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1987-07-14 第109回国会 衆議院 予算委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十二年七月十四日(火曜日)     午前九時一分開議 出席委員   委員長 砂田 重民君    理事 今井  勇君 理事 野田  毅君    理事 浜田 幸一君 理事 林  義郎君    理事 吹田  愰君 理事 上田  哲君    理事 川俣健二郎君 理事 池田 克也君    理事 吉田 之久君       相沢 英之君    愛野興一郎君       上村千一郎君    魚住 汎英君       臼井日出男君   小此木彦三郎君       小渕 恵三君    越智 通雄君       大島 理森君    奥野 誠亮君       海部 俊樹君    片岡 武司君       小坂徳三郎君    左藤  恵君       佐藤 敬夫君    桜井  新君       志賀  節君    田中 龍夫君       渡海紀三朗君    西岡 武夫君       原田  憲君    福島 譲二君       細田 吉藏君    松野 幸泰君       武藤 嘉文君    村上誠一郎君       村田敬次郎君    村山 達雄君       山下 元利君    井上 一成君       井上 普方君    加藤 万吉君       川崎 寛治君    菅  直人君       細谷 治嘉君    坂口  力君       冬柴 鉄三君    水谷  弘君       宮地 正介君    木下敬之助君       楢崎弥之助君    米沢  隆君       石井 郁子君    岡崎万寿秀君       田中美智子君    正森 成二君  出席国務大臣         内閣総理大臣         通商産業大臣臨         時代理     中曽根康弘君         国 務 大 臣 金丸  信君         法 務 大 臣 遠藤  要君         外 務 大 臣 倉成  正君         大 蔵 大 臣 宮澤 喜一君         文 部 大 臣 塩川正十郎君         厚 生 大 臣 斎藤 十朗君         農林水産大臣  加藤 六月君         通商産業大臣  田村  元君         運 輸 大 臣 橋本龍太郎君         郵 政 大 臣 唐沢俊二郎君         労 働 大 臣 平井 卓志君         建 設 大 臣 天野 光晴君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     葉梨 信行君         国 務 大 臣         (内閣官房長官後藤田正晴君         国 務 大 臣         (総務庁長官) 山下 徳夫君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)         (沖縄開発庁長         官)         (国土庁長官) 綿貫 民輔君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 栗原 祐幸君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      近藤 鉄雄君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)     三ッ林弥太郎君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 稲村 利幸君  出席政府委員         内閣法制局長官 味村  治君         内閣法制局第一         部長      関   守君         公正取引委員会         事務局長    厚谷 襄児君         警察庁長官   山田 英雄君         警察庁警務局長 大堀太千男君         警察庁交通局長 内田 文夫君         警察庁警備局長 新田  勇君         総務庁長官官房         交通安全対策室         長       原田 達夫君         総務庁行政管理         局長      佐々木晴夫君         防衛庁参事官  瀬木 博基君         防衛庁参事官  筒井 良三君         防衛庁長官官房         長       依田 智治君         防衛庁防衛局長 西廣 整輝君         防衛庁教育訓練         局長      長谷川 宏君         防衛庁人事局長 松本 宗和君         防衛庁経理局長 日吉  章君         防衛庁装備局長 山本 雅司君         防衛施設庁長官 友藤 一隆君         防衛施設庁総務         部長      弘法堂 忠君         防衛施設庁施設         部長      鈴木  杲君         防衛施設庁建設         部長      田部井博文君         防衛施設庁労務         部長      山崎 博司君         経済企画庁調整         局長      横溝 雅夫君         経済企画庁国民         生活局長    海野 恒男君         経済企画庁物価         局長      冨金原俊二君         経済企画庁総合         計画局長    星野 進保君         経済企画庁調査         局長      勝村 坦郎君         科学技術庁科学         技術政策局長  加藤 昭六君         科学技術庁科学         技術振興局長  吉村 晴光君         科学技術庁研究         開発局長    川崎 雅弘君         国土庁長官官房         長       清水 達雄君         国土庁土地局長 片桐 久雄君         国土庁大都市圏         整備局長    柳   晃君         法務省民事局長 千種 秀夫君         法務省刑事局長 岡村 泰孝君         法務省訟務局長 菊池 信男君         外務省アジア局         長       藤田 公郎君         外務省北米局長 藤井 宏昭君         外務省中近東ア         フリカ局長   恩田  宗君         外務省経済局長 渡辺 幸治君         外務省条約局長 斉藤 邦彦君         外務省国際連合         局長      中平  立君         外務省情報調査         局長      新井 弘一君         大蔵省主計局長 西垣  昭君         大蔵省主税局長 水野  勝君         大蔵省関税局長 大山 綱明君         大蔵省理財局長 足立 和基君         大蔵省銀行局長 平澤 貞昭君         大蔵省国際金融         局長      内海  孚君         文部大臣官房長 古村 澄一君         文部省高等教育         局長      阿部 充夫君         文部省社会教育         局長      澤田 道也君         厚生省保健医療         局長      仲村 英一君         厚生省年金局長 水田  努君         農林水産大臣官         房長      甕   滋君         農林水産省構造         改善局長    鴻巣 健治君         通商産業省貿易         局長      畠山  襄君         通商産業省産業         政策局長    杉山  弘君         通商産業省立地         公害局長    安楽 隆二君         通商産業省機械         情報産業局長  児玉 幸治君         通商産業省生活         産業局長    鎌田 吉郎君         工業技術院長  飯塚 幸三君         中小企業庁長官 岩崎 八男君         中小企業庁次長 広海 正光君         運輸大臣官房長 棚橋  泰君         運輸省運輸政策         局長      塩田 澄夫君         運輸省国際運輸         ・観光局長   中村  徹君         運輸省地域交通 熊代  健君         局長         郵政省貯金局長 中村 泰三君         郵政省通信政策         局長      塩谷  稔君         郵政省電気通信         局長      奥山 雄材君         労働大臣官房長 岡部 晃三君         労働省労働基準         局長      平賀 俊行君         労働省職業安定         局長      白井晋太郎君         労働省職業能力         開発局長    野見山眞之君         建設大臣官房長 高橋  進君         建設省建設経済         局長      牧野  徹君         建設省都市局長 北村廣太郎君         建設省河川局長 陣内 孝雄君         建設省道路局長 鈴木 道雄君         建設省住宅局長 片山 正夫君         自治大臣官房長 持永 堯民君         自治省行政局長 大林 勝臣君         自治省税務局長 津田  正君  委員外出席者         参考人         (日本銀行副総         裁)      三重野 康君         予算委員会調査         室長      右田健次郎君     ――――――――――――― 委員の異動 七月十四日  辞任         補欠選任   伊藤宗一郎君     大島 理森君   宇野 宗佑君     片岡 武司君   桜井  新君     佐藤 敬夫君   福島 譲二君     魚住 汎英君   木下敬之助君     米沢  隆君   佐藤 祐弘君     田中美智子君 同日  辞任         補欠選任   魚住 汎英君     福島 譲二君   大島 理森君     臼井日出男君   片岡 武司君     村上誠一郎君   佐藤 敬夫君     渡海紀三朗君   米沢  隆君     木下敬之助君   田中美智子君     石井 郁子君 同日  辞任         補欠選任   臼井日出男君     伊藤宗一郎君   渡海紀三朗君     桜井  新君   村上誠一郎君     宇野 宗佑君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件 参考人出頭要求に関する件 昭和六十二年度一般会計補正予算(第1号) 昭和六十二年度特別会計補正予算(特第1号) 昭和六十二年度政府関係機関補正予算(機第1 号)      ――――◇―――――
  2. 砂田重民

    砂田委員長 これより会議を開きます。  昭和六十二年度一般会計補正予算(第1号)、昭和六十二年度特別会計補正予算(特第1号)、昭和六十二年度政府関係機関補正予算(機第1号)、以上三案を一括して議題といたします。  この際、お諮りいたします。  各案審査のため、本日、参考人として日本銀行総裁三重野康君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 砂田重民

    砂田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ―――――――――――――
  4. 砂田重民

    砂田委員長 これより質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。林義郎君。
  5. 林義郎

    ○林(義)委員 私は、まず中曽根内閣実績について申し上げたいと思います。  中曽根内閣は、昭和五十七年十一月二十七日に発足して、四年八カ月を経過しております。その政治は、第一に、わかりやすい政治を標榜されました。国民の前に具体的な政策目標を提示し、国民理解を得ながら政治を進めていく、そのことによって政治国民にとって極めてわかりやすいものになってきた、協力も得られやすくなってきたことは大きな成果だろうと思います。  次に、強力なリーダーシップを発揮されたことであります。数々の首脳外交日米貿易摩擦緊急経済対策がん対策などに見られるように、多くの困難な諸問題に対処して強力なリーダーシップを発揮し、迅速かつ的確な問題解決に努力し、また解決の方向を明らかにするなど、国際的にも大きな評価を受けたところでありますし、国民にも安心感を与えたと思っております。  私は、これをまず外交面で申し上げてみたいと思うのでございます。  サミットはもちろん、数々の首脳外交をされ、総理御自身たしか二十一回の海外出張をされたと思いますけれども、日本にも外国首脳をたくさん呼ばれました。レーガンアメリカ大統領胡耀邦中国総書記、西ドイツのコール首相フランスミッテラン大統領、オーストラリアのホーク首相、カナダのトルドー首相、そのほか多数の各国首脳日本に招いて積極的な外交を図り、日本の国際的な地位の向上に努められました。よく新聞等でロン・ヤス関係、こう言われますが、私は、レーガン大統領との関係だけでなくて、各国首脳との間で率直に申しまして非常に評判がよろしいと思うのです。特に、外国人に対しては大変わかりやすいようなお話をされるわけでございますから、それがひいては日本政治をわかりやすくすることにおいて大変よかったのではないかと思うわけであります。  次に、内政の問題につきましては、「戦後政治の総決算」、こういう表題を掲げられまして、国鉄、電電、専売の民営化をなし遂げられましたし、また医療年金改革を行い、行政経費の節減、補助金や人員の削減等を実施し、公債依存度の引き下げを行われたのであります。公債依存度は、なられる前の昭和五十七年度は三〇・二%ありましたが、六十二年度は一九・四%、補正後では二一・一%というふうに下がったのであります。  いわゆる経済面におけるところの政策を総括して申し上げますならば、私は自由化路線だと思うのであります。世界的な潮流を見ますと、レーガン、サッチャー、コールというところの新保守主義という考え方がございますし、私はそういった考え方に一致した一つの大きな潮流だと思うわけであります。  戦後の時代を振り返ってみますと、日本復興またはヨーロッパの復興などにおきまして、いわゆるケインズ時代というものがありました。それはまた同時に福祉社会建設ということをやってきたのでありますが、そうした中におきましていろいろな問題が出てきた。経済あるいは社会活力が失われるということからいたしまして、新しい方向づけを見出していかなければならないというのは一つ潮流でありましたし、そういった意味での新保守主義と申しますか新自由主義というか、そういったものは私は歴史の流れだったのだろうと思います。それをたくましい福祉と文化の国の建設という形ではっきり打ち出され、国民活力を与えてきたことは、私は経済史的に申してもまた政治史的に申しても、大きく高く評価されるものではないかと思います。  しかし、本年に入りましてから少しその道は厳しくなってきたと思っております。税制改革を打ち出されました。国の財政というものは、その歳出を賄うために歳入とどうしてもバランスをとってやらなければならない。ブキャナンという学者が「民主主義財政」という本を書いておりますけれども、その中に、民主主義のもとでケインズ理論をやっていくと、不況のときにはよろしいけれども、一遍膨れ上がった歳出を切るというのは民主主義のもとではなかなか難しいということを言っておりますし、そこに財政硬直化が発生するということも言っておるのです。しかしながら、特に我々自民党として、また国会議員として国家責任を考えるときに、やはり財政健全性というものは常に考えておかなければならない重要な問題だと私は思うわけであります。  そこで、戦後の税制シャウプ勧告によって、それを骨組みとして進められてきたわけでありますけれども、いろいろなそこにひずみが出てきた。不公正な、また不平等など言われるような諸問題が出てきたわけであります。そういった意味において抜本改正をやらなければならない、こういったことで進まれたわけであります。私自身も党の税制調査会副会長としてその一役を担った者でありますけれども、これが本年に至りましてなお国民の十分な理解を得られてないということでございます。また、これを受けまして当予算委員会におきましても審議に大変手間取りました。大幅な審議日程のおくれと、最後には不正常な形での採決ということになってしまったわけであります。私は予算委員会のこの席におりまして理事を務めさせていただいておりますが、こうした不手際に対しまして深くその責任感じておるものであります。  率直に申しまして、ことしはなかなかうまくいかないなという感じがいたすわけであります。何か疲れちゃった、厄払いでもしなくちゃいかぬのじゃないかなという感じすら私は個人的には持っておるのであります。しかしながら、私は、自民党がお互いに力を合わせてやはりこの難局に対処していかなければならない点がたくさんある、こういうふうに思っておるところでございます。  この補正予算審議をするに当たりまして、本来ならば当然歳入歳出両面について議論すべきだろう、私はこう思うのです。しかし、歳入の面は税制協議会において議論をされておるところでございますから、私はきょうの質問に当たりましては、この税の問題についてはあえて触れないで、そのほかの問題について質問をさせていただきたいと思う次第でございます。  本年は、日本国憲法施行四十年の節目に当たる年であります。この四十年間の憲法政治実績を検討し、良き成果は伸長させ、悪しきものは是正し、わが国民主政治をさらに輝かしいものに発展させる年であります。このため、立法司法行政三権関係問題点を勇敢に点検し、改革を必要とする点は改革を推進すべきであります。これは中曽根総理がことしの一月の自民党大会にされた演説の最後のくだりにあるところでございます。  選挙区定数の問題、内閣総理大臣権限の問題、政治資金の問題、その他たくさんの問題が三権の問題についてあります。私は、きょうはそういった問題全部をやるわけにもまいりませんので、三権分立の問題と条約の問題について御質問をいたしたいと思います。  権力分立、これはフランス革命のときに、一七八九年フランス人権宣言に、「権利の保障が確保されず、権力分立規定されていない社会は、すべて憲法を持たない。」こういう規定をしてあります。それ以来、基本的人権保障と並んで近代国家の本質的な内容をなす自明の組織原理として、この権力分立三権分離ということは認められてきましたし、我が国でも公理のごとく取り扱われておるものであります。  これは何のためにあるのか。それは絶対権力からの解放であります。フランス革命のときのことを考えれば当然のことであります。権力が集中し、乱用されることを防ぐためであります。三権の間の権力相互抑制と均衡は常に考えておかなければならない点でございます。  それは現行憲法の中でも組織論として、政府議会を解散します、議会総理選任権があります、内閣最高裁判所長官及び裁判官の指名権任命権などというものがございますし、立法司法行政のそれぞれの機関の成立なりあるいは構成なりを別の機関の意思にかかわらしめる、こういうこと。また次には、行政府議会を召集すること、行政府法案提出権、または議会条約承認権等に見られるように、一つ機関権限を行使するに際しては、他の機関がそれに影響を与えるような、チェック・バランス機能相互依存関係を持たせている。これが私は三権分立のあり方だろうと思うのであります。  三権分立というのは、立法司法行政機関が独立して、ほかのことを顧みずにやっていいというものではないと思うのでありまして、その機関機能を行うに当たりましては、相互に補完し合いながら、牽制をしながら国家権力の行使を行うということだと思うのであります。  次に、日本国憲法につきまして申し上げますと、七十三条で、内閣の行う事務として、「外交関係を処理すること」「条約を締結すること」を挙げております。外交関係を処理するために条約を解釈し、その運営を円滑ならしめるのは内閣行政の行う事務であることは言うをまたないところであります。  次に八十一条で、「最高裁判所は、一切の法律命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。」と規定しております。この列記の中に条約という言葉が入っておりません。この点につきましては学説その他でもいろいろありますが、有力な説は、これは条約が外れているのは当然のことだ、こういうふうな話でありますが、この辺はいろいろ問題があるところである。  さらに九十八条、最高法規規定でありますが、第一項で、「この憲法は、国の最高法規であって、その条規に反する法律命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。」と規定しており、ここでもはっきり条約という言葉が入っておりません。  このように、条約につき国内法と別にしている点につきましては、これもやはり学説上いろいろ見解があるようであります。私はそういった学説上の問題についてここで今学者として議論をするつもりはありませんが、そういった観点を通じまして、九十八条二項に、「日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。」点がはっきりと規定してあります。  なぜこういう規定が入ったか、私も調べてみたのであります。戦後の時代憲法学界の泰斗であった宮沢俊義先生の解説によりますと、明治憲法時代に、特にその末期において、日本条約についてとった態度がいろいろと問題があった。当時の日本は多くの条約を破ったと非難されました。これらの非難がどこまで当たっているかにつきましては問題があろうが、少なくともそれが全然根拠のないものだったと断言することは難しい。軍国主義によってもたらされた破滅から立ち上がろうとする日本は、何よりも国際信義を重んずる立場を守ろうとしなくてはなりません。この立場からは、日本外国と結んだ条約はどこまでも誠実に守らなければなりません。これが九十八条第二項の精神であると述べられております。また、憲法の前文に、「いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならない」とうたっておるのであります。  今、光華寮問題についていろいろと言われておりますが、私は、基本的に、立法司法行政三権がさきに述べた三権分立の原則に従って行動することが第一である。第二に、日本国憲法国際法規を遵守するという明確な立場に立っている。そういったことを十分に頭に置いて三権それぞれが行動をしなければならないと考えるものでございますが、この点につきまして、若干法律論でございますから法制局長官に御見解をいただき、次いで総理及び外務大臣から御所見を承れればありがたいと思っております。
  6. 味村治

    ○味村政府委員 三権分立と申しますと、委員がただいま述べられましたように、国家作用立法司法行政の三つに分からまして、そのおのおのを担当いたします機関相互分離、独立させ、それらの機関相互に牽制させるという統治組織原理であると心得ております。この原理は、委員御指摘のような理念に基づきまして、近代民主主義国家におきまして広く採用されているところでございまして、日本国憲法の定めております統治組織もこの原理を基本原理としておる次第でございます。  さらに、日本国憲法は国際協調主義を基本原則といたしておりまして、委員の御指摘になりました憲法第九十八条第二項が条約と確立された国際法規の遵守義務を規定しておりますのも、この国際協調主義という基本原則のあらわれの一つであるというふうに考えております。したがいまして、立法司法行政の各分野におきまして、我が国が締結いたしました条約なり確立した国際法規というものを遵守すべきことは、これは憲法上当然の要請であるというふうに心得ております。
  7. 倉成正

    ○倉成国務大臣 立法司法行政関係については、ただいま法制局長官が申し述べられたとおりだと思います。  憲法九十八条第二項において、我が国が「締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。」旨規定されていることは先生御指摘のとおりでございまして、司法府といえども、我が国が国として国際法上負っている義務に拘束されることは当然だと思うわけでございまして、現在行われております裁判でも、地裁、高裁のいずれの判決も、関連の国際法及び御指摘の我が国の憲法関係国内法を考慮した上でのものであると理解している次第でございます。
  8. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 ただいま法制局長官及び外務大臣が申し述べたとおりに考えております。
  9. 林義郎

    ○林(義)委員 次に、核軍縮問題につきまして、私は総理にお尋ねをしたいと思います。  本問題につきましてはもうしばしば議論をされている。本会議及び昨日の当予算委員会質問の中でもいろいろとありましたし、私は聞いておりまして、総理の核廃絶に向けての大変な御決意、またソ連に対抗するためにアメリカの国内においてやはり対抗手段としてこれをやらなくてはならぬということは、権利として西側が、アメリカが持つというのは、やはりバックアップするという、その交渉をアメリカの切り札として持つ、こういうふうなお話は大変よくわかる話だったと思うのです。  先般フランスのジスカール前大統領が来られましたときに、私もお話をする機会がありました。ヨーロッパではこの問題について受けとめ方が若干違う。それは、圧倒的な東側の通常勢力に対して西側が何でもってこれに対抗するかということで、やはり核の問題についてはいろいろな意見があるというお話を承っているのであります。  私は、核廃絶ということが、また核軍縮が進むということは大変すばらしいことだと思うのです。また、検証も非常に精緻なものをやっていくということは非常にすばらしいことだと思います。今まで、とにかくそんな制限なしにお互いにふやしていこう、ふやしていこうとこうやってきたわけでありますから、それが減るということは本当に大変なことであるし、米ソ間の信頼関係の向上にも役立ちますし、次なるステップであるさらなる軍縮への方向に向けての大きな第一歩になると思います。しばしば議論されておるところでございますが、こういった点を踏まえまして、総理の御所見を承りたい。
  10. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 我が国は広島、長崎の惨劇を受けた核被害国の唯一の国でございまして、核兵器に対する国民感情というものはほぼ一致していると考えていいと思います。それは、地球上から核兵器を追放する、そして地上の平和と申しますか、平和な社会建設していくということでございます。そういう意味におきまして、我が国は非核三原則も堅持しておりますし、全世界的に見ましても、国連軍縮会議の場等におきましてもこの主張を堅持してやっておるわけでございます。  ただしかし、平和を維持していくというこの安全保障の面から見ますと、過去四十年間なぜ平和が維持され、また大戦が勃発しなかったかということを子細に点検してみますと、それはいわゆる均衡と抑止という考え方に米ソ両方も立ち、世界の主要国が立ちまして、そして各自が持っておる軍事力というものをほぼ各兵器ごとに大体均衡させて、そしてその均衡を破るということをお互いがしなかった。破るとアンバランス、インバランスが生まれまして、そこに動乱とかあるいは紛争の危険が出てくる。そこで両方ともそれを抑制しつつ均衡を維持して、戦争を起こさない、そういう配慮をしてきた。米国もそうでありましたし、ソ連もそうであった。中国もあるいはフランスもみんな、私はそういう考えに立ってやっていると思うのであります。しかし、このように核兵器が増殖してまいりますと意味がない。そこでこれをできるだけ縮小していく、均衡も低いレベルで均衡させていく、そしてついにゼロに持っていこう。それが現実的な道でございます。そういう方向に国連を中心にする、あるいは米ソ交渉を中心にする動きが出てきました。  今までは、ややもすれば核兵器はふえる方向ばかりに動いておったのが、今回初めてレイキャビクのゴルバチョフ・レーガン会談におきまして、ICBMは五〇%減らそう、あるいはJRBM、特にINFと言われるパーシングⅡあるいはクルージングミサイルあるいはSS20というものは思い切って全廃しよう、あるいはそれよりもっと射程距離の短い千キロ、五百キロ、この問題もいずれゼロに持っていこうではないか、そういう議が出まして、そうしてレイキャビクにおきましては幻の合意と言われましたが、ある程度それは合意ができたというところなのです。あのある程度合意ができたことを、これをチャラにしてしまうのは余りにももったいないし、世界の運命に関係するというのでもう一回話し合いが始まりまして、そしてICBM、要するに五千キロ以上のものにつきましては半減する、大体そこへ意見が一致しつつある。やり方についてはいろいろありますが、ともかく意見が一致する。それから千キロから五千キロぐらいの間の長距離INF、そういうものについては、いわゆるパーシングⅡとそれからSS20の関係ですが、これもやめにしよう。ただドイツの問題が一つ残っていますけれども、ともかくそういう方向に動いてきておる。  これは、核兵器を削減するという初めての世の中に出てきた新しい現象でありまして、これをぜひ実らせる。最初は多少少ないものであっても、それは将来にわたって大幅な核兵器削減につながっていく。なぜなれば、両方に安心感が出てその実績が生まれてくれば、相当持っているものはむだだということはわかっているわけですから、やめる方向へ持っていくに決まっているわけです。  そういうような方向に行く第一歩ですから、この際、米ソ首脳会談をぜひ開いてもらって、そしてこれを縮減していく方向へ必ず第一歩を踏み出すようにさせるということが我々地球上の人類の悲願であり、日本の大きな主張です。そういう意味において、私はサミットにおきましてもその面を強く主張いたしまして、そうしてレーガン大統領もその気持ちになっておるわけです。ゴルバチョフ書記長が建設的な考え方に立ってこれに対応してくるように、実りある第一歩が踏み出せるように強く念願しておりまして、その面で努力してまいりたいと思っておる次第なのでございます。
  11. 林義郎

    ○林(義)委員 次に、大変新聞その他をにぎわしておりますココム問題というか、東芝機械事件の問題に入りたいと思います。  東芝機械は、伊藤忠商事及び和光交易の仲介により、昭和五十六年四月、全ソ技術機械輸入公団との間で大型NC工作機械四台に係る輸出契約を締結し、昭和五十七年十二月から昭和五十八年六月にかけて輸出をいたしました。同社は、当該機械が同時二軸制御の工作機械であるなどの不実の説明を行うことにより、輸出承認対象貨物には当たらない旨の非該当証明書の発給を受けた上で輸出をしたが、これは実際には同時九軸制御の工作機械でありました。同時九軸制御の機械を使用すれば、スクリュー等の非常に複雑な形状を持つ製品を高度な制御技術により短時間でかつ精密に加工することができるため、同時二軸の機械で加工した場合に比べ製造時間が大幅に短縮でき、かつ精度の高い製品を製造することができると聞いております。  本件につきましては、かなり以前に疑惑ありとの情報がありましたので、通産省では関係者に質問をし、調査をしたが、企業側が虚偽の説明を行ったがために事実が判明するに至らなかった。その後、追加情報もあったことからより一層詳しく調査した結果、本年四月に至り外為法違反の疑いが濃いと判断して警視庁に告発し、警視庁の捜査の結果、違反事実が判明したというのが今回の事件の概要であろう。私はこういうふうに理解をしておりまするが、大筋について間違いがないかどうか。通産大臣、どうでしょう。
  12. 児玉幸治

    ○児玉(幸)政府委員 林先生御指摘のとおりでございます。
  13. 林義郎

    ○林(義)委員 この機械はソ連潜水艦のプロペラ加工に使用されまして、その静粛化に役立つものと言われております。町の中で、またいろいろなところで言われておりますのは、海峡等を通過するソ連潜水艦のスクリュー音を探知するためにソナーシステムというのがあります。これに入ってくるスクリュー音が小さくなった。それは船ごとに異なっておりますので、ちょうど人間の指紋をとってその指紋簿をつくっておる、こういうふうな形での識別が今までできたわけでありますけれども、これが変わってまいった。実はこうしたことの探知をするというのでP3Cというものをつくったわけであります。そのほかにもいろいろなシステムがございましたが、このP3Cが一機百億にいたしまして五十機、大体そのぐらいにことしの暮れぐらいにはなるのだろうと思いますが、五千億も使った。もしも買ったものが使えなくなったら大変なことじゃないかなどというような議論を言われる方もおられるわけでございまして、もしもこういった私が今申しましたような探知ができないとかなんとかというような話になりますとこれは大変なことでありまして、我が国の防衛政策上も大きな問題であります。一体どういうようなことが具体的に出てきたのか、またこれから起こると予想されるのか。この点は技術的な話ですから防衛庁の専門的な方にひとつ御見解を承りたい、こう思います。
  14. 西廣整輝

    西廣政府委員 ただいま先生の御質問の件、これに直接お答えするということになりますと、我我にとって最も機密度の高い対潜能力なり、あるいは平素から監視をし、あるいは調査を積み重ねた結果得られております対潜情報というものの手のうちを出してしまうことになりますので、一般論としてお答えをすることをお許し願いたいと思います。  潜水艦というのは、御承知のようにその所在が見つけられにくい、つまり隠密性ということが命であります。そういうことですから各国とも潜水艦が見つけられないように、潜水艦を見つけるためには、通常、音で探知をするというのが主体でございますので、いかに潜水艦を静粛化するか、雑音を出さないようにするかというのが各国ともその工夫を凝らしているところであります。現に日本におきましても、大体年に一艦ずつつくっておりますけれども、一艦ごとにそういった工夫を重ねて研究をして改良していくということでございます。ソ連等は年間十隻ぐらいはつくっておりますので、一艦ごとかどうか私どおりまびらかにしておりませんけれども、少なくともタイプがかわる、型式がかわることに静粛化が進んでおるということは間違いないところであります。  ところで、お尋ねの今回の東芝機械のココム違反とソ連の潜水艦の静粛化との関連でございますけれども、潜水艦の出す音というのは必ずしもスクリューの音だけではございません。例えば汽缶がございます。原子力潜水艦ですとタービンを回しておるわけですが、そのタービンの振動音をいかに小さくするかということもありますし、それが直接海中に振動が伝わらないように、直接に船体に取りつけるのではなく、いわば水の中に浮かしたような格好でできるだけ振動音を外に出さないようにするとか、いろいろな工夫があります。そのほか、いろいろな機械を操作する際の音、あるいは乗員の足音まで小さくするといったようないろいろな注意をしておるわけです。もちろん、その中でスクリューというのは潜水艦が動くためにどうしても海中で直接回さなければいけないというものですから、発生する音の中でかなり重要な部分を占めておるということはまた間違いない事実であります。  ただ、今回のスクリューをつくるのに非常に適した、先ほどお話がありました高性能のフライス盤、そういったものがソ連の手に入りますと、先生が言われたように、より精巧で複雑なものが短時間にできるという点で相当なスクリューに対する進歩は見られると思いますが、先ほど申したように、者はスクリューがすべてでないということが一つでありますし、また、スクリューの出す音、これはいろいろ工夫はしますけれども、なかなかゼロにはならないというものでありますから、すべてがゼロになってしまうというものではございませんで、例えば、今先生の御指摘の各種の艦艇なり航空機が持っておるソナーあるいはソノブイ、そういったものがある日突然使えなくなってしまうというものではございませんで、今まで百聞こえたものが九十ぐらいしか聞こえなくなるとか、そういったことであろうと思うわけです。ただ、これも相当深刻でございまして、例えば三〇%ぐらい探知距離が短くなるということになりますと、捜索面積からいえば半分以下になってしまうということでございますので、今まで一隻なり一機でできたところが二機なり二隻要るということでございますので、相当深刻なことであるというように考えております。  もう一点、やはり先生が御指摘になりましたように、海中でいろいろ音を出しておりますのは潜水艦ばかりじゃございませんで、水上艦、漁船も商船もみんないろいろな音を出しておるわけですね。それを一々そのとき聞いてから確かめたのでは間に合わない。やはり日ごろから長年気の遠くなるぐらいの努力を重ねて、潜水艦の一つ一つの音を事前にキャッチをしておくということが有事有効な対潜作戦ができる根拠になっておるわけであります。そういう点、比較的手軽にスクリューを取りかえるということぐらいで従来蓄積しておるデータというものが失われますと、もう一度新しくそのデータを取り直すということにやはり相当な期間がかかるということは間違いのない事実でありまして、そういう点、我々としても今回の問題はかなり深刻に考えておるというのが事実でございます。
  15. 林義郎

    ○林(義)委員 技術進歩をずっとしていきます。日本の方でもそうであるし、世界もやはり潜水艦というのは隠密でやらなければならぬから、みんなそれぞれ技術革新をやっていく、こういうことであります。しかし、相手の国にそういったものを出すことによって相手の方がそういったことの技術革新には相当役立つ、それが今度我が国の防衛の方でソナーシステムその他で守るときには相当大きな改良を図っていかなければならないだろう、こういうふうなお話のように今私は承ったわけであります。私は、先ほど申しました、今防衛局長からお話がありましたけれども、P3Cを買ったがこれは全然むだ遣いだという話ではない、こういうふうには考えていますが、今度またP3Cをどうしていくか、これからさらにいろいろなことを考えていかなければならないなという印象を受けたところであります。  そこで、私は、これは日本が心配しているだけじゃない、こう思うのです。特にアメリカの方でも大変に心配しているし、西側の安全保障にとってやはり相当大きな問題であると認識しておるということはいろいろな新聞報道その他で明らかになっておるところであります。  先般、ワインバーガー国防長官が訪日されたとき、この問題について総理と御会談をされたと承っておりますし、今後そういった問題について対処能力を強化していこうというようなお話がされたというふうなことが報道されておりますが、こうした点につきまして、私は、これは単に形式的に東芝機械がココムに違反したという行政法の違反という問題だけの責任ではなくて、やはり我が国を含む西側諸国全体の安全保障の確保という観点から、この問題はココム規制の問題と同時に、またいろいろな点での対策を講じていかなければならない問題ではないか、こう思うわけであります。  そこで、総理に、基本的なそういった諸問題についてどういうふうな御認識を持っておられますのか、この問題についてぜひ国民の前にこの委員会の審議を通じて私は総理のお考えを明らかにしていただきたいと思いますし、また、近くウェッブ海軍長官も来られるという報道を新聞で拝見をいたしました。日米間の協力を具体的にどういうふうにして煮詰めていく考えなのか。引き続きまして防衛庁長官に御見解を賜りたい。
  16. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 今回の東芝機械の不正輸出事件は極めて悪質な、そして遺憾な事件でございます。こういうような遺憾な事件を引き起こしたことについては、我々は関係国、特にアメリカに対しても監督不行き届きについて、政府としても遺憾の意を表した次第でございます。  この輸出ということが虚偽の申告によって、そして不正に行われたということはもう厳然たる事実でありまして、計画的に行われた、そういう点において極めて悪質な性格を持っておるということで関係者は起訴されておる次第であり、また、関係の向きはそれぞれの共産圏輸出に関する行政処分を受けて、禁止行為を受けておる次第でございます。  政府はそれぐらいこの問題を重要視いたしまして、そして、引き続きこれに類するようなことはほかに起きていないか、その点について今厳重に再調査等もしておるところでございます。  ともかく、日本国家を防衛するという意味において、国民の皆さんの税金をいただいて、ある程度相当の経費をかけて長年月にわたりましてその防衛の蓄積をやってきておる。P3Cを購入するにしても相当な費用がかかりますし、海上自衛隊やあるいは航空自衛隊の要員を訓練してそれに習熟させるためにもかなりの時間もかかり、費用もかかるわけでございます。そういうような日本国家の防衛を行うという面に関する侵害行為が日本国民あるいは日本の会社から行われたということは、これはアメリカに関係するのみならず日本国民に対する重大な裏切り行為であると私は思うのです。  そういう意味におきましても、国民の皆様方がひたすら国家を防衛しようという意欲で御協力いただいているこの誠意に対しても、我々としてはさらに監督を厳重にして、こういう不祥事件を起こさないように徹底的にやらなければならぬ、そう思っておる次第なのでございます。  この具体的な内容等につきましては、国防にわたる点等もございますし、またこれに非常に濃厚な疑問がある、濃厚な嫌疑がある、そういう結果自体を判定する場合にはそういう場合もございます。というのは、相手側の対象物を具体的に手に入れたわけではなし、あるいはどういうふうな工作が行われたかという実証を我々まだ持っているわけではありません。が、しかし、大きな変化があらわれてきているということは事実でございます。  そういう意味において、いろいろな状況を見、また本人等の取り調べ等々からも見まして非常に重要な濃厚な嫌疑がある、こう判定せざるを得ないというものはやはり日本側としてもあるわけであります。  そういう面からいたしまして、我々としてはそういう経験をもとにしまして、一面におきましては行政府におきましてもこれに対する厳重な監督あるいは不祥事件再発防止の措置をやらなければなりませんし、また今回の事件を見ますと、時効が三年ということでございますが、こういう不正行為をやるという場合には相当期間秘匿されるという危険性もございます。果たして三年という短時間でいいのかどうか。今回の事件でも、ついに時効になって事件にかからなかったという部分もあるわけでございます。かなり大きな部分にそういう部分があるわけでございます。  そういうことを見ますと、将来の再発防止のために、かかる行為については特殊目的、特殊の構成要件の場合にはその点も検討しなければならぬのではないか、そういうこともございます。そういうような全面的なところにつきまして今検討を加えつつある、そういうことでございます。
  17. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 ただいま総理からお話のあったように、私も、これは西側陣営の安全保障というだけでなしに、むしろ日本の安全保障上大変重大な問題だと思うのです。私は、これを機会に国民の皆さんに、我が国の安全保障というものはどういうものか、このことをよく考えていただきたい。そして、再びこういうことの起きないような防止策を前向きにどうとるかということが大きな課題ではないかと思います。言うなれば、災いを転じて福となす、その機会にしなければならぬと思っております。防衛庁を担当しております私の立場からいたしますと、いわゆる潜水艦に対する探知能力を高める、特にソ連の潜水艦の性能、静粛度というものが非常に進んできている、そういうものまで含めてソ連の潜水艦の性能が非常によくなってきている、そういう事実には私どもは重大な関心を持たざるを得ない。  そういう点につきまして、アメリカとの間で、日米安保の枠の中でどういうことができるか、その点については、実務的に詰められるものは詰めていきたい。ウェッブ海軍長官が参りまして私とどういう話をするか聞いておりません。聞くところによりますと、彼が今度新任をされまして各国を回るあいさつであるというふうに聞いておりますけれども、昨日私が当委員会で申し上げましたとおり、沖縄の駐留軍の労務費等の問題もございますので、話がいろいろに及ぶ場合もあると思います。その場合には、海軍長官とこの問題について話をするということもあり得ると思います。ざっくばらんに話をしてみたい、こう考えております。
  18. 林義郎

    ○林(義)委員 大変重要な問題であるということでありますが、これが今後起こらないようないろいろなことを考えていかなければならない、これはもう当然のことだと思いますし、と同時に、防衛問題でありますから、一遍そうなっちゃっているのは、向こうの潜水艦の技術というのが上がってくることは、これはできた話ですから、今から取り戻して、機械を戻せというわけにもいかぬのでしょうからね。だから、そうしたならば、総理の理論じゃないが、対抗するためにはやはりこちらの方のいろいろなことも考えていかなくちゃならない。向こうが技術を上げればこちらもこうやっていかなくちゃならない、向こうが下げればこちらも下げていく、これはもう当然のことだ、私はこう思うのですね。そういったことはぜひやっていかなければならない問題と思いますが、防衛庁長官、そういうふうな私が今申し上げましたような考え方でおやりになるのかどうか。先ほどは向こうともざっくばらんにお話をする、こう言われましたが、私は、問題が深刻なだけに基本的な考え方をやはりはっきりしておいた方がいいんじゃないかと思いますが、いかがでしょう。
  19. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 先ほど申し上げましたとおり中曽根総理の認識、私の認識、これは一緒でございます。そういう観点に立って、日米安保の枠の中で協力できるものは積極的に協力してまいりたいということでございます。
  20. 林義郎

    ○林(義)委員 実はこのココム規制というのはかねがね非常に問題のある規制だったわけであります。たしか昭和四十四年だったと思いますけれども日工展事件というのがありました。上海でしたか香港でしたか、中国の展示会がありまして、中国に対するやはり禁輸物資がありました。その問題で裁判になったことがあります。裁判では、外国為替及び外国貿易管理法というのはいわゆる経済法規であるから、こういった安全保障云々というようなことについてやるということは、法律の性格上あるいは憲法上問題である、しかしながら、法律で一遍規制をして、輸出貿易管理令でやって規制をしておって、本来承認を受けるべきものが受けないでやったということは明らかに違反であるからというふうな形で、そのときは確かに違反のものについて罰則がかけられた、確かに罰金か何かを払った、こういうふうな事件があったと私は思うのです。  法律論としていいますと、この問題は必ずしもはっきりしてやっているわけじゃありませんが、そもそもこのココム規制というのは、きのうも川崎さんでしたか、ちょっと御質問がありましたが、あくまでも西側陣営の紳士協約に基づくものであります。やはり西側諸国が連帯してお互いの自由と安全を守るために、安全保障上の観点からお互いが話し合いをしてやっていこう、それに基づく規制であります。しかし、紳士協約だから破っていいという話じゃない。むしろ紳士協約であればこそ厳重にやらなければならない。各国同じような法律規制をやれということでなくて、各国それぞれの法制でやるということになっておりますけれども、やはり紳士協約であればこそ、これを尊重し遵守してやらなければならない。先ほど御答弁がありましたように、大変重要な安全保障上の問題も惹起するものでありますから、私は、これは非常に断固たる姿勢でもって厳正に実施していくような体制をつくらなければならないと思うのです。会社側は虚偽申請したのですから、これはもちろん非難されるべきでありますが、これを見抜けなかった通産省当局も私はその責任なしとしない、こう思いますが、通産大臣いかがでしょう。
  21. 田村元

    ○田村国務大臣 大変残念な事件でございまして、この虚偽の申告を見抜けなかった、この不正の輸出を見抜けなかったという責任は通産省として十分に感じておりますし、またこれを重く受けとめなければならないと思います。  でございますから、その対応としてもいろいろしなければならぬことは多かろうかと思いますが、難しい問題であっても法改正、あるいは先ほどおっしゃったような時効の問題まで付随的に、あるいはまた行政的な処分もありましょうけれども、それにも増して今とにかくやらなければならぬことは、審査官の充実を図ることだと思うのです。私も、まことに申しわけのないことでありますが、この問題が表に出てきてから知ったわけであります。いろいろと詳しく調べてみますと、ドイツは六万件を四十人で審査しております。日本は二十万件を四十人で審査しております。そうすると、二十万件を四十人で審査するということは事実上不可能に近いことでございます。まあシーリングだ、行革だ、いろいろな面で官僚にも遠慮もあったのかもしれませんけれども、私は、西側の安全を守り国益を守るためには堂々と胸を張って要求しなさい、そして完璧を期するようにしなさい、少なくとも西ドイツ並みには立派な体制を講じなさい、このように厳しく申し渡したところでございます。  いずれにしても、所管庁たる通産省の責任は重大であるという認識は当然持っておる次第でございます。
  22. 林義郎

    ○林(義)委員 今大臣からお話がありましたように、本事件については刑事措置が行われておりますし、会社側の方は、一般の業界はやはり相当慎重になってくるだろうと思うのです。再発防止策について、今大臣からお話がありましたように人員をふやすということもありますし、また法律の改正の問題もあるし、さらにいろいろな税関の検査体制などというようなものについて見ましてもやはり見直しをしていくことが必要だろう、こう思っております。  この問題につきましてきのうもテレビで出ておりまして、何とかという女性の議員が日本に大変な賠償とか損害賠償を要求するというような法案を出しましたりやっておりますが、アメリカでガーン議員が提案された東芝に対する制裁法案が上院で可決されております。  アメリカではだんだんと対日不信の問題がワシントンを中心として広がってきておりますが、これがアメリカの保護主義政策の傾向に拍車をかけるんじゃないかということを非常に憂慮をしておるものでございまして、日米間の友好関係が非常に悪くなる発火点になるんじゃないかなという気すらするわけでありまして、こうした点につきまして、これにどう対処していくのか。大臣、アメリカにもおいでになるというようなお話でございますから、ひとつ大臣の御所見を承りたい。
  23. 田村元

    ○田村国務大臣 アメリカの議会の保護主義の高まり、これは日本の貿易インバランスまたアメリカの財政赤字の問題についてのいら立ちというものが底流にあることは申すまでもないところだと思います。  私どもは政府挙げて保護主義を何とか薄めようと努力をいたしてまいりました。アメリカ政府もまた努力をいたしてまいりました。内需の拡大あるいは輸入の促進、その他本当に我々としては国際信義に基づいて努力をしてまいりました。ところがこういう事件が起こりますと九個の功を一賛に欠くことであり、まさに目の前が真っ暗になるような感じであります。  今申しましたように、私はもちろんお許しを得てアメリカへ参ります。衆参両院の商工委員長にも御同行を願うということになりましょうが、誠意を尽くしてお話を申し上げていきたいと、我々がこれからこういうふうにしようと思うということも。またアメリカの議会がどう考えておるか。特にアメリカの政府議会との考え方に非常に大きなギャップがあるわけです。アメリカの政府は、もちろんこの問題で日本に対して重大な関心を寄せておることも事実でありますし、また困惑しておることも事実でありますけれども、一面我が国が、つまり私どもがとりました措置に対して高い評価を下してもくれております。と同時に、またアメリカの議会の保護色というものについても非常に懸念をいたしております。  でございますから、そういう点でよく話し合って、日本として何をなすことができるかということを見出して、もちろん本国に請訓をすることは当然でありますけれども、十分の話し合い、とにかくできるだけのことはしていきたいというふうに思っております。
  24. 林義郎

    ○林(義)委員 くどいようになりますし、また御答弁もありましたが、私は、東芝機械その他のところが責任があるというのは、もう刑事責任でありますから当然の話でありますが、通産省も、だまされたといって済む話ではないと思います。先ほどもお話がありました、年間二十万件に及ぶような事件で人員が少ないからやれなかったなどというような言い逃れで済まされる話ではないと思うのです。国際的な信義の問題であるし、安全保障の問題である。通産省という組織がこの輸出貿易の管理をやっているわけでありますけれども、やはりこれは組織の責任だと私は言わざるを得ないと思います。  したがって、その組織の長であるところの通産大臣の管理責任というのはやはりある、こう言わざるを得ないと思うのです。確かに、田村さんの任期中に起こった事件ではございません。しかし、国務大臣として一省を預かる長たる立場にあるならば、その管理上の責任というのは私は重たいと思うのであります。国際的な信義、安全保障という点からの責任も私は重たいと思うのであります。今後の対応について、大臣はどういうふうな責任感じ、またどういうふうにしてこれを果たしていこうとしておりますか、お尋ねをしたいのです。私は、言いますけれども、大臣やめろとかなんとか、そんなことを言うものじゃありませんよ。大臣の進退というのは大臣みずからが決心されるお話である。私は、それはもうそうだと思うのです。しかし、やはり大臣がどういうふうにこの点について責任を考えておられるのか、あえてこの席でお尋ねをしておきたい、こう思います。
  25. 田村元

    ○田村国務大臣 合いみじくもおっしゃったように、通商産業省という組織の責任でございます。でございますから、私の着任以前の事件でありましても、それが発覚をし、世間をといいますか世界じゅうを騒がせましたその責任は、通産省を率いております、通産省の責任者のこの田村にございます。通産大臣である田村にございます。でございますから、私はこの責任は十分にとらなければならぬと思っております。  ただ、私がその責任感じて職を辞することは非常に簡単でございます。簡単でございますけれども、しかし、いささかそれもまた無責任責任のとり方の感じもいたすのであります。でありますから、私自身この問題と真剣に取り組んで、ある意味においてはちょうど私に天が与えた命令と言ってもいいのかもしれません。この問題と取り組んであらゆるうみを一遍出して、私は事務次官以下に言っておるのでありますが、この際ほかにもあるいはあるかもしれぬ、ないかもしれぬがあるかもしれぬ、一遍徹底的に洗い出してみる、外から指摘される前に通産省部内でこれを摘発するぐらいのことを努力をしてみたらどうか、そうしてあらゆる対応を立てて、そうして私の後任の大臣がたれが将来いらっしゃるか、また通産官僚の後輩たちがすばらしい通産省を引き継いでいけるように我々のときにその泥を全部洗っていこう、それが私たちの責任のとり方である、こういうふうに考えて、部下たちにも私の考え方を常日ごろ申し述べておる次第でございます。
  26. 林義郎

    ○林(義)委員 それでは、補正予算の問題に入りたいと思います。  去る五月二十九日に緊急経済対策が決定されまして、これから補正予算と、こういうことになってきたわけでありますが、まず、この対策の総論の中で、「主要国との政策協調を推進しつつ、内需を中心とした景気の積極的な拡大を図るとともに、対外不均衡の是正、調和ある対外経済関係の形成に努めることが急務」とうたわれております。実はその当時から言われておりましたことですが、各種指標を見ますと、経済は遠からず反転していくのではないかということも言われておったわけです。景気がだあっと落ち込むというのではなくて、まあ底ばいか、少しはもっといい話だったのですね。  私は、ちょうど予算委員会ががたがたしておりましたから余りあれしてなかったのですけれども、当時の新聞によりますと、内需拡大は、どちらかというと対外不均衡を背景に、特にアメリカから内需拡大、内需拡大と迫られておったというような印象を私は持ったのでありますが、内需拡大というのは日本がこれから内需中心型産業構造への転換を図っていくということがポイントであって、すぐに影響が対外不均衡に出てくるというふうに考えるのはおかしいので、やはりここで内需中心型経済への転換、こういうふうに考えるのが私はポイントじゃないかと思いますが、この辺、企画庁長官はどういうふうにお考えでしょうか。
  27. 近藤鉄雄

    ○近藤国務大臣 お答えいたします。  日本経済が当面解決をしなければならない大きな問題は、昨年貿易収支で一千億ドルを超える、経常収支も九百億ドルを超える、この対外不均衡でございますし、その結果、日本の累積債権が二千億ドル近い、このことがアメリカを初めとして世界各国に大きな貿易不均衡、摩擦を招来しておるわけでございますが、一方において我が国の経済の現状を見ますと、住宅や社会資本やそういったものに対しての非常なおくれがあるわけでございまして、国民の多くが、そんな経済大国の国民がなという疑問を持っているのが現状でございますから、こうした内外の不均衡を是正することが当面最大の問題でございまして、今般政府が決めました緊急経済対策も、基本的にはこのような対外不均衡の是正というものを当面財政主導型で行う。したがって、社会公共資本の整備から、住宅から都市計画から、そういったものを基軸にいたしましたが、それと同時に民間の活力も積極的にそうした新しい経済転換の中に導入していく、こういうことであろうと思うわけであります。  ですから、確かにアメリカから、またその他欧米各国からも内需拡大に対して強い要請はございましたし、その線にも沿うものでございますが、しかしこれは、基本的には日本経済力を国民生活充実に向けるという、まさに輸出主導型から内需主導型への大きな政策転換を意味するものである、かように私ども考えておる次第であります。     〔委員長退席、今井委員長代理着席〕
  28. 林義郎

    ○林(義)委員 対外不均衡是正、こう言ったところでそう簡単な話ではないと私は思うのです。特にアメリカを中心としまして、日本、内需拡大してください、西ドイツ、内需拡大してください、経済成長してください、そうしますとアメリカの輸出がふえてアメリカの輸入が減るから、アメリカのバランスは回復する、こういうふうな論理がある。私は、もしもそういうことができるならば極めてハッピーな話だろう、こう思います。しかし、これはそう簡単な話ではない。  例えば今回のものは六兆円、経済規模を拡大するということになっていますが、これはGNPでいいますと三百五十兆ですから大体二%ぐらい、こういうことになりますね。ドルで計算しますと二兆三千億ドルの経済の二%ですから四百六十億ドルぐらいのものが効果として出てくる。今までの輸入性向を見まして一〇%が輸入に回ると考えると、ざっと言うと五十億ドルの輸入がふえる、こういうことです。  今度の経済対策を見ますと、政府調達特別対策費というのが千十一億円入っております。これは外国からいろいろなものを買おう、こういうことだろうと思います。例えば政府専用機を二機、今回は予算の計上は八十億円ですが、手付というか最初の代価払いというか、それを払うのですから、全体で三百八十八億円、こう聞いておりますが、そういったものをやりますから、大体契約ベースで十億ドルの輸入がそこであるということになっています。そうしますと、一般の形で輸入がふえるのが五十億ドル、プラス十億ドル、こういうことなんですね。  日本の内需が拡大していけば、今度は輸出圧力が減って輸出するものが減るのではないか、こういうふうなことですが、日本の国内経済の状態を見ますと、輸出産業を中心にして大変難しい状況にある。供給能力はフルにあって、輸出圧力というものはまだまだ非常にある。少々の内需拡大をしたところで、すぐに輸出をやめて内需に向かおうなどというような状況でないということは私はあると思うのです。ですから、為替レートの影響はあると思いますけれども、内需が拡大したからといってすぐに輸出が減るというようなことはむしろ考えられないことではないかなと思うのです。  そうしますと、アメリカに対する影響というのを言いますと、先ほど五十億ドルと申しました。これは世界に対する輸入の五十億ドルですから、いろいろあるでしょうが、アメリカは日本の輸入の中に占める比率は世界全体の二割、二割だと大体十億ドル。もしも政府調達何とかというのを全部アメリカ、そんなこともないでしょうけれども、全部アメリカから買うとしても十億、足して二十億ドルぐらいである。アメリカの貿易赤字は千四百億ドルである。それに若干の日本の輸出減が加わってということになりますと、全体の七十分の一ぐらいということになると思うのです。  だから私は、この政策をやったからすぐに何か対外不均衡が改善されるとかなんとかというようなことを言うと非常に困ることになるのではないかと思うのですね。いろいろなことを将来的に考えてやるということはいいのですよ。しかし、何かこれをやったら手品みたいに出てくるという話ではない。また、そんなことを余り宣伝しますと、また日本が何かやると言っているけれども一つも効果が上がらぬじゃないか、おれのところの収支は変わらぬじゃないか、日本の貿易収支は依然として云々という話がまた出て、また日本はうそをついたぞ、こういうふうなことになる。そのことを考えると、やはりその辺をはっきりしておいた方が私は後々のためにもいいんじゃないかと思いますが、その辺につきましてどういうふうにお考えになりますか。大蔵大臣、お答えいただけますか。
  29. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 その点は、まさしく林委員の言われますことに同感でございます。  実はベネチアにおきまして、蔵相会議等の場におきましてもこの問題は議論せられまして、GNP効果はどのぐらいであるか、あるいは外貨効果は、おっしゃいますように五十億ドルとか六十億ドルとしましても、それ自身は正直に申して全く大したことはない、というか問題はもっと深刻であるわけでございますから、私自身から、事は一片の補正予算を組むとかいうことで済むわけではないので、これで確かに傾向を変えたいと思っておりますが、しかし、実はこういう努力を日本は何年か続けていきませんと、日本自身の問題も解決しないし国際の問題も解決しないだろう、私はそれはよくわかっているということを申してまいりました。と申しますのは、まさに各国の大蔵大臣連中は玄人でございますからそういう誤解はいたしませんけれども、一遍やれば済む大きな効果があって、世界の問題が、先進国間の問題が片づくというような誤解を生むことは最も警戒をしなければならないことでございますから、明確にいたしておくべきことだと思います。
  30. 林義郎

    ○林(義)委員 対外不均衡の改善というのはやらなければいけない、こういう話なんですが、これはなかなか難しい問題がたくさんあると思うのです。  実は私も、一昨年でしたか、二階堂ミッションでアメリカへ行ったときにアメリカから話がありまして、日本は何とか計画、何とか計画というのを大変上手につくっておられる、計画をやると何かさあっとその方にみんな行く、こういう話だから、輸入拡大計画をひとつつくってやってくれたらどうだというような話がありました。しかし、そんな輸入拡大計画をつくってみても、本当に輸入できるかどうかという何も保証がない。保証がないものを計画をつくってやったは、またそれでできない、おまえ何をしていたと必ずやられることになるわけですから、私はそれは断ろうということではっきりと断ったことがあります。  輸入の促進というものをやっていかなければなりませんが、やはり輸入の促進というものは、安くてよいものを買う、こういうことが原則だろうと思うのです。日本でも関税の引き下げとかいろいろな国内の諸制度、流通関係、いろいろな諸制度の改善というものはやっていかなければなりませんけれども、強制的に輸入をするとかなんとかということを民間に押しつけるべきものではないと思うものであります。  そういった点から、やはり自由主義経済体制を原則としている我が国でありますから、先ほど宮澤大蔵大臣がおっしゃいましたように、持続的に内需拡大政策、産業構造転換を図っていくということの今回を第一歩にしてもらって、徐々に体質の改善を図っていくことによって対外不均衡の是正を図っていくという王道をひとつ歩んでいただきたいと私は思うのであります。  そこで、それじゃ一体何をするかといえば、基本的に言いますと消費の拡大を図る、それから設備投資、在庫投資、住宅投資を盛り上げていく、貯蓄に見合ったような投資が行われるようなことにするということであります。ところが、そう貯蓄率を一遍で下げるなどということも、三二、三%程度、これはなかなかにできませんが、長い目で見たらやはり調整をしていかなければならない。世界的に見れば日本の貯蓄率というのは高い、アメリカは貯蓄率が非常に低い。世界的なバランスというものはおのずからあるのでしょうから、その辺の調整を図っていかなければならないと思うのです。  そこで、特に貯蓄と投資とのアンバランスというものが今ありますから、それがやはり実物経済に向かうように貯蓄が投資に向かう、投資というのは株の投資もありますけれども、本当は実物経済に向かうような形での投資になっていくということが必要ではないかと私は思うのです。そうした形で実物経済を上げていくということが必要でありますから、国内でもいろいろな新しい産業を興すなんとかというところに対しては相当な思い切った金が向くようなシステムをこれから考えていくべきだろうと私は思うのです。国内だけではなくて、海外でも私はあると思うのです。特にアジアの発展途上国その他のところではまだいろいろな需要がありますから、金利が高いとかどうだこうだ、条件がどうだ。こうだと言いますけれども、やはりそういったところに資金が流れていくような形にしていかなければならない。貯蓄過剰のところが株式とか証券とかそういったものに流れて浮動的な話になる、もう一つ言いますと、そういった浮動資金が土地に流れているというような状況は決していいものではないと思うわけでありますから、そういった形に持っていくべきだろう、こう思うのです。  一方、今度はアメリカの方を見ますと、アメリカは財政赤字である。そのアメリカの赤字をどう直していくかということは、やはりアメリカは友人でありますから私たちも忠言をしなければならないと思うのです。二千二百億ドルの財政赤字に取り組んでおるところでありますけれども、本年は三百億ドル減らす、アメリカはこう言っているわけであります。一生懸命アメリカもやっているのですが、その財政赤字と大体同じ程度の経常収支の赤字を持っているわけで、これはやはり財政を通じてアメリカとしても民間投資と貯蓄とのバランスを改善していくことが必要である。特にアメリカでは過剰消費、過小貯蓄、こういうことを一般に言われているわけですから、本当を言うと、財政バランスということですが、アメリカでも増税をやってもらうことが一番アメリカのためにいいのだと思うのです。正直言ったら私はそういうことだと思うのですね。しかし、なかなか今のレーガン政権は増税をやらぬ、こういうふうな話をしておられる。     〔今井委員長代理退席、委員長着席〕 それから議会筋などでも増税しなくちゃならぬなということを言う人がおられますよ。おられますが、選挙があるから一体選挙のときにできるかね、こういうふうな話である。これが一般のアメリカで私がつき合っているところの連中の率直な話だと思うのです。私はざっくばらんに申し上げますけれども、そんな話であります。  そういった日本が過剰貯蓄で過小消費、投資とバランスをしない。アメリカがそういった形で消費が多過ぎて貯蓄が足りない。こういう状況の中で、一体これからどういうふうに持っていったらいいのか、またその辺をどういうふうにするのか。何か方針といいますか、大体のお考えがあればこの機会に聞かしていただけるとありがたいと思いますが、宮澤さん、お答えいただけますか。
  31. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 このたびの補正予算緊急経済対策は、先ほど申し上げましたように、一遍だけそういう対策をとれば問題が解決するというものでないということは林委員の御指摘のとおりだと私は思いますので、財政は非常に苦しゅうございますけれども、しかしやはりその中でこういう努力を将来に向かって続けていかなければ、我が国の国内問題も、また国際的な責務も果たすことにならないというふうに考えております。  ところで、その際、これがかつての高度成長時代でございますと、恐らく新しい設備投資に比較的簡単に結びついただろうと思います。ところが、製造業について申しますと、なかなか大きな設備投資というものがすぐに出てくるかどうかという問題が、これはお互いにそうなればいいがということでございますけれども、稼働率等々から考えますとなかなかすぐにそうだとは思いにくい。しかしそれは製造業についてのことでございますから、何もそれにこだわることはありませんので、非製造でもいいし、あるいはいわゆる第三次産業でもいい、その間におけるいろんな設備投資が行われていくということは極めて好ましいことであって、製造業でないからそれは日本経済に余り寄与しないというふうに考えますと、それは過去の日本経済の型にやはりとらわれた考え方になるであろうと思いますので、そこはひとつ踏み切りまして、そういう設備投資、設備更新が行われていくということをやはり進めていくべきではないか。  殊に各国が、殊にいわゆる先進工業国が物離れと言われている中で、我が国の場合には幸か不幸か社会資本が非常に不足でございますから、これに対してはやるべきことがまだまだたくさんある。個人の住宅投資もそうでございますけれども、公共の社会投資、資本投資というものはまだまだしなければならないことがたくさんございます。やはりそういうことに経済成長の一つの大事な要因を求めていくべきではないかというふうに考えております。それらは財政立場から申しますと、いっとき財政圧迫要因になりやすいのでございますけれども、しかし我が国の持っております。そういう経済の潜在成長力を引き出すことができますれば、その結果としては経済が幾らか拡大均衡に入っていく、財政もそこから裨益をする、受益をするということは、これは十分考えられることでございますから、やはり徐々にそういう経済運営に入っていくべきではないだろうかと思っております。  次に、アメリカの財政赤字についてお話がございまして、それは確かにこの際いっとき四百億ドルぐらいの改善はあるということをベネチアの蔵相会議でも説明がございまして、そうでございましょうけれども、そういうテンポで今後改善していくかどうかということについては、私も林委員の言われますように、そうあってくれればいいがという、実は幾らか危惧を持っております。これについて過般、ベネチア・サミットのときに中曽根総理大臣とレーガン大統領とのいわば個別の会談がございました席で、中曽根総理大臣からレーガン大統領に対して、あなたのかねての御所信は自分も知っておるけれども、しかし、やはりここでアメリカの財政赤字というものはアメリカだけの問題ではないので、我々としても重大な関心を持っていて、大統領としてもその点については御考慮をお願いをいたしたいということを、問題を実は明快に指摘をされまして、私は、それはやはりアメリカとしても、どういう形にせよ、それがどういう形でもよろしゅうございます、他国のことでございますから。すぐに増税ということを言っているわけではございませんけれども、問題としてやはりそういう提起を我々としては怠ってはならないというふうに考えております。
  32. 林義郎

    ○林(義)委員 今回の補正でNTTの株を売って四千五百八十億円を国債整理基金特別会計に受入金として計上しております。私はその額がどうだこうだと言うのではありませんが、NTTのように政府が持っておったところの財産を売るときのその処理の仕方については、やはりきちんとしたルールをつくっておかなければならないのじゃないかと思うのです。  今回NTTが大変いい値で売れた、こういう話でありますが、これから日本航空もありますし、まだ話には出ておりませんがJRもあるでしょう、たばこ専売もあるでしょう。その他公社公団で売れそうなところはという話は必ずこれは出てくる。財政がないと、やはり物を売っていってという話は必ず出てくると思いますが、財政が赤字だからそれを売って一般で使ってしまうというのでは、これは財政のあり方としては私は非常におかしなあり方だと言わざるを得ないと思う。企業経営でも、ちょうど持っているところのいいものがあるから子会社にしておこう、その子会社はどこかで人に渡してしまう、株の値段を商うして売る。売ってもうかった、こういうことでそれを飲み食いに使うような経営者は、あれはおかしな経営者だと言われるに決まっている。やはりそれは売ったならばその資産をもって新しい仕事をしていきましょう、そういった目的でやらなければ、例えばいい土地を持っていてそれを売る、それをわけのわからぬところに使うというような話じゃなくて、その金は新しい経営のために使うというルールがなければ、企業経営者としてはおかしいと思うのであります。  国民も非常に心配しておりますのは、このNTTといういい会社を民間に売った、確かにその金は政府に入りました、しかし何かわけのわからぬうちにどこかに使ってしまっているということでは、我々は何のために一体国民の財産としてNTTを持っておったのか。それは確かに皆買うたんだからという話もある。それには、やはりどこにどう使うかということははっきりさせておかなくちゃならぬ。わけのわからぬうちに、まあ減税もいいのでしょうけれども、そんな形に使われちゃってやったということになったら、国民財政のあり方というものについて非常に心配すると私は思うのです。やはりそこにおのずからなる節度がなければならないと私は思うのでありまして、民間企業であれ政府であれ、安易な経営というのは抑えていかなければならない、そう私は思います。一体その辺をどういうふうに考えていくのか。  私自身はこう考えるのですよ。一つは、やはり今まで負債がある、借金がある。借金に対して返すのがこれは第一ですね。それから、これからもしも新しいことをやって、国民が本当に豊かになります、豊かになることによって借金を返す能力ができるという見通しがあるような事業であるならば、私は出していいと思う。この二つじゃないかと思うのですね。この辺は今後のこともありますから私はルールとしてはっきりさせておくべきではないか、こう思いますが、大蔵大臣の御所見を承りたい。
  33. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 NTTの株式等々は、まさに国民が過去に努力をして蓄積した資産でございます。その資産が、何年間かの行財政改革によって再び利用ができるようになった。いわゆる民営化によりまして政府がその財産を株式の形で取得することができることになったわけでございますから、まさにその処分益というものは、ちょうど会社の例をお挙げになりましたが、いわば資産を処分するようなものでございますから、それはまず過去の負債を償還をする、これは確かにしなければならないことの一つであります。  同時に、新しい資産的な形で投資をされるべきものであろうというふうに考えておりまして、殊に我が国の場合には、そのような資産を将来に向かって投資すべき事業がたくさんあるわけでございますから、そういうことに使われるべきではないかと考えておりまして、今回国会に御提案いたしました法律案も、これはNTTに関してでございますが、そのような考えをもちまして御提案をいたしました。恐らく、これから生ずべきもろもろの資産の処分につきましても、これが一つのパターンになるのではないかと想像をいたしますけれども、考え方は私はそうすべきものであろう。  減税に使うということは、減税ということはそれ自身私は非常に意味のあることだと存じますけれども、資産処分はいっときの収入でございますし、減税は一度だけというわけのものではございませんので、やはり恒久的な減税には恒久的な財源を探してまいりませんと、いっときの衝動で後になってその減税が維持できないということになってはならないと思います。
  34. 林義郎

    ○林(義)委員 次に、今度の補正予算を見ますと、前年度剰余金として四千三十億円というものが一般財源として計上されています。六十一年度には約一兆七千億円の剰余が生じたのでありますが、この中で大きなのはやはり税収増である。二兆四千億円というものが大きく私は効いていると思うのです。  税収の内訳を見てみますと、法人税が対補正後一兆四千億円、有価証券取引税が四千億円の増、申告所得税が三千億円の増ということになっています。これを見ますと、ほかのところは余りふえていない。まあ相続税がちょっとふえています。要するに、企業はなぜ申告所得税がふえたかというと、財テクをやっているからそれでもうかっている、こういうことです。まさにこれがあらわれたのは有価証券取引税でありまして、兜町でやっているものがずっとたくさん何億株というのが売れるから取引税が上がる。今度有価証券取引税は、税制改革では少し上げるということになっておったのですが、まだ上がっておらない、こういうことですね。しかし、それにしても去年は相当にふえてきておる。財テクブームである。それから相続税がふえている。それから申告所得税の中の一部は、やはり私は土地の値上がりがあるだろう、こう思うのですね。  そうしたことですが、まず今回の補正予算の中に公共事業費が入っておりますが、よく言われているのは、公共事業費の中に土地代が入っていて、出しても皆土地に化けて預金通帳が変化するだけじゃないか、こういうふうな話がおりますけれども、今回の中には入ってない、こういうふうに聞いておるのですが、それは間違いないでしょうね。土地代は入ってないというのは間違いないですか。
  35. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 その点は、緊急経済対策でも非常に注意をいたしておりまして、現在具体的に箇所づけをし、具体的なプロジェクトに分けておりますけれども、土地代は極めて少ない、一%といったようなことを聞いておりますが、最終的に恐らくやはりその程度のものであろうと思います。
  36. 林義郎

    ○林(義)委員 その問題は、一%というのがいいのかどうか、私はやはり相当きつくやったらいいと思いますが、実は今問題を提起しておりますのは、毎年毎年こういうふうな税収が続いていくか、こういうことである。このまま続いていったら、六十五年財政再建というのはできるかもしれませんね、これは。しかし、財テクや土地の値上がりでふえて、やって、それで財政再建ができたというのは私はおかしな話だろう、こう思うのです。  どのぐらいあるかといいますと、今三百五十兆円というのが政府見通しのことしの国民所得であります。公文俊平という学者がおりますが、公文さんに聞いたところでは、株の値上がりがこの一年間で二百兆円、土地の値上がりが百六十兆円、合計三百六十兆円、国民所得と同じものになってしまうのですね。私も本当かなと思って、実は計算してみた。去年の七月の東証株価、大体東証株価をとれば、ことしの株価とずっと平均して計算をしてみましたら百六十兆円くらいやはり時価総額ではふえておる、こんなことですから、数字をオーバーにしましても相当にこういった資産がふえておると私は思うのです。  株式市場に金が集まるということは悪いことじゃないと思うのです、それは一つには。これは上がっても株式市場に金が集まる、それは何かというと、そこではやはり資本を調達することができやすくなる、安い調達ができます。したがって、企業で仕事をしようという人は株式市場へ行って金を調達することが容易にできる、安い金が調達できるということであるならば私はいいと思うのですが、残念ながら調達しようという人が余りおらぬ。やったところで、これだけの為替の問題になったりなんかしてどうにもならぬから、ちょっと企業は設備投資をするのはやめよう、新しい事業をつくってやるのはやめようなんという話になってしまってなかなか需要が出てこない。ですから金の供給の方はあるのだからその供給をして、したがってだんだんだんだん株価がずっと上がっていくということになっているのだろう、私はこう思うのです。  経済が先行き不安定なところにこの要因の一つがある、私はこういうふうに考えているのですけれども、やはりこういった点を改めて、先ほど大蔵大臣もおっしゃいましたけれども、第二次産業というものの製造業じゃなくて、新しいリゾートであるとかレジャーであるとかいろいろな第三次産業的なものでも、働くというところのものは、働いて仕事をするというようなところには私は金をつけてよろしい。しかし、投機みたいな形でやるようなものは、ほっておくというのは全体の運営としては好ましくない話ではないか。投機によってもうけるということでなくて、やはり広い意味の実業によって稼いでいくというような体制を考えていくべきだろう、こう思うのです。内需振興策というのはまさにそういった方向に私は行かなくちゃならぬのじゃないかと思いますが、大蔵大臣、引き続きですから御答弁いただけますか。
  37. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ただいまの株式等の取引、しばしば取引所当局が保証金の問題あるいは掛け目の問題等々常に注意をして、投機的な取引にならないようにしておられますので、特に心配をいたしておるわけではございません。ございませんけれども、一般的な傾向として、どうもそういうことで経済の主軸が動いておるといったようなことは、やはり経済というのは基本的には物をつくる、サービスをつくる、そういうことから来る、汗を出しての努力ということから健全な経済というのは築かれていくということは経験的にも疑いのないところだと思いますし、少し理屈を申せば、そのようなことでこそ次の再生産過程が生まれていくわけでありまして、金融だけではそれが生まれていかないという心配がございますから、長い持続的な経済成長から考えますと、やはり現在のような姿ばかりで経済が動くことは本当ではない。  これは我が国だけではございません。幾らかそういう傾向がよその国にもございますけれども、どうもそれは、それだけで経済というものは健全に動けるものでないと考えております。我が国の場合には、先ほども申しましたように、健全な投資、個人の投資にしても社会的な投資にしても、まずはいたすべきことがたくさんありますし、技術革新の世の中でもございますから、それはやはりそういうことに向かっての新しい投資というものが考えられていくべきだろうと思います。
  38. 林義郎

    ○林(義)委員 日銀の副総裁がお越しですからちょっとお尋ねをいたしますが、先ほど申しましたように、株価が上がったり、土地の値段が上がったりしている。金余り状況と言われておりますが、一部にはインフレになるんじゃないか、こういうふうな話で、公定歩合を上げたらなどというような話がありますが、私はこれについては反対の意見を持っておるのです。というのは、我が国は何といったって今や世界最大の債権国になっている。最大の債権国というのは、一番金を持っているところですから、持っているところがむやみやたらに公定歩合を上げる話はない。これは、かつてのイギリスが栄えたときにはロンドンも一番低い金利だった。アメリカが栄えたときにはアメリカが一番低い金を出している。日本なんかそれを借りに行ったわけです。日本が一番の債権国で海外に金を貸すときに、基本的な問題として日本はむやみやたらに上げるべきものではないと私は思うのです。  と同時に、インフレ懸念という問題は、これは輸入物価がいろいろ下がっておりますから、卸売物価は下がってきておるし消費者物価もまあまあのところにいっているし、今新しく出てきているというような状況ではないと思うのです。そうした経済全体からしますと、むしろインフレではなくてやっとデフレ状態を何か脱却してきたというようなぐらいの感じのところじゃないかな、こう私は認識しているのですが、金融当局としてどういう御認識を持っておられるのか、お尋ねをいたしたいと思います。
  39. 三重野康

    三重野参考人 お答え申し上げます。  先生御案内のとおり金融政策は、当然のことではございますが、為替レート、景気、物価、内外の金融情勢を見ていくということになると思いますが、為替レートにつきましては、これはきのうも当委員会で御報告申し上げましたけれども、最近やや落ちつきぎみ、きのうは百五十一円台、きょうは百五十円台で推移しておりますが、これはやはり世界的にこれ以上のドル安は困るというアメリカも含めてのコンセンサスができて、それを背景にいたしまして、内外の金利差がある程度開いているのをもとに対外投資が再びまた活発化したかなというふうに思います。しかし、まだ日本の黒字、アメリカの赤字は解消しておりませんので、まだまだ為替レートについては目が離せないというふうに考えております。  景気でございますが、これは長い停滞からようやくここへ来て底固めから、条件つきではございますけれども、先行きにやや明るさを展望し得るのではないか、そういうところまで来ているのではないかと思います。それは第一に、長い間尺を引っ張っておりました在庫投資がほとんど解消をいたしました。それから企業の収益でございますが、企業の努力と物価の安定とか金利低下とか、そういったものを通じてようやく最悪期を脱して先行きやや明るさが出てくるのじゃないか。第三に、政府がこの間お立てになりました緊急経済対策、これは相当程度の内需のプッシュアップを期待できるのではないかと思います。そういうことで、もちろん景気の二面性とかあるいは雇用の問題とか、そういう問題は残しつつも、もし為替がそう大きく動かなければ、先行きやや明るさが出てくるのではないかというふうに私どもは考えております。  金融情勢でございますが、私どもは、特に年初来のマネーサプライの動き、今二けた台になっておりますが、これには注目をいたしておりまして、しかもそのマネーサプライを背景にした、先生今御指摘の一高一低はございますけれども、土地の値段とかあるいは株の値段の上がり方、そういうスペキュラティブな動きについては今後とも注意してまいらなければならない、こういうふうに考えております。  しかしながら、今すぐインフレが来るかと申しますと、これは先生も御指摘のとおり、私どもは当面物価の安定基調が崩れるとは、そういうふうには考えておりません。ただ、先行きの問題としましては、これまで日本の物価の基調の安定に非常に役立ってまいりました円高というのがここでやや足踏みをしてまいりましたし、それから原油を含めての国際商品市況、これがやや反騰してまいりましたので、先行きについてはよく見てまいりたいというふうに考えております。  あれこれ申し上げましたが、私どもの金融政策の現在のスタンスは従来どおり金融緩和基調を維持する、こういうことにいたしたいと思います。ただ、先ほどちょっと申しましたように、金融緩和が長く続いておりますので行き過ぎのいろいろな現象が出ておりますので、これらについては注意深く見守って一層慎重な政策運営はしてまいりたい、かように考えております。
  40. 林義郎

    ○林(義)委員 日銀副総裁、どうぞ結構でございますから、ありがとうございました。  日本が世界の一割も占めるような大国になった。経済的に単に今までの世界のメンバー国としての日本でなくて、それだけの経済的な力を持ったのですから、その力を世界のために尽くしていかなければならない。こういうことで考えますと、一つには、日本の円が国際的にドルを助けて、世界の経済の安定、世界の為替の安定の役割を果たしていかなければならない、国際通貨としての役割を果たしていかなければならないと思います。  今度の経済対策の中で、二百億ドルの還流計画というのが出ております。どういうふうな形でやるのか、私もまだシステムを知りませんが、やはり日本がそういった形で、日本が債権国である、その金をそういった形で出していくということは私は非常にいい方向だろう、こう思うのです。  そこで、大蔵省にまず一つお尋ねをしたいのは、東京マーケット、円の国際化というものを一体これからどういうふうな形で進めていかれるのか。いずれはニューヨーク、ロンドン、東京という形でマーケットの中心になってくるだろうと思いますが、そのためには、金融市場の自由化であるとか円の国際化であるとかということを進めていかなければならないと思うのです。  と同時に、これはどなたにお聞きしたらいいのかちょっとわかりませんが、東京が今度国際都市にだんだんなっていく、東京が金融都市、国際都市、流通都市としての世界の中心的な地位を占めていかなければならないということになっておりますが、実はこれだけ東京の土地が上がってくると、一体キャパシティーとしてどうか、こういう問題があるのだろう、こう思うのです。やはり適正な地価でなければならない。それは国際的な面からも言われると同時に、本来地価が坪一億円もするなどというのは、私はべらぼうな話だ、法外な話だ、こう思います。普通のサラリーマンが一生かかってもらうサラリーというのは、恐らく二億とかなんとかでしょう。たった二坪しか一生かかって買えないなどということは、これはおかしな話だと思うのですね。むしろ社会悪だと言っていいぐらいの話だと私は思うのです。そういったことについては、今まで確かに建設大臣も言っておられましたが、私も全く同感である。やはりこの東京の異常な地価に対して対策を立てていくということは絶対に必要なことだ、こう思うのです。  地価対策については、土地臨調というものをつくられて練られるという話ですが、抜本的な対策を打ち出していかなければ、なまじっかのことをやったのじゃ私はできないと思いますよ。いろいろな政策をやります、しかし、私が最初に申し上げましたように、中曽根内閣一つ大きな目的を、国民にわかりやすい目標を掲げてそれで一緒にやっていく、こういうことでやられたわけですから、私は、これはやはり中曽根総理リーダーシップのもとにぜひやるような方向づけをやっていただきたい、こう思っているものでございます。  若干問題点がありましたから問題点を言いますと、円の自由化、国際化、それから二百億ドルの還流基金を一体どういうふうにしてこれからやっていくおつもりなのかという問題があります。これは大蔵大臣、お答えいただけますか。それから土地問題につきましては、私は総理の英邁なるリーダーシップを期待しているものでございますから、ひとつ総理から御所見を賜ればありがたいと思います。
  41. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 円の国際化につきましての御所見はまことに同感でございまして、そのために努力をいたしてまいりました。国際金融市場あるいは資本市場における円の自由化、ユーロ円の取引の自由化等々、そして円全体をこれからどういうふうに自由化していくかということについての展望につきましても、去る六月に基本の政策を発表いたしたところでございまして、それに向かいましてさらに努力を続けてまいります。オフショア市場も昨年、十二月でございましたか開きまして、まずまずおかげさまで順調に進展をいたしておりますから、基本的にそういう方向を進めてまいりたいと思います。  それから、いわゆるリサイクルでございますけれども、これは総理の指示もございまして、既に百億ドル部分につきましてはそのようなことをいたしましたが、あと二百億ドル程度のものを今後三年間にアンタイドで国際開発金融機関を通じ、あるいは二国間の場合もございますと思います、そういう形でリサイクルをさせてまいりたい。この際には民間の力も、大部分の我が国の資金は民間にございますので、そういうわけで我が国のマーケットの起債能力等々も合わせまして、都合百億ドルプラス二百億ドルで、大体三年間で三百億ドル程度のアンタイド資金を政府それから政府機関、民間を通じましてリサイクルいたしたいと考えております。
  42. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 土地問題は現下の重大問題の一つであると心得ております。最近はオフィスの暴騰という面から近郊、郊外の住宅地にまで波及いたしまして、非常に憂えておる次第でございます。最近のオフィスやそのほかの暴騰の原因等を考えてみますと、割合に借りかえ等のものが多いようです。そういうような面から見まして、法制的に規制を強化する面も当然考えられますし、また一面におきましては、宅地の供給を緩和する、そういう面からは規制を緩和する、そういう面もまた大事であるだろうと思います。緩和の面と強化の面と両方の面をうまく運用いたしまして、そしてやっていくのが当面の仕事ではないかと思います。新行革審にもできるだけ早期に意見を出してもらいたいと先般要請をいたしまして、きょう大槻会長からいただいた答申を読んでみますと、この問題にも至急取りかかる、そう書いてありますので、相ともども努力してまいりたいと思う次第でございます。
  43. 林義郎

    ○林(義)委員 これからの産業構造の変革、こういうことでございますが、やはり依然として日本は中小企業が非常に多い。今回のこの補正予算の中にも、中小企業保険公庫の出資金の増その他につきましていろいろと細かな配慮をされた予算がやられておりますが、これはどちらかというと、とにかく何とか今のところ食いとめるという話でありまして、将来に向かってどうだという話にはなっていない、こう思うのであります。  それから、科学技術庁なり通産省の工業技術院その他のところでも、今までの緊縮財政のあおりでいろいろと金が足りなくなってきたりなんかしているところもある。私は、民間でいろいろとこれから新しい技術を取り入れて新しい産業を興していく、新しい仕事を興していく、そのためには新しい技術開発というものはぜひ必要だ。  もう一つ申し上げますならば、その技術開発、日本はどうも外国の技術に頼りぎみだ。この前、サミットで総理がヒューマンサイエンスという何か非常に高尚な基礎的な研究の話を話された。名前もちょっと私も覚えられないくらいの難しい高尚な話でありますが、そういったことを……(中曽根内閣総理大臣「ヒューマン・フロンティア・サイエンス」と呼ぶ)ヒューマン・フロンティア・サイエンスというのですか、それをやられる。私は、そういったような着眼というものがこれからの日本をつくっていくために大変大切なことだと思うのです。  さらに申し上げますならば、新しい情報化時代、通信時代、こういうものが、いろいろな情報化時代で新しいものが出てくる。テレビも何か宇宙衛星で今度やるという、あんなことは十年前には考えもしなかった話ですよ。そういったものが次から次へ出てくるわけでありまして、新しい時代をつくっていくためにはやはり新しい精神を持ってやっていくようなことを考えていかなければならない。財政におきましても、また一般の社会体制の中においてそういったものが広く取り入れられるような素地、体制をつくっていくことが私は必要だ、こう思うのです。各省大臣からお答えをいただいてもいいのですが、ちょっと幅広いですから、総理からまとめてそういった点についての御見解を賜ればありがたいと思います。
  44. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 科学は日進月歩でございますが、最近におきましては、エレクトロニクス等を中心にしまして、特に新素材あるいは超電導、こういう面におきまして非常に著しい進歩が出てきております。  例えば超電導というようなものを一つ考えてみましても、これが常温で電気抵抗がゼロになるような物質が仮に出てくるとしますれば、これは産業界に大革命が起こります。電気抵抗ゼロという現象というものは、我々にとってはばかるべからざるぐらいの大きな文明的な変換を起こすであろうと思うのでございます。自動車にいたしましても、こういう照明にいたしましても、あるいは核融合にいたしましても、ともかく電気抵抗ゼロということは非常に大きな革命的変化を与えるものです。しかし、それが可能性が出てきた、こういうわけで、絶対温度ゼロの面からだんだんだんだん常温に近づく物質が発見されまして、そして、しかもそれが日本とアメリカの学者が割合に有力に貢献しているという状態でございます。  これは単に今言った新素材だけでなくして、ほかの面、コンピューターの面でも同じでございます。そういういろいろな面につきまして、未知の分野が急に今出てまいりました。あるいはがんに対する攻撃にいたしましても、遺伝子その他を中心にしまして、これまた非常に日進月歩でございます。そういう面におきまして、科学技術に対する一大馬力を入れる時代に入ってきたと思います。  先般来ヨーロッパにおいては、ユーレカ計画ということでヨーロッパの国々が連合して、特定の目標に向けつつ科学技術で協力をやっておりますが、日本はアジアにおいて孤立しておるわけで、したがって日本独自の独創的なそういう研究分野を広げる必要がある、私は、そういう意味からヒューマン・フロンティア・サイエンス・プログラム、そういうものをつくりまして、人体の持つ機能を新しい科学技術によって解明して、そしてそれに代替し得る最大限の接近をやったらどうか。  コンピューターというようなものは、人間の大脳とそれから筋肉と一緒にしたものですね。これは、今だんだん進んでいるのは翻訳機械です。日本語で話したのが英語で出てくる、こういうようなものもある程度今できつつあるようです。専門家の話によると、例えばハシとい三言葉を言うと、日本語では手で持つおはしとそれから渡る橋と、そういうふうにアクセントや言葉のニュアンスの違いによって二つの意味になりますが、コンピューターが聞いた場合にはどっちにするか戸惑うわけですね。それをアクセントを操作することによって、これは渡る橋であるというふうにぱぱっと操作が行われれば翻訳が可能になってくるわけです。そういうところまで今実は進んでおるようであります。  そういうことを考えてみますと、科学技術には相当の力を入れてこの段階に馬力を入れるべきである、そう考えて努力してまいりたいと思います。
  45. 林義郎

    ○林(義)委員 私は実は総理のもとでがん対策をやらしていただきました。そのときにいろんなことをやりましたが、一番欠けておったのは外国の研究者を日本に呼ぶことだったと思うのです。いろんな技術はあります。しかし、私も恥ずかしいと思ったのは、日本の研究者がアメリカに行ったら大変よくしてもらえる。外国の研究者は日本に来たらなかなか、東京の状況というのは家がない、何がない、こういうふうな話なんですね。そういったようなこと。研究というのは人間の問題だと思うのです。教育によって人材をつくっていくことも必要である。しかし、できたらその人がいい環境で研究ができるようなことをぜひお考えいただきたい。私はこれは要望しておきまして、時間も参りましたから、私の質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
  46. 砂田重民

    砂田委員長 これにて林君の質疑は終了いたしました。  次に、坂口力君。
  47. 坂口力

    ○坂口委員 公明党・国民会議を代表いたしまして、昭和六十二年度補正予算案の審議を行いたいと存じます。  まず最初に、今総理初め皆さんのお手元にお配りをいたしました資料の一枚目、これは昭和五十七年から六十一年まで、すなわち中曽根内閣が誕生いたしましてから今日までの経過をたどったものでございまして、経済成長率、失業率、物価上昇率、国際収支、財政収支、それぞれの中曽根内閣の「展望と指針」の枠組みを示して、それに対してその結果がどうであったかを示したものでございます。言うならば、これは中曽根内閣の成績表みたいなものであろうと思います。  この結果をごらんをいただきますとわかりますとおり、年平均実質四%程度の成長率というのは、五十八年から六十一年までの平均三・九%というのは大体四%に近い数字でございますが、しかしその三・九%というのはどちらかといえば外需に支えられたものでありまして、外需に支えられて三・九%になっている。内需拡大というこの題目に対しましては少し達しないところがあった。  また、失業率におきましては二%程度ということでございましたが、平均いたしまして五十八年から六十一年までが二・七%、六十二年度の見通しは二・九%ぐらいになるのではないかと言われておりますし、一時的には三%を超えている、こういう状況でございます。  物価の上昇につきましては、これは年平均三%程度ということでございましたが、これは円ドル為替レート等の関係もございまして、一・四%というふうに、この点につきましては非常にいい成績が残っているわけでございます。  国際収支につきましては、国際的に調和のとれた対外均衡の達成ということでございましたが、この点につきましては貿易収支その他を勘案いたしまして、いろいろ多くの問題を残した結果に終わったというふうに思います。  それから財政収支につきましては、特例公債の依存体質から六十五年脱却という目標のもとに進められてまいりましたけれども、しかし、現在の情勢では六十五年脱却は非常に厳しい情勢に立ち至っている、こうした状況がございます。  総合いたしますと何点になりますか、私は気が弱いものですから点数はつけてございませんが、総理、ひとつごらんをいただきまして、御感想をまずお伺いしたいと思います。
  48. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 この結果を見ますと、必ずしもそう悪い点ではないだろう、そう思います。特に一番いいのは物価ですね。消費者物価あるいは卸売物価というのはスーパー優をもらっていいんではないか、そう思いますが、国際収支に問題点があり、失業率に問題点がかなりある、そういう気がいたします。それから財政収支、これも成績はかなりいい。国債依存率というものはかなり顕著に改革されてきている、こういうふうに思います。これらの強弱の点をよく分析いたしまして、悪いところは直し、いいところは続ける、そういう努力をいたしたいと思います。
  49. 坂口力

    ○坂口委員 この中曽根内閣成績表の評価は当委員会の委員の皆さん方につけていただくといたしまして、ただし、点数が悪かったからといって一年留年というのはございません。ひとつ念のために申し上げておきたいと思います。  さて、内需拡大は中曽根内閣誕生以来の命題でございました。しかし、これは達成されないまま今日を迎えていると言っても決して過言ではございません。  この内需拡大でやはり一番問題になりますのは、個人消費をどう高めるかという問題と、それからもう一つ財政出動のあり方、この二つに要約できるのではないかというふうに思います。国民総支出に占めます個人消費の割合は、アメリカにおきましては六五%に達しておりますし、また英国におきましても五九・七%、西ドイツは政府の消費支出が非常に多いものですから五四%と若干先進国の中では低い数字になっておりますが、日本の最近の五八・一という数字も出ておりまして、これはいいところまでいっておりますが、しかし英米その他に比較をいたしますとまだ伸びる可能性もここにはある、こんなふうにも思うわけでございます。  しかし、日本のこの個人消費の割合は、そういうふうな状態のところにとどまっておりますが、五十八年から六十一年まで、中曽根内閣になりましてからのこの四年間の実績を振り返ってみますと、家計調査を見ますと実収入の方は、これは対前年何%増加するかで見ますと、実収入では三・六%、そして非消費支出、これは税でありますとか社会保障でありますとか、そうしたものの伸びは六・三%、そして所得の中からそうした税や社会保障費を引きました残りの可処分所得の伸び率は三・一%、そしてその中から消費に回る消費支出は平均いたしまして二・五%になっておりまして、最近消費支出が非常に低いところに続いてきているわけであります。  これをどうするかということがこれからの大きな問題になると思いますが、非常に先ほどから議論がありましたように、日本全体で見ますと金余り現象もございます。しかしながら、企業におきますところの利益を労働者に分配するという労働分配率を見ましても、これは最近は決してふえていない。むしろ減少傾向にある、こういう状態にあるわけでございますが、この実収入三・六%の伸びしかない、そして労働分配率がなかなか進まない、むしろ落ちていく傾向すらある、こういうことにつきまして、まず労働大臣から先にお聞きをしたいと思います。この辺を打開するのにはどんな点が大事なのか、どんなことを労働省としてはお考えになっているのか、まずお聞きをしたいと思います。
  50. 平井卓志

    ○平井国務大臣 経済発展の成果を賃金等に適切に配分することは、勤労者の福祉の向上また内需拡大等を中心にした経済成長、均衡のとれた経済成長、これの達成のためには私は非常に望ましいことであるというふうに考えております。  ただ、今委員が御指摘になりました労働分配率につきましては、これは御案内のように景気の関連がかなりございまして、例えば景気上昇期においては分配率はやや下がる、不況期においてはやや上がる等々いろいろな動きがございます。またいろいろなとり方もあるところでございまして、その動きだけをもって勤労者生活の状態を判断することは一概にはできないと私は思うわけでございますが、私たちの存じておりますところでは、労働分配率が必ずしも下がったというふうには認識をいたしておりません。ただ、名目賃金の上昇率、これはやや低下が見られておるわけでございますが、実質賃金は御案内のように物価の安定等等で割合伸びておる。具体的な賃上げ等につきましては、基本的に労使の自主的な話し合いによって決定されること、これは御案内のとおりでございまして、政府といたしましては何よりも物価の安定を通じて実質賃金の向上に努めなければいかぬ、同時に、内需拡大のための経済対策を強力に推進する、よって勤労者生活の着実な改善を図ることが何よりも肝要である。一口に申し上げてそのように考えております。
  51. 坂口力

    ○坂口委員 今お聞きをしますと、いろいろ統計のとり方もあるということでございますが、いずれにいたしましてもこれから急速に実収入がふえていくというそういう見込みも十分に立たない、そういうことでありますと、どういたしましても内需を拡大をしようと思いますと、どうしても減税という問題がそこに浮かび上がってくるわけでございます。この減税を含めまして税制改革につきましては税制改革議会でただいま審議が続いております。いろいろと協議が続いておりますし、私もそのメンバーの一人に加えていただいているわけでございますが、しかし、それはそれといたしまして、この予算委員会におきましても税制問題、減税問題、マル優問題等につきましてはひとつ活発な議論をここでさせていただいて、そしてそれをまた反映をさせていただきたいと思うわけであります。  そこで、減税でございますが、政府自民党の方からは一兆円超という数字が出されました。我々の方はと申しますか、公明党を初め社会党、民社党さん合わせまして二兆円を下らない額ということで、二兆円という数字を我々は示しているわけでございます。大蔵大臣、ことしの経済状態その他から考えまして、現在の景気の状態その他を考えて、どれだけ減税ができるかということではなくて、現在どのくらいの減税が必要だと思うかという希望値、あるいは大蔵大臣の理論値と言ってもいいと思うのですが、このぐらいは必要だと思っているというところをまずお聞かせをいただきたいと思うわけであります。
  52. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは、大蔵大臣でございませんと減税は大きければ大きいほどいいと申し上げたい気持ちがございますけれども、なかなかそうもまいりませんで、いろいろ財政の状況等を考えますと、殊に、これは申し上げるまでもないことでございますけれども、直接税は殊にそうでございますが、一度減税をいたしますと次の年にもとに戻すというわけにまいりませんので、恒久的な減税になるということを考えておかなければならないということもございまして、政府といたしまして先般一兆円程度の所得税等の減税ということを緊急経済対策で決定いたしましたが、総合いたしますとそれぐらいが今年度望ましい減税ではないかと存じます。
  53. 坂口力

    ○坂口委員 今もおっしゃいましたように、一兆円超というのは、特に大蔵大臣の場合には現在置かれている財政の状況等を勘案をしてこのぐらいなものかということになっているというふうにおっしゃるのだろうと思うのですが、私が先ほど申し上げましたのは、それはそれとしての一つ考え方があると思うのです。しかし、それはそうなんだけれども、そうではなくて、現在のこの財政状態、どうしても景気を回復せしめなければならない、内需拡大をしなければならないというこの立場からいって、現在の財政状態あるいはこれからの税制改革の制度改革がどう進んでいくかというようなこととは別にして、現在の景気回復のためにまあこのぐらいあればいいのだがな、その辺のお考えがないかということをお聞きをしたわけでございます。ありましたらひとつ……。
  54. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ただいま申し上げましたのは個人の所得関係の減税でございますが、そのほかに、御承知のように法人税の減税は既に進行いたしております。これはもう御承知でございますが、つけ加えさせていただきます。  そのようなこともございまして、やはり経済全体、財政を合わせましての運営で申しますと、どうも大きければ大きいほどいいということがなかなかこの際申し上げにくい。先般、緊急経済対策を決定いたしましたときも、いわば減税分と、それから公共事業等による投資分と、景気回復のGNP効果等々も考えまして、いわばああいう配分をいたしたところでございますが、ここらは適当なところではなかったかと思っております。
  55. 坂口力

    ○坂口委員 皆さん方のお手元にお渡ししましたこの資料の二枚目、「可処分所得の推移」をごらんをいただきますと、昭和四十年か係ら六十年まで、だんだん可処分所得が低くなってきている。すなわち、所得として入りましたものの中から税や社会保障費を引きました残りというのはだんだん少なくなってきているということを示しておりますが、それからもう一枚、その次をごらんをいただきます。  三枚目でございますが、これをごらんいただきますと、「所得税と総所得の割合」、これはマクロで見たものでございますけれども、絵所得の中の所得税の割合、これを見てまいりますと、昭和五十二年ぐらいから急に多くなりまして、そして最近では八・六八%というふうに、もう九%に近づきつつある。これは国民経済計算年報の数字を拝見をしてつくったものでございます。  そういたしますと、今八・六八%ということになっているわけですが、これを大体八%のラインまで減税をしようと思いますと、大体一兆六千億ここに必要とするという計算が出ます。これを七%までおろそうと思いますと、そうしますと、これは四兆一千億円減税が必要だということになります。これはそこまで行けばよろしいですけれども、先ほど大蔵大臣のお言葉ではありませんが、諸般の事情をいろいろ考えますとなかなか難しい数字ではないか。  そこで、先般税制改革議会におきまして、自民党の方から将来の構想として二兆七千億という数字が示されたわけでございます。これは将来構想としてここまではやりたいという数字が一つ示された。この昭和五十五年のところの七・六五%というところ、ここの辺までおろすということを仮定をいたしますと、これで二兆五千億円必要だという数字が出ます。  私ども、二兆円だというふうに申しておりますのは、何とかしてこの八%のラインは切れないだろうか。と申しますのは、この八%のラインに達しました昭和五十六年以降消費支出が急激に低下をいたしまして、いいときで五%台、昨年なんかは一・四%ぐらいになっているわけでございます。ですから何とかして八%以下にはしなければならない。この辺のところが、八%、これを、一兆六千億でございますから、もう少しここは下げなければならないというので、我々、二兆円という数字を出しているわけでありまして、一兆円よりも二兆円の方が多いから二兆円だということを決して簡単に申し上げているわけではないわけでございます。  この辺のところまではどうしても減税が必要だ、そうすれば支出の拡大ということが起こってくるのではないか、こういう私どもの理論的展開のもとにその数字を示しているわけでございますが、この表をごらんになりまして、自民党が示されました二兆七千億というこれは将来の数字でございますけれども、そうすると、これは七・六五よりももう少し下のところということになるわけです。大蔵大臣としては、一兆円超というのが諸般の事情から考えてまあそんなところかというお話がありましたけれども、しかし目標値としては自民党の方もそう出しておみえになるわけです。我々も本当は七%、四兆円ぐらいのところへいきたい、ここまでいけば随分消費拡大にはなる、こう思うのですが、しかしそれは一度にはいかない。税制改革その他の問題もありますので、まずとりあえず八%を切るというところまでぜひいかなければならない、我々はこう考えているわけでありますが、この辺について我々の考え方理解をしていただけるかどうか。そしてそれに対してどういうふうにお考えになるか。大蔵大臣、ひとつお聞かせをいただきたい。
  56. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 先ほど、今年度の減税はいろいろなことを考えずにどのぐらいが適当と思うかというお尋ねでございましたのであのように申し上げましたが、将来にわたりましては、税制改革の結果として、ただいまお示しのような所得等の課税はそのくらいの減税をいたしたいと考えておりますことは御指摘のとおりでございます。  この表を拝見いたしまして、今拝見したばかりでございますので分析的に申し上げることができませんが、やはりこれはかなり累進がきいてきている、しばらく大きな減税をいたしておりませんので、そういう結果であろうかと思います。ですから、所得税の負担と可処分所得あるいは消費との関係はもとより無関係だと私、思ってはおりませんけれども、その間、消費性向がどうなったのかとか、その辺のことをちょっとここでお示しでありませんので、明確には申し上げられません。しかし、何ゆえにそのような御主張があるかということは、この表を見ますと理解ができるところでございます。
  57. 坂口力

    ○坂口委員 昭和五十五年を境にいたしまして、このときが消費支出七・一だったわけでございますが、それ以後昭和五十六年に五・五に落ち込みまして、以後ずっと低下をいたしております。こういう考え方から、私たちが二兆円減税が必要だという根拠は理解をしていただいたと思いますが、それは大臣、我々のそういうふうに主張しておりますことは理解をしていただきましたね。
  58. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 私どもといたしましても、将来税制改革が完成いたしましたときには、ただいまから考えてかなり大きな程度の所得課税の減税を考えております。そういう立場から考えまして、そのタイミングあるいはそれに見合う税源等々のことはこれは申すまでもなくございます。ございますが、御主張の御趣旨はわかりました。
  59. 坂口力

    ○坂口委員 さてその次に、当面差し迫っております減税をどうするかということでございます。我々は、この制度改革の問題が言われておりますが、増減税同額という考え方は必ずしも減税を意味するものではない、こう考えております。と申しますのは、増税をいたしますところが、この減税が行われます庶民の階層と同じところで増税が行われましたならば、それは増減税同額でありましても、サラリーマンの、特にとりわけ厳しいと言われます中堅サラリーマンのところの減税というのはなくて、差し引きゼロということになってしまう。ですから、この増減税同額の税制改革というのは、増税をどこに行うかというやり方によってこれは決して減税にはならない、こういうふうに我々は考えているわけでございます。  そこで、減税というからには庶民の、とりわけ中堅サラリーマンのところに本当に減税になるような減税というものが必要である。そしてそれは六十三年以降、あるいは六十三年になるか六十四年になるかわかりませんが、その前に、六十二年度におきます減税だけはこれは先行をするというふうに内閣の方もおっしゃっているわけでありますから、我々は、六十二年度の減税というものについてはこれは先行をすべきである、そしてこの六十二年度の減税についてはひとつ別枠の考え方でいくわけにいかないか。将来の税制改革、当然私たちも必要だと思います。しかし、税制改革議会におきましても、急にきょう、あすにその結論を出せと言われましても、これは出ない状況にあります。しかし、私たちもできる限り急いでこの改革に取り組みたいというふうに思っておりますが、当面のこの六十二年度におきます減税幅について、一兆円超というその超とは一体何か。我我はもう少しはっきりとその点を税制改革議会においても示してほしいということを言っているわけでありますが、しかしそれが示されずに今日を迎えているわけでございます。したがって、理論的な話としましては、先ほどもお話し申しましたとおり少なくとも二兆円台の減税が必要であるということをおわかりいただいたと思うのですが、その辺も踏まえて、大蔵大臣として今話し得る限界のお話をひとつしていただきたいと思います。
  60. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは、まことに恐縮なことでございますが、前国会に提出いたしました税制改革案がお認めいただけるところとならずに廃案になりました経緯を私ども非常に深刻に考えておりまして、またその結果、税制協議会がただいま御検討中でございますから、前回の経験にもかんがみまして、余り出過ぎたことをただいま申し上げることはどうも適当でないという気持ちを持っております。  ただ、それにいたしましても、先般の緊急経済対策で申し上げましたような規模のことは、これは、あれを決定いたしましたときに、今年度にそれが賄えるだろうか、これが恒久減税に恐らくなると考えなければならないが、将来その財源を見つけなければならないがといったような意識のもとにああいう決定をいたしておりまして、ただいま申し上げられますことは、その程度が限界というふうに御理解いただきとうございます。
  61. 坂口力

    ○坂口委員 この問題、なかなか解決つきそうにありませんから、それじゃマル優の問題に入らせていただきたいと思います。  マル優の問題に入ります前に、もう一つ次のグラフをごらんいただきたいと思います。ナンバー5、「平均勤労所得、平均利子所得、平均消費各税率の推移」というのをお渡ししてございます。これをごらんいただきますと、昭和五十年を一〇〇として見ました場合に、勤労所得とそれから利子所得というものの推移を見ておりますが、先ほどのカーブにもございましたように、このカーブを見ましても勤労所得の方は年々歳々上昇している。それに対しまして利子所得の方はだんだんと下がっております。昭和五十年を一〇〇としましたときに、昭和六十年で見ますと、勤労所得の方は約五〇%アップになっておりますし、それから利子所得の方は二五%ダウンという数字になっているわけでございます。こういうふうになりますのは、勤労所得の方は減税もございませんし、だんだんとその負担がふえてきている。それに加えまして利子所得の方は、これはマル優制度がこの五十年以前からずっとあるわけでありますから、その中での不正利用等もふえてきている。そうしたことでこうした数字が出てきているというふうに思うわけであります。  それからもう一つ、棒グラフの数字がございますが、それをごらんいただきたい。これは勤労者世帯の年間の収入五分位別の貯蓄一世帯当たりの現在高を示したものであります。日本は非常に貯蓄高が高い、こういうふうに言われるわけでありますが、平均いたしますと、これは昭和六十一年でございますが、七百三十三万という数字になります。しかし、分位別に見ますと、第一分位、年間の収入が三百六十四万までのところ、平均いたしまして二百八十万のところは三百二万という数字。それから順々に上がっていきまして、第五分位のところは、これは千三百八十九万、こういう数字になるわけでございます。しかし、ここでよく見ていただきたいのはBの方でありまして、Aの貯蓄額の中から生命保険と――生命保険というのは若干普通の貯蓄とは異なりますし、すぐそれを出して使うというわけにもいきませんし、これは少し意味合いが違うと思いますので、この生命保険とそれから住宅ローンを中心としましたローンを差し引いたもの、この両方を差し引いたものをごらんいただきますと、第一分位の三百六十四万までの所得のところでは百十三万、そして第二分位の三百六十四万から四百七十八万のところで百六十万、そして第三分位の四百七十八万から五百九十三万のところで二百一方、それから五百九十三万から七百七十六万の第四分位のところで二百六十九万、こういう数字になるわけでございます。第五分位は、これは六百八十六万と少し多いですが、第一分位から第四分位までの間の数字を見ますと、それほど庶民の貯蓄額が高いと言われる数字かな、こういう気がするわけでございますが、総理大臣、これひとつごらんいただいてどんなふうにお考えになりますか。
  62. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 御指摘のような感じを持ちますが、しかし、いわゆる日本人は生命保険とかローンとかそういう面にかなり力を入れておられる、そういう点も今新しく認識した次第であります。
  63. 坂口力

    ○坂口委員 最初に示しました表は、人に対しましては非常に厳しい税がかかり、そして金に対しましては非常に軽く、そして物に対しましては現在平衡状態を続けている、こういう初めの表でございました。そういったところを国民の皆さん方は敏感にお感じになって、そして一生懸命汗を流して働く所得、勤労所得というものに対しては非常に税が厳しいのに、不労所得、働かずにと申しますか、そんなに汗して働くことなしに入ってくる不労所得に対しては非常に税が軽い、これは逆転をすべきではないかという、こういう御意見が出るのは当然だと私は思うわけでございます。ここが今回の税制改革の一番の中心課題ではないかと思うわけでございますが、その点をそのままにしておいて、そうしてその上で直間比率を先へやろうというのは、これは本末転倒をしていると私たちは主張しているわけでございます。そういうふうな意味でこの表をごらんいただいたわけでございます。  そしてこの二番目の、先ほど棒グラフの方の貯蓄額の方をごらんいただいて総理からも所感をお聞きいたしましたけれども、日本の貯蓄というのは、一つは、住宅、土地、それに対する非常に大きな負担がある、それを見込んでどうしても貯蓄に励まなければならないという点が一つ。そしてもう一つは、老後を考えたときに、国の制度である年金等ではまさしく心もとない、あるいはもし万が一、一家の大黒柱である私に何かが起こったらどうするかというようなそうした物の考え方のときに、やはり生命保険に頼らざるを得ないというようなことから、この第一分位から第五分位を比較いたしますと、収入の少ない層の人ほどより多い率で生命保険にお入りになっている。こういったことで、この両方を引きますと決して高い率でない貯蓄額でございます。この額は、これはアメリカの貯蓄率等と比較をいたしましても、まあまあ大体こんなものではないかと思うぐらいの貯蓄率でございます。  そこで、こういうふうにそんなに貯蓄額としては多くはない。そして、多くはない上に高齢化とともにこれからだんだん貯蓄の額というのは減っていく。諸外国を見ましても、高齢化が進めば進むほど貯蓄額は減ってきている。それが急速であれば急速であるほどこの貯蓄率も急速に減ってきている。こういったことで貯蓄額はさほど言われるほど多くはない。そして高齢化とともに貯蓄は減少をしていく。そして国の年金制度、この年金の問題はお昼からやらせていただきたいと思っておりますが、この年金も、特に国民年金、現在の基礎年金でございますが、国民年金などは夫婦で十万、一人五万円ということでありますから、これはなかなか頼りにならない。そして、ここをこれ以上によくするということもなかなか厳しい状態でありますので、そうすると、国の施策としてはどうしても自助努力を求めなければならない時期に来ている。どうしても自助努力を求めなければならない。自助努力を求めるということは、これはやはり税制等でその貯蓄などに対して少なくとも低いところに対しては何とか手を差し伸べるということがあってしかるべき状態である。  今こういう状況に来ているわけでありますが、この状況を無視して現段階でマル優を廃止するということは、現在の状況並びに将来の状態というものを非常に無視したやり方ではないかと私は思うわけでございます。ひとつ御意見をいただきたいと思います。
  64. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 坂口委員から総合的な御所見の御開陳がございましたので、委員におかれましては税制協議会にも御関係でございますから、私どもの考えでおりますことをお聞き取りいただきたいと思います。  本来、ただいまマル優の対象になっております非課税の総体の元本は二百八十兆円と言われております。これは個人の貯蓄額の七割という大きな部分でございますが、二百八十兆という元本から生ずる所得が全く課税されていない、それはなぜであるかといえば利子であるからである、こういうのが現実でございます。  そこで、私どもは、この制度に長年なれてまいりましたからそのことを余り怪しみませんけれども、偏見のない目で見ましたら、なぜそんなに二百八十兆ほどの元本からの所得が免税されておるかということは、これは多くの人が疑問に思うところであろうと思います。  その理由は極めてはっきりしておりまして、沿革から見ましても、資本蓄積を大事にしなければならない、それはかっては富国強兵のためであったこともございますし、また戦後の建設をしなければならないというためでもありました。そういう大きな政策目的がありまして、このような制度が基本的には打ち立てられ、維持されてまいったと思います。それはまたそれなりの役目を果たしてまいりました。そのような政策目的が基本的に今日なお妥当するかどうかということについては、国の中でも外でも問題提起がありましても別に不思議なことではないと思います。  と申しますのは、余りに利子であるがゆえに免税をされておる。これは、申し上げますが、少額、低額所得者の利子であるからゆえに免税されておるのではなくて、そうではなくて利子であるからゆえに免税されているということでございますので、それはなぜかということだと思います。  それから、そのような特典を利子が与えられておるのは、何に対して特典を与えられておるかといえば、その他の所得に対してでございます。まさに御指摘のありましたように、事業所得あるいは殊に勤労所得に対して資産所得が優遇されておるということでございますから、これは本来からいえばいろいろ批判があってしかるべきところであろうと思うのであります。確かに、言われましたように、この制度が、例えば老後の不安のためにあるいは住宅等のためにいろいろ利用されておりますことは御指摘のとおりだと思いますが、それであれば、それは例えば住宅減税であるとかいったようなものでカバーされるべきものではないだろうか、一般的な利子であるがゆえの免税ということはどうであろうかということは、十分に私はやはり吟味されなければならないと思います。  要するに、私どもが考えておりますのは、今まで長いことこの制度をやってまいりましたが、今やその制度はかえって、目的を達した後、税制全体の公平を害するような、つまり利子であるがゆえに免税をされるということは果たしてどのような意味があるのか。それは、少額所得者も恩典を受けますが、高額所得者の方が恩典が相対的に大きいことは明らかでございますから、そういう意味で不公正ではないかということは問われてしかるべきだと思います。  他方で、先ほどから御指摘もありましたが、社会的には保護されなければならない、特段の配慮をしなければならない人々もおられることは確かでございます。従来やってまいった制度でもございますから、そういうことも考えまして、そういう人々のために新しい少額利子の免税を考えるということは十分意味のあることでございますが、これは、今までやってまいりましたこの制度とは一応切り離しまして、新しいものとして考えるべきではないか、私どもはそういう考えを持っております。
  65. 坂口力

    ○坂口委員 資産所得に対する税というものがもっときちっと厳しくあるべきだというのは、これは私たちもそう考えているわけであります。また、現在のマル優制度というものがこのままでいいかといえば、これは改革はしなければならないということを考えておることも私たちも同じでございます。ただ、どう改革をするかということでありまして、現在のように制度を超えたところで悪用をする、そして、多額の預貯金をマル優の限度を超えてそのマル優の名のもとにしている、そういうところはどうしても押さえなければならない、改革をしなければならない、そう私たちも思っているわけでございます。  そこで、だからといってマル優の制度そのものを、全部をやめてしまうというのでは、これは庶民の生活というものを脅かすことにもなる。そこは残しつつ限度管理なるものを厳しくしていくというのが、現在を解決する最大の道ではないかというふうに思うわけであります。  中学校、高等学校の教科書等を見ましても、中学校の教科書にもこう書いてございます。社会科の本に、  わたしたちの生活には、思いもかけない病気や事故がおこったり、失業などによって所得が得られなくなったりすることがある。また、子どもの教育や自分の老後の生活のことも考えなければならない。さらに将来、住宅などを建てたいという願いもある。  このように、将来にそなえるために、現在の所得のなかから消費を節約してたくわえに向けられた貨幣が貯蓄である。  わが国は、むかしから勤勉節約が尊ばれてききたこと、社会保障制度の充実がおくれたこと、住宅事情がよくなかったことなどから、諸外国にくらべて家計貯蓄率が高かった。これは、中学校の教科書でございます。もう教えているとおりでございます。  そこで、時間もないものでございますから、これは大蔵大臣にまず先にお聞きして、後で総括的に総理大臣からお話を伺いたいと思いますけれども、ひとつ大蔵大臣、よく聞いていただきたいと思うのです。  現行の所得税制というのは、これは最低生活水準を維持するに必要な所得には課税されないという制度ですね。最低生活水準を維持するに必要な所得には課税されない、しかし、その水準を超える部分には課税をされる。現在の税制です。この最低生活水準というのは、課税最低限という制度の中で認められている。例えば、夫婦そして子供二人の標準家庭であれば二百三十五万七千円ですか、この最低基準というものがある。最低水準はそこまではかけませんよ、こういう制度なんですね。それから、貯蓄というのは、先ほどの中学校の教科書にもありますように、近い将来の生活保障のために蓄えられたものであり、生きていくために用意をしなければならない最低の条件であります、二百万とか三百万という貯蓄は。この利子所得には当然のことながら税がかからないというふうに認めるべきは、それは所得税における課税最低限のこの考え方をこの利子所得に対しても認めるべきである。これは私の意見ではなくて、ジュリストに「税制改革の課題と展望」というのが出ておりまして、この中で名古屋市立大学の牛嶋先生が書かれました論文でございます。  この物の考え方は、私は正しいと思うわけであります。普通の所得だけではなくて、私たちの本当に生活保障のために、あす、あさってに何が起こるかもわからない、そういうことのために蓄えた二百万、三百万というそうした額については、この最低生活水準の課税最低限の物の考え方を導入してしかるべき課題である、私はこういうふうに思うわけでございます。これに対する大蔵大臣の考え方をお聞きしたいと思います。
  66. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 十分その論文を拝読いたさないままで申し上げなければなりません。お許しをいただきたいと思いますけれども、私はただいま御紹介いただいた限りでは必ずしも賛成いたしがたい。  と申しますのは、先ほど申しましたように、どう考えましても利子所得というのは資産所得でございます。資産所得というものが勤労所得に対してより優遇せらるべきものであるということは、どうも私どもには真っすぐ賛成をいたしがたい。  この利子所得の基本になります元本は、それは勤労によるか事業によるか何かによって積み立てられました、そこから生まれる所得でございますから、いわんやそれは二次所得であるということもございまして、なかなか素直にはただいまのように私は考えにくい。殊に、それが例えば保険であるとかあるいは住宅であるとかということの備えとの関連であれば、それはそれなりにそのおのおのについて所得税の優遇規定があるべきであり、また現実にございますが、それで充てるべきものではないかと思います。
  67. 坂口力

    ○坂口委員 ここに述べられていることは、これは利子所得に優遇しろということを言っておるわけではないのですね。その中の少なくとも最低限のところについてはやはり考えるべきだということを言っておるわけなんです。今ちょっと誤解があったと思いますので、私はもう一遍申し述べておきたいと思います。  さて、大蔵大臣のお考えは大体お聞きしましたが、総理、先ほどからるる申し上げておりますように、貯蓄に対しましては現在そういう環境にあるわけであります。昨日ここでいろいろ総理が述べられましたが、何かきのうのお話を聞いておりますと、マル優制度が存在するから金が余っているみたいなお話にも聞こえましたし、あるいはまた貯蓄に補助金を与えているものだというような外国の見方の発言等もございまして、国民の側から見るとそれは非常に大きな間違いではないか、その辺は大きな見当違いをしておみえになるのではないか、そんな感じを強く持ったわけであります。  全体にひとつ総理のお考えをお聞きしたいと思います。
  68. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 マル優の問題については、我々はやめよというのではないのです。特に、御老人の方であるとかあるいは母子家庭の方であるとか、身体障害者の方であるとか、そういう社会の弱い方々にはそのまま残しておきましょう、しかしお金持ちの方々が利子の所得の課税を払わない、これは変じゃありませんかと。特に、お金持ちと思われる方々が大勢不正をやっておる、他人の名義を使ったり、いろいろなそういう面が顕著である、そういう面は野党の皆さんも御指摘になられておる。したがって、そういう不正をやっているというような面はもうやめさせなければいけない。そういう方々には、利子所得に対しては税金を少し薄くでも出していただこうではないですか、そういうことを申し上げておる。  我々はお正月、二月の議会税制の改正を提案をいたしましたけれども、その税制の改正というのもそういう趣旨で実はやったのでございます。しかし、いろいろ御批判もいただきましたから、マル優問題の取り扱いについては、今協議会で御審議ですから税制協議会の動向を見守りますが、我々としては、情勢によっては新型マル優という新しいマル優を考えてもいいのであります、そういうような考えを持って今税制協議会審議を見守っておる。昔の案に必ずしも固執するものじゃありません、議会のことですから、与野党で話し合って、そしてこういう形がよりよいといういい知恵が出てくれば、我々は十分そういうお考えを考える、そういう余地があるのです、そういうふうに申し上げておるわけなんです。  私は、これは社会正義に合うと思うのです。しかし、その点については野党の皆さんとも一致して、金持ちの不正は征伐しなければならぬ、これが不公平税制の最たるものの一つである、現実に。社会党のパンフレットを読んでみますと、ともかくあれから七千億円ぐらい税金が取れる、お金持ちその他から。そういうふうに私、パンフレットで読んだことがあります。ともかく、そういうやり方で七千億円も税金が取れるというのは、よっぽどインチキが多いということを社会党もお認めになっておるのではないかと私は考えておるわけです。  そこで、ではそういうことをやめさせようという点においては与野党は一致しているわけなんです。社会党の皆さんも、そういう意味ではそういうものは征伐しなければならぬ。では、そのやり方がちょっと変わってくるわけです。我々の方は、もうそういう人は一律に二〇%いただきましょう。そのかわり、懐に手を突っ込んで査察みたいな、いろいろ調査をやるというようなことはやめて、それはもう不正ではない、全部それはお認めしましょう、そのかわり、税金、出しなさいよ。そういう形で安心して税金がいただけて、しかも貯蓄が続く、現状が維持される、そういうやり方の方が民主的じゃないか。しかし、皆さんの方はあるいはグリーンカード制で復活しよう、あるいはマル優カードをつくろう、そういうお考えで今臨んでおられる。しかし、そういうやり方をやると、結局は、これは限度管理強化ということで国民背番号制になる。こういう制度はやはりひとり歩きしていきますから、税務署が悪人であるとは申しませんが職務に忠実である、そういうことになると、必ずこういうものは時間の経過とともに悪くなっていく、国民の方に悪くなってくる、私はそう心配するのです。  そういう面からして、一律に二〇%そういう方方はいただく、しかし弱い方は今のままマル優制度を続ける、そういう形で社会を割合に安定させながら安心して物事が移行していくというやり方の方が税制としては穏当ではないか。我々は自由主義経済を信奉するから、なるたけみんなの自由な形でそれが行われるのが望ましい。権力を使ってぎしぎし懐に手を突っ込むようなやり方というものはできるだけ回避した方が行政としては穏当ではないか、そういう考えを持っているわけなんです。  それで、今度は国際的な問題に変わってみますと、実はこの間のサミットにおきましても外国筋から、日本のやり方というものはそういうふうに所得があっても税金を取らない、外国はみんな税金を取っている。もっともフランスあたり、それからイギリスでありましたか、少額のものは免税しているのもあるのです。日本が二百八十七兆ですけれども、たしかフランスあたりが二十一兆ぐらいですか、イギリスあたりが五兆円ぐらいですか、そういう少額のものについては免税措置を認めている。しかし、日本の二百八十七兆が見逃されているということと見ると、これは月とスッポンくらい違うわけです。国際的に見ますと、日本がそういうふうにやっているということは貯蓄を奨励しているということなんだ、貯蓄を奨励しているということは税金を取らないということを言っているので、結局これは補助金をやっているのと同じことだ、外国はそう言っておる。現にこの間のサミットで、ある国の大蔵大臣その他の人たちがそれを言っているのを私は弁護した経験もあるわけです。  一つの手元のあれを読んでみますと、マンスフィールド大使がやはり同じようなことを指摘されておるのです。これは八六年の二月十九日、京都の講演です。去年ですね。それによりますと、「このような状況を考えると、「マル優」と呼ばれる少額貯蓄非課税制度を通じてさらに貯蓄を刺激する必要はほとんどない。」つまりマル優制度というものはやめた方がいいんじゃないですかという意味のことをマンスフィールド大使も言っておる。外国の人が言うからどうということはないですけれども、しかしシュルツ長官も同じように言っておりました。外国はみんなそう見ているわけです。というのは、日本の貯蓄が非常に優秀だからそういう面もあるんでしょう。しかし日本人にいかに気持ちがいい制度であるからといって、外国から厳しい、今の円高とか貿易黒字がこれだけたまっている原因は貯蓄が多過ぎる、だから日本の円が強くなっていく、そういう指摘を受けている場合には、いかに日本人に気持ちのいい制度であっても、外国と平準化した、外国の標準に戻った制度に移行するというのが国際国家日本のやり方なんです。そういう意味において、この制度は今国際的水準に合わせるように我々もこれを改革する必要はある、ただし日本の場合は今までの歴史もありますから、弱い方には特別面倒を見たそういう考え方でやったらどうかというのが私たちの考えなのでございます。
  69. 坂口力

    ○坂口委員 時間がなくなってしまいましてお答えができませんが、気持ちのいい制度だと我々も思っているわけではないのです。現在の制度はいろいろの不備がある。そのことは先ほども申し上げたとおりであります。また番号制につきましても、年金番号というのは既にもう我々には全部ついているわけであります。私には私の番号というものはあるわけです。ですから、これは別に番号が初めてできるわけではない。きちっと制度に見合ってそして税金を出していただく、そういうきちっと税金を出していただくという制度に対して、国民の懐の中に手を突っ込むようなことはいけないというような言い方をすれば、それじゃ税の公平とは何か、税というのは一体何かということになってくる。制度はきちっとつくって、そしてそれを運用するときには、それはいろいろ起こるでしょう。アメリカだってキャピタルゲインの番号制をしておりますけれども、五〇%台しか実際は把握されていないと言われています。そういうふうなこともあるわけでありますから、制度はいずれにしてもきちっとやらなければならないと思うわけです。  また、懐に手を突っ込むというふうにおっしゃいますが、もしそれなら、先般出ました売上税なんというのは本当に懐の底まで手を突っ込むものである。それでそのことは言わずに、貯金のことだけ懐に手を突っ込むというような発言をされるのは、それは私はおかしいと思うわけであります。  時間がなくなってしまいましたので、それじゃ午後の時間の始まりましたところでこの続きをやらせていただくことにいたします。  ありがとうございました。
  70. 砂田重民

    砂田委員長 午後一時より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時一分休憩      ――――◇―――――     午後一時開議
  71. 砂田重民

    砂田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。坂口力君。
  72. 坂口力

    ○坂口委員 午前中に引き続きまして質疑を続けたいと思います。  後半、マル優問題の質疑をいたしまして、いよいよ議論が佳境になりましたところで中断をしてしまいました。マル優制度を改革するという点につきましては、政府側と我々の考え方とは一致をいたしております。しかしながら、その改革の仕方につきまして、政府の方はマル優制度そのものをなくする、総理のお言葉をかりれば、六十五歳以上とかあるいは母子家庭、身体障害者の御家庭の皆さん方に新しくつくるというお話でございますが、しかし今までの制度はなくしてしまう、そういう議論でありますし、我々の方はマル優を超えた分の限度管理を徹底をして行うべきである、こういう点で意見対立をしたわけであります。最後総理の方から、お年寄りのためにはそうしてきちっと手を打っているじゃないか、こういう議論があったわけですが、我々の考え方は、老後に備える貯金に対してそれを手を打たねばならない、こう考えておるわけでありますし、政府の方の御答弁は、老後を迎えた人の貯蓄を保護すればいいじゃないか、こういう議論であります。そこにも考え方の違いがあるわけであります。我々は、老後に対して、その老後を迎えるまでの間の備えに対して手を打たねばならない、こういう考え方をいたしております。  このマル優の問題、余り時間をとっておりますとほかのことができ得ませんので締めくくりにしたいと思いますが、前国会に提出されましたマル優廃止のこの法案、なくなった法案のことを今さら持ち出すことは私好まないところでありますけれども、一カ所だけ不審に思った点がございますので指摘をして、これは大蔵大臣から御答弁をいただき、そしてまた最後に締めくくりとして総理大臣からも発言をいただいて、この問題の締めくくりにしたいと思うわけであります。  前国会に提出されましたこのマル優廃止の法案、その中で先ほど話のありました六十五歳以上の家庭あるいは母子家庭、身体障害者の家庭、そうした家庭にはマル優制度を認める、こうした点につきましては、所得税法の一部を改正する法律案の中に出ていたわけであります。しかし、一律二〇%の分離課税につきましては、これは租税特別措置法の一部を改正する法律の中に含まれている。この二〇%の限度管理については、租特の中にこれが含まれているということは、この分離課税については今後もこれは検討を続けますよという意味であったのかあるいはまた別の意味がそこに含まれていたのか、その辺について疑問に思っておりましたが、前国会で質問をする機会もありませんでしたのであえてここでお聞きをするわけであります。この議論は今後のこのマル優問題の議論にも大きく影響をしていくことでありますので、一言お聞きをしておきたいと思います。  そして、最後に締めくくりといたしまして、我我は限度管理というものはこれはでき得る、諸外国においてもやっておりますし、日本においてもかつで一度グリーンカード制という制度を政府の方から提案をし、そのとき政府の方は、この限度管理のための番号制というのは決して国民背番号制ではありません、何度も何度も、これは時の大蔵大臣並びに政府委員の皆さん方がお答えになったところでありまして、我々もそのように了解をして賛成をしたわけであります。そういう経緯もございます。したがって、我々はこの限度管理を行いますためにはそうしたことも十分考慮に入れた上、あるいはまた名前でありますとか、生年月日でありますとか、あるいは住所等を参考にしてそれが決められるというのであるならば、これも一つの方法ではないかというふうに思うわけであります。決して番号制だけに絞ったわけではございませんけれども、しかし、何らかの形で限度管理というものが必要になってくる。それは、たとえそれを六十五歳以上の人とか母子家庭だとかというようなことにいたしましても、最後のところではそうした管理の方法というものが問題になってくるのではないだろうかと思うわけでございます。こうした点を含めましてひとつ答弁をいただいて、次に移りたいと思います。
  73. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 この制度が不正利用されませんために、いろいろ限度管理につきまして坂口委員からもお話がございまして、その点御不審のことは私どももよくわかるわけでございます。ただ、私どもも申し上げようと思いましたのは、そういう限度管理を考えます前に現行の制度そのものに実は問題がある、こういうことをるる申し上げたかったわけでございますし、また午前中お聞き取りを願ったわけでございます。  次に、いわゆるグリーンカードでありますとか限度管理とか等々、政府も確かに一度かってそういう試みをいたそうと考えましたが、いろいろな世論の御批判あるいは世論の入れるところとならず、結局この案を撤回いたしまして廃止いたしましたことは御存じのとおりでございまして、この点はやはり我々そういう経験にかんがみなければならないと思っておるところでもございます。  米国において社会保障の番号があって云々ということはしばしば言われることでございますけれども、社会保障制度、番号制度が米国で確立いたしまして、これが税に利用されるのに実は三十年たっておりまして、やはりその間にはおのずから成熟の時間がかかったということをこれは意味しておると思いますが、私どもとしてはやはりそういう背番号あるいはグリーンカード等々につきましては、午前中にも総理が言われましたとおり、どうも実際問題としてなかなか世論がこれを入れない。また、そこから来るいろいろな問題、これは税務そのものにもあるわけでございますけれども、及ぼすところ問題が多いというふうに考えておるわけでございます。  最後に、冒頭のお尋ねでございますが、この制度をどうして租税特別措置法の方に入れたかということでございます。  私ども、基本的にはいかなる所得も本来的には総合せらるべきものであろうという考えを持っております。総合所得税によって累進課税の適用を受けるのが本来であろう、それが本則であるという考えを持っておりますものですから、したがいまして、その例外になりますものはやはり租税特別措置法に置くというふうに、伝統的にそのように考えております。でございますから、いつの日にかはいろいろな所得が総合せらるべきものであろうというのが所得税の基本的な理想でございますけれども、ただそれが現実に行われるためには、それなりの制度あるいはそれなりの税務の体制が整わなければならない問題がございます。措置法に置きましたのはまさしくそのような、所得税制度の本来は総合課税であるということに根差すものでございます。
  74. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 マル優制度の扱いが先般の議長あっせんの関係でどういうふうな扱いを受けるか、これはやはり議長あっせんというものが各党との関係において行われたものでございますから、各党、与野党の間で解釈は決まる、政府は直接には関知していないわけでございます。そういう意味で、与野党の関係の折衝あるいは今後のお考えを我々は注目してまいりたいと思います。
  75. 坂口力

    ○坂口委員 それでは次に、公共事業の問題に移りたいと思います。  内需拡大の中で、先ほどからるる話をいたしました減税を含みますこの部分と、それからもう一つ財政出動をどうするかという問題があろうかと思います。去年からことしにかけましての現在の状態というのは、振り返ってみますと、一九七七年から一九七八年、昭和五十二、三年ですか、このときとよくいろいろの点で似ているわけでございます。経常収支の黒字が非常に大きくなったということ、あるいは内外から内需拡大への要求がなされている、あるいはまた、財政的にも公共事業への増額が図られる、こういった点で非常に似通った状況を迎えているわけでございます。この七七年から七八年の反省といたしまして、財政赤字が大きくなり過ぎたということ、それから内需主導型への構造転換ができなかったということ、この二つが七七年から七八年のあのときの結果として、反省点としてここに残っているわけでございます。  そこで、我々は今、現在のこの財政状態を打開いたしますために積極財政を進めるべきであるというふうに主張いたしております。政治家の中、政党の中、そして学者の中にも、それに賛成の人あるいは反対の人、いろいろの意見がございます。財政出動をすべきであるという人、そして、それは後世に赤字を残すことになるから慎重であるべきだという人、この二つの意見の分かれ目というのは一体どこにあるのかということをいろいろの人の意見を分析をして見てみますと、結局この意見の分かれ目というのは、この二十年間を振り返ってみまして、公共投資の伸びが高いときには輸出の伸びは確かに低下をした。しかし、公共投資の伸びが一たん低下をすると、再びまた輸出の伸びが大きくなっていく、ここの点に対する評価の仕方でございまして、この公共投資を積極的に進めようという人は、それでもしかし、なおかつ、一時的にしろ景気はよくなり、そして外需は下がったではないか、こう評価をするわけでありますし、逆に今度はそれを評価しない人は、しかし、その公共投資を一たんやめてしまうとまたすぐにもとのもくあみに戻ってしまうではないかという議論に実はなるわけであります。公共投資の行い方ということが非常に難しくなってくる。我我も積極財政をここに主張しておりますが、しかし積極財政を主張しておるからと申しまして、これをフリーハンドで、どのようにでもよろしいから、財政をひとつお任せしますからおやりくださいということを言っているわけではなくて、過去のそうした反省を踏まえて、同じ道を決して歩んではならない。そのことを条件にして我々はその財政出動ということを言っているわけでございます。  そうした面で私はひとつお聞きをしておきたいと思いますが、この公共投資の使い方につきまして、今までの、その地域に金が落ちるとか、あるいはまた社会資本の充実になるあるいはまた非常に便利になる、いろいろのことがあろうかと思いますけれども、それだけで果たしていいのであろうかということをいま一度考えておく必要があると思うわけでございます。  このことについて、ことしの補正予算につきましても公共投資が非常に多く組まれておりますけれども、建設大臣、ひとつどういうふうな方針でこの公共投資の実行に臨まれようとされるのか、まずお聞きをしたいと思います。
  76. 天野光晴

    ○天野国務大臣 お答えいたします。まず昨年から、異常という言葉を使っていいと思うのですが、補正予算を多く出さなければいけなくなったその原因は二つあると思います。一つは貿易摩擦であり、一つは国内産業が円高によって受けたその状態をどうするかという二つの問題があると思っております。  そういう観点で、私たち建設省といたしましては執行を完全にするというのが前提条件であります。予算を組んで、そして来年度へ残すようなことではどうにもなりませんで、そういう点から、完全に執行できるという考え方でやるのが第一。第二は、できるなら国内における円高によって生じたその地域に対してできるだけの措置を講じたい。御承知のように相当失業者も出ておりますし、一部失業対策にもなるのではないか、そういう考え方で、いわゆる国内で起きた不況地域を重点的な対象として、昨年の補正予算から今年度の当初予算、また今かかっておる補正予算もそういう考え方で執行していくことは事実であります。  以上です。
  77. 坂口力

    ○坂口委員 今建設大臣からいろいろお聞きをいたしましたが、今までの公共投資に対する財政の使い方と、そして今後どの違いというのは余り明確にそこからはわからなかった。これは経企庁の方のお仕事になるかもしれません。これから先、あり余った財政じゃありませんから、どうしても厳しい中で進めていかなければならない公共投資でありますので、これをより効率的に使うという意味で、経企庁はどんなふうに研究なすったりあるいは今後進めることに対する提案をしようというふうになされているのか、ありましたら、ひとつお答えをいただきたいと思います。
  78. 近藤鉄雄

    ○近藤国務大臣 経済の基本的な成長力というのは、公共支出でやるよりも民間の消費や投資支出でございまして、三百四、五十兆の中の消費が占める割合が二百兆でございますし、民間の設備投資割合が五、六十兆でございますから、問題は、こうした民間の投資や消費をいかに活性化するかということが経済成長政策の基本なのでございますけれども、一昨年来、特に昨年の急激な円高で大変不況の分野が広がっておりますし、諸外国からも日本財政主導による積極的な景気対策、内需拡大政策が強く要請されておる面もございます。やはり何らかの意味で、今度は本当に国が積極的な内需拡大に取り組んだんだということを示すことが、例えば国際的為替市場においての円の安定、これ以上の円高を防ぐゆえんでもある。こういうことでございますので、御案内の六兆円の財政措置、一兆円の減税と五兆円の公共事業、さらに住宅融資で今回の緊急経済対策が始められつつあるわけでございますが、先生御案内のように、こういう形で財政が全部経済成長を背負っていくということになりますと、お話しのかつてと同じ道を歩むことになりますので、何らかの形でこの財政の担っている役割を民間の方にだんだんウエートをシフトしていくことが必要である、かように私ども考えておるわけであります。  そういうことで今度の緊急経済対策におきましても、民活プロジェクトの推進、また中小企業対策、さらには内需志向型の設備投資の促進等々に、金融さらに助成金また税制等も考えているわけでございますので、そういう形でだんだん民間活力によって景気の推進力を強化していくことに切りかえていく必要がある、かように考えているわけでありますが、すぐにはできませんので、ここ当分はやはり財政主導でやらなければならないと思うわけであります。  したがって、問題はその財政でありますが、効率をよくする使い方につきましては、先ほど建設大臣のお話もございましたが、不況地域等を中心にしながら、例えば土地代金などにできるだけ使われないような、実質内需主導型に需要が展開できるようなプロジェクトを重点に政府としてもいろいろ関係方面と協力しながら進めてまいりたい、こういうことでございます。
  79. 坂口力

    ○坂口委員 公共投資なるものが、これが民間投資へと次々に玉突き現象を起こしていくような状態が起こってこないといけないわけでありまして、そういうふうな意味で、今までの一九七七年から七八年当時のあの反省がまだ今お二人の大臣からお聞きをいたしますと生かされていない。このままで財政出動をいたしましたら、またいつか来た道を行く可能性もある。今これは一番大事なことであります。国といたしましては、財政的にも厳しい、しかし公共投資も行わなければならない、その使い方はどうあるべきか、これは日本にとりまして一番今最重要課題ではないかと思うわけであります。その最重要課題に対するお答えとしてはいささかこれは物足りない答弁でありまして、こんなことで果たしていいのかなという気がするわけであります。  この問題も余り長くやっておる時間がありませんが、総理、これは何とか早急にこれの進め方というものをもう少し研究もし、そしてこれから新しい道を求めていかなければならないのではないかというふうに思うわけであります。だから、その点につきまして今後の期待と申しますか、今後に対するこういうふうにやりたいということも含めてひとつお話をいただきたいと思います。
  80. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 公共投資の乗数効果が高度経済成長時代から比べて落ちておるということは、これは事実であると思います。今の段階に即しましては、やはり重点的に傾斜配分をする。例えば輸出関連産業あるいは地域、あるいは大型の鉄鋼とか造船とか、あるいは石炭であるとか、あるいは北海道や沖縄や九州、四国あるいは日本海沿岸、そういうような地点に対して重点的に傾斜配分をする。もう一つ考えることは、減反によってかなりの打撃を受ける農村地帯、それも重点的に選んで公共投資というものを考えなきゃいけない。そういう形によって我々は現在の日本全体の均斉ある景気の回復、内需拡大というものに進めてまいりたいと思っております。
  81. 坂口力

    ○坂口委員 例えば地方におきましては効率ばかりも言えないと思うのですね。効率が悪くても地方の道路なんかはやらなきゃならないところもある。あるいはまた、教育機関などにおきましてはそうとも言えない、ぜひやらなきゃならないところもある。あるいは福祉の方でもやらなきゃならない問題もある。そういうような問題は多分あるだろうと思うのですが、しかし全体から見るならば、もう少しやはり効率ということを求めて、財政出動をしたらその後を民間が必ず追っかけてくれるように、そしてそこにこの内需が次々と起こってくるようにするためにはどうしたらいいかという、その辺の研究というものをより強めていかないことには、今までと同じことをやるだけに終わる可能性があるではないかと、こう私は言っているわけでございまして、どうも、今総理のお言葉を聞きましても、その辺のところちょっとはっきりしないわけですね。もう少し私は、今後この辺についてひとつ政府を挙げて取り組んでいただいて、そしてできる限り後世に負担を残さないように、そして現在のこの内需拡大のためにそれがより効率的に使われるように、そうした議論をぜひ高めていただきたい、御注文を申し上げておきたいと思います。  さて、次の問題でありますが、昼まで少し時間をとり過ぎましたので先を急ぎますけれども、防衛の問題につきまして少しお聞きをしたいと思います。  防衛費GNPの一%枠の問題につきまして、西廣防衛局長さんがことしの五月二十六日の安全保障特別委員会で、五十一年十一月の閣議決定は廃止をされたというふうに考えるべきであります、こういうふうに答弁をしておみえになるわけであります。しかし、一月二十四日の閣議決定におきましては、その閣議決定の四番目の項におきまして「精神は、引き続きこれを尊重するものとする。」と、こういうふうにあります。精神尊重ということとこの廃止をされたということとはどういうふうに結びついているのか、この点をひとつ明確に御答弁をいただきたいと思います。
  82. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 ただいまの御質問は、法律的に詰めたお答えということになると、西廣君が御答弁を申し上げた五十一年の閣議決定はことしの一月末の閣議決定によって廃止をせられた、こう理解をせられるのが私は法律的には正しい解釈であろうと思います。  ただ問題は、なぜそれでは官房長官談話の中で、かわるものとして云々、こういうことを申し上げたかといいますと、法律的にはさようであっても、やはり五十一年の閣議決定の精神はあくまでもこれを尊重しながら、防衛力の整備というものについてはできる限り抑制的な物の考え方でいくべきであるというのが国防会議、さらには閣議の意見であったわけでございます。そこで、これを廃止という言葉を官房長官談話の中で使うと、そういったような我々の気持ちがにじみ出てこないのではないか。そこで、かわるものとしてこの閣議で新しく決定をいたしました。しかしその第四項目の中には、五十一年の閣議決定の三木内閣当時の精神はあくまでも尊重するのだということをはっきりとうたうことによって、今後とも抑制的な態度で防衛力は整備をしていくべきであるということを国民の皆様方に宣明をすることによって安心も願いたい、こういう意味合いでございます。
  83. 坂口力

    ○坂口委員 法律的にはというふうにおっしゃいましたけれども、これは閣議決定でございますから、法律が変わったわけではございません。今お話を聞きましても、なおかつ、局長のお話とそれから一月二十四日におきます閣議決定での精神尊重というのはどういうふうにダブっているのか、どういうふうに整理をしていいのか、どうも我々の頭の中で整理ができないわけであります。恐らく、法律的にはというふうにおっしゃいましたが、これは五十一年の閣議決定のことを言っておみえになるんだろうと思いますが、これは局長の言ったとおりであるということは、五十一年十一月の閣議決定は廃止をされたというふうに考えるべきである。しかし、そのときに決められたその精神は今も受け継いでおりますよということであれば、それは廃止をされたことではなくて今も生きているというふうに解釈もされるわけであります。これはどうも今のお話を聞きますとここが明確でない。総理大臣からもう一言これはお聞きをしたい。
  84. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 文章のところに、何々にかえるもの、そういう表現があり、前のものにかえるもの、そういう言葉がありまして、つまり代替するという意味で、そのことは、形式的、法的には前のものはやめる、これで新しいものとしてかえる、そういう意味だと思うのです。しかし精神は尊重していきます、そういうことで解釈は十分成り立つと思うのであります。
  85. 坂口力

    ○坂口委員 こんなことで時間をとっていますと次に進まないのですが、本年一月二十四日の閣議決定の四番目に、「今回の決定は、「当面の防衛力整備について」(昭和五十一年十一月五日閣議決定)に代わるものとするが、」とありますが、「同閣議決定の節度ある防衛力の整備を行うという精神は、引き続きこれを尊重するものとする。」こういうことでありますから、これはその精神は尊重されているもの、その内容は引き継がれているものというふうに我々は理解ができるわけであります。この点につきまして、ひとつこれからこの精神を十分に守り続けていただきたいということを主張しておきたいと思います。  大蔵大臣にお聞きをしたいと思います。  この精神尊重規定というのは、大蔵省の来年の予算の査定等にどのように影響を与えるものなのかということをひとつお聞きをしたいと思います。  それから、まとめてお聞きをいたしますが、昭和六十二年度の防衛関係費がGNP一%枠を突破いたしまして、その突破分が百三十四億円になるわけであります。その中で、廃止となりました売上税の相当分が百十六億円あるわけでございます。それから、売上税相当分の百十六億円と、今回のこの補正予算で四十一億円が修正減額されているわけであります。これらを合計いたしますと百五十七億円ということになりまして、この百三十四億円を超えるわけでございます。これはどのようにお考えになっているのかということをあわせてお聞きをしたいと思います。
  86. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ただいまお尋ねになられましたような経緯で一月二十四日の閣議決定ができておりまして、私どもは、これは専守防衛のもとに節度のある防衛計画を進めていくという伝統的な考え方は貫かれておるものと考えておりますので、そのような精神に基づきまして、六十三年度におきましても防衛費の査定をいたしてまいりたい、かように考えております。  なお、ただいまお尋ねの点でございますが、確かに為替関係で四十一億円、それから、今度は補正をいたしておりませんけれども、売上税を想定いたしました段階で防衛費の中に売上税相当分が一部入っております。それらを差し引いた場合にGNPとの関係がどうなるかということはございます。ございますが、GNPの基数そのものもはっきりいたしませんし、私といたしましては、そういう数字の結果一%になるならないということは実は第二義的なものであろう、一月二十四日の閣議決定がございます限り、仮に結果としてそうでありましょうと、あるいはそうでございませんでしょうと、それは一・〇〇三とか一とかそういう種類のことでございますから、大した意味合いを持たないものだろうと私は考えております。
  87. 坂口力

    ○坂口委員 この補正予算での修正減少額の中に売上税相当分百十六億円の不用額を計上いたしますと防衛費は対GNP比で〇・九九九一%になるというふうに計算ができるわけでございます。GNP一%枠を守るという意思さえありましたならば、今でも遅過ぎるわけではなくて、守れるわけであります。ひとつ皆さん方がこの精神というものを十分に尊重をして実行されることを要望をしておきたいと思います。  それから次に、円高差益の問題につきましてお聞きをしたいと思います。  円高差益の還元につきましては、これはもう今まで幾つか言われてきたことでありますし、今さら申し上げるべきことでもないわけでございますが、しかしまだまだ円高差益の還元が十分でないところがいろいろな点であるわけであります。  これは経企庁が編集協力をしておみえになります「ESP」の四月号に「円高差益は還元されているか?」という一文を寄せておみえになりまして、これを拝見をしておりまして、この中でセメントあたりが非常に低下をしていない。一一・五%は少なくとも下がるべきだというふうにこの論文の中で述べておみえになりますが、セメントは昭和五十五年を一〇〇にいたしました場合に昭和六十一年の十二月には一〇四・三というふうに逆に高くなってきている。ほかの化学肥料でありますとか石油製品あるいは非鉄金属、鉄鋼、電力、合成ゴム、こうしたものを見ますと全部、少なくとも程度の差はありますけれども安くはなっている。ところが一つこのセメントだけは突出して一〇四・三というふうに上がっている。そしてことしの五月の値を見ましても一〇二・七というふうにして依然として高いままになっている。これはどういうことでこうなっているんだろうか。と申しますのは、これから景気対策で公共事業がたくさん出るところでありまして、セメントあたりも非常に大きな影響を与えるところでありますが、こうした点はなぜこうしたことが起こっているのかということを明確にひとつお答えをいただきたい。それ相応のどうしてもやむを得ざる理由があるというのならこれはいいわけでありますけれども、そうでないならばひとつその点を明確にしておくべき問題であろうと思います。  それからもう一つ、石油関係の製品につきまして、この石油製品からの二次製品、三次製品が、うまくこれが安くなっているかどうかを見ていきました場合に、必ずしも実は安くなっていないものに突き当たってまいりました。それは原油でありますとかナフサ。原油は昭和六十年の九月に比べまして本年の五月の値は六一%も安くなっておりますし、ナフサは五八%安くなっているわけでありますが、そのナフサからさらにできてまいりますカプロラクタム、こういうものは一六%しか下がっておりませんし、ナイロンフィラメントというのは一四%しか下がっていない。  このカプロラクタムという物質は、これを素材にいたしまして、いわゆる漁網ですね、魚をとります網等をつくっている材料になっているわけであります。この人たちのお話を聞きますと、非常に円高で外国にそれを出すことができない、その材料が非常に高くてこれがなかなか下がらない、そのために諸外国と太刀打ちができないというようなことが起こっておりまして、何とかならないだろうか。日本からカプロラクタムというこうした物質が海外に輸出をされてそこでつくられておるものと競争をいたしましてもなかなか競争ができないということでありまして、外国にはかなり安く出ているのではないかという訴えもあるわけでございます。これらの点がどうなっているのか。  それから先ほどのセメントにおきましても、ことしの五月現在で国内におきましては一〇二・七というふうにして五十五年の一〇〇よりも高くなっているのですが、輸出の方は四六・四%というふうにして半分以下に下がっている。この辺のところも、これだけ安く外国に出せるものならばもう少し国内において何とかならないのだろうか、こういう疑問も実は起こってくるわけであります。だからこの辺のところもあわせてひとつ御答弁をいただきたいと思います。
  88. 鎌田吉郎

    ○鎌田政府委員 お答えを申し上げます。  まずセメントでございますが、先生御指摘のとおり、昭和五十五年度と比較いたしますと先生がおっしゃったような格好になるわけでございますが、セメントの価格は、日銀の指数でございますと五十六年度がピークでございまして、それ以降は若干ずつでございますが下がってきている。特に昨年の後半からは、近隣諸国の安価なセメントが輸入されているわけでございますが、これが最近非常にふえておりまして、そういった関係もあって一段と価格が下がってきている、こういう状況でございます。保問題は円高メリットとの関係でございますが、セメントの場合にはエネルギー源として石炭を使っているわけでございます。この石炭につきまして、国内炭も一部使っていただいておりますけれども、大半は海外炭でございますので、価格下落は当然円高等によってあるわけでございますけれども、総じて言いますと、円高による輸出の大幅な減少あるいは先ほど申しましたように輸入が倍倍ゲームで最近ふえてきておりまして、そういったことも総合的に勘案しますと、円高のメリット、デメリット、ほかの業界に比べて特に円高メリットが大きいというような状況になってないわけでございます。  それから、経営状況につきましても、昭和六十年度業界全体で四十億円の経常利益、この六十一年度につきましても百四十五億円程度ということでございまして、製造業平均に比較しましても大変低い水準になっているわけでございます。そういった状況でございまして、この辺につきまして御理解を賜りたいと思うわけでございます。  それから、輸出価格が国内価格に比べて非常に低いというお話でございます。ただいまも申し上げましたように、セメント業界、急激な円高と近隣諸国との競争によりまして輸出が大幅に減少しているわけでございます。この数年でほぼ三分の一になっておりまして、特にこの一年は半減している、こういう状況でございます。そういった状況の中で、今も申し上げましたように輸出価格の下落が起こっているということで、御理解を賜りたいと思うわけでございます。  それから、ナイロン糸の問題でございます。ナイロン糸につきましては、先生御指摘のとおりカプロラクタムが主原料なわけでございます。これが大体コスト全体の五割程度を占めております。それから、カプロラクタムの原料がいわゆる石油製品、ナフサとかベンゼンでございまして、これがやはりカプロラクタムの生産コストの大体四割とか五割というふうに言われているわけでございます。そういったことで、仮に石油製品、ナフサとかベンゼンが四割、五割下がりましても、五割の五割でございますので、石油系原料という点だけとりますとナイロンの糸には四分の一程度しか反映しない、こういう格好になるわけでございます。  市場価格というのは、マーケットにおいて需給関係等々いろいろなファクターによって決まるわけでございますので、なかなか一概に言えないわけでございますけれども、石油製品の値下がりとの関係で考えますと、私どもは一応対応関係はできているというふうに、そういった印象を持っているわけでございます。  以上でございます。
  89. 坂口力

    ○坂口委員 でけてないから聞いておるわけで、でけとるというような答弁はけしからぬ。でけてないから聞いている。でけてないから、それはなぜかということを聞いているのに、でけてるというような答弁はけしからぬと思います。  私は、セメントなんかにつきましても、別にセメントをどうのこうのということはないわけですけれども、この「ESP」においてわざわざ取り上げて、そして細かに分析をして、これが問題だということを経企庁の課長さんが指摘をしておみえになるから、どうですかということを私は言っているわけで、わざわざ「ESP」に載っていることを言っているわけで、私はそれに対して何ら、セメント業界に対してどうのこうの、悪意を持っているわけでも何でもないわけでありまして、スムーズにいっていれば、それなりの理由があるならば結構でございますよ、しかし円高差益というものが十分に行き渡っていかない、そうしたことがこうしたところからだんだんと、あそこもいいんなら、うちもいいじゃないかというようなことで、おくれていくようなことがあってはならないという意味で私は申し上げているわけです。どうも答弁は不十分であります。  これはどなたにお聞きしたらいいのか、通産大臣にお聞きをしていいのかどうかよくわかりませんが、今後の御努力をひとつ発言をしていただければ、次に移りたいと思います。
  90. 田村元

    ○田村国務大臣 かしこまりました。
  91. 坂口力

    ○坂口委員 かしこまりましたというところで、ココムの問題を引き続きまして大臣にお聞きをしたいと思います。  東芝機械のココム違反問題につきましては、これはきのうからきょうにかけまして既にいろいろと議論もあったところであります。私は、今までの議論も聞きつつ思ったわけでありますが、通産省は東芝機械の虚偽の申請を受けてそれをチェックできなかった。年間二十万件あるところを四十人でございますかの職員でやっておみえになる。もしも虚偽の報告をされるということであるならば、それはなかなか四十人がたとえ八十人になったとしても、これは果たしてできるのかなという気がするわけでございます。  これはココムという紳士協定を破り、あるいはまた日本法律を犯して東芝がソ連に機械を輸出をしたということが今回の事件でございますが、しかし、これはもとをただせば企業の持つ社会責任のあり方、それを問うている今回の事件ではないかと思います。現在、世界各地で、いろいろな形で日本の企業のあり方が問われているわけであります。企業行動のルールと申しますか、南ルールの原理原則に関する問題でもあるわけでありまして、この辺のところをどうするか、どう指導するかということによって将来決まってくるのであって、通産省の職員の四十人を八十人にするとかということもそれは結構でしょう。しかし、私は、たとえ四十人を八十人にしても、なかなか決着のつきにくい問題ではないかと思うわけであります。以後これをどのようになさるのか、どういうふうに企業に対する指導をされるのかということもひとつお答えをいただきたいと思います。  それからもう一つは、きのう川崎議員からも出たところでありますが、ソ連がこの機器を使ってスクリューをつくり、そしてソ連の潜水艦の水中雑音が減ったということが報道をされて、そしてその責任がすべて日本にあるかのごとく、本当にあるのかどうかよくわからぬわけでありますけれども、報道をされている。中には、日本に対しまして、それによって起こった賠償を全部日本が支払えというような意見も起こっている。しかし、英国から出ております雑誌等を拝見いたしますと、問題のソ連のシエラとかアクラというこうした潜水艦は、時間的にいきまして、シエラは一九八三年の七月に進水をいたしておりますし、アクラの方は一九八四年の中ごろに進水をしているということが言われている。その時間的な関係からいきまして、東芝機械がそのすべての責任なのかな、こういう疑惑もそこに起こるわけでございまして、この犯しましたことに対しましては、これはもう当然厳重な処罰があってしかるべきではあると思いますけれども、そのすべての責任日本がかぶるべきものかどうかということにつきましては、このジェーンという軍事年鑑を見ますと、そのジェーン軍事年鑑に出ておりますことが真実であるとするならば、時間的な問題でいささかどうかなという問題もあるわけであります。こうしたことも踏まえて、これはきょうこれから米国に御出発になる大臣としては非常にお答えをしていただきにくい問題かとも思いますけれども、ひとつお答えをいただきたいと存じます。
  92. 田村元

    ○田村国務大臣 まず、前段のくだりでございますけれども、確かに日本の企業の営業のあり方というものに問題が多いことは事実でございます。もうけんかな主義だけでなしに、シェア拡大主義ということで、私が対外的に非常に頭の痛い思いをしたこともしばしばでございました。でございますから、行政指導としても、やはりモラルというものを守っていくように、企業の倫理というものを明確にしていくように求めていくつもりでございます。また、現実にいろいろとそういう問題に遭遇するたびにあるいは事前に、厳しくそれを申していきたいと思っております。  それから、今のココムの問題でございますけれども、今おっしゃったとおりでありまして、これは二つの問題に分けることができるかと思います。  一つは、今おっしゃったとおり理屈抜きに、こういう非常に高度な性能を持ったものをごまかして不正輸出したということについては、これはもう何をか言わんやであります。厳しく処分する以外にありません。また、当然アメリカに対しても、我々は遺憾の意を表明しなきゃならぬことは申すまでもないと思います。  ただ問題は、じゃしからばそれが、東芝機械の機器がすべて諸悪の根源かということになりますと、昨日もちょっと申し上げましたように、その証拠というものは明確でないわけでございます。同時にまた、ここに難しい問題は、そのエビデンスをはっきりさせろといっても、アメリカもソ連もともに、極端な軍事機密に関する問題でございますから、恐らくその設計図だ何だというものを出してくるということは両国ともにないだろうと思う。そこに難しさがある。しかし、今言った時期的なずれその他の問題はありますから、それは私から、向こうへ行きまして、特に国防省等に対してはっきりとお尋ねをするつもりでございます。  しかし、それはそれとして、今申し上げたように、こういうココム違反ということについては、まことにとんでもないことをしてくれた、今後かかることのないことを祈っておりますし、またそうしなきゃならぬと思っております。
  93. 坂口力

    ○坂口委員 それじゃ、この問題はこの辺にしておきたいと思います。  さて、年金の問題でございますが、先日総理は、本会議場におきまして、将来高齢化によって年金をもらえない事態が起こる可能性もある、こういう御発言がございました。聞く人が聞きますと、これは大変なことになるぞという気になるわけでございますが、厚生大臣、果たしてこんなことが起こるのかどうか、起こるといたしましたらこれまた一大事でございますが、ひとつ今後の状態等を含めて御答弁いただきたいと思います。
  94. 斎藤十朗

    ○斎藤国務大臣 本格化する長寿社会を迎えまして高齢化が進み、また年金が成熟化してまいりますことによりまして、これからの年金の運営というものが非常に難しくなってくることは確かでございます。でありますので、将来にわたってその制度が安定的に、また安心して運営できるような制度に今変えていかなければならないということで取り組んでおるわけでございます。  さきの年金改正におきましても、将来を見据える中で適正な給付水準に是正をさせていただき、また、基礎年金という形の中で基礎的な部分を賄っていくというような改正をいたしたわけでございます。そして、今後におきましても、後代の負担が大変きつくなってまいりますので、それだけに、いろいろな角度から検討をいたし、今後、昭和七十年に向かって年金の一元化をしていくということで作業をいたしており、将来にわたっても国民の皆様方が年金に対して信頼を持ち、安心していただけるような、そういう年金制度の確立に最善を尽くしてまいる覚悟でございます。
  95. 坂口力

    ○坂口委員 時間がありませんから先を急ぎますが、年金問題、現在のこの制度、保険料が高い割には給付額が低い、国民の間にそういう不満があることも事実であります。それからもう一つは、中曽根総理のそうした御発言等もありますように、将来年金が受けられるのかどうか不安である、こういう議論もあるわけでございます。しかし、今厚生大臣から御答弁ありましたように、将来年金が受けられないということは大変なことでありまして、そんなことは絶対にない。総理も非常に強調をしておっしゃったのだろうというふうに私も理解をいたしておるわけであります。  それで、年金制度につきましていろいろ改善をしていきたい点があるわけですが、現在の保険料が高い割に年金給付額が低い、このことを解決をしていきますためには、どうしても現在の年金の積立金をよりよく運用するという以外に方法はないのです。今以上に、保険料は昭和八十年の初めごろになりますと一万三千円、現在の貨幣価値での一万三千円でありますから、その当時になりますとどれだけになるかわかりません。だんだん上がっていく。だから、これをこれ以上上げるわけにはいかない。ということになりますと、積立金を高利運用する以外に方法はない。  前国会でありましたか、私申し上げましたとおり、今のようなままでありましたら生命保険の方がうんと率がよくなる。物価上昇が三%以内であったら、生命保険の方がよくなるという話をいたしましたけれども、そうしますと国民年金なんかに入っておみえになる方が、現在基礎年金ですね、その方がだんだんとやめる方が出てくる。そんなことになってまいりますとこれは一大事でございます。現在でもかなりやめておみえになる方がある。ここを解決するためには、積立金の自主運用の額を進めていかなければならない。私、何年か言ってまいりましたが、ようやく一兆円だけ自主運用が認められましたけれども、少なくとも三分の一、半分ぐらいは自主運用をぜひするようにしないと、将来の国民の要望にこたえることはでき得ないというふうに思うわけです。しかし、そう申しますと、大蔵省の方は頑としてここに立ちふさがって動かない。ここで今まで議論はストップをしてきたわけです。  そこで、私は、ここできょうは新しい提案をしたいと思うわけであります。これは前国会の本会議場の演説で、私の方の矢野委員長が提案をいたしましたけれども、無利子国債を発行をして、これは一人の限度額を決めておいて、どれだけまではいいということを決めなければなりませんが、そしてその国債を引き受けてくれた人には、相続税ならば相続税をその分だけは免除をする、こういう無利子国債を発行してはどうかという提案を委員長がしたわけであります。私は、この無利子国債と資金運用部資金とを結びつけて、そしてこういうふうな形で無利子国債が発行できればそれを財投のかわりに使う、そうしてそこから浮いてきた年金は自主運用に回す、こういうことにならないか。  そうすると、無利子国債を発行するということは、もしも相続税をそれだけ免除するということになれば相続税の先取りということになりますから、若干国の方としては意見もあるだろうと思うのですが、それによって国民の皆さん方もプラスの面もある。相続税の先取りにはなりますけれども、しかしそれを財投のかわりに使うということになれば、そこで五%ないし六%の利息をつけて貸すわけでありますから、そこに利息はついてまいります。それから、それによって浮いてまいりました自主運用の方の年金の方は、これまたそれだけ利子もうんと多くなるわけでありますから、これもプラスになる。これらを組み合わせることによってかなり国の方も取り入れてもいい制度になるのではないか、そんなふうに実は考えておりまして、新しくきょうは私はここに提案をするわけでございますが、まことに名案だというふうに考えておりますが、大臣、いかがでございますか。――では、大蔵大臣。
  96. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 非常に概略は、かつて矢野委員長が言われましたことを記憶いたしております。いま少し詳細に伺いましたが、もうちょっと伺いませんと、ちょっと私に判断いたしかねる点がございます。  ただ、相続税の前取りと言われましたけれども、無利子国債でございますから、結局償還をしなければならぬのじゃございませんか。そうしますと……(坂口委員「そう。だからその分は相続税は払わなくていい」と呼ぶ)相続税はないわけでございますので、償還義務だけが残るか、こういう感じがややいたします。  それからもう一つは、そのような無利子国債が証券市場に出ましたときに、他の国債との関係でどういうことになるかということをちょっと見当がつきにくうございます。そういう意味での金融秩序がどういうふうになるかということ、恐らく転々売買ができることになろうと存じますので、そうしますと、有利子のものとの間、有利子と申しますか、仮にそう呼びますが、どうなりますか、その辺がよくわかりにくうございまして……(坂口委員「研究してください」と呼ぶ)はい、また承りまして検討いたします。
  97. 坂口力

    ○坂口委員 それから、厚生大臣。地域年金の方でございますが、これは制度の導入、この地域年金というものを導入しないと、基礎年金だけの方は一階建てだけでありまして、二階建てがない。だから、何とかもう少し二階建ての年金にならないかということがございます。そうした意味で地域年金の導入ということを我々主張いたしておりますが、このことに対して厚生省の考え方をぜひひとつ聞かせていただきたいというのが一つ。  それから、時間がございませんので、年金からエイズに移って恐縮でございますが、あわせて申し上げます。  エイズの予防体制につきましては、公明党は当初から熱心にここに取り組んできたわけであります。法律案が提出をされようといたしておりますが、現在のところ治療法がありませんので、予防に重点を置かざるを得ません。しかし、予防を強化するがゆえに、患者さんやあるいは患者には現在立ち至っておりませんけれども感染をしている人たちの人権を損なうことがあってはならないと思うわけであります。この点、法律におきましては慎重の上にも慎重でなければならない、我々そう考えているわけでありまして、そうした大臣の見解をお聞きをしますと同時に、このエイズに対する研究をぜひ強化をして、一日も早く治療ができるような体制をいたしますために、国立の免疫病センターというものをぜひひとつこれは設立をするようにお取り計らいをいただきたい。これは免疫といいますと、エイズだけではございませんで、例えば関節リューマチ等も免疫病の中に入っておりまして、そして何百万という人たちがその病気のために苦しんでいるという事実もあるわけでございます。こうした面を含めて、免疫に関係するものをすべてそこでやっていく、もちろんエイズの研究をそこで強力に進めていくというようなセンターの存在がぜひ必要ではないかというふうに思うわけでございます。これらの点を含めてひとつ御答弁をいただきたいと思います。
  98. 斎藤十朗

    ○斎藤国務大臣 まず国民年金の二階部分のお話でございますが、御承知のように、被用者年金につきましては、二階そして三階というふうになっておるわけでございますが、自由業者等を中心といたしました国民年金対象者の皆様方には基礎年金の部分だけしかないということで、その上に二階部分をぜひつくるべきであるということを私もかねがね考えておったところでございます。  ただ、いろいろな問題もございまして、大部分の方が自由業者であるというようなことから所得の捕捉というようなことも大変難しいというようなことから、いわゆる所得比例型の年金というものも仕組みにくいのではないかというようなことも考え合わせまして、ただいま国民年金基金という制度が法的にはございます。しかしながら、これは職域型の日本全国の一つの業種にわたってその三分の二の方々が賛成するものについて国民年金基金が仕組めるというようなことになっておりまして、残念ながら現在一つも活用をされていないわけでございます。でありますので、こういった職域型の国民年金基金がより活用できるような改善をしてまいるということが一つだと考えております。  そしてもう一つは、今お話がございましたような地域型の国民年金基金というものを創設できるように、新しく制度をつくってみたらどうだろうか。その場合に、基礎的なというか基本部分と、そして加算部分というような二つの仕組みの中でやっていき、そして基本部分については月額二万円から三万円ぐらいの年金が三十年ぐらいの納付によって得られるようなそういうものにできないであろうか。そしてその上に、それぞれの地域のニーズに合ったような、またそれぞれの方々の選択ができるような加算的な年金がその上にできないか、こういうようなことで事務当局に指示をいたしておりまして、次の年金の再計算期、昭和六十四年ぐらいには何とかそういうものができないか、ひとつ検討を今指示いたしておるところでございます。  それから、エイズの問題でございますが、エイズは……(坂口委員「研究所」と呼ぶ)研究所でございますか。それでは三番目の免疫研究センターについての答弁を申し上げさしていただきますと、エイズを初め、免疫不全による、免疫が関係する疾病というのは非常に数多うございまして、これまでもそれぞれの疾病ことに、臨床また基礎的研究ということで研究班を組織して研究を推進をいたしておるところでございます。一括やっていくということがなかなか難しいのではないかという考え方を持っておるところでございますが、今先生の御指摘でもございますので、ひとつ寄り寄り検討をさせていただきたいと思います。
  99. 坂口力

    ○坂口委員 時間がございませんので、二番目の法律の問題もぜひ我々の意見をひとつ尊重していただきたいと思います。  最後になりましたが、中曽根総理一つお聞きをして最後にさせていただきますが、これはINFのアラスカ配備問題について一つだけお聞きをして終わりにさせていただきます。  総理も指摘されましたように、日本は世界唯一の核被爆国でございます。その国の総理が、たとえ核均衡、それから将来核廃絶を目指すための方便として発言されたといわれましても、外国の地であるとはいえ、核配備を勧めるような発言は、これは最も慎むべきことではないかと思うわけであります。この発言は力には力をもって当たるという考え方に陥る危険性がございます。かつて日本はそうした考え方のもとに軍国主義への道を歩んだわけでありまして、それだけに慎重にも慎重を期していかねばならない問題であります。そうした意味総理の発言はまことに慎重を欠いた発言ではなかったかと思いますが、お答えをいただいて終わりにいたします。
  100. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 核廃絶を念願しているという点においてはどの方にも私は負けないつもりでおります。先ほど申し上げましたように、世界最初の唯一の被爆国である日本総理大臣でありますから、そのこともよくわきまえておるはずであります。  しかし、軍縮や軍備管理に関する話し合いになりますと、これは極めて冷徹な冷静な、しかも現実性のある話し合いにしなければ、単なる理想とか理念だけでは通用しない世界になっておるのです。我々は確かに皆さんと同じように、核を廃絶し、核という言葉すら使うのは嫌らしい感じがするのでありますが、しかし、現に存在していることだけはもう冷厳なる事実であって、この嫌らしい冷厳なる事実をどうして消していくか、なくしていくかということが政治の仕事になっておる。宗教家とかあるいは大学の先生とか、あるいはそのほかのそういうことに当たっておられる方々は、理想だけで徹底しておられるでしょうけれども、我々政治家になると、現実にそれを廃止し切る政策を出さなければ政治にはならないのであります。  そういう面から見まして、現在の平和がどうして維持されているか、軍縮がどういう方式で進められているかということを見ますと、やはり均衡と抑止という理論で行われておる。Aがあれば、それに準ずる、対応するものがあって、そうしてそれを同時にやめよう、そういう議論が行われているので、Aだけがあって片方がゼロという状態で軍縮は進んでいないのです。したがって、現実的にこれをやめさせようとすれば、ソ連もそれに応ずるような方策を現実的に出さなければ向こうはやめないのであります。シベリアに百置くということはどうしても我々は認められないことであります。何とかしてそれを阻止しよう、そういうことからいろいろ考えまして、そしてアメリカがソ連と交渉する場合に、ソ連の百をやめさせるためにどうしてもやむを得ない、そういう場合には交渉の切り札としてそういうものを持ってもよろしい、そういう意味のことを申し上げたので、私は、これは政治として成り立つ議論なのであって、その点はあなた方と若干考えが違うかもしれませんが、現に政府を担当しておる私といたしましては、私は間違っていないと確信する次第です。
  101. 坂口力

    ○坂口委員 わかりました。
  102. 砂田重民

    砂田委員長 これにて坂口君の質疑は終了いたしました。  次に、米沢隆君。
  103. 米沢隆

    米沢委員 私は、民社党・民主連合を代表いたしまして、当面する重要課題を中心にして、政府見解をただしてみたいと思います。  まず中曽根総理総理就任以来四年数カ月、あと数カ月を残してはおられますが、長い間御苦労さんでございました。総理は、総理に御就任以来「戦後政治の総決算」という問題をみずからの政治課題として課せられまして、いろいろと問題提起をし、そしてそれを政治日程の中に取り込んでこられました。その課題の中には、大方の皆さん方の賛同を得て実現したものもたくさんありますし、時には国民の皆さんの反撃や野党の反撃を受けて志半ばにあるというようなものもたくさんございます。とりわけ行財政改革、教育改革税制改革など、大方のところまだ未達成に終わろうとしておる課題でございまして、さぞかし心残りもあるだろうと拝察をいたします。  この際、中曽根政治を締めくくるに当たりまして、あなたがみずから課された「戦後政治の総決算」がどれだけ進展し、何が残されたか、残された課題の中で、特に何を次の政権に承継されようとしているのか、それぞれの課題につき、政治責任を明らかにしながら総括的な所見を求めたいと思います。
  104. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 私が「戦後政治の総決算」ということを申し上げましたのは、私は昭和二十二年、一九四七年第一回の国会から議席を持たせていただきまして、約四十数年にわたりまして戦後の日本議会政治に携わって、その功罪をともにしてきた一人でございます。そういう観点から見まして、戦前の日本と戦後の日本というものを冷厳に比較しながら、どこが戦前よりよくなったか、どこが戦前に足りないものが出てきたか、戦後の欠点とすべきものはどこにあるか、そういう点を自分なりに分析してみまして、そして一つには、明治以来の日本一つの体質というものがございます。社会の体質、行政の体質、政治家の体質、そういうものもございます。そういうものも踏まえまして、その全部の分析を行いました結果、こういう点はこういうふうに改めよう、こういういいところは残し、あるいは強化すべきである、そういうような考えに立ちまして政策を打ち出しました。  それは二つの大きな動脈みたいなもので、二つ申し上げれば、行政改革と国際国家ということで言えるだろうと思います。これが中曽根内閣の軸としてきた大きな二つの線、中心線でございます。行政改革と国際国家日本。そのほか財政改革の問題あるいは教育改革の問題あるいはがんの克服の問題等々のこともいろいろお世話になってまいりました。また、国際国家の問題につきましても、対外的な市場の問題とかあるいは日本の制度の改革の問題とか、そのほかさまざまな問題、あるいは安全保障の問題における基礎的観念というものを、やはり国民の目の前に我々の責任において提示して御協力をいただく。安全保障の問題というものは忘れられているけれども、意外に重要な問題であると私は認識しておるのでございます。  そういうようなことを申し上げまして、まだ道半ばでなすことも少なく甚だじくじたるものがございますが、必ずやこの道は間違っている道ではないと確信いたしておりまして、日本議会の力、行政府の力によって、私が念願してきたことが達成されますように、ひたすら念願してやまない次第でございます。     〔委員長退席、今井委員長代理着席〕
  105. 米沢隆

    米沢委員 さきの総理の所信表明の中で、特に残された課題として、税制改革、そして教育改革というものに言及されておるわけであります。しかし、残念ながら私どもが最大の関心を持っております行財政改革、この部分については、胸を張る部分には入っておりましたけれども、非常に大きな課題として残っておるという問題認識として所信表明の中で言及されていない。このことが私は非常に残念でなりませんでした。  御案内のとおり、確かにこれまで行財政改革も国鉄改革等を中心にしましてかなり進んだものもあります。しかし、大方のところは予算編成の際に歳入歳出の数字合わせのため経費削減という、そんな形で国民にツケを回す、あるいは地方にツケを回す、そういう形のものが大部分であったような気がしてならないわけでございます。そういう意味では本来の行政改革にメスは入っていない。  例えば補助金行政の問題。補助金の削減はありましたけれども、行政のあり方にはほとんどメスは入っておりません。あるいはまた中央省庁の再編合理化の問題、あるいは現業部門を除く地方出先機関の合理化の問題、あるいは特殊法人、公益法人の整理、地方分権の推進。特にこれは最近問題になっておりますが、縦割り行政の弊害、行政の効率化、能率化行政の推進等々、これからの課題はまさに山積しておると言っても過言ではないのでございます。したがって、所信で述べられたように、これからも「引き続き経費の節減合理化に努めるとともに」というような文句では包み切れない大事な課題が残っておる、私はこういうふうに思わなければならないと思います。  特に、行政改革が官僚機構の組織、運営、発想、こういうものにどの程度切り込んだのか甚だ疑問でございます。市場開放の問題にいたしましても、諸外国日本を見る目にいたしましても、批判の相当部分は日本の官僚機構の保守性のセクショナリズムに原因がある、こう考えるわけでございまして、私は、今おっしゃったような気持ちがあるならば、ぜひ所信表明の中で次の政権に堂々と承継していただく課題としてこの問題を取り上げていただきたかったと思うのでございますが、所見はいかがですか。
  106. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 その点は、おっしゃる点多々我々も共鳴しているものがございます。私は、行政改革は三代の内閣、十年の仕事である、そういうことを申し上げてきまして、今でもそう思っております。私の代におきまして切り口をつけたようなもので、二代、三代、これから出てくる方々が強力にこれを推進していかれるように希望してやまないし、我々もその線で協力していきたいと思う次第なのでございます。
  107. 米沢隆

    米沢委員 次は教育改革の問題でございますが、臨教審ができた当時の中曽根総理の意気込みに比べまして、少なくとも今日の段階まで進んできた教育改革というものの進捗状況は、私は、国民の期待を裏切るものであると言わざるを得ないのでございます。  三次にわたる答申を受けまして、政府はいろいろやってこられたと言われておりますけれども、この三年の間、審議過程を経て現在までいわゆる法律改正という形で提案されたのは大学審議会の設置法のみでございまして、これは継続審議、あとは政省令改正若干数と通知、通達、告示のみで終わっております。  今から八月に最終答申が出るということでございますが、総理が所信の中で、近く出される最終答申をも踏まえ、二十一世紀を担う世代にふさわしい教育が実現できるよう、政府はその改革に全力を挙げると述べられましたけれども、今日までの文部行政の取り組みを見る限り、総理の趣旨が生かされるという確証を私は持つことができません。この前の中教審あたりもかなり立派な答申があるのでございますが、残念ながらほとんどそれは棚上げされておるという事実を見るにつけ、本当にこの最終答申の実施というものができるか否か。  私はこの際、行政改革が、新行革審等でも見られますように行革審をつくり、そしてプッシュ機構をつくっておられると同じように、この教育改革についても、最終答申が出た際にやはり教育改革の大綱をつくり、そしてそれを推進していく体制を強固につくらない限り、教育改革はまたインベインという感じになるんじゃないかと思うのでございますが、その点いかがですか。
  108. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 臨教審は今最終答申に向けて懸命な努力をしておられる最中でございまして、途中でとかくいろいろ批判することは避けたいと私は思っておりますし、今まで各委員が休みも返上して、合宿までしていろいろ御研さん願ったことにつきましては心から感謝と敬意を表する次第でございます。  いよいよ最終答申が出ましたら、教育体系全般を俯瞰いたしまして、教育の問題はやはり社会あるいは会社の人員採用、そういうもの全般を含めた整合性のある統一的体系のもとにやらなければ、それは成果も上がりませんし、ちぐはぐになるものであります。我々が念願しておる非常に大きな大事なポイントは、生涯学習という問題でもございます。生涯学習ともなりますと、これは半分以上は社会との関係も出てくるわけです。そういう意味におきまして、答申が全部出そろったところで全体を俯瞰しながら整合的な全体系というものを考えて、そしてそれを一歩一歩、今度は今まで答申いただいたものを分析し当てはめながら体系的に実践していく、これがやはり正しい態度であると思っておるのです。  ただ、今まで、当面の急務でありましたいじめであるとかあるいは共通一次テストであるとか、あるいはそのほかの諸問題、大学入試の問題にしても同様であります。これらは必ずしも法律を改正しなくてもできる部分がございまして、それらは応急にいろいろな処置もまたやってきたし、あるいは大学の当事者ともいろいろ協議して、大学自治においてやっている部分については、いろいろ大学当局としても御検討願いまして改革を進めてきたところです。大学の改革については、受験改革については受験のチャンスをふやすとか、いろいろそういう改革も行われて賛否両論沸き起こっておるところでございます。  ともかくしかし、今度は大学自体の改革をやらなければならぬという問題があるわけであります。そういう問題全般も含めまして、全体的な整合性のあるもので着実に実践していきたい、そう考えておる次第であります。
  109. 米沢隆

    米沢委員 私も、何も臨教審の仕事ぶりを批判しておるのではありません。いろいろ御苦労なさって最終答申にこぎつけた課題について、やはりまじめにそれを推進していく体制というものを、少なくとも次の政権を担う方々はまじめに体制を整えてほしい、こういう要望をしておるところでございます。  さて、今いみじくも言葉の中で大学改革とか大学入試とかそういう話が出ました。御案内のとおり、先般のいわゆる国立大学入試のABグループ分けであの混乱ぶりを見ておりますと、これが大学の人のやることか、こういう感じを持ったのは私だけではないと思うのでございます。少なくとも優秀な学生を取り入れたい、それはよくわかりますけれども、大学というところは、取り入れた学生を立派に勉強させてすばらしい人材として出すという、それが大学の機能ではないか、そのように思うわけでございます。そういう意味で、現在の国立大学等を見ておりますと、ややもしますと特権的な地位に安住して、人事の閉鎖性、それから硬直性から来る研究教育の水準を高めるという点に欠ける嫌いがあるのではないか、そういう気がしてなりません。  大学の教育、研究を活性化するためには、現在の国立大学の親方日の丸的な体質、すなわち文部省がいわば直営事業として設置しているために、画一的で没個性的な運営や事なかれ主義が横行している状態を改めなければならないと私は確信するのであります。そのために、教官の任期制の導入による人事の活性化、民間からの多様な資金を受け入れた第三セクター方式の大学など、画一的でない大学のあり方を、これはもう早急に私は検討し実現に移すべきだ、こう思うのでございますが、所信を伺いたい。
  110. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 入学試験の問題で非常に批判を受けたことは事実でございますが、この入学試験全体を見ます場合に、理工科系は非常に理想的にできておった。二段階選抜ということも、その趣旨は生かされた。ABグループ分けも順当にいった。ただ問題は、法学部につきましては非常に曲がった、一方的でABの振り分けがうまくいかなかった、こういうところがございまして、これは大学にしばしば反省を求めておるところでございまして、引き続き求めよう、この改正に努力しようとしております。  それから大学の閉鎖性、これは私も確かにそう感じておりまして、それを改めるために大学の評価制、教授の評価制、これを導入いたしたい、そして人事の交流も流動的にいたしたいということを思いまして、大学審議会を設置し、まずそこで御意見聞きたいと思って法案を提出しておるところでございますが、しかし、それとは別にいたしまして、並行的に今大学の中の活性化を図るために、例えば共同研究システムというものをつくりまして、これによりまして民間との要するに接触が非常にふえてまいりましたし、また受託研究という制度もつくりまして、これによって社会と、あるいは実用的な技術の開発に資してきた。それから寄附講座制をいよいよ発足さす。そういうことで活性化には努力いたしておりますけれども、根本はやはりおっしゃるように人事の交流にあると思っておりまして、そのことを一刻も早く実現していきたいために大学審議会の設置のお願いをしておるわけでございまして、どうぞ御協力のほどお願い申し上げたいと存じます。
  111. 米沢隆

    米沢委員 大学の改革はまさに急を要する課題であると思いますので、ぜひ御努力を賜りたいと思います。  次に、中曽根外交についてちょっと触れてみたいと思います。  さきの所信表明演説の中では、総理は驚くべきスペースを割いてベネチア・サミットの成果を誇られました。あれを聞いておりまして、これが中曽根外交の真骨頂だというように胸を張っておられるような印象を受けたものでございます。そして総理らしく、国際国家日本への脱皮を訴えて締めくくられたわけでございます。  確かに総理は国際会議場ではさっそうとしておられますし、あるいは記者会見等では弁舌さわやかに、ちゃんと言うべきことを言うという態度を続けておられましたので、私は日本外交の押し出しはよくなった、これは国民の皆さんはひとしく認めるところではないかと思うのでございます。しかし、振り返ってみまして、我が国が中曽根さんが総理になる五年前と比べてどれほど外交成果によって国際社会での地歩を固められたのか、どれだけ対外国との関係が、友好状態が維持そして増進されたのかという観点から見ますと、確かに世の中はそのまま一定になっておりませんので比較はしようがないと言われればそれまででございますが、私は疑問なしとしないのでございます。  例えば対外関係等を見てまいりますと、最も重要である日米関係をとってみますと、今日は御承知のとおり戦後最悪の状態と言われるに至っておりますし、時がたてばロン・ヤス関係も終わって両国で新しい指導者ができる。そして、新しい指導者が現在の厳しいこの日米関係を克服して新しい信頼関係をいつ築くことができるであろうかということを考えますと、私は非常に寂しい気もするのでございます。また、日中関係も極めて不安定なものになってきております。特に胡耀邦氏の失脚以来、中国側の日本に対する風当たりの強さは異常でさえございます。考えてみれば、この五年間はいつも日中関係では荒波が立っていたような感じがしてなりません。また、日ソ関係も行き詰まったままでございます。あるいは欧州もASEAN諸国も、日本との経済摩擦で不満たらたらであります。韓国を初めとするNICSの対日本満もかなりうっせきした状態にあることは否めない事実でございましょう。  こういう状態を見ましたときに、いかにサミットの成果を誇られても、今日までの中曽根外交成果はいずこに出ておるのであろうか、そういう気がいたしますので、ぜひ中曽根外交を総括してほしいと思います。
  112. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 外交的にもそう大したことはやれなかったと思いますが、ただ、私が懸命に努力したと思いますことは、日本経済力が急上昇いたしまして、そして日本が最大の債権国にのし上がった、そして世界最大あるいは史上最大と言われるくらいの黒字をここに抱えた、そういうふうに日本立場が急上昇して、そして我々が考えもしなかったような大きな経済力を持った日本に成長してきますと、必ず摩擦熱が起こるのは当然なのでございます。その摩擦熱を最大限に起こさないように努力しつつ、日本のこの経済力なり国際的な役割というものを正しい方向に伸ばしていくというのが私の仕事であったと思うのです。  これが昔のように、あるいは黒字もそうない、あるいは経済力もさほどない、そういう日本であったならば、あるいは波静かであったかもしれません。しかし、そうじゃなくして、これだけ強大な大きな国家にのし上がってきた。経済的のみならず、科学技術においてもアメリカと張り合うぐらいのものが出てきた。こういうことが出てくると周りが緊張するのは当然のことでございましょう。そういう中でできるだけ摩擦を起こさないで、日本に対する理解を深めつつ渉外関係をうまくとりなしていくというのは、やはり政府の大きな責任でございます。そういう今まで予想もしなかったような立場日本が急上昇しつつありますので、その間懸命の努力をして、後追いの部分もございましたけれども、摩擦をできるだけ少なくし、そして日本が名誉ある地位を占める国際社会にしていきたい、そう思いまして努力をいたしましたが、まだまだやるべきことはたくさんあると考えております。
  113. 米沢隆

    米沢委員 中曽根外交成果につきましては、後世の歴史の評価にまたねばならないと思いますので、深入りはよしたいと思います。  特に、日米関係の中で現在ホットな争いになっておりますのが東芝機械の問題でございます。御案内のとおり六月三十日、アメリカの上院は、審議中の包括通商法案の修正条項の形で、ココム違反をした外国企業に対する制裁条項を圧倒的多数で可決をいたしました。そして、これが今日の段階ではますますエスカレートしておることは御案内のとおりでございまして、田村通産大臣がきょうアメリカに行かれる。大変御苦労さまでございます。しかし、こういう事態を見ておりますと、一体これがどこまでエスカレートしていくのだろうかという危惧の念が広がるばかりでございますが、政府としてはこの制裁措置等が今後どのように展開していくと見通しを持っておられるのか、これが第一点。  第二点でございますが、これは昨日も触れられましたし先ほど坂口先生の方も触れられましたが、どうもこの事件をアメリカの方は安全保障の観点からかなり深刻な問題として問題を提起しておるという、これが一つ大きな問題だろうと私は思うのでございます。確かに東芝機械がココム違反をやったのでございますから、当事者についてはいわゆるはっきりとした厳正な処置をとることが必要でありましょうし、これからこのようなことが起こらないように防止対策を打つのは当然のことでございます。しかし、これはただ単にココムだけの問題ではなくて、アメリカの方が安全保障との関連で議論を始めますと、私は、下手をしますと我々の対応の仕方いかんによってまた相当深刻な事態に発展していくのではないか、そういう危惧の念を持つのでございます。  そこで、新聞なんかを見ておりますと、例えば東芝機械のNC機械とソ連の原潜の低音化は直接の因果関係はない、西欧側の資料で判断すると稼働前野に配備されているというように因果関係はないという議論もあれば、あるいは海上自衛隊の潜水艦とソ連艦のスクリュー音は酷似しており、これはどちらも東芝機械の製品だ、ココム違反の消せぬ証拠だというような報道もなされております。私は、この際このような因果関係は、確かに軍事機密に属するものもございますので非常に難しい面はあるかもしれませんけれども、この因果関係というもののあるなしで対応の仕方は全然違ってくると思うのですね。今や、何かソ連のスクリュー音が消えてそれを追尾するための損害が非常に大きい、その損害まで補償しろというような法案が出てくる始末を見ておりますと、私は、この対応をはっきり政府としてもしない限り大変なことになるのじゃないか、こう思うのでございます。  そういう意味では、ココムの問題で通産大臣は訪米をされますけれども、もし安全保障関係で問題が本当に因果関係ありとして、また彼らが言うことも是だという議論になりますと、私は、通産大臣ではなくて外務大臣とか防衛庁長官とか総理大臣とか、そういう方が行ってアメリカとの和解、打開の話をするのが当然ではないか、そう思うのですが、いかがですか。
  114. 倉成正

    ○倉成国務大臣 お答えいたします。  ただいま米沢議員がお話しになりましたように、上院ではガーン修正法案が六月三十日に九十二対五で通過いたしております。したがいまして、東芝のココム違反に対する米議会の空気は極めて厳しいものがございまして、我が政府といたしましてもこの問題に対して、情勢は予断を許さない状況にあると思います。したがって、この種の事件の再発防止のための体制強化につき政府といたしましても引き続き真剣な検討を行っていく所存でありまして、また、本事件が日米関係全体に悪影響を与えたりあるいは保護主義の傾向を助長することにならぬよう努力をするつもりでございます。この点について田村通産大臣が訪米される予定でございます。  なお、第二点の東芝機械事件とソ連の潜水艦の静粛の因果関係の問題でございますが、本件の不正輸出事件とソ連潜水艦との因果関係については米側より種々説明を受けております。その内容については事柄の性質上答弁を差し控えたいと思いますが、我々としては、本件機械の性能、使用目的及びその他の情報から総合的に判断すれば、両者の間に一定の因果関係は有するないし存在し得ると考えておる次第でございます。
  115. 米沢隆

    米沢委員 私は、例えば日立製作所とか三菱電機がIBMの事件を起こしました。あるいはまた、さきには富士通がフェアチャイルド買収問題等を起こしました。どうもあれを見ておりますと、おどりで捕まえたり、第三国ルートの議論をいかにも日本がダイレクトにやっておるように追及してこられたり、何か不本意なところもあるような気がしてなりません。特に先端技術それから軍事技術に関連するものにつきましては、どうも日本が出過ぎておるというところに不快感を持っておるのがアメリカだと思います。そういう意味で今回の事件も、先ほど申しましたように因果関係そのものは、難しいことかもしれませんけれども、はっきりとつかんでそれなりの対応をするということが毅然とした日本外交のあり方ではないか、このことを注文しておきたいと思います。  それから、次はベネチア・サミットに関連いたしまして質問をしたいと思います。  先般の所信表明演説で中曽根総理は「東西関係が重要な局面を迎え、世界経済が大きな困難に直面している今日、西側主要国の首脳が一堂に会し、西側の結束と政策協調の重要性を再確認した意義は大きい」、私もまさに総括的にはこの所見に賛意を表します。特に、今米ソ関係が微妙な段階にある状況でございますが、政治声明の中で、ソ連の政策のすべての側面に対応するに当たって依然慎重な警戒を維持しなければならぬ、はっきりと言われたことはまさに同感でございます。  しかし、ここで述べられた諸課題につき、それでは我が国がここで約束したことを国際国家日本としてどう果たしていけるのかという観点からいろいろな約束事を見ておりますと、いろんな問題があるような気がしてなりません。  例えば、ペルシャ湾の自由航行の問題であります。  総理も所信表明で述べられましたように、ペルシャ湾経由の原油に輸入原油の約五五%を依存していることからも、我が国がこのペルシャ湾の自由航行について一番大きな役目を果たさねばならぬということは当然のことだろうと思います。そこで、政治声明では、この自由航行確保の目標を効果的に追求するための方法につき引き続き協議していくことを誓うとだけありますけれども、一体日本に何ができるのかということでございます。  総理は、軍事的な役割は果たせないと明言されましたが、としますと、確かに日本はイラン、イラク双方にパイプがあるということで紛争解決に多少の外交努力はできるでありましょうし、あるいはまた国連安全保障理事会の紛争終結のための新たな決議案づくり等に積極的に参画することはできるかもしれませんけれども、しかし、関係国が何かをやろうということを決めたならば、ただ応分の経済的負担はするだけの話になるのではないでしょうか。国際国家日本はペルシャ湾の自由航行は万事金で片づけるということになりかねない問題だろうと思うのでございます。  そこで、私は、政府のペルシャ湾自由航行確保に関する考え方を明らかにしていただきたいと同時に、万一我が国の船舶が攻撃を受けた場合に、一体今日本は何ができるのか、特に潜在的には常に危機の中にあったわけでございますが、日本はそのような危機管理をどういう対策を練ってこられたのか、所見を求めたいと思うのでございます。
  116. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 今委員からお述べになりましたように、このペルシャ湾の事態というものを運輸当局としては極めて深刻に受けとめております。そして、現在既に二百五十三隻の船が被弾をいたしました。その中において日本籍船十一隻が被害を受けております。  私どもが考えて今日までやってまいりましたことは、まず航行中止海域を設定をいたすことでありまして、昭和五十六年の二月以降、北緯二十九度三十分以北への日本船の配船を中止してまいりました。また、五十九年の二月以降、イラン随一の原油積み出し港でありますカーグ島に日本船の配船を原則的に中止をいたしました。しかし、なおかつ本年五月の秀邦丸の被弾事件以降、北緯二十八度線以北への日本船の配船を見合わせておる状況であります。  また、湾内の情勢に応じて夜間航行海域を適宜設定をし、同時に、湾内情勢の把握及び迅速な伝達並びに緊急時の即時対応のために通信設備を充実し連絡網を確立するなど通信連絡体制を整備、またペルシャ湾南部の航行、これはイランが宣言をいたしております航行制限区域からできるだけ離れて航行するという方針をとります。また、日本籍船における日章旗の掲揚といったものをとってまいりました。  しかし、実は私どもにとりまして、本年一月のコスモジュピターの被弾の際にはまだ多少の気分的な救いがございました。夜間でありましただけに日本国旗が視認できなかったのではないか、あるいは船腹に書いてあります日の丸が見えなかったのではないか、淡い期待を私どもはまだ持っておりました。しかし、秀邦丸の襲撃を受けました時点からそのような甘い期待は一切とれなくなりまして、現在北緯二十八度以北への配船を見合わせるという状態になっております。  そして海運労使は、我々も相談をいたしながら、それぞれの企業またそれぞれの船としては最善の努力を尽くして安全対策を講じておりますが、到底個々の船会社あるいはそれぞれの船で警戒をし切れる情勢では既にございません。しかも、本日現在でありましてもペルシャ湾内には十七隻の日本関係の船舶が在泊をいたしております。  これだけの状態でありますだけに、我々といたしましては海運労使には最善の努力を指示しながら、外交当局に対しなおかつ最善の努力を要請し続けておるというのが現状でありまして、我々は本当にわらにもすがる思いでこの情勢を見守っておるところであります。
  117. 米沢隆

    米沢委員 今までの対応を今るる述べられましたが、ますます深刻な状況になりつつある。一体、これ、どうするのですか、総理
  118. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 我が国は独特の平和憲法を持っておりまして、この平和憲法を遵守しつつ、我が国の船舶の安全あるいはそのほかの要点を行わなければなりません。そういうことを政府は至上命令として今やっておるところでございます。  この自由世界の諸国も、日本とドイツがある限度しか物がやれないということはよく了承いたしております。その範囲内において我々が最大限努力するということは、外交的な努力であります。その外交的努力の一環として、イラン、イラク双方と対話を持てるという立場を今も維持しておるわけです。サミット構成国でイラン、イラク両方と対話を持てるという国はほかにはございません。しかも、あのサミットの後に外務大臣がイランへ行きまして、直接かなり濃密な話を率直にやってきておるのであります。  そして、ポイントはイラン・イラク戦争を早くいかにやめさせるかということです。第二は、安全航行を行うために船舶攻撃をやめるということでございます。船舶攻撃をやめるという場合においても、日本船については我が国としては重大な関心を持っておるので絶対これはやめてもらいたい、そういうこともまた言っておるわけでございます。そういうようなことが言えるということは、イランとイラクが我が国に若干の好意を持ち、そして対話を維持しているからそれができるのでありまして、ほかの国々と日本のこの二国に対する立場をお考えいただけば明らかに違っておるし、私はこの方法が賢明であると思っておるのです。こういう立場を維持し、また持続しつつ対話を強化していくという日本独特の立場というものは、我々の外交努力によって築き上げてきたものでございます。そういう意味において、この力は決してそう劣るものではない、むしろ事態が難しくなればなるほど重大な意味を持ってくる、そういうことであると思っておるのでございます。  国連安全保障理事会においてこの問題の審議がいろいろな角度から今行われております。その国連安全保障理事会にたまたま、偶然ですけれども、アメリカやフランスやあるいはソ連や、かつて第二次大戦の連合国で戦勝国であった国と、それから日本、イタリー、ドイツという敗戦国であった国が同じ安全保障理事会に偶然全員入っておるというのが今の現状でございます。全くこれは偶然であります。しかし、これらの国は力を持っている国だと私は思うのです。これらの力を持っている国が総力を合わせて、そしてイラン・イラク戦争をやめさせる方向に今こそ力を注ぐべきときにも来ていると思います。そういう意味におきましても、我々は関係、協力を緊密にいたしまして、平和が訪れるように今後とも努力していきたいと考えておる次第でございます。
  119. 米沢隆

    米沢委員 時間は刻々と過ぎておりまして、まだ質問する事項がたくさんあるのでございますが、同じような、サミットで約束されたことで、テロリズムの防圧という問題があります。  昨年五月の東京サミットで採択されました「国際テロリズムに関する声明」は、「テロリズムにはいかなる正当化の余地もない。それは人間の生命、自由及び尊厳の価値を無視し、卑劣な手段を用いることによって蔓延していくものである。それに対しては仮借なくかつ妥協することなく闘わねばならない。」と国際的な常識がだんだんと書かれてありますが、日本国家としてのテロを実施した国、リビアを名指しすることに大変ちゅうちょされたと言われております。御承知のとおり、かつてダッカのハイジャック事件で、犯人から金を要求された当時の日本政府は、多額の身の代金を出して犯人を国際社会に放置してしまいました。今回、ベネチアサミットで日本は他の国々と一緒に、「テロリストの捜査、逮捕及び訴追についての協力を増大することを誓約する。」と約束をされたわけでありますが、具体的には日本は一体とういうことがこれまたできるのでございましょうか。東京サミット、ベネチア・サミットでテロ防止に関する国際的約束をした日本は、もしダッカ事件と同じようなテロの脅迫を受けた場合、今どのような態度がとれるのか、またぞろ何とか金を支払って急場だけは切り抜けようという以外に方法があるのであろうかということを私は感じておるのでございます。  特に私が問題にしたいのは、総理は国際国家日本、国際国家日本と言われますけれども、今まで指摘してきましたように、我が国が国際的責任を果たそうとすれば、それは正直なところ、ほとんどが経済面でしか果たせないという現実的な枠組みの中では、我が国が一人前に他の先進国並みに約束をしたり国際国家として振る舞おうとすることに大変無理が出てきておるということを総理は気づいておられるのではないかということでございます。それが総理の戦後政治の総決算の最大の課題であったと私たちは見たのでございますが、今回の所信表明演説からはそれが抜けております。変心をされたのでございましょうか。もしそうでないとするならば、平和国家としての基本的な立場を踏まえて、先ほどおっしゃいましたように憲法の枠内での国際国家の行動はいかにあるべきかというところを最後に所信表明で堂々と述べられて、やはり国民の皆さんに国際国家日本の勧めをしてほしかったと私は思うのでございます。
  120. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 テロリズムに関する声明も今回ベネチアサミットで行われたわけで、この原則は一貫して東京サミットの声明と変わっておりません。日本の考えも変わっておりません。原則は、テロとは妥協しない、特に国家権力を背景にした国家的な間接テロというものについては妥協しない、そして各国が主権と国際法の範囲内において最善の処置をとる、そういうことで具体的に各国がとるいろいろな例を挙げておるわけであります。日本はその精神に従って今後とも実行していくつもりでございます。  いろいろなそういう問題が起きた場合にどういう対処をするかということは、その場の起きたときの情勢に従いまして危機管理としてこれをいろいろ処理するというふうに、国家としての態勢はいろいろ検討もし、整えておる次第であります。
  121. 米沢隆

    米沢委員 私が申し上げたかったのは、国際国家日本と言いましてもそれなりの制約があって、国際的な世界の中で国際国家日本として一人前の約束をすることが実際はいろいろな制約の上で余りできない、このことを他の先進国の皆さん方が本当に理解しておるのか、事態に直面した場合にはそういう理解ではなくて、おれたちと同じような格好でもっと責任を果たせという議論の方が多いのではないか。そのあたりにどういう配慮がなされるべきかということを説いてほしかったと私は思うのでございます。  同時にまた、国際国家日本国民も意識改革をしろとおっしゃいました。確かにそのとおりであろうと思いますが、よく言われますように、今GNP一人当たり世界一になったとか賃金水準が世界一になったといっても、国民は実感として受けとめていない。そういう状態のままにしておいて国民に意識改革をせよと言われても、これは大変無理な話であろう、もっとそこらは政策努力をしてしかるべきであっただろう、こういうことを申し述べたかったわけでございます。  さて、時間もありませんので順序を変更いたしまして、税制改革について質問してみたいと思います。  税制改革の話をする前に、先般本会議場の答弁で、自民党の伊東政調会長と中曽根首相とのやりとりがございました。いわゆる理想の宰想像とは何か。これに答えて総理は、理想の宰想像は、国境を越えた人類愛を持たねばならぬ、あふれるばかりの同胞愛と強い愛国心が必要だ、見識と人材活用の能力がある、千万人といえども我行かんの強固な意志と実行力を持つ、こういうことを言われましたが、うそをつかないというのが入っておりません。あなた自身が理想的宰想像に入らなくなるからそういう議論をしなかったのでございましょうか。昔から、国民を欺瞞して無告の民を虐げないというのは宰相の最大の責務だと思うのでございますが。
  122. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 それはもう最低限の、人間としての要件でありますから、言う必要もないし、私はうそをついた覚えはございません。税制について野党の皆さんがいろいろおっしゃいました。またダブル選挙についても、野党の皆さんが中曽根はうそつきだ云々とおっしゃいました。しかし、後からゆっくり皆さんもお考えになっていただくと、なるほど中曽根はうそをついたのではないと、はっきりおわかりになっていただけると思います。
  123. 米沢隆

    米沢委員 うそをつかないといううそを言う。まさにダブル選挙の話にいたしましても、大型間接税導入の話にいたしましても、これは主体的に私はうそを言わないじゃなくて、客観的にうそと感じられたらこれはうそだと私は思うのですね。  まあその話は茶番劇でございますからやめますが、まずこの中曽根税制改革、先ほど申しましたように戦後政治の総決算の中の大きな課題でありましたが、結局は挫折をいたしました。この挫折の理由を総理はどういうふうに考えておられますか。  同時にまた、挫折の反省をどのように生かしてこれからの税制改革の展望を眺めておられるか、所見を求めたいと思います。
  124. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 やはり税制の問題は、時間をかけて国民の皆さんに御理解を願う、そういう手順が非常に必要であると思いました。  これからどうするかといえば、所信表明でも申し上げましたように、周到なる配慮をもってこの問題に対処する、そう申し上げたとおりです。
  125. 米沢隆

    米沢委員 周到な配慮とはどういうことですか。
  126. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 いろいろな方面に目配りをする、そういうことであります。
  127. 米沢隆

    米沢委員 私は、中曽根税制改革というのはみずからつぶしてしまった、そう思うのですね。中曽根総理がみずからつぶした。そういう意味で、非常に税制改革、あのような形で一とんざしておるわけでございますが、ともかく売上税関連法案は廃案となって今日に来ておりまして、御承知のとおり今議長裁定を受けまして与野党の税制改革協議が開かれております。まずその場では六十二年度の減税というものから議論してみようではないか、こういうことで今始まっておるのでございますが、御承知のとおり、規模それから制度改革の中身、財源等についていろいろ対立があることは御案内のとおりでございます。  そこで、まず第一に規模の問題でございますが、我々は二兆円規模のものが国際公約としては当然実施されねばならぬ、こう言っておるのでございますが、自民党側の方は一兆円を下回らぬと、こういうことで今対立いたしております。  そこで私は、中曽根総理にお聞かせいただきたいのでございますが、ちょうど予算がまだ成立していない段階で訪米されて、そして予算が成立したならば緊急経済対策を早急に講じて補正予算を組む、こういう話をされました。その中に減税の先行実施というのが入っておったと思うのですね。当時はまだ予算が通っておりませんから、まだ裏づけの売上税法案も生きて、議論の対象になっておったわけでございまして、そのときは所得税減税が約一兆円あった。そしてその予算が済んだら緊急経済対策をつくって一兆円ぐらい上積みするんだという話なもんですから、トータル二兆円だと我々は思ったのですね。ところが、一挙に緊急経済対策になりますと一兆円にしりすぼみをした。なぜ一兆円しかないのか、なぜ一兆円しか規模を出せないのか、このことをお答えしてほしい。
  128. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 先ほどもちょっとお答えを申し上げておったところでございますが、六十二年度所得税の減税が行われますと、それは一遍で終わるということは考えられないことでございますから、その減税は今後とも続くと考えなければなりません。そういたしますと、仮に今年度の税源は何かで探し得るといたしましても、将来にわたっては恒久的な税源を探さなければならないということになりまして、どうしてもこれはやはり私どもの感じでは根本的な税制改革の一環として考えるしかないというふうに思っておるわけでございます。そういうことから考えますと、おのずから今年度の減税の幅にもどうも限界がある、こういうことでございます。
  129. 米沢隆

    米沢委員 その議論は財源論として後で議論しようと思いますが、例えば一兆円程度ということになりますと、今政府がマル優改組法で対抗しよう、それであがなおう、こういう話をしておられるのでございますが、例えば一兆円ぐらいの減税をしますと、大体五百万ぐらいの年収の方で三万五、六千円の減税にしかなりませんね。その五百万ぐらいの年収の方が四百万か五百万ぐらいのマル優の貯金を持っておるとするならば、それの利子に二〇%の分離課税をかけますとやはり三万か四万ぐらい取られるのでございまして、一兆円ぐらいの規模のものならまたぞろ減税どころか同じじゃないか、増税ではないかという議論が始まって、この前の税制改革の協議と同じようなものになるのじゃないかと思うのですが、どうですか。
  130. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 どうもそこらになりますと、税制改革議会でいろいろ御検討でありますので、もう少し推移を見守って慎重にしておらぬとならないという感じを私どもは持っておりますが、まさにその辺のところはやはり一つ考えておかなければならない問題であろうというふうに思っております。
  131. 米沢隆

    米沢委員 大事なところになると税制改革議会の結論を待つ、それは真摯な態度のように見えますが、例えば新聞なんかはまさに「大蔵省首脳語る」で、新聞に減税の話がいろいろと書かれておりますね。例えば自民党が一兆円を下回らない、我々は二兆円ということで議論しておりますが、もう既に新聞報道によりますと「減税三兆円に拡大」とか「六十二・六十三年度大蔵・自治方針」「「所得」(六十二年度)三千億円増」。だからこの場合には六十二年度は一兆三千億、そして「二年間の減税額を当初案の二兆七千億円から三兆円強に拡大し、このうち、六十二年度の所得税減税(当初案一兆百八十億円)の上積みを三千億円程度とする」あるいは「サラリーマンの約八割を占める年収五百万円以下の層の所得税率を、当初案の二段階(一〇%、一五%)から最低税率(一〇%)に一本化するとしており、」というふうに大蔵首脳が語っておるわけですね。あるいはまた、所得税減税をもう十月分から、十月一日から所得税減税をやっていただくようになっておりますね、これは。そして一月から九月分は年末調整だ。それから七月の十一日、先般の話になりますと、本格減税は六十四年度以降にずれる。六十二年、六十三年は暫定でやる。だから一年目は約一兆三千億、二年目は地方税の分を約五千億、それから売上税等新聞接税の段取りができたら本格的な減税を、こういうふうにして新聞は常にいろいろな議論を書いておりまして、くしくも似ておるのですね。特に読売新聞が詳しい。いろいろと想像にかたくないのでございますが、こういう報道に接しますと税制改革議会というのは一体何だろうか、もう既に決まったことをただ後で認知するような議論をさせられておるのだろうかというむなしさも感じるのですが、大蔵大臣、これはどういうことなんですか。これは本当ですか。
  132. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 私もよくそういう報道を読みますが、子細に検討しますとかなり報道自身があれこれ違っておりまして、このごろはもう私ども特に静かにしておりますので、私どもはそういうことを申したこともございません。
  133. 米沢隆

    米沢委員 本当に火のないところに煙は立たぬと言いますが、何らかの形でやきもきしながらこういう話を記者団にされておる人がおるんじゃないか、私はそう思いますね。もしこれは全然知りません、間違いですとおっしゃるなら、もしここに書いてあるようになったらこれはどうなるのですか。これはまさに正鵠を得た、当を得た何か中身が書いてあるような気がしてなりません。  そこで、財源論の、制度改正の話にちょっと触れてみたいと思うのでございますが、我々も今度減税を増税なしの自主財源でやるといたしましても、税制改革の一環でやるべきだ、こう思っております。しかしながら、その場合の制度改革というものは、この前旧政府案で所得税法案等が出ましたが、あの中身等を見ておりましてもやはり物足りないところがございます。例えば百二十万から二百万ぐらいの課税所得の皆さん方は前の、現在よりも逆転するというような中身があったり、実額控除あたりはもう全然問題にならないですね。使う人はほとんどいないだろうと思いますね。あるいはまた、中高年齢層に重点といいましても、累進税率あたりを平均的に削り込みますと、中高年齢層というそこの層に重点的に当たらないという嫌いがありますね。そういう意味で我我は扶養控除あたりを上げたらどうかとか、あるいは今政策フォーラムあたりが出しておりますように消失控除あたりを入れて、高額所得者がたくさんの減税になるのは計算上当然のことでございますが、そこらをちょっと遠慮してもらって、そのかわり控除額を年収が多くなるに従って少しずつ削っていくというような発想でございますが、そのような制度改正について、やはり今度の減税についても大蔵省としては対応する用意があるのかどうか。あるいは、もしあるとすれば、現在の所得税改正の、制度改正の中身等についてどういう議論が今行われておるのか、大蔵大臣の所見を求めたい。
  134. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 前国会で御提案いたしました政府案について寄せられました御批判は、今米沢委員の言われましたようなことに関してでございました。これは結局、累進構造を簡素化しようということを考えましたために、一〇%、次の税率は一五%、こういうふうに簡素化したいと考えましたことは御承知のとおりでございますが、それによりまして現在途中にございます中間の税率、各駅停車みたいなことでございますが、それを飛ばしてしまったことになります。そうしますと、そこらあたりに減税を受ける度合いが大きいところとそれほど大きくないところとが生ずる。これは簡素化をいたしますと結局は避けられない。  ただ、その限度を余り大きくしない方法はないかといったようなことを前回の国会におけるいろいろな御議論の中から私ども反省はいたしております。おりますが、それはしかし、もとに戻りますが、税制改革議会のいろいろ御検討にまつことであって、ただいま私どもが何かの案を本格的に考え始める段階ではないというふうに思っております。
  135. 米沢隆

    米沢委員 考える段階ではなくて、既にこの場合、この場合、この場合といろいろ計算して事務当局はいろいろな試算を重ねておられるのでしょう。そういう研究をしないと実際は大蔵省の役目は勤まらぬのでございます。  それから、財源の問題でこれまた対立しておるのでございますが、六十二年度減税については先行減税、先行実施だということで、我々は約二兆円の規模の減税を自前の財源で調達できるではないか、こう言っておりますが、自民党さんの方は、減税先行の原資については政府に検討させる、しかし、将来像として今度の減税額と大体似たような恒久財源が姿が見えない限りどうも納得できない、こういう話で対立しておるのですね。  そこで、結局私どもも、何も今度減税したものが、来年からもうそれは一ことし減税したものは確かに自前の財源で調達できたとしても、来年からはその分の金が要るというのはよくわかっていますね、ばかじゃありませんから。ですから、恒久財源については堂々と議論しようではないか、せめて今度の臨時国会だけは減税法案を通して、引き続き恒久財源について来年度に間に合うように議論しよう、こう言っておるのですが、だめだ、やはりマル優制度を入れなければならぬ。マル優制度そのものも、十月実施から一月実施になって、もう四月以降で結構ですわ。あるいはまたマル優制度そのもの、この前の旧政府案にちょっと手を加えてもいいような話があるのですが、なぜそんなにマル優制度の法律案を今のこの臨時国会で出さなければならぬのでしょうか。  皆さんの言われる約一兆円の減税をされるにいたしましても、十月から実施しても、マル優制度が政府案どおりになったとしても、大体四百五十億くらいしかない、一月実施になったら二百五十億くらいしかない、一兆円のごくごく一部なんですね。そうであるにもかかわらず、なぜマル優法案を出さないと、マル優法案とセットでないと減税の議論ができないのか、非常に我々は不思議でたまらぬのでございますが、なぜマル優法案をそんなに急がれるのか、中曽根総理見解を聞いておきたいと思います。
  136. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 今年度の減税が将来に向かって税制改革の一環になるという点まではお認めいただいておることといたしますと、それであれば、今年度の減税を構想いたしますときに、それが将来どのように展開するかというところまで構想しておかなければならないのは当然であろうと思います。  そういたしますと、その際の財源はどうなるのか。これはお疑いを申し上げるのでは決してございませんが、九月になりますと六十三年度の予算編成を本格的に考えてまいらなければなりませんために、来年度に、今年度の減税がどのように展開するか、そのためにどのぐらいの財源が要るかということはもうその段階で私ども考え始めなければならないことでございますので、それは後になって考えてやると仰せられましても、余りおくれますと、どうも何ともやりようがないということになりまして、そこのところを私ども申し上げておるわけであります。  なお、マル優のことは、それはある意味で将来に向かっての財源になることは決して否定いたしませんけれども、けさほども申し上げておりましたように、マル優という制度自身に私どもは実は疑問を持っている。そういうことが今本当にそのとおり必要なのであろうか、二百八十兆というような元本から生まれる所得が本当に免税でいいのだろうか、それはかえって不公正ではないか、資産所得でございますから、勤労所得の犠牲において免税を受けているのではないか等々のいろいろの疑問を持っておりますから、そこで、社会的な保護を必要とせられる方々には新しい制度を考えますが、従来のマル優というものはこの際やめさせていただきたいというのがこれが提唱の根拠でございまして、それが財源になるということを決して否定いたしませんけれども、それ自身の意味合いがあることを御理解いただきたいと思います。
  137. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 やはり長期にわたって減税をやるという場合には、これに見合う恒久財源をぜひとも確保しておかなければならぬ、もう一つは、経済摩擦を解消して国際批判に耐え得る税体系に早く改革しなければならぬ、こういうことです。
  138. 米沢隆

    米沢委員 利子課税の問題の是非については後で触れたいと思いますが、今大蔵大臣が、例えば二百八十兆ぐらいの預貯金の利子に果たして税金がかからないことがいいものかどうか、そうおっしゃるならば、土地の譲渡益、株の売買益、膨大な財テクブームで今沸き上がっておるようなものに全然税金をかけないでいいものだろうか、そういうことも一緒に議論してもらわなければ困るんですね。
  139. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは、お言葉を返すようですけれども、土地の譲渡益、株のキャピタルゲイン等々は制度としては課税をいたすことになっておって、行政上できる範囲でそれを広げていっておるのでありまして、マル優の場合は制度上課税がないということになっておるわけです。
  140. 米沢隆

    米沢委員 そこらが抜本改正を言われるならば、まさに抜本的にメスを入れるということが今度の税制改革の私は主眼だと思うのですね。そうでなければ、やりやすいところからやるというだけの税制改革にすぎない。これは、また後で議論もいたしましょう。  そこで、今このマル優制度そのものに何かこの前出した政府案よりもいい方向に手かげん加えてもいいよというような話が時々首脳から出るのでございますが、そういう全体像でも持っておられますか。
  141. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 これも先ほどのことと同じでございまして、私どもはここのところもうそういうことは一切公に申さない、申すことは不謹慎であるというふうに考えております。
  142. 米沢隆

    米沢委員 持たないとか考えない。にもかかわらずそのような話がひとり歩きする、大変不思議な世界だと思います。  そこで、次の問題でございます。  利子課税の問題はいわば資産性所得の税金と密接に関連する問題であると我々は思っておりまして、利子課税を言うならば土地や有価証券の売却益のようなキャピタルゲインや節税商品にまつわる不公平な制度や税務執行体制上の問題などと同列に置いて議論されるべきものである、私はこう考えておるわけでございます。  税制改革議会の論議の中で減税の全体像もまだ固まらない、あるいは財源についても全般的な検討は全然進んでいないにもかかわらずマル優だけを独走させることはちょっとおかしい、再度疑問を呈しなければならぬと私は思います。マル優制度の吟味は行政改革の論議全体の中に少なくともほかの資産性所得の税制のあり方を論議する中で正しく位置づけられて議論すべきだ、私どもはこう考えておるわけでございまして、先ほど議論しましたように、それでなければ、取りやすいところから取るというだけの税制改革に終わるのではないかという本源的な疑問を持っておるということを訴えて、大蔵大臣の所見を求めてみたいと思うのです。
  143. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは先ほども申し上げましたが、利子は明らかに資産所得でございます。そうしてそういう意味では、例えば土地の譲渡益であるとかあるいは株式のキャピタルゲインであるとか、そういうものも同じ範疇に入るものではないか、したがって、いわばある意味では不公正課税、これに欠くることがあれば不公正ではないかとおっしゃる意味では同じに考えるということはそれでよろしいと思います。
  144. 米沢隆

    米沢委員 利子課税は取りやすいところから取るということでございましょうが、確かに土地の譲渡益だとかあるいは株のキャピタルゲイン等等、捕捉において問題があることは事実ですね。しかし、難しいからやめたじゃなくて、難しいけれども何らかの形で一歩前進する方法はないかと汗をかいたことがあるんですか、大蔵省は。
  145. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 前国会に御提案いたしました政府提案におきましては、いわゆるキャピタルゲインについて五十回二十万株というのを三十回十二万株というふうに強化いたすこと、また土地につきましては短期の譲渡を重課いたしますことをおのおの御提案いたしました。
  146. 米沢隆

    米沢委員 五十回二十万株を三十回十二万株ですか、結局捕捉の仕方が全然足りないわけですよね。現在の五十回二十万株だって実際申告しておるのは何ぼおるのですか。株をあれだけの人間が扱っておきながら、五十回で二十万株を扱う人は相当なものだと私は思いますよ。しかし申告件数なんてわずかなものですね。それを限度をちょっと下げて厳格にやったとおっしゃっても、実際執行体制の捕捉の仕方等にメスが入らない限り、実際は同じような話になるのじゃないでしょうか。  これはいろいろ議論もありましょうからさておきまして、ここでもう一つ確認しておかねばならぬのは、さきの通常国会の会期末には与野党の間で売上税関連法案の臨時国会再提出は考えないという合意が確認されておるわけですね。これは素直に考えれば、マル優を含め意見が対立した問題は当分国会には出さないと約束したと見るべきだと私は思うのでございますが、与野党の税制協議を無視してマル優法案を出すということになりますと、これはやはりこの前の国会の二の舞になるということを心配するのです。そういう意味で、マル優制度の法案はやはりじっくり議論して、次の通常国会あたりにもし出すなら出すという方向に方向転換するのが当然のことではないかと思うのでございますが、いかがですか。
  147. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 前回の国会の終了に当たりましていろいろなお話し合いがあり、結果としては税制改革議会でひとつ検討をしようということになっておるわけでございますので、その御協議をしばらく見守らしていただくという、まことにどうも同じことを申し上げて恐縮なんでございますけれども、そういうことでございます。
  148. 米沢隆

    米沢委員 私たちも、この現行のマル優制度そのものにはいろんな問題がある、そう思っております。  私は、マル優問題の問題は二つの側面があると思いますね。まず一つの側面は、現在のこの不公正な利用をどう排除するか。これは、マル優を残すにしましてもあるいは政府の提案のマル優を改組されるにいたしましても、限度管理を徹底するということは必要なんですね。限度管理の徹底策を考えない限り、例えば今度の自民党のあの改組案みたいなものでも、今までどおりにマル優を存続するという人については、不公正利用がなければいいですよ、しかしあったならば、そのあたりの限度管理はしっかりしないと問題を残す。だから、我々がマル優を残せと言う、それについても限度管理の徹底についてメスを入れねばならぬというのが抜本改正だろう。皆さん方は改組すると言っても、残る部分があるのですから、その部分については限度管理を徹底するという物の考え方はなければならぬと思うのですが、どうですか。
  149. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 その点は前国会で御提案いたしました、例えば六十五歳あるいは母子家庭、心身障害者等々はすべてこれ確認の方法が現にございますから、それによって管理ができると思います。
  150. 米沢隆

    米沢委員 持っていったときには確認できても、A銀行、B銀行、C銀行と持っていったら、管理できるのですか。
  151. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それはいずれも証票がございますから、極めて簡単であろうと思います。簡単と申してはいけませんが、例えば老人手帳でありますとか、あるいは母子家庭でありますとか障害者でありますとかそれを証する証票がすべてございますので、それを使っていただけば、それが二重に使われるというようなことは防止できると思います。
  152. 米沢隆

    米沢委員 いや、私が言うのは、本人確認はできますよ、その人がマル優対象者であると。しかしながら、その方が三百万をA銀行に納める、私はマル優を適用してくださいと。そして今度は東京に来てC銀行に行って三百万預ける。果たして名寄せができるのですか。
  153. 水野勝

    ○水野政府委員 今回御提案申し上げた新しい少額非課税貯蓄と申しますか、その対象は六十五歳以上の方、身体障害者等々でございまして、その対象人員といたしましては千五百万から二千万人ぐらいの方と申し上げておったわけでございます。現在のマル優制度でございますと、金融機関だけとりましても一億六千万口ぐらいあるわけでございまして、その数は一けた違うぐらいの数でございます。  それからまた、本人確認はただいま大臣からも申し上げておりますように極めて明確に対処できる対象でございますので、そうした明確なものを根拠といたしまして、また、人数等も今申し上げたようなものでございますので、この管理は容易ではないかと思うわけでございます。
  154. 米沢隆

    米沢委員 全然答えになっていないな。それは本人確認はできましょう。しかし名寄せはできるのですか。それができるのだったら、今だって簡単にできるんじゃないですか。
  155. 水野勝

    ○水野政府委員 繰り返してございますけれども、その根拠となる証票等が明らかでございますから、名寄せの根拠がまず明確でございます。それからまた、その対象人数等が格段に差があるというあたりから、これは管理が容易であろうということでございます。
  156. 米沢隆

    米沢委員 どうもわからぬな。それならば、やはり本人確認は確実にできるだろうけれども、その方が銀行の窓口を変えていって預金をされた場合には名寄せのシステムをつくらない限り、私は管理は難しいと思うのですね。  そういう意味で、我々は貯蓄だけに通用するような、マル優枠だけに通用するようなカードぐらい導入したらどうかと提案をしておるわけですね。どうも中曽根さんは勘違いしまして、例のグリーンカードみたいなものを持ち出してきて、あのグリーンカードというのは、御承知のとおり限度内の貯金もそれ以上の貯金もみんなノートに書かないとわからないというシステムだったのですね。だから結局、国民のプライバシーが問題だとなってああいう議論になったんで、今度は逆にマル優の制度だけ、例えば我々が提案するのは、税務署からこういうカードをもらいますね。A銀行に行って百万貯金します。そのときにはマル優のカードに記入してもらって、はい枠内ですねと非課税の判こを押してもらう。B銀行に行ったら今度は百万納める、その分も枠内ですね、それならば私の方も非課税にしましょうと。そうしますと、カード自体に名寄せができるのですね。そういうような簡易なカードというのをつくったらどうか。それは決してその人がカードの枠以上に持っておるものまで記入してそれをオープンにするというたちのものではない。グリーンカードとは全然違った質のものだ。マル優の枠を管理するだけのカードみたいなものは、限度管理を徹底するためには考慮してしかるべきものではないかと言っておるのです。我々の案がすべてだとは言いませんよ。そういう考え方を導入することこそ限度管理を徹底するという道につながるのではないか。そこまで放棄したら果たして税制改革と言えるものかと問いたいのですね。
  157. 水野勝

    ○水野政府委員 具体的に申し上げますれば、ただいま御指摘のように複数の店舗なり金融機関と契約されるというときにおきましては、その申請された方の所在地の税務署にそれぞれの設定された枠が集められるわけでございますので、その署におきましてそれを名寄せをし、限度管理をするということになろうかと思うわけでございます。  ただいまお示しの、利用されようとする方がカード交付を申請して、それによりまして自動的に管理をするという制度は、まさに昭和五十五年におきまして私どもが御提案申し上げ、国会で議決をいただきました少額貯蓄等利用者カードそのものでございますが、やはりそれに番号が付され、税の観点からそうしたものが管理されるということにつきましては、社会的にかなりな抵抗感等がございまして、ついにおととし、これを撤回させていただいたという経緯があるわけでございますので、現時点におきましては、税の観点からそうした番号をつけて、たとえ預金管理にいたしましてもそうしたものはなお若干の検討を要する時期が必要ではないか、現時点におきましてはこのように考えておるわけでございます。
  158. 米沢隆

    米沢委員 どうもこれは意見の相違かもしれませんが、むだな時間を使っては、私もえらいじくじたるものを感じておるのでございますが、同じ銀行なら名寄せはできる、ほかの銀行ならば銀行間同士の名寄せのシステムはできてませんから、幾ら言われたって私は納得できません。  それからもう一つ、グリーンカード制に最終的にはなるとか、結局それはグリーンカードではないかというその誤解も、私はぜひ解いてほしいのでございますが、グリーンカードは預貯金を行う者全員に保有を義務づけておったわけですね。そして非課税貯蓄のみならず課税貯蓄、さらには配当所得などおよそ金融資産と言えるもののほとんどを把握するものであったわけでございますが、我々が言うマル優カードというのは非課税貯蓄のみを管理する、そしてマル優カードは希望者のみに発行するものであって、保有を望まない者には強制しないという大きな違いがある。  やはり限度管理の徹底という意味では、私は固執するつもりはございませんけれどもカード制、それも、おっしゃるように係国民の総反発を受けるようなものでなければ本当の総合課税は徹底しないかもしれませんけれども、その一段階としてやはりカード制の導入で限度管理をやっていくというのは、一つ行政の手法としては当然とられてしかるべきものではないか、このことを私は申し上げておきたいと思います。  それからもう一つ、マル優制度の問題の一つの側面は、先ほどからいろいろ答弁がありますように、一つはこの不正利用をどう排除するかという問題であり、一つの方は、現在のこの少額貯蓄非課税制度を今日時点で改組すべきなのか、廃止すべきなのか、存続すべきなのかという政策選択の問題はある。私らもその問題はあると思うのですね。しかし私は、現在の段階では存続論の上に立っておるわけでございます。なぜなら、限度いっぱい利用した人は確かに金持ちのはずだ、その人が免税されているのはおかしいじゃないかという、感性に訴えられたらそのとおりだ、こう言うかもしれませんけれども、しかしその人と同じように、こつこつためた皆さん方の貯金でさえ利子課税を取るということにダイレクトにどうも感性的に結びつかないんだ、我々は。  例えば、現在の資料等を見ましても、大体六十一年度の統計等でも、勤労世帯の貯金なんというのはわずか四百七十四万ですね。そのうちに定期が三百二十六万。この方はローンを二百六十四万も持っておるのです。最も世帯が集中している貯蓄現在高は、去年が百七十三万でしたから実際は今は二百万くらいでしょう。圧倒的多数の皆さん方が限度枠を利用しないままにたくさんおるにもかかわらず、一部の連中が限度枠いっぱい利用するのはけしからぬ、ましてや不正利用する、けしからぬという理屈で、不正は不正で管理しようじゃないか、しかし限度いっぱい使う人がけしからぬという理由で、二、三百万しか持たない皆さん方の利子に二〇%の分離課税をかけるということは我々はおかしいと言っておるのでございます。  貯蓄をする理由を考えてみましても、いろいろなアンケート調査等がありますが、若い人はまあ旅行資金をためるとかあるいは耐久消費財を買うとかいうのはあるかもしれませんが、大部分はこれからの高齢化社会の自己防衛という感じで貯蓄をされるという理由が圧倒的ですね。不慮の事故、それから不慮の災害、医療費、子供の教育費、住宅資金などをためるために営々として貯金をされる。残念ながらその貯金も四百万前後しか持ち得てないという。なぜそういうものに利子課税とはいえ分離課税をかけねばならぬのかという、そのことが我々は納得ができないということを言っておるわけでございます。  確かに、できた最初は貯蓄奨励の政策であったかもしれませんが、逆に今や変質したかもしれませんが、いわゆるGNP世界一になったとしても実感がわかない。老後生活にはいまだに不安が残っておるとすれば、やはり何とか自己防衛しようというのはわかるじゃないですか。その皆さん方が貯蓄できやすいようにしてあげるというのは、政策の次元で考えても私は正当に選択できるものではないか、こう思っておるわけでございまして、マル優制度はやはり今の段階では存続すべきだということを言いたいわけでございますが、所見を求めたいと思います。
  159. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 一部重複をいたしますが、それならばなぜそのような貯金の利子について課税をしなくていいのか、つまり勤労所得に対して資産所得をどうして優遇しなければならないのかということを、今までの従来のいきさつを離れて、先入観なしに問題にいたしますと、これはやはりいろいろ問題があるんじゃございませんでしょうか。  お年寄りであるからというなら、それはそういう制度として考えればよろしい。母子世帯でもあるいは身体障害者でもそうでございますけれども、一般にこれが免税になることによって、その税負担はほかの方々にかかっていくわけでございますが、勤労所得に対してすら優遇しなければならない理由は何であろうか。この制度は、低所得者を保護する制度ではなくて、利子というものを、資産所得というものを優遇する制度でございます。どうしてそういう制度がなければならないのかということだと思うのでございます。
  160. 米沢隆

    米沢委員 大蔵省の立場からすれば、まさにそれは膨大な課税を逃れた利子というふうに見えるでしょうね。そういう意味では、まさに資産課税であるから税金を取って結構だ、そう言われるなら、もう一方のキャピタルゲインあたりも正当に扱ってほしいと一方では言っておるわけですね。そっちの議論は余り熱心でなくて、なぜそっちの方に傾斜するのかというような疑問がありますね。  同時にまた、我々は政治家ですから、そのような利子課税を非課税にしておって、一つ政策的な目標を追おうというものは、私たちは、政策的な手段としては今まで税金だって優遇税制というのはみんなそういう手段としてとってきたのですから、そういう制度として残してもおかしくないと言っておるのです。
  161. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それでございましたら、そのようなつまり特別の配慮、だんだん老後に備えられるとかあるいは御家庭の事情がこうであるとかいう方々のためにそういう制度をつくれと言われれば、私どもそれは理由のあることだ、こう申し上げております。
  162. 米沢隆

    米沢委員 それから、よくマル優制度を変えねばならぬという理由の中に、中曽根総理は国際的に非難があるとおっしゃいますね、内需拡大に反するとおっしゃいますね。マル優制度があると円高になる、この論理を一回説明してほしいのでございます。私は、少なくともそれぞれの国にはそれぞれの国の政策があって結構だろう。全然貯蓄のないアメリカが、持っておる日本にやっかみを抱いておまえらの貯蓄は高過ぎる。冗談じゃない、持たぬのがおかしいと国際的に非難されたらどうですか。  そういう意味で、もしマル優をとってしまったときに、では本当に消費に回るだろうか、投資に回るだろうか。私はどうも頭を振るわけにはいきませんね。先ほど申しましたように、持っておる人はたくさん持っておる、それは確かですよ。しかし平均的な議論をすれば、少なくとも勤労世帯は四百七十万ぐらいの貯金、そして定期性は約三百二十万ぐらいの貯金しかないのです。もしマル優制度を撤廃して分離課税を課すとするならば、そういう勤労世帯はますます貯金に励むでしょうね、将来の不安は去っていないのですから。持っておる人は、逆にそこからエスケープして財テクに走るでしょうね。貯金がたくさんあるから投資に回るなんという議論にはなりませんね。投資するかしないかは景気や経済動向に関係することであって、マル優制度がなくなれば投資に向かい消費に向かうなんという議論はちょっとお粗末じゃありませんか。
  163. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 その点は、私は若干見解を異にいたしまして、やはりマル優というもので優遇されておると結局貯蓄に回っていく、優遇がなければやはり使う、そういう方向に人心というのはやはり動くだろうと思います。やはりわずかな利子という問題だけでも、税金がつくかつかぬかというのは、心理的に大きな問題を持ってくると思うのです。  それから、米沢さんがさっきおっしゃったマル優の利子の問題ですけれども、これは仮定の発想ですけれども、仮にマル優で免税になっている分だけ所得税減税してやったらどうだろうか、そういうふうな形で所得税の減税の刻みを深くしてあげる、マル優というものを特別の弱い方々には維持してあげるけれども、国民一般というものについてはその分だけ所得税を安くしてあげる、そういう形にすれば、これは同じことですわね。しかも片方では、限度管理とかなんとかという何となしに薄暗い、後ろめたい感じのするような感じのものはなくなって、そして気持ちのいい制度に変わっていく、そういうことすらも考えられる。だから、この問題についてはいろいろな発想があり得るのでして、所得税の方でそれに代替するということをやるというのも一つの方法なんです。そういうことを研究するということも、可能性としてはいいんじゃないんですかね。     〔今井委員長代理退席、委員長着席〕
  164. 米沢隆

    米沢委員 マル優を廃止したら貯蓄が消費に回るという、これは議論の異なる水かけ論みたいになるかもしれませんが、私は、庶民の気持ちというのはそんなものじゃない、ますます貯金をしようと思うだろう、こう思いますね。かなりたくさん持っておる人は、貯金から離れて、分離課税のゆえに逆に流出して、今度は財テクに走るだろう、こう思いますね。やってみなければわかりませんが、私は予想としてはそうならざるを得ない、こう思います。  私は、今話を聞いていまして、現在のマル優制度を皆さんは改組するんだとおっしゃいますね、廃止じゃないと。高齢者や母子家庭や身障者の皆さんには残すとおっしゃいますが、ならば今度は逆に発想を変えて高額所得者だけ利子課税を払うようにしたらどうですか、そういう制度に。
  165. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 すべての人が利子課税は払う、ただし、特殊な方々にはそれは免除をする、これが一番いいのじゃございませんか。
  166. 米沢隆

    米沢委員 特殊な人が払うとすればいいですね、特殊な人が払うと。まあこれも水かけ論でございますが、私はぜひそういう意味ではマル優制度は存続すべきである。  特に私は将来のことを考えたとき、本当にこの二十一世紀を展望して、今日本もかなりの苦難な道を歩いておるわけでございますが、無資源国日本というものが貯蓄という意味をもっとまじめに考えていかねばならぬのじゃないか、こう思うのです。我が国が先進国病を免がれて良好な経済パフォーマンスを持っておるというのは貯蓄率の高さにあったと思います。この二、三年対外貿易摩擦で少々黒字がふえたからといって、余り威張るといかぬと思うのです。どうなるかわかりませんよ、この対外経済摩擦の原因である黒字なんというのは。今かなりのものになって大変な非難を受けておりますが、この五年ずっともつでしょうか。十年先こんなに黒字を計上できるでしょうか。国際国家日本になればなるほど大変な厳しい状況になっていくのじゃないですか。そのときに、私は貯蓄率を下げるような政策をこの時点でとったら、本当に反省するような時期になっていくのじゃないかということを憂えておるわけでございます。  現に、御承知のとおり貯蓄率は今どんどん減りつつありますよ。今でこそ貯蓄率は高い方だと言われますけれども、現実的には近年どんどん低下傾向にある。そしてこれから高齢化が進展する、貯蓄率はまた下がる。そのときにこの日本を経営する金として、資金として、ほかから金を借りてくるのじゃない、やはり自前である程度持っておるという意味では、貯蓄優遇税制というよりも将来の二十一世紀、大蔵大臣は何か二十一世紀の国家をつくるとおっしゃったそうでございますが、そのためにも貯蓄率はある程度維持する措置は私は必要だと思いますよ。資源はないのですから、今の黒字だって威張るものじゃありませんよ。四、五年たったらなくなるかもしれませんよ。そのときに、偉そうに国際的に非難されるから貯蓄率を下げるためにやりましたなんと言われたら、中曽根総理、後で笑われますよ。
  167. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 貯蓄率の問題を言われますけれども、もし仮にある野党が言うようなグリーンカードをおやりになるとしたら、あるいはあなた方がおっしゃるようなマル優カードをおやりになろうとしたら、今まで不正利用している人の金はどこへ行きますか。恐らくこれは税務署に見つかるとかあるいは世の中から指弾されるとか新聞に出るとか、かなり不正している人はおるわけですね、社会党の案でも何しろ七千億円もそこから税金を取り上げると言っているのですから。そのお金はどこへ行くかと言えば、必ずそれは株へ流れたりあるいは海外へ流れたり。そうすると郵便貯金が激減するのですよ。あるいは銀行預金が激減するのですよ。日本がこれだけ持っておる、あなたが言う、今誇っているとおっしゃる貯金の額、これがもう目に見えて激減しますよ。その場合に郵便局はどうしますか。これは、せっかくたまっている郵便貯金がどこかへ行ってしまったら郵便局は経営ができなくなりますね。そういう人心の微妙なところをぜひお考え願いたいと思います。
  168. 米沢隆

    米沢委員 そのように激減するからマル優をとるなど言っているのですね。それでなくても減るならば、激減するならば、マル優制度をとるというのは逆に逆効果じゃありませんか。まあ、これも水かけ論ですね。  それから、先ほどから議論しておりますように資産性所得に対する捕捉の体制の整備というものは、そちらの方は完全に総合課税をギブアップして現実を認めようという方ですね。我々はやはり総合課税というものを最終的には常に望むべきだ、今できなくても望むべきだと思うのですね。そういう意味でできることから整備していく、我我はそういう立場に立っておるのでございますが、その分、政府の方は最初から投げ出しておるというところに問題があると言わざるを得ません。  例えばマル優の不正利用を理由に利子に対する一律分離課税を実質的に公平だということでやった場合、今日のように、先ほど話がありましたように、株にも行く、土地にも行く、金(きん)にも行く、会員権なんかにも行くというふうに資産選択の幅は拡大しておるわけですから、そうなりますと、そういう大きな金があったら土地にも向かいましょう、金(きん)でも買いましょう、株でも買いましょうですけれども、営々としてためてそんな財テクに参加できない人はみんな利子課税、こっちに行くのは非課税だというのは逆に不公平をつくることになるのじゃないですか。そのことも私は考えてほしいなと、こう思うのでございます。  今度の税制改革のねらいの一つは、御承知のとおり、税制のひずみ、ゆがみあるいは重圧感の除去というものであったわけですから、ゆがみやひずみを一つ一つ除去して、マル優も例外たり得ないとなったならば国民の皆さんも納得するのじゃないでしょうか。まだその前段階で、いろいろな資産性課税等についての不公平みたいなもの、そういうものがどうも解消されないというところに、なぜ利子課税だけをねらうのか、取りやすいところだけをなぜねらうのか、抜本改正をやろうとするのだろう。よくこの前の税制改革でも、国民の所得水準が上がった、それで平準化した、そういう意味で結局総合課税を崩すような話がありますよね、間接税を入れたりこのように一律分離課税を入れたりして。  しかし、資産なんかの持ちぐあいを調べたことがありますか。資産はますます格差が大きくなっている。確かに賃金所得は平準化の方向に向かいました。しかし、昭和五十年ぐらいから不況になりますとまたおかしくなりまして、逆に拡大しつつありますよ。政府が言うように給与所得は平準化したというのは決して当たらないと私は思っておるのですが、その話は別にしましても、資産の方は膨大な格差がつき始めました。こちらの方は原則非課税というのでは、やはり庶民は救われない。抜本税制改革とおっしゃるならば、利子課税もその他の資産性課税と同列に置いて議論し、ぎりぎり詰めてみるべきだ、私はこう思うのですね。  今まで不公平税制という問題は余り議論していない。みんなすれ違いの議論ばかりですね。減税しろ、不公平税制があるじゃないかと言ってそこに逃げ込むのです。政府の方は、そんなのできるものかと言ってまたとんちゃくしない。結果的には、不公平税制議論は今までかみ合っていないのです。今度の税制改革議会の最大の目標は、この際不公平税制と言われるものをみんなぶち上げて一回とことん議論しようじゃないか、そして、やれるものとやれぬものを区別して悟りを開こうじゃないか。やりたいけれどもこれはコストがかかる、やりたいけれどもこれは国民の総反発を受ける、しかしこれはぎりぎりやれる、何かそんな詰め方をして、いろいろな、税制改革の周辺にある何となく税に対する不信感を一つずつ除去して、そうしますと正論の税制改革議論は進んでいくのだと私は思うのですね。  そういう意味で私たちは、何もただ六十二年度の減税の財源としてマル優を早く出さなければいかぬなんという議論じゃなくて、もっとトータルの財源論を議論するためには、まず減税をさっと片づけて、恒久財源について、その分野党も今度はオブリゲーションを負うわけでございますから、一緒になって知恵を絞る、そしてもうこれから先の議論の中には、あれは不公平があるじゃないか、これは不公正じゃないかという議論ぐらいは除いて堂々と税制改革ができる、こんな環境をつくることが大事なんじゃないでしょうか、総理
  169. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 ですから、あなたの議論と我々の議論は非常に接近してきていると思うのです。  つまり、貧しいあるいは弱い方々、これはもう利子に課税いたしません、しかし、それ以外の国民の皆さんは、我々の方は二〇%なら二〇%を出してください、しかし追及はもういたしません、そのままで結構です、別に悪いことということではなくなります、そのかわり二〇%をお出しください、そういう形で今の預金が減らないという配慮をしているわけですね。ところがあなた方の方の場合は、グリーンカードとかあるいはマル優カードという形でインチキは厳重に調べ上げますよ、そういう形になるわけですね。そういうシステムをやるとみんなお金が逃げ出して、不正をしている人のお金は金へ行ったり宝石へ行ったり、あるいはそのほかへ行ったりして預金が激減いたします、これは郵便局も非常に困ります、あるいは銀行も非常に困ります、そういう形になって、非常に後ろめたい、暗い世の中になるのですよ。我々はそういう面においては、ともかく税金を納めなさい、そうすれば追及もせぬし悪いことではなくなります、その方が制度としては穏当な制度だ、まずそれをやりましょう。  それで、土地とかあるいはそのほかの様とかそういう問題は非常に複雑な難しい問題がある。土地は私はある程度やれると思いますよ。ですからこれは皆さんと相談しましょう。株の問題はまた背番号みたいな嫌らしい問題が出てくるから、これはもう少し慎重にやりましょう。ですから、我我はお話に乗っていいです、乗ります。しかし、今申し上げたようなことはまず片づけてください、これが私のお願いなのでございます。
  170. 米沢隆

    米沢委員 インチキに手を入れたら貯金が減るから大変だ、インチキをそのまま残せというような議論に聞こえますね。一時減ってもいいじゃないですか、そんなのは。  それから利子課税も、そのものだけの整合性を議論したら自民党流の議論もそれはあるかもしれませんよ。我々は資産課税の全体の議論の中で利子課税も位置づけて議論しよう、こう言っておるのでございまして、そこらは知恵の出しようによっては知恵は出せるんじゃないか、こう思います。税制改革議会議論をしなければなりませんが、これは大変なことだと思っておることは事実でございます。  それから、結論的に言いますと、どうもマル優がなければ減税できぬような話ばかりあるのですが、本当にマル優が今度の臨時国会に出されないと減税しないのですか。国際公約なんかどうでもいいわけですね。
  171. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは政府立場に関します限り、先般の緊急経済対策で、先ほどもおっしゃいましたように一兆円絡みの所得減税を仮に先行であっても今年度でやりたいと考えておりますが、たびたび申しますとおり、それは税制改正のやはり一環としてやらせていただきたい、こう思っておるわけでございます。したがいまして、と申します意味は、くどいようでございますけれども、一遍限りの減税ということはあり得ませんので、将来の展望を持った上でさせていただきたい、こう思っているわけでございます。
  172. 米沢隆

    米沢委員 水かけ論を何回もやっておるのでございますが、マル優制度改革法案をセットでなければ減税できないというふうに聞こえるのですが、税制改革議会もそこまで理解が進むかどうかわかりませんが、もし最終的に減税をするためにどうしてもマル優制度の改革法案を出すとおっしゃるならば、私は税制改革議会というのはぶっつぶされた後だと思いますね。よく自民党の中でもあの税制改革議会なんかやめてしまえという話があるのだそうですが、中曽根総理もそんな気持ちでおるのですか。
  173. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 いや、あれはぜひ続けて有効な実りある議論をしていただきたいと念願しております。
  174. 米沢隆

    米沢委員 それから郵便貯金の例の預入限度額が五百万になったり自主運用が始まったり、それから十月一日からの窓販が法律が通ってしまっておるのですね。この中には、だからマル優法案が通らないと実施時期が決まらないというものがありますが、しかし皆さんは早くマル優を出したいと言う、我々は出させないと言いますが、出させないという立場から立ては、五百万になったらやはり三百万はマル優で上の方は税金をかける貯金、こういうふうになりますよね。  十月一日から窓販をやるという場合に、特別マル優がかけられなかったのはマル優が通るからということで決めたんですね、あれは。もし通らないと、今の現状の中で郵便局が扱う国債はマル特は適用されないで、銀行が売るのはマル特は適用される、これはそういうことになるのですか。
  175. 唐沢俊二郎

    ○唐沢国務大臣 先回の国会で国債も郵便局で販売することができることになりましたが、郵便局で販売する国債が特別マル優の適用の対象とされておりませんのは、昭和六十二年度の税制改正の一環として特別マル優の廃止が政府の方針として決定されたためでございます。  なお、税制問題につきましては、この特別マル優を含めて、衆議院に設置されました税制協議会でただいま検討されておりますので、その成り行きを見守っておるところでございます。
  176. 米沢隆

    米沢委員 いろいろな政策的判断があるかもしれませんが、せめて十月一日から始まる窓販みたいなものは、マル特をイコールフッティングでつけないとおかしいのじゃないかなと思いますね。それから、マル優制度が廃止にならなかった場合には、五百万の限度額は、あれはならないわけですね。三百万でいくわけですね。――はい、わかりました。  あと十五分でございますが、次は、ベネチア・サミットの経済編に関連しましてお尋ねしておきたいと思います。  今度のベネチア・サミットは、危惧されておりました日本たたきが、緊急経済対策等が効果があって、行われずにうまくいった、こういう評価が政府筋の大方の評価のようでございます。しかし、考えてみますと、今度の会議というのは、世界経済の構造的な不均衡が一番深刻なときに開かれた会議ではなかったか、こう思うのですね。  例えば、アメリカの貿易経常収支赤字の増大と日本、西ドイツの黒字の累増、危険的な水準にありますね、もう危機的な水準にありますね。アメリカが純債務国に転落してから、今や二千五、六百億ドルの債務があるということでございますから、ブラジルやメキシコの比しゃありませんよね。しかし、日本だけは最大の債権国家になって、それがドルの信認を揺るがせるのじゃないか、あるいはまた保護主義への傾倒というのを助長しておるというふうになっておるわけで、これも危機的な状況にあると思うのですね。同時にまた、発展途上国の累積債務、昨年末約一兆ドルを超えたといいますが、ベーカー構想も進展しておりませんので、これまた危機的な水準にある。そういう意味で私は、ランブイエ会議以降、世界経済の中でこの世界的な構造不況が危機的な水準に、一番高いところにあるというときの会議だった、こう思うのですね。そういうことが経済宣言あたりでもいろいろと触れられておりますけれども、果たして、この前の経済宣言で触れられたようなことで本当にこの危機的な水準が解決の方向に向かうというふうに自信を持って総理は思われますか。
  177. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 ベネチア・サミット以後、事態は非常に好転してきているように思います。まず、例えば円ドル関係が安定をし、日本にとってはまた好ましい方向に変わってきております。本日もたしか百五十円台にカムバックしております。この傾向は私は続くだろうと思います。これは、やはりベネチアにおきまして総理大臣、大統領がかたい決心で約束をした、協調行動を約束した、そういうものも大きくあずかって力がある。また、たまたまそういうふうな傾向に向かうときにぴしっとそれを政治意思で決めましたから、投機をやっている連中も非常に警戒感が強くなってきて、そういう点も大いにこれは役立っておると思っておるのであります。  それから、アメリカの財政赤字縮減に対する努力は今まで以上に非常に強まってきております。また、日本の黒字の問題も、最近の貿易統計をごらんになればおわかりのように、輸出、輸入ともにいい方向に歴然と出てまいってきております。こういう傾向がどんどん前進していきますれば、私は、事態は今まで以上にはるかにいい方向へ傾向を変えてきた、そういうふうに認識しておる次第です。
  178. 米沢隆

    米沢委員 それにしても、ああいうふうにサミットで首脳会談が行われ、そしてお互いに政策協調しながら危機を乗り越えていこうとやりながら、一方ではアメリカなんかの様子を見ますと、貿易法案あたりはどんどんエスカレートして、何かアメリカの議会にとりましては、あのような世界的なサミットなんかの効果みたいなものは全然無視しておる、サミットなんかあってもしようがないというような感覚のような気さえするのでございますが、そういう意味で、日本にとってサミットはどうかというよりも、世界にとってサミットの経済宣言等に盛られたあの努力がいかに理解をされておるかという観点からいたしますと、どうもアメリカの議会のあの貿易法案等のエスカレートぶりはちょっと理解ができないとお思いになりませんか。
  179. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 アメリカは三権分立の国で日本の議院内閣制とは異にしておりまして、議会はもう完全に独立てあります。しかし、日本流の三権分立とアメリカ流の三権分立とはまたちょっと違うわけであります。しかし、アメリカにおいては大統領府、大統領ははっきり保護主義と闘う、サミットへ出てきて我々にも約束をいたしました。そして、貿易法案の内容によっては拒否権を使って貿易法案をつぶしてしまおう、そういうかたい決意で出てきておる。現在、この十四、五日ごろ、上院で貿易法案の表決が行われる形になる可能性がだんだん強まってまいりましたが、いずれ上院でそれが通過しますと上院、下院の協議会が始まる。それが八月の休みまでに片づくか、九月以降になるかというのを今最大限我々は注目しておるところでございます。  そういうような情勢で、アメリカの大統領府、大統領ははっきりと保護主義とは闘うということを言っておりまして、これらは明らかに、サミットによって我々が大統領と話し合い、大統領が約束した、そういう結果がこういう形になっておる。世界じゅうの前に約束しているのですから。もしサミットというものがなくしてそういう約束がなかったら、あるいは議会との間で変な妥協が行われるかもしれませんね。どうなるかわかりません。そういう意味からも、やはりサミットというものはそれなりの効果を持っているものだというふうに御認識願いたいと思うのです。
  180. 米沢隆

    米沢委員 そこで、これからの我が国の大きな課題は、そのサミットで約束されました緊急経済対策をどう実行するか、こういうことになるわけでございます。この対策が講じられた経過からいたしましても、まずその緊急経済対策の持つ性格みたいなものは、やはり対外経済摩擦の是正にどれだけ役立っていくのかという視点であり、あるいはまた円高不況の克服や雇用不安や失業増大にどう対処できるのかという視点であり、ひいては経済の構造転換、内需型経済体質への転換促進にどれだけ役立つかという視点で私は見られると思いますし、そう見て緊急経済対策議論していかねばならぬと思うのですね。  そこで、あの緊急経済対策はそういう観点からしてどれだけの効果があるというふうに経企庁あたりは見ておられるのか。あるいはそういう効果を持たすためにこれからいろいろ配慮しなければなりませんね、経済政策の面で、財政政策の面で。特に、この緊急経済対策は緊急という言葉がついておりますけれども、サミットでたたかれぬようにしようという緊急もあれば、今まで財政再建で余り建設国債等は増発できないという意味で、臨時応急的に出さなければいかぬという意味で緊急という意味もありましょうけれども、私は、この緊急経済対策の持つ性格というのは、これから持続して、少なくとも日本経済は今から産業構造の転換をしていかねばなりませんから、これは息の長い内需拡大策を続けていかないと目的を達しませんので、やはりそれは緊急という名前はそのときには返上して、緊急をとってこれから先はまた営々として我々は努力をしていかねばならぬという位置づけになると思いますね。  そういう意味では、財政再建の途上でありますけれども、やはりもう財政再建至上主義ではこのような対策はできないということが明らかになりつつあるのではないかと思うのです。そういう意味では、経済政策も変わらなければいけませんし、財政政策も変わらなければいけませんし、あるいはこの緊急経済対策が来年の六十三年度予算編成にどうつながるかというのはまさに見ものだと思っておるのでございますが、そこらを包括的に大蔵大臣の所見を求めてみたいと思います。
  181. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 息の長い政策の継続を必要とするということはまさにおっしゃるとおりであると存じます。ただ、財政再建を放棄するわけにはまいらない。これは財政の弾力性を失わせますからもちろん放棄いたしませんが、ただ、経済財政政策の運営よろしきを得れば内需拡大から経済の潜在的な成長率が高まってまいりまして、財政もそれから裨益するということは十分あり得ることであって、願わくはそのような経済運営をしてまいりたいと思います。
  182. 米沢隆

    米沢委員 経企庁長官の答弁を。
  183. 近藤鉄雄

    ○近藤国務大臣 今回の六兆円の緊急経済対策はGNP対比一・八%でございまして、これがGNPに与える効果は、一年間で大体二%程度というふうに私ども計算をしているわけでございます。したがいまして、今年度に対しましてはその半分プラスアルファぐらいの効果を持つ、かように考えております。  問題は、そういうことでの経済成長が先生のお話もございました国際収支にどのような影響を与えるか、こういうことでございますが、これも十億ドルの政府の特別調達を含めまして、五十億か六十億ドルの国際収支改善効果がある。問題は、こうした国際収支の改善効果があらわれ始めますと、既に円レートは安定をし始めておりますし、これが日本の企業心理にプラスの効果を今与えつつございます。  したがいまして、今年度の経済成長も、私ども当初考えた三・五%の線に乗るものと考えておりますし、こういう形で民間主導型で日本経済が成長を始めますと、先生もお話しの財政再建の問題につきましても、だんだん財政によらないで民間主導で景気の回復、成長が始まりますとおのずから税収の増が期待される。そういう形で持続的な民間主導型の経済成長路線に漸次転化していく、かように考えるわけでございますが、しかし当面は、一昨年以来の急激な円高によって日本の産業構造の相当部分にいろいろデフレ混乱がございますので、こうしたものが健全な成長に乗って、しかも産業構造が転換していくためには、しばらくの間は財政主導によって景気の拡大を図っていく必要がある、かように考えている次第でございます。
  184. 米沢隆

    米沢委員 ぜひこの緊急経済対策は緊急に終わらされることなく、これからの経済の展望等を眺めながら、息の長い産業構造、経済構造の転換に結びつけるように格段の努力をしてほしいと思うのでございます。  そしてまた、やはり建設国債等をかなり増発するような傾向になりますと、先ほどおっしゃったように財政再建との絡みもありますが、将来どうなっていくのだろうかという配慮もこれは考えていかねばなりません。その際、私たちは考えねばならぬのは、ちょうど石油ショックがやってきまして、五十二年、五十三年、建設国債を発行したり、かなり増発して公共事業等で景気回復を図ろうとしました。しかし、残念ながらうまくいかない。そして五十三年、例のボン・サミットで七%成長を約束させられて、かなりの努力をしたけれどもうまく回らない。そのとき、借金することは結果的には増収として返ってくるからいいじゃないかという気持ちがあったのだと思いますけれども、結果的にはそうならずに累積赤字でたまった。そういう経済政策の流れの経験みたいなものをこれからはどうしてもやはり生かしていくという努力をしてほしいな、こう思うのでございます。  同時に、今でこそ、新行革審等が打ち出しましたように「公共投資の重点化、効率化等」、これは立派なことが書いてありますね。しかし、本当にこういうふうに――今だってこうでなければならなかったのだけれども、どうしてもマイナスシーリングになりますと縄張りがあって、公共事業の配分あたりはどうもぎこちない姿でしかあり得ない。今度だってNTTのあの株の分だけはやっとうまくめり張りがついたけれども、その他は大体実績どおりというような感じを見れば見るほど、新行革審でこれからの経済構造改革をやっていくためにはどこに重点を置くべきか。  例えば、もう東京集中は地方分散しなければならぬ、情報の基盤整備あたりもどんどんやっていかねばならぬだろうと言いながらも、実際は新しく参入するところは配分が回ってこないということであってはならない、というふうにしていろいろとここに書いていただいておるのでございますが、こういうものが実際実現できるかどうか。これはまさにお役人の縄張りもあり、彼らの生きがいみたいなものがあって、本当にここに書いてあるような方向で公共投資が国のために行われる、官庁あって国があるというような、官庁あって風がないというそういう発想ではなくて国のために官庁があるという、そういう気持ちでこのような配分をしていただければ、私は、本当に効果的に重点的に事業が行われて社会資本の整備もスムーズにいくのではないか、こう思うのでございますね。そのあたりについて、ぜひ今後も御検討いただきながら頑張っていただきたいと思います。  時間が参りましたので、答弁は要りません。ありがとうございました。
  185. 砂田重民

    砂田委員長 これにて米沢君の質疑は終了いたしました。  次に、岡崎万寿秀君。
  186. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 日本共産党・革新共同を代表して質問いたします。  まず、マル優廃止問題についてです。  先日の衆参本会議で、我が党の代表がマル優廃止は国民に対する公約違反ではないかという質問をしたところ、これについては全く答弁がありませんでした。しかし、昨年の衆参同日選挙のときに、大型間接税とともにこのマル優の廃止についてもはっきりとやらないと約束したことは周知の事実であります。例えば、昨年六月二十八日の大阪、寝屋川市内での演説でこう言っています。これは新聞の切り抜きですが、「大型間接税とかマル優の廃止とか、そういうようなことを私がやるもんですか。」中曽根総理です。「野党のみなさんは、四谷怪談の時期だからお化けをうんともってくる。お化けにだまされないようにしてくださいよ」売上税廃止という問題が野党の言っているお化けだ、だまされるな、こういうことを演説されていますが、この事実は総理、認めますか。
  187. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 マル優の問題については、老人とかあるいは未亡人の母子家庭とか身体障害者とか、社会の弱い人たちは守ってあげなければならないが、不正は許さない、そういう演説を各地でみんなやってきたので、そのときもそういうことを他面で言っていますが、全体の演説の一部で急いで言ったときにそういうことをたまたま言ったのだろうと思います。どこへ行っても私が言ったのは、老人それから未亡人の母子家庭それから身体障害者、社会の弱い人のマル優は守らなければならない、しかし不正は許さない、そういうふうに演説してきておるのです。
  188. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 ごまかしてはいかぬと思いますよ。(中曽根内閣総理大臣「いや、本当だ」と呼ぶ)いやいや、やるというのとやらないというのは丸々違うのですよ。やらぬとあなたは言ったのでしょう。だから、このことを言っていないか、それとも忘れたか、それとも答えたくないか、その三つのどっちかでしょう。おっしゃっていただきたいのです。言いましたか。
  189. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 今申し上げたとおり、間違いありません。
  190. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 じゃ、言ったことは事実なんですね、流れの中で。やらないと宣伝しておきながら、弱者に対する特別な配慮で云々言ったと言ったってだめです。  もう一つ、神戸でこのように言っています。「大型間接税とか、マル優制度の廃止とか、そんなことはやらないとなん回も申しあけたとおり、」マル優制度の廃止はやらないと何回も申し上げたとおりとあなたは言っているのですよ。「野党の皆さんは選挙の材料がないものだから、なんだかんだといってそれで皆さんをおどかしている」こういうふうにあなたはおっしゃっているのです。この事実を認めますか。
  191. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 私がやった演説はもう一回帰って速記録を調べなければわかりませんが、私がはっきり言ってきたことは、今言ったように、社会の弱い人たち、これは守らなければならない、その弱い人たちとして老人それから母子家庭、それと身体障害者、これをはっきり言っておるので、間違いありません。そちらは調査不足ではないかと思います。
  192. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 はっきりとあなたはやらないと何回も申し上げたと言っているのですよ。私はテープを持ってきました。聞かせましょうか。このとおりのことをあなたは言っているのですよ。否定しますか。
  193. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 私が各地で言ってきたことは今言ったとおりです。
  194. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 はっきりとテープにも入っている。マル優制度の廃止はやらないと何回も言っている。そして、そういうことを言うのは野党がおどかしているんだということを言っておきながら、言わぬということはおかしな話ですよ。はっきりしたこれは公約違反じゃありませんか。政治家がそういうことでいいですか。
  195. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 NHKが各党首の演説を中継しましたね。私は岡崎でやりました。あの岡崎でやった演説を全国の皆さん聞いておりましたが、ちゃんとそれには言ってあります。これは私は後で聞いたから、よく確認しておるわけです。
  196. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 マル優制度の廃止をやると言ったのですか。あれこれ述べただけでしょう。やらないということを何回も繰り返したとあなた自身が言っているんじゃありませんか。
  197. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 何回も言うように、老人とかあるいは未亡人の家庭とかあるいは弱者、特に身体障害者の皆さん、こういう弱い者に対しては守るとはっきり言っているのです。
  198. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 それは言ったとしても、同時に、マル優制度の廃止はやらないと繰り返し言ったということを言ったでしょう。
  199. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 それを称して揚げ足取りと言うのですよ。
  200. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 自分ではっきりと言っておきながら、言ったということも言えない。まことに恥ずかしいんじゃありませんか。これは明らかな公約違反だ。政治家がそういうことでは国民に対して申し開きができますか。私は、これは断じて公約違反としてはっきりと国民立場から批判をしたいと思うのです。公約違反と認めませんか。
  201. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 そういう質問こそ恥ずかしい質問だと私は思っている。
  202. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 自分では言っておきながら、その真実を突かれると逃げるというのはまずいですよ。そして、こういう結果、大きな国民の批判があって、売上税と一緒にマル優廃止は廃案になりました。その力は何であったか。新聞の世論調査等を見ますと、八四%の人々がマル優制度の廃止には反対だ、賛成はわずか一二%しかいないのですね。売上税よりかはるかに多いのです。この大きな力が廃案になった。総理はその力を認めませんか。
  203. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 いろいろな要素があるでしょうね。
  204. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 いろいろな要素の一つにそういう国民の世論の力があった、これが廃案の力になったということは認めませんか。
  205. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 若干そういう面もあったとは思います。
  206. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 そういう国民の世論に謙虚に耳を傾けなくちゃいけないというふうに私は思います。  さて、国民の八四%がマル優廃止に反対したが、その中身というのが庶民には増税、そして大金持ちには減税、こういう中身になっているからこそ反対したというふうに思うのです。大金持ちの場合は、巨額な預貯金の利子が三五%から二〇%に一律引き下げられる。預金額一億円の人は年に五十九万円、十億円の人は何と七百三十四万円の減税になるのです。一方、生活を守るためにやっている庶民の預金というのは、これまでゼロであったのが一律二〇%の課税になりますので、利率五%としますと、百万円の人が一万円、二百万円なら二万円、五百万の貯金の人は五万円毎年ずっと税金を取られることになるわけです。  ところで、総理はどのくらい貯金なすっていますか。
  207. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 たしか総理大臣、申告しておりますから、たしか新聞に出ておりますからどうぞごらんください。
  208. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 調べてきました。資産公開に載っています。総理の貯蓄は五千百六十万です。定期、国債、信託に入っていますが、利率五%とすると、三五%から二〇%に利子課税が引き下げられるので二十八万の減税になります。ちなみに大蔵大臣は、もう聞きませんけれども、九千百七十一万の貯金でございます。総理よりちょっと多いのです。税金でまけられるのは五十三万円でございます。ニューリーダーと言われる竹下幹事長の場合も挙げておきますと、四千百九十八万の預金でございますので二十一万の減税、安倍総務会長の場合は四千百三十五万の預金でございますので二十万円の減税になります。これは額の多寡じゃないのです。パーティーなどで一日に何億あるいは十何億と稼いでいる方にはそうおっしゃるかもしれませんけれども、やはりこれは政治家として考えなくちゃいけない。マル優廃止で庶民には増税を押しつけながら政治家、自分たちは減税の恩恵を受ける。やはりそれは為政者としての良心にかかわる問題であろうと思いますが、総理、良心の苛責を感じませんか。
  209. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 マル優の問題についてあなたは御賛成してくださるのですか。
  210. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 随分問題をはぐらかして一あなた方がやればこういう結果になると言っているんですよ。反対だからこそ反対の質問をしているのじゃありませんか。良心の苛責を感じますか。
  211. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 法律のとおり実行するのが正しいことで、別にやましいことは絶対していない。それは金額の問題よりも率の問題を考えるべきです。松下幸之助が十億円の収入がある、税金で八億円持っていかれる、二億円残る、それで二億残ったとしても八億円という大きな金額を税金で取られていることを知らないで二億という金額だけに焦点を合わせる、これは間違いです。問題は率で言ってください。一生懸命働いてもうけた人は余計お金がたまるというのは自由主義の原則です。何も悪平等で一緒にしようなんて我々は考えていない。
  212. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 いずれにせよ庶民からはたくさんの税金を取りながら、あなた方も含めて大金持ちの方は大幅な減税になる、これが今度のマル優廃止の本質なんです。ねらいなんです。そこを厳しく指摘しておきたいと思うのですね。  ところで総理は、昨年四月の訪米の際に、国会にも語らずに前川レポートを持っていかれて、この中にはマル優廃止がはっきりと書き込んであるとアメリカに公約をされました。そして今回のベネチア・サミットでは、国会で廃案になったにもかかわらず、このマル優廃止について再び各国に言明をされてきました。あなたは約束したと言わずに願望を述べたまでだというふうに言われたが、それでもいいでしょう。しかし、少なくとも国会と国民がノーと言っている問題を外国にやるなどと意思表明をするということは、これは民主政治として許されますか。あなたの権限はそこまであるのですか、お答え願いたいと思うのです。
  213. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 サミットの席上で外国の代表から日本は貯蓄過多である、その原因の一つにはマル優という問題がある、そういう質問がかなりありまして、それに対して私は、この問題は改革を今やろうとしておる、したがって、この間税法として提出したけれども、残念ながらこれは成立しなかった、できるだけ早い機会にこういうものは改めたい、そういう願望の表明をしたのであります。理由は、今までここでるる申し述べたとおりであります。
  214. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 少なくも国民の八四%が反対し、そして国会で廃案になったのを、あなたが国際の舞台でそういうことを言われるというのは主権在民の精神に反すると私は思います。  さて総理は、マル優制度の廃止の理由について、貯蓄率が高くて経済摩擦の原因として国際批判があることを挙げられています。そもそもこの貯蓄率の国際比較なるものがちょっとおかしいのですよ。住宅ローンの支払いまで貯蓄、と見られて、実態を確かに反映していない点があります。  そこで、労働大臣にお聞きします。  労働省が五月に出した報告、この中で、老後を人並みに暮らすには厚生年金だけでは足りない、六十五歳以後生活するためには千五百万ぐらいの貯蓄が必要だ、こういうふうに言っているのですね。日本人の貯蓄の多くは、余裕があってやっているわけではない。老後の暮らしの不安のために、あるいは病気の用意のために、住宅をつくる、それから教育にかかる、こういうことのために旅行に行きたくてもそれをやめて、つくりたい洋服もやめながらためているのが実情じゃありませんか。その勤労者の状況について、労働大臣、どうですか。
  215. 平井卓志

    ○平井国務大臣 ただいま委員の御指摘になりました約千五百万、この数字でございますが、これは勤労者の老後生活安定対策研究会報告という報告で出ておる数字でございまして、平均的な高齢者夫婦世帯の希望生計費等をもとに試算いたしますと約千五百万。また、厚生年金四十年加入の標準モデルをもとにいたしますと九百十五万程度が必要ではないか、こういうふうな試算の数字になっております。
  216. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 ともかく、勤労者が老後を生活するためにはたくさんの貯蓄が要るんだ、これが貯蓄率を上げている原因なんですよ。その原因をそのままにしておいて、貯蓄率が高い、国際的に批判されるからこれを削るというのはおかしな話なんです。  通産省の産業構造審議会の答申を見ましても、はっきりと日本が貯蓄率が高い理由についてこう述べています。日本の貯蓄率は国際的に格段に高いものとなっているが、住宅価格、教育費が所得に比して相対的に高いこと、不時または病気あるいは老後の不安に備える必要があることなどが貯蓄を高める構造的な要因として指摘される。一方、アメリカにおいては、住宅ローン控除、消費者ローン控除等税制上貯蓄縮小型の政策がとられてきていることは日本とは対照的である。この問題をはっきりしないで、外国から、貯蓄が高い、だから内需が進まない、こういうことを言われると、すぐ、はいそうですか、マル優制度を廃止しようという形で庶民いじめをやる、こういうことはやめなくてはいけないと思います。  そこで、またもう一つある。政府のマル優廃止の理由としては、不公正な理由があっちこっちにあるからだというふうに言っていますけれども、これは、ほんの一握りの不心得者のために大多数の、貯蓄をし、老後のためあるいは生活のために貯金している庶民に大迷惑をかけよう、巻き添えにしようとしている、こういうことを許してはいけないと思うのです。  私はここにパネルを持ってきました。委員長、御許可願います。見てもわかるように総務庁でつくった貯蓄動向調査でございます。勤労者の中で一番貯蓄している最頻値、頻度の多い、これはわずか百九十三万円です。百九十三万円なんですよ。そして、平均値が七百三十三万円です。御承知のようにマル優は一人九百万、夫婦にしますと千八百万まで枠があるわけですね。千八百万はずっと減っているのですよ。これは千五百万以上がここです。千五百万はここなんですよ。大多数の人々はまじめにその枠内で貯蓄をし、その利子をためながら老後に備え、病気に備えているのです。だから、不心得な者というのはこれより先の方にいる人たちなですね。  そこで、聞きますけれども、こういう一般の庶民が不正をする必要もないし、する必要がないと思うけれども、これは基本的に認めますか。一般の庶民は限度枠内にしか貯金していませんので、だから不正に当たらないということなんですね、不正する必要もないということなんですね。そのことを認めるかということを聞いているわけです、基本的に。
  217. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 不正と申しておるわけではないのでして、例えば今ちょうどお話しになりましたが、夫婦二人ですと千八百万円でございますか、四人標準世帯ですと四、九、三千六百万円でございます。その三千六百万円の元本、これが仮に五分に回るといたしますか、百八十万円になりますが、その二〇%は三十六万円でございますから、その三十六万円を今全然払っていただいていないのを払っていただけませんか、こういうことでございます。
  218. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 私の質問したのは、不正の問題なんですよ、不正の問題。不正利用している人は一般の庶民が、そのことを聞いているんですよ。
  219. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは、恐縮ながら庶民ということを定義していただきませんと、それはわかりません。
  220. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 先ほどパネルで見せましたように、大多数の人々はその限度の枠内でやっているんですよ。不正しようにもしようがありません。やっているのはやはりそれ以上に持っている大金持ちじゃありませんか。それを庶民にしわ寄せする、庶民からそのことを理由に巻き添えにして税金を取るというのは筋が違うのじゃありませんか。そのことを聞いているんです。
  221. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 何度も申し上げているとおり、これは不正だからということを言っているわけではないのでございます。何のために資産所得が免税になるのかということを言っておるわけです。
  222. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 不正も理由の一つに挙げられたでしょう。総理もそう言われましたね。
  223. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 そこで、こういう制度は間々不正な方法に使われやすいということは事実であります。
  224. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 所得を言うならば、キャピタルゲインとかなんとかもっともっとありますよ。そういうことは理由にならぬです。なぜ不正を理由になしているのか。不正といっても、一般の庶民じゃなくて、とにかく大金持ちがやっている、そこにメスを入れなくちゃいかないということを申し上げているわけでございます。  そこで、例えば昨年でございましたけれども、撚糸工連事件というのがございました。固有名詞を挙げて恐縮ですけれども、これは政治家であり国務大臣でしたから、はっきりと申し上げましょう。稻村佐近四郎元国務大臣、彼は中曽根さんの派の幹部のお一人でございましたが、報道では、東京地検の捜査の際に彼の秘書宅からマル優の貯金通帳が九十余通、その金額は二億数千万円出てきたというふうにはっきり報道されています。明らかにこれは税金逃れのために、脱税のためにマル優を悪用したとしか言えないと思うのです。国税庁は国民の疑惑を晴らすためにどういう対処をされましたか。
  225. 水野勝

    ○水野政府委員 金融機関につきましてのマル優の調査につきましては、毎年金機関の一〇%程度の店舗にお伺いして調査をいたしておるところでございまして、数百億円程度の追徴が挙げられているというふうに聞いております。
  226. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 あなた、何を言っているんですか。私の聞いたのは、稻村佐近四郎氏のこういう九十通という貯金通帳をつくった悪用について聞いているんですよ。
  227. 水野勝

    ○水野政府委員 そうした全体のマル優の監査の結果をただいま申し上げたわけでございまして、個別のケースにつきましては、こういうケースにつきましては従来から御答弁を差し控えているというのが国税庁の態度ではないかと思うわけでございます。
  228. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 個人といいましても、彼は政治家ですよ。あなた方も資産公開されるように、政治家は天下明朗でなくちゃいかない。その中で九十通のマル優利用の悪用の通帳をつくっている。これがはっきりと出たからには、国民が納得するように調査するのが国税庁の仕事じゃありませんか。私が国税庁当局に調べたところ、貴重な資料として適切に対処しています、こういうふうに言いました。事実を認めているんです、中身は言わぬけれども。  しかし、中身が問題です。こういうことをのさばらしておくから、いつまででも不正がはびこるのでございます。これは意図的な脱税でございますから、所得税法二百三十九条違反です。これは「偽りその他不正の行為により、」所得――この中には利子所得も入るわけですが、「免れた者は、三年以下の懲役若しくは五十万円以下の罰金」、証拠も挙がっているんです。こういう悪事についてどうしてしっかりと取り締まらないのか。こういう不正を見逃しておいて、不正がある、あると言ってマル優制度の廃止をやろうとする、そこが問題なんです。どうです。
  229. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 そういう報道がございましたら、真実か否かは別として、国税庁としては当然関心を持ったものと思います。それにつきましては適正な処理をしておるに違いありません。これは個人のことでありますから申し上げることはできない。今国税庁はお呼びがありませんからおりませんけれども、またお呼びがありましても同じ返事を申し上げると思います。
  230. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 こういうことを見逃しておいて、そして、この不正はもう取り締まることはできないんだ、手の打ちようがないんだ、だからマル優制度の廃止が必要だということを盛んにここでもおっしゃっている。そうじゃないのです。取り締まろうと思えばはっきりできる。こういう不正利用者はそう数が多くないのです。また、銀行も加担している事実があります。こういうこともきちっと取り締まらなくちゃいけない。グリーンカードなどしなくたって、はっきりと本人の確認と、さらに、名寄せというのがあります。どうして埼玉県の朝霞につくったADPという、そういうコンピューターシステムを使わなかったのですか。こういうことをやろうとしないで、そして、マル優制度を廃止して庶民からたくさんの税金を取る、大企業、そして大金持ちについては減税をしてやる、そして、その安定的な財源を軍事費の方に持っていこうとしている、こういうところが私は問題だと思うのですよ。  こういうことについて総理、どう思いますか。総理です。
  231. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 先ほどはマル優の受益をしているのは所得の小さい人がほとんどだとおっしゃって、今度は金持ちの方だとおっしゃるのですが、どちらなんでしょうか。
  232. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 何を聞いているのですか。私はそんなことは言っていませんよ。ちゃんと人の言っていることについて聞いてからおっしゃいませ。
  233. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 マル優制度を廃止するのは軍事費のためだというのは、全く荒唐無稽の話です。
  234. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 軍事費がどんどんふえているわけでございます。それはいろいろなところからも金は持ってくるでしょうけれども、軍事費をふやすための安定的な財源がこういう形で確保されていく、そのために大増税をやろうとしている、こういうことを私はゆゆしい問題として指摘したいと思うのです。  こんなふうに庶民いじめの大増税をしなくても、財源はいっぱいあります。今言った軍事費だって、正面装備費を削るならば一兆八千億円あるはずなんです。さらに、今もうけ過ぎてもう二足という天文学的数字になっているマネーゲームとかそういうところから、有価証券取引税等をわずか〇・一%、千分の一ちょっと上げるだけでも相当なお金が入ってきますし、さらにまた、外国税額控除などのこういう大企業優遇税制、これをはっきりするならば、これは四兆円ぐらいのお金が入ってくるはずなんですね。我が党は、そういうお金を財源にしてから、増税なしの三兆円の減税を要求しているものです。そういう姿勢をしっかりとってもらいたい、そして、マル優制度廃止はやめてもらいたい、そのことを強く要望しておきます。  続いて、関連質問に入ります。
  235. 砂田重民

    砂田委員長 この際、正森成二君より関連質疑の申し出がありますので、岡崎君の持ち時間の範囲内でこれを許します。正森成二君。
  236. 正森成二

    ○正森委員 私は、日本共産党幹部に対する電話盗聴事件に絞りまして、許された範囲内で関連質問をさせていただきたいと思います。  この事件は、日本共産党の緒方靖夫国際部長の自宅を電話盗聴した事件でございますが、盗聴者は一九八五年七月ごろから、緒方氏宅から約百五十メートル離れたメゾン玉川学園二〇六号室、ワンルームマンションでございますが、そこを借り受けた上、この建物前の電柱上の端子面内で緒方方電話回線と二〇六号室電話回線とを接続して、二〇六号室内において緒方方電話回線の通話を盗聴した、こういう事案であります。  この二〇六号室内には、テープレコーダーや録音記録を消去した形跡のある録音用テープ、電話回線のつなぎに使われた部品など、電話盗聴を裏づける証拠が、我が党の緒方国際部長が申請しました民事の証拠保全において見つけられております。さらに、この部室からは、衣類、新聞雑誌、メモ類のほか、神奈川県警職員共済組合関係文書など約三百点に上る証拠品が押収されております。  このような電話盗聴を他人の私宅に対して行うということは、これはだれに行われたとしても国民は皆気持ちが悪くて仕方がないと思うのですね。プライバシーの重大な侵害であります。しかし、それと同時に、六百万の国民の支持を受けている公党の幹部を盗聴するということはゆゆしい大事であります。これは、プライバシーはもとより、言論、表現、思想、信条、結社の自由及び通信の秘密など、基本的人権をじゅうりんする重大な犯罪行為であると言わなければなりません。かつてアメリカのニクソン元大統領は、野党民主党本部に盗聴器を仕掛けたウォーターゲート事件でアメリカ国民の厳しい批判を浴びて、一九七四年七月にそれが主な原因になって辞任に追い込まれたことは記憶に新しいところであります。  そこで、総理に伺いたいと思います。  この事件が公になりました昨年十二月九日の内閣委員会におきまして、我が党の松本善明議員の質問に対し、総理は事件の性質について、「民主主義社会における公益、安全を害する大きな侵害行為であると考えております。」こう答弁されました。さらに、「厳正公平な捜査が行われなければならぬ、」と思うかどうか、こういう質問に対して、「あくまでも厳正、公平に、公正に、だれであろうと、それは遠慮することなく行うべきであると考えております。」こう答弁されております。このお立場は今ももちろん維持されると思いますが、念のためお伺いいたします。
  237. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 その立場は一貫して変わりません。厳正公平な捜査が今も続行していると確信しております。
  238. 正森成二

    ○正森委員 この事件は、その後捜査が進展いたしまして、押収品の分析、文書類の筆跡鑑定、この部屋の中には複数の指紋が残されております。また、毛髪から血液型が検出されまして、その結果、この盗聴を行った二〇六号室に出入りし、盗聴の実行行為をしたと見られるのは、神奈川県警公安一課所属の警察官であるということが明らかになり、そしてその事情聴取も行われているところであります。これは、複数の警部補あるいは巡査、また巡査部長とも報道されております。  また、この二〇六号室の賃貸借契約については、賃借名義人は二十三歳の青年でありますが、その父親が同じ神奈川県警公安一課の警部補でございます。また、保証人になっているのは元公安一課の警察官であり、その保証人として不動産屋に提出するために住民票の交付が必要でありますが、その交付の申請をしたのは公安一課の現職警察官であります。  こういうように、警察官が関与した疑いが極めて濃厚である、またその容疑が極めて濃いというのがこの事件の特徴であると申さなければなりません。警察はそもそも、基本的人権を擁護して、国民の生命財産を守らなければならない立場のものであります。また警察法によれば、不偏不党で公正でなければならない、こういう立場であるにもかかわらず、こういうことをもしやったとすれば、それは極めて重大であると言わなければなりません。  そこで、国家公安委員長に伺いたいと思います。  私は新聞に報道されていることを若干言いましたが、その細かいことを言えばあなたは、捜査中だからお答えになれない、答えられないと言われるでしょう。  そこで、簡潔に聞きますが、この緒方国際部長の自宅の盗聴事件に警察官が関与した、こういう容疑を持たれて東京地方検察庁の特捜部で取り調べの対象になっているという事実だけは認めますか、認識されておりますか。
  239. 葉梨信行

    ○葉梨国務大臣 その件につきましては承知しております。
  240. 正森成二

    ○正森委員 国家公安委員長が、警察官が容疑者、被疑者であるという事実だけはお認めになりました。これだけでも重大なことですね。しかもすべてのマスコミは五月七日、八日にかけて、公安一課の巡査がまず東京地検特捜部の事情聴取を受けましたが、それに関連してほとんどすべての新聞、私はここに一般紙の切り抜きを全部持ってまいりましたが、ほとんどすべての新聞は、県警が関与した、しかも組織的犯行である、こういうぐあいに報道されております。もちろん我が党の赤旗は真っ先に報道しておりますが、赤旗だけではないのですね。朝日、毎日、読売、それから我が党が必ずしも良好な関係になかったことがあるサンケイ新聞とか、いろいろな新聞が全部、警察官の関与だ、組織的犯行の疑いがある、こう言って報道をしているのですね。  そこで、警察庁長官に伺いますが、こういうようにマスコミに広く報道されている事実は認めますか。公知の事実ですね。まさか新聞を読んでないとは言わないでしょう。
  241. 山田英雄

    ○山田(英)政府委員 新聞報道については承知しております。  ただ、これまでの神奈川県警における調査結果によりますと、神奈川県警においては電話による盗聴は行っていないという報告を受けております。警察官がどの程度関与したかにつきましては、捜査の結果にまちたいと考えております。
  242. 正森成二

    ○正森委員 今、そういう御答弁でありますが、それでは警察庁長官にもう一つ伺いたいと思います。  昭和二十九年の九月、――大分古いことでありますが、鳥取市で盗聴事件が発生しました。九月十五日のことでありますが、警察では盗聴という言葉が嫌いで秘聴器と言っておるのですね。後藤田官房長官などはよく御存じだと思います。そこで、昭和二十九年の十一月の一日、二日、四日、三日間にわたって参議院の法務委員会で関係者の参考人質疑が行われました。この事件について、大体どういう事件であったか簡潔に答えてください。
  243. 山田英雄

    ○山田(英)政府委員 お答えいたします。  ただいま御指摘の事件は、鳥取県警察本部で当時行われたケースだと思いますが、これは昭和二十七年の一月に、当時日本共産党札幌地区委員委員長村上国治ほか七名によりまして敢行された白鳥警部射殺事件という事件がございました。共産党が軍事行動を展開しておった中の事件でございます。その捜査のために、昭和二十九年の八月十三日から約一カ月間、日本共産党の鳥取地区委員会が会議及び連絡等の場所として使用しておりました鳥取市内のアパートの一室に、同アパート管理人の同意を得て、秘聴器といいますか会話を聞くことができるものを取りづけたという事案でございます。  これにつきましては、その以前にもそういう秘聴器を取りつけたケースはございまして、これは昭和二十六年の十一月……(正森委員「それは聞いておらない。簡単に」と呼ぶ)今のケースについてお答えいたしますと、そういうことでございます。
  244. 正森成二

    ○正森委員 今、警察庁長官がお答えになりましたが、当時の参議院の法務委員会の記録を見ますと、警察は、事が明らかになった当初は関与を全く否定していたのですね。それが、五日たってから警察官が関与しているということを認めたわけです。その経緯を、当時の参議院の法務委員会の昭和二十九年十一月二日の議事録を見ますと、県の公安委員長がこう言っております。警察が進んではっきりとかくかくでありますというお話をすることは、捜査上に影響のあるごとはもちろん、協力していただいた田中中村両氏にも御迷惑になることでございまして、警察といたしましては知らんと拒否いたしておつたのでございまするが、十六日の新聞を読みますと詳細を載せまして、しかも山根警部補がやったとほとんど断定いたしておるのでございます。(中略)警察としては捜査上の不便はあっても、公表しなければならないのではないかという神田本部長の意見もありますし、鳥取県公安委員会といたしましても、警察の民主化の意味からも、あるいは県民の管理しておる警察が県民の疑惑を受けるようなことがあってはならないと、内容を県民に公表すべきだという委員会の意見が一致したのでございます。こういうように言っているのですね。しかし、そのときは、当時の議事録を全部見ましても、今、山田長官は白鳥事件のためにああいうことをやったのだと言っておりますけれども、事件の件名、個人の名前はもちろん、その性質、例えば殺人事件とか傷害事件とか強盗事件とか、そういうことを言うだけでも相手方に感づかれる可能性があるから言えない、こう言っているわけですね。  今はもう大分たったからと思ったのかしれませんが、あるいはそう言うことによって何らかの打撃を質問者側に与えようと思ったのかもしれませんが、わざわざと白鳥事件だというようなことを言いましたけれども、ここで言いたいのは、警察は、この当時はですよ、警察官が関与した、こう言われて、その内容がある程度暴露されたら、初めは否認していたのだけれども、そういうぐあいに否定していたら県民に対する疑惑を招くということで、進んで積極的にある程度のことを発表しただけでなく、国会へも出てきて、堂々とこれこれこういうわけで秘聴器を使わざるを得なかったのだ、秘聴器といいましても電話盗聴ではありません、集音器を壁に仕掛けておったわけですが、そういうことを言っておるのですね。  それに対して、今度の神奈川県警あるいは警察庁長官の態度はすこぶる解せない。今度は、単に共産党やあるいは一部の民主団体と言われるものが言っているだけじゃないのですよ。国家公安委員長が認めたように、捜査機関のもう一方である検察庁が、警察官がやった疑いがある、こう言って取り調べをしておるという状況なんです。  法務省に伺います。法務省、検察庁、その中でも特捜というのは、ロッキード事件などで検察の捜査機関の中では最も精鋭な部隊であるというように国民は思っております。その特捜がわざわざ、同じ捜査機関であり権力を持っておる神奈川県警の現職警察官を、全く容疑がないのに調べるというようなことが一体あるのですか、十分に容疑があった上で調べているのじゃないのですか。
  245. 岡村泰孝

    ○岡村政府委員 本件につきましては、ただいま東京地検におきまして捜査中でございます。検察当局は捜査をいたしておる立場にあるわけでございまして、したがいまして、捜査の具体的内容にわたりますことにつきましては答弁を差し控えたいと思っておるところでございます。
  246. 正森成二

    ○正森委員 今言いましたのは、捜査の内容については答弁を控えたいと言いますが、特捜部が捜査をしているということは否定しませんでした。そして、現職の警察官を呼び出す以上、被疑事実を疑うに足る何らかの証拠がなければ呼び出すなんということはあり得ないのですね。私は、今取り調べ中であるという言明によって、出頭を命ずるだけの相当な証拠があったということを間接的に認めたものだと思って、次に移らせていただきます。  そこで、前の鳥取市の事件に移りますが、その当時は警察庁もなかなか民主的だったと見えて、当時の長官は斎藤昇警察庁長官でありますが、その御親族の方が閣僚にもおられるようでありますが、その議事録を見ますと、すこぶる率直に答えておるのですね。そして、こう言っております。当時の警察庁長官の斎藤昇氏は、この供述の中で、少なくとも府県の主務課長はこういう秘聴器の事件を承知しておる、本部長も知ることが望ましい、今後は本部長も秘聴器を使う場合は承知するよう指導したい、こういうように明白に答弁しているのです。つまり、この答弁を見ますと、単なるピストル事件だとか泥棒事件だとかそういうものは本部長まで知る必要がないけれども、秘聴器を使うというようなそういう特別な事件については、主務課長、つまり公安一課長あるいは警備、そういうところの課長はもちろん知っておる、しかしそれだけでなしに、本部長も報告を受けるようにこれから私はいたしますということを答弁しているのです。  そうだとすれば、本件は警部補が二名関与しておる、そして資金が百六十万円も要っており、新聞に広く報道されているところでは、神奈川県警の近くの都民銀行あるいはもう一つの銀行から振り込まれて、事件が新聞で発覚したら、その直後に神奈川県警の二人の警察官がその口座を解約しておる。解約している状況は銀行の防犯カメラにばっちりと映っておって、それは東京地検特捜部に押収をされて、氏名も特定されておるということが広く報道されているのです。そうだといたしますと、これは全く組織的な犯行であると言わなければなりません。主務課長である公安一課長が知らないなんということはあり得ない。警備部長が知らないなんということはあり得ない。また、この斎藤昇氏の供述によれば本部長が知らないということもあり得ないし、警備警察の筋からいって警察庁の警備局長が知らないということもあり得ないのです。したがって、組織的犯行として検察庁は調べなければならない性質のものであるというように私は考えるものであります。  そこで、警察庁にお伺いしたいと思いますが、最近、相次いで警察官の上級者が辞職をしております。中山好雄神奈川県警本部長、これは辞職。吉原丈司警備部長、これは転出。三島健二郎警察庁警備局長、これは辞職。小田垣祥一郎公安一課長、これは転出というように、本件に極めて密接な関係があるいわば組織的な上司がいずれもこういう辞職ないし転出、こういうことになっております。そして、ここに一連の新聞を全部持ってきましたが、これは事件についての引責辞職である、あるいは引責の転任である、こう見られるというように広く報道をしております。これについて警察庁長官の答弁を求めたいと思います。どういう人事ですか。
  247. 山田英雄

    ○山田(英)政府委員 ただいま御指摘の人事を含む一連の人事異動は、この臨時国会を前に、毎年夏に行っております定例の定期異動を早めたものでありまして、主要なポストについて必要な人事刷新を図ったということでございます。
  248. 正森成二

    ○正森委員 そうすると、本件についての引責人事だとか責任をとったものだということでは全くない、こういうことですね。
  249. 山田英雄

    ○山田(英)政府委員 そうでございます。
  250. 正森成二

    ○正森委員 それでは法務省に伺います。  本件は、我々は組織的な犯行であることは疑いない、こういうように思っておりますが、検察庁はいまだ強制捜査を行っていない。それだけでなしに、巷間伝えられるところによれば、今証拠が挙がっているのは下っ端の公安一課の警察官だけである、しかし、これは組織的犯行だという疑いが十分だが、取り調べをしても黙秘もしくは否認をしておるということで、現段階では上級者まで起訴することはなかなかできない、そこで、不公平であるということで全部不起訴にする、あるいは相手が同じ権力機関の警察であるから、仁義か何か知らないけれども、不起訴にするというようなマスコミの報道もございます。  一般的に、起訴にするか不起訴にするかというときには、その被疑事実の容疑があるかだけでなしに、情状の点が判断する場合には大きなウエートを占めます。その情状の場合には、公務員の場合には、責任感じて辞職したとか懲戒免職になったとかいうことは重大な情状であると言わなければなりません。しかし、今警察庁長官は、わざわざ私がそういうことでも言うかと思って聞いたら、一連の人事異動であって引責辞任では全くない、こう言っておりますね。そうだとすれば、将来、検察が処分を行うに当たって、このような人事異動は全く考慮する必要のないものである、こういうぐあいに総理もおられるこの公の予算委員会で警察庁が公式に言明したということにならざるを得ないと思いますが、それを認めますか。
  251. 岡村泰孝

    ○岡村政府委員 ただいま東京地検におきまして捜査中でございまして、どう処分するかについて結論はいまだ出していないと聞いておるところでございます。したがいまして、ただいまの御質問に対しましても何ともお答えがいたしかねると思うわけでございます。
  252. 正森成二

    ○正森委員 一般論として、公務員が犯罪を起こしたと疑うに足りる理由があるときに、その関係者が辞職あるいは転出しても、それがその事件と全く関係がない場合には、処分の情状上考慮する必要がないことではないか、こう聞くのです。
  253. 岡村泰孝

    ○岡村政府委員 情状といたしましては、具体的な事件に即しましていろいろの角度から判断されるべき事柄でございますので、一般論としてどうこうということを今あらかじめお答えすることは非常に困難であることを御理解いただきたいと思います。
  254. 正森成二

    ○正森委員 法務大臣、二言お答えになってください。余りにも今の刑事局長の答えは、あれで検察ができるのかというぐらい頼りない答えですよ。
  255. 遠藤要

    ○遠藤国務大臣 本件につきましては、さきに総理が既に御答弁されているように、厳正公平に対処していくということに承知をいたしておりますので、今警察庁長官のお話によりますると、定時的な異動に対しては検察当局としては何ら関与しておらぬ、こう承知をいたしております。
  256. 正森成二

    ○正森委員 法務省の刑事局長の答弁も非常に国民から見て納得のいかない答弁ですけれども、法務大臣の答弁も同様である、こういうように思いますが、しかし、もう少し真剣に検察の使命を考えなければいかぬですね。現職の、現在の検事総長は、自分の著書等で、巨悪を逃がさないということを言っているのですね。  それから、ここに私はロッキード事件での最高裁に対する嘱託尋問調書についての合法、違法が問われた決定を持ってまいりました。その中で、東京地裁の決定ではこう言っております。これは名前を挙げて失礼ですが、田中角榮氏の受託収賄罪に関連する事件であります。「人は病気に罹ることを虞れるべきではなく、その治療手段のないことを虞れるべきである。権力の腐敗は民主主義的法治国家にとって忌むべきことではあるが、事前にこれを根絶する有効策によし欠けるとしても、これを剔抉し、糺弾する司直の機能に誤りなくんば、なお国家の基盤は安泰を保ち得るのである。もしそうでないとすれば、国民の間に著しい政治不信を招来し、ひいては現行国家体制そのものに対する疑念すら生じかねないのである。」こう言っています。いいですか、これは裁判所が言っていることなんですよ、共産党が言っているのじゃないのです。  今、公党の幹部に対する盗聴が、権力を使って捜査をする一方の当事者である警察で行われた、こういう疑いが持たれているのです。その場合に、これを捜査し、ただし、そして裁判所に公正な判断を仰ぐもう一つ国家権力としては検察庁しかないのですよ。もし検察がやらなければ、不告不理の原則から裁判所も出動することができないのです。だから、検察がだらしがなければ裁判所も司直の手を動かすことができないのです。そうだとすれば、この決定が言っているように「これを剔抉し、糺弾する司直の機能に誤りなくんば、なお国家の基盤は安泰を保ち得るのである。」というぐあいに言えないじゃないですか。  そういう国民から負託された重大な権限を検察が与えられているのに、この重大な事件についていまだに強制捜査をやろうとしない。そして一般論として警察はあの人事異動も全然関係がない、いまだに警察がやったということも十分認めないのだから、全然反省がないじゃないか、それは情状に酌量の余地がないじゃないか、捜査のやり方にも酌量する余地がないじゃないかと言っても、刑事局長はまともに答えない。これでは国民は検察を信頼することができない。これでは検察は、言葉は悪いが、警察に遠慮をして恩を売るようなつもりであっても、結局は警察からなめられ警察の走狗になる、こう言い切ってもいたし方がないんじゃないですか。それはただに我が国の検察にとって不名誉であるだけでなく、国民にとっても大きな不名誉であると言わなければならないと思います。  ここに八七年七月五日付のサンデー毎日があります。この見出しにはどう書いてあると思いますか。「「盗聴事件」の神奈川県警に言いたい「ウソつきはドロボーの始まり」」こう言っているのですよ。いいですか。警察というのは泥棒を取り締まる組織じゃないですか。ところがうそばかりついておる。うそつきは泥棒の始まりだ。それが国民の警察に対する信頼を失わせているのです。しかも、それを剔抉し、ただすべき検察が今の答弁のようなていたらくでは、これはロッキードの決定からいえば、国家の安泰を期することはできないんじゃないですか。  私は時間がございませんので、最後総理に伺いたいと思います。  総理は、松本善明議員の質問に対して、先ほど私が確認したような答弁をされました。私は、この事件は日本共産党に関係するだけでなしに、全国民の権利、また政党政治民主主義的なあり方について関係する事件であると思います。これについて総理がどのように考えておられるか、前のお考えはお変わりがないかどうか、最後に伺って、私の質問を終わらせていただきます。
  257. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 まことに遺憾な事件でございますが、厳正公平に処理いたします。
  258. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 続いて核兵器廃絶問題についてお尋ねをいたします。  核兵器をめぐる世界の大勢がどう動いているのか御質問したいと思いますけれども、中曽根政権の前半は、レーガン大統領の限定核戦争論や米ソの核軍拡競争、これが非常に激化していることが特徴的でございました。しかし、今日は相当変わってきているわけです。核兵器廃絶そして核兵器の大幅削減へ向けて世界の流れが大きく変化しつつある。  例えば一九八五年の国連総会でございますけれども、そこでの事務総長報告を見ますと、核兵器全面禁止を国際法に含めるためにさらに努力すべきである、つまり国際法に含めよ、核兵器廃絶協定をつくれということを国連の事務総長が言うに至っているわけですね。さらに、去年九月の非同盟首脳会議では、核兵器廃絶はたくさんある問題の中の一つではなくて、今日の最も緊急の任務である、こういう位置づけも行っています。     〔委員長退席、野田委員長代理着席〕 さらに、日本の広島・長崎アピール、これは核兵器廃絶ということは人類の死活にかかわる緊急の課題だということを全世界に訴えたアピールでございますが、総理は御存じであるかどうか知りませんけれども、これは既に世界の百五十カ国に広がっているわけでございます。  こういう大きな世界の反核の動きを受けまして、米ソ間でもかなりの変化が起こっています。一九八五年一月の米ソの外相会議では、あらゆる領域における核兵器の廃絶、これを目指すということが確認されましたし、さらに昨年一月、ゴルバチョフは期限を切って核兵器の廃絶を提案しているわけです。そして、去年の十月のレイキャビクでの首脳会談を通じまして、今日では欧州のINF、中距離核ミサイルの全廃の交渉が進んでいるわけです。これも従来の核軍拡競争のルールづくりであった核軍備管理の交渉ではなくて、本当に核兵器の廃絶を、そして大幅削減を目指そうという運動になってきている、交渉になってきている、ここが大きな大勢であろうというふうに思うのです。  こういう世界の大勢の中で、総理はこの間のベネチア・サミットに行かれて、東西関係に関する声明をつくる場合イニシアチブをとられたそうでございますけれども、核兵器は必要だとする核抑止力論、このことは盛り込まれていますけれども、核兵器廃絶という言葉は一言もございません。総理は、日本総理として核兵器廃絶を盛り込むためにどういう努力をなされたのか、主張をされたのか、お答え願いたいと思います。
  259. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 核兵器廃絶はかねてから私が主張しておるところであり、ベネチア・サミットにおきましても同じように主張してきたところであります。ただ、現実的な軍縮交渉におきましては、均衡論に基づく抑止力、そういう議論に立っておりまして、いよいよレーガン・ゴルバチョフ会談を迎えるに当たりまして、このレベルダウンの水準をできるだけ低くするように、そのためにソ連の方もアメリカの方も誠実に努力してくれるように、そういう趣旨のもとにあの声明は出しましたが、建設的な対応を期待する、そういう趣旨の言葉で出ておると思っております。
  260. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 イニシアチブをとられたにもかかわらず、核兵器廃絶を盛り込むような努力はなかったわけでございますね。やはり方針を決めるわけでございますから、その方針の中で日本国総理としては核兵器廃絶を盛り込むように努力すべきであったというふうに思うのです。     〔野田委員長代理退席、委員長着席〕  あなたは、世界の大勢を見る場合、旧態依然として対ソ脅威論、これがどうも吹っ切れていないような感じはいたします。それを口実にしてシーレーン防衛とかエイジス艦を購入するとか軍事費を増大するとか、いろいろなことがなされていますけれども、しかし、ソ連を含めて情勢は変わってきているわけでございます。いつまでもソ連脅威論に立って軍拡をやろうとすることはもう口実がなくなりつつある、こういう動きも見ておく必要があろうと思うのです。  さらに、中曽根内閣五年間の歴史を見ますと、やはり世界の大勢に逆らって、核兵器廃絶、これに対する逆流としていろいろな妨害的な発言も行動もなさったようでございますけれども、こういうものの集中的なあらわれが、たびたび持ち出しているこの自民党の核パンフレットでございます。きょう、この問題について集中的に聞きたいと思いますけれども、「「非核都市宣言」は日本の平和に有害です」、全国千百三十にわたる自治体で、日本国民の五五%も住んでいるその地域で非核都市宣言が広がっていますが、これが日本の平和に有害ですというパンフレットが出されています。  この問題につきましては、昨年、我が党の不破委員長質問しまして、一部訂正されました。一番最後の「「核兵器の廃絶」は、日本の平和を破壊します。」このところに「一方的」というゴム印が押されました。このところで総理は私の質問に対しても、もうこれで正しくなったんだ、理論的に間違っていないというふうにおっしゃいましたけれども、昨年の衆議院でございますが、今一方的に核兵器を廃絶しようとしている国やあるいは運動がございますか。
  261. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 一方的に廃止するという主張や何かがないとは限らない。相手が何を言おうと、思おうと、自分の方でこれはやめたと言えば、それは天に通ずる、そういうような宗教的な響きすら感ぜられる、そういう主張もないわけではない。
  262. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 だれが言っているか知りませんけれども、今アメリカとソ連を中心に核兵器が持たれている。双方持っているのを片方だけなくそうという主張は、これはないんですよ。なくす場合は一緒になくしなさい、全世界から核兵器をなくしなさい、これが世界の声じゃありませんか。そのことについてこのパンフレットは批判をしているわけでございます。こう書いているのです。「「核兵器の一方的廃絶」は、」この「一方的」は判こを押していますけれども「日本の平和を破壊します。」という題で、「人類に対して巨大な破壊力をもつ「核兵器」を廃絶することは、非常に好ましいことのように思われがちです。」そうじゃないということなんですよ。そして、核兵器がみんななくなることはだめだ、反対だという理由を二つ挙げています。  その一つは、「「核兵器の廃絶」が達成されても、通常兵器やBC兵器が同時に廃絶されない限り、「核兵器の廃絶」は逆に世界を戦争に巻き込みかねません。」もう一つは、ソ連は絶対に核兵器の廃絶をしないという現実を直視する必要がある。この二つの理由を挙げているのでございますが、それでは最初の方からお聞きしますけれども、ここに書いてあるように、通常兵器がなくならない限りは絶対に核兵器はなくならない、総理もそうお思いですか。
  263. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 それは全文読んでみないとわかりませんが、私がいろいろ話し合った人々の中には、やはり核兵器というものによって戦後は現実問題として平和が維持されてきた、そういう均衡状態が崩れた場合には戦争が起こり得る、そういうことを強く主張した人は有力な政治家におります。外国の有力な政治家です。
  264. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 ちっとも答えになっていない。私の質問に対して外務委員会では理論的に正しいとおっしゃったので、読まずにそうおっしゃったわけじゃないでしょう。通常兵器がなくならない限りは核兵器は廃絶できないというのがこの立場なんですよ。総理・総裁としてそれは正しいかどうか、あなたの言う抑止と均衡というのはそういうことなのか、どうです。
  265. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 通常兵器と核兵器というものは、実際は、例えばヨーロッパの正面なんか見ると、バランスがとれて行われていますね。ですから、両方のバランスが必要であるという議論は私は成り立つと思うのです。つまり、片っ方が核兵器が非常に優勢である、それと同時にまた通常兵器も非常に優勢である、それに対抗する片っ方が通常兵器は劣勢である、しかし核兵器は数は少なくても優秀なものを持っている、そういうような場合にどういう机工作戦が行われるかということを考えてみますと、やはりこれは通常兵器、核兵器ともにバランスのとれた形で廃絶していかないとそれは危険性が出てくる、そういう議論は十分あり得るのです。
  266. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 おかしな話だと思います。核兵器というのは普通の兵器とは比較にならない残虐性を持っているわけです。たった二発の広島、長崎に投下された原爆によって一瞬にして二十万の人が亡くなって、今なお三十数万の被爆者が苦しんでいるわけなんです。絶対に人類とは共存できない、これが核兵器ではございませんか。通常兵器、戦車があるとか大砲があるとか軍艦があるとか、こういう兵器は国家がある限り相当長期に続くのでございます。その通常兵器をなくさない限りは核兵器もなくならないといったら、いつまでも未来永劫この通常兵器がある限り核兵器はなくならないということになるわけです。総理もそういう見地ですか。
  267. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 日本のことを言っているのじゃない。そういう場合もあり得るということで、ヨーロッパの場合なんかを考えると、核兵器と通常兵器とバランスがとれて削減されていかないと、それは戦争の危険性が十分ある。それは戦略家も言っているし、政治家も言っております。
  268. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 通常兵器の軍縮も結構なんですよ。しかし、通常兵器がなくならない限りは核兵器の廃絶はできないというところが問題だと言っているのです。そうなると未来永劫、通常兵器がある限りは核兵器の廃絶ができない、こういう残虐兵器が廃絶できないということになるでしょう。そこが問題だと言っているのですが、総理、ここはあなたの見識ある答弁を期待したいと思うのです。
  269. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 要するに、通常兵器も核兵器も兵器ですから、ですから両方のバランスがとれて廃絶しないというと戦争の危険性がある、そういうことは私はあり得ると思います。
  270. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 それでは、別の側面から聞いてみましょう。  総理はよく核兵器の究極的な廃絶というふうに言われますね。その究極的な廃絶というのは、通常兵器がなくなるまでは核兵器の廃絶はないという考え方なんですか。
  271. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 それはそのときの情勢によるので、通常兵器を存置しておいて核兵器を廃絶することも十分あり得る。それはそのときの情勢によります。
  272. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 今おっしゃいましたね。通常兵器を存置しておいて核兵器の廃絶はあり得る、それが大事なんですよ。通常兵器はあるけれども、しかし核兵器の廃絶はあり得る。今、もう一回おっしゃっていただきたいのです。
  273. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 今申し上げたとおりです。
  274. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 そうしますと、このパンフレットの見地は完全に否定されたわけです。これは、通常兵器がある限りは核兵器はなくならないという見地なんです。しかし、今は通常兵器があっても核兵器の廃絶はあり得ると言われました。このパンフの見地は完全に壊れている。  もう一つ申し上げましょう。ソ連の核兵器の廃絶は絶対にあり得ない、こういう見地で書かれていますけれども、これもおかしな話です。今はゴルバチョフ政権になっていろいろな動きが起こってきているわけですね。こういうときになおかつ総理は、このソ連の核兵器の廃絶は絶対にあり得ないという見地にお立ちなんですか。
  275. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 外国のことだから、それはよくわかりません。
  276. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 外国のことであっても、現実にソビエトの場合は期限を切って核兵器を廃絶しようという提案をしているわけでしょう。あなた自身、ゴルバチョフを日本に呼ぼうという話もなさいましたし、そういうふうに不信感を持っていてどうして内容のある会談ができますか。ソビエトも変化しつつあるし、そこを直視するならば、こういうソ連は絶対に核兵器を廃絶しないという独断が通用しますか。どうですか。
  277. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 INFの場合でも、ソ連はシベリアに百残すと非常に頑強に言っているようです。私は、それをやめさせるために先般来あなた方が問題にしている発言をしているわけじゃありませんか。ソ連の百を早くやめてくれれば問題はなくなるのです、その問題に関しては。
  278. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 その問題はまたじっくりやろうと思っていますけれども、今言っているのは、核兵器の廃絶をソ連が絶対にやらないと言っているかどうかです。問題をそらさないでほしいと思うのですが、このパンフレットに書いてあるように、核兵器の廃絶をソ連は絶対にしないという見地を総理はおとりになるかどうか、そういう頑迷な立場がどうかということを聞いているのです。
  279. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 さっき申し上げたとおりです。
  280. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 さっきの話では、アラスカに配備するとおっしゃったでしょう。しかし、そのアラスカ配備その他のことじゃなくて、INFを含めまして核兵器を全廃する立場をソ連は絶対にとっていない、とらない、そういう前提かということを聞いているのです。
  281. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 ですから、手始めにシベリアに百というのをきっぱりやめてもらったらだんだん真意が理解されてくるのじゃないですか。
  282. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 問題をそらさぬでほしいのですよ。それを含めまして、ソ連は期限を決めて核兵器の廃絶をしようという提案をしているわけでしょう。そして、あなた方はそういうソ連のゴルバチョフさんを呼ぼうとしているわけでしょう。そういうときに、ソ連が未来永劫絶対に核兵器を廃絶しないという見地に立って、だから核兵器廃絶運動は平和に有害だ、こういうパンフレットをお出しになる、そこが問題だと言っているのです。そういう頑迷な態度をおとりになるかということです。
  283. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 米ソ交渉でソ連が期限を決めて、自分たちの方だけでも、アメリカの方はどうでも、全部やめてしまおうということを言っているとは私は聞いていない。それは、ほかに核兵器を持っている国があります。残ります。そういうことを考えてみても、果たしてソ連が本当に条約交渉をやる場合にそういうことに踏み切るかどうか、甚だ疑問であると私は思います。
  284. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 何回聞いても答えられないようでございますけれども、この二つの論拠によって、パンフレットは核兵器の廃絶は平和に有害ですというふうに書いていました。しかし、少なくともその一つについては、通常兵器があるうちでも核兵器の廃絶はあり得るということを総理は今答弁された。これは確認しておきます。しかし、もう一つの方の論拠になっている、ソ連は絶対に核兵器を廃絶しない、これは答えられない、そういう状況です。しかし、少なくとも自民党が、核兵器は全部なくすことについて反対だ、そういう論拠は大きく崩れた、これははっきり言えると思うのです。こういうパンフレットはやはり日本の平和に有害だということをはっきりしておきたいというふうに思います。  さて、検証の問題についてお聞きしたいと思います。  総理は、これまでもたびたびこの検証の問題は核兵器廃絶問題について重大な問題であるということを言いながら、何か自分のところがあたかも科学的な廃絶論であるかのようにおっしゃってきました。しかし、最近は状況が大きく変わってきた。総理自身も去年の十一月十日の参議院予算委員会で、この検証問題については最近はかなり前進してきた、こういう答弁をされているわけです。ソ連もアメリカの提案を受け入れるだけではなくて、現地査察やあるいは国際的手段を含めたもっと積極的な提案をするようになってきています。  これはゴルバチョフがことしの四月十日、プラハで行った演説でございますけれども、紹介してみましょう。  現地査察を含むしかるべき監視は、削減後に残されるミサイルと発射装置に及ばなければならない。その場合、実戦配備のものと同様に、実験場や製造工場、訓練センターなど、他のすべての施設にあるものにも及ばなければならない。第三国の領土内にある相手側の軍事基地への査察官の立ち入りも保証されるべきだ。これは、協定が厳格に順守されていることを完全に確信するために必要である。ソ連のゴルバチョフの演説ですが、このように査察を徹底してやろうというふうに言っているわけなんです。  これまで総理は、この検証問題がネックになって、あなた方はこれを見ようとしないから、そこに共産党の核廃絶論の弱点があるので、だから核兵器の廃絶なんというのは演説だ演説だとおっしゃいましたけれども、現実に世界の流れは、検証を含めて、核兵器廃絶の方向に行っているのですよ。そうしますと、この検証問題を口実にもう核廃絶はできないと言われたこれまでのあなたの理論というのは大きく崩れた、そう思いませんか。
  285. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 だからこそ検証をしっかりやって前進させようじゃないか、そう言っておるのです。検証問題について消極的な態度をとっておったのは共産党じゃないですか。私は検証をしっかりやれ、そうして前進させよう、そう言っておるのを、何だかんだ言ってそれに対して消極的な態度をとったのは共産党です。ソ連が最近検証問題に熱心になってきたので、ちょっと驚いたのが共産党じゃないですか。
  286. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 いつもそういう形で、自分が苦しくなると何か共産党にそういう矛を向けるようになってきていますけれども、この核兵器の廃絶問題に向けて、検証問題についてあなたとよく論議してきました。しかし、現実にはこう動いてきているのですよ。そうすると、あなたが言ったこの検証問題がひっかかっているから核兵器廃絶はできないということは、もう言えなくなってきているのですね。だから、核兵器の廃絶というのはどんどん進む状況が、相互信頼もいいでしょう、あるということ、これはあなたも認めますか。
  287. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 我々が検証をしっかりやろう、検証をしっかりやろうと言ったので、ソ連はそれに従ってきたのですよ。初めは反対していたじゃないですか。自分の国に入って見られるのが嫌じゃないのですか。今でも、じゃ具体的に検証をどういうふうにやるか。人間を常駐させるのか、現場まで見させるのか、そういう具体的な問題になってどういうふうに出てきますか。口先だけでは信用できない。実際にどういうふうに出てくるかは、我々は注目して見たいと思っています。
  288. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 それぞれの国はいろいろな外交があるでしょう。しかし、少なくともこのように核兵器廃絶に向けて、あるいは大幅削減に向けて検証問題も積極的にやろうとしているわけなんですね。そうなってくるならば、当然、検証問題を口実に核兵器の削減や廃絶ができないというのは、もう口実にならぬ。これははっきりしてきたと思うのです。  そこで、INFのあなたのアラスカ配備の問題、先ほどおっしゃったからこの問題について言いますけれども、あなたはこれでアジアを含めてグローバル・ゼロになるとおっしゃっている。最近は何か国益のために必要だったかのようにも言われていますけれども、アラスカに百発配備するということは、ソ連のウラジオストクやペトロパブロフスク、こういう戦略拠点にもINFが届くことになるわけで、こういう点ではあなたの言うバランスにもならぬわけなんです。交渉のカードにもならぬわけなんですよ。こういうことを主張されると、今進もうとしているINF交渉、これ自身に水を差す結果になりかねない、私はそう思うのですけれども、あなたのこういう見地というのは、結局バランスバランスと言いながら、本当のところは核兵器において対ソ優位に立とうとしているからではありませんか。そのことを聞いているのですよ。それが本音でしょう。
  289. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 どうもあなたの話を聞いているというと、ソ連の立場に立っていろいろな御主張が行われているようです。じゃ、シベリアに百残してアメリカはゼロにしておけと言うのですか。今の御主張を見ると、シベリアに百残してアメリカがゼロでもしようがない、それでも我慢しろ、そういう御議論のようですけれども、そういうことは私は日本にとってとらざるところなんであります。
  290. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 だれがアメリカはゼロにしろと言いました。そういうことをだれも言ってない。米ソ交渉でもアメリカ本土に百発、シベリアの方に百発ということを言われているでしょう。そういう交渉が進んでいるのですよ。それをわざわざソ連に近いアラスカに持ってこいと言っているのがあなたなんですよ。それは結局のところ、ソ連に対する核優位をねらっているからじゃありませんかと言っているのですよ。
  291. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 アラスカはアメリカの領土ですよ。
  292. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 領土でも、これはちゃんと地形学的な優位に立つ場所があるわけなんですよ。対ソ核優位をあなたはねらっていませんか。そのことをじゃ聞きましょう。  昭和五十七年四月に自民党調査局の出している分析資料「反核と平和を考える」、この中に書いてあるのですけれども、「真の軍縮への道は、米国が対ソ核優位を確立し、ソ連に核を使えないものとする以外にないのである。」「対ソ核優位を確立し、」あなたが言っているとおりのことが書いてある。抑止と均衡と言っているあなたの言葉はこういうことなんですか。首相はこの問題についてどうお考えになっているのですか
  293. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 今まで私の理論はもう十分述べて、あなたも嫌なほど聞いておるわけでしょう。そのとおりなんです。
  294. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 そのとおりだとおっしゃるのは、対ソ核優位をねらっているということですね。間違いないですね。
  295. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 バランスを得つつやめていこう、ゼロにしよう、そういうことなんです。
  296. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 核軍縮のためにはアメリカの核優位が、対ソ優位が必要だという見地、これをおとりになりますか。軍縮のためにはアメリカの核対ソ優位が必要だという見地ですか。
  297. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 均衡だって前から言っているじゃありませんか。バランスということは同じ力を持つということですよ、均衡ということは。
  298. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 今おっしゃったのは、こちらのと大分違うのですよ。バランスというのは同じ力だとおっしゃるでしょう。そうすると、対ソ核優位じゃないということなんですよ、今おっしゃっているように。そして、この自民党調査局に書いてあるのは、バランスじゃなくて対ソ核優位に立てということなんですよ。総理は今それを否定されましたね。それでよろしいですね。じゃ、うなずいていらっしゃるから、そのことをはっきり確認して、この立場は間違っているということを、また自民党のこの主張は崩壊したということをはっきり言っておきましょう。  それで、倉成さん、あなたは、日本は国是として非核三原則を持っているのですが、これについて日本は非核地帯だと思っていますか。日本は非核三原則がある、したがって非核地帯だと言っています。
  299. 倉成正

    ○倉成国務大臣 御質問意味がはっきりいたしませんが、日本は非核三原則を堅持いたしております。
  300. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 質問意味がわからぬじゃないですよ。国是として非核三原則を日本はとっているでしょう。核兵器を持たない、つくらない、持ち込まないと言っているわけでしょう。核兵器がないでしょう。そうすると日本は非核地帯かということを聞いているわけです。
  301. 倉成正

    ○倉成国務大臣 日本には核はございません。
  302. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 したがって非核地帯かということです。あなたはおっしゃらないけれども、安倍元外務大臣ははっきりと非核地帯であることは明らかじゃないかと言っているのです。だからあなたも遠慮しないで、非核三原則であるからには非核地帯だということをはっきりと認識してもらいたいと思うのです。  それで、あなたは六月二十日のASEANの拡大外相会議で大分おっしゃいましたね。現地の新聞にも載っていますし、うちの特派員を入れてちゃんとこれは取材してきたから間違いございませんけれども、こういうことを言われている。今世界の平和が保たれているのは超大国を含めた核のバランス、恐怖の均衡によるという現実も見なくてはならない、ただセンチメンタルな意味での構想であってはならない。あなた、日本は非核地帯でしょう、非核地帯が、東南アジアや太平洋の地域が非核地帯をつくろうというのに何で水を差すのです。
  303. 倉成正

    ○倉成国務大臣 岡崎先生は「前衛」の編集長もしておられますし、たくさんの著書を持っておられます。したがって、言葉の一部分をとってそういう発言をされることはまことに遺憾に思います。私が東南アジアの、ASEANの拡大外相会議で申したことを正確に申し上げたいと思いますから、聞いてください。  私は、東南アジアの非核地帯構想及び南太平洋非核地帯条約については、我が国は当事国ではないのでコメントする立場にはないということをはっきり申しております。しかし一般論として申し上げれば、非核地帯構想または条約をどう取り扱うかは、基本的に域内諸国がみずから決めるべき問題である、他方、従来から、非核地帯構想または条約が現実的なものになるためには、次の諸点を含む種々の条件が満たされることが必要であるとの考えである。一つ、核兵器を含むすべての関係国の同意があること。二つ、当該地域のみならず世界全体の平和と安全に悪影響が及ばないこと。三、査察、検証を含む適切な保証措置を伴うこと。四、公海における航海の自由を含む国際法の諸原則に合致したものであること。こういうことをはっきり申し上げたわけでございまして、その点を抜かしてただ一部分だけを取り上げていただくことはまことに遺憾でございます。
  304. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 長々とおっしゃいましたけれども、こう言ったことは事実でしょう、一部分であろうと何であろうと。東南アジアや南太平洋地域が非核地帯をつくろうと言っているのに対して水をかけるのはよくないと言っているのですよ。  これをうんとやりたいのですけれども、もう時間が来ました。言ったことは事実でしょう。
  305. 倉成正

    ○倉成国務大臣 せっかくのことでございますけれども、私の真意をただいま申し上げたとおりでございますから、そういう片言隻句をとらえて、あたかも私の真意が反対であるとか、そういうことを言ったことではないということをはっきりこの席で申し上げておきます。
  306. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 言ったことが事実ならば責任をとりなさい。そのことを言っているのですよ。
  307. 倉成正

    ○倉成国務大臣 私が申し上げましたことは、先ほど御説明したとおりでございます。
  308. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 とにかくこういうことをおっしゃっているのは事実だし、したがってまたインドネシアの外相とかニュージーランドの外相が猛烈な批判をしているのじゃありませんか。  そこで、こういうふうに私は核兵器廃絶問題につきまして、自民党のパンフレットや調査局の資料や、あるいは首相のアラスカINF配備発言やあなたのASEANでの発言等取り上げましたけれども、やっぱり自民党は世界の大勢に逆行していると私は思うのですよ。そこで、やはり日米軍事同盟のもとで、アメリカの核の傘にあるというそういうもとで例えば三沢にF16が持ち込まれるとか、あるいは日本の横須賀や佐世保に核トマホークを積んでいるような核積載艦がどんどん入ってくるとか、こういう核基地になっているような現実と決して無関係じゃないというふうに私は思います。したがって、こういう問題についてははっきりとやはり軍事同盟から離脱して非核、平和、中立の方向に行くことがノーモア・ヒロシマ・ナガサキの道にこたえる道であるということをはっきりと申し上げておきたいというふうに思います。
  309. 倉成正

    ○倉成国務大臣 言葉より実行ということが必要でございます。やはり幾ら言葉でいいことを申しましても実行しなければならない。平和とか安全とかいうものはやはり真剣に血を流して、そして本当に汗を流して一歩一歩努力していかなければ得られないというのが被爆地の出身である私の基本的な気持ちでございます。そういうことで、平和を願う気持においては私は人後に落ちません。私のうちそのものが被爆地の中心にあるわけです。ですから、そういうことをおっしゃることはまことに遺憾でございます。
  310. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 共産党ほど核兵器廃絶を熱心にやっている党がどこにありますか。ソ連に行ってから、はっきりとソ連に対しても核兵器廃絶を緊急課題としてやりましょうということを日ソ両党の共同声明にうたって、さらに二回にわたって反核の国際シンポを開き、先ほど言った広島、長崎からのアピール運動をどんどん広げているんじゃありませんか。共産党がやっているんですよ。  そこで、倉成さんについて余りやっていますと時間がなくなりますから、私は、あなたが言っていることについて当たっていないということをはっきり言って、三宅島問題について移りたいというふうに思います。  本日朝の十一時半に、東京防衛局の方が寺沢村長のところに、あした早朝やるということを通告されてきたようでございます。つまり、きのうから問題になっている観測柱を三本つくるという話なんですね。もうその前から何か草刈りをやっているそうでございますけれども、早速寺沢村長は現地の事務所に抗議に参りました。既に村長は、あるいは村会議長は三回にわたって防衛施設庁に抗議をしているんです。また、六月二十八日に開かれました第三回全島大会では、今度は千六百七十名の村民、有権者の過半数ですが、これが集まって絶対反対の決議をしている。これは、NLP基地化と建設するための調査に絶対反対することを怒りを込めて宣言する。怒りを込めてですよ、このように圧倒的な島民が、そして行政議会もみんなが反対している、こういうときにあしたやろうというのですけれども、この明らかな基地建設の一歩となる観測柱、鉄柱をつくるということは、強行じゃありませんか。  強く抗議したいと思いますけれども、これについて五月二十五日の衆議院外務委員会で、中曽根さんは私にはっきりとこう言っているんですよ。「気象調査とか地質調査をやろうということでございますから、十分御理解をいただいて、そしてやれるものだと確信しております」。私が「最後に一問。理解しなかった場合は、強行なさいますか。」こう聞いたところ、あなたは「一生懸命努力すれば理解していただけるものと考えております。」これは今度の調査に対する鉄柱について一生懸命努力すると言ったのですよ。何の努力をなさいましたか。国会答弁をどうお考えになりますか。――これはあなたですよ。あなたが言ったことで聞いているのですよ。
  311. 友藤一隆

    友藤政府委員 お答えをいたします。  艦載機の着陸訓練場の設置場所としましては、御案内のとおり三宅島が立地条件が非常にすぐれておりますので、私どもとしてはぜひ三宅島にお願いをしたいということで、かねてから防衛施設庁を初め防衛庁も含めましていろいろ努力をいたしておりますが、先ほど先生から御指摘がありましたように、島の方では大変反対が強いわけでございます。しかしながら、その反対と申しますのが、いろいろ訓練場ができることにつきましての憶測等で相当の誤解がございますので、私どもとしましては、ぜひ御説明をしてその辺を十分御理解いただきたいということで、大変長い時間いろいろ私どもも対話の努力をいたしてきております。  ただ、村当局におかれましてはなかなかそういったことを聞き届けていただけませんで、現在まで公式の話はなかなか聞いていただけないわけでございますが、連絡事務所等をつくりまして私どもとしては今日まで努力をいたしてきておるわけでございまして、決してこの関係について強行しておるということでございません。場所もやはり所有者の御了解をいただきまして観測柱を建てようということでございますので、本格的な建設ということとは異なりますので、御了解をいただきたいと思います。
  312. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 総理、あなたに聞いたのですよ、あなたがはっきり言ったから。国会の答弁についてどう責任をとるのですか。
  313. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 粟原長官も前からお答えしますように、ともかく話を一回よく聞いてくださいと何回も何回もお願いして一生懸命やってきた。しかし、一生懸命やったけれども聞く耳を持たない。このままじんぜん日をむなしゅうするわけにいかぬ。そこで、環境庁の方からお許しが出たのでそういう措置に出た。一生懸命やった結果であります。
  314. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 今度の調査のための鉄柱をつくることについては何の努力もないのですよ。一生懸命やった努力というのは何にもないのです、あなたは首相としてははっきり国会でこのように約束しながら、もう今度は強行をやって破ろうとしているのじゃありませんか。こういうことが許されるかということを厳しく抗議したいというふうに思うのです。  それで、今度観測柱をつくって、またボーリングもやるわけでしょう。そういうふうになってきますと、どの段階であなたが盛んに言っている理解と協力を得ることになるわけですか。盛んにあなたは村民の理解と協力なしにはできませんと繰り返し言っているけれども、どの段階でやるのです。いろいろな段階があるわけでしょう。施設庁はこの基地をつくる場合、この広大な敷地、これは村民が持っているわけですよ。まさかこれを強行するわけにはいかないというふうに思うのですね。やはり首相は村民の理解と協力を得てやりますということをはっきり言っているからには、多数の土地所有者がこの土地を売らないと言っているからにはこれは強行できない。私はそう思うのです。どうですか。
  315. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 私もたびたび言っておりますけれども、問題は、あなたが島の大部分が反対とかなんとか言うけれども、反対、反対でもいいんですけれども、私どもの話は一つも聞いてくれないのですよ。いわゆる聞く耳を持たないという格好で反対、反対じゃ困るのです。なぜ三宅島にお願いしているかということじゃないか。  特にあなたのお話を聞いておって、共産党さんは反対の方で旗を振っているのでしょうけれども、例えばさっきのマル優の関係と防衛費の関係を一緒にして……(岡崎委員「あなた、話を広げなさんなよ、時間がないのですよ」と呼ぶ)いやいや、私も言わしてください。そういうふうに軍事費とマル優の関係をごっちゃにする、そういうようなことであなた方がもし三宅島の人たちに言っているとすれば、これはえらいことだと思いますよ。そういう意味合いで私どもの話も聞いてもらいたい。このことをぜひお願いしたい。  それからもう一つは、今度の観測柱の関係は、いわゆるもろもろのデータを収集するということであって、これですぐ建設に移るというんじゃない。建設に移る場合には、総理が言っているように、住民の皆さん方、地方公共団体の皆さん方の御理解を得てやる。これは間違いございませんから、どうそそういう意味合いで、重ねて言いますけれども、あなた方の一方的なことではなしに防衛庁の話、施設庁の話も聞いてもらう、その上でいろいろと判断をしてもらうというのが民主主義のルールじゃないですか。これをお願いします。
  316. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 あなた方の言い分については村民の人はみんな知っているのです。知った上で反対しているのです。とにかくアメリカでは十四隻の空母を持っているけれども、海外母港を持っているのは日本だけなんですよ。そして、航空母艦があれば必ず夜間の離発着訓練をやるわけでしょう。しかも、三千万の人口の住んでいる首都圏のど真ん中の横須賀、ここの百八十キロのところでやろうとするならば、どうしてもこういう無理があるわけです。こういうところに基本問題があるわけなんですね。そして、三千四百の人たちがもう三年半にわたって、どうしても反対だ、自治と平和を守る、こう頑張っているのに、何が何でもやろうとしているのはあなたたちではありませんか。こういうことをやはりやめなくてはいけないというふうに思うのですよ。いろいろなことをやめてもらいたいというふうに思います。  そこで、私は三宅島についてあなたとうんとやりたかった、総理に聞きたかったけれども、もう時間がない。  そこで、今円高不況の中で深刻な状態、そしてまた、経済構造調整とかいいましてどんどん日本の資本が海外に行こうとしている。この中で働いている労働者やあるいは中小下請企業は本当に深刻な状態にある。  きょう通産大臣――もう行ってしまいましたか。まことにけしからぬですよ、これは。私のこの質問が終わってから通産大臣は行ってよろしいと言ったんですよ、そういうふうに紳士的にやって、これでは聞けないではありませんか。  ともかく中小企業の問題につきまして一言、中小企業庁長官、かわってやってください。  共産党議員団、各地の円高不況による中小企業の実態について調査しました。私もまた東京の城南地域を調査して、本当に深刻な事態であります。この状態はほうっておくわけにいかない。こういう状態の中で、中小企業の円高不況下の状況からどう中小企業を救うか、この問題は大変な問題になっているわけでございますけれども、しかし借りました円高融資については、もう一年間の据置期間が切れているわけですね。これを何とか三年に延ばしてくれ、この声は深刻でございます。それについて中小企業庁長官、中小企業を守る立場で、円高不況を起こしたのは政府責任でございますから、せめてこのぐらいのことは大したお金じゃなくてできるわけですから、やってほしいと思うのですが、どうですか。
  317. 岩崎八男

    ○岩崎政府委員 今御指摘の国際経済特貸しでございますけれども、運転資金について一年というものを実情に応じ三年まで据置期間を延ばすということでやっておりますので、今の個別事情に応じまして三年までの据置期間の延長は認めることにしております。
  318. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 例外的に三年までの据え置きと言いましたけれども、例外ではまずいんですね。例外ではなくて、すべて据置期間を三年まで延ばすように強く要求しておきます。検討してもらいたいと思うのです。  最後に、交差点事故の問題についてお尋ねをいたします。  これについては、交通事故が本当に大変な問題だということを訴えたいのですけれども、死者は昨年でほぼ一万人に上っている。そして負傷者が七十一万人。その中で交差点の事故が何と四一%にも及んでいるわけなんです。そういう点からしましても、歩行者優先ということが本当に問われているというふうに考えます。  青信号になって、そして歩行者が歩いていく。ところが、車が一緒に進んでから左折する。共産党の議員が目の前で見たそうでありますけれども、子供がひかれた。足の上をずっと車が通っていったそうです。そのときに子供が叫んだそうですけれども、青信号だったのにというんですね。こういう事態が起こっているのです。こういうことをなくすためには、とにかく人と一緒に車が進む、こういう不合理をなくすということが基本問題だというふうに思うのです。これはやはり政府や警察の方に責任があるというふうに思います。  だから、歩行者用の信号をもっと長くするとか、あるいはスクランブルのように歩行者を完全に渡らした後で車が通るとか、いろいろな意見があるわけでございますけれども、当局は、車が渋滞するということで、この基本的な対策見直しもまだやっていません。これはやはり車優先の立場であるというふうに考えますが、やはりここのところは、歩行者の人命最優先という立場に立ってこの交差点事故を解決すべきだと思いますけれども、どうでしょう。
  319. 葉梨信行

    ○葉梨国務大臣 警察といたしましては、交差点におきます交通事故を防止いたしますために人命尊重の理念のもとに今までも歩行者専用信号機等の交通安全施設を整備いたしましたり、それからただいま先生がおっしゃいましたように、横断中の歩行者に対しまして車を突っかけてくるというような危険な違反につきまして取り締まりを行ったり、あるいは歩行者の安全保護運動を行いましたり、あるいはまた運転者に対します正しい右折、左折の指導を行ったりしているところでございます。  警察といたしましては、関係団体、機関と協力をいたしまして、これからも人命尊重第一にいたしまして交通事故防止に努めていきたいと考えている次第であります。
  320. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 そうなってないから国会で質問しているわけなんですよ。人命尊重第一じゃない。政府は、交通安全基本計画、これは昭和四十六年度から五十年度までの第一次基本計画ですね。このときにははっきりと「人命尊重がなにものにも優先する」、こういう計画でなさいました。このときにはなるほど一万六千の死亡者から六千人減っているんです。減っているんですよ。ところが、その後、車優先の方にだんだん変わってきた。五十一年度以降、つまり第二次計画以降は人命尊重は単なる理念としてうたわれているだけであって、車との共存という形で実際上は車優先になってきているわけなんです。そうなってくると、これまでどんどん減っていたその死亡者というのは今のところ逆に増加する傾向にあって、去年は九千三百十七名の事故になるわけですね。やはりこれは、総理に聞きますけれども、政府の交通基本政策ですね、人命最優先ともう一度はっきりとうたうべきであると思いますけれども、総理どうでしょうか。
  321. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 交通事故をなくすことは非常に大事なことであると思います。最近またふえ始めましたけれども、政府のあらゆる力を使い、また民間の皆さんの御協力もいただきまして、さらにこれを思い切って減少させるように努力してまいります。
  322. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 思い切って減少させることは結構でございます。そうしますと、基本方針の中に人命最優先ということをかつてのようにうたうべきだと思いますけれども、どうでございましょうか。
  323. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 人命最優先というのは当たり前のことです。
  324. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 当たり前のことをはっきりとかつてのように基本計画に盛り込んでいただきたいと思います。  そこで、今歩行者で交差点事故がどんどん起こっている中で、周辺住民の方々によって、この交差点事故をなくそうという運動が広がっているわけでございますが、これは国家公安委員長の方にお聞きしますけれども、所轄署が住民の意見をよく聞かぬといかぬと思います。この交差点事故はいろんな事情があるわけですね。特殊性がある。したがって、住民の意見をよく聞いて人命優先、歩行者最優先、そういう交差点にしていくようにすべきであると思いますが、そういう姿勢をおとりになりますか。
  325. 葉梨信行

    ○葉梨国務大臣 先ほども申し上げましたように、人命優先を第一として交通警察は仕事を行っているわけでございます。これからもそのような態度で皆様方の信頼にこたえられるようにやっていくことを指導していきたいと思います。
  326. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 公安委員長、私、聞いたのは、人命優先と口先で言うだけじゃなくて、周辺住民の、また運動されている方々の要望や意見をよく聞いて、そしてそれぞれの交差点事故に対応していく、そういう姿勢を所轄署にとらせるように指導なさいますかということです。はっきりお願いします。
  327. 内田文夫

    ○内田政府委員 お答えいたします。  交差点の問題につきましては、従来から人命尊重という理念のもとに取り組んでいるわけでございまして、交通の関係の地域の方々のいろいろな意見を聞きながらそれぞれの対策を講じておるわけでございまして、今後とも一層そういった面での努力をしてまいりたい、こう思っております。
  328. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 今、住民の意見を聞きながらとおっしゃいました。その姿勢を貫いて、この人命最優先の交通事故対策を進めてもらいたいということを強く要望して、私の質問を時間が参りましたので終わりたいと思います。(拍手)
  329. 砂田重民

    砂田委員長 これにて岡崎君、正森君の質疑は終了いたしました。  次に、池田克也君。
  330. 池田克也

    ○池田(克)委員 公明党の池田克也でございます。大分遅い時間になりましたが、私が最後でございますので、よろしくお願いをいたします。  きょうはきのう、きょうと各党の代表からいろいろと総理の今日までの政治について御議論がありましたが、私が用意いたしましたテーマの前に、一つだけ、衆参同日選挙の考え方につきまして総理のお考えを伺いたい、  たまたま同日になったという一つの時期、あるいはまた政治の運営として衆参同日を期す、これはいろいろと議論があろうかと思いますが、政治の空白をもたらす、あるいは二院制という状況の中からそれぞれの院がそれぞれ持っている特殊性というものが有権者に伝わりにくい、こうした状況が今日までいろいろ議論されてまいりましたが、これからの政治を考えるときに、衆参同日選挙というものは当然のものと考えるのか、やむを得ぬ緊急処置として考えるのか、総理として、昨年そうした政治手法をおとりになったように私は理解をしておりますが、一点だけお伺いをしたいと思います。
  331. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 参議院の選挙というものは大まかにいつごろと決まっているわけです。ただ、いつにするかという着地点はそのときの政治情勢その他を見ていろいろ政府が決めるわけでございますが、おおむね三年ということで決まっております。  問題は衆議院の解散でございますけれども、まず申し上げたいのは、前にも申し上げましたように同日選挙というものは憲法違反ではない、そのことをまず確認しておきたいと思います。  それから第二番目に、解散をいつするかということは、生きた政治の対応として政府憲法の範囲内において断行できることでありまして、憲法以外にこれを制肘するものはない、そういうふうに私は考えております。それから、時期的に見て、ではいつが一番適当なのかといいますと、これは農閑期がいいじゃないかとかいろいろな周辺的な条件というのがございますけれども、やはり政治から見て、このときに人心一新を行うべきである、あるいは国民の意思を問うべきであるということは相当優先していいことだ、そう思うのであります。最優先に近い要件を持っている大事なことである、私はそう思っております。  ですから、同日選挙が悪であるとか同日選挙というものは回避した方がいいとか、そういうような考え方に対しては私は疑問を持っております。しかし、一応考えられることは、同日選挙をねらってやるというようなことはちょっとどうかなという気がいたします。と思いますけれども、しかし、それは政治の生きた流れの中で行うことでありますから、それをあえて行うということも一つ政治の選択であって、悪いことではない、そういうふうに考えております。
  332. 池田克也

    ○池田(克)委員 大蔵大臣、ニューリーダーというふうに称されていろいろと所管以外のことでございますけれども、この同日選挙という一つ政治のあり方について総理と同じお考えでいらっしゃいますか。
  333. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 当時の状況の中で私は私の所信を申し上げましたが、最終的には総理・総裁である中曽根総裁が自分に任せてほしいと言われまして、私は総理の決断に従った次第であります。
  334. 池田克也

    ○池田(克)委員 労働の問題に入りたいと思います。今日までいろいろ議論がありましたが、雇用とかあるいは産業の転換とかいう問題は余り触れられておりませんでした。労働省にお伺いいたしますが、今度の補正予算でも、三十万人雇用開発プログラムにさらに追加していろいろと施策を打ち出しておられますが、現在のいわゆる労働環境あるいはこれからの見通し、特に雇用の関係でございますが、どういう見通しを持っておられるか、お答えいただきたいと思います。
  335. 平井卓志

    ○平井国務大臣 最近の雇用失業情勢は、これはもう御案内のように非常に厳しいものがございます。ただ、一部部分的ではございますが、内需関連業種を中心として求人がやや増加するとか、さらには製造業の雇用過剰感もわずかながら低下したかなというふうな一部改善の兆しもございますけれども、構造不況業種、またその関連、大変に厳しい状況でございます。このために、従来から申し上げておりますけれども、やはり業種、さらには地域の雇用動向をいち早く察知いたしまして、現在いろいろお願いしております雇用開発プログラム、さらには各種の現行制度、これを機動的に推進して、とにもかくにも政府の目標でございます何とか失業を二・九%、それに抑え込むための最大限の努力をいたさなければいかぬ、かように考えております。
  336. 池田克也

    ○池田(克)委員 いろいろな調査が発表されておりますが、向こう七年ぐらいの間に約二百二十万人ぐらいの仕事をかわらなければならないという人々が予想される。これはかなりの数でございまして、労働組合の調査なんかを見ましても、昨年まで第十位だった産業のあり方論というものがことしは第一位に上がってきている、あるいは政府に要請したい事柄というのも前回九位であったものが産業振興対策として第一位に上がってきている、非常に働く人たちの関心というものが、これからのいわゆる職場というものがどういう方向に向いていくのか、これを政府はどうとらえ、どう対策を立てようとしておるのか、こういう点に向けられているように思うわけでございまして、今審議しております補正予算も、こういう思想のもとに雇用の開発あるいは能力の開発ということがかなり重要な施策として予算化されているように思うわけでございます。  今の私の申し上げた二百二十万人という数の問題も含めまして産業の転換をどう進めていこうとしているのか、これは労働大臣と、通産大臣きょうはアメリカへ行かれましたが、総理からお伺いできればと思います。
  337. 平井卓志

    ○平井国務大臣 御指摘のように産業構造の転換、私らの思ったよりスピードが速く参っておるという認識でございまして、したがって、この構造の転換に伴って雇用面でもいろいろな問題が生じてくる。先生今御指摘になりましたような能力開発、またきめ細かい訓練対策等々がやはり今後の雇用対策の非常に大きい柱になる、そして常に内容の見直し等もやっていかなければならぬと考えておるわけでございます。  たびたび申し上げて恐縮でございますが、何と申しましても雇用問題そのものが当面する政策の非常に重要なところでございます。そういう意味で、業種、地域の雇用動向、これらあたりを常に実態を把握しまして、一般的な経済運営とともどもに、これはもう総力を挙げて万全を期してやらなければいかぬ。  ただいまのところは、先ほども申し上げましたように三十万人の雇用開発プログラム、これは決してお題目だけではございませんで、ただいま全安定所を挙げて周知徹底、そしてまた機動的、弾力的な運営も指示いたしておるところでございまして、いま一つは、地域に特に重点を置きました地域の雇用開発等の促進制度でございますが、これなんかももうフル回転いたしまして今後の問題に対処してまいりたい、かように考えております。
  338. 杉山弘

    ○杉山政府委員 産業構造転換問題につきましては、通産省といたしましては、やはりその過程で生じてまいります雇用転換の問題、これと地域経済に対する影響というものが非常に大きな問題であろうかと思っております。これをどうやってうまく解決するかということがこれからの構造転換問題のかぎを握っていると考えております。  そういう観点から申しますと、まずやはり経済全体としてできるだけ活気のある運営をしていくということが必要であろうと思いますので、そういう観点から、いわゆる中規模の成長、四%前後の成長はこれはぜひ実現をしていかなければいかぬ。その過程におきまして、私どもといたしましては、やはり新しい産業の分野を開拓する、そのための技術開発といったものを少し中長期的な観点からこれまで以上に進めていかなければいけない。また、これからは物離れの時代でございますので、いわゆるサービス産業を中心といたしました新しい産業、これを興していきまして雇用機会の創出を図っていかなければならぬ。これは中長期的な問題でございます。  当面の課題といたしましては、やはり各企業が雇用調整をやります場合に、できるだけ企業内で新しい分野でこれを吸収して雇用をつなぎとめていくということでございますので、事業転換を必要としております企業に対する助成、さらには地域問題、地域中小企業問題、こういった点につきましては、既に先国会におきまして所要の立法措置等も成立をさせていただいておりまして、こういった点から、雇用調整問題、産業構造転換問題に遺憾なきを期してまいりたい、かように考えております。
  339. 池田克也

    ○池田(克)委員 先ほど労働大臣にもお伺いしたのですが、要するに規模として何人ぐらいのこうした移動というものが想定されるのか。これはそんなに遠い遠い未来の話じゃなくて、今御答弁がありましたが、産業転換のスピードが速いという答弁があったわけですから、ここ六、七年あるいは十年以内という一つの期間をとってみて、どのくらいの産業転換があり、そのために今通産省から答弁がありましたような新しい企業の事業というものを興させる、この具体的な数字についてはいかがでしょうか。
  340. 白井晋太郎

    ○白井政府委員 お答えいたします。  数字の計算はいろいろあるかと思いますが、先ほど先生おっしゃいました今回の労働白書の計算では、六十八年までに二百二十万人が転換するということの数字になっております。
  341. 池田克也

    ○池田(克)委員 これだけの大きな数ですから大臣からお答えいただきたかったのですが、要するに非常に大きな規模の産業の転換というものがあるわけで、そのために労働省もその対策を立てていると思うのですが、職業転換訓練というのはどういうことをねらって、どういうことをするのでしょうか。
  342. 野見山眞之

    ○野見山政府委員 最近における円高あるいは貿易摩擦等によって余剰になっておる労働者がいわゆる造船、鉄鋼等からかなり出てきているという状況の中で、これらの方々の再就職の先が主として三次産業等が中心になるということになりますと、これまで持っておられた職業能力に加えて新しい知識、技能が必要になるというために、職業の転換が必要になるわけでございます。  したがいまして、私どもといたしましては、これらの不況業種からの離職者、あるいはもっと先を見て、現在余剰になっている在職労働者について新しい雇用吸収の可能性のある産業、業種に転換をしていただくというための訓練制度でございまして、従来の職業訓練施設に入っていただいて訓練をすることはもとよりでございますが、同時に企業あるいは専修学校、各種学校等、今ある教育機能を十分活用した形で訓練をしていただこうということで、三十万人雇用開発プログラムの一環として現在実施しているものでございます。
  343. 池田克也

    ○池田(克)委員 今お話が出ました三次産業というのは、どんなものを想定しているんでしょうか。これはいろいろと、三次産業といえば大変広い、一次と二次じゃない、あと残り全部だという議論もあるのですけれども、企業城下町の産業がどういうふうになっていくかということをレポートしたものもあるのですけれども、当面は建設土木あるいは精密産業、サービス業。そうした非常な不況の地域、不況産業の城下町ではほぼ半分ぐらいが建設土木に依存し、残りはサービス業あるいはまた観光事業、ハイテク、レジャーなんということが挙げられているわけです。  けさもニュースで炭鉱の閉山が報ぜられましたけれども、これらの人々が職を失って一体どこへ行くのか。この中にもある市では、アンケートに答えまして首都圏に転出、こうなっているわけでございます。つまるところ、三次産業に吸収するといいますとやはり大都会、そうしますと、私は東京なんですが、次々とそうした労働人口を受け入れていった場合に、居住環境あるいは地価、さまざまな問題が当然連関として出てくる。この雇用と二百二十万人という大きな人々の移動というものは、政治の課題として極めて重いと思うわけです。  したがって私は、この場で、政府がこの補正予算にかなり力を入れて職業の教育をしようとしているその問題についてお伺いをしているわけなんですが、重ねて伺いますが、三次産業とは一体何であるのか、そしてそれは、それぞれの地域で興せるものあるいは興せないもの、この点をどのように労働省はお考えになっているのか。通産省でも結構ですが、お尋ねをしたいと思います。
  344. 杉山弘

    ○杉山政府委員 サービス業の範囲につきましては、これからのサービス業はこれだといって一つ、二つを挙げるということでは済まないのかなと存じます。主な分野といたしましては既にかなり進んでおりますが、これから情報化の時代になってまいりますので、情報処理ないしはそれに関連するサービス業というものも出てまいると思います。それからいわゆる製造業のサービス産業化と言われております、また一方ではソフト化とも言われておりますが、製造業の段階でのサービスに対する需要というものも出てまいりますので、いわゆる事業所サービスという形でのいろいろなサービス業というものもこれからふえてまいると思います。それから、個人の生活におきましても、高学歴化でございますとか女性の社会進出が進むとか、さらには健康志向といったいろいろな社会的、経済的な変化がございますので、こういうようなニーズに対応した意味でのいわゆる対個人サービスというものもこれまで以上にふえてくるように思われます。こういった各種、もろもろの分野での新しいサービスというものが出てくるのがこれからのサービス業ではなかろうかと思っております。  こういったものにつきましても、私どもといたしましては、できるだけその事業化を容易にするような格好で雇用機会を提供できるように努力をしたいと思っております。また、おっしゃいますように、サービス業と申しますのはどうしても人口との関係で都会中心ということになってまいります。こういった点につきましては、現状までのような大都市への機能集中ということではなくて、産業を中心とした機能の地方分散といったようなこともこれからは考えていかないと、全国的、地域的にバランスのとれた雇用情勢というものはなかなか実現しにくい、こういうふうに考えておるところでございます。
  345. 池田克也

    ○池田(克)委員 労働省にお伺いしますが、今回の補正予算で情報処理関係の技能者を育成するために二百七十六億の予算を組んでおられますが、このうちで、そうした今お話があった情報産業の従事者を育成しようとしておりますが、受講者の数あるいは年代層、どういうことを考えておるか、お伺いをしたいと思います。
  346. 野見山眞之

    ○野見山政府委員 今度の補正予算の中におきましては、緊急経済対策の一環として、職業転換あるいは今後不足が予想される情報処理関係の技能者の養成が緊急に必要であるという観点から、情報処理関係の教育訓練施設の整備をお願いしているわけでございます。この中では、特に施設等につきましては国が準備をいたしまして、その運営を第三者の第三セクターで地域の自治体あるいは地元の企業等に運営をしていただくということによりまして、情報処理関係の不足に対応し、かつまた不況地域における雇用機会あるいは産業の活性化に寄与したいというのが今回の予算の考え方でございます。
  347. 池田克也

    ○池田(克)委員 ちょっと質問が続きますので、なるべく近いところにいていただきたいのですが、この予算の説明によりますと、情報処理関係技能者を育成するための施設設備の整備として二十一億円が計上され、地域職業訓練センターの新設を二カ所予定しておられます。一カ所は室蘭というふうに聞いておりますが、もう一カ所、どちらということになるのでしょうか。
  348. 野見山眞之

    ○野見山政府委員 設置をいたします場所といたしましては、雇用機会が不足をしておるということで、地域の活性化に役に立つということで北海道及び九州から各一カ所ということを現在予定をいたしておりまして、九州では長崎県に設置をする考えで今おります。北海道につきましては室蘭市を予定をしたいというふうに思っております。
  349. 池田克也

    ○池田(克)委員 室蘭で労働省が情報処理訓練校を新設しようとしたところ、ちょうど隣の伊達市、登別市にいわゆる専修学校があるわけです。そして、この専修学校はまだできてそんなにたっておりませんけれども、定員の充足率は三〇%足らず、あるいは一方の登別市の方も余力が十分ある。こういう状態でこの非常に近接した地域に国が情報処理訓練校というものを新設をするということになると、既存の専修学校というものに甚大な影響を与える。当事者は大変困って何とかこの設置を待ってほしいという陳情をしているようでございますが、先ほど答弁を伺っておりますと、既存のいわゆる専修学校等とも連携をとるというふうに答弁もありましたし、また、法律でも職業能力開発促進法の第三条の二、二項には、学校教育法に定められた学校と連携をとらねばならない、こううたわれているわけでして、これを考えてみますと、先ほど私が質問してちょっとお答えはなかったのですが、果たしてそれぞれの地域にこのコンピューター等の新しい情報処理を学ぼうとするニーズが十分あるのか。政府は予算を組んでそれをやるとおっしゃっておりますが、十分にそのいわゆるニーズというものを計測しないで単に予算をつけてここへつくる、これは既存の教育機関の秩序というものを乱しますし、私は問題があるんじゃないか、こう考えますが、いかがでしょうか。
  350. 野見山眞之

    ○野見山政府委員 私どもとしては地域の活性化、特に情報処理関係の産業が、これは室蘭市等においても今後期待されるということと同時に、雇用機会は現在少ないという両方の要請に考えまして、北海道庁関係方面との協議の過程で室蘭市を現在内定しているという状況でございます。と同時に、私どもの教育訓練を進める上で、私どもの施設だけでは当然賄えない、いわゆる民間の技能、ノーハウも加えて運営していきたいということで、当然、地域の専修学校、各種学校等との御協力をいただかなければいけないというふうに考えております。  したがいまして、この競合というような御懸念が一部にあるやに私どもも伺っておりますけれども、今後私どもの方で準備をいたします訓練施設におきましては、例えば在職者あるいは離職者を中心に夜間のコースを設けるとか、あるいは教育の中身につきましても、それぞれの機能を十分に生かしたような分担といいましょうか、そういうものも今後地元と十分御相談しながら運営に当たる第三セクターの関係の皆様方と御相談をしてまいりたい、かように考えております。
  351. 池田克也

    ○池田(克)委員 これは新聞の報道ですが、こうした苦情を受けて労働省の窓口になっている道労働部は、室蘭市と周辺二校の板挟みとなった形で対応に苦慮している。そして、伊達、登別両市と室蘭市に呼びかけ、三市が協議して地元の利害調整を進めることになった、こういうような事態が報ぜられているわけです。道の労働部長は、新設校の定員二百人のうち半数を夜間部とし、高校新卒者の争奪を緩和する。私が伺っておるところによりますと、予算は五億円だ。大変莫大な予算をかけて二百人のコンピューターの技術者を養成する。既存の専修学校は既にある。そして、その人たちは困ると言っている。そういうところへ新たに予算を追加して建物を建て、そして将来どうなるのかわかりませんけれども、需要の計測も十分じゃないままにこれを強行するというのは、私は予算のむだなことであり、また、先ほど指摘もありましたような縦割り行政の弊害ではないか。やはり法律が指定しておりますように、既存の専修学校等と密接な連携をとって、そうしてそこのところが、既存のところに十分活用するようなことを講じ、それでもなおかつあふれて希望者が収容できないというような場合に国が手を打つのが順序ではなかろうか。  これはアメリカの「日本教育の現状」というレポートでございまして、一九八三年に総理レーガン大統領とが協議されまして、日米両国で教育の情報を交換していこうということになり、カルコンと称しまして、スタンフォード大学のフーバー研究所のキャンベル先生、日本では天城先生を中心とした教育のお互いの分析のレポートでございまして、これを見ますと、  政府は労働省を通じて基礎訓練、技能開発訓練、離職者の再訓練、職業訓練指導員の養成などの音頭を取っており、一九八一年には約四百の公共の職業訓練施設で三千近いコースが開議され三十万人が受講している。しかしこの制度は新しい技能を身につけようとする求職者を引き付けることにあまり成功はしていない。というのは雇用者側がこの制度の修了者をあまり熱心に採用していないからである。こういう指摘があるのです。  私は労働省がおやりになっている職業訓練を別に批判するわけではありませんが、今申し上げたような既存のものを活用してそれで十分に目的が達せられるならば、方向転換するのが筋ではないか、私はこう思いますが、重ねてお伺いしたいと思います。
  352. 野見山眞之

    ○野見山政府委員 情報処理技術者の将来の需要動向につきましてはいろいろな調査がございますけれども、将来百六十万人にも及ぶ需要がふえてくるという中で、これらの需要に見合う供給体制が今後緊急に必要になっているというのが現在の状況ではないかと私どもは考えておるわけでございますが、問題は地域の配分あるいは教育の中身等におきまして、既存の教育施設といたずらに競合するというようなことは避けるべきことは当然でございます。したがいまして、ただいま御説明申し上げましたように、現在北海道庁あるいは地元におきまして、どういう教育訓練の内容を進めていくかということで検討しておりますし、私どもも必要な指導をする上で、それぞれが適切な教育内容でもって産業界の需要にこたえていくということで努力をしてまいりたい、かように考えております。
  353. 池田克也

    ○池田(克)委員 わかりました。  私が申し上げたいのは、そうしたむだな予算というものは大変厳しい財政の中で避けるべきだということ、と同時に、特に今まであったことを――今価値の転換の時代だというふうに私は考えます。したがって、今までの流れをそのまま踏襲するのではなしに、新しい発想のもとにそれぞれの役所が協力するということは当然だろう、こう考えます。特に、第三次産業への就職というのは幅広い社会的経験とかあるいは文化的教養が要求されまして、単に何日、何カ月訓練を受けてその免許が取得できたからそれでいいとか、そういうものではないと思います。また、情報処理技術者については、かなり幅広い社会的な常識あるいは秘密の情報をデータにインプットすることもあるわけで、著作権法のデータベースの整備の問題等もありまして、単にコンピューターが処理できればいいというだけではなしに、そのモラル性の問題とか社会的な一般教養の力とか、こうした問題が強く要求される分野だと思うのです。  そういう点では、従来の労働省が所管していた職業訓練というものの発想を一歩乗り越えて教育機関と連携をとるあるいは地域と連携をとる、むしろ地域におけるそうした、例えば失業が予想される方々の奥さんとか家族とか、そういう人も含めたところの、新しい時代はこうなるという認識を与えつつ雇用を造成するような能力を開発するような施策が必要ではないか、このことを私は切に考えるわけでして、労働大臣並びに総理からこの職業転換の問題についてのお考えを伺いたいと思います。
  354. 平井卓志

    ○平井国務大臣 お答えいたします。  おっしゃいますように、これからの産業構造の転換等々、非常に雇用問題の困難な時期に当たりまして、今後我々が特に力を入れなければならぬのは訓練であり、能力の転換その他の事業でございます。今やむだのないような投資をせよという御指摘もございましたが、やはり今後の労働力、その中身の需要動向を考えました場合に、やはりある程度は先行的な判断もいたさなければならぬ、こういう判断に立ってこのたび二カ所にお願いをしておるわけでございまして、まだまだ決して十分とは申せませんし、さらにまた申し上げれば、雇用情勢というのは常に流動的でございますから、指導員等の訓練も含めまして、教育科目さらには訓練期間等々も実態に即して今後有効に働くようにさらなる見直しを常時やっていかなければならぬ、かように考えております。
  355. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 やはりこれからの日本の産業の状況を考えますと割合に将来性がある、そして発展性の見込まれる分野にそれらの人々を送り込むということが親切なやり方であると思います。そういう意味において職業訓練というものは不可欠でございまして、積極的に政府としては手を広げて努力すべきであると考えております。
  356. 池田克也

    ○池田(克)委員 同じ問題の延長線で文部省にお伺いをしたいと思います。  文部省は専修学校を所管しているわけですが、臨教審の答申などを見ましても、第一次答申では生涯学習ということが取り上げられ、特に学歴社会の是正ということが主要なテーマでございました。どこで学んだかというよりは何を学んだかということに主眼を置いていくべきだ、こういう主張がございましたし、第二次答申では、生涯職業能力の開発が取り上げられました。また、第三次答申ではより詳細に「生涯学習を進めるまちづくり」ということがうたわれておりまして、まさに今問題としておりました産業の変化、そして人々の本当に働くために必要な教育というものが臨教審のサイドからも叫ばれ、そしてまた子供たちの数が年々、ふえているところもございますが、子供たちの学年にもよりますけれども、特に小学校レベルなどでは減ってきております、そうしたあいている学校等もあることから、そうしたところを活用いたしまして生涯教育というものを推進すべきだ。そしてそれは新しい産業社会の転換に十分に役に立つものであって、この文部省対労働省というそれぞれの役所ごとのことを乗り越えたそうした発想というものが当然行われるべきだ、こう考えますが、文部省のお考えをお聞かせいただぎたいと思います。
  357. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 ちょっと冒頭に、労働省の訓練校と専修学校と何か競合して奪い合いしているというお話。まあそういう空気もございましたけれども、今、労働省と文部省が話し合いをやりまして、先ほど局長が答弁しておりますように、例えば夜間に重点を置くとか、委託訓練にするとか、カリキュラムの競合を避けるというふうな非常に苦労をいたしまして、そういうふうにお互いに分野を守ろうとしておりますので、成り行きを見ていただきたいと思うのです。  それから、今御質問がございました職業訓練にもっと画期的なものを導入しろということ。おっしゃるように高等専門学校がございますね、あれだとかあるいは大学の工学部、こういうふうなものの開放を私はやっていくべきだと思うし、それから、現在の国立学校、私立も含んででございますが、その中に、社会科学あるいは人文科学の中でそういうふうなものが、一つは理工科系に、技術系に転用していくということも考えていかなければならぬだろうと思うのです。そういうふうなものを積極的にやっていくと同時に、やはり現在職業についておられる方が夜間でも勉強できるという、これが非常に希望が多いと思っております。そういうふうなものと専修学校の方とをうまく組み合わすことを考えていきたい。それで今、生涯学習体系の一環としてそれを具体的なものに仕上げていきたい、こう思っております。
  358. 池田克也

    ○池田(克)委員 この生涯教育の問題ですが、文部省の組織を見ておりますと、今申し上げたような問題、生涯教育を具体的に推進するそうしたセクションが余り見当たらないのです。大学、高校、中学と、それぞれ学校体系ごとに機構化されておりますし、学術とかあるいは国際とかそうした分野もございますが、いわゆる勉強する世代をほぼ十八歳あるいは二十代前半というふうに規定した、そうした時代の教育の官庁であったのではないか。社会教育局等もありますけれども、私は、新しい時代を迎えてこの生涯教育についての文部省の機構というものも新しく考えるべきだ、こう思いますが、大臣いかがでしょうか。
  359. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 文部省ではかねてから、そういう生涯学習体制の責任の部署というものをはっきりしよう、社会教育局がこれに一番ふさわしいところでございまして、これを名実ともに内容も変えてそういうふうに持っていきたいと思っております。しかし生涯学習は、先ほどのお話にございましたように、学術国際局とも関係しているし、高等教育局等そういうものと関連してまいりますしいたしますので、そういうようなものを整合性をとりながら機構を変えていきたい。  それで、その時期でございますけれども、臨教審の最終答申がございまして、それを受けたころに大体機構の改革が着手できるように今準備をしておりまして、それの内容がほぼ固まってきたという段階でございます。
  360. 池田克也

    ○池田(克)委員 そうしますと、臨教審の答申を受けて、先ほど総理からも、いろいろ整理してその上で改革に手をつけていく、こういうふうに他の委員からの質問に答えていらっしゃいましたけれども、この生涯教育という問題は極めて重要な課題である、こう私は思っておりますし、生涯教育の機関というものも教育官庁である文部省につくるべきだ、こう考えます。そして、先ほど来話題にしております専修学校もかなり苦労しつつ、そしてまた本当に勉強したい、あるいはそうした能力はありながら今までの普通教育万能と言われるような学校になじまない、そういう子供たちにとっていい場である。しかし、社会的な教育機関の地位として、いいところもありますけれども、もっと応援をし、そして社会がもっとこれを宣揚していかなければならない。率直に申しますと、専修学校の振興という問題も、法律はありますものの、いま一つという感を否めないものがあるわけです。  やはりいじめとか、そうした問題を見ておりますと、不本意入学、きのうも文部大臣が答弁しておられましたが、どっちかというと職業系の高校に行った子供たちの中に途中退学などがある。そうした子供たちを、そうした職業的な具体的な社会現象をとらえて教えて活性化させるという面もあるわけですから、私は生涯教育と専修学校の振興というのは大きな社会全体の、産業の変化も含めました施策の柱になるべきだ、こう考えるのですが、総理の御所見を伺いたいと思います。
  361. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 池田さんの御所論を今拝聴していまして、非常に地味なお話ではございますが、非常に大事な点をお話しくだすっていると思うのであります。  現在の学校教育体系というものは、いわゆる文部省直轄の系統のものはややもすれば硬直化してまいりまして、そしてややもすればまた人間性も失われつつあるところで、自由闊達さが欠けてきています。それを直すために今臨教審にお願いしているわけですが、しかし専修学校とか特殊学校というものは子供たちが自分で志願して、自分の将来のためにみずから進んで行くという性格のものですから、これは教育の思想に最も合うものではないかと思うのです。それが立派にうまくできれば日本の教育体系というものは非常に変わってくる。そうして価値基準においてどっちも同等のものである。あるいは、むしろ本人の希望や趣味に合ったもの、自分の得手とする世界へ突っ込んでいけるというので喜びを余計に伴うものであるかもしれない。そういう意味から今の問題をお取り上げであると思いますが、私もそういう観点から、その辺に非常に重点を入れてやるべきであると考えております。
  362. 池田克也

    ○池田(克)委員 大学の入試について、私はここへ立つたびに総理あるいは文部大臣にお伺いをしてまいりました。ことしの春の暫定予算のときに、いわゆるA、Bに分けた国立大学の入試の問題について評価を伺いましたときに、文部大臣は、高校レベルでもっと情報を渡さなければならない、どうしても、どこの学校どこの大学がいいか、あるいはその能力との比較、そうした進路指導の面で大手の予備校、そうしたところのデータというものが不可欠になり、そうしたところの情報というものを得ない学校は進路指導で大変不利な状況に置かれる。そうした意味から、文部省としては教育委員会等にそうした情報を渡してこれからの入試に備えたい、こういうような答弁をいただいたように記憶をしておりますが、その後何らかの対応をなさったでしょうか、お伺いをしたいと思います。
  363. 阿部充夫

    ○阿部政府委員 昭和六十三年度の入試におきまして国立大学協会と、それから私ども文部省といろいろ協力をしながら改善点を進めておるわけでございますが、先生御指摘の情報関係、できるだけ提供したいということにつきましては、各大学への出願の状況をできるだけ何回も知らせるように、今何倍になった、今何倍になったというようなことが知らせられるようなことを各大学でやっていただくとか、あるいは過去の入試のデータにつきまして各大学で発表していただくとか、それからまた先般も新聞に載っておりましたけれども、各大学の積極的なPRと申しますか、受験希望者に対しまして説明会等を、これも相当数がふえてまいりましたが、たくさん実施するようにするとか、いろいろな形での情報の提供ということで、現在鋭意努力をしているところでございます。
  364. 池田克也

    ○池田(克)委員 もう一問だけ文部省にお伺いしたいのですが、問題としておりました新しいテスト、ここで総理にも何度がお伺いをしましたが、昭和六十五年からいわゆる新テスト、いろいろその名称については議論のあったところでございますが、私学も加わり、一科目でもいいというような新しいテストというものを六十五年から実施すると今日まで答弁をいただいておりました。こうなりますと、当然そのテストランニングと申しましょうか試行をやらなければなりません。そうすると、具体的には六十三年度に試行するということになるだろうと思います。そのためには新しい機関法律でつくるというふうに前に答弁をいただいておりますが、恐らくそうなりますと、もうことしの今ごろには法制化の準備をし、そして明年度の予算にその要求を入れておかなければ、新テストの問題は六十五年には実施できないのではないか。ただでさえ今大学入試は国立大学の間でもいろいろもめている状況の中で、六十五年の新テストというのを入れるとさらに受験界は混乱をし、子供たちは本当にどうすればいいのか、親はどうすればいいのか、結局たくさん受けてどこか受かればいいということにならざるを得ない。そうすれば受験料も莫大にかかるし、何かの指導やデータを受けるとすれば大手の予備校ということになり、それもそれぞれの地域にあればいいけれども、大変多くの受験生を混乱に陥れることであって、今この時期に、新テストが六十五年にできるかできないかというのはかなりめどをつけて発表すべきではないか、こう私は考えるのですが、いかがでしょうか。
  365. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 池田さんの御心配、私も全く同じ心配を実は持っておりまして、それでこれは何とか早くやりたいと思っております。  ところで、入学試験のやり方等につきましては、これは法律の改正は要らないですけれども、入試センターがやはり国公私立全部合わせてやるということになり、そしてテストの内容も変わってくるということになってまいりますと、これは法改正が必要なんではないか、こういうことで準備をいたしております。概算要求をこの八月に行うわけでございますが、その概算要求時期、八月末までにはこういうことでという基本的なものがお示しできるようにきちっといたしたいと思っております。
  366. 池田克也

    ○池田(克)委員 初めて伺いましたが、明年度予算要求して法案を出すということになりますとかなり忙しいことですし、私学の恐らく対応というものもなかなか難しかろう。これについては総理、何か御意見ございますでしょうか。
  367. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 大変技術的な問題なので文部大臣にお任せしております。
  368. 池田克也

    ○池田(克)委員 時間がありませんので、もっとお聞きしたいのですが、別の機会に譲ります。土地と税制の問題についてお伺いをしたいと思います。  私は、先ほど申し上げましたように東京でありますし、しかも極めて土地が上がりました世田谷に住んでおります。そういう状況の中から、ここで私が申し上げるまでもなく、東京の地価高騰というのは非常に異常な状態になってきておりまして、この一年を例にとりましても、私の知っている限りで、坪二百万円ぐらいだった土地が六百万円になった。それで、買い手の方は土地も見ないで、売ると言えばすぐ売れる、こういう状態です。しかも売った人は、それが業者の手に渡り、一週間もたたないうちにチラシになって八百万円の値がついている。あなたのところに売ったのは失敗だったからもう話を白紙にしてくれ、こういうふうな状態にもなっている。  私が承知する限りでは、極めて異常な状態で、政府が最近打ち出された土地の規制対策というのはもう時既に遅しである。ここから先は一体どうするか。人々は追われるようにして引っ越していく。そして何も悪いことしないのにきっと固定資産税は上がるであろう。それを払うのにはどうしたらいいか。あるいは年老いた親を抱えて相続になった場合には、私たちはここへ住めないのじゃないかという非常な心配を持っているわけでございます。確かに異常な地域ではありますが、次第にそれが波及いたしまして、東京全域、神奈川県あるいは千葉県、埼玉県に至るまで、首都圏はこの土地の異常な高騰で秩序が狂ってきている。  例えば消防団の人たちに聞いてみますと、この消防団というのは非常に重要な、地域の人々を守る組織でございますが、若い人たちがいなくなって、消防団員になり手がない。従来土地の人として、八百屋さんとか魚屋さんとかを営んだりしていた人たちがいたのですが、そこも地上げ屋さんに買われてマンションとなり、その商売はやめた、若い人は勤めに出た、こういう状態で、地域のさまざまな、今まであった、地域を守りいい住環境にしていこうとしていたそういう人たちがいたたまれなくなってきている。やはり外国からのそうした需要があり、都心部を売って閑静な住宅地へ来たわけですが、その閑静だったものが、地域の人たちがその土地を大事にし、そこから犯罪も発生しなかったし、そしてそこにいる人たちがそれぞれ社会の重要な地位についてその評判をよくしてきたからがゆえにそういう事態になったわけなんですが、そこに今までいた、功績のある、そしてそこに永久に住みたいと思っている人たちが住めなくなってきている。  こういう実情というのを私は毎日見聞きしていまして、これは重大な政治の失政である、この問題に手を下さなければ、今下しつつありますけれども、本当にみんなが納得するような解決策を打ち出さなければ、ある不動産のかなりの識者が暴動も起きるというふうに言ったそうですが、私は大変な問題であると考えております。総理並びに国土庁長官にこの問題の対応をなるべく具体的にお伺いしたいと思います。
  369. 綿貫民輔

    ○綿貫国務大臣 最近の地価の高騰に対しましては、政府といたしましてもいろいろと憂慮いたしまして、さきに百八国会におきましては国土利用計画法の改正をさせていただいたわけであります。この内容は、御存じのように各地域において監視区域というものを設けまして、これでチェックをしようということであります。この国土利用計画法の、さきに東京都におきまして条例によってこのチェックをしていただくように改正していただいたわけであります。その結果を見ますと、昨年の十二月からことしの六月まで約八百三井届け出があったそうでありますが、その届け出制の中で百八十七件の価格指導、あるいは売買をやめたとかいうことで、約二九%の捕捉率があったというふうに聞いておるわけであります。  しかし、五百平方メートルという単位につきまして、おおよそ取引の二〇%が捕捉できるだろうという予測をいたしておりましたが、約一〇%の捕捉だということでありまして、これをさらに三百平方メートルに七月一日から改正をされたわけでありまして、これでまいりますとおよそ二〇%の捕捉率になるだろうという想定をいたしておりまして、相当の効果を上げておるわけであります。八月一日からは国土利用計画法のいよいよ発効でございまして、東京都以外におきましても、これが各自治体において監視区域を設け、それぞれの単位を切りましてチェックができるようになりますので、相当の効果があるだろうと考えておるわけであります。  一方、最近の土地の供給面におきまして、さきに税制面におきまして長短期の区分の変更ということで、従来十年以上所有していない場合には、これは売却いたしますと大変重課税がされるわけでありますが、これを五年に切りかえてさらに宅地の供給に資するということと同時に、転がしが大変に頻繁であるということで、二年以内の取引によって利益を得た人には超重課をするという法律を提出いたしたわけであります。しかし、これは残念ながら売上税関連ということで廃案になりました。これが実は通るだろうということで、一時大変に値下げのムードが出てきたというか、値上げの売りどまり、こういうことが予想されたわけでありますが、最近この法律がどうも通らないらしいということでまたむくむくとそういうムードが起こっておるということで、今度の国会にも提出をさせていただくつもりでございますので、ぜひ成立をさせていただきたいと思っておる次第でございます。
  370. 池田克也

    ○池田(克)委員 値上がりの激しい地域に住んでいる人々にとっては、先ほど申し上げましたように、相続税あるいは固定資産税のことが非常に心配であります。先ほどもちょっと触れましたけれども、これは大蔵省と自治省だと思いますが、相続税につきましては課税最低限をぜひ引き上げてほしい。新聞の論説なんかにも出ておりましたが、従来の評価が七千百万、そしてそれに伴うところの相続税が百六十万であったところが、一億六千万にその土地がはね上がりました結果、納めるべき相続税は千八十万になった、こういうふうな試算もあるわけでございます。確かにその土地は値があるんです。あるからこそそうした税がかけられるのでしょうが、売って初めてそれは収入になるわけでして、静かに住んでいる人々にとっては大変迷惑な話である。そして近所からは、あなたのところ高いんだそうだ、随分お金持ちのようだと言われるのですが、生活の実態とはかけ離れたものである。  政府は、自分の住んでいるところを出ていけと言うのでしょうか。確かに、土地の効率利用から考えるならばそうした税をかけて追い出すということは理論的にあるでしょうが、しかし生活の権利というものは、そこに前々から人が好んで住み、そこを大事にしてきたということは最も大事にすべきことではないか。都市におきましては必ずしもそういう状況にない、それはわがままだという説もあるかもしれませんが、私は、相続税の課税最低限というものはどうしても変更をし、人々の暮らしを守るべきだ、あるいはまた固定資産税についても、最低人々が住むに足る部分についてはどうしてもこれは据え置いて、あるいは緩和をしていくべきだ、こう考えますが、大蔵、自治両相の御答弁をいただきたいと思います。
  371. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 池田委員のお住まいのあたり、特に東京のそのあたりで土地の上昇が大きくなりまして、今おっしゃいましたように地つきの人が本当に親代々住んでいた、それも大邸宅なら別でございますけれども、百坪ぐらいのところで、本当に相続があったために泣く泣くそれから動かなきゃならぬということはどうも私は問題だという感じがやはりいたしておりまして、そこで、二百平方メートルまでは評価額を三割減らすというようなこともやっております。やっておりますが、ここへ来ましてまた上昇が激しいものでございますから、どうもおっしゃいますようなことが起こりつつある。  実は昨年政府税制調査会をやりましたときに、そういう問題は皆様お気づきであって、何とかすべきではないかという御議論が相当ございましたのですけれども、いろいろなほかの税との関係その他のことで、この際はまあ一応見送るかということでございました。実は、たしか昭和五十年ごろから評価と申しますか課税構造を変えておりませんものですから、相当無理がきているというふうに私も思っていまして、これは次の順序には早急に取り組まなきゃならない問題ではないかと実は強く思っております。
  372. 葉梨信行

    ○葉梨国務大臣 先生言われましたように、大都市の中心部、商業地等で異常な地価の高騰が見られましたが、これが周辺地域にもだんだん及んできておりまして、大変憂慮すべき状態であろうと思っております。昭和六十三年度の固定資産税の評価がえにつきましては、課税団体において作業が進んでおります。また、自治省におきましては、全国的な基準となる地点につきまして適正な評価が行われるように調整を進めているところでございます。先ほどのような異常に高騰した地価、特に先高を見込んで割高になっていたりあるいは将来の期待価格が織り込まれているような異常な地価につきましては、その異常な要素を取り除いて評定をするというような配慮を加えまして行っていきたい。自治省といたしましてはそのような調整を今行っているとこうでございます。  それで、固定資産税の負担と評価の問題につきまして、昨年十月の税制調査会の答申におきまして以下のように述べております。「その評価にあたって引き続き均衡化、適正化に努め、中長期的に固定資産税の充実を図る方向を基本とすべきである。この場合、多くの納税者に対し毎年課税されるという固定資産税の性格を踏まえて、負担の急増を緩和するためなだらかな増加となるような配慮が必要である。」こう書いてございますが、このような趣旨を踏まえて検討を進めていきたいと考えております。
  373. 池田克也

    ○池田(克)委員 近郊の農地を宅地にして供給をふやし、それによって需給関係を緩和して土地の下がるのを期待する。今の勢いではそういうふうにしてもすぐ下がるかどうか疑問があると私は思っておるのですが、しかしながらそれでも需給というものは非常に重要でございます。宅地並み課税の実施につきましてどのようなお考えか伺いたいと思います。
  374. 天野光晴

    ○天野国務大臣 宅地並み課税、御承知のように実施しております。今年度で丸五年たちまして、現在の農地が果たして営農をやっているのかやっていないのかを確かめて、そしてやっていないというものは宅地並み課税をするという方針を今から六年ばかり前に決めたわけでありますが、それがちょうどことし今調査中という段階に来ましたので、その結果を見て、この措置は、随分テレビでも宣伝されまして、急にカキの木が二、三本植わっているところが今度整理されてきれいな畑になったり、いろいろしておるそうでありまして、その実態をできる限り完全に把握いたしまして、宅地並み課税はすぐさま実行する予定でございます。
  375. 池田克也

    ○池田(克)委員 今木が植わっているというお話がありましたけれども、本当に皆深刻でございまして、林などが切り払われてそして畑になった。これは、相続関係におきまして有利であるという、こういう判断だそうでございます。また、いわゆる農業ですが、近郊ではそうした手をかけたくないということからか果樹を植えている。その果樹の背丈も余り高くなると畑ではないということから背の高くならない果樹を植える、もしくは背が高くならないような農薬をそこにまく。さまざまな工夫と知恵が込められておりまして、この近郊におけるところの林が切り払われるというのは大変大きな生態系も含めたところの緑の変化でございますし、そうした点を踏まえますと、今御答弁いただきましたような近郊の農地のあり方というのは、本当に真剣に考えていかなければならないと思っているわけでございます。  時間がございませんので、この問題をまた次に譲りまして、別の問題で建設省にお伺いをしたいと思うのですが、今回の補正予算で住宅に対する対策はどのようになっているか。私の伺ったところでは、公営住宅の改築というものが数百億の予算が措置され、住宅金融公庫に七千億円投じてこれによって住宅供給を賄う、こう説明を受けましたが、こういう趣旨でございましょうか。
  376. 片山正夫

    ○片山(正)政府委員 このたびの補正予算の住宅関連でございますけれども、まず第一点といたしましては、住宅金融公庫関係につきまして七千億の追加計上を行っております。この内容といたしましては、戸数につきましては二万五千戸の追加、そのほか規模増あるいは設備の水準の向上等の質の改善を図っております。また一方、公営住宅関連につきましては、戸数にいたしまして約三千五百戸、金額にいたしまして四百九十億円でありましたかの計上をお願いしておるところであります。
  377. 池田克也

    ○池田(克)委員 野村総研の発表した試算があるのですが、これは正確、不正確があるのですが、これによると、地価が一%上昇すると何万戸かの着工件数が減る。私もそういうことがあるかと思います。一方では、地価が上昇すればしたで土地の動きが活発になるからそれだけ着工件数がふえるという説もあるようで、この政府が考えている住宅の着工、そしてそれに伴う国民の住宅需要を賄うということと土地の値上がりとの相関関係というものをどうお考えになっているでしょうか。
  378. 片山正夫

    ○片山(正)政府委員 地価につきましては、その上昇、下降は住宅の建設戸数に大きく影響することは自明のところでありますが、これを住宅の建設戸数の具体的数字の推測としてとらまえましたときに、短期的要因としましては、地価が上昇いたしますと投機的な買いが入る。この面では住宅建設についてはプラスの面に働きます。しかしながらまた、中長期的に見ますれば、住宅取得費が上がるということで、これはマイナスに働きます。そういうことで、地価の扱いにつきましては、具体の数字を推計いたしますモデルの扱いとしましては、建設省としましては外生変数として使っておりまして、直接内生変数としては使っておりません。野村総研の一つの試案として出されたものにつきましては、地価につきましては直接住宅の取得価格ということで内生変数として扱っておるところでありまして、その点、建設省で従来推計しておりますものとは数字が若干違います。  なお、御参考までに申し上げますると、野村総研のモデルにおきましては、パラメーターとしまして住宅の取得価格と取得能力の二点を使っております。しかしながら、建設省の推計しておるモデルにおきましては、そのほかに婚姻の状況の問題でありますとか、あるいは第一次オイルショックのダミーの問題、これは統計上大変大きな影響を及ぼしますので、そういうことも含めておりまして、ちなみに決定係数で申し上げますると、建設省のモデルにおきましては〇・九七、野村総研は〇・八八でありますので、誤差におきまして野村総研の方は相当大きく出るというような特色がございます。
  379. 池田克也

    ○池田(克)委員 大変御専門的な話でございましたが、ある試算によりますと、東京二十キロ圏の二月建て住宅は年収の八倍に相当する。これではもうサラリーマンは持ち家を望んでも取得は無理である。政府は平均的なサラリーマンのマイホーム計画のモデルを持っておられるのかどうか。アパート住まいのサラリーマンが現在の家賃をローン返済分として金融公庫からいわゆる頭金を借りて家を建てるとして、今平均的なサラリーマンの家、この程度なら買えるだろうというモデルは一体幾らぐらいの家と政府は考えておられるのか、お伺いしたいと思います。
  380. 片山正夫

    ○片山(正)政府委員 住宅の価格とその取得能力の実績につきましては、まだ六十一年度のデータしか出ておりません。六十一年度につきましては、マンション系統につきましてはこの二、三年その乖離が少し縮まってきたのですけれども、六十一年度、マンションにつきましてはまた上昇の気配が明らかに出ております。一方、戸建て住宅につきましては、まだその影響は六十一年度は出ておりません。  ちなみにどの程度のものがいいかというのは、いろいろの条件がありまして一概には申し上げられませんけれども、例えばローンの負担率を所得の二五%と想定いたしまして、マンションにつきまして、まず第一に住宅金融公庫のお金を第一優先で借りまして、それから実績におきます自己資金というものを組み込みまして、残りをローンの負担率の限度いっぱい民間資金を借りるということで試算をいたしますると、年収倍率におきましておおむね四・七から四・八という数字が出ます。
  381. 池田克也

    ○池田(克)委員 四・七から四・八がおおむねということですが、実際は八倍、四千万ぐらいの家は二十キロ圏でもどうかという感じが東京の実態です。これは、建設大臣、東京の事情を御存じかどうか、東京駅の近辺についていろいろお詳しいと思いますけれども、現実に四・八倍といいますと、金額にして一体幾らですか。
  382. 片山正夫

    ○片山(正)政府委員 年収が、京浜地区の場合に、平均的サラリーマンとしまして貯蓄動向調査から調べまして六百六十三万、これに対しまして三千百二十万という金額が出ます。
  383. 池田克也

    ○池田(克)委員 三千百二十万といえばどの辺なら買えるでしょうか。
  384. 片山正夫

    ○片山(正)政府委員 即座に具体的な地名でお答えすることはちょっとできかねますけれども、やはりかなりの郊外地になろうかと存じます。
  385. 池田克也

    ○池田(克)委員 要するに、どこという特定はできないということでございますが、しからば二十キロ圏は無理だ、こう考えていいでしょうか。
  386. 片山正夫

    ○片山(正)政府委員 いろいろと住宅の様式がございますけれども、マンション形式にいたしましてかなり規模を倹約するということでありますればかなり近いところでも可能であろうかと存じます。
  387. 池田克也

    ○池田(克)委員 運輸省にお伺いしたいのですが、こんなことから、おうちがだんだん遠くなるという歌ではございませんけれども、サラリーマンの通勤時間というものは非常に延びている。そして、電車なども超過密でありまして、二分に一本、一時間、六十分について三十本出している。小田急電車の説明ですけれども、踏切は一時間のうち五十七分閉まっている、こういう状態で、しかもそれは超満員電車である。本当にサラリーマンのこうした住宅事情がだんだん遠くなるということと、それに費やされる労力、もうほかの物は買えない。先ほどちょっと触れなかったのですが、アメリカが調査しております日本の教育を調べてみますと、高校生の子供一人で月収の一〇%、それから塾通いで五%、一人子供がいると月収の一五%が教育費に費やされるという、そうした情報がアメリカが発表したものにあります。二人子供がいますと、それで三〇%出ていってしまう。それから、今のお話のローンの二五%が住宅費となると、これは合わせて五五%が教育費と住宅費に持っていかれると残り四五%、それで可処分所得で、さあ、これで一体内需振興だ、何か買いたい物があっても、これはとても子供のこと、家のこと、払いが滞れば真っ先に出ていかなければならない状態になっている、  こういう実態を考えて、運輸省にもお伺いしたいのですが、大都市圏の通勤過密、先般法律ができまして、この十年以内にどうしてもこれは何らかの形の複々線をして交通量をふやすように、こういう法律がございました。この十年はとても待てないのじゃないか。運輸省、何か通勤に関するこうしたデータをお持ちでしたらばお示しいただきたいと思うのです。
  388. 熊代健

    熊代政府委員 先生おっしゃいましたように、東京圏の場合、いわゆるドーナツ化という格好で郊外に延びております。交通センサスというのを五年に一遍やっております。東京圏の平均の通勤時間は年々少しずつ延びておりまして、現在六十七分、一時間ちょっとというようなところになっております。  先生御指摘の特定都市鉄道整備促進特別措置法の考え方は、御承知だと思いますけれども、複々線あるいは大規模な改造をやりまして、輸送力を十年以内に、いわば複々線になりますと二倍以上になります。そういったことで、目下関係の大手私鉄会社におきまして鋭意検討しておりますが、先生御指摘のようにそれを待っているということじゃございませんで、六十年の七月に東京圏の高速鉄道網の整備の基本計画というのを審議会から答申をいただいて、目下各所において複々線化あるいはホーム延伸等による編成長の増大といったような格好でやっておりますが、これをより進みやすくするということで、昨年法律をつくっていただいた次第です。  そういった意味で、我々としては従前から、東京圏だけではなくて、大手の私鉄につきましては五カ年計画で輸送力増強、あるいはそのほかに安全とかサービスの問題がございますが、投資計画をつくらせまして、開銀融資等も行いながら積極的に進めておる、今度の法律につきましては、これもこの秋から年末にかけまして具体的な適用をして進めていきたい、このように考えている次第でございます。
  389. 池田克也

    ○池田(克)委員 これは建設省にお伺いしたいのですが、こういう実態を考えますと、サラリーマンにとってもう既に一戸建ちの家、マンションは今かなり遠いところにかなり面積を倹約すれば何とか手に入るという御答弁でしたが、少なくとも首都圏に関しては非常に厳しい状態に置かれている。二五%で狭いところが手に入り、三〇%子供の教育費に充てて、結局あと残りで生活をしていくといったらどういうことができるだろうか。私は、本当にみんなが我慢の限度に達しているんじゃないかなと思います。  そうなると、結局賃貸住宅に切りかえ、そして夢をセカンドハウスを持つようにして、そして休日がふえたりした段階で高速鉄道などを活用して、そして自分の勉強をしたり休暇をとる、こういうふうな考え方にもならざるを得ないんじゃないか。そんなことを人々も先に考えて、九十九里浜あたりに土地が供給されて大変売れている、こういうふうな状況も聞いております。建設省としてこういう持ち家の問題からいわゆる賃貸住宅、賃貸住宅もいろいろありますが、どうしても単身世帯用のものと、または外人さんが使うような超豪華なものと、かなりどうかと思うようなところと両極端に分かれているようなんで、適切な賃貸住宅に一つの施策のめどをつけて進められるというお考えはないか、お伺いをしたいと思うのです。
  390. 天野光晴

    ○天野国務大臣 先生御承知のように住宅公団が古くから歴史を持ってやっております。そういう点で、今先生が御指摘なされたような問題については、住宅公団が十分踏まえて、他の業者よりは格安に分譲もできますし、賃貸住宅でどんどんやらせるつもりでおります。  ただ問題は、何といっても地価を下げるということなんですから、これは中曽根内閣、この間総理が演説したように、あとわずかきりない中でこの問題を解決するという演説をしているのですから、それはある程度のことは実現できる、私はそう考えております。
  391. 池田克也

    ○池田(克)委員 これは地価が下がるとどうこうという問題よりも、賃貸住宅に方向を切りかえたら地価が下がるのじゃないかと思うのです人々が二戸建ち二戸建ちと言っているのでぐんぐんそれがいくので、賃貸住宅に切りかえると、売ることを税制上の問題からためらっている地主さんなんかも、それを政府が応援したり制度を改正してあげれば、そういうものをつくる意欲はあるのですね。売るというと、これはちょっと待ってくれ、もう二度と買えない、それで相続のときに何とかなる以外は出てこないという実態ですね。ですからやはり施策として良質な賃貸住宅というものを進めるということが土地を緩めていく一つの方法だろう、まあこれはわかりませんけれども。私はそう思うのですが、さっき手を挙げていらしたのですが、ちょっと伺いたいと思います。
  392. 片山正夫

    ○片山(正)政府委員 まず、住宅対策の進め方としましては、国民の住宅の需要動向に応じまして進めるのが基本的な考えてあります。一方、持ち家住宅につきましても、世論調査をいたしますると、八一%の方々が住宅を持ちたい、所有したいという意向が片方ございます。片方、都市におきまして少人数世帯がふえていること等、借家の供給、需要もふえております。特に標準世帯用の賃貸住宅は東京圏におきまして、七十五万戸でありますけれども、絶対的に不足しております。そういうことを勘案しまして、第五期の五カ年計画におきましては持ち家率を六三・三%に計画いたしました。これを前期の計画に比較しますと、前期は七一・四%ですから、その面におきましては借家の方に全体がシフトしている、こういう状況でございます。
  393. 池田克也

    ○池田(克)委員 一問だけ最後に。  このほか、いわゆる中水道、つまり東京はそうした点で人口が過密になり水資源はもう限度に来ている、こういう状況から中水道の問題をお伺いするつもりでしたが、時間が来てしまいましたので、ずっと土地の問題あるいは住宅の問題をお伺いしてまいりました。非常に国民の関心の高い問題でございます。総理のこれについての御決断、あるいはこれから、今いろいろ御答弁がありましたが、土地をどうするか、あるいは借家にするかアパートを供給するか、非常に重大な問題で、私は率直に言って、全域とは申しませんが、サラリーマンの多くの人たちがこの問題に頭を痛め、この設計が変わるならばもっと別の方にお金を使おうということは十分あり得るわけで、この方向については積極的に研究をして、国民一つのマイホームあるいはマイ生涯のデザイン計画というものができるようにしてやるべきだ、こう思いますが、総理の御所見を伺って終わりたいと思います。
  394. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 住宅問題、土地問題は現下の大問題でございますが、新行革審にも今諮問しておりますが、それを待たずにできることはどしどしやっていきたいと思います。やはり税制の問題あるいは供給増加の問題、転売の禁止、制限の問題、そういうさまざまなことがやればあると思いまして、努力をいたします。
  395. 池田克也

    ○池田(克)委員 終わります。
  396. 砂田重民

    砂田委員長 これにて池田君の質疑は終了いたしました。  次回は、明十五日午前十時より開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後七時二十三分散会