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国務大臣(
中曽根康弘君) 政治権力というものは、政治権力自体のためにあるのではないので、何か目的を持ってその権力というものは存在すべきである。では何が目的であるかと考えますと、やはり文化に奉仕する、そういう考え方が正しいと思っております。そういう
意味におきまして、
予算の編成とかあるいはいろいろな行政の展開等につきましても、文化問題、それは国際及び国内における文化的問題について常に政治は
関心を持って、その環境の中で許す限り最大限の力を発揮するのが正しい、そう考えておるわけでございます。
私、着任以来そういう考えを持ちましていろいろ努力もしてまいりましたけれども、やはり文化というようなものは、上の方からのお仕着せでできるものではないので、民間の中から自分の力で出てくるところに文化というものがありますし、また、既にできたもの自体はもうこれは過去のものなのであって、それをつくっていく創造力、それが文化それ自体である。活字にせよ映像にせよ、あるいは絵にせよ音楽にせよ、できたものはもはや過去のものであって、つくられたものになってしまう。そのつくられたものをつくる力、それがやっぱり文化の力だろうと思うので、そのつくる力をいかに培養していくかということが文化政策の中心であり、そしてそれがまた世界に対して大きな力を、意義を持ってくるだろうと思うのであります。
そういう面から、教育の面におきましても、臨教審というものをつくりまして、自由なすがすがしい、そういう教育体系に変えて、子供の創造力、そういうものを培養していくとかあるいは国際性を持った国にして、
日本が世界の文化ともっと接触して交流できるようにするというようなこととか、あるいは
日本は文化の輸入量は非常に多いけれども輸出量は極めて少ない、そういう
意味で
日本を発信基地とする文化政策というものをもっと我々は推進しなければならぬ。
そういう
意味におきましても、
日本のアイデンティティー等々も検討するための国際
日本文化
研究所をつくるとか、あるいは先ほど申し上げましたような、この交流の一環として、西ベルリンの旧
日本大使館を
日本ドイツ文化センターとしまして東西交流の文化の
一つの中心にしたいと思って、これはことしの秋に竣工式が行われますし、次いでフランスのパリに同じような文化センターとしての
日本館を建設しよう、こういうことで、幸いにフランス側から土地の提供がありましたから、いよいよ来年は設計に着手しまして、国際コンペでその建築を募集しようかと思って、来年はそれ相応の
予算を計上したい、そう思っておるわけでございます。
そのほか、
外務省の機関等を通じまして、
日本の歌舞伎をこの間もモスクワ、レニングラード等を巡回させまして、もう大変な評判で、圧倒的な何といいますか感銘を与えたようであります。
そういうようないろんなことをこれからも積極的に努力してまいりたいと思う次第でございます。