運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1987-12-09 第111回国会 衆議院 大蔵委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    国会召集日昭和六十二年十一月二十七日)( 金曜日)(午前零時現在)における本委員は、次 のとおりである。   委員長 越智 通雄君    理事 大島 理森君 理事 太田 誠一君    理事 中川 昭一君 理事 中西 啓介君    理事 中村正三郎君 理事 野口 幸一君    理事 宮地 正介君 理事 玉置 一弥君       新井 将敬君    井上 喜一君       今枝 敬雄君    江口 一雄君       遠藤 武彦君    金子 一義君       小泉純一郎君    笹川  堯君       杉山 憲夫君    戸塚 進也君       葉梨 信行君    鳩山由紀夫君       藤波 孝生君    堀之内久男君       村井  仁君    村上誠一郎君       山中 貞則君    山本 幸雄君       上田 卓三君    沢田  広君       中村 正男君    早川  勝君       堀  昌雄君    武藤 山治君       日笠 勝之君    森田 景一君       矢追 秀彦君    山田 英介君       安倍 基雄君    正森 成二君       矢島 恒夫君 ――――――――――――――――――――― 昭和六十二年十二月九日(水曜日)     午後五時二分開議 出席委員   委員長 越智 通雄君    理事 大島 理森君 理事 太田 誠一君    理事 中川 昭一君 理事 中西 啓介君    理事 中村正三郎君 理事 野口 幸一君    理事 宮地 正介君 理事 玉置 一弥君       新井 将敬君    井上 喜一君       今枝 敬雄君    魚住 汎英君       江口 一雄君    遠藤 武彦君       金子 一義君    小泉純一郎君       笹川  堯君    戸塚 進也君       葉梨 信行君    鳩山由紀夫君       堀之内久男君    村井  仁君       村上誠一郎君    山中 貞則君       山本 幸雄君    上田 卓三君       沢田  広君    城地 豊司君       早川  勝君    堀  昌雄君       武藤 山治君    日笠 勝之君       森田 景一君    矢追 秀彦君       山田 英介君    安倍 基雄君       正森 成二君    矢島 恒夫君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 宮澤 喜一君  出席政府委員         経済企画庁調整         局長      横溝 雅夫君         大蔵政務次官  平沼 赳夫君         大蔵大臣官房総         務審議官    角谷 正彦君         大蔵省主計局次         長       斎藤 次郎君         大蔵省主税局長 水野  勝君         大蔵省関税局長 大山 綱明君         大蔵省理財局長 足立 和基君         大蔵省銀行局長 平澤 貞昭君         大蔵省国際金融         局長      内海  孚君         国税庁次長   日向  隆君  委員外出席者         経済企画庁総合         計画局計画課長 西村 吉正君         通商産業省産業         制作局産業構造         課長      松藤 哲夫君         建設省都市局都         市計画課長   伴   襄君         自治省税務局         固定資産税課長 佐野 徹治君         大蔵委員会調査         室長      矢島錦一郎君     ――――――――――――― 委員の異動 十二月八日  辞任         補欠選任   安倍 基雄君     佐々木良作君 同日  辞任         補欠選任   佐々木良作君     安倍 基雄君 同月九日  辞任         補欠選任   杉山 憲夫君     魚住 汎英君   中村 正男君     城地 豊司君 同日  辞任         補欠選任   魚住 汎英君     杉山 憲夫君   城地 豊司君     中村 正男君     ――――――――――――― 十二月九日  抵当証券業規制等に関する法律案(第百九回  国会閣法第九号)(参議院送付) 同月三日  大蔵省財務局大幅増員に関する請願上田卓  三君紹介)(第一五号)  同(中村正男紹介)(第一六号)  同外一件(野口幸一紹介)(第一七号)  同(正森成二君紹介)(第一八号) 同月七日  新大型間接税導入反対国民本位税制改革  に関する請願安藤巖紹介)(第四九号)  同(石井郁子紹介)(第五〇号)  同(岩佐恵美紹介)(第五一号)  同(浦井洋紹介)(第五二号)  同(岡崎万寿秀紹介)(第五三号)  同(金子満広紹介)(第五四号)  同(経塚幸夫紹介)(第五五号)  同(工藤晃紹介)(第五六号)  同(児玉健次紹介)(第五七号)  同(佐藤祐弘紹介)(第五八号)  同(柴田睦夫紹介)(第五九号)  同(瀬長亀次郎紹介)(第六〇号)  同(田中美智子紹介)(第六一号)  同(辻第一君紹介)(第六二号)  同(寺前巖紹介)(第六三号)  同(中路雅弘紹介)(第六四号)  同(中島武敏紹介)(第六五号)  同(野間友一紹介)(第六六号)  同(東中光雄紹介)(第六七号)  同(不破哲三紹介)(第六八号)  同(藤田スミ紹介)(第六九号)  同(藤原ひろ子紹介)(第七〇号)  同(正森成二君紹介)(第七一号)  同(松本善明紹介)(第七二号)  同(村上弘紹介)(第七三号)  同(矢島恒夫紹介)(第七四号)  同(山原健二郎紹介)(第七五号)  大蔵省財務局大幅増員に関する請願矢島恒  夫君紹介)(第七六号) 同月八日  大蔵省財務局大幅増員に関する請願早川勝  君紹介)(第二八三号)  同外一件(武藤山治紹介)(第二八四号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 十二月七日  新大型間接税導入反対に関する陳情書外一件  (第一四号)  税制改正に関する陳情書外二件  (第一五  号)  相続税法改正に関する陳情書  (第一六号)  大幅減税の実現に関する陳情書  (第一  七号)  公共用地取得に伴う税制上の優遇措置に関する  陳情書  (第一八号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  国政調査承認要求に関する件  閉会中審査に関する件  抵当証券業規制等に関する法律案(第百九回  国会閣法第九号)(参議院送付)  国の会計税制及び金融に関する件      ――――◇―――――
  2. 越智通雄

    越智委員長 これより会議を開きます。  国政調査承認要求に関する件についてお諮りいたします。  国の会計に関する事項  税制に関する事項  関税に関する事項  金融に関する事項  証券取引に関する事項  外国為替に関する事項  国有財産に関する事項  専売事業に関する事項  印刷事業に関する事項  造幣事業に関する事項の各事項につきまして、今会期中国政に関する調査を行うため、議長に対し、国政調査承認要求を行うこととし、その手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 越智通雄

    越智委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ――――◇―――――
  4. 越智通雄

    越智委員長 次に、本日付託になりました第百九回国会内閣提出参議院送付抵当証券業規制等に関する法律案を議題といたします。  本案は、第百九回国会において原案のとおり可決し、参議院に送付いたしましたが、同院において継続審査とされ、本日、原案のとおり可決され、本院に送付されたものであります。  したがいまして、その趣旨につきましては既に御承知のことと存じますので、この際、趣旨の説明を省略いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 越智通雄

    越智委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ―――――――――――――  抵当証券業規制等に関する法律案     〔本号末尾掲載〕     ―――――――――――――
  6. 越智通雄

    越智委員長 本案につきましては、質疑及び討論とも申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  抵当証券業規制等に関する法律案について採決いたします。  本案賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立
  7. 越智通雄

    越智委員長 起立総員。よって、本案原案のとおり可決すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 越智通雄

    越智委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ―――――――――――――     〔報告書は附録に掲載〕      ――――◇―――――
  9. 越智通雄

    越智委員長 国の会計税制及び金融に関する件について調査を進めます。  質疑申し出がありますので、順次これを許します。武藤山治君。
  10. 武藤山治

    武藤(山)委員 大蔵大臣、大変厳しい状況の中で大蔵大臣をまた引き続いてお務めになることを大変御苦労と存じます。一層頑張っていただきたいと期待をいたしている一人でございます。  私は、けさ、朝の三時までNHKのテレビを見ておりまして、少し頭はもうろうとしているのでありますが、レーガンとゴルバチョフの世界のトップにいる人たちが何を考え、地球に対してどういう責任を果たそうとしているかを実況放送で目の当たりに見たいと思って、大変勉強になる画像を見ていたわけでございますが、INF全廃条約ができたというこの歴史的な、まさに二十一世紀に教科書に載る大きな出来事がきょうあったということは、この地球に生きている全人類にとっても大変な意味があると感じた次第でございます。  大蔵大臣というよりは竹下内閣国務大臣の一人として、この米ソ両首脳の軍縮への第一歩の踏み出しをどう評価され、また、この超大国合意世界に、日本にどんな影響をいろいろ与えるだろうか、そんな点を国務大臣として御感想をちょっとお述べいただきたいと存じます。
  11. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 引き続き大蔵大臣を務めることになりました。相変わりませずよろしく御指導をお願い申し上げます。  ただいま武藤委員からINF調印につきましてお尋ねがございました。私はきょうたまたま早朝から国会に入っておりまして、十分詳細を存じませんまま不勉強でございますが、これが調印に至りましたことは、両国並びに関係各国の長い間の努力の結果でありまして、御指摘のとおりまことに画期的なことであると存じます。  殊に我が国世界ただ一つ被爆体験国といたしまして核兵器の廃絶を長く叫んでまいりました立場から申しますと、その第一歩が踏み出されましたことは慶賀にたえないところであります、願わくはこれがさらに戦略核にも及びまして、行く行くは核兵器すべてあるいは通常兵器削減にまで至ることを心から希望するものでございます。  本来、我が国は、国連等々の場におきまして、超大国地球を何遍も破壊することができるようなたくさんの、殊に核兵器等々の軍備を持っていることはまことに愚かなことではないかということを申してまいりました。これを減らすことによって、それによって浮きますところの経済的な資源等々を、これだけきょう現在餓死しておる人々のたくさんいる地球全体に対して、そういう人々あるいは発展途上国の救済のために用いるならば、それは地球全体の幸せになるのではないかということをかねて申し続けてまいったわけでございますが、願わくはこのたびの調印がさらに戦略核、また通常兵器削減にも及びまして、人類全体の福祉の向上に、そのような資源のむだが排除されて建設的に使われることを心から希望するものでございます。
  12. 武藤山治

    武藤(山)委員 特に宮澤先生はずっと以前から、鈴木内閣の当時から、今の平和憲法は実践してみる価値のある憲法だと思う、こういうことを常々おっしゃっていた政治家でありますから、こういう世界軍縮への方向というものと日本の目指す理想というものが一致する点がたくさんあるわけでありますから、ぜひ閣内でそういう世界の潮流の方向日本政治を引っ張っていくように一層の努力を、お願い申し上げる次第でございます。  それで、割り当てられた時間が大変短うなってまいりましたので、通告はたくさんいたしておりますが、この通告どおり質問する時間がないことが確定的になりましたので、この順序どおりにならないであっちこっち行ったり来たりすると思いますが、ひとつ御容赦いただきたいと存じます。  まず最初世界経済の問題でありますが、今各国国民あるいは指導者は、あのアメリカの十月十九日の株の大暴落、一日で日本円にして七万円も株価が下がってしまった五百ドル暴落というのは大変な事態であり、またG5やG7でいろいろ相談をしてもどうもドルは下がっていってしまう、一体これからどんな形に世界経済がなっていくんだろうか、不況になるんだろうか、不況を回避して何とか持続的成長が可能なんだろうか、それともインフレーションになってしまうんだろうか、選択肢は幾つかあると思うのでありますが、いずれにしても先行き大変不確実で不透明でなかなか先が読めない、そういう状況に今あると思うのであります。でありますから、その全体像をここで描けと言われてもなかなか大臣もお答えしにくいと思うので、大変細かい個々の問題を尋ねながら全体像をひとつ考えてみるという以外質問のしようもない時代だと思うのであります。  何としても七カ国で世界GNPの五五%を占めておるし、またOECD二十四カ国では六七%、約七〇%の総生産を担っておるし、また日本一国でも二一%近い世界GNPを占める国に成長した。こういうことを考えてみると、アメリカ日本、ドイツ、先進工業国責任というのは人類に対して大変重い責任を持っているな、こう感じている次第であります。  そこで心配なのは、アメリカがだんだんこのシェアが低くなってきておりまして、御案内のように一九五五年には世界の三七%のGNPを占めていたアメリカが今は二〇%に低下してしまっている。そのために、アメリカが国際的な公共財供給とかあるいは資源供給開発途上国への援助、そういうものが十分できなくなってきた。そういう面から日本に対する要請、要求、強要、内政干渉的な手法までいろいろ迫ってきているわけでありますが、こういう傾向というのはさらに強くなっていくと私は心配しているのでありますが、大臣はその辺どのように認識されておりますか。
  13. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 十月十九日のウォールストリートにおける株式暴落は、アメリカ人の感覚ではやはり一九二九年以後の最も大きな出来事であるというふうにとらえておるようでございます。我が国におきましてはそれほどまでにはこれをとらえておりませんけれども経済界出来事としてはやはり二九年以来の出来事であったと考えておるようでございます。そこで、したがいまして二九年の教訓に倣いまして、ともかく金をできるだけ豊かにする、じゃぶじゃぶにするというようなことでこれに対応を当面いたしたように見えます。  今日までのところ、あの日の底はそのまま、いっとき底へ届くかと数日前に思われましたが、さらにそうはならずに一応の落ちつきを示しておるということかと存じますが、そこで武藤委員の言われましたように、いわゆる戦後のアメリカがマーシャル・プランをやりましたころのことを考えますと、相対的な力の変化は確かに極めて顕著なものがございます。そこで我が国に対してアメリカが求めておりますものは、実は同じことを求めておるのでございますけれども、私は理由は二つあるのであろうと思います、  一つは、競争国としての我が国と申しますか、アメリカかなりたくさんの先端産業まで含めまして日本競争力がひょっとしてアメリカよりまさっているのではないか、追い越されるのではないかという一つの多少恐怖もございますし、それからまた他方で、アメリカほど我が国が自由に市場を開放していないのではないかという、多少の誤解もございますが正解の部分もございまして、そういうことから来る日本に対しての一つの多少の恐れあるいは怒りとでも申しましょうか、そういう部分があろうと存じます。  もう一つ部分は、長いこと世界を支えてきたパックス・アメリカーナというものが御指摘のようになりましたので、それに対してはやはり日本等々の国がもう少し積極的に世界的な責任感を持って一緒にこの自由世界というものを支えてもらえないかというそういう気持ち。これは怒りとか非難とかいうのと違いまして、客観的に見て自国の力がそれだけ相対的に小さくなった、については共同してこの責任を分担してくれないかという、そういう二つの問題があるように存じまして、いずれの場合にも我が国がこれに対応していかなければならないのではないかと思っております。
  14. 武藤山治

    武藤(山)委員 競争力が低下し、アメリカの国力が大変相対的に落ち込んでしまった。その国が基軸通貨として国際通貨をひとりで担当しているわけでありますが、これはややもう限界に達したんじゃないか、ドル通貨国際通貨を担うにはアメリカ経済が余りにも弱くなり過ぎてしまったのではないか、したがって、何らかの別な、ドルと並行して同時に負担をする通貨がない限り、これはドル安というのはどんどんまだ進むのではないかという心配をしている私は一人なんでありますが、大臣は、その場合どんな構想で、ドルだけで支えることが難しい場合にどんな手だてをしたらいいと、そういう発想についてはどうお考えになっていますか。
  15. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 今日でもドル基軸通貨であることに変わりがなく、ある意味では、円、マルク等々の経済が多少の力を持ち始めましたので、それが補完的な役割を現実の問題として少しずつ果たし始めるといった程度のことではあるまいかと思われます。そういう意味ではどう考えましてもやはりドル基軸通貨として運営していくしかないというのが、しばしばG7において私ども議論をし、ただいまのところ結論として持っておるところでございます。すなわち、各国政策協調をすることによりましてドル価値の安定を図りたい、こういうことがただいま先進各国、殊にG7合意であろうというふうに思われます。そのために、我が国としてあるいは西ドイツとして、いわゆる貿易黒字国が内需の振興に努めなければならない、開放に努めなければならないということはもう御承知のとおりでございますし、アメリカに対しても財政赤字貿易赤字の改善に努めてもらいたい、アメリカ自身もまたそれを約束しておるところでございます。  それは、冒頭に武藤委員INFの話をなさいましたのはまことにこの際的を得た御指摘であろうと思いますのは、アメリカがそのような形で財政赤字を減らしていくあるいは貿易赤字を減らしていくという上で、大きな軍備が幾らかでも縮小するということはこれはプラスになるはずの要因でございますから、そういう点からも歓迎すべきことだと存じます。  要は、ただいまのドル水準が、これがもうさらに下がらなければならないと考える理由は特にはないはずでございまして、この水準そのものに特段の意味があるというふうには思いませんものでございますから、貿易赤字あるいは財政赤字が改善されていくということであれば、ドルに対するこの水準での信認というものは維持され、回復するのではないか、またそのために私ども政策協調をやってまいりたい、私はそのように考えております。
  16. 武藤山治

    武藤(山)委員 政策協調をやってもなかなか日本期待するような水準とか答えが出てこないのですね。  ちょっと今アメリカ連銀ドルを支えるために介入した日時と金額アメリカが発表しましたね。これは八月から十月まで三回介入した。最初が八月四日から十日までの間で六億三千百万ドル、これはマルクを買った。このときが一ドル百五十一円、そしてマルクが一・九〇。それが二回目の介入の八月二十四日から九月二日、三億八千九百五十万ドルドル買いをやった。そのときに日本との関係は百四十円になっちゃっているのですね、ほんのわずかで。三回目が十月二十七日から二十九日で、ついに円が百三十八円。現在百三十二円ですね。これは、ルーブル合意でいろいろ中央銀行総裁大蔵大臣が集まって相談をして、大体こんな程度のところでお互い介入しようやという話はしてあるのでありましょうが、このわずか八月から十月まで一五%円高になっておるわけですね。この速度なり水準というのは、合意をした精神から見てやむを得ない推移なんでしょうか。
  17. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 さらに十月十九日以降、ウォールストリート暴落以降のこともあわせて考えますと、ルーブル合意による各国共同介入という約束を米国かなり忠実に守っておるように私は考えております。私どもも詳細を正確に存じておるわけではございませんし、ある時期がたちませんと連邦準備局が発表もいたさないわけでございますが、かなりしばしば、しかも相当の金額で、円もマルクも、これはFedばかりでありませんで、G7の国及びその周辺の国々がみんな一様に介入をして最近に及んでおります。  これは一応ルーブル合意精神に忠実にそれをやっておるということであるというふうに考えておりますが、武藤委員も御承知のとおり、この介入というものはある水準を絶対に維持するあるいは絶対に回復するというようなことを考えておるわけではございませんで、市場が短期間に非常に急激に動くということはいかなる意味でも好ましくない、それを緩和する、緩めるという形、目的での介入ということが行われるわけでございますので、その介入の過程において、ある時間の間に円なりドルなりが水準としてはある程度の上昇をする、ある程度の下落をするということは場合によって避けられないことである。だが問題は、それをいわゆるスムーズアウトとでも申しますのでしょうか、急激な変化がないようにという目的を持って介入お互いにいたしてまいった。
  18. 武藤山治

    武藤(山)委員 介入でそう効果があると私も思いません。というのは、一日のドル決済額をちょっと見ても、ロンドン市場で一日に取引が一千億ドル、ニューヨーク五百、東京約五百、この三市場だけで一日に二千億ドル取引ですね。日曜日、土曜日、祭日を除いて一年二百五十日と計算しても五十兆ドル取引ですからね。五十兆ドル取引のある中で政府介入する額なんというのは微々たるものですね。ですから、介入で意図する値段にびしっとくぎづけしようなんということはもうどう見てもとてもできっこない。五十兆の取引のうち、例えば六十二年一月から十月までの介入金額中央銀行で一千百億ドルにすぎないのですから、そう期待はいたしていないのでありますけれども、ただ、アメリカドルの安定に対する考え方と日本期待とでは物の見方にかなりの違いがあるような気がするのです。  ことしの十月、堀さんがちょうどブラックマンデーのときにアメリカにおりましてグリーンスパン連銀議長と話し合っているのです。この雑誌に、堀さんが質問をしたときに答えているのでありますが、グリーンスパンはこう言っているのですね。介入の是非ということですが、この介入に効力ありやなしやという議論は、国際経済をやるエコノミストの間で相当な議論がなされてきました。概して言えば、米国エコノミストの大部分は、為替介入効果について「ない」、「あっても、ほとんど影響なし」という見解かと思います。  私自身の意見はと問われれば、介入は、市場の短期的な混乱を回避するというか、安定化させるには有効だが、それ以上のものではない  為替レートは経済のファンダメンタルズを反映すべきものであり、反映するだろう  円ドルの為替レートに関して申し上げれば、今、円ドル・レートは安定化のプロセスにあると思います。G7でも為替の安定、ことに円ドルの安定をうたっており、われわれも、今それにそって経済運営をしているわけです。ルーブル合意での為替介入についても、介入は私は為替安定のための道具だての一つにすぎません。おっしゃるようにファンダメンタルズが大切だと思います。堀さんとの一問一答の中でグリーンスパン最高責任者がこう述べている言葉は、介入というのは急激に何か変化があったときの即効薬としてはある程度効き目があるが、徐々にドルが下がっていくのはやむを得ないんだよという意味がこの話の中に潜んでいる、私はそういう感じがしてならない。  というのは、グリーンスパンがことしの二月ですかアメリカの雑誌に書いたのを局長もごらんになったと思いますが、一ドル百十円説をグリーンスパン議長になる前に言っていたのですね。一ドル百十円ぐらいまでドルは下落をするか、もしくはアメリカ国民の生活水準を三%ぐらい引き下げるか、どちらかの選択しかない。すなわち、一方では増税をやれということですね。しかし、選挙を前にしてそういうことはなかなかできないだろう、結局はドルの下落という方向で解決をする以外にないという論文を彼は議長に就任する前に出しているものですから、私も大変気がかりなんです。  海外経済協力基金の前の総裁、もと大蔵省にいた細見卓さんがたまたまワールドレポートにこれまたなかなかいいことを、歯にきぬを着せずにばっちりいろいろなことを言っているのですね。これまでいろいろと政策協調が言われてきたにもかかわらず、アメリカアメリカのやり方を変えないし、日本はある程度は変えたとはいいながら、市場開放や円高メリットの還元などについては抵抗しており、為替レートの変化影響が十分に出ていない。こういうふうに政策協調を口にしながら、実際には実行されず、めいめいがそれまでのやり方をそれほど変えてはいない。このために大きな政策破綻、協調の破綻が来つつあるということを認識しなければならない。そして、どうすれば国際経済協調の破綻を大火にせずボヤにとどめるかに、各国経済政策の責任者たちは本気で取り組まなければならなくなったと言える。こういうことを細見さんが言っていられる。なかなか示唆に富むことを言ってくれているのです。ですから、これでいくと、大蔵大臣も、経済担当の最高責任者として、ぼや程度で消しとめる努力をしなければならない。特にその場合、為政者に要求されるのは、アメリカの置かれている特殊な政治情勢、経済情勢を現実的にとらえ、理念とか理屈とか願望だけではなしに、現実のマーケットの動きに的確に対応することだろう。こう細見さんが教えているのですね。  私はこれを読んで、やはりもと大蔵省にいて財務官をやり、主税局長もやり、また海外経済協力基金総裁として、大変高い見地から広い視野で物を言ってくれているな。この細見さんのこういう見解について、大蔵大臣、どうですか、賛成できますか、これは間違っているという判断でしょうか。
  19. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先ほど堀委員の御紹介になりますところのグリーンスパンの言というのを承りましたが、確かに介入というのは一種の補助的な手段でございまして、その基本には政策協調がなければならない、私もそれはそのとおりであると思います。その点は、また細見氏が言われることそのもの、つまり、政策協調とは申しましても、おのおのが主権国家でおのおのいろいろな事情を持っておりますために、口で言うほどあるいは学者が唱道されるほど現実にはそれが十分に行われ得ないということも時としてございます。殊にこの十月十九日以来のしばらくの間は、一九二九年の経験にもかんがみて、とにかく金を十分に放出しよう、金利を下げようということにアメリカのすべての人の関心が集中したものでございますから、それは短期的には金利差を小さくすることでございますので、ドルについては、いわゆる為替については不安定要因になる。それはしかし知っての上で、それどころではないという気持ちがあったろうと思います。これはある意味では、おのおのの国にそういうことはございますから、私どもも同情をしながら見ておりました。こちらはその間これは介入をしてそれに対応していくしかないと思っておりましたが、時間がたちますと、しかしそのようにドルが落ち続けること自身が、やや長い目で見ればこれはアメリカ経済にとってよくないということも明らかでございますので、やがて大統領を初め多くの人々がこれ以上のドルの下落は好ましくないということを言われるようになり、そして、その根源は何かと言えばやはり財政赤字だということから、御承知のようにホワイトハウスと議会との間でようやく財政赤字のある程度削減合意合意としてはでき上がった、まだ具体化をいたしておりませんけれども。これは長年言われておった政策協調の中ですべての国がアメリカに対して求めておったところでございますので、そういう意味では、米国自身も、ああいうウォールストリートの厳しい経験をしながら、結論としては政策協調に向かって不十分ではあっても具体的なステップをとりつつあるというふうに考えております。
  20. 武藤山治

    武藤(山)委員 アメリカの今とっている議会と大統領の協議がそんなに効果があると見るかどうか、またこれは議論のあるところでありますが、アメリカの今の財政規模からいって九十億ドルの増税、日本円にして一兆二千百五十億円、これはアメリカの財政規模から見たら微々たるものですわ。それからさらに歳出削減二百三十億ドル、約三兆円、これは日本の財政規模ならかなりいくなという感じですが、アメリカの財政規模で、今のていたらくで、一千六百億ドルも赤字が年々出るような状況の中でこの程度の手直しては、市場は本気にこれを受けとめないという感じだと私は見ているのですよ。もうちょっと思い切ったことをやらなければ、とても市場の空気というのは、アメリカはファンダメンタルズよくなるぞ、本気だぞ、大丈夫だぞという空気にならないのじゃないか、こう見ているのですね。いずれにしても、議論していると時間がなくなりますから先に進みますが、もし期待するとすれば、きょうの時点で軍縮交渉が成功したということがこれからのアメリカの歳出削減かなり影響が出るかな、そういう感じです。  やはりワールドレポートの中でおもしろいことを言ってくれているのですが、ブッシュ副大統領が、今度は大統領になると思うのですが、恐らく共和党で当選すると思うのですが、副大統領に指名されたときに、彼の演説の中で、「増税なしに防衛力の増強を行おうというレーガンの計画は、まやかしの神がかり的な経済だ」、ブッシュがこういう演説をぷっているのですね、今ようやく軍縮が正式に調印される段階で、プッシュのこの発言が大変先見性を持ってレーガン政策を批判をしているのです。私も初めから、レーガンがあの減税案と強いアメリカということを両立してやれるはずない、これはどこかに無理がいって破綻をする、多分大蔵委員会でもそういう質問をしていると思うのですが、そういう状況に今なってきたのです。結局、レーガンは、ドルの低下はどんどん構わない、来年の大統領選挙までの間国内の景気の持続だけとにかくやればいい、あとはなりふり構わぬ、こういう戦略が一つあると思うのです、共和党大統領として。そのためにいろいろな犠牲がほかの部分に出てきている。したがって、今市場にその責任が転嫁されていってしまった。市場の大混乱から、今度は逆に鏡を見ながら反省をする段階にアメリカは入ってきている。  しかし、アメリカの今の双子の赤字というものを解消するのはそう簡単に短期間には無理だな、したがって、まだドルは下がるな、まだ円高になるな、私はこういう感じがしてならない。しかし、大蔵大臣がそうなるでしょうなどと言ったらまた市場は大変なことになるから、それは答えろと言う方が無理ですけれども、しかし、そういう可能性もあるぞということを常に政府としては頭に置かなければいかぬのじゃないかな、私はそう思うのです。というのは、大蔵大臣ドルが下がり円が上がるときはもう思い切って遠慮ない介入をするということが前に新聞に出たことがあるのです。だけれども、そんなに思い切って年じゅう介入をやった場合に、介入資金はどうなるのでしょうか。ここのところちょっと心配なのですよ。ことしの十一月までの介入に出した日本の資金というのは幾らになりますか。
  21. 内海孚

    ○内海(孚)政府委員 介入を幾らいたしましたかということにつきましては、本院におきましても、本委員会におきましても、マーケットに与える影響等から御勘弁いただいておりますので、御容赦願いたいと思います。
  22. 武藤山治

    武藤(山)委員 しかし、新聞や雑誌には、局長、もうどんどん書かれているのです。為券を償還期間二カ月で金利二・三七五%で金利が低いから民間は引受手がない。そして全額日銀が引き受け、日銀の信用創出になり、通貨増発につながる。六十二年十一月末までで発行残高は十六兆円、純増額で五兆円、外貨準備が十一月末七百八十億ドル、こうなっておりますが、ドルが先ほど言った八月から十月二十七日までだけだって一五%も円高ドル安なのですから、こういうことでどんどん介入をする資金を出してロスは一体幾らぐらいになるのか。今までロスが幾ら出たかは答えられるでしょう、結果ですから。それはどのくらい出ましたか。
  23. 内海孚

    ○内海(孚)政府委員 現在、今までのロスにつきましては、全部の累計で大体五兆円くらい、これは今までの累計でございますが、そうなってございます。
  24. 武藤山治

    武藤(山)委員 これは約二年半くらいですか。
  25. 内海孚

    ○内海(孚)政府委員 特別会計の創設以来の繰越評価額でございます。
  26. 武藤山治

    武藤(山)委員 特にこの二年、G5以降、ルーブル合意以降の問題を中心に私は聞いているのですが、親しい局長と僕の間だからこれ以上資料を出せと言いませんけれども、やはりそういうことをしかと考えると、これはなかなか容易ならぬ事態だなと思う。私の見る目では、そういう介入資金をどんどん日銀が出さざるを得ないためにマネーサプライがどんどん上がっている。現在、水準は一一%くらいいっているでしょう。これは経済成長率の範囲内ぐらいのマネーサプライの伸びが適正な経済運営の水準だと私たちはずっと大蔵委員会で主張してきたのですよ。経済成長率よりはるかに高い通貨増発やマネーサプライの高さというのは、やはりインフレの傾向を意味するのですよね。日銀はやはりインフレに対しては非常に敏感であり、今神経を使っているでしょう。ですから、大蔵大臣みたいにのんきなことを言って、いや、介入はじゃんじゃんしますよ、遠慮はしませんよと市場向けの発言をするのはいいけれども、やはりこれは国家的損害をかなり受けるのですね。ですから、堀さんのように自由経済体制論者だったら、為替も自由に変動していってやむを得ないんだと踏み切って、そのかわり被害の出るところへはきちっと手当てをしなきゃならぬという姿勢になる方がいいのか、いや、とにかく介入はじゃんじゃんするから皆さん安心してやってくれよという姿勢がいいのか、大臣のこの間の新聞発表を見て、これはいろいろな諸般の事情をよく検討して言っているのかなという不安をちょっと持ったのですが、いかがですか。
  27. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ブッシュが選挙を戦っております段階の相手に対してそういうことを言ったのはそのとおりでございますが、その後は決して言わないようにしておるようでございます。しかし、これはその後もしばしば話題になっておるようでございます。  ただ、私思いますのに、せんだっての財政削減案というものは、大統領が絶対に自分はいかなる増税もしないということを言う立場からともかく何かの増税はやむを得ないということに踏み切らざるを得なかったといいますか、そういう決心をされたこと、それからいまだに具体案が生まれないほどやはりあれは苦しい決断であったということを思いますと、何もできなかった場合を考えますと、やはりそれは評価をしていいのではないかというふうに思っておりまして、武藤委員の言われますように、しかしまだまだ財政赤字削減貿易赤字削減の道は遠うございましょう。が、だから今のドルというものはもっともっとこれから落ちるはずだということには、必ずしもそういうことにならない。今の水準というものは、これは相場でございますから理屈があってないようなもので、これからアメリカ努力が始まるということをあるいは評価するという立場もございましょうし、そこを私はさして悲観的には考えておりません。  それから、確かに相当の介入をいたしまして、それがマネーサプライの一一%ということに無関係ではない、日銀が心配されるということもそのとおりでございますが、日銀もしかしそれなりのオペレーションはしておりますし、幸いにして我が国経済にこれだけの供給余力がございますから、インフレということは心配をいたしておりません。ただ、過剰流動性ということがあって、このことが土地の問題になったりなんかしておる、そういう心配はないわけではございませんけれども、基本的にインフレということは心配しておりません。  私がやはり思いますことは、プラザ合意から二年ちょっとのところでこれだけ通貨が上がりますと、いかに日本経済でもなかなか適応しがたいことで、殊に中小企業においてそうでございますし、それが雇用の問題になる、地域の問題になりますから、大蔵大臣といたしましては、いろいろなことがございましても、やはりここは何とかして為替の大きな変動を防いでまいらなければならない、そういう気持ちを持っておりまして昨今に及んでおるようなことでございます。
  28. 武藤山治

    武藤(山)委員 首脳会議でいろいろ大蔵大臣はやったのでしょうが、いろいろ読んでみると、アメリカは何といっても大統領選挙が終わるまで景気の持続、景気の後退だけは何とか防ぎたい。そうしないと共和党は勝てない。ドイツは何としてもインフレにならぬように、中央銀行はインフレ防止に目的を求めている。日本は何としてもドルと円の関係の安定、為替の安定というところに目的がある、大体集約してみると。三カ国がそれぞれ違う戦略目標をみんな持っているわけですね。だから、私らが見ていると、なかなか日本の考えるようなドルの安定という方向だけにばっと一本化されていかないのですね、まあ大蔵大臣じゃないから会議でどんな議論をしてきたのだかわかりませんけれども。  しかし、細見さんは、アメリカをどうこの舞台にきちっと組み込むかがこれからの勝負だと言っているのですね。なかなか適切な言葉じゃないかなと思うのですが、こう言っているのですね。「ドル安容認に走りがちな米国世界経済の協調の枠に多少窮屈でも引きとめていくことは、さほど容易ではなさそうになった。」容易ではないようだけれどもやらなければどうにもならぬぞということを細見さんは警告しているのですね。ですから、G7なり5なりをアメリカが呼びかけたからやる方がいいのか、日本が積極的に今のアメリカをそういう形にきちっと取り込んでいく枠を設定するためにこっちから呼びかける方が得策なのか、その辺の見解はどうでしょうか。
  29. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいまの段階といたしましては、先般、十月二十日でございますか、アメリカで大統領と議会がとにかく同意いたしました歳出削減案がまだ法律化していないわけでございますので、これが正式に法律になり成立をいたしませんと、現実にアメリカが何をするかということは確定をいたさない。そのことは世間がすべて知っておりますので、そこに不安がありましては、G7というようなことをやりましても世間はなかなか信用をしてくれないだろうというふうに私は考えておりますものですから、できるだけ早くアメリカのそういう財政削減の案が最終的に確定をし実行されるということを今最も急いでもらわなければならない、私はそのように考えております。
  30. 武藤山治

    武藤(山)委員 その点は全く大臣と同感です。アメリカがもっと責任を感じて急いでやらぬといかぬのです。アメリカの生産性の競争で負けている点がこういっていたらくを起こしているのですから、アメリカがもっとしっかり、企業がもっと頑張らなきゃいかぬ話なんであります。もちろんレーガン政策も失敗したけれども、企業の競争力をつけない限りこれは解決できないですね。  そこで苦し紛れにアメリカが考え出すことは、この軍縮交渉がうまくいき、戦略核兵器までとにかく削減する合意ができる、そして来春レーガンがモスコーに行っていろいろなことを話し合う、そういう過程の中でお互いに親密感が出、信頼関係が醸成され、結局米ソ経済の問題を裏で話すと私は思うのですよ。それは、ヨーロッパや日本にはココムだと言ってじゃんじゃん制限して、ソ連には余り機械をやるななんて言っていますけれども、これを契機にアメリカはやはり貿易収支の赤字解消のためにもソ連と経済的に太いパイプをつくるのじゃないか。そういう点では堀先輩と私も全く同意見なんですよ。ですから、そうなってくると、ソ連が一番欲しがっているのは、やはり今生産をふやして生活水準を高めようということで機械なんですね。工作機械初め、とにかく合理化された機械が欲しい。堀さんはゴルバチョフさんと四時間会談をしていろいろ彼の本心も聞いてきたし、私も去年ソ連共産党大会に招待されて行ってソ連の高官の皆さんとも話し合い、ゴルバチョフとはちょっとでありますが握手をしていろいろ彼の苦悩というものをとにかく四時間にわたって演説をじっと聞いて帰ってきた一人でありますが、本気ですね。国民生活水準を引き上げようというためにどうしたらいいかということをソ連は今本気で考えている。ですから、そこのところをうまく、アメリカはこの軍縮の雰囲気、平和共存の雰囲気の中をうまく利用して、日本の頭越してばんばん始めるんじゃないか、こう見ているのですよ。そんなことはあり得ないと考えるか、見通しとしてどうですか。
  31. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは、私にそこまでの知識がございませんけれども、ともかく補助金つきの農産物を輸出しておるのでございますから、ただいまおっしゃいますようなことが、全く考えられない、荒唐無稽なことだというふうには、私は全然考えておりません。
  32. 武藤山治

    武藤(山)委員 宮澤さんは竹下内閣の副総理大臣ですからね、総理大臣を動かし、日本のかじ取りのできる大物政治家ですから、そういう情勢についても的確な進言を常に総理にできるだけの広い科学的情報と識見をひとつ発揮していただきたいことを期待している一人であります。  時間がどんどん進むので、企画庁を呼んでありまして大変失礼でありますから、企画庁の局長に先にお尋ねをしたいと思います。  企画庁は、最近国民所得統計速報を発表して、日本経済は大変順調に今推移している、特に七月から九月の実質GNPの伸びは十年ぶりの成長で、年間換算、瞬間風速で計算すると八・四の経済成長を遂げている、大変好ましい状況に進んでいると発表いたしました、こういう傾向が進めば六十二年度の経済成長は政府見通しよりかなり高目の答えが出るんじゃないかな、こういう気がいたしますが、六十二年度三月いっぱいまでのある程度の見通しはどういうことになっておりますか。
  33. 横溝雅夫

    ○横溝政府委員 お答え申し上げます。  先生御指摘のとおり、七-九月の国民所得統計、前期比二%、年率で八・四%と非常に高い伸びを示しました。これは、御指摘のとおり、個人消費とか住宅投資とかあるいは政府支出とかいろいろ内需が順調に拡大しているということが基本にあるわけでございますけれども、他方では、ちょっと住宅投資が前期比一〇%で非常に突出した伸びをしておりましたり、あるいはその前の四-六月には大きなマイナスを示しておりました外需、海外経常余剰部門が七-九月には若干のプラスになったりと、イレギュラーな動きも入っておりまして、年率八・四というのは基調的なものと考えるのはやはりちょっと過大かと思います。その四-六月期は御存じのとおりゼロ%でございましたので、期によって非常にでこぼこいたします。しかし、いずれにしましても、基調的に住宅とか公共投資も政府の緊急対策でこれからふえてまいりますし、基調としてその下支えするものとして個人消費も堅調でございますので、今後も順調な経済の推移を示すものと考えております。したがって、今年度三・五%という実質経済成長率を見込んでおりますけれども、これは十分達成可能と思います。  これを上回るのではないかという先生の御質問でございますけれども、今申しましたように、期によってゼロであったり、二であったり、この四半期というのは非常にでこぼこいたしますということを考える必要がございますし、いずれにいたしましても、本年度の経済成長率につきましては、来年度の経済見通しとあわせて政府として見通しをつくることになっておりますので、現在その作業をやっておるところでございまして、今のところ上回るかどうかははっきり申し上げるのをちょっと差し控えさせていただきたいと思います。
  34. 武藤山治

    武藤(山)委員 企画庁は来年度予算編成を前にして経済見通しを策定するわけです。もちろん大蔵省と十分交渉しながら、研究をしながら決めるのだと思うのでありますが、来年の経済成長は、新聞報道によると三・七から四%程度の成長を期待するようであります。この積算の根拠と経済動向はどういうぐあいに見ているのでしょうか。一応一ドル幾らぐらいに為替レートを考えてそれでもろもろの指数をはじいているのか、百三十二円前後で推移するという前提で計算しているのか、あるいは百十円までいくかな、百二十円にいくかなという計算をしているのか。そして、まだこれから、そういう円高ブレーキがかかれば、景気はやはりまたかなり難しい問題が幾つか出てくるだろうし、あるいは債券市況が盛り上がらないで今のような株価の状況で推移したときは、個人の金の使い方も締まってきてこれが個人消費の足を引っ張るだろうし、幾つかのそういう要因を見ると、成長率がことし三・五の土台の上にさらに四%の成長ということが来年可能だろうかどうだろうか。  そして、アメリカ経済の見方も、学者によったり専門家によって大変違いますが、来年アメリカ経済成長はゼロ成長だと言う学者と、細見さんなんかは一・五%ぐらいになるのじゃなかろうかという見方をしていますわ。ですから、そういうことを考えると、アメリカがリセッションに入っていくというようなことになった場合にどうなっていくかとか、いろいろな不安定要素があるからそう的確なことは言えないですが、四%内外の成長が可能だと見る最大の根拠は何ですか。住宅建設がこのままずっと来年も恐らく続くと見ておるのか、あるいは個人消費だと住宅でずっと引っ張っていけると見ておるのか。何が一番大きな要因でしょうか。
  35. 横溝雅夫

    ○横溝政府委員 来年度経済見通しのつくる手順でございますけれども、先生よく御存じのところと存じますが、通常ですと、年末に政府の予算編成方針を閣議決定するときに経済の見通し及び来年度の経済運営の基本的態度も閣議了解をしていただいております。したがって、通常ですと、十二月下旬の初めのころになるわけでございますが、現在大体その辺を念頭に置きまして、経済の諸情勢あるいは日本経済が抱えておる、今もいろいろ御議論ありました解決していかなければいけない内需の拡大とか対外不均衡の是正とか、いろいろ政策課題がございます、そういうものも踏まえながら、各省とも協議をしながらこれから詰めていくところでございまして、御指摘の三・七から四という数字は、これは新聞社の方でいろいろな想定をお書きになったのだと思います。これからつくっていくところでございまして、まだできておりませんということで、まだとても内容的にこういうものであると御紹介する段階ではございませんで、ひとつよろしく御了解いただきたいと思います。
  36. 武藤山治

    武藤(山)委員 局長はまだ聞いておらぬと。しかし、作業はどんどん進めていなければ、あれだけ新聞がかなりの数字を挙げて報道しているわけですから。部下はもうつくっているかもしれないね。局長の頭越しで課長が新聞にしゃべっているのかもしれない。きょうは企画庁は初めは課長が来ると言ったから私は小言を言ってあなたが来たのだけれども、これは課長を呼んで具体的な数字を吐かせた方がよかったかな。  企画庁、時間がありませんから一応以上で結構です。建前だけ聞いておきます。  それから、来年度の税収の見積もりの作業も今いろいろ進んでいるようで、新聞に毎日のように出ておりますが、十二月五日の新聞報道では、税収を四十四兆七千億円程度、当初予算比三兆五千億増、補正の比較で二兆一千億円増、大体こういう数字が十二月五日の報道ですが、今度はゆうべの報道になると、税収が四十五兆とふえてきておりますね。今一生懸命作業をしているのでしょうが、四日の間にちょっと税収がふえてきた原因は何ですか。
  37. 水野勝

    ○水野政府委員 先ほども企画庁の方からお話がございましたように、来年の経済見通し等も全く作業中の段階でございます。そういったものもいただきながら私ども翌年度の税収を見込むわけでございますので、そうしたものはまだまだこれからの話でございますので、いろいろ報道等に数字が出ておりますけれども、どうも私どもとしてもコメントはしようのない難しいところでございます。
  38. 武藤山治

    武藤(山)委員 主税局は、来年の経済見通しが企画庁でまだ発表されないから答えられないと言うかもしれないが、仮に大体四%の実質経済成長率というと名目で六ぐらいいくんでしょうかね、そうなったときの税収の見積もりみたいなものをやっておるんじゃないのですか。だって、大体新聞には全部出ておりますよ、朝日から読売から日経から。そういうのが出ておるのに、主税局長がまだまだと言うのはおかしいですね。そんなびくびくしないで言ってみたらどうですか。  ただ、不思議なのは、五日の新聞では四十四兆七千億円、僕らがこの間ヒアリングで主税局に来てもらって説明を聞いたときも四十四兆七千億円、それがきのうの報道になるとふえて四十五兆円になっておるのはどうかと言っておるだけで、その差がどうやって出てきたのか、計算の仕方がどこか違ったのかということを聞いておるのですよ。これは難しくないのですよね。四日間の違いはどういうところにあるのかということを聞いておるのですよ。
  39. 水野勝

    ○水野政府委員 恐らく御指摘の計数は、今までいろいろなところで六十二年度、六十三年度の財政状況等を御説明申し上げておる際に、仮置きといたしまして、例えば六十二年度におきますところの年度内の増収を仮に一兆と置いたり一兆五千と置いたりしていろいろなケースを想定する、その上に立ちまして、六十三年度としては五%程度の税収の伸びを置きまして、それを前提にいたしまして財政状況等を御説明している場合もあったわけでございまして、そうした計数との関連の御指摘ではないかと思うわけでございますが、こうした数字は、ただいま申し上げましたように全く仮置きで申し上げているところでございますので、そういう性質のものとして御理解いただきたいと思うわけでございます。
  40. 武藤山治

    武藤(山)委員 大蔵省が六十三年度の歳入に見積もる税の増収分と減税分の数字はもう出たんですか。税制改正による増収分、減収分。
  41. 水野勝

    ○水野政府委員 六十三年度税制改正につきましては、ただいま政府税制調査会、それから与党の税制調査会等々におきまして鋭意審議をいただいておるところでございますので、まだ内容は未確定でございます。
  42. 武藤山治

    武藤(山)委員 大蔵省、自治省が自民党税調に示した六十三年度税制改正検討項目は次のとおりと国税、地方税等新聞報道に出ていますね。期限の到来する特別措置を延期するということが大部分のようでありますが、この中で六十三年度に増収になるもの、それから減収になるもの、それを聞いているのですが、まだ大蔵省が企図する額も発表できない。そうすると、自民党税制調査会には項目だけ出して、これをこんなぐあいに中身をいじるとこうなりますよという中身の説明というのはしないのですか。金額は一切示さないのですか。この項目だけぽんと出すのですか。
  43. 水野勝

    ○水野政府委員 項目として検討をお願いするものはお出ししておりますが、まだ全くその審議にお入りいただいたばかりの段階でございますので、詰めた数字等、具体的な数字をも含んだ具体的なものとしてはまだ御結論をいただいていないわけでございます。
  44. 武藤山治

    武藤(山)委員 新聞をいろいろ読んでおると、相続税と酒税は通常国会に法案を出して、ただし施行だけは後で決めるという、いわゆる間接税と同じ時期に実施するような法律にするとか、どういうことになるのですか。相続税は来年の臨時国会になるのですか、それともこの年末までに税制調査会で案をつくって通常国会に出すのですか。相続税と酒税の改正案はどういう取り扱いになりますか。
  45. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは私どもの中にもいろいろ、税制調査会にも政府の中にもいろいろ議論がございまして、まだ最終的にきちっとしておらないところでございますが、相続税について申しますならば、昭和五十年以来の改正になりますので、非常に大きな改正で、財源も必要である。また、所得、消費、資産といったようなことから、そういうバランスも考えますと、抜本改正のときにやらせていただく方がいいのではないかという考え方がかなり有力でございます、まだ最終と申し上げられませんが。しかし、そうなりましたときに、土地の上昇がかなり著しゅうございますから、いつまでも適用をおくらせることができるかという問題がございますので、もし抜本改正で御審議を願うのであれば、その結果をあるところまで遡及をさせていただかないといけないのではないかということは考えつつございます。全体の問題がまだ未定でございます。  それから、酒につきましてもまだ最終的に未定でございますが、これにつきましては例のガットの問題がございますものですから、正式に法律が決定するのが遅くなる場合には、ガットで問題になっておりますことの処理は、政府としてはこうする考えであるということをかなり早い時期に何かの形で決定をして先方に伝えておかなければならないであろう。これも未定でございますが、その場合にはそういうことが必要だと思っております。
  46. 武藤山治

    武藤(山)委員 ガットの方からいろいろ、ECから要望が来ていますね。酒税法の改正については八八年四月から八九年三月までにやってくれ、そして改正案が成立する前にその内容を知らせてくれ、こういうことがガットの方から日本に要望されております。私は、これに基づいて自民党税調は酒税だけでも先にやるのかな、そして通常国会に法案を出すのかな、そのときに同時に相続税法案も一応通常国会に法案を出してくるのかな、こう思っていたのですが、相続税は別ですか。抜本改正の臨時国会の方に法案審議は回りますか。
  47. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先ほど申しましたようなことで、両方とも実は最終的にまだ決定をいたしておりませんのですが、もし抜本改正に回るということになりますと、おのおのについてただいまのような配慮が入り用ではないかということが一緒に議論されております。
  48. 武藤山治

    武藤(山)委員 それでは自民党の山中さんと話し合う以外に中身の議論をここでしてもどうしようもないね。項目だけ出したというのだから、これは中身は自民党と社会党で話し合う以外にどうにも質問しても始まらない。  自治省が今ちょうど来ているわけですが、申しわけありませんからちょっとお尋ねしておきます。  これは私の専門じゃなくて、固定資産税のことや地方税のことはどうも大蔵委員を二十年もやっていてもちょっと疎いのでお尋ねだけしておきたいのですが、今地価がどんどん上がって固定資産税の負担も大変重くなってきている、したがって、こういう異常な状態のときには評価がえを一回くらい間引いたっていいんじゃないか。三年、三年にきちっとやらなくも、あと三年くらい延ばしても。素人考えでね。  それからもう一点は、二百平米以下のところは評価額を四分の一に減額をしているから、課税標準額の四分の一程度しか課税価格にしてないんだからいいじゃないかという自治省の意見もあると思うけれども、しかし、やはり三大都市圏では、本当の都会地の市街化のど真ん中では、二百平米でも、近隣の地価はこの三年間取引実例売買で評価してもかなり上がっていると思うのですね。ですから、やはり二百平米以下の住宅の固定資産税はここ一、二年は据え置きにしておく、そういう措置を副総理としても大英断で、この地価の問題はかなり長期的な問題だということをきょうも土地対策委員会でしゃべってきたのが夕刊に出ていますし、長期的にいろいろ検討しなければならぬ問題がたくさんあるのですが、当面この固定資産税問題に焦点を当てて一時ストップする、評価がえはしない、こういう措置はとれないものなんでしょうか。
  49. 佐野徹治

    ○佐野説明員 固定資産税の問題につきましてお答えいたします。  固定資産税は三年に一度評価がえをいたしております。これは固定資産税の基本的な性格と申しますか、その資産の価値に着目をいたしましてその資産の価値に応じまして税負担をお願いをいたします、これが固定資産税の基本的な性格でございます。三年間に資産価値がどういうように変動しておるか、こういうことを勘案をいたしながら評価がえを実施いたす必要があると考えておりまして、来年度の評価がえに当たりましては、その間の資産価値の変動等を勘案しながら評価を行っていきたいと思っております。  なお、大都市の問題につきまして御指摘がございましたが、例えば、大都市部におきますいろいろな土地の取引におきます買い急ぎだとか、また将来の期待価格だとか、こういったものが売買実例価格に含まれております場合には、固定資産税の評価基準におきましては、そういったものを不正常要素ということで評価から排除いたすということで運用いたしております。  六十三年度、来年度の評価がえの基準になります、これは基準宅地と言っておりますが、基準宅地につきましてはこの九月に決定をいたしましたが、六十三年度の基準宅地の全体の平均上昇割合は一六%でございます。六十年度の基準宅地の平均上昇割合が全国で一九・九%でございまして、それらと比べましても低い数字になっているというのが実態でございます。  なお、住宅用地につきましてのいろいろなお話がございましたが、住宅用地につきましては、先ほど来申しました固定資産税の基本的な性格は踏まえながら、小規模の住宅用地につきましては四分の一の軽減措置を講ずるということをいたしておりまして、この金額が既に一兆円を超えるということで、相当大幅な、市町村の財政収入から申しますと非常に大幅な軽減、減収ということになっております。こういうようなことも勘案いたしますと、これ以上の特例措置を講ずるのはいかがかと考えておる次第でございます。  なお、固定資産税の評価がえに伴いまして、一挙にこの評価額が税負担にはね返るということにつきましては、やはり固定資産税の性格から申しましてどうであるかという問題もございまして、従来から負担調整措置というのを講じてまいっております。この負担調整措置、六十二年度で期限が切れますので、六十三年度からの負担調整措置をどうするかということにつきましては、税制調査会でも御検討いただきまして、それらを踏まえまして対処をしたいと考えておるところでございます。
  50. 武藤山治

    武藤(山)委員 その二百平米以下のことを私が問題にしているのは、所得を生まないんだし、生活用財産でそこに寝泊まりするための土地なんだから、周りが売買で上がったからその住んでいるところまで評価が上がって税金がふえていくという今のシステムに、やはり少しなだらかな増税になるようにしていかぬことには、国民期待にこたえたことにならないのじゃないのか。だから、もしその負担調整措置を今検討しているというならば、その負担調整措置の中でここ一年間ぐらいは何とか税額がふえないような臨時特例措置を考えてやって、ひとつなだらかにしてやる、そういうような方法はやろうと思えば政治なんだからできるんですね。政治は法律をつくる方なんだから。行政はそれを忠実に実行する責任があって、政治というのは法をつくる力であり、法を破る力を持っているんだから、やはり自民党の多数の諸君がこれは庶民のために考えなければいかぬと思ったときは、自治省は素直にそういう意見に耳を傾けなければいけない。日本はどうも官僚政治で、役人先行で、役人の石頭で決めたことは頑として動かないというのでは、社会の趨勢にマッチしない。そこらはひとつ十分負担調整措置の中や、土地特別委員会でいろいろ議論された問題を、固定資産税は当面の問題ですから、土地全体の抜本対策は対策として考えるにしても、これはぜひひとつ十分検討、考慮してほしい。強く要望しておきます。自治省、結構です。  宮澤大蔵大臣、来年の臨時国会大型間接税をやるんだ、もうこう言っているんですね。出口を先に決めておくのはいかがなものでしょうか。竹下総理は、国民合意を得るために、十分コンセンサスを得るための手だてをとって、五カ条の御誓文じゃないけれども、万機公論に決すべしという発想なんですよ。その万機公論に決しないうちに、もう来年八月か九月の臨時国会をめどにして大型間接税をやるんだということを事前に発表することはいかがなんでしょうかね、この手順は。
  51. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 その点は少しく説明をさしていただきますと、前回、間接税、売上税があのような結末になりましたことについて、私どもとしては当然非常に反省をいたしております。そこで今回は、国会はもとよりでございますが、国民各層の御意見をよく聞いて、これならばどうもやむを得ないかなというところまで十分時間をかけまして、成案を得ましたならば国会に御審議を願いたい、そこのところで時間をできるだけかけようということが私どもの基本でございます。そういう基本方針に基づきまして政府税調においても、また私どもの党の方の税調においてもこれからの仕事をお願いをいたしたいということは、政府・与党の首脳間で決定をいたしました。  ただ、いつその成案を得るかということがしたがいまして必ずしも明確でございませんので、これを成案を得ていつ国会に御審議のために御提出するかは、なお党首脳において事態の推移を見ながら考えていきたいということが私どもの申し合わせの内容でございます。そういう過程の中で、財政等々諸般の事情から、できれば明年のうちに成案を国会の御審議を得て法律として得たいという希望はもとより持っておりますが、それはそのような背景のことでございます。
  52. 武藤山治

    武藤(山)委員 しかし、合意を得るためにはまず、成案を得てから国会議論してもらうという前に、国民の世論をどういう方法で吸収するのか。単なる今の政府税調なり自民党税調だけで公聴会を開いて、それが世論だという形でいくのか。私たち社会党は、去年の予算編成のときに、間接税をやる場合にはその前段階の手順が大切ですよ、例えば全国の税理士会とか農協とか労働組合とか婦人団体とか消費者団体とか、三、四万のそういう組織の責任者のアンケート調査をいろいろな角度からいろいろな項目についてやる、そして国民の大多数がノーと答えたら、それは国民の意思だなと思わなければならぬし、そういうような手順が大切なんだ、その前にやることは、不公平税制の是正とか、今の税法の中で改めねばならぬ問題がまだたくさんあるのだ、まずそっちを誠意を持ってきちっとやりなさい、そして同時に並行して国民の世論をくみ上げる方法を工夫したらどうだ、そういう提案を党として正式にやっているのです。私は今党の財政金融政策委員長なものですから、税制や財政問題では本気で、大蔵官僚の諸君よりもっと私は国家国民のためを考え、財政再建を自分なりには考えていると思っているのです。だからそういう提案をしているのに、今度は竹下内閣は、ぜひ国民に耳を傾け合意を得てやると本会議で言っているのに、一方ではもう八月には出口を決めてしまっておくなどというのはけしからぬ、こう言っているのです。  もうあと時間がありませんからやむを得ませんが、しかし、副総理、中曽根さんが多段階、包括的、網羅的、普遍的で縦横十文字に投網で全部ひっくるめて取るようなことはしないと言ったあの言葉を今度はもう尊重しないという場合、この中のどれが気に食わないのですか。多段階、包括的、網羅的、普遍的、この中のどれが気に入らぬからこれを破棄するのですか。それをちょっと教えてください。
  53. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 前内閣の時代に、ただいま御紹介になりましたようなことに該当すると考えられるようなものは中曽根内閣としてはとりたくないという発言がございました。政府としては、それらの経緯も踏まえまして、本年二月に売上税法案を御提案いたしました。しかしながら、同法案をめぐりましては種々の世間の御批判もあり、かつ、結局審議未了のまま廃案となったわけでございます。そこで竹下内閣といたしましては、この中のどれがと申しますよりは、とにかく国民の理解を得られなかったというこの事実に基づきまして、今度は国民の理解を得られるような税制の確立ということを、いわば論議に先立って予断を持ちませずに広く国民各方面の御意見を伺って成案を得るための努力をいたしたい、こう思っておるわけでございまして、この中の特にどれがということではございません。そういう過去において起こりました状況の反省の上に立って、今度は予断を持たずに謙虚に国民の声を聞きたい、こう考えておるわけでございます。
  54. 武藤山治

    武藤(山)委員 これだけの五つの概念でくくる税法などというのはないですよ。こんなことを言う人は、大体素人で、何もわからぬからこういうことを言っているのです。例えば、普遍的だけの方法もあれば、あるいは多段階なんか全然使わない間接税もあるのです。こういうことにこだわっているから与野党の政治がおかしくなるのです。そんなものは黙っていればよかったのです。そして、今後みんなの意見でどうしようかということから始めればこんなにもめないのですよ。どうも政治戦略的な発想が全然ないね。私はそういう意味で大変残念に思うのですよ、こんなところで行ったり来たりの議論をしているのは。それよりも、どういう方法、手順でやりましょうやということをなぜ野党に呼びかけないのか、その方が重要だ、こう思っているのです。  時間がありませんからやめますが、最後に、これは要望になりますが、土地委員会でも大変問題になっている最上グループと第一相銀の関係ですね。今国際化の中で銀行が、資本充実の問題や、国際的な会議での自己資本比率規制の統一基準づくりだとかいろいろ騒がれ、またアメリカなど外国から金融機関が日本にどんどん上陸してくるという状況の中で、相互銀行も用意ドンで全部普通銀行にしてやろうなどという意見も金融制度調査会から出ている。そういう情勢のときに、こういう第一相銀みたいないいかげんな、でたらめな融資をする銀行があっていいのか。大蔵省、一体どういう監督をしたのか。大蔵大臣、これは大変責任が重い。したがって、きょうはもうこの質問をする時間はありませんが、この第一相銀と最上グループ、土地取得金に対する融資の状況をひとつ文書できちっと私に報告してください。その後質問します。こんな銀行を普通銀行に転換させるなんてもってのほかだ。大体銀行の経営者として姿勢がなっておらぬ。忠告だけしておいて、私の時間がなくなりましたから、後で詳細報告をお願いします。
  55. 越智通雄

    越智委員長 次に、森田景一君。
  56. 森田景一

    森田(景)委員 宮澤大蔵大臣、総裁戦のレースに勝利をなさるか、こういうふうに新聞とか雑誌では大きく報道されておりましたけれども、私たちも注目しておりましたが、残念ながら御希望どおりにはいかなかったようでございます。ただ、再び大蔵大臣として、しかも副総理ということだそうでございます。  実は今もお話しになりました、私ども大型間接税と呼んでおります、最近は新聞では新型間接税という表現になっておりますこのことについて、実は竹下総理においでいただこうと思ったわけでございますが、何か委員会には総理大臣は出てこないしきたりになっているので要請をするならば理事会でやらなければだめだときょう聞いたものですから、もう間に合いません。  それで、副総理というお立場、権限というのはどういうものか、まずお伺いしておきたいのです。
  57. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私は内閣法第九条により指定を受けましたのでございますが、九条によりますと、「内閣総理大臣に事故のあるとき、又は内閣総理大臣が欠けたときは、その予め指定する国務大臣が、臨時に、内閣総理大臣の職務を行う。」こういうものとして承知をいたしております。
  58. 森田景一

    森田(景)委員 あらかじめ指定を受けていらっしゃるお立場、こういうことでございまして、副総理といいますと、私、思い出したのが、テレビをごらんになっているかどうか知りませんが、天下の副将軍水戸光圀、あの方は現職じゃなくて、テレビによりますとさきの副将軍、さきのなのですね。とにかくこれはドラマでございますからそのとおりとはいかないかもしれませんが、ドラマでは、さきの副将軍であっても――なぜこんな話をするのかといいますと、総理大臣がナンバーワン、副総理はナンバーツーということでございます。ですから、副将軍というのはナンバーツーでございます。そのナンバーツーが、それがさきのナンバーツーであっても、ナンバーワンにいろいろと御意見を申し上げておる、こういうことであのテレビが成り立っているのだろうと私は思うわけでございます。ですから、宮澤大蔵大臣も当然総理の代行をなさる、こういうお立場でございますから、きょうは総理におなりになったつもりでこの間の本会議の所信表明についてお答えをいただければ、こんなふうに思っているわけでございます。  先般我が党の矢野委員長が、売上税のときに問題になりました多段階、包括的、網羅的、普遍的で大規模な消費税を投網をかけるようなやり方はしない、こういう問題をまたひっ提げまして、そして政府の統一見解は竹下首相、当時は大蔵大臣だったわけでございますが、竹下首相の約束でもある、また、統一見解が白紙撤回されみならば、生活必需品など消費や福祉、医療にまで課税され、一網打尽の課税に道を開くことになる、三番目として、政府統一見解をベースとする大型間接税はやらないは自民党の選挙公約であり、白紙撤回は主権者を欺くことになる、大型間接税を導入するならば衆議院を解散して国民に信を問え、このように筋道を立てた質問をなさったことは、大蔵大臣もあの席でお聞きになっていらっしゃったと思うのです。  それに対して竹下総理は、政府統一見解は重要な意味を持っている、こう言いながら、しかし竹下内閣としては、論議に先立って予見を与えることは避け、国会論議や国民の意見を聞きながら成案を得る、こういう答弁をなさっているわけなんですね。これからの間接税のあり方について予見を与えないで、いろいろな税制を考えてもらう、このことは私はいいと思うのです。いろいろなことを提言してもらう。ただ、政府税調から答申がある、答申があったときに、それは諮問をするときは予見を与えないで構わないわけですけれども、答申があったときには、やはりこの中曽根内閣の政府統一見解、これを守るというのが私は筋道だろうと思うのですね。その辺のことについてどうお考えになりますか。意味がわかりませんか。
  59. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 せんだって十一月三十日に矢野委員長に竹下総理が答えられました意味は、前回ああういことがございましたが廃案になりました、したがって今回は予断を持つことなく世論に広く聞きたい、こういう立場でお願いをしたいと思っておりますということでございますので、そういう立場から世論に聞きあるいは税制調査会の御意見を聞きその上で成案を得たい、こういうこと、それについてはあらかじめ予見、予断を持たずにいたしたい、こういうふうに申しておるのだと思います。
  60. 森田景一

    森田(景)委員 ですから、諮問するときは何を諮問してもいいと思うのですよ。全然こちらの見解と言わないで、新型間接税というものについていろいろな考え方、いろいろなやり方があるから、それを全部洗いざらい出してくれ、いい知恵を絞ってくれ、こういう形で諮問する、これは予見を与えないことだと思うのです。けれども、少なくとも中曽根政府の統一見解というのは、これは国会に対する約束事ですね。  それで、そのことについてお尋ねしたいのですけれども宮澤副総理も含めて三人の総裁レースがありましたときに、当時は総理ではありませんけれども、竹下総理は公約を掲げておりまして、このことは、言ってみれば当時は敵味方だったと思いますから、相手の公約は御存じなかったですか。竹下さんが総裁選挙に公約を三つ掲げたのですね。そういうことは御存じありませんか。
  61. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ちょっとただいまはっきりいたしませんが。
  62. 森田景一

    森田(景)委員 敵を知りおのれを知るは百戦危うからず、何かそういう兵法の言葉があるようでございますが、やはり副総理が敗れたというのはそこに一つあったのじゃないかと思うのです。  じゃ、どういうことを竹下総理が言っていたかといいますと、大胆な発想、賢明な継承。政務次官も、お隣で、はあなんて感心していらっしゃるようですね。これは余計なことですが、賢明な継承、それから誠実な実行、私は自民党ではありませんけれども、この三つを新聞で拝見しました。この三つを竹下総理は公約として掲げて総裁選挙に臨んでいらっしゃったのですね。私が直接聞いたわけじゃありません、新聞で知ったことですから。でも、大体このとおりだと思います。  ところが、この間の本会議の所信表明演説ではこう言っているのですね。大胆な発想、誠実な実行、この二つはあの中に入っていたのですが、賢明な継承――賢明な継承というのは中曽根路線を継承しますということだったのですね。新聞では、あれは中曽根におべんちゃらを言っているのだ、こういうふうにたたかれておりました。何か自民党の議員さんの方々の間でもそういう話があったというような記事がありましたが、総裁選挙のときにはこの三つの公約を掲げ、総理大臣になったら賢明な継承というのを削ってしまったのです。しかし、賢明な継承というのは、本会議では言われなかったけれども、これはやはり引き続いて生きていることだと思うのです。それでなければ、中曽根さんもうそつきだったけれども、竹下さんも大うそつきだということになりかねないと思うのです。これを宮澤副総理に申し上げるのは非常に酷な話だと思うのですけれども、総理大臣が来ないものですからこういうことでかわってお尋ねしているわけでございます。中曽根政治の賢明な継承というのはやはり公約として生きている、このように私は思うのですが、宮澤副総理も同じようにお考えでしょうか。
  63. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私がかわって答えることはできにくい、また適当なことであるかどうか定かでございませんけれども、当然のことながら同じ党に立ちまして総理大臣の後を継がれるわけでございますから、中曽根さんのやってこられましたこと、すべてをという意味ではないかもしれません、十分に考えながら、それが賢明なということでございましょうか、承継していくということは、基本的にそういう態度を持っておられると想像をいたします。
  64. 森田景一

    森田(景)委員 そういうことですから、中曽根路線を継承するということならば、包括的、網羅的というややこしい表現のこれは当然引き続いて生きていくものだ、こう理解するのが常識じゃないでしょうか、どうでしょう。
  65. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 こういうことを中曽根さんが言われましたことは全く事実でありますし、それによりまして売上税法案を提案いたした、しかし、それが審議未了になった、そういう経緯でございますので、総理大臣自身こういう経緯を踏まえて、今度は予見を与えることなく云々と言っておられまして、過去にこのような事実があったことをもとより全く否定をしておられるわけではございません。事実こういうことがあった、そしてその中曽根首相のお話に従って法案を出した、しかしその法案が廃案になった、したがって今回はもう予断を持たずにと、こう言っておられるのだと私は理解をしております。
  66. 森田景一

    森田(景)委員 それで、先ほども申し上げましたけれども、総理大臣の答弁は、政府統一見解は重要な意味を持つ、こう言っておるのですね。重要な意味を持つというのは、今宮澤副総理が答えられたような意味だと思うのです。やはり中曽根政府統一見解というのは非常に大きな重みを持っている。それが今度は予見を与えず、これは矛盾する表現じゃないですかね。私はそう思うのです。片一方では、重要な重みを持っていますということは、大事だということでしょう。それが今度は一方になると、それは予見を与えない、これは矛盾した表現だと思うのです。  よく新聞報道等を見ますと、竹下総理は、いないところで言ったんでは悪いですけれども、できればいるところで言いたかったのですけれども、しようがありません、言語明瞭、意味不明瞭、こういうふうに言われているのですね。本当に言葉ははっきり言っているのですけれども、言っている中身というのは非常に不明瞭なことが多い。あなたは、次の総理を目指していらっしゃるというふうに新聞でも報道されておりますけれども、そんなことをお尋ねするのはこの場合失礼かもしれませんから、よします。どうかひとつ宮澤副総理は、ナンバーワンが言語明瞭、意味不明瞭ならば、ナンバーツーは意味明瞭、こういうふうに言っていただいて、初めて天下の御意見番の役目が果たせるのじゃないだろうかと思うのですが、御見解をお伺いいたします。
  67. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ここに十一月三十日の答弁の記録がございますが、中曽根さんのこういった発言、「私も当時大蔵大臣でございました。政府としても、これらの経緯を踏まえ、したがって、これは重い意味を持つものであるということは、私は否定する考えは全くございません。そこで、こういう趣旨を踏まえまして、いわゆる売上税法案というものを提案したわけでございます。」こう言っておられます意味は、総理大臣中曽根さんがこういうことを言われたので、これは重大なことであるので、そういう意味を踏まえて法案を出しました、この中曽根さんの言われたことに背馳しないように法案をつくりまして提案をいたしましたが、その法案が、こう言っておられるように私は了解をいたします。
  68. 森田景一

    森田(景)委員 いろいろこのことについては、明日予算委員会がまたございますので、そちらで詳しい論議があろうかと思いますから余り深く申し上げませんが、やはり私の申し上げておることは、生きていることは生きているとはっきり言わなきゃいけないし、いや、中曽根さんはそう言ったけれども私はそれは反対です、そんなことしません、そこでいろいろともめるかもしれませんが、先ほどの質問にありましたように、そういうことが国民に対して広く合意を求めることにつながるのだろうと私は思うのです。そういうことを言わないで、何とか言葉だけでごまかそう、ごまかそうという行き方が、やはり混乱を招くもとになると思うのです。そういう点で、ひとつ副総理のお立場で十分警告をしてあげながら御意見を申し上げて、総理の言ったことがうそにならないような、そういう方向をぜひ補佐していただきたいと思うのです。  新型間接税の問題で最後になろうかと思いますが、それで宮澤大蔵大臣として、新型間接税なるものはどういうものが新型間接税としてこれから考えられるのか、その辺のところを、率直な話、私はこういうもの、こういうもの、こういうものがあると思います、それがどういうふうに出てくるか、どうなるかということはまた別としまして、新型間接税として今考えられる範囲ではこういうものがありますというのを明確にしておいていただきたいと思います。
  69. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 実は、その点がまさしくこれから税制調査会等々で御審議を願い、また国民の御意見を聞いて案をつくっていきたいと思っているところでございまして、文字どおり今それについて私は予断を持っておりません。ただ、売上税法案が廃案になりました経緯には、反省すべき点は幾つかございます。  それは、やはり一つは、政府・与党が案を決定いたしました後、国民の各層の御意見を聞くのに使った時間がいかにも短うございました。一月足らずの間にそれが法案になっていったわけでございますので、これはいかにも国民の立場からいえば、十分批判をし、議論をする、あるいは内容を理解する時間がなかったではないか。いわんや、国会においてもほとんど御議論がございませんでしたので、これはやはり非常な間違いであった。今度は、そういう意味でよく国民の御意見を聞かなければならない、それが一つでございます。そのために時間をかけなければならない。  それからもう一つは、先ほどまさにお話しのことでございますが、中曽根首相がいろいろな時代に言われました、こういうものにはしたくないというその御発言を忠実に守ってまいらなければなりませんから、その結果のという点もありまして、でき上がったものがかなり難しいものであった。理論的には整合性があるものであったかもしれませんけれども、一見国民が見られたときにかなりいろいろ難しい。その難しいということはやはり一つの拒否反応につながるわけでございますから、これも一つ反省をしなければならない材料ではないか、問題ではないかというふうに思っておりますが、原則といたしまして、十分にひとつ国民の中からこれならというものが生まれてくるような、そういう雰囲気づくりにまず努力をしなければならない、今そのことを専ら思っております。
  70. 森田景一

    森田(景)委員 いずれにしても、国民合意を得られるようなということですから、そういう方向努力をお願いしたいと思うわけでございます。  先ほどもお話がありましたが、きょう、アメリカとソ連、INF全廃条約調印ということでございます。アメリカもソ連も核廃絶という方向に一歩を踏み出したということで、大きな成果だったと思うのですが、私はこの問題じゃなくて、円高の問題についてお尋ねしたいと思います。  円高の原因は、アメリカの双子の赤字というふうに言われているわけです。その一つが軍事費の削減ということでございまして、そんなことは申し上げるまでもなく御存じのとおりですが、核の全廃条約の調印ということで、じゃ日本の円は下がったのかというと余り下がりませんで、ほとんど変わらないわけですね。きょうの午前中の円相場は一ドル百三十二円五十銭前後、こういう状況だったようでございました。この前、百五十円前後で、ここで落ちつくのかなと思っておりましたら、それもいつの間にか突破して円は百三十円台、こういう状況になっておりました。そういうことになると、先般来いろいろとG5とかG7とか、こういうことで努力なさってきた。ことは一体何だったのか、こういうことになると思うのですね。その点について、大蔵大臣の見解をお聞かせいただきたいと思います。
  71. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 いわゆるプラザ合意以来二年二カ月でございますが、なかなか、これだけドルが下がりましてもアメリカの貿易収支というものは改善を見せない。他方で、その他の国は急激な白国通貨の上昇によりましていろいろ苦痛を感じておるという現状で、幾たびか関係国の大蔵大臣中央銀行総裁等々が集まっておるわけでございます。その結果といたしましては、これ以上急激に通貨が動くということはやはりみんなが迷惑である、したがって政策協調をやろう、また、その必要に応じて、市場が乱れるときには共同介入をやろうということで、ずっとそれを続けて今日に及んでおるわけでございます。  そういう中で振り返りますと、なお円は徐々に上がってまいっております。ただ私どもは、政策協調介入によって、市場が非常に大きく急変しないようにという努力お互いにしてまいりました。そのことはそれなりの効果を上げておると思いますけれども、その間に円がおっしゃいますように二十円ほど上がったということは、おっしゃるような事実でございます。それは、我が国経済にとりましてある意味ではなかなか、殊に企業の立場からは苦しいことでございますから、できるだけ変動を緩やかにしながら、介入という形でその努力をしてまいった、こういうことでございます。  ここに来まして、アメリカ財政赤字を具体的に減らすという決心をいたしましたので、これからようやくアメリカも本気になって問題に取り組むということになってくるのではないか。貿易赤字の方は、漸減がもう定着したのかしないのか、もうしばらく見ておりませんとまだわかりません。しかし、全体としてそういう方向になっていくことを希望しておるところでございます。
  72. 森田景一

    森田(景)委員 それで、これから円は一体このまま推移するのか、あるいはもっと高くなるのか安くなるのか、その見通しについてはどういうふうに持っていらっしゃいますか。
  73. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これはもう基本的に市場で起こっておることでございますので、見通しを申し上げることが事実問題としてできない。また私どもとしては、いずれにしても急激な変化が起こらないように努力をしなければならない。それから政策協調もしなければなりませんし、全体としてはここまで来れば、もうプラザ合意のときの努力は達せられたというのがみんなの認識でございますから、これ以上のドルの急落がさらにあるということは、関係者にとって決して好ましくないことだということまでの合意はあると存じます。
  74. 森田景一

    森田(景)委員 プラザ合意目的は達せられたということは、その当時の合意は一ドル百三十円前後、こういうことだったのですか。
  75. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そう申し上げようとしたのではございませんで、ドルをひとつ下げていこうというのがプラザ合意でございまして、ここまで参ればもうその仕事は済んでおるではないか、このような意味合いで申し上げたのでございます。
  76. 森田景一

    森田(景)委員 円の予測が、十二月七日の日本経済新聞に載っておりました。まだまだドルの冬は続くだろう、こういうことで世界の三十人の予測というのを載せております。それを見ますと百二十円から百五十円、いろいろ幅があるようでございます。来年の三月から五月、この時期の予測では、日本でも十人の方々が予測しておりますが、百二十円という予測をしておりまして、例えば日本石油の杉山守さんという方、あるいは三井物産の福間年勝さんという方、そんな方は百二十円と見ております。あるいは住友生命の佐野一昭さん、この方も百二十円。やはりこれからもまだ円が高くなっていく、こういう予測をしていらっしゃるわけです。  大臣の立場で円が強くなるとか弱くなるなんということは、実際のところ言えないわけですね。それはわかります。心配することは、百七十円あるいは百五十円、この時期に輸出関連の中小企業は非常な打撃を受けまして、私どもも全国各地に調査に出かけたわけでございますが、もうそれをはるかに超えて今百三十円台に入っているわけです。私の地元にも輸出関連の中小企業の方がおられまして、百二十円までは何とか覚悟していろいろと体制をつくっていかなければならない、ただ我々心配するのは、その上にまた百円という話もちらほら出てきている、もうこうなったら我々はどこまで努力していっていいかわからないのだ、こういう悲痛な叫びですね。百二十円だってきついんだ、百三十円だってきついんだ、だけど生き延びるためにはそれに対応する努力をしなければいけないのだ、こういう切々たる陳情があるわけでございまして、これは日本各地の輸出関連の中小企業の皆さんそうだと思うのです。ですから、やはり高いなら高いなりに、一応変動が少なくなるような努力をしなければならない。そのために政府も頑張ってもらわなければならないというのが、そういう方々の強い要望です。  したがって、そういう要望を受けて、一応プラザ合意目的が達成されたということならば、G7を早急に開催して、ドル安なんということがこれ以上進まないように、円の安定といいますか為替レートの安定ということについて、もう一遍世界の主要国の大蔵大臣あるいは中央銀行総裁が集まって協議をすべきじゃないか、こういう声は今たくさん出ているわけです。大臣も十分御承知のはずでございます。ですから、早急にそういうG7の開催をやるべきじゃないかという強い要請に対して、大蔵大臣としてそれじゃいつごろ出かけていってそういう問題に対応していくんだ、こういう決意がございましたらお聞かせをいただきたい。
  77. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 企業の立場から申しますと、御指摘のように円が急速にどんどん上がるということはもう非常に苦しいことでございますけれども、それと同じぐらい、どこまでいったらとまるかがわからないということが実は非常に問題なのでありまして、それがわかりませんとこの努力目標の立てようがない。一遍努力をして落ちついたと思いましたらまた動く、決勝点のないマラソンのような話になっては、とてもこれは企業はやれない。そういうことがございますから、私どもいろいろ御批判はあっても、やはり介入する場合には介入しなければならない。一生懸命やってまいっております。  G7のことでございますが、先ほどもおっしゃいましたように、やはり問題はアメリカ財政赤字というところ、貿易赤字というところにございます。まず、財政赤字をようやく削減するという決心を不十分であってもアメリカがしたわけでございますから、それの具体化をやはり急いでもらわなければならないと思います。結局市場でござ、いますから、マーケットでございますから、先行きアメリカ努力が奏功しそうだということになればそれがまたマーケットにあらわれる、そうでないと思えばそれがまたマーケットにあらわれるということで、やはりそこは現実にマーケットが信用できるような努力が行われていくということが一番大事なことであって、それをさしずめアメリカに今求めているところでございます。
  78. 森田景一

    森田(景)委員 ひとつ、実際に大勢の中小企業が苦しんでおるわけでございますので、その方々のためにも最大の努力を払っていただきたいと思います。  次いで、現在土地問題の特別委員会ができまして審議をしておるわけでございます。ただ、私も土地に関して若干申し上げたいことがあるわけですが、時間が制約がありますので二つ三つ申し上げてみたいと思うのです。  一つは、土地狂乱といいますか狂乱地価状況といいますか、土地が暴騰した。しかも、これが東京を中心にした首都圏あるいは大阪圏、この辺で非常に急激な土地の暴騰がある。土地問題特別委員会大蔵大臣としてもずっと答弁なさっていらっしゃるところで、状況はよく御存じと思いますけれども、土地の暴騰した一番の元凶といいますか、これは一体何だと思っていらっしゃいますか。
  79. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 我が国が戦後の経済の復興を始めました昭和三十年ごろから振り返ってみますと、何回かごの土地問題というのは大きな問題になりまして、国会でも政府でも随分御議論をされ、その都度法律をつくり、あるいは税制を変え、いろいろなことをいたしまして一生懸命対応してまいったと思います。そのときそのときはそれでおさまるのでございますけれども、これはやはり対症療法のようなもので、基本的には需給というものが両方の側からなかなか難しい。供給もふえております。何遍かの新全総、三全総、四全総、交通、通信の整備あるいは都市再開発であるとか土地の高度利用であるとか、供給側もふえておりますが、我が国経済がこれだけ大きくなって核家族化になったとか国際化したとかいうことで、需要がまた需要で伸びていくということで、需給というものは実はその都度その都度の対症療法にもかかわらず、バランスが安定していないということが私は根本にあるのであろうと思います。これが根本にございますから、何年かごとに一遍噴火するということであったのではないかと見ておりまして、したがってその根本のところを考えなければならないのだと思います。  このたびのことは、そういう潜在的な需要があるところへ我が国の国際化がかなり急速にここへ来て進みましたから、そのために外国の法人、企業がたくさん日本に急に参りまして、そのためのオフィススペースが不足になった、あるいは彼らの住居が十分にないといったようなことが現実としてあったのだと思いますが、しかし、それが場合によりますとどうもやや過大に伝えられて仮需要も呼んだ、かたがた金融が緩やかであったといったようなことがきっかけになったのではないかと思います。
  80. 森田景一

    森田(景)委員 いろいろと言われておるわけですけれども、やはり元凶というのは、要するに土地を投機の対象にして、その投機の資金を金融機関が、大変多額の金額を土地転がし、土地投機に融資していった、これが一番大きな元凶だった、このように思うわけです。  この間からずっと、特別委員会でもそういう問題が議論になったようですし、また私も千葉県の状況を聞いてみますと、例えば千葉市で、これは銀行の名前を申し上げるわけにいきませんが、S信託銀行というのがありまして、ここが不動産会社に一千億の融資枠を設けた、それで三年分の利息を前取りしているというのです。これは法律では禁止されているはずですね。信託銀行が三年分の利息を前取りした。それで、もうあいた土地があればすぐ不動産会社は買っていく。そして、それを担保にしてまた借りる。こういうことで、そっちこっちに我が何々会社の社有地であるとか管理地であるという立て看板がたくさん立っているわけです。東京ではもっとひどかったようでございます。やはりそういう多額のお金が安易に土地転がしの融資に使われたというのが、一番大きな原因だったろうと思うわけでございます。そういうことになりますと、監督官庁の大蔵省としても、この土地投機問題については大きな責任を感ずるべきじゃないだろうかな、こんなふうに私は思っているのですが、この点は大臣としてどうですか、お認めになりますか。
  81. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 物の売り買いでございますから、金がついていないはずは絶対にないので、それは金が必ずついておりますが、ただ、金を借りる方も貸す方も、これは上がるということの見通しがなければこういうことは起こらなかったはずでございます。ですから、その前に何があったのかということはやはり追及しておく必要があると思って、先ほど申し上げました。ただ、おっしゃいますように金融が非常に緩慢でございますから、これが全体を加速したということは私は残念ながら事実であったと思いますし、その間金融機関の貸し出しの態度にも、いわばともすれば投機にわたりやすいようなケースに対しても貸し出しをした例が幾つかあったということは、特別ヒアリングをいたしますと事実でございますから、それはその責任なしとしない。私どもとしてもヒアリングをし、検査もいたしまして、十分にただすべきことはただしてまいっておるつもりでございます。
  82. 森田景一

    森田(景)委員 それで、実は土地に関する税の問題で先ほど話がありました固定資産税という問題が出ておりますから、自治省さんにも来ていただいておるのですが、もう時間がなくなってきましたので、何かの機会にまたお願いしたいと思います。御了解ください。  それで、ただ一つこういう問題があるのです。いわゆる供給が少ないから土地の供給をふやすために、市街化区域と調整区域の線引きを見直せという論議があるわけです。要するに今まで線を引いたところをもっと奥まで線を広げろ、こういう論議があるのですけれども、この点については、大蔵大臣どう考えますか、賛成でございますか。
  83. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これは私、所管でございませんので、申しわけございません、ちょっとお答えができません。
  84. 森田景一

    森田(景)委員 いや、所管でなくても、意見は意見としてお聞きしたいと思ったのですが、もう時間がありませんから申し上げますけれども、その前にこれは建設省からおいでになっていただいておりますので、この市街化区域、調整区域を線引きをした経過を御説明いただきたいと思います。
  85. 伴襄

    ○伴説明員 お答え申し上げます。  いわゆる線引きでございますが、これは市街化区域、調整区域に分けるということにしておりますけれども、これは昭和三十年代から四十年に起こりました都市への急激な人口集中があったということで、それを背景といたしまして、昭和四十三年の都市計画法の改正の重要な柱として設けられた制度でございます。したがいまして、その制度の基本的目的は、都市におきます道路、公園、下水道等の公共施設の段階的かつ効率的な整備を行うということが一つ。それからもう一つは、無秩序な市街化を防止しまして、公共施設の段階的な整備に対応した計画的な市街化を図っていこうということにねらいがあったというふうに考えております。
  86. 森田景一

    森田(景)委員 ありがとうございました。  今の御説明のとおり、要するに当時も大変な住宅不足というか、住宅建設が盛んでございまして、とにかくどんどん無秩序に住宅が建設される、そのために道路とか公共下水道とか、こういういわゆるいつも宮澤大蔵大臣がおっしゃる社会資本の整備ができないまま住宅だけができていく、その後追いは全部地方自治体がやらざるを得なかった、これではたまらないということからこの線引きというのができた、こういう御説明だったと思います。ですから、安易に線引きを外すようなことは私よろしくないと思うのです。担当でなくても、副総理ですから言っておいてくださいよ。安易にあれを外してはいけない。  ただし、調整区域であってもきちんとした開発計画に基づいて、これは市町村を通して県知事が許可することになっているはずであります。許可があれば、きちっとした道路も下水道も整備された住宅地ができることになっているわけです。だから、そういうのを積極的に国が、首都圏なら首都圏のそういう調整区域を持っているところに出向くか何かして、ここはこういうふうに住宅をつくっていこうじゃないか、それで東京の住宅不足を解消しようじゃないか、こういうことで積極的に国が進めていかないと、地方自治体はなかなか進めにくいですね。そういうことをやっていけば、良好な、環境の整備された住宅がまたたくさんできるわけですよ。だから、安易に線引きたけ見直せ、見直したらやはりスプロール化ですね。だから、そういう点は担当じゃないというお話でございましたから答弁要りませんが、副総理としてそういうお話の機会があると思います。十分ひとつ住宅対策にはこうすればできるじゃないかということをお話しいただければ、幸いだと思うわけでございます。  もうちょっとありますが、実は国の総定員法という枠がありまして、いろいろと公務員の数を減らしていこうという仕事があるわけでございます。それに応じましてというか、大蔵省の方でも人員削減をやっているわけですが、大変困っているのが国税の職員の方とかあるいは関税の職員の方とか、こういう方々が非常に困っているわけですよね。特に「マルサの女」といいますか、ああいう映画ができましてから、国税の職員の方々は家族の理解なんかも非常に深まったということなのですが、いずれにしても大変な仕事をやっていらっしゃるわけです。何か法人は、二十五年に一遍くらいしか調査ができないくらいの状況だというふうに聞いておりますけれども、税関の方も大変です。ピストルとか麻薬とか、ああいうものを押さえなければならない。そういうことで、今人員が削減されている、だけれども人数が欲しい、こういうことで、これは考えてあげなければいけない状況ではないかと思いますので、国税の職員とかあるいは税関職員の増員ということについて、大蔵大臣はどのようなお考えをお持ちなのか、また、来年度はどういうふうに対応なさるお考えであるのか、お聞かせいただきたいと思います。これで最後にいたします。
  87. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 御理解のある御指摘でございます。  国税職員は、私がちょうど国会に出ましたのが昭和二十八年でございますが、そのころに五万二千人であった。現在も五万二千か三千。三十何年間変わらないのでございますから、それは大変にきついことだということは承知しておりますし、また、したがって実調も、おっしゃいますようにかなり間を置いてしかできない。関税の方も、国際化にもなりましたし、またいろいろな社会悪がふえておりますから忙しい、これも御指摘のとおりと思います。できるだけ機械化をし、合理化をいたしまして、何とか頑張ってもらっております。私も国庫大臣という立場もございますので、そういうことをぜひと言ってやってもらっております。そういうことに努めまして、どうしてもやむを得ないときにはまたそれなりのことを考えるということにいたさなければならないと思っております。
  88. 森田景一

    森田(景)委員 数が出ておりませんでしたけれども、もう概算要求もなさっているはずです。例えば国税の方では何名くらい概算要求しているとか、あるいは税関の職員の方は何名くらい要望しておるとか、このくらいはおわかりじゃないですか。せめてそのくらい、ひとつ答弁していただいて終わらせてもらいたいですね。
  89. 大山綱明

    ○大山政府委員 税関の方の要求でございますが、ただいま予算当局といろいろやりとりをいたしておるところでございますので、細かい数字につきましてはちょっと遠慮させていただければと思います。
  90. 森田景一

    森田(景)委員 それでは、最大の努力を払われるように要望いたしまして、質問を終わります。
  91. 越智通雄

    越智委員長 次に、玉置一弥君。
  92. 玉置一弥

    玉置委員 大変遅くまで御苦労さまでございます。  いろいろな課題が山積をしておりまして、聞きたいことは山ほどあるのですけれども、時間が二十五分ということでございますので、来年につなげるさわりだけ、こういうことでやってまいりたいと思います。  いつも思うのでございますが、今までは大蔵大臣ということでさっと呼べばよかったのでございますが、副総理というのがつきましたので、どちらを呼べばいいのでしょうね。大蔵委員会のときは大蔵大臣でよろしゅうございますか。――そうでございますか。  それではまず、経済企画庁、通産省にお見えをいただいておりますので、今の為替問題を中心にお話を伺っていきたいと思います。     〔委員長退席、中川(昭)委員長代理着席〕  日本の今までの対応が非常に悪くてといいますか、我々もまさに日本の産業を守るため、あるいは日本の国を守るため、こういうことでむしろ超保護貿易的なところがございまして、例えば農産品の輸入の問題とか、ガットに提訴された場合にも、逆にそれぞれの国が誤解をしているのではないか、こういうことで今まで対応してきたわけでございますが、どうもいろいろ考えてみますと、これからそういう状態がより細かくといいますか、製品別とか大変細かい状態で相手から提訴される、あるいは強い反発をされる、こういうことが起きてくるような気がいたしまして、日本としてまさに窮地に追い込まれた、そういう状態になりつつあるというふうに考える一人でございます。その結果が、やはり今までの為替の相場に響いてきているわけでございますし、また、日本製品が非常に価格が安く、品質がいいと言われながら、日本国内の物価を調査いたしますと、生計費等を含めて非常に高い、こういう実態が出ております。どうもどちらが正しいのかわからない、こんな気持ちがいたします。  そういう面から見て、内外ともに姿勢を改めていかなければならない、そういう時期にいよいよ差しかかってきたな、こういう感じがいたしまして、私もどちらかというと保護主義的な考えを持っていた者でございますが、急に態度を変えました。ですから、むしろこれから内外ともに納得していただけるような産業構造あるいは経済構造というものへの転換を図らなければこの為替問題は解決しない、こういうふうに思うわけでございますが、まず大きく聞いて大蔵大臣、産業構造、経済構造の転換の問題を為替問題として一番重要を位置づけとして考えておられるかどうか、その辺についてお伺いしたいと思います。
  93. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 今の円の強さあるいはドルの弱さということの一つの大きな原因が、我が国が殊にアメリカに対して非常に大きな貿易黒字を持っているということ、また両国とも世界に対して片方は大きな黒字、片方は大きな赤字を持っているということ、そのことがあることはもう疑いを入れません。したがいまして、我が国がそのような貿易黒字を縮小するということの努力はやはり内需の振興であり、また我が国自身のより外に向かって開かれた輸入体制ということであろうと思われます。しかし、それを可能にするためには、一時の緊急輸入というようなことで問題は片づくわけではございませんで、あるいは輸出制限ということで片づくわけではございませんで、我が国経済全体がより輸出に依存しないように、そして必要な物はより多く輸入するように、そういうことになっていかなければ永久的にそういう体制にはなれないわけでございますから、それは玉置委員の言われますように、まさに例えば前川報告が指摘しておりますような我が国経済社会の構造変革、構造調整ということがございませんと、そのような恒久的な体制にはなれないという意味で、言われましたことは真実であると私は思います。
  94. 玉置一弥

    玉置委員 変わっていかなければならないということでございますが、どうもさきの中曽根内閣以来、言葉だけが先行して中身がついて来ない、こういうような感じがするわけでございます。今回も、経済構造あるいは産業構造の転換が行われなければ、日本に対する貿易摩擦というのはますますひどくなるだろう、これはだれもが理解するところでございますが、ではだれが、いつ、どうやってやるのか、こういうことについての具体化ができていない。私は、前の委員会か何かでちょっと申し上げたと思いますけれども、これが具体的に、ではだれがやるのか、いわゆる企画、発想といいますか、この辺がやはり必要でございますし、また実務部隊といいますか、号令をかける人がいればそれを実行する人がいなければいけない、それからまたその対象もいなければいけない、こういうことでございます。  関連省庁を横に見てまいりますと、ほとんどの省庁が関係する、こういうような状態でございまして、政府部内で経済構造、産業構造ともに推進する母体をつくる必要があるのではないか、こういうふうに思いますが、まず実態について経済企画庁、お願いします。
  95. 西村吉正

    ○西村説明員 構造調整の推進体制につきましては、昨年の八月に内閣総理大臣を本部長といたします政府・与党経済構造調整推進本部というものができておりまして、私どもも協力しながらやっておるわけでございますが、担当の各大臣が御参加いただきまして内閣において調整をしておるところでございます。
  96. 玉置一弥

    玉置委員 内閣において調整をするということは、結局各省が全部出向いているわけですね。だけれども、その割には具体的な方針といいますか、何年ごろにどうしてとかあるいは推定といいますか、こういうものがなかなか出てこないような感じがするわけですね。経済企画庁が出された資料では、もう既に就業人口とかそういうようなものの変化が産業別にいろいろ出ておりますけれども、いわゆる具体性がない推測、ちょっとそういう感じがするのですね。ああいうデータを出されてきた背景は大体わかりますけれども目的があるはずですね。ただ単に大体この辺を推測して出しておこうかというものじゃない。ですから、ああいうものをより具体的に、例えば本当にそういう方向がほぼ確実だということになってくれば、各省に対していろいろな指示を出さなければいけないと思いますけれども、その辺はどうなっていますか。
  97. 西村吉正

    ○西村説明員 私どもといたしましては、例えば今年五月にいわゆる新前川レポート、経済審議会の建議というようなもので今先生御指摘のような方向を提案したところでございますが、そういうものであるとか政府において策定いたしました推進要綱に沿いまして、先ほど答弁いたしましたような政府・与党の経済構造調整推進本部におきまして、具体策を関係各省が寄り集まって鋭意推進しておる、こういうふうに理解しておるわけでございます。
  98. 玉置一弥

    玉置委員 それじゃ通産の方にお伺いしますけれども、産業構造の転換につきましては具体的にどういうスケジュールで動いておりますか。
  99. 松藤哲夫

    ○松藤説明員 お答え申し上げます。  産業構造の転換につきましては、前川レポート以降のいろいろな検討及び政府の決定を受けまして、通産省としても鋭意これに取り組んでおるところでございまして、ことし四月には産業構造転換円滑化臨時措置法を国会でお通しいただきまして、特に不況地域の対策、円高等によりまして国際競争力を失いつつある企業に対する転換対策等につき、いろいろな対策を講じておるところでございます。いろいろな政府の対策あるいは民間の努力によりまして、現在輸入の拡大、特に製品輸入の拡大あるいは海外投資等が進んでおるわけでございますが、同時に、特に重厚長大型の産業が立地しております地域の経済の疲弊とか雇用問題等マイナスの問題も出てきております。こうした中で、今後さらに対外的には構造調整あるいは対外不均衡を是正しながら、かつ国内的には地域の経済の疲弊あるいは雇用問題に取り組むということで、通産省としても鋭意努力しておるところでございますが、さらにこの辺の状況について根本的に見直しながら態勢を引き締めてさらに構造転換に取り組むべく、現在産業構造審議会におきまして構造調整の進捗状況及び今後の見通し等につき検討中でございます。ごく近い将来、私どもとしてはできれば今月中に、産業構造審議会の答申という形で将来の見通しについてもお示ししたいと考えております。  以上でございます。
  100. 玉置一弥

    玉置委員 昨年来こういう取り組みが始まったということでございますが、取り組みが始まってからいろいろなものが具体化してきたということで、摩擦の方もより細かくなってきているわけです。そういう面から考えると、実効を上げていくということ、特に中曽根内閣の時代によく言われてまいりましたけれども日本は何かをするといっても効果が上がらない、こういうのが続いてまいりまして、しびれを切らしてかみついてきた、こういう感じなんですね。ですから、これからはより具体的な成果を上げていかないと、この貿易摩擦問題あるいは為替問題が解消しないと思います。  我々が感じますのは、アメリカにつきましては貯蓄がないのに大体お金を使い過ぎだ、物がないのに消費をやり過ぎだ、一言で言えばそういうことなんです。ですから、もっとアメリカがしっかりしてくれないと困る。いわゆる双子の赤字ですね、この辺についてもまあ何とかなるじゃないかというレーガンさんかもわかりませんが、どうも思惑どおりいかないということでございます。ですから、日本としてもある程度姿勢を示していくということは、アメリカに対してあるいはヨーロッパに対してより反論できるというよりも、むしろ逆に我々がやっているのだから皆さん方もこういうことをやりなさいということは言えると思います。  そういう意味で、ちょっと心配なのはルーブル合意でございますが、ルーブル合意あるいはその後のパリ合意ですか、一番新しいのはワシントンG7というのがございますが、そういうのをずっと含めて見て、特にルーブル合意でございますが、これはそれぞれが責任分担をして帰ってきたような形になっていますけれどもアメリカルーブル合意というのをどこまで本当にやる気になっているのか、その辺について大蔵大臣はどのように受けとめておられるか、お聞きをしたいと思います。
  101. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 アメリカは、今の時点におきましてルーブル合意を誠実にやっておると私は見ておりますが、ただ御指摘のように、せんだってのように株が暴落いたしました、その直後には、もうそのことにすべての目を奪われまして、とにかくもう金利も何も、金をできるだけじゃぶじゃぶにしてしまおうというような、これはやむを得ないのでございますが、しばらくそういう時期がございました。が、やがて、ドルがさらに急落するということはアメリカ自身に悪いということをもう一遍再確認する余裕が出てまいりまして、大統領自身ドルのこれ以上の暴落は決して望まないということを言われ、またアメリカ自身財政赤字削減という、まあかつて大統領が自分のしかばねを乗り越えてやれと言ったぐらいの増税ということにとにかく踏み切ったのでございますから、そして連日共同介入もやっておるということで、アメリカ自身ルーブル合意を守ることに自国の利益を感じておるということであろうと思います。
  102. 玉置一弥

    玉置委員 大蔵大臣はそのようにおっしゃったのでございますが、我々の感触だとか、あるいは向こうに出ている金融界とかそういう方々のいろいろなお話を聞きますと、どうもレーガンさんそのものに威信がなくなってきたというのが一つあります。これは、やはり任期が先が見えてきたということですね、これは余り言えないと思いますけれども。しかし、ベーカーさんの発言とかいろいろ考えてみますと、ベーカーさんそのものが、レーガンの時代は増税を絶対しないのだ、こういうふうなことを言っておられて、やはり多少そちらに踏み切らざるを得ないというところに追い込まれてきている。そういうような状況とか、あるいはドルに対する発言とか、そういうようなものを見ておりますと、どうもアメリカ政府部内のこの辺の意思統一がされていないというような感じがするわけで、余りアメリカを信じてもらっていますとまた日本に無理難題が降りかかってくる、こういうようなこともございますので、より強い意見が吐けるように日本国内の体制をまず整えていただきたい、こういうふうに思います。  時間がありませんので、本当は構造問題をまだまだ聞きたいのですけれども、きょうはさわりだけでございますので、このぐらいで終わりたいと思います。  それで、今回のアメリカ政府と議会が基本的に合意をしたという、二年間で七百六十億ドルですか、七百五十億ドルとも言われておりますけれども、これが果たして実施できるのかどうかという問題と、我々から見ると、全体の赤字幅から考えて少ないんじゃないかなという感じがするのですが、この辺の評価をお伺いしたいと思います。
  103. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは端的に申しまして、これができなかったらえらいことだったなということから評価をしていくのが、一番正直な表現ではないかと私は思うのでございます。殊に、レーガン大統領自身が、増税ということはもう一切やらないという立場をともかく変えられた、そして、議会と大統領との間で具体的に赤字削減の二年間にわたるパッケージができたということは、やはりあれだけもみましたのですから相当苦しかったのだと思いますが、それをやったということは評価してもいいのであろう。  問題は、これがいつと申しますか、そう時間もないわけでございますが、具体的に法律になって成立する、もう一つそこの努力が、今胸突き八丁で苦労をしておるらしいのですが、それができましたら評価をしていいのだろうと思います。
  104. 玉置一弥

    玉置委員 時間がないので、一言やはり税金の話もと思いますので、これもまたさわりだけですけれどもお願いしたいと思います。  今、新聞紙上、税制改正の話が非常にたくさん出回っておりまして、新聞接税がもう既に検討されて出てきているとか、あるいは相続税の改正をやるんだとかいろいろなのが出ておりまして、よく見ると六十三年度とそれ以降、こういうふうな形でいろいろ話が分かれているようでございますが、まず、昨年の末からことしのほぼ前半にかけての売上税問題、これは、売上税がいいか悪いかは別にしまして非常に大きな勉強になった、私はこういうふうに思うのです。というのは、議会制民主主義のもとにおきましては、論議をしていくというのは非常に大切なことです。ですから、たとえ政府提案であっても、あるいは与党と政府間でも、提案された中身がどんどんと変わっていく、この変わっていくということが民主主義にとって非常に大切なことではないか、こういうふうに考えるわけです。  そういう面から見ていきますと、前回の売上税は、政府の方から出されまして、自民党税調あるいは政府税調で論議をされて何が変わったかといいますと非課税がふえただけだ、こういうふうな形でございまして、いろいろな方々が、今の税制、特に日本の商慣習に合わない、こういうようなところから大変な反発があったわけでございますが、ただ単に犬型間接税という形で見ると、決して大部分の方が反対をするとは思えない。ですから、売上税そのものにやはり欠陥があったのではないか、こういうふうな見方をしております。  それは一つには、中曽根さんが、大型間接税は導入をしない、こういうふうに言われました。売上税は大型でない、こんなばかな話はないのですね。だれが見たって大型でございまして、少なくともたばこ消費税より大きいのですね。そういうふうに比較して見ていくと全部大きいわけですね。そういうふうに考えていきますとやはり大型である。だから、やはり国民をばかにしたといいますか、一つはこの姿勢が一番大きな問題であったと思いますし、国会に提案をする直前まで全く姿を見せなかった、これによって国民が非常に警戒感を持った、こういうことでございます。  こういうふうに見ていきますと、政府・自民党は民主主義を放棄した、極端に言えばその一例だと思うのですね。非常に重要な問題でこの民主主義が生かされていないということは、大変問題になるというふうに思います。そういう面から見て、これからの税制改正の姿勢をお伺いしたいと思います。
  105. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 今おっしゃいましたように、この案をひとつやりたいと思いますがと具体的に案をお示しして、国民に長い間それについての賛否を議論していただくという機会をつくらなかった、結果としてそれができなかったということは、やはり致命的であったと思います。したがいまして、そういう間違いだけは今度はしてはならない、こういうふうに反省をいたしております。
  106. 玉置一弥

    玉置委員 竹下総理が本会議の所信表明の中で、国民の納得が得られるような税制をやりたいというような話をされたと思います。また、国際性という面も言われました。大蔵大臣もふだんからそんな話をされておりますけれども国民の納得を得られるというのはどういうことか、どういう手法でやられるのか、それについてお聞きしたいと思います。
  107. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 率直に申しまして税金というものは、だれも積極的に好むというものではございません。しかし、いろいろな状況から、現在、将来を展望して、どうもこのことは必要であるようである、しかも、自分としてもこの程度のものならば負担ができないわけではない、まあやむを得ないのではないか、このような受け取り方を国民にされるということではないかと思います。     〔中川(昭)委員長代理退席、委員長着席〕
  108. 玉置一弥

    玉置委員 聞きようによっては、話を出しておけば、そのうちまあしようがないなということになったら納得した、こういうような感じにも聞こえるわけですが、しかし、例えばいろいろな方々にどんな影響があるかとか、あるいは利益を受ける側と受けない側とのバランス、この辺とか、いろいろな分野にわたって調べていかなければいけないと思うのですね。  前回の売上税のもう一つの悪い点は、出してすぐやろう、一気に押し切ろう、こういうような勢いがあったのですね。そういう面で説明をしないで、ともかく何もかも目隠しをしてやってしまおう、そういうようなのもあったと思うのです。これは論議になると手に負えないということも考えられるのですけれども、それは出す方の勝手でございまして、国民の側としては、十分論議をして、納得ずくで自分たちが認めたんだというような形にしたい、こういうことがあるわけですが、これができなかったということです。  もう一つは、税制改正全般を眺めてみて、いわゆる地方税と国税の問題、いつも国税がずっと先行して、後で部分的に地方税が国税の影響を受けて変わっていくようなところがございます。そういう面で見ていきますと、これからの税制改正は、地方税を含めた中で同時に改正をしていく。例えば、地方行政の分野あるいは国の補助金というのがございまして、これから費用配分していきますと、今国が七割、地方が三割という形になっておりますけれども、実際の行政的な経費から見ると逆転をしている、こういうふうに言われております。それがまた今でも同じ国税と地方税の分け方で来ている。こういう分野の見直しというものもやらなければいけないし、それからよくおっしゃっていますけれども、直接税と間接税の税負担の問題、こういうものもやっていかなければならない。縦も横も同時に見直しをしていくという姿勢がなければいけない、こういうふうに考えますが、いかがでございますか。
  109. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 国と地方との行財政の負担、再分配ということは長い間の課題でございまして、なかなかいい姿になりませんが、これはやはり常に必要なことでございます。
  110. 玉置一弥

    玉置委員 急に時間が来たようでございまして、また続きは次の委員会でお願いします。
  111. 越智通雄

    越智委員長 次に、矢島恒夫君。
  112. 矢島恒夫

    矢島委員 まず、大蔵大臣にお聞きしたいと思うのですが、十一月二十七日、政府・自民党の六者協議というのが行われて、大型間接税を来年秋にも成立させたいということを決めたと伝えられております。先ほど来いろいろとお話がありますとおり、竹下総理も、政府統一見解を白紙撤回、それから大蔵大臣も、今度失敗したら三度目だからチャンスがないというような発言をされておる、このように聞いておりますけれども、このようにして政府は、あの百八国会の中で売上税導入反対という国民の大きな声が上がって列島騒然となった、こういう国民の声を無視して、新しい装いを凝らして大型間接税を導入しよう、そういうようにしているわけですが、少々装いを凝らしたところで、大型間接税は導入しない生言った公約違反ということについてはぬぐいようもないわけですから、政府がかわったからということでこのような方向を打ち出すということは、国民を欺くものであると言わざるを得ないと思うのです。  とりわけ大蔵大臣は、中曽根内閣のときも大蔵大臣でありますから、その責任は十分あると思うのです。そういう意味で、ぜひ大型間接税は導入しないと明言されるべきだと思うのですけれども、その点、いかがでしょうか。
  113. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 なるべく長くならずに申し上げますけれども、これから我が国の将来を考えますと、二〇〇〇年になりますと急速に老齢化をいたします。その場合に、社会の費用、共通の費用というのは、なるべく広く薄く国民の皆さんに負担をしていってもらうような制度をつくっておきませんと、老齢化した場合の若い人の負担は大変に大きなものになるということは今はっきり見えております。しかも、我が国は所得水準の高い、しかも所得の格差の最も少ない国でございますから、そのような広く薄い負担を国民にしていただくことは可能であるというふうに考えます。  他方で、所得税はなお重税感が強く、法人税は、世界どこにでも本店の置ける時代でございますから、世界各国との権衡としても考えなければなりません。両方とも直接税が重過ぎる。直間の比率は、七〇よりもっと直接税に重いこと等々を勘案いたしますと、国民に消費税の形で広く薄く何か負担を背負っていただくということは、私はどうしても入り用なことだというふうに思っておりますので、それは御理解を得て、お願いをいたしたいと存じます。
  114. 矢島恒夫

    矢島委員 いろいろ言われましたが、私は、軍拡予算を大幅に削減することや、あるいは大企業本位の税制だとか財政を国民本位に変えていくというようなことによって、大型間接税の導入はする必要がないんだということだけを主張いたしまして、時間がありませんので次の質問に入っていきたいと思います。  十一月二十七日の新聞報道によりますと、「国税庁はトヨタ自動車、日産自動車の両社からすでに徴収している法人税のうち八百億円と、輸出車製造工場などに課税していた地方税四百億円の計千二百億円を還付することを決めた。」このようにあるわけですが、大臣、このことはもちろん御存じだと思いますけれども、これは事実なのかどうかということ、それから、この問題の経緯とてんまつについてお伺いしたいと思うのです、
  115. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 国税庁の次長がお答え申し上げます。
  116. 日向隆

    ○日向政府委員 個別の企業にそれぞれ幾ら還付されたかにつきましては、個別企業の具体的な課税関係に関することでもございますので、御答弁することを差し控えさせていただきたいと思います。ただ、御指摘のような新聞報道がなされまして、その中で二社に対しまして約八百億円還付するという報道がなされたことは承知しておりまして、そのことについてはあえて否定するつもりはございません。  それから、次にお尋ねのどういう経緯かという点でございますが、これは長くなりますので簡単に申し上げますと、アメリカに四百八十二条という規定がございまして、これは移転価格課税でございます。私の記憶では、一九六八年から国内取引のみならず国際取引にもこれが適用されるということになりまして、これを発動してアメリカの国税庁が、我が国の現地の法人に対しまして課税をしてきたわけであります。これにつきまして、移転価格は御存じのように所得の調整でございますから、その課税を受けますと二重課税が発生してまいります。そこで、日米租税条約第二十五条にそういう二重課税を防止するために、当該企業はそれぞれの課税当局に対して相互協議をするように申し立てる権利がございまして、私ども、条約を誠実に実行する見地から、この申し立てがあればこれを受けて相互協議をしなければならぬということがございます。日米両課税当局が相互協議を行いましてある結論に達し、その結果に基づいて所得調整が行われ、それに付随して還付が行われた、こういう経緯でございます。  簡単で恐縮でございますが、御了承いただきたいと思います。
  117. 矢島恒夫

    矢島委員 一部答弁を得られないわけですけれども、新聞報道では、日産については五十-五十六年度の七年間で十億ドルを超える所得が申告されず、トヨタも五十二-五十七年度の六年間に八億五千万ドル申告がなかったとし、六十年三月、両社に対し仮更正処分、計九億ドル強の追徴本税額を通知した。  両社から協議申し立てを受けた国税庁は日米租税条約に基づき、IRSの課税が適正かどうか協議を続けていた。  その結果、日産の課税を逃れていた所得は五億七千万ドルとすることで合意、国税庁は同社からすでに徴収していた法人税五百八十億円の還付を決定。トヨタの更正所得も二億七千万ドルに減額され、近く同税二百二十億円を戻す方針。こういう報道がなされているわけですが、大変重大な問題だと思うわけなんですね。既にもう還付がなされているのか、あるいは十二月中には還付するようなことも言われているのですが、その点はどうですか。
  118. 日向隆

    ○日向政府委員 既に還付は行われております。
  119. 矢島恒夫

    矢島委員 そこで、次にお伺いしたいのですが、いわゆるこの移転価格税制アメリカでいいますと先ほどお話しの四百八十二条ですか、これによって行われたということになると思うのですが、過去我が国の法人にこれが適用されて還付した例はあるのかどうか、それから租税条約の対象になって日米税務当局の協議によって日本の法人に還付された例はあるのかどうか、この辺をちょっとお聞きしたい。
  120. 日向隆

    ○日向政府委員 大変恐縮ですが、ただいま既に還付されたかということにつきまして私が既に還付されましたと言いましたが、それは一部について還付されたということで、訂正をお願いしたいと思います。  ただいまの御質問でございますけれども、先ほど申しましたように、アメリカで一九六八年に四百八十二条が整備されて、国内のみならず国際取引にも適用されるようになってから、アメリカが諸外国との関係でこれを適用した件数が幾らあるかというふうに仮にとってお答えさせていただきますと、これにつきましては大変残念ながらIRS、アメリカの国税庁がこの数字を公表しておりませんので、正確なところはわからないというところでございます。  それからもう一つお尋ねの、我が国との関係でこの四百八十二条を適用したケースがあるか、これは恐らくアメリカの国内における取り扱いとしてはいろいろあるのだろうと想像されますが、これが正式に日米租税条約の条項に基づきまして相互協議の申し立てがなされ、そしてそれに対する日米課税当局間の相互協議が行われませんと、私ども正確な数字はわからないわけでございます。それで、今申し上げましたようなそういう正規のルートで協議が行われた件数は、過去に一件ございます。一件だけでございます。
  121. 矢島恒夫

    矢島委員 そういうことで、これは非常に重大な問題だと思うのですが、時効のことについてちょっとお聞きしたいのです。と申しますのは、アメリカ日本の時効が違っているということは承知しております。日本アメリカも原則三年だと思いますけれどもアメリカは納税者の承認のもとでIRSが課税権を事実上長期間延長できるようになっている。租税条約でも、日米間の合意ということがあるわけなんですが、この十年もさかのぼるということはどうかと思うわけなんです。しかも、時効延長、時効延長ということで引き延ばしてきた結果が、今回のように十年もさかのぼる結果になったわけであって、もっと早くこのことについて対処していくならばこのようなことにならなかったと思うのですが、その点はどうなんでしょう。
  122. 日向隆

    ○日向政府委員 お尋ねは二つあるかと思います。  一つは、時効の適用についてどうかということでございますが、これはただいま委員のおっしゃいましたように、アメリカにおける時効も過少申告の場合には通常三年でございますけれども、これはあるいは制度論でございますので主税局の方が専門家かもしれませんが、納税者が時効の延長に同意いたしますれば、その限りでは時効が適用にならないということになっております。  アメリカにおきましては、御存じと思いますが、我が国の場合と違いまして挙証責任が納税者側にございますものですから、したがって課税を受けました場合、納税者側としては、その課税を争うためにいろいろな資料、情報の収集等が必要でかなり時間がかかるわけでございまして、この点特に争いたいと思う場合には、つまり課税が問題があるのではないかと納税者が考える場合には時効の延長に同意いたしまして、その時間をいただいてそして争うというのが通例であるというふうに聞いておりまして、私どもが承っているところでは本件もその例外ではないということのようでございます。
  123. 矢島恒夫

    矢島委員 そもそも今度のこの問題は、いわゆる海外法人の申告が正確でなかったということから出発しているのだと思うのです。具体的にはトヨタと日産が挙がっているわけですが、この二社が支払いを大変渋って、そして時効延長ということを申し入れてきた。結局のところ、日米政府間ベースにのせて今度のような決着をつけたという経過だろうと思うのですが、その結果、私どもが調べたところによりますと、地方自治体も十四都道府県、二十八市町以上で、地方税でいいますと日産が三百五億円、トヨタで百十億円以上の還付になっておる。神奈川県でいいますと百億円、東京で約五十八億円、愛知や埼玉でも還付する、こういうふうに言われておる。非常に重大な影響を与えているわけです。二社ともこの間大変大もうけしてきたことは、いろいろと今までの資料を見ればわかることであって、こういう財テクで資金を有利な方向へ回すための価格移転操作というようなことをした結果が、今度のようなことになったと思うわけです。ですから、これらの企業の責任というのは極めて重大だと思うわけなんです。企業の責任なしに今度のような決着の仕方というのは、どうも納得できないわけなんです。  例えば同じ自動車産業の本田技研工業、これなどは企業自身アメリカと交渉して解決したと私は聞いているわけなんです。ですから、トヨタ、日産のアメリカの子会社でも、これは明らかに独立した会社です。ですから、親企業と子会社とを一緒にしたやり方ではなくて、それぞれ独立した企業と、それからアメリカあるいはIRSとの協議で解決していくべき問題だろう、ほかに影響を及ぼすというようなことはやってはならないのじゃないかと思うのですが、その点はいかがですか。
  124. 日向隆

    ○日向政府委員 おっしゃるように、それぞれの具体的な現地企業名はもちろん差し控えさせていただきますけれども、それぞれの現地企業がそれぞれの課税当局側とその課税関係につきまして調整ができればそれが最善であろうかと思いますが、しかし、どう考えましてもいずれ調整がつかなければ訴訟になるわけでございますけれども、そういった過程まで眺め渡してみても非常に難しいという判断に立ち至った場合には、現在の租税条約の制度のもとでは先ほど私が申し上げましたような制度がございますので、その制度に乗っかってその調整を求めてきたということでございますれば、やはり私どもとしては、日米両課税当局で誠意を尽くしてこれに対して対応しなければならぬ、こういう事情にあるわけでございます。
  125. 矢島恒夫

    矢島委員 やはり新聞報道じゃないと、ほとんど内容について国税庁の方で教えてもらえないわけなんですが、この新聞報道によれば、今度の決着というのがIRSが六十年三月に行った仮更正処分に比べて相当減額になっているということ、なぜそうなったのかという点、どうも自動車をめぐる日米貿易摩擦のことを考えると、政治決着というように考えざるを得ないわけなんです。しかも、こういうことはいきなりやってくるわけであって、特に関係自治体にとっては大変なことになると思うのですね。  二十八日の新聞なんかによりますと「税金紛争、家電でも」ということで、家電業界でも東芝、松下電器あるいは日立製作所、こういうようなところでカラーテレビやオーディオ製品などの家電製品に対しても問題が起きてきているということが報道されているわけですね。還付金が多額になりますと、自治体では突然のことなので補正を組まなければどうしても対処できない、こういう状況も生まれてくるわけです。さらに現在、企業がどんどん海外へ進出する、アメリカにも進出する、こういう状況のもとで、どうもこれまでの経過をずっと調べてみますと、日本の税務当局というものが、アメリカアメリカに子会社を持つ大企業に屈服し続けているんじゃないか。こういう事態は極めて問題があり、不合理で改善すべきだと思うのですけれども大臣、この辺はいかがでしょうか。
  126. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいま国税庁から御説明いたしましたところは極めて理路整然としておりますし、両国間の条約によりまして友好的に事態を解決したということで、何ら問題はないと存じます。
  127. 矢島恒夫

    矢島委員 両国間の今日までの経過というよりも、むしろ後半の部分ですね。国税庁の方からお答えいただいても結構なんですけれども、これから海外へどんどん企業が進出していく、突然こういうことが起こる、そうすると、地方自治体にとっても大変な問題が現在もう既に起きておるわけですが、家電業界の問題などが報道されておりますから、今後も起こり得る可能性が十分あるのだと思うのです。そうなりますと、どうもこの間のやり方というのが、アメリカなりあるいはアメリカに子会社を持つ企業の言いなりになっているのじゃないか。何か是正する、改善するという方向は考えないのか、この点なんですけれども
  128. 日向隆

    ○日向政府委員 委員も御承知と思いますが、移転価格税制といいますのは、関連会社間あるいは企業間における価格が第三者価格に比準して適正かどうかという問題でございますから、確かに事後的に課税されるという側面があることは否定できないところでありますので、今後もこの種の問題が発生することは十分予想されるところであります。ありますが、具体的に今委員が御指摘になったような企業、企業群がどうかということについては、私ども確たる情報を得ておりませんので、ここで申し上げることは差し控えさせていただきますけれども、やはりそういう問題が発生しました場合には、日米租税条約に基づきまして日米課税当局間で誠実にこれに対応するということであろうかと思いまして、決して米課税当局ないしは企業の言いなりになっているということではございません。それだけは申し上げておきたいと思います。
  129. 矢島恒夫

    矢島委員 先ほどもちょっと質問したのですけれども、十年間もさかのぼっていくという事態を起こした状況というのは、私が先ほど申し上げたような状況だろうと思うのですけれども、今後もそういうことが起こり得る可能性があるわけなんです。要するに、早く対処をすればこれだけさかのぼらなくても大丈夫だったのではないか。この点について、今後の対処の仕方についてどんなふうにやっていくおつもりか。
  130. 日向隆

    ○日向政府委員 私、その点は確かに今後の問題としては十分検討し、早急な対応をしなければならない点であろうかと思います。
  131. 矢島恒夫

    矢島委員 私は、このことは非常に重大であって、まず第一に、先ほど御答弁をいただけなかったわけですけれども、こういう問題の経緯や仕組みあるいは全貌といいますか、こういうものを国民の前に明らかにすべきだということ。それから第二には、トヨタ、日産などこういう海外進出の企業には、例えば外国税額控除のことだとか税制上の優遇措置があるという状況。あるいは新聞報道では外国貿易地域指定ですか、こういうことでの優遇措置が次々と行われる方向も出てきているというようなことから、大企業に対する優遇税制の問題。さらにもう一つは、国税庁も発表しているわけですけれども、最近海外取引にかかわる大口不正脱漏の所得金額、これが大幅に増大している。例えばギンジコーポレーションですか、これが二百四十億円の申告漏れを指摘された。ところが、実際には海外へ譲渡益を移転して徴収できない、こういうような例もあるわけで、こういう不正をなくしていく、こういうこともやはり重要な今後の問題ではないかと思うわけなんです。  時間がありません、もうあと一分でございますので、そうすれば今日の大企業に対する税制の抜本的な改正、こういうものをやって国民本位税制にしていくならば、不公平税制を是正するとか大型間接税の導入は必要ないということだけ申し上げて、質問を終わりたいと思います。      ――――◇―――――
  132. 越智通雄

    越智委員長 この際、御報告いたします。  本会期中、当委員会に付託されました請願は三十四件であります、各請願の取り扱いにつきましては、理事会において慎重に検討いたしましたが、委員会での採否の決定は保留することになりましたので、御了承願います。  なお、本会期中、参考送付されました陳情書は、新大型間接税導入反対に関する陳情書外四件であります。念のため御報告いたします。      ――――◇―――――
  133. 越智通雄

    越智委員長 次に、閉会中審査に関する件についてお諮りいたします。  国の会計に関する件  税制に関する件  関税に関する件  金融に関する件  証券取引に関する件  外国為替に関する件  国有財産に関する件  専売事業に関する件  印刷事業に関する件  造幣事業に関する件の各件につきまして、議長に対し、閉会中審査申し出をいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  134. 越智通雄

    越智委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  本日は、これにて散会いたします。     午後八時七分散会      ――――◇―――――