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1987-12-04 第111回国会 衆議院 外務委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    国会召集日昭和六十二年十一月二十七日)( 金曜日)(午前零時現在)における本委員は、次 のとおりである。   委員長 糸山英太郎君    理事 甘利  明君 理事 北川 石松君    理事 田中 直紀君 理事 中山 利生君    理事 浜野  剛君 理事 高沢 寅男君    理事 神崎 武法君 理事 永末 英一君       天野 公義君    石井  一君       大石 正光君    鯨岡 兵輔君       小杉  隆君    坂本三十次君       椎名 素夫君    塩谷 一夫君       水野  清君    村上誠一郎君       森  美秀君    山口 敏夫君       岡田 利春君    河上 民雄君       佐藤 観樹君    土井たか子君       伏屋 修治君    正木 良明君       渡部 一郎君    岡崎万寿秀君       松本 善明君 ————————————————————— 昭和六十二年十二月四日(金曜日)     午前十時開議 出席委員   委員長 糸山英太郎君    理事 甘利  明君 理事 田中 直紀君    理事 中山 利生君 理事 浜野  剛君    理事 高沢 寅男君 理事 神崎 武法君    理事 永末 英一君       天野 公義君    井出 正一君       石井  一君    大島 理森君       片岡 武司君    鯨岡 兵輔君       小杉  隆君    椎名 素夫君       穂積 良行君    村上誠一郎君       谷津 義男君    新盛 辰雄君       伏屋 修治君    吉浦 忠治君       渡部 一郎君    岡崎万寿秀君       松本 善明君  出席国務大臣         外 務 大 臣 宇野 宗佑君  出席政府委員         外務政務次官  浜田卓二郎君         外務大臣官房審         議官      柳井 俊二君         外務省アジア局         長       藤田 公郎君         外務省北米局長 藤井 宏昭君         外務省欧亜局長 長谷川和年君         外務省中近東ア         フリカ局長   恩田  宗君         外務省条約局長 斉藤 邦彦君         外務省国際連合         局長      遠藤  實君         外務省情報調査         局長      新井 弘一君         農林水産大臣官         房総務審議官  吉國  隆君         水産庁長官   佐竹 五六君  委員外出席者         警察庁警備局外         事課長     国枝 英郎君         防衛庁長官官房         防衛審議官   村田 直昭君         外務大臣官房領         事移住部長   黒河内久美君         外務省経済局次         長       池田 廸彦君         外務委員会調査         室長      門田 省三君     ————————————— 委員の異動 十二月四日  辞任         補欠選任   大石 正光君     片岡 武司君   坂本三十次君     穂積 良行君   塩谷 一夫君     谷津 義男君   村上誠一郎君     井出 正一君   森  美秀君     大島 理森君   河上 民雄君     新盛 辰雄君   正木 良明君     吉浦 忠治君 同日  辞任         補欠選任   井出 正一君     村上誠一郎君   大島 理森君     森  美秀君   片岡 武司君     大石 正光君   穂積 良行君     坂本三十次君   谷津 義男君     塩谷 一夫君   新盛 辰雄君     河上 民雄君   吉浦 忠治君     正木 良明君     ————————————— 十二月一日  アメリカ合衆国地先沖合における漁業に関す  る日本国政府アメリカ合衆国政府との間の協  定を改正する協定締結について承認を求める  の件(条約第一号) 同月三日  核兵器廃絶に関する請願(金子満広紹介)(  第一一号)  同(経塚幸夫紹介)(第一二号)  同(正森成二君紹介)(第一三号)  同(村上弘紹介)(第一四号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国政調査承認要求に関する件  アメリカ合衆国地先沖合における漁業に関す  る日本国政府アメリカ合衆国政府との間の協  走を改正する協定締結について承認を求める  の件(条約第一号)  国際情勢に関する件      ————◇—————
  2. 糸山英太郎

    ○糸山委員長 これより会議を開きます。  国政調査承認要求に関する件についてお諮りいたします。  国際情勢に関する事項について研究調査し、我が国外交政策の樹立に資するため、関係各方面からの説明聴取及び資料要求等方法により、本会期中国政調査を行うため、議長に対し、承認を求めることにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 糸山英太郎

    ○糸山委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  4. 糸山英太郎

    ○糸山委員長 この際、浜田外務政務次官より発言を求められておりますので、これを許します。外務政務次官浜田卓二郎君。
  5. 浜田卓二郎

    浜田政府委員 このたび外務政務次官就任いたしました浜田卓二郎でございます。  宇野大臣を補佐いたしまして、微力ではありますが、職務を全うするため全力を傾ける所存であります。  本委員会の諸先生方の御指導、御鞭撻と御協力をお願い申し上げまして、私の就任のごあいさつとさせていただきます。  どうかよろしくお願いいたします。(拍手)      ————◇—————
  6. 糸山英太郎

    ○糸山委員長 国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中山利生君。
  7. 中山利生

    中山(利)委員 時間が制約されておりますので、早速大臣にいろいろお伺いしたいと思います。  竹下内閣が成立をいたしまして政局も新しい時代に入ったと思うわけでございますが、最近の内外の情勢を考えてみますときに、大変な時代竹下さんは内閣をお引き受けになったものだなという感を強くするわけでございます。この竹下内閣の重要な閣僚、しかも外務大臣という職責に御就任になりまして以来、まさに席の暖まるいとまもないほどの御活躍をいただいております。心から敬意を表する次第でございます。  きょうは、大臣の御心境と申しますか御決意と申しますか哲学と申しますか、そういうものをゆっくりお伺いしたいと思っておりましたが、何分にも、ここへまいりましてガットの問題であるとか大韓航空機の問題であるとかペルシャ湾であるとか、対外摩擦関係を初めいろいろな課題が山積をしておりますので、具体的の方をできるだけお伺いしたいと思っておりますが、まず初めに、御心境などをお漏らしいただければ幸いでございます。
  8. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 就任の際にも、国民皆さんにごあいさつを申し上げたとき、いろいろと私の抱負経綸を申し述べましたが、ただいまはこの栄光ある外務委員会におきまして初の御質問をいただいたわけでございます。  私といたしましては、日本の平和と繁栄はまさに外務における一番大切な使命の一つである、だから我々の生存と繁栄というものは一にかかって世界の平和と繁栄を基盤としておる、こういう考え方で今後進んでいきたい、かように思っている次第であります。  もちろん日本大国になっております。したがいまして、国際社会からはありとあらゆる要請、期待が込められて送られてきておりますので、それにこたえるためには、私たちといたしましては、世界に貢献し得る日本世界に開かれた日本、そうしたことを一つの大きな眼目として外交を進めていかなければならないと考えております。なおかつ、日本といたしましては、あくまでも西側に属しておる、同時にまた、アジア太平洋諸国一員である、こういう気持ちを常に忘れてはならないと思う次第でございます。  したがいまして、大国であることを我々は誇りとはいたしますが、決してそれを一つの大きな何か威嚇手段に用いるというようなことがあっては絶対にいけないと思います。あくまでも謙虚に、特に途上国等々に関しましてはお互いに共存共栄し得る道を講じて、日本はできる限りの努力をすべきである、こういう気持ちで今後進んでまいりたい、かように存じております。
  9. 中山利生

    中山(利)委員 大臣の御決意、まことにそのとおりであろう、我が国世界から期待をされ、また世界に対して何をなすべきか、非常に大事な問題であろうと思いますし、その我が国の顔として御活躍をいただく大臣、まさに私は適任者をお迎えしたというふうに感じておりますので、今後ともひとつよろしく御活躍をいただきたいと思います。  早速でございますが、先般、ガット総会に御出席をいただきまして、頑張ってこられたということでございますが、農産物の十二品目輸入自由化の問題、これは我が国農業の現況並びに将来につきましても非常に重大な深刻な問題であろうと思うわけでありますが、このお話だけしても二十分ぐらいはすぐ飛んでしまいますが、総会の経緯あるいは今後の見通し等についてお話をいただければ幸いだと思います。
  10. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 この間、国会の特別の許可を得まして、私は、国会開会中でございましたが、ガット総会に出ました。これは四十周年という記念も兼ねた総会であったのでございますが、それはさることながら、やはり我が国と米国の間におきまして紛争を起こしておりました十二品目、これに関しまして先般ガットパネル報告が出されております。十二のうち二つはまあまあだが、あとの十は黒色である、こういうような判定でございます。  それを総会において採択するかしないかという問題が来たわけでございますが、いろいろ私たちも考えまして、ガット参加国といたしましては、やはりガット規定に従っていかなければならないことがあります。しかしながら、詳細にわたりまして十二品目を眺めた場合には、やはりせっかくのパネル報告ではあるけれども、その立論、結論において大いに異議あり、こうしたことに対してはやはりはっきりすべきである、そういうふうに私は考えておりましたので、そのことは、当の相手国アメリカヤイター代表と四十分ばかりでございましたが、お出会いいたしましたときにも、はっきりと私から主張すべきは主張いたしておきました。  例えば、アメリカガット創設者である、だから当然いろいろなウエーバーを持っていらっしゃる、自分はウエーバーを持っていながら、同じ品目について日本自由化を迫るとはいかなることなりやと実は申し上げたこともあります。あるいはまた、アメリカを初めECにおきましては、輸出に対しまして補助金をつけておるではないか、我が国はそういうことをしておりませんよ、したがいまして、非常に気候的な問題あるいはまた土地の問題等日本には制約があるが、そうした中において日本人日本人としての農業を今経営しておるのである、だからガットのいろいろな言い分に対しまして、何もだめだと私は申し上げたくないけれども、中にはどうしてもやはりはっきりしておきたい問題がある、こういうことでございます。  したがいまして、異例の措置ではございましたが、我が国ガット代表波多野大使をして、初日に、言うならばひとつ分割採択ということはできないのか、そういうような趣旨の演説をしてもらったわけであります。しかしながらガットは、十二品目一括してこれが議題に供せられておりますので、その中のつまみ食いは許しません、もしつまみ食いを許すようなことがあるのならば、各国が今後それぞれこれは特別扱い、これは特別扱いと言えばガットの存在する意味がない、またパネルによっていろいろと報告をする意味がない、だから許しませんというような圧倒的な反対の声が出たわけでございます。はっきり申し上げますと、国内におきましても何とかいろいろな方法を考えてくれというので、外務省といたしましてもひとつ今までかつてない例だけれども分割して考えてほしいということを主張しようじゃないか、こういうことで主張いたしましたけれども、多くの反対に遭ってしまいまして、では、続いてどうすればよいかというときを迎えたわけでございます。  しかし、私どもといたしましては、肝心かなめの農林省並びに関係議員、これは与野党を通じていろいろな御意見がございますから、その御意見を拝聴せざるを得まい、こういう姿勢で昨夜まで得たしていただいた次第でございますが、なかなかこれという結論は出てまいりません。しかしながら、二月に総会があるからそれまで余裕を与えていただきたい、その総会にはガット規定に沿って我々も承知したいと思う、こういうふうにお答えをいたしまして、ようやく総会の了解をいただきまして、昨夜この問題は二月まで延期ということになったわけでございます。その際、私たちは、これは単に時間稼ぎではございません、このように申し添えてあります。
  11. 中山利生

    中山(利)委員 大変な御苦労、御奮闘をなされたことは承っております。我が国の十二品目につきましても、いろいろなところで批判もあることでありますが、今日までまいりましたのはそれなりの歴史、必然性というものがあってのことだと思うわけでありますが、国際社会の中で受け入れるものは受け入れていかなくてはならないのではないだろうか。その点につきましてはまた政府の手厚い御指導、御援助がなければならないと思うわけでありますが、ひとつその点もよろしくお願いを申し上げておきたいと思います。  それから次に移りまして、この十五日からマニラにおきましてASEANサミットが開かれる。竹下総理、それから大臣も御出席になるのではないかと思いますが、我が国が招待をされたということは、ASEAN諸国それぞれが政治的、経済的、宗教的、人種的、いろいろな複雑な事情を抱えながら発展を期して努力をしておるわけでございますが、それぞれの国が日本に対する大きな期待を持っているであろうと思うわけでありますし、東南アジアとの善隣友好ということは我が国にとっても欠かすことのできない大事な仕事であろうと思うわけであります。このASEANサミットは、竹下総理としても初めて外国おいでになることでもありますし、ぜひとも成功をさせたいと思うわけでございますが、このサミットに臨む御決意といいますか、お聞かせをいただきたいと思います。
  12. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 今おっしゃいますとおり、ASEAN我が国の近隣であり、最も大切な地域ではないかと思います。もっとも、我が国外交はいずれの国を問わず常にその友好を図るよう努力する、そのことは先ほど申し上げたとおりでございますが、特にアジア同士、そうした面からもASEAN各国日本に寄せていただく期待は大きい、私はこう思います。  幸いなるかな、ASEANは既に二十年という長い年月をけみせられまして今日その総会を開くという事態になったわけで、ぜひとも竹下総理をお迎えしたいという招請状が参っておりますので、私もお供していきたいと思います。  そして、その翌日にはフィリピン日本との会談も予定されておるわけでございますが、経済的にも政治的にもそれぞれの国はそれぞれ政策を持って立派に努力してこられた、私はこう考えております。しかしながら、やはり我が国といたしましても、お隣のことでございますから、なお一層の力を尽くさなければなりません。  恐らく経済協力問題、政治全般に関する問題等お話があろうかと思いますが、具体的な一例といたしましては、本年度、私たち外交政策の上におきまして還流資金二百億ドルというものを設定いたしました。このうち二十億ドルはASEAN各国にひとつ有効に使っていただきたい、こういう意思表示を既にいたしておりますので、この間もASEAN各国大使諸公おいでになられまして約一時間ばかりいろいろと御意見を拝聴したばかりでございますが、日本といたしましても、そうした意味合いにおきまして、ASEANの政治的安定、経済的繁栄、そして我が国との親睦のさらに深きことを望んで最大の努力をいたしたい、かように考えております。
  13. 中山利生

    中山(利)委員 ぜひとも我が国にとりましても実り多いサミットになりますように御期待申し上げるわけでございます。  実は私も先日、ここにいらっしゃる高沢先生永末先生などと一緒に日比議員連盟ということで向こうの上院、下院の皆さんとお目にかかってまいりました。そのときにマングラプス外相ともちょっとの間ですがお目にかかってきたわけでございますが、フィリピンがこのサミット開催国としてこのサミットの成否に命運をかけているというような感じもございました。  フィリピン我が国と近いところにあるにもかかわらず、何か関係の薄い国、いろんなうわさはありますけれども、ほかの国と比べて何か関係が遠い国のような感じもいたします。しかしアキノ政権は大変苦労しておりまして、我が国に対する期待も大変大きいと思いますので、サミットおいでになったついでに認識をよくまた改めてきていただきまして、御支援のほどをお願いしたいと思います。  時間がございませんので、次に移りたいと思いますが、マニラといいますと、若王子さんの事件を持ち出すまでもなく共産ゲリラNPAの襲撃であるとか一部軍人の反乱など物騒な話題に事欠かないわけであります。さらに最近、日本赤軍の丸岡とか泉水などがマニラに潜入したことが判明しまして、あるいはサミットをターゲットにしているのではないかなといううわさもあるわけでありますので、十分御配慮をお願いしたいと思います。  細かいことをお伺いしたいと思うのですが、時間がもうないそうでございますので、私の方からいろいろお伺いしたいと思います。  テロ行為というのは、長年培ってまいりました国際関係善隣友好関係国民同士信頼関係というものを一朝にして失ってしまうというような卑劣な行為であろうと思うわけでございます。全力を挙げて防止策を講じなければならないわけでございますけれども、今度の大韓航空機でも、偽造パスポートが容易に手に入る、あるいは出入国も比較的簡単である、それからそういう工作員なりスパイというふうなものを何か庇護している、万全に生活ができるというような印象を外国に与えることは、これからの外交を展開していく上にも非常に大きな障害になるのではないかと思うわけでございますが、このテロの今後の対策等につきまして、また大韓航空機問題、これも今国民が大きく注目をしているところでございますので、外務省なり警察庁なり、その後の情報等についてもおわかりでありましたらお知らせをいただきたい。よろしくお願いいたします。
  14. 黒河内久美

    黒河内説明員 今先生指摘国際テロ対策でございますが、外務省としては、基本的な考え方といたしまして、我が国は、従来より理由のいかんを問わずいかなる形のテロにも断固反対するという立場から国際社会全体の問題として、サミット諸国を初めとする志を同じくする諸国とともに国際テロ防止のための国際協力を積極的に推進してきたわけでございます。  今回の大韓航空機事件に関連いたしましては、タイ、ビルマ等関係当局が失踪の原因等につきまして全力を挙げて捜索に当たっておりますが、いまだ確認は行われていない状況でございます。  問題のバハレーン邦人名義旅券を所有しておりました蜂谷真一蜂谷真由美が、十二月一日、バハレーン当局偽造旅券所持の容疑で逮捕、拘束されまして取り調べ中自殺を図り、男性が死亡し、女性は命を取りとめたことは報道されておるとおりでございますけれども、この問題は多くの犠牲者を出しました生命にかかわる重大な問題でもございますので、我が国といたしましては、この女性身元確認、また死亡いたしました男性身元確認を含め、真相解明のために今全力を挙げておるところでございます。
  15. 国枝英郎

    国枝説明員 バハレーン当局に拘束されました二人の男女が所持しておりましたのは、日本旅券の偽造されたものでございます。したがいまして、警察におきましては、現在、外交ルートを通じてもたらされます資料あるいは情報等をもとに国内においても所要の捜査を進めておるところでございます。いずれにしましても、この邦人名男女二名の身元確認を最優先にいたしまして、事案の真相を解明する所存でございます。  なお、本日、警察庁係官を現地に派遣することにいたしております。  一方、国際テロ防止策についてでございますけれども、国際テロ国際社会全体の問題であるという認識を持っておりまして、そういう観点からも国際テロ防圧のために、ICPOでございますとかあるいは外交ルートを通じまして積極的に情報の交換あるいは捜査協力を行っておるところでございます。
  16. 中山利生

    中山(利)委員 質疑時間が終了いたしましたのでこれで終わりますが、テロ対策につきましては、ぜひ今後とも全力を挙げて厳重な措置をとっていただきたいことを希望いたしまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。
  17. 糸山英太郎

    ○糸山委員長 次に、高沢寅男君。
  18. 高沢寅男

    高沢委員 大臣、御就任早々東奔西走、まことに御苦労さまでございます。今後も十分健康に御留意されて御活躍されますことをまずお祈り申し上げたいと思います。  まず初めに、竹下内閣あるいは宇野外務大臣外交基本姿勢ということを私もお尋ねしたいと思います。  最近、こういう声があります。日本経済科学技術で非常に力の強い国になった。ところが、国際政治の舞台ではそれにふさわしい発言力を発揮していないじゃないか、もっとそれを発揮すべきだ、こういう意見が大いにあるわけであります。中曽根総理もそういうお立場日本国際国家にならなければいかぬということでいろいろな言動をなされたわけであります。  ただ、私の見るところ、中曽根総理日本国際国家にという、その方向が言うならばアメリカ核戦略を、先頭に立って大いにその片棒を担ぐ、あるいはNATO諸国よりもっと前へ出て、日本は西欧の一員だから大いに対ソ連対決の前面に出なければいかぬ、こういう方向国際国家方向を目指されたように思うわけですが、これは平和憲法を持つ日本立場として少し方向が違いはしないか。先ほど中山委員に対する大臣お答えの中にも何といっても平和が第一、さらには日本アジア一員である、こういうことを強調されましたが、全く同感です。  そういたしますと、日本国際国家として、平和の方向国際協力方向、軍縮の方向、この方向先頭に立って大いに発言力を発揮していく、言うならばこれで他の国をリードしていく、そういう立場外交が今や一番必要なときではないかと私は思いますが、まず大臣の御所見をお尋ねしたいと思います。
  19. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 お答えいたします。  一般的に外交というものは継続性がなければならない、これが言われております。したがいまして、例えば一国にして二大政党があって時と所を変えて与党になる場合、今までの野党といえども外交は波打ち際までという一つのルールもある、でなければ相手国が迷惑するというふうなことでございましょうから、私たちといたしましても、同じ自民党の中の政権交代であるから当然外交継続性、また一貫性ということは守っていきたいというのが、私の就任のときのあいさつでございました。今もそのように考えております。  今高沢委員から御指摘のありました、前総理は言うならば平和よりもむしろ右向きの姿勢をとられたが、それも継承するのかいという含みの御発言でなかろうかと思いますが、我々といたしましては日本は平和と繁栄、その道を求めるのが外交である、これが外交基本方針であるということでございますので、私はこれを守りたいと思いますし、同時にまた、日本は常に平和と軍縮を叫ばなければならない国家である、このことも私の信念として就任のときにお話をいたしておるような次第でございます。  前総理の場合も、いろいろ見方はあったと思いますが、例えばサミットにおきまして、アジア一員として出ている以上はアジアの平和と安全、この確保ということについても発言なかるべからず、これが前総理気持ちではなかったかと思います。例えばSS20の問題にいたしましても、欧州のSS20は廃止するよというような話になりましたときに、御承知のINF交渉におきまして核弾頭つきの中距離ミサイルというものは今度全面的に廃止されるということで当然喜ばしいことでございますが、アジアということを考えますと、アジアになおかつSS20が配置されておれば一方的脅威ではないか、だからアメリカさんはアラスカにもそれと対抗し得るような抑止力を持ってほしいと言ったのは実はアジアの平和のためであるということは、前総理もしばしば外務委員会なり本会議で申されたと思っております。  そういうようなことで、決して右向きというような発言、軍国主義の方へ走っているような発言ではなくして、常に平和というものを考え、アジア繁栄を考えられた上での話であった。その一端だけをとりますと何かすごいことをしゃべっているなということになったかもしれませんが、少なくともそうした中曽根内閣を継承いたします竹下内閣、またその外交を継続したいと願っております私におきましては、いずれにいたしましても平和、そして我が国繁栄、それを中心に世界の立派な平和というものを確立するために日本全力を尽くさなくちゃならぬ、こういう立場で進みたいと考えております。
  20. 高沢寅男

    高沢委員 中曽根総理宇野さんの御関係は私もわからないわけではございません。  同時に、従来の自民党各歴代内閣は、振り返ってみるとやはりそれぞれの内閣の持ち味といいますか、それぞれの外交のカラーがあった、私はこう思います。当然これから竹下内閣竹下内閣外交のカラーというものができてくることと思いますが、そのカラーというのは、先ほど私の申し上げたそういう平和と国際協力方向で非常に竹下内閣はやった、こういうカラーが出るようにぜひひとつお願いを申し上げたい、こう思います。  今の問題として大変ホットなあれとして、やはりガットの問題、これをひとつお尋ねをいたしたいと思います。  先ほど来、ガットに臨んで日本側のとった態度について大臣の詳細な御説明がありましたが、ヤイター代表との話し合いの中で、アメリカ側から日本に対して出された主張というか、あるいは要求というか、これらもひとつこの際お聞きをいたしたいと思います。
  21. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 私だけではなく、松永大使もワシントンにおきましていろいろと折衝を重ねております。そうした折衝の中におきまして、例えば十二品目に限って申し上げますと、アメリカは、日本は二十四年間実はガット違反しておるのだ、どの品目がどうかということは私はつまびらかにいたしておりませんが、その分だけ日本は利益をこうむっておるはずであり、またアメリカ初め他の国は不利益をこうむっておったはずである、だからガット委員会においてもパネル結論が出されたのだ、ひとつそれを尊重してほしい、やはり今ガットを構成するものはアメリカであり、日本であり、同時にECであると思う、参加国は九十五カ国であるけれども、やはりこの大きな三主体がガット先頭に立って、ガットの自由貿易精神というものも大いに発揚しないことには、保護貿易がはびこったらどうなるか、これがアメリカの言い分でございました。これには全く我々も同感でございます。  しかし、先ほど申し上げましたとおりに、総論はさようでございましても、一つ一つ品目の経線等々考えてまいりますると、そう簡単に日本がそうかと言うわけにはいきませんよという反論は当然我が方にもあったというのがこの間からの両国の間でございます。
  22. 高沢寅男

    高沢委員 このガットの裁定は二月まで延期になって、ここにごくわずかではあるが時間のすき間ができたわけですね。この時間のすき間の間に、この問題の我が方の立場を実現していく対アメリカの、二国間のいろいろな御努力があると思いますが、その中の一つとしては、一月の竹下総理の訪米もまた入ってまいりますが、そういう中において日米二国間でこの問題の解決を図る、そのための御努力方向といいますか、あるいはまたその実現の可能性といいますか、それらの点はどういう見通しをお持ちで臨まれるか、お尋ねをしたいと思います。
  23. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 ガットの重要な一員である以上は、やはりガットの尊重というものを具現化するということも日本立場ではなかろうかと思います。したがいまして、日本世界に貢献する、さらには世界に開かれた日本ということを竹下内閣一つの目標とし、今委員が申されました一つのそれはカラーであるということになりますと、やはりぜひともそうした面における世界に対処するだけの態勢を我々は整えていくことが必要ではなかろうかと思うのでございます。  もちろん中には代償を払えば済む問題があるかもしれません。もちろん中には国内的な関税を高め、あるいはまた補助を出すことにおいて救い得る品目があるかもしれません。しかし、それぞれにはそれぞれの歴史もあり、地域の特色もあるわけでございますから、そうしたことを十二分に時間をかけて一時間はないわけでございます。先ほど二月総会と申しましたが、実は理事会でございますから、その理事会までに日本日本としての最大の努力をするというのが今の日本姿勢でなければならぬ、かように存じております。
  24. 高沢寅男

    高沢委員 今大臣の説明された御努力のその一環に関連しますが、けさの新聞によりますと、自民党首脳は、練乳・粉乳とでん粉、この二品目については日米間で合意できる、そういう内々のあれはできているんだというようなことを語られたということが出ておりますが、何かその種の感触を外務省として、政府レベルでお持ちなのかどうか、この点はいかがでしょうか。
  25. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 まだこれという具体的な品目について云々ということは、折衝中の問題もございますし、また話し合いを深めて理解を得なければならぬ問題もございますけれども、アメリカとの間において、今先生一つの例として挙げられましたことに対して我が方が了解したということはないわけであって、むしろそうした品目に関しましては、我々といたしましては日本の特別の事情を申し述べることにおいて、これこそまさに、例えば除外があるとするならば除外してでも主張を貫かなければならない問題ではないかというのが現在の我が国の農政担当者の意見であるということは私たちも耳にいたしております。
  26. 高沢寅男

    高沢委員 私が今お尋ねしたのは、でん粉と練乳・粉乳については日本自由化は困りますという立場アメリカ側が合意してくれる、そういう内々のあれはできている、こう言われたというのです。それは実際そこまで行っているかどうかということをお尋ねしたわけです。
  27. 池田廸彦

    ○池田説明員 お答え申し上げます。  ただいま大臣から申し上げたとおりでございまして、我が方としては、この二品目については特に深刻な国内的な問題があるということを重ねて主張いたしまして、それでは、それに対してどのような措置をとるのかあるいはとり得るのかという点につきましては、まだ何ら暗黙の了解等といったようなものはございません。  それから、御指摘の点につきましては、アメリカの報道の一部、特に生産者に密着した報道の一部にそのような声があったということは承知いたしております。しかしながら、政府レベルに関しましてはそのようなことはございません。
  28. 高沢寅男

    高沢委員 他の品目もいずれも重要でありますが、特にこの二品目の問題は重要なものとして今後の解決の御努力をぜひお願いしたいと思います。  それから、それに関連しまして、やや長期のあれになるでしょうが、続いて今度は、十二品目がから例えば牛肉、オレンジというふうな次のアメリカからの自由化要求、さらにもっと延びれば今度は米の自由化要求というような形で次々と来るのではないか、この点が大変心配されるところですが、その点の見通しはどのようにお持ちか、お尋ねをしたいと思います。
  29. 池田廸彦

    ○池田説明員 牛肉、かんきつにつきましては、先生御案内のように、本年度、すなわち明年三月末まで有効の二国間の取り決めがございます。これにつきましては、いずれその取り決めの取り扱いについて交渉に入らなければならないと思っております。  それから米の問題につきましては、これも何回もお答え申し上げておりますけれども、先般リン農務長官が来日された際に、アメリカのウェーバー等を含むすべての問題が新ラウンド農業交渉のテーブルの上にのせられるのであれば、我が方としても話に応ずる用意はあるということを申し、それから、アメリカの精米業者がアメリカ政府に対しまして通商法三〇一条の発動を求めた、これに対してアメリカの行政府は却下の措置をとった、これも御案内のとおりでございます。
  30. 高沢寅男

    高沢委員 この問題はすぐれて、今度は日本国内農業の問題に結局帰着するわけです。この場所は農林水産委員会とは別でありますが、大臣、ひとつ国務大臣のお立場で、こういう問題が進行する中で日本農業を守っていくという、この点について万全の対策もひとつぜひお願いをいたしたい、こう思いますが、御所見いかがでしょうか。
  31. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 御承知のとおり、今度ウルグアイ・ラウンドというものがございます。十五項目にわたりましてひとつレビューしようではないかということでございます。  今までのガットは、名前のとおりに為替並びに関税に関する委員会だけでございましたが、関税に関しましては、我が国も本格的にどんどんと障壁を取り払って世界も取り払う、そうしたことにおいて世界の貿易が自由貿易体制下において拡大されたということは事実でございます。  しかしながら、それに伴いまして、今までは物だけについていろいろ議論しておったが、物を運ぶサービスということはどうであろうか、サービスについては、金融はどうであろうかとだんだんと範囲が広がってまいりまして、ウルグアイ・ラウンドが先年、十五に関しましてひとついろいろと検討しましょうというようなグループに分けられたわけでございます。その中に農業がございます。そして農業に関しましてもそのほかの十四項目に関しましても、ことしの十二月三十一日までに各国はそれぞれ提案を出してくれということでございまして、我が国農業に関しましてはまだ出しておりません。しかしながら、農林省も出しますということで、恐らくこの月末までには日本といたしましても提案が出るだろうと思います。  そこで私は、この間の自由討論のときにも申し上げておき、あるいは非公式な閣僚会議でも発言をしておいたのでございますが、アメリカの提案、カナダの提案あるいは農産物輸出国の提案、そうしたことと私の国の事情を考えた場合には、なかなか難しい問題がございます。日本は小さな島国でございますし耕地も小さなものでありますし、アメリカの一人当たりのお百姓さんの二百分の一しか我がお百姓さんは持っておらない。そういう中において、苦しい条件のもとの農業でございますから、例えばそのような納経済的でない制限ということも日本にはあるんだから、この点はひとつ世界にも了解をしてほしいですね。こういうふうなことを既にして私はこの間の総会のあらゆる場面で申し上げつつ、やはりガット一員でございますから、極力カットの精神に沿うべく、ひとつ出すべきものは出しましょうということで農業提案もこの年末には出される予定になっております。  したがいまして、十二品目につきましても、一応農林当局者はそういう考え方でございましょう。今次長から答えました米に関しましても、私は極力、米は絶対に自由化できないよという精神のもとに、しかし皆さん方と論議する場で大いに我が国の主張も吐露いたしましょうということで申し上げておるような状態でございます。
  32. 高沢寅男

    高沢委員 もう一つのホットな問題で、大韓航空機の問題。  この飛行機が今落ちだと推定したにしても、一体どこに落ちているのかまだ発見もされない。これ自体が非常に奇怪な事件であります。  それから、大変残念ながら、韓国で何か事件が起きると、ほとんど必ずそこに何か日本の絡みがあるというふうなことも大変残念なことであります。今度の場合も二名の日本人のパスポートを持った、これは偽造のものではあるわけ。ですが、そういう人物が絡んでおるというようなことで大変残念なことです。  ただ、事柄全体の評価が私もまだよく確定できないから、この事柄の評価については別にいたしまして、先ほど中山委員に御説明ありましたが、私もまた、今掌握されている事実関係をひとつ御説明をいただきたい、こう思います。
  33. 黒河内久美

    黒河内説明員 私どもで承知しております限り、大韓航空機八五八便は十一月二十九日、アブダビからバンコクに向かう間に消息を絶ち行方不明となったわけでございまして、現在までタイ、ビルマ等関係当局全力を挙げて捜索に当たっておりますが、いまだに確認が行われていないことは先生指摘のとおりでございます。  その後、邦人名義旅券所有者二名の身元確認につきまして、先ほど御説明申し上げましたとおり外務省外交ルートバハレーン当局協力を得つつ全力を尽くしておるところでございまして、昨日、この病院に収容されております女性の容体が好転したので面談が可能であるというバハレーン当局からの連絡を受けまして、わが方館員が立ち合い、病院において面談を行った次第でございますが、いまだに女性の方は一言も発言することがなかったということで、その後の身元確認の材料はまだないわけでございます。  ただ、写真等関連資料につきましては、バハレーン当局協力を得て今入手中でございますので、これが入手され次第、本邦における捜索も進むのではないかと期待しております。
  34. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 詳細は今政府委員お答えしたとおりでございますが、外務大臣といたしましては、まずこうした不慮の事故で犠牲になられました方々に深甚の弔意を表したいと思うのでございます。  同時にまた、二人がどういう関係があるかは知りませんが、偽造の日本のパスポートを持っておったという点に関しましては、やはり政府といたしましてもその真相を追求する立場にございます。したがいまして、バハレーン当局に対しましても私の名前をもちまして電報で御協力をお願いもし、直ちに近隣の在外公館から係官も派遣をし、当然警察庁からも行ってもらっておりまするが、ただいま真相を究明中であるというのは今の政府委員の御答弁どおりでございます。
  35. 高沢寅男

    高沢委員 一刻も早くその真相が明らかになるような御努力をお願いして、次へ進みたいと思います。  大臣、先ほどの中曽根総理のやられた政策の継承の問題に戻ります。具体的なあれとして靖国神社の参拝の問題です。  御承知のとおり、中曽根総理は戦後の総理としては初めて公式参拝をあえてやられたわけです。私たちはこれにはもちろん反対であったわけですが、しかしあえてやられた。そうしてその後、これについて今度は韓国なり中国なりアジア諸国から非常に強い異論が出た。そうすると今度は取りやめをされたわけですね。こういう経過で見ると、この問題は日本の内政問題であり、同時にすぐれて外交問題です。  そこで、今度は竹下内閣として、竹下総理はこの靖国神社の例大祭とか八月十五日とか、そういう機会に公式参拝をおやりになるのかどうか。また外務大臣、あなた自身もそういう機会には公式参拝をおやりになるのか。私の承知しておるところでは、従来、歴代外務大臣は公式参拝はやられなかったと承知しておりますが、その辺のお考えはいかがでしょうか。
  36. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 私も靖国神社の英霊には敬けんなる祈りを常にささげております。私も学徒出陣兵といたしまして五体健全に帰ってまいりまして、多くの友人を失っておりますから、そうした気持ちを抱いております。  しかし、中曽根総理が戦後四十年という一つの節目でございましたので参拝をされましたけれども、これが近隣諸国に与えた影響は大きかったということは私も十分承知いたしております。また近隣諸国が、それによって再び日本の軍国化が進むのではないかというような極端な疑惑さえ抱いておられるということ等も十分承知いたしております。  外交を預かる身といたしましては、やはりそうしたことを十二分にわきまえまして自分の行動をとらなければならない、かように思っております。今までの外務大臣もそうしたお考え方で英霊に対しましては同胞として敬けんな祈りをささげていらっしゃると思いますが、公式で参拝するということを慎んでおられたということを承っておりますから、私もそうした路線を継がなければならないであろう、かように思っております。
  37. 高沢寅男

    高沢委員 大変はっきりと大臣のお考えをお示しいただいて、どうもありがとうございました。ぜひ竹下総理もそういうお立場で対処されるように、また大臣の御努力をお願いをいたしたいと思います。  次へまた進みたいと思いますが、この十二月八日、ゴルバチョフ書記長が訪米し、レーガン大統領との間でINFの全廃の協定が調印される。これは私はもう間違いない、こういうふうに見ておるわけですが、それに続いて今度は戦略核兵器を五割減らそうじゃないか、このことも既に実際上米ソ間では話し合いの俎上にのっている、かなり前へ進む、こう私は期待しております。あるいは核実験を制限する、あるいはこれをやめる、こういう問題についてもかなり話し合いが前へ進んでいる、こう私は見るわけです。それが順調に進めば、今度は来年の前半にはレーガン大統領がモスクワを訪問するというふうな事態も予定されているわけですが、こういう進行は今までの戦後四十数年の、人類がみんないつも頭の上に核の危険性を感じながら生きてきた、こういう時代から見れば一つの新しい時代へ入りつつある、こう私は考えるわけです。  この米ソの両外務大臣のINF全廃協定の事実上の合意ができたその段階で、竹下総理は、これは非常に結構なことだという非常に前向きな評価をされました。ところがその時に、外務省首脳、こういう形で出たのですが、外務省首脳はこれを一応評価しつつ、しかしこれは手放しては喜べない、こういう留保条件をつけているわけですが、竹下総理のこの対応と外務省首脳の対応には私は食い違いがあるというふうに考えるわけですが、この点はひとつまた大臣の御所見を承って、その大臣の御所見の線でひとつ外務省指導していただきたい、こんなふうに思うわけですが、いかがでしょうか。
  38. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 INFの全廃署名ということは本当に喜ばしいことであると思います。世界もこれに対しまして賛意を表しておると思います。ただ、ヨーロッパ一部におきましては、それはそれで結構だろうけれどもヨーロッパは裸になるのではないかというふうな危惧の念があることも事実でございます。  戦略的にそうした問題をもし分析するとするのならば、続いて行われる戦略核の五〇%の削減、これも喜ばしいことである。しかしながら、地上兵器はどうなのだろうか、化学兵器はどうなのだろうかという心配をしますると、そこまですべてのすべてバランスをとられた軍縮ということが成立するのならば、これは最も喜ばしいことであるというふうな解釈から、あるいは外務省首脳、私も首脳の一人でございますけれども、しかし外務省首脳がそう言われたことも一応外務省としては日本だけではなくして広く世界を見渡した場合の話をされたかもしれません。  しかし、この間もソ連の外務次官が来られました。ロガチョフという方であります。この方と十二分に話し合いをいたしましたが、私が質問するまでもなくロガチョフさんの方からは、大変な米国とソ連の努力によってこういう結果を招いたことをひとつ評価してほしい、続いて私たちはレーガンさんをお迎えして戦略核の五〇%削減という問題もするよ、あるいはまた軍備管理の話もするよとおっしゃっておりましたから、我々は世界の二大強国がともに努力をしてそういう成果を生みつつあるという事態に対しましては大いに賛意を表さなければならない、かように考えております。
  39. 高沢寅男

    高沢委員 確かに、核兵器がそうやって軍縮される、しかし通常兵器で見ればソ連側が強いじゃないかというような議論がヨーロッパ側に非常に強いと承知いたしております。そうなってくると、両者がお互いに不信感を持つ必要のない、そういうバランスのとれた水準に通常兵器も減らしていく、こういう話が今ヨーロッパでは既に現実に話し合いも行われているわけです。化学兵器もごらんのとおりです。  この間なんかソ連は自分の化学兵器の基地を西側の代表に見せた。そこでこの化学兵器を解体する作業も見せた。今度はアメリカもそうするというふうなことで、これも進行しつつある、こう私は思うわけです。そういたしますと、もう核兵器、化学兵器あるいは通常兵器全体を含めて今や縮減する方向世界の安全を、平和を確保していく、こういう方向一つの流れになりつつある、こう言って間違いないと私は思うのです。  そういたしますと、さて今度は日本立場でありますが、今まではそういう軍縮の話し合いは米ソがやっておることだというふうなことであるとか、いやそれはヨーロッパでやっておることだというふうなことで来たような気がしますが、ここまで来ると、今度は日本政府自体が、日本自体がその軍縮交渉の中でどういう役割を果たすのか、どういう発言をしていくのか。さっき申しました国際国家としての日本発言力というのはまさにここだと思うのです。  ここで日本発言力を発揮していくということが非常に重要じゃないか。INFの縮減でヨーロッパでは確かに新しい情勢ができる。アジアもソビエトのアジア部のSS20百弾頭が廃棄される。これはアジアでも新しい状態。しかし、アジアにおけるそうした軍縮体制というものを進めるには、私はまだヨーロッパより一歩二歩おくれているという感じがします。じゃアジアの太平洋地域もそういう軍縮を進めるには一体日本はどうするか、こういうまた大きな発言力を発揮しなければならぬのじゃないか、こう思うわけです。  今度マニラサミットもあることですし、いずれにせよそういうアジア・太平洋で日本がこの問題で発言しなければならぬチャンスはいろいろ出てくると思いますが、大臣、この辺の、日本先頭に立って進めていくというこのことについての御所見はいかがでしょうか。
  40. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 米ソのINF交渉に関しましては、私たちは米国を大いに支援をいたしまして、所期の目的を達成されるよう努力ありたしということは申し上げておるような次第でございます。当然両国が努力されるでございましょうが、さらには今申し上げましたような軍備管理に関しましても十二分な話し合いが今後進められることは世界の平和のために大切なことだろうと我々は考えております。  同時に、日本外交といたしましては、米ソがそのように、言うならば一つのデタントの道を大きく歩み出された、こうしたことを認識しつつ私たちもやはり隣国のソ連を大切にしなければならない、このことは申し上げておるわけでございます。だから、この間ロガチョフさんに対しましても、一日も速やかに平和条約をつくって、そうした安定な状態のもとにいろいろな協力をしましょうや、そのためには前提として四島問題があることは御承知おきください、こういうふうに申し上げたことも事実でございます。  しかし、まだアジア全部を眺めてみますると、もう少しく何か東西の対立がどこかにおいてちらちらしておるという面もございますから、我々といたしましては、そういう面に関しましても極力留意しながら、関心を持ちながら日本日本としての平和を守りつつそうした国際舞台におきまして、マニラのときには発言をしていかなければならない、かように考えておるわけでございます。
  41. 高沢寅男

    高沢委員 今のアジア・太平洋地域の軍縮の問題でありますが、アジアで非常に難しい二つの地点と申しますか、一つは何といっても朝鮮半島です。ここの南北の関係というものが、今度のオリンピックの問題とか等々で南北の間の話し合いやそういうものが前へ進むということを大変期待しておるわけです。ただ、今度の大韓航空機事件がこれに一体どういうハレーションを与えるか大変心配であります。心配でありますが、これはまだ事態の推移を見守らなければならぬということじゃないかと思います。  もう一つの重要な難しい地点はインドシナ半島とASEAN関係、具体的にはカンボジアですね。このカンボジアではつい最近シアヌーク殿下とカンボジアのフン・セン首相がパリで会談をされた。そうして今度また会談を北朝鮮でやりましょう、その後またパリでやりましょうというふうなところまで来ているわけですが、私はこの動きは一つの春の来る先ぶれとして、カンボジア問題がカンボジアの人たちの話し合いの中で解決の方向が出る、インドシナのベトナムやこちらのASEANやそういう国々がそれをまた支えて、真のカンボジア問題の解決の道が開ける、どうもそういう方向に向かってもう一歩動き出したのじゃないかという感じがするわけです。  そういたしますと、このアジア・太平洋地域における難しい情勢というものの解決の道がまたかなり出てくる。これがアジア・太平洋のまさに軍縮、そしてこの地域におけるお互いの平和保障体制というものをつくるための一つの絶好のチャンスじゃないか、こんなふうに私は考えるわけです。  例えばお隣の重要な国としての中国。これも既に人民解放軍の百万の縮減を現にやっているのですね。これは国際的な関係じゃなくて、自分の一方的なあれでもって百万減らすということを現にやっているわけです。  そういう点においては日本もまた、これは今度は一%問題に絡んでくるわけですが、一%の枠を昨年超えたわけですが、ここを少なくももう一度一%の枠内に戻す。こちらには中期防衛力整備計画という一応の枠を与党自民党としては持っておられますが、それは別として、一%の枠内にやはりもう一度戻すというような努力の中で、日本も具体的に軍縮に向かってこういう行動をとっておる、これを踏まえてアジア諸国にそうした平和保障、軍縮の体制を呼びかけていく、こういう役割をされるべき段階が今や来ているのじゃないのか。宇野外交が歴史に残る重要なポイントだと私は思いますが、いかがでしょうか。
  42. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 いろいろとアジアの問題に対しましても、私は私なりの認識を踏まえながらその努力を惜しんではいけないと思っておりますが、今高沢委員申されましたカンボジア問題一つをとらまえましても、ASEANが非常に関心を示しております。同様に私も関心を示しております。特にシアヌーク殿下とそしてセン首相との間においては、セン首相は宮廷用語を用い、臣下の礼をとったというふうな外電が入っておりまして、これが事実ならば一つの大きな進歩ではなかろうかと私たちは思っております。  日本外交といたしましては、あくまでもベトナム軍の撤兵ということをひとつ考えてほしい、そしてその後は今のような関係において民族自決という方法をとっていただきたい、こうしたことをASEAN会議におきましても、ASEAN会議自体が話をしておられますから、もしそうしたお話ができる立場だったならば、やはりいろいろの面においてできる限りの努力をして、まずアジアの平和というものの安定を図っていくということも我が国の大きな使命の一つでございます。  その一つの証拠として一%枠、もう一度こしらえたらどうかということでございますが、これは御承知のとおり、防衛大綱を推進し、また実行するために中期防を設け、その額は十八兆四千億というふうに決まっておりますから、これを達成するためにはどうしたらいいかということがいろいろ議論されたわけでございまして、ことしの一月、私も幹事長代理としてその会合に参加して意見を申し述べた一人でございますが、一応昭和五十一年の三木内閣の一%を超えないように努力せよというふうな努力目的は尊重してやっていきたい、これは現内閣もそのような気持ちでやっていきますので、その点は御理解賜りたいと思います。
  43. 高沢寅男

    高沢委員 次へ進みたいと思います。  先ほど大臣からも米ソ間に今やデタントという一つの段階が来ておるというお言葉がありましたが、私も全く同じ見解であります。この米ソ・デタントの一つ経済的なあらわれとして、何か近々アメリカから総数三百名というふうな物すごい大型の経済、貿易の代表団がモスクワを訪問する、そしてソ連側とアメリカとの間でいろいろな経済協力とか貿易とかあるいは合弁事業、こういう話し合いを進めるというふうに聞いているわけであります。今度のゴルバチョフ書記長のアメリカ訪問で、アメリカ経済代表団とも会談をしたいというふうにソ連側では言っているそうですが、私はどうもその辺の関連が非常にあるような感じがいたします。  そうすると、この米ソ間のデタントの時代の中で、アメリカとソ連の貿易とか経済協力が非常に進むのじゃないのかというふうに私は思います。それはもちろんそれ自体結構なことです。それは世界の平和のために大変結構なことですが、ただそのときに、日本の貿易、経済というものが何か置いてけぼりを食うというようなことになりはしないかということを私は大変心配するわけです。この点、私の心配は決して杞憂ではないと思います。  ことし問題になりました例の東芝問題、そしてそれとの関連でココム規制の強化というような形で、これはいずれもアメリカから非常に強く日本にしかけられてきた、そういう行動であったわけです。日本側はそれを受けて、東芝に対する一定の制裁も加えたり、あるいはまた法律を改正してココム規制を一層強化するというようなことも日本としてはとりました。その結果としては、日本のソ連やその他の社会主義諸国との貿易は今や非常に落ち込んでいる、あるいは足踏み状態になっている、こういう状態にある。  その状態のときに、アメリカはどんどんソ連と貿易をやります、どんどん稼いでいきますというふうなことが進むということを、一体日本は指をくわえて見ていていいのか。このまま行くと、どうもそうなりそうなんですね。この点は私は大変重大な問題ではないか、こう思いますが、これはひとつまた大臣の御所見をお聞きしたいと思います。
  44. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 この間ガットに参りまして、およそ十七、八カ国の西欧側大臣とあらゆる機会に意見の交換をいたしました。それを通じて私も感じ取ったところは、ゴルバチョフ書記長は相当な決意を持ってペレストロイカ、つまり世直しを始めた、これは成功するだろうというふうな見方が多かったわけでございます。中にはやはりソビエトの政府内にも頑迷な保守派がいらっしゃるから、必ずしもペレストロイカに全部が全部賛成しておるわけではないが、しかし書記長自体としてはそれをどんどんと推し進めておるというふうな話を私は耳にいたしました。したがいまして、INFの交渉成功を祈ると同時に、レーガンさんが明年モスコーを訪問される、そうしたときに日本はこのデタントのスタートに当たっていかにあるべきかということも当然日本外交戦略として忘れてはならない一番大切なところだ、私はこういうふうに思っております。  したがいまして、この間ロガチョフ次官に対しましても、速やかにシェワルナゼ外相に来てほしい、安倍さんのときにはまずシェワルナゼさんが来て、安倍さんが行って、そして今度はシェワルナゼさんが日本に来る番だから来てほしい、同時にまた、我が国の戦後外交においても鳩山、田中、鈴木、中曽根という四人の総理大臣が訪問されておるのだから、一度もあなたのところからは来ていらっしゃらないのだから、私はむしろ要請します、そうして、やはりソ連からもその会談を通じまして技術協力あるいは科学技術協力、さらには経済協力等と、いろいろな話が出ましたが、そういう話の実のあるためにもお互いの交流を深めたいものである、こういうふうにお話をいたしておりますので、今高沢委員が申されましたような感覚で私たちも今後対ソ問題に処していきたいと考えております。
  45. 高沢寅男

    高沢委員 ゴルバチョフ書記長の来日問題というのは中曽根内閣時代からの懸案であるわけです。私は、これが実現できるようにということはまた非常に重要な我が方にとっての課題である、こう思いますが、ただ、相手も何といっても一国を代表する書記長でありますから、日本を訪問するときに、何もなしで行って、それで何もなしでただ話して帰りました、これではなかなかいかぬと思いますね。そうすると、向こうの方で、じゃ日本を訪問しましょうとなるためには、それなりの、向こうもこれなら日本へ行ける、行きましょうと言えるものがやはりこちらで用意がなければいかぬだろう、こう思いますね。  先ほど、領土問題なり平和条約なり、それは日本の基本的立場として大臣お述べになりましたが、それを入り口にして他の懸案に進むのか、いや他の懸案を処理して、そして一つの出口で領土問題、平和条約を解決するのか、これは以前からある大きな議論ではありますが、その入り口・出口論のまた間をとることは決して不可能じゃない、私はこう思いますが、その辺のところはひとつ踏まえておいて、今言った米ソの物すごい経済交流が今や進もうとしているこの段階で、日本が少なくも経済問題で一歩前へ進む、そのことによってソビエト側のゴルバチョフ書記長の来日についての一つの大きな前提条件をつくるという考え方があっていいのじゃないのか、こう思います。  そこで、先ほどアメリカの大型経済ミッションがソ連に行くという話をしましたが、同時に日本も来年一月には今度は東京で日ソ経済合同委員会ということが予定されているわけです。私は、この合同委員会が今問題のこの米ソの経済交流に見合った、今度は日ソ間でも経済協力が一歩進むというそのための非常に重要なチャンスである、こう思います。この経済合同委員会がそういう成果を上げるには、これは何といっても、日本政府一つの対ソ連の対応というもの、これが物を言う。それがソビエト側に、一歩日本は前に出た、こういう印象を与える日本政府の動きがあれば、この日ソ経済合同委員会も大きな成果あるものにまとまっていくのじゃないのか、私はこう思います。  じゃ、そういう日本政府の一歩前へということをどうやって示したらいいかということになるかと思いますが、私は、例えばこういうやり方はどうか、一つの私の素人考えですが、今度竹下総理アメリカへ行かれますね、そして行かれた後、総理は日程上無理でしょうが、少なくとも外務大臣はその辺で一本ぱんとソ連へ飛んでみたらどうで中か。そして日本アメリカとの重要な話し合いをされた、それを踏まえて、今度は日ソ問題をどういうふうに打開するかということで外務大臣が飛ばれる。いや今度は向こうが来る番だ、これが日本立場であることは私も重々承知しています。ただ、その順番がどうだということも大事ではあるが、そういう形式の問題を乗り越えて日本外務大臣があえてモスクワへ飛んだというこのこと自体が、話し合いの中身も当然そうですが、しかし飛んだという行動自体が非常な日本政府の対ソ前向きということに相手は受け取る。相手が受け取ればそこで今度はさっき言った日ソ経済合同委員会も大きな成果を上げることができるというふうに、今度はいろいろな弾みがついてくるということじゃないかと私は思います。  聞くところによれば、西ヨーロッパの国々では随分気楽に、よし、ひとつこの話をやろうといえばぱっと西欧諸国同士も首脳がお互いに交流する、場合によればぱっとモスクワへ飛んでいくというようなこともあると聞いています。今度は訪米の途中でゴルバチョフ書記長はロンドンへ飛んでサッチャー首相と話し合うというふうに、そういうお互いの行ったり来たりの話し合いは至って頻繁に、そして必要に応じてどんどんやっておる。こういう状況のときに、日本外務大臣にもそういう行動があっていいんじゃないか、こんなふうに私は思いますが、いかがでしょうか。
  46. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 私も、外務省には外務省一つのしきたりなりあるいは各国際慣行なりあることは十分知っております。例えばこの間、某国の大使がある議員を通じまして、ひとつじっこんを深めるために夕食をともにしたい、これは結構な申し入れでございます。しかしながら、ではその某国において、某国の外務大臣我が国の大使がそう簡単に飯が食えるような関係にあるのだろうかということを考えますとなかなか難しいのですよというふうな話もございますから、したがいまして、あくまでも私の行動には一定の制限があることは事実でございます。しかし、今おっしゃいまするとおりに、外交は機敏に動かなければならないということも一つの今日の日本外交に課せられた使命ではないか、私はかように思っております。  ソ連に関しましても、次はあんた、次はわしたということも必要でございましょうし、あるいは時と場合によりましては自由なことが許されることもあり得るかもしれません。まずそのためには、財界人等々が今度はいろいろと経済問題で話し合うということも私たちといたしましては大いに喜ばしい現象ではないかと思います。ただ今日まで、御承知のとおりに、シベリア開発を含めいろいろな問題でどんどんと経済計画等がなされておりましたが、一方の都合で挫折を来したとか、いろいろな約束事が守られなかったとか、そんなことばかりでございまして、そこへ持ってきてココム問題が出ましたので、日ソの間は本当に冷え切りました。  だから、まず現在はその冷え切った日ソ間を冷え切ったままであってはいけない、改善しましょう、こういうことで私の方から呼びかけまして、向こうから外務次官が来てくれたということは大きなことではなかったか。そうした熱意、そうした誠意、そして米ソ間の今日の話し合い、これは私たち日本といたしましても忘れてはならない。そういうことで、今高沢委員のおっしゃいましたようなことも十二分に私といたしましては耳を傾けておりますので、今後我が国のきちっとした外交ルートのもとに事は進めていかなければなりませんが、時と場合によってはそういうこともあり得るかもしれないなと思っております。だからやるとは申しませんが、そういうようなことも大切だなと今清聴をさせていただいたような次第でございます。
  47. 高沢寅男

    高沢委員 何分にも相手は大変寒い国ですから、私は、寒い時期こそ実はそういうことをやるには適している、こんなふうに思いますが、これは私のあれとしてお聞きください。  次にイラン・イラク戦争、これまた今の世界平和の最大の脅かす要因になっているわけで、このことについてお尋ねをいたしたいと思います。  もう八年来このイラン・イラク戦争が続いているわけですが、この戦争は一体どうやって始まったのか、あるいはだれが始めたのか、この辺のところの認識はまずいかがでしょうか。
  48. 恩田宗

    ○恩田政府委員 戦争はだれが始めたのかというのは非常に議論されておりますが、始まった経緯は、国境における紛争でございますので、非常に歴史的に長い経緯がございまして、どの時点をもってだれがどう始めたかということは現在のところはっきりした意見がないというのが現状だと思います。  もちろんそれぞれの国の立場によってそういう意見を出しているところもございますが、現在のところ私どもとしては、単純にこの戦争はだれが始めたかということを結論づけるということはできないというふうに考えております。
  49. 高沢寅男

    高沢委員 御承知のとおり、日米開戦も日本がハワイを攻撃して始まったわけです。だからいろいろその前に日米間に交渉があり、あるいは対立があったことは事実ですが、しかしこの第二次世界大戦、太平洋戦争の開戦は日本のハワイ攻撃から始まった、これは歴史的な事実ですね。そういうふうなたぐいの、イラン・イラク戦争もやはり始まった時期というものがある。それから今日八年、こうなっているわけです。  その八年の前にずっと何年もいろいろありましたということと、実際に今日のこのイラン・イラク戦争が始まった八年前に、私は今記憶がありますが、八年前私はこの衆議院外務委員会の海外派遣でちょうどニュージーランドにおりました。そしてニュージーランドのホテルで朝、部屋に入れてくれた英字新聞で見たら、イラク軍がイランに侵入を開始した。これを見て、いやいや、いよいよやったか、こういうことを今でも鮮明に覚えているわけですが、これがイラン・イラク戦争の具体的な発端ではないのですか。いかがでしょうか。
  50. 恩田宗

    ○恩田政府委員 時関係といたしましては、九月二十二日にイラク軍が中部国境よりイランに侵攻したというものでございますが、またその前にイラン軍からのイラク領への小規模な攻撃があったというのもまた事実でございます。したがいまして、これは七月二十日に国際連合の安全保障理事会で決議が採択されまして、これは非常に重要な問題である、したがってこれは中立的な機関をつくってその機関によって問題を解決してもらおうということを検討せよということで国連事務総長に検討してもらうことになっておるわけでございまして、私どもとしてはそのような中立的な機関における十分な検討の後に結論を出すべき問題ではないかというふうに考えております。
  51. 高沢寅男

    高沢委員 大変恩田局長慎重に対応されていますが、これはわかります。つまり、イラン・イラク戦争において日本は中立の立場を守らなければいかぬ、その立場で両者に対して戦争をやめなさいというようないろいろな調停をやっていこう、従来もやってこられました。その立場からして戦争を始めたのはあちらだとかこちらだとか言うことは避けようという配慮はわかります。  さて、そうなってくると、なおさらイラン・イラク戦争に対する日本のスタンス、中立の立場を守るというスタンスはますます重要である、こう私は思うわけです。  そこで、ペルシャ湾におけるアメリカの艦隊の展開という現実があります。今やアメリカは、あそこにおける中立的な立場を既に事実上捨てていると私は見ざるを得ない。というのは、ペルシャ湾で行動しているアメリカの艦隊のその筒先はいつもイランに向けられている。来たらやってやる、来たらやってやる、こういう形でイランに向けられている、これはもう紛れもない事実だと思う。それから一方、イランの側も、今やアメリカを自分の敵対者とみなしている、このこともまた紛れもない事実であると思います。  そうすると、イラン・イラク戦争の中に、ペルシャ湾に出動したアメリカのスタンスは今や中立てはない、こう私は言わざるを得ないと思いますが、いかがでしょうか。その評価は大臣いかがでしょうか。
  52. 恩田宗

    ○恩田政府委員 アメリカは、公式の立場ではこの戦争について中立である、こういうふうに言っております。米国の艦船が現在ペルシャ湾に入っておりますが、これは公海において米国国籍の船舶を護衛するために行っている行動である、あの行動はイランに対する敵対行動として行っているのではない、かように説明しております。
  53. 高沢寅男

    高沢委員 まあアメリカはそういうふうに説明はしていると思います。それは国際法上のいろいろな問題がありますからね。ただ現実には、要するにけんかをしている二人がいる、そこへやめなさいと割って入った仲裁人が、割って入ったけれども片一方を殴りつけているというような状況と同じ状況ではないか、こう私は思います。  そういたしますと、その前提に立ては、そのアメリカのペルシャ湾における行動の、今度は日本が費用において責任分担をしますという問題が出てくる。私は、このことが少なくも相手のイランから見れば、アメリカはおれたちに対して敵対行動をとっておる、それに日本がそのアメリカの行動について責任分担をする、それはお金という面であっても、そういうことになれば、イランから見れば日本は自分たちに対してもはや中立てはない、こういうふうに相手は受け取るのではなかろうか、こう思うのですが、この点の評価はいかがですか。
  54. 恩田宗

    ○恩田政府委員 日本の費用の分担とかいう先生指摘になった日本の行動というのは、十月七日に我が国政府がとった、ペルシャ湾における自由安全航行確保のために日本がどのような貢献ができるかということで決定された政策のことを指しておられると思うのでございますが、我が国としては、安全航行を確保するということはイランに対する敵対行為でも何でもないわけでございまして、これは国際的に全世界の関心事項であるわけです。それで諸外国が安全航行確保のためにいろいろなことをしておる。  日本としても、ペルシャ湾の自由航行から大変な利益を受けている国でございますから、応分の、当然の貢献をせざるを得ない、こういうことで非軍事的な手段によってこれを確保するということのためにいろいろな措置を決定したわけでございます。そしてこれは関係各国にも十分説明してございまして、そのようなものとして諸外国から理解されている、かように考えております。
  55. 高沢寅男

    高沢委員 今恩田局長が説明されたことは、総理の所信表明の中でも「また、ペルシャ湾における自由安全航行確保については、先に決定した方針に基づき、」これは十月七日の決定ですね、「非軍事的手段による我が国としての積極的貢献を図ってまいります。」これは今あなたの説明されたことです。  私の言っているのはこれじゃないのです。これでなくて、これとは別に、日本の石油がペルシャ湾を通過するのに、アメリカが、おれたちはこれだけ軍隊を出して、艦隊を派遣して金もかけてやっているんだぞ、日本は応分の負担を払え、こういうことが出てきて、十月七日のこれとは別途、今度はそれに対して日本が金を出せとこうきた。その出し方をどうするかということで今いろいろ論議されていることは私も承知しているし、皆さん御承知のとおり。それを在日米軍の経費の負担という形でやるのかどうかということが今現に政府部内で、あるいは自民党内で検討されているでしょう。私の言っているのはそれなんです。  イラン・イラクの問題と在日米軍の経費をどうするかということを事実上絡めている。その絡みをつけることが、相手のイランから見れば、日本はもはや我々に対して中立でない、当然こういうふうに受け取るだろうということを先ほどから私は申し上げている。その辺についての皆さん認識はどうかとお尋ねしているのです。この点は大臣、いかがでしょうか。
  56. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 この間イランの外務大臣のベラヤチさんが来まして、私からも今の問題は十分説明したのです。同時にまたイランに対しまして、ちょうど日本は国連の安保理の議長国であるから、あなたに対する要望は当然イラクに対してもしているよということで、日本はイラク、イラン両国に対して直接話し得る世界の数少ない国である、こういう立場お話ししました。  そして特にアメリカ問題等々に関しましても、日本としてはあくまで非軍事面で協力しておるから、今恩田局長が言いましたように、新しい電波装置によるところの航行安全装置をつくったので、これに対しては何も湾岸諸国だけではなくしてイランもお使いになったらいいんですよ、そういうふうにして私たちはペルシャ湾の航行の安全を図っておりますからと外務大臣に申し上げまして、外務大臣もこれに対しましては理解を示しております。したがいまして、ペルシャ湾の問題と今の在日米軍の問題は私たちは全く絡まさずに考えていかなければならない問題である、かように考えております。  詳しくは局長から御説明させます。
  57. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 ただいま大臣が御答弁申し上げたとおりでございまして、事実関係といたしまして、先ほど高沢委員から、アメリカのペルシャ湾における軍事行動の経費の一部を負担するようにという要請がアメリカからあったのではないかという趣旨の御発言があったやに拝聴いたしましたけれども、そのような要請はアメリカから一切ございません。それが一つの事実関係でございます。  それから第二の事実関係といたしまして、十月七日のペルシャ湾の安全航行のための政府方針におきまして、先ほど大臣から御説明がございましたようなデッカシステム等につきましての諸方策が掲げられておりまして、それで諸方策というのは尽きておるわけでございますが、その最後に「なお」ということで在日米軍の経費の削減の方途について触れております。  これは我が国のペルシャ湾の安全航行確保のためということ、その諸方策の中ではございませんで、「米国が、ペルシャ湾を含め国際的な平和と安全の維持のためにグローバルな役割を果たしている状況の下で、我が国の安全保障にとり不可欠な日米安保体制のより一層の効果的運用を確保する見地から、適切な対象について在日米軍経費の軽減の方途について米国と協議を行う。」ということを決めておるわけでございまして、先ほど大臣が御答弁申し上げたとおりでございます。
  58. 高沢寅男

    高沢委員 大臣、残念ながら語るに落ちているということじゃないかと思いますね。十月七日に安全航行のための三つの方策を決められた、これ自体はまさに安全航行のために当然あってしかるべき。しかし、そこへ「なお」と、在日米軍の負担の軽減のために、なぜそこへそんなものをくっつけるのですか。これは関係ないといっても実際上は関係があるということの私は語るに落ちた姿ではないかと思います。  そこで、関係ないと盛んに言われるから、では、まさに関係ないように扱ってもらいたいということを言って、その前提の上で一つお尋ねします。  在日米軍の経費については従来地位協定の二十四条に基づく支出を日本はしてまいりました。本年度はそれに伴う特別協定を結んで、基地で働いている日本人従業員の労務費の一部についてまた特別の支出をすることを決めました。この地位協定二十四条、それに伴う特別協定、この二つの枠組みが我が方が在日米軍の関係で金を出す裏づけになっています。今度の六十二年度予算ではその二つの裏づけとはまた別個な支出を計上されるのかどうか、この点は一体どのような取り扱いをされるかをお尋ねしたいと思います。
  59. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 在日米軍の経費の削減云々につきましては、ただいま先ほど私が引用いたしました十月七日の政府の方針がございまして、その方針のもとでどういう方策が可能かということについて現在慎重に政府内部で検討中でございまして、いまだ方向性というようなものも出ておるわけではございません。したがいまして、ただいまの御質問につきましては、現在政府は慎重に内部で検討中であるということ以上にお答えいたしかねるというのが現状でございます。
  60. 高沢寅男

    高沢委員 では、今検討中ということはわかりましたが、検討の結果、先ほど私の言いました従来の二十四条、そして特別協定、この枠組みと別個にまた金を計上しようという場合は、地位協定を改定するとか、そのためのもう一つまた特別協定をつくるとか、そういうふうな手続が当然必要になりますね。そういうふうにお尋ねしてよろしいですか。
  61. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 いかなる経費の削減のための方途があるかということについて慎重に検討中でございますので、それがいかなる既存の関係条約関係等含めまして影響を与えるかということにつきましては、全くその方向性というものが出てない現状におきまして、理論的にそれをどうするあるいはこうするというようなことをお答えいたしかねるというのが現状でございます。
  62. 高沢寅男

    高沢委員 そういたしますと、これは今度は大臣に対するお尋ねですが、その在日米軍の経費節減のために日本からまたさらに別途の支出をするという問題が今検討されている、できればその結論を持って竹下総理は一月訪米をするんだというようなことも新聞報道などではあるわけです。その辺のところは、今度は大臣の国務大臣としての御判断でそういう措置をやるべきとお考えなのか、それは慎重にしなければいかぬというふうなお考えなのか、この辺はいかがでしょうか。
  63. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 在日米軍の経費関係はペルシャ湾対策とは全く違うということは局長からも私からも申し上げたとおりでございます。  そうした区別において、では在日米軍の経費はどうするのかというお尋ねに関しましては、私は、地位協定を結びました当時よりは日本経済力もついておることは事実でございますし、あるいはまた為替相場の問題におきましても円高・ドル安という著しい差が出てきておることも事実である。そうしたことを考えた場合に、やはり地位協定に基づいて我が国に駐留していてくれる在日米軍の活動というものが極めてスムーズに行われるということも我々は考えておかなければならない、こう思います。  そういうふうな観点からあれこれ考えました場合に、在日米軍の負担は軽減をする、その量とかいろいろな問題は別として、やはり軽減をするように考えてあげるのが日本政府立場ではなかろうか、こういうふうに私は考えておりますし、いろいろなインタビューに対しましてもそのことを明らかにしてまいっておる次第でございます。だから、それはどういう方法でするのかということに関しましては、ただいま鋭意検討中であるということでございます。
  64. 高沢寅男

    高沢委員 在日米軍が日本を守るためにいてくれるのか、あるいはアメリカの極東戦略のために日本がお座敷を貸しているのか、これはまた評価の分かれるところです。今大臣の言われた、これだけ日米の経済関係が変わってきたのだから、在日米軍の経費を軽くするようにいろいろ考えることはすべきだという御意見ですが、しかしこの問題は国民の税金を出すのですから、ただ思いやり、それでは出しましょうというふうなことでいって、それこそ限度がないということになっては大変です。  そこで、一つのあれとして、例えばNATOの西ドイツにも非常に多くの在独米軍がいるわけですね。それに対して西ドイツがどういう財政負担をしているのか。それと、ドイツにいるアメリカ軍の費用のアメリカ自体の出し分、それに対する西ドイツの出し分、その両者のバランスというか関係はどうなっているか。あるいは、西ドイツのそれを支出するための裏づけとして、これはNATOという条約上の裏づけはどの規定に基づいてやっているのか。あるいは、アメリカと西ドイツとの二国間の何かそういう駐留米軍経費の扱いについての取り決めがあるかどうか。この辺のところをきょうは具体的に事実関係をお知らせいただきたいと思います。
  65. 長谷川和年

    ○長谷川(和)政府委員 西独におきましては、米軍の駐留はNATOの枠内で行われておりまして、NATO軍に関する経費の負担の形態も非常に複雑でございます。したがって、駐留軍の経費を算定することは技術上非常に困難で容易でない。しかし、私たちが承知しているところでは、西独が負担している広義のNATO駐留経費は一九八五年では約三十億ドイツ・マルク、これは八五年の為替レートでいいますと約二千四百億円、こういう数字があるようでございます。  御質問にございました西独駐留米軍のアメリカ側の負担金額、これについては承知しておりません。  それからなお、もう一点の御質問でございますが、NATO軍の西独駐留に伴う経費の分担に関する規定としましては、ドイツ連邦共和国に駐留する外国軍隊に関して北大西洋条約当事国間の軍隊の地位に関する協定を補足する協定、これはボン協定と言われておりますが、この協定は多数国間協定でございますが、これがあると承知しております。
  66. 高沢寅男

    高沢委員 アメリカ側の出し分はまだきようは承知していないというお答えですが、私はこれから非常に重要な関連が出てきますから、それもひとつお調べいただいて、アメリカが西独駐留の軍隊のためにどのぐらいの支出をしているのか、今西ドイツが出しているのは約三十億マルクというお話がありましたが、そういう関係、それから今言われたNATOの協定、それにまた伴うもう一つ協定、それの第何条でこうなっているという関係を別途資料でぜひいただきたいと思いますが、これはひとつ委員長、そういうお取り計らいをよろしくお願いします。
  67. 糸山英太郎

    ○糸山委員長 理事会で協議します。
  68. 高沢寅男

    高沢委員 そこで、もう時間がありません、あと一問だけお聞きして終わります。  大臣、問題の第十八富士山丸の船長、機関長です。この御家族の方なり、みんなの非常に大きな心配のテーマであります。  そこで、もうあれこれの経過は言いません。要するに、あの閔という兵士を仮釈放したというということで非常に事態が難しくなった、なったというよりは難しくした日本政府、この前提に立って、しかし、この船長、機関長が無事に早く日本へ帰る、このことのためにどういう一つの目算を持っているか、どういう御努力をされるか、ひとつ教えてください。それで私は終わります。
  69. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 関兵士の釈放は、法務省当局に言わしめれば人道上の問題であるということになると思いますが、あくまでも日本政府の監視下にあることは事実でございます。したがいまして、船長並びに機関長の釈放に関しましても、残念なことに日本と北鮮との間には国交がございませんから、したがいまして交渉ということはできないわけでございますが、あらゆる機会をつかまえていろいろな場所でそれぞれ話し合いを続けて、ひとつやはり人道上の問題として扱ってほしいということを強く北鮮に要求いたしておるところでございます。  閔兵士が仮放免されましたことに関しましても、完全な自由を得てどこへ行ってもよろしいという問題ではない、これはあくまでも日本政府が収容所の中より出てもらったということにすぎないのであって、監視下にあるから、決していろいろと北鮮が推測されるような事態を起こらさないように考えながら、ぜひとも二人の日本人の釈放にお努め願いたい、こう申しておるわけでございまして、やはり両国の間のことでございますので、余り詳細なことを触れますとデリケートな問題もたくさんございますから、外務省といたしましては、誠心誠意北鮮にそのことが伝わるよう直接出会ってしばしば話をしておるというところでございます。
  70. 高沢寅男

    高沢委員 今後のこともありますので、大臣、北鮮という言葉はお使いにならない方がいいと思います。  それで、今の件でありますが、外交交渉は、先般の土井委員長の朝鮮訪問で、金日成主席との話し合いの中で、その問題はひとつ第三国でお互いの外交のベースで話しましょう、こうなっている。それは開けたわけです。確かに日本と北の朝鮮民主主義人民共和国は国交はないけれども、この件についてはひとつ外交ルートで話しましょうというあれが開けたわけですから、そのルートを大事にして、そして、始まった途端に関兵士の仮釈放でそれを自分でつぶしてしまうというようなことが我が国外交としてあったわけです。  これは法務省の関係もあるので、外務省だけを私は責めるつもりはありません。しかし、そういうことを踏まえて、とにかくいい結論が早く出るようにぜひとも特別の御努力をお願いをして、私の時間が参りましたから質問を終わりたいと思います。終わります。
  71. 糸山英太郎

    ○糸山委員長 次に、渡部一郎君。
  72. 渡部一郎

    渡部(一)委員 外務大臣就任後の最初の会合でございますので、お尋ねしたいことがたくさんあるわけでございます。全部お尋ねするわけにはいかぬと思いますが、私は、時間の許す限りいろいろな点につきまして政府の御方針を確認してまいりたいと存じます。  まず、十一月のことでございますが、私は国連議員連盟の一員といたしまして最初の国連本部訪問を行いました。国連本部の視察、事務総長等関係者との意見交換等を行いまして大変勉強をさせていただき、その際におきましては、外務省、また現地代表部等から大変御丁寧な御教示をいただきまして、心から感謝しているものでございます。  国際舞台における外交の多角化と申しますか、多国間外交の焦点は明らかに国連でございますし、今後議員としての交流を進めるということは極めて重要なことであろうと存じます。この国連議員連盟は、当外務委員会理事会における話し合いを経て三年半かかってつくったものでございまして、御同席の諸君は大体その議連に御加盟をいただいているというような実情もございますので、あえてこの場で、提起された諸問題につきお尋ねをさせていただきたいと思うのであります。  まず、今回の最大の懸案は、イラン・イラク紛争に対して日本政府は一体何をなし得るか、日本の議員として何をなし得るかということでございました。十一月は安保理事会議長として我が菊地大使が就任されておられたこともございまして、日本側の対応はまさに目覚ましいものがございましたし、その現場をつぶさに伺ってまいったところであります。また、イラン代表あるいはイラク代表等は、日本側に対し、また私たち議員に対しましても自分たち立場を弁明するとともに、広範囲な根回しを工作してくるというような状況もございまして、このようなイラン・イラク紛争における日本側の取り組みというのはなかなか重要なものであるという認識を持ってまいったわけでございます。  さて、我が国として本件にいかに今後取り組んでいくか、現在どう対処しているか、その辺のところを概括してお話しをいただきたいと存じます。     〔委員長退席、浜野委員長代理着席〕
  73. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 仰せのとおり、日本は十一月に国連安保理の議長国でございました。次はソ連が議長国をやられるという順番でございます。そんなことで、いろいろとイラン・イラク紛争の一日も早く解決することのために努力をしたわけでございます。  その前にまず、渡部委員が申されましたとおり、国連議員連盟をつくっていただくことに最大の努力を傾けられまして、先般超党派の議員連盟が国連を訪問されたということに対し、私は敬意と謝意を表しておきます。  そのとき、直接事務総長ともお出会いの上いろいろとお話を聞かれたと思いますが、私も、就任直後に、議長国である以上はあらゆることをしなければならぬ、こういうふうに思いましたので、まず議長の調停に対して協力をしよう、そのためにはイラン、イラク双方の特使を直ちに議長のところへ派遣してほしいということを両国にお願いをいたしまして、このことが若干手間暇がかかった面がございますが、両国とも了承してくれました。当時、もちろん紛争国でございますから、同じ日に同じ場所にいるのではかなわぬよというふうな気持ちもありましたから、その間には多少時間がかかった面もあったと思いますけれども、このことはできました。  同時に、外務省の栗山審議官をイラクに派遣いたしましたし、また、ペルシャ湾のいろいろな問題に対処して我が国が電波誘導装置等々新しい施設をつくることに関しましても、ガルフ・カントリーのそれぞれの理解を得るために最大の努力をしたことも事実でございます。同時に、イランの外務大臣もわざわざ日本にやってきてくれまして、私と長時間でございますが意見が交換できたことも、大きな成果でございました。  しかし、我々から申しますと、国連の事務総長がせっかくお出しになられました五九八号案に対しまして、率直に両国が、ではそれに従おうという態勢ではない。イラクの方は一応わかりましたという態勢でございますが、イランは、よいところもございますがなかなか難しいところもあります、だから、このことはみずから国連総長と出会って話しますからというふうなあんばいでございましたが、やはり我が国はドイツ、イタリー等々と並びまして世界で直接話し得る数少ない国でございますから、今後も両国との折衝を怠らずにむしろ積極的にやっていきたい。恐らくアメリカが言いたいことはイランに直接伝わらぬと思いますから伝えてあげてもよいことでもあるし、またイラクに伝わらない国の問題は我々が伝えてあげてもよいことであるし、いずれにいたしましても、イラン、イラクとはどちらにも偏らないよということを両国に申し上げております。そうした意味で頑張っていきたいと思います。  特に、一般国民の方々にもさらに御理解を賜りたいのは、ペルシャ湾を通過する石油のうちの五五%が日本向けであるということは我が国にとりましても重要な関心を持っていただかなければなりませんので、速やかなる紛争の解決は世界のためでもあり、また我が国にとりましても大切なことだ、こういう立場で今後そうした外交を進めたい、かように思います。
  74. 渡部一郎

    渡部(一)委員 大臣にごまをすっているわけじゃありませんけれども、御就任早々のイラン、イラク両政府に対するアプローチの仕方は従来に見ない機敏なやり方であられまして、私は高く評価している一人であります。このイラン、イラク両国政府を国連の場に引っ張り出して事務総長の調停に援護射撃をしようとした外務省のお立場、工作のあり方というのは見事な成功をおさめた。これは、近々イラン、イラクの代表が国連事務総長のもとへやってきて説明するというところまでの根回しに当省が動かれた経緯というのは大変なものであったと私は高く評価しているところでございます。  それと同時に、次の段階でどうするか、これがまさになければならないし、事務総長を見ておりましてわかったのですけれども、事務総長は今回の国連に対する特別拠出金二千万ドルというのを非常に感謝しておりましたが、それと同時に、財務面だけでなく政治的援助をぜひお願いしたいと強く強く述べております。  また五九八号の決議につきましては、アメリカ、ソ連のイニシアによってできたのではない、これは明らかに私と菊地大使のイニシアによってできたものである、そして安保理の十五カ国の合意によってできたものであるが、我々の方が主導権をとってやったのだとかなりちゃんとその辺を述べておられたいきさつもあるわけでありまして、安保理の議長国をおりられても日本側が相当積極的に乗り込むチャンスである。そのためには、イラン、イラク両国政府に対する従来の話しかけを強化して取り組まれる必要がある。五九八号決議は、御承知のように安保理が事務総長に対して調停しろよ、簡単に言うとそういうふうにゆだねた格好にはなっておりますが、ゆだねられた格好である事務総長を孤立化させることなく今後もその影響性を多大に行使していただくことが望ましい。もちろんそういうお気持ちではございますでしょうけれども、今後も必要な措置、適宜なる措置をとるという御決意を何とか示していただけぬか、私はこう思っておるわけであります。
  75. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 大切な安保理の一員でございますから、たとえ議長国という使命を終えましても同様の気持ちを持ってやるべきである、こういうふうに考えております。  もうそれ以上我々といたしましてはやることはないんだというわけではありません。幾らでも考えればやることがあるのじゃないか、こう思いますので、気がつき次第両国に対しましてあらゆる機会に紛争解決の道をお互いに求めるべく努力をしたいと思います。
  76. 渡部一郎

    渡部(一)委員 今回、もう一つの大きなテーマは国連の掲げている行財政問題、特に財政危機であろうと思います。この問題につきましては、議連として、一番お金を払わないアメリカの代表にお会いをいたしまして、どうしてお金を払わないのよという話をかなり嫌みたっぷりと申し上げさせていただきました。  日本国会で鍛えているものですから相当の嫌みになったようでございまして、先方も困っておられた御様子でございますが、その結果といたしまして、アメリカ側といたしまして、大使の表明ではございますが、ウォルターズ大使は、今回の拠出金の問題については、いろいろ困難はあるけれども政府の方にも行って何回も話しているんだという打ち明け話の後に、国務省員に対する給与の支払いと同じレベルで相談しているんだなどと大分お述べになった後、我々はこの拠出金について債務があるということについて認めておる、主要な部分については近々支払います、こういう表明をされまして、初めてあの時点においては支払うぞという意思を表明された。国連側の方は大変お喜びになりまして、こういうことを言っていただけるのは日本側だけだ、ありがたいことだと述べられました。また、先週は八千万ドル余の拠出金を決められた御様子でございますから、全体が解決しないにしてもその一部が解決の方向に向かい始めたという意味で喜んでいるわけであります。  しかし問題は、賢人会議その他において提案した行政改革の先鋒に立っている我が国でありますがゆえに、この行政改革の問題を通して我が国は国連をどうしようとしているのか、国連を重視しているという立場はわかるのでありますが、今後行財政改革をどういうように進めようとしているかについて、日本政府の方針というものは極めて注目されておるところであると見えるわけであります。  つまり、効率的なものにしていくよという方向で行くのか、それともこの際、人員をもっと整理するんだよという方向で行くのか、将来像がよくわからぬところがある。国連職員の一部には将来の国連というのはもう前途に希望がない、この辺でそろそろ転職を考えましょうかなどという過激な意見を言われる方も一方であるかと思えば、この時期だけ逃せばまたお金がどんと来るだろう、そしたら私たちはうまくいくよというようにのんびり考えておられる方もある。その方々のすべての意向が日本代表部の意見日本の代表部が何を言うかに注目を集めているという状況なのであります。  その代表部を注目しているということは、宇野大臣のこの問題に対する御発言の一言一句を先方は望遠鏡で見ていると思わなければならぬわけでございまして、この行財政改革問題につき大臣の御方向を示していただきたいと存じます。
  77. 遠藤實

    ○遠藤政府委員 大臣お答えになります前に一言、ちょっと事実関係だけ御説明したいと思います。  行財政改革につきましては、先生御承知のように日本がイニシアチブをとりましていわゆる賢人会議報告書というのが採択をされまして、現在事務総長がこれに沿って機構の再編成、それから経費の削減等を実施している最中でございます。もしこのような賢人会議報告、それの実施ということがございませんでしたら、恐らく先ほど先生が御指摘になりました国連の財政危機というものははるかに深刻な状況になっていただろうというふうに考えられます。  もちろん我が国といたしましては国連を単に経費を削減せよとかあるいは機構を整理せよということだけではございませんで、それを通じまして一方において効率化を図る、同時に例えば調整機能、いろいろ機構がまたがっております、複雑になっておりますが、これについてさらに調整機能を高めるとか、そういった提案を今後行財政改革につきまして積極的にしていくつもりでおります。
  78. 渡部一郎

    渡部(一)委員 今の御方向で行くとすれば、さらに我が国としては国連行財政改革のために積極的な貢献をする用意がある、こういうことでございますね。
  79. 遠藤實

    ○遠藤政府委員 先生指摘のとおりでございます。  さらにちょっとつけ加えさせていただきますと、事務総長の最近の年次報告の中で、国連の特に経済社会分野における機構の再編成が重要であるというふうなことを言われております。これにつきましても、特に我が国といたしましては非常に国連が政治、経済、社会、いろいろな分野で唯一のグローバルな機関である、こういうことから、この機構を十分活用できるようこれから提案していきたいというふうに考えております。
  80. 渡部一郎

    渡部(一)委員 ひとつよろしくお願いしたいと思います。  そして、具体的な個々のテーマについて最近情報を集めれば集めるほど、国連の各機関において支出金が不明瞭であったり、変な人間を雇ったりあるいは飲み食いだけに使われたり、ひどい場合には会計報告がまともに行われていなかったり、極端なひどい例があるわけであります。  こういう例はアメリカ国内において非常に多くのキャンペーンにかけられ、国連離れを加速するための材料として使われる極めてぐあいの悪い状況が生まれているわけでございまして、国連を活性化するためにも私どもは言うべきを言わなければならない。そうでないと、せっかく国連を応援しようという人がいたとしても、逆に裏切られた感情から国連離れが加速されてしまう。今、世界の中で世界の安全保障のために機能しているたった一つの機関でありますし、この世界的な議会とも言うべきものを大事にしておきませんと、我が国としては多国間外交の手がかりを失うのではないかと思うわけでございまして、その点も助けるべきところを助ける日本政府、と同時に言うべきを言い、ただすべきもただす日本政府という方向でぜひお願いしたいと思っておるわけであります。この辺は御答弁は不要でありまして、先ほどから大臣うなずいておられますし、あえて御答弁は不要でございます。  さて、ユネスコからアメリカ、イギリスが脱退したままでございますが、マイヨール氏が新事務局長に選出された現在といたしまして、ユネスコへの復帰というものをアメリカやイギリスに呼びかけるなどというような立場我が国はとるべきではないかという議論があるわけでございますが、このユネスコに対する態度というのは、日本政府としてどういうお立場であるのか、伺わしていただきたいと存じます。
  81. 遠藤實

    ○遠藤政府委員 ユネスコにつきましては、先般の事務局長の選出に当たりまして新しくマイヨール事務局長が誕生したわけでございまして、我が国といたしましては、新事務局長のもとで必要なユネスコ改革が促進されることをまず十分に期待し、かつ支援をしていきたいというふうに考えております。  特に、従来からユネスコにつきましては非常な政治化傾向というのもございまして、例えば新世界情報秩序の確立であるとか、あるいはまた管理運営面におきましても人事面あるいは会計面でいろいろ問題がございました。したがって、このような点を新事務局長のもとで十分是正されていくことが日本としてはまず目指すべき方向であろうというふうに考えております。  もちろん、この新しいユネスコのあるべき姿といたしましては、普遍性の回復、つまりアメリカ、イギリスを初めといたしまして、一たん脱退した国、そのほかまた入っていない国等がユネスコに再び復帰するあるいは入ってくるということを確保することが重要でございまして、私どもとしては今後ともそのような働きかけをしていきたいと考えております。
  82. 渡部一郎

    渡部(一)委員 では次に、最近の国際金融の問題について大臣にお尋ねしたいと思います。大臣はそちらの方も大変な御専門家でいらっしゃいますので、ぜひ見識あるところをお示しいただきたいと思っておるわけでございます。  最近、十月の中旬における世界的な株の暴落に引き続きましてドルが急下落をしておる。きのうはちょっと持ち直したという状況はございますけれども、円レートは史上最高値を連日更新中である。このままでは来年になる前に一ドル百二十五円台に突っ込むのではないかとか、もっと過激なことを言う方におかれましては一ドル百十円台が近々来るであろうとか、また、もっと言われる方には来年の終わりには九十五円台であるとか、過激な意見も散見するわけでございます。  我が国の円が強くなってくるということは、今までの戦後の国民の皆様方の大きな努力経済界の多年にわたる創意工夫、また行政のある意味での的確性を保証するものとして喜んでいていい面もあるわけではございますけれども、喜べないのは、この余りにも物すごい急激な変化に産業が追いついていけない、それから文化面でも追いついていけない、我々のビヘービアをどういうふうにするのが妥当かもわからないという状況の中で混乱が続いているわけでございます。  我々の選挙区におきましては、既に選挙民の大多数の重厚長大型産業の下請産業においては注文が激減する。ある自動車産業の下請においては、その一社において五〇%も下請に発注するものがかわってしまって輸入品に切りかえられていく。それは世界的な経済の活性化からしてはいいことではあったとしても、これほどの激変というものが我が国列島を見舞ったことがないというようなレベルのものであります。したがって、この問題について政府がなすべきことは何かと言えば、言うまでもなく激変緩和措置という政治の一番果たさなければならぬ一つの能力を今こそ発揮すべきところではなかろうかと私は思っておるわけでありまして、これが私の立場であります。  したがって、このドル急落の原因がどこにあるかという議論、当外務委員会ではその辺からはよく詰めて議論したことは余りないのでございますが、そしてそれに対して、アメリカ経済不安、双子の赤字がある。これももう世界的に言われていることでありますが、これをどう評価するか。また、この双子の赤字を削減するためにアメリカ政府は必死になりまして議会と政府で今お話を詰め、七百六十億ドルの財政赤字削減というものを決めた。しかしながら、それは言われているような千五百億ドルレベルのようなものなら効果があるのはだれが見ても明らかですけれども、少し少な過ぎたのではなかろうかという我々の意見もある。  こういうような状況の中で、その財政赤字削減の具体的な方策がここのところさっぱり見えていない。しかも増税についてはするのかしないのかまだわからない。十二月の半ば、もう数日後でございますが、そのときに出る経済指標の幾つかを見れば恐らくアメリカ政府が本気でやるのかにせものでやるのかがわかるというので、証券市場はアメリカ政府の動向をみんな注目していて、そして買い控えをしているというような状況で、株式市況は依然低迷を続けているわけであります。この低迷の中にあって、アメリカ政府がしっかりしてくれればという大きな期待にこたえているときに、我が国は千編一律のごとくルーブル合意の厳守を叫ぶのみで、積極的なポーズが今までなかったのではなかろうかと思われる節があるわけであります。  したがって、今一遍に議論するとごちゃごちゃいたしますので、まず、今のこれだけの株の大暴落、そしてドルの急落、そして双子の赤字の問題。要するに今度の米政府のとられた七百六十億ドルの削減問題、それの具体化の問題、今のホットニュース中のホットニュースでございますが、これをどう評価されておるか、その辺から承りたいと存じます。
  83. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 いつも日本だけではなくして世界経済人が集まりますと、今日の世界経済の大混乱、不安というものの元凶はアメリカの双子の赤字である、こう申されるわけで、当然のことだと私も思いますし、現に四、五年前、通産大臣のときにも、四極ではそのことをアメリカ代表にしばしば申し上げておるところでございます。  したがいまして、まず財政支出の削減ということが一番肝心ではないかと思いますが、最近はようやく大統領と議会との間ではおおむね合意がなされつつあるということでございますから、これも両者の努力の結果だろうと思って評価しなくてはならないと思いますが、それだけでは事はおさまらないことはもう百も御承知のところであろうと思います。  しかし、貿易の赤字ということに関しましては、やはり私たちもいろいろと考えていくべきことがあるのではなかろうかということで、我が国政府といたしましては、外需型より内需型というふうな構造調整の改革等を推し進めまして、一応私は、最近の実績によりますと、とにかく前川リポートは着々として効を上げておりますよということは言えるのじゃないかと思っております。一つには五カ月続いて黒字が減っておることというような実績がございますし、十月における前年同月対比におきましては輸入の方が二一%ふえた、輸出の方は七%そこそこであったという数字は、これは数字の限りにおいては世界にそのことが言い得るのではないだろうかと思います。  しかしながら、いずれにいたしましても、ドル安・円高というものがある程度の段階で定着するのならばいざ知らず、かように変動が厳しいということは、やはりそれに対応するだけの体質に変えていかなくてはなりませんから、日本自体は努力しておるんだよ、しかしながらもうちょっとアメリカは足らぬよということは私申し上げていいのではないだろうかと思っております。だから、昨今来られますアメリカのVIPに対しましては遠慮会釈なくそのことは申し上げつつ、また日本といたしましても内需喚起のためにこれだけのことをやった、来年度予算においても竹下内閣は恐らくことしの公共事業を下回らない公共事業を組むことにおいて内需拡大策を図るであろうと。相手の責任ばかりでなくして、やはり私たちの責任を果たす分も話していかなければならないのが最近の世界ではないか。一国によってすべては解決できない、世界の主要国が集まって何らかの政策の統一を見るということが必要ではなかろうか、かように存じております。
  84. 渡部一郎

    渡部(一)委員 我が国の内需が拡大しつつある。そして輸出が減りつつある。数量ベースでは昨年からもう十カ月、十二カ月ぐらい減っておりますし、金額ベースでもJカーブのしっぽがいよいよ切れてきたと思われる節がございますから、内需拡大という言葉に対してアメリカ側の高官が余りにも知ってないのじゃないかなと私も思う節がございます。というのは、あの人たちはどこかでペーパーを聞いてきて、話の中身を聞いてきて、日本は内需拡大がおくれているので怒濤のように我が方に品物を売りに来るのだなどと称していて、自分たち日本製品を買わないで台湾と香港製品を買って、依然として我が方は輸出超過だなどという議論をしているのは、議論としても幼稚だし、幼稚な以上に認識の不足で間違いであると私は思っているわけであります。そうすると、それに対して日本側がよく説明しているのかな。今、外務大臣は非常に的確にいろいろおっしゃっているというお話でございましたので、それを信用するわけでございますが、もうちょっと大声で言っていただけないかなと思う節がたくさんあるわけでございます。  そこで、今度グラム・ラドマン法の執行を防ぐために行われた急速な赤字の削減の問題について。  アメリカ側はその削減を容易にするために今応援の声を欲しがっているところだと私は思っているわけであります。今回の赤字削減交渉はアメリカの政治生命をかけた交渉であると同時に、政府と議会の関係でもあると同時に、民主党、共和党の非常に微妙な対決の中における交渉であったように思うわけであります。  我が国としてこの赤字削減の方向というのは望ましいことなんだという立場があるわけでございますから、それに対して応援団として声をかけるなり、それを加速するような何かというものが我が国にできないか。私は一工夫も二工夫もあってしかるべきだと思います。その辺、外務大臣の御見識を承りたいと思いますが、いかがでしょうか。
  85. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 グラム・ラドマン法が執行されない前に結論を出そうということで一応概略合意をおさめたのですが、それが本当のところまでいったのか、まだ内容的には極めて灰色の部分もある等々でございますから、この面はもう少しく正確なことを我々も知らなければならないと思います。  今、渡部委員おっしゃられましたとおり、確かにアメリカの保護貿易主義者と自由貿易主義者とは分かれておりますけれども、政府はどちらかといえばこれは完全なる自由貿易主義者でございます。したがいまして、自由貿易主義を貫くためにはまず隗より始めよという精神を持っていらっしゃることは、何に出会いましてもこれだけは歴然たるところがございます。ですから、日本から相当強いことを言う、またECから相当強いことを言うということはそうしたアメリカ政府に対してもエンカレッジすることになるということは私たちも十分わきまえております。  いろいろと今後考えていきたいことがございますが、とりあえず日本といたしましては、今世界が、だれに出会いましても、前川リポートはどうなっておるのですかというところから始まりまして、日本に関する情報は極めて乏しく、また非常に理解されていない面が多いと私は思います。したがいまして、それをもっともっとあらゆる方法で理解させる努力はやはり外務省怠っちゃいけないなということを強く感じておりますので、今後ともまたいろいろとアドバイスをちょうだいいたしましてやっていきたいと考えております。
  86. 渡部一郎

    渡部(一)委員 ドイツの例を考えてみますとよくわかるのでございます。西ドイツも日本と同じような立場で、もうドル安で閉口しておったわけでございます。ところが、西独の方はどういう態度をとってきたかというと、この間において金利の引き下げなんてことはだめだ、我が方はインフレになると言い続けて、抵抗して抵抗して抵抗していながら、グラム・ラドマン法の審議の様子を見、そしてここのところで米国議会における七百六十億ドルの赤字削減を見た瞬間に金利引き下げをばんと訴えました。  このおとといの赤字削減に対応した金利の引き下げというのは、アメリカ議会の方から見るとすごくわかりやすいのですね。ドイツ人もおれたちが赤字削減と言ったら腰を上げてくれた、ああかわいい、わかった、本当の友達だなという感じがするだろうと思うのです。それは、象徴的な一つの行動、アクションにおいてあらわれるからであります。  ところが我が国は、いろいろなことはやっているし、内需拡大は頑張ったりいろいろしているけれども地味だ。もう一つ悪いことは、攻め寄られてからやっとおしりを上げる。ちょうど我々の家庭において、奥さんがうるさくて、だんなが朝なかなか起きなくてというのととってもよく似ていると思うのです。早く起きろ早く起きろと山ほど言われてからやっと起きる。起きたころには次の怒りがもう奥さんの方に内蔵しているような状況になっているのと非常によく似ている。そして非常に明快でない。  竹下総理が施政方針演説においてその辺何か明快におっしゃるという非常に大きな期待を私は持っておったのです。ところが、新総理の施政方針演説において「諸外国に対し我が国考え方をはっきり伝える」、こうおっしゃった。そしてもう一つは、「レーガン大統領との間で、胸襟を開いた意見交換を行う」と言われた。それはわかりましたけれども、何をはっきり伝えるんだかが一向に鮮明でないのが竹下さんの特色ある御発言だろうと私は思うのです。  その意味では、あいまいな竹下総理に対して宇野外務大臣の言葉の切れ味のよさというのは抜群でありますがゆえに外務大臣期待するところ多大なのであります。つまり、何をしようとしているのだよと。赤字削減にうれしいのかうれしくないのかと向こうが言っておるわけですから、これはボディーランゲージで言わなければいけない。わかりにくい、回りくどい日本語で言ったって通じやしない。英語に翻訳している間に、もとの合意はことごとく見失われてしまうという状況にあることは明らかでありますから。  私は、そこで宇野大臣が、例えば、西独が金利引き下げをしたと聞いておるが、我が国においてはあれほどではないとは思っても、何かを考える必要性があるように思うというようなことをもしここでおっしゃったとすれば、そこにいらっしゃるマスコミの皆さんを通してアメリカ政府を直撃するでありましょう。私は明らかに今誘導質問をしているわけでありまして、外務大臣をくすぐっておるわけであります。そういうようなたぐいの、私は金利引き下げが日本にとって今適当だと思いません、例えばそのように、金利引き下げのような、はっきりわかるボディーランゲージを表示しないと、日本政府は今、アメリカのドル安を一方では抗議しながら、一方では笑っているみたいな、複雑な笑みを浮かべた日本外交ということになりかねないと私は思うのです。  だから、全体としての流れがあっての中で、今アメリカが必死になって赤字削減と、もう国内でも評判の悪いのを見越しながら言い始めたその瞬間に、激励の声が宇野外交として高く上がるということが必要なのではないだろうか。公定歩合の引き下げ並みの明快な、ショックのある、パターンの明快な信号が、ボディーランゲージが宇野外交としてあらわれる必要があるのではないかと私は述べておるのでございますが、いかがでございますか。
  87. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 日本も最大の努力を何回もしておるのですが、今おっしゃるとおり、なかなか理解されておらないというのが現況でございます。だから、一口にして、あるいは一政策にして全アメリカが拍手を送ってくれることがあるかどうか。これはやはり十二分に検討し、考えていかなければならない問題だと思います。  この間、私も金額の点でこう申したのです。昨年来、我が国は内需拡大のために、公共事業を中心として幾つもの予算を組んだが、その予算の乗数効果を一・五ぐらいにすると、恐らく十五兆円ぐらいの仕事を日本はしているのだよ、国民生活に与えた影響は十五兆円ぐらいだよ。例えば百五十円というふうな円安で考えてみても、これは一千億ドルに及ぶだけの仕事をしたんだよと言うと、皆びっくりするのです。そんなたくさんしたのか、きみらできるのだろうかと。そういうことをやっておるんだよ。だから効果は出て輸出は減少し、輸入は拡大されておる。だからどんどんと輸入する方法を考えてください。国々によっては、何の努力もせぬと口だけで日本は輸入をもっと促進せよと言うが、最近欧州は極めて独特の方法によりまして自動車も薬品も、その他機械類もふえておるわけであります。これはECは非常に努力したと私は思います。  だから、国々によって努力してくれれば、我が国がそれだけの購買力があるのだから、どんどんと日本人の購買力をそそるような品物を送っていただきたい。これも大いに宣伝すると、その数字を聞くとびっくりするのですが、しかしながらはっきり申し上げまして、今回の十二品目の問題もさようでございましょうが、個々の問題についてはわかる問題があるといたしましても、日本は現在一千億ドルの黒字の国ではないか、大金持ちではないか、それが何を言うか、そこから出発してしまいますから、今のところはあれこれと我々も努力をいたしますが、すぐに消されてしまうというのも現状でございます。  しかし、今渡部委員が申されましたような思い切った、ひとつティピカルな問題もぐっと押し出せということは大切なことではないかと思っております。
  88. 渡部一郎

    渡部(一)委員 今大臣、いろいろだんだんお話しになられる御様子を見ますと、大臣は討論型の人物だなと私拝見して思うのですね。演説型でなくて、何か向こうから攻め込まれてくると、いや、それはこうだねとおもむろに料理をする横綱相撲型のタイプ。これは西欧人とやるときは余りはやらないタイプだと私は思いますね。というのは、今こちらの主張、要請を向こうに先にのみ込ませなくてはならない。そうすると、こちら側が向こうが攻め込むのを待ってから受けるのではなくて、かなり言わなければならない。  僕は一貫して中曽根内閣外交方針に対して非常に注文と反論があり過ぎましたけれども、一つだけ褒めている点があるわけであります。それは、あの人は一遍大きな黒板を持ってきまして、日本の輸入を増大させるために黒板の前にグラフをかいて、わかったかわからないかわからないような数字を一生懸命、どもりながらあの人は説明しました。外電にそれが出たときのあの影響は大変なものでした。  というのは、外国では総理大臣が黒板のボードの前に立って日本経済の立て直し、内需拡大のために日本国民に呼びかけたということで、その行動自体がアメリカ人のハートを大変に揺るがせたということが言えると思います。効果がそれほどあったかどうかは私は問題だと思いますけれども、そのPRにかけた迫力というものはテレビの画面を通して日本語のわからない人にも通じたと私は思います。  今、竹下内閣で一番心配なのはそれなんですね。万事が明快でないのです。はっきり物と言うなどとはっきり言わないこのスタイル。しっかり慎重になどと言いながら全然慎重でないこのスタイル。そして考え過ぎて何もしゃべらないこのスタイルというのが外交路線として定着すると危ないのではないかと私は思っているわけです。  ですから、向こうの言っている言葉に対して今の時期に何か返事をしなければならぬと思うなら、タイミングを失せずに言わなければならない。そのタイミングを失ったころ稟議書を上げて、係長から課長、課長から局長、途中の参事官の判ごまで入れて、ゆっくり大臣決裁のところまで来て、閣議に持ち出して判こを押してから返事をしたころには全部終わっている、悪い印象が定着しているということではないかと思うのです。だから私は、この問題については、世界的な世論形式の合意を求めるためには何かしなければならない。この辺は、私はもう御答弁要りません。  では次に行きますが、ルーブル合意の話、政府お話を聞いているとわからないところがたくさんありますが、ルーブル合意は存在していると思っているのか崩壊していると思っているのかわかりません。  というのは、アメリカ側はルーブル合意を自分でけ飛ばしておきながらルーブル合意を尊重するなどと下っ端に言わせてみたり破ってみたり、態度がかなりばらばらですね。日本側は、ルーブル合意というと何かもう日本憲法よりすごい、何か神様のお言葉みたいな調子でそれを引用して言う。しかし、それはまくら言葉になり得ても現実の政治からいったら遠過ぎると私は思うのです。  このルーブル合意の内容を見てみると、為替レートの現在の水準というものは大体適切だと思いますよというのが前提にあって、それを各国は大体支持しますよというニュアンスが二つ目についていますね。ところが、そのルーブル合意が行われてからドルはもう何回下げてきたことか。そして円は、それからまたもますますひどい状況になって、何がルーブル合意かと言われるような状況にある。しかもその状況の中で、日本側が、ルーブル合意だというのにこのルーブル合意を守るのは日本ばかりであって、何で諸外国は、特にアメリカは守ってくれないのだという抗議の声を発したようには見えない。だから、ルーブル合意というのをまくら言葉に使うけれども、ルーブル合意を破られても平然としている日本外交みたいに見えるのが常である。そしてそのこと自体がルーブル合意の拘束力というか能力というのをどんどん下げてきたのではないかと私は思われるわけであります。  さて大臣、この為替レートの問題は大変面倒な問題です。そしてそれは恐らく大蔵大臣の所管が大部分でございましょう。しかし、その問題をどう説得し、どういうふうに我が国のスタンスを決めるかは閣議の問題であり、その方面にも通暁しておられる外務大臣のすぐれて重要な御関心事項だと私は思いますので、あえてここで持ち出すわけでございますが、これからの円ドル為替レートの急激な変動をどう安定させるおつもりなのか。  それとも、もうあきらめてしまって、もう一気にずどんと下げて、巷間言われますように百十円くらいのところに一発行っちゃって、もうJカーブがしょっちゅう顔を出すのはたまらぬから、大きなJカーブ一発だけで行こう、ほおかむりしようというふうに思っていらっしゃるのか。それともアメリカ側にほかの交渉案件とあわせて嫌がらせのためにこれを時々言うのみと思っておられるのか。日本経済外交、特に為替の外交についてはわからぬことだらけであります。その辺のところをお示しいただけませんか。     〔浜野委員長代理退席、甘利委員長代理着席〕
  89. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 二百四十円当時のときにG5が行われました。そして非常に効果あったなと思ったのですが、ドルは百八十円まで急激に下がってしまいまして、円は円高になってしまいました。したがいまして、産業界にも多大の悪影響を及ばしたことは事実でございます。国内的な措置をとりました。  自来、7とか5と言われるグループの会合が果たして効果あるのかないのか、これは各国によって評価はまちまちでございましょうけれども、いやしくもルーブル合意がなされた以上は、国際的な協調によって一日も速やかに安定をしていただくのが一番よいことではなかろうか、かように思います。  したがいまして、先般も株式の大暴落を来し、あるいはまた急激なドル安・円高というような状態のときに、アメリカには資金がショートしているんだから、とにかく日本に余っているんだったら、それによって支える以外になかろう、しかし、ドル安のものをだれが買うかいというふうな議論もございましたが、どうにかこうにかアメリカの国債は、言うならば日本も随分買いまして、そうしたことがアメリカの一部株式の暴落というものにある程度のとどめを刺したことも事実だったと思います。  こう考えてまいりますと、やはり一番大きな国の日本がもっとリードをすべきであろうとは思いますが、歴代大蔵大臣の話等々も私たち直接聞いていますが、なかなか妙案がないらしい。  日本におきましては、はっきり申し上げまして、大蔵大臣と日銀総裁が出ますと、大体意見が一致いたします。それは、失礼でございますが、自民党が長年政権を担当しておりますから、日銀も中立であるけれども、やはり日銀と大蔵大臣という間は親戚のような関係になっておるが、他の国においては、中央政府と中央銀行との間は必ずしもさようでない。そういうことが、せっかく集まりましてもなかなか合意に達しないような問題もあったんだというふうを、これは率直な意見ですね。やはりそういう意見も私たちは十二分に分析しておかなければならないと思います。  したがいまして、我々といたしましては、令ともかくドルというものがもうこれ以上下がらないことをアメリカに要請することである。その方法として、日本協力することがあるならば、我々も協力しましょう。先ほど申し上げましたような幾つかの協力方法があったわけでございます。  したがいまして、日本の貿易も、今後も世界のためによい貿易にするためには、私はこれ以上の円高というものは決して好むものではないということだけは申し上げたいと思います。
  90. 渡部一郎

    渡部(一)委員 総理大臣の施政方針演説の中で、  我が国としては、平和への寄与と繁栄への国際協力をより積極的に推進していかなければなりません。また、諸外国に対し我が国考え方をはっきりと伝えるとともに、その責務は誠実に実行してまいります。  このような主体性を持った外交を行っていくことこそが、私は、外交の基本であり、日本国際社会において信頼を得る道であると信じます。こう総理は述べられているのですね。  これはちょっと格好よくお述べになり過ぎておりますから、ぼくはもうこれからさんざん引用しますから、総理は後でお困りになるだろうと予言しておきますが、この「主体性を持った外交」というのは、この際何なのか。  それは、アメリカという当事者があって日本という当事者があるわけですから、日本はこれやりましたよだけでなくて、アメリカに申し入れるなり、働きかけるなり、もっとアクションを起こさなければならぬテーマだと思います、為替の問題については。  ところが、西ドイツは、公定歩合引き下げという格好で、多年の対米公約を見事に果たしたのを劇的に示すと同時に、アクションを起こすことに成功しました。我が国は今いろいろなことをごちょごちょやっておる最中です。しかし、その意思表示は明快でないです。そしてまた、アメリカのドル価格の維持を放棄したように見える政策がここ依然として続いておりますね。  このような状況の中で、当外務委員会で現職大臣がドル価格のこれ以上の下落は好ましくないと今堂々とおっしゃったのが、世界に電報が打たれて大きな衝撃を起こすと私は信じていますが、その信じているのは少し期待も込めて申し上げておるのですが、それだけではちょっと足らないのではないだろうか、もう少ししかけることが要るのではないかと私は思っているわけであります。この点はぜひ御工夫をいただきたいし、その「主体性を持った外交」というのが一体何なのか、この為替レートの件で示していただかないと、日本の中小企業に蔓延する大きな不安の声というものは、もう年末にかかって手のつけようのない段階に今やなりつつあるということも御認識をいただかなければならぬと思うのですが、いかがでしょうか。
  91. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 内外に及ぼす影響もさることながら、やはり我が国内における中小企業等々企業、産業に与える影響は甚大なりと、このことに関しましては、確かに総理がおっしゃるように主体性を持って臨むべきであろうと思います。  今日まで、意外と日本アメリカ追随というそしりがあるかもしれませんが、経済政策に関しましては、世界の中におきましても本当に日本が主体性を持って、あらゆる会議におきましてもイニシアチブをとりまして進めてきたことも多々あるわけでございます。それが、ただ国際的な仕事であったがために、一応日本独特の行動というものが評価されなかった面があるかもしれませんが、やはり経済は総合的な問題であり、グローバルな問題であるという考え方で、当然我々の考えを申し述べ、なおかつ万一のときに国内体制に刀遺憾なきを期すということでございますから、年末にかけましての我が国内の情勢等々を考えました場合には、やはり速やかにそうしたことに対しましても世界的な合意が早くなされた方がいいんじゃないか、こういうふうに思うのです。  ところが、まだ早いとか遅いとか、なかなか相撲の立ち会いと同じように呼吸が整っておらないというのが今日でございます。そうした面におきましても、恐らく財政当局も相当な意見を持っていらっしゃると思いますが、私が外務大臣として考えました場合には、先ほどお答え申し上げましたようなことであります。
  92. 渡部一郎

    渡部(一)委員 そうしますと、今外務大臣は、御職掌柄非常に慎重をきわめておっしゃいましたけれども、為替レートの安定のために必要な措置を速やかにとる方が望ましいという意見を持ち始めておられて、いろいろな意見もあるので調整中である、こういうふうにほのめかされたなと私は理解しました。G5もG7もさっさとやりまして、今までの合意がいいのか悪いのかだけはっきりしてもらわなければ、これは商売人は商売ができない。来年の見通しが立たない。東京における大企業の社長たちは、新年の年頭の祝辞において、私はいかに訓辞していいか訓辞の方法がないとまで言っておられる方がございます。  ニューヨーク・タイムズは、竹下内閣に対する大きな期待を述べると同時に、ポリティクス・オブ・ウェーティングの人だと紹介しております。このポリティクス・オブ・ウェーティングというのは、恐らく待ちの政治を直訳したのでしょう。だけれども、私は外国の新聞でこんな字が見出しになるとは思いませんでしたし、ちょっとショックがひどうございました。この問題にだけは、待ちの政治の方式が成功しないケースの一つでございまして、私はその意味では、この十二月における国際経済問題に対する外務省及び大蔵省の御判断と交渉のしぶりというのは、他の些事とはわけが違うと思います。ここのところ、先ほどから大臣、随分率直にお話しいただいて、私、感謝しております。それと同時に、ぜひとも特段の御努力をいただきたいと希望するものでございます。  最後に、私は日本におけるたくさんの原則がございます。例えて申しますと、当外務委員会でもいろんな平和諸原則についてお尋ねしようといたしましたが、時間がございませんので、次にゆだねさせていただきたいと存じます。  例えば非核三原則とか防衛費の対GNP一%枠とか、武器禁輸三原則とかSDIの問題とか、シーレーン防衛とか集団的自衛権とか、三海峡封鎖とか海外派兵とか、スパイ防止法とか文民統制の問題とか、こうした諸問題につき当外務委員会は戦後一貫して答弁を積み上げてきておるわけであります。私が手に持っているのがその積み上げられた答弁の主要部分であります。前中曽根内閣の当時、この部分がひどくあいまいになり、ぼんやりしてきて、答弁が確定していない部分が多うございます。  新大臣におなりになりましたので、この次の会合のときにでもまた十分お尋ねをさせていただきまして、明快なる宇野外交の平和外交の輪郭をお示しいただきたい。これは質問の予告でございますので、その節はよろしくお願いいたします。  以上で私の質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
  93. 甘利明

    甘利委員長代理 次に、永末英一君。
  94. 永末英一

    永末委員 宇野外務大臣に申し上げます。     〔甘利委員長代理退席、委員長着席〕  このたびの内閣であなたが外務大臣に御就任されました。おめでとうございます。日本の国の国際的責務がいよいよ重大になっておりますときに、我々がやっていることをどのように正確に外国に伝えるかということは極めて重要な仕事でございます。十分御自愛されて我々の期待に沿うように御活動あらんことを期待しております。  さて、今月十五、十六日にマニラASEAN首脳会議が開催され、日本竹下首相がこれに招待されておるという話であります。ASEAN自体、相互間の問題もございますが、私は竹下政権ができて総理大臣が初めてフィリピンに行かれることに非常に重要な意義を見出しております。  各国は、それぞれ国内的に大きな問題を持ちながら国際会議をやるのでございますが、アメリカフィリピンとの間で何が今最大の問題であると外務大臣認識しておられますか。
  95. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 率直に申しまして、フィリピンの治安の確立によるアキノ政権の安定ということが最大の目的ではないかと思います。
  96. 永末英一

    永末委員 アキノ政権が昨年の二月にできた経緯は、アメリカ側からすれば、フィリピンにおきますアメリカの軍事基地が一体どのような見通しのもとに新しい政権ができるかということが非常に重要なファクターであったと私は見ております。アキノ政権はそれ以来一年半続き、ことしは新しい憲法をつくり、国会議員の選挙を行いました。下院の場合、十分に完結しておるとは申せませんけれども。したがって、アキノ政権の安定度は重要な問題でありましょうが、私がお聞きしたのは、アメリカフィリピンとの両国間におけるフィリピン側からの最大の問題は何だと御認識しておられるかということでございます。
  97. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 やはりフィリピン政権といたしましては、経済の安定拡大ということによる民生の安定ではないかと思います。しかしながら、いろいろな地理的環境から申しますれば、アメリカとの間における安全というものも大きな目的ではないかと思います。
  98. 永末英一

    永末委員 フィリピン国民の民生の安定はフィリピン政府が当然果たさなければならない最大の関心事でございますが、フィリピンアメリカとの間に持っている問題は、あなたは後段で安全という文字に触れられましたが、要するにアメリカフィリピンに持っておる軍事基地を一体どうするか。すなわちアキノ政権が米比軍事基地協定に基づいて一九九一年までは協定どおりの軍事基地は認める、その後のことはオープンにした形で政権を維持しているわけでございます。  年が明けますと、その協定に基づく申し合わせに従いまして、九一年の期限切れ前五年でございますから、どうするかという協議が早速始まるわけでございます。その意味合いで米比間の最大問題はアメリカフィリピンに持っておる軍事基地問題だと私は考えておりますが、あなたはどう見ますか。
  99. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 先ほど申し上げました安全というところをとらえましたならば、まさに基地問題であると考えます。
  100. 永末英一

    永末委員 アメリカは全世界にわたりまして彼らの軍事戦略を持っており、その軍事戦略上、それぞれの国々と同盟条約を結んだり、軍事基地を設定したり、自分のところの軍隊を送ったり、あるいは兵器を集積したり、いろいろなことをやっているわけです。西太平洋においては、我々はアメリカとの間に安保条約関係にあります。アメリカは韓国との間に軍事条約関係にある。フィリピンとの間にも、先ほど触れましたように、基地協定を結んでおるのでございます。したがって、アメリカはそれぞれの国々とのこういう関係を背景にしながらアメリカの西太平洋における戦略展開を行い、そして彼らの安全保障の動きをやっておると思います。  さて、私があなたに伺いたいのは、我々はアメリカとの間に安保条約に基づく関係を結び、我々のやり方をやっておるわけでございますが、問題は、アメリカが今の場合フィリピンとの間の軍事基地協定を結んで、そのもとでアメリカの軍隊がフィリピン基地を使いながら、もちろんそれはそれ以外にアメリカがハワイに軍司令部を置きます艦隊、太平洋統合軍司令部関係の艦隊の動きもございましょうし、あるいはまたグアムの航空隊もございましょうが、そういう動きをしておる。そういうものと絡み合って我が国の防衛方針というものも考えられておるとあなたは承知しておられますか、どうですか。
  101. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 我々からの考え方を申し述べれば、あくまでも日米安保条約アメリカ日本のものであるという観念でございまして、フィリピンアメリカとの防衛関係は、それはあくまでフィリピンアメリカとの防衛関係である、こういうふうに考えたいと思います。
  102. 永末英一

    永末委員 防衛庁の方、来ておられますね。  鈴木善幸総理大臣が訪米をいたしましたとき大統領と会見をいたしまして、その後の記者会見で、自分の方は、日本の海に関しては沿岸数百海里、航路帯は一千海里、庭先だからそれはひとつ責任を持ちますというようなことを申しまして以来、航路帯千海里というのが何か具体的な日本の防衛方針であるかのように言われ、政府もそのことを鈴木内閣以来説明してまいりました。  これは日本の自衛隊の能力が日本から航路帯と称する南方海域に対して千海里で終わるというのか、今申しましたように、アメリカがいろいろな形で彼らは彼らなりの戦略展開をやっている、それと見合って日本のいわば防衛部分が千海里で終わるというのか、はっきりせぬのでありまして、航路帯自体の認識もいろいろさまざまでございますが、防衛庁はこの方針を防衛白書にもちゃんと書いておりますね。どういうつもりで書いたのですか。
  103. 村田直昭

    ○村田説明員 お答えいたします。  御質問の千海里でございますが、我が国が海上防衛力の整備に当たっての一つの目標としまして、我が国周辺数百海里、航路帯を設ける場合にはおおむね千海里程度の海域において海上交通の安全を確保することができることということで防衛力の整備を行っておるということであります。
  104. 永末英一

    永末委員 これは防衛庁が自分の内輪を見ながら言っておるひとり言みたいなものであって、フィリピンの方はこれを一体どう見ているだろうか。  フィリピンの方から見ると、日本の防衛庁はフィリピンの国の北まで、つまりいわば自分のところの守備範囲外の北まで日本が何かやろうとしている、おれのところの軍事基地がなくなったらどうしてくれるだろうというような感覚をフィリピンの中で持っておる人がおります。したがって、防衛庁は一体そういうものを考えて今の千海里なんというようなことを受け継いでやっておるのか、いや我が国の持っておる対潜哨戒機や護衛艦やその他その他の能力からすれば、ここで終わりである、こういうことですか、はっきりしてください。
  105. 村田直昭

    ○村田説明員 私どもが防衛政策を考える場合に、米比関係を含めまして、当然のことながら東アジア全般の軍事情勢というものを考慮に入れながら考えておるということは事実でございます。  ただ、在比米軍の基地はシーレーン防衛のみならず米国の西太平洋、東アジアに対する前方展開の基地として、この全般的なプレゼンス、抑止効果を上げるためのプレゼンスとして存在しているというふうに理解しております。
  106. 永末英一

    永末委員 今の御発言、あいまいでございまして、さらにアメリカが西太平洋における全般の彼らの身構え、それを見ながらその千海里なんというような構想がある、そういうような意味でございましたけれども、我々が関与すべき範囲は一体どういうことなんであり、理由は何に基づくのかということと、アメリカが今の場合フィリピンとの間の軍事基地使用協定に基づいて航空機や艦船を配置し、それを使いながらアメリカがこの水域の安全保障の任についておる、こういうことを前提にして今のような千海里論ができたのか、これは発想が違うわけだな。  その辺をはっきりしてもらわないと、これからの議論が進まないわけでありますが、例えばこの軍事基地協定はどうなるかわかりませんが、軍事基地協定につきましてなかなか交渉がまとまらず、今度の憲法によりますと、国会の同意もさることながら、国民投票にも訴える、こういうことになっているわけでありますから、軍事基地がなくなるということは日本の防衛方針を考える場合に重要なファクターなのか何なのかということは、日本政府は考えておらねばならぬ問題だ、こう思います。  外務大臣、防衛庁の言っていることはそういうあいまいな点があるということを前提の上で、あなたはフィリピンに行かれるんだから、フィリピン側の最大の関心事は、日本政府フィリピンにおきますアメリカ軍の基地についてどういう判断をしておるか、これを一番重要に見ておると私は見てまいりました。その点についてあなたのお考えをお答え願いたい。
  107. 藤田公郎

    ○藤田(公)政府委員 大臣から御答弁ございます前に一言だけ事実関係の御説明を申し上げますが、委員御高承のとおり、この軍事基地、在比米軍軍事基地問題、政権がかわります前もそうでございましたが、アキノ大統領になりましてからもフィリピン国内で非常にいろいろな論議を呼んでおりまして、新しくフィリピンの議会が構成をされました後もいろいろな決議案が出る等内政上の非常に大きな問題になっております。  したがいまして、このASEANの国が、フィリピンにおきます米軍事基地の存在について若干の発言をする、新聞等で発言をすると、これがすくまたフィリピン国内ではね返りますし、委員も御高承かと存じますが、去る七月に我が方でフィリピンにあります米軍基地の重要性について若干の発言が行われました際には、フィリピンのマスコミがすぐ神経質に反応いたしまして、日本は一体何を考えているんだ、アメリカの軍事基地の重要性について云々するということは日本が何か役割でも担いたいと思っているんだろうかというような、私どもが思いも及ばないような議論を誘発する状況でございますので、フィリピン国内における議論、それからASEANが持っております神経質さ等々を考えますと、この在比米軍基地の持っております意味合い、重要性等について日本側が発言をするのは、特に今、非常に慎重の上にも慎重を期すべき時期ではないかというふうに考えております。それだけちょっと申し上げておきます。
  108. 永末英一

    永末委員 私が申し上げたのは、日本政府発言せよなんということを一つも言っておらぬ。宇野大臣竹下総理と行かれたら必ず聞かれるから、だから一体どう思っておるかはやはり考えておかなければいけませんね。  間違ったことを言ったらとんでもない話になるわけでございまして、したがって、在比米軍基地についてフィリピン側は米国との間に存続か否かの交渉をこれから始めるのでございます。今は現存しており、あと五年は現存するわけです。しかし、存廃問題というのがあの国の抱いておる、現在の米比間の最大問題であると私は承知をしておりますし、あなたもいささかそういう感じをお持ちだと思いますが、その在比米軍基地問題についてあなたはどういうお考えを今お持ちか、明確にお答えを願いたい。
  109. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 率直に申しまして、フィリピンにおける基地の存廃に関しましては、日本はただいまコメントをする立場ではございません。
  110. 永末英一

    永末委員 大臣おっしゃったとおりです。明確にそのお立場をお貫きになるのが至当だと思います。  もう一つこの機会に伺いたいのは、我が国は一九二〇年ミクロネシア地区に対しまして、当時の国際連盟から委任統治地域としてその統治を引き続いてやってまいりました。一九四五年、戦争の敗戦とともにこれは終わりまして、そうして一九四七年、新しくできました国連の信託統治地域として、米国がこの地域の統治の責任をとってまいりました。しかし、これらの地域の人々は独立志向が非常に強くございまして、いろいろな経緯がございましたが、四つの地区に分かれまして、マーシャル群島、ミクロネシア連邦は自由連合の協定アメリカ側と結び、北マリアナ諸島は自治連邦の盟約を結び、パラオもいろいろな問題がございましたが、本年の夏、自由連合盟約をアメリカ側と結ぶことをパラオ側の国会では決めました。さて、マーシャル、ミクロネシア、北マリアナ三地域につきましてはそういう関係になったということをアメリカ側が国連に通報をいたしておりますが、パラオについてはまだその通報はしておらないと聞いております。  我々日本の国は、今申しましたような歴史的な経過があり、私のごときは戦争中まさにこの地域と極めて密接な関係を持っておりました。それだけにこの地域の人々と接触し、そしてこれらの人々が国際連盟の委任統治というような姿やあるいは国連の信託統治という姿の中でこれらの地域の人々が生活の安定、発展のためにやっていく、そういう方向には十分にはいい仕掛けではない。やはりより独立した地位を保ち、自由な意思に従って自分たちの道を切り開きたい熱望極めて大であると考えております。  したがって、私は、そういう特殊的な関係を持っておる日本政府として、これらの地域についてどう考えておられるか、この機会に宇野大臣の御見解を承っておきたい。
  111. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 永末委員もその御経歴書によれば海軍の将校をしておられた地域で、私たちも小学校時代には教科書において学んだ非常に親しみ多き南の島々のことでございます。  特に、国際連盟によります委任統治地、そして赤い線がちょんちょんと地図に載っておったことも思い出しますが、そうした歴史的な意味から申し上げましても、またアジア・太平洋諸島であるという意味から申しましても、私たちはここの住民の方々には最大の協力をすべき立場にある、私はこういうふうに考えております。したがいまして、今日も経済協力等々も惜しまずやっておる面もございますが、幸いなるかな、住民の自由意思によって自由連合とかあるいは自治連邦とかそういうふうな自治の方向へ向かっておるということは大変すばらしいことであって、我々も大いにそのことを応援をしなければならない立場ではないかと思っております。
  112. 永末英一

    永末委員 数年前でございましたか、このミクロネシア連邦の中心でございますトラック島周辺の子供たちが東京周辺の子供たちとの交歓、まあホームステイとでもいいますか、そういうことがございまして、日本側がJALを飛ばしてトラック島へ着陸をせしめたことがございました。つまり四十年ぶりで日の丸のついた飛行機が来るというので、そのことの記憶を持っている島民が飛行場へやってまいって一生懸命見だそうです。歓呼の声を上げて歓迎した。次の日に帰るのでありますが、そのことを聞いたほかの島民がまた来て、前の日の三倍程度の人が来たと言っております。大臣はできるだけのことをとおっしゃったが、つまり彼らの方の期待が大きいわけでありますから、十分にそれは彼らの生活の実態、法律的地位はいろいろございましょうが、十分ひとつ考える限りのことをやって住民の期待にこたえてほしいと私は思います。  最近アフリカへ参りましたが、アフリカにつきましては、ヨーロッパ諸国はそれぞれの過去の経緯がございますから、それぞれいろんなことをしておる。しかしこの地域は、かつてはスペインが手をつけたといいますか、旗を立てたくらいでございまして、ドイツも大したことはございません。まさに新しい近代史の中では、日本アメリカが主として携わってきた国、地域でありますから、十分それをやっていただきたい。  同時に、ひとつこの機会に御決心を伺っておきたいのは、国連憲章八十二条によりますと、この信託統治地域の決定は安全保障理事会でやるということになっておりまして、したがって、今のような自由連合とか自治連邦とか申しましても、国連の意思決定、安全保障理事会の意思決定がなければ正規のものにはなかなかなり得ない。我が国は安全保障理事会の非常任理事国に当選しておると思いますが、やはり日本外交一つの重要な問題、ほかの国にはない日本国に負わせられている重要な問題として、円満にこの地域の住民の願望が天下晴れて実現するように私は日本政府努力すべき問題だと思います。いろいろな問題がございますから、なかなか努力をしなければなりませんが、一つ外交方針として努力をしていただきたい。お答え願いたい。
  113. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 もちろん、諸問題ございましても、やはり努力すべきだと思います。  世界を回りますと、やはりアフリカ、中東等と、かつて欧州の植民地でございましたが、しかし、独立後といえども宗主国は宗主国としての愛情を持ってお互いの交流がなされておるところが非常に多い、こういうふうな感じもいたします。もちろん、委任統治でございますから我々が宗主国だとは申し上げませんが、歴史的経緯を振り返りますと、今永末委員が申されましたとおり、住民の人たちは非常に日本を懐かしみ、また日本協力を望んでおる、そうした気持ちを私たちも率直に国際会議の場においては表明をし、そしてそうした立場が与えられるように努力をすることは当然のことであると私は考えております。
  114. 永末英一

    永末委員 せっかく御努力をお願いしまして、質問を終わります。
  115. 糸山英太郎

    ○糸山委員長 次に、岡崎万寿秀君。
  116. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 これまで多くの外交問題情勢について宇野外務大臣の見解を承りました。重複を避けまして、私は、INF全廃後の日本がどうなっていくのか、そういう角度からの質問をしてみたいと思います。  御承知のように、今月八日にもINF交渉が妥結し、この分野での核兵器の全廃が進もうとしていることは大変画期的なことだというふうに考えます。これが核兵器廃絶に向けての一つ世界の潮流となることがはっきりしてまいりましたけれども、被爆国日本としまして、こういう世界の大勢、世界の潮流を促進する立場に立つのか、それともこれへの逆流となるのか、非常に大事な問題であろうというふうに考えます。この点について外相の所信をお伺いしたいと思うのです。
  117. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 先ほど来お答え申し上げておりまするとおり、日本国民の平和と繁栄のために外交を進めなければならぬということは申し上げましたし、また、世界に貢献する日本でなくちゃならないということを申し上げました。さような意味で我々といたしましてもそうした目的の一つに平和と軍縮がございます。だから、今回のINF交渉の成立ということは、さような意味で我々といたしましては心より歓迎しなければならない問題だろう、私はこう考えております。
  118. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 平和と軍縮を歓迎し、そして評価されるということでございますけれども、現実の日本はそれと逆行するような方向に進んでいるのじゃないかと私は非常に懸念するわけでございます。レーガン政権の中にも、この地上でのINF廃絶と裏腹に海洋核あるいは戦略爆撃機を強化して核戦力をより強化していくような方向が出されていますけれども、そういう拠点に日本がなるのではなかろうかということが懸念される点なんです。  日本は以前から横須賀港等、核トマホーク積載原潜の寄港地になっていますけれども、これは今どういう状況にありますか。数字がわかりましたら、去年、おととしとちょっと数字を申し述べてください。
  119. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 これまでの我が国に対します原潜の寄港状況でございます。それは、昭和三十九年から昭和六十二年十一月二十八日までの間でございますが、全部で四十三隻、三百四十一回ということでございます。最近でまいりますと、いわゆるロサンゼルス級、スタージョン級ということにつきましては、昭和六十一年でまいりますとロサンゼルス級が六隻で十六回、それからスタージョン級が二隻で六回ということでございます。
  120. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 かなりの数の核トマホーク積載可能な原潜が横須賀港等日本に寄港しているわけでございますが、加えて私がきょう質問したいのは、そういう原潜だけじゃなくて水上艦ですね、ここにトマホーク積載艦がおまけに日本を母港にしようとしている、このことでございます。  横須賀は十隻ほどの米艦船の母港となっていましたけれども、九月三十日の在日米海軍司令部の発表によりますと、うち二隻のフリーゲート艦が交代する。名前は申し上げませんが、新たに配備されるファイフというスプルーアンス級の駆逐艦、これは外務省でも、同艦は垂直発射装置、VLS、つまりトマホークの取りつけ工事をやっているということを確認されておりましたけれども、そのとおりでございますね。
  121. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 在日米軍が本年の九月三十日に発表いたしましたところでは、アメリカの八八会計年度内にフリゲート艦フランシス・ハモンド、これは海外家族居住計画のもとで横須賀に乗組員の家族を置いておる船でございますが、このフランシス・ハモンドにかわりまして駆逐艦のファイフという船を配備する予定であるという発表を行っております。そのファイフは現在工事中でございまして、そのファイフが垂直発射装置をつけるというふうに聞いておりますけれども、垂直発射装置はトマホークのものであるのか、あるいはそれ以外のものであるのか、垂直発射はいろいろな目的に使われるわけでございます。
  122. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 今言われましたスプルーアンス級三十一隻でございますか、これにはトマホークを積載する予定だということが報じられているわけでございます。垂直発射装置がそうじゃない可能性もあるように言われますけれども、現実にはこれはトマホーク積載艦になるのでしょう。ジェーン海軍年鑑にもそのことが書いてあるわけです。日本の港でトマホーク積載の水上艦の母港になったのはほかにございますか。
  123. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 スプルーアンス級駆逐艦に対しまして、トマホーク設備可能な、トマホークケーパブル、それを今後設置していく予定であるという趣旨のことがジェーン年鑑に書いてあることは承知しております。  トマホークのミサイルは、御存じのとおり通常弾頭、核弾頭両方がございますけれども、そういうトマホークの施設を持ったということが直ちにトマホークそのものを持つということとは別なことでございます。  このファイフにつきましては、先ほど申し上げましたように、トマホーク施設を持つのかどうか、その点については現段階では承知しておりません。いずれにしましても、垂直発射装置の改修中であるということを承知しているわけでございます。
  124. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 トマホーク発射の装置をつくってトマホークが載ってないなんということはないでしょう。  いずれにせよ、これは来年の九月までに日本に配備され、そして母港になることになるわけでございますので、これは確認をとる必要があると思いますよ。なさいますか。
  125. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 委員御存じのとおり、米艦船の一々の装備につきまして、それが我が国に寄港し、あるいは乗組員の家族を常駐させるということにつきましても、我が政府として知るべき立場にはございませんし、アメリカ政府に申し入れあるいは照会を行う立場にないわけでございます。
  126. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 事がトマホーク積載艦の横須賀母港化という問題なんですね。単に寄港じゃないんですよ。母港になるという非常に重大な問題でありますし、こういうことについてははっきり聞くべきだと思うのですよ。単なる装置だけなのか。トマホークを積載しているかどうか。  私は先ほどこういうトマホーク積載艦の母港化ということが今回の横須賀でのそういうファイフ以外にあるかどうかと聞きましたけれども、どうですか。
  127. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 先ほど来御答弁申し上げておりますとおり、我が政府といたしまして、アメリカの軍艦の装備の一々につきまして、それを詳細承知する立場にないということでございます。  なお、委員から母港化云々という言葉がございましたけれども、いわゆる母港化ということは、乗組員の家族を横須賀等に住まわせまして、それによりまして乗組員の士気の向上あるいは乗組員がアメリカなりほかの港に帰っていくその費用の節減等を趣旨としているものでございまして、その本体は乗組員の家族を住まわせるということでございます。
  128. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 藤井さん、はっきり答えてほしいのですね。こういういわゆる母港化がほかにあるかということですよ。
  129. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 先ほど来はっきり申し上げておるつもりでございますけれども、我が政府といたしまして、アメリカの海軍等の装備につきましてその詳細について知る立場にございません。
  130. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 余りにもだらしないですな。  いずれにせよ、こういうトマホーク積載艦の母港化というのは、今回のトマホーク積載駆逐艦の横須賀母港が初めてだということ。これは各紙にもそういうふうに指摘されていますし、これを否定されることはないと思いますね。  大臣、トマホークというのは核、非核ございまして、撃たれる相手国というのはわからぬわけですね。爆発して初めて核であったということ、そうじゃなかったということがわかるわけで、これは当然核トマホークの、あるいはそうじゃないものがあったにしても、相手国はそれにふさわしい対応をとらざるを得ない、多くの軍事専門雑誌はそう書いておるわけですわ。  そうすると、抑止のためと言いながら、実際上は抑止ではなくて核戦争を誘発する、そういう危険性もトマホークという問題は持っておるわけでございますね。そういう水上艦の母港になるということでございますから、私はそういうことはやはりはっきりと断る姿勢が必要ではなかろうか。INF全廃という形で核戦争阻止、核兵器廃絶方向世界の大勢が流れているときに、被爆国日本でそういう核戦争を誘発しかねない、核戦略の拠点になるようなそういうトマホーク積載水上艦の母港化ということを許すべきじゃないと思いますが、御見解を承りたいと思います。
  131. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 ただいま委員指摘になりましたけれども、抑止と申しますのは、まさに、相手方がもし攻撃を加えた場合に、こちらは相手方に対して損害を与えるということで相手方の攻撃の意図をくじくということが抑止でございます。したがいまして、ただいまの御見解と政府の見解とは異なるわけでございます。
  132. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 大臣の所信をお聞きしたのですけれども……。
  133. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 もう御承知のとおりに、我が国は非核三原則がございますから、もしも核の持ち込みということがございましたらこれは反対するより以外に仕方がございません。  では、それはどういうところにおいて起こるかというならば、我が国における装備の重大な変更があったときには事前協議というふうに相なっておりまして、事前協議の場合にはアメリカから発議するということも委員御承知のところでございましょうし、今まで一度もそういうことはございませんから、我々といたしましてはそうした事態はない、そうした確信を抱いている次第でございます。
  134. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 トマホークというのは、核か非核かというのは暴発するまでよくわからぬところに問題があるということを言っているのですね。時間がないので、先に進みましょう。  八月十二日に、私も二回ほど当委員会質問しましたけれども、奈良県で米軍機によるワイヤ切断事件が起こったわけです。以来四カ月たちますが、まだ調査中というのですね。何をやっているのです。こういうことについては督促なさいましたか。
  135. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 本件につきましては、直ちに米側に対して申し入れを行い、原因の究明等々につきまして申し入れを行ったわけでございます。その後、アメリカ政府の内部の事実関係調査は下したようでございますけれども、いまだ最終的に調査のプロセスが終了していないということでございます。  なお、ただいま御質問でございますが、我が方といたしましては、いろいろな機会にアメリカから早くこの結果を入手するように督促いたしました。
  136. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 その後、若干の情報を得ているのでしたらそれを含めてお答え願いたいと思うのですけれども、共産党の国会議員団もこの秋全国の基地調査をいたしまして、当然奈良での米軍機事件についても調査いたしました。  かなり多くの事実が判明いたしましたけれども、その一つですが、米軍機というのは非常に険しい谷底をはうようにして目的地に接近しているのですが、これはルートは一つじゃなかった。幾つかのルートがあって、最終的にこの目的地に行く。百五十メートルから二百メートルの超低空で飛んでいくのですね。そして、その目的地である十津川の峡谷のところに行きますと急に上昇し、そして左の方に旋回していく、そういう飛び方をしているわけです。  自衛隊の航空総隊司令部にこのことについてお聞きしました。自衛隊はこういう訓練を航法訓練というふうに言いますか。困ってしまいまして、何と言うんでしょうね、自衛隊はそういうことはいたしません、こういうふうに答えたわけでございますが、その後の調査を含めまして、先ほど言われていましたような航法訓練が、いまだにそういうお考えかどうか、お答え願いたいと思います。
  137. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 米側のその後の調査によりましても、米側が我々に当初から申しております、これは航法訓練であるということについては全く変わりはございません。
  138. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 こんなの自衛隊でさえも航法訓練と認めないようなことなんです。この訓練は一機じゃなくて、多くの場合二機のペアでやっているようでした。一機は今言ったように谷底をはうようにやり、もう一機は上の方から目的地の方に接近して、そしてそこでミサイルを発射するような形で飛び去っていく、こういう訓練なんですね。  この事件機はEA6Bプラウラーという電子戦専用機でございますが、昨年夏からミサイル装備をするようになったということが米海軍協会の雑誌プロシーディンクのことしの五月号に載っていますけれども、外務省は承知されていますか。
  139. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 御指摘のプロシーディングという雑誌がございます。これはアメリカのUSネイビー・インスティチュートという私的な協会が発行している刊行物でございますが、そこに「一九八六年の米海軍の攻撃ミサイル開発」という記事がございまして、そこで、昨年八月にEA6Bプラウラー飛行隊にHARMの装備を開始した、そういう記事がございます。真偽のほどはわかりません。
  140. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 そのようにHARMミサイルを装備している電子戦専用機がこういう戦闘訓練をやっている。何が目的か。これをやり始めたのは、これは国会でも答弁されているようですが、昨年の八月以降ですね。一九八五年一月でございましたか、米海軍協会の雑誌に海洋戦略という問題が出されて、公式戦略だというふうに言われていますけれども、これによりますと、米海軍は同盟国軍と協力してソ連の沿海州やそれからサハリンや千島ですね、こういうところに対する攻撃をやり、上陸もやるというふうになっているわけなんですが、今の訓練を見ますと、まさにこのようなところに超低空でレーダーを避けて接近していっているんです。そしてレーダー基地やあるいはミサイル基地を攻撃するための訓練をやっているとしか思いようのないそういう訓練でございますね。  藤井さん自身も八月二十四日の安保特別委員会での答弁の中で「問題は、安保条約地位協定の目的に照らしまして合理的に判断してそのような施設、区域あるいは訓練空域外の訓練がどの程度許されるべきか、それがすべて許されるというわけではございません。」というふうに言われていますが、今言ったような海洋戦略に基づく戦闘訓練が訓練空域外で行われるということが今後とも許されるとお思いでしょうか。そのことをお聞きしたいのです。
  141. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 先ほどの御質問のHARMでございますが、これは高速の対放射源ミサイルでございまして、放射能などを発する装置に対しまして、それをねらいまして撃つミサイルということでございまして、そのようなミサイルをこの飛行機が装備しているかどうかわかりませんけれども、そういう雑誌の記事があるということでございます。仮に万一装備しておったとしても、それが何らこの航法訓練云々あるいは私がかわて申しました問題と関連があるわけではございません。  要するに、日米安保条約におきまして訓練というものはどのような訓練が実施されるかを明記はしておりませんけれども、基地あるいは特定の地域内で行われるべきものというものは当然合理的にあるであろう。それは例えば射爆であるとか、当然にその特定の行動、それが地上に明確な影響を及ぼすというような場合であって、それ以外の問題については必ずしも明確な規定はないけれども、在日米軍の駐留目的、それに照らしましていろいろな訓練を行う、それが一方の要請であり、他方、我が国国民の安全、福祉、これに害を与えないようにという他方の要請、この間におきまして当然それぞれのケースによりまして合理的な判断があるであろう、こういうことを申し上げているわけてございまして、先ほどのミサイル云々とは何ら関係がない話でございます。
  142. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 その合理的な判断をどうするかということを聞いているんですよ。もう一つ例をとりますと、三沢基地のF16が十一月十六日から十八日にかけて北海道全域に超低空の訓練をやったということ、これは御承知だと思うのです。日高地方では放牧中のサラブレッドがこの爆音に驚いて駆け出して足をけがしたということさえも報じられています。等々の事故が——うそじゃないんですよ、委員長。十件あります。朝日新聞に載っているんですよ。苦情が百四十件寄せられているというわけなんですね。こういうのは単に北海道だけじゃなくて青森、秋田等の東北地方でなされている。これも最近始まっているんですよ。  こういう訓練というのは、明らかにレーダーによる捕捉を避けて、そしてこの海洋戦略による千島やサハリンへの奇襲攻撃をするための訓練、大いにそういうことが想定されるわけなんですね。奈良県のワイヤ切断事件のあの戦闘訓練、さらに今度の北海道等における超低空の訓練、こういうことが合理的判断によって許されるかどうかということ。いろいろ解釈はあるでしょうけれども、こういう住民に被害をもたらすような、あるいは危険を伴うような訓練が合理的なケースと見られるかどうかということを聞いているんですよ。外務大臣一つの政治家としての見識を伺いたいのです。
  143. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 飛行の安全と事故防止、これに関しましては、政府といたしましても米軍に十二分に申し伝えでございます。したがいまして、我が国を守っている駐留軍の訓練のことでございますが、やはり公共の安全ということを念頭に入れながらやってほしい、そういうような対処は私たちとしても怠らないようにしたい、かように思っております。
  144. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 では局長、最後に一問聞きますけれども、これが合理的な判断のうちに入りますか、一般論じゃなくて。今後ともやりますか。
  145. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 十津川の件につきましては、先ほど申し述べましたように、現在まだ事実関係について、一応の調査は終わったけれども、アメリカから正式な報告が来ていない、こういう段階でございます。  それから、先ほどお触れになりましたF16につきましては、私どものところにいろいろな苦情が寄せられまして、早速米側にこの照会をしておるところでございまして、この事実関係についてはまだ私どもの方で十分につかんでおりません。  したがいまして、ただいま委員のせっかくの御質問でございますが、これが合理的であるかどうかということについて直ちに判断をしかねる状況でございます。ただ、大臣が先ほど申し上げましたように、米軍がその訓練を行うに当たって、我が国民の安全あるいは公共の福祉、あるいはその気持ちと申しますか、そういう住民感情と申しますか、そういうものに十分な配慮を払ってほしいということはかねがね米側に対して常々申し入れているところでございます。
  146. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 常々申し入れてもそういうことがなされる。これは安保条約と地位協定がいかに日本の空の主権、住民の安全を無視するものであるかということを如実に示しているということ、このことがはっきりしたと思います。  以上で終わります。
  147. 糸山英太郎

    ○糸山委員長 午後二時から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後一時三十一分休憩      ————◇—————     午後二時二分開議
  148. 糸山英太郎

    ○糸山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  アメリカ合衆国地先沖合における漁業に関する日本国政府アメリカ合衆国政府との間の協定を改正する協定締結について承認を求めるの件を議題といたします。  政府より提案理由の説明を聴取いたします。外務大臣宇野宗佑君。     —————————————  アメリカ合衆国地先沖合における漁業に関す   る日本国政府アメリカ合衆国政府との間の   協定を改正する協定締結について承認を求   めるの件     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  149. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 ただいま議題となりましたアメリカ合衆国地先沖合における漁業に関する日本国政府アメリカ合衆国政府との間の協定を改正する協定締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  政府は、現行日米漁業協定の有効期間が本年十二月三十一日に満了することにかんがみ、明年一月一日以降も米国の地先沖合二百海里水域内において我が国漁業を継続し得るよう、米国政府との間で数次にわたり交渉を行ってきましたところ、現行日米漁業協定を一部改正しつつ延長する協定の案文について最終的な合意を見ましたので、本年十一月十日にワシントンにおいて、我が方松永駐米大使と先方ウルフ大使との間でこの協定に署名を行った次第であります。  この協定は、現行漁業協定の主な改正としまして、米国が、排他的経済水域として一九八三年三月十日の大統領宣言によって示された水域を設定したことに言及すること並びに協定の目的として米国の水産業の迅速かつ十分な発展を容易にすること及び米国地先沖合において我が国漁業が継続され得るための原則及び手続についての共通の了解を確立することを挙げること等を定めるとともに、現行協定の有効期間を一九八九年十二月三十一日までの二年間延長することを定めております。  この協定締結によりまして、明年一月一日以降においても我が国の漁船が米国の地先沖合で引き続き操業することが可能となります。  よって、ここに、この協定締結について御承認を求める次第であります。何とぞ御審議の上、本件につき速やかに御承認あらんことを希望いたします。
  150. 糸山英太郎

    ○糸山委員長 これにて提案理由の説明は終わりました。
  151. 糸山英太郎

    ○糸山委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。新盛辰雄君。
  152. 新盛辰雄

    新盛委員 実は日米漁業協定承認の審議に入る前に一、二お聞きしておきたいと存じます。  まず、けさほどガット、関税貿易一般協定に基づくジュネーブでの会議の模様が既にテレビ、新聞等で報道されておりますが、調整が難航されて、来年二月の理事会で決着をつけるやに承っておりますが、これまでの経緯と、さらにこれからこれに対する対処について、まず外務大臣の所見を伺いたいと存じます。
  153. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 おとといガットから帰ってまいった次第でございますが、御承知のとおり米国との間におきまして農産物十二品目がかねて懸案になっておりました。これに対しまして米国はガットに提訴した次第でございます。その結果、二品目はともかくとして、十品目はクロというふうなパネル報告がなされました。ガット参加国は現在九十五カ国でございますが、この九十五カ国にこの旨全部通知されたわけでございます。そして十二月二日には総会が開かれまして、こうした案件がいよいよ採択されるという段になったわけでございます。  そこで日本政府といたしましては、必ずしも十品目すべてが、そのパネル報告異議を申し立てるものではないけれども、我が国の特別な農業等の事情を考えると、特にでん粉と乳製品に関しましてはあくまでもその立論、結論において異議あり、こういうことで松永大使も米国のUSTRの代表としばしばやり合ってまいりまして、なかなか結論が得られなかったのでありますが、私もヤイター代表お話をいたしまして、そして異議を申し立てました。異議と申し上げますと、はっきり申して、アメリカガット創設者であるから幾つかのウエーバーを持っておる、それはあなたの権利であろうけれども、同じような品目に対して日本に裸になれとはおかしいじゃないか、第二番目は、アメリカ補助金を輸出につけておる、あるいはECもサーチャージ、課徴金をつけておる、そうしたことをしながら日本には裸になれというのはおかしいじゃないか、特にこの二品目に関して私たちは断固として承認しがたいと私ははっきり二人の間におきましても申し上げたような次第でございます。  しかしながらアメリカは、宇野さん、あなたのおっしゃることはわからないでもないが、ウエーバーは私たち一つの権利である、この権利は使わなければならない、同時にまた二品目だけ分割して採択せよ、それを取り下げろというふうなことは、言うならばつまみ食いに等しい、だから、もしつまみ食いが入るのならば、パネル協議も何もあったものじゃない、こういうふうなことに相なりまして、とりあえず、それなら我々は我々の権利を行使しますよということにおきまして、最初の日本の順番は十八番目でございましたが、実はこれを一番目に繰り上げてもらいまして、いろいろお願いをしたわけです。そうでないと時間がございませんから、一番目にしゃべらせてくれというふうなことで我が国波多野大使が一番目に発言をいたしまして、今申し上げました二品目、これは受け入れることはできませんよ、だからひとつ分割採択というような方法でお願いしたい、こう言ったわけでありますが、多くの国々が反対をいたしまして、まかりならぬということでございますから、したがって本国に訓令を仰いでまいったというような経緯でございます。  もちろん、これは農林物資で、超党派でこれはいろいろと御心配願っておる問題でございますから、外務省といたしましても農林省を中心としてのお話を伺おうではないかというので、昨夜ぎりぎりのところまでお待ちいたしておりましたが、残念ながらこの短時間において政府として見解を出すということはなかなか難しい、したがって、特別の配慮によって二月の理事会まで延ばしてほしい、これをガット総会でひとつ頼んでくれというので、私も御承知のとおり、マンスフィールド大使とお目にかかりまして、長時間我が方のお話もしまして、大使もそういう方法につきましては了解をしていただいて、そして、日本時間のけさ方でございますが、日本代表が今私の申し上げました経緯において、二月の理事会にはひとつガットの規則に従って解決方法を見出したいと思いますのでお願いしますということで、そのことが了承されたというのが今の経緯でございます。
  154. 新盛辰雄

    新盛委員 だとすると、ガット裁定というのは原則として各国々の満場一致という形をとるわけですから、日本が拒否をするとなれば当然そういう形になってきたのでしょうが、これから来年二月までいわゆる二国間、日米の具体的な交渉、こうしたものはまだ継続されていくと確認してよろしゅうございますか。
  155. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 現在のガットのシステムはオール・オア・ナッシングでございます。だから、私は死児のよわいを勘定するべからず、こういうふうに申すのですが、実のところはもう少しく深き配慮あらば十二品目に関しまして一括ではなくして一品一品、これがあるいはまた議論されておったのならば、十のうち二つ日本反対だけれども、八つは出すかもしれぬよ、十のうち五つは反対かもしれぬけれども五つは出すよ、そういうようなこともあり得たかもしれません。ところが、一括でございますから、現在の日本に対しまする同情というものはどこにもなく、ガットの規制どおりいきますとオール・オア・ナッシングである、こういうことでございます。  しかし、こうした採択法につきましても問題があるから、ウルグアイ・ラウンド等におきましてガット機能の強化という問題も出ておるのですが、まだまだそこまでは到達するのに日は遠し、こう考えてまいりますと、やはり現行ガットの規則に基づきまして行動せざるを得ないであろう。  そこで、もちろんアメリカとの間におきましても、両国の紛争でございますから、両国間におきましてまだまだ話し合いはして、いろいろと知恵を出し合ってはどうであろうか、かように思っております。しかしながら、今申し上げましたとおりに、なかなか難しい環境にいる。また同時に、分割採択総会で否決されたというような状態でございますから、今私が申し上げましたような品目等々につきまして、これからいかにそれを守っていくかということも一つの今後の重大なイシューではなかろうか、こういうふうに思っております。
  156. 新盛辰雄

    新盛委員 ウエーバー権利を保有するアメリカ側、これはもう既に乳製品など十九品目、みずから保護政策をとっているわけです。日本に対してだけ十二品目の全面開放ということで攻めてきているわけですが、非常に理不尽である。全国五百五十万農民はもう怒り心頭に発しているわけであります。  それで政府が今言われております落花生とかあるいは雑豆を除いたあと十品目、これはクロであるとする、その中のとりわけ脱脂粉乳、そして芋でん粉、この分だけは何としても自由化を阻止したいという政府のお考えというのは、これは一致しておりますか。  もう一つ、あと残りの八品目はもう容認せざるを得ない、そういう環境に来ていると判断しておられますか。十二品目一括ということで、我々はどうしても理不尽であるからぜひこれは全体的に拒否してほしい、こう言っているわけですが、お考えをお聞きしたい。
  157. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 そこが極めて難しいところであります。だから、一つの答えとしまして、十二品目採択に対しまして日本反対ですと言えばそれで済む問題であるかもしれません。しかし、何分にも九十五カ国、それぞれ日本に対しましてよい感情を抱いている国もございますし、何だと、一千億ドルの黒字を持ちながらまだ日本は閉ざされた国かというのが、この間から列席いたしておりました各閣僚の意見ではないかと私は思いますと、せっかくガットというものにおいて自由貿易体制が確立されて、我が国もそれによって今日の繁栄を得た面も多々あるということを考えますと、果たしてここで向こうに全部を回して日本だけが孤立するのがよいかどうか、これは慎重に考えなければならない問題ではないかと思っております。
  158. 新盛辰雄

    新盛委員 日本が全面的に拒否をする、あるいは今大臣がおっしゃるように、その内容において脱脂粉乳とかでん粉はどうしても認めるわけにはいかない、そういうことになった場合に、アメリカはかねがねからその代償、報復措置、そのようなことを言っているわけですが、これはどういう中身を指しているのか、大臣としてはそのことについてどう把握をされていますか。
  159. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 一般論としてお聞き賜りたいと思います。  だから、今どれがよくてどれが悪いとか、まだまだ政府も検討されておるでございましょうから、特に農林省を中心の話でございますが、もう全部が全部だめだよということはなかなか言いにくいではないだろうか、私はこう思います。  しかしながら、もしそれ、AならAという一つの品物に関しまして自由化を認めだというような場合がございました場合には、しかし、その産業は二年先にあるいは何年か先にしなければならない、こういう期限も決めるわけで、あしたからすぐ自由化というわけではありませんが、その間に国内的な措置は十二分にとらなければ、地域的な混乱も、その産業に従事しておられる方々の問題もございますから、そうしたことはガットにおいて許されておる面もあるわけであります。つまり、国内的に関税を高くしますよ、補助金をつけますよというふうなことが方々でやられている一つ方法であるかもしれません。これは一般的な問題でございます。  また、どうしても反対だというような場合に関しましては、では反対日本の権利であろう、しかし、あくまでも反対、とことん反対ならばそれに関するところの代償は支払われますか、コンペンセーションはありますか、そういうようなことに相なってくるのではないか、こう思っておりますから、これは一般論を申し上げましたので、そうした一般論の中において何が当てはまり、どうなるかということも、今後政府といたしましては検討をしなければならない主要な業務であろうと考えております。
  160. 新盛辰雄

    新盛委員 同じ質問ですが、農林水産省としては、一体こうした内容についてどうとらえておられますか。
  161. 吉國隆

    吉國政府委員 お答えいたします。  この問題は、外務大臣からいろいろお話がございましたように、大変難しい問題を含んでおりますので、私どもといたしましては、このたびの会議での各国発言等もよく分析いたしまして、外務省ともよく御相談申し上げながら日本国政府として適切な対応ができるような方策を見つけ出してまいりたい、このように考えておるところでございます。
  162. 新盛辰雄

    新盛委員 事は急を要するわけですから、来年二月までのうちに、二国間の努力も必要ですけれども、日本として最悪な事態ということも予想しなければならないだろうと思うのですね。そうならないように願うのですけれども、我々としては絶対に残存十二品目自由化というのは許すわけにはいかぬ。これは国会の衆参農林水産委員会で決議をしたことでもございますから、いわゆる農産物の自由化枠拡大は絶対に阻止をする、日本農業を守るために我々としては当然のことであるという決議をしているわけですから、その上に立って農民にもうこれ以上、畑作農家もそうですけれども、生産意欲を失わしめることのないように最善の努力をしなければいけないと思うのです。  だから十二品目全体を絡めてはややなかなか大変だろうけれども、内容の面に至りましても譲るところは譲って、譲られないところは断固として譲らないんだという農水省の御意見もございました。しかし私どもは、それじゃアメリカはもう足元を見透かしているじゃないか。日本日本のゴーイング・マイ・ウェーでやるべきだ。こうでなければ日本農業を守ることはできないと私は思うのですが、大臣、もうここばかりしていくわけにはまいりませんが、本当に来年の二月まで手法としてはいろいろな手だてがありましょうけれども、一体どういう形で進めるか。みんな農民の皆さんはその答えを期待しているわけですから、お答えをいただきたいと思うのです。これは大臣もですが、農林水産省の方も両方からお答えいただきたい。
  163. 吉國隆

    吉國政府委員 お話しございましたように、我が国農業に致命的な打撃を与えるようなことが断じてないようにという趣旨の国会決議もちょうだいいたしておるところでございますし、そういった基本線を踏まえて行動することは当然でございますが、一方におきまして、外務大臣もお触れになりましたようにガットにおきます紛争処理手続との関係というものが登場してまいっているわけでございまして、私どもとしては終始一貫アメリカとの間で現実的な解決を二国間で目指したいということで対応してまいったわけでございますが、ガットの場におきます。そういった問題との関係、両面を踏まえて適切な対応をし、最善の努力をしてまいりたい、このように考えている次第でございます。
  164. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 先ほど来申し上げているような環境にいるわけでございまして、非常に事が急を要すると同時に、また国内のことを考えますと慎重に運ばなくてはならぬ面がある。私も、率直に言うとゆうべ非常に迷いました。しかしながら政府の一体という気持ちの上で、まず農林関係者の御意見を十分拝聴して外務省はやろうではないかということで、先ほど申し上げましたが、二段階に分けたというようなことは今までガットで他国に例がありません。その例のないことを日本がやりおった、日本は何を考えているんだという非難すら集まったんでございますが、やはりそれはするべきであるということで、現地の波多野大使も喜んで一回目の主張をしてくれておるということでございます。  今後十二分にこの問題、ガットの責任国でもありますからその責任も果たさなくてはなりませんし、世界において開かれた日本、貢献する日本と言っておるのでございますから、その点も考えなくてはなりませんし、十二分にまた農林省等々関係省庁と連絡をし、さらにはアメリカとも理解を深めてこの問題の解決に当たりたい、かように考えております。
  165. 新盛辰雄

    新盛委員 要望しておきますが、外務省としては日本が孤立化したりあるいは信頼を失うようなことのない外交手段というものを持っておられるわけですし、農林水産省の方は現実に農民と直結しておりますから、どうしてもそこに食い違いが出てきそうなんだけれども、今大臣のおっしゃったお話では一体になって事の解決を図りたい、こういうことでございますから、ぜひひとつ農林水産省を初め農家の意見を十分に頭に入れながら今後の対処をお願いをします。  さて第二は、もう既にまたこれ緊急な問題でありますが、IWC科学委員会で今日本調査捕鯨ということで八百七十五頭の計画を提出をして、これは衆参の捕鯨問題議員懇話会、まあ横断的超党派で私どもいろいろとこれまで頑張ってきたわけでありますが、何回か訪米された水産庁長官、最終的には三百頭と頭数を減らして調査捕鯨にゴーサインを与えたのか、あるいは調査捕鯨はいつから実施するのか、このことだけひとつお答えいただきたい。もう政治判断だという段階に今来ています。だから政治判断ならいつ決まるのか、明確にひとつお答えいただきたい。
  166. 佐竹五六

    ○佐竹政府委員 調査捕獲の実施につきましては、衆参農林水産委員会において関係各国の理解を深めつつ今漁期から調査を実施するように御決議をいただいておるわけでございます。  私ども、その御決議を生かすべくいろいろ検討いたしまして、その間私も二度渡米いたしましてその方法を探ったわけでございますが、結局ことしのIWC総会における日本調査捕獲に対する勧告、これは内容につきましても手続につきましても我々としては異論があるところでございますけれども、ともかくもそれが一応なされた以上、その勧告に従ってそれを受け入れる形で調査捕獲を実施することが御決議を生かすゆえんであろうということで、指摘されました問題点を明らかにするためにただいま御指摘の三百頭の予備調査計画を計画いたしまして、IWCの手続に従いまして科学委員会の特別会合にかけることにしておるわけでございます。  この会合が十五日から十七日までロンドンで行われるわけでございますので、その科学委員会の結果を待って最終的な判断を下したい、かように考えている次第でございます。
  167. 新盛辰雄

    新盛委員 長官、もう船はドックに入っているんですか。
  168. 佐竹五六

    ○佐竹政府委員 所要の準備は現在進めております。
  169. 新盛辰雄

    新盛委員 このロンドンでのIWC科学小委員会での結論を待ってということなんですが、これは率直に言ってアメリカの横やりによって八百七十五頭からこんなに激減してきたわけです。アイスランドは御承知のようにIWCを脱退してもいい、NATOを脱退してもいいからおれたちはやるんだと言って断行されて、それは認めておる。日本は認めるわけにはいかない。これはどういうことですか。  これは何回も議論をしてきましたが、結局私どもはあの決議をしたのは、IWCを脱退する決意でもいいからもうやらなければ日本国内の食文化である捕鯨がこれで完全に壊滅する。それを憂えるからです。もうことしの四月には商業捕鯨がなくなった。七月には近海捕鯨がなくなった。完全に鯨の肉はなくなる。そこに調査捕鯨の一九九〇年までの決め方をどうするかというのがあるわけですから、このことについてやるのかやらないのか、それだけを結論を言ってくださいよ。そんな、ちょっと待ってください。ロンドンで会議があってなんて、科学委員会は八百七十五頭を認めたじゃないですか。それがまず三百頭がいいか悪いかという議論じゃないでしょう。どうなんです。
  170. 佐竹五六

    ○佐竹政府委員 本年のIWC年次総会におきましては、科学委員会での討議を踏まえまして日本調査捕獲に関する幾つかの疑問点、これは不確実性と言っておりますが、それが明らかになるまで特別許可の発給を延期せよ、こういうふうなことを勧告されたわけでございます。その点について、我々、科学者の意見も聞きまして議論した結果、予備調査を要する部分がございます、こういうことでございまして、そのための予備調査を計画したわけでございます。  先生ただいまお話しございましたように、確かに御決議の中にはIWCの脱退も辞さない覚悟でという文言が入っていることは事実でございますが、私どももなお生存捕鯨の問題も抱えているわけでございまして、これは関係国の四分の三の同意が必要になるわけでございまして、かようなことも考えまして、とにかく私ども、自分たちの主張の正しさは疑っておりませんけれども、関係国にこれを理解してもらって、やはり世界の多数の国が日本の国を支持する、日本の主張を支持する、そういう状態をつくり出したいというふうに考えて、IWCの枠組みに沿って問題の解決を図るべく現在努力しているわけでございます。
  171. 新盛辰雄

    新盛委員 ガットの問題と同じようなことでして、何にしても根源はアメリカにあるわけです。だから、日本はこれからこの調査捕鯨を完全に実行するという決意政府が臨むなら局面の打開ができると私は確信しております。  それで、もう既に共同捕鯨は解散しましたよ。従業員はみんなもう今失業保険で生活を支えているのです。こういうことが次々に許されたら、後ほど協定承認に入りますけれども、これとてもそうです。だから、深刻な漁業外交をこれから展開しなければならないだけに、ぜひとも今回のこの調査捕鯨だけは断固していただくように、これは外務省の所管でも一部あるわけですから、十分に話し合いをされてこれからの善処を特に要求しておきます。  さて、日米漁業協定の内容でございますが、一読して、承認するわけにはいかぬ、率直にこんな気持ちです。しかし、日米間で随分これまで協議された内容でございますから、内容の各面にわたって指摘をしておきますけれども、今後こうした問題についてはぜひとも日本の国益ということを前提に置いてお取り扱いをお願いしたいと思います。  まず、この二百海里時代、まさに厳しい状況でございます。日米、日ソなどの国際規制を含める全体的展望は遠洋漁業に従事する皆さんにはもう大変になっていることは間違いないのでありますが、撤退を余儀なくされていくうちにまさしく私どもの国では減船、減船であります。御承知のように、この減船でも、五十九年には北転船が四十三隻も減船をされて、そしてまた昭和六十一年には四百八十三隻減船。これに働いている漁船員がいるわけです。一万数千人、陸に上がっちゃったのです。どんどんこんなに撤退するという今の状況を踏まえて、これら漁業外交の基本的な姿勢として政府はどういうふうに今後対処されていくのか。  そしてまた、私ども野党四党で、こういうことになってはいかないので、この際、本邦の漁業生産活動を続けていく法案を野党としてこの国会に上程しております。まだ審議中でございますけれども、このいわゆる水産対抗法、これを認識しておられるのか、そしてまたこの扱いについてどうされるのか。これは事務当局の水産庁じゃなくて、外務省としてどういうふうにお取り扱いになっているか、お聞きしておきます。
  172. 池田廸彦

    ○池田説明員 お答え申し上げます。  御指摘のいわゆる対抗立法案につきましては私ども承知いたしております。慎重に検討をいたした次第でございます。  検討をいたしました結果、私どもが抱いております考え方といたしましては、心情につきましては深く深く共有するものでございます。しかし、法案としてこれを見ました場合には、ガットなどの国際約束に違反しない形でこの法案の条項を実施する、これは残念ながら非常に難しいという考えを抱いております。したがいまして、かかる立法を行うこと自体を回避する必要があると思っております。  また、御案内のように確かにアメリカ側の経済問題に関する出方、いろいろと私どもとして強い不満、時にはふんまんを持たざるを得ないような場面もございますけれども、しかしながら、現在のアメリカ議会を吹き荒れております保護主義的な傾向、こういうものを率直に事実認識として認めた場合、感情的な反発を招くような状況をつくり出すということは、これは日米間のみならず世界的に保護主義的な動きを助長してしまいます。したがいまして、このいわゆる対抗法案というものもそういうおそれが多分にあると申し上げざるを得ないのでございまして、この点からも極めて慎重に考えなければいけない、かように考えておる次第でございます。
  173. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 今次長が答えたとおりだと思います。ガットを体験いたしましても甚だ痛感することは、だんだんと時代が変わってまいったなと。最初ガットは、例えば関税と貿易、そして為替だけでよかったが、それで済まずに農業もその対象にしたり、あるいはそのほかいろいろなこと、十五にわたって対象にしなくてはならぬほど世界は狭くなり、また利害が相反する面もだんだん出てきたのだな、こういう感じでございます。  そういう中において各国から言うならば経済水域、さらには二百海里問題等々出てまいったわけでございますから、もちろん我々といたしましても、そうした国際的な問題にはまず我が国国民立場を重んじまして常に積極的な発言をしていかなければならない、かように考えておりますが、いろいろ制約があることも御承知だろうと思います。ひとつこの問題に関しましても、ただいまアメリカと根限りの交渉を重ねた結果の協定である、かように御理解を賜りたいと存じます。(新盛委員「答弁漏れだ、水産対抗法はどう思うか」と呼ぶ)
  174. 池田廸彦

    ○池田説明員 いわゆる対抗立法につきましての基本的な考え方は、さきに申し述べたとおりでございます。しかしながら、漁民の皆様方の心情というものは私どもなりに共有しているものでございます。したがいまして、今後ともそれを外しまして関係国と強力に交渉してまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  175. 新盛辰雄

    新盛委員 この協定は、協力の義務は課せられておりますが、その一方では、割り当ては限りなく減りつつあります。来年は恐らくゼロになるのじゃないか、そういう面から見て片手落ち協定ではないか、一言にしてみればそうだと思います。  なぜかといいますと、この協定締結当時は、漁獲の割り当ては五十六年で百四十二万トン、それが五カ年たちまして六十一年で四十七万トン、六十二年は十万トン、まさにこんなにまで割り当てが減ってきたのです。そして逆に、洋上でアメリカのとった魚をアメリカの船から日本の業者、いわゆるベンチャー仕組みになっておりますけれども、この方は当初五十六年一万トンぐらいだった。それが五年たって五十三万トン、今六十二年では六十七万トン洋上で買いつけるのです。漁獲量をどんどん減らして、買う方はどんどんふやしていく。日本の漁船は結局減らさざるを得ません。商売人があの洋上に行けばいいわけです。  こんなことを協定で盛り込んで、協力の義務を一方的に課して、そして日本の方にはそういう形で押しつけるというのはまさに不公正じゃないか。言下にして言えばそうだ。どうお考えですか。
  176. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 お答え申し上げます。  ただいま先生指摘のとおり、割り当て量が激減してまいりましたことは大変に残念でございます。一般的に申しまして、現在御承知のとおり、世界におきましていわゆる二百海里水域というものが非常に一般化しておる次第でございます。この二百海里体制におきましては、沿岸国が生物資源の探査、開発、保存、管理につきましての権限を行使することができるというふうになっておるわけでございますが、このような中におきまして外国漁業につきましては、いわゆる余剰原則が適用されているものでございます。したがいまして、ただいまも御指摘ございましたように、米国の二百海里水域におきましてもアメリカ漁業が発展するにつれまして外国全体に対する割り当てというものが減少してきておりまして、その中で、我が国に対する割り当ての割合も、減っているという厳しい状況にあるわけでございます。  このたびの対米改定交渉におきましても、我が国としては我が国漁業アメリカ二百海里水域におきましての伝統的な操業実績につきまして十分考慮が払われるようにということを強く主張いたしまして、我が国のこの水域での漁業の継続というものを確保するために全力を尽くしたわけでございます。ただ、先ほど申し上げましたように、この沿岸国の権限が非常に強まる、また、沿岸国の漁業が発展するという中にありまして、大変に厳しい状況にあるということは事実でございます。  ただ、アメリカの対外割り当て全体が近年急激に減っております中で、我が国に対する割り当ての全体に占める割合というところにつきましては約七割ということで、絶対量は減っておりますけれども、シェアは大きいということでございまして、我が国漁業実績というものがそれなりに評価されたのではないかというふうに考えております。
  177. 新盛辰雄

    新盛委員 この協定締結する際に政府の見通しは本当に実のところ甘かったのじゃないですか。そしてまた、五カ年協定がなぜ今回から二年になったのか。そしてまたさらに、これからの対日割り当て量の確保のために政府としては一体どういう御努力をなされるのですか。  我々が聞くところでは、来年はゼロだ。IWCの商業捕鯨を断行するか、あるいは控えるかというときに、鯨をあきらめるなら沿岸のマダラ、カレイあるいはスケトウダラ、こういうものは従来どおり日本の漁獲割り当てをしますよと言った経緯があります。商業捕鯨はそのためにあきらめたところが、今度はこちらの日米間のこの漁獲割り当てはぐんと減った。踏んだりけったりとはこのことなんですよ。だから見通しが甘かったんじゃないか。この反省を踏まえて、我が国はこれから先どういう主張をされるのですか。
  178. 佐竹五六

    ○佐竹政府委員 協定の期間が短縮された点については外務省からお答えいたします。  先ほど外務省からの御答弁にもございましたように、二百海里制度がほぼ国際的なルールとして定着したもとにおいて、私ども遠洋漁業の利益を守っていかなければならないわけでございます。したがいまして、ソ連あるいは韓国のようにお互いに相互の二百海里内で操業を行っている国においては、これはお互いにその漁獲のバランスを確保するという形で利益を確保していくことにしたい。  問題は、アメリカとかニュージーランドのように日本の漁船が一方的に相手国の二百海里内で操業している場合が問題になるわけでございまして、これらにつきましては、結局、日本の漁船を締め出すことがアメリカの利益にもならないというようなそういう関係をつくり出すことが大切ではないかと思うわけでございまして、ジョイントベンチャーにつきましては、確かに日本が直接漁獲してそれを加工している場合よりも、その漁獲する部分の利益は向こう、アメリカに落ちるわけでございますので、それは日本の漁船が直接魚をとってそれを加工することが一番望ましいわけでございますが、それが許されないとすれば、アメリカ漁業者にとることのメリットは帰属させる、しかしそれを加工することによって日本にも付加価値を得る、こういう関係でまいりますと、アメリカは現在加工船の母船の建造を非常に急いでおります。  したがいまして、そのジョイントベンチャー全体で七十四万トンでございますが、これを確保していくことも将来なかなか難しいかと思うのでございますが、ただ、やはり日本の市場に非常に通じている、それからまた加工技術が非常に高いというようなこともございまして、アメリカの加工母船がやるよりも日本の加工母船がやった方がいわばアメリカの漁民から高く魚が買えるというような関係もあるわけでございまして、こういう関係をできるだけ広くつくり上げていくことを通じて我が国の遠洋漁業の実質的な利益を守っていきたい、かように考えている次第でございます。
  179. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 先ほどの御質問の中で延長期間の問題についてお触れになりましたので、その点についてお答えさせていただきたいと思います。  今回の延長につきましては、我が国といたしましては当初安定的な操業ということを考えまして、相当期間の延長が望ましいという立場をもって臨んだわけでございます。これに対しましてアメリカ側といたしましては、アメリカが他の諸国締結しております漁業協定を今後はすべて二年間ということで対処していきたい、そういう政策を貫いていきたいということを非常に強く主張した次第でございます。  これを受けましていろいろ検討を行いまして、また折衝をいたしました結果、最終的にとりあえずは二年という延長で取りまとめようという結論になったわけでございまして、その後の問題につきましては今後の諸般の事情も見ながらまだ判断をしていきたい、そういうふうに考えております。
  180. 新盛辰雄

    新盛委員 条文の中で各条に「主権的権利」という文言が今度入っていますね。従前は「排他的漁業管理権」という表現でされているのですが、どこが違うのですか。これは、主権的権利というのは、アメリカ側の権利の程度が強まったと私どもは理解をするのです。これが一つ。  それと、第一条の「合衆国の水産業の迅速かつ十分な発展を容易にすること」という文言が加えられています。これとバランスをとるということで、日本の「漁獲が継続され得るための原則」、こういう文言がまた入っている。後で出ます第五条の解釈問題も出るわけですけれども、これは、協力をせよ、協力をせよと言って、主権的権利はアメリカ側にありますと。協定というのはお互いが道義的に信頼と協調の関係でつくられるべきものであって、片手落ちのものでないはずなんです。それがこれでいきますと、もうアメリカが嫌だと言えばこれは協定もくそもない。そんなふうに理解されるんじゃないか。協力をすればするほど減ってしまう。  そしてまた、二年間というこのことも、現在の十万トン、これが来年、再来年、保証されるということがこれは確実に確認できるのかどうか。そのことも含めてお答えいただきます。主権とその後のバランスの問題、内容について。
  181. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 お答え申し上げます。  ただいま二つの重要な点について御指摘がございました。  まず第一に、主権的権利という言葉が今回の改正協定の中に出てくるわけでございますが、これは先ほど御指摘のとおり、従来の協定におきましては排他的漁業管理権という言葉でおったわけでございます。この主権的権利と申しますのは、もとより主権という言葉とは意味合いの違うものでございまして、主権というのは国家の総合的な権限と申しますか、全体的な権限でございますが、この主権的権利というのは主として国連海洋法の中で出てきた観念でございます。特に、以前一九五八年の大陸棚条約というところでたしか国際条約としては初めて使われたと思いますが、この主権的権利と申しますのは、海洋法の分野では沿岸国が海洋の一定の区域において生物的な資源、その他の資源に対してその開発、探査、保存、管理等の権限を持つ、そういう目的に限って権限を持つということでございます。  結論的に申し上げますと、この主権的権利という言葉が今度入りましたのは、現行の日米漁業協定締結されました後に、アメリカの大統領宣言によりましてアメリカの二百海里水域が漁業保存水域からいわゆる排他的経済水域に変わったということに伴っでこのような概念が導入されたわけでございます。これは国連の海洋法条約にもある概念でございまして、結論的にはこの主権的権利と申しますものと排他的漁業管轄権あるいは管理権というものの内容に実質的な差はございません。  それから第二に、これも先ほど御指摘がございました第一条の中で目的を若干変えまして、この協定の目的といたしまして、一方におきましては「合衆国の水産業の迅速かつ十分な発展を容易にすること」というのが入りました。これはアメリカのいわゆるマグナソン法にある考え方でございます。また、現行の協定におきましても、合意議事録の中でこのような考え方は出てきているわけでございますが、これを協定の中に書きたいということで取り入れたわけでございます。同時に我が方といたしましては、我が国の「国民及び漁船による漁獲が継続され得るための原則及び手続についての共通の了解を確立すること」というのも目的に入れまして、バランスをとったわけでございます。  先ほど主権的権利ということに関連いたしまして、先生の方から、主権ということになるとアメリカが一方的にいろいろ措置をとるのではないかという御指摘ございましたが、主権的権利と申しますのは、先ほど申し上げたとおり、排他的漁業管理権と同義と考えていただいて結構でございます。  なお、あくまでもこれは日米間の条約でございますから、アメリカがこの条約で取り決められた条件を外れて一方的に何か措置をとるということはできないのは申すまでもございません。
  182. 新盛辰雄

    新盛委員 もう時間がなくなって、たくさんまだあるのですが、一つ乗組員の問題ですけれども、「乗組員」というのは今度新しく第十二条に入っていますね。これは船長などの指揮監督のもとで働く乗組員が何で処罰を受ける事態が生ずるように変えてしまったのですか。それが一つ。  それと、この協定は二年ということですけれども、先ほどおっしゃったような理由があるでしょう。しかし、洋上買い付けを含めてこれから非常に内容が、先ほどから申し上げているように片手落ち的な方向で進行するだろう。  例えば第五条第二項に「特に、当該国が割当てを要請している魚類」という文言が入っておりますね、これは米国のマダラを買いなさいよ、そうすればマダラのクォータを上げましょうということになるんですね。そうしますと、資源が幾らでもあれば問題はないですけれども、米国のマダラをさらに買うということは米国漁業が振興しても日本へのマダラのクォータは減るということ、まことにこれはおかしいわけですよ。だから、こうした面で片手落ちの協定ということは非常に不満でございますが、この点についてはもうこれまでやられたことですから、私どもとしてもやむを得ざる状況である、承認するかしないかは後ほどのことですが、そういうことで一応私どもとしてこれから各面の内容に先ほど御回答ありましたような御努力をひとつお願いしたいと思うのです、  最後に、サケ・マス漁業についても、水産庁、先に私の方から申し上げておりますから、海産哺乳動物の混獲許可の問題でオットセイとかイシイルカなどですけれども、例のマグナソン法でこの間アメリカは混獲の許可が差しとめられた。これは環境保護団体が強いあれを持って裁判を起こした、こういうこともあります。こういうことで実害はなかったんですけれども、今度は二百海里内でのサケ・マスをとれる時期に来ていてこういう混獲法、いわゆる海産哺乳動物保護法によって実際に操業できなくなるんだが、どうだろうかということなんです。  それから、ベーリング海の操業の状況が変わってきます。これも大変な問題でございますし、先ほど申し上げたこの海産哺乳動物の保護のためにアメリカのスチーブンス法案がありまして、これもすべてイカ流し網漁業等、大目流しなどに規制を受けることになるんですが、こういうことについて事前の対策をぜひ立てておいていただきたい、それを要望して私の質問を終わりますが、回答してください。
  183. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 十二条に「乗組員」という言葉を加えた理由につきまして御指摘ございましたので、その点につきましてお答え申し上げます。  現行の協定の十三条一項におきましては、漁船またはその所有者もしくは運航者につきまして、合衆国の法律に従って刑を科すというような規定がございます。一項におきましては、御指摘のとおり、乗組員についての言及がございませんでしたが、他方、この同じ十二条の第二項、三項におきましては、乗組員が逮捕、拘禁された場合につきまして外交上の経路を通じて通告する等の規定がございました。したがいまして、この十三条におきましては乗組員も刑を科されることが前提とされていたと解されまして、その点を今回確認的に規定したものでございます。  その他の点につきましては水産庁の方からお願いいたします。
  184. 佐竹五六

    ○佐竹政府委員 母船式サケ・マス漁業につきましては、確かにこの訴訟に仮にアメリカ政府が負けますと操業ができないことになるわけでございまして、これは日米加条約で認められた権利の行使ができなくなるということでございまして、アメリカ政府自身我々に対してもこれは勝つべき最大の努力をすると申しております。私どももアメリカ政府に対して、大変厳しい交渉を経て、いやしくもアメリカ政府日本政府に対して約束したことができなくなるということは、これはまさに日米の信頼関係にもひびが入るようなことでございますので、訴訟対策に遺憾のないように強く申し入れているところでございます。  それから、ベーリング公海の操業につきましては、これは私ども大変貴重な漁場でございます。残された唯一の公海上の漁場でございます。これについて米国はもとよりソ連も大変関心を持っておるわけでございますが、少なくとも、二国間で公海上の操業について何か約束するという道は絶対に避けたいというふうに考えております。しかし、この資源を大切に使っていかなければならないということは日本自身の問題でもあるわけでございますので、積極的に多数国間でその資源の管理の方法について協議するための機関をつくるような提案をしておるわけでございます。また一方、その調査等につきましても我が国が自主的にこれを進めていくつもりでございます。  イカ流し網操業についてのいわゆるスチーブンス法でございますが、これは漁獲割り当ての削減につながるような我が国として一番問題であると思った部分は削除されたわけでございますけれども、なお我が国のイカ流し網漁船の操業に影響のあるような法案が成立する可能性があるわけでございますが、これは何としても阻止すべく、私ども現在さまざまな努力を積み重ねておるわけでございます。ただ、私どもとしても、公海であれば何をやっても構わないということではないわけであろうと思うわけでございまして、やはりそれぞれの時代の社会的な要請、国際的な要請等も踏んまえて、自主的に一定の規律はみずから加えていく必要があるだろう、かように考えておるわけでございます。
  185. 新盛辰雄

    新盛委員 終わります。
  186. 糸山英太郎

    ○糸山委員長 次に、吉浦忠治君。
  187. 吉浦忠治

    吉浦委員 アメリカ合衆国地先沖合における漁業に関する日本国政府アメリカ合衆国政府との間の協定を改正する協定につきまして御質問をいたしたいと思います。  まず質問に入ります前に、今回発生をいたしました南ア航空機の事故でございますけれども、四十七名の我が国民が遭難をしておる。そのほとんどが水産業関係の方々ということで大変悲惨な事故となったのでありますが、ここに私は深く哀悼の意を表したいと思うわけでございます。  特に遠洋トロール漁業に従事する日水トロール部の乗組員、また、日本鰹鮪漁業協同組合連合会の幹部の方々、年齢的にも四十代から五、六十という働き盛りの方々、いわゆる大黒柱を失ったその家族の方々のことを考えますと慰める言葉もないわけでございますが、ある本に「モーリシャスの海に散った空飛ぶ漁業戦士たち」という言葉まで表現されておるわけでございまして、私は壮烈な戦死であるというふうに思うわけであります。  今回のこの事故の原因が究明されておりませんので、残された御家族の方々も現在現地に行っておられますし、少しでもと肉親の手がかりを探しておられる状況下にありますから軽々しく論ずることは避けたいと思いますけれども、いずれにせよ我が国水産業界に与えられたショックというものは大変なものでございます。  かつて沿岸から沖合、沖合から遠洋というふうに発展してきた我が国の水産業でございますが、二百海里時代の到来とともに、逆に遠洋から沖合、沖合から沿岸というふうに逆流している最中に起こった事故であろうというふうに私は位置づけておるわけでありますが、こうした流れの中で、遠洋漁業は、漁船を現地にとどめて、その乗組員は三百日から長ければ四百日も就労を行って交代をする、こういう経費節減等の理由で飛行機の使用というものはこれは行われて当然だろうと私も思うわけでありますけれども、今回の事故を教訓にされて、遠洋漁業で働く乗組員の就労状況というものを把握されて、改善するための対策なりあるいは指導が必要ではないかというふうに考えるわけでありますけれども、その点どのように考えておられますか、まずこの点をお伺いします。
  188. 佐竹五六

    ○佐竹政府委員 今回の事故はまことに痛ましい事故でございまして、私どもとしても本当に深く哀悼の意を表している次第でございます。  御指摘のような事情からああいう形での操業をせざるを得なくなっておるわけでございます。基本的にはこれは労使関係の問題でございまして、それぞれカツオ・マグロ等につきましても大部分組合の加入があるわけでございまして、それぞれの労使関係を通じて問題の処理が図られておると思いますが、私どもとしても、最近遠洋漁業は操業形態が非常に多様化しておりまして、今回のようなケースは一つの例でございますが、それ以外にも、半分は外国船員を乗せなければいけないとか、日本の旗を立てずに外国の旗を立ててその上で日本漁業者が操業するというような非常に多様な形が出てくるわけでございますので、今御指摘もございましたように、その操業の実態を的確に把握いたしまして、それぞれ乗組員の福祉、それから安全の確保について十分な配慮をするように事柄の性質に応じて対応してまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  189. 吉浦忠治

    吉浦委員 私はかねてから日米の漁業関係というものは総合的に見直さなければならないときが来ているというふうに考えている者の一人でございまして、今回の日米漁業協定の改定というものは、米国との関係において我が国水産業が置かれている厳しい環境を真に認識しているものであるかどうかという甚だ疑問を持っているものでございます。  現行の日米漁業協定は、アメリカ漁業の振興を基本にするとするブロー法が米国内で成立して、その考え方によるモデル協定案を押しつけられた形で結ばれたものであるという、私は不当なものだというふうに思うわけでありまして、こういうことを承認しなければならないということ自体問題ではないか。  しかし、米国地先沖での我が国漁船の操業の確保が図られるとのことでもありますし、また政府の答弁を今聞いておりましても、新協定のもとでの合意議事録等をあわせて読みますと実害がないというものであったわけでありますが、日米漁業協定の五年間の漁獲量の推移がどうかというふうに見てまいりますと、細かい数字で恐縮でございますけれども、五十六年に百四十二万四千トン、これが六十二年には十万四千トンというふうに十四分の一に激減をしているわけです。これにかわって洋上買い付けが一万一千トンから六十七万トンというふうに激増しているわけです。この事実からも日米漁業協定は五年間のもと協定の基礎となるべきところの漁業に対する考え方に一大変革がなされたのではないかというふうに考えざるを得ないわけです。  そうであればもはや単なる改定だけでは済まされないのではないか。漁獲割り当て量については後ほどお尋ねをしたいと思いますけれども、それは水産業についてはアメリカは発展途上国というふうに言っているわけですが、実は我が国漁業協力の見返りであったわけでありまして、既に当初からすれば十四分の一というふうになきに等しい漁獲割り当て量になっている。一方では我が国漁業協力の義務が明記されているわけです。いわば一方的な義務を負う状況になって、本協定の存在の意味も薄れてしまっている、こういうふうに言っても私は言い過ぎではなかろうというふうに思うわけです。  しかも、当初はその漁業協力のために行っていた洋上買魚に現在では相当な漁業者が依存している事情等、また対日漁獲割り当ての今後の見通しなど、さらに慎重に検討しなければならない、こういうふうに思うわけであります。  いずれにせよ、日米漁業関係は総合的に見直しのときが来ているというふうに考えるわけでありますが、時間をかけて慎重に審議をしなければならないときに慌てて承認案件として出てきているわけでありますから、それも一月一日から出漁を準備している漁業者の方々のこともあります。早急に可決しなければならない状態もよくわかるわけでありますが、こういう、私が今申し上げましたような点で、総合的な見直しについてのお考え、どのようなお考えをお持ちなのか、この点をお伺いしたいと思います。
  190. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 お答え申し上げます。  ただいまるる御指摘ございましたように、国際漁業環境というものは大変厳しいものになっておりますし、また漁業大国でございます我が国漁業者の置かれた立場というものも極めて厳しいという点は、私ども十分に認識しているつもりでございます。今回の協定の延長、改正に当たりましても、そのような認識のもとで、私どもといたしましては最大限の努力を払ったわけでございます。  ただ一般論として申し上げれば、これは先生御承知のとおりでございますけれども、国際的な二百海里体制というものが定着し、また非常に広がってくるという中にございまして、基本的には沿岸国がその二百海里の生物資源に対する探査、開発、管理等の権限を有する。この沿岸国の水産業がまずこの資源を開発しまして、そして余剰が出たらこれを外国に割り当てるというような基本的な体制が一般化しているわけでございます。  そのような中にございましてこの現行協定も結ばれたわけでございますので、今回の延長協定あるいは改正協定は、若干改正点はございますけれども、基本的には現在の枠組みを延長する。また当面、来年一月一日からの操業の問題もございますので、これに間に合うように現在御審議いただいているわけでございますが、そういう中での現行協定の延長ということでございます。  しかしながら、そのような中にございまして、今回の交渉に当たりましても、我が国としてはアメリカの二百海里水域におきまして伝統的に操業を行ってきたということをあらゆる機会に主張いたしまして、この改正につきましても我が国立場が反映されるように努力をした次第でございます。  改正点は少のうございますけれども、例えば目的のところで、アメリカ側がアメリカの水産業の発展ということに言及してほしいということを申しまして、我が国はこれを受け入れたわけでございますが、同時に我が方の漁業が継続され得るということも明記するという努力を払った次第でございます。  延長の期間につきましては二年間ということになりましたが、これはアメリカ側が現在締結しております第三国との協定も、延長に当たって二年間で統一していきたいという政策を持っておりましたことも勘案いたしまして、また我が国といたしましても、この変転する漁業環境ということも総合的に考えまして、とりあえずは二年延長、その後のことはまた諸般の事情も踏まえて検討したいという考え方のもとでこのような結論に達したわけでございます。
  191. 吉浦忠治

    吉浦委員 さきに漁業割り当て量についてはその漁業協力と見合いの存在であるというふうに申し上げましたが、日米漁業協定の最初百四十二万四千トン、本年は十万四千トンというふうに、実に十四分の一に激減したわけでありますが、しからばその協定での漁業協力の義務というのも十四分の一でよいのではないかというふうに、こうまで皮肉るわけではございませんが、日米間というのはイコールパートナーと米国はよく言っておるわけでありますから、実際はどうなのか。  結果的に漁業協力一つとなっているところの洋上買魚事業というものは六十七万トンに達しているわけであります。また、アメリカの水産物輸出の六四%を我が国が買い付けているわけであります。米国の水産業振興のために多大な貢献をしておるにもかかわらず、漁獲割り当て量はなぜか激減をしておる。全く理屈に合わない。こういう日米漁業協定協定それ自体が、私は、いわばバケツのようなものだ、こう思っている。漁獲割り当て量がバケツに入る水でありますと、バケツは水を運ぶ効用があるわけでありますから、漁獲割り当て量である水がなければ効用の大部分が失われてしまうわけであります。  そこで、その漁獲割り当て量でありますが、先ほど言いましたように激減しているわけであります。日本側の漁業協力のいかんにかかわらず激減をしておる、こういうことで、この先漁獲割り当て量がより削減されて、先ほども新盛委員の方から指摘されておりましたように、将来ゼロにならないかどうかと危惧されるところである。政府は、この漁獲割り当て確保についてどのような見解を持っておられるのか。
  192. 佐竹五六

    ○佐竹政府委員 確かに、先ほど来新盛先生吉浦先生から御指摘ございましたように、対米漁業協力をしてアメリカの漁獲能力、アメリカ漁業の力がつけば、それは締め出されるわけでございますから、タコが足を食っているようなところがございまして、非常にわかりにくい関係にあることはもう御指摘のとおりでございます。しかし、現実に割り当てを受けるためにはやはり協力をしていかなければならない。私ども、そういう矛盾に悩みながら実際の交渉をいろいろやっているわけでございます。  特にジョイントベンチャーにつきましては、発足の当初は対米漁業協力の一環としてなされたことは御指摘のとおりでございますが、現在では手段であったものが目的と化してきているわけでございまして、これはこれなりに我が国の加工母船、それからそれに従事する漁業者、関係者にメリットがあるわけでございます。また、日本のスケソウ漁獲量全体で百四十万トンぐらいでございますけれども、六十万トンから七十万トンのJVの形での供給がほかにあるわけでございます。そういう意味国内のすり身関係業界にもそれなりの安定した原材料の供給源になっているわけでございます。  今後の見通してございますけれども、アメリカの漁獲能力はさらにふえているわけでございまして、マダラ等につきましても、アメリカ漁業者自身の漁獲能力が出てきているわけでございます。現在、十万四千トン、特にこれは、中にはマダラを中心といたしまして北洋はえ縄業界のように一〇〇%アメリカ海域に依存している業者にとっては、十万トンには減っておりますけれども、これは大変重要な操業海域でございます。  したがいまして、私ども、割り当ての決定に影響力を有するRC、それからまた商務省等にもさまざまな形を通じて残されたわずかなクォータの確保に努力してまいってはいるわけでございますけれども、率直に申し上げまして、その見通しは大変厳しい状況にあるわけでございます。  ただ、この協定との関係で申し上げますと、先ほど申し上げましたジョイントベンチャーにつきましても、この協定が存在いたしませんとアメリカ海域に入域することができないことになるわけでございます。その場合には、確かにアメリカ業界もアメリカ漁業者も大変困るわけでございますが、一方、また韓国等はむしろ日本と積極的に競争しているという状況もございますので、私ども、このJVを安定的に続けるためにもこの協定は必要である、かように考えているわけでございます。  さらにまた、来年度の漁獲割り当てにつきましても最大限何とか確保できるように、大変厳しい状況でございますが、努力を続けてまいりたいと考えております。
  193. 吉浦忠治

    吉浦委員 入漁料等対米支払いについて伺っておきたいと思うのですが、入漁料等の推移を見てまいりますと、五十五年に三十四億五千万円、五十六年に四十九億二千万円、五十七年に七十億四千万円、五十八年に八十億四千万円、五十九年に八十六億円、六十年に八十二億四千万円、大幅な漁獲割り当て量の減少にもかかわらず我が国アメリカに支払う入漁料は八十億円を超えておるわけでございます。  私の手元にあります資料では六十一年の数字が出ておりませんけれども、入漁料等の計算は昨年かかった経費を計算の基礎に本年の入漁料等を決める。例えば六十一年は六十年より漁獲割り当て量は半減させられておるわけでありますが、この多くの経費がかかった六十年の単価の計算で半減させられた六十一年の入漁料等が決められるので、非常に割高な入漁料を支払わなければならぬというふうに聞いておるわけでありますけれども、大幅な漁獲割り当て量の削減の上に高い入漁料を払わなければならぬという悲鳴を上げておるのが漁業者の実態であろうと思うわけですが、こうした計算方法は今後改善されなければならないというふうに考えておりますけれども、米国側にいかに主張されておられるのか、この点、伺っておきたいと思います。
  194. 佐竹五六

    ○佐竹政府委員 入漁料の単価が高騰しているのは、もう御指摘のあったとおりの事実でございますが、これはどうしてそうなるかと申しますと、二百海里水域の総管理費用に過去のデータによる外国漁獲比率を乗じて徴収目標額を設定する。そしてそれを実際に割り当てた割り当て量で割るということから非常に単価が高くなってくるわけでございます。  これは私ども、確かに非常におかしいと思うわけでございまして、外国漁業に対する割り当て比率が一定していれば、過去の数字を使うことも、これは多少の振れがあることはやむを得ないと思うわけでございますが、現在のように急激に割り当て量が減ってきているときにこのような割り当ての徴収の方式をすることは非常におかしいと思うわけでございまして、割り当て数量を正しく反映した入漁料単価を設定するように事あるごとに米国側には申し入れておるところでございます。
  195. 吉浦忠治

    吉浦委員 日本アメリカとの間の漁業関係には種々の問題が山積をしているわけでありますけれども、当面する課題、いわゆる捕鯨問題についてちょっと伺っておきたいと思うのです。  我が国の捕鯨、前にも私は農水委員会でこの問題に絞って長官にも質問をいたしましたけれども、この機会でありますので、要点だけをお尋ねをしておきたいと思うのです。  この日本の捕鯨は、七百年以上の伝統に支えられているわけであります。ところが今やもう風前のともしびの状態でありまして、戦中戦後の食糧難時代、また戦後の全く食糧がなかった時代に安く鯨肉が供給されて給食等の材料にも多く使用されていた。今日、それによって育った方々、私などもそうでありますけれども、その鯨肉に郷愁を感じない人はないのではないかと思うくらい多いのであります。それが現在アメリカ等の強力な圧力によって我が食文化が危殆に瀕しているというのが現状であります。  我が国の場合には自然の摂理に従って捕鯨を行っておりました。自然界のたまものとして尊敬を払って、余すところなく利用して最後にはお墓までつくるというふうに、その恩恵に感謝をして、そして伝統に支えられたものであったわけでありますが、国際捕鯨委員会における米国を中心とする理不尽と言えるところの運営によって五年前に科学的根拠のないままにモラトリアムが採択をされ、そして我が国条約上の当然の権利である異議申し立てを行って商業捕鯨を実施していたのでありますけれども、これも米国のPM修正法の、商業捕鯨を行うならば漁獲割り当て量を半減する、さらにゼロにする、こういう恫喝とも言える圧力の前に申し立ての撤回をせざるを得なくなったという窮地に追い込まれているのが今日であります。このような日本姿勢に対して、米国は漁獲割り当て量を保証するのではなくて削減し続けてきております。日本は鯨も底魚も失うという結果になってきているわけであります。  商業捕鯨にかわって我が国が行おうとしております調査捕鯨についても疑似商業捕鯨だと言って強引にIWC勧告という形に持ち込んで例のPM修正法の枠内へ引き込みまして調査捕鯨さえ行わせないように画策を行ってきたというふうに考えられるわけであります。アメリカが力をもって他国の文化を否定するというアメリカの態度に私は憤りを感じているわけであります。  御承知のとおり調査捕鯨は捕鯨国の主権に基づいて科学的調査のために限定されるが、何の拘束も受けることなくできるわけであります。これは条約上明記されているわけでありますから、あとは我が国政府の決断のいかんにかかっているだけでありまして、私は、鯨を愛するがゆえに我が国が培ってまいりました鯨食の食文化を大切に、その守り手として捕鯨産業が健全に経営されることを願ってやまないものでありまして、調査捕鯨ができなければ商業捕鯨一九九〇年包括見直しなどと言ってもそれは単なる絵そらごとにすぎないのであります。  そこで、現在政府は三百頭の予備調査を行う方針であります。米国の示唆に従ってIWC科学委員会特別会合を十二月十五日から十七日、三日間開くことというふうに聞いております。会合の結果がどのようにしても、IWC条約上の権利に従って直ちに予備調査を実施すべきであるというふうに思うわけでありますけれども、明確な御答弁をいただきたい。
  196. 池田廸彦

    ○池田説明員 お答え申し上げます。  経緯につきましてはまさに御指摘のとおりでございます。非常に強い締めつけ下にございますけれども、政府といたしましては、鯨資源の調査計画につきましては、衆参農林水産委員会の御決議の趣旨を体して鋭意努力を続けているわけでございます。現在、御指摘のようにIWC科学小委員会意見を求めております。また、この意見の取りまとめを推進するために特別会議を招集しているわけでございます。この特別会議の結果を踏まえ、最終的な判断を行うことにいたしたいと思います。  現在の段階では特別会議の結果を予断することは差し控えたいと存じますが、認識といたしましては、IWC条約調査を実施するか否かは科学小委員会意見を踏まえて当事国がみずからの判断で決める問題である。したがいまして、我が国としましては、特別会議の結果を見ました上で総合的立場から妥当な結論を出したい、かように考えている次第でございます。
  197. 吉浦忠治

    吉浦委員 時間がありませんので残念でありますけれども、さきに私は米国のPM修正法を取り上げてまいりましたが、この法律が存在するがために我が国捕鯨産業が壊滅的被害をこうむっているということを指摘してまいりました。次に、アメリカはこの法律を盾に外交交渉をみずからに有利に展開させていることは、これまでの経緯がそれを証明していると思うのであります。  また、アメリカには他にペリー修正法あるいはマリンママル法とか我が国漁船の活動に制限的に働く法律がある。これがまた外交交渉に非常に有効に機能しているのを我々はいつも逆から見て歯がゆい思いをしているわけであります。  一方、我が国水産外交といえば、交渉の都度相手国から譲歩を強く求められて、相手国に対して譲歩に譲歩を重ねてきたのが水産外交の歴史であろうと思うわけです。今日の漁獲割り当て量の急激なる減少をもたらす結果を招いたのも、相手国に対して何ら対抗する手段を一つも持たなかったゆえにこのような結果になっているのではないかと思うのです。相手国を刺激しないというのは非常に日本的な分別のある態度でありますけれども、それは外交交渉では勝負にならないのじゃないか。この点、交渉に当たっておられる担当者が一番感じられている点ではないかと私は思うのです。  我が国の水産業の健全な発展を願うためにも、また外国とも対等にかつ強力に交渉に当たるためにも、あえてその項目を対抗なんて言いませんけれども、この際考えるべき最優先の課題ではないかと考えるわけです。その必要性について水産庁並びに外務省はどのような見解を持っておられるか、伺いたい。
  198. 佐竹五六

    ○佐竹政府委員 現実に漁獲割り当てが大幅に減少し、減船を強いられていることは事実でございます。そういう交渉に臨む際に、御指摘のように、確かに何か武器が欲しいなということは交渉担当者の率直な感情ではあるわけでございます。  ただ、先ほど来外務省からも御答弁申し上げましたように、各国の二百海里内の資源につきましては沿岸国が主権的権利を持つということが国際的なルールとして定着している。その主権的権利の発動として割り当て量が減少させられているわけでございまして、これに対抗するのに輸入を規制するというような措置につきましては、我が国の全体的な立場からガット等の関係を考えて検討する必要があるというのが、私ども政府内でいろいろ議論し、現在の段階での見解となっているわけでございます。  そのような制約のもとでございますけれども、私どもとしてはさまざまな漁業協力等を通じて、先ほど来申し上げましたように、日本漁業者を排除することがそれぞれの国にとって必ずしもメリットにならない、そういうような関係をつくり出すことを工夫してまいりたいと考えております。
  199. 池田廸彦

    ○池田説明員 御指摘の点が具体的内容としてどういう格好になるものか私ども必ずしもはっきりした像を結ばないのでございますが、一般論として申し上げれば、こういう法案を考える場合にはまず第一にガットを初めといたします国際約束との関係がどういうふうになるか、またそういう法案を作成した場合に我が国と諸外国との関係全般にどういう影響があるか、少なくともこれらの点につきまして十分に配慮を加える必要がある、そういう配慮を踏まえて慎重に検討していく必要があるのではないか、かように考えております。
  200. 吉浦忠治

    吉浦委員 時間になりましたので、最後に外務大臣にお願いだけして終わりますけれども、宇野外務大臣就任早々農産物十二品目ガット総会出席されて大変御苦労さまでございました。  大変な努力には敬意を表しますけれども、農産物の輸入制限等の撤廃について、特に日本農業を守るという大変厳しいときを迎えておりますので、私ども、党といたしまして竹下総理大臣に党の申し入れ等もいたしましたけれども、期間もないこともありますが、来年二月までという期間、ガット裁定の延期等もあろうと思いますので、この期間に政府として最後の最後まで十分な努力をいただきたいことをお願いいたしまして、質問を終わりにいたします。
  201. 糸山英太郎

    ○糸山委員長 永末英一君。
  202. 永末英一

    永末委員 今回の日米漁業協定の改正は、改正される対象のこの前つくったものと基本的性格は変わったのですか変わらぬのですか。
  203. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 現行の日米漁業協定と基本的性格は同じでございます。現在の基本的枠組みを維持いたしまして二年延長するというのが今回の改正の内容でございます。
  204. 永末英一

    永末委員 基本的性格は変わらぬというのは、条約の法律的性格は同じだということなのですか、それともこの協定によって縛られる我が国の水産業者の経済的性格は変わらぬというのですか。
  205. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 私、先生の御指摘の点を的確につかんだかどうかちょっと自信はございませんが、まず第一に、法的な性格につきましては先ほど申し上げましたとおり同じでございます。また、経済的な面につきましても基本的には同じであろうと私は思います。  ただ、この協定におきましては、御承知のとおり漁獲割り当て等の具体的な数字は出てまいりません。この問題は毎年決定されるものでございますから、今後どういうふうに推移していくかということは協定の文言そのものから直接には出てこないということはございます。これは運用上の問題でございます。
  206. 永末英一

    永末委員 この前の五十七年協定の審議の場合、当外務委員会政府は次のようなことを言っているのですね。  全体として見ると、従来の規定から後退したような印象を受けるけれども、実際の取り扱いにおいては、合意議事録等をあわせ読むことによって、十分に我が国に対する配慮がなされている、そういう意味で実質的に実害がないという考慮から、アメリカ側もそうやって案文に合意した、こうなっておる。  この答弁を聞いた限りでは、今我々が知っているように、五十七年から今までに百四十万トンの割り当てが十万トンになってみたり、それから買い付け数量が七十倍になってみたり、それから買い付けする魚の単価がどんどん上がってみたりというようなことは、五十七年当時には余り考えなかったのか、考えておったのか。考えておって、今のように十分我が国に対する配慮がなされているという答弁をしたんだろうかと非常に疑いを持つ。  したがって、私は、今伺いましたのは、法律的性格は変わらぬ。経済的にも変わらぬが、漁獲量はそのときどきの相談で変わることがあり得るような答弁でありますが、どうなんですか、変わらぬのですか、変わるのですか。
  207. 佐竹五六

    ○佐竹政府委員 五十七年当時の状況でございますが、私も当時水産庁に在職しておりまして、米国の漁船による漁獲能力がこれほど急速に伸びてくるであろうということは想定していなかったというのが率直なところでございます。当時、ジョイントベンチャー一万トンから始まったわけでございまして、先ほど来御指摘ございましたように、現在六十万トンから七十万トンの漁獲をアメリカの漁船がやっているわけでございますが、これほど急速に増加するということは当時は判断していなかったというのが率直なところでございます。
  208. 永末英一

    永末委員 相当前でございましたが、テレビを見ておりましたら、太平洋岸のアメリカ漁業会社がどんどん発展していることが映っているのですね。二隻ぐらいしか漁船を持っていなかったのが今は六杯ある。そして、じゃんじゃん工場で漁船をつくらせておる。それが操業しやすいような法律をつくるように、ワシントンへ行ってアメリカの議会にロビイストを使ってやっておる。我が方はこの間漁船をつぶし、漁船員が失業しておる。水産加工業者も職を失っておる。そんなことは予想できなかったといって協定をするのですか。
  209. 佐竹五六

    ○佐竹政府委員 当時、現在の事態が予想できたかどうかという点でお答え申し上げたわけでございますが、現在でもアメリカ海域におきましては六十万トンから七十万トンのジョイントベンチャー方式による操業が行われているわけでございまして、この操業を続けるためにはやはりこの協定が必要になってくるわけでございます。  万一これが失効いたしますと、一月一日以降アメリカ海域でもジョイントベンチャー操業ができないということになりまして、もちろんできない場合には、日本の加工母船にスケソウ等を売却しておりますアメリカ漁業者も困るわけでございますが、一方、日本には韓国を初め中国、それからポーランドというような競争相手がいるわけでございまして、これらのものがジョイントベンチャーのシェア拡大をねらっているわけでございますので、私どもとしてはやはりこの協定は必要であり、御承認いただきたいというふうに考えておるわけでございます。
  210. 永末英一

    永末委員 我が方は、今日の前にある状態がなお続けよかしというようなことで見ているわけですね。あっちの方はそうじゃなくて、この協定に基づいて新しいことを自分らのために考えていこう、こういう目でこの協定を見ている。  先ほど法律上性格は変わらぬとおっしゃったが、この前の協定と違うところは、この協定第一条の中に「合衆国の水産業の迅速かつ十分な発展を容易にすること」を我が方はのんでおるわけですね。我が方は何をのましたかというと、「日本国の国民及び漁船による漁獲が継続され得るための原則及び手続について」了解した。我が方は発展せぬでいいのですか、あっちばかり発展して。そういうことを了解したのですか。
  211. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 お答え申し上げます。  ただいま御指摘のとおり、協定の目的というところで、確かにアメリカ合衆国の水産業の発展ということにアメリカ側としては言及したいということを交渉の過程で申しました。これに対しまして、我が方としてはそのこと自体に異論を唱えることはできませんが、それを書くのであれば我が方としての利益、すなわち、我が国漁業の継続ということも書いてほしいということでバランスをとったわけでございます。  もとより、これはアメリカの二百海里の中における双方の操業ということでございまして、一般的に申しまして、この二百海里制度と申しますものは、御案内のとおり、沿岸国の資源開発と沿岸国が漁業資源に対して管轄権を及ぼし、これを管理するというのが基本になっているわけでございます。そして、その中で余剰があれば外国に割り当てる、すなわち余剰原則というのが一般的に採用されているわけでございます。  したがいまして、この日米の交渉というものもこのような一般的な枠組みの中で行われざるを得ないわけでございまして、そのような意味で沿岸国たるアメリカ漁業の発展ということがここに言われているわけでございますが、もとより、これは日本漁業が発展しなくていいという意味ではございませんで、実態から申しますれば、アメリカの二百海里水域では日本が伝統的に操業してきたということを私どもとしては交渉の過程で強く主張いたしまして、その結果、こういう目的、我が方の漁業の継続という考え方があわせてここに書かれたということでございます。  なお、アメリカの水産業の発展という考え方自体につきましては、現行の協定の場合におきましても合意議事録の中でそのような考えが出ております。
  212. 永末英一

    永末委員 法律も基本的性格も同じだと言われたが、排他的経済水域ということを明示した一九八三年三月十日の大統領宣言、これはアメリカの宣言ですわ。我が国の宣言ではないのであって、それをわざわざ我が方とあっち側の協定にその水域は我々が認めるんだという形で、言うなればアメリカのつくった法律と同等の効力のある宣言を日本が認めておる。形としては我が方の主権というものを押し込まれているような感じがするのですね。  そういう主権的権利などという文字はこの前なかった。今までは漁業保存水域というような言葉を使っておりました。排他的漁業管理権という言葉は使ってございましたが、それにかぶさるような非常に物々しい主権的権利というような言葉はなかった。もちろん、その主権的権利には生物資源である漁業資源に関する主権的権利とは制限はつけてあります。しかし、彼らがこの主権的権利という文字を押し込んだというのは理由があると思うのですが、あなた方はどういう気持ちでこれを受けられたのですか。
  213. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 ただいま御指摘のとおり、今回の改正におきまして前文の中でこの主権的権利ということが初めて出てきたわけでございます。  御承知のとおり、この主権的権利という言葉は確かに聞こえは若干物々しいわけでございますけれども、結論から先に申し上げますならば、従来の排他的漁業管理権というものと漁業に関して言いますならば基本的には同じことであろうと思います。  しからば、なぜ今回このよう宣言葉、あるいは排他的経済水域という言葉をこの協定の中に取り込んだかと申し上げますと、先ほど先生もお触れになりましたように、一九八三年にアメリカの大統領宣言によりましてアメリカの二百海里水域を排他的経済水域として設定するということが打ち出されたわけでございます。そして、現行の協定は一九八二年に結ばれたものでございますが、その後このような八三年の宣言がございまして、さらに、これがアメリカ漁業法でございますいわゆるマグナソン法の中に取り入れられたという経緯がございます。  そこで、この点について触れてほしいというアメリカ側の主張がございまして、この点について折衝したわけでございますが、我が国としては、このいわゆる排他的経済水域と申すものは、御承知のとおり海洋法条約の中で出てきている概念でございますが、また既に多くの国が、現在七十カ国以上になっていると承知しておりますが、この排他的経済水域の設定を行ってきておる状況にはございますけれども、しかしながら、この排他的経済水域が一般国際法上の制度としてどうかという点について考えてみますと、私どもとしては、これは一般的国際法上の制度として確立していく方向にはある、しかし、既に漁業水域のように完全に確立したというところまでは言えないのではないかという考え方に立ったわけでございます。  そこで、今回の条約改定の文言といたしましては、この排他的経済水域そのものを認めるということではございませんで、アメリカ合衆国がこの排他的経済水域を設定したことというその事実を認識するという形の前文の改正にしたわけでございます。  ただ、先ほど申し上げましたように、この排他的経済水域の設定の目的は、主として鉱物資源に対してアメリカ側が管轄権を及ぼす、主権的権利を及ぼすということが目的でございまして、漁業に関する限りは従来と同様でございます。確かに、先生が御指摘のとおり主権的権利というのは大変物々しい響きを持っておりますけれども、法律的に申しますと、管理権あるいは管轄権という言葉と同様でございまして、主権そのものではないわけでございます。すなわち、経済的な資源に対してある一定の目的のために沿岸国が管轄権を及ぼすことができるという意味におきまして同じものでございます。
  214. 永末英一

    永末委員 あなたが触れられましたが、この排他的経済水域という文字を日本政府が了解することによって、生物資源ではない鉱物資源に対しても、将来問題が発生するときに、日本は既に認めだてはないか、漁業に関するけれども認めたではないかということで我々の方の主張というのは一蹴される、そういうことはありませんか。
  215. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 先ほどちょっと触れましたように、鉱物資源につきましてはもとよりこの協定自体は対象としていないわけでございまして、この協定全体を通じまして漁業に関するものであるということは客観的に明らかであろうと思います。  しからば、鉱物資源等につきまして沿岸国が管轄権を及ぼし得る、あるいは主権的権利を持つということについて国際法上どうかということになりますれば、先ほどこれもちょっと触れた点でございますけれども、いわゆる排他的経済水域というものは、国連の海洋法条約が採択されまして、いわばこれを先取りする形で相当多くの国が設定をしつつある。したがいまして、これが一般国際法上の制度として定着しつつあるということは言えると思いますけれども、まだ完全に確立したというところまではいっていないというふうに考えておる次第でございます。  将来、この鉱物資源の問題が出てきた場合にどうなるか、これが我が国立場を害するのではないかというような御指摘であろうかと思いますが、この点は、この協定漁業資源に関する限りのものであるということは非常に明らかでございますので、その点は懸念はないというふうに考えております。  また、我が国の一般国際法の問題としての考え方というものにつきましても、この交渉の過程を通じましてアメリカ側にも十分説明をしているところでございます。
  216. 永末英一

    永末委員 国際関係はひとり言を言っておったってあかんのです。相手方もこっちの言い分を認めてもらわぬというと成立しない。先ほど五十七年度のこの協定の審議のときのことを申し上げましたが、その当時想定しなかったというようなことを言ったってしょうがないじゃないですか、どんどん変わるんだから。変わることは、相手方は相手方で変えようと思ってやっている。したがって、我々も協定を結ぶ以上は、その協定に従って相手方がどんどんやってくるということも考えて協定を結んでいるんだと我々は思います。  そこで、時間が来たようでありますが、買い入れ量をどんどんふやされる、逆に割り当て量は減る、そして買い入れ量の単価も上げられる、そのことによって、例えばスケトウであれば練りもの業者が往生するというようなことは起こらぬという判断ですか、ちょっとお聞かせ願いたい。
  217. 佐竹五六

    ○佐竹政府委員 もちろん国内でのスケソウすり身価格というのは、米国は相当な大きなウエートを占めておりますけれども、すべての供給源ではございませんので、当然、我が国独自で我が国近海でとる供給もございますし、またソ連海域のスケソウもあるわけでございます。アメリカ海域だけに支配されているわけではございませんので、経済ベースでおのずからやはり限界があるわけでございます。確かに、年々買い付けの単価は引き上げられてまいっておりますが、そのような意味で限界はあるわけでございまして、ということを申し上げておきたいと思います。
  218. 永末英一

    永末委員 歯切れが悪いですが、速記録に残ったら、また五年たったら読みますからな、時の政府はこんなことを言っておったぞと。ひとつ慎重に対処をしていただかなければならぬと思います。  時間が参りましたのでやめますが、外務大臣、公海についてああいう海洋法の複雑な経過ですが、一応申し合わせができてこういうものが設定されると、それに基づいて各国は法律的形を整えてやってくるわけですね。  我が方の農業は、主権国家の中でやっておっても、ガットという国際会議あるいは国際協定を通じながらやはり攻め寄せてくるのでございます。それで、農産の方は漁業でこれだけやり込められておるということはなかなかわからぬかもしれません。それから日本国全体としては、むちゃくちゃに押し込まれるところもあるし、また押し込まれそうになるところもある。これはひとつ緊揮一番頑張ってもらわぬといけませんな。御決意のほどを。
  219. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 激しい勢いで世界は変わっております。午前中申しましたとおり、ガットの内容も十五にまで広げられてしまう。そうした中におきまして各国が気がつき出したのは、余りにも利害が相反する面において二国間の協定が多過ぎるんじゃないか、二国間だけの協定でいいところもあるし、またそれに入れない人たちもいるんじゃなかろうか、だから、ガットというのは、すべての問題を一つのテーブルの上で議論すべし、こういうような話も出ておるわけでございます。  したがいまして、確かに我が国も、二国間においてうまくやっている面もあるかもしれませんし、とんでもないひどい目に遭っている面もあるかもしれません。そうしたこと等も踏まえまして、今度世界におきましては一つのルールをつくろうではないかということがウルグアイ・ラウンドとして議論されているというのも事実でございますけれども、先ほど来各委員の御指摘がありましたとおり、どうも日本は弱いぞ、もっと先を見越してやれというふうな御忠告に対しましては、今後政府は十二分にそうした気持ちを抱きまして、我が国国民のために努力をいたしたい、かように存じます。
  220. 永末英一

    永末委員 終わります。
  221. 糸山英太郎

    ○糸山委員長 岡崎万寿秀君。
  222. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 審議をずっと聞いていまして、二百海里体制とはいえ余りにもひど過ぎる、こんな改正協定に漁民の利益のためとはいえ賛成しなくてはいけないというのは何とも残念だという実感です。  ところで、アメリカは新海洋法条約には賛成していません。にもかかわらず、この排他的経済水域などといった都合のよい規制だけは先取りをして押しつけてきているわけです。  新海洋法条約というのは、御承知のとおり漁業資源の保存の見地が貫かれていますし、漁獲可能量の余剰分の漁獲を他の国に認めるといった規定もあります。  ところが、この余剰原則さえもゼロになる懸念を、この改正協定やただいまの答弁等を聞いていますと感じるわけなんです。余りにもアメリカは身勝手ではないか、そういうような水産業界、漁民の怒りの声、嘆きの声が聞かれます。外相も当然実感としては同じだと思いますけれども、どうお考えでしょうか。
  223. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 海洋法の問題についてお触れになりましたので、その点についてまずお答え申し上げたいと思います。  先ほど御指摘ございましたように、海洋法条約全体につきましては、アメリカはこれに不満を持っておるところがございまして、確かに全体を受け入れるという状況にはなっておらないわけでございます。  他方、アメリカの近年の外国漁業政策の骨子と申しますか大体の方向と申しますものは、漁業資源の効果的な保存及び管理を行いながら、アメリカの、自国の水産業者によって利用されている度合いの低い資源につきまして、米国水産業による開発を奨励し促進するというものでございます。このような目的に立ちまして、外国漁業に対する漁獲割り当てに際しましては、伝統的な漁獲実績あるいは資源調査への協力等の考慮要件に加えまして、米国水産業の振興というものに対する協力の度合い等も考慮することとしているわけでございます。  このようなアメリカ漁業政策と申しますものは、御承知のとおり、いわゆるマグナソン漁業保存管理法等の国内法にあらわれておりまして、またこれに基づいて実行されているわけでございますが、このような法律制度は、基本的には、これも先ほど岡崎先生お触れになりましたように余剰原則、すなわち沿岸国がとり切れなかった余剰の漁業資源を外国に割り当てるという、いわゆる余剰原則等の国連海洋法条約の排他的経済水域に関する関連規定を念頭に置いてつくられたものだというふうに考えて差し支えないと思います。  しからば、この海洋法条約規定されておるような排他的経済水域が一般国際法になっているかどうかという点がございますが、この点につきましては、現在確立していく方向にあるということは言えると思いますけれども、まだ定着し切ってはいない、こういう状況にあると思います。アメリカは、海洋法全体、特に深海海底の部分につきまして態度を留保しておりまして、そういうことで海洋法全体には賛成しておりませんけれども、排他的経済水域あるいは漁業水域に関する限りは現在広く国際社会全体でとらえております流れに沿ったものというふうに考えられます。
  224. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 懇切な説明ありがとうございます。私は十六分しかないので、なるべく手短にお願いします。大臣に聞いたのですけれども、今ちょっとトイレだそうですから先に進みましょう。  それで、今度の改正協定によりますと、第四条、アメリカ水産業の迅速かつ十分な発展を促進する、先ほども質問がございましたが、こんなことを目的に我が国までが約束する必要があるかということです。余りにも卑屈ではないかという感じがいたしますが、これも簡潔にお願いします。
  225. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 簡単にお答えを申し上げます。  ただいま御指摘の点は、今回の改正で目的の中に含まれたわけでございますが、これは先ほど申し上げましたようなアメリカ政策あるいはマグナソン法の中にある考えでございます。また、現行協定におきましても、合意議事録の方でこのような考え方が既に取り入れられております。  他方、今度の改正交渉におきまして我が方といたしましては、アメリカの水産業の発展ということは沿岸国のいわば権利としてこれを否定することはできないわけでございますが、同時に、我が方の漁業の継続ということもこの目的の中に書きたいということで、そのような形でバランスをとったつもりでございます。
  226. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 バランスになっていないということが先ほどからの指摘なんですね。第六条では、現行協定の第五条二項を改正して、日本が割り当てを求める魚種、これはマダラとかカレイ類ですか、これをアメリカから購入することが新たに規定されているわけなんです。これは日本の買い付けが、今でもスケソウが六年間で一万トンから六十七万トンにもふえている状況ですが、さらに多くなって、一方、日本のとる漁獲は減らされる方向がさらに促進されるものになるのじゃないか。これは余りにも譲歩が過ぎるのじゃないかという気がいたしますが、いかがでしょう。
  227. 佐竹五六

    ○佐竹政府委員 この規定の性格がそのようなことを考えていることは事実なわけでございます。しかし、各国が自国の沿岸二百海里の漁業資源については主権的な権利を持っているということを前提にいたしますと、やはりこういう思想を認めない限り操業させないということがあるわけでございまして、これに対して私どもは対抗すべき手段がないわけでございます。考え方としては、生き延びるために自分の首を自分で絞めるような面があるわけでございますけれども、これを認めざるを得なかったということでございます。
  228. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 生き延びるために自分の首を絞めるというのは何とも矛盾した話です。それで命がもてばいいわけですけれども。  それで、我が国の操業実績が正当に認められたという御答弁が先ほどございましたけれども、これは数字を見ましても、先ほどからもしばしば引例されていますように、五十六年の百四十二万トンが六年間で十四分の一に減っている。さらに減って、あるいは近い将来にアメリカの水域から全面的に締め出しをされるのじゃないかとさえ懸念されるような状況なんですね。これで操業実績が正当に認められたと言えますか。これでは遠洋漁業の利益は守れていないと言わざるを得ないと思いますが、いかがでしょう。
  229. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 先ほど交渉の経過の中でそのようなことを私どもとして強く主張したということを申し上げたつもりでございますが、結果につきましては、ただいま御指摘のように、残念ながら割り当て量が非常に減っているのが現実でございます。  若干繰り返しになって申しわけございませんけれども、やはり基本的には、この二百海里漁業体制ということの中で、沿岸国がまずもって自分の二百海里の資源を開発する、そして余剰があればこれを外国に割り当てるという制度が一般的になっておりますので、このような中でアメリカの水産業自体が近年急速に伸びてきたということがございましたので、このような結果になっているというのが現状でございます。  なお、この協定のもとで、アメリカの二百海里水域におきましてアメリカの漁民のとった魚、スケトウダラでございますが、これを洋上買い付けを行ってくるということも可能になっておりますので、これは純粋な意味での、伝統的な意味でのとる漁業ではございませんけれども、水産物の原料の供給という面ではこういう形でもこの協定は役に立っているというふうに考えております。
  230. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 大臣、先ほど私は、日米漁業交渉というのは、この協定に見られるようにアメリカ姿勢は余りにも理不尽、身勝手過ぎる、それに対して日本姿勢は余りにも卑屈、追随的ではないか、そのことを指摘して御見解を聞いたわけですけれども、それとあわせてお答え願いたいと思いますが、この春、衆議院の農水委員会の方に野党の共同提案として、アメリカの不当な規制に対して水産物輸入規制などの措置をとるという対米対抗法案が、我が党はもちろん共同提案になりましたが、出されてそれが今継続審議になっています。  自民党の政調会で棚上げになっているやに聞いていますけれども、こういう状況だけに、こういう日本の水産業者、漁民の利益を守る立場で、やるべき姿勢をとるべきじゃないかというふうに私は思うわけでございますが、これを含めて大臣の御所見をお願いしたいと思うのです。
  231. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 日米関係の御審議を願っております漁業協定でございますが、先ほど来政府委員お話しいたしておりまするとおりの事情でありまして、確かに仰せのとおり漁獲量は減るわ洋上における取引はふえるわ、一体何しておるんだということに相なりますが、我が国における魚たんぱくへの需要が高まり、そうした意味合いにおきまして力関係もあるのかもしれません。そんなことで、我々としてはやむなくやはり操業は続けていかなければならないということで、五年間の過去を振り返り尊重しながらあと二年、こういうふうなことでございますので、その点はひとつ格段の御理解を賜りたいと思います。  したがいまして、こういうふうな二国間の協定のよいところもありますが、いろいろと力関係が働き過ぎるところもあるからというふうな議論も今世界で沸き起こっておるようなこともありますので、そうしたことも我々踏まえまして、何と申し上げましても日米親善は一つ外交の基軸でございますから、この基軸に基づいてやはり今後は言うべきことは言っていきたい、かように思う次第でございます。  また、午前中にもございましたが、対抗法案に関しましてはいろいろと国際法上の問題もございまして、貴重な意見だと思いますが、政府委員から答弁を差し上げます。
  232. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 ぜひ対抗法案を検討されて具体化し、日本姿勢を示すようにお願いしたいと思います。  最後になりますが、日本アメリカの水産物の六割強を輸入している国なんです。水産物の六割なんですね。決して卑屈になる必要はないと思うのです。ところが、割り当て量はどんどん減るし、買い付けはどんどんふえてくるし、何のための漁業協定かと言いたくなるくらいの状況なんですね。これでは伝統ある日本の北方漁業、遠洋漁業はどうなるかということが非常に懸念されます。政府として、これは外務大臣よりか農水の方でしょうか、どういう方策をお持ちか、大臣は今あと二年とおっしゃったが、二年で終わるかどうか大変懸念されるのですが、責任ある方策についてお答え願いたいと思います。
  233. 佐竹五六

    ○佐竹政府委員 我が国の遠洋漁業は伝統的に領海が三海里で三海里の外はすべて公海で自由に操業できる、そういう時代に築き上げられたわけでありますが、現在ではこの二百海里内の漁業資源についてはそれぞれの沿岸国が主権的な権利を持つというのがほぼ国際的なルールとして定着してしまっている、こういう事態になったわけでありまして、私どもはこういうことを前提に我が国の遠洋漁業者の利益を守っていかなければいけないと考えておるわけでございます。  具体的に申し上げますと、ソ連のようにお互いの二百海里で操業しているという国に対してはそのバランスをいかに確保するか、それからアメリカやニュージーランドのように日本が一方的に行って操業している、相手国はこの日本の二百海里に入ってこないという国に対しては、我が国漁業者に対して操業を継続させることが相手国漁業者のメリットにもなる、つまり逆に言えば、締め出せば向こうも損をする、そういう関係をいかにしてつくり出していくかということを旨として今後遠洋漁業に関する施策を進めていきたい、かように考えておるわけでございます。
  234. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 時間が来ましたので、これで終わります。
  235. 糸山英太郎

    ○糸山委員長 これにて本件に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  236. 糸山英太郎

    ○糸山委員長 これより本件に対する討論に入るのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決いたします。  本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  237. 糸山英太郎

    ○糸山委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました本件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  238. 糸山英太郎

    ○糸山委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  239. 糸山英太郎

    ○糸山委員長 次回は、来る九日水曜日午前九時四十五分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時十五分散会      ————◇—————