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1987-07-17 第109回国会 衆議院 予算委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十二年七月十七日(金曜日)     午前九時三十一分開議 出席委員   委員長 砂田 重民君    理事 今井  勇君 理事 野田  毅君    理事 浜田 幸一君 理事 林  義郎君    理事 吹田  愰君 理事 上田  哲君    理事 川俣健二郎君 理事 池田 克也君    理事 吉田 之久君       相沢 英之君    愛野興一郎君       伊藤宗一郎君    上村千一郎君      小此木彦三郎君    小渕 恵三君       越智 通雄君    海部 俊樹君       片岡 武司君    小坂徳三郎君       古賀  誠君    左藤  恵君       桜井  新君    志賀  節君       武村 正義君    中村正三郎君       西岡 武夫君    原田  憲君       福島 譲二君    細田 吉藏君       松野 幸泰君    武藤 嘉文君       村田敬次郎君    村山 達雄君       山下 元利君    井上 一成君       井上 普方君    加藤 万吉君       川崎 寛治君    菅  直人君       嶋崎  譲君    細谷 治嘉君       坂口  力君    冬柴 鉄三君       水谷  弘君    宮地 正介君       木下敬之助君    楢崎弥之助君       藤原ひろ子君    正森 成二君       山原健二郎君  出席国務大臣         内閣総理大臣         通商産業大臣臨         時代理     中曽根康弘君         国 務 大 臣 金丸  信君         法 務 大 臣 遠藤  要君         外 務 大 臣 倉成  正君         大 蔵 大 臣 宮澤 喜一君         文 部 大 臣 塩川正十郎君         厚 生 大 臣 斎藤 十朗君         農林水産大臣  加藤 六月君         運 輸 大 臣 橋本龍太郎君         郵 政 大 臣 唐沢俊二郎君         労 働 大 臣 平井 卓志君         建 設 大 臣 天野 光晴君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     葉梨 信行君         国 務 大 臣         (内閣官房長官後藤田正晴君         国 務 大 臣         (総務庁長官) 山下 徳夫君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)         (沖縄開発庁長         官)         (国土庁長官) 綿貫 民輔君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 栗原 祐幸君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      近藤 鉄雄君         国 務 大 臣        (科学技術庁長         官)     三ッ林弥太郎君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 稲村 利幸君  出席政府委員         内閣官房長官 渡辺 秀央君         内閣法制局長官 味村  治君         内閣法制局第一         部長      関   守君         総務庁長官官房         審議官     百崎  英君         総務庁長官官房         審議官     新野  博君         北方対策本部審         議官      紀 嘉一郎君         防衛庁参事官  瀬木 博基君         防衛庁参事官  古川 武温君         防衛庁参事官  児玉 良雄君         防衛庁参事官  筒井 良三君         防衛庁長官官房         長       依田 智治君         防衛庁防衛局長 西廣 整輝君         防衛庁教育訓練         局長      長谷川 宏君         防衛庁人事局長 松本 宗和君         防衛庁経理局長 日吉  章君         防衛庁装備局長 山本 雅司君         防衛施設庁長官 友藤 一隆君         防衛施設庁総務         部長      弘法堂 忠君         防衛施設庁施設         部長      鈴木  杲君         防衛施設庁建設         部長      田部井博文君         防衛施設庁労務         部長      山崎 博司君         経済企画庁調整         局長      横溝 雅夫君         科学技術庁科学         技術政策局長  加藤 昭六君         科学技術庁科学         技術振興局長  吉村 晴光君         科学技術庁研究         開発局長    川崎 雅弘君         環境庁自然保護         局長      古賀 章介君         環境庁大気保全         局長      長谷川慧重君         国土庁土地局長 片桐 久雄君         国土庁地方振興         局長      澤田 秀男君         法務省民事局長 千種 秀夫君         外務省アジア局         長       藤田 公郎君         外務省北米局長 藤井 宏昭君         外務省経済局長 渡辺 幸治君         外務省条約局長 斉藤 邦彦君         大蔵大臣官房総         務審議官    長富祐一郎君         大蔵省主計局長 西垣  昭君         大蔵省主税局長 水野  勝君         大蔵省理財局次         長       藤田 弘志君         大蔵省銀行局長 平澤 貞昭君         国税庁次長   日向  隆君         文部大臣官房総         務審議官    川村 恒明君         文部省初等中等         教育局長    西崎 清久君         文部省高等教育         局長      阿部 充夫君         文部省学術国際         局長      植木  浩君         厚生大臣官房審         議官      川崎 幸雄君         厚生省健康政策         局長      竹中 浩治君         厚生省保健医療         局長      仲村 英一君         厚生省生活衛生         局長      北川 定謙君         厚生省薬務局長 森  幸男君         厚生省社会局長 小林 功典君         農林水産大臣官         房長      甕   滋君         農林水産省経済         局長      眞木 秀郎君         農林水産省農蚕         園芸局長    浜口 義曠君         農林水産技術会         議事務局長   畠中 孝晴君         食糧庁長官   後藤 康夫君         通商産業省基礎         産業局長    鈴木 直道君         通商産業省機械         情報産業局長  児玉 幸治君         工業技術院長  飯塚 幸三君         運輸大臣官房国         有鉄道改革推進         総括審議官   林  淳司君         運輸省運輸政策         局長      塩田 澄夫君         運輸省航空局長 山田 隆英君         郵政省通信政策         局長      塩谷  稔君         郵政省放送行政         局長      成川 富彦君         労働大臣官房長 岡部 晃三君         建設省建設経済         局長      牧野  徹君         建設省都市局長 北村廣太郎君         建設省道路局長 鈴木 道雄君         自治大臣官房長 持永 堯民君         自治大臣官房審         議官      森  繁一君         自治省財政局長 矢野浩一郎君         自治省税務局長 津田  正君  委員外出席者         予算委員会調査         室長      右田健次郎君     ――――――――――――― 委員の異動 七月十七日  辞任         補欠選任   宇野 宗佑君     片岡 武司君   奥野 誠亮君     武村 正義君   田中 龍夫君     中村正三郎君   冬柴 鉄三君     大久保直彦君   岩佐 恵美君     岡崎万寿秀君   中路 雅弘君     山原健二郎君 同日  辞任         補欠選任   片岡 武司君     宇野 宗佑君   武村 正義君     奥野 誠亮君   中村正三郎君     古賀  誠君   岡崎万寿秀君     藤原ひろ子君   山原健二郎君     金子 満広君 同日  辞任         補欠選任   古賀  誠君     田中 龍夫君   藤原ひろ子君     不破 哲三君   正森 成二君     岡崎万寿秀君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件 昭和六十二年度一般会計補正予算(第1号) 昭和六十二年度特別会計補正予算(特第1号) 昭和六十二年度政府関係機関補正予算(機第1 号)      ――――◇―――――
  2. 砂田重民

    砂田委員長 これより会議を開きます。  昭和六十二年度一般会計補正予算(第1号)、昭和六十二年度特別会計補正予算(特第1号)、昭和六十二年度政府関係機関補正予算(機第1号)、以上三案を一括して議題とし、質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。上田哲君。
  3. 上田哲

    上田(哲)委員 緊迫の三宅島でありますが、先般ここに論議を交わしましたように大変厳しい状態になっておりまして、御承知のように、三カ所の鉄柱建設のうち二カ所が終わって、あと一カ所は住民が夜を徹して座り込んでいるという状況の中にあります。さなきだに厳しい熱暑でありまして、事故の人たちも出ているという中でありまして、一昨日は午後一時十分、昨日は二時五分、防衛庁長官が私との話し合いで、当面強行しないという決断を示されたことは一つ判断だと思います。したがって、この事態でさらに三日目、四日目を迎えて状況はさらに悪化する心配もありますので、この際当局としてはここで断念をされる、少なくとも、今三つ目の下錆の建設断念をされるというふうに求めたいと思います。
  4. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 これは断念するわけにいかぬのです。前から申しているとおり、これはいわゆる気象上の資料を集めるということでございまして、このこと自体が直接直ちに建設をするということではないわけでございますから。  それで、私申し上げているとおり、とにかく聞く耳を持たないというこの態度だけはぜひ改めていただきたい。また、各党それぞれのお立場はありますけれども、よく防衛施設庁の方の話も聞けよ、こういうことで御努力を賜りたいと思います。私の方は平穏裏にできることを期待しておりますけれども、しかしもうそれは絶対相ならぬということでまいりますと、これは話は大変こんがらがってくると思うのです。ですから、そういう意味合いでぜひ私どもの話も聞いていただきたい。私どもは理不尽なことを言っているつもりはございませんので、そういうことでぜひ上田議員の格段の御協力をいただきたい、こう思います。
  5. 上田哲

    上田(哲)委員 ここは政治的判断が必要なところでありまして、きのうもおとといも長官と私は長い議論を続けてまいりました。少なくとも共通するところは、不測事態を避けたいということでなければならない。私も掛け値などはいたしませんから、ずばりで一つ提案をしたいのですが、今月いっぱいとかシーズンが終わるまでとか、いろいろな制限も設けてみたいのですが、ずばり最低限の言い方で、疲労こんぱいその極に達しているということもあり、不測事態を避けるということのためには、両三日少なくとも平穏に島の人たちを眠らせてもらいたい。これはずばりですから、お答えをいただきたいと思います。
  6. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 私ども、その提案についてかたくなな態度をとるつもりはございません。  ただ、問題がある。そういうことで日にち日にちをずるずる延ばしていく、そういう格好だとこれは困るということなんです。ですから、これはずばり静粛にといいますか、工事ができないような環境をつくる、そういう反対行動はお慎みいただきたい、こう考えております。
  7. 上田哲

    上田(哲)委員 ですから、もうお互いそういう議論をここではちょっと横に置いて、私はたった三日と今言っているわけですから、両三日については双方さまざまなこともなしに、三日間はとにかく島民を眠らせる、不測事態を避ける、ここだけはきちっと腹をひとつ見せていただきたい。一言お願いしたい。
  8. 友藤一隆

    友藤政府委員 お答えをいたします。  私どもは、先ほど大臣から御答弁ございましたように、何とか話し合いを軌道に乗せて、私ども国の話もよく聞いていただきたいということで努力をいたしておりますが、今般の観測機材設置につきましては、残念ながら私どもが借りました土地の上で座り込みが行われるということになりまして、若干の混乱もございますし、大変遺憾なことであると思っております。  ただ、私どもとしてはあくまでできるだけ平静に事を運びたいというのが基本方針でございますし、やはり設置も既定の方針どおり進めたいということも変わっておりません。しかしながら、昨今の状況、大変ホットな状況にもなってきておりますので、この日曜日ぐらいまでは冷却期間をとるようにしたいというふうなことで、現在検討をいたしております。
  9. 上田哲

    上田(哲)委員 そのことを確認しておきます。これは、三日たったらやってよろしいということでもないし、島民反対ということが変わるわけでもありません。しかし、不測事態を避けるという双方の政治判断ということで、三日間は島で眠らせてやってほしいということを、ひとつこの点だけ抜き出して確認をしておきたいと思います。  さて、その上に立って、私は数点について極めて簡単にひとつ確認をしておきたいことがございます。  その第一点は、これは防衛庁からいただいた文書での私への答弁資料でありますが、この中に、今回は事前予備調査である、事前予備調査であるので飛行場建設工事ではない、本建設工事をするためには、手続的に日米合同委員会の合意及び閣議決定が必要である、こういうふうに書いてあるわけです。したがって、まだそのことは行われていないのである、手続としてはそういうことが必要なのであり、それはまだ行われていないのであるということを確認をしてください。
  10. 友藤一隆

    友藤政府委員 当然のことながら、現在着手いたしております気象調査、そのほかいろいろな予備調査がございます。こういった調査をやはり行いまして、諸般の資料をとりまして、これらを総合的に検討して次のステップに進むということで考えております。
  11. 上田哲

    上田(哲)委員 いやいや、人の言うことを聞かなければだめだよ。合同委員会閣議決定とあなたの方は書いてきたから、そのことだな、それはまだ終わってないなと。余計なことを言わないでください。
  12. 友藤一隆

    友藤政府委員 それは、そういった調査結果を踏まえて当然そういった手続に進む、こういうことでございます。
  13. 上田哲

    上田(哲)委員 はい、わかりました。  それから、同じような資料防衛庁側はこれを事前予備調査と呼んでおられて、それには基本調査として地形測量地質調査概況調査現地調査気象調査、こういうふうになっております。予算は計二億七千百万円であります。これについて、これまでの確認では気象調査そのものも三年なければだめだというお話がありました。風速、風向調査、それも含めて、このすべての各項目調査が有意に終わるためには三カ年要るということが事前に報告されておりますが、そのことを確認いたします。イエスノーでひとつ簡単に答えてください。
  14. 友藤一隆

    友藤政府委員 先ほども申し上げましたように、気象調査のほかいろいろな調査がございまして、それらには若干時間はかかるというふうに考えております。ただ、具体的な期間につきましては、いろいろ地権者との御調整とかそういったものもございますし、得られたデータへの検討期間というものもございますので、現在明確に何年というふうに申し上げるのはいかがかと思います。
  15. 上田哲

    上田(哲)委員 事前説明では、合わせて三年かかるということだった。それがイエスノーか言ってください。最低三年かかるとあなたはおっしゃった。
  16. 友藤一隆

    友藤政府委員 これは一応のめどとして三年程度は見込まれるというようなことでございます。あくまでこれは推測でございます。私どもとしては、できるだけ早くやりたいということであります。
  17. 上田哲

    上田(哲)委員 わかりました。推定だけれども三年はかかるということであります。  その次は、運輸省に伺うが、官民共用空港という打ち出しになっているのでありますが、運輸省としてはこの空港建設について協議をされておるか。それから、民間航空就航について採算性検討をされたことがあるか、簡単にお答えいただきたい。
  18. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 大切な点なので正確に申し上げたいと存じます。  先般の御質問を踏まえてもう一度調べ直してみました。本件につきまして、防衛庁から一般的な情報の提供あるいは説明を受けたことはございます。そして、それは五十八年十二月以降しばしばあるようであります。しかしそれは、夜間訓練飛行場概要あるいは夜間訓練概要等を含んだものでありますが、協議という内容のものではないと理解をいたしております。  また、現在の状況の中で、運輸省として三宅島にジェット機を就航させた場合の採算性検討をいたしておりません。
  19. 上田哲

    上田(哲)委員 よくわかりました。協議は行われていない。  環境庁に伺います。鉄柱三本についてはするっと許可されたのでありますが、これは今後の調査あるいは本工事ということになればおのずから立場や見解が変わってくると思います。いかがでありましょうか。
  20. 稲村利幸

    稲村国務大臣 上田議員の御意見のとおり、気象用観測に限って求められたものですから、自然公園法に基づいて景観上差しさわりない、こういうことで今回は許しました。今後のことにかかわりましては、また改めて十分慎重に協議するつもりでございます。
  21. 上田哲

    上田(哲)委員 最後に五点目ですが、将来土地を取得されようという意図において、土地収用という言葉は大変まだ使いたくないのですが、そういう事態が起きる予想の中では、政府として国内の土地収用法手続をとられるのか、地位協定に基づく土地収用を図られるのか、私は後者の意図があってはならないと今思っているわけでありますが、いかがですか。
  22. 友藤一隆

    友藤政府委員 お答えいたします。  現在予定しております訓練場というものは、御案内のとおり米軍艦載機訓練場として提供したいというふうに考えております。したがいまして、そういう趣旨からいたしますと、私どもとしてはできるだけお話し合いあるいは御理解をいただいて進めるということには変わりございません。ただ、法制的には、先ほど先生がおっしゃいました土地収用法特例法でございます特借法というものがございまして、その制度に乗るというようなルールになっておるということでございます。地位協定に基づくものでございます。
  23. 上田哲

    上田(哲)委員 とりあえず今、五点を確認いたしました。最後の問題については大変危険な問題でありまして、これは日本の憲法に基づく基本的な議論がなおかかるべきであります。  その前の四項目を並べてみれば、明らかに官民共用空港という話し合い政府部内でも行われていない。つまり官民共用民航就航可能性は今のところ策定されているわけではない。また、少なくともこれが予備調査であるというのなら、本工事にかかる前には一定の手続、これは今確認された閣議決定なり日米合同委員会の議を経なければならない。それはまだ行われていないという幾つかの問題が確認をされました。大いに議論しなければならない多くの課題が残っているはずでありますから、みだりにこれを強行されるということは、こうした民意に反するだけではなくて、やはり日本法制度あり方そのものからいっても多くの問題を抱えているということを確認をしておきます。  三日間、少なくともこの島にとりあえずの平静な時間を取り戻すことになることを将来にわたってひとつ確保したいということで、この問題は当面、この緊急保事態で確保しておきます。
  24. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 上田さん、いつも申しておるように、本当にこれは話し合いをしなければならない。今の話でも、詰めていくためには話し合いをしなければならない。だから、話し合いの道をどうかあなた御努力いただきたい。このことをお願いします。
  25. 上田哲

    上田(哲)委員 一%問題についてお伺いをいたしたいと思います。  この一%の枠を六十二年度当初予算で超えた。一口で申し上げると、総理、これは積み重ねていったら結果として一%を超えたとおっしゃるのだが、そうではなくて初めに一%突破あり、まず一%を突破することが今回の眼目であったというふうにしか理解できないのでありますが、いかがでしょうか。
  26. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 この前申し上げましたように、積み重ねましたら結果的にそうなったということであります。
  27. 上田哲

    上田(哲)委員 新たな閣議決定によっても一%の枠、三木内閣閣議決定はなくなったのである、あとはできるだけ抑制するんだという精神条項になったというのは、私は大変納得できないところでありますが、総理が今言われたように、積み上げていったら結果的に一%を超えてしまったというのであれば、やはり一%は守った方がいいという論理になるのですか。
  28. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 三木内閣閣議決定精神を尊重すると言っておるのですから、できるがけ努力していく、そういうことには変わりはありません。
  29. 上田哲

    上田(哲)委員 くどいようですが、一%が守れたらその方がいいというお考えですか。
  30. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 守りたいと思って一生懸命努力している、そういうことであります。
  31. 上田哲

    上田(哲)委員 そうすると、既に強行採決を含めて通ってしまった六十二年度当初予算の中では一%を超えているのですが、守れたら守った方がいいということであれば、決算の段階でこれをまた枠内に入れるという努力はできればされるわけですか。
  32. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 初めに一%突破ありきといったようなことでないことは、今回決定経緯、私と防衛庁長官協議をしたことでございますが、そういう経緯から見まして、初めにそういう方針があったというわけではございません。  そこで、ただいまお尋ねのことは、例えば売上税等々のこともあるしいろいろ考えてみて結果として六十二年度一%を割ることがあるかもしれない、そういうことをどう考えるかということのお尋ねでございますけれども、まあそういうことがあるかもしれません。しかしGNPの動向もわかりませんし、私どもとしましては一月二十四日の閣議決定がございますから、その一%にゼロ、ゼロ、ゼロ何かがつくつかないということはいわば第二義的なことであって、要は一月二十四日の閣議決定精神というものを今後にわたって守っていけばいい、こう考えております。
  33. 上田哲

    上田(哲)委員 まるっきり支離滅裂でして、守れるならば守った方がいいと言われるのと、それはどうでもいいと言われるのと、これはどう考えたって論理は合わないのですよ。言葉の遊戯はもう結構であります。だから、一%を予算編成の段階で守れなかったとしても、決算の段階で守れるなら守れるように努力をするのですかしないのですか。
  34. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは大蔵大臣としては、必要な限り経費は少ない方がいいということはもう明らかでございます。
  35. 上田哲

    上田(哲)委員 これは押し問答をしてもしょうがない。守りたくないのです。  しかし、例えば先日来から議論をされておりますけれども、差益の問題で四十一億、それから売上税に関連の不用額として九十二億、合わせて百三十四億というのは、ちょうどはみ出た分になるわけですが、今の数字で言えば、その後ベアの加算なんかもあるでしょうから百三十四億イコールとはいかないでしょうけれども、目の子で言うなら、今浮いてきた金だけでも百三十四億というのはちょうどはみ出た分がイコールになっているんだから、それならもう一つ努力をすれば決算の段階では一%内におさめることはできるという見方も十分あるわけです。できると思っているんですか、できないと思っているんですか、あるいはやろうとしないのですか。
  36. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 今おっしゃったようなこともございますし、GNPの動向もございますから、先のことは今の段階ではよくわからないと申し上げるしかないと思いますが、それはもう、小さく済めばそれにこしたことはございません。
  37. 上田哲

    上田(哲)委員 まあ皆さんお聞き取りのように、一%を守るという意識は絶対ないのです。私はそれが非常に問題だと思うのであります。  そこで、前国会の終わりに、実は強行採決が行われる前の日でありますが、私はかなりの時間をかけでこの数字の問題を洗いました。端的に申し上げると、これはいろんな部分があるんですが、集中的に申し上げると、ドル建てでもって兵器をあかなう場合の三つの方式、政府間の直接輸入、一般輸入、それから国産品の兵器の中に含まれるドル建ての部品、この三つのうち最後の部分の、しかも後年度負担というところになる支出部分、この支出部分で十分にこれを精査していけば浮いてくる金がある。  これは、私は円高・ドル安によって差益が生ずるだろうというようなことを言っているんではないのです。それはそれで十分出てくるのですが、それだと円安のときにどうなるかみたいなこともまた出てくるから、もう少しく政府の志向に合わせて具体的に議論をすることにしよう。  そうすると、例えばこの五年間、支出額というのは五年間に分けるのですから、五年間ずっと見てまいりますと、五十八年から支出官レートが二百四十七円、二百三十八円、二百三十七円、二百九円、ことしは百六十三円ですけれども、これだけの大きな幅があるんだから、財政運営の基本である支出官レートを中心にして、それを基準にして精査をしていく、年度別の支出額というものをそこで精査していく。どのみち一番最後にやるのですから、これだけの差のあるときは途中で精査していけば十分に、私がこの前示した計算では三百億は優に浮くんです。優に三百億は浮くんだから、財政の適正な処理によって一%内にとどめることが十分できるはずだということを申し上げたんだが、当時の経理局長理解が十分でなくて、十分な答えがないまま終わってしまいました。  その後私も防衛庁と双方で論議を重ねてまいりまして、ようやく防衛庁側も一定の見解に達したようでありますから、それについて御答弁をいただきたいと思います。
  38. 日吉章

    ○日吉政府委員 お答え申し上げます。  先生の御提案は、防衛費における国産品中の輸入部品等に係ります外貨関連経費の予算計上につきましては、当該契約に係る防衛庁の精算業務が終わっていない段階におきましても、各年度の予算編成時におきまして生産企業が既に発注し支払いを済ませているものは、その実績を調査し、これに基づいて見込み得る不用額を減額した上でその都度予算額に反映させるべきではないかという御趣旨のものと理解して、お答えをさしていただきたいと思います。  御指摘のとおり、国産品中の輸入に係る予算額の計上につきましては、御提案のような処理を行うことは理論的には考えられないわけではありません。しかし、それは実務的には極めて困難と考えられます。と申しますのは、現在防衛庁におきましては、契約の最終年度に生産企業の個々の調達、支払いの実績に即しまして、証票類等と照合しつつ、実際に使用した輸入部材等を確認したり差益差損の状況を把握したりする作業を行っておりますが、このように最終年度にこのような作業を行いますのは、これらの作業が非常に膨大なものになること、ちなみに申し上げますと、F15の例で申し上げますと、一万枚以上の証票類等を精査し、半年以上かけて実施されております。そういうことや、これらの証票類等を精査し確認、把握する作業は、最終年度にならないと正確にはなかなか把握できがたいという事情があるからでございます。  以上申し上げましたように、精算の実態からしまして現在の予算計上の方式を御指摘のように変更することは困難であり、防衛庁としましては今後とも、最終年度におきます精算業務を厳正に行うことにより、差益が生じますときには決算時の不用額として適切に処理してまいりたいと考えておりますので、御理解を賜りたいと思います。
  39. 上田哲

    上田(哲)委員 今の答弁のように、私の指摘したあり方は理論的には正しいと言っているのです、できると言っているのです。ただ、事実問題として膨大な作業になるからできない。私は、御指摘のようにF15の場合でも一万枚以上の証票類があるからと言われれば、それを無理してやれというのはなかなか難しいことは率直に認めます。しかし、国の税金を使っていく、しかも世論がこれだけ一%を大事にしたいと言い、政府もまた守った方がいいというのであれば、理論的にはできることなんです。私の粗い計算でも三百億は浮くんだ。ならば、浮かせる努力をしょうとすればできないはずではないんだという論理は残るわけであります。私はそういう点を、今ここでおっしゃるとおりだと思うけれども、なかなかそうはできないのだというところでこの問題はとどめますけれども、あえてこのことが理論的には正しいと認められつつも実施されないということの根底には、難しいだけではなくて、一%内におさめるという実は政策意図がない。やればできるということは、明らかに私は二つの国会合わせてやっとここで結論を得ましたけれども、しかし、残念ながらこれはできないのだということは、何で残念だといえば、一%を破ることに根本的な目的があったんじゃ幾ら計算を示してみても意味がないんだという実態を、ここで私は非常に不満を、憤りを込めて指摘せざるを得ないのであります。  そこで、そうなると一体なぜそんなにして一%枠を破らなければならないのか。  ちなみに一つ伺っておきたいのですが、六月十八日にアメリカの下院が本会議で可決いたしました。日本は安全保障料を払え。つまりGNPの三%の軍事費を盛り込め、こういうことになっております。これが上院でどうなるかなどということの問題は別にして、少なくとも下院の本会議決定される。  私はこういう問題について、今回の一%突破というのが非常に外圧ということも加味されていると思わざるを得ないだけに、アメリカ国会がこういうことを決議するのであれば日本国会としてはひとつしっかりした姿勢を示さなければならぬと思いますから、アメリカが言う安保科三%、GNPの三%を持つべきであるなどという見解に対しては、総理、どういう御見解でありますか。
  40. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 アメリカの国会におけるフラストレーションの一つのあらわれであろう、そう思います。
  41. 上田哲

    上田(哲)委員 三%というのは、当然考えられないむちゃな数字でありますか。
  42. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 あの決議は日本に対してどうしろこうしろという法的拘束力のあるものではなくして、ある意味における希望の表明、そういう意思表示としての性格を持っている、そういうふうに聞いております。
  43. 上田哲

    上田(哲)委員 もう一遍お尋ねいたします。  三%というのはあり得ない、あってはならない数字でしょうか。
  44. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 三木内閣閣議決定を守りたい、精神を尊重してまいりたいと思っております。
  45. 上田哲

    上田(哲)委員 非常に歯切れが悪いのです。  何で一%をこんなにまでしても――精査していけば一%内におさまる、当初予算ですらおさまると私はさっきから数字を指摘したのです。当初予算でおさまらなくても決算でおさめる努力もあるということも指摘しているのですが、いずれもそんなことに意味はないと大蔵大臣もおっしゃる。総理も歯切れが大変悪い。ということの裏側には、一%を破らなければならないニーズがある。政府側におけるニーズがある、あるいは日米共同体制におけるニーズがある。そのニーズは何かというと、私は二つだと思っています。その二つは、戦略範囲の拡大、それから兵器体系の変更だ、この二つがいよいよこの時点で図られてきたんだ、こう判断せざるを得ないのであります。  それを象徴的に申し上げると、いわゆる重点的な戦略構想となってまいりました洋上防空であります。洋上防空を推進するという、言うなれば洋上防空元年とでも申しましょうか、そのためには、六十二年度で一%を破っておかなければ中期防十八兆四千億円のかなたにその数字が合わなくなってくるということが歴然としてくるのであります。  そこで私は、絞ってお伺いいたしたい。兵器専門家にひとつ具体的に伺いたいのですが、洋上防空ということがしきりに言われておりますが、その話意は必ずしも明確ではありません。絞って伺いたいのは、兵器体系として洋上防空というのはどういう柱で成り立つのでありましょうか、御解明いただきたい。
  46. 西廣整輝

    西廣政府委員 お答えいたします。  洋上防空と申しますのは、私は、いわゆる防空機能の中の一部ということでとらえるべきものだと考えております。洋上防空というものが防衛の対象物で分類したものじゃないというように考えております。  防空と申しますのは、先生も先刻御承知のように、国土を守り国民を守る、あるいは必要な部隊の基地なり航空基地なり、あるいは部隊そのもの、さらには船舶等を守るという、対象物を守るものすべて防空でございますが、そのうち洋上防空というのは、主として洋上においてその種の防空任務を果たす、まあ地域に着目したものであろうというふうに考えております。  したがいまして、洋上防空を果たすための機能としては、まず相手の動静を探知するための各種の監視、探知機能というものがありますし、その探知したものに対してこちらが要撃をするといいますか対応するための要撃機能というものがあろうかと思います。最終的には、基地なりあるいは艦艇等のいわゆる官隊防空といいますか、頭上に来た敵機に対してどう対応するかという、自衛火器も含めて防空機能に入るというように考えております。
  47. 上田哲

    上田(哲)委員 つまり、そのことをもう少し具体的に申し上げると、私は具体的な兵器体系としてお尋ねをしているわけですから、そういう固有名詞で申し上げなければならないと思うのです。  今もおっしゃった三つに分かれますね。第一はずばり言ってOTHです。第二はCAPです。第三はエイジス艦です。こういう組み合わせで洋上防空ができ上がるのだ、これでいいですか。
  48. 西廣整輝

    西廣政府委員 具体的な装備システムについて今言われたわけでございますが、今言われたOTHは、私が先ほど申しました監視、探知機能の中の一つであろうと思います。おっしゃるとおり、最近の航空機の航続距離なりあるいはスピード、さらには非常に遠いところから、射程の長くなった航空機からのミサイル攻撃ということを考えますと、従来より以上に広い範囲を監視し得るレーダーが必要であるということで、OTHもその中の一つに入ろうかと思います。  それから第二点目のCAPでございますが、CAPというのは、先生は十分御承知だと思いますが、航空機が防護する地域に近いところで既に上空にあって対応する態勢をとっておくということでありまして、それはクイックレスポンスというか、相手方の攻撃に対してより早く対応し得るようにするということで、その点につきましても、先ほど申したミサイルの性能の向上、そういった事態を考えますと従来以上に攻撃に対して素早く対応しなければいけないということで、CAPということも今後考えていかなくてはならない一つの課題ではあろうというふうに考えております。  最後に申されたエイジス艦でございますが、これは五カ年計画で私どもは、艦艇の自衛火器といいますか、船団の自衛火器としてミサイルに対応するためにどういったものが必要かという研究を今いたしております。そして、この五カ年計画中にその措置をするべく予算といいますか計画が計上されておるわけでございますが、その一つの手段としてエイジスというものがあることは事実でございます。
  49. 上田哲

    上田(哲)委員 この三本柱である、兵器体系としてはそういうものであるということをお認めになったので、お伺いしたいのは、こういう兵器体系はいずれも中期防の中にもとより含まれているのかいないのか。つまり、十八兆四千億円というのが一%を超えた後、総額で決めているんだからこれで枠になるんだとおっしゃるんだが、これはもう私たちが認めるところではないが、百歩譲ってそういうものだとしても、この十八兆四千億円の中期防の中に、今述べられた三本柱の洋上防空のポイントになる兵器体系というものは含まれているのか、いなかったのか、そこのところ明確に答えてください。
  50. 西廣整輝

    西廣政府委員 防衛力整備五カ年計画の中には、OTHにつきましてはこの有用性というものを十分検討して、必要な措置に着手できるような若干の経費というものが見込まれております。  なお、お尋ねのCAPということにつきましては、私ども必ずしもまだそういった考え方をとっておらないわけでございまして、恐らくCAPに関連のある事業としては、航空機が相当長時間滞空するために、空の上にとどまるために給油機とかそういう問題があろうかと思います。その点については、五カ年計画の本文に書かれてありますように、給油機については研究をするということで、これについては予算といいますか金の裏づけ等は何もいたさないで研究だけをするという形になっております。  それから最後の、エイジス艦と申しますか艦艇搭載のミサイルの近代化の問題につきましては、五カ年計画期間中にいわゆるDDGといいますミサイルを搭載する艦艇二隻をつくる計画が計上されております。そのための経費と、さらに今申し上げた艦艇搭載ミサイルの近代化のための研究及び経費として、経費的な裏づけのある計画というものが組まれておるということであります。それがキャッシュで十八兆四千億円の総経費の中に含まれておるというふうに御理解いただきたいと思います。
  51. 上田哲

    上田(哲)委員 そこが非常にあいまいなんですね。一つは研究テーマであったりなどなどいたしまして、そもそも入っているかどうか、さかのぼって大綱から考えれば、これが入っていると言うべきかどうかというのは非常に議論の分かれるところなんです。しかし、どうあろうともこれはやるんだということになると、問題はどこにいくかというと、十八兆四千億円の中に含まれる分と、その後の、次の中期防というものの中に、五年計画の中にどう含まれていくかという連続でなければ、洋上防空ということは兵器体系として議論はできないことになる。しかも、それが今の段階で重要なアクチュアルな問題となっているということを具体的に聞いておきたいのです。  まずOTHは、アメリカへ調査団が行きましたね。その調査団が行って、いよいよOTHについての結論が出る。最終決定は一年とか一年半くらい後になるのはこれは技術的にあるのですが、目の子としては、もう時間がもったいないからずばり言うのですが、発信地小笠原、受信地は硫黄島というところに確定する、これはもうアメリカへ調査団が派遣された結果として方針が決まっていると思いますが、お答え願いたい。
  52. 西廣整輝

    西廣政府委員 OTHにつきましては、かねがね我が方の監視したい地域というものからすると、小笠原なり南西諸島の島嶼部に置かなければいけないということは申し上げているとおりであります。また、その際に、我が方の防衛上どこが一番適した地域かと言えば、南西諸島よりも小笠原なり硫黄島の方が適しているということは事実であります。
  53. 上田哲

    上田(哲)委員 六月に調査団が行きました。その結論がもう出るだろう、そしてそれは小笠原、受信基地は硫黄島ということはもうはっきりしてきていると思うのですが、ずばり答えてください。
  54. 西廣整輝

    西廣政府委員 六月に一週間ほど各幕の専門家をアメリカに派遣をして調査をさせました。これは、我々が有効ならば導入しようと考えている海軍用のOTHレーダーがアメリカで現在プロトタイプの実験中でありますので、それの調査と、それから既に配備をされている空軍用のOTHレーダー等について調査したわけでありますが、この主たる目的は、OTHレーダーは相当広範囲に電波が飛ぶわけでありますので、果たして電波干渉等の事態が起きるであろうかどうかというようなことについてまず調べるというのが一つの目的でありまして、そういう点については今のところ全く問題が生じていないという結論を得て帰ってきたわけであります。  と同時に、今先生が御質問されましたように、OTHの受信基地というのはかなり大きな、長大な土地が要ります。ということになると、硫黄島が非常に適切な地域であろうということは我々も考えておりますが、そうしますと、硫黄島には御承知のように訓練用の航空基地がございます。そういったものとの関係で、電波的にいろいろ干渉が起きるかどうかとか、あるいは硫黄島というのは非常に地殻変動の大きな火山地域でありますので、そういった点、設置が可能かどうかといったようなことのための必要なデータを集めてくるといったようなことが今回の調査団の目的でございました。
  55. 上田哲

    上田(哲)委員 ずばり聞きますが、もう防衛庁としては硫黄島だという確定的な見通しを持っているのだという情報について、ひとつ確認していただきたい。
  56. 西廣整輝

    西廣政府委員 ただいま申し上げたように、硫黄島についてはまだ幾つかの問題、特に後段で申しました地殻変動なり火山活動、硫黄の影響とか、そういった問題がございますので、そういった技術的問題をクリアしないと決定するには至らないというようにお考えいただきたいと思います。
  57. 上田哲

    上田(哲)委員 どうしてももう一つあるところが言い切れないのですが、しかしはっきりしていることは、研究課題であったはずのOTHは、もう具体的に設置するという方向に歩み出していることだけは間違いないのです。そして、それはもう防衛庁では、発信地小笠原、受信地、これが大事なんですが、硫黄島ということを目指して、恐らく一両年でこれが決定するということは間違いないのであります。  そしてCAPの問題ですが、なるほどCAPと一口に言っちゃうと非常に大まかになるのですが、もっと具体的に言えば早期警戒機、空中給油機、これも幾たびかの閣議決定で持たないことになっていたのが、いつの間にか崩されてまいりましたが、OTHがあってCAPがなかったらこれは何にもならないですから、当然つきものとしてこれはCAPの方にいくに違いないのであります。具体的に言えば、CAPかどうかといえば議論もあるでありましょうが、早期警戒機、空中給油機をこのOTHに合わせて配備しなければならないということは明らかであります。  時間がないから、あわせてもう一つ伺っておく。  エイジス匿は、中期防十八兆四千億円の中では二隻を購入するということになっているが、四群ある匿隊薦成からいえば、将来的には八隻、今日価格で一隻千五百億円のものを八隻装備するということになっている。  これら三つは、三つといいますか、二つにしましょうか、硫黄島のことはもうそれでいいとしても、早期警戒機、空中給油機、それをあわせたCAPのための必要な装備、配備、そしてエイジス艦は将来像八隻という形というのは、もう具体的なプログラムの中に入っているということでしょう。
  58. 西廣整輝

    西廣政府委員 給油機につきましてかねがね政府が申しておりましたのは、当時国会等で御論議のあった時点において、現状ではまだ給油機を必要とする状況にはない、しかしながら将来の技術的な超勢等を考えて、その持つことの可能性は否定しないというようにお答えをしておったと思います。  ところで、現在どういう状況にあるかということについては、先ほど来申し上げているようにまだ研究中でございますが、かなり長射程のミサイル等が非常に命中精度がよくなって、こちらの艦艇なり、あるいはレーダーサイトというものが攻撃できるようになったということを考えますと、その母機対処をするためには、より早い段階で対応するという必要性が出てまいりました。  そういう点で、CAPという戦法といいますか、そういったものも一つの有効な手段であろうとは考えられますが、現在まだそこまで研究は進んでおりませんで、主として洋上における船舶の防護ということを考えますと、船舶を常にCAPをしておるということは非常に難しい状況でございますので、やはりOTHレーダー等による早期監視、それによって、でき得ればまず退避をする、避難をする、間に合わない場合は要撃ユニットというものを出して対応するといったようなことも考えられるのではないかという、いろいろな対応策があるわけでございまして、まだCAPの問題については我々としては結論を得られない状況にあるというように御理解いただきたいと思います。  それからエイジス産について、四群あって、それに各二隻、八隻要るのではないかという御質問でございますが、先生御指摘のように海上自衛隊は四つの、外航で行動する護衛隊群、一部八隻の群を持っております。そしてこの八隻の群の構成は、ミサイル艦が二隻、ヘリコプター屋が一隻、残りの五隻が対潜を中心にしたDDということで、八隻の組み合わせというもので整備中でありまして、現在三群まではミサイル艦、いわゆる六隻のミサイル艦は既に整備をされておるという状況にあります。したがって、あと一部分二隻のDDGがまだ未整備のまま残っており、この五カ年計画でつくる計画になっておるわけでございます。  そういうことでございますので、当面はDDGは二隻というように御理解いただきたいと思います。もちろん、これから非常に長い先になりますと、現有のDDGが除籍をするという段階が出てまいると思いますが、そのときはそのときでまたどうするかということを改めて検討するということになろうと思います。
  59. 上田哲

    上田(哲)委員 八隻というのは、最終では八隻……。
  60. 西廣整輝

    西廣政府委員 二隻の四群、DDGが八隻要るということは御指摘のとおりでございますが、既に六隻は整備されているということを申し上げたわけであります。
  61. 上田哲

    上田(哲)委員 つまり、そこなんです。私は、きょうあすのことを言っているのではありません。今、中期防、五カ年計画、そしてそれが済んだらまた五カ年計画ということの、つまり十年ほど先を見込んだ今年度、六十二年度の防衛体制あるいは洋上防空体制というものが発足をしているというところに問題がある。一隻千五百億円のエイジス艦を二隻買うんだとしたら三千億円ですが、どう考えたって十八兆四千億円の中にはほかのものも含めて三百億しかない。一割しか入ってないのです。これは後年度にいくことは間違いないのです。十年単位で眺めれば、この洋上防空体制を兵器体系として根本的に改めるということの中に膨大な防衛費が必要になってくる、これがことしの出発点であり、一%におさまりようのないという実は実態なのであります。  まあCAPというような問題は、OTHがあったらCAPがなければ成り立たないというのは常識中の常識なんですが、今はまだ決めてない。十年後にはそういかざるを得ないということがはっきり絵で出てきたのです。それが一%なんというものをいつまでも持っていたらだめだということであるわけで、それが本質なんです。となると、そのことは実に戦略体制そのものが変わってくる。  極めて端的に言えば、これまでは鈴木総理以下のワシントン会議の談話以来、周辺数百海里、シーレーンを設ける場合は一千海里ということになっておりましたが、設ける場合は、ではなくて一千海里までが常時そうした防衛範囲と称するものの中に入っていく、こういう拡大拡張戦略といいましょうか、そこに踏み出すことにならざるを得ないというのが実は一%突破の、無理無理一%突破、決算でもやっていかないということのポイントなんだということをひとつ私は実証的に言えると思うのですね。そこはいかがなんですか。
  62. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 基本的な考え方において認識がちょっと違うんじゃないかと思いますね。というのは、今防衛局長が言ったようにエイジス艦、これは二隻つくるとかつくらぬとか検討中のようなもの、あとのDDGについても、将来的に見るとこれをエイジス艦にかえていくんじゃないか、それをやるために一%をここで突破しちゃうんじゃないか。私は、「防衛計画の大綱」にもあるとおり、いわゆる技術水準の向上に伴って装備というものは近代化するのは当たり前なんですよ。特に十年先なんということになれば、それは当然のことじゃないですか、どうなるかわからぬけれども。それを今の段階からこういうように見てだんだんだんだんいっちゃうぞ、そのために一%を超えるんだ、そういうふうな考え方というのは素直でないと思うのですね。  私は、一%の問題について言うと、本当に一%の問題点については必要なものを積んでいって、それで一%を超える場合はやむを得ないんじゃないか。できるだけ少ない方がいいけれども、一%でがちっとこういうふうにかんぬきをはめることが本当に我が国の防衛のためになるのか。だから「防衛計画の大綱」水準の達成、そのために一%を超えざるを得ない場合にはお許しをいただきたい、こういうことでございますので、その点についての認識が違っていると思います。
  63. 上田哲

    上田(哲)委員 認識が違っているのではなくて、まるっきり争点がかみ合いもしない。何という、失礼ながらレベルに達しない議論をなすっていらっしゃるか。少なくとも一年や二年のことじゃないでしょう、中期防、五年規模で十八兆四千億円。しかも、その次の五カ年を見込んで防衛計画というのを立てるのでなかったら、何の安全保障論がありますか。今明らかに十年の展望で考えて、こういう洋上防空という概念が出てきて、これははっきりとると言っておられるではないですか。それは明らかに単なる兵器の更新じゃないのです。新しい装備兵器体系の中にはっきり三本柱と言っているではありませんか。間違いなくOTHという膨大な費用のかかる兵器体系、観測体系をつくり、そしてそれはCAPがなくてはなり得ないものになり、そしてエイジス艦の体制が含まれる。これは今の日本の自衛隊の持っている装備体系とはまるっきり違ったものじゃないですか。これが全然違わないなんというばかなことは誤解どころの話ではないんだ。認識不足で勉強してもらわなければならぬということしか言えないのですけれども、私はそういう問題として、これが、恐らく否定されるのだから言いっ放しになってしまうしかないのですけれども、これはシーレーンというものに集中的に設ける場合の一千海里ではなくて、防衛範囲を一千海里に広げるという兵器体系を裏づけにした戦略構想の大転換である。そうなってくると、アメリカ側が三%と言っているのはめちゃくちゃであるけれども、例えば軍人恩給等々を含める形をとるならば、三%は指呼の間にある。こういう状態に出発するのが一%突破の具体的な実質であるということを申し上げたい。  総理、私はそのことについて、そこまで拡大をした兵器の近代装備の変更ではない、大きな兵器体系そのものの転換を、少なくとも五年や十年向こうに、中期防のもう一つ向こう、十八兆四千億円に入るか入らないかわからない兵器体系が、その次の軍事費膨張を含めて実は待ち受けているという今後の十年を心配する。その視点を、これはお詳しいのだから、総理、しっかりお答えをいただきたいと思います。――いやいや、総理にお願いしたい。あなた、もういいですよ。時間がないんだ。じゃ、時間を延ばしてくれますか。
  64. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 私が防衛庁長官で、この責任者なんだ。  一番の問題は、洋上防空というのがあたかもけしからぬというお話だけれども、これは防空機能の一助である。「防衛計画の大綱」の中で認められておる。これをあなたは認めないからそういう議論になる、この点だけ申し上げておきます。
  65. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 今のお話のとおり、日本は海運国であり貿易国であり、膨大な物資を日本に入れてこなければ国民生活も成り立たない。油を一つ考えてみても、油が来なければ農業もできない、そういうような国情にあるので、海上における輸送の安全を確保するということは日本にとっては致命的なものであり、そういう点からも洋上防空というものは日本防衛機能の大事な部分である。それを否定なさることからまず根本的に我々と違う。これは、防衛というものを全く無視しているかあるいは防衛に対して我々と基本的考えが違う、そういうことでないかと思う。  「防衛計画の大綱」におきましては、兵器というものは日進月歩でございますから、その日進月歩に対応できるように、要するに防衛というのは相対的なもので、来る方がどういうやり方でやってくるか、それに対応するにはどうしたらいいか、そういうような相対的な関係で動いておる。科学技術の進歩、兵器体系の進歩というものに対応じて、こっちもそれに対応する備えをしていかなければ防衛自体意味がない、そういう意味の兵器の研究、改善というものは十分認めておるわけであります。その範囲内において、我々は日本のこういう貿易立国という、あるいは貿易国というような性格にかんがみまして防衛体系の改善を研究しておるので、これは防衛に忠実なるゆえんである、そう考えております。
  66. 上田哲

    上田(哲)委員 私は、構想がいいか悪いかという議論でなくて、中身の問題として伺っているのです。これは単なる近代化に伴う兵器の更新というのではなくて、新しい装備体系に入らざるを得ない。端的に言うと、総理、これは設ける場合の一千海里ではなくて、いよいよこの一千海里のシーレーンは線ではなくて面になった、こういうふうに考えるのですが、いかがですか。
  67. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 海上警備活動という点におきましては、ある場合には局部的な面になり、ある場合には点にもなり、ある場合には線にもなる。それは、そのときの状況いかんによって変化が出てくるでしょう。そういう意味におきまして、我々はそのときの状況に応じた体系をとらなければならぬ。しかし、一千海里の範囲内全体を面的に防衛するというようなことは不可能です。ですから、もし航路帯を設ける場合は一千海里云々、もし航路帯を設ける場合はとちゃんと限定的に言っておるわけです。
  68. 上田哲

    上田(哲)委員 これを食い違いとか、かみ合わなかったというような議論にされてはならないと思います。これは十年の規模の議論、それが今の出発点だと思いますので、後の議題、議論にゆだねたいと思います。  がらっと変わりますが、総理、長い内閣首班のお仕事をなすって、今私はそれをここで総括してあげつらうというのじゃないのです。実行力の非常に強い方ですから、最後にぜひ提案をするのでいいことを実行していただきたい。それはがんであります。総理ががん制圧のために御努力をなすったということは私はいいことだと思っています。  そこで、どうしてもここで頑張っていただきたいことがある。それは何かというと、今資料を時間を節約するためにお配りしましたが、がんマップのことです。日本ががん先進国と言われたいですね。そのためには、もう明らかに生態を確保しなければならぬ、実態がどうなっているかを精査しなければならない。ところが、御存じのように、WHOの関連でありますUICC(国際ガン対策連合)このUICC、そこにありますから訳語その他全部ごらんいただきたいのでありますが、このUICCが五年に一遍五大陸がんマップ、つまり罹患率と死亡のマップを出すわけであります。日本は相当頑張っていると思ったら、あに図らんや、日本を代表する都市は大阪なんであります。これは全部で十四の道府県でも少しはやっているのですけれども、国際的な基準がありまして、死亡率登録だけで言いますと、二〇%以下は資料にならない。国際的な資料になるということになりますと、日本では大阪と宮城だけなんです。日本を代表するがんマップが大阪というのは、これは不完全なことであります。世界ではこうした資料が今そこにございますように、例えばアメリカでは完全にNIC、国立がん研究所が日本の十倍の千五百億円の予算を持って全国の一三%の資料をきちんと出しているわけですね。あるいはスウェーデンというのは、国の法制によってこれを義務づけて、資料にあるような実に理想的な数字を出しているわけです。これを日本でもぜひやはり全国的な問題にしたい、しなければならないだろうと思う。  具体的にはどうなっているかというと、大阪では医師会等の協力を受けて、これはプライバシーがありますから、患者の名前なんというのは当然言うべきではないし、また、患者に向かって、あなたはがんだと言うか言わないかは議論がありますから、医師ががんと診断をした場合、はがき一枚で大阪のがんセンターに報告をする、ここでデータができるということであります。  さて、数字をそこに書いてありますけれども、東京の場合一年にがんで一万七千五百五十三人亡くなる。そして大体の推定では二万五千人ぐらい罹患者がいるんじゃないかという。一切の事務的な経費を含めて一件千円と考えても、東京だけであればさして大予算でなくてもできるわけであります。これを国立がんセンターで集めて資料にしていくということは、やればすぐできることなんでありまして、億なんという数字になるような財政的な負担ではないのですね。これは、私はぜひがんにこれまで努力をされてきた総理がそういうかけ声を出していただいて、やはり首都圏、しかも、がん発生については非常に人口隠密で疫学上意味を持っている。意味というのは、危険率を持っている、そして未来性を持っているということで、その東京をぜひ督励していただいて、そういう処置を講じていただく。そしてこれまで国際的に提出されたことのないがんマップ、世界の国際がんマップの中にやはり東京のデータがちゃんと出ていけるようなふうに御努力いただくということが総理最後の仕事として大変いい業績ではないかとぜひ思いますので、これに意欲的にひとつ取り組んでいただけないでしょうか。
  69. 竹中浩治

    ○竹中政府委員 今がんマップのお話がございましたが、その基礎になるのががん登録でございまして、御承知のように大阪と宮城県が非常に歴史が長いわけでございます。  私どもも、できるだけ登録の都道府県をふやしたいと思っておるわけでございますが、やはり精度が一番大事でございますので、そういうことを考えながら、着実にふやしてまいりたいと考えております。
  70. 上田哲

    上田(哲)委員 どうか役人答弁ではなく答えてほしい。これは大したことじゃないのですよ。これはじらんいただきたいんだ。きのう実は、こんなことを言うから、私は経理がやろうと言ってくれれば大変いいことだと思うからお話をしているのですが、きのうから厚生省に資料を出してくれ、UICCの資料を出してくれと言ったら、UICCというのはありませんと言うんだ。一生懸命探したが、UICCの資料がないと。これですよ。このマップですよ。そんなことを今のような答弁するから、こんなこと言いたくないのに言わなければならない。  そんなことじゃなくて、金額からいったって知れているんだし、そして大阪では現にやっているんだから、ぜひ東京も始めてもらいたい。そして、日本のプライドにおいてぜひひとつ世界のマップの中に東京のデータを出す。がんマップのもとになるのはがん登録であります。――それは同じことだ、がんマップのことをがん登録と言っているのですよ。だからそういうことをぜひこれは総理、決断をしてやろうというのを出してください。これは厚生省ではなくて総理最後のいい仕事じゃないですか。
  71. 斎藤十朗

    ○斎藤国務大臣 がんによる死亡は今一番多いわけでございますので、このがん対策についてはあらゆる角度から努力をいたしておるところでありますし、御承知のように、政府全体としても対がん十カ年総合戦略ということで今取り組んでおります。そういう中で、今先生御指摘のように、がんの発症の分布等についてきめ細かく把握するということは非常に必要なことであろうと思いますので、がんマップをつくるに向けてどのような点をこれからやっていったらいいか、ひとつ勉強いたしてみたいと思います。
  72. 上田哲

    上田(哲)委員 総理、無理難題言ってないですよ。ひとつ決断でここはもうかき分けてでも立ってもらってやってもらいたい。数は知れているんですよ。大阪は今まで医師会の協力を得てお医者さんが全部はがきを出しているのですよ。その大阪の医師会の御協力、御努力については高く評価をする。大阪が幾ら立派な資料を出されても、やはり一番人口隠密な、しかもいろいろな問題があるそういう東京でデータがなければデータとしての完全さも期しがたいわけです。しかも東京には国立がんセンターという立派なものがあるのですから、そこでこういう仕事をしてもらったらどうか。具体的に言うと東京の場合は六十一年で一万七千五百五十二人の死亡です。推定は罹患が二万五千人です。もちろん医師会の協力も得なければなりませんけれども、ぜひ補助金を出して、金は知れているのですから、ぜひ中曽根総理の前向きな姿勢としてこの仕事をやってみょうということを言っていただきたい。それが政治じゃありませんか。
  73. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 どうも東京だけの利己主義というのはよくないですな。第一部馬県もありますし、鹿児島県のようなものは白血病の独特のものもありますし、日本海沿岸についてはまだ独特のものもありますし、北海道や沖縄もありますし、やはり政治というのは日本全国も見なければ公平にならぬ。  そこで、私もがんマップというものは必要だと思います。ですから、せっかく御質問でございますからよく検討するようにさせましょう。やはり発生状況をよく調べるということはがん対策の大事な一つのポイントであると思います。
  74. 上田哲

    上田(哲)委員 東京が大事だから東京だけやりなさいということを言ったつもりは全くない。総理が言っていただいた言葉をそのとおり受け取ろう。全国でやってください。これはここにもちゃんと書いておいたでしょう。今でも不十分ながら十四の道府県がやっているのですから。群馬県も入っていますよ。――入ってない、これは。だから群馬県でもやっていただこう。日本のがんマップは世界から要求されているのですよ。特に日本の首都東京はどうなっているのだということが要求されているのだから、全国でぜひやっていただいて、群馬県も忘れずにやっていただいて、そういう中で東京の求められるデータも出せるように努力をする、私はこういう意味でもう一遍申し上げるから、総理、これはもう一言きちっと前向きの御発言をいただきたいと思います。
  75. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 よく検討いたします。
  76. 上田哲

    上田(哲)委員 あと三カ月余りありますから、これをやってくれるかどうかを、中曽根政治五年間のさまざまな功罪はありますけれども、その重大な判断材料として私はこの実行をお願いをしておきます。  ついでに、きょうは言うつもりはなかったけれども、厚生省の態度が非常にはっきりしませんから申し上げておきます。  今、日本のテレビのコマーシャルの中で第五位までに必ず入るのは外国たばこのコマーシャルです。そうですね。外国たばこのコマーシャルは見ようと思わなくても見ますね。こんなにたくさんコマーシャルが出ているのですが、アメリカたばこ。この外国たばこはアメリカたばこ、アメリカたばこはアメリカではテレビコマーシャルは許されておりません。何で日本で許すのですか。
  77. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これは大変難しい話でございます。御存じのように難しい話でございますが、私どもとしては財政収入も図らなければならないということがございますから、青少年等々への危険あるいは吸い過ぎについての問題はよく注意しつつ、ある程度の広告というものは認めておる、それが今の我が国の段階でございます。
  78. 上田哲

    上田(哲)委員 これは全然わからないですね。財政優先ならば、アメリカでは有害だからコマーシャルをやってはいかぬとまで言っているのを、日本では多少有害であっても財政のためには仕方がないというふうにしか理解できませんよ。そんな理解でいいのですか。アメリカで、アメリカのたばこがアメリカのテレビコマーシャルに出てはいけないと言っているのに、日本に持ってきたらテレビコマーシャルの上位に入るというコマーシャルを許しているのは財政上の理由ということになったらちょっとおかしいのじゃないですか。これは総理、いかがですか、社会常識として。総理
  79. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 何もそんなときに急にアメリカが出てくることはないのでして、やはりおのおのの国におのおのの考え方がある。我が国の場合で申しますと、まあこの辺の段階にいるということと御理解願いたいと思うのです。
  80. 上田哲

    上田(哲)委員 何もアメリカが急に出てきたんじゃない。アメリカのたばこじゃないですか。アメリカのたばこがアメリカの本国でこうなっていると具体的に指摘するのは当然じゃないですか。そんなへ理屈を言ってはいけません。社会常議として総理、それはどうお考えですか。総理総理は物を言えないのですか、こういうときは。
  81. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 今の御指摘は、アメリカのたばこにだけ広告を許さないということになりますと、これはフェアでありません。
  82. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 やはり各国各国それぞれ国情に応じまして保健上の理由、財政上の理由あるいは青少年に対する影響あるいは個人的嗜好に対する許容量、そういうようなもので、例えば禁煙の特別の列車あるいはカーをつくるとか、あるいはそういうような灰吹といいますかアジュトレーを置かないとか、国によってみんなそういう習慣が違う、そういう国情というものに対する許容量というものを少し上田さんも見ていただいた方がいいんじゃないか、そう思います。
  83. 上田哲

    上田(哲)委員 これはもう議論をしますまい。回りの皆さん方が今の御答弁、特にお二人の答弁をどうお聞きになったかの御批判にゆだねて、私は社会的公正を欠くなどという言葉が出てくるのは適当でないなと言うにとどめます。  もう一遍戻ります。最後に戻りまして、時間の関係で後へ譲ったのですがFSX、これは私どもはココムとの関係も含めて、時間がありませんからココム問題はやりませんけれども、どうも王手飛車取りのにおいもしないではない。  FSXは既に六月にそれについての委員会が防衛庁に設けられております。私は、これまでの経過で言うと三段階、第一段階はアメリカの飛行機の輸入、第二段階はF15、16、18、この改造という問題、第三段階は日本も幾らか主体性を持ちながらの共同開発、こういうふうに進んできているように理解をしておりますが、ココム等々の関係もあり、議会筋の関係もあり、さきに来日したワインバーガー長官は、私はリンケージを認めたくはないが、議会の圧力が強いのでということを漏らされたということもありますから、その辺を心配しております。防衛庁内に設けられているFSXの委員会の結論が私は大体三カ月後に出るやに伺うし、その結論の方向は第三段階にあると理解をしているのでありますが、いかがでしょうか。
  84. 西廣整輝

    西廣政府委員 先生御承知と思いますが、F1の後継機につきましては現用機を転用する、あるいは外国機を導入する、さらには開発をする、開発する場合には純粋に日本だけでやる場合もありますし、共同開発する、あるいは向こうのものを改良開発をするという場合もありますが、そういった三つの選択肢のもとに今検討しておるわけでありまして、過去の検討結果それが順次絞られてきている、必ずしもそういうわけではございません。今も同じ三つの選択肢の中から選ぶということで進んでおります。  ただ、若干つけ加えますと、従来日米間で若干の誤解といいますか、ボタンのかけ違いみたいなものがございまして、アメリカの方は、この五カ年計画中にも日本はFSの後継機を整備を始めるのではないかというように誤解をされていたのではないかという気がいたします。それで、貿易の問題等と絡んですぐにでも買ってくれるのではないかというようなお話をされる方がおりましたけれども、そういったものは現在解けておりますので、今日本検討しておるのは一九九七年ごろ配備をする航空機をどうするかという問題であるということで、日米とも同じ土俵の中で、向こうからも知恵が出でいるということでございます。
  85. 上田哲

    上田(哲)委員 聞き漏らしたかもしれませんが、委員会の結論というのは九月には出るということでいいんですか。
  86. 西廣整輝

    西廣政府委員 委員会の方には、仮に開発ということになりますとできるだけ早く着手をしたいということもございますので、努力目標として三カ月ぐらいで検討を終えてくれということでお願いをしております。
  87. 上田哲

    上田(哲)委員 私は、いわゆる防衛問題の今焦眉の急である一%枠問題というものを何とかしてやはり守るべきだ、なおかつ守る努力をすべきだ。どうもお言葉としても納得できませんけれども、そのことの裏返しは、十八兆四千億円の中期防を超えてもっと長いレンジで質的なものに変わっていくという懸念を表明をいたしまして、それについては的確なお答えがあったとは思いませんけれども、これからの深い長い議論にゆだねて、国論とともにこの問題を究明していくことを申し上げます。  終わります。
  88. 砂田重民

    砂田委員長 これにて上田君の質疑は終了いたしました。  次に、木下敬之助君。
  89. 木下敬之助

    ○木下委員 質問いたします。  今回御提案の補正予算は二兆七百九十三億円ということで異例の大幅なものでありますが、結果として昭和六十二年度一般会計予算の総額は五十六兆一千八百三億円ということであります。この五十六兆幾らという予算は、過去数年間とり続けてこられた緊縮財政方針のもとでは見られなかった伸びを示しているわけでございますが、どうでしょうか。政府はこれまでの財政方針を転換されたのですか。転換されたとすればどういう点をどのような理由で改められたのか、お伺いいたします。
  90. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 財政方針を転換と言われますと、御承知のように財政再建の基本命題はまだ道半ばでございますから、そういうふうに解釈をされることはどうも私どもの本意ではございません。ただ、木下委員もよく御承知のように、内需振興、拡大ということが内外の緊急の事態になってまいりましたので、それにつきまして一段の努力をする必要がある、また今後とも努力を続ける必要がある、こういう認識のもとに補正をさせていただきました。
  91. 木下敬之助

    ○木下委員 私たち民社党は、かねてから積極型財政運営への転換を強く主張してきております。こういった提言を続けてまいっておりますから、今回の補正予算は、規模としてはまだまだと思いますけれども、我々の考えもやっと日の目を見た、こういう感じも持っておるところでございます。政府は転換ではないと言われますが、やはりここでこういったことをしなければならぬということは、これまでの政策が誤りであった、そのようにお認めになられていいんじゃないかと思いますが、それでないとするなら外圧によってこういった方針をとっておるのか、この点をお伺いいたしたいと思います。    〔委員長退席、林(義)委員長代理着席〕
  92. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 申し上げるまでもなく、経済は生き物でございますから、やはりプラザ合意以来の非常に急激なかつ大きな円高というものに日本経済が対応していく必要がございまして、そのために財政も一つの寄与をしなければならない、こういうふうに考えたわけでございます。財政再建の必要というのはこれはいささかも衰えないのでありまして、これをやってきたことが誤りだというふうに私どもは思いませんし、その努力は今後も続けなければならないと考えております。
  93. 木下敬之助

    ○木下委員 財政再建の考えは当然我々も一致しておるわけです。これは絶対にしなければならないことでございますが、それを転換する、しないじゃなくて、財政再建を図りながらなおかつ日本経済も繁栄していくというためには、今までのようなシーリング、マイナスシーリングということで一律に全部するようなことじゃなくてやったらどうですかということで言っているわけでございますから、こういう基本方針というのはやはりきちっと総括して先に進まれる方がいいと思います。私はやはり今までのは間違いであったと思います。これまで政府は、昭和五十七年度はゼロシーリング、五十八年度からはずっと今年度当初予算まで五年間連続でマイナスシーリングを続けてきております。我々は単なるつじつま合わせの一律マイナスシーリングを批判してきているのですが、こういった官僚的発想の財政運営は実体の経済にそぐわない、いろいろさまざまな弊害を生み出してきていると思います。  例えに一つ例をとって、本来最も重点が置かれなければならないはずの研究開発費が圧縮されてきた、こういったことが最も典型的な例になると思います。郵政省の例をとってみまして、郵政省の一般会計における宇宙開発、ニューメデアといった最先端の研究開発の予算が、五十六年には二十四億六千万円あったものが二十二億一千万、十八億二千万、十三億一千万、十億四千万、九億一千万とだんだん下がってきて、ことしては八億八千万、五十六年に比べて約三分の一に減ってしまっております。どういう苦しい予算の中でも、現代のような情報化社会、宇宙時代にこういった結果を招いてきていることは全くナンセンスなことであると私は思います。郵政大臣、この点はどうですか。こういった数字で責任持って宇宙開発とかニューメディアといった問題に取り組んでいけるのかどうか、お伺いいたします。
  94. 唐沢俊二郎

    ○唐沢国務大臣 情報化時代に郵政省関係の政策経費が減っておるのは遺憾であるというお話でございましたが、私も先生おっしゃるように、高度情報社会になりますと電気通信の果たす役割は非常に大きいと思うのです。  せっかく御質問をいただきましたのでこの機に申し上げますと、問題点は二点あると思うのでございますが、一つは、高度情報社会になりますと、情報格差によって中央と地方の格差がさらに拡大するのではないかという懸念がございます。そういうことで、中央と地方とのバランスをとるということが重要な問題でございまして、そのために御承知のようにテレトピア計画とかテレコムプラザ構想を促進をいたしておるわけでございます。  それからもう一つは、技術開発でございまして、超電導とか宇宙通信とか光技術とか、そういう時代に向かいまして、基礎技術の研究を着実に地道に続けることも必要でございますが、当面技術開発が内需拡大に大きな貢献をする、効果がある。先生御承知のように新型の携帯電話とかポケットベルとかあるいはカーステレオとか、これは現在開発されたものもあるし、近い将来開発されるものもございます。  その中で一番決め手になるのは、先生が大変関心をお持ちのハイビジョンだと私は思っております。第三のテレビ革命と申されておりますが、勤労者世帯で平均七百万以上の貯蓄のある今日でございますから、前の二回と違いまして爆発的に普及するのではないか。いろいろ効能書きも言われておりますが、一番いい点は、やはり非常に鮮明であってちからかしない、子供の目の悪くならないテレビ、お年寄りの目の疲れないテレビ、したがいまして、初孫にハイビジョン、親孝行にはハイビジョン、内助の功にもハイビジョンということで、三千五百万世帯が五十万のハイビジョンを買いますと、乗数効果を入れませんでも十七兆五千億の売り上げでございまして、これが内需振興、自然増収につながるわけでございます。  そういう意味で、今回の補正予算では、御承知のようにテレトピア地域に対します各種情報化事業に無利子融資の道を開いていただきましたし、民活対象のATR等の施設に対しましては補助金も若干増額させていただきましたが、今後とも通信情報の基盤整備のためには、民間活力の活用を基軸といたしまして各方面と御協議をいたしながらできるだけの支援を行ってまいりたいと思っております。
  95. 木下敬之助

    ○木下委員 総理、郵政大臣もあんなふうに言っておられます。やはり一律のシーリングでやるといろいろ弊害がある、そんなふうに私は思いますが、どうですか、総理の御見解は。
  96. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それはやはり数年間マイナスをやってくると、各省庁でみんなお願いするということばなかなかつらいことでございます。やはり手法としてはどうしてもみんなでその減り分を共通に分け合おうではないかということでありませんと、現実の行政としてはなかなか難しいということは御理解がいただけると思います。しかし、その中で、それをやってまいりますと、おっしゃいますように、そのアクセントをつけることをだんだん忘れてまいりますから、その中ではやはりそういうことを考えていかなければならない。今伺いますと、内需拡大にもなる、親孝行にもなるというようなことは、これはぜひ一生懸命やらなければならぬことだろうと思います。
  97. 木下敬之助

    ○木下委員 そういうお考えのもとに、それでは六十三年度の予算編成はどういう姿勢で臨まれますか。これまでの一律マイナスシーリングは撤廃なさいますか。
  98. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 実はその点をこれから閣内でも御相談をし、私どもの党とも相談をしていかなければならない。だんだんその時期が迫っておるのでございますけれども、従来からのいろいろな経緯から考えますと、やはり投資的経費については従来マイナス五%というようなことをやってきておるわけでございますけれども、今度NTTの売却代金も利用できることにもなりますので、この点は内需拡大、内外の問題を考えまして、従来の方針をある程度再検討していく必要があるのではないだろうかとひそかに考えております。  ただ、そうなりました場合には、今度いわゆる経常的経費の方は、片方を仮に緩和するといたしますと、もう片方の方はやはり厳しくやっていかなければならないという問題にならざるを得ないと思いますので、その点もよく閣内でこれから御相談をしていかなければならないと思っております。
  99. 木下敬之助

    ○木下委員 もう一点、シーリングに関して申し上げておきますが、今私、郵政省の例を取り上げて言いましたけれども、大体我が国の研究開発予算というのは大変少ないと思います。日本全体としては、民間も含めての研究開発費は、対GNP比で西ドイツが二・八四%、これに次いで二・七七%と日本が高い水準にあるのですが、その中に占める政府負担割合は、他の主要国は、英国の場合六〇%、フランス五六・七%、アメリカでも四六・八%といったものに比べて日本は二一%、これは極端に少ないと思います。しかも、この数年間の政府研究開発費の伸びが、欧米主要国はこの数年間で三〇%伸びてきているのに対して日本が九%しか伸びていない。差は開く一方でございます。  そういった意味で、この資源に乏しく、国土に比べて人口の多い我が国のあしたの社会、経済、産業の発展のために研究開発の推進は不可欠でありますので、私は来年度からの予算編成に当たっては、研究開発予算は内需拡大という見地からも公共投資的経費として扱うべきものである、こう考えておりますが、大蔵大臣のお考えをお伺いしたいと思います。
  100. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 今のことは私も気がついております。ただ、これは我が国の場合、経済が全体に民間主導型である、あるいは政府と民間との関係がよその国に比べますと非常に近いといったようなこともございますし、軍事費の問題もあるいはあろうかと思います。そのことは気がついておりますが、したがって必要な研究開発費はやはり政府としても当然出さなければならない、公共事業並みというふうにまいりますかどうか、その点にひとつ重点を置いて考えろということでございますと、それは十分に考えさせていただきます。
  101. 木下敬之助

    ○木下委員 いろいろと申し上げてまいりましたが、今、我が国にとって財政再建と内需拡大、これは両方どもやり遂げていくことが必要であると考えます。そういう中での公共事業というのは、効率よく内需拡大に結びついていくものを最優先して行うべきであろう、こういうふうに思います。  どういったところ、どういったものが効率のいいものであるか、こういう点を考えてみたのですが、まず新たな投資の呼び水となる、そしてまたいろいろな基盤整備事業等なんかの場合は土地取得費にかかり過ぎないものがいいんじゃないか、そしてそれが雇用創出につながる大きな影響のあるものであったり、また貿易黒字の削減に直接資するようなもの、こういったものが効率のいいものでないかと思うのです。この内需拡大のために公共投資は効率のいいものをやるべきだということと、また効率というのはそんなことを考えてやるんだという点について大蔵大臣のお考えをお伺いしたいと思います。
  102. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいまお挙げになりました諸点はすべてごもっともで、私どももそう思います。その上になお国内にかなり経済の落ち込みの大きい地方とそうでない地方がございますので、そういう意味での傾斜もひとつ考えてまいりたいと思います。
  103. 木下敬之助

    ○木下委員 ただいま申し上げましたような見地から、内需拡大に効率よく貢献するであろうと思われますものを幾つかこれから個別に取り上げて政府方針をお伺いいたしたいと思います。  まず、情報通信基盤整備という点でお伺いをいたしたいと思います。  東京集中を是正して均衡ある国土を形成し、産業経済の構造転換、国際交流の促進等のためには、全国的な高度通信ネットワークの構築などの整備が急がれると思います。政府においては、従来のような形の社会資本のみならず、こういった情報通信基盤等の新しいタイプの社会資本の整備にも積極的な財政支援措置を講ずるべきと考えますが、どうでしょうか。  また、内需拡大という点からは、特に先ほど郵政大臣の言われたハイビジョン、それから衛星放送、CATV、その他の放送メディアの振興が挙げられますが、どうお考えになられますか。総理のお考えをお伺いいたしたいと思います。
  104. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これは郵政大臣からお答えがあろうかと思いますが、特に通信基盤整備はいわゆる民間の力も入ってまいりますから、先ほど申し上げましたNTTによります社会資本整備勘定からこれは十分に御支援ができる、またいたしたいと思います。
  105. 木下敬之助

    ○木下委員 ぜひやっていただきたいと思います。  郵政大臣、ことしの四月の半ばごろにちょっと新聞で読んだのですが、キャプテル計画、こう名づけられて、ビデオテックスの端末機を五百万台ほど無償で提供して情報通信市場の呼び水とする、このような計画のあることが報道されておりましたが、あれはどういう計画でどこまで進んでいるのか。
  106. 唐沢俊二郎

    ○唐沢国務大臣 ビデオテックスの無料配付の問題でございますが、我が国の電気通信の発達、また情報化の進展はよその国に比べて大変スムーズでございますが、その中で比較的歩みののろいのがビデオテックスであったわけでございます。かつてフランスがビデオテックスを無料配付してこれが普及に非常に貢献をしたということもございますので、この機会に我々も無料配付を考えたわけでございますが、やはり大蔵省が非常に健全であった、そして頭脳も堅実でありましたので、教科書の無償配付も今問題になっているので、そういうときであるから、たとえ一回であってもいかがなものであろうかということで、実現は今のところ大変難しい状況にございます。  しかし、先ほど申しましたテレトピア地域に対する地域のビデオテックス事業に対しましても無利子融資の道を開いていただきましたので、そういう点でまた今後もできるだけの努力はしてまいりたいと思っています。
  107. 木下敬之助

    ○木下委員 郵政省の話となりましたので、ちょっと気がついたことをもう一点申し上げたいと思います。  郵政省関係では、保養センターとか郵貯会館とか、特別会計でやっている施設があります。厚生省とか農林省とか他の省庁にもいろいろとあるわけでございますが、財政再建を考えながら内需拡大を図るという見地から見ると、この際、財政再建に影響を与えない特別会計等を積極的に活用して、地域経済にも活力を与えることになる公的施設の整備拡充を図るなどはぜひやるべきであると考えますが、経企庁長官はどうお考えになっておられますか、お伺いいたします。
  108. 近藤鉄雄

    ○近藤国務大臣 内需拡大の基本というのは日本全土を大きなマーケットとして拡大をすることでございまして、そういうことで積極的な民間投資の活用を図る、こういうことでございます。そういう点では、先生から御指摘ございました電気通信網の整備だとか道路交通網の整備、こういうことがその基本であって、それに民間活力をどんどん動員していくわけでございますけれども、特別会計におけるいろいろな施設の整備については、これまではそれなりの役割を果たしてまいったわけでございますが、これから民間主導型の経済運営を考えてまいりますと、所によっては民間が入ってくるのにそういった公的な施設が多少障害になるという面もございますので、その点は地域地域の現状に即しながら、民間活力でできないような過疎、山村地帯については、やはり従来よりも場合によっては積極的に進めるということだと思いますけれども、そこは地域の実情に即しながらきめの細かい対応をしていく、やはり民間活力ということを従来以上に積極的に引き出すことに配慮すべきではないかと思う次第であります。
  109. 木下敬之助

    ○木下委員 民間活力、当然でございますけれども、こういう緊急な事態ですから、大いにできることはやっていただきたいと思います。  次に、高速道路網整備についてお伺いいたします。  私は地方の出身でございます。同じ日本に住む者として、憲法で保障されているように平等に国家の繁栄を享受する権利があると思うのに、現実は不平等であると考えております。特に、新幹線の通ってないところや高速道路網の整備がなされていないところでは大きな不満となっております。ちなみに、私の大分県ではまだ一メートルも高速道路がございませんし、もちろん新幹線もございません。大変な不公平だと思っております。  建設大臣は、国土の均衡あの発展のために高速道路網をどのように整備していくお考えか、決意のほどをお伺いいたしたいと思います。特に、限られた予算の中で進めるからには、土地にお金を余り食われずに済むような地方を優先して、重点的な整備であってよいのではないかと考えますが、この点を踏まえて御答弁ください。東京の土地のことで思うと、東京で一キロつくるお金があれば、地方に行けば千キロほどできるわけであります。
  110. 天野光晴

    ○天野国務大臣 木下君の質問ですが、御承知のように最近、高規格自動車専用道路として四全総の策定に当たりまして一万四千キロを決めました。これは御承知のように、今までの高速国道は七千六百キロですから、相当な伸びになるわけでありますが、今度のこの路線を決定することによっておおむね全国文句ないぐらいの配分ができたんじゃないかなと考えておりますし、今までよりはスピードを上げてやりたいと思っておりますし、四全総は御承知のように一点集中主義ではございませんから、そういう観点でできるだけ効果のあるような措置を講じたいと思っておりますが、全高速国道、三十年ぐらいの計画で今度は仕上げるように準備を進めようと思っております。大分県の方も大丈夫、今度は高速国道できそうですから、ひとつ御心配ないように。
  111. 木下敬之助

    ○木下委員 次に、下水道整備についてお伺いいたします。  我が国の下水道整備は先進諸国に比べて著しくおくれています。ちょっと調べてみたんですが、イギリス九七%、西ドイツ九一%、アメリカやカナダのような広いところでも七二%、七四%、これに比べて日本はわずか三六%であります。我が国は経済大国であり、世界一の債権国となったわけでございますが、その国の一番大事な文化のレベルを示すとも言えるような下水道の整備率がこんなことでは本当にどうしょうもないと思っております。生活水準の向上のためには思い切って下水道整備を進めていく必要があると思いますが、建設大臣のお考えをお伺いいたしたいと思います。これは大臣、具体的にいつごろまでにどのくらいの普及率まで持っていくことを考えでおられるのか、お答えをいただきたいと思います。
  112. 天野光晴

    ○天野国務大臣 下水道がおくれでいる一番大きな原因は、日本の民族の生活のあり方が大きな原因となっているんじゃないかと思います。私は農家に生まれて農家に育ったんですが、農家では今の下水道のようなことをやったらどうにも生活が続きませんで、それを農耕用に使ったものですから、いわゆる普及率が、スタートがおくれたということが一番大きな原因ですが、しかし、今日のような社会状態になってきますと、それは当然家庭生活に直結する一番大きな公共事業でございますから、特に急ぐようにしたいと思っております。この点についてはここ数年間相当伸びたつもりでありますが、それにしても、伸び率を比較されますと全然どうにもなりませんので、今度の補正を中心といたしまして相当伸びを大きくしてやりたいと思っておりますが、あと何年間で仕上げられるかということについては、ちょっとやはり問題がありますから、できるだけ早くやるように努力いたしたいと思います。
  113. 木下敬之助

    ○木下委員 目標を立ててやっていただきたいと思います。  その次に、老朽市街地の高層化という観点でお伺いをいたします。  各地に行きますと、かつては最先端で栄えたであろう町の一角が古くなって、客足も幾らか遠くなっているような、そういった商店街もございます。こういった老朽市街地を高層化して活用していくことは大きな内需拡大となっていくわけですが、そのためにはいろいろと有効な促進策を政府も講じていく必要があると思われます。  特に地方に行きますと、駅前なんかは大変密集した老朽家屋の多いところが多いのですが、こういったところは道路も狭くて、再開発を行うにもなかなか大変です。大きなものが建てられないところを無理して建てても、床面積の小さな段々ビルをつくる、こういった程度にとどまりまして、極めて非効率なものですからなかなか建てかえに踏み切れない、こういったことが実情であろうかと思います。また大分を例えて悪いのですけれども、大分はまだ鉄道高架がされてないのです。私も駅の近くに住んでおるのですが、これは、交通がいつも踏切で遮断されて不便であって、それ自体でも町の発展が阻害されておるのですが、またその地域の老朽市街地を建てかえようとするときに、もし駅高架ができて、道も整備されたら、もうすぐあしたにでも建てかえたいと思っている方も多いのだと思いますね。  そういう意味で、こういう緊縮財政の中で一生懸命内需拡大をやろうとしたときの効果を考えますと、鉄道を高架化する、駅高架を図るということは大変大きな呼び水となっていく効果があるのじゃないかと思います。この点に関して私は、鉄道高架事業というのは大いに進めるべきであると考えますが、建設省のお考えをお伺いいたします。
  114. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 確かに建設省の関連される部分でもありますけれども、鉄道という立場から、私の方から先にお答えをさせていただきたいと思います。  私ども立場からいきますと、鉄道の高架化というものは踏切がなくなる、これは交通安全の上でも非常にプラスが大きい。また同時に、あなたの御指摘のように駅前の再開発等にも資すると思います。ただ問題は、この事業というものは都市側がまさに事業主体となるものでありまして、都市計画決定を経て実施されるというものでありますから、都市側と鉄道事業者の協議によって逐次進められる性格のものであります。  今、委員が御指摘になりましたように、例えば大分駅を例示でとらせていただくなら、大分駅付近の高架化については昭和五十年度に事業化の調査が実施され、その後もまだ引き続いて検討が行われておりまして、むしろ現在は、地元の自治体において工事計画の内容などについて検討を行っておられると聞いております。こういうものがまとまってまいりますと当然対象として考えられるものでありまして、例えばJR九州会社としても、こうした検討課題が解決した後、都市の方から協議が来れば適切に対処する考え方を持っておると聞いておりまして、その辺もどうぞ御勘案をいただきたいと思います。
  115. 北村廣太郎

    ○北村政府委員 大分駅前の高架化につきましては、ただいま運輸大臣から御答弁のございましたとおり、昭和四十八年から五十五年までにかけまして一時調査に取りかかりまして、いろいろ両省あわせ取り調べたわけでございます。しかし、何分事業費が膨大であることから一時見送りになっておりましたが、最近に至りまして、清算事業団の方から駅北三・三ヘクタール、駅南三ヘクタールほどの処分予定地があるというような御通知をこの七月に受けたばかりでございます。これを合わせまして都市改造と高架化とをあわせて検討するというような意向も市及び県当局にあるとも考えておりますので、改めましていろいろ御相談に乗りたいと思っております。
  116. 木下敬之助

    ○木下委員 大分を例にとりましたけれども、私は何も大分のことだけを言っているのではなくて、全国各地で内需拡大という盲点から高架事業というのは大変有効だということを申し上げておるのでございます。地方の事情を言われましたが、これはお金がいろいろとかかりますからなかなか地方ベースだけでは難しい。こういうときには、大いに内需拡大のため少ない予算をどこに使って効率よくやるかということですので、ぜひ積極的に取り組んでもらいたいと思います。  それでは次に、ヘリポート網構想についてお伺いいたします。  今回の補正予算では、ヘリポート整備促進のために三億円の予算を計上しています。現在、ヘリポートは都市圏に集中して二十五カ所ほど設置されていますが、今後全国各地に拠点を整備していくべきであると考えます。日本全国六百カ所のヘリポート網をつくるべきだ、こういう声もあるようですが、政府はどのように進めていくおつもりか、お伺いをいたします。
  117. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 ことしの五月二十九日、閣議決定をいたしました緊急経済対策の中で、公共用ヘリポートの整備を推進する、地域間の交流の活性化を図るということが盛り込まれておりまして、運輸省としても、空港整備法の改正による無利子貸付制度などを活用して公共用ヘリポートを整備していきたいと考えております。
  118. 木下敬之助

    ○木下委員 地方の発展のために太いに大きなスケールでやっていただきたいと思います。この補正で十五カ所ほどするうち、二カ所決定して十三カ所はまだというふうに聞いておりますけれども、ぜひ、これは内需拡大とか国土の均衡発展のためにも、不況地域に重点を置いてやっていっていただきたいと思います。  このような、これから相当な範囲でやっていく可能性もあるヘリポートを浮体工法で建設したらどうかという構想があると思いますが、この点をどのように考えられますか。この浮体方式というのは関西新空港のとき等にいろいろ話題になったものですが、私専門家でありませんからわかりませんけれども、とにかく鉄やコンクリートの箱のようなものを海上に浮かせてそれをつないでとめて、その上を飛行場、ヘリポート等で使うということなんですが、このようにして海につくると土地代はかからないし、これは鉄鋼もたくさん使うし、その他の資材も使いますし、造船産業等にも影響のある、現在対策を必要としている産業に直接影響のある、内需拡大効果のあるものだと思います。その上、そういう箱を浮かしたようなものですから倉庫にも使えれば、海の上に構築しますので、魚礁としての効果もあって栽培漁業の漁場にもなみ、こういう総合効果の大きいものであります。ぜひ浮体工法で進めるべきと考えますが、いかがでしょう。
  119. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 今委員から、ヘリポートの整備に力を入れてやれ、それは私どももそのとおり一生懸命やっていくつもりです。ただ、不況地域に力を入れろと言われましても、具体的なヘリポートの整備については、輸送需要その他の問題がありますから、必ずしもその御要望に沿えるとばかりは限りません。  また、浮体式のヘリポートのアイデアというものがあることは承知をいたしておりますけれども、具体的な計画がある段階ではまず第一にございません。私どもは、日本の地形条件から考えてみて、浮体式のヘリポートというものを建設をして海域を活用することは大変有効な手段だと考えております。しかし、具体的にはまだ技術的可能性あるいは経済性、環境に与える影響などさまざまな観点からも検討が必要であろうと考えております。  そして、その浮体ビル的な考え方につきましても、現在、運輸省でポセイドンという海洋構造物を由良沖でテストをいたしておりますけれども、私は、実用までにはまだ多少の検討を必要とするものではなかろうか、将来においては当然考えていくべきものの一つだ、そのように考えております。
  120. 木下敬之助

    ○木下委員 これからの御検討をお願いいたします。  ほかにもコミューター航空の整備推進とか年金客船、こういったものもぜひ前向きに取り組んでいただきたいと思います。時間がありませんので、御答弁はもう結構でございます。  これまでいろいろと個別の問題を取り上げて内需拡大策について論じてまいりましたが、最後に、最も大きな問題として鉄鋼産業対策についてお伺いをいたしたいと思います。  今日の日本の繁栄のためにこれまで営々と努力して力を尽くしてきました鉄鋼産業は、急激な円高の直撃を受けてまさに危機的な状態にあり、血の出るような合理化努力を行っているところであります。我が国のような高度工業国家を今後とも維持していくためには鉄鋼業は不可欠であります。我が国では、今後の各産業の発展に伴ってますます高機能な鋼材を必要としていくことが明確になっておりますが、そのような鋼材を供給していく鉄鋼産業は我が国にあって密着して発展していかなければならない、このように考えます。  また、雇用の問題の目から眺めても、鉄鋼産業の雇用吸収力というのは絶大であります。しかも、今取り組んでおります荒療治とも言える合理化努力が成果を上げると、近い将来にコスト優位を回復できる十分な可能性も持っており、このような取り組みの結果として、鉄鋼の輸出を、八百万トンほど輸出が減って輸入が二百万トンほどふえる、こういう方向での計画でやっているわけですから、この出し入れ一千万トンという数字は金額に直すと五十億ドルという、これが貿易黒字の削減に直結していくわけでございます。  ただいま申し上げましたように、鉄鋼産業対策に力を入れることは我が国の今日の最も優先すべき重要な政策課題である、このように考えますが、どうでしょうか。総理、ぜひお考えをお聞かせください。
  121. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 鉄鋼産業というものは、私はやはりいつでも重要な基幹産業であると思っています。ちょうど人体が、大脳がコンピューターに当たるとすれば足腰というものはやはり鉄鋼のようなものじゃないか。足腰があるから大脳というものがあるので、足腰がなければ大脳はあり得ないというようなもので、情報情報と騒ぐけれども、やはりコンピューターとか情報というものはそういう基礎的産業の上に花が咲くものだ、そう認識しないといけない。そういう意味で足腰と頭がバランスがとれて発達する、そういうことが大事でございます。我が国の鉄鋼業というものは、世界に卓越した技術と経営力を持って、世界に対しても相当な技術輸出までしてきておる非常に特色のある産業ですから、その優秀性をあくまで保持しながら、今のようなバランスのとれた産業基盤として今後とも我々は成長発展することを望むものでございます。
  122. 木下敬之助

    ○木下委員 この鉄鋼産業対策としましては、先ほど来述べてきたような公共事業に力を入れることが即鉄鋼の需要を増大させることになりますので、そういう意味も込めて、重ねて各省庁の御努力をお願いいたしたいと思います。  この鉄鋼産業は地域経済に対し大きな影響力を持っているわけでございますが、鉄鋼産業の血の出るような合理化努力の結果として出てくる廃棄設備撤去による跡地を再活用していくことが、地域経済の活性化のなめにも、またそういった設備廃棄を円滑的に進めるためにも重要な問題でございます。これにつきまして、鉄鋼企業自身も、雇用の受け皿として新規事業等を考えて再活用に向けて努力をしているところでございますが、そのためのプロジェクトに対する助成措置をとるべきであり、政府の方も積極的に第三セクター方式等でできるものを検討していく、こういった必要があると思います。この春、成立を見ました産業構造転換円滑化法による助成措置では、あれではまことに微々たるもので少な過ぎると思います。もっと中身の濃いものを考える必要があると思いますが、いかがでしょうか、お伺いいたします。
  123. 鈴木直道

    鈴木(直)政府委員 御指摘のように、現在、鉄鋼業は大規模な合理化計画を実施しておりまして、その一環といたしまして、高炉八基の吸収を含む設備の集約化を実施しようとしております。それに伴いまして、おっしゃいますような跡地の活用等々の問題が今後出てまいると思います。  現在各企業は鋭意検討中だと思いますが、私どもといたしましては、御指摘のございましたような産業構造転換円滑化法の活用等によりまして、例えば新規事業分野に展開する場合、あるいはまたその地域の活性化につながるような第三セクターを設置してその地域を活用していくような場合等々につきましては、この法律の活用において財政上、税制上の支援をしていきたい、かように考えているわけでございます。
  124. 木下敬之助

    ○木下委員 鉄鋼産業では、構造転換の実施のために設備の休廃止の実施がやむを得ない状態にございます。こうした設備に係る固定資産税の負担が大変大きくなってきております。これは、鉄鋼産業界は大幅な赤字に苦しんでいますから、実際に廃止した設備であってもこれ以上赤字を出すわけにいかない苦しい経営状態の中で、帳簿上では除却するということがなかなかできないのですね。こういう状態で存在しておるのに固定資産税を取るというのは大変酷だと思うのです。こういう厳しい状況下にある産業の償却資産などについては十分配慮するように要望いたしたいと思います。  鉄鋼対策の最後に、次世代製鉄技術開発に対する政府支援措置の拡充についてお伺いをいたしたいと思います。  鉄鋼産業界は、減量経営を徹底していく一方、新技術基盤の確立が急務であります。具体的には、鉄鋼製品の飛躍的な品質向上とコスト低下をもたらすと言われる溶融還元製鉄法、半凝固加工プロセスなど、革命的技術の開発導入に対する政府支援措置の拡充をしていくべきではないかと考えますが、いかがでしょうか、お伺いいたします。
  125. 鈴木直道

    鈴木(直)政府委員 総理答弁にもございましたように、日本の鉄鋼業は技術的には大変世界的に優秀な水準にあると思いますけれども、やはり今後とも技術開発は怠ってはならない、かように考えております。  お話しのような新しい製鉄法、溶融還元製鉄法につきましても、現在私ども検討しております。やはり今後を考える場合に、例えば大幅なコストダウンを製鉄の面で図らなければならないと考えておりますが、この製鉄法によりますと、例えば従来原料炭を使っていましたものが一般炭でいいとか、あるいは鉄鉱石をそのまま使うことができる等々によりまして、二五%程度のコストダウンが期待されるということが予想されておりますので、我々といたしましても、今後の技術開発の主要なテーマといたしましてぜひ取り上げ、関係方面の御協力を得たい、かように考えておるわけでございます。    〔林(義)委員長代理退席、委員長着席〕
  126. 木下敬之助

    ○木下委員 よろしくお願いいたします。  最後に、総理の政治姿勢ということで、話は変わりますが、お伺いいたしたいと思います。中曽根総理への質問の機会というのはもうないかもしれない、こういうふうに思いますので、総理、私が前々からぜひ総理に一度伺ってみたいと思っていたことをお聞きしたいと思います。  総理は大正七年のお生まれで、終戦を多分二十七、八歳でお迎えになられて、戦時中は海軍主計中尉であった、このように聞いております。その点、違ったら訂正してください。少佐ですか。ごめんなさい。大変失礼しました。  あの第二次大戦を身をもって体験されておられまして、そういったいろんな体験の中で確立された政治哲学を持って、この四十年間政治家として活動されてこられたものと思います。そういう中から戦後政治の総決算という言葉も出てきたのだと思います。  実は私は昭和十九年一月の生まれでありまして、終戦のときは一歳半であります。もちろん戦争のことは何にも覚えておりません。いわゆる戦争を知らない世代でございます。しかし、この戦争というものについては、我々は我々なりに、日本国の体験ですから、日本民族の体験として自分のものにして生かしていきたい、こう考えて念願しております。また、その責任があると思います。総理にはこの戦争を体験した政治家として、戦争を知らない者に対しておっしゃりたいことがきっとあると思うのでございますが、ぜひ率直にお聞かせをいただきたいと思います。
  127. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 大変難しい御質問でございますが、私のようなまだ浅学非才の者が申し上げるのも恐縮でございますが、いずれ時間が経過したらそういうようなことも申し上げる機会があると思いますが、端的に申し上げて、あなたの御質問にお答えしたいと思いますのは、やはり日本の二千年の歴史の中で、私は明治維新までというものが一つの区切りだ。明治維新以後がまた一つの区切りだ。それから、この間の太平洋戦争がその後の一つの区切りになる。  明治維新でなぜそう分けたかというと、国際社会に積極的に参入したのは明治維新からであります。それまではアジアの東の東海の列島で、我々民族だけでつつましやかに生活して独特の文化を形成してきた。しかし、明治維新以後は世界の中に入っていった。そして追いつけ追いつけの努力を積極的にやって、しかしその追いつけの努力というものが歪曲されて軍国主義というものに取りつかれて、そうして、言いかえれば自分で自分の火薬庫を爆発させたというような形であの戦争の悲惨さを体験した面もある。それだけではないけれども、そういう面が非常にあるのだ。そうして戦争に負けて、瓦れきの上に立って、私たちは復員して茫然と祖国を見たわけであります。この国、一体どうして再建できるのだろうかと思った。  そのときに、やはり民族の団結というものが一番大事で、社会秩序を建設するのがいい。その中で国民が一致して考えたことは、やはり民族が団結して結束するためには、何か中心が要る。それはやはり日本の場合は天皇制だろう。しかし、天皇制といつでも昔のような軍国主義に利用された天皇制ではいけない。そういう意味で、無一物無尽蔵というような天皇制、つまりないがゆえにとうとい、そういう意味で権力も皇室財産も放棄された。そうして無一物になり、それがゆえに無尽蔵であるという象徴天皇というものを我々は考えて、そうして今の憲法のもとに民族の団結を図って、象徴天皇については共産党を除いては全員賛成して結束したわけですから、それで今日の民族の活力と再建が可能になり、それにあわせて日本民族の持つ勤勉性とか積極性とかいろんな面が複合的に出てきて今日ができてきた、そう思うのであります。  そういう点を考えてみると、やはりその国その国の味というものがあるのであって、日本日本の味というものを大事にしていかなければならぬ。しかし、そういう個性ばかりを言っていると、これはまた非常に教条主義的な固陋なものになる。日本が明治維新以後これだけ発展したというのは、一つは遠心力と求心万を巧みにうまく調和さ世だ。例えば、儒教とか仏教というものあるいは昔の制度ばかりに固執していると、これは求心力であって、近親結婚みたいな弊害みたいなものが出てくる。遠心力は民主主義です。民主主義というものによって遠心力が出てきて、これが巧みに調和されてその時代時代の必要に応じて発現された、戦後は非常に巧妙にこれが発現された。そういう意味において、遠心力と求心力を巧みに使っていくというのがまた政治家の腕前じゃないか、そういうふうに思います。  そういう意味において、私は、民主主義、平和主義、国際協調主義というものを一面において強調しますが、一面において日本のアイデンティティーというものも大事だ、そういうことも言っておるわけであります。それで、これから我々戦争に行った大正あるいはその世代の復員した連中は第一線から退きますが、あなたのようなお方が次の時代を背負っていただくわけでございますが、そういう形で日本が今日復興したという過去の軌跡をよく研究していただきたい。そして自分なりの方向を見定めていただぎたい。それには外国のイデオロギーとかそういうものを一切離れて実証主義的に、この日本で何がよかったか、何が悪かったか、独特の、独自の見解でやっていただきたい、そう思います。  もう一つは、やはり太平洋戦争というこの大きな悲劇というものは、明治維新以来追いつけ追いつけて来たのでありますが、あの日露戦争で日本が勝ってからは、言いかえれば五大国の中に入って、それからやはり増上慢になったですね。そして、官僚とか軍人とかというもののばっこを許して民主主義の力が弱まった。民衆の統制力や力というものが弱まった。そこにあの太平洋戦争の悲劇というものが生まれてきたので、やはり民衆の力というものは非常に大事である。ジャーナリズムも入るし、学者も入るし、政党も入るでしょう、労働組合も入るでしょう。しかし、みんなが健全でいけば、その間に争いはないはずであります。そういう共通の価値、基準というものを見つけ合いながらみんなで進んでいくという形が大事だろう。  それから、やはり日本は明治維新以来もう息せき切って百年間、それ以来太平洋戦争まで追いつこう追いつこうで、非常に私は疲れたと思いますよ。それから狭量にもなり、そして何か焦ったという感じがした。しかし、太平洋戦争というもので目が開かれて、そして別の世界に、民主主義あるいは人道主義、国際主義という大きな広い世界があったということを気づかされたと思うのです。そういう意味からすると、明治維新以来息せき切って駆けてきた、追いつこうとした日本はしばらくは休養を要する、五十年か百年ぐらいは民族的休養の時代じゃないでしょうか。その間に文化とかあるいは生活とか福祉とかそういうものを大事にしていく。しかし、文化や生活や何か守るためには、独立と平和を維持しなければそれはできない。独立と平和を維持するためには、やはり防衛というものも必要だ。しかし、防衛というものも、戦前的な感覚の防衛ではもうない。今のような民族とか文化とか平和を守る、そのための防衛が大事だ。政治も私は文化に奉仕するものだ、そう言ってきた。今までの戦前の政治というのは外国に勝つため、あるいは外国に優位を持つため、そういうような帝国主義時代の残滓を持った政治であったと思うのです。今やそういう文化に奉仕する政治というふうに変わらなければいかぬと思います。  今のようなそういうような感覚に立って、そして、いよいよこれからは国際国家として、これだけの経済力と科学技術力を身につけてきましたから、本格的に世界や文化や人類に奉仕する、そういう面で日本の特色を出していく時代が来た。それは、我々戦前派の者ではここまでたどり着いたが、これからその実を発揚していくのはあなた方の時代だろう、そういう気が私はしております。  以上で、大変僭越でございますが、感想を申し上げる次第であります。
  128. 木下敬之助

    ○木下委員 感銘をもって聞きました。大変ありがとうございました。
  129. 砂田重民

    砂田委員長 この際、楢崎弥之助君より関連質疑の申し出があります。木下君の持ち時間の範囲内でこれを許します。楢崎弥之助君。
  130. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私は、最近の後藤田官房長官の例えばココム問題に対する統一見解に対するクレームあるいは土地問題に対する義憤の発言を非常に高く評価しておるのです。立派なものだと思うのです。昨日、私が尊敬する天野建設大臣答弁も立派でした。私は笑ってしかられましたが、あなたが健在だから、うれしかったから笑ったのでありまして、ろうそくの消えかかる前の一瞬の光芒でないように、どうぞ体を大事にして、留任でもなんでもしで頑張っていただきたい。  それから、中曽根総理のきのうの答弁も、私は後で読んで感動しました。任期が少ないのにあれだけの情熱を持って土地問題と取り組むんだという、非常に感動いたしました。  それで、私はきょうは土地問題に絞りますけれども、何とかして、私も腹に据えかねるものがあるから協力をしたい、そういう点で質問をしますから、若干腹に据えかねる点があるから過激な言葉になるかもしれませんが、それはお許しください。浜幸さんもお願いします。  それで、今まで土地問題の質問を聞いておりまして、この六十一年度の「国土の利用に関する年次報告」の中でもそうですけれども、今までの政府答弁でも、地価の狂乱的高騰の原因に欠落している点がある感じがするのですね。それは何かというと、信託銀行ですよ。これの犯罪的な融資です。私はそう思いますよ。それで、土地高騰をストップさせるいろいろな方策について野党からも提案をしております、政府も考えておられますが、その中にぜひ追加していただきたい、考えていただきたい問題があるのは、信託銀行が土地の鑑定士を兼任しておることは一体何だということです。  以下、私はそのなぜかということについて説明をいたしますけれども、大体信託銀行に土地の仲介業務をやらせることが間違っている。これにも書いてありますけれども、金融の緩和が非常に騰貴の原因になっているということは書いてあります。それで、この際信託銀行に土地の仲介業務をやらせることをやめさせる、そして同時に公示価格の決め方の仕組み、これに私は問題があると思うのです。最近国税庁が調査に入っております中央信託事件、これ以外の信託銀行にはこの種の事例はないと大蔵大臣は断言できますか。どうでしょうか。
  131. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 かねて間違いを起こさないように十分注意をいたしておるつもりでございます。
  132. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そういう中央信託銀行のような事例はないと思っておられますか、それを聞いているのです。調査されてないのですか。
  133. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そういうことが起こりませんように、私どもとしても万全の注意を払っておるつもりでございます。
  134. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 かつて住友信託は前科がありますね、御案内のとおり。これは、都市部の地価急騰で主役を演じてきました大手不動産の住友不動産、住友商事と地上げ屋の都市企画設計の元中堅幹部、これは昨年十月二十二日に土地先行取得に絡む詐欺容疑で東京地検特捜部が入って逮捕されましたね。前科があるのです。  それから、三井信託にも前科があります。これは、有名な千葉の浦安沖の埋立地で東京ディズニーランドですか、あれをつくった。このときには非常に社会性があり、転売は、埋め立てしておりますから、千葉県との間に非常に厳密な転売を規制する契約を結んだ。ところが、それに違反して、一部転売したという事件があった。これはオリエンタルランド――オリエンタルランドというのは、昭和三十五年につくられた会社で、これには三井不動産、京成電鉄、三社がつくっておるのですね。これが五十八年に東京国税局の税務調査で約五億円の所得のごまかしが指摘されて、重加算税を含め追徴課税をされておるという事実があります。こういうことが過去にあるのです。ところがまた、中央信託がやったわけでしょう。  それで私は、良心的な鑑定士あるいは業者の方に、時間の許す限り会って話を聞きました。どなたも一致しておっしゃることは、この信託銀行のあり方、土地投機に対する融資のあり方、これはだれでも指摘しておりますよ。だから、中央信託のようなことはどこでもやっている。信託銀行八社。大和銀行も信託業務やっていますから、大和銀行を入れると八社になる、これは調べられればすぐわかることです。  そこで私は、資料にありますけれども、一九八六年の九月二十七日付のものですが、「浜松町・新橋地区におけるビル用地取得の主要例」、これはことしの五月にソウルで日韓の不動産鑑定士の合同会議があった。そのときに配られた資料なんですよね。この資料をお手元に配っておると思いますが、これを見ると一目瞭然ですね。つまり、住友不動産がビル用地取得の総面積の三七%を買い占めでおります。だから、土地買収の最大チャンピオンは、数字上は住友不動産ですよ。そして、今度はその土地投機融資の方の最大のチャンピオンは三井信託なんです。これもはっきりしておる。  そこで、私はこれは国税庁にもう一遍聞きますけれども、どうしてこの際中央信託だけに限って、ほかのところを調査していないのですか。それを聞きたいのです。
  135. 日向隆

    ○日向政府委員 委員も御案内と思いますが、私どもといたしましては課税上有効な資料の収集には常に努力しておりまして、この資料と申告書等を突き合わせまして問題がある場合には、適切に実地調査等を行って処理しているところであります。信託銀行の場合においても例外ではございません。
  136. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 じゃ、今のところ問題ないというわけですか。
  137. 日向隆

    ○日向政府委員 個別のことについて御答弁することは差し控えさせていただきますけれども、信託銀行につきまして、私ども調査いたしました内容についてこれ以上言うことは差し控えさせていただきたいと思います。
  138. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 大変微妙な御答弁ですが、相当注目をされておるというふうに私は受け取りたいと思います。  それで、これも調べればすぐわかることです。私も調査しました。信託銀行の各社はほとんど、半年に百億円の利益を上げるノルマが課されておる。それで、不動産業者に融資するでしょう。正規の手数料はありますわね。そのほかに指導料、コンサルタント料と称してダブル手数料をほとんど取っているのです。これも調べてごらんなさい、すぐわかることですよ。だから私は、こういう点に実は問題があるのではないか、過剰融資、投機的な融資。それでこの点もひとつ厳重に調べていただきたいと希望をいたしておきます。  それからもう一つ、公示価格の決め方、仕組みに問題があるのではないかと冒頭申しました。公示価格は、地価公示法に基づく土地鑑定委員会、七人の委員の人から成っている、これが決める建前になっておりますね。しかし、七人では能力がないから、また法律上二人以上の鑑定士に評価をお願いしなければいかぬから、実際には日本不動産鑑定協会にその決定を依頼しておりますね。そして、その日本不動産鑑定協会が全国の基準地の価格を決めて、そしてまた七人委員会。つまり土地鑑定委員会に持ち上げてそこでチェックする、こういう仕組みになっておるようですが、国土庁長官、間違いないですか。――御存じないのですか、大臣、公示価格の決め方について。
  139. 片桐久雄

    ○片桐政府委員 お答えいたします。  地価公示につきましては、土地鑑定委員会が各標準地につきまして二人以上の不動産鑑定士等の鑑定評価を求め、その結果を調整いたしまして公示価格を判定することとされております。このため土地鑑定委員会は毎年、不動産鑑定士等の仲から標準地の鑑定評価等に携わる者を選任し、地価公示鑑定評価員を委嘱しておるものでございます。  一方、国土庁は、別途、社団法人日本不動産鑑定協会と請負契約を締結いたしまして、上記土地鑑定委員会の委嘱を受けた鑑定評価員による標準地の点検とか鑑定評価を実施させておりますけれども、これは次のような理由によって請負契約をやっておるものでございます。  一つは、契約事務、支払い業務等を行う場合には会計法に基づきまして設置された会計機関が行うことになっておりますけれども土地鑑定委員会にはこのような機関がないために国土庁が契約当事者になっておるわけでございます。また、標準地の点検……(楢崎委員「そういう仕組みになっているかどうかだけ聞いているのです」と呼ぶ)はい。そういうことで、実際の実務につきましては不動産鑑定協会と請負契約をいたしまして、そういう実務を不動産鑑定協会に担当させております。
  140. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それだけでいいのです。一番最後だけで。そういう仕組みになっておるわけでしょう。  ところが、資料を配っておりますとおり、土地鑑定委員会の委員七名。委員長日本不動産研究所理事長。日本不動産鑑定協会の方を今度は見てください。副会長に日本不動産研究所が入っていまして、二人入っている。それから三井不動産販売が土地鑑定委員会の委員になられておる。これは三井不動産と同じです。それから、中村友治さん、デベロッパー三信。これは地上げ屋です。  だから、不動産鑑定協会が出したものが、言うならば、例えば日本不動産研究所の社員がつくっておるものを社長が文句言いますか。実際問題として、この不動産鑑定協会が出したものに、建前はまた七人委員会に戻すようになっておるけれども、こんなことは実質的にはチェックできないのです。だから実質的には不動産鑑定協会が全部やっておる。  そこで、私が疑問に思うのはこういうことなんですね。先ほど申し上げたとおり、例えば三井信託銀行。この協会の会長になられておりますね。この人は鑑定士なんですね。鑑定士というのは弁護士と同じで、非常に社会的、公共的使命が重大であって、適正な不動産価格を形成するのに努力しなければならない人なんです。一方、信託銀行としての川崎さんは土地が上がった方がいいのです。それで、不動産鑑定協会が市価価格を結果的には上げることになる。なぜか、そこが問題なんです。鑑定評価の仕方は法律的には三つあります。しかし、実際にはほとんど取引事例比較法でやられておる。つまり実勢価格ですね。それで実勢価格に準じて、結局は市価が決められるのです。実勢価格が上がれば市価が上がるのです。ところが、その実勢価格をつり上げておるのが大手の不動産屋です。これもはっきりしています。そしてそれを応援して融資しておるのが信託銀行なんです。では、これは一体どうなるのですか。片一方では適正な価格にする任務を負っていて、片一方は地上げのグループの一人。マッチポンプじゃないですか。消防士が放火魔を兼任しておるのと同じじゃないですか。もう少し悪い言葉で言えば、しかられたら取り消しますが、取り締まり側の警察が泥棒を兼任しておるのと同じことです。本当ですよ、これは。だから私は先ほど申し上げたとおり、この兼任をやめさせにゃいかぬ。  それで、日本不動産鑑定協会の会長選挙はすさまじいんですよ。公職選挙法が及ばぬから金権選挙。なぜ会長になりたがるか、うまみがあるからです。それで、ことしの六月選挙があった。候補者が二人出て、三井信託銀行の川崎誠一さんが当選した。この当時は頭取であったが、なってやめた。こういうことじゃいかぬということで、正義感を持った方が対立候補で出ています。そして二千三百三十八票対千六百四票でこの三井信託頭取が会長になられた。それだけうまみがあるからです。だから、私はこういう点も十分注目をしていただきたい。後藤田官房長官、こういう点はびしっとやってもらいたいですね。  それからもう一つ、ここで副会長の中に和田輝雄さんという方がいらっしゃいます。かつては三菱信託銀行の取締役であり不動産部長であった。そしてこの六月に副会長になられるまで二年間その東京会の会長であった。この人が会長である間に東京の地価がどんどん上がったんですよ。上がったんです、二年間に。そういう責任者がどうして格上げされて副会長になるのですか。これも私は不思議でならない。だから、この不動産鑑定協会に私は注目してメスを入れてもらいたいんですよ。そうしないと、実際問題としては土地騰貴をストップさせるのに画竜点睛を欠くと申しますか、そういう気がして仕方がないわけです。  それで、さっき言ったとおりもう一つ問題があります。国土庁長官聞いておってください、大蔵大臣も聞いておっていただきたい。先ほど申し上げたとおり、公示価格を決める、それは実勢価格が影響する、実際の取引の価格が。実際の取引価格はなかなか外に出ないのです。ところが、それを一番よく知っている人がいる。それはだれかというといわゆる信託銀行です。一番よく知っているのです。この取引の実例を一番知っているのが信託銀行です。だから市価形成に非常に影響してくる。中身がそういう仕組みになっている。それで、実際の取引を熟知しておる信託会社が、結局はこの不動産鑑定協会の中に入って、意識的じゃないかもしれぬが、結果として市価を上げることになるのです。そういう仕組みになっている。だから、ぜひひとつこの点は私は考えていただきたいと思います。  それからもう一つ、これにも書いてありますけれども、当委員会でも何回も問題になりました土地を持っている方の相続税の問題です。これは大蔵大臣が、大変な問題だから来年は必ず考える。なるたけ早くこれはきちっとしてもらいたい。こういう事実があることも頭に入れておいてもらいたいのです。いいですか。国税庁も聞いておってくださいね。信託銀行は今相続税対策というのを最も重要な業務の一環としています。どういうことをやるかというと、わかりやすく一例を挙げます。十億円の遺産を持っておる人があるとしますね。この人がもしものときは相続税を払わなければいかぬ。大体八五%ぐらいでしょう。そうすると八億五千万。そこで、信託銀行はそういう人たちを探して、例えば今の十億円の遺産を持っておる方だったら十億円の土地を買わせるわけです、融資して。そして実際の地価価格は、税金との関係だから路線でしょう、十億の場合二億ぐらいですよ。後藤田官房長官、二億ぐらいです。そうすると二億に対する相続税で済むのです。二億の八五%で済むのです。八億五千万も払わぬでいいのです。そして、その相続が一段落をしたときにその信託銀行が再びその土地を高く買い戻す。だから、この相続人は相続税を安く納めた上につり銭までもらう、こういう仕組みになっている。信託銀行は相続税の対策を重要な業務の一環にしています。これも調べていただけばわかることなんですね。だからこの辺も、私は、正直者がばかを見ないようにひとつやっていただきたい。  次に、国土庁は、日本橋、神田、浜松町、高輪、こういうところの都心の土地がどう転がっていくかの調査をなさっているでしょう。
  141. 片桐久雄

    ○片桐政府委員 三年ほど前から東京都心の地価が上昇しておりまして、その対策を検討する段に当たりまして東京都の都心部における地価の取引状況につきましては、私ども登記簿等をいろいろ調査いたしまして、詳細な調査をしている次第でございます。
  142. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それは大蔵省の方に報告されておるのですね。
  143. 片桐久雄

    ○片桐政府委員 私どもの方から不動産関連の金融の適正化につきまして銀行局の方にいろいろ御指導をいただいておるわけでございますけれども、そういういろいろな情報交換の一つといたしまして、そういう情報交換もいたしておる次第でございます。
  144. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 銀行局長お尋ねしますけれども、その調査に基づいて都市銀行を呼んで調査されているでしょう。呼ばれていないのは大和銀行と協和銀行だけだというふうに聞いていますが、どうですか。
  145. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 前にも御答弁いたしましたように、半年に一回各金融機関から不動産融資についての計数を報告を受けていますので、それを受ける際に、一つ一つ銀行について問題がある場合にはその処理について指導をしているということでございます。そのような際にいろいろ入手しました資料も参考にしながらやっているということでございます。
  146. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 ぜひこういう点を考慮されて、今までの各党で提起されているものは立派なものばかりですから、それに今の点を追加して、信託銀行の土地の仲介業務をぜひチェックしてもらいたい。そして公示価格の決め方の仕組み、先ほどいろいろな矛盾があることを私は明らかにしたつもりですが、そういう点もぜひ考えていただいて、適切な対策をしていただきたい。総理の御見解と大蔵大臣の御見解を聞いておきたいと思います。
  147. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 不正あるいは投機にわたるようなことはありませんように、厳重に監督いたします。
  148. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 土地の値段それからそれの流動、売買、移転、それと金融、それと鑑定、こういう問題の内容について今お話を承りまして、我々も気づかされた点がございます。監督を厳重にやるようにいたします。
  149. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 ぜひそうやっていただきたいと思う。これはどなたにお聞きになっても、関係の業者、鑑定士、良心的な方なら、私のきょう言ったことと同じことが返ってきます。それで、総合的な立場にある後藤田官房長官にあの発言のとおり厳しくひとつこういう点も考えていただきたいと思います。  時間がなくなりましたから、一つだけDNAの問題について、これは大体一時間ぐらいかかるのですけれども、一点だけ来年の通常国会のために聞いておきますが、生物・毒素兵器禁止条約というのができましたね。日本は批准していますか、外務大臣
  150. 斉藤邦彦

    ○斉藤(邦)政府委員 私の記憶しているところでは、いまだ批准しておりません。
  151. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 あなたの記憶は間違っておるんじゃないですか。ほかに知っている者おりませんか。おかしいんじゃないですか。だれも知らぬのですか、批准しているのを。日本は世界で九十六番目の締約国になっているのですよね。外務大臣、この生物・毒素兵器禁止条約、読んでみるとなかなかいいけれども、重大なところに欠落しているものがあります。どこと思われますか。――今の声のとおりに、知らぬ者が中身がわかるわけないわけですから、私の方から指摘をしておきます。これは重大ですから。  いいですか。研究が野放しになっている。ここに問題があるのですね。これがDNAの、つまり遺伝子の組みかえ研究と関係があるのです。なぜか。このDNAの組みかえ、これは総理はしばしば関心を持ってお話しされたことがある。これは重大問題です、倫理的にも医学的にも。もう一つつけ加えるならば、軍事的にも非常に問題があるのです。すぐ生物兵器ができるのです、これは。たやすく、しかも安値でできる。それで、既にソ連もアメリカも研究に入っている、このDNA組みかえで生物兵器をつくるのに。まさか日本防衛庁関係では研究しておらぬでしょうね。防衛庁長官、どうですか。
  152. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 当然のことながら、研究しておりません。
  153. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それがしているのですね。これはもう時間がないから、やらないと思っておったから全部印刷しておりませんが、長官だけ、ここにあります。ちょっと見てください。  これはこういうことなんですよ。非常に危険ですから、ばい菌を扱うのですから、これが外へ出たら大変ですから、物理的な封じ込めそれから生物的な封じ込めと規制が二つあるのですね。そのうちの施設的な封じ込めはP1からP4まである。P4は一番危険なばい菌を扱うのですよ。それを筑波の学園都市につくるというので、社会党の竹内猛議員が随分国会でやりました。いよいよこの秋からやるんじゃないですか。これを読まれたらわかるように、防衛医大でDNA研究室の整備というものを去年からやっておるのですね。見られたらわかるとおりです。そして三枚目を見てください。「二十六番から三十番まではP3レベルおよびP4レベルの時に必要であってP2レベル迄の場合は将来の購入でもよいと考える。」つまり、P4までいく計画が立てられておるのですよ。長官、私は、これはチェックしなくちゃいかぬと思うのです。防衛庁関係がこういうDNAの、生物兵器にすぐあれするから。この資料は調べればすぐわかります。ちょっとお考えを聞いておきたい。
  154. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 DNAの研究はやっておるけれども、生物兵器の研究はやっていません。
  155. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そんなことは答弁にならないのです。いや、あなたいいですか。条約でもさっき言ったとおり研究は禁止されてない。ここに問題がある。だからそれをどこでもやっている、特に米ソは。時間がないから具体例を挙げられませんけれども、この次に譲りますが、じゃこの次、私はそのあれを上げますよ。生物兵器、すぐできるでしょうが。
  156. 古川武温

    ○古川政府委員 防衛医大においてDNAの研究をやっております。しかしこれは、一つは臨床の研究でございまして、虫歯の発生のメカニズム、それからもう一つは臓器移植に関する研究でございます。そして、それらの研究のレベルはP1でございます。これは一般的に自然条件下で、例えばその研究の材科の宿主、そうしたものが自然条件下ではふえない、むしろどんどん減っていく、こういうふうな安全なものに限って行っているわけで、これが生物兵器に転用されるようなものではございません。
  157. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 何が虫歯だけですか。これを読んでくださいよ、あなた。何をばか言っておるんだ。冗談じゃありませんよ。時間がないからもうこれ以上やれません、残念ながら。来年楽しみにしておってください。  これで終わります。
  158. 砂田重民

    砂田委員長 これにて木下君、楢崎君の質疑は終了いたしました。  午後零時四十分より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時十分休憩      ――――◇―――――     午後零時四十分開議
  159. 砂田重民

    砂田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。山原健二郎君。
  160. 山原健二郎

    ○山原委員 最初に、総理にお伺いいたします。  ことしは憲法施行四十周年、そして教育基本法制定四十周年という年です。憲法は御承知のように、前文におきまして、「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。」こう述べております。そして、「これは人類普遍の原理」である、こう述べております。また教育に関しましては、学問の自由、また教育基本法では、真理と平和を希求する人間の育成、平和的な国家及び社会の形成者を育成する、これが教育の目的として明記されておるのでございます。  首相は、行政あるいは教育行政に当たりましてこの原典を守る御決意であろうと思いますが、改めてこの点を最初にお伺いしておきたいのであります。
  161. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 守る考えでおります。
  162. 山原健二郎

    ○山原委員 幾つかの問題をお尋ねしょうと思っておりますが、最初に、臨教審の総会が一昨日十五日に行われまして、その総会でこういうことが記述されておることが新聞その他によって発表されております。それは、国旗、国歌についてその意味を正しく理解し尊重する心情と態度を養うことが重要であり、この点について学校教育上適正な取り扱いがなされるべきである、こう記述していることが報道されております。同時に、教育課程審議会におきましても、小学校六年生に国旗及び国歌を尊重する態度を育てるということを秋の答申に盛り込むことを決めだということが報道されておるのでございますが、この点について、私は非常に重要な問題だと思いますので、これを看過することができませんので、最初にお伺いしたいのであります。  まず、法制局長官にお伺いしますけれども、日の丸、君が代を国旗、国歌と定めた法律があるかどうかという問題ですが、この点について最初にお答えをいただきたいのです。
  163. 味村治

    ○味村政府委員 日の丸につきましては、船舶に掲揚いたします旗につきましてその制式等を定めた明治時代の太政官布告でございますか、ちょっと記憶がはっきりいたしませんが、あると承知しております。したがいまして、日の丸は我が国の国旗であるということは法制上明らかでありますと同時に、慣習法としても明らかになっておると存じております。  それから、君が代の方につきましては、これは国歌であるということを決めた法律はございません。しかしながら、慣習といたしましてこれは国歌であるという法的確信が既に存在しているものと承知しております。
  164. 山原健二郎

    ○山原委員 法律としては、君が代の場合は存在しないということですね。慣習法という言葉がありますが、慣習法の問題につきましての法律的解釈については、今法制局長官が言われたことと全く違った見解が法制上の通念になっておりますから、そのことを今お尋ねしょうとは思いません。  今回、君が代につきまして特にお尋ねしたいのですが、今度の臨教審答申の中に、正しく理解をするということを教育として取り上げるということですから、そうなりますと教育に持ち込む、また教育内容としてこれが持ち込まれるというのは今度初めてなんですね。そうしますと、一体どう教えるのかという問題、いわゆる教育内容の問題が出てまいります。  私の想像ですけれども、もしこれが通りましたならば、また政府がこれを取り上げましたならば、恐らく指導要領によって国歌君が代はかくかくしかじか教えるべきであるというふうに規定が出てくるのではなかろうか。そうしますと、今度は教科書の記述がそのように変えられるでしょう。そして全国の教師はその一つの理念に基づいて教えなければならぬ。もしそれに対して疑義を挟む者に対し、また拒否する者があるとするならば、この国歌の考え方を押しつける、また拒否すればそれを処罰するということが出てくる可能性がありますね。また、これが一つの踏み絵になるということも考えられますと、これは極めて重大な問題でございます。  この点で、私は過去の君が代の歴史を調べてみますと、御承知のように明治の初めに天皇に対する礼式曲としてこれが定められまして、それから昭和十二年の小学校修身、巻四を見ますと、こういうふうに教えよと出ております。  これは今まで何回か論議されておりますので、ちょっと読み上げますけれども、「わが天皇陛下のお治めになる此の御代は千年も万年も、いや、いつまでもいつまでもつづいてお栄えになるようにというまことにめでたい歌であります。私たち臣民が君が代を歌うときには天皇陛下の万歳を祝い奉り、皇室の御栄を祈り奉る心で一杯になります。」これが戦前において教えられた君が代の中身なんです、教え方です。  ところが、戦後を迎えまして時代も情勢も変わりまして、これはふさわしくないということで、御承知のように文部省令三十一号で国民学校施行規則の一部を改めまして、この条項は削除されたわけですね。このとき削除されたのは、職員及び児童に君が代を合唱させる、あるいは御真影に最敬礼を行う、あるいは教育勅語を奉読するというような項目につきましては、これは削除されておるわけでございます。  その次に問題になりましたのは、一九八五年、今から二年前に文部省が君が代斉唱を徹底をさせるという異例の通達を出しまして、このときには御承知のようにアジア諸国からの一定の批判が起こってまいりました。それからまたその後、各地においてある意味での混乱が起こっております。  例えば福岡県におきましては、君が代を斉唱しなかった教師あるいは口をあげなかった、起立をしなかったということで六十五名が処分をされるという事態が起こってまいりました。それからまたある県におきましては、祝祭日に先生が子供の家を回りまして、翌日学校へ行くと、君の家は日の丸を立てでないではないかと言われるようなことも幾らか出ております。また沖縄におきましては、全土が戦場となりました沖縄県民の感情というものも、これも無視できない大きな問題としてあるわけでございます。  こういう意味におきまして、いまだ国民的合意が完全になされていない時点におきまして、教育の現場にその内容としてこれを教育させるというこの臨教審の、まだ最終答申が決定したわけではありませんが、この考え方については、私はどうしても納得することができないのでございまして、この点についてどういうお考えなのか、まず伺っておきたいのであります。
  165. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 臨教審の最終答申が出ておりませんのでこの問題について決定的なことを申し上げられませんが、私が聞いておりますのでは、恐らく臨教審はその方向で検討しておるという話を聞いておるのでございます。したがいまして、もし臨教審でこれが明記されてまいりましたら、当然教育課程審議会でも最終答申の中に盛り込まれてくると思いますし、そういたしますと、学習指導要領は当然変更しなければならない。それに伴いまして教科書もそれに沿った内容の教科書となることは当然でございまして、我々はそれを受けまして教科書の改正、さらには指導の実際のやり方等につきましても指導要領を決めていきたい、こう思っております。  さらに、日の丸、国旗、国歌が国民的合意を得られておらないとおっしゃいますけれども、それはごく一部の方はそういうことでかたくなに反対しておられる方はあるとは思いますけれども、しかし、いずれの会合あるいはいずれの行事あるいはいずれのそういう集会等に行きましても、やはり国旗、国歌を尊重するという習慣はもう既に根づいておるものでございまして、これは当然にして国歌であり国旗であるということは間違いのないということであります。
  166. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 今文部大臣が御答弁申し上げたとおりですが、国歌というようなものはたとえ法律になくともこれは民族的習律として確立していると私は思っております。それで、例えば東京サミットの場合に、ミッテラン大統領でもレーガン大統領でも来た場合には国歌をお互いが吹奏し合う。アメリカの国歌もフランスの国歌も吹奏し、日本の国歌もそれに応じて吹奏し合っている。国家儀礼としても確立されておるものでありまして、その国家儀礼としても確立されておる国歌を子供たちが知らないということは、これは国民としての教育の上でいかがであろうか、やはり自分の国の国歌ぐらいはちゃんと知っておいてもらうというのが大事なことではないか、私はそう思っておる。よく聞くと、あれは相撲の歌じゃないか、そういう話がよくありますけれども、これは国家としても甚だ残念な事態ではないかと思っております。
  167. 山原健二郎

    ○山原委員 今、サミットの話が出ましたね。また、相撲あるいはオリンピックで使われる。それは一般的にどこの国でも国歌や国旗があること、それを私は否定しておるものではありません。問題は、この君が代という問題ですね。このことについて国民の統一――ごく一部だとおっしゃいましたけれども、人数の問題ではないのですね。ガリレオはどうですか。ただひとり地動説を唱えて、最後はそれが正しかったことが証明されているわけですからね。だから、そういう意味での国民的合意が本当にあるのかということは真剣に考えなければならぬ問題でございます。  問題は、これを今度は単に知っているとか知っていないとか、掲げるとか掲げないとか、歌うとか歌わないとかいうことだけでなくて、これについて、その意味を正しく理解し尊重する心情と態度を養うことが重要であり、この点について学校教育上適正な取り扱いがなされるべきであるということになりますと、この教える内容までが決められていくわけですね。今塩川文部大臣がおっしゃったとおりです。そうしますと、過去においで、先ほど私が言いましたように、千代に八千代に皇室と天皇の栄えるようにという歌ですからね。それがいわゆる天皇主権という君主制のもとにおける歌がそのまま出てくる可能性だってないとは言えませんね。  それからまた、この君が代につきまして申し上げますと、戦前の教育というものを冷静に考えてみる必要があると思うのですね。戦前における教育は軍国主義教育、私どももそれで育ったわけですけれども、その主柱になったのは国歌、それから国旗、そして教育勅語であったわけですね。そして教師たちはそれに基づいて教育を行いました。そしてたくさんの青年たちを戦場へ駆り出す役割も果たしたわけですね。それからまた、あの十五年戦争におきまして他国の人たちも二千万人が犠牲になるという、そういう事態があった。その先頭に立ったのがやはり日の丸であり君が代であったということを考えますと、戦争が終わりましたときに、先ほど私が憲法で読みましたように、二度と戦争の惨禍を繰り返さない決意のもとに、主権は国民にあるんだという、この国民主権の立場というのが憲法上の最大の問題なんですね。  それを再び学校教育に強制をする、これはもう今塩川さんおっしゃったように強制になるわけですからね。このことが学校の教師を一つの思想で統一する結果にならないのかということを考えますと、この今臨教審が出そうとしていることは、将来を考えましたときに非常に恐るべき内容を包含をしておると私は思うのです。その意味で今質問をしているわけでございまして、私は、今君が代を学校教育に強制するということは全く時代錯誤、それから国民主権の立場からいっても憲法に違反する行為ではないかとさえ思っているわけでございます。  私の友人で、もう故人になっておりますが、彼は戦争が終わりましたときにこういう歌をつくったのです。彼は非常に忠実な軍国主義教育を行った人物です。彼は戦争が終わりまして、これは有名な詩でありますけれども、竹本源治といいますが、中学校の教師をしておりました。これは「戦死せる教え児よ」という詩です。   逝いて還らぬ教え児よ私の手は血まみれだ!   君を縊(くび)ったその綱の   端を私も持っていた   しかも人の子の師の名において   鳴呼! 「お互いにだまされて   いた」の言訳がなんでできょう   漸塊 悔恨 懺悔を重ねても   それがなんの償いになろう   逝った君はもう還らない   今ぞ私は汚濁の手をすすぎ   涙をはらって君の墓前に誓う   「繰り返さぬぞ絶対に!」 こういう詩なんです。これは世界じゅうに知られた歌でございますけれども、あの戦争が済みましたときに、戦前における教師の役割を翻って考えましたときに、多くの青年たちを戦場へ送ったその悲しみとざんき、もう二度とこれを繰り返してはならないということで教え子を再び戦場に送らないという言葉も出てきたわけですね。  そういう点から見まするならば、本当に君が代というものが国民的合意に達しているか、大勢であるとか少数であるとか、そういう判断ではなくして、本当に国民の合意に達しているかどうか、また憲法上に照らしてそれが正当であるかどうかということは当然論議をしなければならないものでございまして、一つの政権の党が、あるいは力を持っている党の考え方で国民を律するということは、これは将来ファシズムにつながる可能性はないとは言えません。その点を私は心配をして今質問を申し上げておるのでございまして、この点については慎重な態度をとっていただくべきであると考えておるところでございます。
  168. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私は、やはり国歌とか国旗というものには歴史がいつもしょわされているものだと思うのです。ですから、勝っても国歌、負けても国歌、負ければ国歌ではない、そういうものではない。やはり民族の歴史の栄辱が込められておるのが国旗でありあるいは国歌である。そういうものとして考えて、その歴史のまにまに、あるときは反省し、あるときは喜び、あるときは悲しみ、みんなでそれをともにしていく、これがやはり民族であり国家というものであるだろうと思うのです。そういう意味から、日本の国旗というものにつきましても栄と辱といろんな場面があったでしょう、それは。そういうようなすべてを包含して、その上に立って我々は次の時代を考えつつ進むというのが私は正しいと思っておるのであります。英国でも、あれは君民同治とかなんとかいっていますが、ゴッド・セーブ・ザ・キングといって、国民はゴッド・セーブ・ザ・キングとキングを謳歌し、尊敬しているわけです。私は、「君が代は」という歌は、今日におきましては象徴天皇下の我が日本、そういうふうに解すべきでしょう、象徴天皇のもとに結束している我が日本は、そういうふうに解す、それぞれ歴史的にもいろいろそういう変遷を経た、いろいろな経験を経た上の思い出をみんな込めて歌えばいい、そう思っておるのであります。
  169. 山原健二郎

    ○山原委員 私も大正後期の生まれですから大正デモクラシーの経験は受けておりません。けれども、私は、そういう意味では軍国主義教育を受けてきた一人でございます。でも、私の場合は、あの戦前から戦後を迎えまして一定の反省を持っております。それは私だけでなく、たくさんあるのですよ。それからまた、教師という立場から見まするならば、戦前の教育を経験した者が戦後において衝突にも似た反省をしたわけですね。それを無視することはできないわけで、だから、多数だからといって、あるいは多くの人がこうだろうからといって――確かに君が代に対して愛着もあれば、あるいは幻想もあれば、長い長い教育の歴史の中で素直に歌う人もたくさんおいでになることももちろんでしょう。しかし、それに対して本当にそれでいいのかという、また現憲法のもとでそれでいいのかという考え方のあるのも当然だ、これが国民というものです。それを、一つの政権の手によってこれをこれだと強制したり、あるいは学校の現場にこう教えよということになってまいりますと、これは国民の考え方に対する統制につながるという意味で、学問の自由あるいは思想の自由をうたった憲法上の問題あるいはまた現憲法における国民主権の問題から見まして、多分に問題を含んでいる。  実はきょうはこの問題で長い時間とるつもりはありませんけれども、問題の提起として、またこういう問題については当然論議をすべきであって、おまえの考え方は間違いだからというような形で私は私の考えを中曽根首相に押しつけるつもりはありません、私の見解を述べているのです。そんな考え方は国を愛する考え方でないなどという人がおりますけれども、国を愛するとか民族を愛する、郷土を愛する、人後に落ちませんよ、私どもは。でもこういうものに対しては見解を誇っている。それは国民として当然の権利です。それを包含をしているのが国家ですよ。それを一つの考え方で律するというところに問題があるということを私は指摘をしまして、次に移りたいと思います。  次の問題は、SDIの問題につきまして御質問いたしたいと思います。  SDI研究参加に関する日米政府間協定が、これは交換公文と実施細目、覚書ですね、近く閣議決定をし、ワシントンにおいて調印されると聞いておりますが、この交換公文及び実施細目については当然この国会に報告されるべきものと思いますが、そのように理解してよろしいでしょうか。
  170. 倉成正

    ○倉成国務大臣 我が国のSDI研究参加にかかわる政府間の取り決めについては、現在米側との間で文書の形式、今交換公文とおっしゃいましたが、その文書の形式及び内容につき最終の調整中でございますが、従来より答弁してきておるとおり、政府として公表し得るものは公表する、そういう基本立場で臨んでおります。かかる立場で最終の調整を行っているところでございます。
  171. 山原健二郎

    ○山原委員 実施細目についても御報告になりますでしょうか。
  172. 倉成正

    ○倉成国務大臣 いずれにしましても公表し得るものは公表するという立場でございます。
  173. 山原健二郎

    ○山原委員 そうしますと、公表できない秘密の部分もあると理解してよろしいでしょうか。
  174. 倉成正

    ○倉成国務大臣 そのとおりでございます。
  175. 山原健二郎

    ○山原委員 この協定で新規開発技術の所有権はだれに所属し、また、秘密にするかどうかについての決定権はどこにあるのでしょうか。
  176. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 ただいま大臣から御答弁ございましたように、現在アメリカ側とこの協定の形式、内容について最終的な調整中でございますので、その内容についてこの場で云々することは差し控えさせていただきたいと存じます。
  177. 山原健二郎

    ○山原委員 この協定によって我が国が秘密保護の法的措置が義務づけられることはないのでしょうか。
  178. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 現在アメリカと折衝中の取り決めにつきましては、昨年の九月九日に官房長官談話が出ておりまして、その官房長官談話に従いまして米側と折衝しているわけでございます。その談話の趣旨から明確なことは、新しい法律というものを一切想定しないということでございます。
  179. 山原健二郎

    ○山原委員 西ドイツにおきましては秘密事項に関する法的措置が義務づけられているという報道が幾つかの雑誌から報道されておりますが、そのようなことは全くないと理解してよろしいのでしょうか。
  180. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 西ドイツを含めましてNATOの諸国にはそれぞれの法律があるようでございますが、我が国につきましては我が国の既存の法律の範囲内で、秘密の情報がありますれば、その秘密の情報を保護していくということでございます。
  181. 山原健二郎

    ○山原委員 昨年四月にワインバーガー国防長官が来日をいたしまして加藤防衛庁長官と会談をいたしております。そのときにワインバーガー氏の方から、SDIについて政府間協定、民間協定、大学、研究所など、いかなる形の参加も歓迎する、特に日本のごとき技術、学問水準の高い国の参加は極めて有意義であると述べられておるわけでございます。これは明らかに日本の大学の参加も要請した発言となっておりますが、今回の協定にもこの趣旨が盛り込まれ、国立研究機関及び大学の参加を認めるという状態になっているかどうか、その点を伺います。
  182. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 現在のところ、大学及び研究機関がSDI研究に参加しておるという実績はございません。
  183. 山原健二郎

    ○山原委員 現在のところ参加している実績はないとおっしゃいましたが、きっぱりと日本の国立研究機関あるいは国立大学が参加はできないのだということをはっきりとお答えになることができませんでしょうか。
  184. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 これは山原さん自身、もういつでも学問の自由ということを言っているじゃありませんか。学者が研究上必要ありとするならば、その研究者が参加することに対して、我々は指導はできますけれども、学問の自由を侵すわけにはまいりません。したがって、研究する人があればこれはやむを得ないことだと思います。
  185. 山原健二郎

    ○山原委員 学問の自由というのはそういうところで使うものじゃないのですよね。日本国憲法、教育基本法は、日本の大学がいわゆる軍事研究に参加することを許しておりません。それは最初に申し上げましたように平和的、民主的な社会と国家の形成者を育成する、こういう理念でございますから、その点は塩川文部大臣、きっぱりしたお答えをしないと。SDIというのは、これは軍事研究であることは間違いないのですね。それにそういうあいまいな態度でしたら、日本の国立大学もこれに参加あるいは動員されないという保証はないわけでございまして、そんなことが許されるならば我が国の大学教育の根本的転換になるわけでございまして、言うならば実に重大なことを申しておられるわけです。学問の自由というのはそこをいう。日本の国立大学が憲法に違反して軍事研究に参加をしてもいい、それも学問の自由だなどという解釈は今までどの文部大臣もしたことはないのです。それから今まで文部省も私の質問に対しましても、大学が軍事研究に参加するなどということは全く考えられないことであるというのが公式な発言なのでございます。  もう一回聞きますけれども、そういうあいまいな態度では私はいけないと思います。それは大学の軍事研究への道を開く結果になると思いますので、あえてもう一度お答えをいただきたい。
  186. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 私は大学として参加するとは言っておりません。研究者があればということを言っておるのでございまして、これは研究者がそういう軍事目的であるということになれば我々も差しとめできますけれども、軍事上ではなくただ学問研究上であるといった場合、その場合やはり学問、研究の自由というものを保障しなければならぬ、こういうことを言っておるわけです。
  187. 山原健二郎

    ○山原委員 非常にあいまいなお答えですけれども、SDIというのはアメリカの国防総省がすべて金を出してやっておるわけですからね。しかも戦略防衛機構でしょう。そういう点から見まして、これに参加する、しないという、これはもう明らかに軍事研究に国立大学が入っていくということでして、今までの大学の理念からいいましても今までの考え方からいいましても塩川大臣お答えはちょっと違っていますが、これははっきりさせておいてください。
  188. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 ただいま文部大臣が仰せられているとおりでございまして、SDIに対する参加と申しますのは、これは昨年九月九日の官房長官談話に関連いたしましても累次国会で御説明申し上げておりますとおり、研究機関も含めますけれども我が国の企業等が、その自主的な意思でアメリカの国防省あるいはアメリカの企業と契約をしてSDI研究計画に参加をするということでございます。あくまで自主的な意思でございまして、その研究機関なり企業なりの意思、それから例えば国立の研究機関につきましては、その設置の目的あるいは機関の性格、業務の状況、そういうものによっておのずから制約が明確にあるわけでございます。
  189. 山原健二郎

    ○山原委員 それは民間の企業のことをおっしゃっているのでしょう、今の外務省の答弁は。
  190. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 民間の企業につきましてはその企業の自主的な判断ということでございます。それから国立の機関につきましては、当然のことでございますが、その国立の機関の設置法とか、あるいはその機関を設置いたしました目的、それから機関の性格、その機関の業務の対応状況、そういうものが明らかに参加のときの制約になるわけでございます。
  191. 山原健二郎

    ○山原委員 これはやはり国立大学の軍事研究、またSDIへの参加を容認する立場ですね。今まで文部省は、これは昨年の四月の科学技術委員会におきまして、「大学におきます研究者が軍事研究を行うことについては到底考えられないわけでございます。」というのが私に対するこの関係における答弁の中身でございまして、今のようにいろいろな理由をつけながらSDIに国立大学あるいは附置研究所が参加するということになりますと、これはもう明らかに軍事研究への道を開く、こういう結果になるわけでして、重大な御発言をされておるように思います。これは明らかに憲法上の問題または教育基本法に対する逸脱、違反行為であるということをはっきり申し上げておきたいのです。  もっと申し上げたいことはありますけれども、時間の関係がありますからこの点は指摘にとどめておきたいと思います。  これと関連しまして、今、国会に提出されております大学審議会の問題ですけれども、この大学審議会の審議の内容は一体何なのかということについて簡単にお伺いしたいのです。
  192. 阿部充夫

    ○阿部(充)政府委員 ただいま御審議をお願いしております大学審議会の審議事項でございますけれども、法案の内容といたしまして、大学に関する基本的な事項について審議をするということにいたしております。  基本的な事項の内容として考えられますことはいろいろな方面にわたると思いますけれども、大学の教育研究組織のあり方でございますとか、あるいは修業年限や入学資格の問題、あるいは教職員の制度、あるいは設置に関するシステム、あるいは学位の問題、教育課程の問題等々、いろいろな分野にわたると考えております。  いずれにいたしましても、そういった基本的な事項についで御審議をいただくというのがこの審議会の内容でございます。
  193. 山原健二郎

    ○山原委員 今くしくも阿部局長からお話がありましたように、この大学審議会の持てる審議内容を今幾つかおっしゃいましたが、臨教審にのっとりこの審議会を設置する、こうなっておりますから臨教審第二次答申によりますと、七つの項目が上がっていますね。今おっしゃったように、大学の評価システム、あるいは情報収集、調査研究、それから大学の基本に関する事項、大学の計画的整備と見直し、人材養成計画、大学教育の内容、方法の検討。これは全部大学の自治に関するものですね。大学の自治に所属しておるものでございまして、これを大学審議会というわずか二十名の人によって構成される審議会、しかも法律によってほぼ恒久的につくられる審議会が、わずか二十名の者が今まで大学に付与された大学の自治のすべてを握るということがこの大学審議会の中身ではないでしょうか。今おっしゃったことから聞くとそう断定せざるを得ないのです。  戦後大学の理念は、学問の自由を保障する大学の自治、これが原則なんですね。この戦後大学の理念というものをここで一挙にぶち壊そうとするのが、しかも憲法上保障された、あるいは教育基本法によって保障されたものを、ここで一挙に大学審議会というものによってぶち壊そうとするのが大学審議会の設置の理由ではないかということがほぼ明らかになってきたわけです。そのように私は理解しますが、いかがですか。
  194. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 学園の自治ということを非常に強調しておられますが、学園の自治が本当に自治として働くならば大学も相当な社会的要請にこたえていっておると思うのでございますが、最近大学が、社会的要請あるいはまた社会的ニーズというのでしょうか、そういうものに十分こたえておるかといえば、そうは言えないと私は思うのであります。したがって、大学審等におきましてこういう大学のあり方がありますよということを明示するということは、私はこの時代になって必要なことではないかと思います。また大学も時代とともに変わっていかなければなりません。その変わっていくについて、てんでんばらばらで勝手に改革されていくということになれば、これはやはり貴重な税金を使って運営しておる大学でございますから、それなりに国全体として、あるいは社会の要請にこたえる格好において改正をしていかなければならぬということでございまして、そこにはやはり一つ方針というものが必要であろうと思うのであります。  それで、大学審議会ができましたから大学審議会の結論によって文部省が強圧的にこれをどんどん変えていく、そう思っておられるからそういう疑問が出てくると思うのですけれども、そうではない。そういう一つ方針が審議会で定められましたら、それを実行していくについては、各大学と十分な協議をしてそういう方向に指導していかなければならぬということは当然でございますので、私は、大学審議会が、今当面する大学を社会的要請に、新しい大学へどうして脱皮していくかという点について審議し、答申を得ることは必要だと思いまして、設置に踏み切ったわけでございます。法案、どうぞよろしくお願いいたします。
  195. 山原健二郎

    ○山原委員 大学が今社会的要請に対して完全にこたえていないとかいうようなことは私どもも知っております。それは改善しなければならぬ問題ですね。さればといって、今おっしゃっておるように、この大学審議会の内容を見ますと、大学全般について審議する。これは戦後初めてですね、こういう性格を持った審議会は。少なくとも文部省は初めてです。それから勧告権を持つ。こういう審議会も文部省関係の審議会では初めてなんですね。それから、審議会委員の人選につきましても、内閣が承認して文部大臣が任命をする。こういう形で、第二臨調、行革審あるいは新行革審、さらに臨教審の人選から見ましても、率直に言って中曽根首相の好みの人が構成をしておるというふうに私は考えているのです。そういう点、実際に臨教審の委員が選ばれますとき、二十五名ですね、現場の教師はほとんど入ってないのです。そういう批判が新聞にも出ました。出ると、専門委員によって補充するんだ。ところが、その後で専門委員が任命されましたが、ほとんど入っていません。ほとんどその中には、行政改革推進論者であるとか、さまざまな教育現場の実態などを承知していない人が入っていることは間違いないのですね。  そういうことを考えますと、今塩川文部大臣がおっしゃいましたけれども、この大学審議会の人員構成その他から見まして、これが大学の自治を一層破壊していく。大学の自治、自治と言いますけれども、大学の自治というものを保障していくのが文部省の役割。条件整備をするのが文部省の役割ですよ。教育基本法第十条に書かれている、行政の任務は何か、教育条件の整備である。しかも行政が不当な介入をしてはならぬというのが教育基本法の精神でしょう。  ところが、文部大臣、この間「あまから問答」を見ておりますと、大学や教官の間に競争原理を導入するための評価制度検討してもらうであるとか、あるいはこの間の委員会では、学長、学部長、こういう人のリーダーシップを確立し教授会自治の見直しを諮問する、まだ法律が通ってもおりませんし審議にも入っていない段階でこういうふうな個人的な見解を述べて、大学審議会にこういう諮問をしてその権限を発揮させよう、そういう発言があるわけです。こういう点から見まして、この大学審議会は非常に危険なものを内包しておる、しかも法律によって長く存在をする、しかも少数の機関。こういうことを考えますと、私は、こういう審議会設置がさっき言いましたように憲法や教育基本法に対しまして大きく抵触をするものであるというふうに考えざるを得ません。  また、教授会自治の問題につきましても、私は教授会自治そのものが十分であるとは思っておりません。大学の民主的改革は、その大学を構成する全構成員によって民主的に討議されて改革をしていくべきものであるという見解を持っておりますけれども、しかし現実の法律では、学校教育法それから教特法によって教授会自治というものも法律上決められているわけですからね。塩川文部大臣の言うようなことになると、今度は教特法を変えなければいけませんね。教特法を変えて教授会の持っておる人事権も剥奪をしていくということになってまいりますと、大学の自治の理念そのものがこの大学審議会構想によって変えられていくということも指摘しておかなければならぬと思います。  私は、幾つかの大学を調べますと、こういう大学の自治がなかなか守れないというのは、予算上の問題もあるわけです。例えば東大の工学部を見ますと、教育研究費が光熱水費にしかならないのですね。ほとんどないのです。予算で締め上げて、民主的な改革をやろうとしてもできない状態。だから、そういう条件が整備されていないものですから、後で申し上げます寄附講座へ走っていくという状態が今大学にあるわけでして、そういう点では大学の自治を本当に援助していく、指導助言をしていくということが今文部省に課せられた任務であるということを申し上げておきたいと思います。  これに付随しまして、もう一つの問題は、今東京大学が大学院重点大学という構想を出しまして概算要求をされておると聞くわけでございますが、いわゆる大学院重点大学構想について文部省はこれをお認めになるような動きをしておるのかどうか、これを伺っておきたいのです。
  196. 阿部充夫

    ○阿部(充)政府委員 東京大学のいわゆる大学院重点大学構想でございますけれども、現在東京大学の中で大学院に重点を置いて考えていこうという方向については一致した意見になっておると思いますが、具体にどういう方向でやっていくかというあたりのところにつきましては、まさにこれからの検討課題ということのように聞いておるわけでございまして、私どもの方といたしましては、臨教審の答申で大学院を大事にしていこうということはまさにそのとおりだと思っておりますし、一般的にそういう検討が行われることは結構だと思っておりますけれども、東京大学のこの構想自体が適当かどうかという問題につきましては、なお現在の段階では判断いたしかねるということでございます。
  197. 山原健二郎

    ○山原委員 東京大学が民主的な討議の中で一定の方向を出されることについて私はいろいろ言っているわけではありませんけれども、いろいろお聞きしてみますと、法学部、経済学部、文学部、これは反対なんですね。それから、賛成をしておられる工学部におきましても学部全体としてまとまっているわけではありませんし、また、教授会もほとんど作業にあずかっていない。当局側がこういう構想を出しているわけですけれども、これがもし成立をするとしますとどういうことになるか。東京大学というのが一層超エリート化していくわけですね。予算をここへ吸収する。他の大学には予算が回ってこない。まして大学の格差は、今でもこの格差是正の問題が起こっておるにかかわらず、さらにこれが突出した形になりまして、受験競争は一層激化し、偏差値、中曽根首相はいつも偏差値をなくさなければならぬと言っておりますけれども、偏差値だって一層深刻化することはもう目に見えているわけです。そういう問題について本当に民主的に討議しないで当局だけで考えてやっていくということになりますと、これは日本の教育全体に重大な禍根を残す結果になりますので、この点は十分な論議が必要だろうと思います。  それからもう一つは、東京大学だけではありませんけれども、今出ておりますいわゆる寄附講座、これは我が党の松本善明議員の本会議質問に対しまして、中曽根首相は、大学の活性化を図るもの、また文部大臣も活性を図るために導入した、こういうふうに言っておられます。けれども、東京大学の先端技術研究センター、ここに申し込まれている寄附講座を見てみますと、NTTの場合は通信機器の講座ですね。新日鉄は新素材の講座、NECはコンピューター、九州大学の経済学部に出ておりますのは安田火災海上保険でございまして、ここでは保険学、これは全く企業の利益とそのまま結びついているわけですね。そういう寄附講座ということ、しかも冠講座とも呼ばれているわけでございますが、大学の活性化というよりもむしろ企業の活性化、そのために大学が奉仕するという形になる可能性が濃厚でございまして、特定の企業に奉仕をするということになりますと、大学が公のものであり公に奉仕をしなければならない、また国家公務員は公に奉仕する任務を持っているわけでございますが、そういう点から見ましても、本当にこれはこのままでいいのかということを痛切に感ぜざるを得ないのでございます。こういう事態を文部省としては今後も許していくのかどうか、これを伺っておきたいのです。
  198. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 民間と大学との接触が何かえらい悪いようにおっしゃっていますけれども、私は、大学の研究というものも結局しょせんは人類の福祉増進ということに役立つように、そのことの一つとして企業活動とも関係があるということは否定できないと思っております。  そもそもこの寄附講座を大学とそれから企業の密着だけをお考えになって判断しておられますが、実はそうではなくて、大学がいろんなことを研究したい、そういう研究に対して企業が援助しよう、こういうシステムでございまして、したがって、運営あるいは教授の任命とか、そういうようなものは全部大学が自主的に決めることでございます。ですから、決して私は企業癒着にはならない。けれども、研究の成果というものがいずれはこれは社会に出ていきますから、社会に出ていった場合に、その場合にやはり企業は利用するであろう、これは当然想像されますけれども、企業から委託を受けて大学がその企業にかわって研究する、こういうものではないということだけはひとつはっきりしておいていただかないと大変な誤解を生んでまいりますので、もう一度申しますが、この寄附講座の構成、そして内容、こういうようなものは全部大学が自主的に決めるものであるということでございます。
  199. 山原健二郎

    ○山原委員 大学の予算が現実に非常に少ない。大関のカップがありますね、あれをためて、これをビーカーにする学校だってあるのです。そういう中で、経済的に非常に研究をしたいと思ってもできない状態の中に企業が入り込んでくる。しかもその企業の出している講座がその企業の利益とぴたっと結びついている。私は、企業と大学がすべてあらゆる面で接触してはならぬなどと単純なことを言っているわけではありません。大学は地域社会に対しても奉仕することもしなければならぬ問題でしょうしね。でも、余りにも直截的な形で大学そのものの研究が企業に奉仕するという形になりますと、将来にとっていいことではないと考えております。  そういう点で本当に、四十年前に新制大学をつくりました、そして新制大学の充実と発展というあの戦後の生き生きした大学の民主的な前進というところにもう一回思いをいたさないと、大学の教授が、金がない、金が欲しければ研究する、こういうことになってしまうと、私はこれは真の意味での大学ではない。国を代表する学術の中心というのが法律に書かれております大学の任務でございますから、そういう点から今のような質問を申し上げた次第でございます。  次に、農業問題について質問をいたしたいと思います。  総理大臣にお伺いしますが、総理は所信表明演説の中で、三十一年ぶりの、しかも五・九五%という大幅な生産者米価引き下げを施策の充実であるかのように述べられております。今日農家は、十七万ヘクタールもの減反拡大による稲作収入減と転作奨励金削減で、概算約千八百億円に及ぶ減収を強いられております。加えて、生産者米価引き下げで約千四百億円、合わせますと三千二百億円、三千億円を上回る収入減となっているわけでございます。これが農民の購買力を低下させ、地域社会経済に深刻な打撃になることは事実でございまして、このことで苦しむのは農民だけではありません。商店やサービス業の人たちにも否定的影響を及ぼさずにはおかないのでございまして、政府が述べている内需拡大どころか、これに逆行する結果になっておるのではないかと思いますが、総理大臣はどうお考えでしょうか。
  200. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 確立されている計算方式に基づいて当てはめてやったのですが、実際はそれをやりますともっと下げる計数が出てきたのでございますが、激変緩和ということも必要でございますのでああいう措置をとった次第でございます。  なお、いろいろ減反による収入減の地域等に対しましては、公共事業の傾斜配分、失業対策等、十分を期してやっていきたいと思います。
  201. 山原健二郎

    ○山原委員 この公共事業の面から見ましても、実際に農民の懐を潤す結果にはならないんですね。そういう点がございます。減反や米価引き下げで農家収入が大きく減るのは間違いないわけでございまして、しかも円高不況が農家や地域経済に暗い影を落としていることは、今月七日に開かれました地方農政局長会議の報告でも浮き彫りになっています。今回の生産者米価引き下げがこれに追い打ちをかけることになっておることは明らかでございます。  ところで、この米の問題あるいは農業の問題に対しまして、内外格差論を誇張して、日本農業はだめだとかぐうたらだとかいう烙印を押すところの日本農業批判の大合唱が昨年来展開をしているわけですね。このことについて伺いたいと思います。  例えば、日本の米価は国際価格の十倍である、食糧を自由化すれば日本人は五兆円楽になる、食糧輸入こそ日本を安全にするなどなどの宣伝がまことしやかに出されているわけですね。こういう論調というものをどう受けとめておられるか、これは農林水産大臣にまず伺っておきたいのです。
  202. 加藤六月

    加藤国務大臣 我が国農業は、食糧の安定供給を初め健全な地域社会の形成あるいは国土自然環境の保全など重要な役割を果たしております。こういう中で、御指摘のように最近我が国の農業、農政に対して種々の批判やまた提言が行われております。この中には、今後我が国農政を推進していく上についての貴重な御意見等もあります。私は耳を傾けるものには耳を傾け、あるいはまた事実十分勉強せずにいろいろおっしゃっておられる方々もおられます。こういう方々に対しては一生懸命説得し、説明し、農政に対する理解と納得を深めていただかなければならないと考えて、一生懸命努力しておるところでございます。
  203. 山原健二郎

    ○山原委員 私が今申し上げました、日本の米は国際価格の十倍であるとか、食糧を自由化すれば日本人は五兆円楽になるとかいうようなことを申し上げましたね。これは、個人の名前を出して大変恐縮でありますけれども、今例示しましたいわゆる批判論の項目は、これは竹村健一氏の「日本農業大改造論」、この本からピックアップしたものです。     〔委員長退席、今井委員長代理着席〕 この本の中で竹村氏はこういうふうに述べております。中曽根首相から「竹村さんが露払いをしてくれたおかげで、(農政改革が)やりやすくなった。ありがとうございました」「ご主旨は充分参考にさせていただくよう、加藤農水大臣や玉置総務庁長官にいろいろ指示いたしました」という手紙を受け取っているということがこの文章の中に出てくるわけでございます。  米を含めた農産物完全輸入自由化、食管廃止を主張しておられる竹村氏、この竹村氏のキャンペーン、テレビその他を通じて行われておりますが、これが農政改革を進めるための露払いと評価をしておられるのかどうかですね。これは文章にありますから、一応正確な意味を期しましてお伺いしたいのです。いかがでしょうか。
  204. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 たしか、テレビで竹村氏が農政改革論を展開したのを聞いておりまして、その趣旨に対しては自分も同感である、そういう趣旨のことを言ったことがあります。しかし、やり方については、農政審議会の答申を、我々は農協と一緒になってこれを現実的に改革する方向で努力したい、そういう趣旨のことを言ったことはあります。それをそういうふうにお受け取りになったのではないかと思います。
  205. 山原健二郎

    ○山原委員 政府は今まで、米の国内自給を堅持するという国会決議に対しては、これを守りますと何遍も御答弁なさっているわけですね。それに比べまして、完全自由化論を唱える竹村さんの見解、これが農政改革を進める露払いになる、これはとても言えた話ではないと思います。  だからその点、私は何となく中曽根首相周辺が、例えば加藤寛氏にしましてもあるいは臨教審の専門委員をされております屋山太郎氏にしましても、中曽根首相のブレーンと言われる人あるいは中曽根首相が審議会のメンバーとして多用しておる方たちの間から、日本の米、日本の農業に対する批判がもうあなたの周辺から一番多く出ているのですね。これはもう大変なことだと私は思いますが、この点について加藤農水相はどういう見解を持っておられるか伺っておきたいのです。
  206. 加藤六月

    加藤国務大臣 たびたび申し上げておりますように、米というものは我が日本人にとって主食でございます。そしてまた、我が国農業の根幹をなすものであります。また水田、稲作というものは、我々日本の文化、伝統あるいは国土、自然環境の保全等々数限りない重要な問題があるわけでございます。  しかし、先ほど申し上げましたように、我々もある面では内外価格差というものをこれは意識しなくてはなりません。したがって、私は、いつも生産者、農民にお願いしておるのは、どうぞ血を流してください、涙を流して頑張ってください、そして米の自給を貫き、食管制度を守っていくためにひとつおいしくて安い米をつくるように頑張ってくださいということを言っておるわけでございます。  それから、先ほど申し上げましたが、いろいろな御批判、御提言に対しましては、聞くべき点は真剣に耳を傾け、今後の農政の上に役立たしていくものは役立たし、また数字や何かあるいは事情等十分、勉強不足の上でおっしゃっておられる方には、日本の農政というものを理解していただき納得していただくように一生懸命頑張っておるところでございます。
  207. 山原健二郎

    ○山原委員 これは本当に重大なことでして、不確実な資料に基づいて、前々から米は頭が悪くなるとか、そういう宣伝が過去においてもなされたことがあるわけですが、外務大臣、あなたの私的諮問機関である新ラウンドに関する懇談会が、去る四月十六日に「ウルグアイ・ラウンドと日本」という提言をまとめております。  そこでは、「農産物輸入自由化のメリット、輸入制限措置による消費者の負担等について正しい情報を国民に知らせ、自由化に対する国民の合意を得るよう努力すべきである。」と書かれておるわけでございます。それだけではありません。「工業用米については可及的速やかに輸入を実施していき、併せ、主食用米の輸入問題について検討を行っていく事が望ましい。」という意見まで紹介をして提言がなされておるのでございますが、外務大臣、あなたはこういう立場でウルグアイ・ラウンドに臨むおつもりかどうか、最初に伺いたいのです。
  208. 倉成正

    ○倉成国務大臣 ただいまお話にありました新ラウンドに関する懇談会、これは各界の有識者に参加いただきまして、ウルグアイ・ラウンドに関して自由な意見の交換をしていただいたものをまとめたもので、その一部分を先生は御引用になったと思うわけでございます。  その中にもありますように、ちょうど昨年、アメリカの精米業者が、日本の米の輸入をめぐりましてアメリカの通商法の三〇一条に基づいてUSTRに提訴いたしたことがございます。ちょうど私、ウルグアイ・ラウンドに出ておりまして、プンタデルエステへ行っておりましたが、農林大臣がその席におられませんので、私が、加藤農林水産大臣とお打ち合わせしたわけではありませんけれども、ヤイター通商代表に対しまして、米というのは日本の国民にとって大変センシティブな物資であるから、こういう三〇一条で取り上げるというようなことは我々は望ましくないということを申しましたし、またボルドリッジ商務長官にも申しました。また重ねて、ニューヨークでシュルツ国務長官とお目にかかったときにも注意を喚起したわけでございまして、もちろんその他のいろいろな方の御努力があったせいもありましょうが、この提訴は取り下げられたわけでございます。  したがって、今ここにあり、掲げられておるいろいろな御意見は御意見として、貴重な意見として参考にはさせていただきますけれども、これは一つの外務省の意見でもなければ政府の意見でもない、これらの自由闊達な御意見として我々は承っておる次第でございます。     〔今井委員長代理退席、委員長着席〕
  209. 山原健二郎

    ○山原委員 私的諮問機関といえ外務大臣の諮問機関ですから、諮問に応じでいろいろおっしゃるわけです。決して軽い存在ではありません。しかし、この懇談会の構成を見ますと、全く私は驚いたのですが、二十六人の構成メンバーのうちで農業団体代表は一人も入っていませんね。米輸入自由化を虎視たんたんとねらっている大商社代表が六人、伊藤忠を初め、これは戸崎さんが座長をしておりますが、三井物産、三菱商事、丸紅、これは六名入っております。それから、貿易摩擦の元凶ともいうべき自動車メーカーのトヨタから二名、電子機器メーカーの日本電気から一名、銀行資本代表は四名など、実に十七名までが明白な財界代表ですね。こういうメンバーに農業問題で意見を取りまとめてもらうということになりますと、どういう内容の提言になるかぐらいは推察がつくはずです。私的機関といえども外務大臣の諮問機関の提言となれば対外的影響は小さくありません。  しかも、この提言がことし四月の米国リン農務長官の来日のその日に出されたというタイミングを見ましても、まことに意味深長と言わなければなりません。リン長官は先日日本農業新聞の記者との会見で、一部分でもいいから米の輸入を日本に迫っていくことを基本戦略にする考えを述べております。工業用米などの部分輸入で風穴をあけ、それを突破口にするという点で外相の私的諮問機関の提言と軌を一にしているわけであります。  私は中曽根首相の竹村氏への手紙の一件とも考え合わせますと、中曽根内閣が陰に陽に米輸入自由化論を権威づけまして、その外圧、内圧を鼓舞していると指摘をせざるを得ないのでございますけれども、これについて中曽根首相の見解を伺っておきたいのです。
  210. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 そういうことは全くございません。大きな歪曲か誤解であります。加藤農林水産大臣が申したとおり、この間のOECDの閣僚会議におきましても、ベネチア・サミットにおきましても、あのような食糧の安定供給あるいは各国の国情に応じて必要な弾力的対策あるいは環境に対する配慮、そういうことを政策について特に入れてもらったのは我々の努力であり、私みずからがベネチア・サミットにおいても努力したところでありまして、それは先ほど加藤農水大臣の申したとおりです。  しかし、内外価格差が余りにも離れているという現状は黙視できないし、国民生活の安定という問題も考えなければなりません。そういう面まであなたは反対じゃないのでしょう。何でも人のやっていることが悪い悪いといって決めつけておられる。そういう面について、やはりもう少し普遍的にお考えを示していただきたいと思うのですよ。そういう意味からも、いかにして内外価格差を少なくして、そして食管制度を守ってあげるか。我々の大きな仕事は食管制度の根幹を何としても守ってあげなければならぬということなのでありまして、農村といえども農民といえども全国民の中で一緒に生活をしておるので、国民世論というものを全然無視して農業が成り立つはずはない。そういう危険水域にだんだん迫りつつあるということも知らなければならない。どっちが農民のためを思っておるか、お考え願いたいと思うのであります。
  211. 山原健二郎

    ○山原委員 農村は疲弊をしております。人口は減っています。本当に何をおっしゃるかと言いたいのですよ。  あの小麦が入ってきたとき、日本じゅう小麦だらけだった。今ごろは麦の穂が出ましてね。今もう日本全国ほとんど見ることができないでしょう。どうしてこうなったのか。そこのところから考えないと、あなたのおっしゃるように私、悪口ばかり言っているわけじゃないのです。  ここでまず農水大臣にお聞きしたいのですが、一部輸入を含め米輸入はしないと、この点で今明言できますか。
  212. 加藤六月

    加藤国務大臣 先ほどお答えいたしましたような米の重要性、さらには衆参両院における国会決議がございます。国権の最高機関の決議があるわけでございまして、私は一部といえども輸入する気持ちはございません。
  213. 山原健二郎

    ○山原委員 総理大臣にお伺いしますが、加藤農水大臣が一部といえども輸入はしないと今おっしゃいましたね。これは内閣として統一した全体の見解がどうか伺っておきます。
  214. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 現中曽根内閣においてはいたしません。
  215. 山原健二郎

    ○山原委員 きょうは私の質問がこの予算委員最後の質問ですから、中曽根首相も最後の衆議院予算委員会における御答弁をなさっておるのではなかろうかと思うのですが、今の見解については後でちょっと述べたいと思いますが、農業問題で最後に二つばかり伺っておきたいのです。  一つは、国民の理解を得る上でコストの低減に努めることは当然だと思います。そのためにも、米生産費の六割を占める農機具、肥料等の生産資材費引き下げ、これは緊急課題だと私は思いますし、我が党の議員もこの点では今まで主張してきたところでございます。加藤大臣に、この農機具、肥料等の業界に対する行政指導を強めまして価格の引き下げをさせるべきだと思いますが、この点についてお答えをいただきたいと思います。  もう一点は、国民の理解を得るという上で一番のポイントになる消費者米価でございますけれども、二重価格制という食管制度の本旨に基づきまして大幅に引き下げるべきだと思いますが、この二点についで御見解を伺いたいと思います。  大臣は最近の週刊誌上で、消費者米価は下げるべし、その点で私の心にもやもやは既にないと語っておるわけでございますが、ここでもやもやのない決意を表明していただきたいと思います。
  216. 加藤六月

    加藤国務大臣 生産者米価のコストに占める農機具、肥料等のウエートが非常に大きいことは先生御存じのとおりでございます。  そこら辺の問題を踏まえまして、まず、国民から理解してもらうために、輸出農機具と国内の農民が使う農機具とに差があるという話がございました。徹底的に調査し、また勉強もいたしました。そこら辺について、余り時間がございませんから多く申し上げられませんが、私の調査したところ、輸出価格というものと国内農家の庭先渡しの農機具との間にほとんど差はございません。ただ、一部誤解がありましたのは、アメリカに輸出しておりますがーデントラクター、これについてタイヤやいろいろなものをつけない輸出価格というものと農家庭先渡し価格との間に差があったことはそのとおりでございます。また、全体として、これは全農がメーカーと徹底的な交渉をし、農林省としてもそこら辺に対し両方を指導しまして、ぎりぎり下げられる限界まで下げさすように、肥料にしましても農機具にしてもいたしておるわけでございます。それが決まりまして、商系もそれに従って行うようになっておるわけでございます。詳しくは政府委員からお答えいたさせますが、そのように鋭意取り組んでおるところでございます。  また、消費者米価につきましては、参議院の本会議でもお答えいたしたところでございますが、例年十二月に決定いたしておるようになっておりますので、具体的にはまだ決めておりません。しかしながら、基本的な考え方を申し上げますと、先般の米審の答申においても消費者米価についての意見をいただいております。また、昨年の農政審の報告にも、価格政策についで国民の支持の受けられる運用を目指せというような御指摘がございました。そして、先ほど来申し上げましたが、内外価格差を極力縮小するように努めるべきであるという点等もあるわけでございまして、今後可能な限り、現在進みつつある生産性向上の成果を生産者価格に先般反映したわけでございますが、これを踏まえて消費者価格も適正に決定することによりまして、広く国民の理解と支援を得ていく方向で努力することが必要であると考えております。
  217. 山原健二郎

    ○山原委員 この問題の最後に、私は中曽根首相に申し上げたいのです。  我が国の米生産というのは、千年、二千年の歴史を持っているわけですね。どこへ行きましても水田があります。その水田の果たしている役割というのは、これは治水の問題を含めて、あらゆる面で重要な役割を果たしているわけですね。今はもうどの土地へ行っても水田があるというこの国、これは民族的に言いましても、まさに豊葦原の瑞穂の国という言葉がありますけれども、そのとおりなんですね。これを主食としている民族の首長が中曽根首相です。  アメリカはどうかというと、アメリカの米は安くてうまいなどという宣伝がなされておりますが、比較することができるのかと私は言いたい。アメリカは五十の州がありますけれども、米をつくっておるのは五つの州でしょう。そのうちで日本人が好むような米をつくっているのはわずかにカリフォルニアだけと言ってもいいわけですね。アメリカでは米の生産量は小麦の一割です。米は全農産物生産量の一%にしか過ぎないのですね。これがアメリカの米なんですよ。だから、米ではなくて、これは野菜なんです。日本人の米に対する感覚と全く違うわけですよ。それを比較して、いかにも向こうの米は安いかのごとき宣伝がテレビやその他を通じてなされております。  こういうことに対して農林水産省はなぜ正確な事実をもって反撃しないのか。比べること自体がおかしいのですね。それを比べて、日本の農民が何だかまた肩身の狭い、減反はやられる、生産者米価は引き下げられる、人は減っていく、嫁に来手もないという状態の中に置かれて、なおかつ肩身の狭い、税金はクロヨンだと言われる。これらに対して事実をもって本当に反撃しなければならない農水省が本当に反撃をしているのかということを考えますと、私は、何といっても首相みずからの考え方に、この米を主食とする民族の首長としての自覚があるかどうかということを本当に疑わざるを得ないのです。  この間、我が党の調査団がアメリカへ参りまして米の調査をしておりまして、その報告書の一部を見たわけでございますけれども日本に米を輸出をして安定的に供給できるのか、質も量も確保できるのかという質問に対して、ほとんど答えが出ていないのですね、答えが返ってこない。ある政府当局者は、窓口を闘いでさえもらえば、後はタイの米だって持ち込んだっていいのだということすら言うような現状ですね。実際に米の自由化をやって安定的にあるいは安全なものを供給できるかというと、そういう保証もないわけです。そういう状態の中で、何だか日本の米は高くで、日本の農民は高い米をつくって、過保護で、そしてよその国は安いものをつくっている。本当に比べてみたら、今度の円高の差によって日本の米の生産費が上がっておりますけれども、円高さえなければちっとも、むしろ価格は減っておったわけですね。そういうことを考えますと、本当にこれは事実をもって国民に知らさないと、いつの間にかふわっとした雰囲気が起こって、米を自由化した方がいいじゃないかという空気が起こってくるわけですね。けれども、本当に胃袋を他国に握られて主権が守られた国はないと言われていますよ。本当にみずからの主権を守るというのは主食を確保することじゃないのですか。その情熱があったら、そういう簡単な、あなたの雰囲気から、米高論あるいは農業に対する過保護論などというあられもない攻撃は起こらないはずです。これを起こしているのが中曽根首相その人ではないかということを考えますと、本当にこの国の主食を守る意味で決意を固めて、このような自由化は許さないという決意をあなた自身が持つことが必要だ、私はそのことを中曽根首相に心から訴えたいと思いますが、この点についての御見解を伺っておきたいのです。
  218. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 豊葦原の瑞穂の国と言われましたが、国旗と国歌を否定したあなたが天孫降臨の神勅を引用なさるとはちょっと驚きましたですね。やはりあれを信じていらっしゃるので結構なことじゃないかと思いますね。  それから、米の問題については、今一生懸命努力しておるのは中曽根内閣ですよ。これはウルグアイ・ラウンドの場におきましても、あるいは日米会談の場におきましても、サミットの場におきましても、OECDの場におきましても、全閣僚があらゆる機会をとらえまして今の米の輸入を阻止するために全力を振るっておる、外交交渉でそれをやっておるのです。演説だけしてそれで終わっておるというところとは違うのです。我々のこの努力をよく見てもらいたいと思うのであります。
  219. 山原健二郎

    ○山原委員 あなたはいつも共産党の質問に対してそういうことを言うのですよ。私は国旗、国歌を否定していませんよ。しかし、今私が言いましたように君が代の問題については国民の間に諸感情がある、このことを言っているわけです。それから、その否定した山原が天孫降臨の豊葦原を言った。私はもともと漢文の教師ですから古い言葉は好きなんですよ、あなたも好きだけれども。豊葦原の瑞穂の国が天孫降臨と直接関係はないのです。この国は青々とした水とそして水田によって生活してきた民族的歴史、そういうものがあるわけですから、これを私が使ったからといって、ちっとも国歌、君が代と関係あるわけじゃありません。そういう言い方は、まさに中曽根式デマゴーグといいますか、これは本当に共産党の質問に対してももうちょっと、親切とは言わぬけれども、まじめに答えてもらいたいですね。  最後に、もう時間がございませんので、国立病院の統廃合の問題についてお聞きしたいと思います。  厚生省は、六十年八月、二百三十九の国保立病院・療養所のうち三分の一の七十四施設を六十一年から十年計画で再編・統合する計画を発表しました。重大な医療行政の後退でありまして、私は断じてこれを認めるわけにはまいりません。  しかも、その中に随分と乱暴な統廃合が行われようといたしております。これは私の県の例を申し上げて大変恐縮ですけれども、私の県の統廃合が全国の統廃合のいわば突破口だというふうなこともお伺いしておりますのでお伺いしたいわけでありますが、ここでは国立療養所東高知病院二百三十床を統合しまして国立高知病院二百十床に一緒にするということでございます。東病院を高知病院に押し込もうとするわけですが、この統合には非常な無理があります。廃止される東病院は二十六万平米あります。約八万坪ですね。ところが、これを一つの高知病院に入れるわけですが、それはわずかに三万平米である。八分の一の面積でしかありません。しかもこの東高知病院には、結核患者あるいは老齢者の療養中の方たち、重度の身体障害児の教育施設、これは県立養護学校の分校でございますが、ここで教育活動が行われております。  東高知病院は、広くて静かでそして緑にあふれ大きな池があります。人はここに池と呼ぶ地名をつけておりますが、この池の地は、かつて戦時中、海軍航空隊のために地域住民から強制的に土地が収用されたものでございまして、その際住民は、今後病院以外には貸さない、もし病院以外のものに転用するならば返してほしいと今日まで主張してまいりまして、念書も交わしておるわけでございます。この地をあっさりつぶしまして、そしてこのすばらしい環境の地から八分の一の土地、ここは約一万坪ですが、ここに押し込む。しかも交通の渋滞地であります。しかもこの両病院とも最近増改築したばかりなんですね。この両方を壊して、一方を新たに建設してそこへ入れるというわけですから、考えでみますと全く予算のむだ遣い、こういうことも考えられるわけでございます。  またさらに、新たな国立高知病院に七科目を新設し医療を充実すると厚生省は言っておりますが、その構想の中身も明らかでありませんし、それに要する費用、構想、人員、スタッフ、土地を買収する費用、こういうものも実は明確にはなっておりません。このような無謀な計画を強行しまして、これを全国の統廃合の突破口にするなどということは断じて許されないことでございます。  県民にとりましてこの東高知病院というのは、戦後のあの結核患者の命をどれほど守ったかわからない歴史的な愛着を持った土地であることも間違いございません。このことを考えますと、今度の統廃合が医療の後退であるばかりでなく、県民の感情にとっても随分と乱暴なやり方ではないかということを痛感せざるを得ないのでございますが、このようなやり方は直ちに中止をしてもらいたいというのが私の要望でございますけれども、これについて厚生大臣の見解を伺っておきたいのであります。
  220. 斎藤十朗

    ○斎藤国務大臣 我が国の医療機関は、公私立の医療機関の整備が進みまして、現在量的にはほぼ日本の医療を確保できてきておるというふうに考えております。  国立病院・療養所につきましては、戦後それまでの経緯をたどりながら整備をされてまいりました。昭和二十年代のころには国立病院の有する病床が全体の病床の約三割を占めておったわけでございまするけれども、今日におきましては、全体の病床のうちのわずかに六%を占めるというような状況になってきております。  そういう中で、国立病院が果たすべき役割、国民の皆様方に本当に信頼に足る国立病院、そして他の医療機関では果たし得ない使命を果たしていく、そういう形の中で国立病院の再編成を図っていき、そして政府が決めております行政改革の方向にも沿うでいってまいろう、こういうことで考えておりますのが今回の国立病院の再編成でございまして、医療行政の後退というよりも、真に一層良質な医療を国立病院・療養所で確保していくという方向に向かって今進めようといたしておるところでございます。  今御指摘のございました国立病院高知病院、国立療養所東高知病院の統合につきましては、現在の両病院の機能に加えまして、国立医療機関にふさわしい広域を診療圏とする高度な診療機能、すなわち母子小児総合医療、救急医療、腎の総合医療、重症心身障害児者に対する医療、結核に対する医療等を行うよう整備をいたしてまいる、同時に新しく看護婦等医療従事者の養成及び研修施設をあわせて設置してまいろうと考えておるところでございます。そして、この進めにつきましては、高知県当局とも円満に順調に話し合いを進めで現在進行をいたしておるところでありまして、そのような状況でありますので、ひとつ何とぞ御協力を賜りますようお願いを申し上げたいと思います。
  221. 山原健二郎

    ○山原委員 最後に一言。これが行われますと、全国で高知県だけが国立療養所のない県になるんです。これは私は本当に許しがたいことだと思っておりますが、時間が参りましたのでこれで終わります。
  222. 砂田重民

    砂田委員長 これにて山原君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして昭和六十二年度補正予算三案に対する質疑はすべて終了いたしました。     ―――――――――――――
  223. 砂田重民

    砂田委員長 これより討論に入ります。  討論の通告がありますので、順次これを許します。吹田愰君。
  224. 吹田愰

    ○吹田委員 私は、自由民主党を代表いたしまして、ただいま議題となっております昭和六十二年度補正予算三案に対し賛成の討論を行うものであります。  我が国経済は、ここに来まして急速に景気の底入れ感が広がっておりますが、製造業を中心に停滞感が続き、雇用情勢の悪化が懸念されております。また、我が国を取り巻く経済環境は、大幅な貿易不均衡、これを背景とする保護主義の動きなど引き続き厳しく、我が国への貿易不均衡の是正、内需拡大を求める声は依然として強いものがあります。  このような経済情勢を打開するために、政府は、我が党がさきに打ち出した総合経済対策要綱を受けて、去る五月、総額六兆円を上回る財政措置を伴う緊急経済対策を決定し、内需を中心とした景気の積極的な拡大と貿易不均衡の是正に全力を尽くすことを内外に示したのであります。この緊急経済対策は、さきに行われたベネチア・サミットにおきましても、各国から高い評価を受けていることは御承知のとおりであります。  今回の補正予算は、この国際公約ともなった緊急経済対策を財政面から裏づけるものであり、極めて時宜にかなった措置であると確信するものであります。  以下、本補正予算の内容につきまして、賛成の理由を申し述べます。  賛成の第一は、内需拡大を強力に進めるため、公共投資の追加を中心に予算規模二兆円を上回る実効ある大型補正となっている点であります。  今日の経済情勢では、政府主導型による内需喚起のための財政出動が急務であり、公共投資は即効性あるいは民間投資への誘発性が期待できるなど、最も有効な手段であることは言うまでもありません。  今回追加された公共投資は、新規用地取得を必要としない事業を中心に、国民生活関連の環境施設整備、住宅投資、文教研究施設などの社会資本整備に重点を置いて配分が行われるなど十分な気配りがなされており、高く評価するものであります。  賛成の第二は、対外経済対策に特段の配慮を講じている点であります。  政府は、政府調達特別対策費として一千十一億円を計上し、政府みずから率先して輸入の拡大に取り組むとともに、後発発展途上国向けの無償資金協力の拡充等を図るため、経済協力特別対策費を計上し、国際的責務に対する積極的な姿勢を示しているものであります。これらの措置は、我が国の調和ある対外経済関係の形成に資するものとして評価すべきものであります。  賛成の第三は、行政改革の成果であるNTT株の売り払い収入の活用についてであり、国債の償還財源に充てるという基本原則は維持しつつ、その一部を活用して社会資本整備を図っている点であります。  これは公債の増発を抑えながら、公共事業、民間活力事業に無利子貸付制度を導入し、経済社会の整備を促進し、地域経済の活性化を図ろうとするものであり、財政の現状からいたしまして妥当な措置であります。  以上三点にわたり補正予算に対する賛成の理由を申し述べましたが、世界第一の債権国となった我が国としては、世界経済の安定と繁栄のため、国際国家日本として積極的な役割を果たすとともに、調和ある対外均衡を図りつつ、持続的な成長を確保し、国民生活の安定と質の向上を実現することが必要であります。このため経済構造の調整が強く要請されているのでありますが。政府におかれましても、かかる見地に立って中長期的な政策を推進され、その推進に当たっては万全を期されることを申し述べておきます。  最後に、残された大きな課題である税制改革の問題につきましては、現在衆議院に設けられた税制改革協議会において鋭意協議検討が続けられているところでありますが、特に国民の待望している減税が速やかに行われることを期待いたします。しかし、それには同時に恒久的財源確保が必要欠くべからざる前提であり、実りある成果が得られるよう要望いたしまして、賛成の討論といたします。  終わります。(拍手)
  225. 砂田重民

    砂田委員長 加藤万吉君。
  226. 加藤万吉

    加藤(万)委員 私は、日本社会党・護憲共同を代表いたしまして、ただいま議題となりました昭和六十二年度補正予算三案に対しまして反対の討論を行います。  六十二年度政府当初予算は、国会提出時点から欠陥予算でありました。対ドル円レートの大幅な変動、内需の拡大、三・五%の成長率を無視する縮小均衡型のマイナスシーリング、政治的操作による防衛費の対GNP比一%枠の突破、そして売上税、マル優廃止という公約違反の大増税の歳入への計上など、多くの矛盾と欠陥を含んでおりました。  私は、まず、政府予算編成に対する姿勢が極めて無責任、場当たり的であり、しかも国外の声を尊重し国民の声を無視する傾向にあることに対し、強く警告を発したいと考えます。  国の予算に国民が失望するとき、国民の政治に対する信頼、そして納税に対する合意は根底から崩れます。税制改革を見ても、増税案であるとともに、その使われ方に国民が疑問を持っているからこそ、あれほどの反対の声が上がったのであります。  次に、私は、具体的に補正予算案の問題点を指摘したいと考えます。  第一に、今回の補正予算案の基本となっております緊急経済対策そのものが従来型の発想で終始をし、日本経済の内需主導型への転換策もなく、輸出規制の心構えもなく、非鉄金属など輸入産業への手だてが何ら行われておりません。また、国民一人当たりGNP世界第一位にふさわしい国民の生活の質の向上への出発点として、不合格であることであります。したがって、必然的に本補正予算案にも同様の欠陥が存在していることを指摘できるのであります。我が党は、経済の安定的成長を維持するため、少なくとも名目経済成長率程度の予算の伸びを確保するよう積極財政への転換を主張してまいりました。しかし、中曽根内閣は我が党の主張に対してかたくなに耳を傾けず、緊縮予算を続けてきた結果、今日の円高不況と貿易摩擦の激化という事態を招いたのであります。政府は、大型補正予算と強調しておりますが、事業規模五兆円、一般会計二兆円という内容は、今日の経済情勢にあってはその規模自体が不十分であり、三・五%成長達成にはほど遠いものであります。  第二に、本補正予算に内需振興に不可欠な個人消費の拡大のための大幅所得税減税が盛り込まれていない点を指摘しなければなりません。まず早急に六十二年度所得税等の二兆円規模の減税を先行実施をするべきであるにもかかわらず、政府はマル優廃止を減税の条件にしております。このことは、六十二年度減税とマル優廃止、六十三年度以降減税と大型間接税導入を貫こうとする大増税路線を政府がねらっていることを如実に示す例証であり、マル優廃止は即、大型間接税導入に必要な条件、外堀を埋めることにほかならない、断じて認めるわけにはまいりません。対外公約でもある減税を六十一年度決算剰余金やNTT株の売り払い益の一部を財源として実施するよう、強く求めます。  第三に、公共事業についてでありますが、その事業規模、内容とも国民の期待にこたえ、内需拡大に資するものにはなっておりません。これからの公共事業は、新前川リポートですら述べている生活の質の向上を図るためのものでなければなりません。そのためには、生活関連の社会資本を中心とした整備の観点から進められなければなりません。しかも政府は、四全総においては多極分散型国土の建設を展開しておりますが、その基盤となる地域経済の振興の視点が欠落し、地方財政負担増に対しても何らの手当てを行っておりません。二兆円の一般会計負担に対して地方負担増も単独事業を加えると二兆円余となり、これは中曽根総理のアメリカやサミット発言を地方への財政転嫁によって裏づけようとするものであります。逼迫する地方財政の現状からいっても、単独事業の政府案どおりの進捗など到底困難であります。  また、事業推進の前提条件であります地価を抑制するための有効な土地政策、経済政策が欠落をしているため、国民生活基盤の整備が思うように進んでいないのであります。さらに、NTT株の売却益四千五百八十億円を公共団体、第三セクター、民活事業に無利子で融資をすると言っておりますが、幾ら無利子といえども返済しなければなりません。特に地方財政等が複雑化をするのみでありまして、これでは国民の要求にこたえる公共事業を行うことは不可能であります。  第四に、雇用状況が深刻化しているにもかかわらず、公共事業の拡大以外、雇用・失業対策が全く講じられていないのであります。当初予算におきまして三十万人雇用開発プログラムが大々的に打ち出されておりましたが、それにもかかわらず今や失業率は三・二%を超え、史上最悪の状態であります。こうした状況に対して政府補正予算案は全くの無策であります。我が党の五十万人雇用創出のプランをあわせて御検討していただきたいと思う次第であります。第五に、中曽根内閣は、六十二年度予算編成に当たって円高、原油安など十分にGNP一%の枠に防衛費をおさめられたにもかかわらず、意図的にそれを突破したことは天を恐れぬ行為と言わなければなりません。我が党は、政府の補正予算編成に当たって、国民の軍縮、平和への願いと、INF全廃の国際的動向を踏まえ、円高による為替レートの変更、売上税の創設中止という条件を生かして防衛費の対GNP一%枠を今年度の予算執行においても厳守するよう申し入れましたが、中曽根内閣はいまだにその姿勢を示していないことは、初めに一%突破ありきの方針をみずから暴露するものにほかならず、断じて容認ができません。  発展途上国への資金還流と言われる経済援助につきましても、相手国の立場理解せず、大国意識の象徴と言われる状態であります。  また、一つの中国と言いながら、中曽根内閣がとってきた政治姿勢と対応は、今日光華寮問題に見られますように、中国の不安と疑惑を強く抱かせていることに対して強く警告をしなければならないと思う次第であります。  以上の理由をもちまして、日本社会党・護憲共同は本補正予算案に反対するものであることを表明し、私の討論を終わります。(拍手)
  227. 砂田重民

    砂田委員長 池田克也君。
  228. 池田克也

    ○池田(克)委員 私は、公明党・国民会議を代表して、ただいま議題となっております昭和六十二年度補正予算三案について反対の討論を行います。  補正予算案に反対する第一の理由は、補正予算案では所得税減税が見送られていることであります。  我々は、内需拡大を図るとともに、重税、不公平にあえぐ中堅サラリーマン層の税負担を軽減するために、二兆円規模の所得税減税の実施を主張してきました。しかし政府・自民党は、前国会で廃案になったマル優制度の事実上の廃止に固執し、これが実現できなければ緊急経済対策に掲げられた一兆円規模の減税すら実施できないという、かたくなな態度をとり続けているのであります。  マル優制度は、老後や病気への備え、住宅の取得等、庶民の自助努力に利用されており、この実情を無視して制度を廃止しようとするのはまさに弱い者いじめであり、財源あさりと言わざるを得ません。マル優制度等非課税貯蓄制度は、いわゆるグリーンカード復活により限度額管理を徹底して公正を期し、存続すべきであります。  私は、この際、六十二年度所得税減税については、速やかに六十一年度決算剰余金及びNTT株式売却収入を財源に二兆円規模で実施するよう要求するものであります。  第二の理由は、生活関連の公共投資が十分に確保されていない点であります。  補正予算案では一兆二千億円の一般公共事業が内需拡大の柱となっておりますが、五十六年度以来横はいないしマイナスに抑制されてきた経緯からいっても、規模は必ずしも十分とは言えません。その上、この公共事業は住宅、居住環境整備が中心となるべきであるにもかかわらず、公共事業の配分は従来とほとんど変わっていないのであります。特に重視しなければならない住宅対策費の配分比率は四・一%であり、下水道、環境衛生等の居住環境整備費を加えても、配分比率は二四・六%にとどまっているのであります。  なお、NTT株式の売却収入は、国民共通の資産であり、国民に還元する方法として公共事業財源に限定することなく、幅広い活用方法を検討すべきであります。  第三に、雇用対策、中小企業対策への配慮が不十分な点であります。  急激な円高の進行による雇用調整が進み、大量失業が深刻化してきました。この五月、完全失業率は三・二%、失業者数は約百九十一万人と、過去最悪となったのであります。しかしながら、政府の雇用対策は失業予防がほとんどであり、雇用機会の創出の面では十分とは言えない実情にあります。政府は、速やかに雇用の厳しい情勢を認識して、雇用機会の拡大のために地域主導の多角的な取り組みを行うべきであります。  また、中小企業の経営は次第に深刻化しつつありますが、金融、税制上の対策はもとより、下請代金支払遅延等防止法の強化、中小企業向け官公需の拡大等、実効ある対策が急務であります。  第四に、大型補正予算の編成が地方財政を圧迫している点であります。  六十二年度の補正予算の地方負担は約一兆二千億円で、六十一年度補正予算の二千五百三億円と比べると実に約四・八倍、地方単独事業分八千億円を加えると二兆円規模となっています。この地方負担については、全額を地方債発行で手当てするという従来の方式を改め、六十一年度決算剰余金などによる地方交付税の特別加算を行うべきであります。  最後に、防衛費の減額修正を十分に行っていない点であります。  我が党は予算委員会の質疑において、売上税負担分の不用額、円高益差分を減額することによって防衛費はGNP比一%の枠内に十分おさまることを示しました。防衛力増強政策の歯止めであり、我が国の平和政策の一つである防衛費のGNP比一%枠の突破は断じて容認できません。改めてその堅持を強く要求します。  以上、反対の主な理由を申し述べまして私の反対討論を終わります。(拍手)
  229. 砂田重民

    砂田委員長 吉田之久君。
  230. 吉田之久

    ○吉田委員 私は、民社党・民主連合を代表して、昭和六十二年度補正予算三案に反対の討論を行います。  その第一の理由は、この補正予算は今日の円高不況の克服、内需拡大の推進、対外貿易摩擦の解消などを実施するには甚だ不十分であることであります。  本来ならば、六十二年度当初予算そのものを積極型に編成すべきであって、従来、我が党はこのことを強く提唱してきたところでありますが、政府は耳をかさず、無為無策のマイナスシーリングを踏襲してまいりました。そして、総理が訪米した際、余りの激しい外圧に押されてか、慌てて方針を変更したものがこのたびの補正であって、これはまさに国会軽視の最たるものと言わざるを得ません。しかも、この補正予算案では政府公約の三・五%の経済成長達成は不可能であります。既に五月の失業率は三・二%と最悪の状態にありますし、また、我が国の経常収支、貿易収支はそれぞれ一千億ドルに達し、史上最高であります。とてもこの補正予算では対外摩擦の解消を図ることは不可能と言わざるを得ません。  反対する第二の理由は、経済危機に対処する哲学を欠いていることであります。  公共事業についても、昨年度補正後の予算と比較して事業別シェアはほとんど変わっておりません。公共事業の実施においては、用地費率が低い事業や住宅、下水道など、国民生活向上に資する事業を優先し、不況地域などの活性化を図るため、重点的、効率的配分を行うべきであります。また、この実施に当たっては、地方債の発行が既に限度に達している地方自治体の財政をこれ以上圧迫せざるよう、十分の配慮がなされなければなりません。  反対する第三の理由は、行財政改革が依然不徹底なものとなっていることであります。  膨大なる官僚機構に大なたを振るう抜本的改革を怠った中曽根内閣の責任は重大であります。積極財政への転換と財政再建はともに両立することを改めて確認し、断じて行革を前進させる決意を堅持すべきであると思います。  我が党は、二兆円規模の減税、事業費ベース六兆円の公共事業など、総額八兆円、国家による財政出動五兆円程度の内需拡大策を提唱しております。現在進められている与野党間での税制改革協議会で鋭意努力して、大幅減税の先行はぜひ実現されなければなりません。ここで問題なのは、既に先国会で廃案となったマル優法案を再び提出しようとする動きのあることでありますが、決して許容できるものではありません。  庶民の生活を守り、経済全般の活性化を図り、より近代的、快適な国土と生活環境を整えるため、そして世界と協調しながら確かな二十一世紀に向かって進む、誇り高き日本を築き上げるために、中曽根政治の最後を締めくくるべく期待された今回の補正予算が、その中身においで余りにも不十分なものであることは極めて遺憾でありますことを強く申し述べて、私の反対討論といたします。(拍手)
  231. 砂田重民

    砂田委員長 正森成二君。
  232. 正森成二

    ○正森委員 私は、日本共産党・革新共同を代表し、政府提出の昭和六十二年度補正予算案に対する反対討論を行います。  今回の補正予算に何よりも求められたものは、軍縮と平和、国民の暮らしと営業を守り、真の内需拡大の方向へ転換するしとでありました。ところが、政府が提出した本補正予算案は、このような国民の期待に何一つこたえようとはしなかったのであります。  以下、具体的に反対理由を述べます。  第一の理由は、売上税、マル優廃止による増税を補正予算でただの一円も削減せず、増税強行の執念をあらわにしていることであります。  国民の審判は既に明白であります。マル優廃止が不公平是正どころか、庶民への大増税、大金持ちへの大減税で不公平、不公正をますます拡大するものであることも明白となりました。にもかかわらず、あくまでも民意に挑戦しようとする政府態度は、主権在民、議会制民主主義の原則に照らして絶対に許されるものではありません。  総理並びに宮澤大蔵大臣が、税制改革協議会なるものを衆議院の正規の機関であるごとく強弁したことは重大であります。衆議院のどの機関でも設置を決めたことがなく、六百万有権者の声を代表する日本共産党を排除した一部党派間の密室協議は、私的協議機関以外の何ものでもないことを重ねて指摘しておきます。  第二の理由は、国民生活を守る対策を何一つとらない一方、日本とアメリカの巨大企業に対して徹頭徹尾奉仕するものになっていることであります。  国民の切実な願いである大幅所得減税はあいまいなまま先送りされ、失業防止、雇用確保は全く無策、円高緊急融資の利子の引き下げや返済期限の延長など、円高危機に苦しむ中小企業の血の叫びはことごとく無視されました。ところが、大企業に対しては、民活事業への五百八十億円に上る無利子融資、六億円の補助金など、優遇の上に優遇を重ねているのであります。公共投資の大幅拡大も、財政危機に苦しむ地方自治体にさらに巨額の負担を負わせ、肝心の不況地域には仕事が行かず、一部大企業だけを潤わせる結果になることは明らかであります。  スーパーコンピューターや政府専用機など、千四百五十億円に上る巨費を投じた緊急輸入に見られるアメリカ大企業への奉仕とむだ遣いも、まさにレーガン政権のための外需拡大ではありませんか。  第三の理由は、今まさに世界に広がる核兵器廃絶、平和、軍縮の世論に敵対し、レーガン核戦略に加担、協力するための巨額の軍事費を温存していることであります。このような態度が唯一の被爆国の総理として許されないものであることは言うまでもありません。  我が党が一貫して主張してきた軍事費一兆八千億円の削減は、平和への転換はもとより、増税を食いとめ国民生活を守る財源を生み出す上でも不可欠の課題であります。  中曽根内閣最後予算で「増税なき財政再建」なる看板までついに投げ捨て、「財政再建なき大増税」の方向を公然と打ち出したことは重大です。  日本共産党は、対米追随、軍拡最優先、財界奉仕の政治を根本的に改め、核兵器の廃絶、軍事費の大幅削減、三兆円の所得減税、国民生活防衛のために全力を挙げて奮闘する決意を表明し、反対討論を終わります。(拍手)
  233. 砂田重民

    砂田委員長 これにて討論は終局いたしました。     ―――――――――――――
  234. 砂田重民

    砂田委員長 これより採決に入ります。  昭和六十二年度一般会計補正予算(第1号)、昭和六十二年度特別会計補正予算(特第1号)、昭和六十二年度政府関係機関補正予算(機第1号)、以上三案を一括して採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  235. 砂田重民

    砂田委員長 起立多数。よって、三案は、いずれも原案のとおり可決すべきものと決しました。(拍手)  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました三案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  236. 砂田重民

    砂田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ―――――――――――――     〔報告書は附録に掲載〕     ―――――――――――――
  237. 砂田重民

    砂田委員長 本日は、これにて散会いたします。     午後二時四十二分散会