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1987-10-26 第109回国会 参議院 決算委員会 閉会後第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十二年十月二十六日(月曜日)    午前十時開会     —————————————    委員異動  十月二十三日     辞任         補欠選任      佐藤 昭夫君     内藤  功君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         穐山  篤君     理 事                 井上  裕君                 石井 道子君                 大島 友治君                 杉山 令肇君                 菅野 久光君                 峯山 昭範君     委 員                 井上  孝君                 板垣  正君                 河本嘉久蔵君                 沓掛 哲男君                 斎藤栄三郎君                 寺内 弘子君                 中曽根弘文君                 永野 茂門君                 福田 幸弘君                 松尾 官平君                 宮崎 秀樹君                 守住 有信君                 久保  亘君                 佐藤 三吾君                 山本 正和君                 片上 公人君                 刈田 貞子君                 内藤  功君                 橋本  敦君                 関  嘉彦君                 抜山 映子君    国務大臣        法 務 大 臣  遠藤  要君    最高裁判所長官代理者        最高裁判所事務        総長       草場 良八君        最高裁判所事務        総局総務局長   山口  繁君        最高裁判所事務        総局人事局長   櫻井 文夫君        最高裁判所事務        総局経理局長   町田  顯君        最高裁判所事務        総局刑事局長   吉丸  眞君    事務局側        常任委員会専門        員        小島 和夫君    説明員        警察庁刑事局暴        力団対策室長   深山 健男君        防衛庁教育訓練        局訓練課長    柳澤 協二君        防衛庁経理局施        設課長      伊藤 宗武君        防衛施設庁総務        部調停官     折田 成男君        法務大臣官房長  根來 泰周君        法務大臣官房司        法法制調査部長  清水  湛君        法務省民事局長  千種 秀夫君        法務省刑事局長  岡村 泰孝君        法務省矯正局長  敷田  稔君        法務省人権擁護        局長       高橋 欣一君        法務省入国管理        局長       熊谷 直博君        大蔵省主計局主        計官       若林 勝三君        文部省初等中等        教育局中学校課        長        辻村 哲夫君        労働省職業安定        局企画官     吉免 光顕君        会計検査院事務        総局第二局長   志田 和也君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和六十年度一般会計歳入歳出決算昭和六十  年度特別会計歳入歳出決算昭和六十年度国税  収納金整理資金受払計算書昭和六十年度政府  関係機関決算書(第百八回国会内閣提出) ○昭和六十年度国有財産増減及び現在額総計算書  (第百八回国会内閣提出) ○昭和六十年度国有財産無償貸付状況計算書  (第百八回国会内閣提出)     —————————————
  2. 穐山篤

    委員長穐山篤君) ただいまから決算委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る二十三日、佐藤昭夫君が委員を辞任され、その補欠として内藤功君が選任されました。     —————————————
  3. 穐山篤

    委員長穐山篤君) 昭和六十年度決算外二件を議題といたします。  本日は、法務省及び裁判所決算について審査を行います。     —————————————
  4. 穐山篤

    委員長穐山篤君) この際、お諮りいたします。  議事の都合により、これらの決算概要説明及び決算検査概要説明は、いずれもこれを省略して、本日の会議録の末尾に掲載することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 穐山篤

    委員長穐山篤君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。     —————————————
  6. 穐山篤

    委員長穐山篤君) それでは、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  7. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 大臣、おはようございます。  もうあと何日かで、きょうが最後大臣席じゃないかと思うのですが、就任のときに法曹界の刷新を意気込んでおった大臣ですから、さぞやこの一年有余は思う存分腕を振るわれたのではないかと思うのですが、感想をひとつお伺いしたい。
  8. 遠藤要

    国務大臣遠藤要君) ただいま先生お話しのとおり、来月六日が内閣首班指名が行われるというような状態でございますので、この委員会、きょうの委員会は確かに最後でございますけれども法務大臣としてはこれはまた再選されないとも限りませんので、その点十分御理解を願っておきたいと思います。  それはさておきまして、法務省においてこのような立場にさせていただき、大変皆さん方の御協力をちょうだいいたして、もろもろの法案に取り組んだわけでございますけれども自分自身としてこの国会内で皆さん方と一緒になって行動をとっておったときと、役所という中に入って一つ法案をつくるということに対して、大変なんだなということをしみじみ感じさせられたわけでありまして、議員立法やその他とは大分異なりまして、各省庁の顔色を見ながら法案を作成しなくてはならないというような点もございまして、またその中身においても、個人遠藤としてはもっと考えなければならぬのじゃないかなというような点もたくさんございました。しかし、これまた各省庁の御機嫌を損じてはという点で一歩前進させよう、そういうふうな姿勢で今日まで取り組んでまいった。その点では役所も私の心を心として、一体となって取り組んでいただき、また、国会では先生初め超党派的に大変御協力をちょうだいいたしたと。先般の法案についても、反対法案ではございますけれども審議を促進させていただいたと。そういうふうな大変思いやりに、人の情けといいましょうか、人の情について、この大臣となってしみじみ感じさせられたということを申し上げて、ごあいさつといたしたいと思います。  ありがとうございました。
  9. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 それで大臣、十五日でしたか、私がこの委員会だったと思いますが、地検のいわゆる報道の自由の問題について大臣の、まだ私は大臣でありますからきちっとやりますということをここで言明なさったんですが、どう措置なされましたか。
  10. 岡村泰孝

    説明員岡村泰孝君) 前回委員から御質問のありました、東京地検特捜部司法記者クラブに対しまして文書といいますかメモといいますか、こういったものを渡して取材活動に関する特捜部要望を伝えたという件でございますが、この件につきましては、その後東京地検の方にも事情を確かめたところでございます。  私が前回申し上げましたように、報道の自由という問題と捜査の秘密、あるいは捜査を円滑に進めていくという問題がぶつかり合う面が少なくないわけでございます。そこで東京地検特捜部といたしましては、かねがね捜査を円滑に行いたいという観点から、特捜部としての要望といいますか、希望記者クラブの方に伝えていたところでございまして、これは主として口頭で、いろいろな話し合いの機会の中で意思の連絡を図り合っていたわけでございますが、たまたま特捜部の方も幹部がかわったし、記者クラブの方もかわったというようなことから、従来の要望メモといいますか、書面として記者クラブに渡したと、こういうようないきさつであったということでございます。  これに対しまして記者クラブの方では、そのメモに書いてありますことは、特捜部要望としてはこれは受けとめるけれども自分たちにもやはり取材の必要があるんだということを言っておったということでございます。その後、両者の間で意見の交換を行う場もつくり合って話し合いもしたということでございまして、現在におきましては、その文書をめぐりまして格別のトラブルは生じていないというふうに聞いているところでございます。
  11. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 では、それであの文書による報復とか、そういうことはないんですね。
  12. 岡村泰孝

    説明員岡村泰孝君) 報復というふうにこの文書が読まれますと、やはり誤解があるのではなかろうかというふうにも思うわけでございまして、その辺は特捜部あるいは東京地検といたしまして決して記者の方に威圧を加えるような気持ちはございませんし、そういう趣旨でのメモでもないわけでございます。  取材に応ずるかどうかということは取材を受ける側の判断でもありますけれども、そこは東京地検特捜部といたしましても適切に判断いたしまして、記者クラブとの間の円滑な関係を保っていくように努力をするということでございます。
  13. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 これは先日の場合は、大臣が胸を張って、大臣の責任でそういうことのないようにすると約束なさったわけですから、これはひとつ、せっかく先ほど一年間の感想もいただいたんですが、あと二週間あるわけですから、そこら辺はひとつ問題を残すことのないようにきれいに、報道の自由の問題と絡んでいますから、悔いを残さないようにきちっとしておいてほしいと思います。よろしいですか。
  14. 遠藤要

    国務大臣遠藤要君) さきにお答え申し上げておるように、報道の自由ということ、これは尊重すべきことであり、ましてやクラブとのいろいろの点から、さも報道に対して抑制するような文書を出したというような感じをとられたということは遺憾であるというような感じをとっておりますので、報復その他はございませんし、むしろこの点はひとつ報道しないでほしいというような点があれば、率直にその点を話をして理解を求めるような方法を講すべきではないかというようなことを刑事局長にも話をして、向こうの方に伝えておるというような点がございますので、この点は佐藤委員お話しのとおりすっきりさせて、報復とか何とかということは全然考えておらぬということを御理解願いたいと思います。
  15. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 そこで、きょうの本題に入りたいと思いますが、三つ四つお聞きしておきたいと思うんですが、その一つは、やめ検の問題についてです。  攻めの検察庁ということでおります検察任官志望が最近激減をしておる、一方中途退職者が激増しておる、こう報道されておるわけでございますが、その実態はどうなっておるのか、もしおわかりならひとつ明らかにしてほしいと思います。
  16. 根來泰周

    説明員根來泰周君) まず、任官者の動向でございますけれども、ことしの四月に検事任官した者が三十七名でございますし、その前年は三十四人でございました。それまで大体年間五十人ぐらい任官しておったのでございますけれども、ここ二年ばかり任官者が減っておるということでございまして、そういう現象から最近、検事任官者が激減しておるというふうな報道もなされ、また客観的にそういう状況にもあるわけでございます。  この原因というのはなかなかわからないわけでございまして、いろいろ調査もし、あるいは各界の御意見も聞いておりますけれども原因はもう一つはっきりいたしません。  それから、退職者でございますけれども、そういう報道がなされる一方で、退職者も非常にふえておるということも言われておりますので、これも調査いたしました。その結果でございますけれども昭和五十七年から六十一年までの間に修習生を終えた検事以上の検察官は、退職者が全体で二百三十五人でございました。それに対しまして二百三十九人が任官しておるわけでございまして、そういうことからいいますと、まあプラスといいますか、黒字の状況にあるわけであります。  二百三十五人のうち、そういう中で若年者がどれぐらいやめているかということを検討いたしました場合に、二十五年以上勤続した者が百二十六人やめているわけであります。それ以外の者がそれまでの経験年数でやめているのでございまして、それでは昭和四十五、六年ごろと比較しましてどうだろうかということを検討いたしました場合に、やはり同じような傾向を示しているのでございまして、退官者の面ではそう従来から変わった現象を呈しているというわけではないと思います。したがいまして、ここ二年ばかり検事任官者が減っておるという点が若干問題になろうと、こういうふうに思っております。
  17. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 検察官任官が五十一年が七十四人、以後毎年五十人台であったのが、六十年で四十人台に割り込み、六十一年が三十四人、六十二年が三十七人、こういう実態なんですね。  また、欠員補充の面からいっても、先ほど回答いただきましたように、退職者の方も激増しておりますから、補充ができない現状になっておるんじゃないかというふうに推測するわけです。六十一年から初任給調整が七万三千円に引き上げられた、そういう意味待遇改善もやられて、なお現状ということになっておるんだと思うんです。  また、定年を待たずに退職する検事が毎年三十人台が続いておったんですが、五十七年から四十人台に上りまして、六十、六十一年が各五十名を超える、こういう状態、これもまた私は異常じゃないかというふうな感じがするんです。しかも、任官十年未満の若手検事退職が今年度を見ても、六十、六十一年度を見ても二十人近いということは、これはやはり何かあるんじゃないかというような感じがするんですが、この検事欠員補充問題も含めてどのような認識をしているのか、お聞きしたいと思うんです。
  18. 根來泰周

    説明員根來泰周君) ただいまの御指摘の点でございますが、先ほど申し上げましたように、任官者はここ二年ばかり減っておるということは事実でございますけれども退職者の点につきましては、巨視的に見ればそんなに変更がないのではないかというふうに思っております。  そして、先ほど申し上げましたように、ここ五年ばかりの点をとらえますと、退職者が二百三十五人、それから任官者が二百三十九人でございますので、五年間ぐらいは定員はほぼ変動せずに推移しているのではないかというふうに思っております。現在欠員は、四十数人の欠員があると思いますけれども、この程度で検察運営に差し支えあるというふうには考えていないわけでございます。
  19. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 四十数名の欠員が全然支障がないというのもこれはおかしな話で、検事というのはそう何千人もおるわけじゃない、たしか千二、三百人じゃないかと思うんですがね、総数としては。そこら辺が私は気になっておるわけですけれども、まあいいでしょう。  そこで、東京弁護士会若手グループでつくっている法友全期会ですか、これが中途退職者検事百四十四人のアンケート調査をやっておりますね。それによりますと、検事任官した動機としては、三十四名が検事仕事魅力、生きがい、使命感感じたとか、二十二人が自分仕事が向いておる、こう答えておるわけでございますが、しかし、任官後三年ぐらいたつと十三人、十年までに二十一人が退官を考え始めるという回答をしておるわけです。その理由として、家族、家庭の理由が三十人で一番多いんですが、しかし、大事に公正さが欠けると、これが十一人、やりがいを感じなくなったと、こういうのが十一人、答えているわけですね。この辺が大変私ども気になる点であるわけですが、また、社会の巨悪を摘発する検察使命感が薄れ、全体的に官僚化し、事なかれ主義に陥っていると思うかという問いに対して、六割の方がそうだと言っている。これをどういうふうに思いますか。
  20. 根來泰周

    説明員根來泰周君) ただいまの法友会調査でございますが、これは私どもに正式にちょうだいしているのでございませんので、正確な議論といいますか、意見を申し上げる余地はないわけでございますが、新聞社等からちょうだいいたしまして、先生今御指摘のような内容はよく承知しております。  これに対しまして私どもは申し上げたいことはいろいろございますが、ここで一々反論申し上げるのも何かと思いますので、一つ意見だけを申し上げますが、どこの社会でも組織に対していろいろ不満を持っている者がございます。そういう不満に対しまして、特に退職された方についてはその不満が非常に増幅されているという傾向がございますので、そういう退職者の方にいろいろ意見を聞くと、いろいろの不満があろうかと思います。また、人事の面につきましてもその他の面につきましても、主観と客観というのは非常に差異がございます。ですから、主観的にいろいろな問題がございましても、客観的にはそうでない場合もございます。そういういろいろの問題がございまして、なかなかそういう御意見に一々意見を申し上げるわけにもまいらぬと思いますけれども、私どもとしましては、そういう退官者意見というのは全く取るに足らぬものだというふうな立場でございませんので、そういう意見も十分考えまして、今後組織活性化あるいは人事公平化ということを図っていきたいというふうに考えております。
  21. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 あなたがおっしゃる点もわからないではないんですが、さらにこのアンケートの中で、検事任官者が減少しておることについてどう思うかという問いに対して、検察組織に問題がある、これが三十人。それから検察仕事魅力がない、これが二十五人。それから、中途退職者がふえている点について、ほぼ同数の人が同じ理由を挙げておる。後輩の面倒見が悪い、魅力のある人材が少ない、こういった点も若干ございますけれども、相対的に今検事のいわゆる使命感というのですか、こういったものについてかなり絶望的な意見というのが感じられるわけでございますけれども、ここら辺の問題については、これは私は、やっぱりそういうさっきの答弁のような考えじゃなくて、もう少し立ち入って真剣に検討する必要があるんじゃないかというような感じがするわけです。そういうことで、おたくの中に検察問題検討会というのがつくられておるということでございますけれども、この検討の結果はいかがなんですか。
  22. 岡村泰孝

    説明員岡村泰孝君) 検察組織として将来とも活性化を続けていかなければならないということはそのとおりでございます。そういうような観点からいたしまして、検察がどうあるべきかという検察あり方論というものにつきまして十分議論をしてみたい、またその結果、大方の合意が得られ、活性化につながる具体的方策があるならばこれを実行に移したい、こういうような観点から検察問題検討会というものを開きまして、いろいろ検討をいたしたところでございます。検察捜査あり方はどうあるべきかというようなこと、あるいは処遇上の問題、人事上の問題、こういったものにつきましていろいろ検討をいたしまして、その結果を踏まえまして全国の検事正、検事長の会同の際にもただいま申し上げましたような問題につきましていろいろ議論をいたしたところでございます。その結果、活性化につながる道があるならば、これを速やかに実行に移したいということで、いろいろ新しい検察の進むべき道というものを実行に移している面もあるところでございます。
  23. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 これは私は、御検討いただいておるようですけれども余り軽視をする事項ではないと思います。ですからやはりここら辺は、将来の検察を背負っていく若い人たち希望の持てるそういう方向での議論もぜひやるべきじゃないかと思うんですが、そういうためにも考えなきゃならぬのは、最近の二つの事例じゃないかと思うんです。  最近の法学セミナーに次のような記事が載っておったので私も目にとまったわけですが、ちょっと読み上げてみますと、最近の検察捜査にどうも納得できないことがある。その一つは福岡の苅田事件であり、いま一つ共産党国際部長盗聴事件である。盗聴事件は、三島警備局長が辞任する一連の人事が発令されると、事件被疑者現職警官四人の不起訴が出る。末端の実行班だけの処分は公正を欠くとの理由であるが、これが果たして理由になるだろうかということが一つ。  それから、苅田町の場合には、東京地検から福団地検移送が出された、決まったと。その移送理由が、事件関係者の大多数が県内にいる。二番目に町議会が別件疑惑の追及、尾形代議士の告発など自治体問題にあるので、地元がよい。しかし、それなら着手をしたそのときから予想されることであって、極めて不自然である。一線検事の士気に影響していないか。これでは検察使命感が薄れ、事なかれ主義に陥っているのではないかという問いに六割の第一線検事が肯定的に答えたというが、全くそうだと思う。第一線は眠れる獅子になっておるのではないかと心配されると、こういう記事があったんですが、これをどういうふうに受けとめますか。
  24. 岡村泰孝

    説明員岡村泰孝君) 検察に対しましていろいろな面からの御意見があることは私どもも承知いたしているところでございます。  ただ、検察といたしましては、先ほど指摘のありました苅田事件につきましても、その事件の円滑な捜査を行うためにはやはり福団地検移送するのが最も妥当な方法であると、そういう判断のもとに福団地検移送いたしまして、現在福団地検において捜査を継続しているところでございます。検察といたしましては、あくまで検察としての自主的な判断のもとに、その事件に対してどういう形で捜査を行い、またどう処理することが適切、妥当であるかということを常々考えながら処理をいたしているところでございまして、大方の国民の納得は得られているところであると思うのでございますが、ただいろいろな御意見のあることも事実でございまして、そういったものも率直に踏まえまして、今後とも検察といたしましてさらに一層適正な検察権の行使に努めるものと、かように思っているところでございます。
  25. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 岡村さんね、検察内部としては理由があるからこそ移送したんだろうと思うんですね。しかし、今見たように、ここに記事にありますように、おたく移送理由として挙げた二つの点は初めからわかっておることなんです。東京地検が取り上げる前にわかっておることなんです。ですから、それなら初めから福団地検でやればよかった。ところがそうじゃなくて、途中から移送した。またそういういろいろな事情があるからこそ、逆に言えば東京地検に告発したわけです。そういう意味では、あなたの今の答弁ではなかなか納得しがたい。  私は、先ほどから言われておる、検事志望が減少しておること、若手検事定年を待たずにどんどん退職していくこと、その背景に今申し上げたようなことがないのかどうかということについては、やっぱり真剣に検討してみる必要があるんじゃないかと思うんです。そうしなければ、検事総長は、逃げない検察であるとか、悪いやつらは眠らせないということをなかなか強気で言っておるんですけれども、肝心の第一線がやる気をなくしたんでは、これは絵にかいたもちであって、任官希望が激減し、やめ検が激増する、こういう事態はまさに私は重症じゃないかというような感じもするんです。  そういう意味で、検事総長の言葉どおりに再生をする見通しというんですか、そういう自信というんですか、私どもの胸に落ちるような、こうこうこういうことできちっとしますというものがあるならお聞きしたいし、もうやめていくんだから言うことはないわというような顔をしとらんで、法務大臣もやっぱりここはひとつ真剣に知恵を出す必要もあるんじゃないかというような感じがしますので、あわせてひとつ。
  26. 岡村泰孝

    説明員岡村泰孝君) 苅田町の事件につきましては、東京地検に告発を受けたところでございます。東京地検といたしましては、やはり告発を受けました以上、どういうような状況にあるのか、関係人がどの程度捜査の必要があるのか、またそれらの関係人等がどこに居住しているのかと、こういったようなことにつきまして一応の内偵捜査と申しますか、そういったことはやはりやってみる必要もあったものと思うのでございます。その結果といたしまして、本件はやはり福団地検移送するのが相当であると、こういう判断に達したところでございます。  この事件移送をめぐりまして、検察の部内におきまして士気が阻喪するとか、そういうようなことは私は決してなかったというふうに思っているところでございます。もちろん御指摘にございましたように、第一線検察官の士気を高揚いたしまして、犯罪に対して積極的に取り組んでいく、そういう意欲を高める必要のあることはそのとおりでございまして、検察の幹部の方々もまた法務省の私どもも、そういったことにつきましてはいろいろな面で配慮していかなければいけないところであるというふうには思っているところでございます。  要は、検察といたしましては、具体的な事件の端緒をいかにつかんで、そしてそれの証拠固めをいかにするかということにかかわってくるわけでございまして、今後ともそういう面で第一線検察官捜査あるいは公訴の維持というものに、さらに一層意欲を燃やすように努めていきたいというふうに思っているところでございます。
  27. 遠藤要

    国務大臣遠藤要君) 先ほど来申し上げているとおりで、やめていくからいいわという、他意は毛ほども持っておらないので、先生の方が何となくそういうふうに見られているということは大変遺憾でございます。  いろいろ今検察官についてのお尋ねがございましたけれども、私は率直に申し上げますると、いろいろ問題があろうと思います。一つは、やはりいろいろよその、例えば弁護士さんなりその他の方々との比較。それから検事検察官として今日本の国で法治国家として検察の使命というのはいかに重大であるか。その使命感、正義感を、もっとやはりその考えを持った方々が多数競い合っていただくくらい、法務省自体が手を上げるくらいの希望者が多いというような方向にやっていくべきだというような考えは、佐藤先生と同じ考えを持っております。  そういうふうな点から考えると、一つは、やはり同じ研修を受けた方々の中においても、よそのいろいろの立場で、その所得や何かにおいても大変差がある。それから検察官になると、どうしても同一任地に二年、長くて三年というような点で転任が多い。そういうような点で、両親なり子供を抱えて教育というような点があると大変ややこしい問題が出る。そういうような点を考えると、なぜ二年、三年で転勤させなければならぬか。やはり検察官に対して私は信用といいましょうか、責任がやはり上から見て、何とも言葉がちょっとわかりませんけれども、もっとやはり信用をすべきではないかと、こういうふうな感じをしております。そういうようなことになれば、転勤の回数も少なくなってくることだというような点もございます。さらにいま一つは、試験制度が今の現状でいいかどうかというような点、もろもろございます。  そういうような点から考えると、法務省は、役所としては、今なぜそういうふうなことになっているかというようなお役所的な答えになってくるわけですが、そういうふうな点を多分に考えなければならぬ。やめた人のいろいろの資料をとると、組織が悪いから、いろいろ名目がつくと思いますけれども、転勤が多いからとか、また所得が少ないからというようなことは、なかなかそれには出してくるということは相当の勇気が必要だろうと、こう思います。そういうような点なども、言えないことをもっとやはり法務省自体としても考え、対応していかなければならない。そして検察官に対して、やはりその人その人の考えということに対してもっと高く評価するような方法を講すべきだというような点が私として感じておりますので、先生が御心配になっている私の立場というような点もございまするので、こういうような点はひとつ次の大臣にも私は引き継ぎと申しましょうか、私の今のお答えをぜひ次の大臣にも御理解を願っていただいて、一つはこの制度、組織、そして待遇、そういうふうな点にもっとやはり考えていかなければならぬ点があるなど、こう感じておりますが、何はともあれ、先生の御意見のとおり、私どもとして今後検察官に対する希望、これは検察官に対する希望ということは、当初に申し上げたとおり、法治国家としていかに検察ということが、検察官の使命というのが重大であるかというような点を、その正義感に燃える方々を多くやはり希望者が出るような方法を講じていくということが法務省として大切なことだと、そのような点で努力すべきだと、こう思っております。
  28. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 ぜひそういう点は、大臣の残り任期短い期間ですが、きちっとやってほしいなと、こう思います。  そこで、刑事局長ね、福岡の苅田町の問題で、あなたがいつだったですかね、この委員会の中で私の質問に対して、移送したのは、本格捜査のために移送したんだと、こう御答弁なさいましたね。それなら私は、さっき言ったような疑問はわかるんです。疑問はなくなると思いますよ。しかし、そうではない。さっきからその答弁が出るかなと思ったけれども、あなたはなかなかそこを出さない。これは、この前の答弁はそうでなかった。いわゆる移送理由の中に言ってなかったのかどうか、改めてひとつお聞きしておきたいと思うんです。  それから、私が言うのもそうでございますけれども、ここに書いてあるのも、捜査に入ってからちょうど七カ月たつんですね、苅田町の問題は。いまだに強制捜査にも入っていない。花房収入役の証言や銀行の裏帳簿、これはもう全部おたくの方で資料押さえておるわけですから、動きのとれようもないぐらいにきちんと押さえておるわけですからね。にもかかわらず、今申し上げたように、まだその気配もない。尾形さんが、当時の町長の尾形さんが代議士で、しかも安倍派の中に入っておりますから、総裁選挙まではこれは動いちゃならぬというふうな配慮もなさったんじゃないかと私は思うんですが、総裁選挙の方はもう大体済んだわけですから、ここら辺で動くのかなという感じをしておるんですけれども、これもなかなかきょうの答弁を見るとすっきりしない。これは私は、もうここら辺できちっとしないと、事が住民税の、しかも公職の収入役が裏帳簿でがっぽりいったという事件でございますから、今秋の問題では非常に国民の関心が高く、そういう中だけにゆるがせにできない問題だと思うので、ここら辺が一体見通しを含めてどういうふうに受けとったらいいのか。私の胸に落ちるような説明をしていただけませんかね。どうですか。
  29. 岡村泰孝

    説明員岡村泰孝君) 検察といたしましても、事税金に関しまする不正事件についての告発を受けた以上は、この事件を解明すべきものであるというふうに考えているものと承知いたしているところでございます。その事件を解明するための方法といたしまして、まず東京地検といたしましては告発を受けましたので、先ほど申し上げましたような観点から内偵捜査と申しますか、一応の捜査を行ったところでございます。その結果といたしまして、事案解明のための本格的捜査と申しますか、要するにどういうような経緯にあったのか、またどういうような内容の事案であるのかという個々具体的な事柄につきましての証拠固めというものは福団地検において行うのが相当である、こういう判断福団地検移送をいたしたのでございまして、現在、福団地検におきましてはそういう意味で鋭意捜査を行っているところでございます。  今後の見通しという御質問でございますが、その点につきましては、何しろ捜査上の問題でございますので、ここで具体的なことは申し上げかねるところでございます。  また、相当の時間がかかっているのではないかという御質問でございますけれども、この点はやはり相当長期間にわたりまする犯行でございまして、個々具体的な一件一件ごとの金の流れと申しますか、そういったものにつきましての裏づけ捜査、これが必要であるという事件でございますので、そういう点で捜査も相当の期間を要しておると、こういう現状にあるわけでございます。福団地検移送いたしたことが直ちにこの事件捜査を何と申しますか行わないとか、そういうふうなことでは決してないのでございまして、私が先ほど来申し上げておりますように、この事件の事案の解明のための捜査を現在福団地検が鋭意やっておる、こういうことで御理解をいただきたいのであります。
  30. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 それではその本格捜査に踏み切ったというのが移送理由、こういうことで理解していいんですね。
  31. 岡村泰孝

    説明員岡村泰孝君) 要するに告訴を受けますと事案の解明をしなければいけないわけでございます。この解明をいたすものを本格捜査ということでございますと、それは本格捜査ということであると思うのでございます。ただ私ども余り本格捜査というような言葉を実務の上で使っておりませんので、何と申し上げていいか、ちょっとわかりかねる点もございますけれども、要するに事案の真相の解明のための捜査福団地検が現在行っておる、これはそういうふうに御理解いただいて結構であるというふうに思っているところでございます。
  32. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 きょう私はこれが済んでから苅田町に行くんですが、現地の状況をいろいろ聞きますと、もう七カ月ですからね、そしてほとんどの資料はおたくの方が握っておるわけですよ。それでしかもその資料を克明に握っておる。にもかかわらず動かない。この中でいろいろ取りざたされておりますから、私はやっぱりその一端を申し上げたわけで、事が政治が絡んでおるということは事実ですから、そのことで東京地検は弱いんじゃないかと言われたんでは、これはもうあなたの名誉にかかわる、あなただけではない、検察の名誉にかかわることで、検事総長は、悪いやつは眠らせないと、こう言いながら、眠らざるを得ないようなことになったんでは、これは検察というものの信を問われる、そういうことでございますから、私はきょうはこれ以上言いませんが、いずれにしても七カ月といえば相当な時間がかかっていますよね。岡村さん、もうそろそろいいんじゃないですかということだけはきょうひとつ申し上げておきますから、ひとつ早急に現地の皆さんに、だけじゃなくて、関心が高いわけですから、きちっとこたえる捜査の展開をお願いして、この問題についてはこの程度にとどめておきたいと思います。  そこで今度は、次の問題として法廷写真の問題について、これは最高裁ですか、お尋ねしておきたいと思うんですが、憲法八十二条には裁判公開の原則をうたっているわけですがね。ところが民事訴訟規則十一条、刑事訴訟規則二百十五条ですか、法廷内の写真、放送、録音に制限を加えておるわけですね。その上、法廷等の秩序維持に関する法律二条で罰則もございまして、北海タイムス事件というのもございました。しかし、お聞きしますと、これがまちまちというんですね。法廷写真をちゃんと認める裁判所もあれば認めないところもある。まちまちと、こういうふうなことも聞くんですが、この点について実態がどういうふうになっておるのか、まずお聞きしておきたいと思うんです。
  33. 吉丸眞

    最高裁判所長官代理者(吉丸眞君) ただいま御指摘がございましたとおり、刑事事件の公判廷における写真撮影につきましては、刑事訴訟規則二百十五条に規定がございます。同条は、公判廷における写真の撮影等は「裁判所の許可を得なければ、これをすることができない。但し、特別の定のある場合は、この限りでない。」というふうに規定いたしております。この規定に基づきまして、写真撮影の許否は、個々具体的事件の公判におきまして、その審理を担当する裁判所が決定するということになるわけでございます。  そこで、全国的な実情でございますが、私どもも必ずしもこれを正確に全部把握しているわけではございませんが、まず開廷中、すなわち現に審理を行っている間の写真撮影につきましては、これは認めないというのが実務に定着した運用でございます。これに対しまして、開廷前の写真撮影につきましては、例えば最高裁におきましては、裁判官等が入廷、着席した後、報道カメラマンの撮影を認めております。また、地裁または高裁におきましても同様の撮影を認めた事例が相当数ございます。しかしこれは、この点につきましてはこれを認めない裁判所も多い。以上が大体の実情でございます。
  34. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 そこで、この問題について、日本新聞協会ですか、の方も再三写真の取材の許可について要請をしてますね。また、その中には自主規制の案も提示しておるようですが、今御答弁にありましたように、最高裁はこれは三分間ですか、開廷後、許可しておるようですね。私は先日、写真家の福田さんが開いておる全国法廷写真展を見に行ったんですね。行ってみると、懐かしいと言うんじゃございませんが、例えば昭電事件の法廷写真とか、かつて戦後いろいろ大事件がございましたが、それが載っておりましたので、多分これは三十年ごろまでは公開になっておったんじゃないかというふうな感じもするんですけれどもね。それがこういう何というんですか、裁判官の判断によって非公開になるというような経緯になったんじゃないかなという感じがしました。ただ、北海タイムスの事件で、これは記者の方が有罪になったんですが、その最高裁の大法廷にもございますように、新聞が真実を報道することは憲法の認める表現の自由に属し、そのための取材活動も認められなければならないという一節がございますね。この点が私はやっぱりまだ生かされてないんじゃないかというような感じがしてならぬのです。報道の側も行き過ぎた点も確かにあったかもしれません。しかし、現実には今言ったように、最高裁のこの判例の中にもございますように、やはり取材の自由というのは、取材を通じて表現の自由、報道の自由について保障していくということもこれは大事じゃないかと思うんで、何か報道側との間に妥協点というか接点というんですか、そういうものを見出すことができないのかどうなのか。私は福田さんのこの法廷写真展を見て、非常に貴重なものだと思っておりますから、これはやっぱり後世に残していくためにも必要じゃないかと思うんで、ここら辺はどういう話し合いになっておるのか、どこまで詰められておるのか、もしよければお聞かせ願いたいと思います。
  35. 吉丸眞

    最高裁判所長官代理者(吉丸眞君) 委員指摘のとおり、戦後しばらくの間は全国的に写真撮影を緩やかに認める運用がなされていたようでございますが、これをめぐっていろいろ問題が生じたところから、昭和三十年ごろから慎重な運用に変わってきているという経緯がございます。  問題は次のようなところにございます。写真撮影を認めた場合、厳粛であるべき法廷の雰囲気を損なうおそれがあるほか、被告人の大多数が法廷にいる自分の姿を写真に撮られて、テレビ、新聞等で報道されることを強く嫌っておりまして、何とか勘弁してほしいという気持ちが強うございます。証人の中にも同様の気持ちを持つ者が多いわけでございまして、個人の肖像権という問題もございますので、このような被告人または証人の立場は十分尊重する必要があるということがございます。  また、被告人または証人が写真を撮られて報道されることを強く意識する余り、緊張、動揺し、興奮または萎縮するなどして率直な供述をすることができにくくなる、その面から適正な裁判の実現に支障を生ずるおそれがあるというようなこともございます。実際には昭和二十年あるいは三十年代に、カメラマンによる取材の行き過ぎが頻発するということがございまして、現実に法廷の秩序維持、被告人その他の関係者の保護というような面で問題を生じたという状況もございました。  しかし他方、委員も御指摘になりましたとおり、報道の、取材の自由という問題がございますし、また、現在テレビを中心にマスメディアの映像化現象が進んでまいりまして、報道における写真の重要性が大きくなっているという状況もございます。  また、日本新聞協会から最高裁判所事務総局に対しまして、再三法廷写真について検討してほしいという御要請がございました。事務総局といたしましては、その趣旨を全国の裁判所に十分伝えております。そのようなことがございますので、各裁判所では、開廷前の法廷写真につきましてはもう少し広く認める余地がないかということでいろいろ検討してきている、そういう状況にございます。
  36. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 今のお言葉を返すわけじゃございませんがね、肖像権という言葉が出てきましたから、それこそ私は重要だなということを感じたんですが、先週の十九、二十日の日に静団地裁で死刑囚再審の島田事件というのがございましたね。この公判の際に、静岡中央署の警備課の採証班二十名が傍聴人や支持者のビデオ撮影を行っておると、しかもこれは同地裁の総務課長が黙認しておる、事実上。こういう報道がなされておるわけですね。この点が事実かどうかは知りませんが、これこそ肖像権にかかわる問題じゃないかと私は思うんですが、いかがですか。
  37. 吉丸眞

    最高裁判所長官代理者(吉丸眞君) その静団地裁におきます十月十九日の件についてでございます。この点についても私ども必ずしも事実の細かいところまで正確に把握しているわけではございませんが、当日の状況は次のようなことであったようでございます。  静団地裁では、当日の裁判所の庁舎警備等のために静岡県警に対して警察官の派遣要請を行いまして、当日は同県警の警察官約八十名が同裁判所の構内において裁判所の職員とともに警備についておりました。  他方、当日は朝から二百人を超える傍聴希望者等が裁判所前の路上に集まってまいりました。その大半は赤堀さん奪還等と記したゼッケンを着用し、中にはヘルメットをかぶり、マスクで覆面をした者の集団などもございました。午前九時ごろから裁判所構内の通用門付近で傍聴券の抽せんを行いまして、くじに当たった者は構内の指定の場所に集まってもらい、くじに外れた者は通用門から道路に出てもらうことにいたしておりましたところ、くじに外れた者が通用門付近に滞留いたしまして、次第にその数が多くなりました。そして、赤堀さんは無罪だ、即時釈放しろなどというシュプレヒコールを繰り返すというような状況になったわけでございます。その間、裁判所職員は、そのくじに外れた者に通用門から道路に出てもらおうと懸命に整理に当たっておりましたが、これに対して大声を上げて突っかかってくる者等もございました。職員との間に小競り合いのような状態も生じました。  また、このとき通用門の外の道路の上には百人以上の集団がおったわけでございますが、これらの者の多くも口々に大声で叫び、中には通用門のさくに手をかけて乗り越えようとする気勢を示すような者もございまして、裁判所の職員の手には負えないような喧騒の状態になったわけでございます。  以上のように、通用門付近で混乱が生じ、周辺が騒然となったとき、裁判所の前庭等におりました警察官がその通用門付近の状況をビデオに撮ったということのようでございます。  そして、警察の説明によりますと、当時警察官は、先ほど申しましたような状況から、犯罪その他の違法行為が行われるおそれがあると認め、これが行われた場合の証拠とするためにその撮影を行ったということでございます。警察が裁判所の要請に基づいてその庁舎等の警備を行うに当たりまして、犯罪その他の違法行為を現認し、またはそのおそれが推測されるような状況を認めたとき、証拠の収集保全のためにそれらの状況を撮影することは、これは警察官の職務の範囲内にあるというふうに考えられるわけでございまして、静団地裁においては、このビデオ撮影につきましては以上のように理解しているところでございます。
  38. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 私は、被告の肖像権は守らなきゃならない、しかし被告でない一般の国民の肖像権は無視してもいいと、こういう典型的な事例だから言ったわけですね。それが裁判所の考え方の基本にあると、こういうことになると問題じゃないかということで今提起したわけです。あなたはそういうふうにおっしゃるけれども、総務課長さんは、この新聞の記者のこの質問に答えて、今後も、次回以降もこのビデオを撮ることについては警察の判断に任せると、こう言っておるわけです。こういう偏った姿勢が私は問題じゃないかと思うんです。ですから、これは一つの、あなたが肖像権とおっしゃったから事例で出したんですけれども、このようなことは今あなたが言った説明をしてみても納得できるものじゃない。ですから、ここはきちっとしてもらいたいと思うんですが、本題へちょっと戻って話をしなきゃならぬのは、私は、さっきのあなたのこの答弁を聞きながら思うんですけれども、公平な裁判の歴史上の記録というものが法廷写真を禁止した場合になくなっていったわけですね。特に私は、小さな事件全部を云々と言いませんよ。言いませんが、例えばロッキード事件であるとか、例えば政治家の絡む汚職の問題であるとか、後世に残る大事件、こういったものは私は新聞協会と話をして、そしてきちっと整理をする必要があるんじゃないか、こう思うんですね。確かに被告や証人の人権の問題もあるでしょう。けれども、今申し上げたように、ロッキード事件のような政治家の絡んだ汚職事件であるとか、後世に残るような大事件の場合に、そのために法廷写真も許さぬということはどう考えてもいかがなものかと思うんです。これはひとつ早急に、事件はどんどんたっていっておるわけですから、それだけ歴史は消えていくようなことにもなるわけですから、早急にひとつ整理をして、そして最高裁としても積極的に対応した方がいいんじゃないかというふうに思うので、ひとつ接点を詰めてもらいたい、こういう感じがしますが、いかがですか。
  39. 吉丸眞

    最高裁判所長官代理者(吉丸眞君) この問題は先ほどから御説明申し上げておりますとおり、いわば適正な裁判の実現とそれに対する報道の自由と申しますか、先生が御指摘になった後世への記録というような点も含めまして、その接点の問題だろうと思います。開廷前の法廷写真につきましては、先ほど申しましたような社会情勢なども考えますと、これはもう少し広く認める方向で検討する必要があるのではなかろうかということで、現在各裁判所でいろいろ考えているというところでございます。
  40. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 ぜひそこら辺は、これはどんどん事態は移っていますから、早急にひとつ結論を出してあげて、そして国民の期待にもこたえてもらいたい、こう思います。  そこで、ちょっと時間の関係で防衛庁の問題に移らせてもらいたいと思うんですが、一つは、十五日に当委員会で、私が大分県の日出生台で行われておる戦後初めての日米合同演習の問題で質問をしたわけでございますが、この問題について、私がその際にも申し上げましたが、県民の理解を得られていないままに強行される、こうなると不測の事態も予測されるんじゃないかという点を指摘したわけでございますが、できればひとつ中止してもらいたいと、こういうことで要求したんですけれども、あなたの方は問答無用、こういう姿勢のようですね。米軍部隊、兵器、車両は二十二日に上陸をしたようです。千二百名の機動隊に守られて、二十三日の朝まで、深夜に強行するという事態になっておりますね。当日は三千五百名のいわゆる共同演習反対阻止という行動が終日、終夜行われたわけですが、その翌日の二十三日は、知事に対して、県民の三十三万の演習反対署名、三十三万というと有権者の約六割ですね、演習反対署名が提出されておるわけです。しかし、にもかかわらず来月一日から十日間、演習が強行されると、こういう事態になっております。当日は三万人が演習反対阻止の集会と行動を展開すると、こういうことになっておりますから、また不測の事態が起こらないとも限らない、こういうような状況にございます。  そこで、こういうことに対して、どういうふうな御認識なのかということが一つと、もう一つは、二十三日午前四時、米軍輸送車と佐賀県の浅野さんの運転するトラックが接触して、右ドア下に損傷した事件が発生しておりますが、こういった事故、トラブルについてはどこが責任を持つのかが一つ。  それから演習場の北側を走っておる県道、通称自衛隊道路と言っておるんですがね、ここに二十一日から車が急増しております。この沿線には四つの小中学校の分校があるわけですが、教育委員会、学校当局が慌てまして、児童の登下校はもちろんのこと、万一起こる危険性が増大したということで、全生徒を傷害保険に入れたようですね、期間中の傷害保険に。そして県警も事態を重視しまして、現地に交通司令室を設けて、保安と交通安全に三十名の警官を常置させる、こういう緊急配備をしておるようでございますけれども、この場合にも不測の事態が予測されるわけですけれども、その場合の責任の所在というものを一体どういうふうに考えられておるのか、防衛庁。
  41. 柳澤協二

    説明員(柳澤協二君) あの演習、共同訓練をめぐります地元の関係全般について私の方からお答えいたしますが、日出生台におきますところの日米共同訓練、これは先生おっしゃるとおり、九州におきましては初めてやらしていただくものでございます。ただ、全国的に昭和五十七年以来、いろいろ規模、態様等は若干違いがございますが、全国あちこちの方面隊におきまして実施をさしていただいておりまして、残る九州の部隊におきましても、こういう有効な我が国防衛のための戦術技量向上の機会をぜひ与えさしていただきたいということでやっておるわけでございますが、地元の関係につきましても、県それから関係市町村に対しまして、十分かねてからいろいろ御説明やらお願いをしております。  私ども先ほど先生指摘ありました米軍の車両の輸送の問題にしましても、特に交通量の少ない夜中から早朝にかけて行うとかいうようなことで、できるだけ地元に御迷惑のかからないような形で、もちろん安全上十分な配慮をするということでやらしていただいておるものでございます。基本的には、県それから関係市町村に基本的な御理解は賜っておると考えておるところでございます。  事故の関係等につきましては、また担当の方から御答弁いたします。
  42. 折田成男

    説明員(折田成男君) ただいま御指摘のございました米軍の起こした事故でございますけれども、まず事故の事実関係につきましては、先生お話しのとおり、二十三日の早暁に発生いたしまして、警察、米軍、自衛隊並びに施設局をもって迅速にその対応を検討させ、本件は米軍との示談ということで、被害者に示談金を支払って一応の解決を見ておるところでございます。基本的には日本国内において米軍が起こした事故につきまして、公務上発生した場合には、地位協定十八条によりまして施設庁がその賠償等を行っております。  なお、今後とも米軍の演習等につきましては、安全管理については十分努めるように我が方から要望していきたいと思っております。  以上でございます。
  43. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 今私が申し上げたように、学校当局は全児童をその期間中の傷害保険に入れておるわけです、万一起こるといけない。入れざるを得ない。それから警察官は三十名急遽常駐して、滞在しなきゃならぬ。これは、こういう演習がなきゃ何もせんでいいことなんです。  それから、二十二日から二十三日にかけては約千百名の機動隊が出て、終日終夜来ておる。これはやっぱり超勤その他を含めて大変な金がかかる。そういった経費は一体どういうふうになるんですか。
  44. 柳澤協二

    説明員(柳澤協二君) 共同訓練に関します。その経費負担は、日本側、米側、自分たちの移動、それから訓練費用についてはそれぞれ負担しておりますが、今先生指摘のような形で地元自治体等に御迷惑をかけることになる部分も確かにございます。ただ、これらの経費につきましては、地元の御負担でやっていただくということになると認識しております。
  45. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 そうでしょう。そういうことが、あなたがさっきから言うように地元に迷惑をかけないようにと、こう言うけれども、ちゃんとかけているじゃないですか。  それから、我が国の防衛と言うなら、その地元の皆さんから理解が得られるような最低限の演習なんだから、無理に十一月一日にやらなきゃならぬという理屈はないはずですよ、十月でもよければ十二月でもよかったはずだ。だから、そんなむちゃくちゃなことを設定するからいろいろ問題が起こってくるわけですよ、そうでしょうが。  そこでもう一つ、時間がございませんから二つほど聞いておきたいんですが、現地で緊張が高まっておりますから、同時にこの自衛隊に対する不信感が、今私が申し上げた不信感が強まっておるわけです。これは一つは自衛隊の秘密主義、約束違反、不正、この繰り返しに原因があるわけですけれども、二十三日に大分市議会が各党派運営協議会を開いて、統一して自衛隊に対して申し入れをするということを決めました。それは何かといえば、市民の不安が増大しておる。特にこの不信感が増大しておるので、これを取り除くような所要の措置を講すべきである。こういう内容にあるようです。それは何かといいますと、自衛隊が、例えば敷戸弾薬庫、これは今回の演習に使わないということを市当局、市議会に約束しておる。ところが、最近になったら、いやあれは使わざるを得ない、前言を翻した、こういうことが起こってきた。それから十月七日には市当局、県当局に言わずにこっそり二十四台の車両を上陸させる、こういうような措置、やみ夜に紛れて演習場に持ち運ぶ、こういう事態も起こって非常に不信感が高まっておる。こういったことに対する市議会の今の決議になったわけですが、この点についてどういうふうに認識しておるのか。  それから三十七年以降、この演習場をめぐって関係自治体との間に協定がございます。その協定の中では、日出生台の演習場を放牧農業で使っておる農民、これらの方々についてはその出入りを保障するという規定がきちんとございます。にもかかわらず、この十月の十五日から一カ月間、その演習場に入るためには許可証を、腕章がなければ入れない、こういう自衛隊側の突然の申し入れがございました。そしてその腕章の配付の条件として、一つは共同訓練に反対しないという約束をしてくれ、そして部落に立っておる反対のプラカードを撤去してくれ、これをしないと腕章を渡すわけにはいかない。これは湯布院駐屯地の池田業務隊長が言っておるわけですが、その後に、十月十九日にはそのことを柚木西部方面幕僚長が確認しておる。さらに全員に、いわゆる協定で保障されておる全農民、入会権を持つ農民に対して誓約書をとっておる。誓約書を出さなければ腕章を渡さない。農民の皆さんからしてみると、冬を控えておる、牧草を刈らなきゃならぬ、そういうような状態にせっぱ詰まってきて、ここで一カ月入れないんではたまったものじゃない、生活権にかかわる。こういうことでやむなくプラカードもおろし、誓約書も書いたと、こう言っておるんですけれども、ところが、この中にまた差別をして、山本さんという人に対しては、これは渡さない、こういったこともやっておる。こういうやり方は、地域に迷惑はかからないようにしておると言うけれども、こんな迷惑をかけて、そしてしかも言うことを聞かなきゃ差別すると、こういうやり方が自衛隊の常套手段ですか。それで我が国の防衛などよく言えたものだと思うんだけれども、いかがですか。
  46. 柳澤協二

    説明員(柳澤協二君) 地元の自衛隊に対する不信感というような点についてお答えいたしますが、私どもこういう訓練をやらせていただくに当たりまして地元の、特に自治体の責任ある立場の方にはできるだけ内容の御説明、安全対策の御説明等をするように努めておるわけでございます。ただ、先生今言われました点につきましては、恐らく米軍の移動時期等についてのことであろうと思うんですが、訓練実施前の米軍の移動、どういう経路で、どのような手段で、いつどこに来るかといったようなことは、基本的には米軍が自主的に計画して実行する問題でございまして、これを防衛庁が間に入って特段の手続をするというような私ども立場にもございませんし、それからまた、米軍の行動ということで、基本的にはなかなか私どもの方から正式に申し上げるような立場にないということでおったわけでございますが、ただ、今回につきましては、大分県の御当局の方からも非常に強い関心と御心配をいただきまして、できるだけ早く教えてほしいという御希望もございましたので、私どもとしても米軍の行動が確定した段階でお伝えしたわけでございます。  ただ、特にその七日の件につきましては、これは米軍の方が民間のフェリーを使って、他の米軍以外の一般の貨物とも混載という形で運んできたということで、私どもも非常にその通報が、米軍自身からも通報といいますか、情報提供がなされなかったことは極めて残念でございますが、米軍の建前といたしましては、米軍自身が民間のフェリーと契約をしてやったということでございますが、建前はともあれ、県当局あるいは地元がそれだけ御心配になっているときに、こういうことではやはりいかぬと思いまして、在日米陸軍司令部の方に対しましては、やはり地元の御心配、お立場といったものを十分伝えまして、できるだけ十分な情報提供ができるようにしたいと考えてきたわけでございます。
  47. 伊藤宗武

    説明員(伊藤宗武君) ただいま先生から放牧等についてお話がございました。その部分について私から御回答申し上げます。  日出生台演習場におきましては、従来から採草、放牧等のために地元の人々が場内に立ち入りますのを認めておりまして、腕章は演習に対する賛否を問いませず、あくまでも採草、放牧等のため立ち入る人とそれ以外の人を識別するために交付いたしましたものでありまして、申請者全員に対しまして交付いたしました。  さらに、現地部隊は立ち入り申請者に対しまして、立ち入りは採草、放牧等のために認めますけれども、演習の妨げにならないよう協力をお願いしたいという旨の要請はいたしておりますけれども、演習に反対しないことを条件に腕章を交付したということではないという報告を受けております。  以上でございます。
  48. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 時間が来ましたからこれ以上問いませんが、あなた、うそを言っちゃいけませんよ、この場で。さっき私がなぜ名前を挙げたかというと、西部方面の幕僚長、柚木さんが十月十九日ちゃんと言っているんですよ、差別したと。こう言っているんです。それから湯布院の池田業務隊長、この人は直接責任者だし、この人もはっきり言っておるんです。だから、そういう白々しいうそを言うものだから不信が出るんですよ。あそこに住んでおる人は日本国民ですよ。何びとだと思っていますか。だからそこの日本国民に、日本国を守る自衛隊が云々と言うなら、もっと誠意を持ってこたえたらいかがですか。私はさっきから聞いて、そこら辺がやっぱり現地では高まるのは無理もないという感じがしたんです。  それから、あなたたちは演習場の使用権を持っておる、確かに。大蔵省の管理の国有財産として使用権を持っておる。しかし、あそこの農民は、やっぱり入会権も持っておるわけです。だからこそ使用協定できちっとあなた方は保障しておるわけだ、保障せざるを得ないんだ。その農民に対して、しかもあなたたちよりうんと前からの先住民だ、その人たちに対して許可証を出して誓約書をとるとは何事ですか。何の意味があるんですか、誓約書なんて。こんな不届きなことをするから、ますますこじれてくるんじゃないですか。私は十五日のときにも言ったように、あそこの現地の皆さんは、いまだかつて陸当時代から自衛隊に至るまで一つも反対したことはない純朴な人たちなんです。それをなぜこんなふうにしてこじらせなきゃならぬのですか。それが自衛隊のやるやり方ですか。誓約書なんて返しなさいよ。申しわけなかったと陳謝しなさいよ。そういう不遜な態度をとるから問題を起こしていくんじゃないですか。  これは大臣、あなたも国務大臣だよ。法務大臣であると同時に、閣僚の一員なんだから、こんなことが自衛隊の中でやられておることについては、やっぱり閣僚会議でもきちっと栗原さんに言って、そうしてこんなばかげたことのないようにしてもらわぬといかぬと思うんですよ。国務大臣として、あなたの御意見も聞きたいと思います。  同時に、防衛庁、何か文句がありますか。なければ、きちっとあなたたちが判断できないなら上司に伝えて、誓約書を返しなさいよ。そして陳謝しなさい。  終わります。
  49. 遠藤要

    国務大臣遠藤要君) ただいま突然この話を拝聴して、なおまたよく事情をお聞きして、防衛庁長官と懇談する機会はたくさんございますので、よく話し合ってみたい、こう思っております。
  50. 山本正和

    ○山本正和君 会計検査院から法務省に対して御指摘がございますが、六十年度は一件ということで出ていますけれども、ちょっと最近のを調べてみて、五十三年に刑務所職員の不正行為、五十四年に法務局職員の不正行為と契約方法不適切、五十五年に法務局職員の不正行為、五十七年に入管 職員の不正行為、五十八年に区検察庁職員の不正行為、そして今度の登記所職員の不正行為、こういうふうに毎年不正行為を指摘されているわけです。これは最高裁判所の方を見ますと、もうほとんどそんなことは何もないですね。やっぱり国民が、法治国として生きていく中での一番大切な本尊とも言うべき法務省が、こういうことが頻発してなかなか絶えない、こういうふうなことについて、恐らく国民の皆さんが、こんなことでいいのかと随分心配していると思うんです。  歴年こういうことが起こったことに対して法務省としてはどういうふうにお考えなのか。また確かにその都度その都度処理はされておるようですけれども、しかし、こういう傾向に対して、法務省としてのひとつ御見解を承っておきたいと思います。
  51. 千種秀夫

    説明員(千種秀夫君) ただいま御指摘の問題は、実は私ども所管の民事局の問題だけではないようでございますので、全体についての問題はまた別といたしまして、とりあえず私ども民事局に関してお答え申し上げたいと思います。  ただいまの最初の方の御指摘はちょっと聞き取れませんでございましたけれども、大体民事局で所管しております登記所中心の業務に関しての不正事件というのは、御指摘のように印紙にまつわる問題が多うございます。これは現場において印紙を扱うために、しかもその額が多額であるために特にそういう不正行為が発生しておりまして、これは最近減ってはきておりますけれども、なお最近発見され、まことに遺憾で申しわけないことと思っております。  そういう私どもの所管業務についての性格からいたしまして、これを防止するためにいろいろな策を講じておるわけでございますけれども、それは一つには一般的な公務員の自覚の問題でございますし、もう一つは具体的に業務の不正防止策ということになってまいります。一般的なことは常に申しておるわけでございますし、今回もたびたび地方局の長の会同等におきまして具体策を検討しておるところでございますけれども、具体的な施策としましては、例えば登記事務の監査の厳格化あるいは充実化、また印紙にまつわるものでございますから、その消印器をもう少し精巧なものにして、またその消印器を押す時期をすぐやるように、そういうような問題。それから職場において職員の相互牽制体制の確立、こういうようなことを中心に策を進めております。
  52. 山本正和

    ○山本正和君 国民サイドといいましょうか、市町村等で、とにかく何か自分たちの財産その他の問題がありますと、登記所へ行きましていろいろやるわけですね。そのときに素人ではわかりにくいいろいろな手続がございまして、大変国民の立場から言うと苦労してつくった、それが出された。ところが、それがこんなことになるとなりますと、本当にあんなに苦労してお役所の言うとおりきちっとやったにもかかわらずこんなことが起こっているのかと、これはやっぱりどうしても不信感しか生まれないというふうに私は思うんです。ですから、例えばそういう登記事務等ももう一遍見直しをしていただいて、もっと国民がやりやすい、それから確かに専門家の司法書士等に聞かなきゃいけない部分があるにしても、そうじゃなくてもやれる、もっと国民にとってわかりやすい格好での検討等も、できましたらお願いしておきたいと、こう思います。  それから、今からあと二、三御質問をするわけですが、まず一つは、私、去年から国民生活に関する調査会の中でいろいろと議論しておりまして、我が国の国際化の問題、相当同僚議員の皆さん方から御指導もいただきながら勉強してまいりました。そこで、どうも日本人に対して外国の人たちが何か閉鎖的に見える、あるいはなかなか日本人というのは国際人になれないんじゃないかというふうな話等も出ております。  そこで、ずっと調べできますと、日本国民であるということのためには、これは憲法でもって、憲法十条で、国民たる要件ということを法律で別に定めるという規定がありますね。それから、日本国民というのは一体どうなのかといって見ていきますと、日本国民は憲法二十二条で、国籍を離脱する自由あるいは海外に移住する自由、いろいろな自由が国民の権利として与えられている。また、これは憲法前文の基本的人権の尊重ということとも絡んで、大変立派な法律だろうと私は思うんです。  ところが、その日本人になろうと外国人がする場合にはなかなかなれないんです。日本人には外国へ移住し、日本国籍を離れて外国人になる権利を与えていながら、外国人が日本に来る場合には同じような条件になっているのかいないのか、その辺は対等というふうにお考えなのかどうか、ちょっと一遍御見解を承りたいんであります。
  53. 千種秀夫

    説明員(千種秀夫君) 外国人が日本人になるのは帰化の制度でございまして、それは私どもの所管でございます。  ただ、今の御質問でございますが、出ていくのは自由というのは自由の方でございますが、外国の国籍を取得するのが自由かといいますと、日本人の場合、外国に行きましてもそう自由ではございません。それは、国籍を取得するのは当然の権利というふうには一般に考えられていないわけでございまして、その国が国民にするかどうかを国の立場で決めるという建前でございますから、日本の帰化もその例外ではないわけでございまして、どこの国でも帰化については法律で要件を定めております。それは、出ていく自由ほど自由ではないのでございまして、そこは対等に考えていいかどうかというものは非常に難しい問題であろうと思います。そういう意味では、一応帰化は出ていく自由に比べて対等とは言えないのではないかと考えております。
  54. 山本正和

    ○山本正和君 ちょっと外国の例も見てみたんですが、イギリス、アメリカ、フランス、それから西ドイツというようなところを調べてみました。確かにいろいろな制約を与えています。その国の国籍を取得するためにいろいろな制約があります。それで、この制約と我が国の制約との場合、大体これは同じようなものであるというふうにお考えですか。
  55. 千種秀夫

    説明員(千種秀夫君) 帰化の場合、なかなか現実と法制と同じではない点もございまして比較しにくいんでございますが、法制について諸種の要件を比較いたしますと、我が国のいろいろな帰化の条件というのは、先進国と申しますか、欧米、フランス、ドイツなどとそう変わらないと考えております。
  56. 山本正和

    ○山本正和君 今のおっしゃるようなことに大体なっていると私も思うんですが、ただ現実問題として、日本人が例えばドイツならドイツに行く、あるいはアメリカならアメリカに行って、そして帰化を許される数、あるいは帰化に当たっていろいろ条件がありますが、その条件について恐らくそれぞれの国で裁量されて認めるんだろうと思うんですね。その裁量の部分は一体どうですか。
  57. 千種秀夫

    説明員(千種秀夫君) いや、実はその辺のところは私どもも外国の実務について十分資料を持っておりませんが、日本人がただいま話題になっておりますところの欧米、フランス、ドイツなどに行って帰化する人数というのは非常に少ないわけでございますし、それらの国の国民が日本へ帰化する場合も大変少のうございます。  日本で帰化の問題がとかく問題になっておりますのは、いろいろな歴史的な地理的な条件がございまして、在日韓国人などが一番多いわけでございます。大部分と言ってもいいかもしれません。そういう方々は日本にかなり永住的な条件を持っておられますし、日本で生まれた人も多いわけでございます。したがって、日本人で外国へ行って帰化する場合に、果たしてそのような方々であるのかどうかということも実はわかりませんし、もう一つ、アメリカなどは出生地主義をとっておりますために、向こうで生まれて国籍を取得する人も多いわけでございますものですから、またそういう意味から移民法というのが移民について非常に厳格でございまして、永住権を取得する方が一番難しい、帰化ということはそれほど問題にされていないという実情もございまして、そういう裁量部分については非常に比較しにくい要素があると思っております。
  58. 山本正和

    ○山本正和君 よく言われたことは、ベトナム難民の処理に当たって日本では大変厳しい、そして、もちろん日本語の難しさというのがありますから、それ以外の要素もありますけれども、ベトナム難民等の問題で国際的にやっぱり非難を受けている、これは事実だろうと私は思うんですね。そして、国際社会の中に適応するために今のようなままでいいのかどうか。これも条件は今御説明のように先進国と比べて変わっていないけれども、実際は裁量する部分でかなりその裁量のところに難しさがある、それが問題になっているようによく指摘されるわけです。  その辺も含めて、ひとつ国際化社会の中の日本という立場から、これは法律を改正しなくてもいい、恐らく法務大臣の御指示か御指導ができる部分がかなりあるんじゃないかと思いますから、この辺についてはひとつ個々のケース等も一遍御検討をぜひお願いしておきたいと、こう思うんですが。
  59. 千種秀夫

    説明員(千種秀夫君) 御指摘の点、十分検討いたしたいと思いますが、ただいまお話に出ましたことでちょっと申し上げておきたいことは、ベトナム難民なんかの問題もそうでございますし、出入国に関してはいろいろございますが、帰化というのは最低五年日本にいなければならないとか、そういうことは各国共通でございまして、出入国の問題、要するに国際的な交流を盛んにしなければいけない、そのためにいろいろな人が自由に出入りできるという、そういう建前と、それから国籍を取る帰化というのはかなり違った面があると私考えております。時々国際交流の問題と帰化とが混同されて議論されることがございまして、その点は一つ申し上げておきたいと思っております。
  60. 山本正和

    ○山本正和君 今のおっしゃっていることは私も理解しているつもりでございますので、要するに、国際的に日本がやっぱりもっと開かれた社会であるという印象を与えるための御検討をお願いしておきたいと、こう思います。  特に、今お話しになりました在日韓国人の問題ですが、これは要望の形で申し上げておきたいんですけれども、お父さん、お母さん、あるいはおじいさん、おばあさんの時代に朝鮮半島から我が国に強制移住させられた、あるいは随分たくさんの人が、今の韓国籍の人が来ている。ところが、戦後韓国籍にまた変わった。あるいは北朝鮮ですから、今度は籍なしになるのかどうか、その辺はわかりませんけれども、いずれにしても日本国籍を離れた。ところが、そういう人たちの中で確かに随分立派に商売等もおやりになって成功されているという方もありますけれども、なかなかやっぱり職業の選択にも制限があってできない。例えば暴力団に入っていくとか、あるいは犯罪行為を犯すとかというような例がないではないんです。  その人たちの子供が今度はちゃんと日本の小学校を出て、高等学校を出て、就職するときにもいろいろな問題がありますけれども、じゃもうお父さん、お母さんは韓国人でいくけれども、私は日本人でいきたいという場合もなかなか難しいようなんですね。その難しい条件を聞いてみますと、素行善良なる者という裁量行為の規定の判断がかなり厳格にというか、厳し過ぎるような感じがいたします。例えばお父さんが暴力団の団員に所属していたと、だからだめですよと、こんなことは言わなんだけれども、実際はそう受けとめざるを得ないと。あるいはお母さんが、もう今はトルコとは言いませんけれども、風俗営業に携わっておって云々、こんなことで許可されない。本人は高等学校を卒業してまじめに一生懸命働いているという場合にでも、なかなかそういうことが障害になるというようなことも聞いております。ですから、ひとつそういうことにつきましては本人主義で、本人がまじめに働いて日本に帰化したいという場合については、十分なひとつ御配慮を第一線の方々に御指導願いたいと、こう思うんですが。
  61. 千種秀夫

    説明員(千種秀夫君) ただいま先生おっしゃいましたこと、私どもも十分心得てやっているつもりでございますが、一つ法律的な問題として御理解いただきたいことがございますので申し上げますと、帰化の要件といたしまして、これは成人して、要するに行為能力者でなければ一人でできないものでございますから、十八歳ぐらいでございますと、どうしても親がまず日本人になって、要するに親が帰化されない場合は独立してちょっと無理なんでございます。それで結婚するときとか大学に行くときとか、そういう成人になった機会をとらえて、親が許されない場合でもなるたけ認めると、こういうやり方をしております。  そういう意味で、ぎりぎりのところでちょっと成人にならない方は、親のためになれないという人も若干出てくることもあるのでございます。その点はひとつ御理解をいただきたいと思っております。
  62. 山本正和

    ○山本正和君 要するに、我が国のあの第二次世界大戦というああいう大変な問題の中で生まれている現象でございますから、特に在日韓国人の問題については格段の御配慮をお願いしておきたいと思いますが、大臣ももしこの辺で御見解がございましたら。
  63. 遠藤要

    国務大臣遠藤要君) 今、山本先生の御質問ですが、私自身もここにいる民事局長にはしばしばもっと何とか促進せいということで進めさせておるわけでございますけれども、今先生のおっしゃるように、日本に生まれて日本語きりお話ができない、よその国に行ったことがないという人たちがなかなか帰化が面倒だというような点が、私ども自身すら何とかいま少し早く敏速にやれないのかといういらいらを生じておるわけでございますので、先生指摘のとおり民事局自体が今努力しておるわけでございますが、許可するならする、だめならだめだということをもっと敏速にさせた方がいろいろの点で大切なことではないかなと、こう思っております。今後十分検討させたいと、こう思っておりますのでよろしくお願いいたします。
  64. 山本正和

    ○山本正和君 ひとつよろしくお願いしたいと思います。  先ほど局長のお話の中にあった未成年の問題じゃなしに、成人の問題を私言っておりますのと、それから道交法でちょっとひっかかったと、だからだめだというふうな、いろいろしますから、その辺はどうかひとつ第一線の方々にいろいろと法の精神といいましょうか、これについては御徹底方をお願いしておきたいと思います。  次に、先ほど佐藤委員からも検事さんの問題がいろいろあったのですが、私ちょっと、弁護士さんの問題で少し御質問しておきたいのですが、弁護士になるためには大変な勉強をしなければいけない。弁護士になられたら、今度は弁護士会に登録し、いろいろやっていくわけですね。ところが、これは東京とか大阪とか、あるいは私のそばで言いますと名古屋あたりは弁護士さんの数が相当あるわけです。何か問題が起こってもすぐ弁護士会、弁護士のところへ相談に行ける条件があるわけですね。ところが、同じすぐ百キロも離れていない南の方の三重県に参りますと、なかなか弁護士さんがいないんですね、田舎には。問題があるから相談しようと思ったら名古屋まで行かなければいけない。田舎から今度は県庁の所在地の津まで出ていかなければいけない。あるいはせめて行っても、十万都市ぐらいまで行かなければ弁護士さんがいないという状況があるんですね。  しかし、我が国は近代社会の中で生きていこうとすれば契約者になっていくわけですから、いやでも応でもこの種の問題も出てくる。弁護士の数は一体これで足りるのかしら。どうも田舎におると弁護士が足りなくてどこに相談に行ったらいいか困る。ところが都会では弁護士さんが余っているというような話も聞くのですけれども、一体弁護士として登録しあるいは開業しておられる方は何人ぐらいおられるのでしょうか。また都道府県によって随分差があるというふうに聞くんですけれども、多い順番から三つか四つでも結構ですし、少ない順番から三つか四つ、両方ちょっとお知らせいただけませんでしょうか。
  65. 清水湛

    説明員(清水湛君) 弁護士の登録人員でございますけれども、十月二十一日現在における人数でございます。現在全国の弁護士の登録総人員は一万三千三百六十二名でございます。  県別の登録人員の多い方をまず申し上げますと、東京都が六千百五人、大阪府が千八百三十四人、愛知県が六百十人、神奈川県が四百九十一人、福岡県が四百三十二人となっております。少ない方から申し上げますと、鳥取県が二十五人、島根県が二十六人、福井県が二十九人、滋賀県が同じく二十九人、岩手県がこれちょっと多いんですが三十二人と、こういう数字でございます。
  66. 山本正和

    ○山本正和君 今の数字だけ見ても、これは地域によって法の恩恵を浴しにくいところと非常に浴しやすいところとあるような気がいたしますがね。  それから、私も高校の教員時代に教えたのが大分弁護士等あるいは検事あるいは判事等もおります。たまに寄ってきていろいろな話をするのですけれども、そこで問題なのは、さっき佐藤委員から検事さんがだんだんやめるのがふえたというふうな話もあるんですけれども、実はいずれも司法修習生として二年間勉強されるわけですね。その間の給与はいわゆる上級職公務員を受けて国家公務員になった人たちよりも大分高い給与でもって修習生に待遇はしている。ところがその人たちは今度は出て就職の自由、確かに職業選択の自由がありますから、それでなるのが圧倒的に弁護士が多い、検察官や裁判官にはなかなかこのごろはなりたくない。どうもその辺、例えば義務教育の教員の場合、これはどうしても適正配置しなければいけませんから一定の期間教員としておらなければいけない。しかも配置について各県教育委員会の配置に従って就職しなければいけない。また自治医大を卒業いたしますとこれは僻地にどんどん派遣される。  ですから、要するにそういうふうに教育やお医者さんの面ではかなり国が保障していくそういう養成機関を出る、あるいは国からいろいろな恩恵を受けて学校を出た者については一定の制限をしているんですね。これは憲法の精神にも反しないというふうにどこかで説明があったと思うんですけれどもね。そうすると、こういう法曹界というのは全然そういうことは今まで議論されなかったのか、またされる余地がないのか、その辺はいかがでございますか。
  67. 清水湛

    説明員(清水湛君) 御指摘のように、弁護士の大都市偏在あるいは地方の過疎化というような問題、これは弁護士会の内部におきましても、それから法務省裁判所等におきましても、これまで議論の対象になっているわけでございます。また、全体的に諸外国に比べまして弁護士の数が少な過ぎるのではないか、そのために国民に十分な法的サービスを提供することができないのではないかと、こういうような御意見もかねてより各方面にあるということは私ども十分に承知しているわけでございます。それぞれ非常に傾聴に値する御意見だというふうに思っております。  しかしながら、では具体的に弁護士がどのくらい足りないのか、あるいはどのくらいふやしたらよろしいのか、こういうようなことになってまいりますと、諸外国、例えばアメリカあたりでは弁護士の数が七十万人、人口が日本の約二倍でございますから、二倍だということを考えましても、弁護士が七十万人おる。日本は先ほど申しましたように弁護士の数が一万四千人弱、こういうような差異をとらえまして直ちに日本もそれだけふやすべきである、同じような数にふやすべきであるということになりますと、これはいろいろ問題があるわけでございまして、それぞれの国の司法制度の歴史的な背景とか、それぞれの社会、経済、文化事情というようなものが異なるわけでございますので、具体的にどの程度ふやしたらよろしいのか、あるいは現在どの程度不足しておるのかというようなことにつきましては、弁護士会あるいは裁判所法務省、それぞれの立場から十分に慎重な検討を加えて結論を出す必要があるのではないかというふうに考えているわけでございます。
  68. 山本正和

    ○山本正和君 合弁護士会の話が出ましたから、ちょっとそっちの方から先に、少し疑問に思っていることを質問させていただきたいんです。  最近新聞を見ておりますと、弁護士さんが絡んだ事件が相当出ているわけです。朝日新聞の七月三十日の記事ですけれども、「弁護士が逃走手助け 金渡し「大阪を離れろ」」、それからつい最近では、十月に「一億円融資させる保証人 弁護士が替え玉工作」、それからこれは同じ内容だと思うんですけれども、「弁護士が加担、無断で抵当権登記抹消命じる判決」、こういうふうにあるかと思ったら、今度は「地上げ加担の弁護士 取り壊しを黙認 被害者女に賠償を支払え」と、これは今度はこんな大きな写真入りの新聞まで出ているわけですね。国民がまた逆に弁護士さんに対する不信を持ったら大変なことになる。しかしこれを扱うのは弁護士会なんですね、弁護士さんの処分という問題は。これは私も大変大切なことだと思うんですね。  弁護士に対してそういう独特の弁護士会という中にすべての責任を持たせるというのは非常にいいと思うんですけれども、ただここで行政権という観点からいった場合に、弁護士会というのは行政権を持ってこれをやるのか。要するに、例えば検事なら検事、あるいは裁判所の場合は若干身分が違いますけれども検事の場合にはこれは行政権は及びますよね、法務大臣の。ところが弁護士の場合はそれは及ばない。これは弁護士会がやるんだと。弁護士会がやるというのは行政権というふうに言えるのか言えないのか。また行政権ということでいった場合、憲法やいろいろな国民のさまざまな置かれている状況から、状況といいますかその地位に対する保障という問題からいって、これは一体その辺どういうふうになっているのか、これどうですか。
  69. 清水湛

    説明員(清水湛君) 御指摘のように、現在弁護士会に登録をしないと弁護士の職務を行うことができない。それからまた、弁護士の被疑行為に対する懲戒権は弁護士会にある。こういう意味で、日本の弁護士会というのは完全に自主独立の団体である。こういうことになっているわけでございます。  登録を受けなければ弁護士の仕事ができないということでございまするが、例えば医者が厚生省に登録をしないと医師の業務は行うことができない、こういうようなこととの対比で考えてみますと、登録というのは一種の行政作用である、こういうふうに考えられるわけでございます。そういうことになりますと、例えば弁護士会の現在の登録事務というのは一種の行政的作用であるということに相なろうかと思います。  そこで、恐らく先生の御疑問は、「行政権は、内閣に属する。」という憲法六十五条の規定がございまして、これとの関係でどういうことになるのかということだろうと思いますけれども、この問題につきましては、国会でもこれまで御議論のあったところでございますが、弁護士会にそういう完全な自治的な能力を与えるということが直ちに憲法六十五条に反するものではない。それは一種の立法政策的な問題でございまして、弁護士会というのはその職務の特殊性と、それから特に高い自治的能力を備えた団体であるということから、立法政策的にそのような自治権が付与されたものであるというふうに私ども理解いたしておるところでございます。
  70. 山本正和

    ○山本正和君 弁護士法の中にいろいろ規定がございますね。その中で弁護士会に対する国家機関の介入、規制、これを排除するという趣旨のものがずっと出ているというふうに私は読むんですけれども、そうすると、弁護士会が行う弁護士登録あるいは弁護士に対する懲戒、これはやっぱり公権力の行使だろうと思うんですね。  そうすると、今のお話の中で議論がいろいろあったと、こういうことでございますが、要するに国会というのがあって、国会がさまざまに行政権に対するチェックをする役割を果たすわけですけれども国会は弁護士会に対しては何らチェックできるのかできないのか。さらにもっと言えば、国はこの弁護士会に対してどういう調整といいましょうか対応ができるのか。例えば弁護士会が処分いたしますね、登録抹消するとかあるいは戒告をするとかいろいろな処分があります。さっき申し上げた幾つかの例の中で弁護士会として処分された例があります。これは戒告処分ですね。戒告処分というのは何ら実害が伴わないといったらおかしいですけれども、事実上は実害は伴わないと私は思うんですね、私どもから見ますと。  そういうふうなことでは、国民は一体弁護士会というのは本当に弁護士をちゃんとチェックしているんですか、こういう心配が出てくる。それはどこで一体今度は不満を言ったらいいか、こういうふうな議論になってきます。またもう一遍再審査しなければいけない。そういうふうなこと等を考えた場合、行政権という観点から見た場合にさまざまな問題があろうかというふうに思うんですが、ちょっとその辺もう少し御説明いただけませんか。
  71. 清水湛

    説明員(清水湛君) 弁護士会が適切に懲戒権を行使するということは、弁護士の職責の重要性とまた国民に対する影響の大きさという点から非常に重要なことだということは当然のことだと思います。  そういうことで、過去弁護士会の懲戒権の発動のあり方等について種々問題がございまして、特に弁護士の法廷活動等についていろいろな問題が指摘されたことがあるわけでございますけれども、そういうような経緯を踏まえまして、たしかあれは五十四年でしたでしょうか、弁護士会における弁護士倫理の問題だとかあるいは懲戒についてのいろいろな懲戒委員会あるいは綱紀委員会等の組織を充実強化する。特に懲戒委員会等には裁判官、それから検察官裁判所検察庁の推薦にかかわる者を入れているわけでございますけれども、その数を増加するというような形で、弁護士会自体が懲戒権の適切な行使のための改善策を多々講じたわけでございます。そういうようなことを踏まえまして、弁護士会といたしましてもこの問題について非常に努力をしておるというふうに私どもは今考えているわけでございます。  これを憲法の面から果たしてどうなのかと、一体、内閣としては弁護士会のいわば行政的作用について責任の持ちようがない、したがって国会に対しても持ちようがないというふうに言えば、いろいろ法律論がそこで出てくるわけでございますけれども、私どもといたしましては弁護士会が高度な自治的能力を備えた団体であるという前提のもとに、まさにその名のとおり適切に懲戒権を行使して国民の信頼を保持する。こういう形でその内容を充実するということに日弁連あるいは各地の弁護士会が非常に努力をしておられるというふうに考えているところでございます。
  72. 山本正和

    ○山本正和君 山分弁護士事件というのがありまして、それを東京地裁が判決を出されていますけれども、その中で「弁護士は社会正義を実現させる使命がある。」これは違法行為のことだと思うんですが、違憲行為というふうに新聞ではなっていますが、「違憲行為阻止に最大の努力を尽くすべきで、不法行為を黙認したことは弁護士倫理にもとるという以上に法的義務に欠ける」、こういう表現を使っているんですね。ところがこの人は戒告なんですね。どうも、そうすると何か心配な部分というのを感じるわけです。  私も、弁護士、随分優秀な立派な先生方をよく存じ上げていますし、国会議員の皆さんの中にも弁護士の出身の方がたくさんお見えでございます。ですから、今お話しのように、弁護士会というものの良識といいましょうか、弁護士会というものの本当の権威、これをみんなが信頼してこれがあるというのが前提だろうと思うんですけれども、しかしこういうふうな格好で新聞に書かれると、弁護士会そのものの権威の問題にかかわってくるんじゃないか、これがそのまままかり通っているということになれば、どうもこれでいいのかしらということになってまいります。  外国の例を私は知らないんですけれども、外国ではこういう弁護士等の事件に対してはやっぱり日本と同じような形でございますか、それとも何か規制の措置がございますか。
  73. 清水湛

    説明員(清水湛君) 外国の実情につきましては、いろいろな法令等から私どもその大体のアウトラインを知るという程度でございますけれども、例えばアメリカ、これは各州によって、州が弁護士制度をそれぞれ各州によって違っておるという面がございますけれども、アメリカなどでは登録も裁判所、それから懲戒も裁判所が最終的には行うというようなことになっているようでございます。ただ、実際の懲戒権の発動については、それぞれの州の弁護士会の意見というものが非常に重要な要素を持つということのようでございます。  それからドイツは、これは西ドイツでございますけれども、やはり懲戒権者は裁判所であるということでございます。それぞれ監督あるいは資格付与につきましては、州のラントの司法行政部がその権限を持っておるというような実情にあるようでございます。  フランスなどにつきましては、これは弁護士会の懲戒委員会というのが実質的にはこの懲戒権を行使するということのようでございますけれども、そういう弁護士会に対して検事長あるいは裁判所も監督的な役割を与えられておる、こういうことのようでございます。  イギリスにつきましては、これは非常に歴史が古い制度でございまして、バリスターとソリシターという二つの職能があるわけでございますけれども、バリスターについては、これはもうバリスターの資格を与えるのもバリスターの団体、登録もバリスターの団体、懲戒もバリスターの団体と、このようでございます。しかし、これはバリスターというのは非常に数が少のうございまして、いろいろ社会的な経済活動の面で弁護士活動をしているのはソリシターでございますけれども、ソリシターにつきましては、これは一次的にはソリシターの団体でございますけれども裁判所も監督的役割を持っていると、このようでございます。そういう意味から申しますと、日本の弁護士会というのは完全な自治権を持っているわけでございまして、相当珍しい立法例の方に属すると、こういうふうに申し上げてもよろしいのではないかと思います。
  74. 山本正和

    ○山本正和君 今どうこうしようにも、そんなどうせいとかこうせいとかというふうな問題じゃないと、本来から言えば弁護士会がきちんとした自立をされるべき内容だというふうに私も根本的には思いますけれども、ただこれは個人になっていろいろ話をしていると、先ほどの質問じゃありませんが、検事をもう早くやめて弁護士にでもなろうかと、でもと言つたらしかられますけれども、弁護士になろうかと、あるいは裁判所で優秀な判事として嘱望された人がまだ若いのにもう弁護士にかわっていくと。これは日本の国の中に何かみんなでもう一遍考え直さなきゃいけない状況が生まれているんじゃないかということを私は心配するわけですが、別に高等学校で教えた子供たちが言うからじゃないんですけれども。  それはいろいろの原因があるんですが、先ほどちょっと大臣もおっしゃっておられた、私は検事というその仕事が本当に独立して犯罪を徹底的に追及していく、社会正義のために闘うということには余りにも待遇が悪いと思うんです。というのは、お医者さんになりますね。僻地へ行ったらどんな貧乏な町村でもお医者さんの給料手取り五十万ぐらいにせなければ来てもらえないんですね。そうしていわゆる田舎の医療を守るために自治体は苦労するわけです。ところが、こういう法律の問題で、例えば弁護士さんにも田舎の町村なら町村に来てもらってそういう保障をするとかなんとか、もしこれやるとしたらまた変わると思いますけれども、それよりももっと大切なことは、検事が本当に自分で勉強もし、調査もし云々しようとするには今の給料でできるだろうかと、本気になってやった場合ですね。  ですから、もともと昭和三十年代には検事の、検察官の待遇というのは、社会的にも、まあ経済的な部分は若干問題あるにしても、社会的に非常に高い地位があって、ですから検事になることが誇りであると。これは小説なんかにも「検事 霧島三郎」なんて出て、随分若い連中、学生が、よし検事になろうかというふうなこともあった。ところが今は、どうも同窓会なんかで一杯飲んでいろいろ話していると、そんな待遇かと、しかも先ほど佐藤委員の話じゃありませんけれども、どうも官僚化してしまって検察官の独立性というものが何か心配だと、こうなるとやっぱり希望が減るんじゃないか。そういうことを含めまして、むしろ弁護士会を自立性を持たしてやっていくためにも逆に検察官の待遇の改善あるいは検察官に対する、まあ国会議員は文書交通費というのをいただいていますけれども、例えば検察官には文書交通費を渡すとかなんかいろいろせぬことには、これは直らぬじゃないかと私は思うんです。  その辺のことも含めてこれはひとつどうでしょう、検察官の今の待遇のあり方、それについてはこのままでいいとお考えでございましょうか、どうでしょうか、その辺は。
  75. 遠藤要

    国務大臣遠藤要君) これは事務局の方から答えがたいと思いますので、私からお答えいたしたいと思いますが、先ほど申し上げたように、検事になるということはかっては大きな夢であったと、最近は淡い夢になったような感じが私自身しておるわけであります。  それは原因は何かというと、先ほど来申し上げているとおり、やはり役所自体が検事さんに対して同一任地に二年、長くて三年というようなことで、ほとんどの検事の家庭は段ボールに常に荷物を入れてまた引っ越すと、いつも引っ越しの態勢でおるというようなことでは生活の基盤が果たしてどうかと。また年寄りを抱えている、子供を抱えていると、そういうふうな点を考えると、検事自体に対してやはり信頼感というのをもっと高く評価していかなくてはならぬではないかというような点が一つと、それに先ほど申し上げたとおり待遇の問題です。  今の待遇でなぜ検事さんよりも弁護士さんの方が希望が出るのかというような点を考えてみると、やはり社会正義のために弁護士さんもその使命感にあふれて弁護士をやられるということでございますけれども検察官はより以上やはり第一線で闘っていくという点を考えると、それにふさわしいところの身分保障、待遇というのを考えていくべきだ、こういうような点を私は大臣就任当初からその気持ちが頭から離れておりません。そういうような点で、今後もいろいろの機会にその面において努力してまいりたい、こういうふうな考えを持っておるということでございまして、役所先ほどから官房長や何かの答えでも、そういうような点は素知らぬ顔して、事なかれというような感は持っておらないんでしょうけれども、余り自分たちの待遇問題ということになると言いそびれておる、それが今日をもたらしているんではないか、こう感じますので努力いたしたい、こう考えております。
  76. 山本正和

    ○山本正和君 それから、国選弁護人の報酬が大変低くて、これは最高裁の方にお伺いするわけですけれども、そうしたらどうも、しかし法曹の身分を持つために国がしっかり先ほど修習生時代に高額でもって待遇、処遇しているから、国選弁護人になって安くてもそんな文句言うな、文句言うなと言われたかどうか知りませんけれども、そういうふうな状況だということを聞いたりするんですが、やっぱり国選弁護人が本気になってやるためにはこの今の状況でいいんだろうかと。どう考えても一般で言う弁護士報酬と比べて余りにも差があり過ぎると。これしかし、最高裁の方は時々か毎年かどうかわかりませんけれども、これの改善を言っておられるようですけれども、見通しやその展望についてはどうでございましょうかね。
  77. 吉丸眞

    最高裁判所長官代理者(吉丸眞君) 御指摘のとおり、刑事裁判を適正、円滑に運営するためには弁護人の弁護活動に負うところが大きく、したがいまして国選弁護人が選任された場合にはその活動は大変重要な意味を持つわけでございます。  なお、国選弁護人の報酬の増額につきましては、毎年日本弁護士連合会などからも強い要望が寄せられているところでございます。私どもといたしましては、この日本弁護士連合会等の意見も考えまして、また国選弁護人の活動にふさわしい額を確保するよう、その増額に努力しているところで。ございます。  ただ、御承知のとおり、マイナスシーリングの続く昨今の厳しい財政事情がございますので、なかなかかってのような大幅な増額というようなことは望めない状況でございます。そのような中で財政当局の御理解も得まして一般の公務員の給与改定率よりも手厚い引き上げを実現してきたところでございまして、この点につきましては、今後ともその増額についてできるだけ努力いたしたいというふうに考えております。
  78. 山本正和

    ○山本正和君 ひとつ本当に何とか、国選弁護人、もう少し待遇の改善のために御努力をお願いしておきたいと思います。  それから、時間がもうございませんから、あとは専ら私なりの要望を申し上げる形になろうかと思いますが、法令をずっと見ていきますと、法律、政令、府省令、さらには勅令等もまだ生きているのがたくさんあります。その中にいわゆる旧大日本帝国憲法当時の表現のままの片仮名の法令が随分まだ残っているようでございます。そして、それは確かに憲法で、この新しい憲法に抵触するすべての勅令、法令その他は廃止するとなっていますから、そうでないものがみんな残っているんだろうと思います。  確かに見ていきますと、いいのも随分あるんですが、問題がこんなのでいいんかしらんというようなやつが随分出ておりまして、例えば公証人法という法律があります。公証人法の本来の建前からいくと、やっぱり試験を受けて資格を持った人がなるというのが建前なんでしょうけれども、現実はそうじゃないような運用が「当分ノ間」ということでされておりまして、これが今もってそのままきている。公証人というのは定年七十歳でありますけれども、大変収入も多いし、その地区での社会的地位も高い、立派な方が多いわけですね。しかし、この公証人法というのは一体いつからこういうふうになっているのかということを見てまいりますと、もうぼつぼつみんなで検討しなければおかしいんじゃないかというふうな感じがいたします。これは一体これから直すのか直さないのかという問題がございます。これ、もう時間ございませんから御答弁していただかないで、次の問題も言っておきたいものですから、指摘だけにとどめます。  それから、陪審法という法律があります。ところが、これは停止している。そして、停止しているのが戦争中だからということで「今次ノ戦争終了後再施行スル」、こう書いているんですけれども、そのままやっていないんですから、まだ戦争が続いているのかしらんというふうな印象を法律だけ見ると感じたりするわけです。こういうふうに直さなきゃいけない問題がたくさんあります。  ところが、見ていくとまた大変、こういうのをなぜ適用しないのかと思って私もこの前から見ておったんですけれども、暴力行為等処罰ニ関スル法律、大正十五年四月十日というやつがあります。これを見ていくと、「団体若ハ多衆ノ威力ヲ示シ、団体若ハ多衆ヲ仮装シテ威力ヲ示シ又ハ兇器ヲ示シ若ハ数人共同シテ」云々と、こういうふうに続くんですね。この前、靖国神社に中曽根総理が出られるとか出られないとかいう問題のときにやってきて、中曽根殺せ、中曽根殺せとやっているわけですね。しかも、異様な服装をして国会周辺をうろうろしている、朝八時ごろからばんばんやっている。これ、どう見ても古い暴力行為等処罰ニ関スル法律によく合います。私もそれで三、四年前までずっと経験したんですけれども、日教組が大会を開くというとやってきて、何十台という車ならいいんですけれども、三重県でやったときには二百二十台ですよね。小さな十万市民のところにあの装甲車みたいなやつが何百台も来てだっとやられたら、市民はおびえるんですよ。ここでも田中殺せ、私も山本殺せとやられたんです。これはどうも暴力行為等処罰ニ関スル法律に抵触するように思うんですけれども、こういうものは適用されておりません。  しかし、そういうものも含めて、国民生活が本当に平穏に、そしてまた、もちろん表現の自由の問題がありますから、表現の自由の問題ともかかわりながらいろいろあろうかと思うんです。ですから、昔からあるさまざまな法令、法律等をやっぱり法務省としてぜひ御検討いただいて、整理すべきは整理する、そして整合性を持った形でみんなが法律がわかるような状況にしていただきたい。私はそれで国民がやっぱり一番もっと法律になじまなきゃいけないと思うんです。国民が法律になじむことについての責任は、主として主務官庁といえば法務省だろうというふうに思うんですが、そういうことも含めまして、もう時間が参りましたので、今最後のところは法令に関する私なりの要望にとどめておきたいと思います。  どうもありがとうございました。
  79. 穐山篤

    委員長穐山篤君) 午前の審査はこの程度とし、午後一時二十分まで休憩いたします。    午後零時十九分休憩      —————・—————    午後一時二十二分開会
  80. 穐山篤

    委員長穐山篤君) ただいまから決算委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、昭和六十年度決算外二件を議題とし、法務省及び裁判所決算について審査を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  81. 杉山令肇

    ○杉山令肇君 日々、法秩序の維持と国民の権利の保全という大変国民生活にとって大事な業務を担当していただきます遠藤法務大臣以下、関係の皆様方にまずもって敬意と感謝を申し上げておきたいと思います。  さて最近、新聞紙上を眺めておりますと、土地の地価狂乱と暴力団に関する記事が多く記載をされております。  ちなみに若干の新聞紙上に載っておりますことを述べてみますと、去る十日の読売には、   地価狂乱の”元凶”となっている地上げに暴力団が介入、放火や建造物損壊など凶悪な手口で立ち退きを迫っていることが九日までに警察庁が実施した全国の実態調査で裏付けられた。その調査結果によると、地上げ事件は手口の凶悪化に加え、全国二十都府県に拡散し、昨年の三倍を超えるペースで増え続けている。こう報道しているのであります。  また同じく朝日を眺めてみましても、「暴力団使った地上げ横行」という見出しにつきまして、   この一年半の摘発は全国で計二十八件で、そのうち八割強は地価の暴騰が続く東京、大阪などの不働産業者や所有者が、転売を急いで暴力団に依頼したケースだった。立ち退きを迫って居住者を短銃でおどしたり、家に放火して全焼させるというひどいケースもあった。また、相談件数は摘発の十倍もあり、地上げ問題が東北や四国、沖縄など地方都市にも広がっていることも明らかになった。こう報道しているのであります。  また一部では、「脅し・壊し・焼く あくとく地上げ」ということで、   ある日、暴力団員風の男がやって来て、「出て行け」と脅す。断ると、右翼の街宣車が来る。それでもがんばっていると、ダンプカーが突っ込む。パワーショベルが襲う。家を焼かれる。   この一年、都内で急増した地上げにからむ事件は、ほとんどに暴力団がかかわり、手口はしつこく荒っぽい。地上げ屋の暗躍は、都心の一等地で始まり、めぼしい土地を食いつくして周辺部に広がったといわれる。  また、東京新聞では、「ついに死者出す」ということで、「地価の急騰が続き、不動産業者に絡む事件が続発している東京で二十八日、ついに死者の出る重大事件が起きてしまった。」と報道しているところであります。  さて、この問題に絡めまして若干の御質問をさせていただきたいと思います。  まず最初に、現在暴力団を使った地上げが横行しておりますが、警察庁の調査によりますと、摘発された地上げ事件のうち八割以上は暴力団が関与し、さらに脅迫、放火、建造物破壊など、悪質な手段によるものが多いと言われています。このことにつきまして、その実態をひとつ御説明していただきたいと思います。
  82. 深山健男

    説明員(深山健男君) お答えいたします。  最近、都市部におきます地価高騰を背景としまして、地上げに暴力団が関与し、不法な行為を敢行する事案が目立っております。さきに実施いたしました地上げに絡む不法事案の実態調査によりますと、全国の都道府県警察において検挙しました地上げに絡む不法事案は、昭和六十一年中に八件、本年六月末現在で二十件でありますが、このうち暴力団が関与したものは昭和六十一年については八件すべてでございますし、本年については六月末現在の検挙事件の八〇%に当たります十六件であります。  また、地上げに係る不法行為の態様といたしましては、建物にペンキで落書きしたり中傷ビラを配布したりするなどのほか、けん銃を突きつけておどしたり、ビルの屋上にハンマーで穴をあけたり、あるいは建物に放火したりするという極めて悪質なものがございまして、今後ともこの種事案に対しましては厳正に対処してまいりたいと考えておるところでございます。
  83. 杉山令肇

    ○杉山令肇君 さらに、これらによる地上げに関する報酬というのは、新聞報道でありますが、百億円以上とも報道されているのであります。暴力団の新しい重要資金源ともなっていると思います。不動産業界と暴力団の癒着の実態はどうなっているのか、さらにひとつ御説明をいただきたいと思います。
  84. 深山健男

    説明員(深山健男君) 検挙事例から見ますと、暴力団が不動産業者から地上げを依頼され、その報酬として億単位の資金を得たという事例もあり、地上げが彼らの重要な資金源の一つとなりつつあるという現状ではないかと考えるわけでございます。また最近、不動産取引に暴力団が介入して困っているということで市民からの相談件数というものが急増いたしておりまして、全国の警察で受理いたしました相談件数は、六十一年中に千九百九十三件であったものが、本年六月末現在、半年間で千二百五十九件に達しておるわけでございます。なお、この不動産取引に暴力団が介入、困っているという相談のうち地上げに絡むものは六十一年中は百六件であったものが、本年六月末現在では百八十四件に達しております。  このような状況から見まして、暴力団関係者が一部の不動産業者と結びついて地上げなど不動産取引に関与あるいは介入している状況というのがうかがえるのであります。
  85. 杉山令肇

    ○杉山令肇君 さて、そのようなことをお聞きいたしますと、今後地上げに関する暴力団対策ということにつきまして警察庁としてはどのような見解をお持ちなのか、お尋ねをいたしたいと思います。
  86. 深山健男

    説明員(深山健男君) 暴力団の資金源活動というものはますます多様化、巧妙化しておるわけでございますが、地上げなど不動産取引に対する介入、関与が顕著となってきているところから、警察といたしましても不動産業への暴力団の介入実態の把握に努めるとともに、市民からのこの種事案の相談に積極的に対応し、刑事事件となるものにつきましては徹底した検挙を図ってまいる所存でございます。  また現在、不動産業からの暴力団排除を推進するために、関係省庁とも協議いたしているところでございます。
  87. 杉山令肇

    ○杉山令肇君 それではこれに関しまして法務省にお尋ねをいたしたいと思います。  地価の狂乱はいろいろな原因があると思っておりますが、その中の一つにもちろん供給の不足というものが一因と私は考えてみたわけであります。つきましては、現行の借地・借家法でありますが、借り主にも相当の権利の保全が図られているということは結構なことでありますが、考えてみますと、できれば貸し主の保護にも配慮して両者のバランスを見直し、供給の拡大を図るべきではないかという考え方がありますが、これに対する御所見を承りたいと思います。
  88. 千種秀夫

    説明員(千種秀夫君) 最近地価問題に関連して、土地の供給ということから御指摘のような御意見も出ております。私どももそういうことを踏まえまして、ただいま法務大臣の諮問機関でございます法制審議会の民法部会の財産法小委員会において、借地・借家法の改正について御審議をいただいて、目下盛んにその審議を進めているところでございます。  ただ、借地・借家法というのは、御指摘のように、本来借り主、貸し主の両方の利害を調整するという建前でできておりますし、法律の構造もそういうふうになっておりますものでございますから、一方だけの利益を調整するという特別な政策的な法律に改めるというようなことはなかなか難しゅうございます。  ただ、私どもがここ数年来そういう問題について関心を持っておりますのは、この法律ができたのは大正年代でございますから、非常に小規模な住宅あるいは店舗というようなものを建てるために土地を借りて、それで利用している、そういう前提条件のもとにいろいろな法律ができておりますが、最近都市の土地利用というものが非常にスケールが大きくなってまいりましたし、建物の建て方も非常に大きなものになってまいりました。明け渡すというときに直ちに収去できないような大きな建物もできてまいります。そういうようなことから、借りている人も、企業が利益のために借りておるというようなものも多くなってまいりますと、古い条件では理解し得ない、解決し得ない問題が出てまいります。  そこで御指摘のように、営業のために特別に大きなものを借りる場合に期間を一定にして、すっきり期間が来たら返すというような形に定期借地権を設定してはどうか、期間が来た後の更新その他についてももう少し明け渡しあるいは地主の方の利益を考慮してはどうか、こういう問題が出てきて、それを今検討しているところでございます。  そういう意味でこの改正は急いでやる必要があると考えておりますが、その結果がよろしければ、ただいま御指摘のように、土地の供給についてもよい結果を生むと考えております。
  89. 杉山令肇

    ○杉山令肇君 次は、去る十日の読売新聞にも書いておりますように、「暴力団追放 切れ味見せた「仮処分」」という見出してあります。具体的には静団地裁浜松支部の事件でありますが、十月九日、暴力団所有のビルを組事務所として使ってはならないとする仮処分の決定が出されました。  今回のこの仮処分申請は、暴力団そのものの存在を問う全国初のケースとして注目されたものでありますと同時に、暴力団退治の伝家の宝刀とする法的手段がどこまで通用するかを試すものであったと思うのであります。つきましては、本決定に至る経緯と背景について御説明を賜りたいと思います。
  90. 山口繁

    最高裁判所長官代理者(山口繁君) 本件仮処分の申請は、本年の八月十日と九月七日の二回に分けまして静団地裁の浜松支部になされたものでございます。  その債権者の主張の概要を申し上げますと、債権者、これは合計で五百十五名いらっしゃいますけれども、問題の建物、これは浜松市海老塚二丁目に存在いたします鉄骨づくり陸屋根の六階のビルディングでございます。この建物の周辺地域に居住されまして平穏に生活をしてこられた一般の住民の方々でございます。  ところで、暴力団と言われております国領屋一力一家の組長でございますこれが債務者になるわけでございますが、その方が、もと市内の別なところに本部があったわけでございますが、最近になりまして、先ほど申しました海老塚二丁目にこの問題のビルを新築されたわけでございます。これを一力一家の組事務所として使用するに至った。これに対しまして住民の方々が移転に反対する住民運動を起こされたわけでございますが、組側の方ではこれに対しまして暴力行使等の犯罪行為を頻発させて、そのため住民らは日常、生命、身体、財産等に対する危険にさらされることになった、深刻な不安と危険におびえながら生活しなければならなくなったといたしまして、人格権に基づいて債務者がこの建物を一力一家の組事務所として使用することなどにつきまして差しとめなどを求める仮処分申請をされたわけでございます。  裁判所におきましては、八月二十四日、九月の七日の二回にわたりまして審尋期日を開きまして、御指摘のように本年の十月九日に債権者らの申請の主要部分を認めまして、債務者であります組長さんに対しまして、この建物の外壁に設置した「国領屋一力一家」と表示する文字板及び山口組を表象する紋章を仮に撤去せよ、それから建物の外壁に国領屋一力一家を表示する文字板及び看板等、または山口組を表象する紋章、文字板及び看板等を設置し、建物内において一力一家の定例会を開催し、あるいは建物内に一力一家の構成員を集合させるなどしてその建物を国領屋一力一家の組事務所として使用してはならないということを命じたわけでございます。  仮処分の申請、それから決定に至る経緯は以上でございます。
  91. 杉山令肇

    ○杉山令肇君 このような仮処分というのが今後定着をしてまいりますと、暴力団追放に大きな効力を持つと考えるのでありますが、法務大臣としてのお考えはどうでしょうか、お尋ねをいたしたいと思います。
  92. 遠藤要

    国務大臣遠藤要君) 具体的事件に関する裁判所の仮処分に対して法務大臣として意見を述べるということは差し控えさせていただきたい、こう思いますけれども、暴力団の構成員による犯罪が依然として多発している、そして国民に大きな危害と不安を与えている現状は全く憂慮すべきものであると思い、検察としても今後とも事態の推移を十分注視して関係当局との緊密な連絡のもとに厳重な取り締まり、そして具体的事案については厳正な科刑の実現を図っていくものと思います。  さような点で、せっかくのお尋ねでございますけれども、仮処分に対する問題については、法務大臣としてはこの意見を差し控えさせていただきたいと思います。
  93. 杉山令肇

    ○杉山令肇君 次は入管に関することでありますが、その中で格別、男性じゃぱゆきさんについてお尋ねをいたしたいと思います。  このごろ、単純労働者と申しますか、男性じゃぱゆきさんの増加が目立っているように思います。つきましては、その動向または増加の原因等について法務省、労働省の見解と、今後どう対処しようとするのか、考えをお聞かせいただきたいと思います。
  94. 熊谷直博

    説明員(熊谷直博君) 従来の女性の不法就労者に加えまして最近、御指摘のとおり男性不法就労者が急激に増加いたしております。特にこの五年間をとってみますと、例えば昭和六十一年一年間で、これは暦年の一年間に二千百八十五名という数字になっております。これは摘発者でございますが、五年前、すなわち五十六年の二百八人と比べますとほぼ十一倍に当たっているわけでございます。国名を明確にするのは差し控えますが、特にアジア諸国からの者が急増しているのがこの特徴でございます。  このような男性不法就労者の急増の原因につきましては必ずしも明確ではないのでありますけれども、その背景には、例えばそれらの国々と我が国との経済格差の拡大、これらの諸国における従来の出稼ぎ先でありました中東産油国の景気の後退による稼働機会の激減、それから日本の円高という状況での我が国での稼働のメリットなどが考えられるのではないかと思っております。さらに、これらの者の送り出し及び受け入れを行うブローカーあるいは職業的な手配師のようなネットワークが存在している可能性があり、かなりこれらが組織的に送り出しとか受け入れを行っている可能性があると考えられます。  このような不法就労者のほとんどの者は先生指摘のように単純労働に従事いたしておりますので、これらの者の増加傾向は今後も続くものと考えられますが、このような状況を放置いたしますことは、出入国管理行政の根幹を脅かすだけではなく、我が国の労働市場、治安等各方面にわたって重大な影響を及ぼすおそれがあると考えます。入管当局といたしましては、入国法における厳正な上陸審査の実施及び違反者の積極的な摘発等種々の方策を講じてその防止、取り締まりに努めておりましたが、今後ともその努力を引き続き行っていく所存でございます。  ただ、何分にも限られた人員及び予算をもってこれに対応しているところから、その効果が必ずしも十分に上がっているとは言いがたい実情にありますので、今後とも関係の警察、外務、労働等の諸省庁と連絡をとり、連携を十分に保ちつつ努力をしてまいりたいと思っております。
  95. 吉免光顕

    説明員吉免光顕君) お答え申し上げます。  最近、アジア諸国を中心に外国人が観光査証等で日本に入国した後、風俗営業関係あるいは建設現場、工場等で就労しているところを資格外活動、不法残留等の入管法違反の形で摘発される事例が増加している。特に最近の円高それから中近東産油国の経済不況を背景に単純労働に従事する男性の違反者が急増しているというふうに承知しております。  こうした外国人の不法就労の増加ですけれども、我が国の雇用失業情勢が今後も楽観を許さない状況にございますので、さらにこれに深刻な影響を及ぼすということになりかねないということから、労働省としてもこの問題に適切に対処していく必要があるというふうに考えております。このため、入管法違反に当たる外国人の雇用あるいはこれに係る労働者派遣等が行われることのないように、関係団体あるいは関係事業主に対して協力要請をする、あるいは指導等に努めるとともに、職業安定法あるいは労働者派遣法に違反した形態で外国人労働者の職業紹介あるいは労働者派遣等が行われている場合については、これら法違反に対して厳正に対処しているということにしております。今後とも、法務省、警察庁等関係省庁との連携をさらに強化してまいり、この問題に適切に対処してまいりたいというふうに考えております。
  96. 杉山令肇

    ○杉山令肇君 次は、製造業者等において技能研修生として入国してくる外国人が増加しているということをよく聞くのでありますが、その動向と、またこれらの者が研修の名目で国内労働者と同じ仕事をさせられていることはないかということと、研修生としての認定はどのように行われているのか、御説明をいただきたいと思います。
  97. 熊谷直博

    説明員(熊谷直博君) お答えいたします。  我が国に技術研修生として新規入国した外国人の最近の数をまず申し上げたいと思います。昭和五十九年、一万三千二百六十二人、六十年、一万三千九百八十七人、六十一年、昨年ですが、一万四千三百八十八人でありまして、逐年増加する傾向にあると言えます。  外国から研修を目的とする入国申請が行われます場合には研修先、研修受け入れ態勢、それから具体的な研修計画等を調べまして、その必要について慎重な審査を実施し、研修生としての在留資格を認めてまいっております。また、入国後の在留期間更新申請の際にも、研修の実施状況等を聴取して同様の観点から審査を行っておりまして、研修生としての入国を許可された者が労働者と同様な仕事に従事することがないようにしております。一見他の一般の労働者と同じような仕事に従事している場合もあるようでございますが、そのこと自体が研修目的の一環である場合があるわけで、研修先もそのような説明を行っているのが実情でありまして、当局としてもそのような説明を了としておるのが実情でございます。
  98. 杉山令肇

    ○杉山令肇君 次に不動産登記関係について若干お尋ねをさせていただきます。  登記事務というのは、土地取引や会社数の増加等でふえ続けてまいりまして、六十一年度は登記の申請が約二千五百万件の多きに達しておりますし、登記薄の謄抄本の請求、閲覧が約四億七千万件、三十年度当時に比べますと、それぞれ三・六倍、約三十倍となっていると聞いております。  ところが、職員の増員は行政改革推進の立場から三十年度の約一・四倍にとどまっておりまして、窓口のサービスの低下や不正申請事件等が発生するなど、電算化による処理能力の向上が求められております。また、五十八年一月からは、東京法務局の板橋出張所におきまして電算処理を試験的に行ってきておられまして、私も見学させていただきましたが、大変に法務行政の中で苦労をされているところであります。  つきましては、十月の五日に登記事務のコンピューターシステムの全体構想をまとめました民事行政審議会答申が出されたと承っておりますが、その内容はどのようなものか、ひとつ御説明をいただきたいと思います。
  99. 千種秀夫

    説明員(千種秀夫君) 登記行政につきまして御理解をいただき、まことにありがたく感謝申し上げます。  この民行審の答申は、去る六十年九月二十七日に法務大臣の諮問、すなわち「電子情報処理組織を用いて登記を行う制度の導入に当たり特に留意すべき事項について意見を承りたい」、こういう諮問に対し、民行審において二年余の審議を経た後いただいた答申でございまして、これは大きく分けますと七項目になっております。  概略を申し上げますと、第一はこの全体構想についてでございますが、コンピューターシステムを用いる場合にどういう形、すなわち集中的に中央でやるのか各地で分散してやるのかというような問題でございますが、これは結論として分散処理・三階層ネットワーク方式を採用するのが適当であるということを言っております。要するに、今までやっていたとおりに各登記所ごとにコンピューターを入れて自分の庁の登記事務を処理するのが一番よい。しかし、それを法務局、さらには本省に、三段階に同じ資料を同時に回線で結んで蓄えておいて、いざというときにそれを利用して安全を図る、こういうシステムにするのがよいということでございます。  第二番目といたしましては、登記ファイルの保全・保護対策ということでございますが、やはり機械化いたしました場合に何かの事故で資料が全部消滅してしまうようなことがあってはいけませんし、また何かの機械の支障によってその事務が停滞してはいけない、こういうことから、どういうふうにそれを保護するかということがうたわれているわけですが、各登記所においては登記ファイルのほかに必ず同じ保全ファイルというものを同時に供えておいて、何か支障があったらすぐ保全ファイルから復元して事務の停滞がないようにしなければいけない。また、各登記所において事故があった場合には、必ずバックアップセンターからその資料をすぐに持ってまいりましてその資料を復元して事務の支障なきようにすること。三階層でございますから、中央にあります登記情報センターにも全国の同じ資料を蓄えておいて、いざというときにはそこから資料を現地に流してそこで復元をして、それで事務をするようにと、こういうようなことがうたわれておるわけでございます。  第三点は、障害対策でございますが、これは今申し上げました保全対策と裏腹の関係でございまして、障害が起こった場合には必ず法務局なりバックアップセンターあるいは中央の登記情報センターからその登記情報を流してスムーズに事件が処理できるようにしろと、こういうことでございます。  第四点は、登記事務の処理方式なのでございますが、これは文字を符号に直して文字で打ち出すコード処理方式と、例えば画像のような形をなしたものはそのまま画像として入力して出力するようなイメージ処理方式という二つ方法が考えられるわけでございますが、登記につきましてはすべてコード処理方式をとるのがよろしい。ただ、印鑑証明のような、形でなければならないものについてだけイメージ処理方式をとる方がよろしい、これが全体的に能率的であると、こういう提言がなされております。  また第五番目は、現在の登記制度からコンピューターシステムに移行する方法をどうするかということでございますが、なるだけ繁忙登記所から優先的に実施するようにするのが基本である。また移行の準備作業としてどのようにするか、登記ファイルを作成する作業はバックアップセンターが実施するものとすべきであり、その一部は外部に委託することができるものとするのが相当であると、こういう提言がなされております。  第六番目は登記情報の公開ということでございますが、これは閲覧でございますとか謄抄本の請求、こういうものでございます。この辺はちょっと複雑になりますが、コンピューター化いたしますと磁気ファイルに入ったものをそのまま肉眼で見ることができませんものですから、今までと同じような閲覧ということができなくなります。そこで、これをどうするかということが一つの問題でございますが、これには登記事項証明書あるいは要約した登記事項要約書というものを打ち出して、要望に応じて一定事項だけを要約した証明書を出す、こういう書面による閲覧と申しますか、そういう方式にするのが好ましいと、こういう提言がございます。そのほか、ついでながら、登記事項証明書などは今まで縦書きになっておりますが、こういうものは横書きにしてアラビア数字を用い、登記事項の表示方法については関連事項をまとめる等の改善を図るべきであると、こういった改善策についても触れております。  第七番目といたしましては、今後の検討課題でございますが、これにつきましては、このコンピューター化のための財政的基盤の整備を図る必要がある。ということは、今特別会計で主として乙号の手数料が財源になっておるわけでございますが、これは行く行くコンピューター化いたしますと、権利関係のいわゆる甲号という登記についてもメリットが出てまいりますので、特別会計については甲号事件も加味して将来考えていく必要があるという御示唆がございます。もう一つは、不動産に関する総合的な情報システムを考えてもよいのではないかという御提言がございます。不動産は、登記だけではなくて、いろいろな法規制などがございまして、実際に不動産を扱う方々は、登記簿謄本だけではなくて、それがどんな規制の土地であるとか、そういういろいろな情報が同時に必要になるものでございますから、そういうものが将来一つの情報システムの中に入っていると非常に便利である、必ずそういう需要ができるであろうからそういうことも研究した方がよいと、こういう御提言がございます。  以上が答申の骨子でございます。
  100. 杉山令肇

    ○杉山令肇君 今御報告いただきましたように、登記事務のコンピューター化というのは法務行政の中でも最も大事な今後の課題だと思っております。したがいまして、いろいろな問題もあろうと思いますが、そのことについて今後どのように対策を立てていこうとなさるのか、具体的に若干お聞かせをいただきたいと思います。
  101. 千種秀夫

    説明員(千種秀夫君) この登記のコンピューター化の問題といいますか、事業は大変大きな事業でございまして、私どもの予算規模からいたしましても単年度でできるようなことではございません。今の私どもの計画では、ことしが実施の第一歩でございますけれども、当初から十五年計画で全国の登記所をコンピューター化し、ネットワークを完成しようという計画をしております。そのために、今技術的にはいわゆるシステム開発というものを進めているわけでございまして、これは今年度といいますか、来年の三月末までにはほぼ完成する見込みで仕事を続けているわけでございます。一方、板橋におきましては御指摘のように今まで実験をしてきたわけでございますが、これが完了いたしました場合には本番に移行したいということで、来年のうちには全国で十庁ぐらいはコンピューター化された登記所をオープンしたいというふうに考えております。  そういたしますと、まずはこの答申に沿いまして最低限の法改正というようなことも考えていかなければなりません。その法改正の検討も今進めておりまして、できますれば来年の通常国会に法改正をお願いしたいと考えているわけでございます。  ただ、先ほど申しましたように、これが十五年計画ということになりますと、この移行作業を進めていく上においては、まずは少しずつだんだんとそれをふやしていくということになってまいります。したがって、実際の運営といいますか、事業の運営につきましては、それに応じて組織といいますか、移行作業を分担する、そういう機構をこしらえ、スムーズにそれが行われるように、またコストが余計かからない、申請人が、あるいは業者が混乱しないように、こういうことを考えつつ、少しずつ拡大していく、こういうことを考えているわけでございます。
  102. 杉山令肇

    ○杉山令肇君 次は、商法についてお尋ねをさせていただきます。  このごろ監査役というのが大変大事な業務であって、さらに充実をする必要があるという声が聞かれているのであります。今年に入りましてからも不動産転がしの中央信託銀行、あるいは財テク失敗のタテホ化学、ココム違反の東芝機械など、新聞紙上に載っておりますように、会社の社長とか会長とかそれなりの人が責任を負うということはわかりますが、最も大事な監査役の責任が明確に出てくる例は余り見当たらないのであります。  そういうふうな実情から考えまして、監査の効力をこれから上げていかなければいけないという意見もありますが、このような事件が多い現状におきまして、法務省としてこの実態をどのように考えていらっしゃるのか、お伺いをさせていただきます。
  103. 千種秀夫

    説明員(千種秀夫君) 御指摘のとおりに、いろいろ企業の倫理問題と申しますか、企業倫理の問題が最近報じられておりまして、私ども商法、特に会社法の問題を担当しております民事局といたしましては、これに重大な関心を持って臨んでいるところでございます。ただ、この監査制度というものは企業の内部において、経営のコントロール、あり方、こういうものを見ていく制度でございますので、そこのところが企業の外からこれを統制していくという立場と違いまして、非常に実効を上げることが難しいわけでございます。  しかし、さればといってそれは放置できないことでございますので、五十六年の商法改正作業、今その後の後半部分をやっておるわけでございますが、五十六年の改正に当たりましても、会社の自主的な監査機能を強化するために、監査役に使用人に対する営業の報告、それを求める請求権を認めるとか、取締役会の招集権を認めるというように監査役の監査権を強化いたしましたほか、大規模な株式会社については会計監査人による監査を実施する会社の範囲を拡大し、複数監査役制度の採用等により監査制度の充実を期する改正を行いました。この結果は、改正後五年を経過しまして、一定の効果が上がっていると評価されているところであります。  ただ、会社法は組織法でありますので、最終的には組織を動かす人、この人を得なければ制度、組織がよく機能しないという限界がございます。しかしながら、そのような事件が続いたというようなこともございまして、私どもは今後、法整備をさらに続けたいと現在作業を続けているところでございます。
  104. 杉山令肇

    ○杉山令肇君 次は、法務行政のボランティア活動について、全く私案でありますが、大臣意見を申し上げてみたいと思います。  法務行政には、それぞれ教誨師、保護司、人権擁護委員、BBS、篤志面接委員、更生保護婦人会というように数多くのボランティア活動のお世話になっているわけであります。  昨年、私も法務行政の一部をお手伝いさせていただきましたが、その中で各地からいろいろと要望が出ておりまして、法務省というのは大変役所がかたくて、予算のとり方の下手なところですと、こうおっしゃるわけであります。  どういうことかといいますと、そのような諸活動、社会活動をお世話になっておりますものの、なかなか実費弁償、費用弁償等々も十分でない、お互いに自分のお金を使って応援をしている、協力している、こういうことをよく聞くのであります。したがいまして、予算の拡大をしてもらいたいというような御陳情が多々ございました。ところが、国家財政の現状から考えまして、そのようなボランティア活動まで十二分な予算の配慮をするということはとても難しいことだと思うのであります。  そこで、一つの案と申しますのは、先般十月の十五日でありますが、文部省のこれは話でありますが、文部省といたしましても文化功労者を今後拡大していくということで、「文化の日が近づき、今年の文化勲章受章者、文化功労者の決定が注目されているが、文部省は十五日までに、文化功労者の選考範囲と人数を今後、大幅に拡大することを決めた。」という報道がされております。  ただ、そこで私は、法務行政の中で従前の表彰、感謝の方法といたしまして、叙勲あるいは藍綬褒章、大臣表彰、感謝状等々の方法でそれぞれ顕彰をしていただいておるのでありますが、私は、それを大幅に拡大するとかしないとかという論議をするのでなくて、例えば十年なり十五年なり二十年なり、それぞれ御尽力をいただいた方々に、何かひとつ法務省としてアイデアを出していただいて、何かのシンボルをつくっていただく、お金はそう高く使わなくてもいいわけでありますから。  例えて言えば、端的な表現でありますが、金、銀、銅表彰にするなれば、十年たてば銅のバッチのものをもらう、それから十五年たてば銀がもらえる、二十年たてば金がもらえる。端的な表現でありますが、そのような独自の功労賞を大臣の考えで行える方法で謝意をあらわす方法がないであろうか。  結論的に言いますと、私は、物やお金でお返しすることがなかなか難しいわけでありますから、人間は心でありますから心で返してもらいたい、心で感謝の意をあらわすというようなひとつ顕彰方法はないであろうか。これなればそう多額な国費を使うわけじゃありません。そして、そのシンボルに合ったものが国民の中から認められて、あああの方は大変社会のために活躍、努力をした人だなと、だんだんとそれが認められて評価が高まってくれば、それを受けた人たちは感謝をしてありがとうと、金のことは言わずに法務行政に積極的にさらに力を大にしてくれるのではないかというような感じがするのであります。どうか方法論、内容等については私はわかりませんが、心でお返しするというような考え方で一つのアイデアが生み出せないかなということを、私は在任中痛感をしたものであります。  したがいまして、この機会に大臣に私の考え方を申し述べまして、考え方を承りたいと思います。
  105. 遠藤要

    国務大臣遠藤要君) ただいまのお尋ね、私自身も先生同様に感じておりながら進めておらなかったということを反省いたしておりますけれども、法務行政というものは、改めて皆さん方の前でそんな話を申し上げてはどうかと思いますけれども、日本の国が法治国家としては世界一、このようなすばらしい民主社会が構成され、しかも平和と繁栄をもたらしている、これは何といってもやはり法の秩序維持が一番だと、こう私は信じております。その法の秩序は一体だれがやっているか。もちろん政府自体が努力しておるからではございますけれども、私は今先生のおっしゃるように、ボランティア活動と申しましょうか、それぞれの民間の方々の御協力をいただいて今日の社会が構成された、こう申し上げてもやぶさかでないと思います。中曽根総理は民活、いろいろの面において民活という言葉が出ておりますけれども法務省自体は法の秩序保持のために、大分前から民活によってこのような日本国が形成されている、こう申し上げても誤りではない、こう思っております。そのような方々に対して、今、先生御承知のとおり、そのお報いする予算というのは三階から目薬の程度のことであって、到底皆さん方の御協力に対してこたえる姿ではないことも十分承知をいたしておりますので、私自身としても何らかの方法皆さん方のその奉仕に対する感謝の誠をささぐべきであるというような点は苦慮いたしており、さような点で民間団体のそういうふうな御協力をいただいている団体にはほとんど欠席をせずして、いろいろの都合をさておいて出席し、感謝のお礼を申し上げておることも事実でございます。そういうような点で、今、先生から大変立派なとうとい考え方を提示されて、私自身としてもこれは十分検討していかなければならぬなというような感を深めておりますので、これは役所自体に持ち帰って、できるだけ速やかに検討してこたえたい、そういうふうな気持ちであるということを御理解をちょうだいいたしておきたいと思います。どうぞその点はよろしくお願い申し上げたい。  なお、また一つ先ほどもろもろの先生からとうといきょうは御意見が出ておった中に、先ほど入管局長から答えておったじゃぱゆきさんの問題についても、この問題についても私は閣議で何回か各省庁に御協力を求めておるわけでございまして、今低賃金で、しかもその大部分が暴力団の資金源になっていると、こう言われている。そういうふうな点で、徹底的にこの面をやはり規制していくべきだというような考えでおることも、閣議でも何度も私は各省庁に要請をいたしているという点をひとつ御理解をちょうだいいたしておきたい、こう思います。よろしくお願いいたします。
  106. 杉山令肇

    ○杉山令肇君 大変御好意ある御回答に感謝を申し上げます。  さて、先般、臨時国会におきまして刑事施設法案が残念でありますが継続審査になっております。この立法の緊急性、また必要性につきまして説明をひとついただきたいと思います。
  107. 敷田稔

    説明員(敷田稔君) 御高承のとおり、現在の監獄法は、日本国で残っております仮名書きの法令の数少ないものの一つでございまして、明治四十一年の作でございます。同じく刑法も仮名書きではございますが、その後、何回となく改正を加えまして、十分に使用に耐え得る状態でございますが、監獄法の場合には、その改正を省令の改正あるいは通達の発出によって補ってまいりました関係で、現在、体系的に極めて複雑、難解なものとなっているわけでございますが、それに加えまして、その後の世界の刑事政策の風潮あるいは人権擁護の風潮からいたしまして、施設管理法として発足しました監獄法としましては、施設の処遇全体に対する法律としては極めて不十分なものとなっているわけでございます。例えば刑務行政の目的は何であるのか、あるいは被収容者の権利義務というようなものは何であるのかということを明確にするところはございませんで、それを通達などによって補われている関係から、それを原因とする苦情あるいは不服というようなものが最近特に多くなってきておりまして、これに対処することに困難を来している状況でございます。  他方、刑事施設の職員自体の目から見ましても、重要な相当の点を解釈にゆだねている部分がございますので、その解釈について必ずしも一定していない面もございまして、それがまた被収容者との不要な対立の原因ともなっている部分もございまして、早い機会に、例えば警察官職務執行法と同じような明確な職務執行の権限の範囲と、その限界をあらわしたものが必要であるという声が非常に強く現場から起こっているところでございます。  それからまた第三に、外国、例えば国連を中心といたしまして被拘禁者の最低基準規則というようなものが国際社会で確立されているところではございますが、日本の場合、既に八十年を経た法律でございますので、これに必ずしも十分に対処しておらず、外国に向けてこれが日本国の法律であるということを必ずしも大きな顔をして示すことができないような部分もございまして、その点からも改正が必要でございます。  このような改正を特に急ぐという理由一つには、先ほど申し上げましたように、法律の不備によって被収容者の権利義務の関係、それからこれに対処する職員の職務執行の根拠の関係などが必ずしも円滑、適正に行われていない面があらわれている事案も最近出始めておりまして、先ほど大臣の法治国家というお言葉がございましたが、この法治国家のいわば刑事施設は最後のとりでともいうべき性格のものでございますので、そういうとりでが法律に従って円滑、適正に行われているということが一日も早く実現することが望ましいわけでございますので、そういう点から考えましても一日も早く刑事施設法案の御審議を賜り、成立の日を見たい、このように考えている次第でございます。
  108. 杉山令肇

    ○杉山令肇君 最後になりますが、大臣のただいま御説明の刑事施設法案の成立に向ける決意を承りまして、私の質問を終わりたいと思います。
  109. 遠藤要

    国務大臣遠藤要君) この法案は法制審議会の答申を受けてから既に七年経過しております。そして、昭和五十七年に国会に提出をいたし、廃案後四年目を迎えて再提出をいたしたわけでございます。しかしながら、皆さん方には大変御心配をいただいたわけでございますけれども法務省としてはかつてないたくさんの法案を提出したために、この審議までには至らなかったというような経過を見て、私どもとしてはぜひこの法案の成立をお願いしなければならぬという感を深めておるわけでありまして、法務省自体としても重要性から、この法案がいかに重要であるかという点から先に提出をいたしたわけでございますけれども、ちょうどかめか瓶に物を入れたように、後の物が先に出てきてしまって、先に入ったのが日の目を見ないでしまったという過程がございます。  そのような点で、今度の国会には先生方の御協力をちょうだいいたして、ぜひひとつ御審議をちょうだいし、そして成立の日を見せていただきたい、これがやはり現在の我々としての、法務省としての一番の一つの問題であり、切望しているところでございまして、矯正行政に携わる職員の方々は本当に一日も早くということで待望しておることは事実でございまして、また被収容者もそのような心境だと、こう承知をいたしております。  さような点で、これからの人事その他でどうなるかわかりませんけれども、私どもとしては、先般この対策について法務省としてはこの法案の審議に入ってから民事局なり、いろいろの法案の提出を今度はお願いするために、この法案一本でまず最初に法務委員会の方にお願いをしていく以外はないのではないかというような感すら深めておると、そういうような心境を御理解願って、どうぞ皆さん方の、おれは決算だからというようなことでなく、ひとつ皆さん方の格段の御協力をお願いいたしておきたいと思います。
  110. 杉山令肇

    ○杉山令肇君 ありがとうございました。
  111. 片上公人

    ○片上公人君 いじめと子供の人権についてお伺いいたします。  法務省はことしの三月十五日に昨年一月から十二月のいじめの実態を発表いたしました。人権擁護機関が把握したいじめ事象は、二千三百九十三件で、一昨年と比べますと月平均で二十五件ふえたということでございますが、件数が増加しただけではなくて暴力的ないじめから言葉によるいじめや仲間外れなど陰湿ないじめがふえてきているとのことでございます。このような最近のいじめの傾向及びその原因につきまして、法務省としてはどのように受けとめておられるのか、御見解をお伺いいたします。
  112. 高橋欣一

    説明員(高橋欣一君) ただいま委員仰せのとおり、私どもの方で調査いたしました結果によりますと、最近の傾向といたしまして、私ども調査は六十年と六十一年、二カ年にわたりまして取り扱いました事件の内容の分析ということで結論を出しておるわけでございます。  これによりますと、いじめを形態別に見ますと、昭和六十一年は、言葉によるいじめが最も多い、次いで無視あるいは仲間外れが多くて、三番目に殴る、ける等の暴行、傷害、こういう順となっております。これを前年の昭和六十年調査と比較しますと、言葉によるいじめあるいは無視、仲間外れあるいは物を隠す、壊すというような形態が増加しておりまして、殴る、ける等の暴行、傷害あるいは金品の取り上げ、強要、嫌がる行為の強制などが若干減っておると、こういう状況でございます。こうした傾向から見ますと、ただいま委員指摘のとおり、いじめが暴力的傾向から言葉によるいじめなど陰湿な性質のものに移っているというような傾向がうかがえるかと思うのでございます。  また、そのいじめの原因につきましては、これはいろいろ識者によりまして、核家族化であるとかあるいは家庭の子供の数の少ない家庭環境であるとか、あるいは受験競争の激化、地域社会の連帯感の希薄化など、いろいろ要因が指摘されておるところでございますが、私ども法務省といたしましては、このいじめの根底にはこうした家庭環境あるいは社会環境の中で育っている子供たちに、他人に対する思いやり、いたわりという心の欠如があると考えているのでございます。  このことは、毎年法務省が実施しております全国中学生の人権作文コンテストの内容によりましても裏づけられるところでございます。いじめは心身ともに健全に育成されるべき子供の人権を侵害するものであるという認識に立ちまして、法務省といたしましては、学校関係者あるいは地域社会と連帯して一層人権意識を高める啓発を強化していきたい、このように考えておるところでございます。
  113. 片上公人

    ○片上公人君 特に私、心配しておることでございますが、両親や先生などに相談した子供の割合が減って、だれにも話さない、我慢したという子供が件数でこれは二倍もふえておる。割合でも三八・七%を占めております。人権擁護活動は、法務省のこれは重要な役目でございますが、人権擁護のための多くの機関を抱えていらっしゃる立場から、このような傾向は大変これは望ましくない、こう思いますが、どのように見られておるかお伺いしたいと思います。
  114. 高橋欣一

    説明員(高橋欣一君) ただいま御指摘のとおり、だれにも言わずに我慢したという回答が六十年よりも六十一年がふえているという状況でございまして、六十年も含めましても大体三〇%ないし四〇%近い子供がだれにも話していないという状況にございます。  もともといじめ事象は、いじめられた子がだれにも話さないという傾向を持つものでございまして、これは話しますとまた余計にいじめられるということが原因であろうかと思うわけでございますが、やはりだれかに相談してもらわないと私どもとしては大変困るわけでございまして、こういう傾向がふえるということは、委員指摘のとおり大変困った傾向であると思っております。  そこで、私どもといたしましては、なお一層相談をしやすくするようにする必要があろうかと考えまして、全国の地方法務局の人権相談窓口で、特にいじめ相談窓口というのを設けておるわけでございますが、そこに女性の職員を配置するなどいたしまして、いじめられた子供たちが相談しやすい体制をとるというような工夫も凝らしておるところでございます。しかし、根本的にはいじめを生む土壌を改めなくてはこの問題は解決しないのでございますので、法務省といたしましては、すべての児童生徒に先ほど申しました他人に対する思いやり、いたわりといった人権感覚を身につけてもらうことが大切と考えておりまして、そのような感覚を育てる環境を醸成するような啓発活動をさらに一層進めてまいりたいと、このように考えております。
  115. 片上公人

    ○片上公人君 この調査によりますと、いじめが原因で登校拒否等をした生徒は、六十年度と比べると減少傾向にあるということでございますが、文部省がことしの九月十一日に発表しました六十一年度の児童生徒の問題行動実態調査によりますと、いじめは前年度の三分の一以下に急減しましたが、小中学生の登校拒否及び自殺はともに過去最高になっております。これは一時期問題になりました校内暴力が学校や地域の取り組みによりまして鎮静化する一方で、いじめという形で生徒間に広がり、これについても学校などの管理が行き届いたことにより鎮静化して、結果として学校恐怖症、神経症的な要因による登校拒否や自殺がふえているのではないかと思いますが、文部省としてはこのような教育現場の実態をどのようにとらえ対応していくつもりなのかお伺いしたいと思います。
  116. 辻村哲夫

    説明員(辻村哲夫君) ただいま御指摘のとおり、いわゆるいじめにつきましては、文部省の調査によりますと、六十年度に比較いたしまして、六十年度は十五万件我々報告を受けたわけでございますけれども、それが昨年度間では五万件ということで大変に減ってまいったわけでございます。これにつきましては、保護者あるいは学校関係者、教育委員会、行政関係者、力を合わせての努力の結果であると思っているわけでございますが、他方、ただいま御指摘のとおり、登校拒否、これは学校嫌いというものを理由といたしまして年間五十日以上欠席する、こういった子供たちを登校拒否というふうに我々理解しているわけでございますけれども、それが小中学校合わせまして三万件を超える大変大きな数字になったということも事実でございますし、また小中学生の自殺者の数というものも例年に比して増加しているということも事実でございます。  ただ、この登校拒否あるいは自殺の原因につきましては、我々もさまざまな専門家の意見等を聴取しながら検討を加えておりますけれども、本人の性格的な特性の問題、あるいは本人を取り巻く家庭環境の問題、それから学校の指導のあり方の問題、その他さまざまな要因が絡み合っているわけでございまして、端的に一つを取り出してこれという原因究明というものは、なおなお検討していかなければならない課題であるというふうに思っております。  しかし、いずれにいたしましても、そうした児童生徒の問題行動と申しましょうか、これから解決していかなければならない課題がございますので、我々県の教育センター、あるいは各学校のカウンセリングに携わっております先生方、それからPTA等を通しました保護者の関係の方々等、力を合わせましてこの対応に取り組んでいこうというふうにしておるところでございます。文部省といたしましては、これらの活動をより推進するために、指導書、手引書等を作成し配付する、あるいはカウンセリング等の養成ということで教員研修に力を入れる、その他さまざまな施策を今行っているというのがただいまの我々の取り組みでございます。
  117. 片上公人

    ○片上公人君 法務省人権擁護局は、九月の二十日に昭和六十年及び同六十一年における体罰の概要を発表いたしましたが、これによりますと、両年度で体罰を加えたと人権擁護局が認定した教師は百五十一人で、二十代の若い教師や体育の教師が多い。体罰の内容も殴るだけでなく、ける、竹刀や金属バットを使うなど大変執拗で冷静さを失っていると思われるケースが多く見られております。  体罰を加えるにはそれなりの動機があるとは思いますが、学校教育法第十一条におきまして体罰は明確に禁じられております。小学校では体罰を受けた児童のうち五二・七%がけがをしておるというこういう実態を見ますと、これは教師である大人が子供の人権を踏みにじるということで、子供同士によるいじめ以上に重大な人権侵害事件だと思います。  これにつきまして、文部省はどのように受けとめ、対策を講じておるのか、また、体罰を加えた教師への処分や被害児童生徒の救済の状況についてもあわせてお答え願いたいと思います。
  118. 辻村哲夫

    説明員(辻村哲夫君) ただいま御指摘のとおり、体罰につきましては、これは学校教育法上明確に禁止されているところでございまして、しかし何件かの体罰事例が報告されるということで、我々も人事を担当いたします教育委員会関係会議、あるいは指導事務を担当いたします関係会議等で再三再四にわたりましてこれを禁止するような指導の徹底を期しているところでございますが、しかしなお現実問題といたしましてはこの体罰事例が報告されております。  そして、この体罰によりまして処分を受けた教師の属性等を見てみますと、かなり若年の先生、つまり教師になって経験の浅い年齢層のところに数が多いというようなことも統計的に出てまいっておるわけでございますので、我々そのあたり、やはり教師の指導力の育成というところにも問題があるのではないかということで、教育委員会等に問題を投げかけているところでございます。  やはり、この体罰を行うというのは、教師が子供の指導の中身におきまして感情的になり、そして生徒も反発するということで師弟関係が損なわれるというところから起きてきているわけでございますし、またそういう状況でありますれば教育的な効果も期待できないわけでございまして、私どもはそういった趣旨等を説きながら指導をしているわけでございます。  お尋ねの体罰を起こした教師に対する懲戒の状況でございますけれども、六十年度間の状況では、二百六人の体罰にかかわります懲戒処分を行っておりまして、免職一、停職六、減給十六、戒告三十三、訓告等百五十の計二百六名が体罰等を理由とした処分等の対象になっているというところでございます。  なお、体罰等によって傷害を受けた子供たちの救済につきましては、それぞれ各設置者の市町村等によりまして、個別に損害賠償あるいはその他の方法によって対応されているというのが現状でございます。
  119. 片上公人

    ○片上公人君 特に小学生などは、学校の若い先生にいろいろな暴力的なことをされますと、これはもう無抵抗でございますので、この件数に出ておらない部分も大分あるのではないかと思いますから、特に新しい先生方についての教育といいますか、子供を思う心というのを何とか植えつけるように御指導願いたいと思います。  文部省がことしの一月十三日に発表しました昭和六十年度公・私立高等学校におきます中途退学者数等の状況によりますと、六十年度中に全国の公、私立高等学校を中退した生徒が五十九年度より五千六百人多い十一万四千八百三十四人に上り、調査開始以来の最高となっております。  また、同じく文部省がことしの六月に行いました追跡調査によりますと、高校をやめた理由は、「高校の生活が合わなかった」が二九%、「進路変更のため」が一四%、「非行・問題行動」が一二%となっております。  高校中退の問題をさきに触れましたいじめ、登校拒否、自殺、体罰等の状況と合わせて考えますと、高校への進学率が九〇%以上という現実のもとで、学習能力や意欲に欠ける者や反抗的態度をとる生徒に対しまして、学校側が落第をちらつかせたり、またやる気を失わせたり、自主退学に追い込んだり、非行生徒に対して本人に弁明の機会を与えなかったり、事実確認を怠ったり、自白を誘導したりする体質がなかったと言い切れるのかという心配がこれはございます。憲法二十六条の教育を受ける権利という観点からも、高校中退についても子供の人権にかかわる問題であると思いますが、文部省としてはどのようにとらえていらっしゃるか、対応をどうしていくつもりなのかをお伺いしたいと思います。
  120. 辻村哲夫

    説明員(辻村哲夫君) ただいまの中退者の数が十一万人を超えるという数字は我々も承知しておるわけでございまして、せっかく高等学校に進学いたしましても卒業することなく十一万人の子供たちが中途で高等学校を去っていってしまっているということにつきましては、我々も大変重たい数字というふうに考えております。  このなぜ中退をするのかということにつきましては、子供たちの側に聞きますと、今先生のおっしゃりましたような言葉があるわけでございますけれども、我々この問題を重要に考えて、折りに触れ、学校関係者と率直に意見交換をする場があるわけでございますけれども、そういうところにおきましては、相当程度に学校側も努力をしておるということもあるわけでございます。しかし、いずれにいたしましても、こういう数字が上がってきているということで、我々公教育に携わるものといたしましては、保護者あるいは本人の理解も十分得ながら、学校、教育委員会、文部省として力を合わせながら対応を考えてまいらなければならないというふうに考えております。  ただ、高等学校の授業が難しいという一つをとりましても、学校側の指導の問題もありますし、またやはり本人の努力の問題もあるだろうということで、なかなか原因を明確にするのが難しいわけでございますけれども、ただ、この調査を通しまして、子供たちが中学校のころにもっと将来の職業について教えておいてもらいたかった、あるいは高等学校に進んだ後の生活あるいは勉強の中身等についてもっと教えておいてもらいたかったというふうなことは、我々進路指導のあり方の問題として考えていかなければならない問題であろうかというふうに思っておりますし、調査全体を通じまして学校側が生徒の立場に立った親身な指導をこれからも一生懸命努力してやっていくということ、このことはやはり忘れてはならないことであろうというふうに考えておりまして、先ほども申しましたように、子供たちを取り巻きます保護者、学校、教育委員会、我々文部省ともども力を合わせて今後ともこの課題に対応してまいりたいというふうに考えております。
  121. 片上公人

    ○片上公人君 日本弁護士連合会がことしの三月末に発行しました「子どもの人権救済の手引」というのが十月までの七カ月間に一万二千部も売れたということを聞いておりますが、子供を未完成な大人としてではなく権利の主体、一人の人間として尊重していこうという考えに立って書かれていることが特徴となっております。父母や教師だけでなく児童相談所、教育委員会法務省の人権擁護委員などからも申し込みが来ているとのことでございますが、このパンフレットは実費ということで一冊千円かかります。子供の置かれている状況を人権の視点でとらえて対応しようというこのようなパンフレットの発行は望ましいことと思いますが、法務省の人権擁護局が各地の人権擁護委員会などにこのような手引を配るような取り組みがあってもよかったのではないかという気もいたします。とりわけ泣き寝入りしたり学校内部で処理されがちないじめなどの子供の人権問題につきましては、法律事件として問題を大きくするというのではなく、人権擁護の視点で学校やPTA、地域社会協力を呼びかけて問題解決への取り組みを促進させていただきたい、こう思いますが、法務大臣、御見解よろしくお願いします。
  122. 遠藤要

    国務大臣遠藤要君) 法務省昭和六十年以降いじめ問題について焦点を合わせて、シンポジウム、講演会、またいじめの実態調査と、これを実施して公表などしておりまして、世論の喚起には努力をしてきたつもりでございます。  今後とも法務省としては、この問題はひとり教育の問題にとどまる問題ではない、健全に育成さるべき子供、児童生徒の人権問題でもあるとの認識に立って関係機関と十分連携をとって対処していく決意でございますが、日弁連で大変いじめについて理解と関心を持ってそのようなパンフレットをつくっておられるということも承知をいたしておりますが、それを配布するかどうかは、まだ私もそこまでは検討しておりませんでしたけれども、十分先生のお気持ちを頭に入れて対応していきたい、こう思っております。とにかくこれは我々としては、特に法務省として人権擁護の立場からいってもこのいじめの皆無を期したいというつもりで努力しているということを御理解願いたいというふうに思います。
  123. 片上公人

    ○片上公人君 次に、借地・借家法改正問題についてお尋ねいたします。  現在、法制審議会民法部会におきまして改正作業が進められておると聞いておりますが、今回の改正に至った背景、改正の必要性はどういうところにあるのかということを簡単にお伺いしたいと思います。
  124. 千種秀夫

    説明員(千種秀夫君) 借地・借家法は、これは大五年間にできた法律でございます。これはまあ当時、土地を借りて家を建てるという小規模な土地の利用関係が前提になって、地主あるいは家主と借り手の借家人、借地人の私的な利害を調整するということを目的とした法律でございまして、したがって、零細な借地人、借家人の立場を保護するということがかなり長い間に、また戦後の住宅事情の困難な時代に定着をしてまいったわけでございます。したがって実務、特に裁判例などもそのような弱者保護という観点からいろいろと判例も出てきたと、こういう事態でございました。  ところが、最近になりまして、特にここ十年ぐらいのことかと思いますけれども、大都市での大規模な土地の利用ということが大きく問題になってまいりますと、そのような法理だけでは必ずしも適正な利害の調整ができないということが指摘されるようになってまいりました。少なくとも、昭和五十年代後半になりまして土地問題ということが特に議論される経過の中で、そういう問題を私どももよく耳にするようになってきたわけでございます。  そういうことを背景にいたしまして借地・借家法の改正、そういうことが法制審議会の関係部会におきましても取り上げられてまいったわけでございます。そうしまして、これが具体的に問題になりましたのは昭和五十年も後半になりましてからでございますが、法制審議会としましては、そういう問題点をまとめまして皆さんの御意見を聞いたというわけでございます。それをもとに今いろいろな詳細な事項について逐一検討を進めているというわけでございます。  これは例えばの話でございますが、特に借地関係は今土地問題、土地の供給というようなこと、あるいは地主の方の権利の保護というような観点から借地権の期間の問題でございますとか、その更新、終了した場合の権利関係でございますとか、そういうことを中心に特に議論がなされているわけでございます。
  125. 片上公人

    ○片上公人君 特に、今回土地臨調の答申で土地有効利用の観点から、「借地・借家法の見直しを進め、早期に結論を得るよう努める。」とされておりますことに対しまして、法務省はどのように考えておられるのか、これまたお伺いします。
  126. 千種秀夫

    説明員(千種秀夫君) 御指摘のように、最近土地問題に関連いたしまして、ただいまお読み上げのような問題が答申の中に出ております。先ほど申し上げましたように、借地・借家法というのは借り手と貸し手の利害の調整という観点から法律ができておりますものですから、土地の供給即そのものを目的として法律をつくるということはこの借地・借家法の制度とはちょっと違った観点になります。ただ、先ほども申し上げましたように、土地の利用関係が大分変わってまいりまして、特に土地問題は大都市中心の問題でございますから、先ほども申し上げましたように、大都市中心の土地利用関係というものを適正に処理できるような法改正をすれば土地の供給もスムーズになるのではないか、その意味におきましてはこの答申の趣旨にございますように、改正のよろしきを得て土地問題の解決に寄与するのではないか、こういうふうに考えております。
  127. 片上公人

    ○片上公人君 先ほどの話もちょっと出ましたが、今回の改正におきまして借地権の存続期間を三十年に統一して更新を十年に短縮するという、こういうふうなことを伺っておりますが、このような期間にした理由及び問題点をお尋ねいたします。
  128. 千種秀夫

    説明員(千種秀夫君) ただいまの御指摘はそういうふうに決まったというわけではございませんので、そういう試案といいますか、ものが公表されて、それについての討議をいただいていると、こういうことでございますが、今の現行法でございますと、契約で定めない場合には、今の借地法では借地権の存続期間は堅固な建物である場合には六十年、それ以外のものは三十年と、また契約でこれを定める場合の最低期間は堅固なものでその半分の三十年、堅固でないものは二十年と、こういうふうななっておるわけでございますが、実際は契約で定めない場合というのはないわけでございます。そうしますと、大体は三十年と二十年ということできているわけでございますが、今都市なんかは、特に耐火建築ということにもなってまいりまして、堅固であるか非堅固であるかというようなことはなかなか区別がつかない、どっちかといえばみんな堅固でなければならないようになってまいりました。そういうことからこれを統一した方がいいんではないか、そういたしました場合にはみんな契約で三十年となっておるんだから三十年にしたらどうかというようなことが、一つの案として出てきたわけでございます。  それから、期間が来たときにどうなるか、これについてはいろいろな考え方がございまして、更新の問題が出てまいりますが、更新がされてしまった場合には同じ期間になるのがいいのか、期間を定めないのがいいのか、そういういろいろな案がございまして、それでとりあえず十年ということにしてはどうかというような問題があるわけでございます。  この問題は実をいいますと、期間が来たときに正当事由を備えないと明け渡してもらえないというような、そういう問題が一番の問題でございまして、これを要するにどんなことがあってもぽっきり三十年型にしたらどうかとか、長期でやって五十年、六十年ならもうぽっきりそのときが来たらば明け渡すような仕組みにしたらどうかということとも実は関連しているわけでございます。  正当事由につきましては、実はまた御質問があるかもしれませんが、この正当事由の中身が非常にあいまいであるとか、また正当事由はいつ備えなければいけないのか、期間が終了した土地ならばいつでも正当事由があれば明けてもいいんじゃないか、こういった議論がございまして、必ずしも更新を十年ということも必ずしも決まった意見ではございません。そういった背景からいろいろな議論がなされております。
  129. 片上公人

    ○片上公人君 これはいい意味でも悪い意味でも大変皆心配しておる問題でございますので慎重にお願いしたいと思います。  次に、自己借地権制度、これを新たに設けようという話が出ておりますが、その理由及び問題点を伺いたいと思います。
  130. 千種秀夫

    説明員(千種秀夫君) 借地権というものは大体所有権のような財産権であるのかどうかということが法理論的には実は問題がないわけではないのでございますが、土地の権利というものが法律によって強く保護されておりますために、それが一つの権利として実際は社会的に評価されております。例えば税金の問題にいたしましても、相続にいたしましても一つの権利になっております。そうしますと、自分で家を建てて、その家だけ譲渡した場合に一体どうなるんだ。家の権利は他人に行きますが、敷地の利用権というのは何にも決めてなかったときに借地権が生ずるのか、ただの使用権なのか、こういう問題も出てくるわけでございまして、特に最近自分の土地にマンションを建てて人に売るというような場合が出てまいります。そういたしますと、その敷地利用権というものを初めから自分で設定して、それで、それを譲渡するようにした方がわかりやすくないか。それを避けるためにダミーといいますか、他人に土地を貸した形にしてそこの借地権をつくってそれを譲渡するようなやり方も行われているように聞いております。その発展の先の話でございますが、それならば土地を担保に入れないで借地権を設定して、それを担保に入れるようなことまで認めてもいいじゃないか、こんなような議論が出てまいりまして自己借地権というようなことの新設が議論されているわけでございます。これは完全に財産権にしてしまおう、そういう考え方でございまして、理屈は非常に合うんでございますが、果たして自己借地権というものをつくって担保に入れるなんということまでして複雑なことをしていいのかどうか、必要なだけでいいんじゃないかというようなことで実は議論の最中でございまして、今後の検討にゆだねられているというのが現状でございます。
  131. 片上公人

    ○片上公人君 また、地代、家賃、敷金、更新料等につきましてはこれはどのように考えておられるのかお伺いしたいし、特に土地が急騰している地域におきましてはこれらを大幅に上げようとする動きが目立っておりますが、これはどのようにお考えか、伺いたいと思います。
  132. 千種秀夫

    説明員(千種秀夫君) 御指摘のとおりに、こういう地代、家賃、敷金等が、さらには更新料といった金銭的な給付、こういうものは借地、殊に借地でございますが、借地の利用関係については非常に大きな問題でございます。私どもも直接相談を受けたり耳にしたりするのでございますけれども、土地が上がったためにそういう賃料の値上げ、あるいはたまたま期間が満了したときの更新料というものを高い値上がりした土地の価格を基礎にして計算をして請求されるというようなことで、いろいろな問題なり苦情が出ております。ただ、そういう関係につきましては、特に金銭の関係につきましては当事者の合意によってなされるわけでございまして、それを統制するという法律は今のところはないわけでございます、昔地代家賃統制令というようなものがあった時代はその対象になったわけでございますけれども。そういたしますと、これは当事者の合意でございますから自由な意思によって決定されるんでございますが、ただいまの御指摘のように経済変動によって急に上がるということになりますとこれは借りている人にとっては大変なことでございます。必ずしも地価の騰貴が生活の利益に結びついていないわけでございます。したがって、裁判所で値上げの訴訟をやっても恐らくはすぐにそういうことにはならないとは思うのでございますが、すべてがまた裁判になってもこれまた大変なので、何とかその調整のための手続を考えるべきではないかということが一つの問題になっております。  一つは、訴訟を起こすにいたしましても、調停の必要的な前置主義とか、あるいはそれを裁判ではなくて非訟事件のような手続でまとめて地域ごとに鑑定をしてそういうふうにバランスをとってやったらどうかとか、そういう制度についての議論がなされておりますが、これはまだこれぞといった確定的な姿になっておりません。
  133. 片上公人

    ○片上公人君 この借地権、借家権の相続についてはどのように考えていらっしゃるのか。そのほか特に問題点があればお聞きしたいと思います。
  134. 千種秀夫

    説明員(千種秀夫君) 先ほど借地権について特に申し上げたわけでございますが、借家権につきましても同様財産権でございますので相続の対象となるというのが一般的な考え方でございます。ただ、借家権につきまして相続の問題が起こりますと、中に住んでいる人が亡くなった、相続人は外にいる、住んでいない、その人が相続したときに一体どういう権利関係が起こるか、たまたまお手伝いさんかあるいは籍の入っていない奥さんかいろいろいらっしゃるわけですが、特に老人で亡くなる場合にはそういうこともあり得るわけです。そういう人たちの居住権が一遍になくなってしまうのか、そういう利害関係の調整ということが実は難しい問題でございまして、これはかつて五十五年の改正のときにもそういうことが議論されたのでございますが、そういう居住者以外の相続人の利益が害されるようになっても困る、こういうようなことで改正が見送られたという経緯がございます。そういうことから今後ちょっと検討をしなければならない問題でございまして、現在までのところそういう点で良案はまだ得ておりません。
  135. 片上公人

    ○片上公人君 このたびの改正で一番その影響を受けるのは借地人であり借家人だと考えられますが、先ほどのいろいろ御意見をお聞きしましたけれども、全体的に借地人、借家人にとっては今回の改正案につきましては非常に批判的であるとも聞いておりますが、法務省は、法案作成に当たり、借地人、借家人の生活権を損うことのないように十分に借地人、借家人の考えを考慮していただきたいと思いますが、その点どのように考えていらっしゃるか、伺いたいと思います。
  136. 千種秀夫

    説明員(千種秀夫君) まことに御指摘のとおりでございます。  そのいろいろな方法といたしまして、従来までの借地、借家関係にこの新しい改正の部分を適用するかどうか、これは改正の内容によって異なるわけでございますが、既得権が害されないようなこともひとつ考えていかなければならないわけでございます。  それから、ただいま審議中でございますからどうなるかということは申し上げられませんけれども、そういう改正試案がまとまった段階におきましてはそれを公表して、もちろん借地人、借家人を含めて広く国民一般の御意見を承ろう、そういうことを考えております。
  137. 片上公人

    ○片上公人君 この件の法制審議会の作業の進捗状況と今後の見通し、特に提出予定時期についてお伺いしたいと思います。
  138. 千種秀夫

    説明員(千種秀夫君) 先ほど来申し上げておりますとおりに、目下検討中の課題がかなり多うございまして、これはそう早くまとまるというのは難しいように観察されるわけでございます。審議の日程が順調に進みましても、六十三年後半に試案ができればいいなというような見込みでおります。
  139. 片上公人

    ○片上公人君 次に、先ほど同僚委員も触れられましたが、このことは重要なことと思いますので重ねてお聞きいたします。  昭和六十年度決算検査報告におきまして、法務省につきましては、不当事項として法務局の登記部門の職員の不正行為によりまして損害が生じたものについての指摘がなされております。同様の指摘は五十四年度及び五十五年度にも出されておりますが、法律事務に携わる公務員が不正行為をするということがあっては、法治国家に対する国民の信頼を失わせることにもなりかねません。今後このような事態が発生しないように、法務省として綱紀粛正の徹底とチェック体制の確立を図る必要があると思いますが、大臣のお考えをお伺いしたいと思います。
  140. 遠藤要

    国務大臣遠藤要君) ただいま先生指摘のとおりでございまして、人を取り調べをし、そして正義の使者と言われる法務省に不正があってはこれはならないことでございまして、職員の不正行為の防止については従来からも配慮してまいりましたが、御指摘のような不祥事件を生じたことに対してはまことに遺憾でございます。今後とも管理者及び一般職員に対してあらゆる機会をとらえて綱紀の粛正の徹底を図っていくということが大切だと思い、さらにまた内部的には監査の充実を図っていく、そのようなことで不正行為の絶対根絶を期していきたい、こう思っております。  繰り返して申し上げるようですが、役所役所だけに、よその役所をどうでもいいと言うんではございませんで、やはり法務省が一番亀鑑としての示すべき立場である、こう考えておりますので一層努力させていただきます。
  141. 片上公人

    ○片上公人君 ことしの八月二十五日に総務庁が発表しました行政サービスに関するアンケート調査の結果によりますと、窓口サービスの印象が悪いワーストスリーは警察署、登記所、陸運支局の順であるとのことでございます。不満理由としては応接態度が横柄、事務処理がおそい、言葉遣いが悪いなどと挙げられております。登記所は前回の一位から今回二位へと改善されたわけでございますが、とはいいましても、決してこれは褒められたことではないと思うわけでございます。このサービス改善への取り組みについてお伺いしたいと思います。
  142. 千種秀夫

    説明員(千種秀夫君) 私どももそういう御指摘を受けまして大変頭の痛いところでございまして、その解消といいますか、改善のためには最善の努力をしているところでございます。  大きく分けますと、取り組みの姿勢一般といいますか、職員の心構え、こういう問題が一つございますのと、もう一つは、具体的に窓口においてどういう問題が生じ、それに対してどのように対応していくかという施策の問題とに分かれると思うわけでございます。  私、実は臨時国会終了後一カ月ばかり各地の法務局長、支局長の会同に回って、現場を見て、また話を聞いてきたわけでございますが、各局各会同におきましてその問題が重要な一つの問題として討議されております。現場の登記所も随分見てまいったわけでございますが、概してそういう問題が起こるのはやはり繁忙庁のようでございます。  もう一つ、職員一般の問題といたしましては、法務局の職員は生まじめでかたいものでございますから、余りサービス的な言葉の使い方を知らない。例えば登記というものを申請人に教えるのでも、一生懸命教えようとするものですから、ちょうど自動車教習所に行ってしかられるようなことになるようでございます。したがって、教え方の教育もしなきゃいかぬということを一つ言ってきたわけでございます、それから、強いて言えば、もともと不動産登記法が不親切である。君たちは一生懸命やっておるけれども、登記法をわかりやすく自分でまず理解しなければいけないというような、そういうところから始めないといけないところも実はございます。  ところが最近、私は手紙をいただいて驚いたのでございますが、参議院の前法務委員をしておられました寺田熊雄先生が突然手紙を下さいまして、最近法務局へ行ってみたらば驚いたことがある。一つは大変繁忙であるということを、想像以上であったということですが、もう一つ驚いたことには、およそ威張っているという評判の法務局の受付の職員が驚くほど親切かつ丁寧なことであった、こう言っておられました。その人によってではないかというんで、翌日行ってみたら、その人もまたやはり丁寧で親切であった。それが大変驚いたことだというお手紙をいただいて、私も実は驚いたのでございますが、さようなふうに、別に寺田先生だから親切であったようではないのでございまして、別にそうおっしゃらないでいらっしゃったようでございますが、そういうことで大分改善されてきているのではないかと思っております。  具体的には、私ども特別会計にもなりまして、少しでも接遇にいいようにということで、例えば庁舎のスペースを改善する。最近できました法務局というのはかなりよくなりました。私も驚いておるわけでございますが、スペースもかなり広くとっていただけるようになりました。環境備品と言いまして、窓口のいろいろな備品、あるいは一番やはり難しいのは、じっくりと相談をしてあげる人がいない。そこで、登記相談官というものをまずつくって、今ふやしておるわけですが、それでも足りないところには臨時にOBを雇いまして、登記相談員という窓口をつくってやっておりますが、これが地方の登記所では非常に好評でございます。そのために難しい人にじっくりと御相談できる。ただ、こういうことはやはり予算の問題と人員の問題がございますので、また登記所も忙しいというだけじゃなくて、東京のスペースが足りなくなったところでは、実は場所がないのでございます。そういうきついところは何とか営繕的な措置をしなければいけませんし、抜本的にはコンピューターを早く入れて余裕を持たせないといけない、こういうことで、いろいろな面から取り組んでいる次第でございます。
  143. 片上公人

    ○片上公人君 随分とよくなっておるような感じを受けましたが、どちらにしましても、行く人は非常にかたいなという感じがこれはあると思います。恐らくは法務大臣の人柄とか、先ほど局長のお人柄が徐々に浸透しておるんではないか、このように思っております。さらに、ベストスリーに入るようにお願いしたいと思います。  法務省のさらにこの調査によりますと、最近の土地ブームを反映して、お話ありましたように、首都圏を中心に登記件数が大変急増しておる。一部の登記所では、ことしの一月から六月に二〇%以上も件数がふえていると聞いております。また、国鉄の分割・民営化に伴う所有権移転の登記件数の増加の影響もありまして、登記事務が急増してパンク寸前であるとも聞いております。先ほど指摘いたしましたサービスの低下も、恐らく人手不足が原因とも言うことができるものもあると思いますが、今年度におきましても職員の超過勤務手当とまた臨時職員の給与分が予算化されているとのことでございますが、それらも含めまして、このような最近の登記事務の急増に対してどのような対策を行っておるのか伺いたいと思います。
  144. 千種秀夫

    説明員(千種秀夫君) 御指摘のように、最近首都圏、これは近畿圏も含めまして、大きな都市におきましては地価が上がったというようなことから買いかえの事件が急増しているようでございます。  いわゆる土地転がしといったように、一つの土地が年に何回も移転登記されるというような事態もあるようでございまして、そのために東京あるいはその近県の登記所においては、一月から六月までの前年比でございますが、一〇%以上、中には二〇%以上増加しているようなところもございます。そういう事態が実は年の前半に既にわかっておりますので、そういうところには何とか特別繁忙対策を講じるということを指示いたしまして、今まで賃金職員を応援に出す、あるいはよその部門から法務局の大きいところでは応援に出す、官房から応援に出すとか、残業手当等につきましても特に繁忙庁に限って特別の手当てをするという措置を講じました。後半におきましても、予算の執行について見直しをいたしまして、なるべくそういう繁忙対策を講じようと今考えているところでございますし、来年の予算要求につきましても、そういう特別繁忙手当といいますか、これは実を言いますと、いろいろ賃金的な職員、要するに補助職員については手当てができたのでございますが、やっぱり本当の登記が忙しい部門は登記がわかる職員でないと役に立たないということでございます。そのためにOBでも何でも、要するにOBというのは定年退職した人とは限りませんで、家庭の事情でやめた主婦の方もいらっしゃるわけでございますが、そういう人を組織して、そういう登記のわかるOBを特別の賃金で雇って応援態勢を組もう、こういうことを今計画をしている次第でございます。
  145. 片上公人

    ○片上公人君 去る十月五日に法務大臣の私的諮問機関である民事行政審議会から、電子情報処理組織を用いて登記を行う制度の導入に当たり特に留意すべき事項についての答申、これが提出されました。その骨子は、コンピューターまたは端末装置を各登記所に置きまして、全国五十カ所の法務局にバックアップセンターを、法務省民事局に登記情報センターを設置して、先ほど話がありましたこれらの三段階のコンピューターをオンラインで結び登記ファイルを管理する、登記簿謄本、抄本のかわりに登記事項証明書あるいは登記事項要約書を発行する、移行は処理件数の多い都市部から行う、ともなっておると聞いておりますが、そこで、とりあえず来年度までにコンピューター化する法務局、登記所の数とその費用、また、全国に千百七十カ所ある登記所をコンピューター化するにはどれぐらいの期間と費用がかかるのかを見通しをお伺いしたいと思います。
  146. 千種秀夫

    説明員(千種秀夫君) 来年度までということでございますと、まだコンピューター化する庁の数は非常に少ないのでございまして、六十三年度末までに大体各ブロックといいますから、八ブロックありまして、一庁プラス一、二庁、全部で十庁ぐらいがオープンするといいなと、そういう計画で予算の要求もしているわけでございます。これはなぜかと申しますと、いろいろな附帯的な事業がどのようにうまくいくかということや、申請人とかあるいは職員がコンピューター化にどのようになじんでいくか、またそれが修正しなければならない問題はないか、そういうことをいろいろ検証しながら拡大していきたい。そうしませんと職員も混乱しますし申請人に迷惑がかかる。まして繁忙なところにそういうものが入りますと大混乱になるわけでございます。そういうこともありまして、まずは一年ぐらいブロックで一庁ずつ見本をやってみて、問題があったらそれを直してそれを二庁にし、それを四庁にと、こういうふうにネズミ算式に伸ばしていきたい、そういう考えでございます。したがいまして、午前中にも申し上げましたが、全体構想としては十五年計画という長期の計画になっております。ただ、これは途中の経済変動、財政問題もございますので、技術が非常に開発されてみんながなれてくればなるたけ早く縮めたいわけでございますし、場合によってはその山がずれていく可能性もあると考えております。  予算的な問題でございますが、ことしはそういうことで第一歩ということでございますが、パイロットシステムをやっております板橋の出張所を本格化したい、もう一庁少なくとも大阪あたりに一つのコンピューター庁への移行作業を始めたい、できればもう二庁ぐらい始めたいのですが、見込みがございません。そういうようなことで初めからことしの予算は、コンピューター関係では二十億を切って十九億ぐらいの予算でございますか、来年になりますとこれが四十九億、関連のものを入れても五十億前後の予算でございます。  全体の計画はどうかということになりますと、これは六十年、二年前に計算をした十五年計画でございますので、これは十五年もつかどうか、それはわかりませんけれども、そのときの大体の額が五千億弱ぐらいでございます。これを二年たった今試算しますと五千億を超えるんではないかということ。ございますので、これは、年々といいますか何年置きかにはいろいろと特別会計の出入りを計算いたしまして修正していかなければならないと思いますが、現在のところその程度の規模でございます。
  147. 片上公人

    ○片上公人君 登記事務のコンピューター化につきましては、六十年に制定されました電子情報処理組織による登記事務処理の円滑化のための措置等に関する法律に基づいて行われているわけでございますが、そのための費用を手当てするために、同じく六十年に登記特別会計法を定めて、特別会計において登記事務処理及びそのコンピューター化を進めていくことになったという経緯があります。  これら二つの法律の制定当時の議論を振り返ってみますと、コンピューター化を含めまして登記事務処理の費用は受益者である利用者からの手数料つまり登記印紙収入によって賄うのが原則であり、順次その割合が大きくなっていくとの見通しを法務省は述べておられました。ところが、六十年度の決算額、六十一年、六十二年度の予算額を見ますと、登記印紙収入の占める割合が減少して、一般会計からの受け入れの割合が増加しております。このことは緊縮財政下で受益者負担によるコンピューター化を進めるという登記特別会計を設置した趣旨に反することではないのかと。このまま一般会計からの繰り入れがふえていきますと、一般会計を圧迫するおそれや、あるいは法務省関係予算全体の膨張という結果を招くことになるのではないかとの危惧も生じております。このような現状及び今後の登記特別会計の見通しについて、法務省及び大蔵省にお伺いしたいと思います。
  148. 千種秀夫

    説明員(千種秀夫君) この特別会計の財源の問題なんでございますが、今法務局の予算というのは特別会計だけで賄われているわけではございませんので、一般会計からの繰り入れが半分以上あるわけでございます。法務省の予算一般にそうでございますけれども、人が仕事をしておりますために人件費の率が非常に高いわけでございまして、したがって、半分以上の繰り入れがありますと、両方膨らんでいるのでございますが、繰り入れ側の方が上がる率が高いというような結果で、その比率が何か逆になっているといいますか、繰り入れ分が、比率が高くなっているように見えるのでございますが、特別会計の方も着実にふえていることはふえているのでございます。  そこで将来の問題でございますが、コンピューター化がもう少し進みまして費用が要るということになりますと、これは何年後かに手数料を値上げするということも実は計画されておるわけです。今少しおくれぎみでございますから、その値上げの方も、御負担をかけないようにおくらせるような事態になっております。  それから、将来の問題として検討すべきことかと思うのでございますが、コンピューター化が進みますと、これは今乙号の手数料ということでございますが、受益者という点からいいますと甲号の登記関係者も利益は受けるわけでございますから、ある時期に来ますと、甲号の手数料を考えて特会を膨らませる、そのかわり登記は全部特会でやる、こういった構想も出てくるように思うわけでございます。そういうことはまだアイデアといいますか、考えだけでございまして、具体性はございませんが、そういうことは今後考えていかなければいけないと思っております。
  149. 若林勝三

    説明員(若林勝三君) お答えいたします。  一般会計からの繰り入れと手数料との関係につきましては、今局長の方からお答え申し上げたとおりかと思います。  また、登記特会の規模が今後どのようになっていくかということにつきましても、今後の登記件数の動向等に左右されるところが非常に大きいわけでございまして、今の段階でそれをどうということはなかなか申し上げがたいところではございます。ただ、今千種局長からの話もございましたように、登記関係事務についてはコンピューター化を図っていくということがこれからまさにいよいよ本格的に実施されるわけでございます。そういう中において、事務の効率化とか円滑化というようなことが進んでいくというふうに我々も考えておるわけで、財政当局といたしましても、当然こうした事務の進展に応じまして、財政上どうすればいいかというようなことを法務省の御当局とも御協議、御相談にあずかるということで、十分念頭に置いて考えさしていただきたい、このように思っておるところでございます。
  150. 片上公人

    ○片上公人君 次に、司法試験の改革についてお伺いしたいと思います。  司法試験改革の動きが出ておりますが、改革が必要な理由は幾つかあると思います。  まず、社会の高度化や国際化の進展に法律家が対応し切れていないのではないか、社会の要求にこたえられる体制がつくられていないのではないか。また、今春の外国人弁護士の参入にも見られますように、外国企業との取引がふえて、外国法だけでなく広く国際的な交渉能力を身につけた渉外弁護士の需要が大きくなってきている一方、行政法規の複雑化や、特に技術分野における高度な知識が要求されるようになったということでございますが、これらへの対応として、試験内容や司法修習の内容をどのように変えるべきであると考えていらっしゃるか、お伺いしたいと思います。
  151. 根來泰周

    説明員根來泰周君) ただいまお尋ねの司法修習の問題は裁判所の問題でございますが、全般的にお答えいたしますと、非常に抽象的でございますけれども、いわゆる司法試験を受けて合格するというのは何か法律の虫のような感じがいたしますが、そういうのではなくて、柔軟な思考を持った、広い視野を有する素質を持った若い柔軟な者を迎え入れたいというのが司法試験の改革の基本線だと思います。したがいまして、司法修習も同じ見地によってなされるものというふうに考えております。
  152. 片上公人

    ○片上公人君 諸外国に比べまして法律家が非常に少ないために、裁判の遅延化や民事介入暴力などの非近代的な手段に訴える事例の増加を招いていることも改革の一つ理由と聞いておりますが、法曹人口は世界で見ますと、米国では三百三十人に一人、英国では六百十人に一人、西独で九百人に一人、フランスでは二千五百人に一人ということになっておりますが、日本では六千七百人に一人と極端に少なくなっておると聞いております。それぞれの国によりまして法律的な風土が異なるということもありますし、日本が欧米のような訴訟社会になることは決してこれは望ましいこととは思いませんが、今後社会の権利関係が複雑、高度化する中で、法律による救済を受ける権利が保障されないということでは困ります。  そこで、実際にどのくらいふやせばよいのかという需要の目安、そしてそのための司法研修所の増設などの条件整備も必要となってくると思いますが、その点につきましてどのように考えていらっしゃるか、お伺いしたいと思います。
  153. 根來泰周

    説明員根來泰周君) これはまさにただいま大臣から私的諮問機関ということで設置していただいておる法曹基本問題懇談会で御検討いただいているところでございまして、大局的には増員が必要だというふうに思いますけれども、現在のところ何人必要なのか、あるいは司法研修所をもっと増設すべきかどうかという点については、まだ確たる見解を申し上げる段階に至っておりません。
  154. 片上公人

    ○片上公人君 改革する理由の三番目として、大学を卒業してから合格までに五年から六年かかるために合格者の高齢化が進む一方で、若くて優秀な者が司法試験を敬遠してしまうということが指摘されております。学生の受験者以外の七割から八割が無職で、しかも何回も挑戦を重ねるうちに転身がきかなくなった者も多くおり、このような社会的損失を未然に防ぐ方法はないのか。また、せっかく合格しても研修所を出るときには三十歳を超えておる者が多く、検事や裁判官を目指す者が減少しているなどの問題もございます。それでは、合格者がこれほどまでに高齢化してしまい、経済的なゆとりがない者は受験を続けられない、塾に何年も通わなければ合格しないような試験になってしまった原因はどこにあるのかお伺いしたいと思います。
  155. 根來泰周

    説明員根來泰周君) 一言で申しますと、受験者が多いということでございます。昭和三十六年に一万人を超え、昭和四十五年には二万人を突破している。それから、五十三年には三万人を超えるような勢いでございました。そういうふうに受験者が非常に多かったものですからこういうような事態になったのでございますけれども、一方においてただいま御指摘のような問題を解決するために何回か法制審議会に諮問し、あるいは臨時司法制度調査会等が設けられまして、いろいろ検討されて立法の試みが行われたわけでございますが、その立法も中途半端に終わってしまいまして今日に至っておるわけでございます。こういう点について私どもも十分反省して、さらに一歩から出直して、こういう問題について御理解を得て改善していきたいと、こういうふうに考えております。
  156. 片上公人

    ○片上公人君 合格者数の増や試験内容の改善についてさらにお伺いしますが、合格者増に伴う費用を軽減させるために、修習期間を短縮するとか手当を貸与制にして検事や裁判官になった者のみ返却を免除するなどの方法が考えておられるということでございます。さらに、試験内容の改善との関係で、国家公務員となる検事や裁判官と、自由業である弁護士とを分けて試験や修習を行うという意見もあると聞いておりますが、これに対しましては法曹一元化に逆行するもので、弁護士を低く見る傾向を生むとの批判もございます。このような改革への危惧についてはどのようなお考えがお伺いしたいと思います。
  157. 根來泰周

    説明員根來泰周君) 確かに立場によりましてそのような主張をされる人がいらっしゃいます。しかし、こういう問題についてはいまだその成案といいますか、そういう具体的にどうしようという問題にはなっておりません。基本的には裁判所なり弁護士会等、十分議論を重ねまして成案を得るべきものと思いますので、現在どういうことか申し上げかねる状況にございます。
  158. 片上公人

    ○片上公人君 司法試験の改革に当たりましては、目先の検事、裁判官不足にとらわれまして若くて優秀な者ばかりを追い求めるという姿勢であってはこれはならないし、企業が求めるビジネスロイヤーなどへの対応を急ぐ余りに、基本的人権擁護、社会正義の実現を目指す弁護士の役割を軽視することがあってはこれはならないと思います。さらにまた、現実に司法試験を目指して勉学に励んでいる何万人という受験者に不安を与えるようなことがあってはならないと思います。そこで、今後司法試験の改革に取り組まられる姿勢につきまして、法務大臣からの答弁をお願い申し上げて私の質問を終わります。
  159. 遠藤要

    国務大臣遠藤要君) 大変難しいことでございますが、基本的には正義感、人権感覚にあふれて、柔軟な思考と広い視野を持って社会の変容に対応できる素質の方をということに帰するわけでありますけれども、法曹として迎え入れる試験を改革いたしていくという考えでもいろいろの問題を抱えていることは先生御承知のとおりでございまして、現行の制度を改善することは焦眉の急だということは先生もよくおわかり願えると思いますけれども、今後の法曹のあり方等について重大な影響を与えることでもございますし、試行錯誤の許されないことでございます。そのような点で各界の御意見をいただいて、法曹三者のコンセンサスを得なければならぬというような点で役所としては慎重な姿勢をとっていかなければならぬというような気持ちで対応していかなければならぬと思いますが、それにはいま少し時間をおかりしなければなりませんけれども、現に受験されている方々にはいろいろな意見に惑わされることなく、着実に勉強し、早く合格することを希望しておるわけでございますが、先ほど来申し上げておるとおり、弁護士といい、検察官といい、判事といい、これは日本の国の法秩序にはなくてはならない大切な三法曹でございますので、今後健全な育成強化といいましょうか、健全な方向で進むことを我々としても配慮していかなければならぬ、こういうような点で、大変回りくどい話になって恐縮でございますが、慎重に慎重を期させていただき、何とか我々の希望を満たしていきたい、こういうような考えでございますのでよろしくお願いいたします。
  160. 片上公人

    ○片上公人君 ありがとうございました。
  161. 内藤功

    内藤功君 最近、簡易裁判所で支払い命令を発して債務者が自宅にいないということになりますと、民事訴訟法の百七十二条、百七十三条によって書留郵便に付する送達、こういう送達方法をとるということが多くなっております。これは届かなくても届いたとみなされます。こういう大変奇異な制度でありますから、大変紛争、問題が起きてくる。訴訟で争いになっているのもかなりある、こういうふうに私ども承知しておるんですが、まずいわゆる書留郵便に付する送達というのは、簡単に言ってどういう制度であるか。それから現在各庁でどのように実施されているのかということを御説明いただきたいと思います。
  162. 山口繁

    最高裁判所長官代理者(山口繁君) 内藤委員よく御案内のとおり、本来の送達は、送達を受くべき者の住居所、営業所において本人に交付して行われるわけでございます。住居所、営業所が明らかでない場合、あるいは本人が受領を拒みましたような場合には、補充的に本人の就業場所で交付することができる、こういうことになっております。それから、本人でなくとも、住居所、営業所あるいは本人の就業場所におきまして、事務員でありますとか同居人でありますとか、受領を弁識する能力のある者に対してはその者に交付して送達を行うことができる、これが原則でございます。  そのような方法によって、住居所あるいは就業場所が明らかであるのにかかわらずそのような方法によっても送達できない場合、これは住居所あるいは就業場所に本人がいないような場合になるわけでございますが、その場合には裁判所書記官はそういう住居所にあてて書類を書留郵便に付して発送することができる。この場合には、書類を郵便に付して発送した場合には、その発送のときにおいて送達ありたるものとみなす、こういうふうな規定になっているわけでございます。  現実の運用といたしましては、ただいま申しましたように被告の住居所あての送達を行ったところ、全戸不在のために送達ができず、その後就業場所への送達を行ったがこれも効を奏しなかった、あるいは原告が被告の就業場所がないか、不明であることを証明してくるわけでございますが、そのような場合におきましては書留郵便に付する送達をする、このような扱いになっております。
  163. 内藤功

    内藤功君 現実には最近ふえているのは、支払い命令の場合、本裁判でなくて支払い命令の場合で、それからいわゆる信販会社、クレジット、サラ金、こういうふうな会社が非常にこれを使っているんですね。そこで問題が起きてきているわけです。これは非常に慎重にやらなくちゃいけないと思うんですよ。つまり債務者の方はその債務を否認する場合もある。それから抗弁を持っている場合もある。それから利息や遅延損害金をまけてもらいたい、減らしてもらいたいという要求を持っている者もありますから、自分のところに届いていないのに届いたとみなされるという制度ですから、これは慎重にしなければならない。  岩松、兼子両先生の編集した「法律実務講座民事訴訟編」というのは、この送達に関して一番権威のある解説書だと伺っていますが、これには「郵便に付する送達では、その発送の時に、すなわち郵便局においてその書留郵便を受理した時に送達が完了したとみなされ、送達書類が現実に受送達者に到達したかどうかは関係ない。従って送達に伴う危険は一切受送達者において負担することになる。郵便に付する送達の当否は立法の際に極めて問題とされた。むやみにこれをすると受送達者の利益を害することになる。運用に慎重を要する所以である。」と、こういうふうに指摘しております。そういうことが起きないために現在あなた方の方でとっておるチェック対策、これはどういうものをとっておりますか。
  164. 山口繁

    最高裁判所長官代理者(山口繁君) まず東京、大阪、福岡、仙台等の各簡裁を初めといたしまして多くの庁でとられておりますのは、被告の住居所への送達が全戸不在の理由で効を奏しない場合でも、共働き等の理由でウイークデーは日中不在であるということが考えられるものでございますから、直ちに就業場所送達を行わずに、土曜、日曜に書類が配達されますように速達で特別送達を行っております。こういうふうな土日の速達による送達が効を奏しない場合初めて就業場所送達を行う。これが効を奏しないか、あるいは原告の方で被告の就業場所がないかあるいは不明である旨の証明を行ったときに、ようやく付郵便送達を行っている。こういうふうに何段階かに分けまして、被告に不利益にならないように送達が慎重な手続で行われるようにやっているつもりでございます。  チェックの方式といたしましては、今申しましたようにどうしても全戸不在等のために送達が効を奏しない場合、訴訟手続をするためにはどうしても書題を被告に送達することが必要でございますから付郵便によるわけでございますけれども、その付郵便の要件のチェックは慎重でなければならないのはもとよりでございまして、ただいま御指摘のように考課も非常に厳しいものでございますから、的確にチェックをいたしますためには就業場所の送達あるいは就業場所の不存在または不明の証明に関する運用の厳格化が挙げられるわけでございます。  就業場所を証明するための資料といたしましては、例えば被告の勤務先を記載しておりますクレジット契約書の写しを提出させたりするわけでございまして、就業場所が不存在あるいは不明であるという点についての証明資料につきましても、単に報告書に就業場所がないんだというような簡単なやり方ではなくて、だれが調査して、どんな方法調査をしたのか、裁判所の方でその調査内容の真偽をチェックすることができるように、なるべく詳しく記載してもらっているようでございます。そこら辺から見まして不審な点が出てまいりますと、原告に再調査を命じまして追加資料を提出させてもらう、こういうふうな運用を励行しているところでございます。
  165. 内藤功

    内藤功君 そのとおりになっていないところがあって問題が起きているわけですね。  それで、今あなたのおっしゃったのは大変何重にもなっていて、聞いただけでは結構なんですが、それは最高裁民事局のおつくりになった「送達の運用基準」というものの考えと同じですか。また、この「送達の運用基準」というものは、法的な性格ですね、各庁をいわば拘束する法的拘束力というのはございませんですか。あるいはなるべくそうしろという目安程度なんですか。
  166. 山口繁

    最高裁判所長官代理者(山口繁君) 御承知のように信販関係事件が非常にふえてきたわけでございます。支払い命令でございますと六十数万件、訴訟でございますと二十数万件というように非常にふえてまいりました。他方、先ほど申しましたように、共働きであるとか婦人の社会活動が活発になりまして、全戸不在で不送達になって返る割合が非常に多くなってきたわけでございます。そのような状況を踏まえまして、送達に関する運用をどのように適正にならしめていくか。  先ほど申しましたように特別送達の方法をとりまして、その後、それによって送達ができない場合には直ちに書留郵便に付することができるような規定の建前になっておりますけれども、それでは債務者の利益保護に貸さないであろう、したがって慎重な運用が必要であるというようなことで、各庁の運用状況も踏まえまして、最高裁民事局の方におきまして基準といたしまして運用基準をつくったわけでございます。そのこと自体につきましては、これはもちろん法的拘束力があるとかどうとかという問題ではございません、あくまで基準でございます。しかし、できる限りこのような基準に従って運用がなされるよう、各庁でも努めていただきたいというようなことで申し上げているわけで。ございます。
  167. 内藤功

    内藤功君 ことしの「判例タイムズ」の九月一日号、つい最近出た雑誌ですが、これで私見たんですが、昨年の十月十七日に釧路地裁の決定がありまして、非常に重要だと思います。この内容は、債権者はジャックスという信販会社ですが、自宅に、相手に送達したところ返ってきたというので、就業先不明のため、つまり職場が不明のために書留郵便に付する送達をしてほしいという上申書を出した。私調べてこの上申書もここにコピーを持ってきましたが、確かにそう書いてあるんですよ。そうすると、あなたはそういう場合でもそういう上申書だけじゃ簡単に信用しちゃいかぬぞという指導だと言ったが、これは具体的に言えば釧路の簡易裁判所ですが、すぐその日のうちに仮執行宣言付支払い命令を出したんですね、上申書だけで。そしてほかに契約書も出させないんですよ。ほかに調査も何にもしないんですよ。そして仮執行宣言付支払い命令をその日の午後四時に郵便局に受け付けしてもらって、それで送達したとみなされた。  御本人は何にも知らなくて、その後、差し押さえをやるぞという電話をこのジャックスというところから聞いてびっくり仰天して、それで弁護士さんを通して記録を調べてもらったところこうだと。ところが、本人はちゃんと契約書には自分の職場を書いているんですよね。職場の会社の名前、電話番号、所在地をちゃんと書いているんです。これはそうでなきゃ貸しませんよね、信販会社は。しかも、その人は昭和四十三年から六十一年まで十八年間勤めている。これ僕の言っているのは全部判決文に書いてあるとおりです。争いのない事実なんだね。  そういうのが起きているんですから、実際のあなたの指導と非常に違うことが起きているということなんですが、ここらあたりの、この「判例タイムズ」をごらんになっていると思いますが、専門の担当官としてどういうふうにお考えになりますか。私の聞きたいのは、この判決の評価と、むだなことは要らない、判決の評価、これは僕は妥当な認定だと思うんです。その評価と、もう一つは、これから導き出す裁判所としての教訓ですよ。この異議とか抗告とかいう数カ月かかる訴訟の不経済を招くよりは、そのときにチェックしておけばよかった、甘いんじゃないかと、そこの点です。お答えいただきたい。
  168. 山口繁

    最高裁判所長官代理者(山口繁君) 実はこのケースにつきましては、仮執行宣言付支払い命令の前提になりますところの支払い命令正本は本人の住居所に送達されて、本人は受け取っているわけでございます。二週間の異議申したて期間内に異議の申し立てがなかったものですから、仮執行宣言付支払い命令の申し立てが出まして、その仮執行宣言付支払い命令を送りましたところが不送達になったと。それで債権者の方で、ただいま御指摘のように就業先が不明のため書留郵便に付する送達を行ってほしい、こう言ってきたわけでございます。  実は、就業場所の調査につきましては、裁判所が逐一当たって調査するわけには、これは到底まいりません。したがいまして、債権者の調査結果というものをいわば御信頼申し上げながらやるより仕方がないわけでございますが、実は裁判所に対してそのような偽りの上申書を出すようなことはちょっと予定してなかったわけでございます。先ほど申しましたいろいろチェックの方法を厳格にいたしましたのは、実はこのようなケースが起きましたために、より厳格にチェックする必要があると思いまして、そのように釧路の方にも申し上げ、その後全国各庁の方にも御連絡申し上げて、現在におきましては今申しましたような厳重なチェック体制をしているところでございます。  今後も書留郵便に付する送達もあろうかと思いますけれども、私どもといたしましては、できる限り被告債務者にとって不利益にならないように、十分運用については留意してまいりたいというように考えています。
  169. 内藤功

    内藤功君 結果論ですが、予定しなかったと言いますが、やはり信販会社の場合は契約書に必ず定型的な欄があって、職場を書く欄があるんですから、ですから上申書だけじゃだめだ、契約書の写しを持ってきなさいと。その写しを別のものを持ってきたら、これまたこれ自体が大問題ですから、出せと言えば出すんですから、チェック体制が非常に私は甘かったということを反省材料として肝に銘じてもらいたいと思います。  そうすると、今確かめておきますが、この判決を昨年十月十七日に受けて、最高裁としてはさらに、上申書だけじゃなく、さっきおっしゃったような契約書の写しを提出させるとか、もっと積極的なチェックをやるという連絡を出されたと言いますが、これはいつどういう形式でお出しになったんですか。
  170. 山口繁

    最高裁判所長官代理者(山口繁君) これは釧路の方に対しましては、こういうふうなケースの場合にはこういうふうなチェックをやるべきではないかということで御連絡は申し上げております。そのほかにつきましては、私ども種々会同、協議会等がございますが、そういうところでこういう例を御参考に提供いたしまして、こういうことのないように慎重な配慮をしてしかるべきであるというふうに申し上げているわけでございます。
  171. 内藤功

    内藤功君 少し最高裁民事局に対する批判的なことを申し上げることになりますが、私が問題だと思うのは、「信販関係事件に関する執務資料」というのがある。最高裁民事局の方でつくられたものが法曹会から発行されていますね。これを拝見しました。  そうすると、その三十八ページに「注」というところがありまして、「民事局の調査によると、書留郵便に付する送達の運用について慎重な庁が大部分であって、あまり活用されていないようである。」というふうにしながら、「しかし」として、「しかし」以下が問題なんです。「しかし、信販関係事件は、簡易迅速な解決が要請される少額の金銭請求事件であるので、」「消費者の利益の保護を図りつつ、この」「活用を考える必要があろう。」と、消費者の利益は言っていますけれども、この「活用を考える必要があろう。」というのが最後になっていますから、これはやはり最高裁がどんどんやれと、受け取らなくても受け取ったとみなす制度をどんどんやれということを一時期やったがために、こういう釧路のような例が出てきたんじゃないかと思うんです。  私は、そういう反省材料をひとつこの中から酌み取っていただきたい。今後ともこの運用基準については、こういうような釧路地裁の判決、裁判所に虚偽の理由の上申書を出して裁判所を欺いたということですから、事は軽くないですよ、簡裁、地裁の事件といえども。判決文にそう書いてあるんですから、ごらんのとおり。これはやはり相当な反省をしていただかなくちゃならぬと思いますが、最後局長並びに法務大臣、御所見があればお願いしたいと思います。
  172. 山口繁

    最高裁判所長官代理者(山口繁君) ただいまも申し上げましたように、私どもといたしましては、事件の処理の迅速化を図ると同時に、それぞれの利益の確保、これを図っていかなければならないわけでございまして、要するに適正な事件処理が私どもの課せられた使命でございますから、今後ともこのような運用につきましては、十分その辺のところを配慮しながら進めてまいりたいというふうに考えております。
  173. 遠藤要

    国務大臣遠藤要君) ただいまの総務局長答弁のとおりでございます。
  174. 内藤功

    内藤功君 しかし、実際はまだ起きているんですね、幾つか。こういう上申書だけで出すという例が出ているんです、ですから、裁判所はこの役所の性格上行政官庁と違いますけれども、しかし、これは会同、それからいろいろな指導等で十分徹底してもらいたい。そうしないと、無用の異議申したて、抗告事件が非常に多くなってきますよということを最後に申し上げておきたいと思うんです。  次に、刑事局の問題ですが、国選弁護人の問題です。  まず、刑事事件の弁護の中で、これは六十一年度でいいですが、国選事件の占めるパーセントは地裁、簡裁の場合どのくらいですか。
  175. 吉丸眞

    最高裁判所長官代理者(吉丸眞君) 昭和六十一年におきまして、地裁におきましては、終局人員中、国選弁護人が選任された人員の割合は六三・〇%でございます。簡裁におきましては七九・二%でございます。
  176. 内藤功

    内藤功君 法務省に伺いますが、いわゆる元被告人からの訴訟費用、この中には国選弁護料も入っていますが、の収納状況、最近一年間でいいですが、何%ぐらい取られていますか。
  177. 岡村泰孝

    説明員岡村泰孝君) 昭和六十一年度におきまして検察庁で収納いたしました訴訟費用は、件数にいたしまして二万三千件、金額にいたしまして八億七千九百六十万円でございます。  その収納率と申しますか、収納すべき金額に対してどの程度実際に収納したかという率を申し上げますと、六十一年度におきましては約七〇%でございます。
  178. 内藤功

    内藤功君 国選弁護人の報酬額増額についての現在の状況を御説明願いたい。
  179. 吉丸眞

    最高裁判所長官代理者(吉丸眞君) 国選弁護人の報酬につきましては、現在の刑事訴訟における弁護人活動の重要性を考えまして、殊に国選弁護人がついた場合、その弁護人の活動の重要性を考えまして、私どもといたしましてはそれにふさわしい報酬を確保したいということでいろいろ努力いたしているところでございます。また、日弁連の方からも毎年私どもにこの点についてはいろいろ要望がございます。私どもといたしましては、その日弁連の御意見も参考にいたしまして努力いたしているところでございます。  ただ、御承知のような厳しい財政事情でございますので、なかなか大幅な引き上げということは困難でございますが、その中で財政当局の御理解を得まして、これまで国家公務員の給与の引き上げを上回る増額を図ってまいりました。今後も一層努力いたしてまいりたいと思っております。
  180. 内藤功

    内藤功君 私から繰り返すまでもないんですけれども、憲法が定めた制度なんですね、この国選弁護人制度というのは。そして労力の点は、私選たりと国選たりと全く同じですよ、これはね。まず選任命令を受ければ必ず拘置所へ行って面会して、長時間やっぱり面会して聞き取り書きをとって、それから身内に連絡をするでしょう。身内がなかなか見つからないなら自分で行かにゃならぬですよ。それから今度は情状証人を選んで、証人に出てくれと頼んで、それから検察庁へ行って証拠の記録閲覧をやって、そうして公判の準備をして、公判はやっぱり三回は普通かかりますわね、三開廷やると、こういうことですよ。検察庁や裁判所と違って事務官も書記官も助けする人はいないですよ。かわりに法廷へ出てくれる人いないから自分で回るわけですね。全部自分仕事でしょう。  私選弁護は大体今報酬規定では最低二十万から三十万ということですね、地裁の場合ね。実際はどうですか、国選三開廷で六十二年度が地裁は五万五千円、一件ですね、簡裁が三万九千七百円でしょう。日当が二千二百五十円から五千九百五十円、私はこういうふうに承知しておりますよ。これは大変なことです。しかも謄写料ですね、相手の記録を見なきゃこれは弁護になりませんからね、メモじゃ勝負になりませんから。微妙な言葉のあやなんかはコピーでもって一字一句とらなければ有効な防御はできませんからね。そうすると謄写料がかかる。これはしかし、今謄写料は別個支給じゃないでしょう。報酬の中に、やっぱり額が多かった場合に報酬の中に上積みすると、含ませるという制度ですから、これもおかしな話なんですね。報酬というものと実際にかかったコピー代違うんですね。  私の聞きたいのは、こういう状況で財政的な負担が大変だと言うけれども、しかしさっきの法務省答弁のように、訴訟費用の七〇%、八億円はちゃんと戻ってきているわけです。元被告人は国選弁護人の弁護士さんによくやってもらったという気持ちもあり、また検察庁の督促もあって七〇%は戻ってきているんです、国へ。ですから、国選弁護料を引き上げてみたところで、全部が全部弁護士のところへ行っちゃて国に返ってこないんじゃないんです、七割返ってくるんだから、国へ。この理屈はおかしいですか、私はそう思いますね。同僚の弁護士もみんなそう言いますよ、弁護士会の人も。その戻ってきた分を上げてやってくれと、こういう意見がやっぱり弁護士会の会合で出てきますよ。  私は、憲法は世界に冠たる国選弁護制度をつくっているんですが、さっきの大臣のお言葉をかりて言えば民活ですか、甘えだと思いますねこれは、そういう民活というのは。そういうものじゃなくて、やっぱり甘えるんじゃなくて、犠牲を強いるんじゃなくて、それなりの制度を物質的に裏づけると、こういうことで真剣にやってもらいたいんです。  大体吉丸さんですか、局長、あなたが財政のことを大蔵省みたいに言うことはないんですよ。どんどんやっぱり強く言わなくちゃいけないと思う、日弁連毎年出しているんですから。それと謄写料の支給は別途やると、この二つについて局長もう一遍どうですか、決意を伺いたいんです。
  181. 吉丸眞

    最高裁判所長官代理者(吉丸眞君) 国選弁護人が、委員指摘のようにいろいろ御苦労されているということは私どもも十分承知いたしておるところでございます。私どももできる限りそのようなお仕事にふさわしい報酬を支給できるように、いろいろ努力いたしているところでございます。ただ、先ほど申しましたような国家全体の財政の事情もございますので、なかなか難しいところがあるということを御理解いただきたいと思うわけでございます。  また、謄写料の問題でございますが、これは御承知のとおり、現在は国選弁護人に対しては、旅費、日当、宿泊料及び報酬を支給するものとするということになっておりますので、弁護の準備のために要する諸経費、これは例えば交通費、通信費などとともに記録の謄写料も含まれるわけでございますが、それは国選弁護人の報酬の中で考慮するということにされているわけでございまして、実際の運用といたしましては、特に多額の交通費を要したとか、あるいは記録の謄写が特に必要と認められる事案で相当額の謄写費用を払ったというような場合には、報酬額の決定に当たってその費用を考慮するという取り扱いをいたしているところでございます。これあたりの運用の充実については今後さらに努力いたしたいと思っております。
  182. 内藤功

    内藤功君 次に、人権擁護局に伺いますが、現在の予算、規模、人員、それから人権侵害の事案の申告に対しての調査救済活動は、基本的にどういう手順で行われているのかということを伺いたい。
  183. 高橋欣一

    説明員(高橋欣一君) まず、人権擁護局関係の予算でございますが、最近二カ年の予算額を申し上げますと、当初予算額におきまして昭和六十一年度が五億四千四百万円、昭和六十二年度が五億七千八百万円でございます。六十一年度に比較しまして六十二年度は三千四百万円の増になっております。パーセンテージにしまして六・三%でございます。  それから人員でございますが、現在人権擁護業務を担当しております職員は、本省人権擁護局それから法務局、地方法務局合わせまして人権擁護事務に専従しておる職員の定数が合計二百二十名でございます。ただ、御承知のとおり、人権擁護事務は法務局、地方法務局の支局も取り扱うことになっておりまして、二百六十八支局があるわけでございますが、その支局の支局長あるいは総務係長というのが、これは専従ではございませんが、相談などがあれば取り扱うということになっております。この人数が千五十七名ということになっておりますので、合わせますと千二百七十七名で担当しておる、こういうことになろうかと思います。  それから、人権侵犯事件がどのような手順で処理されているかという御質問でございますが、私どもの機関が人権侵犯の疑いがあると思われるような情報を探知する手段としましては、例えば新聞情報であるとか、それから当事者の申告であるとか、あるいは人権相談を受けた人権擁護委員からの持ち込みとか、そういったことで法務局、地方法務局の人権担当機関が探知するわけでございますが、それを受けますと、これが果たして人権侵犯事件として法務局として取り上げるべきものかどうかということをまず調査するわけでございまして、その調査の結果これは事件として取り上げるべきという判断になりますと、これを人権侵犯事件として立件いたしまして、さらに調査を重ねた上で事案に応じて説示とか勧告とか、その他適切な処理をする、こういう手順で行っております。
  184. 内藤功

    内藤功君 私は、七月三十日に社労委で、石川島播磨重工業など造船、鉄鋼などの大企業が、そこで働く労働者の人格の尊厳を傷つけるような方法で大量の退職を強要した人権侵害問題が起きているということを具体的事例を挙げて質疑を行いました。そのとき労働省当局は、「実際にそういうことが行われたとするならばかなり強硬な退職勧奨だと思います。」、また大臣は、「企業に行き過ぎの点がございましたら、これは都道府県等を通じてさらに指導してまいりたい」と、こういう答弁になっておるわけであります。  ところが、その後も石川島播磨重工では、特に組合の活動家である労働者に対して人権侵害が相次いております。たくさんありますが、一、二の例を挙げますと、一つは勤続二十七年の方です。この人は茨城県の阿見町に居住していて、八年前に奥さんを亡くして三人の娘さんがいる。特に二番目の娘さんは特殊学級に所属をしている。精神薄弱児という認定を受けておるんですね。そして、この人は毎朝五時四十分ごろ家を出て、早くても帰宅は七時三十五分ごろ。出張というようなことは絶対にこの三人の子供さんを抱えた家庭でできない。こういう家庭事情を十二分に承知の上で、別会社の石川島輸送機株式会社というところの改修技術部へ出向を通告されたんですね。  この出向先は、石川島播磨でつくったクレーンの納入先を巡回して点検、修理するという出張が日常的な業務である、長期の出張もあり得ると、こういうことでありました。西は静岡から関東一円、東北、北海道にまでエリアは及ぶということで、月のうち半分くらいは出張もあり得ると、こういう職場に出向を命ぜられたわけです。そこで、これでは直接の家庭崩壊にやはりつながる、深刻な事態を招くことは必至である、必定であると、特に次女の学級担任教員や町の民生委員からも嘆願書が出されている状況なんですが、なおこの出向を断念していない。東京都内のしかるべき職場にという懇願にもかかわらずこの出向を断念していないという問題が、私は一つの人道上の問題だろう、労働法以前のやはり問題としてあるというふうに私は思わざるを得ないんですね。  もう一つだけ例を挙げておくと、このもう一人の方は仮にBさんといたします。さっきの方をAさんとします。このBさんは五十六歳で、やはり二十七年間勤務をした。特に昨年十二月まで十六年間は一貫してクレーン運転工ですね、クレーンの運転手をしておられた。この人を別会社の、これは石川島鉄工建設という会社の橋梁部、橋をつくる橋梁部所属の現場作業員として出向を命令してきたんですね。これはなぜ問題かというと、出向先の業務は橋梁の架設工事であります。このBさんに、橋梁架設工事の現場作業をやれというわけです。橋梁は必然的に高いところの高所作業であります。山合いや谷合いの場合は大体地上二十ないし三十メートルでしょう。市街地でも五メートルから十メートルになりますね。こういうところで足場の組み立てからボルトの締めつけ、ジャッキ操作、測量、塗装その他等々の現場作業をするわけです。これまでこの人は工場内でのクレーン運転工、それからその前は機械工、溶接工であった。高所作業は経験がない。それから五十六歳のいわゆる法律上の中高年齢者に当たり、高血圧症ですね。これは私も血圧のあれを見ましたが、非常に高いです。  労働安全衛生法の六十二条には「事業者は、中高年齢者」「については、これらの者の心身の条件に応じて適正な配置を行うように努めなければならない。」というのが改正でつけ加わっております。そこで、安全に自信がないと申し出たんですが、企業側は、そのうちなれる、低いところから次第に高いところに移ってくる、命綱や足場もあるというような答弁にしかすぎないんですね。大変無責任なことであります。我々が調べた労働災害の事故では、なれるまでの間に転落するというのが非常に多いですね。これが非常に多い。これが問題です。ところが、そのうちなれるというふうな答弁しかしないんですね。あくまでこれは人間の今、体に危害のあるところに追いやるわけですから、私はこれ以上の人権侵害というものはないと思うんですね。労働法どうのこうのという以前の問題であります。  この出向先会社の発行した安全手帳を見ますと、墜落のおそれのある高所作業には中高年齢者並びに高血圧症、低血圧症、心臓疾患等を持った人を配置しないと書いてあるんですから、これはもう明白に安全規程自体にも違反しておる。本人からは文書、口頭で何度かこのようなところの高所作業をやめさせてもらいたい、ほかの高所でないところで働かせてもらいたいという要求を出しておるわけであります。これは結局昨年十一月から十二月に行われた緊急対策で七千人の退職者が出たんですね、そのときに退職を断った、この断った者への高齢者いじめと考えざるを得ませんというのが御本人の判断であります。私はあってはならぬことだと思うんですね。生命身体の危険の大きいところに高齢者を送り込む、非常に冷酷な、人道に反することだと思います。  私は、こうした事案について法務省としても人権擁護という立場から、これはまた労働省などと違った立場から、巨大企業であるがゆえに許されていいか、調査等是正勧告を局長にお願いしたいと思いますので、これについての御答弁を伺いた  時間の関係があるので関連をして、これはもう一、二の例にすぎないんですね。大臣にこれは伺うことだと思いますが、これらの巨大企業は国からいろいろな契約の発注を受けています、優先的に受けていると思いますね。それからいろいろな補助金を受けていますよ。それからいろいろな特典もあると思いますよ。そういうものを国から受けていて仕事をしている。もちろん私は、石川島播磨という世界に冠たる企業の技術、働いている人の優秀さ、そういったものを少しも疑いません。そういうことを否定するのじゃないんです。そういうところであるがゆえに、やはり率先して憲法、人道というものを守って、そして他の企業の模範となるべきであるにかかわらず、こういう人権侵害、さっきお話しの大企業内のいじめですよ、こういうことがあることは断じて許せないと思うんです。その点についての大臣の人権擁護の基本姿勢というものをお伺いをしたいと思うんです。
  185. 高橋欣一

    説明員(高橋欣一君) ただいまお話のございました具体的な事案、Aさん、Bさんの事案につきましては、私どもまだ把握しておりませんので、きょう初めてお聞きしたところでございますから、調査いたしまして後日御報告さしていただきたいと思います。  こういった職場における労使関係の問題一般について申し上げますと、不当労働行為だとか、あるいは職場における差別だとか、こういった労働者と企業者との間の問題につきましては、まずはこの専単機関であります労働省等の関係の機関が適切に対処をしておられるというように承知しておるわけでございますけれども、事案によりまして労働問題の枠を越えたような人権侵害事案があります場合には、それらについて法務省人権擁護機関といたしまして取り扱い、対処することはやぶさかではございません。具体的な事案について申告等がありました場合には、先ほど申しましたような手順で調査をいたしまして、人権侵犯事案に当たるかどうか判断をした上で、当たるとなればそれ相応の処置をする、こういうことになろうかと思います。
  186. 遠藤要

    国務大臣遠藤要君) 大企業であるからといって手心を加えるというような考えはございません。ただいま人権擁護局長が御答弁申し上げたように、その調査の結果を承知して対応したい、こう思います。
  187. 内藤功

    内藤功君 最後の質問になりますが、本年の五月三日、これは時あたかも憲法記念日ですが、朝日新聞の阪神支局が襲撃をされて、居合わせた記者が殺傷されました。九月二十四日には、名古屋において同じく朝日新聞社の寮が襲撃されて、さらに本年一月に朝日新聞東京本社に散弾銃が打ち込まれていたということも明らかにされました。これら事件捜査は、いわゆる赤報隊なるグループによる犯行という情報などがあるにもかかわらず、遅々として進展していないように思います。  この一連の朝日新聞関係事件は、単に一言論機関に対するテロルというにとどまらず、民主主義社会の存立の基盤である言論、表現の自由に対する挑戦と見るべきであって、広く国の法秩序全体に対する攻撃であると思います。とりわけ無言で記者を銃撃するという攻撃方法は、暴力に対する恐怖と不気味さをてこに、自由な批判と反対意見の表明を言論機関に自己規制させるという効果をねらったものだと思われます。言論、表現の自由、民主主義に対する深刻な影響は私は軽視すべからざるものがあると思います。絶対に許すことのできないことだと思うんです。  言論の自由、表現の自由と憲法に基づく国の民主主義的法秩序を守るための法務大臣法務省の任務は非常にまた重いと思いますが、これら一連の事件に対する法務省としての対応及び大臣のこの種暴力に対する所信を明らかにされたいと思います。
  188. 遠藤要

    国務大臣遠藤要君) お尋ねの事件については、現在捜査当局において捜査中と承知をいたしております。事案の詳細が必ずしも明らかではございませんけれども、犯行の手段、方法などから凶悪な事件であると認識をいたしております。言論封殺を企図した暴力の行使に及ぶ本件のごとき事件は、民主主義の根幹を破壊しかねないものと考えております。そのような点で速やかな真相の解明を期待しているところであり、検察としても厳正に対処してまいりたいと思います。
  189. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 私、きょう質問しようと思いますことは、去る九月十七日の法務委員会で、外国人登録法の問題に関して質問したときに時間が足りず、質問をし残した問題がありますので、その問題を取り上げたいと思っております。  その問題と申しますのは、いわゆる人の国際化と申しますか、単に物や資本だけの国際的な交流だけではなしに、人間と人間との交流あるいは心と心の交流、その問題は今後避けて通ることのできない問題であり、だんだんふえていくだろうと思っております。こういう交流がふえれば当然国際結婚というふうな問題もふえていくだろうと思う。国際結婚がふえれば日本から国籍を離脱する人もふえるでしょうけれども、同時に日本に帰化したいと希望する人もふえていくんじゃないかと思うんですが、中曽根総理大臣は、日本人は単一民族であるので知能指数が高い、それから先またちょっと要らぬことを言われたものですから失言問題を起こしたんですけれども、単一民族の社会であるかということは、これは民族をどう定義するかの問題でなかなか難しいんですけれども、少なくとも日本が同質的な社会、そういう意味で言われたんだろうと思います。  確かに同質的な社会というのは長所は持っておりますけれども、同時に短所があるということは自覚しておく必要があるんじゃないか。その短所の最も大きいのは物の見方、考え方が非常に画一的になってくる、もっと変化の時代に応じた多様な考え方が必要だと思うんですけれども、その意味において国際結婚によって違った血が入ってくるということは必ずしもマイナスばかりではない、むしろプラスの面があるんではないか。その点から、午前中山本委員が質問されました帰化の問題、同じ問題意識から質問するわけでございますが、少し詳しくお聞きしたいと思います。  まず第一に、外国人で日本に帰化を申請する件数、一年に大体どのくらいあるのか、最近の平均で結構です。  それからまた、その帰化を許可された者、大体の件数で結構ですけれども、大体どのくらいありますか、それをまずお聞きしたいと思います。
  190. 千種秀夫

    説明員(千種秀夫君) 最近における帰化申請件数あるいは許可された件数についてでございますが、大体ここ五年ぐらいのところ、申請件数は一万件弱でございます。
  191. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 一年間に一万件。
  192. 千種秀夫

    説明員(千種秀夫君) 一年間でございます。  この件数のとり方が若干問題があるのでございますが、この統計は本省へ進達のあった事件を数えておりますので、実際には九千台、八千台、昨年でございますと少し減って七千七百というふうに落ちておりますが、それに応じて許可された件数も変動がございます。これは七千件前後、八千台もございますし、七千台、六千台というふうに分かれております。昨年の場合は六千七百人でございます。  申請件数というのは大体一万件をちょっと減る程度のところでございまして、許可された件数はそのうちでそれぞれ千人ぐらい少のうございましょうか、昨年の場合、申請件数、本省に進達されたものが七千七百件で、許可された件数は六千七百という数字が出ております。
  193. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 法務省で、昨年の九月、在日韓国人で帰化を希望する者の調査をされましたね。帰化を希望する者が、これはアンケート調査ですけれども、三四・二%。それから、ほぼ同じ時期に大韓民国居留団が同じ調査をやっぱりアンケートでやったんですけれども、これは一八・七%。調査主体が違いますから、そういった差が出てくるのは当然かと思いますけれども、私の予想した数字以上に多かったと思っているんです。  その場合にもちろん、帰化ということ、外国人が日本人になるということは非常に大事な問題でありますから、無制限に許すべきことではない。また、各国ともそれぞれ幾つかの要件を設けております。ほとんど各国に共通している要件というのは、帰化を申請する人が素行善良であるということ、言いかえれば素行不良でないということですね。これも私はもっともなことだと思う。余りしょっちゅう犯罪なんかを犯しているような人たちが帰化を求めてきたら困るので、それは拒否すべきである。そのことは私は当然だと思うんですが、素行不良でないということをどういうふうにして判定するか。これが私は問題だと思うんです。日本の場合は外国人登録法の指紋とは違った意味の指紋によりまして、つまり犯罪歴がないということを証明するために指紋をとっているわけですね。しかし、これは多くの善良な人たちにとっては大変迷惑というか、屈辱的なことではないかと思うんです。  それで、まず外国では、いずれも素行善良ということを言っているんですけれども、どういう方法で素行善良であるということを証明しているのか、あるいは逆に素行不良でないということを判定しているのか、もしおわかりであればお知らせ願いたいと思います。
  194. 千種秀夫

    説明員(千種秀夫君) 最後の点につきまして、私ども外国の実際の実情は十分把握しておりません。これはなかなか外に公表をするようなことではないらしく、いろいろ調査いたしておりますが、具体的に知り得ておりません。
  195. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 私の想像で物を言うのはどうかと思いますけれども、恐らくヨーロッパ諸国では日本のような指紋のやり方ではないのではないかと思うんですけれども、法務当局としまして、現在の制度があくまでいいのだ、最善の制度だという考え方ではなしに、やはり申請者に対して余り屈辱的な感じを与えないような方法で素行不良でないということを判定する、その方法を研究していただきたいと思います。私自身も、どういう方法がいいかということはちょっと想像がつかないんですけれども、やはりヨーロッパ先進国あたりのやり方を十分研究して、それを参考にしていただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。
  196. 千種秀夫

    説明員(千種秀夫君) 御指摘の点はまことにごもっともと思っております。これは、一つには外国人登録法の改正問題とある程度関連した問題だと私ども理解しておるわけでございます。帰化を申請してこられる方は外国人登録をしておられるわけでございまして、その点では帰化だけでやっていたわけではないものでございますから、今まで帰化をなさる方は大体そういうことに応じていただいてきたようでございます。今度改正の問題が議論されておりますので、私どももこれは少なくとも外国人登録法のやり方以下にしなければおかしいということで、早速もう検討をしているところでございますし、指紋以外の方法によっても十分達成できるような問題でございましたら、なるべく不快なことは避けたい、そういう方針でこれから検討したいと考えております。
  197. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 お役所というのは一般に新聞の投書なんかに対して反論しないことが多いんですけれども、日本のお役所の態度を知らせる、殊に対外的な問題に関しては日本の方針を誤解させないようにするために、もし間違った投書でもあれば、私はやはり反論すべきだと思うんです。  レクチャーのときに申し上げておいたので多分お読みになったと思いますが、中央公論の十月号に「人的鎖国体制から脱皮せよ」という論文を大学の先生が書いている。その中に、昭和六十二年の四月十六日付朝日新聞紙上でクロード・チアリという人、この方は有名な音楽家らしいんです。私はよく知らないんですが、クロード・チアリという人が「日本国籍とるのは大変。日本人になるのをあきらめさすんですね」というので、「日本人でも日本人になれないよ。絶対」というふうな書き出しで、帰化する場合に大変要件が難しいと。  例えば「まず、学校の卒業証明書。なぜ、日本人になりたいかという理由を日本語で書く。女房の戸籍謄本、おじいさん、おばあさんの戸籍、出生証明書、パスポート、国籍証明書」「(国籍証明書って)何ですかと聞いたんだよ。パスポートがあるのにね。フランスの領事も「聞いたことない」っていう。」いろいろ調べてみたら、フランスにそういうお役所があるらしいんですが、それは五年に一枚ぐらいしかもらいに来る人がいない。そのほか外人登録であるとか納税証明であるとか家の近所の地図、家族の写真とか、大変要件が難しいということが書いてあります。  大体ここに書いてあることは事実に近いんですか、それとも誇張があるんですか。
  198. 千種秀夫

    説明員(千種秀夫君) 中央公論にありますのは朝日新聞の孫引きでございまして、この先生一つの参考資料にそのまま括弧づきで引用したものでございます。この先生は、この題にございますように、問題提起をしたわけでございまして、帰化の論文を書いたものじゃないものですから、そこを責任を逃れるために全部括弧で引用してあるんだろうと思いますが、もとの朝日新聞のこれを見ましても、題でごらんになるように、やはりこれはギタリストとしてのインタビューでございます。帰化の問題を取り扱うための記事でもございません。  そういうわけで、この方は芸能人ですから、おもしろおかしく書いていらっしゃるので、誇張といいますか、誤解といいますか、すべてまぜこぜで書いてある。ありのままのお話だろうと思います。これはこの人の体験記でございますからうそとか本当とかいうのじゃないんでございますが、手続が面倒であるということは、それはこの人にとってはまことにあり得たことであろうと思います。  というのは、これはどこの国でもそうでございますけれども、日本で帰化という問題が起こります場合特に問題になるのは、在日韓国人のような者が普通対象になっておりますけれども、フランス人が日本に帰化するというのは、この会話の中にもございますように、本国ではおまえ気が狂ったんじゃないかと言わんばかりの待遇を受けた、家族や親類からですね、それぐらい珍しいことでございます。  フランス人で日本に帰化した経験というのは、五年の間にもう一家族ございますけれども、二件しかございません。それで、大使館の方々も国籍法に通じていらっしゃる方はないわけでございまして、私どもがフランス大使館にどういうふうに国籍の喪失の手続をするかということを再三確かめて、それによって指示をしているわけでございますが、それがどうも誤解があったようでございまして、結局この人が言っておりますように、帰化しないうちに国籍がなくなったら困るじゃないか、まことにそのとおりなんでございます。  そこで実際は、国籍の喪失の届け出を宣言をいたしますとそれを受理したという証明書をもらって、それを出しますと認める、帰化を認めますとこれはなくなる、こういうような条件つきでなくなるような仕組みになっておるのでございますが、喪失証明書をまずもらってきなさい、こう言ったということで、そんなものはもらえないということで時間がかかったようでございます。  それは、やはり外国の法律でございますから、訳し方もございますし、どういうふうにするかは向こうの大使館の説明に従ってこちらもやっているわけでございますから、それだけフランスに関する限りにおいては帰化の件数は少ないわけでございます。そこで、難しいいろいろな問題が出てくることは当然でございまして、日本人がフランスに帰化するのも毎年一けた、二、三人、多いときで七人ぐらいでございますから、あちらの方はどういうふうにやっておられるか知りませんけれども、そういう少ない、非常な希有な事例におきましてはそういうことが往々にしてございます。  ところが、在日韓国人のような問題になってまいりますと、これはかなり違った様相を呈しておりまして、先ほどもちょっと御質問に入っておりましたけれども、今在日韓国人が六十数万おるわけですが、許可されている帰化の許可人数が六千何百人ということは、一%ぐらいが大体帰化されてきているわけです。こういう方々は大体、日本人と結婚したとか生来日本で生まれた、ほとんど日本人と同じ生活環境にある方々でございます。こういう方々に対してそんな特別なことをいろいろ言っているわけじゃないのでございます。おのずから、その出す書類もないのがございます。  そういうわけで、帰化一般の問題としてはクロード・チアリさんのおっしゃっていることは非常に異例なケースではないか。こういうことがあっても、それはうそとも言えません、本当とも言えません。この人の体験記と思って私は読んでいるわけでございます。あえて反論するに値することではないと思っているわけでございます。
  199. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 非常にまれなケースかもしれません。しかし、こういうふうに書かれると、何か日本という国は非常に閉鎖的な国であるような印象を読者に与えるのじゃないかと思います。例えばここに書いてあるような条件が全部本当に必要なのかどうか。例えば日本に来て、奥さんが日本人で、結婚して三年なり五年なり生活していれば当然日本語がある程度話せるようになると思うんですけれども、日本語で理由を書くというのは、これはちょっと簡単にはできないことではないかと思うんですが、こういうのをやはり真に日本語で書かせる必要があるのかどうか。家の近所の地図であるとか、そういったふうなことも書かれてあるんですけれども、もしこれは事実に反していれば、そういうことは今要求していないと言うのであれば、私はやはり反論さるべきであると思いますし、もしここに書かれていることがそのとおり事実であれば、やはりここに書いてあるような条件をもう少し考え直してもいいのではないかというふうに考えるんです。
  200. 千種秀夫

    説明員(千種秀夫君) ここにいろいろなものを出せというふうに書いてあるのはどうかということになりますと、これはそんなに違っておりません。先ほど申し上げました国籍喪失証明書の点は誤解があって間違っていたようでございますが、それ以外は大体こういうものを出させております。これは、各法務局の国籍の窓口にこういうものを説明した実はパンフレットというのがございまして、それにどういうわけでこういうものを出せということが書いてございまして、おいでになるとそれを法律の規定の写しと一緒に差し上げて説明をし、相談をしているのが実情でございます。  国によって、あなたはいい、あなたは出しなさいと、こうは言えませんものですから、これは一律に出すことになっておりまして、いやこういうものはこういう理由で出せないというときには、それじゃかわりにというような指導をしているのが実情でございます。  この中にいろいろございますけれども、学校の卒業証明書なんというのは、これは帰化をする人の履歴の確認のためでございますが、とれない場合は別になけりゃならぬというわけのものではございません。  これは順次申し上げますと、動機書を日本語で書くというのは、大体自筆で書けと言っているわけじゃございませんで、他人に書かせる人もあるわけですが、日本語の理解をどのぐらいできるかということを見るためにもかねてやっておることでございます。  それから、配偶者の戸籍謄本というのは、身分関係、今度戸籍をつくったりいろいろしますから、これはどうしても必要でございます。  出生証明書というのも外国人につきましては戸籍謄本と同じでございますから、これまた必要でございます。  パスポートというのは国籍確認のためでございますが、さらに国籍証明書が必要だというのは、その時点のパスポートとは限らないわけでございますから、現に国籍証明をもらわないと確認できないということがありますので、二重に請求するのが普通でございます。  外国人登録証明書もまた当然のことでございます。  それから、過去の三年間の納税証明書というようなものを出せということを言っております。これは生計能力を知るということも一つございますが、やはり税金を一文も払っていないということになりますとこれはちょっと問題ではないかということになって、素行要件の資料になるということもございます。  それから、家の近所の地図というのはどこに住んでいるかということをわかりやすくするためなんでございまして、これはやはりある程度近隣調査ということを能率的にする必要上出さしております。  家族の写真というのは、本人の写真はもちろん申請書に添付しておりますけれども、特に強制しているわけじゃございませんから、ないのもございますし、あれば便宜出していただいている。こういうことでございまして、全部合っているわけでもないんですが、全部違っているわけでもございません。
  201. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 例えば必ず出さなくてはならない書類と、それからあればあった方がいいという書類とあるわけですね。これはやっぱり実際の出先の人によって、あればあった方がいいという書類まで出しなさいと言われる例があるのではないか。これは次の例で申し上げますけれども、そういう点で、先ほど地方の法務局は大臣以下の人徳のしからしめるところによって非常に窓口の空気がザ・ワースト・スリーから少し上がってきたという話ですけれども、この問題なんか取り扱うところもひとつ遠藤法務大臣の人格を浸透さして、そういった無用の日本に対する誤解が起こらないように十分指導していただきたいと思います。  それから、もう私の持ち時間なくなりましたから、あとはちょっと一応申し上げるだけ申し上げておきますけれども、これも六十二年の九月十七日の法務委員会で質問したときに、日本の男性と結婚しているアメリカの婦人、これが永住許可を願い出たのに最初の三年間は一年越しに更新になっている、それから三年目になってやっと三年の許可を得たと、永住許可を申請したにかかわらず。それで、子供が生まれていればもっと条件はいいんだというふうなことを言われて、本人非常に憤慨しているんですけれども、これは前の入管局長、小林さんですけれども、そういうことはあり得べからざることだと言って、まるで全然私がうそのことを言っているように答えられたんですけれども、私その後でまた本人に会っていろいろ聞いてみましたら、私の言っていることには間違いないんですが、これはやはり出先の人たちの対応の仕方がそれぞれ違う、必ずしも法務省意見が、遠藤法務大臣の人格が浸透していない例だったかもしれないと思うんですけれども、かなり非常識なことを言う人がやはり中にはおるということの一つの例だろうと思います。  それで、日本人を配偶者に持つ外国人が永住許可を申請した場合には、例えば三年ないし五年婚姻状態が続いていれば、他によほど不適格な条件がない限りにおいては原則としてこれを認める、そういうふうに指導されたらどうかと思うんですけれども、いかがでしょうか。
  202. 熊谷直博

    説明員(熊谷直博君) お答えします。  前半の御質問については前政府委員からの御答弁がありましたように、そういう指導はしていないということでありまして、九月十七日の法務委員会で御指摘を受けました後も、さらに子供の有無だけで自動的に処分、つまり在留期間に関する処分に差異を設けるような取り扱いをしないようにというような指導を強化いたしまして、東京入管等、特にこの種の案件の多いところに、口頭でございますが、指導の徹底を図っております。  第二の問題につきましてお答え申し上げますが、いまだにいわゆる偽装婚という事案がございます。この偽装婚というのは、在留の手段としまして日本人と戸籍上婚姻をする、しかし実際には婚姻関係にはないという関係でございますが、それがある以上は、一律に三年ないし五年の在留期間を条件として自動的に永住権を与えるというわけにはいかないのではないかと……
  203. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 いや、三年ないし五年の在留期間ではなしに、婚姻状態
  204. 熊谷直博

    説明員(熊谷直博君) 婚姻期間を条件にでございます。  婚姻歴というのは非常に要素として加味するわけでございますが、三年ないし五年の婚姻期間があれば自動的に永住を許可するということは、偽装婚事案が現存しておるということからやはり消極的に考えなければならないので、そのほかの事情によって婚姻の信憑性とか継続性を考えていかなければいけないというふうに考えております。昨年一年で偽装婚を理由に永住許可を与えなかったという件数が八十七件に上っております。
  205. 抜山映子

    ○抜山映子君 先ほど来国選弁護人の報酬につきまして、同僚委員も質問されておりますけれども、まずお伺いします。国選弁護人の報酬の性格をどのように認識されておられるでしょうか。
  206. 吉丸眞

    最高裁判所長官代理者(吉丸眞君) 国選弁護人に支給される報酬は、その専門的な学識経験に基づく弁護という訴訟活動の対価でございます。  具体的な報酬額の決定に当たりましては、事件の難易、これに要した労力、時間等が総合的に考慮をされることとなりますが、一般的に申しますと、当事者主義的な色彩の濃い現行法のもとにおける弁護人の役割が重要であるということにかんがみ、それにふさわしい報酬であるべきだというふうに考えております。
  207. 抜山映子

    ○抜山映子君 ただいまはっきりと弁護士の学識、弁護活動に対する対価であるというように言われました。もちろん、対価とは申しましても、国選弁護の公共的性格から通常の報酬よりは低くてもしかるべきと思いますけれども、対価と言われる以上は、やはりそれなりの配慮が必要だと思うのです。  ところで、その算定基準はどうなっておりますでしょうか。
  208. 吉丸眞

    最高裁判所長官代理者(吉丸眞君) 国選弁護人に支給すべき報酬額につきましては、最高裁におきまして受訴裁判所の行う報酬支給決定の便宜に資する等の見地から、一定の支給基準を定めて通達しているところでございます。この支給基準は、国選弁護人が付されている事件の中で、開廷回数、事案の難易等から見て標準的と考えられる事件についてこれまでの支給基準、各庁における支給の実情等、いろいろな事情を勘案しました上で、国選弁護人の報酬として一応この程度の額が標準的ではないかと思われる金額を示したものでございます。  もっとも、御承知のとおり、国選弁護人の報酬額の決定はあくまで受訴裁判所の裁量にゆだねられているところでございますので、この支給基準は、受訴裁判所が報酬額を決定するに当たって一応の参考として作成されたという性格のものでございます。
  209. 抜山映子

    ○抜山映子君 余りはっきり部外者の方にはわからないと思うんですけれども、それでは例えばその管内に弁護士のいない僻地の国選事件がございますね。そういう場合は最寄りの弁護士会から会員が出張してやるわけですけれども、その日当はどれぐらいになっていますか。
  210. 吉丸眞

    最高裁判所長官代理者(吉丸眞君) どうも恐縮でございます。報酬の方に心をとられまして、日当の表がただいますぐ出ませんので、少々お待ちいただきたいと思います。
  211. 抜山映子

    ○抜山映子君 それが出ましたところで御回答をいただきます。  アメリカの一部には、官選弁護の報酬基準を私選の三分の二だとか二分の一程度と決めておるところがあるわけですけれども、日本では何分の一になっているとお考えですか。
  212. 吉丸眞

    最高裁判所長官代理者(吉丸眞君) 私選弁護人の報酬の金額については、その実情について私ども承知いたしておらないところでございます。ただ、それの一つの資料といたしまして日弁連がつくっておられる私選弁護人の基準がございます。この基準との比較ということになりますと、その間にはかなりの格差があるということであろうと思います。
  213. 抜山映子

    ○抜山映子君 その日弁連の報酬基準によりますと、着手金と報酬、最初に事件に着手するときに着手金をいただく、成功したときには報酬をいただく、こういうことです。その着手金ですが、単独事件で二十万円、合議事件で三十万円、報酬が単独審の方で二十万円、合議審の方で三十万円と、こういうふうに出ております。そうしますと、国選弁護の報酬は一本化されて弁護報酬をいただくわけですね。そうしますと、荒っぽく言いますと八分の一とか十分の一とか、そういうことになっておるわけじゃないんですか。
  214. 吉丸眞

    最高裁判所長官代理者(吉丸眞君) 私選弁護人の報酬ということにつきましては、国選弁護人の報酬とはかなり違った性格もあろうかと思います。着手金のほかに、報酬金といたしまして無罪のときには幾ら、刑の執行猶予のときには幾らと、いわば成功報酬のような性格を持つものがあるわけでございますが、これが国選弁護人の場合に当てはまるのだろうかというような問題もあろうかと思います。
  215. 抜山映子

    ○抜山映子君 医療の場合には、たとえ保険であっても相当の報酬をちゃんといただいておるわけですが、国選弁護の場合は、先ほど同僚議員も言われましたように、記録の謄写とか交通費とか、そのほか点字なんかでございましたら点字の翻訳とか、もろもろ大変な実費がかかるわけでございます。そういうことを余り考慮せずに、先ほど対価と言われたにもかかわらず、ほとんど対価のていをなしていないのではないかと思うんです。そのために各地域の弁護士会から報酬の改善の要望が出ておりますね。これはどこどこから出ておりますか。
  216. 吉丸眞

    最高裁判所長官代理者(吉丸眞君) 直接私どもに出されておりますのは、日本弁護士連合会からでございます。そのほかに、各弁護士会から対応の地裁などに提出されているものが少なからずあるのではないかと思われます。
  217. 抜山映子

    ○抜山映子君 私が理解しておるのでは各地域の弁護士、北海道地域、東北地域、中部地域、関東地域、近畿地域、中国地域、四国地域、九州地域と、報酬の増額の要望が出ております。この国選弁護ですね、憲法で保障する被告人の弁護人依頼権、これに由来する一つの人権保障制度でございます。この人権保障制度である以上、有効にして十分な弁護活動が行われなければならない。ところが、現在の基準では有効にして十分な弁護活動にはとても及びませんですね。先ほど報酬基準を明らかにしてくださいと申し上げましたが、数字でははっきりおっしゃいませんでしたけれども、ここに弁護士会からいただいた資料がございます。基準報酬額五万五千円ですね。こういうようなことでは、時給にしますと、実働時間三十二時間と書いてありますが、一時間当たり千七百三十円強、こういうような非常に知的労働に対する対価としてはまことにお粗末な金額になっておるわけです。これは、被告人の人権保障のためにもぜひ改正していただきたいと思いますが、いかがですか。
  218. 吉丸眞

    最高裁判所長官代理者(吉丸眞君) 私どもも、これまでこの弁護人の報酬の増額につきましてはいろいろ努力をいたしてきたところでございますが、今後ともさらに努力を重ねたいというふうに考えております。
  219. 抜山映子

    ○抜山映子君 それから、ちょっと問題なのは、共犯事件において複数の被告人がある場合に一被告人一国選弁護人の原則が貫かれておらないわけです。これが大変弁護士にとって苦痛でございまして、一方の被告人の弁護をすると他方の被告人を批判せざるを得ないという状況が当然出てくるわけでございます。そういうわけで、国選弁護についても、これは答弁を要しませんけれども、一被告人一国選弁護人の原則を貫いていただきたいということを申し上げておきたいと思います。  それから、先ほど同僚議員の質問に国選弁護事件の比率をおっしゃっていただきました。地裁で六十一年度六三・〇%、簡裁で七九・二一%でしたか、過去との比較におきまして国選弁護事件はふえておると思いますが、流れとしてその推移はどうなっているか、把握していらっしゃいましょうか。
  220. 吉丸眞

    最高裁判所長官代理者(吉丸眞君) この五年間について見ますと、この比率は上がってきております。地裁について申しますと、昭和五十七年五七・四%、五十八年五八・〇%、五十九年六〇・五%、六十年六二・四%、六十一年六三・〇%と、このようになっております。
  221. 抜山映子

    ○抜山映子君 国選弁護士に対する信頼が非常に高い結果、こういうことになっておるのではないかと思います。しかしその原因の中に、必ずしも貧困が原因じゃなくて、国選で十分であろうというような人とか、弁護士を頼みたいけど適当に知らないから国選でよかろう、こういう人が中に入っておることが想像されます。果たして貧困がどうかという問題もあるわけでございまして、こういう点の多少のチェックが必要じゃないかということと、先ほど弁護士報酬は受訴裁判所の裁量で一方的に決定されるということを言われましたけれども、実際に弁護士が誠実で非常に時間をかけた、記録の謄写ももう全部やったというような場合、弁護士の方からもそういう記録を出させて、そして決定するという方が穏当なのではないか、こういう気もするわけでございます。ここで答弁を求めませんけれども、こういう点について検討をしていただけるかどうかだけ御回答いただきたいと思います。
  222. 吉丸眞

    最高裁判所長官代理者(吉丸眞君) 御指摘の点は確かに一つの問題でございます。私どもも認識いたしております。これまでもいろいろ考えてまいりましたが、今後ともさらに検討いたしたいと思っております。
  223. 穐山篤

    委員長穐山篤君) 他に御発言もないようですので、法務省及び裁判所決算についての審査はこの程度といたします。  次回の委員会は明二十七日午前十時三十分に開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時五十八分散会      —————・—————