○
渡部(一)
委員 今
大臣、いろいろだんだん
お話しになられる御様子を見ますと、
大臣は討論型の人物だなと私拝見して思うのですね。演説型でなくて、何か向こうから攻め込まれてくると、いや、それはこうだねとおもむろに料理をする横綱相撲型のタイプ。これは西欧人とやるときは余りはやらないタイプだと私は思いますね。というのは、今こちらの主張、要請を向こうに先にのみ込ませなくてはならない。そうすると、こちら側が向こうが攻め込むのを待ってから受けるのではなくて、かなり言わなければならない。
僕は一貫して
中曽根内閣の
外交方針に対して非常に注文と反論があり過ぎましたけれども、
一つだけ褒めている点があるわけであります。それは、あの人は一遍大きな黒板を持ってきまして、
日本の輸入を増大させるために黒板の前にグラフをかいて、わかったかわからないかわからないような数字を一生懸命、どもりながらあの人は説明しました。外電にそれが出たときのあの影響は大変なものでした。
というのは、
外国では
総理大臣が黒板のボードの前に立って
日本経済の立て直し、内需拡大のために
日本国民に呼びかけたということで、その行動自体が
アメリカ人のハートを大変に揺るがせたということが言えると思います。効果がそれほどあったかどうかは私は問題だと思いますけれども、そのPRにかけた迫力というものはテレビの画面を通して
日本語のわからない人にも通じたと私は思います。
今、
竹下内閣で一番心配なのはそれなんですね。万事が明快でないのです。はっきり物と言うなどとはっきり言わないこのスタイル。しっかり慎重になどと言いながら全然慎重でないこのスタイル。そして考え過ぎて何もしゃべらないこのスタイルというのが
外交路線として定着すると危ないのではないかと私は思っているわけです。
ですから、向こうの言っている言葉に対して今の時期に何か返事をしなければならぬと思うなら、タイミングを失せずに言わなければならない。そのタイミングを失ったころ稟議書を上げて、係長から課長、課長から
局長、途中の参事官の判ごまで入れて、ゆっくり
大臣決裁のところまで来て、閣議に持ち出して判こを押してから返事をしたころには全部終わっている、悪い印象が定着しているということではないかと思うのです。だから私は、この問題については、
世界的な世論形式の合意を求めるためには何かしなければならない。この辺は、私はもう御答弁要りません。
では次に行きますが、ルーブル合意の話、
政府の
お話を聞いているとわからないところがたくさんありますが、ルーブル合意は存在していると思っているのか崩壊していると思っているのかわかりません。
というのは、
アメリカ側はルーブル合意を自分でけ飛ばしておきながらルーブル合意を尊重するなどと下っ端に言わせてみたり破ってみたり、態度がかなりばらばらですね。
日本側は、ルーブル合意というと何かもう
日本憲法よりすごい、何か神様のお言葉みたいな調子でそれを引用して言う。しかし、それはまくら言葉になり得ても現実の政治からいったら遠過ぎると私は思うのです。
このルーブル合意の内容を見てみると、為替レートの現在の水準というものは大体適切だと思いますよというのが前提にあって、それを
各国は大体支持しますよというニュアンスが二つ目についていますね。ところが、そのルーブル合意が行われてからドルはもう何回下げてきたことか。そして円は、それからまたもますますひどい状況になって、何がルーブル合意かと言われるような状況にある。しかもその状況の中で、
日本側が、ルーブル合意だというのにこのルーブル合意を守るのは
日本ばかりであって、何で諸
外国は、特に
アメリカは守ってくれないのだという抗議の声を発したようには見えない。だから、ルーブル合意というのをまくら言葉に使うけれども、ルーブル合意を破られても平然としている
日本外交みたいに見えるのが常である。そしてそのこと自体がルーブル合意の拘束力というか能力というのをどんどん下げてきたのではないかと私は思われるわけであります。
さて
大臣、この為替レートの問題は大変面倒な問題です。そしてそれは恐らく大蔵
大臣の所管が大部分でございましょう。しかし、その問題をどう説得し、どういうふうに
我が国のスタンスを決めるかは閣議の問題であり、その方面にも通暁しておられる
外務大臣のすぐれて重要な御関心事項だと私は思いますので、あえてここで持ち出すわけでございますが、これからの円ドル為替レートの急激な変動をどう安定させるおつもりなのか。
それとも、もうあきらめてしまって、もう一気にずどんと下げて、巷間言われますように百十円くらいのところに一発行っちゃって、もうJカーブがしょっちゅう顔を出すのはたまらぬから、大きなJカーブ一発だけで行こう、ほおかむりしようというふうに思っていらっしゃるのか。それとも
アメリカ側にほかの交渉案件とあわせて嫌がらせのためにこれを時々言うのみと思っておられるのか。
日本の
経済外交、特に為替の
外交についてはわからぬことだらけであります。その辺のところをお示しいただけませんか。
〔
浜野委員長代理退席、
甘利委員長代理着席〕