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1987-12-08 第111回国会 衆議院 法務委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    国会召集日昭和六十二年十一月二十七日)( 金曜日)(午前零時現在)における本委員は、次 のとおりである。   委員長 相沢 英之君    理事 井出 正一君 理事 今枝 敬雄君    理事 太田 誠一君 理事 保岡 興治君    理事 坂上 富男君 理事 中村  巖君    理事 安倍 基雄君       逢沢 一郎君    赤城 宗徳君       稻葉  修君    上村千一郎君       加藤 紘一君    木部 佳昭君       佐藤 一郎君    塩川正十郎君       塩崎  潤君    丹羽 兵助君       松野 幸泰君    宮里 松正君       伊藤  茂君    稲葉 誠一君       小澤 克介君    山花 貞夫君       橋本 文彦君    冬柴 鉄三君       塚本 三郎君    安藤  巖君 ――――――――――――――――――――― 昭和六十二年十二月八日(火曜日)     午前十時開議 出席委員   委員長 相沢 英之君    理事 逢沢 一郎君 理事 井出 正一君    理事 今枝 敬雄君 理事 太田 誠一君    理事 保岡 興治君 理事 坂上 富男君    理事 中村  巖君 理事 安倍 基雄君       赤城 宗徳君    上村千一郎君       木部 佳昭君    塩川正十郎君       宮里 松正君    稲葉 誠一君       小澤 克介君    山花 貞夫君       橋本 文彦君    冬柴 鐵三君       安藤  巖君  出席国務大臣         法 務 大 臣 林田悠紀夫君  出席政府委員         法務大臣官房長 根來 泰周君         法務大臣官房司         法法制調査部長 清水  湛君         法務省民事局長 藤井 正雄君         法務省刑事局長 岡村 泰孝君         法務省入国管理         局長      熊谷 直博君  委員外出席者         人事院事務総局         給与局給与第一         課長      小堀紀久生君         人事院事務総局         職員局職員課長 山崎宏一郎君         公正取引委員会         事務局審査部第         一審査長    菊池 兵吾君         警察庁長官官房         審議官     森広 英一君         警察庁長官官房         審議官     岡村  健君         警察庁警備局外         事務課長    国枝 英郎君         外務大臣官房領         事移住部領事第         一課長     飯田  稔君         外務省アジア局         北東アジア課長 田中  均君         大蔵省証券局流         通市場課長   松川 隆志君         海上保安庁警備         救難部航行安全         課長      酒田 武昌君         海上保安庁警備         救難部救難課長 小澤 友義君         建設大臣官房官         庁営繕部管理課         長       恒松 和夫君         最高裁判所事務         総長      草場 良八君         最高裁判所事務         総局人事局長  櫻井 文夫君         最高裁判所事務         総局経理局長  町田  顯君         最高裁判所事務         総局民事局長         兼最高裁判所事         務総局行政局長 上谷  清君         最高裁判所事務         総局刑事局長  吉丸  眞君         法務委員会調査         室長      乙部 二郎君     ――――――――――――― 十二月八日  理事熊川次男君十一月十日委員辞任につき、そ  の補欠として逢沢一郎君が理事に当選した。     ――――――――――――― 十一月二十七日  刑事施設法案内閣提出、第百八回国会閣法第  九六号)  刑事施設法施行法案内閣提出、第百八回国会  閣法第九七号) 十二月一日  裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する  法律案内閣提出第四号)  検察官俸給等に関する法律の一部を改正する  法律案内閣提出第五号) 同月三日  刑事施設法案廃案に関する請願矢島恒夫君  紹介)(第五号)  刑事施設法案反対に関する請願工藤晃紹介  )(第六号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 十二月七日  刑事施設法案廃案に関する陳情書外一件  (第一二  号)  外国人登録法改正に関する陳情書外一件  (第一三号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件 理事補欠選任  国政調査承認要求に関する件  裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する  法律案内閣提出第四号)  検察官俸給等に関する法律の一部を改正する  法律案内閣提出第五号)      ――――◇―――――
  2. 相沢英之

    相沢委員長 これより会議を開きます。  理事補欠選任の件についてお諮りいたします。  委員の異動に伴い、現在理事が一名欠員となっております。その補欠選任につきましては、先例によりまして、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 相沢英之

    相沢委員長 御異議なしと認めます。よって、委員長逢沢一郎君を理事に指名いたします。      ————◇—————
  4. 相沢英之

    相沢委員長 国政調査承認要求に関する件についてお諮りいたします。  裁判所司法行政法務行政及び検察行政等の適正を期するため、本会期中  裁判所司法行政に関する事項  法務行政及び検察行政に関する事項並びに  国内治安及び人権擁護に関する事項について、小委員会設置関係各方面からの説明聴取及び資料の要求等の方法により、国政調査を行うため、議長に対し、承認を求めたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 相沢英之

    相沢委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  6. 相沢英之

    相沢委員長 お諮りいたします。  本日、最高裁判所草場事務総長櫻井人事局長町田経理局長上谷民事局長行政局長吉丸刑事局長から出席説明要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 相沢英之

    相沢委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  8. 相沢英之

    相沢委員長 内閣提出裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官俸給等に関する法律の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。  まず、趣旨説明を聴取いたします。林田法務大臣。     —————————————  裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する   法律案  検察官俸給等に関する法律の一部を改正する   法律案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  9. 林田悠紀夫

    林田国務大臣 裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官俸給等に関する法律の一部を改正する法律案について、その趣旨を便宜一括して説明いたします。  政府は、人事院勧告趣旨等にかんがみ、一般政府職員給与を改善する必要を認め、今国会一般職職員給与等に関する法律の一部を改正する法律案及び特別職職員給与に関する法律及び国際花と緑の博覧会政府代表設置に関する臨時措置法の一部を改正する法律案を提出いたしました。そこで、裁判官及び検察官につきましても、一般政府職員の例に準じて、その給与を改善する措置を講ずるため、この両法律案を提出した次第でありまして、改正の内容は、次のとおりであります。  第一に、最高裁判所長官最高裁判所判事及び高等裁判所長官報酬並びに検事総長次長検事及び検事長俸給は、従来、特別職職員給与に関する法律適用を受ける内閣総理大臣その他の特別職職員俸給に準じて定められておりますところ、今回、内閣総理大臣その他の特別職職員について、その俸給を増額することとしておりますので、おおむねこれに準じて、最高裁判所長官最高裁判所判事及び高等裁判所長官報酬並びに検事総長次長検事及び検事長俸給を増額することといたしております。  第二に、判事判事補及び簡易裁判所判事報酬並びに検事及び副検事俸給につきましては、おおむねその額においてこれに対応する一般職職員給与等に関する法律適用を受ける職員俸給の増額に準じて、いずれもこれを増額することといたしております。  これらの給与の改定は、一般政府職員の場合と同様、昭和六十二年四月一日にさかのぼって行うことといたしております。  以上が裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官俸給等に関する法律の一部を改正する法律案趣旨であります。  何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。
  10. 相沢英之

    相沢委員長 これにて趣旨説明は終わりました。     —————————————
  11. 相沢英之

    相沢委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。安倍基雄君。
  12. 安倍基雄

    安倍(基)委員 この法案は、例年の問題でございますので、また一括して後でお聞きしようと思います。  最初に、いわゆる大韓民国の例の大韓航空機ですか、その墜落事件についてお聞きしたいと思います。  今度どうも政府が、容疑者が何か韓国政府の方に身柄が移るということについて同意したという報道がされておりますけれども、この辺について裁判権として我が国はどういうのを持っているのか。私の通常の考えからいえば、偽造であろうとなかろうと旅券を持っている。本人国籍がまだはっきりしていないという状況のもとにおいては、そのいわば旅券を持っている者が推定される、はっきりどの国とわかっていない状況のもとでは、たとえ偽造旅券であってもそれを持っている者がその国籍を、日本なら日本国籍を持っていると推定されるような状況かと思いますね。そのときに確かに被害国である韓国裁判権を持っておるのか、日本裁判権を持っておるのか。その場合に法律的に考えた場合、もし日本が持っているとするならば、それを放棄するのは政治的な意味であるのかと思いますけれども、正当な理由があるのかどうか、まず最初裁判権の問題についての御答弁をいただきたいと思います。
  13. 林田悠紀夫

    林田国務大臣 一般論として裁判権について申し上げますと、偽造旅券行使につきまして刑事裁判管轄権我が国にございます。
  14. 岡村泰孝

    岡村政府委員 補足して、もう少し具体的なことを申し上げることにいたします。  委員から御指摘のありましたように、旅券を持っていることによってその旅券発給国国籍であることが推定されるかという点でございますが、この点につきましては、確かに正当な旅券を所持しております場合は、その旅券発給国国籍を持つという事実上の推定力が働く場合が多いかと思います。  ところが、本件に関しましては、日本国が発給いたしました正当な旅券とは似てはおりますけれども、いわゆるにせものであるという状況が認められるわけでございます。そういたしますならば、本件旅券偽造されたものであるというふうに考えられるわけでございます。そういたしますと、法律的には公文書偽造、また偽造されました公文書であります旅券行使という罪名が考えられるところでございます。この二つの罪名につきましては、刑法上、何人を問わず国外において犯した場合においても日本刑法適用するということになっているところでございます。そういう意味におきまして、大臣が御説明されましたように、公文書偽造あるいはその行使という罪名が認められますならば日本裁判権が及ぶ、こういうことになるわけでございます。
  15. 安倍基雄

    安倍(基)委員 ですから、一応旅券偽造問題についてはこちらに裁判権ありと。ただ、現在相手が何人であるか、はっきりしてないわけですね。その場合に、要するに韓国が引き取る、韓国人であろうという推定はなされるわけでしょうけれども、その辺はどうなんでしょうか。いわば正当に裁判権を主張する権利を持っているのでしょうか。
  16. 岡村泰孝

    岡村政府委員 韓国といたしましては、大韓航空機事故に関連いたしまして犯罪人引き渡し要求しているように思うわけでございますが、それは韓国側判断でございます。一方、容疑者が領域内におりますバハレーンがその者を引き渡すかどうかということになりますと、これはやはりバハレーン判断ということになってくるわけでございます。
  17. 安倍基雄

    安倍(基)委員 私は何もこの問題、日本に連れ帰ってきてごしごしやれということは必ずしも強く主張しているわけではないので、これはなかなか国際的にも大変な問題ですから、我が方がどの程度これを処理できるかという問題もあって、政治的に韓国と向こうのバハレーンのいわば話し合いということで、それは我が方の権利を放棄してもいいのかとは思いますけれども、この辺はいささか法理的にきちっとした上でやっていただきたい。  少なくとも我が方はいわば偽造旅券関係についての裁判権はある。それから、国籍がはっきりしない。今韓国人であるかどうかもはっきりしてないので、韓国被害者としての立場から要求していると思いますけれども、この辺になりますと、国際的な裁判権が本当にどこにあるのか。これはむしろ法務省というのか、外務省というのか。外務省の方も来ていらっしゃるのかな。来ておられないか。そうすると、この辺は相互の話し合いだけれども、そういった場合、韓国に、被害国には裁判権があると言ってもいいのでしょうか。
  18. 岡村泰孝

    岡村政府委員 モントリオール条約というのがございまして、これには日本も加盟いたしておりますし、韓国もそうでございますが、この条約によりますると、登録された航空機所属国と申しますか、その国が一般的に裁判権を持つということになっているところであります。
  19. 安倍基雄

    安倍(基)委員 いずれにいたしましても、韓国がそちらの方で要求してくれば、我が方は偽造の方では余り強く要求せぬという立場をおとりになるつもりなんですね。その辺はちょっと確認したいと思います。
  20. 岡村泰孝

    岡村政府委員 この点につきましての我が国態度につきましては、官房長官が既に記者会見で述べておられるところでございますが、要するに日本旅券偽造されておるという事実につきまして、現在警察におきまして捜査をいたしているところでございます。しかしながら、蜂谷真由美名義旅券を所持しておりました女性がどこの国の人物であるかということについては、いまだわからないわけでございます。少なくとも日本国籍を持っておるという事実は私ども把握いたしておらないわけでございます。  こういったようないろいろな状況を総合的に判断いたしまして本人引き渡しを求めるかどうかということが判断されるわけでございまして、今の時点におきましては引き渡し要求するということは考えていない、そういうことでございます。
  21. 安倍基雄

    安倍(基)委員 いずれにいたしましても、韓国大統領選挙あるいはソウル・オリンピックを控えた直前にこういった大きな犯罪が発生することは非常に遺憾な限りでございますけれども、これから本当に我々も、ああいった急にぼんと落ちられると、海外旅行もできない、いつ我が身かもわからぬというような状況でございますけれども、こういった犯罪防止、こういったことについてどうやって対処するのか。これはなかなか難しい問題ですけれども警察庁のいわば方策、特に海外における犯罪防止のネットワークというのがどういうぐあいに張られているのかということをお聞きしたいと思います。
  22. 岡村健

    岡村説明員 この種事案防止するためには、何といっても情報収集をいち早くやることではなかろうかと思います。情報をできるだけ早く把握いたしまして、関係機関連絡体制を密にいたしまして対処する。また、平時におきましては荷物の安全検査を徹底する、あるいは不審者あるいは不審物件の発見を警備体制を強化して行うということではなかろうかと思います。  国際テロにつきましては、国際社会全体の問題でもございます。したがいまして、ICPOルートとかあるいは外交ルートなどを積極的に活用いたしまして、ただいま申し上げましたような情報の交換あるいは捜査協力を積極的に行って未然防止に努めてまいりたい、こういうふうに考えております。
  23. 安倍基雄

    安倍(基)委員 情報との関連で、私はちらっとあるところから、今までアラブ諸国の中にいわゆるそういう国際的なテロ集団を、かくまうと言っては変だけれども、それが割合と自由に動けた場所があった。ところがイラン・イラクが大分長引いてきまして、アラブ諸国内でそういう拠点をもう提供しないようにというような動きが出てきて、そこの連中がいわば大分動揺しているというか、拠点アジアへ移そうかという動きも今あるというような、ちょっと小耳に挟んだ話がございます。それが今度の一連の、南アフリカの分が本当にああいった爆破事件であったのかどうかということも疑問でございますけれども、その背景にあるのじゃないかというような話もちらっと聞いておりますけれども、その辺の真偽と申しますか、この点についてちょっとお聞きしたいと思います。
  24. 岡村健

    岡村説明員 アラブにおける過激派全般のことについてはつまびらかではございませんが、海外における日本過激派、これは主として日本赤軍でございます。彼らの拠点はあくまでもレバノンにございますベッカー高原、ここに置いているようでございます。彼らがアジアあるいはヨーロッパ等々にアジト的なものを持っておろうかと思いますが、しかし、あくまでもこのベッカー高原本拠地、これの出店的なものではなかろうかというふうに考えております。
  25. 安倍基雄

    安倍(基)委員 じゃ、そのアラブ諸国から追い立てられて拠点を移すというような事情は存在するのですか、しないのですか。
  26. 岡村健

    岡村説明員 日本赤軍に関する限りは、現在は依然としてべッカー高原本拠地を置いているというふうに考えております。
  27. 安倍基雄

    安倍(基)委員 この問題と関連しまして、ちょっと私は小耳に挟んだのですが、若干嫌がらせ的な、嫌がらせというか、かつて極端なときは、御承知のように関東大震災のときに随分朝鮮関係人間がやられた。私は別に朝鮮のあれじゃないのですが、そういったことを一、二耳にしますけれども、そういう状況があったのかどうか。あるとすればそれにどう対処するのかということをお聞きしたいと思います。
  28. 岡村健

    岡村説明員 私どもでただいまいわゆる朝鮮人に対する迫害といったような具体的な事例は聞き及んでおりません。  ただ、十二月四日に朝鮮総連の幹部の方が愛知県警に見えられまして、朝鮮学校の生徒さんが道で嫌がらせを受けたといったような訴えをいただきまして、それに対して善処するようにという要請はいただいております。私どもとしましては、所要の聞き込み等を行っております。ただ、より具体的なことをお聞きしたいものですから、被害届をただいまお待ちいたしているところでございます。
  29. 安倍基雄

    安倍(基)委員 私は別に総連の弁護をするつもりは毛頭ないのですけれども、いずれにいたしましても、こういうときにいわば一般的にそういう問題が起こりやすいことは割合日本社会のちょっとまずい点なんでございまして、これについてはやはりきちっと公平な態度で臨んでもらえないかと私は思います。いかがでございますか。
  30. 岡村健

    岡村説明員 犯罪がございました場合は、人種のいかんを問わず公平に捜査を遂げて社会正義の実現を図ってまいりたい、このように考えております。
  31. 安倍基雄

    安倍(基)委員 いずれにいたしましても、この問題は警察の問題であるとともに、いわばこの航空機事故について、法務大臣、これは本当にどういうぐあいに考えておられるか、御所見を承りたいと思います。
  32. 林田悠紀夫

    林田国務大臣 現在も、十二月四日からこの十日まで人権週間をやっておりまして、人権につきましては、日本に居住しておりまするあらゆる国民を問わずこれを尊重することは必要でありまして、今後そういうPRを通じまして人権の大事さをみんな考えて対処し得るようにさらに進めてまいりたい、努力してまいりたいと存じます。
  33. 安倍基雄

    安倍(基)委員 私は今、人権の問題もさることながら、いわゆる航空機事故のようなものですね、これは警察の所管かもしれませんけれども、これは刑罰の問題もありましょうし、法務の関連する問題で、こういった航空機事故航空機犯罪、それについて警察以外に法務として打てる手があるのかどうか、法務大臣どう考えるかということでございます。
  34. 林田悠紀夫

    林田国務大臣 航空機犯罪につきまして各国との条約について、まずモントリオール条約があることはもう御承知のとおりでございまして、そういう条約に基づいて対処してまいります。また、国内につきましては、航空機の強取等の処罰に関する法律というのがございます。また、人質による強要行為等処罰に関する法律、あるいはまた国際犯罪共助法がございまするし、そういうような法律に基づきまして十分対処をしてまいりたいと存じております。
  35. 安倍基雄

    安倍(基)委員 いずれにいたしましても、こういう犯罪は、通常一対一で殺す犯罪とはまた次元の違うものなんですね。一対一殺人犯というのは従来問題になっていましたけれども何人もひっくるめて全く関係のない人間を殺すということは、まさに新しいこういった高度化社会における一番の罪になるのですな。これは、本当にいわば極悪というか、こういった者をもちろん極刑に処さなければいかぬし、そういう点でやはりこの新しい種類の殺人犯というものは、これは政治犯とかなんとかいうことじゃなくて、まさにもう国際的にも物すごい厳罰に処さなければいかぬという意味で、これは法体制整備という面から見ても考えていかなければいかぬ。一つは、情報収集警察がやる。と同時に、これは通常殺人犯以上の現代的な大犯罪、極悪人、こう考えてもしかるべき犯罪でございまして、この点、法務大臣としての御所見を承りたいと思います。
  36. 林田悠紀夫

    林田国務大臣 こういう航空機を利用する犯罪というものはまことに進んだ社会における最も極悪な犯罪でありまして、先生がおっしゃるように、さらに法規的にも整備を進めまして対処をしていきたいと存じます。
  37. 安倍基雄

    安倍(基)委員 また、過日私はここで浜松の暴力団問題を取り上げたことがございます。  そのときに、住民が立ち上がった、これが要するに腰砕けになるようでは全国的に非常によくないというような話をいたしました。そのときに、また同時に、こういう暴力団というものは、ただただたたきつぶすだけでは、一方をたたきつぶせばまたほかに出てくる。だから、暴力団員の更生というか、いわばもう一遍正しい道へ戻るというためのいろいろのことを考えなければいかぬ。それは単に警察だけではできない。たしかそのときの法務大臣が、各省庁連絡機関と申しますか、警察、厚生、そういったものを含めて、それから資金源を断つという面も含めて、各省庁で総合的に対処しなくちゃいけませんねと、私の質問に対して早速そういうことを検討したいというようなことを言われたのですけれども、その後どうなっているのか。裁判状況のみならず、たしかここにおられる方は、前の大臣が、これは一省一庁で解決できない、各省庁が力を合わせてやっていかなければいかぬという御答弁をいただいて大いに意を強うしたのだけれども、どうもその答弁だけでそのまましりすぼみになっているのかな、あるいはその辺の話が進んでいるのかなということをお聞きしたいのです。  最初にいわば裁判状況、その次にその後における、私がそのとき強調したのは、ここはせっかく立ち上がった住民のあれを腰砕けにしてはいかぬ、みんな協力しなければいかぬということと同時に、そういうただただたたきつぶしても問題は解決しない。暴力団問題というものは、その資金によって得をしている連中にまた踊らされている要素がある。それから、更生しようと思っても結局はまたもとのどこかの組に入っていかなくちゃいけないという意味では、これは厚生省の問題でもある。警察とこういったのがいわば連絡機関的に合同で総合的に解決していかなかったらいつまでも解決しませんよという話をしたら、まあそうですねなんて言っていただいたのだけれども、その後何か進展があったのか。この二点についてお聞きしたいと思います。
  38. 森広英一

    森広説明員 前回、七月二十九日に御質問が行われました以後の経過につきまして御説明いたします。  その後、八月十日に至りまして、地元の有志五百十五名の住民が一力一家の事務所の使用差しとめの仮処分の申請をするという大きな出来事がございました。その後審理が行われまして、十月九日に至りまして、静団地方裁判所浜松支部におきまして、住民の仮処分の申請をほぼ認め、一力一家の組事務所の使用を禁止する内容の決定が下されております。また、十月二十日に至りまして、住民側から一力一家がこの決定を守っていない、この履行を担保するために間接強制の申し立てを行っております。続きまして十一月十二日には、さらに組事務所の使用を本格的に差しとめますために本訴も提起をいたしておる状況でございます。さらに十一月二十日に至りまして、さきに提訴いたしました間接強制の申し立てに対する決定が下りまして、一力一家が仮処分の決定に違反をいたしまして組事務所として使用した場合には一日につき百万円の間接強制を科する、こういうような決定がなされておるという状況でございます。  一部地域住民に先生御指摘の腰砕けというような不安な者もないわけではございませんが、大方の住民は依然として勇気を持って暴力団に立ち向かっておられるという状況でございまして、警察といたしましてもこれらをバックアップする意味から一力一家に対する取り締まりを強化いたしておりまして、今年度八十一人の組員を検挙いたしました。昨年が一力一家に対して四十一人の検挙でございましたので、ほぼ二倍の検挙人員となっておる、かように取り締まりも強化をいたしまして、この裁判が正当に進められるように、また、住民の不安を取り除くように警察としてもバックアップをいたしておるという状況にございます。
  39. 安倍基雄

    安倍(基)委員 やはり皆注目している案件でございますから、これは本当にきちっと暴力団はいけないんだということのけじめをつけていただきたい。  第二番目の、そういった暴力団に対して総合的に考えるという、一方においてはつぶさなければいかぬけれども、一方においては正業へ向かうための道を考える、また、そういう資金源を利用して利得している人間を押さえる、そういう面についての何らかの総合的な措置、前法務大臣が閣議にも話しましょうなんという話をしたような気がするのですが、ちょっと正確な記憶がないのですけれども、そういった措置がとられておるのでございましょうか。
  40. 岡村泰孝

    岡村政府委員 暴力団対策といたしましての総合的対策というその中身の問題といたしましては、一つには、暴力団犯罪に対しまして徹底的に検挙するということであろうかと思います。この点につきましては、捜査機関であります検察、警察、お互いに必要なときに十分な連絡をとりながら暴力団犯罪の検挙のために努力をいたしているところでございます。  もう一つは、法務省の中の矯正保護の問題といたしまして、暴力団犯罪者をいかに立ち直らせるかという問題でございまして、そのための効果的な方策ということにつきましては、それぞれの部署におきましていろいろ検討をいたしておるところでございますし、また、必要な相互の連絡をとりながらそういう対策を講じるように努めているところでございます。
  41. 安倍基雄

    安倍(基)委員 大臣、前大臣がそう言って、各省庁間の協力体制というものが一つの考え方ですね、それをやりたいと思っていますという話を私は聞いたのですけれども大臣はいかがでございます。
  42. 林田悠紀夫

    林田国務大臣 前大臣がそういうふうに答弁をしたことは大変いいことだと思います。ただ、そのときは浜松におきまする大きな事件があって、そしてそれを契機として先生からそれに対する質問があり、大臣からそういう発言があったものと存じまするが、そういう問題が起こったことを契機にいたしまして、閣議においても、各省の協力を得るということを、何かありましたならばお願いをしていきたいと存じます。
  43. 安倍基雄

    安倍(基)委員 私は何も浜松問題に限ってなくて、こういう暴力団の政策に対しては、一方においでつぶすという面と、一方においてその背景にある資金源を抑えなくてはいかぬ、もう一面においては更生ということ、正業につくための手だてを講ずるという意味で、何も浜松事件だけに限ってではないので、そういうことでございますから、今後真剣に取り上げていただきたい。これは、確かにやりますよというのがその後本当にやられているのかどうか、いささか疑問がありますので、暴力団対策というのはそういう総合的な形でやらないと、ただただモグラたたきみたいにこっちをたたいたらまた出てくるというような話になるので、更生をも含めた形の方策が必要であろうと思います。  時間も私どもは余りございませんので、ちょっと話をあれいたしますが、今度の法案との関連ですけれども、最近司法官、裁判官検察官に対する志望者が非常に減ってきているという話をしばしば耳にするのです。ちょっとこういったことを聞いてはどうかとは思いますが、通常こういった裁判官検察官が自分の家をどの程度持っているのかな、ほとんど公務員宿舎かな、これは一つの生活のメルクマールとしてちょっと質問してみたのですけれども、そういう持ち家比率なんというのはどの程度なんですか。
  44. 櫻井文夫

    櫻井最高裁判所長官代理者 裁判官が自宅をどの程度持っているかということに焦点を当てた調査というのは実はいたしておりませんので、正確なところはわからないわけでございます。ただ調査といたしましては、宿舎貸与の関係で宿舎を希望する者の調査を行い、そしてその中で宿舎を必要としない者というものの数を出している、そういう調査がございます。この宿舎を必要としないというのは、それぞれの任地において宿舎を必要としない者の数ということでありまして、これが自宅を持っている者の数と必ずしも一致しないわけでありますが、ある程度近い数をあらわしているものであろうかと思うわけでありますが、その数は裁判官二千七百名の中で七百五十九名という数が出ておりまして、三割程度の数がこれに当たるのであろうかというふうに考えております。
  45. 安倍基雄

    安倍(基)委員 一般の行政官に比較したようなことはやっていますか。
  46. 櫻井文夫

    櫻井最高裁判所長官代理者 これも、行政官と比較したような調査という形ではやっていないわけでありますが、こういった自宅保有率についてはそんなに変わらないものではないかというふうに思っておりますし、また、実感から申し上げますと、私どもの知人等から得ている私的な知識の集積でございますが、同じ年齢層における自宅保有率は大体似たようなものではないかというふうに認識いたしております。
  47. 安倍基雄

    安倍(基)委員 一つ自宅保有率ということを例にとったのですけれども、ある意味からいうと、司法官がどういう生活をしているんだという生活調査的なことを常時把握しておく必要があるのじゃないか。私はもともと別に法務委員だからという意味じゃなくて、司法、警察とか、私も税務署、大蔵におりましたから、そういう連中の給与はほかの者と比べて思い切って高くしてもいいのじゃないか。そのかわりに、そう言っては悪いけれども、判こをしょっちゅうついているような地方公務員——地方公務員がおられたら申しわけないけれども、要するにそういうのは下がったっていいんだ、本当に大事な職業をやる者に対してはすごい金をやってもいいんだという主張なんです。そうじゃないと、本当の意味社会の根幹というものは崩れる。その意味で、私は別にここにおられる裁判官検察官の人にあれするわけではないけれども社会というものはいい人材がそこに入ってくるだけのインセンティブがないと、もちろんそれが頭だけよくて道徳的に悪いのじゃ困るのですけれども、やはりその意味の公正な裁判を担保し、安全を保持するためには高くしてもいいと私は思っているのですよ。  そこで、法務大臣にお聞きしたいのですけれども、こういう検察官になったり司法官になったりする志望者が減ってきつつあるということにどういう手段を講じたらいいのかということをお聞きしたいと思います。
  48. 林田悠紀夫

    林田国務大臣 現在、裁判官あるいは検察官、また弁護士もそうでありまするが、そういう法曹界に入る人々のまず最初の関門が試験でございます。その司法試験には毎年二万数千人の志願者がありまして、合格者は五百人という、今一番難しい試験と言われるようになっておりまして、合格しておりまするのは、大体大学を出てから五、六年たたないと合格しない、そういうような状況でありまして、やはりこの試験制度を改革をして、法曹界にもっと若い弾力性に富む人が入ってくれるようにしていかなければならぬということが一つあると存じます。  またもう一つは、裁判官とか検察官とかいう仕事が国にとって、社会にとって非常に立派な仕事である、やはり民主主義国家を維持していきまするためにはそういう仕事が基本になるのだという考え方を国民みんなが持っていただきまして、裁判官検察官の価値といいまするか、地位を上げていくということが必要だろうと思います。そうしてもう一つは、またその人たちの環境を整備をいたしまして、給与の面におきましても、あるいは居住の面におきましても優遇をしていくというようないろいろなことが相まちまして、裁判官あるいは検察官がそのサークルの中へ入ってくれるということになるわけでありまして、そのために努力をしなければならないと存じております。
  49. 安倍基雄

    安倍(基)委員 試験を易しくして大勢採るというのが果たしていいのか悪いのかという問題もあると思いますけれども、一つのアイデアは、私は今ここで考えついたのですけれども、弁護士というのはこれからどんどんふえるのですね、逆に言えば。だから弁護士と司法官と同じ試験にしないで、裁判官、司法官は別の試験にして、そのかわり数は非常に限定して、しかしそのかわりべらぼうに優遇する。今のところは、受かった人間はほとんど弁護士に行っちゃうのですよ。裁判官、司法官になっても余りろくなことがないというか、恨まれるばかりだし、余りお金にもならない。逆に、そういう裁判、検察の分は試験を別にして、少し人数は限って、余り易しくする必要はない。弁護士も余り易しくしてはいけませんけれどもね。アメリカなんかは弁護士はぞろぞろいる。い過ぎるほどいるのですね。あれがいいかどうかという問題もありますけれども、こうやってある程度厳選して、今おっしゃったような試験を易しくして大勢採る、そういうのはよしあしなんで、弁護士の数をふやすのだったら、そちらの方はある程度一つのレベルにしておいて、一応検察については少し難しくするというか、そのかわり優遇するというような方策も考えられないわけじゃない。これはまさに思いつきでございますから、今急に言い出して、それをやれということではございませんけれども、一つの方策じゃないか。  ただ、やはり私が強調したいのは、社会の根幹になる者に対しては十分報いるべきである。別に皆さんのあれを言っているわけじゃないけれども、後で私は最高裁の判決をちょっと言いたいと思ったのですけれども、私は昭和三十五年の例の七条解散の問題を、また論文を書いていますけれども、あの判決を見たら、そう言っては悪いけれども、これが最高裁の裁判官の判決かと目を疑うような判決なんですよ。私は、これはまた後日、きょうはもう時間が。ございませんから……。  それで、たまたまダブル選挙が合憲であるという判決が出たわけですけれども、これのもとになっているのは三十五年の判決ですよ。きょう法制局を呼んだら、次に回してくれというので、これは改めて一般質問でも取り上げて何十分間でもやろうと思っております、きょうはもう時間がございませんから。そういうことでございますので、本当に司法の判断というのが社会の根幹に非常に関連するという意味で、私は今試験制度についてちょっと思いつきを申しましたけれども、これからどうやったら本当に人材が法曹界に来るかということについてよく検討していただきたいと思います。  もう質疑時間が終わりましたから、ひとつその辺の対策についての御決意を大臣からお伺いして、質問を終わりたいと思います。
  50. 林田悠紀夫

    林田国務大臣 先生おっしゃいましたように、司法官の試験と弁護士の試験を別にしておるような国もあるようでございます。あらゆる点を含めまして、司法に携わる人の地位が向上して司法界に入ってくれるように大いに努力をしてまいりたいと存じます。
  51. 安倍基雄

    安倍(基)委員 それでは、終わります。
  52. 相沢英之

  53. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 私は、法案に関連することは後で聞かしていただきたい、こう思うのです。  最初に、常日ごろ非常に関心を持っております証券取引法の運用に関連する問題から入っていきたいというふうにも思うわけです。  最初に、ちょっと抽象的になるかもわかりませんけれども、証券取引法の五十八条一号というか五十八条全体ですね、「禁止される不正取引行為」こうあるわけですね。これは具体的にどういうふうなときにこれに該当するのか、一、二、三あるわけですが。大変恐縮なんですけれども、御説明を願えないでしょうか。
  54. 松川隆志

    ○松川説明員 証券取引法の五十八条につきましては、不正取引の禁止という規定であるわけでございます。  それで、一号は「有価証券の売買その他の取引について、不正の手段、計画又は技巧をなすこと」という規定でございまして、インサイダー取引については、該当するとすればこの第一号が関係するのではないかというふうに学説上言われているわけでございます。  それから二号、三号は、いずれも有価証券の売買に関し、不正な表示をするとかあるいは虚偽の相場を利用するというような形で、有価証券取引に関し詐欺的な行為をすることを一般的に規定している規定であるというふうに言われております。
  55. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 いや、私の聞いているのはそういうことじゃない。それは条文を読めばわかることなんで、この条文に書いてある一、二、三というのは具体的にはどういうふうなことなんでしょうか、恐縮ですけれども、例をもってお示しを願えないでしょうか、こう聞いているわけです。
  56. 松川隆志

    ○松川説明員 この五十八条の規定につきましては、余り判例等はございませんが、昭和三十八年に東京高裁で五十八条一号違反という事件がございまして、この事件は価値のない有価証券をいわゆる店頭取引によりまして価値があるものというふうに相場をつくりまして、それで一般の投資家にその株券を売りつけて、いわゆる金銭を詐取したということでございますが、この判例におきましては、「有価証券の売買その他の取引について、詐欺的行為、すなわち、人を錯誤におとしいれることによって、自ら、または他人の利益を計ろうとすることである」というふうに言われております。  それから二号、三号につきましては、今のところ具体的な事件というのはございませんで、具体例を挙げるのはちょっと難しいわけでございます。
  57. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 法務省にお尋ねをしたいのは、今の五十八条と刑法の二百四十六条に詐欺の規定がありますね。これとの関係ですね。そうすると、この証取法の五十八条に入っているけれども、該当するけれども詐欺にならないという場合はあるのですか。あればちょっと具体的な例でお示し願いたいのですよ。
  58. 岡村泰孝

    岡村政府委員 まことに難しい問題でございまして、要するに詐欺罪というのは、人を錯誤に陥れて、錯誤に基づく処分行為によって財物を受取するという罪でございます。  これとただいま御指摘の証券取引法の罰則との関係がどうかということでございますが、具体的にこうだということはなかなか申し上げにくいところでございますけれども一般的に申し上げますと、やはりそこに錯誤に陥れるとかいう行為、あるいは錯誤に基づく処分行為、こういったものがあるのかないのか、そういうような点で構成要件としての一つの違いというものも考えられるのではなかろうかというふうに思います。
  59. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 だから私が言っているのは、証取法の五十八条には該当するけれども刑法の詐欺に該当しないという場合は、今の抽象的なあれじゃなくて、もう少し具体的に御説明を願えないでしょうかと聞いているわけですよ。最初から甚だ難しい質問でございましてなんて言っているのは、答える方がもう既に自分が負けているということなんですよ。だめだよ、そういうのは。そんなの何言っているんだ、そんなこと大したことないからというので、もう少し戦闘的にならなければだめだよ。と思うのですが、それを逆に言う場合はどうなのか。今言った刑法の二百四十六条には該当するけれども証取法には該当しないとか、こういう場合もあるのですか。それはどうなんだろう。
  60. 岡村泰孝

    岡村政府委員 ケースによってはあり得るだろうと思いますけれども、今のところ、それではどういうケースであるかということについてさらにお尋ねがありますれば、私としても今直ちに思い当たるケースは見当たらないわけでございます。
  61. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 これは、普通法と特別法みたいな関係になるのかとも思うのですがね。そうすると、証取法の五十八条でこういう規定がある。ところが、その後全然適用がないわけですか。どうなっているのですか、これは。
  62. 松川隆志

    ○松川説明員 この五十八条の適用問題につきましては、御指摘のとおり昭和三十八年の事件と、それからあと百二十五条、いわゆる株価操縦の違反行為で摘発されたような場合に、同時に五十八条にも違反しているのじゃないかということで、一応両方罪状として挙がったケースはございます。
  63. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 それは、後の方はたしか協同飼料ですか何かの事件だと思いましたが、そこで、せっかくこういう条文ができておるのに全然と言っていいくらい手を下さないのはどういうわけなのかということが問題なわけですね。これは告発をもって論ずべき罪に該当するわけですか。どうなっていますか、これは。
  64. 松川隆志

    ○松川説明員 告発は義務的ではございません。
  65. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 今の告発が義務的——義務的というと語弊があるのだけれども、義務的というのは訴訟条件という意味でしょう。それは関税法と間税法と両方あったかどうかちょっと忘れましたが、いずれにいたしましても、これは別に告発が要件じゃないわけですね。そうすると、なぜ検察当局はこういうふうなことについてやれないのですか。やらなかったのですか。それは条文自身が抽象的だとかなんとかというので問題があるということなんですか。どういうことなんですか。こういう例は幾らでもあるのじゃないかというふうに常識的には考えられるのですが、どうなんですか。今までやっていないのはどういうわけなんですか。
  66. 岡村泰孝

    岡村政府委員 証券取引法違反ということで検察が捜査、処理をいたした事件もあるわけでございます。ただ、御指摘の条文の関係につきましては、先ほど御説明のありました判例になっております一件があるわけでございますが、それ以外には私の承知いたしておるところでは、ないわけでございます。この種事件を検察が捜査いたしますにつきましては、やはり十分な端緒と申しますか、捜査の的確な端緒を得なければなりませんし、それに基づいて捜査をいたしましても、証拠が十分に集まる場合と集まらない場合とあり得るわけでございます。そういうような点から、本件については一件しか起訴した事例がないということになるものと思います。
  67. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そうすると、条文自身に問題があるのですかないのですか、どうなんですか。
  68. 松川隆志

    ○松川説明員 この五十八条の規定につきましては、ちょっと繰り返しになりますが、詐欺的不正行為を一般的に禁止した規定でございまして、インサイダー取引につきましても、取引が行われた状況あるいは具体的事実を総合的に判断した場合に、この規定を適用することも可能であろうということは、学説的に今言われているわけでございます。  しかし他方、五十一年に証券取引審議会、これは大蔵大臣の諮問機関でございますが、この審議会でいろいろと証券取引に係る不正行為について検討審議をした際に、証取法五十八条については、詐欺的不正行為を一般的に禁止した立法趣旨からいって、これを直ちに内部者取引にまで広げることには限界があるというような結論が出されたわけでございます。また、学説上におきましても、やはり刑罰規定としては構成要件が抽象的である等から、我が国においてこの規定を使って摘発を執行するには難しいという学説、意見もあるわけでございまして、そういう意味で、確かに構成要件が抽象的であるということは一つの問題であるというふうに言われております。
  69. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 構成要件が抽象的だと言えば、じゃ刑法の二百四十六条は具体的なんですか。どうなんですか。
  70. 松川隆志

    ○松川説明員 刑法のあれは私もちょっと専門でないのであれなんですけれども、五十八条につきましては有価証券取引に係る詐欺的行為を一般的に禁止した規定であるというわけでございまして、やはりできればこれを具体的に規定した方が、罪刑法定主義の観点から、一般国民にとって何をもっていわゆる罰せられるべき行為なのかというのをはっきりした方がいいという意見は、学説上ございます。それで、例えば五十八条と百二十五条の関係等の解説を読みますと、百二十五条というのはやはり個別具体的な、いわゆる有価証券取引を使った詐欺的行為である、いわゆる株価操縦の規定でございます。できればむしろその百二十五条で処罰して、そこにひっかからないけれどもどうしてもおかしい、明らかに万人が見ても詐欺的であるというものを五十八条で処罰するという、いわば特別法と一般法の関係にあるというふうに、これも学説上言われております。
  71. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 百二十五条の株価操縦、これ自身も構成要件が余り厳格過ぎて適用されにくいのじゃないか。だから日本の検察庁はほとんど、一件しか今までやってないのじゃないですか。それで問題は、証券取引法五十八条というのはアメリカ合衆国の連邦証券規制における詐欺禁止規定、とりわけ証券法十七条、証券取引所法十条(b)項、証券取引委員会規則十b−五ですか、これを基礎として立法された、こういうことが言われておるのですが、これは本当ですか。
  72. 松川隆志

    ○松川説明員 御指摘のとおり、アメリカの一九三四年証券取引所法十条(b)項及びそれに基づくSEC規則十条b−五、いわゆるテン・ビー・ファイブと言われておりますが、とほぼ同様の規定でございます。  それでアメリカにつきましては、御存じのように判例法の国でございますので、多数の判例の集積によりましてその適用範囲が拡張されているというふうに言われております。ただ、我が国の場合には、同様の解釈が可能であるかという点につきましては、いろいろと疑問なしとしないというふうに言われているわけでございます。それでアメリカにつきましても、近年この十b−五をある意味で無限定でいわば活用することにつきましてはいろいろ意見がありまして、インサイダー取引の定義につきまして、実定法上はっきり定義化しようという動きがございます。それで、現在議会に対し議員立法及びSECが提案をしておりまして、恐らく来年中にはこれが立法化されるのではないかというふうに言われております。
  73. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 それはおっしゃっているのは、恐らくD・ルーダーという人がSECの委員長になったのですか、この人の意見だと思うのですよね。この人は学者として、インサイダー取引の処罰対象を広くとらえるSECの姿勢に異を唱えてきた、こういうことらしいですね。この人の意見のことを今は中心に言われていると思うのですけれども、問題は、じゃアメリカで従来この証取法、ほとんど同じ規定ですね、それでアメリカでどんどんやられてきて、日本ではほとんど、全然と言っていいくらいやられていないというのは、具体的にどこに理由があるかということなんです。これはきょうの法案にも関係するのですが、検事の希望者が減ってくるということにも、ちょっとあれかもわからぬけれども関係があるわけですよ。検事になりたい人たちは社会正義の気持ちに燃えて、だから例えば涜職罪だとか、それから会社犯罪だとか、こういうような証券取引関係犯罪というふうなものをやりたいと思って来るのだけれども、全然と言っていいくらいやれない。やろうと思ってもつぶされてしまうというか、証拠が集まらないとかなんとかいってやられないというところが、検事の志望者がどんどん減ってきてしまうということの一つの原因になってきているのですよ。ここのところをよくお考えいただきたいと思うのですが。  だから、アメリカの場合は、この五十八条、アメリカの条文とは違いますけれども、それによって幾多の人が刑務所に入れられているということで、実刑を受けているということがありますね。そういう点をあなた方の方としては、大蔵省は別として、法務省はどの程度つかんでいるのですか、そういう事実関係について。それから、法務省としてはどこからつかむのですか。
  74. 岡村泰孝

    岡村政府委員 アメリカと日本との違いということになりますと、一つはやはりアメリカではそういった証券取引という専門分野におきまして、いろいろ違反と目される事実を調査するための機関と申しますか、こういったものが非常に充実しておるということが言えるのではなかろうかと思います。日本の場合、検察官一人だけでこういった事件を捜査、処理することは到底ないわけでございまして、そういう意味の国情の違いもあろうかと思うわけでございます。  また、インサイダー取引ということにつきましては、アメリカではそういった調査機関と申しますか、そういうものが充実しておりまして、いろいろ事件として処理していく中で判例的に固まっていくという面が一つあるわけでございます。ところが日本の場合は、先ほど来申し上げましたように、一件処理した以外にはないというようなことでございまして、判例上も固まっていないという点があるわけでございます。
  75. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 今おっしゃったのは、恐らくSECのことを言っておられるのだと思うのですね。これは二千人ぐらいおって、専門でやっていますね。アメリカの場合は、投資者保護というか自己責任の原則というか、そういうものをはっきり見きわめて、これを徹底的にというか、正義のためにもやらなければいけないということになっているのだけれども日本の場合はさっぱりやらないでしょう。これは今言ったように検察庁の体制が整わないということもあるのだけれども、あなたに悪いけれども大蔵省にやれと言ったって無理ですよ。だって、大蔵省の証券局なりその他の人たちがみんな証券会社に天下っているのでしょう。ほとんどそうじゃないですか。それで証券の規制をやれと言ったって無理な話なんだ。こんなことはできっこないですよ。だから、検察庁がしっかりしなければいけないわけですよ。  今はどういう体制になっているのですか。こういうふうな税関係なりあるいは証取法関係なりを全体としてやっていくのはどういう体制になっているのですか。まず警察警察は呼んでいないけれども警察は、ここでは恐らく警視庁もあるかもわからぬけれども、あそこの中央警察だけですか。検事の方はどういう体制になっているのですか。
  76. 岡村泰孝

    岡村政府委員 警察といたしましても、こういった経済事犯と申しますか、こういったものの取り締まりということにつきましては一つの重点を置いているところであると承知いたしております。  検察といたしましても、御承知のように東京地検、大阪地検には特捜部というものを置きまして、ここでこういった経済事犯なりあるいは知能犯の検挙、処理ということに努力いたしているところであります。
  77. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 東京地検の特捜部は一部、二部、三部に分かれているわけでしょう。三部がやっているのですか。何人くらいの体制でやっているの。今まで二部制だったものを今度は三部制にしたわけでしょう。これは主に三部がやっているのだというふうに言っていたと思いましたが、どういう体制でやっているのですか。
  78. 岡村泰孝

    岡村政府委員 三部制と申しますか、副部長が三人いるということでおのずから三つに分かれておるということであろうかと思います。  総勢何名かということでございますが、東京地検の特捜部、私正確に今知りませんけれども、三十数名くらいのところではなかろうかと思っております。これは正確ではございません。
  79. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そうじゃないのよ、僕の聞いているのは。全部じゃないの。この方に当たっているのはどのくらいいるかと聞いているのです。これは恐らく三係というのか、だれのところでやっているのかな、名前は言いませんけれども、今まで副部長は二人だったでしょう。去年ですか、今度は三人にしましたよね。そのうちの一人の人がやっているのでしょうけれども、その係は証取法だけやっているわけじゃありませんよね。脱税事件なんかもやっていることだと思うのですけれども何人ぐらいいるのかということは今でなくてもいい。僕の聞く範囲では、三十何人いるうちの三分の一ではなくて、もっと少ないでしょう。  なかなか難しいですね、勉強するのが。簿記から会計学から証券取引法から、いろいろな勉強をしなければならないからなかなかできないかもわかりませんけれども、しかしこれが検事の仕事なんですよ。こういうのをやらなくなっちゃうから検事のなり手が減ってしまうのよ。おもしろくないということになってしまうのよ。警察から送ってきた事件の壁塗りばかりやっているのでしょう。壁塗りというのは、知っているでしょう。知らないかな。あんなことじゃ、何のために検事になったのだかわからないということになってしまうのよ。何だということになってしまって、つまらないということになって、みんなやめてしまうのですよ。そうですとも言えないよね、あなたの方から。言えないだろうけれども、そういう点よく考えていかなければいけないと思うのです。  そこで、タテホ化学の例がありましたね。これについては、大蔵省なり法務省なりは、どういう事件でどこに問題があるのだということをどの程度把握しておられるのですか。
  80. 松川隆志

    ○松川説明員 タテホ化学の事件につきましては、御存じのように財テクで失敗して債務超過の事態になったわけでございますが、その発表される前に、発表は九月二日にされたわけですが、その前に非常に大量の売買が大阪証券取引所で行われた、それについてインサイダー取引があるのではないかということを調べたわけでございます。これは大阪証券取引所に命じまして、全取引を調べさせたわけでございます。  それで、その内容といたしましては、まず役員の中で六カ月以内の短期売買に該当する者が一名いた。そのほか二名ほどやはり一カ月以内に売買している者がいまして、これについてもいろいろと事情聴取したわけでございますが、これにつきましては、いわゆる内部情報を得て売買したということについては本人は否認しているわけでございます。  それから、阪神相互という銀行が直前に売却しているわけでございますが、これにつきましていろいろと調べたわけでございますが、これにつきましても銀行側は、いわゆる融資銀行を集めて説明会を開くということは事前に説明を受けたけれども、大量に損失をこうむったということについては全く説明を受けてなかった、ただいわゆる市場における取引等の状況が異常であったので、そういうものを総合勘案して売却したということで、内部情報を利用しての売却ということは否定しているわけでございます。  それで、あと一般投資家も一応全部調べてみたのですけれども、これにつきましては、直接相手方に聞くわけにいきません、調査権限がございませんので証券会社を通じて聞いた限りにおいては、いずれも相場観による売却であるということで、内部情報を利用しての売却ということについては証拠を得るに至らなかったわけでございます。
  81. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 一般投資家がタテホ株を買って、うんと急に下がっているわけですね、それを秘して売っているわけでしょう。だから一般投資家が非常に大きな損害をこうむった、こういうことは事実なんですか、事実でないのですか。
  82. 松川隆志

    ○松川説明員 おっしゃるように、一日と二日の日に買った投資家は評価損ないしキャピタルロスをこうむったことは事実だと思います。
  83. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 その場合、銀行なりあるいは会社は株が暴落しつつあるということは知っているわけですよね、ちゃんと前から社長会議なんかやったりして知っているわけですからね。それを一般投資家に知らせなければならない義務があるのですか、ないのでしょうかね、そこはどうなんでしょうかね。これは僕も疑問だと思うところがあるのですよ、確かに。それは会社の関係者としては、今株がこういうふうに下がっているというときならば、それを知っていてもそれを売って、損失をできるだけ少なくしなければならぬと考えるのが会社としての一つの立場でしょうからね。そうすると、その場合にどの程度のことを一般投資家に知らせなければいけないのですかね。今株が下がりつつあるんだ、近い将来、二、三日中にうんと下がるかもわからないんだ、そういうことを言ったら買いっこありませんからね。だから、それを隠して売るわけでしょう。そういう場合に、一体詐欺が成立する場合があるのですかないのですか、どうなんでしょうかね、これは。どうなんですか、法務省は。
  84. 松川隆志

    ○松川説明員 まずちょっと私の方から補足的に説明いたしますと、例えばうちの会社は債券取引で幾ら損をして、要するに債務超過になっているということをはっきり知ってからそれを売却するということについては、五十八条が最終的に適用できるかどうかは別として、いわゆるインサイダー取引に該当するということになると思います。ただし、今回のケースにおいては、銀行の方はそういう債務超過の状況であるということについては知らされてなかったわけでございます。明日融資銀行を招請してお話しするということしか、それは説明がなかったわけです。これはよその銀行も全部調べましたが、タテホ化学側はそういう言い方しかしなかったということでございまして、特段この銀行がどこか別のルートで調べない限りはわからなかった。  それから会社の役員につきましても、役員会で実はこういう事態になっているということは八月の下旬に通知したわけですが、実際の売却はその前だったわけでございます。したがいまして、役員会ではっきり役員に知らせる前に売却が行われているわけでございまして、これもどこか個人的なルートでうわさを聞いたとかそういう形で知っている場合は別として、役員についても内部情報をはっきり聞いて売ったということは認定できなかったわけでございます。
  85. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 今大蔵省からいろいろ説明がありましたけれども、大阪地検は特捜部があるわけですから、このことについては大阪地検としてはどうしたのですか。全然ノータッチだったのですか、あるいはどうもおかしいということである程度乗り出したというか、そういう状況にあったのですか。全然知らなかったのですか、どうなんですか、これは。
  86. 岡村泰孝

    岡村政府委員 タテホ化学の件につきましては、小林元常務の脱税事件につきまして神戸地検が告発を受けて、現在捜査をいたしている段階でございます。捜査の中身につきましては、申し上げがたいところでございます。
  87. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 今お話が出ましたアメリカの場合と日本の場合とで非常に違いますね。アメリカの場合はそれは人員が二千人以上いるとか、それからいろいろな判例の積み重ねがあるとか、いろいろありますけれども日本はそれはないというのだけれども、そうすると今後は一体どうするつもりなんですか、日本の場合は。今証券取引審議会か何か開かれているわけでしょう。そういう中でインサイダーの問題なり株価操縦の問題なり、証取法の改正全体についてどういうふうにしていこうというふうに考えているわけですか。それは法務省も入っているわけでしょう。それをお聞きするのですが、その前に、今あなたがタテホ化学の件についていろいろ説明されましたね、時間的な経過や何か。それが果たして事実であるかどうかということについては、私どもの方もよく調べます。どうも私どもの聞いているのとちょっと違うような感じがしますからね。これは事実は事実としてよく調べてみたい、こういうふうに思いますが、今の私の後のことについて、証券取引法の改正の問題に絡んでどういうふうな状況にあるのかという点については御説明をいただきたいと思うのです。
  88. 松川隆志

    ○松川説明員 証券取引法のこの五十八条の問題を含めまして、現在証券取引審議会におきまして不公正取引特別部会というものを設けて検討しているところでございます。御承知のとおり、やはりインサイダー取引ということは証券市場の信頼を失わせる行為でございますし、また、特に最近アメリカ、イギリスそれからフランス、スイスとか、そういう世界各国でこのインサイダー取引についての規制法を立法する動きが出てきておりますので、そうした動きも考慮しまして、五十八条をもっと活用できるような形にしていくという方向で現在検討しているわけでございます。  それから、そのほかいわゆる株価操縦等不公正な取引につきましてももっと規制を強化していくということを一つの審議テーマにして検討しているところでございまして、要すれば証取法の改正も行いたいということで、現在集中的に審議を行っているところでございます。
  89. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 それは、いつごろどの程度の結果が出るというふうに考えていいのですか。法務省から刑事課長も入っているわけでしょう。どういうわけで刑事課長が入っているわけなんですか。
  90. 松川隆志

    ○松川説明員 その特別部会の中心的テーマは、五十八条あるいは五十八条の別条みたいな形で、いわゆるもっと使いやすい刑事罰の規定にするということが主眼でございまして、やはり刑事罰の規定ということになりますと法務省と協議しながらやっていかなければいけないということで、メンバーに、委員法務省の刑事課長に御参加いただきまして、いわゆる商法学者、刑法学者等の中立的な委員とともに御審議いただいているというところでございます。  それから、一応時期的には、できれば新年に入って早々にでもいろいろと詰めていただきまして、次期通常国会にかけられるようなタイミングで証取法改正案を出したいということで、目下集中的に審議しているところでございます。
  91. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 もとへ戻って恐縮なんですが、インサイダー取引、それについて刑事罰の適用ができるようにしたいとか、いろいろな話がありましたね。そうすると、あなたの方で考えているインサイダー取引というものの定義はどういうふうに見たらいいのですか。
  92. 松川隆志

    ○松川説明員 現在審議中でございまして、具体的なイメージを申し上げるのはちょっと時期尚早なんですけれども、外国の立法例を見ますと、アメリカのこれから立法しようという法案等も参考にしますと、内部者についてやはり具体的な範囲をある程度、これは完璧に規定することはできないと思いますが、ある程度裁判官とか一般国民がイメージがわくような具体的な定義化を図りたい。いわゆる解釈の基準になるものをやはり置きたいということ。  それから、一つの問題としては、例えば情報というのはどういう情報なのか、あるいは未公開というようなことを中に入れるのかとか、いろいろ情報についての定義というか、範囲づけとか、そういうことが中心になると思います。  それからもう一つ、五十八条関係ではございませんけれども、百八十八条という報告義務の規定がございまして、実はこれが昭和二十年代に削除されたわけですけれども、これも復活するような方向で現在審議をいただいているところでございます。
  93. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 私は今、百八十八条がどういう経過で削除になったかということを聞こうと思っていたところなんですが、これはどういう経過なんですか。
  94. 松川隆志

    ○松川説明員 これは、当時証券取引委員会という独立委員会の形で規制をしていたわけでございますが、一つは、発行会社の方が、本来この提出義務者は役員、主要株主なんですけれども、実際問題、発行会社がそれを代行してやるような形になっていた、それで非常に報告の件数が多いということ。それから、証券取引委員会職員も非常に少なかったということで事実上活用されないままでいたということ。発行会社からの不満も非常にあった、事務を代行して煩瑣であるということで削除の要望が非常に強くて削除したというふうに聞いております。
  95. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そうすると、法務省は、この証取法の関係について資料はどの程度SECから来ているのですか、とっているのですか、どうなんですか。これは大蔵省に聞きたいのですけれども、SECの判例や何か日本でもとっている人がいっぱいいるわけですね。大蔵省に一体あるのかないのかもよくわからない。法務省に一体何があるのかもよくわからない。大蔵省は、関心を持っているけれどもそんなに深くない。法務省は、全くと言っていいくらい関心を持たない。ボウスキー事件だとかカウデンだとか、それからポスター・ワイテンスの事件だとか、どの程度法務省としては知っているわけですか。
  96. 岡村泰孝

    岡村政府委員 具体的事件につきまして私がどの程度情報収集等をしているかということにつきまして、今の段階で申し上げるだけのことは承知いたしておらないわけでございますが、参事官室、刑事課その他関係の部局におきまして、それぞれ必要な判例その他の情報収集等には努めているところであると思っております。
  97. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 判例も、SECの判例なんていっぱいあるわけですね。そういうのを何か日本では余りとってないようなことを言うのです。この前開いたら、定期的な年に一回のマニュアルは出るけれども、これは大して参考にならないとかなんとかという話なんですが、民間でも随分とっている人がいるわけでしょう。大蔵省はどの程度集めているわけですか。  法務省にお願いしたいのは、これは将来大きな問題になってくるのですよ。どこが大きな問題になってくるかということはここではちょっと省略しますけれども、問題になってくるので、もっと十分な体制を整えて勉強してもらいたいというふうに思います。  大蔵省はどの程度資料が集まっているのですか。
  98. 松川隆志

    ○松川説明員 アメリカの証券取引所法の関係の判例あるいはSEC規則につきましては、常時入手できるような体制がとれております。  特に、この証取審の審議が始まって以来、これについては全部法務省にも提供して、これは翻訳もしなければいけませんので非常に難しいのですけれども、翻訳作業やあるいはそれに対する解釈とかという作業、分析等を今共同でやっているところでございます。
  99. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 証取法の運用ということが絡んでくるのは、これが社会悪の根源なんですよ。だれからこういうことを聞いたかということはここでは言いませんけれども、私は政治献金が一つの政治的な害悪のあれだと思っていたのですが、そうじゃないんだと言うんだ。そんなのはあれだと言うんだ。株だよ株だよと言う人が相当いるのですよ、だれが言ったとか言いませんけれども。株をめぐっての不正というものが行われて、これが政治腐敗の大きな原因になっているのですよ。だから、これは今後も徹底的に究明していかなければいけない。きょうは第一回ですから、序論ということでお話をしたということですね。これはプロローグだな。  大蔵省がおっしゃったタテホ化学の事件の経過、これについては私がお話ししましたようによく事実関係を追って、どうも僕らが聞いているのとちょっと違うものですから、あれをします。研究させてください。  そこで、法案に関連して入りたいと思うのですが、どうもよくわからないのは、検事の志望者が非常に減っている、あるいは途中でやめてしまう、いろいろあります。それに絡んで、これはだれに聞いたらいいのか、官房長なんですか。本当は、矯正局長と保護局長も呼ぼうかと思ったのですけれども、余り気の毒だろうと思ってあれだったのですが、矯正局長であれ保護局長がなぜ検事でなければならないのか、そこら辺のところから聞かせてください。
  100. 根來泰周

    根來政府委員 従来からお答えしておるところでございますけれども法務省の所掌事務のうちには、司法制度に関する法令並びに民事及び刑事の基本法令の立案等の事務があるほか、訟務事件の遂行並びに検察官の人事及び研究、研修並びに検察事務官及び検察庁に関する事項法律的素養に関する事務が多いわけでございまして、そういうものを効果的に行うためには法律専門家としての素養、特に裁判官検察官の実務経験を有する者が必要だということで、いわゆる充職検事としてただいまお挙げになった矯正局長、保護局長等を検事をもって充てておる実情でございます。
  101. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 それは別に理由にならないのじゃないですか。法律の専門家といったって、行刑局長を小川太郎さんが昔やったことがあるでしょう。何も検事でなくてもいいのじゃないですか、どうなんですか。例えば矯正管区の区長、これは元検事がやっていたのが大分多かったですね。これは今は外しましたが、どうして検事でなくていいのか。それから更生保護委員会、これは今は東京だけが検事で、あとは検事でなくなったですね。これはどういう理由なんですか。検事は本来の仕事をもっとやるべきなんです。それがいろいろな役職の方に行ってしまっているのです。今の説明はよくわからないのですよ、どっちもそれは都合のいいように説明しているのだろうと思うけれども。矯正局長なり保護局長なりあるいは矯正局の中にある総務課長なり、その他なり保護局のあれなり、どうして検事でなければならないのか。そんなものは検事でなくたっていいじゃないですか、そのために一般職がどんどんいるわけだから、試験を受かった人もいっぱい入っているわけなんだから。そういうことになるんじゃないですか。東京の矯正管区の区長が検事でなくなった。もとは検事だった。そうすると更生保護委員会は東京だけが、関東ですか、検事だ。これはどういう理由ですか。
  102. 根來泰周

    根來政府委員 ただいま御説明申し上げたとおりでございますけれども、従来光職検事で運用しておったところを廃止したところがございます。これはやはりそれまでの実績に基づきまして、ただいま申し上げましたような、検事でなくても十分いけるという見通しをつけて検事でないようにしたわけでございまして、常々そういう見地から検討を加えているわけでございます。それじゃ現在残っている充職検事一般職に振りかえたらどうか、こういう議論がございますけれども、これも一挙にできるわけじゃございませんし、その都度その都度のいろいろの事務のやり方等に基づきまして、やはり検事であった方がよかろうという内部的な判断で現在まで続いておるように理解しております。
  103. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 私は、例えば官房の営繕課長がなぜ検事でなければならないのかというのがわからなかったのですよ。その人に聞いてみたのだ。その人は笑いながら答えたのですけれども、真実だと思うのだけれども、やはり検事でやっていた方がいいと言うのです。刑務所の移転だとかああだこうだというときに、検事が行って頭を下げてお願いすると、検事が頭を下げてくれたのだからしようがないだろうということになる、ほかの人が行って頭を下げたのではなかなか言うことを聞かないけれども、という話を漏れ聞いているわけです。いろいろあると思うのです。あるけれども、それほどまでに全体として——だからこういうことが起きてくるのですよ。矯正局長なら矯正局長をやる。前の矯正局長は二年いなかったでしょう、学者だからあれですけれども。立派な方ですけれども。だからその下の人事関係が、これは矯正局長というものを全くブラインドにすると言うと語弊がありますけれども、いろいろな面から私どものところへ来ているわけです。不満が相当あるわけです、もうこれ以上言いませんけれども。そういうようなことがありまして、そこがみんな腰かけみたいになっているのだよ、例えば矯正局長は。京都の検事正は今は腰かけじゃないですか。違うか。そうですとも言えないね。だけれども、実際はそういうふうになってここのところずっと続いている。東京の家庭裁判所の所長は高裁長官に行く腰かけみたいになっているのとこれは同じだよ。そういう人事のやり方はまずいのですよ、余り言いませんけれども。  そこで問題になってくるのは、検事の志望者がどうして減っているかということです。そこをどういうふうにあなた方は分析しているのですか。
  104. 根來泰周

    根來政府委員 これは御承知のことだと存じますけれども昭和六十年度までは検事の任官者は毎年ほぼ五十人程度を確保してまいりましたけれども、六十一年の三十八期司法修習生は三十四人、六十二年の三十九期司法修習生は三十七人ということで、ここ二年ばかりは激減しているのでございます。これに対しまして、司法研修所入所時の検事の任官志望者数につきましても、三十七期、いわゆる六十年度卒業生までは三十人台から四十人台でございましたけれども、三十八期は二十五人、三十九期は二十四人というふうに減少しておるわけでございます。御指摘の二年間は、検事は三十人台に落ち込んでおるのでございます。もとより、司法研修所入所時の志望がそのまま終了時の志望につながるものではございませんけれども、これが検事の任官者の基礎数ということでございますので、これが原因で落ち込んでいるということになろうと思います。  それで、その基礎数がどういうわけで減っておるかということについては、その理由ははっきりしないというのが実情でございます。これは推測でございますけれども、第一番目に、先ほど大臣答弁いたしましたように、司法試験の平均受験回数が六回、合格平均年齢が二十八歳という司法試験の現状から見まして、組織に入って活躍しようとする者は民間会社や他の公務員に流れてしまうという傾向があるのじゃないかというふうに思います。  それでは裁判官はどうか、あるいは弁護士の志望者はどうかということがございますけれども、そういう自由業とか独立性の強い職業につきましては、そういうことについて極めて強い希望を持っている者がございまして、そういう者が司法試験を受けているという現状にあろうかと思います。検事を志望して受験する者が極めて少ないものですから、この二年間に弁護士あるいは裁判官志望者を検事の方に希望を変えるということも極めて難しいことでございまして、そういうことで、検事の任官者が少ないのじゃないかということになります。  それから、一般的に任官時の年齢が高くなっておりますので、初任給を多少高くしていただきましても、他の分野に就職している同年配のそれと比較するとむしろ少ないということになります。そして、同年配の者はもうそろそろ中堅ということで働いているのに自分は末輩の検事、いわゆる駆け出しということになるわけでございます。また、弁護士に比すれば転勤が多いために住居が定まらない、子女の教育とか父母の扶養も困難で経済的にも恵まれていないという一方、仕事が多忙である、また、その言動は常に制約を受けて公私の生活が窮屈であるという、いろいろな原因があって検事の志望者が少なくなっているのではないかというふうに推測をしているわけであります。決定的な原因というのは、先ほど申し上げましたようにわからないということでございます。
  105. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 今官房長がおっしゃったことは、それは確かにそのとおりな面がたくさんあります。だけれども、問題はそういうことよりもむしろ検事になってもつまらないということなんですよ、つまらないと言うと言葉が悪いかもわからぬけれども。なぜつまらないかというと、第一線の検事の意見を聞いてごらんなさいよ。一つは、事件があると警察の事件の壁塗りなんですよ。警察から送ってきた事件をただもう一遍調べ直して、十日間の勾留期間だとすれば最後の一日か二日で調べているわけですよ。そして調書を取り直すわけですよ。警察の調書が十ページだったら、二ページか三ページの調書にするわけですよ。それだけの仕事なのよ、あとは公判に立ち会うのだけれども。公判に立ち会ったって、ほとんど事件は認めているからということもあるでしょう。だから、おもしろくないということが一つあるのです。  本当に社会正義に燃えてやりたいと思っても、そういう事件をやれないわけですよ。私がお話ししたような証券取引法の事件だとか会社犯罪だとか涜職事件だとか、そういうふうなものについては、ほとんどとは言わぬけれども、なかなかできないということなんですよ。なぜできないかということは、検事自身が今言ったように事件を十分に証拠を挙げて起訴しなかった場合に無罪になる。無罪になったときに自分がえらい責任をこうむってしまうということから、どうしても事件に憶病になってきているのですよ。そういうこともあって、どうもということになってくるのです。それが一つあるわけです。この辺のところはあなた方としてもわかっているのだろうけれども、そうですとも言えないから言わぬのでしょうけれども。  もう一つ不平不満がわいているのは、何だ、おれたちは田舎回りばかりされているじゃないか。上層部というか上の方の人は法務省と東京地検、高検との間ばかり行ったり来たりしているじゃないか。特別に田舎の検事正になって出ていって、また法務省に帰ってくる人は別ですよ。そういう人は別だけれども、そういう人もいるけれども、これは特別優秀な人です。だからそういうことから見ると、東京地検と法務省との間を行ったり来たりしている人ばかりうんとふえてしまっているわけですよ。そういう人たちは動かない、まあできるからだけれども。確かにみんなできますよ。だけれども、そういう人と比べてみるとおれたちはつまらない、何だ、ばかばかしいということになってきて、そういう不満が随分多いですよ。聞いてごらんなさいよ。そういう点がある。いろいろありますね。  それからもう一つは、最初から検事志望というのは確かに少ないですよ。だから、研修所の教官がいかにして検事志望者をふやすかということのノルマを課せられているわけでしょう。ノルマを課せられていて、自分が教官になっていて自分の教室から検事が出ないと、どうもこの教官だめだということになってきて成績が悪くなっちゃうからなかなか大変ですね、一生懸命やるのですけれども。いろいろ勧誘しているわけです。そういうのはいろいろあるのですけれども、あなたのおっしゃったようなきれいごとはきれいごととしてそれでいいのですけれども、今私の申し上げたようなことも一つの例なんですよね、声なんです。いろいろあるのですけれども。だから、もっと警察の壁塗りでない検事ということはできないのかな。これは刑事訴訟法を改正しなきゃできないの。供述調書の証拠能力を変えなければできないのかな。そういうふうなことはいろいろあると思うのですけれども、やっぱり壁塗りじゃかわいそうですよ。何のために司法試験に受かったのかわからないもの。そう私は思うのですよ。そういうふうなこと全体を含めて、どういうふうにお考えなのか。将来どういうふうにしていきたいのですか。
  106. 根來泰周

    根來政府委員 特に反論申し上げることはないのでございますが……(稲葉(誠)委員「どうぞ遠慮なく」と呼ぶ)壁塗りとおっしゃいましたけれども、別にその壁塗りを奨励しておるわけではないわけでございまして、事件が多いとかあるいは検事の人数が少ないというような実情から、警察事件の処理に追われておるという一面もあると思います。しかし、先ほど来いろいろ御指摘もございましたけれども、どの検事も事件をやりたいという熱意でやっておるわけでございます。それはやはり証拠的な問題とか事実上の問題とか、いろいろの制約でなかなかやれないというのが実情でございまして、これがいわゆる上命下服というようなことで上の者が抑えつけておるという実情については、そういう実情はないわけでございます。その辺はひとつ誤解のないようにお願いいたしたいと思います。  それから人事上の問題でございますが、自分を顧みていろいろ申し上げるとまた非常に語弊がございますけれども、現在、人事の公平ということで、まず初任者は希望庁へ置く。それから数年地方を回りまして、いわゆるA庁制度ということで、東京、大阪、神戸、京都あるいは浦和というところへ置くというようなことで、一つのローテーションを組みまして人事の公平を図っておるわけでございます。その間に人事の考査を行いまして、優秀な者はそれからだんだん自分の力で上がっていくというようなことでございます。  退職者についてもいろいろ調査いたしましたけれども、この者らがそれじゃ東京、大阪に勤務したことがないかといいますと、ほとんど勤務しておるわけでございます。そのうちの二割ぐらいが地方だけを回っているという実情はございますけれども、これらはやはり年配の関係とか家族の関係でむしろ希望して地方を回っておったという実情でございます。その人事の不満というのは、これは主観と客観は相当食い違うものですから、やはり自分は優秀だけれどもどうして地方を回っているかというような繰り言と申しますか、そういうことは当然出ることと思います。  最後に申し上げますけれども、司法研修所の教官についてそういうノルマを課しているということは、これはもう絶対にございません。これは要するに検事の任官者を多く確保するということが当然必要でございますので、司法研修所教官に努力をお願いしておりますけれども、決してそれで検事の任官者が少なかったから評価が下がるとかそういうことはございませんので、ひとつその辺は十分御理解いただきたい、こういうふうに存じます。     〔委員長退席、逢沢委員長代理着席〕
  107. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 ノルマを課すというのはちょっと言い過ぎで、俗語みたいなことですけれども、大変らしいですね。自分の受け持ちのところから検事が出ないとなかなか気を使うらしいですね。これ以上言いませんけれども裁判官だって同じですよね。自分の受け持ちの方から裁判官が少ないと、どうもなかなかということになるわけですね。いろいろあるのですけれども、もっと自由闊達な空気というものが法務省の内部に出るようなことでないといけないと私は思いますね。  いろいろ聞きますと、日本の制度というのは、本当にがっちり証拠が固まらないと起訴しないわけです。固まらないと起訴しない。だから、起訴した以上は何とかして有罪にしなければいけない。すると、公判で非常に焦るわけですよ。もし無罪になったら自分の責任をとらされるわけです。責任のとらされ方が前とは変わってきたにしても、これは人権侵害になる、捜査が不十分とかいろいろ責任をとらされるということもあるのだと思うのです。そうすると、がっちり固めてがっちりした証拠でなければ起訴しないということになってくる。それは一面いいことなんですよ。一面いいことではあるけれども、逆に見ると危ない事件には近寄らない、危ない事件はみんな落としちゃう、やらないということになってくる。  それは、よく聞きますと国賠法との関係があるのですね。国家賠償法の個人責任の関係や何かで、しっかりとした証拠があって確信があって起訴しない場合にはその個人が責任を問われる。そういうこともあって、がっちりとした固い捜査といいますか、固い証拠になってくる。そのことから受ける逆な意味での問題点もあるわけです。これは非常に難しいところですね。  日本とアメリカ、日本とイギリス、制度はみんな違うわけですから、私も今の制度を直ちに変えろとかなんとかということを言っているわけじゃない。私の言っていることも舌が足らずで誤解を招くといけないと思っておりますけれども、いろいろそういうふうなことがあります。だから、この委員会でももっと遠慮なくあなた方の方で発言してくださっていいのですよ。僕らだけが言論の自由を楽しんでいるというのはまずいので、あなた方だって言論の自由——ただ、議事録に載っかってしまうと本当のことを言えないというのでなかなか本当のことを言わない。だから議事録なしにでも、別の機会でも何でも遠慮なく本当の本音で、日本の全体の、刑事訴訟制度、刑事裁判制度あるいは検事のあり方、裁判官のあり方とか、裁判官のあり方は司法権の独立がありますから問題ですけれども、そういう点をもっと話し合う必要があるのではなかろうか、こういうふうに思っております。  時間が参りましたので、これで終わらせていただきます。     〔逢沢委員長代理退席、委員長着席〕
  108. 相沢英之

  109. 坂上富男

    坂上委員 大韓航空機事件あるいは南アフリカ航空機事故と、大変な被害が出ておるわけでございます。私は、この点に関しまして、直接結びつくのかあるいは別個なのかわかりませんが、日本捜査権について御質問を申し上げたいと思います。  まず、蜂谷真由美という偽造パスポートを持っておる事件について、法務省、検察それから警察庁捜査を開始されているのでしょうか。
  110. 国枝英郎

    ○国枝説明員 警察といたしましては、偽造旅券行使の容疑がございますので、捜査を進めております。
  111. 岡村泰孝

    岡村政府委員 警察の方で捜査を進めておられるところでございまして、検察といたしましても必要な連絡をとっているところでございます。
  112. 坂上富男

    坂上委員 捜査は、現在どのようなことが判明をしておるのでございますか。
  113. 国枝英郎

    ○国枝説明員 バーレーン当局に身柄を拘束されました男女二名につきまして、日本人名義の旅券を所持していたわけでございますけれども、いずれも偽造と見られるわけであります。したがいまして、警察といたしましては、捜査員をバーレーンに派遣いたしまして現地当局と情報交換に当たらせておりますほか、名前をかたられました東京在住の方から事情聴取を行っております。また、バーレーンの方からも資料を送られてきておりますので、これをもとに所要の国内捜査を行っておるところでございます。しかしながら、この男女両名の指紋でございますが、警察が保管いたしております指紋と照合いたしましたところ合致するものがないなど、まだ身元の確認には至っておりません。今後とも引き続きまして関連情報の入手、所要の国内捜査を進めまして、事案の真相の解明に努めたいと考えております。
  114. 坂上富男

    坂上委員 新聞の報ずるところによりますと、韓国の指紋にもない、日本の指紋にもない。しかし、指紋がないというだけで日本人でないというようなことは言えるのでございましょうか。
  115. 国枝英郎

    ○国枝説明員 私ども警察保管の指紋と照合いたしたわけでございます。したがいまして、先生御指摘のとおり、その結果をもって即日本人であるないという結論には至らない、かように考えます。
  116. 坂上富男

    坂上委員 それでは、今度は予防注射に対する証明書の偽造されておるものを所持している、こう言われておりますが、これはどの程度捜査されておりますか。  それからもう一つ、自殺をした男の人については、衣類の中に火薬が残っていた、こういう発表があるわけであります。しかも、この火薬は飛行機の爆発に結びつくか結びつかぬかということで、なかなか議論があるようなところでございますが、こういう点は一体どういうふうに見ていますか。
  117. 国枝英郎

    ○国枝説明員 まず第一の予防注射の件でございますけれども国内捜査を進めております関係上、この場での答弁は控えさせていただきたいと存じます。  第二の、けさの新聞に載っておりました火薬の件でございますけれども捜査の過程でいろいろなことが出ておるようでございますけれども、いずれにしましてもバーレーン当局の捜査の中身でございますので、この場での答弁もまた控えさせていただきたいと存じます。
  118. 坂上富男

    坂上委員 バーレーンの方には、捜査のためにどなたが行っておられるのでございますか。  それから外務省の方、やはり何らかの形でそちらへ行っておられるのですか。それとも、大使、公使の方で賄っておられるのですか。
  119. 国枝英郎

    ○国枝説明員 バーレーン現地には、三名の捜査官を出しております。
  120. 飯田稔

    ○飯田説明員 ただいまの増員のほかに、近隣公館から入れまして現在十一名で対処いたしております。
  121. 坂上富男

    坂上委員 そういたしますと、旅券偽造違反について、それから予防注射の証明偽造行使についてはどういう罪名でもって立件されておるのでございますか。  それとあわせまして、これと航空機爆発事故との結びつきはどのようにごらんになっているのですか。
  122. 国枝英郎

    ○国枝説明員 ただいま捜査を進めております容疑罪名につきましては、偽造公文書行使でございます。  第二点の韓国機の行方不明との関連につきましては、警察としてその原因を把握するには至っておりません。
  123. 坂上富男

    坂上委員 現地からの情報も入ってないのだろうと思うのでございますが、そういたしますと、この二人と航空機事故との関係は結びつきはあるのですか、ないのですか。
  124. 国枝英郎

    ○国枝説明員 警察といたしまして、いわゆる航空機事故と申しますか、航空機そのものがまだ発見されてないと承知いたしておりますけれども、その行方不明の事案とこの男女二名の結びつきにつきましては、把握はいたしておりません。
  125. 坂上富男

    坂上委員 そうだといたしますと、公文書偽造行使という、日本政府のパスポートが偽造されておるわけでありまして、これほど明白な犯罪がもうわかるわけでございます。  一方、韓国の飛行機の遭難については、まだこの二人と直接的な結びつきが全く出てないわけです。そうだといたしますと、これに対する捜査権は、やはり証拠の関係から見ても日本に第一義的にあると思われるのでありますが、それをきょうあたり、あるいはもう引き渡しになったかどうかわかりませんが、韓国側に引き渡すというようなことが言われ、日本引き渡し要求しないというようなことになっておりまして、これについて外務、法務警察、協議の上で決定をしたと言われておりますが、どなたとどなたがこの決定をして、どうしてそういう論議が出てくるのか、少し明白にお答えをいただきたいと思います。
  126. 飯田稔

    ○飯田説明員 この問題につきましては、現地十二月六日、日本時間にしますと十二月七日になりますが、バハレーン政府に対しまして、本件に関心がある旨、表明いたしました。  いずれにいたしましても、身柄に関する措置につきましては、最終的にはバハレーン政府の決めることであり、バハレーン政府の決定を尊重したいと考えております。
  127. 坂上富男

    坂上委員 犯罪があり、日本捜査をしなければならぬという立場にあるとするならば、身柄引き渡し要求をやったのですか、やらないのですか。
  128. 飯田稔

    ○飯田説明員 身柄引き渡しを請求するかどうかにつきましては、この問題は、状況を総合的に判断すべき問題であると思われますので、現在までのところ、そこまでには至っておりません。
  129. 坂上富男

    坂上委員 警察庁どうですか。犯罪があって、日本捜査しなければならない。場合によっては裁判にかけなければならぬ事案があるのに、何で身柄の要求をしないのですか。まじめに捜査しているのですか。ただ韓国側に渡すか渡さないか、優先するかどうかは、これはまた別の問題ですよ。何で要求しないのです。
  130. 国枝英郎

    ○国枝説明員 警察捜査いたしております偽造旅券行使の容疑にかかわる部分についてでございますが、いまだこの身元の確認ができないなどの事情もございます。こういう捜査結果等も踏まえまして、警察としましても、現在のところ、身柄の引き渡しを求めるか否か判断できる段階には至っておらないということでございます。
  131. 坂上富男

    坂上委員 どうも納得できませんが、犯罪があったら身柄の引き渡し要求するのは当たり前じゃないですか。ただ外交関係で、それから韓国側の被害が大変大きい、そのような国民感情を考慮して、韓国側が優先的に身柄を引き取って捜査されるのについては、日本韓国に優先権をお与えするというならわかるのでございます。なぜ捜査権までいろいろの客観的な情勢を考慮してやらなければならないのですか。お答えください。
  132. 国枝英郎

    ○国枝説明員 先ほど申し上げましたとおり、身元の確認ができていない、あるいは偽造ルートの解明もできていないという状況でございますので、引き渡しを求めるかあるいは求めないか、この判断ができる段階ではないということでございます。
  133. 坂上富男

    坂上委員 これ以上議論しても始まりませんが、日本にも裁判権があると思われるのでございます。したがって、それに対する捜査権もあると思われるのでございますけれども、早急に、明確にひとつ対処していただきたいと思っておるわけでございます。  これと同じものが金大中氏の拉致事件についてでございます。今、FBI方式で捜査が続けられていると言われておりますが、現在における捜査状況はどうなんですか。
  134. 国枝英郎

    ○国枝説明員 FBI方式とは言うまでもなく俗称でございまして、いわば長期に継続的に捜査を要するような特に重要な事件につきまして、少数の要員を割り当てまして捜査をさせるという方式を呼んでおるわけでございます。金大中氏事件につきましても、現在五名の捜査員を充てまして捜査させておるところでございます。  どういうことをやっておるかということでございますが、例えば関係者の洗い直してございますとか、既存の捜査資料の中で、再検討しあるいは深めなければならないようなものにつきまして逐次捜査していく、いわゆるつぶしの作業と呼んでおりますけれども、こういうこと。あるいは、今まで得られました情報あるいは捜査資料を再検討いたしまして捜査の活路を見出すというようなこともやっておるわけでございます。ただ、事件発生以来十四年を経過いたしておりますので、捜査推進上相当厳しい状況があるということは否めない事実でございます。
  135. 坂上富男

    坂上委員 この方式に切りかえてから、新しい捜査の進展はあったのですか。それから、新しい資料が回収できたのでございますか。ひとつこれも明確にしていただきたいと思います。  それから、この金大中氏拉致事件については政治決着が二度にわたってなされたと言っておるわけであります。金大中氏は、この政治決着を破棄してくれと強く要求しております。我が党も政治決着を見直すべきだ、こう言っておるわけであります。なぜかならば、御存じのとおり元KCIA部長が証言をいたしまして、五十五年当時は上の方から殺せと命令された、今回は、私の一存でやったというような報道がなされておるわけでございます。そうだといたしますと、新しい状況、証拠がやはり出たのではなかろうかとも思っております。そしてまた、そうだといたすならば、政治決着の見直しがこの中からなされてもいいのではなかろうかと思っておりますが、これは外務省なり警察ではどのような認識をされておりますか。
  136. 田中均

    ○田中説明員 お答え申し上げます。  これは政府の一貫した立場でございますけれども、政治的な決着につきましては、韓国側の公権力の行使が明白になった場合にはこれを見直すことがあり得るというのが立場でございます。  委員御指摘の李厚洛氏の問題でございますけれども、李厚洛氏自身が九月二十八日の記者会見において、自分が話したことと聞いた側との間にはニュアンスの差があり、インタビューで政府組織や公権力が介入したことを認めたことはないというふうに述べていると承知しております。そういう中で、政治決着の見直しを行う必要があるとは考えておらないわけでございます。
  137. 国枝英郎

    ○国枝説明員 まず、FBI方式に移行してから新しい資料の入手ができたかという御質問でございますが、この場で特段御説明申し上げるほどの資料、情報の入手には至っておりません。  第二点の李厚洛氏であったかと思いますが、先般の雑誌のインタビュー記事について、先ほど外務省からの答弁にもありましたごとく、その後の記者会見で、公権力の介入を認めたことはないというようなことを述べておるわけでございます。警察といたしましては、新しい捜査の進展の手がかりが得られるかどうかという点に興味があるわけでございますが、本人自身がその点を否定しておるという状況でございますので、この点についてとりたてて捜査の手がかりになるものではなかろう、かように考えております。
  138. 坂上富男

    坂上委員 さて、十二月十六日、韓国大統領選挙の投票が行われるわけでございますが、この見通しあるいは認識について、外務省はどのように見ているのですか。
  139. 田中均

    ○田中説明員 お答え申し上げます。  韓国大統領選挙につきましては、韓国国民にとっても隣国日本にとっても非常に重要な選挙である。特に明年の平和的な政権移譲に向けての非常に重要な出来事であるというふうにとらえております。  何せ他国の選挙に関することでございますから、公の場で見通し等を述べるのは差し控えさせていただきたい、かように考えます。
  140. 坂上富男

    坂上委員 どうでしょうか。韓国大統領選挙の結果により、金大中、金泳三、金鍾泌、盧泰愚さんですか、この四人が有力だと言われておるわけでございますが、この結果によって外交方針が変わると思われるのでございます。これについて今どのような対応をしているのですか。準備についてです。
  141. 田中均

    ○田中説明員 お答え申し上げます。  隣国韓国との関係を重視し、これを推進していくという外交の基本方針には変わりがないと考えております。もちろん外交につきましてはそのときどきの状況によって対応していく、個別の方針については対応していくということでございますから、将来に向けてどうなるかということをこの場で申し上げることは不可能ではないかと考えております。
  142. 坂上富男

    坂上委員 さて、そこで金大中氏あるいは金泳三氏が当選をされたような場合、この金大中氏の拉致事件について政府としては政治決着の見直しをやるのですか、やらないのですか。殊に金大中氏が当選すれば、彼は最近まで日本の政治決着を破棄すべきであると要求をしておるわけであります。どうされますか。
  143. 田中均

    ○田中説明員 お答え申し上げます。  私が先ほど御答弁申し上げましたように、韓国側の公権力の行使というものが明白になった場合には見直しをすることはあり得るというのが政府の一貫した立場でございます。
  144. 坂上富男

    坂上委員 そうすると、今のお話を聞いておりますと、あるいは金大中氏が当選すれば公権力による犯罪であるかどうかということがまたそこでわかるという意味ですか。
  145. 田中均

    ○田中説明員 私が申し上げました趣旨は、いかなる場合におきましても、公権力の行使が明らかになっているという材料が出てまいりましたときには、それを見直しすることはあり得るということを申し上げておるわけでございます。
  146. 坂上富男

    坂上委員 もう一つです。金大中氏が当選すれば、必ず韓国においてこの問題がある程度明確になるのじゃなかろうかと思うのでございます。外務省日本政府は、そういうようなことがあっても公権力の行使としての犯罪行為がなければしない、こうなるのですか。
  147. 田中均

    ○田中説明員 お答え申し上げます。  隣国の選挙のことでございますし、だれが大統領に当選するかどうかというようなことにつきまして推定いたすわけにはちょっとまいらないわけでございます。他方、私が申し上げておりますように、公権力の行使といった明白な客観的な材料というものが出てまいりました場合には、その立場を見直しすることはあり得るというのが趣旨でございます。
  148. 坂上富男

    坂上委員 これ以上になりますと水かけ論みたいになるようですし、また、外務省もなかなかお答えにくいようでございます。  この旅券違反の問題と金大中氏拉致事件の日本の対応というのは同じなのじゃないか、私はこう思うから二つを質問しているわけです。日本捜査権、まさに捜査権は主権の行使でございます。私は、こういうものが内外に向けてきちっと行われなければならぬ、こう思っておるわけです。どうも日本人の犯罪でない、かもしらない、だからバーレーン政府に身柄の要求をしない、こうおっしゃっておるわけでありますが、はっきりと日本旅券偽造されたわけでありますから、たとえ外国人であろうと日本捜査権があるわけでございます。ただ、これを優劣をつけるのについては外交上の問題があろうと思うわけであります。  同じく、金大中氏の問題についてもそうでございます。政治決着ということは外交上の必要があってやったのでしょう。だけれども、その被害者の当人が強く要求しておるわけであります。万々一金大中氏が当選した場合の外交の方針というものは、ちゃんと準備されているのだろうと思うのでございます。あるいは、金大中氏が当選しないというような確信をしているわけでもないのだろうと思うわけでございます。事は犯罪捜査にかかわるわけであります。犯罪捜査というものは、明確にきちっと正義が実現されるというのが犯罪捜査でございます。でありますから、私は、外交によってこれが著しく左右されるようなことがあってはならぬ、こう思っておるわけでございます。これは私の意見でございます。  ついでと言ってはなんでありますが、この間、新聞の報ずるところによりますと、法務、検察の合同庁舎の談合があったという通告が新聞社にあったそうでございます。その結果、建設省営繕部では調査をなさったそうでございます。そして、どうも談合あるいは批判を受けるようなことはなかったようだというようなことで入札がなされました。そうしたら、やはりその談合して落札者が決まっているんだというとおりの人が落札をしたそうでございます。これは計算をしてみますと、百分の一の確率なんだそうでございます。一体こういうようなこと、しかも社会正義を実現するという検察庁と法務省の建築、設備に対する談合の疑問なんでございます。  まず、簡単でいいですが、これを担当なさっておりますところの建設省の方がどの程度の調査をなさったのか。それから、公取がお見えだろうと思うのでございます。公取はこのことについてどの程度の調査、捜査をなさっておるのか、これもひとつお話をいただきたいと思っております。
  149. 恒松和夫

    ○恒松説明員 御説明申し上げます。  先生のお話のように、入札日の前日に、談合の疑惑があるとの報道が一部の新聞にされました。営繕部にとりましては初めてのことでございますし、慎重に対処しなければならないということで、指名業者の責任者を呼んで慎重に事情聴取をいたしました。そのために入札予定を延期いたしましたが、事情聴取いたしました結果、報道されましたような談合の事実はないと判断できましたので、十二月二日に入札を行ったわけでございます。
  150. 菊池兵吾

    ○菊池説明員 お答えいたします。  公正取引委員会の違反被疑事件にかかわります調査の実施の有無等につきましては、従来から原則として答弁を差し控えてきておりまして、御指摘の件につきましても、現時点におきましては答弁を差し控えさせていただきたいと思います。  なお、一般的に申し上げますと、当委員会としましては、官公庁発注工事の入札談合問題につきましては情報収集に努めておるところでございまして、具体的端緒に接した場合には所要の調査を行いまして、違反事実が認められる場合には厳正に対処する所存でございます。
  151. 坂上富男

    坂上委員 公取は資料収集しているのですか。
  152. 菊池兵吾

    ○菊池説明員 お答えいたします。  資料の収集には努めております。
  153. 坂上富男

    坂上委員 建設省、百分の一の確率が当たると思いましたか、それとも、調べた結果は百分の一の確率だから必ずしもそういう諸君が落札するなどと思ってなかったのですか、どっちなんですか。
  154. 恒松和夫

    ○恒松説明員 御説明します。  発注者といたしましては、先生の今の御質問につきましては大変お答えしにくいわけですが、確率としてはあるというふうに認識しております。
  155. 坂上富男

    坂上委員 これは朝日新聞の記事でございます。百分の一の確率は当たるとも思った、こう言っているのですよ。読みますと、こう言っているんだ。どなたかしら、部長さんだ。あなたの上がな。「落札の確率は一件が十分の一。それが二件なので単純計算で百組の組み合わせが考えられるが、フタを開けたらタレ込みがどんピシャリ当たっていたことになった。霞が関につくる大きな工事であり、かつ他省庁からの依頼工事であることを重視し、慎重に調査をし、その結果疑惑を招くことはなかったと信じてきただけに、ただ驚くばかりだ」こう言っている。びっくりしているのです。あなたは平然としているようだが、どっちなんですか。
  156. 恒松和夫

    ○恒松説明員 私も就任して日が浅いわけでございまして、こういう件は初めてのことでございますので、そういった意味では驚いているというふうに申し上げられるかと思いますが、先ほど申し上げたように、可能性としてはあることだというふうに申し上げたわけでございます。
  157. 坂上富男

    坂上委員 さて、大臣、今法務、検察の合同庁舎が国民から見ると疑惑の目で見られているわけであります。しかも、平然と百分の一の確率はある程度当たるかもしれないなどというようなことがあるわけでございますが、これはもう日本捜査力をもって捜査すれば、一体何が行われたかぐらいはわかると思うのであります。落札者と契約なさったそうでございますが、やはり検察あるいは法務も含めまして正義を実現する役所でございまして、疑惑の目を持たれるような工事が行われるところに私は大きな問題があると思うのでありますが、この問題についてどういうふうな御感想なりお考えがおありなのか。これはもうこれで終わりとするのですか、それとも今後厳重にもっと本格的な調査、捜査が行われるのですか、どちらかお答えください。
  158. 林田悠紀夫

    林田国務大臣 談合はあってはならないものと考えております。ただ、この問題は、法務省といたしましては合同庁舎の建設をすべて建設省にお願いをしておりまして、建設省が実施に当たっていただいておるということでありますので、今後の推移を見ながらいろいろ検討をしていきたいと存じます。
  159. 坂上富男

    坂上委員 公取と建設、どうですか。
  160. 菊池兵吾

    ○菊池説明員 お答えいたします。  公正取引委員会としましては、具体的な情報を集めた結果によりまして調査をするかどうか決めることになるかと思います。
  161. 恒松和夫

    ○恒松説明員 今後とも法令に従いまして厳正に発注を行いたいと思っております。また、業者に対しましては、現場説明等におきまして疑惑を招くことのないように十分指導してまいりたい、かように考えております。
  162. 坂上富男

    坂上委員 時間がありませんからこの程度でこの問題は打ち切りますが、先刻申しましたようなことでございまして、このごろちょくちょくこういうことがあるわけであります。その結果談合があったかなかったかというようなことがあいまいになっておるわけでございまして、事は法務、検察の合同庁舎にかかわることでございますから、厳重に調査、捜査の結果をお聞かせいただくことを期待したい、こう思っております。  さて、今度はコンピューター登記についてでございますが、先般私はコンピューターの登記についてお聞きをいたしまして、民事局長から御答弁がありました。前国会でコンピューター登記について質問書を出しまして、御回答がありました。どうもその御回答を見ておりますと大変抽象的な回答でございますので、ずばずばと答えていただきたいのです。  まず最初に、商業登記、法人登記のコンピューター化というのはいつから始められるのですか。
  163. 藤井正雄

    ○藤井(正)政府委員 法務省における登記事務のコンピューター化の研究開発、これは不動産登記の方が先行いたしておりますので、商業登記関係につきましては立ちおくれている状況にございますが、現在システム開発を鋭意進めているところでございます。私どもといたしましては、できるだけ早期にこれを完成いたしまして実験の運びに持っていきたい、こういうふうに考えている段階でございます。
  164. 坂上富男

    坂上委員 では、登記のコンピューター庁らしいですが、明年はどことどこを予定しているのですか。そして、その実施はもう明年から行われるのですか。
  165. 藤井正雄

    ○藤井(正)政府委員 御承知のように、昭和五十八年から東京法務局板橋出張所において、現行の不動産登記の事務処理、これは引き続き行いながらそれと並行してコンピューターによる処理も実験的に進めてまいりました。並行して処理をしてきたわけでございます。したがいまして、これをコンピューター一本で処理をするということになりますと、当然不動産登記法の改正をお願いしなければなりません。これは次の通常国会でお願いをしたいというふうに考えておりますが、その不動産登記法が改正されました後、その第一号としてこの板橋出張所における不動産登記について、ブックレスのシステムによる登記を、コンピューターによる処理を行いたい、こういうふうに考えております。
  166. 坂上富男

    坂上委員 そうすると、その板橋だけですか。大体その実施の時期は、実務ができるのはいつごろになりますか。それから、コンピューター庁は毎年順次できていくのですか。説明は簡単でいいです。
  167. 藤井正雄

    ○藤井(正)政府委員 コンピューター処理を行いますためには、現在ございます、ブックの形になっております登記簿冊に入っている登記情報を登記ファイルに移行しなければなりません。それで、その移行作業をこれから始める。板橋出張所は既に実験的にかねてから一部について行ったわけでございますが、そのほかの庁はこれから段階的に始めていく。まずこの移行作業が先行しなければならないわけでございまして、当面、東京、大阪各一カ所においてすぐにも今着手しようとしているところでございますし、本年度内には名古屋、仙台にも一庁ずつ移行作業を始めたい、こういうふうに考えております。
  168. 坂上富男

    坂上委員 これは大体十五年ぐらいかかると言われているのですが、登記に関する証明書、これは例えば東京で新潟の証明書をとるようなことにできるんだというお話ですけれども、大体この範囲なんかはどういうふうになっておるのですか。
  169. 藤井正雄

    ○藤井(正)政府委員 これは段階的に順次全国の登記所に及ぼしていくという考えでございまして、まあ十五年、そういうふうに私ども申し上げておりますが、大体今世紀いっぱいはかかる、こういうことでございますけれども、コンピューター化が実現いたしました登記所相互間におきましては、そういう交換的なシステム、つまり東京の登記所で新潟の登記所にございます登記の登記事項証明書を請求することができる、こういうふうに相なります。これはコンピューター化された登記所相互間ではそういうことが可能になるということで、これがコンピューター化の最大のメリットであろうか、こういうふうに思っております。
  170. 坂上富男

    坂上委員 登記申請はどうなりますか。例えば東京の法務局に新潟の物件を申請しても新潟の法務局に登記ができるようになるのでございますか。  それから、二の末端機、例えば銀行で末端機を据えつける、司法書士さんが自分の事務所で末端機を据えつける、それによって証明書がいただけるようになるのですか。
  171. 藤井正雄

    ○藤井(正)政府委員 先ほど申し上げましたのは謄抄本、現在で申しますと登記簿の謄本あるいは抄本の請求、これを乙号事務というふうに私ども呼んでおりますけれども、乙号事務についてはそういうふうに他の登記所の登記事項証明書を別の登記所で請求できるようにするというふうに考えているわけでございますが、今委員が申されました登記の申請は、これは私どもの方では甲号事務と呼んでおりますけれども、これにつきましては、現在のところ、B登記所の管轄に属する物件についてA登記所に申請をするということは考えておりません。  これは、登記というのは順位が生命でございまして、先に登記をした者が優先順位をとるということになります。現在のコンピューターの技術水準のもとでは、ある登記所に先に申請をしたけれども、コンピューターの故障があるとか通信回線がどうとかなるということで、その物件が所在します登記所のコンピューターの方に即時に入力できない。その間に別の登記所で申請があって、そちらの方が先に入るというふうなことになりますと、登記の事務が全く根底から建前が崩れてしまいます。そういう懸念もございますし、あるいは表示登記というもの、これは物件の物理的な状況をあらわす登記でございますけれども、これは実地調査が必要であるとか、あるいは地図は一元的に管理しなければならないとか、いろいろな制約がございまして、別のところで登記の申請をするということは適当でないというふうに考えております。
  172. 坂上富男

    坂上委員 閲覧はどうでしょうか。
  173. 藤井正雄

    ○藤井(正)政府委員 現在の閲覧にかわります仕組みとしまして、登記事項要約書というものを出すというふうなことが考えられております。もし文字どおり閲覧をする、そのままコンピューターのシステムのもとでも閲覧をするということになりますと、お客さんが大勢参りますから、いわゆるディスプレーを数多く登記所に備えつけなければならないとか、その操作を一々指導しなければならないということになりまして、これは経費的にも事務処理上も非常に大変なことになりますので、むしろ登記事項要約書を出すということを現在考えておるわけでございますが、これをも他の登記所でもって請求できるということになりますと、これはどうもシステムとしての負担がかなり過重になる。したがって、現時点では閲覧にかわります登記事項要約書を他の登記所で請求できるようにするというところまでは進み得ないように思っております。将来の検討課題であろうというふうに考えております。
  174. 坂上富男

    坂上委員 時間がありませんので急ぎますので、御答弁も簡略で結構でございます。  二つですが、コンピューターについて。一つは、民事行政審議会の答申とパイロットシステムの評価委員会との関係についてです。評価委員会の評価ができないうちに行政審の答申があったようでございます。普通、このパイロットシステムの評価委員会の評価があった上で民事行政審議会の答申があっていいのじゃなかろうかと思うのでありますが、この関係はどういうふうに理解をしたらいいのか、ひとつお答えをいただきたいと思います。  それからいま一つ、八十四国会の衆議院及び参議院におきまして、登記のコンピューター計画について附帯決議がなされておるわけであります。「日本司法書士会連合会を含む関係者の意見を尊重しつつ、慎重に検討しここう附帯決議がなされておるわけでございますが、この処理法の成立のときは全く相談がなかったそうでございますが、こういう点についでどのようにお考えになっておるのか。忘れていたわけではありませんでしょうが、もうちょっと関係団体とのお話し合いがきちっとその都度なされてしかるべきでございまして、国会の附帯決議を何か無視されたような感じもしてならないわけでございまして、法務省は自分の都合の悪いときは御相談するけれども都合のいいときには相談しないなどというようなことがあってはいかぬ、こう思っておるわけでございますが、この点いかがでございますか。
  175. 藤井正雄

    ○藤井(正)政府委員 民事行政審議会は、これはいわゆる円滑化法、電子情報処理組織による登記事務処理の円滑化のための措置等に関する法律、これの規定に基づきまして法務大臣が民事行政審議会に諮問をいたしまして、コンピューター化をするに当たりまして制度の基本にかかわる部分について御答申をいただいたものでございます。評価委員会は、これは現に板橋で行っておりますパイロットシステム、これの具体的な登記手続あるいは職員の勤務条件などについて、そういう具体的な事項について評価委員会でもって評価をお願いしているところでございます。  後の方のお尋ねの点でございますが、日本司法書士会連合会、ここからは代表の方が民事行政審議会の委員として、また幹事としてお入りいただいておりまして、その中で十分に御意見を伺ってこの答申に至ったものというふうに承知をいたしております。なお、このシステムは今後とも日本司法書士会連合会の方と十分な意思疎通を図りながらやっていかなければならないということはまことにそのとおりでございまして、そのようなつもりで運営をいたしてまいりたいと思っております。
  176. 坂上富男

    坂上委員 今度は最高裁にお聞きをします。  いわゆる最高裁民事局見解なるものについて、これは裁判官の独立を侵す裁判統制ではないのかという疑義が出されておるわけであります。そして、その顕著なものがいわゆる河川裁判であります。そしてまた、原発裁判であります。一体最高裁はどのようなお考えでこういうことをなさるのか、簡単でいいがお聞きをしたいのであります。  時間がありませんので、指摘だけ申し上げます。  「今回のケースでは事務総局側の勇み足は否定できないのではないか。」こういうふうな指摘が報道されておるわけでございます。かつて、福島裁判長に対して上級裁判官からの私信がなされたことがあるわけでございます。ちょうどこのようなことがこの事務総局民事局から、関係裁判官が集まりまして最後の締めくくりを見解を示してなさるというようなことになりますと、もちろん裁判官はどんな判決をしてもいいでしょうが、やはり最高裁民事局がこういうことをきちっと見解を示されるということになりますと、それに反することは裁判官といえどもなかなか勇気の要ることになるんじゃなかろうか、こう思っておるわけでございますが、どのような御見解でございますか。
  177. 上谷清

    上谷最高裁判所長官代理者 最高裁判所の事務当局が裁判官の会同あるいは協議会を開催いたしておりますのは、各裁判官が事件を処理する上であるいはまた訴訟を運営していく上で関心を持たれている事項につきまして、裁判官相互の研究の場を提供するという趣旨で行っているものでございます。その席で各裁判官が相互に意見を交換するわけでございますし、また、私ども民事局あるいは行政局がそれぞれの問題について場合によっては意見を述べるということもあるわけでございますが、私どもが申し上げます意見も事務当局の一つの参考意見にすぎない。各裁判官のいろいろおっしゃる意見と全く同じでございまして、それぞれの意見の交換の場で一つの意見として申し上げているにすぎないものでございまして、例えば裁判を統制する趣旨で行っているのではないかというのは全くの誤解というほかないわけでございます。  もう委員もよく御承知のとおり、裁判官は若いころからすべて独立して職務を行うことに自覚と誇りを持って仕事をいたしておるわけでございます。協議会で述べられたいろいろな意見は、それぞれの意見としてお考えになり、それぞれの裁判官が正しいとお考えになるところに従ってまさに独立して訴訟の判断をされるわけでございまして、それが例えば事務総局から述べられた意見であるからといって、それに拘束されるとかそれに遠慮をするとかいうふうなことは考えられないところだというふうに考えております。したがいまして、そのような協議会を開催することが裁判の独立を害するとかあるいは公正を害するとかいうことを疑わしめるようなことになるというふうなことは全くないというように考えておるわけでございます。
  178. 坂上富男

    坂上委員 担当裁判官が集まっているのではありませんか。
  179. 上谷清

    上谷最高裁判所長官代理者 この協議に参加する裁判官は、それぞれ諸協議に参加する庁で適当と思われる方を選んでいただいておるわけでございまして、それぞれの協議会のテーマにふさわしい、なるべく経験の豊富な裁判官を選んでいただいておりますので、中には当面テーマになっている問題に関連する事件を担当している方もおられましょうし、そういうものを直接は担当していない裁判官もいるということでございます。
  180. 坂上富男

    坂上委員 要望をいたしておきたいと思います。  「一線の裁判官が個々の訴訟で難問に直面したとき、その求めに応じて最高裁事務総局が一般論の形で見解を述べたり、資料を提供したりすることは認められている。しかし今回の見解を見ると、」民事局見解ですが、「学説の紹介や討論のまとめの域を越え、事務総局側の意見をおしつけようとする姿勢が感じられる。」こう言っておるわけであります。やはり国民の疑惑を招くような裁判官協議会であってはならぬと私は思います。それから、民事局見解であってはならぬと思います。それこそ一人前の裁判官がみずからの良心と憲法に基づいて裁判をなさるわけでございますから、ことさら集まりまして、一般的、抽象的な議論をなさるのは結構でございまするけれども、こういうように踏み込んだ見解を最高裁民事局の名前でされるということになりますと、私は大変な影響を及ぼすのだろうと思うのであります。  これはもう在野法曹の中では大変な意見が述べられております。また、この新聞の報ずるところによりますと、元の裁判官判事までがこういうあり方に問題を投げかけて批判をしておられるわけであります。しかもその表題としては、「やっぱりあった最高裁の裁判官統制」というような見出しがなされておるわけでございますので、ぜひともこのような疑いのないような対応をしていただきますことをお願いいたしたいと思います。  なお、まだ半分程度しか終わってなくて、各省からもわざわざ来ていただいておるわけでございまして、せっかく御準備、せっかく出席をいただきながら御質問ができなくて恐縮でございましたが、次回に回させていただきますので、質問できなかった各省庁におわびを申し上げまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。
  181. 相沢英之

    相沢委員長 午後一時三十分再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後零時四十六分休憩      ————◇—————     午後一時三十七分開議
  182. 相沢英之

    相沢委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。冬柴鉄三君。
  183. 冬柴鐵三

    冬柴委員 私は、昨年、昭和六十一年十二月九日にも、昨年度の裁判官報酬等及び検察官俸給等の改定のための法改正に当たり詳細な質疑を行いました。したがいまして、今回は、その際問題として指摘を申し上げた諸点に絞って伺うことといたしたいと思います。  まず初めに確認をしておきたい点は、若干概念法学的な議論で恐縮ではございますけれども裁判官報酬につきましては憲法の七十九条六項及び八十条の二項に「裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、これを減額することができない。」このように定められておりまして、これを受けて裁判所法第五十一条には「裁判官の受ける報酬については、別に法律でこれを定める。」このような規定になっております。ここに言う法律、これが今次改正の対象とされている昭和二十三年法律第七十五号の裁判官報酬等に関する法律である、このように理解をしているのでありますが、これでよろしいでしょうか。
  184. 櫻井文夫

    櫻井最高裁判所長官代理者 ただいま委員がおっしゃいましたとおり、今回改正審議されている裁判官報酬等に関する法律裁判所法五十一条に言われている法律であるというふうに理解いたしております。
  185. 冬柴鐵三

    冬柴委員 そこで、この法第一条では「裁判官の受ける報酬その他の給与については、この法律の定めるところによる。」このように定めておりまして、先ほど挙げました憲法及び裁判所法では報酬についてのみ言及していたところを拡張をしまして、本法におきましては、報酬以外のその他の給与についてもこの法律で定める、このように規定をいたしまして、いわゆるその他の給与についても法律事項としていると私は理解しておるのですが、その点につきましても御確認をいただきたいと思います。
  186. 櫻井文夫

    櫻井最高裁判所長官代理者 この裁判官報酬等に関する法律の第一条では、ただいま委員仰せのように、「裁判官の受ける報酬その他の給与については、この法律の定めるところによる。」ということになっております。その法律の定めというものの一つが、この法律の第九条にございます報酬以外の給与の定めであろうというふうに考えるわけでございます。第九条の定めでは、「報酬以外の給与は、」ずっと後ろの方に参りまして、「最高裁判所の定めるところによりこれを支給する。」というふうに定めてありますので、これによってこの法律の定めがさらに最高裁判所の規則に委任されたというように理解しているわけでございます。
  187. 冬柴鐵三

    冬柴委員 しかし、私は、この法律で言っているのは、報酬とかその他の給与とかを区別して論ずることはなく、裁判官がその職務の対価として受ける金銭給付についてはすべてこの法律の定めるところによる、この法律に根拠を有する、そのような理論的な帰結に至る、このように考えているのですが、その点についてはどうでしょうか。
  188. 櫻井文夫

    櫻井最高裁判所長官代理者 裁判官が受ける給与、これは報酬はもちろん含まれるわけでございますが、それ以外の手当につきましても、すべてこの法律がその根拠になっているということは、これはただいま仰せのとおりでございます。
  189. 冬柴鐵三

    冬柴委員 裁判官の初任給調整手当、これは現在最高額は幾らになっていますか。
  190. 櫻井文夫

    櫻井最高裁判所長官代理者 裁判官の初任給調整手当に関する規則によりまして、最高額は七万三千六百円でございます。
  191. 冬柴鐵三

    冬柴委員 そうすると、この授権規定が法第九条一項による、こういうふうな理論構成ですか。
  192. 櫻井文夫

    櫻井最高裁判所長官代理者 法第九条では、裁判官を三つのグループに分けております。最高裁判所長官最高裁判所判事及び高等裁判所長官という一つのグループ、それから判事及び簡易裁判所判事で四号以上の報酬を受ける者、これが一つのグループ、それからそのほかにその他の裁判官、つまり判事補簡易裁判所判事の五号以下の報酬を受ける者のグループ、この三つに分けているわけでございます。その一番最後のものにつきましては、第九条の定めでは、「一般の官吏の例に準じて最高裁判所の定めるところにより」報酬以外の給与を支給すると定めているわけでございます。その一般の官吏の例に当たると考えられます一般職職員給与等に関する法律がございますが、その第十条の三におきまして初任給調整手当の定めがございます。判事補に支給されております初任給調整手当についての定めは、この一般職に支給されている初任給調整手当の例に準じて定められたものでございます。
  193. 冬柴鐵三

    冬柴委員 判事補に支給される初任給調整手当に関して、ほかにどういう法律がありますか。今挙げられた初任給調整手当に関する給与法十条の三以外にもありますか。
  194. 櫻井文夫

    櫻井最高裁判所長官代理者 国家公務員の初任給調整手当は、一般職給与法にございます第十条の三の定めのみでございます。これ以外には支給を受けている官職はないものと考えております。
  195. 冬柴鐵三

    冬柴委員 この給与法十条の三、読めばいいわけですけれども、それは何項があると思うのですが、法文はどういうふうな構成になっていますか。
  196. 櫻井文夫

    櫻井最高裁判所長官代理者 一般職給与法の十条の三の第一項に定めがあるわけでございますが、要するにその考え方としては、採用の困難な職種について初任給調整手当を支給するという考え方でできております。  第一項は三つの号に分かれているわけでありますが、第一号は「医療職俸給表(一)の適用を受ける職員の官職のうち採用による欠員の補充が困難であると認められる官職」が例として挙がっております。第二号といたしましては、「医学又は歯学に関する専門的知識を必要とし、かつ、採用による欠員の補充が困難であると認められる官職」、それから第三号といたしまして、「前二号に掲げる官職以外の官職のうち特殊な専門的知識を必要とし、かつ、採用による欠員の補充について特別の事情があると認められる官職」というように挙がっておりまして、この例示と申しますか、列挙された官職から大体おわかりいただけると思いますが、国家公務員として採用することに困難があるために初任給調整手当を支給するのが適当であるというような官職が考えられているわけでございます。
  197. 冬柴鐵三

    冬柴委員 今読み上げられた一号ないし三号についてですけれども、この判事補の採用は、定員が足らないとか採用が困難であるとか、そういう事情があるのですか。  それからもう一つは、その各号にはたしか金額が決まっていたように思われるのですが、その点についてもあわせてもう一度御説明いただきたいと思います。
  198. 櫻井文夫

    櫻井最高裁判所長官代理者 まず判事補の問題でございますが、これは昭和四十六年に初めて設けられたわけでございます。そのときと申しますか、そのころと申しますか、判事補の採用につきまして、司法研修所における司法修習生から判事補任官者を確保していくに当たって、その志望者がだんだん低下していくというような事情がありましたためにこのような手当の必要が感ぜられたわけでございます。その後、採用状況は大体上向きになっていたわけでありますが、昨年に至りましてまたその採用について志望の低下といったような事情が見られましたために、また金額の増額ということを考えたというのがこの手当の経緯でございます。  ただいま仰せの一般職給与法に定めております初任給調整手当の金額でございますが、この第一号で挙げてあります金額は月額二十三万五千円でございます。それから、第二号で挙げてありますものが月額四万二千五百円でございます。それから第三号は月額二千五百円と、このようになっております。
  199. 冬柴鐵三

    冬柴委員 その給与法では、調整手当についての最高限というものが今読み上げられたように具体的な金額として法文の中に定められておりまして、したがってこれは国会における論議というものを経由をいたしまして、そして具体的な支給につきましてはそれはまた別ですけれども、その上限がそのように法律の中に定められている。ところが、この判事補の初任給調整手当についてはどうか。これは支給の根拠といいますか、これが最高裁判所規則というところで決められるために、その金額を幾らにするのかということは、これは極端に言えば大蔵省の了解さえ得られれば国会の論議というものなしに決めることができる。現に四十六年で決められたのが二万六千円ぐらいだったと思いますけれども、六十年度には一挙にこれが先ほど言われましたように七万三千六百円ですか、このような三倍増するというような増額修訂がなされているわけでございます。  私はそれがいいか悪いか、そんなことを論議しているわけではございません。現にきょう法改正というこの増額幅というのは、判事補十二号二千七百円の増額だ、それから最高裁判所長官の増額は二万六千円の増額をこのような大がかりな審議でやっているわけでございまして、この調整手当はそういう法律事項になっていないために、こういう場で論議することなく定められることができる。いかにもこの報酬法の体系といいますか、全体から見ると、私はちょっと法の仕組みから見てどうも納得できないのです。やはり、前回も私そのことを提案したと思いますけれども、初任給調整手当についても本法すなわち裁判官報酬等に関する法律の中に根拠条文を置き、最高限を法律で決める、そういうようなことが必要ではないだろうかというふうに思われるのですが、その点いかがでしょうか。
  200. 櫻井文夫

    櫻井最高裁判所長官代理者 大変難しい問題でございますけれども、まず一つは、初任給調整手当はやはり裁判官報酬法さらにはそのもとになります裁判所法等に定める報酬というものとは違った性格を持っておりまして、裁判官の、何と申しますか、職務、責任あるいは裁判官の地位等に対応してこれを保障するために設けられた報酬額というものとは違った役割を帯びているわけでございまして、司法修習を終えるに当たって、弁護士との収入の格差があるために、そのために任官確保に支障を来さないようにといったような配慮から設けられた、そういう意味で本来の報酬とは違った手当であるということが一つあろうかと思います。そういう意味で、その金額は多いという問題はありましても、一般官吏の例に準じて最高裁が定めていけるというような、そのような扱いが許されているという点が一つあろうかと思います。  それからもう一つは、この金額が一般官吏の例に準じていることになるのかどうかという問題でございますが、この点は、この七万三千六百円という金額を出します場合に、一般職給与法に定めている金額とそれから医師の初任給、そういったようなものを合わせまして、そして結局すべてが初任給調整手当を受けている国家公務員の他の官職の範囲を出ないように、大体その範囲におさまるように裁判官の初任給調整手当の金額も定まっているわけでございます。そういう意味で、金額は多いように見えましても、最高裁判所の定めはこの第九条に言っております一般官吏の例に準じた定め方になっているものというふうに考えているわけでございます。そういう意味で、法律で本来定めるべきものではないかという御指摘、もっともな点もあるように思いますけれども、金額が多いという点だけから必ずしもそうは言えないのではないかというふうに考えているわけでございます。
  201. 冬柴鐵三

    冬柴委員 私は多い少ないを言っているわけじゃございませんで、その金額、アッパー、上限を国会で議論をして、そして法律の中に入れるべきではないか、そしてその具体的支払いは九条による最高裁判所の規則で支払ったらいいわけでして、その範囲で簡易裁判所判事の何号には幾らを払うか、こういうことは最高裁の規則で決めるべきではありますけれども、その最高限度につきましては給与法にも規定があるように、本法の中で最高限は決めるべきではないだろうか。そうでないと、二千七百円の増額修訂はこの国会で議論しなければいけないけれども、それ以外は大蔵省と話がつけば何ぼでも——何ぼでも取るというわけにはいかぬと思いますけれども、そこにはおのずから限度はあるでしょうけれども、おのずから最高裁が自制していられる範囲がそれでいいのかどうかということはやはり国会で議論をしなければいけないのじゃないのでしょうか、そういうことなんです。  これはいろいろお考えはあるでしょうけれども、前向きに、これはこういう人勧が出れば毎年同じような質問をして議論しているわけですけれども、大事なところがこの中には、判事補の初任給調整手当なんて、きょうの資料をいただいた中にも一つも入ってないですね。しかし、それは判事補報酬額の実に三割にも相当するような金額がそこに出てくるというのは、ちょっと私としては、法体系としてはおかしいのじゃないか、こういうふうに思いますので、前向きに御検討いただきたい、このように思います。  次に、裁判官の宿舎の改善についてお伺いをしたい。これも前回私は質疑をいたしまして、検討をお願いした事項でございます、  裁判官の場合には、宅調日においては終日自宅で起案をされるし、また、平日におきましても深夜家族が寝静まってからしか行いがたい記録読み、文献の調査、判決起案等、役所の判事室と同じような性格を有する部屋というものが宿舎の中に要るのではないか。宿舎というのは単に家族との生活の場、憩いの空間というだけではなく、公的な仕事の場としての性格がある空間が必要ではないか。それが裁判官宿舎の特質でもある、このように考えているわけでございまして、そういたしますと、この裁判官宿舎を国家公務員宿舎法及びその施行規則等によって一律、画一的に取り扱っておられるということについてはどうかなと考えます。いわゆる先ほど述べましたような職務の特質というものを捨象してしまっているのではないか、このように思います。  それにつきまして、前回私は、少なくとも家族の生活ゾーンと区画された空間、すなわち書斎のようなものの確保、それが一つ。二つ目は、そこへの作りつけの書架、書棚の設置を考えられたらどうか。三つ目は、たくさん配本される最高裁及び下級審の判例集、あるいは報告書や研究書等のたぐいのいわゆる白表紙本というようなものを備えつけたらどうか、このような三つのことを御提案申し上げたと思います。これに対して櫻井最高裁判所長官代理者は前向きに検討されることをおっしゃったと思いますけれども、この一年間何かの前進があったのかどうか、伺っておきたいと思います。
  202. 町田顯

    町田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。  委員御指摘のとおり、裁判官の宿舎の問題が私どもといたしましても非常に重要な問題であることは十分認識しているところでございます。御承知のとおり、国家公務員の宿舎法によりますと、宿舎の規格が、世帯宿舎で申しますとb型からe型まで定められているわけでございます。これは一般行政庁も同じでございますが、大体どのくらいのクラスの人がどういう大きさの形のものに入れるかというのが決まっているわけでございますが、裁判官一般の行政官を比べますと、一般行政官の入省後、裁判官の場合ですと司法修習生になった後の年数で比べてみますと、大体一般行政官の半分ぐらいの年数で大きい宿舎に入れる。そういう意味では、現在の宿舎行政上も裁判官の特殊性というのは認められてきているのではなかろうかと思っております。  ただ、問題がございますのは、それではe型ならe型に入れる者が現在全部e型に入っているかといいますと、これは宿舎の関係でまだe型に入れる者がd型にしか入れないという者もかなりあるわけでございます。私どもといたしましては、本来e型に入れる者はe型に入れるようにしたいということで、近時大きい建物を建ててきているわけでございます。  昨年からどういうことだというお話でございますが、昨年からといいますと、六十二年度の関係でございますけれども、六十二年度で裁判官用の宿舎として新設いたしますのが四十六戸ございますが、そのうちe型が三十二戸でございます。非常に高い割合でe型を建てていくということによりまして、本来e型に入れる者が入れるようにしたい。そういうことによりまして、委員御指摘の書斎等の確保にも努めたいと考えております。また、その際申し上げたかと思いますが、現在運用上はc型にしか入れない者があるわけでございますけれども、c型自体もかなりの幅がございまして、最高六十五までございます。それになるべく近いものを建てるとお話し申し上げたわけでございますけれども、本年度c型をやはり建てるわけでございますが、それはいずれも六十四・幾つということで限度きりぎりのものを建て、そういった意味で書斎等も確保したいという努力をしておるところでございます。
  203. 冬柴鐵三

    冬柴委員 この問題について、最後に法務大臣にお尋ねをしたいと思います。  法治国家として裁判官検察官に第一級の人材を確保して、この人たちがその地位に誇りを持って職務に精励され得る環境を、いわゆる報酬俸給の面あるいは住環境の整備等々いろいろな面があると思いますけれども、整えるということが必須の要件だと考えております。したがいまして、先ほども修習生からの任官志望者が少ないとか、せっかく任官された方が途中で定年以前に退官される方が非常に多いとかいう、いろいろな問題がございます。それらの面は我々法治国家として憂うべき事態だと思いますので、その点についての所信を明らかにしていただきたい、このように思います。
  204. 林田悠紀夫

    林田国務大臣 先生おっしゃいますように、法治国家を維持してまいりますためには、裁判官あるいは検察官のような司法に携わる者に、若いまた極めて弾力性に富んだ立派な人材を得るということは必要なことでございます。そのためには、現在の世相といたしまして若い者はだんだん華やかなものを求めるわけでありまして、学校を出ますと、あるいは外国へすぐ行ける商社に参りましたり、あるいは他の行政官になる、そういうような希望が非常に多い傾向にあるわけであります。その際に、使命感を持ちまして検察官裁判官になってくれる、そういう人を得ますためには、現在の司法試験の問題にも突き当たりますし、また、これからその人たちが入ってくれますためには、もちろん給与の面におきましてもあるいは住宅なんかの環境整備にいたしましても、その士気を高めましてやりがいのある仕事であるということが必要でございます。そのために大いに努力をしてまいりたいと存じますし、また、国民の皆さんもそういう気持ちを持って判事検事を見ていただきたい、かように存ずる次第でございます。
  205. 冬柴鐵三

    冬柴委員 では、次の問題に移らせていただきます。  全く論点が変わりますけれども昭和六十二年十一月二十三日、つい先ごろでございますが、午前二時五十分ごろ、兵庫県の淡路島南約五キロ、和歌山県の加太友ヶ島南西約十五キロの紀伊水道で、エンジントラブルのため漂流し、救助を求めていたプレジャーボート幸栄二号に、小松島発和歌山港行きの南海フェリー「たちばな」一千四百十二トンが衝突、ボートに乗っていた三人が海中に投げ出され、うち一名が死亡したという海難事故がございました。  また、その二日後の同月二十五日午前八時十分ごろに大阪府岬町深日港の北西約四・五キロの大阪湾で、兵庫県淡路島生種漁協の漁船戎丸が僚船十一そうとともにシラス漁を操業中、鋼材貨物船第十八松島丸百十九トンが衝突、戎丸の船長が海中に投げ出されて死亡した海難事故がそれぞれ起こりました。  刑事局長にお伺いいたしますが、この二件につきましては認知、立件捜査をしておられるかどうか、その点についてお伺いしたいと思います。
  206. 岡村泰孝

    岡村政府委員 ただいま御指摘のありました二件の海難事故でございますが、検察庁といたしましては、いずれもいまだ受理するには至っていない段階でございます。
  207. 冬柴鐵三

    冬柴委員 海上保安庁に伺いますが、この事件の事実関係について御承知あると思いますけれども、御説明をいただきたい。
  208. 小澤友義

    小澤説明員 お答えいたします。  まず、幸栄二号とフェリー「たちばな」衝突海難についてでございますが、海難の概要については今先生御指摘のとおりでございまして、海上保安庁の救助措置についてお話ししたいと思います。  十一月二十二日午後十時ごろ、幸栄二号の所属する紀ノ川マリーナから幸栄二号が機関故障して漂流している旨の連絡を受けた第五海上保安本部では、同日の十時二十五分、ころ、巡視艇「りんどう」、引き続き巡視艇「きいかぜ」を出動させ、捜索救助に当たらせました。出動した巡視艇は、出港直後から捜索を始めていたところ、二十三日午前二時四十七分、ころ巡視艇「りんどう」がレーダーにより幸栄二号を捕捉いたしました。直ちに同船に向かいまして、同二時五十五分ごろ海中に飛び込んでいた三名を救助いたしました。一名は意識不明のため人工呼吸を実施しながら和歌山の下津港に向かいまして、救急車に三名とも引き継ぎ病院に収容させております。この意識不明の一名の方は、不幸にも病院において死亡しております。なお、幸栄二号の船体は巡視艇が和歌山下津港に曳航しております。  引き続きまして二十五日の海難でございますが、貨物船第十八松島丸と戎丸の衝突海難でございます。これも当庁の救助措置についてのみ御報告いたします。  十一月二十五日午前八時二十分ごろ、第十八松島丸から海難発生の通報を受けた第五管区海上保安本部では、行動中の巡視艇「りんどう」及び「きいかぜ」を直ちに海難現場に向かわせまして、巡視艇は午前八時四十五分ころ現場に到着いたしましたが、戎丸船長は付近の僚船により既に救助されておりました。僚船により救助された戎丸船長は、収容先の病院において死亡しております。  以上であります。
  209. 冬柴鐵三

    冬柴委員 まず幸栄二号について、出動あるいは救助は早かったようですけれども、エンジントラブルが起こったのはいつか。私が聞いているのでは、二十二日の午後四時ごろエンジントラブルを起こして、自走能力を失って漂流を始めた。それから十時二十五分に救助を求めるまでの約六時間は一体どうなっていたのか。SOSを発していたのかどうか。その点についてはどうでしょうか。
  210. 小澤友義

    小澤説明員 お答えいたします。  幸栄二号につきましては、先生申されたとおり機関故障を起こした時間帯から当庁に救助を求めてまいったこの紀ノ川マリーナから通報があった時間帯が、かなり差異がございます。六時間四十分ほどございます。このところに問題があるのだろうと思いますが、要するに早目にこのマリーナから通報があれば、三人とも問題なく巡視艇によって救助されていたに間違いないと思っております。したがいまして、我々は日ごろからマリーナ等に所属のプレジャーボートの管理という意味合いにおきましても、海難情報は的確に海上保安部の方へ知らせるよう指導に努めているわけでございます。  なお、SOSブイ等は、該船は持っておりませんでした。  以上でございます。
  211. 冬柴鐵三

    冬柴委員 外洋ならともかく、瀬戸内海の中で十時間も漂流をしたあげくに定期航路のフェリーにぶつけられて、そして一命を落とすというようなことは、我々陸におる者ではちょっと考えられないような事故のように思われるわけでございます。したがいまして、いわゆる海難情報収集体制といいますか、あるいは外郭団体もおつくりだと思いますけれども、そういうところを指導されまして、そのような海難が発生したら直ちに通報をする、そのような指導をぜひ強めていただきたい、このようにお願いをしていきたいと思います。  瀬戸内海のうち、この紀伊水道あるいは友ヶ島周辺、これはたしか第五管区に属すると思うのですけれども、第五管区の海上保安本部における過去五年間の船舶交通量の推移と要救助船舶総数の推移、こんなものはどうなっていたのか、あわせて、これは予測ですけれども、今後数年間における交通量はどのように動くと見ていられるのか、その点についてお伺いをしていきたいと思います。
  212. 酒田武昌

    ○酒田説明員 お答えいたします。  五管区内で海上交通量の多い海域といたしましては、明石海峡と友ヶ島水道がございます。海上保安庁が毎年七月から九月にかけまして三日間観測した結果によりますと、昭和五十七年から六十一年までの五年間の各海域におきます一日当たりの通航船舶隻数でございますけれども、明石海峡につきましては、千五百二十六隻、千四百九十七隻、千四百十六隻、千三百九十五隻及び千三百十六隻となっております。一方、友ケ島水道につきましては、六百五十隻、五百五十隻、八百十六隻、八百十五隻及び七百六隻となっております。  次に、要救助海難の発生状況でございますけれども、五管区におきます海難発生状況につきましては、過去五年間、昨年まででございますが、順次申し上げますと、二百五十四隻、二百四十三隻、二百三十七隻、二百三十四隻及び二百二十隻となっております。これは御参考までに申し上げますと、昨年我が国周辺海域におきまして発生いたしました船舶海難は総数で千八百四十三隻でございますが、このうち五管区内のものは約一二%に相当いたします。  それから最後に、今後の五管区内におきます交通量の見通しでございます。  当面、関西国際空港の建設工事が重要なファクターでございますけれども、この工事は御承知のように本年一月に着工されまして、昭和六十七年度末の開港を目指して進められているところでございます。そこで、空港島及び連絡橋の工事用船舶の通航量でございますが、工事開始後二年目前半、具体的に申しますと六十三年前半、来年前半でございますけれども、この時期に最大となりまして、このときで一日当たりガット船八十九往復、土運船四十三往復、合計百二十二往復と見込まれております。  それから、今後大阪湾周辺で予想されます大規模な開発といたしましては、現在兵庫県におきまして淡路島をレクリェーションリゾート地域として整備する構想がございますけれども、これは現時点ではまだ具体的な整備計画はできていないというふうに聞いております。したがいまして、これらリゾート計画によって今後船舶交通量がどれだけ変化していくかということにつきましては、現時点では明らかとなっておりませんけれども、私どもといたしましては、今後整備計画の具体化に応じまして船舶の航行安全の確保の観点から必要な対策を講ずるよう指導いたしまして、海上交通の安全確保に万全を期することといたしたい、かように考えております。
  213. 冬柴鐵三

    冬柴委員 今のお答えでほぼ状況はわかったわけでございますけれども、この狭い友ケ島水道あるいは明石海峡にこれだけの、一日に千数百そうとかあるいは数百そう以上のものが動いているわけでありまして、その中には石油等を満載した船とかそういう大型船があるかと思えば、またモーターボートとかあるいは釣り舟のような遊漁船あるいはヨット、このようなものもその中を走っている。非常に危険がいっぱいだというような感じを受けるわけでございます。  そこで、東京湾には東京湾海上交通センターというものがつくられているようでございますし、備讃瀬戸にもそのようなもの、あるいは門司にもあるようでございますけれども、特に第五管区の、このように関西国際空港あるいは明石海峡大橋架橋工事等が今後十年間見込まれるこの地域、そしてまた、今おっしゃいましたように淡路島が総合リゾート法等の指定を受けて開発されることも必至だと思いますけれども、そのような場合に、この淡路島の南西部分、沼島周辺というのは絶好の漁場でもありますし、そういうところから、ぜひこのような海上交通情報機構の整備、すなわち海上交通センターを早急に設置する必要があるのではないか、このように私は考えるのですけれども、その点についてはどのようなお考えでいらっしゃるのか、その点についてお伺いしたいと思います。
  214. 酒田武昌

    ○酒田説明員 お答えいたします。  海上保安庁におきましては、今年度から大阪湾におきます海上交通センターの整備に関しまして必要なレーダー施設、情報提供の内容等につきまして具体的な調査検討を開始したところでございます。今後、この検討結果を踏まえまして整備を推進していきたいというふうに思っております。
  215. 冬柴鐵三

    冬柴委員 それじゃ、そういうものが一日も早く設置されて安全な航行が確保されるようにお願いをいたしまして、私の質問を終わります。
  216. 相沢英之

  217. 橋本文彦

    橋本(文)委員 昭和六十二年度の人事院の勧告が出まして、それに準じて裁判官報酬検察官俸給が改定されるということでございますけれども、今回の人事院の勧告は非常な問題を提起しております。後藤田官房長官の、五%に満たない官民較差の場合には勧告をすべきではないのじゃないかというような問題もあるし、また、人事院の方では給与以上に職員の職務の改善、そういうものに重点を置いているというふうに見られますけれども、まず、そういうこと全体を聞くためにきょう人事院が来ておりますので、今回の勧告の内容をひとつお教え願いたいと思います。
  218. 小堀紀久生

    ○小堀説明員 お答え申し上げます。  本年の給与に関する勧告でございますけれども、経済環境を反映いたしまして企業経営に一段と厳しさが見られたということもございまして、賃金改定の状況はもとより、民間企業におきます経営の合理化それから雇用調整等についての対応ぶりなどについても従来にも増して詳細に調査を行い、また各界との意見交換の場を地方にも広げるなど、国民からも理解と納得を得られるようさまざまな観点から検討を行って得られたものでございます。  そのおおよその概要を申し上げますと、まず給与の改善率は一・四七%となっておりまして、民間給与の動向を反映いたしまして今までで最も低率な改定となっております。  その改定の内容でございますが、官民給与の較差の状況等を考慮いたしまして、俸給表を重点的に改善することにいたしております。俸給表の中におきましては、民間初任給の上昇傾向等を考慮いたしまして初任給について厚目の改定を行い、その他につきましては比較的均一な改定を行っております。また、生活関連手当につきましては、民間企業の支給状況等を考慮いたしまして通勤手当、住居手当に絞って改善を行っています。  以上でございます。
  219. 橋本文彦

    橋本(文)委員 一般公務員の平均は一・四七%の上昇で、今までで最低である。裁判所法務省の方では、今回の改定は平均何%になるでしょうか、それぞれお答えください。
  220. 清水湛

    ○清水(湛)政府委員 法務省検察官の方からお答え申し上げます。  検察官の各号俸のアップ率は一・四%から一・六%というふうになっているわけでございます。こういうような各号俸のアップ率を単純加算平均いたしますと一・五%になる、数字上はこういうふうになるわけでございます。
  221. 櫻井文夫

    櫻井最高裁判所長官代理者 裁判官について申し上げます。  裁判官につきましても、裁判官の今回の報酬の改定率は一・四%から一・六%にまたがっております。これを各号俸につきまして平均をいたしますと、一・五%というのが平均の改定率でございます。
  222. 橋本文彦

    橋本(文)委員 それぞれ一・五%ということなんですが、きのう私が政府委員にお聞きしたところでは、一・五六%と一・五八%と聞いたのですけれども、どうしてこのように差が出たのでしょうか。
  223. 清水湛

    ○清水(湛)政府委員 お答え申し上げます。  私、大変舌足らずの答弁を先ほど申し上げたのでございますけれども裁判官検察官について何%のアップ率があるかという数字の出し方、いろいろな出し方があるわけでございますけれども、現在在職する全検察官が受ける俸給の総額と改定後の各総額とを出しまして、その差額を現行の各総額で割る、つまり給与の支給に要する総額がどのくらいふえるのかという形で見ますと、検察官については平均一・五六%、裁判官については、私どもの計算では一・五八%くらいになるのではないかということでございます。  ただ、これは、裁判所の方が非常に年とった裁判官が多いとか、アップ率にばらつきがございますので若干そういうような差が出てくるわけでございますけれども、それぞれの検察官裁判官について見ますと、同じようなアップ率になっておりますので、それぞれの裁判官検察官によって差が生ずるということではございません。
  224. 橋本文彦

    橋本(文)委員 一・四%から一・六%ならば、平均は一・五になるわけでして、私どもの聞きたいのは、人事院が出しているように一・四七%を実態とすれば、裁判官検察官もどうなんだろうかということを聞いたわけですけれども一般の公務員よりは高いアベレージを示している、こういうことでございますね。別に私の方で高いからけしからぬと言うわけではございませんけれども、一応人事院の勧告に大体横並びしておる。なぜ横並びする必要があるのかということをこれからお聞きしたいのです。  その前に、また人事院の方に返りまして、今回一・四七%、極めて低率でございます。確かに国家公務員法の二十八条では、五%の官民較差が出た場合には勧告は義務である、勧告しなければならないということになっていますね。ところが、後藤田官房長官の言うように、五%未満であるならばあえて勧告をしなくてもいいのではないかという議論があるようですけれども、その点どのようにお考えですか。
  225. 小堀紀久生

    ○小堀説明員 人事院の給与勧告は、国家公務員が労働基本権を制約されているということの代償措置として定められておるものでございまして、確かに国家公務員法の二十八条には、人事院の給与勧告は職員給与を五%以上改定する必要があるときは必ず行わなければならないけれども、それ以下のものにつきましては原則に返りまして、公務員の給与社会一般の情勢に適応して定めるという規定があるわけでございますけれども、その規定の方へ返って私どもは解釈すべきであろうと考えておりますので、五%以上の場合は必ず勧告しなければならないけれども、五%未満の場合につきましては、社会一般情勢を総合的に勘案して判断すべきものというふうに考えております。
  226. 橋本文彦

    橋本(文)委員 国家公務員法の第二十八条によりますと、「情勢適応の原則」というようなタイトルで、「給与、勤務時間その他勤務条件に関する基礎事項は、国会により社会一般の情勢に適応するように、随時これを変更することができる。」今、社会一般の情勢に適応するようにということに力点を置かれて今回の勧告をしたのだというふうに伺いましたけれども、問題は、一%と極めて低率である、そこが問題になっているようですけれども、その辺についても、たとえ一%についても一般社会情勢に適応するために必要なんだと人事院は考えておられるわけでございますか。
  227. 小堀紀久生

    ○小堀説明員 お答えいたします。  その点につきましては、私ども給与に関する報告の中で詳しく申し述べておりますけれども、ただいまも申し上げましたように、職員給与は労働基本権を制約されていることの代償として人事院の行う勧告に基づいて決定することとされておりまして、この勧告と申しますのは、職員にとってはほとんど唯一の給与改善のための機会となっております。したがいまして、本院は従来から法の定めます情勢適応の原則に基づきまして、毎年精密な調査を行いまして、民間における賃金等の動向を踏まえて職員給与を民間の給与に均衡させる、そういう考え方で勧告を行ってまいっております。  ことしは民間の状況等が非常に厳しゅうございましたので、結果として非常に較差は小さくなっておりますけれども、民間の実態等を見ておりますと、賃金改定をしておるところが九三%に上っておりまして、ほとんどの企業がやっている。それから、同じ公務員でございます四現業の職員給与改定についても完全実施がされている、そういうようなこと。それから、公務員の生活の実態、そういうようなものを総合的に勘案いたしまして、一・四七%といえども改善をすべきであるというふうに判断をしたものでございます。
  228. 橋本文彦

    橋本(文)委員 私は、人事院に対しまして勧告したのはけしからぬと言っている意味ではございませんよ。  この勧告の中で、さらに週休二日制に論及しておりまして、さらには現在の四週六休制ですか、それの完全な実施と、終局的には完全な週休二日制を提言しておりますけれども、これはどういう点から成っておるのでしょうか。
  229. 山崎宏一郎

    ○山崎説明員 今回の勧告の特徴の一つと申し上げますか、八年ぶりに週休制の勧告をいたしました。  五十六年から四週五休制といいまして、四週に一回交代で職員が休みをとるということをやっておりましたけれども、それを四週に二回職員が交代で休みをとる方式を勧告いたしております。これは、昨年の十一月からいわゆる四週六休の試行といいまして、試みにやってみましたけれども、これがかなり順調にいっているということが一つ。それから、民間の四週六休制あるいは週休二日制の普及状況を見まして、かなり進展をしている。これらの状況を見ながら勧告を申し上げた次第でございます。  それからもう一つ。将来の展望でございますけれども、完全週休二日制に向けても、今回の勧告あるいは報告の中で、近い将来において四週八休制を実現する必要がある、したがって今回の四週六休制は四週八休制へ向けた一つのステップである、計画的に今後政府において条件整備を進められたいというような報告を申し上げております。  これは、さらに国際的な観点といいますか、世界的に見まして、人事院が今回四十カ国の調査をやりましたけれども、四十カ国の主要国のうち三十一カ国が既に完全週休二日制を実現しているというようなこともございます。あるいは、この前の国会で民間ベースの労働基準法で週四十時間制の労働時間制が定められた。ただ、これはすぐ実施ということではなくて、一九九〇年代前半に向けて努力していくという規定でございます。  ただ、そういう世界的な趨勢あるいは民間の労働法制の動向、あるいは新前川レポート等におきまして、完全週休二日あるいは千八百時間労働に急ぐべきだ、あるいは特に公務員なり金融機関が努力をすべきだというような御提言もいただいておりますので、それらを総合的に判断いたしまして、近い将来に完全週休二日制を実現すべく計画的に条件整備を進められることの検討が必要であるというような提言を申し上げた次第でございます。
  230. 橋本文彦

    橋本(文)委員 それから、土曜を閉庁するという、現在は交代で土曜日もやっておりますけれども、土曜日を完全にお休みにするという提言もしていますね。これはどういう根拠なんでしょうか。
  231. 山崎宏一郎

    ○山崎説明員 土曜日に行政サービスを提供するかどうかというのは、基本的には政府において御判断をいただくべき事項というふうに我々は思っておりますけれども、やはり裏から見ますと、職員の勤務時間と密接に関係がある事項でございます。  現在のいわゆる開庁スタイルといいますか、職員が交代で休みまして半分出勤をするスタイルといいますのも一つの有効な手法でございますけれども、ただ、これを見てみますと、非常に小規模な官署あるいは窓口等の官署におきましては、なかなか定型的に休みがとれないというような問題点が一つございます。それからもう一つは、先ほど申し上げました将来の完全週休二日制を展望いたしますと、やはり閉庁で完全週休二日制に臨んだ方が職員の定数増が防げるとか、その他いろいろな意味で、完全週休二日制を展望した場合には閉庁スタイルの方が望ましいというような点がございます。  それから、外国の状況を先ほど申し上げましたけれども、主要先進国等を見ましても、イタリアを除いて閉庁スタイルで実施されているというようなこと等々を勘案いたしまして、職員の勤務条件を預かるサイドからの御提言でございますけれども、閉庁方式が望ましいというような提言をさしていただいた次第でございます。
  232. 橋本文彦

    橋本(文)委員 また給与に返ってちょっと恐縮なんですけれども、今回の勧告の中には初任給調整手当についても一部ありますね。この調整手当はやはり勧告しなければならないものなんでしょうか。
  233. 小堀紀久生

    ○小堀説明員 今回改正を勧告いたしております初任給調整手当でございますけれども、これは現在お医者さんの給与水準が民間とかなり差があるというようなことを考慮いたしまして勧告いたしたものでございます。  その考え方といたしましては、俸給表だけではなかなか水準が埋め切れないということもございまして、その差を初任給調整手当として幾分見ていくということでございます。したがいまして、毎年俸給表を改定するときにあわせて検討して改定しているというのが実態でございます。ことしもそういう考えで行ったものでございます。
  234. 橋本文彦

    橋本(文)委員 この初任給調整手当については、一般職職員給与等に関する法律、この法律事項なんですね。
  235. 小堀紀久生

    ○小堀説明員 法律で最高限度額を定めておりますので、その額を改定していただく必要があると思っております。
  236. 橋本文彦

    橋本(文)委員 ちょっと質問が悪かったようですけれども、調整手当についても法律をもって改正するということですね。内部の規則等で運用できるというものではないですね。
  237. 小堀紀久生

    ○小堀説明員 ただいまもお話ししましたように、最高限度額は法律で書いてございますが、その限度内のいろいろな支給額があるわけでございます。条件を設定いたしまして定めております支給額については、私どもの人事院規則の方で定めております。
  238. 橋本文彦

    橋本(文)委員 人事院の方では、裁判官報酬とか検察官俸給に関して調整手当というのがあるのは御存じですか。それがどういうふうに決められているか、その実態を知っておられますか。
  239. 小堀紀久生

    ○小堀説明員 私どもの所管外でございますので、詳しいことは存じ上げておりません。
  240. 橋本文彦

    橋本(文)委員 では、裁判所と検察庁にお尋ねいたします。  今回の人事院の勧告は平均で一・四七%、裁判官は平均で一・五八%、検察官俸給は一・五六%、こうなっておるようでございます。それで、人事院の方ではいわゆる大卒の初任給の方を厚くしている、下部に厚くしているというような主張でございますけれども、今回法案審議でいただいた資料によると、むしろ下部の方が裁判官にしても検察官にしても薄い。そうして相当上の方が厚い。要するに、たくさんお金をもらっている人が一・六%の適用を受け、なったばかりの判事補の給料が一・四である。これは人事院の一般職とは、そういうスタイルとは違いますけれども、どうしてこのようになるのでしょうか。  別に人事院の勧告をストレートに裁判官あるいは検察官に当てはめるものではないと言われればそれまでなんですけれども、いただいた資料を見ておりますと、すべてがきちっと判で押したように金額が並んでおる。本当に一糸乱れもなく並んでいるように見えるわけなんです。なぜこのように一般公務員と検察官裁判官が一線で横並びしていなければならないのか。  先ほどからいろいろ議論がありましたように、ただでさえ判事あるいは検察官のなり手がないというときに、初任給の調整を必要とするような人たちのアップ率が低くて上の方が厚い。人事院勧告に右へ倣えとは言いませんけれども、同じように、なったばかりの判事補さんあるいは検察官の給料を大幅に上げてあげるとかという配慮をなぜしないのでしょうか。
  241. 清水湛

    ○清水(湛)政府委員 お答え申し上げます。  裁判官報酬につきましては、裁判官の果たす非常に重要な機能に着目しまして、憲法でもその報酬規定があるところでございます。それからまた、検察官につきましては、これは一般職の公務員、法律的にはそういうことになるわけでございますけれども裁判官に準ずる非常に重要な機能を持っておる、また、その養成につきましても裁判官と同じような養成過程を経て検察官になる、こういうようなことから、裁判官に準ずる俸給というものが一般職給与とは別に検察官俸給表によって定められておる、こういうことは委員よく御存じのことでございます。  そういう職務の特殊性に応じた報酬あるいは俸給体系というものが定められているわけでございますけれども、その改定ということにつきましては、これは例えば裁判官報酬法十条という規定がございまして、生計費及び一般賃金事情の著しい変動によりまして、一般の官吏について政府がその俸給その他の給与の額を増加する場合には、最高裁判所は、別に法律の定めるところによって、裁判官について一般の官吏の例に準じて報酬その他の給与の額を増額する、こういうことになっておるわけでございます。今回の一般政府職員について行われようとする給与の改定はまさに生計費、賃金事情の変動に基づくものでございまして、その職務の特殊な変質、変化というようなものに基づくものではございませんので、まさに裁判官報酬法十条の規定によりまして、一般官吏の例に準じてアップをする必要があるということになるわけでございます。  この場合、準ずる方法というのは一体何なのかということが問題になるわけでございますけれども、従来より対等額の行政職の俸給額の増加割合と同一の割合をもって裁判官報酬額を増加させる、こういうことになっております。つまり、端的に申しますと、一般の行政職の中に裁判官と同じ月給の人が当然いるわけでございまして、そういう人たちがアップいたしますとそのアップ率だけ、全く同じ金額だけ裁判官についても上げる。裁判官報酬一般的にはかなり高こうございますので、多くの場合は指定職俸給表に準じて上げられる。もちろん最高裁判所長官とかあるいは検事総長等については特別職の公務員のアップにスライドするということになるわけでございますけれども、指定職に準拠するものについて見ますと、人事院勧告で示された指定職俸給表の金額どおりに裁判官報酬額も検察官俸給額も改められておる、こういうことになっておるわけでございます。  なお、裁判官については裁判官報酬法十条という規定がございまして、検察官にはその趣旨の規定がございませんけれども最初に申し上げましたように、検察官につきましては裁判官に準ずる給与の取り扱いをする、準司法官的な性格を有する、こういう点にかんがみまして、裁判官と同じような、全く同じ形でこの俸給のアップを図る必要がある、こういうことから、今回検察官についても同様の俸給改定法案を出して御審議を仰いでおる、こういうことになっているわけでございます。     〔委員長退席、逢沢委員長代理着席〕
  242. 橋本文彦

    橋本(文)委員 ちょっと教えてください。裁判官報酬等に関する法律、今示されました第十条なんですけれども、この十条で「最高裁判所は、別に法律の定めるところにより、裁判官について、一般の官吏の例に準じて、報酬その他の給与の額を増加し、」というのですが、この「別に法律の定めるところにより、」というのがよく理解できないのですけれども、これはどういうふうに理解するのでしょうか。
  243. 櫻井文夫

    櫻井最高裁判所長官代理者 この十条で言っております「別に法律の定めるところにより、」というのは、毎年度の御審議の際に問題になるところでございますが、これはこの報酬法の改正法のことを指しているというふうに考えております。そのように一般に理解されておるところでございます。したがって、一般の官吏について給与額の増額等がある場合には、最高裁判所は、一般行政官について増額があったから直ちに支給できるのではなくて、この改正法により、結局この報酬等に関する法律の定めによって一般の官吏の例に準じた給与の増額を図ることができる、そのような定めと理解されております。
  244. 橋本文彦

    橋本(文)委員 検察官にはその間の増額の規定はないけれども、いわゆる裁判官に準じてという形で同じように扱っているんだ、これは慣例ですか。
  245. 清水湛

    ○清水(湛)政府委員 検察官の準司法官的機能にかんがみまして、裁判官に準じて俸給の改定を行うということが従来より一度の例外もなしに行われてきた、これは間違いないことであるというように思います。
  246. 橋本文彦

    橋本(文)委員 ところで、法務省あるいは裁判所におきましても、昨年の人事院の勧告等でありましたいわゆる四週六休制、これを試行的に導入しておられるようでございます。要するに人事院の勧告があると、いわゆる勤務時間等についても裁判所あるいは検察庁はそれに対応しておる、このように考えておりますけれども、その実態。  今回人事院が出しておりますように、完全週休二日制あるいは土曜閉庁という問題が出てきますと、裁判所とか検察庁はそれぞれどのように対応できるのか。特に法務省については、窓口サービスであるところの入管局であるとか法務局、こういうものも土曜閉庁できるのかどうか。裁判所においてはいわゆる勾留事務をどうするのか。いろいろな点があると思いますけれども、人事院の労働時間の問題に関してはそれぞれどのように対応なさるおつもりでしょうか。
  247. 櫻井文夫

    櫻井最高裁判所長官代理者 裁判所について申し上げます。  裁判所でも、行政官庁と同様に昨年の十一月から裁判所職員について四週六休制の試行を実施いたしております。現在のところ、この四週六休制の試行によりまして土曜日は通常の半数の職員で事務処理が行われていることになるわけでありますが、特段の問題は生じておりませんで、試行が順調に進んできているというふうに考えております。さらに、今回の一般職職員給与法により四週六休制の本格実施ということになりました場合に、現在の試行状況から見ますと、裁判所におきましても他の行政官庁と足並みをそろえて順調に実施していけるのではないかというふうに考えているわけであります。  ただ、土曜閉庁ということになりますと、これは裁判所そのものが閉まってしまうということになるわけでありまして、これは四週六休制とはちょっと別の問題があることは事実でございます。裁判所の場合には、例えば勾留の処理であるとか、そういった緊急に処理を要する問題がございまして、これはあるいはその他の官庁なんかとは若干違う点ではなかろうかというふうに思っております。しかし、現在でも日曜日にいろいろな緊急事務の処理についての体制がとられているわけでありまして、仮に土曜日の一部分が閉庁という事態になりましても、そういった緊急事務の処理等に必要な体制を組むことによって行政官庁の動きにおくれをとらないように、かつ一般国民に迷惑をかけないような形で何とか処理をしなければならないというふうに考えているところでありまして、まだその具体的な対処方策というところまでできているわけではありませんが、積極的に検討を進めているという段階でございます。     〔逢沢委員長代理退席、委員長着席〕
  248. 清水湛

    ○清水(湛)政府委員 お答えいたします。  法務省における四週六休制の問題でございますけれども、現在試行が行われているところでございますが、当省における試行におきましては全組織ともほぼ円滑に実施されておりまして、現在のところ法務局や地方入国管理局を訪れる利用者から苦情などが出ているという状況ではないように承知いたしております。  なお、土曜閉庁方式が導入されたとした場合に法務局や地方入管等の窓口業務がどうなるかという問題があるわけでございますけれども、そういう窓口業務は当然のことながら停止することとなりますので、業務体制の整備その他行政サービスをなるべく低下させないための工夫等を含めまして検討することといたしております。また一方、利用者に対しましても積極的に広報活動を行い、その理解を得るように努めたいものと考えております。
  249. 橋本文彦

    橋本(文)委員 時間が参りまして、大臣からお答えを願いたいと思いましたけれどもできなくなりましたので、また改めて次の機会に……。終わります。
  250. 相沢英之

    相沢委員長 安藤巖君。
  251. 安藤巖

    安藤委員 私は、主として最高裁判所にお尋ねをしたいと思います。  昭和五十八年十二月二日に民事事件担当裁判官協議会というのが開かれましたかどうか、そしてその招集者、出席者はどういう者でありましたかというのをまずお尋ねいたします。
  252. 上谷清

    上谷最高裁判所長官代理者 昭和五十八年十二月二日に民事事件担当の裁判官の協議会が開かれたことは仰せのとおりでございます。招集いたしましたのは民事局長でございます。集まりました裁判官は、全国各地の裁判所の民事担当の裁判官でございます。
  253. 安藤巖

    安藤委員 今、出席者は各裁判所の民事担当の裁判官というふうにおっしゃったのですが、水害訴訟担当の裁判官、しかも部総括判事、いわゆる裁判長クラスの人たちではなかったのですか。
  254. 上谷清

    上谷最高裁判所長官代理者 ただいまの協議会で主として取り上げましたテーマが水害関係の訴訟の国家賠償事件でございますので、そのテーマにふさわしい裁判官を各裁判所から推薦していただいております。したがって、やはり水害関係の訴訟事件を抱えている裁判官が多いとは思いますが、必ずしも全部がそうではございません。  なお、裁判長が推薦されてくることが多いわけでございますけれども、できるだけ民事の事件に、その種の事件に経験の深い裁判官で協議に出席するにふさわしい方を推薦していただくようにお願いしておりますので、大体裁判長が多いと思いますが、裁判長でない方もいらっしゃったと思います。
  255. 安藤巖

    安藤委員 この趣旨はどういうようなことでございましたか。
  256. 上谷清

    上谷最高裁判所長官代理者 当時、全国の裁判所に非常に多数のこういう水害による被害の賠償を求める訴訟が係属いたしておりまして、御承知のとおりいろいろ難しい問題がございます。これはいろいろな法令の解釈の問題もございますし、それから通常こういう事件は当事者、特に原告が非常に多数であるということでございまして、訴訟を進めていく上で手続的な問題、証拠調べをどうするかといった運営の問題等も大変難しい問題がございます。そういう悩みを共通に抱えている時期でございまして、こういうテーマを取り上げたわけでございます。
  257. 安藤巖

    安藤委員 その協議の結果を、結果全部じゃないですが、要旨ということのようですが、それを収録したものを「水害を原因とする国家賠償請求事件関係執務資料」として昭和六十年三月にまとめたとして、全国の高裁、地裁に配付されたというふうに聞いておりますが、それはそのとおりですか。
  258. 上谷清

    上谷最高裁判所長官代理者 そのとおりでございます。
  259. 安藤巖

    安藤委員 この協議会の開催、それから今答弁をいただきました「執務資料」の配付、これは司法行政の一環としておやりになったのだろうと思うのですが、そういうことですか。
  260. 上谷清

    上谷最高裁判所長官代理者 会同あるいは協議会等を設営しまして運営するというのは、司法行政のサービスの一つでございます。もちろん、司法行政の事務として行ったわけでございます。  それから「執務資料」の配付も、各裁判官がいろいろ執務をされる上で参考となる資料をできるだけ広く提供しようという趣旨でございますので、もちろん裁判事務の運営に裏方からお手伝いをするという意味司法行政の中に含まれると考えております。
  261. 安藤巖

    安藤委員 午前中の質疑の中でこの問題が一部取り上げられまして、そのときに裁判所の方から、この協議会は相互の研究の場を提供するんだというふうにおっしゃったですね。それから民事局の見解というのが出されておるけれども、別にそれはそれぞれの裁判官裁判を統制するとか意見を統制するとか、そういうものではない、こういう御答弁があったというふうに聞いておるのです。  私は、今答弁いただいた「執務資料」というのを入手しておるのでございますけれども、これが本物かどうかということもありますし、全部を申し上げておったらそれこそそれだけで時間が来てしまいますので、本物かどうかということを検証するために、ちょっとだけお尋ねしたいと思うのです。  これはコピーをしたものでございますが、三ページに「協議事項」とありまして「第一 実体上の問題」、そして一、二、三とあって「一 各種災害における営造物のかじ等」「二 損害」「三原因の競合」、それから「第二 手続上の問題」そしてその中に「一 鑑定」「二 その他」、こういうふうになっておるのですが、これは間違いないですね。
  262. 上谷清

    上谷最高裁判所長官代理者 御指摘のような内容が含まれていたことは間違いないと思います。
  263. 安藤巖

    安藤委員 そこで、民事局の意見を押しつけるものではないというお話があるのですけれども、先ほどの第一の「実体上の問題」という関係につきまして、「各種災害における営造物のかじ等」、ここで甲説、乙説、丙説と、中身は言いませんけれども、こういう説の紹介があって、それぞれ地裁、高裁の関係の方、先ほど御答弁いただいたそういう関係の方だと思うのですが、意見を述べられた。そして最後に「民事局」として民事局の意見が述べられておるのですが、「民事局」というふうになっておりますが、これは意見を述べられたのはどの方ですか。
  264. 上谷清

    上谷最高裁判所長官代理者 今お読みになりましたコピーが本当のものかどうかという点については、実は私どもは「執務資料」を公表いたしておりませんので、私の方からそれを正しいものとしての前提はお答え申し上げにくいわけでございますが、一般的に申しますと、民事局あるいは行政局等の慣例では、協議会でいろいろ議論し、御説明するのは、多くの場合課長でございます。もちろん、その場のやりとりでいろいろな質疑が出たり、どうですかというようなことがございまして、内容によっては私が口を挟むということもございますが、現にそのときの協議会で具体的にどの問題についてだれがしゃべったかというのは、ちょっと明確には記憶しておりませんが、大体は課長が多いと思います。
  265. 安藤巖

    安藤委員 そこで、この民事局の意見として相当長文なのが載っておるのですが、それぞれの裁判所が述べられた意見の五、六倍にわたって意見が述べられておるのです。  そして、全部は言いませんよ、例えば「この河川管理において水害を防止するためには、堤防の構築等の治水工事を行うほかないのであるが、それには財政的制約、時間的制約、技術的制約、社会的制約による各限界があるとされ、それらがかしの判断にどう関連するかが議論されるのである。」そして、「これらの問題は、後に改めて提起されているので、余り深入せず、計画高水流量がかしの判断基準となり得るかについてだけ考えてみる。」ということで、学説の紹介があるのですが、結局はこういうふうに結論づけておられるわけですよね。「計画高水流量規模の洪水を防御できる堤防が完成しているところが極めて少なく、その達成には今後一〇〇年、二〇〇年という年数がかかる、という現実を直視し、更に前述の河川の特性ないし河川管理の特殊性を考慮すると、あらゆる河川について極めて高度な水準ともいうべき計画高水流量を基準とし、それ以下の洪水で水害が発生したときは直ちにかしを推定するとの考え方には、にわかに賛同できない。」こういうふうに言っておられて、「したがって、河川管理の現段階における一般的な水準に即した安全基準を構築し、それをかしの判断基準にすべきである。」というふうに言っておられるのですよね。となると、これは、民事局の見解はこういうものだ、最高裁判所はこういうふうに考えておるんだよと言っておられるのと同じことじゃないですか、どうですか。
  266. 上谷清

    上谷最高裁判所長官代理者 私どもはいわゆる事務当局でございまして、私どもの局の中にも私を初め何人かの裁判官がおりますので、寄り寄り議論をして意見を申し上げたということでございます。  一方、最高裁判所の判決は、裁判官が大法廷もしくは小法廷としてお示しになるものでございまして、私どもの発言はそのような重みを持つものでは決してございません。普通に皆さん裁判官仲間として意見を述べたまでのことでございますので、特に最高裁判所の判例とかいうふうなものとは全く性質の違うものだというふうに考えております。
  267. 安藤巖

    安藤委員 最高裁判所の判決と全く違うものであることは当たり前の話でありまして、結局、さらに先ほど甲説、乙説、両説というのを申し上げたのですが、結論として、「甲、乙、両説の分け方が必ずしも適切とはいいがたいが、一応両説を採るのが妥当であろう。」ということで、このうちでは両説をとるべきなんだ、こういうふうにまで言っておるのですよ。  そして、まだその後の方にはずっとあって、「被告の反証が許されることはもちろんである。」だから、反証を許すか許さぬかということまで、立証責任の分配のことに関してまで述べられているのですよ。これでどうして意見交換をしただけのことであって司法行政の域を出ていないと言えるのですか。立証責任の分配まで言っておるのですよ。どうです。
  268. 上谷清

    上谷最高裁判所長官代理者 先ほどから申し上げておりますとおり、私どもも各裁判官と自由闊達な意見を交換する中で、一つの参考意見として申し上げているにすぎないわけでございます。  改めて申し上げるまでもないことだと思いますが、裁判官の皆さん方は非常に難しい事件を抱えて、問題の解決に非常に苦労しておられるわけでございます。裁判官は最終的には自分の責任において独立して判断を行わなければならないということで、言ってみれば非常に孤独な立場であるわけです。しかしながら、正しい裁判をするために広くみんなの知恵を集め、意見を聞いて、その中から正しい判断を選択する、それが裁判官の一番大事な仕事であることは当然のことでございまして、そういうたくさんの問題を抱えている裁判官が、ぜひとも広い方面から仲間の多くの人から意見を聞きたいという要望がございましてそういう協議の場を設けているわけでございます。  私どもの意見というのも、できるだけ今までの判例あるいは学説等の流れを紹介しながら、そういうふうな一つの考え方をそれこそ参考として示すことがある意味では私どものむしろ責務ではないかと思っているわけでございまして、それ以上の域を出るわけのものでは決してございません。しかも、裁判官それぞれ独立して判断をするということにつきましては、皆さん自覚と誇りを持って仕事をされておるわけでございます。そういう方々がぜひとも皆さんから意見を聞きたい、意見を聞いて、よりよい判断をしたいということに協力することに特段の問題があろうとは全く考えていない次第でございます。
  269. 安藤巖

    安藤委員 そういうことであるならば、この協議会で課長さんが、というお話ですからそう言うのですが、こういう民事局意見というものを長々とお述べになって、そして結論めいたことをおっしゃる必要は全くないので、ただ場所さえ提供して、場所、機会を与えて相互にそれこそ議論をなさって、それだけで終わるべきだと思うのですよ。この民事局の意見があってから全然どなたも発言してみえないのです、この記録によると。  まだあるのですよ。例えば予算とか技術とか社会的とか、先ほど申し上げました河川管理に関する財政的な制約、それについてどの程度考慮すべきかというような問題について議論がなされておる。そしてまた民事局見解というのがなされておるのですが、ここでその問題についてはこういうことになっておるのです。財政的な制約を考慮することが必要だということをお述べになって、「管理のかしの判断に際して、その基準とされる「通常有すべき安全性」ないしは「管理可能性」を議論するとき、これらの河川管理の特殊性は当然考慮されるべきと思われる。河川管理者に求められる安全性は、(中略)河川についての河川行政上の最終目標としての水準のそれではなく、その目標到達までの過程の中での、ある段階における一般的水準で満足すべきである。」こうなりまして、そして「財政的制約を理論上どう位置づけるかは、通常有すべき安全性の基準設定の中で考慮すべきか、あるいは管理可能性の判断のファクターとすべきかの議論があるようであるが、それは説明の仕方の違いであり、いずれにしても肯定したい。」財政的制約があるということを肯定したい、こういうふうに言っておられるわけです。そして、「行政庁側では、予算制約上の理由を含む諸々のファクターがあって堤防がないこと、現存堤防にとどまることが、一般的水準に即した安全基準の範囲内であることを裏づける事実を、少くとも立証の必要を負うことになろう。」と言って、これまた立証の責任の分配にまで言っておりまして、こういう言い方をしておるのですよね。  だから、こうなってくると、まさにこれはお互いに相互の意見を交わさせて、それでしまいというのじゃないのですよ。最高裁は、財政的、社会的なこの制約について肯定したい、こう言っておるわけです。そういう方向で裁判をやるべきだと言っておるのと同じことじゃないですか。この点どう思われますか。
  270. 上谷清

    上谷最高裁判所長官代理者 意見の具体的な内容については触れないで申し上げたいと思いますが、いずれにしましても、先ほどから何度も申し上げておりますとおり、私どもの意見として申し上げているわけでございます。意見である以上は、何らかの結論があるのが普通でございます。もちろん私どもとしても、とても難しい問題であって今のところとても結論を示すような段階に至っておりませんというのは、そういうふうに申すこともあるわけでございます。  それから、最後にしゃべっているという点ですが、これは従前の慣例からそうなることが多いというだけのことでございまして、それに対して例えば反論がある、あるいは質問がある、またほかの裁判官が議論をするという例もいろいろございます。たまたま私どもの方が「執務資料」として出しておりますものはいわゆる要約でございますので、一々速記のような形で議論の経過を写しているわけではございませんでして、読みやすいようにまとめているという部分がございますが、実際の協議の雰囲気は、もしお聞きいただけるものならお聞きいただくとよくおわかりいただけると思うのですけれども、みんなテーブルを囲んで非常に活発な議論をしているというのが実際でございます。
  271. 安藤巖

    安藤委員 いろいろこういう意見がある、こういう意見があるという紹介ではありませんよ、私が今紹介しましたのは。明らかにこういうふうにいきたい、こういうふうにいくべきである、こう言っておられるのですよ。私はこれを読んで実は愕然としたわけであります。  ほかにもたくさんありますが省略しますけれども、もう一つだけ例を挙げましょうか。  これは、いわゆる砂防指定地に指定された沢が公の営造物と言えるかどうかという議論をしておられるところがあるのです。この関係についてはA地裁が出題をしてB高裁とC地裁とD地裁がそれぞれ意見を述べられたのですが、B高裁は肯定、公の営造物と認めるべきである、C地裁も肯定、D地裁は否定、そう見るべきではない、こう意見が分かれたのですね。そうしましたら、「砂防指定地として、私人の行為が制限されたり受忍義務が課せられたというだけでは、国や地方公共団体が当該山の斜面を支配管理しているということができないのはもちろんであり、このような意味においても、公の営造物ということはできないであろう。 ただし、砂防設備が設置された場合、これが「公の営造物」に該当するのは当然であり、」云々というふうに書いてあるのですね。これは意見が分かれたのを一方の意見にくみしておる、こういうことを言っておられるわけです。そうすると否定した方ですか、それになるわけですね。片一方の意見は、おまえは間違っておるのだよ、こう言っておるのと同じことになる。そうすると、やはりこれはお互いに意見を交換する場というのではなくなっていると私は思うのです。  ほかにも、発電用ダムを建設した電力会社の責任がどうかとか、自然公物も公の営造物に含まれるかどうか、急傾斜地に集中豪雨があった場合の責任はどうかとか、損害賠償の算定に当たって考慮すべき事項はどうか、全部意見があって最後にこうだという結論を出しておられるのですよ。時間がありませんから省略し史すが、またほかの機会でもいいですけれども、これはやはり憲法それから裁判所法の趣旨に反することを最高裁事務当局がやっておられるとしか私は思えないわけです。  そこで、この民事局回答、意見なるものが、具体的な裁判に対してどういう影響が出ておるかということを示しながらお尋ねします。  申し上げるのは、先ほどの財政的、社会的、時間的な制約というのは、この直後に出された大東水害の最高裁の判決にそのまますぱっと出ておるのですよ。判決の当否を私は言うわけじゃありませんよ。この協議会がなされておったころは、大東水害判決がちょうど書き終わっておるころじゃないのか。大東水害判決は翌年の一月ですからね。全く同じ理論が展開されておる。  私が申し上げるのは、昭和五十九年五月二十九日のいわゆる長良川・墨俣水害訴訟の判決の関係であります。もちろん改めて断っておきますが、この判決がいいか悪いかということを申し上げているのではありませんよ。この協議会があった後です。同じ水害での訴訟が起きたいわゆる長良川・安八水害訴訟、これが一審原告勝訴、被害者の方です。ところがこの墨俣水害訴訟は、同じ岐阜地方裁判所の判決であるけれども全然違う判決だというので、当否はともかくとして、いろいろ社会的にも大きな問題になった判決であります。  それで、この審理をしたし、それから判決を言い渡しをされた岐阜地方裁判所のそのときの裁判長は渡辺剛男とおっしゃる方であります。私は、これは想像でありますが、恐らくこの昭和五十八年十二月二日の協議会にこの渡辺判事も出席をされておっていろいろメモをおとりになったのではないか。  まず第一に、この判決の「理由」のところでありますが、「理由」の第二の「河川管理の瑕疵に関する主位的主張について」、そのうちの二の一の「工事実施基本計画及び計画高水位の意義」の目のところで、「河川の管理については、道路その他の営造物の管理とは異なる特質及びそれに基づく諸制約が存するのであって、」云々と言って、「すなわち、河川は、本来自然発生的な公共用物であって、もともと洪水等の自然的原因による災害をもたらす危険性を内包しているものであるから、河川の管理は、当初から人工的に安全性を備えた物として設置される道路その他の営造物とは性質を異にし、本来的にかかる災害発生の危険性をはらむ河川を対象として管理者による公用開始のための特別の行為を要することなく開始されるのが通常であって、」そして、「堤防の安全性を高めるなどの治水事業を行うことによって達成されていくことが当初から予定されているものということができる。」こういうくだりがあるのです。  私は、それぞれの一つ一つの言い分の項目を見ますと、全くこれは、先ほどの協議会の資料として出された中の二十四ページにあるのですが、「そもそも河川については天然のままで営造物といえるかどうかについて争いがあり、これを肯定するとしても、河川の特性、すなわち、道路はそれを設置することにより危険が発生するものであるから、その対応措置を講じた上で管理を開始することができるが、河川は本来危険を内包したままの状態で管理を開始せざるを得ないのであり、河川管理はこれを逐次安全なものにしていく過程であること、」こういうような言い方、これは一つ一つ項目別に言っておられるのをやると完全に一致するのですよ。これでまた私は愕然としたわけであります。  それと、「瑕疵の推定の要件」という項目が同じ「河川管理の瑕疵に関する主位的主張について」というところの判断であるのですが、ここでも同じような判断をしておられるのです。この判決は「一般に構造物がその設計外力以下の外力に耐えられなかった場合、当該構造物に欠陥が内在することによるものと事実上推定し得ることは明らかであるところ、」「計画高水位以下の水位の洪水の通常の作用により破堤した場合には、反証のない限り、古事実から河川の管理に瑕疵があったことを事実上推定し得るものというべきである。」こういうような言い方ですね。これは、この協議をまとめた「執務資料」によりますと、「次に、内在欠陥型については、設計外力以下の流量の洪水で破堤又はいつ水したときは、そのことからかしを事実上推定してもよいであろう。」こうなっておるわけですよ。先ほど私が読んだ判決の文章と全く一緒なんです。  だから、私はこういうふうに影響されているというふうにしか思えないわけです。そして、結局この判決は、まだ河川の改修が全部完了してないということでもって被害者側の原告の請求を棄却しておられるわけです。その関係は、判決は財政的な事情とかなんとかかんとかからまだ未完成であるからといって責任を問うわけにはいかぬ、こう言っておみえになるわけですが、「執務資料」の関係でいくと、先ほど言いましたように、財政的な制約を肯定すべきである、肯定したい、こう言っておられるわけですね。だから、そういうことがこうやってあらわれてきているというふうに私は思わざるを得ない。となると、そんなことはないとおっしゃりたいに決まっておるのですが、この協議、民事局の意見というものが現実に裁判官の審理の内容、そしてその結論である判決に影響を与えているのではないかという疑いを持たざるを得ぬと思うのですが、この点どういうふうにお考えですか。
  272. 上谷清

    上谷最高裁判所長官代理者 先ほどから何度か申し上げておりますとおり、これはいろいろな意見があり、その意見の中でどれが正しいと考えるかはそれぞれの裁判官がお考えになってお決めになることでございまして、それが先輩の裁判官の発言だから、あるいはまた民事局の発言だからということで特別の遠慮をする、あるいはそれがいいというふうな考え方をする裁判官はいるはずがないという前提で私どもはそういう協議会をやっているわけです。また、現にそういう裁判官がいるとは全く考えておりません。したがいまして、いろいろな意見が多い方がいいわけでございます。先ほどちょっと御質問の前におっしゃいましたけれども、A裁判所がこういう意見を述べ、B裁判所がこういう意見を述べ、C裁判所がまたこういう意見を述べ、また私どもはどれかの裁判所と同じ意見を述べというのも、議論を豊富にするためのものにすぎないわけでございまして、特別の意味合いがあるわけではございません。いずれにいたしましても、裁判官がみずから正しいと考えるところの材料をお互いに提供しているというわけのものでございますから、それによって影響を受けるというふうな言われ方をされますのは大変心外だと思うわけでございます。  具体的に今長良川の墨俣訴訟の判決の点に触れられましたけれども、この裁判をされました裁判官がそれぞれどういうふうなものを材料にしてそういう判断に至られたか、これは私どもの知るところではございません。その判決が言い渡される前に、先ほどございました大東水害訴訟の最高裁判所の第一小法廷の判決も当然ございましたので、その中身も検討されていると思います。それに、昭和五十三年三月十日にそういう問題についての最高裁の裁判もございます。さらに水害関係では、加治川水害訴訟等東京高裁の判決ほか幾つかの判決が出ておるわけでございまして、先ほど読まれましたような財政上の制約に関する議論であるとか計画高水流量と瑕疵の推定に関する議論とかはそういうふうな裁判例でもいろいろ出てきておりますし、それに対する判例批評あるいは学説等でも多数出されているわけでございます。そういうふうなものを総合的に検討されて恐らく御判断をなさったのだと思います。たまたま私どもの協議会で述べました意見が正しいとお考えになったということはあるかもしれませんけれども、特に民事局の見解だからこうしたというふうなことは考えられないところでございます。  なお先ほど、この協議会の二カ月ほど後に最高裁判所の大東水害訴訟の判決があって、それの内容が非常によく似ているという御指摘がございましたが、これは私ども事務当局と裁判部とは、具体的な訴訟の裁判の内容等については判決の言い渡しがあるまで一切知らされておりません。全く知る余地もないわけでございます。その点は誤解のないようにひとつお願いしたいと思います。
  273. 安藤巖

    安藤委員 いや、私の方ももちろん、今民事局長が御答弁なさったようなことでいってもらわなければならぬと思っておるのです。ありたいどころの騒ぎじゃないというふうに思っておるのですが、こういうようなことを聞いて、そしてこういうものを拝見したり判決を読ませていただいたりすると、これはいいのかなという気持ちにならざるを得ない。最高裁判所は、中身の公正なることももちろんであるが、外形的に見ても公正らしさというものをきちっと保たなければならぬのだといつも言っておみえになるのです。となると、今私が指摘いたしましたようなことからすると、これは公正らしさというのが危うくなってくるのじゃないかなという気がするのです。だから申し上げておるのですよ。いただきました資料によりますと、会同とか協議会というのは、多いときは年に六、七回、少ないときでも五、六回やっておられるようですが、もちろん中身は今申し上げましたようなことばかりではないと思いますけれども、やはり公正らしさというものに対して国民が疑念を持つようなことは絶対やっていただいてはならぬと思うのですが、その点いかがです。
  274. 上谷清

    上谷最高裁判所長官代理者 公正であるとともに公正らしさも大切であるという御指摘はまことにそのとおりでございますし、私どもといたしましても、公正であるだけではなく、公正に疑いを持たれるようなことは一切すべきでないと考えておりますし、現にそれをしていないというふうに確信を持っているわけでございます。
  275. 安藤巖

    安藤委員 一番最後の文句がちょっと気に入らぬけれども、そこで給与法との関係でお尋ねしたいと思うのです。この問題に関しまして、これは午前中にもお話しになったのですが、朝日新聞の社説で、結局こういうようなことになると裁判官の独立心が次第に失われて、最高裁の司法行政動きなどいわば上を見ることに必要以上の神経を裁判官が持つようになるのではないかということを心配しておられるのです。こういうようなことも問題ですが、お金のこともやはり問題だと思うのです。  今度の給与法案給与の中身を拝見いたしましたけれども裁判官報酬の号、今判事の場合八号までありますね。判事補だけでも十幾つまであるのですが、判事の段階だけを見ますと、昭和二十三年から十年間は一号から五号で五段階だったのです。このときの一番たくさん報酬を受け取られる方と一番少なく報酬を受けられる方、最高裁長官と五号の方の差はせいぜい二・一倍から二・五倍だったのです。それが昭和三十三年、これが八段階になった、判事の特というのがついて七号まで。そのときには二・七倍から三・四倍にこの差が広がったのです。そして昭和三十八年、判事特、丸というのが一つある特ですね、それから八号まで、結局九段階になったら、その差は四・二倍から四・八倍に広がっておるのですよ。これは段階が多くなるに従って格差が非常に広がっておる。最近少し手直しをされたのですが、やはり九段階で三・八倍です。だから、これは私は前々から申し上げておるのですが、こういうような段階を幾つかに区切るのではなくて、せいぜい二つか三つくらいの段階に分けて、裁判官の皆さん方が安定した報酬でもってしっかり事件に取り組むことができるようにということ、そういうことを申し上げてきておるのですが、今給与法案が出されているわけですけれども、今後ともそういうようなことを考えていかれるお気持ちはあるのかないのかということを最後にお尋ねをして、私の質問を終わりたいと思います。
  276. 櫻井文夫

    櫻井最高裁判所長官代理者 裁判官報酬の刻みの変遷につきましては、ただいま委員のおっしゃったとおりでございます。いろいろと経緯はあったかと思いますけれども裁判官報酬、特に判事報酬につきましては、判事に任官しましてから定年まで、長いものでは三十年の期間があるわけでございます。その三十年の間には経験も積み、いろいろと法的な知識等も増していくわけてありまして、そういう意味で、我が国裁判官の場合は判事の経験あるいは識見等の面で非常に幅広いものがあるわけでございます。そういったようなことから現在のような判事報酬の刻みというものができているのであろうと思います。  ただ、それにいたしましても三十年という長い期間を八つあるいは九つという段階で区切っていくわけでありまして、その刻みはかなり少ないと申しますか、粗い刻みであろうというふうに思います。そのことは、裁判官の職務と責任の特殊性、国家公務員、一般職の行政官とはやはり違う点があるということからそのような刻みができてきておるものと思いますので、そういった裁判官の職務と責任の違い、さらにはその刻みが一般行政官よりは随分有利に設定されているといったようなことにつきましては、我々に課せられた責任というものを十分認識して今後もこの法律の維持、運用ということに力を尽くしていかなければならないと思っております。
  277. 安藤巖

    安藤委員 終わります。ありがとうございました。
  278. 相沢英之

    相沢委員長 次回は、明九日水曜日午後零時十五分理事会、午後零時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時四十四分散会      ————◇—————