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1987-07-15 第109回国会 衆議院 予算委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十二年七月十五日(水曜日)     午前十時二分開議 出席委員   委員長 砂田 重民君    理事 今井  勇君 理事 野田  毅君    理事 浜田 幸一君 理事 林  義郎君    理事 吹田  愰君 理事 上田  哲君    理事 川俣健二郎君 理事 池田 克也君    理事 吉田 之久君       相沢 英之君    愛野興一郎君       伊藤宗一郎君    上村千一郎君       魚住 汎英君   小此木彦三郎君       小渕 恵三君    越智 通雄君       奥野 誠亮君    海部 俊樹君       片岡 清一君    片岡 武司君       亀井 善之君    小坂徳三郎君       左藤  恵君    斉藤斗志二君       桜井  新君    志賀  節君       田中 龍夫君    西岡 武夫君       福島 譲二君    細田 吉藏君       松田 九郎君    松野 幸泰君       武藤 嘉文君    村田敬次郎君       村山 達雄君    山下 元利君       井上 一成君    井上 普方君       加藤 万吉君    川崎 寛治君       菅  直人君    細谷 治嘉君       坂口  力君    冬柴 鉄三君       水谷  弘君    宮地 正介君       木下敬之助君    楢崎弥之助君       児玉 健次君    柴田 睦夫君       辻  第一君    藤原ひろ子君       正森 成二君  出席国務大臣         内閣総理大臣         通商産業大臣臨         時代理     中曽根康弘君         国 務 大 臣 金丸  信君         法 務 大 臣 遠藤  要君         外 務 大 臣 倉成  正君         大 蔵 大 臣 宮澤 喜一君         文 部 大 臣 塩川正十郎君         厚 生 大 臣 斎藤 十朗君         農林水産大臣  加藤 六月君         運 輸 大 臣 橋本龍太郎君         郵 政 大 臣 唐沢俊二郎君         労 働 大 臣 平井 卓志君         建 設 大 臣 天野 光晴君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     葉梨 信行君         国 務 大 臣         (内閣官房長官後藤田正晴君         国 務 大 臣         (総務庁長官) 山下 徳夫君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)         (沖縄開発庁長         官)         (国土庁長官) 綿貫 民輔君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 栗原 祐幸君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      近藤 鉄雄君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)     三ッ林弥太郎君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 稲村 利幸君  出席政府委員         内閣法制局長官 味村  治君         内閣法制局第一         部長      関   守君         総務庁行政管理         局長      佐々木晴夫君         青少年対策本部         次長      倉地 克次君         防衛庁参事官  瀬木 博基君         防衛庁参事官  古川 武温君         防衛庁参事官  児玉 良雄君         防衛庁参事官  筒井 良三君         防衛庁長官官房         長       依田 智治君         防衛庁防衛局長 西廣 整輝君         防衛庁教育訓練         局長      長谷川 宏君         防衛庁人事局長 松本 宗和君         防衛庁経理局長 日吉  章君         防衛庁装備局長 山本 雅司君         防衛施設庁長官 友藤 一隆君         防衛施設庁総務         部長      弘法堂 忠君         防衛施設庁施設         部長      鈴木  杲君         防衛施設庁建設         部長      田部井博文君         防衛施設庁労務         部長      山崎 博司君         経済企画庁調整         局長      横溝 雅夫君         経済企画庁国民         生活局長    海野 恒男君         経済企画庁総合         計画局長    星野 進保君         国土庁計画・調         整局長     長沢 哲夫君         国土庁土地局長 片桐 久雄君         国土庁大都市圏         整備局長    柳   晃君         法務省刑事局長 岡村 泰孝君         外務省北米局長 藤井 宏昭君         外務省中南米局         長       山口 達男君         外務省中近東ア         フリカ局長   恩田  宗君         外務省経済局長 渡辺 幸治君         外務省経済協力         局長      英  正道君         外務省条約局長 斉藤 邦彦君         外務省国際連合         局長      中平  立君         大蔵省主計局長 西垣  昭君         大蔵省主税局長 水野  勝君         大蔵省理財局長 足立 和基君         大蔵省証券局長 藤田 恒郎君         大蔵省銀行局長 平澤 貞昭君         大蔵省国際金融         局長      内海  孚君         国税庁次長         国税庁間税部長         事務取扱    日向  隆君         文部省初等中等         教育局長    西崎 清久君         文部省教育助成         局長      加戸 守行君         文部省高等教育         局長      阿部 充夫君         厚生省生活衛生         局長      北川 定謙君         厚生省薬務局長 森  幸男君         厚生省年金局長 水田  努君         農林水産大臣官         房長      甕   滋君         農林水産省経済         局長      眞木 秀郎君         農林水産省構造         改善局長    鴻巣 健治君         農林水産省農蚕         園芸局長    浜口 義曠君         食糧庁長官   後藤 康夫君         林野庁長官   田中 宏尚君         通商産業省貿易         局長      畠山  襄君         通商産業省産業         政策局長    杉山  弘君         通商産業省立地         公害局長    安楽 隆二君         通商産業省機械         情報産業局長  児玉 幸治君         資源エネルギー         庁長官     浜岡 平一君         中小企業庁長官 岩崎 八男君         運輸大臣官房国         有鉄道改革推進         総括審議官   林  淳司君         運輸省運輸政策         局長      塩田 澄夫君         運輸省国際運輸         ・観光局長   中村  徹君         運輸省地域交通         局長      熊代  健君         運輸省海上技術         安全局長    間野  忠君         運輸省航空局長 山田 隆英君         海上保安庁長官 粟林 貞一君         郵政省貯金局長 中村 泰三君         郵政省通信政策         局長      塩谷  稔君         労働大臣官房長 岡部 晃三君         労働省労働基準         局長      平賀 俊行君         労働省職業安定         局長      白井晋太郎君         労働省職業能力         開発局長    野見山眞之君         建設大臣官房長 高橋  進君         建設省建設経済         局長      牧野  徹君         建設省都市局長 北村廣太郎君         建設省住宅局長 片山 正夫君         自治大臣官房長 持永 堯民君         自治省財政局長 矢野浩一郎君         自治省税務局長 津田  正君  委員外出席者         参  考  人         (海外経済協力         基金総裁)   細見  卓君         参  考  人         (海外経済協力         基金理事)   加茂 文治君         予算委員会調査         室長      右田健次郎君     ――――――――――――― 委員の異動 七月十五日  辞任         補欠選任   宇野 宗佑君     片岡 武司君   小此木彦三郎君    亀井 善之君   小渕 恵三君     斉藤斗志二君   桜井  新君     松田 九郎君   原田  憲君     片岡 清一君   福島 譲二君     魚住 汎英君   石井 郁子君     藤原ひろ子君   岡崎万寿秀君     辻  第一君 同日  辞任        補欠選任   魚住 汎英君     福島 譲二君   片岡 清一君     原田  憲君   片岡 武司君     宇野 宗佑君   亀井 善之君     小此木彦三郎君   斉藤斗志二君     小渕 恵三君   松田 九郎君     桜井  新君   辻  第一君     柴田 睦夫君   藤原ひろ子君     児玉 健次君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件 参考人出頭要求に関する件 昭和六十二年度一般会計補正予算(第1号) 昭和六十二年度特別会計補正予算(特第1号) 昭和六十二年度政府関係機関補正予算(機第1 号)      ――――◇―――――
  2. 砂田重民

    砂田委員長 これより会議を開きます。  昭和六十二年度一般会計補正予算(第1号)、昭和六十二年度特別会計補正予算(特第1号)、昭和六十二年度政府関係機関補正予算(機第1号)、以上三案を一括して議題とし、質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。川俣健二郎君。
  3. 川俣健二郎

    川俣委員 専ら国内問題で、円高不況にあえぐ産業幾つかを取り上げ、特に非鉄金属、さらにひいては雇用問題、私たちは五十万人雇用創出プランというのを政府の方にお出ししておりますが、そして近く労働基準法審議されるだろうと思うのですが時間短縮の問題、それから農業林業、さらに加えて戦後処理、戦後四十数年になりましたが、まだ処理されていないたくさんの問題があるのですが、特にシベリア抑留者の問題で新たに惹起した問題がありますので、こういう通告をいたしております。しかし順番は、官房長官の十一時からの定例記者会見などもありますし、ちょっとやりくりします。  専ら国内問題でございますが、ただ一つだけ、きのう例のココムの問題で外務大臣が、初めてですが因果関係がある、何らかあるというお話がありましたのですが、これは終始一貫、今までうち川崎委員質問に対しても明確でない、こう言い張っておったのですが、余りにも食い違うので、きょうも大きく報道されておりますから、その辺を少し伺いたいと思います。  それから、これはどなたがいいのか、通産大臣のかわりは総理大臣だそうですが、きのう米国内で例の制裁措置法案が大多数で可決された。それによると東芝関係は、東芝機械にとどまらず関係会社含めて二年ですか、一切輸入は相ならぬ、こういうようなことを取り決めたというのですが、これに対する政府のお考えをちょっと聞かしていただいて、自分の質問に入りたいと思います。
  4. 倉成正

    倉成国務大臣 東芝機械の事件とソ連潜水艦静粛化因果関係については、米側より昨日も申しましたように種々説明を受けておりますが、その内容については事柄の性格上、答弁を差し控えたいと思います。  本件については、昨日も総理からも濃厚な嫌疑があると述べられましたけれども、私どもとしては、本件機械性能使用目的及びその他の情報から、一般的に判断すれば両者の間に一定の因果関係は存在し得ると考えられるが、具体的証拠を有しているものではございません。米側との間では、今後とも右に関する意見交換を続けていきたいと存ずる次第でございます。  いずれにせよ、本件については極めて高度の工作を行うことができ、潜水艦を含む海軍艦艇性能の向上に利用することができる本件工作機械が、我が国の法令に違反してソ連に不正輸出されたこと自体が、我が国を含む西側全体の安全保障上重大な問題と認識いたしている次第でございまして、一連の措置もかかる認識のもとに行っているものでございます。  なお、後段のアメリカ上下両院におけるこの問題に関するいろいろな法案につきましては、我我としましては、かような法案について先方に対してできるだけの理解を求めるべく最善の努力をしたいと思います。
  5. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 今外務大臣がお答えしたのは、政府内部で統一いたしました統一見解でございます。今のお話にもありますように相当な高度の機械が輸出されまして、その後のいろいろな変化等考えてみますと、因果関係に関する嫌疑は濃厚であると推定せざるを得ないのです。しかし、我々が具体的にそのもの自体を把握するとか、そういう意味現実的証拠を握っているわけではございません。今まだいろいろ調査検討は続行中でございます。そういう意味におきまして、ただいまのような御答弁を申し上げた次第であります。  しかし、いずれにせよ、アメリカ議会におきまして伝えられるような貿易法案が上院を通過するといたしますと極めて遺憾な事態で、我々は保護主義に対してはあくまで反対であり、またベネチアサミットにおきましても関係国首脳において保護主義と戦う、そういう共同の意思表示をしておるところでございますから、今後ともその線に沿ってアメリカの大統領以下行政府とも協力し合いながら、保護主義法案の成立に向かっては我々はこれに対して反対をしていく、そういう態度を今後とも努力して持続してまいるつもりでございます。
  6. 川俣健二郎

    川俣委員 保護主義とあくまで戦うということであれば、農業問題のときもそういう問題をとらえてやっていきたいと思うのです。  ところで、国内問題となるとどうしても――今の問題については区切りをつけたいのですが、この予算委員会は十七日までセットしておりますので、十七日までのセットを決めた翌々日に、今回の補正予算に最も関係のある通産大臣が不在である、渡米される、こういう趣旨は十分踏まえましたが、予算委員長以下理事会としては実は大変に苦慮いたしたわけです。しかし、いろいろと吟味いたしまして、それでは一巡したというところで、きのう急いで走ってもらったわけですが、この成り行きについて、刻々と情報が入ると思いますし、うちの方の同僚議員も十七日もございますので、このココムの問題はその成り行きを見ながらさらにただしていきたいなというような気持ちを持っておるのですが、私たくさん質問事項を持っておるものですから、この辺でやめたいと思います。  そこで、新行革審、昨夜からけさにかけて大きく報道されておりますが、きのうの夕刊で、これは朝日ですかな、いわゆる新行革審、正しくは臨時行政改革推進審議会大槻会長、この大槻会長が緊急に総理に会いまして緊急答申をしたい、こういうわけで報道されております。そこで、私もけさ急いでその内容を見せてもらったのですが、どうもこの流れは従来の行革審、いわゆる土光さんを長とする行革審、「増税なき財政再建」、むしろ財政再建に力点を置いた行革審、これが大きく変わったというか転換いたしまして、「今後の財政運営については経済情勢変化に応じて機動的に対応する必要がある」、したがって新聞の見出しも「財政出動緊急答申」、こういう見出してはっきりしておるように、大分今までの路線とは違ったものが出されたなと思っております。  もちろん、内需拡大を叫ばれておる今日ですから、我々が言う年金人件費公共事業農業林業雇用、こういったものは当然でありながら、けさのニュースによると、防衛費の増もこれにこだわらず考えるべきだというように報道されたが、この答申内容には防衛費がないみたいでございます。そういったものも触れながら、ひとつきのう直接お会いしました大槻会長総理との、いろいろなお話があったと思うのですが、その辺のことを聞かしていただきたいということと、では今後どういう心構えであるか、それから来年度の予算編成が間もなく来ておるわけですが、この辺のシーリングの問題等も含めて総理のお考えを示していただくとありがたいなと思っております。
  7. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 新行革審大槻会長以下ときのうお昼にお会いいたしまして、新しい緊急答申をいただきました。この忙しいときに、委員の皆さんが非常に精力的に御努力していただきまして答申をつくっていただいたことを、非常に感謝を申し上げた次第でございます。  内容は、行政改革の基本的な姿勢というものはそのまま堅持しつつ、現在の国際的な要請やあるいは国内内需拡大というものに対してこたえる、そういう必要性を認めておられます。しかし、やはり行政改革財政改革基本線というものは一貫して今後も堅持していくべきである、そしていろいろその間に出てくる緊急の必要に応じて、内需拡大、そういうような問題については弾力的に対応して結構だ、そういう趣旨の御内容であったと私考えております。  そういう意味におきまして、来年度の概算要求の作成につきましても、この答申を尊重しつつ作成していくべきであると考えております。大体今までの概算要求につきましては、一般行政経費について、その一部でございますがマイナス一〇%、それから公共事業費についてはマイナス五%の削減を昨年はやりましたけれども、この答申をいただきましてどういうふうに扱っていくか。今までの感じで申し上げますと、やはり一般行政経費というものは昨年同様厳しくこれを査定していく、答申の中にも昨年同様厳しくやる、そういう趣旨のことが書かれてございます。しかし、公共事業費あるいは社会資本の投下というような問題につきましては、これを弾力的に内需喚起等の必要に応じてこたえていく、そういうことでございますから、これは例外とすると書いてありまして、例外とする、そういう形でいくべきであろうと思います。  そのほか、予算編成のパターンで、一般行政経費の中にも枠外と認められているものが今まで幾つかございます。例えば、エネルギーであるとか国際関係であるとか年金でありましたか、そういうようなものは枠外として扱われておったわけでございますが、これらも恐らく同じような扱いを受けていくだろうと思いますが、大蔵大臣がどういうふうな御所見でこれに対処しますか、これは今後の問題でございます。  いずれにせよ、行政改革財政改革の理念及び今までやってきました考え方というものは基本線としてこれを堅持していく、そういう形で進んでまいりたいと考えております。
  8. 川俣健二郎

    川俣委員 そこで、大蔵大臣はどういう御所見でやっていかれるかという総理のあれもありましたのですが、今の補正予算二兆七百九十億、百四十円で換算しますと百四十八億ドルですか、ベネチアサミットでも国際公約してまいりました二本の柱が、大蔵大臣予算説明趣旨にもありました。それは、一つ内需拡大であり、一つ対外均衡是正である、こういうことでございましたが、問題は、感じは、この程度で果たして国際公約を初めとして国民が期待しておる円高不況対策雇用創出農林業等々、この日本列島を包む今の低迷しておる経済情勢に対し、内需拡大とさらに対外均衡是正というのが効果があるだろうかな、私はこう感じました。  そこで、さっきの総理お話もありましたが、問題は、大蔵大臣がこれから中心になりましてこの二兆何がしかの運営はもちろんですが、来年度の予算編成。さらについでながら伺いますが、この予算委員会として聞いておきたいのですが、二次補正もあり得ると考えていいことなんだろうか、こういうところも話してもらいたい。
  9. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいま川俣委員の御指摘になりました非常にすそ野の広い日本経済全体、雇用問題を含め、また、農業その他広い分野を含めましての展望を考えますと、一度の補正予算我が国国内の問題あるいは対外的な責務が遂行できるとは考えません。そういう努力は、今後とも継続をしていかなければならないわけでございますが、しかし、同時に財政再建という大きな仕事は道半ばである。そういうことから考えますと、明年度予算編成というものは、ただいま総理が御説明になられましたそういうラインでいかざるを得ないというふうに実は私も考えております。まだ詳細に検討いたしておりませんし、総理に御説明もいたしておりませんけれども、大筋で考えますと、やはりそういうことしかないのではないか、またそれでいいのではないかというふうに考えておりますので、そういう考えで将来を考えていくというふうにひとつ御理解をいただきたいと思います。  それから、二次補正についてのお尋ねがございました。実は財政演説でも申し上げたところでございますが、政府税制関係法案が前国会で廃案になり、税制改革協議会の御審議が進行しておりますので、このたびの補正税制改正歳出歳入については一切補正に触れなかったところでございます。したがいまして、今年度、これからの税制がどうなるかということが決まりました段階では、当然その関連補正をいたさなければならないということになると存じます。  ただいまの形は、理屈で申しますと、税制改正案廃案になりましたら、いわゆる現行税制がもとに戻ってくるというのが形式的な理屈でございますけれども、税制改革協議会ではいろいろなことを御検討中でございますから、やはりその御審議というものを見なければいけないというちょっと前例のない事態でございましたけれども、政府が先に立ちまして、これはああ、あれはああとこの補正で申すことは現実的でもないし適当でもないと考えましたので、その関連補正に触れておりません。したがいまして、その部分はいずれにしても年度内に触れなければならない、こういうふうに考えております。
  10. 川俣健二郎

    川俣委員 さらに雇用問題とか円高不況等を並べてありますが、やはり大蔵大臣の御意見次第だなというふうに感じますので、少し御意見をこれから聞かしていただきたいと思います。  宮澤大蔵大臣にこういうことを言うのは釈迦に説法だとは思いますが、私たちはこう思います。  内需拡大はいろいろな本にも書いてありますが、一時的な施策では効果がないんだ、息長くやるというか続けていかなければならない、こういうような、従来私の経験では余り見ない補正の二兆円というようなものは、これを頭に描きながら、長期的に息長くやっていく必要があるということを申し上げたいわけです。  それから一方、貿易摩擦で非常に問題を起こしておるわけですが、やはり輸出規制というか輸出自制、そして輸入増、こういう気構えてやる必要があるのじゃないか。これに対する政府の気構えが、私から見れば、余り輸出するんじゃないぞというような行政指導が弱く見える。したがって、そのはね返りが農産物その他にやってくる、こういうように思えるのだが、宮澤さん、どう思うのでしょうかね。  それから、もう一つ申し上げますと、これからだんだん雇用問題に入っていますから、やはり産業構造を転換するというか変革しなければならないんじゃないかなと思っています。単に労働省が、失業したからそれ訓練の費用をもっと出せ、訓練学校のセンターを整備しなさい、それから特定地域を決めなさい、労働省が後処理をするだけではとても追いついていかない。一時的にはできると思いますが、後で申し上げますが、日本は求人倍率は多い。求人倍率は多いんだが、失業率はもう三・二%、過去最悪である、こういうように総務庁が出しております。労働省は、単に求人倍率が、人を求める率が多いからというので就職が決まるわけじゃない。北海道から九州に渡らなければならない。JRの場合はあっちからこっちに回らなければならぬ。それから学校の問題等々あります。その辺が労働省としては非常に苦慮しておるわけですから、したがって、産業構造の転換をあわせてやらなければと、おたくの方は三十万人、うちの方は五十万人、雇用創出のプランをお互いに練っているわけですが、私は思います。  いわゆる輸出依存型の産業構造で日本の国は生きてきた。資源もない。したがって、向こうから資源を買ってきて、煙ぼうぼうに日本列島をして、公害をまき散らして、そして加工して付加価値を高めて輸出をしてきた。これが戦後の四十年。この構造から内需型産業構造というか、ある言い方をすれば、言い方というか、情報産業構造、これへの移行の促進というか、こういうものを図らないと、真の問題の解決にならないんじゃないだろうか。  こういうことを考えますと、例えば今回の二兆円に余る予算の中には、公共事業は非常に振る舞ってもらった。これは大変結構なことだと思います。これは建設大臣も強く均衡ある国土の開発ということでこういうことにもなったので、大変結構だと思います。ただ問題は、この二兆何がしに上る、そして地方負担等考えると五兆円、こういった公共事業の経済効果を一体はじいているのだろうか。すなわち、金が金を生むというか、そういったものはもう少し優先的にやる必要があるのじゃないかな、こういうような感じがします。いわゆる量と質。  それから、雇用問題一つ取り上げましても、公共事業は確かに東北、北海道、九州等の、いわゆる農業がこういうことになったので、ありていに言えば土方の働く場所は非常にふえる。だけれども、土方は土方きりなんだ。退職金もなければボーナスもあるわけじゃない。だから、そういう日雇い的な労働力のはけにはなるだろうが、雇用創出というのはそういうものじゃないのじゃないのかな、こういうように思いますので、その辺の御意見をぜひお願いしたい、こう思います。いかがでしょうか。
  11. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私の直接所管する問題でない点もございますので、それはそういうこととしてお聞き取りをいただきたいと思いますが、確かに我が国の輸出、殊に製造業の輸出が非常に多うございます結果、貿易の黒字が多くなる。そのツケを農業がしょっているのではないかという感情は農村に非常に多うございまして、私もそういうことをよく聞きます。が、この問題は一応二つの問題を分けて考えなければならないであろう。  農業の問題は農業自身の問題として政策を考えていくべきであろうというふうに思っておりますが、ただ、それならば、製造業の、工業の輸出自身に問題がないかと言えば、それは確かにないわけではない。殊に今、川俣委員が言われましたように、昭和五十五年から昭和六十年の間に急に我が国の輸出依存度が高くなっておるわけでございます。これは油が高くなるから何としてもまた輸出をしなければならない。当時円が非常に安うございましてドルが高いものですから、幾らでも輸出ができたというようなこともあって、大変に経済の輸出依存度が高くなってしまった。  これが今日の問題の近因であったと思うのでありますが、私は輸出というものをただ抑制すべきだと考えておりませんので、むしろ世界経済が拡大均衡していくべきだろうと思います。ただ、この昭和五十五年から六十年の間の輸出はいかにもシェア争いのような点もありましたし、コストの関係でどうだっただろうかといったようなそういう問題も含んでおりますので、その点は今後とも気をつけていくべき問題であろう、つまり公正な輸出というもの、集中豪雨的でない輸出というものを考えていくということは大事なことであろうと思います。  次に、このたびの補正予算の経済効果でございますが、これは直接には経済企画庁長官が言われますとおり、一年間のGNP効果はほぼ二%である、それから外貨効果は五十億ドルないし六十億ドルであるということで、それ自身は大したことではございません。したがいまして、これはこれから長い努力が必要であるということを意味すると思います。  次に、雇用の問題についてお話がございまして、それは私は御指摘はまことにごもっともだと思います。今の雇用統計を見ておりますと、毎月見えますことは、製造業の雇用は減っているのでございますけれども、建設業の雇用はふえておる。そういう形で有効求人倍率が維持されておるというような感じでございまして、直接に公共事業があるので建設業の雇用がふえるということは悪いことではございません。それ自身好ましいことと思いますが、むしろ経済対策の基本は、こういう補正予算を組むことによって国全体の経済が動き始めて、そして各面にわたって雇用情勢が、つまり有効求人が多くなる、そういうことをやはり目的とすべきものであろう。事業をやったから、いわば今おっしゃいましたように、農村の人が出て、それで土木工事をやって建設業の雇用がふえるというのは、それはいかにも直接的にはそうでございましょうけれども、そういうことだけがやはり経済政策の目的ではありませんで、国全体の有効求人というものがふえていく、こういうことでなければならない、こういうふうに思います。
  12. 川俣健二郎

    川俣委員 それで、もう少し気になるのは、今公共土木事業等がありましたが、何となくせっかくのこの大型の予算が、もちろん十分留意して政府はかかっていると伺っていますが、こうべらぼうに高くなった土地に、土地高騰にこの大型の補正予算が吸収されていくのではないだろうか、こういうようなところも気になるだけに、さらにもう少し伺っていきたいのです。  宮澤さんは余り方々で、自分の将来の展望なり有力なるニューリーダーとしての御意見を伺う機会がないのですが、それでも青森などへ行って非常に庶民性を発揮されたりしてお話ししております。したがって、記者会見で、あるいは宮澤総理――ごめんなさい、まだ早いですね、宮澤蔵相をこの新聞記者会見などで非常に興味を持って見ております。月末でしたか、ある新聞のじっくり記者会見をしたところで、しかし宮澤さんというのは、中曽根路線を継承する人だろうかどうかということで言われておるが、「宮澤さんは以前から「日本経済はもっと成長力があるはず」と発言してきたが、それが事実によって証明されたということだろうか。」こういうものに対して、宮澤さんは「この四、五年、日本経済は落第生だ、」こういうことから始まっておりますが、さらに「宮澤財政は、どんな経済社会を築こうというのか。」積極的に社会資本充実、地方の個性ある発展、こういうことで非常に期待しておりますのですが、「日本経済の輸出依存体質を改めるために、社会資本の充実を中心とした内需拡大を継続的にやらねばならない。」今一回じゃだめだ。一般会計だけで約六兆円ある公共事業費で、高速道路、住宅建設など従来やってきたものだけではなくて、それだけではカバーできない。そこで、例えば二千億の事業なら一千億ぐらいは無利子の金を投入し、こうしたことを四年間続ければ、生活に密着したインフラ、基盤整備ですね、インフラや町づくりがかなり進むのではないだろうか、こういうような抱負を聞かしてもらっておりますが、この辺とあわせて、一体中曽根路線を継承するということなのか。失敗、日本経済は落第生、こういうことであるのか、その辺を少し聞かしてくれませんか。
  13. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいま御引用くださいました中で、日本経済は落第生云々というのは、実はこういうことを申したのでございます。  ここのところ、日本経済の成長率というものは余り高くない。かつては高度成長をした国でありますけれども、昔のように戻れるとは思いませんが、いろいろな潜在力を考えれば、もう少し高い成長ができるのではないか。どうも学校で落第生、落第生だと言われているうちに、自分で落第生だと思っちゃうということはよくございますけれども、もう少し日本経済には潜在力があるはずだということを言おうとしたのであります。  それから、あとの事業費の半分ぐらいというのは、これはNTTの株式を今後いわゆる民活の仕事に使っていただきますときに、これは開発銀行等々を通じて無利子でお貸しするつもりなんでございますけれども、その場合に土地代金を別にしますと、大体事業費の半分ぐらいは無利子の融資ができる、こういうことを考えておりますので、そう申したわけでありまして、したがって、一般会計に計上されております公共事業のほかに、ただいま御審議をお願いしておりますこの法律を成立させていただきまして、社会資本整備勘定というものをNTT株の売却代金でやらしていただきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。  最後のところのお尋ねでございますけれども、やはり戦後、平和、自由、そして基本的人権というものがこれほど尊重され、確立してまいりましたが、中曽根首相におかれましても、憲法問題については非常に慎重な立場をとり続けられまして、戦後のそういう基本的な我々の先輩が残した大事なそのようなことを継続して、さらに高めていかれることは、また総理大臣が在任されております今日までの期間でもそれは明らかでございました。  そういう中で、これから我が国が将来に向かってすべきことは、やはり一つ社会資本の充実というようなことがございますし、またもう一つは、国際国家としての日本の進路、それを進んでいくということがございますが、そういうためには、戦後四十年間に行われてきたいろいろな制度あるいは慣行というものの中には、随分改められなければならないものがあって、またそれらについては、現に行政改革あるいは財政改革として、総理大臣が先頭に立ってそれに取り組んでこられたわけでございますから、これは今後の二十一世紀に向かっての我が国の進路を考えますと、さらに継続していくべきものである、私はそういうふうに考えまして、先般本会議でそういうふうに御答弁をいたしたわけであります。
  14. 川俣健二郎

    川俣委員 これ以上余り聞いていると、ちょっと時間がなくなる。  この新行革審は、臨時緊急ということでこの大型予算をつくったのか。  そこで、総理通産大臣の代行をおやりになるということですが、通産省はさきに社会経済活性化構想というのを発表されました。この社会経済活性化構想によれば、今回の円高構造調整は五年程度かかるとこの文章には書いてあります。活性化構想には歴然と書いてある。五年続けて積極拡大政策で初めて理想である四%成長ができるのだ、こういうことをうたっておるのですが、その辺、これは総理にあれですけれども。
  15. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 ただいま御引用の計画については政府委員から答弁させますが、やはり内需の喚起あるいは国際関係の摩擦の解消というような面を考えますと、一回ぽっきりでそれが済むというような情勢ではないと私は認識しております。したがいまして、内需喚起あるいは国際摩擦解消というものに関する措置は、それが解消するまである程度持続的に、そのめどがつくまである程度持続的に努力するということが大事であると思いますでありますから、来年度予算の編成に当たりましても、やはり社会資本公共事業という問題は重視いたしまして、ことしやっている補正関係の仕事は中断しないように、また成果をさらに大きく伸ばしていくように配慮してその部分へやっていくべきである、そう考えておる次第でございます。
  16. 川俣健二郎

    川俣委員 政府委員お話は、時間がなくなったので結構です。  そこで、雇用問題ですが、労働基準法の改正が近く審議されるということで、私たち意見を出しながら、あるいは労働四団体も出しておるわけですが、いよいよ労働基準法、戦後四十年、松岡駒吉でしたかね、労働大臣。この労働基準法というのは聖域というか、手をつけられなかった。代代の内閣は手をつけられない。野党は野党なりに、何となくこれに手をつけると不気味だった。憲法と言われるくらいのものです。いよいよこれにひとつ改正を出してみよう、こういうことでございました。  しかし、その中で週四十八時間労働、よくもやれたなというように感じますが、それは占領下で、マッカーサー司令部の大命令もこれあったからだ、こういうことでした。戦後四十年になって、もうぼつぼつ日本人の働き過ぎ、それからどこの国に比べても労働時間の長いことはおびただしい。そこでいよいよもって、国挙げて、政府挙げてこういうことを論議し、改革案を出そうとしておるのだろうが、ここに資料がありますが、今は三百人以上のあれはほとんど四十時間制なんだ。問題は中小零細だろうということですが、せっかく改革する改正案を出すのなら、四十時間をめどにする、四十時間を将来に持っているが、いつやるのか、やらなければどうするのか、行政指導はどうするのかということもはっきりしてない。ただ移行措置、それからその間の変則時間、こういったものをお互いに論議しているわけです、事務当局同士で。したがって、この機会に、この四十時間というのを出した以上は、中小零細等については強力なる行政指導をやるなり、あるいは助成制度をとるなりするにしても、三年なら三年というめどをつけてかかるべきではないだろうかな。  こうでもしなければ、せっかく戦後四十年の大改革をやろうという労働基準法の改正の審議は、これはおぼつかないだろうと思うのですが、その辺せっかく今改正案を出しているのに、ここにそういう三年めどなんということは言えないということかもしらぬが、今までずっと長年労働四団体ばかりじゃなくて、革新政党とおたくとやってきたことを労働大臣も十分知っておるから、その中身は言う時間はないのですが、ぽつぼつこの辺で何か言い方があろうと思うが、お聞かせ願えないだろうかと思います。
  17. 平井卓志

    ○平井国務大臣 労働時間短縮につきましては、もう御案内のとおり、内外ともに要請がございまして、どうしてもこの際長時間労働に対して切り込まなければいかぬということで、この点はどなたも御異論がないわけでございます。  ただ、今おっしゃいましたように、四十時間という問題についていつ踏み込むのか、三年なら三年等々のめどをつけたらどうかという御指摘でございますが、ただ、一つ二つ申し上げますと、本来的に非常に難しい面がございまして、一つにはこの労働基準法というのは罰則をもって全事業所に適用される法律でございまして、基本的には最低基準を明示して今後の法制時間のあるべき姿を示すということを原則にいたしております。  さらにまた、その時期の明示でございますが、御案内のように、中央労働基準審議会におきましていろいろ御議論ございましたけれども、その審議の過程で、四十時間制の実施時期を現時点では明確に見通すことは甚だ難しい。御案内のように、やはり時短の進んでおらない中小零細企業等に過大な負担をかけるのもいかがかなと。この点の応分の配慮をしなくちゃなりませんし、無論時間短縮というのは大変な政策課題でございますけれども、労働基準法の改正のみをもって行うことではございませんので、やはり公務員等々の時短の問題もございましょう。金融機関ひいては商店街等の御協力、そういうことで総合的に国民的なコンセンサスの中で、法制時間のみならず実労働時間も含めた実態をどう縮小していくか、やはりその実績の上に立って段階的にやるのが妥当ではないかなという考えでこのたび御提案申し上げております。この基準法改正案がお認めいただけましたら、公務員問題等々あわせて強力に推進すれば相当な時間短縮が図れるもの、かように私は考えております。
  18. 川俣健二郎

    川俣委員 三百人以上の事業規模を四十時間以内でやっているのは七二・二%、こういうことから伺いたいのですが、今、労働大臣の話を聞いていると、社会の趨勢それから動きそれから実態に後追いというか、合わせたような労働基準法の改正なんというのは、それは行政指導でできるのよ。終戦後四十年ぶりの労働基準法改正でしょう。あの残業二割五分つけたというのは、いろいろ論議があったが、二割五分も事業家に払わせるんなら残業させないであろうという配慮が非常に強く働いた。ところが、今は二割五分を欲しがって残業をしたがるというあれもあるんだよ。  そうじゃなくて、労働基準法という労働の憲法はやはりめど、ばちっと柱をつくっておいて、後でいろいろな問題があるだろうから、それは労働省がやることで、労働基準法というのは憲法だから。それは、やはりぼつぼつ四十時間制になった、週休二日制に入る時間ないけれども、週休二日制の時代に入ったということをばっとつくらなければだめですよ。だから、この予算委員会も随分理事会でやった。十一日も休もう、十八日も休む、土曜日はお互いに休む、これからは予算委員会は土曜日はないと思ってもらいたい。いや、それはそう、何ぼ日程がなくても。通常国会もそうですから。やはりそういうように、みんなでやっていこうという気構えがなければだめですよ。あなたもう少ししゃべってください。それだったら、局長か何かが行政指導をやっていこうという程度だよ。基準法をつくるのでしょう。大改正をやるんでしょう。歴代の時の人ですよ、あなた。何を言うのですか。
  19. 平井卓志

    ○平井国務大臣 でございますから本則に四十時間という画期的な踏み込みをいたしまして、ただあとは各党いろいろな御議論ございますけれども、段階的に実態を踏まえて時短を推進していくということが政府考えでございまして、決してなまぬるくやるということではございませんで、基準法はおっしゃるようにまさに労働問題の憲法でございますけれども、本来的に非常に重要な労働条件の柱でもございますし、本来なれば労使の間で自主的に十分にお話し合いいただくということが本筋でございましょうが、この十年間実態はほとんど進んでおらない。したがって、そういう内外の要請によって思い切って時短をやろうという中で、今おっしゃいましたようなまさしく憲法、本則では四十時間と明示いたしまして、後四十時間の実施に向けて進んでいく過程、その目標年次等が明確でないでないかという御指摘でございますけれども、やはりこの実態から離れていくということではなくて段階を追って、荷重がかからないように中小企業等への配慮もいたしながら、先ほども申し上げましたように基準法の改正のみをもって時短が国民の間でコンセンサスを得て十分に達成できると私考えておりませんが、基準法改正も一つの手段でございまして、公務員その他順次段階を追って総合的な政策を持って国民の間でコンセンサスを得るということが政府の方針でございますので、御理解を賜りたいと思うわけであります。
  20. 川俣健二郎

    川俣委員 法律というのは一つの示唆も含まっているのだから、七二・二%という今の実態でしょう、三百人以上は。それ以内なんだから。そういう時代になったからぼつぼつ四十時間制を法律にも一部うたっておこうかなということでは、この基準法の大改正は恐らく成立はおぼつかないですよ。これだけになったのだから、あとの残る二十何%の人力を行政指導なりあるいは助成その他でやっていくからまず法律をつくろう、こういう気構えがなければ、何のための四十年ぶりの基準法へのメスかね。これは恐らく成立は無理だろうと思うのです、言っておきますけれども。  それから、官房長官定例記者会見だから、ちょっと一つだけ。  戦後処理の問題です。これも四十数年になったのですが、官房長官がいなくなってからの時間になるが、新たな問題が今係争中でございまして、シベリア抑留者の問題ですね、これは何らかの補償をしようかなということを考えつつあるというふうに伺っておりますが、どういうことですか。
  21. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 川俣さん御案内のように、この戦後処理問題、これは昭和四十二年、例の引揚者に特別給付金が出たあの年ですが、ともかく戦後処理問題はこれで終結をしたのだ、こういったことで政府として方針を決めたわけでございますが、しかし国民の皆さん方の中から、また与野党の皆さん方の中から、まだまだたくさん問題が残っているじゃないかといったような極めて強い御要望があり、昭和五十六年に政府・与党の申し合わせの中で、この問題は四十二年に一応けりはついているけれども、こういった強い要求がある以上は政府としては何かの懇談会等つくって検討をしろ、こういうことが五十六年に決められて、官房長官のもとで戦後処理懇というものが御案内のようにできたわけです。その御協議の結果の御意見は、やはりこれ以上個別補償は適当でない、しかし慰謝の念を政府としてはあらわす意味合いにおいて基金制度を設けて意義のある事業をやったらしかるべきであろう、こういうことであったわけでございます。しかし、その後も予算の編成のたびのみならず、ときたま、やはりこれは個人補償すべきでないかといった強い要求が依然として残っておるわけでございます。  そこで昨年の暮れの予算編成の際に、そういった戦後処理懇の御意見はありますけれども、政府・与党の間で厳しい折衝が行われました。その結果、今戦後処理懇として言われておる問題の大きな項目は、一つシベリア抑留者の取り扱いの問題ですし、もう一つは恩欠の方々の問題、もう一つは引揚者の在外資産の補償の問題、あとやや性格は違いますが元日本軍の軍人軍属であった台湾人の皆さん方の問題、こういう問題があるわけでございますが、台湾の方の問題は別として、あとの三つの問題の中で、特にシベリアの抑留者の方については、あの酷寒の地で強制労働等にも服して本当に気の毒ではないかといったような御議論があり、あの当時新聞に出ておりますように、これは六十三年度から基金事業の一般の事業のほかに、特別の事業として慰謝の念をあらわす書状とかあるいは何らかの品物とか、それから同時に十万円の特別の慰労金とかといったようなものを出してしかるべし、こういう決定がございましたので、政府としてはその方針のもとに六十二年度の調査費を出し、六十三年度からその線で解決をして処理をしていこう、こういうことになっておるわけでございます。  これが政府・与党首脳の間の最後のぎりぎりの折衝でありましたが、率直に言いまして、この問題は気予算編成のたびになかなか厳しい論議があり、お互いに苦悩を重ねておりますし、また私自身の個人の心情としても苦渋の決断をいつも迫られておるというのがこの数年の経験でございますが、一応昨年の暮れのこの決定がございましたので、それによって処理させていただきたい、かように考えているわけでございます。
  22. 川俣健二郎

    川俣委員 もし時間があればどうぞ……。  今、戦後処理の話をいろいろ並べていただいたのですが、最後の三行か五行ぐらいの問題なんです。シベリア抑留だけの問題でこれからやるのですが、今何らやっていない。いわゆる英米の範囲内からの捕虜に対しては確かに賃金も払っておる、補償もしておる。ところがソ連の方から来ておる者はやっていない。そこで、間もなく裁判の結審が出るらしいのですが、今十万円ぐらい、こうなると、金となるとやはり関心を持たざるを得ない。五十万人のうち十何万死んで三十何万ぐらい、三十四、五万。ところが、今までずっと叫んできて亡くなっているわけですね。遺族がいるわけだ。遺族は、今の官房長官の言う十万円でも除外する、度外視する、こういうことですか。その点一つだけ。
  23. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 生存者のうち、恩給未受給者ということに限定をせられております。
  24. 川俣健二郎

    川俣委員 そうすると、生存者のみですね。もう亡くなった人は対象外ですね。恩給をもらっておって亡くなった人は終わりですね。
  25. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 今お答え申し上げましたとおりでございます。
  26. 川俣健二郎

    川俣委員 この問題は非常に尾を引くだろうし、大きな問題ですが、これが黄金律などを口にする中曽根内閣のやり方なんだろうか、今まで補償すべきだと叫んできたわけだから、それを今になって生存者に限る、遺族は一切やらない、これではとてもじゃないけど、中曽根内閣の姿勢というのはそういうものだろうかと思うのですが、問題は、外務省に伺いますが、ずっと私もこれを追跡してまいりまして、予算の分科会でございましたが、あえて今回、総括ですが、最終段階を迎えましたので申し上げますと、こういうことです。  捕虜に対する補償は一体どっちが払わなければならぬのか。ジュネーヴ条約が一九四九年でしたか、このジュネーヴ条約に日本の国も調印して、国会で承認を得た。これは鳩山内閣が日ソ共同宣言にうたっているように一切の個人的な権利でもお互いに放棄する、こういうことを日ソが共同宣言でやって、そしてジュネーヴ条約では、それぞれの帰っていった国、祖国ですね、ドイツ軍がイギリスに捕虜にされてドイツへ帰ったらドイツに、フランスでもそうです、イタリーでもしかり、そういうのを全部祖国、帰ってきた自分の国から補償を受けておるわけです。年金の形もあるし、一時金の形もあるし、慰労金の形もある。ただ日本の場合は、フランス語と英語でジュネーヴ条約ができておるようですが、「ザ・セット・パワー」の訳を当該国と訳さないで抑留国と訳したために、ソ連がそれを当然払うべきなんだ、こういうことで突っぱねてきた。ところが、いろいろと諸外国の実情を見ると、抑留国が支払うのではなくて、当該国、それぞれの国が払っているということの実態が明らかになって、関係団体が今訴訟を起こして間もなく結審である、こういうことになっております。  そこで安倍外務大臣が、一体その政府の見解はいつごろ出すのかということから、いや数カ月待ってくれ、しばらく待ってくれ、いかぬ、半年待ってくれ、半年とは六カ月かということで、去年の通常国会の際に、三月八日の予算を上げる際に、じゃあ今から六カ月後に結論を出すということで外務大臣答弁したことから、九月の上旬に、確かに訳は間違っておった、抑留国じゃなくて当該国であった、官報でこういう誤訳訂正を出した、こういういきさつでございます。  その辺は事実認定できますか。外務省、それでいいですか。
  27. 斉藤邦彦

    斉藤(邦)政府委員 捕虜の待遇に関する条約の第六十七条の訳文に関しまして、御指摘をいただきまして、昨年九月三日付の告示をもちまして、ほかの点もございますが、今まで抑留国と訳されていた部分を当該国と訂正したのはただいま御指摘のとおりでございます。
  28. 川俣健二郎

    川俣委員 そこで、それじゃ国会と政府との関係ですが、その当時は、解散したために、選挙があったために、条約を事後承諾で国会の承認を得ているという記録でございます。昭和二十八年の出来事、外務委員会でもかなり論議されております。  そこで、これは国会に対して何らかのアクションがあっていいのじゃないかな、単なる誤訳訂正の官報だけで一。体いいのかな、これが一つ。  それからもう一つは、抑留国が支払うのだという解釈でジュネーヴ条約ができ上がっておるから、したがって、日本はこれに補償する必要は一切ないということで通してきた。――官房長官、いいですよ。記者会見ならお出かけください。いいです、どうぞ。  それで、この抑留国から当該国に誤訳訂正だったということになると、単に「てにをは」を直すということだけでは事片づかないのじゃないかな、抑留国が払うべきと思っておったら当該国が払うべきだということになると一体これはどうなるのだろうかな、こういうように思うのですが、官房長官いなくなったので、まず外務省からその辺は聞こうか。
  29. 斉藤邦彦

    斉藤(邦)政府委員 御質問の第一点の方の、条約の訳文の訂正を告示だけでやったのが適当かどうかという点につきましては、昨年の十月にも川俣委員外務大臣の間での質疑が行われて政府の見解をお答えしておりますが、条約の締結は正文に基づいて行われるものでございまして、正文テキストが表現している条約の内容我が国が拘束されるという性格を持っております。それで、この昨年行いました訳文の一部の訂正は、日本語テキストについてそれを正文に即した表現に改めるということでございまして、条約の内容自体には何ら変更があるわけではございません。この訳語の訂正というのはこのような性質のものでございますので、政府といたしましては、条約の締結事務を所掌しております外務省の告示という形でその内容を広く国民に知らせることが妥当であると考えまして、そのような措置をとった次第でございます。  それから第二点の、訳語の訂正が補償問題にどういう影響を及ぼすかという点でございますが、この点については二点申し上げさせていただきたいと思います。  第一点は、この捕虜の待遇に関する条約は一九四九年に作成されておりまして、日ソ間でこれが適用されるようになりましたのが一九五四年でございます。昭和二十九年でございます。したがいまして、この条約が第二次大戦を契機として起こっておりますいろいろな問題にそのまま適用されると考えることには無理があるのではないかと考えております。  それからもう一点は、この訂正を行いました第六十七条の趣旨は、抑留国または所属国が行いました支払いを最終的に敵対行為が終了した後に関係国の間で取り決めをつくって清算しなさいという規定でございまして、いずれの国が補償責任を負うかという問題とは関係がない規定でございます。  したがいまして、この訳文の訂正というのは、いずれの国が補償責任を負うかという問題とは関係がないというふうに我々は考えている次第でございます。
  30. 川俣健二郎

    川俣委員 無理があるというのは、そのように解釈する方が無理があるのだと思いますよ。どなたが考えても抑留国が支払うのだということで今まで通してきたわけですよ。ところが、「抑留国」の訳を「当該国」に訂正せざるを得ないということになった以上は、補償も抑留国じゃないんだ。そうでしょう、当該国日本が払うんだという問題は当然出てくるんじゃないの。これはあなたに聞くのが適当かどうかわからぬけれども、そうじゃないですか。どなたが聞いてもそうだと思いますよ。これは時間がないからまた日を改めて言いますけれども、当該国という「ザ・セット・パワー」を抑留国に誤訳しておった。大変な誤訳ですね、外務省は。大変な誤訳なんだ。相手が払うべきだというジュネーヴ条約だと思ったら、そうじゃないんだ、自分の国で払うんだということを、諸外国もそれに倣ってやっておったし日本もやらざるを得なくなって、しかし二十八年以来ずっとなって今日係争中で、じゃ結審がつくまで待っていようかという程度ですかな、その辺なんだよ。まあいいよ、時間がないからよろしい。  後先になって申しわけありません。先ほど円高不況であえいでいる一つの例として、この金属鉱業のものをちょっと政府のメモを配ってみましたが、一つ取り上げてもこのように変わってきたわけです。例えば、一番上のカッパーを例に出しておりますが、五十九年度のカッパーはトン当たり三十七万八千円、これがこの六月には二十六万七千円になった。これは二つ要素がありまして、一つはロンドンでポンドで決められる国際相場、LMEで決められる国際相場の建て値。もう一つ大きな要因は、全部ドル建てなものですから、二百四十五円のドルが六月現在で百四十六円、今現在百五十円前後でございますが、こういう状態になったのが全部もろに売上高にかぶってくる。売上高もこのしうにどんどん四分の一以下になった。鉱山数も二十一あったのが三分の一になった。こうやってしゃべっている間に、情報によると七鉱山が、福井県の中竜という鉱山ですが、福田一さんのところの選挙区でございますが、六つになるわけです。一つ今度また閉山の憂き目になる。従業員も八千人から二千五百人、こういうようになっていく。  これは雇用創出の問題にもなるので、後に労働省から二言だけこれにどういう手だてがあるかということを聞きますが、こういうのは宮澤さん、やはりメタルマイニング、金属鉱山というのは輸出してもうけている産業じゃないのですよ。輸入なんです、国内資源がないものだから。したがって、輸入なんだからドルが下がるともうかるじゃないか、向こうで買ってくるんだから下がるんじゃないかというけれども、そうじゃなくて、でき上がったものも全部ドル建てなものだから、したがって、十分御承知のように、コスト、人件費とか物財費は円ですから変わらない。そうすると、買ってくるものは安いものかもしれないけれども、それを単にもちつき屋のように委託加工じゃなくて、一たん買い取って加工するものですから、そして売らなければならないものだから、したがってパイが小さくなる。パイが小さくなったものの固定費、コストは大きく構成されるものですから、とてもじゃないけれども、相手から買ってくるんだからいいじゃないかという考え方もあるかもしらぬけれども、同時にこのように円高不況にあえいで、倒産した方から言わせればこれは政治的な人災だと言いたいんですが、こういうような状態をいま少し考えてくれるべきじゃないか。一切この二兆何がしにはない。一文もない。  しかも僕が力説したいのは、メタルマイニングというのは輸出産業じゃなくて輸入に貢献する産業だ。それからもう一つは、国内資源を開発するという大変な使命を持っているんだ。しかもあの採掘、製錬というのは、物の本にはなかなか書けないいわゆる伝わっていく技術が非常にある、坑内で掘っているという状態。したがって、鉱山というのはやめてしまうとそれが続かない、ふたをしてしまうとなかなかそれをもう一遍取り明けしてみようといったって無理なんです。そういうところを考えると、いま少し、二兆何がしあったんならと。  そこで労使が、労はもちろんですが、価格差補給金制度を検討してみてくれぬか、いわゆるある程度までの価格になったらお返しするので、それまでは半分でも三分の一でも見てやってくれ、こういう手厚い通産行政が必要なんじゃないか、こういう叫びをしておったんだが、一文もない。どう宮澤さんお答えしますか。
  31. 浜岡平一

    ○浜岡政府委員 事実関係を御報告申し上げますが、非鉄金属は御高承のとおり典型的な国際商品でございまして、ただいま先生が御指摘のような状況でございます。まさに円高不況にあえいでいるわけでございます。  私どもこの状況にいかに対応するかということで、六十一年度予算、さらにはその補正、それから六十二年度予算というような過程におきまして、財政当局とも御相談をいたしながら、金属鉱業経営安定化融資制度というものを充実いたしてまいりました。御承知のとおり、現在融資金利一%、五年間という、融資制度といたしましてはまず格段の水準のレベルのものを用意いたしているわけでございます。また、融資額につきましては、六十二年度約百七十億が可能な手当てがいたしてあるわけでございます。この利子補給額につきましては、六十一年度からの繰り越しもございますものですから、今回の補正予算では特に手当てをいたしませんでした。  ただ、今回の補正予算の論議の過程におきまして、融資の運用面での充実ということに十分議論をしていただいたわけでございまして、融資要件、融資対象等につきまして要件の見直しを行ったわけでございます。そういったことで、今後とも努力をしてまいりたいと思っております。
  32. 川俣健二郎

    川俣委員 二兆何がしには入ってないんでしょう。
  33. 浜岡平一

    ○浜岡政府委員 はい、入っておりません。
  34. 川俣健二郎

    川俣委員 それを聞いたんだ。いわゆる二兆七百九十億には一文も入ってないという論議でございますので、融資するなんていったって、とてもじゃないけど、借りる力もないのに融資も何もきかないのでございます。さらに二次補正もあるようでございますので、さらに考えていただきたいと存じます。  それから、時間がなくなってしまいましたが、さっき総理保護主義と戦う、こういうことでございましたが、一体総理、日本の農業というのは過保護でしょうか。過保護論というのはずっと長年やられてきたんですけれども、過保護だろうか。
  35. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 その国その国にみんな農業関係については事情がありまして、今回のベネチアサミットにおきましても、食糧の安定的供給とか、あるいはその国情に合う弾力的施策であるとかそういう面、あるいは環境問題に対応するやり方とか、そういうことも各国で合意をした声明に出したわけでございます。  日本の状況については、食管制度という大きな太い動脈が通っておりまして、そのもとに生産性を上げるように今まで努力をしてまいりました。外国との間でいろいろ論争がありまして、いろいろ統計の基準のとり方について論争が分かれております。この点については農林省の専門官から御答弁させます。
  36. 川俣健二郎

    川俣委員 時間がありませんから……。  それからもう一つ、後先になりましたが、労働省から、さっきの非鉄に対する手だてをちょっと聞かせてくれませんか。
  37. 平井卓志

    ○平井国務大臣 今御指摘ございましたように、この関係では、六十一年度において、特定不況業種離職者求職手帳、この発給数だけで二千人を超えておりますので、雇用情勢は大変厳しい。そういうことで、非鉄金属鉱業及び銅、鉛、亜鉛第一次製錬、精製業等を特定不況業種・雇用安定法の特定不況業種に指定をいたしております。また、非鉄金属の集積している地域を地域雇用開発等促進法の特定雇用開発促進地域、また緊急雇用安定地域に指定をいたしております。  さらに、今後の問題でございますが、特定不況業種にかかわる非鉄金属鉱業の指定期間が本年八月十五日で満了するということでございますが、労働省といたしましては、国産業の業況、設備廃棄計画等の状況等を勘案いたしまして、その指定期間の延長等必要な措置を実施してまいりたい。現在その指定期間を延長する方向で業界団体へのヒアリングを実施いたしておるところであります。
  38. 川俣健二郎

    川俣委員 二兆七百九十億円には一文も入ってない非鉄金属鉱山ですが、やはり今のようなせめてもの労働省の前向きの労働行政でつないでいかない限りにおいてはというように思っておりますが、さらに一層この点については提示しておきたいと思います。それから、皆さんにもう一枚見ていただきたいのですが、これはあちらこちらから資料を集めて私がつくってみたのです。諸外国の農業関係予算といわゆる助成金を出している一覧表をつくろうとしてやってみました。一番下の方の欄に、農業総産出額に対する農業予算額、これを出しております。それから上の方は、一体どの程度の所得支持費、いわゆる補助しているだろうか、こういうのを調べてみました。もちろん農林省に一番に伺ったところでございますが、ほかの官庁にも聞きながら資料を集めてつくってみました。まず、この説明に入る前に、この資料の信憑性というか、農林省、これはどうですか、大体いいですか。
  39. 眞木秀郎

    ○眞木政府委員 ただいまの、御質問のございました各国の予算額、あるいはその中に含まれます価格・所得支持費等につきましては、各国の制度等と、非常に複雑で相違をしておりますので、必ずしも正確な比較というものが難しいわけでございますけれども、ただいま御引用ございました米国、EC、日本の、農務省の予算額等につきましてのこの数字は、農林水産省におきましてできるだけ正確にということで調べたものでございます。ただ、これは必ずしも正確に反映しているかどうかについてはさらに検討する必要があろうかと思いますが、大体のところこういうところであろう、このように考えます。
  40. 川俣健二郎

    川俣委員 大体お墨つきをいただいたので。問題は、諸外国はいろいろ実情があろうかということよりも、一九八〇年を起点にしてどのように保護貿易の、貿易摩擦の問題をやっておる今日までの動きがどうなっているだろうかということを皆さんに見ていただきたいと思いましたのがこれです。  それで、例えばアメリカの一九八〇年の農務省の予算が一〇〇に対して、八六年に至るまでのあれはそんなにふえていない。ふえていないというのは、いわゆる農業の助成金、助成金が所得支持費ですが、一九八〇年を一〇〇としますと、一九八六年は九五六、約十倍の助成金である、こういうことです。それからECの方を見ますと、一〇〇に対して、特に一九八五年あたりからぐっぐっと伸びてきたのですが、一九八六年には全く助成金が二倍になった、こういうことです。それから日本の場合は、農業関係の予算も一七%減ったが、それよりもひどいのは補助金、助成金、所得支持費が一〇〇に対して六三になってしまった、こういうことでございます。  私は、総理、過保護というのはずっと前から農林大臣とここで論議してきたのですが、国から助成、保護してもらって補助金をもらってつくった生産物をアメリカ初め諸外国に売りに行ってもうけているというんなら、過保護でアメリカ並びにECからとやかく言われると思うが、そうじゃなくて、一億二千万人が食べるこの食糧をつくるのに助成しているのが何で過保護と言わにゃならぬだろうか、こういうように思うのですよ。この数字から見ますと、やはりこの辺はもう少し、さっき総理保護主義と戦うということの反論で、私もそう思います。やはりアメリカの方が日本は農産物を買えと言うことは、アメリカの方の保護なんですよ。農業保護なんです。アメリカ農業を保護するために余った農産物を買っていけ、こういうことと同じように、日本の場合もそれはやはり拒否してかかるべきではないだろうかな、こういうように思います。その辺の所見一つ。  それから、この間、米価が三十一年ぶりで引き下げられました、五・九五%。自民党の農業関係者で承認されたということで諮問された五・九五%、政府案どおり引き下げられた、こういうことでございますが、さあ、それでは一体それに追い打ちをかけるように農産物が入ってくるだろうか、輸入されるだろうか。いや、そんなことはない、こういうことを記者会見で何回も政府当局も言っておるのですが、その辺の関係を、せっかくだから農林大臣にまず意見を伺って、総理に最後に伺いたいと思います。
  41. 加藤六月

    加藤国務大臣 ただいま川俣委員のお配りになりましたこの数字、資料、実は我々も国際的にはこのことを主張しておるわけであります。特に日本の農業の過保護という問題が議論になるときは、一九七九年から八〇年の時点の数字を挙げて、例えばOECDにおけるPSEの数字というのはここら辺をとってきておるわけであります。とんでもない間違いであるということ。そして今日、世界において一番問題になるのは、輸出する目的で農産物をつくっておる国々の間の競争、それが問題であって、農産物を輸入しておる国の問題ではないということが一つの基本的な考え方でございます。したがいまして、一九八六年ないし八七年の数字をPSEの方式で出していくならば、日本は言われておるような過保護ではないということをはっきり言っておるのが第一点でございます。     。  ただ、この数字にもう少し勉強していただいておくならば、農家二戸当たりの価格・所得支持費がどうなっておるか、あるいは農地面積一ヘクタール当たりの価格・所得支持費がどうなっておるかというのを出していただきますと、さらに詳しい数字が出てくるんではないかと思います。したがいまして、今後国際的に問題になるのは、こういう価格・所得支持費をつぎ込んで超激烈な輸出競争をしている国と国との間が問題になる。そしてそれがまた、ある面では開発途上国の中でもそういう一次産品農産物を輸出しておる国の打撃が大きいということ。そしてもう一つは、同じ開発途上国でも食糧を輸入し、飢餓に苦しんでおる国があるということ。ここら辺を国際国家日本として今後どうリードしていくかという問題があるわけでございます。  それから我々は、したがいましてもう農業というものの我が国における重要性、それは先ほど来おっしゃっておられます良好な国土、自然環境の保全等々に重要な役割を果たしておるということも諸外国に十分に説明し、納得さしていく。そして、国際的にはそういう線を通じながら協調し、協力していくという基本姿勢を持っていくことが大切であると考えております。
  42. 川俣健二郎

    川俣委員 私は、汗を流してつくった数字の信憑性を裏づけしてくれましたのでよかったのですが、ただ一口当たりとか一ヘクタール当たりになると今度は農業政策じゃなくて農民政策なんですよ。日本は農民政策は何もないわけだから、農業政策だけはあるけれども。その問題は日を改めて論議しますが、ひとつ今の問題を総理、どう思われますか、この数字を見られて。今後どういうように対処していくか。輸入には断固拒否するか、その辺。
  43. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 今農林大臣がお答えしたとおりであると思います。  これはOECDあるいはサミットの場におきましてもいろいろ論争したところでございますが、要するに、輸出で競争し合っている国々のとばっちりを日本が受けるのはたまらぬ、日本は膨大な輸入をしておる国であって輸出競争をしている国とは違う。それはもう基本的に違うポイントであります。  ただ、先方が言うのは、そういう補助金の問題だけじゃなくて市場アクセスの問題を言うわけでございます。そこで、今十二品目についてガットで争っているとか、あるいは近くまた来年の四月までの間に牛肉、オレンジの交渉をやらなければいかぬとか、そういうような問題は別のアクセスの問題として出てきている。しかし、補助金に関する問題については日本の主張は正当であると私は確信しております。
  44. 川俣健二郎

    川俣委員 林業問題はやれないでしまいましたけれども、これで終わります。
  45. 砂田重民

    砂田委員長 これにて川俣君の質疑は終了いたしました。  次に、宮地正介君。
  46. 宮地正介

    ○宮地委員 最初に中曽根総理大臣に、総理として今国会が恐らく最後の予算委員会になるのではないか、こういう感じがするわけでございますので、中曽根内閣が誕生いたしましてからこの四年八カ月を振り返りまして、最初に「戦後政治の総決算」の問題についてお伺いをしてまいりたいと思います。  率直に言いまして、歴代の総理大臣の中で中曽根総理ほど大変な語録を残された総理大臣はいないのではないかと思っております。第一次中曽根内閣が発足いたしまして、一九八三年の一月二十四日に施政方針演説の中で、戦後総決算に向け、タブーに挑戦をしよう、こういうくだりの中で、「私は、日本が、戦後史の大きな転換点に立っていることをひしひしと感じます。いまこそ、戦前戦後の歴史の中から、後の世代のために何を残し、何を改むべきか、そしてわれわれはどこに向かって進むべきかを真剣に学び取り、新しい前進のための指針とすべきである」「このような時代の激変に対応して、われわれは、従来の基本的な制度や仕組み等についても、タブーを設けることなく、新しい目で素直に見直すべきであると思います。」いわゆる戦後政治総決算論を公式に初めて明らかにした発言でございます。ここで総理がお考えになっておりましたところのタブーとは果たして何であったのか、この点について最初にお伺いしたいと思います。
  47. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 例えば端点に申し上げれば、国鉄の民有・分割というようなこと、これは恐らく民有・分割ができると考えていた人は十年前には一人もいなかったと思います。しかし、昔さんの御筋力をいただきまして、民有・分割を実現いたしました。あるいはそのほか、健保の問題にしても年金の改革にいたしましても、なかなか手をつけなかった問題でございます。つまり、社会福祉制度に関する制度的改革という問題は、いわばタブーのようにも考えられておったわけでございます。  あるいはさらに国際関係におきましても、日本が国際政治の中で政治的発言権を持ちながら前進していくというようなことは余り考えられていなかった。いわゆる経済国家という枠内にとどまって、そして割合にひそやかに息づいていたという感じがしておった。そういう関係でエコノミックアニマルというような批判を非常に浴びました。そういう中に、国際政治の中でも日本が正当な政治的役割を負う、世界的役割もあえて辞さない、そういうことで前進してきたと思います。そういうような点が数えられるのではないかと思います。
  48. 宮地正介

    ○宮地委員 私たちも、最近の歴代の総理大臣一つの大きな成果として、佐藤元総理大臣といえば沖縄の返還、田中角榮総理大臣といえば日中国交回復、中曽根総理大臣といえば今お話しのように国鉄、専売、電電の民営化、この改革を断行した、こういう点は確かに評価ができるのではないか。また、一つの外交的な特徴としては、ロン・ヤス関係、これは歴代の内閣の中では余り聞かれなかった言葉でございます。  総理はこの関係につきましても、ロンはピッチャー、ヤスはキャッチャーだ。レーガン大統領が野球の投手なら私はキャッチャーになりたい。投手がどんどんサインを送ってくれればこちらも協力を惜しまない。でも、時にはキャッチャーのサインを聞いてくれないと試合は勝てない。これは八三年五月二十八日のウィリアムズバーグ・サミットの前の日米首脳会談における発言内容であります。確かに外交問題においては、アメリカ一つの基軸として、ロン・ヤス関係ということで大変御苦労されたと思います。  しかし、日ソ問題については、ゴルバチョフ書記長が日本に来日をされておらぬ。また、最近の日中関係においては、光華寮問題を初め大変きしみが出ているような感じがしてならない。また、後ほど触れますが、これだけのロン・ヤス関係がありながら、最近はジャパン・バッシングといういわゆる日本袋だたき論的なものがアメリカ議会から強烈に出てきておるわけであります。そうなりますと、総理のとってきた外交路線というのは、どこに政治の基本理念、思想があったのかな、こういう感じがするわけでございますが、その点についてのお考えを伺っておきたいと思います。
  49. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 基本的に考えますと、昭和以来、特に昭和十年代以来日本が国際的に孤立いたしまして、そしてあの大戦への悲劇へ突入した。どこに原因があるか。考えてみれば、明治以来の日本の体質というものもありましょうし、あるいは昭和十年前後あるいは大恐慌前後からのいろいろ社会的要因もございましょう。そういうようないろいろな面も反省もしてみて、そして戦後の新しい、更生日本が前進をした。  しかし、したについてはそういう本当の深い反省のもとに出てきているかどうか、あるいは新しい世界がどういうふうに進む世界であるかということを明確に認識してそっちへ前進したかどうか、そういう点は為政者として真剣に考えなければならぬところであったと思うのです。私は私なりに考えまして、そして日本の行くべき方向というものをその機会その機会を通じて国民の皆さんにお訴え申し上げたと考えております。
  50. 宮地正介

    ○宮地委員 さらに、特に防衛問題、これにつきましても中曽根総理は、語録の中をたどってみましても、いろいろとやはり話題を投げかけた総理大臣ではないか。特に日本は盾で米国はやりである。シーレーン防衛は米国との国家分業だというのは努力目標で言ったことであり、当たらずといえども遠からずだ。日本は盾、米国はやり。周辺一千海里防衛とはコンパスを回して全部守るのではない。航路帯を設けると限定した場合、千海里程度を目標としている。日本の防衛は日本が自主的にすべて決める。米国から頼まれたからやるというものではない。これは八四年二月十七日の当衆議院予算委員会の発言でございます。  特にさらに、中曽根語録としては日米運命共同体あるいは不沈空母、総理の話録というものも、過去の歴代の総理大臣には見られない大変強烈な防衛問題においては語録が残っております。特に「一%枠突破へ「王道進む」」これまた八五年度の予算審議で首相は、防衛費一%枠を今後も守りたいという発言、その約束。そして「ところが半年後には「国民理解してくれると思う。それを逃げてはいけない。素直に国家の現状、防衛の現状というものを国民に披瀝して、国民の判断を仰ぎつつ、計画を進めていきたい。堂々と王道を踏んで、勇気を持って進む」」これは七月二十七日、あの有名な軽井沢セミナーの発言であります。  特に中曽根総理防衛庁長官などの経験をし、着きころは憲法の大変な改憲論者であった。特にマッカーサーのいわゆる押しつけ憲法には大変な抵抗を示した総理として、防衛問題については大変な発言が続いておりまして、結論的に、おやめになる最後の予算編成の中で一%突破をしてしまった。これは、これからの将来において、私たち日本国がやはり世界唯一の被爆国として世界の平和のオピニオンリーダーとしていく上において、私は大変に大きな遺憾な問題ではないか。立場を異にしておりますから、お考えが違うと思いますが、特にこの防衛問題についての総理の当初のこうした御意見、そして今総理が最後の国会において一%を突破、確かに一・〇〇三ということで、数字の上では大した問題ではない、こういう言い方もありますが、ともかく一%突破をさせようという執念がこの四年八カ月の間に総理の底流に一貫してあったのではないか、こんな感じをしておるわけですが、この点についての御見解、御所見をお伺いしたいと思います。
  51. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 一%を突破させようという執念があったということは間違いで、そういうことはありません。結果的に一%突破という現象が出てきた、そういうことであります。
  52. 宮地正介

    ○宮地委員 そういう点についてはまだ議論が違うところでございまして、私は総理のとられてきた防衛問題の底流に流れている思想というものは大変強烈なものであった、こんな感じがしているわけであります。  また、特に内政問題におきまして、経済財政問題については総理は「増税なき財政再建」、これをにしきの御旗にしてこの四年八カ月やってまいりました。しかし、売上税に見られるように、いわゆる増減税とんとんという考えでありましたが、明らかにあれは増税路線、これは国民の方々の今回のああした世論の動向、力というものを見れば明らかでございまして、この「増税なき財政再建論」というものについても、総理の当初の考え方が非常に変化をしてきたのではないか。  特に財政問題については、緊縮財政を当初とられた。しかし、結果的には今回の補正予算等に見られるように、総理が最後の段階で積極財政に転換をしたと見られるような予算編成をしてこられた。また、私は大蔵委員会でも総理に御質問させていただきましたが、福田総理昭和四十年代に建設国債を発行、そして五十年代になって新たに特例公債の発行、総理の代になりましていわゆる借換債の発行、そしてその借換債にまで六十年償還ルールを適用する。将来に大きな借金を残すという大変なルールをつくられた。私は、経済、財政については、総理のそうした対応については若干意見を異にすると同時に、疑問を持っているわけでございます。そういう点について、総理は一貫して自分の経済財政運営は変わらなかった、あるいはやはり経済環境の変化によって変えざるを得なかった、この点についての御意見を伺っておきたいと思います。
  53. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私は変わってなかったと思います。要するに、行政改革あるいは財政改革基本線を貫いてきたし、今も貫いておると思っています。新行革審のきのういただいた答申にいたしましても、やはりその基本線は貫いていくべきである、そういうことは明示されております。     〔委員長退席、今井委員長代理着席〕 ただ、応用問題として、事態の状況に応じて臨時緊急の措置としてとるべき措置は思い切ってとりなさい、そういう意味で今回そういう措置をとらせていただいた。そういう意味においては、やはり行財政改革基本線として厳然としてあるという点においては変わっておりません。応用問題処理という意味において今回の処置は行われた、このように御理解願えれば結構でございます。
  54. 宮地正介

    ○宮地委員 そうした四年八カ月の特に外交、防衛、財政経済運営の中で、今我が国は、先ほど申し上げましたようないわゆるジャパン・バッシングと言われるような現象にぶつかっております。言葉は適当かどうかわかりませんが、ともかく今貿易収支の中で我が国に一千億ドルという大変なお金が集まってきた。数年前は、オイルダラーということで中近東の油を持っている国にお金が全部集まったわけでありますが、今そうした莫大なお金が我が国にやってまいりました。そういう中で通商摩擦等が大変今激化をしてきているわけでございますが、総理、いわゆるジャパン・バッシングというこうした言葉、昔は特に東南アジアなどではエコノミックアニマル、こういう言葉がよく言われました。新たにジャパン・バッシング、こういう言葉についてどういう御感想を持っておりますか。
  55. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 輸出力が強くて、そして貿易の黒字がたまるということは罪悪ではない。むしろそれはその国のバイタリティーを示しているものであって、私はこれを厄介視したりあるいは罪悪視することには反対です。やはり日本の国民が勤勉であり、また、生産性が高いあるいは経営のマネージが上手である、長期的視野に立って経営をしておる、労働者も非常に勤勉で労使協調もうまくいっている、そういう国全体の総合的成果がこういう結果を生んでおるのです。それ自体を悪いとは私は思いません。  また、それを罪悪視して急激な政策や何かをとれば、必ず不況が起きたりあるいは失業問題が出てきたり、経済に大きな変動が生ずるのであって、そういうものは徐々に徐々にソフトランディングという形で解決すべき問題であり、黒字の問題は黒字の問題として手際よくそれを解消する方向へいろんな政策を総合的に運用してやっていくべき問題であって、生産性が高いとか経営が上手であるということ自体を、これを直そうということは間違いであると私は思っております。     〔今井委員長代理退席、委員長着席〕 そういう意味において、政治あるいは経済、あるいは経済団体あるいは政治家というものが協調し合いながら国際摩擦を起こさないような手際のよいやり方で処理していく、それが欠けていたと私は若干反省もいたしておるのであります。  しかし、ジャパン・バッシングという言葉がありますが、これは政治的な表現の言葉あるいはジャーナリスティックな表現でございまして、外国においては迷惑を受けている面もあり、あるいは日本のアクセスにおいてまだ十分でない、そういう面を指摘されておる。私は市場開放については外国に負けてないと思っておるのです。また、金融市場の開放についてもそれほど外国に劣っているとは思いません。しかし問題は、市場アクセスという問題について問題がある。そういう意味においては、我々の市場アクセスという問題についてさらにいろいろな面で改良を要する面がある。  我々はアクションプログラムをつくりましていろいろ改革をしてきましたけれども、外国側から見ると、日本人は当たり前のことであると思っていることが、国際水準から見れば当たり前でないということにもなっておる。そういう点は、国際関係を円滑に処理していくという面から見ると我我として直すべき面がまだ多々あるのではないか、そういうふうに考えています。制度の問題もありますけれども、法律とかあるいはなんとかという問題よりも、やはり日本に存在する商慣習とかあるいは日本の固有の社会システムとか維持してきたいろいろな経験とか、そういうようなものに対する違和感というものが外国に多分にありまして、そういう面が日本けしからぬという気分にもなる、誤解を受けるもとにもなる、そういう点を我々としては思い切って改革していく必要がある、そう思っておるのであります。
  56. 宮地正介

    ○宮地委員 特にそうしたジャパン・バッシングというような言葉が出てくる中には、総理の言う国際国家論、こういうものをどういう形で具体化していくかということが大変大事だと思うのです。そういう中で、そうしたジャパン・バッシングの一環とは直接的にはとらえにくいにしても、例えばお米の自由化の問題とかあるいは急激な円高問題、それに伴う一千億ドルの収支アンバランスあるいは今問題になっておりますところの東芝ココム問題あるいはこれからのFSX選定問題、ペルシャ湾の安全航行問題、大変多方面にこうした問題が非常に大きな影響力を今及ぼしてきておりまして、我が国としても、ある意味では二十一世紀を目前にして今大変大きな試練に立たされているのではないか。  総理の言う国際国家論というものをどう具体化し、世界の中の日本が果たす責任、役割、こういうものを本気になって、今までも努力してまいりましたが、ただ口先でなく本当に実行していく、そういう時代に突入してきたのではないか。そういう中で、まず私は、東芝のココム問題についてもいろいろこの予算委員会審議をされてまいりましたが、何点かについて御質問をさせていただきたいと思います。  先ほど総理は、外務大臣因果関係についての御発言が政府統一見解である、こう言明されましたが、これはすなわち、因果関係我が国政府は公式に認めた、こう解釈してよろしいのですか。
  57. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 極めて濃厚である、そういう疑いが十分ある、そういうことを申し上げておるのであります。
  58. 宮地正介

    ○宮地委員 防衛庁に伺いますが、ソビエトの原子力潜水艦というのはどういう種類の潜水艦があるのか、御説明いただきたいと思います。
  59. 瀬木博基

    ○瀬木政府委員 ソビエトの潜水艦は、これは米国とも同じでございますが、一つはミサイルを発射いたしますミサイル潜水艦それから専ら攻撃型と言っております潜水艦、この二種類に大きく分かれております。  それで、最新型の潜水艦といたしましては、これは俗称でございますけれども、攻撃型の潜水艦といたしましては、マイク型、シエラ型、アクラ型、それからいわゆるミサイル潜水艦といたしましては、デルタ型、またタイフーン型、そのような潜水艦がございます。
  60. 宮地正介

    ○宮地委員 今回の、この東芝機械が関与したと言われる潜水艦はマイク型、シエラ型と言われておりますが、間違いありませんか。
  61. 瀬木博基

    ○瀬木政府委員 防衛庁といたしましては、東芝機械のつくった、東芝機械からココム違反で輸出されました機械によって製造されたプロペラがどの潜水艦につけられたかということは存じておりません。
  62. 宮地正介

    ○宮地委員 外務大臣、この因果関係についてアメリカ政府から御説明を受けたと伺っておりますが、その内容の中にこうした議論は入っておりましたか。
  63. 倉成正

    倉成国務大臣 個々の内容については、先般も申し上げましたとおり、答弁は差し控えさせていただきたいと思います。
  64. 宮地正介

    ○宮地委員 通産省に伺いますが、東芝機械工作機械が実際にソビエトのレニングラードに送られたのは一九八二年、こう言われておりますが、通産省がこの機械を輸出するに当たりまして認可したのはいつですか。
  65. 畠山襄

    ○畠山政府委員 二つ工作機械があるわけでございますけれども、九軸と五軸とございますが、九軸につきまして、いわゆる非該当証明、解釈上の証明でございますが、それを出しましたのが八一年の八月でございます。それからその関係で九軸がどんどん出ていきまして、四号機目が船積みが行われましたのが八三年の六月でございます。  それから五軸の方でございますが、これは八三年の九月に非該当証明を出しまして、私どもこの承認をしたということではございませんけれども、非該当証明を出しまして、それが船積みをされ、四号機目が完了したのが八四年の五月ぐらいであろうというふうに考えております。
  66. 宮地正介

    ○宮地委員 ソ連の原子力潜水艦の音が小さくなったと言われる時期は一九七九年以後、こう言われておりますが、この点について防衛庁長官は把握しておりますか。
  67. 西廣整輝

    西廣政府委員 先日もお答えしましたが、ソ連潜水艦の具体的な静粛度等は申し上げられませんが、逐次静粛になっておるということで、先般申し上げたとおり、タイプが変わる、あるいは型式が変わる、そういうことでありまして、一九七九年に特に静かになったとか、そういうものではございません。
  68. 宮地正介

    ○宮地委員 当然、防衛庁としては、原子力潜水艦の、いわゆる対ソ戦略等について研究はされておるわけですか。
  69. 西廣整輝

    西廣政府委員 ソ連がどうこうというふうには申し上げませんが、我が国周辺にあらわれる潜水艦というものについて、その動静なりあるいはどういう音波を出すか、そういったことについては我々いろいろな形で調査をいたしております。
  70. 宮地正介

    ○宮地委員 そうしますと、一九七九年ごろにそうしたソ連の原潜等に、いわゆる音紋と専門的には言うようですが、音の紋ですね、この変化というものは起きたのですか。
  71. 西廣整輝

    西廣政府委員 先ほどから申し上げておりますように、年を境に潜水艦の音が変わるということではございませんで、潜水艦はそのつくられた設計思想なり工作技術、そういったものによって逐次静粛化が進んできておるというものでありまして、あの年すべての潜水艦が急に静かになるとかそういったものではございませんので、御了解いただきたいと思います。
  72. 宮地正介

    ○宮地委員 いわゆる時系列的に、一九七九年以降ソ連の原潜の音が小さくなった。今お話を伺っておりますと、その後に通産省の一番早いあれでも八一年八月、東芝機械工作機械ココム違反で輸出をされておる。時系列的に見ますとこの因果関係は成立してないような感じで我々素人は見るわけですが、この点については政府はどういう調査あるいは見解をお持ちなんでしょう。
  73. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 具体的にアメリカからの説明につきましては、先ほど大臣が申し述べましたように、その内容について明らかにすることは差し控えさせていただきますけれども、一般論といたしまして、ソ連潜水艦の静粛化というものは先ほどから御答弁ございますように逐次進んでおるわけでございます。その静粛化の中で一つの大きな役割を果たしますのがスクリューの静粛化でございまして、逐次進んできた中でこのスクリューの静粛化というものが大きな役割を果たしているということでございますので、東芝機械の不正輸出と全く関係がないということではないということかと思います。
  74. 宮地正介

    ○宮地委員 外務大臣、昨日の夜、ウェッブ米海軍長官と都内でお会いをしたようですが、このときどういう内容の会談を行ったのか、特に今申し上げたような重要な問題については議論されたのか、その点についてお伺いしたいと思います。
  75. 倉成正

    倉成国務大臣 ウェッブ長官といろいろなお話をいたしましたが、特に今回沖縄における護国寺の鐘の返還の式が来週行われる、ウェッブ長官がこれに出席するということでございますので、そういう際に、沖縄におけるいわゆる米軍従業員の雇用問題等、本委員会でも問題になっておりましたので、この問題についても注意を喚起いたしたところでございます。
  76. 宮地正介

    ○宮地委員 先月来日しましたワインバーガー国防長官が表明したような、日米両国で対潜探知能力を高めるための共同努力が大事だ、こういう議論はお話し合いにならなかったのですか。
  77. 倉成正

    倉成国務大臣 ウェッブ長官といろいろお話はございましたけれども、一々その内容を申し上げる筋のものではないと思います。
  78. 宮地正介

    ○宮地委員 それはおかしいじゃないですか、外務大臣。今回の東芝機械工作機の輸出問題について当然議題になったと思うのですが、その点についての今のお話について、あったのかないのか、その点についてどうしてコメントできないのでしょうか。
  79. 倉成正

    倉成国務大臣 そういう立ち入ったお話をいたしておりません。
  80. 宮地正介

    ○宮地委員 防衛庁長官、十五日以降にまたこのウェッブ長官とお会いいたしますね。この会談の主たる内容、目的、これはどういうことなんでしょうか。
  81. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 けさ会いました。けさ会いまして、話の内容一つは、いわゆる対潜探知能力、それについて日米で共同して、研究といいますか話し合いを進めていくといいますか、そういうことをやろうということで合意いたしました。向こうの方からも担当の責任者を出す。向こうは海軍こちらは海上自衛隊、その責任者同士で、責任者をつくってお互いに話し合い、協議をしよう、早急に始めようということで合意を見ました。
  82. 宮地正介

    ○宮地委員 防衛庁長官がはっきりしているのに、外務大臣、ちょっとおかしいですね。当然同じような内容の話があったと私は推察をいたしますが、外交上の問題もあろうかと思いまして、外務大臣のお立場も理解し、これ以上責めませんが、今防衛庁長官お話しになりまして、合意をされた、これは非常に重大なことであろう、私はこう思うんですね。  そこで、これからの再発を防止する、ここもやはり非常に大事なところであろう、これについては総理大臣、細かいことは事務当局で結構ですが、まず、総理としてはどういうお考えを持っておりますか。
  83. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 先ほど来の御答弁の中で、スクリューとの関係という話でありますが、私もある程度情報は聞いておりますが、やはり最近におけるソ連側の音の変化というものと、それから東芝の機械が輸出されて、レニングラードでしたか、造船所に据えつけられて、その後の時間的な経過、そういうようないろいろな面を見ますと、やはり何か結びつけられるんではないかという嫌疑が、疑いが極めて濃厚だと判断される、そういう状況下にある。それを私も自分でそのように考えまして、それで先ほどのような御答弁をしたのであります。  しかし、どういう加工が行われたか、またどういう羽根のものであったか、そういうことまでは我々は知る由もないわけでありますから、現場を確認したり証拠物件を持っているという、そういう証明は我々としては自分で持ってはおらぬ、そういう意味において断定はできない。しかし、そういういろいろな状況判断からしてみて推定は可能であって、あり得る、そういう意味で申し上げた次第なのでございます。  それから、日米間の今の共同対処という問題は安保条約の枠組みの範囲内においてやろう。これは従来も、P3Cをどういうふうに運用するかとかソノブイをどういうふうに開発したらいいかとか、そういう点は枠組みの中で、両方の共同防衛の一つの研究項目としてそれは当然やるべきものであって、それをさらにひとつ精出してやろう。今度のこういう事件にもかんがみまして、いろいろな情報を両方で寄せ集めて、そしてどういう対策がいいのか、技術的にも究明する必要がある、そういう意味の共同防衛の共同対処という意味で、安保条約の枠組みでやろう、そういうことで私とワインバーガー長官と合意し、また先ほどの栗原長官のお答えのように相手側の海軍長官ともそういう合意をした、そういうことなのでございます。私は、これは必要であると考えております。
  84. 宮地正介

    ○宮地委員 もう一点、非常に見落としてはならない大事な問題が一つ提起をされているわけでございますが、特にこの因果関係について疑問視する一つの問題として、いわゆるアメリカの議会筋という話で、ソ連の原潜の低騒音化というものは今回の東芝機械事件より以前に、六十年に発覚した元米海軍准士官らによるスパイ事件のジョン・ウォーカー事件によるところが大きいのではないか、こういう報道もされているわけですが、この点については米国政府に照会する意思は政府としてあるんでしょうか。
  85. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 ただいま御指摘のウォーカー事件は、一九八五年の六月に発覚したものでございますが、ウォーカー元海軍軍人がその息子、それから兄等と組みましてソ連に対して種々軍事情報を送っていた。特にアメリカの対潜水艦探知能力につきまして詳細なデータを送っておったということで、結局終身刑になっておる事件でございますが、その際にアメリカの海軍作戦部長の言明を見ましても、このウォーカー事件は、ソ連に対しまして、ソ連潜水艦の静粛度というものが必要であるということを再認識させたということを言明しておりまして、そのようにアメリカ政府としても把握しているというふうに承知しております。
  86. 宮地正介

    ○宮地委員 こうした問題も大変私は重要であろうかと思います。  そこで、先ほど申し上げました再発防止の問題で、特に外為法の改正問題、この第二十五条の役務取引あるいは四十八条の輸出の承認、五十三条の制裁、こうした問題について、外務、大蔵、通産、この辺の連携が私は非常に大事だ、こう思うのです。外務省は非常に、制裁措置等についても五年ぐらいと厳しい対応をして、この四十八条の輸出の承認の中に二十五条の二項、役務取引等の二項を入れよう、こういう強い姿勢にあるようですが、どうも大蔵、通産はこの点について若干消極的である、政府内でこの辺の意見調整が今ちょっと難しい状況にあるような感じを受けておるわけです。まずこの点について、大蔵大臣外務大臣の御見解を伺っておきたいと思います。
  87. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 別段政府部内で意見のそごは生じておらないと思います。関係省庁の間でどのようにすれば有効な対策がとれるかということをただいま協議中でございます。
  88. 倉成正

    倉成国務大臣 今大蔵大臣がお答えになったとおりでございます。
  89. 宮地正介

    ○宮地委員 大蔵大臣この四十八条のところに二十五条の二項的なものを導入する問題について、大臣としてはどういう見解を持っていますか。
  90. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 実はまだ私のところまでそういう具体的な案を持ってきておりません。各省庁で検討いたしておるものと思います。
  91. 宮地正介

    ○宮地委員 総理、やはりこれは非常に大事な問題だと思うのです、再発防止の中の具体的な法改正問題。ぜひ総理、最後の仕事の中で、大事な問題ですから、リーダーシップをおとりいただいて、外務、大蔵、通産のしっかりとした調整をどうかお願いしたいし、また、これだけの重大事件ですから、政府が、いわゆる因果関係は濃厚である、こういう公式見解をきょう発表された、また防衛庁も、アメリカの海軍将校とこれからその探知の共同研究の合意をした、ここまで踏み切っていくのですから、この外為法の改正も相当厳粛な、国民の合意の得られるような対応をしていくべきではないか。この点について総理の見解を伺っておきたいと思います。
  92. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 そのほかに法務省もありまして、よく検討させます。
  93. 宮地正介

    ○宮地委員 時間もございませんので、ココム問題はこの程度にさせていただきたいと思います。  次に、次期支援戦闘機のFSX導入問題について、粟原発言というものがございまして、これは防衛庁長官、日米共同開発の線でいくという方向が大体固まりつつあるのですか。
  94. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 別にそういうことではございません。従来から申し上げているとおり、外国機の導入、現有機の転用あるいはアメリカとの共同開発を含めて開発、こういうことでございまして、特に今の段階で共同開発に踏み切る、そういうようなことではございません。
  95. 宮地正介

    ○宮地委員 防衛庁長官は、今月十日の自民党の国防関係合同会議で、このFSX選定につきまして「日米の技術をどう調和させるかが大事」、こういう御発言をされたようですが、間違いありませんか。
  96. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 これは間違いないのです。私の言った意味は、いわゆるFSXということに限らず、これからの日米の大きな問題は、両方の持っている技術をどうするか、両方の持っている技術を両国のためにどのように使っていくか、そういう観点から問題を見ていかないと本質を誤ることがある、そういう一般的な原則といいますか、私のそういう基本的な考え方を申し述べた、こういうことであります。
  97. 宮地正介

    ○宮地委員 それでは、今回のこうした東芝ココム事件あるいは通商摩擦問題、こういうものは一切この選定には絡めない、こう理解してよろしいですね。
  98. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 このことはアメリカ側も、貿易と防衛とは絡めたくない、こう言っているわけでございます。しかも、私もこれは、内外に公表している原則というのは、客観的に見て、防衛的に見て一番いい、そういうものをつくりたい、それから、日米安保というその観点から、少なくともアメリカ国防省の理解を得られるものでなければならない、両方の防衛産業の圧力は受けない、この三原則で処理をしたい。ワインバーガー長官もこれについては賛成をしておる、そういうことでございます。
  99. 宮地正介

    ○宮地委員 この点については、我が国の専守防衛という大原則に立って適切な対応を自主的に判断していくべきであろう。しかし、現在の置かれた経済環境、日米のこうした大変な摩擦熱の強いときですから、我々専門家じゃございませんが、非常に危惧をするわけですね。特に長官が、いわゆる防衛産業の影響を受けない、排除する、これは今までも産軍複合体とかいろいろな言葉で、また過去にもこうした戦闘機の選定にはいろいろ忌まわしい事件もあったわけですから、どうかそういう点では国民にわかりやすく、そして日本の防衛にやはり適切な判断で御努力いただきたい。これは強く要望しておきたいと思います。  次に、ペルシャ湾の安全航行問題につきまして少しお伺いをしておきたいと思います。  これはスターク号事件、これがやはり引き金になりまして、特に我が国がペルシャ湾を航行して、中近東の油約五五%、こういうことでいろいろ安全航行に対する役割分担、こういうものがアメリカ等からも強く声が高まっているようでございます。先日も橋本運輸大臣の大変悲壮な御意見を私も伺いまして、これは大変な事態だなと思いました。  外務大臣、この点についてどういうお考え方を持っておるのか、まず御見解を伺っておきたいと思います。
  100. 倉成正

    倉成国務大臣 ただいま宮地委員お話しのとおり、我が国は原油輸入量の約五五%をホルムズ海峡に依存しております。したがいまして、ペルシャ湾の安全航行の最大の受益国の一つであることは御承知のとおりでございます。したがって、国際社会の責任ある一員として非軍事的な分野において応分の役割を果たしていきたいと考えておる次第でございます。かかる観点から我が国は、イラン・イラク戦争がおさまるということが基本的な最大の問題でございますので、この点につきまして、イラン・イラク紛争の解決ということについて最大の努力を合いたしておるところでございます。  あわせて、このイラン・イラク紛争が終結しない限りこの湾の安全というのはなかなか確保できないと思いますが、当面、船舶攻撃の自制等については、両国に対しましてあらゆる外交的な努力をいたしておりまして、現地におきましてもあるいは当東京におきましても、それぞれのあらゆる機会に外交ルートを通じまして船舶航行の安全についての注意を喚起いたしております。また、先般私がテヘランに参りましたのも、そういう意味で参った次第でございます。
  101. 宮地正介

    ○宮地委員 例えばイ・イ戦争終結の後、復興的なものとして思い切った経済協力、こういうものは政府としては考えの中にありますか。
  102. 倉成正

    倉成国務大臣 まずイラン・イラク戦争がおさまるということがその前提でございますけれども、イラン・イラク戦争がおさまった後、当然復興の問題が起こってくる、その際に日本としてある役割を果たすということは当然のことだと思います。
  103. 宮地正介

    ○宮地委員 総理は、この点については、いわゆるイ・イ戦争をやめさせることがまず先決である、日本はイラン、イラク両方にパイプがあるのでその努力をこれからもしてまいりたい、こういうような発言を当予算委員会でされております。具体的に我が国は、このイ・イ戦争の終結に向けて今後どういう積極的な外交を展開しようというお考えを持っているのですか。
  104. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 これは直接イラン・イラクにそれぞれ我が国から働きかけを行うというケースもございますし、あるいは国連安保理事会の非常任理事国として安保理事会の各国ともいろいろ話し合いをしてそれを推進する、あるいは国連の事務総長に対して国連の出先を通じていろいろ働きかける、さまざまなやり方があると思いますし、あるいはパキスタンの総理大臣ともこの間話しましたが、パキスタンあるいはトルコ、そういう関係国ともいろいろ連携をとって行う、そういうあらゆるケースがあり得ると思っております。
  105. 宮地正介

    ○宮地委員 こうしたペルシャ湾の異常事態、こういうものに関連して、再び第三次石油危機の到来があるのではないか、こういう心配が出てきているわけですが、通産省としては、この点の状況分析、こういう点はどういうふうにされておりますか。
  106. 畠山襄

    ○畠山政府委員 本来、資源エネルギー庁長官がお邪魔しているべきでございますけれども、貿易の状況にも関連しますのでお答えさせていただきますと、石油の価格は今、下支えといいますか、かなり強含みになっております。そして、私どものみならず、IEAを中心とします西側全体として、九〇年代になるとやはり相当需給が逼迫する可能性があるのじゃないかという見方をいたしておりまして、そういうことも前提に諸施策を進めていかなければいけないというふうに考えております。
  107. 宮地正介

    ○宮地委員 そういうような石油危機の到来を予測してかどうか、通産省がひそかに、ガソリン、灯油のいわゆる配給券ですか、これを二億枚印刷をしておった。これはどういう背景なのでしょう。
  108. 畠山襄

    ○畠山政府委員 宮地委員御指摘の点が最近のことかどうかちょっと存じませんが、私が知る限りでは、昔、石油危機が深まりましたころ、第一次でしたか二次でしたか、そのころに、やはり石油について、ガソリンとか灯油とかそういったものにつきまして、あるいは配給制を採用しなければいかぬかもしれないということがございまして、そういう配給券と申しますか、そういうものの準備をいたしたことがございました。
  109. 宮地正介

    ○宮地委員 昭和五十四年から五十五年にかけて、七億円の予算を使って民間の印刷会社を利用して印刷をされた。首都圏の民間倉庫の空調設備つきの部屋に保管をされた。保管料八千万円だ。  総務庁長官、これについては、あなたはむだというような御見解を持っているようですが、そのとおりですか。
  110. 山下徳夫

    山下国務大臣 突然の御質問でございまして、今資料を手元に持ってきておりませんが、御指摘の点につきましては既に勧告をいたしております。
  111. 宮地正介

    ○宮地委員 どういう内容の勧告ですか。
  112. 山下徳夫

    山下国務大臣 より適切かつ経済的な保管方法について検討しろ、こういうことでございます。
  113. 宮地正介

    ○宮地委員 総理、これは大変大事な問題だと私は思うのですね。九〇年代に第三次石油危機が到来するのではないかと、通産省としては非常に危惧をされておる。それに伴って早目早目にこういう御準備をされる。この点についての政府部内における情報分析というか、やはり本当に第三次石油危機がやってくるのか、その可能性とか、またそれに対して備えあれば憂いなしの対応なのか、あるいは総務庁あたりは御注意の勧告と、政府部内でちょっと対応がしっかりしてないんじゃないか、こんな感じがするのですが、総理、どうですか。
  114. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 この前の石油危機のときに、万一を恐れてそういうような予備的対策をとったのだろうと思いますが、ちょっとおもんばかりが深過ぎたという感がなきにしもあらずであります。
  115. 宮地正介

    ○宮地委員 私は、今、こうしたココムの問題、あるいはFSX、ペルシャ湾安全航行問題等、当面する我が国が置かれた重要課題について政府の見解を伺ってきたのですが、そうした背景にやはり経済的な、総理の言う摩擦熱、こういうものが相当シビアに働いているのではないか。直接的な関係についてはいろいろ御意見があるにしても、ただ、先ほど申し上げましたような一千億ドルという大変なお金が我が国に今たまってきておる。それに対して我が国が世界の中に果たす役割、責任、こういうものが相当シビアに求められてきている。そういうバックグラウンドというものがなきにしもあらずだと私は思う。ここのところで、そうしたいろいろな通商摩擦あるいはそうした問題の貿易摩擦の背景の中から外交、防衛、通商、こうしたいろいろな問題が今惹起してきているわけでございまして、私はこういう点について、やはり目配りをしっかりやって、きめの細かい政府としての対応をしていかないと、まさに日本は世界から孤立化し、袋たたきに遭ってしまうのではないかと大変心配するわけですが、この点について総理の見解を伺っておきたいと思います。
  116. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 その点は全く同感でございまして、非常に広い、深い目配りをしながらやっていく必要があると痛感いたしております。
  117. 宮地正介

    ○宮地委員 次に、税制改革問題等について若干お伺いをしてまいりたいと思います。  大蔵大臣は、この問題に触れますと、いわゆる税制改革協議会の協議を待ってということで、どうもそこに答弁を持っていってしまうわけで、この議論が当委員会でもなかなかかみ合わない。私も聞いておりましていら立ちを感じているわけでございます。しかし、新聞報道はどんどんと新たな情報が我々の目の前に出てくるわけでございまして、そこの乖離に私も大変疑念を抱いているわけでございます。  そこで、昨日総理は新型マル優、こういう新たな語録をまたおつくりになりました。当然この中身は税制改革協議会で詰めなければならないのですが、もう既にこの新型マル優的なものの中身もいろいろ報道されてきている。この点について、大蔵大臣は昨日は、全く私の知らないところである、こういうことなんですけれども、こういうような議論というものは果たしてどうなのかな、こんな感じがしているわけでございまして、既にこうした問題について、どうもこの臨時国会で政府は、前国会に提出したあのマル優廃止の中身、これはそのままストレートには出す気配はないようだな。若干ストレートにそのまま出せという御意見も自民党内にあるようですが、そこをやはり一部改正して、例えば六十五歳を六十歳にするとか、あるいは十月を来年の四月にするとか、一億円以上の高額貯蓄者には今までのような三五%課税を残すとか、いろいろな中身が今情報として伝わってくるわけです。総理としては、昨日おっしゃった新型マル優、これは何か総理として中身について御意見をお持ちなんですか。
  118. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 きのうは野党の皆さん方といろいろ問答が行われまして、いろいろなお考えを拝聴いたしました。我々も税制協議会の御協議を見詰めておるわけでございますから、そういう御協議の中に、仮定の発想としてときのう申し上げたのです、こういうようなものを考えている、あるいは考えてそういう案が出てきたらそれはまた一つの案ではないか、そういうふうに思いますと仮定の発想として申し上げたのです。我々がもうそういうふうに決めたとか、そういうような考えではございません。しかし、いい案が出れば我々としては喜んで受け付ける。これはもう皆さんの声を傾聴いたしますと言っているわけですから、いい案をぜひお出しくだされば、我々としても検討いたしたいと思うわけです。
  119. 宮地正介

    ○宮地委員 大蔵大臣税制改革協議会でもしまとまらなかったらこれはだめですね、新マル優は。
  120. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 昨日から税制改革協議会とこう二言目には申し上げますので、まことに御不満だということは私もよくわかっておるのでございますけれども、実はそういう問題について、政府としてはこういう案がいいと思いますと仮に申し上げましたら、直ちに税制改革協議会におかれて、極めて僭越なことであるとおしかりがあることはもう明らかであります。それはまた、税制改革協議会は議長のごあっせんでできた公の御検討の機関でございますからそれもごもっともなことで、おしかりがあるのをわかっておって言ったのでは、これはまことにどうもぐあいが悪いわけでございまして、それはひとつお許しをいただきたいと思います。  それで、今のお尋ねは、昨日から申し上げておりますように、今年度所得課税の大幅な減税を、政府としては先般、緊急経済対策で必要であるというふうに決めたわけでございますが、またそれにつきましては、承りますと、税制改革協議会でも、規模の問題はありますけれども必要だと多くの党がお考えのように伺いますが、そうなりますと、それは、今年度減税いたせば必ず明年度またもとに戻るということはございませんので、恒久的なものと考えざるを得ませんで、そういう意味では、恒久的な税制改革の全体の問題を財源も含めて御検討をいただきたいというのが、私どもが税制改革協議会に念願をしておるところでございます。したがいまして、今の点を含めまして、何分の御検討の結果が出るものと思っております。
  121. 宮地正介

    ○宮地委員 本来的には、五月十二日の与野党国対委員長の合意メモ、これは素直に見れば、臨時国会でマル優の廃止、あるいは新マル優と言われるマル優の前国会のを見直されたもの、改正されたものをこの臨時国会に提案するというのはいかがなものかな、私はやはりこれはやるべきではないのではないのかな。税制改革協議会でまとまらなければ法案化できませんから、これは厳しいと私は思うのです。  そこで総理、基本的な問題なんですが、今回の売上税法案のああした審議の中で、直間比率の見直しとか今のマル優のこれからの廃止問題あるいは新マル優の問題、こうした税制改革論議、特に恒久財源的なものの制度改革というのは、やはり二年なり三年なりじっくり与野党で議論をして国民の合意を取りつけていく、この基本路線が一番大事じゃないか、こう思うのですが、どうでしょうか。
  122. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 原則的にはそういう時間をかけるということも成り立つのですが、ともかく減税を思い切ってやるということになると、それに見合う恒久財源というものはやはり一括してつくっておかなければ無責任な制度になります。そういう意味におきまして、減税、それに対する正しい恒久的財源、これはやはり一緒にやるべきではないかと思うのです。  それから、いわゆる間接税の改革というような問題につきましては、その次の段階の話として、大体の皆さん方の話し合いをお進めいただくというのが段取りとしてはいいのではないか、そういうように感じますね。
  123. 宮地正介

    ○宮地委員 そこで、六十二年度のいわゆる当面の税制改革と六十三年度以降のいわゆる税制改革、特に六十二年度の減税財源としては、大蔵省の議論をいろいろ聞いていますと、六十一年度の決算剰余金の一兆三千五百億、ずっと引いてきまして、ここのところで所得税減税の先行をやる以外ないのかな、こんな感じがするわけです。  私は、税制改革論議というのは、今回の売上税問題等国民の中でも税金に対して相当関心を持ってきていますから、やはり二年なり三年かけてがっちり、これからの日本の税制というものはどうあるべきか、こういうものを議論する。そうすると、その前段としての財源というのは当然必要になってくる。  そこで、NTTの売却益については、当然今回社会資本整備として四千五百八十億円、これは六十一年度の売却益の中から回す。六十二年度以降この売却益の活用について、いわゆる国債償還に充てる、これはもう大原則です。その一部を一般会計、産投経由で基本的には国債整理基金にまた戻すということで、無利子によって社会資本整備に使う。この二頭立てで今後いき、この社会資本整備のところは、積極財政といいますか公共事業の拡大、ここに使っていく、こういう考え方も当然あるわけですけれども、例えばこの秋に、六十二年度に百九十五万株またこれからお売りになるわけですね。今は大体二百五十万前後でNTTの株があるわけです。ざっと四兆七、八千億円ぐらいになるのかな。そのうち、大蔵省のつくったのでは、NTTの売却益の中から国債償還に使うのは大体一兆八千五百億ぐらい、六十二年度から六十三年、六十四年と、こうなっておりますね。それから、社会資本整備の方はことしは四千五百八十億ですけれども、来年あたりは、大蔵省の試算等いろいろ伺ってみますと一兆円強ぐらいなのかな。ざっと見て、六十二年度のこれから秋に売るNTTの売却益の中から大体二兆円ぐらいは浮く勘定になる。これは全部本来的には国債償還で国債整理基金に入れておく。しかしこれを、これからの税制改革を詰める間のいわゆる暫定的な財源として使うことはできないんだろうか。これを二回ぐらい、六十二年度、六十三年度の売却、要するに六十三年度、六十四年度ぐらいで二兆円ずつぐらいをいわゆる当面の税制改革財源として使えないのだろうか。そして、本格的な税制改革ができたときは恒久財源は当然できるわけですから、六十五年度以降ぐらいからがっちりとしたそうした対応をしていく。確かにNTTの株というのは国民の皆さんのつくった大変な資産、それを一つ税制改革のための減税財源に充てるのはいかがかという議論、これは私も理解できますけれども、そういった考え方も私は大事じゃないのかな。この点について大蔵大臣どうでしょうか。
  124. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そこまでおわかりくださってのお尋ねでございますのでその部分をくどく申し上げませんが、やはりこれは市場に株を売却いたしますので、私どもはなるべくいい値で売れることを期待しますし、努力をいたしますけれども、何分にもそういう性格のものでございます。  ただ、減税というのは、一遍いたしますともう一遍もとへ戻るということは事実上できませんので、NTTの株の売れ方がちょっと悪かったのでことしの減税はもとに戻しますということは事実上できることではないと私は思うのでございます。そういうことをいろいろ用心深く考えてまいりますと、やはりしっかりした財源を考えておく必要があるのではないだろうか、こういうふうに思いますが、いかがでございましょう。
  125. 宮地正介

    ○宮地委員 これは、大蔵大臣としてはそういう答弁はやむを得ないと思うのですね。ただ、これからの日本の二十一世紀に向けての本格的な税制改革をやる、そのためにはやはり二年なり三年は時間をかけてやろう、そこは皆さん御理解しているわけです。ただ、当面の財源がない、じゃそれについて緊急避難的にこのNTTの売却益というものを六十二年度、六十三年度売却の問題を手当てして、時間を少し稼いで対応するということも私は案じゃないかな。総理、どうでしょう、この点。
  126. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 そういう誘惑に駆られるのです。しかし、そこをやはりきちんとした財政秩序をつくるというところに為政者の良心というものはあるのではないかと思うのです。
  127. 宮地正介

    ○宮地委員 為政者の良心というとらえ方もありますけれども、なぜこの臨時国会のこの短い期間に、前国会で廃案になったものを少し手直しをして、マル優を廃止あるいはマル優の手直しをしてこだわらなければならないのか。これも財源的には、来年度大した財源じゃない。いわゆる総理の幕引きに筋道を立てる、こんなことはないと思いますけれども、非常に我々不可解な感じをするわけですね。これからNTT二法案については大蔵委員会等でも議論しますが、もう少し減税財源は忌みたいなこだわり、これはどうかな。僕は、為政者としてはむしろ逆に勇気のある対応じゃないかな、二年間分の売却、これからの分を少し減税財源に当面充てて、そして思い切った、これからのあなた方の言う直間比率の問題も、マル優も不公平税制も全部議論しようじゃないか、こういう考え方なんで、総理税制改革について最後のお仕事が少し残った、こういう感じですけれども、この点は最後に勇断を奪うべきじゃないかな、こんな感じをしております。これ以上議論しても水かけ論ですから、私は期待と要望をしておきたい。  そして当面は、我々が主張している二兆円程度の所得税減税。先日は金丸副総理も、自民党が一兆円、野党が二兆円、真ん中とって一兆五千か六千かななんという発言も山梨で行ったようですが、自民党内でもそういう折衷的な発言もちょろちょろ出てきているわけでございまして、決算剰余金の枠の中の最大、マキシマムをとって、きのうあたりは一兆三千億ぐらい、こんな話も総理から出ているわけで、その点もう少し頭をやわらかくしながら、本格的な税制改革に向かって与野党で議論を詰めるべきではないか、私は特に要請をしておきたいと思います。  時間もあとわずかでございます。特に私は、中曽根総理、あなたの今までやってきた政治の中で、最後のこの段階になって、いわゆる四全総絡み、東京集中、これで大変な地価の高騰になりましたね、これはやはり総理、あなたの発言、対応、相当影響力があると思う。昭和四十七年、田中角榮元総理大臣日本列島改造論を発表してから、やはり同じような地価高騰、狂乱物価、石油ショックと重なりまして、日本はそういう大変な経済の危機に見舞われた。総理が今最後の幕を引かんとするときに、この東京地価高騰問題が発生をした。これは私は、ある意味では失政じゃないのかな、まずこの点について総理の御感想を伺っておきたいと思います。
  128. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 四全総の案をつくるときに私のところへ案を持ってきて、私が申したのは、東京プロブレムがないじゃないか、そういうことを言ったのです。東京プロブレムというのは何であるかと言えば、地価の問題なんです。東京の地価対策ということを四全総の中で触れてないで、考えないで、それで四全総が成り立つものではない、いわゆる東京プロブレムという問題が欠如しているからその点をもう少し検討しなさい、そう言ったので、地価対策というものは頭に置いてそれを言ったのですよ。決して東京に物を持ってこいという意味で言っているのじゃないのです。それはもう誤解ですから、この際はっきり申し上げておきます。  そういう意味で、四全総の中にも地価問題というものが入ってきた、このことを御認識願いたいと思うのであります。
  129. 宮地正介

    ○宮地委員 確かに、ロンドン、ニューヨーク、東京、国際金融市場、国際的な都市、八時間の時差、こういうことで金融を回せば、国債先物取引もロンドンで始まったようですが、これは、オフィスビルが山手線の中に五、六百本できるようなそういう感じ国民の中に広がっていったのはやはり事実なんですね。認識を改めてもらいたいという御希望はわかりますが、現実はやはり中曽根発言というものが東京集中、地価高騰に火をつけたと言っても私は過言ではないと思う。そこにやはり総理の反省が必要ではないかな、そういう感じを私は受けますね。  そこで、時間がございませんので国土庁に伺っておきたいと思うのですが、ここまで東京の地価が高騰し、地上げ屋さんが暗躍したり、大変な事件が起きてきている。こういう段階で、国土利用法の運用、これはやはり厳格にやっていくべきじゃないかな。特に監視区域等設けているようですが、ある場合においては地価の凍結ぐらいやるそうした勇気ある対応も必要ではないかな、こんな感じがしておりますが、長官いかがでしょうか。
  130. 綿貫民輔

    ○綿貫国務大臣 御指摘のように、国土利用計画法の十二条には、地価の高騰あるいは投機的な投資が行われる場合にはその区域を指定いたしまして、また期限も決めまして、都道府県知事がこれについての規制区域として指定することができます。これによって、いわゆる許可制になるわけですから凍結ということであります。また特に十三条には、総理大臣が、国の立場から、国民生活に及ぼす影響が非常に弊害が大きい場合にはこれを指定するように都道府県知事に指示をすることができる、こういうふうになっておるわけでございます。これを発動いたしますと経済社会に及ぼす影響が非常に大きいということで、先般来東京都ともこれらの問題についていろいろと協議をしてまいりましたが、当面監視区域を設けましてこの規制をチェックしていく、こういうことでこの高騰を抑えていこうということで現在やっておるわけでございます。既に御存じのように、先国会で成立いたしました国土利用計画法によりまして、八月一日から各地区において、既に準備も始まっておりますが、この規制のチェックをする準備をいたしておりまして、相当の効果があると考えておりますし、何回も申し上げますが、特に短期の取引につきまして重課税を課します税制を先国会に提出いたしたわけでございますが、売上税関連と称して廃案になったわけであります。これはやはり成立させてもらうと相当効果があるということですから、この国会ではぜひお願いしたいと思っております。
  131. 宮地正介

    ○宮地委員 建設大臣に伺っておきたいと思います。  実は、東京の地価の狂乱的な暴騰、こうした影響が今都心の三十キロ圏、四十キロ圏、私どもの埼玉県などにも非常にひしひしとこの地価の高騰が押し寄せてきておりまして、それとともにビジネスホテルと称したラブホテルがまたがんがんでき始めてまいりまして、宅地の中にまで大変入り込んでくる、こういう現象が首都圏の中で今非常にラッシュになってきている。  もう一つは、いわゆるワンルームマンションという、十世帯ぐらいで一棟を丸売りするのですね、建設業者が。ところが、これはもうほとんど学生さんとか独身の方が入りますから大変にごみの処理とか、あるいは御近所の宅地の中にどんと――大体四十坪ぐらいあるとぽんと一棟ぐらいできてしまう、七、八十坪あると並んで二棟できちゃう。こういうことで御近所の日照権問題あるいはプライバシー、奥座敷まで全部廊下伝いに見えてしまう、こういう大変な社会問題が発生してきておりまして、現在の建築基準法、ここの中にやはりこうしたワンルームマンションあるいはビジネスホテル的なラブホテル建設、特に住宅環境のよいところに入り込んでいく、こうしたものに対して何らかの規制措置、これも大変必要じゃないかな。  特に文部大臣、文化財のあるところとか小中学校の通学路のところにばんばんできていく。これは教育上も非常によくない。私は、ぜひこうした問題について政府としても法改正等について検討する時期に来ているのじゃないか。この点について、建設大臣また文部大臣にちょっと所見を伺っておきたい。また、旅館業法の関係で衛生上さえ問題なければ建ちます、こうなりますから、もうラブホテルがばんばん出てくる。こうしたことで二言だけ両大臣に御意見を伺って終わりにしたいと思います。
  132. 片山正夫

    ○片山(正)政府委員 いわゆるラブホテルでございますけれども、建築基準法上の扱いといたしましては、建築基準法の趣旨が建築物の安全でありますとか衛生を確保する観点でございますので、特段ビジネスホテル等との区別は設けておりませんで、ホテル一般として扱っております。ホテル一般の規制としましては、第一種住居専用地域それから第二種住居専用地域につきましては、これは建築を禁止しております。その他の地域で建築ができるところにつきましては、建築協定あるいは地区計画の制度によりまして建築規制をすることができることになっておりまして、既に公共団体におきましてその制度を活用いたしまして建築規制を実施しているところもございますので、その方向で指導を進めてまいりたいと考えております。  それから、もう一方のワンルームマンションでございますけれども……
  133. 砂田重民

    砂田委員長 簡潔に御答弁ください。
  134. 片山正夫

    ○片山(正)政府委員 ワンルームマンションはいわゆる単身世帯の増大ということを背景に起こりましたもので、これは住宅対策の観点から申し上げますとそれなりの役割は一つあると存じております。しかしながら、確かにまた環境を害しているということもございますので、これが急増いたしました五十八年、五十九年に建設省も指導いたしまして、それらが大変たくさん建っているところを中心に指導いたしました。その結果、その地域におきましては紛争がかなり減ってきております。  しかしながら、最近、全国的には数は漸増しているのですが、地域が新しい都市の方へと、周辺都市の方へ散ってまいりまして、そこで新たな問題になっておりまして、そういう地域につきましては、前回の経験に照らしましてまた指導を強化して、そういうことのないように努めてまいります。
  135. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 学校周辺にはそういう悪い環境のものが建たないように規制もあるのでございますが、なお教育委員会に厳重に申しまして、そういう環境を悪化しないように努力させます。
  136. 宮地正介

    ○宮地委員 終わります。
  137. 砂田重民

    砂田委員長 これにて宮地君の質疑は終了いたしました。  午後一時三十分より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後一時七分休憩      ――――◇―――――     午後一時三十三分開議
  138. 砂田重民

    砂田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、お諮りいたします。  各案審査のため、本日、参考人として海外経済協力基金総裁細見草君、理事加茂文治君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  139. 砂田重民

    砂田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ―――――――――――――
  140. 砂田重民

    砂田委員長 質疑を続行いたします。井上一成君。
  141. 井上一成

    井上(一)委員 まず最初に、私は中曽根総理に対しまして、総理が日米首脳会談、さらにはベネチアサミット国際公約とされた還流資金の具体的な問題についてお尋ねをしたいのですが、還流という定義をひとつ、まず伺っておきたい、こう思います。
  142. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 これは英語で言うとリサイクルという言葉になりましょうか、日本にたまっておるそういう黒字あるいは外貨資金、日本側の権利にある外貨資金というものを、途上国そのほかの国々の発展のためにこれを使っていただく、そのために日本が国際機関あるいは二国間同士でそのお金を供与する、これは無償じゃなくしてノンタイド、そういうアンタイドという形でこれを提供する、そういう意味であると思います。
  143. 井上一成

    井上(一)委員 今回の補正予算と資金還流計画との絡みについて大蔵大臣からお答えをいただきたいと思います。
  144. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいま総理大臣が言われましたように、リサイクルをいたします資金のもとは、一つは国、予算支出がございます。これは国際機関に対する出資等になるわけでございますが、それからもう一つ政府機関によりますものがございます。それは、基金でございますとか輸銀でございますとかでございます。もう一つは民間資金がございます。これは、例えば世銀等が起債をいたしますときに民間資金がこれを引き受けるという形になるわけでございますが、その三つのソースから日本の持っております外貨をリサイクルする、こういうことでございますが、先般の緊急経済対策にはこの考え方を盛っておりますが、このたびの補正予算につきましては政府支出に当たる部分はございませんので、特には補正には入っておりません。
  145. 井上一成

    井上(一)委員 アジア開銀等への拠出金三十億円はこの二百億ドルには入っていないわけなんですね。
  146. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 大変失礼いたしました。お許しをお願いいたします。  アジア開銀等に対する三十億円の出資分はこのたびの補正予算に計上いたしておるそうでございます。間違えました。
  147. 井上一成

    井上(一)委員 私は、補正予算審議に当たって大蔵大臣がそういう中身まで御存じないというのは非常にどうか、いかがなものかと思うのですよ。だから、二百億ドルの中に拠出金というものが三十億円入っている、今回の補正で。さらには当初予算でも計上されているわけなんです。今後、その後の予算手当てというものは民間資金、いわゆる今言われた三つのソース、私は、そんなに民間からうまく資金が、リサイクルの資金として活用されるような今、体制なのかどうか、そして拠出金はリサイクルなのか、こういうところを大蔵大臣に聞いておきたいと思うのです。
  148. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 まず、民間資金がそのようないわゆるリサイクルに乗るかということでございますが、これは私は十分に乗り得ると考えております。と申しますのは、そのかなりの部分が世銀債の起債でございます。起債の中には借りかえも入っておりますので、これは十分に東京市場でこの世銀の起債に応じ得ると思います。  それから、もう一つ民間資金が出てまいりますのは、輸銀等々が融資をいたしますときに協調融資になる場合がございます。この場合も民間銀行は安んじて協調融資に輸銀とでございますと応じると考えられますので、民間資金の出について私は心配を余りいたしておりません。今後三年間でございますから、まずまず大丈夫かと思います。  それから、あと国が支出いたしますもの、拠出いたしますもの、それは例えばいわゆる特別ファンドでございますが、それは世銀もあり、アジ銀もございますけれども、こういうものは予算支出になりますが、当然にリサイクルになります。
  149. 井上一成

    井上(一)委員 非常に確定要素が不安定であるというそういう状況の資金というものは、キープすることに大変骨が折れる、むしろ政府資金のいわゆる手当てというのが大事である。片方では内需拡大を言いながら、民間の資金を当てにしているというこの二百億ドルの資金還流については、私自身は非常に先の安定度を案じているわけなんです。  それで、そういう意味で、それじゃ政府関係の、もっと具体的に突っ込んで、二百億ドルの政府と民間との、あるいは世銀、輸銀も含めてどれくらいの比率でやるのですか。去年の百億ドルに対しての比率はどうだったのですか。
  150. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 まず、二百億ドルについて申し上げます。  まず最初の八十億ドルの部分でございますけれども、これは世銀特別ファンド方式による還流が七十億ドルございます。そのほかに国際開発金融機関への出資分十億ドルがございます。これを合わせまして八十億ドルでございます。これは、先ほど申し上げました国際金融機関への出資十億ドル、これは政府資金でございますけれども、それから世銀に対する特別ファンド七十億ドル、これもそうでございます。  なお、次に九十億ドル分がございます。これは輸銀、基金、民間銀行による協調融資等々を含んでおりますが、その内訳を申し上げますと、実行団体に輸銀から入りましたもの、インドネシア十二億ドル、フィリピン三億ドル、トルコ等々数億ドルでございます。それからそのほかに基金の分が、今後ノンプロジェクト借款等々含めまして予想をされております。これは三年間でございますので、それ以上具体的にこういう案件、こういう案件と積み上がって申し上げることはできませんが、それがございます。  第三に輸銀の開発途上国に対しますアンタイドローン、直接融資の拡大分でございますが、これが三十億ドルございまして、合計で二百億ドルになるわけでございます。  それから百億ドルの内訳について申せということでございましたが、これは第一に世銀特別ファンドに二十億ドル、それからIMFへ貸し付けをいたしました三十六億ドル、それからIDAとアジア開発銀行、IDAが二十六億ドル、アジア開発銀行が十三億ドル。これらはすべてもう既に済んでおりまして、九十五億ドルでございます。これを丸めて百億ドルと申しております。  これは既往分でございますから内容がはっきりしておりますが、あとの二百億ドルはただいま申しました八十億ドル、九十億ドル、三十億ドルの合計でございます。
  151. 井上一成

    井上(一)委員 外務大臣がASEANの外相会議で、五十億ドルとも言われているのですけれども、産業構造高度化基金ですか、これを約束されているのです。これもまた二百億ドルの中に入るのか、別途なのか、これはいかがなんですか。
  152. 倉成正

    倉成国務大臣 お答えいたします。  ASEANの拡大外相会議でASEANの外相の皆さん方から、ASEANのファンド的なものをつくりたいという御要望がございました。しかし具体的な中身についてはまだ先方で固まっておりませんので、これはかつて福田ファンドというものがございましたけれども、いろいろそういうものの経験にかんがみまして十分具体的な想をASEANの諸国で練っていただいた上で御相談に応じましょうと……(井上(一)委員「二百億ドルに入るのか入らないのか」と呼ぶ)それは、その中の一部は当然入ると思います。
  153. 井上一成

    井上(一)委員 さらに中曽根総理にお伺いをしたいのですが、首脳会談で総理がレーガン大統領とお話しになったときに、この還流問題で開発途上国、特にアフリカ、アジアということを御指摘になったと思うのですが、中南米のお話はなかったのかどうか、あるいはレーガン大統領から中米に対する我が国の援助要請方があったのかどうか、このことについて尋ねておきたいと思います。
  154. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 レーガン大統領から中米あるいは中南米に対して特にそういう発言はございません。私が申し上げた中には地域開発銀行、例えば米州銀行とかアジア開発銀行とか、そういうものを通じて行うものもある、そういう説明はいたしました。それから、サハラ以南のアフリカに対して三年間で五億ドルの無償援助を行います、そういうことも申し上げました。
  155. 井上一成

    井上(一)委員 総理が在任中に世界各地を歴訪されて、国際国家日本としての役割を大いに自賛されていらっしゃるわけなんですけれども、中米に対する和平というのでしょうか、これは世界平和のために大変大事なことだと私は思うのです。そういう意味では、中米に対する関心が中曽根内閣としてはやや薄かったのではないだろうか。任期いっぱい全うされるという決意をしばしば伺うわけでありますが、中米和平に対する我が国の果たせる役割というものをぜひこの機会に明確にすべきではないだろうかというふうに私は思うのです。  特に、相でき得ることならば、いろいろと最終の外遊、総理がどこを訪ねるかということを風間で相聞くわけでありますが、私は、やはりアメリカに最も近い友好国であるとする我が国であれば、アメリカの裏庭ともいうべき地理的条件にある中米問題を我が国が注視するというか、関心を持って外交政策を打ち立てるということは今日一番大事なことではないだろうか。貧困あるいは民生の安定、いろいろな意味で今二百億ドルの還流資金というそういう援助資金を太いにぶち込むべきではないだろうか、そのことが世界の平和に役立っていく、こう思うのです。総理の見解を聞いておきたいと思います。
  156. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 中米につきましては、コンタドーラ・グループの活動を支援いたしまして、コンタドーラ・グループによる調停のもとにニカラグア問題そのほかが解決することを強く要望して、コンタドーラ・グループの皆さんを激励しておるわけでございます。もし和平達成のためにそれが非常に重要な条件として使われるならば、我々としてもそういうような平和的な民生安定のために今のようなお金を、あるいは米州銀行を通じてあるいはバイラテラルで供与するということも情勢によっては考慮しても結構だと思います。
  157. 井上一成

    井上(一)委員 ここで私は、OECFの総裁、大変申しわけないのですが、若干の質問をしたい。  このことは昨年の十一月の臨時国会で、私がいわゆる基金の果たす役割ということを強く皆さんに訴えて、果たして透明度があるのかどうか、あるいは正しい、相手国に対して喜んでいただけるような援助をやっているのであろうか、そういう中で具体的に一つの事例を挙げまして、オーバーシーズ・プロジェクト・マネジング・コンサルタントという会社があるわけなんですね。以後私はこれをOPMACと略します。OPMACは私的企業なのか、公的企業なのか、政府関係があるのか、あるいは一介の民間企業、営利を目的とする株式会社なのか、このことについてまず聞いておきましょう。
  158. 細見卓

    ○細見参考人 お答え申し上げます。  OPMACと申しますのは、実は日本がやっておりますいろいろなコンサルタント業務の中で一番欠けておって問題になりますのは、いわゆるエンジニア、物をつくったり道路をつくったりするのは日本の技術は大変進んでおるわけでありますけれども、それをいかにうまく運営していくか、これが実は途上国には一番欠けておることなんでありますが、そういういわゆるマネジメントについて相談に応ずる会社がないということで、亡くなった人を申し上げて恐縮でありますけれども、亡くなった東京銀行の渡辺頭取が、そういうことを補うために何とか民間でそういうことに応じられる会社をつくろうという意見が出まして、そして井上頭取の努力によりまして、十三の都市銀行、興長銀、信託銀行五つあるいはほとんどの大商社、それからコンサルタント会社も二十社ばかり、合計四十数社という人たちがその趣旨に賛同されまして、これは金もうけではあるけれども、いわゆる金もうけのための金もうけではないというような会社ができたわけです。ですから、性格を申せとおっしゃれば個人会社でございますが、考えようによってはナショナルプロジェクトというようなものでございます。
  159. 井上一成

    井上(一)委員 限られた時間ですので、大変申しわけないのですが、質問の要旨をポイントよくお答えをいただければありがたいと思います。  このOPMACはジャマイカのブルーマウンテンコーヒーの開発計画事業のコンサルタントの下請業者をやった、こういうことは事実ですか。
  160. 細見卓

    ○細見参考人 事実でございます。
  161. 井上一成

    井上(一)委員 その請負をした下請企業の中にOECFから職員を派遣したことも事実ですか。
  162. 細見卓

    ○細見参考人 そのとおりでございます。
  163. 井上一成

    井上(一)委員 その派遣した職員の仕事は、そのいわゆる援助のプロジェクトの中でどういう仕事をやったのですか。
  164. 細見卓

    ○細見参考人 主としましてお金の取り扱い、つまりツー・ステップ・ローンと申しまして向こうの企業から直接農民に金を貸した力、そういういろいろな業務がございますことも含めまして、全体としていかにファイナンスするかということに主としてかかずらったわけであります。
  165. 井上一成

    井上(一)委員 ここに私は、その出向させた職員の任務が「財務サービス」。事業主体、これはジャマイカ政府ですね。「ジャマイカ政府側に対しOECF借款の諸手続方法の指導と入札、同契約の審査、財務会計関係者のトレーニング等不測の事態に対する補足的なサービスを提供する。」まさに審査をする。そういうことへのOECFの援助に対して、援助を受けるジャマイカ側政府との折衝役に当たる、そういう形での全くもって好ましからざるというよりもむしろめちゃくちゃなことをやって、東銀の亡くなられた渡辺頭取の趣旨に全く反するじゃないですか。あなた方はそういうことをやって、今総理が言う開発途上国に対する国際的公約に沿うと思っていらっしゃるのですか。
  166. 細見卓

    ○細見参考人 やり方については御批判もあるいはあろうかと思いますが、取り組んでおりますプロジェクトはまさにジャマイカの代表的なブルーマウンテンコーヒーの栽培ということをやっておるわけでございます。
  167. 井上一成

    井上(一)委員 私はそのプロジェクトの是非を論じているわけじゃない。じゃ、OPMACとOECFとは関係があるのですか。OECFの関連企業なんですか。そうじゃないでしょう。
  168. 細見卓

    ○細見参考人 関連事業じゃございませんで、先ほど申し上げましたマネジング・コンサルタントということのいわば見習いとして、研修のために派遣しておった職員でございます。
  169. 井上一成

    井上(一)委員 私は一点、少なくとも国家的な事業を手助けする、いわばコンサルだとさっき言われたわけですけれども、実態は営利事業である株式会社にOECFの職員を派遣する、そしてそこで援助にかかわる仕事をやるなんということは、これは全く癒着以外の何物でもない。何の弁解もできないんじゃないですか。こういうことが今の日本の海外経済援助の実態であるということの一例を私は前回から指摘をしているわけです。これに対してOECFは何か申し開きがあればおっしゃってください。
  170. 細見卓

    ○細見参考人 先ほども申し上げましたように、職員を派遣いたしましたのは、いろいろマネジング・コンサルタントの業務について研修のために派遣したわけでありますけれども、いわゆる株式会社で研修でありますから、研修の過程、つまりオン・ザ・ジョブ・トレーニングというのが営利事業に結びついた、そのためにいろいろな誤解を招いたということに対しては今後気をつけなければならないと思っております。
  171. 井上一成

    井上(一)委員 私はさきの国会でも、出向した本人の名誉を傷つけたくないということであえて名前も出しませんでした。しかしまあ、S氏としましょう、きょうもまた、このS氏はそれじゃ給料は、S氏に対する報酬はどこが負担をしていたのですか。
  172. 細見卓

    ○細見参考人 研修に派遣した考えでおりましたので、私の方で払っておりました。
  173. 井上一成

    井上(一)委員 幾らOECFは負担したのですか。そして、いつからいつまでの分として負担したのですか。
  174. 細見卓

    ○細見参考人 派遣をいたしておりましたのが五十八年の十一月から約三年間でございます。それで三年間の給料でございますから、約で申し上げますけれども、約二千万ぐらいになっております。
  175. 井上一成

    井上(一)委員 OPMACの設立はいつなんですか。そして、このコーヒー事業にOPMACがかかわったのはいつなんですか。
  176. 細見卓

    ○細見参考人 正確には記憶いたしておりませんが、非常に早い段階です。設立して間もない段階の事柄でございます。それで鈴木という、Sという人間はそのときから出向しているわけでございます。
  177. 井上一成

    井上(一)委員 そちらの答弁が鈴木と言ったから事実鈴木さんなんですね。じゃ、これからは鈴木さんと言いましょう。その鈴木さんに対しての給与はOECFが持ち、仕事はOPMACの仕事をし、OPMACはジャマイカ政府から下請をした企業の、Cとしましょう、Cの下請をしているわけなんです。そして、ジャマイカ政府はこのサービスに対して一定の負担をしているわけなんですね。少なくとも鈴木さんに対する報酬はジャマイカ政府側は幾ら負担をしているのですか。少なくとも報酬だけですよ。いろいろと航空運賃だとかあるいは滞在費だとかそういうことは要りますが、まあ計算上、ジャマイカ政府がこの鈴木さんに対してどれだけ支払ったことになるのですか。
  178. 細見卓

    ○細見参考人 詳しい内訳は、総括で支払われておりますので明らかにできないかと思いますが、仮に同じような人間がもし基金の給料でなく自分で、自腹で払っておったとすれば約一千万ぐらいの金はかかっておっただろうと思いますから、それに対する対価が支払われておるのではないかと思います。
  179. 井上一成

    井上(一)委員 確かに私の調べでは、人件費、これは報酬としてですね、給与としては一千二十九万、このコンサルのサービスに対しての総額が二億二千二百万余りなんです。これはただ単なる報酬というか給料ということでのサービスに対する、コンサルに対するジャマイカ政府の支払いなんです。  私はここで申し上げたいのは、これはまあ大きなプロジェクトです。そのプロジェクトの問題にもいろいろ疑問はありますけれども、先ほどから申し上げているように、政府機関であるOECFの職員がOPMACという民間企業、それも直接の請負ではなく、OPMACがジャマイカ政府から請負をしたその中に入り込んで、そしていわばそこの社員になってOPMACがジャマイカ政府から一千万からの給与を取るということは、給与の二重取りじゃないですか。そう思いませんか。
  180. 細見卓

    ○細見参考人 こちら側の、つまり日本側でのだれがどういう形で給料を払うべきかとい五問題はあろうかと思いますけれども、そのOPMACがジャマイカ政府に提供したコンサルティングサービスというのはそれなりに評価されていいんじゃないかと私は思います。
  181. 井上一成

    井上(一)委員 サービスに対する評価とそのサービスに対する報酬を受けるということとは、これは別な問題なんです。政府の職員が開発途上国に対してその知り得るノーハウをどんどんと提供すべきことは、私は大賛成ですよ。しかし、相手国から金を取るなんというのは、こんなことが許されますか。その職員にはOECFが金を払っているんでしょう、二千万から。そういうことが国際国家と言えるのですか。これは後で総理にすべて総括してお聞きしますが、あなた方のやっていることは許されない。私はこういうことは許せない。ジャマイカ政府は、これは日本の金を、金利が四・二五%で二十五年償還で、これは返す金でしょう。そんな金からたとえ幾らの額といえども取るという、そういうような精神が、そういう根性が、まさに日本が世界から批判を受ける一つの大きな問題である、こういうことなんです。そんなことを率直に反省をし、そしてしっかりとこの際出直すのだという、そういう姿勢がOECFにないと私は困る。OPMACは、総裁が言われたように、当初の精神を受け継いでしっかりと国際協力に、その職務にもっともっと専念してほしい。  じゃ、そういう金をサービスに対してもらって当然ですとあなたはお考えなのか。それは私が指摘したように、これは当然誤った受領である、いわば二重取りであると私は言っているわけなんです。OECFから取って、そしてOECFから金をジャマイカに貸して、そして貸す手続は全部鈴木がやったんでしょう。そしてそれはOPMACが中に直接入らずに、Cというコンサルが入って、Cというコンサルの中に、たった六人のチームメンバーの中にOPMACは何人入っていたんですか。
  182. 細見卓

    ○細見参考人 先ほども申し上げましたように、これは単なるかんがい事業とか道路をつくるとかあるいは農園をつくるとかいうよりも、新たにコーヒーを栽培する農民を呼び込んでくるといいますか、委嘱を求めるとか、あるいは今ブルーマウンテンというのは大変希少コーヒーでありますけれども、大量に生産したときにどうなるかとか、そういういろいろな問題がございまして、いわゆるマーケットリサーチ及びファイナンシングのマネジメントコンサルタントの八人ばかり行っておりました一員として、それなりのサービスを、あるいは仕事をしたことに対する包括的対価の中の一部であることは変わりないと思いますけれども、と申しましても我々の方が一方では給料を払っておったことも事実でございますし、今井上先生がおっしゃったような誤解を受けておることも事実でございますので、この際はそういうことを一切されいにするという意味におきまして、OPMACに、もし基金の職員でなくて彼らが自分で同じような職員を雇っておったであったならば、そのかかったであろうコストは我々の方へ返還を求めるというようなことを一応考えております。
  183. 井上一成

    井上(一)委員 この六人のコンサルのチームメンバーの中にOPMACから三人入っているんですよ、半分。その一人として鈴木さんがOPMACにOECFから出向しているわけです。OPMACはやはりそういうことをしちゃいけないという一つの行政指導をやらなければいけないし、本当にその設立の趣旨から考えればそういうことをしなければいけないし、そしてOPMACに対して、今本人に不利益を与えない範囲で、その鈴木さんに不利益を与えない範囲で、私はこれはOPMACから金を、二重取りをしていた給与は返還させるべきである。返還させますか、どうですか。
  184. 細見卓

    ○細見参考人 御趣旨のように善処したいと思っております。
  185. 井上一成

    井上(一)委員 させるんですね。
  186. 細見卓

    ○細見参考人 させます。
  187. 井上一成

    井上(一)委員 さらに私は、これはもう本当にこういう具体的な問題を、事例を挙げなければなかなか皆さんの方でも御判断をいただけないので、前々から、フィリピンの援助問題にかかわってもそうでございましたし、あらゆる援助に対しては、そこに協力をする、さらには参加をしていろいろとその事業の推進に当たる企業を公表すべきである、私はそういうことを申し上げきたわけです。これは今回のほんの一例にすぎないと思うのですが、十一月の委員会で委員長にぜひそのことをお願いをし、政府をして公表に踏み切るべきであるということを強く要望してきたわけです。  外務大臣にお伺いしますが、今のごくわずかな一つの事例をお聞きをいただいたわけですが、こういう事態になっても外務省はすべて相手国の主権云々あるいは相手国に対してということで公表を避けられるのか。この際思い切って相手国の了解を得て外務省としては、日本政府としては公表に踏み切る、それだけの強い決意を私はぜひ持っていただきたいし、そういうお答えをいただきたいと、大変長い時間かかったわけですが、いかがですか。
  188. 倉成正

    倉成国務大臣 本来、企業名等の契約内容に係る事項の公表いかんは契約者当事者間の問題であり、契約当事者でない我が国政府として公表し得る立場でないことは従来申し上げてきたことでございます。  しかしながら、企業名公表については、ただいま井上委員お話しのとおり、従来の国会における諸議論、特に昨年十一月の衆議院予算委員会における御議論を踏まえまして、政府としては援助に対する国民理解と支持を得ていくための努力の一環として、今後の資金協力案件にかかわる企業名の公表につき、相手国との関係も念頭に置きつつ検討を行ってまいったところでございます。その結果、既に大方の関係国から新規の資金協力案件についてこれを公表していくことについて了承を得られたので、今後これを公表していくように計らいたいと考えておる次第でございます。  さらに、政府といたしましては、我が国の重要な国際的責務たる経済協力を今後一層拡充していくために国民理解を深めていくことは極めて重要であると考えておりまして、こうした観点から、経済協力に関する広報については一層の努力を払う決意でございます。
  189. 井上一成

    井上(一)委員 念を押すようでございますが、公表をする、原則として公表をする、そういうことでございますね。
  190. 倉成正

    倉成国務大臣 原則としてそのように考えております。
  191. 井上一成

    井上(一)委員 私は基金に、先ほども申し上げましたように、鈴木さん、固有名詞を挙げて、あなたの方が挙げたから、大変気の毒なんだけれども、本人に不利益を与えない範囲で、どれくらいの額の返還をOPMACに要求されるのでしょうか。
  192. 細見卓

    ○細見参考人 先ほど申し上げましたように、OPMACが私の方からの職員をもし使わないで自分たちで使っておったならば、かかったであろう約千万余を返還させる考えでおります。
  193. 井上一成

    井上(一)委員 この問題は大変大きな問題だ。一つには、今申し上げたように、みなし公務員ともいうべき政府機関の職員が民間企業に出向して、そして仕事をうまくとれるように段取りをした。そういう疑惑を持たれても仕方がないような状況である。職務にもう少し忠実でなければいけないし、これこそまたOECFの精神を履き違えている。  それともう一つは、OPMACから一千万余りの金を受け取った場合にこの金をどうするのか。OECFとOPMACとが組んで、ジャマイカ政府からいわば詐取的な、ペテン師的な金の流れだ、こういうふうに私は思うのです。それは故意であるかあるいは結果の問題であるかは別にして、一般的な常識から考えれば。そういうことは国際信義にも、何というかもうお話にならない。こういうことが本当にいいのかどうか。もちろんいいという道理はないのだし、こんなことで日本はどうするのだ、こういうことなんです。むしろジャマイカ政府に謙虚に頭を下げて、千何百万か千万余りのお金を大変悪うございました――通産大臣がきのうアメリカココムの問題で行ったように、このOECFの問題では総裁が、御苦労ですけれども、OPMACから金を取って大変申しわけないと、ジャマイカ政府にお返しに行くぐらいの姿勢が必要だと私は思うのですよ。どうなんですか。
  194. 細見卓

    ○細見参考人 気持ちは全くそうでございますけれども、この男がそれなりにジャマイカ政府にふさわしいサービスを提供したことも事実でございます。正当な対価を私どもではなくてOPMACという会社が提供したわけでございますから、OPMACに必要以上の負担をかけるのは適当でないと思いますし、我々といたしましてもその金をやはり政府にお返しするというのが筋だと思っております。
  195. 井上一成

    井上(一)委員 金額は少ないのですが、二百億ドルから一千二十六万ですか、これは単純な給与計算だけの問題で、それに関連した諸費用というのは私はたくさんあるだろうと思うのですよ。今後OPMAC以外にもOECFがこのような出向をさせないという、あるいはそういうことも――この鈴木さんは現在は引き揚げてきたのでしょう。私が指摘をしたこの問題に対してどういうふうに対応するのか、対処するのか。じゃ、まず金は政府にお返しをしたい、こういうことなんですよ。それで後はどうなさるのですか。人的ないわゆる教育の問題あるいは人的な派遣の問題、あるいはこれからOECFがOPMACとのかかわりをどうしていくのか。
  196. 細見卓

    ○細見参考人 お金の点は今申し上げたようなことでございますし、人の問題につきましては、先生御承知のように、これからの発展途上国に対してどういう能力を持った、どういう才能の訓練を受けた人間が本当に途上国のために役に立つ人間になってくれるかというためには、私どものような一方的な組織でなくて、いろいろな分野でいろいろな検討をしてみるということは必要じゃないか。ですから原則的に、誤解を受けるようなところにはこれからももちろんやってはいけないと思いますが、いろいろな訓練の機会というものはやはり残しておくべきではないか、かように思います。
  197. 井上一成

    井上(一)委員 まだまだ聞きたいことはたくさんあるのですが、総理、ひとつ今の私の質疑を通して、要約して私は三点あると思うのですよ。審査をするOECFの側が審査を受けるそういうコンサルに職員を派遣した、これはもってのほかだと思うのですけれども、こういうことに対する問題。さらには今言う相手国から二重取りしていたという、これは我が国が、OECFが融資をするわけですから、そういう貸した金から給与という、私は、給与以外のお金もあるんだけれども、一番わかりやすいから給与ということにしたわけですが、そういう給与を二重取りしていたという事実関係。さらには私が指摘をした、国際国家日本だと大きく見えを切られてきた中曽根総理として、国際的に道義的にも信義的にも私は著しく傷をつけたと思うのですよ、この問題は。こういうことをほっておいてはいかぬので、これこそまさに総理の決断が必要である。ひとつ総理の御決断というか、これに対するお考えを聞かしていただきたいと思います。
  198. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 お話を承っておりまして御指摘のとおりであると思いました。  まず第一に、OECFから派遣された者はやはり日本人としての名誉を傷つけたケースではないか。二重取りもそうでございますし、また表へ出さないことがあるいはあるかもしれません。そういう意味におきまして、前から海外経済協力については厳正な査定と公正な執行、そして相手側の身に立った親切なやり方、そういうことを強調して監査も厳重にやらせているわけですが、そういう事件がまだ後を絶たないということは甚だ遺憾でございまして、外務省あるいは交流基金そのほか、襟を正してこういうことを是正するように、再発を繰り返さないように注意したいと思います。
  199. 井上一成

    井上(一)委員 検査院はお越しでしょうか。お越してはないですか。  それではもう一点だけ。これは外務大臣、知っていただきたいのですが、ボルネオの奥地で、いわゆる狩猟民族のプナン族という人たちが生活の場にしているところを援助で林業開発事業をやっているのです。私は、もちろんいろいろその国にはそり国なりの事情があると思うのですけれども、この件については格段のやはり配慮をしていただきたい。少なくとも生活の場にしている環境あるいはその地域が、いわば開発、いわゆる援助事業でその人たちが生きることへの希望が持てないということでは大変困った問題だ。ついては、この問題について外務省として十分気を配っていただけるかどうか、現状も十分調査をしていただいて、実態を見きわめてもらって善処方を強く要望したいと私は思うのですが、お考えをひとつ聞かしてください。
  200. 倉成正

    倉成国務大臣 ただいまの御指摘の点、私、現在詳細承知しておりませんけれども、十分調査をして善処をいたしたいと思います。
  201. 井上一成

    井上(一)委員 それでは次の問題に移ります。  実は総理ココムの問題がこの予算委員会でも議論をされたわけです。過日、アメリカの国会議員が東芝のラジカセをハンマーでぶっ壊しているあの映像が全世界に流れたわけなんです。非常に僕は衝撃的にこれを受けとめたわけなんです。総理はどういう感想を持っていらっしゃるか、ひとつお聞きをしたい。
  202. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 甚だ遺憾な事件が起きたと思いました。そしてアメリカ議会の人々あるいはアメリカ国民の憤激を二回にあらわしていると思いましたが、まあしかしあれまでやらぬでもいいんじゃないか。ややもすると人間というのは過激に走りますが、議員さんというものはできるだけ冷静であるのが望ましい、これは洋の東西を問わず同じであろう、そう思いました。
  203. 井上一成

    井上(一)委員 全く同感なんですよ。そして、私はあの映像を見て教育的効果、教育改革だとかいろいろな議論がなされているのだけれども、あのシーン一つをとらえて、日本の国民に対する教育的効果は逆じゃないか、ああいうことをやれば。だからその本質、いわゆるココム違反であるという本質は別にして、アメリカってひどいことをやるじゃないか、そういうことが教育的効果として非常に私はううんとこう思ったのですが、それはどうでしょうか。
  204. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私の率直な印象は以上のようなことですが、私はアメリカ人からも手紙をもらいまして、あのテレビを見て自分も甚だ遺憾に思った、アメリカ人としてちょっとああいう行き過ぎた態度がテレビで世界に放映されることは甚だ残念である、そういう手紙ももらった事実がございます。
  205. 井上一成

    井上(一)委員 外務大臣に私はあえてお聞きをしたいのですが、日本にココム統制違反という犯罪はあるのでしょうか。
  206. 渡辺幸治

    ○渡辺(幸)政府委員 委員御承知のように、ココムというのは自由民主主義諸国における非公式の相談の会合ということでございまして、したがいまして、ココム違反という犯罪はございません。
  207. 井上一成

    井上(一)委員 外務大臣、やはり外務大臣がそういうことを知っておいてもらわないといかぬのでね。  じゃ、ココム違反ということは外為法違反ということですね、外務大臣
  208. 倉成正

    倉成国務大臣 ココムは御承知のとおり紳士協定を結んでおるわけでございます。(井上(一)委員「外為法違反ですねと言っているのです」と呼ぶ)現在のところ外為法違反でございます。
  209. 井上一成

    井上(一)委員 それじゃ外為法とココムとはどんな関係にあるのですか、外務大臣
  210. 渡辺幸治

    ○渡辺(幸)政府委員 外為法のもとに輸出貿管令がございまして、貿管令に違反して輸出を行ったものについては貿管令違反、外為法違反ということでございます。具体的に申しますと、物の輸出については外為法四十八条、役務については外為法二十五条ということでございます。
  211. 井上一成

    井上(一)委員 ココムに加盟している国の数は何カ国ですか、外務大臣
  212. 倉成正

    倉成国務大臣 十六カ国と記憶しております。
  213. 井上一成

    井上(一)委員 それじゃココムの規制対象にな保っている国は何カ国ですか。
  214. 渡辺幸治

    ○渡辺(幸)政府委員 先ほど申しましたように、ココムは自由民主主義諸国十六カ国の対共産圏輸出に関する非公式の相談場でございまして、対象国の数及び国名については明かさないという申し合わせができておりますので、お答えを差し控えさせていただきたいと思います。
  215. 井上一成

    井上(一)委員 それはおかしいのですよ。こことここへは貿易をしたらいかぬということをはっきりしてあげないと、これはあなた、どうなるのですか。自由主義経済の本家本元である我が国が、ここへ出したらいかぬということを言えないなんというようなことはおかしいわけなんです。外務大臣、そういうことは私はどうも納得がいかぬのです。それはおかしい。  それじゃちょっともう一つ聞きますが、輸出貿易管理令、これは政令ですが、それの別表に何か区分をしたそういうものはあるのでしょうか。
  216. 畠山襄

    ○畠山政府委員 輸出貿易管理令で昔そういう区分をしていたこともございましたけれども、現在では全地域に対する規制ということになっております。この趣旨は、本来は無論共産圏に対する規制をやるわけでございますが、第三国を経由していくもの、いわゆるダイバージョンでございますが、そういうものも一緒に規制をしようという趣旨から、全地域ということになっております。
  217. 井上一成

    井上(一)委員 通達で地域を指定している国はどこですか。
  218. 畠山襄

    ○畠山政府委員 私どもの事務処理を定めている通達がございまして、その通達の中で本省で事務を取り扱う地域、そういう性格のものとして掲げてあるのがございます。
  219. 井上一成

    井上(一)委員 それはどこの国なんですか、何カ国なんですか、ちょっとおっしゃってください。
  220. 畠山襄

    ○畠山政府委員 その「い」地域として、これはちょっとくどくて恐縮でございますけれども、必ずしもココムの対象地域ということではございませんけれども、その通達の中で「本省が処理をすべきもの」ということで「い」地域として定められております国は次の国でございます。アフガニスタン、アルバニア、ブルガリア、キューバ、チェコスロバキア、ドイツ――ドイツというのは東ドイツでございます。ハンガリー、朝鮮、これは(大韓民国政府の支配する地域を除く。)と書いてありますが、モンゴル、中華人民共和国、ポーランド、ルーマニア、ソビエト連邦及びベトナムでございます。
  221. 井上一成

    井上(一)委員 この「い」地域というのは、今言われたように慎重に審査することですよと、こういうことなんです。逆を言えば、ここがココムの共産圏の対象地域だと私は理解をするわけです。もしここへ出してココムに違反しないというなら、ここで答えておいてください。私は、この地域に出すことは本省所管で慎重にやらなければいけないということですから、これはココムのいわゆる規制対象地域であるということを内々審査の過程で示している、こういうふうに思うのです。そういうふうに理解をしていいかどうかです。どうなんですか。勝手だとおっしゃるかもわからぬけれども、私はそう理解している。
  222. 畠山襄

    ○畠山政府委員 確かに本省で慎重に審査する国ということではございますが、それ以上のものであるということを公式に申し上げるのは差し控えさせていただきたいと思います。
  223. 井上一成

    井上(一)委員 中国は対象地域ですね、その今言う地域の、慎重に。それじゃ台湾は規制対象地域帯と位置づけていいのかどうか、おっしゃってください。
  224. 畠山襄

    ○畠山政府委員 くどくて恐縮でございますけれども、私どもが本省で事務を取り扱っている地域として、中華人民共和国ということが書いてございます。
  225. 井上一成

    井上(一)委員 いや、それはくどいことって、それはわかっているんだから、中国は対象地域ですねと言ったら、はいと言ったんだよ、今。そうでしょう。だから、台湾もそうですねって言っているんですよ。イエスかノーかしかないのですよ。おっしゃってください。私は今、私が理解しているだけだと言ったんだけれども、あなたの方の慎重に審査をする区域というのは、これは「い」地域だ、だから台湾はどうなんですかと。おっしゃってくださいよ、答えてください、外務大臣
  226. 畠山襄

    ○畠山政府委員 ここに書いてございますのは地域概念でございますので、これ以上の通産省からの答弁は御容赦願いたいと思います。
  227. 井上一成

    井上(一)委員 いや、だから私は外務大臣に聞いているんですよ、外務大臣。私は通産省に聞いているんじゃないのですよ。外務大臣、いかがですか。中国は今通産のおっしゃっている慎重に審査をする区域ですと。台湾はいかがですか。私はそうですねということを、そうでしょうねということを聞いているんですから、どうなんですか。これは答えてくださいよ。これは答えがないと……。
  228. 渡辺幸治

    ○渡辺(幸)政府委員 私の承知しているところでは、台湾地域は入ってないと思います。
  229. 井上一成

    井上(一)委員 外務大臣はそれをそういうふうに理解をされますか。外務大臣
  230. 倉成正

    倉成国務大臣 ココムの対象国は、ココムの参加国の申し合わせによって公表しないことになっておるわけでございます。したがいまして、私からはそれ以上のお答えを申し上げるわけにはまいりません。
  231. 井上一成

    井上(一)委員 外務大臣、これはやはり中曽根内閣のまた大きな問題点だと私は思うのですよ。台湾がその地域ではありませんという、今局長答弁なんですよ。これは大変なことなんですよ、その地域でないと言えば。総理一つの中国を本会議であれほど強調されたということ、私は、これはしっかり、はっきりしておいてもらわぬと大変なことになりますよ。だから、台湾は中国の領土であるという、一つの中国からいけば中国は規制に入っているんだという答弁があり、片っ方では入っていませんということになると、これはどうなるんですか。二つの中国を外務省は認めることになるんですか。これはまた大変なことになる。外務大臣、どうぞお答えをください。
  232. 斉藤邦彦

    斉藤(邦)政府委員 台湾の地位に関します我が国の立場は、日中共同声明第三項に書いてあるとおりでございまして、中国は、台湾は中国の一部であるという主張をしておりまして、我が国はその立場を十分理解し尊重するということでございます。個々の法律におきまして、中華人民共和国という言葉が出てまいりました場合に、それが具体的にどの範囲を指すかということにつきましては、それは個々の法律の性質によるところでございますので、一概に、それに台湾が入る、入らないということはお答えできない次第でございます。
  233. 井上一成

    井上(一)委員 これは今の答弁でも間違いない。二通りあるわけなんです、入らないというのと個々のケースだというのと。どっちが外務省の統一見解なのか、これは少ししっかりと決めておきたい。外務大臣、いかがなんですか。もう一度繰り返して恐縮です。台湾は対象地域に入るのか。僕は、中国は一つという視点から、中曽根内閣の理念からいけば入る、こういうことになるんじゃないですか。
  234. 斉藤邦彦

    斉藤(邦)政府委員 先ほど一般論でお答えいたしましたが、外為法上の中華人民共和国に台湾が入るか否かという点につきましては、外為法という法律の性質上、中華人民共和国が具体的にどの地域を支配しているかという観点から判断されるべき問題と思いますので、台湾地域はそこに言っております中華人民共和国に入っていないと解すべきものと考えます。
  235. 井上一成

    井上(一)委員 これは大変な答弁ですよ。総理、これは大変な答弁なんですよ。これはやはり総理、ここで修正を、修正というか総理の御見解をきっちり聞いておかないとまた大変なことになる。
  236. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 外務大臣からもう少し懇切に答弁をさせます。
  237. 斉藤邦彦

    斉藤(邦)政府委員 繰り返しになって恐縮でございますけれども、その外為法という法律の執行目的上、これは実際上の支配が及んでいるか否かという観点から判断されるべきものでございますので、この際一この際といいますか、この法律上、台湾は中華人民共和国に含まれておりません。
  238. 倉成正

    倉成国務大臣 日本の国家意思として中国は一つであるということは、日本政府の変わらざる意思でございます。したがいまして、その点については、我々の見解は日中共同声明また日中平和条約に基づいておるわけでございますが、外為法について申した点は、ただいま条約局長が申したとおりでございます。
  239. 井上一成

    井上(一)委員 総理、いかがでしょうか。
  240. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 日本の国家意思は厳然として一つの中国であり、日本は当時の共同声明及び平和友好条約を厳守しておるのでありまして、この点についてはみじんの疑いもないと確信しております。
  241. 井上一成

    井上(一)委員 国家意思というのは一つであるということは再々申されているので、十分理解をしているんですが、実際上の問題として、外為法にはその支配が及ばないのでこれは除外をするというお答えなんですよ。私は、これは大変なことだ。だから、中国は一つという視点に立つと、台湾もその規制対象区域に、これはココムとは私はまだ言っていませんよ、通産の別表の、その範疇、そこに列記された国名に中国という国名があるんですから、台湾は中国ですから、そういう意味一つの中国という視点から考えれば、そこに包括されるのではありませんかと聞いているんですが、今までは、それは現実的に支配が及んでないということで除外している、こういう答弁なんです。それでよろしいんでしょうか。
  242. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 外務省で申されたとおりであると思います。
  243. 井上一成

    井上(一)委員 これはもっと詰めた話をしなければいけないわけですが、私、これは非常に大きな問題に波及するのではないか。そういうことのないように、波及をしないように、私は十分な手だてを、手だてというか対策というか、そういう見解を統一しておくべきである、こういうことを申し上げておきます。  外務大臣、さらにあなたは、因果関係の存在を、けさも我が党の川俣議員の質問にその存在を答弁されているわけですが、アメリカから安全保障上の問題で損害補償を要求された場合には一体どうするのか。そういうことは好ましくありませんよ、そういうことは好ましくないけれども、政府がその因果関係の存在を一定の範囲内で認めたということは、そういうことも起こり得るケースがある。そういうことについて外務大臣に――むしろ防衛庁長官は、ハードエビテンスがないんだということをおとといだったか、おっしゃられたわけです。だけれども、外務大臣はそうではないので、そういう要求があったら、どう抗弁をしていくというか対応していくのですか。
  244. 倉成正

    倉成国務大臣 本件につきましては、昨日総理からは濃厚な嫌疑があると述べられたとおり、我我としては、本件機械性能使用目的及びその他の情報から一般的に判断すれば、両者の間に一定の因果関係は存在し得ると考えられるが、具体的証拠を有しているものではない、米側との間では、今後とも右に関する意見交換を行いたいというのが我々の考えでございます。
  245. 井上一成

    井上(一)委員 さらに外務大臣、きょうの報道で、外務省は今回の再発防止のために物資輸出規制の新法を検討しているということが報道されたわけです。田村通産大臣は、非常に難しい点はあるが現在の外為法の改正で検討したい、こういうふうに答えているんですよ。外務省はここへいわば出てきたわけなんですよ。さっきから聞いていることについては、よう答弁をしないわけなんですよ。そういうことを検討されているのかどうか、また、そういうことを検討するに値するいろいろな資料を持っていらっしゃるのかどうか。通産大臣は外為法の改正ということをおっしゃっているわけなので、それはどちらなんですか。
  246. 倉成正

    倉成国務大臣 ただいま関係省の事務当局間でいろいろな角度から検討しているところでございまして、私のところまで詳細に上がってきておりません。
  247. 井上一成

    井上(一)委員 あなたのところまで上がっていったら、どうするんですか。外務省は検討するんですか。
  248. 倉成正

    倉成国務大臣 その時点で検討したいと思います。
  249. 井上一成

    井上(一)委員 私は、その時点でなんて、今これだけ大きな問題になっているんだから、外務大臣少し、それこそ答弁としてはそういうのは差し控えるべきじゃないか。今こういうことをするんだ、しかし通産大臣は違う、外為法の改正ということをおっしゃっていらっしゃるのですよ。だから外務大臣もその方がいいとお考えなのか、それだけではいろいろと頼りないからこうしたいのですと、どっちなんですか。
  250. 倉成正

    倉成国務大臣 今お答えしたとおり、事務当局間で、十分いろいろ関係各省で意見をすり合わせているところでございますから、それが我々のところに上がってきたときに対応したいと思います。
  251. 井上一成

    井上(一)委員 さらに、外務省が防衛庁にも協力を呼びかけて、向こうのアメリカ政府との、国防省なりいろいろとの関連でいわゆる新しい協議体をつくってこれを検討していきたいという報道も一部なされているのですが、外務大臣、そういうことはこれまた事務当局でやられている範疇ですか。
  252. 倉成正

    倉成国務大臣 ただいまの点は防衛庁長官からお答えされたとおりでございます。
  253. 井上一成

    井上(一)委員 外務大臣安全保障の問題の面からいろいろと防衛庁と外務省との連携というのはそれは必要なんですけれども、やはり集団自衛権という、そういう範疇を十分心がけないと大変なことになりますよ。日本が自立をし、日本の主権国家としての立場はやはり明確にしながら物事を進めなければ、防衛にしたって外交にしたって、議論をすれば、要は日本が自立をしていくというか主体性を持つというところにベースがなければ、アメリカの言いなりになって事を運んではいけないと私は思う。だからそういう意味で、余り時間がありませんが、ただ事務レベルで検討していますということで答弁を逃げるということは、いずれまた機会がありますけれども、この点についても、残り少ない任期だと言われればそれまでだけれども、外務大臣、これはひとつしっかりと答弁をしてほしい。
  254. 倉成正

    倉成国務大臣 ただいま井上先生のおっしゃったこと、しかと承りました。
  255. 井上一成

    井上(一)委員 時間が余りありませんので、次にひとつ建設大臣に御質問をいたしたいと思うのです。  御案内のように、花の万博が大阪で開催をされるわけです。私自身はぜひその成功を願う一員でもありますし、何とか世界から日本に緑を、花を、心と一緒に運んできてほしい、そして成功ができるように。そういう意味で、二千万人とも三千万人とも言われているのですけれども、それの交通体系というかそういうものに対してやはりまだまだ不十分なんです。具体的に私は、地下鉄だけだとかあるいは環状線だけだとかJRだけだ、そういうものではいかないし、あるいは車も非常に混雑をするであろう。幸い大阪には大阪高速鉄道(モノレール)建設が今進んでいます。御承知でしょうけれども、これは空港から阪急までといういわゆる第一次計画として現在着工されているわけですけれども、少なくともこの花の万博を成功させるためにも、経企庁も発表しているように、社会資本にうんとつぎ込むという、そういう見地からもひとつ今思い切って南伸を図るべきである。この南伸というのは少なくとも万博会場まで思い切って前倒しで、しっかりと最優先して、近畿の特に大阪の公共事業として、私はこれをぜひ手がけていただきたい。建設大臣、運輸大臣にも関係がありますけれども、まずは建設大臣に、ひとつぜひ南伸優先の実現方をお願いしたい、こういうふうに思うのです。
  256. 天野光晴

    ○天野国務大臣 先生のおっしゃるモノレールは、大阪空港から南茨木間を着工しておる、これは御承知のとおりであります。南茨木から荒本という地域までの調査にことし着手いたしました。それで、先生から質問があるという予約がございましたものですから、急いでそれをやるわけにいかないか、特に万博が開かれるときまでに間に合えばなお結構じゃないかと言ったのですが、なかなか難しいようです。取り急ぎやるようにという考え方で臨むという結論です。
  257. 井上一成

    井上(一)委員 私は、それ以外にいろいろと新たなものをつくろうということよりも、既定のこの方針を最優先さすべきであるということ、これの約束だけでもしてほしい。新たにほかのことをやろうと考えるよりも、このことを最優先すべきである。もっと極端なことを言えば、今の既定のモノレールをほかへ延ばす、新たに路線を設定するよりも現在の計画された路線を最優先して考えるべきであるという見解を私は持っているわけなんです。私はそれに対する大臣の見解をひとつ聞いておきたいと思うのです。
  258. 天野光晴

    ○天野国務大臣 いろいろ事情はございますし、私の場合は万博の会場までが私の責任になるわけですから、そういう意味でそれはできるだけ促進するように……(井上(一)委員努力してくれますか、南伸に」と呼ぶ)努力いたします。
  259. 井上一成

    井上(一)委員 さらに私は、INF、一%枠の問題もお尋ねをしたいのでございますが、時間の関係で日航の問題についてお尋ねをいたします。  御承知のように、日本航空は今まさに民営化に向けて、いろいろな問題が内部からあるいは外部からも含めて指摘をされているわけです。  ドルの先物買いを十年余にわたって日航がして、そういうようなことで、いわば差損で大変な大損をしておる、その結果は、機材購入についてもまことにもって高価な機材を買わざるを得ない、こういう実態があるわけであります。そういうことを運輸大臣は具体的に説明を受けられたのかどうか。さらに私自身は、質問主意書も含めて日航に対しての問題点を指摘したわけでありますが、日航の経営の問題だということですべてが答弁にはね返ってきたわけであります。  私自身はここで具体的に、JA八一七九、これは機材を九千四百万ドルで購入をした、前渡金として二千万ドル、さらには受領時、六十二年の二月十日七千百万ドル、この購入に対してのキックバック、いわゆる割引料というのでしょうか、それが二百七十万ドル。そういうことで二千万ドルのレートが二百七円、七千百万ドルに対しては百九十二円、キックバックの、いわゆる割引クーポンというのでしょうか、リベートというのでしょうか、バックリベートについては実勢レートの百五十三円、こういうことで帳簿価格としては百七十九億円で購入をしている。これはすべて機材ということでありますから、減価償却に入り、それは経費の問題に即入ってくるわけで、保険料から運賃にこれははね返ってくるわけなんです。一機の償却は十年ということになれば、十分の一毎年償却をしていく。ドルの先買いで損をしたものをいわゆる機材購入に充てて、具体的にはこの一機についても、私の計算では一八%以上の高い値段で買っている。実質的には二十八億円高い値段でこのJA八一七九を購入した。こういうことを承知しているのか。高い機材を買っている、あるいはドルの先物買いの事実関係は承知していたのかどうかということをまず運輸大臣にお聞きをしておきます。
  260. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 今委員御本人からも申されましたように、四月十八日に委員から衆議院議長あて「日本航空株式会社の経営実態に関する質問主意書」が提出をされました。この質問主意書を拝見いたします時点まで、私どもは日航がその先物予約をどういう状況で行っておったかについては存じておりませんでした。  その理由は、続けて申し上げて恐縮でありますけれども、昭和五十六年に日航法が改正をされまして、予算及び資金計画の認可制が廃止をされましたこと、そして運輸省としてはこの法律の改正の趣旨を踏まえまして、企業経理についてはできるだけ日航の自主性に任せるということで参っておった経緯がございます。今御質問の中にもありましたが、これが問題になりまして、この質問主意書を通じて私どもがこの事実を確認すべく日本航空及びその実情についての聴取を行いました。  以上、御報告を申し上げます。
  261. 井上一成

    井上(一)委員 事情聴取の中で、ドルの先物買いについては部内で相当な議論があったというようなことは報告を受けていますか。
  262. 山田隆英

    ○山田(隆)政府委員 お答えいたします。  先ほど大臣から御説明いたしましたように、井上先生から質問主意書が提出されまして、それを受けまして私ども、日本航空に対して本件につきまして事実関係についていろいろ報告を求めました。その段階で社内でいろいろ議論があったということは承知しております。
  263. 井上一成

    井上(一)委員 時間がありませんが、社内のいわゆる稟議の中では、五十九年の九月の稟議で、予約レートと社内レートの差で為替差損は為替差損として計上するということをきっちり決めているんですよ。ところが、機材購入に充てているということも問題なんですけれども、きょうはもう一点、特に三十六機。いわゆる六十年度の監査報告の中で、「六十年の八月に、予約の取りつけ開始前に担当部門から意見の打診があったが、監査役の意見としては、将来の長期の為替の動向は、不確定要素が多く予測しがたい。よって、大幅な円高局面もあり得ることから、十カ年にもわたる為替予約を取りつけることは極めて危険である。」これは考え直しなさい、こういう監査役からの指摘があるんですよ。それをなお踏み切って買ったわけなんですけれども、こういう監査役の指摘があったということを運輸大臣は御承知でしょうか。
  264. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 その事実については存じません。
  265. 井上一成

    井上(一)委員 こういう事実があるので、運輸大臣、当局を呼んでお調べをいただけるでしょうか。
  266. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 恐らく事務方としてはそうした点まで聴取をしておると思いますけれども、私自身も改めて聞いてみます。
  267. 井上一成

    井上(一)委員 じゃ、大臣から改めて聞いていただくと。こういう監査役からの意見があるにかかわらず、ドルの先物に対して、私から言えば日航本体にいわば大変なリスクを負わしたのではないか、そういう為替リスクのヘッジで先物を買っていったという例、こういうことは結果的に大変大きな経営体質を揺るがせたことになる、こういうふうに思うのです。  総理、大変はしょった私の質疑なんですけれども、総理に、そういう体質はやはり改めるべきである、全部がまだわかりませんけれども、監査報告、監査役の意見を聞かなきゃいけない、私はそう思うんですけれども、日航の体質について。一じゃ後で総理については最後にひとつ締めくくって御答弁をいただくとして、運輸大臣、もう一点。  日航の安全度というんでしょうか、いわゆる航空会社の安全度を表現するその尺度というんでしょうか、一定の物差しがあるわけですが、日本航空の現状の安全度というのはどれぐらいの位置づけにあるとお考えでしょうか。
  268. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 私は素人でありますから細かくは存じませんが、いろいろなとり方があるようであります。ですから、例えばこの十年間だけをとりますと、全損事故の率は日本航空は高いと存じます。しかし、これを仮に二十年でとりますと、日航の全損率はそう高くはございません。
  269. 井上一成

    井上(一)委員 それじゃ、まあ中をとって十五年と、こうしましょう。私は、その十五年の中で日航の、いわゆる安全度の一つの尺度としてハルロス・レートというのがあるわけですけれども、これによると、アメリカの平均どころか、日航は今後、全日空の今日の状況までにそのレートを、いわゆるそういう安全度を求めようとしたら、何と百三十三年無事故で通さなきゃいけないんですよ。これから百三十三年日航が事故を起こさずに通して今日の全日空との安全度がバランスを持つわけなんです。それほどまでに日航の安全度というのは危険であるというのは、やはりいろいろな面で注意が緩慢である、こういうことになるんです。だから、緩慢にならないように手だてをしていかなきゃいけない、そういうことなんです。安全度一つとらえてもそうである。あるいは乗客に対する例えば予約制度一つをとらえても、ANA、全日空は予約してキャンセルをすればキャンセル料、ペナルティーを取る。日本航空はそういうこともやらない。民営化のためにどれだけの努力を皆さんが積み重ねていらっしゃるかということはよくわかりますけれども、やはり一部の人たちといえども、そういうような間違った認識や体質が、少し考え直してもらわなければいけない部分がたくさんあるので、その点について、この安全度の問題についてはどう指導されますか。
  270. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 ちょうど私が運輸大臣を拝命いたしまして一番最初に公的な場所に出ましたのが、一昨年の日航機事故の一周年の追悼式の場でありました。そのときにも痛感をしたことでありますけれども、これは航空ばかりではなく、運輸行政全般いずれをとりましても、安全というものほど大きな課題はございませんし、またこれを欠いた場合にはその交通機関に対しての国民の信頼は真っ向から揺らぐわけであります。そして一昨年の事故以来、例えば日航におきましての機つき整備士の制度の創設でありますとかさまざまな改善措置が加えられ、また努力もされてまいったと存じております。そして完全民営という目標に向けて私どもは今国会で法案の御審議を願おうといたしておりますけれども、そうした中においてなお御指摘をいただく諸点も多かろうと存じますが、そうしたものをちょうだいしながら、安全にして国民に信頼される企業に日本航空が育ってくれることを私は願っております。
  271. 井上一成

    井上(一)委員 総理、いよいよ総理に最後。  私は、ここに、いわゆる日航の会長、社長があの事故以来再建を希望して新たな決意に浸ったその文書を持っているわけなんです。山地社長が、「伊藤さんは、非常に信頼のおける副会長でございます。私は尊敬をしております。この方とならば生死を共にしてもいいという気持ちになりました。」例えて申し上げたら、長男が伊藤さんで、私が次男だ。三男が利光さんだ。「次男というのは若干言いたい放題のことをいいます。三男になっては、してはいけないことまでする場合があるかもしれません。長男は絶対そういうことをしないのではないかと思います。」こういうことで、その強いきずなを披瀝されたわけです。さらには伊藤さんは、「この山地社長、利光副社長は、胸襟を開いて、生死をともにできる人だというふうに思っています。山地社長が倒れるときは、私も倒れます。私が死ぬときは、山地社長も死ぬと言ってくれているわけであります。」いわゆる兄弟三人が日本航空再建のために、言葉は大げさだけれども、身分を賭してきょうから努力するつもりでありますという、非常にこの真意というものには共鳴のできるところがあるわけなんですが、そういうことであったのに、いつの間にやらごたごたが続きまして日航の再建が非常に危ぶまれている。  私は総理に、やっぱり日本航空が円満な状況になる、企業も、さらには社員も経営者も、そしてそれを政府もバックアップして、ソフトなテイクオフができるようなそういう状況をつくることが今必要である。余り混乱を求めて、あるいは混乱がこれ以上続くことは、いわゆる民営化に踏み切るについて、安全度、いろいろな面から含めて、非常に大変な信頼を失うことになるのではないか。そういう意味で、いわばこういうときにこそ中曽根総理の指導性というか、ひとつ総理の手腕を期待したい。円満にソフトなテイクオフが可能であるような状況でないと、運輸大臣も国民の信頼を取り戻したいという御意見でございますから、総理としての見解を私はここで締めくくって聞いておきたい、こう思うのです。
  272. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 日航は五百二十名に及ぶ大事故を起こしまして、国民の皆さんの御期待を裏切って大変申しわけない事態でありましたが、これを直すために、伊藤さんの御出馬を願い、山地さんそのほか協力して再出発をしたのでございますけれども、その経過におきまして必ずしも初期に期待したようなことでなく、挫折がついに訪れまして、まことに残念でたまりません。  伊藤さんは、ともかく組合問題、安全問題あるいは経営問題、そういう問題について抜本的改革を志して身を挺して努力してくれたと私は思っております。あの人の熱意と誠意は疑うべからざるものである、そう思っておりますが、やり方等におきましてやや摩擦が生じたという面もなきにしもあらずであります。しかし、本人の善意と誠意というものは一貫してあった、私はそう思うのであります。しかし、事態やむを得ず御本人が辞意を漏らしましたので、現行体制に今移管しておるところでございますけれども、やはり安全第一ということが最大の眼目でございまして、この点は、社長以下全従業員一日もゆるがせにしてはならぬところで、国民の御期待にこたえて一日一日として改善していかなければならない。  また、経営につきましても、伊藤さんは二年で復配してみせますと私に言っておりましたが、挫折してまことに残念ですが、いずれ復配するような経営状態に一日も早くカムバックする必要がございます。それには、やはり従業員の士気を高めて、そして会社と一体になって、身を粉にして信用を回復するという精神が必要で、それは社長以下全従業員打って一丸となってやるということが大事であります。  日航はどうも組合関係においてなかなか複雑な要素があるようでございますけれども、こういう問題は一朝一夕にしては解決しないでしょうけれども、一日一日と事態を改善して、お互いが融合し、会社のためにはという気持ちで努力されるような体制をつくっていくのが社長以下の腕前である、そう思って、今後ともそういうふうに持っていくように私もよく見守ってまいりたいと思う次第でございます。
  273. 井上一成

    井上(一)委員 この日本航空の問題については、また時を改めましてさらに問題点を指摘し、円満な経営が、そして安全な運航が保障されるように、私も意見、さらには指摘も含めて申し上げていきたい、こういうふうに思います。  最後に、もう時間が参りましたのですが一点だけ。  せんだって我が党の上田委員から、三宅島の強行着工は見合わすべきであるという強い要望と意見が展開されたわけでありますが、きょう早朝から三宅島でその気象観測所の建設が決行された、住民の強い抗議の中で着工されたということは大変遺憾である、私はこういうふうに思うわけであります。国民と一緒に平和な日本を築いていくためにも、私は地元三宅島に住む住民の人たち理解を得てその後にという見解を持っておったのですが、こういうことでは暴挙と言うべきものであって、他の何物でもない。このことについて私は強く当局に反省を求め、謙虚に住民の声、住民の意思を尊重すべきであるということを申し上げて、私の質問を終えたいと思います。
  274. 砂田重民

    砂田委員長 これにて井上君の質疑は終了いたしました。  次に、加藤万吉君。
  275. 加藤万吉

    加藤(万)委員 最初に総理にお聞きしますが、過般行われました統一地方選挙で総理は各地方選挙応援に行かれなかったわけであります。私は、総理の性格からいたしまして大変不本意な結果ではなかったかな、こういうことを推察しているわけですが、この総理が地方の選挙に応援に行かれなかった要因、原因は何というふうに理解されていらっしゃいますか、感想をお聞きしたいと思います。
  276. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 売上税問題でいろいろな反応等もあって、地方の皆さんの中に、必ずしも来なくてもいい、そういう議論も一部にあったと聞いております。私自体は非常に国務が忙しいときでもありましたから、それは国務に尽瘁するいいチャンスでもある、そういうふうにもまた考えました。
  277. 加藤万吉

    加藤(万)委員 総理、今度の売上税の問題は、売上税の五%導入の問題もさることながら、この問題に対して地方議会がほとんど反対の決議をされたわけですね。同時に、この選挙は地方選挙だったわけですよ。私は、売上税の税制改正の問題に対する国民的な反発、それももちろん総理がおっしゃるようにあります。同時にいま一つは、地方議会がこの問題に反発したということは、極めて重要な意思として理解をしていただかなければいけない問題ではないかと思うのです。と申しますのは、この税制改正一つの側面として、大きな側面と言ってよろしいでしょうけれども、例えば電気税あるいはガス税などいわば地方の課税権に対する制約がこの中に含まれておった、あるいは自主財源、固有財源と言われる財源に売上税や譲与税で吸い上げてこれを分配するという、そういう制度上の改正がこの底辺に実は横たわっておった。私は選挙の結果を見まして考えさせられましたのは、単にこの売上税だけを反対でとらえておった地方議員の人は残念ながら議席を得ることはできなかった。しかし、この地方と中央との税の仕組みの改正について訴えられておった方は、これはもう我が党の議員もそうですが、率直に申し上げまして自民党の地方の議員の方も、あるいは自民党にその後所属された地方議員の方を見ましても、地方のいわば課税制限あるいは地方の自治権の侵害が財政の局面から出てくる、この面をまともに訴えられておった方はほとんど当選しているのですね。  したがって私は、今税制協議会で審議をされておりますが、マル優の問題とか直間比率の問題と同時に、税制の仕組みとして中央と地方との分配の問題を含めてこの底辺の問題をやはり理解をしませんと、次の税制協から受ける答申、あるいはそれを受けて新しい制度としてあるいは法律として提起をされる内閣の側でその行き道を間違ってしまうのではないか、実はこんな気がしてならないのです。     〔委員長退席、吹田委員長代理着席〕  これは大蔵大臣にお聞きした方がよろしいと思うのですが、今やっておる税制協で結論が、減税問題とかマル優問題はここでたくさん議論が出ましたけれども、制度上の改正という問題については、今のところ、議長の裁定でも触れていないのです。いわゆる直間比率は触れていますよ。売上税をどう取り込むかということによっては、これは地方の財源に手を突っ込むこと、あるいはそれはなくなるかもしれませんが、それはいわば出てきた要因に対しては従的な要因ですよ。しかし、この売上税を中心とした新しい税制改正の中にはそういう制度上の改正まで実は含まれておった、こういうふうにまず理解をされるでしょうか。  と申しますのは、御案内でしょうが、この法案が出たときに学者の中で大きな意見が出たのは、シャウプ勧告以来の日本の税の仕組みの改正であるという意見が相当強く出ました。これは、シャウプ税制が地方に対する財源配分の問題を重視しながら、地方自治という問題を大変強調したということもありますけれども、それは時間を経て幾つかの手直しはされましたが、今日まで日本にある税制というものはそこを基礎にしながら成り立っておったわけですね。  ですから、税制度という問題の根幹にかかわる問題が今のところ、率直に言って、この国会でもあるいは税制協の中でも、議長の裁定の中でも触れられていない。したがって、次に出てくるのはやはり政府側の姿勢ですね。それを受けて立法として交付税の問題とかいろいろ出てくるでしょうが、それに対する財政当局を預かる大蔵大臣としての見解を最初に聞いておきたい、私はこう思うのです。
  278. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これは、あるいは自治大臣もお答えになるべき問題であろうかと思いますけれども、今度政府が前国会に御提案をいたしましたところでは、売上税については譲与税を設ける、売上税そのものが交付税のベースになることはもとよりでございますが、譲与税を設けること、それから利子につきまして地方に利子税を取っていただく、そういったようなことも政府提案の中に含まれておりまして、私どもとしては、地方に対しても決して、いわば不利にならないような改正案を御提案しておったつもりでございました。  ただ、加藤委員の言われますことは、もっと根本的に中央と地方の行財政の配分といったようなものが考えられるべきではないかということは、これはまことに言われて久しい問題で、十分な答えが出ておりませんけれども、そういう問題意識は私も持っております。
  279. 加藤万吉

    加藤(万)委員 例えば電気税を売上税に取り込んだときに国民はどういうふうに理解したかといいますと、ちょうどマル優制度の議論と実は大変似通っているのですよ。  御承知でしょうけれども、電気税、ガス税は所得が少ない層には一定の限度で税をかけない仕組みに実はなっているわけですね。ところが、売上税ですと、御案内のようにすべての消費に五%ずつかかるわけです。しかも電気税は国に吸い上げてかけていくわけです。地方の住民と自治体とは非常に近い距離にありますから、どこで減税をし、どこで税の控除をしてやるかということがよくわかるわけですね。いわば地方自治体が住民を見る場合に、どこに税を吸収する能力があるのか、担税能力があるのか、そういうことが理解できるから、それでああいう電気税の控除処分というのが底辺にあるのです。そういうことが売上税の場合には全部一括して五%で吸い上げられる。したがって、お金持ちも貧乏人もあるいは公共事業も、公共事業の場合なんかは電気税がかけられなくていいようになっているわけですね。ところが、今度の場合は全部がかるわけですから、電気を使用したものに対しては全部がかっていくという仕組みになったわけですから、そういう意味では大変、地方から見ますと、五%の税が高いか安いか、それが物価にどうはね返るか、生活にどう返ってくるかという問題と同時に、そういう税の仕組みそのものが悪いのだ。  先ほど私は総理に、今度の選挙に対して応援に行かれなかった最大の原因は、総理がおっしゃるように、売上税そのものに対する説得性とかあるいは理解の度合いが少なかったとかいろいろあるでしょうけれども、地方議員がこれに反発したという理由はそこに問題があったのですよ。ですから、そこのところをしっかり押さえていきませんと、次の税制をつくる場合に地方と国との単なる財源の配分、交付税や譲与税は来ますよ、しかし、地方から見ると、今交付税というのは一般財源といいますけれども、実は、交付税にはこの事業をやった起債分はこれだけ繰り込んであげますよ、交付税に算入しますよという形で、事実上交付税が一般財源というよりもひもつき財源になってしまっているのですね。  それと同じような形で今度は譲与税が来る、国がまたそれに対して手を突っ込んでくる、そういう支配に対する抵抗というのが地方議員にあったからこそ、総理がおいでになってもそれは実は我我の選挙には余り有効には作用しません、そういう意思が出たのではないでしょうか。地方議会が保守の方を含めて満場一致あの法案反対をしたというのは、私は地方議員というのはやはりベテランだと思うのです、ベテランでありますから地方の財政というものをよく知っていますから、だからそれには野党が、あるいはその地域で言えば与党になっているところもありますけれども、全部を含めて反対という決議が出たのではないか、こう理解しているのです。どうでしょうか。次の税制改正法案がいずれ提起をされますが、この地方と国との関係、特に戦後シャウプ税制と言われた日本の税の仕組みの中における基本的な部分をなしておったそういう姿勢については今後も大蔵大臣としてはお続けになりますか。
  280. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 実は電気税などの場合にはいろいろな選択があっただろうと思いますので、私ども、特に地方にそれが不利になる、自主財源がなくなるというような点が果たして問題であったのかどうか、今伺いまして、そういうことであろうかと思っておりますけれども、例えばしかし利子税のようなものは、これは新しく地方の税になるわけでございますから、これなどは歓迎されることではないのであろうか。今後ともその点はよく自治大臣とも御相談をしながらやってまいりたいと思います。
  281. 加藤万吉

    加藤(万)委員 課税権に対する制約が生まれたということなんですよ。したがってそういういわば各地方自治体が持っています、いわゆるいうところの自主財源と言われるものに対しては、税制度の仕組みとしては、やはりそこの固有の財源を十分確保する、そういう基本的な政策を持ちながら次の税制の改正に私は置くべきではないか、こう思うのです。  さてそこで、きのうから交付税の問題、特に与野党国対委員長会談で、交付税の算定は八月いっぱいにやろうということを取り決めをいたしました。これは後で自治大臣にもお聞きいたしますから一緒に聞いておいていただきたいのですが、交付税の八月算定をやるには交付税の総額をまず第一に確定をしなければなりません。当初予算で十兆何がし、実額で九兆八千億、これは当初予算で決まっているわけですが、この交付税総額をまさか変えることはないでしょうね。
  282. 葉梨信行

    ○葉梨国務大臣 地方団体におきましては、既に示されました地方財政計画等を参考にいたしまして本年度の財政運営を進めることにいたしておりますので、当初において予定しておりました交付税の総額を確保することはぜひ必要であると考えております。
  283. 加藤万吉

    加藤(万)委員 大蔵大臣税制の改正が行われまして、所得税減税が行われますね。交付税の算定基礎は変わりますよ。今自治大臣は、交付税の総額は確保します、こう言いました。どうですか。
  284. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 確かにこれから新しく税制が生まれてくるわけでございますから、そのいかんによって三二%の問題も答えは変わりますし、それから地方税も変わりますと基準財政収入も変わるかもしれない、そういう変わる要素があるわけでございますね。が、自治大臣もああ言われますと、それはやはり何とかしてそうしてさしあげなければいけませんでしょうね。そう思います。ですから、それはそれなりの答えをちゃんとそういうふうにしていかなければならぬだろうと思います。
  285. 加藤万吉

    加藤(万)委員 それはちょっと歯切れが悪いですがね。いわば詰めて言えば、総額確保についてはあらゆることをして努力をします、総額は確保します、こういう答弁だというふうに理解をします。うなずいていらっしゃいますから多分間違いないだろうと思います。確かに、おっしゃるように減税のいかんによって算定基礎が違いますからね。しかし、それは財源を埋める方法は何ぼでもあるのですから、例えば特例交付金で埋めたっていいんだし、いろいろな方法はあるんですから、まず総額を確保すること、これが第一になければ交付税の八月算定までに間に合うようなことはできませんよ。  自治大臣、交付税の算定を八月までにするにはあと何と何との要件が整えばできますか。
  286. 矢野浩一郎

    ○矢野政府委員 交付税の算定、これは八月末までに行うことになっておるわけでございますが、その際の必要な要件といたしましては、もちろん交付税の総額が確定をしていること、これは御指摘のとおりでございます。そのほかに交付税の計算上基準財政収入額の計算は当然行わなければならぬわけでございますが、地方税法がどのように変わるかということが確定しておる必要がございます。それと、もちろん言うまでもございませんが、昭和六十二年度におけるさまざまな財政需要に対する財源措置、その財政需要を計算するところの単位費用、これが交付税法の改正で決まっていなければならない。  以上でございます。
  287. 加藤万吉

    加藤(万)委員 自治大臣、地方税はこの国会で減税はできますか。私は時間がありませんから端的な質問をするんですが、まあ答えがしにくいでしょうから、この国会で地方税減税を期待されますか。それとも率直に言って、おとといからの答弁から聞いていますと今年度、六十二年度中には地方税減税は難しいのではないかとまではおっしゃいましたけれども、期待をされますか、されませんか。極端に言えば、できますか、できませんか。
  288. 葉梨信行

    ○葉梨国務大臣 既に地方税につきましては徴税令書を出しておりまして、改めて減税を行うことといたしますと市町村並びに企業におきますいろいろな手間等もかかりまして、いろいろそういう意味で困難な状況が出てきているのは、先生がおっしゃいますように事実でございます。これにつきましては、ただいま税制協議会におきます審議の経過を見守っている状況でございます。
  289. 加藤万吉

    加藤(万)委員 それはおととい答弁をいただいたんですよ。その上に立って、できるかできないかと聞いているんてすよ。例えば、自治大臣、御承知のようにもうお互いに長いつき合いですから地方行政はお互いに熟知しているところですよね。課税徴収はもうやっていますから、徴収票を発行していますから、もし年度内に減税分の還元ができないとすると、これは訴訟が起きる可能性があるわけですね。おれのところには回ってこないよ。今まで神奈川県にいたけれども今度は北海道に行ったら、そこで減税が還元されなかった、結果的にはおれの減税還元分はどうなったんだということが訴訟に及ぶ可能性すら実は秘めているんですよ、おっしゃったように事務的なこと以上に。ですから、私も率直に申し上げて、これは地方税減税を六十二年度でやるのは極めて困難だ、こう思いますよ。一遍困難だとおっしゃったらどうですか、できませんと。
  290. 葉梨信行

    ○葉梨国務大臣 先ほど申し上げた御答弁が、非常に難しいなあという感じを申し上げたわけでございまして、お察しいただきたいと思います。
  291. 加藤万吉

    加藤(万)委員 お察しするところは、私が申し上げたところだと思うのです。  そうすると、自治大臣、二つ要件が解決しましたよ。交付税総額はまず確保すると大蔵大臣は言いましたよ。それから地方税減税は大体見込みではできないということを言っていると思うのですね。今度は交付税の算定基礎ですよ、財政局長が言いました。これは売上税が廃案になったわけでしょう。売上税込みの単位費用はもう必要ありませんね、廃案になっているんですから。六十二年度中にまさか売上税が成立するとは思えませんからね。交付税は配れるじゃないですか。三つの要因全部解決しているんじゃないですか。矢野さん、そうでしょう。どうですか、何ができないのですか。できない要因はたった一つだけなんですよ。所得税減税がどうなるかだけなんです、これはおっしゃいませんでしたが。所得税減税の財源がどうなるかだけが決まれば、もう決まるのです。ですから私は、NTTの株というのはいわば時限的なものです、財源的には。おっしゃるとおりです。しかしこれを六十二年度は適用しましょう、こう大蔵大臣が言えば、与野党国対委員長会談で決めた六十二年度中の算定、しかも交付はできるのですよ。九月が地方議会でしょう。みんな困っちゃっているでしょう、実際は。どのくらいお金がおりてくるかわからない。しかも次から次へと五兆円だとかいう内需拡大の予算が出てくる。受けとめようがないですよ。幾ら金が入ってくるかわからない地方議会が、九月の補正予算を組みようがないじゃないですか。いわば三つの要件を解決すればできた。ところがその二つがもうここでできたわけですから、あと一つだけですよ。それは六十二年度は限時的な財源でやりましょう、そして地方の財政と六兆円に及ぶ今度の内需拡大のこの施策について地方自治体が金が困らないようにしましょうと、自治大臣何でおっしゃらないのですか。閣議でそうおっしゃったらいいですよ。マル優の是非が決まるまでは所得税減税額が決まらないなどと言わずに、これだけの今国際的な非難の中で緊急経済対策をやろうとしているんでしょう。だとするならば、税の上でも緊急対策、いわば緊急避難的な要素も含めてやればできるのですよ、内閣がその気になれば。どうですか。
  292. 葉梨信行

    ○葉梨国務大臣 そうでありますからこそ、衆議院議長のごあっせんによりまして速やかに結論を出すようにということで各党の御協議を願っているわけでございまして、早く結論を出していただくことを私どもは待っている次第でございます。
  293. 加藤万吉

    加藤(万)委員 速やかにという中が問題でしょう。問題は、所得税減税をマル優制度まで含めて、いわば税の根幹にかかわる問題まで含めてやろうとするからできないのですよ。そうじゃない。六十二年度のとりあえず減税財源は、二兆円なら二兆円、私どもが提案しているように、それはNTTの株を含めて今年度の財源としてはあるんじゃないですか。税制改革の根幹にかかわる問題まで含めてこれからじっくりやりましょう、こういう結論をお出しになれば、地方団体は何も図らずにこの問題は済んでいくわけです。ですから、そこはひとつ自治大臣、特に地方団体に責任を持つ省でありますから、私は自治大臣の奮起をぜひ促したいと思うのです。閣議でも、自民党の恐らくそういう部会もあることでしょうから、自治大臣の奮闘を私どもは期待をいたしますよ。  先ほど減税問題が出ましたけれども、きのうは総理がマル優は不公平税制をするものだというような御発言等々が続きました。私はあえて言いませんけれども、マル優制度は、先ほど私は電気税の問題でちょっと触れましたが、全部にマル優制度を廃止をするということは、結果的にマル優を通して老後の生活資金をつくろうとする下の層に実は網をかけてしまうことになるのですよ。それでしかも二〇%に下がるということは、三五%までやっていた人が今度は二〇%になるわけですから不公平をさらに拡大することになるのですよ。ですから私どもは、そういうものを含め、同時にまた資産所得等も含めて総合課税化をしましょう。その総合課税化をするには、どうしても捕捉をするために番号制が必要じゃないですか、税に対するだけの番号制度というものをひとつお互いに検討してみようじゃないですかというところまで今踏み切っているわけですね。この問題はきょうの私の議論からしますと、またこれ、総理のわけのわからない答弁になってしまいますからこれ以上は申し上げませんけれども、ぜひそういう意味で自治大臣あるいは大蔵大臣の、今地方団体がどういう意味で困っているかということも含めて賢明な提言をひとつお願いしたいと思うのです。  さて、地方団体がいろいろ事業を行いますが、その指標となるのは地方財政計画です。この地方財政計画は今、六十二年度当初に提起をされ、提案をされました。それに基づいて財政計画を組みました。しかもおまけつきでありまして、売上税を込めた予算を各県の段階ではつくりなさいということで、自治省の財政課長ですかの名で内簡が出ました。各都道府県はこれを全部取り込んだわけですよね。私の数字が間違いならば別ですが、三十二府県が売上税を込めた予算を三月議会でそれぞれ決めています。この地方財政計画は今日生きているのでしょうか、自治大臣。
  294. 矢野浩一郎

    ○矢野政府委員 地方財政計画、これは通称でございますが、正確には地方交付税法第七条の規定に基づく「地方団体の歳入歳出総額の見込額」でございます。これは同条の規定によりまして、年度開始前に翌年度の地方財政の歳入歳出総額見込み額について国会に提出をするということで、既に提出を前年度のうちにさせていただいたものでございますので、そのように御理解をいただきたいと思います。
  295. 加藤万吉

    加藤(万)委員 今局長から話がありましたように、これは地方交付税法七条によりまして、政府は国会に提出をしなければならないという法律的義務になっています。したがいまして、今言ったように出したわけです。  さて、この地方財政計画ですが、中身は全部だめになりましたね。まず売上税というものが廃案になりました。結果として課税標準額、税率、徴収見込み額、これは現状では、地方財政計画は売上税法案廃案になったことによって全く喪失していますね。中身がありませんね。どうですか、財政局長
  296. 矢野浩一郎

    ○矢野政府委員 地方税法の改正案が成立をしなかったということによりまして、現在の制度としては、提出いたしました地方財政計画にお示しをしたもののようにはなっていない。すなわち、現行制度のままに現在ではなっておるということでございます。
  297. 加藤万吉

    加藤(万)委員 現行制度のままになっているのじゃなくて、地方財政計画の中身がもう喪失をしてしまったでしょうということを私は言っているのですよ。  地方財政問題をやった方に御理解いただくために申し上げますが、地方財政計画というのはいわば船で言えば羅針盤のようなものなんですね。これからこの船はどっちへ行こうかな、その場合に羅針盤を見ながら、こっちの方向に進んでいけば大体財政の収入もあるし、こういうような形で事業執行もできる、この羅針盤が実はぶっ壊れちゃったわけですよ。羅針盤のないまま船が走ってるようなものなんです。よく総理は日本丸のかじ取りはと、こう話をされますが、日本丸というのは御案内のように、今の四十七都道府県、三千三百の地方自治体を乗せた船であるわけですね。乗せたというよりも、それを引き連れている船と言った方がいいかもしれませんが、それの羅針盤が壊れちゃってるわけです。  さて、こうなってくると、この地方財政計画を法七条によって国会に提出をするというのは、地方団体にとってみればそれが羅針盤だ、しかも国がそれを示すことによって地方団体はその針路が決まる、そういう意味で法律上義務づけているのです、国会に提出しろと。この中身がなくなっちゃったわけですから、喪失しちゃってるわけでありますから、どうでしょうか、この時期に私は地方財政計画を改めて提出をすべきだ、こう思いますが、いかがでしょうか。これは自治大臣に聞きましょう。
  298. 矢野浩一郎

    ○矢野政府委員 御指摘のように、六十二年度の地方財政計画の歳入歳出の見込み等につきましては、これは通常国会に提出をいたしました関係法案が成立をしなかったことによりまして変動を生ずる要素を持っておるわけでございますが、その見込みについては、税制改革の取り扱いのいかんなどによりまして変動が見込まれるということになるわけでございます。したがいまして、当初、本年の二月に提出いたしました地方財政計画の中に変動が見込まれることは、これはもう御指摘のとおりでございます。  ただ、地方財政計画につきましては、先ほども申し上げたところでございますが、地方交付税法第七条の規定に基づきまして、これは「翌年度の地方団体の歳入歳出総額の見込額に関する書類」として、その年度の開始する前に国会に提出されるというものとなっておるわけでございます。そういう意味で六十二年度の場合には二月に提出をいたしたわけでございます。  したがって、本年度の中途でこの交付税法の規定に基づいて地方財政計画を再提出するということは、法律上は考えられていないところでございますが、しかし本年度においては、先ほど来申し上げておりますように税制改革のいかんにより地方財政対策の見直しが今後必要になるということが見込まれるということ、それから第二に、目下御審議をいただいておりますところの補正予算に伴う地方負担が極めて多額に上るというようなことから、補正地方財政対策を決定する必要があろうかと考えております。その補正地方財政対策を決定するに際しましては、あわせて地方財政の歳入歳出の状況に関する資料を作成いたしまして、本来地方財政計画が持っておりますところの、お示しのような羅針盤としての機能あるいは地方財源をこれによって保障、確認をするという機能、こういった点を果たすべく、あわせて審議の御参考に供したいというぐあいに考えておるところでございます。
  299. 加藤万吉

    加藤(万)委員 前年度に今年度の分を出すから、今年度はもう六十二年度分は出せません、こう言うのですが、前年度に出したその内容が間違っちゃったわけです、喪失しちゃったわけです。ですから、修正を加えて六十二年度を再提出をするのが本来なんです。しかし、今の御答弁補正をして提起をする、こういうわけですから、百歩譲ってまあまあと、その案を見てから――これはなるべく早く出していただきませんと、五月補正に間に合いませんから。  そこで、これは自治大臣。その補正をされる際に今度の補正予算額を算入されますか。計上されますか。というのは、御案内のように今度の国庫負担分が約二兆一千何百億、地方負担額が一兆一千八百億。今までは地方財政や国家の当初予算が決まり、地方財政計画が決まり、そして執行されていたわけですね。そして九月の補正予算で大体二千四、五百億円が地方の裏負担分と言われる金。これが今度一兆二千億なんですね。従来の四倍ですよ。今度は当初予算、地方財政計画が喪失した、地方財政計画を今度出します。この間に補正予算は決まるのです。今度この国会で決まろうとしているわけです。そうしますと、この分を取り込んで補正をされた地方財政計画として提出をされるべきだ。提出をしなければまた九月予算なりあるいは事業執行に地方団体は困る、こう思いますが、取り込んだ補正の財政計画をお出しになりますか。出すか、出さぬかだけでいいです。
  300. 矢野浩一郎

    ○矢野政府委員 補正地方財政対策を講ずるに当たりましては、今回の補正予算に伴う地方負担、これに対する財源措置というものを目下大蔵省と協議中でございますが、それを含めて地方財政の収支に関する見込みをつくりたい、このように考えております。
  301. 加藤万吉

    加藤(万)委員 そのとおりなんです。そのとおりにしてもらわないと困るのです。  さあ、そこで大蔵大臣、問題ですよ。今まで、補正予算の二千四百億円前後、これは全部地方債です。今度一兆二千億ですよ、四倍です。地方財政の今年度予算については先輩の細谷先生がここで議論されましたから、もう私は言いません。その起債率といい、公債費比率といい、まさにパンク状態ですよね。いま少し行くと再建指定団体がそれでできるんじゃないでしょうか。その議論はやめますが、四倍のお金を地方の起債だけでやることはできませんね。大蔵大臣も、この面については財政的には全然心配がないように配慮しますという答弁だけです、今まで。そして、やや具体的になったかなと思ったのは、六十一年度の剰余金がございます、これを充てますとまでは言いませんでしたが、剰余金も含めて地方財政については御心配ないように、こう言いました。今大蔵省と自治省と協議中と、こう言われておりますが、この一兆二千億にかかわる地方財源の負担額について、いわゆる裏負担分について具体的にはどうされますか、金額的に。例えばその半分ぐらいあるいは三分の一ぐらい、そういうものは国費の方で面倒見ましょう、あるいは後年度、とりあえずは地方債で持っていただいて、後、国費でそれを償還する、いろいろな方法があるでしょうが、どうですか。大臣は言葉の端ではときどき、六十一年度の剰余金があるからこれで埋めてもいいような感じを受けることをおっしゃるのですが、その辺を含めてひとつ。
  302. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 補正予算が非常に大きゅうございますから、地方の負担も当然大きくなるということはもうよく承知しておりますし、今もおっしゃいましたように、六十一年度分の精算増が確かにやっぱりございますと思います。あれこれ考えまして、今両省の事務当局でその辺を相談してもらっておるわけですけれども、その相談の結果によりましてある程度交付税で措置をする必要があるかもしれないなということは私も内々は考えておりますが、もう少しよく両省で協議をさせていただきます。
  303. 加藤万吉

    加藤(万)委員 交付税で措置をすることも含めて、しかも剰余の額、交付税の措置として五千七百億円ぐらいが出るんじゃないかと言われておるのですが、これはひとつ正確に計算していただいて、地方財政に憂いのないようにしていただきたい、こう思います。  加えて、地方は今度八千億の単独事業がありますね。大蔵大臣、お聞きをしますが、八千億円という額は今度の緊急経済対策の中に含まれた一つの額ですね。そういうふうに理解していいのでしょうか。大蔵大臣、ひとつ答弁してください。
  304. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 このたびの緊急経済対策の中で地方にお願いする分としまして、自治大臣とも御相談いたしまして八千億を計上予定しておるわけでございます。
  305. 加藤万吉

    加藤(万)委員 八千億というお金は、自治大臣、六十一年度も八千億でしたね。六十年度も八千億なんですよ。緊急経済対策で何でこれは六十年度からずっと続いているのでしょうか、八千億という額が。緊急経済対策ならもっと額が多くなるべきでしょう、要請する額にしても。仮にそれが負担の能力があるとかないとかは別ですよ。六十年度からですよ、ずっと。去年の十月ですか総合経済対策、三兆円決めましたね。あのときの本会議で葉梨大臣が答弁したのは八千億ですよ。今度また六兆円で八千億ですよ。何です、この八千億という数字は。減税を含めて今緊急経済対策として総額が示されておるその額のつじつま合わせの額ですか。どうですか。
  306. 矢野浩一郎

    ○矢野政府委員 八千億円という数字を挙げましたことにつきまして私どもの方の立場から御説明させていただきますと、今回の対策の一つとして示されておりますところの八千億円の地方単独事業の追加は、これはあくまでも地方公共団体が当初予算以後これからの補正予算において追加計上すると見込まれる額を掲げたものでございます。これらの八千億という数字を出すにつきましてはあらかじめ、これは年間のこれからのことでございますから確定的というわけではございませんけれども、地方団体、特に都道府県の考え方、これからの予定といったようなものを聞きまして、それらに基づいて市町村分もさらに推計をし公営企業分も加えて、八千億という数字は追加が期待することのできる額としてこれに掲げることにいたしたものでございます。
  307. 加藤万吉

    加藤(万)委員 大蔵大臣、六兆円の緊急経済対策じゃないのですよ。八千億というのは毎年度やっていることなのです。ですから、もしも八千億を追加して我が国は六兆円の緊急経済対策をやりますと国際的にお約束したとしますと、よその国からは、そのうちの八千億の単独事業というのは六十年度もやられたことでしょう、六十一年度もやられたことでしょう、何が緊急経済対策ですか、こう言われますよ。八千億という単位は、お金は、実は地方自治体が単独事業としてやれる限界なのです。ですから、六十年度も八千億お願いした。ところが六十一年度になりますと、例えば都道府県だけでとりますが、都道府県では二千四百億円しか九月に予算計上できなかったのです。六十一年度になりますと千七百億円しか組めなかったのです。なぜかと言えば、単独事業をやる財源がなかったから。そこで、八千億にするために下水道事業を一千億ぶち込みまして、そして八千億の量を確保したのですよ。  いわば地方自治団体が今日できる額としては総額八千億がもう限界なのです、単独事業としてやる財源的な裏づけを含めて。そこまできちゃっているのです。ですから、緊急経済対策としてこれを何か華々しくといいましょうか、あるいはこれが取り込んであるのですよというそういう言われ方をすると、外国からは指摘を受けますよ。これは恐らくそういう答弁が自治大臣も財政局長もなかなかできないから私の方から言っておきますけれども、そういうことでこの八千億というのを理解してもらいませんとだめなのです。したがいまして、私は、先ほど一兆二千億に近い地方団体負担、裏負担、それからこの八千億を含めてきっちりとした財源的な裏づけをしませんと、国際的に、サミットにせっかく総理がお土産を持っていかれた六兆円という中身のふろしきが全部ほころびてしまいますよ、こう申し上げているわけです。  さて問題は、これらを含めて六十二年度の財政執行で経済成長が三・五%確保されるか。今冬新聞がいろいろ出ています。きょうは時間がありませんから私が出しました数字は申し上げませんが、私どもの推定でいくと、大体六兆五千億から七兆円ぐらい公共事業投資を含めて経済的効果を与えませんと三・五%という経済成長率は難しい気がしますね。ケースはいろいろはじいてありますから、後でもし必要ならば御参考に供しても結構ですけれども。経済企画庁長官、三・五%は可能でしょうか。
  308. 近藤鉄雄

    ○近藤国務大臣 経済企画庁といたしまして最近関係業界とのヒアリングもいたしましたけれども、一般の消費は私ども当初予定したように大変堅調でございますし、住宅投資もさらに堅調でございますし、民間設備投資も非製造業部門は、これは堅調でございます。ただ御案内のように、円高の影響を受けて従来から製造業の設備投資は低調でございますが、民間の各調査機関と私どもの見通しとの大きな違いは、まさに民間設備投資をどう見るかということでございます。  そこで、その民間設備投資の減分をまさに緊急経済対策でカバーする、こういうことでございますし、今度の緊急経済対策の大きなポイントは、日本の本格的な財政主導による景気対策に対して国際的なマーケット筋も大変反応を示しまして、御案内のように円高傾向に歯どめがかかる、むしろ今百五十円に戻しているわけでございますので、こうしたものが民間の設備投資にむしろ今後積極的な効果、プラスの効果を与えていくだろう、こういうことでございますから、それと円高の是正に基づきますところのいわゆる輸出入のバランスの好転、こういうことを考えてまいりますと、私どもはこの減税を含めて六兆円の緊急経済対策が全部執行されれば二%程度のGNPを押し上げる効果がある、こういうふうに計算してございますけれども、六十二年度、来年三月までに限っても一%プラスアルファくらいの効果があるのではないか、こういうことでございますので、民間設備投資の多少の減分を財政の主導で賄うことによって当初見通しの三・五%経済成長率は達成できるものと、かように考えております。
  309. 加藤万吉

    加藤(万)委員 経済見通しですからね、これからの予測されるさまざまな条件、変化が起きますから。ただ、計算の基礎となる、例えば逆行列係数というのですか、それをとるのか、あるいは私どもが出しました公共支出の乗数値をとるのか、これによっても随分変わると思うのです。これはもう細かいことですから申し上げません。  安全度を見ますと、この補正予算で国庫の支出額はやはり二兆三千億ないしは二兆四千億必要ではないか。それに対して裏負担がかかりますからね。そして、その財政的な全体的な効果として、やはり七兆前後、六兆五千億から七兆四、五千億のところにとりませんと、三・五%の経済成長率は望めない。一%落ちるということは、税収入で大体一兆円落ちることですからね。加えて地方財政でいけば、それに三二%掛ける、交付税の関係で落ちるわけですから、即とは言いませんよ、即とは言いませんが、おおむねそのくらいの見当になるわけですから。  そうすると、これは大蔵大臣、第二補正が出るという話を私も聞いていますから、今のこの補正予算を取り込んだ上でなお日本の経済の成長がきちっと三・五%、当初計画のようにできるように第二次補正を仮に組まれるという場合には。公共投資等については十分なめり張りが必要だということだけこの際申し上げておきたいと思うのです。  それから、土地問題について少しお話をさせていただきます。  地価の高騰、こういう言葉を使いますが、最近では狂騰でございまして、どなたも今日の地価の狂騰という問題、狂い高ぶっている、こう書くわけですが、御異論のないところだと思うのです。地価高騰の最大の原因は、幾つかありますけれども、一つは人口の集中、極めて東京中心にあるいは大都市中心に人口増加が起きている。これに加えて、マネーゲームさながらに投資へのゲームが行われている。さらには、日本の国土建設の計画そのものが一極中心的な傾向にある。さまざまな要因が、さまざまというよりも、その三つぐらいが大きな要因として指摘をされているわけであります。  私は、土地政策はやはり緊急な課題とそれから長期的な課題と二つあると実は思うのです。問題は、土地というものに対する観念をどう政府が持つのか。よく言われるところの、土地は帰属するべきところは国であるという土地の帰属権に対する基本的なスタンスというものがあった上で、なお今は自由経済その他を含めて土地の個人所有というものがあるわけですから、常にそういう発想を持ちながら土地の狂騰に対する、高騰に対する制限を行わなければいけない、こう思うのです。  そこで、当面の問題をちょっとお聞きをしますが、最近、中央信託銀行が、新聞でマネーゲーム、土地投機に関して話題になっています。八十二行で三十兆円の金が不動産関係に投資をされておる、そのうちの一部が中央信託銀行の形で出ているのではないか、こう言われているわけですが、大蔵大臣、銀行が土地転がしあるいは土地投機に対してこれだけの資金を投入する、これに対して大蔵省サイドとしての何らかの規制というものがあってしかるべきだと私は思いますが、いかがでしょうか。
  310. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ごもっともな御指摘でありますので、昨年も、また暮れにもたしかいたしましたが、金融機関に対して、いやしくも投機の結果に終わるような土地の取引については融資することを自粛してほしいということを申しておりまして、これはかなり金融機関に対しては、そういうことについて慎重に扱わなければならない、そういう効果を持っておるように存じておりまして、私どもとしては、今後も金融機関にそういう自粛を促してまいりたいと思っています。
  311. 加藤万吉

    加藤(万)委員 せんだって新聞で拝見をしましたら、それぞれの土地投機に回っているその不動産関係を大蔵省が見て、こういうお金は不当な投機ではないかという指導をされるという新聞記事を読ませていただきました。今度の中央信託銀行については、私はやはり社会正義に反するものだというふうに実は思うのですが、大蔵大臣、どういう見解をお持ちでしょうか。
  312. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 先生今お話しのように、中央信託銀行につきましてそういう事態になっているということを新聞等で我々拝見したわけでございます。中央信託銀行そのものにつきましては、先ほど大臣からお話し申し上げました通達で半年ごとに報告をとっておりますので、その報告を聴取する際に、投機的な融資があるかどうか、そういう点についてはいろいろ行政当局としても指導しているところでございます。
  313. 加藤万吉

    加藤(万)委員 今、強制捜査に東京国税局が入っています。  神奈川県の鎌倉に東邦病院というものがございまして、この乗っ取り事件が実はございました。このときに、中央信託銀行からお金が回ったのは、六十年七月の話でありますが、約四十億と言われているわけです。この鎌倉の東邦病院の乗っ取り計画というのは、ある不動産会社の社長が病院の理事長におさまりまして、病院が必要がないにもかかわらず資金の借り入れをしたわけです。結果的には病院を売り払ってという構想ではなかったか、こう言われているわけです。これが実は背任罪で起訴されているわけです。このときにも実は今新聞で出ております中央信託銀行の福田という次長がちらほら新聞をにぎわわせたわけです。私は、今度の新聞記事の中で福田という次長が出たものですから、はて、どこかで聞いた名前だなと思って調べてみたら、実はこのときの事件に介在した人なんです。これはまさに銀行が土地転がしの、しかも三つか四つの会社を回しながら本来取るべき手数料は大体三億円と言われていますが、この間の利益が二十億、そしてそのうちの十億か十五億が本人のポケットに入ったのじゃないかという疑いを持たれている新聞報道なんですね。どうでしょうか、今、税の所得の面での強制捜査ですが、もしも事件がいま少し、強制捜査の結果として、今言ったようないわゆる社会正義に反すること、犯罪的要素を持つということになりましたら、東京国税局は地検に告訴されますか。
  314. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいま国税庁からだれも参っておりませんので、抽象的にしか申し上げられませんが、租税につきましてもし適正でないことがございますれば、これは厳正に調査をいたすということはもとよりでございます。ただ、これは全く一般論として申し上げさせていただきます。
  315. 加藤万吉

    加藤(万)委員 質問の通告がこの部分についてはしてありませんでしたから、御答弁はそれ以上は出ないと思いますのでおきますが、問題はやはり大蔵省が土地投機に三十兆円もの金が動いているという事実を、指導される、監察をされる、いろいろなことをやられておるのでしょうが、何らかの法的な規制を加えない限り土地に対する投機はやむことを知らないのではないか、こう思うのですよ。したがって私は、土地の狂騰に対する財政的な面、お金の面での規制措置、これは今の現行法を駆使すれば相当の制約条件は生まれてくると思いますので、ぜひひとつ投機から来る土地の高騰という問題についての面を強化をしていただきたい、こう思います。  国土庁長官、見えていますが、第四次総合計画、いわゆる新全総、これは一極中心型の日本の国土計画から多極分散型へというタイトルでできておるわけですが、どうでしょうか、今度の新全総によると、地方への機能の分散と同時に人口の分散というものは考えられるのでしょうか。
  316. 綿貫民輔

    ○綿貫国務大臣 例えば首都圏におきましては、二十一世紀までにあと一千万人日本で人口がふえるわけでございますが、そのままの状態で置きますと五百万人ふえるということになっておるわけでありますが、これにつきましては三百万人ということに頭を切って、むしろ縮小の方向に位置づけておる、その分は地方等に展開される、こういうことになっておるわけであります。
  317. 加藤万吉

    加藤(万)委員 建設大臣、今人口分散を含めて新しい新全総ができましたね。そうしますと、これは昭和七十五年度までにという計画ですから、相当長期的な展望であることは間違いないです。七十五年度を展望したそういう多極分散型の日本国土を建設するためには、今からそれぞれの手段が必要ですね。例えば道路建設一つとってみましても、東京を中心にして放射線状に広がっていく道路では余り意味がないですね。したがって、できる限り都市間を結ぶ道路計画などというのが優先的に配置をされていかなければできませんね。  例えば神奈川県で横浜で、御案内のようにみなとみらい21という計画をやっています。これは、あそこの工業地を再開発をして、できれば横浜そのものも国際都市ですから、国際的な機能というものをできる限りあそこに分散――分散と言ってはおかしいですが、東京にあるべきものを持ってこよう。例えば世界銀行のようなものを持ってきてもらったらどうか、あるいは成田へ行くアクセス道路をつくって、横浜が東京を経由しないでもよろしいような方向でつくってみたらどうだろうかといろいろ計画が提起をされているわけです。  今度の補正予算は緊急経済対策です。そして、大臣がおっしゃるように、不況地域にはそれで雇用ができるようにということも一つの理由がありました。加えて私は、この多極分散型の今の国土計画に対して一歩進めていくということが、六十二年度の予算にも、あるいは補正にも、それから六十三年度もこれはまたがるでしょうが、そのときに大臣をおやりになっておれば当然そのことも配置して考えられるべきだ、こう思いますが、いかがでしょうか。
  318. 天野光晴

    ○天野国務大臣 今国土庁長官が言われたように、四全総で道路計画を立てまして、高規格自動車専用道路一万四千キロという道路を計画いたしました。近く国会の御審議を願うことになりますが、その道路は今申し上げましたような観点に立って線路を引いております。要するに、東京集中ではなくてその地方地方の連絡協調をするという点を強調してやっております。  言うことは簡単ですけれども、とても人口を東京から今分散するということは、今の状態ではだめだと思います。私のお師匠さんといいますか、河野一郎先生の提案は、東京都は七百万が限度だという主張をされておりました。何ぼ多くても八百万以上超えてはとてもそこに住む人に満足を与えるようなすべての問題はできない、私はそう理解しておるのです。そうですから、私自身は個人的な意見は幾らもありますが、何らかの格好で分散するような措置を講じなげればならないんじゃないかなというような考え方を持っておりますが、道路はそういう考え方で今度決めたことは事実でございます。     〔吹田委員長代理退席、委員長着席〕
  319. 加藤万吉

    加藤(万)委員 国土庁長官、私がいま一つ今度の四全総の特徴があるというふうに見たのは、いわゆる重厚長大産業が日本の産業構造から撤退しますね。そして、それにかわるべきソフトウエアの部面をできる限り地方に配置をして、雇用も増大しあるいは地域も活性化しよう、こういう構想がずっと流れています。これに伴いまして、これは長期の七十五年度までの計画ですからそれはそれなりに理解しますが、それとそういう新しいソフトウエア部面をできる限り地方に分散をさせて工業再配置を考えていくというような構想と、今現実にある例えば各省庁が持っているプロジェクトチームがございますね。例えば郵政省にしてみればテレトピア計画、通産省はニューメディア計画、農水省がグリーントピア計画ですか、建設省がインテリジェントシティー計画、これとの関係をどう見ますか。  要するに私の言いたいのは、将来の日本の産業構造がそういう展開になっていくならば、そういうもの、これは地域開発の問題、新しい情報社会に対応する一つのプランではありますが、それと、四全総が持つ、これから日本の国土はこういう形になっていきますよというものとの連動ということがなげればいけないと私は思うのです。自治省が熊本で土地信託をやっています。これは公有地を提供しまして民間活力を導入しまして、そこで情報化社会に適応するような新しいコミュニケーションあるいはネットワークをつくり上げよう、それを民間に活躍させよう、これもいわゆる多極分散型の一つの型として私はあっていい、非常にいい計画だろうと思うのです。今各省が持っているこの計画も私はそういう発想にならなければいけないと思っているのです。  ところが現実には、情報化社会に対応する新しいそれぞれのプラン、計画というものは、どうも情報化社会の拠点が東京だから、東京に集中するような構造にしかなっていないような気がするのです。例えば青森でできたリンゴが一遍東京の神田の市場へ入ってきて、そして仙台に売り込む。そのために、どういうものが青森で新しいネットワークとして必要か、情報機能として必要か、これでは何にもならないわけですよ。問題は青森と仙台が直通になるようなそういうネットワークが必要なんですね。ですから、今各省が持っているそういうプランと四全総が指し示しているものとが、ここですよ、これに向かって、今ある計画はここに進んでいきなさいよという指導がなければいけないと思うのです。どうですか。
  320. 綿貫民輔

    ○綿貫国務大臣 確かにおっしゃいますように、情報の発信基地が一極に集中しておるということは一極集中になるわけでありまして、情報の発信基地を分散するということも必要だということであります。今、四全総に沿いまして地方の定住核都市構想というものが考えられておるわけであります。これは例えばコンベンション都市とかあるいはファッション都市とかあるいは木を中心にしたウッドの都市とかそういうようなことにして、そこが発信基地になる、こういうようなことで各省庁ともこれから御相談をしながら、地方の核をつくっていかなければならないというふうに考えるわけであります。今回の四全総におきましても、例えば空港も、国際空港を全国に十五カ所展開するという位置づけもさせていただいておるわけでございまして、国内のみならず国際的にも開かれた地方都市というものをこれから建設していかなければならない、こういうことも考えられるわけであります。
  321. 加藤万吉

    加藤(万)委員 大蔵大臣、こういう計画、プランにNTTの資金を流用されたらどうですか。私、せんだって郵政省のこの計画を聞きまして、郵政省はそういうものに対する予算はどのくらいですか、こう聞きましたら、八億八千万円です、そういう事業投資ができるのは。ちょっとひどいじゃないですか。新しい情報化社会に適応する郵政省が持っているテレトピア計画その他を含め、郵政省といえば通信、発信機能の、そういうものを扱う総元締めの省庁ですから。NTTの資金というものが今年度四千五百八十億ですか。そのうち民間関係の金が五百八十億ですね。そうですね。六百八十億ですか、五百八十億ですか。もし間違っていたら訂正しますけれども、その五百八十億だけですよ。四千億というのは地方団体への貸し付けでしょう。もっとそこを拡大をして、今言ったような地方拠点づくり、しかも情報社会に適応するネットワークとして、資金としてそこに投入すれば、そこから民間の新しいエネルギーが生まれできますよね。吸収できますよ。私は今後のNTTの利益の使い方については、そういう面を配慮しなければいかぬと思っている。もちろん、これだけじゃございませんよ。その他地域的ないろいろなゾーンの計画をつくってもらう。  中曽根内閣の一番批判されるのは、何といっても輸出中心の政策だった、こう言われているわけですね。内需を拡大するには、輸出中心でなくて内需拡大の方向ですから、しかもそれがそういう新しい地域拠点構想というものを持ちながら、しかもそれを情報ネットワークで結びつけながら、縦糸の線から横糸の線を強めよう、太くしよう、こういう計画なんですから、そこに思いっ切り財政投資をしていくということがあれば、日本の機能としても地域分散ができますよね。私は、ここは次の四全総の展望も含めてぜひ考えてもらいたいと思うのです。  国土庁長官、私の質問に対して当然私の質問の部分しか答えていませんけれども、どうも大蔵省がそういう地域拠点づくりに対する財政の面では渋っていたということが各新聞に書かれているのですね。そして、結果的には一極中心の面も併用的にあの四全総にのせた、こう言われていますよ。これではいけませんよね。これではやはり東京を中心とする新しい輸出構造を中心とした日本の経済の仕組みになってしまいますよ。そうではなくして、今言ったような資金も投入をしながら、同時に地域拠点をする。横の線を強めていく。東京へ縦貫道路をつくっても、中央縦貫道路をつくっても、上り線だけ込んでしまって下り線ががらがらでは、これは何にもならぬのですよ。下り線の方が込んで上り線がすくという地域づくりをしなければ、拠点づくりをしなければ、本当の意味での内需の拡大にはならない。政策の転換にはならない。この転換があって初めて国際的な日本のいわゆる貿易の収支バランスの問題も解消できる。それにこたえることができる。やや長期的な展望ですけれども、そういうスタンスを持った日本の国の政策指導ということになっていかなければ、本当の意味で国際的な非難を免れることはできない、私はこう思うのですね。中曽根内閣の功罪については、いろいろ議論がありましたから私は言いませんけれども、経済の成長がもしも輸出中心の経済構造の中で生まれてきたのだとするならば、それを新しい、土台をかえた発想の転換をすべきだ、こう思うのです。  時間がありませんから次に進みますが、建設大臣、多くは申し上げませんが、今人口の問題、地価狂騰に対する抑制の当面の処置として必要なことは、私は、現行あるいろいろな法律をさまざま発動すべき時期だと実は思っているのです。例えば今地価表示をする、例えば法務省でも造成地に対する地価表示、評価基準がありますね。それから、建設省もお持ちだし、各都道府県もお持ちだし、いわば地価表示が各省によって全部違うのですね、いわゆる表示価格が。これは国民の目から見ると、あの土地が法務省じゃ坪一万円だ、こう言っているよ、この省じゃ十万円だと言っているよ。したがって、この土地を買う面からいうと、一番高値をつけてみたり、あるいは国だって実は定まらないのだからこれが相場だよということで、実は地価高騰を招いているのですよ。どうですか、国が指定する地価表示、これを統一化するということについての御見解をひとつお聞きしたいと思うのです。
  322. 綿貫民輔

    ○綿貫国務大臣 地価の表示につきまして統一しろというような御意見でございますが、これにつきましては、国土庁では地価公示制度あるいは都道府県におきます地価調査、この二本で地価をお示ししておるわけでございますが、これはあくまでも公正な取引が行われる基準、あるいは国土利用計画法の地価をいろいろと査定する場合の基準、こういうことで公表しておるわけでございます。
  323. 加藤万吉

    加藤(万)委員 国土庁で公示価格、それから自治省に固定資産評価額というのがあるんです。それから国税庁には路線価というのがございますし、造成地を評価する基準としては法務省が造成地を評価する基準というさまざまな基準があるんですよ。したがって、私は土地に対する一つの基準、国が、これがこの土地に対する一つの一定の基準ですよというものを示すことが必要ではないか、こう思うのです。ひとつ御検討いただきたいと思います。  さて、今土地が不労所得的に、土地の値上がりによって不労所得的要素が非常に多いわけですね。どうでしょうか、ひとつ基準価格を決めて、それ以上の価格で、超過をした価格で大もうけをしていると言われる人、これには一定の税をかけて、一つの目的的な税としてこれにかけて、そしてその利益を吸収し、同時に社会的な還元をするというようなことについてはお考えをいただけませんでしょうか。これはどこにお聞きしたらよろしいのでしょうか、大蔵省でしょうか。
  324. 水野勝

    ○水野政府委員 土地の譲渡所得に対する課税といたしましては、現在、十年以上保有していたものと十年未満の保有の土地、それぞれ譲渡した場合につきまして課税の方法を変えてございまして、十年以上でございましたら四千万までは二〇%、それを超えるものは二分の一課税、十年未満のものにつきましては四〇%または総合の一割増し、そういうふうに区分をいたしておりまして、そこにはやはり、短期に投機的に土地を取得してこれを譲渡したというときには特別の課税をするということでは、そうした措置は講じられているとも申せるかと思うわけでございます。  さらに、この二月に御提案申し上げました改革案では、二年の間に譲渡した場合につきましてはさらにそれを加重するという制度、それから法人税におきましても、そうした投機的な短期的売買によりまして取得した譲渡益につきましては法人税とは別に二〇%の特別課税を行うといった制度も現在あるわけでございまして、おおむね御趣旨、御指摘のような点も取り入れられておるわけでございますが、今後のあり方につきましては、なおよく検討はしてまいるところでございます。
  325. 加藤万吉

    加藤(万)委員 私は、公的評価価格を統一化しなさい、そして現行取引される土地価格を一種の基準価格を決めまして、さらにこの基準価格以上出たものは、今の法律をさらに手直しをすれば、基準価格以上の超過利益が、不労所得というものに対する税の強化によってこれが還元する。そうすれば、土地投機によって大もうけをしようという者は、一部分的ではあるかもしれませんが、抑制される可能性というのは非常に強くあると思うのです。  それから建設大臣、これは大臣がいいと思うのですが、どうも今公有地の確保については大変難しい。今度公共事業をやりますけれども、この答弁の中では今度の補正予算では公共事業に対する用地費というのは七%か八%ですと大蔵大臣言いましたよね。それは、古い学校を建てかえれば用地費は要りませんから、そうでしょう。しかし一般的にいえば大体一七%、このごろでは二〇%以上だと都市では言われてますよ。公共事業はできませんわね、実際問題として。公有地優先の政策をとらなければ公共事業の確保はできないのじゃないかと私は思っているのです。現に私は神奈川県ですけれども、神奈川県の市町村を含めまして、用地費にほとほと参っちゃっているのですよ。NTTのお金が来るけれども何に使おうか、事業ができないからしようがない、土地を買おうかと、こう言っていますよ。土地を買って、とりあえずそれでいわゆる資金消化をしよう、これじゃ公共事業の拡大にはなりませんね。用地費といえば、公共事業をするための用地費を確保するためにどんな手だてがありますか。一つは公有地の公共事業に対する優先的な張りつけだと私は思うのですね。いわゆる優先的な先買権、これをやはり与えてやる。今、都市計画ができまして、都市計画の範囲内での先買権はあるのですね、あるいは事業計画の。これをもっと広くして、広い範囲をとって、そしてそこにおける公有地の使用、いわゆる公共事業等に必要な用地は先買権を持たせるというようにこの法律を拡大したらどうですか、公有地確保に関する法律は。どうですか。
  326. 牧野徹

    ○牧野政府委員 ただいまの先生のお話は、いわゆる公拡法と申しますか、公有地の拡大の推進に関する法律のおただしたと思います。  この法律は、御承知のように、なかなか一般には捕捉しがたい民間の取引について、その一定規模以上のものについて知事に届け出をしていただいて、それについて公共団体等の公的主体が将来の都市整備のために必要だと判断した場合には先に協議をする、協議が調えば買収する、こういう制度でございます。  したがいまして、ただいまお話しの国有地あるいは公有地等につきましては、法律制定当初から、それらの固体のといいますか、国有地等につきましては、所在なり処分等がわかっておって、地元の公共団体とも実質上お話し合いをするということでございますので、そもそもこの公拡法をつくったときから対象外にしておる、そういう経緯でございます。
  327. 加藤万吉

    加藤(万)委員 いや、経緯を聞いているんじゃないのですよ。そういうようにしなければ公共事業の公有地確保ができないじゃないですかということを私は言っているのですよ。  したがって、従来の法律の枠内でやったんじゃこれはできないですよ。駅前開発をしようと思って、国鉄用地、例えばこの前の大田区なんかそうですね、完全に事前協議をやったけれども、値段が合わぬから売らぬ、こういうことでしょう。これでは何もできないじゃないですか。事前協議をして、土地というものが個人のものだ、あるいは値段が高ければ高いほどいいんだという思想あるいは発想がある限り、公有地確保なんかできませんよ。ですから、私は、私有地に対する制限という言葉は余りいい言葉じゃございませんけれども、一定の制限、当初も申し上げましたように、土地というものは常に国に帰属をするものだというそういう政治理念を持ちながら、公有地の先買権というものをどう確保するのか、同時にそれは今の法律上どのくらいまで実際適用ができるのか、同時に、今の法律で適用できなければどこまで拡大をすべきか、これをやらなければ都市における土地の抑制というのはできませんよ。建設大臣が、我が内閣で一番失敗したのは土地政策だと参議院でおっしゃったそうですから、思い切ってやられたらどうですか。そこまで言われるんだったら、私は後顧の憂いのないように法律改正まですべきだと思いますよ。  それから、宅地並み課税が今自治省で進められています。これは、宅地の再調査ということで、土地評価に対するいろいろな今までの制度の改正をやっているのですが。これとても私は軽々に扱うべきではないという実は見解を持っているのです。  と申しますのは、宅地並み課税で土地を追い出した。確かに勤労者にとればその土地がある。しかし、その土地がまたまた投機の対象になってしまうのですよ。これはマンション法、建築基準法のときに、マンションをつくって空間地帯は空に伸ばせばマンションの家賃は安くなるという発想でやったんです。ところが、マンションをつくればつくるほど高くなってしまったんですよ。いわゆる空間地が利用できなかったわけです。空間地というのは空き地という意味じゃないですよ。空のです。できなかったわけです。  同じように、宅地がそこにある。今三万八千ヘクタールぐらいでしょうか、私の計算でいけば大体二百四十万戸分ぐらい、これを仮に五十坪に直しますと。それには空閑地をとりますから数字的にはもっと縮まると思いますけれども、二年分ですよ。宅地並みの中に仮に住宅をつくるといえば二年分しかない。そうすると、それこそ砂糖に群がるアリのように投機はそこに押し寄せできますよ、土地投機屋さんが。そうすると、マンションと同じように結果的には安くならない。したがって、土地の管理という問題に対しては、その都市を、その地域、宅地のあるところを含めてどのような生活環境をつくるか。そのためにこの市街化にある土地は、宅地はどういうふうに活用するのか、さまざまな要素を持ってその宅地というものを管理する。私はみんなに言っているのですが、ちょうど今日の渇水時期における小河内ダムの水と同じだというんです。最後に残された宅地供給地ですよ、いわば都市にある市街化区域にある農地というものは。  ひとつ自治大臣、今度評価がえをやりまして、宅地に対する課税がいろいろありますけれども、単なる市街化区域における農地を税で追い出して宅地を確保するという、まさかそれだけの発想じゃないと思いますけれども、その場合にはその最後に残された水、貯水池の水をどのように有効的に利用するか、その観点をぜひ頭に入れてこれからの市街化区域における土地課税を考えてほしい、こう思います。  建設大臣、きょうは答弁をいただこうと思いましたが、答弁の時間がもうないようでございます。ぜひ、私ども考えた、訴えていることはおわかりと思いますから、一見識ある大臣ですから、よろしくお願いをしたいと思います。  最後に国鉄の問題について運輸大臣にお聞きをしますが、今清算事業団がありまして、これまた資料を一つ一つ点検していけばいいのですが、時間がありませんから、清算事業団に今残されている再就職のどうしても不可能といいましょうか、なかなか見つからないという人が五千人ちょっとあるというふうに聞いています。  そこで、この清算事業団における完全就職をさせるための今ある状況の中での条件というのは、どういうことを条件整備すればこれらの人々が完全に就労できますか。
  328. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 これは委員がもうよく御承知のことでありますが、先般来、本州の三会社並びに四国会社また貨物会社等で、北海道地域及び九州地域を中心にして追加の募集をいたしました。その終了後に、現在北海道、九州を中心に五千五百人程度の再就職先未定の職員が清算事業団に残っておられるわけであります。この方々は、今委員はできなかった人、こういう言い方をされましたけれども、これはあくまでも再就職未定の方でありまして、私どもはこの方々が就職ができないといってほうり投げるつもりはありません。この点だけはぜひ御理解をいただきたい。  そこで、問題はこれから先、この方々の個々の希望、また能力というようなものを踏まえながら就職対策を立てていくわけでありまして、そのためには再就職に必要な教育訓練、また個別の求人開拓、職業紹介といったようなものを着実に実行すると同時に、これらの方々を雇い入れる事業主に対して所要の財政助成措置を講じていくといったような形で、私どもはお約束の三年以内に清算事業団に残るこれらの方々の再就職を全部終わろうと考えております。  ただ、そこでもう一つの問題としては、この方方が北海道及び九州地区を中心にと申し上げましたとおり、大変ある意味ではこの方々が地域に固定して再就職を求められているという現状がございます。ところが、北海道及び九州地域自体経済情勢等もありまして、これは民間部門を中心に広域再就職を促進する必要がありますが、そのためには、一つは住宅の確保を必要といたします。ですから、住宅の確保をどう円滑に行うか。また特に、義務教育を過ぎました公立の高等学校に在学する子供さんをお持ちの方々に対しての学校の転入学のための情報提供といった、いわば本当にそれぞれの方と清算事業団が一体になった努力をいたさなければなりません。こうした努力を払いながら、これを完遂するように指導していきたいと考えております。
  329. 加藤万吉

    加藤(万)委員 今大臣がおっしゃいましたように、基本計画の職員の過不足が起きています。したがって、その過不足の面も、今の再就職未定者、この人たちをできる限り再配置をしてもらう、このことが第一の条件。そのために住宅だとか子供の問題だとか、ぜひひとつ配慮していただきたいと思うのです。  現実には、この清算事業団にいるこれらの人々は、率直に言って勤労意欲はあっても仕事をする場所がないという状況が非常に各所に見えているようですね。清算事業団そのものは事業を企画するわけじゃないですから、私も百も承知の上ですが、例えば清算事業団が持っている施設をある事業者に貸して、例えば従来あった車両工場を民間のある会社に貸してみて、例えば今車両の足切りをしてその車両を払い下げようとかいうのがありますね。今全国では一万数千台あるそうですから、そういう仕事を民間に委託をしながら、同時にそこで現在再就職の未定者の方を当面働かせるというような方法も一つの方法ではないかと私は思うのです。賃金を払っていて、しかも再就職するためにそれぞれ就職先とのコネクションや、あるいは派遣されている人もあるでしょうけれども、まだ多くの人がそういうことすらもないまま一日一日をむなしく暮らしている。これでは余りにも、本人にとってもさることながら、国の、清算事業団のお金の面から見ても少しむだではないか。ならば、そういう機能を通して、今言ったように、例えば車両の足切りをしてそれを民間に売り払う、そういう会社があれば、それを、今の清算事業団が持っている旧機関区ないしはそういう修理工場がございますね、そこでやらして、仕事をさせながら同時に再就職の道筋を見つけてやる、こういう方法も私はあろうかと思うのですが、いかがでしょう。
  330. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 私は、委員のお考えが全く検討に値しない問題だとは思いません。ただ、むしろ逆に、そうしたことを行う間、その方々は次のいわば恒久的な第二の人生に移り変わるための職業訓練あるいは求職活動というものができなくなるという問題も出てまいります。そうした点の利害得失を考えて、果たしてどちらが望ましいものか、とっさに私も判断がつきませんが、一度考えてはみたいと思います。しかし、私は、やはり本当に新しい職場を真剣に求めていく努力を事業団、それぞれの担当者とともに行っていく、そのための第二の人生に向けての職業訓練等をきっちりと身につけていただくためにその時間を使っていただく方が、結果的に御本人の幸せにつながるのではなかろうか、そういう気持ちはぬぐえません。
  331. 加藤万吉

    加藤(万)委員 ぜひ検討していただいて、労働者というのは働くことが主体で生きているのですから、それが失われることは極めて過酷な条件下にあるということを推察をして、あらゆる面での職業あっせん、あるいはそういう勤労意欲を満たすことに御配慮いただきたい、こう思います。  終わります。
  332. 砂田重民

    砂田委員長 これにて加藤君の質疑は終了いたしました。  次に、吉田之久君。
  333. 吉田之久

    ○吉田委員 いろいろ質問要旨を配らしていただいておりまして、ずらっと並べてみたわけなんでございますが、今資料を配らしていただきました関係上、順序を変更いたしまして、減税規模とマル優との関係、ここから質問に入らせていただきたいと思う次第でございます。  今お配り申し上げました資料、それは、減税やマル優問題、大変論議が闘わされている今国会でございますが、果たして現段階でいわゆる財源の余裕がどの程度あるのであろうかと、私どもの党も一生懸命知恵を集めて計算してみたわけなのでございます。  ごらんのとおり、1のAと書いてありますが、六十一年度の決算剰余分、これはようやく判明いたしてまいりまして、幸いなことに一兆七千億円出ております。うち補正予算に既に充当されておりますのが四千億円でございます。したがって、差し引き一兆三千億円の金が余裕としてあるということに間違いはないと思います。次にBといたしまして、六十一年度末の国債整理基金の残高でございますが、これは御承知のとおり六十一年の十月、六十二年の二月、二回に分けて発行されましたNTTの売却収益を主とする残高でございますが、この売却収益は二兆三千七百四十六億でございましたが、そういう結果、二兆一千八百億円の残高があることは事実でございます。それからCといたしまして、六十二年度、これからでございますけれども、本年度のNTTの株の売却収入、これはまだいろいろ、将来の問題ではありますけれども、仮に二百五十万円で売れると見て、百九十五万株でございますから、それを掛け合わせますと四兆八千七百五十億円という数字が出てまいります。  一方、2のDと書いてございますけれども、六十二年度の国債償還分、これは二兆二千億でございます。それから六十二年度の補正予算、今度のこの補正予算に既に四千五百億円充当されております。その合計が二兆六千五百億円、これは出ていかなければならない金額であると思います。したがって、AプラスBプラスCからDを引きますと、五兆七千五十億円という財源がともあれ現存するはずでございます。さらに、六十一年度の税収の決算、これは参考でございますけれども、四十一兆八千六百八十四億円ございました。今年度の税収の決算、税収が仮に五%伸びるとするならば四十三兆九千六百十八億円になるという数字が出ます。六十二年度の当初予算は四十一兆一千九百四十億円でございます。したがって、②から③を引きますと二兆七千六百七十八億円という数字が出てまいります。そんなに順調に伸びればいいのですけれども、仮に伸びない場合、したがって六十二年度が六十一年度の決算と同額であったと想定いたしましても、六千七百四十四億円が出てくるはずでございます。(AプラスBプラスCマイナスDプラスE)、そのaの場合には八兆四千七百二十八億円、仮に横ばいのbの場合といたしましても六兆三千七百九十四億円という数字が算出されるわけなのでございます。  まだまだ未定の要素もございますけれども、大まかに申しまして、この六十二年度を概観して、我が国の財政の余裕と申しますか、国家の政策意思でこれから配分を考え得る財源は六兆円ないし八兆円あるはずだというふうに考えておりますが、大蔵大臣、この数字に間違いはございませんか。
  334. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 今拝見いたしたばかりでございますが、お考えのなり方は了解することができます。御承知のことではございますけれども、一つ二つ申し上げることがあるといたしますと、例えばNTT、これは二百五十万円を前提にしていらっしゃるということでございますね。それから六十一年度税収決算、これから五%伸びればという想定でおられますが、御承知のように自然増収分がかなり一時的と思われます事情によって出ておるところがございますので、五%をそのままとっていいかどうかといったような問題があろうかと思います。ただ、しかし百歩譲ってというような計算もしていらっしゃいますので、その点もあるいは御配慮の上かもしれません。総じて申しまして、NTTの売却収入がこの中で五兆近くございますので、それを入れますと全体としてはまずまずこういう計算、こんなことになろうかと。大筋はよくお考えはわかります、これで。
  335. 吉田之久

    ○吉田委員 この数字を算定いたしますときに大蔵省当局の方々にも目を通してもらっておりまして、いろんな想定は想定としてこの数字自体に間違いはありませんということでございますから、ただいまの大蔵大臣の御答弁、それでいいと思います。もちろん、株価の問題でありますとかあるいは景気の動向、伸び率でありますとか、不安定な予測できない要素もいろいろございます。したがって、希望的に見積もればこの上限、あるいはかなり辛く見ても下限、六兆円から七兆円程度の金が現に用意できる状況にある、まずこの辺のところを総理もひとつ頭の中にお入れいただいて、さてこの減税の問題、マル優の問題等について論を進めてまいりたいと思いますが、――どうぞ。
  336. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 恐れ入りますが、主計局長がちょっと一言申し上げたいことがあるそうでございますので、お許しを願います。
  337. 西垣昭

    ○西垣政府委員 大臣からお答えしましたとおりでございますが、ちょっと技術的に補足をさせていただきたいと思います。  一つは、大臣が申されたことでございますが、私どもできるだけ有利に売却したいと思っておりますが、どの程度で売れるかわからないという基本的問題がございます。  それからもう一つ、年度末にこれだけの余裕があるということで考えておられるようでございますが、この中には当然六十三年度、来年度の償還分を含んでいるわけでございますので、これを考慮する必要がございます。  それから、国債整理基金の残高はゼロというわけにまいりませんので、ある程度のものを残さざるを得ない、こういう問題がございます。  それから、私どもといたしましては、NTTの売却益でもって社会資本の整備に充てたいということで相当程度のものを予定いたしております。その分を留保しなければならない、こういう問題がございます。  それからもう一つは、六十一年度の税収の中に一時的なものが相当ございまして、その辺の分析をしてみなければわからないという問題がございまして、六十一年度の税収の伸び分を土台としてどの程度カウントできるか、こういう技術的な問題がございますので、これだけのものが余裕としてあるというわけにはあるいはまいらないかもしれない。しかし、こういう計算もできないことはないという意味で、大臣のおっしゃるとおりでございます。
  338. 吉田之久

    ○吉田委員 私は、こういう計算ができると言っているだけでありまして、これを全部減税に回せなんて、そんな荒っぽいことをまだ言っておりませんよ。もちろん、できるだけ国債の償還分に充でなければならないというのは私どもの常識でありますし、また公共投資にも充当しなければならない。今お話がありました、何か一時的な非常に異常な要因があって六十一年度の決算がこうなったというのであるならば、後日その要因を示されて、こういうことにはことしはならない可能性の方が大きいということをそれはまた御説明いただければいいわけでございますが、決してむちゃくちゃな無理をしたからくりの数字ではない、ごく常識的に自然に考えて、幸か不幸か六兆円ないし八兆円の余裕が見込み得ることしてある、こういうことをまず総理に申し上げておくつもりでございます。  さて、そういう状況の中で、二日間、きょう三日目でありますけれども、いろいろ減税の問題やマル優の問題等につきまして各党各委員から厳しい、鋭い、掘り下げた質問がございました。答弁もちゃんと最大限正確に承っておったつもりでございます。そこで、問題を整理して、ちょっとどうしても疑問に残る点が幾つかありますので、総理大蔵大臣に伺ってみたいと考えるところでございます。  ともあれ、最近総理はマル優の廃止とはおっしゃらないでマル優の改組とおっしゃっておりますし、そのおっしゃらんとするところもほぼ推察できるわけなんでございますが、仮に、そういうマル優に全然手を染めることができなくて今のままの状況であるとしても、最低一兆三千億程度の減税はあるのでございますね。まずこの辺をひとつきちんと聞いておきたいと思います。
  339. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先日来のこの委員会におきます質疑応答を踏まえての御質問でございますのでくどくは申し上げませんが、今年度の六十一年度剰余金等々を考えますと、所得税減税の規模いかんにもよりますが、今年度に関します限り何とか処理をすることができる。ただ、当然のことながらこれは明年度にも同じ減税があるということを、したがいまして私どもは恒久的なものと考えまして問題提起をいたしておるところでございます。
  340. 吉田之久

    ○吉田委員 ただいまの御答弁で大変はっきりわかってまいりました。要するに、ことし単年度の現時点での減税だけを考えるならば、先ほど申しましたようないろいろな順調な条件の中である程度、これはもう国際公約として一兆円を上回るとサミット総理みずからが言ってこられたことでもありますし、ほぼ、どんなに辛くとも一兆三千億、あるいは一兆五千億だっておかしくない、一兆八千億だっておかしくないが、それはまだこれからお決めになることでありましょうけれども、ともあれことしの減税はすることはできる、しかし減税はことしだけで終わるべきものではない、年々ずっと持続的に続けていくべきものである、だとするならば恒久的な財源が必要ではないか、ついてはそういうことでひとつマル優にメスを入れざるを得ないと総理考えておられる、このように理解していいと思うのでございますね。  もう少し言い方を変えれば、ある程度、一兆数千億の減税はこれはことしは用意できますよ、しかしそれ以上にプラスアルファを求めようとなさるならば、ひとつマル優についてもいろいろと検討をしなきゃならないんじゃありませんか、あるいは来年も再来年も持続的にこういう減税状態を続けていく、それは国の政策上非常に大事なことであります、内需拡大にも大事であります、そういうことを真剣に考えるならば、マル優の改組あるいは常に総理みずからがおっしゃっております直間比率の見直し、そういうものをひとつ真剣に論議していただきたい段階にあるんだ、こうおっしゃっていると理解してよろしゅうございますか。
  341. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 と申しますか、今年度の所得税減税、大きさにもよりますが、これがいわゆる戻し税であって一時のものであるということの場合には来年度云々ということを申し上げることは要らぬことかもしれませんが、そういうことは普通ないことでございますから、どうしても一遍減税になったものは、来年少なくともその水準で継続すると思わなければなりません。その場合の財源をどうするかという問題が一つと、それと、関連いたしますが、そもそもマル優という制度を、昨日までずっと申し上げてまいりましたように、やはりこの際基本的に考え直して、必要な新しいものにしていくべきであるということ、それはたまたままた財源になるわけでございますが、そういうことの両方の連関である、こういうふうに御理解いただきたいと思います。
  342. 吉田之久

    ○吉田委員 きょうまでの野党の質問の中で、ことしの減税は申しておりますけれども、来年度以降こんな減税をしてくれとはまだだれも詳しくは言及いたしておりません。にもかかわらず、政府は来年度のことを考えてくださっている。大変余計なことを考えていらっしゃるようにも考えますし、大変親切に考えてくださっているような気もするわけでございます。  重ねて聞きますが、このマル優にメスを加える、マル優を改組する、そのことを野党がイエスと言うのかどうか、その回答いかんによっては減税が全くゼロということもありますよ。イエスかノーかと迫っておられるのでは全くないということだけは言い得ますね。
  343. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 過般、政府が緊急経済対策におきまして、本年度一兆円を下らざる所得減税をいたしたいということを申しましたのは、あそこにも書いてございますが、全体の税制改革の一環としてという思想に立っております。したがいまして、とれは当然恒久的なものであって、それに見合う税源が考えられる、こういう前提に立っておるわけでございます。  ただいまのお尋ねは、これから税制協議会でいろいろ御審議を続けられます上で出過ぎたことを申してはならないわけでございますけれども、議長があっせん案に示されましたように、いろいろなことをおっしゃいまして、税制改革全体についての御協議であるというふうに私ども存じておりますので、したがいまして、今年度減税につきましてもそういう観点から御検討をいただいておるものと存じますし、また期待を申し上げておるわけでございます。
  344. 吉田之久

    ○吉田委員 御期待はよくわかりました。  さて、今の御答弁関連いたしましても若干きちんとしておきたいことがあるわけなんでございますが、大蔵大臣総理は、この減税は一年で終了しないものである、だからマル優の改組を考えようではないか、あるいは総理の場合、長期にわたる減税、したがってマル優にメスを入れてみたい、恒久財源の確保が前提である、こうおっしゃっております。そして税制改革協議会で早く結論を出してほしい、それまでは立ち入ったことは言えない事情にある、しかし早く決めてもらわないと六十三年度予算編成に支障を生じます、こうおっしゃっているわけなんですね。  ところが、私ども税制改革協議会のメンバーから聞いておりますことでは、税制改革協議会では、減税は減税、マル優初め直間比率の見直しは見直しとして、別個に大いに論じていこうではないか。我が党の永末副委員長説明でありましたから、あるいは他党がそうであるか全体がどうであるかは別といたしまして、少なくとも減税とマル優をセット論で税制改革協議会では論じていないような気がするわけなんでございます。政府あるいは与党自民党の方は、それをセットで論じようとなさっていると思うのでございますが、その辺が十分かみ合っていないまま今後真剣に検討が続けられていく、そうすると、常識的に考えまして、やはりかなり時間の経過することもあり得ると思うわけなんでございます。そうすると、税制改革協議会が続いている限り、これから何カ月続くのか知りませんが、その結論が出るまでは政府のこの税制問題に対するフリーハンドが戻ってこないということになると思うのです。  しかし、きょうの新聞なんか見ますと、既に八月四日には減税とマル優とのセット法案が国会に提出されるのではないかというような声も聞こえてまいっております。しかし一方において、総理は何遍もこの委員会で、税制協議会はあくまでも尊重いたしますとお答えになっておるわけなんでございます。こうなりますと、ここに一つのジレンマがあると思うのです。この税制改革協議会を尊重し、かつ十分に審議してもらわなければならない、これは議長がそうお決めになったことであります。そうしておる限りにおいて来年度の予算編成になかなか入れない、政府自身がフリーハンドを取り戻すことができない、これをどうなさろうとするのでございますか。時間が来れば、もう税制改革協議会を打ち切ってでも、政府みずから、みずからの考え方を出し始めようとなさるのでございますか。
  345. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいま仰せられましたような種々の事情並びに本日いろいろ御質問にもございました地方財政の各地方団体の九月補正という問題等々もございまして、まさに大変に困った状態を心配をいたしておりまして、それらの事情を税制改革協議会に申し上げまして、速やかにひとつ御検討を終えられますことを懇願を申し上げたい、こう考えておるわけでございます。
  346. 吉田之久

    ○吉田委員 私に懇願されてもどうにもならないことなんでございますけれども、お気持ちはそれなりにわかります。  ところで、今度はひとつ問題を整理いたしまして、マル優問題でございますけれども、大まかに分けて選択肢は四つに分けることができると思うのです。  一つは、ともあれ現状のまま存続という一つの方向。いま一つは、これは金丸副総理も山梨でお話しになったようでございますが、マル優の脱税防止対策を真剣に協議しようとおっしゃっております。私どももそう考えているわけなんでございまして、したがって、マル優カードを発行するなどして、ともかく限度管理を厳密にやっていこうではないかという考え方が一つの筋道でございます。いま一つは、総理のおっしゃるように、新型マル優に改組して、特別の人たちに対しては何らかの配慮を残していこうという考え方でございます。四つ目には、もうこの間の売上税のときと同じように、マル優は全廃する、そして一律二〇%の分離課税にする。この四つのパターンしかないと思うのでございます。  きょう時点の考え方で、この一の考え方はほとんど与野党ともなくなってきていると思います。ともあれ、不正利用者の多いマル優をこのまま目をつぶって存続させようという考え方はほとんどなくなってきていると思います。また、一挙に荒荒しく全廃してしまおうという考え方も、総理みずからが変えられたように思います。だといたしますと、マル優カードを発行するか、あるいは新型マル優に改組するか、この二つが残ってくるわけでございますけれども、この二つは、その対象の設定、範囲の決め方の量の問題と申しますか、そういう問題でありまして、質的に余り変わらない問題だと思うわけなんでございます。  いずれにいたしましても、何らかの管理、何らかのチェックが必要であると思います。そう私は思うのでございますけれども、大蔵大臣はいかがお考えでございますか。
  347. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私はやはり、その中間の二つでございますが、質的に違っておるというふうに思います。と申しますのは、私どもは、本当に健康で十分に働ける、また働きつつある人々が持っておられる預貯金の利子、それが資産所得でございますが、何ゆえに免税にならなければならぬか、もはや我が国にはそういう理由はないのではないかというふうに基本的に考えるものでございますから、そういう人々にはマル優という制度は必要がないと考えるものでございます。それに続きまして、社会的には特別な配慮を要する方々が随分おられますから、その方々に対しては新しくこういう制度をいわば新設すると申しますか、つくっておくことが大事であろう。その場合にそういう方々は、私どもの考えでおります範囲では、例えば住民票であるとかあるいは身体障害者手帳であるとかあるいは健康保険証であるとかいうことでおのおのが検証ができる、またできる範囲の数であると思いますので、したがいまして、特段のカードであるとかいうようなものを必要としないと思うのでございます。基本的に私どもは、したがって、このマル優というものは原則的にはやはりこの際やめまして、そして特段の配慮を必要とされる方々のために、新しいものをつくると申しますか、改善をして残すと申しますか、そういうふうに思っておりますので、質的にやはり違っておるように存じます。
  348. 吉田之久

    ○吉田委員 質的に違うのか、量的に違うだけなのか、これはかなり見解の違いを感ずる次第でございますが、戦争中から国の目的に協力するためにつくられ始めたこの制度、そして戦後四十年間続いてきたこの国の制度、これはもう一つのメカニズムになっておるわけでございまして、いかに偉い宮澤大蔵大臣であろうとも、あなたの判断で、ある日突然これはもう不要であると、ちょっとそんなに断定なさるのはいかがなものかと思います。  それは仮に百歩譲って質的に違うといたしましても、この間からおっしゃっておりますように、何らかのチェックが必要だ。そこで大臣は、いや、老人とか母子家庭とか身体障害者、こういう弱い方々はそれぞれの証票を持っておられる、こうおっしゃっております。恐らく証票といったって手帳のことじゃないかと思うのでございますが、うなずいていらっしゃいますからそうだといたします。確かに手帳を持っております。したがって、その手帳を持った人が行けばそれは本人であることが確認できるというのが大臣のお考えのようでございますが、もちろん、純情な素直なそういう方々が多いと思いますけれども、やっぱり今日このような近代社会の中で物事を考えるときは、いろいろなケースを考えなければなるまいと思うのです。  現に、九十過ぎたおばあちゃんが、立派な有資格者であるとして、該当者であるとして、このおばあちゃんが銀行や郵便局に行くことはほとんど不可能であります。だれかに代理で行ってもらう、子供や孫が走るだろうと思います。そういうことでございますから、手帳は見たって、来た人がその本人であるかどうかというのは全く確認できません。写真でもつければ別でありますけれども、この手帳に全部写真がついているとは思いません。あるいは、人間生身の体でございますから、亡くなるということもあります。亡くなったが、その死亡確認ができないままに幽霊手帳がひとり歩きするということもあり得ると思います。失って再発行を求める人たちもあると思うのです。Aの銀行からBの銀行に走っていけば、その銀行ではみんな、御本人わかりましたということにはなりますけれども、その人が限度を超えてマル優をため込んでいるのかどうかのチェックはできないと思うのです。どうなさろうとするのですか。
  349. 水野勝

    ○水野政府委員 大臣からも御答弁申し上げましたように、こうした人たちにつきましては、人数も限られたところでございますので、それぞれの店舗におきまして非課税貯蓄申告書をお出しになる、その申告書はそれぞれお出しになった方の税務署に集中される、そこにおきまして、複数の店舗におかれまして預金されても、それは合計されて限度が管理されるということでございますし、また、そうした人だちにつきましてはお話しのようなはっきりした証票がございますので、現在に比べれば量的にも質的にも格段の差があると申し上げられるのではないかと思うわけでございます。
  350. 吉田之久

    ○吉田委員 ちょっと局長、余りいいかげんなことをおっしゃらない方がいいと思うんですよ。大臣はこの間、それじゃこういう弱い立場にある人たちは幾らぐらいおられますかという質問に対して、ほぼ千五百万人から二千万人だとお答えになりましたね。千五百万や二千万といったらそんなに少ない数でしょうか。国民の数割に当たる数でございますよ。また、税務署は一つでありましても、税務署がそういう銀行に全部限度額をチェックする、そういう機構を持つということができますでしょうか、今の体制で。  ちょっと思いつきで余り言わないで、わからなければわからないと。検討しますならいいけれども、そんなに大臣や局長さんらがこの問題で深く検討なさっているはずはないのですよ、きのうきょうの答弁なんだもの。それほど、いかに優秀な大蔵省であっても私はちょっと――いや、大臣がおっしゃってください。やっぱり大臣と私どもの方がチャンネルがよく合いますので。
  351. 日向隆

    ○日向政府委員 新型マル優の姿がどうなるかによっても変わってくると思われるわけでございますけれども、さきの通常国会に提出されました政府案によって考えますと、非課税貯蓄対象者の数は約二千万人弱と考えられます。既に国税庁といたしましては、六十一年一月一日より、非課税貯蓄対象者の限度管理につきましては、住所、氏名、生年月日について公的書類により本人確認を行っておりまして、これは委員も御承知と思いますが、この住所、氏名及び個人の不動の要素である生年月日を名寄せキーといたしまして、コンピューターにより全国一本の名寄せを実施することとすれば、先ほど申し上げた約二千万人弱の対象者を前提にその限度管理は適正に行えるものというふうに私どもは考えております。
  352. 吉田之久

    ○吉田委員 だんだん話がかみ合ってまいりました。やっぱりコンピューターによるオンラインが必要だと思うのです。そうしなければ二千万近くのチェックはできません。  そういうことで二千万人のチェックができるとするならば、日本に世帯数というのは幾つあるんでしょうか、日本の世帯の数。ちょっと教えてください、だれか。
  353. 水野勝

    ○水野政府委員 世帯数は約四千万世帯でございます。  それから、先ほど申し上げました千五百万人から二千万人でございますけれども、現在のマル優利用者の口座数は一億六千万口ございますので、そこは質的に差があると申し上げたところでございます。
  354. 吉田之久

    ○吉田委員 ちょっとあなた失礼ですよ。私どもの今の論議は、ABCD四つの選択肢の中の二つが質的に違わないと私は言うし、大臣は違うと言っておるのであって、今の一億数千万の口数を相手に、それをそのまま是として論議しているのではないんですよ。失礼ですよ、あなたは。  だから今、浜田さんもいみじくも、それじゃ二千万と四千万といったら二千万しか遣わぬじゃないか。そのとおりなんですよ。二千万コンピューターでオンラインできちんと名寄せができてチェックできるものならば、私は四千万人はできると思うのです。だから、一億何ぼできるとは言いませんよ、すべきだとは思いませんけれども、私どもがここで申し上げたいのは、やっぱりきのうの坂口さんの質問でもありましたけれども、我が国の一世帯の平均の年間収入は七百三十三万円、そして貯金いたしておりますのが二百八十五万円です。ちょうどマル優の限度額に似ているのですね。だから、私どもの常識では、庶民、普通の勤労者は、まずマル優一口ぐらい平均貯蓄するのがまあまあのところだと思うわけなんです。だとするならば、もっとお金持ちの方々もいらっしゃるでありましょうが、国民は平等でございますから、これは私の一つの私案でありますが、仮に日本のすべての世帯に一口とか二口とかのマル優等を認めるとしても、これは名寄せは簡単なことだと思うのです。それてなければ、今総理がおっしゃっている極めて一部の気の毒な人たちだけは守りましょうということも守れなくなると思うのです。だから、私はこれは質的にも一緒だ、量的にちょっと、倍か三倍違うだけだと思うのでございますが、そうお考えになりませんか。
  355. 日向隆

    ○日向政府委員 委員も御案内のように、限度管理を適正に行うためには、一定の公的書類など外形的なもので本人確認が行われるというのがまず第一でございます。また、確実な名寄せが行われるということが必須の条件であります。この場合、老人等を対象とするマル優制度の場合には、その対象が、今申し上げましたが約二千万人弱で、外形的な本人確認が確実に行われると考えられますけれども、この対象者が今お話しのように全国民に広がる場合には、いわゆる私どもが言っておる言葉でございますけれども、借名預金が行われることが予想されまして、これについては本人確認が難しいという問題があります。これを最終的に担保するには、私ども税務調査でやる以外にしようがないと思います。  また、非課税貯蓄申告者の名寄せにつきましても、その数が膨大なものになるというのは今委員も御指摘になりましたが、仮にコンピューターによって名寄せするといたしましても、これらの事務には相当な事務量や多額の経費が必要である、こういう問題があろうかと思います。
  356. 吉田之久

    ○吉田委員 ちょっとここからしばらくの質問は大臣にお答えいただきたいと思うのです。詳しい今のような説明はもうこれで結構でございます。  大体、今の局長さんらの答弁を聞いておりますと、既にマル優の改組は決まった、そしてそれは老人と母子家庭と身体障害者を対象にするものだと決めてかかっていますね。こんなものまだ全然決まっていませんよ。  総理、申し上げますが、総理も戦中派だ、私どもも同じ世代、ちょっと後輩でございますが、あの戦争中にかなりの男は死んでおります。したがって、今日本の社会では、六十歳前後の女性で全然結婚しない独身者が秘めやかに生きているという現状はお気づきいただけると思うのです。夫も持たず子供も持たず、しかしだんだん高齢化社会、いつまで生きられるのかそれはわかりませんけれども、必死になって自分のか細い生活を支え、かつその足らざる分をつめに火をともすような思いで貯金をして、マル優や郵貯をやって、そのわずかな利息、月に四、五万でありましょう、その利息を生活の一部の補いとして生きている人たちもいっぱいいるのですね。私は常識的に考えまして、こういう人たち、よしんば総理のおっしゃる一部の非常に気の毒な人たちだけは対象とする、そういう形に改組しようとなさるとしても、そういうひとりで生きているか細い女性たちを入れないわけにはいかないでしょうね。総理、ひとつこの辺からお答えいただきたいのです。
  357. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 先ほどちょっとお話がありましたように、母子家庭であるとかあるいは身体障害者であるとかあるいは御老人、六十五歳、こういうような方々は把握しやすい。それで、初めきちっとやっておけばそう崩れることもないし、悪いことをやる可能性も割合少ない層だと私は思うのですね。それは未亡人とかあるいは身体障害者の方とかそういう方と、健康で社会を飛び回ってあっちこっち自由に活動できるという方とちょっと違いますね。そういうようないろんな性格から見て、一般国民の皆さんにマル優をずっと同じように認めるという場合と、そういう社会的な弱者に対して認めるというのは、質的な、思想の差があると私は思うのです。  それから、一般国民全部に認めるとどれぐらいになるかわかりませんが、数千万とかあるいは一億ぐらいの口数が出てくる可能性がないとは言えませんですね、それはやってみなければわかりませんけれども。しかし、それらの方々の場合はどうなるか。これはお年寄りの方々や何か、かかった方でも同じですけれども、限度管理という形でやる場合には、結局はコンピューターに入れて名寄せしなげればできない。あなた方の言うマル優カードの場合でも同じです。というのは、三百万とかあるいは二百五十万とか持っておられても、引き出したりまた入れたりするわけです。ですから、そのたびごとにある程度調書が要る、支払い調書とか。そういう問題の届け出とか調書というものから見るとかなりの膨大な手数が要る。経済活動の活発な方と活発でない方とはそれだけまた非常に違ってまいります。そういうようなことから見ると、事務の繁忙というものが非常に出てくる。  もう一つは、国民の皆さんの側からすると、お金の移動というものが銀行ごとに、あるいは郵便局と銀行の間を移動するごとに、Aという人は幾ら残っています、Aという人はもうオーバーしましたとか幾ら残っていますというのがみんなわかってくるわけです。そうなると、貯金というようなものについては、実は親子、兄弟の間でもたんすの中に入れたり、人に知られたく市いものなんですね。人に知られたくなくて、自分ひとりでにっこりして持っているという、そういう日本国民のいじらしい貯金に関する性格というものをよく理解しないと政治は間違うのです。一般のブロイラーを扱うみたいなつもりで、こういう貯金という金融的性格のものを扱ったら間違いなんです。貯金というものは秘匿して持っているところに楽しみがあり、そしてまたためていこうという努力もあるわけなので、そういうものが銀行ごとに、移るごとに、Aという人はもうあと幾らしかありませんとかオーバーしましたとか、これを直すということ自体が私は非常に非日本的である、あるいは非人間的である、いじらしさがなくなるじゃないですか。そういう非常に大事な面をお考え願いたいと思うのです。  そういうような事務の繁忙、あるいは今のような貯金心理というものを考えてみると、我々が考えているように、全部これはあからさまに二〇%なら二〇%、利子について二〇%払っていただけば、そうすればもう追及や何かしません、あと追っかけることも要りません、預金証書も要りません、あなたは幾ら残っているとか足りないとかということも追っかけてきません。そして安心して、今までは、どうも不正をやっていた人たちは、おずおずいつやられるかというので恐怖心でやっていたでしょう。しかし、今度はもうそのことは正しいことなんです。責められないことなんだ。そういう形になって預金が現状維持されていく。郵便貯金も減らないでしょう。銀行預金も激減しないでしょう。しかし、そうでない形になると、これは名寄せあるいは限度管理を厳重にやるとおっしゃっている方やそういう政党もあるわけですから、こうなるというと、これはもう金を買ったり、株式へ逃げたり、土地を買って土地の暴騰をまた促進したり、そういうような副作用が非常に出てくる危険性があると思うのであります。  そういうようないろんな面から見まして、どちらがいいかという比較をやった場合に、私は、私らの方が明るくて穏当ではないか、そう思うわけなんです。
  358. 吉田之久

    ○吉田委員 これはきのうときょうの、今の総理答弁を総合いたしましたら支離滅裂ですわ。今あなたがおっしゃったのは、それは理論的にきちんとしておるのですよ。それは全廃論なんですよ。あのもめた国会、売上税と一緒に出してきた中曽根案はそのとおりなんです。全部何もかもなし、弱い者も強い者も全部貯金というものは、(中曽根内閣総理大臣「いや、弱い人を守ろうという」と呼ぶ)弱い人を守ろうとしたら、これは後で大蔵大臣に聞きますが、先ほどの説明をあなたは聞いてなかったのですか。ちゃんとコンピューターが要るというのです、二千万人調べる。そうしたら、老人や母子家庭や身体障害者の人たちの貯金は全部白日のもとにさらされていい、その他の人間は絶対これはプライバシーだ、これは差別じゃありませんか。大蔵大臣、どう思います。
  359. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 もう一遍申し上げますが、仮にそういう該当者が――これは政府の案でも限度管理は要るわけでございますから、私どもの事務当局がことしの初めからああいうことを考えておるので、今思いついて申し上げているのじゃございません。それで、仮に老人であるとかあるいは母子家庭であるとか身体障害者であるとか、そういう方々が非課税枠を設定されるときに、金融機関へ申請書を出されます。その際に、自分は老人であるとか母子家庭であるとかいうことは、そこで証票ということをきのう申し上げたのでございますが、例えば住民票の写しでも、健康保険証でも、年金証書でも、身体障害者手帳でもよろしゅうございますから、それを添えて銀行で非課税枠を申請書で設定をされまして、金融機関はその本人確認をしたということを認証をする、そういう仕組みでございます。それを全部集めますから、そこでコンピューターが要るわけでございますが、ですから結局、二重申告ということはできないことになるということを説明申し上げました。  その場合には、これはあくまでマル優のためのいわば事務処理でございますから、それが広い意味での国民の背番号とかグリーンカードになるという心配はない。何と申しますか、特定の配慮を必要とする方々を優遇するための手段でございますから、国民一般にこの制度をやろうというわけではないということを申し上げたいのです。
  360. 吉田之久

    ○吉田委員 国民一般になさろうとなさっていないことぐらいは、きのう、おとといから十分わかっておりますが、さてそれじゃ、社会的な弱者とは申せ、そういう大蔵大臣がおっしゃるような証票を持っている、そういう手帳などを持っている弱者は救う、しかしそういうものを持ってないもっと気の毒な弱者もいるのですね。先ほど申しましたような、本当にか細いひとり暮らしをしている女性がいるのですね。今随分いるのですよ、男は死んじゃったから。そこらは弱者には入れない。それから、その証票を持っている弱者は神様であって絶対不正はしない、そう思いたいけれども、これは断定はできませんね。あるいは、亡くなった場合に税務署に届け出るのはずっとおくれるでしょう。その間ひとり歩きすることもあるでしょう。  いま一つお聞きしますが、身体障害者で老齢者はいますね。これはダブってお考えになるのでございますか。その辺はいかがですか。
  361. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それで昨日から千五百万ないし二千万と申し上げておりますのは、重複がございますので、延べの数字でございます。延べの数字というふうに御承知願いたいと思います。もちろんダブってはございません。  それから、今おっしゃいましたことで実は一番現実に困りますのは、大変に所得の少ない人がいる。その人の持っている、預金といたしますか、ほかに別にこういう一種の弱者ということはない、しかし低所得者ということの証明が事実上できない。どうやって低所得者であることを証明するかということは、現実には行政としてはほとんど不可能な問題になってしまうということがございますので、そういうケースは私はないとは申しません。今申しました幾つかの特別な配慮をする人々のほかに、ないとは申しませんけれども、低所得者であることをどうやって証明するか。それから、言えば、そこへすぐその名義の預金をすることはまだ易しいという問題はございますけれども、それはちょっと汚い話でございますから申しませんけれども。
  362. 吉田之久

    ○吉田委員 今大臣がおっしゃったように、低所得者でもっかみにくい人たちがいます。つかみにくいから切り捨てるというのは非常に薄情な話。低所得者ほど思い詰めてマル優にすがりついている人たちがいるということは、どうもお二人にはわからないようでございますが、これは育ちが違うのか、私どもにはよくわかるのでございます。  それは別として、ですから、たとえ少数でもそういう把捉できない非常な弱者がおる、それを切り捨てるわけにはいかないから、一応すべての国民に例えば一世帯幾らとか、全部に、これは豊かな人もおるけれどもまず最低ベースとして平等にマル優カードを発行した方が、そういう哀れな人たちは一応それなりに救うことができる。しかもそれが、弱者だけを守るとしても二千万人前後、コンピューターオンラインが要る、ならば四千万だってほとんど同じこと。それは質的に変わるのかどうかは論議のあるところでありますが、限度管理ができないわけてはない。私はそう信じて疑わないのです。これ以上の論議はしても時間がたつばかりでございますから、これは税制協議会でも篤とやっていただかなければならないことだと思うわけでございます。  次に、総理のここ二、三日の答弁を聞いておりますと、諸外国からは貯金にまで補助金を出すのかとなじられる、大体我が国は貯金し過ぎるんだ、それはマル優がこんな形になっているからだ、一方でこうおっしゃるのですね。しかも一方では、限度管理を強化する、私どもの言うマル優カードなんか出したら、それはもう全部調べ上げられるということで預金者は全部預金をしなくなる、金が逃げ出す、預金が激減する、世の中が暗くなる、そして一層財テクに走るだろう、だからこれはだめだ。  そうしたら、両方聞きましたら、片一方では貯金は減らした方がいい、諸外国に対して。あなた自身はそのすぐ後の言葉で、やはり貯金は減らしちゃいかぬ、逃げたら大変だとおっしゃるのですね。どっちをお考えなのでございましょう。
  363. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 つまり、こういうものについては激変が一番いけない。徐々に変動が起こることはやむを得ないし、経済の趨勢でしょう。しかし、金融とか経済の問題については非常な激変等を起こさせないようにする。この間うち、グリーンカードをやるということになったら相当な資産逃避が起きた経験があります。そういう面から我々は考慮をせざるを得ないのであります。
  364. 吉田之久

    ○吉田委員 よくわかりました。激変を緩和する意味でも、私は、一番確かな答えはマル優を本来の姿に戻そう、これを不正利用する人たちを排除しよう、これが一番歴史的経過に沿っても正しいし、今日の政治というよりも、国民生活のメカニズムとして一番定着している。これを破壊するようなことは、いかな全能の総理であったとしてもなかなかにしてはならないことでありまして、今一番の的確な答えは、私どもが申しておりますようなマル優カードを正しく発行して、そしてきちんと限度管理をしていく。多少難しい問題がありましても、社会的な不正は許さない、こういう姿勢にやはり立つべきだと思いますので、そのことだけ申し添えておきます。  ついでに郵政省にお伺いいたしますけれども、マル優が廃止されれば同時に実施されることになっておりました預け入れ限度額、これが五百万になる予定でございましたけれども、こういう動きの中で戸惑っておる、めどが立たない、末端の郵便局もやきもきしておる。私どものかかわっております、協力してくれております全郵政労働組合でも、急いで現行三百万の限度額を五百万に引き上げてもらいたい、こういう希望が非常に強いのでございますが、郵政大臣はどう対処なさろうとしておりますか。
  365. 唐沢俊二郎

    ○唐沢国務大臣 郵便貯金の限度額は、さきの百八国会で三百万から五百万に引き上げていただきましたが、その実施日は、税制改正の施行日に合わせて「政令で定める日」となっておるわけでございます。これは、もう先生御高承のように、郵便貯金の預入限度額と民間金融機関の非課税限度額は同額でバランスをとっております。そういうことで郵便貯金の預入限度額が引き上げられることによって資金シフトが起きたり、また金融秩序に無用な摩擦を起こしてはならないという配慮からこのような調整がなされたものと承知いたしております。そういう意味で、今衆議院に設けられました税制改革協議会で御審議をされております税制改正、一日も早く速やかに御審議をされることを懇願を申し上げる次第であります。
  366. 吉田之久

    ○吉田委員 お聞きのとおりでございまして、この辺も総理、激変緩和の意味で十分御配慮をなさらなければならないことだと思います。  さて、次に防衛問題に入りますが、まず防衛白書によりますと、これは六十一年八月発行されたものでありますけれども、「諸外国の技術的水準の動向等に対応するため、装備体系等を変更する必要が生じた場合には、安全保障会議及び閣議の審議、決定を経て、別表の内容を変更することも可能である。」こう書いてあります。仮に別表の内容を変更したとしても、大組の定める基本的な考え方を見直したことにはならないということも書いてあります。そして「現在、「大綱」の基本的考え方の見直しはもちろん、別表の修正も考えていない。」と書いてあります。全然考えていないならば、なぜそんな余計なことを書こうとするのか、それからお伺いいたします。
  367. 西廣整輝

    西廣政府委員 御承知のように、防衛白書と言っておりますが、「日本の防衛」というアニュアルレポートは過去一年間にありました主たる防衛に関する事業とかあるいは国会等で論議されました主要な論議、そういったものを御紹介するということで、その一つとして書かれたものというように理解いたしております。
  368. 吉田之久

    ○吉田委員 ともあれ、私は別表を見直したり、あるいは防衛計画大綱それ自身も必要な時期には見直すべきであると考えておる一員でございますけれども、例えば既にいろいろと新聞等をにぎわしておりますエイジス艦ですね、DDG、これは対空ミサイル搭載護衛艦の一種だろうと思うのですけれども、これは対潜水上艦艇の中に含まれるというのかどうか。いずれにいたしましても一隻二千億もするこのエイジス艦、私は必要ならばお求めになっていいと思うのですが、しかし求めるならばやはり最低四隻、護衛隊群それぞれ四グループから成り立っておりますから四隻要るのではないか。大体どういう順序で、どういう年次でこれを導入しようとするのか、かつ、そういうものがそろったとするならば、あるいはその他FSXや、あるいはその他いろいろと陸海空新しい装備を備えていくわけでございますが、一つ一つは別表の中に入る、全体としても別表の中に入るけれども、そろってみれば全く質的に、それこそ質的に変わったものになるおそれが十分にある。だとするならば、今の別表もただ頭数や隻数や飛行機の機数だけしか書いていないわけでありますが、もう少し事細かに書いて国民にも納得、説明できるようにし、かつ、それを逐次やはり見直していく、こういうことが親切であり、防衛に対する国民合意を得る一番大事な出発ではないかと思うのでございますが、防衛庁長官はそうお考えになりませんか。
  369. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 今お話のありましたとおり別表というのがあって、別表の中の基幹部隊あるいは主要装備というのでいろいろあるわけですね。私は、これはこれでいいと思うのですよ。ただおっしゃるとおり、いわうる技術水準が向上してまいりますから、量の問題でなくて質が向上する、それに伴っていろいろと高度なものができる、これは当たり前だと思うのです。しかも、それは現実には中期防衛力整備計画の中で具体的に検討しているわけです。今のエイジス艦ですな、いわゆる護衛艦の対空ミサイルシステムですね、この性能向上、まだ決めておりませんけれども、検討していることは事実でございます。そういうようなことは中期防衛計画の中でいろいろ検討もし、また六十三年度の予算を組む場合には概算要求の中でやりますので、国民の皆さんにもその都度わかりますので、それなるがゆえに現在「防衛計画の大綱」を見直すという必要はないのではないか、私はこう考えております。
  370. 吉田之久

    ○吉田委員 大綱問題はそれぐらいにいたしておきまして、次に、GNPの一%をわずかに超えた、そうして今度は総額明示、十八兆四千億の金額で縛ったということでございますが、いろいろ国民の論議のあるところでございますけれども、私は、静かに考えますと、金額の縛りというのも大変きついと思うのでございますね。十八兆四千億をきちんと五で割りましたら、一年間三兆六千八百億でございます。それで、その三兆六千八百億とことしの三兆五千百七十四億、差し引きいたしましたら千六百二十六億しか余裕はないのですね。したがって、例えばエイジス艦を毎年一隻入れるとは思いませんけれども、エイジス艦だけではありません、次々OTHレーダーとかいろいろなものを導入していこうとすれば、それだけで他の部分をかなり圧縮したり、あるいは節約したり、再編したりしないとつじつまが合わないと思うのでございますね。したがって、私はやはり全体的なこれからの五年間のあるべき防衛力の輪郭、そういうものをきちんと説明し、そして必要ならば別表も変え、また必要ならば防衛計画大綱も変える、できればこの五年間、しかも途中で三年日に見直ししないわけでございますから、この五年ごとに必要があれば別表をきちんと見直し、防衛計画大綱も修正すべき点がありとするならば正していく、そういうことが非常に大事だと思います。  ともあれ総理、一%をわずかに超えた。しかし、一%を守る精神を継承して頑張っていかれるでありましょうが、この額で縛られましたことも大変厳しい縛りでありまして、その辺を十分よく指導していただきたいと思うのです。総理は近々おやめになるようでございますけれども、やはり五年間の間には総理が二人、三人がわることもあります。大変勇ましい総理大臣が出てこられることもあります。あるいは、時に非常に元気のいい防衛庁長官が出てこられることもある。時に極東の情勢が非常に一時悪化する場合もある。そういうときに、やはりそれなりの構えをとらなきゃならない。とったとするならば、四年目五年目にはほとんど予算が半分ぐらいに減ってしまうというようなことになる心配も私は心配し過ぎじゃないと思うのでございますが、その辺いかがお考えでございますか。
  371. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 「防衛計画の大綱」の水準を達成したときに次の問題を考えるわけでございますが、その次の問題を考えるときに今おっしゃったようないろいろな諸点、諸元というものは考慮の対象にして検討したらいい、そう思います。それは将来の話でございますが、ともかく我々は、現在は「防衛計画の大綱」水準達成に一生懸命努力したいと思っております。  それからエイジス艦云々という御質問でございましたが、今の五カ年計画による金額による歯どめというのは民社党さんの御助言を入れて我々はそれを採用させていただいたので、これは非常にいい歯どめである、私はそう思っておるわけです。やはり金額的な歯どめというものも将来ある意味においては一面的に考慮する必要もあるのではないか、そう思います。
  372. 吉田之久

    ○吉田委員 総理防衛庁長官もこの「防衛計画の大綱」に示す水準に達したらそこでまた見直そうとおっしゃるのでございますが、私はこういう大綱には永久に達することはない、どこまで行ったって、情勢が変わりますし、科学技術が進んでいくわけでございますから、ほぼ近づいたと思えば次なる目標を掲げるということでないと本当の防衛は難しいのじゃないかと思いますので、あえて野党でありながらこんなことを申し上げておる次第でございます。  さて、アジアのINFの問題についてであります。  総理は、アラスカにINFを置いてそのような牽制を与えながらソ連のINFをなくしてしまうためにと、いろいろそういう助言をなさったそうでありますが、しかし、このアメリカのパージングーというのはシベリアに届かないのですね。だから、極東に配置されたソ連のINFに対して対抗する能力を持たない、ただ数だけのINFを百弾頭アラスカに置いてみたってそれはどんな意味があるのだろうかと思うのですが、その辺は総理はどうお考えでございますか。
  373. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 どの程度に届くか、正確な射程位置を私ははかったことはございませんが、シベリアに置くというのは、一体どこに相手が置くか、そういうことにも関係しますし、また、シベリア以東におきましてもかなり重要な核基地というものはソ連は持っております。そういうような面についても有効性を持っておるのではないか。一番近いところはペトロパブロフスクですね。これは非常に重要な軍港にもなっております。いろいろそういう総合的に考えてみますと、やはり相殺する価値はある、そういうものになってくるだろうと思います。     〔委員長退席、吹田委員長代理着席〕
  374. 吉田之久

    ○吉田委員 カムチャツカ半島のペトロパブロフスクに達することだけはわかっておるのでございますが、それとソ連の恐るべきINF百弾頭とがパリティになるかどうか、私にはどうしてもわからないことなのでございます。  それから、きのうペルシャ湾の我が商船の援護等につきまして総理お話ありまして、このときにはやはり我が国我が国の平和憲法の国是があり、だから武力でそれを守りに行くわけにはまいらない、だからあくまでも平和外交で我が国の商船を守ろうとするんだ、ここではそうおっしゃっているわけなんでございます。そして、このINFの問題では、我が国は持てないわけでございますが、アメリカにどうぞひとつそれで対抗してなくしてくれとおっしゃるのでございますが、この辺が私にはどうもちょっと次元の一時には平和憲法でその姿勢を示し、時にはまた力のバランスを示そうとなさる。どこか総理の深層心理の中に、何か核を主力とする、そういう極めて力の外交に頼ろうとするお気持ちがあるのではないか大変心配なんでございますが、いかがでございますか。
  375. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 前から申し上げていますように、日本は大きな意味においてアメリカの核の傘の中にある。我々は核に対して今全く裸同然でおりますけれども、これに対抗するものはやはりアメリカの核である。そのアメリカの核抑止力の傘の中で我々は安全を維持している。しかし、日本列島の防衛自体に関しては我が自衛隊あるいはアメリカの安保条約による協力等によって限定的小規模の力をもって守り、かつアメリカの安保条約による後援というものを当てにしてやっている。これはもう防衛の本質に関する基本的な線ですが、このペルシャ湾における問題というものは日本の本土防衛と直接そう深い関係があるわけではありません。油の供給という意味において間接的にはございますが、そういうものではないし、日本国憲法の枠内というものを厳格に考えてみた場合に、そこまで我々は手を出すだけの性格は持っておりません。その分野は外交とかあるいは国際世論、国際関係というものの力によってやるべき分野でありまして、そういう意味においてイラン、イラクとも我々は対話を持つ唯一の先進工業国として存在している、この独特の地位というものは、そういう日本の広い意味における総合的安全保障という意味とも絡んでおる一つの外交戦略である、そうお考え願っていいと思うのであります。     〔吹田委員長代理退席、委員長着席〕
  376. 吉田之久

    ○吉田委員 総理のようなすぐれた方が物を申されますと、諸外国では、それは日本人がそういう気持ちを持っているというふうにイコールで受け取られることは当然だと思います。私は、総理が一面において厳しく核を否定されながら、実は内面において核を肯定されているような気がする、そういう印象を少なくとも諸外国に与えたと思います。しかも、その示唆されたアラスカのINFがアジアにほとんど達しないものである。要らざることをおっしゃったような気がしてならないわけでございまして、やはり広島、長崎に核攻撃を受けた世界最初の人類であり、最後の人類でなければならない日本、この平和国家日本の宰相の独特の指導力、言動というものを示していただきたかったということを強く申し上げておく次第でございます。  次に、地価の問題でございますけれども、総務庁長官にお伺いいたします。  臨時行政改革推進審議会等で地価問題についていろいろと動きを示していただいております。ちょっと概要につきまして御説明をいただきたいと思います。
  377. 山下徳夫

    山下国務大臣 土地問題につきましての新行革審審議は今緒についたばかりでございまして、本格的な審議はこれからお願いするのでございますけれども、非常に広範多岐にわたっておりますので、私どもといたしましては基本的に、総合的にお願いをいたしておるわけで、しからばどのように進めるかということは、これから新行革審自体でお決めになる問題でございますが、その内容には大分実務的な問題がございますので、したがいまして各省庁の横の連絡も十分とっていただきたいな、かように思っておる次第でございます。
  378. 吉田之久

    ○吉田委員 新聞で拝見したわけでございますが、新行革審の土地小委員会、大槻会長委員長になられまして、特に市街化区域、調整区域の線引きの見直し等にも触れておられることは大変現実的だと思うわけなんでございます。  そこで、農林大臣にお聞きいたしますけれども、現在の日本の国土面積は三千七百七十万ヘクタール、耕地総面積がほぼ五百万ヘクタール、その中で市街化区域が日本全国で百三十五万ヘクタール、調整区域が三百七十万ヘクタール、こういう状況の中で今純粋な休耕地は十四万ヘクタールだと思いますが、転作地はどのくらいありますか。減反総面積はことしは幾らでありますか。
  379. 加藤六月

    加藤国務大臣 本年度から水田農業確立対策を実施しております。そのための転作等の目標面積は七十七万ヘクタールでございます。そして今まで昭和四十六年から四十八年、稲作転換対策を行っておりましたが、そういうときには一つの態様として休耕を認めてきたことはありましたが、現在は水田の有効利用という観点からこれを極力解消するように指導しております。みずから転作を実施することが困難な農家等が農協等に水田を預託し、作付はされないが常に耕作可能な状態に管理することになっております。吉田委員が言われるのはいわゆるこの保全管理が行われておる面積ではないかと思いますが、本年度のはまだ出ておりませんが、六十一年度の分は転作実施面積六十二万ヘクタールやっておったわけでありますが、約二万三千ヘクタールぐらいあったようになっております。
  380. 吉田之久

    ○吉田委員 大体私の想像いたしておりました数字と合います。減反面積が初め七十三万ヘクタールと見ておりましたのが七十七万になったようでありまして、純粋な休耕地が十四万、したがって六十数万の転作地がある。  さて、その転作地でございますけれども、本当に転作しているところと、形だけの、奨励金をもらわなければならぬから泣く泣くそういう体裁だけをしておるのと、これは農林大臣が一番よく御存じだと思うのですが、そこで、今日本の米の問題がいろいろとかく国際的に論議されておりますけれども、そろそろこの休耕、転作、いわば減反というのをやめてしまって、やはり東北や北海道、米しかつくれないところは全部一〇〇%米をつくっていただく。そして、それに見合う面積を徐々に、都市近郊の調整区域を逐次市街化区域化していく、あるいは一挙に市街化にしなくとも両面にらみの準市街化地域に繰り入れていく。これが現にさっきもお話に出ておりましたけれども、東京周辺はもとより関西周辺にいたしましても、日本じゅう大都市周辺というのはもう土地が高騰してどうにもならない。しかし、家を建てたくとも調整区域には家を建てるわけにはまいりません。農家の長男しか建てられないわけでございます。したがって土地が幾らでも用意できるにもかかわらず、我が国は宅地難、住宅難で苦しんでおる、こういう現状でございます。  ちなみに休耕面積、全く何もしないで遊ばしております面積だけをとりましても市街化区域の一一%に当たるわけでございまして、あるいは今お話しありましたとおり、減反面積を全部総計いたしますと、何と驚くなかれ、我が国の市街化区域の五〇%以上に当たるわけなのでございます。全部を一挙にそうしろと申すわけではございませんけれども、逐次、この辺で都市計画法を見直して、本当に今国民が必要としている宅地を提供していく、供給していく、言うならば宅地予備軍をつくり出すことによって都心部の土地の値段を自然に引き下げることができると私は思うのでございますけれども、天野建設大臣はいかがお考えでございましょうか。
  381. 天野光晴

    ○天野国務大臣 農地を宅地に転用する、大変考え方はいいと思うのですよ。日本全国ばらばらに休農させておく土地を一カ所にまとめてやる、大体同じだと思うのですが、具体的に東京周辺の田んぼは稲づくりはやめさせて宅地にする、そして宅地の足りないのを補給するということは私は非帯にいい考え方だと思いますが、私は建設大臣ですから、そういう意味では農林大臣の方でそれをそうやるように決めてもらわないと困る。これは法律をつくもか何かしなければだめですな。あなたは全部わかっておるはずですから、その点は。
  382. 吉田之久

    ○吉田委員 どうも建設大臣にしかられたようでございますが、こうなると総理大臣がいろいろ総合的に御指導いただくしかないと思うわけなのでございます。  都心部の中で緑地があります。それが騰貴のために温存しておる部分もあると思います。ともあれ、宅地並み課税をするそというのでございますけれども、一向に宅地化しない。これは旅人にそのマントを脱がせようとしてビュウビュウ北風を吹きつければますますそれをくるんでしまった、ぽかぽか暖かく太陽が照れば自然に脱いだというのと同じでありまして、自然に宅地予備軍をどんどんつくっていけば、私は、そんな高い都心部に売ってくれない土地ならば、どんどん国民の方が新しい便利な近郊を求めていくと思うのです。そういう鎖を外してやらなければならないと思うのでございます。また、大都市近郊の農業地帯におきましてはほとんど兼業農家でありまして、次なる農業を引き継いてくれる後継者がいないと途方に暮れておるような現状でございます。  この辺のことを御認識いただきまして、サラリーマンに住宅を持ち得る夢を与え、また諸外国から指弾されている中で本当に内需拡大を図っていくためには、まず土地を安くどんどん提供する。そして、それは日本の農業を危機に陥れることには全くならない。こういうことで、総理大臣みずからがひとつ今こそなさなければならない決断として御指導に当たっていただくわけにはまいらないものでございましょうか。
  383. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 それらの問題については、今、新行革審で御研究願っておるのでございますが、今日の日本の状況を見ますと、今おっしゃったような農地と宅地あるいは調整区域の関係あるいは税制あるいは都市計画あるいは埋め立て、そういう問題についてかなり大胆な思い切った政策をやらなければだめだ、小手先の技術的な問題で解決する問題ではなくなった、特に東京周辺あるいは三大都市周辺においてはそういう状況になってきておる、そう思いまして、そういうようなていの思い切った改革案を新行革審において検討されることを期待しておる次第です。
  384. 吉田之久

    ○吉田委員 四全総にも期待いたしますし、やはりこれから総理がそういうことで総合的なリーダーシップを発揮していただかなければ、問題は根本的に解決しない時期に来ておるとつくづく思います。  さて、時間短縮の問題でございますけれども、だんだん時間がなくなってまいりましたが、五十五年に労働省は、六十年までに二千時間にしようと言った。それが全然進まずに、六十年六月に、今度は六十五年までに二千時間にしよう。総労働時間数でございますね。ほとんど横ばい状況でございます。これでは世界から働き過ぎだ、アンフェアだと言われることは当然でございます。  さて、新前川レポートが申しておりますように、二〇〇〇年に向けて千八百時間にまで圧縮していく、時間を短縮していく、そういうことのためにはもっと具体的なプログラムを労働省初め各省庁がお持ちにならなければならないと思います。時間がございませんので、そういう時間短縮、これはまさに国際的な課題でありますし、国際的な公約でありまして、どう取り組もうとするのか、労働省、経企庁、通産省、逐次簡単にお答えいただきたいと思います。
  385. 平井卓志

    ○平井国務大臣 当面大変重大な、重要な政策課題でございまして、今御指摘ございましたように、この十年来実態は進んでおりません。そういうことで、内外ともに非常な要請がございますので、何とかここで思い切った時間短縮を図らなければならぬ。  そこで、ただいま御案内のように、労働基準法の一部改正もお願いしておりまするし、さらには公務員等の完全週休二日制、閉庁制等々へ、人事院勧告まだでございますが、どこまで踏み込んでいくか。一層のこと、その結果、金融機関、さらには商店街等の協力、そして労働基準法の改正をもって今後の四十時間法制へのあるべき指針を示して国民の皆さん方の御理解を得ながら着実にこれを実行してまいるということで、ただいま基準法改正をお願いしておるところでございます。
  386. 近藤鉄雄

    ○近藤国務大臣 労働大臣からお答えがございましたので、私からつけ加えることはございませんが、御案内の経済構造審議会の建議の中でもこのことはうたわれてございますし、私ども国民生活の充実という観点からも、例えば内需拡大、消費の拡大も今後時間消費型の消費がふえてまいります。文化活動とか、スポーツとかその他、そういったことでございますので、そういう点でも労働省その他関係各省といろいろ御相談しながら、できるだけ早くこの所期の目的を達成をするように努力をしてまいりたいと考えております。
  387. 岩崎八男

    ○岩崎政府委員 優秀な人材の確保のためには、中小企業サイドからもやはり労働時間その他労働条件の改善、これはぜひ必要だという認識でございます。ただ、それを促進する具体的な直接の、例えば税制なり金融上の支援策があるか、ここがなかなか適当あるいは有効な形というのがどうも考えつきませんで、基本的に中小企業の法人税軽課とか組合の税制の軽課とか、あるいは研究開発、設備投資等に対する促進とか、こういうことによって中小企業全般の経営基盤の安定強化を図ることがそういうことに結びつくのではないかというふうに考えておる次第でございます。
  388. 吉田之久

    ○吉田委員 総理、これはここ何年来各大臣も一生懸命でございますし、また答弁も立派なんでございますが、問題は時間であらわれてまいりまして、全然進んでないんです。昭和五十五年に年間総実働時間が二千百八時間でありまして、それが昭和六十年には二千百十時間、二時間ふえておるのでございます。六十一年になって二千百二時間、それでも五十五年と比べて六時間しか一年間に減っていない。まさに遅々たる歩みでございます。  それから、年次有給休暇等も日本は平均九月しか休んでいない。アメリカは十九日、イギリスは二十三日、西ドイツ二十九日、フランス二十六日と全く格差があるわけなんです。これはやはり今答弁にもありましたけれども、中小企業の特殊事情が大きく足を引っ張っておる。時間外の長時間労働にたえなければ勤労者の方も生活が、賃金が十分に満たない、経営者の方も余り頭数をそろえるよりはそうしてくれた方が経営が少しでも楽である。この体質を変えてやらなければならないと思うのですが、そのためには総理みずからが指導力を発揮されて、何とか中小企業に奨励金も出すから、いろんなことを考えるから改善しなさい、そうしなければ日本として恥ずかしいと思うのですね。それが貿易摩擦の主たる原因になり、いつも日本がターゲットにされるということでございます。何かよろしく御指導いただきたいと思うのですが、いかがですか。
  389. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 そういうふうに持っていくためにも、やはり先導力というものが要ると思うのです。先導力になるのは労働基準法であると思うのです。今改革をお願いして四十時間という目標をつくって新しく前進させようとしているわけですが、この法律を通していただいて、そして四十時間に持っていくについては段階的に何年ぐらいで何時間にしていくか。四十八時間を四十六時間にし、四十四時間にし、あるいは四十時間にするのか。あるいは一挙に四十五時間にして四十時間に持っていくのか。そういうような段階的計画という努力目標をつくったらどうか。そしてそれには、中小企業の問題を忘れることはできません。それに付随して同時に中小企業対策をどうするかということを行いつつ、今のような段階的削減案、努力目標というものを政府とあるいは民間団体あるいは各党で話し合って、そしてその努力目標を実現するために協力し合う、そういうことにいくのが私は超党派的にいい方法ではないかと思うのです。しかしお互いに余り無理を言わないで、この辺ならやれるという線をみんなで模索し合いながら、一歩前進二歩前進、そういう形で進むというのが賢明ではないかと私は考えております。
  390. 吉田之久

    ○吉田委員 御努力をいただきたいと思います。  それから、ちょっと問題は違うのでございますが、関西学研都市、これがそろそろ出発をいたします。ついては、やはり担当大臣を早く決めてほしいというような動きがございます。筑波の場合と比較して、その辺いろいろ御配慮をいただけると思うのでございますが、総理、いかがでございますか。
  391. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 関西学園都市は非常に重要なプロジェクトであると思っています。ただ、筑波の新都市をつくりましたときには、工業技術院とか都内にある膨大な研究所を移転させたものでございますから、それには各省大臣がみんな協力しないとできないので、そういう閣僚の協議会をつくりました。関西の場合は新しくこれから物をつくっていくというので、今あるものを時間を決めて移転するのとちょっと性格が違うわけです。その辺、今検討させております。
  392. 吉田之久

    ○吉田委員 ほとんど時間がなくなりましたが、ちょっと塩川文部大臣に一言お伺いをいたしたいと思います。  実は、今そろそろ大学も就職シーズンで、大学生も苦労しておると思うのでございますが、一口に申しまして、せっかく勉強して大学を出て、一番大事な就職試験を受ける。しかし、同じ日一斉に試験が始まりますね。そこでうまくいけばよし、だめだったらそれですべては、もう夢も希望もなくなってしまう。もちろんどこかに就職はするのでありましょうが、大変苦労いたしております。  ついては、大学の入学試験をAグループ、Bグループに分けましたように、ひとつこれは自由なる経済国家でありますが、いろいろ総理も御指導いただいて財界、経済界の人たちにも協議していただき、文部大臣も骨を折っていただいて、例えば株式上場の会社でも、百人人を採用する場合にはまず五十人を決める、そしてまた二十日置いてあとの五十人を採用するとか、複数に試験を受ける機会を与えてやる。何かやはりその辺の政治的な指導、配慮が必要だと思うのでございますが、文部大臣はいかがでございますか。
  393. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 なかなかいいアイデアだと思いまして、さすがやはり就職問題、非常に関心を持っていただいて、学生を大事にしていただいて栄ります。感謝いたします。  そういう提案があったということを私は日経連の方なんかにもお伝えいたします。
  394. 吉田之久

    ○吉田委員 時間が参りましたので、どうもありがとうございました。
  395. 砂田重民

    砂田委員長 これにて吉田君の質疑は終了いたしました。  次回は、明十六日午前九時三十分より開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時八分散会