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1987-12-08 第111回国会 参議院 決算委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十二年十二月八日(火曜日)    午前十時開会     —————————————  委員氏名     委員長         穐山  篤君     理 事         井上  裕君     理 事         大島 友治君     理 事         杉山 令肇君     理 事         柳川 覺治君     理 事         菅野 久光君     理 事         峯山 昭範君                 井上  孝君                 板垣  正君                 河本嘉久蔵君                 沓掛 哲男君                 斎藤栄三郎君                 鈴木 省吾君                 寺内 弘子君                 永野 茂門君                 福田 幸弘君                 二木 秀夫君                 松尾 官平君                 宮崎 秀樹君                 守住 有信君                 一井 淳治君                 久保  亘君                 佐藤 三吾君                 山本 正和君                 片上 公人君                 刈田 貞子君                 佐藤 昭夫君                 橋本  敦君                 関  嘉彦君                 抜山 映子君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         穐山  篤君     理 事                 井上  裕君                 大島 友治君                 杉山 令肇君                 柳川 覺治君                 菅野 久光君                 峯山 昭範君     委 員                 井上  孝君                 河本嘉久蔵君                 斎藤栄三郎君                 鈴木 省吾君                 寺内 弘子君                 福田 幸弘君                 二木 秀夫君                 宮崎 秀樹君                 守住 有信君                 一井 淳治君                 久保  亘君                 山本 正和君                 片上 公人君                 刈田 貞子君                 佐藤 昭夫君                 関  嘉彦君                 抜山 映子君    国務大臣        文 部 大 臣  中島源太郎君        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)       伊藤宗一郎君    政府委員        科学技術政務次        官        竹山  裕君        科学技術庁長官        官房長      見学 信敬君        科学技術庁科学        技術政策局長   加藤 昭六君        科学技術庁科学        技術振興局長   吉村 晴光君        科学技術庁原子        力局長      松井  隆君        文部政務次官   船田  元君        文部大臣官房長  古村 澄一君        文部大臣官房総        務審議官     川村 恒明君        文部省初等中等        教育局長     西崎 清久君        文部省教育助成        局長       加戸 守行君        文部省高等教育        局長       阿部 充夫君        文部省学術国際        局長       植木  浩君        文部省社会教育        局長       齋藤 諦淳君        文部省体育局長  國分 正明君    事務局側        常任委員会専門        員        小島 和夫君    説明員        大蔵省主計局主        計官       伏屋 和彦君        文部省高等教育        局私学部長    坂元 弘直君        会計検査院事務        総局第二課長   志田 和也君     —————————————   本日の会議に付した案件昭和六十年度一般会計歳入歳出決算昭和六十  年度特別会計歳入歳出決算昭和六十年度国税  収納金整理資金受払計算書昭和六十年度政府  関係機関決算書(第百八回国会内閣提出)(継  続案件) ○昭和六十年度国有財産増減及び現在額総計算書  (第百八回国会内閣提出)(継続案件) ○昭和六十年度国有財産無償貸付状況計算書  (第百八回国会内閣提出)(継続案件) ○国政調査及び継続調査要求に関する件 ○継続審査要求に関する件 ○参考人出席要求に関する件     —————————————
  2. 穐山篤

    委員長穐山篤君) ただいまから決算委員会を開会いたします。  この際、中島文部大臣伊藤科学技術庁長官船田文部政務次官及び竹山科学技術政務次官からそれぞれ発言を求められておりますので、順次これを許します。中島文部大臣
  3. 中島源太郎

    国務大臣中島源太郎君) このたび文部大臣を拝命をいたしました中島源太郎でございます。  教育学術文化振興を図ることは国政の基本であり、担当大臣としてその責任の重大さを痛感いたしております。また、教育改革政府の重要な課題であり、先般、閣議で決定した教育改革推進大綱に基づきまして所要の施策を推進する必要があります。私といたしましては、持てる力のすべてを傾注いたしまして、これらの課題に取り組む所存でございますので、委員長初め委員各位の御指導、御鞭撻をよろしくお願い申し上げます。(拍手
  4. 穐山篤

  5. 伊藤宗一郎

    国務大臣伊藤宗一郎君) このたび科学技術庁長官を拝命いたしました伊藤宗一郎でございます。  科学技術振興重要性が強く指摘をされておりますこの時期に、科学技術庁長官就任をいたしましたことの重責を痛感をしている次第でございます。  決算委員会委員各位におかれましては、かねてより科学技術行政推進に格別の御尽力を賜り、厚く御礼を申し上げます。  改めて申すまでもなく、資源に乏しい我が国が厳しい国際環境の中で、二十一世紀に向かって今後とも発展をしていくためには、人間及び社会との調和を図りながら、創造的な基礎研究中心とした科学技術振興を図り、また、その成果をもって全世界に貢献していくなど、国際的な展開を図っていくことが必要であります。  このような政府に課せられました重大な使命を果たすべく、微力ではございますが、科学技術行政責任者として身を引き締め、全力を尽くしてまいる所存でございますので、何とぞ従前に増しまして御指導、御鞭撻のほどをお願いを申し上げます。(拍手
  6. 穐山篤

  7. 船田元

    政府委員船田元君) このたび文部政務次官を拝命いたしました船田元でございます。  微力ではありますが、大臣を補佐し、教育改革推進を初め、我が国教育学術文化振興全力を尽くしてまいる所存であります。委員長並びに委員皆様方の御指導、御鞭撻をよろしくお願い申し上げます。(拍手
  8. 穐山篤

  9. 竹山裕

    政府委員竹山裕君) このたび科学技術政務次官を拝命いたしました竹山裕であります。  ただいまの伊藤大臣あいさつにもございましたとおり、我が国にとっての科学技術振興を図ることは極めて重要な課題認識しております。委員長初め委員の諸先生方の御指導を賜りまして、誠心誠意努力大臣を補佐していく所存でございますので、何分よろしくお願いいたします。(拍手)     —————————————
  10. 穐山篤

    委員長穐山篤君) 委員の異動について御報告いたします。  去る十一月十六日、中曽根弘文君が委員を辞任され、その補欠として二木秀夫君が選任されました。
  11. 穐山篤

    委員長穐山篤君) 昭和六十年度決算外二件を議題といたします。  本日は、文部省及び科学技術庁決算について審査を行います。     —————————————
  12. 穐山篤

    委員長穐山篤君) この際、お諮りいたします。  議事の都合により、これらの決算概要説明及び決算検査概要説明は、いずれもこれを省略して、本日の会議録の末尾に掲載することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  13. 穐山篤

    委員長穐山篤君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。     —————————————
  14. 穐山篤

    委員長穐山篤君) それでは、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  15. 久保亘

    久保亘君 最初科学技術庁長官にお尋ねをいたしますが、大臣は今回の長官就任に当たって科学技術庁長官念願ポストであったと言われたと聞いておりますが、科学技術庁長官念願ポストとされましたその大きな理由といいますか、あなたのお考え最初にお聞きしたいと思います。
  16. 伊藤宗一郎

    国務大臣伊藤宗一郎君) 先ほどのごあいさつでも申し述べさせていただきましたとおり、資源の乏しい我が国がこれからも発展を遂げていくためには国民の知的創造力にまつ以外にはありません。そういうことで科学技術振興によって二十一世紀我が国をソフトランディングさせにゃならぬ。これは我が国が置かれた宿命とも言うべき最高の政治課題と心得ております。たまたま私も十五年前に科学技術庁政務次官をさせていただきました。それ以来、科学技術立国というものの重要性、また緊要性国会場等でも痛感をしておりましたので、ぜひそういう役割を果たす意味においても科学技術庁長官として努力をさせていただきたいものだなというふうに考えておったものですから、そういう念願ポストということを申し述べさせていただきました。
  17. 久保亘

    久保亘君 お考えはよくわかりました。  それでは、我が国の現在の科学技術研究費状況をどういうふうに御認識になっておりますか。
  18. 伊藤宗一郎

    国務大臣伊藤宗一郎君) 金額のことを申し述べさせていただきますが、委員も篤と御案内のことでございまして、釈迦に説法だと思いますけれども、我が国研究開発投資総額は約八兆円でございまして、自由世界ではアメリカに次ぎまして第二位でございます。このうち政府負担をしておる額は約一・六兆円。この額はヨーロッパ西ドイツフランス英国等とほぼ並んでおります。ただ、金額では並んでおりますけれども、政府負担額ということで見ますと、約二割でございます。ということは、研究開発費総額ではやっぱり民間負担が大きいということでございます。全体の額ではヨーロッパと並んでおりますけれども、政府負担額では二割ということでございますので、この面で我々政府側行政側努力をしなければならない目標があるなと思います。ただ、おかげさまで委員各位の御協力もございまして、厳しい財政状況のもとではございますけれども、毎年の予算一般歳出予算伸び率よりも高い伸び率科学技術関係予算が、研究開発予算が進んでいるということは言えると思います。  こういう現状の中で今後我々としては、先ほどのごあいさつでも申し上げましたとおり、科学技術政策大綱というものを決定しておりますので、その方針に基づきまして基礎的研究の強化、科学技術面での国際貢献等、三つの柱を柱として科学技術振興を図ってまいり、その中で研究開発投資充実をなお一層努力目標として進めてまいりたい、このように考えております。
  19. 久保亘

    久保亘君 今長官が言われましたような状況であることはそのとおりでありますが、科学技術研究費のトータルでは六十年度で八兆八千九百億というかなり世界の諸国家に比しても水準の金額になっているということはそのとおりでありますけれども、この中身を子細に見てまいりますと、いわゆる企業負担するものが六兆円に近いのでありまして、とりわけ大学等における研究費の占める割合は非常に低い。研究機関においてもそうであります。それをこの十年間を見てまいりますと、企業会社等負担する割合は一〇ポイントも上がっておりまして、全体の七割に近づいております。大学等研究費は逆に三〇%近かったものが二〇%まで下がっているという状況がございます。大学科学技術研究費は主として文部省にかかわる問題だとは思うのでありますけれども、このような状況、今日の状況ではなくてこの十年間にそういう変化を遂げている状況をどういうふうにごらんになるかということであります。  それからもう一つは、国、地方、つまり公的な負担割合が十年間に二九・七から二一・○、つまり三割から二割に下がった、逆に民間の方が七〇・三から七八・九、七割から八割に上がってきている。これは諸外国と比べましても非常に特異な状況であると思われるのでありますが、このような変化状況をどういうふうに御認識になりますでしょうか。
  20. 加藤昭六

    政府委員加藤昭六君) まず科学技術関係予算全体のここ十年ばかりの推移でございますが、一般歳出総額と比較してみますと、例えば昭和五十五年度、三十兆七千三百億円一般歳出総額がございましたが、その際科学技術関係予算は一兆二千九十億円でございました。その後、先ほど大臣が申し上げましたように年々一般歳出ももちろん少しずつは伸びてきておりますが、それの伸びを上回る科学技術関係予算伸びがございます。具体的な数字で申し上げますと、昭和六十年度におきましては一般歳出総額におきましては三十二兆五千九百億円、五十五年に比べまして六%の増加になっておりますが、科学技術関係予算総額では一兆五千三百億円と一八・一%の伸びという状況でございます。  一方、民間研究開発費総額を同じように比較いたしてみますと、昭和五十五年度におきましては三兆四千七百億円でございましたが、昭和六十年度におきましては六兆五千三百億円と八八・三%の増加ということで、この数字からごらんいただきましておわかりのように、政府関係におきましても非常な科学技術関係予算努力をしておるわけでございますが、民間研究開発費伸びが極めて著しいということのために、全体の科学技術関係予算の中に占める政府関係予算比率が低下しているということでございます。  科学技術関係の御答弁は以上でございますが、文部省関係の御予算につきましては……。
  21. 植木浩

    政府委員植木浩君) ただいま先生から御指摘ございましたように、現時点におきまして八兆九千億ほどの全体の科学技術関係経費があるわけでございますが、そのうち大学は一兆八千億ほどでございまして二〇%ぐらいのシェアを占めておるわけでございます。  これまでの経緯を見ますと、確かに先生が御指摘のように、大学等の占めるシェアが少しずつ減っているわけでございますが、これはただいま科学技術庁の方からも御説明がございましたように、会社等研究開発費が非常に伸びが高いためでございまして、大学等自体研究費は年々伸びておるわけでございます。  なお、文部省関係予算という点から見ましても科学技術関係予算は六十一年度で四・五%の伸び、六十二年度で四・六%の伸びということで、絶対額そのものとしては大変厳しい財政状況下の中でも努力を一生懸命いたしておるわけでございますが、何分にも会社等研究開発費伸びが高いためにシェアは下がっておる、こういう状況でございます。
  22. 久保亘

    久保亘君 この民間研究費が非常に大きな分野を占めるということについて、そのことが一概に悪いというわけではないのでありますけれども、科学技術研究全体に占める公的な役割というのがアメリカフランス西ドイツなどに比べると非常に低いという事実は否定ができないのでありまして、そのことがどういう影響をもたらしているかということについても検討をする必要があるのでは広いかと思っております。  一つは、我が国科学技術研究民間、とりわけ企業に依存する割合が非常に高いことによって、科学技術研究の本質的な方向といいますか、そういうものに影響を及ぼすことはないのかということであります。そのことについては科学技術庁としてはどうお考えでしょうか。  また、大学等におけるこの科学技術研究費我が国科学技術研究全体の中で占める予算から見た場合の割合というのが年々低下をして非常に小さくなっているということは、やはり大学研究あり方に問題を生ずることはないのか。この点についてどういう考え方を持っておられるかお聞きしたいと思います。
  23. 加藤昭六

    政府委員加藤昭六君) ただいま御指摘政府関係投資が全体の中に占めるウエートが非常に低い、これが科学技術振興に当たっての本質的な問題いかんということだと思いますが、ここは諸外国研究投資我が国研究投資とを比較いたしました場合に、諸外国の場合にはかなり軍事関係が入っておりますので、それを除いた額の比率で見てみますと、諸外国はほぼ政府負担比率は四割前後、我が国が二〇%前後と軍事関係を除いてもかなり日本は低いという状況でございますが、こうした低い予算の中でも我が国におきましては産学官の有機的な連携というものを通じて極めて効果的な開発を進めてきているということが言えるのではないかと思います。  それからまた第二に、これはもういろいろなところで御案内のように、我が国の戦後の科学技術発展外国技術導入中心にした応用あるいは改良等を主とした発展でございましたが、こうしたようなことが研究開発の中においても民間中心とした形で科学技術振興が進んできたというふうに推測されます。  しかし、最近の時点になりますと、生産技術におきましてもほぼ外国と肩を並べるような状況になってきております。むしろ、これからは基礎志向型で我が国科学技術振興をしていかなきゃならないというふうな方向産学官ともににじみ出てきております。したがいまして、これからの科学技術振興のポイントは基礎研究分野中心になってくると思われますし、その中におきます政府関係研究役割というのは今後は極めて大きなものになってくるというふうに考えております。
  24. 植木浩

    政府委員植木浩君) 先ほど申し上げました一兆八千億という数字は必ずしも文部省予算だけではなく、私立大学等研究経費等も全部含めたものでございますが、私ども文部省としては文部省関係科学技術関係予算をできるだけ充実をするということで努力をしてきております。  先ほどもちょっと申し上げましたように、例えば六十年度は七千百三十八億、六十一年度は七千四百五十六億、六十二年度は七千八百二億ということで、大変文部省関係予算全体もう厳しい状況ではございますけれども、特に文部省関係科学技術関係予算伸びは、先ほど申し上げました六十一年度が四・五%増、六十二年度が四・六%増ということで、及ばずながら努力はしてきておるわけでございます。  先ほど科学技術庁から御答弁がございましたように、これから特に基礎研究振興ということが大事でございますので、やはり何といっても基礎研究中心大学等でございますので、こういった点さらに充実をするように努力をしてまいりたいと思います。
  25. 久保亘

    久保亘君 今、両名の方から御答弁がありましたように、基礎研究分野科学技術研究我が国の場合には予算面から見た場合に非常に小さいということは、やはり公的な科学技術研究費負担というのが非常に少ないということとも大きくかかわっているのではないかと思うんであります。なぜならば企業の場合には利潤と直結しやすい研究というのは基礎研究分野ではないからだと思うんです。しかし、これから日本が国際的にも役割を果たしていくということを考えました場合には、基礎研究分野にもっと力を入れていかなければならぬ。その場合に科学技術研究費というのが、我が国の場合には大学研究においてすら企業ひもつき研究費というのがかなり多くなってきておりますが、そういう企業利潤追求立場からの研究費支出というものをそういう基礎研究分野に回していくということは、非常に難しいものではないかと思うんであります。もしそれをやるとするならば、民間負担する科学技術研究費を一切ひもつきでないものとするということができなければいかぬと思うのでありますけれども、基礎研究を今後重視をしていくという立場であるとするならば、基礎研究を重視していくために科学技術研究費あり方というものをどういうふうになさるおつもりですか。
  26. 中島源太郎

    国務大臣中島源太郎君) 先生のおっしゃいますように、この基礎研究推進ということは、社会活動のあらゆる面の基礎を保つ重要なものであろうと思います。特に、産学官連携でこの研究が進められるということは、これは好ましいことと思いますけれど、おっしゃいますように、やはり基礎科学研究となりますとサイクルが長い分野でございますから、そうそう民間サイクル、五、六年のサイクルで見ていく民間サイクルと、それから基礎科学の場合はやっぱり三十年、四十年という長期の分野で見ていくことが必要でありましょうから、その点やっぱり公財政支出がそれなりに重点配分されなければならぬことであろうと、このようには考えております。  ただ、文部省といたしましては、そういうことを踏まえまして、六十三年度予算編成を控えまして、科学研究費の拡充それから若手研究者の育成、重要基礎研究学術国際交流推進等大学における学術研究予算の確保に格段の努力を払ってまいりたい。こういうことで、先ほども申し上げましたように、六十二年度は絶対額におきましても科学技術関係予算アップをしておるわけでございますが、六十二年度はさらにアップを目指して努力をいたしてまいる、そういう所存で進みますので、よろしくお願い申し上げます。
  27. 久保亘

    久保亘君 今の点は文部大臣のお話はよくわかりますが、しかし、何といいましても我が国の場合には、六十年度の決算で見ましても、研究者一人当たりの研究費も先進諸国家に比べて著しく低い。そのようなことが、頭脳流出という言葉がよく使われますけれども、日本では研究が非常に難しいということで人材研究のために海外へ出る、そのこと自体がそうすべて悪いというわけではありませんけれども、日本研究が困難なために外国に出るということは非常に問題が多いと思うのであります。  日本人のノーベル賞受賞者も、海外研究をされている方が対象になることが多い。このことは、やはり我が国における科学技術研究あり方一つの問題を示唆していることではないだろうかと思うんですが、こういう点については大臣はどういうふうにお考えになっておりますか。
  28. 中島源太郎

    国務大臣中島源太郎君) 特に基礎研究の場合、非常に多分野にわたりますし、また世界的視野人材を確保するということが必要であろうと思います。現在までは確かに我が国基礎科学あるいは科学技術に関しましても、外に学べと申しますか、こちらから外へ出まして、そして新しい知識を吸収する、人材流出時代をずっと経過をしてまいったと思いますが、我が国の現在の経済的な国力と申しますか、そういうところから、これからはむしろ日本流入をすると、頭脳流入をしていかなければならない、そういう時代だと思いますので、これには公財政支出ももちろんでございますが、また自由な研究の環境を日本につくっていく。そして世界の進み方は、今の情報化時代でございますので、どこでどのような方がどのような研究をしておるかということは比較的早く察知あるいは入手することができるわけでございますので、そういう頭脳を流入をし国内で育てられる環境整備、これに向けましても意を注いでいくべき時代だと、こう思っております。
  29. 久保亘

    久保亘君 科学技術庁長官は防衛庁長官もおやりになったことがあると思いますが、先ほど政府委員から御答弁がありましたように、日本の場合には国防費を除外いたしましても、研究費の公的負担の占める割合というのがほとんど変わらない。そのほかの国々の場合には、国防研究費を除外をいたしますと、公的負担経費割合が下がってくるということはどういうふうにごらんになっておりますか。
  30. 加藤昭六

    政府委員加藤昭六君) ただいま先生指摘我が国におきます政府研究開発費負担割合でございますが、各国比較いたしてみますと、アメリカが四六・八でございます。西ドイツが三九・六、フランスが五四・三。これは米国、西ドイツが一九八五年の数字でございます。またフランスは八三年の数字でございますが五四・三。さらにイギリスが四八・九でございますが、これに対します我が国研究費政府負担割合は、一九八三年には二二・二%でございましたが、八四年には二〇・八%、さらに八五年には一九・四%と漸減の状況にはあるわけでございますが、先ほど大臣からの御答弁にもありましたように、負担割合においては減ってきてはおりますが、額におきましては、例えば八三年は一兆四千四百億円、八四年におきましては一兆四千九百億円、八五年におきましては一兆五千七百億円と、非常に財政厳しい中で増額の努力を逐次してきておるところであるわけでございます。
  31. 久保亘

    久保亘君 私が聞いているのは国防研究費、つまり兵器の開発に使う研究費というのを含めた場合の構成比とそれを含まない場合の構成比というのが、ほかの国と比べた場合に日本だけがほとんど変わらないという状況はどういうところから出てくるかと聞いているんです。
  32. 加藤昭六

    政府委員加藤昭六君) 失礼いたしました。我が国におきましては、国防費を入れた数字と入れない数字を比較いたしますとほぼ一%程度の差にすぎないわけでございますが、アメリカ西ドイツにおきましては、例えばアメリカにおきましては国防費を入れた場合は四六・八、これに対して国防費を除いた場合二八・一と非常に大きな差がございます。また、西ドイツにおきましても国防費を入れた場合は三九・六に対して三六・五、フランスにおきましても五三・五に対して四二、イギリスにおきましても四八・九に対して二六・九ということでございまして、我が国におきましては御案内のような防衛状況でございます。諸外国と比べてそうしたことを反映した数字がここにあらわれているものと考えております。
  33. 久保亘

    久保亘君 御案内のような状況というが、私は別に御案内ではありませんが、そこを説明してもらいたいと言っているんですよ。
  34. 加藤昭六

    政府委員加藤昭六君) 私どもの立場から国防についてのコメントは避けさしていただきますが、科学技術関係予算につきましては先ほどから申し上げましたように、いわゆる純粋の科学技術関係予算につきましては、アメリカ西ドイツフランス等諸外国と比べた場合に日本は非常な差があるということでございまして、国防云々の点につきましての私どもからのコメントは科学技術庁としては避けさしていただきたいと思います。
  35. 伊藤宗一郎

    国務大臣伊藤宗一郎君) 委員の質問にお答えしかねておりますけれども、私自身数字そのものも今初めて聞きましたし、どういうわけで日本が国防関係を入れたものの数字科学技術そのものの数字がそう変わりないかということの原因というか要件はどこにあるのか、簡単に言えば国防関係の技術開発費がほとんどないということだろうと思いますけれども、そういうことがそういう数字にどうやってあらわれているのか、ちょっと私今勉強不足でございまして、的確なお答えができませんことを申しわけないと思います。
  36. 久保亘

    久保亘君 それじゃ、そのことはまた機会を見てお尋ねすることにしましょう。  次に文部省にお尋ねいたしますが、文部大臣、非常に文教予算が財政的に抑圧を受ける時期に大臣におなりになって御苦労の多いことだと思いますが、文教予算が一般会計に占める割合が五十八年度に一〇%を割りました。そして、きょう審議の対象となっております六十年度においては九・二%に低下をしておりまして、これはさらに減少傾向を続けてまいっております。臨教審が答申を出されたころは六十一年度では八・五%という数字が述べられておるのでありますが、このことについての文部大臣の御見解を承っておきたいと考えております。特に文教予算の中で占める人件費の性格等についても大臣のお考えを承っておきたいと思うのであります。
  37. 中島源太郎

    国務大臣中島源太郎君) おっしゃいますように、確かに一般会計に占めます文教予算はやや低下傾向にございます。もっともこれは一般会計が年々増額をいたしておりますので、文教予算は概して横ばいでも比率は下がっていく、こういうことは言えるわけでございますけれども、額で申しますと六十二年度予算文部省所管関係はやや増額、こういうことになっておるわけでありますが、率の方でも上げますように努力をいたしてまいらなければならない。特に厳しい財政とは申しますが、教育改革、これまた大変な施策でございまして、文教全体に対しましての文教予算、それからまた教育改革その他重点項目に対します配分に対しましても十分努力をいたしてまいらなければならぬと思っております。また文部省予算の中の人件費にかかわるものは、これまた年々当然のことながら増額をいたしておりますが、これは文教施策を支える重要な部分でございますので、この点はやはり軽視することなく、人件費は人件費、それから政策経費は政策経費、この点十分わきまえまして努力をしてまいるつもりでございます。
  38. 久保亘

    久保亘君 六十三年度の概算要求では文教予算の構成比は幾らになっておりますか。
  39. 中島源太郎

    国務大臣中島源太郎君) 先ほど六十二年が八・五と、こうおっしゃっておりますが、それとの比較で申しますとややワンポイント程度比率は下がるのかな。ただ、全体の一般会計規模がわかりませんのでこれははっきりは申し上げられませんが、やや下がるかなと、こういう感じでございますが、これは学童あるいは生徒減少地帯に対します新しい施設費がやや減少してまいっておる、こういう点もございますが、しかし、先ほど申しましたように、新しい研究あるいは若手研究費を含めまして先生が御指摘科学技術方面では、相当部分の増額を要求いたしておるところでございます。
  40. 久保亘

    久保亘君 全国の自治体からは公立文教施設の予算を増額してほしいという要請が続いておりますけれども、この文教予算の中に占めます構成比というのは、五十六年の一二%から六十二年には六・五%まで低下をいたしております。いろいろ理屈はつけられると思うんでありますけれども、しかし、これは明らかに文教予算の財政的な圧縮ということが大きな要因となって、そういう結果が生まれていることは間違いないと思うんですが、それは私と共通の理解をしていただけますか。
  41. 加戸守行

    政府委員(加戸守行君) 公立文教の施設の予算につきましては、先生御承知のように児童生徒が大幅減少の時期に向かっておりまして、ピーク時に比べますと年々減少を続けているわけでございます。しかしながら、各地方自治体の要望に沿います計画等ございますが、それに対応する必要な事業量の確保に努めてまいっておりまして、現時点まで予算は減少いたしておりますが、各自治体の要望には沿う形で何とか対応してまいっておるわけでございまして、あくまでも金額の減少は事業量が減少してくるということに伴います金額の減少であると理解をいたしております。
  42. 久保亘

    久保亘君 文部省がそんなことを言っているようじゃ、私は文教予算の国民の要求にこたえる確保なんて非常に難しいと思うんですよ。文教予算が特にマイナスシーリングをかぶせられる中で非常に抑制の対象とされてきたということは、これはもう一般的にだれもが認識していることなのじゃないですか。そういうことは一切関係ないと、これは文部省自体が要らなくなったから予算が減ったんだと、そういうふうにおっしゃるんですか。
  43. 中島源太郎

    国務大臣中島源太郎君) 先生指摘の、一般会計との比率をちょっと御質問になりましたので、一般会計規模との比率で申しますと八・五に横並びのものはやや下がるかなと、こう申し上げたわけでございます。これは予測でございますのでわかりません。ただ、額で申しますと、私どもは今準備をいたしております要求額は明らかに昨年よりももちろんアップで要求し、これを獲得してまいる所存でございますので、先ほどお答えしたのは、一般会計に対する率でお答えしましたものでございますから、以上額で改めて決意を申し上げさしていただきます。
  44. 久保亘

    久保亘君 まあ、この議論はそれじゃそれぐらいにしておきましょう。  それで、それなら私は必要な文教費というのは確保していかなければならぬというお立場でしたら、少し具体的なことで伺いたいと思うんでありますが、いわゆる四十人学級、第五次学級編制基準及び教職員定数改善計画の達成状況と、この十二カ年計画が今後六十六年度を完成年度といたしておりますけれども、その達成の見通しについて御説明をいただきたいと思います。
  45. 中島源太郎

    国務大臣中島源太郎君) 正確な数字政府委員から補足させますが、先生おっしゃいますように、四十人学級の達成は六十六年達成を目標といたしておりまして、私どももその達成に全力を傾けるということは言うをまたないところでございます。現在達成率三〇%台と承知しておりますが、これをとりあえず五〇%に持っていき、あと四年間でございますので、一二、三%平均のアップをいたしまして、達成に努力いたす所存でございます。
  46. 久保亘

    久保亘君 六十六年度に計画を完成させるということについては文部省の一貫したかたい方針だと、こういうことでございますね。
  47. 中島源太郎

    国務大臣中島源太郎君) そのとおりでございます。
  48. 久保亘

    久保亘君 といたしますと、報告されております決算の段階ではちょうど折り返し点でありますね、六十年というのは。その折り返し点で一二・二%の達成率になっております。そして六十二年度、本年度をもって三〇%ですね。本年度をもって三〇%で、残り四年しかございませんが、七〇%を四年間ということになりますと、単純に計算をいたしましても、大臣言われたように一二、三%ではなくて一七、八%でいかないと完成しないわけです。  では、六十三年度にさしあたり何%まで引き上げられる予定ですか。
  49. 加戸守行

    政府委員(加戸守行君) この計画につきましては、ちょうど五十七年から六十年にかけまして臨調答申に基づく凍結抑制措置がございまして、そのために達成率の伸びが低かったわけでございます。しかしながら、これから完成年度に向けまして児童生徒の減少に伴います教職員の自然減が相当数見込まれるわけでございまして、それを考慮しながら計画を円滑に着実に進めたいという考え方でございます。  なお、残りの七〇%、現在ございますけれども、六十三年度予算要求におきましては、児童生徒減少が一番大きい時期でございまして、それに伴います教職員の自然減もまた一番ピークに達するわけでございますので、その範囲の中におきまして最大の努力をしてまいりたいと考えておるわけでございます。
  50. 久保亘

    久保亘君 いや、だから六十三年度、今文部省が計画されているのがそのとおりいきます場合に達成率が何%になりますかと聞いている。
  51. 加戸守行

    政府委員(加戸守行君) 六十二年度の予算要求におきまして要求どおりの数字がもし実現するといたしますれば、達成率五〇%になるわけでございます。
  52. 久保亘

    久保亘君 六十三年度で五〇%に達するということになりますれば、私どもも文部大臣が言われた六十六年には完成をさせる、そして当然その前段階において第六次の計画が策定されなければならぬ、こう思うわけです。それは文部省の現在の六十三年度五〇%達成の方向がさらに前進するようなことをやっていただきたいと思うんですが、この教職員定数改善計画と初任者研修に係る教職員定数とが混同されているのではないかと思うんですが、初任者研修に係る人員というのは、これはこの定数改善計画とは関係ございませんね。
  53. 加戸守行

    政府委員(加戸守行君) 先生御承知のように、昭和六十二年度、本年度から初任者研修の試行に入ったわけでございます。この試行に要します教職員の定数につきましては、現在の計画の中で六十二年度は対応さしていただき、また六十三年度も同様にこの計画の定数の範囲内での要求をさしていただいているわけでございます。しかしながら、いわゆる将来におきます本格実施の段階に至りますれば、この教職員定数計画の数字とはいわゆる別の形での対応ということを当方としては考えさしていただきたいと思っております。
  54. 久保亘

    久保亘君 そういたしますと、六十二年度、三〇%という中に入ってきているわけでしょう。そうしたら、もともとこれは別のものなんだということなら、これを三〇%という見方をするのはおかしいんじゃないですか。  それで、六十三年度も五〇%という文部省目標の中に初任者研修に要する定数まで含めて、五〇%になりました、将来はこれは別ですというそれは大変おかしな話だと思うんですが、私は、この初任者研修制度というのに対してはまだ国民的なコンセンサスを得ている問題ではない、非常に議論のある問題だと思っておりますが、今は定数改善の問題に限って議論するとしても、将来はこれはこの定数改善計画と位関係のないものだというのに、今はその中で宿借りをして達成率の中へ含めていくというのは私は大変おかしいと思う。これはあなたが今答弁されたことでも矛盾ございませんか。
  55. 加戸守行

    政府委員(加戸守行君) 現在の定数計画の中におきましてそれぞれの分野、例えばどの分野に必要な定数、例えば教職員定数あるいは事務職員その他いろいろな分野別の計画の中にあるわけでございますが、初任者研修の試行につきましては、いわゆる研修代替定数という当初の計画の範囲内におきまして試行の段階で実施をさしていただいているわけでございまして、事柄としましては初任者研修の試行でございますが、内容的には研修代替定数に相当するものでございます。そういう意味で、十二カ年計画の中におきまして、途中段階、つまり六十二年度、六十三年度で試行の段階におきましては、言葉は悪うございますが、一種の間借りのような状態ではございますけれども、定数計画の範囲内で試行を行わしていただいているということでございます。
  56. 久保亘

    久保亘君 家主である学校の現場がそんな間借りを認めているわけじゃないのに、勝手に間借りさしてもらっちゃ困るんです。そうしないと、これは全然別だとあなた言われたのだから、しかし今はこの中に間借りをさしてもらう、そんなそういう勝手な解釈はおかしいと思うんで、間借りをするんなら間代も払ってもらわぬといかぬ。そういうことについては私は非常に納得しかねる問題であります。  ちょっと、今の問題について違った角度から山本委員が発言を求められておるんで、委員長、お願いいたします。
  57. 穐山篤

    委員長穐山篤君) この際、山本正和君の関連質疑を許します。山本正和君り
  58. 山本正和

    山本正和君 まず、関連で時間をいただいたわけでありますが、私はきのう七十代のかつて三重県下の小中学校の校長会長をしておった人たちと話をしておりました。そしてまた先般、文教委員会で林寛子先生が団長で長崎県に行ってまいりました。そういう各県の教育長やあるいは学校の校長経験の方たちといろいろ話をしておる中で、いわゆる若い先生ですね、初めて教員になった、あるいは教員になってから五年目、六年目という若い先生たちの状況についてのいろいろな話し合いをしたわけでございます。その中で、これはもう長崎の教育長さんも、あるいは長崎県は大変ユニークな選抜制度をやっておりまして、長崎市内の五つの公立高等学校を全く平等に、成績が全く平等に配置されるような格好での選抜制度をとっておみえでございますが、そこの校長先生とも話をしたわけです。大変立派な学校運営をしておみえでございましたけれども、異口同音に言うのは、若い先生方が勉強したいと、そして一生懸命に取り組んでいきたいと、これはもうどこにもあると。教員になった瞬間に、これは恐らく大臣も若かりし時代に「坊っちゃん」という小説だとか、あるいは石坂洋次郎の「若い人」とかいろいろお読みになった御経験もおありになろうかと思うんでありますが、教師になった瞬間にいやでも応でも子供を目の前にしていろいろなことを思うわけです。その若い先生たちをどういうふうに指導していったらいいか、また立派な先生になっていったらいいかというのは、当然校長やあるいは教育長が一生懸命真剣に考える、または先輩教師も一生懸命考えるわけですね。  そこで、今文部省が教員の資質向上と、特に若い先生方の資質向上ということで取り組まれる、そのことを私も決して反対するものではないわけです、やらなければいけないと思うんですね。ところが、今文部省がモデルとして出されている案の一つですね、これは全部そうじゃありませんけれども、例えば学校現場でマン・ツー・マンで一人の若い先生に一人の先生をつけてその指導のもとに一年間やらせるんだと、あるいは画一的にこういう計画でもってやるということをもしもするとしたならば、一体どうなんだろうかという議論が行われたわけです。  そこで、これは長崎の教育長あるいは校長さんや三重県の校長連中も言うのは、若い先生指導というのは学校全体でやっていきたいと。ところが、小さな学校で仮に十五名しか教員がおらぬ中で五名若い先生が来たという学校もあるわけですね。その学校はやっぱり学校運営上困ると。そうすると、その五名の先生指導するのに残りの十名で一生懸命いろいろやっていって、それにプラスして例えば年輩の先生五人をつけて画一指導してもらうというよりも、むしろ学校に例えば若い先生が五名配置されたら、それの研修用として二人なら二人の定数をいただいたら、その中で担任の経験等もしながらやっていけると。できたらひとつあなたも東京へお帰りになったらそういうことを言ってくれと。これは長崎の校長さんのお話でございました。林先生からもそういう話が大臣のところに行くと思いますけれども。  ですから、この初任者研修という問題は、実は各県あるいは各学校にかなり大きなウエートがかかった仕事だろうと私は思うんです。そういう意味から言いますと、今の久保先生の発言の中にありました、一体これは総定数として県全体に来たんですよというのか、あるいは初任者研修の分として、若い先生指導分として来たというのかはぜひ区別をしていただきたい。そして文部省としては六十六年度までに四十人学級をちゃんとやろうとしているんですから、それと要するに研修に要する分との数ははっきりした数字でもって出していただきたい。そして各県それぞれの運用がある程度できるようにしていかなければ、現場ではいただいてもなかなかそうはいかないと。  特に私もう少し時間をいただきたいのは、きのう話しておりまして、七十を超えたある小中学校の校長会長をしておった人でありますけれども、この人が、実は最近三重県の教育文化会館というところで会報を出しておりまして、その会報に投稿をした。投稿を見て若い教師が感激をしたわけです。そしてまた三重大学の学生で教育学部の学生も感激をして、その先生のところに教えを請いに行った。それは何かといいますと、つづり方です。現在はつづり方という指導はいたしておりません、個別にやっている人もおりますけれどもね。つづり方というのは、まさに子供にとっての人間の生きる叫び、生きているという存在感を表現する仕事だと思うんですね。それを指導するのに今言った指導がされていないんです。されていないというのはいろいろな原因がありますけれども、最大の原因は偏差値教育ですけれども。そういう中で若いときの児童書を書かせておったころということで簡単な文章をお書きになった。それを見て大変感激しているんですね。ですから、そういう意味でいきますと、若い先生たちが指導するというけれども、実は若い先生自体が一生懸命勉強をやろうと思っている。ところがこの初任者研修制度というものが何か大変な誤解を受けている部分がある、誤解か正解かわかりませんけれども。要するに洗脳するんじゃないかと、昔の大日本帝国時代教育を受けた校長先生の古手によって洗脳するんじゃないかというふうな誤解を受けたとするならば、これはまた大変な問題だろうというふうに私は思います。そういう意味を含めまして若い先生方指導あり方も絡めて、これは大臣に初任者研修という問題とそれから教職員の定数増、要するに行き届いた教育をするための四十人学級というものについての、これは違うものだというふうに大臣がお考えになっておられるというふうに私は思うんですけれども、その辺でちょっと大臣からの御見解を承っておきたいと思うんですけれども。
  59. 中島源太郎

    国務大臣中島源太郎君) いろいろお話をいただきまして、それから作文のこともちょっと資料を拝見をいたしまして、大変こういう取り組んでいらっしゃる姿勢には感銘を覚えました。特に若い少年少女諸君に対しましては、これから私どももまさに個性化それから創造性重視の教育を進めるべきときと、こう思っております。そういう若い芽の心の叫びがともすれば消えておりますのをいろいろな形で引き出そうとしていただいて、一つの方法としてこういうことから自分の叫びを素直に表現できる、これはまた自己の人間形成の上にも大きな収穫であろうと思うわけであります。  申し上げるまでもなく、明治時代からずっとやはり日本教育というのは近代化あるいは効率性を重視するために、どちらかというと画一的だと言われれば否定できない面があったのであろうと思いますが、これを臨教審答申の中にも示唆されましたように、まさにこれからは個性重視の教育に進むべきであると、そういうことでございますので、文教行政に携わる者もそれを尊重してまいりますし、またまさに実際に生徒諸君に接していかれる方々は、まず接するときにそういう方向で、そしてそういう形で接していこうというようなことを、実際に何年も生徒諸君とかかわり合っている中での接し方あるいはこれからの接する方向というものをまず体得していただいてというか、習得していただいて、そして実地の教鞭をとっていただくということは大変結構なことだと私は思っておるわけでありまして、その趣旨は今申し上げたように創造性、個性化を引き出すという方向、大きく言えばその方向で成果を上げていただきたいと、こう思っておることだけ申し上げさせていただきます。
  60. 加戸守行

    政府委員(加戸守行君) ただいまの定数の考え方につきましての御質問がございましたので補足させていただきますが、教職員定数改善につきましては、先生御承知のとおり学級編制の改善ということで四十人学級に相当するものの定数も計画に入っているわけでございまして、それはそれとして当然に四十人学級を進めますれば、必然的に教職員が必要になるわけでございますから、この四十人学級に関します部分は四十人学級の改善に充てられるというわけでございます。  一方、例えば初任者研修に対します指導教員等の定数でございます。これは二通りございまして、一つは定数によって措置するものと、一人配置校につきましては非常勤講師等によります定数外の措置という考え方で現在試行が行われております。その定数分につきましては、あくまでも先ほど申し上げましたように研修等定数という中で対応させていただいているわけでございまして、これはいわゆるその他の改善増という形で、ひもが完全に色がくっついているわけではございませんが、初任者研修の指導に当たっていただく、あるいは初任者が学校を離れます場合の穴埋めの授業をしていただく等のために措置をさせていただいているわけでございますので、基本的にはそういった形に使われるわけでございますが、もちろん一〇〇%その業務にのみ従事するというわけではなくて、その他校務分掌等の仕事をしていただくわけでございまして、そういった点ではその他の改善増の中で教職員がふえた中の一要素であるというぐあいに御理解いただければと思っております。
  61. 山本正和

    山本正和君 実は先週の土曜日に山形の方へ参りまして、お母さん方と随分いろいろ話をしたんです。そうしたら、先生が、初任者研修だと思うんですけれども、新任の先生が二学期になって突然一月いなくなって、かわりの先生になってしまったと。本当に一番大切な二学期に突然いなくなったと、一体どうなるんだろうかと、こういうふうな話が出てまいりまして、これは必ずしもそのことで行ったかどうかわかりませんですけれども、明らかにしかし校長の許可を得て、あるいは指示に基づいていないわけですね、一月間。それで代替の教員が来ていると。問題は、各県ともこの初任者研修をどうしていったらいいかということについてはそれぞれ、本当にどうやったら若い先生方の力をつけるためにいいのかと各県なりに考えているわけですね。ところが、そのときに定数全体の中にぼんと入りますと、これは例えば六学級とか七学級とかいう小規模校に加配した方が学校運営上いいという問題もあれば、あるいは困難校に対して加配した方がいいという問題も、それぞれの地域の実態によって違うわけですね。わからなくなるんですよ。ですから、文部省としては、あなたの県にはこれだけの定数は新しい先生方の分として枠づけしてありますよということが明確にならなければこれは困るし、またそれによって初めて各県は各県としての対応ができるだろうと思うんです。ですから、その辺の問題、数字はひとつこれから御検討いただいて、何とか、まだ決定されるまで期間等あると思いますので、ひとつ御検討いただけますかどうか、その辺はいかがでございましょうか。
  62. 加戸守行

    政府委員(加戸守行君) 先生御承知のように、定数と申しますのは各都道府県単位あるいは指定都市もございますけれども、その任命権者単位でその都道府県内の教職員の定数というのを積算いたしまして配当数が決まるわけでございまして、したがって文部省から県に定数を示達いたします場合には、これは四十人学級相当分、この場合は教頭代替です、この場合は研修等定数あるいは事務職員、養護教諭という形で配当いたします。現実に教員につきましては、配られましたものを県がどのように学校に配置するかということになりますと、その総定数の中で各学校の必要性を考えながら配当するわけでございますので、色がついて、この教員は同若輩教員である、あるいは研修定数である、あるいは教頭代替定数であるという形で、截然とその人一人に色がついているわけではございませんので、そういう意味では先ほど申し上げましたように、おおむねそういった要素で県は配分をされるわけでございますから、例えば初任者研修の場合でも、県に配当された人数が例えば十人といたしましても、必要によって十二人県が自分の県内の定数の中で、例えば教頭代替定数二名を回して初任者研修に回すというようなこともあるわけでございますので、そういう意味ではこの人がこういう形で配当されたということを決めるのは極めて難しいかと思いますが、先生の御趣旨に沿いますように、本来の意図に沿って定数の配分が各県で行われるようにということは指導させていただきたいと思っております。
  63. 山本正和

    山本正和君 ちょっと半分ぐらいわかったような、まだ微妙な部分があるんですけれども、要するに今のお話は、各県がそれぞれ実態に合わせて初任者研修の趣旨を生かしてかなり柔軟に使っても構わないと、こういう判断に立っているということでよろしいですね。
  64. 加戸守行

    政府委員(加戸守行君) それは県内の事情によりますけれども、あくまでも初任者研修に対します指導教員の加配の問題につきましては、その加配の必要性があるかないかということがまず前提としてあるわけでございますから、配当数が決まりました場合に、実は初任者研修と称して定数をとりながら、初任者研修には使わないで別の要員で配当されるというようなことは余り望ましいこととは考えておりません。ただ、私申し上げましたのは、若干のその運用の幅というのは当然、先ほど申し上げましたように、個々の色がついているわけではございませんから、その趣旨を踏まえた若干の弾力的な対応は当然あり得るだろうと思います。それはあくまでも決められた定数の範囲内で各県の中の応用動作であろうと思っております。
  65. 久保亘

    久保亘君 余りいろいろあなたが説明しよるとだんだんまたおかしくなるんで、要するに教職員定数改善計画と初任者研修制度と称するあなた方今強引にやっているその人員とはこれは本来関係のないものだ、そういうことで、あなたさっき言われたことでよろしいんですよね。いやいや、それは要らない、答弁は。  それから、これはぐあい悪くなるといろいろ解釈されるといけないので、先生がどういうふうに、各県がその人をどういうふうに現場で生かして活動してもらうかという問題ともそれは別の問題で、だからそのことははっきりしておいてもらいたいと思います。  時間がないので、それじゃ次へ行きますが、義務教育費国庫負担制度について、ここ数年人件費、とりわけ事務職員、栄養職員の国庫負担について、これを見直そうとする考え方が財政的な見地から非常に強く提起されております。しかしこの問題については、これまで歴代の文部大臣はこの点に関してはかなり明確な態度をおとりになってきたと思うのであります。事務職員や栄養職員が学校教育における基幹職員としての役割を持つということについての理解、そしてこれらの人件費については、義務教育の根幹を揺るがすような制度の改正は絶対に文部省としては認められないというお立場は、この六十三年度の予算編成に当たっても強く貫いていただけるものと思いますが、文部大臣のお考えをお聞きしておきたいと思います。
  66. 中島源太郎

    国務大臣中島源太郎君) 御指摘の学校の事務職員、栄養職員の方々、いずれも学校の基幹的な職員であるという認識に立っております。文部省といたしましては、当然義務教育費国庫負担制度の対象にするという考えで来年度予算にも要求をいたしておるところでございまして、その認識は貫いてまいる所存でございます。
  67. 久保亘

    久保亘君 大蔵省にお聞きしておきたいのは、昭和六十一年度の予算編成期におきまして、当時の竹下大蔵大臣と古屋自治大臣との間に取り交わされた覚書がございますね。この覚書において「暫定措置の期間内においては、国・地方間の財政関係を基本的に変更するような措置は講じないものとする。」ということになっておりますが、この覚書は当然に六十三年度の予算編成に当たっても守られるものと私どもは理解をいたしておりますが、よろしゅうございますか。
  68. 伏屋和彦

    説明員(伏屋和彦君) お答え申し上げます。  ただいまの御指摘の件につきましては、私ども当然そのことを頭に入れながら六十三年度予算編成に当たってまいりたいと思いますが、ただ全体の財政事情が厳しい状況にございますので、よくいろいろな点を総合勘案して対応してまいりたいと思っております。
  69. 久保亘

    久保亘君 文部省としては六十一年度の大蔵・自治のその覚書もございますことですし、また歴代文部大臣が一貫してこの事務職員、栄養職員の国庫負担制度に手をつけることは義務教育の根幹にかかわる問題であるという立場を、強く貫いておいでになりましたことでございますから、これは新しい文部大臣におかれても特にその点については強い姿勢をもってこの問題に取り組んでいただいて、義務教育費国庫負担制度に改悪のメスを入れられることがないようにやっていただきたいと思います。  なお、大蔵省においでいただいておりますからこの機会に少しお尋ねしたいことがございますが、財政審に大蔵省の考え方が述べられた中に来年度の大学授業料の値上げの問題がございます、また教科書無償制度の見直しの問題もございますが、これらの問題についてまず文部省はどうお考えになっているのか。  特に国立大学の授業料を大幅に値上げをするというこの動きが具体化されるということになれば、私学助成が年々切り下げられていく。最近少し、本年度は少しだけ切り下げられてきた前年度よりはちょっと上がったということがありますが、しかし、ピーク時に比べますとかなりダウンしている状況がございます。私学に対して学費の負担を余り増額しないようにという文部省指導の裏づけとなるものは私学助成であり、国立大学の授業料の抑制であると私は思うのであります。  私学助成は、当初この制度がつくられますときに、法律がつくられますときに、経常費の二分の一補助を目標としてこれは法律が制定され制度が発足したはずでございます。ところが、今日においては出発時点の約三割の補助から二割以下に落ち込んでおります。だから、そういう状況の中で今度の国立大学の授業料値上げが具体化するというようなことになりますと、当然に私学の学費負担がまた大幅に上がってくるおそれなしとしないのでありまして、この点についてまず文部大臣のお考えを承っておきたいと思います。
  70. 中島源太郎

    国務大臣中島源太郎君) 幾つかの御指摘がございました。  国立大学の授業料につきましては、国立大学の使命、教育の機会均等の確保等に係る極めて重要な問題でございます。これは諸般の状況を勘案しながら各方面の意向をこれから十分に踏まえて対処してまいりたいと思っておりますが、同時に、私学助成、確かにおっしゃいますように六十二年度予算では前年度アップ、来年度もさらにアップ要求をしてまいるつもりでございますし、私学はその建学の精神からいたしましても、またその私学の役割重要性ということは十分認識をしておるつもりでございます。厳しい財政事情ではありますけれども、総合的に勘案いたしながら私学助成の確保に鋭意努力をしてまいりたいと、こう思っております。  それから、御指摘の教科書無償制度でございますが、これは私どもとしてはぜひ堅持をいたしてまいりたいと、こう思っております。先生御存じのように憲法第二十六条に掲げる義務教育無償の精神を広く実現する施策でもございますし、また臨教審答申におきましても、「当面、義務教育段階の無償給与制を継続する。」と、こう指摘をしていただいておるわけでございますので、これは私どもとしては絶対に堅持をいたしてまいりたいということで努力をいたします。
  71. 久保亘

    久保亘君 教科書無償制度の問題については、大臣の御見解を伺って十分理解できました。ぜひ貫いていただきたいと思うのでありまして、これはかって文部大臣が参議院文教委員会において、教科書無償制度は社会保障ではない、教育である、こういうことを述べられたことがございます。今の大臣の御見解も憲法に基づくそのような立場を明らかにされたものだと考えておりまして、その点については私も全く賛成であります。というところで、ひとつ大蔵省、授業料値上げや教科書有償の考え方を財政的な立場からいろいろとお考えだと聞き及ぶのでありますが、これらの点については、国の文教政策の基本にかかおる問題として文部省考え方を十分に尊重されるものと考えますか、いかがですか。
  72. 伏屋和彦

    説明員(伏屋和彦君) 先ほども申し上げましたように、六十三年度予算編成に当たりまして、ますます厳しい財政事情のもとにあるわけでございます。したがいまして、歳出全般にわたりまして六十三年度の予算という観点から、いわば聖域を設けることなく私どもは節減、合理化、増収策を図ってまいりたい、検討さしていただきたいと考えておるわけでございます。  先ほどの義務教育国庫負担金の見直しもそういう意味では臨調、行革審、それから臨教審でも見直しを言われておりますので、見直しをさしていただきたいと思っておりますし、今御指摘の国立大学の授業料でございますが、これは近年逐次改定を行ってきたわけでございます。行革審の答申でも、国立大学の学生の納付金は適正化を進めるべきであるという答申をいただいておるわけでございます。また、そういう観点からもぜひ御検討をお願いしたいというぐあいに考えておるわけでございますが、今の教科書の問題につきましては、臨教審でこの間答申をいただきまして、無償論、有償論、貸与論、いろいろ臨教審でも答申の中で示された後、今後この問題について検討を続けることとし、したがって、結論が出るまでの間は当面無償を続けるという答申をいただいておるわけでございまして、私どもは、やはりこの教科書の負担あり方につきまして、有償化を含め各方面の御検討をいただきたいと考えておるわけでございます。  いずれにいたしましても、義務教育国庫負担金の話にいたしましても、国立大学の学生納付金の話も教科書の無償給与制度の話につきましても、あらゆる角度から幅広く見直し、検討をさしていただきたいと考えておりまして、関係省庁とよく協議し検討してまいりたいと考えておるわけでございます。
  73. 久保亘

    久保亘君 臨教審の中で議論されたことに、ああでもないこうでもないと言っているから、皆さんがそれぞれの立場で都合よく読めるような文章も多いんだけれども、ちょっといいこともあるんです。それは、教育予算については、一律にシーリングの枠をかけるべきでないという意見が強く出されたということもあの経過の中に残っているんでありまして、その場合に、やっぱり財政当局として念頭に置いていただきたいのは、文教政策のその衝に当たる立場の側から考えられる教育の基本にかかわってくる問題については、文部省のそれらに関する意見を無視して、財政的な理由で授業料や教科書、特に教科書無償制度あるいは教育費の国庫負担制度について財政的な立場からの意見だけで物事を処理するということは、これは国の基本の政策を誤る、私はこう思うんでありまして、そういう意味で、今文部大臣が述べられた私と共通の認識に立った問題が幾つかあります。こういう問題については文部省文部大臣考え方について十分にこれを尊重する姿勢がなければならぬ、こう思うんでありますから、その点をあなたにお聞きしたんです。しかし、あなたにここでまたそのことの御答弁を求めることは大変、あなたのお立場上いろいろあろうかと思いますが、きょうはそのことを篤と胸に入れてお帰りいただけば結構だと思います。  それでは時間が非常に短くなりましたので、どうしても本日伺っておきたい二つのことについて。  一つ教育課程審議会のまとめと称するものが十一月二十七日に公表されましたが、このまとめを一般的にマスコミでは、文部省のねらった戦後教育の総決算を一挙になし遂げようとするものだという表現をいたしております。これがしかも非常に短い時間に国民の理解を求める配慮や努力がないままに行われた、こういう批判が強くございます。特に、かつて文部省の教科調査官として仕事をされた協力者会議と称する会議の主要なメンバーたちが、このまとめの公表に前後して委員を辞任するということが相次いで行われております。このことは我が国のこれからの教育考えてまいります場合に非常に重大な問題だと思うんであります。  また報ぜられるところでは、昨年の九月に教育課程審議会の委員を辞任された佐藤愛子さんは、この委員会は「場違いな感じだった。各委員が言いっ放しで、反論しようと順番を待っているうちに次のテーマに移っていた」、これではとてもこの会には自分はなじまないということでおやめになった、こういうことも報ぜられておりますが、この教育課程審議会というのは文部省の意図どおりに、ここを一つの隠れみのにしながら、文部省は長年温めてきたものを一挙にやろうとされているのではないかというこの危惧に対して、何か文部省から言い分がおありでしょうか。
  74. 西崎清久

    政府委員(西崎清久君) ただいま教育課程審議会の審議のまとめに関しまして何点が御指摘がございましたが、まず第一点の今回のまとめのねらいでございます。御指摘によりますと、戦後教育の総決算的なねらいがあるのではないかという御指摘でございますが、審議のまとめの「基準の改善のねらい」にございますように四つの柱、「豊かな心をもち、たくましく生きる人間の育成を図ること」、以下三つのねらいをもとといたしまして、今後二十一世紀を目指した教育課程のあり方について、教育課程の基準のまとめを行っておるというふうに私どもは理解をしておるわけでございます。  それから第二点の少し拙速ではないか、急ぎ過ぎではないかという御指摘でございます。この点につきましてはもう約二年余、教育課程審議会はさまざまな総会あるいは分科会等をやっておるわけでございます。総会は二十回ございます。課題委員会は二十五回やっております。中間まとめからのいろいろな分科会も、初等、中学あるいは高等学校に分かれてそれぞれ十数回ずつやっておるわけでございまして、この点につきましてもかなり審議は尽くされておるというふうに理解しておるわけでございます。  それから第三点といたしまして、社会科に関連しての地歴科、公民科、仮称でございますが、その分割の問題で、委員の方と申しますよりは協力者でございます、学習指導要領の作成に関する協力者という形で教育課程審議会とは別のお願いをしておるわけでございますが、その中のお二人の方が委員辞任の届けをお出しになったということは御指摘のとおりでございます。ただ私どもは、現在審議のまとめの段階でございますし、教育課程の問題はやはり広く教育学の方々、あるいはそれぞれの専門の方々、現場の校長、教員の方々の御理解を得て、これから十分に実施されるという性格のものでございます。そのお二人の方にも現在なお引き続き御協力をお願いしたいということで、お願いをしておる段階でございまして、まだ辞表の受理はいたしておらないということでござます。  それから最後の御指摘の、過去にお一方教育課程審議会の委員を辞任された方があったわけでございます。御発言の内容は詳細私承知しておりませんが、私どもが承知いたしておりますのは、住所地が非常に変わって遠方に、北海道であったと思いますが、変わられたと、活動がそっちの方へ移ったということ、本来の活動をしなければならないいろいろな時間的な問題もある、こういうふうなことを承って、それでは辞任もやむを得ないという形で受理をしたということを記憶しておるわけでございます。総じて申し上げますれば、今月末でございますけれども、教育課程審議会の答申をいただきたいというふうに思っておりますが、教育課程審議会は、それぞれの専門的な立場先生方が十分な審議を尽くされて、現在審議をいただいておるというふうに私どもは理解しておるわけでございます。  以上でございます。
  75. 久保亘

    久保亘君 お忘れでないと思うんでありますが、六十年の九月に教育課程審議会の第一回審議会で諮問が行われました際に、当時の松永文部大臣がごあいさつの最後にこう言っておられます。「審議の過程においては、国民の理解と協力が得られるよう種々の御配慮をお願いしたい」、この「種々の御配慮」はどのように教育課程審議会はなさったのでしょうか。私が不思議に思いますことは、最も近い立場におられたはずのその協力者会議委員が、これじゃとてもということでおやめになる。ましてや、国民の理解と協力なんというのは一体どこでどういうふうにおやりになったんだろうか。  それから、同じ日に、補足説明に立たれた初中局長は、これは今の次官がな、「高等学校にあっては、教科・科目の多様化と生徒の科目選択を多様なものにしていく方策について御検討をお願いしたい」、こういうふうにおっしゃっておるんでありまして、なぜそこで世界史が必修になっていくということになるのか、これとどういうふうに結びつくのか、そういう点について私ども非常に釈然としないのであります。だから今後、この前のまとめから答申に至る間に、何か国民の理解と協力を得られるような手段がとられるのかなと思っておるんでありますが、恐らく十二月二十四日には答申が行われるというふうに聞いておりますので、そういうことはないままこのまとめが答申にかわって出される。文部省はこれを足場にして、文部省がこれまでお考えになっていたことをどんどん今度は具体的に進めていかれる。こういうことになれば、今文部省責任ある立場におられる方々は、来世紀にわたって大変重い責任を背負っていかなければならぬことになるんじゃないかと思うんですが、いかがですか。
  76. 西崎清久

    政府委員(西崎清久君) 第一点の教育課程審議会にかかわるいろいろな御意見の反映の問題でございますが、教育課程審議会はいろいろな会議がございまして、その都度その内容を逐一公表し、国民の皆様にお知らせするということは、審議会の構成その他の問題からいって難しい問題でございます。したがいまして、昨年の十月の段階で審議にかかわる中間まとめ報告という冊子を出しまして、これで世の中でいろいろな御意見があろうかということで皆様方からの御意見をいただいたわけでございます。そして、その御意見は中間まとめの以後においてもたくさんいただきましたし、以前もございました。それらは教育課程審議会の委員の方々にずっと配付いたしまして、こういう方面からこういう意見があるということは、それぞれ委員の方々お一人お一人が承知していただきながら審議をしていただくというふうなことにいたしておるわけでございます。  それから第二に、審議のまとめ、先月出さしていただいておるということでございますが、これにつきましても新聞世論、それぞれの投稿、それから会長あてのいろいろな御意見を寄せられるということが現在も行われておるわけでございます。これから初等分科会、中学分科会、高校分科会とあるわけでございますが、寄せられました意見は十分分科会等にもお配りをし、委員の参考に供していただき、それぞれのお立場でまた分科会審議、総括委員会等、総会もございますが、そういうことで審議を尽くしていただきたいというふうに思っておるわけでございます。  それから第二点の、高等学校段階における選択の問題、個性に応じた教育の問題。これは御指摘のとおり、文部省におきましてもあるいは教育課程審議会においても方針としておるところでございます。ただ、高等学校におきましても先生案内のとおり、必修科目ということがあるわけでございまして、この必修科目につきましては、過去におきましては六十単位以上の必修科目があった時代がございます。それを四十単位台に下げ、そして現在は三十二単位でございます。この点については教育課程審議会で随分議論がございました。この点はやはり基調は変えないと、しかし時代の要請ということで、高校生段階で必要なものとして与えるべき教育課程、教育内容はやはり必修として与えるべきではないかという議論も片やあったわけでございます。  その端的な例としたしましては、家庭科の男子、女子共通の履修というふうな問題で、男子にも四単位の履修をさせる必要がある、これは時代の要請でございます。そういたしますと、体育との関係でやはり二単位がふえるわけでございます。その関係で申しますと、家庭科の関係では三十二単位が三十四単位になる、これは一つの端的な時代の要請でございます。  それからさらに、今御指摘世界史につきまして、国際社会における今の日本立場考えれば、小中でやっていない世界史、中学で若干背景としてやっておりますが、それはやはり高校生段階で履修させる必要があるのではないか、これは時代の要請であるということで、地歴の問題、公民科の問題は省略いたしますが、そういう観点での世界史の必修というのは一つ時代の要請として、やはりこれは若干単位がふえても必要なものとして教育課程審としては判断を下そうというところが、現在審議のまとめのお考え方であるというふうに私どもは理解をしておるというふうに申し上げたいと思います。
  77. 久保亘

    久保亘君 中間のまとめと今度のまとめとでは非常に大きく変わっておりますね。特に高校における社会科の解体・世界史の必修というのは、中間のまとめの段階ではそんなにはっきり出されていたわけじゃないんじゃないでしょうか。この高校社会科の解体・世界史の必修という考え方は、このまとめを出す直前になって非常に急がれたというような状況が、私どもその真相を確かめることはできませんけれども、いろいろと報道されております。政治絡みのことも書かれております。そういうことがあるとすれば大変遺憾なことだと思っております。  私も短かったけれども高等学校で世界史を教えてきた教師の一人でありますから、非常に深い関心を持っております。そういう意味から、今度は教育課程審議会のこの委員の方々の顔ぶれを見てまいりますと、高等学校教育分科審議会というところには、高等学校で実際に今日世界史の授業をしている人、社会科の授業をしている人は一人も含まれていないのでありまして、このメンバーは大学教授が八名、高等学校長が五名、全部東京の高等学校の校長であります。盲学校の校長が一人、それから文部省だけではないのですけれども、行政機関が五名。その行政機関の五名のうちの一人は、かつてあなた方の上司であった初市局長、文部事務次官を務められた方であります。この方が座長をされております。そのほかに財界から諸澤さんの補佐をする立場の人で諸井さんが入っておられます。そういう構成でありますね。私は教育課程審議会の委員、この方々はそれぞれ非常にすぐれた見識をお持ちの方だということは、私はそのことに批判を加えるものではありませんけれども、なぜ現に高等学校で社会科を担当している者が一人もこの中に含まれないのであろうか、これは大変不思議なことであると思うのであります。中学校の方には中学校の教諭が一名、初等教育分科審議会の方には小学校の教諭が一名は含まれております。それでも大部分が校長、行政、それから特に大学の学長を多数含む教授の皆さん方がこの過半数を占めるという形で構成をされておりまして、私はこの教育課程審議会が今回のようなまとめをなさるについては、この審議会にも問題があるのではないかと思っておりますし、ましてや国民の理解と協力を得られるような種々の配慮と、文部省みずからが大臣の発言において審議会に委嘱しておきながら、そのような手だては積極的には何ら講ぜられておらない。中間のまとめは発表したから意見が来たものは伝えた、それでは私は、日本教育の根本を変えることになるかもしれないこのような改革について余りにも拙速であり、また官僚主義的やり方ではないだろうかと思うのです。きょうはもう私の持ち時間がありませんので、意見だけ申し上げておきます。  なお、この中で日の丸、君が代を国旗、国歌として強制をする立場をおとりになり、これを教育課程の中にはめ込もうとする考え方を今回明確にされようとしているその背景は一体何であるのか。私どもは、これらの問題については、十分な国民的議論を深める必要がある問題であって、これを文部省教育課程審議会の議を経たという形をとって、一挙にそういうふうにおやりになることが果たして妥当なのであるかどうか、この点についても深く疑問を持っているものですが、この点については文部大臣、ぜひお答えをいただきたいと思います。
  78. 西崎清久

    政府委員(西崎清久君) 前段の方で一言お答えいたしたいわけでございますが、地歴分割等がにわかに審議のまとめの前段の段階で決められたという点でございまして、御指摘の点でございまして、これは報道等で詳しく御承知いただけないような現在事態でございますので申し上げたいわけでございます。  社会科の問題というのは中央教育審議会、臨時教育審議会等でもいろいろその構成のあり方について問題があったわけでございますけれども、六十一年でございます、昨年の三月から第三委員会と申しまして社会科の委員会が数回にわたって開かれたわけでございます。中間まとめの前の段階でございますが、この社会科に関する第三委員会で、社会科のあり方というのが相当突っ込んで議論がされた。そこで議論が両論ございまして、先生指摘のように、中間まとめでは両論併記になったと、こんな経緯がございます。  それから、さらに専門家も入ってオブザーバーという形でございますが、社会科の科目に関する委員会で議論をいたしました。そこでは先生指摘のような専門家の方も多数入っておられますのでいろいろ議論がございまして、ここでも結果としては両論併記になって、高校分科会の方で結論を出してほしいということで高校分科会に上がった。高校分科会で議論をして最終のところが大きく報道されたものでございますから、高校分科会だけで決めてしまったのではないかということが世の中の理解にあるので私ども非常に残念でございますが、教育課程審議会のお立場としては、かなりの時間いろいろ慎重に議論をしてきたというふうなおつもりであろうかというふうに推察するわけでございます。  それから、日の丸につきましては大臣のお答えがございますが、教育課程審議会の立場としては、やはり従来から日本国民としての自覚を育てる、国際社会において信頼されるに足る日本人の育成と、こういう形で国旗、国歌の問題を扱うということを審議経過の前段の方でも書いておるわけでございまして、今回の課程審のまとめも、そういう立場で学校教育における適正な扱いという内容をお出しいただいておるというふうに私どもは理解しておるわけでございます。  以上でございます。
  79. 中島源太郎

    国務大臣中島源太郎君) 教育課程審についての御指摘でありますが、この答申は今月末いただくことになっておりますので、私どもは審議のまとめを拝見をいたしておるという段階でございますので、細かいあれは御遠慮すべきなのかもしれませんが、経過については今局長が申し上げたとおりでございますが、私としては、この課程審の審議は十分それぞれの学識ある方々が意を尽くしていただいたものと受け取っておる次第でございます。答申をいただきましたならば、これを得まして適切に対処いたしたいと、こう思っておりますが、概して審議のまとめを拝見いたしましたところ、適正なものと理解させていただいておるところでございます。  なお、国旗、国歌につきましては、これは当然のことながら、拝見をいたしますと、我が国の国旗、国歌、それからそれぞれの国の国旗、国歌と、こういうことでありまして、日の丸、君が代だけではございませんで、それぞれの国の成り立ち、それから我が国でも現在の日の丸、君が代を国旗、国歌と位置づけておるということを今までの国会でも答弁をさせていただいておりますが、この意義と同時に、それぞれの国の国旗、国歌の意義を理解し、尊重する。おのれも責任を感じ、自覚をし、そしてそれぞれの立場を尊重すると、こういう立場を貫いていただくとするならば、これは結構なことではないかと、このように理解をいたしております。詳しくは答申を得ましてからよく検討したいと思います。
  80. 久保亘

    久保亘君 時間が来ましたので、最後にもう一つだけ私の意見を少し申し上げてお聞きしておきたいんでありますが、最近、教育委員会の活性化に関する調査研究協力者会議文部省には協力者会議というのがあちこちにありまして、このごろ新聞で私教えてもらうのでありますが、この協力者会議というのが、随分文部次官とかいろいろ文部省の幹部でおられた方々が座長その他でお座りになっておるものが多うございます。この協力者会議というのが何だろうかと思って調べてみましたら、この教育委員会の活性化に関する調査研究協力者会議というのは、教育助成局長の私的諮問機関だというふうに聞いております。間違いでしたら訂正してください。そうすると、そういう局長の私的諮問機関がまとめたものに基づいて文部省が通達をお出しになったり法律の改正を準備されたりして、そしてそれは臨教審の答申に言う教育委員会の活性化を目指すものだということをおっしゃっているのでありますけれども、私はこのまとめを読みまして、これは教育委員会の活性化ではなくて、日本教育行政を縦系列で完全に指導監督の関係に置こうとするものだという感じがしてなりません。臨教審も先ほど申し上げましたように、時々よいことを書いておるのであります。臨教審の答申を見ますと、「戦後、教育における地方自治への大きな転換があったにもかかわらず、依然として、戦前の国から与えられた教育という意識が教育関係者の間に根強く残存し、自分のことは自分の責任で、身近な事は身近な機関の責任で処理するという自治意識が未成熟なため、制度の本旨が十分に生かされていない」、こう書かれているのでありまして、私は、教育委員会の非活性化をもたらしたものは教育委員の公選制をやめたことにある、こう思っておるのでありまして、これを今文部省が法改正や通達によって、文部省指導監督権限を地方の教育行政になお一層強化をしようとするような考え方があるとすれば、これは活性化の本旨を誤るものではないだろうか、こう考えております。これらの問題につきましては、また機会を得て意見を申し上げ、文部省の見解もただしたいと思っておりますが、もしこのことに対して文部大臣、御意見がございましたらお聞かせいただいて、私の質問を終わります。
  81. 古村澄一

    政府委員(古村澄一君) 突然の御質問でございますので担当局長がおりませんが、私、官房長でございますのでお答え申し上げたいと思います。  御指摘のとおり、教育委員会の活性化を図れという臨教審の答申、これを実施するために、文部省独自で発想をしてもいいわけでございますが、文部省としていろいろな有識者の御意見を聞いて、そうしてどうすれば活性化できるかという方策を探ったのがこの活性化委員会であろうかと思います。したがってその結論といいますか、そういった御意見を得た上で、活性化に対しての方策を文部省として決めていくというのが今の段階ではなかろうかというふうに思っております。
  82. 一井淳治

    一井淳治君 学校給食の関係で御質問をさせていただきたいというふうに思います。  米飯給食につきましては、文部省の体育局長さんからの通達等がございまして、文部省としてもこれの普及を図っていくということにされておるわけでございます。米飯給食は子供も好むし、米の消費拡大にもつながるし、また栄養もすぐれておる、そうしていろいろと教育上有意義であるということが言われておりまして、よいことずくめだというふうに思うんですけれども、その割に目標の週三回にも達しないということで、普及がいま一歩ではないかというふうに思うわけでございます。この米飯給食が皆さんから期待されておるにもかかわらずいま一歩であるという最大の原因はどのあたりにあるんでしょうか。
  83. 國分正明

    政府委員(國分正明君) 米飯給食につきましては、御指摘のとおり学校給食におきます食事内容の多様化を図りますとか、あるいは米飯の正しい食習慣を身につけさせるというような教育上の大変な意義を持っております。また一方で、我が国の食糧事情等も考慮いたしまして、昭和五十一年度から学校給食に米飯給食を導入したわけでございます。当時の目標は週二回というのを目標に行いまして、導入当時は週〇・六回であったかと記憶いたしますが、六十二年度現在では週平均二・二回にまで、これが当初の目標を一応上回ったという形になっておるわけでございますが、ただ、まだまだ普及を図る必要があるということでございますけれども、いろいろな数字、データを分析いたしますと、やはり一部の大都市、政令都市でございますとか、あるいは県庁所在地の都市等において米飯給食の実施状況が十分でないということでございますので、私ども今後全体的な普及とともに、特に大都市における米飯給食の普及というものに努めてまいりたいというふうに考えております。
  84. 一井淳治

    一井淳治君 ただいま御回答も抽象的であったわけでございますけれども、農水省の方でも米飯給食の普及については補助金制度を設けていろいろと推進させておるところでございます。今お話がありましたように、やはり大都市部の設備の整備ということが非常に米飯給食を推進する上に重要ではないかというふうに思うわけでございますけれども、そのあたりにつきましては文部省の補助制度もあるようでございますので、さらにこの米飯給食を普及していただくように、特に最近はお米の消費拡大ということが非常に重要な時期でございますので、その点特に要望をいたしたいと思いますけれども、いかがでございましょうか。
  85. 國分正明

    政府委員(國分正明君) 米飯給食のさらなる普及という観点からは、私ども当面、全体的には週二・二回という状況になりましたけれども、既に二回やっているところについては週三回、あるいはまた、まだ週二回になってないところは週二回、十分でないところは週一回でもという形で全体の米飯給食の普及を図っているわけでございますが、御指摘の大都市周辺におきます米飯給食につきましては、やはりまず何よりも御指摘の炊飯施設、設備というものを十分整備する必要がございますので、私ども今後とも、これらの補助制度もあるわけでございますので、大都市における米飯普及がなされますように指導をしてまいりたいと、こんなふうに考えております。
  86. 一井淳治

    一井淳治君 もう一つミルクの給食でございますけれども、学校給食において牛乳の飲用の促進を図るということは、これは常々行われておるところでございまして、特に土曜日の牛乳の飲用の普及と、そして学校行事の日にも飲用するということで、年間日数増を図るということが農水畜産局長さんともにいろいろ促進の努力をされておるところでございますけれども、牛乳というのは完全な栄養食品でございまして、生徒の体位、体力の向上にも非常に役に立ちますし、また非常に最近厳しい酪農の発展のためにもミルク給食の充実ということが大切ではないかというふうに思います。調べてみますと、生の牛乳の消費の一四%ぐらいが学校給食に充てられているというふうなことが実情として出ておるようでございますけれども、土曜日の牛乳飲用の普及について一層努めていただきたいというふうに思うわけでございますけれども、いかがでございましょうか。
  87. 國分正明

    政府委員(國分正明君) 牛乳は御指摘のとおり、特に成長期にございます児童生徒にカルシウムあるいはビタミン剤といったようなものが不足しがちでございますので、望ましい食習慣の形成を図る上でも欠かせない食品であるということから、全体としてその飲用を図ってきたところでございます。御指摘の土曜日の牛乳飲用の問題につきましても、かつて文部省と農水省との連名の通達で、その促進を図り指導してきたところでございます。  現在の状況は、土曜日の牛乳飲用を行っております学校は、牛乳飲用実施校の約二六%という状況になっておりますが、文部省としては、御指摘のように、牛乳摂取の重要性にかんがみまして引き続き、ただ地域の実情もございますので、それらも踏まえながらその推進指導してまいりたいと、こんなふうに考えております。
  88. 一井淳治

    一井淳治君 四校に一校では非常に寂しいので、何とか二校に一校ぐらいは土曜給食をしているというふうな状況に早く持っていっていただきたいというふうにお願いいたしたいと思います。  次に、給食の材料の納入の問題でございますけれども、給食材料の納入業者の選定や納入方法について相当の配慮がないと、粗悪品が納入されたり、あるいは不当に高い価格で供給を受けるというふうなことが起こってまいります。本来はよい品質の商品を安く納入させるというために、業者の個々の人たちが自由競争のもとに努力をするというのが最も推奨されることだと思います。これは基本原則であると思いますけれども、しかし、市町村側では行政事務の簡素化ということから、この納入業者の窓口一本化ということを考えておられる。これももう理解できないことはないわけでございますけれども、納入業者側が窓口一本化のためにつくった業者団体の内部で共謀などしますと不当な結果が発生いたしますので、不用意な窓口一本化のための施策というものは好ましくないというふうに思います。  具体的な例を挙げて御説明いたしますと、岡山県の倉敷市で食肉の納入事例がございますが、これは文部省の方でも岡山県を通しまして一応の御調査をいただいておるように聞いておりまして、しかし、私どもでさらに調査いたしますと、非常に深刻な問題があるということがわかりましたので、ここで説明さしていただくわけでございますけれども、倉敷市では食肉の納入の窓口一本化のために肉屋さんの協同組合が結成されております。ここでは組合内部で入札を行いまして、入札によって最も安く納入する業者に納入権を与えるというふうなことを決められた歴史があります。  具体的に申し上げますと、例でございますけれども、倉敷市とその協同組合との間では年間を通して、例えばこれは例でございますけれども、豚肉の並みはキログラム九百円でしょうということを年間を通して納入金額を決めるわけでございますけれども、今度は協同組合内部では入札をして、最も安い業者、例えば七百円で落とした業者が納入権を取得する。そういたしますと、市の方は九百円払うけれども、子供の口には余り品質のよくないと百円の肉が提供される。その上に差額の二百円についてはいわゆる分配をするという不公正な問題も起こるわけでございます。これについてはかなり批判がありまして、現在では表立ってはできなくなっておるようでございますけれども、しかし、この窓口一本化が継続しておりますので、依然として組合内部での談合と、そして時価より相当高い納入が続いておるという状況があるようでございます。一般にスーパーではかなり商品が安く売られておりますけれども、このスーパーよりも平均一六%ぐらい高く市には納入されておるという報告がございますし、たまたま談合に加わっておる業者が納入できなくて、ほかの業者が臨時に納入したということが昨年起こったようでございますけれども、そのときに市の方ではキロ当たり千四百円払ったと。しかし、業者の方はキロ当たり九百円でよろしいということで、五百円ほど市の方が高かったということも報告されております。  最近これ私が調べたんですけれども、倉敷市ではキログラム当たり豚のスライス、ミンチ肉が千八十円、これは上という品質でございますけれども、並みが九百円で納入されておりますけれども、最近この豚肉の市場は、卸値段がキログラム当たり五百円を割っているというふうに聞いておりますけれども、仮にこれに三〇%の口銭を乗せても五百円台から六百円台で納入できるはずでございますけれども、市の購入価格は千八十円から九百円ということで、やはり高過ぎるんじゃないか芝いうふうに思います。結局、常時公開をして、適正な業者から適正な価格で納入されるようなシステムがありますといいんですけれども、窓口一本化をして団体と協調するというふうになりますと、そういうふうな問題が起きてまいります。それを団体内部ではその納入した業者から手数料を集めまして、七人の役員がいるようですけれども、別に給食肉の納入以外に業務がないようでございますけれども、合計三百三十六万円の報酬を取ったり、あるいは交際費や旅行費を計上して台湾の方へ旅行したりというふうなことでお金を使っている。結局これが市の給食会から払われるお金を使っているわけでございますけれども、そういうふうなことは父兄の負担にはたえ得ないんじゃないかと。そして父兄の負担にたえ得るような公正な納入をやろうというふうに言って、入札や談合に反対する組合員もおるわけですけれども、そういった組合員は除名されて、排除されてしまうというふうなことも起こっているようでございます。  給食事業というのは非常に長い歴史でございまして、いろいろなこのきれいごとでは済まないこともあるとは思いますけれども、やはりこういう状態が長く放置されていることはよくないんではないかと思いますが、この問題につきましては、今すぐここで御答弁というわけにはいきませんと思いますので、こういう事例もありますので、さらに調査をいただきたいというふうにお願いしておきたいと思います。  本論の質問に戻りますけれども、給食は結局は父兄の負担とそして税金の援助のもとに実施されるわけでございますから、父兄や納税者の批判に十分たえ得るような公正な納入方法、風通しのいい方法がそこになければならないというふうに思います。  そこで、この業者からの納入の方法ですけれども、個別的な契約、理想とすれば入札方法を、入札方式を原則とすべきではないか。そして仮に窓口一本化をするにしても、内部の公正かつ民主的な運営が十分監視できるような方法を講ずべきではないか、そのように思うわけでございますけれども、この納入方法、納入業者の選定等につきましてのお考えをお伺いいたしたいと思います。
  89. 國分正明

    政府委員(國分正明君) 学校給食が円滑に行われます場合に、当然その前提としてその食材料が良質で、かつできるだけ低廉な価格で、そしてまた安定的に供給されると。またそれの確保を図るということが前提になろうかと思うわけでございます。  具体的にその食材料の購入に当たりましてどうするかということになりますと、実態的にも、例えば学校が個々に購入しているケース、あるいは市町村が一括購入しているケース、あるいは給食会等を設けて購入しているケースもございますし、また一方で、御指摘のような協同組合をつくって、そこから一括購入しているケース、あるいは競争入札でやっているケース、あるいは随意契約でやっているケース、さまざまでございます。こういうことで私どもそれをどういう形で購入するかという具体の問題につきましては、学校給食の実施体である市町村等がやはり地域地域の実情を踏まえまして決定するというのが適当で、一律的にこうあったらいいということがなかなか一概に言えないのではないかというふうに考えております。ただ、その場合に当然法令あるいはそれぞれの市町村の会計規則等々にのっとるのはもちろんでございますし、御指摘のケースのように、談合といったようなことがあってはならないのはもとよりでございますが、それらに留意しつつ、それぞれの地域の実情を踏まえて市町村が決定していくべき事柄ではないだろうか、こんなふうに考えているわけでございます。  なお、具体例としてお示しの倉敷市の場合につきまして、私ども県教委を通じていろいろ実態を伺っているところでございますけれども、現在までのところ、学校給食物資の購入に際して特段問題があったという報告は受けておりませんが、御指摘でもございますので、引き続きその実態の把握には努めてまいりたい、こんなふうに考えております。
  90. 一井淳治

    一井淳治君 給食の原材料の納入につきましては栄養の問題、価格の問題、そして安全性の問題、幾つもの問題が横たわっておるわけでございますけれども、父兄の意見を取り入れるとか、あるいはいろいろ万全な手段を講じて、よりよい給食が実現できるように一層の御努力をお願いしたいというふうに思います。  次に、科学技術庁の方にお尋ねをしたいわけでございますけれども、これはもう言うまでもないことでございますけれども、科学技術に対する研究、特に基礎研究の拡充が重要であることは当然のことでございます。  先ほども質問があったわけでございますけれども、どうも日本では民間研究費割合が非常に多い。国際的に見てもそうでございますし、また民間研究費割合がだんだんふえていくという著しい傾向があるわけでございます。それに対応してか基礎研究費の割合が国際的に相当低位であるということで、改善の必要があるということは皆さんお考えのようでございます。科学技術会議の十一号答申によりましてもその点が強く指摘されておるところであります。  この科学技術会議につきましては設置法三条に、答申については尊重しなくちゃいけないということが明記されているところでございますけれども、さらに科学技術政策大綱、この中にも「研究開発投資の拡充」ということが明記されておりまして、とにかく研究費を公の財政から支出をすることをさらに拡大していかなくちゃならないということはだれの目から見ても明らかではないかというふうに思います。当然やっていただかなくちゃならないことが予算面でなかなか実現できない、これは科学技術庁に限らずほかの諸官庁でも同じではないかとは思いますけれども、特に基礎研究の拡充ということが大事でありますので、その点についてのお考えをお聞きしたいと思います。
  91. 伊藤宗一郎

    国務大臣伊藤宗一郎君) 先生の御指摘、また仰せのとおりでございまして、確認の意味においてお答えをさせていただきたいと存じます。  先ほどあいさつでも申し上げましたけれども、我が国が二十一世紀へ向けまして発展をしていくとともに、国際社会において貢献もしていくというためには、創造性豊かな科学技術を機軸とした科学技術振興を図ることが必要でございます。御指摘のとおりでもあります。とりわけ独創的な基礎的研究の強化が不可欠の課題でもございます。そして、これもまた仰せがございましたが、基礎的研究はいわば公共財的な性格を持っておるものでございまして、国民みんなのものでございます。公のものでもございますので、その推進に当たりましては国が大きな役割を果たしていくことが必要であると認識をしております。このため政府としては、昨年三月閣議で決定をいたしました科学技術政策大綱におきましても基礎的研究の強化を基本方針として位置づけておりまして、今後とも厳しい財政状況のもとではございますが、全力を振るって科学技術予算充実、確保に努めてまいりたい、このように考えております。なお一層の御協力、御支援を賜りたいと存じ上げる次第でございます。
  92. 一井淳治

    一井淳治君 次に、文部省にお尋ねいたしますけれども、基礎研究充実、これは研究の成果を上げるということと将来の研究者の育成ということと両方あると思いますけれども、そのためには大学研究費予算確保が必要ではないか。やはり民間企業だけに任せておけない、大学研究費予算確保が重要ではないかというふうに思いますが、特に地方の大学の様子を見ますと、やはり大学先生方が本気で勉強をして、そして科学技術の前進のために研究をするためには、地方の大学におっただけではだめで、中央の学会とか学会に附属する委員会に出席するということがどうしても必要でございます。最低月に一遍ぐらいは上京しなくちゃならないというのが実情のようでございます。  ところで、現在の予算を大蔵省からいただく際の計算基準によりますと、地方の大学の場合は一回ぐらいしか東京に行けないというふうな旅費の積算がなされておるようでございますけれども、そういう状況が続きますと、地方の大学に優秀な人材が行きたがらない、また地方の大学の科学水準が、研究水準が向上しないというふうになってまいりますので、せめて中央のいろいろな学会等に余り旅費を考えなくても出席できるように、地方の大学予算の確保をしていただきたいというふうに思うわけでございますけれども、そのあたりはいかがでございましょうか。
  93. 阿部充夫

    政府委員(阿部充夫君) 地方の大学の教官の研究推進するために学会等への出席の旅費が大事だというお話は、御指摘のとおりであると私どもも考えておるところでございます。  国立大学の教官の場合には、予算上教官研究旅費というのが計上されておるわけでございますけれども、この金額が大変最近の厳しい国家財政の中で、経常的経費毎年一〇%減という中での対応ということで、大変毎年苦しい対応を強いられてきておるわけでございますが、私ども、先生の御指摘のような趣旨から、これにつきましては絶対に手をつけない、少なくとも削ることはしないということで、大変苦しい中で頑張って、ここ数年来前年同額を確保いたしてきておるような次第でございます。今のような状況の中で、早速明年度から増額というようなわけになかなかまいらないという苦しい点はございますけれども、そういう精神を体して今後とも努力をしてまいりたいと思っておるわけでございます。  なお、この予算の配分に当たりましては地方の大学と、例えば東京所在の大学とはいろいろ差があるだろうということは私どもも念頭に置いておりまして、それぞれの地域の事情等を踏まえながら、一律の配分ではなくて、地方の大学に相当有利な配分をするという方式で現在対応しておるところでございまして、この点も今後とも引き続きそういう方向で対応してまいりたい、かように考えております。
  94. 一井淳治

    一井淳治君 最近、産学官の協同ということで、地方の大学がだんだん脚光を浴びておるというふうな状況もございますけれども、地方の先生方の旅費の確保という点は格段の努力を特にお願いいたしたいと思います。  次に、最近研究センターの設立など、地方での産学協同の努力をなさっておられるということについては敬意を表するわけでございますけれども、現実には地方での産学協同というのは非常に困難な問題がございます。といいますのは、地方で大企業研究所等があれば別でございますけれども、大体中小企業が主になりまして、そういたしますと、表面的に産学協同が行われておるということはあるわけでございますけれども、実質的には大学の方は高い水準の研究に、これが第一でございますから、そちらの方に没頭する。そうしますと、中小企業の持つテーマというのは非常に低水準でございますから、なかなか大学研究体制と低水準の中小企業のテーマの研究というものはマッチしないわけでございます。無理に大学側が中小企業の方に合わせていくと非常にそのために時間や労力をとられて、本来の研究に支障を生ずるというようなことが起こります。  また、地元の企業大学の学生との交流ということで、例えば夏休み等に学生を地元の中小企業の研修に行かせますと、中小企業の労働条件等が余りよくないために、せっかく地方で働く意欲を持っておった学生までが幻滅を味わうというようなことで、中小企業とそして大学との産学協同というのは、これは評価がいろいろございますけれども、かなり人が、あるいはもうマイナス効果が多いというふうなことをざっくばらんに言われる方が少なからずあるのが実情ではないかというふうに思います。  最近、共同研究センターというのが新設されまして、今全国で三カ所推進されておりますけれども、例えば富山大学につきましては、朝日新聞の記事でございますけれども、非常に研究対象が大企業向けの高度のものばかりで、ちょっと中小企業に手が届かないんじゃないか。熊本大学の分を見ますと、参加している民間企業がやはり大企業中心でございます。やはり地域の振興といいますか、地方と東京とのこの格差をなくしていくというためには、地方の大学とそして地元の中小企業がタイアップするということが非常に手っ取り早い方法だと思うんですけれども、現実にはなかなかそうはうまくいっていないというのが実情ではないかと思います。  そこで中小企業に対応する、余り高度の科学技術研究はしないけれども、中小企業に対応するようなタイプの大学を設けるとか、いろいろと対策が必要ではないかというふうに思いますけれども、中小企業との産学協同を充実進展させるために何か方法はないか、その他この問題についての御見解をお伺いいたしたいと思います。
  95. 植木浩

    政府委員植木浩君) 今先生おっしゃいましたように、文部省といたしましては、大学が本来の使命並びに主体性を保ちながら企業社会的な要請に積極的に対応するということは、大学自身の研究活動等にも刺激を与えるということでこれを推進しているわけでございまして、先生のお話ございましたような共同研究センターを設置するとが、民間等との共同研究制度、あるいは受託研究制度、受託研究員制度等の諸施策を進めてきているわけでございます。民間等との共同研究につきまして、今大企業、中小企業、こういうお話がございましたけれども、やはり大学企業との共通の関心を有する研究テーマを定めまして、これで共同研究等を進めるということでございますが、もちろん大きな企業との共同研究が多いわけでございますけれども、全体の約二割程度は中小企業との間で共同研究制度が進められているというふうに推計をいたしておりますし、また民間企業等からの、大学研究指導を受ける受託研究員のうち約十数%はやはり中小企業から受け入れていると、こういうふうに私どもは理解をしているところでございます。また中小企業でもなかなか研究開発水準の高いものもいろいろございまして、大学におきましてもそういうものに関心を示し、企業の方でも関心を示し、共同研究が開拓をされているという状況でございます。さらにいろいろな例を見てみますと、地元の産業等との関係ということで公開講座を行うとか、技術交流会を行うとか、あるいは先端科学技術の懇談会を行うとか、いろいろな工夫を各大学で始めているところでございます。  何かさらにいろいろな工夫はないかというお話でございますが、今申し上げたように、各大学におきましても地域社会との関連を十分意識しながらいろいろな試みを行っておりますので、文部省としてもそういう方向をさらに推進をいたしたいと思っておりますし、また大学だけでなく各地の最近の傾向でございますが、工業高等専門学校がございますが、こういったところが地元の中小企業等と積極的に共同研究を行っていきたいという風潮が出てきておりまして、これらも地方の産業、特に中小企業と高等研究教育機関との研究協力という点では新しい方向ではないかと思っております。先生指摘のように、今後とも我々としてもそういう方面の開拓につきましていろいろと検討を進めてまいりたいと思います。
  96. 穐山篤

    委員長穐山篤君) 午前の審査はこの程度とし、午後一時三十分まで休憩いたします。    午後零時二十四分休憩      —————・—————    午後一時三十一分開会
  97. 穐山篤

    委員長穐山篤君) ただいまから決算委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、昭和六十年度決算外二件を議題とし、文部省及び科学技術庁決算について審査を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  98. 井上裕

    井上裕君 中島文部大臣、御就任おめでとうございます。今日の我が国発展は、特に明治以来、国民の教育に対します先人の努力によって今日あるわけでございますが、大臣就任早々でございますが、教育行政全般についてのひとつ御抱負をお願いいたします。また、特に大臣は私学の道を歩んでまいりまして、旧制慶応普通部、そして大学と私学なんです。そこで、私学振興に取り組む大臣の抱負をまずもってお伺いをいたしたいと思います。
  99. 中島源太郎

    国務大臣中島源太郎君) このたび文教行政を担当さしていただくことになりまして、人づくりは国の基本であるというところから大変な重責を感じておるところでございますし、またやりがいのある仕事と存じております。  明治以来今日まで、いつの世でも教育最重点でございますけれども、明治から今日までともすれば画一的な教育と言われかねない点もございまして、これからは個性重視の教育に、その振興努力してまいる時期と、こう思っております。特に私どもは二十一世紀を目指しまして、たくましく個性的で、心豊かな青少年を育成するということに全力を挙げてまいりたいと思っておりますが、臨教審も三年間の御論議をいただきまして答申を得ましたし、それを受けまして十月には教育改革推進大綱、これを閣議決定をしていただいておりまして、八項目にわたります当面進むべき指針をいただいておりますので、これを着実に進めてまいる。特に一項目目の生涯学習を初めといたしまして各項目を着実に推進する、これが私どもに与えられた使命であると考えております。  特に私学につきましては、高校で約三〇%、それから高等教育、幼稚園で七六%が私学でございまして、まさに建学の精神から自由な気風で教育の中枢を支えてきていただいたところでありますので、私学の振興に対しましてはなお一層心してその振興に努めてまいりたい、このように考えております。
  100. 井上裕

    井上裕君 大変ありがたい御抱負をちょうだいいたしまして、非常に力強い限りであります。順を追いまして御質疑をいたしたいと思います。  まず教育改革について。我が国教育は戦後、国民の教育に対します熱意と信頼、教育関係者のたゆまぬ努力により、世界的に見ても一応誇り得べきものとなっております。また、この我が国発展基礎もここにあったと思います。しかし、近年におきます社会や経済の変化はまことに著しく、教育分野においてもさまざまな問題が生じており、学歴偏重の社会風潮や受験競争の激化、さらにまた画一的、硬直的な教育に対する反省等の指摘がなされるようになっております。このような状況のもとで、今日これからの日本を担う子供たちを豊かな個性と創造性に富み、さらにまた社会的連帯と公共の精神を持ち、さらに国民意識と国際感覚、こういうものをも備えた日本国民として育成していくことが重要な私は政策課題であると思います。  文部大臣は、臨時教育審議会の答申を受けて、今後どのような教育改革に取り組まれるか、これをひとつお伺いいたしたいと思います。
  101. 中島源太郎

    国務大臣中島源太郎君) おっしゃいましたように、臨教審の答申は、二十一世紀に向けまして意義ある御示唆を幾多いただいたと考えております。それを受けまして、教育改革推進大綱を閣議決定していただいておりますので、その中から生涯学習あるいは教育内容の改善、教員の資質向上などいろいろな八項目にわたります項目もございますし、また、今すぐ進められるべきもの、これはまた国会の方で御審議をいただくべく用意をいたしておるものもございますし、また進めつつ御理解を得るものもあるわけでございまして、順次的確にこれを進めてまいりたいと思っております。
  102. 井上裕

    井上裕君 次に、生涯教育について御質問いたします。  臨教審は国民的関心のもとで進められまして、八月の最終答申をもって完了しました。答申は、生涯学習体系への移行を目指し、社会分野の広範な学習体制を整備するよう提言しておりますが、これは地域社会あるいは人生全般を通じて教育問題をどうとらえるかということであり、大いに推進していきたいものであります。  まあそのために放送大学、これは千葉につくっていただきまして、一番最初に衆議院の文教部会長でありました石橋さんが、衆議院の文教委員会でまずはなに質問して、ちょうど私が参議院の文教委員会で最後のとき質問をいたさしていただきまして、この放送大学というものが生涯教育の一環、あるいはまた私ども地域にも非常に潤った。こういうものを考えますときに、この大都市周辺、カルチャーセンター、スポーツセンター等の講座も用意されており、生涯教育社会への路線も引かれているようでありますが、そのソフト面についてのひとつ考え方をお伺いいたしたいと思います。  次に、人々の学習機会を提供する上で社会教育施設、これは非常に大きな役割を果たすと考えられますが、現状はどうなっているのか。まあ予算のたびにいろいろなスポーツ面での施設、あるいは公民館、ありとあらゆる社会教育、そういうものの現状、今後の整備状態、ぜひひとつ充実をしていただきたいと思いますが、この点についても御質問をいたしたいと思います。
  103. 中島源太郎

    国務大臣中島源太郎君) 生涯学習につきましてはまさに重要な点でございまして、人生八十年の時代でございます。したがって、八十年の生涯をいかに意義ある社会人として過ごし、全うするかと、こういうことにつきまして、学校教育は当然教育の基本でございますけれども、それを基本といたしまして、いつでもどこでも学び加えることができるという施設、空間を整備するということが必要であろうと思います。  その中で、今御指摘の放送大学などもまさに生涯学習の中枢を占める有意義なものでございますが、それと同時に、国の施設もございます。地方公共団体によります教育施設もございます。それから民間教育機関の開放、こういう三位一体のネットワーク化、これがまさに生涯学習の機会を広めるということに相なると思っておりまして、これができれば、現在まさにゆとりある社会生活に資する道と、こう考えておるわけでございまして、私の考えはそれで今後とも進めてまいりたいと思っております。詳しくは政府委員からお答えさせます。
  104. 齋藤諦淳

    政府委員(齋藤諦淳君) 生涯学習体系への移行ということで、その学習活動の拠点となります施設を整備するということ、先生指摘いただきましたように非常に重要なことであると考えているわけでございまして、文部省では従来から施設の建築費の一部を補助いたしておりますけれども、現在の状況を申しますと、五十九年七月現在でありますけれども、公民館は一万七千五百館、図書館は千六百館、博物館は六百七十館、こういう状況になっております。社会教育施設の整備はかなり進んできておりますけれども、なお地域的な格差やあるいは老朽施設の更新という、こういう問題もあるわけでございまして、今後ともその整備をさらに進めていく必要がある、こう考えているわけでございます。  なお、生涯学習体系への移行という、そういう考え方から、他のいろいろな施設のネットワークを組むという、大臣言っていただきました、そういう考え方でさらに施設整備も進めていきたいと思っている次第でございます。
  105. 井上裕

    井上裕君 大臣から放送大学の問題がありましたが、やはりまだまだこの問題は、放送大学そのものをひとつPRをしてもらって、そして多くの人にやはり学んでいただいて、またさらに現在の都市を広げていただく、こういうこともひとつ要望いたしたいと思います。  次に、生徒の減少期の高校教育につきまして、高等学校教育の重要な課題一つは、生徒の多様化への対応であると思います。そのため、生徒の減少期におきまして、さらに大学志向の変わらない状況の中で、生徒の、子供たちの個性を生かす多様な教育課程の編成、あるいは変化に対応した学科の新設、さらにまたこの再編、特色ある学校づくりが推進される、文部省として各都道府県を指導すべきであると思いますが、その点についてどういうような指導をしているか、ひとつお願いします。
  106. 西崎清久

    政府委員(西崎清久君) 御指摘のとおり、高等学校教育につきましてはいろいろなインパクトがあるわけでございますが、一つは御指摘の生徒の能力、適性が非常に多様化しておる。九四%でございますので、一人一人の子供たちは非常に異なった適性、個性を持っておるということが一つでございます。それからまた、御指摘にもありましたが、産業構造の変化ということで、いろいろこれから高校生が社会へあるいは大学へ進むというとぎに、それぞれの社会、産業構造の変化に対応できなければならない。こういう二つのインパクトがあるわけでございますので、私どもといたしましても高等学校教育の弾力的な運営と申しますか、学科なりあるいは教科科目について、それぞれ生徒一人一人に見合った教育が行えるようにということについての指導を心がけておるわけでございます。  具体的に申しますと、まず普通科につきましては、単なる普通科ではいけないということで、最近は外国語科であるとか国際関係科であるとか、普通科でありながら特色を持った普通科ができるような各地域の実情がございます。それからもう一つ、職業科につきましては、農業、工業、商業という伝統的な大学科の中で、農業科、畜産科、園芸科という以外に例えば農業経済科でありますとか、商業でございますと、いろいろな意味での国際経済に対応するような学科とか、工業でございますと、機械、電気ではなくて電子機械科とか、そういう新しい時代の要請に見合う学科がいろいろ設置者の判断によって自由にできるようにというふうなことを教育課程でも弾力的な基準としていたしておりますので、この辺につきましてはいろいろな機会に私どもは都道府県を指導しておるわけでございます。過去に局長通知を出しまして、各都道府県の努力を促した経緯もあるわけでございますので、今後とも先生指摘のような点を踏まえまして都道府県への指導努力いたしたいというふうに思っておる次第でございます。
  107. 井上裕

    井上裕君 今答弁をお聞きいたしまして、そのような指導をぜひひとつお願いいたしたい、このように考えます。  次に、大学の入試改革につきまして三点ほどひとつ御質問いたしたいと思います。  大学の入試のあり方は、高等学校以下の教育に与える影響は非常に大きいわけであります。したがってこれは、国民のそれに対します関心というのはまことに深い。その改革に当たってパーフェクトの方法は、なかなかこれはあり得ないと思いますが、しかしながら、意図することを改革して、そしてまた着実に一歩一歩の前進が好ましい、こういう入試改革の道であります。  私は、従来から幾たびか入試改革が積み重ねられてきておりますが、大学入試の現況について、ぜひひとつどういう認識でおるのか、また、マスコミあるいはまた一般の方々、さらに経験豊かな専門家が、大学入試につきましては余りにもいろいろ変わっていくというようなことでございますので、この点について、まず大学入試の現況についてどういう認識を持っているのか、これをお聞かせ願いたい。
  108. 中島源太郎

    国務大臣中島源太郎君) おっしゃいますように、大学入試につきましては、これは国民的な関心のあるところと承知をいたしております。一時共通一次の試験を施行いたしてみました。それの結果二つの点でいい面もあったかなと思っております。それは学校によりまして、難問、奇問と言っては失礼かもしれませんが、非常に難しい出題、これが均一化されたと申しますか、共通一次の出題傾向につきましては大方評価をいただいておるところでございます。それから、一次を利用していただくということによりまして、二次試験で多様化を図ることができる、こういうことはいい面であったと思いますが、その一方でまたいろいろ改善すべき点もあるわけでございます。そういう点につきまして、臨教審の答申にもいただいておりますように、これを私学にも開かれた道として進めてまいりたいと思いますし、当面六十五年を目途といたしましてこの新テストを進めてまいりたい、こう思っておりますが、これは進めつつ私学、国公立の一層の御理解と御協力を得たい、こう思っております。  また、受験機会の、チャンスの複数化と申しますか、これに対しましても今国大協におきましてお諮りをいただいておるところでございますので、さらに受験者の身になりまして一層研究、検討をいたしながら進めてまいりたいと思っております。
  109. 井上裕

    井上裕君 私、これからいろいろお聞きしたいこと、大臣にお答えいただきまして、ぜひそのように。  ただ、私ども素人が考えまして、大学入試というのはやはり高校生、特に子供を持つ親がなかなかどういう試験に受かったらいいか、いよいよなれてくるとまた変わる、こういうことのないように、また専門家が大学入試というものをこうしてやろうということで決定したからには、やはりそれ相当の気構えで私はやっていただきたい、このように考える次第であります。  次に、十八歳人口の急増対策。これは、ちょうど昭和五十八年の二月から五十九年の十二月まで私自民党の文教部会の高等教育問題の小委員長をやっておりまして、そのときに文部省の皆さん、また党の方々といろいろな協議をし、まだこれからの、六十一年から六十七年まで十八歳人口がふえる、さらにまた六十七年をピークにして子供たちの数が減っていく、こういう中で高等教育の量的整備を計画的に進められるということ、これは非常に重要なことでありますが、さらにこの六十七年から、ただいま申し上げましたように今度はピークを迎えてどんどん減っていく、そのときの文部省としての考え、対策、こういうものはどうなっているのか、これをひとつお伺いいたします。  さらにまた、医師、歯科医師の過剰問題、特に歯科医師の過剰問題につきまして、厚生省は歯科医師の需給に関し昭和四十五年に、昭和六十年までに人口十万対五十人、この歯科医の確保が必要である。当時歯科大学は、昭和四十五年におきましては十七校で千四百六十名、それが十年後昭和五十五年には二十九大学の二十九学部三千三百六十名、二・四倍というような数になったわけであります。この数は昭和四十五年の当時人口十万対三十九であったものが、昭和五十五年にはわずか今言ったような二・四倍、しかも人口十万対五十人を現在もう超えております。これは厚生省が立てた目標より五年町も早く過剰になった。今後またどんどん歯科医師の参入が考えられることから新規参入、過剰時代が極めてこれは深刻になる、このような状況を受けまして、厚生省の将来の歯科医師需給対策検討委員会は、最終意見において、昭和七十年には医師は一〇%、歯科医師二〇%、こういうものをもって二〇%削減する、こういうことを提言いたしております。  これに対しまして、国公私立の大学を通じた歯科大学歯学部の入学定員の削減がぜひ必要である。今日まで私の方の十一校には、徳島大学は八十で、一応六十のもともと定員だった。六十一年に東北大の歯学部が八十を六十にしていただいた。今年は広島と九大。さらに六十三年度の概算要求の中で、あるいは皆さんの中で岡山と新潟と長崎、あと残っているのが四校、現在北大、さらに医科歯科、大阪、鹿児島とこの四つが残っているわけですが、このようなときに当たりましてその見通し、これはもうぜひひとつお願いをいたしたい。さらに、せっかく八十を六十にしていただいたわけですが、実数を見ますと、やはりその六十の定員は守られていない。これはお答えはよろしゅうございますので、ぜひひとつその問題は守っていただきたい。  さらに私学に対します国公立がそのように医師一〇%、歯科医師二〇%、特に国公立は八十を六十ということは二五%落ちているわけですから、大変ありがたいことですが、私学に対しましての指導あるいはまじめな学校は確かに一〇%、現在。将来二〇%やるという仕組みにしておりますが、定員以上、さらにオーバーをとっているところ、こういうものの文部省としての強いひとつ姿勢、こういうこともお聞かせ願えれば幸いであります。
  110. 阿部充夫

    政府委員(阿部充夫君) 先生よく御承知のことでございますけれども、整理をしてお答えをさせていただきたいと思います。  まず最初に御質問のございました、これからの十八歳人口の急増に対する対策の関係でございますが、御案内のように昭和六十七年がピークということで、第二次ベビーブームの波が高等教育に押しかけてくるわけでございまして、昭和五十年代に比べますと約四十万人増というような、総計二百五万人にも上るという時期が来るわけでございます。こういった事態に対処するために大学設置審議会でこの点については十分議論を重ねてまいりました結果、新しい高等教育計画の提案ということが昭和五十九年に出されたわけでございまして、この高等教育計画では昭和六十一年以降昭和六十七年まで、ピークに達するまでの期間におきまして国公私立合わせまして大学、短期大学の入学定員を約八万六千人増員をする必要があるという考え方を示しておるわけでございます。この八万六千人と申します数字は比較的安定をしております昭和五十年代、特に昭和五十八年の高等学校進学率三五・六%というものを、子供の数がふえた時期においてもこれだけの進学率は確保しようという考え方に基づくものでございまして、さらにその後昭和六十八年以降十八歳人口は減少してくるということを踏まえまして、このふやす八万六千人のうちの約半数、四万四千人分につきましては期限を限った定員増、いわゆる臨時増募で対応しようというような構えに立っておるわけでございます。  この計画につきましてはその後、実際には六十一、六十二というところまで進んできておるわけでございますが、今日までに約七万四千人、全体計画の八六%は既に達成済みでございまして、六十三年度以降一年あるいは二年間程度の間に一〇〇%を上回るところまで行くであろうということが見込まれておるわけでございます。  問題は、先生指摘になりましたように、この急減期をどうするかという問題がさらに引き続きあるわけでございますが、先ほど申し上げましたように、私どもといたしましては、そのうちの四万四千人分は期限を限った臨時増募ということにいたしておりますので、その臨時増募分は逐次これを落としていくという形での対応ということが一応念頭にあるわけでございますけれども、それにいたしましても進学志願率の動態等は、若干ことしの春あたりの様子を見ますと、やや動いているような状況も見られるわけでございますので、こういった傾向等もなおもう一、二年見ながら、これから先の方針というものをさらに改めて検討いたしたい、こういうふうに考えておる次第でございます。  それから次に、医師、歯科医師の過剰問題でございますけれども、御指摘のように人口十万人当たり医師の場合百五十人、歯科医師の場合には五十人というのが目標となる規模であるということで、国公私立の医科大学あるいは歯科大学の拡充整備ということが行われてまいったわけでございますけれども、その結果予想以上にこれが進んだということもございまして、既にこの目標値に到達をしているというのが実態でございまして、今後の医療の推進のこと等も念頭に入れましても、なおかつ現在の医師養成が少し過大になってきているんではないかということが言われておるわけでございます。  こういったことを踏まえまして厚生省の検討委員会でも御検討が行われましたし、また文部省におきましても専門の方々をお願いいたしまして調査、研究を行いました結果、昭和七十年に新しく医師に参入する方々の数を一〇%、歯科医師の場合には二〇%程度減ずることが適当であるという判断に立ち至ったわけでございまして、そういった方向に基づきまして文部省といたしましては、現在国立大学につきましては各国立大学と相談しながらこれを進め、私学につきましては私学の関係の団体と御相談をしながらこれを進めようとしておるところでございます。  具体に申しますと、国立大学に関しましては、地元あるいは大学内の調整ということが必要でございますので、そういった御議論を進めていただきながら、調整の整ったものからということで、医学部関係は既に昭和六十年度から手をつけておりますし、歯学部関係は昭和六十一年度から手をつけておりまして、今日までに医学部では六校百二十人、歯学部では三校六十人の入学定員の削減を既に行っておるわけでございますが、六十三年度におきましても医学部で四校、歯学部で三校引き続き削減を行うという方針を固めて概算要求をいたしておるところでございます。また、公立大学につきましては、六十二年度に歯学部一校二十五人の削減が行われるということが予定されておりますし、それから私立大学につきましても、昭和六十二年度に歯学部二校計四十人の削減が行われました。六十三年度には医学部関係も新たに加わりまして、私立の医学部二校二十人、それから私立の歯学部一校四十人の削減ということが予定をされておるわけでございます。  今後ともこういった方向に即して実施をしていかなければならないわけでございますが、私立の医科大学協会におきましては、六十三年度について六十二年度に引き続き入学定員の厳守を申し合わせる。同時に今後の対応について現在対策委員会を設けまして鋭意検討が行われている最中でございますし、また私立の歯科大学協会、歯科医師の方の関係につきましては、既に募集人員を一〇%を減ずるということを協会としての申し合わせが行われておるところでございまして、六十三年度につきましてもこういった方向での募集が決められていくということに相なろうかと思っておるわけでございます。  こういった募集の問題、入学定員の問題につきましては、今後関係団体とも十分協議をしながら、各大学等の意見も踏まえて、しかも円滑に対応を進めてまいりたいと考えておりますし、さらに先生の御指摘のございました定員の厳守というような問題につきましても、文部省としても毅然とした態度で各大学指導していくように努めたい、かように考えている次第でございます。
  111. 井上裕

    井上裕君 局長の今の非常に懇切丁寧な答弁ありがたいわけでありますが、これはすぐということではありません。ことしから定員を減らして、御案内のように六年たってのことですから、ほかの予算というのはこのときこうやればすぐこうなるんですが、ことし減らしたものが六年、こういうことでありますので、これはよくひとつ考えていただいて、さらにまたこれは文部省の方を応援するわけですが、我々としても八十名を六十名に減らされる。これは今三校ですからいいわけですが、国公立十一大学になりますと、これも大蔵の方で講座を減らすとか減員というようなこともあろうと思います。そういう点は私どもも一生懸命頑張りますので、ぜひひとつ所期の目的の二〇%をやっていただきたい。  もう一つ、御案内のように入学志望者が非常に率が低くなっているわけですね、昔から見ると。それはなぜかというと、やはりいろいろ過剰ということで、これはお米と同じですから過剰ということで、そこに今までみたいに医科大学、歯科大学を希望する子供たちが非常に減っている。それについてはもう私立大学では三校ほど定員を割っている状態、医師、歯科医師の質の問題にもかかわる。私は、そういう点であくまでもその定員を守っていないで、やはりこれは非常にふえ過ぎちゃったんですから、ひとつ文部省としても思い切ってこのことはやっていただきたい、このように考える次第であります。  それから、どんどん子供たちがふえて幼稚園がうんとできた。さあ今度減少した。今非常に困っている。これは困っているだけならいいけれども、つぶれている幼稚園もありますし、あるいは子供を勧誘するために、何か商品と同じように物を持って歩くような幼稚園も出てくる。六十七年がピークでどんどん今度は大学定員が減るわけですから、今の局長さんの御答弁にもありましたけれども、ひとつぜひこのときの対策を立てて、子供たちが減れば教員も減るわけですから、そういう点をひとつ考えて、よく今から勉強していただきたい、このように考えます。  次に、検討委員会において、国民の歯の健康を守るという見地から当面抑制策、これは九項目施策を挙げております。今後の歯科医学教育の改善、充実について述べられておりますが、歯科医学教育の改善及び充実、これは今局長さんが最初の問題で答弁ありましたが、もう一たびこれはよく考えていただきたい、答弁は結構でございます。  次に、高校野球のことでちょっと御質問いたしたいと思います。甲子園大会の愛称で広く国民に親しまれている高校野球のあり方について御質問いたします。  高校野球は、私自身がつて中等野球という時代から、幾多の困難を克服して青春をかけるにふさわしい国民的スポーツとして今日の隆盛を見るに至ったわけですね。戦争中一時途絶えました。しかしながら、現在では全国で三千八百九十余校、約十三万人の高校球児たちが甲子園を目指して練習に励んでいる。また来年の春の甲子園大会の出場校もほどなく選抜で決まるようですが、甲子園に出場する選手は、学校が出場するというよりも地域全体が郷土の代表だ、こう呼ぶにふさわしいほどこの大会は郷土色豊かな国民的行事に今なっているわけです。  これにつきましてはマスコミもいろいろ書き、このような高校生が野球を通し、非常にフェアなプレーで精神力を学び、さらに強健な心身の育成に励んでいる姿は、もう選手だけでなく青少年の教育上にも大変これは私は得るところがあろう、このように思います。しかし、また一方で、監督さんあるいは上級生が下級生に対する暴力事件、非行なども非常に起きており、関係者を中心に憂慮する声が上がっております。  そこで文部大臣にお聞きいたしたいと思いますが、野球部を含めて一般的に高等学校におきます運動部の活動は教育活動の一部として行われる、こういうように私ども思います。そうであれば、学校教育の中で暴力や非行などの行為はあってはならないことだ、絶対に根絶していかなければならないと私どもも思いますが、文部大臣はこういう問題をどのように考えており、また今後具体的にどのような指導をしていくか、これはひとつ文部大臣からお答えを願いたい、このように思います。
  112. 中島源太郎

    国務大臣中島源太郎君) 御指摘のように、野球部はもちろんでございますが、高校の運動部、押しなべてこれは学校教育の一部であるという認識を持っております。  特にこういう運動部は、学生諸君の健全な身体、と同時にやはり忍耐、寛容あるいは協力精神、そういうものをはぐくむのに格好な学校教育の中枢な一部である、こう思っておりますので、そういう中で御指摘のような暴力事件等の不祥事がありますことはまことに遺憾なことでございます。文部省といたしましては、従来から高等学校におきます運動部の活動が適正に行われますように、関係者に通知をいたすなど努力をいたしておるところでございますが、今後とも一層その趣旨に基づいて指導を徹底いたしたい、このように考えます。
  113. 井上裕

    井上裕君 ただいまのことに関連しまして、特に高校野球をめぐる不祥事についてでございますが、いわゆる内部告発というものがございます。これが明るみに出ることが非常に多いわけであります。他方また、そのまま明るみに出ないものもあると思います。私は、内部告発は教育的観点から見てもまことに好ましからざる影響を関係者に与えるものと思いますが、不祥事の隠ぺい工作やそれに対する内部告発というような事態が起こるのは、一つには高野連の処分のやり方にも問題があるのではないでしょうか。これはあくまで新聞とかテレビに出る名前というのは、これは強い学校であるとか名門である、甲子園に出場した、あるいは夏も春も出た、そういう学校に限ってマスコミは取り上げるわけですが、マスコミにのらない不祥事というものは大変あると思います。  ただ先ほど申し上げましたように、暴力あるいはまたそういうものは一〇〇%いけないわけでありますが、これを自分のライバルの学校、あるいはまたいろいろな監督の一つの個性の強さ、そういうもので自分の子供が選手になれないというようなところに内部告発というものがある、こういうことを現場の監督あるいは現実に野球部長さんからもお聞きしているわけです。こういうことがあっては、本当にこの高校野球というものは、こうした内部告発、自発的な申告があったケースならまだしも、こういうものはぜひひとつ球児の夢を奪わないように細かい処分を行う必要があるのではないか。実際高野連の処分のケースによっては私ども考えて非常に厳し過ぎるというものもあろうかと思います。  これは、やはり私はマスコミにも責任があると思いますが、同じ学校で同じようなことが、子供たちが三年間やって、野球部に関係ないことでも出場停止と、そういうことが内部告発になってどれほどの子供の夢を断ち切ったか、こういうことについて、文部大臣としてひとつ始球式のみならず、これはやはり高校野球の一ファンとして、現場の方たちの意見も時には聞き、また高野連の幹部ともいろいろ話し合って、処分の問題などもいろいろな段階で何年間停止、あるいは本当に先ほど言ったように、暴力事件に対してはこれはもう絶対だめでありますが、そうじゃないようなことも私は多々聞いておりますので、この点はひとつよく克明に文部省としても調べていただいてぜひお願いをいたしたい。この問題について文部大臣のお考えを聞ければ幸いであります。
  114. 中島源太郎

    国務大臣中島源太郎君) 今申したように、学校の運動部活動というのは学校教育の一環だ、こう思っております。特に学校教育が人生生涯学習の基礎教育ということからいたしますと、二十一世紀を担うに足るたくましく心豊かな青少年を育成するということにありますので、まさにおっしゃるような内部告発とかあるいは隠ぺいとか、そのような陰湿なことは許されない、あくまでも心身ともに明るい部活動として、これはまた見る者にとりましては、自分の青春を思い起こし、あるときはふるさとを思い起こしまして、健全な校風とともに自分の気概を取り戻すという精神さわやかなものでなければならぬと思いますので、これに反するものは厳しく、あるいはその精神に沿うものには寛容にと、このように扱っていくべきではないかと思います。  細かい処分方法につきましては政府委員からお答えいたします。
  115. 國分正明

    政府委員(國分正明君) 暴力を初め不祥事があった場合の高野連の処分の問題でございますが、高野連では、ただいま大臣がお答え申し上げましたように、野球部活動等も高校教育の一環として行われているということから、従前ややもすると、まあ表現は適当でないかもしれませんが、一罰百戒的な厳しさで臨んでいたということを高野連関係者みずからも申しているわけでございます。しかし、ここ数年来そういう方針を徐々に変更いたしまして、例えば部員以外の一般生徒の非行を理由とした対外試合禁止措置はとらないようにしておるとか、あるいは野球部員が起こした事件でありましても、直接野球部に関係のない非行の場合には、それを理由として野球部を処分することがないというようなことでございますとか、処分の軽減をそういう点で考えておる。さらに、事件の自主的な申告があった場合には、やはり処分手続を非常に速めるという迅速化を図るというようなこともやっておるようでございます。  その結果、必ずしも処分を軽くしたからといって、後は絶ちませんけれども、暴力事件等がふえているわけではない、むしろ減っているという傾向もあるようでございますので、高野連としては、もちろん事件等を起こした場合に事件関係者の反省を求めるということは当然でございますが、お話にございましたように、高校球児たちに将来の希望をできるだけ失わせないようにするという方向努力しているということでございます。このことにつきましては、今後ともそういう方向で、まあ関係者に反省を求める、これは求めなきゃなりませんが、繰り返しになりますが、将来の希望を失わせない、そういうような方向で今検討中である、近く結論も出したい、こんなことでございますので、今後は具体のケースに応じましたよりきめ細かなより適切な措置がとられるのではないだろうかというふうに私どもも期待しているところでございます。
  116. 井上裕

    井上裕君 文部大臣局長の御答弁を聞きまして、何回も申し上げますが、三年間一生懸命に練習をしてきた。それが自分たちに何の関係もないところでそういうものが明るみに出る。そうすると全員が晴れの大会にも出られない。これでは昔の陸軍、海軍の往復びんたの連帯責任と同じことなんです。こういうものをひとつやはり考えて、あくまでも暴力は悪いわけです。しかし、本当に自分たちに関係のないところで起こったものを、学校の本当の一部の、一人のために全部が御破算になる。これはやはり先ほど、くどいようですが、有名校はマスコミでたたかれる、そういうためにやると。本当に私は気の毒のような感じがする。  時間がありませんので要望いたしますが、もう一つ、高校野球におきましてプロ興負けのスカウトをやる。先ほど言ったように高等学校の野球というのは学校教育の一環ですから、例えば一つの地域の学校の、そこの中学から出た生徒でやる。それは、いろいろ私学は私立の方針がありますから、私学Aという学校が全国からスカウトしてきて、プロ顔負けの派手にやって、それがまたプロ野球にいく。決して高校野球というのはプロの養成でもないし、純粋な子供たちの夢を、そしてまた青少年のこれからの教育のためにも、やはり一つの県の、まあ文部大臣の群馬県はやはり群馬県の中学からとった生徒、私の場合には千葉県の生徒がやはり千葉を代表して行く。出身を見たらもう全部千葉県以外の方が出ていると、こういうようなことでは、やはり本当の高校野球の姿というものはないんではないか。こういうことをひとつ、これは時間ありませんから要望しておきます。  さらに、来年に控えましたソウルのオリンピックの問題でございますが、これまた時間がございませんので、お答えを願えればいいんですが、この選手強化の問題ですね。この間オリンピックへの出場権をかけたサッカーの予選で中国に敗れた。最近の国際競技大会におきます我が国選手の成績は必ずしも芳しいものでないというんじゃなく、負けてはかりいる。国際的な舞台で日本選手が活躍する、これは私はやはり青少年のスポーツに対する意欲をかき立てるためにも大変な必要なことであると思います。民族の活力を増大させる、こういうものでも、やはり私ども何としてもソウルのオリンピックでの日本選手の活躍を期待したいわけです。  昨日、福岡マラソンにおきましてすばらしいタイムが出まして安堵したわけでございますが、今後このオリンピックというのは、参加することに意義があると言う方もいると思いますが、やっぱりある程度勝たなくちゃしようがない。それには文部省予算をひとつうんと取って、選手強化を、今からでも遅くないと思います、一年ある。そういうことで、中島文部大臣、すばらしい抱負を伺いましたので、ひとつ全力を傾注いたしますことを心から皆様方にお願いし、希望いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  117. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 文部大臣、文教行政の基本は憲法、教育基本法にあります。この点で新しく大臣になられましたあなたの基本姿勢を、聞くまでもないかと思いますが、まず確かめておきたいと思います。
  118. 中島源太郎

    国務大臣中島源太郎君) お説のとおり、教育行政は教育基本法はもとより、関係法令に従って行われるべきものと心得ておる次第でございます。また、教育は人づくり、また、人づくりは国の基本である、そういうことを認識をいたしまして、これから健やかなと申しますか、たくましく、個性的で心豊かな青少年の育成に全力を挙げてまいりたい、このように考えます。
  119. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 午前中も議論がありましたが、年末の来年度予算案の決定に向けて既に大蔵省が若干の重要問題について財政審議会に諮問するなど、事態は重大化をしています。そこで、新大臣の決意のほどを伺いたいわけでありますが、義務教育教科書の無償制度、これは堅持するということでありますね。
  120. 中島源太郎

    国務大臣中島源太郎君) おっしゃいますように、教科書無償制度は、結論から申しましてぜひ堅持してまいるべきものと、こう考えております。憲法第二十六条に掲げる義務教育無賃の精神をより広く実現する施策でもございますし、また臨教審答申におきましても、「当面、義務教育段階の無償給与制を継続する。」と、こうございます。これを尊重いたしまして、この教科書無償制度はぜひ堅持してまいりたい、貫いてまいりたい、こう思っております。
  121. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 同じく義務教育の国庫負担制度、当面焦点の事務職員、栄養職員の国庫負担制度もこれも堅持するというふうに理解をしていいですね。
  122. 中島源太郎

    国務大臣中島源太郎君) 今おっしゃいました事務職員、栄養職員は、いずれも学校の基幹的な職員であると認識をいたします。文部省といたしましては、義務教育費国庫負担制度の対象にするという考えに立ちまして要求もし、獲得に全力を挙げたいと思います。
  123. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 次に、国立大学の授業料問題でありますが、学部間格差を導入しようとする動きがあります。教育の機会均等原則から考えて、文部省としてはこうした学部間格差の導入に反対をし、授業料値上げも極力避けるという方向努力をしていただきたいと思いますが、どうでしょうか。
  124. 阿部充夫

    政府委員(阿部充夫君) 国立大学の授業料につきましては、午前中大臣からもお答え申し上げましたように、国立大学が持っている使命とかあるいは教育の機会均等の確保に果たしている役割等を考えますと、極めて重要な問題だというふうに私どもは考えております。したがいまして、その取り扱いにつきましては、従来からも諸般の状況を勘案しながら、しかも関係の団体等とも十分協議をしながら的確に対応すべく努力をしてまいったところでございまして、現在じかに、例えば財政当局からその話が文部省に来ているということではございませんけれども、そういう問題がありました際にも、関係方面とも十分相談をしながら適切な対処に努めたいと思っております。  なお、特に学部間格差についてのお話がございましたけれども、学部間格差の問題につきましては、これは結局、要するに多額の経費を要する学部については授業料がかなり多額になるという結果に相なるわけでございますが、こういったことによりまして、いわば経済的な理由によって専門分野ごとの進学の機会に格差が生ずるというようなこと等ともつながる、あるいは能力に応じた教育の機会均等という問題からも問題なしとしない等のこともございまして、文部省としては従来から特にこの問題については慎重に対処をしてきたということは先生御承知のとおりだと思うわけでございまして、これにつきましては従来どおりの方針で対応をいたしたいと、こう考えているところでございます。
  125. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 さらにもう一つ、私学助成問題でありますが、物価上昇と対比をしてみて事実上年々後退をしています。経常費に対する二分の一国庫助成の早期達成というこの方針を文部省としては堅持をして、来年度予算の増大のため渾身の努力をしてもらいたいと思いますが、どうですか。
  126. 坂元弘直

    説明員(坂元弘直君) 私学助成につきましては、法律の上では私学振興助成法で経常費の二分の一以内を補助することができるという規定になっておりますが、法律が制定された経緯、本院の参議院文教委員会でも、速やかに二分の一を目標にしてそれを達成するようにという附帯決議もいただいているところでございまして、私どもも法律施行以来、五十一年以来逐年その増額に努めてまいりまして、五十六年までは毎年かなりの増額をしてきたわけでございます。しかしながら、五十七年度から、先生御承知のとおりに臨時行政調査会の答申がございまして、五十七年度の私学助成については前年度と同額以下とするという第一次答申がございましたし、その後も臨調の本答申の中でも、私学助成は総額を抑制するというような表現で答申がなされてきたわけでございます。  しかも、国の財政が一方大変厳しいということもございまして、いわゆるマイナスシーリングということで概算要求の段階で私学助成につきましては経常部門にカウントされまして、前年度より一〇%減の枠しかいただけない。しかしながら、私学助成の重要性ということは十分私ども文部省としても理解し、肝に銘じているつもりでございまして、文部省の各局の協力を得まして、前年度一〇%減という枠でありますけれども、前年度以上の要求をして今日まで参りました。しかしながら、結局財政当局とのやりとりの中では、ここ数年、前年度同額というようなことで推移してきたわけですが、幸い本年度につきましてはわずかでありますが、五億円ではございますが増額になったという経緯もございます。したがいまして、経常費の二分の一に速やかに達成するというのはなかなか端的に申し上げまして至難であろうかと思いますが、私どもとしましては厳しい条件のもとではありますけれども、私学助成の確保、充実という方向には鋭意努力してまいりたいというふうに考えております。
  127. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 どうも難しさがるる強調されておる嫌いがありますが、新大臣、ひとつ閣議の一員として、私学の経常費二分の一助成というこの方針は堅持をして、そのための最大限の努力をするというふうに、大臣としても御努力いただけるものと理解をしてよろしいでしょうか。
  128. 中島源太郎

    国務大臣中島源太郎君) 御趣旨に沿って努力をいたします。
  129. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 次に、十一月の二十七日に発表されました教育課程審議会のまとめ、この問題でありますが、日本教育の将来にとって多々問題を含んでおりますが、その中の若干の問題について本日質問いたします。  まず、君が代、目の丸について、現行の学習指導要領では学校行事において君が代を歌い日の丸を掲揚するのが望ましい、こういう位置づけから、扱うことをそれを明確にするという今回の教育課程審まとめにいわば義務づけを打ち出しているわけであります。これは教育行政上の義務づけであって、君が代、日の丸の法的措置とは別問題ですね。
  130. 西崎清久

    政府委員(西崎清久君) 君が代、国歌、それから日の丸、国旗ということにつきまして正式上の法的な根拠がないということは御指摘のとおりでございます。しかし、日の丸が国旗である、そして君が代が国歌であるということは、長い間日本国において定着しておる事実でございますし、政府立場としてもそれぞれが国歌であり国旗であるという認識国会等で表明さしていただいておるという経緯がございます。  そういう前提に立ちまして、各学校において教育上の扱いとして国歌、国旗に関する教育指導を徹底するということは、従来文部省としても指導に努めてきたところでございます。  以上でございます。
  131. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 この法的な定めのない君が代や日の丸を、これを学校教育上の問題とはいえ義務づけをするということが一体妥当なのかどうかというこの問題があるんですが、そこの議論はまた後日やりましょう。  問題は、今度の教育課程審のまとめで打ち出していますように、入学式、卒業式で君が代、日の丸を義務づける。しかし、これをやらなかった学校、もしそういう学校が出た場合に教職員は処分の対象になるんですか。
  132. 西崎清久

    政府委員(西崎清久君) まず現状の姿は、先生御承知のように、指導要領上国歌あるいは国旗について、掲揚し、斉唱することが望ましいと、これが指導要領上の扱いといたしましては、儀式というものがいろいろな形態がございますのでこういう表現になっておりますが、一方、私ども文部省指導といたしましては、少なくとも入学式あるいは卒業式においては、国旗あるいは国歌にかかわる斉唱あるいは掲揚について適切な取り扱いをするようにという指導をしておりますし、都道府県、市町村あるいは学校それぞれにおいて、当該学校においては国歌を斉唱し、国旗を掲揚しようというふうに決めて、そしてそういう取り扱いを学校において行うと、こういうふうな現状が多くの学校で見られるわけでございます。  そういう意味におきまして、やはり教育課程の編成についての責任者は学校であり、その最終的な責任を有する者は校長でございます。そういう意味で校長がそういう方針を決めて、国歌斉唱、国旗掲揚についての方針を示した場合、教職員は所属職員としてこれに従っていただくという義務があるわけでございます。そういう意味におきましては、やはりその義務には従っていただく必要がある。それに違背した場合の措置につきましては、それぞれの身分上のあるいは職務上の監督者が適切な措置を講ずると、こういうふうな姿になろうかというふうに考える次第でございます。
  133. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 私の質問に必ずしも的確に答えておられないわけでありますけれども、今の答弁によりますと、君が代を斉唱をし、日の丸を掲揚をするそのいかんは、学校並びに校長が決める問題だと、こうおっしゃるんですから、校長も含めて学校がそういうことはやめておこうと、こうなった場合には、その場合には処分はどうなるんですか。
  134. 西崎清久

    政府委員(西崎清久君) 一つ前提として申し上げますと、学習指導要領の扱いといたしましては「望ましい」という姿になっている。望ましいという姿が、やはりそのことが適切であるということでありますがゆえに望ましいということになっておるわけでございますから、指導要領上の問題としては学校長なり教職員がやはりそういうふうな方向でやっていただく必要がある。これが一つでございます。  しかしながら、現状といたしましては、指導要領上の表現が「望ましい」という姿でございますから、仮に先生指摘のように、学校全体が校長も含めてこれを実施しないというふうにした場合に、教育委員会からそれにかかわる指示命令がないとすれば必ずしも指導要領違反という問題は起きないというのが第二点でございます。しかし、仮に市町村の教育委員会から所属の学校に対して、やはり所属の学校はすべて入学式、卒業式においては国旗を掲揚し、国歌を斉唱することが必要であるという指示が出ていた場合に、学校長を含めて学校がその指示に従わない場合には、学校長を含めて処分の可能性、対象となることがあり得ると、こういうふうな観点でお答えを申し上げたいと思います。
  135. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 いろいろ言われますけれども、確認をされたように、法的な定めのない君が代とか日の丸を、これを学校行事で扱わなかったからといって処分の対象になるということについては、そもそも議論のあるところですね。  もう一つ聞きますけれども、君が代を歌わない子供が出たという場合に、これは教育上どういう扱いになるんですか。
  136. 西崎清久

    政府委員(西崎清久君) 前段の方は、先ほど私が申し上げたとおりに御理解をいただきたいわけでございますが、後段の君が代を歌わない子供の問題、これはやはり音楽の授業におきましては、音楽の教科書はやはり君が代が全部一年生から六年生まで載っております。そしてそれぞれの発達段階に応じて君が代についての指導が音楽で行われる。まずその音楽についての指導というのが一つ前提になるわけでございますが、やはりそういうことを前提として、入学式、卒業式で、できるだけ厳粛な雰囲気の中の儀式で、意義のあることでございますから君が代を歌うようにというふうな指導先生方がしていただく、この問題がまず第一でございます。  にもかかわらず子供が歌わない場合については、その歌わない子供のなぜそうであるかについては、やはり教育上、指導上の問題として担任教師等が適切に事後措置としての対応をすべき問題である、こういうふうに考える次第でございます。
  137. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 今回のまとめによりますと、社会科の授業でも君が代、日の丸の意義を教える、こういう方向になっておるわけでありますけれども、そうすると例えば例の「君が代は千代に八千代にさざれ石の巌となりて」というあの歌の文句、これをどういう意味で教えるんですか。
  138. 西崎清久

    政府委員(西崎清久君) このたびの教育課程審議会の審議のまとめにおきましては、それぞれの学校段階、特に小学校、中学校の社会科で、先生指摘のように国旗、国歌の意義を理解させるというふうな表現、取扱内容が載っておるわけでございまして、その意義を教えることについての内容をどういうふうに考えるかということは、今後仮に、このまま教育課程の答申をいただいた場合、私どもが約一年かけて指導要領上どういうふうに考えていくかということを、関係の協力者のいろいろな御示唆等もいただき、御審議をいただいて決めてまいらねばならない、こういう問題でございます。第一点でございます。  しかし、それでは先生御満足いただけないと思いますので、一般論として現段階で申し上げられますとすれば、意義を教えるということについての要素として考えてみますと、一つは国旗、国歌というものがやはり日本国なり日本国民のシンボルであるというふうなことを教える。それからまた、国旗、国歌というのは、自分の国の国旗、国歌だけれども、他の国の国旗、国歌も大事なんだよというふうなことを教えるとか、あるいは国際的な関係でもそれぞれ尊重されなければならない、マナーとしても大事だとか、それから先ほど先生がお触れになりましたこれについての根拠あるいは沿革というふうな問題についてもし議論があるとすれば、やはり国民にはこれが定着して国旗そのもの、国歌そのものだということについての児童生徒の理解を得るとか、いろいろな考え方が要素としてあり得ると思います。  その際、じゃ君が代の歌詞をどこまで教えるかということにつきましては、まだ現段階で私ども明確にお答えするのはいかがかと思うわけでございまして、やはり君が代の歌詞の意味につきましては、児童生徒の発達段階もございます。しかし、少なくとも君が代という歌詞の内容が、天皇陛下を象徴として日本国民あるいは日本国家がとわに繁栄していくようにというふうなことを願った趣旨の言葉である、そういうふうな意味であるということは少なくとも教える必要があるであろう。それから、ではどの程度深めるかという問題は、これからの発達段階の問題としての議論にまちたい。こんな考えで現段階ではおるわけでございます。
  139. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 君が代の歌の意味をどう教えるかという問題は、これから文部省としていろいろ検討をやっていきたいと。それはそうでしょう。そういうふうに言わざるを得ないでしょう。何しろあの歌については、天皇が千年も万年も、いついつまでも天皇制が長続きしますようにということで子供時代教え込まれて、日本国民があの戦争に総動員をされていったという苦い歴史があるわけですから、したがってどういうふうに一体あの歌の意味を教えるかということについて、今ここで即座に文部省として答えにくいというのは私はもう当然だと思うんです。  とにかく法的な扱いとしても何ら定めはない。国民の中に定着しているとおっしゃいますけれども、今もなお、国論として国民の意見の中で重大な対立があるということの明白なこの問題を、法的な新たな措置も定めないまま、教育課程審議会のまとめが出た、答申が出た。学習指導要領で告示をするということでもって強制力を持たせるということが一体できるのかどうか、それが日本教育の将来にとって正しいのかというここの問題があるんだと思うんです。  次に、道徳教育の問題へいきましょう。  道徳教育の問題について、まとめで触れていますけれども、いろいろ批判のある現行の学習指導要領でさえ掲げている基本的人権の尊重、正義を愛し不正を憎むと、こういう目標はなぜなくなったんですか。
  140. 西崎清久

    政府委員(西崎清久君) 道徳教育でお答えいたします前に、前段の方の君が代の意義の問題につきまして、先生がおっしゃいました、万世一系の天皇のしろしめす御代がとこしえにという解釈は、これは戦前の解釈、確かにそうでございました。しかし、私は衆議院でもお答えしたことがございますが、現在やはり新日本国憲法のもとで君が代の歌詞というものを考える場合には、象徴であられる天皇陛下を中心として日本国あるいは日本国民というものがとこしえに繁栄するようにという歌詞の意味であると。これははっきり歌詞の意味として教えることは必要であるし、そうすべきであるということで私どもは考えておる次第でございますので、ひとつ御理解をいただきたいと思う次第でございます。
  141. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 これから検討すると言ったでしょう。
  142. 西崎清久

    政府委員(西崎清久君) それから具体的に、それではどういう段階でどこまで深めるかにつきましては検討をさしていただきたいと、こういう趣旨で、基本のところは今お答えしたとおりでございます。  それから次に道徳教育でございまして、この点につきましては、道徳教育については現在小学校二十八項目、中学校十六項目の項目があるわけでございます。これを、主として二つあるわけでございますが、一つは低学年、中学年、高学年というふうな発達段階に応じた仕分けをして、道徳教育がそれぞれ子供に身につくようにということを考えたい、これが第一点でございます。それから第二点は、やはり事柄についてのいろいろウエートづけをし、構造化し、脈絡をつけるというふうなことで、その辺についての整理をいたしたい、これが第二点と申し上げられようかと思います。  そういう前提でこれをごらんいただきますと、今回の全体の整理といたしましては、「人間としての望ましい自己の形成と自他の人間関係の育成」、それから「自然を愛し、生命を尊びこという第二の項目、それから「国際社会」云々という第三の項目、この三つを柱として、こういう柱の中に先生がおっしゃいましたような正義の問題であるとかそれから人権の問題であるとか、そういうふうなものをはめ込んでいくという考え方でございます。したがいまして、審議のまとめ自体は、現在小学校にある二十八項目のそれぞれに含まれております主たる項目は全部が挙がっておりません。整理の観点を挙げておるわけでございまして、決して正義の問題それから人権、権利義務の責任の問題をネグっているわけではなく、実際には指導要領を作成する段階で、現在も当然入っているわけでございますから、私どもといたしましては、現在入っているそのようなものをやはり指導要領の中ではちゃんとはめ込んでいくというふうなことを考えておる次第でございます。  課程審の審議のまとめとしては全体の整理の観点を示しているので御指摘のような文言が入っていない、こう御理解いただきたいのであります。
  143. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 今後の新しい学習指導要領作成の検討過程の中でそういうものもはめ込んでいくというふうにおっしゃっても、私は言い逃れだというふうにしか理解ができないんですね。なぜならば、冒頭に大臣にお尋ねをしたように、教育行政の基本を律するのは憲法、教育基本法だ。この憲法、教育基本法にうたわれておる基本的な課題として、基本的な人権の尊重だとか正義を愛し不正を憎むという、こういう課題が現行の学習指導要領の中であったと。これが偶然に消えたということには私は思えないわけです。やっぱり何かの理由があってこれが消されたんだろうというふうに思わざるを得ないわけでありますけれども、そのことだけでこの論争を続けても始まらぬでしょう。  同じように、同僚委員からもありました高校社会科を地歴と公民科、これに分離新設をするというこの問題にしましても、現に二人の社会科協力委員の辞表が出されておるということで新聞も報道しておりますように、文部省教育課程審議会を設置してきて、委員からこういう辞表が出るということは三十八年来なかったことだというふうに言われておるがごとく、非常に重大な問題が今日露呈をしてきておるということですね。しかも公民科というのは、我々の年代にとっては、あの修身科とともに公民科という名によってどういう教育がやられてきたか。戦後それが反省をされて民主主義教育一つの代表として社会科というものが登場をしてきたというこのいきさつから考えてみましても、きょうはごく代表的に君が代、日の丸の問題、あるいは道徳教育の問題、高校社会科の問題、これを例にして取り上げてみたわけですけれども、本当に今、軍国主義教育復活の危険な方向を私としてはひしひしと感ずるわけです。  さらに、義務教育の中学校の段階から教科の選択制を大幅に広げて差別、選別教育を強化していくというこの問題などは戦前でもなかったことですね、義務教育からこういう方向をとるということは。こういう内容さえ出てきているということでありますので、こういった審議会まとめはひとつ根本的に白紙に戻して再検討をするということで、大臣は新しく大臣になられたところでありますから、ひとつそういうことでやられるよう、もう答えを求めませんけれども、強く要求をしておきたいと思います。  そこで次は、初任者研修問題をお聞きをする順番でありましたけれども、これ後に回しまして、次の問題は、先日十一月六日、国会でも竹下新総理が首班指名を受けたというあの直後、午後四時ごろから竹下さんの地元島根県の掛合町で祝賀会が開かれておりますが、祝賀会が開かれたことを別にとやかく言うわけじゃありませんけれども、問題なのは、それに地元の小中学校の子供が大量に動員をされているという問題であります。竹下氏の母校の小学校、それからあの方が教鞭をとった中学校のほぼ全員、教師も付き添ってこの祝賀会に出ている。写真もちゃんと出ていますから。これはそういう小学校と中学校のほぼ全員、教師も付き添っていたということですから、校長や町の教育委員会も承知の上での参加だったと思うんです。  そこで一つ尋ねます。新しい総理大臣が誕生する際、こういう小中学校の子供なんかも動員をしてお祝いの行事をやるというのは今までも例があったことですか。中曽根、鈴木善幸、大平、福田さん、ここら辺のところ、例はどういう例か。
  144. 西崎清久

    政府委員(西崎清久君) 御指摘の竹下総理の件につきましては、ちょっとお話がございましたので、昨日島根県の方に照会いたしました。  後段お尋ねの過去の例はどうかという点については、私ども正確に承知いたしておりません。
  145. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 承知していないということは、少なくとも新聞などの報道に出るような形で、大々的な派手な形で子供まで動員をして、そういう祝賀行事をやるということはなかったということだと思うんですよ。いや、そうじゃないと言うんだったら例を言ってください。だから、今度のやり方というのは私はちょっと異常じゃないか。出身校と、教えておった学校のそこの子供のほぼ全員が参加しておるというふうに新聞も書いているわけですからね。  文部大臣、一体こういう姿は教育基本法の第八条にも、教育の政治的中立、これをうたっているわけでありますけれども、そうした見地から見てどう思われますか。
  146. 中島源太郎

    国務大臣中島源太郎君) 今、当面のお尋ねでございますが、竹下新総理に関することでございますので、やや調べてみました。  十一月六日選出されました後、地元で祝賀会が開催された。そのときに掛合町の小中学校のうち、これは竹下総理の母校であったということと、それから竹下総理がかつて一時教鞭をとっておられた中学校であると承知をいたしております。どのくらいな児童生徒か人数はつまびらかでございませんが、授業に影響のない放課後において自由参加の形で竹下総理のお宅にお祝いに上がったと、こういうことでございますので、伺う限りは大変心温まる話だと、このように受け取らしていただきました。
  147. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 仮に自由参加とはいえ、教師も付き添ってほぼ全員、三百五十人ぐらいです。ほぼ全員が参加するというようなことが、これが一体教育委員会や校長が参加しなさいということで命令を出したわけじゃないからといって済む問題ではないと思うんです。大臣はまさかお考えにはなってないと思いますけれども、今後各大臣が、臨時国会も終わって国会が休みに入ったらお国帰りということになったときに、こんなような形でどんどんと子供も動員をしていってやられるということになったら、これは事は重大でしょう。ですから、一遍これを機会に、本当に教育の政治的中立、これが大事だとおっしゃるのであれば、もっと節度を持った形でこういったことがやられるように、ひとつよく実情を調べ、文部省としての指導方向をはっきりさしてもらいたい。どうですか。
  148. 中島源太郎

    国務大臣中島源太郎君) これは、私どもはすべて国民の負託を得まして、そして国政あるいは議会で全力を尽くすということが務めでございますので、たまたまこういう祝賀会というのは、祝賀をしていただくのをお受けする立場ということでは、もちろん当然私どもからお呼びかけ、あるいは各議員から呼びかけてということはあり得ないことと存じております。あくまでも自主的な祝意をお受けするということでありましょうけれど、恐らく各議員地元に戻られますのは一般の休みの日を利用する以外にはあるまいと思いますが、おっしゃるとおり節度ある心がけということは当然必要なことと存じます。
  149. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 科学技術庁長官お願いをしておりますので、一問お尋ねをしておきますが、明年の一月行われます茨城県の東海村の議員選挙、これに日本原子力研究所の原子炉安全工学部次長、同時にこの方は自民党茨城県連の東海支部の会計監査をなさっている方でもありますが、石井敏雄さんという人が三期目の出馬をするということで、その後援会東海原子力同友会、その会長はこの原研の東海研究所の副所長、この原子力同友会が活動を始めているところであります。もちろん、原子力研究所の役員、職員は基本的に政治活動の自由が保障をされていますが、法律にも原子力平和利用の三原則を明記し、全党派一致のもとに原子力研究所が設立をされてきたという、こういう経緯に照らして、その活動は公正、民主的な自主規律が求められるところだろうと思うわけでありますが、しかし今までの何回かの選挙で村の選挙管理委員会に提訴があるなど批判を招く活動がなしとはいたしません。  例えば、同友会の機関誌五十八年の十二月号、ここで選挙に当たってのこの法的解説、こういうものがやられているんですけれども、公選法百三十六条の地位利用禁止、これは原子力研究所の職員には該当しないということを述べているだけであって、研究所法の二十一条での刑法上公務員としての同等扱いを受けるということとか、公選法二百二十一条などの利害誘導罪の適用などについては全く触れていないという非常に偏った作為的なものになっているわけです。あるいはまた、かつてこの石井さんが村政報告会を行ったそのときに、ある管理職が原研の公用車を使ってそれに参加をしているとか、あるいはこの原研の出入り業者に同友会加入の事実上の強制がやられていると、原研の倉庫の中に特定候補の看板が保管されていたとか、こういう事実も指摘されているわけであります。今回の、もう年を越えた一月に選挙を控えているわけでありますけれども、今回の選挙に当たってはこうしたことが繰り返されないように研究所の名にふさわしく公正な活動をひとつ貫いていく、そのために科学技術庁としてひとつよく注意を向け、必要な場合には指導も行うという立場で心がけてもらいたいと思うんですが、どうですか。
  150. 松井隆

    政府委員(松井隆君) ただいま先生指摘の件につきまして、確かに私どもも話として伺っておりますけれども、現在東海村の村議会議員に原研から職員が二人出ております。一人が先ほど申しました安全工学部の次長の方で、もう一人が組合の方からやはりアイソトープの職員でございます。それで、来年の一月に選挙があろうというふうに聞いております。それで、恐らく両名とも立候補するのではないかと、こういう事情にあるやにも聞いております。もともとこの村会議員選につきましては、昭和五十四年でございますけれども、東海村の原子力関係事業者の有志が集まりまして、原子力施設と東海村の調和ある発展ということをともに考え、あるいはともに行動するという意味合いで東海原子力同友会というのが設立されております。  それで、村会議員の選挙に関しましては、同友会が中心になって活動しているというふうに承知しております。それで原研の職員につきましては、あくまで個人の資格でこの同友会に参加するという仕組みでございまして、原研として、組織として村会議員選挙に関与しているということはないというふうに承知しております。  なお、私ども承知しているところでは、今までの選挙活動につきまして公職選挙法でいう例えば二百二十一条、これは利害による誘導とか、そういったことによることは過去はなかったというふうに聞いておりますし、先生指摘のとおり、今後ともそういうことがあってはならないというふうに考えておる次第でございます。
  151. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 お役所としては、過去あった選挙について監督指導上の手落ちがあったというようなことをそう簡単に認めるわけにはいかぬという気持ちかと思うんですけれども、しかし科学技術庁長官、新しく長官になられまして、その傘下の非常に重要な原子力研究所、ここの職員が多くを占めるそういう組織がつくられて選挙がやられていくというところでありますけれども、新しく大臣になられたこれを機会に、一遍実情はどうかということもよく調べていただいて、改善すべき点があれば改善をすると、こういう方向でのひとつ慎重な対応を長官としてお願いをしたいと思いますが、どうでしょうか。
  152. 伊藤宗一郎

    国務大臣伊藤宗一郎君) ただいま先生の御指摘に対しまして局長の方から答弁をさせていただきましたけれども、私自身もそれぞれの事項については今局長答弁をしたことと同じような報告を受けたり理解を持たしていただいていると思います。したがって今までのところは特段の問題はなかったと、いわゆる組織として選挙活動をしたという事実はなかったものと考えておりますけれども、原子力行政の大事な日本原子力研究所のある東海村のこれからの村政の問題にも深くかかわっておりますので、もし今後何らか必要なことがあるならばその場合は適切に対処をしてまいりたいと、このように考えております。
  153. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 それでは残りました時間、初任者研修問題でもう少し質問をしておきたいと思います。  内容には、文部省のやる洋上研修初めいろいろありますが、本年度二回にわたって文部省が相当のお金を使ってそれぞれ九泊十日の洋上研修を行ったわけですね。その際に船の上に乗っておるのですけれども、朝の全員ミーティングでテープで君が代を流し、日の丸を掲揚する、こういうところから始まるわけでありますけれども、一体その法的根拠が何なのか。さっきも議論していましたけれども、現行の学習指導要領でも、入学式や卒業式などの学校行事で行うのが望ましいというこの程度の現時点では文部省としての打ち出し方でありますけれども、こういう研修会で今言ったようなことをやっているというその法的根拠は何ですか。
  154. 加戸守行

    政府委員(加戸守行君) 本年七月並びに十一月、初任者研修の一環として文部省におきまして洋上研修を開催いたしました。その際、朝のミーティングの際に君が代のテープを流して日の丸を掲揚させていただきました。  この考え方といたしましては、文部省の施設といたしまして例えば青年の家、少年自然の家等ございますが、そこにおきます行事におきましても朝は国旗の掲揚を行っております。この船は文部省の船ではございませんけれども、文部省がチャーターをいたしまして文部省が自主的に管理をする、主催する研修会でございますので、もちろん初任者研修自体は都道府県教育委員会あるいは指定都市教育委員会が行う研修の一環であると同時に、この洋上研修に関しましては文部省の主催でございます。その意味におきまして、文部省の施設と同様な考え方で文部省が主催する行事でございますので、文部省の権限と責任において自主的な判断において日の丸を掲揚したということでございます。これは日本国の文部省としての当然の態度であろうかと考えております。
  155. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 青年の家や婦人の家でもやっていることだから、今度の洋上研修の船の上でもやったといったってそれは何の法的根拠の説明にもならないわけですね。曲がりなりにも文部省が官報で告示をして拘束力ありというふうに言っておる学習指導要領でも、入学式や卒業式などのこういう学校行事でやることが望ましいと、こう言っているその程度の問題なんであります。やはりこれは依然として重大な疑義が残るわけです。もしそういう文部省の方針として、国の一つとして、文部省はえらい大きなことを言っておる。今後各県の研修会でも必ず君が代を流し、日の丸を掲揚するというのが文部省指導方針ですか、今後一切の研修に。
  156. 加戸守行

    政府委員(加戸守行君) この初任者研修におきましては都道府県教育委員会が、このほかそれぞれの県におきまして宿泊研修等が行われると思います。その場合いろいろな施設を使われると思いますが、その研修会におきまして都道府県あるいは指定都市教育委員会が国旗を掲揚するかどうかということは、都道府県教育委員会が自主的に判断なさる問題であろうかと思います。
  157. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 その洋上研修においてあなたが文部省を代表するような形、というのは文部省を代表して講義をやった方はあなたしかいないわけですけれども、この君が代、日の丸問題について話の中で触れているわけですね。どういうことを言うたのか、その要旨をもらいたいと思って、私のところへ届いたのは、国旗日の丸、国歌君が代の由来について述べ、国際社会の中の日本人としてこれを尊重する必要性について述べたという極めて簡単、抽象的にこう書いておられますけれども、こういうことを言っているんじゃないですか。君が代の君はあなたであり、天皇ではないと。君が天皇であったとしても国の象徴をたたえてなぜ悪い、こういう話をあなたはしたということじゃないんですか。
  158. 加戸守行

    政府委員(加戸守行君) 国歌君が代の由来について申し上げましたときに私が、記憶でございますけれども、そもそもこの歌は古今和歌集の中に賀の歌として巻の七の筆頭にありました和歌から由来すると。その場合には、そこで用いられておりましたのは「わがきみは」で始まりまして、あと以下同じでございますけれども、それが一世紀ほどたちまして和漢朗詠集で「君が代」に変わって、それが用いられるようになったということと、当時古今和歌集の中で用いられております「わがきみは」という「きみ」は、通常はあなたを指すということで、同様にその中に別の句でございますが、光孝天皇が僧正遍昭に対してその七十歳のお祝いで使われた歌の中には「君がやちよに」という言葉もある。そういう意味で、当時は意識されていなかったが、それは明治時代に国歌として採択された、採択といいますか、曲がつけられたときにはもちろん天皇を指す意味として用いられてきた、そういう過去の経緯を述べまして、いわゆるそもそも歌の始まったときには一般的にはあなたを指す意味であったということを触れたわけでございます。
  159. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 大臣、今の局長のその答弁文部省の統一見解かと。私は統一見解ではないと思うんです。しかし、そういうことを洋上研修、そこにおいて局長がとうとうと新任者を前にして話をしておるということは、私は非常に異常なことであり、局長の職権逸脱だと思うんですね。しかも、洋上研修問題を、今もう時間の関係でこれだけを取り上げたんでありますけれども、例えば県教育委員会がやっておる研修なんかにおいて、これは新聞にも出ましたので御存じかと思いますけれども、夜の時間まで含めて初任者を拘束するということです、岐阜県の例ですけれども。夜、ある教職員がお酒を飲んだと。これを理由にして懲罰として深夜にわたるまで正座をさせたと。御嶽山に研修所がありますから御嶽山に登山をやるということで、雨の心配があった中をそれを強行して重体になって、病院へ担ぎ込まれたときには意識もうろうとしておったという、こういう例が新聞にも報道をされておる。  かくのごとく、お話があった四十人学級実現のために必要なその定数にまで割り込んで補充教員を配置しなくちゃならぬというこの初任者研修、これを強行する。洋上研修問題といい、県の段階でやっておる研修といい、重大な問題を含んでおりますので、最後に文部大臣、新しく文部大臣になられまして、これ七月の当決算委員会で当時の塩川文部大臣のときに私質問しまして、一遍諸外国の制度がどうなっているかということもよく調べてみよう、本当に日本の誤りなき方向をよく考えてみようということにもなっておりますので、一遍これで、ほぼ半年がたつんですけれども、ひとつ慎重な検討を、このあり方について再検討をぜひやってもらいたいということを大臣に求めて、ちょっと時間超過しましたが。
  160. 中島源太郎

    国務大臣中島源太郎君) いろいろ御指摘がございました。  細かくは政府委員から答弁させますが、私どもは二十一世紀に向けましてたくましく心豊かな青少年を育成するということに目標を置いておりますので、今までのともすれば画一的と言われかねない教育から、創造性と個性重視の教育推進をしてまいるときと、こう心得ておりますので、そういう時期に新しく教鞭をとられる方にその趣旨をよく理解していただくという研修があることは至極当然のことと思いますし、また、国旗、国歌につきましても、我が国の国旗、国歌と同時に、それぞれの国の国旗、国歌の意義を理解し尊重する、これはお互いにおのれを尊重し責任を分かち合い、また相手のすべての人々、すべての国々の意義を尊重するということにおきまして、これから巣立っていきます青少年に対しましても、あるいは老若男女それぞれの国民にとりまして、平和を祈念し末永く発展をしていくということを祈るための象徴である、これは大変結構なことと、こういうふうに私は根本的には考えておるということを申し上げさしていただきます。
  161. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 きょうは文部省科学技術庁についての決算委員会ですけれども、科学技術庁については質問するだけの勉強をしておりませんので、きょうは専ら文部省についてお伺いいたしたいと思います。  最近、国際化ということが盛んに言われるようになりましたけれども、国際化という場合に、単に物の交流、商品であるとか資本なんかの自由な交流というだけではなしに、むしろそれ以上に大事なのは、文化あるいは人間の交流ではないかというふうに思っております。その人間の交流の中でも、単なる観光旅行に出かける、これもある意味では勉強になると思いますけれども、やはり一番その中心になるのは、ある相当期間にわたりまして外国の青年が日本に滞在して、そして日本の若者と同じように勉強する、あるいは日本の習慣、文化を学ぶ機会を持つ、そういう意味の留学生、これは日本からの留学生ももちろんですけれども、外国からの留学生を、たくさんの人を呼んで安心して勉強できるようにさせるということが非常に大事ではないかというふうに思っております。  私が学校におりました十年ぐらい前に比べますと、確かに外国からの留学生がふえておりますし、施設も改善されました。そのことは認めますけれども、まだまだ十分ではない点があるんではないか。二、三日前に発表されました東南アジア大型文化ミッションの提言の中にも、留学生に対する取り扱いをもつと質的、量的に改善していくようにという提案もございます。先般、新聞に出ておりましたけれども、バングラデシュからの私費留学生が食べ物も食べられずに餓死したというふうな記事も出ておりましたし、あるいは金がなくなって強盗を働いたというふうな外国の留学生もいたということが新聞に載っておりますけれども、もしそういうことがありますと、せっかく呼んでも逆効果になるんではないか。その意味で留学生に対する取り扱いを質的、量的に改善してもらいたい、その立場から若干の質問をいたしたいと思います。  これは中曽根首相の時代だったと思いますけれども、東南アジアを訪問されまして、その後、外国人留学生を十万人ぐらいにふやしたいということが言われまして、それ以来何か留学生を十万人にふやすんだというふうなことが言葉として定着してしまったような感じがするんですけれども、文部省としましては、こういった留学生を、量的あるいは質的に改善していくについて何か政策上の指針というふうなものを定めておられるかどうか、それを発表されたかどうか、そのことをまず最初にお伺いしたいと思います。
  162. 植木浩

    政府委員植木浩君) ただいま御指摘の点でございますけれども、昭和五十八年に二十一世紀への留学生政策懇談会という五人の有識者から成ります懇談会が設けられまして、ここで二十一世紀に向けての留学生政策がいろいろと検討され、提言をいただいたわけでございます。そして、さらに昭和五十九年の六月に、この提言を受けまして、やはり専門家等の会議によりまして「二十一世紀への留学生政策の展開について」という御報告をいただいたわけでございます。これらはいずれも提言でございますけれども、文部省といたしましては、これらを踏まえて現在留学生の受け入れの拡充、受け入れ態勢の整備、これらを行っているわけでございます。
  163. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 その提言、私もいただきました。文部省学術国際局留学生課という名前で発表されております。中身は、文部省自身の意見ではなしに、ただいま言われました懇談会なんかの意見が書かれているわけですけれども、大体ここに書かれていますことを文部省は是認して推進していかれる、そういうふうに考えていいわけですね。
  164. 植木浩

    政府委員植木浩君) 基本的にはただいま申し上げましたように、ここに書かれておりますいろいろな提言をできるだけこれを踏まえて進めていきたいということでございます。もとよりこの中にはいろいろ推計、そういったものも含まれておりますし、その時点での推計ということも中に書かれておりますので、今後の状況変化によってはいろいろとあろうかと思いますが、基本的にはこれらの提言を踏まえつつ今政策を進めているところでございます。
  165. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 この文書によりますと、二十一世紀に十万人、その内訳が国費留学生が一万人、私費留学生が九万人、合計十万人ということになっております。現在の大ざっぱな数字は国費留学生一に対して私費留学生が大体五ぐらいの割合じゃないかと思うんですけれども、果たしてただじっとしておいて私費留学生が国費留学生以上に伸びていくだろうか、そのことを私は心配しているわけでございます。  文部省からいただきました資料によりますと、日本民間の奨学団体からスカラシップをもらっている、その意味の私費留学生ですね、私費留学生といいましても自分のポケットマネーで来るのも私費留学生ですけれども、それが五十八年度は千五百人、六十二年度は千八百人。だんだんふえてきております。しかし外国あたりでは、例えばロックフェラーであるとかフォード財団であるとか、そういうところでスカラシップを出して、いわゆるその意味の私費留学生が盛んにあるんですけれども、どうも日本の場合はそういった意味の私費留学生というのが十分組織されていないといいますか、このままで果たしてそういうふうに私費留学生がふえていくかどうか、国費留学生が牽引車になって私費留学生をふやすことができるかどうか。それについてはまだ後ほど、例えば税制上の問題なんかもあるだろうと思いますけれども、文部省としましては、日本がそういったふうにヨーロッパ並みに、フランスなんかの場合は国費が一に対して私費が九になっている。それから類推されたんだろうと思うんですけれども、果たして私費留学生に重点がだんだん移っていくというふうにお考えでしょうか。もしお考えでしたら、どういう根拠からお考えですか。
  166. 植木浩

    政府委員植木浩君) 確かに先生がおっしゃいますように、さらに大幅に留学生の受け入れがふえていくという状態を想定いたしますと、国費留学生をふやさなければいけないということはもとよりかと思いますが、やはり日本大学なり日本社会なりの魅力が海外の青年に対してふえて、そのために私費留学生が非常にふえてくる、こういう状態でなければならないだろう、こういう趣旨のことがこれらの先ほど申し上げました二つの懇談会なり会議でも出たわけでございます。  私どもといたしましても、私費留学生の施策ということで医療費補助を行うとか、あるいは学習奨励費を支給するとか、さらに今先生おっしゃいました民間団体等の奨学金の支給も年々ふえてきておる、こういう状況でございます。  データを見ましても、近年数カ年をとりましても、徐々にではございますが、私費留学生の留学生全体数の中に占める比率というものは上昇傾向にあるわけでございます。ただ、今後円高等の影響で必ずしもそういった点、楽観的に見ているわけではございませんが、今までは徐々に上昇を続けておるわけでございます。
  167. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 そういう留学生をふやしていくためには、国費留学生、私費留学生いずれもですけれども、やはり受け入れ態勢、これが整備していないと、せっかく来ても失望するだけだろうと思うんで、その受け入れ態勢の整備の問題についてお尋ねいたします。  まず、国費留学生の場合。国費留学生の奨学資金、これは学部の学生、それから日本語研修学生が月に十三万三千五百円、それから大学院なんかの研究留学生が十七万五千円。私はこの額は、欲を言えば切りがないんですけれども、まずまずの金額ではないかと思いますが、問題はその奨学資金を支給される期間が研究留学生の場合は四月入学で二カ年、九月入学の場合は一年半、それから学部留学生の場合は五カ年。これも学部留学生については五カ年あれば最初の一年間は一生懸命日本語の勉強をする、あとの四年学部の勉強をする。まずまずではないかと思うんですけれども、研究留学生の方、これは二カ年というのはちょっと中途半端ではないか。  どの程度日本語をもとの国において習得しているか、習得してから来るかということにもかかるんですけれども、余り日本語を十分勉強していない、まあ自然科学の場合はそれほど日本語をやらなくてもいいと思うんですけれども、社会科学、人文科学、日本の場合はそれが割に多いわけですね、ほかの国に比べまして。その場合に、二年間で日本語を学びつつ専門のことを研究するのはちょっと短いんではないか。したがって、私はこれを少なくとも二年半ぐらいには延長することが必要ではないかと思いますし、またこの取り扱いにつきましても弾力的に、人によっては、二年であるけれどもそれを二年半なり三年に延ばすということを認める、そういう弾力的な取り扱いが必要だろうと思います。  これも文部省からいただきました資料、研究留学生の延長の場合にはあらかじめ予算が取ってあって、例えば昭和六十二年度では四百九十人について延長を認めだということが報告されておりますが、志願した人の割合、志願した人に対してこの延長を認められた割合は一体どうなっておりますか。
  168. 植木浩

    政府委員植木浩君) 今、先生がおっしゃいましたように、大学院レベルの場合は、初めに一年半ないし二年ということで受け入れまして、その間に日本語を勉強し、さらに修士課程、場合によっては博士課程の試験を受けていただく、こういうシステムになっております。特に開発途上国からお見えになる方はこういうコースで、試験で合格したときにはさらにそこからまた修士課程なり博士課程の期間二年、三年奨学金を保証しているというシステムになっております。また、先進国からお見えになります留学生の場合は、学位はやはり自分の母国で取るというケースもかなり多うございまして、むしろ日本で学位を取るよりは日本で専門の勉強をして二年ぐらいで帰りたいというケースもあるわけで、まだ十分とは言えるかどうかわかりませんが、先生が御指摘のかなりな程度に弾力的には運用しているわけでございます。  なお、私どもとしては、もちろん予算の範囲がございますので、全員にそういった希望どおり奨学金を支給するというわけにいかない場合もございますけれども、できるだけそういった御希望に応じて延長を図っているということでございます。
  169. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 これは私の知っている大学先生が、やはり二年間ではどうしても短い、それで延長を申請したんだけれども、そのときは予算がなかったのかどうか認められなかったということを言っておりましたけれども、やはりもう少し弾力的に取り扱って、あるいはそういった予備の費用をとっておいで、そういった人たちの希望をできるだけかなえるようにしていただきたいというふうに思います。  それから次は、国費留学生の奨学金の支給が国立大学に通っている国費留学生の場合は比較的簡単にいっているようです。毎月のやつが大体十日ごろには受け取れるらしい。ところが国費留学生で私立大学に行っている場合は二十四、五日ぐらいになるというんですね。それで、どうしてそんなにかかるんだろうと思っていろいろ文部省にお尋ねいたしました。そうしたら非常にたくさんの判こを必要とするものですから、その担当者が出張なんかしているとおくれるんじゃないかと思います。  大臣、余りお役人のことは御存じないかもしれないのでちょっと読み上げてみますけれども、まず個々の留学生がそれぞれの大学に出頭して在籍しているということを示して、そしてそれが文部省の方に来て、そして起案をして、係長、課長補佐、課長、連絡課、審議官、局長、七つの判をもらって支払い依頼書というのが作成されて、それが会計課の方に回って支出負担行為、それから支出の決裁をするので起案、係長、主査、これは本来は副長、課長まで行くんだそうですけれども、会計課の方では代行制度で主査のところで打ち切っている。したがってこちらの方は三つで済むわけですけれども、しかしそれにしてもたくさんの判こが必要なんですね。  しかも、これが最初の月だけではなしに、毎月毎月これだけの判こをもらわなければそれが日本銀行に行かない。日本銀行から各銀行本店に行き、銀行本店から支店、大学口座、大学会計課、大学学部事務所、そしてやっと留学生本人に渡るというんですよ。これはやっぱり二十五日ぐらいまでかかるのは私はやむを得ないんじゃないかと思うんですが、これは別に会計法上そうしなくちゃならないというのではなしに、文部省内でやれることなんです。一番最初のときはそれはやっぱりこの程度の、厳重にする意味で判こが必要かもしれませんけれども、その次の月からはもう本人が確認されればどんどん払っていっていいことでしょう.。  文部省というのはよほど暇なお役所で、人が余ってしようがないからできるだけこういう複雑なことにしているんだと言われればそれまでの話ですけれども、もう少しこういうのを簡素化して、文部省これからなさらなければならない仕事がたくさんある。重要な仕事がたくさんある。こういったルーチンな仕事はできるだけ簡素化して、そして必要な人間をそういった重要な仕事に回すということをひとつ大臣考えられたらいかがでしょうか、検討されたら。
  170. 植木浩

    政府委員植木浩君) 先生大変お詳しいんで、なかなかお答えしにくいんでございますが、確かに国立大学に在籍します国費留学生は毎月十日から二十日、そのころに奨学金を受け取っております。これは、国立大学の場合は会計関係の法令に基づきまして、四半期ごとに概算で大学へ送付をいたしまして、いわば支出委任をできるということでございますので、手続がかなり日数が簡素化できるわけでございますが、公、私立大学の場合はやはり会計法令に基づきまして、あらかじめ支出委任という形で送付できないものでございますから、今先生がおっしゃいましたように、銀行あるいは在籍大学、そういうところを経由して、さらに文部省の方のいろいろな書類の手続もその都度行うというようなことで若干手続が複雑になっておるわけでございます。そういうわけで、公、私立大学の場合には、平均して二十日から二十五日ごろに奨学金をお渡しできる、こういう差が出てきておるわけでございます。  もちろん、できるだけ、先生指摘のようにルーチンは簡略化して、エネルギーは本来の政策の方へ振り向けるということで、私どもも少しずつ改善してやっておるわけでございますが、今御指摘いただいたような点は、さらに公、私立大学の国費留学生が奨学金が早く受け取れるように改善する余地がございますので、私どもとしては少しでもその日数を詰めるように努力をいたしたいと思います。
  171. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 その問題は文部省内だけでやれることですから、業務の簡素化、行政改革、私は行政改革というのはむしろそういったところの仕事を減らしていくということが本来の行政改革だと思うんですけれども、行政改革の趣旨からもひとつぜひやっていただきたいと思います。  それから、これは会計法上問題があるかもしれませんけれども、私立大学に通っている国費留学生に対する奨学金の支給を、地方の大学の場合はちょっと別かもしれませんけれども、東京あたりにかなりまとまっているところでは、日本国際教育協会という文部省の外郭団体がございますですね。例えばそういうところに一括して委任する。最初のときはこれは文部省がやらなくちゃいけませんけれども、あとルーチンのことはそういうところに一括して、文部省の監督のもとにやらせるようにすれば、文部省の仕事も随分簡素化できるんではないかと思うんですけれども、これは会計法上できないんですか。
  172. 植木浩

    政府委員植木浩君) 先ほど申し上げましたように、国立大学の場合は支出委任ということで、四半期ごとにお金をある程度概算で送付いたしまして、そこで大学限りで交付事務ができるわけでございますけれども、私立大学の場合はそれができないわけでございます。もちろん、日本国際教育協会のような留学生事業団体、そういったものを今後どういうふうにいろいろな面で活用して、文部省の方のエネルギーをもっと政策の方に振り向けられるかということは確かに大変大事な点でございますので、いろいろと検討いたしたいと思いますが、なかなか簡単なことではなさそうでございます。しかしながら、留学生事務の簡素化という点については全く先生の御趣旨ごもっともだと思いますので、さらによく検討してみたいと思います。
  173. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 確かにおっしゃったように、現在の官僚機構の中ではなかなか難しい問題があるだろうと思います。もし会計法上問題があるとしますならば、私はこれは大蔵省のときに取り上げるんですけれども、会計法上どういうところに問題があるか。これは今じゃなくても結構ですけれども、私は必ずしもできないことではないんじゃないかという気がするんです、ほかの省なんかの補助金なんかの出し方なんか見ておりまして。後で結構ですけれども、もし会計法上非常に問題があるのでありますならば知らしていただきたい。これは大蔵省の決算のときに取り上げたいと思います。  それから、その次は宿舎の問題ですけれども、外国から来た留学生、これは民間の下宿に住まわせるということが普通の人たちとの交流を盛んにする意味で、それも私は非常に必要なことだと思うんですけれども、最近の地価上昇に伴う下宿代なんかの値上がりもありますし、どうも日本では、残念なことですけれども、東南アジアあたりから来た留学生は受け入れたがらない、下宿なんかでそういう傾向がありますので、やはり国として宿舎をある程度建ててこれを収容するということが必要だろうと思う。  これも資料をいただきました。大きな大学では、それぞれ留学生のための会館というんですか学生寮といいますか、そういうのを建てているところもあります。それから、日本国際教育協会みたいなところの集合的な、国立大学以外の私立大学の学生も入れる、そういうのがあるんですけれども、今後文部省の方針としましては、そういった個々の大学の宿舎をふやしていく方針なのか、あるいはそういった集合宿舎といいますか、どこの大学の者でも自由に入れる、自由にといいましてももちろん資格はありますけれども、そういうのに重点を置いていかれるつもりですか、方針がありましたらお聞かせ願いたい。
  174. 植木浩

    政府委員植木浩君) 留学生を受け入れる場合に、やはり宿舎の問題が非常に大きな問題でございます。文部省といたしましても、各国立大学等から御要望がありますれば、それに応じて留学生宿舎をできるだけ建てて差し上げるということで近年まいっておりまして、年間三百戸ずつぐらいふえてきております。六十二年度はさらに四百戸以上建てたいということで現在建設を始めておるところでございます。  留学生は各大学教育指導を受けるわけでございますので、やはり各大学の宿舎ということに重点を置かざるを得ないと思いますが、今先生指摘の、どこの大学にも属さない宿舎というものもまた大変宿舎として重要でございますので、先ほども御引用ございました日本国際教育協会、こういったところで今、祖師谷に新しい留学生宿舎、これは三百五十室でございますが、今建設中でございます。両々相まっていきたいと。こういう方針でやっております。
  175. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 私は、やはり地方なんかの大学の場合は個々の大学が宿舎を建ててやるということがいいだろうと思いますけれども、大都会の場合はやはり集合住宅といいますか、それの方が、お金のことばかり言ってもなんですけれども、経済的に安上がりでありますし、それからまた、留学生に対して日本語を教育するというふうな場合でも非常に便利じゃないか。したがって、大都会の場合にはそういったふうな集合住宅をもっと建てていただきたい。  東京についてはただいま言われましたように祖師谷の方で建築中で、三年以内には開設するという話を聞きました。しかし、やっぱりそれだけじゃとても足りないので、今後長期計画を立てて、何年までに大体こういうものを目指してやっていく、そういうのを立てることが必要ではないかと思うことが一つ。それから、東京の駒場にあります国際教育協会の寮、あれも私見てまいりましたけれども、古く建った建物ですね。これは、その当時そこに入れるのは特権的な学生だというふうに考えられていたかもしれませんけれども、もう二十何年たって、今日から見ますと、ほかの建物が非常によくなっているだけに、非常におそまつ。大体広さが四畳ぐらいですか、ベッドを入れるともうほとんど余席がないものですから、げた箱とか冷蔵庫を廊下にずっと並べているわけです。防火上も非常に危険ではないかということも心配しました。したがって、古い建物については、これは改築ということになりますと、いろいろ国有財産の対象にする問題とかなんか難しいと思うんですけれども、部屋の間はベニヤ板ですね、あれを取っ払って二つの部屋を一つにする、それだったら、これはもうごく簡単にできるんじゃないか。それだけ減るわけですけれども、減るのは別なところで補って増大していく、そういうふうな計画を立てられたらどうかと思うんですけれども、御意見どうですか。
  176. 植木浩

    政府委員植木浩君) 確かにあの留学生会館ができた当初は、周りに比べて大変立派な建物であったと記憶いたしておりますが、何分にも昭和三十二年あるいは四十年と古いときにできたものがありまして、当時はテレビとか冷蔵庫が普及するという予想がそれほどできていなかったものですから、非常に手狭な面もあるということは御指摘のとおりでございます。現在は文部省としては祖師谷の三百五十人という大型の新しい留学生会館の建設に全力を投球しているわけでございますが、この完成の後、駒場の留学生会館の改築等の問題につきましても鋭意検討いたしたいと思っております。
  177. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 それでは、ぜひ力を入れて検討していただきたいと思います。検討じゃなしに、実行していただきたいと思います。  それから、私費の留学生、特に私立大学なんかの場合多いんですけれども、私費の場合に対しては、留学生の受け入れのために、留学生一人について十万円の補助を私立大学にやっている。それからまた、秋からは、最近の円高に応じまして授業料を割り引いてやった場合には、その三五%まで補助している。これは大変結構なことだと思うんです。しかし、これは授業料に関してだけですね。生活費なんか非常に上がってきている、それに対しては十分の手配ができてないと思うんですが、その場合に私は、やはり国として面倒を見ることも大事ですけれども、先ほど申しました民間の奨学資金なんかをもっとふやしていく、これが必要ではないかというふうに考えております。これは税制上の差し支えがあるのかどうか。例えば国際交流基金にしましても、それから今申しました日本国際教育協会にいたしましても、政府の補助金のほかに民間から募金するということになっているのですけれども、どうも民間の金の集まりぐあいが悪い。双方から聞きました。これはどうも税制上何か問題があるのかどうか。二、三日前に発表されました「東南アジア大型文化ミッション提言」の中でも、「民間企業や個人が国際交流活動に協力しやすくなるような欧米並みの免税措置をとるべきです。」、そういう提言をされている。私、これは大蔵省のときに取り上げるつもりでおりますけれども、文部省として、例えばこういった学術団体であるとかあるいは国際交流のための団体なんかに対してもっと免税、税制上やってもらいたい。現在ではどうもこういうところがボトルネックになっているというふうなことをお気づきでしたら教えていただければ、私大蔵省のときに取り上げたいと思います。
  178. 植木浩

    政府委員植木浩君) 確かに民間の留学生奨学団体を今後活動を活発にしていただく、拡充をするということは、大変留学生を受け入れるに当たって重要なことでございます。かねてからこういった奨学金法人に対する税制措置というのは一応できておるわけでございまして、試験研究法人と言っておりますけれども、民法三十四条の公益法人、財団法人、社団法人で、留学生等に対する学資の支給を行うあるいは留学生等のための宿舎の設置、運営を主たる目的とする、こういう法人は主務大臣文部省関係ですと文部大臣に申請をしまして、認定を受けて試験研究法人、こういうことになりますと寄附金について優遇措置がございます。例えば日本国際教育協会もそうでございますし、それからロータリー米山記念奨学会、留学生に奨学金を支給しておりますが、こういった団体あるいは財団法人国際学友会、これらも皆試験研究法人ということになっております。これになりますと個人が寄附金を出す場合に所得税法上の措置が、これは全額というわけではございませんけれども、特定寄附金ということで総所得金額の百分の二十五を限度にしておりますし、法人税につきましても、通常の損金の二倍までを算入できる、こういう措置がございます。
  179. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 それはもう十分承知の上なんです。  私が聞いているのは、どうも文部省もっとシーリングの上を外したらいいのじゃないかと思うんですけれども、そういうことをすると税金が取れなくなりますからとかなんとかというふうな考えが大蔵省の考え方で、その考え方は間違っている。したがって私は、文部省のときにそれを取り上げるつもりはないんですけれども、文部省としてもっとこういう点改善してもらいたいということがあればおっしゃっていただきたいということを言ったわけです。今急に思いつかないかもしれませんけれども、ひとつ大臣、留学生問題について大いに頑張っていただきたいと思うんですけれども、大臣の御認識をまずお伺いしたいと思います。
  180. 中島源太郎

    国務大臣中島源太郎君) まさに先生おっしゃいますように、現在の日本の経済的な国力から見ましても、かつては外に学び外に流出するという時代でございましたけれども、現在は外に向かって貢献をする時代でございますし、流出から流入時代と心得ておりますので、特に海外からの留学生受け入れに対しましては万全を期してまいりたい、このように考えます。
  181. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 留学生の場合には、宿舎であるとかそういった受け入れアコモデーションの問題だけに限らず、大学自身がもっと魅力あるものにならなければいけない。その問題を次にこれは大学審議会にやってもらいたいと思いますので、大学審議会についていろいろ諮問していただきたいことがございますので、その中で一括して申し上げたいと思っております。  先般、大学審議会を設置されまして、新聞によりますと既に会合を開いて若干の問題を討議されたようでございますが、やはり大学が活性化していく、あるいはもっと大学を魅力のあるものにしていく、そのことが必要であり、その方法としまして大学審議会をつくるということに対しては我が党も賛成した次第でございますが、それが期待外れにならないためには私はもっと根本的な問題をまず議論していただきたいと思うのであります。  根本的な問題というのはどういうことかといいますと、大学審議会の設置のときにも文教委員会でいろいろ議論がございまして、その反対理由の一つとしてはこういった大学審議会ができると学問の自由、大学の自治が侵害されるから反対だという意見が委員の方からも述べられましたし、また参考人の中からも述べられたと思うのであります。ところが、その議事録を読んでみますと、何か学問の自由、大学の自治というふうなことはわかり切ったことだとしてその定義をはっきりさせないままに、やれこれは大学自治の侵犯であるとか、いや大学自治の侵犯ではないとかというふうなことが議論されているわけです。  それで、今後大学審議会がいろいろな提言をやっていく、教科の問題であるとか教員の評価の問題であるとか、もしそれをやっていくとしますならば、私は必ずこれは大学の自治を侵害するのだという反対論が起こってくるんじゃないかと思う。したがいまして私は、まず大学審議会が最初に取り上げるべき問題は、学問の自由とは一体何なのか、大学の自治とは一体何なのか、教育についても同じように自由が主張できるのかどうか、そういったふうな根本的な問題を議論していただきたいと思うんですけれども、大臣としましてこういった学問の自由、大学の自治について何か御意見があれば承りますし、特になければそのことをぜひ諮問していただきたいと思うんですけれども、大臣いかがでしょうか。
  182. 中島源太郎

    国務大臣中島源太郎君) 確かにおっしゃるとおり、大学審議会におきましては、具体的には大学院の充実と改革、大学設置基準の大綱化、簡素化、組織、運営の活性化等各般にわたる御審議をいただくべきところと理解をいたしております。  ただ、これからそういった面と同時に、社会そのものが多様化、個性化いたしております。大学そのものがそれに即した努力をしていただくように、これは一方において切望するところでございます。
  183. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 この問題、私非常に大事なことだと思うんです。といいますのは、もう今から二十年近く前になりますけれども、いわゆる大学紛争がありましたときに臨時大学措置法なんかもできたんですけれども、あの法律そのものが大学の自治の干犯であるとかあるいは機動隊を導入することは大学の自治の侵害である、職を賭して反対するというふうなことを言われた大学先生もかなりいたんです。しかし、実際においては機動隊の導入によって大学紛争が解決した学校がかなり多いし、その後大学をやめられた先生というのを私は余り聞いたことがないんです。つまり、同じ大学先生の中でも、大学の自治とは何なのか、学部の自治なのか大学の評議会の自治なのか、そういったふうな問題について必ずしも意見が一致していないわけなんです。それでみんな都合のいいようにそれを解釈して、何か自分に都合の悪いことはこれは大学自治の侵害であると言って反対する人が多いわけで、その意味でぜひこの問題を大学審議会で議論をしていただきたい。私は、何もその肯定の考え方を打ち出せと言っているのじゃなしに、議論を喚起する意味でこの問題をぜひ取り上げていただきたい、それを諮問していただきたいということを大臣にお願いしておきます。  それから、留学生関係で大学を魅力あるものにしなくちゃいけない、その観点からこれは既に一部分は議論されているようにも思います。八七年十月十四日の朝日新聞、「大学審が初会合」というこんな小さな記事なんで余り具体的なことを書いてないので、何が議論されたかということ、よくわかりません。したがって、あるいは既にもう議論された問題であるかもしれませんけれども、あわせて諮問していただきたいと思うんですが、一つは修士及び博士の学位授与基準を再検討していただきたい。殊に、日本の場合は社会科学、人文科学関係で留学してきている人がかなりいます。ところが、日本大学というのは人文、社会科学関係というのは、博士号はもちろんですけれども、修士号でも非常に取りにくい。自然科学の方ではかなり修士号というふうなものは出しているように思うんですけれども、これはどういう性質か、どうも大学の権威というふうなものを考えているのか、余り出すと権威が下がるとでも考えているのかどうか知りませんけれども、どうも授与されにくい。これはやはりぜひ再検討していただきたい。授与基準というのは私も大学院におりましたからよく知っているんですけれども、あれを厳密に解釈したらとてもドクターなんか取れる人はないと思うんです。今までの学説と違う新しい学説を出さなくちゃドクターになれないなんていったら、とても私でも取れないと思うんです。それで、そういった学位授与基準の再検討をしてもらいたい。  それから、英語というより、むしろこれは国際語ですけれども、それによる講義及び外国人教師、これは確かにふえております。外国人教師、助教授、これもだんだんふえてまいりました、国立大学でも。しかし、もっとこれはやはりふやして、日本の学者が外国の学者と同じ大学のキャンパスの中で競い合う、それをしないとどうも大学の活性化というのはなかなか起こらないのじゃないか。自分たちの仲間内だけで議論していて国際的に通用し得るような論文というのは、私は非常に少ないように思う。その意味において、外国人教師をどんどん入れていく、そして外国語による講義もやっていく、そういうことをしてもらいたい。  そのほか、これはちょっと私提案したいと思ったんですが、時間があと一分しかないので大急ぎで言いますけれども、臨教審でも秋季入学の問題を取り上げられまして、結局、結論先送りになっています。しかし、大学は秋季入学を考えていいのじゃないか。それは、つまり入学試験を春季と秋季と二回やるわけです。  今大体多くの大学において一年通算の講義が行われていますけれども、一年を二タームズに区切りまして、ータームずつの講義を例えばある先生は春のタームで一週間に二回やる、そのかわり秋はやらない、ある先生は秋に二回やって春はやらない、そういった学期ごとに講義をやっていくことにして、入学試験も春は通常の方法で入学試験をやるとしましても、秋は帰国子女なんかのことも考えまして試験科目を大いに減らして、そしてむしろ推薦状なんかを重視して、そして異色のある学生が入れるようにする。春は普通の試験でも結構だと思うんです。したがって、卒業年次も今まで四年以上いなくちゃいけないとなっていますけれども、三年半、つまり七タームですね、あるいは四年半、九タームで卒業できるようにすれば九月入学して三月に卒業することができるようになるので、こういった問題も秋季入学に移る一つの過渡の方法にもなると思いますので、あわせて検討していただきたい。  最後、もう一つ検討していただきたいのは、大学に入るのは十八歳でなくちゃ入れないということになっていて、大学入学資格検定試験を受けた者が十六歳ぐらいで合格しても、あと二年間、十八歳にならないと入れないわけなんですよ。私は、こういった規格に外れたような学生だと思うんですけれども、そういう型破りの学生こそむしろ歓迎すべきであって、何も十八歳以上にならなければ大学に入れない、そんなかた苦しい規則をつくる必要ないじゃないか。十六歳ぐらいで入ってもいいし十七歳で入ってもいいし、あるいは三十歳で入っても一向構わないので、そういった入学資格基準といいますか、そういうのをもっと弾力化してもらいたい。そのこともあわせて諮問していただきたいということを希望しまして私の質問終わりますけれども、大臣、何か御意見があればお伺いいたしたいと思います。
  184. 阿部充夫

    政府委員(阿部充夫君) 私からお答えをさせていただきますが、大学審議会に対しましては、先般十月に諮問をいたしまして、諮問の中身は大学等における教育研究の高度化と個性化、それから活性化等のための具体的方策についてということで、高度化、個性化、活性化ということを目指しまして、具体的に何をしたらいいのかということで、かなり包括的な御諮問を申し上げたつもりでございます。  そういったことの中で、先生ただいま御指摘もございましたような学位の問題、それからあるいは外国人の採用とか外国語による講義の問題、あるいは春秋二回入学制の問題等々、私どもも問題意識を同じくしている点が多々ございます。恐らくこういった問題につきまして、この審議会で十分な御議論がなされるものと私どもも期待をしておるわけでございます。審議の状況によりましてまた御報告を申し上げる機会もあろうかと思いますが、そういうことでございますので、御理解を賜りたいと思います。
  185. 中島源太郎

    国務大臣中島源太郎君) 御示唆に富んだ貴重な御意見として拝聴いたしました。また、大学審の方にもお願いをいたしまして、それを待ちましてよく検討させていただきたいと思います。ありがとうございました。
  186. 峯山昭範

    峯山昭範君 それでは、初めに文部大臣にお伺いをいたします。  大臣就任されまして、いろいろな新聞に大臣の抱負等が述べられております。いろいろと見させていただきました。それを一つ一つ読んでみますと大臣は、二十一世紀に向けて心の豊かな個性を伸ばす教育が大切だ、また特にこれからは老若男女を問わず生活の中で学べるよう生涯学習に重点を置いていきたいとか、学校にしても家庭にしても子供に余裕を与えなさ過ぎる、こういうふうにも述べていらっしゃいます。これはそのとおりだと思いますし、大臣がおっしゃっていることは私どもも大変大事なことだと思っております。  そこで、そのとおりだと思うんですけれども、その一方でこの新臨教審の問題でありますけれども、先般からのいろいろな問題に絡み合わせまして、これから教育改革をどういうふうに進めていくかという観点から見まして、文部省がやりやすいところだけをつまみ食いして、そしてゆとりとか個性とか、そういうふうなものがないがしろにされる可能性というのがありますし、あるいはその管理され、画一化される、そういうふうなおそれというのがあるわけですね。そういうふうなところが私たちが一番心配しているところでもあるわけです。そういうような意味で、新しい大臣就任をされまして、私も本会議大臣の御答弁を聞いておりまして、内容はともかくとして、非常にさわやかに感じました。今度の大臣はちょっとやるんじゃないかなという感じを受けたわけでありますが、特にこの教育改革にかける大臣の情熱みたいなものが私はあると思うんです。そういう点について、大臣就任に当たってのお考え等を初めにお伺いしておきたいと思います。
  187. 中島源太郎

    国務大臣中島源太郎君) いろいろお言葉をいただいて恐縮でございます。また、私が抱負として持っております点も御指摘をいただきましてありがたいと思っております。特にその中で二十一世紀に向けての青少年育成の一番の問題は、これから取り上げるべきはやはり個性の尊重ということであろうと思います。したがって、今までの教育というのが積み重ねられて現在の教育があるわけでございますけれども、明治以来振り返りますと、やはりどちらかというと効率性を重視する余り画一的な面があったと言われても仕方のない面もあるやもしれない。これからはむしろ人間性、個性あるいは創造性、こういったものをできるだけはぐくみ、取り上げていかなければならない。そういう面では、学校そのものがやはり開かれた学校であり、これからの社会人をつくる上におきましては学校、家庭、社会の三位一体の努力が必要であることは当然でございます。また同時に、今のようなむしろ画一的なものは取り除いていくということにあるわけでございますし、もう一つつけ加えれば、今度は基礎的な学校教育を経ました者を受け入れる社会の方がやはり学歴偏重からの脱却をいたしまして、その一人一人の人間性、個性を吸収するような、そのような社会への取り組み方をぜひしてもらいたい。これがあって初めて完成するものではないか、このように考えております。
  188. 峯山昭範

    峯山昭範君 私は、子供の教育、非常に大事な問題だと思うんですけれども、文部省さん、何となく冷たい感じがするんですね。また組合の方も何となく、私たちの立場からすると、余り感じいいことないですね。恐ろしいような感じもするし、もう少しやっぱり全体に明るくなってもらいたいと思う。我々も文部省に行っても何となく待遇が悪いような気がして、私は二十年になりますけれども一回も行ったことない、本当に。何か暗いような感じがする、そういうようなやっぱりイメージというのが私あると思うんです。それじゃ私いかぬと思うんです。全体にもう少し明るくなってもらいたいと思うし、また全体に教育行政というのは非常に大事な問題ですから、そこら辺のところは大臣の明るさでしっかり頑張ってもらいたいと私は思っておるわけです。  そこで、昭和六十三年度の予算の問題についてもお伺いしたいと思うんですけれども、六十三年度予算、この間から新聞でも概算要求等が出ましたので随分報道されているわけでありますが、この概算要求を見ますと、一般会計予算が六十兆八千七百五億円で一二・五%の増、それから一般歳出が三十三兆一千七百七十九億円、一・八%増ですね。それに比べまして文部省が四兆五千八百二十億円、〇・二%増、これだけ見ていると、増となっていますから、ちょっとふえているなという気がするわけですけれども、大臣、これはしっかり頑張っていただきたいことでございます。  私の手元に文教及び科学振興費の推移という表があるわけであります。この資料を見ますと、昭和五十六、五十七、五十八、五十九と、ずっと六十二年まで毎年あるわけでありますが、一般会計歳出予算に対する文教関係予算、毎年減っておるわけです。もうずっと減りっ放しです。やっぱりこの文教予算というのは、私はもう少ししっかりふえるべきじゃないか、そう思っているわけです。そういうような意味では、例えば私立大学の経常費の補助率というのもありますが、これも毎年低下を続けておりますし、新聞報道によりましても六年続きのダウンというふうな報道があります。そういう点考えてみますと、これはいよいよ予算の確定の時期を迎えるわけでございますが、大臣にしっかり頑張ってもらわないかぬわけでございますが、こういう問題に対する大臣のお考えはどうか、まずお伺いしておきたいと思います。
  189. 中島源太郎

    国務大臣中島源太郎君) 六十三年度予算を話題にされまして御鞭撻をいただいたわけでございますが、まさに文教施策全分野にわたりましてできるだけの概算要求をいたしてまいったところでございますし、特に臨教審答申にもありますように、これからの教育改革にはそれなりのやはり公財政支出というものがぜひ必要だということで、できるだけ努力をいたして要求どおり獲得をいたしてまいるために全力を挙げさせていただきたいと思っております。  おっしゃるように、本当に絶対の額を見ましてもそう余り誇りにできることではございません。全体の財政が逼迫という中で圧迫されておるようでは教育の前途も暗いと言われても仕方がございませんので、本年度はやや前年度対比増額獲得をいたしております。来年度もさらに増額要求をいたしておるところでございまして、一般会計との対比といたしましては、一般会計すべて国債費その他入れて大分ふえておりますので、なかなかそれに追いつくということは難しゅうございますけれども、少なくとも絶対額でやはり必要なものはとっていくという決意でおりますので、今後とも御鞭撻をいただきますようにお願いを申し上げておきます。
  190. 峯山昭範

    峯山昭範君 今の問題に絡みましてもう一点、教科書の問題です。  義務教育の教科書の問題、これは、私どもの党も昭和三十一年に参議院に代表を送りましたのが初めてでございますが、それ以来もう相当長期間にわたって、義務教育の小学校、中学校の皆さんの教科書の無償ということを叫び続けまして、御存じのとおり、昭和三十八年からですか、段階的に無償になってきたわけでございますが、最近、毎年予算折衝のときになりますとこういう問題が出てまいります。  私どもとしましては、いろいろありますけれども、何はさておき教科書は無償であった方がいいと、そういうふうに考えております。諸外国状況というのも十分調べましてよくわかっているつもりでありますけれども、私ども大人の方がしっかり辛抱するところは辛抱して、その上で最終的にというのなら話はわかりますけれども、そうじゃなくて、こういうところからというのは私は非常にいかぬと思っております。そういうような意味では、大臣にしっかりこれは頑張ってもらわなければいかぬわけでございまして、そこら辺のところについての大臣の決意のほどもお聞かせいただきたいと思います。
  191. 中島源太郎

    国務大臣中島源太郎君) 教科書無償は、結論といたしまして、ぜひ堅持をいたしてまいりたい、こう思っております。また、臨教審におきましても当面これを堅持するようにという御示唆もあるわけでございますので、これは絶対に努力をいたしてまいるつもりでございます。
  192. 峯山昭範

    峯山昭範君 それでは大臣、次に留学生の問題を二、三質問させていただきたいと思います。  これは、先ほどから同僚議員の方から種々御質問がございましたが、非常に大事な問題でもあると思いますので、質問をさせていただきたいと思います。  現在、日本には留学生たくさんおいでになっていらっしゃると思いますが、国別に言いますと大体どこの国から何人ぐらい留学生としておみえになっていらっしゃるのでしょうか。これは数字の面はわかりますでしょうか。
  193. 植木浩

    政府委員植木浩君) 現在、我が国大学等で勉強しております留学生は一万八千六百人余りでございますが、地域で言いますとアジアが八六・六%ということで圧倒的に多うございます。先生指摘の、国別に言いますと、地域を含めまして、まず第一位が中国、二番目が台湾、三番目が韓国、四番目がマレーシア、五番目がアメリカ、こんな順序になっております。
  194. 峯山昭範

    峯山昭範君 それをもうちょっと人数正確におっしゃっていただけますか。
  195. 植木浩

    政府委員植木浩君) 中国が四千四百十八人でございます。台湾からの留学生が四千三百四十人でございます。韓国四千二百六十七人、マレーシア八百九十六人、アメリカ合衆国八百九十人でございます。上位五カ国でございます。
  196. 峯山昭範

    峯山昭範君 私の手元にも皆さんからいただいた資料がございます。それによりますと、その五番目の後、タイが七百一人、インドネシア四百十三人、香港二百九十三人、ブラジル二百四十五人と、こういうふうになっているようでございます。  そこで、この留学生の皆さん、いろいろな問題がたくさん私はあると思うんですが、やっぱり一番大きな問題は生活費の問題だと私はまず思うんですけれども、この円高によるいわゆる生活難、これは文部省としてはどういうふうにお考えになっていらっしゃるんでしょうか。
  197. 植木浩

    政府委員植木浩君) 私費留学生についてでございますけれども、急激な円高によりまして、故国からの送金というものを急激になかなか上げるわけにはいかないということで、勉学生活状況がかなり厳しい状況になってきておる、このように私どももいろいろと承っておるわけでございます。
  198. 峯山昭範

    峯山昭範君 一番苦しい国はどこですか。
  199. 植木浩

    政府委員植木浩君) これはそれぞれの親元の経済状況等がございますので、どこの国がというふうに一律に言うわけにはまいりませんけれども、やはり発展途上国からおいでになっている留学生が一般的に言いますと苦しいかと思いますが、先進国から来ている留学生でも随分急激な円高で大変厳しい状況だ、こういうことも伝え聞いております。
  200. 峯山昭範

    峯山昭範君 いずれにしましても、発展途上国からおいでになっている留学生の皆さんというのが生活が非常に厳しいというのは、もうこれはいろいろな新聞報道でも明らかであります。  私の方から質問の通告のときにバングラデシュの青年の話をしましたら、これは留学生じゃないというふうなお話があったそうでございます。それはそのとおりでしょうが、新聞報道によるバングラデシュの青年の話を読んでみますと、これは朝日新聞では社説にまで取り上げて書いているぐらいでございますが、この方は入国のビザが観光ビザですか、何かそういうようなあれですから、留学生とは端的には言えないにしても、何といいましょうか、今の飽食の時代と言われるほど何でもある我が日本の中において、このバングラデシュからお見えになった一人の青年が都内の日本語学校へ入って日本語の勉強をするためにいろいろ準備中だった、そんな中で餓死したというんです。日本の国で今餓死するなんというのを聞いて、これは本当に私たちショックを受けたわけであります。  バングラデシュのこの青年は観光ビザで入ってきた、そういう事情であったかもしりませんが、これと同じような思いをしている留学生の皆さんというのは相当たくさんいるのじゃないか。たまたまこの方は新聞に載ったからこういうふうになりましたけれども、こういう方々のことを考えると、我々何かやることないのかと、そこら辺のところも十分やっぱり配慮すべきじゃないか。抽象的で申しわけありませんが、文部省としてもそこら辺のところの考え方あるいは指導の仕方、あるいは地方自治体に対するそのやり方、あるいは里親なりそこら辺の日本の国民に対する訴え方、いろいろな方法が私はあると思うんですけれども、そういう点に対しては文部省としてはどういうふうにお考えなのか、そういう点、一遍お伺いしておきたいと思います。
  201. 植木浩

    政府委員植木浩君) 大学等で勉強しております私費の留学生について申し上げますと、病気になったりけがをしたときが一番困られるということで、従来から医療費八割の補助ということをやっております。通常はできるだけ国民健康保険にもということで、国民健康保険で七割カバーをし、残りの三割のまた八割について文部省の方の医療費補助でカバーをするということで、御自分の負担は極めて少ないということでやっております。  それから、いわゆる勉学に要する経費でございますが、もともと私費でおいでになるわけですから、相当の見通しを立てておいでになっているとは思うわけでございますけれども、国費留学生に切りかえを行ったりあるいは就学奨励費を支給したり、さらに先ほど来お話に出ております民間の奨学金の団体も年々ふえてきているというわけでございます。この急激な円高に対しましては、これまた先ほど話が出ましたように、授業料の減免措置をこの秋から大幅に拡充をしたと、こういうような施策を講じてきておるわけでございます。  これは日本から海外へ出ていく留学生についても言えることですが、留学をする場合には、留学する先の大学状況あるいはその国でどのくらいの勉学生活の経費がかかるか、こういった点も、日本から海外へ出る留学生も、また外国から日本へ来る留学生もお互いにあらかじめもっと慎重にしなければいけないということも痛感しておりますが、同時に、日本で勉学をします留学生につきまして、先ほど来御指摘のように、できるだけ温かく日本で勉学生活が充実して送れるようにいろいろな施策を充実していかなければいけないと考えております。
  202. 峯山昭範

    峯山昭範君 これももう既に皆さんは見ていらっしゃると思いますけれども、十一月十日付の朝日新聞の夕刊です。これは中国人の私費留学生の写真記事ですけど、これを見ますと、やっぱり非常に苦労していらっしゃるというのがよくわかる。とにかくこの記事をちょっと読んでみます。   「日本の人たちにとって一回二百七十円の銭  湯代は安いんでしょうけど、私の国のお金にか  えると一家そろって軽い食事ができます」。中国  人私費留学生のAさんは倹約のため銭湯に行か  ず、自分の部屋でお湯をわかし、体をふくこと  にしている。  そして、これは二人写っている写真が入っているわけですけれども、非常に生活が厳しい状態がこの記事の中ににじみ出ております。そういうふうな意味で、特にこの中国からの私費留学生の皆さんというのは非常にいろいろな面で苦労していらっしゃるわけです。特に、お金の面もそうですけれども、もう一つは保証人の問題です。これを探さないといけないという問題もあるのだそうです。  実際問題として、国交回復十五周年を迎えまして、中国からもたくさんの留学生を受け入れているわけですけれども、これからもどんどん受け入れてもっとふやしていかなくちゃいけない。そういうようなときに、日本として現状をもう少し詳細に把握してこれからの対応というものをがっちりやっていかないといけないんじゃないかと思うんですけれども、この点についてもう一回お伺いしておきたいと思います。
  203. 植木浩

    政府委員植木浩君) 身元保証人の点の御質問かと思いますが、御案内のとおり出入国管理に関する法令でもって、日本に留学しようとする留学生は、法務大臣に対して在留資格の認定を得るという場合に、日本に居住します身元保証人の身元保証書、これを提出することが必要であるわけでございます。これはやはり、先ほど申し上げましたように、留学生が故国を離れ日本へ来た場合にいろいろな経済的その他の困難な状況にも遭う場合があるわけでございまして、そういうようなときに保証人という方がいて、それをいろいろな意味で助ける、そういうものを保証するためのものである、こういう制度であると我々は承っております。ただ、この身元保証人につきまして、従来個人でなければいけないということで、必ずしも日本に知り合いのおられない方などがこれを探すのに苦労されたということを、特にアジアの留学生の方などから承っておったわけでございますが、法務省の方でも昭和五十九年から、個人だけでなくて、例えばその国の在日外国公館あるいは入学する学校、会社、国際交流団体、こういったものにまで身元保証ができるものを広げたわけでございまして、これによって従来身元保証人が必ずしも見つからなかったという点が改善されたというふうに聞いておるわけでございます。  なお、身元保証人以外、私費留学生についての対策の充実という点については全く先生のおっしゃること同感でございまして、我々引き続き充実努力をしつつあるところでございます。
  204. 峯山昭範

    峯山昭範君 それからもう一点、日本語学校の問題についてお伺いをしておきたいと思います。  日本語を学ぶ外国人というのは昨年の十月一日現在で約二万三千七百人、そういうことでございますが、文部省が掌握している日本教育機関は全体で四百三十七、うち大学院、大学等が二百十、高専が二十二、専修学校が十九、各種学校が三十二、その他個人・法人立が百五十三、こういうふうになっております。しかし、これから留学生を十万人までふやすということになると、この日本語学校の整備というのが不可欠になってくるわけでございますが、この問題について今後の文部省としての取り組み、また考え方、これは大体どういうふうにお考えがお伺いしておきたいと思います。
  205. 植木浩

    政府委員植木浩君) 留学生が日本に来て勉強する際、でき得ればそれぞれの国においてかなりの程度に日本語が普及するようになって、そこで相当の基礎知識を持って日本へ来るというのが一番望ましい形かと思います。そういうことで、海外におきます日本語の普及という点につきましては、外務省が中心になりまして、文部省も協力していろいろと推し進めておるところでございます。  文部省関係では、特に日本におきます大学等での日本教育学科、こういうものを近年増設いたしまして日本語教員の養成の充実を図るというようなことや、あるいは日本の国内におきます日本語学校、こういったものでも最近いろいろな学校が、今御指摘のように非常に数が多くございますので、やはり質の向上ということのためにすぐれた実績を有する日本語学校等につきまして研究協力校として指定をいたしまして、さらにそういうところでの日本教育充実をし、そういうところに入った外国人が質の高い日本教育を受けられるように、こういう努力をいたしております。  なお、留学生で大学へ入りました後も日本語の勉強が続けられるように、日本教育コースや日本語・日本事情の科目等の増設も行ってきているところでございます。
  206. 峯山昭範

    峯山昭範君 それでは次に、留学生のアルバイト、これは大体どういうふうになっておりますか。
  207. 植木浩

    政府委員植木浩君) これも法務省関係の直接の事柄でございますけれども、従来留学生に対するアルバイトは原則として大変厳しく制約がございましたけれども、風俗営業その他必ずしも留学生にとって適当でないというような種目を除きまして、留学生の勉学上支障がないというものにつきましては、たしか週二十時間を限度にいたしまして、従来よりこれを緩和をしたというのが現在でございます。
  208. 峯山昭範

    峯山昭範君 文部省としては、二十時間の規制はあるのですけれども、例えばアルバイトについてあっせんとかお世話をするとか、それは今どこがやっているんですか。
  209. 植木浩

    政府委員植木浩君) 私も直接細かいことは今資料を持ち合わせておりませんけれども、例えば大学等で留学生のお世話をする係がおりますので、そういうところもいろいろと留学生の要望に基づきまして助けてあげるということもございますし、いろいろな留学生の世話団体、こういったところも助力をしているということもあると承っております。
  210. 峯山昭範

    峯山昭範君 これは非常に大事な問題ですし、文部省も規制だけしないで、どういうところがやっているのか、どういう実情にあるのかというのを調べて、一遍御報告していただきたいと思います。
  211. 植木浩

    政府委員植木浩君) 留学生の勉学並びに生活状況等につきましては、留学生の世話団体の方でもいろいろと調査をいたしておりますので、御報告申し上げたいと思います。
  212. 峯山昭範

    峯山昭範君 留学生十万人の受け入れ計画というのがありますね。これは実際にはどういうふうに今進捗しておられますか。
  213. 植木浩

    政府委員植木浩君) 先ほど来申し上げておりますように、十万人の計画は有識者の方々の御提言の中にございまして、これを目途に一生懸命努力しているわけでございますが、ここ数年の留学生の伸びは、ここで予想されております紀元二〇〇〇年までの一四・二%、あるいはその途中までの一九九二年、昭和六十七年までの一六・一%という推測を上回りまして、ここ三年は二〇%を場合によっては超えるというような増加率でございます。
  214. 峯山昭範

    峯山昭範君 今の二十一世紀への留学生政策の提言、これはそれぞれ審議会か何かつくってこういう提言を出していただいたんでしょうけれども、これはどういうものなんですか。
  215. 植木浩

    政府委員植木浩君) 先ほどもお話が出ましたように、中曽根総理がASEAN諸国をお回りになった後、留学生政策について有識者で政策をひとつ懇談していただきたいというようなお話もございまして、五人の有識者の方に二十一世紀への留学生政策懇談会ということで御討議をいただきまして提言をいただいたものでございます。これが「二十一世紀への留学生政策に関する提言 昭和五十八年八月三十一日」でございます。  この中で、やはり今後は留学生受け入れの規模の拡大を前提として展開をしなければいけない。二十一世紀初頭には現在のフランス並みの留学生の受け入れを想定して留学生政策を推進することが要請されるということで、フランスはそのころ十二万人ほどだったかと思いますが、これが十万人のいわば根拠でございまして、その後さらにこの提言を受けまして、もっと多数の方でございますが、大学先生方等の有識者の方が改めて留学生問題についての会議を重ねまして、昭和五十九年六月二十九日に「二十一世紀への留学生政策の展開について」という提言をいただきまして、ここで十万人という一つの目途を想定をされたわけでございます。現在、留学生政策の推進を、これを踏まえながら行っておるわけでございます。
  216. 峯山昭範

    峯山昭範君 初め、これはいわゆる中曽根さんの私的諮問機関ですな。五十八年八月三十一日、二十一世紀への留学生政策懇談会、これはそういうことですね。それで、それに基づいて、そのときは五人の先生方でつくった提言をまた補強する意味で、今度はたくさんの先生方に御協力をいただいて全体の「二十一世紀への留学生政策」というのがまとまった、そういうことですか。
  217. 植木浩

    政府委員植木浩君) 中曽根総理からの御指示に基づきまして文部大臣がこういった有識者による懇談会に検討を依頼して結論を得た、それに基づいてさらにまた文部省の方で大勢の有識者の方にお集まりいただいて、さらに具体的にいろいろと御審議をいただいたと、こういうものでございます。
  218. 峯山昭範

    峯山昭範君 それならそれで法的根拠、これはどういうことになりますか。
  219. 植木浩

    政府委員植木浩君) これはいわゆるレギュラーな審議会ではもちろんございませんが、そういった有識者の方々にお集まりいただいていろいろと御意見をまとめていただいた、こういう性質のものでございます。
  220. 峯山昭範

    峯山昭範君 だから、非常にそこに問題があるわけですよ。十万人についてどういう対応をしているんだと、こういうふうに追及されると、この提言した当時よりも留学生の数が予定どおりふえなかった、だんだん減ってきた、だからその対応はしなくてもいいんだというふうなことになってくるわけですよ。責められると。だから、そうじゃなしに、やっぱりやるからにはそれなりの根拠を持ってきちっとやってもらいたいと思うし、私的諮問機関のこういうまとめたのが出てくること自体もおかしいし、また本当はきちっとした法的根拠のある八条機関なり三条機関なり、そういうようなものから出てきたものはそれなりの根拠を持って出てくるわけですから、それを行政の上にぴしっと反映せなければいかぬわけです。  皆さん方はこれをどういうふうに取り扱おうとしているのか。私は、文部省学術国際局の留学生課というところできちっと印刷して、上にもきちっと留学生政策はこれだということで、審議会の協力者はこういう人で答申はこうだということを出しているということは、これは皆さん方が公式に、そういうふうな私的諮問機関から出てきた報告書を、正式の機関だということできちっとしているということになりますね。だから、そのためにはその根拠となる法律もきちっとしてないといけないわけです。文部省のどういう法律に基づいて、これはこういうふうな政策として、方針として取り上げているのか、これははっきりしてください。
  221. 植木浩

    政府委員植木浩君) 私どもがいろいろと政策を進めていく場合に当たりましては、もちろん省内でいろいろと検討もするわけでございますが、やはり省外の有識者の方々、特に専門的な事項にわたる教育とか学術につきましていろいろそういう有識者の方にお集まりをいただいて十分御審議をいただき、提言をいただき、そしてそれを踏まえながら行政を進めていくということはこれまでもいろいろな形で行ってきておりますので、これもその一つの形でございます。
  222. 峯山昭範

    峯山昭範君 今までそんな八条機関の隠れみのみたいなことを文部省はずっとやってきたのをだれからも追及されなかったの。そんなことはやらないようにということで、官房長官から何遍も、閣議でも何回もやられたんじゃないの。  行政というのはすべて法的根拠に基づいて行うのが当たり前でしょう。僕は、学識経験者から意見を聞いちゃいかぬと言っているのじゃないんです。意見は何ぼでも聞いていいんです。ところが、そういうふうな意見というのは、いわゆる八条機関から出てくる報告とか答申とかいうものとは全く異質のものなんです。一人一人のあくまでも意見なんですよ。それを大臣が聞いて参考にしていくのは当然なんです。ところが、あなた方が言うのは、たくさんの皆さん方の意見が出て、十万人という一つの答申としても固まって出てきているということは、それはまさに八条機関の役目を果たしておるわけです。実質八条機関ですね。実際、つくってないところから出てきたものがひとり歩きするなんてなったら、これは問題なんですよ。  実際は、私はこの答申はいいから余りそんなに問題にしようとは思っていないわけです。中身はそんなに悪くない。しかしながら、これは一つ間違うと大変なことになるんです。大臣なり総理が自分の好きな人だけ集めて、好きな答申を山さして、それで文部省がこれに文部省とぼんと判こを押して、これが有識者の皆さんの意見ですと、ぽっとひとり歩きすると大変なことになるんですよ。そういうことをしないようにするために国家行政組織法の第八条というのがあるんです。  だから、そういうような意味では、あなた方が文部省の行政をつかさどる場合に、すべて法律に基づかないものは一つもないはずです。こんな法律に基づかないものを出してきて、これにぼんと文部省の判こを押して、ぽんと正式に我々のところに資料として出てくること自体がおかしい、本当を言えばね。きょう私が言う趣旨とは違うからこれ以上追及はしませんが、そういうことがあるということはわかっておいていただきたいと思います。  だから、こういうふうに出したからには、留学生十万人を受け入れる態勢に本気でがっちり取り組んでもらいたいということを私は言いたいからそういうことを追及すると、いや、現在十万人にもなりません、うんと減りつつあります、このとおりじゃありませんと逃げるんだったら、何もこんなことを出してくる必要ないわけですよ。そういうことなんです。少しわかっていただいたでしょうか。何か言いたいことあったら言っていただきたい。  それでは、もう時間がなくなってまいりましたので、科学技術庁長官がせっかくお見えになっていますので、一言質問させていただきたいと思います。  もう既に質問がいろいろあったそうでございますので、大臣も今回が二回目の大臣でございまして、張り切っておられると思いますが、ノーベル賞の問題から入りたいと思います。  この問題は大臣でなくても結構でございますが、いずれにしましてもこれは大変喜ばしいことであります。しかし、いろいろな新聞報道を見ておりますと、何で京都大学関係者だけで、何で東大は出えへんねと、こういう話が実際あるわけです。これは大臣とない思います。
  223. 伊藤宗一郎

    国務大臣伊藤宗一郎君) たまたま利根川さんが日本に帰ってこられましたときに、文部大臣もお目にかかったようでございますけれども、私もお目にかかりまして、利根川さんのような方が日本からもっと幅広く出るようなそういう研究環境をどうしたらつくれるでしょうかというようなことをお話し合いをしたわけでございます。  今先生からも御指摘のように、戦後自然科学でノーベル賞をちょうだいせられた方が五人おられますが、京都が四人か三人なんですね。まあほとんどと言ってもいいわけで、それは京都がどうだ、あるいはほかの大学がそうでないということではないと思いますけれども、利根川さんのお話をせんじ詰めると、三十代の時代伸び伸びと自由に、独立という言葉を利根川さん使っておられましたけれども、独立というのは、お金の面でもあるいはまた組織、制度の面でもその人の自由濶達な気持ちで研究できるということだろうと思いますけれども、そういう研究環境というものが日本にはどうも少ない、したがって自分も含めましてそういう環境に入りやすいアメリカとかその他の国に行く傾向になっているんだというようなお話でございました。  そこで、せっかくノーベル賞をちょうだいされた方がおっても、それが外国での業績なり外国での受賞ということでは日本の本当の喜びにはならないので、何とか利根川さんを初め日本に帰っていただけるようなそういう研究環境というものをぜひ科学技術庁中心として、また文部省ともよく御相談をしてつくり上げたいと思いますので、ぜひ帰っていただけないだろうかというようなことも懇請というか、申し上げたようなことでございます。  また、我々行政の側で言うならば、そういう研究者を育てるような制度も確かに持っておりますし、せんじ詰めると国の研究費をもっとひとつ大幅にふやせるようなそういう努力が必要であろうというふうに考え、とりあえず六十二年度の予算に向けてそういう方向全力を傾注したいと、このように考えております。
  224. 峯山昭範

    峯山昭範君 大臣おっしゃるとおりだと私思います。  利根川さん、日本にお見えになりまして、いろいろな新聞に相当いろいろなことをおっしゃっております。皆さんもお会いになったそうでございますからお聞き及びだと思いますが、これは文部大臣もぜひ聞いてもらいたいんです。先ほど伊藤大臣おっしゃったことなんですけれども、要するに日本では二十代の後半から三十代の前半、そういう時代に何をしているか。それがやっぱり今大臣もおっしゃいましたように、いわゆる先輩の教授の手伝い、お茶くみ、掃除、それで先輩の先生のまあ言うたら研究に、ちょっと何というのか、本当にもう汗かきですな。それで自分の研究が全くできない。自分の研究を実際やろうと思ったときには自分は年とっておる、利根川さんこうおっしゃっておりますね。全くこれは考えさせられるべき問題であり、特に私は官僚の皆さんには問題があると思っておるわけです。  利根川先生が実際カリフォルニア大学に行ったときには、もう図書館は二十四時間あいていたし、それからまだ学生の身分であるのに研究室はちゃんとした研究室をいただいた。オフィスがある。そういうふうに全部体制が整っているわけですね。そういう点がやっぱりきちっとしてないといけないのじゃないか。また、大臣が最終的におっしゃいましたように、やっぱりお金の問題、そういう問題になるのだろうと私は思います。  と同時に、私もしみじみとこれは思うんですけれども、きょうも私は内閣委員会で総理大臣や防衛庁長官や皆さんに質問してまいりましたが、要するに総理大臣になると突然ガードがかたくなるんです。直接物が言いにくくなる。とにかく周りにいっぱいついておる。それで、すっといかれへん。総理も自分の思うように言われへんようになる。みんなメモが次から次と回ってくる。それじゃやっぱりいかぬのであって、それぞれ大臣になる皆さん方、それなりの才能もあるし、またそれなりの識見を持っていらっしゃるわけですから、それなりに堂々とやっていい。周りのガードがみんな多過ぎる。そして結局はそういうのが邪魔してうまくいかないことが多過ぎる。  いや、そうじゃないんだとおっしゃるかもしれませんけれども、実際そういうことが多いわけです。ですから私は、そういうような意味で、もう少しそこら辺のところはならないかなという感じがするわけです。そこら辺のところについては、科学技術振興の最高の責任者でございます伊藤長官、これはどういうようにお考えでしょうか。
  225. 伊藤宗一郎

    国務大臣伊藤宗一郎君) 今の御指摘の中にお答え申し上げたいことが含まれておるようでございます。今までもそういうような認識で我々もやってきたわけで、一つには、まとめてみますと、研究所の持つ独創性を生かすような人中心の柔軟な組織体制の整備、あるいはまた基礎的、先導的研究に適した研究マネージメント、そういうものを確立すること、さらに研究組織、研究分野の枠を越えた研究交流の促進、さらに基礎的研究への重点的な投資、特にこの基礎的研究への重点的な投資というのは、民間では余りやれないわけでございますから、そしてまた、基礎的研究の成果というのは国民みんなのものになるわけで、公共財的性格を持っておるわけでございますから、これには公、国がしっかりとひとつ投資をするということが必要だろうと思いまして、これらに重点を含めて、先ほど申し上げました、二十代から三十代にかけて若い研究者伸び伸び研究できるような環境の整備に努めてまいりたいと、そういう方向で進んでまいりましたけれども、さらに進んでまいりたいと思います。  私もたまたまきのう筑波の科学技術庁所管の研究所を十ばかり一日がかりで視察してまいりましたけれども、そこで研究をしております若い方々、今先生指摘のような年配の若い方々が本当にわき目も振らずに研究一筋に進んでいる真摯な姿に接して、改めて感動、感銘を覚えてまいりました。そういう方々に本当にお報いするような、そういう科学技術行政というものをぜひつくり上げたい。  そしてまた、もう少し言わしていただきますと、みんな私も含めまして政治家に科学技術というものの重要性をどなたもお一人漏らさず唱えていただきます。また唱えられております。しかし反面、科学技術というものの政治的実現が、必ずしもその重要性が叫ばれている割には低い地位にあるというところに私性大きな問題点があるように思いますので、先生を初め皆様方委員各位の本当にひとつ言行一致で、科学技術あるいはまたそれを所管する科学技術庁という役所がもっと位置づけが高くなるように、なお一層のひとつ御協力、御鞭撻を賜りたい、このようにお願いしたいと思います。
  226. 峯山昭範

    峯山昭範君 そのとおりですね。我々もやっぱり責任がないとは言いません。我々にも責任はあると思います。実際問題として、今回質問するに当たって初めて私も実情を知ったわけでございまして、非常にいかぬと思っております。  それで、ノーベル賞を利根川教授がいただきまして、これは非常にすばらしいなと思って、これはよその国はどうなっているかと思ってよくよく調べてみますと、自然科学部門の受賞者というのは、各国別で見ますと、日本はベルギーと同じで十二番目、自然科学も同じで五人、一番多いのがアメリカの百四十二人、イギリスが六十三人、西ドイツが五十四人。こうして見ると全然けたが違う。何やこれは、たった五人か、これほんまかと、こう思うんですけれども、実際調べてみればこういうことです。今大臣がおっしゃいましたように、そういうような意味で基礎研究というのを相当力を入れてこれから我が国としても取り組んでいかなくちゃいけないなと思っているわけであります。  それで、基礎研究費という部門、この予算的な問題も質問するに当たって調べてみました。これもとにかく非常に少ない。私の手元にデータがありますけれども、パーセントでいくと、全体の研究費の中の基礎研究費というのは、六十年度でも一二・九%、五十五年度から一貫してほぼ低下の一方です。そういうような意味では、これは科学技術会議でも何度がこういう問題についての答申がなされているようでございますし、諸外国からも日本はやっぱり基礎研究をただ乗りと。僕は、安保ただ乗りというのは聞いたことあったんですけれども、基礎研究もただ乗りというのはきょう初めて聞きまして、そういうふうに言われているなんということになると、これは大変なことだと、そういうような意味で、今抜本的にそこら辺のところに力を入れて我々も努力をせにゃいかぬし、政府としてもそこら辺に十分力を入れてこれから取り組んでいかなくちゃいけないと思うんですけれども、そこら辺の御見解もお伺いしておきたいと思います。
  227. 加藤昭六

    政府委員加藤昭六君) 先生指摘のように、基礎研究これから強化拡充に努めていかなきゃならないわけでございます。特にこれからの基礎研究は、従来の基礎研究のような応用に近い基礎研究ではなくて、まさに基本に近いところの基礎研究を進めていく必要があるわけでございまして、こうしたステージになればなるほど非常に長期的な、かつリスクの高い研究になってまいります。ここでは特に民間が果たし得ないような分野が広く出てくるわけでございまして、国立試験研究機関の果たす役割というのが非常に大きくなってくるものと思われます。この八月二十八日に科学技術会議におきまして、国立試験研究機関の今後のあり方につきましての答申をいただいております。この答申に沿いまして、きめ細かな現在基礎研究の強化策を講じているというところでございます。  具体的に幾つか申し上げますと、利根川博士が言われたような、三十代で独立できるような伸び伸びとした研究環境をつくり上げるということで効果的な研究マネジメントの確立とか、ライフステージに応じた人事運営等々、研究環境の改善に努めているというところでございます。
  228. 峯山昭範

    峯山昭範君 これが大臣、中曽根内閣の一番まずいところ。あの方は、私的諮問機関というのは非常に大事にするんです。ところが、今局長から御答弁ございました科学技術会議、こういうところの答申は全然やる気ない。本当は逆なんですよ。私的諮問機関からの答申というのは尊重したらいかぬのです。やっぱり正式のこういう諮問機関の答申というのを政府は尊重する義務があるわけです。これは国家行政組織法にちゃんとそう書いてある。  何で私がこんなことを言うかというと、局長答弁されましたが、昭和六十二年の八月二十八日にそういう答申があった。今おっしゃいましたね。ところが、この基礎研究を大事にせにゃいかぬという答申は、これはもう既にこの科学技術会議からその前に出ていますね。あなたもうなずいておりますように、昭和五十九年の十一月二十七日に出ております。出ておるのにまた同じ答申をせにゃいかぬというのは、前のをやっていないからやっておるわけですよ。そうでしょう、逆に言えば。だから、本当は一番初めに出たときにその答申を尊重して一生懸命力を入れておれば、もうちょっとこの予算もふえておるだろうし、またノーベル賞ももっとようけ出ておったかもしらぬ。そんな急に出るものじゃないかもしれませんが、わかりませんよ、本当に。  だから、そういうことを考えますと、正式のそういうふうな八条機関から、きちっとした諮問機関から出ている答申というものは、政府としてはやはり本気でそれに取り組んでいかないといけないし、そういうふうな点、私はがっちり取り組んでいただきたいと思う。こういうふうな同じ答申を二度、三度出されるようなことがないように本当は本気で取り組んでいくべきものである、そういうふうに私は思います。  大臣がおっしゃいましたように、これは新聞の社説とかそういうものにもいっぱい書いてありますけれども、基本はやはり国立研究所やそういうところへどれだけ助成をふやすか、予算をどれだけ獲得してそこへどれだけ注ぎ込むかということにかかっているわけでございまして、そういう点、科学技術庁長官もぜひしっかり取り組んでいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  229. 伊藤宗一郎

    国務大臣伊藤宗一郎君) 全く仰せのとおりでございまして、私自身も全力を振るって研究費充実拡大を中心とした科学技術行政予算の獲得に体当たりでぶつかってまいりたいと思いますので、ぜひひとつお心のこもった御後援を賜りますようにお願いを申し上げたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
  230. 峯山昭範

    峯山昭範君 それから行政改革、中曽根さん随分やってきたわけです、定員を削減せいと。ところがあの方は、ふやさないかぬところも減らしてしまうわけです。それじゃやっぱり困るわけでございまして、こういうふうな基礎研究部門というのは、先ほど大臣がおっしゃいましたように、予算ともう一つは人なんですね。だから、そういうふうな意味では、何でもかんでも減らせばいいというものじゃないと私は思うんです。そこら辺のところもぜひお取り組みいただきたいと思います。  それから、次にもう一点お伺いしておきたいのでありますが、日米科学技術協定というのがあるのだそうですね。私も実は今回質問するまでこんなのがあるということは知りませんで、まことに申しわけないと思うんですが、この問題、実は調べれば調べるほど非常に大きな問題があるなということを感じております。来年の一月で期限切れになるのだそうでありますが、研究開発費の問題やあるいはその国が負担する研究費の問題、そういういろいろな問題が絡んで、日本側の基礎研究ただ乗り論というのがあるのだそうですね。  まず人の面を見てみますと、六十一年の場合、研究者と留学生などの合計は、アメリカからが二千人に対して日本からは二万六千人。これも十三倍開きがあるわけです。一けた違う。そういうふうな人間の問題があるということと、それからもう一つ基礎研究の資金の問題ですけれども、これも先日の新聞の報道によりますと、アメリカの国立衛生研究所の問題が日経新聞に掲載をされておりました。  これをずっと読んで見ますと、欧州とか日本以外の国が米国へ派遣をして研究開発をする場合は、要するにほとんどの国が資金を出しておる。ところが、日本人の場合は日本の国が出すのじゃなしに、ほとんどアメリカからもらっておる。こんなあほな話本当かいなと思って調べてみますと、これ本当にこのデータによりますと、例えば米国の国立衛生研究所の場合は全部で日本研究者は三百三十人、そのうち特別研究員と言いまして、アメリカからお金をもらって研究をしている、米国負担でやっている特別研究員が二百八十人、そして日本側が負担をする客員の研究員が四十人、その他が十人でございまして、これを見ましても、ほとんどアメリカから研究費をいただいておる、そういうことになるわけです。これは非常に大きな問題だと私は思いますし、このまま放置することもできないような問題じゃないかと私は思います。  そういうふうな意味では、アメリカの国立衛生研究所の所長さんも、日本の国がもう少し資金負担をすべきだ、そういうことを新聞の対談の中でもおっしゃっておりますが、まさにそうじゃないかなという気がするわけであります。この問題について、これは科学技術庁、事務当局でも結構でございますが、これはどういうふうになっているのか、そこら辺のところのお考えをお伺いしておきたいと思います。
  231. 吉村晴光

    政府委員(吉村晴光君) ただいま御指摘ございました日米の間での科学技術交流の問題でございますが、戦後日本の技術水準、科学技術水準が余り高くない時代には、御承知のとおり大学を終えてアメリカ研究所で勉強するというようなことが長い間行われたことが多かったわけでございまして、ただいま御指摘ございましたNIH、アメリカの公衆衛生院と申しましょうか、そこにつきましても、そういった観点から長い間多くの人がそちらに行って研究をしていたという事実がございます。  その場合にアメリカ側といたしましては、特に日本人を相手ということではなくて全世界を相手にして優秀な若手の研究者を集めて研究をするという態度であるわけでございますが、たまたま日本からかなりの人がその資質を認められて招かれておるということでございまして、そういったことがずっと続いてきておるということでございます。  ただ、昔と違いまして、やはり日本科学技術水準も非常に上がってきておるし経済力も上がっておるということもございまして、アメリカ側といたしましては、そういった状態に見合った形で、NIHに派遣されるような方につきましても、これはアメリカ側の研究をやってもらうという意味でございますからアメリカ負担をするということも一つの方法ではございますけれども、やはり派遣されるところでも負担をしていただくということも考えられないか。  それから、逆に日本研究者アメリカだけに行くということではなくて、アメリカ研究者日本に行って研究をするといったそういう機会をふやして、お互いに国境を越えて考え方の違う研究者同士が切磋琢磨をすることが、今後の基礎的な科学の振興に大変重要である、それがひいては世界全体の科学の振興または経済の活性化につながることになる)そういうことを言われておるわけでございまして、私どもといたしましては、長い間、何といいましょうか、我が国科学技術のレベルが低かった時代の形というのが今まで引きずられてきておるということでございますけれども、今後は少しずつでもそういったことを改善をいたしまして、日本側から日本側の資金で派遣する研究者の数もふやしてまいりたいし、それから、日本側の資金で招く外国人の研究者の数もふやしてまいりたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  232. 峯山昭範

    峯山昭範君 これが最後の質問になります。これは文部大臣科学技術庁長官にお伺いしたいと思います。  今の局長答弁でほぼ出ているわけでございますが、やっぱり日本側も優秀な研究者、学者をどんどん連れてきたらいい、要するに日本に。アメリカはどんどん連れていっておるから自分のところでお金払っておるなんというと、それは、そんなのじゃみんな行っちゃいますよ。だから、そういうような意味では、やっぱり研究者の交流促進というのは非常に私は大事だと思います。  実際問題として、文部省が六十年度から、博士号取得者と博士課程後期の在学者に対して現在二十一万四千円、それから研究奨励金として十二万三千円ですか、このほか別途科学研究費として一人百二十万円を支給する特別研究員制度を発足させているわけでございますが、こんなものではとてもじゃないけれども間に合わないんじゃないかという気がするわけです。  実際問題、私も今回質問するに当たりまして研究者がどういうふうになっているかということを調べてみましたら、日本からアメリカへの研究者や留学生は約二万六千人、アメリカから日本に来ておられる方は二千人、だから大体十三倍ぐらい開きがある。そのほかの国を見てみましても、英国へ日本から行っておられる方は四千三百六十九人、英国から日本へお見えになっている方が三百八十六人、日本から西ドイツへ行っておられる方が二千七百七十人、西ドイツから日本が百九十五人、フランスへは二千八百二十四人が日本から行って、フランスから日本へは百九十二人。いずれも十分の一以下です、これね。  こういうふうな実情を見ますと、並み大抵の対策では基礎研究ただ乗りなんという言い分について、これはそうじゃないとは言えないと私は思うんですね。  そういうふうな意味では、この研究開発費あるいはこういうふうな人たちに対する援助というのは、これはもう当然私は文部省科学技術庁だけではなくて、政府を挙げてこういうふうな問題に取り組まないとこれは、応用科学とかそういう面ではある程度立派になったにしても、基礎となる基礎科学部門については本当に立ちおくれる、そう思うんですけれども、両大臣のこういう問題に対するお考えをお伺いして私の質問を終わりたいと思います。
  233. 中島源太郎

    国務大臣中島源太郎君) 御指摘のとおりでございまして、私も利根川博士ともお会いをいたしました。お会いするまでもなく、今の日本の経済的な国力からいたしますと、今までは外に学べ、外に流出という時代でございましたけれども、これからは流入時代、これに即するようなやっぱり努力と手当てをいたさなければならぬと思いますし、それには大方の御理解を得まして予算上もやはり必要でございますし、またそういう自由に研究できる環境を整えまして世界的な視野でいろいろな人材日本に来ていただく、それも定着してゆっくり腰を落ちつけてサイクルの長い基礎研究日本でやっていただくというような環境を整えていくことに全力を挙げてまいりたいと思っております。
  234. 伊藤宗一郎

    国務大臣伊藤宗一郎君) 今文部大臣からお答えを申し上げたとおりでございます。  そしてまた、先ほど峯山先生お触れの中の問題すべてそのとおりやらしていただきますけれども、そのほかに、やっぱり先ほど触れましたように、円高等で生活の問題もありますので、そういう問題についても我々はきめ細かく配慮していかなくちゃいけないなというふうに考えます。  宿舎の問題もあります。なかなか外国人がここへ来て円高で適切な宿舎もないということでございますので、宿舎の面倒も文部省、皆さんと相提携して親切にひとつ対処をしたい、そして立派な研究者、学者を喜んで懐深く我が国に迎え入れられるようなそういう研究環境の設備を整えてまいりたいと、このように考えております。
  235. 穐山篤

    委員長穐山篤君) 他に御発言もないようですので、文部省及び科学技術庁決算についての審査はこの程度といたします。     —————————————
  236. 穐山篤

    委員長穐山篤君) 次に、国政調査及び継続調査要求に関する件についてお諮りいたします。  本委員会は、従来どおり国家財政の経理及び国有財産の管理に関する調査を行うこととし、今期国会閉会中も継続して調査を付うため、本件の継続調査要求書を議長に提出いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  237. 穐山篤

    委員長穐山篤君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  なお、要求書の作成につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  238. 穐山篤

    委員長穐山篤君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  239. 穐山篤

    委員長穐山篤君) 次に、継続審査要求に関する件についてお諮りいたします。  昭和六十年度決算外二件及び昭和六十一年度一般会計国庫債務負担行為総調書(その一)、以上四件につきましては、閉会中もなお審査を継続することとし、継続審査要求書を議長に提出いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  240. 穐山篤

    委員長穐山篤君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  なお、要求書の作成につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  241. 穐山篤

    委員長穐山篤君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  242. 穐山篤

    委員長穐山篤君) 次に、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  昭和六十年度決算外二件及び昭和六十一年度一般会計国庫債務負担行為総調書(その1)、以上四件の審査並びに国家財政の経理及び国有財産の管理に関する調査のため、閉会中必要に応じ、政府関係機関等の役職員を参考人として出席を求めることとし、日時及び人選等につきましては、これをあらかじめ委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  243. 穐山篤

    委員長穐山篤君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。  次回の委員会は来る十六日午前十時に開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時二十分散会      —————・—————