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1987-10-15 第109回国会 参議院 決算委員会 閉会後第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十二年十月十五日(木曜日)    午前十時一分開会     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         穐山  篤君     理 事                 井上  裕君                 石井 道子君                 大島 友治君                 杉山 令肇君                 菅野 久光君                 峯山 昭範君     委 員                 井上  孝君                 板垣  正君                 河本嘉久蔵君                 沓掛 哲男君                 斎藤栄三郎君                 鈴木 省吾君                 中曽根弘文君                 永野 茂門君                 福田 幸弘君                 松尾 官平君                 宮崎 秀樹君                 守住 有信君                 久保  亘君                 佐藤 三吾君                 山本 正和君                 片上 公人君                 刈田 貞子君                 佐藤 昭夫君                 橋本  敦君                 関  嘉彦君    国務大臣        外 務 大 臣  倉成  正君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  栗原 祐幸君    事務局側        常任委員会専門        員        小島 和夫君    説明員        警察庁刑事局刑        事企画課長    古川 定昭君        警察庁警備局外        事課長      国枝 英郎君        防衛庁参事官   瀬木 博基君        防衛庁参事官   児玉 良雄君        防衛庁長官官房        長        依田 智治君        防衛庁防衛局長  西廣 整輝君        防衛庁教育訓練        局長       長谷川 宏君        防衛庁装備局長  山本 雅司君        防衛施設庁長官  友藤 一隆君        法務省刑事局総        務課長      原田 明夫君        外務大臣官房長  小和田 恒君        外務大臣官房領        事移住部長    妹尾 正毅君        外務省アジア局        審議官      谷野作太郎君        外務省北米局長  藤井 宏昭君        外務省中南米局        長        山口 達男君        外務省欧亜局外        務参事官     野村 一成君        外務省中近東ア        フリカ局長    恩田  宗君        外務省経済協力        局長       英  正道君        外務省条約局長  斉藤 邦彦君        大蔵省理財局国        有財産第二課長  上野 憲正君        厚生省生活衛生        局水道環境部水        道整備課長    小林 康彦君        自治省行政局長  木村  仁君        会計検査院事務        総局第一局長   疋田 周郎君        会計検査院事務        総局第二局長   志田 和也君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○昭和六十年度一般会計歳入歳出決算昭和六十  年度特別会計歳入歳出決算昭和六十年度国税  収納金整理資金受払計算書昭和六十年度政府  関係機関決算書(第百八回国会内閣提出) ○昭和六十年度国有財産増減及び現在額総計算書  (第百八回国会内閣提出) ○昭和六十年度国有財産無償貸付状況計算書  (第百八回国会内閣提出) ○国家財政の経理及び国有財産の管理に関する調  査(派遣委員の報告)     ―――――――――――――
  2. 穐山篤

    委員長穐山篤君) ただいまから決算委員会を開会いたします。  昭和六十年度決算外二件を議題といたします。  本日は、外務省及び防衛庁決算について審査を行います。     ―――――――――――――
  3. 穐山篤

    委員長穐山篤君) この際、お諮りいたします。  議事の都合により、これらの決算概要説明及び決算検査概要説明は、いずれもこれを省略して、本日の会議録の末尾に掲載することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 穐山篤

    委員長穐山篤君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。     ―――――――――――――
  5. 穐山篤

    委員長穐山篤君) それでは、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  6. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 防衛庁長官訪米御苦労さまでした。  逗子池子米軍住宅建設問題で事実上問われておりました市長選が十二日に開票しまして、御案内のとおりに富野氏が二千四百票の大差で勝利をしたわけです。このことは、知事調停案というんですか、これが事実上否決になりまして、拒否されまして、先般私がこの問題で質問に立ったときに、あなたから、高度な政治判断、こういう回答をいただいたにもかかわらず、対米土産になるのか、それとも既成事実をつくって選挙をリードしようとするのか知りませんが、くい打ち、測量の強行、こういったことが私は逗子市民の冷静な判断の中でボールが返ってきたんじゃないかと思っておるわけでありますが、この取り扱いをめぐって、報道にかかわるところだけですから私もよくは定かでございませんけれども施設庁予定どおりだと言っておりますし、防衛庁長官談話は出ておりませんが、いずれにしても、この事実を尊重すべきであるにもかかわらず、そこら辺が出てないような感じがするんですね。総理談話としては、これは残念だが、市民理解協力を求めて今後も努力が大切だ、こういう談話が出ておりますけれども、一体どのような取り扱いになるのか、私は、当然市民意思があらわれたんですから、それに基づいて協議が白紙に戻らざるを得ないんじゃないかと思うんですけれども、いかがでしょう。
  7. 栗原祐幸

    国務大臣栗原祐幸君) 選挙の結果で富野さんが再び市長になったということは、これは厳然たる事実であります。  ただ、御案内のとおり、この問題は長いいろいろな経過がございます。特に折衝過程の中で、神奈川県知事まで入りまして、最大限譲ってくれと。実はこれは日米安保に基づくアメリカとの折衝事でございますから、それはこちらだけの話じゃなかなかいかないんです。ただし、私は、これはいろいろあるだろうけれどもアメリカ側にも日本事情理解してもらって、ひとつわしの言うことを聞いてくれと、そういう前提のもとに実は神奈川県知事が中に入りましたので、いろいろとお話をした。その都度富野さんの要求を全部のんでいるわけだ。そうしてまとまった調停案でございますからね。しかも緑を守るということについても最大の配慮をしておるわけですよ。ですから、この調停案の成立の過程の中で十分に富野さん自体の意見を入れているわけです。これは私が言うんじゃなしに、おととい神奈川県知事定例記者会見をやりましたよね。これを見ると、神奈川県知事はまことに心外千万だという話なんです。これは、これに携わった人たちからすると、みんなそういう気持ちじゃないでしょうか。しかも住民というのは、神奈川県知事談話がもっと早く出ておったら、これは結果はまた違ったかもしれませんよ。選挙というものは、そのときそのときのいろいろの事情によって変わるものです。しかも、これは裁判じゃないんですから。裁判であれば、不服なら控訴するということがございますけれども、そういうものじゃない。したがいまして、私どもは法に基づいて整々と進めていく、この気持ちにはいささかも変わりはございません。
  8. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 大臣、確かに経緯はございまして、長洲知事が入ったことも承知しておりますがね。長洲さんが今どういう心境であるのか、ああいう発言をしていることもよく承知しております。しかしいずれにしましても、あなたもおっしゃったとおりにこの問題は約六年ですかね、問題が起こって。その間に、逗子市民意思を問ういわゆるりコールであるとか、もしくは選挙であるとか、そういった機会が五回ほどございまして、その五回の実態を見ますと、五回ともいわゆる建設反対する票が、賛成というかやむなしというか、受け入れる票を上回っておることだけはこれまた事実なんですね。この意味は非常に私は重いと思うんですよ。ですから、そこをどのように国が理解するのか、ここが今問われておるんじゃないかと私は思うのであって、この問題の処理というのは、私はやっぱりあくまで市民意思等を確認しながら話し合いで解決するという方が一番いい。これはもうあなたもその意味では変わりはないと私は思いますけれどもね。そういう意味でこの問題をひとつ理解できないのかということが一つです。  今あなたおっしゃったように、確かにこの問題は日本国だけの問題じゃなくて、アメリカとの関係もございます、安保条約に基づいておるわけですから。しかし、アメリカ国民から見ると、こういう形の手法というものは私はアメリカ国民にはよく理解できるんじゃないかと思うんです、逆に。あなた以上にアメリカ国民の方がなるほどと、米軍住宅建設問題は逗子市民が執拗に反対意思表示をしておる、これは理解できると思うんです。そうすれば私はこの安保の問題、アメリカの問題については余り気兼ねする必要はないんじゃないか、むしろ確かに日本国の中における処理をどうするかという問題が逗子に集中しておるわけですから、逗子でなきゃならぬという理由もないわけですね、逆に言うならば。そういう意味では、この際逗子市民が、もし逗子で入れるなら私の方は反対だということを五度にわたって意思表示をしておるわけですからね。これはやはり私は尊重していく、民意を尊重するというのが政治基本ですから、そこ辺を私はもっと、大臣、あなたは非常になかなか、何と言うんですか、理解のある大臣というふうに風評が高いんですけれども、私はそれにふさわしい処理があっていいんじゃないかというような気がするんです。総理も、せっかく先ほど申し上げたようにああいう談話を発表して、市民理解協力を求めて今後も努力継続は大切と、こう言っているわけですから、あくまで整々と行くとかいう、そういう何かつっけんどんな議論じゃなくて、ひとつ私は率直にこれを認めた上に立った処理が必要な時期に来ておる、こういうふうに思うんです。特にどう整々と進めるかわかりませんけれども、これをやっていくとすれば、例えば河川法との関連で市と協議をしなきゃいけないとか、もしくは計画区域池子川の整理の問題であるとか、調整池設置工事であるとか、いろいろ市と協議をしていかなきゃ進められないことは、これはもうあなたも御承知のとおりですから、むしろそういう意味では市民の結果が出されたこの機会を大切にとらえて、ひとつ工事をせっかちにするのじゃなくて、そういう話し合いの場に戻って議論をするということが必要じゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。
  9. 友藤一隆

    説明員友藤一隆君) 大臣の御答弁になる前にいろいろ過去の経緯、それから今後の市との協議の問題がございますので、私からまず御答弁を申し上げさせていただきたいと思います。  先生御指摘のとおり、何回か市民意思というものが、いろいろな面で示されたわけでございますが……
  10. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 もう過去の経緯はよく知っておるのだよ、だからちょっと今大臣に聞いておるのだからね。
  11. 友藤一隆

    説明員友藤一隆君) その点につきましては、そういった事情があるということで、私どもは当初千五十六戸でございますかの住宅計画いたしたのでございますけれども、逐次そういった御要望等を入れながら、計画米側といろいろ相談をいたしまして縮小して九百二十戸、それに今回八百数十戸というような形でもう本当にぎりぎりのところまで絞ってきておるということをひとつ御理解を賜りたいと思うのでございます。  それから市とのいろいろな今後河川等協議でございますが、これにつきましても、総理からもコメントがございましたように、こういった日米間の非常に重要な事業でございます。いろいろそういった点も今後も御理解をいただくように私どもも説得をいたします。それから河川関係につきましても私ども事情等も十分申し上げ、あるいは緑の保全等にも十分意を尽くしておるというようなことについても、さらによく御理解をいただくようにいたしまして、事業の遂行上必要な市との協議は十分やっていきたいというふうに考えております。
  12. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 あなたの方の答弁を私は求めてないんですけれどもね。  自治省行政局長、さっきの大臣もああいうお言葉なんですが、長洲さんがこの問題の調停案を出した。その調停案市民投票を通じて事実上拒否されたわけですね。長洲さんはそれに対してあれ以外に考えつかないとか言っておられるわけですが、これは私は今の長洲さんの気持ちとしてはわからないでもないと思うんです。しかし、新しい局面、市民意思が示されたわけですから、国と市の激突を静観するというようなことでなくて、投票の結果を尊重して行政に生かしていく、この対応が私はやっぱり民主主義基本だと思うし、行政の基調でなきゃならぬと思うんです。その意味自治省として、もしそういうことになれば私はやっぱり長洲さんをそういう面からの助言というものを考えてもいいんじゃないかと思うんですが、いかがでしょう。
  13. 木村仁

    説明員木村仁君) お答えいたします。  自治省といたしましても池子弾薬庫跡地の利用に関します従来の経緯及び今回の選挙経緯及び結果については十分認識しているわけでございますが、この事柄は基本的に関係する住民と国の権限ある機関との対応関係でございますので、それぞれの立場でどのように対応するかという問題につきましては自治省がこれに関与する立場にないのでございます。その点御理解をいただきたいと存じますが、いずれにいたしましても国と地方の双方がお互いの立場を尊重しつつ適切に対応していかれることを自治省としては期待をいたしている次第でございます。
  14. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 自治省は、例えば賃金であるとか、もしくは労働関係であるとかいえば早速乗り出していく癖を持っておるんですけれども、そのときにはせぬでもいい助言をしたりするわけだが、こういう肝心なことになると立場にないとはどういう意味ですか。関与する立場にないとはどういう意味ですか。私は助言ということがあるじゃないかと言っておる。行き詰まればそこに対して当然、県の気持ちはわかるけれども、しかしこの際円滑に、民意が示されたのですからそれに基づく潤滑油を、助言するのは当たり前じゃないですか。まだ新米だからよくそこはわからぬという意味ですか。どうなんですか。
  15. 木村仁

    説明員木村仁君) 自治省地方公共団体行財政運営につきます指導助言等はいたす立場になっておりますけれども、このような地域住民と国の関係機関との関係につきまして、これを調整していく制度上のシステムがないのでございますので御了承いただきたいと思います。
  16. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 この前大臣に私は言っておきましたが、第十六次の地方制度調査会答申の際にも、こういうことがあるからその場合には住民投票制度というものを制度化すべきであるという答申を五十一年にしておるんですよ。それをサボっておるのは自治省じゃないですか。政府じゃないですか。それがあったならこういうことはなかったでしょう。一遍に片づいたでしょう。だからそこら辺はあなたはそういうことじゃなくて一遍、きょうはいいでしょう、大臣とよく相談してきちっとした指導に当たりなさいよ。  そこで防衛庁長官、これは外務大臣にもちょっと聞いておきたいと思うんですけれども逗子問題というのがこれほど市民の中で問い直されてきたことは私はないと思うんですね。そして、逗子建設をするということになれば、逗子市民がやっぱり最も尊重されなきゃいかぬと私は思うんです。そういう意味逗子市民という意思表示が五度もされたわけです。そういう問題について、さっきの防衛庁長官答弁を聞いておると何か否定するような、市民意見意見としてそれはわかりますが、あくまでひとつ云々という、またこっちの答弁によると説得するとまで言っておる。説得するというこの知事調停案が拒否されたわけだ、住民投票で。そのことはアメリカとのことにかかわっても、アメリカ国民も私はよくわかると思うんだ、投票をやっておるんだから。そういう類のものだからもっと原則に戻って、そして民意に従って話し合いをするということがどうしてできないんですか。総理もそう言っておるんじゃないの。
  17. 栗原祐幸

    国務大臣栗原祐幸君) 確かに選挙でたびたび富野さんが勝たれたこと、リコールその他を含めてね、それを踏まえて富野さんがこの調停案に乗ってきたんですよ、向こうから言ってきたんですよ。ですから、長洲さんの出した案は、富野さんが市長として市民の信託を受けて、その責任において調停に乗ってきたんです、これ。ですから、民意を無視してということじゃないんです。たまたま今度の選挙でまたこういう結果が出たけれども、今までの過程において民意を無視してきているというものでは私はないと思うんです。  それから、アメリカの方はと言いますが、これはちょうどいいときだから申し上げますが、国際的な安保常識安全保障常識とそれから日本の意識とは随分食い違いがあるんですね。私は今度アメリカへ行きまして、ナイアガラで向こうの空軍の将校に会ったんです、将校といいますか、代表者に。そのときにペルシャ湾の問題が出まして、なぜ日本ペルシャ湾にいわゆる海上自衛隊を派遣しないんだ、それは日本憲法で否定されている、だめだ、できないんだ、それ、むやみなことできないんだ、こう言いましたら、そういう憲法は直したらいいじゃないか、アメリカだってどんどん直してきているんだと。ですから、アメリカの人は日本のこういう選挙理解するだろう、そんななまちょろいもんじゃない、むしろ日米安保のためにもっともっと日本国民協力すべきだ。ですから、アメリカが納得してくれるというのは、私の実感としてそれはないと思います。
  18. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 外務大臣、どうですか。
  19. 倉成正

    国務大臣倉成正君) 防衛庁長官から明快にお答えいただいたとおりだと思います。
  20. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 私は、もうこれ以上この問題、ちょっと時間がございませんから言いませんが、しかし長官ね、あなたはそうおっしゃりますが、アメリカ日本関係というのは日本国全体の問題ですわね、そうでしょう。しかし逗子にこれを建てるというのは逗子市民の問題でしょう。逗子に建てなきゃならぬという理屈はない。また、逗子の方もあそこに建てる必要はない、もっと町の中に入れて建てたらいいじゃないかといういろいろな考え方もある。そういった問題もいろいろあるわけだから私はもっと、長洲さんがせっかく骨折ってつくった調停案かもしれません、せっかくそのことを通じて国は受け入れたかもしれません。けれども、それが今度の投票の中で拒否されたことは、これは事実なんです、富野さんかどう言ってたかこう言ったは別にしてですよ。市民の一票をもってこれは拒否されたことは事実。だとすれば、それをもって整々とやるということはどういうことですか。市民に挑戦することですか。そういうことは私はすべきじゃない。これはまさに個々の役人の判断することじゃない、あなたが判断しなきゃいかぬ、政治家判断しなきゃいかぬ。だから総理も言っておるじゃないですか、残念だけれども市民理解協力を求めて今後も努力継続は大切だ、こう言っている。このことは何かといえば、私はやっぱり民意を反映した政治というものが基本であるということですよ。そうすればこの問題については、逗子市民意思がそれだけ明確に出た以上はそれに基づいて、さて新たな角度からどうするかということ、これは当然じゃないですか。  私は、政治家粟原長官に今まで期待しておっただけにちょっと失望感を今持っておるんだ。あなたは少しは、何というか、タカ派じゃなくて少しは、反中曽根とは言いませんがね、そういう感覚を持っておったんだけれども、これはちょっと勘違いしましたがね。しかし、これはひとつ大臣、あなたがどんなに踏ん張っても、このことでこの問題が解決するとは私は思いません。そして、それを強行していくと、私は先般申し上げたように、成田の二の舞になるんじゃないかと言いましたがね、同じようなことをまた起こしていく。こういうボタンのかけ違いだけはすべきじゃないということだけはこの際一つ申し上げておきたいと思います。  そこで、次の問題に移りますが、日米合同演習の問題についてお聞きしたいと思うんです。  九月の四日の閣議で、陸上自衛隊米陸軍共同訓練大分県の日出生台十文字原で行う、これは九州で初めてのことですね。十月八日に演習概要が発表がありました。その規模、内容についてどういうふうになっておるのか。また、大分県民はもちろん、九州住民は一方的な決定に対して非常に怒りというか困惑しておる。大分での演習理由は一体何なのか。まずそこからお聞きしたい。
  21. 長谷川宏

    説明員長谷川宏君) お答えいたします。  今回予定しております総合実動訓練は、昭和五十七年以来毎年一回実施しておるものでありますが、この種の訓練を実施することのできます演習場といたしましては、西部方面隊の管内、西部方面九州、沖縄では最大規模日出生台演習場で実施するのが最適であると判断したためであります。
  22. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 最適というのはどういう理由ですか。何が最適ですか。
  23. 長谷川宏

    説明員長谷川宏君) 今回の演習規模から見まして、この規模演習ができます場所としては九州では日出生台しかない、こういう判断に立ったものであります。
  24. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 大分県下での日米合同演習は、これまで数回閣議決定をしたりやりかけたことはあるんですよ。例えば三十七年の十一月、それから三十八年の九月、いずれも十文字原日出生台での日米合同演習閣議決定され、計画されたのです。けれども県民の強い反対運動がございまして、そのことが理由で延期になったのか、それとも米軍事情でなったのか、それは知りませんよ。いずれにしても二回とも中止になっておるのですね。その事情は今回も変わってないのです、現地の場合。そして、現地に入りまして、見ますと、住民皆さんも、あすこは御存じのとおりに、言うなら日出生台の農民と牧草民演習は共存しておるわけですね。そういう意味では、かつて日出生台米軍の接収した期間があるのですね。その間にやった米軍強奪行為、これは今でも忘れられてない、身にしみておるわけです。ですから、今回の場合でもその基本一つも変わってない、現地住民皆さん、断固反対です。至るところに反対のあれが立っていますよ。そういうものに対して、九州規模においてもこれは反対運動が今盛り上がってきておるんですけれども、私はこういう時期になぜ大分なのかということがわからない。現実に現地皆さんもなぜ大分ですかと、こう言うのです。米ソでは軍縮の方向に向かっておる。韓国では軍政から民主化方向大統領選挙が始まろうとしている。そういう時期にどうしてここの九州なんですかと、こう言われると、恐らく西部方面皆さん住民との懇談会に出ておるけれども説得できぬのじゃないですか、答弁ができないのじゃないですか。十三日の県議会の各派代表の中で西部方面の何というのですか、斎野というんですか、来てやっていますが、しどろもどろじゃないか、陳謝したり。私は、やっぱりそういう意味から見ると、この際ひとつ思い切って中止をなさったらどうかと、そう思うのですが、いかがですか。
  25. 長谷川宏

    説明員長谷川宏君) お答えいたします。  そもそも自衛隊が米軍共同訓練を行いますことは、日米それぞれの戦術技量の向上を図るという上で有益であるという観点からやっているわけであります。それからまた、日米共同訓練を通じまして、平素から自衛隊と米軍との戦術面等におきます相互理解意思疎通を促進して、相互連携要領と申しますか、インターオペラビリティーの向上を図っておきますことは、有事におきます日米共同対処行動を円滑に行いますために不可欠でありまして、日米安保体制の信頼性及び抑止効果の維持、向上に資するものであると考えているわけであります。  このために、陸上自衛隊におきましても、できるだけ多くの部隊に日米共同訓練機会を与えたいと考えまして、これまで東部方面隊、北部方面隊、それから東北方面隊及び中部方面隊におきまして共同訓練を実施いたしまして、所期の成果を上げてきておりまするところから、今回は、残ります西部方面隊の所在する九州において実施させるということを考えているわけなのであります。
  26. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 それはまあ、あなた方が決まり文句で再々そういうことを言っておるようだけれども、それが納得できないと言うのです、現地では。  それで、今回の日米共同演習を報道で見る限り、米軍が、在日米陸軍司令官と、これはハワイ駐在の第二五経歩兵師団ですか、第三旅団ですか、これは司令官が同じとも言われておるのですけれども、これがまあ千六百、車両が二百六十両、自衛隊西部方面総監部ですか、第四師団が千五百、二百八十車両と、こういうふうに公式には発表になっておるんです。そして実弾演習を含む実動訓練。ところが、西部方面の斎野というのですか、彼の十三日の県議会における説明を聞くと、千六百と千五百だから三千百なんですが、実際は四千名ぐらいと、こう言っておるのですね。おたくが十月八日に発表した公表と全然違うんです、数字が。これは一体どういうのが本当の内容なんですか。
  27. 長谷川宏

    説明員長谷川宏君) お答えします。  日本側が千五百名、それから米側が千六百名と申しますのは、訓練実施部隊、実際に訓練を実施する部隊の人数でありまして、そのほかに必要な管理部隊と申しますか、そういうものがあるわけであります。それは従来の演習すべてについてあるわけですが、それを訓練実施部隊には入れないわけであります。したがいまして、訓練実施部隊の人数としては千五百名と千六百名、足して三千百名という御説明をしてきているわけであります。そのほかに管理部隊等があると、こういうことであります。
  28. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 その管理部隊は何名ですか。
  29. 長谷川宏

    説明員長谷川宏君) ただいま調べます。
  30. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 そういう点から言うと、あなたがおっしゃるように単なる何か北、中部、東部ですか、そういうところは訓練ができておるけれども、西の方ができていないので、西でやるとすれば、この目出生台しかないので今回やるのだ、そういう子供だましの説明じゃないのじゃないんですか。いろいろな軍事評論家や専門家の意見を聞きますと、そういう意見とは全然違いますね。今度の演習に対していろんな意見もございますけれども、これは北海道が対ソ戦略構想であったと、しかし、朝鮮半島をにらんでの戦略構想の拡大から、九州米軍の最重要基地になって新たな極東戦略の転換になるんだと、こういう説もございます。  また一つは、九州では沖縄の在日米軍基地を中心に、佐世保基地の米海兵隊の再常駐、新田原に次ぐ築城基地の米軍の共同使用、さらに宮崎県のえびの市で建設されるVLF、こういうのを考えると、米陸軍の今回の演習による大分への上陸というのは、九州日米安保に基づく陸海空三軍の中枢基地、そういうねらいが込められておるのじゃないかと、こうも言われておるわけです。そうして、防衛庁はこういった説明に対してほとんど反論してない。そういう意味で、この問題について、もしあなたの方で御意見があるなら聞かせてもらいたい、反論があれば。今そういう説が九州では専らなのです。いかがでしょう。
  31. 西廣整輝

    説明員西廣整輝君) ただいま先生、九州地区におきますさまざまな防衛力整備に関連したものが、一連の例えば西日本防衛といいますか、日米の朝鮮半島をにらんだものではないかというお話でございますが、ただいまお挙げになりました中の例えばVLF、これは潜水艦に対する通信施設でありまして、これは日本としてはただ唯一のものであって、太平洋全般に、日本周辺の海域全般に展開をしている我が潜水艦との通信のために使われるというものでございますし、陸上自衛隊についていえば、平時はそれぞれの地域に災害派遣等のことも考慮して師団等を配備いたしておりますけれども、有事になりますと、やはりそのときの侵攻正面、例えば北海道なら北海道というところに各地域から増援をするということで、必ずしも現在配備されておる部隊がそのままそこで立てこもっておるというようなことではございませんので、今先生がおっしゃられたような御指摘は必ずしも当たらないというふうに考えております。
  32. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 あなたは当然そう言うだろうと思うのですがね。しかし、私の今言った説は、軍事評論家の皆さん意見は大体そう変わってないですよ。そこら辺はやはりもっと正直に僕は説明すべきではないかというふうに思うのです。  そこでね、先日、私、現地に入りましていろいろ現地意見を聞いてまいりましたが、二、三この問題についてただしておきたいと思うのです。  一つは、先ほど申し上げたように、この日出生台地区はずっと旧陸軍が演習場に使っておったのですが、戦後一時期に、約十年ほど、十数年ですか、米軍がこれを接収して朝鮮戦争を挟んでここを使っておったわけです。そういうときの悪夢というのか、米軍のいわゆる演習場と農業、牧畜業の共存というものを否定する行為、これが徹底的にやられたわけです。現にあそこに補償史に残っておりますけれども、こういう立て札が随所に立っておったわけです。日本の農夫は、地区内の演習、発砲で土地、家屋、穀物、家畜に損害が出ても、占領軍は責任を負わない、このもとに強行されたわけです。それがあるものですから、今度の場合もまた同じことがやられないという保証はないということで非常に危機意識が募っておるわけですけれども、そういうことはないということを盛んに西部方面皆さんは説得をしておりますけれども、とてもそういうことで応ずるような情勢ではない。  そこで私が回ってみますと、いわゆる共存しておるわけですから演習場の中の牧草も農民のものなのですね。農民が常時やっておるわけです。そしてまた自衛隊が大砲とか演習する合間には牛がのんびり演習場の中を回っておるわけです。だから自衛隊が演習最大の障害物は牛でしょうね、あそこでは。そういう実態があるのに、今度はくいを打って、そうして鉄条網はまだ私が行ったときには張ってなかった。境界線のくいは打っておった。これを、くいを打って鉄条網を張られると、牛の放牧ができない、牧草刈りができない、稲刈りができない、こういう状態になる。これは張るのですか、張らぬのですか。それとも張った場合はどのくらいの期間張るのですか。ここら辺お答えできますか。
  33. 児玉良雄

    説明員(児玉良雄君) 御説明いたします。  演習場内における道路の通行であるとか採草だとか放牧などにつきましては、地元に古くからの慣行がございまして、この慣行を尊重するということが、地元で陸上自衛隊側が西部方面総監、それから大分県の方が大分県知事、日出生台演習場関係する三つの町の町長の間で協定を締結しております。その協定の中で、今申し上げましたようなことにつきましては従来の慣行を尊重するということになっております。そして現実に年々採草、放牧をすることにつきましては西部方面隊と地元の利害関係者との間で御相談をいたしまして、いつからいつまで放牧ができる、あるいは採草ができるということを取り決めておるわけでございます。  それで今回の共同訓練につきましても、現在牛が放牧されている期間に当たりますので、演習の支障になるとか、あるいは不慮の損害を生ずるとかということが懸念されますので、演習の期間中は演習場内にさくを設けまして、その中でその期間だけは牛を飼っていただくということで地元と調整をしております。関係地区の代表の方とお話しいたしまして、きのうまでに全部話は済んだという報告を受けているところでございます。
  34. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 この内容はどういうことですか。
  35. 児玉良雄

    説明員(児玉良雄君) 共同訓練を実施している期間、演習場内に設けたさくの中で牛を飼うといいますか、区域を限ってしていただくという内容でございます。
  36. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 だから私が聞いておるのは、さくは張るのか張らぬのか、張るとすればいつ張るのか、いつ撤去するのか、そこを聞いておる。
  37. 児玉良雄

    説明員(児玉良雄君) 演習場内に自由に出てこないようにしなければなりませんので、さくを張ることを考えております。さくは演習が終わればもとどおりに撤去することになると思います。
  38. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 もう一遍ここは確認しておきますが、くいは打っておるわけですね。それに鉄条網をこれは演習の期間だけ張ると。もっと言えば十一月一日から十一月十日まで張るのだと、それ以後については直ちに撤去する、そういうことでいいのですか。
  39. 児玉良雄

    説明員(児玉良雄君) 共同訓練の期間中は、演習場の周囲であるとか、放牧地区についてはさくを設けますが、演習が終わればもとの状態に戻します。
  40. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 演習が終わるということは、さっき私が言ったように、十一月一日から十日が演習でしょう。なぜ私が言うかというと、六カ月という使用期間を持っていますね。だから私は念を押しているんだけれども、十一月の一日から十日まで、それが終わればさくは外すと、いいんですね。
  41. 児玉良雄

    説明員(児玉良雄君) いつからいつまでということを今ここではっきり申し上げることは難しいのですが、作業のことで二、三日すれることがありましても、演習が終わればもとの状態にいたします。
  42. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 わかりました。  そこはひとつ、二、三日という作業期間があるかもしれぬ、しかしいずれにしても原則は十日間が過ぎたら一切もとの状態に戻すと、協定の線に戻すと、こういうことですね。それはひとつそういうことで確認しておきますよ。いいですね。
  43. 児玉良雄

    説明員(児玉良雄君) そのとおりでございます。
  44. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 もう一つ聞いておきたいんですが、演習場の中を見ると、戦車の射場ですか、領収射場というのですか、何か製品の試射をするところらしいんですがね。それから通信施設、こういうのが次々に建っていっておる。通信施設などは二階建てで沖縄の嘉手納にあるあれと同じような通信施設をつくっておるようですがね。  これは常駐訓練ということが予測されて、そこに必要な施設と、こういうふうに理解せざるを得ないような状況だと私は思うのですが、いかがですか。
  45. 児玉良雄

    説明員(児玉良雄君) 私、現地事情について、今先生のおっしゃった工作物について具体的に承知しておりませんけれども、この共同訓練のために必要な施設を一時的に設置することはありましても、将来の常駐であるとか、そういうことを考えた上で施設を整備しているものはございません。
  46. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 あなたはあそこの現地の施設を見ましたか。私は、あそこに行って、この通信施設はいつできたのかというと、二年前できたというのです。それから、この領収射場はいつできたのかというと、これは三、四年前と、こう言っておるのですね。  それを聞くと、今私が申し上げたように、常駐訓練態勢というものがやっぱりその中にあるのじゃないか、こう思うのですが、それはありませんね。今でも一年間で三百二十日間あそこで訓練しておるのですよ。そのうち実弾訓練が百九十日です。これが実態なんです。  そこで日米共同部隊の常駐態勢による訓練ということが、当然やっぱりこれを契機に出てくるのじゃないかというのが、現地では非常に流布されておるわけですけれども、これはいかがでしょう。
  47. 児玉良雄

    説明員(児玉良雄君) 今先生おっしゃいました施設のうち、最近、私現地をこの共同訓練の準備が始まってから見ておりませんのでわかりませんけれども、通信施設のことを今お触れになりましたが、これはかねてから防衛力整備の一環として進めております防衛マイクロ回線の中継基地をつくったことがありますので、そのことを指しているのではないかと思います。  それから、今回共同訓練を初めていたしますけれでも、共同訓練に必要な施設で現在の施設だけでは足りないものにつきましては、この共同訓練の期間中、一時的に設置するものがありましても、将来、例えば部隊が駐在をすることを予定した施設をつくるなどということは今考えておりません。
  48. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 わかりました。  もう一つ聞きますが、この県と日出生台演習場の使用等に関する協定を九月十七日に更新していますね、自衛隊との間に。これを見ますと、あれですか、別府、日出、山香が抜けておるのですが、これはどういうことですか。
  49. 児玉良雄

    説明員(児玉良雄君) これは演習場の使用を円滑にし、自衛隊と地元の相互の便宜を図るということを目的に締結しているものでございまして、目出生台演習場行政区画上、玖珠、湯布院、九重の三つの町に全部含まれておりますので、今御指摘の山香とか日出とか、その周辺のものについてはこの協定の当事者にはなっていない。もしそういうことで必要があるということであれば、それは大分県知事もこの協定の締結の当事者になっておりますので、県の方にその辺のところの処理をしていただく、お願いをするということになるかと思います。
  50. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 あなた、現地へ行ってないからよくわからぬと思うんだが、それなら十文字原もやっぱりこういう協定を結んでおるのですか。どうなんですか。
  51. 児玉良雄

    説明員(児玉良雄君) 十文字原につきましても協定があることでございます。
  52. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 そうすると、この協定の中の細部事項に、「使用する武器は軽火器・火砲等、通常の武器とする。」と、「飛行機による銃爆撃は行わない」、こうあるわけですね。ところが、あなたの方の説明によると、いわゆるこの飛行機とは翼を固定したものであって、回転式のヘリコプターはこれは飛行機じゃないと、だからヘリコプターはこの中に含まれてないと、こういう説明を行っておるようですが、やっぱり地域の住民から見ると、何かペテンにかかったという認識になっておる。  そこで、私が県と関係市町村に聞いてみると、この協定の前に何ら説明はなくて、これは更新したわけですからね、去年の暮れごろに来て、口頭でそういう解釈だと、こういう話があったと、やっぱりちょっとけげんな顔をしておるわけですね。納得はしてない。ここら辺は一体どういうことですか。
  53. 児玉良雄

    説明員(児玉良雄君) 協定の細部事項に「飛行機による銃爆撃は行わない」という条項がございますが、ここで言う飛行機といいますのは、戦闘機などからの射爆撃が極めて危険であるという懸念が地元にあったという経緯から織り込まれたもので、ここにはヘリコプターは含まないというのは従来からの解釈であると承知しております。  それで、ことしの三月にヘリコプターからの射撃もしておりますけれども、このときも事前にお知らせをし、何ら問題がなく射撃訓練をいたしまして、それと同様の内容のものがこの九月に更新締結されたので、ここで言う飛行機にヘリコプターを含まないという解釈につきましては、関係の当事者間に疑義がないと理解をしております。
  54. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 しかし、これはあなたも御存じだと思うんだが、三十七年に米軍訓練の中でジェット機やそれからヘリコプターや、そういった訓練に伴って、弾がそれて部落の中に飛び込んで被害が起こって、その結果、三十七年にこの協定の中にこの項が入ったわけです。この項は初めからあったわけじゃないのです。そういう意味でこれは入れられておるわけです。だから、地域の皆さんから見ると、空を飛んでくるのだったらこれは飛行機だと思う。ところが、あなたは航空法第二条を理由にして、あれは航空機であっても飛行機じゃないと、そういう論法でしょう。飛行機というのは固定翼のものを飛行機といい、回転式ヘリコプター、これは飛行機じゃなくて航空機だと、こういう諭理ですよ。そんなことがわかるものですか、現地の中に。これはだましの術ですよ。そうでしょうが。何か御意見ございますか。
  55. 児玉良雄

    説明員(児玉良雄君) 航空法に御指摘のような規定がございますが、航空法は航空法の趣旨、目的に従って区分をされたものと思います。この協定は、先生今御指摘のような経緯もありまして織り込まれたものであり、ヘリコプターの射撃は、戦闘機などが高空からする射爆撃などとは性格が違うということから、この飛行機にヘリコプターは含まれないということで、先ほど申し上げましたように協定の当事者間でこの点についての疑義がないと私ども理解をしております。
  56. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 疑義がないのじゃないんです。きのうも玖珠の町長から電話がかかってきましたが、そんなことは言ってない。疑義があるのですよ。あるけれどもしょうがないと、こう言っておる。言うなら、そんなものが航空法二条にあったとは知らなかったというのだよ。飛行機の範疇にヘリコプターが入ってないなんて考えもつかなかったわけだ。しかし現地はそうは言ってないですよ。現地住民皆さんは、現実にその結果被害を受けたのは我々だ、だからそれはやめてくれと、こう言っておるわけです。それをまた、しかも十三日の、西部方面総監部の斎野光浩幕僚副長ですか、これが県議会への説明の中では、そのほかにもヘリコプターが二十六機ですか、迫撃砲が二十七門ですか、こうくるけれども、そのほかにも航空自衛隊の戦闘機も参加する、こう言っておる。これは戦闘機ならまことにこれは飛行機だ、この協定にある。違いますか。
  57. 児玉良雄

    説明員(児玉良雄君) 戦闘機は、ここで言う飛行機に当たると思います。
  58. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 この戦闘機も参加すると言っておるわけだ。まさに協定違反じゃないかと言っておるんだよ。どうなんだ。
  59. 長谷川宏

    説明員長谷川宏君) 航空自衛隊の戦闘機の支援のための参加、これは射爆撃は行いません。
  60. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 行わないなら、なぜ参加するなどと言っておるのですか。この中にちゃんと出ておるじゃないですか。県議会の各派代表の説明会の際に、十三日ですよ、迫撃砲二十七門、戦車十台、ヘリコプター二十六機のほか航空自衛隊の戦闘機も参加すると、こういう説明をしておるのじゃないですか。どうなんですか。
  61. 長谷川宏

    説明員長谷川宏君) まだこれははっきり決めたわけではないんですけれども、仮に航空自衛隊が参加いたします場合にも、これは支援のための上空をフライトするだけの参加ということでありまして、これは通常の射爆撃を含まないものであります。支援のための参加ということであります。
  62. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 そうすれば、あなたの説明を聞けば、まだ決めてないけれども、あなたの考えでは支援だと、こういう意味ですか、今の答弁は。私はそんなことを聞いておるのじゃないんだよ。今言うように飛行機は使わないということになっている、協定では。それを地域の人はヘリコプターも含めているわけだ、それをあなたのところはヘリコプターは違うと、こう言っておる。航空機だけれども飛行機じゃないと、こう言っておるわけだ。ところが、今度それに加えて、説明では航空自衛隊の戦闘機も参加すると、こう言っておるわけだ。参加する以上、この訓練に参加するんでしょう。そのことが協定に反しないかと聞いておるわけだ。
  63. 長谷川宏

    説明員長谷川宏君) お答えいたします。  これは射爆撃はいたしませんので、上空のフライトだけでございますから、ここで協定で言っている文言に全然当たらないというふうに考えております。
  64. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 あなたの方でそこまで強引におっしゃるんなら、もう一つそれなら聞きましょうかね。  こういう新聞が出ておるわけですがね。何かというと、「夜間こっそり陸揚げ」と、こう言っている。十月の七日ですか、米軍の車両二十四両ですか、これを大分の埠頭に夜間こっそり陸揚して、そして夜明けまでに演習地内に運び込んだということなんで、これについては県の方も今かんかんに怒っているわけです。一週間前に連絡するという約束しておったと。それが無視されたということが一つ。これは民間の船舶でチャーターでやってきたらしいけれども、その場合でも港湾管理者には入港届、使用届というものは普通出すものですよ、これは。夜中に、こそ泥じゃあるまいし、岸壁にこっそり上陸してやるということは、これでもって我が防衛庁を信頼してくれと言ってみても信頼できますか。これは、米軍の場合、米軍にかかわる地位協定五条三項で言っても通告の義務があるんじゃないですか、どうなんですか。
  65. 長谷川宏

    説明員長谷川宏君) お答えします。  十月の七日、大分港の大在埠頭に米軍のトラック等の車両が陸揚げされましたことは承知しておりますけれども、これは民間業者に委託しての輸送だったということでありまして、入港に関する手続等は当該民間業者が行うべきものであり、米軍が県当局に通知等を行わなければならない性格のものではないというふうに理解しております。
  66. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 そうでしょう。あなたのところは何かそういうことをまた弁解しておるようですね。それは知っています。しかし、県の総務部長も言っておるように、わざわざそのことで防衛施設局に電話を入れて、ちゃんと事前に連絡してくださいよと念押ししておったというんです。にもかかわらず今言ったような答弁を繰り返しておるらしい、あなたの方の答弁をね。こういうようなことをやりますと、だんだん信頼関係は薄れますわね。  ですから、今あなたがおっしゃったようなことを、航空機であるけれども飛行機じゃないとか、航空機が参加するけれども射撃訓練はやらないと思うとか、そんなことが信頼できますか、現実問題として。そういうのが今現地では大変な問題になっておるんですよ。これは私は、防衛庁長官ね、あなた何か田舎の方でぼそぼそ怒っているようなことぐらいにしか思っていないかもしらぬけれども、こういう実態なんですよね。こういうことが、いや防衛庁の常套手段であって決して悪くないとまた強弁するかしれませんがね、これでは民主国家の中における自衛隊と言ってみたって通用しませんよ。いかがですか。
  67. 栗原祐幸

    国務大臣栗原祐幸君) 私も今ここでいろいろお聞きしたのでございますが、少なくとも住民皆さん方に防衛庁、自衛隊がごまかしておる、こういう印象を与えることはよくないと思います。したがいまして、ごまかしているんじゃない、必要上どうしてもこれはやらしてもらいたい、そういう趣旨を徹底をさしたいと思います。
  68. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 それでは長官、そういう前提に立って、今あった私とのやりとりを聞いて思ったと思うんですが、現地は非常に不信感に燃えてますわね。そして、九州一円を含めたこの反対闘争になっておるんですが、私は今幾つか申し上げましたが、ここら辺は不信を除去するためにも、誠意をもってひとつ取り除いていかなきゃならぬと思うんですが、この際そのためにも中止ができなければ演習を延期するなり、そうして事態を平静な中で解決すると、こういう方法がとられてしかるべきだと思うんですが、いかがでしょう。
  69. 栗原祐幸

    国務大臣栗原祐幸君) 佐藤さんとそこら辺になると違ってくるんですね。私どもは、日米安全保障というのは非常に大切でございますから。できるだけこの問題については前向きにやっていきたい、佐藤さんの方は、これに反対でございますから、これはできるだけ消極的にかぎをかけるということのその差異がございますから、これは埋まらないと思います。  ただ、御指摘のとおり、住民に非常な不信感をもしもたらしておるとするならば、そういう我々の意図はこうでございます、ぜひ御協力いただきたい、演習によっていろいろトラブルが起こらないように最善の注意をいたしますと、それは誠意をもって呼びかけなきゃならない。このことについては私はさらに徹底をさしたいと、こう思います。
  70. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 あなたとしてはそういう答弁をするだろうとは思っておりました。しかし率直に言って、ここの共同演習というのを見ると、あなたはそう言いますが、五十五年までは白書の中でもこの演習問題というのは取り上げてないんですよね。五十五年の白書を見ると、日米防衛協力の指針ですか、ガイドラインですか、これが五十三年に出ていますが、これ以後急ピッチでエスカレートしておるわけです。  私は、この際だからひとつ、時間ございませんけれども、そこまでおっしゃるなら、一体これがどういう効果があるのか、共同演習。単なる訓練を熟練するということだけじゃないと思う。ある意味では、これを通じて仮想敵国に対する抑止効果を持つということも白書の中で書いていますわね。こういうことについて、あなたは率直にそれをうなずけますか。いかがでしょう。
  71. 長谷川宏

    説明員長谷川宏君) お答えします。  昭和五十三年あるいは五十四年ころの防衛白書におきまして、先ほど申し上げました戦術技量の向上という、その点の企図だけを記述していたということは確かにございますけれども、当時におきましても、戦術技量の向上だけを目的として共同訓練を行っていたということではございませんで、有事におきます共同対処を円滑に行うこともあわせて目的としていたものであります。五十五年以降の記述につきましては、この点を少し詳しく説明することとしただけのことであります。  一般的に白書の記述は、そのときどきにおきます施策の重点の置き方とか、あるいは説明の仕方等によって若干異なることがありますけれども、そういう趣旨のものであります。
  72. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 時間があればゆっくりFSXその他やりたかったんですが、時間ございませんから大臣に一言だけ聞いておきたいんですが、私は日米共同演習というものは、白書の中で強調しておるような式でいきますと、これはFSXがそうでありますように、だんだん何というんですか、憲法の枠だけじゃなくて、あなた方が言う、政府が言ういわゆる専守防衛というその枠も飛び越えて、そうしてどこまで発展するのか非常に危機を覚えますね。  そういう意味で私、長官一つ聞いておきたいと思いますのは、一体どこまでエスカレートさせていく予定を持っておるのか、計画を持っておるのか、それが一つ。それと、日米合同演習のようなやり方は、ある意味では本土決戦というものを、有事とは言いながらそこら辺を想定しておることも間違いないと私は思うんです。だとするならば、一体本土決戦ということが将来その想定の中に入っておるのかどうなのか、ここらについて長官の御見解を承って、私のこの問題に対する質疑を終わりたいと思うんです。いかがでしょう。
  73. 栗原祐幸

    国務大臣栗原祐幸君) 我が国が侵略される場合にどういう対応になるかというのは、いろいろのケースがありますので一概に言えないと思います。ただ、日米安全保障体制があるというのは、日本日本だけの力で守れないと、したがってこれは必要最小限度のものだけ持つと、足らざるところはアメリカの力をかりるということになっているわけです。したがって、有事に際しましてどう対処するか、アメリカとの共同訓練、共同対処をどうするかということは非常に重要なことでございまして、そういう憲法の枠の中での行動は当然だと思います。
  74. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 憲法はどうでもいいんだな。
  75. 栗原祐幸

    国務大臣栗原祐幸君) 憲法の枠の中でと、こう言ったんです。
  76. 久保亘

    ○久保亘君 私は、主として外務大臣に対して二つの問題をお尋ねしたいと思います。一つは第十八富士山丸事件の解決についてであり、もう一つは金大中氏拉致事件の真相究明についてであります。  最初に、第十八富士山丸船員の釈放問題については、不幸にして国交がない状況の中で起きた事件でありますが、外務省においてもこれまでいろいろの努力を重ねられたことを承知いたしておりますけれども、未解決のまま既に四年を経過しようといたしております。現在この問題の解決について外務省としてどのような努力をされているのか、今日の状況について御報告をいただきたいと思います。
  77. 倉成正

    国務大臣倉成正君) 政府といたしましては、ただいま先生お話しの第十八富士山丸の問題を日朝間の最大の懸案の一つとして重視いたしております。これまでもあらゆる方途を尽くしまして日本人二名の船員の方々の早期釈放、帰国のため北朝鮮側に対しまして働きかけてまいりましたが、残念ながら釈放、帰国はいまだ実現いたしておりません。家族の方々の心情を思いますと、本当に胸の痛む思いでございます。こういう中で政府としては、久保先生も同行されました社会党の代表団が訪朝の際に、土井委員長が金日成主席に対し直接本件を提起されたことを多といたしております。右訪朝の結果を踏まえまして、新たな決意を持って本件の解決に向けて一層の努力をいたしたいと考えておる次第でございます。  本件問題の解決のためにあらゆる方途を尽くす所存でございますが、北朝鮮との間でも何らかのルートで話し合うことが必要であると考えております。何分にもしかし、本件は二名の日本人の身の安全にかかわる問題でもございますので、交渉等の詳細を対外的に明らかにすることによりまして、問題解決がより困難となるという可能性も排除されませんので、これ以上申し上げることはできない点をぜひ御了解をいただきたいと思うのでございます。最善を尽くしてこの問題に取り組んでおる次第でございます。
  78. 久保亘

    ○久保亘君 問題を速やかに解決することが重要でありますから、私は今の外務大臣がお答えになりましたことを十分理解できますが、先般、社会党の土井委員長と金日成主席との会談に当たって、金日成主席から両国の該当機関同士の協議を行って解決の道を探ったらどうかという公式な提案がありまして、このことについては既に中曽根総理を初め政府にも御報告を委員長が申し上げたところであります。  この共和国側から提案されております該当機関同士の協議ということについて、この協議が正式に開かれる見通しはついているのかどうか、その点をお聞かせいただきたいと思います。
  79. 倉成正

    国務大臣倉成正君) 御案内のとおり、北朝鮮との間には今国交がございません。したがいまして、どういう形で今御指摘のような点をいたすかということについては今いろいろ工夫をしておるところでございまして、詳細についてこの席で申し上げることは差し控えさしていただきたいと思うのでございます。
  80. 久保亘

    ○久保亘君 この会談の際に、土井委員長の側からは速やかな解決を強く要請をいたしておりまして、その時期的なめどについても、できれば年内に解決できるようにというお話を申し上げまして、そのことについて金日成主席の方も速やかに解決することについては全く同意であるということを表明をされているのであります。  ただその際、これは共和国側においては司法機関の問題であるから、国家主席の立場での司法機関に対する直接介入は非常に難しい問題である。しかし、両国間に協議が行われるということであるならば、少なくとも司法機関による措置を延期してこの協議における合意を待ちたい、こういうことを言われているのでありまして、もし日本側が協議を開始することについて非常にちゅうちょをするということになれば、共和国側においてこの二人の船員は裁判に付せられるということになるだろうと思うのです。私どもが聞いておりますところでは、共和国の国内法において現在の容疑を裁判で処置されるということになれば、最低十五年の刑期に処せられる法律上の問題である、こういうふうに聞いておりまして、これは人道上からも極めて重大な問題だと考えております。  したがって、日本政府として、この共和国側の国家主席が正式に提案をいたしました両国政府間の協議を速やかに開くことについて、全力を挙げることが必要だと思うのでありますが、既に提案がありましてから半月を経過をいたしておりますが、どこまで進んでいるのか御報告が難しいということでありましたけれども協議が行われることについて前進しているのかどうか、その辺のことについては御報告いただけませんか。
  81. 倉成正

    国務大臣倉成正君) この問題につきましては、ただいま先生お話しのように、この四年近くの間我々ずっと頭を悩ましてきた問題でございまして、あらゆる機会をとらえまして二人の日本人船員の方の釈放について努力をしてまいりましたけれども、なかなかその実績を上げるに至らなかったわけでございまして、今回の土井委員長の訪朝を機会に、久保先生も御同行いただきまして、一つのきっかけができたと思っております。したがって、これを最大限に生かしまして解決をしたいということで今鋭意進めておるところでございます。したがって、その端緒、相手があることでございますから、今どこまでどうしてと、これはちょっと申し上げにくいわけでございますけれども、少なくとも前進しつつあると考えていいと思います。
  82. 久保亘

    ○久保亘君 これは、先ほど申し上げましたように、二人の船員の釈放を行わせるということが極めて重大なことでありますから、その経過について御説明いただくことが、大変時期として今は、はばかられる問題であるということでありますならば、これ以上お尋ねをすることを留保したいと思うのでありますけれども、今外務大臣が前進しつつあるということでありましたので、ぜひ両国がそれぞれの立場を尊重し合って、誠意のある対応で速やかに解決できるよう全力を尽くされるように強く要請を申し上げておきたいと思います、  次に、金大中事件の真相究明についてでありますが、金大中事件の真相究明は、第二次政治決着において終わったと考えておられるのかどうか、まずその点をお尋ねいたします。
  83. 倉成正

    国務大臣倉成正君) 先ほどの富士山丸に関連いたしまして、前進と申し上げましたのは、協議についての努力が前進しつつあるということでございますので、協議そのものが前進しているというわけではございませんので、この点はちょっとつけ加えさせていただきたいと思います。  さらに、金大中事件につきましてのお尋ねでございますが、金大中事件は不幸な出来事であったと私ども考えております。同事件の外交的決着については、その当時の日韓双方の最高首脳が、日韓関係の大局を考えて高度の政治判断を下したものでございまして、現在の内閣もこれを引き続き尊重していく態度を維持してまいりたいと考えておる次第でございます。
  84. 久保亘

    ○久保亘君 私がお尋ねしているのは、事件が発生をいたしましたときから、歴代内閣は真相究明は内外に納得される筋の通ったものとして行われなければならぬということを主張されておりますが、この真相究明は政治決着で打ちどめになって、これで終わりなのかどうかということであります。
  85. 倉成正

    国務大臣倉成正君) 政治決着については、韓国側からの公権力の行使が明白になった場合には、これを見直すことがあり得るというのが政府の終始一貫した立場でございます。
  86. 久保亘

    ○久保亘君 それでは、今おっしゃったことで、私も政治決着は政治決着として真相の究明というのは引き続き行われなければならぬ問題だと、こう思っているのでありまして、金大中事件そのものは真相を日本国民は知らされていないわけです。政治決着で韓国政府の側が金大中事件については公権力の介入はなかったということを主張しているのでありまして、それを日本政府として、あなたは高度のと言われますけれども、これは高度なのか低度なのかわかりませんけれども、そういうことで終えられておる。そうすると、政治決着というのがある以上、後何か自然に問題が出てこなければもう真相究明はやらないのであって、そうではなくて、政治決着は政治決着であるが、このことについて内外で納得を得られるような筋の通った真相究明というのは事件としてきちんとやるべきものだと考えておられるのか、もうこれ以上この問題には触れない方がよろしいと考えておられるのか、その点をお聞きしているわけです。
  87. 倉成正

    国務大臣倉成正君) ただいまの件につきましては、警察当局において引き続き捜査を継続しておると承知しておる次第でございます。
  88. 久保亘

    ○久保亘君 この問題につきましては、事件が起きました直後における政府立場というのは、韓国大使館の一等書記官金東雲がこの事件に直接関与しているという証拠をつかんだので警視庁に任意出頭させてほしいという申し入れがあり、当時の二階堂官房長官は記者会見において、捜査事実に基づいて今度の事件に韓国政府機関が関与しているという事実を確認せざるを得ない、筋を通して真相を究明するのがこの事件に対応する政府基本方針であることは変わりがない、こういうことが事件直後の政府立場であります。また、高橋警察庁長官は、普通の刑事事件ならば逮捕状を請求できるケースだ、こうも言われておるのでありまして、三井捜査本部長は記者会見で、金東雲は容疑者だと断定しているということも言われております。  それから、歴代の総理大臣のこの問題に対する発言を私はずっと調べてみたのでありますが、第一次政治決着が行われましたときに田中総理大臣は、新事実が出てきたときにはそれに応じた措置をとることを了承願いたいというのを金鍾泌首相に対して言われておりますし、当時の三木副総理は、この事件は滞日中の金太中氏を韓国関係者が不当に連れ去ったのが原点である、政府としては金大中氏の再来日、金東雲に対する日本での取り調べという基本方針を貫くべきだと言われております。  そしてその後、宮澤外相の訪韓によって七五年に第二次政治決着が行われ、この政治決着を前にして韓国の側は捜査本部を解散をいたしております。しかし、日本の方では、この捜査に当たりました警察当局は、この問題についてこれ以上の証拠は要らない、逮捕して供述をとれば十分だという御発言もあったり、また第二次政治決着の直後に、駐日アメリカ・スミス公使は本国国務長官あてに電報を打ちまして、日本の警察は、宮澤の――これは当時の外務大臣のことであります、本件の政治的決着に対しいまだ非常な不満を有しており、KCIAの直接の関与を証明すべく、さらに一層の熱意を持って動くこととなろう、こういう打電をされております。  引き続いて、福田内閣は、参議院の予算委員会において総理大臣答弁として、政治決着と刑事事件は別個のもので、刑事事件はあくまで追及し、その結果、成り行きいかんでは政治的問題の決着もまたつけなければならぬ、こういう御発言があっております。大平さんが総理大臣なられました後も、主権侵害について疑惑がないと言っているのではない。広く深い疑惑があることは認める。しかしその証拠を掌握していない。人権、主権、外交などいろいろな面から大きな問題だが、新しい証拠が出ない限り、政府が韓国に対して主権問題を持ち出す立場にない、こう言われております。  歴代の内閣は、鈴木内閣においても大体同じような立場を述べられておりまして、最終的にこの問題は中曽根内閣の手によってこの金大中事件捜査本部が八三年に解散されておるのであります。そして今日に及んでおりますが、警察庁としては、この問題を刑事事件として今日も捜査を継続中と聞いておりますが、その辺の経緯について警察庁の御報告をいただきたいと思います。
  89. 国枝英郎

    説明員(国枝英郎君) まず、捜査本部の解散の経緯について御答弁申し上げます。  金大中氏拉致事件につきましては、警視庁に特別捜査本部を設置いたしまして、長期間にわたる捜査を行ってきたわけでございます。しかしながら、事件発生から十年が経過いたしまして、被疑者を含む重要関係者が国内にいないといった事情など、捜査を進める上で当面直ちに対応し得ない特殊な状況があるということ、さらには現在の情勢下で新しい捜査資料の収集が極めて少なくなってきていること、こういう点を考慮いたしまして、捜査の体制も捜査の実情に見合ったものにしようということで、五十八年八月一日特別捜査本部を解散したわけでありますが、以後五名の専従捜査員をもちまして、いわゆるFBI方式によって捜査を継続しておるところでございます。
  90. 久保亘

    ○久保亘君 警察庁としては、この事件についての解明は政治決着を受けて非常に困難になり、そして中曽根内閣によって捜査本部が解散された後は、積極的な捜査を行うということではなくて、真相を究明するということではなくて、政治決着の上に立ってこれまでの捜査の結果をいろいろ取りまとめておる、こういうことでございますか。
  91. 国枝英郎

    説明員(国枝英郎君) まず政治決着と捜査の関係と申しましょうか、その点につきまして、私ども警察はあくまで捜査機関でございます。したがいまして、高度の政治上の問題につきまして言及すべき立場にないわけでございまして、あくまで事件捜査の観点から引き続き事案の真相解明のために捜査を継続しておるところであります。  捜査の手法と申しましょうか、どういう事項について捜査をしておるかという御質問かと存じますが、既存資料、これは非常に膨大なものがございます。こういったものの再検討ですとか、あるいは新たな情報の掘り起こし、こういう点に中心を置きまして捜査を推進しておるところでございます。
  92. 久保亘

    ○久保亘君 今日もこの事件の経過の中で警察庁の幹部が表明をされてきた、金東雲がこの事件の容疑者であるということを断定をされているそのことについては、現在の捜査継続の中でも変わっていない、こういうことでございますか。
  93. 国枝英郎

    説明員(国枝英郎君) そのとおりでございます。
  94. 久保亘

    ○久保亘君 それでは外務大臣にお尋ねいたしますけれども、この第一次、第二次の政治決着というのは、あなたが言われましたように高度の政治判断に基づいてこの事件を収拾をするという目的で行われたのでありまして、したがって真相はふたをされた、真相究明はふたをされたというのが私どもの率直な感じでございます。  だが、歴代の総理大臣関係大臣が国会や記者会見等で述べられておりますように、新しい事実が出れば政治決着は見直すという立場は今日も貫かれておると思うのでありますが、それはそのとおり理解をしてよろしゅうございますか。
  95. 倉成正

    国務大臣倉成正君) そのとおりでございます。
  96. 久保亘

    ○久保亘君 では、御質問の前提として、主権侵害というのは他国の公権力が了解なく行使をされた場合を言うというふうに解してよろしゅうございますか。
  97. 斉藤邦彦

    説明員(斉藤邦彦君) そのとおりでございます。
  98. 久保亘

    ○久保亘君 では、韓国の中央情報部、普通KCIAと呼ばれるこの機関は、韓国の公権力であるということは間違いありませんね。
  99. 谷野作太郎

    説明員谷野作太郎君) そのとおりでございます。
  100. 久保亘

    ○久保亘君 では、私がきょうお尋ねしたい点を申し上げたいのでありますが、韓国における最も有力な月刊誌であります「新東亜」十月号に、金大中拉致の内幕、李厚洛証言、同じく「月刊朝鮮」十月号、李厚洛が明らかにした金大中拉致事件という、事件当時のKCIAの部長李厚洛の証言が掲載をされておりますが、この二つの李厚洛証言について外務省は検討をされておりますでしょうか。
  101. 谷野作太郎

    説明員谷野作太郎君) 両雑誌に掲載されたところを私ども詳細に承知いたしております。
  102. 久保亘

    ○久保亘君 捜査を継続中の警察庁の方は、これを御検討になっておりますでしょうか。
  103. 国枝英郎

    説明員(国枝英郎君) 内容は承知いたしております。
  104. 久保亘

    ○久保亘君 では、その李厚洛氏が事件当時KCIAの部長であり、そしてその本人が直接証言をいたしましたように、もしこの事件に李厚洛氏が関与したとするならば、これは公権力の介入ということになると思うんですが、外務省いかがですか。
  105. 谷野作太郎

    説明員谷野作太郎君) 万一そのようなことがございましたならば、先生仰せのとおりでございます。
  106. 久保亘

    ○久保亘君 十分検討をされたんですから、万一ということではないと思うのでありまして、李厚洛氏の証言の内容をつぶさに検討をいたしますと、これは明らかにKCIAの部長がこの計画に加わり、そしてこの計画を責任ある立場で遂行させたと解せられるのでありますが、この点についてどのように判断をされておりますか。
  107. 谷野作太郎

    説明員谷野作太郎君) 私ども、ただいま御説明いたしましたように、雑誌の掲載する記事につきまして詳細に精査いたしました。  雑誌の記事をお読みになりましても、ただし、雑誌の中でいみじくも書いてございますように、結局この事件、金大中氏の拉致事件というものが一体だれの手によって指示されたのかということは、李厚洛氏のインタビューを通じても明らかにならなかったということが書いてございます。私どもはそのようにあのインタビュー記事を理解いたしました。  それから第二点は、その後李厚洛氏が、先生もあるいは御存じだと思いますが、このインタビュー記事につきまして以下のようなことを申しております。すなわち、九月の二十八日の記者会見におきまして、自分すなわち李厚洛氏が話したことと聞いた側との間にはニュアンスの差があると。インタビューで、自分から政治組織や公権力が介入したということを認めたことは一切ないというふうに記者会見で断言しておりますので、私どもはそのように理解いたしております。
  108. 久保亘

    ○久保亘君 日本の主権を侵害されたかどうかということを日本立場で考えます場合には、そういう読み方というのは私は大変問題があると思うのであります。  私もこの証言の内容を調べてみましたが、重要な点は、拉致事件については内容を知っているが、私がしゃべる立場になく今日まで口を閉ざしていたと。まずそういうことがございます。彼はこの事件が起きましたその年のうちに、この事件が絡んでKCIA部長を解任をされたのであります。しかも全然関与しない者が言えない発言が幾つもあるんであります。これは最初から拉致事件であり、殺そうとしたものではない。ホテルから拉致しようとした計画であり、絶対に殺害しようとしたものではない。こういう発言がございます。これらの点は訂正されておらぬのであります。  そしてまた、金鍾泌氏、首相が日本に謝罪特使として行って戻ってきたときに、私は彼に済まないと言ったと。それから、アメリカが事前に知っていれば、駐韓大使かCIAが私のところに来て、事実でないことを望むとか、中止しろと言うだろうと。それは言わなかったと。だからアメリカは知らなかったということを言っているのであります。  それから、最も重要な点は、拉致の動機について、この事件で私も人間的には苦しい気持ちも多く、心を悩ませもした。私なりの国家安保論があり、私なりに国家の将来を見通す目があったからだ。ただ率直に言って、金大中氏に済まないと思ってきたし、国民にも済まないと思ってきたという発言もございます。そして、これは今あなたが言われたニュアンスの差だという訂正の記者会見がございましたくだりでありますが、はっきり言うが、これは私がやったことだ、しかし、どんな人々とどうやってこれをやったかについては、もっと多くの問題が派生するのでそれ以上は明らかにできない、こういうことになっているのであります。  そしてまた彼は、私も国家のことを心配し、金大中氏も国家のことを心配した。間違いを犯したのなら処罰を受けなければならないだろうとまで、自分の立場について彼はこのインタビューの中で言っておるのでありまして、李厚洛氏の証言全体を通して李厚洛氏がこの事件に重要なかかわりを持たなければ言えない証言が随所にあらわれているのでありまして、これを私がやったというくだりについてはニュアンスの相違であるということだけでもって片づけられる問題であろうか、こう思うんですが、これらの点についてはどういうふうにお読みになりましたか。
  109. 谷野作太郎

    説明員谷野作太郎君) もとより李厚洛氏は当時KCIAの長官立場にあったわけでございますから、かかる重大な事件が起こったにつきましては、同氏の立場でいろいろ調査もされたでしょうし、そういう記憶があるいは残っておるのかと思います。したがって事件について李厚洛氏が全く内容を知らないということではないと思いますので、そういう記憶がよみがえってあのような記事になったのだとは思いますけれども、いずれにいたしましても、その御本人がその後の記者会見で、先ほど来問題になっております政府の公権力の介入というものがこの事件の過程であったということにつきましては、明確に否定しておるわけでございますから、私どもはそのように素直に理解しておるということでございます。
  110. 久保亘

    ○久保亘君 非常にその辺になりますと詭弁になるわけでありまして、李厚洛個人の関与とKCIA部長としての立場からの関与というものを一体区分できるのかどうか、私はそれはできないと思うのでありまして、少なくとも李厚洛氏が証言している全体の内容、かなり長時間にわたって行われたインタビューだと報告されておりますが、これらの問題からは明らかに当時KCIA部長であった李厚洛氏がこの事件に重大なかかわりを持ったということは極めて明らかであります。  そして、この雑誌が出されるという前の段階で韓国政府は、李厚洛証言の掲載は国益を損なうということで両社に対して警告し、そしてこの雑誌の発行に権力でもって介入をいたしております。そのときの警告は、十四年前に起きたこの事件は、日韓両国が相当期間捜査の結果、公権力の介入はなく、司法的、外交的に決着がついたものだ、こう言っておりますね。日本では司法的に決着がついたとは皆さんも思っておられないのでありまして、警察はなおこれを捜査中と言われております。はっきりしない発言を土台にこの事件を再論することは、国際外交上重大な国益損失を招くおそれがあるからやめろ、こう言っておるんであります。  これに対して東亜日報と朝鮮日報の側は公開質問状を出して、国民の知る権利を制約しなければならないほどこの李厚洛証言を報道することは国家利益に反するのかということで両社の対決がありまして、そして最終的には、両誌の編集部が、そのまま出した場合、外交問題になるおそれがあるため、編集部みずからの判断で証言の一部を削除、修正した、こう言って、この雑誌は政府も了解して発刊されることになるわけでありまして、これは私は、インタビューで行われた李厚洛氏の証言というものは訂正の記者会見の方に重点を置くべきでなく、政治決着をもとにした政府の国益という立場からの主張に基づいてその訂正が加えられたと見るのが正しいと思うのであります。  したがって、このことに対して韓国国会において、孝雄煕文公相は、インタビューに応じた李厚洛氏が政府当局に憂慮を表明し、承知したので、政府は国際関係上国益損傷を招くかもしれないとの憂慮から、インタビュー全文とか職務上の機密漏えい部分を報道しないよう両社に協力を求めたと、これは国会における李文公相の発言であります。  こういうふうになってまいりますと、私はやはりこの李厚洛氏の証言というのは、今日まであらゆる捜査の段階でも明らかにされなかったKCIAの最高幹部のこの事件に対する関与の疑いを、非常に強くあらわしたものだと見なければならぬと思うのでありまして、そういう意味では歴代の総理大臣が国家の主権を侵害した疑いは、これは究明し、明らかにしなければならぬという立場をとっておられるのでありますから、少なくともこの李厚洛証言について、事実を徹底的に究明をしていく立場を外交上も司法上もおとりになることは極めて重大な問題ではないかと、必要な問題ではないかと思うのでありますが、いかがでありますか。
  111. 谷野作太郎

    説明員谷野作太郎君) 私どもが目にいたしておりますのは、あくまでも市販されております両雑誌の内容でございまして、その雑誌ができ上がる過程にいかなることがありましたのか、私ども承知する立場にないわけでございます。しかしながら、先ほど来申し上げておりますように、御本人が若干の誤解があったと、そして公権力の行使についてはいずれにしても明確に否定しておられるわけでございますから、私どもはそれを重く受けとめて、そのように対処しておるということでございます。  なお、先ほどちょっと先生がお触れになりました、例えば自分が手を下したんだというようなお話がございましたけれども、私どもが目にいたしております両雑誌には、そのような表現はないわけでございます。
  112. 久保亘

    ○久保亘君 いいえ、私は李厚洛氏が手を下したとは言っておりませんよ。李厚洛氏がこの計画の責任者として私がやったことだと言っているということを言っているんでありまして、その点に関しては、今アメリカにおります当時の金存権韓国大使館公使の証言が同時にこの月刊誌では取り上げられているのであります。自分は犯行に反対だった。金東雲一等書記官も反対していたが、押し切られて実行グループが強行した。そして自分は拉致事件についていかなる命令も上部から受けたことはなかった。これは金在権公使の証言であります。しかし、尹振元海兵隊大佐が李厚洛KCIA部長の特命を受け、部下を連れて日本に来て、金大中氏を尾行していることを知っていた。李部長に工作を中止するよう進言したが回答もなかった。こういう内容もあるんであります。  そしてこれらの問題を総合しまして、今の御答弁を聞いておりますと、私は、日本政府政治決着を盾にとって事件の真相究明を永久にやぶの中に入れてふたをしてしまおうという考えに立っておられるんじゃないかという気がするんでありまして、私は、日本立場としては、政治決着は政治決着、その段階において時の政府判断し、責任を持たれたことでありますが、この疑いが新たに出れば、国家の主権の問題であり、また法治国家としての日本の中において公権力の介入した疑いのある金大中氏の人権侵害、こういう問題については、この事件の真相を徹底して明らかにするという姿勢が日本政府の側にはなければならぬ。政治決着がすべてに優先するという考え方は間違いだと思うんでありますが、それはみずから国家の主権を放棄するに等しいと私は思うのであります。  この点について、外務省としては、今度の李厚洛証言を、あなた方がこれは雑誌に載ったにすぎないということで片づけられようとする態度ではなくて、それでは李厚洛氏の証言をみずから確かめる、こういうことでこの問題を、真相究明を徹底して行うという立場でおやりにならなければならぬ問題だと思うんでありますが、そうお考えになりませんか。
  113. 倉成正

    国務大臣倉成正君) ただいまの先生の御意見一つの御意見として、それなりに承っておきたいと思います。
  114. 久保亘

    ○久保亘君 承って無視するというのは、これは困るんです。承ってくださるのならば、主権侵害が行われたのかどうかということについては、私はこういう問題で外交上のトラブルを起こせと言っているんじゃないんでありまして、お互いに主権国家として、主権を持つ国家として相互の立場を尊重し合ってきちんとしていくという意味では、日本政府としてもこの問題は明確にやるという立場を貫かなきゃいかぬと思うのであります。  その事件の起きた最初のときには、先ほど申し上げましたように、政府もかなりはっきりした態度をとっておられたと思うのでありますが、だんだんおかしくなって、そしてそのうちにアメリカでコリアゲートの解明のためのフレーザー委員会などが開かれてまいりますと、どうもこの事件を余り突っ込み過ぎるといろいろぐあいが悪いんじゃないかというような考えがあったのではないかと思われるほど、急激にこの問題は政治決着へ動いていくのでありまして、私はそういう点について、国民の間に残っている疑問というものを解明をして、日本の主権の立場、それから金大中氏の人権にかかわる問題、こういう問題について、こういう李厚洛証言を一つの契機にして改めて取り上げる。そして、その解明の結果、もしこれが公権力の介入として確認できるならば政治決着を見直す、白紙に還元をして、もう一遍この問題について、日本の主権の侵害が行われた問題についてきちんと決着をつけるというようなことをやるべきだと思うのであります。  この点について日本政府は余りはっきり物を言わないのに、アメリカの側からいろいろの意見が述べられておったこともよく外務省の御存じのことだと思うのであります。フレーザー委員長は、この問題で下手人の名前を全部この委員会で金炯旭の証言に基づいて明らかにした後、これは日本に来て記者会見したんじゃないでしょうか、金元部長の証言は他の情報源から得たものと一致するなどの点で信用できる。金大中事件は、証言によれば、野党の指導者を国家機関員が他国内で捕らえ、国外へ強制移送した事件であり、日本の主権に対する明らかな侮辱であると、こういうことを言っております。  そしてまた、フレーザー委員会で証言に立ちました国務省の元韓国部長のレーナード氏は、記者会見において、外交政策の中で最も重要な問題、つまり倫理的価値と人権という問題に沈黙することに意義を認めるのが日本政府の態度である。金大中氏が世界人権宣言によって確約されている権利のほとんどを侵害されたのだと説得力のある主張ができるはずだ、日本がこうした権利の侵害を起こしたとは非難できないが、責任ある行動をとって権利侵害をやめさせることをしなかったのである、こういうことをレーナード氏は記者会見で言われておるのでありまして、こういうことがそれこそ第三国からその国の調査によって言われるということになれば、日本としてはますますこの主権侵害の事実について徹底的な究明を行って、もし主権侵害の事実がないと政府判断するのであれば、そのことを政府の責任において国民に明らかにすべきじゃないでしょうか。  政治決着がついているからということですべてあいまいにして、さわらないことがよいことだというようなやり方では、私は日本国民としても、また世界じゅうの国々も日本のこの対応を決して信頼しないだろうと思うのですが、いかがですか。
  115. 倉成正

    国務大臣倉成正君) ただいま先生お話しのように、金大中事件につきましては、一九七三年の十一月、また一九七五年の七月、それぞれ第一次の外交決着、それから第二の外交決着と申すものがございまして、この後、日韓双方の最高首脳が日韓関係の大局を考えて、高度の政治判断を下したものでございます。  しかし、先ほどからるる政府委員からも御説明申し上げておりますように、我が国における刑事事件としての捜査は継続しておるわけでございますが、これまでのところ捜査の経過では我が国の主権が侵害されたと断定することができないというのが、至っていないというのが事実でございまして、韓国側の公権力の行使が明白になった場合にこれを見直すというのは、見直すことがあり得るというのが政府の終始一貫した姿勢でございまして、ただいまのところ、これを公権力の行使が明白になったという段階ではないということを申し上げておきたいと思います。
  116. 久保亘

    ○久保亘君 そこが、その考え方が非常に間違っている点だと私は思うんです。  今あなたが言われたことを最も端的に言われたのが、七九年の五月、所も同じこの参議院の決算委員会で、第一次政治決着のときの外務大臣であった大平首相が、私は初めからこの事件に満足していない、極めて不満だがいたし方ない、こう言われているんです。これが今の外務大臣がおっしゃることを非常に短く端的に表現した言葉だと思うんでありまして、そして韓国政府が公権力の介入を認めることにならないと問題解決にならないと、こう言っておられるんです。これじゃ日本の主権というのを日本みずから守ることはできないんじゃないですか。やっぱりその主権侵害の事実が明白にならなければどうにもならないんだという考え方だったら、結局主権は私どもが侵害されたという疑問を持っている、その疑問を日本の大多数の国民は永久に抱き続けなければならぬと思うんです。  だから、日本政府として新たな証言などが出てきた場合には、そのことが主権侵害の事実に該当しているのかどうかというものを積極的に調査し、これを究明していくという態度がなければ、あれは雑誌が書いたことだからそういうものを一一取り合っているわけにはいかぬ。明白にならなければということになれば、これは捜査当局が明白な結論を下さなければだめなのです、あなた方の言う言い分によれば。しかし、その捜査当局の捜査というのは、政治決着という厚い壁によってふさがれておるんです。進みようがないんですよ。  だから、このような新たな証言が出てまいりました場合には、政治決着が行われてきたけれども、この問題について積極的に日本政府としては外交的、司法的に調査、捜査を行うという立場をとらなければ、主権の侵害の事実を明らかにすることにはならない。永遠にこれはなぞとしておくということになるのでありまして、これは主権国家の政府が行うことではない、こう思うのですが、この問題について必要な調査や捜査を行う、こういうことにはならないのですか。そうしなければ、私は、この問題をきちんとしなければ、日本の主権が傷ついた疑いのまま、国際的にも国内的にも疑いを抱かせたまま永久にこの問題は隠されてしまう。そして、現在五名の捜査員がなお継続中といっても、中曽根さんの手で捜査本部が八三年に解散をされた、そして政治決着が厳然として存在をするという事実の前に、五名の捜査員の方がどんなに努力されようとしてもその壁を越えることはできない、こう思うんです。  私は、李厚洛証言というのは、そういう政府が新たなこの問題に対する究明の立場をおとりになるに足るだけの重要な証言だと思うのでありますが、そういう立場でこの問題の真相究明に取り組むという姿勢を外務大臣はお持ちになれませんか。
  117. 倉成正

    国務大臣倉成正君) 捜査当局は当然この問題を刑事事件として捜査を継続しておるわけでございまして、いろいろな問題について深い関心を持っておると思います。したがって、捜査当局がどういう判断をし、そしてどういう措置をとるかということは、捜査当局が判断すべきものだと考えております。  しかし、いずれにいたしましても、李厚洛氏のインタビュー記事についてお話ということであれば、李厚洛氏自身が、先ほど政委員も答弁いたしましたように、二十八日の記者会見で、自分が話したことと聞いた側との間ではニュアンスの差がある、インタビューで政府組織や公権力が介入したことを認めたことはないと述べておると承知しておるわけでございます。したがって、李厚洛氏に関する件については、この李厚洛氏自身の記者会見というのが我々の参考になることであろうかと思うのでございます。
  118. 久保亘

    ○久保亘君 李厚洛氏が九月二十八日に改めて記者会見を行われたというその事実を私は否定していないんですよ。しかし、その改めて行われた記者会見の内容も含めて、そのインタビューで行われた証言とあわせて積極的に調査をするということは必要なんじゃないですか。  しかも、この最初の証言と訂正を含めた記者会見との間に、いろいろなことが介在をした事実もまた判断しなければいかぬのです。明らかに雑誌社に対して政府の権力的介入があったことも事実として報道されております。  それから、九月二十八日の記者会見の際には、李厚洛氏は、今度の証言について政府と接触したことはないと言われたと私は聞いております。ところが、李文公相は国会において、李厚洛氏から政府当局に憂慮の表明があった、それを受けて政府が必要な措置を行ったということを発言しているわけですよ。だから、その後の記者会見というのは、非常に制約された立場の中で李厚洛氏が行わざるを得なかった事情も存在したのではないかと当然にこれは判断をされるわけですよ。だから、その後の訂正の記者会見が行われたからあのインタビューにおける証言はなかったも同然だといって喜んでいるようでは、これは私は日本の主権を守る立場外務省の態度ではない、こう思うんです。  だから、一連の李厚洛の発言を全体的に調査をし、そしてこのことによって、果たしてKCIAの責任者の事件に対する介入があったのかどうか、それを明らかにすることなしには、私は国際的にも国内的にも疑いは晴れない。そういう意味では、李厚洛証言というのは、明らかに新しいこの事件に関する事実なんです。関係者の証言という事実なんです。これを無視して外務省政治決着を優先させて通るのならば、そのようにはっきり言ってください。
  119. 倉成正

    国務大臣倉成正君) いろいろ久保先生推測を交えて御意見をお述べになりましたけれども、一義的にはこの問題は捜査当局がどうこの事実を判断するかという問題であろうかと思いますので、これについて捜査は継続しておるわけでございますから、捜査当局からお答えするのが適当であろうかと思います。
  120. 久保亘

    ○久保亘君 捜査当局並びに法務省にお尋ねをしたいと思いますが、その前に、それでは法務省や警察庁がこの問題について重要だと考え、真相究明に積極的に当たる、あるいは必要な資料の供与を相手国に対して求める、こういう立場をおとりになることについて、外務省としては政治決着のあるなしにかかわらず、そのような捜査活動についてはこれを積極的に支持されますか。その上で捜査当局の意見を聞きたいと思います。
  121. 谷野作太郎

    説明員谷野作太郎君) ただいま大臣から御答弁申し上げましたように、この問題は一義的には捜査御当局の御判断の問題でございます。今回の李厚洛氏のインタビュー記事、これをどのように解釈し、どのように判断するかということも含めて、そこから何か新しい捜査上の手がかりが得られるかということの判断は捜査御当局の御判断だと思います。その上で、さらに新たな措置があるいは韓国との間におきまして必要ということであれば、私どもはその段階で御協議にあずかるということになろうかと思います。
  122. 久保亘

    ○久保亘君 それじゃ、その政治決着をこの捜査の障害としないということでありますならば、警察当局はこの問題について新たな観点を持っておやりになりますか。
  123. 国枝英郎

    説明員(国枝英郎君) 純粋に捜査的な観点で私どもこの記事等を読んだわけでありますが、何よりも我々としまして一番重要なことは、捜査上の手がかりとなる情報が得られるかどうかという点にかかるわけであります。  御指摘の李厚洛証言なるものについてでありますけれども、先ほど来出ておりますように、本人は記者会見の席で、インタビューで政府組織や公権力が介入したことを認めたことはないと明言いたしておる事実があるわけでございます。なお、金大中氏拉致事件につきましては、これまでもKCIAの関与が取りざたされてきたところでございまして、警察といたしましては、この点も踏まえて鋭意捜査してきた経緯がございます。  このような状況にかんがみますと、今回の李厚洛証言あるいは発言なるものをもちまして新たな捜査の手がかりを得られるほどのものではないというのが、私どものとりあえずの判断でございます。
  124. 久保亘

    ○久保亘君 法務省。
  125. 原田明夫

    説明員(原田明夫君) ただいまの御質疑にございますように、また警察当局のお答えにもございますように、現在この事件、引き続き捜査中ということで、その状況についてはただいま答弁があったとおりでございますが、そういう状況のもとで、この際法務省の立場として本件具体的な事件の取り扱いについてお答えすることは適当でないと考えております。  ただ、一般論として言いますならば、法務省といたしましても必要に応じて適切に対応するということであろうと考えております。
  126. 久保亘

    ○久保亘君 もう一遍私最後に申し上げておきたいのは、この政治決着というのが二回にわたって行われましたけれども、この政治決着に当たって韓国政府の側は捜査を完了した。そして捜査本部を解散し、証拠は見出せず、関係者は不起訴処分にした。つまり無実である。だからKCIAは一切この問題には関与していない。しかし、だれがやったかということは明らかにされないままに終わっておるわけです。日本政府の側は、二度にわたる政治決着というのはいずれも韓国政府の事件に関する捜査の報告を受けて、両国の関係を重要視する立場からこれを了として決着さしているわけです。つまり日本の主権にかかわる問題についての捜査というのは終わらないままこの政治決着が行われたのでありまして、そうしてその後は、この政治決着が捜査を非常に困難にしたということもまた事実であります。  だから我々の側は、その主権侵害が行われたかどうか、韓国の公権力が介入したかどうかということについては、これはもう総理大臣であった人たちが国会でも述べられておるように深く広い疑惑があるということなんです。当時の外務大臣、後の総理大臣である大平さんがそう言っておられるんですよ。だから、深く広い疑惑があるにもかかわらず、政治決着が行われたために捜査が困難となっている。しかし、関係者の方から新たな事実につながる可能性を持つ証言が行われているんでありますから、もし我々が日本の主権を大事にし、この主権の侵害を許さないという立場に立つならば、この事件についてもっと前向きに真相究明を行う、韓国政府に対しても必要な協力を求める、李厚洛氏にも直接司法上、外交上の接触を行う、こういうことが考えられなければならぬ問題じゃないんですか。  そうしないと、政府国民に対してこの事件が起きたときからずっと一貫して言ってきていることとやったことは全く反対のことをやったんであって、みずから主権を侵害されたことを、そういう疑いがあってもやむを得ない、こういうことでほおかぶりしていこうという態度になると私は思うのであります。  それで外務大臣、最後に御答弁をいただきたいのは、ぜひこの李厚洛証言を単なる雑誌のインタビュー記事だということで黙視するのではなくて、この問題の李厚洛が証言している事実について確認をする努力を通じて真相の究明を行う、そして、もう既に十四年を経過したのでありますけれども、金大中事件についての真相を取りまとめて国民にもわかるように報告をする、こういう努力を今後も前向きに進めるという立場を表明できませんか。
  127. 倉成正

    国務大臣倉成正君) もう外交決着、そのこれまでの答弁を繰り返すことはいたしませんけれども、これまでの我が国の捜査結果によれば、韓国による主権侵害があったということは断定できないというのが政府立場でございます。ただ、今先生がるるお話しになりましたことは、一つの貴重な御意見として承らせていただきたいと思います。
  128. 穐山篤

    委員長穐山篤君) 午前の審査はこの程度とし、午後一時二十分まで休憩いたします。    午後零時二十一分休憩      ―――――・―――――    午後一時二十四分開会
  129. 穐山篤

    委員長穐山篤君) ただいまから決算委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、昭和六十年度決算外二件を議題とし、外務省及び防衛庁決算について審査を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  130. 板垣正

    ○板垣正君 私は、FSXの問題とペルシャ湾の安全航行問題を中心といたしまして、それぞれ伺いたいと思います。  初めにFSXの問題でございます。これは実質二年越しのいろいろな経緯がございまして、十月初めに防衛庁長官アメリカに行かれまして、ワインバーガー長官話し合いをされて決着をつけられた、こういう次第でございます。私はこの経緯、そして今回の決着、顧みましていわゆる国内開発、自主開発と申しますか、これが最終的には断念をされた、で、アメリカの既存の飛行機をベースにして改良ですか、改造が行われる、こういうことでございますが、そうした案も選択肢としてかねてあり、いろいろな検討をされた経緯も一応察しておりますけれども、いずれにいたしましても私も大いに期待をいたしておりました。この日本のすぐれた技術をもって二十一世紀に通用する立派な支援戦闘機をつくり上げる、これは我が国の防衛にとりましても、また我が国の航空産業にとりましても、またいろいろな意味から極めて意義の大きい、関係方面から言わせるならば、まさに二十一世紀最大一つの行事として大いに意欲を燃やしておられた、これが見送られたということは私は非常に残念であり、またそうした声もいろいろ聞くわけであります。  そこで、第一に長官にお伺いしたいのは、断念せざるを得なかったこの根本の理由はどこにあるのだろうか、あるいはその背景はどういうことなのであろうか、そういうことについてお差し支えのない範囲で承りたいわけであります。  アメリカ長官とのお話し合いの中でも、先方は新しいのをつくるということはリスクの問題、コストの問題、時間の問題、こういうことで得策でないというふうなお話もあったと拝見をいたしております。しかし、ただそれだけであろうか。やはりその背景にありますいわゆる今の日米関係、経済、貿易摩擦あるいは東芝のココム問題、こういうものをめぐってこうした問題とリンクする、そういう中で言うなれば政治決着を図らざるを得ないというふうな面もあるのではなかろうか。さらには、アメリカのいわゆる戦闘機戦略ということを聞きます。アメリカとしては、少なくとも戦闘機の市場は我々の天下である、これはあくまで維持し続けなければならない、そういういろいろな立場から日本が新規開発を行うことは好まない、こういう意向もあったのではないのか。  さらに言うならば、一部高官の話として、日本が独自の安保体制に行ってしまうのではないかとか、あるいは次期主力戦闘機につながっていくんではないかとか、こういうようなことも報道をされたのを見ておりますが、いずれにいたしましても日米安保体制は日米関係の基軸であります。これはやはり安全に保っていかなければ、確実にしていかなければならぬ。この基本は私どももちろん重々承知しながら、ただいまのような残念な思いを禁じ得ないわけてありますが、その点についてまずお伺いいたしたいと思います。
  131. 栗原祐幸

    国務大臣栗原祐幸君) 大変残念だというお話を聞きましたのは私は初めてでございます。私は、これは残念だというよりも、ぎりぎりの妥当な線であるというふうに自負をしております。  今度の日米交渉で、私はワインバーガー長官にざっくばらんに申し上げたんです。それは、私は理屈の通らぬことについてはだめだと。それからもう一つは、愚直なほど誠実である、そういう意味合いでこれからの私の話を聞いてくれと言って切り出したのです。あなたが六月に来たときにどういうことを言われたかというと、米国の航空機を主体として、それに日本の技術を入れて開発をされたらいかがですかという話があったので、その点についてはいろいろと時間をかけて検討した。そして、F15、F16、F18、それぞれ検討してみたけれども、現在までの検討の段階では、皆、帯に短したすきに長しである。したがって、せっかくではあるけれども、今のままではこれは受け入れられない。そこで、私はワインバーガー長官が来られたときにこういう提案をした。私はアメリカの航空機を買うことに興味はない。さりとて、日本でどうしてもつくらなければ承知ならぬ、そういうふうに考えていない。問題は、日米の技術をどうアジャストするか、そしてよりよいものをつくっていくか。これはただ単にFSXのみならず、これからの大きな日米のハイテクなんかの問題に関係があるんだ、両方の技術をどうアジャストするかというところに問題があるんだ。航空機を買うとか、自分でどうしてもつくらなければならぬ、そういうところには私は焦点を置いていないんだという話をした。  そこで、そういう観点から、新規に共同でできないものかということを聞いたんです。それに対するワインバーガー長官の答えが、これはムードまで入れますと、何と言いますか、非常に静かに、しかも友情にあふれたあれでした。それは、おまえの一方的な考え方だと言えばそれまでですけれども、私はそうは思わない。彼が言うのには、アメリカでも今、新規ということは非常に難しいことなんです。新規に何かをつくるということは、アメリカだけでつくるにしても日本だけでつくるにしても、あるいは日米共同でつくるにしても、新規に開発するということは時間もかかるし、リスクも多いし金もかかることだから、既存の航空機を土台としてやられた方がいいと思いますよ、これは決して押しつけるんじゃなしに、私どもの長年の経験からしてその方がいいと思いますよ、そういう話なんです。私は技術的な点はわかりませんし、ワインバーガー長官も、私が行くについては、向こうとしてもできるだけのことをしようという、そういう雰囲気だったんです。そういう話がございますから、ワインバーガー長官のこの提言というものは非常に重大なものとして、重みのあるものとして受けとめざるを得ないわけです、何言っているんだというわけにはまいらない。  また、現に後でNORADというところに行きました。そこのコマンダー、これは空軍大将ですが、その方に会ったときに、彼がはしなくも言ったことは、もうアメリカではATFなどと言っているけれども大変難しいんだ。国防費を削られて、F15の二倍も三倍も開発費がかかるというので、ATFについての費用をどんどん削られようとしている。そこでアメリカ空軍としては、既存の航空機に改良を加えていいものをつくっていく、そういう方向に転換しつつあるんだ。今度日本の方の技術も入れられて、アメリカの飛行機がよくなるということは大変ありがたいという話もあったんです。ああワインバーガーの言っているのはこれかなというふうに思ったんです。これは話が前後しますけれども、ワインバーガー長官の話というのは、それなりに私には心に響いたんです。  そこで、しからばもう一回申し上げるけれども、F15、F16、F18のうち、F18は日本のパイロットが好まない。F18をやると金がかかり過ぎちゃう。したがって、これはお断りをする。向こうは売りたいのかもしらぬけれども、それはお断りすると一番先に断ったんです。15と16について、日本の要求性能に合うようにあなたの方が応じてくれるかどうか、あなたの方が応じてくれるならば私の方も考える、日本の要求についてできるだけのことはいたしたい、こういう話だったんです。  そこで今度は、それはありがたいが、日本ではアメリカの航空会社に対するところの不信がある。一たん決めると値段が高くなったり、ああでもないこうでもないとクレームをつける、評判悪い、そういう意味合いで、そういうことのないようにしてもらいたい。今度のFSXに対する粟原三原則の中で、日米の防衛産業の圧力をこうむらないことと言っているんだ、あなたの方もそういうことでやってもらったと思うし、私の方も航空産業の方の影響を受けてない。ですから、今度忌まわしいようなことは一つもないんです、これ。これからもそれをやってもらいたい。我々の方もしっかりやるけれども、あなたの方の航空会社について適切な指導をしてもらいたい。それは必ずやります、そういうことで、それでは15、16をもととして、日本の性能に合うように最大の御協力をいただくということを前提として私どもは作業を進めたい、こういうことできたんです。  したがって、私は甚だ残念であったという気持ち一つもない。見方によると、自分みずからつくらなきゃ承知ならぬという人がいるかもしらぬけれども、先ほど言ったように私はそういうことには興味がない。また、改良することによって日本の技術が継承されるわけです、これ。そういう意味合いで、自分で言うと大変恐縮でございますが、ぎりぎりのまあまあの妥当な線ではないかと考えております。
  132. 板垣正

    ○板垣正君 粟原長官のお人柄、また信念を貫かれる、その点についてはかねがね尊敬申し上げております。また今回のことについても、恐らくそういう経緯で今お話しのとおりであったと思うのでございます。  ただ、そう伺いながらも、ただいまATFの話がございました。これは二十一世紀の戦闘機としてアメリカが今開発に取り組んでおる。これは一九九〇年代半ばには高性能戦術戦闘機として実現を見よう、こういうことでございます。さらにオリエント特急と言うんですか、東京ーワシントンを二時間で飛ぶ、これも既にアメリカは民間会社でございましょう、三社ほどと契約して、エンジンも別に契約をして一九九〇年代、試験飛行が行われる。やはり今の技術のテンポは極めて目覚ましいものがございまして、こうしたことも夢ではない時代、また我が方もロケットの打ち上げ、HⅠがこの間打ち上げられました。三段ロケット、これはほぼ国産でございましょう。さらに近くはHⅡが上がるということになりますと、これはまさに国産で、ほぼ国産技術の粋を集め、しかも宇宙の平和利用の面においても世界のトップクラスに立とう、こういう流れの中で、私どもは、やはり当然これは日本でつくるといたしましても技術の交流というものはあるわけでございまして、閉じこもって何でもかんでもと、こういう姿勢から出ているわけではない、またこれは後から申し上げたいと思います。  さらに、我々は報道に接する程度でございますけれども、いろいろな報道、折衝過程で、アメリカ側としては日本側の自主開発、新規開発については極めてかたい姿勢で拒否をし続けてきたということを私は感ずるわけであります。  これは局長にお伺いしたいんですけれども、いわゆる日米折衝過程においていろいろな案が出たようなことが伝えられております。例えば二段階諭というのがございましたですね。つまり新規開発、これは新規開発といっても試験飛行まで七、八年かかるわけでありますから、まず技術の粋を集め新規開発をし、その試験飛行の段階において改めてそのほかの飛行機ともいろいろ比較をして、そして正式に採用を決定するという考え方であります。あるいは試験機としてF15を数機買って、これを試験台にしていろいろ検討して日本が新しくつくる。数機買って、それを試験に使おうとか、あるいは各会社から設計を買い入れて、それをもとにまた日本の技術を集めて機体の共同設計も行う。共同設計も行い、すべてについて共同で一つつくり上げる。自主開発といっても、いわゆる国内、国産開発と、それから日米共同開発で、日本の主導における新規開発、これは幅のあることであろうと思います。そういうことでございます。  そうした経緯というものをどう理解すべきか。どうなってしまったのか、こういうことは。そしてまた、焦点になってきていると思いますけれども、F15、これは初めからなかった、途中から急浮上といいますか、という形であらわれて、対象に入ってきたということの経緯も事実でございまして、こういう点も含めて教えていただければと思います。
  133. 西廣整輝

    説明員西廣整輝君) 幾つかのお尋ねがありましたが、まず二段階論、まず開発をし、引き続きF1の後継機を決めていくという二段階論につきましては、まさに現在そういう方向に進んでおるというようにお考えいただきたいと思います。  と申しますのは、先般の防衛庁長官とワインバーガー国防長官との話し合いの中で、日本の独自の戦闘機の運用構想、あるいは日本の特殊な地理的条件、そういったものから見て既存機、現にある飛行機をそのまま使うというわけにはいかないという結論が出ましたので、いずれにしろ、改造開発にしろ、開発をして航空機をつくってみて、その結果によってそれを採用するという二段階による以外にないだろうということになりましたので、二段階論をとる以外にないという状況に現在ございます。  それから、そういった結論にたどり着く段階で、例えば新規に全く新しいものを日米共同して開発したらどうだというようなことも我々も提案し、考えてみたわけであります。それについても先ほど防衛庁長官大臣からお答えになりましたように、新たにつくるということは、米側意見では極めてコストがかかる。時間がかかる。さらにはリスクといいますか、不確実性がかなり残るという問題がございます。  さらにつけ加えますと、私が六月時点で米側に参っていろいろ協議をした段階におきましても、新たにつくるということにするにしては、日本が現在つくろうとしている航空機そのものが、さほど現在あるものに対して飛び抜けて将来へのものではないという点に非常に向こうとしては難色を示しておるわけです。つまり、現在もう既に飛んでおる、あるいは改造されつつある、そういった飛行機とほぼ似たような性能である。航空機というのは御存じのように、エンジンというものが決まりますと、おのずから飛行機の性能というのはかなり決まってくるわけでありますが、そういった点で、先ほど先生が言われたようなATFであるとか、それ以外の大陸間を非常に短時間で飛ぶ飛行機、そういったものにすぐつながるようなものを今度つくろうとしているわけじゃございませんで、既存のエンジンを利用してつくるということになりますと、米側としてはそういう言葉は使いませんけれども、いわば現在あるもののイミテーションを日本がつくるというような感じを非常に受けるわけであります。そういうことであるならば、そういった新たな投資というものはむだであるので、それは別のものに使ってほしい。それよりも現用のものをそのまま使うなり、あるいはどうしても日本での使用に合わないものであるならば改造して使ったらどうだと、こういう提案であったというように私ども理解をいたしております。
  134. 板垣正

    ○板垣正君 いずれにしましても、新しくつくろうと構想されたものがいわゆる第四世代に属する、二十一世紀に通用する、そういう構想であったことは間違いないと思うんですね。そして、現在それをベースにやっていこうという、F15にいたしましてもF16にいたしましても、いずれもこれは七〇年代に開発された飛行機であります。したがいまして、この機能がワインバーガー長官は、F15は二十一世紀になっても機能を発揮するんだと。これはいろいろな改良を含めておっしゃっておるんだと思いますけれども、つまり第三世代の飛行機をベースにして、その改造、改良によって本当の第四世代の飛行機ができるのだろうか、これが私の疑問であります。  防衛庁の資料によりますと、所望の性能のFSXを取得できる目途が立ったという文言がございまして、それが防衛庁のお立場だと思いますけれども、それでは当初、当方が性能なりその他について新しく技術をいろいろ検討しておったものがほぼ全面的に生かされるのかどうか、その点が伺いたいわけてあります。例えば、コンピューター操作で機体の姿勢を変えずに、高度、進路を変える運動性能向上、いわゆるCCVですね、そうしたものとか、コンピューターを軽量小型化した結合コックピット、あるいは射撃目標の位置、方向、速力を、いわゆるアクティブ・フェーズド・アレー・レーダー、新しいレーダーですね、あるいは高度の軽量の複合材の取り入れとか、あるいはレーダーに捕捉されないいわゆるステルス性、そうしたことが、例示でございましょうが、今の日本の先端技術で積み重ねてきたものが今度の機体にも生かされるのか、そして、いわゆる第四世代と言われる飛行機が生まれるのか、その点を伺いたい。
  135. 西廣整輝

    説明員西廣整輝君) 技術的な問題については、後ほど必要があれば担当の政府委員よりお答えしたいと思いますが、まず、第四世代の航空機というもの自身、私はどういうものを第四世代と呼ぶべきかよくわかりませんけれども、私どもが今欲しておるFS機能なり、それのあわせ持っておる防空機能、そういったものをあわせ持った要求に合った航空機というものは、例えばアメリカがF15Eというものを既に開発するといいますか、改造する目的を持っておりますけれども、そういったものをもってすれば、ある意味では十分過ぎるぐらいの能力を持っておるという飛行機であります。しかしそれが、要は航空機の世代が何世代に当たるかは別として、日本の独自の使い方なり地理的な条件、そういったものに合ったものをつくりたいということが我々の非常に強い希望でありまして、それが新しいものでなければできないというふうには必ずしもならない。というよりも、先般、防衛庁長官とワインバーガー長官との間で決められました既存機を改造することによって、私どもは新規に国産するにまさるとも劣らないものができるという確信を持っておる次第でございます。
  136. 板垣正

    ○板垣正君 それと、具体的に今いろいろ日米で詰めておられる、作業が進められておるようでありますが、いわゆる共同開発ということですね。いわゆる技術の世界には玉虫色の解決はあり得ない。ほかの問題は、政治的決着とか、いろいろあるにしても、いろいろつくる、分担してやっていく場合の技術の世界には玉虫色の解決はあり得ない、こう言われておる。したがって、共同開発といった場合に、果たしてどこまで我が方が主導権を持ってやれるのか。また今回の場合、改良なのか、改造なのか、抜本改造なのか、その辺はどういう目安でお話し合いがなされておるのでしょうか。  いずれにしても、これはアメリカ国防総省の胸三寸で、大した実質的な改造はできないとか、枠がはめられた改良ではかえって経費がかさむとか、あるいはアメリカの新聞にも、日本は念願のFSX国産をあきらめ、少しだけ改造した米機購入を受け入れた、この結果、米企業は少なくとも一億ドルの利益をもたらすと、これはタイムズにそういう記事が載っておったということであります。ワシントンポストも、米機は、日本製レーダーその他ハイテク部品でわずかに改造されるだけだと。こういうようなことも果たして杞憂に終わればよろしいわけでありますが、関連をしてこの辺のことについてお答えいただきたい。
  137. 西廣整輝

    説明員西廣整輝君) 共同開発の基本的な枠組みと申しますのは、要は最もコストの安い方法で我が方が必要とする性能を満たすということに尽きるわけでありますが、その際のいわゆるプライムコントラクターと申しますか、主契約者は日本側の企業であるということで、おのずから日本側企業というものが中心になって、そういったものを組み立てていくということになろうと思います。  その間、共同開発の分担がどうなるかというものについては、米機を母体にいたしますから、それの諸元等も十分知っておる向こう側の支援も得なくちゃならないことは当然でありますけれども、いずれにしましても、どの部分をどちらが請け負うかというような、先ほど最初に申し上げた、必要なものを得るために、どちらがやった方がよりいいものができ、かつ安くできるかということが基準になって分担されていくということになろうと思います。  さらにつけ加えて申しますと、その改造に際しまして、先ほど来レーダーであるとか、あるいは複合体とかいろいろなお話が出ましたけれども、そういった日本の得意とする技術、日本がぜひ伸ばしたい技術というものは十分に盛り込み得るというふうに私は考えておるわけでございます。  なお、新聞の論評等いろいろな書き方をしてあるものがございますが、それらは企業の諭理から言えば、どちらがどれだけ金がもうかるかということはあろうかと思いますが、私どもとしては、先ほど来申し上げておるように、我々の所望のものがいかに費用効率のいい形で得られるかということを中心に考えておる次第であります。
  138. 板垣正

    ○板垣正君 次に、技術の継承の問題でございます。  これは、航空産業関係のいわゆる五社の方々も、この際新規開発、F1に取り組んだ方々も皆高齢になってきている、定年年齢になってきている。ここで新しいものをつくり上げる。やはり飛行機をつくるということは設計することであり、それを統合することであり、つくり上げる。それをつくり上げていく経験、統合能力、これはやはり具体的な目標があって、それをつくり上げていく、一つの具体的なものを。そういう中で技術の蓄積が行われる、継承が行われる。そういうことも先ほど来のお話で、決して従来考えていたものに遜色のないものができるんだ、日本の技術も大いに取り入れられる、こういうお話でございますが、私どももともに案じておりましたいわゆる二千名といわれる日本の貴重な航空技術者、こういう方々が本当にその貴重な技術をさらに蓄積され、次の代に伝えていく、こういうことにおいては見通しはいかがでございますか。
  139. 西廣整輝

    説明員西廣整輝君) 技術の継承といわれる場合、まさに先生のおっしゃったとおり、何の技術を何のためにという継承すべき目的というものが、将来のビジョンというものがはっきりしてないといかぬと思いますが、正直申し上げて私は航空技術というものは、私自身通産省と違いますから専門ではございませんけれども、将来としてはかなり難しい問題を抱えておると思います。  一つは、民間機の完成機をつくるという路線からはどうやら完全に撤退をしてしまったように思われるわけであります。また、軍用の航空機につきましては、御承知のように武器輸出三原則というものがございますから、そのマーケットとしては防衛庁以外にないということで、世界各国にいい航空機をつくって売るというわけにまいりませんので、そもそもマーケットそのものが余りない、需要そのものが非常にないということになりますから、いわゆる航空機というものの技術がどういう形で継承されるのがいいかということについては相当論議されるべき問題があり、もう少し広い意味の航空宇宙産業とか、そういったものに発展していく以外にないのかなという気もしないわけでもございません。  しかしながら、いずれにしましても我々としては、現在既に持っておる航空関連技術の中で世界各国と比肩し得るものがあるとすれば、これはやはり引き続きそれを維持し、かつ発展するべきであろうというふうに考えており、今回のFSXの改造、開発に関連しましても、そういったものについてはできる限りの配慮をしていくということが必要であろうというふうに考えておる次第であります。
  140. 板垣正

    ○板垣正君 次に、今使っているF1ですけれども、これは防衛局長が行かれたときですか、あの飛行機は非常に脆弱である、日本の防衛には間に合わないんじゃないか、ましてこれを十年も使うなどということは理解ができない、新規開発を仮にするとしても、そのつなぎにアメリカの飛行機をお買いなさいと、そういうことも一部報道されておりました。その辺私ども判断の根拠がございませんが、果たして今のF1というものが日本の防衛の上で今後も相応の役割を果たし得るのか、あるいはそのつなぎとしてF4の改修というのも行われつつありますけれども、それを一時つなぎ的に使うとか、そういう計画があるかどうかということが第一点であります。  第二点として、今回いずれの採用になるか。F15の呼び声が高いというようなことが巷間言われておりますけれども、仮にそうなった場合、今現在のいわゆる迎撃第一線主力戦闘機はF15であります。さらに支援戦闘機もいずれF15政機が入ってくる。そうした場合、一機種で我が方の航空自衛隊の主力が占められるという姿が果たして防衛上あるいは航空戦略の上で妥当なことかどうか。万一F15という飛行機がこういう欠陥があるというようなことが生じた場合に全部の飛行機が飛行中止、これは極端な例でありますけれども、あるいは今度それがいずれまたかえるときが来れば、つまりまた今までのつながりにおいて、アメリカからまた今度は次の新しいのを丸々買い入れるという一つのことにつながっていくのではないのか、その辺についてはどういうお考えでございますか。
  141. 西廣整輝

    説明員西廣整輝君) まず、F1についてでございますが、F1については先生御承知かもしれませんけれども、これを採用するときにF1、いわゆるT2という練習機の改造型であるF1を採用するか、アメリカの例えばF5戦闘機のようなものを入れるか、さらにはF4ファントムを使うかというようないろいろな論議があったわけであります。  そういった論議を経てT2練習機の取得機数等の問題等も兼ね合いもあり、現在のF1というものを採用した。それなりに性能的に限界があることもまた事実であります。しかしながら、これの後継機についてどうするかということは、御承知のように現在実施中でございます中期防衛力整備五カ年計画の中でこれに引き続いた後継機というものをこの期間中に検討し、しかるべき措置を講ずるという次第になっておりまして、そのつなぎとして何らかのものを使うという考え方は必ずしもとっておりません。したがって、次のF1の後継機というものが改造、開発なりそういった形で決まり、でき上がってくるまでの間は、現在のF1で推移をするということについて我々としては政府の方針は決めておりますし、米側もその点は理解をしておる次第であります。  それから第二点の問題でございますが、F15の一機種がいいか、二機種なり三機種なりを併用した方がいいかという問題は、一つには物理的な問題がございまして、逐次航空機というものが世代がかわっていくという段階でやむを得ず二機種、三機種になることもあります。あるいは一機種がかなり大宗を占めるという場合もあろうかと思いますが、これについてはそれぞれ利害得失があると思います。機種が一つにそろっておれば、それだけ整備なり部品の補給、そういったものについても非常にやりやすいということで、可動率も上がるであろうし、経費的な節約もできるという面があろうと思います。  と同時に、特に平時なんかでございますと、ある事故が起きると全機点検をするといったような問題があって、一斉にとめるということもあり得るわけでありまして、一長一短があろうかと思います。そういったことを含めて部内的にはいろいな論議をした結果、それでなおかつF16あるいはF15の改造であれば、どちらでも我が方の性能を満たし得るものであり、かつ経費効率のいいものであればそれをとろうということで、運用側の航空自衛隊も含めて現在結論を得ておる次第でございます。
  142. 板垣正

    ○板垣正君 この問題はもうこの辺で終わりたいと思いますが、最後に長官にお願いいたしたいと思いますが、これからのF15なり16をベースにした我が方主導の改造計画、これを推進するにつきましては、ぜひとも我が方の主導のもとで、かつさっき申し上げました新しい技術が十分取り入れられる、そしてまた技術の継承についても十分その辺が配慮されるということについて、この上ともひとつ御配慮願いたいと思いますが、そのお気持ちを承りたいと思います。
  143. 栗原祐幸

    国務大臣栗原祐幸君) 私もこのFSXは、粟原のときに決めた機種がやはり日米安全保障という観点からも評価をされる、また日本の国内的にも技術の面でも運用の面でもそれなりの評価を得られるということでなければ申しわけない、そう考えておりますから、それに向かって最後まで全力を尽くす所存であります。
  144. 板垣正

    ○板垣正君 ありがとうございました。そのお気持ちでお願いいたします。  それでは、次はペルシャ湾の問題であります。  政府の方では大変御苦労されまして、「ペルシャ湾における自由安全航行確保のためのわが国の貢献に関する方針」、これをお決めになったわけであります。  第一点でお伺いしたいのは、外務大臣、この我が方が決めたことについて国際的な反響、評価、こういうものはどういう形であらわれておりますか、伺いたいと思います。
  145. 倉成正

    国務大臣倉成正君) 我が国が非軍事的な手段によりまして、ペルシャ湾の安全航行に貢献したいということで今回とりました一連の措置につきましては、一部関係国よりは既に好意的な反応を得ておりまして、またそれ以外の国からも相当の理解と評価を得られるものと期待をいたしている次第でございます。
  146. 板垣正

    ○板垣正君 この策定までの経緯等についてもいろいろ報道もされましたが、特に大臣外務省に作業班を置かれて、今までの概念にとらわれないでというような形でいろいろ検討されたということで、私どもも非常に期待をしたわけでありますが、結果は率直に言って、私どもから見ると大変物足りない、そういうことのお感じはどういうふうにお持ちでございましょうか、そのことについては。
  147. 倉成正

    国務大臣倉成正君) 日本が非軍事的な手段によりまして、ペルシャ湾の安全航行に貢献するということで、私ども知恵を絞りまして誠心誠意この問題に取り組んだわけでございまして、現在の段階で考えられ得る最善の方途を講じたというふうに考えておる次第でございます。
  148. 板垣正

    ○板垣正君 私の見解を申し上げる前に、この問題については各紙とも非常に注目し、論説等も掲げておられます。しかも、この各紙の論説は、私は非常に示唆に富んだ、また深くいろいろ考えさせられるものがあろうかと思うので、若干挙げさせていただきます。  東京新聞、見出しは「「”カネ”で解決」浮き彫り」「ペルシャ湾」「次期政権にも重荷」というようなことで、すべて金絡みではないか。日本は何でも金で解決しようとする、こうした対日批判に拍車がかかるんではないか。平和国家として貢献するということは当然であるけれども、この問題については、次の政権に大きな課題がかかっていくのではないか。いわゆる電波航行援助施設も、これが目玉と言われておりますけれども、これもこれがなくては相ならないというものなのかどうか。いずれにしましてもそうした見方ですね。  サンケイ新聞、「有事法制なき国の苦肉の策」、日本の泣きどころを露呈したと。外務省は、起死回生の策を作業班を設けてやったけれども日本が有事法制を備えるという作業を放置しているがゆえに、国際国家としての一番の泣きどころがあらわれたのではなかろうか、こういう見方。  それから、これは今の社説とはあれですけれどもアメリカ政府筋の見方として、掃海艇をペルシャ湾に派遣するとなれば百点満点、巡視船なら八十五点、金を出すだけなら十点だと、こういう見方が、これも一つの見方でございましょう。  これは東京新聞、「安全航行問題への貢献と限界」、応分の負担要求に日米関係を一段と悪化させる危険性は軽視できないと、こういうことで、率直に言って、安全航行の確保に直結するのか、いまひとつびりっとしない内容である。目玉は安全航行システム、これとても外圧をかわすため無理にひねり出した苦肉の策の印象を免れない。日本は、また金で解決しようという批判を改めて受ける可能性もあるのではないか。しかし我が国の貢献度は、ぎりぎりの線とはいえ、この程度に限定されざるを得ないのではなかろうか。しかし、この問題は再燃を避けられないだろう、一件落着というわけにはいかないであろうという見方をいたしております。  さらに、サンケイの場合でございますが、「これでよいか安全航行策」。率直に言って、迫力に欠ける印象はぬぐい得ない。ペルシャ湾問題、日本が世界にどのような貢献をしていくか、これに深く結びつく、言うなれば象徴的な問題ではないか。注目すべき点は、選択肢が憲法上の制約から非軍事的な役割に限定され、では金さえ出せばよいのか。このような制約の中では、国際世論に対して訴える力のある措置がなかなか見つからないというジレンマがあるのではないかと。これは憲法の制約なり、我が国が軍事的な役割を果たせない、これは私もそうあるべきだと思っております。  ただ、だからといって結果的には金で解決という姿で、果たしてこれが国際世論から理解され、また評価されるであろうかという点が、やはりこの問題点として提起されているわけであります。したがいまして、日本の役割が世界の多くの国からも評価されるようなあり方、非軍事的という枠組みの中で日本が何をなすべきか。これはもちろん経済協力なり外交努力なりございますけれども、やはり直接ペルシャ湾ならペルシャ湾、これは日本が一番恩恵をこうむっておる、かつあの地域は自由世界にとっても極めて重大な戦略的な地位を占めております。そういう面から我々の直接安定にかかわってきている問題、そこで何ができるのかを本腰を入れて模索するときが来たのではないか。私はこうした社説が掲げられるということ自体が時代の要請を反映しているというふうに思うわけでございます。  さらに、次は毎日でございますけれども、「ペルシャ湾政策で考える」、貢献策は、やっぱりこれも日本は物事を金と物で解決しようとする批判、平和国家としてどう対処していくか、真剣に考えるべきときである。海外協力援助も、これはまだGNPの比較からいえば世界十四番目ですから、余りこれは胸張っても言えない。さらに毎日の社説で言っておりますのは、いわゆる良心的兵役拒否者というのがおりますね。そうした良心的兵役拒否者は、従来戦争だなんということになると、兵役は拒否します。そのかわり自分は服役をする、あるいは労役に服する、あるいはいろいろな奉仕活動に従事をする、こういう形で行われてきている。こういう姿を見た場合に、日本という平和国家が国際社会へどう貢献するか、そうした場合の自己犠牲、これも欠かせないのではないのか。いわゆる安保ただ乗り論、これが日本外交のツケになって、今回の場合も結局、その場しのぎという処理に終わらざるを得なかったのではないのか。人をどう派遣するか。財政的に援助はもちろん大事でございます。今後もっとふやしていかなければなりませんけれども、やはり人の派遣を含めてこの国民的な論議を巻き起こさなければならないのではないか。こうしたことが述べられているわけであります。  私は、これらの意見のすべてに一〇〇%同じというわけではございません。しかし、各紙が筆をそろえて、この平和国家といいながら、実質的にはお金で解決する、こういう姿が果たして本当のあるべき姿なのか、これが本当の平和国家なのか。そこで私は伺いたいのですね。平和といい、一番の基礎はこれはやはり人命尊重でございましょう、人権でございましょう。人の命は地球より重いという最高裁の二十三年ごろの判決も出たそうでありますが、そこで、人の命を奪う、国内においても凶悪犯罪、その中でも人の命を奪う、こういう殺人事件というものが平和国家になってから本当に減っているのかどうか。戦前と戦後と比較してみてどうなっているんだろうか。一つの指数として、きょうは警察の方ですか、出てきていただいておりますが、それをお答えいただきたい。
  149. 古川定昭

    説明員(古川定昭君) 申し上げます。  戦前、戦後の殺人事件の発生状況でございますが、戦前は、昭和初年から十五年までの年平均が約二千三百件、戦中は、昭和十六年から二十年までの間の年平均でございますが、これが千百件となっておりまして、これらを通じますと約平均二千件というのが件数であります。戦後になってからは、昭和二十八年から三十年くらいまでの間に、昭和二十九年の三千八十一件というのを頂点とするピーク時がありましたけれども、その後は年平均約千八百件と数字の上では戦前の数値を下回っておりまして、最近ではやや減少の傾向を示しておるという状況でございます。
  150. 板垣正

    ○板垣正君 ありがとうございました。  こうした数字的なものも若干減るといっても、必ずしもそれが定着した方向とも言い切れないと思う。いずれにしても口先だけの平和、口先だけの人権尊重といっても、これはややもすると自己本位な自己満足、これは戦前の日本というものが、私はいろいろな意味で一番反省すべきことは、言うなれば余りにも自分の殻に閉じこもって、自分たちだけが正しいんだと、国際連盟から脱退しても拍手喝采、我々は子供でございましたけれども、そういう気分が横溢しておった。しかし、それが日本を孤立化に導いた、破綻につながっていったということを今反省しているわけであります。再び日本が物で栄えながら、かつての軍部は既にございません、これだけの民主国家になっているわけでありますが、しかし、果たして今の日本がその同じ孤立化の道を歩んでいないのかどうか、このことを今こそやはり深く考えるべきときではないのか。そういう意味で、このペルシャ湾の安全航行の問題も、端的に言うならば、自衛隊の掃海艇を派遣するということまで踏み切って私は当然である。これは憲法上も認められる、自衛隊法にも認められる、公海津上行える。ただ、現にあそこがひとつの非常なああした状態にありますし、政策的にまた、現在の国民の感情その他から考えてできない、保安庁の船の派遣一つもできない。これはきょう派遣しようと決めたってできません。できない根本は、さっきサンケイの社説にもありましたけれども、それを裏づけする法律、それを裏づけする準備というものが全く何にもないわけですよ。ですから、これは勇ましげに自衛隊派遣なんて言ってみたって、そんな準備は何もできてない。一体ああいうところへ行って、いろいろな事態に対応する武器の使い方一つについても、法律もなければあるいはそれの基準を示したものもない。つまり有事法制というものが放棄されておる。そういう姿が一体じゃ国際社会から見た場合にこの経済摩擦を起こし、いろいろな摩擦を起こしておる、あるいは日本という国は外圧を加えるほかない、あるいはそういうことによってすべてを物で解決しようという、これで我が国民たちが、次の世代が本当に誇りを持って、胸を張って世界に向けて平和国家として進んでいくことができるでしょうか。私はそういうことを含めて、まさにペルシャ湾問題は、現時点においてはぎりぎりこうした方策しか出し得ない、なし得ないのはやっぱりその背景にある法制的な準備も、また心の準備も、また何よりも政治の姿勢ができておらない、ここに問題があるわけでございます。そうした面について今後私どもも真剣に取り組んでいかなければならないと思いますが、外務大臣は今後も党のリーダーとして御活躍いただくわけでございますので、その辺の率直な御見解を承りたいと思います。
  151. 倉成正

    国務大臣倉成正君) ただいまお話がございましたとおり、平和国家というのは単に平和を願う国家ではなくして、平和を実現するために相当の努力をする、汗を流すというのが真の平和国家であると思うわけでございます。そういう意味で、ただいま先生がるるお述べになりましたとおり、国際社会における我が国の地位の向上に伴い、その期待も非常に大きいと思うわけでございます。  今回の措置は、我々が現在考えられ得る最大の措置でございますけれども、より積極的に国際社会の期待にこたえるために取り組んでいくことはさらに必要であると考えるわけでございまして、いろいろな問題について、我々国民の世論等を参照しつつ検討すべきものだと考えておる次第でございます。
  152. 板垣正

    ○板垣正君 ありがとうございました。  それではあと若干時間が残りましたが、INF交渉ですね、これに関連をして一つ伺いたいんですが、私どもも、いずれ米ソ首脳によって初めて現実にある中距離核兵器が削減され、全廃される、いわゆるダブルゼロと、こういう姿は大変喜ばしいことでございますが、しかし両国が持っておる、世界が持っておる核兵器から比べればまあ三%とか四%とかいうんですね。そういうことでございまして、仮に米ソ話し合いが実現できたといたしましても、それはイギリスの外相も言っているそうですけれども、これはまさに始まりの始まりにすぎない。欧州等の動きを見ておりますと、やはりさすがに欧州においてはこれにどう対応していくか、一つの危機感に立って、今後そういうものがなくなればソ連の強大なる通常兵力、核兵器ももちろん含まれますが、そうしたものに直面する中でいかに欧州の安定、平和を守っていくかという問題が各方面で真剣に論議され、対策が講じられようとしている。我が方の場合も、現在進めつつあるこの中期防衛計画による最小限の防衛体制の確立なり、法制的準備なり、あるいは積極的な外交努力なり、むしろ始まりの始まりという立場に立つべきではないのか。ややもすると、INFができた、いわゆるデタントムードで、もう今さら自衛隊なんか必要ないじゃないかとか、あるいはもうそうしたものが解決されたような、そういう極めて安易な風潮が今後招かれるおそれも非常にあるわけであります。率直に言って、我が国の場合はそうした風潮に非常にもろいし、動かされやすいし、したがいまして外務大臣、いかがでしょうか、そうした立場からこのINFの今後の対処というものについての御見解を伺っておきます。
  153. 倉成正

    国務大臣倉成正君) 九月末の米ソ外相会談におきまして、INFのグローバルな全廃を内容とする協定を締結することについて、原則的な合意が成立したことは広く歓迎されておりまして、西欧諸国も一様に歓迎しているところでございます。今お話しのように、確かにこれは核兵器全体から考えると一部分でありますけれども、業の兵器と言われる核兵器の廃絶の端緒をつけることができるとすれば、これは確かに大きな一つの前進であろうと思います。同時に、NATOの諸国は、INF協定を端緒として、さらに戦略核の大幅削減並びに欧州正面におけるNATO諸国とワルシャワ条約諸国との間の化学兵器、通常兵器の分野における不均衡を是正するための交渉を進めていくべきとの立場と承知しておるわけでございまして、これはグローバルな立場でこれらの問題は考えていかなきゃならないという点については先生の御指摘のとおりであろうと思います。
  154. 板垣正

    ○板垣正君 洋上防空でただ一つだけ、これは防衛局長に伺いたいんですが、いわゆる洋上防空をめぐっていろいろな防衛白書も出ていますし、いろいろ何か全く新しいものが立ちあらわれたような論議もいろいろあるわけですけれども、これは防衛局長もかつて言われたように、いわゆるこれは防空の機能であると。つまり、これは技術は日進月歩でございますし、特に潜在的脅威と言われ、私は実質的な脅威と思いますけれども、ソ連側の極東の軍事力の増強は今日においても進められつつありますし、かつ新しく開発されたミサイルなり航空機なり爆撃機なりをヨーロッパと同じくらいに配備してやっているという姿であります。そうして、そういうものにやはりおのずから専守防衛の立場においても、これに対処した防衛機能を考えなければならない、こういうことではなかろうかと思うわけでありますが、ここでまあわかりやすく言って、ミサイルを遠いところから撃つようになった、あるいは爆撃機の航続距離が長くなったとか、いろいろございましょうが、具体的にソ連の最近のミサイル、あるいはそうした攻撃兵力、そうしたものについての特に対空脅威が増大してきているその具体的な例をひとつお聞かせいただきたい。
  155. 瀬木博基

    説明員(瀬木博基君) ただいま先生から御指摘になりましたようにソ連の爆撃機、またその搭載いたしますミサイルというものの機能が確実に進展しているということはそのとおりでございます。従来からソ連は海軍が爆撃機を持っておるという、そういう戦術を持っておる極めてまれな国でございまして、この中距離の爆撃機をもって海上交通そのもの、またそういう爆撃機による他の国の領土に対する脅威というものを与えるという国でございます。  中距離の爆撃機は、従来ソ連は、バジャーTU16というものを主体としてございましたけれども、最近におきましては、このバジャー自身を改良するということにより、バジャーの今G型というところまで行っておりますが、またそれに加えましてバックファイアというものを増強いたしておるわけでございます。バックファイアというものは、これは先生もよく御存じだと思いますし、既に先生からもお話がございましたけれども、速度も非常に速い。速度にいたしまして、マッハの二という速度を持っておる。また航続距離も非常に長く、半径にいたしまして四千キロと言われております。さらには対地、対艦のミサイルを備えておる。このミサイルはAS4と言われておりますが、およそ三百キロと大変な長い距離を飛ぶミサイル、かつ非常に精度の高いミサイルを持っておるということでございまして、かかる航空機というものの我が国に対する脅威というものは残念ながら非常に増大している、潜在的な脅威は増大していると見ざるを得ないと思います。
  156. 板垣正

    ○板垣正君 ありがとうございました。終わります。
  157. 片上公人

    ○片上公人君 FSXの選定問題についてでございますが、さきの日米防衛首脳協議で、F16かF15Jをベースとした改造機を日本の主導で日米が共同開発をするとの合意に達して、現在日米の専門家会議で検討されているようでございますが、この専門家会議の設置の目的は何なのか、この会議によりFSXの機種が実質的に決定し、後の手続はいわば形式的なものとこれは理解してよいのか。あわせて、FSXの最終決定までの手続と時間的な目安を説明願いたいと思います。
  158. 西廣整輝

    説明員西廣整輝君) 先ほど板垣先生の御質問に対して防衛庁長官からお答え申し上げた、ように、先般の日米の首脳会談におきまして大きな枠組みというものは決められたわけでありますが、残された問題としては、F15、F16いずれかの既存機を日本の使用に合ったように改造し、そのうち経費効率のいいものをとろうということになっておるわけでございますが、内容的にはF15について言いますと、現在まで改造案として提案されたものは、アメリカ側が既に高性能化したF15Eというものを土台にして若干の改造をするという案が提案されておるわけでございますが、これは我々が現にもう運用しておりますF15Jという戦闘機を持っておりますが、それよりも一段すぐれたものを日本的に改造するというようなことでありますので、非常に高くつくという問題がございます。さらに言えば、その改造がアメリカによってなされたものを再改造するということになりますので、大部分はアメリカの技術で改造されてしまう、我が方が盛り込みたい技術が盛り込めないという問題がございます。そういう点で、そうではなくて現在我が方が使用しているF15Jから日本の技術を使用してどう改造していけば所望のものが得られ、かつ最も安くそういったものが得られるかということを技術専門的に、あるいは運用上から専門家に詰めてもらおうというものであります。  一方、F16につきましては、同様にF16を土台にして米側から改造案というものが提案されておりますが、その改造機そのものの性能が我々の要求しているものを満たしておらない。したがって、我々としては、より大幅な改造をして我々の要求を満たすものにしなくちゃいけない。しかもその改造というのは、できる限り日本の技術というものを生かした改造にしたいということで、そういった改造をするためにはどのような部分をどのように改造していけばいいかと、そうすれば日本の必要とするものになるかといったことを技術的に詰めるということで、その両案について現在、技術専門家あるいは運用の専門家が詰めておる最中でございますが、これが終わりますと、それに要する経費等も出てまいりますので、おのずから費用対効果といいますか、それぞれ能力が違う航空機でありますが、一定の金額なり、あるいは一定の効果を得るためにどちらがより経費効率のいいものであるかというものが出るわけでございますので、その段階でそういったデータをもとにして、防衛庁としてはこちらがよろしいという案を決めたいというふうに思っております。これはそう遠くない先に決めたいと思っております。  しかる後そういったことを前提にして、来年度にも開発のための経費を追加要求したいと考えておりますが、これは概算要求の追加という形で出し、安全保障会議等でその必要性等を御説明することになると思いますが、安全保障会議あるいは各省等においては、例えば財政当局等においては、これを年末の予算の政府案をつくる時期まで、その間いろいろ御審議をいただき、調整をさしていただいて、最終的には多分年末になると思いますが、来年度予算政府案をつくるまでに政府としてどうするかということを御決定いただく。したがって、年末の段階で安全保障会議あるいは閣議等で予算としてそれを御決定いただくという段取りになろうかと思います。
  159. 片上公人

    ○片上公人君 防衛庁は六月にF1後継機総合検討委員会をつくりまして検討を行っていたと承知いたしておりますが、これと今回の専門家会議との関係はどうなっておるのかを説明願いたいと思います。  また、検討委員会はどのような検討を行い、どのような結論を出しているのか。今回の粟原長官の訪米時の発言は、当然その結論を踏まえたものと考えますが、そのように理解してよいか、お伺いいたします。
  160. 西廣整輝

    説明員西廣整輝君) 御承知のF1後継機の検討委員会は、我が庁におきますこの種後継機等の選定に必要な各分野がございます。例えば技術の分野、運用の分野、あるいはそのほかの防衛力整備に関連してそういったものを所掌する分野、それぞれの主たる責任者が集まって委員会というものをつくり、各般の面からどういうものがよろしいかという検討をする委員会でございます。その下には、当然のことながらそれぞれの分野を代表する者が委員になっておりますので、技術のスタッフなり運用のスタッフなり、あるいは防衛力整備その他の関係のスタッフがおるわけでございますが、今回米国から来ております専門家というのは、主体は技術系統の人間でございますが、それ以外にそういった技術的な改造を行った場合どういう性能が出るか、それが我が方の要求性能とどうなるかということで運用面についての専門家も若干まじっております。そういった人間が来て専門家会議、専門家の協議を行っておるわけでございますので、いわば検討委員会のメンバーも一部入っておりますが、そのスタッフが中心になって、今米側協議、調整をしておるということになります。  なお、この検討委員会の成果がどうなって防衛庁長官の訪米時に反映されたかということでございますが、この検討委員会が中心になりまして従来各種の案が提示されておるわけであります。例えば、現在もう既に使われている航空機をそのまま使った場合どうか、あるいは新規に国産した場合どうか、改造した場合どうかということについて各種の案が出ておったわけでございますが、それらについて、それぞれいろいろな立場から、あるいは総合的なシミュレーション等も実施をして、それぞれの短所、長所というものを洗い出して整理をしたのが検討委員会の主たる仕事でありまして、そういったものを土台にして、先般大臣訪米の際にはそれを前提にして、少なくとも現在提示されておるそのままの案では我々の要望を満たすものはないと、したがってどうするかということから議論が始まって、御承知のように現在作業が行われているようなF16、もしくはF15のさらなる改造案を検討するという結論に立ち至った次第でございます。
  161. 片上公人

    ○片上公人君 報道によりますと、検討委員会では結論を出せずに、結局、栗原長官の訪米前の参事官会議長官一任との確認を行ったとされております。結論を出せなかった原因は何なのか。FSX問題が日米間の政治問題になって、もはや事務レベルでは結論が出せなかったというのが真相ではないのか。  また、先ほど共同開発につきまして、同僚委員の質問に対しての局長答弁で、日本側が主体となってと、こうありましたけれども、本当にそのように主体となるような保証というのはあるのかどうか、伺いたいと思います。
  162. 西廣整輝

    説明員西廣整輝君) 検討委員会が結論を得られなかったのではないかということでございますが、御承知のように、先ほど申し上げたように、検討委員会としては十分私はその職責を果たしたと思っております。ただ、その結論というものが、いずれも提案された案そのものでは帯に短したすきに長しといいますか、一長一短あって、これならそのまま採用に値するというものにならなかったということでありまして、そういったものを前提としてさらに新たなものを求めるとすれば、米側と十分また調整をしなくちゃいけない。たまたま大臣が訪米されることになりましたので、その一番重要な部分、大きな枠組みについてお話し合いをいただき、さらに私ども事務当局もついてまいりましたので、その枠組みの中でいろいろ調整した結果、先ほど申し上げた二案が残ったという状況でございます。  次に、日本側主体の問題でございますが、これまた私先ほどお答え申し上げたとおり、米側と十分話し合った上で、これからの改造というものについては当然のことながら防衛庁というものが中心になって、どういうものを必要とするからこういう形で改造してほしいという、まず我が方からの改造要求といいますが、開発要求そのものについて我が方が主体性を持ってやりますし、それを受ける側、実施する側の企業の関係にしますと、先ほど申し上げたように、いわゆる主契約者、プライムコントラクターというのは日本の企業がなる。したがって、アメリカ側の企業というのは日本側企業の下請として協力をするという形でやるということについて米側と十分取り決めをしておりますので、問題はないというように考えております。
  163. 片上公人

    ○片上公人君 FSXで重大な問題は、国会で何回も指摘しているにもかかわらず、その要求性能が一切明らかにされていないことでございます。新聞などには数多く言及されているものを何ゆえに国会で説明できないのか、これは納得できませんが、そもそも要求性能というのはどこがどのようにして決めて、そしてどのような拘束力なり権威を持つものなのか、まず説明願いたいと思います。
  164. 西廣整輝

    説明員西廣整輝君) 要求性能というのは通常、開発をする場合等に、開発してもらう際に、この種の性能のものを開発してほしいということが一つの条件といいますか、そういう目標を持って開発してもらうということになりますので、その際に出すことになると思います。したがって、これから開発というものが決まりますれば、当然のことながら要求性能というものが出てくるということになると思います。いずれにしましても、それらのものは装備の性能そのものをあらわしますので、それすべてを国会なり外部にお示しをするということは非常に困難なわけでございますが、いずれにいたしましても、私どもこのFSXについて開発方針が決まり、かつ政府としてそれを予算で決めるという段階になりましたら当然国会で御審議をいただきますので、出し得る範囲のものは御提出をして、また御審議いただくということになろうかと思います。
  165. 片上公人

    ○片上公人君 従来、要求性能というものは絶対的な条件のように受け取られておりましたが、今日では要求性能と言われていたいわゆる双発についても、空幕長までが柔軟な発言を行っていらっしゃいます。そもそも双発との考えを持った理由は何だったのか、また要求性能というものはそんなに簡単に変わり得るものかどうか、この辺をお答え願いたいと思います。
  166. 西廣整輝

    説明員西廣整輝君) 先ほど来申し上げているように、要求性能というのは、ある開発が決まり、それを実施する段階で出されるものでございますから、その段階で出された要求性能というものは、開発段階でもそれを満たしていただくということが要件になってくると思いますが、その種要求性能にもいろいろな項目があろうと思います。それが極めてバイタルかつコアになるものもあろうかと思いますし、でき得ればという程度のものもあろうかと思いますが、それは今後の問題であろうと思います。  なお、お尋ねの戦闘機について双発がいいか単発がいいかという問題については、これまた一長一短あろうと思います。一般的に申しますれば、双発の方が安全感が高いということが言えるんじゃないかと思います。一方、運用面等で言いましても、例えば単発であれば航空機としての可動率は当然のことながら高くなるわけであります。というのは、発進する際に二つのエンジンが快調であるかどうかということと、一つのエンジンが快調であるかどうかということであれば、当然一つの方が確率は高いということですから、可動率は高くなるわけでございます。と同時に、戦闘中に片方のエンジンがぐあい悪くなったというときに、双発であれば、なおかなり離れたところまで帰還するチャンスが持ち得るというような問題もあろうかと思います。またいろいろな面で考えれば、例えば訓練等は通常海上等で行われる場合が多いわけですけれども、双発のものであれば、片方残っているんだから何とか帰れるんじゃないかということで帰るチャンスがあると同時に、無理して帰ることによって陸上で事故を起こす可能性もある。単発であれば無理して帰るわけにもまいりませんので、そこでベールアウトするということで、地上まで害を及ぼさないということもあるかと思います。いろいろ一長一短ありまして、これでなくてはいかぬという絶対的なものではないのではなかろうかと私は思っております。  いずれにしましても、その航空機の何といいますか、信頼性なりできばえということで、単発であっても非常に信頼性が高いものもあれば、双発であってもかなり信頼性の低いものもあるということであろうかと思いますが、ある点ではこれは好き嫌いの問題も入りますし、なかなか決め手にはなりがたいというように考えております。
  167. 片上公人

    ○片上公人君 今までのFSXに対する防衛庁対応を見ておりますと、いわゆる栗原三原則や費用対効果の考慮と説明されていた選定基準ですが、結局、米国の軍事産業と議会の圧力を受けた米国防総省の強い要請を受け入れて、国内の防衛産業の要望にも配慮した決定と言わざるを得ないように感じられますが、いわば政治判断が優先したものと考えますけれども長官の所見をお伺いしたいと思います。
  168. 栗原祐幸

    国務大臣栗原祐幸君) 粟原三原則というのは、私は守られたと。これは一つには今度できるFSX、これはやっぱり性能のよいものでなきゃいけない。ですから性能のよいものができるかできないかが一つの問題です、これ。  それから、もう一つの問題は、やっぱり日米安全保障ですから米国防総省の理解を得られなきゃならない。そういう意味合いでは、先ほどお話ししたとおり十分に話をいたしましたから、米国防総省の方も理解をしておる、こちらの方も向こうの話はよくわかった。  それから日米の防衛産業の圧力をこうむらないか。これは現に米国防総省は、こちらへ来ておりまする航空機会社に対して、全面的に日本に対して協力するようにということで来ておりますので、私の聞いている範囲では、日本側が予期する以上に積極的に協力をしておる、こういうふうに聞いております。したがいまして、今まではメーカーが政府を動かしたという格好でありますが、今回はむしろ政府がメーカーを指導しておる、こういうことではないかと思いますので、見方にもよりますけれども、私は栗原三原則の基本は生かされておる、そういうふうに確信をしております。
  169. 片上公人

    ○片上公人君 FSX選定問題は単なる新装備品の購入といった次元ではなくて、我が国の防衛のあり方までを左右するものでございますが、十分なる論議を尽くすことはもとより、これはいささかも不透明なことがないように国民の前にできる限りのことを説明すべきだと思います。  また、何でもレベルが高ければよい、性能がよければよいということだけではなくて、費用対効果など国民への負担の面にも十分な配慮をした合理的なものを選ぶといった態度で臨むべきだと思いますけれども長官の御所見をお伺いしたいし、そしてまたそのためにも、しかるべきときに国会にFSXの選定の経過及び理由を詳細に報告してもらいたいと考えますが、いかがでございましょうか。
  170. 栗原祐幸

    国務大臣栗原祐幸君) そうありたいと考えております。
  171. 片上公人

    ○片上公人君 さらに長官にお尋ねいたしますが、昨日の報道によりますと、米国のメーカーの協力を促すために、共同開発の過程日本側が供与した製品や技術を米国が第三国に輸出することについて同意する方針と言われておりますが、事実かどうなのか。  また、現在行われている専門家会議なり、これまでの米国メーカーとの話し合いの中で、米側から第三国への輸出の事前同意を求められたことはあるのかどうか、これをお伺いしたいと思います。
  172. 山本雅司

    説明員山本雅司君) FSXに関しましては、今、日米で最終的な作業をしている段階でございます。  この技術供与の関係は、実はまだ話し合いをしておりません。と申しますのは、具体的な共同開発の形態なりその内容が固まりませんと、その固まったものに基づいて日米政府の間でこれを決めるということになると考えております。したがいまして、アメリカ政府からまだ共同開発した技術を第三国に出したいとか、あるいは出すことについての同意を得たいとかいう話は来ておりません。  ただ、一つだけつけ加えますと、これから政府間で枠組みを話し合うことになると思いますが、多分その過程で、私どもアメリカに技術供与する場合には、現在の日米間の武器技術供与の枠組みを使うということにしたいと考えております。
  173. 片上公人

    ○片上公人君 対米武器技術供与を決定しました五十八年当時、供与した技術の第三国移転の問題についても国会で論議が行われまして、衆議院予算委員会理事会に提出されました政府見解では、「武器技術供与を認めた趣旨及び武器輸出三原則等を踏まえて慎重に対処する所存である。」としております。第三国に移転された武器が紛争に使用される可能性があることを考えますれば、武器輸出三原則の原点からしても、第三国移転についての事前同意は行うべきではないと思いますが、この点の防衛庁長官の見解をお伺いしたいと思います。  また、今までの日本の武器禁輸政策がイラン・イラク戦争でも両当事国に対しまして調停役を務めることを可能にしていることは、これは明白であり、第三国移転を認めればその立場は揺らぐことになるのではないか、重ねて御見解をお伺いしたいと思います。
  174. 山本雅司

    説明員山本雅司君) ただいまお答え申し上げましたように、またこれは話し合いをしておりませんから具体的な事例については申し上げられない立場でございます。  ただ、今の先生御指摘のように、一般的な武器技術供与の枠組みにつきましては既に決まっておりまして、今回のものにつきましてもその枠組みの中で行うというように考えております。したがいまして、具体的にそれでは第三国にどういうものを出すのか、あるいはそのときの同意を求めてくる内容がどうなるか、これは全く今のところはわかりませんけれども、具体的な要請のあった場合に、先ほど御指摘のような要件を十分検討して慎重に対処するというのが私ども立場でございます。
  175. 片上公人

    ○片上公人君 次にペルシャ湾の情勢につきましてでございますが、十月八日の夜に米軍攻撃ヘリコプターによるイラン艇攻撃が発生しまして、その緊迫の度を一層強めまして、まさに一触即発の状態になりつつございます。我が国にとりましても、また世界にとりましてもペルシャ湾の安全航行の確保が緊急の課題となってきております。我が国政府もこの問題に大変努力を傾けていることは承知しておりますが、情勢は一向によい方向に向かわず、むしろ悪化していると思われます。  その原因は、一概には言えませんが、米軍によるタンカー護衛作戦に代表される米国及び西側諸国の軍事的プレゼンスの強化が、当事国に刺激を与える結果になっているのではないかと危惧する向きがございます。政府はこのような米国等の行動を高く評価しているようでございますが、軍事力によっては平和をつくり出すことはできずに、往々にして紛争をエスカレートさせるとの批判に対しましてどのような考えを持っておられるか伺いたい。  私は、イラン・イラク戦争の終結なくしてペルシャ湾の真の安全はないと思います。したがって、世界各国はそのための外交努力をなお一層続けるべきでございますし、特に日本はさらなる平和的外交努力をどこよりもするべきではないか、そしてペルシャ湾に軍事力を集結させ力で安全航行を確保するなどという考えは、事態を悪化させるデメリットの方が強いと思いますが、外務大臣の所見をお伺いしたいと思います。
  176. 倉成正

    国務大臣倉成正君) ただいま先生お話してございますが、ペルシャ湾の問題につきましては既に最近までで約三百隻の船が被弾をいたしておりまして、この中には米海軍のフリゲート艦スタークの被弾は含まれておりません。したがって、三百隻以上のものが被弾をしておりまして、なお最近またいろいろた事件が起こっていることも御承知のとおりでございます。  我が国は何とかして、このペルシャ湾の安全航行の最大の受益者であるという点にもかんがみまして、外交努力によりましてこの問題の解決を図りたいということで、私自身もテヘランに赴きましてベラヤチ外相あるいはハメネイ大統領、ラフサンジャニ議長ともお目にかかりまして強くイランの平和的な解決についての努力を求めた次第でございます。またイラクにも参りまして、フセイン大統領、ラマダン副首相あるいはアジズ外相とも懇談しまして率直な意見の交換をいたしました。  なお、御案内のとおり、安保理の決議五九八が全会一致で採択されたことにもかんがみまして、イラン、イラク両国に対しましてこの五九八を全面的に受け入れるよう強く申し入れているところでございます。御案内のとおり、イラクの方は一応受け入れる、しかしイランの方はなかなかそのまま受け入れるということにはなっておりません。したがって、そういう中で戦火が依然として続いているということでございます。  そこで、私どもといたしましては、何とかこの五九八を現実のものにするために国連の事務総長にこの調停努力をさらに続けていただきたい、事務総長もテヘランあるいはバグダッドに行かれまして大変な努力をされましたけれども、さらになおこの努力を続けていただきたいということを申しておりまして、事務総長が活動する経費の一端について日本もひとつ負担をいたしましょうということを考えている次第でございます。しかしながら、御案内のとおり現実に被弾をし、あるいは現実に安全航行を脅かされているという段階のもとにおいて、アメリカが安全航行のためにその役割を果たしておるということは、私はそれなりに評価してしかるべきであろうかと思うわけでございまして、我が国としては非軍事的な手段において貢献していくということで、先般御承知のとおりの高度情報通信システムを含むペルシャ湾対策についての一連の施策を決定したところでございます。
  177. 片上公人

    ○片上公人君 政府は去る十月七日に「ペルシャ湾における自由安全航行確保のためのわが国の貢献に関する方針」を決めましたが、この方針は三本の柱から成っていますが、この方針に盛られた方策につきまして直ちに関係諸国及び国連と所要の協議を開始することとしておりますが、いつから協議を開始していつまでに方策を実施するのかお伺いしたいと思います。
  178. 倉成正

    国務大臣倉成正君) 既に外交ルートを通じまして相手国と話を続けております。しかし、相手もあることでございますから、いつまでにどうということはこの席で申し上げることはできませんけれども協議が整えばなるべく速やかにこの通信システムの方はひとつ実現をぜひいたして安全航行に資したいと思っておるわけでございまして、この構想につきまして一部の国からは、これは称賛すべき措置であるという評価も得ているところでございます。
  179. 片上公人

    ○片上公人君 一方、イランのハメネイ大統領は、七日、日本政府ペルシャ湾の安全航行のための資金拠出計画決定したことにつきまして、米国は政治的孤立からの脱却をねらってペルシャ湾問題に他国を巻き込もうとしているとレーガン政権を非難するとともに、我が国に対しましても、資金拠出はこれまでの日本の中立政策に合致しないと批判しておりますが、確かにハメネイ大統領が指摘するように、今回の措置はこれまでの中立的立場から一歩踏み込みまして米国にくみしたことはこれは明らかでありまして、今後の日本・イラン関係に悪い影響を与えかねない。  そこで、イラン大統領の対日批判をどのように受けとめ、また今後のイランとの外交関係をどのように見ているのか、明らかにしてもらいたいと思います。
  180. 倉成正

    国務大臣倉成正君) 今次のペルシャ湾に対する我が国の一連の政策に対しまして、イラン側が今次決定日本の伝統的政策とは一致しないという旨のハメネイ大統領の発言があったということを聞いております。しかし、今回の我が国の措置は安全航行確保のための非軍事的な手段での協力でございます。機雷の敷設はイラン自身もやっていないということを言っているわけでございますから、そういう広く湾岸及び周辺地域の長期的発展のためにまた経済協力をしたいということでございますから、また一面において、イラン・イラク戦争が終わりました際にはイラン、イラクの復興にも協力したいということでございますし、また国連の和平努力の支援等幅広い内容のものがこの措置には含まれております。したがって、このような措置をとったからといいまして、これがイラン側に対して反対立場をとっているというものではございません。あくまでも公海でありますペルシャ湾の安全航行ということを念頭に置いて行った措置でございますから、十分な説明を行いまして、イラン側の理解も得られるものと確信をいたします。
  181. 片上公人

    ○片上公人君 さらにワインバーガー国防長官は、今月七日に日本政府が決めましたペルシャ湾の安全航行確保の方策の一つである安全航行情報システムに対する財政支出に対しまして、ペルシャ湾での自由航行に向けた意義深い第一歩であるとのコメントを発表しました。また、国務省のレッドマン報道官も同日の記者会見で、日本の支援計画ペルシャ湾における西側の安全航行計画に対する同国の明確な支持のしるしであると我が国の政府対応を評価しております。こうしたことが逆にイラン側に刺激を与えることは、これは必至でありまして、これまで以上に日本のタンカーに対して報復措置に出るのではないかという危惧がございます。この点につきまして再度答弁していただくとともに、安全航行情報システムの建設計画とそれに伴う財政支出がどの程度なのかを明らかにしていただきたいと思います。
  182. 倉成正

    国務大臣倉成正君) 先ほども申し上げましたとおり、この情報システムにつきましては、湾内の自由安全航行確保に貢献するという見地から、御案内のとおりオメガ、それからロラン、そしてデッカというシステムがございますけれども、このデッカシステムを高度にいたしまして、船舶の位置を非常に正確に測定することができるシステムでございます。本システムは、技術的な性格から考えまして、特定の国に向けられたものではございません。また、湾内を航行するすべての船舶がこの利益をこうむるのでございます。したがって、イラン側に対しましては外交ルートを通じて我が国の趣旨を十分伝えているところでございますから、我が国の決定について理解を得られるものと期待しているところでございます。このシステムに要する経費はおよそ一千万ドルでございます。
  183. 片上公人

    ○片上公人君 さきの方針の中で、なお書きではございますが、「米国が、ペルシャ湾を含め国際的な平和と安全の維持のためにグローバルな役割を果たしている状況の下で、わが国の安全保障にとり不可欠な日米安保体制のより一層の効果的運用を確保する見地から、適切な対象について在日米軍経費の軽減の方途について米国と協議を行う。」と記述されております。  このように政府ペルシャ湾の支援と絡んで在日米軍経費の軽減策につきまして米国側と協議に入る方針を明らかにしておりますが、これは全く別々の問題であると思います。ペルシャ湾対策とは切り離す問題であると思います。このように個別の問題を同一問題として処理しようとする合理的な理由はどこにあるのか。さらに、これから協議に入るというが、在日米軍経費の何を軽減しようというのか、明確にしてもらいたいと思います。
  184. 倉成正

    国務大臣倉成正君) 安保条約に基づく米軍の我が国への駐留は日米安保体制の根幹でございまして、在日米軍駐留支援は在日米軍の円滑な活動の確保という観点から極めて重要であると考えております。かかる観点から、政府としては従来から在日米軍の駐留費について自主的な判断によって、できる範囲内で我が国の負担について努力をしてきたところでございます。  政府としては、米国がペルシャ湾を含め国際的な平和と安全の維持のためにグローバルな役割を果たしている状況のもとで、我が国の安全保障にとり不可欠な日米安保体制の一層の効果的運用を確保するとの見地から、在日米軍経費の軽減の方途について米国と協議を行うこととしたわけでございますが、具体的な対象及び措置については今後双方で検討してまいりたいと思っておる次第でございます。
  185. 片上公人

    ○片上公人君 ペルシャ湾の問題に関しましてさきに我が党の黒柳議員が政府に質問主意書を出しまして、その答弁が九月二十九日に出されているのでございますが、それについて若干伺いたいと思います。  まず、中曽根総理の機雷掃海は武力行使ではないとの発言に関する答弁では、浮遊しているか定置されているかを問わず、公海上に遺棄されたと認められる機雷は、我が国船舶の航行の安全にとって障害となっている場合に除去する行為は武力行使に当たるものではないと断言しておりますが、一方で、一般に機雷の除去が武力の行使に当たるか否かは、それがいかなる具体的な状況下で、またいかなる態様で行われるか等によりまして判断されるものであり、一概に言うことは困難であるとしております。  機雷の除去が武力行使に当たる場合もあることを、この答弁書では認めているわけでございますが、中曽根総理の発言のケースは少なくとも武力行使には当たらないという意味と思います。私はこの点を明確にすべきであると考えますので、機雷の除去が武力行使に当たらないとする条件をこの際政府が明らかにすることを要求いたします。答弁書からは、一つは公海上に遺棄されていること、二つに我が国船舶の安全航行の障害となっているものの二点しか出ておりませんが、それだけと理解してよいのかどうか伺いたいと思います。
  186. 依田智治

    説明員(依田智治君) 先生御指摘の答弁書では、ただいま先生お読みいただきましたように、浮遊しているか定置されているかを問わず、公海上に遺棄されていてだれからも権利の主張のないような、そういうようなものを我が国の船舶の航行安全のために取り除くというような行為は、これは武力行使に当たらないということを回答させていただいたわけでございます。  具体的ケースとしましては千差万別でございまして、一番明白なのは、交戦国が相手国に対して戦闘行為の一環として機雷を敷設する、その機雷を相手国が除去するというようなのは明らかに武力行使になってくるわけでございますが、その間には大変なバリエーションがあるわけでございまして、どういう場合に武力行使に当たらないのかというのをここで明言してくれというのは、なかなか態様によって千差万別でございますので、一概に言えないということで御了解をいただきたいと思います。
  187. 片上公人

    ○片上公人君 自衛隊法の第九十九条、機雷除去の海上自衛隊の任務の地理的範囲について答弁書は、その権限は公海上にも及び得るが、具体的にどの範囲にまで及ぶかについては、そのときどきの状況等を勘案して判断されるべきで、一概には言えないとしております。これは我が国の自衛権の及ぶ地理的範囲と同じ言い方と思いますが、自衛隊法第九十九条の規定は平時における行動を規定しているのではないか。それを有事の際の自衛権の行使の範囲と同一に考えるのは、これは拡大解釈であり、平時から自衛隊の行動を海外にまで広げようとするもので納得はできないと思います。やはりこの規定はごく限定された周辺海域ととらえるのが妥当で、少なくともこの規定からペルシャ湾の掃海が可能とするのは拡大解釈過ぎると考えますが、政府の見解をお伺いしたいと思います。
  188. 依田智治

    説明員(依田智治君) 自衛隊法九十九条の規定の趣旨は、船舶の航行の安全等、我が国の公共の安全を確保するということで、いわば警察行動として海上にある機雷等の爆発物を処理する任務を専門的知識を持っている海上自衛隊に与えた規定であるというように一貫しておるわけでございます。  経過的には、戦後日本の近海に大戦中等に敷設した機雷がまだ残存しているというようなことで、そういうものを除去するというのが当初のねらいであったかと思いますが、この規定は、特別に経過規定として国内の爆発物処理というようなことで附則に一時的、当分の間というようなことで規定されておるわけでございませんで、一般的規定としてできておるわけでございまして、しかも特に領海、領空について限っておるというわけでございませんので、そういう点から公海にも必要な範囲で及び得るというように解しておるわけでございます。  ただ、ペルシャ湾の公海はどうかというような点も先生御質問でございますが、これは現在政府としては、前回後藤田長官がこの決算委員会で明快に回答しておりますが、派遣する考えはないということでございまして、法的にも実は詳細な検討をやっておりません。ただ、理論的に純法律諭として申し上げさせていただきますと、純粋の公海という点では、特に日本近海の公海とペルシャ湾の公海というのが異なるというわけじゃないと思います。ただ、ペルシャ湾というのは現在、私の指摘するまでもなく、国際紛争が行われている。あの際、後藤田長官も交戦海域という言葉を申し上げましたが、そういう海域でございますので、そういう場所で機雷を除去するということになってきますと、公海といってもそこのところで相当慎重な判断を要するということで、私どもとしても法律判断をする場合においてもそういう点も踏まえて総合的に判断する必要があろうというように考えておる次第でございます。
  189. 片上公人

    ○片上公人君 次に、在日外国大使館の問題でございますが、現在、地価の高騰によりまして、また円高の重圧をもろに受けまして大変困っておると聞いております。特に開発途上国におきましては深刻な問題にまで発展しております。開発途上国の公館では、日本では物価が高過ぎまして、中でも家賃が諸外国と比べて極端に高いために余儀なく公館を撤去し、近隣諸国にある公館に事務移転をして業務をカバーする。また、在旧公館を維持するために、国によりましては所有地の切り売りや住宅、事務所同居の貸しビル業等を計画しながら外交業務を継続しようとして、あるいは従業員を減らして書記官が運転手を兼ねるなど、大変涙ぐましい実情でございますが、これに対しまして外務大臣はどのような御認識なのかということをお伺いしたいと思います。
  190. 倉成正

    国務大臣倉成正君) 最近の一部の在京公館の閉鎖が、主として経済的な理由によるものと考えられておるのは事実でございます。その他の在京外国公館について閉鎖の動きが現在具体的にあるとは承知しておりません。しかしながら、今先生御指摘のように最近の東京の地価高騰、またこれに伴う家賃の高騰が在京の外国公館にとって大きな経済的負担になっておることは十分承知しております。  本問題は、また派遣国の考え方、意思を考慮する必要があろうかと思うわけで、各国固有の事情を有するものと考えております。具体的ケースに即しまして当該在京公館と十分な話し合いをいたしまして、我が方としていかなる協力ができるものか、適当かつ可能であるかについてただいま鋭意検討いたしているところでございます。
  191. 片上公人

    ○片上公人君 新聞報道によりますと、ウガンダ共和国のアーネスト・オビトウルガマ駐日大使は、経済的な理由で撤退しなければならなくなった、残念であると外務省にそう言い残しまして去る七月九日に帰国したと言われており、また館員三人も七月末で全員日本を離れて、インドの高等弁務官府が日本を兼轄することになったとか聞いておりますが、外務省は具体的にどのように御報告を受け、閉鎖の理由をどのようにとらえておりますか、お伺いしたいと思います。
  192. 恩田宗

    説明員(恩田宗君) 本年四月二十一日、在京ウガンダ大使館より口上書が参りまして、七月末をもって大使館を閉鎖したいという予告がございました。その予告を私どもが受け取った際に、経済的理由による閉鎖であると受け取られるような御発言があったことは事実でございます。その後、七月二十七日に、八月一日以降大使館は閉鎖されると、こういう通報を受けております。
  193. 片上公人

    ○片上公人君 ウガンダ共和国大使館があった渋谷区の松濤地区は東京都内でも有数の高級住宅地で、現在の地価は坪二千五百万以上と聞いております。この二年間で八倍も急騰しておりまして、同国の大使館は借家でありますから、家賃は月二、三百万円は下らないと言われております。その一方、ウガンダ共和国の年間一人当たりの国民総生産が二百三十ドル、約三万五千円程度であると、このことを考えますと、この家賃の負担は大変なものではないかと思います。  さらに、フィジー大使館も近く閉館の意向とも伺いますが、実情がどうなのか、説明をいただきたいと思います。
  194. 野村一成

    説明員(野村一成君) フィジーの政府の方からも、日本にございます大使館を閉鎖させる予定である、外交ルートを通じましてそういう通報がございました。ところが、最近私どもの得た情報によりますと、再びこの大使館を維持するという話も伺っておりますので、現在その事実関係につきまして確認いたしているところでございます。
  195. 片上公人

    ○片上公人君 ウガンダ共和国大使館は、既に触れましたように、インドの高等弁務官府で兼轄するという事態となりましたけれども、このように在日大使館が経済的な理由によって在外の同国大使館等に移転を余儀なくされるということは、決して我が国にとりましても名誉なことではないだけでなく、今後その国とのコミュニケーションにも影響することが、これは危惧されると思います。この点につきまして外務省はどのように考えておるのか、明らかにしていただきたいと思います。
  196. 恩田宗

    説明員(恩田宗君) 先生御指摘のとおりウガンダの在日大使館は閉鎖されまして、閉鎖後は中国のウガンダ大使館が我が国を兼轄することになっております。私どもの方は、ケニアにある日本の大使館を通じてウガンダ政府と連絡及びその他の協議に当たっているわけでございます。これらの二つの大使館を通じまして意思疎通及び連絡協議を行っておりまして、私どもとしては直ちに両国関係に大きな支障が生ずるというふうには考えておりません。
  197. 片上公人

    ○片上公人君 ウガンダのケースを中心に触れてまいりましたけれども、この問題はいわゆる開発途上国である本国の経済状態が悪い中南米やアフリカ諸国の中には、大使が帰国して一年以上もたつのに後任大使が来られない国があるようでございます。この理由は国々によっていろいろあると思いますが、円高等による原因もその一つであろうと思います。この実態につきましても説明を願いたいと思います。
  198. 山口達男

    説明員(山口達男君) 中南米の幾つかの国で前任の駐日大使が離任しました後に、一年以上にわたって後任大使が着任しないで臨時代理大使が外交事務を行っているという例があることは事実でございます。ただ、いかなる理由で後任大使が着任していないか、それが先生御指摘の円高ないしは家賃の高騰等の経済的理由によるものかどうかにつきましては、これらの国の政府ないしは大使館から特に説明を受けておらない状況でございます。
  199. 片上公人

    ○片上公人君 さらに具体的にお尋ねしますけれども、アイスランドは二年前から駐日大使館の設置を検討していると言われておりますが、東京の地価や賃貸料が大変高過ぎましていまだに実現されていないとのことでございますが、この実情についても説明をお願いいたします。
  200. 野村一成

    説明員(野村一成君) 先生御指摘のとおり、アイスランドはアジアにどこか一カ国大使館を置きたいということで検討が進められておるという話を伺っております。他方、日本もその段階で候補地の一つになっておるということでございますが、具体的にまだ日本に大使館を設定するのだというそこまでは固まっていない、そういう状況であるというふうに承知しております。
  201. 片上公人

    ○片上公人君 次に、こうした問題につきまして、外務省を中心に我が国政府対応策についてお尋ねしたいと思います。  日本政府が外交団の公館の土地買収に際しまして、またその他の項目で現在とられている免税措置について、具体的に説明をお願いしたいと思います。  さらに諸外国、特に地価の高い国等におきましての特別措置の実施状況について、あれば説明いただきたいと思います。
  202. 小和田恒

    説明員(小和田恒君) 片上委員御承知のとおり、外交関係に関するウィーン条約という条約がございまして、その中で外国に派遣する使節団の公館についての特権、免除等を定めているわけでございますが、その第二十三条に公館に対する課税等の免除の規定がございます。それによりますと、使節団の公館につきましては、所有しているものであろうと賃借しているものであろうと、「国又は地方公共団体のすべての賦課金及び租税を免除される。」ということになっているわけでございます。  これに基づきまして不動産の取得ないしは維持に関連する具体的な税の減免措置につきまして申し上げますと、まず取得について申し上げますと不動産取得税、それから登録免許税の租税が免除されているわけでございます。不動産の賃借につきましては特別の課税はございません。それから、取得後維持している場合につきまして、通常の居住者でございますと毎年固定資産税、都市計画税、特別土地保有税というようなものを納付する義務があるわけでございますけれども、これらにつきましても、いずれも在京公館等に対しては免税措置が講じられているというのが状況でございます。  諸外国の地価の高い国においてどういう取り扱いになっているかということでございますけれども、私ども承知しております限り、外国において今申し上げましたようなウィーン条約第二十三条に従って免除しなければならないような租税の免除は各国とも行っているというふうに理解をしておりますけれども、地価が高いからといって特段の措置をとっているケースがあるというふうには、私ども今までのところ承知しておりません。
  203. 片上公人

    ○片上公人君 東京には百五カ国の大使館が開設されていると聞きますが、在京大使館の事務所の所有関係につきまして、本国政府の所有、我が国の国有地を貸借しているケース、民間からの貸借筆、その内訳を説明願いたいと思います。また現行法上、国有地に大使館敷地として貸し付けることに問題があるのかどうか、説明願いたいと思います。
  204. 小和田恒

    説明員(小和田恒君) 東京にございます外国の大使館の事務所の所有関係についてでございますが、百五カ国ございますうち本国政府が所有しておりますケースが四十六件でございます。それから、我が国の国有地を賃借しているケースが五件ございます。それ以外に、民間から賃借しているケースが五十四件ということでございます。  我が国の国有地を貸し付けるということについての問題点につきましては、これは大蔵省の所管でございますので、所管の方からお答えさせていただきたいと思います。
  205. 上野憲正

    説明員(上野憲正君) お答え申し上げます。  国有地を大使館敷地として貸し付けまたは譲渡することにつきましては、現行法上可能となっております。ただし、永続的な建物を建てるための新規貸し付けにつきましては、借地権が付着するという問題がございまして、一般的には行っておらないところでございます。  なお、譲渡する場合の価格につきましては、これを減額できるという法的根拠がないため、財政法第九条の規定により、時価によって譲渡するということになっております。  それから、貸付中の国有地につきましては、先ほど外務省の方からお答えがございましたように、五件五カ国ございます。  それから、在京の外国大使館に対しましてこれまでに売却した国有地は昭和二十六年以降十件八カ国、六万六千平米でございます。
  206. 片上公人

    ○片上公人君 去る九月三十日にアジア・アフリカ諸国を中心にしました約四十カ国の大使らが外国公館建設推進協議会を結成しまして、大使館集合ビルを建設するため日本政府に用地提供を求める運動を行っておりますが、この運動に対しまして外務省はどのように考え、どのように対応するのか明らかにしていただきたいと思います。
  207. 小和田恒

    説明員(小和田恒君) ただいま片上委員御指摘になりました協議会でございますが、九月三十日にアジア・アフリカを中心として四十カ国の大使がこういう協議会を結成したということ、それからその背景に最近の東京の地価高騰等の問題が在京の外国公館にとって大きい経済的負担になっておるというような背景があるということも承知しております。この協議会の発足式には外務省関係者も出席いたしまして、この問題の重要性を踏まえて、外務省としても関心を持って意見交換等を行っていきたいというふうに考えております。
  208. 片上公人

    ○片上公人君 現在我が国では、開発途上国に対しまして政府開発援助、ODAを実施しております。この援助の対象は被援助国の民生安定、経済開発に絞られて、しかも対象国内で使われるのが原則でございますが、被援助国側からODA資金の一部を大使館の建設費に回すことができないかという要求があった場合でございますが、どのように対応するか検討の余地があるのかどうかということを伺いたいと思います。
  209. 英正道

    説明員(英正道君) 委員御指摘のように、政府開発援助、ODAは相手の国である開発途上国の経済開発、福祉の向上に貢献することを目的としておりまして、この援助を行う国における公館の建設等に要する経費をODAとすることは困難であろうかと思われます。
  210. 片上公人

    ○片上公人君 さらに、さきに触れました大使館集合ビルの建設構想が仮にまとまりまして、資金的な裏打ちもありまして建設着工が具体化された場合でございますが、主権国家の出先機関を同じところに集めることはかえって相手国の反発を招きかねないという心配が外務省にあるやに聞いておりますが、この点はどのように見ていらっしゃいますでしょうか。
  211. 小和田恒

    説明員(小和田恒君) 先ほど来御指摘がありましたように、東京の地価高騰ないしはこれに伴っての家賃の高騰ということが背景にございまして、在京の外国公館にとって非常に難しい問題が出てきておるということは私ども十分承知しております。ただ、大臣からお答えもいたしましたように、外国公館を接受国に建設したりあるいは維持したりするという問題は、基本的には派遣国がどういう基本的な考え方を持ち、どういう意思を持っているかということを十分に見きわめて対応する必要があるわけでございまして、それぞれの国にいろいろ固有な事情があるというふうに考えられるわけでございます。  この集合ビルという構想につきましても、それが仮に具体化をいたしましても、そういう各国の希望であるとかあるいはその集合ビルというものがもたらすいろいろな問題点というようなもの、それに対する派遣国の態度というようなものを十分見きわめて、我々として対応する必要があるというふうに考えております。  いずれにいたしましても、具体的ケースが出てまいりました場合に、その具体的ケースに即して十分に相手側と話し合いを行って、どういう協力が適当であり可能であるかということをよく見きわめて対処してまいりたいというふうに考えております。
  212. 片上公人

    ○片上公人君 私は、この在日外国大使館の問題は大変重要なことととらえております。それは、私の調査では三十日に集まった関係大使館の多くが、今後の大使館の維持に大変不安を持っているからでございます。現在我が国は政治的、経済的にも国際社会から高い関心を寄せられまして、一方では国際貿易や経済の面で極めて難しい時期に差しかかっているのも事実でございます。このような状況のもとで国連を中心とした平和外交を推進していかなければならないのに、開発途上国が在日公館を撤去し新たに設置することは困難、また継続に多大の経済的負担を必要とする状況では、我が国の提唱する国連平和外交にも支障を来し、国際社会の中で支持が得られるか疑問でございます。日本国憲法の前文でも、平和主義、国際主義につきまして「われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならない」との主張をしております。このことにつきましては既に大蔵大臣は、希望国があれば考えることにやぶさかではないと、さきの委員会で答弁されております。このまま放置すれば国際的な名誉、信頼を失墜することにもなり、大臣のこの問題に対する取り組み、解決法を重ねてお伺いしたいと思います。
  213. 倉成正

    国務大臣倉成正君) 最近の東京の地価の高騰、まことに異常なものがございますし、この件を背景にいたしまして、外国の公館がその維持が困難になっている、あるいは物価の高騰によって途上国、特に所得の低い国々が大変困っているという実情は、我々直視していかなきゃならないと思います。この件に関しましては外務省の中で、在京公館の実情を十分把握する必要があるということで、できるだけ正確にこの実態を調べる必要があるということで連絡会議を設けまして、二回ほど今までこの情報交換を行ったところでございますが、さらにこれらの在京公館の窮状に関する実態を十分把握して、いかなることが我々としてできるかということを相手国の意思も踏まえて検討いたしたいと思っております。
  214. 片上公人

    ○片上公人君 次に、モスクワの日本大使館の件でございますが、最近の新聞報道によりますと、今月四日の時点で、過去一カ月の間に、確認されただけでも約四十人のソ連人従業員のうち十三人、全体の四分の一以上が次々に退職する事態が起こっているようでございますが、この事実関係について説明していただきたいし、またソ連はその後補充もしないというようなことも言っておるようでございますけれども、この辺についての見通し等も含めまして御説明をお願いいたしまして質問を終わりたいと思います。
  215. 野村一成

    説明員(野村一成君) ソ連にございます私ども日本大使館におきましては、先生御指摘のように、運転手、助手、掃除婦、タイピスト等ソ連人現地職員を約四十名ほど雇っておるわけでございますが、九月の初旬から現在までに十三名が退職しております。また一人、数日前ですけれども、十一月一日付でやめたいと言ってきておりますので、私どもが繰り返し要請しております補充がないとしますれば、十四名に十一月にはなるというのが実態でございます。こういった事態を受けまして、私ども外交ルートで、十月五日でございますけれども、これだけ一時期に多数の現地職員がやめていく、またそれに対して補充もされていない、極めて遺憾であるということをまず指摘するとともに、一体こういうソ連側の意図はどういうものかということで、先方に釈明を求めております。現在、まだソ連側から回答が参っておりません。回答待ちの状態でございますが、先方も補充しないとは言っておりませんので、私どもいろいろな機会をとらえまして、重ねてこの補充を強く求めていきたいと、そういうふうに考えておる次第でございます。
  216. 橋本敦

    ○橋本敦君 最初に外務省に質問をいたしますが、ベトナムのグエン・クイ・クイさん、これは日本のジャーナリストの間でも大変親しい関係にある人ですが、この方がこのたび日本・ベトナム友好ジャーナリスト各界連絡会の招待で来日をされることになりました。外務省に対して滞在日程を提出したわけでありますが、外務省の方から、クイさんが沖縄県を訪問することは困る、こういった拒否に遭いまして、クイさんはやむを得ず、不本意ながら沖縄県の訪問をやめるという形で今来日をしているという事態が起こっています。クイさんに対して沖縄訪問は困ると言って拒否をされた事実は間違いありませんか。
  217. 妹尾正毅

    説明員(妹尾正毅君) お答え申し上げます。  ただいま御指摘のグエン・クイ・クイ氏につきましては、先方といいますか、身元保証人というのがいるわけでございますが、先方の身元保証人の方といろいろお話をいたしまして、それで結局沖縄訪問を含まない日程の提出がございまして、それをもとにして政府としては同氏に対する査証を発給したということは事実でございます。
  218. 橋本敦

    ○橋本敦君 時間がないから明確に言ってください。沖縄訪問は困ると外務省が言ったから話し合いに入ったんですよ。間違いないでしょう。
  219. 妹尾正毅

    説明員(妹尾正毅君) 一般的な外国人が沖縄を訪問しては困るということではございませんで、この方から出された訪問日程、その中には沖縄訪問も最初の案として入っていたわけでございますが、それが適当かどうかということを私どもとしては審査させていただきまして、その結果、身元保証人の方とお話をしまして、最終的に今申し上げたような形で処理した、そういうことでございます。
  220. 橋本敦

    ○橋本敦君 だから、適当でないと考えたから協議したんでしょう。はっきりしてください。
  221. 妹尾正毅

    説明員(妹尾正毅君) 最初に申し上げておくべきだったかもしれませんが、査証申請は全部ケース・バイ・ケースで処理いたします。ですから、どういう方がどういう目的で具体的にどういう日程で行かれるかということでありまして、沖縄一般じゃございません。
  222. 橋本敦

    ○橋本敦君 なぜいかぬのか。
  223. 妹尾正毅

    説明員(妹尾正毅君) 沖縄一般ということでこの問題は申請されたものでもございませんし、特定の日程についてお話がありまして、それを検討した結果、今申し上げたような形で処理したということでございます。
  224. 橋本敦

    ○橋本敦君 九月十六日から二十日までの沖縄訪問、なぜクイさんはいけないんですか。はっきり言ってください。
  225. 妹尾正毅

    説明員(妹尾正毅君) 査証審査の過程につきましては、通常、詳細を申し上げることは控えさせていただいているわけでございます。と申しますのは、査証は全面的な主権行為でございまして、どういう基準によって具体的に審査をするかということは普通公表しておりませんし、それは各国とも同様でございます。ただ、せっかくの機会でございますので、御質問に答える意味も兼ねまして申し上げますと、私どもとしては広い国益の観点から審査をいたします。それで、そういう国益という中には通常、公安上、政治外交上、経済社会上、そういういろんな観点が入っているわけでございまして、そういうものを総合いたしまして判断を下しているわけでございます。
  226. 橋本敦

    ○橋本敦君 だんだん明らかになってきた。国益上ぐあいが悪いというのは、広大な米軍基地が沖縄にあるからです。
  227. 妹尾正毅

    説明員(妹尾正毅君) そういう具体的な点にわたりましては従来からお答えすることは差し控えさせていただいておりますので、御了解いただきたいと思います。
  228. 橋本敦

    ○橋本敦君 外務省行政執行そのものがまさに国会で審査の対象として今議論されているときに、はっきりしないというのは問題ですよ。外務大臣、こういう姿勢でいいんですか。沖縄県はまさに日本に復帰して日本の県の一つでしょう。この沖縄県を社会主義国から来た人が訪問するということについて国益上の理由でこれを断るという理由が一体どこにあるんですか。これは大事ですから、外務大臣答えてください。
  229. 倉成正

    国務大臣倉成正君) ただいま妹尾領事移住部長から申し上げたとおり、審査の中身については申し上げるわけにまいりませんが、我が国の国益上不適当と認めたということでございます。
  230. 橋本敦

    ○橋本敦君 納得できません。なぜ国益を害するんですか。去年も、キューバの男子バレーボール団が沖縄へ行くというときにこれを拒否した。我が党などの抗議で撤回をして行くことができましたから、これは結構です。今度の場合、友好訪問のクイさんが沖縄に行くことを国益上の理由外務省がチェックするというのは、沖縄県民立場から見れば、まさに沖縄県は特殊扱いか復帰していないのか占領下体制と同じなのか、政府はそう考えているのか、こう言いたくなります。この沖縄県民立場に立って、こういう意見があることについて外務大臣はどう考えますか。
  231. 倉成正

    国務大臣倉成正君) せっかくのお言葉でありますけれども、こういう審査はケース・バイ・ケースで判断すべきものであると思いまして、今回の場合はこのような決定が適当であると判断したわけでございます。
  232. 橋本敦

    ○橋本敦君 全く理由なしに適当であるといったって、納得できません。沖縄県民にとっては、はっきり理由を示してもらいたいと思うのは当然です。沖縄に広大な基地があるからですか。沖縄が日本に復帰して、まだ完全にそのことを政府は認めないからですか。あるいはその他に理由があるんですか。あるいは、ベトナムの友好訪問の皆さんに、社会主義国から来る皆さんに沖縄県を見せてはぐあい悪い、そういう理由が何かあるんですか。アメリカの膨大なあの基地を、まさに日本の国益と称して社会主義国の人の目からふさぐ、これが日本の国益だというんですか。はっきり答えてください。これは大臣、こんな政治的な問題、大臣答えなくてどうするんですか。国益の問題じゃないか。国益の問題を言っているのに大臣答えられないはずない。
  233. 倉成正

    国務大臣倉成正君) 沖縄だからというわけではございません。ただし、審査の内容は申し上げるわけにはまいらないと申し上げているとおりでございます。
  234. 橋本敦

    ○橋本敦君 納得できません。一般的に言って、沖縄県をまさに他の県と差別して考えるというような考え方を絶対とらないとは、これは約束できますか。
  235. 倉成正

    国務大臣倉成正君) 沖縄だから特別な扱いをしているというわけではございません。
  236. 橋本敦

    ○橋本敦君 なおさら理由がわからなくなってきます。この問題についてはまさに今政府のとっている態度は不当であるということが一つと、それから沖縄県を沖縄だからといって不当に差別的扱いをするという、そのつもりは一般的にはないということははっきりしましたから、この問題についてはもう時間がありませんので、きょうはおいておきますが、今後ケース・バイ・ケースといえども、沖縄県について外国特に社会主義国から友好的訪問ということがあった場合には一般的に禁止するということではない、ケース・バイ・ケースを通じてあくまでもそういった審査だということは間違いないということを確認しておきます。いいですか。
  237. 倉成正

    国務大臣倉成正君) そのとおりでございます。
  238. 橋本敦

    ○橋本敦君 ケース・バイ・ケースであっても許されないということを私は言ったんです。このことははっきりと言っておきますから、御検討の課題にしておいてもらいたいと思います。  次に参りますが、問題の金大中事件であります。これについて、まず政府に確認をしておきたいのであります。  昭和五十二年二月二十二日に当参議院で予算委員会が行われまして、私と上田耕一郎議員がこの問題について福田首相に質問をいたしました。そのときに福田首相は、「金大中事件の政治的決着と刑事事件としての追及、これはもう全く別個の問題であります。金大中事件の真相解明、これにつきましては今後とも鋭意これを続行する、そういう方針でございます。」と明確に答えました。そういう捜査を続けた結果、この件について刑事事件としての金大中事件、これの新しい問題が提起されるということになりますれば、その点で、刑事事件の成り行きによりましては政治問題としての決着をまたつけなければならない。つまり、政治決着の見直しもあり得るということを答弁いたしました。つまり、金大中事件が韓国の公権力の行使による犯行だということが明確になれば、政治決着の見直しは当然だというこの福田総理答弁、今の政府としても変わりありませんね。
  239. 倉成正

    国務大臣倉成正君) 変わりございません。
  240. 橋本敦

    ○橋本敦君 ところで、この金大中事件は、金大中氏に対する人権侵害事件であると同時に我が国の主権を侵害する重大な事件だという、こういう重大な疑惑を持った事件であるということは、これはかねてからの審議の経過でも当然ですが、外務大臣も我が国の主権侵害についての重大な疑惑を含む事件だという認識はお持ちですか。
  241. 倉成正

    国務大臣倉成正君) これまでの捜査段階では、我が国の主権が侵害されたということを断定するまでに至っていないということでございます。
  242. 橋本敦

    ○橋本敦君 至ったか至ってないかじゃなくて、主権侵害にかかわる重大な疑惑のある事件だという認識はお持ちかと、こう言っているんです。
  243. 倉成正

    国務大臣倉成正君) 主権侵害ということはあり得るとは考えますけれども、そういう侵害されたという断定をするまでに至っていないということでございます。
  244. 橋本敦

    ○橋本敦君 そこで、大臣答弁された主権侵害であり得るというそこが大事であります。  その主権侵害は一体だれがやったか。一つは金東雲一等書記官、これが指紋まで発見されて重大な問題になりましたね。それから、それだけでなくて、この犯行そのものが韓国のKCIA、中央情報部、今は国家安全企画部となっておりますが、これによる犯行の疑いが強いという事件であった。私もたびたび参議院でKCIAのメンバーリストを示しながら追及をいたしました。KCIAにかかわる事件だという疑惑が濃厚だと、これはフレーザー委員会の報告書でも出てくる。そういうような関係にあることは大臣御承知ですね。
  245. 倉成正

    国務大臣倉成正君) 承知しております。
  246. 橋本敦

    ○橋本敦君 そこで、そのKCIAの当時の部長であった李厚洛氏が何を言うかが問題なんです。前は前KCIA部長であった金炯旭氏の発言がアメリカでも当国会でも問題になりました。しかし、金炯旭氏どころか、当時KCIAの部長そのものであった李厚洛氏がどう言うかということは、これは捜査の点でも、あるいは今大臣がおっしゃった主権侵害であり得るKCIAの犯行の疑惑、こういう点を解明する上でも、これは決定的に重要な問題であります。  その李厚洛氏が、報道されたように、韓国において有力誌である「新東亜」あるいは「月刊朝鮮」、こういったところにインタビューの記事を出すということになりまして、そこで明確に、このKCIA部長であった李厚洛氏がこれは自分がやったということを「月刊朝鮮」でははっきりとこう言っておりますし、そしてまた、その他の「新東亜」のインタビューでは自分がやったということを濃厚に明らかにするような状況的な発言をしておった。その共通している一つは、あれは朴大統領が指示したものではないと言って、自分の判断でやった、自分の責任だということを言う。もう一つは、これが殺人事件ではなくて、当時の韓国の政情から金大中氏を韓国に連れ戻す必要があった、そのことが動機であるということを言っている。まさに当事者でなければ言えない重大な問題であります。  こういう重大な発言に対して、捜査当局も外務省も当然重大な関心を払ったに違いないと思いますが、この発言が出たときにそういう認識を持ちましたか。外務省、どうですか。
  247. 谷野作太郎

    説明員谷野作太郎君) 私ども、この雑誌が出ました段階で、当然職務といたしまして両誌を取り寄せまして精査いたしました。しかしながら、そこで明確にKCIAの、いわゆるすなわち公権力の介入を断定するように読み取れる箇所は見出せなかったわけでございます。  しかしながら、いずれにいたしましても、この雑誌のインタビューがいろいろな話題を呼びましたものですから、その後九月の二十八日でございましたか、御本人の李厚洛氏が改めて記者会見をいたしまして、自分の話したことと雑誌記者が聞いたこととの間にはニュアンスの相違があるようである、インタビューで自分から公権力の介入を認めたということは一切ないというふうに明確に述べておりますので、私どもは本件をそのように受けとっております。
  248. 橋本敦

    ○橋本敦君 外務省が検討されたのは、国益上の理由によって出版社と政府が話をつけて、そして一部修正削除した上で出版されたその出版物を読まれたということですね。修正削除されていない以前のオリジナルは知らないわけですか。どっちかはっきり言ってください。
  249. 谷野作太郎

    説明員谷野作太郎君) 私どもは、その出版に至るまでの過程にどういう経過がありましたかはつぶさにいたしません。いずれにいたしましても、私どもが相手にいたしますのはあくまでも公開された、いわゆる出版された資料でございます。
  250. 橋本敦

    ○橋本敦君 だからだめなんですよ。まさにKCIA、国家安全企画部がオリジナルの出版を妨害して差しとめている。そして、国益上の理由によって記者たちは頑張ったけれども、その会社は一部修正削除で出した。それを見てKCIAの犯行だということを李厚洛がはっきり言ってない、こう言ったってだめですよ。もとのやつをはっきり見なきゃ。  警察に伺いますが、警察ももとのやつは知らぬでしょう。知っているか知らないかで結構です、これは。
  251. 国枝英郎

    説明員(国枝英郎君) もとのものがいかなるものを指されるのか、それはわかりませんが、私ども市販されておるものは承知いたしております。
  252. 橋本敦

    ○橋本敦君 だから、後の修正削除で出版されたものしかない。  例えば犯罪人がみずからの犯行を自白した、そして後になって、いや、あれは違うんだと、こう言った場合に、違うんだということを信用して捜査はやめるのか、それともそれは犯行を否認し、証拠隠滅のおそれがあるということで強制捜査に踏み込んでいく一つの動機としてきちっとつかんでいくのか、捜査の常道から言えばどっちですか。明らかに後者でしょう。
  253. 国枝英郎

    説明員(国枝英郎君) 捜査的観点から申し上げますと、犯罪捜査の進展に役立つ、すなわち捜査の手がかりとなるような情報がどうかという点に関心があるわけでございます。  本件について申し上げますと、李厚洛氏はインタビュー記事について公権力が介入したことあるいは政府組織が介入したことは認めたことはないということを明言されております。その前提にかんがみます限り、捜査の進展に役立つ情報の提供が得られるその可能性はなかろうという判断をいたしております。
  254. 橋本敦

    ○橋本敦君 全然だめですよ。まさにKCIAの犯行だということを明らかにするような、そういうようなインタビュー記事が載ったから、私がさっき言ったように、韓国の政府機関はこれの発行を差しとめるために必死になっているんじゃないですか。その上で国益を理由にして言論、表現の自由を圧殺して修正して出した。その後で出てきたものを見て有力な情報もしくはKCIAの犯行だと認められるような状況はないなどということは、真剣に捜査を遂げるという立場から見れば、これは戯画化されたとんでもない話ですよ。  外務大臣に伺いますが、本気になってこの我が国の主権侵害を徹底的に究明するとなったら、今お話をした一連の経緯をも含めて、なぜ国家機関が出版の妨害をやったのかということも含めて、なぜ前の発言と後の発言が違ったのかということも含めて、KCIAの責任者である李厚洛氏自身から、主権を侵害された日本政府として当然直接に話を聞く、このことはやるべきじゃありませんかどうですか。やれないとすれば、なぜやれないのか言ってください。
  255. 倉成正

    国務大臣倉成正君) それは捜査当局が考えるべきことだと思います。
  256. 橋本敦

    ○橋本敦君 捜査当局だけじゃありません。捜査当局ももちろんです。しかし、外務省日本政府立場で、主権侵害を受けたらこれを明らかにする責任があります。もう一遍答弁してください。それは逃げの答弁です。
  257. 倉成正

    国務大臣倉成正君) 先ほど申し上げたとおりでございます。
  258. 橋本敦

    ○橋本敦君 それはもう話にならぬ。なぜそういう態度をとるんですか。主権侵害を徹底的に明らかにする、警察もやるけれども外務省もやる、こういう姿勢になぜ立たぬのですか。政治決着があるからですか。関係がありますか、外務大臣
  259. 谷野作太郎

    説明員谷野作太郎君) 大臣からも御答弁いたしておりますように、私ども政府立場はあくまで、この不幸な事件につきまして公権力の介入というものがあったという明白な事実が明らかになれば、その時点で政治決着の見直しがあり得るということが第一点でございます。しかしながら、今回のことにつきましては、先ほど御答弁いたしましたように、当の御本人がそのようなことはないと明言しておるわけでございますから、それを重く見て対処しておるということであると思います。
  260. 橋本敦

    ○橋本敦君 何度言っても同じだ。当の御本人が公権力の行使、KCIAがやったということをはっきり言ったという事実から出発しなきゃだめですよ。こういう問題について積極的に本人から事情を聞くことも含めて韓国政府対応を迫るということをやれないというのは、私は主権国家としておかしいと思います。警察だってもっと断固自信を持って捜査をやるべきですよ。どうしてもこれはやれないというなら、まさに政治決着があるからじゃありませんか。  今審議官がおっしゃいましたが、公権力の行使だという明白な証拠が出てきたら政治決着を見直す、当たり前のことですよ。その明白な主権侵害が韓国官憲によってやられたかどうか、これを追及せずして、どうやっていつの日にそんなことが明らかに自然になるんですか、なりはしませんよ。だから、まさに今度の李厚洛証言、これが行われたのを契機に、今日本政府は主権侵害の有無について断固として調査すべきです。外務大臣、もう一遍重ねて聞きます。これがやれないというのは、あの日韓政治決着があるからできないんですか、はっきり答えてください。明らかにしなきや明らかにならぬじゃないですか。
  261. 倉成正

    国務大臣倉成正君) 本事件の外交的決着につきましては、当時の日韓双方の最高首脳者が日韓関係の大局を考えて高度の政治判断を下したのでございまして、現在の内閣も引き続き尊重する態度を維持しております。  政治決着については、先ほど政府委員からもお答えいたしましたとおり、韓国側の公権力の行使が明白になった場合これを見直すことがあり得るというのが政府の統一した見解で、終始一貫した立場でございます。しかし、現在までのところ、そういう公権力の行使が明白になったと我々は考えておりませんので、この点については、李厚洛氏のお話はございましたけれども、二十八日の記者会見においても公権力の介入を認めたことはない旨述べております。従来の方針を見直すことは考えておりません。
  262. 橋本敦

    ○橋本敦君 あの政治決着のときに、かねてから私どもが、これは捜査にふたをするものである、日本の主権侵害に対する日本自身の捜査を続けますと国民向けに形で言うけれども、実際はこれはその捜査をも事実上幕を引くものであると厳しく指摘しましたが、まさにその姿が今ここにあらわれていますよ。断固として政治決着の見直しをやる、そのために公権力の行使による主権侵害かどうかについて明らかになったら見直すのじゃなくて、見直すためにこれを調査する、そういう姿勢に断固として立つことを要求して、次の質問に移ります。これはもう幾らやっても今の政府じゃだめです。  資料配付を委員長答弁する方にお願いしたいと思います。    〔資料配付〕
  263. 橋本敦

    ○橋本敦君 逗子の問題が重大な国民的な注目を浴びておりますが、安保条約というのは大変なものだと思うんです。水は天からもらい水と言うんですけれども、だれにも平等なまさに天からの利益でなきゃならぬ水についても、米軍日本国民との間には不当な差別が行われているということが米軍との給水契約で実は明らかなのであります。神奈川県の米軍との給水契約は相模原補給廠、厚木航空隊それから逗子地区軍事施設、池子の弾薬庫、この三つがあります。それと別に横須賀市と米軍との間で横須賀基地に関する給水契約があります。この英文の契約を私全部取り寄せましたが、全部中身は同一でございまして、契約番号が違うだけでありまして、そこで答弁席にお渡ししたのは逗子地区の契約であります。  この資料を見ていただきますと、「逗子地区軍施設 公共事業役務提供契約」で契約番号がDA-92-577-FEC-37877となっておりますが、これは昭和四十四年の十二月一日に番号の変更がございまして、現在はDAJB-17-70-D-0623、こう変わっております。これは番号だけの変更です。それから、当事者がそこには陸軍省とこうなっておりますが、四十五年八月一日に海軍省に変更になっております。これは中身にかかわることではありませんので、それだけのことでありますが、問題はこの契約の二枚目をめくっていただきますと、第二条のd項、(ⅰ)、(ⅱ)があります。「給水の継続及び消費料」ということであります。時間がありませんから簡単に言いますと、米軍に対する給水契約、これに基づいて神奈川県は給水するわけですが、池子地区、逗子地区についても、ほかも同じですが、どういうことが問題かといいますと、これは不可抗力、つまり火災、洪水、地震その他大災害、ストライキもここに入れておりますが、そういったことによって給水が停止されることがある、それは当然ですと。ただし、このような給水不能、停止その他供給変動、その際に大事なことは、契約者は米国政府の要請によって一カ月に十時間以上この断水をした場合には緊急給水を米軍に対してしなければならないとdの(ⅰ)で決めています。  そして(ⅱ)で、不可抗力だというのにそれができなかったら、そうすると今度はこの料金について「公平な調整を加えるものとする。」と、こう書いている。料金をまけろということなんですが、そういう契約を掲げているわけであります。  そこで、厚生省に伺いますが、我が国には言うまでもなく水道法があるわけですが、その十四条では、特定の者に対して他と差別をして給水するというようなことを許されるようなことになっておりますか、許してはならぬということになっておりますか。
  264. 小林康彦

    説明員(小林康彦君) お尋ねの水道法第十四条におきましては、「特定の者に対して不当な差別的取扱をするものでないこと。」、このような規定になっております。
  265. 橋本敦

    ○橋本敦君 そうしますと、同じ断水のときに、日本国民は水がなくて泣いている、しかし米軍は緊急給水を契約上要求をする、それでどんどん水を使えるようにする、できなかったらペナルティーもとられる。こういった給水契約は、私はこの水道法に違反をする、少なくともその基本的な精神に反するものと思わざるを得ないのですが、厚生省はどうお考えですか。
  266. 小林康彦

    説明員(小林康彦君) 断水時におきます緊急給水に関しましては、ある程度以上の断水がありました際に緊急給水を行いますことは、一般家庭も含め、また病院等に対しても通常行われるところでありますし、災害等の場合に米軍から要求があり、かつ給水すべき必要性が明示されたときに限定して米軍基地への緊急給水を行うことを給水契約に定めたからといって、直ちにこれが水道法に禁止をいたします特定の者に対する不当な差別的取り扱いになるものではないと考えております。
  267. 橋本敦

    ○橋本敦君 おかしいですよ。特定の具体的事由、例えば病院とかあるいは日本国民の生命にかかわる問題で具体的ケースを特定して書いているなら別ですよ。そんなことは何もない。何もなくて一般的に米軍の要請があれば緊急給水すると書いてあるのですから、こんな契約は国民とは乖離していますよ。明らかに違いますよ。  それからさらに、そういったことをあなたがおっしゃっても、この不平等契約はまだ次のところを見てもはっきりしているんですよ。十一条の「紛争」によれば、この契約についての紛争の最終的結論はだれが下すか、これは契約担当官であり米軍司令官と、こう書いてある。驚くべきことじゃないですか。  そして、さらに次のページを見てください。十五条「解釈の不一致」、「この契約の英文原本とそれに基づく訳文との間に不一致がある場合、または訳文が不明確な場合、英文原本により決定する。」と書いてある。何もかもアメリカが優先するのです。契約上の解釈についても正文テキストは英語だけ、日本文はだめだ、こんな屈辱的なことがありますか。  これについてはもう既に議論をされたことがあります。昭和四十六年十二月二十六日、佐世保の給水契約に関して、正文が英文だけだというこんな不平等について問題だと当時の我が党の春日正一議員が指摘をしたのですが、佐藤総理ははっきりと、こういった問題については日米両国のものを正文とするようにこれは改めるのが当然だ、こう言って答弁していますよ。いいですか。ところが、横須賀関係では全然改まっていない。逗子住宅が建つ、こんなことを防衛庁は強硬にやろうとしていますが、こういう不平等な給水契約、これはこのままでいいんですか。正文は英文だけだ、外務大臣、これでいいんですか。紛争の当事者は米軍司令官が最終決定権限を持つのだ、こんな不平等契約が許されていいんですか。神奈川県はたびたびこの契約の改定を米軍に申し入れています。しかし、米軍はこの改定に応じようとしない。まさに安保日本国民を従属国扱いにしているんじゃありませんか。外務省の見解を聞きます。
  268. 藤井宏昭

    説明員(藤井宏昭君) まず第一に、先ほど厚生省からお答え申し上げましたように、実体問題といたしまして、この契約、これはあくまで私契約でございますけれども、この契約によってアメリカ軍に対して緊急時に優先的に水道を供給するということでは必ずしもないというのは、先ほど厚生省が御指摘したとおりでございます。  それから第二の、ただいまの紛争云々でございますけれども、これはまさにお配りになりましたこの紙にございますように、このaというのが紛争の事実関係でございまして、英語でございますように、クエスチョン オブ ファクトということを書いてございます。それからbというのが法律問題、これはコンスィダレーション オブ ロー クエスチョンズということでございます。この下に書いてある英語はそう書いてございますけれども、ということでございまして、事実関係につきましてはこれが最終的に米軍の方で事実を認定するということが書いてあるわけでございますけれども、法律事項につきましてはそれで終わりではないということでございます。それは結局合同委員会に持ってくるというのがこの仕組みでございます。  それから、次の英文云々でございますけれども、これはまさに私契約上これが英文を主文とするということで、それが妥当であればそれでいいということでございまして、当事者同士がそれでよければそれでいいわけでございます。これは条約ではございませんので、不平等であるというようなこと、完全に日本文と英文と二つが同時に正文であるという必要は必ずしもない。これはまさに当事者同士がその内容等に関連いたしまして、便宜それでいいかどうかという判断の問題であるというふうに存じます。
  269. 橋本敦

    ○橋本敦君 外務大臣、答えてください。当事者はよくないと言っているんだ、神奈川県は改定したいと言っているんだ。だから今の答弁意味ないですよ。神奈川県は改定したいと言っているんですよ、不平等だと考えている、どうですか。当事者で異議がなければよいという時代じゃないのだ。
  270. 倉成正

    国務大臣倉成正君) 政府委員からお答えしたとおり、これは基本的に私契約、神奈川県と米軍との間の給水契約は当事者間の私契約でございまして、両方の合意でこの契約が決められたわけでございますから、相互に相談のもとでこの契約については話し合うべきものだと考えております。
  271. 橋本敦

    ○橋本敦君 話し合うべきものだということは、改定したいという神奈川県の意向も含めて話し合うべきだというように理解してよろしいですか。
  272. 倉成正

    国務大臣倉成正君) これは相手があることでございますから、米軍と十分よく神奈川県とで話すべきことであろうかと思います。私契約でございます。
  273. 橋本敦

    ○橋本敦君 防衛庁に伺いますが、自衛隊の基地の水の使用について、断水時の場合に緊急給水を特に求めるという契約を自治体と結んでいるということはありませんね。
  274. 児玉良雄

    説明員(児玉良雄君) 自衛隊の駐屯地、基地等に対します水道水の供給につきましては、水道局等との間で、通常のといいますか、一般の事業所等と同様の供給契約により給水を受けております。
  275. 橋本敦

    ○橋本敦君 つまり、一般の国民と同じようにそれぞれの給水条例あるいは水道条例に基づいて受けていますから、こういう契約で緊急の給水を要求したり、できなかったらペナルティーを要求する、こんなことは自衛隊もないんですよ、米軍だけなんですよ。日本国民もないんですよ。こんな契約は、水道条例やあるいは県の、あるいは自治体の条例で米軍が持っているようなこんな特権的契約はどこにもない。だから、そういう意味では、何と言おうとこれは米軍だけの契約だということははっきりしているんですよ。そして神奈川県は、今私が指摘したように、最近では五十九年十月九日もこの改定を申し入れて、こういう契約を解消して、今度は神奈川県の県営上水道条例に基づいて米軍に給水するようにしたい、こう言って申し入れている。ところが米軍は拒否している。だから外務省は、私はさっき佐藤総理答弁をお話ししましたが、佐藤総理でさえこれは改めるべきだと言っているわけですから、それぞれ話し合うべきだと大臣がおっしゃったその話し合いについて、これの改定については日米合同委員会その他で外務省としてもこれについて検討するよう米軍に話をする。当たり前じゃないですか。どうですか。
  276. 藤井宏昭

    説明員(藤井宏昭君) 先ほど来御答弁申し上げておりますように、実態的に米軍が緊急時に米軍のみが優先的に供給を受けるということはないわけでございます。  御指摘の点を先ほど一々申し上げましたけれども、英文の問題にいたしましても、それが実態上、水道の供給という見地から不公平あるいは不都合が起きているかという実態に着目いたしますと、そういう事実はないわけでございます。そういう実態が生じましたような状況におきましては、当然政府としていろいろ考えていくということになるかと思いますけれども、ただいま委員御指摘の点につきましては実態上問題がないということで私契約が行われているわけでございまして、これが長年にわたって行われてきておるという現実があるわけでございます。そのような状況におきまして、政府といたしまして合同委員会等におきましてこれを訂正するとか、あるいは神奈川県に対しまして、これをさらに訂正するように米側に申し入れよとか、そういうつもりは毛頭ございません。
  277. 橋本敦

    ○橋本敦君 大臣は当事者間の協議を進めるべきだということまで言われたんだが、その協議について当事者の神奈川県が改定したいと、こう言っている。北米局長は今問題はないと言っていますが、問題がいろいろあって議会でも議論されて、やっぱりこれは県民立場から見て不平等契約になるおそれがあるという立場から県議会でも議論をして、それで県知事は改定の申し入れということに踏み切って水道局長がやっているんですよ。だから、当事者で話し合うべきだと大臣が言うなら、その話がどういうことで、どうなのか、神奈川県からもっと積極的に事情を聞きなさい。具体的な不都合があるかないか、事情も知らずに判断することはおかしい。神奈川県はこれの改定を申し入れておるんです。そういう事情について改めて聞くことを私は要求しますが、北米局長どうですか。神奈川県の意思を正確に聞いてください。
  278. 藤井宏昭

    説明員(藤井宏昭君) 神奈川県とは直接、あるいは厚生省などにおきましてもいろいろ話をしております。
  279. 橋本敦

    ○橋本敦君 この件について、改定要求について話をしたという答弁ですか。違うでしょう。
  280. 藤井宏昭

    説明員(藤井宏昭君) この問題について話をしておりますが、改定をするというような方向で話をしたことはございません。
  281. 橋本敦

    ○橋本敦君 それじゃ、神奈川県が文書で改定要求を出しているのを抑えにかかるような話なら、これはもってのほかですよ。  私がこの問題を指摘するのは、ああやこうやと、こう言って、日米安保条約のもとで何かといえば米軍の特権的優先と国民から見られなきゃならぬ、そういう事態を前からも続けているしこれからも続ける、そうなっちゃいかぬ。日米安保条約は私どもは早く解消し破棄すべきだとこう言っていますが、水についてまでこんな不平等があるということは許せぬということで、私が言っているのじゃなくて神奈川県が改定の申し入れをしているのに、日本政府はそれに対して何と安保条約アメリカに肩を持つ答弁をするのか、怒りに燃えますよ。あの逗子選挙でも、今度の選挙ではまことに市民の重大な意思池子における住宅建設反対ということではっきりと示された。これは今回だけじゃなくて、防衛庁長官も御存じのとおり、まさに五回にわたる重大な市民意見、しかも今回の場合は米軍住宅建設そのものに反対ということに加えて、あの長洲知事が出した調停案そのものを全住民住民投票で問うという性格を持った選挙だったものですから、その結果はとりわけ重いはずでなくちゃならぬ。だから、例えば朝日や毎日その他の新聞でも、この事実はとりわけ重い事実として行政はしっかり受けとめる、そういうことは当然だとこう言っております。憲法が定める地方自治の原則という点を尊重するなら、この選挙結果は謙虚に受けとめて、この際あの池子地域における住宅建設、これはもう白紙撤回をする。そして同時に、今強行しようとしてきた準備行為という名でやっている作業も直ちに中止する。これは当然だと思いますが、防衛庁長官どうですか。
  282. 栗原祐幸

    国務大臣栗原祐幸君) あなた、朝日と毎日を言うたけれども、ほかの新聞の社説を見てごらんなさい。必ずしもそう書いてない、池子のそれは。
  283. 橋本敦

    ○橋本敦君 答弁しなさい。
  284. 栗原祐幸

    国務大臣栗原祐幸君) いや、今答弁しているんです。
  285. 橋本敦

    ○橋本敦君 私は朝日と毎日を使って言ったんだよ。
  286. 栗原祐幸

    国務大臣栗原祐幸君) 朝日と毎日、ほかの新聞も見て言わなきゃならない。  それから、今度のやつはどういうことかというと、たびたび選挙した結果、富野さんがこうしてほしい、ああしてほしいと神奈川県を通じてやってきたんだ。それをみんなのんだんです。しかも、選挙というのは判決じゃないんです。差し戻しなんというのはない、これは。したがって、あなたの言うことについては私は賛成できない。そういうことです。
  287. 橋本敦

    ○橋本敦君 わからぬな、さっぱりわからぬ。
  288. 栗原祐幸

    国務大臣栗原祐幸君) わからぬのは君の方だ。
  289. 橋本敦

    ○橋本敦君 のんだにしろ何にしろ、あの調停案を含めての住宅建設については反対という住民意思がはっきり示されたこの事実は厳粛なんです。いいですか、この事実を謙虚に受けとめなさいとこう言ってるんです。なぜ受けとめられないんですか。
  290. 栗原祐幸

    国務大臣栗原祐幸君) 事実は事実として認めているんです、それは。だけれども長洲知事がきのうの記者会見で言ったようなことがもし事前にわかっておったら、私は投票の結果はまた違っておったと思うよ。
  291. 橋本敦

    ○橋本敦君 それは投票の結果にいちゃもんをつけていることですよ。投票の結果ははっきり出ているんです。そうでしょう。だから、その結果に基づいて今とるべきことは、地方自治を尊重する立場から防衛庁は考え直すべきだ。ボールはあなたの方に投げ返されているはずですよ。これがなぜできないかということです。
  292. 栗原祐幸

    国務大臣栗原祐幸君) そういう考え方もあるけれども、私の方も考えるつもりはない、そういう考え方もある。
  293. 橋本敦

    ○橋本敦君 だから、私の考え方もあることは認めて自分の考え方を主張なさるんでしょう。その考え方というのは安保国是諭ですか。安保は国是だという理論ですか。
  294. 栗原祐幸

    国務大臣栗原祐幸君) 安保は非常に大切であるということです。あなた方は安保は要らないと言うけれども、我々は国の平和のために安保というのは必要である、これは重大に受けとめてもらわなきゃ。
  295. 橋本敦

    ○橋本敦君 安保は国是だとこの前おっしゃった。あの国是というのは私は問題だと思うんです。国是というのは、私は念のために広辞苑を引いてみた。そうすると、「国を挙げて是と認めたもの」とこうある。それはそうですわな。安保は必要だ、大事だというのは、これは国を挙げてじゃないです。単独講話に問題があって国民の大きな反対もあった。あの安保改定のときは国会を取り巻く大デモが行われて岸内閣は辞職をした。今でも安保はまさに国論を二つに割るような重大な問題だから、国を挙げての問題じゃないですね。だから、長官がおっしゃる、歴代の自民党政府にとって大切であり重要だという施策であることはわかるが、国是とまで言うのは言い過ぎじゃないですか。これは訂正してもらいたい、国是というのは。
  296. 栗原祐幸

    国務大臣栗原祐幸君) 国是という言葉を、そのニュアンス、私の言う意味は、日本が現政府がやっておる大変重大な政策である、そういう意味ですよ。
  297. 橋本敦

    ○橋本敦君 だから、そういう意味はわかったから、国是という言葉はこれは正確を期すという意味でも誤解を招くから、国是というのは国を挙げての国の一致した基本方針とこうなるから、国是という言い方は、これは正確にするためにそれを改めて重大な問題、大事な問題だと、こういうように訂正してはっきりしてもらいたい。
  298. 栗原祐幸

    国務大臣栗原祐幸君) これからは御注意があるからそういう言葉は使わない。
  299. 橋本敦

    ○橋本敦君 いいですよ。  そこでもう時間があと一分しかないから、これから大事なんですけれどもまたの議論にしますが、逗子選挙の結果をあくまでやっぱり厳粛に受けとめて、緑を守りまた住民意思を尊重して、先ほど言ったように防衛庁施設庁としては計画の全面的撤回、準備作業の一切の中止、このことを強く要求してきょうは終わります。
  300. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 まず、外務省外務省の機構の問題についてお伺いいたします。  私、政治家になる前から長らく疑問に思っていたことなんですけれども、欧亜局というのがございますですね、外務省に。その欧亜局というものの亜というのはオセアニアのことだろうと思うんですけれども、ユーロピアン・オセアニアン・ビューローというんだろうと思うんですけれども、それは間違いないですね。としますと、これは私昭和六十年四月二日の外務委員会でも質問したことですけれども、オセアニアを、大洋州をヨーロッパを主として扱っておる局の中に入れておくということは、何かオセアニアをヨーロッパの一部であるというふうに日本政府は考えている、そういう印象を外国に与えるんではないか。確かに第二次大戦以前は大洋州の多くの国はヨーロッパの植民地でありましたから、ヨーロッパを通してオセアニアの問題を解決する、それは当然であったと思うんですけれども、もうほとんどの国が、まあ一部残っておりますけれども、ほとんどの国が独立してそれぞれの外交関係を持っている。そういうときに何かヨーロッパの一部であるというふうな印象を与えることはそういう国の人たちに対して失礼に当たるし、また日本外務省の外交姿勢がアジア・太平洋地域、この場合はオセアニアですけれども、それを非常に軽視している、そういう印象を与えかねないと思うんで、それで前に、六十年四月二日の外務委員会でその問題を提起いたしまして、その当時安倍外務大臣、検討いたしますという答弁をされたんですけれども、それ以後二年以上たっているんですけれども検討されましたかどうか、検討されてどういう結論が出ましたか、お知らせ願いたいと思います。
  301. 小和田恒

    説明員(小和田恒君) 関委員のお尋ねのまず欧亜局の所掌でございますけれども、御指摘のように欧亜局は欧州と大洋州とその両方の諸国に関する外交政策の企画立案等々を事務としているのは御指摘のとおりでございます。  そこで、どうしてそういうことになっているかということにつきましても、先ほど御指摘がありましたように主としては歴史的な経緯というものが背景にございまして、比較的最近まで英連邦課というものが欧亜局の中にございまして現在の大洋州地域の国々、豪州、ニュージーランド等を所管していたことも事実でございます。したがって、近年特に大洋州諸国が対欧依存から脱却してまいりましてアジア・太平洋諸国としての自覚を強めてきておるという状況の中で、それが欧亜局の中にあることが適当であるかどうかということにつきましては、外務省においても種々議論がございまして、方向といたしましては欧亜局の中にあることが必ずしも適当ではないという議論の方が外務省の中において強いということも事実だと思います。  ただ、関委員御承知のとおり、行政改革が行われておりますような状況の中でこのオセアニア、大洋州地域というものを現在の機構を拡大しないでどういう形で処理することが一番いいかということについていろいろ問題がございまして、最終的な結論はまだ出ていないというのが状況でございます。  御指摘のように、これをアジア局の一部に加えるというような考え方も省内にございますけれども、現在のアジア局はそれ自体が既に極めて膨大な機構でございまして、そこにさらに大洋州を加えるということになりますと、一つの局としてはとても事務を処理し切れないというような実際上の問題もございます。  結局のところ局の配分と申しますのは、理論的な区分の問題とそれから実際上の仕事の便宜という問題と、両方をにらみながらやっていかなければいけないわけでございますので、そこら辺のバランスをどういうふうにとるかということで検討を続けているというのが実情でございまして、さしあたりの問題といたしましては、特に大洋州地域、南太平洋等の問題が我が国にとって非常に重要になってきておるという状況を踏まえまして、この地域を特に担当する審議官等を設けることによって問題の処理を図りたい、とりあえずのつなぎの措置としてはそういう方向で考えたいということで目下検討を進めておりますけれども、最終的には外務省全体の機構の配分というものを見直す過程の中で決着をつけたいというふうに考えております。
  302. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 仕事上の便宜のことは私たちにはわかりませんけれども、もしオセアニアをアジア局の中に入れるとアジア局が非常に膨大になり過ぎるというのでありますならば、私はやはり、環太平洋というふうなことが問題になっておりますので、東アジア太平洋局あるいは太平洋東アジア局とでもして、むしろインド以西のアジアを、現在中近東アフリカ局と言っていますね、中近東という名前を日本が使うというのもこれ見識のない話だと思うんですけれども、西アジアアフリカ局とでもした方が、まあインドは違いますけれども、パキスタン、アフガニスタン――イスラムですわね、それの方が私はすっきりしてくるんじゃないかというふうに考えるんですけれども、どうですか。
  303. 小和田恒

    説明員(小和田恒君) ただいま関委員が御指摘になりましたような考え方も、省内の検討の過程においては一つのアイデアとして出ております。  ただ、先ほどの繰り返しで恐縮でございますけれども、理論的と申しますか、筋で分けてどういうのが一番理想的な形であるかという問題を一方でにらみながら、同時に全体の仕事の量、局の単位としての規模というようなものも実際的な見地から考えていかなければならないということで、いろいろな構想を今比較考量しておるというのが状況でございますので、ただいま御指摘の点も含めて検討させていただきたいと思います。
  304. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 ぜひ研究して早急に結論を出していただきたい、これはやはり日本の外交姿勢を疑われる問題だと私は思いますから。  次に、発展途上国の開発協力の問題に移りますけれども、これも外務省の局の名前にけちをつけることになるのですけれども、経済協力局というのが現在ありますですね。経済協力というと何かいかにも経済だけ協力する、日本がエコノミックアニマルだということを言わんばかりの名称のつけ方だと思うのですが、私は外国のことは全部は知りませんけれども、多くの国は開発協力庁あるいは開発協力局と言っているように思うのですけれども、これはやはり向こう、途上国の開発を援助し協力する、それがいわゆる日本の経済協力の目的じゃないかと思うのです。その意味から言いましても、経済協力という名前は改めて、開発協力局にすべきじゃないかと思うのですけれども、どうですか。
  305. 英正道

    説明員(英正道君) 関委員のおっしゃる点、確かに開発に対する協力であるということをやっているわけでございますし、そのための手段として経済、技術面での、経済というと資金になるわけですけれども、技術面での協力をするということで経済協力という言葉がずっと使われてきておりまして、現在までも経済協力局という名称が使われておるわけでございます。  ただ、実際にやっている仕事は、関委員の御懸念されたような何か経済進出とかそういうことではなくて、相手の立場に立って、相手国の、途上国の開発の努力を側面から支援するということで徹しておりますので、今の御指摘は一つのお考えとして伺っておきたいと思いますけれども、経済協力という言葉もかなり人口に膾炙している言葉でもありますので、現在それを変えなければいけないというふうに、考えなければいけないとは必ずしも思っておりません。
  306. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 それが私は問題だと思うんです。  私は、やはり途上国の開発に協力するのは、根本は向こうの人材をつくるということになげればならない。それは確かに港湾をつくったり道路をつくったり農業基盤の整備をしたりする、そういった経済協力、金額的に言えば大きいでしょう。しかし根本はやはり向こう人たちの人材の育成、経済の技術を運営していく、あるいはその国の制度をつくり出していくための教育、そういった人材教育が開発協力の中心でなくちゃいけない。そのためにも、今まで惰性として使ってきたところの経済協力という名前をこの際開発協力に改めることが、国民に対してもいわゆる経済協力意味を考え直させる意味で必要ではないか、そういう意味で問題提起をしたわけです。
  307. 倉成正

    国務大臣倉成正君) 関先生の御意見一つの御見識だと思います。  同時に、我が国は国づくりの基礎はやはり人づくりであるということを考えておりまして、ODAの重点項目として人づくり協力を実施しております。今後とも、開発途上国の人材育成のため、また技術協力を中心として、効果的な人づくり協力を推進していく所存でございます。  外務省全体として大きな機構改革等を行うような場合には、ただいまの御意見は十分参照してしかるべきことかと思います。
  308. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 それからこれは単に外務省だけではなしに、内閣全体の機構の問題ですけれども、いわゆる開発協力といいますか、経済協力、これは四省庁体制、外務省、経済企画庁、通産省、大蔵省、そのほかに十幾つかの省が関係していると思いますけれども、この四省庁体制というのはマルコス疑惑のときにも国会で取り上げられまして、こういったふうに担当官庁がばらばらになっている、そのために有機的な連絡が少ない、あるいは責任体制がはっきりしない、開発協力の体制を強化するためにもこれはやはり一つの庁、省をつくるなり庁をつくるなり、ともかくその庁をどこに置くかということは一応別にしまして、私は外交の二元化ということを避ける意味では、どこかの省の中の庁をつくるんだったならば外務省の方がいいんではないかと思いますけれども、それはどこに置くかということは一応別にして、やはりこれは一元化することが私は本当に開発協力向こうの国の途上国の開発を援助する、そういう理念のもとにやるんでありますならば、それは一つに統一すべきじゃないかというふうに思うんですけれども大臣いかがでしょう。
  309. 倉成正

    国務大臣倉成正君) 今先生お話しのように、円借款については四省庁、外務省、経企庁、通産省、大蔵省のもとで海外経済協力基金を通じて実施しておりますし、それから無賞資金協力については国際協力事業団の協力を得まして外務省が実施しております。それから技術協力についても大部分は外務省関係省庁と協議しつつ国際協力事業団を通じて実施しているところでございます。  今お話しのことも一つの御見識と思いますけれども、ただいまのところ各種援助実施は四省庁、関係省庁で必要に応じ適宜調整をいたしまして、現行の体制で順調に機能していると思っておりますので、今後とも御指摘の精神を生かしまして援助の一層効果的な効率的な実施のために運用面でひとつ十分改善、強化を図っていきたいと存じております。
  310. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 そのことを私強調しますのは、マルコス疑惑のときにこの四省庁体制が問題になって、経済企画庁からなぜ経済企画庁として援助行政に参画しなければならないかということの趣意書みたいなのをいただいたんですけれども、それはやはり日本の総合的な経済発展計画とうまく調合させていく、その上に立って行っていくんだと。しかしどうも発想が日本の経済成長、経済発展ですね。通産省は特別にそのときになぜそういうことが必要かということの趣意書は出されなかったですけれども、私はどうもやはり通産省なんかは円借款なんかの場合にともすると日本の企業、輸出、そういう面に重点を置いて考えていくんじゃないか、これでは私は本当の開発援助にはならないんで、そういう意味でもやはり一元化して、もちろんそういった通産省であるとか経済企画庁なんかの意見を聞くことは重要ですけれども、責任の主体はやはり一つの省庁が握るべきだというのが私の考えです、十分検討していただきたいと思います。  それから、これもマルコス疑惑のときに私質問したんですけれども、いわゆる透明性、疑惑を招かないように透明性を確保する、その方法として、あの当時各党からいろいろ質問が出たんですけれども、契約を受注した企業名、あるいは金額の公表なんかがなぜできないか、それに対する外務省答弁は、これは相手国政府と企業との間の契約であるので、それを公表することは外交儀礼に反するという御答弁だったと思うんですけれども、これもこちらから頼んでどうぞ援助を受けてくださいと、こちらから頭を下げて頼むのであれば話は別ですけれども、しかし向こうのそういう依頼に応じてやはり援助するのである以上は、一定の時期にどういう企業と契約して、どういう条件で契約したということを発表する、少なくとも日本国民に、税金を納めている国民に対して発表するのだと。その最小限度の条件を、発表するということを条件にして向こうの開発に協力していく、そういうことを交換公文なり何なりではっきりさせるべきじゃないかと思うんですけれども外務省のお考えはどうですか。
  311. 英正道

    説明員(英正道君) 経済協力の受注企業名、また契約内容等の公表についての政府基本的な考え方は、これはやはり契約の当事者間、すなわち被援助国と企業との間のものでありますので、その当事者でない政府として公表するという立場にはない、これは基本的な立場でございます。  しかしながら、関委員の御指摘もございましたように、やはり経済協力を広い国民的な支援と理解の上に行っていくというためには、その内容をはっきりさせていく、いわゆる透明性を確保していくということがこれは必須であるということはもう明らかでございまして、そういう観点から、国会で累次の御議論を踏まえまして、やはりそういう広い基盤に立つ経済協力の実施という努力の一環として、今後の資金協力案件にかかわる企業名の公表については、相手国との関係も念頭に置きながらどういうことができるかということで検討したわけでございますけれども、その結果、大方の関係国から新規の資金協力案件についてはこれを公表していく、受注企業名を公表していくということについて異存がないという了承を得られておりますので、今後はこれを公表していくように計らいたいと考えております。
  312. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 ぜひ納税者の納得が得られるように、私は今後この開発協力を質、量ともにもっと増大していく、あるいは中身を高めていくことが必要だと思う。そのためには、やはりどうしても国民理解を得なければいけない問題でありますので、ぜひこの透明性の確保ということは努力していただきたいと思います。  それから、今までは外務省に文句ばっかり言いましたけれども、これは外務省を褒めたいことなんですけれども、ことしから、十月六日、いわゆる国際協力デーと言うんですか、国際協力日がつくられた。これは私、昭和六十一年四月二日のやはり外務委員会で提案したことがあるんですけれども、私が提案した趣旨は、もう少しこれは国民的な休日として国際協力デーというふうなものを設けて、そしてその日は、例えば国際協力のために青年海外協力隊なんかで命を落としたというふうな人たちの霊を慰めたり、あるいは今度できました国際緊急援助隊ですか、これなんかでもやはりかなり危険な仕事をされる。どうしたって命を落とす人なんかも出るでしょう。そういった人たちの霊を慰めるとか、あるいは単に外務省だけの行事としてではなしに、地方自治体なんかでも最近かなり姉妹都市との間の交流なんかをやっていますけれども、あるいは草の根のルートの個人的なボランティアの人たちがいろいろなことをやっておりますけれども、できればそういったふうなのを十月六日でもいつでも結構ですけれども一斉にやって、そして国民の関心をもっと高めていく、そういうものとしての国際協力デーを設けてもらいたい。今度のやつが、今度外務省で決められたのがその第一歩であれば私はそれで結構だと思いますけれども、それに満足せずに、もっとやはり国民的な関心を呼ぶ、そういう、休日にまで高めていくということを努力願いたいと思うんですけれども外務大臣いかがでしょうか。
  313. 倉成正

    国務大臣倉成正君) 十月六日を国際協力日と定めまして、いろいろな、ただいま先生がお話しのような行事、また、先般も外務省関係もこの日にいろいろなシンポジウム等をいたしまして、ちょうどその際もこの日を休日にしてはどうかという御提案が山崎正和教授からもございました。今先生お話しのように、我が国としては、国際的地位の向上に伴って国際協力を行っていくという、そして開発途上国に対する援助を積極的に行っていく、そしてそれはまた、政府がただ単に予算上行うということだけではなくして、国民の一人一人がこの問題を真剣に考える、またそういう真剣に考える日があっていいのではないかという趣旨がこの国際協力の日でございます。  この休日の問題につきましては、省内のコンセンサスあるいは政府のコンセンサスをまだ得たわけでございませんが、私個人としてはそういうことが望ましいと思っております。
  314. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 次は経済協力以外の国際協力の問題ですけれども、先般、国際緊急援助隊を組織されましたが、これに対して、この中に自衛隊が入ってないということを私は非常に不満に思いますが、その問題は一応別にいたしまして、かつて昭和五十八年の九月に、斎藤前国連大使を長とする数人の学識経験者の委員会がつくられまして、国連の平和維持機能に日本がもっと積極的に協力すべきである、そういう提案が外務大臣になされております。それについて、これも私、五十九年四月六日の外務委員会で質問したんですけれども、どうも政府の考え方は非常に消極的であると思います。私は、今のペルシャ湾の問題がどういうふうに解決していくか、一日も早く平和が戻ることを希望してますけれども、そういうところにいきなり掃海艇を派遣するとかなんとかいうふうなことは、私は今の日本国民の世論からいって性急であると思いますけれども、しかし仮に国連の調停が、国連の事務総長の調停が成功したとしたときに、やはり平和維持――何というんですかね、ピース・キーピング・オペレーションとかという言葉の翻訳だろうと思いますけれども、何かそういう組織がつくられるかもしれない。その場合にも、単に日本は金さえ出していればいいんだというふうな態度では、私は日本は国際的に物笑いになるんではないかと思う。これは戦争をするための部隊ではないんであって、あくまで平和を維持していくための国際的な部隊でありますから、私は当然に日本の自衛隊もそれに協力していいんではないかというふうに思っておりますけれども、これは両方、お二人にお伺いします。外務大臣及び防衛庁長官両方にお伺いいたしますけれども、いかがですか。
  315. 倉成正

    国務大臣倉成正君) 国連の平和維持活動いわゆるPKOは、個々の事例によりましてその目的、任務が異なりますので、自衛隊のそれへの参加の可否を一律に論ずるのはできないと思います。しかし、当該平和維持活動の目的、任務が武力行使を伴わないものであれば、自衛隊がこれに参加することは憲法上は許されないわけではないと考えております。しかしながら、現行の自衛隊法上は、自衛隊にそのような任務を与えておりませんので、これに参加することは許されないと考えておる次第でございまして、いずれにせよ現在自衛隊の派遣は検討していないことは既にたびたび御答弁申し上げているとおりでございます。
  316. 栗原祐幸

    国務大臣栗原祐幸君) 御指摘のとおり、平和目的のために自衛隊を派遣するということは法的には外務大臣の言うとおりだと思います。  非常に重要なことは、もう今の社会は、特に国際社会は、いわゆる国際常識といいますか、そういうものと日本国民感情との間に大きなギャップがあるんですね、これ。今度アメリカに行ってみましても、向こうからするともう国際常識なんです。しかし、我々としてはそれがなかなか乗り切れないんです。何かというとそれは国民感情、戦後の国民感情という、これが非常に厚いんですね。したがって、現実問題としては世界の国際情勢、国際常識というものを考えながらこの溝をどう徐々に埋めていくか、これはもう日本に課された大きな課題だと思います。
  317. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 確かに防衛庁長官の言われたとおり、この日本人というのは戦後何か自分のことばかり考えてきて、世界の平和と自由貿易の常に受益者、利益を受けることはかり考えてきて、いかにしてそういった平和なり自由貿易を築いていくか。これ自動的にでき上がるものでも何でもないんで、みんながそれだけコスト、犠牲を払わなければそういうものは維持できない。その寄与者、寄与をするそういう者にならなければならないという点について、日本人の感覚といいますか、常識というのは非常にギャップがある、ヨーロッパ、外国あたりに比べまして。それを直す意味でも自衛隊法の改正が必要であれば、特に自衛隊法の改正をやってでもやるべきじゃないかというのが私の意見です。ぜひ防衛庁及び外務省として、この問題を真剣に考慮していただきたい、検討していただきたいと思います。今すぐ結論を出すことは困難だろうと思いますけれども。  それから、まだ大分質問があるんですけれども、時間が迫ってきまして、あと防衛庁プロパーにも質問したいことがありますので、以下はごく簡単に答えていただいて結構でございます。  その次の問題は、日中関係の問題、特に光華寮に関しての問題ですけれども、私はやはり日本は戦前から、あるいは第二次大戦中を通じてある国を支配し、あるいは征服し、戦争に巻き込んで多くの害を与えてきた、アジア諸国に対して。そのことを私は謙虚に反省する必要がある。普通の者同士であれば別にそう一々発言するのに気を使う必要はないんですけれども、殴った方はすぐ忘れますけれども、殴られた方はなかなか忘れない。そういう人間心理は国民の間においても同じだと思いますので、発言は十分注意していただきたい。しかし、同時にまた国の体制の違い、これははっきりお互いに認識し合って友好関係を結ぶべく、増進していくべきだと思います。  今問題になっていますのは光華寮の問題ですけれども、我が党の塚本委員長が去る九月に中国を訪問いたしまして、鄧小平氏なんかとも会談してまいったんですけれども、どうも中国の人たちは三権分立という意味が本来よくわかってない、あるいはもっとその底にある法治主義ということがわかってないのかもしれないと思うんですけれども、少なくとも表面に出た限りにおいては三権分立の考え方はわかってない。  例えばこういうことを言われたそうであります。アメリカは立法、司法、行政が分かれているので三つの政府があるんだと。日本はそのアメリカの悪いところをまねしないでもらいたいというふうな趣旨の発言があったんだそうですけれども、これは十七世紀、十八世紀以来の、いわゆる民主主義の国の先人たちがいろいろ苦労して考え、あるいは実行してきたやはり基本原則、デモクラシーの基本原則でありまして、やはりこういった国内の憲法体制、これをいささかもゆるがせにするようなことは私はやるべきでない。  先般、光華寮の問題が起こりましたときでも、一部の人が最高裁から意見を求められれば政府として意見を述べることがあるというふうな発言をされましたけれども、これは向こう人たちに対して何か希望的な観測、イリュージョンを与えることになるばかりであって、少しもお互いの理解を増進することにはならないと思う。こういう発言は十分慎んでもらいたい。あくまでやはり国の体制の違いということを十分に説得する、その努力をやっていただきたいと思いますが、外務大臣いかがですか。
  318. 倉成正

    国務大臣倉成正君) 御指摘の光華寮問題は、現在我が国の最高裁において係争中の案件でございますから、当方としては本問題が法律上の問題として裁判所の判断にゆだねられる問題であることを誠意を持って繰り返し中国側へ説明をいたしております。今後ともかかる努力を続けることとともに、本件が日中関係に悪影響を及ぼさないように努力をしたいと思います。  いずれにしましても、政府としては日中共同声明、日中平和友好条約に示された日本政府立場、すなわち中国の唯一の合法政府として承認した中華人民共和国政府との間で友好協力関係を発展、強化していく立場を堅持しておりまして、今後とも右立場を堅持するとの決意は変わりません。この点につき中国側に辛抱強く説明して、その理解を得るべく努力をいたす所存でございます。
  319. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 これも時間がなくなりましたので、ごく簡単に私の意見を述べておきますけれども、先ほど久保亘委員からも御指摘があった問題で、いわゆる北朝鮮に抑留されています第十八富士山丸の日本人船員、二人の日本人船員、この釈放に対してはあらゆる努力をやっていただきたい。そのことは当然でありますが、一部新聞の報道するところによりますと、北朝鮮の方としては先般密航してまいりました兵士、これ何と読むんですか、ミン・ホングと読むんですか、それとの交換を希望しているというふうなことが一部の新聞に報道されておりましたけれども、私はまさかと思いますが、そういった向こうに送り返せば大変な処罰を受けることはこれは当然であります。そういった人道に反するような交渉だけは絶対にやっていただきたくない、日本の国家の品位に関する問題でありますから。その点十分心にとめていただきたいと思いますけれども、よろしゅうございますですね。
  320. 倉成正

    国務大臣倉成正君) ミン・ホングに関しまして、北朝鮮への送還、本人が北朝鮮への帰国を拒否しているということにかんがみまして、国際法上及び人道上の観点からあり得ないと考えております。
  321. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 あと残り防衛庁にお伺いいたします。  米ソ間の核軍縮交渉、特にINFの交渉、これ多分協定成立するだろうと思うんですが、その協定成立した後において、アジアにおける日本に対する脅威、それをどういうふうに評価しておられるか、そのことをまずお伺いしたいと思います。
  322. 瀬木博基

    説明員(瀬木博基君) INFの問題につきましては、本日この委員会でも板垣先生から既に御質疑がございました。米ソ間でINFのグローバルゼロということで協定を結ぶという原則的な合意ができたことは、これは非常に画期的なことでございます。防衛庁といたしましても歓迎いたしておるところでございます。  他方、この軍縮、軍備管理というものは、これは非常に画期的な事柄であったとしてもまだ緒についたばかりでございます。戦略核兵器というものにつきましてもまだ米ソ間の意見が非常に離れておりますし、また通常兵器につきましては全く進展が見られておらないということでございます。  他方、我が国が位置いたしておりますところの極東というところを見てみますと、遺憾なことに極東ソ連軍の質量ともの増勢というものは依然として続いておるという現実でございますし、また活動も活発になっておるというところでございまして、我が国に対する潜在的な脅威というものは依然として高まっておるということであると思います。
  323. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 私も日本としてできるだけ、できる範囲内において米ソ間の軍縮あるいは軍備管理の交渉が進展するように協力することはもちろんだと思います。しかし、何かこれが成立することによっていかにもデタントが始まるんだというふうな考え方が広がって日本の防衛力をおろそかにするようなことがあれば、私は悔いを千載に残すことになるんではないかというふうに考えております。  それについて、いろいろな装備の問題でありますとか後方訓練の問題もありますけれども、いわばソフト面と申しますか、有事法制の問題、これは今年度の防衛白書にも今までの経過がずっと書いてございます。第一分類、第二分類、第三分類と分けて、それぞれ問題がないとなった面もありますし、しかしやはり依然として問題があるんだという面もあります。例えば野戦病院をつくる場合の医療法との関係でありますとか、火薬を積んだトラックをフェリーに載せる場合の問題でありますとか、あるいは飛行場に倉庫をつくると建築基準法にひっかかるとか、そういったふうな問題は依然として解決を要すべき問題だと思うんですが、この有事法制の研究、これは最初から研究ということになっていて、この研究の結果をどうするかということは今後の問題だと思うんですけれども、単に研究さえしていればそれでいいんだ、お役所がそんなばかなことをやっているはずはないんで、やはり研究した以上はこれを解決していくことが必要ではないかと思うんですけれども、今後どういうふうにしてこれを解決していかれるのか、その方針をお伺いしたいと思います。
  324. 依田智治

    説明員(依田智治君) 有事法制の研究につきましては、五十二年八月研究開始して以来一貫いたしまして、我が国の自衛隊が有事において円滑、有効に行動する上での法制上の問題点を研究して国民の前に明らかにするということで、当面近々この立法措置を講ずるための準備ではないということで研究を進めてきておるわけでございます。  先生御指摘のように、こういう法制面で不備の面があればこれを整備しておくということは極めて重要なことであり、防衛庁といたしましては、こういう問題点が法制上整備されるということは望ましいことであるというように考えておりますが、しかし、これは今朝来のいろいろな議論でもございましたが、例えば共同訓練一つにしましても、やはりそういう共同訓練に対して、これは何か戦争のための準備行動ではないかというような感じも持つ方々もあるわけでございますし、この法制を整備するということにつきましては、何といいましても、国民の本当のコンセンサスというものが必要であるということで、特にこういう国会審議等も踏まえ、国民のこういうものがぜひ必要だというコンセンサスの熟成を待ってこれは措置するべきものであろう。そういうことで私どもことしの白書におきましても、有事法制につきましては、最後の資料としてもこれまでのものを書いておりますし、また「国民と防衛」というようなところでは、各国では大変に民間防衛という問題についても真剣に取り組んでおるというような状況も記述しております。そういうことで、こういう国会審議の状況、また国民のいろいろな世論の動向というものを踏まえながら、今後慎重に対応していくべき問題であるというように考えておるわけでございます。
  325. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 第三分類のやつはどこで研究なり実行なりされるわけですか。
  326. 依田智治

    説明員(依田智治君) 第三分類につきましては、所管省庁が必ずしも明確でない事項ということで、内閣全体で取り組むことが適当であるというようなことで、昨年安保室ができましたので、これは安保室の方でいろいろ、どこがこれを取り扱うとか、割り振りをやるのが適当であろうというようなことで、私どもの方でも内部的な作業として若干研究してきたことにつきまして、安保室の方にこれまでの経過を説明して、安保室の方でそれを引き継いでいただくというような段取りで今進めておるところでございます。
  327. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 時間がないので、もうこれで打ち切りますけれども、やはり戦争を防ぐ、防止する最善の方法は、もし日本に侵略してくる国があれば、国を挙げていつでも戦えるんだ、そういう姿勢を持っていることが私は平和を維持する上で一番の道じゃないかと思います。どうかその点忘れないで有事法制なんかの問題でも、こうやって問題を提起することによってそれが国民の関心を引くことになると思いますので、どうぞ、単に研究だけやっているんじゃなしにそれを実施する、その心構えでもってやっていただきたいということをお願いします。
  328. 穐山篤

    委員長穐山篤君) 他に御発言もないようですので、外務省及び防衛庁決算についての審査はこの程度といたします。     ―――――――――――――
  329. 穐山篤

    委員長穐山篤君) 次に、国家財政の経理及び国有財産の管理に関する調査を議題とし、派遣委員の報告を聴取いたします。  まず、第一班の御報告を願います。井上裕君。
  330. 井上裕

    井上裕君 本委員会の委員派遣第一班につきまして御報告を申し上げます。  第一班は、穐山委員長、寺内委員、宮崎委員及び私、井上の四名で、九月二十九日から十月一日までの三日間、国家財政の経理及び国有財産の管理に関する実情等を調査するため、山梨県及び長野県に参りました。  調査の概要を申し上げますと、九月二十九日は、甲府市におきまして、山梨県から財政状況等県勢全般について説明を聴取いたしました。県内の経済情勢は、全国一であった製造品出荷額の伸び率が、円高の影響で六十一年度以降に若干の落ち込みが見られるなど、回復の兆しはあるものの厳しい状況にあるとのことであります。また、農産物はブドウ、桃等、果物において全国有数の生産量を誇っておりますが、全国シェア五五・五%を占めるワインについては、輸入自由化が進められつつある中で、外国産との競争が懸念されております。しかし、雇用情勢は、六十二年六月の有効求人倍率が一・一七倍と全国ベースの倍であることから、失業についての心配は少ないとのことでありました。  続いて、大蔵省甲府財務事務所から、管内の資金運用部資金貸付状況、金融機関及び国有財産について概況説明を聴取いたしました。  次に、地場産業の実情を把握する観点から、株式会社ワカツキを訪れ、貴金属装身具類のデザイン及び製造工程を視察しました。当社は、昭和三十八年の設立以来、機械化による量産によって、現在では県内有数の企業に発展しております。  次いで、山梨県立美術館を訪れ、概要について説明を聴取した後、ミレーコレクションを初めとする常設展を参観いたしました。当美術館は、置県百年の記念事業として建設されたもので、県外からの参観者も多く、一日の平均入館者数は千四百人と地方美術館としては破格の多数に上っており、来年の秋には開館十周年を迎えるとのことであります。  その後、国母工業団地内にある松下電器産業株式会社精機事業部甲府工場を訪れ、概況説明を聴取した後、ファクトリーオートメーションのための標準機器の製造工程を視察しました。同工業団地は、総面積九十五・六ヘクタールで、昭和四十三年から十年間かけて造成され、五十五年に分譲が終了し、二十一社の工場が立地しております。  九月三十日は、長野県に参り、諏訪湖の水質状況を船上から視察するとともに、諏訪湖の治水、浄化対策、流域下水道事業計画等の概要についても説明を聴取しました。また、諏訪湖から流れ出る唯一の河川である天竜川の始点にある釜口水門において、六十五年度から暫定操作に入る予定である新水門の建設状況を視察いたしました。  次に、中央自動車道長野線岡谷-松本間の建設状況を視察いたしました。長野線は、岡谷-更埴間約七十六キロメートルの高速自動車国道として計画されておりますが、松本までの区間は六十三年三月の供用開始を目指して工事が進められております。  次いで、長野市において、長野県から県勢概況について説明を聴取いたしました。長野県の産業経済の状況は、五十六年の中央自動車道西宮線の開通後においては、諏訪地区を中心とする第二次産業の伸びが著しかったのでありますが、昨年度は、円高の影響で十一年ぶりに工業出荷額が減少しており、税収も六十一年度は前年度に比べて三・五%の減となっております。また、有効求人倍率は一倍を超えておりますが、一人当たりの県民所得は、六十年度には国民所得との格差が拡大しているとのことでありました。  また、続いて大蔵省長野財務事務所、長野営林局、信越郵政局、信越電気通信監理局からそれぞれ管内状況の説明を聴取し、各般にわたる熱心な質疑が行われました。  十月一日は、六十年七月に大規模な地すべりが発生し、死者二十六名、全半壊六十四戸という大きな被害を出した地附山を訪れ、復旧状況を視察いたしました。二年後の今日でも災害の傷跡は生生しいものがありましたが、対策工事も懸命に続けられ、百二十億円を超す費用を投じた工事は九〇%の進捗を見ております。  次に、戸隠国有林内に位置する戸隠森林植物園を訪れ、戸隠・大峰自然休養林及び同植物園の概要について説明を聴取した後、園内を実地に視察いたしました。  最後になりましたが、今回の委員派遣に当たり、山梨、長野両県並びに関係機関に大変お世話になりましたことを申し添え、御礼を申し上げます。  以上で口頭報告を終わりますが、別途委員派遣報告書を委員長に提出してありますので、本日の会議録に掲載させていただけますよう、委員長においてお取り計らいをお願い申し上げます。
  331. 穐山篤

    委員長穐山篤君) 次に、第二班の御報告を願います。大島友治君。
  332. 大島友治

    ○大島友治君 本委員会の委員派遣第二班につきまして御報告を申し上げます。  第二班は、石井理事、杉山理事、菅野理事、関委員及び私、大島の五名で、九月二十九日から十月一日までの三日間、国家財政の経理及び国有財産の管理に関する実情等を調査するため、熊本県及び鹿児島県に参りました。  調査の概要を申し上げますと、九月二十九日は、まず、大蔵省九州財務局から管内の概況説明を聴取いたしました。九州財務局の管轄区域は、九州七県であり、熊本、大分、鹿児島及び宮崎の南九州四県を本局が直轄し、北九州三県を福岡財務支局が分掌しております。九州財務局本局管内の経済情勢は、設備投資は引き続き力強さに欠け、雇用面では一部に改善の兆しが見られるが、なお厳しい状況が続いているものの、個人消費や公共投資は堅調で住宅建設も増加しており、鉱工業生産は電気機械の増加などから持ち直しの動きとなっております。こうした状況から景況は、製造業の一部になお停滞感が残るものの、総じて見れば緩やかな回復の足取りとなっているとのことでありました。  また、熊本県からは、昭和六十一年度決算を中心とした財政状況及び熊本県の将来の方向等を含めた、県勢全般についての説明を聴取いたしました。  次に、二十一世紀に向けて新しい飛躍の礎となり、熊本テクノポリスの中核的拠点施設である熊本県テクノポリスセンター、並びに産・学・行政の三者共同により技術立県を目指す熊本県の産業政策のシンボルである電子応用機械技術研究所を視察いたしました。  次いで、ハイテク時代に自然との調和、融合を求め、環境音楽空間をつくり出す熊本県野外劇場アスペクタを視察して参りました。  九月三十日は、鹿児島県に参り、大蔵省鹿児島財務事務所からは管内における行政財産、普通財産別による国有財産の管理状況等の説明を聴取し、鹿児島県からは財政状況等県勢全般について説明を聴取いたしました。鹿児島県内の経済情勢は、設備投資が弱含みであるほか、畜産の一部に厳しさが増しているものの、鉱工業生産が持ち直し、住宅建設も増加、個人消費も底がたい推移で、全体としては緩やかに回復しつつあるとのことです。しかし、雇用情勢は、求人が電気機械や卸、小売などで増加している一方、求職は前年度を上回っており、やや明るい兆しはあるものの、依然として厳しい状況にあるとのことでした。  次に地場産業の実情を把握する観点から、まず、手織り機の里において、その起源が千三百年以前にさかのぼり、我が国における最も古い伝統を持つ染色織物と言われ、鹿児島県の伝統工芸である本場大島つむぎの染色技法を視察した後、しょうちゅう、さつまおはらの醸造元であります本坊酒造株式会社に参りました。当社では、しょうちゅうの製造工程の概略を聴取するとともに、工場内でしょうちゅう生産の稼働状況を見てまいりました。  次いで、南日本グレーンセンター株式会社を訪れ、輸入穀物、各種飼料用原料の陸揚げ及び管理状況等を視察いたしました。当社は、鹿児島二号用地に形成された食品コンビナートの中心として輸入穀物を初め、各種飼料用原料を供給する大型総合流通センターとしての機能を発揮するために設立され、第一期サイロ完成から第七期サイロ完成までの総収容能力二十三万七千四百三十トンを有し、隣接する飼料工場九社、でん粉工場一社及び南九州の各地への物流の重責を担っておりました。  十月一日は、鹿児島県の歴史資料センターである黎明館を視察した後、船で桜島町に参りました。当町では、桜島の噴火に伴う降灰の住民生活への影響や農作物への被害状況について説明を聴取するとともに、降灰による土石流を防止するため、昭和五十一年度以降国の直轄事業として実施されている野尻川の砂防工事を視察いたしました。  次に、鹿児島県が臨空国際産業都市の実現を目指す、国分隼人テクノポリスの建設状況を視察いたしましたが、当県から、テクノポリス建設の効果として、過疎問題の解決、県土全体にわたる経済社会発展への寄与等を期待しているとの意見が述べられておりました。  なお、各視察箇所において派遣委員関係者との間で、熱心な意見交換が行われたこともあわせて御報告いたしておきます。  最後になりましたが、今回の委員派遣に当たり、熊本、鹿児島両県並びに関係機関に大変お世話になりましたことを申し添え、御礼を申し上げます。  以上で口頭報告を終わりますが、別途委員派遣報告書を委員長に提出してありますので、本日の会議録に掲載させていただけますよう、委員長においてお取り計らいをお願い申し上げます。
  333. 穐山篤

    委員長穐山篤君) なお、ただいま各班から御要望のございました詳細にわたる報告書につきましては、これを本日の会議録の末尾に掲載することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  334. 穐山篤

    委員長穐山篤君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。  次回の委員会は明十六日午前十時に開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時二十一分散会      ―――――・―――――