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1987-12-16 第111回国会 参議院 決算委員会 閉会後第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十二年十二月十六日(水曜日)    午前十時開会     ―――――――――――――    委員異動  十二月九日     辞任         補欠選任      抜山 映子君     勝木 健司君  十二月十一日     辞任         補欠選任      勝木 健司君     抜山 映子君  十二月十五日     辞任         補欠選任      橋本  敦君     諫山  博君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         穐山  篤君     理 事                 井上  裕君                 大島 友治君                 杉山 令肇君                 柳川 覺治君                 菅野 久光君                 峯山 昭範君     委 員                 板垣  正君                 河本嘉久蔵君                 鈴木 省吾君                 寺内 弘子君                 永野 茂門君                 福田 幸弘君                 二木 秀夫君                 松尾 官平君                 宮崎 秀樹君                 守住 有信君                 一井 淳治君                 久保  亘君                 佐藤 三吾君                 山本 正和君                 片上 公人君                 刈田 貞子君                 諫山  博君                 佐藤 昭夫君                 関  嘉彦君                 抜山 映子君    国務大臣        大 蔵 大 臣  宮澤 喜一君         ―――――        会計検査院長   辻  敬一君         ―――――    事務局側        事 務 総 長  加藤木理勝君        常任委員会専門        員        小島 和夫君    裁判官弾劾裁判所事務局側        事 務 局 長  金村 博晴君    裁判官訴追委員会事務局側        事 務 局 長  龍前 三郎君    国立国会図書館側        館     長  指宿 清秀君    説明員        警察庁刑事局暴        力団対策室長   深山 健男君        宮内庁次長    山本  悟君        総務庁人事局参        事官       河野  昭君        総務庁行政監察        局監察官     西村 正紀君        経済企画庁調整        局産業経済課長  柴崎 和典君        法務省刑事局長  岡村 泰孝君        外務省経済協力        局審議官     川上 隆朗君        大蔵政務次官   佐藤栄佐久君        大蔵大臣官房審        議官       吉川 共治君        大蔵大臣官房審        議官       瀧島 義光君        大蔵大臣官房審        議官       千野 忠男君        大蔵省主計局次        長        寺村 信行君        大蔵省理財局た        ばこ塩事業審議        官        宮島 壯太君        国税庁次長    日向  隆君        農林水産大臣官        房総務審議官   吉國  隆君        農林水産大臣官        房経理課長    草野 英治君        農林水産省農蚕        園芸局企画課長  山本  徹君        通商産業省産業        政策局調査課長  江崎  格君        自治大臣官房審        議官       前川 尚美君        自治省行政局行        政課長      秋本 敏文君        会計検査院事務        総局次長     秋本 勝彦君        会計検査院事務        総局第一局長   疋田 周朗君        会計検査院事務        総局第二局長   志田 和也君        会計検査院事務        総局第三局長   大沼 嘉章君        会計検査院事務        総局第四局長   吉田 知徳君        会計検査院事務        総局第五局長   三原 英孝君    参考人        国民金融公庫総        裁        吉本  宏君        日本銀行理事   青木  昭君        日本開発銀行総        裁        高橋  元君        日本輸出入銀行        総裁       田中  敬君        日本たばこ産業        株式会社代表取        締役社長     長岡  實君        日本たばこ産業        株式会社常務取        締役       佐藤 友之君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件昭和六十年度一般会計歳入歳出決算昭和六十  年度特別会計歳入歳出決算昭和六十年度国税  収納金整理資金受払計算書昭和六十年度政府  関係機関決算書(第百八回国会内閣提出)(継  続案件) ○昭和六十年度国有財産増減及び現在額総計算書  (第百八回国会内閣提出)(継続案件) ○昭和六十年度国有財産無償貸付状況計算書  (第百八回国会内閣提出)(継続案件)     ―――――――――――――
  2. 穐山篤

    委員長穐山篤君) ただいまから決算委員会を開会いたします。  この際、宮澤大蔵大臣及び佐藤大蔵政務次官より発言を求められておりますので、順次これを許します。宮澤大蔵大臣
  3. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 先般再び大蔵大臣を拝命いたしました。  内外情勢の厳しい折、引き続き財政金融政策運営の任に当たることとなり、その責任の重大さを痛感いたしております。今後とも政策運営に誤りなきを期すべく全力を尽くしてまいる所存でございますので、よろしく御指導お願い申し上げます。
  4. 穐山篤

  5. 佐藤栄佐久

    説明員佐藤栄佐久君) 先般図らずも大蔵政務次官を拝命いたしました佐藤でございます。厳しい財政情勢の折から、その職責の重大さを自覚し、誠心誠意職務の遂行に当たる所存でございます。よろしく御指導、御鞭撻のほどをお願い申し上げます。     ―――――――――――――
  6. 穐山篤

    委員長穐山篤君) 委員異動について御報告いたします。  昨十五日、橋本敦君が委員辞任され、その補欠として諫山博君が選任されました。     ―――――――――――――
  7. 穐山篤

    委員長穐山篤君) 昭和六十年度決算外二件を議題といたします。  本日は、皇室費国会大蔵省会計検査院国民金融公庫日本開発銀行及び日本輸出入銀行決算について審査を行います。     ―――――――――――――
  8. 穐山篤

    委員長穐山篤君) この際、お諮りいたします。  議事の都合により、これらの決算概要説明及び決算検査概要説明は、いずれもこれを省略して、本日の会議録の末尾に掲載することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  9. 穐山篤

    委員長穐山篤君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。     ―――――――――――――
  10. 穐山篤

    委員長穐山篤君) それでは、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  11. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 宮内庁の方がお急ぎのようでございますから、ちょっと大蔵大臣に入る前に宮内庁について入らせていただきたいと思います。  昨日の閣議で、天皇陛下国事行為のうちで負担の軽い部分を担当なさるということで、新年祝賀の儀もとり行うことを決定したようでありますが、山本さん、これは大丈夫ですか。国民皆さんも、大変な手術の後だけに心配なさっておるんです。わずか八十四日間で御復帰なさるということ、これは非常に喜ばしいことでございますけれども、全快なさったわけではないんです。しかも高齢。こういうことなんで、私はひとしく心配なさっているんじゃないかと思うんです。いかがでしょう。
  12. 山本悟

    説明員山本悟君) ただいま先生から御心配を賜りましたことでございますが、九月の二十二日に陛下手術をなさいまして、その後いろいろ多少ずつの経過はあったわけでございますが、次第に御回復になられてまいりましたこと、新聞報道等で御承知のとおりでございます。まさにずっと御回復状況というのがそのままの格好で現在まで続いてまいっておるわけでございまして、側近におります音あるいは侍医団といったような者も十分そういった状況判断をいたしまして、今回国事行為につきましても御解除を願うということになりました部分については御負担とならないような格好での御処理が十分可能であるという判断をいたしまして、宮内庁といたしましてもその説をとりまして、政府お願いをして閣議決定をしていただいたというような次第でございます。したがいまして、私どもただいまの判断といたしましては、これによりまして陛下の御体調その他に御負担がかかるということはないという確信を持ってお願いを申しておるという次第でございます。
  13. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 確信を持って御決定なさったようでございますが、今回の病気について、私自身幾つかの疑問がぬぐい切れないんです。そういう意味で二、三ただしておきたいと思います。  これだけの大手術がやられて、しかもなぜこんなにおくれた対応をしなければならなかったのかというのをまず第一に私は感ずるわけです。陛下には平素侍医団というのが高木さん初め四人もおられるわけです。それで、二十四時間検診態勢にあると聞いておるんですけれども同僚議員お話によりますと、本年四月二十九日の天皇誕生日の際に嘔吐されて途中から退席なさったと。その後那須御用邸で二回にわたって倒れられたということを聞いておりますし、九月になると連日嘔吐が激しくなってきたと。これだけお苦しみになっておるのにバリウムを九月十三日初めて行った。外から見ると、侍医団というのは一体何をしておるのかという感じがしてならぬわけでございまして、それをもとに今、山本さんは絶対大丈夫という御発言なさったわけでございますが、それだけにちょっといかがかなと、こういう感じがするんですが、早期発見がおくれた原因は一体何ですか。
  14. 山本悟

    説明員山本悟君) 今回の御手術に至るまでの経緯をちょっと申し上げてみたいと思うわけでございます。  ただいま御指摘がございましたように、本年の四月二十九日、天皇誕生日祝賀の宴会の儀の席上におきまして食べ物をお戻しになって御退席になりました。別室におきまして直ちに侍医長当直侍医とが拝診をいたしたわけでございますが、御体調にそのときも脈拍その他の特別の御異常が認められないで、お疲れぎみによる一過性のものという判断侍医としてはいたしたわけでございまして、大事をとって午後の行事はお取りやめいただくというようなことになったわけでございます。その後、実際にもお変わりなくお元気で実はお仕事もなさっていらっしゃったというような状況が続いたわけでございます。  那須御用邸にいらっしゃるという夏の御予定があったわけでございますが、それに先立ちまして、七月十日に宮内庁病院におきまして胸部のエックス線写真と腹部のCT検査というものをいたしたわけでございます。ところが、この検査によっても実は御異常が認められなかったというような状況でございました。そういうようなことであったわけでございます。  それで、確かに那須におかれましては御元気に植物の観察その他でお出ましになっていたわけでございますが、七月の中旬ごろに一度お倒れになったというようなことがあったようでございます。そのときの状況を、もちろんそのときは侍医もついていたわけでございますから、判断といたしましては、どうもたびたび毎日のようにお出かけになっていたことと暑さというようなことが重なっての貧血でふらふらなさったというようなぐあいに判断をいたしたようでございまして、極めて重大なことというような判断は、側近医師としても当時はまだしてなかったというのが実情であろうと存じます。それで、八月の下旬ごろからときどきおなかが張るというような御異常が認められるようになりまして、九月に入ってからお戻しになるというのが一週間置きぐらいにあったというようなことでございまして、これはということで東京にお戻りになりました後、直ちに宮内庁病院におきましてもう一遍検査お願いをして、そこで食物のお通りの悪い部分があるということがはっきりいたしまして、早急に御手術というような決定になり、そのとおりになってきた、これが一連経過でございます。  したがいまして、結果論としてどうしてだと、こういうお尋ねをされますと、私どもも何と申し上げていいかということになるわけでありますが、経過といたしましてはただいま申し上げましたようなことで、それぞれのときにおいて医師判断をいたしておりまして、そういうような異常なものという判断というのが結果として九月の上旬になったというようなことでございます。  御手術の結果というのは、本日までに既にある程度公務にも御復帰になるというようなことで、順調に御回復になる。御高齢でございますから、もちろん先生おっしゃいましたような意味での御心配はあったわけでございますけれども、順調に御回復になっていると、かように存ずるわけでございまして、結果論として御発見が遅かったのじゃないかというような御心配を賜りましたこと、まことに申しわけないとは存ずるわけでございますが、それぞれのときにおきましては最善の考え方で対処をしてきたというように存じております。
  15. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 なかなか山本さんも苦しい御答弁なさっているようですが、私もあなたもこの道では素人ですから、なかなか正確なあれはできないと思うんですが、この中には宮崎さんのようにお医者さんもいらっしゃるわけで、いろいろ聞くと、これは率直に言って、私も去年腹を切りましたが、ちょっとおかしいなと直観で思ってすぐ医者のところへ駆け込む、それで医者判断する、そういう図式の中で、もし森岡さんだったら、これは直ちに手術しなきゃ大変だと言ったかもしれない。そうすると、侍医団というものは一体何だろうとまた再び考えざるを得ないんですね。  私は、結果論としてという言葉がございましたが、兆候を見逃したことは事実じゃないかと思う。そして、なかなか宮内庁というのは外から見ると秘密が非常に好きなようですから、なかなかこれがわからない。推測しかないんですが、森岡教授がこういう記者会見していますね。複雑な気持ちで一言では言えない、社会的影響の大きい人は気になることがあると、この意味報道がされております。これは一体何なのかと私も考えさせられたんですが、いわゆる玉体論というところに行き着くんですけれども陛下治療の場合にお体を傷つけてはならないという不文律があるそうです。  明治天皇の場合には注射の一本も侍医団で激論があった、こういうのも報道されておりますね、この際。陛下の場合も何か虫歯の治療抜歯ができない、こういうような現状だということも報道されている。そういうことから見ると、開腹手術というのは大変だったのじゃないかなというような想像がされるわけです。これが私は真相じゃないかなというふうな感じがするんですが、いかがでしょう。
  16. 山本悟

    説明員山本悟君) 明治天皇あるいは大正天皇という時代であればいろいろなことがあったかとも存じますが、やはり現在の陛下、御高齢ではあるというようなことで、もちろん手術というものを考えます場合には、非常にいろいろ専門方々頭をひねられ、考えられたことであろうと思います。しかしながら、やはり第一は、何といっても現在の医学のもとにおいてどうして差し上げるのが一番いいのか、お体のことであろうと存じます。その意味では、やはり手術が御必要であるという判断になったときには、それにつきましてとやかくの論議は全く私どもはなかったと存じております。その意味では、玉体論なるがゆえに非常に手術そのものがもめたというようなことは、私は全く存じておりません。  抜歯というような問題も、確かに抜かないで済めばそれの方がいいわけでございますので、そういう意味努力は、それぞれの担当の医師は非常に努力をいたしておると存じますけれども玉体論なるがゆえに歯を抜いては困るのだというような意味に短絡になるというようなぐあいには存じておりません。
  17. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 それなら結構なんですが、しかし、ちょっと気になる報道があるんです。  陛下が退院なさって最近の新聞ごらんになって、精密検査についての記事を見て大変腹を立てられたという類の記事を私目にしたんです。何で精密検査をするのか、まだ何か悪いところがあるのかということを侍医団に聞かれたとかいうことが報道されておるんです。私も手術を受けて主治医からも随分詳しくいろいろな意味お話を聞いてなるほどと納得したんですけれども、普通これだけの手術をやれば術後について患者が大変疑心暗鬼になるのは、これは無理もないんですよ。それを解くのも侍医団責任であると私は思うんですけれども新聞を見て、なぜ精密検査をやるのか、何かまだ悪いのかと、こういう御質問をなさったということを聞くと、一体侍医団皆さん何を説明なさっているのかなという感じがしてならぬわけでございますが、この点はいかがでしょう。  もう一つお聞きしますと、皇后陛下もいろいろ報道されておるんですが、何か宮内庁の話としてということで、その報道の中に、吹上御所ではしっかりされているが外へ出るとそうでなくなるという類の発言記事になっておるわけでございます。これは一体どういう意味だろうと私は首をかしげておるんですけれども、ここら辺もあわせてひとつお願いします。
  18. 山本悟

    説明員山本悟君) 精密検査記事が出たことをお読みになって云々と、これが正確にどうであったのかということはもちろん私ども存じ上げていないことでございますが、御自身のお体に関しましてのいろいろな新聞記事が出る、しかもそれがお身にちゃんと御説明を申し上げてないものが出るというようなことについては非常に意外に思われたのじゃなかろうか、それでいろいろと御下問になったというようなことではなかろうかと存じます。したがって、それをお怒りになったとかなんとかいうことは承知をいたしておりません。  もちろん、いろんなことがいろんな格好報道されたわけでありまして、それは本当に責任のある者が言ったのか言わないのかというようなことも随分あったわけであろうと思います。私どももはっきり言って、いろんなデータの数字なんというのは、全然責任者から聞いてないものがあたかもそういう格好のごとくに伝えられて出た場合があるというようなことでございまして、当然その後のいろいろな検査もなさっていると思いますが、それはやはり御説明をして、していただいているということであろうと存じます。それがまた、そういったものを確定し、そういうことを医師団そのものが考えていないときにああいう格好で出るということについて、何でたと、こういうぐあいにお思いになったのは、これはまた当然のことじゃなかろうかというような気もいたしております。そういうような事情であることを御賢察賜りたいと存じます。  それから、皇后様のことでございますが、これもだれがどう言ったのか存じませんが、時によって、やはり御高齢でございますから、これは老人特有のいろいろな状況がある場合がよくございます。それで、普通のときには何でもないことも、日によってはなかなか思うようにお体が動かないというようなときだってそれはあるわけでありまして、そういったことを指しているのじゃなかろうかと思いますけれども、常にそういうような状況であるということではないと存じております。日常の御生活はきちんとなさっているというように存じております。
  19. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 あなたの御説明ならばそう心配することもないのじゃないかという感じがします。しかし、報道を通じてしか知ることのできない国民から見ると、この天皇病気を含めて、最近の一連報道は、あなたの方が非常に秘密のベールがかたいものですから、それだけに誤解を生んだり、心配がさらに心配を生むという結果になっておるのじゃないかと私は思うのです。これは戦後四十年たっておる今日、人間天皇を宣言なさって、できるだけ国民との開かれた皇室づくりというのが基調になっておるはずであるだけに、私はやっぱり非常に残念なことだ、そう思うんです。最近の傾向から見ますと、何か国民との間に垣根をつくって隔離、隔絶するというんですか、そういう方向に流れておるような気がしてならぬわけでございまして、今度の御病気回復写真がテレビで出てまいりましたけれども、それも何か報道関係者の人がじかに撮ったのじゃなくて、宮内庁関係写真家の方が撮ってそれをお貸し下げになったというようなことも聞いておりますし、カメラマンの皆さんがわっと行くと陛下自身にも大変ショッキングな感じがあるということで配慮なさっておるのではないかと思いますけれども、じかに接近する一つの媒体というのはマスコミしかないわけですから、そこら辺をもっと活用なさって、そしてこういう誤解や何かが生まれないようにするのも宮内庁の役割じゃないか、私はそう思うんです。そういう意味で、ひとつぜひ今後も開かれた皇室づくりに専念されていただくことをお願いしておきたいと思います。  最後に、その意味で私が五十四年と六年の二回にわたって取り上げました外国の公賓の陛下に対する贈答品などについては、各国でもやられておるようでございますが、宮内庁の倉庫の中に眠らせるのじゃなくて、もっと国民に共有の財産として開放する、そういった提案をしてきておるわけでございますけれども、ここら辺は山本さん、検試させてくれ検討させてくれということで約六年たったんですが、もうそろそろ結論を出していいころじゃないかと思うんです。いかがでしょう。
  20. 山本悟

    説明員山本悟君) この問題につきましては先生からたびたび御指摘をいただいていることをよく存じている次第でございまして、やはり外国からの陛下あてということでの贈答品ということでございますので、そのたびごとにこういうものが来たということを公表いたしていることは御承知のとおりでございます。そうして、やはりそれぞれのお立場なり陛下ということを頭に置いての贈答品が来ているわけでございますので、それを身近にお置きになる、あるいはごらんになっておる、あるいは飾っておられる、これは吹上御所等ではそういうような扱いをいたしているわけでございますが、たまってまいりますから、たびたび新しいものとかえていくというようなことが行われてきているわけでございます。そういうような格好での陛下ということを頭に置いての御贈答、あるいは皇太子殿下なら皇太子殿下ということを頭に置いての御贈答というようなことが多いものでございますから、なかなかぱっと陳列してというような状況に踏み切れない、何らかのきっかけというようなものがあったときにさらに考えていきたいというような気持ちは持っているわけでございます。  御案内のとおり、ただいまの皇室でございますから、それをどうこう御処分なさるというようなことは全くないわけでありまして、それこそ戦後のは全部きれいにとってあるわけでありますけれども、そういう並べる施設、あるいは並べることによってそれぞれの、こういうものが来た、こういうものが来たということの比較の問題とか、いろんなことが起こってくることも考えられるようなこともあるわけでございますので、そういったものを頭に置きながら、しかも先生のおっしゃいましたようなことも一つの考え方だということは十分承知をさせていただきながら、機会を探してまいりたいと、かように存します。
  21. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 それ以上なかなか出ないでしょうから、もうこれ以上追及しませんが、開かれた皇室づくりということは大事なことでございますから、その一環としての今の贈答品関係のものもございますけれども、早急にひとつ検討、結論を出す御努力お願いしておきたいと思います。  どうぞ結構でございます。  そこで、検査院から十一日に六十一年度の検査結果の御報告をいただきましたので、その問題についてまず若干入らせていただきたいと思います。  報告の内容を見ますと、行政改革、財政難の折でございますけれども、不当な事項が四十億、不適正を含め。ますと百五十六件、二百十四億、年々増大しておるわけでございまして、ある新聞報道によりますと、サラリーマン一人当たり年所得税二十四万五千円の実に八万七千五百人分がむだだという記事も出ております。これは推測を含めてでしょうが、院長、この報告をまとめての感想をまず聞かせてくれませんか。
  22. 辻敬一

    会計検査院長(辻敬一君) ただいまお話のございましたように、十二月の十一日に六十一年度の検査報告を取りまとめまして内閣にお送りをしたわけでございます。  私ども指摘をいたしました件数、金額は、ただいまお話がございましたように、百五十六件、二百十四億円でございまして、前年度より件数、金額ともやや増加をいたしております。また、その内容につきましても、一般の御関心の深い住宅、土地問題でございますとか、あるいは年金、医療問題でございますとか、あるいはまた公共事業問題でございますとか、その他広く取り上げているつもりでございます。国会における御審議の御参考になるような報告を取りまとめることができたというふうに考えておるわけでございます。
  23. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 大変検査院としては御努力した結晶のようでございますが、何か報道によりますと、院長の言葉として、今の役人の頭には節約や効率という言葉がないとか、規則どおりという頭はあっても、もう少し安く上げられないかという意識がない、こういうあなたのつぶやきというよりも怒りでしょうね、報道されておるわけでございますが、毎年のこの検査報告を見ると、あなたのおっしゃる理由が私にはわかるような感じがするわけです。このむだ、不当をなくすためにどうすればよいのか、その点についてやっぱり院長としても御所見があるのじゃないかと思うんですがいかがでしょう。
  24. 辻敬一

    会計検査院長(辻敬一君) 私ども検査をいたします場合には、いろいろな観点から検査をしているわけでございます。  まず第一に、会計経理が予算、法令等に従いまして適正に処理をされているかと、合規性の観点と申しておりますが、これは検査の原点でございますからもちろん重要でございます。しかし、それだけでは十分ではないわけでございまして、ただいまお話のございましたように、経済的、効率的に行われているか、少ない費用で効果を上げているかという点からの見方が大事でございます。また、ある事業が所期の目的を達成しているかどうか、そういう有効性の観点からの見方もまた重要なわけでございます。  官庁の経理を見てみますと、第一の合規性の意識に比べまして、これは比較の問題でございますが、経済性、効率性の意識でありますとか、あるいは有効性の意識でありますとか、そういう意識は比較的薄いのではないかと考えておりまして、ここが民間と違うところである。したがいまして、最近の検査におきましては、合規性の観点と並びまして経済性、効率性の観点あるいは有効性の観点からの検査を充僕しているところでございまして、最近の検査報令では多くの事例を指摘をいたしておるところでございます。やはり実際の経理を扱われます各省庁あるいは出資法人におかれて、このようなところを十分認識されて経理の執行に当たられるということを検査院として強く希望をいたしておるところでございます。
  25. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 検査院というのは、ある意味ではそれが任務として監督という立場から言われているわけですから、私はもっとはっきり物を言った方がいいのじゃないかと思うし、今度の検査報告を見ましてもそのことが私は大事じゃないかというように思いますので、ぜひひとつその辺は今後とも強めていただきたいと思います。  そこで、大蔵大臣、同時に今度は副総理でもございますが、今検査院長から所見がございました。この決算報告を見てどういうふうに御認識をしておるのか。八年ぐらい前だったですか、鉄建公団を含めて、公費天国でこの決算委員会も大変大きく追及の輪が広がったことがございます。十一年前にはロッキード事件もございましたが、むだ遣いをすれば処分をするとか、もしくは返納を求めるとか、こういった措置が私は必要じゃないかというような感じもするんですけれども、年々この決算報告を参考にしながら査定を行って予算編成している主務大臣として、副総理でもあるわけですが、御見解、決意があればいただきたいと思うんです。
  26. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 会計検査院から今院長の言われましたような御指摘を受け、それもことしだけのことではありませんで、年々そういう御指摘を受けておるということはやはり行政府としては大変に申しわけないことである、反省をし、改善をいたさなければならないことであると考えております。  今院長の言われましたことの一つは、法規に違反していないということはもとより大切なことでございますけれども、同時に私の言葉で言えば、国は営利団体ではございませんけれども、費用対効果の原則というものはやはりなければならないということを言われておるのであろうと思います。そういうことについて欠くるところがあることはまことに申しわけないことでございます。しかし、他方でそういう御指摘を受けているということはまことに私自身ごもっともなことだ。いかに営利団体でありませんでも最小限の費用で最大限の効果を上げるということは、これは国にとっても公共の団体にとっても必要なことである。営利団体ではございませんから、効果とは何かということにいろいろな議論はあろうと思いますけれども、しかし費用対効果の原則というのはやはり最大限に尊重をされなければならないという、そういうことを言われたものとして十分反省をいたすべきことと考えます。
  27. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 ぜひその辺はひとつ、言葉だけじゃなくて、これから予算編成もあることですから、大事にしていただきたいと思うんです。決算問題につきましては後ほどまた具体的な問題で入りたいと思いますが、せっかく今副総理である宮澤大蔵大臣になりましたので、ついでに二、三聞いておきたいと思うんです。  今回の自民党の総裁選で三名の候補の一人として立候補なさって、私がおやと思ったのは、あなたまで含めて中曽根政治の継承ということを公約なさった。中曽根さんは、御案内のとおりに自他ともに認める改憲論者。そこで、戦後政治の総決算ということで彼は彼なりにその路線で努力した。できない部分はたくさんございましたが、そう思うんです。宮澤さんはそうじゃないのじゃないかというふうに私はうかつにも思っておったんですけれども、そういった公約もございますから、この際改めて現行憲法に対する見解を承っておきたい、そういうことが第一点です。  それから第二には、防衛費がGNP一%を突破しました。このあり方、防衛力の整備、この問題についてもどういう御見解なのか、改めて聞いておきたいと思います。
  28. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 前にも何かの機会に何度か申しておることでございますが、私が承継と申しましたのは、中曽根前総理大臣がその政治の一つの大きな目標として行財政改革ということを掲げられた。これは戦後四十年になりまして、やはり戦後やってきた制度がいろんな意味で改められなければならない、いろいろひずみも生じておる、そういうことについてこの際根本的にやはり見直すべきであり、改めるべきものは改めるべきである、そういう行財政改革の路線についてこれを承継すべきであるということを申したのでございます。  他方で、今佐藤委員お話しになられました問題について具体的に申しますと、実は中曽根内閣発足直後におきましては、不沈空母であるとか幾つかの発言がございまして、私は正直を申してちょっとその点を危ぶんだ段階がございました。しかし、その後に非常に中曽根さんはそれらの問題について慎重になられまして、むしろ後半はかなりその辺性いわば抑制をして、世論を聞きながら政治をやってこられたように思います。  御指摘になられました憲法の問題については、個人としては恐らく改憲論者でいらっしゃろうと思いますが、自分が総理大臣である間はこの問題を政治の日程に上せる気持ちはないということを明言せられまして、私はそれをもって十分であると考えたものであります。私自身は改憲ということを考えておりません。  それから、GNP一%と防衛費の関係でございますが、昭和五十一年に三木内閣があの決定をいたしましたころには、まだ我が国はかなり経済成長の高い国でございましたので、恐らくGNPの成長の方が当時二けたというようなことは比較的容易に考えられたものでございますから、これがこの一%ということを決めても現実の制約になることはないという認識が片方であったかと思われます。しかし、石油危機の影響がその後出てまいりまして、GNPの伸びが非常に小さくなった。ということは、分母の事情が思わない状況になってきたということがございますし、だんだん給与のウエートがやはり防衛費の半分を占めるようになった。しかも、毎年ベースアップが行われるといったようなこともございました。  それらの事情から、どうしても一%を超えてはならないということ自身は、私はそんなに意味のあることではないとかねて思っておったわけでございますが、昨年の暮れに予算編成をいたす段階で、いろいろな分子、分母の両方の事情からこれを守ることが現実に難しいということになりまして、改めて安全保障会議を開き、閣議を開きまして、かねての三木内閣の決定についての再検討を求めたわけでございます。  結果といたしましてやや一%を突破いたしましたが、しかし一月になりまして改めて閣議決定をいたしまして、今後とも専守防衛の立場に徹して、三木内閣の閣議決定そのものは、文言はこれに置きかえるわけでございますが、精神は尊重する、しかも十八兆四千億という中期防衛計画がございますので、これが十分な歯どめになる。制約になる、こういう認識のもとに新しい閣議決定をいたしました。私は、それをもって足りるのではないか、我が国がいわゆる軍事大国になるということはこの新しい閣議決定のもとで到底考えられないことは以前と同じことであろう、そういう認識をいたしておるものでございます。
  29. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 この問題、あなたの考え方はわかりました。まだ議論は、これはやれば尽きないわけですから残しますが、もう一つこれと関連してあなたの見解を聞いておきたいと思うのは、在日米軍駐留経費の負担増額の処理が注目されておりますね。恐らくこれは今度の予算編成の一つの焦点になるのじゃないかと思うんですが、この問題の発端というのは、中曽根内閣の当時に、ペルシャ湾の自由安全航行確保のため我が国の貢献する具体的な方針は何かというのが主題で取り上げられてきたわけですね。一体このペルシャ湾と米軍駐留経費がなぜ関係があるのか、私は理解に苦しむんですけれども、このようなことが一たび許されますと、率直に言って、世界じゅうの危機が日本の防衛費増額の理由にされてくる。さきに韓国のいわゆる四十億ドルの問題もございましたが、政府みずからが日米安保条約の精神を踏みにじることに私はなるのじゃないかというふうに思うんですけれども、あなたの憲法認識等含めてこの問題についてのお考え、これはもう即日あなたがぶち当たっていかなきゃならぬ問題ですから、お聞きしておきたいと思います。
  30. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) まず最初に、この問題につきましての具体的な政府の対処はただいまのところ全く未決定でございます。関係各省庁の間で問題をどのように考え、どのように処理すべきかについて内々検討はいたしておりますけれども、事務当局の検討の段階にとどまっております。  今佐藤委員の言われましたことは、十月七日にペルシャ湾の問題についての対処が政府並びに与党との間で議論になりました。  御承知のように、この議論の大筋といいますものは、我が国がペルシャ湾からこれだけ多くの石油を輸入して運んでおりながら、その安全というものについて我が国が自分で寄与することは、当然ながら軍事的にはできないことでございまして、米軍等々のいわば恩恵にあずかっておる、端的に言ってそれはただ乗りという批判を受けておる云々、こういうことをどう考えるべきかということでございまして、このときに政府が考えましたことは、ペルシャ湾の安全航行のために憲法の範囲内で我が国ができることは何であろうか。それは、例えば安全航行のためのいわばシステムといいますか、機器といいますか、デッカと申しましたが、そういうものを導入できるということ、あるいは周辺の国に対して経済協力に貢献ができるといったようなこと等々であろうということは、会議に関係いたしました者が比較的容易に合意できたところでございました。  しかし、どうもそれだけではなお十分ではないだろうといったようなことから議論が展開をいたしまして、米国がいわばペルシャ湾を含めて国際的な平和と安全のために全世界的な意味で役割を果たしておるのであるから、我が国としては日米安保体制を結んでおるので、この日米安保体制を一層効果的に運用する方法はないであろうか、こういうことから、在日米軍の経費を軽減する方法ありや否や、そういう議論に発展をしていったという経緯でございます。  そのこと自身は十分に理解のできることでございますが、ただ一般論から、それならば我々として何ができるか、何が有効かということになりますといろいろ議論が分かれてまいりまして、佐藤議員の言われましたようなそういう心配をされる向きも確かにないわけではないのでございます。  そういたしますと実態は、何かをすべきだといたしましてもそのための物の考え方あるいはいわば理論的な基礎づけ、また具体的な運び方等々をどういうふうにすることが一番世論の支持を得るゆえんであろうかということについてなお政府部内にいろいろな議論がございまして、冒頭に申しましたように、ただいま事務当局間で検討いたしておりまして、結論が出ておりません。発生論的には先ほど申しましたようなことであるのでございますけれども、ただいま各省庁間の議論はその辺の問題をめぐりましてまだ決着に至っていないというのが現状でございます。
  31. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 今あなたの考えがもやっとしておるんですけれども、この問題、これは防衛庁かもしれませんが、恐らく外務省でしょう。もう予算要求は具体的になされておるんですか。なされておるなら、内容はどういう内容になっておるのか、それが一つ。  それから、今あなたのお話を聞いておりますと、全体的に党、政府の中でまとまってなくて模索の段階とのお話がございました。しかし私は、もし仮に今度の二十八日に閣議決定がなされるいわゆる六十二年度予算に計上するとなりますと、これは地位協定の改定にもかかわってくるのじゃないかと思うし、そういう問題が国会で議論もなしにやられるということになると、これは重大だと私は思うので、そういう意味で、きょうはまさに予算編成の大詰めの段階ですから、あなたにひとつその内容が明らかになれば聞きたいと思ったわけですけれども、これは大臣、さっきペルシャ湾の問題について何らかの貢献ができないかという議論がございましたけれども、そういう性格のものじゃ私はないと思う、この問題は。そこら辺をきちっとしないと、これから失いろいろな問題が、だから前例じゃないかということになりかねぬと私は思う。だから、そこら辺はひとつぜひきちっとした対応をしてほしい、そう思います。いかがでしょうか。
  32. 寺村信行

    説明員(寺村信行君) ただいま大蔵大臣から御答弁申し上げましたように、駐留米軍の経費の軽減問題につきましては、現在、各省庁間で検討中でございまして、具体的に大蔵省に予算要求が出ているという段階ではございません。
  33. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 先ほど申し上げましたようなことでございますので、当然のことながら、大蔵省に対して具体的な予算要求は出ておりません。  ただいま出ておりますのは、御承知のように、前回、駐留軍労務者の雇用の安定等々の関連におきまして、地位協定に対して特別協定をつくりました。その特別協定の結果、我が国が一部の給与関連を負担するということになりました。これは昭和六十二年度予算にも計上されましたが、いわばその平年度分と申しますか、六十三年度分、この予算要求はございます。しかし、それ以上のものはございません。
  34. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 まだ省庁の要求も出てないようですけれども、恐らくこれは最終段階に登場してくると思いますから、そこら辺をぜひひとつ念頭に置いて対応してほしいということを要求しておきます。  それから最後に、ひとつ副総理として聞いておきたいと思いますのは、六十四年に参議院選挙が行われるわけですね。それで、これを目指して、臨時国会の議論を聞いてみますと、早くも同日選挙が云々というのが報道されておるんですけれども、私は、同日選挙というのが慣習化されると、憲法に認める二院制の意義というのが失われてくるのじゃないかというような感じがしてならぬわけですけれども、政権の座にある者として、むしろ避けるべきじゃないか、私はこういうふうに思うんです。これは副総理として、あなたのひとつこの問題に対する御見解を聞いておきたいと思います。いかがでしょうか。
  35. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 私は過般、内閣法第九条によりまして、総理大臣に事故あるとき、または総理大臣が欠けたときにその職務を行う者としての指定を受けておる者ではございますけれども、現実の問題といたしまして、総理大臣は昨日出られましてもきょうは国に帰ってこられるということでございますから、私自身がただいまのような問題について直接に決定をする立場にないし、また、そのようなことの委任を受けておるとも考えておりません。したがいまして、ただいまの御質問につきましては、まことに恐れ入ることでございますが、総理大臣もすぐに帰られますので、別の機会にひとつお尋ねをいただきたいと存じます。
  36. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 まあいいでしょう。しかし、あなたも次の総理を目指しておるわけですからと思って期待したんですが、これはまあしようがない、そういうことで逃げられれば。しかし、私はそう思いますから、そこら辺はまたひとつ通常国会の中でも議論したいと思います。  そこで、先ほどちょっと中断していましたが、決算の具体的な問題でひとつ検査院その他に二、三聞いておきたいと思います。  その一つは、郵政省の簡易生命保険及び郵便年金特別会計において、円高・ドル安のために外国債の運用分で三千億円の為替差損が生じた、こういうことが報道されておったんですけれども、今度の報告を見ると、具体的にそこら辺が鮮明に出ていないんですけれども、これはいかがでしょうか、検査院。
  37. 辻敬一

    会計検査院長(辻敬一君) 簡易生命保険及び郵便年金特別会計におきます積立金の運用のために保有している外貨債券でございますが、これを仮に六十一年度末の実勢為替相場で円換算をいたしますと、それらの取得価格約一兆三千五十六億円を約三千二十六億円下回っているわけでございます。  今回の六十一年度決算検査報告におきましては、歳入歳出決算その他検査対象の概要というところがございます。その中の簡易生命保険及び郵便年金特別会計の概要を記述している部分にその旨を注記いたしております。
  38. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 それは見せていただきましたが、三千二十六億になりますかね。巨額な額なんですが、実損がないのかあったのか、こういった点については、恐らく私は明年の審査対象と思うんですけれども検査院の検査の性格から大変重要な問題を含んでおりますから、これらの検査結果をどう措置するのか、ここら辺について定かでございませんので、ここら辺をもう一つ聞いておきたいと思うんです。
  39. 辻敬一

    会計検査院長(辻敬一君) 外貨債に運用いたしますことにつきましては、法律の規定により認められていることでございます。また、ただいまお話がございましたように、これは現時点の為替相場による評価によりましたもので、いわゆる評価損でございます。そういう意味からいたしまして、私ども指摘をいたします不適切な事態ではないわけで、直ちに不適切な事態とは言えないわけでございますが、やはりこういう問題については注意をしていく必要がございますので、先ほど申し上げた方法によりまして、特別会計の概要を記述いたしましたところに注として記述をいたした、こういうことでございます。
  40. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 次に、国会図書館が三億五百万かけて設置した入退館システムですか、このソフト開発の失敗から実用が不可能になっておるという事態が報道では流れたんです、検査院の検査結果として。ところが、今度のあれには全然指摘されていないんです。これは一体なぜかということが一つ。  それから、これはひとつ図書館側に聞いておきたいと思うんですが、国費をもって設置した施設が一度も使用にたえないというゆゆしい問題を起こしておるわけですが、これは一体何が原因でそういうことになったのか、責任の所在についてあわせてひとつ図書館の方からも聞いておきたいと思うんです。
  41. 辻敬一

    会計検査院長(辻敬一君) 国立国会図書館の入退館管理システムが稼働していないという事実は承知をいたしておりますが、ただいま図書館側におかれて改善策を取りまとめられておりまして、その改善されたシステムが明年の七月ごろまでに完成するというふうに承知をいたしておりますので、もうしばらく事態の推移を見守ることにいたしまして、検査報告への掲記はいたさなかった、こういうことでございます。
  42. 指宿清秀

    ○国立国会図書館長(指宿清秀君) お答えいたします。  当館の入退館管理システムにつきましては、昨年の九月、当館新館の開館を機といたしまして、懸案でございました利用者サービスの向上の一環といたしまして導入を計画いたしたものでございますが、ただいまお話ございましたように、これがいまだに全面的な稼働をしておらぬという事実でございます。このことによりまして、利用者はもとより、国会を初め関係各方面に多大の御迷惑をおかけしたということで、私どもとしてまことに申しわけなく、心からおわびを申し上げる次第でございます。  このシステムについては、最終段階におきましていろいろテストをいたしました。昨年の十一月六日には利用者を対象とするテストをいたしましたのでございますが、いわゆる混雑時の処理スピードに問題がございまして、これが全面稼働いたしますのにはいかにしても不十分であるという事態でございました。したがいまして、当館といたしましては、一部の対象者にのみ稼働をいたすいわゆる部分稼働を実施いたしたのでございます。  全面稼働ができなかった原因の究明につきましては、当館といたしましても早々に館内に調査委員会を設けまして検討いたしました。その中で、外部の専門家、具体的に申しますと学術情報センターの専門家にもその原因究明についての調査を依頼いたしました。その結果、この入退館管理システムの中心部分でございますソフトウエアに欠陥があるということが明らかになりまして、同時にこのソフトウエア部門に改良を加えることによりまして所期の目的を達成できると、こういうことでございました。  この考え方に基づきまして、今年二月に館内に来館利用者サービスシステム開発室というものを設けまして、そこで、昨年の失敗と申しますか、ダウンの事情等をよく勘案いたしまして、当館が中心になりまして建設省、メーカーとも十分協議をいたしまして、文字どおり共同開発の実を上げて、現在改善に向けて最善の努力をいたしておるという状況でございます。
  43. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 撤去するのじゃなくて、改良、改善中ということですね。そうすればやっぱり改善の必要経費が要ってくると思う。その概算額は一体どの程度になるのか。さらに、それは予算要求として今回出しておるのかどうか。そうして、改良をいつごろをめどに利用が可能という前提でやられておるのか。ここら辺も含めててひとつ。
  44. 指宿清秀

    ○国立国会図書館長(指宿清秀君) お答えいたします。  昨年導入を計画いたしました入退館管理システムは、改善ということで目下進めておるわけでございます。  この改善に要する費用でございますが、私どもといたしましては、今年二月以来検討を重ねました結果、いろいろの問題が実は明らかになっておりまして、例えば利用者にサービスをするためのよりよき条件というようなものも実は検討の段階の中で出てきておるわけでございます。端末機の増設でございますとか、あるいはゲートの改良でございますとか、あるいは電光表示板の一部の手直しといったようなものは、システムダウンと直接関係はないかもしれませんが、せっかくの機会でございますので、こういうことも含めまして考えておるわけでございます・これらの経費につきましては、これは建設省に実は支出委任をいたしておることでもございますので、私ども自体が算定をするという立場ではございません。ただ、聞いておるとこるによりますというと、大体図書館として、その新しい部分の費用でございますが、おおむね三千五百万円程度ではなかろうかと、こういうふうに聞き及んでおるわけでございます。  なお、この経費につきましては、私どもといたしましては当館のいわゆる施設費の中で賄いたいと、こういう考え方でございまして、新たな予算要求はいたしておりません。しかし、これにつきましても、まだ財政当局等とも十分な打ち合わせをしておるというものではございませんので、建設省の方からこのような経費が必要であろうということを聞き及んでおるという状況でございます。
  45. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 二年有半にわたって研究しながら、当初から全然使用不能というぶざまな格好は、私は相当反省をしてもらわなきゃいかぬのじゃないかと思うので、ここら辺の問題は、ひとつ今後対応に当たっては再び起こらないように、ぜひ要請しておきたいというふうに思います。  そこで、時間が迫っておりますから、ひとつ海外経済援助の問題で二、三お聞きしておきたいと思います。  我が国のこの海外援助の問題で最大の汚点は、同日選挙の前に行われたいわゆるマルコス疑惑、その後引き続いて今度はJICAの汚職が続発しているわけですけれども、この問題についてどのように監査がされていったのだろうと私は期待を持って今度の報告を見たわけでございます。それというのも、御案内のとおりに国際公約、第三次中期目標では六十一-七十七年度までに約四百億ドルということになっておるわけでありまして、さらにその後六十七年は六十年の倍とすると、こういう海外経済援助については増大一途をたどっておるわけでありまして、それだけに、これに対する関心というものは私は重大であると、こう思っておるわけです。  検査院も、あのマルコス事件が起こりまして、機能の充実を図って組織も改編したはずでございます。そして、旅費も増額して積極的に検査を実施した。こういうふうに私は考えておったわけですが、この問題について、院長、どういう検査結果なのか明らかにしてほしいと思います。  けさの新聞を見ますと、外務課か何かをきのうの段階で設置したということが出ておりましたけれども、そういうことでは私は国民は納得しないと思うので、まずこの経緯をお聞きしたいと思います。
  46. 辻敬一

    会計検査院長(辻敬一君) 経済協力につきましては、ただいまお示しがございましたように、予算額も最近非常に増加しておりますし、今後も我が国の国際社会での地位向上を反映いたしまして、さらに増加することが予想されておりますし、一般の御関心も深いわけでございます。しかし、率直に申しますと、従来この方面の検査は手薄でございましたので、六十二年の検査のときから、今お話がございましたように検査の体制を整備いたしまして、外務省、海外経済協力基金、それから国際協力事業団、それをある課でもって一元的に検査することにいたしまして、外国旅費を増額して検査の充実を図ったわけでございます。  六十二年に実施をいたしました実績について申し上げますと、東南アジアを中心といたしまして八カ国に調査官を派遣いたしまして、在外公館、国際協力事業団、海外経済協力基金の事務所の実地検査を行いますとともに、政府開発援助の現場の実地調査もいたしたわけでございます。ただ、本年検査をいたしました限りでは、検査報告に掲記するような事態は特になかったわけでございます。  なお、今お話のございましたように、今後この海外検査を実施いたします課を外務検査課というふうに名称を改めまして、今後とも検査の充実を図ってまいりたいと、かように考えております。
  47. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 六十二年度の場合には八カ国をやったけれども指摘する事項はなかったと、そういうのが報告の趣旨だと思うんですが、あれだけ世間を騒がしたマルコス疑惑、この点については同日選挙との絡みがございまして時間的な問題もあったんですけれども、結論は何かといいますと、国税庁の調査で結局六社でわずか十六億円の申告漏れが発見されて六億数千万の追徴、それで一応表ではけりがついたという格好になっておるわけですけれども、しかし決してこれは解明されたものではない、むしろ検査院の検査結果でこれらも明らかにされるだろう、私はこう期待しておったわけです。しかし、今あなたの御報告を見ると、これらについて全然触れられていない。  私は、日本の海外援助について国民皆さんは、マルコス疑惑から、援助がどうなっておるのか、実態は一兆円を超える額になりながらああいう姿が各国にやられておるのかという疑惑だけは残ったと思うんです。しかし、これをもっと解明していく、疑惑をぬぐい去っていくその役割というのは、今のところ検査院しかないのじゃないかと私は思うんです。そういう意味検査院の検査体制の強化というのが私は行われたというふうに思っておるわけですけれども、それが今の院長のような御報告ではどうしても納得ができない。  恐らく円借款事業の検査で、日本企業と援助受け入れ国政府との契約、こういう内容ですから、なかなか権限上制約があるのじゃないかという感じはします。だったら、その点はどこなのか、こういう点も明らかにすべきじゃないか。  そしてもう一つは、六十二年度の検査をやった際に、相手国政府の協力、契約等の必要書類の閲覧、事業現場への立ち入り、こういったことがやられた上で、結果的には指摘することはない、こう言われておるのか、ここら辺も含めてできればひとつ聞いておきたい、そう思うんです。いかがでしょうか。
  48. 辻敬一

    会計検査院長(辻敬一君) 私ども検査をいたします対象はあくまでも外務省あるいは海外経済協力基金あるいはまた国際協力事業団でございまして、相手側の政府あるいは相手側の機関を直接検査する権限がないことは御承知のとおりでございます。  今回の検査につきましても、先ほど御報告を申し上げましたように、現地で実態を調査するということはいたしているわけでございます。何分外由におきます調査でございますから時間と経費もかかりますし、特に協力事業の行われている現地は交通不便なところもございます。あるいは言葉の問題もございます。そういう問題がございますし、あるいは当方の経験不足ということもございますけれども、今後いろいろと工夫をいたしまして検査の充実を図ってまいりたいと考えております。
  49. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 いろいろ工夫なさってやるということについては同感なんですが、さっきも言ったように相手国のあることでございますから、そう自国内の検査のようにはいかないことは承知しております。したがって、一年やってみて、どこに問題があるのか、これを明らかにしないと問題解決になってこない。きょうの報道などを見ると、何か外務省から猛烈な抵抗が強かったとか、いろいろ書かれておりますが、そういうことなのか。そうだとすれば、やっぱりそこをきちっとしなきゃいけない。いろいろおありになることはわかるんですが、そこら辺を具体的にきちんと言わないものですから、私どもどうしても胸に落ちない。十分な成果を上げないとすれば、年々ふえて一兆円を超えていく経済援助について疑惑は深まるばかりなんです。そこら辺は、ひとつこの際一年の経験を踏まえて、どこに問題があるということを指摘してほしいと思う。そうして、次の一年間そこをどう克服してやるつもりだと、抱負、方針があるならば、それもひとつ明らかにしてほしい。どうでしょうか。
  50. 辻敬一

    会計検査院長(辻敬一君) 私は、ただいまの検査のやり方で特に大きな支障があるとは必ずしも考えておりません。ただ、先ほど申し上げましたように、本格的に取り組みましたのはことし初めてでござますので、何分にもこちらの側の経験不足等もございます。そういう問題につきましては、今後の検査におきまして経験を蓄積いたしまして、また検査のやり方等について工夫をいたしまして、今後検査を充実して成果を上げるように努力してまいりたいと思っております。
  51. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 当決算委員会でも去る七月に、五十九年度決算の議決に際して、開発援助問題に対する警告決議を行っております。この警告決議で、外務大臣もその趣旨に沿うよう努力すると、こういう約束をされておるわけですが、主管省として外務省は、この一連の事件の反省に立って経済援助実施体制の改善をどのように進めてきたのか、あればひとつ聞きたい。
  52. 川上隆朗

    説明員(川上隆朗君) お答え申し上げます。  委員指摘の点につきまして、御案内のとおり、政府といたしましては、適正かつ効果的、効率的援助というものの実施のために従来から、事前調査を充実させる、交換公文で適正使用を義務づける、公正な入札の確保をするといったような措置をとってきたわけでございますが、マルコス疑惑、JICA事件等にかかわる御議論の際の御指摘もございまして、我が国の経済協力一般につきましてこれをより一層適正かつ効果的、効率的にするための改善策を検討し、実施に努めてきたところでございます。  具体的に申し上げますと、援助の流れの各段階につきまして従来以上にきめの細かい配慮を行うという基本的な考え方に基づきまして、適切な援助計画の策定、相手国との政策対話の強化、事前調査の拡充、ローカルコスト支援の拡充等によりまして円滑な案件の実施、さらには第三者評価などの評価の拡充、質的な改善、人材の養成、アフターケア援助の充実といったことにとりわけ努めているところでございます。  特に一例を挙げて申し上げますと、国別、分野別の援助計画の充実という点がとりわけ大事と思いますが、これにつきましては、本年一月、援助計画の基礎的事項を整理検討することを目的とする国別、分野別援助検討パネルというものをJICAの国際協力総合研修所に設置いたしました。政府としましては、ここでの討議等を基礎としまして援助計画の充実に努めております。また、このようにして作成される援助計画等を踏まえて相手国との政策対話というものを強化してまいりたい、そういうことによって相手国の本当のニーズに合った援助にしてまいりたいというふうに考えております。  評価につきましては、過去にも御議論いただいたことがございますが、有識者、外部の機関等第三者による評価、相手国との合同評価、それから国際的な専門家による評価といったようなもので評価の拡充改善というものに努めております。その評価結果のフォローアップ及び今後の援助政策へのフィードバックというものに努めておる次第でございます。また、評価結果については、御案内のとおり毎年公表をいたしております。さらには、きめの細かい効果的援助を実施するためには、先ほど申しましたけれども、援助に携わる人材の養成というものが不可欠と考えておりまして、JICAの国際協力総合研修所を設立し、また、十一月には国際協力センターを設立するなど、人材の養成に努めておる次第でございます。  そのほか、援助拡充に対する国民の一層の理解と御支援を得ていく努力の一環といたしまして、国際協力の日の設置、経済協力にかかわる企業名の公表、それから我が国の政府開発援助といったODA白書的なものの公表等、広報の強化に努めているところでございます。  JICAにつきましては、調達契約に関する組織の一本化、業務監査室の設置、コンサルタント選定手続の改善等、その改革に努めておりまして、今後とも内部の人材の登用、在外事務所の充実等、必要な措置をとっていく所存でございます。  以上でございます。
  53. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 英さんの雑誌対談も十二月号で読ませてもらいましたが、今あなたがおっしゃったようなことをいろいろ言っておりました。  ただ問題は、マルコス疑惑に見られるように、どういろいろやってみても、日本の企業と密接な連携をとって現地でやっておるわけですから、企業と官僚との間に癒着がある限り、これはどうしようもない。そこら辺にどうメスを加えていくかということも考えていかなきゃならぬと思うんです。これも後で会計検査院に聞きたいと思っているんですけれども、そこら辺について、英さんの雑誌討論を見ても厳しく見詰められていない感じがします。ひとつぜひ本人に伝えておいてほしいと思います。  総務庁、亡くなられた玉置さんが大変この問題についてはハッスルしておられて、亡くなられた瞬間に何か消えてしまったような感じもするんですけれども、そんなことは私はないと思うので、一体その後どういうふうな監察状況になっておるのか、それでいつごろそれが報告されるのか、もしおわかりなら、ひとつお聞きしたいと思うんです。
  54. 西村正紀

    説明員(西村正紀君) お答えいたします。  私どもの行政監察でございますが、これは昨年大臣の指示もございまして、ことし六十二年度から関係省庁、実施機関に対しまして、業務の実施体制、それから手続、運営状況等の調査を行っております。それから、八月から九月にかけまして現地の大使館等の調査を行っております。現在はそれらの結果の取りまとめを行っているところでございまして、取りまとめ時期については今申し上げかねますが、できる限り速やかに取りまとめたいと考えております。
  55. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 ひとつ期待しておきます。あれだけ玉置さんぶち上げたのだから、相当確かなものが出てくると思いますが、いつごろの時期か明らかにならなかったのですが、できればひとつ予算委員会の審議が始まる前に間に合えば間に合わせてほしいと思います。  そこで大蔵大臣、この問題の四省庁の一つの主管大臣でもあり、同時に副総理でもあるわけですが、私は海外経済援助はこれから日本がますますこたえていかなきゃならぬと思うんです、ある意味では。したがって、増額をしていくと思います。しかし、もう一兆円を超えてきておるわけです。今言ったように、マルコス疑惑が出されて、大変国民皆さんこれに疑惑を持っておりますし、現実に私も行ってみて、何でこんな援助をするのかということにも再々ぶち当たります。実態に合わない援助、こういった問題がたくさんございます。これはやっぱり公正、適正、公開のもとにどうやって国民に理解を求めていくか、重大な意味を持っておると思うんです。そのために私は基本法を制定すべきではないかという議論も聞いております。検査体制の強化も重要でしょう。この問題に対してどういう御認識を持ち、対応しようとなさっておるのか、副総理としてお聞きしておきたいと思います。
  56. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ただいまも会計検査院長お話の後、外務省の方からその後の改善につきまして報告がございました。政府としても、ああいう出来事がございました後、非常に深い反省をし、改善の努力をいたしておるわけでございますが、ああいう不幸な事情もございまして、すべてが我が国側ばかりの問題とは言いがたいところもございますが、これはある意味ではこういう援助には予期しなければならない危険であるかもしれません。したがいまして、そこはよく注意しながらやらなきゃならぬということだと思います。  それで、こういう事件にかんがみて何か法制あるいは機構の上で特に考えるかというお尋ねでございまして、これは私は大変に消極的なお返事を申し上げて相済まないのでございますが、実は以前から、対外援助についてはいわば形の上ですっきりした仕組みを考えられないかという御議論が長いことございました。各省庁にもございますが、実はこれには経済企画庁、通産省、外務省、大蔵省四省庁がかかわり合っておりまして、私はたまたまそのすべての省庁に勤めまして、自分のささやかな経験でおのおのの立場からこの問題を見てまいりました。  結果として申し上げられることは、これを形の上ですっきりした機構に仕組むということは一見好ましいことのようであって、実態的にはなかなかそれでは動くまいというのが実は私の偽らない感想でございまして、四省庁の間でできるだけ連携をしながらやっていく、どうもこれしか方法はなさそうである。それは結局、取り組みます四省庁の心構えの問題あるいはそのおのおのを代表される閣僚の間の連携の問題でもあるわけでございますが、私は人的な連携を密にしてやっていくということ以外に、どうも現実的に効果的に動く方法は考えにくいのではないかという感想を持っております。はなはだ消極的とも聞こえるお答えをしておりますけれども、それが一番効率的なのではないかというのが私の感じでございます。
  57. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 私もマルコス疑惑の際に予算委員会で質問に立ったんですけれども、答弁を聞いておってつくづく感じたのは、大蔵、外務、経企、通産ですか、この四省庁共管事項の体制は、金額がそこそこの場合なら私はいいと思いますけれども、一兆円を超える段階になりますと、逆にそれが無責任の体制に変わってきておる感じがしました。ですから、そこら辺をそろそろ検討していかないと経済援助そのものまで国民から不信が出てくる、こういう結果になるのじゃないかと思うので、これはひとつぜひ新年度に向けて検討していただいて、万全の体制をつくっていただくことをお願いしておきたいと思うんです。  そこで、最後になりますが、検査院長、ずっと前から衆参両院の決算委員会で決議されてきました院法改正問題ですね。この問題について藤森通達による肩越し検査でやってみて、その上でこの問題の処理をどうするかということになっておるんですが、この一年間やってみて、いかがでしょうか。
  58. 辻敬一

    会計検査院長(辻敬一君) 六十年にいわゆる藤森通達が発せられまして、それまで必ずしもいわゆる肩越し検査に協力をいただけてなかった三機関につきましても肩越し検査の実績が出てまいったわけでございます。六十年に三機関合わせまして十件、六十一年に九件、六十二年に十件ということでございます。したがいまして、会計検査院といたしましては、当面この肩越し検査の方法によりまして検査の実効を上げるよう全力を尽くしているところでございます。
  59. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 委員長、肩越し検査状況について今、院長からもありましたが、この問題は、本委員会では再三にわたって取り上げた経緯もございますから、さらにひとつ理事会でも調査していただいて適切な処理をお願いしておきたいと思います。  同時に、海外援助問題については当委員会で警告決議を行った経緯もございますし、今このやりとりで御案内のとおりに、決して私は十分ではないと思います。そういう意味で、この問題について委員会としてもひとつどう対応していくのか、ここら辺の問題についてぜひ私は理事会でも議論してもらいたい、こう思っておるんですが、いかがでしょう。
  60. 穐山篤

    委員長穐山篤君) 理事会に相談いたします。
  61. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 わかりました。ぜひひとつお願いしておきたいと思います。  そこで、時間ございませんので、法務省、お待ちいただきましたが、一言だけお聞きしておきたいと思うんです。  それは何かといいますと、福岡の苅田町の問題ですが、もう私もこれ四回取り上げてきておるわけですが、今度の月刊誌の新年号の中でそこら辺の問題が詳細に出ておりまして、私が懸念しておったことが出されておりますが、これは一体、もう十カ月になるわけですから、花房収入役の取り調べなりも行われたんじゃないかという情報も入っておりますが、もうそろそろこの問題について強制捜査なり結論なり、最終段階としての詰めをしなきゃならぬ時期に来ておるんじゃないかと思うんですが、いかがでしょう。
  62. 岡村泰孝

    説明員(岡村泰孝君) ただいまお尋ねの事件でございますが、現在福団地検におきまして捜査中でございます。  具体的にどういう者を取り調べしているかということについては申し上げかねるところでございますけれども、必要とする関係人等につきましての取り調べを含めまして、現在捜査を継続している段階でございます。  また、強制捜査に踏み切るべきではないかという点でございますけれども、強制捜査に踏み切るかどうかというような点につきましては、捜査の中で検察としてもその要否というものを判断しているものであるというふうに承知いたしております。
  63. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 岡村さん、すぐそういう答弁になるだろうと思うんです。しかし、あなたのことですから、この月刊誌を読んでおられるんじゃないかと思うんですが、「東京地検を告発する!特捜検事はなぜ辞めたか」と、この二十ページ物の特集が出されておりますが、この中で、撚糸工連や平和相互の真相もという形で書かれております。しかし、苅田町事件も、担当の田中森一主任検事外第一線の検事が福岡へ移送することに激怒して検事の辞任を決意したと、こういう記事になっておるわけですが、田中検事は近くやめられるんですか、どうなんですか。
  64. 岡村泰孝

    説明員(岡村泰孝君) 近く退職する予定であるというふうに聞いております。
  65. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 そうすれば、この記事についてはお読みになったと思うんですが、どういう御感想ですか。
  66. 岡村泰孝

    説明員(岡村泰孝君) 本件の記事の内容でございますが、現に捜査中の事件あるいは公判中の事件に関する部分が多いわけでございまして、そういう意味では、具体的な事柄については申し上げかねるところでございます。  ただ、一般的に申し上げますと、東京地検、特に特捜部が捜査をいたした結果、あるいは事件を処理した結果につきましてはいろいろな見方、意見を述べられる方もあるわけでございます。本件記事を見ましても、臆測と申しますか主観的な判断と申しますか、そういったものを交えた部分も少なく次小ように私点感じた次第でございます。ただ、申し上げられますことはい検察といたしましては、捜査の結果収集いたしました証拠を客観的に冷静に判断いたしまして、事件の処理を厳正公平に行うよう努めているところであります。
  67. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 もう時間ございませんが、岡村さん、私も移送のときに、これは逃げたんじゃないのかとあなたを追及しましたね。ところが、あなたは、そうじゃない、むしろ本格捜査にかかった、こうお答えなさった。しかし、あの記事を読んでみると、まさに逃げた、そのために田中さんは辞表をたたきつけた、こう出ておる。私は、主任検事がこんなことをしていくと、検察に対する信頼はもうなくなっていくと思うんですよ。これだけ事実が、しかも税金の使い込みですよ、これは。しかも、それを時の町長、今の代議士である尾形さんが自分の選挙資金に使った、そこまで歴然としている事実ですよ。こういう問題がうやむやになったらどうなりますか。私は、やっぱり国民の怒りを検察もまともに受けなきゃいかぬと思うんですよ。そして、それにこたえた結論を出すべきですよ。もう時間ございませんからいろいろ言いませんが、これはいつごろ、年内に出ますか、結論は。
  68. 岡村泰孝

    説明員(岡村泰孝君) どこまでが歴然たる事実であるかについては、私といたしまして現段階では何とも申し上げかねるところでございます。  また、本件を福団地検に移送いたしましたのは、決して逃げたということではないのでありまして、本件の性格にかんがみまして、関係人も非常に多数いる、こういった者の取り調べもしなければ事案の解明ができないという判断とともに、こういった関係人がほとんどすべて福岡、特に苅田町付近に居住しておる、そういったような事情を総合いたしまして、本件につきましては地元の福団地検で捜査するのが相当であるという結論から、本件を福団地検に移送した次第であります。  現在、福団地検におきまして関係人の取り調べ等を含めます捜査を継続している段階でありまして、今のところ、いつごろその結論が出せるか、そういう段階にはまだ至っていないというふうに承知いたしております。
  69. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 これで質問時間なくなりましたから終わりますが、まああなたの発言を信頼しましょう。ぜひひとつ期待にこたえて、きちっとした結論を出していただきますように要請しまして、私の質問を終わります。
  70. 一井淳治

    ○一井淳治君 大蔵省の職員の方の土曜閉庁移行について、まず質問いたしたいと思います。  労働時間の短縮というのはもう時代の要請でございまして、週休二日制の円滑な推進が必要で、現在大蔵省でも四週六休制の試行中という状況でございますけれども、この四週六休の試行について、税務署とか財務局とか税関など、国民や業界と直接接しているそういう官署を含めまして、何か大蔵省の職員の方の四週六休の試行に対して国民の間から不平や不満があるのかどうか、その点をまず大蔵省の方にお尋ねします。
  71. 吉川共治

    説明員(吉川共治君) 大蔵省の出先機関につきまして現在四週六休の試行をしているわけでございますけれども、今のところ利用者から特段の不満の声もございませんで、試行は順調に実施されておるというふうに聞いております。
  72. 一井淳治

    ○一井淳治君 総務庁の方では、この閉庁方式を進めていかれるについて、諸外国での公務員の閉庁問題についての調査をなさっておられるようでございますけれども、私の聞いているところでは、税務署も外国では閉庁するというふうに割り切られておるというふうに聞いておりますけれども、諸外国での調査結果はいかがでございましょうか。
  73. 河野昭

    説明員(河野昭君) 総務庁におきましては、ことしの六月、英、米、独、仏、イタリア、カナダの六カ国につきまして、在外公館を通じまして主要な官署の開閉庁の状況を調査いたしました。その結果、イタリアを除く五カ国におきましては、いずれも完全週休二日制をとっているということもありまして、今お尋ねの税務署についても土曜日は閉まっているというのが調査結果でございます。  なお、イタリアは若干特殊な経緯がございまして、土曜日はあいておるわけでございますが、週の所定労働時間ということで申しますと、一週三十六時間と短くなっているということをつけ加えさせていただきます。
  74. 一井淳治

    ○一井淳治君 現在政府の方では、週休二日制・閉庁問題関係閣僚会議を中心に閉庁問題を検討されておりまして、閉庁官署の範囲についての基本的な考え方として三つの分類をなさっておられるようでございます。  三つの分類というのは、一つは刑務所のように性格上土曜閉庁が不適当な官署、二つ目が小学校のように別途制度的な検討を必要として、当面閉庁を対象としない官署、三つ目が当面閉庁の対象として検討をしている官署という三分類をなさっておられるようでございますけれども、税務署、財務局、税関等を含めて大蔵省の職員の方々は基本的には三の分類に入れられて、今後閉庁について積極的に検討されていくというふうにお聞きしておるわけでございますけれども、その点はいかがでございましょうか。総務庁の方にお尋ねします。
  75. 河野昭

    説明員(河野昭君) 先生の御指摘のように、閉庁問題につきましては、週休二日制・閉庁問題関係閣僚会議というところで検討しておりまして、先週の火曜日、十二月八日でございますが、閣僚会議の場におきまして、今先生から御指摘のあったような閉庁範囲の考え方というものをお示しし、御了承いただいたわけでございます。  私ども今の三分類で言いますと、少なくとも税務署はその三つ目の分類に入ると考えておりますし、税関につきましては、空港等交代制部門がありますので、その部門については先生おっしゃった一の分類に入るかと思いますが、その他の部門につきましては三番目の分類と、閉庁を当面する検討の範囲の中ということで考えておるわけでございます。
  76. 一井淳治

    ○一井淳治君 大蔵省の方にお尋ねするわけでございます。  税務署、これは国民と密着していると思います。けれども、財務局、これは特定の経済分野と密着しているという部門ではないかと思います。そういったところを含めまして、大蔵省の職員の方については、土曜閉庁に踏み切って特に問題ないというふうに思うんですけれども、この点はいかがでございましょうか。
  77. 吉川共治

    説明員(吉川共治君) 週休二日制を円滑に進めていくためにはこの閉庁の問題避けて通ることのできない課題でございます。ただ、閉庁方式は国民生活などにも影響のあるところでございますから、この点につきましていろいろと工夫を凝らしながら、国民の理解を得ながら、今先生から御指摘のありましたものについて、できるだけ広範囲に閉庁の対象とするという方向で検討を進めてまいりたいと存じます。
  78. 一井淳治

    ○一井淳治君 公務員の土曜閉庁の実施というのは、現在では国の重要な政策であるというふうに思います。そういう意味で、できる限り広い範囲で実施していただきたいというふうに思いますが、大蔵省の職員の場合には税関のような特別な出先の部門もございますけれども、官署とすれば全面的な閉庁という方向で検討をしていくべきではないかというふうに思うわけでございますけれども、総務庁の御見解をお伺いしたいと思います。
  79. 河野昭

    説明員(河野昭君) 先週の閣僚会議で御了承をいただいた内容でございますが、先ほども申しましたように、交代制部門であるとか、あるいは国立大学の附属小中学校あるいは病院の病棟部門等、当面、別途制度的な検討が必要で閉庁が困難な部門以外についてはできるだけ広範囲に閉庁の対象とする、そういう前提で検討するという方針で閣僚会議の御了承はいただいております。
  80. 一井淳治

    ○一井淳治君 次に、手形交換制度について質問させてもらいたいと思います。  手形交換制度については銀行協会が大変な御努力をいただいて、手形制度の信用向上のためにいろいろ運用なさっておられるわけでございます。それについては敬意を表したいと思いますが、次に申し上げる点、この点だけは今や改善すべきことについて関係者共通の合意に達しているのではないかというふうに思いまして、決算委員会の場で質問させていただく次第でございます。  手形交換制度における、不渡り処分を免れるための異議申し立て預託金の返還請求権につきまして、手形の所持人が支払い銀行を第三億務者とする差し押さえ、転付命令を得た場合にも、反対債権を差し押さえ前から有していた支払い銀行がその反対債権を自働債権として相殺するということが行われておるわけでございます。この相殺自体が有効であることはもう最高裁判所の判決が繰り返し宣言しているところでございまして、これに対して今さら異議が言えるわけではないというふうに思います。現在の手形交換所規則施行細則の第八十条によりますと、転付命令がかけられますと不渡り事故解消とみなされまして、手形の持ち出し銀行の方から不渡り事故解消届を出さねばならないシステムになっております。これは転付命令によりまして債権の回収がなされたというふうにみなされるからであるというふうに思いますが、ところがそうなりますと、この預託金が拘束を解かれたとして支払い銀行の方では相殺をする、そうなるわけでございます。そういたしますと、せっかく転付命令をかけたんだけれども、転付命令は空振りに終わって、債権者は回収ができないという結果となります。こういうことで、支払い義務者の支払い資力を証明して不渡りが支払い義務者の信用に関しないことを示す原因となっておる預託金が消滅したという事態になるのにかかわらず、支払い人に対しては不渡り処分がない、債権者は回収できない、そういう事態が起こるわけでございます。しかも、手形所持人が手形の権利者であって、手形支払い義務者は手形所持人には対抗できないということが判決によって明確化されているにもかかわらず、そういった事態になるわけでございまして、しかも支払い人の方は全く安閑としているというわけでございまして、手形債権者とすれば、わざわざこの転付命令までやったのに回収できないということで強いショックを受けるでございましょうし、またこの預託金については、仮に優先権はないにしても、経済的には手形債務と密接な関係があることは万人が認めているところでございまして、こういうふうな結果は妥当でないということは皆さん感じておられるところであるというふうに思います。  こういうふうな事態でございますので、東京高等裁判所では五十九年十二月二十七日の判決で、これは現行制度の欠陥だということを判決内で指摘しておられますし、また、こういう業界の中で一番こういう問題について詳しい「金融法務事情」という雑誌の一一三五号の四ページを見ますと、「不満批判のフィーバーぶりはとどまるところを知らない」というふうな指摘もなされておるわけでございます。そういうことで、手形交換所規則の改正ということが必要で、そういう方向での提言が続いておるわけでございますけれども、いまだにこの改正ができないわけでございます。  この改正の方法とすれば、不渡り事由の資金不足に準じて取り扱うとか、あるいは預託金を追加させるべきであるとか、いろんな意見が出ておりますけれども、非常に長い間批判が続いておりまして、もうこれは改正しなければならないということで大体合意があるのじゃないかというふうに思いますが、まだこの改正ができませんので、やはりこのあたりで大蔵省の方からの何らかの御指導があってもいいのじゃないかというふうに思って質問する次第でございますけれども大蔵省のその点についての御見解をお伺いしたいと思います。
  81. 千野忠男

    説明員(千野忠男君) 御指摘のとおり、手形訴訟で手形受取人が勝訴をした場合に、裁判所から支払い銀行に対しまして預託金を手形受取人へ転付する旨の命令が出される。この場合に、本来手形受取人が預託金を取得できるはずでございますが、手形振出人が支払い銀行に貸国債務を負っておる場合には、支払い銀行が手形振出人に対しまして有する貸国債権と預託金返還請求権とが相殺をされる。そうなります結果として、手形受取人は要するに保護に問題が生ずる、手形振出人の方は不渡り扱いにならない、こういうのが現行の扱いてあることは御指摘のとおりでございます。  大蔵省としましては、手形交換所の取り扱いに係る問題は、これは決済機能を中心といたします信用秩序にかかわる事柄でございますので、これは大変大きな問題であるというふうに考えておるわけでございます。  先生の御指摘になられました点につきましては、関係者間でいろいろ議論がされておるところと承知をしております。大蔵省といたしましても、先生の御指摘はこれは大変貴重な御意見として承っておきたいと思う次第でございます。
  82. 一井淳治

    ○一井淳治君 貴重な御意見というふうに評価していただいて、私、非常にありがたいのでございますけれども、その先でございます。やはり大蔵省は、直接銀行協会に対して強力な指導というのはできるかどうか、これは大きな問題があるわけですけれども、各銀行に対しては指導権限がある。また大蔵省は、銀行協会に対して民法上の公益法人ということで監督官庁になっておるのじゃないかと思いますけれども、そういう観点で何らかの発言権があるということは間違いないと思うんですけれども、私の意見を聞いていただくというだけではなくて、これだけ多くの方々から、業界の雑誌などを見ましても、今言いましたように、批判がフィーバーぶりだというような状況でございますので、方向は別にして、改善すべきであるということは大体もう合意ができておるというふうな状況だと思いますので、何らかの一歩前進するような方策を立てていただくべきであるし、またそうされるのが一番いいと思うんですけれども、もう一度その点についてのお考えをお聞きしたいと思います。
  83. 千野忠男

    説明員(千野忠男君) 先ほど申し上げましたふうな意識を我々も持っておるわけでございますし、また先生の御意見の御趣旨というものはよくわかるわけでございますが、他方、相殺権の行使による銀行の債権の保全の問題、これにはやはり預金者保護といいますか、公共性の観点もあるということは御理解をいただきたいと思うわけでございます。  しかしながら、関係金融機関にありましてはこの制度の趣旨を十分理解をいたしまして、適正な運営に努めておると我々は承知をしておるわけでございますけれども、運用面で相殺が受取人の利益を不当に侵害することのないように引き続き指導をしてまいりたいと考えております。
  84. 一井淳治

    ○一井淳治君 現在の規則の過程でいろいろ論議があったわけでございますけれども、現在の規則ができてしまいますと、それを一つの前提としてこれを、言葉が悪いんですけれども、悪用する者が出ておるわけでございます。例えば銀行の方が取引先と相談をし合って、転付命令がかかってくると、ほかの債権、債務を理由に相殺をするということが現に起こっておるわけでございます。こういうふうな規則を前提としていろんな弊害があるので、規則自体を変えなければならないというのが多くの人たちの指摘するところでございますので、少なくともこの決算委員会でそういう意見があったということを大蔵省の方から銀行協会の方へ伝えていただきたいというふうに思うわけです。  といいますのは、銀行協会というのはやはり銀行の集まりでございまして、銀行の肩を持つというのが、これは人間も動物ですからやむを得ないというふうに思うわけですが、やはり公正な立場での批判を率直に聞くようにという、そういう趣旨で大蔵省の方から、この決算委員会での発言も含めまして、いろんな多くの批判を聞くようにというふうなことを銀行協会に伝えていただきたいと思いますけれども、その点はどうでしょうか。
  85. 千野忠男

    説明員(千野忠男君) ただいまの御意見を銀行協会の方へ十分伝えさせていただきたいと思います。
  86. 一井淳治

    ○一井淳治君 それからもう一つ、ちょっと今も申し上げたのですが、銀行の方が規則の存在を理由にして転付命令がかかってきても、個々の預金先と相談し合って相殺をするという事例がだんだんふえているように思うわけです。そのためにいろいろな批判があるわけでございまして、このままでは手形の有用にかかわるのではないか、また金融機関の社会的責任からしても妥当を欠くのではないかというふうに思いますので、相殺については極力抑制するように、乱用しないように大蔵省の方から御指導が必要じゃないかと思いますけれども、その点はいかがでございますか。
  87. 千野忠男

    説明員(千野忠男君) 相殺が受取人の利益を不当に侵害することがないように指導をしてまいりたいと思います。
  88. 一井淳治

    ○一井淳治君 次に、六十三年度の予算編成の基本方針について、ごく簡単に御説明を願いたいというふうに思います。
  89. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ただいま六十三年度の予算編成、できますならばこの二十三日ごろには大蔵原案を各省庁に内示をいたしまして、年内比較的早いうちに最終的な閣議決定をいたしたい、スケジュールとしてはそのようなスケジュールを考えております。  我が国が内外から今求められておりますのは、社会資本の充実等によりまして内需を十分に振興するということでございまして、財政としても過般の補正予算以来そのことに努めておるところでございますが、これは前川リポート等にもございますように、我が国自身にとりましてもかなり長い間の継続的な努力を必要とすることでございますので、六十三年度予算もその努力の一環としてそのような目的に奉仕しなければならないというふうに考えております。  他方で、かねて昭和六十五年度には特例公債依存の体質から脱却したいということを政府は考えてまいりまして、いっときこの目標は到底実現が木可能のように映じたのでございますが、最近になりまして経済情勢の好転もあり、税収等にかなりのいわゆる自然増収が見込まれる可能性が高くなってまいりましたことに伴いまして、昭和六十五年度特例公債脱却のための具体的な、いわば残されました年次の間の第一歩をこの六十二年度予算で踏み出したいということをただいま念願いたしております。  大まかには、大枠としては、そのようないわば二つの目的を同時に実現したいと考えておるわけでございますが、具体的に前者の問題につきましては、長いこと続けてまいりました投資的経費――公共事業でございますが、につきましてのマイナスシーリングを今回はやめたいと思っております。及び過般来売り出しておりますNTT株式の売却代金をもちまして、先般の国会で社会資本整備勘定を立てることをお認めいただきましたが、この勘定をいわば公共事業等々のために活用して、一般会計の公共事業費、これはマイナスシーリングがなくなりますので前年と同額ということになろうと思いますが、その上に社会資本整備勘定の支出を追加いたしまして、前段に申し上げました目的を達成することに役立たせたい、そういう方針で考えております。
  90. 一井淳治

    ○一井淳治君 来年度の予算編成についてはこれは動きがとれないと思いますが、六十四年度以降の予算の編成方針についてでございます。  最近の予算編成の方針というのは、概算要求基準から始まって、前年度実績を基準としてずっと予算を組んでおられるようでございますけれども、そのために重点施策というものができないというふうに思います。  前回の決算委員会では科学技術庁が対象になりましたけれども、科学技術、特に基礎研究の予算の確保が必要であるということが何人もの議員の方から質問が出まして、日本がノーベル賞の受賞者が四人ぐらいでは、これはもう世界的にも話にならない、大いに基礎研究に対する予算の確保が必要であるということが本当に決算委員会全体の雰囲気でございまして、仮にこの決算委員会で予算の審議をしておれば、大変な基礎研究の予算が増額されたのじゃないかというふうな雰囲気でございましたけれども、今後六十四年度以降の予算編成におきまして、重点施策という観点から、例えば科学技術の基礎研究の問題に対する予算について前年度実績を余り考えないで思い切ってふやすというふうなことはできないだろうか、特に科学技術の基礎研究というのは、これはもう国民共通の社会的な資源でございますし、我が国のような資源がなくて技術で国民が生活している国の場合には特に必要でございますし、また研究開発というものは新しい内需の振興にかかわるわけでございますので、だれも反対しないし、緊急にこの基礎研究を充実させていかなくちゃならないということであるというふうに思いますけれども、現実には前年度実績とかいうことがありまして大幅な予算増ができないわけでございます。  また、電気通信技術の問題につきましても、これはもう国民共通の社会資本というふうに言ってもいいと思うんですけれども、なかなか予算の増加ができません。そういうことで、重点施策を実施するためにこれまでの予算編成方針を少し手直しする必要があるんじゃないか。  また、公共事業という問題につきまして、今までは道路とか橋とか、土木工事あるいは建設工事を重視して考えておりましたけれども、今申し上げましたように、科学技術とかあるいは電気通信技術の開発、これも一つの公共事業じゃないかというふうに思いますけれども、公共事業という問題についての考え方の改定ということも必要じゃないかと思います。そういう意味で、六十四年度以降の予算編成に当たられまして、前年度実績というんではなくて、もう少し思い切って重点的に予算を配分していく、少し予算編成に弾力性を持たせるべきではないか。  今までの予算編成の方針をずっと貫いていくと、例えば科学技術の振興がおくれるとか、取り返しのつかないことも起こるのじゃないかというふうに思いますので、きょうは大臣がお見えでございますので、いわばこれはドン・キホーテ的な御質問にはなるかもしれませんけれども、お尋ねいたします。
  91. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ただいま御指摘の点は国民の多くが共感を持って聞かれる種類の御批判ではないかと思っております。  事実を先に申し上げますと、これだけ国の大きな予算でございますので、どうしても過去の蓄積の上に立ってこれからを考えていくということは、これはやむを得ないことでもあるし、またああ意味で便利、間違いのないこと、大きな間違いのない、大過ないというような意味での間違いがないことでもあろうということがございます。  それからもう一つは、何分にも財政が非常に厳しい状態にございますために、前年度対比でマイナスというような予算をずっといわゆるゼロシーリングあるいはマイナスシーリングということでやってまいりましたし、一般歳出もほとんど伸びがないということでこの何年かまいりました。そういう状況においては新しいことは非常に考えにくい。過去にあったものをどの程度傷つけずに残していけるかというような気持ちになりやすいし、また現実にもそうでないと予算が組めないということも事実としては今日まであったというふうに私は考えます。理屈の上では、総体はふえなくても、いわゆるスクラップ・アンド・ビルドをやればできるようなものの、なかなかやはり総体がふえない状況ではそういうことは現実に行いにくいということがあったと思います。  しかし仮に、先ほども申し上げましたような特例公債、借金でございますが、赤字公債でございますが、それを現実にやめられるというような状況にまで財政が多少の弾力性を回復するというようなことが見えてまいりますと、やはりある段階で、前年度の実績、それをどのぐらい削るかといったようなことに長年終始してまいりました予算編成の方針というものをやはり一遍考え直す必要があるということは、一井委員の今言われますことは大変にもっともなことではないか。  私が素人でございますものですから、そんなことを言うので、なかなか玄人にはそういうことは考えにくいということが一つありそうでございますけれども、しかし要求側で思い切ってスクラップ・アンド・ビルドをやるのだという態度をとってこられれば、これはいわば査定側といいますか、編成側もそれは十分考えられることでございますので、世の中もこれだけ変わってまいりましたから思い切って、しかし、そのかわりスクラップするものはスクラップをしていただくということで考えてもらわなきゃならない。そして新しいものを育てていく。財政の弾力性が多少出てまいりましたら、そういうことはやはり考えていかなければならない大切なことではないかと私としては思っております。
  92. 一井淳治

    ○一井淳治君 これは重要性という評価の問題にも絡みまして非常に難しい問題であるというふうに思います。しかし、防衛とかあるいは海外援助等につきましては予算の増額があるわけでございまして、国民に豊かな生活を確保するという方向につきましても予算の増額が行われるように御配慮をいただきたいということで、別の質問に変わらせていただきます。  国民金融公庫の進学資金の小口貸し付けについてお尋ねいたしますけれども、これまで国民金融公庫におかれましては、進学資金の小口貸し付けについて実に年間六万七千件余り、三百数十億円という高い実績を上げられまして、庶民階層の子弟の進学のために大いに助けてくださって高い成果を上げられているということに対しては敬意を表します。ただ、現在の国民金融公庫法十八条三項の貸し付けの対象者を見ますと、進学をする者またはその親族ということに限定されておるわけでございます。  最近の時世を見ると、例えばサラ金からお金を借りて、払えなくてサラ金に追い回されて両親が蒸発してしまうとか、あるいは事故や災害で親が死亡して、親族の扶養になっておればいいんですけれども、親族でない者、例えば里親とかそういった保護者のもとで養育されている子供もふえておるわけでございます。進学資金を借りようとした場合には、親族の庇護下にある子供の場合は親族が借りることができますからよろしいわけですけれども、親族の保護下にない子供の場合には本人に対する貸し付けということでいく以外にないわけでございますけれども、残念なことにその子供については法定代理人がいないということになりますと、非常に借りる側に借りたい希望があっても借りられない。特に最近では、本人に対する貸し付けについては勤労少年に限るというふうな運用がなされておるようでございまして、未成年の子供が夢を持って進学したい、それから保護者の人も何とか進学意欲を満たしてやりたいという気持ちになっておるのだけれども、本人が未成年者で、しかも法定代理人がいないというために、しかもまだ勤労少年でないということで国民金融公庫の教育資金の小口貸し付けの対象になれないというようなことが起こっておるように聞いております。気の毒な環境にある子供の進学を助けてやるという意味で、本人に対する貸し付けの運用を何とか拡大して、勉学意欲のある子供を助けてあげるような方策はできないものかということで、まず国民金融公庫の方にお尋ねしたいと思います。
  93. 吉本宏

    参考人(吉本宏君) お答えをいたします。  ただいま御指摘のとおり、現在進学ローンの貸付対象者といたしまして、国民金融公庫法第十八条第三項に、進学をする本人あるいはその者の親族という規定がございます。通常の場合は進学者の父母、御両親がその貸し付けの対象者になる例が多いのであります。今御指摘の里親ということになりますと親族の定義の中には入らない、ここにひとつ問題があるわけであります。恐らくこの法律の制定当時は里親というようなところに考えが及ばなかったということではないかと思うのでありますけれども、現行法はそういう規定になっているわけであります。  そこで、何とか方法はないかということでいろいろ検討もしてみたのでございますが、結局今委員指摘のように、進学をする者本人を対象として貸し付けを行うという以外にないのではないかと思います。ただ、御本人は通常の場合、これも御指摘のありましたとおり、未成年者でございますし、また所得もない、こういうことで、この辺をどうするかという問題になるわけであります。例えば里親に後見人、まあ法定代理人の定めがございますので、里親に後見人になっていただいて、それと同時に保証人をお願いして、それによって進学者御本人にお貸しをする、こういう方法しかないのではないかというふうに考えているわけであります。  私どもとしても、こういう里親の庇護下にある進学者に対して進学ローンの門戸を閉ざすということはいかがであろうかと思いますので、そういうような方向で検討をいたしまして、何とかこの貸付対象者に加えるように考えていきたい、このように考えております。
  94. 一井淳治

    ○一井淳治君 現在、勤労少年に限るという取り扱いがなされておるようなんですけれども、里親とかあるいは里親に準ずる保護者に収入があって、その者が返還していくというふうな場合には回収の可能性は十分にあるわけですから、何らかの運用によりまして、できるだけ気の毒な未成年者の勉学の道を開いてやるという方向で改善をお願いしたいというふうに思います。-それからもう一つ、運用の改善だけではどうにもならない範囲がございまして、やはり親族でない保護者のもとで養育されている子供の場合、事実上の親族といいますか、あるいは親に準ずるような監護をその保護者がしているような場合には、親族に準じて保護者に貸し付けをするというふうな法律の改正ということも必要になってくるのじゃないかと思いますけれども、最近、各金融機関の貸付対象を整備するというふうなことも行われておるようでございまして、国民金融公庫法の改正ということも起こることもあるのじゃないかと思いますが、そういった場合には法改正の一つのポイントとして御記憶いただいておきたいというふうに思います。この点大蔵省に要望いたしたいと思いますが、いかがでございましょうか。
  95. 千野忠男

    説明員(千野忠男君) 御要望がございましたことは十分承っておきたいと存じます。
  96. 穐山篤

    委員長穐山篤君) 午前の審査はこの程度とし、午後一時三十分まで休憩いたします。    午後零時二十分休憩      ―――――・―――――    午後一時三十分開会
  97. 穐山篤

    委員長穐山篤君) ただいまから決算委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、昭和六十年度決算外二件を議題とし、皇室費国会大蔵省会計検査院国民金融公庫日本開発銀行及び日本輸出入銀行決算について審査を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  98. 松尾官平

    ○松尾官平君 総論は総括の際に譲りまして、きょうは各論で二つばかり質問をさせていただきます。ということでございますので、大臣はもし御用あったら、どうぞ。  まず、きょうはせっかく御多忙の中をたばこ会社の社長さんに来ていただいておりますので、その問題から入りたいと思います。  会社では先般、たしか先月の二十四日ですか、本年度の中間決算について発表されたわけでありますが、それを拝見して機械的に推定をしてみますと、経常利益において三一%の減、当期利益で三〇%近い減が計算として出てくるようであります。こういうことは、せっかく民営化した政府全額出費の会社として相当責任があると思うのでありますが、社長の立場からこの事態をどのように考えておられるのかということになるわけであります。私なりに見てみますと、売上高を確保するために販売費を相当使ったのじゃないか、こういうようなことも推測されるわけでありますが、その辺は一体どのようになっているのか。そして、会社の経営、財務状況がぐあいが悪くなるということは、将来葉たばこの買い入れ価格にはね返ってくるんじゃないか。現に、ことしの買い入れ価格も五・何%か引き下げになっているわけでありまして、私は、葉たばこ耕作者を案ずる立場から、会社にも立派な経営をしていただきたいし、また貴重な政府の全額出資という立場の会社でありますから、健全な経営をしていただきたいという願いを持っているわけでありまして、そういう立場から、社長の現状分析をお聞かせ願いたいと思います。
  99. 長岡實

    参考人(長岡實君) お答え申し上げます。  ただいま松尾委員が御指摘になりましたように、昭和六十二年度の中間決算におきまして、前年度の中間決算と比べましたときに相当程度の減益になったことは事実でございます。私ども昭和六十年四月に株式会社になりまして、鋭意会社経営に努力をいたしてまいりました。初年度の昭和六十年度には経常利益九百七十一億円、次の六十一年度には九百六十一億円の経常利益を上げることができたわけでございますが、三年目に至りまして減益の状態になりつつあるわけでございます。  その原因でございますけれども、先ほどおっしゃいましたように、販売促進費もふえております。これは、今申し上げますこの四月一日から、日米貿易摩擦の結果、アメリカを初めとする外国からの製品たばこの輸入につきまして関税がゼロになりまして、価格差なしの大変熾烈な競争状態に入ったわけでございます。その結果、三月時点では大体五%程度のシェアでありましたものが、四月に入りまして急激に輸入品のシェアが高まりまして、五月には九%台に上がるということで、この勢いで輸入品が伸びでは私どもも大変なことになるということで一生懸命に国産品の販売の努力に努めたわけでございますが、五月に九%に上がりましたシェアが、その後ウナギ登りに登るという趨勢は食いとめることができましたけれども、最近時点の十一月、一カ月をとりましても一〇%と、大体一割ぐらいのシェアになっておるわけでございます。そのあおりを食らいまして、競争の結果、たばこの消費全体がふえれば、私どもも販売努力によってふやすことができるわけでございますが、松尾委員承知のように、喫煙と健康の問題等もありまして全体のたばこの消費が伸びない、そのような状態の中で輸入品がふえるものでございますから、私どものたばこの売り上げが中間決算段階で、前年の中間に比べまして七十五億本売り上げが落ちたわけでございます。大体一億本売り上げが落ちると利益が一億五千万円落ちると言われておりますので、そういう意味におきましても、この七十五億本の売り上げの減少というのは大変私どもにとっては痛かったわけでございます。  本年度決算が終わりまして初めて六十二年度の経営の成績が明らかになるわけでございますが、私どもといたしましては六十年度、六十一年度に比べて減益になることは免れないとは思いますものの、その減益の幅を最小限度に食いとどめるように、今後とも国産品の販売に全力を傾けてまいりたいと考えておる次第でございます。  また、このような問題が、将来の国産の葉たばこについてどういう影響を及ぼすのであろうかという第二の御質問のポイントでございますが、やはりこれも相当深刻な問題を含んでおりまして、私どものたばこの売り上げが減るということは、私どものたばこの製造規模が減っていくということになりまして、したがいまして、その製造に使っております原料の葉たばこの使用量も減らざるを得ない。そういったような意味におきまして、葉たばこ耕作農家に対しましてもある程度の面積の調整、あるいは価格の面におきましては、私どもの経営が悪くなったから、そのしわを葉たばこの価格に寄せるというようなことは絶対にしないつもりでおりますけれども、現実の姿を反映したような葉たばこの価格にしていただくというお願いは、実はこの夏の葉たばこの審議会においても議論の中心になった問題でございますけれども、来年度以降におきましても、引き続きこの問題につきましては葉たばこ耕作団体との間で十分に意見を交換しながら将来の方向を決めてまいりたいというふうに考えております。
  100. 松尾官平

    ○松尾官平君 お話は伺いました。なるほどというように聞こえるわけであります。しかし、先ほど私申し上げましたように、将来に向かって今心配される点がありますので今後とも頑張っていただきたいわけでありますが、関税ゼロとかいうようなことは、ある程度前からそうなるということは予想されてきていたわけでありますし、それなりのやはり十分な対応があったかどうかということになれば、会社の成績が下がっているということ等を考え合わせれば、十分な対応が行われたとは言えないのではないかというふうに私は思うんですが、今社長さんのお話を伺いますと、一生懸命やっておられると、こういうことでございますので、頑張っていただきたいと思います。  視点を変えまして、生産性統計月報によりますと、どうも日本たばこは労働生産性が他の製造業に比べますと低いように見受けられるわけであります。  昭和五十五年度を一〇〇とした指数で月報は出ているわけでありますが、それを見ますと、民営化前の五十九年度の一〇八・四に対し、民営化後の六十年度一一六・一、六十一年度一一四・四と、幾らかは向上しているわけでありますが、民営化して今日までそう際立った向上が見られないように思うわけであります。ちなみに製造工業全体の労働生産性は、今のような形で見ますと、五十五年の一〇〇に対して一二六・六というふうに上がっているわけであります。不況産業と言われる織物関係と比較しましても、織物関係は一一八・九というような数字が出ているわけでありまして、そういう意味では、会社は労働生産性の向上に向かって一層の努力が必要ではないのかというふうに思うわけでありますが、この点はいかがでしょうか。
  101. 長岡實

    参考人(長岡實君) 生産性本部が発表いたしました生産性の統計によりますと、御指摘のような数字が出ております。昭和五十五年を一〇〇といたしまして、六十一年は製造工業全体は一二六・六%、たばこは一一四・四%と、製造工業の平均に比べて大分生産性の向上がおくれておるという数字になっておるわけでございますが、実はこの点につきまして、言いわけのようになるかもしれませんけれども昭和五十八年に私どもとしては考えられない数字が発表されました。これは前年に比べて生産性が落ちたという発表があったわけでございます。その時点から生産性本部のこの計算の仕方と私どもの考えとの間に食い違いがあるのではないかということで、是正方をいろいろお願いを申し上げておりますけれども、統計の継続性と申しますか、そういったようなことでなかなか直していただけないという現状でございます。  私どもは私どもなりに労働の生産性の向上には最大限の努力をしておるつもりでございまして、生産性本部の計算とは別に、単純に投入労働量を製造量で割りました労働の生産性を比較してまいりますと、五十五年を一〇〇にいたしましたときに、六十一年度は一三四・四まで上がっておるわけでございます。これは私どもの一方的な計算でございまして、それが直ちに一二六・六に比較し得る数字であるかどうかは問題があろうかと存じますけれども、ただ、表面にあらわれているほど私どもの労働生産性が伸びていないということではなくて、それなりの努力は必死にやっておるということをお答え申し上げたいと存じます。
  102. 松尾官平

    ○松尾官平君 問題は、先ほど参考人触れましたように、会社の経営状態その他をストレートに葉たばこ生産者にしわ寄せしないつもりだと、そういう覚悟で進むということに全幅の期待をかけているわけでありまして、ぜひひとつよろしくお願い申し上げたいと思います。  なお、新聞を見ておりますと、今度会社で、子会社でしょうか、ジェイティ不動産という会社をつくって不動産経営といいますか、多角経営に乗り出すということが出ておりましたが、どういうスタッフでこれを経営なさるのかわかりませんけれども、お役人を前に置いて大変恐縮ですが、役人の商法というのはなかなかうまくいかないというのが通説でありまして、せっかく多角経営に乗り出すのであったら立派な経営をしていただきたいものだ。まして、たばこが苦しいからといって本業を忘れるようなことになっても、これも困るわけでありますし、私なんか素人ですから、会社の定款だけを見ますと、何か不動産会社をやるのは定款違反じゃないかなというような感じさえ受けるわけでありまして、しかもこういうのをやるのだったら、もう少し早くおやりになった方がよかったんじゃないか。それが原因で東京の地価が上がったと言われているわけですから、マンションや貸し事務所をどんどん提供するのだったら、もっと先見性を持ってやるべきじゃなかったかなという感じさえ持つわけであります。  そういうことで、たばこ会社はNTTやJRと違いまして、葉たばこ耕作者というものを抱えての大変重要な任務を持った会社、財政物資としてのたばこを製造販売する一方では、その中に葉たばこ生産者というものを抱えておるということで、国民経済上大変重要な地位にある会社だと思うわけでありまして、社長以下、皆様の今後の一層の御努力を御要望申し上げて、社長に対する質問は終わりたいと思います。どうぞお急ぎのようですから御退席なさって結構であります。  次に、葉たばこ関係でちょっとお伺いするわけでありますが、私は実は生まれが酒屋の生まれでありまして、酒屋というものは大蔵省の管轄下にある国税庁、その下の国税局、その下の税務署、その中の間税課というものに対しては、もう恨み骨髄に徹していると言っては言葉が悪いんですけれども、生まれたときから税務署というものは一番おっかないものだという中で育ってきたわけであります。そういうことですから、うちのおやじも、おまえは官を平らげろと、官平という名前をつけたと思うんですが、その同じ立場がたばこ会社と葉たばこ生産者との間にも言えると思うのであります。  私、ことしの収納に当たって、もう二回ばかり取扱所の実態を見てまいりましたけれども、神わざのような鑑定人のスピード、ちょっとさわっただけで本葉のAとかBとか、こういうのがもう機械的のように出ていくわけですね。そのときの鑑定人の気分によって大分違ってくるのじゃないかなということを、私は現場を見て感じたわけです。だとすれば、そういう耕作者は会社の方々に対してどういう気持ちで接しているか。会社はよく、何でもたばこ耕作組合の皆さんと相談をして事を進めていると言いますけれども、果たして弱い生産者が本当のことを会社に言っているのだろうか。本当の気持ちをくみ上げる努力が会社の立場として要求されるのではないかということをいつも思っております。  酒屋の話はさておくとしまして、今の会社と耕作組合との関係といいますか、置かれている立場を考えますときに、いつも言いたいことも言えないで、会社は怖いものだ、気分悪くするとすぐ等級に響くというような気持ちで接しているのじゃないかという心配を持つわけであります。  例えば去年の買い入れのときの新聞でありますけれども、あるところで「葉タバコ返品相次ぐ」、「乾燥不足で不合格」、記事の方へくれば、「三十四キロこん包を七十個持ち込んだAさんは、やはり半分以上戻され「こんなことはかつてなかった。これまで通りちゃんと乾燥したはずなのに…。こん包を解いて乾燥し直すとなると、人手から時間のロスから大変だ」と深刻な表情。」と、こういう新聞が出るわけであります。そうすると、かわいそうだなと思って済む問題じゃ実はこれはないのでありまして、その地域において、実は耕作組合と会社の間にその前にトラブルがあった。そうすると、そのトラブルがあってこういう事態になると生産者は組合の幹部を信用しなくなるわけです。つまらぬトラブルをやったから乾燥不足だなんと戻された、等級が下がったと、こういうことにもなりかねないわけでありまして、私は、このたばこ会社の第一線の職員の諸君は、一層慎重に厳正な態度で仕事に当たってもらいたい、こういうことを言いたいわけであります。  一々の事例については今申し上げませんが、たばこ耕作組合、そして生産者に対して原料本部長はどういう態度で指導に当たり、どういう態度でこれから生産者を守るために――まさか会社側にだけ立って、幾らでも安く買い上げろなんということは言わないと思うんですが、何か聞くところによりますとPSMですか、いわゆる色損系の葉たばこは、今度買ってくれと持ってくるものを自主的に辞退させる指導をしていると聞いているわけであります。製造独占の立場にあって、全量買い上げの立場にある会社が色損系の葉は買わないと言えないから、耕作者が自粛するように指導をした。そこに私は、妙な昔の私の例のようなことがないのか、お上の言うことには勝てないというようなことで当たるのであれば問題だと思うんですが、ひとつ原料本部長の立場で御答弁願いたいと思います。
  103. 佐藤友之

    参考人佐藤友之君) お答え申し上げます。  私どもとたばこ耕作者との間柄と押しますか、関係は需給当事者、すなわち売り手、買い手対等という立場で臨んでおりまして、耕作者の方々の権利も尊重し、お互いに決めた義務は履行するという考えで進めているところでございます。  葉たばこの買い入れに当たりまして、品質評価についてただいま御指摘がございましたが、葉たばこの品質評価は買い入れの区分ごとに設けられました標本葉たばこというものと見比べて行っておりまして、買い入れ現場におきましては、長年葉たばこの鑑定で熟練しました技術員がたばこを観察評価して総合的な判断を下しておりまして、確かに御指摘のとおり、一つの俵を二十秒程度で格付するわけでございますけれども、こういったやり方は世界各国の葉たばこ商取引におきましても通常の手段として行われているわけでございまして、当然売り手、買い手の立場から高い安いの問題がございますけれども、こうした場合には耕作者代表、会社代表双方から構成されております協議委員会、こういったようなものも設けまして苦情、不服の処理に当たっているところでございます。  いずれにいたしましても、耕作者の方々が一年汗水かけておつくりになった葉たばこでございます。私ども謙虚な姿勢で、技術的な観点で的確に評価してまいりたいと思っております。  また、水分問題について、昨年確かに返戻の割合が多うございましたけれども、これはお天気の関係で、出荷された葉たばこの含水量が高い。高いものを買い入れれば、これはもう後腐ってしまうわけでございます。やむなく耕作者にお返しして、再度調製して出荷していただいたわけでございます。  それから、最後に御指摘になりました葉たばこのうち、一部の特に品質の劣るものにつきましてこのたび出荷抑制をお願いすることにいたしました。これは現在過剰在庫でございまして、さらにたばこの売れ行き減からこれがふえるということを避けるために、農家経営を配慮いたしまして、減反にかわる方策として打ち出したわけでございまして、六十三年限りの緊急措置としてお願いしてございます。たばこ事業法に、原料の用に適するものを購入して、それ以外のものは買わないとございますけれども、この用に適するか否かの基準をこのたび変更するというものではございませんで、あくまでもたばこ農家による自主的な出荷抑制を前提としたものでございまして、このことは全国たばこ耕作組合中央会さんにおかれましても御理解いただきまして、この出荷抑制については六十三年一年限りの措置であるということと、需給調整のための方策で、選択購買制への移行を意図したものではないということで合意をいただいているようなわけでございます。
  104. 松尾官平

    ○松尾官平君 一年限り一年限りと言うけれども、どうもあなた方の一年限りは当てにならぬ。波及のときもそうだったけれども、今回も消費税一円一年限りで上げると言ったのがいまだに続いているわけだから、なかなかそちらさんで一年限りと言ってもそのままのめないわけですけれども、ひとつ質問通告してからいろいろやり合ったわけでありますから、十分頑張っていただきたいと思います。  時間がないので、国民金融公庫の問題に入ります。演説はやめて、ストレートに内容を聞きます。  今、小規模事業者が一番望んでいることであり関心のあることは、国民金融公庫の貸出金利がどうも少し高いのじゃないか、もう少し安くならないかという問題であります。国民金融公庫の基準金利は円高の後どのような経緯をたどって現在の水準にあるのか、現在の水準はどういうのかという点と、最近は、昔金融公庫が発足した当時といいますか、この間までと違って民間の金融機関が中小企業向けにも力を入れてきておりますので、この貸出金利の差額が従来に比べてメリットがなくなったという声もあるわけでありますが、この際、厳しい経済情勢のもとでありますから、貸出金利を引き下げる措置を講ずる必要があると思われるわけであります。国民金融公庫大蔵省の方からお答え願えればありがたいと思います。
  105. 吉本宏

    参考人(吉本宏君) お答えいたします。  国民金融公庫の基準金利でございますが、これはいわゆる長期プライムレート、長期金利の最優遇金利でございますが、これに連動して決められるわけであります。  先ほどの円相場が非常に急騰した以降の基準金利はどういうふうに推移をしてきたかという御質問でございますが、昭和六十年の末、十二月の基準金利は七・五%ということになっておりまして、その後七回にわたって引き下げが行われまして、ことしの五月には四・九%というところまで下がったわけであります。しかし、その後若干長期金利が反騰するという中で二回ほど引き上げが行われまして、現在の基準金利が五・七%ということに相なっているわけであります。  松尾委員が御指摘のとおり、全般に金融の自由化とかあるいは金融緩和が進む中で、政府系金融のウエートが戦後の一時期に比べますと若干落ちているという御指摘も私どもよく理解できるわけでありますが、よくよく考えてみますと、公庫の長期金利は、今申し上げましたように、民間の長期金利の中の最優遇金利であるということ、また、いわゆる拘束預金というようなものも要求いたしませんし、長期安定的な資金供給という意味ではそれなりにメリットがあるのではないかと、このように考えているわけであります。現に、昭和六十一年度の実績をちょっと申し上げますと、普通貸し付けにおきまして貸出実績が二兆八千二百五十一億円、前年度対比で七・六%の伸びであります。また、今年度におきましても、今年度上期の実績を申しますと一兆四千二百八十五億円、前年対比九%という伸びになっておりまして、いわゆる政府関係金融機関の中では善戦をしておると申し上げてよろしいのではないかと、かように考えております。  また、この金利を引き下げられないかというお話でございますが、いわゆる長期プライムレート連動という基準を外しますと、一体基準をどこに求めるかということに若干問題がございます。また、現在私どものいわゆる利ざやと申しますのは財投金利で五・二%でありまして、これを五・七%でお貸しすると利ざやが〇・五%しかない。こういう状況の中でなかなか現在の基準金利の形を改めるということは難しいんではないか。それだけ補給金が必要だというようなことにもなりますので、私どもとしては現行基準の中で精いっぱいの努力をさせていただきたいと、このように考えております。
  106. 千野忠男

    説明員(千野忠男君) 政府系中小企業金融機関の基準金利につきましては、今公庫総裁からお話があったとおりでございますが、実は政策誘導を目的とする一定の貸し付けにつきましては、この基準金利をさらに下回る水準に設定をしているわけでございます。特にいわゆる円高特別貸し付け、これの金利につきましては、従来からコストであります財投の金利水準を大幅に下回る低い水準に設定しておるところは御承知のとおりでございます。また、円高の影響を集中的に受けております地域の中小企業者に対しましては、特定地域中小企業特別融資、これも大変低い金利のものでございますが、こういうものを実施しておるわけでございます。  こういうわけで、政府といたしましては、円相場の急激な上昇でございますとか、あるいは国際経済環境の変化によって影響を特に受けております中小企業において、事業転換なりあるいは内需転換なりが円滑に進みますように特段の配慮をしてきたところでございまして、この厳しい財政事情のもとで、現在のところこれ以上の金利引き下げというのは困難でございますけれども、いずれにいたしましても、金利の設定につきましては、今後とも市中金利の水準でございますとか、あるいは円相場の動向等をも踏まえまして、中小企業者を取り巻く内外の厳しい経済環境を十分認識しながら引き続き適切に対処してまいりたい、かように考えております。
  107. 福田幸弘

    ○福田幸弘君 大臣には引き続き御苦労さまでございます。  最初に税の関係でございますが、現在検討が進められておりますので、御要望申し上げることにいたします。  今般、ガットの裁定によりまして酒税法の改正を迫られておりますが、関税ならともかく、本来、国の主権に属します国内税法の改正について、高級洋酒に大幅な減税が行われる反面、特に一般、一部の国産酒の増税が指摘されているのは今までにない異例のことであると考えるわけであります。  従来、我が国の酒税制度は伝統的な担税力の考え方を基本として設定されておりまして、長年これに順応していたところでございます。しかし、ガット裁定に基づく改正が行われますと、極めて大幅な変革が予想されるところであります。その結果、生産、流通、消費を通じまして、商品構造の激変に伴い、酒類産業の基盤を揺るがすことになることが懸念されるところでございます。特にいわゆる大衆酒であります酒類、すなわち日本国有の労働酒でありますしょうちゅうについての増税は、大衆消費者と地場産業を中心とする生産者双方にとりまして耐えがたいものがあるわけであります。したがいまして、酒税法の改定に当たりましては、明治以来国家財政に貢献してまいりました酒類業界や国民一般への影響、特に、言うなれば日本のふるさと文化を伝承します清酒やしょうちゅうのような民族酒につきまして十分御配慮の上、慎重に御対応いただきたいと切願する次第であります。これは要望にとどめます。  次に、決算の内容に入ります。  租税に関する会計検査について質問させていただきます。  会計検査院のこれまでの租税の徴収状況検査及びその結果の公表により、適正な納税が担保されてきたことは申告納税制度にとってまことに有効であったと考えております。また、その御努力に感謝いたすものであります。  六十年度決算検査報告書の中で、これは三十五ページでありますが、大蔵省については租税について、これは一件と勘定されますが、徴収不足が約十億一千二百万余り、徴収過大が約六千四百万円と指摘されています。しかしこれらは、中に入っては不当事項ではありますが、新聞報道されるむだ遣いという歳出面の話とは違うわけでございまして、税法を守りますのは本来納税者自身責任でありますし、また税理士法第一条にありますように、それを援助する税理士の責任でもあるわけであります。そこで、申告納税制度のもと租税に対する会計検査の観点をお伺いしたいと思います。
  108. 辻敬一

    会計検査院長(辻敬一君) ただいま、租税に対する会計検査の観点につきましてお尋ねがあったわけでございます。  私ども、国税庁国税局あるいは税務署の業務を検査の対象としているわけでございまして、いろいろな観点から検査をいたしております。例えば納税義務者及び徴収義務者の把握が十分になされているか。例えて申しますと、給料を払っておるのに源泉徴収していないというような事例が見られるわけでございます。それから第二に、課税の対象となります所得金額の把握が適正であるかどうか。例えば会社から貸付金の利子を受けながら申告が漏れているという例がございます。三番目といたしまして、法令の適用は的確に行われているかどうか。資産合算でございますとか同族会社の留保金課税でございますとか、そういう問題に特に注意をいたしております。それから四番目といたしまして、所得金額あるいは税額の計算が正しいかどうか。最近、給与所得控除につきまして誤りが割合にございますものですから、高額の給与所得者につきましてコンピューターを使ってチェックをいたしております。その結果、数件の指摘をしているわけでございます。こういうように検査をいたしておりますとともに、なお税務に関する制度あるいは課税上の取り扱い等につきましても検査を実施しているところでございます。  ただ、先ほど申し上げましたように税務官署が対象でございますので、納税者を検査するわけではございません。その意味においていわば限界がございます。例えば大きな脱税を取り上げるというような問題は必ずしも私ども検査になじまない点がございます。  それから、先ほど申告納税制度についての御指摘があったわけでございますが、確かに納税者の方の申告の誤りが多いわけでございまして、それを税務官署でチェックされるわけでございますが、そのチェックが漏れておると、それを私ども指摘しているというケースが多いわけでございます。したがいまして、やや技術的な観点の指摘があるわけでございますが、私どもはそういう検査を通じまして申告納税制度の運営の適正化、ひいては公平な納税の担保ということに寄与できるのではないか、かように考えて検査を実施しているところでございます。
  109. 福田幸弘

    ○福田幸弘君 税負担の公平を確保するためには改善を要すると思われる制度的な問題点があると思います。この指摘も重要と思うわけでありますが、御所見をお伺いしたいと思います。
  110. 辻敬一

    会計検査院長(辻敬一君) これは租税の検査に限りませんで、検査全体の話でございますけれども、不当事項ということで個別の不当を指摘いたしますほかに、会計検査院法三十四条というのがございまして、処置要求あるいは意見表示をいたします。これは一般的、傾向的な不当の問題を取り上げるわけでございます。それから、第三十六条に基づきます意見表示、処置要求というのがございまして、これは必ずしも不当ではございませんけれども、制度、行政に問題がありということで指摘をするわけでございます。また、この三十四条、三十六条の発動を検討しておるときに、相手方の官庁におきまして早急に是正措置をとられたという事例もございます。これが処置済み事項ということで掲記をいたしているわけでございます。  そのほかに、事業効果あるいは事業運営の見地から問題を提起して事態の進展を図る要があると認めた事項につきましては、いわゆる特記事項として掲記しているわけでございます。租税の検査に当たりましても、先ほど申し上げましたような個別の徴収の漏れというものを指摘いたしますと同時に、税務に関します制度あるいは課税上の取り扱いにつきましても検査を実施しているところでございます。ただいま御指摘のございましたこういうような制度的な問題に関する指摘につきましては、三十四条、三十六条あるいはその変形でございます処置済みあるいは特記事項を通じて御報告申し上げているところでございまして、六十年度の決算検査報告でも処置済み事項として、農地等に係る相続税の納税猶予制度の運営について掲記をいたしたところでございますし、五十一年度においては特記事項で税の問題を取り上げたこともございます。  なお、ただいまの御指摘にかんがみまして、個々の徴収過不足ばかりでなくて、今後も税務に関する制度あるいは取り扱い等につきましても広い観点から検査を実施してまいりたい、かように考えているところでございます。
  111. 福田幸弘

    ○福田幸弘君 どうもありがとうございました。今後とも検査院の活躍を期待いたします。  次は、地方税収の監査体制について自治省にお伺いします。  国の租税につきましては、今お伺いしましたように厳重な検査が行われておりますし、また間違いなく国庫へ入金されておるわけであります。他方、地方税につきましては、先般福岡県苅田町に起きた事例のように、納税者の支払った地方税がその地方自治体の歳入になっていないという考えも及ばないケースが発生しておるわけであります。地方税の収納に関する会計制度及び会計監査制度に欠陥があるのではないかと懸念されるわけでありますが、今後このような事態が生じないためにどのように対処されるおつもりなのか、自治省の御見解をお伺いします。
  112. 秋本敏文

    説明員秋本敏文君) 会計制度などについてお尋ねをいただいたわけでございますが、市町村におきましては、地方税の賦課徴収、これは地方部局の税務担当課が行いますし、また地方税を含めまして公金の出納保管は収入役が所管をしております。このように組織上、賦課徴収の決定機関それから収入機関、それぞれ分離をしておりまして、相互に牽制が行われるという、そういう仕組みになっております。  また、さらに不正を防止いたしますために、御案内のように監査制度あるいは議会による決算審査制度などが設けられておりまして、特に監査委員は定例の監査、随時の監査を行いますほかに、現金の出納につきましては例月検査を行わなければならないということになっております。  このように制度としては整備をされていると考えられるのでございますが、この制度をどのように運用していくか、例月の出納検査ということを行うにいたしましても、それをどのようにして行っていくか、そういったことが問題でございまして、この種の事件を防止いたしますためには、地方公共団体自身におきまして制度を適切に運用することが重要でございますので、これまでも県を通じて指導をするなどいたしておりますけれども、今後ともさらに適切な指導をしてまいりたいというように考えております。  なお、苅田町の事件とは直接の関係はございませんけれども、ただいま国会で御審議をお願いいたしております地方自治法の改正案の中におきまして監査制度の整備をさらに図るということにいたしております。
  113. 福田幸弘

    ○福田幸弘君 地方におきましても国と同様の検査体制を納税者のために確立していただきたい、こう思います。  次は、違法所得の課税につきまして、前回に引き続き警察庁、国税庁にお尋ねいたします。  暴力団の問題、これは看過できないと思うんですが、暴力団収入の大半を占めます覚せい剤等の違法所得につきましては、所得の申告は当然行われないわけであります。しかも、これらの所得は、覚せい剤など社会に大きな弊害を及ぼすものによって得る違法所得であります。一部報道によりますと、これら暴力団の活動による収入は推定で約七兆円、大体私もそういう感じで七兆から十兆と思いますが、巨額に達しております。これは我が国百貨店の年間販売総額に匹敵するということでありまして、この辺の異常な数字が見逃されておる、こう思うわけであります。また、組員の数は推定約九万でありまして、これも異常な数字であります。これから推定しますと、一人当たりの年間純益は実に一人頭五千万円以上という高利益になっておるわけであります。この計算は経費率を三〇%と見ていますが、違法所得に経費率があるかどうかは知りませんが、違法所得についてまで経費を認めるのには疑問を感ずるわけであります。  いずれにしましても、課税によりまして資金源を断つこと、これはアンタッチャブルじゃありませんが、資金源を断つことが暴力団対策の基本であると考えますが、これにつきまして警察庁、国税庁の緊密な協力関係、これが最も重要と思います。現在どう対処されておられるかお尋ねいたします。
  114. 深山健男

    説明員(深山健男君) お答えいたします。  暴力団取り締まりのいわゆる第一次頂上作戦が実施されました昭和三十九年、暴力団を壊滅させるためにはその資金源を断つことが必要であるという観点から、法務省、国税庁及び警察庁が協議し、暴力団に対して厳正な課税措置を講ずるということにしたのであります。具体的には、警察が捜査活動などを通じまして暴力団の所得を把握した場合には、その都度対応する税務署に通報いたすことにいたしておりまして、昨年の場合約二百件ほど通報しております。  今後とも国税当局と一層の連携を図り、さらに暴力団に対する厳正な課税がなされるよう努めてまいる所存であります。
  115. 日向隆

    説明員(日向隆君) すべての納税者について適正公平な課税を実現するという見地から、私どもといたしましても、他の納税者と同様、御指摘の暴力団等についても課税上有効な資料、情報の収集に努め、これら資料を活用してできる限り適正な課税の実現に努めておるところであります。しかしながら、御承知のとおり賭博行為や覚せい剤取引など不法行為による所得は課税の端緒がつかみにくく、また通常一般の納税者に比べ、私どもの任意調査に対する協力が得られないということなどから経費の実態がつかみにくいため、所得を正確に把握するのにかなりの困難が伴うこと並びに所得の帰属の把握に困難を伴うといった問題があります。このような問題に対処するため、私どもとしてもあらゆる機会を通じて課税上有効な資料、情報の収集に努めるとともに、今御指摘がございましたように、警察当局との協力関係を緊密にして、例えば査察部門を窓口にして暴力団の課税に関する情報の交換を行い、これを活用するということによりまして課税の一層の適正化に努めているところでございます。  今後とも、警察当局とのこのような協力関係を堅持しつつ課税の適正化に一層努力してまいりたいと、かように考えております。
  116. 福田幸弘

    ○福田幸弘君 社会的に見まして不公正の最大の問題がこの暴力団の問題であります。社会秩序にとって最も弊害の大きい暴力団に対しては厳しい対処をもって一般市民の期待にこたえていただきたいと、こう思います。  次に、また要望でございますが、さきに酒税の問題を申し上げたのは、外国からの批判に対する我が国の対応の問題であるわけで、当局非常に御苦労されておると思いますが、一方、外国からの批判に対しまして反対に敏感でない場合もあるように思います。小さい問題でもそういう問題が大きく外国から取り上げられるわけでありまして、その例としまして芸術に対する賞金の課税問題があるわけであります。  これは大臣御承知でないかもしれませんが、所得税法の九条十八号というのに、大蔵大臣の指定されます団体から交付される賞金、これは朝日賞とか毎日賞、読売賞、それから稲感賞とか、十九だけ現在指定されていますが、その賞金は学術に関するものだけは非課税とされているために、同じ受賞者の中で学術部門は非課税、芸術部門は課税と、こういう差別的な取り扱いになっておるわけでありまして、最近の例では京都賞、これは稲感賞ですが、三人に授与されましたが、学術の二人だけは非課税で芸術関係の一人は課税ということになって、国際的にも批判が生じたわけであります。この一人はポーランドのアンジェイ・ワイダ監督で、ポーランドの自由化を先頭に立って進めておる世界的な映画監督でありまして、ワイダ監督はこの賞金を日本美術館、これはポーランドにあるわけですが、そこに全額寄付するという意向でもあったわけであります。しかし、税法では課税でありますので、これは私も中に入って苦労したんですが、結局、両国間にポーランドとの租税条約がありますので、何とかこれは救うことができました。  こういう問題が起きていますし、また東京国際映画祭、これは第二回が終わったんですが、この賞金も恵まれない監督に奨励のために与えるものでありますが、これも同じく課税になったわけであります。  こういうことで、日本の言われ方は、政治家がどうも文化的にセンスがない、経済は非常に大国であるけれども、芸術、文化に対して理解がないと、こういうふうに言われますと私非常に困るような場面があるわけでございました。  芸術の範囲が定めにくいという問題はございますが、大蔵大臣が団体を指定されますし、その中で審査される委員は権威のある方でございますので、おのずからその線ははっきりしていると思うわけであります。したがって、経済大国となった我が国にとって、学術と同じく芸術につきましても御配慮を願いたいということをお願いするわけであります。これは要望でございます。  最後に、福祉予算の確保について大臣の見解をお伺いしたいと思います。  これから高齢化社会が急速に到来してくるわけでございますが、これに伴いまして年金それから老人医療に対する給付が中心となりまして増大をしていく、これは当然に予測されるわけであります。しかし、将来どのような社会保障の姿になるのか、その展望をやはり国民の前に明らかにする必要があるというふうに考える次第であります。  現在の歳入の仕組みでこれに対応しますと、異常な所得税や法人税の負担の高まりがこれは予想されますし、また異常に高額在社会保険料となるわけでありまして、いずれにしましても、老後の保障システム、これを確立しまして、福祉予算の将来の姿を具体的に国民に示して、そのための安定財源確保の制度を早く確立しておく必要があると思いますが、大臣の御所見をお伺いして私の質問を終わります。
  117. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 御指摘のように、我が国はただいまの段階では特に老齢社会とは申せないかと思いますけれども、人口統計によりますと、二十一世紀到来に伴いまして老齢化が極めて急速に訪れることがはっきりいたしております。ただいまいわゆる六十五歳以上の老人一人を生産年齢人口六・六人で背負っておると言われておりますが、二〇〇〇年にはそれが四人に一人となり、もうすぐに三人に一人になっていくということが明らかになっております。  そういう場合に、背負う方の若い人にとってみますと、これは非常な負担になるということがはっきりいたしておりますが、背負われる方は老齢になってまいりますから、いわゆる稼得能力は小さくなる、所得税を納めるというようなことはだんだんになくなっていくわけであろうと思われます。そういたしますと、大変にその分だけまた若い人の負担がふえるということでございますから、我が国のようにかなりの所得水準に国民全体がなっており、しかもその間の所得格差が世界で一番少ないという国について考えますならば、ただいまのような社会の共通の負担というのは広く薄く国民全部が背負うことが可能であるし、またそれは望ましいことではないかというふうに存じます。  しかし、そのようなことを老齢化社会になりまして突然いたしますことは実際不可能でございますから、ただいまからそういったような体制を考えておく必要がある。  先般来、税制調査会等々におきまして幅の広い間接税ということを御検討いただいておりますのも、一つには我が国の所得税、法人税が相当に重い、直間比率がまた極端に直税に偏っておるということもさることながら、ただいまのように、もう確実にやってまいります。そのような老齢化社会に今から対応した制度を考え、社会的にそれに習熟しておいてもらう必要があるのではないかと、こういうふうに考えるからでございまして、そのことは直接にそれが福祉政策と結びつくあるいは結びつかないといったようなことにはいろいろ議論があるといたしましても、いずれにしても社会全体のもう目前に迫っておりますニーズに対してただいまから税制も備えておく必要があるという意味では、まさに福田委員の私は御指摘になるとおりだと考えるものでございます。
  118. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それでは、初めに検査院長にお伺いをいたします。  昭和六十一年度決算検査報告の概要が先日発表になったわけでございますが、大変な努力をされてこれだけの概要発表になったと私思うんです。六十年度の検査と比較をいたしましていろいろな点が考えられると私思うんですけれども、院長といたしまして、特にこういう点が特徴として考えられるとか、あるいは特に六十一年度の検査結果の中でこういう点がやはり問題であるというふうな点がございましたら、初めにお伺いしたいと思います。
  119. 辻敬一

    会計検査院長(辻敬一君) 去る十二月の十一日に、六十一年度の決算検査報告を内閣に送付いたしたわけでございますが、その報告におきまして私ども指摘した事項は、件数にいたしますと百五十六件、金額にいたしまして約二百十四億円でございます。これは前年度に比べまして件数、金額ともやや増加いたしております。  また、その内容でございますが、特に私どもは一般に御関心の深い住宅、土地問題あるいは年金、医療問題等を取り上げております。  住宅、土地問題では、公庫住宅、公団住宅を無断で他人に譲渡、賃貸したり、あるいは事務所として使用したりしている例を指摘いたしております。また、土地問題としましては、児童生徒急増地域の小中学校の用地のための補助が目的外に使用されているというような事態を指摘いたしております。  年金、医療関係では、負担能力がございますのに国民年金保険料の納付を免除されている例でございますとか、それから医療につきましてはことし初めて検査をいたしたわけでございますが、老人ホーム関係の医療費の問題について指摘をいたしております。  また、公共事業の関係につきましても、技術の進歩に伴いまして、新しい工事の方法でございますとか大型機械でございますとかあるいは材料等が導入されておりますのに、それを設計や積算に反映していないために工事費が不経済になっているものを指摘いたしております。  このように幅広く問題を取り上げて指摘をいたしたつもりでございます。
  120. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 ここ二、三年特記事項というのがございましたが、ことしはなくなっているようでございますが、そこら辺のところはどうでございますか。
  121. 辻敬一

    会計検査院長(辻敬一君) 特記事項につきましては、今回の検査において特に特記事項として取り上げるものがなかったということでございます。
  122. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 検査結果を予算に反映させるという問題は、これは非常に大事な問題であると思います。  当決算委員会におきましても、今から十年ほど前になりますか、相当その問題で議論したことがあります。特に最近は、決算の審査が、きょうのこの審査も昭和六十年度の決算の審査を今やっているわけでございますが、当時は三年も四年も審査がおくれたことがあります。そういうこともありまして、決算審査というのは一体何だというふうな議論が出てきたことがあるわけでありますが、そういうことも踏まえまして、院長はこの決算審査の結果というものを、あるいは決算検査の結果というものを予算に反映させるための努力というのはどういうふうにお考えでございますか。
  123. 辻敬一

    会計検査院長(辻敬一君) 私ども検査報告の結果をできるだけ予算等に反映していただいて活用していただきたいと念願をしておるところでございます。  どのように予算に反映させるかというのは、これは政府のお仕事であり、また国会のお仕事であるわけでございますが、私どもも当然関心を持っておりまして、私どもの立場におきまして努力をいたしております。例えば予算当局といろんなレベルにおきまして意見、情報の交換をするということは最近活発にいたしております。その結果、例えば私どもが補助金の制度について問題ありと指摘いたしましたのを、予算当局の方で翌年度の予算編成に当たって補助金整理ということで削減されるというように、直接に予算に反映した例もございますし、また、私ども検査の結果はいろいろな予算査定の面で御参考になっているのではないかと思います。また、私ども指摘いたしました結果、予算の実行上節約になりまして、それがまた予算編成に反映されてくるということもあろうかと思います。  ただいまの御指摘も配慮いたしまして、今後とも予算当局との意見、情報の交換は活発にやってまいりたいと考えておるわけでございます。
  124. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 大臣にお伺いします。  今の問題と同じ質問なんですけれども、いわゆるこの検査院の検査結果というものが毎年相当膨大な資料で出ております。その結果というのは当然予算に反映させるべきだと私は思うんですけれども、大臣としてはこの点についてどういうふうにお考えでございましょうか。
  125. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 午前中にも一部お答えを申し上げましたが、会計検査院から政府の支出につきましていろいろ御指摘を毎年受けておりますことは、行政府としてはまことに申しわけないことであると思っております。常々反省をし、直そうと努めておりながら、なお御指摘をされる事柄の後を絶たないような現状はまことに申しわけないことだと思っております。それは支出として不当あるいは不適当ということはもちろんさることながら、先ほども申し上げましたが、さらに費用対効果といったような観点から見て、いかに非営利を目的とする国家であろうともそれはいかがなものであろうかという御指摘もございまして、そこらのところも十分に反省をしてまいらなければならない。  ただいま院長が言われましたように、過去において会計検査院お話を予算編成あるいは予算の実行の上で取り入れてまいりましたことは数少なからず実はあるわけでございますけれども、今後はまずそのような御指摘がないように努めること、また、ありました場合にはそれを将来に向かって改めてまいるということが大切なことであると考えております。
  126. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 先日、六十一年度の検査結果の発表がありまして、その直後、新聞報道、相当大きくいろんな面で報道されました。これは院長がこういうふうにおっしゃったのかどうかはわかりませんが、「いまの役人の頭に節約という言葉はない 会計検査院報告」というでっかい活字がありまして、中身にもそういうふうな意味のことを書いております。いずれにしましても、ことしのこの検査内容等から見てみますと、そう言われてもしようがないようなことがいっぱいあるわけです。  そこで私は、そう言われてもしようがないことが実際あったわけですからしようがないと思うんですが、実際問題として、例えば一つだけ例を挙げて、院長に御説明いただきたいんですが、工事が終わっていないのにいわゆる料金を払う。一体こんなことが実際許されているのか。しかも、後でいろいろ聞いてみますと、架空のいわゆる工事が完成した、あるいは検査が済んだ、そういう書類をつくって提出して、それでいろいろやっている。会計検査院が五月に検査したときには品物も何にもなかったのに、その検査の前の三月に完成したように書類をつくっている。そういうふうな報道記事がありますし、検査院の報告の中にもそれに近いようなことが書いてありますが、例えばそういうことをした地方のお役人の皆さん方あるいはそういう方々は、これは公文書偽造ということになりますな。そういうふうな意味でのきちっとした処置はしているのかどうか。  新聞記事の中にもありますが、人のお金だから、自分の懐は痛まないから、あるいは予算制度だから三月までに何とかしなくちゃいけない。もしもそういうふうなことが蔓延しているなんということになると大変なことでありまして、これはもう大臣にも聞いていただきたいからわざわざ私こう言っているわけでありますが、そういうことを含めて院長の御見解をお伺いしておきたいと思います。
  127. 辻敬一

    会計検査院長(辻敬一君) 私ども検査をするに当たりましては、まず第一に、会計経理が予算、法令等に従って適正に行われているかという観点から検査をしてまいります。これが合規性の観点でございます。しかし、それだけでは十分でございませんので、経済的、効率的に行われているかどうか、少ない費用で効果を上げているかという点について検査をいたします。それから、事業が所期の目的を達成しているかどうか、有効性の観点と申しておりますけれども、そういう観点からも検査をいたしております。合規性の観点はいわば検査の原点でございますからもちろん重要でございますが、最近これとあわせまして経済性、効率性の検査、あるいは有効性の検査も重視してまいっておるわけでございます。  今回の報告におきましても、経済性、効率性、有効性の観点からの検査による指摘を相当数いたしておるところでございます。この私ども指摘にはいろいろな形態もございまして、ただいま委員指摘のようなケースもあるわけでございますが、それぞれのケースに従いまして、またそれ相当の事後的な処置をとっておるわけでございます。
  128. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 院長のお話聞いておりますと、一般論みたいな、何となく抽象的なお話ですけれども、もう少し具体的に言ってくれませんか。  これね、とにかく新聞はもうちょっと具体的に書いていますね。「大蔵官僚から検査院トップに立場を変えた辻敬一院長も「今の役人の頭に、節約や効率という言葉はない」。」こうなっております。こういうことを、そういうふうにお考えだと私は思うんですけれども、違うようにお考えなのか。それから、今の架空工事の問題も事実なのかどうか、中身も含めてもう少し御説明いただけますか。
  129. 辻敬一

    会計検査院長(辻敬一君) 私は、新聞報道されておりますように「節約という言葉はない」というふうに断言したつもりはないわけでございます。ただ、先ほど申し上げましたように、官庁の経理におきましては合規性の観点の意識が比較的強いと思うのでございますが、それに比べて、比較の問題ではございますけれども、少ない費用でやろうというような意識、あるいはまた事業が目的を達成しているかどうかという観点からの意識は比較的薄いんではないか。そこが民間と違うところであるので、検査に当たっても、経済的、効率的あるいは有効性、そういう観点からの検査を重視していくのだということを申し上げたわけであります。  それから、ただいま委員の御指摘の件は、具体的にはどの問題でございましょうか。
  130. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 農業用貯水プールの水の水質改善工事。
  131. 秋本勝彦

    説明員秋本勝彦君) トンネル工事の関係の減渇水補償のお話でございましょうか、念のためにお伺いさせていただきます。
  132. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 そんなこと、もうちょっと詳しく言わにゃわからぬかな。概要の中の十一ページ、もうちょっと詳しく説明してごらんなさい。
  133. 秋本勝彦

    説明員秋本勝彦君) それでは御説明いたします。  旧国鉄でございますけれども、四十六年に東北新幹線で蔵王トンネル工事を施工しておりますが、その施工中の四十七年の八月ごろから大量の出水が続きました。したがいまして、減渇水現象が一部に生じまして、農業用水あるいは飲料水等に不足を来す事態が生じました。そこで……
  134. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 ここに書いているようなことはわかっているわけですよ。要するに、もうちょっと核心をぱちっと言ってもらいたい。どういう点が問題になったのか。先ほど私説明したように、そういうふうな人たちが間違えた報告書を出したり領収証を出したり、そういうことをしたら、そういう問題は私文書偽造なり公文書偽造になるでしょう。そこら辺の措置はどうなっているかと聞いているわけですよ。
  135. 秋本勝彦

    説明員秋本勝彦君) わかりました。  この補償の対象となりました工事を責任を持って施行する白石市では、今言いました水質改善のためのプールをこしらえることになっておりました。それを国鉄としても補償の対象としておったわけでございますけれども、実際にはそれが完成されたという報告に基づきまして国有鉄道が全補償金を払ったところが、実際にはそれは施行されていなかった。つまり、そういう検収調書がこしらえられておったという事態でございまして、これにつきましては、私ども指摘に従いまして、その分につきましては早速返還を求めたということでございます。
  136. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 これだけやっておりますと、大臣も時間もありませんから、もう言いませんけれども検査院ももう少し私の言っていることをよく聞いて答弁していただきたいと思うんです。要するに、これは我々が考えなくちゃいけない問題でもあるんですけれども、予算が三月末までということもあったりして、国鉄の場合は今度民間に変わりましたから、そういう関係もあってでしょうけれども、予算があるから三月末までにちゃんと終わったことにしないといけないということで、いわゆる慌てて領収証をつくったり、あるいはその工事が完成していないのにしたというような報告書をつくってみたり、そういうふうな傾向というのは、私たちは当決算委員会で審議をしている中ではいろんなところで何回も聞くんです。  ですから、私は院長にも言いたいのは、これは何もこれだけと違う。こういうふうな意味のことは今まで何回もある。したがって、こういうふうな場合には特にきちっと厳格にする必要がある。ただ、それじゃ白石市がお金を返せば済むか、これはそんな問題じゃないでしょう。言うたら、一つの犯罪ですよ。一たん盗んできた物を返したら罪にならないのか、そうじゃないでしょう。犯した罪というのはやっぱり厳格にすべきです。そういうふうな姿勢というのが私は大事じゃないかなと思って、再度改めてこのことを言っておるわけでございまして、これ以上深く追及はしませんけれども、そのくらいのことはきちっとやっていただきたい、そう思っているわけです。したがいまして、大臣、これ以上言いませんが、そういうような意味のことがあるということだけわかっていただきたいと思うんです。よろしいでしょうか。
  137. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 先ほどからお話しになっております、そのむだということの観念が役所にない、それから効率ということもないということにつきまして、それは私もまことにその感を深くいたします。  そもそも営利を目的としない団体でございますために、利益を最大にするという動機がございませんので、そこからいわゆるこのむだということはとかく起こりやすい。それからもう一つ、効率の話は、普通は生産性で効率をはかりますけれども、役所の生産性というものは極めてはかりがたいものでございますので、そういう意味からもそういうことに陥りやすい。それらのことは会計検査院長がおっしゃったと言ってこの間も報道されておりましたけれども、まことにそうなりやすいことであって、官庁が強く戒心をいたさなければならないことだと思います。
  138. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それでは次に、円高対策とその差益還元の問題についてお伺いをしたいと思います。  特に、十月の下旬の円高あるいはドル、株式の暴落、それからしばらくの間はこの円の相場も小康状態だったんですけれども、この十二月に入りましてから、本当にこの一週間ほどの間でございますが、急激なまた円高が始まっているわけでございます。まだこれから先どうなるか、本当に私たち冷や冷やしているわけでありますが、きのうも大臣、テレビでも随分おっしゃっておりました。いわゆるアメリカの財政赤字の縮小という問題あるいは貿易の赤字の問題等いろいろあると私は思います。そういうような中で、これはいろんなことがいっぱいあるわけでありますけれども、現在のこの円高の推移というものを大臣はどういうふうに見ていらっしゃるか、その点、現在の認識等を含めてお伺いしておきたいと思います。  それから、日銀の方からもおいでいただいておりますので、現在の円ドルの関係、これからの推移等も含めて日銀の方からも御答弁いただきたいと思います。
  139. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) お話しのように、十月の十九日にウォールストリートの株式の暴落がございまして、それからかなりの時間たちましてから、それが為替相場に響いてまいりまして、マルクに対しても円に対してもドルはさらに値段を下げたわけでございます。そして、そういう状況の中でアメリカは財政赤字の縮小をしなければならないということで、大統領と議会との間の折衝が続きまして、その合意がそれからほぼ一月たって、かなり時間がかかったわけでございますが、合意としてはでき上がった。しかし、でき上がった合意が立法にならなければならないわけでございますが、その立法はかなりおくれまして、今日現在まだできていない、こういう状況が市場に反映をしつつありましたところへ、アメリカの十月の貿易収支が、かねてクリスマスの関連もあって、少しは悪かろうと思っておりましたのを超えてさらに悪かったということが為替をさらにドルを弱くしたということが今日までの簡単な事態の推移でございます。  この間、西ドイツが中心になりまして金利の引き下げが行われた。我が国はもともと最も低い金利になっておりましたし、緊急経済対策の効果がおかげさまでかなり出てきておりまして、いわば各国の政策協調というものの中で、アメリカの財政赤字の削減の具体化が非常に延びたといったようなことで、今日なお市場が不安であるということであろうかと存じます。  ルーブル合意では、こういうときには共同介入をするということになっておりまして、各国がなり大きな共同介入をいたしつつございますけれども、それはそのときそのときの相場のいわばスムーズアウトとでも申しますか、乱高下をならしておるということでありまして、政策協調がまだ出そろっていないということが相場を不安にしておるのではないかと存じます。恐らく間もなくアメリカの財政赤字削減の立法が完成すると思われますので、それによりましてルーブル合意の再確認ということが結果としてはできるのではないかと期待をしておるわけでございます。  なお、この間における為替の水準でございますけれども、ルーブル合意は、もともとこの変動相場が、当然でございますが、いわばマーケットで生まれる相場でございますので、その水準そのものを各国が介入して基本的に左右する、そういうものではないであろう。市場でございますから、それは動くのでありますが、乱高下ということは防がなければなりませんので、そのために共同介入はしなければならない、こういうことと存じておりますので、どの水準が適正であるということは、本来的には私は申すことが難しいのではないかというふうに考えております。  ただ、この二十日間ぐらいの間のことを考えますと、かなり急激なドルの下落でございます。このようなことは、我が国の経済界がせっかく景気の回復に向かいつつありますときにかように急激な為替の変動というものは経済界にとりましては極めて対応が困難な事態である。また、そういう意味では国民生活にも影響なしとしない、そういうふうに考えておりますので、政府としては政策協調が出そろうのを待ちつつ連日介入をして。おるという現状でございます。
  140. 青木昭

    参考人(青木昭君) 日本銀行の青木でございます。  ただいまの大臣御答弁のとおりでございまして、円相場、十月下旬以来円高ドル安の方向でやや不安定な地合いを続けてきたわけでございますけれども、さらに先週の後半から米国の貿易収支が百七十六億ドルという既往最高の赤字を示した、こういう報道を受けまして一段と円高ドル安が進んでまいったわけでございます。きょうの東京市場も一ドル百二十七円台の動きということでございますけれども、こうした動きの背景、もう先ほど大臣から御指摘のあったとおりでございまして、米国の財政赤字と貿易赤字、いわゆる双子の赤字というものがなかなか縮小をしない、そういうことに伴う先行きの不安感が市場に停留をしておるということであろうかと思いますし、また米国の貿易赤字拡大といったようなことを材料にいたしましたやや投機的な思惑的な動きというようなものが発生している、こういったことによるものではないかというふうに思っておるわけでございます。  こうした動きに対処いたしまして私ども、主要国と緊密な連絡をとりながら、為替市場への介入等を実施いたしまして相場の安定に努めておるわけでございますし、また短期金融市場の運営の面でも、為替市場の動向などをにらみながら弾力的な運営に努めているような状況でございます。今後とも主要国と緊密な連絡をとりながら、必要に応じて介入を実施していくということが大切であろうというふうに思っておるわけでございます。
  141. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 大臣、ルーブル合意というのはちょっと我々の認識と多少違うような気がするんです。ルーブル合意というのは、当時の百五、六十円だったですか、そこら辺のところでいわゆる介入したり、そこら辺で安定をさせる、それがルーブル合意だと私たちは思っていたわけでございますが、今の大臣のお話を聞いておりますと、要するにその当時その当時のいわゆる乱高下を安定させるためにルーブル合意がある。そういうようになってくると、これは日本は今もう大変な急激な円高で大変な状況にあるわけでございますが、私たちはルーブル合意というのは破綻しておる、新たに何らかのあれをしないといけないんじゃないかと、そう考えるわけでありますが、そこら辺のところをもう少し詳しく教えていただけませんか。
  142. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それは、私どもはこう考えておるわけでございますが、確かにルーブル合意の際も、このあたりの水準で安定させる云々というような表現を使ってございまして、峯山委員もただいまそこらあたりということを仰せられました。  まさにそのそこらあたりということは、さらに分析的に申しますならば、一定の具体的なやや半永久的な水準を考えている、ターゲットゾーンとでも申し上げておきますが、そういうことを必ずしも意味するものではない。変動相場そのものはやはり市場に任せてございますから、市場の関係でこれが動いていくことは基本的に変動相場でございますから、それは否定ができない。ただ、その動き方が上に動くにしましても下に動くにいたしましても極めて急激に動くときには、これは各国がみんなもう迷惑をする、各国の経済の成長にも害がある。したがって、そのようなことは、まず政策協調によってできるだけ防ごうではないかというのが第一でございます。その政策協調は、各国が主権国家でございますから、みんなが他に期待するほどお互いに百点満点がとれるような協調が必ずしもできているわけではございません。しかし、そういうことを志向して各国が動いておるということは事実と思います。  第二点は、しかしそれでも、相場はやはり市場でございますから、動くことは考えておかなければならない。その動きが急なときには協調介入をしてそれを緩やかにしようではないか。この二つが私はルーブル合意というものであると考えております。  御指摘のように、ルーブル合意のときの円は百五十三円ほどでございます。その後円は、いろいろございましたけれども、今日までかなり上がっておる。とすれば、ルーブル合意はもう役に立っていないのではないか、あるいはもう存在しないのではないかという御指摘に対しては、先ほども申しましたように、特定の決まったターゲットという相場を何としても守ろうというのがルーブル合意という、厳格に申すとそういうものではない。それは市場に従って動くことは不可避なことである、やむを得ないことであるが、それをなるべく政策協調によって小さくしていこう、安定さしていこう、それが一〇〇%奏功しているとは申しにくいのでありますけれども、そういうことと、それから急激な動きについては市場介入をしていこう、こういう二点がルーブル合意の志向するものでございますので、そういう意味では、ルーブル合意そのものの物の考え方は今日なお有効である、こういうふうに考えておるわけでございます。
  143. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 文面の上ではターゲットゾーンとして百五十三円ですか、そういうようなものは出てこないにしても、内々そういうようなものがあるのじゃないかなというふうに私たちは見ていたわけであります。しかし、今の大臣のお答えで大体わかりました。  そこで、これはルーブル合意に基づいても、やっぱり日銀も相当介入してきたと思うんですが、そこら辺の状況は現在どうなっておりますか。
  144. 青木昭

    参考人(青木昭君) 市場の状況がなり今のところ不安定でございまして、円高のテンポも速いということでございますから、私ども市場の状況に応じまして粘り強く、かつ精力的に介入を行っておるわけでございます。どういうふうなレベルをめどとして介入をするというよりは、むしろ少しでも早く相場を安定させたいという気持ちで対応をしておるわけでございます。
  145. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 これは日銀と大臣にお伺いしておきたいんですが、最近のいろんな状況から見て、日銀も相当介入していると私は思うんです。数字ははっきり言わないにしても、それはもう我々予想できるところであります。そうしますと、これは介入が多ければ多いほど、いわゆる過剰流動性といいましょうか、インフレの心配もあるわけでございますが、そういう点についてはこれはどういうふうにお考えになっていらっしゃるか、これもお伺いしておきたいと思います。
  146. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) まず、私の方からお答え申し上げます。  確かに介入ということでそれだけの円が出るわけでございますが、それについては日本銀行もオペレーションなどでいろいろ苦心をして対応していただいておるわけであります。ただしかし、いわゆるマネーサプライというものはどうしてもかなり高い、二けたでございますから、これは決して低いとは申せない、そういう事実がございます。  ただ、他方で幸いなことに、我が国はかなり長いこといわばデフレのような状態が続いておりましたから、今日我が国の企業、殊に製造業はかなりの供給余力を持っておる。また、自由化になりまして、近隣諸国からも必要な資材等々は、入り用な物がかなり、それも安い値段で入ってくるといったようなことがございますから、我が国の経済がインフレに向かっていくような兆候は、私は見られないと思っております。物価水準でもそれは明らかになっておるところでございますから、それはないと思います。ただ、そのような過剰流動性が例えば土地であるとかあるいは株式であるとかというところへ向かっておるという事実は恐らく否定のできないところでございますし、日銀のお立場からすれば、そのような過剰流動性があるということ、マネーサプライがかなり高いということは、これは恐らく、いわば常に警戒をしておられる、私はそれはごもっともなことだと思っております。しかし、我が国経済がインフレの兆候を持っておるというふうには、幸いにして、私はそういうことはただいまないというふうに思っております。
  147. 青木昭

    参考人(青木昭君) 御指摘のとおり、介入をいたしますとそれだけ円がマーケットに出ていくわけでございますからマネーサプライの増加要因になる。これに対して私どもは、売りオペとかあるいは貸し出しの回収とかいうような形で、極力その不要な緩和効果といったようなものが出ないようにしておるわけでございます。  しかし、また同時に、この為替レート安定ということもありまして、長期にわたって金融緩和を続けてまいりました。こうした金融緩和の累積的な効果ということもございます。またそのほかに、最近は大口預金の条件緩和といったような金融自由化の影響もございまして、マネーサプライが随分ふえておるわけでございます。マネーサプライの対前年同月比の増加率を見てみますと、昨年末の八%台からこの十月には一一・七%ということで、かなり高いところまで来たわけでございます。  当面、物価の方は円高に伴う輸入品価格の下落というようなこともございまして、全体として落ちついておるわけでございますから、こうしたマネーサプライの増勢が直ちにインフレにつながるというふうな危険はないものというふうに思っておりますけれども、景気の拡大に伴いましてこの夏場ごろは建設資材などがかなりの値上がりをしたような経緯もございます。また、最近の地価の上昇^これは金融面だけではないと思いますけれども、金融緩和の副作用といったような側面もなきにしもあらずでございます。  今後ともマネーサプライの増加というようなものがこのインフレに、つながることがないよう、私どもとしては十分注意をしていかなければならぬというふうに思っておるわけでございます。
  148. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それでは、通産省とそれから経済企画庁にお伺いしておきたいと思います。  まず、経済企画庁は、ことしの八月だったですか、景気の回復というのを宣言しておられるわけでありますが、その中にも、円の相場が多少上昇しても景気の回復局面は動かない、そういうようなこともおっしゃっているわけであります。しかしながら、当時予想されたいわゆる相場とは相当違う情勢になっていると私は思います。そういうふうな意味で、これからの見通し並びに今後の景気の問題等含めて端的に御答弁いただきたいと思います。  それから通産省には、これはもう我が国の産業に与える影響というのは非常に大きいわけでありますが、特に円高という問題になってまいりますと、いろいろな地域でばらつきが出てくるのじゃないかという問題もあります。そして、倒産とかそういうような問題、転業の問題もいろいろあると思います。そういう点も含めまして、通産並びに経企庁の方から御答弁をいただきたいと思います。
  149. 柴崎和典

    説明員(柴崎和典君) お答え申し上げます。  ただいま、この円高が日本の経済、景気にどのような影響を及ぼすかという御質問でございます。  最近の景気の状況、御案内のとおり大変順調に全体としましては回復過程にある、かように言ってよろしいかと思います・最近発表されました七月-九月の短期のGNPの速報でございますが、前期比二%、あるいは年率八・四%、これは瞬間風速でございますが、かような回復あるいは拡大過程にあると申し上げてよろしいかと思います。  この円高がどのような影響を与えるか、これは大変難しい問題でございます。先ほど先生おっしゃったころの円高というのは今ほど進んでいなかったということもございます。一方で、企業の円高への対応力、かなりついてきておる、大変な血のにじむような努力を経てその辺の対応が進んでおるということは一方であろうかと思いますけれども、他方、大変円高が進めば企業の対応力の限界も超えますし、あるいは中小企業の問題、産地の問題、地域の問題、このようなことを考えますと大変厳しい状況にあるということはまことに御指摘のとおりだろうと思います。  なお、今後の、特に来年度の見通しがどうかというようなことにつきましては、目下政府部内で検討を進めておるところでございます。
  150. 江崎格

    説明員(江崎格君) 最近の為替相場の変動でございますが、国内の景気が現在回復局面にございますので、全体としては一昨年秋のプラザ合意以降の急激な円高局面に見られましたような事態と比べますと、影響は緩和されているというふうには見ておりますけれども、円高のスピードが大変急激でございますので、景気の回復に水を差すのではないかということを心配しておるわけでございます。  特に、現在上昇傾向にございます企業の設備投資などに悪影響が出るのではないかということを心配しておりますし、また先生指摘の中小企業、輸出型の産地ですとかあるいは企業城下町といったところの景況でございますが、かねてからこういうところの業績がはかばかしくないわけでございまして、そこに今回のようなまた急激な円高ということで追い打ちをかけるような事態にもなりかねないということで心配をしております。それから、企業の合理化ということも今後さらに一層進められるということでございますので、地域の経済とかあるいは雇用への影響ということを心配しておる状況でございます。  それから、こうした事態に対する対応でございますけれども、これまでも産業構造転換円滑化臨時措置法ですとか、あるいはその他法律に基づきまして、各種の事業転換対策とか、あるいは地域活性化対策あるいは雇用対策あるいは金融面での支援というようなことを中心にしました中小企業対策といったようなことを行ってまいりました。また、この五月に円高不況に対処するために決定されました緊急経済対策、この中におきましても、公共投資の拡大ということだけではなくて、設備投資減税とかあるいは各種の政策金利の引き下げといったようなことを柱にしました中小企業対策を講じてきたわけでございますし、また産業構造転換円滑化臨時措置法などの地域の指定というようなのも追加をしたり、あるいはNTT株の売却益の活用といったようなことも考えてまいったわけでございます。  これからも当省としましては、円高デフレ効果を回避して、産業、地域経済の振興を図っていくということのために、従来の各種の施策の活用ということに加えまして、地域の活性化あるいは技術の開発あるいは内需型産業の育成といったような施策をさらに充実していくように努力してまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  151. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それでは、もう時間がありませんので、ちょっとはしょって質問したいと思います。  円高差益の還元の問題であります。  これは、特にこの二年間で大変な月高になっているわけでございまして、差益の還元をするということについては政府もいろんな意味努力をされているのはよくわかります。特に電気、ガス等の問題を含めまして相当やっておりますが、実際問題としては、先日総理府が行いました国民生活に関する世論調査というのがあるんですけれども、この世論調査によりましても、実際問題として、円高で利益を受けたあるいはその還元をされておるというふうに思っている人たちというのは非常に少なくて、八・七%の人たちなんです。  そこで、何でこういうことになるのかということをいろいろと調べてみますと、はっきりしておりますのが政府のいわゆる価格支持制度、これがやっぱり大きな問題ではないかな、こう思っております。農産物の価格支持制度、特に麦とか牛肉ですね、こういうようなものの差益が食管会計やあるいは畜産振興事業団に滞留して、そこら辺がちゃんとしない限り消費者に還元されない。これは新聞報道の中にもあるわけです。  それで、差益の還元はなお不十分ということで、どういうふうなものが一番円高で、六十年の九月と六十二年の九月、この約二年間の物価の値下がり状況、還元の状況等いろんな角度から比較をしているわけでありますが、一番値下がりしたものからずっと順番に書いておりまして、二十番目まであるわけです。一番上の方から読みますと、レモンとかマグロとかブロイラー、クッキー、スコッチ、バナナ、そういうようなものが大体安くなったものであります。そして、一番安くなっていない方から逆に読んでみますと、豚肉、小麦粉というように、もう豚肉のところなんかは一%しか安くなっていない、小麦粉は二%というように、やっぱりそこら辺のところが問題じゃないかなと私は思うんです。ここら辺のところは非常に大変な問題だと思うんですが、本当は通産大臣と農水大臣といらっしゃればいいんですけれども、いらっしゃいませんので、きょうは副総理としての宮澤大蔵大臣に、特に新しい内閣としての円高に対する取り組みと、それから政府の価格支持制度に対するいわゆるお考えと、この二点をお答えいただきたいと思います。
  152. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) これは、御指摘のように、農水大臣あるいは通産大臣がお答えになるべきことでございますし、私はまた総理大臣にかわってそのような政策を政府全体の立場として申し上げる立場にはございませんのですけれども、両大臣がおられませんので、考えてみますと、殊に農産物についてさようでございますが、そのような政策を今日までとってまいりましたことには、それなりに国内の生産を保護しなければならないそれだけの理由がある。殊にまた、天候によってそれが左右されるということもございますから、そのような理由に基づくものであったということであろうと思います。  ただ、いつまでもそれが大きな幅で行われてよいものかどうかということにつきましては、農政審議会が昨年の暮れでございましたか、報告を出しておられまして、農業の生産性向上分はやはり価格への的確な反映が必要であって、それを通じて内外価格差の縮小を図って国民の納得のいく価格で食糧供給を行う必要がある。これはやはり基本的には政府はこの方針に従って、将来この方向で施策を進めていくということに私は変わりはないであろうと存じます。  ただ、そういう制度が現在残って作用をしておりますから、その限りにおいて、峯山委員の言われますように、円高差益がそのまま例えば西ドイツにおけるようにストレートに消費者に反映していないということは、これは殊に農産物において事実であるということは認めざるを得ませんが、政府といたしましては、国内の生産性の向上をなるべく的確に価格を通じて内外価格差の縮小を図っていくという、そういう政策目的を持っておりますことは、これは申し上げることができると存じます。
  153. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それでは次に、全く視点を変えまして、たばこと健康の問題についてお伺いをしたいと思います。  大臣もお読みになっていらっしゃったと思いますけれども、先日厚生省がたばこと健康問題に関する報告書というのをつくって発表になっておられます。私の手元にもあるわけでございますが、ごっつい厚い本でございまして、これまた全部は私は読んでおりませんけれども、要するに早く言うと、たばこは害があるからのんじゃいかぬ、こう言っておる感じの本でございます。  そこで大臣、それはまとめたものにもあるんですが、たばこの製造量はここ十年間ほぼ同一の約三千億本、一人当たりの紙巻きたばこ年間消費量は、昭和五十年以降一人平均約二千六百本でほぼ一定している。それで、昭和六十年度の国のたばこ消費税が八千八百三十七億円、一般会計の歳入の一・六%を占めておる。地方たばこ消費税は八千六百四十五億円で、地方歳入の一・五%を占めております。また、六十一年度はさらにふえまして九千七百九十二億円、そういうふうに地方税の方も一千億円の増収が見込まれているということで、これは両方合わせますと約二兆円近く、大変な状況にあるわけであります。  と同時に、最近は大臣も御存じのとおり、十一月の初めに喫煙と健康世界会議というのが開かれたわけでございますが、その新聞報道記事も実は私の手元に届いております。きょうは先ほどから同本たばこ会社の社長さんもお見えになって、葉たばこについて質問がございましたが、大蔵省からいいますと、これはたばこに大変お世話になっているわけであります。そういう点からいきますと、大蔵省は、たばこと健康という問題についてどういうふうにお考えなのか、お伺いしたいと思います。
  154. 宮島壯太

    説明員(宮島壯太君) お答えを申し上げます。  峯山委員指摘のとおり、先般厚生省公衆衛生審議会より「喫煙と健康問題に関する報告書」が出されました。私ども大蔵省といたしましても、喫煙と健康問題につきましては深い関心を持っておりまして、この報告書につきまして厚生省の考え方も聞きながら、内部で現在検討しているところでございます。  大蔵省といたしましては、本問題の重要性にかんがみまして、紙巻きたばこの包装に「健康のため吸いすぎに注意しましょう」との注意表示を義務づけているほか、たばこ事業法第四十条の規定の趣旨に沿いまして、現在業界において行われている広告、宣伝についての自主規制の実効を上げるための業界指導、あるいは未成年者喫煙防止対策に関連した小売店指導等を行ってきたところでございます。  言うまでもなく、たばこ消費税は大変貴重な財源となっております。一方、喫煙問題は社会的に大変関心を持たれている問題でもございますので、種々の観点から喫煙と健康問題等につきまして大蔵省としても引き続き検討を重ねていきたいと、このように考えております。
  155. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 大蔵省としては、特に喫煙と健康という問題は、私は非常に大事な問題だと思うんです。これは、厚生省は今までいろいろなことをやってきたと思うんですが、大蔵省としてはどういう対策をとってこられたのか、概要で結構ですから一遍教えてください。
  156. 宮島壯太

    説明員(宮島壯太君) 先ほども申し上げましたように、未成年者対策、これにつきまして小売店指導をいたしました。また、紙巻きたばこの包装に注意表示を義務づけますほか、広告、宣伝につきまして自主規制の実効を上げるための業界指導等を行ってきたところでございます。
  157. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 私は、実はこの報告書をずっと読んでみますと、この報告書の中に「わが国における規制措置等」ということで相当詳しく書いてあるわけだ。  これは一番初めに未成年者喫煙禁止法という、こんな法律あるとは私は知りませんでして、実はこれ読んで初めて知ったんですけれども、これは明治三十三年法律第三十三号で、古い法律なんです、これ実際ね。それから始まりまして、たばこに関するいろんなことがいっぱい書いてある。これによりますと、鉄道営業法が明治三十三年、消防法が昭和二十三年、それから先ほどお話ございました「吸いすぎに注意しましょう」というのが、たばこ事業法で昭和五十九年ですとか、いろいろ広告の規制もありまして、それ以外にも都道府県知事に対する通知として、「児童の喫煙禁止に関する啓発指導の強化について」とか「喫煙の健康に及ぼす害について」とか「喫煙場所の制限について」とか「喫煙と健康の問題に関する衛生教育について」とか、とにかくようけ書いてありますね。  そこで大臣、私はこれは大臣にもこの点をちゃんとしたいと思ってきょう質問しているわけでありますが、要するにこういうふうな報告書を書いた皆さん方というのはほとんどお医者さんです。それで、確かにたばこそのものは害があるというふうにわかっていたら、たばこをやめたらいいんです。早う言うたら、なくなりゃいいわけですよ。ところが、そういうわけにもやっぱりいかぬというところもあるわけです。  私は、そういうような意味では、大臣の諮問機関の中にたばこ事業等審議会というのがあるわけですから、やっぱり大蔵省大蔵省として、この間のWHOの会議もありましたし、あるいは厚生省のこういうような報告書もあるわけですから、こういう問題と絡み合わせて、実際将来の健康と喫煙という問題も含めまして、国のあり方としてこういう問題について大蔵省としても本気になって取り組む必要があるのじゃないかなということを私は感じておりまして、そういうふうな意味で御所見のほどをお伺いしておきたいと思います。
  158. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 御指摘のように世界会議もございましたし、厚生省からの喫煙と健康問題に関する専門家による報告書もございまして、厚生省の考え方もよく聞きながら内部で強勉をするようにといって、私ども勉強をしてもらっております。その勉強のいかんによりまして、おっしゃいますように必要があれば、たばこ事業等審議会にも議論をしていただくことが有用かもしれない、ただいまその辺のところを含めまして勉強をいたしておるところでございます。
  159. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 もう時間がなくなりましたので、あと一点だけお伺いして終わりたいと思います。  これは竹下総理がいわゆる政権構想の中で、一省庁一機関の地方分散というお話がありました。この問題について政府部内で検討していらっしゃると私は思いますが、これは来年度の予算編成ともかかわり合いがあるわけでありますが、確かに東京にいろんな面で集中しておる、最近の地価問題等を含めてもそういうことになっている、そういうことを踏まえて総理はおっしゃったんだと私は思います。したがいまして、私どももその点については、これは賛成なんでありますが、実際問題として総論はそういうことでやらにゃいかぬというのはわかるんですけれども、各論になると、これはもう実際問題いろんな問題が出てくるというのもわかります。  そこで、この問題については実現が不可能だという人もおりますし、総理の打ち上げたことだから何とか格好つくようにせにゃいかぬという人もいるし、いろいろいるわけであります。しかしながら、やっぱり来年度の予算編成の中でこういうふうなものをどういうふうに検討していくかということは、私は大変大事な問題だと思います。  そういうような意味で、大蔵省としてはこの問題についてどういうふうに取り組もうとされていらっしゃるのか、この点についてお伺いしておきたいと思います。
  160. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 東京圏へのいろいろな機能が過度に集中することは好ましくないということは、もう一般に常識的になってまいりましたし、四全総でも政府機関の移転、再配置等を検討すべきであるということを申しております。また、政府の土地対策閣僚会議でもこれは検討課題になっておりまして、ただいまのところ国土庁ではございますけれども、やはりこれは内閣官房が中に入りませんと、各省庁を動かすためには内閣官房が入りました方が推進しやすいということはあろうと思いますので、やがて内閣官房が国土庁と一緒になって、中心でこれを推進して検討していくことになろうかと存じます。  ただその場合、予算編成はもう大変目前に迫っておりますところで、現実にこれから数日の間にどこかの移転ということを決められるものではございませんから、予算編成におきましては、もし要すれば、この問題に必要な調査のための費用とか、あるいは審議会になりますでしょうか、どうなりますでしょうか、何かそういうことの関連の費目を置いておくことが有用であれば考えたい。現実に今この移転があって、これの予算化ということはもとより今数日で可能だとは思いませんが、何かそういうことに備えての準備は必要ならばしておこうかと考えております。
  161. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 私もまず、峯山委員からもありました最近の異常円高問題について質問をいたします。  何しろ一昨日、昨日と一ドル百二十七円台に突入をし、終わり値百二十六月台にも入ったと伝えられるわけでありますが、とにかく大蔵大臣、あなたが大臣になられてからも事態はエスカレートする一方であります。こうした状況が続けば、一月の竹下総理訪米に当たってあなたも同行し、アメリカと強力に協議をしてくるということを検討されますか。
  162. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 急激に円高がまた進行しておりまして、これは残念なことと思っておりますが、しかしこれについての対処は基本的にルーブル合意で決まっておりまして、各国がルーブル合意で定められたところを行っていくということが大事なことでございます。ただいま待たれておりますのはアメリカの財政赤字削減の具体化でございますが、これは恐らくもう間もなく終局的な結論に達するだろうと、こう思っておりますので、特に私が年が明けまして訪米をして云々ということは考えておりません。
  163. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 大蔵大臣は今までもしばしば、まあそのうちに落ちつくだろうというふうに言われながら、事態はもう数字が示すごとくエスカレートする一方だというこの繰り返しになっているわけでありますけれども、この新総理誕生に伴う儀式的な訪米ではなくて、そういうせっかくの機会であれば、緊急に解決を必要とする日米間の懸案問題の打開のために直接協議を行ってくるということが当然あってしかるべきであります。  副総理という立場の宮澤さんにお願いをしたいわけでありますけれども、日本政府として今度こそ、アメリカ赤字、ドル安の根本原因の一つ、軍事費の削減を強力に申し入れをしてくるべきではないかというふうに思いますが、どうでしょうか。
  164. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 米国が財政赤字を削減することがやはりドルの安定強化のためには必要であると考えております点では、私も佐藤委員のお考えと変わっておりません。  ただ、どのようにして財政赤字を削減するかということはおのおのその国の主権に属することでございますし、その国なりの考えもあろうと思いますから、こちらから何をどうしろというふうに言うべきものではないだろうと思います。
  165. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 そのような態度が、いわば内政干渉にかかわるようなことは避けるべきだという、そういう態度が今日の異常円高を進行させてきた、とにかく双子の赤字と言われるその中の重要な一つでありますから、その問題の解決を図らずして今日の円高問題の是正の方向に進むはずがない。この点で、ヨーロッパ首脳の例えばイギリス、西ドイツなどの首脳のとっておる態度と比べてみても、日本政府の態度というのは私は非常に甘いと思うのであります。こうした点で、異常円高是正のために方策はいろいろあろうかと思いますけれども、ぜひこの積極的な方策をさらに一段と強めるというこの必要は御同感でしょうね。
  166. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 竹下首相が誕生いたしました間もなくのことでございましたが、レーガン大統領のこれはたしか就任のお祝いの言葉でございましたかと思いますが、それに返書を出しました際に、アメリカのドルの安定化のための施策について大統領の考慮を要請されたといったようなことが現実にございました。また私も、相手であります財務長官には、そのようなことをしょっちゅう私どもの考えとして要請をいたしておりまして、それは先方もよく承知のことでございます。  問題は、どこの国にもいろいろな事情がございましょうけれども、やはり政府と議会、選挙といったようなことがいろいろ出てまいりますと、なかなか一人の人が思うようにすべてのことがいかないというのは、これはお互いに理解のできることでございますから、アメリカ政府が最善を尽くしてくれる、またそれを要請しておるということでございます。
  167. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 ところで、我が国の軍事費問題であります。  明年度の予算編成も大詰めを迎えていますが、来年も防衛費が異常膨張するのかどうか、国民は注目をしています。大蔵大臣としては、INF全廃の世界の大勢、そういうものに沿って防衛費を聖域とはせず、削るべきものは削るということで厳しく査定をする、こういうことで臨まれるんでしょうね。
  168. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) さように考えております。
  169. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 そこで、来年度の防衛費について削減すべき、また削減できる幾つかの要因が現在あると思います。  その一つは、いわゆる六十三年度概算要求、これは一ドル百四十五円を前提にして算定をしたわけでありますけれども、夏以降円高は加速しており、輸入代金は大幅に節減ができる。二つ目に、退職者が少なく、国家公務員給与の引き上げ幅も低かったので人件費の伸びが少ない。三つ日に、六十二年度予算には売上税負担分九十三億円が含まれていたけれども、六十三年度は不要だ。こうした事情について、大蔵大臣としてはよく念頭に置いて査定に臨むということでありましょうね。
  170. 寺村信行

    説明員(寺村信行君) 六十三年度の防衛関係費につきましては、今後の予算編成過程におきまして調整されるべきものでございますが、厳しい財政事情のもとでございます。ただいまいろいろ御指摘をいただきました点も考慮しまして、極力経費の節減合理化を図りまして、国の他の諸施策との調和を図りつつ節度ある防衛力の整備に必要な経費を計上するよう調整をしてまいりたいと考えております。
  171. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 大臣も同意見でしょうね。
  172. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) さようでございます。
  173. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 来年度の防衛予算について、イージス艦の導入が目玉となっております。この危険性については先日の臨時国会における予算委員会で我が党の神谷議員も指摘したところでありますけれども、中期防衛力整備計画、ここではイージス艦については検討課題ということにとどまっているものを、導入に踏み切っていくという方向が事実上前提であるかのごとく事が進んでいるということは非常に重大だと思うわけであります。大臣としては、この問題についてもそういった中期防に照らして毅然たる対処をするということで臨んでもらいたいと思うわけでありますが、一いや、あなたじゃなくて大臣に、もう時間短いから大臣答えてください。
  174. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 私と委員長おっしゃいましても、実は私はまだ予算の中身を見ておりませんものですから、むしろ政府委員がお答えした方がいいと思ったのでございますが、それらの問題は、多分今安全保障会議でこれからの洋上防空をどうするかということの審議の対象になっておるという、そういう段階であろうと思います。
  175. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 だからこそ、あたかももう導入が当然だというがごとき最近の防衛庁を中心にした政府側の動き、これに対しては厳しく臨んでもらう必要があるということを強調しておきたいと思います。  大型間接税問題でありますが、先日、日曜日のNHKの政治討論会で渡部自民党国対委員長や小沢官房副長官は、明後年は参議院選挙もあり、したがって来年の夏ないし秋までに大型間接税問題の結論を出すよう税調などで検討中だと、こういう発言をしているわけでありますけれども大蔵大臣、あなたも同意見ですか。
  176. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 今度私どもが一番注意いたさなければなりませんのは、いわゆる予断を持たずに、どういう案なら国民がまあまあやむを得ないとして認めていただけるかという、そういう国民的な議論というものをできるだけ長いこと時間をかけてやっていただきたい、こういうことがこの際一番大事なことであると思っております。  したがって、そういう観点からは、いつというようなことをがんじがらめに決めますと、結局そのような目的を十分に達しないことになる心配がございますから、ただいま申しましたことに一番の重点を置いてこれから進んでまいりたいと思いまして、政府の税制調査会にもお願いをし、私どもの党の税制調査会でもそういうことでお願いをしようと思っておるわけでございます。  せんだって政府・与党でいわば雑談をいたしましたときに、そうは申しても、やはりこういうことには一つの時間というものもあるので、例えば来年の秋ごろどうであろうかというような議論もあったわけでございます。あったわけでございますが、まずしかし、そういう今申しましたような、まあまあ国民的に受容できるような案がそれまでに浮かび上がってくるかということ、次にこれは国会で御審議を願うことでございますから、それらを考えますと、私どもが先に秋にはということを申し上げるのは、実は僭越なことでありまして、私どもの内部での、あるいは政府・与党の間での一つの時期としてそういうことを言っておる者もあるのでございますが、こちらからどうしてもということは事の性質上申し上げられる問題ではなかろうかと存じます。
  177. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 大蔵大臣ないし副総理としての宮澤さんとしては、そういう予断を持たずに国民的世論の成熟を見る、こういった点で、来年の夏ないし秋までにという出口を初めから決めていろいろ検討をやっていくというやり方はとらないというふうにおっしゃったというふうに今の答弁を受け取ります。  それは当然でありまして、去年の同時選挙のあの公約違反ということで大騒動になった、ああいう初めから出口と結論を決めてやるというやり方はそれの繰り返しになるわけでありまして、必ずそれは国民の反撃を食って失敗をするということで、むしろ今急ぐべきは不公平税制の是正、この問題を真剣に政府としては検討することが必要なんだということを改めて申し上げておきたいというふうに思います。  そこで、次の問題でありますが、都市農業の税制に関して質問をいたします。  東京圏の地価高騰が地方にも波及をして、都市農業をまじめに営む農民の中に、農地税制の強化がやられるのじゃないかという不安が大きく広がっています。私のところにも京都の農業関係諸団体から次々と要請が参っているのでありますけれども、例えばその一つ、「東京都などの大都市を中心に地価の高騰が続き、その防止策の一つとして農地の宅地なみ課税がとりあげられようとしており、都市農家は大きな不安に駆られている。すでに明らかになりつつあるように、今回の地価高騰の原因は、農地の宅地向け供給不足によるものでなく、金余り現象と結合した土地投機が最大のものである。」と要請書に述べているわけでありますけれども、大臣もこの農民の不安はよくわかるはずだと思います。  そこで、まず農水省に確認をいたしますが、都市農業の重要性について、ちょうど一年前、六十一年十二月十六日、参議院の農水委員会、我が党の橋本議鼻の質問に対して当時の加藤六月農水大臣はこう答えられております。   私は都市農業は都市住民に対する野菜等生鮮農産物の供給ということに加えまして、緑やレクリエーション空間の提供、大気の浄化、あるいは洪水調節等環境保全の役割を果たしておるということは、これはもう国民一般よく認識されておる、こう考えております。また、都市地域には農業に意欲を持って取り組む農家が相当数存在しておるということも事実であると考えております。  こういう前農林水産大臣が述べられておるこの立場は、農林水産省として変わりませんな、今日も。
  178. 吉國隆

    説明員吉國隆君) 加藤前農水大臣が都市農業の役割についてお述べになった、ただいま先生からお話ございましたが、そういった役割についての認識というものは変わっておりません。加藤大臣はその際に、宅地等農業外の土地需要に対する供給の確保どこういった都市農業の役割というようなものをどう調和させていくかという問題があることも、これもまた一方における事実であるということをおっしゃっておられますが、都市農業の役割についての私どもの認識は先ほどのとおりでございます。
  179. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 そこで大蔵大臣、この都市農業を守るために今日税制上も特例がつくられています。その特例の一つに相続税猶予制度、すなわち二十年以上農業を継続した場合は農地にかかる相続税を猶予するというものでありますが、この制度を崩しますと、まさに都市農業と農地は大きな打撃を受けるわけであります。この制度は都市農業を守るためには今後とも維持する必要があると思われるでしょうね。
  180. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 真実農業をやる意思があり、またやっておられる、そういうことでございますれば、やはりこの制度はそういう人々のためには有用な役割を果たしておると思います。
  181. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 そこで大臣、先日来土地特別委員会でもいろいろ議論があったところでありますが、政府はとかく地価高騰の一因に土地の需給バランス論、すなわち供給の促進で地価を抑制するという、こういう論があります。しかし、一体これで東京の地価は下がったのだろうか、また地価高騰の地方波及を防止できるのだろうかというこの問題について、大臣の見解はどうでしょうか。
  182. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 我が国が経済復興に入りまして昭和三十五年ごろから後、何回か土地問題というのは政治の緊急の課題になりまして、その都度国会もいろいろお考えくださり、政府も、立法も税制もいろいろなことをいたしまして、その都度その都度真剣に対処してまいりましたけれども、結局それはやはり対症療法でございますから、なかなか問題は根治しない。根絶されていないというのは、結局はやはり需給関係というもので、これは需要の側がどんどんふえてまいるわけでございます。供給の側も高度化とか都市再開発とか造成とかいろいろいたしますが、需要の側のふえが欠きゅうございますから、やはり需給関係というのがなかなか落ちつかない。これが落ちつきませんと問題は落ちつかないだろうというふうに私はやっぱり思っております。
  183. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 これは十二月九日の土地特別委員会で、我が党の近藤忠孝議員が資料として配付をいたしましたので、大臣も目をお通しのことと思いますけれども、一体何が原因でこの土地急騰が引き起こされてきているかという事例として、例えば新宿区の西新宿八丁目の北新建設株式会社の買収土地三十六・七五坪、これが転がし転がし三回、七億円が二十九億円に、十億円が四十一億四千二百八十六万円、すなわち四・一倍に三回の転がしで急速に二年の間に上がっている。あるいは新宿区西新宿八丁目関東不動産株式会社が入手した土地、これが一年半で二十億円から百億円へ、転がしが一、二、三回、一年半で五倍に膨れている。  その他いろいろ事例挙げておりますけれども、こういう事例が端的に示しておりますように、言われるような土地の供給促進、この本音は農地の吐き出し、都市農地をつぶして大企業の事務所用地などに提供せよと、こういうふうに言わざるを得ないわけであります。この考え方を根本的に転換する必要があるのじゃないかと思うんです。三大都市圏について見た場合、この農地は今日減少の一途をたどっています。都市周辺から急激に緑が奪われてきているわけであります。しかし、かといって、それがそれならば国民に安い住宅を提供するということになっているかといえば、決してそうじゃない。少し数字的な例を挙げますと、三大都市圏の農地一九六五年八十八万ヘクタール、これが二十年間たちまして一九八五年六十二万ヘクタール、三〇%この間に都市農地が減っているわけであります。  中でも、私も調べてみて今さらのごとくびっくりしましたけれども、京都市、ここが同じ一九六五年、五千六百五十ヘクタール、これが二十年後の一九八五年、三千百七十ヘクタール、ほぼ半分に減っているわけです。私が住んでいる宇治市、京都のすぐ隣の衛星都市でありますけれども、千二百ヘクタールから五百四十九ヘクタール、これはもう半分以下、こんなふうに急速に農地の減少をしながら、それが多少とも住宅難の解消に役立っているかということでありますけれども、国土庁の六十年度調査、これで見ますと、法人所有土地の、入手した土地の造成工事などの着手率は一三%、着手予定なし、まさにもう未利用地そのままほうっておる四八%、三大都市圏の数字であります。  こういう状況にあるんですから、大企業が買い占めながら計画さえないということで未利用で放置をされておる、これを国民生活のために活用するということこそが今本当に大切な問題だ。今の数字を見て、大臣どうお考えになるでしょうか。
  184. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 供給と申しましても、都市農地だけを頭に置いて申しているわけではもとよりございませんで、もっと広い意味で供給対策、例えば交通通信でありますとか、あるいは再開発でありますとか高度利用でありますとか未利用地の活用でありますとか、もちろんその中では名前だけの都市農地もそうでございますけれども、そういったような供給全体をやはり考えて供給対策を考えていく必要があるというふうに私どもは思っているわけでございます。
  185. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 長期営農継続農地制度というものがあります。我が党は、農地に宅地並み課税をするというのは本来不当だ、本当にまじめに営々と農業を営んでおられるそういうようなところに宅地並み課税をするというようなことは間違っているという基本的立場であります。しかし、やむを得ざる措置として、現在国としても長期営農継続制度というものをつくってきているわけでありますけれども、この都市農業に仮に宅地並み課税をすればどういう税が課せられるかという実例があります。  東京は非常に重大なる事態にあることはもう言うまでもないわけでありますけれども、これも京都府農協に調査を聞いてみたのであります。京都市の場合ですと、稲十アール当たり年収十四万から十五万ぐらいのところでやっております。ここへ宅地並み課税をしますと、税が十五万五千二百十円、最高の場合ですと七十三万七千円になるということで、もうまさに農業収入を大きく超えて課税がおっかぶってくる、こういうことで宅地並み課税の不当性ということが明らかであるわけですが、今申しましたように、そのもとで一つの妥協の産物といいますか、長期営農継続制度というものが設けられたわけでありますけれども、この制度は最低必要なものというふうに政府としては判断されるのでしょうか。
  186. 前川尚美

    説明員(前川尚美君) ただいま御指摘がございましたように、三大都市圏の特定市の市街化区域におきましては、いわゆる一言で言えば宅地並み課税ということで、農地課税に対する適正化措置が講ぜられているところでございますが、一方では、これまたお話ございましたように、その農地を使って誠実に農業を行おうとする人たちの農業を継続させることも非常に必要なことであるという観点もございます。  そういうことで、長期営農継続農地制度というのが設けられておりますことは御高尚のとおりでございまして、十年間以上農業を継続しようとする意思のある方で現にその耕作をしていらっしゃる方、そういう方について一定の手続のもとにその農地制度の適用を受けることを市町村長が認定をいたしまして、そうなりますと、いわゆる宅地として課税した場合の税額のうち、農地として課税した分を上回る部分については徴収猶予をいたしておきまして、五年ごとにその営農実績等を徴しまして、果たして当初のとおり農業を誠実に行っていると認められる場合にはそこで免除をする、そうでない場合には過去にさかのぼって延滞金を付して固定資産税を徴収する、徴収猶予は取り消される、こういうことでございます。  この制度につきましてはいろいろな御議論もあるところでございますけれども、去る十月十六日の閣議決定にもございます。この長期営農継続農地制度については、運用の適正化を図るよう地方公共団体を指導する、こういうことでございまして、私どももこの閣議決定を受けまして、関係地方公共団体に対しましてその厳正な運用を図るよう通達をいたしたところでございます。  私どもといたしましては、そういうことでこの制度を引き続き厳正に運用をさしていただきたいと考えているところでございます。
  187. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 最後にもう一つ、都市農民が心配をしているあれにこの長期営農継続農地制度の認定基準の見直し問題というのが出ています。建設省から税調に一定の案が出ているわけですけれども、とんでもないものであって、周りが住宅地だとかあるいは真ん中に道路を挟んでいる、水路を挟んでいる、そういうような場合にはこの制度の適用から外せということで、こんなことでいけば都市農業というのはもう次々とつぶされてしまうということであるわけで、こういう無謀なこと、乱暴なことはやらないということで、税調との関係において、宮澤さん大いにひとつ努力をしてもらいたいと思います。
  188. 前川尚美

    説明員(前川尚美君) 先ほども申し上げましたが、この長期営農継続農地制度を含め、課税の適正化措置につきましていろいろ御議論があるところでございますし、建設省からも見直し案というものが出されているところでもございます。現在その取り扱いについていろいろ各方面でまた御論議が進んでいるところでございまして、私どももその御論議の経緯を踏まえて的確に対処をする必要があると考えておりますが、先ほども申しましたように、既に閣議決定を経まして、政府側といたしましてはそういうことで地方公共団体を指導しているということでもございます。自治省といたしましては、引き続きこの制度を厳正に運用していただくよう地方公共団体にお願いをして、その適正化を図ってまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  189. 諫山博

    諫山博君 ことしの十月十四日、西福岡税務署の岩佐統轄官と熊本署員が福岡県の志摩町芥屋漁協にやってきまして、漁協組合員四十人の全員に対して所得税の修正申告をするように申し入れています。その際、二人の税務署員は、漁協組合長に協力を求めて、全組合員について当初漁業収入、当初漁業所得、さらに漁業所得、増差額、増産税額などを記入した書類を漁協組合長に渡しました。書類の用紙は税務署の用紙です。  資料お配りしてあると思います。こういう事実がありましたか、国税庁の方から説明を求めます。
  190. 日向隆

    説明員(日向隆君) ただいま委員が御指摘の点は、西福岡税務署が行ったある漁協についての申告指導に関連したことと思われます。  同署では、漁協の組合員数名につきまして事後調査を行いましたところ、同組合員にほぼ共通の申告上の問題点があると判断されましたため、その漁協の役員会に出向きまして、組合長や他の組合役員に対し、自主的に申告内容を見直してもらえる、いわゆる業種別指導を要請したようでございます。その際、組合長から、これは当然のことかもしれませんが、組合員に対する指導のための参考となる資料、これを求められましたため、適正な申告をお願いしたいという見地から、申告を見直すための目安としての参考資料として、今委員が次々とお申し出になられました当初漁業収入、当初漁業所得、漁協から署に提出されていた所有船舶、従事員、燃料消費量等の資料をもとに試算した漁業所得、増差額、増産税額等の資料を組合長に渡したものと聞いております。資料を渡しましたのは今私が申し上げましたように組合長でございまして、聞いておりますところによりますと、組合長はその場でこれをコピーいたしまして他の組合役員六名の方に配付したというようでございます。  以上が概略私どもが把握した事柄でございますけれども、このように適正公平な課税をするため、組合長や組合役員を通じまして業種別指導お願いすることはよくあることでございますけれども、この中で各組合員が当初申告した漁業所得金額等の記載のある資料を組合長に渡したということにつきましては、私どもこれはやや問題があったのではなかったか、かように考えております。
  191. 諫山博

    諫山博君 この書面に書かれている当初漁業収入、当初漁業所得というのは本人が自主申告した収入額、所得額だと理解されますが、そのとおりですか。
  192. 日向隆

    説明員(日向隆君) ただいま委員指摘になりました当初漁業収入というのは、私どもが聞いておりますところでは、本人が当初申告した収入、当初漁業所得と申しますのは本人が当初申告した所得というふうに聞いております。
  193. 諫山博

    諫山博君 漁業所得というのは税務署が適当と推計した本人の所得額、増差額というのは税務署が適当と推計した所得の差額、増産税額というのは税務署が適当と推計した税額だと読めますが、そうでしょうか。
  194. 日向隆

    説明員(日向隆君) 今お話しになりました点につきましては、私どもの理解するところでございますと、漁業所得と申しますのは税務署が各種のデータを使いまして試算した所得である。これは先ほど私の説明の中で申し上げましたいろんな客観的なデータがございます。所有船舶とかあるいは従事員とか、ないしは燃料消費量だとか、こういったものでございます。増差額とは、当初漁業所得と今言った形で試算しました漁業所得との差額。増産税額とは、このようにして試算した漁業所得をもとに計算した税額と当初申告された税額との差額というふうに私ども理解しております。
  195. 諫山博

    諫山博君 今私が指摘した税額とか収入額、これは国民のプライバシーに属する問題であって、税務署の職員は第三者に漏らしてはならないという性質のものだと思いますが、この点の見解はどうですか。
  196. 日向隆

    説明員(日向隆君) 今委員が仰せになりましたように、私どもといたしましても、当初申告された所得等につきましてはやはり個人のプライバシーに関するものであると思っておりまして、これについては、私ども適正な申告をお願いするために、それを業種別指導お願いする中で組合長の要請に応じて資料の一部としてお渡ししたということでございますけれども、たとえそういう事情でございましても、この点については私ども守秘義務を負う税務職員として適切を欠く行為であったというふうに考えております。
  197. 諫山博

    諫山博君 この守秘義務違反を法律に照らしますと所得税法の二百四十三条違反、これは「二年以下の懲役又は三万円以下の罰金」、国家公務員法第百条一項違反、これは「一年以下の懲役又は三万円以下の罰金」、こういう法律に触れる犯罪行為だと思いますが、いかがですか。
  198. 日向隆

    説明員(日向隆君) 私は、一連の行為の中での事柄といたしまして、守秘義務を負う税務職員として適切を欠く行為であったと申し上げましたが、それではその行為の中で具体的にどの行為が守秘義務に違反するかどうかという点につきましては、今委員も仰せになりましたように、職員が守秘義務に違反するということは職務関連事項として位置づける重要な非行というふうに考えておりますので、私どもといたしましては具体的にしかも厳密に事実関係をよく念査した上で、どの行為が守秘義務に違反するかよく検討したい、こう思っております。
  199. 諫山博

    諫山博君 事が余りにも重大ですから、十二月三日、私は衆議院の正森成二議員と一緒に現地に行きました。そして、西福岡税務署長に会って事情を確かめました。署長は、こういう資料を漁協の組合長に渡したことは認められますけれども、これがやってはいけない行為だ、慎まなければならない行為だということはついに認めませんでした。反省の言葉も聞かれませんでした。とすると、西福岡税務署はこういうやり方が悪いことだと思っていないように理解されるわけです。別な面から見れば、同じようなことが繰り返される危険性さえある、私はこう思いました。この点について、大臣いかがお考えでしょうか。
  200. 日向隆

    説明員(日向隆君) ただいま個別のケースについて、私またそのケースに即しながら御説明申し上げましたが、業種別指導はいろんな機会にその必要性が判断されました場合には、私ども適正申告を実現する見地から、これはお願いしているところでございまして、こういったことをお願いするときに、ただいま委員が御指摘になりました法令その他を十分守りながら適切な指導を行うということについて今までもそれなりに気をつけてまいったところでございますけれども、この問題をさらに踏まえまして十分指導の徹底を図りたいというふうに考えております。
  201. 諫山博

    諫山博君 国税庁は、本件が所得税法とか国家公務員法に違反するかどうかについては触れられませんでした。しかし、実際に行われた行為が犯罪構成要件に該当することは極めて明白です。違法性阻却とか可罰的違法性がないとか、そういう特別な法理論が出てくるなら別ですけれども、行われた行為は明らかに違法、しかもこれは犯罪行為、そして被害者は漁協の組合員一人一人です。  私は、この際国税庁として、実はきょうは関係の組合員もこの席におられますけれども、やはり陳謝の意を表明すべきだと思うが、どうでしょう。
  202. 日向隆

    説明員(日向隆君) 先ほどから私申し上げておりますように、一連の行為の中で守秘義務を負う税務職員として適切を欠く行為があったということは、私どもといたしましても大変残念に思う次第であります。
  203. 諫山博

    諫山博君 申しわけなかったとは思いませんか。被害者がここに現に来ておられる。
  204. 日向隆

    説明員(日向隆君) 同じ言葉を繰り返して恐縮でございますが、大変遺憾なことだ、こう思っております。
  205. 諫山博

    諫山博君 なかなかお役所は申しわけありませんでしたという言葉は言いにくいようですけれども、遺憾でございますという意味を私は陳謝の言葉として理解したいと思います。  ところで、こういう問題が起こるというのも、本人の自主申告を根拠がなくて疑ってかかるからです。今度の場合は、例えば十八名の資料をお渡ししましたけれども、この中の四名は税務署の修正額がきれいに申告額の二倍です。何の根拠もなくて機械的に二倍にしております。多くの人はそれ以上あるいは三割、四割増し。これについては全く資料を示さないわけです。例えば組合員の中には自分で上ってきた魚を近くの旅館に直接小売する人とそうでない人があります。当然これによって収入は違うはずですけれども、そういう点も全く考慮されずに、一方的に独断的に修正の金額を決めていると言ってみんな怒っております。こういう問題について、自主申告の原則を尊重するという立場から考え直さなければならないと思いますが、どうでしょう。
  206. 日向隆

    説明員(日向隆君) 当然のことながら、当初申告の重要性については私どもこれを十分受けとめて処理しているわけでございますけれども、他方、もしその当初申告に問題がありました場合には、他の申告者との関係もあり、当然修正申告を慫慂することもあるわけであります。この際、今委員が仰せられましたように、いろんな資料を使ってそれなりに合理的な計算をして処理しているわけでありまして、私が本件に即して聞いておりますところも、先ほど申し上げましたように、組合員数名の調査結果の中で把握した事柄と、それから漁協から提出されていた所有船舶、従事員、燃料消費量等、それなりに合理的な計算ができるようなものをもとに試算して一応の漁業所得というものを算出したということでございまして、そういう意味では私ども当初申告はそれなりに尊重しつつ、申告上問題がございますれば、これに対して修正なりあるいは更正なりの処置をしているところでございます。
  207. 諫山博

    諫山博君 さらに許しがたいのは、修正申告を押しつける手段として不当な民商攻撃を行っていることです。民商とすぐわかるような言い方をしながら、非協力団体に属している者は徹底的に調査する、こういう言い方をしております。これは、憲法で保障された結社の自由の原則に反するし、従来しばしば大蔵省当局が言ってきた民商に対する基本的な考え方にも違反すると思いますけれども、こういうやり方を許しているんですか。
  208. 日向隆

    説明員(日向隆君) 税務行政は、本来、適正な課税の実現を図ることを目的として公平に執行されるものでございまして、特定の団体に対し先入観念を持って行うべきでないということは、委員も仰せられたとおり、私ども国税庁といたしましても基本的には同様の考え方でございます。したがって、どのような団体に対しても私どもは中立の立場で税務行政を行っているところでございますし、また、納税者がどのような組織に所属しようと、これは納税者個人の自由であって、私どもそれに干渉する筋合いのものではないというふうに思っております。  ただ、私ども率直に申し上げまして、民主商工会の事務局員の方や会員の中には、調査の際に立ち会いということで各種の調査拒否と思われることや調査妨害に至る行為をするなど、納税非協力的な行動をする場合がございまして、このため円滑な税務行政の実施が極めて困難なる事例も見受けられるというところでございます。
  209. 穐山篤

    委員長穐山篤君) 諫山君、時間ですから整理してください。
  210. 諫山博

    諫山博君 最後に、大蔵大臣に質問します。  事実は今お聞きのとおりです。外形的な事実は国税庁認めておられをする。そして、現に四十名の被害者がいるわけです。守秘義務違反というのは、所得税法の場合は納税者が被害者だというのはもう常識だと思います。こういうことが現に行われて、まだ紛争は解決していません。大蔵大臣としてはどのようにお考えか、聞かせてください。
  211. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 今後注意いたすべきことと存じます。
  212. 穐山篤

    委員長穐山篤君) 諌山君、時間ですから整理してください。
  213. 諫山博

    諫山博君 注意していただくのは当然ですけれども、反省をするという言葉は大臣から聞けませんか。
  214. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 先ほど国税庁の責任者が申し上げたとおりであります。
  215. 諫山博

    諫山博君 終わります。
  216. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 きょうは大蔵大臣に二問ほど質問したいと思います。  一つは、国際交流に対する寄附金の免税の問題でございます。  国と国との間の友好関係を増進する場合に、人間の交流あるいは文化交流が非常に大事であるということは言うまでもないだろうと思います。文化交流を伴わない経済交流だけが突出しますといろんな摩擦を生み出してくる。現在、竹下総理大臣、フィリピンに行っておられてASEAN首脳会議に出席しておられますけれども、その席でも、単に資金還流だけでなしに、ASEAN諸国との文化交流を強調しておられました。こういった文化交流は国が力を尽くすべきであるということは言うまでもございません。しかし、単に政府に任せきりで、そういうふうなことは政府のやることでおれたちは知らぬというふうに国民が考えたのでは、これは本当の交流にはならないので、やはり個人なり民間の企業なりがしかるべき金を寄附して官民一体となって交流を進めていくことが必要ではないか。その交流を促進するために何らかの免税の特典を与えるということが、私はやはりそれを促進していく上において重要な働きをするだろうと思います。その点から、個人及び法人の国際交流に関する寄附の免税の問題について質問したいと思います。  法人税法三十七条、所得税法七十八条は、寄附金の所得控除を受ける公益法人を定めていて、それを受けた所得税法施行令二百十七条の中には、特定寄附金の控除を受けられる資格のある団体が列挙されております。ところが、その条文の中には国際交流を目的とする団体という言葉がないわけです。したがいまして、国際的な人物交流を目的とした団体に寄附をした場合においても、そういう言葉がないために免税の特典が受けられない。例えば私の知っている団体で日本国際交流センターというのがありまして、これは日本とアメリカの間の人物交流なんかにかなり努力している団体でありますけれども、そういうふうな人物交流、国際交流を主たる仕事としている団体は免税の特典を受けられないと思うんですけれども、これだけ国際交流が非常に強調されているときにこれが免税の恩恵を受けられないということは、私は不合理ではないかと思うんです。どういう理由でこれが入ってないのか、お答え願いたいと思います。
  217. 瀧島義光

    説明員(瀧島義光君) 委員の御指摘は、個人の寄附でございますね。
  218. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 法人の場合も。  ここに列挙してありますね。所得税法施行令二百十七条の一項二号の先にイロハニホヘトというふうにずっと書いてありますね。この中に例えば「科学技術に関する試験研究を主たる目的とする法人」であるとか、学生もしくは生徒に対する奨学金ですね、学資の支給あるいは貸与をする団体であるとか、あるいはそういった寄宿舎を運営する団体であるとか、そういうのがたくさん列挙してありますけれども、この中に国際交流を目的とする団体というのは全然書いていないですね。
  219. 瀧島義光

    説明員(瀧島義光君) お答え申し上げます。  寄附金に対する課税上の取り扱いは、寄附をする人が法人であるか個人であるかによってちょっと変わっております。  まず法人の場合でございますと、その寄附の対象、内容いかんにかかわらず、その法人の所得の二・五%と資本金の〇・二五%を足して二で割った金額、その範囲内ではこの国際交流であろうと何であろうと全部損金には認められるわけです。ところが、個人の場合には、今委員指摘になりましたように、国、地方公共団体あるいは今の条文にあります、試験研究法人と税法上言っておりますけれども、そうしたものに該当する法人に対する寄附、あるいは大蔵大臣が個別に告示で指定した法人に対する寄附、これに限って所得税の計算に際して控除が認められるということになっているわけでございます。したがって、個人の場合に、国際交流のための法人に寄附をした場合、寄附金控除の対象にならないのではないかという問題が出てくるわけでございます。  確かに御指摘のような問題が若干ございますが、現在、国際交流基金それから開発途上国に対する経済協力を主たる目的とする法人というのが、例えば今ごらんになっておられますところの二百十七条ですと、この一号の中に「国際交流基金」というのが書いてございますが、それと二号のルでございますね、「開発途上にある海外の地域に対する経済協力を主たる目的とする法人」と、こう書いてございますから、こうした法人に対する寄附であれば、現在でも個人についても寄附金控除が適用になるということでございます。ただ、この書き方が限定的なので、委員指摘のようなケースあるいは外れる場合が出てくると思います。  問題意識は我々十分持っておりまして、いろいろ勉強しているわけでございますが、国際交流という概念といっても非常に広うございまして、どのようなものが税をまける、そういうことについて国民の合意が得られるかということについての縛り、これが非常に難しゅうございまして、まだ結論が出ていないという段階にあるわけでございます。
  220. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 国際交流基金のことを言われましたけれども、国際交流に用途を指定して寄附する場合、その場合に例えば国際交流基金がアメリカのハーバード大学ならハーバード大学に日本研究のために資金を寄附する、これはできるんです。ところが、日本の私立大学に外国から学者を呼んでシンポジウムをやりたい、そういうふうなことに対する寄附はできないんです。
  221. 瀧島義光

    説明員(瀧島義光君) お答えいたします。  それは、国際交流基金の業務がその交流基金の中の規則で限定されておりまして、「交付対象者は、原則として海外における大学、研究所等の公的機関及びこれに準ずる機関とする。」と、こう書いてありますので、国際交流機関から国内の団体に交付される場合には確かにそういう道がないわけでございます。  この問題、実は非常に難しい問題でございますが、うまく公益的な見地から絞りができるかどうか。つまり、国際交流に関する団体全部が寄附金控除の対象になるというと、ちょっと広くなり過ぎる。どうやってそれがうまく絞れるかということについての問題意識は私ども持っておりまして、鋭意検討中なのでございます。
  222. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 それは、かつては国際シンポジウムなんかやるときは大体外国から招待を受けて行くのが、一九五〇年代、六十年代はそうだったと思うんです。しかし、現在はむしろ日本が金を出して外国の学者を呼んでそのシンポジウムをやる。それをしなければいけない時期なんです。寄附のもとは日本人ですよ。ところが、それを外国に寄附して外国がやる場合には免税の特典を受けられるというのに、例えば日本の私立大学がそれをやろうという場合に受けられないというのはおかしいじゃないか。
  223. 瀧島義光

    説明員(瀧島義光君) 同じ御答弁で恐縮でございますが、国際交流につきましては、御指摘のような問題を含め、寄附金の取り扱い上いろいろ問題があるということは私ども十分意識しておりまして、鋭意検討中ということだけこの席で申し上げさせていただきたいと存じます。
  224. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 先ほど個人と法人と違うと言われましたけれども、今私が言っているのは、寄附を受ける団体のことを言っているんですよ。寄附をする方が法人であるか個人であるかということを言っているのじゃなしに、今言った受ける団体、その団体についてはこの所得税法施行令、それから法人税法施行令、全く同じ規定なんです。
  225. 瀧島義光

    説明員(瀧島義光君) 私の御説明が舌足らずであったかと思いますが、寄附金を受ける団体、この団体は寄附を受けていい、この団体は受けてはいけない、そういう制約は一切ございません。問題は寄附金を出す方の個人、法人でございまして、寄附をしたときに税金が安くなるかならないか、そこにあるわけでございます。  法人につきましては、先ほど申し上げました範囲内で寄附の使途いかんを問わず全部損金経理が認められているということでございます。  個人については出した先についての縛りが法人より強いものでございますから、御指摘のような問題が時に出てき得るということでございます。
  226. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 一般寄附金のことを言っているのじゃなしに、法人の場合でも、試験研究法人に対する寄附金の場合、特別の恩典がありますね。私はそのことを言っているんです。
  227. 瀧島義光

    説明員(瀧島義光君) お話が寄附金制度の全般に広がってまいりましたが、法人の寄附金の枠は、原則として、先ほど申し上げたとおりであります。そのほかに試験研究法人に対する寄附金という制度がございまして、ある特定の言ってみれば優良団体に対する寄附につきましてはさっきの枠と同じ枠が別に設けられておりまして、したがってそういう団体に対する寄附をする限りにおいては損金に算入できる、天井が高くなっているわけでございます。  そのほかに、さらに申し上げれば、ここに大蔵大臣がおられますが、大蔵大臣が個別に指定した寄附につきましては、その額のいかんを問わず全額法人の損金経理の対象になるという、この三段階になっているわけでございます。法人につきまして、さっき申し上げました一般の寄附の限度、これについてどのくらいの寄附が実際に行われているのか、これを税務統計をもとにして計算をいたしますと、半分も枠が使われていないという状況にあるわけでございます。ただし、だからといってこういう国際交流について全く勉強しなくていいのかというと、そうではなくて、私ども十分問題意識を持ちまして、法人につきましてもこの寄附の試験研究法人の中にうまい絞りがあれば入れられるのだがなという観点から鋭意勉強しているわけでございますが、問題が非常に広範囲で絞りが難しいものですから、結論がまだ出ていないという状況でございます。
  228. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 つまり、試験研究法人の場合には大蔵大臣が認定して、これはいい、これは悪いということを決められるときに、その縛りが非常に厳格になる場合ともう少し寛大にしていいのじゃないかと思われる場合とがあるわけで、それで国際交流といっても自然科学の場合なんかは比較的出やすいというふうな話を聞いたんですけれども、先ほど言ったような例で、一般的には非常に難しいということを申し上げて、それはぜひ研究していただきたい。  それから、それに関連して、これは国際交流に限らないんですけれども、特定の恩典の受けられるそれは、今申しましたようにイロハニホとずっと列挙してある。それで、その中のイに、「科学技術に関する試験研究を主たる目的とする法人」、これは特典を受けられるわけですね。その中に括弧して「(自然科学に係るものに限る。以下この号において同じ。)」というふうになっている。私は、人文科学、社会科学を研究したのだけれども、その点で非常に不公平だと思うんです。なぜ自然科学だけに限ってあるのか。
  229. 瀧島義光

    説明員(瀧島義光君) 人文学者でおられる関先生にそういう御質問を受けると私も大変つろうございますが、これは経緯的に申し上げますと、我が国において科学技術を大いに振興して、単に諸外国における技術の導入を図るということだけでなくて、日本自身の自前の技術、こういったものを大いに開発していく、自然科学の発展を期すということ、そこに何か政策の力点が行われた。すべてについて同じような政策努力をいたしますと拡散してしまうので、とりあえず非常に緊急性があると認められた分野に重点を置くということが一つあったと思います。  それからもう一つはお金のかかり方でございまして、自然科学の場合には何かとお金がかかるということもこういった規定の背後にあった考え方ではないかと思われます。
  230. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 確かに自然科学の方がお金がかかることは私も認めます。しかし、国の政策が余り自然科学偏重だ、もしそういうふうなことであれば、私は非常に偏った人間ができてくると思う。確かに日本は科学技術の点じゃすぐれていますけれども、例えば国際理解という点については、私は決してほかの国に、先進国に伍し得るとは思わない。非常におくれているのじゃないか。いろいろ人種差別的な発言なんかをする大臣なんかいましたけれども、そういうふうなことが出てくるということも、こういった自然科学偏重というふうなところから出てくるのじゃないかと思います。それで、やはりぜひそういったふうな問題も入れてもらいたい。特にこれから国際関係ですね。  中曽根前総理は平和戦略研究センターというふうなものをつくられるらしいんですけれども、その団体をつくられてもこの規定のままでは、民間から寄附を集めようとしてもなかなか集まりにくいんじゃないですか。
  231. 瀧島義光

    説明員(瀧島義光君) 人文科学の分野につきましては全く試験研究法人の対象になっていないというわけではなくて、日本育英会から奨学金をもらいますが、卒業後、文部省が指定したある団体、幾つもございますが、それに就職すると奨学金を返さなくてもいいという制度がございます。そうした機関につきましては試験研究法人等になれるという道は開かれているわけでございます。  人文科学の分野というのは本当に範囲が広範でございまして、この問題については委員指摘のような問題意識を実は私ども持っておりますが、対象が本当に千差万別であるだけに、十分な検討を今後要するのではないかというふうに考えております。
  232. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 十分検討していただきたいというふうに考えます。  その問題にかかわっていると私の持ち時間がなくなってしまいますので次に移ります。  大蔵省というのは非常に忙しいたくさんの業務を抱えておられる省だと思いますので、少しでも仕事を減らして大事な仕事に集中できるようにしてあげたい、そういう親心で質問するんですけれども、現在、国家公務員の共済年金、これは大蔵省の主管になっております。大蔵省が国家公務員の共済年金を主管してきた歴史的な理由はよくわかります。しかし、かつての恩給と全く性質の違う年金制度というのが施行されている現在、これをあえて大蔵省に置いていく合理的な根拠があるかどうか、合理的な根拠があるとすれば、それをお伺いしたいと思います。
  233. 寺村信行

    説明員(寺村信行君) 国家公務員共済組合制度を大蔵省が所管している理由についてのお尋ねでございますが、ただいま委員指摘のとおり、戦前の政府職員を対象といたしました共済組合制度は、事業主の福利厚生事業の一環として発展してきた経緯がございまして、当時公務員の給与を所管していた大蔵省が共済……
  234. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 歴史的な経緯はわかっております。現在合理的な根拠があるかどうか。
  235. 寺村信行

    説明員(寺村信行君) 共済組合制度は公務員制度の一環であるとともに、他方社会保障制度としての性格も有しているものでありますために、これらの総合的な観点から従来の経緯も含め引き続き大蔵省で現在所管しておりますが、国家公務員共済組合制度のほかに共済制度が幾つかございまして、現在共済制度を所管している省庁は四省庁、大蔵、自治、農林、文部ということになっております。
  236. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 四省庁があって、農業団体の年金をなぜ国家公務員なんかと同じような共済制度にしなきゃいけないか、私はよくわからないけれども、これは別な機会に質問するとして、そういった共済組合は主として公務員、私立学校の先生も入っていますけれども公務員、そういうのと、それから国民年金あるいは厚生年金は厚生省の所管ですね。なぜこれを分けておく必要があるのか。  例えば昭和六十一年の厚生白書の中に、新しい年金制度ができてそれをいろいろ解説した資料が詳しく出ております。この中では、厚生年金と国民年金を対比してどこがどういうふうに違うか、どういう点が共通になったか、そのことは非常に詳しく書いてあるけれども、共済年金と厚生年金なり国民年金との差、これについてはほとんど触れられていないんです。国民が最も聞きたい点は、年金制度について官民の格差があるのじゃないかということが国民の聞きたい点なんです。だんだん話を聞いてみるとそんなに大して格差はないので、なければこの中にちゃんと書けば国民のそういう疑惑も晴れると思うんですけれども、書いていない。厚生省になぜ書かないのだと聞いたら、それはやっぱり大蔵省の所管ですからほかの省のことに余り介入できませんという形で書かなかったと。  私は、やっぱりそういう問題についての疑惑を避ける。また、五十九年の閣議決定、時間がないから言いませんけれども、御存じだろうと思います。昭和七十年に向けて年金の一元化を図るという閣議決定がありますね。その点から考えてみましても国家公務員の年金を大蔵省が持っている合理的な根拠もないし、厚生省にそれを譲る、そうすると自治省なんかの所管のものも全部厚生省に統合されるでしょう。そこで一元的な行政をやった方がはるかにいいのじゃないかと思うんですけれども、大臣お聞きになっておりまして、どういう御感想をお持ちでございますか。
  237. 寺村信行

    説明員(寺村信行君) ただいま御指摘のとおり、五十九年の二月の閣議決定に基づきまして、現在五省庁にわたっております公的年金制度の一元化の問題につきまして、年金問題担当大臣でございます厚生大臣のもとで関係制度間の調整に鋭意努力をしてきたところでございまして、六十一年の四月の制度改正におきまして、公的年金の一元化が特に給付面では大きく前進したものと考えているところでございます。  今後もこうした体制のもとで関係者が一体となって引き続き制度間の調整を進めてまいる必要があると思いますが、先ほど御指摘ございました五十九年二月の閣議決定でも、今後「給付と負担の両面において制度間調整を進める。これらの進展に対応して年金現業業務の一元化等の整備を推進する」とうたわれております。いずれも長い歴史的な経緯を持って、かつそれぞれの制度が定着しておりますものですから、それらの制度改正の中で検討してまいる必要があると考えております。
  238. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 歴史的な経過があって定着しているということは、言いかえれば、お役所は一たん握った権限というのは離したくないということなんでしょう。私は、国の今の縦割り行政、いろいろな弊害が先ほどからも言われておりますけれども、そういうものを改革していくというのが政治家の任務だと思うんです。大蔵大臣、しかも副総理としていかがお考えになりますか。
  239. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) これは実は非常に難しゅうございまして、うっかりあれこれを申し上げにくいようないきさつがあったり混雑しているところがございますので、私も実は十分勉強をしてきちっとお答えをするだけの用意がございませんし知識がございませんで、まことに申しわけないことだと思いますけれども、それが事実でございます。
  240. 抜山映子

    抜山映子君 昭和六十年度決算検査報告書九十九ページ、農林水産省の補助金の関係でございますが、これによりますと、国庫補助金二千四百六十六万二千六百八十六円が不当と認められております。この補助金については大変むだ遣いということがちまたでうわさされておりますが、こういうことについていかに反省し、このようなことがないように対策をどう講じていくか、まずおっしゃっていただきたいと思います。
  241. 草野英治

    説明員(草野英治君) 農林水産省の補助金の適正な執行につきましては、かねてからいろいろと努力しておりますが、ただいま先生から御指摘のように、六十年度におきましては二千四百万円余りの不当事項の指摘を受けましたことはまことに遺憾に存じている次第でございます。指摘を受けました事項については、補助金の返還等の適正な措置を講じますとともに、さらに関係部局あるいは関係都道府県に対しまして通達を発したり、市町村、農協等に対しましての指導監督の徹底を図っておりますが、今後とも関係機関に対しまして、機会あるごとに補助事業の一層の適正化の指導を図ってまいる所存でございます。
  242. 抜山映子

    抜山映子君 補助事業の実施について会計検査院は何%ぐらいを検査の対象にして検査していますか。
  243. 辻敬一

    会計検査院長(辻敬一君) 農林水産省の実地検査の施行率について申し上げますと、六十一年につきまして要検査箇所が千五百三十四カ所でございます。そのうち二百九十カ所を検査いたしまして、施行率が一八・九%ということになっております。なお、そのうち重要と認められます箇所は八百十一カ所でございまして、これらにつきましては二百七十二カ所を検査いたしております。施行率が三三・五%ということに相なっております。  なお、補助金につきましては、その種類とか交付先が非常に多いということなどから、特に補助金につきましての検査箇所あるいは金額にかかわる施行率というのは従来計算をしておりません。
  244. 抜山映子

    抜山映子君 恐らく全部を検査の対象にすれば、不当な国庫補助金の金額は膨大に上ると思います。ここで挙げられおります六事例を見てみますと、その中で兵庫県の社町の例は、盛り上等の工事が現在施行されていて作付が全く不可能であったにもかかわらず転作奨励金を取っておるわけで、単なる行き過ぎとか過ちを超えて非常に作為的なものが見られるわけでございます。  地元の一部の人の意見では、この土地については仮換地の指定通知があった、それで、この仮換地の指定通知があったときには、仮換地の使用収益開始日の通知まで使用収益できないことが仮換地指定通知書の中にはっきり書いてあるわけでございまして、どうしてこの転作奨励金が出たものか非常に不審に思う、こういうように申しておる一人もあるわけでございます。  そこでお伺いいたしますけれども、この補助金の査定のシステムというのはどういうふうになっておりますでしょうか。
  245. 山本徹

    説明員山本徹君) ただいま御指摘の転作奨励金の交付の仕組みでございますけれども、この交付については全国三百二十万農家、一千万筆に及ぶ水田を対象としております大変な膨大な事業でございますが、貴重な国民の税金を使って転作を実施していただいておりますので厳正な確認をしておりまして、具体的には、国が都道府県知事に補助金適正化法第二十六条の規定に基づきましてこの確認を機関委任いたしまして、さらに都道府県知事は、この事務が非常に膨大にわたりますために市町村長に事務を委託いたしておりまして、個別農家ごと、さらに転作水田一筆ごとに確認をいたしまして転作奨励金を交付いたしております。
  246. 抜山映子

    抜山映子君 機関委任というのは代理権が生じるわけでございますけれども、委託というのは法的にはどういうことになりますか。
  247. 山本徹

    説明員山本徹君) これは具体的な事務の判断の基準を市町村長にゆだねているという性格のものでございます。
  248. 抜山映子

    抜山映子君 この兵庫県の社町ほかの事例ですけれども、恐らく市町村長にゆだねているために地元の有力者がなあなあで適当にやるという傾向があるのではないかと懸念されます。  そこで、補助金決定の適正化について従来どういうような措置を制度的にとっておられますか。
  249. 山本徹

    説明員山本徹君) 先生指摘のように、これは大変細かい事務でございますので事務を市町村にゆだねておるわけでございますが、この確認事務、査定事務が適正に行われることが必要でございますので、これについては具体的な補助金の交付基準というものを詳細にわたって国が定めております。具体的に申し上げますと、補助金の交付対象となる水田あるいは農業者の資格要件、耕作権があるかどうかというようなことでございますが、さらに交付できる水田の対象面積、さらに定められた転作作物が実際に植えられて適正な営農活動が行われるかどうかといった要件につきまして子細に、これは市町村という行政機関が中心となりまして、市町村だけでは事務に不十分な場合にはさらに農協であるとか市町村の農業委員会、それから食糧事務所、農業改良普及所等、現地の実情によりまして関係機関が全面的に協力いたしまして確認事務を行っているところでございます。
  250. 抜山映子

    抜山映子君 その確認事務が適正に行われていなかったからこそ、こういうような不当事項の指摘を受ける事例が出てきたわけで、例えばそういう確認事務ということでもいいんですが、どこかの農協なら農協が、適正であるという監査、以上監査しましたが相違ございませんとか、そういうようなシステムをとってチェックするわけにはいきませんでしょうか。
  251. 山本徹

    説明員山本徹君) ただいま先生指摘のとおり、これが一人の人間でこういった事務を担当しておりますととかく現地で実際に判断を間違えるというようなケースもあるかと思われますので、市町村が中心になりまして、農協それから農業委員会、食糧事務所、普及所等、これが単独でやるのではなくて、市町村の現場の、これは特に地域の農業全体にかかわりのある問題でございますので、農業の関係公的機関、それから農業団体等が全力を挙げて、かつ、一人でやるのではなくて、二人以上の人間がいわばクロスチェックといいますか、相互に点検しながら確認を行うような指導をいたしておるところでございます。
  252. 抜山映子

    抜山映子君 これは大事な国民の血税ですから、クロスチェックが行われていない、あるいは地元同士の顔なじみでむやみやたらに転作奨励金なんかを出してもらっちゃ困るわけなんです。指導を強化して、本当にその必要があるものに出す、こういうふうにしていただきたいんですが、その指導強化の具体的な構想はございませんか。
  253. 山本徹

    説明員山本徹君) 転作の確認事務につきましては、ただいま先生の御指摘のとおり、大変貴重な国民の税金を使って転作を推進しておりますので、私ども今後も先生のただいま御指摘されたような線に沿いまして、毎年私ども現地農政局、さらに都道府県、市町村段階で研修会を行ったりあるいは研究会を行ったり勉強会を行ったりいたしておりますが、そういった機会にさらに一層転作奨励金の交付が間違いのないように指導を強めてまいりたいと考えております。
  254. 抜山映子

    抜山映子君 助成金の交付については、交付申請書とか対策の実績報告書とか、いろいろ書面を出すわけですけれども、偽りの申請書を出したり報告書を出したりすると、これは文書偽造の問題もあり、全く見え見えの理由のないものについて助成金をもらえばこれは詐欺罪にも該当するわけでございまして、こういうものはやはり取り締まっていかなくちゃいけないと思うんです。  会計検査院に伺いますけれども、三十一条には懲戒処分の要求があり、また三十三条に犯罪の通告というのもございます。これを発動した過去の事例は一体何件ぐらいあるのか、そしてまた、最近は発動されていないようですが、現在はどういう状況にあるかをお答えください。
  255. 辻敬一

    会計検査院長(辻敬一君) 過去における第三十一条の懲戒処分の要求の実績でございますが、昭和二十七年以前に六件ございます。それから、検察庁に対する通告の状況でございますが、二十七年以前に九件ございます。  ただいま委員指摘のように、最近、三十一条の懲戒処分の要求あるいは三十三条の検察庁への通告の実例がないわけでございますけれども、これは不当事項等につきまして検査院が指摘をいたしますと当局において早速相応の処分を実施いたしますので、三十一条の懲戒処分の要求の規定の発動の必要が生じていないからでございます。検査院といたしましては、検査結果の指摘につきまして、関係者の関与の態様でございますとか責任の所在でありますとか、あるいは当局における処分の状況等について常に関心を払っており、把握に努めておるところでございます。  また、三十三条の検察庁に対する通告につきましては、犯罪の容疑につきまして司法当局に捜査の端緒を提供するということを目的としているものでございますが、このような事態につきましては、当局において告発をいたしますとか、あるいはまた本人が自首いたしますとかいうことになっておりますのが通常でございます。したがいまして、近年院法三十三条の規定の発動の必要が生じていない、かようなことでございます。
  256. 抜山映子

    抜山映子君 それにしても最近は全くない。不当事項はたくさんあるのに全くないというのは、ちょっとこれは発動しないような傾向があるのじゃないか。監査機関としての会計検査院の地位を高めるためには、こういう条文があるのですから、これらの機能を生かすべきではないかと思うんですが、いかがですか。
  257. 辻敬一

    会計検査院長(辻敬一君) 懲戒処分の問題につきまして、相手方の当局によります関係者の処分状況、それを検査院として把握している限りにおいて申し上げますと、六十年でございますが、不当事項が百十七件、関係者の数が千七百三十七人でございますけれども、そのうち懲戒処分あるいはその他これに準ずる処分をいたしました者を合わせますと千五百八十七人、その中には免職も含んでおるわけでございます。処分をしておらない者が百五十人ということでございますので、先ほど御説明を申し上げましたように、大体当局において処分がなされておりまして、私どもで三十一条を発動する必要がないということになっておると存じます。
  258. 抜山映子

    抜山映子君 大蔵省に伺います。  自動車関係諸税ですが、これが九種類にも及んで大変複雑なものになっております。これを簡素化するとともに、今や自動車はもう大衆のものでございますから軽減すべきだと思います。これを今後の税制改革の中で御検討いただけますでしょうか。
  259. 瀧島義光

    説明員(瀧島義光君) 自動車関係の税金、確かに九種類で、よくもこんなにたくさんあるものだとお考えになるのも無理からぬところでございますが、自動車につきましては、その取得、それから保有、消費といいましょうか、実際の走行等に着目いたしましていろいろな税を課すことによって全体としての適正な負担を実現していくという考慮によって税体系ができているわけでございます。  これらの九種の税金につきましては、税をかける主体が国、地方公共団体というふうに異なったり、あるいはかけられる課税客体といいましょうか、それが自動車という物であるのか、あるいは燃料であるのか等々、いろいろ異なっており、また課税の根拠もそれぞれに別にございますので、直ちにこれを統廃合するということはなかなか難しいことではないかなというふうに考えます。  全体としての負担が重過ぎるのか軽過ぎるのか、これは人によっていろいろ意見があると思います。これは今や委員指摘のように、日常普通に使われる品物になったのだから税負担を軽くしてもいいではないかという御意見がある反面、資源の節約とか、あるいは世の中にいろいろな害悪をまき散らす、したがってもっと重くしていいのじゃないかというような御意見もあります。そうしたいろいろな意見を全体として眺めながら、どのくらいの負担水準が適当かということと、他面、これはほとんどが道路財源等特定の目的に使われておりますので、そうしたお金が使用される対象である道路整備の必要性、緊急性、そうしたもの等もあわせて今後検討していくことが必要なのだろう、こう考えております。直ちに軽減ということを私の口から申し上げることはちょっとお許し願いたいと思います。
  260. 抜山映子

    抜山映子君 きょうは時間がないのでこれで終わりにしますが、諸外国に比しまして、アメリカ、イギリス、西ドイツに比べまして日本の自動車諸税は格段に重い、このことをぜひ念頭に入れて今後検討していただきたいということを申し上げまして、私の質問を終わります。
  261. 穐山篤

    委員長穐山篤君) 他に御発言もないようですので、皇室費国会大蔵省会計検査院国民金融公庫日本開発銀行及び日本輸出入銀行決算についての審査はこの程度といたします。  次回の委員会は明十七日午前十時に開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時五分散会      ―――――・―――――