○伊江朝雄君 私は、自由民主党を代表して、
中曽根総理並びに
関係大臣に対して、現下の諸
情勢について
質問するものであります。
もはやその一挙手一投足が
世界の各国から注目され、
世界経済の動きに大きな比重を持つに至った
我が国の国際社会に臨む
立場と
政策並びにこれに伴ってこれからの
国内経済の運営に伴う諸問題について
質問をすることにいたします。
まず初めに、過般イタリアの
ベネチアで行われた
サミットについてであります。
今回の
サミットは、昨年の
東京サミット開催時に比べて
世界経済の全般的
状況が必ずしも明るくなく、巨額な対外不均衡の継続、発展途上国の債務累積問題、保護主義圧力の高まりなど、多くの困難な
状況が存在する中で開催されたわけであります。
一部マスコミは、新味のない
サミットと報じましたが、それはまことに当を得ない論調であります。
サミット参加の各国首脳が自由貿易を擁護し、ドル安がこれ以上進行することは
世界経済にとって望ましくないとの点で意見が一致し、
サミット参加国首脳の間で、為替相場の安定促進のため緊密に
協力していくことが合意され、
黒字国には内需の拡大を、赤字国には
財政不均衡の是正を促し、各国間の
政策を
効果的に調整するための指標が選ばれました。このことは
我が国のみならず
世界経済の持続的
成長と不均衡の是正のため極めて重要であると
考えます。
また、今回の
サミットにおいては、米ソの軍備管理、軍縮交渉を中心とする東西
関係の改善と安定、ペルシャ湾における航行の安全、テロリズムの防圧や
我が国が提唱したヒューマン・サイエンス・プログラム等を通じて重要な合意がなされたのであります。新味がないところか、大きな成果が上がったのであります。
総理、昨年の
東京サミットの中心人物が
レーガン大統領であったとすれば、ことしの
ベネチア・
サミットでは我が
中曽根総理であったと高く評価している外交評論家がおります。確かに、
中曽根総理は、今回の
サミットに
減税を含む六兆円の
国内緊急経済対策、三百億ドルに上る
黒字の還流、五億ドルのサハラ以南アフリカ諸国に対する無償援助等々、
我が国が行う具体策を携えていったただ一人のリーダーであったのであります。このことは、
日本が
世界を支える太い柱であり、応分の
責任を分担していく
決意を
世界各国、特に
世界の首脳に強く印象づけるとともに高い評価と期待を得たのであります。
中曽根総理は、
世界のリーダーの一人として堂々と期待を担われて振る舞われたことに我々
国民は大いなる誇りを感ずるのであります。この十月に
総理としての
責任ある締めくくりをされるに当たっての大きな功績であろうと存じます。まことに御苦労さまでございました。
同時に、思い切った
緊急経済対策を立案し、ややもすればこれまで
縮小均衡型の
財政を前面に押し出していた
政府の
財政政策から、
内需拡大を軸とする
経済構造の
転換に向かって
積極財政への転機を求めて
政府をリードした我が自由民主党の
努力と先見性に
拍手を送るものであります。
我が国の
姿勢が問われるのは、しかし、これからであります。いかに着実に
世界に
公約したことを実行するかにあります。
総理の御
見解と御
決意を承りたい。
次に、これに関連して、
緊急経済対策が策定され、裏づけとして大型
補正予算が今回組まれたわけでありますが、今回の対策は、現在、衆議院の
税制改革協議機関で検討されている
税制改革、その一環としての
減税を除いても五兆円に達する大型のものであり、
昭和五十年代以降、
経済対策としては過去最大のものであります。しかも、国費、地方団体及び
財政投融資を合わせ、六十二年度に支出が予定されるいわゆる真水は四兆六千百億円と
試算されておりまして、景気の底固めと
内需拡大に力強い
効果を発揮するものと期待されます。しかし、
経済の先行きあるいは
国際収支への影響について、その
効果を疑問視する向きも見受けられます。
したがいまして、私は
政府に対し、この際、今回の対策による
経済成長率、
国際収支の改善等の
経済の諸
効果を明確に
国民にお示し願いたいと思うのであります。
次いで、今後の
基本的な
経済運営についてでありますが、今回の
補正予算により公共事業
関係費は七兆四千五十億円となり、前年度当初
予算に対して一九%の伸びを確保し、
昭和五十九年度以来毎年減額を続けた
予算に歯どめがかかりました。問題は、今後の
財政運営の
方針であります。
なるほど、今回、
積極的な
内需拡大策としての
財政追加を行いましたが、仮に六十三年度
予算で再び公共事業費の
削減が行われるといたしますならば、
緊急経済対策はまさに一時的、糊塗的な
措置にとどまり、せっかく盛り上がり始めた民需に水をかけ、内需型へ
転換しようとする
経済構造にデフレ的悪影響を及ぼしかねません。私は、来年度においてはもとより、今後三年、四年にわたる中期的構想のもとで息の長い持続的な内需主導型
経済を定着させ、
財政を中心に
拡大均衡型の
政策運営が不可欠と
考えるのであります。
と申しますのも、日米不均衡拡大の要因が、
米国側の超過需要によりもたらされた
アメリカの
財政赤字及び
経常収支の赤字体質と、
日本側の今日までの内需不足に基づいてもたらされた輸出依存体質及び
経常収支黒字体質という構造的要因によるものであり、したがって、
米国政府が国際競争力回復と
財政赤字の
削減を図り、
日本政府が
内需拡大による構造
転換を図るためには、中期的に持続されることが必要であるからであります。これにより
経済の
潜在成長力が持続的に引き上げられ、
政府が今日まで必死に取り組んでいる
財政再建にも、結果的に税の自然増収を通じて寄与することになるからであろうと思うのであります。
さてそこで、当面の問題として、来年度の概算要求基準をどのように設定するかについて伺っておきます。
また、これに関連いたしまして伺いたいことは、六十一年度の
剰余金及び六十一年度の
NTT株売却益の使途についてであります。
まず、六十一年度の税の自然増収は約二兆四千億円に達し、このうち四千三十億円は本
補正予算の財源として計上されておりますが、今後、
地方交付税分等を差し引いたといたしましても、なお一兆三千億円程度の純
剰余金が残ると見込まれております。この
剰余金は法律どおり二分の一を次年度の
歳入に、残りの二分の一を国債償還に向ける
おつもりかどうか伺いたい。
また、
NTT株は予想を上回って高騰しておりまして、六十一年度と同様、本年度も多額の
売却益が予想されます。本
補正予算に六十一年度
売却益のうち四千五百八十億円が計上され、公共事業のための無利子融資に充当されますが、この
NTT株式売却収入の活用に当たって、なぜに従来の補助金や
減税ではなくて、無利子貸付
制度を創設することにしたのか、その
理由を伺いたい。同時に、六十二年度の場合、どう処置するかについてもお
考えをお示し願いたいと思います。
続いて、
財政再建の問題についてでございますが、
中曽根内閣は今日まで
昭和六十五年度赤字国債からの脱却を
目標に専心
努力してまいりました。すなわち二十一世紀を展望して
財政のあるべき姿を問い、高度
成長の情性による
歳出の膨脹体質に歯どめをかけて、
予算の圧縮、縮小というだれもが予想し得なかった成果を上げたことは
財政再建の最大の功績と言えるのであります。我々自由民主党も、この間、歯を食いしばってこれを支え、推進してまいりました。今後も
財政改革、そして行革は不断に継続すべき
課題でありますけれども、その反面、従来の
財政再建は、ともすれば
目標に近づこうとする余り、
経済の
状況変化やその
施策の重要性に対して柔軟に
対応する妨げとなったことも率直に言って否定できません。
今や、私は、従来の
財政再建を抜本的に見直し、新たな視点に立って
財政改革を進めるべきときに来たと思っております。すなわち、今までのように一定
期間を定めて機械的に赤字国債の発行額を
削減する硬直的
財政運営から、
建設国債をも含めたすべての国債を対象に、
国民総生産に対する国債残高の比率を徐々に一定に保っていく方式に
財政目標を改め、
経済の変動等に適切に
財政が運営できるように変更すべきではないかと思いますが、
政府の
見解を承りたい。
次に、
雇用問題についてでありますが、造船、鉄鋼を初め、製造業を中心として大量の
過剰人員が生じておりますことは御承知のとおりでありますが、このため出向、配転、一時休業の
実施や
希望退職の
募集等の
雇用調整が進められており、特に
不況業種等における
雇用調整の進展は、地域の
雇用情勢を悪化させ、企業城下町、輸出関連の中小企業産地等において深刻な
雇用問題となっております。
さらに、これは
産業構造上の問題としてではありませんが、先ほども
野党議員がもの御
質問があったが、新たな
雇用不安の問題として発生しております。それは
我が国における
米国基地の五〇%を超す沖縄において、つい最近、
円高による
アメリカ軍の緊縮
政策によって三百名を超す基地従業員の大量解雇の通告を受けるなど、新たな深刻な問題が発生しております。いわゆる思いやり
予算によって救済策を講じるとか、就職のあっせん、金利の安い転業資金の貸し付け等、今後においても発生が予測される同種問題として善処すべきである。こうしたいろいろの
状況や今後の
経済構造調整の進展を
考えますと、
雇用問題の解決はまさに国政の最重要
課題となってまいったと
考えるものであります。
政府は、三十万人の
雇用開発プログラムの機動的、着実な
実施に努めると言われるが、具体的に
雇用対策をどう進めていかれるのか、御
見解を承りたいと思います。
次に、
経済構造の調整をどう進めていくかについて伺います。
この五月に行われた
経済審議会の建議「構造調整の指針」の前文に、「
世界の
GNP一割国家」の
日本であるが、「
国内に目を転じると、低い居住水準、高い生計費、長い
労働時間に象徴されるように、必ずしもこれまでの
経済成長の成果が生活の質の向上に反映されているとは言い難い
状況にある。さらに、
円高の下で、現実の為替レートと我々の生活実感からみた円の値打ちとのギャップが拡大している。このため、
国民は強い円が生活の質を高めたのか」そういった疑問を強めております、率直に申しまして。「また、一昨年九月以降の
円高は、種々の摩擦を生んでおり、
国民の間には
我が国経済の将来について不安」を感じると、その前文には指摘されております。
東京における土
地価格の異常とも言える上昇によって、マイホーム
建設の夢が遠のいたことを嘆き、
円高によって電気やガスについての差益還元はあったものの、ガソリンの価格や
国内産の食料品価格等々に
円高の利益を受け得べきものがあるにもかかわらず、それがなされていないと家庭の主婦は嘆いております。
私の今までの
質問の中での幾つかの指摘は、まさに多くの
国民の実感と軌を一にしております。こうした中で、今後
政府は
経済構造の調整をどのように進めていかれるのか、
総理の御
見解を承りたいと存じます。
次は、
税制改革についてであります。
前
国会の衆議院
議長の裁定により、
税制改革は衆議院の税制
協議機関の各党
協議にゆだねられております。当時の衆議院
議長の調停案によれば、
直間比率の見直しを含め、
税制改革について早急に結論を得る、と記されております。その後、今日まで鋭意各党
協議が進められているものの、なお結論を得るに至っておりません。各党
協議が整わない最大の
理由は、
直間比率の是正を認めるか否かにかかっているようであります。しかしながら、最近の調査によれば、
国民の間に
税制改革の
必要性が強く認識され、七割以上の人々かこれを
支持しており、特に、
不公平税制の見直しが先決ではないかとする意見や
直間比率の是正を求める声が強く出されております。
総理は
演説で、二十一世紀を展望した新たな望ましい税制の
実施に向けて最大限の
努力を傾けると申されました。改めて今、
税制改革を急がねばならないその
理由と、また、これに取り組む
決意について
国民の前に明らかにしていただきたいと存じます。特に、
所得税等の
減税は
緊急経済対策に盛り込まれ、既に国際
公約となっておりますので、恒久財源を確保して思い切った断行を切望いたしたいのであります。
また、
国民の間から担税の不公平感を除去してほしいとの要望について、必要とされる財源が確保されるならまことに喜ばしいことであります。
政府は現在、そのいわゆる
不公平税制の具体的
内容についてどのように
考え、どのようにこれを改めていかれるかお示し願いたいのであります。
私は、率直に言って、現行税制の
所得、法人に対する直接税中心主義はもう限界に来ていると
考えております。不公平感を除去する税制、すなわち、
所得、消費、
資産の三要素に対し適切にバランスのとれた課税をすることで
国民の納得が得られると思いますし、その方向で
努力することが大切と
考えます。
また、今後二十一世紀に向けて活力ある
経済社会を構築していくためには、製造業の活性化を初めとして新技術の研究と開発等、その活力を維持し、培養していくことが必要であります。しかるに、現在の
円高等のもとで企業の体力は弱まり、製造業の設備投資は六十一年度に対して九・二%減と大幅に落ち込みを見せております。このような時期にあってこそ設備投資
減税を速やかに
実施していただきたい。そしてまた、同時に加速度償却を行うことが必要であろうと存ずる次第であります。これについての所見を伺いたい。次に、今後、人口構造の高齢化が急ピッチで進んでまいります中で、恩給、年金を初め福祉
制度が健全かつ安定的に維持運営されるためには膨大な資金が必要であります。この費用は、いずれ加入者のみの負担に依存するには限界があり、やがては破綻につながります。その典型が旧国鉄の鉄道共済組合の
財政危機の姿であります。
政府は、五十九年二月二十四日の閣議で、公的年金
制度は
昭和七十年度を目途に一元化をすることになっている、しかし、この公的年金の共済組合グループの中での鉄道共済組合の
財政は、六十五年度から統合時の七十年度までの間が最大のピンチを迎えると予想され、憂慮されているところであります。この救済の方途について伺いたい。
同時にまた、福祉
政策の拡充維持のための新たな税制を導入する
考えはないかどうか、これについても伺いたい。
いずれにいたしましても、今後、
税制改革についての展望と今後あるべき姿についての
政府の力強い
見解を伺いたい。
次に、日米
経済関係について伺いたい。
昨今の日米
関係は、両国が二大
経済大国として総体的には確かに相互依存
関係を強めております。この基調は将来とも変わらないと思います。
総理、「アメリッポン」という新語があるのを御存じですか。カーター
政権当時の大統領首席補佐官を務めたブレジンスキーという人がつくった新語であります。
アメリカと
日本を接続させた、いわゆるハイブリッドされた
言葉であります。その意味は、
日本の
協力なくして
アメリカの
経済回復はあり得ないという一体感の
主張なのであります。日米が相互に助け合わなければならない
情勢であることは、もはやだれも異論はないはずであります。
アメリカ財務省が発行した証券、略称TBのことし五月の競争入札において、機関投資家等を含めて
日本勢が、TB発行額の四五%、約四十億ドルを購入している。申すまでもなくTB売却代金は、
アメリカの
財政資金となっております。すなわち、
アメリカの
財政資金調達に
日本は大きく貢献していることになるわけであります。このことは、日米相互
協力の
一つの事例としてぜひ記憶にとどめるべきことでありましょう。
しかしながら、他方、
我が国の対米貿易
収支の大幅な
黒字や
円高問題、半導体、米、農産物の問題等、個別
経済問題としては双方に深刻な対立があります。
アメリカの対日要求は、マクロ的に言えば
貿易黒字問題と
内需拡大問題、ミクロ的には個別品目の両面があると言えるわけであります。
昨年五月の
東京サミットで、
経済サーベイランスという相互の
経済活動を監視しようという
提案があったことはいまだ我々の記憶に新たなところでございます。これは要するに、主要国の
経済指標を相互に監視し、
経済政策協調の実を上げることによって為替の変動をできるだけ少なくしようということであった。今回の
ベネチア・
サミットにおいてもその基調は変わらない。しかしながら、相互の
経済活動の監視ということは、内政を監視することにほかならないのであります。そういうことを建前に、だんだん
アメリカが個別品目あるいは個別問題、例えば
国内税制や今現に問題にされている米の問題等々、今後ともその風潮が高まってくるのではないか。率直に言って、内政干渉のアプローチを広げ、それを許すことに相ならないか。日米
経済関係のそういう一面についても御
見解を承りたい。
一方、特に
米国においてかなり保護主義的色彩の強い貿易法案が議会で
審議されておりますことや、半導体問題のように一方的な対抗
措置をとる傾向も強まっております。
米国内のこのような保護主義的動きは、
日本経済パートナーシップの
立場からも、アメリッポンと言われる
協力関係からも好ましいものとは
考えられない。
政府としてどのように見て、いかように対処されるか、お伺い申し上げたい。
そういう
情勢の中で、
我が国の
昭和六十一年度貿易
収支黒字は一千億ドル以上になり、
経常収支不均衡の是正を為替レートの調整のみによって行うことはもはやできない
状況に立ち至った。したがって、
我が国は率先して保護主義を防止し、自由貿易体制を強力に維持することに努めなければならないと思います。まず隗より始めよで、より一層の輸入拡大、
市場開放が必要でありますが、これについての御
見解も承っておきたい。
また、近年、対米直接投資が急速に増大し、従来の貿易摩擦に加え新たな
経済摩擦発生の
懸念が出てまいっております。海外直援投資は、本来、輸出
転換効果を通して
我が国の対米貿易不均衡の是正と
米国の
経済成長に貢献する性質のものであったはずでありますが、急速な増大、過度の対米工場進出は投資摩擦を生ずるおそれがあります。事前に手を打つ必要があると思いますが、これについての
政府の
見解も伺っておきたい。
次に、
世界平和に対する貢献について伺いたいのでありますが、今まで述べてきたように、
経済の面でもグローバルの
立場から各国が協調しなければならないことは当然であります。
世界の平和のためにも、
世界各国の相互依存
関係を一層深めてまいらなければなりません。今日、
世界の平和と繁栄なくして
我が国の平和と繁栄もあり得ないのであります。
世界の平和のため
積極的に貢献すべきものと
考えられます。
他方、現在の国際
情勢は、東西
関係が軍備管理交渉を中心に一定の進展を見せているものの、その長期的趨勢は予断を許さないものがあり、また、
世界各地にはカンボジア問題、イラン・イラク紛争等の地域紛争が見られ、引き続き解決のめどが立っておらず、テロ行為も相変わらず生じております。
このような
状況のもと、先般の
ベネチア・
サミットで安定的で
建設的な東西
関係の構築を目指した西側の平和意思及びその協調と結束が確認されるとともに、イラン・イラク紛争、テロリズムについても声明が出されたことはまことに有意義であったと
考えます。
日本は、原油輸入の半分以上をホルムズ海峡に依存し、ペルシャ湾の安全航行の最大の受益国の
一つでありますが、この地域の安定には、国際社会の
責任ある一員として貢献すべきものと
考えます。
この六月、
アメリカのジョン・レーマン前海軍長官が、
アメリカはペルシャ湾の防衛のために年間四百億ドル、約五兆六千億を支出していると
演説をぶち、その半額を
日本に肩がわり請求すべきであるということを言ったというふうに聞いておりますが、中近東からの石油輸入に依存している
日本の今後のこれに対する
総理の御
見解を承りたいと思います。
関連して、FSX、いわゆる次期支援戦闘機選定問題でありますが、現在、
米国との共同開発を含む開発、現有機の転用及び
外国機の導入かという選択について防衛庁において専門的検討を進めていると承知しております。本件は、九〇年代後期から配備を目指すものであるだけに、二十一世紀にかけて通用する性能を有するものでなければなりません。それだけにその選定は慎重を期すことは当然のことであります。
ここでぜひ考慮願いたいことは、その選定が
日本独自の航空機産業の技術水準の維持向上につながり、
我が国の防衛や産業の面で極めて有意義であることを念頭に置き、日米の貿易上の問題と絡めることなく純防衛的見地から、
米国の
理解を得つつ
我が国の自主的判断によって選定すべきものと思うが、
政府のこれに対する御
方針を承りたい。
次に、第四次総合開発
計画についてでありますが、
昭和七十五年を目途とするこのたびの第四次総合開発
計画、いわゆる
四全総は、定住と交流による地域の活性化という理念で、交流ネットワークの構想を打ち出しておりますが、その点私は高く評価いたしております。そこで、交流ネットワークを交通問題の面から取り上げて
質問をいたしたい。
四全総では、
全国の主要都市間の移動に要する時間をおおむね三時間以内、地方都市から複数の高速交通機関へのアクセスをおおむね一時間以内とすることを目指す一万四千キロの高
規格道路構想を打ち出しております。これによれば、人口五万人程度の都市もすべてこのネットワークの中に入り、
東京圏への一極集中の機能を分散させる
効果として高速交通体系の整備を私は高くまた評価する次第であります。
そこで伺いたい。国の資金による投資で一万四千キロの高
規格道路についてはその構想を鮮明にされておるのに、高速大量の旅客輸送機関である新幹線は、道路
建設と同じく国の資金による投資であってよいはずの
建設構想がなぜに不鮮明になっているのか、二十一世紀に向けての国土開発の
立場からはいささか疑問なしとしない。改めて
政府の
見解を伺いたいと思います。
次に、
四全総では、国際基幹空港として成田及び新設中の関西空港を位置づけておりますが、これは当然なことであります。現在、成田空港の受け入れ容量、滑走路容量は年間九万回の発着容量であります。現在既に八万五千回に達している、限度いっぱいであります。また、関西空港の供用開始は
昭和六十八年予定になっている。この間に
我が国に乗り入れの希望をする国が何と三十九カ国に及んで、みんな待ったをかけられている。
したがって、
環境条件とか立地条件、そういった受け入れの条件等が整い、例えば海から入って海に出ていく、そういう離発着が可能で、しかも二十四時間開港体制がとれて、今直ちにでも
対応し得る地方空港、例えば沖縄とか長崎などの地方空港を国際空港化して中継基地とすべく
四全総計画中の検討
課題にのせるべきであると思うが、
政府の
見解を伺いたい。
次に、開発に伴って起こるトラブルについて、国あるいは地方公共団体の行う開発、空港
建設などの大型プロジェクトやこのたびの
四全総の
実施に伴う開発もそうでありますけれども、必ずといってもよいぐらい開発があるいは資源保護かの選択をめぐる地域のトラブルが発生しております。
行政庁においても裁定に時間を要し、開発がおくれ、その目途さえつかないといった例が多々見受けられる。今後ともそういった事例が多くなると思われる。したがって、
一つの提言でありますけれども、こういったことを解決するため、最終的
決定の司法機関をまつまでもなく、
政府機関を離れた中立的な
立場で裁定、調停できる権限を持つ機関の設置を
考えるべきではないかと思うのでありますが、御
見解を承りたい。
次に、海外における子女
教育と帰国子女の受け入れ
教育の問題について御
見解を承りたい。
まず初めに、
中国帰国孤児の定住対策についてであります。
報道によれば、厚生省は、来年度
全国に約二十カ所の研修センターを新設して、帰国
中国孤児の定住先での
日本語指導や生活相談、就職活動を国が一貫して世話し指導する体制を
強化する
方針と聞くが、そうだとすれば、これはまことに時宜を得た
施策であり、ぜひ推進してもらいたいと思うが、それについての
総理の御
見解を承りたい。
次に、海外における子女
教育と帰国子女の受け入れ
教育の問題であります。
日本の
経済が
世界的規模において拡大発展するに伴って海外で活躍する
日本人がふえ、およそ十年前の約二倍に当たる二十五万人を超す
状況であります。在外居住者の悩みは、滞在
期間の長期化によって
日本の子供たちとの
教育の格差をどうやって埋めるかという問題と帰国後の受け入れの不安についてであります。
一方、
日本に滞在する
外国人は、六十一年の十二月末現在で、
全国に実に八十六万七千人余に及んでおります。その数は今後もふえ続けてまいるでありましょう。これら
外国の人たちは、海外在住者として在留邦人が抱く悩みと同じ悩みを持つものだと思います。
そこで、これは
一つの提言でありますけれども、帰国子女は
国際感覚も身につけており、それぞれの国の話学も体得している。せっかく取得したこれら貴重な体験に磨きをかけながら、
精神的にも生活習慣の面からも、逐次祖国復帰させて有能な社会人、国際人に育て上げる必要があるわけであります。一方、在住
外国人の子弟にも
日本語や
日本の生活習慣になじませながら、
日本についてのよき
理解者として在日
期間を過ごしてもらう。この両方の目的を持つ
教育機関、インターナショナル・パブリックスクールなるものを設立してはいかがと思う。御検討願いたい。それについての御
答弁をいただきたい。
いずれにしても、臨教審の
教育改革に関する第三次答申においても、海外子女
教育、帰国子女の
教育に関し、受け入れ体制の整備充実、海外経験教員の活用等々、提言がなされておるのでありますが、それを踏まえて諸
施策を充実してほしいと思いますが、
政府の御
見解を承りたい。
質問を終わるに当たりまして、
総理にお願いがあります。
ことしの秋は、沖縄において天皇陛下をお迎えしての
国民体育大会が開催されます。ことしは沖縄の本土復帰十五年の節目に当たり、また、沖縄国体としては戦後各県一巡の締めくくりの最後の番を受け持つ番になっております。
総理は、十月には
総理としての
政治の締めくくりを
表明されておりますが、この時期に陛下にお供をしてぜひ沖縄国体に出席していただきたい。そして、戦後の困難な
状況からたくましく立ち上がった県民を励ましていただきたい。心から要望いたしまして、私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
国務大臣中曽根康弘君
登壇、
拍手〕