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1987-12-08 第111回国会 参議院 外務委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十二年十二月八日(火曜日)    午後二時開会     ―――――――――――――  委員氏名     委員長         森山 眞弓君     理 事         宮澤  弘君     理 事         最上  進君     理 事         松前 達郎君     理 事         小西 博行君                 大鷹 淑子君                 倉田 寛之君                 後藤 正夫君                 嶋崎  均君                 鳩山威一郎君                 林 健太郎君                 林田悠紀夫君                 原 文兵衛君                 三池  信君                 中村  哲君                 矢田部 理君                 黒柳  明君                 広中和歌子君                 立木  洋君                 田  英夫君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         森山 眞弓君     理 事                 宮澤  弘君                 最上  進君                 松前 達郎君                 小西 博行君     委 員                 大鷹 淑子君                 倉田 寛之君                 後藤 正夫君                 嶋崎  均君                 林 健太郎君                 原 文兵衛君                 中村  哲君                 矢田部 理君                 黒柳  明君                 広中和歌子君                 立木  洋君                 田  英夫君    国務大臣        外 務 大 臣  宇野 宗佑君    政府委員        外務大臣官房審        議官       柳井 俊二君        外務省アジア局        長        藤田 公郎君        外務省北米局長  藤井 宏昭君        外務省中南米局        長        山口 達男君        外務省欧亜局長  長谷川和年君        外務省経済局長  渡辺 幸治君        外務省条約局長  斉藤 邦彦君        外務省国際連合        局長       遠藤  實君        水産庁長官    佐竹 五六君    事務局側        常任委員会専門        員        小杉 照夫君    説明員        警察庁警備局外        事課長      国枝 英郎君        外務大臣官房領        事移住部長    黒河内久美君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○国政調査に関する件 ○アメリカ合衆国地先沖合における漁業に関す  る日本国政府アメリカ合衆国政府との間の協  走を改正する協定締結について承認を求める  の件(内閣提出衆議院送付)     ―――――――――――――
  2. 森山眞弓

    委員長森山眞弓君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  委員の異動について御報告いたします。  去る十一月十九日、藤井孝男君が委員を辞任され、その補欠として倉田寛之君が選任されました。
  3. 森山眞弓

    委員長森山眞弓君) 国政調査に関する件についてお諮りいたします。  本委員会は、今期国会におきましても国際情勢等に関する調査を行いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 森山眞弓

    委員長森山眞弓君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ―――――――――――――
  5. 森山眞弓

    委員長森山眞弓君) アメリカ合衆国地先沖合における漁業に関する日本国政府アメリカ合衆国政府との間の協定を改正する協定締結について承認を求めるの件を議題といたします。  まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。宇野外務大臣
  6. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) ただいま議題となりましたアメリカ合衆国地先沖合における漁業に関する日本国政府アメリカ合衆国政府との間の協定を改正する協定締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  政府は、現行日米漁業協定有効期間が本年十二月三十一日に満了することにかんがみ、明年一月一日以降も米国地先沖合二百海里水域内において我が国漁業を継続し得るよう、米国政府との間で数次にわたり交渉を行ってきましたところ、現行日米漁業協定を一部改正しつつ延長する協定の案文について最終的な合意を見ましたので、本年十一月十日にワシントンにおいて、我が方松永駐米大使先方ウルフ大使との間でこの協定署名を行った次第であります。  この協定は、現行漁業協定の主な改正としまして、米国が、排他的経済水域として一九八三年三月十日の大統領宣言によって示された水域を設定したことに言及すること並びに協定の目的として米国水産業の迅速かつ十分な発展を容易にすること及び米国地先沖合において我が国漁業が継続され得るための原則及び手続についての共通の了解を確立することを挙げること等を定めるとともに、現行協定有効期間を一九八九年十二月三十一日までの二年間延長することを定めております。  この協定締結によりまして、明年一月一日以降においても我が国の漁船が米国地先沖合で引き続き操業することが可能となります。  よって、ここに、この協定締結について御承認を求める次第であります。何とぞ御審議の上、本件につき速やかに御承認あらんことを希望いたします。
  7. 森山眞弓

    委員長森山眞弓君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  8. 松前達郎

    松前達郎君 初めての大臣にとっての外務委員会質疑ということになるわけですが、きょうはまず最初宇野外務大臣外交姿勢全般についてお伺いをいたしたいんです。外交姿勢といいましても、幾つかの国との間の外交ということになるわけで、日米日ソ、日中、あるいはアジアASEAN等を含めてそれぞれあるわけでおりますけれども、最初に、北米局長がまだお見えでないので、まず日ソ関係からお伺いをいたしたいと思うんです。  十二月八日というのは、これは大臣も十分御承知のとおりに、日本にとって非常に歴史的な日でもあったわけであります。一九八七年の十二月八日、これもまた世界にとって非常に歴史的な日になるのではないかと我々は期待をしておるわけです。  戦略核兵器の数と核弾頭の数のバランス、そのバランスのもとに核抑止力米ソ両国、いわゆるスーパーパワーが保ってきたわけですけれども、最近になると、秘匿性に富んで、しかも移動可能なINFの無制限な展開というものが行われてきそうになった。こういうことからいわゆる核抑止力というのが消滅してしまうんじゃないか、こういう懸念もあったわけでありますが、その結果としてINFの一〇〇%削減というふうな新しい方向が決まりつつある。これは確かに米ソ間の合意が行われるとすれば世界の平和の維持にとっては画期的かつ重大な歴史的な出来事であろう、こういうふうに私は思っておるわけであります。  外務大臣として、この会談――会談というか首脳会議といいますか、これについてどういうふうに評価をされておるのか、また今後この会議の継続としてどういうことを期待されているのか、まずそれからお伺いいたしたいと思います。
  9. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) いよいよ日本時間の明朝、アメリカにおきましては米ソ首脳によりますところのINF全廃署名がなされます。これは本当に松前委員が今おっしゃるとおり画期的なことでございまして、我々といたしましても大いに歓迎するところでございます。特に、既存の核兵器削減したという点、またそうした状況に関しましてお互いに査察をしようという点、こうしたことが積極的に話し合われ、合意を見るに至りましたことに対し、日本といたしましても米ソ両国努力に対して評価をしなければならないと思う次第であります。もちろん、これは全体の核から申しますと四%あるいは五%とも言われる程度のものであるかもしれませんが、しかしそのパーセンテージよりもむしろ核軍縮第一歩が印されたということにおいて私は意義があるのではないかと思います。  この間ソビエト連邦外務次官ロガチョフさんがお越しになられまして、直接この問題を伺いました。また、米国の方々にもこの問題を伺いました。双方ともに、この後にはひとつ戦略核の五〇%削減という問題に関しましても私たちは進んで合意を得るように努力をいたしましょうと、こういうことでございましたので、この面におきましては我々といたしましても核軍縮第一歩として評価をいたしたいと考えております。
  10. 松前達郎

    松前達郎君 この後引き続き今大臣がおっしゃったような核軍縮が継続して行われる。我々としてもそれを大いに期待しなきゃならないし、そうあってほしいなと思っておるわけなんですが、これは少なくとも核戦略からいきますと、スーパーパワーの間の抑止力としての適当な数が必要であるなんという意見もあるわけです。ですから、ゼロになるかさもなければある程度の数を保有したい、そういういろんな抑止力としての問題がたくさんあると思いますけれども、我々としてはとりわけ戦略核兵器・特にこれはICBMも含めて削減が望ましいわけであります。  また同時に、もう一つ残ってくる問題はSLBMの問題です。これは潜水艦そのもの秘匿性がありますし、その位置その他確認できない非常に難しい問題もある。この問題から例のココム事件などもある程度宣伝をされたわけなんですけれども、そういったようなところまで本来進むべきじゃないかと私は思っておるわけなんです。その点ひとつ今後日本政府としても、大いに両国政府をバックアップしながらできるだけ早く軍縮が実現するように御努力いただければと思うんです。  また、最近とりわけ米ソ接近経済の面あるいは科学技術の面、まあ文化交流の面は前からあったと思いますが、それらの面で非常に日立ってきたのではないか、こう思います。それはどうしてかというと、これはいろいろ複雑な理由はあるかもしれませんが、自国経済政策のある意味での行き詰まりというものもあるでしょうし、民生の分野、これが比較的両国ともおくれをとった、とりわけ日本などにはおくれをとった面もあると思いますが、生産性あるいは品質などの面の水準の比較をしたときの低下他国と比較しての低下、こういう問題もあるんでしょう、一種の焦りをどうも感じているのではないか。そしてまた、自国経済を破綻させてまでも限りない軍事レースというものに、軍備拡張方向に取り組むというのは非常にむなしいんだと、国民に対する責任を恐らく感じているんじゃないかと私は思うんです、大ざっぱに言って。  そういう面から、昔は大砲かバターかという言葉もあったんですけれども、やはり経済政策というものが今後外交の中の非常に重要な部分に入ってくるのではないかと思うんです。とりわけ米ソ接近しているというのは、これはもう御承知のように、アメリカ経済使節団、非常に大きな使節団ソ連を訪問したり、あるいは今度ゴルバチョフさんもアメリカで恐らくアメリカ実業界との会談を行うだろうと言われておりますし、その結果としてまた新しい通商協定などが結ばれる可能性もある。対ソ投資とかあるいは合併事業が恐らく今後拡大していくんじゃないか。  こういうふうに考えてみますと、やはり米ソ経済的に相当接近をしつつあるという今日、それに対して日本政府としては、かつての中国とアメリカとの日本頭越しにした外交のようなことがあるのではないかと私は心配するんですが、経済政策に関してはどういうふうにお考えでしょうか。
  11. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 今回の米ソINF全廃の相互の承認という貴重な幕を迎えました裏には、今松前委員がおっしゃいましたように、やはり両国の軍部といえども経済ということを忘れることができないような時代を迎えておった、だからそこに一つ合意が生まれた、こういうふうに私たちも聞いている面もあるわけでございます。したがいまして、両国にとりまして、社会主義あるいは資本主義という差はあるとはいいながら、経済というものがいかに国民の福祉に直結するものであるかという観点に立った場合に、これは有無相通ずる何か一つ時代を迎えたのではないだろうか、私たちもそのことをはっきりと認識した方がよいのではないかと思っております。  今さら言うまでもございませんが、ソビエトにおきましてはペレストロイカ、立て直したと、あくまでも社会主義社会主義だが、その中における立て直したということで、ゴルバチョフ書記長も相当な勇気を持ってこれに取り組んでおられるという事実一つをつかまえましても、やはり米ソ間におきましては、今世界におけるいろんな経済問題、貿易問題、通貨問題等、それぞれ違う体制下にあるわけでございますけれども、そうしたものの中においてもどこかにおいてひとつ接触点はないものだろうかとしておられることは事実だろう、私たちはかように考えます。したがいまして、日本といたしましても、よい空気が醸し出されつつあるときに、米国も大切な国家であります、ソ連も大切な隣国であります、そういう意味外交を展開しなくちゃならない、かように考えております。
  12. 松前達郎

    松前達郎君 十一月にモスクワに私行ったわけなんですが、そのときに、前の文化大臣デミチェフという人なんですが、この人が今はソ連最高会議幹部会第一副議長、ナンバーツーになっておられて、その方と一時間近くにわたっていろいろ話をさせていただいたわけです。そのときの話によると、日ソ関係、これについてはどうも最近までは停滞をしている、余りいい関係じゃないんですね。停滞をしているその関係の中で、とりわけ政経不可分あるいは政経分離という問題ですね、これは両極端の問題ですが、こういった問題についてもこの辺で少し考え直したらどうなんだろうかというふうな話もされていたようです。とりわけ中曽根総理時代、そのときの政治からいっても、日ソ関係というのはどうもまじめに取り扱っていない、場当たり的な政治ではだめなんだというようなことを盛んに言われたわけなんです。将来の見通し日本ソ連関係については、ソ連他国関係ですね、日本以外の関係というのが非常に今進展をしている中で、どうも日本だけが取り残されていくような状態になるんじゃないかという発言もあったわけです。  ですから、これからの外交というのは相当広い目で、各国とソ連との関係も十分見ながら展開していきませんと、さっき申し上げたような頭越しということも起こり得る可能性がある、そういうふうに私はその会談を通じて痛感したわけなんです。  見通しとしては、これはソ連側が言うことですから、デリーでのゴルバチョフ宣言というのがあったんですね。それからさらにラジオ演説もやりましたし、あるいはウラジオストク演説などもあった。これは非常に長いですから私も全部は詳しくは読んでいませんけれども、そういった方向がどうも世界外交の動きになるんじゃないか。見通しとしては恐らくその演説の中に盛り込まれているのは正しいんじゃないかというようなことをデミチェフさんはおっしゃっていたわけなんです。  その辺がどうも、だんだんと現実的に、米ソ首脳会談等も行われますし、またその前後の米ソ接近もありますし、特に経済面接近しておりますから、そういう点から考えるとこの辺で我々の方も日ソ間の外交についてもう一度見直してみる必要があるんじゃないか、戦略的な意味は別として、いわゆる経済面で見直してみる必要があるんじゃないか、こういうふうに私は思うんですけれども、その辺をどうお考えでしょうか。
  13. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 詳細は政府委員から話させますが、この間そうした問題に関しましてもロガチョフ外務次官と話し合いをいたしました。そして、今さら申し上げるまでもありませんが、日本スタンスは西側であり、同時に太平洋・アジア諸国の一員であるというスタンスでございますが、ソ連は大切な隣人である。ところがココム等々を通じて、言うならば何か冷たい関係が生じたが、しかしこれであってはいけないのでぜひとも改善をしましょうということを私からも申し上げてあります。  ただ、そのためにはいろんな交流が必要だと向こうもおっしゃいますから、真の交流をするためにはやはり両国平和条約を結ぶことも必要ですよ、その平和条約前提としては、北方四島の問題を解決していただくという前提日本にあることも御承知賜っておかなければならぬ、そういう大目標に向かって我々は進んでいきましょう、それが私たち基礎です、こういうふうに申し上げまして、私といたしましても、日ソ両国間におけるところの改善は今後努力すべき課題である、かように考えております。  あとは政府委員から説明させます。
  14. 長谷川和年

    政府委員長谷川和年君) 日ソ間の経済関係につきまして少しく具体的に御説明申し上げます。  経済は基本的には民間のイニシアチブでもってとり行われますが、日ソ間について見ますと、バランスのとれた格好経済通商関係を進めるべきであると政府考えておりまして、具体的には政経不可分あるいは互恵、こういった原則に基づいて進めるべきである。実際日ソ間の経済関係通商関係は案外進展しておりまして、例えば昨年の日ソ間の貿易は五十一億ドル、他方米ソ間の貿易は十八億ドルでございます。また、ことしを振り返ってみますと、六月には日ソ間で政府間の貿易経済協議、これが東京でございました。先方から外国貿易次官、当方から外務審議官が応答しまして、両国間の通商貿易経済全般の問題について隔意ない意見の交換を行いました。また、来週にはモスコー日ソ科学技術協力委員会が開かれます。また、来年一月には東京日ソソ日経済合同委員会が開かれまして、先方から相当代表団が来ると思います。  こういったいろいろな場がございまして、民間の方あるいは政府レベルでもって日ソ間の貿易経済関係の伸展につき、従来からバランスのとれた格好でこれを拡大していくように努力をしているのが現実でございます。
  15. 松前達郎

    松前達郎君 今もまた、平和条約を結ぶということの前提北方領土返還があるんだということをおっしゃったんですが、本当に現実としてそういうことが行われて、しかもその結果として平和条約が結べるということをお思いでしょうか。これはただ単に島を返せという問題だけではなくて、日米間の問題あるいは世界の東西の対立というものを考えますとそう簡単な問題じゃない。返してもらいたくたってソ連は返さない。いつまでもそれを言っているうちに何十年もたってしまうという可能性もあるんですね。その辺の問題を一体今後どういうふうに我々は考えるのか、もうちょっと弾力的にうまい手がないのかどうか、こういうこともあるので、今その問題はちょっとここで触れないことにします。私が申し上げると、北方領土返還をしてもらって平和条約と、前からまるでテープレコーダーみたいにおっしゃいますから、それはそれだけにしておきます。  今おっしゃった経済交流といいますか、この面について、特に例えばシベリア等極東地域の開発とか、前にも財界でも恐らくそういった問題を取り上げたことがあると思うんです。高度な科学技術の製品に関しての貿易というのはいろんな障害がある。これはココムの問題その他が今あるわけですが、それ以外の資源についてはある程度私はできるんじゃないか、かように思っておるわけなんです。そういった面から考えると、ソ連日本というのは国内市場においてもあるいは第三国の市場においても競争相手ではないわけです。ですから、そういう意味で今後新しい分野経済交流というものができるのではないか、こういうふうに私は考えておるわけなんです。  幾つかの問題があるんですが、例えばレアメタルなんというのは日本にはほとんどないんですね。レアメタルの蓄積、ある程度備蓄をしなきゃいけないとかいろんな問題があったわけですが、こういったような問題も、例えば精錬技術、高純度化技術というものはソ連日本から学びたい面もある。そういうものを提供しながらお互いに結果、成果を分け合っていくということも可能性がありますし、例えば韓国あたりソ連から木材を輸入したくてしようがないんですね。ところが外交ルートがない、一体どうしたらいいのか、そういう話まで出てきている。いろんな話が最近になって出てきているんですから、その辺をひとつ、ただ政経分離ということだけですべてをシャットアウトするんじゃなくて、もうちょっとダイナミックに、多少の原則的なことは結構ですけれども、実際面としてできることはある程度やっていく方がいいんじゃないか、私はそういうふうに思って質問させていただいたわけなんです。例えばロシア共和国外務大臣にビノグラードフという人がいますが、この人あたりも同じようなことを言っているんです。  こういった一連の最近の傾向から見ますと、やはりこの辺でもう一度日ソ経済協力について見直してみる、これがやはり必要だろうと私は思っているんです。それが一つ。  それからもう一つ科学技術です。これは基礎科学技術についてはそう問題がないと思うんです。今までも学者同士は非常に幅広い交流を行っていますからこの辺はそう問題ないと思うんですが、例えば今おっしゃった科学技術協力に対する協定、これもすべての分野というわけじゃないと思いますが、そういったものを、文化交流協定ができたんですからそれに続いてひとつ提案をされたらどうなんだろうか。ソ連あたりは例えばフランスとはもうやっておりますね。日本も、今おっしゃったようにそういった科学技術に関する代表団ソ連に行かれる、そういう話をちょっと伺ったんですが、その辺について今後の課題として取り組んだらどうだろうかと思うんです。  その二つについて質問さしていただきます。
  16. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) この間も、抽象的でございますがソ連からはそういう話がございましたので、日本といたしましても、必要なことは必要なこととして今後交流を深めたらよいと私は考えております。  そこで、とりあえず、シェワルナゼ外務大臣が今INFで非常にお忙しいだろう、しかしながらIMFが一段落してめでたい結果を招かれた後には速やかにひとつ日本にやってきてほしい。順番を申すわけじゃありませんが、今度はソ連外務大臣日本に来ていただく番だから、そうしたチャンスをとらまえて、今後人的あるいはまた経済科学技術、いろんな面におけるところの話もしましょうやというふうに私も申し上げておるわけでございまして、そのときソ連次官からも、極力ひとつチャンスを見てそういうような機会を設けるようにいたしましょうということで別れております。  あともし細かなことあらば政府委員からお答え願います。
  17. 長谷川和年

    政府委員長谷川和年君) 先ほど御答弁申し上げましたが、科学技術に関しましては、来週十七日、十八日、日ソ間で第四回の科学技術協力委員会が開かれます。この分野におきましては、従来から双方共同研究をある特定の分野について行っておりまして、これについてはソ連側大変評価をしている、こういうことでございます。来週は私がモスコーに赴きまして先方関係者協議をすることになっています。  また、経済全般につきましては、先ほど御答弁申し上げましたとおり、民間のイニシアチブでもって一定の原則のもとにおいていろいろ進んでおりまして、政府としても、貿易経済協議を開くとかあるいはいろんな他の場においてお手伝いをしているという経緯がございます。ただ、基本的には、今は低成長時期でございますので、こういった木材とかいろんな資源の輸入についてはある程度限度がある。日ソ間の貿易のパターンというのは、どちらかというと、先方から日本に資源を輸入し、日本から製品を輸出するというような貿易の構成になっておりまして、今のような低成長時期においてある程度限度がございますが、その中で何らか隘路を打開すべく努力をしているというのが現実でございます。
  18. 松前達郎

    松前達郎君 日ソ関係、先ほど申し上げたように、世界全体の外交の中で流れというものが今後多少変わろうとしているような気配がありますので、その辺はプロとして十分もう検討されていると思いますけれども、よろしくお願いできたらと思います。  日ソ関係の最後に、去る十一月の十六、十七日に事務レベル協議が開かれたわけですね、今もお触れになりましたけれども。これは竹下内閣発足して初めてのハイレベルの協議であったと思うんです。ソ連との出会い、新政権としては初めての出会いですが、外務省としてはもう前々から交渉されておりますが、そこの中で日本側が、極東ソ連軍の動向について増強が顕著であって、極東の平和に不安を与えているというふうなことを言われたのではないかと言われているんです。特に北方領土ソ連軍の撤退を求めたというふうに聞いておるわけでありますが、それに対してソ連側は逆に、北方領土への軍の配備というのはソ連の国内問題だと。これは領土の問題とまた関係してきますが、むしろアメリカや同盟国のこの周辺での行動の方を懸念するのであるということを言って、日本の姿勢転換を求めたということを伝え聞いておりますが、こういうことがあったでしょうか。
  19. 長谷川和年

    政府委員長谷川和年君) 協議の具体的な内容については詳しく言及することは差し控えさしていただきたいと存じますが、当方からは、いろいろな場を使いまして、北方領土におけるソ連軍の近時における兵力増強、これについて非難をし、早く撤退するように、こういうことはありとあらゆる場において先方に主張しているところでございます。
  20. 松前達郎

    松前達郎君 日ソ関係はそのぐらいにいたしまして、日米関係なんですが、これはもうちょっと時間がたってからにしたいと思いますから、その前に日米漁業協定、これも同米関係でありますが、協定についてお伺いをしておきたいと思います。  今回日米漁業協定を改定すあということでありますけれども、二百海里体制の時代を迎えておるわけですが、もう既に十年を経過しております。我が国の遠洋漁業というのは最近国際情勢の変化に対応して急激かつ大幅に減船を余儀なくされている。いろいろ問題が出てきているわけであります。特に、十一月二十八日の南アフリカ航空に搭乗されていた方々の多くが漁船員であるということですね。これもやはり今の漁業に関する問題を物語っているんじゃないかと私は思うのであります。六十年から六十一年にかけて日米間で行われた交渉あるいは日ソ間の交渉、これを見ましても、沿岸国というのは最近は、自国の二百海里水域内の漁業資源については自国漁業の発展に貸すべき資源である、そういうふうに位置づけをしてしまっているんです。  しかも、アメリカの対日漁獲割り当て量について見ましても、五十六年が約百四十万トンですか、そのぐらいであった。これはピークであったと思いますが、ことしはわずかに約十万トンにまで減少してきた。この漁獲割り当て量について、これは水産庁の方が専門かもしれませんが、アメリカは一体どういう基準で決定したんだろうか。また、昨年の約四十七万トンに比べて本年は五分の一に近い減少になっているわけですね。非常に極端に減ったわけですが、これの減少にどういうふうに政府が対応してきたのか、この点おわかりでしたら御説明いただきたいんです。
  21. 柳井俊二

    政府委員(柳井俊二君) お答え申し上げます。  先ほど先生から御指摘ございましたように、最近におきましては世界の各居におきまして二百海里漁業水域あるいは経済水域というものが設定されてきたわけでございます。現在、漁業に関しまして二百海里水域内の資源につきまして沿岸国がいわゆる管轄権を有する、あるいは主権的権利という言い方もされていることがございますが、基本的には二百海里の水域におきまして沿岸国がその漁業資源の探査、開発、管理等につきまして一定の管轄権を有するということがこの制度が定着しつつある、そういう方向にあるということが言えると思います。  したがいまして、これも先ほど御指摘ございましたように、まずもって沿岸国がその二百海里における資源を一義的には開発いたしまして、もしそこに残りがあれば、すなわち余剰があればこれを外国の漁業の方に割り当てるといういわゆる余剰原則というものが非常に広く世界で採用されているわけでございます。したがいまして、年々日本の遠洋漁業に対する割り当てというものが米国に限らずいろいろのところで厳しい状況になってきております。特にアメリカの場合には、自国水産業を発展させるという政策に今月を注いでおりまして、その結果アメリカ水産業による二百海里漁業資源の開発というものが非常に急速に進んできたわけでございます。その必然的な結果といたしまして、外国に一般に割り当てられる余剰というものが減ってきております。  ただ、御案内と思いますけれども、我が国に対します割り当てにつきましては、先ほど御指摘があったとおり、絶対量の面におきましては急激に減っております。しかしながら、我が国アメリカの二百海里漁業水域におきまして伝統的に操業しているというような実績でございますとか、あるいは現行の協定にもございます漁業分野での対米協力というものをいろいろやっているというようなこともございまして、外国に割り当てられておる資源の七割程度は日本に向けて割り当てられているという状況もございます。ただ、いずれにいたしましても、割り当てが厳しい状況になっているというのは御指摘のとおりでございます。
  22. 松前達郎

    松前達郎君 五分の一に減少したその反面、余剰というのは一体どうやって算出しているのか私自身もよくわかりませんけれども、これはアメリカ側で恐らく根拠があって算出したのじゃないかと思います。  その反面で、洋上買い付けの規模がどんどん拡大してきている。これは五十七年から行われていますね。アメリカの国内法のマグナソン法というのがあるんですが、それによると、アメリカ水域内の資源というのは、アメリカ漁船が捕獲をしてアメリカの加工業者が加工利用をするのが原則である、その法律によってそういうふうに方針づけられている。こういう趣旨からいきますと、加工というのが入っていますから、将来洋上買い付けも制限されてくるんじゃないかと思うんですけれども、この洋上買い付け問題に対するアメリカの今後の動向についてはどういうふうにお考えでしょうか。
  23. 柳井俊二

    政府委員(柳井俊二君) ただいま御指摘のとおり、マグナソン法におきましては、アメリカ漁業資源をできるだけ自国水産業において開発するという方針をとっておりまして、したがいまして、行く行くは加工をなるべく付加価値の高い形で外国に輸出するという基本的な方向にあると思います。  ただ、現在アメリカの持っております漁業資源のうちアメリカ水産業が漁獲するもの、またそのうちで加工するもの、そのアメリカ水産業自体が処理できないものを外国に割り当てるという形をとっておりますが、この加工につきましては、必ずしもアメリカ水産業が漁獲したものを全部加工して輸出するというだけの能力は持っていないわけでございます。その意味から、漁獲した魚をそのままの形で外国に売る、日本の場合には洋上買い付けという形で我が国の船がアメリカの二百海里に入りまして、そこで直接買い入れて、船上あるいは日本に持ってきまして加工するということを行っておるわけでございます。これはそれなりに漁業の水産加工物の原料の供給という面では大きな役割を果たしていると思いますし、またこのような形の供給を受けるためにもこの協定は非常に大きな役割を持っていると思います。ただ、アメリカの水産加工の能力が進展するに従いまして、現在のような形で輸出ができるかどうかという点につきましては、資源に限りがあるものでございます以上、加工が進めば、やはり加工した、より付加価値の高い形で輸出するという方向にいくのではないかと思います。  より具体的なことにつきましては、水産庁の方から説明していただきないと思います。
  24. 松前達郎

    松前達郎君 いいです。  北米局長お見えになったので、先ほどの外交の基本姿勢等を含めてお伺いしていきたいんです。  対米外交なんですが、アメリカ日本関係というのはもう既に深い関係にあると言うと言い方は悪いかもしれませんが、その中でいろんな問題が、細かいと言ったら大変問題かもしれませんが、いろんな問題が出てきておるわけです。特に最近ではペルシャ湾の問題がございますね。アメリカがペルシャ湾に駐留をしているというか、そのペルシャ湾の安全航行に絡みまして在日米軍の駐留費の日本側負担の増加が問題となっていると思うんですが、これについては、中曽根内閣の当時政府・自民党の首脳会議で決定をされた「ペルシャ湾における自由安全航行確保のためのわが国の貢献に関する方針」、これを具体化することになるんじゃないかと思うんです。ペルシャ湾の安全航行と在日米軍の駐留費というものとはどういう関係があるのか、これはアメリカ一つのものとして見てそういうふうに関係づけているのか、その辺どうでしょうか。大臣の御見解を伺いたいんです。
  25. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 米国がペルシャ湾を含めまして世界の安全と平和のためにグローバルな活躍をしておるということは万事承知いたしておるところでございます。そうした中におきまして、我が国米国との関係はもう言わずもがな、日米安保体制を組んで、そして今日私たちも平和と安全を維持し確保しておるわけでございますから、そうした関係がより一層友好的になるようにという考えは持ってしかるべきだろうと思います。  そんなところから、常に私たちといたしましては、日本にいる米軍のことに関しましては慎重な配慮が必要ではなかろうか、そうしたことから十月七日の政府・与党における決定がなされた。私もそのとき幹事長代理として参加いたしておりますが、そういう気持ちであの決定をいたした次第でございます。したがいまして、日本における米軍の経費の問題はペルシャ湾と関係があるんだとは私たち考えておりません。
  26. 松前達郎

    松前達郎君 そうしますと、例えばペルシャ湾で日本のタンカーをアメリカが護衛しているんだからそれに対する何らかの手当てをせよというふうなことがもしか来ているとすれば、日本が自衛隊を出すわけにいかないですから、何らかの方法で対応しろと言われたときに、じゃどういうふうにされるつもりなんでしょうか。
  27. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) そうした要求があったことはないわけでありまして、ただ、我々として、今申し上げましたような観点に立った場合に、ペルシャ湾に関しましては、あそこを通過しております船舶並びに石油の五五%までが日本向けであるということになりますと、もう我々といたしましてもこの問題を放置することはできません。しかし、我が国の憲法上いろんな制約がございますから、私たちは非軍事的な面において協力しましょう。  それでは非軍事的な面とは何かということになりますが、松前委員も御承知でございましょうけれども、やはり機雷がペルシャ湾にはいっぱい浮いておる。言うならば無事の非戦闘員がそうしたことにおいて負傷し、また時には命を失っておる。また非戦闘国もそれに巻き込まれるような感じになっておる。こうしたことは避けなければなりませんので、日本といたしましては、御承知の航行安全のための電波装置、そうしたことに私たちはお金を出して、ぜひとも航行の安全を図り、なおかつペルシャ湾におけるところの関係者が、第三国あるいはまた非戦闘周、そうした国々の利益も守るように努力しましょう、こういうことで御承知のような措置をとった次第でございます。
  28. 松前達郎

    松前達郎君 その措置の結果、そういう機器類。そういうものを使用するのは米軍が使用することになるんですね、恐らく。日本がこっちから人を派遣してそこでもって例えば機雷の探知をするとか、そういうふうなことではないとすれば、そういった援助によってそれを使用する、例えば機器だった場合、その機器を使用するのは米軍だということになりはしませんか。
  29. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) これは一般の船舶に利用されるわけでございまして、したがいまして、我が国は機雷を掃除するという掃海艇は派遣しないわけであります。その面はその面で派遣している国がたくさんありますが、私たちは一般船舶、アメリカの軍艦じゃなくて一般船舶、タンカー、それを守るためにやったわけでございます。  この間、もちろんその敷設を急ぐ必要がございますから、審議官を初め係官を湾岸諸国に派遣いたしまして、速やかなるそうした安全装置の敷設を勧めにまいりまして、皆了解を得ております。またイランも、お越しになられましたときにイランの外務大臣にも、あなたの方もこれはお使いになっていいんですよ、決して日本は分け隔ていたしておりませんから、イランもお使いになっていいんです、ぜひともそうしてくださいということもお願いいたしておりますので、まさにペルシャ湾におけるところの非軍事的、平和的施認じゃないか。そういうことにお金を出しましょうということで今その敷設を急いでいる途中でございます。
  30. 松前達郎

    松前達郎君 またちょっと話が変わるんですが、農産物輸入制限に関するガット裁定の問題です。  農産物は今先進国で非常に余っているわけですね。ECもそうでしょう、アメリカもそうですね。結局、余っていれば当然それに対して輸出をしたいという欲望が出る。それは日本はその欲望を満たすような条件にない。というのは、輸入制限をやっているということで日本に矛先が向いてくる。  我が国として、昨年始まった農業問題を協議するためのガット新ラウンドを推進しようということを明言しているわけですが、今回十二品目の輸入制限に関する裁定案の受け入れに捜して、これをもしか拒否するとすれば新ラウンド推進の姿勢には反することになってしまう。結局日本として今回裁定全体の採択の先送りを要請する。事実、先送りというか、多少時間が延びたわけでしょうけれども。これは問題として残っているわけですから、こういったような問題について今後どういうふうに対応していくおつもりなのか。これは農業に従事している皆さんにとっては大変な問題だろう、こういうふうに思うわけなんです。これについて、アメリカだけを説得してもなかなかそううまくいかないんじゃないかと思いますが、全体的に見て今後対策としてはどういう対策をとるおつもりなのか、それについてお考えあったらお聞かせいただきたい。
  31. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) この十二品目の問題は日米間における紛争でございます。そして、アメリカの提訴によりましてガットのパネルの討論の結果、その結論は一応クロというふうに出たわけでございます。もちろん、うち二品目に関しましては灰色でございますが、クロという判定を受けたのは十品目あったわけでございます。したがいまして、二国間の紛争でございますからあくまで二国間で話し合いをするべく、現地のワシントンにおきましてもそれぞれの代表間において話し合いが続けられておったんですが、私も、ガットの総会に出ましたときにアメリカのヤイター通商部代表と会って、この問題に対しまして次のように私は申し上げました。  これは日本の与野党超越した国会の声でもあり、また農業団体の声でもあるけれども、例えばガット創設者であるアメリカは既に四十年前にウエーバーを持っていらっしゃる。つまり輸入制限をしてもよろしいというような品目をたくさん持っていらっしゃる。またECにおいては輸出に補助金をつげておる。我が国はウエーバーもなければ補助金もつけた覚えもなし。そういう大きな差があるにもかかわらず、日本の農業に対して裸になれというのはいかにもアメリカの言うべきことではないんじゃないか。こういうふうにして、我々といたしましても一応何としてもこれは撤回してほしいということを申し入れた次第でございます。  しかし、現行ガットによりますると、十二品目十把一からげ、オール・オア・ナッシングだというような説もございますから、宇野さん、十二を全部おろしてしまうということはできませんよ、こういう話でございますので、なれば、その中の乳製品あるいはでん粉に関しましては、これは我が国にとりましても重要な農産物である、また国家貿易という観点に立ちましても重要な品もあるので、こうしたことはひとつ分割をしていろいろと議論してもらえないかということを主張したわけであります。それに対しましてもアメリカは、分割を許しますとつまみ食いを許すことになりますから、各国それぞれこういう問題のときに先例を残すと何のためのパネル協議であったか意味をなさないので反対ですと、こういうふうに答えておりました。  我々といたしましては、あくまでこの問題を主張しなくちゃなりませんから、こういう問題がかかる順序がございますが、実は日本は十八番目でございましたけれども、一番目に繰り上げてほしい、日本としては言い分をうんと時間をかけて言いたいじ、またその間、もしもガットの総会において日本の言い分が阻害された、あるいはまた拒否されたという場合にはその次の手段を講じなければならないというので、実は一番目に発言を許してもらいました。そのときに、御承知のとおりに、二品目に関しましてはひとつ分割してこれを採択するようにお願いをしたいということを希望したのでございますが、三十分近く代表はしゃべってくれましたけれども、ほとんどの国から反対というふうな声が上がりましたので、万やむなく、どうすればよいかということを本国にひとつ訓令を仰ぐというふうな幕を迎えたわけでございます。  私はそのとき、そこまでやって帰ってまいった次第でございますが、ガット総会におきましても、はっきり申し上げますと、酪農品、でん粉及び国家貿易に関する部分を除いて採択されることを求めた発言の中で、酪農品及びでん粉を除いた品目すなわち八品目については今後ガット上適切な措置をとる方針を表明済みでございます。ということは、二品目さえ分割してくれるのならばあとのことも考えてもよろしいというふうな感じだったのでございますが、全然だめだということでございます。今申しましたガット上適切な措置というのは、所要の措置を講じつつ、例えば国内のいろんな問題もございましょう、そうしたことを講じながら、数量制限を撤廃するという意味において、こうしたことで二月までひとつ待ってください、二月までに私たちは、国内問題も随分ございますから、いろいろと今申し上げましたような措置をとらなければなりませんのでということで、ガット総会でも相当異議があったわけでございますが、日本の言い分が通りまして、一応二月の理事会においてこの問題は改めて話しましょうという段取りに相なっております。
  32. 松前達郎

    松前達郎君 そうしますと、一応二月まで先延ばしということになったわけですね。国内問題は大丈夫ですか、二月まで。この問題というのは消えてしまう問題ではありませんから、やっぱり二月になるとまた蒸し返されてくるわけですから、恐らく農産物輸入制限については将来とも問題となってくるのではないかと思いますけれども、その点、将来の展開、展望についてはどういうふうにごらんになっておられますか。
  33. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 現在、農水省におきましても、また野党の部会等におきましてもさようでございましょうが、自民党の部会におきましても、この問題に関しまして鋭意ただいま検討中であり、また一部においては作業を進めようかというふうな段階になっておる。したがいまして、私たちもやはり当事者のそうしたお考え方を聞きながら、ガットという国際的な場におきまして、日本もガットの大きな国でございますので、十二分にガット精神というものも生かしつつ、また反対すべきは徹底して反対していかなくちゃならない、かように思っておる次第であります。
  34. 松前達郎

    松前達郎君 農産物の問題というのは非常にこれから大変な問題だろうと思うので、その辺ひとつ十分御努力をいただければと思うんです。  今度はアジア外交なんですが、来週マニラで十年ぶりですか第三回のASEANの首脳会議というのが開かれるんですね。それに竹下総理大臣が出席をされるわけなんですけれども、会議に臨むに当たりまして、ただ出席すればいいというわけじゃないものですから、ASEAN諸国に対する政府の基本方針というものをある程度明確に打ち出していかなければならない。その基本方針の中の中心的なものについて何かございますか、新たなものとして。ありましたらひとつ。
  35. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 言わずもがな、私たちアジア・太平洋諸国の一員でございまして、特にASEANはちょうど二十年目を迎えておりますが、各国ともにそれぞれ相当な実績を上げることに努力してまいりました。また、ASEAN六カ国の中におきましても、お互いに協調し協力してこられて実績を上げておられます。  当然私たちは、言うならば一番近い諸国との関係でございますから、何といたしましてもまず民生の安定を図らなければならぬ。そのためには経済の繁栄を図らなければならない。こういう意味合いにおきまして、特に、先般緊急経済対策を立てました中におきましても、二百億ドルの還流資金を設けたことは御承知でございますが、その二百億ドルのうち二十億ドル以上、これをASEANの六カ国にいろんなプロジェクトでお貸ししようではないか、使っていただこうではな小かということで、具体的な話を進めております。そうしたことが中心になると私は考えております。
  36. 松前達郎

    松前達郎君 今いろいろなプロジェクトとおっしゃったわけなんですが、とりわけ我が国政府開発援助についてはいろいろと問題が指摘されているわけです。この委員会でも前に、開発援助のあり方というのを今後一体どういう方向に持っていくのか、ただ金さえ出せばいいというものじゃないぞというふうなことで申し上げたことがあるんですけれども、こういったような問題も含めて、基本的にアジアとの外交政策といいますか、そういったものをマンネリじゃなくて見直していくという新しい作業をひとつおやりになった方がいいんじゃないか。とりわけ政府開発援助はその中心じゃないかというふうに思います。この委員会でもいろいろと取り上げられたわけでございます。これは私の希望として申し上げておきたいと思います。  たくさんお伺いしたいことがあるんですが、最後に一つだけ。  これはどうもまだはっきりしないんですけれども、大韓航空機事件です。これは余り外務省の皆さんお触れになりたくないんじゃないかと思うんですが、まだ墜落したというのはわかっていないんですね、確認をされていないんです。わかっていることは、日本政府発行の偽造旅券を蜂谷何がしが持っていたということ、日本人名義の男女二名がいたということ、この点が、大韓航空機がもしか爆破されたとかそういうことがおったとすると、どうもそれとのかかわり合いがあるのではないかと言われているんです。この辺一体、情報としてはなかなか入りにくいと思いますが、今問題となっているのは、蜂谷真由美という方、この方の身柄は一体韓国なのか日本なのかという問題とか、そういうふうなことをいろいろ、身元確認がまだ確立されていないのにそういった議論まで、恐らく新聞によれば外務省の方では韓国に譲るとかいう話をされたというふうなことも報道されておるわけですが、この蜂谷真由美という人は一体日本人なんですか、韓国人なんですか。その辺どうでしょうか。
  37. 黒河内久美

    説明員黒河内久美君) まず、事実関係について御説明申し上げます。  この大韓航空機八五八便は、先生今御指摘のとおり、十一月二十九日、アブダビからバンコクに向かう途中消息を絶ち行方不明となっておりますが、現在に至るまで、タイ、ビルマ等の関係当局の全力を挙げての捜索にかかわらずまだ確認が行われていないというふうに承知いたしております。  この旅客機の乗客の中に、バグダッドで搭乗しアブダビでおりた邦人名義旅券所有者、すなわち蜂谷真一及び蜂谷真由美名義の旅券を所有していた二名が、十二月一日、バーレーン当局に偽造旅券所持の容疑で拘束され、取り調べ中自殺をはかり、男性は死亡いたしましたが、女性は生命を取りとめ、バーレーン政府が現在取り調べ中であると承知いたしております。  他方、国内にいることが判明しました蜂谷真一本人及び蜂谷真由美名義の旅券の番号に該当する旅券申請者につき我が国警察において事情聴取を行いましたところ、両名とも真正な旅券を所持しており、この蜂谷両名の旅券は偽造と判明いたしました。  また、両名の身元確認の資料とする写真と指紋をバーレーン側より入手いたしまして、警察側で照合を行っておりますが、我が国での該当者は見つかっておりません。
  38. 松前達郎

    松前達郎君 そうすると、まだ日本人ではないと言い切ることはできないけれども、日本人に該当者がいない、こういうことですね。  そこで、どうもこの辺まだはっきりしないうちにこういうことを申し上げていいのかどうかわからないんですが、例えばモントリオール条約によると、民間航空機犯罪の捜査、裁判権は旗国主義である。だからこの飛行機を所有している国のということですね。ところが、公文書偽造行使については国外犯に適用されるから、日本にも身柄引き渡しを要求する権利があるというんですから、その考え方によって大分変わってくると思うんです。これは恐らく韓国も非常に際どい状態、際どいというのは、選挙もやっていますしオリンピックもあるでしょうし、いろいろと問題が山積している、やらなきゃならないことがたくさんある。そういう時期に大韓航空の飛行機事故が起こったわけなんで、ある意味では外交的には非常に重要な問題に展開する可能性もあるんですね。その辺を十分慎重に考えながらおやりになった方がいいんじゃないかと思うんです。  どういうわけか大韓航空というのは必ず問題起こしますね。前に、ペトロパブロフスクの上を飛んでみたり、ムルマンスクの方へ飛んでみたり、いろいろと事件メーカーというか、そういう感じを私は持っているわけです。しかし、それはそれとして、やはり今度の問題、国籍いかんというのが非常に大きな問題になってまいります。その辺はまた調査が進めばはっきりしてくるんだと思いますが、そのときの対応が非常に重要であろうと私は思うんで質問さしていただいたわけなんです。  日本への身柄引き渡しというのを要求するということはもうございませんか。
  39. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 先ほどからずっと松前委員がおっしゃったようなモントリオール条約等々いろいろございます。しかしながら、その飛行機は韓国機であり、多くの犠牲者は韓国の海外において働いた方々でありました。まことにお気の毒なことだと思いまして、深甚の弔意を表しておる次第でございます。  我が国といたしましても、たとえそれがにせものであるといえ、旅券が日本政府の旅券であるということにおきましては真相を追求する立場にあります。しかしながら、正式に韓国はバーレーン政府に対しましていわゆる一人の女性の身柄引き渡しを要求いたしております。こういうふうになってまいりますと、私たちといたしましても旅券に関しましては真相追求をしなくちゃならない立場にいるが、多くの犠牲者が韓国の人たちであり、また韓国機が爆破されたのか、あるいは事故だったのか、その辺もまだ定かではありませんけれども、一応行方不明になっておるという事実から考えました場合に、この一人の女性を私たちが何か引っ張り合いをしておる、そういうことは私はこの際なすべきではない、こういうふうに思っております。  したがいまして、まだ国籍も判然といたしておりませんし、また飛行機との関係も判然といたしておりませんし、飛行機が墜落したのか行方不明かその原因も判然といたしておりませんから、我々といたしましては、今日ただいまは、日本は旅券の上において関心を抱いておりますけれども、女性の問題に関しましてはバーレーン政府の判断に私たちはゆだね、そのことを尊重しましょう、これが日本の立場でございます。
  40. 松前達郎

    松前達郎君 くどいようですが、国籍がまだ判明していないわけですね。韓国の方は、韓国人であるということがわかってそれで身柄の引き渡しを要求しているのかどうかという問題です。もしかこれが日本人だったらどうなりますか。やはり韓国に引き渡しますか。引き渡しというか、要求を放棄しますか、日本側は。
  41. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 架空の問題でございますから、こうしたところで議論をするのはいかがかと思いますが、まずモントリオール条約を中心として考えました場合には、現に飛行機が行方不明になって多くの韓国の方々が現在も行方不明で悲惨な運命に遭っていらっしゃるかもしれない。これと蜂谷親子と言っておられました二人の関係を推測するに何か関連性を見出したというふうなことが仮にもしあるならば、やはりモントリオール条約上韓国に私は優先権があるのではないか、こういうふうに考えております。  したがいまして、それがもし日本人だったらどうだということになりますが、日本人でございましても、国籍だけで云々ではなくして、日本人という国籍を持ち、なおかつ韓国と重大な関連があった、そうした総合的な判断をした上の話でございますので、今まだ韓国人とも日本人とも何人ともわからぬという状態のもとでは、私たちといたしましてはそうしたコメントは避けたいと思っております。  したがいまして、バーレーン当局も十分いろいろと捜査を進めておられることだろうと思いますし、また韓国も現に引き渡しを要求されて高官も一人バーレーンへ行ったということも聞いておりまするから、そうしたときに我が方からどうのこうの言うのは少しく行き過ぎ――行き過ぎというよりも、韓国の方々が非常に怒りを抱いておる現状に対して一つの支障を来してはいけませんので、私どもといたしましてはあくまでもバーレーン政府の判断に任します、こういうふうに申し上げておるわけでございますので、仮説の問題に関しましては私はここでひとつコメントを避けておきたい、かように存じます。
  42. 松前達郎

    松前達郎君 まあ公文書偽造行使があったことは事実なんですね、これはもう偽造のパスポートであるとわかっておるんですから。しかも日本政府発行のパスポートを持っていた、にせものですけれども。これに対する問題があるんです。これは消えないはずなんで、これまで放棄してしまうということになるんですか。その辺は、国籍が日本であるのか、韓国あるいはその他であるか、それによってもちろん取り扱いはまず一義的には変わってくるかもしれませんが、しかし公文書偽造というのは変わらないんじゃないですか。その辺どうでしょうか。
  43. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 先ほど申しましたとおり、偽造であれ日本政府のパスポー十でございますから、関心を持っておりますだから、現段階において放棄したというようなことではありません。
  44. 松前達郎

    松前達郎君 終わります。
  45. 黒柳明

    黒柳明君 話のついでですから、今の質問に追っかけてやりますけれども、身柄の引き渡しは放棄したと官房長官が記者会見で発表しましたですね。残念ながらテレビの画面には外務大臣の姿がお見えにならなくて寂しかったんですけれども。小湖長有の、身柄の引き渡しは要求しない、こういう発言がありました。ただ、けさの新聞には一部外務大臣のコメントが出ていましたですね、同じく身柄の引き渡しは要求しないと。これははっきり要求しないとバーレーン政府には申したわけですね。それと、今大臣がおっしゃったバーレーン政府に任せるというのは、ちょっと関係がわからないんですけれども。
  46. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 外務省といたしましては、昨日書簡をバーレーンの外務大臣あてに出しております。事件が起きたときには電報を打ちまして、これには日本政府も関心がございます、したがいましてよろしく御協力のほどをということを打ってございますが、昨日は、日本政府といたしましては、外務大臣あてに、にせパスポートに関しましては関心を抱いております、しかし、バーレーン政府も捜査の結果判断なさることでございましょうから、女性の問題に関しましてはバーレーン政府の御判断に私たちはお任せします、またそれを尊重します、こういうような書類を出しまして、そして相手国の儀典長を通じてその旨は相手国の外務大臣の耳に達したのではないか、こう考えております。  したがいまして、そこまでの段階が現在の日本政府の段階である、こういうふうに御理解を賜りたいと思います。
  47. 黒柳明

    黒柳明君 わかりました。ちょっとその点がわからなかったものですから。  そうすると、バーレーン政府があくまでも、いや身柄は日本に引き渡したいという申し出があれば、当然日本政府としては拒むものではない、すべて何か霧の向こうでわからないわけですから、それが何か糸がほぐれてきまして、それで日本政府に捜査を、あるいは身柄の引き渡しをと言われたらこちらは拒むものではない、こういうことなわけですね。
  48. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 今申したとおり、バーレーン政府の判断ということを尊重すもわけですが、日本政府の立場からはっきり申し上げますと、今のところ我々といたしましては引き渡しを要求するということは考えていない、こう申し上げてもよいと思います。
  49. 黒柳明

    黒柳明君 わかりました。  警察庁と警視庁の捜査員が三名行っておりますね。あの派遣された時点では、一昨々日ですから、引き渡しするしないということも含めて捜査している、あるいはしてきたかと思うんですが、その点警察庁の方はどうですか。
  50. 国枝英郎

    説明員(国枝英郎君) 捜査員三名につきましては、現地捜査当局との情報交換という趣旨で派遣いたしておるものでございます。
  51. 黒柳明

    黒柳明君 だから、きのう外務大臣がはっきり、日本政府として身柄引き渡しは結構ですと、こういうふうに言ったわけです。捜査官はその前にもう行っているわけでしょう。ですから、その時点においては身柄の引き渡しについてはまだ海のものとも山のものともわからないで捜査に着手しているわけじゃないですか。そこらあたりいかがでしょうか。
  52. 国枝英郎

    説明員(国枝英郎君) 派遣した段階におきましては、もちろん引き渡し云々ということで捜査員が行ったわけではございません。先ほど申し上げましたように、あくまで現地当局との情報交換という趣旨で派遣したものでございます。
  53. 黒柳明

    黒柳明君 だから、身柄引き渡しということももしかするとあるということも含めて捜査官が行ったんじゃないですか。
  54. 国枝英郎

    説明員(国枝英郎君) 先ほど申し上げておりますように、捜査という面と情報交換という面は私ども常に峻別いたしておりまして、あくまで現地当局が捜査の過程で得ました情報、それを我々が入手する、あるいは我々が持っております情報について先方に提供する、そういう意味の情報交換という趣旨で派遣したものでございます。
  55. 黒柳明

    黒柳明君 情報交換、捜査じゃなくて情報交換で行った。
  56. 国枝英郎

    説明員(国枝英郎君) さようでございます。
  57. 黒柳明

    黒柳明君 そうすると、昨日の時点においては、その身柄引き渡しということについては完全に情報交換の範疇に入らなくなったわけですね。
  58. 国枝英郎

    説明員(国枝英郎君) まず捜査について、国内捜査は当然進めております。ただ、捜査の状況でございますけれども、身元の確認ができない等の状況がある現時点におきまして、警察といたしましても身柄の引き渡しを求めるかどうかというのを判断できる段階には至っておりません・
  59. 黒柳明

    黒柳明君 大臣、こう言っちゃ失礼ですけれども、日本外交というのは非常に私たちもやきもきするぐらい後ろ手後ろ手に回っていて、まあ慎重だ、いい言葉でね。今回の場合には非常に対応が早いですよね。しかもその対応が、何にもわからないうちから、確かに大韓航空機であり、韓国の多くの方が犠牲になられているわけでありますから、そこであっちだこっちだと綱引きなんというのはこれは本当におかしなことです。おかしなことですけれども、真相の究明というのは韓国だけができるのか、バーレーンができるのか、日本が先行するのか、これはわかりませんね、やってみなけりゃわからない。ですから捜査員も行っているわけだ。国内捜査をやっているわけだ。情報交換、国内捜査。それにしてはばかにあきらめ――あきらめというのか、手の打ち方が早くて、私、いいという評価していいのか、あるいはおかしいという評価していいのかちょっと迷っているんです。  きのうの官房長官の談話は何かはっきりしなかったんですよ。条約上やっぱりいろんな国との問題があるなんというようなことだったんですけれども、その内容というのは、今大臣がおっしゃったその一点に尽きるわけですか、理由は。大韓航空機であり、亡くなられたのが韓国の方であるから、だからそこでの綱引きみたいなことをやると国際的にみっともないよという一点だけで、要するに身柄引き渡しについては結構です、当面はですね、バーレーン政府に任せる、それはその一点だけなんですか。ほかの理由というのはないんですか。
  60. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) きのう官房長官が発表された時点においては、私はまた官房長官の発表内容を知らなかったんです、実のところは。しかし、後から官房長官の方から外務省の見解を聞いてこられまして、外務省の見解は先ほど来申し上げておりまするとおりに、あくまで関心はあるけれども、バーレーン政府の判断に従いましょうと、この時点でございます。  そこへもってきまして、韓国政府が正式に引き渡してほしいという申し込みをしましたということでございますから、そうした事態があるときに、旅券の問題と、多くの人命を失われた問題、こうした問題を国際的に考え、また日韓両国の親善関係等々を考えました場合に、ここでもし私たちが、旅券の方が大切だ、その真相を究明したいという挙に出た場合果たしてどうなるのであろうか。こういうようなことを考えました場合は、当然、バーレーン政府も恐らく捜査が進んでおり、その捜査を韓国の方もある程度耳にしておられ、そうしたことで要求されたのであろうということになりますと、今申し上げましたとおりに、きょうも韓国政府がはっきりと高官を派遣したということも聞いておりますから、したがいまして、こちらから身柄引き渡しを要求するという考え方はございません。きのうはまだそこまで言っておりませんが、きょうは私がこの委員会で初めて身柄引き渡しを要求することは考えておりませんと、今申し上げておるところでございます。
  61. 黒柳明

    黒柳明君 そうすると、バーレーン政府が捜査して、韓国政府が何か耳に入れてそれで特使を派遣した、身柄を引き渡してくれと。そういう情報は日本には伝わってこないわけですか。韓国のだけしかわからない、日本の方には伝わってこないんですか。
  62. 黒河内久美

    説明員黒河内久美君) そのような報告を受けております。
  63. 黒柳明

    黒柳明君 だから、受けてないのに、韓国だけにバーレーン政府はそういう情報を流した。また、おまえの方の何か関係が深いから、おまえの方に身柄を引き渡しするから日本政府関係ないよと。大臣おっしゃったことを私頭が悪いものですから理解できないんでねりちょっと何かこうおかしいなという感じがするんです。  何も日本がこの捜査でおくれをとっていいと思って捜査しているわけじゃないですね。おくれをとっていいどころじゃありませんよ。赤軍の世界的な、しかもこの十四日から総理大臣がいらっしゃるマニラだってそういう問題があるわけでしょう。それとの関係やいろんな関係が複雑に絡んでいるかもわかりませんね。ただ単にこれが単発で起こったのかどうか、これだってわからない。全くわからないわけですよ。いろんな問題があるわけですね。国内捜査だってやっている。韓国とどっちが早いか、これはわかりませんけれども、捜査員も派遣している。特使は派遣していません。  ですけれども、今大臣ちょっとおっしゃったのは、これは話し言葉ですから、別に言葉じりをとらえるわけじゃありませんけれども、何かバーレーン政府の捜査内容は韓国だけにいって、だから韓国が身柄を引き渡してくれと言ったんだ、日本はそういう情報が来ないから遠慮するんだというようなことは、ちょっと私――そういうことはあるんですか。
  64. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) そういう意味で私申し上げたわけでなく、当然我が国からも、警察庁からも出ておりますし、我が国も臨時大使を送り、近隣諸国から四、五名の外交官を送って、いろいろと捜査にはバーレーン当局の協力を得ております。したがいまして、そういう総合的な判断のもとに我々の見解をきのう書簡にしたためた、こういうふうに御理解賜りたいと思います。
  65. 黒柳明

    黒柳明君 いずれにせよ、日本政府としては、身柄引き渡しのための韓国みたいな特使も派遣しないし要請もしないというようなことで、韓国だけがやった、こういうことが現実ですよね。  それから、今大臣おっしゃったように、身柄引き渡しはもうしなくていい、バーレーン政府に任せる、これがもう現実ですな。ですけれども、何か全くわからないうちに、手の打ち方が早くて、さっきも言いましたように御立派だと褒めていいのか、あるいは御立派じゃない、どうしてかなと言っていいのか、ちょっとその辺わかりません。これは私の頭が悪いということで私自身も了解しなきゃならないと思うんですけれどもね。  そうすると、今後いろんなことが当然はっきりすると思いますね、身柄が韓国に行くにせよ、バーレーン政府の捜査が進むにせよ、日本政府の捜査が進むにせよ。それに応じて当然日本政府の対応というものも主体的に変わってくる可能性が当然ある。今はあの女性の身柄引き渡しについてはバーレーン政府の出方待ち、こういうことですけれども、いろんな情勢の変化に応じては要するに日本政府の打つ手は当然変わってくる、こういう留保も含めて、政府はバーレーン政府にその身柄引き渡しも任せる、こういうことになっているわけですか。まさか捜査をあきらめたり、情報交換をあきらめているわけじゃないでしょうからね。
  66. 黒河内久美

    説明員黒河内久美君) ただいまの御指摘の点でございますが、理論的には変わり得るということだと思います。  なお、バーレーン当局からは日韓双方に対して同じように情報の提供を得ておりますことをここで申し上げます。
  67. 黒柳明

    黒柳明君 大臣、日韓双方に同じような情報が入っている。さっき大臣が言ったのは、私の耳が最近悪くなったか、どうもそういうふうに受け取らなかったからちょっと同じような質問をしたんですけれども、日韓両方に対して同じ情報が入っていますね、部長。
  68. 黒河内久美

    説明員黒河内久美君) 私ども事務当局で理解している限り、そういうことでございます。
  69. 黒柳明

    黒柳明君 それで安心しましたよ。何かさっきの大臣の発言、議事録を後で見てくださいよ。韓国だけにバーレーン政府からの特殊な情報がいっているような感じ――もう結構です、大臣初めての答弁で、失礼ですから。わかりました。  今後の日本政府の対応は、当然その捜査の進展の状況によって変わり得る、こういう理解でいいと、大臣よろしゅうございますね。
  70. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 理論的には変わり得るということは、今申し上げましたとおりであります。
  71. 黒柳明

    黒柳明君 そうでないと、何だかわからない中で日本政府が先行して、これは国際的道義上いろんなことがあるけれども、やっぱりこういう捜査というものは法律、条約、そういうものが優先しなきゃならない。日本政府だって都合のいいことはそういうことを言うじゃないですか。ですけれども、今回の場合は何か国際道義上みたいなものが先行しちゃっているような感じがいたします。まあこれはいいでしょう。  それから、間もなく米ソのサミットが始まるが、これは世紀の会談ですね。確かに私たちも、核軍縮と言うは易しく、全く軍縮どころか拡大の方向、やがては宇宙までも競争がいくような懸念があったわけですが、やっとの思いでINFの全廃調印、これはもう間違いないでしょう。  ただ、今回の米ソ首脳会談のメーンは、五〇%の戦略核削減、あるいは一部報道では来年はモスクワでこの調印があるのかなと、こんな報道もされておりますけれども、どうなんでしょうか。外務省の情報あるいは外務大臣の御判断として、今回のこの首脳会談を踏まえまして、私たち待望の戦略核の五〇%削減、その見通しについてはどういうふうなお考えをお持ちでしょう。
  72. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) これはもう既に双方が公にいたしておりまするとおり、INF全廃の次には、レーガン大統領が続いてモスクワに行ってそして戦略核五〇%の削減をする、こういうふうに言っております。先ほどの松前委員の御質問にお答えいたしましたとおり、両国の責任者が私との会談におきましてそういうふうに申しておりますので、私も、成功をお祈りいたします、世界じゅうが成功をお祈りいたします、御努力に対しましては敬意を表します、こういうふうに言ってあります。
  73. 黒柳明

    黒柳明君 話し合いのことですから、先般のあれのように寸前のところで調印がひっくり返るということもありましたから、INFについてはそんなことはないと思いますけれども、五〇%の核交渉の方についてはいろいろ問題があるかと思います。  日本米ソ核戦略の中で、言うならば揺れてきたというか、国会でいろいろな問題が提起されたというか、横須賀の第七艦隊の母港化にしても三沢のF16の配置にしても、アメリカとしては当然ソ連の核に対する対抗手段である、これはもう明白であるわけでありますが、ソ連アメリカも軍備拡大、核の拡大についての経済問題が国内にあるからこそペレストロイカであり、あるいはアメリカの赤字財政の削減と申しますか、議会ではやっきになっているわけであります。そうなりますと、米ソのこれからの中期的戦略というのは変わらざるを得ない、当然変わってくるんじゃないか、こう思います。  今大臣おっしゃったように、もし来年五〇%の戦略核削減まで至れば、さらにその後の話し合いというものは、当然これでよしとするわけではないんじゃないかと思います。そうすると、今の核中心にしての米ソの戦略が変わってくるんじゃないか、また変わらざるを得ないんじゃなかろうか、こういう感じもしますが、五〇%の核戦略の方は、私は来年モスクワでこれができるかどうかはまだ未知数の点があるとは思うんです、大臣は非常に確信持っておっしゃっておりますけれども。それを踏まえまして、今後の米ソというか、核中心の国際情勢というか、そういうものが変化するんじゃないか、変化せざるを得ないんじゃないか、こういうふうに思うんですが、大臣見通しいかがでしょうか。
  74. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 先ほど、今回のINF核軍縮第一歩である、こういう評価を払いたしました。同時にまた、ヨーロッパ等々の声は、既に黒柳委員も御承知のとおりに、果たしておれたちは大丈夫か、こういうふうな声も出ております。一概にして言うならば、戦後四十年間本当に大きな戦争が避け得られたのは核という抑止力があったからである、こういうことも言われております。  いろいろそれに対する見方もございましょう。しかしながら一つ抑止力であったということは事実である。したがいまして、今後はそうした抑止力を維持しつつ核軍縮というものが行われていくということは私たちはやはり評価しなくちゃいかぬ。けれども、今申し上げましたように、軍備そのものから考えますと、そのほかにも、地上においては果たして米ソはどのようなバランスを保っておるのであろうか、どちらが優位なのであろうかとか、あるいは化学兵器がどうなるのであろうか等々考えてまいりますと、やはりそうした面における今後一つ世界の新しい展開等々も私たち米ソ間においても考えられておるだろうと、こう思っておる次第であります。  したがいまして、今回は、お互いに金がかかるミサイルをつくって、弾頭をつくって、同時にまたその分解自体にも金がかかる、およそ何か我々としてもはかないことをやってきたんだなというふうな一つの反省と申しましょうか、あるいは世界の平和に対する声にこたえるためと申しましょうか、そうしたことで両国がこのような挙に出られたことは私はいいことだと思います。したがいまして、今後の大きな課題は、核というものが今後どのようになっていくかという問題は我々といたしましても関心を持って見詰める必要がある、こういうふうに考えております。
  75. 黒柳明

    黒柳明君 NBCとの対談でゴルバチョフ書記長がSDIのことを言っていましたですね。当然アメリカでやっているような研究はうちもやっていると。前からスターウオーズはソ連もやっているんじゃなかろうかということでありましたが。ただし、その配備、実験、開発は当然これはもうABM条約に違反する、こんなこともおっしゃっていましたですね。  あのテレビでお聞きになったか、あるいは新聞でお読みになったか、あのゴルバチョフ書記長のSDI問題の発言をお聞きなって、大臣はどのような感じをお持ちだったですか。
  76. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) SDIに関しましては、ゴルバチョフ書記長も前回いろいろと意見を申しておられましたが、今回はさほど、それを条件とするとせっかくの大きな合意がつぶれてしまう、こういう気持ちがありありと見えております。したがいまして、そうした見解で今回はソ連も臨まれるんだなと、こう思っております。
  77. 黒柳明

    黒柳明君 日本政府はABM条約についてはどうなんですか。研究は結構だ、配備あたりまでいくと違反だというような……。
  78. 遠藤實

    政府委員(遠藤實君) 御承知のように、ABM協定米ソ二国間の協定でございますので、第三国である日本が有権的な解釈をするわけにはまいりませんけれども、いずれにいたしましても、御承知のように、アメリカの中におきましても、行政府は当然いわゆる広い解釈が法律的には妥当である、地方議会等におきましてはこれは狭い解釈でなきゃいかぬ、こういう論争があることは御承知のとおりでございます。ただ、いずれにいたしましても、狭い解釈、広い解釈、いずれをとりましても研究については制限は何ら付されていないということで了解しております。
  79. 黒柳明

    黒柳明君 日本もSDIの研究に協力するわけですからね。そういう観点で、ABM条約は二国間条約ですから、それについてコメント云々、深入りする必要もないし、するような権限もありませんけれども、アメリカのSDI研究にはコミットするわけです。そういう意味で、今おっしゃったように、ソ連アメリカと解釈が非常に違う、狭義あり広義あり。あるいはアメリカの議会筋、政府筋の中でも解釈が違う。しかも、今回はゴルバチョフは、これはもう国内の情勢なのか事情なのか、SDIについては論議しない。先般の二の舞をするからでしょうね。ABM条約についてだけ問題にするんだ、こういうことであります。  ですから、日本政府がこれについて立ち入ることができない分野でありますけれども、しかし解釈が違う。そうなると、米ソ間で今後戦略核についてあるいは核についてこれからどう発展するかわかりませんけれども、SDIの研究あるいは開発、実験、配備ということは、これはアメリカとしては既定の事実なわけですよ。レーガン大統領は断固として譲らない、こう言っているわけですね。  ここで今までの憶測みたいなものがゴルバチョフ発言ではっきりしてきたわけであります。研究はソ連もやっている。ですけど配備なんかABM条約違反だと、実験、開発だってとんでもないことなんだ。片やレーガン、アメリカの首脳の方はこれはもう配備までやるんだと。そういう中で日本政府民間を含めて研究にコミットする、こういうことになると、この米ソのせっかくの、片っ方では大臣おっしゃったように核軍縮の世紀の一歩をしるし、やがてその第二歩をしるすにもかかわらず、相変わらず日本がそういう米ソ核戦略の中に引きずられてコミットしなきゃならないということにもなるんじゃないでしょうか。  そういう意味を含めて、ABM条約の今言ったような四つの段階についてどのようにお考えですかと、こう質問したつもりなんです。
  80. 斉藤邦彦

    政府委員(斉藤邦彦君) いわゆるSDI計画に対する日本の参加というのは、これは累次国会等でも明らかにしておりますとおり、SDIという研究計画に対する参加でございます。  SDIの将来の計画、開発、配備の段階に至りました場合、これがABM条約上合法かどうかという点につきましては、ただいま黒柳委員御指摘のとおり、米国の中にも意見の相違がございますし、米ソ間でも意見の相違がございます。しかしながら、いずれにいたしましても、我が国が参加を決定いたしましたのは研究段階に対するものでございますので、この点に関しまして、すなわちSDIの研究そのものはABM条約の違反ではないという点に関しましては、これは意見の相違がない次第でございます。したがいまして、ただいま御指摘のような問題点というのはないと考えていいのではないかと存じます。
  81. 黒柳明

    黒柳明君 明瞭ですね、今の局長の答弁で。  ただ、現実アメリカへ行きまして、それでペンタゴンから、SDIの開発局長に説明を聞きますと、やっぱり四つ同時並行してやっている、研究所が。もういろんなところでいろんな研究をしていますよね、これは私言うまでもなく。こっちの研究所はこれやっている、こっちの研究所はこれやっている、もういろんな研究していますよ。一カ所で単独な、特定な研究しているんじゃないんですね。まあ配備という言葉がいいかどうかわかりませんけれども、最終段階も考えて、もう各所で、何カ所という研究所でいろんな段階の研究をやっている、こういうことです。ですから、それは全部向こうとしては研究段階だなんということを考えてないんです。開発でもあり、あるいは実験でもあり、やがては配備に行く段階、あるいはその間近であるということも考えながら、あらゆる方向から研究しているんです。  局長が今おっしゃった、研究段階において今コミットしているんだ、だからこれはソ連あるいはアメリカ内部の幾多の見解の違いについては我々は大丈夫なんだ、研究段階だ、今こう言っているけれども、この次に立つと変わってくるよ。ちょっと今の発言は何だか僕心配だな、質問する側にとって。研究段階だけでコミットしているんだ、そのほかは絶対コミットしない、大丈夫ですか。そうすると、あのころ言われたんだけれども、研究とか開発――配備はこれ別ですよ、研究、開発、どこで区別をつけるかというのは前にいろいろ論議されたんですよ。今の斉藤さんの、研究だから大丈夫、だから米ソあるいはアメリカ国内のいろんな意見については研究だけならいいんだ、我が国はそこだけなんだ、だから安心ですということで大丈夫ですか。その次の開発ということが明瞭になったとき、これは完全に手を引くんですか。そうすると、研究段階におけるいろんな技術問題等は、開発段階に行ったときはどうなるんですか。  今この質問をするんじゃないんで、ほかの質問があるんですけれども、ちょっと今の局長の答弁というのは何か危ないけれども、大丈夫ですか、北米局長
  82. 藤井宏昭

    政府委員藤井宏昭君) ただいまの委員の御質問でございますけれども、昨年の九月九日の官房長官談話において、これが我が国のいわゆるSJI参加に関する官房長官談話でございますけれども、非常に明確に、SDIは研究計画であって、我が国はその研究計画に参加するということ、それから第二点は、研究計画に参加するということは我が国民間が主として参加をするわけでございますけれども、その参加をしやすくする、そういうことだということを明確にしておるわけでございます。  したがいまして、その後アメリカ日本の間でいろいろ交渉いたしまして、SDI研究計画に関する参加に関しまして取り決めを結んだわけでございますが、その取り決めに基づきまして日本政府としては、我が民間がSDI研究計画に参加する場合には、それに対しましていろいろな援助あるいはその過程を了知することになるわけでございます。その過程におきまして、SDI研究に対する参加であるという我が国の官房長官談話に示されました方針は貫徹されるというふうに信じて疑わないものでございます。
  83. 黒柳明

    黒柳明君 私は聞く方ですから、今の北米局長の話をもう信じて疑わない、こう言わざるを得ないのであって、疑いが出てきたときにはまたそのとき質問しますから、今のところは信じて疑わないと私も言うよりほかないと思います。  それから、時間ありませんものですから、これから総理がアメリカへ行くに当たって、何か活字が先行しているのかどうかわかりませんけれども、在日米軍駐留費の経費の軽減の問題、これはどうなんでしょうか。やっぱり総理が訪米するときまでには決着つけなきゃならないという外務大臣のお考えでしょうか。
  84. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) そういうふうにまだ日限を限って私たち考えておりません。
  85. 黒柳明

    黒柳明君 わかりました。活字で私たち非常にいろんな資料、材料を提供されるものですから、そういうようなことが多いものですから。  そうすると、外務大臣としては、十月七日ですか、政府・与党会議で決めたのが。ともかくアメリカ政府日本政府で話し合おう。いずれにせよ何か軽減しよう、負担しようということは決めたと。その話し合いというのはもう逐次やっているわけですか、あるいはいつか時を決めてやろうと申し入れるんですか。まだ政府内部の意見が固まらないから、両国政府間の話し合いはこれからだと。そうすると、政府あるいは政府・与党の話し合いというのはいつごろまでに決めたらいいのか、そこらあたり、局長
  86. 藤井宏昭

    政府委員藤井宏昭君) 本件につきましては、ただいま御指摘になりました十月七日の政府・与党首脳会議におきまして、政府方針というものに「なおこということで、「適切な対象について在日米軍経費の軽減の方途について米国協議を行う。」ということが記されておりまして、これを受けまして、理内閣になりましてからも政府部内で検討を続けております。現在、外務省は鋭意検討を事務的に行っておりまして、防衛庁と内々の話し合いに入っておりますけれども、その段階でございまして、ただいま大臣が御指摘になりましたように、いつまでにどういうふうにするかという方向が出ておるわけではございません。  なお、この「米国協議を行う。」云々につきまして、米国との協議というものは、当然日本政府の態度を決めてからでなければ米国との協議を開始できないわけでございます。
  87. 黒柳明

    黒柳明君 検討されているパターンというんですか、これも活字によって私たち啓発されているんですけれども、日本人従業員の本給を肩がわりしたらどうか、そうなると地位協定の変更、そうなるとうるさいだろう、いろいろ出ていますですね、憶測みたいな、解説みたいなのが。検討する段階においてどんなパターンが考えられるんですか。
  88. 藤井宏昭

    政府委員藤井宏昭君) 先ほど内閣委員会でも同様の趣旨の御質問がございまして、その際にも総理その他政府側から答弁ございましたけれども、現在まだ事務的な検討段階にございます。  いろいろな角度からいろんなことを検討しておりますけれども、いまだ事務レベルにおきましても、外務省と防衛庁の間で、あるいは財政当局との間で意見が一致したというようなことではございませんので、まだその前の段階の検討段階なわけでございますので、どのようなパターンであるとか、あるいはどのような方向であるとか、そういうことが残念ながら申し上げられない段階でございますので、御了承願いたいと思います。
  89. 黒柳明

    黒柳明君 そうすると、予算編成にも当然間に合わないですね、もうあと幾日もない。宮澤大蔵大臣が一週間ぐらい前がな、今回の予算の中に入らないだろうなんて言っていましたけれども、これはもう完全にだめですか。そこには何とか入れたいですか、間に合うように。
  90. 藤井宏昭

    政府委員藤井宏昭君) 来年度予算の編成との関係、あるいはその来年度予算の編成の際にいろいろな話し合いが行われるというようなてと、その辺を含めまして全く現在検討の段階にあるということでございます。
  91. 黒柳明

    黒柳明君 ただ、その予算の編成、あるいは来年の総理の訪米あたりは局長の頭の中に入れながら検討しているということは間違いないんでしょうか。
  92. 藤井宏昭

    政府委員藤井宏昭君) 当然、鋭意検討しているわけでございますから、できるだけ早く検討結果ができることを事務レベルとしては期待しておりますけれども、ただいま大臣がおっしゃいましたように、特定の期日を念頭に入れてそれまでにどうしてもということでやっているわけではないということでございました。
  93. 黒柳明

    黒柳明君 大臣、最後はやっぱり大臣なり総理なりの政治的決断というものは当然出てこざるを得ないと思いますね。  増額することについては、これはGNP一%突破、さらにはこれが枠外であるのか、地位協定を変更するのか、特別立法にするのか、これは全くわからない。いずれにせよ増額ということは決めたわけですから、それについて私たちがああ結構と言うかどうか、それは疑問ですね。けしからぬという声の方がまず多いんじゃないか、こう思うんです。  大臣としてはどうなんですか。いろいろ事務レベルで検討はしているという最中ですけれども、地位協定の変更とか、あるいは先般の日本人従業員の手当を特別立法でやった、こういうことについては非常に今回はやりにくい。そうなると、今の思いやりですね、思いやりあたりが一番うまくやれるのか、こんなことですけれども、これはもう大臣は一番の当事者ですから、事務当局で検討している立場と当然違うわけですよ。もう大臣なりにある意味での構想があるわけですね。これは臨時国会で各党全部間接税以上に在日米軍の経費の問題については取り上げて本会議で言ってますね。通常国会においては、決まる後か決まる前が、ここはわかりませんけれども、大きな問題になることは間違いありませんね。予算編成の中で防衛費との関係でまた大きな問題になる。そうなると、当然事務レベルでは早急に決めなきゃと一生懸命やっているわけでありますが、一番の責任者の大臣としての構想なり――こうしょうという構想じゃありませんよ、こうやればこうなって、こうすればこうやるだろう、こうすれば公明党だけはうるさくないだろう、社会党、共産はうるさいけれどもとか、いろんなあれもあるでしょうね。そこらあたり大臣はどういう考えをお持ち合わせですか。
  94. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 一般に私は申し上げておるんですが、今日の情勢を考えた場合に、在日米軍の経費に関しましては、常に我々といたしましては慎重な配慮をしてあげることが必要だと思っております。  それを具体的に、今黒柳委員もおっしゃるように、どういう形でやるんだ、また額はどうなんだということをやはり事務局同士が話し合わなければならないのではないかというので、現在は外務省と防衛庁がいろいろと話し合っている最中です。したがいまして、私といたしましてもそうした経緯を踏まえてあるいは決断することがなければならないと思いましょうけれども、まだその段階に至っておらぬのですよ。したがいまして、地位協定を直すんだとか、いや特別協定でやるんだとか、思いやりだとか、幾らだとか、そういうことは全く今白紙でございますので、その点だけは御理解賜りたいと思います。
  95. 黒柳明

    黒柳明君 思いやり予算、これが五十五年からの八年間で三十五億から大体一千億になっているんですけれども、思いやり予算というのは、日米政府間の当事者で、失礼ですが大臣は余り細かいことは御存じじゃないと思うんですけれども、あのいわゆる長い国会の、大平内閣からずっと論議されてきているんですが、思いやり予算というのは限度というのはないんですか。文字どおり思いやりなんですか。  先ほど大臣が、ペルシャ湾については軍事面じゃなくて非軍事面での協力であると。イランに対しても、船の安全について日本政府がこれからつくるこういうものを使ったっていいんだと、非常に配慮されているわけですね、これは今戦争をやっているところですから。ですけれども、在日米軍は直接今日本本土からベトナムに行くわけじゃありませんし、直接戦争に加担しているわけじゃないわけですが、大きい意味においては、やっぱりアメリカが絶えず世界じゅうの通常戦争の裏に見え隠れしていることは間違いないわけであります。そうすると、思いやりというのはあくまでも在日米軍、アメリカの財政不如意というものについて日本が応分の負担をするんだと、こういうことで文字どおり思いやり、何でも使えるんだという見解に立ちますか。あるいは思いやり予算というのは限度があるというふうな考えがありますか。どうでしょう、その思いや力というのは。  ということは、もしかすると、今おっしゃったように、今白紙ですから、この在日米軍の軽減の負担をどういうお金でやるかわかりませんね。日本人の従業員の本給でやるのかどうかわからない。思いやりというのは、今までずっと思いやりでつかみ取りしてきましたから、こちらにいく可能性も強いわけですよ。ですから、ちょっとそこらあたり今先行してお聞きしたいということなんですが、思いやりの限度というのはあるんですか。
  96. 斉藤邦彦

    政府委員(斉藤邦彦君) 思いやり予算という言葉は二つの意味で使われているように思われます。  一つは、日本側が米軍の施設等を提供する際、米軍の経済状況等を考えでできるだけ多く日本側が負担しようという考えから出てきている予算でございます。もう一つは、同じような背景でございますけれども、米軍従業員の手当の一部を、これは昭和五十三年度、五十四年度に行った措置でございますけれども、地位協定二十四条の範囲内で日本側が負担しようということで負担した予算というのがございます。  後者につきましては、当時から明らかにしておりますとおり、地位協定第二十四条の範囲内で日本側が負担できる労務費はもはやこれが限度であるということを御説明しておりますので、その意味でこれ以上の負担というのはできないというのが政府考え方でございます。他方、施設の方につきましては、これは地位協定原則として日本側が負担するという考え方に立っておりますので、そういう意味で、法律的な限度というのは存在いたしませんけれども、当然のことながら、実態を踏まえた上でのおのずと定まるべき限度というのはあるんだろうと考えます。
  97. 黒柳明

    黒柳明君 そうですね。当然おのずと。何でもかんでもというわけにはいかないと思いますよね。というのは、五十五年は、米軍の隊舎、兵舎のリロケーション、これだけに限るんじゃないかという問題で大平内閣から始まったわけですからね。そのとき三十五億です。  ゴルフ場のネットあるいはボウリング場、そういう娯楽施設にこれを思いやり予算で、日本国民の税金でアメリカ側に提供する、こういう問題についてはどういうふうに判断しますか。おのずからやっぱり限度があると思うんですよ、線を引かなきゃならないという。これは従来からもそういうことなんだ。だけど、そういう問題に使われているとするとこれはどうですかね、娯楽遊技施設。隣で自衛隊は、プールどころか、野球場どころか、何にもないところで一生懸命頑張っているんですよ。アメリカの方は広大なところで、もう非常に優雅なところで、ゴルフ場はある、プールはある。これはもうしようがないですね、日米間の相違ですから。しかも、アメリカの予算でつくるんならいいけれども、日本国民の税金で、いわゆる思いやりというものでネットをつくったりボウリング場をつくったりすると、隣の自衛隊が、おれたちにこそ思いやりしてくれないか、なぜ日本政府アメリカにあんなに思いやりするのかと。  その限度というのはどう考えますか、条約局長
  98. 斉藤邦彦

    政府委員(斉藤邦彦君) 先ほど私が申し上げましたのは、施設の方に関しましては、法律上ここまででなければならないという限度はないということを申し上げたつもりでございます。  他方、具体的に日本側が何を負担すべきかという点につきましては、これは個々の具体的なケースに沿って判断されるべきものでございますので、ただいま御指摘のようなケースにつきましても、これはその都度その具体的なケースに沿って適当かどうかという判断を下すしか方法がないのではないかというふうに考えます。
  99. 黒柳明

    黒柳明君 そうすると、あくまでも日本政府の主体的な判断によるということですね、使い道は。要するに、日本政府がいいとなれはあの野球の夜間照明もあるいはバックネットもつくっても結構と、そのときそのとき、こうなるわけですか。
  100. 藤井宏昭

    政府委員藤井宏昭君) ただいま条約局長から御説明ございましたとおりの法律関係でございまして、要するに、委員御存じのとおり、地位協定二十四条と地位協定三条、その両方から見まして、施設、区域につきましては法的に、まあ一義的には日本でございますけれども、アメリカも三条の管轄権の範囲内でいろいろな施設、区域が付加できるということでございますので、日本が負担すべきところ、アメリカが負担すべきところというものは法的に明確に決まっているわけではございません。しかし、日本政府は施設、区域の提供に当たりまして、安保条約の目的達成との関係、それから我が方の財政負担との関係、それから社会経済的影響などを総合的に勘案しまして、個々の事案に即しまして自主的判断に基づきまして提供すべきものを提供するということは従来からの方針でございまして、そのように対処してきているわけでございます。  ただいまの御指摘の案件でございますけれども、案件と申しますか、例えば娯楽施設はどうかということでございますが、これも今申しました基準から判断すべきものでございまして、それも個々の具体的事案に即しまして判断さるべきものでございますので、一般的に娯楽施設がどうであるというようなことは言いかねるのではないかと思います。御指摘のように、自衛隊におきましてはこのようになっているのにアメリカはこうではないかというような議論も間々ございますし、しかしアメリカの軍隊といたしましてはこれが普通でおる、いろいろな側面もあるわけでございます。したがいまして、娯楽施設であるがゆえにこれは日本が負担すべきでないということは一概に言えないと思いますけれども、個々の事案に即しまして先ほどの評価の基準に従いまして決定していくということでございます。
  101. 黒柳明

    黒柳明君 局長、現場を一回見てみたらわかる。幾らアメリカの兵隊さんだって、百円のゲームをがちゃがちゃやるというのはちょっとこれはどうかと思いますよ。まあこれはまた後で、細かい問題で、きょうここまで行くつもりなかった。ちょっと時間があったからあれしたんでね。  以上です。
  102. 立木洋

    立木洋君 最初漁業協定の問題について質問いたしたいと思います。  今度の協定の中には、アメリカ側流の二百海里内の魚類や資源についての主権的権利、排他的経済水域というふうな表現が入れられております。これは、先ほど説明がありました八三年三月十日の排他的経済水域に関するアメリカの大統領の宣言、これに基づくものであるということですが、日本政府も既に署名をした新しい海洋法条約、ここで述べられている、つまり第五章には排他的経済水域というのがありますが、この概念と全く同じものなのかどうなのか。日米漁業協定で盛り込まれた排他的経済水域という概念が、新海洋法条約で述べられている排他的経済水域というものと全く同じなのか、部分的でも違うものがあるのか、もしか若干でも相違があるならば、それはどういう相違があるのか、まずその点をお尋ねしたいと思います。
  103. 柳井俊二

    政府委員(柳井俊二君) お答え申し上げます。  ただいま御指摘の経済水域に関する問題でございますが、一九八三年にアメリカ大統領宣言によりまして排他的経済水域を宣言したわけでございます。  御承知のとおり、現行の日米漁業協定締結されました一九八二年の段階におきましては、アメリカの二百海里は漁業保存水域ということでございまして、そこにおきましてアメリカは沿岸国として排他的漁業管理権を有するというものであったわけでございます。いわゆるマグナソン法におきまして、昨年すなわち、一九八六年に至りまして、この排他的経済水域大統領宣言を取り入れまして、そのための改正を行ったわけでございます。ただ、このマグナソン法は御承知のとおり漁業関係の法律でございますので、漁業以外の問題につきましては取り扱っておらないわけでございます。一九八三年のアメリカ大統領宣言におきましては、海洋法会議から出てまいりました排他的経済水域の概念を取り入れておりますが、その主たる目的は、漁業というよりはむしろ鉱物資源等のその他の経済活動を取り入れるというところにあったものと思います。  したがいまして、マグナソン法が昨年改正になりまして経済水域という表現にはなりましたけれども、漁業に関する限りは、アメリカの二百海里水域におけも管轄権、あるいは今度は主権的権利という概念も導入されましたけれども、その権利の内容においては特に変わりはないというふうに承知しております。  また、海洋法条約に規定されております排他的経済水域アメリカ大統領宣言におきまして設定した排他的経済水域との間にどのような差異、あるいは同じ概念がどうかという点につきましては、基本的には、アメリカの宣言というものは海洋法条約の排他的経済水域の概念を取り入れたものであるというふうに考えております。多少細かいところになりますと違いはあるかもしれませんけれども、基本的には同じ考え方というふうに考えております。
  104. 立木洋

    立木洋君 アメリカは今度の新しい海洋法条約についてはまだ署名をしていないわけですね。百五十九カ国署名したと言われている中で数少ない署名をしていない国であります。これは今言われたような、結局深海底における資源の開発などの問題が絡んで賛成していないというふうに見られているわけですが、しかし、こういう排他的経済水域というアメリカにとって利用できるものについては盛り込んで、そしてそれを条約化して既成事実化していく。しかし、実際には今新しい海洋法条約については賛成しないというふうなことで、今後の海洋秩序のあり方について、日本政府としてはそういうアメリカ側の態度にどういう判断をお持ちになっているのか。そこらあたりはどうなんでしょうか。
  105. 柳井俊二

    政府委員(柳井俊二君) アメリカ署名しなかった理由につきましては、ただいま先生御指摘のとおりでございまして、アメリカとしてはこの新海洋法条約の中の特に深海海底の制度について異論があるということだったわけでございます。他方、それ以外の問題につきましては、特にアメリカとしても異論はないという考え方に立っているものと思われます。特に、それ以外の問題の一つでございますところの排他的経済水域につきましては、現在既に非常に多くの国がこのような水域を設定しておりまして、海洋法条約はいまだ発効してはおりませんけれども、国際社会全体の中で排他的経済水域という制度が一つの一般国際法上の制度として確立する方向にあるということもまた現実であろうと思います。  そのような中にあって、アメリカとしてもこの排他的経済水域の宣言を決定するに至ったものというふうに考えております。
  106. 立木洋

    立木洋君 どうも余りはっきりしない答弁なんですが、今度の第一条の目的のところに書かれてある点からいいますと、「両国政府が相互に関心を有する漁業における効果的な保存、合理的な管理及び最適生産の達成を促進すること、」、これは当然のことだと思うんですね。海洋秩序の内容から見ても当然のことだろうと思うんですが、「合衆国の水産業の迅速かつ十分な発展を容易にすること」というふうなことが入れられたのはどうして入れられたのか。  これは、いろいろ他の沿岸国での漁業を行う場合の協定等を見ましても、こういうふうな条項が盛り込んでいるというのは余り見当たらないと思うんです。もちろん、魚をとらしてもらうかわりにということになるのかもしれませんけれども、こういうふうなことを明文で明記すると、今後の漁業交渉などにおいてはますます日本側としてはやりにくくなるんじゃないかと思うんですが。
  107. 柳井俊二

    政府委員(柳井俊二君) ただいまお触れになりましたこの協定の目的の中で、「合衆国の水産業の迅速かつ十分な発展を容易にする」という表現が入りましたことにつきましては、この日米漁業協定が基本的には我が国国民及び漁船のアメリカの沖合における操業、漁獲について規定するものであるという前提に立ちまして、また現行の協定におきましても、合意議事録というのがございますけれども、その四項におきまして、現行協定第五条の漁獲割り当て決定の際の各種考慮要件に触れておりますが、これに関しまして、合衆国の水産業の迅速かつ十分な発展というものがアメリカ経済にとって重要であり、この発展について我が国の協力を重視しているということが記述されているわけでございます。したがいまして、既に現行の協定におきましてもこのような考え方というものはあったわけでございまして、今回の改正におきましてはこれを協定の本文において確認するということにした次第でございます。  他方、この協定の目的ということにつきましては、アメリカ側につきましてこのような文言を入れますと同時に、我が国としては、我が国が伝統的にアメリカ地先沖合漁業において占めてきた割合等につきましてアメリカ側の理解を求めまして、その結果、今回の改正におきまして、我が国漁業が継続されるための原則及び手続について共通の理解を確立することということも目的の一つとして記述することにしたわけでございます。したがいまして、この協定の目的の改正というとこうで、いわばアメリカ側の関心と我が方の関心と両方書きまして一つバランスをとったわけでございます。確かにこのようなことを直接書いた先例というのは私承知する限り余りないと思います。関連のことを書いた先例がないわけではございませんけれども、そのような先例が少ないというのは事実でございます。  いずれにいたしましても、一般論として申し上げますと、漁業に関する限りは二百海里水域におきまして沿岸国の管轄権が既に確立しているという今日におきましては、なかなかその環境が厳しくなっているということは言えると思います。
  108. 立木洋

    立木洋君 結局、向こうから強く要望されてこういう項目が入れられた、そしてそれに見合うようにこちらとしても漁獲の保証ですね、漁獲が継続されるための原則云々ということを入れざるを得なかったということが私は経緯だろうと思いますね。  問題は、なぜこういうふうな一般的にないものが入れられてくるのかという問題について言えば、例えば第五条、これは五十七年協定で初めて、アメリカの水産物の対日輸出についてアメリカにどの程度協力するかということによって漁獲量が決められるということは五十二年の協定にはなかったんですよね。これが五十七年の協定に入れられた。今回これを見ますと、もっと言うならば、ここではアメリカが割り当てを要請している魚類あるいは加工品、こういうふうにまでさらに詰められてきたわけですね。アメリカ側が買えというものを買わないといけない。その量をどれだけ買うかということによってどれだけ魚をとらすか決めてやるんだ、こういう条項にまでなってきているんです。よりこれは厳しい内容になっているんですよ。  これは第五条のそこの問題だけじゃなくて、海洋法条約の第六十二条で、自国排他的経済水域における漁獲の問題を考慮する場合に、つまり常習的に漁獲を行っている国の経済的な混乱を最小限にとどめなければならないというのがあるんですね、この新海洋法条約の中には。この概念というのは五十二年のアメリカとの漁業協定の中にはあったんですよ。それも取られてしまった。  いただいた資料の内容を見てみますと、その点では、日米漁業協定が始まった一九七七年から一九八四年あたりぐらいまでは大体百二十万トンから百三十万トン、多少の上下はありますけれども大差がないんですね。ところがこの三年間これは急激に減ってきているんです。つまり、漁獲を行う側の経済的な混乱を最小限にとどめる必要があるという条項が五十七年協定でなくなってからこういうふうに日本側の漁獲の量というのは急激に狭められてきている、少なくなってきている。九十万トンから四十七万トン、十万トン、来年どうなるか。なかなかこれは難しい状態になってきているわけですね。そういうふうに明確になっているにもかかわらず、日本側として経済的な混乱を最小限にとどめるというふうな条項すら五十七年協定ではなくなってしまった。  こういう全体の推移を見てきますと、やはりどうしてもアメリカとの漁業交渉のやり方というのは、アメリカの強力な主張を受け入れるという形で終始してきたという状況がこの交渉経過にあらわれているんじゃないかと思います。だから、今後の日米間の漁業交渉というのはますます自分で自分の首を絞めるように難しくなってくるというふうな形になっているんじゃないかと思うんですけれども、参加されておってどういう印象ですか。
  109. 佐竹五六

    政府委員(佐竹五六君) 御指摘のような事実は確かにあるわけでございます。  これが何に由来するかということでございますが、要は、日本の漁船が一方的にアメリカの二百海里内で操業している、アメリカの漁船は日本の二百海里内で全然漁獲してない。しかも、アメリカの二百海里内で操業したいという漁船は非常にたくさんある、例えば韓国、ポーランド、いろいろあるわけでございます。こういうような実態的な漁業関係の違いから御指摘のような現象が出るわけでございます。特にこの五条の二項につきましてはまことにいろいろ問題のある条文であるということは御指摘のとおりでございます。  これは、一応の考え方とすれば、アメリカ自国にまず二百海里内の許容漁獲量を決めて、そしてその中から自国で使う分をまず優先的に割り当てる。残った分を各国に割り当てて、各国の協力の程度あるいは実績の程度に応じて配分するということで、日本は七割ぐらい、外国に割り当てられたうちでは七割は確保しているわけでございますけれども、その場合に、アメリカが自分のところで利用していない資源というのは、要は輸出市場がないからである。つまり、外国が優先的に買うならばそれはアメリカの漁民がとるであろう、したがって自国の利用が十分にいく、こういう発想でございまして、確かに一方的な規定であるとおっしゃればそのとおりでございますが、先ほど申し上げましたような実態的な関係があるものでございますので、私どももやむを得ずこのような協定を認めたわけでございます。
  110. 立木洋

    立木洋君 一方的な主張が取り入れられているということは事実として認められたわけですが、二百海里の排他的経済水域世界の大勢になっている、これは条約が効力が発効していないにかかわらずそういう状況になっている、また日本が一方的に漁獲を求めなければならないという状況にある、そういう実態というのは決してわからないわけじゃないんです。  しかし、外交交渉を行う場合には、相手のことはもちろん、どう主張するか、相手の立場によってそれは主張はあるわけですが、こちらのこともやっぱり主張し、そして条約をつくる上では、ますます自分たちが引け目を感じた、そういう相手に追随するような形で外交をやっていくというようなことだけはやめた方がいいと思うんですよ。これは日本アメリカとの漁業協定だけでなくして、原子力協定の場合も航空協定の場合も、いろんな場合でも、日本側が一方的に受け入れざるを得ない条項というのはいろいろあるわけですから、だから私たちはこういう点では今後のあり方の問題としてきちっと主張すべきことは主張する。外務大臣は、主張すべきことは主張するというふうなことを言われているわけですから、今後の外交の姿勢のあり方としては、そういうことを特に私はこの問題に関連して強調して指摘しておきたいと思います。  それから今度は、大臣にきょう私は初めてお伺いするんですが、ほかの同僚議員もいろいろ聞いていますけれども、INF、この問題が核廃絶の第一歩として歓迎するという趣旨のことを述べられたわけです。ですから、世界の大勢としてこれが核軍縮の方にいく、あるいはいろいろな問題が今後とも生じないということはないでしょうけれども、さらに引き続いて戦略核の五〇%削減等々も問題になり得る、大臣も大体見通しとしてはそういうふうになるだろうということです。だとするならば、例えば日本の場合には唯一の被爆国ですから、核軍縮を進めていく中で日本がどういう努力をするのか、日本としてどうするのかという問題があると思うんです。  例えば、極東に配備されたSS20の問題だとかというのは前々から大分議論されました。その対抗措置としていろいろな問題が問題になり得るんだということさえ言われたこともあったんですね。ところが、極東に配備されたINFも全廃ですから、もちろんこれは一分野に限っての核ですけれども、それが全廃されるということに対しては一体どう考えるのか。日本の今の状態、アメリカに依然として核抑止力に依存している状態があるわけですね、こういう状態がいつまでもこういうふうな状態でいいと思うのかどうか。例えばF16を三沢に配備している。もう五十機配備されましたね。あれは核攻撃用の戦略戦闘機であるというふうにされている。こういう問題。これはただ単に三沢だけの問題でなくして、いろいろな基地等々をとってみても、アメリカ核戦略、核戦力を補完する形で日本の基地というのはある、これは明確です。これは核があるかないかということはここでは議論は別としてですよ。  だから、そういう問題全体についての今後の日本のあり方の問題、いわゆるそういうアメリカ核抑止力にいつまでも依存するような状態というのは少なくとも改めていくべきではないか。今の核軍縮方向世界の大勢がいくならば、日本としてもその核軍縮を進める方向に積極的に進んでいくという努力を行うべきではないだろうかというふうに思うんです。この点では、来年の五月にSSDⅢが開催されるということが決まっておりますね、国連軍縮特別総会が開催される。日本としてもこれに臨む方針というのは当然検討されなければならない。  そういうもろもろの世界の動き、流れを考えてみて、今までのようなあり方で果たしていいのかどうなのか、こういう問題を、最初なものですから、きょうまず大臣からそれについての若干具体的なお考えを開いておきたいというふうに思うんですが、いかがでしょうか。
  111. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) INF評価に関しましては先ほど来申し述べました。特にこのINF合意のためには、私たちも西側の陣営でございますから、アメリカに協力して大いに頑張りなさいよと言っていることは事実でございます。なおかつ、私たちアジア・太平洋の一員でございますからアジア・太平洋のことを常に忘れてはならない、こういう頭もございます。  前にも話題になりましたが、前総理がサミットで、ヨーロッパのSS20は撤廃されるが、にもかかわらずアジアは残っておるじゃないかという問題がございまして、だからそれの抑止力としてアラスカにアメリカも当然そうしたものの対抗手段を持つべきだということを申されましたが、あれはあくまでもアジアというものを念頭に置いて言われた言葉でありまして、今回そうしたことも含めてINFで全廃ということになりましたので、めでたい限りだとは存じております。  日本といたしましては、やはり非核三原則というものは私たちは守っていかなければならぬ。このことに関しましては同盟国のアメリカにも、我々には非核三原則ありと、こう申しておるわけであります。また安保条約もございます。しかしながら、核が今日まで抑止力として戦争を未然に防いできたということも事実であります。  今回、その核軍縮第一歩は歓迎するけれども、まだ軍備管理という問題に関しましては、一般兵器の問題もございましょうし、化学兵器もあるし、いろいろあるじゃないか。そうした中におきまして、私たちが現在安保条約の体制下にあるというときにはアメリカのサイドに立って物を言うことは当然でございますけれども、我々といたしましても、常に平和、軍縮ということを一つのモットーとして外務省も動いているわけでございますから、いろんな機会にそういうことは我々としては主張すべきであろうと思っております。  今お尋ねの来年開催される第三回の国連軍縮特別総会では、日本がちょうど一般の部の全体委員会の副議長という立場でございますから、ここではいろいろと日本的な発言をしなければならないな、こう考えておりますが、今申し上げましたように、抑止力というものを維持しつつ、戦争がないように考えながら平和を目指すというふうな大きな筋というものがございますので、我々といたしましてはその筋を離れることなく、やはり平和を説き軍縮を説きたい、これが私たちの立場であります。
  112. 立木洋

    立木洋君 その点についてはさらに次回また引き続きいろいろお聞きしていきたいと思いますけれども、世界の大勢がこういう軍縮に向かい始める、そしてこれが核軍縮第一歩であるとして歓迎される。しかし、日本においてはアメリカとの日米安保条約があるんだからということで、軍備をアメリカに要求された限りふやしていくという現状があるんですね。だから、そういう世界の流れに逆行するようなあり方は少なくとも改めるべきだということを今後大いに議論したいと思うんです。現実に対してはやはりもっと、日本軍備拡張がやられている状態、アメリカ核戦略を補完する状況になっている日本の基地の状態等々にもっと率直にメスを入れるということがないと、本当に核軍縮を促進していく日本政府の姿勢とは言えないという点だけきょうは指摘をしておきたい。  次にまたいろいろとお尋ねすることにしたいと思います。
  113. 田英夫

    ○田英夫君 先ほどからお話がありますように、きょうはINF合意という劇的な米ソ首脳会談が行われますし、来週十六日には注目の韓国の大統領選挙がありますし、同じ十五、十六日には外務大臣も総理とともにマニラに行かれてASEAN首脳会議が行われる。こういうことで、伺いたいこと、議論をしたいことはたくさんあるわけでありますが、時間が大変限られておりますので……。  先ほどから同僚委員から出ていたことですが、大韓航空機の事件につきまして、女性の身柄をこちらからは要求しない、バーレーン政府側の判断にゆだねるということで既にお話がありましたが、現時点においては、この女性と大韓航空機事件とのかかわりというものは一切わかっていない。今わかっているのは、我が国の偽造旅券を持っていたということであって、犯罪的には日本の旅券法違反、偽造公文書行使というこの容疑であると思います。  大韓航空機事件に関与しているとすればこれはもちろん大変な犯罪でありますが、これは明らかになっていない。だから、今日ただいまの時点で身柄引き渡しを要求するとすれば、それは一に日本に第一義的な要求の権利がある。韓国には全くないと言っていいんじゃないでしょうか。もちろん、先ほどから大臣が言っておられるように、大勢の犠牲者が、犠牲者ともう思わざるを得ない時点ですが、そういう韓国の皆さんの心情を配慮されたということはよく理解できますけれども、にもかかわらず国と国との関係、また条約というものを背景にしたそういう国際間の約束事からすれば、現時点において身柄引き渡しを要求しない、放棄するということはいかがなものかと思うんですが、その点は大臣いかがでしょうか。
  114. 斉藤邦彦

    政府委員(斉藤邦彦君) 現時点において偽造旅券の作成という容疑が非常に濃厚である、したがって日本政府が引き渡しの要求の権利があるではないかという点は御指摘のとおりでございます。その点は法律上御指摘のとおりでございますが、先ほど来大臣が御答弁申し上げておりますとおり、韓国の事情その他諸般の状況を総合的に判断して、今の時点では身柄の要求をしないというのが日本政府の立場でございます。  他方、韓国政府がそれでは何を根拠に要求したのかという点でございますけれども、これは韓国政府とバーレーン政府との間の関係でございますので、第三国たる日本がとやかく言うことではございませんけれども、事件の性質にかんがみまして、韓国政府として当然のことながらこの事件及びこの女性の身柄に重大な関心を持ち、その結果として身柄の要求をして、バーレーン政府が仮にこれに応じたとすれば、これは日本政府が横からそれがおかしいというような文句をつけるべき筋合いではないというふうに考えておる次第でございます。
  115. 田英夫

    ○田英夫君 それはおかしいんでして、むしろ条約局長としては、条約、法律、こういうことを厳守される立場であるはずなんですね。一にかかって政治的判断ですとおっしゃるならこれは私は理解できます。ただしその政治的判断について私は同意はいたしませんけれども。  つまり、先ほど申し上げたように十六日に大統領選挙がありますよ。大変失礼だけれども、今までの韓国の政府の雰囲気、私もよく承知しています。そして同時に、大統領選挙の今激しい雰囲気、こういうものを考えますと、韓国政府が身柄を引き取ったならば、治安当局はもうほどなく、選挙の前に、これは北のしわざであるということをかなりにおわせるか公にするか、とにかくそういう方向に持っていこうとすることは私は明らかであると思わざるを得ない。そういうのも一つ政治的判断の根拠になると思いますよ。確かにお気の毒だということも政治的判断の根拠になります。しかし、私なんかの感覚からすれば、これが大統領選挙のために政治的に利用されるおそれがあると思わざるを得ない。これも政治的判断ですよ。こういう中で私は申し上げているわけであります。
  116. 斉藤邦彦

    政府委員(斉藤邦彦君) 私はただいま、日本政府の判断が一にかかって政治的な、政策的な判断からなされたものだということを申し上げたつもりはございません。法律的に日本側が身柄を請求し得る立場にあるということは御指摘のとおりでございますが、今のところ日本政府は、諸般の事情を勘案いたしましてこれを請求しないという立場をとっているわけでございます。  他方、韓国政府といたしましては、これは韓国政府とバーレーン政府関係になりますので、日本政府が横から口を出すべき問題ではございませんけれども、大韓航空機に起こった事件、これに関しまして重大な関心を持ち、その結果として関係があるかもしれないこの女性の身柄の引き渡しを要求したというのが現状であろうと思われます。
  117. 田英夫

    ○田英夫君 先ほどからのお話で、政府からバーレーン政府に対して書簡を送った、そういう接触があったことはわかりました。それでは、今の条約局長のお答えのようないきさつがあるとするならば、韓国政府日本政府との間でこの身柄の引き渡しについて何らかの接触が、交渉というところまでいかなくてもいいんですけれども、何らかの接触があったかどうかということをお尋ねしたいと思います。
  118. 藤田公郎

    政府委員(藤田公郎君) 当然のことながら、日韓両国は本件について関心を共有しておりますので、意見交換というのは常時行っております。
  119. 田英夫

    ○田英夫君 そういう接触の中でつまり譲ったと、こういうことになるわけですけれども、私の感覚からいえば、これはまだ現時点で、繰り返しますけれども、あの女性の容疑というのは日本の法律に違反しているという容疑だけが浮かび上がっているんであって、大韓航空機事件とのかかわりというのは一切不明なわけです。にもかかわらずこれを譲るということは、日本政府が主張すべき主権を放棄したと言われても仕方がないのではないかとさえ私は大変厳しく受け取っているんですが、いかがですか。
  120. 藤田公郎

    政府委員(藤田公郎君) 先ほどの条約局長の答弁で尽きているかと思いますけれども、決定をされるのはバーレーン当局でございまして、譲った譲らないというようなお話ではなくて、日本は、先ほど大臣からも御答弁を申し上げましたように、まさに御指摘の偽造旅券の問題、公文書偽造の問題に関連してはバーレーン当局の協力を要請して、捜査員の方も行かれ、真相解明に最大の努力をした、その結果等も踏まえ総合的な判断として現在のところは要求をしないということを先ほど大臣もお述べになりました。  韓国側は韓国側の立場で接触をしておられる。決定をされるのはバーレーン当局のお決めになることということで、主権の問題をもしおっしゃるならば、主権の問題というのは、バーレーン当局の管轄のもとに今あるわけでございますから、バーレーン当局がお決めになることだというのがお答えかと思います。
  121. 田英夫

    ○田英夫君 その点は、さっきからのやりとりで言いたいことはたくさんあるんですけれども、時間がありませんから……。  つまり、バーレーン当局にお任せしますという書簡を送ったということで今アジア局長が答弁された線は貫いておられるようです。しかし結果としては、主張しないんですから、本来主張すべきものを放棄したという現実は変わりないと思います。これは私の意見ですが、ちょっと角度を変えて伺いたいんです。  外事課長おいでになっていますが、国内捜査という言葉をさっきお使いになりましたが、これはどういうことを内容とするのか。つまり身元確認といいますか、これだと思っていいわけですか。
  122. 国枝英郎

    説明員(国枝英郎君) 身元確認に加えまして、いわゆる事案の真相解明全般考えております。具体的には、バーレーンから送られてまいりました資料あるいは情報をもとに国内の捜査も行っておりますし、その他、偽造旅券で名義をかたられた人が旅券を一時預けておるその人物についても追及捜査を行っておる等、所要の捜査を行っておるところでございます。
  123. 田英夫

    ○田英夫君 指紋が送られてきましたね。それで指紋の確認をしたという報道を読んだんですけれども、これは要するに日本の警察でつかんでおられる犯罪者の指紋を照合した、その結果がどうなったかということを伺っておきたいと思います。
  124. 国枝英郎

    説明員(国枝英郎君) 警察が保管いたしております被疑者の指紋とバーレーンから送られてまいりました男女二名の指紋を照合したわけでございます。その結果、合致する指紋は発見するに至らなかったということでございます。
  125. 田英夫

    ○田英夫君 念のために伺っておきたいんですけれども、指紋照合の対象はあくまでも被疑者であって、いわゆる外国人登録法による指紋押捺、これは対象にしたかどうか伺っておきたいと思います。
  126. 国枝英郎

    説明員(国枝英郎君) いわゆる外登法の指紋につきましては全く対象といたしておりません。
  127. 田英夫

    ○田英夫君 この問題は、先ほどから私の意見をむしろ申し上げたわけで、政府のおとりになっている措置に対しては私は納得できないということを繰り返して申し上げたいと思います。  時間がありませんので、宇野大臣にはきょう初めて御質問をするわけで、私も、多分福田外務大臣かと思いますが、佐藤内閣当時から外務委員をやらせていただいておりますが、参議院の外務委員会がこうやって座って質疑をする、議論をするというのもかなり古い歴史があります。それも、つまり外交権というものが行政府にあることは憲法ではっきりしているわけですから、日本外交が誤りなきようにということを期するために、国民の代表である外務委員が衆参でいろいろ意見を言う、こういう中で初めて本当に正しい方向に進むんじゃないか、そんなことを思うわけであります。  したがって、委員長にもお願いしたいことでありますが、行政府の方々がおられて、それに対して、きょうは条約の審議ですけれども、委員が質問をする、行政府のお考えを述べられるというやりとりが日本の国会では通常の形になっておりますけれども、少なくとも参議院の外務委員会はもっと意見を交換する。ぜひお願いしたいことは、外交権を持っておられる行政府外交の責任者である外務大臣は、こういう機会に、むしろ唯一の意見を言う場ですね、野党にとって、こういうところで意見を吸い上げていただきたい。そういうことで、もし仮に政府・与党の進めていらっしゃる方向が誤ったものであるとするならば、それに修正を加えていただきたい、そういう場を、しかもいきり立った議論ではなくて、座った姿勢で語り合うということで、そういうことを先輩の皆さんが考えられてこういうシステムをつくられたんだと私は理解しているわけです。ぜひひとつ新外務大臣にこのことを御理解いただきたいと思います。  その意味で、来週は外務大臣もフィリピンへおいでになるということでありますので、私も十一月半ばに日本・フィリピン友好議員連盟の代表団の一人として訪比いたしましたので、広中委員もそのメンバーのお一人でしたけれども、そのときの体験を若干お話をして、ぜひ参考にしていただきたいというふうに思うわけです。  それは、超党派の代表団でありましたから、もちろん考え方にいろいろ違いがあるわけですが、しかし一つの友好という目的のために参りました。私はその代表団の日程とやや外れて、深夜や早朝を利用していろいろ各方面の人にもお会いをしてきたわけであります。そんな中で感じたことを申し上げておきたいんです。  一つ日本からの経済協力です。このことは今回も恐らくいろいろな機会で話し合われると思いますし、大切な問題だと思います。しかし、例えば我々代表団とフィリピンの新聞記者との記者会見がありました、日本の記者もおられましたけれども。ところがそこで質問として出てくるのは、日本からの経済協力の問題はついに一時間ほどの記者会見の中でゼロです。質問が一つも出ないんですよ。これは角谷大使以下大使館員の皆さんもおられましたからよく御存じのはずです。  それから上院議員との懇談会がありました。これは二時間ほど我々と、二十四人の上院議員のうちの半分ぐらいが出てきておられた。野党であるエンリレさんもおられたわけですが、そこで出てきたのは、八百二億の円借款ということを日本側からも団長である小坂善太郎先生から説明をしたんですけれども、これについてはほとんど言及がありません、向こうの上院議員からは。ある人は、経済協力ももちろんありがたいことだけれども、むしろ教育とか文化とか、そうした問題についてもっと日本の協力が欲しい、こういう発言があり、また、じゃぱゆきさんの問題について触れられた婦人議員もおられました。あるいは、非常に日本に詳しい人ですが、あのアキノさんの弟ブッツ・アキノ上院議員は、青函連絡船が今度廃止されるそうだけれども、そうした船をひとつフィリピンに譲ってもらえないかというような、そういう意見も出されておりまして、日本からのいわゆるODAの問題については全く触れられない。  しかも、その懇談会の議長役をしておられたのはサロンガ上院議長でありまして、言うまでもなくマルコス疑惑の調査委員長であった方ですね。  こういう雰囲気というものをぜひひとつ頭の隅に入れていっていただいた方がいいのではないか。つい日本からは経済協力をややもすると恩に着せるような形で言うおそれがあるのではないかと思います。それに対するフィリピン側の受け取り方は今申し上げたような空気であるということをぜひ御理解いただきたい。  聞くところによりますと、百四十億の日比友好道路の援助を用意されているということも聞きますけれども、これももちろん向こうにとってはありがたいことと思いますが、果たして民衆の側から見れば何が一番緊急かということをきっと言いたいのだろうと思います。  それでは一体フィリピンの側にとって何が一番今大きな問題なのかといいますと、記者会見で驚きましたことには、若い女性の記者が多いんですけれども、その若い女性の記者の口から米軍基地の問題について矢継ぎ早に我々に質問が浴びせられたわけです。直接関係ないようですけれども、まず、あった方がいいか、廃止した方がいいか、意見を聞きたい、こう言うわけです。これに対しては当然小坂団長から、それはフィリピンの皆さんがお決めになることだと思いますという答弁をされたところが、それでは納得しませんで、こういうことを言うんですね。  もしクラーク、スービック米軍基地が廃止されるということになれば、アメリカアジア戦略の上で重要な空白ができるでしょう、そうなったらアメリカは放置しないはずだ、必ず日本に肩がわりを求めるんじゃないでしょうか、それは日本の軍国主義化につながるんじゃありませんか、したがってあなた方に無関係ではないと思いますと、若い女性の記者がそういう言い方で質問をしました。これに対して日本側から、フィリピンの皆さんはそこに空白をつくるような選択をなさらないのではないでしょうかという答弁を団長がされましたところが、それは存続しろということですか、こういう詰め方をします。もちろんその質問をした記者は、そういう質問の空気からして、廃止した方がいいと考えている新聞の記者だと思います。そういう意見の新聞が多数あることもまた事実なんですね、左の側の新聞といいますか・  もう一つ申し上げておきたいことは、今アキノ政権は左右の板挟みといいますか、そういう中で大変苦しい立場にあることは御存じのとおりでありますが、ややもすると日本では、左イコール新人民軍イコール悪、右の旧マルコスグループも困る、こういう判断をしがちでありますけれども、左と一括して言っていいかどうかの問題ですね。サロンガさんもある意味では左かもしれません。やめられたアロヨ官房長官もそういう攻撃を受けてやめざるを得なくなったことも事実であります。  私が会いましたのはロドルフォ・サラスという、文字どおりこれは軍によって逮捕されて今獄中におりました。その獄中を訪ねてみたわけです。独房の中で彼と二人で会ったわけですが、彼は実にアキノ批判もいたしますけれども、同時に、自分たちも停戦交渉の一方の責任者だったわけです、左側の。この人が停戦交渉のさなかに軍に逮捕されるというまことにおかしなことが起こっているわけです。自分たちも停戦を求めていたんだ、にもかかわらず、自分たちも米軍基地即時撤去というようなことを要求した、しかしアキノ政権側も自分たちに対して即時投降ということを求めた、双方が極端な意見をぶつけ合ったんじゃないか、もっと農地の改革とか経済の改革とか、民衆の生活にとってプラスになることを徐々にやるような提案をし合ったならば話し合いはうまくいったかもしれない、こういうことを獄中で私に語ってくれたわけです。  こういうような事情で、時間が来てしまいましたけれども、今のフィリピンの状態というのは、必ずしも残念ながら日本のマスコミの紙面にあらわれているだけの空気でもないということをぜひ御配慮をいただきたい。これは出先の大使館で十分につかんでいらっしゃることと思いますから、外務省は御存じでしょうけれども、ある意味では外務省が接触し得ない部分の声も若干は聞いてきたつもりでありますので、この機会に申し上げて、大臣のフィリピン訪問の一つの参考にしていただければ幸いであります。  終わります。
  128. 森山眞弓

    委員長森山眞弓君) 他に御発言もなければ、本件に対する質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  129. 森山眞弓

    委員長森山眞弓君) 御異議ないと認めます。  これより討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。――別に御発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。  アメリカ合衆国地先沖合における漁業に関する日本国政府アメリカ合衆国政府との間の協定を改正する協定締結について承認を求めるの件の採決を行います。  本件を承認することに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  130. 森山眞弓

    委員長森山眞弓君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  131. 森山眞弓

    委員長森山眞弓君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時四十五分散会      ―――――・―――――