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1987-09-11 第109回国会 参議院 大蔵委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十二年九月十一日(金曜日)    午前十時開会     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         村上 正邦君     理 事                 大浜 方栄君                 梶原  清君                 吉川  博君                 赤桐  操君                 多田 省吾君     委 員                 井上  裕君                大河原太一郎君                 河本嘉久蔵君                 斎藤栄三郎君                 斎藤 文夫君                 福田 幸弘君                 藤野 賢二君                 矢野俊比古君                 山本 富雄君                 志苫  裕君                 鈴木 和美君                 丸谷 金保君                 塩出 啓典君                 和田 教美君                 近藤 忠孝君                 吉岡 吉典君                 栗林 卓司君                 野末 陳平君    政府委員        大蔵政務次官   藤井 孝男君        大蔵大臣官房審        議官       瀧島 義光君    事務局側        常任委員会専門        員        保家 茂彰君    参考人        税制調査会会長  小倉 武一君        全国銀行協会連        合会会長     神谷 健一君        主婦連合会事務        局長       清水 鳩子君        日本大学教授   吉牟田 勲君        立教大学教授   和田 八束君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○所得税法等の一部を改正する法律案内閣提出  、衆議院送付)     ―――――――――――――
  2. 村上正邦

    委員長村上正邦君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。  所得税法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  本日は、本案審査のため、参考人として、税制調査会会長小倉武一君、全国銀行協会連合会会長神谷健一君、主婦連合会事務局長清水鳩子君、日本大学教授吉牟田勲君、立教大学教授和田八束君、以上五名の方々の御出席をいただいております。  この際、参考人方々一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多忙のところ本委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。  御承知のように、税制改革は今日国民的重大な課題であります。今国会の最重要法案でもあります。本案について参考人方々のそれぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べ願いたいと存じます。  なお、議事の進行上、最初にお一人十分以内で御意見をお述べいただき、その後委員の質疑にお答えいただく方法で進めてまいりたいと存じますので、よろしく御協力をお願いいたします。  陳述いただきます順序は、お手元に配付してあります参考人名簿記載順でございます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。  それでは、まず小倉参考人からお願いいたします。
  3. 小倉武一

    参考人小倉武一君) 私、最近税制調査会余り開いておりませんし、税制のこと少し疎遠になっておりますので、ちょっとぴんとこないような御意見になるかと思いますけれども、少しお耳を汚したいと思います。  近年と申しますか、さらにさかのぼれば戦後四十年の間に産業・就業その他の諸構造変化があります。また人口構成が非常に高齢化してきているということもありますし、さらに高齢化する公算が大であるということもございます。さらに経済取引国際化というようなことで日本の国内だけでは処理しにくい国際関係も考慮しなければならないというような変化にも対応するという必要が生じてまいっております。ところがこういう近年の変化税制が対応しているかというと必ずしもそうではございません。  他方税制のひずみなりゆがみがありまして、納税者重圧感があるあるいは不公平感があるというような国民不満の声も高まっているやに承知しております。こうした近年の社会経済の著しい変化と将来の我が国経済・財政を考えますというと、現行税制につきまして抜本的な見直しをするということによりましていわゆるゆがみ、ひずみあるいは重圧感あるいは不公平感を取り除きまして、国民の理解と信頼に基づく望ましい税制を確立するということが緊要な課題になっておるというふうに存ずる次第であります。  かような見地から昭和六十年度以降、各方面で広く税制改正についての議論が行われました。政府税調におきましても、一年余りの間の慎重かつたび重なる審議の結果といたしまして、昨年十月に「税制抜本的見直し」という題での答申政府に出した次第であります。  この答申の趣旨に準じまして通常国会提出されました法案におきましては、いわゆる税制抜本改正の全体像がほぼ明らかにされておるというふうに承知しておりますけれども、御承知のような経緯でもってこれらは廃案になるというようなことがございました。そういうことの結果を受けまして、今回の法律案におきましては早急に手当てをすべき事項に限って取りまとめ提案されたと、こういうふうに存じておりますので、やむを得ない措置ではないかというふうに思われます。  そこで、今回の法律案のうち、幾つかの点につきまして私の所見を申し述べさせていただきます。  まず、所得税減税について申し述べますと、我が国経済中心的な担い手であります中堅所得者層、四十代、五十代のサラリーマンのことでございますが、この中堅所得層収入が比較的多いといいますものの、他方、教育、住宅などの支出がかさみ、生活余りゆとりがないということから強い税負担感が表明されております。こうした状況にある中堅サラリーマン層税負担軽減を図りまして、税負担累増感に対する不満を解消していくというためには、現在の累進度の高い税率構造を改めまして、その累進度を緩和していく必要があると、かように思われるわけであります。今回提案されました所得税減税案は、こうした基本的な方向に沿いました時宜を得たものでないかと思っております。  また、いわゆる片稼ぎと共稼ぎの間の負担のバ ランスの問題あるいは給与所得者事業所得者家計の間の負担の不均衡というような点に着目しまして、所得の稼得に対する配偶者の貢献という点を念頭に置きまして課税あり方について検討が加えられ、その結果、今回配偶者特別控除の創設が提案されておるところは結構なことかと存じております。  また、給与所得事業所得との間の負担の不均衡感の問題に対応するために、みなし法人課税制度適正化あるいは総収入金額報告書提出の要件の見直しといったような整備も図られておるようであります。また、給与所得者につきましては、特定支出控除制度を適用して、申告納税の道を開くというような措置も講じられておりますことも適切な方向であると思います。  次は、利子課税制度の改組について申し上げます。  国民購買力の吸収を目的としました戦時中あるいは資本蓄積が非常に急務であった戦後の経済復興期におきましては税制上の貯蓄奨励措置も高い意義を持っておったというふうに存じますが、今や日本が世界一の資本輸出国になったというような状況がございまするし、こういう状況のもとで貯蓄奨励といった目的で一律的に税制上の配慮を行う必要性は甚だ藩札でいるものと思われます。また、国際的にも、我が国貯蓄率が高いというようなことを背景といたしまして、この貯蓄優遇制度税制上の措置を今後も続けるということにつきましては批判も高まっておるのではないかと思われます。また、現状では個人貯蓄残高の七割といったような巨額の利子課税ベースから外れ、利子所得給与所得あるいは事業所得との間の税負担の不公平をもたらしているということがございまするし、その上、事実上高額所得者の方がより多くの受益をしているというような状態であります。このような意味におきまして、利子非課税制度につきまして、稼ぐ力の減退した者に対する配慮を行って、老人母子家庭等に対する非課税制度に改めるという今回の改正は実質的な公平にかなうものというふうに考えております。  今回の税制改正法案におきましては、中堅層中心とした所得税等負担軽減合理化が図られ、他方利子課税制度見直しが行われ、現行非課税貯蓄利子につきまして税負担が求められまして、増減税が同時に行われることになります。このような所得税等減税及び利子課税制度見直しが全体として家計税負担に対してどのような影響を与えるかという点につきましては、さきに大蔵省から試算が提示されております。それによりますと、家計の五分位の各分位、またライフステージの各ステージにおきまして負担が多少とも軽減されることになっております。  ただ、一言蛇足を加えておきます。  大きな税制改正が行われます場合には、まさに古い制度に問題があるからこそその抜本的な手直しが必要となるわけでありますから、その古い制度のもとでのいわば問題を内包している税負担の水準を与えられたものとして、そこからの税負担の増減を論ずるというのはやや問題があるように思われます。そのような状況をそのままにしては、いわゆる既得権を擁護するという形になってしまい、思い切った税制改革の実現の足を引っ張ることになるのではないかというふうに思料いたします。  土地税制につきましても一言触れさせていただきます。  最近の地価の高騰等背景にしまして土地問題は重要な課題として朝野に論議されておりますが、資産に係る所得に対す各課税あり方という点からも、また、土地需給関係適正化という点から見ましても、土地税制見直しは緊要であると考えております。今回の法案におきましては、超短期重課制度導入長短区分見直しなどが行われまして、ある程度この線に沿った改正が提案されており、速やかに実施に移されることが期待されておるわけであります。  最後に、若干間接税の問題について申し述べさせていただきます。  税収特定の税目に過度に偏るという場合には税負担の公平な配分を妨げますし、国民経済にも悪影響を及ぼすおそれもございます。その意味におきまして、税体系全体として所得消費資産といったさまざまな側面に対します課税均衡に配意しつつ、そのあり方について、ときどきの経済社会情勢を踏まえながら見直しを行っていく必要があるかと思います。今回の法案におきましては間接税につきましての改正はほとんど行われておりませんけれども、今後とも公平、簡素、中立といった要請を踏まえつつ、さきに述べましたような見地から間接税あり方についても見直しを進めていく必要があるのではないかというふうに考えております。  以上をもって私の陳述を終わりたいと思います。どうもありがとうございました。
  4. 村上正邦

    委員長村上正邦君) ありがとうございました。  次に、神谷参考人お願いいたします。
  5. 神谷健一

    参考人神谷健一君) 全国銀行協会連合会神谷でございます。  大蔵委員会の諸先生方には私ども銀行界といたしましても常日ごろ大変お世話に相なっておりまして、厚く御札を申し上げる次第でございます。また、今後におきましても一層のお引き立てを賜りますよう、この機会をかりましてお願いを申し上げる次第でございます。  本日は、ただいま御審議の行われております税制改正法案につきまして、私どもの業界として関心の強い利子課税制度中心にして日ごろ考えておりますことを申し述べさせていただきたいと存じます。  まず、今回改正される利子課税制度におきます一律分離課税につきましては、金融に対し中立的な税制であり、民間預貯金郵便貯金金融類似商品等を包含した一律性があって、かつまた簡素でわかりやすい税制であると評価いたしております。  また、老人母子家庭などにつきましては現在の利子非課税制度がそのまま存置されることとか、国民の圧倒的多数を占める勤労者に対しましては財産形成制度改革とあわせて非課税制度を存続させるなどの配慮がなされ、この点からも国民皆様に比較的受け入れやすいものとなっているのではないかと思います。  それでは、利子課税制度あり方につきまして私どもの考えでおります主要なポイントを申し述べさせていただきます。  まずその第一点は、利子課税制度はそもそも金融に対して中立的なものであってほしいということであります。  例えば、現状について申し上げますと、マル優もあり、総合課税もあり、分離課税を選択する者もありまして、それぞれの場合に応じて、源泉徴収税率はゼロ、二〇%、そして三五%と三つに分かれておりまして、また金融類似商品果実につきましては実際上ほとんど税負担が生じないものが少なくありません。  このように税制金融商品税引き後の和回りに非常に大きな影響を与えておりまして、どの税制が適用されるかによって金融商品の有利さが大きく変わっている現状にあり、税制の仕組みが金融の姿に結果的に何らかのひずみをもたらしている可能性が大きいのであります。したがいまして、新しい税制はできるだけ金融に対して中立的な税制であるべきだというのが私ども立場からまず申し上げたいことであります。  第二点は、民間金融機関預貯金利子に関する税制とその執行上の取り扱いは一郵便貯金預貯金以外の金融類似商品を含めて、すべてイコールフッティングであるべきだということであります。  現行制度におきましては、郵便貯金原則として非課税であるのに対しまして、民間預貯金原則として課税でありまして、税務署に一定の範囲で申告したものでなければ非課税にならないのであります。また、税の執行面におきましても、原則非課税でありますために、郵便貯金には源泉徴収義務がなく、原則として税務調査も行われて おりません。一方、民間金融機関には源泉徴収義務支払い調書提出義務がございまして、税務調査も行われております。さらに民間預貯金利子原則総合課税でありますが、金融類似商品果実につきましては、一時所得とか譲渡所得等という分類がなされておりまして、特別控除関係もあって、実態的には税負担が生じていないというような状況になっていることは先ほども申し上げたとおりでございます。  その結果どういうことが起こっているかと申しますと、我が国個人金融資産全体に占める民間金融機関個人預金のシェアがダウンしているのであります。  今、昭和六十一年三月末の我が国個人金融資産は、時価評価になっております株式を除きますと総額で五百三兆円に達しておりますが、このうち民間金融機関預貯金は二百十五兆円で、その構成比率は四二・七%、五年前と比べ四・四%ダウンになっているのであります。  これに対して、シェアアップしているのは保険とか郵便貯金などでありまして、これにはいろいろの要因もありましょうが、どうも税制預貯金利子郵便貯金金融類似商品果実との間でイコールになっていないということにも原因があるのではないかと考えるのであります。  第三点は、ただいままで申し上げましたこととも関連いたしますが、利子所得というものは非常に広範な国民全体に関して日常的に発生するものでありますだけに、それに係る税制というものもできるだけ簡素でわかりやすく、手続の簡単なものであってほしいということであります。  仮に、税理論上非常にすぐれた制度というものがあったといたしましても、何千万人にも及ぶ預金者が数万カ所に及ぶ金融機関の窓口で日常発生する利子所得について複雑な手続で納税しなければならないということでありますと、それに伴う預金者金融機関の直接間接コストは膨大になりまして、これを国民経済的な観点で見ました場合に、これに伴って生ずる税収とそれに要するコストとの兼ね合いという面から、果たして望ましい制度と言えるかどうか微妙だということにもなりかねません。  そしてまた、仮に、預金者金融機関の手間は全くかからないけれども徴税当局で膨大なコストがかかるという場合にも、やはりコストと効果の問題は残るかもしれません。例えば、現実に今総合課税を選択されている方などもいらっしゃるわけですが、総合課税申告をするためには過去一カ年間の受取利子計算書を全部なくさないで保管しておかなければなりませんし、万一紛失した場合には銀行にもう一度計算書を再発行してもらわなければなりません。  これは一例でございますが、とにかく多数の国民がかかわり、預金者心理に及ぼす影響も大きい税制でありますだけに、簡素で安定的な制度であってほしいということは私どものかねてからの念願でございます。  最後に、このような税制のもとで銀行預金者皆様にどうやってお報いしていくのかというのが私ども課題でございます。  端的に申し上げますと、預金金利自由化というものを一層推進することを通じまして、できるだけ多くの預金者の御期待に沿うよう努力をしてまいりたいと考えるのであります。  改めて一律分離課税という制度について考えてみますと、この制度金利自由化される時代にある意味では最もふさわしい税制だというようにも考えられるのではないかと存じます。金利それ自体は内外の諸情勢金融政策方向に沿って今後も頻繁に変動することに相なりますが、預金者は表面の利子率から常に二〇%だけ税負担分を割り引いて手取りの利回りを考えることができますので、どれが有利か不利かということは簡単に判断がつくようになるのであります。今は、適用される税制いかんによりまして税引き後の利回りは全部異なってまいりますので、この比較は容易ではございません。そして今後は、このような意味で、預金者金融資産の選択は、金融商品を提供する金融機関の側から見ますと、ある意味では一層厳しさを増してくるということになってまいりましょう。  私ども金融機関といたしましても、金利自由化を根幹として、さまざまな新商品の開発やサービスの向上、コストの低下などの努力を通じて、従来にも増して預金者のニーズに積極的におこたえしてまいりたいと存ずる次第でございます。  以上をもちまして私の意見陳述を終わらしていただきたいと存じます。長時間御清聴賜りまして、まことにありがとうございました。
  6. 村上正邦

    委員長村上正邦君) ありがとうございました。  次に、清水参考人お願いいたします。
  7. 清水鳩子

    参考人清水鳩子君) 主婦連合会事務局清水でございます。  本委員会で御審議中の所得税法等の一部を改正する法律案に対して消費者立場から意見を申し上げたいと思います。  今国会延長会期も残りわずかでございまして、改正案に対する御審議機会も本当に限られているというふうに伺っておりますけれども、今回の税制改革に寄せられております多くの国民期待にこたえた結論をぜひこの委員会でお出しいただきたいと心からお願いいたします。  まず第一に、今回の税制改革の私どもにとって最大関心の的でございますマル優、すなわち少額貯蓄非課税制度原則廃止廃止後の二〇%一律分離課税導入について意見を申し上げたいと思います。  これは、現在の税の不公平、特に所得の低い者の感じております税負担の不公平を是正するどころか、むしろ不公平を拡大するものであって、到底これを認めるわけにはまいらないというふうに私は思っております。  特に、年収一千万以上層を対象といたしました利子分離課税方式優遇策三五%を二〇%に引き下げておることは、高額所得者優遇減税だというふうな国民のそしりを免れないというふうに思います。  一方では、私たちが今まで非課税として生活預貯金ということで蓄えておりましたわずかな金額が一律に二〇%課税されるわけですから、特にあそこに書いてございます特例の部分を拝見いたしましても、非常に手続も繁雑ですし、一番頭に出ております六十五歳以上というところにつきましても、私どもの周りの高齢者に入りかけている人たち生活の実態を見ておりますと、やはり定年退職が一般的には六十歳を目標とは言われていますけれども、特に今のような景気の停滞している中ではなかなか六十歳定年ということも実現できないで、五十五歳もしくは五十七歳ぐらいから年金ももらえないし非常に苦しい生活をしているわけでございますから、五十五歳から六十五歳までの間のこの人たち生活の圧迫というものをこの制度は救済できないのではないかというふうに思います。  それから、一世帯当たり平均貯蓄額、それからどこに一番貯蓄が集中しているかということについては、衆議院委員会でもこちらの委員会でも具体的な数字が出ておりますのでそれは省略いたしますけれども、そこにも明らかなように、多くの国民はいわゆるマル優限度枠すら消化しておりません。  もしこの制度廃止されますときに、一体預貯金がどういうふうに流れるかということですが、今消費者問題の中で最大消費者被害は豊田商事、それから抵当証券、それからマルチまがいなど、いわゆる法律の不備も根底にあるわけですけれども、そういうところに非常に中高年の人たち被害者として集中しているわけです。これは、一方でそういう人たちを救済する法の整備を急げばいいという御議論もあるかと思いますけれども、なかなか現状ではそういうわけにはまいりませんので、マル優廃止された場合には、私は、恐らくそういうところに、少しでも金利の高い方に向けてこのお金が流れていく、そうすると、今よりももっともっとそういう金融商品に対する消費者被害というものが増幅して、そしてそれを法的 にもカバーし切れないというふうな重大な問題が起こってくるのではないかというふうに思います。  それから、マル優不正利用があるとか、それからむしろ廃止することによって公平が確保されるという議論とか、マル優制度不正利用者税金逃れに悪用されているんだというふうな御議論も確かにございますし、そういうことが全くないとは私も思いませんけれども、しかしマル優制度廃止したことによってそういうものがどの程度防げるのかというふうなことは大変疑問でございまして、むしろ現行制度ですら限度管理を徹底するという道は残されているということを思いますと、ぜひその限度管理不正利用を是正するということで、マル優廃止をやめて、そしてそこから相当額の増収を図っていただきたいというふうに思います。  それから、ここの御提案の中に、利子所得に対する見直し期間が五年というふうに書いてございますけれども、この「五年を経過した場合において」という点ですが、今非常に目まぐるしい経済変化時代に五年間はある意味では見直しをしないということ、これは大変に大きな意味を持っていると思います。また、そこの文章の中に「必要に応じ、」という言葉が使われておりますけれども、この「必要に応じ、」ということは、どこの機関が、どういう基準で、どういう手続判断をするのかということについても非常にあいまいでございますので、五年という期間見直していただいて、この部分の修正をぜひお願いしたいというふうに思います。  それから次に、今回の法律案のもう一本の柱の所得税減税についての意見を簡単に申し上げたいと思います。  今、私は、手元昭和五十二年と六十二年の年収所得税所得税負担率税引き後の所得、そして税引き後の実質所得の五項目についての数字を持っております。それを見ますと、年収三百万、五百万、七百万、一千万のいずれの階層におきましても、所得税負担収入の伸びをはるかに上回っております。そして、物価調整をいたしました後の実質所得の伸びを見ますと全部マイナスでございます。所得が上がりながら所得税が大幅に引き上がってきたという中で実質所得が目減りしているということですから、所得税減税というのは急いでやらなければいけないし、その幅も今のような少額のものではなくて、暮らしの実態から見てもっと大幅に減税をするべきだというふうに私は思っております。特にその中で、最高税率の一〇%引き下げという部分がございますけれども、これはマル優廃止と同じように、やはり高額所得者に温かく所得の少ない者に非常に冷たい方法ではないかと思います。  もう一つ最後に申し上げたいのは、医療費控除の問題でございます。  この足切りを五万円から十万円に引き上げておりますけれども、今高齢化社会の中で国民の大多数は健康に対して非常に大きな不安を持っておりますので、この足切りの五万を十万に引き上げるということは金額的にも余りにむちゃくちゃであるし、むしろこれは五万円で据え置いていただきたいというふうに思います。  最後お願いしたいのでございますけれども、今回の改正法律案を見ますと、私たちが当初願っておりました国民の公平な税負担という視点からは非常に遠い、何か緊急避難的な改正に終わっておりますけれども、これではいけないというふうに思いますので、ぜひこの後の税制改正につきましては広く国民意見を求めていただいて、そして情報も公開して、国民合意の中で二十一世紀にふさわしい税制の体系をつくっていただきたいというふうに思います。
  8. 村上正邦

    委員長村上正邦君) ありがとうございました。  次に、吉牟田参考人お願いいたします。
  9. 吉牟田勲

    参考人吉牟田勲君) 日本大学の吉牟田でございます。  所得税法等の一部を改正する法律案及びその衆議院における修正を含めまして、私の意見を簡単に申し上げたいと思います。  先ほど小倉税制調査会長がお話しになりましたように、今回の税制改正は、六十年以来非常に根本的な検討が行われまして、全体的に人口の高齢化とかソフト産業化あるいは経済金融国際化といったことに対応する根本的改正案として出されたわけでございますけれども、御承知のような経緯を経まして、通常国会ではその全部が示されていたわけですけれども、今回はその第一年度ということで全体像が示されない格好で出されているわけでございます。例えば、所得税の最高税率の五〇%への引き下げとか法人税率の三七・五%への引き下げとかといったことは、国民の勤労意欲や経済の活性化という観点からはこれを明らかに示した方が本当は効果があるように思われますけれども、これは今回の経緯の結果やむを得ないことだと思います。  そういうことで、今回の改正は基本的改正の第一歩だというふうに考えてみますと、以下細かい点を少し申し述べますけれども、細かい点につきましては私意見を異にする部分もございますけれども、全体としては基本的改正の第一歩として今回の改正は妥当なものだと思いますし、今回第一歩として改正されることには賛成でございます。  それでは、一つ一つについて意見を申し述べさしていただきます。  まず第一は、所得税法の一部改正についてでございます。  その一番目は、先ほどもお話のありました所得税率の改正でございます。  学者の中には、通常国会に出された法案と申しますか、それよりも、その前の法案と出された法案との間でございますが、主として百二十万と二百万円の間の税率をめぐりまして、それまで一〇・五%であったものが出される前の案では一一%に上がるという問題がございまして、その下の改正と一緒にしますと、実は増税になるということではなかったのですけれども、その階層だけを見ますと若干そこだけが増加するというので問題にされておりました。けれども、これは今回出された政府の当初案で既に是正され、さらに今回の衆議院の修正では全く問題がない形に修正されまして、そういう点では今回の修正後の所得税率の改正は極めて妥当であるというふうに考えております。  それから第二番目には、給与所得者の例の特定支出の控除でございます。  この実額控除の選択制自体は妥当なことだと思います。ただ、現在のこの改正法案では五つの費用、通勤費、転居費、研修費、資格取得費、単身赴任者の帰宅旅費といった五項目が実額控除の対象になっております、いろいろ税務行政上の問題もありますのでそう簡単にいかないかとは思いますけれども、この実施の状況を見て、この実額控除の制度が効果があるようにその中身についてはなお将来充実の方向で検討されることを期待したいというふうに考えております。  それから第三番目が、配偶者特別控除の創設でございます。  先ほど小倉会長は賛成だとおっしゃいましたが、この点につきましては私は少し意見を異にしておりまして、先ほどおっしゃいました共稼ぎと片稼ぎ、それから片稼ぎもアルバイト的片稼ぎと本当の片稼ぎ、それから離婚した後の子連れ片親と申しますか、そういういろいろな課税単位の負担関係ということを考えますと、二分二乗の方向で検討された結果そこまでいかないで今回の特別控除ができたやに伺っておりますけれども余りこれについては賛成できないというふうな気持ちを持っております。  ただ、この制度の中で非常に私興味を持っておりますのは、いわゆるバニシングエグザンプションという、所得がだんだん高くなれば控除額が低くなってなくなっていく、いわば消えていくという所得控除の制度をとっております。これは評価しておりますけれども、この制度は、基礎控除や配偶者控除あるいは扶養控除についても、所得五億や十億の方にはこの控除はなくてもいいという 方向で将来考えていっていいんじゃないかというふうに思っております。  それから、その次にお話をしたいのは、年金課税改正でございます。  今回の税制調査会で、年金課税についてはかなり大きいテーマとして、特に老齢化社会の進展に伴いまして公的年金の頭打ちというような問題と絡みまして、自助努力年金ということをどう税制が対処するかあるいは公的年金と私的年金の課税バランスといった点から、かなり力を入れて検討されたと思いますし、また今回の課税もそれなりにその方向に即していると思います。  と申しますのは、今回公的年金等控除という制度が設けられまして、六十五歳以上の者等につきましては従来の給与所得控除等よりも有利になっているわけでございますけれども、そういう点、「公的年金等」というので、何か私の申しました公的年金、私的年金というふうに言った場合に公的年金をやはり優遇したのかというふうにお考えになるかもしれませんが、よく読んでみますと「公的年金等」というものの定義につきましては非常に広く書いてあります。例えば、過去の勤務に基づいて使用者であった者から支給される年金というのはいわば普通の企業の自己管理の年金ですが、これも「公的年金等」に入っておりまして、言ってみますと、給付を受け取る段階の課税は公的年金も私的年金も同等の負担に非常に近づいております。先ほど申しましたように、自助努力年金という観点からはこれは非常に望ましい改正だというふうに思っております。ただ、この掛金拠出段階についてのそういった公私年金のバランスといった点からはなおもうちょっと検討の余地があるんじゃなかろうかというふうに考えておりますが、これはまた第二段階以降の税制改正の際にぜひ御検討をいただきたいというふうに考えております。  それから第五番目は、この総収入金額報告書の、先ほど小倉先生のおっしゃいました五千万円超から三千万円超への引き下げですが、これは通則法の加算税の税率の五%引き下げ等と一緒になりまして、やはり何と申しますか、ちゃんと申告書を出し所得を把握するという方向での妥当な改正であろうというふうに考えております。  それから次が、かなり今までお話が出ました非課税利子マル優改正の問題でございます。これはもう皆さんかなりお話しになりましたので、私は学者でなぜそれに賛成かという意味で、この改正に賛成の私の考える理由というものを少しだけお話ししておきます。  個人貯蓄の残高が四百兆に達するというふうに言われておりますし、それから実は今余り考えておられないようですけれども年金や保険や共済の保険料積立金の予定利子という本来利子に当たるものがございまして、こういうものを加えて考えますと、国民所得のうちに占めるそういう利子所得のウエートというのは非常に大きくなっております。勤労性所得給与所得に対する課税とのバランスという点から考えましても、この利子所得に幾分かの負担を求めるということは考えざるを得ないんじゃないかというふうに思います。  ただ、私も、理想はやはり総合所得課税ということで、利子所得も分離で終わらせることがいいのかという点につきましては総合所得にやはり持っていくべきだというふうに考えております。そういうことからいいますと、グリーンカードの問題等も、短時日に二カ月や三カ月でこれを片づけてどうこうするというのは不可能な話と思いますが、なお長期をかけて総合所得課税という方向で検討を行う必要があるんじゃないかというふうに考えております。  それから第七番目が、有価証券の譲渡所得課税関係でございます。  恐らく政令改正でこの細かい点が改正されるのだと思いますけれども、そういう有価証券の譲渡所得課税につきましては、コンピューターの進歩等に伴いまして、証券売買の把握についてさらにもう一歩検討を期待したいというふうに思っております。  以上が所得税で、次が法人税の改正でございますが、実は法人税の改正は、先ほども申しましたように、今回の改正にはほとんど入っていないわけでございまして、わずかに所得税と一緒に改正されております公益信託の税制改正改正法案に入っております。  公益信託の税制改正は、私はかなりそれは評価しておりまして、公益法人の現在のいろいろのことに対する税制措置は事務所や常勤職員等を必要としないような研究助成の基金等につきまして十分公益信託の方が効率的に行えるというふうに考えますので、今後とも公益信託については公益法人と同等の税制措置を、もちろん各官庁も厳正な監督を行って、事故が、公益法人で問題になるようなことが起こらないようにする必要はあろうかと思いますが、そういうふうに考えております。  なお、先ほどの法人税率の三七・五%への引き下げは、アメリカの法人税率が三四%、イギリスが三五%というような状況になることを考えますと、やはり国際化、国際競争という観点から考えざるを得ないんじゃないかというふうに思います。  それから、有価証券取引税の一部改正が行われておりますが、このこと自体は現下の必要に応じた改正だと思いますけれども、先ほど申しました有価証券の譲渡所得課税の進展に応じましては、またもう一回有価証券取引税については根本的にそれとの関係改正検討が必要ではなかろうかというふうに考えております。  それから、租税特別措置法の改正関係は、一つは利子課税の問題ですが、これは先ほど大体意見を申しましたので、もう一つの土地税制改正についてお話しをして終わりたいと思います。  土地税制改正については、超短期の特別重課あるいは長期の十年から五年への短縮という改正が行われておりますが、前者につきましては私はかなりこれは意味がある改正だと思いますが、後者についてはそれほど余り意味があるように思いにくいと考えております。  本来、現在起こっております土地の高騰に対する税制につきましては、やはり現行税制の中の事業用資産の買いかえあるいは居住用資産の買いかえという制度に非常に問題があるように思います。現在国土庁等から案が出されているようですけれども、私見ておりまして一番の問題は、総額を全部使ってしまったら全く税金がかからないというところに問題がありまして、しかも事業用資産については取得面積が五倍以内とか地域が限られるということがあるためにある限られた地域の限られた面積に全部の金を使うという関係、あるいは居住用については地域や金額は限られておりませんけれどもやはり全額を使うという傾向を来しておりますので、全額を使って課税になるということをチェックするためには、恐らく単位当たり、例えば三・三平米当たりの金額とかあるいは両方を通じまして総額的な制限とか、そういうことをやはり改正の際には考えるべきではなかろうかと思います。  なお、これに関しましては、相続税の改正も非常に重要だと思いまして、次回の改正の際には現在の基礎控除の改正あるいは二百平米までの居住用の七割評価という問題につきまして御検討いただきたいというふうに考えております。  以上いろいろお話ししましたが、今回の改正、全体としては現段階では妥当だというふうに考えております。  大変貴重な時間ありがとうございました。
  10. 村上正邦

    委員長村上正邦君) ありがとうございました。  次に、和田参考人お願いいたします。
  11. 和田八束

    参考人和田八束君) 立教大学の和田でございます。  時間の関係もございますので、私は、税率の問題と、それからいわゆるマル優といいますか利子課税の問題と、それから土地税制の三点について意見を申し上げたいと思います。  所得税の税率につきましては、税率構造の点で現行十五段階という税率構造を十二段階に改められるという形になっております。当初のいわゆる 抜本改正の方では六段階に六十三年度からするというふうなことがあったわけですけれども、それに比べますと、いわゆるフラット化という点からいいますと現行に近いような形になっておりますが、法定税率の最高所得現行では八千万円超七〇%というのが五千万円超六〇%というふうに最高のところはかなり緩和されているというようなことでありますし、それから最低税率も百五十万円以下一〇・五%というふうな修正案が出されているというふうな形を見ますと、現行とはやや趣を異にすることになっております。けれども、なぜこのような税率構造にするのかということが必ずしも明らかではないわけであります。  それで、結果的に減税になるわけですから減税になるという点ではよろしいわけですけれども、なぜそのような税率構造なのかということにつきましては、税制調査会答申その他諸般の説明を聞きますと、どうも、第一点としては税負担累増感を緩和するということであり、もう一つは最高税率につきましては勤労意欲等の問題がある、こういうふうな理由が挙げられているわけですけれども、御承知のように法定税率が段階的にかなり細かく、あるいは最高税率が高くても実際に所得に対する税率、これを実効税率というふうに言いますと、そのような数値をとってみますと、課税最低限の水準というものが関係をいたしまして実際にはどのような形をとりましても累進税率という形をとるわけでありまして、税率が単純化し一本化すれば生涯を通じて一つの税負担で済むというふうな、幾分通俗的といいますか、そういうことでいいますと何か誤解があるような向きがございまして、税率の問題については必ずしも正確な認識というものが専門家あるいは国民の間にはないわけでありまして、この辺の税率構造についてはもう少し検討すべき問題があるというふうに考えております。  なお、勤労意欲等の問題につきましては、これは必ずしも実証されているわけではありません。日本人は、常日ごろ働きバチで働き過ぎであるというふうに言われておりまして、累増感の高い税金のもとでもなお勤労意欲を持っているわけでありまして、この辺の問題につきましても十分な証明というものはないように思います。  減税になるということはよろしいわけですけれども、そういう税率構造について幾分誤解があるのではないかという点と、それから所得の増大というものがどんどん進んでいる状況からいいますと、やはり最高税率につきましてはブラッケットの方を八千万円から五千万円に引き下げるというのはむしろ逆でありまして、一億円とか二億円とかいうふうなブラッケットを設けるということの方が合理的ではなかろうかというふうに私は考えております。  それから二番目に、少額貯蓄非課税制度を含む利子課税制度改正でありますけれども、これにつきましては、結論からいいますと私は賛成ではないわけでありまして、これもなぜ今回そのような形で利子課税制度改正されるのかという理由が必ずしも明らかではないわけであります。  言われております点を聞きますと大体三つぐらいあるわけですけれども、第一には、高額貯蓄者の不正利用を排除するという点で税の公平化を進めるという観点があります。それから第二番目には、国際的な問題もあるわけですけれども貯蓄を抑制するというふうな目的があるようであります。それから第三番目には、非常に直接的なものでありますけれども減税財源を目的とするということがあるわけであります。  しかしながら、不正利用ということになりますとこれは確かに不正利用があるわけでありますけれども不正利用を排除し公平化を進めるという点でいいますと、一律にといいますか、少額貯蓄までも全体に課税を行って、そして一律分離課税というふうな方式にすることだけが唯一の道ではないわけでありまして、既に過去においてグリーンカード制というふうな提案もありましたし、それからその次には限度管理の徹底というふうなこともまだ緒についたばかりというふうなことであります。従来は税制調査会議論ども総合課税化の徹底という方向議論が進められ、その方策を模索してきたところでありまして、一部の不正利用のもとに零細な貯蓄者のマル優までも一斉に二〇%の課税をするというのは余りにも行き過ぎではないかというふうに思います。  もちろん、この間には少額貯蓄非課税制度自体の行き過ぎというものもあるわけでありまして、これは限度額五十万円というのが百万円になり百五十万円というふうに三段跳びにどんどん拡大してきたというふうな過去のいきさつでありますとか、それからいわゆるマル時制をつくるとか、それから一店舗制限の廃止とかそういうふうなことをどんどんやってきたわけでありまして、そのツケが回ったということは言えるわけであります。その点でいいますとこのマル優制度自体の縮小とかいうふうなことも考えられるわけでありまして、例えば郵便貯金に限定するとかいうふうなのも一つの案でありますし、あるいはマル特だけ廃止するというふうなこともあるわけでありまして、これを全部廃止するというのは余りにも行き過ぎではないかというふうに思うわけであります。  また貯蓄の抑制に資するということでありますけれども、従来、これは税制調査会などの伝統的な見解といたしましても、貯蓄水準と税制とは関係ないというのが定説になっていたわけであります。定説というか、これもはっきりしない面が多々あるわけでありまして、むしろ日本人の心情からいいますと、利子課税されればなお元本を拡大するというふうな意欲が働いて貯蓄に逆進するというふうな結果が出てきて、貯蓄抑制には逆効果ということもあり得るのではないかということすら考えられるわけであります。また減税財源ということからいいますと、マル優しか減税財源がないのかということで多大の疑問を持たざるを得ないわけであります。  それから三番目の問題でありますけれども土地税制につきましては、従来の長、短期の区分というものを十年から五年というところに変更し、それから二年間の超短期重課というものを新設するというふうな形がとられております。長、短期の区分の変更というのは供給を増加させるということでありましょうし、それから二年間の超短期重課を新設するというのはいわゆる投機的な土地売買を抑制するということになろうかと思いますけれども、二年間の超短期課税を重課するという点につきましては、これは形式的といいますか制度的には上積み税率になりますので相当効果がありそうでありますけれども、果たしてどこまで今後実効性があるかということにつきましては楽観を許さないというふうに考えます。  それから、保有期間十年を五年に短縮するということにつきましては、かえって五年、十年のその間の長期保有者の土地譲渡益というものに対する課税軽減するという結果は生じるものの、果たして供給増にそれがつながり地価抑制になるかどうかということにつきましては、これも昭和四十四年以来の土地税制の歴史を見てみますと期待どおりにいくというふうには考えられないわけでありまして、むしろ土地譲渡益というものに対する優遇策になるのではなかろうかという危惧を持つわけであります。むしろ、土地の保有につきましてのコストが非常に安い、小さいという現状からいいますと、土地保有課税を強化するという方向で、例えば最近提案されております土地財産税でありますとかあるいは含み資産課税というふうなものを徹底することによって土地の保有コストを引き上げるということが現在の地価に対する一定の効果を持つと同時に、土地問題に対する社会的公正という観点から妥当ではなかろうか、こういうふうに考えておりまして、なお今後この土地税制については抜本的な改正期待するものであります。  以上私の意見として申し上げました。失礼しました。
  12. 村上正邦

    委員長村上正邦君) ありがとうございました。  それでは、これより参考人に対する質疑に入り ます。  質疑のある方は順次御発言願います。
  13. 赤桐操

    赤桐操君 私、まず小倉税調会長にお伺いいたしたいと思いますが、税調がかつて答申を出された中では利子課税方式として四つの案を提起されております。その中で出されておりまするのは総合課税方式、それから確定申告不要制度の併置、低率分離課税、一律分離課税と四つ提案されてきておるわけであります。この中で、一律分離課税というのは簡素であり大変中立的であるけれども不公平である、こういうような意味合いのことが述べられておると思うのであります。  したがって、私どもの考え方からするならば、少なくとも公平、公正の問題が今日税制全体を貫いている大きな問題である以上は、しかも公平、公正を第一目標として考えるならば、総合課税を税調としては追求されるべきであると思いまするし、そういう立場からするならば、今回の税のあり方、提案については、これについて会長のお述べになられたような考え方というものは出てこないんじゃないだろうか、こういうふうに私は今伺っておったんでありますが、この点はいかがなものでございましょうか。
  14. 小倉武一

    参考人小倉武一君) 利子課税の問題につきましては、今御質問の中にもございましたように、ここ数年の間に政府税制調査会としては大分考え方が変わってまいりまして、私は最初から関係しておりまして、自分自身ちょっと精神状態がおかしくなったんじゃないかというような気もしないこともないわけです。  最初はとにかく総合課税ということでグリーンカードということだったわけですけれども、それがうまくいきませんで、今や、今度は定率といいますか一律分離課税というふうなことになって随分、百八十度変わっておるわけでありますから、あれもよいこれもよいとみんな一々合理化するわけにもなかなかまいりませんけれども、やはりちょっと時代が変わってきたということがあると思うんです。  一つは、金融資産というものが非常にウエートを高くしてまいってきた。そこで、ウエートが少ない場合にはそれは納税者番号でもいいわけでしょうけれども、グリーンカードというようなことで把握するということで何とかやっていけそうに思って総合所得課税という中に利子を入れるということが成り立ったんだと思うんでありますが、その後金融資産というものが漸次ふえてまいるということになってまいりまするし、もう一つは、金融資産所得税との関係につきましては、金融資産としての特殊性から一律課税がよろしいんだ、これはマル優の話とは別に金融資産自体の利子課税として一律課税がよろしいんだという考え方が税制調査会の中にも相当強くなってまいったということがございます。  それから、ちょっとこれは話がそれますけれども背景としてちょっと申し述べますというと、所得課税に対して支出課税支出税という考え方がございます。数年前まではそういうことを唱える人は税制調査会の中にはいなかったんですけれども所得税にかえて、一生に費やす支出ということを頭に置いて、税金を所得じゃなくて支出に賦課するということの方がいいんではないかという説があるんだそうです。日本の学者の中にも特に若い先生方にはそういう説がございまして、そういう説からいきますと、利子課税するということ自体がそもそもおかしいということになりかねないわけです。そういうようなこともございまして、利子につきまして総合課税が当然であるというふうには必ずしも税制調査会の中でもいかなくなってきたわけです。この数年の間におきましてそういう変化がございます。  それからまた、一つの問題として、他方マル優あるいは郵貯の問題がございまして、これをどう処理するかということがやはり同時に考えられなければならぬというわけで、これも限度管理をきちっとする、これもグリーンカードと関係ございますが、あるいはグリーンカードがなくてもできれば管理を厳密にするということによってマル優は残しておくという考え方がございましたけれども、一方、利子全体についての考え方とマル優の考え方が一緒になりまして、利子につきましては一定の率でもって分離課税をしていくということの方が妥当ではないだろうかというような意見がだんだんと多くなってまいりまして、結果的にはそういうようなことで必ずしも全会一致というわけでもございませんけれども、そういう方向で処理すれば利子課税マル優の取り扱いあるいは郵貯の取り扱いが一元的に処理できるということであったかと思います。  以上のようなことでございますので御了承を賜りたいと思います。
  15. 赤桐操

    赤桐操君 和田先生にお伺いいたしたいと思いますが、時間の短い中でのお話でございましたので私もまだお伺いしたい点がたくさんございますが、私はかねがね思っているんですけれども土地というものが商品である以上はこれはやはり抑制には限界があるんじゃないか、こう実は考えております。  そういう中で、税制というもので盛んに今地価の抑制を図ろうとしておりますけれども税制という角度の中で今の地価抑制というものはどの程度まで効を上げることができるのか、いわゆる土地の価格抑制というものの総合的な対策でもっとほかに必要なものがあるのではないだろうか、条件を整えなければならぬ問題がほかにまだ全体としてあるんではないか、こう思うのでありますが、まずこの点をひとつお伺いをいたしたいと思うのであります。  また同時に、そういう全体の中でもしお考えいただけるとするならば、税制というものはその中でどの程度までの役割を果たすことができるのか、この二点について伺いたいと思います。
  16. 和田八束

    参考人和田八束君) 御質問の点でございますが、東京を中心とする一部で地価が異常な上昇になっておりましていろいろ問題になっているわけですけれども、いわゆる土地税制につきましては既に昭和四十年代からいろいろな制度的なものが設けられております。税制調査会答申書などを拝見いたしましても、税制土地問題に対する役割というのは、何といいますか、補完的なといいますか、間接的なといいますか、そうしたものであって効果がないということはないわけですが、税制だけで地価の抑制に効果があるというふうには考えられないというふうな趣旨のことが書いてありますけれども、私も大体おおむねそういうふうな意見でございます。  従来の土地税制といいますと、地価が上昇するのは需要と供給の関係である、供給をふやせばいいんだという何か一般商品と類似的な考え方で、供給をふやすということでどこの土地でもいいからどんどん売ってくれれば全体として下がるというふうなこういう誤解を持っているように考えるわけであります。土地というのは、そのように東京の都心部で地価が上がったから東京の郊外でどんどん農地を宅地として供給すれば中央部の地価が下がる、こういうふうなものではないわけでありまして、それぞれ個別的な目的を持って土地というのはやはり利用されておりますので、一般商品のような需給関係にないわけでありまして、ただ譲渡課税を緩和して供給をふやすというふうなことだけではやはりうまくないということが過去の二十年ぐらいの歴史の中で非常にはっきりしたんじゃないかと思うんです。  その一方で、もう一つの土地に対する税制の役割として重要な、土地利得に対する社会的公正を期する税制の面をとかく忘れがちになっているのではないかというふうな印象を強く持つわけであります。やはり税制の役割というのは、単に地価抑制というふうなことだけではなくて、土地をめぐるさまざまな社会的不公正を是正するということにおるのではないかと思います。  その点で言いますと、現行土地税制というのはかなり不十分なところがあるわけでありまして、これだけやはり土地を保有しているということによる利益、それから土地を譲渡、売買するということによる利得があらわれていてさまざまな 社会的な問題が生じてきているというものに対して、もっと税制として明確な制度的な対応をすべきではなかろうか、こういうふうに考えているわけです。  その点で言いますと、先ほども少し申し上げましたような土地保有といいますか、そちらの面での課税の強化というものを考える必要があるのではないか。具体的には、財産税といいますかあるいは含み資産課税といいますか、いろいろな形があると思うんですけれども、そちらの方で考える必要があるのではないか、こういうふうに考えるわけであります。
  17. 志苫裕

    志苫裕君 社会党の志苫です。どうも御苦労さまです。  最初に、神谷参考人にちょっとお伺いしたいんですが、このマル優廃止、一律分離課税について二つの観点から伺ってみたいんですが、一つは、資金シフトがどうなるだろうかということ、二つ目には、果たして公平目的にかなうかどうか、この二つの観点でちょっとお伺いしたいと思うんです。  資産の選択は大変自由で容易ですから、利子所得をほかの資産所得に転換することができますが、結局は、ぐるぐる回っても、キャピタルゲイン課税をどうするかという問題に突き当たるんですが、今の税制ではそこのところはなかなか押さえがきかぬことになっていますから、結局、この形態に転換をすれば課税を回避することができるということになりますわね。こっちは税金を取られるから嫌だということになれば、そっちの方に回って、回避できる。したがって、そちらの方への資金シフトが考えられるんですけれども、一体どんなものだろう。  先ほど清水参考人からちょっとそれに触れたお話がありました。仮にそうなった場合に、所得階層間の資産蓄積あるいは日本経済にどんな影響が出るだろうかという点、ひとつ簡単で結構です。
  18. 神谷健一

    参考人神谷健一君) お答えします。  今回の利子課税の変更、すなわち一律課税におきましては、銀行預貯金並びに郵貯、それから一時払い養老保険等いろんな金融資産につきまして、すべて一律に二〇%の分離課税ということになりましたので、各金融資産の間がイコールフッティングになったという点は私は大きな前進であると評価しています。    〔委員長退席、理事梶原清君着席〕 そういう意味で、税制上から今回の改正で大きく資金シフトが起きるというようなことはまずないんではないかというのが私の判断でございます。  それからまた、今も申し上げた預貯金以外の株式とか金とかそういうものに対するシフトの問題というものがこれはあるとは思いますけれども、もともと株式とか金というのは預貯金とは本来違ってむしろ投資の対象ということで元本の保証のないものでございますから、そういう株を買いあるいは金をお買いになる方は投資目的でお買いになっている面がありますので、預貯金に対するビヘービアとはやや違う観点があると思います。そういう意味で、この一律課税があったからといって株や金に対して金融資産が大きくシフトするということも余りないんじゃないかというのが私の考えでございます。
  19. 志苫裕

    志苫裕君 資産の分散というのがありますからね、株にしたり貯金にしたりという。それはあるでしょうが、しかし容易に考えられますのは、仮に株なら株への資金シフトがあるとすれば、そういうふうに転換をできるのはたくさん持っている人でありまして、大口は、税金を取られるから嫌だというので売り買いしてもうけても損をしない株の方へいこうかといって、転換がききます。小口はそれほどのものじゃありませんから、転換もきかない。こうなってまいりますと、結局、課税を逃れるのは大口ということで、そういう不公平が生ずる。利子課税はいろいろあるが結果的に見て公平なんだというのが政府の言い分なんですが、大口がやっぱり税金のかからぬところへ逃げていくということが起きるとすれば、これはその言い分とは別に、不公平を拡大するということになる。私は、所得の低い者は貯蓄目的が利得というよりは老後の不安等でしょうから余り資金シフトは起きぬのじゃないか、大口は気楽に起きるんじゃないかという意味で、逆に不公平の拡大にならないかということの懸念を持つんですが、その点、税調会長どうでしょうか。
  20. 小倉武一

    参考人小倉武一君) お話のように、小額貯蓄者と大口と比較すれば、大口の方がある程度少額貯蓄者に比べますと運用の自由といいますか弾力性というのがあるということはこれは事実だと思います。そちらの方の専門じゃありませんが、当然そうだろうと思います。
  21. 志苫裕

    志苫裕君 それから、会長、もう一つ済みませんが、利子非課税制度は多少の違いはありますけれども大体どこの国にもあるというんですが、とりわけ日本のそれが国際批判の対象になるのはなぜだろうかということですね。  本委員会でもその辺やりとりをしておるんですが、宮澤大蔵大臣は、例えばアメリカの住宅ローン利子控除制度を引き合いに出してみると、一方は消費の助長だし一方は貯蓄の助長だ、この辺の違いからくるのかなというふうな見解を述べるんですが、物事の裏表を言っているにすぎないんであって中身は同じことだという感じもしないわけではない。  で、貯蓄一般の非課税がだめで特定目的のためなら合理性があるとか、仮にそういうのであれば、例えば、財形なんかで貯蓄利子非課税が問題になるのなら、逆に積み立ての方の所得から控除すれば、そちらで代替すれば効果は同じですから、そちらの方がいいということにもなるわけで、二足の目的特定目的ならば合理性があるというふうに会長はお考えでしょうか。利子は、それはいかなる場合でも合理性はない、世の中変わったんだという先ほどお話ありましたが、そのように御理解なさっていますか。
  22. 小倉武一

    参考人小倉武一君) 一般論といたしましては、税制上特に税を減免するというような場合は、お話のように特定の政策目的がある場合ということになると思います。  で、そういう考え方を利子に当てはめます場合にどうかということになるわけですけれども、一般論として、今まで、政策的にそういう例外を税制上つくって税の減免をするというのはできるだけやめよう、できるだけ整理していこう、また新しくそういう制度はとるまいというのが税制調査会の従来からの考え方であります。したがいまして、お話のようなことは考え得られますけれども、よほど特別な場合に恐らく限定されての上でのお話と思いますけれども、それは少し具体的に検討をしなければわからないことになりますが、一般論として申し上げれば、利子に限りませんけれども税制上の減免措置は特別の政策的理由があるという場合に非常に限定的に考えていく、フィクションのものはできるだけ整理していくという建前になっておりますので、その点は利子についても同じかと思います。しかし、利子というのは所得源としては非常に広範な預貯金等がもとになっておりますので、そういうものについて特に例外をつくるということは非常に難しかろう、特定目的といたしましても難しかろうというふうに存じます。
  23. 志苫裕

    志苫裕君 ちょっと清水参考人ね、先ほど私は、資金シフトが起きて大口は税金のかからぬほかの商品に逃げていくけれども、小口はそこにとまっていてもろに税金の対象になるだろうという想定を述べたんですが、それは、少額所得者の場合には、利得というよりは老後の不安とかそういうふうなもので蓄えるわけですから。そういうことに着目をすると、利子課税問題はいろいろ甲論乙駁ありますが、ぎりぎり百歩を譲って、じゃそういう意味合いを持っている低額所得者の分はその廃止対象から外そうかと、そういう案についてはどのようにお考えでしょうか。
  24. 清水鳩子

    参考人清水鳩子君) もともと大多数の国民の持っております貯金というのは、先生おっしゃるように、老後の不安ですとか子供の教育とか住む家をいつの日か購入したいとかいうふうな、ある 意味では社会保障的な意味を持っているわけなんですね。ですから、利殖を考えた上での貯金でないということは貯蓄増強推進委員会貯蓄目的のところにも出ているんですけれども、    〔理事梶原清君退席、委員長着席〕 今は公定歩合の引き下げとか金利の引き下げとかいうことで持っているお金が先行きどんどんどんどん減るんじゃないかという物すごい心配があるわけですね。ですから、以前のように少しなりとも利率が上がっていくというふうな時代ですとそんなこともなかったんですけれども、どうも最近は少しでも有利な方へ、少しでも有利な方へということで、非常に危険な落とし穴のところに誘い込まれているのは、財産にゆとりがある人じゃなくて、ぎりぎり生活している人が被害者になっているんですね。そういうことは利子課税マル優制度を存続することで解決できるのかどうかというのは非常に難しいと思いますけれども、正直、具体的に今まで税金がかからなかったものが今度かかるんだということになったときのその人たちの不安というものは、私は予想する以上に大きいんじゃないかと思うんです。特に昔のように金融窓口というのが限られているわけではなくて、巧妙なあの手この手でもっていろんなことを言ってくるわけですね。二〇%も今までかからなかった税金がかかるんだということになったら、私は、将来の不安が今のような時代は大きいですから、またいろんなことを始めるんじゃないかと、そのことの方が大変心配なんですね。先生おっしゃったようなことがございますから、私は、どうしても低額所得者に対する控除というものは、小倉先生のおっしゃったように税全体の整合性からいうといろいろ問題を持ってくるし、今度のような適用除外みたいなもので一部存続して改組というふうな言葉を使っておられますけれども、あれを見てもまたいろんな問題が起こってくると思うんですね。  ちょっと脱線しますけれども、電気・ガス税の値上げのときに福祉料金制度というものを導入したわけです。いわゆる生活保護世帯とか特別な年金者に対しては窓口へ申告すれば安い料金でいいというふうな制度を一度入れたことがあるんですけれども、そういう制度を使える人ばかりじゃないんですね。せっかく制度ができても、それを使わない人にむしろそのマル優廃止の問題が集中的に及んでいくというふうに思いますので、こういう時代には将来に対する不安が物すごく大きいわけですから、税の整合性ということからいえばいろいろ問題があるかもしれないけれども、そういう社会環境とか社会情勢というものを考えても、私は、これを廃止するのは非常に過酷だし、後に問題を残すというふうに思っております。
  25. 志苫裕

    志苫裕君 和田参考人、ちょっと一問お願いしますが、先ほど税率構造の問題に疑問を呈されましたが、それではないんです。課税最低限の話なんでして、これ随分長いこと据え置きにもなっていたものですから、我々は引き上げたらという意見を持つんです。  ただ、国際的に見て日本は高いんだ、そのことが発端になって全体に税率が高いあるいは税金が高いと、そういう説明で当局は据え置こうというわけですけれども生活非課税は租税の大原則で憲法上の要請でもあるという立場で、果たして課税最低限というその生活レベルが高いか低いか、それでどのような暮らしができるかというのは、単純な国際比較を見て高い低いと言っても意味がないんじゃないか。日本のそれだけのお金で国際諸国と比べてじゃ一体どれぐらいの生活ができるのかというふうなそういう国際比較が必要なのではないか。それを一切捨象してしまって、単純にアメリカが幾らでソビエトは幾らでフランスが幾ら、日本は高い、こういう論理は余り合理性がないんじゃないかというふうに僕らは考えるんですけれども、先生御所見ございましたら、そして今度の改定等で課税最低限の問題についても触れるべきであろうかどうかということもあわせて御所見があればお伺いしたいんですが。
  26. 和田八束

    参考人和田八束君) 課税最低限につきましてですが、今回の改正と具体的にかかわり合うところがあるかどうかわかりませんけれども、お話のように、課税最低限につきましては基礎控除、それから配偶者、扶養控除というふうないわゆる人約三控除というものがございまして、この内容とかあるいは水準につきましては種々議論があるところであります。  それで、人約三控除が果たして妥当な水準かどうかというのはなかなか決着のつきにくい問題があるんじゃなかろうかと思うんですが、そうした質的な問題を抜きにいたしまして、課税最低限といいますか、いわゆる所得控除というものにつきましては、所得から所得控除を引きましたものが課税所得ということになりますので、いわゆる税率に関係が出てくるわけでありまして、これが税率構造と両者相まって所得に対する一定の税負担率というものが構成されるわけでありますので、そういう面からも見てみなければならないのではないかと思うわけであります。ですから、諸外国との比較ということも必要ないわけじゃないんですけれども税率構造ともかなりかかわり合いがあるわけであります。  ですから、アメリカの税制改正などを見ますと、前回のレーガン改正では課税最低限をかなり引き上げて、そして税率構造の方はいわゆる簡素化ということをやっているわけでありますけれども他方、一定の所得以上の層に対しては課税最低限の適用を停止するとか消失するといいますか、そうした装置もつくっているようでありますので、そのようなことも税率あるいは税負担との関係で問題になってくるわけでありまして、今後、そうした観点を取り入れて、実際の税負担が各層に対してどういうふうになるのかということとそれから課税最低限というものとのかかわりというものを注目していく必要があるのではないか、こういうふうに思います。  それから、いわゆる配偶者特別控除でありますけれども、これにつきましては課税最低限と一部関係があるわけでありますが、余りこの制度が複雑になるということを避けるとすれば、むしろ基礎控除なり扶養控除なりを引き上げるということで課税最低限を引き上げて、余り特別控除という形で複雑にならない方が税制としてはいいのではないかというふうな感想を持っておるところであります。
  27. 志苫裕

    志苫裕君 最後にいたしますが、また神谷参考人、ちょっと金融サイドの人として御意見を拝聴したいんですが、いろいろありますが、結局、キャピタルゲインの全額課税をどうするかというのが今後の税制改革の上で重要な柱になるだろう、またそのような議論も起きているわけであります。  それに対しては、まずさまざまな所得の形態があるので捕捉が面倒だあるいはその体制が弱い、そのほかいろいろあるんでしょうが、まことにもって民主国家の税務当局にあるまじき情けない話が出てくるんです。いささか逃げ口上の感もしないわけでもないんですが、金融機関サイドから見て、キャピタルゲインの捕捉というものはできるというふうにお考えかどうか、御所見があれば伺っておきたい。
  28. 神谷健一

    参考人神谷健一君) ただいまのお話は主として株式などの有価証券にかかわる問題でございまして、私、銀行協会長の立場としてはこれは甚だお答えがしにくい問題でございます。  しかし、一般論として申し上げれば、これは私の個人的見解になりますけれども、キャピタルゲインというものは相当担税力のある所得である、税金を負担できる担税力のある所得であるということは事実だという感じがいたしております。それでございますので、これに対する課税あり方、方法論を含めまして、やはり十分議論される余地はあるんではないかと。例えば、有価証券取引税との関連とか、どうやって捕捉するとか、あるいは課税の方法をどうするとか、いろんな面から具体的に総合的に検討さるべき問題であるという認識は私個人としては持っていると、そこらで勘弁していただきたいと思いますが……。
  29. 赤桐操

    赤桐操君 神谷参考人に大変恐縮でございます が、ちょっと伺いたいと思います。  先ほどのお話の中で、今貯蓄の全国の高が五百三兆円になっている、それで五百三兆円の中で銀行関係民間銀行が四二・七%で四・四%のダウンとなっている、あと保険と郵貯である、こういうことでございますが、保険というのは民間保険を意味しておられると思いますけれども、しかし保険といっても、金融自由化の中で保険も貯金も一つにして新しい商品もできていることでございますから、この分野は今一つになってきていると言ってもいいんではないかと私は思っておったんであります。  そこで、問題になるのは郵貯とこうした民間関係との関係だろうと思うんです。これはまたいつも大変ぎくしゃくしているようでございますけれども、これらについて、イコールフッティングになっておらぬ、こういうお話でございました。郵貯の場合は、郵政省がこれを持って運用しているわけではないんですね。この運用権というものは郵政省にはない。大蔵省の資金運用部に全部納入されて、大蔵省に権限がある。したがって、運用の基盤というものは、これは民間銀行や保険の関係とは全然違うんだというように私どもは認識いたしております。その運用の原則が、一方はそういうようになっておりますし、民間の場合は自分の銀行なりあるいはまた会社なり窓口なりで集めた金をみずからの裁量でこれを運用することができる。そうすれば、例えばいろいろ新しい商品をつくるについても独自の発想で行うことができまするし、あるいはまたいろいろなものを混合させたものをつくることができるでありましょう。そういう運用に大変大きな幅があるし、本当のいわゆる金融自由化の中の基盤があるわけですね。競争原理の中で闘っていくだけの運用の基盤があると思うんですね。そういう基盤の相違がこの二つにはあると思うんですよ、率直に申し上げて。というように私は認識しておるわけでありますが、そうすると、これが運用の根本である基盤に相違がある以上は、これをフッティングさせるということ自体、これはできるだろうか。役割がおよそ相互に違うのではないだろうか、こういうように実は私はかねがね考えておるんでありますけれども神谷参考人にこの機会にお伺いをいたしておきたいと思うのでございます。
  30. 神谷健一

    参考人神谷健一君) ただいまの御発言でございますけれども、もともと郵便貯金というのは、発足の歴史からいきましても、少額貯蓄制度ということで少額貯蓄を取り扱うという建前で発足してきたものでございました。    〔委員長退席、理事梶原清君着席〕 それが現在、貯金五百兆のうち百兆を超えるような大きなスケールに伸びてきた。そして、郵貯は税務調査も受けられないということに対して、我々は源泉徴収義務もあるとか、いろんな課税面の違いもあります。そのほか、例えば印紙税一つとっても、郵貯にはかからないけれども我々にはかかるとか、いろんな差異がございます。昨年五月の金問研の答申におきましても、これだけ郵貯がこういう形で肥大化していくのは官業による民業の圧迫である、やはりその点は是正さるべきだというような御意見もございますが、私としましては、やはりこの自由経済のもとでは、金融機関というものは同じ自由経済の原理で、私の申すイコールフッティングで仕事をやっていかなければどこかでひずみが出てくるんではないか、それが私の考え方でございます。
  31. 和田教美

    和田教美君 まず、政府税調小倉会長にお尋ねをいたします。  先ほどの御発言の中に、今度の改正案は緊急の問題を取り上げたんだけれども税調としての抜本的見直しの考え方は昨年十月の基本答申に出ておるということをおっしゃいまして、また、間接税についても見直しを進める必要があるということをおっしゃいました。実はこの委員会でも、抜本改正の一環であるということを政府は盛んにおっしゃるんだけれども、それじゃ具体的に抜本改正の基本構想というのはどういうことだと言うとさっぱり言わないわけでございますが、今の小倉会長のお話だとやはり売上税に類するような、何と。いいますか、課税ベースの広い大型間接税をベースとした基本構想、これは変えないということなのか。  その辺が一つと、それから実際の政治情勢として、売上税が廃案になったというふうな情勢を踏まえて、そういうものをベースとした抜本改正というものが近い将来今の国民の世論のもとで可能であるかどうかということについてどういうふうにお考えになっているか、その点をお聞きしたいわけでございます。
  32. 小倉武一

    参考人小倉武一君) ただいまのお尋ねでございますが、税制について全体としての基本的な改正を行うという意味での抜本改正ということでありますれば、直接税である所得税、法人税のほかに、間接税についてもやはり検討をしなければならぬというのがまず一つ前提としてといいますか、全体の考え方としてあるかと思います。  今回の所得税減税も全貌が出たというわけでもどうもないようでございまするし、また法人税につきましては、去年の十月の答申に沿うような趣旨のものとはなっておらず、見送りという状態になっておりますが、所得税のさらに減税についてどう考えるかあるいは法人税について減税を新しくどう考えるかというようなこととの関連におきまして、財源をどうするかという問題が当然起こってまいりますので、その際はやはり間接税ということになろうかと思います。だから、間接税というのは、何もそれだけが財源だというわけではありませんけれども、一つの財源として検討の中に入るだろうと思います。  もう一つは、減税のほかに、これからの財政再建をどう持っていくかということのために、やはり新しい財源ということを税制上に求めるとすればやはり間接税ということになる。そこで、これまでの間接税につきましては、これは諸先生方皆御承知のとおり、これまでの物品税を中心とするあるいは個別の税目にかかります間接税というようなものもございますが、そういうものの延長線の上ではちょっと考えにくいんではないかというふうに、どうも私どものこれまでの勉強の結果そうなっておりますので、これまでの間接税あり方とは変わった新しい姿のものを考えるということになろうかと思います。    〔理事梶原清君退席、委員長着席〕  そういたしますれば、これまでの経過を考えますと、一般消費税とかあるいは売上税というようなのが頭に浮かぶわけでありますけれども、これらはすべてうまくいかない、国会ないし国民の御了承を賜っていないということも片や考えなくちゃならないというようなことになっておりますので、そういうことを踏まえました上でどう持っていくかということが今後の、我々と申しますか、政府ないし政府税制調査会課題だと思います。  それ以上、我々がこう持っていきたいあるいはどうしたいというようなことはまだございませんので、今後の宿題であるということだけ申し上げるにとどまらざるを得ないというわけであります。
  33. 和田教美

    和田教美君 次に、主婦連の清水事務局長にお尋ねいたします。  先ほどのマル優廃止反対についての清水さんの御意見には全く賛成でございます。我々はもちろんマル優廃止絶対反対でございますけれども、先ほど御提案ございましたように、利子所得の問題について五年を経過した後に見直しを行うということ、しかも「必要に応じ、」というふうなところが非常にあいまいであると。これは衆議院の修正の内容でございますけれども、そういう問題についても全くそのとおりと思うので、その辺は我々もさらに修正できるように努力したいと思っております。  マル優の問題は既に大分出ましたので、この際別の問題をひとつお聞きしたいんですけれども、今回の改正案配偶者特別控除の問題でございます。  これは、専業主婦の内助の功に報いるものだということで新設されて、私はいろいろな意見があ ると思いますけれども一歩前進ではないかというふうに思うし、我々もその方向努力したわけでございますけれども、果たしてそれで十分なのか、あるいはどの程度の効果しかないのか、その辺どうお考えになっているのか。  それともう一つ、それに関連をしていわゆる二分二乗方式、先ほどの吉牟田先生のお話だとそこまでいかなかったんだというお話でございましたけれども、この二分二乗方式について基本的にどう考えておられるか。一部にはこういうことをやるとかえって女性を家庭に縛りつけることになるなんという意見もあるようでございますが、基本的に主婦連としてどうお考えになっているのか、お尋ねしたいと思います。
  34. 清水鳩子

    参考人清水鳩子君) 配偶者特別控除の考え方ですけれども、これは婦人団体の中でもいろいろ意見がございまして必ずしも婦人団体の意見が一致しているということではないんですけれども、私は、これだけ働く女性がふえてまいりますと、今家庭におりますいわゆる専業主婦と言われる人たちは、私たちのような世代ですと結構多うございますけれども、全体的な比率からいうと年ごとに外に働きに行く女性がふえてまいりますし、そういう働きに行くような社会的な環境もだんだん整ってまいりますわけですから、これからの将来の税の収入ということを考えたりいたしますとこの配偶者特別控除の対象者はだんだん少なくなるというふうに思うんですね。ですから、現在においてはそれなりの意味があるかもしれないけれども、やはり次第にそういうものの受ける対象者は減ってくる、これはもう時代の趨勢だと思うんです。  それからもう一つ、働くという意識の問題なんですけれども、私は個人的には、やっぱり女性もきちっと働いて税金を納めていく、そして自立していくというふうなことを家庭の中で夫とともにつくっていくという、そういうふうな時代に来ていると思うんですね。ですから、これは、現在は働きに行きたくても行かれない人とか、それから働いている主婦と家庭にいる主婦との間のさまざまなアンバランスがあるのでそれを解消するということでございますけれども、考え方の基本は私はそういうふうにとっているんです。  それから、二分二乗方式についても、これもいろいろ意見がありまして、私も今どちらが最も望ましいのかということはよくわからないんですね。ですけれども、やはり配偶者特別控除の考え方と同じように、これからの将来を見たときの女性の社会的な地位というものは男と同じようにきちっと所得を得て、そして社会的な地位を持ち、そして税を払っていくというふうな、そういう自覚というものの基本が必要なんじゃないかというふうに私は思っているんです。
  35. 和田教美

    和田教美君 ありがとうございました。  次に、立教大学の和田先生にお伺いいたしますけれども政府の案だとマル優を強引に廃止する、その一方で同じ金融資産からの所得であるキャピタルゲインは依然として原則非課税のままということでございまして、その意味での不公正というものはますます広がっていっているというふうに我々は考えるわけです、  そこで、政府はなぜキャピタルゲインを非課税にしているのかということの理由にまず所得捕捉が不可能だということを挙げているわけですけれども、例えば、アメリカのように個人のプライバシーを非常に極度に尊重する社会においても、社会保障番号などによって所得捕捉についてかなり実効を上げているというふうに聞いておるわけでございます。  そこで、個人のプライバシーを尊重しながらもキャピタルゲインを捕捉する体制を確立する具体的な方法が何かないかどうか、そういうことは可能なのか不可能なのか、その辺についての先生の御見解をお伺いしたいわけです。
  36. 和田八束

    参考人和田八束君) お話しのように、所得の正確な捕捉が難しいのでかえって不公平になるのではないかというふうに言われておりまして、シャウプ勧告時においてはキャピタルゲイン課税があったわけですけれども、その後廃止になって今日に至っているというふうなことからいいましても、そういう税務行政上の問題というのがあるように聞いております。  それに対する具体的な方策というのを私考えておるわけではないんですが、現在は利子課税等においても金融機関の窓口において源泉徴収が行われあるいは所得の捕捉がかなり行われているという現状からいきまして、証券関係が全然できないというふうには考えられないわけでありまして、やはり一定の証券取引という場で行われているわけでありますので全く不可能ということはあり得ないのではないかということでありまして、この辺はもう少し税務行政的にも考える余地があるのではないかということであります。  それで、お話のような番号制ということでありますけれども、これは、現在、給与所得の源泉徴収その他具体的な税務署の税務行政上、それぞれ付番がかなりなされておりまして、いわゆる国民背番号ということになりますと相当プライバシーということで誤解もあるわけでありますけれども、税務行政上の観点からの付番ということでいいますとこれは必ずしも国民のプライバシー全体に対する侵害ということではありませんし、所得を正確に捕捉するということはむしろ公正という観点からいって必要なことでありますので、何らかのやはりそうした合理的な措置というものは考えるべきではないか。  これは正確な話ではありませんけれども、こうしたキャピタルゲインにつきましてもかなり正確に捕捉できるというふうなお話が証券業などにおいてもあるやに聞いておりますので、その辺のところはもう少し検討すべきところではないかということで、キャピタルゲイン課税というものが税務行政上のサイドから不可能である、非常に不公平を助長するというふうなことを一概に言うということについては大変疑問を持っているところであります。
  37. 和田教美

    和田教美君 全銀協の神谷会長にお尋ねをいたします。  先ほどから話が出ております土地の超短期つまり二年以内の転売、土地転がしを防止するための二年以内の超短期重課というのが今度の改正案に入っておるわけでございますけれども、これは私は一歩前進だと思うんです。異論も先ほど述べておられましたけれども。ただ、私いろいろ聞くと、不動産業者なんかの間には、いやそれであればとにかく超重課を逃れるために少し金融機関から金を借りてつなげばいいんだ、今の金余り状況の中でそんなことは簡単にできるよなんと言っている人もあるわけでございます。要するに、この問題は、実際に効果を上げるかどうかは金融機関の態度次第だという面がかなりあると思うんです。  確かに、土地の急騰という問題については、金融機関の貸し過ぎというふうなことがいろいろ問題になって、金融機関の自粛をいろいろ申し合わされたりしておるわけでございますけれども、これが実際に実効を上げておるのかどうか。基本的に金余り余り投資先もないという状況の中で、いろんな形で土地の値上がりを助けるようなそういう融資態度というものが依然として続くのではないかというふうな見方も依然としてあるわけでございますけれども、その辺について会長はどうお考えか、お聞きしたいと思います。
  38. 神谷健一

    参考人神谷健一君) 最近、一部の新聞で私が政府土地政策に反論しているというような記事もございましたけれども、決してそういうことではございませんので。  私ども金融機関といたしましては、過去数回にわたりまして、土地の融資につきましては厳正なる態度で処置していくよう、各金融機関挙げて自粛をするようということで、特にこの七月には銀行協会の加盟銀行それぞれが、とにかく土地転がしのような投機的な融資というのは一切取り上げない、それから土地の融資に関してはその土地の利用計画、それから取引の価格等を厳重にチェックして厳正に対処していくということでやってまいってきているわけでございます。そういうこと でございまして、今非常な努力をしているわけでございます。その結果だとは思いますが、この四月-六月の土地関連の融資の増加額は一-三月に比べて四割程度も減っておる、恐らくこの七-九月になりますと、ますます大きな減り方になってくるということでございます。  一番冒頭に先生からお話しのありました超短期の譲渡について重課税をかけるということについては、私どもとしても今の問題に妥当な処置であると考えておりまして、銀行といたしましては、最初にある期間で融資した以上はそれをまた期間を延ばしてくれと言っても、それは応じられない。それからまた同時に、そのときに、利息を元金に上乗せしてまた貸してくれと言っても、応じないと。要するに、一度土地関係で融資した金が本来の融資目的にちゃんと使われているかどうか確認して、そういうものでなければ御返済いただくなり何なり相当強硬な対策を講じていくという厳正な態度でやっております。
  39. 多田省吾

    ○多田省吾君 小倉税調会長にお尋ねをいたします。  シャウプ税制以来しばらくたって資産課税というものが非常に後退をしました。今、有価証券の配当等のキャピタルゲイン課税というものをどうしてもやらなければならない、総合課税化という方向が私は必要かと存じます。  そういう意味で、問題は、やっぱり捕捉できるかできないか。アメリカ等におきましても、社会保障番号等によって九割近く捕捉している。ですから、捕捉はやろうと思えば問題ないんだ、こういうのが今や常識化しつつあります。  このキャピタルゲイン課税総合課税に対しまして一グリーンカードあるいは納税者番号等コンピューター化時代、また、国民皆保険国民皆年金という時代におきまして、二十一世紀に向かおうという新しい時代におきまして、私は、捕捉できないことはない、プライバシー問題も若干ありますけれども、それを乗り越えて、こういった資産課税という問題は絶対に放置できない、このように思いますが、この番号制を導入する問題につきましては、小倉税調会長はどのように思っていらっしゃいますか。
  40. 小倉武一

    参考人小倉武一君) 今のキャピタルゲインの課税問題につきましては、方向としては総合課税の中に入れていく、これは長期的といいますか、最終的な目標としては是認されるというふうに思います。また、税制調査会でも大体そういうような気分でおるんではないかというふうに思います。  ただ、問題は、根本的に、するかしないかということが一番大事なんですな。やはり全くそれは反対だという意見も大分ございますので、税制調査会の中でもそういうのがございます。  それはなぜかと申しますと、今度は把握という問題になりまして、今のお話のようなプライバシーの問題につながっていく。それは、何も普通言われる人権問題ではなくて、所得ということだってプライバシーの範囲に入れて考えている向きもあるようでございますので、そこはどうするか。もう一つは、キャピタルロスはどうするか。これはテクニカルな話で解決できない問題ではないと思いますが、その手当てをやはり同時に考えないと筋道が立たないというようなこともございます。  今の番号制度の問題でございますが、結局、やるとすれば把握の問題になって番号制ということになるわけでございますけれども、だんだんと社会保障制度が充実してまいるということになるというと、アメリカのように社会保障番号というようなものが活用できるというようなこともございましょう。あるいはそのほかの、これまでの納税上のいろんなデータもございまして、多分そういうものも役に立つので、新しくその番号制というふうに言わなくても年がたてば――年がたてばというのは、そう何年も先ということでなくて、指折り数える程度の何年か先には把握ができる体制がやろうとすれば税務当局はできるんじゃないかというふうに思うのです。ですから、キャピタルゲイン課税をすべきであるということが政治的にお決まりになりますれば、これはできないというわけではないと思います。
  41. 多田省吾

    ○多田省吾君 清水主婦連事務局長さんにお尋ねしたいんですが、私どもも、おっしゃるようにマル優廃止には絶対反対であり、また医療費控除も足切り五万円を据え置くべしという考えでございます。また、所得税減税につきましても、最高税率の部分を一〇%も引き下げるような金持ち優遇であり、今度の場合は五十万円以下の方は一〇・五%のままで、最初の案の六十三年度から一〇%というものを期待していた方々は大変がっかりしているわけでございますが、この所得税減税、もっと大幅減税をやるべしというお考えは賛成でございますが、どの辺を減税したらよろしいのか、お伺いしたいと思います。
  42. 清水鳩子

    参考人清水鳩子君) 金額については一なかなか私自身、税の中身をよく存じませんのであれですけれども、先ほど申し上げましたように、十年間で大体実質所得がマイナス〇・三とか〇・五とかということでございますので、その辺の目減り分が少なくとも上乗せされないと現在言われているような金額では恐らく十年間の目減り分がカバーし切れないんじゃないか、一人一人の世帯に振り分けましたときに。ですから、それでは、名目上は減税になっても実質的には今までの目減りを補てんしたということで、国民の中に減税の喜びというものは出てこないと思うんです。何かその辺の数字の計算ができましたらしていただいて、そしてぜひ上乗せをしていただきたいというふうに思うんです。  野党の先生方はそれぞれの金額を具体的にお示しになっておられますけれども、私は、野党の先生方のお示しになっておられる少なくともそこらまでは必要じゃないかなというふうに思っております。
  43. 多田省吾

    ○多田省吾君 最後になりますが、和田教授に土地税制でお伺いしたいんでございますが、私どもも、大企業、大法人の遊休地等にはやはり土地増価税というものをかけて五年か十年で分離して納めてもらうような方式をとり、また一定以下の規模の個人住宅地の固定資産税等は据え置きあるいは軽減すべきである、このように主張しているわけでございますが、先生のおっしゃる土地財産税、これは保有コストを引き上げるんだあるいは含み資産的な課税なんだというお考えと私は同じようなものだと考えておりますが、もっと詳しくおっしゃっていただければありがたいと、このように思います。
  44. 和田八束

    参考人和田八束君) いろいろな形態がございまして、土地増価税といいますのは、概して開発利益税といいますか、公共事業等による開発効果、開発利益を吸収するというようなことで従来言われてきております。  それから、保有税につきましては、御承知のように地方税に固定資産税、都市計画税というふうなものがありまして、これも一定の目的なり効果を持っているわけでございます。  それから、法人にかかわるいわゆる含み益課税といいますか再評価益税といいますか、これはまたそれ自体いろいろな問題を持っているわけでありますし、また個人に対する土地財産税ということになりますと、これは恒常的な税ということではなくて、むしろやっぱり一時的、短期的な時限的な税制ということにならざるを得ないのではないかと思いまして、保有といいましてもいろいろな形なり目的がございます。  ここで私が何か具体的な結論なり構想を持っているというわけではないんですけれども、そういうふうないろいろな形態なり構想、目的なりあるわけでありますけれども、そうしたものの中から、具体的に土地保有にかかわる利益といいますか、そうしたものを吸収しながら土地の保有コストというものを一定程度負担できるようなそうした税制を何か現在考えないといけないのではないかということを考えているということでございます。
  45. 多田省吾

    ○多田省吾君 ありがとうございました。
  46. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 まず、小倉参考人に質問いたしま す。  先ほどから総合課税化についてのいろんな質問や御発言ございましたが、去年の十二月二十八日の毎日新聞の小倉会長に対するインタビュー詳報があります、それによりますと、小倉さんの発言として、「総合所得課税で累進制をとることを基本にするという考え方が変わってきた。そう簡単に気持ちを合わせられんよ、」と。お気持ちをお察し申し上げますけれども。    〔委員長退席、理事梶原清君着席〕  そこで、私の質問は、ずっと今まで税調としては総合課税だということを言ってきたのが、こう変わったわけですね。そこで、一体一律分離課税という方策は、いつ、どういう形で政府税調に持ち込まれ、そして従来の税調の議論との関係でどういう議論が闘わされたのか。そして、最終的に一律分離案に対する各委員の賛否があったろうと思うんですが、それについての分布、個人個人なかなか言いづらいでしょうから、その分布がどうであったか、これを御説明いただきたいと思います。  というのは、ずっと来たものが変わってしまうんですから、国民にとってはなかなか納得のいかぬことなので、その辺をお話しいただければありがたいと思います。
  47. 小倉武一

    参考人小倉武一君) 最終的に一律分離課税ということになりましたことはお話しのとおりでございますけれども税制調査会の抜本的改正ということで昨年の十月の答申の中では必ずしも一律分離課税というふうに一つに結論を絞っていくことはできなかったわけですね。その十月の段階ではまだ幾つかの考え方があったわけでありますが、そのうちに自民党の方での税制調査会での御検討もあるというようなこともありまして、その自民党の税制調査会の御審議の様子なども途中で当然考慮されるということになりまして、結果的には一律分離課税ということに政府税調としてもなったということでございます。  したがいまして、その際には、もはや最終段階でありますし、まあ税調としては三つばかりの考え方があったわけでありますが、余り深く論ずることなく、自民党でそうおっしゃるならそれも一つの選択だろうというふうな程度でございますから、どなたがどういう意見であってどなたがどういう意見でなかった、数はどうだったというようなことは記録にも載りませんし、また一々全体の方が意見を述べられたということもございませんので、その数の分布その他についてはちょっとわかりかねると思います。
  48. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 今の御発言でも、幾つかの意見があって、十分論じ合い、煮詰め合って、そして一つのところに行ったということではどうもないようですね。  となりますと、これまた別の新聞記事によりますと、「会長辞めた」と。その辺の御不満があるんじゃないかなと、こう思うんですが、もし差し支えなかったらばお答えいただきたいと思うんです。
  49. 小倉武一

    参考人小倉武一君) 利子所得といいますのは、これちょっと釈迦に説法になりますけれども所得の中ではやっぱり相当大きな意味のあるもので、それをどう取り扱うかということは、所得課税について総合所得累進課税をプリンシプルにするということと非常に関係がありまして、軽々に分離課税でよろしいというわけにもいかない性格のものであるというふうには存じております。  しかし、近ごろ金融資産については当然一律でよろしいんだ、総合課税といってもいろいろ例外があって現実は総合課税になっていないという点もございまするし、これは別に、実際上そうなっているという点もございますけれども、したがいましてあらゆるものを必ず総合して、その上で累進課税にするんだということでなくちゃならぬということもないという意見が最近は税調の中でも出てまいっておるわけであります。以前はそういうことはありませんでしたけれども、だんだんとそういう意見も最近はございますので、何というか、対立した意見があって採決に近いようなことになった上でしたのではなくて、円満にそういうことになったということでありますので、個人個人とすれば、総合累進ということで非常に大きな例外ということになりますので、不本意の方も無論おられたと思いますが、税制調査会としては正式には一本に決まったということになっております。少数意見もございます。
  50. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 今までの議論がどうして最後に円満になったのかちょっと理解できませんが、それはよろしいでしょう。  次の質問は、貯蓄率が高いというお話がございました。これは小倉参考人神谷参考人共通の質問になりますが、長期にわたって安定的な経済体制あるいは成長と申しますかを維持するために、貯蓄、特に個人貯蓄の果たす役割が大きいんじゃないかと思うんです。これが外国との比較で高い、多いと言われていますが、アメリカは極端に低いと思うんですね。ヨーロッパ諸国とは、最近、日本もずっと下がってきていますから、そんなに髪もなくなっているんではないか。  そこで、高いということを指摘してこのマル優廃止となりますと、もっと低めようということになるんだけれども、私は、これをこれ以上低めることが果たして日本経済にとって好ましいのか。そして、低ければいいとなってアメリカ並みになってしまいましても、これ本当にいいんだろうか。その日暮らしというようなことになっちゃいますね、というようなことについてそれぞれお答えいただきたいと思います。
  51. 小倉武一

    参考人小倉武一君) 貯蓄の問題につきましては、貯蓄率を下げた方がよろしいんだという意見ももちろんあるでしょうけれども税制調査会では、貯蓄率は下げた方がいいんだというふうに必ずしも意見が一致して税の関係を考えるということではなかったわけです。貯蓄の奨励は奨励としてそれは結構なことだとか、あるいは必要なことであるということはそれはそれとして、税制の上で優遇してまで貯蓄を奨励するということはこの際いかがなものか、こういうことでございまして、貯蓄必要性なり奨励ということは必要ないということから発しているわけではございません。
  52. 神谷健一

    参考人神谷健一君) 私も、ただいまの小倉参考人の御意見と同じように、貯蓄必要性が減っているということはないと思います。むしろ、これからの高齢化社会の到来を展望いたしますと、自助努力の面からも貯蓄必要性はあると思っております。  ただ、先ほどもお話がございましたけれども税制貯蓄率との相関関係というのはなかなか判断の難しいところでありまして、むしろ貯蓄率国民性とか人口構成とかそういう面でいろいろ数字が出てくるのじゃないかという面もございますので、今度の一律分離課税というものが必ずしも貯蓄にとってマイナスの税制であるとは私は考えておりません。    〔理事梶原清君退席、理事大浜方栄君着席〕
  53. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 続いて、神谷参考人ですが、全銀協は現在のマル優制度を支持してまいりましたね。いつごろから廃止に賛成することに変わったのか、その理由は何なのか。  そのことと関係しまして、元銀行局長であった徳田さんがこう言っています。「マル優は「理論的」には制度上完全なものである」、「非課税貯蓄申告書はすべて税務署に提出されるので、税務署において分類整理して住民票と照合すれば、不正利用は全部摘発できる」、「本年に入ってから、本人確認はおおむね正確良好に励行されており、」、「金融機関にとって非常に大きな負担となっているマル優制度の事務がなくなることなどの目前のメリットにだけ惹かれて、国家の大計を誤るようなことがあってはならない。」と言っておりますが、的確な指摘だと思うんですが、率直な御感想をひとつお聞きしたいと思います。
  54. 神谷健一

    参考人神谷健一君) 全国銀行協会といたしましては、従来、広く国民の間に定着しておりましたマル優制度は維持していくべきだというのが、御指摘のとおり我々のスタンスでございました。しかし、現在国会で御審議をいただいている内容 を見ますと、所得税減税とその恒久財源としてのマル優の改組でございまして、それがセットされて議論されてきている。そしてこれまでの国会審議を通じまして、所得税減税は今緊急の課題である、しかしそのためにはやはり恒久財源も必要であるといった方向国民の皆さんの御理解もどんどん進んでいるんじゃないか、それが私どもの感じでございます。そういう前提に立ちますと、冒頭申し上げたように、この際マル優を改組するのであれば御提案の方向で妥当ではないかというのが私どものただいまの考え方でございます。  ただ、ただいま御質問のありましたいつ変わったのかという時点の問題でございますけれども国会での御審議を踏まえながら私どもとしては判断しているわけでございまして、いつ急に変わったかというようなことではない。むしろ年初来の検討の動きを見ながらこういうぐあいになってきたというのが実情でございます。  それから、先ほど徳田さんのお話がございましたけれども、とにかくマル優の口座というのは民間金融機関に何と全国では一億五千万もあるわけでございます。ですから、これは理論的に言えば、名寄せもしあるいはその日々の異動を管理することも理論的には可能だと思いますけれども、現実にそれをやろうと思いますと、まことに膨大な事務負担もありコスト負担もあり、しかもそれだけやって一〇〇%完全な管理ができるかというとこれはまた非常に問題があるということでございますので、やっぱり今完璧な制度があるかどうかについては私どもは疑問を持っているというのが現状でございます。
  55. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 次は、清水参考人に質問しますが、先ほどの、不正利用者がいるからマル優廃止なんということはそれは全く理由にならぬというお話は、私はまことにそのとおりだと思うんです。  そこでもう一つ、不公正の問題としますとこういう問題がありますね。これは、どんな性格のお金であっても、一律二〇%天引きで払ってしまえば後はまさに勝手放題、要するに、架空名義も自由ですし分散も自由というようなことになって、これは脱税の温床になりやしないか。  それからもう一つは、そういう点ではこれをずっとやってしまえば、相続税は少なくとも逃れようと思ったら逃れられる、貯金に関しては相続税をかけることが極めて困難なのではないか、そういう意味で私は、これは新しい不公正への踏み込みだ、こう思うんですが、消費者立場からごらんになっていかがでしょうか。
  56. 清水鳩子

    参考人清水鳩子君) 先生のおっしゃるとおりだと思います。  この制度の今先生がおっしゃったようないろんないわゆるうまみというものは、大多数の私たちの周りにいるような人間がうまみを甘受するのではなくて、やっぱり不正利用しているところにうまみが甘受されて、そして大体限度枠以内で貧しく生活しているというか、普通に暮らしている者にとっては二〇%の新たな課税ということが残るだけで、うまみというものはどこからも発生しないと思うんですね。ですから、いろんなこういう制度を見てまいりますと、高所得者に温かいというふうな印象をぬぐえないわけです。  それから、今神谷さんの方からお話がございましたけれども、完璧な管理ができないということなんですけれども、私はやる気ならできるんじゃないかと。それをやれないというふうなことは、やはりそういう一部の階層に対する温かみを裏に秘めているからそういうことを言うので、もうやろうと思えば本当に何でもやれるのが政府だ、むしろやらなくてもいいものまで思い切ってやっているなというような感じが私なんかいたします。それから、郵便局とか銀行にお金を集めておりましても、もうほとんど名寄せもできているし、個人の財産の管理というのは非常に厳密にされていると。そんな簡単に今お金を預けられないのは去年の改正でそういうふうになってきているわけですから、せっかくそういう意味での厳密な制度が去年の改正で生まれているわけですから、それをもう少し見守るということも大事なんじゃないかなというふうに思っております。
  57. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 今の最後部分は、神谷参考人の答弁に対し私が言おうと思っていたんですけれども参考人だから失礼と思って申し上げませんでしたが、同じ参考人に言っていただいて大変ありがとうございました。  そこで今度は、吉牟田参考人和田参考人共通の問題として、今度一律二〇%課税になりますね。そうしますと、今まで総合課税なら利子所得であっても普通だったら税金がからないような階層も二〇%、それから最高税率の方も二〇%。この辺は、応能負担原則、これは税の基本的な原則だと思うんですが、これに反しゃしないかという点です。  それから、今所得格差が広がっています。数字でも出ていますね。と同時に、資産格差の広がりがさらに強まってきますと、今の実態に対して一律二〇%となりますと、所得格差だけじゃない、資産格差が一層広がっていきやしないか、この点についてそれぞれお答えいただきたいと思います。
  58. 吉牟田勲

    参考人吉牟田勲君) 確かにそういう応能負担の観点からは問題があるということで、私も、現段階でまずそうやることには賛成だけれども、将来、むしろ、先ほどの小倉先生の話とはちょっと逆になりますが、総合の方に持っていくべきだという考えを持っているというふうに先ほどお話ししたように思います。
  59. 和田八束

    参考人和田八束君) 利子課税の分離、一律分離なんですけれども、一律分離になりますとやっぱり応能的ではないということになるわけでありますけれども、そういう点で、仮に分離課税ということにするとすれば、かつて行われていたのは分離所得税プラス総合所得税といいますか、こうしたものも一つのやり方でありますが、利子課税そのものも特別なといいますか特殊な性格のものではないわけでありますので、仮にそういうことで一律課税するとすれば、総合課税を加味するということで、今後五年とは言わず、二年なり三年なりの早期に見直しを図って、そのような方向で検討されるべきではないかと思います。
  60. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 最後に、和田参考人にもう一問ですが、先ほど課税最低限についてのお話がございました。これは先生の著書の中でも、人的控除部分とし、そして生活費を基準として設定されるべきだと。  この生活費は何を基準にすべきか、そういう基準を設定する理由についてお述べいただきたいと思います。
  61. 和田八束

    参考人和田八束君) ちょっと大きな問題でありますので一言で言えることではないわけですけれども、最低生活費の問題はやはり人的控除の中で考慮されるということは従来の考え方でありますし、現在においてもそのとおりだと思います。  ただ、最近の国民生活におきましては、単に、何といいますか、市場での消費だけではなくて、公的消費といいますか、公共部門からの供給というものもありますので、税の中には一部そうした公共部門からの生活資材の購入といいますかそうした面もあるということから考えれば、課税最低限の問題についてもそのような公共材購入という面も考慮しなければならないということだろうと思います。
  62. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 終わります。
  63. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 民社党の栗林でございます。  皆さんどうもありがとうございました。  小倉参考人一言お尋ねをいたします。  所得税税制改正の全貌につきましては、今回政府提出しておりますのは差し迫ったものの一部でありますけれども、全体像は政府税調が昨年発表しました抜本答申に全部盛られているし、それを踏まえた前の国会に出した税制改正案が言うならば今考えている抜本的な改正案に近いと、こういうお立場だろうと思います。  そこで、売上税を含めたこれまでの混乱を見てまいりますと、政府税調答申を読んでまいりましてすごく感じますのは、政府税調議論そのも のがやはり拙速だったのではあるまいか。これは政府税調の責任じゃないと思います。中曽根さんの方から減税案だけ先にとにかくくれという注文もありますし、増減税を含めたトータルの議論ができるような環境にあったかというと、必ずしもなかった。そういった意味ではきちんと議論が詰まる状態の中で政府税調答申案ができ上がったことではないと思うんです。    〔理事大浜方栄君退席、委員長着席〕  そこで、そうはいったって抜本的な改正案とすると行く行くは間接税を考えていかなければなりませんぞとおっしゃいますが、片方で間接税と言いながらもう片一方では利子課税の強化と言われますと何とも筋道が合わないんでありまして、それは先ほどお触れになりましたように支出税の立場に立つとして、では間接税導入をするとしますと、それは利子課税を強化するというのはいかにも理屈に合わないということになりますし、それはもうタックスミックスだからどうでもいいんだと言われてしまったのでは私どもとすると大変困ったことなんであります。したがって、こうした問題についても、もう一度御苦労さんでありますけれども政府税調方々にきちんと議論をし尽くしていただくことが一番必要なのではあるまいか。これは、先々間接税導入が仮に必要であるとしましても、それを国民の理解のテーブルに乗せていくためにも、政府税調の再びの議論お願いするのが私は必要ではないのかと常々感じておりましたので、この点につきまして御所見をお述べ願いたいと思います。
  64. 小倉武一

    参考人小倉武一君) 先般の、昨年の十月の税制改革に関する答申、実質一年余りかかりまして、しかもその間、何回となく総会を開きあるいは部会を開き等々いたしましたし、また地方の公聴会なども数回催すということもございまして、審議が十分過ぎるというわけではありませんが、十分にした上での結論だったというふうに思います。したがいまして、中間答申自体は、必ずしも何といいますか、余り審議を十分しないで早々のうちにまとめたというわけでもございません。ただし、あの中に盛られていることは必ずしも最終的な結論を一本に絞っていくようなところもないところがございましてちょっとおわかりにくい点もあったかと思います。  しかし、いずれにしましても、全体像というものにつきまして、政府の方では法案提出をされましたのですがそれが相当部分だめになったということでございますので、一部が今回の国会の御審議に付されているというわけでございますので、今後政府でどういうふうに取り扱われるかは私存じませんけれども、お話のように、今後、やはり今までの経緯を踏まえますとある程度改めて根本から審議をしてみるというような必要があるいはあるかと思いますので、その点は今後の内閣がどういうようにお考えになるか、また税調がどういう組織になるかによっても違ってくると思いますが、できるだけひとつ過ちを何度も繰り返すことのないような、過ちと言っては語弊がありますが、余り御迷惑をかけないようにひとつ慎重に処理する必要があるかと思います。
  65. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 神谷参考人にお尋ねいたします。  お尋ねの内容はマル優廃止問題並びに利子の一律分離課税問題になりますが、ここに経済企画庁がつくりました「二〇〇〇年の日本」というパンフレットがあります。  これを見ますと、一体日本貯蓄率はどうなるかと推定計算をやっているんです。中身を見ると、高齢化が成熟するに従って日本貯蓄率は下がると言うのです。現在は三二%前後でありますけれども、これが二九・六%に下がるであろう。これは推計ですから、もちろんこうなるかどうかわかりません。ただ、こういう推計が片方である中で、税と貯蓄関係ないよとおっしゃいましたが、とは言うものの今回の二〇%一律分離課税というのは全く無関係なものとして見過ごしておいていいんだろうかということが一つです。  それからもう一つは、同僚委員からもたびたびお尋ねした問題でありますけれども、一律分離課税になりますと、利子課税を回避するために高額資産家は恐らく証券市場に行くんだろうと思うんですね。ところが、零細な資産家の方は行くに行けず、行こうとしても、それは清水参考人がおっしゃるように、まことに危険きわまりない道に行くだけであって、そこにいてとにかく利子課税負担するしかない。高額資産家の方は資産所得に転嫁をして利子課税を回避することができる。こうなりますと、低額資産家、低額所得者、いわば弱い者いじめだけになってしまうのではないかと思うんですが、この点につきましては、吉牟田参考人は先ほどマル優廃止問題についてはこれは給与所得とのバランスからいってそう反対ではないというふうにおっしゃったと思うんですが、この点についてどうお考えになっているのか。結果としては弱い者いじめではないかという点について御意見を承りたいと思います。  また戻りまして、神谷参考人につきましては、とにかく貯蓄が下がるという想定の中で、利子課税あるいはマル優廃止ということが、結果として銀行から証券への資金の流れも含めて、注意しておかなければいけない変化を惹起していくのではないか、そんな気がするんですが、この点についていかがでありましょうか。
  66. 神谷健一

    参考人神谷健一君) まず最初の貯蓄率関係でございますが、確かに日本は現在一六%ぐらい、これから高年齢の時代になりますと貯蓄率は若干は下がっていく傾向にはあるのではないかと思っております。しかしながら、先ほどは税制貯蓄率関係がないと申し上げたんではなくて、その相関関係がどの程度強いものであるかについてはそれほど明らかでない、むしろ国民性とか人口構成の方の関係がかなり強いんではないかという意見があるということを申し上げたわけですけれども、今度の税制でどうして一律分離課税貯蓄率にそんなマイナスの影響になるという判断が出るかというところが私自身どうもよくわからないというのが私の感じでございます。  それから、高額所得者が結局得するんではないかというような御意見でございますけれども、従来マル優制度を活用されておられたのはむしろ高額所得者が非常にこれをフルに利用されておられたという面で、今度の一律分離課税になることによってむしろ高額所得者が今まで得ていた利得が減る、そういう意味ではむしろ負担の公平の方に行くんではないかという感じを持っております。しかし、金をお持ちの方は、おっしゃるとおり、株とか金の方に行かれる傾向が若干あるかもしれませんが、これはやはり元本保証のない投資でございまして、私、銀行協会の関係しております預貯金の範疇には入らない問題でありまして、これは投機であるだけにリスクもあるということだと存じます。
  67. 吉牟田勲

    参考人吉牟田勲君) 私、あるいは近藤委員に対する答え方でも不十分だったのかもしれませんけれども、確かに、まず現段階として一律二〇%課税を是認するということを話したわけです。それは応能負担という観点からどうかと言われて、応能負担から問題があると、こう言ったわけですが、例えば公平という観点から考えますと、今のお答えともちょっと関連しますけれども、現在課税されていない不正利用の人の利子というのが金額的には非常に大きい部分がある、これに第一次的にまず課税をするということが意味があるというふうに考えておりまして、そしてそれを実現した後でこの応能負担にもそぐうような総合課税方向に向かったらと、こういうふうに考えているわけです。
  68. 野末陳平

    ○野末陳平君 きょうはどうも参考になる御意見ありがとうございました。  所得税法のこの改正案に直接関係はないんですけれども吉牟田先生とそれから和田先生のお二人に間接税のことでお伺いしたいと思います。  直間比率の是正も含めてでいいんですけれども、これから間接税が果たして必要かどうかというところで率直な御意見をお伺いしたいんです。もしだめであるならばそれはどういう理由でだめとおっしゃるのか、それから必要だという御意見 であればどういう形の間接税日本の風土に合うのかというか日本人に向くのかといいますか、製造段階の課税というような形なのか、これはいわば物品税の拡大みたいなものですけれども、それとも、あるいはこの間もめました売上税の基本になっている日本型付加価値税がいいか、あるいはアメリカのような末端の小売段階のセールスタックスのようなものがいいのかいろいろあると思いますので、その辺で先生方お二人の御意見をお聞かせいただきたいと思います。
  69. 吉牟田勲

    参考人吉牟田勲君) 間接税についての意見を言えということでございますが、私、本来は公平の観点からやはり直接税を中心に構成すべきだと思いますけれども、現在の我が国課税状況から見ますと、所得消費資産という観点から、所得から貯蓄を抜けば消費になるわけですけれども、やはり消費課税というのが不十分だ、消費課税が特に不十分な点は物よりもサービスだと。そういうことをいろいろ考えできますと、私は、将来は課税範囲の広い間接税、まああっさり言いますと付加価値税が必要だろうと思っております。  最近付加価値税について非常に興味のある提案がされております。それはカナダの税制がそうであり、レスター・サローが「財政赤字」という本で紹介しているんですけれども、要するに、付加価値税の定額を所得税額から控除する。レスター・サローはかなり細かくそのことを述べておりまして、定額の三百七十五ドルという税額控除、これは一五%の付加価値税を想定しておりますけれども、そうしますと四人家族で千五百ドルの税額控除になるんですが、それは一万ドルの消費をしたときの税率相当額なんですね。一万ドルの消費をしたときには、千五百ドル引きますと税金がゼロになります。四人家族で一万ドルよりも多い消費をしますと若干の納付になります。二万ドルで七・五%、五万ドルで一二%ぐらいの負担になるんです。そうしますと、一番問題である逆進性という問題がなくなるわけでございまして、しかもこの税額控除は納めた付加価値税を引くというんじゃなくて、三百七十五ドルと決めてしまって引きますので、源泉徴収段階でも初めから所得税から引いてしまうということも可能だというふうに見られますので、私は、ぜひこの次の検討の際にはそういうことも含めましてやはり付加価値税が検討の必要があるんじゃなかろうかと、こういうふうに思っております。
  70. 和田八束

    参考人和田八束君) 私は直接税中心税制を支持いたしますので、間接税につきましてはいわゆる補完税といいますか、そうした形で整備していくべきであろうというふうに考えております。  直間比率という問題につきましてもいろいろありまして、具体性という点につきましてはやや欠けるところがあり、例えば法人税をどう見るかというふうな問題もありますので、これだけで判断することはできないわけであります。私は、補完税としての間接税ということで言えば、現行の個別消費税を改良改善していくということで対応できるのではないか。特にサービス業あるいはサービス課税につきましても、個別消費税的なタイプで可能な分野というものがあるというふうに見ているわけであります。昨今の大型間接税の諸議論を見ましても、我が国国民性といいますか、歴史性といいますか、そうした面から見てヨーロッパと違う土壌があるような感じがいたしますので、そういう点を十分に考慮していかなければ税制の問題についてもいけないのではないか、こういうふうな印象を持っております。
  71. 野末陳平

    ○野末陳平君 ありがとうございました。  それから、もう一問なんですけれども、これは土地税制関係してくるんですが、固定資産税の問題ですね。先ほど和田先生が保有コストとおっしゃいましたが、その中に固定資産税も含まれているのかどうかちょっとわからなかったんですが、その補足の御意見と同時に、固定資産税というものは今後どういうふうにあるべきなのか。ただでさえ、地価といった場合にもいろんな数字が出てきて、固定資産税は実勢から見ればかなり低いところで評価されているわけですが、これを、それでも高いもっと下げよとか、あるいはいやこれは本来高くするべきものであるとか、学者先生の中でもいろんな意見があるようです。ですから、そういうことも含めまして固定資産税を今後どういうふうに考えるべきものか、その辺、ひとつ専門家の御意見をお伺いしたいと思います。
  72. 吉牟田勲

    参考人吉牟田勲君) 固定資産税の引き上げという問題ですけれども、これ単純にいかないような気がいたします。  というのは、固定資産税は所有している土地・家屋にかかるわけですけれども、最近の評価のやり方は、売買実例価額ということで譲渡があった価格を基準にして評価額にするということから、例えば年金生活者とかいうような方は周辺が上がったために固定資産税が非常に上がるという問題がございます。それで今土地税制の観点から保有経費を上げて吐き出させるという格好で、これは本来は例の近郊農地課税の問題と絡んでいるように思います。したがいまして、私は、ある意味で農地の関係課税というのは別に引き上げる方を考えていいと思いますけれども、そういう住宅地の課税というかあるいは事務所用地の課税等を含めますと、要するに、売買実例価額が上がるからそれに従って直ちに上げていくということば、慎重といいますか、むしろそうやるべきではないんじゃなかろうか。そちらはそちらで現在の二分の一とか二百平米以下四分の一とかいう制度がございますが、そういうことをもっと考えないといけないのではなかろうか。アメリカでは、財産税については所得に応じましてゼロから一割納める、二割納めるというサーキットブレーカーという制度があって、人税化をしているというふうに聞いておりますけれども、そういうことも考えるべきではないか、こういうことを思っております。
  73. 和田八束

    参考人和田八束君) 私も今の吉牟田さんの御意見とそう違うわけじゃないんですけれども、固定資産税の評価額につきましては、これを政策的に抑えて時価との格差を広げるということは好ましくないというふうに考えます。やはり評価額は引き上げる、時価に近づけるということが必要だろうと思います。  ただ、問題は税率でありまして、税率につきましては必ずしも標準税率に全国的に固執することはないわけでありまして、もう少し弾力的にするあるいは用途別に不均一課税をするというふうなことを、地方税でありますのでもう少し地域の実態に応じて弾力的に運用するというふうに制度を改める、これは地方債の起債の問題とも絡むわけですけれども、考えるべきではないか。あるいは、これとの関係で都市計画税につきましての税率については、なおさら弾力的に運用すべきではないか。  それから、居住用の特別の措置につきましては、現在二分の一、四分の一という二百平米以内についての特別な措置があるわけでありますけれども、これも制度ができましてからやや時間がたっておりますので、地価上昇の実態に応じて見直して、居住用の資産について特別に過大に負担が上昇するということについては一定の考慮をすべきではなかろうかというふうに思います。
  74. 野末陳平

    ○野末陳平君 ありがとうございました。
  75. 村上正邦

    委員長村上正邦君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人方々には、御多忙中のところ御出席をいただき、貴重な御意見をお述べいただきましてまことにありがとうございました、おかげで真剣な議論ができました。委員会を代表して厚く御礼申し上げます。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時四十五分散会      ―――――・―――――