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1987-09-21 第109回国会 参議院 決算委員会 閉会後第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十二年九月二十一日(月曜日)    午前十時開会     ―――――――――――――    委員異動  九月一日     辞任         補欠選任      永野 茂門君     土屋 義彦君  九月二日     辞任         補欠選任      土屋 義彦君     永野 茂門君  九月五日     辞任         補欠選任      松尾 官平君     岩崎 純三君  九月七日     辞任         補欠選任      岩崎 純三君     井上  裕君  九月十四日     辞任         補欠選任      佐藤 昭夫君     上田耕一郎君  九月十六日     辞任         補欠選任      上田耕一郎君     佐藤 昭夫君  九月十九日     辞任         補欠選任      宮崎 秀樹君     久世 公堯君      真鍋 賢二君     松尾 官平君  九月二十一日     辞任         補欠選任      久世 公堯君     宮崎 秀樹君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         穐山  篤君     理 事                 井上  裕君                 石井 道子君                 大島 友治君                 杉山 令肇君                 菅野 久光君                 峯山 昭範君     委 員                 井上  孝君                 板垣  正君                 河本嘉久蔵君                 沓掛 哲男君                 斎藤栄三郎君                 寺内 弘子君                 中曽根弘文君                 福田 幸弘君                 宮崎 秀樹君                 守住 有信君                 一井 淳治君                 佐藤 三吾君                 山本 正和君                 片上 公人君                 刈田 貞子君                 佐藤 昭夫君                 橋本  敦君                 関  嘉彦君    国務大臣        大 蔵 大 臣  宮澤 喜一君        文 部 大 臣  塩川正十郎君        厚 生 大 臣  斎藤 十朗君        運 輸 大 臣  橋本龍太郎君        労 働 大 臣  平井 卓志君        建 設 大 臣  天野 光晴君        国 務 大 臣        (内閣官房長官) 後藤田正晴君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  栗原 祐幸君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       近藤 鉄雄君         ―――――        会計検査院長   辻  敬一君         ―――――    事務局側        常任委員会専門        員        小島 和夫君    説明員        内閣総理大臣官        房参事官     坂東眞理子君        警察庁長官官房        審議官      根本 好教君        警察庁警備局長  新田  勇君        防衛庁防衛局長  西廣 整輝君        環境庁自然保護        局長       古賀 章介君        国土庁土地局長  片桐 久雄君        国土庁地方振興        局長       澤田 秀男君        外務省アジア局        長        藤田 公郎君        外務省経済協力        局長       英  正道君        大蔵大臣官房審        議官       尾崎  護君        大蔵省主計局次        長        寺村 信行君        大蔵省理財局次        長        藤田 弘志君        大蔵省銀行局長  平澤 貞昭君        国税庁次長    日向  隆君        文部省初等中等        教育局長     西崎 清久君        文部省社会教育        局長       澤田 道也君        厚生省健康政策        局長       竹中 浩治君        林野庁長官    田中 宏尚君        運輸省国際運        輸・観光局観光        部長       吉田 耕三君        運輸省地域交通        局陸上技術安全        部長       清水 達夫君        運輸省航空局長  山田 隆英君        労働省労働基準        局長       平賀 俊行君        建設省建設経済        局長       牧野  徹君        会計検査院事務        総局次長     秋本 勝彦君        会計検査院事務        総局第一局長   疋田 周朗君        会計検査院事務        総局第五局長   三原 英孝君    参考人        日本銀行理事   青木  昭君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○昭和六十年度一般会計歳入歳出決算昭和六十  年度特別会計歳入歳出決算昭和六十年度国税  収納金整理資金受払計算書昭和六十年度政府  関係機関決算書(第百八回国会内閣提出) ○昭和六十年度国有財産増減及び現在額総計算書  (第百八回国会内閣提出) ○昭和六十年度国有財産無償貸付状況計算書  (第百八回国会内閣提出)     ―――――――――――――
  2. 穐山篤

    委員長穐山篤君) ただいまから決算委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る五日、松尾官平君が委員辞任され、その補欠として岩崎純三君が選任されました。  また、去る七日、岩崎純三君が委員辞任され、その補欠として井上裕君が選任されました。  また、去る十九日、真鍋賢二君が委員辞任され、その補欠として松尾官平君が選任されました。     ―――――――――――――
  3. 穐山篤

    委員長穐山篤君) 次に、理事補欠選任についてお諮りいたします。  委員異動に伴い、現在理事が一名欠員となっておりますので、その補欠選任を行いたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 穐山篤

    委員長穐山篤君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事井上裕君を指名いたします。     ―――――――――――――
  5. 穐山篤

    委員長穐山篤君) 昭和六十年度決算外二件を議題といたします。  本日は全般的質疑第一回を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  6. 一井淳治

    一井淳治君 運輸省の方にまずお尋ね申し上げたいんですが、最近オートマチック車の急発進あるいは急加速、いわゆる暴走事故が多発しているようでございますけれども新聞雑誌記事が最近は頻度もだんだんふえておりますし、記事も大きくなっていくというふうな状況がございますけれども運輸省として、AT車暴走事故に関して一番新しい統計数字で結構でございますが、どのように把握しておられるのか、まずお尋ね申し上げたいと思います。
  7. 清水達夫

    説明員清水達夫君) お答え申し上げます。  ただいま御質問AT車の急発進、急加速事故並びに苦情についての件数でございますが、これは私どもが直接苦情として受けたものを含めまして、各メーカーから調査報告をさせておるところでございます。件数でございますが、私どもがこれまで把握をしているものは、五十八年におきまして三十九件、五十九年が四十件、六十年が四十七件、六十一年が四十二件、今年の一月から三月までは計十件、合計百七十八件となっております。これを発生パターン別に分析いたしますと、急発進にかかわるものが九十件、一般走行中並びに徐行中に急加速したものが三十三件、逆発進等のものが四十四件、それから状況がよくわからないものが十一件、合計百七十八件ということでございます。
  8. 一井淳治

    一井淳治君 オートマチック車暴走事故原因でございますけれども、端的な表現を使わせていただきますけれども、この実態人為ミスなのか、それとも構造上の不良や欠陥事故原因となっているのか、その点はいかがでございましょうか。  といいますのは、最近オートマチックの車の事故がいろいろと話題になっておりますけれども、問題な点は事故状況について再現ができない。そこで、ブレーキアクセルの踏み間違いというような人為的な原因とみなされやすくて、刑事事件処理も大体そのようになされておるように聞いておりますけれども、しかし、八月二十七日付の読売新聞の夕刊など見ますと、サンタナの暴走事故についてフォルクスワーゲン社がトラブルが再現されたとして日産報告しているというふうな記事もございますし、また、私、種市さんという著名な事件についてごく最近、ごく短時間、二十分ぐらいでございますけれども刑事事件記録を見たんですけれども、それを見ますと、これはアクセルブレーキを踏み間違えたという事件でございますけれども、しかし、種市さんの車はサイドブレーキが最上段まで引いてあった、そしてサイドブレーキのドラムに変色があるということがはっきり記録に残っておるわけでございます。そういったものを見ますと、やはり幾らアクセルを踏んでおりましてもサイドブレーキを長時間引いておれば停車するのが車の原理でございますから、五百メートルも暴走するのはおかしいんじゃないかというふうな気もするわけでございます。そういたしますと、やはり今までのように人為的なミスというだけでは片づけ得ない何物かがある。やはり機構上の欠陥があるんじゃないかというふうな気がするわけでございます。  そういうところで、このAT車のいわゆる暴走事故原因ですけれども実態人為ミスというふうに簡単に片づけていいものか、それとも相当構造上の欠陥ということを真剣に考えなくちゃならないような状況があるのか、その点についてお尋ねしたいと思います。
  9. 清水達夫

    説明員清水達夫君) お答え申し上げます。  オートマチック車の急発進、急加速にかかわります事故などにつきましては、これまでのところ車両構造装置欠陥が直接的に事故原因となった事例確認はされておりませんが、先ほど申し上げました急発進、急加速事故及び苦情事例の中には、例えば走行中にエンジン回転数が上がって速度が上がるといったようなもののように、少数ではございますが運転者の誤操作だけでは説明のしにくい事例も認められます。したがいまして、私どもといたしましては、今般原因究明を徹底して行う、こういうことにしたものでございます。
  10. 一井淳治

    一井淳治君 原因究明方法でございますけれども日本自動車工業会等に、業者の方に御指導いただいているのもあると思いますし、また運輸省として公正な調査もなさっているんじゃないかと思いますけれども、その状況について御説明願いたいと思います。
  11. 清水達夫

    説明員清水達夫君) 原因究明は、ただいま先生御指摘のございましたように、日本自動車工業会に対しても指示すると同時に、公正申立な立場から私ども運輸省の附属の交通安全公害研究所におきましても実施することといたしております。  それで、具体的な試験調査の内容について申し上げますと、まず第一番目に、試験車につきまして、例えば発進時におけるエンジン回転数、トルクなどの基本的な車の性能につきまして確認試験を行います。さらに二番目に、その現在問題になっております原因を推定するため、電気回路等に故意にふぐあいを発生させまして、その現象を確認いたします異常挙動確認試験を実施することといたしております。さらに、電波障害という問題も疑問が抱かれておりますので、電波雑音を発生させた場合の車載の電子機器ふぐあい発生に関する確認試験を計画しておるところでございます。  このような試験につきましては、この七月から既に研究所内におきましてプロジェクトチームを編成いたしましてスタートしておるところでございますが、実車を用います試験調査はこの九月から本年十二月末までを予定いたしております。この実車試験に並行いたしまして、必要に応じて自動車メーカーからのヒアリングも行うこととしておりますが、これらの実車試験が順調に進みますれば、来年の一月からデータの解析を行いまして、三月末には中間報告書を作成する予定でございます。  以上のように原因究明に全力投球しておるところでございます。
  12. 一井淳治

    一井淳治君 実車試験でございますけれども、どういうふうな車種を用いられておやりになるのか、それから中間報告までは部外に研究成果が出ることはないんでしょうか、その二点についてお尋ねいたします。
  13. 清水達夫

    説明員清水達夫君) 実車試験のまず第一点でございますが、車種につきましては、現在まで確定いたしておりますのはアウディ、それから日産フェアレディZ車種でございまして、そのほか数車種を追加選定する、こういうことで進めております。  さらに第二点目の御質問でございます途中経過につきましては、技術的な問題でございますので今後の調査進行状況によると思いますが、現在のところは来年の三月末までに中間報告書をまとめて公表する予定にいたしております。
  14. 一井淳治

    一井淳治君 警察庁の方にお尋ねいたしますが、これまでの警察の取り扱いによりますと、AT車暴走事故というものは構造上の欠陥ではなくて人為ミスというふうに、すべて処理されておるように思うわけでございますけれども、しかし、最近いろいろ新聞雑誌等指摘がなされておるところで、多少は警察庁の方の見方も変わってきているんじゃないかというふうな気もするわけでございますけれども、最近の処理状況とか統計数字にどのようにあらわれているかという点について、まず御説明をお願いしたいと思います。
  15. 根本好教

    説明員根本好教君) 警察現場におきましてもAT車事故原因につきまして慎重な捜査を進めておりまして、仮に事故車両構造上の欠陥によるものであれば、それは警察庁に対して報告するという事項になっておりますけれども、現在までのところそういった報告は受けておらない状況でございます。
  16. 一井淳治

    一井淳治君 衆議院の交通安全対策特別委員会がことしの七月三十日に開かれておりますけれども、その席上で葉梨国家公安委員長が、「交通事故原因故障であるとかあるいは構造上の欠陥に起因するであろうという疑いがあります場合には、鑑定とか検査を受けるなど慎重な捜査を行ってきたところでございますが、これからも適正な捜査を続けて原因究明を図りたいと考えております。」、「構造上の問題とかあるいは操作上の問題につきまして、十分な教育を積極的に行うように指導してまいりたいと思っている次第でございます。」、このような答弁もいただいているわけでございますけれども、この答弁を生かして具体的に末端の警察官の方に対してどのような指導がなされておるのかという点についてお答え願いたいと思います。
  17. 根本好教

    説明員根本好教君) 警察におきましては交通警察官に対する教養ということで、各種の教養課程を設けておりますが、その中に自動車工学的なものも含めて専門機関に依頼して教養を行っておるということもございます。
  18. 一井淳治

    一井淳治君 AT車事故というのは先ほども申し上げましたように再現ができないというわけで、ややもすると被疑者が適当に逃げ口上を使っているんだろうというようなことでみなされてしまう。特に第一線で働いておられる警察官の方は普通科高校を卒業した人が多いんではないだろうか、それで機械については余り強くない人が多いんじゃないかというふうな気がいたしますので、今後被疑者構造上の欠陥等について申し立てをした場合には、できるだけ慎重な捜査をなさるように御指導をいただきたいというふうに思います。  それから、かなり第一線の現地では被疑者がそういうふうな申し立てをした場合には、鑑定をするとかいうようなことも行われているように思いますけれども、その実態はどういうふうになっているんでしょうか。特に私今までの様子を見ますと、その車のメーカー試験をやらせるとか、あるいは直前に車検をした業者鑑定をさせるというようなことが多いように思うんですけれども、それでは正確な公正な鑑定はできないんじゃないか、やはり陸運支局検査場のような公正な機関に依頼しなくちゃいけないんじゃないかと思いますけれども、その際についての最近の状況や今後のお考えについてお尋ね申し上げます。
  19. 根本好教

    説明員根本好教君) 交通事故原因車両故障等による疑いがある場合には、現場における車両検分あるいは都道府県警察科学捜査研究所における鑑定等をまず実施いたしております。さらに専門機関鑑定等を依頼する必要があるということであれば、原則として各都道府県陸運支局検査官等に依頼することといたしております。ただ、場合によりましてはメーカー等車両検査を実施させる場合もございますが、この場合でも警察官立ち会いのもとに警察施設内で行うなど、公正な検査に配慮しているところでございます。今後も、大変重要な問題でございますので、できるだけ公的機関鑑定あるいは検査官立ち会い、こういったものをできるだけやることにいたしまして公正な鑑定検査、これが行われますように第一線指導してまいりたいと考えております。
  20. 一井淳治

    一井淳治君 質問を今度は日本航空事故に関連してのお尋ねに変えたいと思いますけれども、六十年八月十二日に日本航空一二三便が墜落して五百余名の方がお亡くなりになるという大変痛ましい事故が発生したわけでございますけれども、このような事故は恐らく運輸省としても予想外のことではなかったかというふうに思います。  私はここでお尋ねしたいのは救難体制のことでございますけれども、それについていろいろ問題点があったんじゃないかということではなくて、この救難体制を、この事故一つ検討資料反省材料として今後どのように整備改善していくかという方向での質問を申し上げたいわけでございますけれども、この際つくられております報告書国会質疑会議録などを見ますと、やはりちょっとさらに改善を要するんじゃないかという点も少なからずあるわけでございますけれども、この事故一つ教訓として、人員配置とか通信網改善とかその他もろもろの点について改善が行われたと思いますけれども、そのあたりのことについてまずお伺いしたいと思います。
  21. 山田隆英

    説明員山田隆英君) 航空機事故の場合の捜索救難体制につきましては、東京空港事務所関係機関との調整を行いますための救難調整本部RCCと言っておりますけれども、これを設置しております。ここでこれまでもそういった事故捜索救難についての調整を行ってきたわけでございますけれども、六十年八月の日航機事故教訓といたしまして航空機捜索救難体制強化を図りますために施設整備を行いますとともに、専任要員配置を行ったところでございます。  さらに具体的に申し上げますと、昭和六十年度の予算におきまして救難調整本部捜索救難調整卓、それから情報蓄積検索装置専用電話回線といったような施設整備いたしますとともに、六十一年の四月から四名の専任要員を増員した、ところでございます。また、関係機関との訓練につきましても、昭和六十一年の八月及び昭和六十二年、ことしの七月の二回にわたりまして訓練を実施したところでございますけれども、今後とも定期的にこのような訓練を実施して捜索救難体制強化を図ってまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  22. 一井淳治

    一井淳治君 今訓練というお話も出ましたけれども、今回は山岳地帯に夜間墜落したという大変なことになったわけでございますけれども、普通では考えられないようないろいろな場面を想定して似演習とか訓練とか、そういったものもなさっておられるんでしょうか。
  23. 山田隆英

    説明員山田隆英君) 救難調整本部は、主としてやっておりますのは情報伝達のための訓練でございまして、実際の捜索活動についての訓練ということではございません。
  24. 一井淳治

    一井淳治君 やはり日本国内とかあるいはその近辺に墜落したという想定のもとに、しかもこの想定は余り容易に救難ができるような場所じゃなくて、非常に救援が困難だというふうな場所想定して、実際に墜落した場合にはどういうふうな対応をしなくてはならないかということを考えながらのいろいろな訓練演習も、演習といえばこれは費用がかかるかもしれませんけれども想定したいろんな準備をぜひともお願いしたいというふうに思います。  それから、事故報告書を読ましていただいたんですが、防衛庁ヘリコプターが四時三十九分に一番に現場に到達しておるわけでございます。その前に防衛庁戦闘機がその前日の事故のあった日の十九時二十一分に現場の炎を発見して、続いて防衛庁ヘリコプターがその夜の二十時四十二分に現場上空に到達して電波位置確認をするというふうな状況確認されておるわけですけれども、そのときから防衛庁ヘリコプターが一番に現場救援にかけつけるというまでに非常に時間がかかっているわけでございます。これを、時間がもっと短縮できないかということが非常に大きな問題ではないかと思いますけれども防衛庁ヘリコプター事故のあった日の夜二十時四十二分に現場へ行って位置確認をやっているんですけれども、これがRCCの方に通報が入っているのかどうか。その通報に対して通報を受けたRCCは適切な措置をしておられるのかどうか、そのあたりはいかがでございましょうか。
  25. 山田隆英

    説明員山田隆英君) 自衛隊ヘリコプターであるバートルが現場に赴きまして、現場上空で煙を確認したという通報RCCにおきましては二十時五十分受けております。これを受けまして東京RCCからは、自衛隊陸上自衛隊東部方面総監に対しまして災害派遣の要請を行いますとともに、関係機関に対しましても情報伝達を行っておりまして、捜索救難活動についての通信を行った次第でございます。
  26. 一井淳治

    一井淳治君 そのとき、具体的な場所などについてもRCCの方から連絡をなさったんでしょうか。と言いますのは、この事故報告書の書きようが、書き方ということもあるかもしれませんけれども、独自に捜索をしたようなふうにも読み取れるというふうに書いてあるものですから、私ども思うのは、そこのところの連絡が果たして適切に行われていたのかどうか、そして通信方法が不完全であれば、そういうふうな通信方法をきちんと改善しておいてもらわなくちゃいけないのじゃないかというふうに思うわけでございます。
  27. 山田隆英

    説明員山田隆英君) 自衛隊からの連絡でございますけれども自衛隊といたしましては炎上中の火災現場位置確認したところ、中心地点が北緯三十六度二分、それから東経百三十八度四十一分ということでございました。その後、私どもの方から現場確認の依頼をいたしまして、これは十一時十分ごろでございますけれども、ただいま申し上げました緯度、経度を中心に半径三マイルから四マイルの範囲に機体が散乱しているという回答を得ましたので、その旨を警察庁の方へ連絡したところでございます。  このように現場位置確認が手間取ったわけでございますけれども、その理由といたしましては、夜間でありますために目視が限られるといったようなこと、それから現場が大変山奥でございまして、地上から確認するということが非常に難しかったというようなこともございまして、今申し上げたような状況になったわけでございます。
  28. 一井淳治

    一井淳治君 警察庁の方にお尋ねしたいんですけれども、夜間のヘリコプターによる捜索というのは非常に困難だというふうに思いますけれども、現にもっと早く救難をしておればあと一人か二人は人命が救えたんじゃないかというふうな気もする事故でございますので質問するわけですけれども、夜間でも捜索できるような装備や器材があるのかどうか。ないとすれば、この開発をしていただく必要があると思うのですけれども、そのあたりはいかがでございましょうか。
  29. 新田勇

    説明員(新田勇君) ヘリコプターの装備の開発、改善について申し上げます。  警察ヘリコプターは現在、平地では夜間でも実は飛んでいるわけでございまして、そのための訓練は計画的にかねてから実施をいたしておりますし、また夜間飛べるようにサーチライトあるいはスタビライザーといったような器具も装備いたしておるところでございます。それから、今年度から気流に対応できるように、少し重い大型のヘリコプターの導入ということをやっておりますし、また夜間の視認性の信頼度を高めるということでナイトゴーグルの装備というようなことで現在研究をいたしておるところでございます。しかし、夜間山間部で縫うように飛ぶ、自由に飛ぶということのためには、まだまだ克服しなければならない問題点が幾つもあるというのが専門家であるパイロットの意見でございます。このあたりの意見を踏まえまして、安全性ということを第一に置きながら改善を進めてまいりたい、こういうふうに思っておるところでございます。
  30. 一井淳治

    一井淳治君 事故はめったに起こりませんけれども、起こりますと人命に関係することでありますので、できるだけ早くそういうふうなものの開発をお願いしたいというふうに思います。  それから次に、事故当時はRCCに消防庁が加わっていなかったというふうに聞いておるわけでございます。これは私も完全に調べたわけではございませんけれども、消防庁には相当強力なサーチライトを備えたヘリコプターもあった。しかし、消防庁が加わっていないためにこの強力なサーチライトを備えたヘリコプターも結局出動しなかったというふうなこともあったように聞いておりますけれども、消防庁を今度RCCに加えていただく必要がどうしてもあると思いますけれども、そのあたりのことはいかがでございましょうか。特に現場で、山の中で事故なんかが起こりますと、やはり地元の消防団の出動がどうしても必要だと思いますけれども、そのあたりはいかがでございましょうか。
  31. 山田隆英

    説明員山田隆英君) 航空機捜索救難に関する協定については、現在までは運輸省の航空局、それから警察庁防衛庁及び運輸省の海上保安庁が参加しておったわけでございまして、お話しのとおり消防庁はこれまで協定には参加しておりませんでした。しかしながら、ただいまのお話にもございましたようなことを教訓といたしまして、今後消防庁の協定参加について関係省庁間で合意が得られておるところでございます。ただ、形式的な協定の改定作業はまだ現在作業中でございますが、実質的には消防庁にも捜索救難の業務に参加していただいておりまして、消防庁とRCCとを結ぶ専用電話回線は既にことしの八月に敷設されておりますし、また去る七月に実施いたしました捜索救難訓練には消防庁も参加しておりまして、既に消防庁を含めた捜索救難体制ということになっておるわけでございます。
  32. 一井淳治

    一井淳治君 きょうはわざわざ大臣も大変御多忙の中をお見えでございますので、一言お聞かせ願いたいわけでございますけれども航空機事故というものはめったに起こるわけじゃございませんけれども、もし起きた場合には大変な大事故となるわけでございます。そういったことで、今後この日本航空事故一つ教訓としながら、早急に適切な救難体制が完備するようにしていかなくちゃならないと思いますけれども、運輸大臣のお考えもこの際お聞きしたいと思います。
  33. 橋本龍太郎

    ○国務大臣(橋本龍太郎君) 私どもの立場からまいりますと、まずその事故そのものを発生させないための努力を最優先すべきであると考えております。この一二三便の事故以来、緊急に改善すべき事項等々につきましてはそれ相応の対応をしてまいりましたし、事故調からの報告書を受けまして、その勧告あるいはその他の部分につきましても対応してまいりました。それと同時に、今委員から御指摘になりましたように、不幸にして事故が発生いたしました場合の対応につきまして、まだまだ私どもは研究をしなければならぬ点が多かろう、こう存じます。今後とも努力をしてまいりたい、そのように考えております。
  34. 一井淳治

    一井淳治君 あと一つお尋ねしたいんですが、これは航空機事故救難体制に関連して、各所管の方で費用を負担しておるのじゃないかと思いますけれども、その費用負担についてはどのようになっておるのでございましょうか。
  35. 山田隆英

    説明員山田隆英君) 日本航空の一二三便の捜索救難に関する費用の負担でございますけれども、地方自治体としての群馬県であるとか、上野村、藤岡市、その他の市町村組合、それから日航、こういった関係者の間で費用を負担しております。自治体が要した費用が総計で八億三千六百万円でございますが、このうち日航の負担分が五億一千五百万円でございます。
  36. 一井淳治

    一井淳治君 ちょっと質問を変えさしていただきますけれども、参議院の決算委員会の審議の重視ということは極めて重要であることは今さ至言うまでもないことでございますけれども、そうしてそのために質疑に対する答弁や資料の提出要求に対して政府側の積極的な当を得た協力が必要であるということも多言を要しないというふうに思います。このことに関しまして、これまで内閣総理大臣からこの委員会において重ねて、誠心誠意努力する、あるいは最大限の努力をするというふうな御答弁をいただいておるわけでございまして、例えばそれは参議院決算委員会のことしの七月三日、六十一年五月十六日、それから六十年六月十五日の各会議録にそれぞれ言葉も残されておるわけでございますけれども、しかし最近私も新しく決算委員会に入れていただきまして、資料の提出をお願いしたんですけれども、なかなか難しかったわけでございまして、やはりこの総理大臣のお約束は余り守られていないんじゃないかという感じもしないことはないわけでございます。  そこで、これまで各省庁に対して、このような御答弁があったわけでございますから、具体的にどのような御指導をいただいておりますのか、その点をお伺いしたいと思うわけでございます。
  37. 後藤田正晴

    ○国務大臣(後藤田正晴君) 当決算委員会で、ただいまのような委員の皆さん方からの政府の対応ぶりについての御注意を従来からしばしば受けておるわけでございます。そういった際には、当然各省庁それぞれ関係の職員に当委員会での御意見等を伝達をして、誠意を持って当然のことながら対応しなければならぬということは伝達をしていただいておるわけでございますが、特に、いってございましたか、ことしの一月ですね、閣議で私から、国会の審議全般にわたってではございますけれども、どの委員会も国政審議のために当然政府としては誠意を尽くして審議に御協力をしなければならぬのは当然であるが、同時に、予算委員会、あるいはまたその予算がどのように適切、効率的に有効に使用せられ、あるいはまた非違があったとかないとかといったようなこと、非違のないように留意をするというような意味合いから、決算委員会の御審議にはひとつ格段の御留意を願いたいといったような意味合いのことを申し上げた記憶がございます。  にもかかわりませず、また今回こういった御注意があったわけでございますが、政府としては従来にも増しまして当委員会に対する質疑に対応する政府のあり方、そしてまた資料要求等については十分ひとつ今後とも注意をして、皆様方にこれ以上御不満をおかけをするといったことのないように、将来とも万全を期してまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  38. 一井淳治

    一井淳治君 そのことは決算委員会に限らないわけでございまして、ほかの委員会におきましてもやはり頭をひねるような質問に対する答弁というものが少なからずあるように思うわけでございます。その答弁がどうも当を得ていないということについて、例えば政治的な微妙な問題が絡まっているとかあるいは大臣の場合は細かいことを知らないことが多少あるかもしれませんので、そういった理由の理解できる場合もございますけれども、全然、何といいますか担当の局長さんや部長さんが全くのピンぼけな回答をなさっている。そんなにかわさなくちゃならない理由もないというふうな、そういうふうな回答も全然ないことはないように思うわけでございます。特に傍聴人が多いような場合には、傍聴人の方々はやはりいろいろ利害関係を持って問題について深い認識を持っておりますので、そういった方の前で余りお粗末な答弁になりますと政治不信につながるんじゃないかというふうな心配もするわけでございます。  そういったことで、決算委員会もそうでございますけれども、ほかの委員会も含めまして、的確な答弁をいただくように、そして資料提出に対しては積極的に御協力いただけるように各省庁に御指導いただきたいと思いますけれども、いかがでございましょうか。
  39. 後藤田正晴

    ○国務大臣(後藤田正晴君) 御意見の御趣旨は、さらにしかるべき時期に私から閣僚を通じて各省に伝達をいたしておきたい、かように考えます。
  40. 菅野久光

    ○菅野久光君 まず最初に、会計検査院法の改正の問題についてお尋ねをいたしたいと思います。  国会は会計検査院の権限の拡充強化等を内容とする会計検査院法の改正、いわゆる院法改正を行うように政府に対しこれまで数回にわたって決議をしてまいりました。これに対して政府は、いわゆる肩越し検査に対しては、検査協力を内容とする通達によって対処することをもって事足れり、こういうことで国会の要請にはこたえておらないわけであります。  ところで、会計検査院はこれまで一貫して院法改正の必要性を堅持してこられました。まずこの点について院長のお考えを確認いたしたい、このように思います。
  41. 辻敬一

    会計検査院長(辻敬一君) この問題につきましては、本委員会におきましてもたびたび御議論をいただいたところでございます。  会計検査院としての考え方につきましては、昭和五十四年に院法改正案要綱という形で内閣にお示しした際に明らかにしたところでございます。ただ、その後いろいろな経緯がございまして、内閣におきましては昭和五十六年と六十年と二回にわたりまして官房副長官通達を出されまして、いわゆる肩越し検査に協力するよう指導するという方針を明確にされたのでございます。そこで現在は、この方法、つまり肩越し検査方法によりまして検査の実効を上げるように全力を尽くしているところでございます。
  42. 菅野久光

    ○菅野久光君 肩越し検査で現在やられていることは私どもも承知をしておりますが、会計検査院として院法改正ということについてはあきらめたのかどうかということを再度お尋ねいたしたいと思います。
  43. 辻敬一

    会計検査院長(辻敬一君) 政府関係金融機関の融資先の調査を充実することによりまして、政府関係金融機関検査の一層の適正を図ってまいりたいという基本的な考え方は変わっておりません。
  44. 菅野久光

    ○菅野久光君 それでは、ただいまも述べましたけれども、肩越し検査については翁あるいは藤森通達で検査協力を要請をすることができるということでありますが、肩越し検査の実情について伺いたいと思います。官房長官の時間の関係もちょっとございますので、答弁はひとつ簡潔によろしくお願いいたします。  政府関係金融機関が行った貸し付けについて貸付先に赴いて調査した件数を見ますと、他の金融公庫等には毎年行われていましたけれども、北海道東北開発公庫、日本開発銀行はやっと昭和六十年から行われるようになりました。日本輸出入銀行に至っては昨年やっと十年ぶりに行われたという状態です。  ここで改めて伺いますけれども、これらの三つの金融機関が長い間肩越し検査を拒んできた理由を伺いたいと思います。また日本輸出入銀行については、昭和六十年に行われなかった理由は何か。さらに、これらの金融機関にかかわる肩越し検査は円滑に、かつ十分に行われたかどうか、それをお伺いいたします。
  45. 辻敬一

    会計検査院長(辻敬一君) ただいまお話のございましたように、大部分の政府関係金融機関につきましては、従来から引き続きいわゆる肩越し検査を実施してきておりまして、指摘事項を検査報告にも掲記しておりますことは御承知のとおりでございます。  ただ、そのうち今お話のございました三機関につきましては、従来必ずしも御協力が得られませんで、肩越し検査を行ったことがなかったのでございますが、先ほど申し上げましたように政府の協力方針が明確になりまして、特に六十年のいわゆる藤森通達が出されまして以降、次第に調査について協力が得られるようになったわけでございます。そして、六十年以降三年にわたりましていわゆる肩越し検査の実績も上がっているところでございまして、ただいま実施いたしております六十二年度の検査につきましても、三機関を通じましていわゆる肩越し検査の実績は十件に上っている、こういうことに相なっております。
  46. 菅野久光

    ○菅野久光君 それでは、一昨年日本輸出入銀行法の改正が行われまして、この銀行は、海外直接投資の円滑化を図る観点から、本邦法人等の出資に係る外国法人に対する貸し付け等ができることになりました。この制度の新設にかかわる貸付先の検査等は行われたのかどうか。またその検査結果はどうであったか伺います。
  47. 辻敬一

    会計検査院長(辻敬一君) ただいまお話のございましたように、昭和六十年六月の日本輸出入銀行法の一部改正によりまして、新たに輸出入銀行が本邦法人の出資に係る外国法人に対して直接貸し付けができるようになったのでございます。ただ、その改正後の規定に基づきまして外国法人に融資した案件はこれまで一件だけと承知しております。またこれにつきましては、融資承諾があったのがごく最近、六十一年十月であることもございまして、私どもといたしまして海外において実地に調査したことはまだございません。
  48. 菅野久光

    ○菅野久光君 何でもこの種のものは最初が肝心ですので、ぜひこういったようなこと等について間違いのないような形でこの貸し付け等がやられているかどうかということを検査院としてもやってもらいたい、このように思います。  今まで政府は、この院法改正に消極的である理由として、自由主義経済体制下における公権力の過剰介入あるいは政策金融の円滑な遂行との兼ね合いなどを挙げて、慎重に対処すべきものとしておるわけでございます。これまでの肩越し検査の結果、それによって政府の言うような公権力の過剰介入と言われるような事態が起こったことがあるでしょうか。また、政策金融の円滑化を阻害すると言われるようなことがあったでしょうかお伺いいたします。
  49. 辻敬一

    会計検査院長(辻敬一君) 肩越し検査につきましては、特に過度の検査にわたることのないよう慎重に行っているところでございまして、これまでの肩越し検査につきましてもいわゆる公権力の過剰介入であるとかあるいは政策金融の阻害要因になったというような御批判を耳にしたことはございません。今後におきましても、この点につきましては十分注意を払ってまいりたい、かように考えております。
  50. 菅野久光

    ○菅野久光君 政府が言うようなことは今まではないということです。その点はしっかりひとつお聞きいただきたいというふうに思います。  現在の通達を踏まえての肩越し検査は、あくまで合理的理由があるというふうに相手方も思わなければできないわけです。この合理的理由の有無で見解の相違があって肩越し検査ができなかったということがあったかどうか、これをお伺いいたします。
  51. 辻敬一

    会計検査院長(辻敬一君) 先ほど申し上げましたように、いわゆる藤森通達が一昨年発せられましてからは、国会における御議論あるいは政府の指導等の趣旨を体しまして、いわゆる三機関におきましても本院の検査に協力的となっております。本院の肩越し検査の要請に対しまして特に拒否されたとか、そういう検査上の支障が生じたことはただいまのところございません。
  52. 菅野久光

    ○菅野久光君 会計検査院としてどうしてもこの融資先までも検査しなければ検査の目的を達することができない、こういった場合に、何らかの政治的理由その他で拒否されることも考えられるわけですね。協力しなさいという通達ですから、これは義務がないわけです。現在のこの肩越し検査では実地検査、そういったようなことでの実地検査ができないこともあるというふうに思います。このような場合はどうしても法的根拠をもって検査できるようにしておかないと、会計検査院としての使命を達することができない事態も生ずるのではないか、このように思いますが、会計検査院としてはどのように考えますか。
  53. 辻敬一

    会計検査院長(辻敬一君) 肩越し検査は、ただいまお示しのございましたように、相手方の協力を要するという点で法律上の権限に基づく検査とは異なっているわけでございます。しかし、相手方の協力を得られますならば、法律上の権限に基づく検査と内容が特に異なるということではないと考えております。現に、先ほど申し上げましたように、三機関以外の政府関係金融機関につきましては従来から長い間この方法により支障なく検査を行って、実績を上げておるところでございまして、いわば肩越し検査方法が定着しているということが言い得るんではないかと思います。また、政府におかれましても、総理大臣、大蔵大臣初め国務大臣がたびたび会計検査院の肩越し検査に協力するよう指導する旨厳命しておられますので、私どもはこれに御信頼をいたし、これに御期待を申し上げている次第でございます。
  54. 菅野久光

    ○菅野久光君 これは特段問題がないから協力をするということであって、何か問題があるようなことができたときには、これは法的な権限が検査院にないわけですから、それはちょっと待ってくださいと言われれば、それに踏み込んで検査はできないわけですね。  少なくとも、これがロッキード事件を契機にして検査院の権限を強化しなければだめだということで出されてきたことから言えば、今の肩越し検査は、今は特段の問題がないから協力するという形になっているのであって、何か問題があって踏み込んで調べたいというときには、院法改正をしなければこれはできないということだけははっきりしているわけです。そこで、院法改正に対する会計検査院の考え方は、私どもは一貫していると思うんですね。今は肩越し検査で協力してもらっているから特段の支障はないと言っていますけれども、しかし、それではいざというときに踏み込んで検査はできないということだけは、これははっきりしておるわけです。そういうような状況でも、政府は依然として法改正を拒否なさるのかどうか、ひとつお伺いいたします。
  55. 後藤田正晴

    ○国務大臣(後藤田正晴君) 会計検査院の機能が強化をせられるということは、私は一般論としては非常に望ましいことであろうと、こう考えております。ただ、問題になっておる政府系の金融機関からの貸出先まで会計検査院の検査が直接及んで、まあいわゆる公権力の過剰介入ということになって、政策金融そのものが十分の機能を発揮するゆとりがなくなってくるということになると、まあ極端なことを言えば角を矯めて牛を殺したといったようなことにもなる。だから、会計検査院の機能強化と、それと政策金融の目的の達成、この兼ね合いをどこに置くかということであろうと、私はさように考えます。そういう点を考えますと、一部の金融機関で肩越し検査を拒否をするといったような例があったように聞いておりますが、それは適当でないと、いうことで、会計検査院、内閣、大蔵省等でも十分協議をしまして、すべてのそういった金融機関からの貸出先についていわゆる肩越し検査でやってみると、これで今、先ほど来の院長の御説明のように、十分の機能が私は発揮をせられておると、こう考えております。それだけに、今の時点でこの法改正、院法の権限強化の、その必要性は私は認めておりません。何もかも用心にこしたことはないということで、役所の権限強化をするということも一つの考え方ではあるかもしれませんが、その結果はかえって国の本当に公権力の過剰介入ということになって、世の中全体に萎縮感を与えるということは私は必ずしも適当であるまいと、かように考えておりまするので、現在はともかく目的が達成せられておるわけでございますので、こういったやり方で継続さしていただきたいと、かように考えております。
  56. 菅野久光

    ○菅野久光君 かつてこの会計検査院は、院法改正案を作成したときに、「両院の御決議をいただき、かつまた当時の総理大臣から前向きの御答弁をいただいて、私どもは一案をつくって、一案といいましても、それはもう各省と御相談して、国会の御決議に沿ったぎりぎりの内容のものをお出ししたわけです」と当時の大村会計検査院長は述べておられます。各省とも相談して了解を得ていますし、国会決議に沿ったぎりぎりの内容と直言っております。これをいつまでも放置するというのは国会軽視であり、決断は一にかかって政府首脳にかかっているというふうに思いますが、今官房長官がお述べになりましたが、通達で十分その目的は達しているということですから、会計検査院が肩越し検査をやると言って、それを拒んだ金融機関などがあったときには、それは会計検査院と政府との間で、拒むことのないようにということは、これは政府として指導するということは確約できますか。
  57. 後藤田正晴

    ○国務大臣(後藤田正晴君) そういったことのないように十分行政指導をいたしたいと、こう思います。
  58. 菅野久光

    ○菅野久光君 官房長官の時間ですので、最後に長官のいるときに一言ちょっとお聞きをしたいと思います。  中曽根内閣もあと一カ月余となって、五カ年にわたる政権の幕を閉じようとしておるわけですが、中国との間で大変問題になっております光華寮の問題ですが、ことしは中国との国交回復十五周年。ぎくしゃくした問題を残したまま退陣されるということでは、これは有終の美を飾るということにはならないのではないかというふうに思いますし、中国の首脳は現中曽根内閣で解決してもらいたい、そういうような意向を表明もしておりますが、この問題について、あと幾らも時間がないわけでありますが、政府としてどう対応されるのか、お聞きをいたしたいと思います。
  59. 後藤田正晴

    ○国務大臣(後藤田正晴君) 光華寮の問題は、御承知のように現在所有権をめぐっての民事裁判が継続中でございます。そういった継続中である段階で、行政府として司法に対してどうこうと言うことは、これは三権分立の立場から私は許されないと、かように考えておるわけでございます。先方は法体系も違いますし、基本原則を踏まえて政府で善処すべしといったような御意見があるやに承知をいたしておりますが、先方はそういった原則はこれは曲げられないのかもしれません、しかし、日本はやはり日本の憲法秩序というものの上に立って国政全般が運営せられているわけでございますから、それを曲げて行政が司法に関与するということは、これは避けなければならぬと思います。したがって、私どもとしては、日本のこの建前を先方によく説明をしながら、そして同時に日本政府としては、日中共同声明あるいは日中平和友好条約、これに示されております日本の基本的な立場、つまり国の最高意思というものは一つの中国ということで我々は確定をしておるわけでございますから、そういった日本の立場というものを十分に先方に説明もし、御了解を得たい、かように考えておりますが、いずれにせよ双方の原則というものの食い違いは、これはやむを得ません。そういった際には、原則といったようなものはお互いの国がまあ余り表立って原則、原則でお互いに意見の投げ合いといったようなことはできる限り回避をしながら、お互いの立場を尊重しながら友好関係を進めていくというような外交を進めることが国益に沿うのではなかろうかな、かように考えて、我々としては静かな中に日本側の立場も御理解を仰ぎたいということでやってまいりたいと、かように考えておるわけでございます。
  60. 菅野久光

    ○菅野久光君 もう時間ですが、十月末で一応退陣される予定。それまでに中国側としては中曽根内閣の手でやってもらいたい、こういうふうに言っておりますが、その十月末までの間にどのような中国との間の手だてをお考えになっておるか、ちょっとお聞かせいただきたいと思います。
  61. 後藤田正晴

    ○国務大臣(後藤田正晴君) ただいまお答えをいたしましたような立場で我々は終始をしたいと、かように考えております。
  62. 菅野久光

    ○菅野久光君 官房長官結構です。  次に、時間が余りございませんので、ODAの検査体制の問題についてちょっとお伺いをいたします。  中曽根総理は、昨年五月十六日の当委員会において、海外援助の問題、特にマルコス疑惑のことについて次のように答えております。「やる以上はやはり住民の皆さんにいつまでも喜ばれる立派なものをやるべきでありまして、」「いいものを残すようにやはりやるべきであると思います。今回のいろいろな経験等にもかんがみまして、そういうような改良について、必要あらばこれらの問題のすべてが調査が終わった時点において、フィリピン政府といろいろ政府間で協議してより改善する道を考えてもいい、」と答えています。  政府は、この総理の発言を踏まえて、フィリピン政府と協議をしたかどうか、より改善する道としてどのような具体的改善がなされたのか、そのことをお伺いいたしたいと思います、
  63. 英正道

    説明員(英正道君) ODA援助の適正、効果的、効率的な実施につきましては、いろいろな措置が従来とられておるわけでございます。交換公文で適正使用を合意しておる、公正な入札を確保する、契約の審査承認等をきちっとやる、そういうことでございます。  今回の疑惑事件を踏まえまして、フィリピンに限らず、経済協力一般について一層適正な実施ということに努めていきたいということで、具体的には事前調査を拡充する、それから、やはりローカルコストが不足のために援助が動かないというようなことがないようにそういう支援を拡充する、そういうことによる案件の実施をスムーズに行う。それから、事後的に第三者を含めた評価ということをきっちりやることによって、適正な実施を確保するということなどをやっております。  特に、フィリピンの援助につきましては、まず昨年の四月から六月に第三者の有識者を団長とします四チームを派遣してフィリピン側の参加も得て評価をいたしました。その結果、日本の協力による各案件はおおむね順調に運営されている。フィリピンの経済社会発展に大きく貢献しているという報告を得ております。この結果を受けて、アキノ大統領がお見えになったときに共同発表で同じような趣旨が確認されているわけでございます。  それから、やはりフィリピンに対する援助をどういうような考え方で行うべきかということについて、国内の有識者の方の知見を集めて参考にさしていただくということで、フィリピンについて援助検討パネルというものを国際協力事業団、JICAの国総研に設置いたしまして、報告書を出していただいて、これを踏まえて本年の六月に大来佐武郎元外務大臣を団長とする対比経済協力総合調査団というものを派遣いたしまして、フィリピン側と最高レベルにおいて意見交換を行いました。今後の協力のあり方の方向づけを行って、適正、効果的、効率的な援助が行われるようなことに努めております。  それから、フィリピン政府との間でも、あらゆる機会にこれは無償資金協力、有償資金協力等、いろいろな機会に先方政府との話し合いをしております。昨年の六月にASEAN拡大外相会議で安倍前外務大臣から、日本としてはこの援助の適正、効果的、効率的な実施ということを非常に重視しているということを明確にいたしまして、それに基づいて、いわゆる政策対話、相手国政府と援助について話し合いを行うということを強化しております。それから、事前調査や事後の評価というものも充実するということを行いました。  こういうような機会を通じて、フィリピン政府と援助が適正、効果的、効率的に実施するということを確保するべく努力をいたしております。
  64. 菅野久光

    ○菅野久光君 ODAの問題についていろいろお聞きをしたいというふうに思っておりますが、時間が余りございませんので、次のことを一点だけお聞きをしておきたいと思います。  ODAの予算は、昭和六十三年度予算においても概算要求基準を上回って前年度比九%増と見込まれております。ODAは国民の税金で賄われていながら、どこの国でどんなふうにだれのために使われているのか、国民にはほとんど知らされておらないわけであります。これは、財政処理の基本原則を示した憲法八十三条の精神から見ていかがなものかというふうに思います。  また、この海外経済協力は先進国日本としてこれは国際的に果たさなければならない責務であるということは、これは当然でありますが、援助の中身が問題なんで、日本が援助することによって国情がますます悪くなるとか、あるいは日本に対する反感が高まるという実情もあるやに聞いております。  こんなことをいろいろ考えたときに、このODAの問題、決算委員会としても十分注意をしていかなければならない問題だというふうに思うわけであります。せっかく国民の税金を使いながら、援助をした国に喜ばれないような、逆に日本が恨まれるような、そんな使い方であってはならないというふうに思いますが、まず財政処理の基本原則の問題について政府の所見をお伺いいたしたいと思います。
  65. 寺村信行

    説明員(寺村信行君) 我が国の経済協力は開発途上国の経済社会開発、民生の安定、福祉の向上を目的としておりまして、特にその実施に際しましては相手国国民が直接裨益する基礎生活援助、農村農業開発、飲料水、保健医療、人口計画、民生用エネルギー開発等を重視してきているところでございます。厳しい財政事情のもとにございます我が国の経済規模にふさわしい政府開発援助の拡充を図り、我が国に課せられました国際的責任を果たしていくためには、一層効率的な援助の実施が必要とされておりまして、六十二年度予算におきましても、先ほど外務省より御答弁を申し上げましたように、事前調査の充実、公正な入札の確保、契約の審査認証、評価活動の充実等々の措置を講じているところでございます。  今後とも六十三年度予算の編成に当たりましては、このような我が国の国際的責任を果たしていくと同時に、厳しい財政事情に対応していくため所要の措置を講じてまいりたいと考えております。
  66. 菅野久光

    ○菅野久光君 とにかく今までの経済協力の中で本当に、例えば日本企業のフィリピンを舞台にしたリベート商法ですね、これは国税当局の税務調査によっても工事受注額の三〇%ものリベートが支払われていたというふうに言われております。一体このような高額のリベートを支払って採算が合うのかどうか、適正な受注契約額に対するチェックも必要になるのではないかというふうに思うがどうなんでしょうか。ある事情通の方の新聞等によれば、フィリピン事情に詳しい国際ジャーナリストの若宮清さんは、実際の工費は受注額の半分くらいのようです、三〇%のリベートでも十分採算が合うと話すということなどもこれは出ておる。一体どうなっているのかというふうに思うのは私だけではない、多くの国民がそう思っているのではないかというふうに思います。こんなことについても検査をしてきたのかどうか等を含めて、次の機会がありますので、これらは時間の関係もございますので次の機会に譲らせていただきたいというふうに思います。  次は、振動病の関係についてちょっとお伺いをいたします。  昨年の暮れに新治療指針を出されたわけでありますが、これは多くの問題がありまして、とても一時間や二時間でやれるような中身ではないというふうに思いますので、今当面する問題だけちょっとお聞きをしておきたいと思います。振動病の治療にかかわる問題としては労働省が労災の関係中心になるわけでありますが、何かこの新治療指針を出されるそのときに、厚生省あるいは林野庁とも協議をしたやに聞いておりますが、そのようなことがあったのかどうか、まずお聞きをしたいというふうに思います。
  67. 平賀俊行

    説明員(平賀俊行君) 振動病が一番多い分野は林業の関係でございました。したがいまして林野庁、厚生省の長官あるいは局長と私どもとの間で協議のための機構を設けまして、随時振動病に対する所管事項の問題について意見を交換し、協議する機会を設けております、そういうところで御説明、話題に供したことがございます。
  68. 菅野久光

    ○菅野久光君 事前に担当の者とでいろいろ話し合ったということですか。
  69. 平賀俊行

    説明員(平賀俊行君) 協議機構の主宰者といいますか、一番高いレベルのメンバーは局長、長官でございますけれども、担当課長等で幹事会というのを設けておりまして、そういうところで随時話し合いは行われております。
  70. 菅野久光

    ○菅野久光君 厚生省、そのことは間違いございませんか。  それから林野庁もあわせてお願いいたします。
  71. 竹中浩治

    説明員(竹中浩治君) 今労働省からお答えがございましたが、私どもこの治療指針につきまして五十六年十月以来検討が行われ、六十一年十月に指針が策定されたことは承知をいたしております。ただ、具体的な内容につきましては事前協議と申しますか、事前のお話は必ずしも聞いておったわけではございません。
  72. 田中宏尚

    説明員(田中宏尚君) この通達の基礎になっておりますいわゆる報告書につきまして、九月に当方で労働省から説明を受けまして、具体的に通達を出しました後にも詳細な説明を聞いております。
  73. 菅野久光

    ○菅野久光君 詳細な説明は聞いているということですね。今この問題をめぐって振動病の患者の方々が大変な動揺を来しておるわけです。二年ないし四年で症状固定ということで労災を打ち切る、労災を打ち切られれば、二年間のアフターケアはありますけれども、しかし振動病というのはまだ医学的にも非常に難しい、何といいますかね、まだはっきりした形での、こうやったらいいのだとか、これが完全に治ったものだというようなそういうものはないんですね。外見から見たら全然わからない。本人しかわからないというところに、何かぶらぶらして労災をもらっているんじゃないかというような一般的な社会の目があったりして患者自身も大変苦しんでいる。それを、今回のこの労災の打ち切りということによって、この人たちが再発をしたときにはどのような取り扱いになるのですか。
  74. 平賀俊行

    説明員(平賀俊行君) 労災保険一般の問題かと思いますけれども、業務上によって疾病にかかり、それが仮に治癒したという後に同じ業務上の要因によるその病気が再発した場合は、再発として労災保険の給付の対象としております。
  75. 菅野久光

    ○菅野久光君 主治医の所見書ですか、それらを見て一たん打ち切って、そしてまた再発するというようなときに、再発したからといって簡単に労災の適用ということが実際面として可能ですか、それをお伺いいたしたいと思います。
  76. 平賀俊行

    説明員(平賀俊行君) 労災保険の建前から言いますと、業務上の疾病であり、それが一回治癒したと認定を受けて、その後さらに一つの病状が出てきて、それが業務上の疾病に起因するものであることが明らかであれば当然労災保険の対象となります。
  77. 菅野久光

    ○菅野久光君 それじゃお聞きしますが、労災を打ち切って再発してさらに労災の再保険を受けるというような例が今まで何件ぐらいあったでしょうか。
  78. 平賀俊行

    説明員(平賀俊行君) そういうケースについて、例えば調査統計等で把握しておりませんので件数はわかりません。
  79. 菅野久光

    ○菅野久光君 実際には、今そういうお答えになりましたけれども、再発したときに再び労災ということは、これは現場の医師の方々あるいは実際に事務を担当している方々のお話を聞いてもそれはそう簡単なことではない、そういう話を聞いております。二年ないし四年で症状固定というその考え方自体についても、これは多くの問題が出されていることは御承知のとおりであります。そうなりますと、これは切られて、そしてその後症状固定ということで、再発してもすぐ労災の認定がなされるかどうかというのは、そこでまた時間が置かれる。そうするとその人は国保は使えないわけですね、自費で医療を受けなければならぬ。そうなると、国民皆保険というそういう立場からいくとこれは保険の谷間になるわけですね。そういうことが起こり得るわけですよ。そういうことについては労働省としてはどうお考えですか。
  80. 平賀俊行

    説明員(平賀俊行君) 振動病についてその治療あるいはその症状の態様その他に関しまして、五年間にわたって専門家の方々が慎重な検討を行った結果、その態様、そして十分治療をしてその治療の効果が及ぶ限度といいますか、それを四年程度と、一番最近の治験としてそれを発表した、それが治療指針でございます。その後につきまして、それはその患者さんたちの医療等については、通常国民皆保険の立場から国民健康保険等でその医療について対応するというふうに承知をしておりますが、なお個別のケースに応じて、同じ病気といいますか、同じ振動病がさらに再発したというケースについては先ほどお答え申し上げましたとおり労災保険で対応することになろうかと存じます。
  81. 菅野久光

    ○菅野久光君 これは最新の医学的な治験、それから専門会議報告と、こうありますが、その専門会議それ自体についても実は振動病の治療に当たっている医師の間から大変な問題が出されているわけですね。本当の意味の専門家が、あるいは打ち切るための専門家なのかですね。どっちなのかといった声さえもあるわけであります。しかし、いずれにしても医療の保険の谷間をつくっちゃいけないわけですね。じゃ、今の局長のお話のように、再発したらすぐそれは労災の適用になるんだと、建前はそうなっている、建前じゃだめなんですよ。じゃ、再発したらすぐ直ちに労災保険の適用ということで、谷間をつくらないということは局長約束できますか。
  82. 平賀俊行

    説明員(平賀俊行君) 振動病であれ、いかなる業務上の疾病であれ、それが一たん治癒という認定を受けて、その後再発されたということが、再発といいますか、同じ業務上の障害、業務上の疾病による病気が、症状が再発したということが確実になりましたらば労災保険の給付をいたします。
  83. 菅野久光

    ○菅野久光君 非常に今度の振動病に対する治療指針の問題については、調査が国公有林労働者が四八%、民間労働者が五二%なんですね。そういう中で治療指針の問題が出されてきている。非常に問題の多いものだというふうに思います。今の局長答弁のように、再発したらそういう谷間をつくらないように労災保険の趣旨に基づいてやるというんですから、この点についてはいささかも遅滞のないように、これはそうなった場合にはやってもらわなければならないというふうに思いますし、しかし、今局長がそのように言われても、実際現地の方ではいろいろなことがなされているようでありますから、そのときには医療の保険の谷間ができてくる可能性がある。そういったときにはまた厚生省とのかかわりも含めたこれは問題に、重要な問題に私はなってくるというふうに思いますので、これはとても今の短い時間の中でちょっと対応するわけにいきませんので、次回の機会にこの問題についてじっくりとひとつ質問のやりとりをしてこの治療指針をいわば撤回をしてもらいたい。そして振動障害にかかわる保険給付の適正化の通達も、これも撤回してもらいたいというふうに思いますので、それはまた改めて時間が参りましたのでやることにいたしたいというふうに思います。
  84. 山本正和

    ○山本正和君 先ほど同僚委員からお話がございまして、決算委員会における各省庁、また各大臣の決算委員会に対する御答弁の問題につきまして強く要請を申し上げました。私は、やっぱり予算委員会同様決算委員会というものの役割は極めて重大である、また国政の基本にかかわる問題が議論される場であるというふうに思っております。そういう意味で、本日は大変各大臣お忙しい中を御出席しておられるのを見まして久しぶりに何となく決算委員会のような気がいたします。まず感謝を申し上げておきます。  実は、六十年度の決算につきまして大蔵省から出されました六十年度決算の説明というのを、全部は読んでおりませんが、拝見さしていただきました。その中で私はこういうことを感じたわけであります。というのは、中曽根総理になられてからのさまざまな施策の中で、確かに国民から高く評価された部分も幾つかあったわけでありますけれども、同時に国民の中にあったいろいろな不満というものがこの六十年度決算の中に出てきているようにも思うわけであります。それは何かといいますと、なるほど日本の国のぜい肉を削ろうとか、あるいは国際社会の中で生き残れる力をつくろうとかいうふうなことは随分おやりになったと思うわけです。しかし一人一人の国民にとってこの五年間は温かい政治が行われておったんだろうかということについての、かなりのみんながこれでいいんだろうかというふうな気持ちがあったことは事実でございますし、また、政府・与党の中からもさまざまにそういう問題についての論議がされたことも私ども聞くわけであります。  私は特にここで申し上げておきたいのは、日本の国民として本当にこの国に住んでよかったと、こういうふうに思うような施策というものがこれからどういうふうに講ぜられていくべきか。まさに中曽根内閣の五年間のその経験をもとにこれから国民が、私たちは日本の国に住んでいてよかった、日本の国民であってよかったというふうな方向にもっていかなきゃいけない時代だろうというふうに思うのでございます。そういう意味で新前川レポートにも触れておりますし、また宮澤大蔵大臣がかつて御提起されたことでございますけれども、国民資産倍増論と、国民にもっとより豊かな生活をというふうなお話もございます。そういう意味で、これからの我が国の財政というものがそういう部分に対してかなり思い切った、まさに発想の転換に基づいた施策というものが講ぜられていくべきだろうというふうに私は思います。我が社会党も二十一世紀へ向けての目標の中に、そういう問題も幾つか初めて検討し提言もするようになってまいっております。まさに国民的合意が国民生活の向上というところに今日が向きつつあるというふうに私は思うのでございます。そういう意味できょうその問題についての本当は各大臣の御所見等も伺いたいんでございますけれども、これはまたの機会に、今までもいろいろと御発言がございますから、そういうことから私どもなりに類推いたしまして、今の新しく出ている、恐らく戦後の日本の各歴代の内閣の中で極めて新しい発想というふうに私はとっているわけでありますけれども、その問題につきまして約一時間にわたりましていろいろと関係省庁の御所見なりあるいは現在の状況について御質問したいと、こう思うわけであります。  それはこの前の国会で成立いたしました総合保養地域整備法の問題でございます。要するに今までの我が国の国民感情といいましょうか、特に一生懸命働いて活発に企業活動が行われて成功された方々、あるいは私どものように六十歳以上の日本人の根性の中にあるのは、働くことはこれはいいことだと、働かなければだめだと、そして刻苦勉励して一生懸命に頑張って頑張って、そして老後、その長い人生に対して御苦労さんと、こういうふうな生涯というものが大体私どもの頭の中にあったわけでありますけれども、実は二十一世紀の展望ということをいたしますと、そういう時代じゃないと、人間がそういうふうにして働いていく人生でいいのかということが、これは我が国ばかりじゃございません。資本主義も社会主義も超えて、人間の生き方として議論がされているように思うわけでございます。したがって、そういう中で人間の生活の中におけるその生活の中の楽しみといいましょうか、要するにみずからの体を休める、あるいはみずからの精神にくつろぎを与える、そのことが生活の中における非常に重要なファクターである、こういうふうに私も思うわけであります。そういう意味から言いまして、この総合保養地域整備法というものを出されたその背景は、まさに今の世紀末から新しい世紀を迎える中での国民のいろいろな期待のあらわれというふうに言ってもいいんじゃないかと私は思うわけであります。ところが、この整備法の段階でも少々御意見を申し上げましたけれども、どうも政府全体として本気になってこれをやるんですよと、こういうふうな御決意の表明がなかなかないように思うわけであります。と申しますのは、例えば総理の施政方針演説とか、あるいは関係各省庁、責任主務大臣が五人の大臣でございますか、そういう方での協議の中で、国民に対してこういうことをやりますよという強くアピールされるようなことが国民の目の前にはなかなかわかりにくいというような感じがいたします。そしてそういうものの背景に我が国の国民の生活の基本にあるさまざまな物の考え方、もっと言いますと、これは文部大臣がお見えでございますけれども、長い間の学校教育の中で培ってきた人生論といいましょうか人生観といいましょうか、そういうふうなものも含めてみんなで考えなくてはいけない。こういうことも合わせた形でのやっぱり関係五省庁で、一体この地域整備法というのは何を意味するんだ、今までの歴代の内閣で初めてこの問題を出したんだ、こういう意味についての本当に緊密な御論議というものがなければ、これは場合によっては絵にかいたもちになるんじゃないか、こういう心配をしておるところでございます。  そういう意味でひとつ関係省庁、主務大臣五人でございますけれども、それ以外に各省庁に全部わたる内容がございますから、今後ともぜひともそういう意味でのさまざまな細かい部分にわたっての御検討をまず御要望しておきたいわけでございます。  ひとつ最初に、そういう問題を含めまして、大臣御出席でございますから、それぞれの各大臣から、そういう国民生活とこの保養地域構想というものにつきまして各省庁で随分議論がございました。例えば、きょうは建設大臣はお見えでございませんが、建設省はもう既に昨年随分ヨーロッパやアメリカにも調査に行かれている。各省庁ともそういうことをやっておみえでございます。それぞれの省庁でいろいろな案をお出しになって、それが現在国土庁でもって総合的に調整をされているという段階でございます。しかしその中で、それぞれの関係省庁の中で、少なくともこういうことはぜひともこの構想の中に生かすべきだ、こういうふうな特色があったやに私は思っているわけでございますが、そういう意味で各省庁のひとつこの整備法に関する御所見をまずお伺いしておきたいと思います。
  85. 近藤鉄雄

    ○国務大臣(近藤鉄雄君) 先生まさに御指摘のように、私ども当面の消費生活は国際的にも相当の水準まで参りましたが、ストックの面、住宅や社会資本の整備や特に先生御指摘の国民のレジャー、スポーツ、文化的な活動、こういった面についての整備がまだ十分ではない、こういう認識を先生と同じくするものでございまして、私ども考えておりますこれからの経済政策の最大の課題の一つは、そうした方面に日本の経済の持っている力をどういうふうにまとめて集中してそうした体制の整備を図るか、こういうことであると考えておりまして、まさに一昨年のG5以来の日本の経済の運営の中におきましても、内需拡大によって景気の回復を図るという考え方の一つも、まさにそうした日本の国民の生産力を国内に向けることによって国民生活を充実する、それが内需の拡大の道だ一こういうことで関係各省といろいろ内需拡大の面につきましてもそうした保養、スポーツ、レクリエーション、そういった施設についてもそれぞれ各役所のいろんな施策がございますから、それを統一して実行をしていただく、こういうことでお話を進めてまいっている、こういうことでございます。
  86. 平井卓志

    ○国務大臣(平井卓志君) 労働省関連につきましては、もう御案内のように、従来から勤労者に研修及び保養等のための施設を提供いたしまして、雇用の促進と職業の安定に資することを目的といたしまして、雇用促進事業団を通じて中小企業レクリエーションセンター、これは六十二カ所設置しておるわけでございますが、今おっしゃいますところで申し上げますと、雇用促進事業団が設置しておりますハイツ等の施設と申しますのは、言うまでもなく福祉の増進、勤労意欲の高揚というところで雇用保険制度の雇用福祉事業として行っておるわけでございます。ただ、今後リゾート法の指定地域内に含まれる場合等の問題もございまして、そういう意味ではハイツ等の設置目的に照らしまして、リゾート法の趣旨も踏まえまして必要な連携を十分に図っていかなければいかぬというふうに考えております。  さらに今後建設されます施設につきましては、地元等時に関係者の要望も十分に踏まえて個別にその必要性について検討を図り、そして充実をしてまいりたいというふうに考えております。
  87. 斎藤十朗

    ○国務大臣(斎藤十朗君) 先生が御指摘のように、勤労者の皆さんが余暇をエンジョイし、またリフレッシュし、次への飛躍を図る、そしてまたお年を召した場合には老後の生活を一層豊かにする、また若いうちからも老後に備えて健康に気をつけて日々の生活を行う、こういうことは非常にこれからの長寿社会へ向かって重要なことであるというふうに考えております。  厚生省といたしましてもそういった観点を重視して、さまざまの施策を推進をいたしてまいっておるところでございますが、今先生が御指摘のことに非常にマッチすることとして例を挙げさせていただきますならば、厚生年金等の積立金を利用いたしまして、当然安全かつ有利でなければいかぬわけでございまするけれども、その中に福利的な観点からのいろいろな保養施設等をつくっております。例えば大規模年金保養基地とか、また厚生年金休暇センターというようなものを初めといたしまして、健康増進につながるような施設等さまざまなものを設置いたしております。  一番大型のものを申し上げさせていただきますと、大規模年金保養基地につきましては、全国に十三カ所設置することといたしまして既に十カ所オープンいたしており、残りの三カ所につきましても六十二年度中に整備が完了するということとなっております。ここにおきます利用状況につきましては、六十一年度この十カ所で一年間に百九十七万人、また昭和五十五年から六十一年までの累計で申しますと約六百万人の方々と、大変多数利用していただいておる、こういう状況でございます。
  88. 塩川正十郎

    ○国務大臣(塩川正十郎君) 文部省でございますが、文部省はこの主務大臣ではございません。この主務大臣に指定するかどうかということで相当議論がございましたが、文部省といたしましては国立青年の家とかあるいは少年自然の家というものを管理しておりまして、学校教育との関係におきましてはこれで一応整備がついております。したがいまして、今回の総合保養センターの設置というものは専ら社会人を対象にしたものでございまして、その意味におきましてこの事業の推進に助言しあるいは援助するという、そういう面で協力するということにいたしたものでございます。  現在私たちが見ております国立青年の家あるいは少年自然の家のこの利用につきまして、さらに一層利用価値を高めるように、そして学校教育の中にそういう自然との行動の中に体験をさせていくということ、これが大事だと思っております。これが社会人となって活用されるようにその下地を学校教育の中につくっていきたい、こういうふうに私たちは思っておりまして、したがいまして総合保養センターと先ほど申しました青年の家なりあるいは少年の家というものとの相互関連を一層強くしていかなきゃならぬ、こういう考えでおります。
  89. 吉田耕三

    説明員(吉田耕三君) 運輸省でございます。  運輸省といたしましては、従来この種のものといたしましては公営のユースホステルというものを整備してまいりました。青少年を対象といたしまして、低廉な料金、それから規律正しい宿泊というような観点からかなり利用されておったわけでございますけれども、最近では若干、いろいろ青少年の意識の変化とか、いろいろな原因によりまして減少傾向にはございます。しかし、今後とも青少年旅行者のニーズに合ったような管理運営をしていくように、地方公共団体を指導してまいりたいと思っております。
  90. 牧野徹

    説明員(牧野徹君) 私どもといたしましても、基本的には国民各層の方の多様なニーズにこたえて、一言で言うならば人生八十年時代にふさわしいゆとりある国民生活を実現することが必要だろうと。また一方、経済面で見ましても、経済のソフト化等に対応して経済構造を変化させる点で、第三次産業を中心とした新しい地域振興政策を展開する必要があると考えております。  そうした意味で、先生今御質問のような総合保養地域整備法というものを成立させていただいたわけですが、その中にあって、建設省といたしましては、やはり基本的な命題の一つに、国土の均衡ある発展を図る、そのために住宅、社会資本整備を進めるということがあるわけでございますが、今後、建設行政を展開する中の重要な柱の一つとして、このような問題を積極的に取り上げていきたいと考えておる次第でございます。
  91. 山本正和

    ○山本正和君 あらかじめ労働大臣、厚生大臣、お忙しい中の御日程を聞いておりますから、今の大臣の御所見で、あと局長の皆さんがお見えでございましょうから、そこで細かい問題についてはお尋ねいたしますから。  ただ厚生大臣、特に御退席前にお願いしておきたいんですけれども、いわゆる生活保護世帯ですね。こういう人たちが大変肩身の狭い思いで暮らしている。生活保護世帯の人が例えばテレビを買ったといったらあいつ何だとか、あるいはちょっと中古車を買ったといったら一体何だとか、さらにまた子供を連れてどこか旅行へ行くといったら白い目で見られるというふうな問題等がございます。ですから、たとえ生活保護世帯であろうとも、いわゆる健康で文化的な最低限の生活を営む権利が日本国民には付与されているんだ、こういう意味で生活保護者に対する思いやり行政といいましょうか、そういうことを各自治体とも連絡をしていただきまして、温かい配慮をお願いしておきたいと思います。  どうも両大臣、本当にお忙しい中、ありがとうございました。  実は今いろいろと各省庁からのお考えをお聞きしたんでございますけれども、今まで既に我が国が国民生活に対して休養といいますか、ゆとりを与える、あるいは労働の再生産性をもっと効果的にあらしめるということでのさまざまな施策が今までされておるわけでございます。しかし、それが大変各省庁ごとにばらばらに行われているような感じがいたしますし、また自治体も自治体としていろいろやっておる。さらには企業も、これはかなり小さな企業に至るまで、労働者の福祉といいましょうか、生活のゆとりというふうなものについてのさまざまな構想等も出しておるというふうに、数字は次から次に出てくるわけであります。ところが一向にこれが国民全体の財産として、なるほどここに行けばこういうものが利用できるんだなというようなことになってない。例えば恐らく保養地へ参りますと、何か立派な施設がある。ところが、片一方はもう満員でどうにもならないぎゅうぎゅう詰めなのに、片一方は丸々がらあきである。こういう状況は、例えば私どもは三重県でございますから、三重県の賢島というところに行きますと、大変多くの会社の寮やあるいは各省庁、自治体等の寮もございます。ところが、そこはあいているのに、国民宿舎は満員で入れないというふうな問題等もあります。何とかそういうことも含めてみんなで考えられぬだろうかというふうなことがあるわけでありますけれども、ただ現実問題として各省庁でお持ちのそういう施設、これの利用状況あるいは現況、さらには収支の問題等につきまして、ひとつまず数字の上でのデータの報告をお願いしたいと思います。  最初に、やっぱり国民休暇村等から、環境庁お見えでございましょうか、その辺からひとつお願いいたします。
  92. 古賀章介

    説明員(古賀章介君) お答えいたします。  国民休暇村の現状でございますけれども、設置数は全国で三十カ所、設置主体は、御案内のとおり財団法人国民休暇村協会でございます。六十一年度の宿泊利用者数は百十五万人。日帰り利用者数は二百九十四万人でございます。合わせまして年間約四百万人が利用しております。  収支状況につきましてはおおむね健全な経営を維持しております。  それから国民宿舎でございますけれども、国民宿舎は設置主体が地方公共団体でございますが、設置数は全国で三百十四カ所。利用状況は、これも六十一年度の数字でございますけれども、宿泊利用者数が四百三万人。休憩利用者数が四百六十万人。合わせまして年間約八百六十万人の利用があるということでございます。  収支状況につきましては黒字のところと赤字のところが約半々、黒字のところがやや多いというような状況でございます。
  93. 山本正和

    ○山本正和君 運輸省。ユースホステル。
  94. 吉田耕三

    説明員(吉田耕三君) 運輸省整備しておりました公営ユースホステルの宿泊者の推移でございますが、ピーク時が昭和四十六年でございまして、このころは利用者数が七十九万人あったわけでございますが、最近、六十年度では三十四万七千人と、徐々に減少傾向にあります。これは先ほどちょっと申し上げましたが、青少年の意識の変化とか、あるいは経済力の向上とか、ペンションというような類似の施設がほかにもできてきているというようなこともありまして、徐々に減ってきておりますが、今後とも適切に管理運営していきたいと考えております。  そのほかに運輸省としてやっておりますレクリエーション施設といたしまして、キャンプ場などが主体となっておるような青少年旅行村とか、あるいは家族旅行村というような観光レクリエーション地区を整備しております。これらにつきましては、利用者は大体横ばいというような感じで推移しております。
  95. 山本正和

    ○山本正和君 文部省の青年の家、少年自然の家の利用状況について。
  96. 澤田道也

    説明員澤田道也君) 青年の家の方でございますが、これは六十年度決算でございますが、六十一年度の実績で申しますと十三施設、平均が六一・九%。もちろん地理的条件によって率直に申し上げて高低がございます。  それから少年自然の家、これが十四の計画のうち既に九、開設しておりますが、これが平均が六三・八%。これも地域によってどうしても便利なところ、不便なところがございまして、高低がございます。  なお、これはベッド利用といいますか、宿泊による利用率の計算でございます。
  97. 山本正和

    ○山本正和君 実は公園の問題がよく議論されますが、児童公園というのが種類が随分ありまして、児童福祉法で児童遊園というものがある。それから、都市公園法で小規模児童公園、児童公園というふうなものがある。こういうふうに何か知らないけれども、子供から見ると公園なんですけれども、役所の性格からいくと、全然また違ったような格好でこれがいろいろと配置されております。そしてまた、私ども国立公園というと大変広域であって、そして特に景勝がすばらしいあるいは自然が大変恵まれた状況にあると思っておるわけでありますが、そうすると、国立公園があるほかに国定公園がある、また都道府県が所管する公園がある、しかもこれが環境庁あるいは建設省さらに場合によっては農水省、さまざまにまたがっておりまして大変わかりにくいといいましょうか、感じがいたします。  本当からいいますと、こういうものは全部一括して、国民が本当に自慢にできる自然、あるいは国民が本当に安心してそこへ遊びに行けるといいましょうか、そういうふうなことからいきましたら、こういう公園法あるいは公園に絡むさまざまな法律の問題についての整備検討等もぜひお願いしていきたいというふうに思っております。これは、関係主務五庁の中でのこれからの総合保養地域の議論をされるときにも、必ずこの問題と絡んでくるだろう、恐らく国立公園や国定公園のあるところが保養地域として使用されるケースが大変多くなるんじゃないかというようなことも思うわけでございます。  そういう意味で、今、各省庁から御報告がございましたそれぞれの施設の置かれているところも、実はこういうところに割合に配置されております。そうしますと、総合保養地域整備法をこれから実際に、何かまだ基本方針ができてないようでありますけれども、基本方針を策定されていろいろ進められるときには、こういう全般的な調整ということもぜひお願いをしておきたい。そして、地方自治体等がこの地域整備法に対する関心が大変高うございまして、何か聞くところによりますと、もう大変な数の地域指定の申請の動きがあるというようなことも聞いておりますが、そういうところも、実はそういう関連法案とのかかわりがなかなかわかりにくいというような問題がございますので、これはひとつ主務五大臣の中で十分に御議論をしておいていただきたいというふうに思います。  そこで、実はちょっと総理府の方にお尋ねしておきたいんですけれども、国民のレジャーに関する意識調査をおやりでございます。そして、私どもが私どもなりにいろいろな新聞社その他のデータ等も含めてずっと見てまいりますと、国民の余暇に対する考え方も変わってきつつあるというふうに思います。その辺で、総理府の方で毎年お出しになっている調査の中から、国民の意識が変わってきている等のデータが出ているかと思うんでありますけれども、その辺でひとつ総理府から御報告を願いたいと思うんです。
  98. 坂東眞理子

    説明員坂東眞理子君) 今先生から御指摘いただいた調査は、「余暇と旅行」と申す世論調査で昨年の一月に行いましたが、国民は「仕事も余暇も両方大切で、生活のなかで両者を区別してそれぞれを充実させることが望ましい」という者が三八・五、それから、「仕事も余暇も両方大切で、生活のなかで両者を区別せず一致させた生活を送るのが望ましい」というのを合わせて五二%おりまして、仕事が大切であり、余暇はそのための休養や気分転換であると申している者は三二・五%でございます。
  99. 山本正和

    ○山本正和君 年次ごとのいろいろな違いがあるんですけれども、これは結構ですから。  大分余暇に対する考え方が変わってきているというのは総理府の調査にも出ておりまして、そして特にここで私が総理府調査を見まして注目したのは、二十歳代、六十歳代の余暇という問題と、三十歳代、四十歳代、五十歳代という働き盛りの大変な開きが出てきている。そして、実は余暇というものをどういうふうに受けとめていったらいいかということについて考える余裕もない忙しい時代と、ちょっとゆとりを持って考えられる時代と、あるいはまだ世の中へ出たばかりですから自分の人生を楽しみたいというふうなことも含めて考える時代、いろいろ違いがあると思うんです。一般的に、日本人はとにかく三十代、四十代、五十代というのはもうまさに働きバチで一生懸命働いて働いて働き抜いて、奥さんもアルバイトしてとにかく収入をふやしてというふうな傾向がございます。  そういうことが大変私も心配でならないんですけれども、そこで文部省にお伺いしたいんですけれども昭和二十三年に新制の教育制度に切り変わりました。いわゆる六三三四制の発足でございます。昭和二十二年発足です。その当時、中学校と高等学校には大変余暇問題をつかまえて議論があったわけです。学校の教育課程の中にホームルームという時間を一週間のうちに一時間必ず設けなさい、これはそのクラスの子供たちが何をしてもいい、自由に議論をしなさい、あるいは哲学の問題でも宗教の問題でも文学の問題でも議論しなさい。ホームルームとしてみんなで何をやったらいいかということを議論しなさいという時間が一時間。それからクラブ活動の時間が一時間。これは自分たちがそれぞれクラブに所属していますけれども、所属している者がホームルーム全体としてクラブ活動に参加もするし計画もするというようなことをやる時間が一時間ある。そしてブックの時間、図書の時間ですよ。図書室へ行ってとにかく一時間だけは自分たちが毎日読んでいるいろいろな本についての整理もしなさい、こういうことをやる一時間。そこにもう一つRという時間がありますね、レクリエーション、一時間。要するに、一週間のうち四時間そういうものを新制高等学校あるいは新制中学校の中で設置をしていこうということで進められたわけです。ところが、いつの間にやらこれが、だんだん受験競争の激化に伴いまして、もう事実上あっても英語の時間にするとか数学の特別授業をするとかいうふうに切り変わってしまった。  ですから、私はこの余暇という言葉も、本当は日本語で余暇という概念と外国での概念とは違うように思うんですね。ヨーロッパやアメリカで言う働く時間以外の自分たちの生活の時間、自分たち自身の楽しい人生を送るための時間と、こういう意味を日本人は余暇という言葉にしているんです。まるで余って要らぬ暇なんだ、暇の多いやつは暇人でこれは怠け者だ、こういうふうな発想がある。しかし、実は生活にとって一番大事な部分というふうに欧米では位置づけしている。  さらに、これからどんどん科学技術が進歩してきまして、世の中がまさに超電導で大変なショックが起こるというふうに言われていますけれども、そうなってきますと余計、人間が生きるということの意味を考えなくちゃいけない時代になってくる。そうなりますと、大変これは重要な問題だろうと思うんです。それは学校教育の中でこういう問題も指導していかなければいけない役割があるんじゃないかというふうに思うのでございますが、この辺につきまして文部省のお考え方をちょっと伺っておきたいと思います。
  100. 西崎清久

    説明員(西崎清久君) 先生御指摘のとおり、学校教育におきましては、心身ともに健全な児童生徒の育成、こういうことが基本でございます。  現在の学校教育の仕組みを申し上げますと、もう先生十分御承知のとおりでございますが、小中学校におきましては特別活動の領域の中で学級会活動、クラブ活動、学校行事と、こういうふうに分かれておるわけでございます。私どもの学習指導要領の指導におきましては、特に指導書等での内容として、学級会活動の内容でございますが、レクリエーションのための活動を初めとして、生活経験の拡充と進化を図る幅広い活動が考えられなければならないと、こういうふうな指導をしておるわけでございます。したがいまして、先生ちょっとお触れになりましたように、個々の地域、個々の学校でいろいろな工夫があって戦後いろいろな実情があるわけでございますが、主としては、学級会活動、高等学校ではホームルームでございますが、その内容として。それから学校行事の内容としていろいろなレクリエーション的な活動が実施されておる、こういうふうな現状でございます。  御指摘のように、受験教育等でそれらの時間が少なくなっているのではないかというふうなところも若干は見られるかもしれませんが、私ども指導といたしましては、やはりゆとりの時間というふうなものも設けまして、その時間の中で、レクリエーション的な活動も十分行えるようにというふうな指導を現在もやっておるというのが実情でございます。
  101. 山本正和

    ○山本正和君 臨教審でいろいろな報告がございましたり、またかつて中教審でいろいろ教育全般についての御議論がございました。そういう中で、まさに人間形成の中の重要な部分として余暇活動といいましょうか、あるいは生活そのものを見詰めるといいましょうか、そういう部分をいろいろ議論もされておるようでございますけれども、なかなか実際学校運営の場ではできないという難しさがございます。これにつきましては特に今後の教育改革等の論議の中でも、文部省の中で特に今重点を置いて御議論いただきますようにこれは要請をしておきたいと思います。  それから、建設省にちょっとお伺いしたいんですが、去年の十二月の十一日に、建設省の、当時調整官の瀬野さんがある新聞に「期待高まる複合リゾート」という形でリゾート問題についてのリポート的なものをお出してございます。私これを読みまして、何といいますか、なるほどよく勉強されているものだなとつくづく感心したんですけれども、そこで言っておりますことに、将来構想には公的関与が必要であると、要するにリゾートというものを考えていく上にはいろいろな意味での計画性をきちっと持っていかなければ逆に大変な混乱が起こるぞと、こういうふうな御指摘だろうと思う、全く同感でございます。そして、恐らく関係各省庁とも随分視察等も出ておられるようでございますし、また通産省も何かけさの新聞ですか、リゾート問題での海外調査をするというふうなことが載っております。そういう中で、建設省が当初考えておられた複合リゾートという構想ですね、これと今度の保養地域整備法との間にちょっとニュアンスが違うように思うんでございますけれども、その辺についての建設省のお考えをちょっと伺いたいんですけれども
  102. 牧野徹

    説明員(牧野徹君) まず結論から申し上げまして、ニュアンスといいますか、その点はなるほど最初に出しました、先生おっしゃったように複合リゾート構想というときは私どもの役所だけでできることで考えておりますから、やや例えば公共施設整備の面が強く出たような印象を与えたかもしれませんが、少なくとも私ども六省庁で寄り寄り協議をし、国土庁でお取りまとめになった法案、現在においては私どもの複合リゾート構想の骨子の部分も生かされておるし、今は一体となって施策を推進するというふうに理解をしております。
  103. 山本正和

    ○山本正和君 実は、総合保養地域整備法という法案がこの前通ったわけですが、そこにある中でちょっと逃げていると私は思うんですわ。今の建設省の御答弁を私は法的規制をしたらいかぬということを言うんじゃないんです。要するに、政府が責任を持って指導し、国民のニーズにこたえ得るものを、将来構想を政府としてきちんと持つべきだと。ところが、その部分がどうも地域整備法を見ますと逃げているような気がしないでもないわけです。そのことを私は申し上げているんでありまして、ぜひ本当に関係各省庁で海外にも負けない、そして二十一世紀に生きていく若者たちが、ああ昔の人はこんな立派なものをちゃんとしてくれたかというふうなものにしていただきたいと、そういう意味でむしろ公的な立場でのあれをぜひお願いしたいというふうに思うわけであります。  これは現在、所管といいましょうか、調整官庁が国土庁でございますから、国土庁の方にちょっとお伺いしたいんですけれども、これは総合保養地域整備法で定義がされております。「「特定施設」とは、」、あるいは「「特定民間施設」とは、」というふうに定義がされておるんですけれども、この定義の中に「休養施設」というのがありまして、展望施設、クアパーク等というふうな表現があります。ところが、私が思うのに、これはヨーロッパでもアメリカでもどうもそういうふうなところがあるようでございますが、例えばカリフォルニアのある州で何万坪ですかね、何百万坪というスケールの大変な保養地があります。そこで老人ホームがあるんです、一戸建ての。これはコンピューターで集中管理しているんです。その老人ホームに住んでいる人たちが釣りにも行ける、ゴルフ場もある、さらには絵画、芸術の制作、自分たちの趣味生活もやる。一つのまるでコミュニティーみたいになっているわけです。そこへ入ることをもって逆に名誉と考えている。そこにかなりの年配の方が、七十歳ぐらいの会社の会長あたりが住んでおられる。そういうところに、実はまたあわせて勤労階級でとにかく財産がそんなにないという人たちがあわせて住んで、しかし、同時にその方々も生活にゆとりを持って十分にやっていけるようなものもある。  大変私も写真等を見ましてびっくりしたんでありますが、恐らくこれは関係省庁御承知のことだと思います。この総合保養地域がもし理想的なものができるとしたら、そこは、何かスペインやオーストラリアに日本人は老人を捨てに行くのかというふうな批判を受けているようでありますけれども、我が国の中の総合保養地域がもしできたら、老後をゆとりを持ってそこに行ける、あるいはいつも子供たちと一緒に住んでおっても、一年のうち半年ぐらいそっちで住んでおこうかというようなものも持てるぐらいの構想を持ったものが、この総合保養地域には必要じゃないかというように思うんでありますけれども、国土庁の方でまとめられまして出された定義の中に、そういう部分、これが触れておらないんですけれども、当然入るだろうと思うんですが、この辺ちょっと御見解を伺いたいと思うんですが。
  104. 澤田秀男

    説明員澤田秀男君) 法律で休養施設というのを特定施設の一種類のものとして掲げておりますが、これは総合保養地域における憩いとか良好な自然環境や温泉等を活用したヘルスケア等のための施設でございまして、具体的には休憩施設とか展望施設、森林浴施設とか、温泉を利用した保養施設等を内容としているものでございます。  私どもが考えておりますリゾートは、今御指摘のありました休養施設も含む多様な複合的な機能が備わっている地域というふうに考えておりまして、具体的にそれぞれのリゾートの内容としてどういう施設を持ったリゾートにするか、どういう機能を備えるかということについては、地域の主体性、自主性に応じて決めていただくと言うべき内容のものでございますが、私ども若干聞いておりますリゾート構想の中には、そういういわばシルバーに属する人々を対象とした施設を集合的に立地させて、医療施設等のタイアップのもとに老後の生活を安心にかつゆとりを持って生活できるような機能を備えた構想も考えている地域もあるようでございまして、したがって私どもとしては今先生のお挙げになったような例も数多くの、いずれ長期的にはリゾートの中にそういう地域が出現するであろうということを期待しているところでございます。
  105. 山本正和

    ○山本正和君 大変まとめ役の役所というところは御苦労が多いかと思うんですが、私は各省庁がお出しになった当初の構想をずっと拝見いたしまして、それぞれ大変すばらしい構想、発想もお持ちでございます。それを何とか生かしていただきたいと思いますし、それから最近老人ホームといいますと、汚い、何が食べ物も決まり切ったようなものを食べさせるというふうな老人ホームじゃなしに、そこの中で生活がもうエンジョイできる、絵をかきたければ絵がかける、園芸をやりたければ園芸ができる、さらには手工芸でいろいろなものもつくっていける、そのことに対する指導もある。要するに年寄りは年寄りなりに体を動かして働いていきたい、あるいは芸術なら芸術の雰囲気を味わいたいというような気持ちもあるんですね。そういうものも保障するようなものをこれからは老人対策として考えていくべきだろうと思うんですけれども、といたしますと、いやでも応でも、この保養地域の中に老人問題は、今のシルバー問題はぜひ入れていただきたいと思いますし、それからあわせてこれは文部省が随分今お取り組みになって、大変参加した子供たちは喜んでいるんですけれども、野外活動ですね、子供たちの、そういうところの保養地域に安心して行けるよと、こういうふうなことも含めてあるわけでありますから、ぜひひとつこの調整役の国土庁としてはいろいろな意味での、広げた角度でのこういう問題に対するお取り組みをお願いしておきたいと、こう思います。  それから次に、大蔵省に御質問を申し上げることになるわけでありますが、というのは、我が国の産業構造、ずっと変わってきまして、それを見るのに税金を見るとよくわかると、こう言われるわけです。それから税収の伸び、どの分野からの税金がどんどん伸びているかというのを見ますと、その国の産業構造がわかってくるわけでありますが、いわゆる第三次産業の中でのサービス産業、レジャー産業、こういう部分の動きについて税金の分野から見た場合にどういうふうになるか、この辺ちょっと大蔵省から御説明いただきたいと思います。
  106. 日向隆

    説明員(日向隆君) サービス産業のうちレジャー産業についての統計は私どもとっておりませんのでサービス産業全体の計数で申し上げますと、統計上一番新しい六十年分の法人税の納税額は十一兆五百六十二億円でございます。このうちサービス産業は五千九百六十三億円で五・四%を占めております。ほぼ同様の業種に従事する個人事業については納税額についての統計がございませんため、そのかわりに六十年分について申告所得金額で申し上げますと、個人事業所得、これは農業を除きますけれども合計で八兆二百八十六億円でございまして、サービス業は五千六十六億円で、構成比は六・四%を占めております。
  107. 山本正和

    ○山本正和君 実は大蔵大臣には御質問申し上げる予定でなかったんでありますが、このリゾートに対するさまざまな税制上の措置をこの法案の中にはお考えでございます。また、場合によっては資金の確保につきましても、政府系金融機関による低利資金の融資を行うというようなことが中には構想としてあるわけですね。  特に、しかし、今一番関心を持ちますのはNTTの資金を無利子でもって内需拡大のためにいろいろ使うと、こういうことは大蔵大臣何遍も御答弁でございます。この総合保養地域整備法に基づく事業の推進について、このNTTの無利子の問題はこれは当然入るというふうに私は思っておったんでございますけれども、いかがでございましょうか、その辺は。
  108. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) いわゆるリゾート法の対象事業はこの対象になります。御利用いただけるということにいたしております。
  109. 山本正和

    ○山本正和君 そこで、最後にちょっと細かい話で、これは時間がなくなってきましたので、御答弁をしていただくのが本来でございますが、実は景勝地の中での問題点に、例えば海岸一つをとりますと、すばらしい海岸があると、その海岸を、景勝を守るためにこれはみんなで大切にしなきゃいけない国民の財産であると、これはみんな共通認識に達するんですけれども、ところが、いざその海岸が台風なら台風で荒れたと。さあそれを整備するとなりますと大変難しい問題が出てまいります。これは建設省、農水省、さらには環境庁、その他関係省庁が全部海岸に関係した法令に基づく権限等をお持ちでございます。また責任をお持ちでございます。そういうふうな海岸等の問題について、当然地域整備法に基づく事業を進めてまいりますとまた難しい問題が出てこようかと思うんです。その中で、特に一番私が心配しておりますのは、林野庁等が山林の自然の確保と、さらには海岸の漁業権の問題等がございます。農水省の方でお考えになった中には、国有林をむしろ守るためにリゾートをそういう中につくったらどうだというふうな構想もあったように聞いておるわけであります。  しかし、なかなか今こういうふうな格好で進めてまいりますと、関係各省庁あるいは自治体との調整の問題がありますし、さらにもう一つ大切なことは、第三セクターをつくってやっていこうという構想、それから宿泊施設とかレジャー施設等はかなり民間の活力に任せて、民間でどんどんやっていこうという構想、いろいろございます。それぞれの地域で議論をするときに最大の妨げになるのが、どこの省庁に持っていって議論をしていったらいいのかどうもわからなくなる。あるいはこれでいいと思っておったら、やっぱり民間でありますから法令上の解釈についての間違いが生まれる等が出てくるわけであります。そんなことにつきましてもっといろいろ細かいことをお聞きしたいんですけれども、国土庁の方で一括してそういう問題についてのトラブル引受所といいましょうか、どうぞ御相談にというのは国土庁の方で引き受けていただけるのか、その辺ちょっとお伺いしておきたいんですけれども、本当はもっと細かい話をしたいんですが、時間がありませんから。
  110. 澤田秀男

    説明員澤田秀男君) リゾート整備についての基本構想をつくるのは県でございますから、県は総合行政機関として知事の段階で一時的には調整していただくということを期待しておりますが、中央省庁レベルにおいては関係主務六省庁で局長クラスの総合保養地域整備推進連絡会議というのを持っております。またその下に課長クラスの会議も持って頻繁に会議を開いて、現在、例えば基本構想の策定等の作業に鋭意取りかかっているわけでございますが、そういうような連絡調整の場を通じて関係省庁間の調整を図っていきたいというふうに考えております。
  111. 山本正和

    ○山本正和君 それでは、もう時間がございませんが、最後にお願いだけ申し上げておきたいと思いますし、また、今後各省庁に対してもこの問題について私なりにいろいろ調べたりなんかしたことにつきまして、ひとつ御指導だとか、あるいはまた私なりの意見を申し上げるという機会があろうかと思います。  ただ、ここで本当に国民が不思議に思って仕方がないことの一つに、特に若い労働者が、勤労者がゴルフをすると一日食べ物を余り食べぬでも関東周辺では二万円は最低覚悟せにゃならぬ。ちょっと御飯食べると三万円になってしまうと。ところが、外国へ旅行してきた若い青年諸君がゴルフしてくると、何と公営であるなら十ドルでやれると、ちょっといいところで二十ドルでいいと、こういうふうな話になってくるわけです。ですから、ゴルフというのはもともと我が国ではハイソサエティー社会の方々がおやりになったと、だから高いのは当たり前だと、こういう意識があるのかもしれませんけれども、もともとスポーツに関連する問題はすべて貴族社会といいましょうか、そういう人たちがやったのが庶民に広がっていって文化の発展があるわけです。ですから、ゴルフは何か高級であるというふうな格好でいろいろ扱われている今のことをそのまま容認するんじゃなしに、本当は国の責任で若い人たちに堂々と国営のゴルフ場があるから来なさいよというぐらいのことを考えていただいてもいいんじゃないかというような気持ちもいたします。ですから、レジャーというものに対する考え方を今国民生活の中で大きく変えていかなきゃいけない、それこそがまさに自分たちの生きがいの中で、そしてまた、この国に住んでよかった、この国を愛していこうという気持ちを生む、本当に自分たちが住んでいてよかったという気持ちにさせる、国が責任を持ってやっていかなきゃいけない部分だろうというふうに思うんです。  またしかし、そうは言いましても、かなりいいものがあってもそこへ行くのに道路が渋滞をしてどうにもならないと。これは建設省の方でいろいろ道路計画をお持ちでございますけれども、ぜひともこの保養地域整備法に絡めて、そういう行き得るような条件づくりを建設省の方では特に御配慮をいただきたい。  冒頭に申し上げましたように、ひとつ政府が一体となって国民生活に一つの展望を与えると、こういう意味でのこの法案の執行をお願いいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  112. 穐山篤

    委員長穐山篤君) 午前の審査はこの程度とし、午後一時二十分まで休憩いたします。    午後零時十九分休憩      ―――――・―――――    午後一時二十二分開会
  113. 穐山篤

    委員長穐山篤君) ただいまから決算委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、昭和六十年度決算外二件を議題とし、全般的質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  114. 大島友治

    ○大島友治君 本日は総括ということで、総論的に大蔵大臣の方にまずお聞きいたしたいと思うのでございますが、昭和六十年度の決算につきましてお伺いいたしたいと思うのであります。  六十年度における政府の経済運営を振り返ってみますときに、最大の問題は何といっても六十年の九月、例のプラザ合意によりましてドルの価格が大幅に引き下げられたということであります。もちろん、これはかねてより貿易摩擦の問題というものの解消の一つの手だてということではあったかと思うのであります。これを契機にどんなふうに経過をたどったかということになりますと、ドルの価格が非常に大幅に引き下げられたということが一つでございまして、またこの際、我が国は急激な円高に見舞われた、しかも、それが非常に余りにも急激でかつ大幅であったということで、我が国の企業というものも、これに対応するためには非常に困難、苦労したということは事実じゃなかろうかと思うのでございます。しかし、そういう中にありましても我が国の企業の非常にすぐれているというような特性もありまして、これが克服のために現在非常に努力をされてきたということは御承知のとおりだと、こう思うのでございます。  しかし、急激な円高であったということにかかわらず、国際収支の不均衡是正というものが、今日見たときに必ずしも順調にいったかどうかということについては、なかなか簡単にいくものではないんじゃないか、こんなふうに考えられるわけでございます。六十二年の三月には、経常収支の黒字幅も一千億ドルになったのでありますが、これらの大幅黒字の解消には日本経済の構造改善というものは必要であるということでありますから、一朝一夕に改善、高度成長というものを実施してその効果を簡単に期待することは、これはできないんじゃないか、相当これは時間を要するものではないか、こういうふうに考えられます。しかし、幸い最近発表されたものによりますというと、特に経済白書によりましても、日本において輸入がふえやすい貿易構造というか、そちらに向かって従来のこの輸出、いわゆる集中豪雨的な輸出だというそういった日本の輸出産業構造というものが、やや輸入の方に貿易構造というものも変わり始めておるんだというような示唆もされておるわけでございます。  したがいまして、ようやくこの大幅な黒字の是正ということにもつながると私どもは大いにこれは期待しておるのでございます。こうした六十年九月以来今日に至るこの状況を踏まえまして今日に至っているわけですが、こういうときに急激な円高を克服しつつある日本経済を通しまして見た場合に、六十年度の政府の経済運営を振り返ったときに、果たしてそうした措置がどんなふうに影響してきておったのか、あるいは六十年度の決算にプラスになったのかマイナスになったかというふうな点も、これは大蔵省の予算執行についても考えられたんじゃなかろうかと思うのでございますので、そういう観点からひとつ大蔵大臣の六十年度決算に対する所見というか評価というか、そういう点をひとつお聞かせいただけたらどうかと思うので、よろしくお願いします。
  115. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 確かに御指摘のように、いわゆるプラザ合意がございましたのが六十年の九月二十二日でございますので、ほぼ二年ということになるわけでございます。当時円は一ドル二百四十二円でございました。それがプラザ合意を契機といたしまして各国の協調によりドルの下落が始まったわけでございますが、その年六十年の暮れにはたしか二百円にまでなっております。ここらまでは恐らく我が国におきましてまあやむを得ないことであろう、どうしてもこういうふうにしなければ対米黒字というものはなかなか減らないということで、まあ二百円程度であれば日本経済も対応できるのではないかという見方が大半であったと記憶をいたします。  しかし、その後二月には円が百八十円台になりましたし、四月には百六十円台になりまして、その辺の円の上昇、ドルの下落がかなり急激であり、かつ大幅であって、そこまでまいりますとこれはプラザの段階でこれほど早くこれほど大きくという予測は必ずしもなかったのではないかという状況が現出したと思います。  そういう状況の中で、政府はどのような対応をしておったかと申しますと、まず当然に日本経済には影響があるということは予測いたしましたから、昭和六十年の十月の十五日、プラザからしばらくたちましてから内需拡大に関する第一段階の対策をいたしております。一兆八千二百億円の公共事業の事業規模の追加を、債務負担等々あるいは財投の追加等々によりまして地方単独もあわせましていたしております。それから電力事業に対して設備投資の増加の要請をいたしております。次に、十二月の二十八日、暮れも押し詰まりましてからこの第二段階の内需拡大に対する対策をいたしまして、公共事業等々の拡大あるいは住宅取得税制の創設などをいたしております。東京湾の横断道路の着工を決定いたしましたのもこの段階、明石海峡大橋もそうでございます。したがいまして、この段階において政府はこの状況に適切に対応しようという努力をいたしましたことは間違いのないところでございます。  問題は、その後のドルの下落、円の上昇が思ったより大幅であり急速であったということから、これらの政府の努力にもかかわりませず、我が国の経済がかなりいわゆるデフレの方向へ入っていくわけでございますが、それに対しましては六十一年度になりまして補正予算等が組まれたことは御承知のとおりでございます。  ただいまは六十年度についてという、六十年度に政府がどのように対応したかというお尋ねでございますので、ただいまのようなことで、政府といたしましてはこれにまず二段階に分けまして公共事業を中心に対応をいたしたということでございます。  なお、歳入でございますが、六十年度はそういうことでもありましたので、これが税収に反映をするにいたしましてはそれだけの時間が、何と申しますか、たっておらないと申しますか、そういうことでございましたから、税収は結局三千五百億円余りの減でございますが、それは一度補正予算をいたしました段階で四千億円の減を立てておりましたのでそれほどの落ちはなかった、しかし結局三千五百億円の落ちであった。これはやはりまだまだ家計なり企業なりにいわゆる円高のデフレ要因というものが十分には出切っていないその本当の最初の部分であったというふうに想像されます。
  116. 大島友治

    ○大島友治君 九月の時期でございましたから、あと三月までというわずかな期間だから、確かに当時緊縮財政の面で財政再建というものを前提に置いた予算の中だから、いかに急激な円高であってもそう直接は効果というものは出なかったんではないかと思いますが、ただいまもお聞きしたように、大変御苦労なすって何とか切り抜けたんじゃないかというふうにも感じられますが、恐らく九月の場合にこれほど急激に円高になるというような予想はつかなかったんじゃないかと思うんですな。確かに私ども地方を歩きましてもあるいは大企業から見ても、まあ二百四十円がせめて二百円程度ならば、あるいはさらに上がる傾向の中でも百八十円ぐらいならばというふうなこともございましたが、非常に急速に円高になったというようなことはただいま大蔵大臣といたしましても相当これは御苦労になったんじゃないかと、こんなふうに感じておるわけでございます。したがいまして、ただいまのような状況から出発いたしまして、これから次の問題としましても、いわゆる財政運営ということについて今後の展望というものがこれに連動してくるんじゃなかろうかということで、若干その点についてお伺いをいたしたいと思うんでございます。  もとより積極的な財政論者と申しましょうか、宮澤大臣はそういうお気持ちで運営に当たっておるんじゃなかろうかと思いますし、今後の日本の財政の方向をどのようにしていくべきであると考えておるかということについてお伺いしたいんですが、まず六十二年度の補正予算が既に七月に成立もいたしましたし、また七月末には六十三年度の予算の概算要求基準の決定も見てまいったわけでございますが、この一連の動きというものは宮澤大蔵大臣の積極的財政のあらわれではないかと、こんなふうに私には感じられるわけなんですが、その辺はそういうふうな理解を持っていいかどうかというようなことでございます。それが一つ。  それからまた、経済企画庁や日銀等によりますれば、最近景気というものは底入れをしたんだ、これからは景気は回復に向かうというようでありますが、日本経済を本格的な軌道に乗せるためには今後もなお財政の努力を相当これはやっていかなければならないんじゃないかと、こう思いますので、宮澤大蔵大臣といたしましてはどんなふうにその辺をお考えになっているのかどうかということもひとつ伺いたいと思うんでございます。  そこで、宮澤大臣としては、非常に積極財政というようなことから今申し上げたような施策を頭に描いて運営されておると思うんですが、一方、大蔵省という立場から当局の考え方をちょっと検討してみますに、確かにこの六十二年度の補正予算は当初予算に比較いたしまして公共事業は二〇%増ということにもなっておりますが、六十二年度の概算要求というこの基準につきましては、いわゆる防衛費やODAの膨らみというものもございますが、定員の抑制によるとか、あるいは人件費の縮小とか、あるいはまた平年度化の済んだことによる恩給費の縮小で吸収ができる、あるいはまた年金や医療費の単純膨張にもブレーキをかけるというようなことで、実質前年度以下におさめたいというようなことがうかがえると私は思っておるわけでございます。また公共事業につきましては、NTT株の売却収入を投入しても、それ以外は中立的からややどちらかといえば抑制的な実態となっているというふうにも感ずるわけです。したがって、財政再建のシナリオは大きく変えないというのが大蔵当局の考えではなかろうかと、いわゆる財政再建というのはあくまでも実行していくんだというような面で、そうしますと、大蔵大臣としては前向きの積極財政でいこうというような前段の感触もあるんですが、大蔵当局としてはできるだけ財政再建を前提に置いた緊縮財政でいくんじゃないかというような感触も私感ずるわけなんでございますが、こう見てまいりますと、やはり一方においては積極性もあるが、一方においては財政再建という面から、消極的と言っちゃ語弊があるが、やはり健全財政を守るんだというような事務的なものも出てくるということになると、内需拡大というような面から見ても、若干机上の面から見ても、一体財政運営上の大蔵の考え方としてどちらが本当なんだろうかと、こう言っちゃ語弊がございましょうが、感じがしますので、その点についてひとつ先ほどの点とあわせて大臣のお考えをお示しいただければ結構だと思います。
  117. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) そこで、大島委員のお尋ねになりました六十年度においてどのように対応したかということはただいま御説明申し上げたわけでありますけれども、その後我が国の経済に円高が与える影響が非常に大きいことがだんだんわかってまいりまして、六十一年度におきましても補正をいたしました。このときには建設国債の増発をいたしております。六十二年度におきまして大型の補正をいたしましたことは、先ほど大島委員が御指摘をされましたとおりでございます。  それが今の段階でございますが、この段階になりましてほぼ申し上げられるかと思いますのは、日本経済そのものもやはり時間の経緯のうちに対応にも多少なれてきたということもございますかと思いますが、政府のこのような施策の結果もありまして、まずまず景気は、御指摘のように底を離れたと申し上げてもよろしいのではないかというのが今日の状況でございます。  そして、先般国会でNTT株式の活用による社会資本整備勘定をお認めいただきましたので、この結果、国の負担にかかわる公共事業の経費は従来のほぼ二割増という水準になっております。これは補正予算後の水準でもございますが、昭和六十三年度におきましてはその水準を下回らないこと、これはNTTの収入によりまして建設国債を用いずにそれを確保することが制度上できることになりましたので、及び一般会計の公共事業費につきましてはマイナスシーリングを置かなかったという両方のことから、二割余り高い水準の公共事業費が今後継続していくということになっております。したがいまして、我が国が内外から求められております内需の拡大ということは、いっときに終わらず、これからの継続した制度による努力によって支えられていくことになろうと考えております。  そういう状況でございますが、他方、実は財政は、五年余りにおける中曽根内閣の努力というものがありまして、ともかくマイナスシーリング、ゼロシーリングを貫いてまいりました。その結果、幾多の改革も行われました。意義のあったことでありますが、と同時に、しかし依然として一般会計の国債依存率はほほ二割でございます。そうして、一般会計の支出の同じくほぼ二割が国債費ということになっておりますので、それだけの努力にもかかわらず、財政再建はなお途上であるということに変わりはございません。  これを特に申しますのは、財政エゴイズムという意味ではございませんで、一般会計の二割が国債費にとられておりますと、新しい施策というものは非常に制約を受ける。今後我が国の社会がいろいろに変わってまいります、また高齢化社会にもなろうというときに、新しいニーズにこのままでは財政が対応できないということを、これは財政エゴイズムでなくて、真実心配をいたしておりますので、やはり財政改革はやっていかなければならない。そういう意味で、昭和六十五年度には特例公債依存の体質から脱却したいという目標は、私どもとしてはおろさずに掲げて努力をいたしたいと考えておるわけでございます。  また、経済運営が多少このようによくなってまいりましたので、いろいろな観点から、それは必ずしも望みなきにあらずとも考えておるわけでございます。  もう一つ申し上げておかなければなりませんのは、その間に税制改革が実は行われつつございまして、先般の国会の御決定によりまして今年度はいわば所得税の前倒しの減税が行われるということで、これに相応するところの財源は税制の上からは出ておりませんで、前年の剰余金等々をもってほほいたさなければならないということでございますが、明年度においてどうするかということの答えは出ておりません。減税の方は続けて行われるわけでございますけれども、財源がどうなるかということが答えがただいまの段階では出ておりませんので、このことがまたこの事態の見通しをやや難しくいたしております。  そういったようなことでございますので、余計財政再建という努力は放棄をするわけにはまいらない、いわば二つの相反する命題を同時に解決しなければならないということでございますけれども、NTTの問題もあり、多少経済状況もよくなってきたということもございまして、その間で六十三年度の予算編成をしてまいりたいと考えておるわけでございます。
  118. 大島友治

    ○大島友治君 大分御苦心のほどをお聞かせいただいて、わかったような点もございます。  そこで、これからの、これも連動する問題ですが、財政上の問題としての税収の見通しということについてちょっとお伺いいたしたいと思います。  先ほどのように、六十年度はとにかく短期間であったから、九月の問題を通じてもそう効果というか、むしろ税収もマイナスの面もあったというような話でございますが、六十一年度を見てみますというと、一般会計の歳入歳出を七月に締め切って、決算額が確定をして、その結果、純剰余金は一兆七千六百十五億円、そして金額では戦後最高を記録したということであります。この原因は、企業の財テクなどによって法人税が伸びだとか、土地価格の高騰を反映して個人の譲渡所得や相続税が増収になったとか、あるいは有価証券取引税のような株式の取引分を反映したものということが言われておりますが、大臣のおっしゃられることによりますれば、これが今後増収の趨勢をすなわち意味するものではない、いつもこういう状況で進んでいくというわけではないというような大臣のお話もございますが、むしろこれは一時的な要因ではないかというふうに考えるべきであるというようなことでございますが、その点はいかがなものかということも一つあるわけでございます。  そこで、そうは申しましても、九月二日、先般発表になりました今年度の七月の税収の実績というものは、法人税、有価証券取引税などが相変わらず好調で四兆四千二百九十七億円となって、前年同月に比べれば一二・五%の高い伸びを示した。この結果、四月からの累計の税収もまた八兆円を上回る八兆五千八百五十八億円で、同期に比べれば一四・一%の増となっておる。このまま伸びが続くと、年度末には当初予算に比べまして四兆円があるいは五兆円を上回る税収が見込めるのではないかと、こう言われております。これは九月の発表ですが、その前の月で見た場合にはちょっと、市場等ではむしろ年度末には七兆円ぐらいな見込みがあるのじゃなかろうかというようなことも発表されましたが、いわゆる八月の結果を見た場合は、九月の発表ではやっぱり回ないし五兆円程度の増収になるのじゃないか、こういうことからして、当初七兆円と見たのは若干無理があったのかどうか、かえって四兆ないし五兆の方が極めて短期間に修正されたというか、大臣の見通しの方が正しいということになるのかどうか。その辺、ちょっとお感じの点を申していただきたいと思うのであります。
  119. 尾崎護

    説明員(尾崎護君) 現在判明しております税収、九月に発表いたしました税収は七月末現在の税収でございますが、これは、たばこ消費税の納付の方法が実は六十一年度と違っておりますのでその調整の必要があるのでございますが、そのベースをそろえましたところで見まして、進捗割合が二〇・八%、それから前年と比べまして一四・一%の増加ということになっております。  そこをとらえてみますと、確かに七月末までの税収実績は比較的高い値を示しているわけでございますけれども、その内容といたしましては、有価証券取引税が引き続き好調であること、それから法人税、相続税、それから関税などが今までのところ好調に推移しているということでございます。ただ、前年との比較ということで注意しなくてはいけないと思っておりますのは、昨年の七月、八月あたりは実は円高の影響を一番まともに受けていたころでございまして、昨年の七月で申しますと、その前の年に比べまして増加率が二・八%、八月はわずか〇・二%というように、ちょうど底を打って横ばいになっていた時期と現在比較しているわけでございます。  したがいまして、伸び率が非常に高く見えるわけでございますけれども、実は、六十一年の税収の好調というのは最後の三カ月、三月分税収、四月分税収、五月分税収、これを申し上げますと、三月分が対前年比一三・九%の伸び、四月分が一六・七%の伸び、五月分が二四・二%の伸びというように、六十一年度の最後の三カ月で急に税収が上がってきた、そのトータルとして御指摘のような自然増収が出たということでございますので、現在はちょうど一番底を打っていたころと比較して高い伸び率を示している。しかし、前年度の伸び率が上がってきたところと比較いたしますと、現在のような高い伸び率が期待できるとは到底思えないわけでございます。  実際のところ、昨年の税収の弾性値をとってみますと、二・一五という史上例のないような非常に高い弾性値をとっておりまして、これはどうも御指摘もございましたように、経済の実体的な生産活動とは関係のない、土地取引でありますとか、それから株式・金融取引の活発化でありますとか、そういうものを反映したものでありまして、一時的なものというように考えるのが妥当なのではないかというように存じます。ちなみに、五十六年度から六十年度の平均の弾性値をとってみますと〇・九五でございまして、昨年の二・一五というのは非常に高い数値であったということがおわかりいただけるかと思います。  六十二年度、どういうことになるかでございますが、非常に好調に税収が上がっていると言われましても、まだ何と申しましても進捗率で二〇%程度の話でございますので、ただいま申し上げましたようないろいろなことを考え合わせますと、ちょっとこの段階で先行きどうなるのか確たることを申し上げるのは甚だ困難なことでございます。私どもといたしましては、今後の税収動向、経済情勢等の推移を慎重に見守ってまいりたいと存じます。
  120. 大島友治

    ○大島友治君 わかりました。  連動的な問題で、次に税制改革の問題について。ひとつお伺いをさせていただきたいと思うのでございますが、今回の臨時国会におきましても、御承知のように、税制改革の問題として先般一応決定したわけでございますが、この税制改正の関連の評価についてちょっとお伺いしてみたいと思います。  成立した税制改正というものは、税制の抜本的な改革にはほど遠いんではないかというふうに感じるわけです。世界的に見ても日本の法人税はかなり高いというのが一般的な見方でもありますし、また中堅サラリーマンの重税感を和らげるための減税も必要ではないか、こういった点も異論のないことではないかと思うのでございます。したがって、法人税と所得税の減税を一層今後図らなければならないのではないか、こういうふうに思うわけでございます。そのための財源手当てというものをどうするかというところは、従来の売上税に始まって今日の税制改革の関連法案の通過と、さらに今後につながる問題じゃないかと。  そこで、御承知のように今回の衆議院議長のあっせん案の中にも税の直間比率の見直しや減税のための恒久財源の必要性がうたわれておるわけでございます。したがって、日本のような多くの国民がみずから中流階級という自覚をしているように、諸外国に比べても貧富の差が比較的少ない国では、やはり何らか新たな間接税を導入することによって減税財源を生み出すことが避けられないのではないか、また適当ではないかと考えます。これらの問題についても、実は昨日の新聞でございますか、大臣の記者会見というふうなことでの発表もございましたので、これらについてひとつ大臣のお考えをお聞きいたしたい。また、こうした税の抜本改正をするとしたら、税制改革の法案を国会に提出する時期は一体いつごろがいいんだろうか、どういうふうにお考えになっているかどうか。もちろんこれは、六十二年度の予算編成の裏づけといたしましても現行の税制のままでいいのかどうかということになれば、やはりいろいろこれからも若干問題を提起いたしますが、問題がございますので、根本的な税制改革の考えとして、今後税制改革、六十三年に向かってどのようにお考えになっておるか、ひとつお聞かせいただければ幸いじゃないかと思います。
  121. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 先週終了いたしました臨時国会におきまして通過をさせていただきました税制改正が、いかに抜本改正の姿とは遠いものではないかと言われましたことは、まことにそのとおりでございます。政府といたしましては、通常国会に全体の構想を御提案をいたしたのでございましたが、これは廃案となりました。したがいまして、臨時国会におきましては、当面今年度必要とする税制改正、主として減税でございますが、に限りまして御提案をいたしておりましたので、これは全貌を見せておりません。  ただ、私どもとしましては、ただいままさに大島委員が言われましたように、行く行くは、所得税というものを中堅サラリーマン層を中心に、いわばもっとフラットな形のものを中堅層までのところは考えていきたいということを思っておりますし、法人税も諸外国との水準で言えば高過ぎると考えております。したがいまして、そのようなことを含みました直接税中心の改正は何とかやはりやっていかなければならないということを思いつつ、そういうことを頭に置きながら、先般の臨時国会における税制改正も当面のもののみをやらせていただいたということになるわけでございます。ただこれも、言われましたように、そのような直接税の最終的な減税案を考えてまいりますと、まさにこれは恒久財源を必要とすることでございます。その恒久財源の一つは、やはり何かの形の間接税ではないかということは税制調査会でもそのように答申をしておられます。これにつきましては、ただ通常国会に御提案いたしました売上税がああいう形で廃案になっておりますので、このことから来るいろいろな反省は私どもとしても十分にいたさなければならないことでございます。  我が国のように所得格差が少なく、かつ所得水準が高く、またやがて高齢化社会が来る、したがって社会の共通の費用はなるべく国民が広く薄く負担をしていただきたいし、またそれができる社会である。恐らく、衆議院議長のあっせんの中で直間比率は大事なことであると言われましたのも、そのような趣旨と存じますので、何かの形でそういう具体的な議論が国民の中に、先般のあの廃案を契機といたしましていろいろに取り上げられることを政府としては期待もし、念願もいたしております。それが早ければ早いほど、また直接税の抜本的な改正も可能になるという関係にあろうと存じます。  その時期でございますが、ひとつここで御指摘になりました、これは他の委員のことではありますけれども、税制改革協議会が議長のあっせんのもとにつくられまして、十二回の会合を終えられて、またやがてその会合を続けようかというふうにも伺っております。最終的には何も決まっていないようでございますが、そういたしますと、その中にやはり今後の税制改正は、あるいは減税は恒久財源を必要とするということがこれまでの合意の中にございますので、といたしますと税制改革協議会がこれから取り上げられる問題は、ただいま大島委員が御指摘になりましたような問題であろうというふうに推察をされます。そういたしますと、そのやさきに政府が何か先に申すことも政治的にはいかがかと考えられます。税制改革協議会は共産党以外の各党派が全部入っておられますので、そこでどういう御意向であるかということをまず見守らしていただくことが先決であろうかと思っておりまして、と同時に、しかし明年度までに余り時間も残っていないということも私どもとしては気にしております。したがいまして、ここしばらくの間、そのような状況の中で、私どもは、さあ来年をどうやっていくか、これから将来どうしていくべきかということを内々でいろいろ検討を続けてまいりたいと、このように考えておるところでございます。
  122. 大島友治

    ○大島友治君 大分御苦心のほどをうかがえるわけでございますが、日本のいわゆる高齢化、二十一世紀、こう言っても、まさに計数的にもいろいろ高齢化時代における、いわゆる経済的な面におきまして受益する音あるいは負担する者ということの大変な問題が展開するんじゃなかろうか。それについてはこの機において基本的な、根本的税制改革というのは必要だ。しからばどうするかということについては、先般の売上税の問題を初め、余り急ぎ過ぎるということになると、これまた大問題でもございますので、しかし近い将来、また遠き将来を見た場合に、ぜひこの税制の根本改革ということは必要じゃなかろうか。特に直間比率の問題については新しい間接税がどういう形であろうと、これは必要不可欠の問題じゃなかろうか。どうかひとつ政策マンとしての大臣の英知をひとつ絶え間なく発揮していただきまして、将来の日本に向かって御協力いただければ私も非常に幸いじゃないかと、こんなふうに考えて、御期待申し上げる次第でございます。  次に、今日の問題になっております土地の価格の問題、いわゆる地価の上昇、それとにらみ合わして、これは税収にも関連しました資産課税の問題、固定資産税の問題とか、いわゆる資産課税の問題等について若干お伺いをいたしたいと思うんでございます。  相続税の課税最低限は五十年以降据え置かれたままでありますが、ここに来て地価の高騰によって遺産評価額は課税最低限を突破しやすくなっておりますし、死亡件数に占める課税件数の割合は五十年の二・一%から六十年には六・四%と三倍にも上昇しているような状況でございます。また、六十一年度の決算においても、相続税の税収は一兆三千九百六十六億円で前年度に比べて三一・六%増と大幅に増加していることは事実でございます。このような異常な地価高騰を背景とした相続税の急激な負担増を軽減する必要があるのではないかと思われますが、東京など大都市圏中心の住民の間で高まっている重税感を解消することを、大蔵省としても検討しているのではないかと思いますが、大筋としていかようにするかというお考えでもございましたならば、その規模を考えておられるのかどうかということでございます。その点をお聞かせいただきたいと思うんでございますが、同時にまた、この地価の上昇ということについては、いわゆる安易な金融の施策の面で融資が行われたんじゃなかろうかというふうに私ども受けとめておるわけでございますが、ついでと言っちゃ語弊がございますが、その金融政策に対して地価が上昇したことについてあらかじめ金融に対する大蔵としての御指導もあったかどうか、あるいはまた、あわせてお伺いいたしますが、きょうはお忙しいところ大変御無理しておいでいただきました青木理事さんの方にも、この金融機関の元締めといたしまして地価上昇に対する金融の面からのお考えがどんなふうになっておるかということもお聞かせいただければ幸いじゃないかと思います。二一日お願い申し上げます。
  123. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 相続税等の資産課税の問題でございますが、ただいまの基本的な構造昭和五十年に決められたものでございますので、確かにこの十年間の経緯、殊に最近の地価の急激な上昇によりまして土地を中心とした相続税あるいは譲与税の問題はかなり難しい状況になっております。  実は税制調査会におきましてもこの御議論はございまして、結局年末に政府、与党いろいろ相談をいたしました結果、ともかく財源の問題もあるのでこの際一応見送ろうということになったわけでございますけれども、その後また地価の上昇がかなり顕著になりましたために、この問題は長くは放置することはできないという感じを強く持っております。  ただいま具体的にこれ全部法律事項でございますので、やはり明年度の予算編成あるいは税制改正との関連でもう少し検討をさしていただくということ程度しか、ただいまとしては十分に申し上げられませんが、かなり実際難しい、無理と申しますか、いろいろあちこちで難しい事態になっておりますことは確かであろうと存じます。  それから土地の関係、値上がりにつきまして金融機関に対してはかねて銀行局長から何度も通達をいたしてあったところでございますが、今回このようなことになったにつきまして、金融機関側に特に投機と知りつつこれをあおるというようなことは恐らくそうそうあったとは思いませんけれども、結果としてそれを助長したということはなかったとは言えないのではないかと見られます。したがいまして、しばらく前から金融機関個々につきまして、また個々の地域の取引につきまして、いわゆる特別ヒアリングというものをやっておりまして、これが具体的にある土地について抵当権が設定されたというようなことは登記面でわかるものでございますから、そういうところまでやや立ち入りまして、それがどういう事情であったか、そしてその後どういうふうに現在に及んでおるか、今後というところまでかなりヒアリングを具体的にいたしました結果、急速に金融機関もこれにつきましては自粛の度を強めておるように存じます。そういう意味では金融機関に関します限り、現在になりましてかなり慎重な態度に変わってきておるということは申し上げることができるかと存じます。
  124. 青木昭

    参考人(青木昭君) 長期にわたる金融の緩和がございまして、それを背景にいたしまして銀行の貸し出しが相当ふえておるということでございますから、こういうことが地価の上がりやすい環境をつくっておるということは否定できないところであろうかというふうに思っておるわけでございます。ただ、地価の上昇につきましては、経済の情報化とか国際化とかいうようなことがございまして、都市機能がますます大都市に集中するというような傾向がございますし、それからまたいろいろ税法の関係もございますけれども、売った土地の値段でこれを買いかえていくというような動きがございまして、高い土地が周辺部に波及するとか、いろいろな非常に多岐にわたる原因があるのではないかというふうに思っておるわけでございます。これに対する対策といたしましても、もういろいろな方面で御研究をいただいておるように存じておりますが、多面的な対策が必要ではないかというふうに私ども思うわけでございます。  日本銀行といたしましては、いやしくも金融機関の過大な融資によりまして投機的な土地取引が行われまして地価の上昇が拍車されるというようなことがないように、かねがね節度ある融資態度というのを金融機関に要請をしておるわけでございます。ただいま大蔵大臣からもお話がございましたように、金融機関は土地融資に関しましては相当節度を持ってきておるというふうに思うわけでございますが、これからもこういったことで節度を保つように期待をしておるわけでございます。
  125. 大島友治

    ○大島友治君 今、大蔵大臣の方もいろいろ地価の問題については手を打ってあると、銀行局長の方から通達も出ておる。それについては国土庁の、直接の土地の所管省からも、ひとつ地価の上昇については大蔵としても何とかやってほしいというようなことも出ているんだと。それに基づいて六十一年内からずっと手を打って、銀行あるいは生保等に対する、銀行協会なりそれぞれの金融機関に通達をしているということも承知しておりますし、また特別ヒアリングもやったということも私も承知はしております。しかし、事ここに至りまして、現在は東京都内におきましても、ある面においてはもう頭打ちで、地価も上昇がむしろ下降しているところがあるというふうにも聞いておりますけれども、しかし非常に今東京都民としても、あるいは近郊の都市におきましても、この余波がだんだん影響してくるんじゃないかと、非常な住民の不安感というものが現実の問題として大変大きく取り上げられておるということでございますので、手は打ったと、日銀におきましてもそんなみだらな融資は十分注意せよということでやったといっても、やはり市場の先行の方がどうしても土地転がしなり地上げなりの結果をもたらしちゃったのではないか。しかし、これはそうは言っても、今後これは国民の生活、なかんずくこれからも影響するであろうという地域に対しては、大変日本としても大きな問題じゃなかろうかと思うので、ぜひこの点についてはしっかりとひとつ今後とも努めていただきたい、こう思うのであります。  そこでまた、これも連動的な勘定になるかと思いますけれども、たまたまこうしたいわゆるマネーサプライというものが行われたりしてどんどん物価が上昇してくる、その基本は地価ではないかというようなことも言われている。この勢いでいくというと、私心配するのは、取り越し苦労かどうか知りませんが、ちょっとインフレの懸念でもあってはなあというふうな気がいたしますので、その点についてちょっと伺いたいと思うんでございますが、輸出産業に大きな打撃を与えているこの円高が、一方で物価の動向には好影響を及ぼして、物価は超安定基調で推移しているとかと、かなり楽観視されてはきました。ところが、七月の卸売物価は、内外の経済情勢の変化を敏感に反映いたしまして、六月よりも、前月よりも一%近くもはね上がった。ここ七年ほど見られなかった大幅な上昇となったのであります。  一方、八月の東京の消費者物価は七月よりも〇・一%上昇し、前の年の八月と比べて〇・八%上昇したということで、一年前よりも物価が安いという状態は今年の初めのほんの短期間のことであったのではないかと、こういうふうに思われるわけです。さらに、金融が完全かどうかということを推しはかるその指標の通貨の供給量、いわゆるマネーサプライというものは、五月、六月と連続して昨年の同じ月よりも一〇%も高い伸びを見せておると。続く七月も一〇・三%の増加となっている。このような状況において一番心配されるのは、あの忌まわしいインフレということではなかろうかとあえて私は心配するものでございますが、日銀ではインフレの警戒を非常に強めまして、金融の超緩和策から緩和の行き過ぎに伴う投機的な行動の発生を未然に防止するという方向へと転換してきていると言われるのでございます。過去において我々は四十七年から四十九年にインフレによる混乱を経験しておりますが、確かに株式や土地の価格が上昇して、そして財政支出の拡大と内需の偏重といった面で大変に類似点が多いわけではありますが、過剰流動性の水準はそれに比較してそれほど高いというわけではないのでそれほど心配することはないのかもしれませんが、注意するにこしたことはないと、こんなふうに考えるので、あえて大臣のインフレに対する見解と、あわせまして日銀の方といたしましてもどうお考えになられるか、ちょっと参考にお聞かせいただければ幸いだと思います。
  126. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 冒頭にお話のございましたプラザ合意以降、円の上昇、ドルの下落が続きまして、そのような為替要因によりまして卸売物価は急激な下降を過去においていたしました。たしか一番下がりましたときは、対前年比で一一%ぐらいマイナスであった段階があったと思います。これは物価の安定にはもとより非常に寄与いたしますが、企業経営的な立場から申しますと、在庫が減価をするということでございますので、在庫の補てんというものは起こらないというそういう結果を生みまして、デフレに拍車をかけたという要因もございました。それが為替要因が落ちつきまして、ここへ来ましてほとんど対前年比で卸売物価の下落も大変な小さなところまで参りました。それはいわば、為替の安定ということの大部分は過去に比べますと結果であったと存じますが、同時に経済の立ち直りということも影響いたしてまいったと思います。卸売物価がそうでございますので、小売、消費者物価もそれを反映いたしましてマイナス一%からゼロあるいはプラス一、そこらの間を行ったり来たりしておるということでございますが、これからは卸売物価が下へ行くということが余りございませんと思いますので、多少それは消費者物価に影響するところがあるかもしれないと思います。ただ、それらは生鮮食料品とかいったような要素ではただいまのところないようでございます。  そこで現在の状況、これは例えばそのような物価情勢あるいは政府の補正予算によりまして公共投資を中心に、例えば丸棒が三万二千円だったものが五万円になったとか、あるいはコンクリートを打ちますときの型枠がちょっとなかったとか、H形鋼がどうであるとかいったようなことは、基本的には私は不況カルテルを解消するとかあるいは操業短縮をやめるとかいうことで、それに加えまして周辺の国からの供給もございますから、心配すべき状況にはないと考えております。この間まであれだけ大きなデフレ要因を抱えておった大きな経済でございますから、この程度のことでインフレというようなことが起こるとはもとより考えられません。問題は、いろんな事情から非常にマネーサプライが大きい、これは日本銀行が心配をされるのはもっともなことでありまして、それが例えば土地という形であらわれてくるようなことになりますと、それ自身をインフレというふうには思いませんけれども、これはやっぱり経済の運営の上では気をつけなければならない要因でございます。  そういう意味で、マネーサプライの動向には注意をしてまいらなければならない。これから恐らく資金需要がだんだん出てまいります、またそうでありませんと経済の正常な運営になっていかないわけでございますが、そういたしますと、金利としても本当にかってないほどの安い金利がかなり続いたわけでございますけれども、これらは正常化すると申しますか、ある程度の上昇はしていくのであろうと思われますが、それらを通観いたしましてインフレというふうには私は全く考えておりませんが、マネーサプライについては注意をしていく必要はあるというふうに考えます。
  127. 青木昭

    参考人(青木昭君) 四、五月まで非常に落ちついておりました卸売物価がこの六月から上がり始めましたのは、一つは原油を初めといたします国際商品市況の上昇ということがございます。それから公共工事あるいは住宅建設といったようなものが大変盛んになってまいりまして、これに伴って建設資材が上がる、それから化学工業製品のようなものが上がるというようなことがございまして、かなりのテンポで上昇に転じたということでございまして、御指摘のように六月が卸売物価で〇・五%、七月が〇・九%、八月もそういった後でも変わらず〇・二%、こういうようなことでかなりのテンポで上がっておるわけでございます。  ただ、大蔵大臣のお言葉にもございましたように、我が国は輸入の可能性というようなことも含めまして供給余力が随分あるわけでございます。それから賃金コストというような点から見ましても、まだまだ決して高いとは言えないような状況にあるわけでございまして、こういうことが生じたからといってインフレとかあるいは今までの物価の安定基調が直ちに大きく崩れるというようなことはまずまずないものというふうに思っております。  しかしながら、景気が回復過程にあるわけでございますし、それからマネーサプライの方も前年比で一〇%以上の伸びというのがもう四カ月も続くというような状況でございまして、相当注意はしていかなきゃならない、大変気配りをしていかなきゃならないような状況にあるというふうに思うわけでございます。  金融政策の運営につきましても、そういう意味で緩和が行き過ぎまして物価面に悪影響を与えるというようなことが万が一にもないように十分注意してまいりたいというふうに思っております。
  128. 大島友治

    ○大島友治君 時間が来たんでございますが、非常に大蔵大臣それから日銀の青木理事、熱心な御答弁をいただいたので、時間の方がいつの間にか過ぎてしまって、せっかく経済企画庁長官もおいでいただいたんですが、一言だけいかがなものでございますかということで、実は円高の問題は白書を通じて百五十円でもういいんじゃないか、この辺で、その以上の円高というものはもう必要がないんじゃなかろうかというようなことで、円高百五十円で見通しをつけたんじゃなかろうかと。しかし、実際は今日のようにもっと円高になってきておる。そういう点で、白書の面から見た長官のお考え方をちょっとお述べいただければ。簡単で結構でございます。
  129. 近藤鉄雄

    ○国務大臣(近藤鉄雄君) こういう場所でもたびたび私どもお答え申しておりますが、為替レートがどういう水準で推移するかということは極めて難しい問題でございますが、ただ大蔵大臣の御答弁にございましたように、また白書にも書いてございますが、最近の日本経済の貿易収支、経常収支を見てまいりますと、ひところはJカーブ効果もあって、この円高の中で我が国の黒字がむしろ増大をした、こういうことでございますが、最近は明らかに変わってまいりまして、輸出が停滞し、輸入が製品輸入を中心にどんどん伸びておる、こういうことでございますので、私どもは今年度における経常収支、黒字幅の改善が相当程度進むものである、かように考えているわけでありますので、そういう点からの円高というものの要素は、これまでのようなことはないのじゃないか、経常収支の改善が行われておりますから。  ただ、もう釈迦に説法でございますが、国際的な為替レートは単に日米間の貿易収支だけじゃなしに、アメリカがどのような貿易収支を他の国と関係を持つか、こういうことでございますので、これにつきましては最近のアメリカのいろいろなデータを見ると必ずしも楽観を許さない、アメリカの経常収支の赤字が必ずしも改善されていない、こういう状況の中で、ドルがどういうふうに推移するかで、その関係で日本の円がどうなるか、こういうことでございますので、私どもは大蔵大臣がもうすぐ国際通貨基金の年次総会にお見えになるわけでございますが、そういう場所におきましてもこの円レートの安定、国際通貨の安定についての、さらにその積極的な話し合いが行われるものであると期待している次第でございます。
  130. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それでは六十年度決算の総括第一回でございますので、二、三質問さしていただきたいと思います。  きょうは中曽根内閣この五年間の中核でずっと頑張ってこられました宮澤大蔵大臣、そして後藤田官房長官がお見えになっていらっしゃいますので、特に中曽根さんは戦後政治の総決算ということでこの五年間総理として頑張ってこられたわけでございますが、最近のいろいろなお話をお伺いいたしておりますと、大蔵大臣は特に中曽根政治を高く評価する、こういうような発言があるわけでございますが、この五年間を振り返りましてまず初めに宮澤大蔵大臣の所感をお聞かせいただきたいと思います。
  131. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 中曽根内閣の五年間ということでございますが、幾つかの点で高く評価すべき治績を残されたと考えております。  その一つは、やはり何と申しても行財政改革でございます。これらについては、財政改革はまだ道半ばではございますけれども、行政改革については大変にたくさんの具体的な治績を上げられた。また、財政改革についても五年間一般歳出をゼロあるいはマイナスにとどめたということの結果、財政にいい影響があったばかりでなく、そこから新しいいろいろな物の考え方等々が生まれまして、それは今後に向かって非常に大事な成果であったと考えております。  次に、国際的に我が国がいわば外国から見られておる我々の力あるいは責任というものと、国民が持っている主体的な意識との開きが非常に多うございまして、その点を総理大臣はできるだけ国民に外から我々に求められているものを自覚の水準に高めようとして努力をせられました。例えば、アクションプログラムといったようなものは我が国自身の体制を可能な範囲で国際的な物差し、水準に持っていこうという努力でありましたが、御承知のようにこれは法令を改正いたしましても、長い間の行政の習癖というものは簡単に直りません。行政の末端に至るまで、これはいわば場合によりましては手をとって直さなければならないというような種類のことでございますが、それらについてもよく陣頭指揮をされたと思います。また、そういうことを通じて我が国がいわゆる国際国家になる、これから将来を展望いたしますと、ますます我が国としてはそういう責務が重くなるということで、そういう自覚を国民にも促され、あるいは御自身も国際会議等々でそういうお立場から主張をしてこられたといったようなことは、すべてこれは将来に残る大きな治績であったというふうに考えております。
  132. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 官房長官、今の同じ質問でございますが、官房長官の御感想を。
  133. 後藤田正晴

    ○国務大臣(後藤田正晴君) 私は中曽根内閣発足以来五年間、ずっと閣僚として批判をされる立場でございました。ただいまの御質問に対するお答えはちょっとおこがましいんじゃないかなと思いまして、できたらお許しをいただきたいと思います。  ただ、働く内閣ということで戦後四十年間続いてきた日本の各般の課題について立派なところは伸ばしていき、また見直すべきところは見直して、そして西欧病といったようなものにかからないでたくましい福祉国家をつくっていこうと、そうすることによって二十一世紀に向けての橋渡しを、この内閣で橋渡しになるような課題を取り上げて、そして自由民主党の内閣でございますから、一内閣ではとてもできることではないが、引き続いて国政の改革に向けて努力をしていただくようにしたいというのが五年間の総理の念願であったと思います。それなりに努力をしたということをお答えをして、その評価はひとつ皆様方に御評価をいただきたいと、かように思います。
  134. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 私も何でもかんでも批判するというんじゃなしに、評価すべき点はちゃんと評価していいんじゃないかと思います。しかし、非常に心配なこともたくさんあるわけです。そういうふうな何でもかんでも全部継承するというんじゃまずいんじゃないかと私は思っておりまして、それはそれとして幾つかの点お伺いしたいと思うんですが、まず大蔵大臣、行政改革の問題でございます。  これはいろいろな問題がたくさんありますけれども、総理みずから大体こういうふうなことをおっしゃっているわけです。特に行政改革の中でも省庁本体や補助金にメスを入れる仕事が大きく残ったと、こういうふうに最後の部分でおっしゃっているところがあります。確かに私たちが行政改革ということを言いましたときに、中央省庁の統廃合や補助金の削減というのは確かに大きなテーマではありました。今、総務庁というのが一つできはいたしましたけれども、総理の目からも本格的な行革には映らなかったんであろうと思います。そういう点からいきますと、この二つの問題については宮澤さんどういうふうにお考えでございましょうか。
  135. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 二つの問題のうちで、補助金等の整理は私はかなり進んだと思います。それは一つはやはり財政の事情から、ゼロシーリング、マイナスシーリングというものをせざるを得ないということがございましたので、そこから結果としてやはり補助金等々についてはただいま暫定的な形をとっておるものもございますけれども、やはりかなりのメスが入れられたと見ております。中央各省庁の問題は、これはなかなか、やはりこれだけの御努力をされても結果としては余り大きな変化はなかったと。定員の方は、これは結構削減が行われつつございますからそれでよろしいのかもしれませんが、機構としては大きな変化はなかったということはさようであろうと思います。
  136. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 先ほど大臣おっしゃいました二つ目の問題、国際的ないろいろな問題があるわけでございますが、総理も国際国家日本としてというお言葉を何回かお使いになりました。しかし総理が就任された当時と現在とを比べてみまして、やっぱりいろいろな問題が残ってしまったんじゃないか、そういうふうに思っております。  まず一つは、何やかや言いましても経済摩擦の問題でありますね。これは総理が就任した当時と現在と比べまして、特にこの日米関係というのはやはりいろいろな面で厳しくなっているんじゃないか、こういうふうに思います。したがいましてこの問題、まあ総理が予想した以上に初めのロン・ヤス関係というふうな考え方とは全く違う方向に来ているんじゃないか、そういうふうに思います。  それからもう一つは、総理が就任当時から念願でございました日ソ関係、これはもう本当に全く、全くといっていいほどこの五年間進展がなかったといいましょうかね、なかったというより逆に悪くなったんじゃないか、こういう感じがいたします。  それからもう一つは日中問題であります。総理が就任当時はもっと日中関係というのは非常にいい関係にありましたですね。ところが、この問題も最近の政府の防衛費の枠の一%撤廃の問題だとか、あるいは光華寮の問題だとか、いろいろな面で非常にそこを来している、そういうふうに言ってもおかしくないと私は思うんですね。そういたしますと、これは非常に日米、日ソ、日中という非常に我が国にとりましては外交政策上重要な問題がそれぞれ大きなテーマを抱えておりますし、これからの大きな外交のテーマにもなろうとしているわけであります。そういうふうな意味で、この三つの問題に対しましてこれ大蔵大臣どういうふうにお考えか、現状認識とこれからの対応について御見識のほどを教えていただきたいと思います。
  137. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 最初の対米経済摩擦の問題でございますけれども、この問題には二つの面があると存じます。  第一の面は、日本だけがこれだけの経済力を持ちながら、先進国としては違うルールで経済をやっているんではないか、国際的な作法と違うではないかという種類の批判、これについては先ほど申しましたようにアクションプログラム等々を通じて中曽根内閣が非常に大きな仕事をされて、そしてかなりの部分でそういう批判はかなり解消いたした。開放体制云々は幾らか残っておりますけれども、しかしできる限り同じいわばゲームのルールにしていこうという努力は私は非常になされて、この問題については改善があったと思います。  もう一つの問題は、日本とアメリカのいわば企業の競争力の問題に関することでございますが、これは残念ながら我が国の方がだんだん追いかける立場でございますので、年とともに競争関係というものが激しくなるということは、これはどうもやむを得ないことであろうと存じます。したがって幾つかのいわばセクター別の交渉でいろいろなことを解決をしてまいる、一つ一つ解決してまいりましたが、それは次が出てくる、次が出てくるということはやはり我が国の対米競争力が比較的大きくなっていったということを意味するものであろうと思います。これは今後ともやはり個々の問題について解決をしていかなければならないのではないかと思います。  それから第二の問題、日ソでございますけれども、日ソの外務大臣の定期協議というものが、行ったり来たりする定期協議でありますが、これがほぼ十年間途絶えていた、それが中曽根内閣の時代に正常化したということはこれはもう事実でございますから、これは私は評価をしてよろしい、日ソ間にはいろいろ難しい問題がございます。ですから、いろいろなことが簡単に解決すると思いませんけれども、外相同士の行き来というものが再び行われるようになったということは十分評価をすべきことと存じます。  それから日中でございますが、これはまあ国交正常化十五年、ともかく両国の首脳がいろいろ問題はあっても、それはできるだけ問題が大きくならないうちに解決をしょうとお互いに努力をきょうまでし合ってきたことは事実でございます。これはやはりそういうお互いの間に基本的な親善と信頼関係がある。日中が仲よくすることはお互いの利益であるということをお互いの指導者が知っておるということであると思いますので、私は基本的に日中関係はよくなってきていると思います。  ただ、具体的には、これだけ隣でございますからいろいろ問題が出てまいります。殊に私どもが日本人の立場で考えておかなければならないことは、とかく被害を与えた方はそれを忘れやすいわけでございますけれども、受けた方は簡単に忘れられることでない。普段口に出して言うというようなことはありませんでも、それは被害を受けた方はそう簡単に忘れられないものだということを常に私、我々の方で考えておく必要があるであろう、それは我々が持つべき心構えの問題だと思っておりまして、日中関係も、しかし両国の最高責任者同士がなるべくそういう問題について表面化しないようにという配慮をお互いにしているということが現実でございますから、これもこれだけ長い長い、しかも隣にいる大きな国同士の関係としては、私はいわば評価していい状況にあると思います。
  138. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 多少いろいろな問題が、例えば今の中曽根内閣のアクションプログラムの問題にいたしましても、あれだけ一生懸命やりましたけれども、ジャパンバッシングがおさまったかというと、全くおさまっていないような気がいたします。そういうようないろいろな評価はいっぱい分かれるところでありますけれども、いずれにしましてもそれぞれの日米、日ソ、日中という問題は、やはり五年前と比べて私たちの目から見るとちょっと後退したんじゃないかなという感じは否めません。  そこで、もう一つは税制改革の問題であります。  これはもう大蔵大臣は当事者でございますから、先般の大蔵委員会でも随分議論はありましたけれども、大平内閣のときの一般消費税、そしてこの中曽根内閣の売上税と続きまして、大型間接税というのが大体二回にわたりまして国民の審判も一応ノーという結果が出たわけであります。しかしながら、先般の大臣の十三日の演説等を新聞報道で見ておりますと、新しい型の間接税の導入が必要であるというふうな意味のお話もあるわけでありますが、いわゆる税制改革に対する大蔵大臣の現在の時点におけるお考えですね、どういうようなお考えを持っていらっしゃるか、これを一遍きちっとお伺いしておきたいと思います。
  139. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 我が国の所得税体系で一番問題がありますのは、いわゆる中堅サラリーマン、住宅ローンを払わなきゃならないとか、子女の教育費がかさむとかいう人たちが非常な重税感を持っているということでありまして、この階層を中心にやはり所得の最初の段階の刻みはできるだけなだらかなものにしていかなければならないと思います。また、それと同時に、所得税体系全体を簡素化する必要があると考えます。法人税につきましては、世界どこでも本社の置けるような時代になってまいりましたので、我が国の法人税の水準というのは先進諸国のそれと無関係ではあり得ないということもありまして、ここも減税の必要がある。この二つはやはりどうしても減税をする必要があると考えておるわけでございますが、たまたまそういう税制改正全体の構想が通常国会におきまして廃案になりました。といたしますと、恒久財源なしにはこれ以上の直接税の大きな減税ということは難しいという問題がきょう現在残っております。残っておりますが、それらの改革は何とかしてやはりやっていく必要があるであろう。  他方で、二十一世紀になりますと我が国はかなり高齢化をいたしますから、今日のように所得格差が少なく、かつ所得水準が高い我が国では、社会の共通の費用というのは薄く広くみんなが分担をしていくということができるし、またそれが必要であろうということも考え合わせますと、衆議院議長があっせん案で言われましたように、やはり直間比率の問題というのは大事な問題であろうと思うのであります。  今日、七〇以上が直接税であり、間接税のウエートは二〇何がしであるということは、これは幾ら何でも我が国のような国においては不均衡だと考えますので、この是正というものはやはりする必要があるであろう。ただ、売上税というものはああいう形で国会で廃案になりまして、そのことについては私ども深刻な反省をいたしております。あれが廃案になりました後、しかし、将来を展望するとやはり何かが必要なのであろうという、そういう議論がもう一遍国民の中に起こってきて、そうしてそれならどうすべきかといったようなことから、いわば大賛成というわけにはまいらぬにいたしましても、この程度のことはやむを得ないかなという、そういうコンセンサスが生まれてくることを期待もいたしておりますし、また私どももそのために努力をいたすべきであろうと思っております。  他方で衆議院議長のごあっせんによる税制改革協議会が、今後の減税のためには恒久財源が必要であるということでは意見が一致されておりますし、議長も直間比率というようなこともあっせんの際に言っておられるということもあって、今後の御審議の中で、御討議の中でそのような問題は恐らく取り上げられるであろうと考えております。それがどういうテンポで取り上げられるかということがはっきりいたしませんけれども、次の課題はその課題であろうと思われますので、これは共産党以外の各党が御出席になって御議論をなさるのでありますから、その帰趨というものは私ども十分に拝聴いたしておらなければならない。そういうこともございますので、だんだん時間も短くなってまいりますけれども、私どもは私どもなりにそういう税制改革協議会の推移も注目しながら、将来をどう考えるべきかを部内でいろいろにこれから議論をしなければならないと思っておりますのが現在でございます。
  140. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 もう一点お伺いしておきたいと思います。  これは特に中曽根内閣、総理に就任されて以来、特に私的諮問機関だとか審議会だとか、こういうふうなものを使った政治というのが相当長く続いてまいりました。私も予算委員会やいろいろなところでこの私的諮問機関のあり方等については質問をさしていただきましたが、余りよくないと私は思うんですが、こういうような政治というのは余り引き継いでいただきたくないわけでありまして、こういうふうな政治手法といいましょうか、こういうような問題については大蔵大臣どういうふうにお考えか、これをお伺いしておきたいと思います。
  141. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) この問題につきましては、随分前から峯山委員が国家行政組織法第八条との関連で何度も御指摘になっておられますことを私もよく存じております。したがって、今御指摘が再度ありますことは少しも不思議なことでないのでありますが、中曽根首相のやってこられましたことは、いわばその私的な懇談会等々で問題の検討を御委託になった。これは恐らく、冒頭に申し上げましたように、行政改革というようなことになりますと、いわばこれは各省庁に真っすぐに関係あることでございますので、なかなか体制内からは思い切った意見というものは本来的に出にくいものでございます。そういう意味でそれ以外の人たちの意見をいろいろに聞かれて、その中から自分としての考えをまとめていこうと、こういうふうにされるその努力であったというふうに私は思っていまして、これはやはりそれなりにいわば中からは出にくい外からの批判というものをくみ上げられるのには有用であったと思いますが、それは総理大臣も気をつけておられまして、懇談会のお話というのは、一人一人のその意見を聞かれるということであって、それが合議体として何かの意思を決定するということではございませんで、その点は第八条に基づく審議会と懇談会の運営の差異については、総理大臣もあるいは官房長官も十分御配意をなすってこられたように思っておりますので、その点は今後とも大切に留意すべきことと思っております。
  142. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 ぜひこの問題は私たち非常に、今大臣は事前に通告をいたしておりましたから一つ一つ詳細に、国家行政組織法八条機関のあり方について大臣のおっしゃるとおりだろうと私は思います。  しかしながら実際は、例えば一番初めにやられました平和問題研究会というのがございまして、これは後で取り消しにはなりましたけれども自衛隊の国連の派遣の問題だとか、GNP一%の枠の撤廃の問題だとか、そういうような問題を結局自分の思うような方向に操作した嫌いがあると、これは実際その当時そのように言われておりましたし、世論を操作するというかそういうようなところがあるのじゃないかということでは私は非常に心配をしたわけであります。  また、その次のもう一つの問題として靖国神社の公式参拝の問題があります。これは総理の私的諮問機関ではございませんでした。当時の官房長官の諮問機関でしたが、これもやっぱり同じように、そういうふうな会合を、私的諮問機関をつくって、そしてその答申を受けて結局公式参拝に踏み切ったといういきさつがあります。  こういう点を考えますと、こういうふうに国民から批判をされるであろう、あるいは憲法違反の疑いがある、そういうふうなやり方、これは私はやっぱりよくない。国の行政のあり方としてはきちっとした法に基づいてきちっとした取り扱いをする、そういうふうになければならないと私は思うわけでありますが、こういうふうな政治手法というのは、負の遺産というか、そういうようなものは引き継いでいただきたくないと私は思うわけですよね。そういう意味で申し上げているわけでありますが、大臣の御見解をお伺いしておきたいと思います。
  143. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) ただいまの立場で何とも申し上げにくいのでありますけれども、こういう諮問機関からいろいろな御意見が出まして、それをこれから実践していくのに当分時間がかかりそうでございますので、問題はいろいろ出尽くしたといいますか、全部じゃございませんけれども、そういうことではないか。問題は、これを今度はどのように実践していくかという段階に入るのではないかと思っております。
  144. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 大臣のお立場はよくわかっております。どの程度の確率がわかりませんが、まあ幾らかの確率で次ということも考えられるわけでございまして、申し上げているわけであります。  そこで、今度はちょっと問題を変えます。防衛費のGNP一%の問題について、お隣の防衛庁長官には内閣委員会で随分長い間質問してまいりました。そのときには大蔵大臣はいらっしゃいませんでしたので、きょうは大蔵大臣にこの防衛費のGNP一%の問題についてお伺いをしておきたいと思います。  これは大蔵大臣、いろいろないきさつはありますけれども、ことしの一月、御存じのとおりの閣議決定によりまして一%枠を突破したわけであります。しかしながらその後の経済事情、財政事情、いろいろな状況によりまして、何とかことしも一%以内におさめられるのじゃないかというところまで来ているわけでございますが、GNP一%というのはあれは全く撤廃するとはおっしゃっておりませんで、あのときの官房長官の記者会見でもその精神は尊重すると書いてあるわけですから、おさめられるものならおさめようと、こうお考えになるのが私は当然だろうと思うんですが、この問題について現在の時点でどうなるかわかりませんが、現在の円高の問題だとかいろいろな情勢から分析をいたしまして、大体おさまるのじゃないかというお話が随分あるわけですが、このGNP一%の絡みで現在大臣どうお考えになっていらっしゃるかお伺いしておきたいと思います、
  145. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 昭和六十二年度の予算編成の過程におきましてこのような問題が起こりまして、栗原長官と予算折衝をいたしておる途中からこれを中断いたしまして安全保障会議、閣議等々の決定をお願いをいたしました。そして予算編成を進めたわけでございますが、これはやはり長い間いわゆる後方というものが手当てができずに、自衛隊の諸君の士気が阻喪するようなそういう生活環境にあるということは、これは決して好ましいことではございません。片方で円高であるとかあるいは石油の、油の価格が下がったとかいうこともございましたので、そういうこともあってこの際やはり後方を充実するということは大事であるといったようなこと、あるいはGNPの関係もあって一%を突破いたしました。  しかし、実は今年度の防衛費の伸びというのは昭和三十何年以来の一番小さな伸びでございます。五・二%の伸びでございますから一番小さい伸びでございます。決して大変大きな伸長をしたわけではございません。そういうことであって、しかも年が明けまして一月二十四日に政府は新しい閣議決定をいたしております。という意味では中期防衛力整備計画という一つの計数的な枠もはめられておることでありますし、昭和五十一年の三木内閣当時の精神を決してないがしろにするものではないということもはっきりいたしております。  それで私は、一%ということそのものはそういう意味でそれ自身が大した大きな意味を持つものではない。我々が専守防衛という防衛力整備計画を大事にして防衛計画の大綱に基づいて考えていけばいいというのが基本であろうと思っております。それでいろいろな事情であるいはGNPの事情あるいは給与とか物価とかの事情で、もう一遍一%の中に入れるかもしれないということが起こりましたら、それは大変に結構なことでございます。大蔵大臣としてはまことに結構なことだと思いますが、一%の中に無理に押し込みたいのでまた何かをするという気持ちは私は別段持っておりません。それはごく自然体でそういうことになってくれればそれはまさに結構なことだという程度に考えております。
  146. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 大臣、今の答弁を聞いておりまして三点ほど問題点があると思います。  それはまず大臣は今度の一%を突破したいきさつについて、いわゆる後方をもう少しちゃんとしないといけないと、現状のままではやはりぐあいが悪いということで今の突破した理由を初めにおっしゃいました。これは大臣、ことしの予算委員会で私は総理と随分やり合いました。実は大臣、この昭和五十年、五十一年、当時自衛隊の正面装備と後方の経費、どうあるべきか、これは実は五十二年の防衛白書の中に正面装備が今まで相当進んできて、後方がおくれておるということを五十二年の白書の中に書いてあるわけです。ところが白書の中に書いて、それから実際に後方を充実するために一生懸命やらにゃいかぬわけです。確かに私の手元に、これは予算ベースです、私は予算ベースで質問いたしましたら防衛庁当局は契約ベースで答弁をいたしましたが、これは予算ベースでずっと見ますと昭和五十一年から五十四年ごろまで、それから五十五年から五十七年、五十八年から六十年、これはなぜこういうふうに申し上げているかと言いますと、私が今申し上げましたこの年次というのはすべてそれぞれの何次防、五三中業、五六中業という区分を今申し上げているわけです。その区分ごとに初めのうちは後方が多かったのです。ところがだんだん後方が少なくなりまして正面に力を入れ過ぎてきたんです、ずっと。これは数字の面でも明らかに出ているわけです。これは本当に大臣に見ていただきたいわけですけれども、突然今そういう答弁が出てきたから私申し上げているわけでありますが、一たん議論をした問題ですから余り深くはやりたくありませんが、これは当然何もことし急に後方をやらなくちゃいけないということはないんです、大臣。ことし急にやらなくたって毎年おくれていたわけですよ。しかもやらにゃいかぬということは前から言うとったわけですよ。それをことしわざわざGNP一%を突破させるためにこういうことを言うというのは、後方のために一%突破したなんという言い方は、これは私は非常に納得できない、筋が通りません。これがまず一つ。  それから、一%を突破するかどうかということに大きな意味を持つものではないと今大臣おっしゃった。一%を突破するか突破しないかというのは大変大きな意味があると私たちは思っているわけです。防衛庁長官も、一%を突破するとかしないとかなんというのは軍事的合理性がないとか、そんなことをいつ直言います。それじゃ中期防の十八兆四千億というお金、金額がどういう軍事的合理性があるか、金額そのものには合理性なんてないんです。そうですよ。そういうふうな議論をいたしますと、あの五十一年に決めた当時の精神、考え方、やっぱり一%というのは非常に大事な我々にとっては歯どめである。もっとわかりやすく言うと、現在の行政府が何とも自分で変えることができない歯どめだからちゃんとした合理性があると私たちは思っているわけです。それを大きな意味を持つものではないという御認識ではこれもうがっかりですな、本当に。これはやっぱりそういうお考えでは僕は本当にいかぬと思いますよ。やっぱりそこのところはこれからの問題としても、国民が安心して自衛隊を理解し、そして防衛力のあり方というものを認識する、そういうふうな意味では一%という問題については非常に国民は大事にも考えてきたし、安心して自衛隊を見てもきたし、そういうふうな意味では今の中期防の十八兆四千億、この金額の決め方とか六十年度価格で決める決め方、実際この五年間たって十八兆四千億が幾らになるかわからないわけですから、そういうふうな意味では私は、今の大臣のお考えというのは、この間の閣議決定の中身も含めまして、やっぱりもう少し、自然体でいく、こうおっしゃいましたが、自然体じゃなくて、そういうふうな一%以内におさめる努力をする、このぐらいのことは、やっぱり大臣としてそのくらいの見識は持っていていいんじゃないかな、そういう感じが私はするわけでありますが、いかがでしょう。
  147. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) この問題は峯山委員がもう何度もよその機会に御議論になっておられると伺っておりますので、余りくどいことを申し上げることは要らないことかと思いますが、しかし、自衛隊の諸君が二段ヘッドであるとか、あるいは手洗いがどうであるとか、あるいは油が高いので演習訓練の時間をそれだけ短くしなきゃならないとかいうようなことは、できればそれは普通のことはしてやらなければいかぬと思いますので、今まで恐らく正面が大事でございますからそっちへそっちへ余裕があれば金を使ってきたという、そういう気持ちはよくわかりますから、あるときにはやはりそういう後方の手当てもいたしませんと士気そのものにさわるというふうに、お互いにこれは考えていいことだと思うんでございます。  それから、中期防でございますけど、これは十八兆四千億、不変価格というこれは一つのきちんとした、積み上がった数字として枠になると思っておりまして、それに比べまして一%というのは、これももう過ぎたことでございますけど、昭和五十一年に至りますまでの当時の名目のGNPの成長率というのは、四十八年が二〇・九、四十九年が一八・四、五十年一〇・二、五十一年一二・四でございますが、ですから、これだけの成長ですと一%というものは実際達することはなかなかないのではないかという認識が当時あって、そこで一%置いておいたらまず大丈夫ではないかということが事実問題としてあったと思います。それが、石油危機以後情勢が変わったということで、合理性がないというふうに私は一概に申しませんけれども、客観的に分母が非常に大きな変化をしたということは確かであって、その間に、しかし我が国の最小限の防衛の努力というものは、だからといってこれを変えるわけにはいかないということであったと思います。
  148. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 大臣、ですから私は、陸上自衛隊の隊員がお休みになるベッドがわらのベッドだからそれはちゃんとせいとか、例えば油が足りないとか、そういうことを減らせと言っているんじゃない。そういうものをわざわざ我々の目の前に出せば、私たちとしてはそういうものはふやしたいわけです。待遇はよくしてあげたいと思いますよ、やっぱりね。しかしながら、そのほかのものを減らせばいいんじゃないですか、余っている戦車とか、余っている戦闘機一つ減らすとかね、それでぱっと済むわけですから。それはそういうわけにはいかないとおっしゃるかもしれませんが、やりようはあるわけです。そういうことも考えていただきたいと思っているわけであります。  そこで、きょう外務省からもお見えになっていらっしゃると思いますが、GNP一%枠突破の問題につきましては、これは中国を初めそれぞれのいろいろな国からもいろいろな批判とかあるいは心配だとかそういうような問題がいろいろな新聞等で報道されております。これは外務省、大臣がいらっしゃれば大臣にお伺いしたいんですけれども、日本の防衛費に関するここ二、三年の特に東南アジア諸国の反応はどういうふうになっているのか、詳細にお聞かせいただきたい。
  149. 藤田公郎

    説明員藤田公郎君) 我が国の防衛予算に関しまして政府ベースで何らかの反応を示している国は中国でございまして、昨年末、十二月三十日の閣議決定、それからもう一つの機会は本年の一月二十四日の閣議決定、二回機会はございましたが、昨年の末の閣議決定に関しまして、本年初め、一月二日に中国の外交部のスポークスマンがこの一%問題について中国側は注目をしている、日本政府が防衛力増強に限度を持たせることを希望するというような趣旨の発言を行っております。人民日報等の報道もそのようなラインで報道を行っております。その他のアジア諸国につきましては、各国政府としての見解の表明はございませんけれども、我が国防衛政策の基本方針が不変であるということについて基本的に理解を得られているのではないかと考えられます。  ちなみに、中国の報道機関につきましては先ほど申し上げましたが、その他の国の報道機関について見ますと、主としてこの一%問題をめぐります我が国の国内の報道ぶり等の紹介等の事実関係を報じているものが多うございます。論評としましては、韓国等一部の新聞が懸念を表明する趣旨の論調を掲げておりますが、フィリピン、インドネシア等ASEAN各国の新聞論調としては、我が国政府の立場は理解できるというようなことを言っているものが多うございます。理解というのは、ソ連の軍事的なプレゼンスですとか、日本の経済成長率の鈍化ですとか、いろいろな日本の国内での論調を引用いたしまして、そのような論調を示しております。  以上でございます。
  150. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 官房長官、お伺いいたします。  この一%問題のときに官房長官の談話を出しておられますね。特にこの談話の三項目目に、「各年度の防衛関係経費については、おおむね当該年度の国民総生産の一%程度となるものと予想されます。」と、こういうふうにありますが、これは大体どういうふうな意味なのか、御説明をいただきたいと思うのであります。  要するに、官房長官の談話の中身は、実は閣議決定の中身を全部それぞれカバーしていらっしゃいますから、項目も大体そのとおりなっておりますから、そういうことだろうと思うんですが、官房長官の談話で出て、わざわざこういうようにおっしゃっているわけでございますから、それなりに私は権威のあるものだろうと思うんですが、この「一%程度」というのは、これはやっぱりはっきりしておかぬといかぬわけでございまして、官房長官は程度の中身をどの程度とおっしゃってお考えなのか。これはやっぱりある程度はっきりしていただきたいと思うわけであります。当時これは新聞報道、いろいろな報道によりますと、この程度というのは中期防策定当時には一・〇一六%、括弧してGNPの基準見直し前には一・〇三八%と説明されていると、こういうような説明もついておるわけですが、こういう数字との絡みもあると思うんですが、実際問題としてどの程度とお考えなのか、一遍お答えをお伺いしておきたいと思います。
  151. 後藤田正晴

    ○国務大臣(後藤田正晴君) 平たく言いますと、中期防衛力整備期間中のこの各年度の防衛関係の対GNP比というものは若干の上下の変動はこれはあり得ると、しかし結果としてはGNPの一%に近い線で推移するというのではないかということを「一%程度」という言葉で表現をしたわけでございます。つまり、余り大きな変化はないであろう、しかしさればといって無理無理一%以内におさめるわけにはまいらない。場合によれば、分母いかんにより、さらにはまた防衛庁の予算の中身いかんによってはこれは若干超すこともあり得ると、こういう意味合いに理解をしていただきたいと、かように思います。  といいますのは、六十年に例の中期防衛力整備計画が決められて、その実質の経費がたしか十八兆四千億に決められておる。これを展望と指針による経済成長の伸び、つまりGNPの伸び、これが四%ということに計算がなっておりますね。そうしますと、それを機械的に比較をしますと一・〇二になるわけですね。しかし、それは機械的な話で、その年々の物価の状況なり、あるいは為替の関係であるとか、いろいろな影響もありましょうし、GNP全体の伸び率の問題もありますから、そこで一%におさまる場合もあるだろうし、おさまらぬ場合もあるだろう。だから、そこはやはり一%そのものに、あなたの御意見と私は違うんですけどね、大蔵大臣と同じ意見でございましてね、余り意味がないな。といって防衛費というのはほっときゃ膨れますからね。これはやっぱりきちんと、少なくて済めばそれでいいんだけれども、しかしやはり国の安全ということは何よりも重要な国政上の課題でございますから、一%という数字そのものにとらわれるというわけにはまいりません。しかし、膨れる傾向がありますから、そこらはやはり従来と同じような節度のあるやり方でやると、そこでやはり一%程度であると、かように理解をしてもらいたいと、こういう意味合いで官房長官談話を出したわけでございます。
  152. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 大臣ね、「一%程度」とわざわざ数字も出して一%と書いてあるわけですから、一般的にはそれは確かに一%上下も若干はあるでしょう。一般的に考えればね。しかしながら、やっぱり一%を一つのめどにして、それ以内におさまるように努力をせいと、そういう意味はないんですか、全くこれ。
  153. 後藤田正晴

    ○国務大臣(後藤田正晴君) それはまた官房長官談話の最後の項目でしたかね、五十一年の閣議決定の精神はこれを尊重するということを私はだしが申し上げた記憶があるんです。それはどういうことかと言えば、やはり防衛力の整備はきちんとやってはいきますが、そうは言いながらも、やはり何といいますか、抑制的な態度でいきたいと、こういうことでございますから、今回の決定によって大きくこれが変化をするという意味合いではない。そういう意味合いもまた「一%程度」という言葉の中には含まれておると、かように御理解していただきたい、こう思います。
  154. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 わかりました。ぜひそういうふうなことを踏まえて、防衛庁長官、六十二年度予算の編成もお願いしたいと思います。  そこで、六十三年度概算要求に当たりまして新行革審の緊急答申というのがあります。これは大蔵大臣、この答申をよく読んでみますと、二カ所にわたりまして「聖域を設けることなく」というお話が出てまいります。これはまず四ページのところに、これは私の資料による四ページですから、七月十四日の答申でございます。それの四ページのところに「すべての行政分野について聖域を設けることなく」と、こう明確にうたっておりますし、それから七ページのところに「技術革新等による我が国の経済社会の発展、国際社会に対する積極的貢献、総合安全保障の観点等を考慮しつつも、厳しい財政の現状を踏まえ、聖域を設けることなく、資金の重点的・効率的配分、行政の合理化・効率化を強力に推進する。」と、こういうふうにありますので、これは私は今回のこの概算要求並びにこれからの予算編成に当たって、当然こういうことを踏まえながら予算編成に当たらないといけないと私は思うのですが、大蔵大臣はこの防衛費についてこういうような問題と絡み合わせてどうお考えか、大蔵大臣のお考えをお伺いしておきたいと思います。
  155. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 防衛費につきましては、先般いわゆるシーリングを決定をいたしておりますが、これは上限でございますので、これから十二月に向かいまして、両省庁の間で厳しく吟味をいたしつつ必要最小限のもので済ませてまいりたいと考えております。
  156. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 これは防衛庁長官、お伺いします。中期防の「所要経費」というところにこういうお話が出てまいります。「各年度毎の予算の編成に際しては、一層の効率化、合理化に努め、極力経費を抑制するよう努力するとともに、その時々の経済財政事情等を勘案し、国の他の諸施策との調和を図りつつ、これを決定するものとする。」と、こういうふうにあります。  そこで、これは大蔵大臣に初めお答えしていただきたいわけでありますが、中期防のこの記述からいたしますと、したがって経済財政事情等によって中期防が完全に達成できない場合もあるわけですよね、経済財政事情によってですから。したがって、他の諸施策とのバランスを欠いてまで防衛費を突出させる必要はないと、こう言っておるわけですよ。したがって、今回のこの閣議決定の中にもあるこの節度ある防衛力整備というのはこういうことじゃないかと私は思うんですけれどもね。  これはまず大蔵大臣どうですか、わかりましたか、意味。もう一回言いましょうか。中期防の中にこういう記述があるんです。この防衛の所要経費について、「各年度毎の予算の編成に際しては、一層の効率化、合理化に努め、極力経費を抑制するよう努力するとともに、その時々の経済財政事情等を勘案し、国の他の諸施設との調和を図りつつ、これを決定するものとする。」と、こうあるわけですよ。ということは、これはよく読んでみると、したがって他の経済財政事情等によっては中期防そのものが完全に達成できないこともあると、ほかの諸政策をほったらかしてやれとは言ってないわけですから、調和を図りつつやれと言っているわけですから、だから他の諸政策とのバランスを欠いてまでいわゆるこの防衛力を突出させて中期防を達成せいとは言ってないわけです。ということは、この閣議決定の節度ある防衛力を自主的に整備するというこの閣議決定は、私が今言ったようなことじゃありませんかと、こう言っておるわけです。どうですか。
  157. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) これは私は十八兆四千億円程度、これをめどとするということは、これは私はやはり達成すべき目標であると思っておりまして、ただここに至りますまでに、毎年いろいろ経済状況というのは確かに変化し得るものでございますから、これをぴちっと年割りにして、それが毎年のいわばノルマといいますか、決まったものではないよと、年によって多少の凹凸はあるであろう、それは経済事情等もあるから、財政事情等もあるから、しかし答えはやっぱり最終的にはこの十八兆四千億だというふうに、そういうふうに努力すべきだと私は思っております。
  158. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それはわかるんですよね。それはわかるんですが、ここに書いている意味は、やっぱりその閣議決定の中に出てくる、いわゆるこの節度ある防衛力を整備するというのは、やっぱり他のいろいろな施策とのバランスをとりながらというわけですから、バランスを欠いてまで防衛力を整備せいとは言ってないわけですよ。そうですな、これ。したがって、その節度ある防衛力の整備というのはそういうことじゃないですかと、こう言っておるわけですよ。
  159. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) それは、これが決定いたしましたのは昭和六十年でございますが、この長い先を見通しまして、いろいろその年々で財政経済事情は異なるわけでございますから、必ず毎年これこれでなければ、いわばこれを何年かで割ったその年割りといったような、こういうことはとらないと、いろいろ経済財政事情もあるだろうから、そこはおのおのの経過年次というものは弾力的に考えざるを得ないこともあろうと、こういう意味だと私は思っておりまして、私どもとしては、やはりこの閣議決定は閣議決定であります以上、達成のために努力をいたすべきものと思います。
  160. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それでは次に、FSXの選定問題についてお伺いします。  これは防衛庁長官近々行かれるそうですが、一番新しい情報はどういうふうになっておるんですか。
  161. 西廣整輝

    説明員西廣整輝君) FSXにつきましては、従来から現在も既に就役をしているアズイズの航空機さらには新規の国産の航空機、あるいは現用機の転用といった三つの選択肢でいろいろ検討いたしておりました。その後さらに日米で協力して開発をする、あるいはアメリカの既存機を改良するといったことについて、一部調査団を出したりして資料を集めました。そして現在庁内に内局、航空自衛隊、技術研究本部、そういった専門家の研究のための検討委員会というものをつくっておりまして、そこで今検討の最終段階に入っておるということであります。近々そこである程度専門家の意見としてまとまってくれば、さらに政策担当者の方に上がってくるという状況にあります。
  162. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 まず、西廣さんね、このFSXの性能ですな、性能。新聞の報道によりますと日本側の要求性能云々というのは随分記事に出てくるわけですよ。日本側の要求性能を無理に満たそうとするとどうのこうのとか、いっぱい出てくるわけですが、具体的にこの要求性能というのはどういうことなんですか。
  163. 西廣整輝

    説明員西廣整輝君) この支援戦闘機というものは大綱に定めてありますように、まず我が国の防空のためには戦闘機、レーダーサイトあるいは対空誘導弾、そういったものでまず防空に当たるということでそこは戦闘機というふうに書いてあります。したがいまして支援戦闘機も要撃戦闘機もいずれも防空任務にまず当たると。さらに大綱の次の項目の本文のところに必要があれば支援戦闘任務につき得る部隊というものも考え出さなくちゃいかぬということでありますので、戦闘機の中の要撃戦闘に加えて支援戦闘能力、つまり洋上阻止であるとか、陸上にある敵を攻撃する、そういった機能を持った戦闘機でなくちゃいけないという、二つの任務をあわせ持っておる航空機というふうに考えております。
  164. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 ですから、したがってその支援戦闘機の性能ですがな。今ややこしいことを初めにちょっと言って説明しておられますけれども、海上における艦船に対する支援、これはわかりますね。陸上というのはどこなんですか。
  165. 西廣整輝

    説明員西廣整輝君) 例えば上陸しまして陸上戦闘が行われておる、その場合の対地支援の任務を言っております。
  166. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 対地支援、そんなやったらあれかいな、日本の国土のことを言ってんの。
  167. 西廣整輝

    説明員西廣整輝君) おっしゃるとおりでありまして、敵に上陸された場合に戦車等に対して攻撃を加える、そういった任務は航空機の対地支援任務というものは当然必要であるというように考えております。
  168. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 そんな対地支援戦闘なんて、そんなごまかしちゃいかぬですよ。そんな、自分の戦闘機で日本の国内のあっちこっちぽんぼん爆撃することになるじゃないですか。そんなことまるっきり考えてないんじゃないの、本当のこと言ってもらいたいね。  とにかく、要するにこの中身をもっと詳しく説明していただきたいと思いますね。時間がありませんから私もうきょうは余りこれ詳しくできませんが、まず防衛庁が今考えているFSXのいわゆる足ですね、どのくらい考えているのかですね。それからいわゆる爆弾とかミサイルとか、そういうようなものはどういうものを考えているのか。そういうようなものの積載能力というのはどの程度のものを考えているのか。やっぱりそこら辺のところをある程度はっきりしていただかないと、我々これ新聞報道でしか見ないわけですよ。そしてそんな中で結局あなたの発言もだんだん昔の発言と後退をしてきておるわけですよ。もともとF1というのは国産でつくってたわけでしょう。それがだんだんいろいろな面で後退してきているわけでございますから、そこら辺の問題はまた別にして、まずFSXの能力、性能、これをもう少しわかりやすく説明してくれませんか。
  169. 西廣整輝

    説明員西廣整輝君) 現在、防衛庁の中で検討しておる段階でございますから、当然のことながら防衛庁としてはこういう航空機が必要と思います、整備する必要があると思いますということを政府部内で御審議願い、かつ国会等にも御審議願うことになろうと思います。そういう段階にはなぜそういう航空機が必要であるのかといった性能面も含めて、必要な理由なり選定した理由というものを十分御説明することになると思いますが、現在まだ庁内で検討しておる段階でございますので、私どもとしてはもろもろの検討の内容なりあるいはそのときそのときの論議、出た内容を外に申し上げておらないという状況であります。
  170. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 ですから、それは私が言っていることに答弁してないじゃないですか、全然。そんなことはわかっておるんですよ。ちゃんときちっと答弁していただきたいね。それが一つ。  もう一つ、これは何ですか、FSX民間合同研究会というのがありますね。三菱重工の名古屋航空機製作所技師長が中心になって研究会をつくってアメリカへ調査に行ってきた。これはどういう法的根拠を持ってこういうことをやっておるわけですか。
  171. 西廣整輝

    説明員西廣整輝君) これは私が必ずしも専門でございませんのでお答えする立場でないかもしれませんが、私の知っている範囲でお答えしますと、航空機を仮に開発をする、新しいものをつくるということになりますと、当然私どもの方に技術担当者というものがございますが、実際にそれを生産した場合に、どのくらい金がかかるかとかどのぐらい工数がかかるとか、そういった問題は民間会社でないとわからない。そういったことでかねがね国産する場合にはということで何社かが一緒になった、五社ほどでつくられた、そういうものを検討する民間の会というものが存在しておるわけであります。そういったところが、我々が必要な場合に資料を提供してくれるという関係にあるわけでございますが、それとアメリカ側の民間会社との間でその種の点について検討会を行ったということでありました。
  172. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 ということは、この研究会の報告をあなたの方の防衛庁のF1後継機総合検討委員会が受けて、それをもとに検討していらっしゃるわけですから、民間のそのものは、これは全く法的根拠があるのかないのかということだけやっぱり明確にしていただかないと困るわけです。  それから、先ほどの性能、私が聞いていることにちゃんと答弁していただきたい。
  173. 西廣整輝

    説明員西廣整輝君) まず前段の方の御質問でございますが、私どもは民間がやったことについても、現在つくっておる検討委員会ではそれを参考にして話は聞いておりますが、彼らが考えたものが私どもの決定の候補になるということでは必ずしもございませんで、あくまで彼らがやってきたことについてのデータというものを参考にしておるということであります。  それから第二点の性能でございますが、私は先ほどのお答えで尽きておると思いますが、さらに一般論として申し上げれば、現在ある例えばF15というのは要撃戦闘能力、それもそう多くない要撃戦闘機で、日本という細長い地形をカバーするために八百マイルでしたか、の行動半径というものを持っております。  一方、FS任務につきましても、FSというのは、例えば上陸されるその地点に存在をしている基地にいるということは非常に困難であります。というのは、例えば上着陸が行われるような事態であれば、当然その前段階に相手方の熾烈な航空攻撃というものがまずあるということでありますので、その段階では被害を受けないような地域まで後退をしていなくちゃいけない。そして実際に上着陸といったような侵攻が始まった際に阻止行動を行わなくちゃいけないわけですから、かなり後陣から出かけていかなくちゃいけないということになりますので、これまた相当な航続距離というものが要ろうと思っております。  そういったことを含めて、現在二十一世紀が航空機が活動する時点になりますので、その時点にはどの種の性能のものでどういったものが要るかということを今検討中であるわけであります。
  174. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 もう時間が来ましたからこれでぴたりやめますけれども、本当に今の足の問題でも八百マイルと、こう今おっしゃいましたが、私の手元にはきちっとしたFSXの行動半径がどのくらいでどうのこうのという資料があるんですよね。そういうことをはっきりおっしゃらないというのはやっぱりよくないと思います。  それから、先ほどの研究会の問題ですけれども、参考にしてとおっしゃっておりますが、これははっきり一言おっしゃっていただきたいんですが、法的根拠とかこういうようなものは私的なもので全くないんでしょう。
  175. 西廣整輝

    説明員西廣整輝君) おっしゃるとおりであります。
  176. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 まず、地価対策の問題についてお尋ねしたいと思います。  最近の東京を初め大都市圏の地価高騰狂乱ぶりはまことにすさまじいものであります。毎日のように新聞に御存じのこういった折り込みが本紙よりも分厚いくらいどっさりと入っております。そこを見ますと、今や物件は一億円以上、億単位というのがざらでありまして、普通の勤労者でいきますと、平均サラリーマン賃金で二十年分です。食うや食わずでも果たして手に入るかどうかという、こういう姿であります。  最近NHKが三週にわたって報道特集「世界の中の日本・土地はだれのものか」というのを放映いたしまして、ロッキード事件以来だと言われるほどのNHKとしてもかってない反響が視聴者から寄せられたとのことでありますが、そこで内閣の番頭役を務められる官房長官にまずお尋ねをいたしますけれども、この狂乱地価が国民生活や地域社会にどんな深刻な影響を与えているか、そしてそもそもこういう事態に至った政府の責任をどう感じておられるか、ここをまずお答えいただきたいと思います。
  177. 後藤田正晴

    ○国務大臣(後藤田正晴君) 佐藤さんおっしゃるように最近の異常な地価上昇、これは私は経済問題をはるかに超えて社会的な問題にまでなってきていると思います。このような状況下ではとてもじゃないが勤労意欲そのものすら喪失するといったような事態になっておると、深刻に政府としては受けとめておるわけでございます。  この問題、実は昭和四十七、八年の第一次の狂乱地価の問題が起きたときにこれをどうするかということで、実は各省庁の俊秀と言われる人にお集まりをいただいて毎朝連日にわたって対応策を研究をし、検討もし、その結果御案内のような国土利用計画法、その後に成立もしたわけですし、あるいは税制の改正も行ったし、あるいはまた公共事業あるいは土地問題を処理する特別のお役所としての国土庁、こういうものもつくったりして今日に至って一時鎮静化しておりましたが、最近の状況はまた当時を上回る。これは一つには私は情報化社会、国際化時代を迎えて都市の管理機能というものが一点に集中してしまいつつある。それは日本の場合には東京に集中をしてきておる。そうなると需要と供給、つまり土地はとても再生産がきかぬわけでございますから、需要と供給の極端なアンバランスといったようなことで、今日のこういったような一部地域における異常な土地の高騰、それに投機も加わってくる。そうすると、居住する人はその地域から相続その他の関係もあり、だんだん外へ押し出されていく。そうすると、その人が今度は周辺の地域で土地を買う、それによってまた周辺が上がっていく、こういったような悪循環が行われつつあるわけでございますが、この点については政府としては深刻に受けとめてこれに対する対応策を検討し、そして今当面やるべき措置は何々である、中長期に検討すべきものは何々であるといったようなことを改めて見直して、できるものからやっていく。  それで、この国会でも既に税法の改正、超短期の土地転がしに禁止的な税負担をかけるとか、あるいは国土利用計画法で、たしかあれは監視区域でございましたかね、それの法的根拠も与えるといったようなことをしておりますから、現在の法制のもとでできる限度のことは各省庁にやってもらおう、そして、同時にまた対応策については、これは土地臨調を設けるという野党の一部の御主張もございました。それらを受けまして、ポスト行革審で土地の専門部会をつくっていただいて検討していただいて、十月の十二日に御答申をちょうだいすることにしております。これは当面の対策です。  当面対策はそれでやって、そして同時に中長期には、やはり土地とは一体何か、土地とは本来公共財的な色彩を包含しておる、土地所有権の中には。ならば、それは一体どこまで規制ができるのかという、最終は憲法問題にもなると思いますし、所有権は所有権として認めるが、利用権は別ではないかという御議論もあろうかと思います。こういったことを一応御検討していただいた上で、そして国民の皆さん方からも広く意見を聞かせていただいた上で、これは政府としてはこの問題が最重要な課題であるという決意でこれは取り組まなければならない課題であると、こういうふうに考えておるわけでございます。  もちろん、当面の対策の中で今一番我々が強く指導をお願いしておるのは銀行の土地融資の問題でございます。これに対しては大蔵大臣のところで各銀行に対する厳しい行政指導もしていただいておるというようなことで、できる限りの当面のことはやっておりますが、根本対策はこれから大きな政治課題として取り組む、こういうつもりでおるわけでございます。
  178. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 国土庁にお尋ねをしますけれども、言うまでもなく土地は本来国民のもの、生活の基盤であります。それがもう多く例を挙げるまでもなく今根本から崩されようとしている。こういう狂乱地価、地価暴騰の主な原因、主犯者はだれなのか。まず自然に暴騰してきたということではない、ここらについてはこの地価の監視役、国土庁としてはどういう見方ですか。
  179. 片桐久雄

    説明員(片桐久雄君) 最近の東京を中心といたします地価の上昇につきましては、まず数年前から東京の都心の商業地につきまして地価上昇が起こったわけでございますけれども、これは我が国経済の国際化、情報化、サービス化等の構造変化に伴いまして、業務機能とか管理機能が東京に一極集中促進されたということによりましてオフィス床の需要が著しく増大しまして、それにより旺盛なビル用地需要が招来し、供給とのアンバランスが生じてこれが地価上昇の機縁になったというふうに考えている次第でございます。
  180. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 抽象的に言われていますけれども、このビルラッシュ、それはだれの手によって引き起こされたのかという、ここでありますけれども、建設大臣、こういう地価暴騰の主な仕掛け人といいますか、企業で見たら、それは大企業なのか中小企業なのか、お尋ねするまでもないと思いますけれども、大企業の側ですね。
  181. 天野光晴

    ○国務大臣(天野光晴君) 両方じゃないでしょうか。
  182. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 中小企業がそういうビルラッシュを促進する中心的役割をしているんでしょうか。ちょっとそこらをはっきりしていただかないと、今後の対策が的を射た対策になってこない。  国土庁、再度聞きます。この東京二十三区で二千平米以上の土地の所有者、それは全体の所有者のうち何%か、そしてまた、それらの法人、個人は二十三区全体の面積の何%を保有していますか。
  183. 片桐久雄

    説明員(片桐久雄君) 東京都の資料によりますと、二十三区における全土地所有者のうち二千平方メートル以上の土地を所有している者の割合は二・三%でございまして、その所有する土地の面積は全体の四五・四%になっております。
  184. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 今の御説明で明らかなように、二・三%の法人ないしは個人、これが面積では四五・四%を保有しているということですから、明らかに少数者への土地の集中が進んでいるわけであります。あのNHKの報道によりますと、都心部の民有地の六〇%以上が企業の所有地だというふうに報告をしておりましたけれども、こうした都市の中心部が大企業、大資本による土地所有の増加、買い占めが急速に進んでいるということを今の数字は特徴的に示しているということですね、国土庁。
  185. 片桐久雄

    説明員(片桐久雄君) 今手元に時系列の数字がございませんけれども、六十年の、この時点での数字は先ほど私が申し上げたような数字になっておるわけでございます。
  186. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 とにかく今確認を求めましたような数字が明らかに物語るように、今日の狂乱地価、地価高騰、これの中心的な責任、これは大手不動産、金融機関、ここにあるんだということはもう明白だと思うんであります。しかもこれらのグループは、日本の国内だけじゃない、アメリカやイギリス、オーストラリア、そういう海外の不動産まで財テクと称しつつ乗り出そうとしている、こういう姿でありまして、でありますから新聞にも報道されていますように、九月の中間決算見通しでいきますと、信託銀行の関係はこれまで利益が最高であった去年の九月に比べても、なお対前年二〇%から四〇%さらに増益、こういう決算見通しになっているというふうに言われています。  ということで、本当にこの土地をがあっと買い占め、そのことによって資産の蓄積をし、利益を膨大に膨らませている。まあ少しオーバーな、オーバーというか別の表現をすれば、国民の生き血を吸って肥え太っているというふうに言わざるを得ぬようなこの姿じゃないかというふうに思うんですけれども、建設大臣、言い過ぎでしょうか。
  187. 天野光晴

    ○国務大臣(天野光晴君) その詳しい中身についてはまだ私不勉強でございますし、このごろどうも私のお座敷が多くなってきておるのも、ちょっと対立的な発言するものですから呼ばれていると思うんです。きょうも、本来ならば私でなくて国土庁長官が、局長でなしに出てくるべき性質のものだと思う……
  188. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 きょう出てこれぬといって、
  189. 天野光晴

    ○国務大臣(天野光晴君) だから、委員会に出てこれないなんという大臣はあるはずありませんから、佐藤さんのこと恐れをなして出てこないんじゃないでしょうかね。  まあ冗談は別としまして、土地問題は相当大きな手おくれになったと思っております。それですから、中曽根内閣のこの最後の段階に来ましてこれだけはどんなことがあろうと目鼻をつけてもらうという約束をしてありますから、先ほど官房長官も発言されたように、まあてんぐ様ぐらい力があるんだと思うんですが、来月の十二日に答申を受けて、あと二週間きりない中でこの始末をしてくれることになっておるんで、私非常に興味深く見守っておるのでございまして、そういう点ひとつお含みの上、かえって資料を出していただいて御協力願えればありがたいと思います。
  190. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 次に大蔵大臣、お待たせしました。お尋ねをいたします。  大蔵省としても土地関連融資に関して通達をしばしば出してこられました。そこで、結果として土地騰貴になるようなそういう融資、こういうようなものは慎めという趣旨でいろいろ手を打ってきたんだというふうに先ほど来も申されておりますけれども、果たして効果は上がってきておるでしょうか。
  191. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 私は今の段階で非常に効果が上がってきたと思って見ておるわけであります。と申します意味は、前から銀行局長通達を何度かいたしておりましたが、これはある意味で、どう申しますか、一般論とでも申しますか、というふうに受け取られておったかもしれないと思いますが、年の初めからだんだんこういうことになりましたので、国会でのお声もあり、私どもの方で特別ヒアリングというものをいたしました。これは特定の金融機関と特定の地域、値上がりの激しいような地域等々を対象にして、いろいろ国土庁の御協力も得て具体的な資料に基づいてかなり具体的なヒアリングをしておりまして、どうしてそういうことが起こったのか、現状はどうなのか、これからどうするかといったようなところまでを役所の方で手分けをして聞いておりますので、金融機関としてもこれは容易なことでないという認識を急速に持っておるように拝察しております。
  192. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 効果を上げておるというふうにおっしゃいますけれども、私は本当にそうだろうかということで必ずしも大蔵大臣の今のお言葉を信じがたいんです。マスコミでもしばしば報道されているところでありますけれども、買い占めだけじゃない、銀行みずからが土地転がしをやっているというような報道も大臣も拝見なさったことあろうと思いますけれども、何しろさっき私申し上げましたように、信託銀行の関係が史上最高とも言うべき、そういう空前のもうけを上げているわけでしょう。  この関係で京都での一例をちょっと申しますけれども、京都の町を御存じの方は思い浮かべていただきたいと思いますが、町の中心部、三条河原町というところがあって、あそこを行くと大橋があって、昔はあそこに高山彦九郎の銅像があったということで、近くには京都の市役所もある、そしてまた京都の一番の繁華街である新京極というところが近くにある地域ですけれども、そこの東へ進んだ一画を日本債券信用銀行が百三平米、十六億円、ですから坪五千百万円ぐらいになろうかと思いますけれども、この融資限度額というものを打ち出しておるんであります。そしてこれは国土庁の地価公示価格の数倍ということで、これはそういう投機的な融資というようなことをやってはいかぬ、またそのことを誘発するようなそういうビヘービアはとるなということで大蔵省は通達もなし、指導もしているとおっしゃいますけれども、現にこういうことが起こっている。これは一例でありまして、何でしたら後から大蔵大臣に差し上げてもいいんですけれども、京都の中心部のところをもう虫食いのようにぐうっと大企業、大資本が進出をしてきているんです。そういった点で、通達を出してやってきているとおっしゃっているけれども、本当にそれが実を上げているのかどうかということをよく実情を徹底して調べて指導の徹底を期す、指導の万全を期す、こういうことで大蔵省として一段と方向を強めていただきたいというふうに、大蔵大臣、どうでしょうか。
  193. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) さように心がけております。
  194. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 次に官房長官、お尋ねをいたします。  こういうふうに地価高騰の重要な原因に大企業の、大資本のそういう役割があるということは明白でありますが、ところで一方、自由民主党はこれらの業界からたくさん政治献金をおもらいになっていると。一体どれくらい自由民主党としてこれらの地価問題、土地問題に関係をする業界から政治献金は入っているかと。
  195. 後藤田正晴

    ○国務大臣(後藤田正晴君) 官房長官が答えることなのかね。これは党が政治献金をちょうだいしておるんで、自由民主党の幹事長はお答えするんだろうがそういうわけにもいきません、これね。そうすると総理大臣になるのかなと、総裁ですから。留守だから私に当たってきた、こういうことであろうかなと、こう思うんです。  先ほどからお話を承っておると、今日のこの狂乱地価、これは放置できませんね。この原因をつくっているのは大手の不動産業者あるいは金融機関であるという佐藤さんのお話、まさにそれは私は大きな責任を感じてもらわなければならない業界だと思います。しかし、なぜそういうことになっておるのかということになると、やはりそこに投資をするということは安全でしかももうかるという前提がありますね。それはなぜかといえば、私は、国際化社会、情報化時代、これを迎えて都市機能の一点集中ということが原因になって、そこで土地の需要、供給のアンバランスということからこういう異常な現象が出てきて、国民生活に重大な脅威を与えるようにまでなってきておる、こう思います。しかし、それじゃなぜそうなったのかといえば、これは国際化あるいは情報化というのは私は時代の流れであるし、そして同時に経済の流れであろうとも思うわけですね。だからこの土地問題の解決というのは、よほど腰を据えて抜本的な対策を講じない限りはこれはなかなか容易な課題ではない、かように考えております。この点は十分含んだ上で政府としては取り組んでいきたい、こう考えるんです。  御質問の金融機関ですか、それから不動産業者から政治献金をようけもろうておるやないか、こういうお話だけれども、政治献金の届け出は共産党が一番多いですね、これは。まあしかしあれは事業収入だ。それははっきり言っておく。それは心配ない。  そこで、私の承知している範囲では、五十九、六十、六十一年を比較してみますと、不動産業界の献金は減っておると思いますよ、金額は。それから金融機関は若干六十一年度はふえておる、十四億ぐらいになっておるんじゃないでしょうかね、若干ふえておる、こういうことでございまして、最近の異常な土地の上昇、それに絡んで政治献金が格別に自由民主党に集中しておるというもし御疑念での御質問であれば、それはそうではないと、かようにお答えをいたしておきたい、こう思います。
  196. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 先日、九月四日付で官報に政治資金報告が掲載をされました。私、いろいろぱらぱら出てくるやつをずっと整理してそろばんを入れてみたんですけれども、第一位が銀行、金融関係十七億五千万円、第二位が建設、不動産の関係九億六千万円、第三位が保険業の関係五億九千万円ということで、まさに土地問題に関係をする分野で上位三位を独占をしているということで、私はこのことを国民が見たら、この姿は何だと、片一方でこういうことがやられながら、一生懸命やります、対策を講じますというふうに政府、与党・自由民主党と一体の政府でありますけれども、口でどんなに言われたって、それは国民はなかなか腹の底からはちょっと信じられぬという気持ちが起こるというのは当然じゃないかというふうに思うんです。まさに政界と財界の癒着の姿と、こう言うべきものじゃないかと。こうした点で一遍、私のそろばん入れた限りではこういうことであって一位から三位まで上位三つを独占をしておると、その関係で。ということで必要があれば一遍また官房長官もそればんを入れたらいいですけれども、これが事実であればやっぱりちょっと反省をしてもらう必要があるんじゃないでしょうか。
  197. 後藤田正晴

    ○国務大臣(後藤田正晴君) 確かに政治に金が要ることはこれは否定できません。しかしながら、私は最近の余りにも政治に金がかかり過ぎるということについてはこれはやはり節度を考えなければいけない、そうしなきゃ政治そのものに対する信頼感を失うという危惧の念を持っておる一人でございます。そういう点についてはあなたとそれほどの大きな開きはないんだけれども、ただ今おっしゃった数字が大分違うんですよ。これ私は自治省の調べで、どっちが本当がよくわかりませんけれども、自治省の調べでお答えしておる……
  198. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 じゃ一遍突き合わせしましょう。
  199. 後藤田正晴

    ○国務大臣(後藤田正晴君) ただ、順番はおっしゃるように銀行業界、それから建設、不動産業界一まとめ、それが二番目、それから三番目が鉄鋼、金属、そしてその次が保険と、こういったような関係になっております。数字は大分違っております。後でまたこれは事務的に連絡をさせますから。いずれにいたしましても、おっしゃるように政治に金はかかるけれども、最近の傾向はこれはよほど自制をする必要がある、かように考えております。
  200. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 官房長官は定例記者会見だそうですから、まだまだお尋ねしたいことがありますけれども、どうぞ残念ながら退席してください。  そこで、次に建設大臣にお尋ねをいたしますが、ずっとお聞きになっておりましてこういう地価暴騰の政治責任、その重要な一つに中曽根内閣の民活路線といいますか国有地の大売り出し、これが重要な要因の一つにもなってきたということは明瞭だと思います。こうした点での建設大臣の見解を求めたいと思うんでありますが、このことにかかわりましてさっきもちょっと触れました三回連続でやったNHKの報道特集、特に一週間前のやつ、諸外国の土地、地価対策をずっと報道しておりました。例えば西ドイツのケルン市、ここで国鉄の跡地を市へ払い下げるということで、西ドイツの国鉄も大変な日本と同じような赤字だったんですね。ところが坪単価四万円ということで払い下げしている。片や東京の汐留は坪七千万円とこう言われているでしょう。何という違いかということで私も改めてびっくりしました。そして西ドイツでは国公有地の払い下げは地方自治体に優先権をまずはっきりさせる、そうして利用目的別に払い下げ価格を決めるということで、事務所用は一平米四万円、住宅用地は平米二万円、公園は四百円。言うなら日本では夢のようなそういう価格で、しかし国民生活最優先ということで公有地を払い下げをしている。フランスも同様で、パリの近辺の郊外地域で凍結の地価一平米五十七フラン、日本円にしたら百二十五円だという説明でした。イタリアも二十年前から地価凍結を打ち出しているということで、大臣このテレビごらんになったかどうかあれですけれども、本当に国有地の大売り出し、このことによって地価高騰に拍車をかけるというこういう日本のやり方を、今こそ反省すべきときに来ているんじゃないかというふうに私は思うんですけれども、建設大臣の御見解どうでしょうか。
  201. 天野光晴

    ○国務大臣(天野光晴君) 私主務大臣でありませんから、そういう意味で第三者的な立場で発言をいたします。  まず、土地に対する考え方ですが、日本と諸外国とではやっぱり根本的に大きな違いがあると思います。日本のように本当に狭いところで利用できる土地がわずかなところで、そこでこれほどの大勢の国民がいるわけですから、それは随分違うと思うんですが、私はそれは別として少なくとも国並びに公有地がこういうときに地価暴騰の助太刀をやっちゃいけないと思っておるんです。要するに今国土庁では事務所用ビルのために高くなった、それは事実そうだと思いますが、実際問題としてはやっぱりここ三年ぐらいの間国公有地の払い下げ競売ですか、競売によって地価が上がり続けてきたことは事実だと私は思います。そうですから十二日に結論が出るというのですが、私はここで地価凍結をするということは非常に問題がやっぱり大きいと思うんですが、地価凍結をする理由が国民に御理解を願える理由であれば、私は一定期商売買を停止してもいいと考えております。というのは、何の対策も政府が講じないで土地がめっぽう高くなるからここで売買は停止だとやったら日本の経済はパンクしてしまうんじゃありませんか。そういう点で私は対策を講じてやる、対策を講ずるからという前提条件ならある程度納得してもらえるんじゃないか。ただし、責任を持ってその期間において政府は土地の値下げを断行する政策を講ずるということをやらなければいけないと私はそう考えております。去年の春私が閣僚になってから言い続けてきている問題なんでございます。私の言い方が悪いのか、私の言い方が間違っているのかしれませんが、まだ本物の地価対策というものは行われておりません。  それですから、今になって十月の十二日に、どうも臨調答申を受けないと仕事ができないんじゃ、臨調が内閣総理大臣になった方がいいんじゃないかと思うんですが、どうもそのような気がするんであります。  御承知のように、この間国鉄法の改正をやるときに私の盟友運輸大臣は高く売るという主張をしました。これは立場上やむを得ないと思うんです。売って国に借金を返すということなんですから。本来なら国公有地、国鉄用地を高く売って借金を返せなんということを普通だったら言えるはずがありませんよ。こんな土地の値上がりがしてないならともかく、どんどん値上がりしているわけですから、もう頂点に来ています。これ以上私は上がるまいと思うんですが、ともかくもうここ数カ月というのが一番ひどい値上がりをした期間ですから、そういう点で私は国公有地は一応やっぱりある程度の時期までは販売は、何ぼ国鉄の借金を支払いするとしても、国が取るんですから、そうでしょう、売った金を国が取るわけですから、それを待ってやれないことはないんではないかと私思うんでありまして、そういう点で私は国公有地はやっぱりある程度の時期の間は売買は停止すべきだと考えております。  というのは、今の国土利用計画法というのはあれは私がつくった法律でございますが、この段階において地価評価を決める公示価格というものを決めますが、これは前年度の土地の売買価格で決めますから、三倍も四倍も高く売ったところの地域はその次の年は公示価格が高くなるのは当然なんですから、そういうんで積み重ねてきたところへここへきて大きな値上がりをしたわけですから、これは狂乱物価と、狂乱土地と言っていいと思うんでありますが、そういう観点で私は、私の受け持ちじゃないから、どうも余りしゃべるとまたあのやろうなんとあとやられると大変なんですけれども、いずれにしろこの始末は緊急につけなきゃいけないと思っておるんです。  私は、閣議で正直言って、十二日に結論が、答申が出てきたら、あと二週間で決めるようにというふうに極言をしておるんでございます。それですから、やっぱり国公有地の売買はここ当分停止すべきじゃないかと考えております。
  202. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 国公有地の売買は当面停止すべきだという大臣の御見解は、ぜひひとつその方向で一層の努力を願いたいというふうに思うわけでありますが、いずれにしても大分時間が経過してきましたので、ちょっとはしょらざるを得ないわけですけれども、国土利用計画法で現行法のもとでも、例えばこの規制区域というものを打ち出して、取引やらそういうものをチェックをするというシステムがあるんですけれども、これは法律制定後一回も発動したことがないということなんでありますからね。これは国土庁の側の問題かもしれませんけれども。そういうことですから、やっぱり事ここに至ったその点での政府の責任というのは免れないということを、ひとつそういう深い反省の上に立って今後の対策も一段と強化をやってもらう必要があるというふうに思うわけであります。  そこで、もう一つこの問題に関係をして建設大臣にお尋ねをしておきますが、今大きな問題になっているのが建築資材の値上がりですね。先日も党として申し入れをさせていただいたわけでありますけれども、国民にとっては踏んだりけったりというか、首は切るわ、炉はとめるわということで、生産を落とせということでやってきている。しかし片一方で、大幅値上がりが起こるというのは、もう全く矛盾をした話でありまして、加えて木材の値上げも問題になってきているということでありますので、建築資材の値上げ、これは極力抑制、抑えるよう、これも主管が違うとおっしゃるかもしれませんけれども関係方面にひとつ働きかけを大いにお願いをしたいと。大臣どうでしょうか。
  203. 天野光晴

    ○国務大臣(天野光晴君) この問題につきましては、御承知のように最もひどいのは鉄鋼関係だと思いますが、製鉄所の室蘭も釜石も北九州も皆全然とめたのもあれば半分にしたところもあるわけですから、そういう関係で失業者が何十万と出まして、その失業対策を政府がやりました。そしてまた、その不況地域と称して、その地域に対しては公共事業の掲載分まで我々はやったわけでありますが、そういう点で、ことしの補正予算を決めた段階において私は強くこれを強力に発言しているんです。  というのは、一般会計当初予算が八〇%以上前倒してやる。そして今度五兆円の補正をやるということになりますと、生産は制限している、使用が増大してくれば相当の物価値上がりがあるだろう。そういう点で、それを実施する段階におけるまでの間に生産体系を維持してほしいというお願いを私何回もやってきたわけであります。そういう点で、ようやくここへ来て通産大臣から手当てができたということでありますから、何とか格好つくんじゃないかと思っておりますし、どうしても最悪の状態、だめなときには海外から輸入したってこれはやらなきゃいけないと思って、それじゃ内需拡大になりませんけれどもね。計画して請け負った業者が参ってしまいます。これは内需拡大政策をとって仕事をやった業者が倒れちゃどうにもなりませんから。そういう観点で、これはほかの仕事じゃありません、私の仕事ですから。  木材だって農林省手持ちのベニヤを相当額を拠出させておりますし、そういう点で、ようやく軌道に乗ってきたようでありますから、いま少しこれは様子を見ていただきたいと思いますし、これは責任を持って始末をしたいと思っております。
  204. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 次に、地価狂乱の問題が単に東京中心だけじゃなくて、今や地方にまでも波及をしてきておるという事態になっているわけでありまして、私の京都でももうこの一年ないし半年の間に急速に空き地でフェンスを張ってというのが物すごく目立ってきた。というのは買い占めがどんどん進行しておると、底地買いが進行しておるということのあらわれなんですね。これは朝日新聞ども報道したところでありますけれども。  そこで国土庁、この首都圏に次いで激しい事態になっているのは近畿圏だと思うんです。そうした点でひとつ京都市も含めて近畿圏といいますか、大阪圏に監視区域をひとつ設定をすると、こういう方向で自治体をよく指導をしてもらいたいというふうに思いますが、いかがですか。
  205. 片桐久雄

    説明員(片桐久雄君) 京都市とか大阪市それから神戸市等の大阪圏の大都市の中心商業地におきまして、最近非常に地価が上昇している状況でございます。国土庁といたしましても、こういう状況に対応するために八月四日に大阪・名古屋圏地価対策連絡会議というものを開催いたしまして、地価動向とか土地取引状況等に関して情報交換それから監視区域の指定に関する連絡調整等をやってきた次第でございます。大阪市におきましては、適正地価問題研究委員会というようなものを設けまして、監視区域の指定の検討を始めているというように聞いておりますけれども、私どもといたしましても、この大阪圏におきます地価高騰に対する対応策といたしまして、監視区域をできるだけ早期に設定する必要があるのではないかというような立場で、現在関係地方公共団体と緊密な連絡調整を図りつつ指導を行っている次第でございます。
  206. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 文部大臣、大変お待たせいたしました。  大資本による土地買い占め、これが正常な市民生活の破壊であると同時に、伝統的文化の破壊にも今日なってきているということで、その典型例が京都のいわゆる頑固祭りの存続さえ危ぶまれるという、こういう状況になってきておるわけであります。祇園祭りは、日本の三大祭りの一つで、この鉾は重要有形文化財、巡行行事は重要無形文化財という指定を受けておるわけですけれども、大臣の選挙区も河内飛鳥など文化財の多いところで、文化財の保存というのは今日の政治家が後世に残すべき重要な使命だというふうに私は思うんですけれども、大臣も御同感のところだと思いますけれども、ところが底地買い、ビルラッシュ、こういうことによっていわゆる氏子がどんどん町から出ていかざるを得ないということで、祭りの行事を引き継ぐ人がいないというのが鉾町三町内で既にそういう姿になってきているというので、これが他の町内にも波及をしていこうという動きになってきておるわけであります。例えば、京都の大文字、昔は五山の送り火というのは鴨の河原で立っていても全部すっと体を回したら見られたんですけれども、今はもうビルの林立で見えないんです。そういう例、あるいは祇園祭りの例、こういうことでそういう文化的な都市計画といいますか、文化的伝統行事、こういうものを守るためにも、今日大資本による勝手な乱開発、買い占め、こういうことはひとつ食いとめなくちゃいかぬという、これは文部大臣サイドからもそういう点にひとつ目を向けていただきたいというので、もう時間ありませんから続けて言いますけれども、そのことが一つ。  それからもう一つは、頑固祭りについて、いろいろあれの緞帳の修理とか、囃子方の後継者養成とか、こういうものに補助金が出ているわけですけれども、この巡行費に対する補助がこれが出ていないというので、地元負担というか氏子の負担がかなりかさんできているわけです。文化庁の来年度の概算要求、これを見てみますと、全体では対前年八・三%ということで今までになく文化庁予算はふえた、ふえたってまだ決まったわけじゃないですけれども、ふえる方向、こういうことになっているわけですけれども、この文化財保護費というのは二・二%、対前年度増ということで、やはりまだ弱い部分になっているんじゃないかという乙とで一つの例を挙げて申し上げているわけですけれども、そういう伝統文化あるいは文化財、こういうものを守るために、文部大臣としてひとつ一段の御努力をお願いをしたい。答弁を求めます。
  207. 塩川正十郎

    ○国務大臣(塩川正十郎君) 一つ最初の御質問でございますけれども、町並み保存とそれから頑固祭り等のその行事をやっていく子方でございますか、氏子がだんだん減ってまいりました。これはもう大変私たちも実は心配しておりまして、そのために祇園祭り保存会等にもいろいろと御相談を受けております。私も京都のあの周辺を見ましたら、確かにおっしゃるようにむちゃくちゃに開発されているような感じがしていまして、これは何とか抑制の方法はないだろうかなということを私も実は心配しておりまして、あの町並みを大事に残していくために市当局ともよく相談してやっていきたいと思っております。  それからもう一つは、巡行いたしますあの無形民俗文化財というのでございますが、あれは実は頑固祭り全体に対しましての補助金をいたしておりまして、そういう中でやりくりをしてもらっておることを知っております。一方、各鉾町でございますが、これにはそれぞれ財団法人等をつくりまして、それぞれ有識者からそういう基金を、浄財を集められるような体制もとっておるんですけれども、なかなかこれが十分に資金が集まらないこともよく聞いております。ついては、これはやっぱり大事な文化財でございますので、市当局、府と相談いたしまして、継続し得るようにいたしたいと思っております。  それからもう一つ、文化財の最近の状況で非常に問題は、それを維持、修繕して継続していく体制をとるということ、この技術保存が実は大事な問題になってきておりまして、私は、この春でございましたが、京都へ参りましたときに、祇園祭の保存会の田中さんという方から直接陳情がございまして、そのためにはそういう技術者を保存するために国も積極的に助成の対象にしようということにいたしまして、今度の補正予算にそれを盛り込んでおるというところでございます。  ところが、この技術者が全国的に把握するのが非常に難しい状況でございますので、とりあえず今やっておりますのはそういう職人の調査をしておりまして、それが判明しました場合に、何かこれを組織的にいたしまして保存の体制をとりたい、こういうふうな総合的な計画を持ってそれに対処いたします。
  208. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 大蔵大臣はけさ朝早くからずっと座りづめで、大分お疲れの御様子で御同情申し上げる次第でございます。きょうは抜山さんが余儀ない事情で質問を放棄されたので、その時間だけ早く終わればあるいはお喜びかもしれないと思うんですけれども、もともと私の質問は初めから十分間ということは不可能だと思っておりましたので、抜山さんの持ち時間全部を使うつもりはございませんけれども、多少食い込みますから覚悟しておいていただきたいと思います。  土地問題、地価問題の重要性、それから国民的関心の深さについては、ただいま佐藤委員から御説明がありましたのでここでは繰り返しません。また、この対策の問題も政府全体の問題で、大蔵省のなし得ることはそれほど多くはないと思いますけれども、しかし、やはり大蔵省自体としてもなし得る面があると思いますので、きょうはその大蔵省関係の問題に限って質問したいと思っております。  先ほど天野建設大臣も言われましたけれども、土地問題というのはやっぱり中長期的な、後藤田官房長官でしたか、言われましたけれども、中長期的な問題と、それから短期の目前の値上がりを抑える問題とに分けて考える。そのとおりでございますけれども、目前の問題を考える場合におきましても、やはり中長期的な観点を頭に置いて対策を講ずべきだろうと思うんであります。大蔵大臣はあるいはこの十一月には総理大臣になることを期待しあるいはまた期待されているニューリーダーの一人でありますので、やはりそういった観点から土地をどういうふうに考えるか、このことをやはりお聞きしておいて、そして今後の施策の参考にもしたいと思いますので、まず土地の特殊性ということをどういうふうに考えておられるのか。日本の憲法は特に土地について特別の条項を設けておりませんけれども、私はこれは日本の憲法の欠点じゃないかと思っておりますが、ヨーロッパあたり、先ほど佐藤委員の話にもありましたけれども、土地に対する考えがかなり日本と違うように思うんです。何か日本では、土地というのは普通の財貨と同じような考え方で、投機の対象なんかにもなっているわけですけれども、土地の特殊性ということを大蔵大臣、どういうふうに考えておられるのか、まずそのことを質問したいと思います。
  209. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 確かに、関委員の言われましたような意味での土地の特殊性を、日本の法律は特には特徴づけていないということは申せるかと思います。いわば私有財産の一般の対象であるということを、特にさらにそれを超えて土地だけはということは、一般的には言えないことかもしれないと思います。ただしかしながら、旧憲法、新憲法を通じまして、私有財産そのものはもとより尊重しなければならないわけでございますけれども、これが公共の福祉あるいは公の目的のためには、正当の代価、対価あるいは補償を払うことによってその制限をすることはできるという思想は、一貫して今日に及んでいるように思います。また例えば、土地収用法であるとか国土利用計画法等は、具体的にそれを申しておるわけであります。  土地収用法は、戦前にはまた現実に発動されたことはそんなに珍しいことではなかったと思いますが、戦後、我が国のいわゆる民主主義、いわゆると申し上げますが、という考え方の段階のどこかで、公共の福祉のために収用法を発動するといったようなことが事実上ほとんど行われないようになって今日に及んでおるのではないか。と申しますことは、問題は、法制そのものの欠陥にあるのではなくて、その法制によって与えられた権限を行使する場合が、国民のいわば世論と申しますか、コンセンサスと申しますか、そういうバックを欠いておるあるいはおるやに考えたために発動されていないというところに問題があるのではないかと思っているわけであります。  そこで現実に、大都市等において土地の私有権というものは、私はかつてもう十年ぐらい前でございましょうか、ある程度これは公共財である、そういう性格を持っておるということを申したことがあるわけでございますが、少なくともその権利の上に眠るといったようなことは、非常にそれが公共的な性格を持つ場合には排除されてやむを得ないんではないか、つまり私有権と利用権というものを場合によっては分けて考えるということは、その特定の土地、特定の状況においてはあってもやむを得ないのではないかというふうに前から考えておりますし、今日もそう思っております。ただ問題は、したがって法制に欠陥があるのではなくて、そのようなことが場合によっては正当な対価を払うことによって行われてもそれはやむを得ないことである、あるいは民主主義というものは本来そういうものであるといったような世論の成熟あるいは世論のバックアップ、そういうものをどうやってつくるかというのがただいまの問題ではないか、そういうふうに考えております。
  210. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 確かに、国民の世論が未成熟であるというか、あるいは間違った考え方を持っていると私は思いますが、それはいわゆる自由経済、自民党はいわゆる自由経済を進めておられるんですけれども、それに従っていわゆるデレギュレーション、いろんな規制を外していく。私は、自由経済というよりもむしろ価格経済というか価格機構、プライスメカニズムによって需給の調整を行っていく、そういった経済の有効性を信じておりますし、また、行政的な規制というのはできるだけ少なくしていくべきであるという考え方を私も持っておりますけれども、しかし土地は、いわゆるお金あるいは労働力なんかと同じように特殊な財貨であって、これは各国ともいろいろな規制を設けているわけで、何かできるだけデレギュレーションでやらなくちゃいけない、自由経済だからデレギュレーションでやらなくちゃいけないという考え方が政府の土地対策、地価対策のおくれを招いたんじゃないかというふうに私は考えております。  民社党の考え方を申し上げますと、土地は社会的必要性によって利用さるべきものであるという考え方を発表しているんですけれども、その社会的必要性というのは、第一は、土地というのは市民生活を営むための住居あるいは道路、そういったものの基盤、いわば生活を保障する必要物である、このことをまず第一に考えるべきじゃないか。それから、もちろん土地はそれ以外に農業あるいは商工業のために生産あるいは流通の拠点になっている。これは、その面だけから考えますと経済性を考えて利用すべきものだというふうに考えておりますけれども、やはり第一の市民生活の拠点であるという考え方から私は必要な場合、規制をすべきじゃないか、そういう観点から以下質問をしたいというふうに考えております。  これは先ほど佐藤委員からの指摘もあったんですけれども、現在の東京を中心にした大都市の地価暴騰の一つ原因が不動産業者なんかによる都心の土地の買い占め、さらにそれが周辺の住宅地に及び、さらに最近では田舎の住宅地、あるいは別荘地、さらに海外にまで及んで、投機の対象として買いまくられている、このことが一つの大きな原因だと思います。その場合、地上げの成否は金繰り次第という言葉が業界のはやり言葉になっているそうでありますけれども、やはり金融緩和で資金の使い道に困っている金融機関の融資が少なくとも今までそれを助けてきたことは否定できないだろうと思います。  まず最初に、事実関係質問をいたしますけれども、全国銀行、いわゆる都市銀行、地方銀行、信託銀行その他、つまり銀行局管轄の金融機関昭和六十一年度の融資残高の対前年との比較、それからそのうちの不動産業への融資残高の対前年増加率、そのことをまず数字としてお示し願いたいと思います。
  211. 平澤貞昭

    説明員(平澤貞昭君) 全国銀行ベースで数字を申し上げますと、六十一年度末の融資残高は二百九十八兆六千四十五億円でございます。対前年度比一二・三%の増となっております。  このうち不動産業向け融資残高は、三十兆二千九百八十三億円でございまして、対前年度比三六・二%の増となっております。
  212. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 ということは、不動産業以外の産業に対する融資残高は、その平均一二%よりもはるかに低いということで、つまりいかにこの一年間、金融機関が不動産業に対して融資をしてきたかということが、はっきりわかるだろうと思います。  こういった金融機関に対して、もちろん銀行局としてはいろいろ通達を出されたわけですけれども、私がいただいた資料によりましても、昭和六十年の七月三十日以来三回ほど出されているわけです。これは三回も出されたということは、それまで余り効果がなかったということだと思いますけれども、今度の一番最近の通達、これは今までと違って、どういう点を強調しておられるのか、簡単で結構ですから、その内容をお知らせ願いたいと思います。
  213. 平澤貞昭

    説明員(平澤貞昭君) 今回と申しましても昨年十二月十九日に出しました通達でございますが、この中で特に投機的な土地取引等に係る融資、これについては従来以上に厳に慎しむことということを、改めて強く自粛を要請いたしますとともに、金融機関に対しまして報告を徴求する、その報告の際に詳しく説明を求めるということを行ったわけでございます。その後、これは十二月でございますが、地価の上昇が急速でございましたので、さらにこの通達によります一般的な報告のほかに、先ほど大臣からもお話がございましたように、特別ヒアリングということを新たに始めております。  これは、この通達には関連しておりますけれども、事実上の行政行為といたしましてやっておりまして、詳しくは申しませんが、個別に金融機関から詳しく聞き、かつ投機を助長するような融資については、それの回収その他を命ずる等具体的な指導を行っているということでございます。
  214. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 この通達に基づく行政指導が効果を上げることを期待しておりますけれども、もしこれに違反したような場合には、その銀行名の公表、発表というふうなことをやられますか。
  215. 平澤貞昭

    説明員(平澤貞昭君) 銀行行政上の監督権限は、通例は一般的な監督権限でございまして、今委員がおっしゃいますような具体的な問題につきまして、仮に我々として知り得た場合でもこれは公表しないということでございます。  といいますのは、一般的な銀行と行政との間の信頼関係というのがございまして、仮に公表ということになりますと、強制的な捜査権限がございませんから、それ以降金融機関の方も行政に対しまして率直に事情聴取等に応じないということ等もございますので、具体的な問題については個別には行政として指導いたしますが、対外的には公表しないということでございます。
  216. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 確かに銀行は私企業ですから、余りにお役所が介入するということは確かによくないことでありますけれども、そういった一般的な指導だけで果たして投機的な不動産に対する融資の抑制ということが、可能かどうかいささか心配しているわけですけれども、例えば融資の限度、六〇%とか七〇%までしか融資してはならない、そういうことを指導する権限はあるんでございますか、また、やるおつもりがありますか。
  217. 平澤貞昭

    説明員(平澤貞昭君) 過去にこの土地の問題と関連しまして融資の限度の指導をしたことがございます。  それは、御存じのように昭和四十七、八年ごろの狂乱物価のときでございまして、このときは全国的に土地が一斉にほぼ同じ上昇率で上がりました。これは今回と違うわけでございます。今回は極めて特定の地域のみ上がるということでございます。  それから、もう一つの違いは、前回の場合は非常に景気が過熱いたしまして、一般的に金融政策を含めまして経済政策が強く引き締めの政策をとっていたという点が今回と違うわけでございます。  したがいまして、今回のような場合に仮に金融機関ごとに融資限度ということを設けましても、地方の金融機関と、それから都市、特に東京を中心とする金融機関との間でどのようにこの融資限度に差を設けるかという問題もございますし、それから、片方で経済政策といたしまして土地開発あるいは住宅供給等々、民活、公共事業の繰り上げ施行その他をやっておりますときに、総量的な規制をするということになりますと、そちらの方へもこの金融が回らなくなるということもございます。場合によっては、そういうところへ回るべきお金が、枠を決めましたためにむしろ土地の値段が高い方へ回っていくというおそれもございますので、いろいろ問題が大きいわけでございます。  そういうこともございまして、今回はむしろ個別に一つ一つ、金融機関が現在の地価の高騰の問題、特に反社会性を認識いたしまして、融資に当たって厳正にやっていく、きめ細かくやっていくということが重要だと考えまして、先ほど申し上げましたような行政上の指導を行っているということでございます。
  218. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 おっしゃるとおりだと思いますけれども、例えば地方と区別して大都市なんかの明らかに投機的な買い上げというふうな場合には、これは自粛するにしましても、なかなかそれの区別がはっきりしないような場合もあるんじゃないかと思うんですが、大都市に限って融資限度を個々に設けるということはできないんですか。
  219. 平澤貞昭

    説明員(平澤貞昭君) 例えば都市銀行を例にとりますと、大都市に仮に店がございましても融資先は地方の企業ということもあるわけでございます。逆に、地方に店がございましても融資先が大都市ということもあるわけでございまして、仮にその枠を設けるといたしましても非常に難しい問題があるわけでございます。  それから、実需に伴う土地のための融資につきましても、この地価の上がりぐあいが例えば都心部分とそれからその周辺部分とも違いますし、融資の金額、これは必要な土地融資でございましても、その辺の額も非常に違ってくるわけでございまして、一概に都市と地方というふうに分けるのも非常に困難でございますし、むしろ実情に適さないということもございますので、消極的に我々としては考えておるわけでございます。
  220. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 そうすると、結局金融機関の自主的な、自主抑制といいますか、セルフレストレインドに期待する以外に方法がないということですか。
  221. 平澤貞昭

    説明員(平澤貞昭君) したがいまして、従来は通達でその旨強く指導したわけでございますが、しかし、委員がおっしゃいますように、金融機関といたしましても、仮に経営者がそういう意識は非常に持っておりましても、現場でそういう意識が薄い場合は融資が行われる可能性もあるわけでございます。そこで一つは、経営者に強く意識していただくとともに、その融資担当者もそういう意識で融資を行うという仕組みをどのようにつくっていくかということで強くその点も指導しております。  例えば、従来ですと支店に不動産関係融資を権限として任せている場合でも、すべて本部で統一的にこれを判断するということも行わせているわけでございまして、そのように金融機関が全行的に問題を十分認識いたしまして、個別個別の問題について具体的に厳しくやっていく、金融機関の自主的な判断でやっていくということが最も現実的である、そのように考えて指導を行っているわけでございます。
  222. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 その点は私はかなり考え方が違うんですけれども、自民党政府としてはいわゆる自由経済の建前を尊重される点からそういう答弁しか出てこないだろうと思っております。  次の問題に入りまして、これもやはり大蔵省の権限でかなりできるんじゃないかと思っていろいろレクチャーを受けてみたんですが、案外大蔵省の権限というのは限られている、つまり国有地の払い下げの問題ですね。  例えば新聞紙上でも、西戸山の公務員住宅であるとか、汐留の国鉄用地であるとかあるいは林野庁跡地なんか新聞をにぎわしておりますけれども、この国有地の払い下げについて大蔵省の持っている権限は必ずしも大きくないということがわかったんですが、国有財産法の第七条に、「大蔵大臣は、国有財産の総轄をしなければならない。」というふうになっておりますけれども、「総轄」というのは一体どういうことでございますか。第四条には、「国有財産の」「管理及び処分について必要な調整をする」というふうなことが書いてありますし、また第十条の第一項では、各省庁の管理している土地ですけれども、「各省庁の長に対し、その所管に属する国有財産について、その状況に関する資料」の提出、「報告」その他と並んで、「その他国有財産の管理及び処分の適正を期するため必要な措置を求めることができる。」ということなんですけれども、「必要な措置を求める」というのはどの程度の権限でございますか。
  223. 藤田弘志

    説明員藤田弘志君) まず「総轄」の定義でございますが、先生おっしゃるとおり国有財産法第四条に出ておりまして、「国有財産の管理及び処分の適正を期するため、国有財産に関する制度を整え、その管理及び処分の事務を統一し、」、あとずうっと飛ばしますが、「必要な調整をする」という、統一とか調整という感じの権限でございます。  それで、第十条で報告を求めまして「必要な措置を求めることができる。」、こうなっておりますが、これお法令等に照らしまして適正でないという場合に必要な措置を求めることができることになっておりまして、個々の財産の具体的な処分につきましては、御説明したかと思いますが、大蔵大臣が直接やりますのは一般会計の普通財産と特待会計、あと大蔵省に属します財産でございまして、特別会計の財産は特別会計を所管します各省各庁の長が処分等をする、こういう建前になっております。
  224. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 そうすると、大蔵省は意見を述べることはできるわけですね。
  225. 藤田弘志

    説明員藤田弘志君) はい。
  226. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 そうすると、その意見を無視された場合にはそのまま引き下がるということですか。
  227. 藤田弘志

    説明員藤田弘志君) 十条で意見を述べることができますし、それから十四条に「各省各庁の長は、大蔵大臣に協議しなければならない。」ということになっておりまして、実質的に各省各庁の長限りでできるというよりは、大蔵大臣に協議して、その結果いろいろな処分を進めていく、こういう建前になっております。
  228. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 協議であれば、大蔵省がうんと言わなければできないということですか。
  229. 藤田弘志

    説明員藤田弘志君) はい、そういうことで運用しております。
  230. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 であるとすればかなり地価抑制に対して、うんと言わなければいいわけであって、国鉄なんかの場合にしてもあるいは林野庁の場合なんかにしてもうんと言わなければいいわけで。
  231. 藤田弘志

    説明員藤田弘志君) 林野庁の財産は国有財産でございますから大蔵大臣の協議、処分の内容によりまして変わってきますが、国鉄の財産はこれは国有財産ではございませんから、大蔵大臣とは一応関係としては切れる形になります。
  232. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 大蔵省所管の国有地ですね、大蔵省所管の国有地の払い下げの実情をちょっとお聞きしたいんですが、国有地の売却ですね、全体の件数と、その中で公共団体に払い下げた場合、それから民間に競争入札で払い下げた場合、その面積及び金額の構成比、どの程度のシェアを占めているか、それをお聞きしたいと思います。
  233. 藤田弘志

    説明員藤田弘志君) 昭和六十一年度の大蔵省所管一般会計所属の普通財産の未利用地の売り払い相手方別実績を申し上げますと、まず件数で六十一年度の売り払い総件数四百五件でございます。このうち地方公共団体等が二百三十六件でございます。その他、これは民間等でございますが、これが百六十九件でございます。  次に面積で申し上げますと、全体の面積が二百五十二万平米でございます。このうち地方公共団体等が二百三十一万五千平米で、比率にしまして九二%でございます。それからその他は二十万五千平米で、率にしまして八%でございます。  それから売り払い価格でございますが、地方公共団体等は全部合計しまして四百五十七億円、それからその他百六十二億円でございます。合計六百十九億円でございます。
  234. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 千代田区の紀尾井町の可決研修所の跡地を払い下げたのはたしか昭和六十年だったと思いますけれども、そのときの民間への払い下げ面積及び価格はどうなっていますか。
  235. 藤田弘志

    説明員藤田弘志君) 先ほど六十一年度を申し上げましたが、紀尾井町は六十年度でございますから六十年度のその他、これは民間等でございますが、それに対する払い下げの実績を申し上げます。  件数が百五十件で、面積が七万八千平米でございます。売り払い価格が六百四十九億円でございます。
  236. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 件数では民間への払い下げは非常に少ない、八%足らず。しかし、金額では二六%ぐらい、これは六十一年ですけれども、そういうことになっているということを事実として確認しておきたいと思います。  それで、林野庁の跡地の入札、払い下げなんかのときは非常に問題になったんですけれども、先ほど天野建設大臣の話もありましたけれども、今のような狂乱的な地価騰貴のときにおいてはやはり一時、大都市の場合、凍結をするとかあるいは土地信託制度、これはできるようになりましたですね、土地信託制度を活用するとか。私は民間活力を生かすということは賛成ですけれども、それは必ずしも払い下げなくても民間の活力を利用することはできるわけであって、信託制度なんかを活用するようにした方がいいんではないかと思うんですが、最後に大蔵大臣に対して、土地のやはり払い下げは、まあ田舎なんかの国有地で、田舎なんかで草がぺんぺん生えていて何にも使ってない、そういう土地は、これは払い下げてもいいと思うんですけれども、やはり土地というのは国民の資産であるという考え方に立って、その利用については民間の活力を利用してもいいと思うんですけれども、できるだけやはりそういった貴重な国民の資産は払い下げずに、公共的に利用する方法を考えるべきじゃないかと思いますけれども、最後に大臣のその問題についての所見を聞いて私の質問を終わりたいと思います。
  237. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 一般論として申し上げるわけではございませんが、確かに大都会等々において、先ほどから関委員が言っていらっしゃいますような状況の中で、国有財産をどのように処分すべきかということはやはりなかなか問題であると思っております。  まず、これが公用地であれば問題ございません。公共用地でも問題がないと思いますが、これは公用あるいは公共用の目的になるのでございましょうから。そうでない場合に、実はもう申し上げるまでもないことでございますけれども、会計法上、国民の財産でありますから、これはいわば最も公正であるはずの競争入札によるべきであるという原則が一つございます。それが一番不正の起こらない、そして国民に一番、最大の所得と申しますか売り上げをもたらすという意味で、一般の場合にはそれが相当であると思われますが、しかしこうなってまいりますと、そのこと自身が本当に国民的な目的に奉仕するものであるかどうかということは、どうも疑問なしとしない場合がやはりあるように思われます。といたしますと、先ほどから御指摘のように、それはそうであっても信託であるとかいろいろな方法はないか。つまり裸でこれが幾らで売れたというようなことにならない方法はないかというのは、いろいろに考えてみなければならない問題ではないかと思っております。従来でございますと、これは国鉄の場合は国有財産でないのでございますが、やはりあれだけの長期債務を持っておる、これは返済することが日本の将来の納税者の負担を軽減するというところまでは理屈としてはどうもそう申さざるを得ませんが、しかし、それはそれでいろいろ問題になり、議論の対象になっておるわけでございますが、国有財産でございますと、そういう当面長期債務を支払うといったようなことはすぐには関連してまいりませんから、それだけに何か方法はないのか。実は、この点は私どももそれならどういう答えを出したらいいかということをすぐ答えを持っておりませんですが、例えばこれも臨時の新行革審等々で御議論になって、こうするのが相当ではないかという方向が出てまいりますと、会計法等々の関連をやはり考えながら何か新しいことをやはり考えなければいけないのではないだろうか。要は、結局いわゆる世論と申しますか、一般的な広い常識と申しますかが、どういうことをもって適当と考えられるかということに私どもも耳を傾けなければならないことになろうか、その辺のところは実はそういう答申を待っておるような感じのものでございます。
  238. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 ちょっともう一言。  新行革審の答申というのは、確かに世論を形成する意味において重要な手段だと思います。しかし、天野建設大臣も言われましたように、本来はそういった新行革審を待たずに政府で世論を喚起して、政府としてもっと早く手を打つべき問題ではなかったかというふうに考えますし、また国鉄の場合は国有財産ではないんですけれども、林野庁の場合なんか、これは確かに赤字財政を抱えて、非常にその赤字を減らす、その気持ちはよくわかるんですけれども、しかしもしそれがきっかけになって土地の値段が上がるというふうなことになると、政府としても今後の公共事業なんかの費用がだんだん非常に上がっていくだけじゃなしに、先ほど言いました国民の住居、東京あたりじゃもうほとんど住めなくなってしまう。そういう問題もありますので、やはり思い切った英断を持って大都市の土地問題を解決していただきたい。殊に、もし総理大臣にでもなられたら全責任を負って解決していただきたい。そのことを希望して質問を終わります。
  239. 穐山篤

    委員長穐山篤君) 本日の質疑はこの程度といたします。  次回の委員会は明二十二日午前十時に開会し、本日に引き続き全般的質疑を行うことといたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時八分散会