○久保田真苗君 私は、
日本社会党・
護憲共同を代表して、
防衛庁設置法及び
自衛隊法の一部を
改正する
法律案及び
防衛庁職員給与法の一部を
改正する
法律案に関し、
総理並びに
関係大臣に
質問いたします。
初めに、
我が国の防衛政策についてお伺いします。
まず、このたび発表されました防衛白書は、冒頭に「軍事力の意義」という一文を掲げております。これによりますと、「軍事力の役割ないし
機能は、究極的には力によって相手に対する要求を充足」させることであるとか、あるいは「強力な軍事力を背景として相手を威圧することなどにより
政治的な
影響力に転化」するなどの説明がなされています。
このような攻撃的な軍事力の意義づけは、平和憲法の精神に照らして、
我が国としてはとても認めることのできないものだと
考えますが、
総理のお
考えを伺います。
〔
議長退席、副
議長着席〕
第二は、米国の前方展開戦略と
日本との
関係であります。
白書は、米ソの対決する二極構造の視点から、米国の対ソ前方展開戦略の最前線として、ソ連の艦艇の出入口に位置する
日本の戦略的な重要性を一段と強調しております。特に、そこからソ連のSLBMが米本土を直接攻撃できるとされるオホーツク海の重要性が高まる中で、白書は、北部
日本の防衛を重視する侵略への対処の作戦を登場させています。
これまでの
総理の発言、
日本列島は不沈空母、海峡封鎖、米国はやり
日本は盾という
日本の役割、あるいはペンタゴンから出た、
日本は熊のおりのしんばり棒の役割をみずから買って出ているわけです。
日本はだれのために
国土を盾にするのでしょうか。このように
日本を対ソ最前線の盾にすることが国民の大多数に支持されるものでありましょうか。
総理の御認識を伺います。
第三に、白書は、単純明快にソ連を一方的な悪者とし、その侵略を想定し、侵略への対処を展開していますが、米国と異なり
我が国にとってソ連は隣国であります。隣国をこのように敵国扱いすることが、緊張の緩和に少しでも役立つのでしょうか。これでは対ソ外交の成果などは望むべくもないと思いますが、外務大臣はどうお
考えですか。
総理は、ソ連との平和的共存はお
考えにならないのか伺います。
第四に、洋上防空の意味と
内容についてであります。
当初、
防衛庁は、洋上防空はシーレーン防衛における経済脅威が増大したこと、すなわち、主に航空機及びミサイルの進歩に対処するためのシーレーン防衛の一環である旨説明しましたが、さきの
予算審議の際には、洋上防空は防空
機能の一部であるとして、いわゆる本土防空の拡大であることを明確にしました。
我が国国土上空における要撃を中心として対処するという従来の
構想からの質的転換であり、防衛の範囲の拡大という重大な
問題であります。洋上防空の
内容につき
防衛庁長官の明確な説明を求めます。
また、このような重大な
内容を、
政府はいつ、どこで決めたのでしょうか。
第五には、防衛計画の大綱についてであります。
政府は、お題目のように、
我が国の防衛力は、質的にも量的にも大綱水準にまだ達していないと言ってきましたが、果たしてそうでしょうか。量的には、四次防完成時に既に達成しているとされていた大綱水準が、毎年、莫大な国民の血税をつぎ込みながら、逆に量的には、減少してきたということは、
政府が兵器の更新のたびに、ひたすら世界の一級品、すなわち最新かつ最強の高額な兵器の購入に奔走していたからではありませんか。
しかも、中期防衛力
整備計画においては、数量的にも増強され、その完成時にはF15戦闘機百六十三機、P3C対潜機九十四機など、能力面においては世界でも屈指の軍事力を持とうとしているのであります。これだけ第一級の兵器のみをそろえることが、どうして必要最小限の防衛力だと言えるのか理解に苦しむところであります。国民にわかるように御説明願いたいと思います。
このように
考えますと、
政府は大綱水準の達成を目指すとして、いかにも小さな防衛力の
整備をしているような説明をしながら、その実は、大綱の精神である基盤的防衛力
構想すら無視した正面偏重の防衛力
整備を続けて、みずから大綱水準からの後退を生じさせていると言わざるを得ません。そのような反省もなく、大綱水準に達していないのは防衛費が少ないからだと言わんばかりの姿勢で、これ以上の防衛力
整備に走るのは筋違いも甚だしいと
考えますが、
総理の御
所見を伺いたいのでございます。
さて、これらの背景で破棄されたのが防衛費の対GNP比一%枠の歯どめです。この
政府の決定に対しては、
総理及び
防衛庁長官の強気の姿勢にもかかわらず、国民及び近隣諸国からの懸念の声と批判は依然として強いものがあります。民意を反映せず、謙虚さを失った
政治は恐ろしいものです。
総理は本当に今でも、一%枠の撤廃が民意を反映し、かつ国民の支持を得ていると
考えておいででしょうか。率直にお聞かせください。
私は、重ねて今回の閣議決定の破棄と、今後も一%枠の遵守を主張するものでありますが、お答えをお聞かせください。
もう
一つの
中曽根内閣の特徴は、日米安保体制の絶対的優先政策であります。
総理は就任早々、武器輸出三
原則に風穴をあける対米武器技術供与を決定し、
我が国の技術力を米国の軍事力向上に役立てる道を開きました。この方向は、過日、日米間で署名されたSDI研究参加に関する
政府間協定まで発展し、今や
我が国の技術は米国の核戦略までも含む軍事力の全面的補完をする体制になってきております。国是である非核三
原則についても、核搭載の疑惑がある艦艇の寄港を認めるなど空洞化を図ってきました。
さらに、最近、核兵器事故に対処し得る爆発物処理第一グループ分遣隊が、横須賀、佐世保に常駐していることがアメリカの公文書で明らかになったのでありますけれども、核の通過、持ち込みの疑惑はますます濃くなっております。この際、改めて、長い間
国会の論議で形成されたこのような基本政策について
総理のお
考えを伺いたいと思います。
駐留米軍に対する思いやり
予算は年々増加しましたが、ついに地位協定の枠外の経費までも特別協定を締結して配慮いたしました。しかも、その結果は、沖縄県における海兵隊クラブ従業員の大量解雇通告であったのですが、この点はどうなっているのか、
関係閣僚の説明を求めます。
防衛費についてまで、米国は内政干渉にも等しい赤裸々な増額圧力をだんだんかけてきており、
政府童言葉では自主的にと言いながら、米国の顔色をうかがいつつ決定しております。
総理、日米安保体制は
我が国がこれほど卑屈なまでに遠慮しなければ成り立たないものなのでしょうか。また、
我が国が利益だけをこうむり、・米国のお情けによって平和を守ってもらっている、そういう認識をお持ちなのでしょうか、御
所見を伺います。
さて、本
法律案の
内容に対し
防衛庁長官に伺います。
自衛官の定員は、今回の増員が認められれば二十七万三千二百七十八人となり、発足当初の一・八倍となります。しかも、過去十七回にわたりなし崩しに増員をしてきたのであります。
政府は、自衛官の定数増の具体的な
理由をもっと明らかにすべきです。
防衛庁は、装備品の就役等に伴う増員としておりますが、非常に大ざっぱな説明で不十分であります。一般の国家公務員の定員については
行政改革の名のもとに計画的に削減され、かつ増員は厳しく抑制されていることから、多くの官庁で純減を余儀なくされておるのです。一方、自衛官は必要だから増員すると言わんばかりの説明であります。各省並みに増員の具体的内訳を明らかにしていただきたいと思います。
第二は、予備自衛官の増員
理由であります。
予備自衛官は、今回の増員で四万六千四百人となり、発足当初に比べ三倍以上となります。そして予備自衛官の将来
規模については依然として何も明らかにしておりません。一体どのような
構想のもとに今回の増員を行おうとしているのか、明らかにしていただきたいと思います。
また、昨年の増員の際に、自衛官未経験者からの予備自衛官採用を
検討するかのようなお話も出ましたが、このような
考えはきっぱりとおやめになったのか、伺いたいと思います。
さらに、以上のことを背景としまして、最近特に
問題となっている点について幾つか伺います。
第一は、NLP訓練基地の
問題であります。現在、
政府は、その建設
対象を一方的に三宅島に絞り、島民の強い
反対にもかかわらず、建設への準備に着手したことはまことに遺憾でございます。そもそもこの
問題は、空母ミッドウェーの母港化に端を発していますが、最大の
問題は、
我が国のように
国土が狭く、人口密度が高いところで最前線の航空機部隊が訓練を行おうとすること自体が常識から外れていることでございます。
政府が真に国民の生活を
考えているならば、訓練の中止もしくは訓練の制限等にまず努力すべきだと
考えますが、そのようなお
考えは持てないのでしょうか。
国はもう少し国民を愛してほしいというのが島民の痛切な叫びなのであります。これに対する粟原長官のお答えは、安保、これは
日本の国是じゃないか、それよりも生活の方が大切という言い方の方がどうかしているという叱咤であったことを
国会答弁が示しています。長官は正気でそうお
考えなのでしょうか。もしそうならば、平穏な生活権を常住不断に奪われる国民にとっては、
政府の存在意義などないに等しいものであります。
このことは、現に存在する基地の騒音
公害として差し迫った
問題となっております。現在、
我が国には、米軍及び自衛隊使用の飛行場は五十数カ所あり、大部分の基地周辺
住民は耳をつんざく騒音に悩まされ続けています。嘉手納、横田、厚木、小松では
住民による
訴訟が提起されております。最近の横田基地
公害訴訟に対する控訴審では、
住民らに与える睡眠妨害、会話妨害、心理的不快など
住民らの被害は特別の受忍限度、耐え忍べる限度を超えるものと判示しているのであります。
判決は国に慰謝料の支払いを命ずる一方、侵害行為者は米軍であって国ではないから、国に米軍の使用規制を求めることは適当でないと門前払いをしておりますが、それならば、米軍の行為から被害を受けている国民はどうしたらいいのでしょうか。外務大臣に御教示願いたいのであります。また、米軍はこのような状態をどう
考えているのでしょうか、あわせて御教示願います。
そもそも外国の空母に母港を提供する基地も世界にためしがなくしかも、その艦載機が昼夜を分かたず
首都圏の人家を圧して訓練飛行を続けるためしもないと聞きます。
政府はなぜ
日本国民をこうまでおとしめるのでしょうか。
その一方で、
政府は、横須賀と清水に商業、住宅、レクリエーション等の多
目的大人工島をつくる予定と聞きます。米軍住宅に対しては、
住民の声に耳もかさず、貴重な池子の森を犠牲にしようとしているのにです。
政府は
住民の悩む基地
問題について、なぜもっと本腰を入れて解決しようとしないのですか。少しは国民を愛してという声に、
総理、
関係大臣はどう答えられますか。
三宅島については、島民の理解を得ないで基地の建設強行を行わないことを確約していただきたいと思います。
さらに、先日の奈良県におけるミッドウエー艦載機が起こした事故にも見られるように、地位協定上は訓練空域以外でも米軍機は自由に訓練を行っているという実態が明らかになっており、
政府もそれを認めております。しかし、
政府は、米軍に国内法の適用がないと言って、いつも事後対策を講ずるのみです。どこの飛行機であろうと危険は危険なのであります。抜本的な是正をすべきと
考えますが、
総理及び
関係大臣のお
考えを伺います。
また、前回の本
会議でココム違反事件について、
総理はこれが極めて悪質な事件と断言されたのでありますが、
政府が今奔走しているのは、ひたすらに米
法案から東芝制裁条項を外すことであります。その代償は国民一般への高いツケとなってくるでありましょう。本来、
我が国の憲法の精神と武器禁輸
原則に従えば、武器及び関連技術の輸出はいかなる国に対してもなされてはならないのであります。しかし、
当事者は国民に背を向けたまま、ひたすら米議会と米国民への陳謝を繰り返しているのであります。
当事者が第一に謝罪すべきは
日本国民に対してではありませんか。
総理の所感をお聞かせください。
最後に、私は
総理に一言申し上げたいのであります。
総理は、先日軽井沢からのテレビ放映で、
日本人の生活はよい、高いのは住まいと食料だけだということを言われたのでありますが、食と住とは他のものに増して必要不可欠な生活の基本ではありませんか。食と住に安んじない社会は悪い社会ではないでしょうか。平穏な生活権の侵害が放置され、自国
政府の手によって一層
推進さえされる社会は悪い社会ではないでしょうか。労働分配率はいよいよ低く、
土地の値段はいよいよ高く、労働時間の短縮についての
法改正は外国向けのただの見せ金になり果てているのです。
総理の一貫した軍事優先政策によって、国民の福祉は徹底的に切り詰められてまいりました。これが経済大国を築いた勤勉で有能な
日本人の受けるべき報いでしょうか。このままでは、愛国心を説く
中曽根内閣の五年間は一言で言えば、国民を愛さない
政治だったということに尽きるのであります。
総理はどうお
考えでしょうか。
対米一辺倒の
我が国の
政治、経済、軍事は、今そのために行き詰まりつつあり、世界から孤立した
日本、友人を持たない
日本の姿があります。米国との間にさえ険しい
関係が存在します。この
政治の大きな弱点を克服し、国民を愛する
政治、諸外国から信頼される
政治に生まれ変わることを念願いたしまして、私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
国務大臣中曽根康弘君
登壇、
拍手〕