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1987-07-13 第109回国会 衆議院 予算委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十二年七月十三日(月曜日)     午後二時開議 出席委員   委員長 砂田 重民君    理事 今井  勇君 理事 野田  毅君    理事 浜田 幸一君 理事 林  義郎君    理事 吹田  愰君 理事 上田  哲君    理事 川俣健二郎君 理事 池田 克也君    理事 吉田 之久君       相沢 英之君    愛野興一郎君       甘利  明君    伊藤宗一郎君       石渡 照久君    上村千一郎君      小此木彦三郎君    小渕 恵三君       越智 通雄君    奥野 誠亮君       海部 俊樹君    小坂徳三郎君       左藤  恵君    桜井  新君       志賀  節君    杉山 憲夫君       田中 龍夫君    西岡 武夫君       福島 譲二君    細田 吉藏君       松野 幸泰君    村田敬次郎君       村山 達雄君    山下 元利君       井上 一成君    井上 普方君       上原 康助君    加藤 万吉君       川崎 寛治君    菅  直人君       細谷 治嘉君    坂口  力君       冬柴 鉄三君    水谷  弘君       宮地 正介君    木下敬之助君       楢崎弥之助君    岡崎万寿秀君       佐藤 祐弘君    正森 成二君  出席国務大臣         内閣総理大臣  中曽根康弘君         国 務 大 臣 金丸  信君         法 務 大 臣 遠藤  要君         外 務 大 臣 倉成  正君         大 蔵 大 臣 宮澤 喜一君         文 部 大 臣 塩川正十郎君         厚 生 大 臣 斎藤 十朗君         農林水産大臣  加藤 六月君         通商産業大臣  田村  元君         運 輸 大 臣 橋本龍太郎君         郵 政 大 臣 唐沢俊二郎君         労 働 大 臣 平井 卓志君         建 設 大 臣 天野 光晴君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     葉梨 信行君         国 務 大 臣         (内閣官房長官後藤田正晴君         国 務 大 臣         (総務庁長官) 山下 徳夫君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)         (沖縄開発庁長         官)         (国土庁長官) 綿貫 民輔君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 栗原 祐幸君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      近藤 鉄雄君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)     三ッ林弥太郎君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 稲村 利幸君  出席政府委員         内閣官房長官 渡辺 秀央君         内閣法制局長官 味村  治君         内閣法制局第一         部長      関   守君         人事院総裁   内海  倫君         人事院事務総局         給与局長    中島 忠能君         人事院事務総局         職員局長    川崎 正道君         警察庁警備局長 新田  勇君         総務庁人事局長 手塚 康夫君         防衛庁参事官  瀬木 博基君         防衛庁参事官  古川 武温君         防衛庁参事官  児玉 良雄君         防衛庁参事官  筒井 良三君         防衛庁長官官房         長       依田 智治君         防衛庁防衛局長 西廣 整輝君         防衛庁教育訓練         局長      長谷川 宏君         防衛庁人事局長 松本 宗和君         防衛庁経理局長 日吉  章君         防衛庁装備局長 山本 雅司君         防衛施設庁長官 友藤 一隆君         防衛施設庁総務         部長      弘法堂 忠君         防衛施設庁施設         部長      鈴木  杲君         防衛施設庁建設         部長      田部井博文君         防衛施設庁労務         部長      山崎 博司君         経済企画庁調整         局長      横溝 雅夫君         経済企画庁総合         計画局長    星野  進君         環境庁自然保護         局長      古賀 章介君         沖縄開発庁総務         局長      勝又 博明君         国土庁長官官房         長       清水 達雄君         国土庁計画・調         整局長     長沢 哲夫君         国土庁土地局長 片桐 久雄君         国土庁地方振興         局長      澤田 秀男君         外務省アジア局         長       藤田 公郎君         外務省北米局長 藤井 宏昭君         外務省欧亜局長 長谷川和年君         外務省経済局長 渡辺 幸治君         外務省条約局長 斉藤 邦彦君         外務省国際連合         局長      中平  立君         外務省情報調査         局長      新井 弘一君         大蔵省主計局長 西垣  昭君         大蔵省主税局長 水野  勝君         大蔵省国際金融         局長      内海  孚君         文部省初等中等         教育局長    西崎 清久君         文部省教育助成         局長      加戸 守行君         文部省高等教育         局長      阿部 充夫君         厚生省健康政策         局長      竹中 浩治君         厚生省保険局長 下村  健君         厚生省年金局長 水田  努君         農林水産大臣官         房長      甕   滋君         農林水産省経済         局長      眞木 秀郎君         通商産業省貿易         局長      畠山  襄君         通商産業省産業         政策局長    杉山  弘君         通商産業省立地         公害局長    安楽 隆二君         通商産業省機械         情報産業局長  児玉 幸治君         運輸大臣官房長 棚橋  泰君         労働省労働基準         局長      平賀 俊行君         労働省職業安定         局長      白井晋太郎君         建設大臣官房長 高橋  進君         自治大臣官房長 持永 堯民君         自治省財政局長 矢野浩一郎君         自治省税務局長 津田  正君  委員外出席者         厚生大臣官房総         務審議官    長尾 立子君         参考人         (日本銀行副総         裁)      三重野 康君         予算委員会調査         室長      右田健次郎君     ――――――――――――― 委員の異動 七月十三日  辞任         補欠選任   宇野 宗佑君     石渡 照久君   小此木彦三郎君    甘利  明君   原田  憲君     杉山 憲夫君   嶋崎  譲君     上原 康助君   大久保直彦君     冬柴 鉄三君   経塚 幸夫君     岡崎万寿秀君   野間 友一君     佐藤 祐弘君 同日  辞任         補欠選任   甘利  明君     小此木彦三郎君   石渡 照久君     宇野 宗佑君   杉山 憲夫君     原田  憲君   上原 康助君     嶋崎  譲君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件 参考人出頭要求に関する件 昭和六十二年度一般会計補正予算(第1号) 昭和六十二年度特別会計補正予算(特第1号) 昭和六十二年度政府関係機関補正予算(機第1号 )      ――――◇―――――
  2. 砂田重民

    砂田委員長 これより会議を開きます。  昭和六十二年度一般会計補正予算(第1号)、昭和六十二年度特別会計補正予算(特第1号)、昭和六十二年度政府関係機関補正予算(機第1号)、以上三案を一括して議題といたします。  この際、お諮りいたします。  各案審査のため、本日、参考人として日本銀行総裁三重野康君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 砂田重民

    砂田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ―――――――――――――
  4. 砂田重民

    砂田委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。川崎寛治君。
  5. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 私は、日本社会党護憲共同を代表いたしまして、総理初め関係大臣に質問いたしたいと思います。  今回の国会総理にとって締めくくり国会である、こういうことで、衆参の本会議におきましてもそれぞれそうした議論が行われてまいりました。総理もそれぞれこれまでの四年半に及びます政治を背景にして述べておられるわけでありますが、今大変大きな転換期でございます。まさに転換期であります。それは日本だけではなくて、全世界が大きく揺れ動いておりますし、ベネチアサミットは、私は総理所信表明とは大分違う見解を持っておりますが、ともあれベネチアサミットアメリカのパクス・アメリカーナ、つまり覇権国家としてのアメリカが完全にその権威を失墜をした、そういう一つ歴史的な会議でもあったと思います。そういう意味では、世界並びに日本をめぐっておる大変大きな課題がございますので、私は中曽根政治を総括をいたしたい、内政外交の主な点についてお尋ねをしてまいりたい、こういうふうに思います。  一九七二年、佐藤総理が、国民の世論また沖縄現地の大変な祖国復帰願いに支えられまして沖縄返還ということになりました。ただ、基地の問題は、これは後ほど上原代議士からまた御質問をいたしますが、一つの節目がありました。同じ七二年に田中総理日中国交回復周総理が井戸水を飲むときには井戸を掘った人の苦労を知れ、こう言っておられますが、大変多くの願いがここに結実をしたと思うのであります。そこで、そうなりますと沖縄返還日中国交回復、そのときはベトナムの和平協定が翌年に成ります。大きく動いておるわけです。ヨーロッパの方はそれよりも早く、ブラント首相東方外交を、アメリカ相当圧力がありましたけれども、ブラント首相東方外交を進めていくわけですね。  そういう中でアジアはどうあるべきかというアジア外交というのが、実は日中国交回復沖縄返還というものからまいりますならば当然に朝鮮問題であり、日ソの問題である、北方領土の問題である、こういう方向でございましたが、残念ながらそれは今日まで進んでおりません。でありますから、私は、総理の戦後政治の総決算という安易な考え方には大変問題を感ずるわけであります。  それで朝鮮問題というのが、日中国交回復以後非常にそのころは動きました。南北朝鮮自体統一三原則というものを打ち出して動いておった時代でございます。私は当時、社会党の国際問題の責任者をいたしておりまして、当時の田中中曽根通産大臣と御相談をして、そして北朝鮮との間の貿易朝鮮民主主義人民共和国との周の貿易を進めよう、つまり、中国の方式をもう一遍朝鮮でも進めよう、こういうことで貿易代表部話し合いをいたしてまいりました。特に朝鮮半島日本とは非常に不幸な歴史があるわけでございますから、その歴史考えますならば、南北朝鮮を差別しないで、南北朝鮮が当時統一という方向を出してきたのでありますから、どうこたえていくかというのは日本としての大きな使命であったと私は思います。  そこで、あなたと御相談をして、前の年は田中通産大臣相談をいたしました。そして、それは、民間貿易はある程度進んでおりましたが、これではいかぬ、だから私は、日本の通産省から役人を出しなさい、向こうから役人を入れましょう、どうですか。あなたは、よかろう。金日成主席が受け入れるならば出すよというお話でございました。思い起こしていただきたいのです。そこで私は参りまして、金日成主席と話をしました。日本政府が出すならば受け入れましょう。そこで、帰ってきて私はあなたに報告をしました。わかった、検討しよう。しかし、これがだめになりました。七三年の八月の金太中さんの拉致がこれを全部ひっくり返したわけであります。歴史の歯車がひっくり返ったのです。それが今度韓国において民主化が進んで、金太中さんの復権ができたわけですね。  でありますから、私は総理お尋ねをいたしたいのは、つまり韓国でそういう民主化が進んできた。日本の対応の仕方というのは大変大事だと思います。そしてそのことは朝鮮半島全体にこれからどう進んでいくか。アメリカももう相当動いておる、関係を深めておるという時期でございますから、残念ながら、あなたが政権をとられて最初に行かれたのが韓国でございましたけれども、それは分断を固定化したわけです。それだけに、今の歴史を振り返りますときに、私は、あなたには大変大きな責任がある、こう思います。  そこで、日本が、日中国交回復沖縄返還、その後動けなかった。しかしブラントヨーロッパは動いていった。今日その開きは大変あると思います。全欧安保にも進みましたし、INFの全廃へと行く道筋も、やはりそこに東方外交というのが出発点でもあったわけですね。  そういたしますと、私が今申し上げました、そういうあなたと私もかかわった、そして社会党の多くの諸君がかかわってきましたそういう問題について、今韓国における民主化が進もうとしておるその時点においてどうお考えになるか、総理の御見解を伺いたいのであります。
  6. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 朝鮮半島の平和と安定の問題は、我々も隣のことでございますから非常に大きな重大な関心を持っております。  朝鮮半島平和的統一というものを我々も念願しておるものでございますが、これはあくまで北と南の当事者の話し合いが第一義でございます。しかし、歴史はジグザグの道を通ってきまして、必ずしもたんたんたる一本の道ではない、これはどこの国の歴史にも通ずることでございます。まあ不幸なことにラングーン事件のようなああいう爆弾事件等もありまして、国際環境というものは著しくあれから変わりました。そういうような不幸な事件を経過した後も、その傷をみんなでいやし合う時間が必要であります。そういう形で、今度オリンピックを機に南北オリンピックをやろうじゃないかということで、それが来年に差し迫ってまいりまして、韓国皆さんオリンピックを最大限に成功させるように今全力を振るっております。  先般の韓国の政局に関する一大決断が行われたというのも、一つにはオリンピックを成功させようという民族的悲願に燃えてあれだけの大英断を韓国の野党、与党の皆さんがおやりになったんだろうと私は敬意を表しておる次第でございますが、こういうようないろいろな経過をたどりながらも、オリンピックというものを機に、ラングーン事件以来いろいろな問題が起こったその傷をいやして、そしてこの大きな追い風のもとに、北と南が平和的話し合い、さらに平和的統一への軌道を設定されんことを私は願ってやみません。  朝鮮半島に隣接する関係国といたしましても、みんなその点については同じような関心を持っていると思います。朝鮮半島の問題については、不幸な朝鮮戦争がありまして、米軍国連軍の存在というものを無視できません。また、北の方を応援した中国というものもまた無視できません。また、朝鮮半島の問題については、ソ連日本も大きな関心を持っておるわけでございます。そういう周辺の関係国平和的統一へ向けての話し合いが徐々に徐々に進行していくように、我々としても環境づくりをやることが望ましい。そういう意味で、韓国の御要望等も私はこの四年半ずっと聞いてきてまいったのであります。  韓国中国との間で貿易を広げあるいは友好関係を増大することに非常に熱心でございまして、そういう面につきまして日本側の協力も求められましたから、私は中国へ参りまして韓国側のその意思を伝達したこともございます。韓中貿易は非常に大きく増大しつつあります。そういうことで、中国韓国との接近というものの比例に応じて日本北朝鮮との関係というものの打開も考えでいいのではないか。そういう点については韓国皆さん方の御意見もよく承って行動する必要がある、そういう考えに立ちまして秋は御意見を承ったこともございます。  そういう面から見まして、この一番近い関係にある北と南と、それから中国日本、それからアメリカソ連という関係になりましょう。中国日本との関係で、もし打開できる分野があれば我々としては相応の貢献をしたい、韓国皆さんの御意見も承りつつ前進するのがよろしい、そう思って、そういうような努力をしておるところでございます。このオリンピックというものを機に、さらに南北話し合いが進められて緊張が緩和される、そしてそういう場が開けてくることを願ってやまない次第でございます。
  7. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 金太中さんが今度復権というのは、ちょうど一九七三年でございますから実に十四年かかっておるわけでありますが、その当時かかわっておりましたのはもう中曽根総理だけになっております。ただ、その後今度は宮澤さんが三木内閣のときに外務大臣として政治決着をいたします。でありますから、金太中さんの復権ということは、つまり原状回復というのは日本ができなかった、結局民衆が進めた今度の大きな運動の中で復権、こういうことになってきたわけです。私たち社会党も、土井委員長自身が表明いたしておりますように、アジアにおける第二回目のオリンピックでございますから、その成功のためには私たち努力をしたい、こういうふうに思っております。  ところが、そういう不幸な歴史というものを振り返りますとき、私は宮澤さんに、二十一世紀を目指す、こういうことでございますから、外務大臣としては残念ながら政治決着ということで目をつぶった、でありますから、今日の復権という事態考えますときに、同じ政治家としてこの事態をどうお感じになられるか、私は宮澤大蔵大臣の御見解を伺いたいのであります。
  8. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私はただいま外交責任を持っておりませんので、そうでない立場で、おっしゃいましたことにお答えを申し上げるわけでございますけれども、あのときに私が訪韓をいたしましていわゆる政治的決着を図りましたことにつきましては、そこに至りますまでの間に、韓国側からこの問題についてのいわばいろんな意味での遺憾の意思表示があったということは御承知のとおりでございます。そういうことになりますと、やはり隣国であり、親しい国でありますが、しかし独立国であることは疑いを入れる余地のないところでございますから、そのような韓国側最高責任者意思表示があったことに対して、外交的にはそれはそれとしてやはり了承をするということが今後の両国の国交のために適当なのではないかというのが当時の判断でございます。  なお、このことは川崎委員が御承知のように、その後、昭和五十五年に至りまして――最終的には金太中氏が裁判の結果にもかかわらず、いわば極刑に処せられることなく今日の日を終局的には迎えられることになったわけでございますが、そういうこと等も実は微妙に関連をいたしておりまして、我が国といたしましてはあの際外交的決着を図ったことはやむを得なかったことであったと、私としては思っております。
  9. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 私は政治家としてお尋ねしたわけですから、もう少し率直な見解を伺いたかったのでありますが、大変物足りないお答えでございますが、これは時間をとりますので、一応これで朝鮮問題は終わります。ただ、これからいずれにしましても、立場はそれぞれ異なっておりましても、日本としては朝鮮半島には今後の発展を願うそれぞれの努力をしなければならない、こういうふうに思っておりますので、この問題は一応ここで置いておきたい、こういうふうに思います。  戦後の解決をしていない北方領土並びに、特に今、日ソの間は大変悪い状況といいますかにございます。昨年の本委員会におきましては、中曽根首相は胸を張って、ゴルバチョフさんおいでなさい、こう大変高い姿勢で言っておられました。しかし残念ながら日ソの問題というのは、あなたにとっては、田中さんや佐藤さんの後を受けた総理としては当然一つの大きなテーマとしてお考えになり取り組みもされたと思いますが、結局来日はなかった、なお一層悪い状況に落ち込んでおります。  西ドイツのワイツゼッカー大統領ソビエト訪問をし、それぞれ独ソの間の問題についても進めておりますが、日ソの問題というのは、こうして振り返ってみますと、やはり米ソという大きな戦略といいますか枠組みといいますか、そこから一歩も出られないでおる、私はどうもそう思えてならない。だから、独自外交はできない、そう思います。ソビエトゴルバチョフ書記長が来れなかったことについて、あなたは締めくくりの今日の段階においてどういうふうにお考えになっておるか、伺いたいと思います。
  10. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 安倍外務大臣シェワルナゼ外務大臣との会談がありまして、共同声明も出されて、そしてまた先方ゴルバチョフ書記長から私に対する親書等もありまして、ゴルバチョフ書記長日本に来たいと非常に強い希望を表明されておりました。こちらの方は、しからばぜひおいでいただきたい、歓迎いたします、そういうことで、向こうが来る、そういう順番で話し合いが進んでおったのでございますけれども、先方のいろいろな都合で、どういう事情か私わかりませんが、ゴルバチョフ書記長はイタリーへ行くという計画も実行できませんでした、日本に来たいという計画も実行できませんでした。恐らく米ソINF交渉、軍縮問題とか、あるいは内政のペレストロイカというような改革問題とか、あるいはアフガニスタン問題とか、ともかくいろいろ内政外交の重要問題が山積してきて、外国へ出るいとまがなくなったのではないかという気もいたします。  当方は一貫した平常心を持ちまして、どうぞおいでください、歓迎いたします、こう申し上げておるので、その気持ちは今でも変わっておらぬのでありますが、先方様の御都合で来られなくなったということは残念でございますが、外交には焦りというのは一番禁物でありますし、また、交渉事に期限を設けるということも甚だ拙劣な外交になりかねないので、私は、平常心を持ちまして前と同じような気持ちで、どうぞおいでください、歓迎いたします、そういうことであることは変わっておらないのであります。
  11. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 この問題はポスト中曽根というものの課題とならざるを得ない、こういうふうに思います。ゴルバチョフ書記長が国内が忙しくてということでございましたが、外国にはあっちこっち出かけているわけでありまして、そういたしますと、日本はその中では余りプライオリティーが高くなかったというふうに言わざるを得ない、こういうふうに思います。  次には中国問題でありますが、本会議でも大変問題にされてまいりました光華寮の問題についてお尋ねをいたしたい、こういうふうに思います。  総理所信表明で、外交関係立場といたしましては、国際国家という立場に立つで前進をしなければならないということと、「日本の国家意思は、「一つ中国」であり、「二つの中国」等の立場をとるものではない」こういうことを言われました。しかし、国交回復をいたしまして十五年、改めて一つ中国だ、二つの中国ではないのだということを本会議で述べなければならないということは、やはり非常に緊張した関係にあるというふうに言わざるを得ない、こういうふうに思います。これは歴代内閣ではなかったことだ、こう思うのです。中曽根内閣が出現をいたしましてから、教科書問題、靖国問題、防衛費のGNP一%問題、光華寮問題、こういうぐあいに問題が山積をいたしてまいりました。大変ぎくしゃくをいたしておると思うのです。  そこで、光華寮の問題に絞って少しお尋ねをしてみたい、こう思うのでありますが、具体的なお尋ねをいたします前に、私は国際法上の問題をお尋ねをしたいと思います。  つまり、中華人民共和国、中華民国それから日本、こういう三者の関係というのは、新たに承認を受けた政府、承認を取り消された政府、承認を与え取り消した国、こういう三者の関係になるわけであります。そこで、その関係の中で考えますときに、承認を取り消された政府の大使館あるいは領事館などの建物や土地は、新たに承認された政府に所有権、支配権というのが無条件で移るものかどうか。  具体的にお尋ねをいたしますけれども、七二年の九月、中華人民共和国政府は新たに承認された政府ということになりました。そして中華民国はその時点で承認を取り消された政府、こういうことになるわけでありますが、そこで、中華民国政府の所有しておりました大使館、領事館などの建物、土地は中華人民共和国政府に移ったと思います。その具体的な事実を伺いたいと思います。
  12. 斉藤邦彦

    ○斉藤(邦)政府委員 ただいま御質問になられました点は係争中の裁判の内容にかかわることでございますので、若干お答えしにくいわけでございますけれども、一般論としてお答えさせていただきたいと思います。  一国の政府の承認関係が移りました場合、そのもと承認されていた国の政府が所有しておりました国有財産につきましてどのような扱いを受けるかという点に関しましては、いわゆる外交領事財産と呼ばれるようなもの、すなわち大使館とか領事館、これにつきましては新しく承認された政府の所有に移るということにつきまして、国際法上これは確立された考え方だというふうに言えると存じます。  他方、そのような外交領事財産以外の国有財産、これにつきましては国際法上必ずしも確立した原則ないし考え方というのがございません。したがいまして、日本政府といたしましては、そのようなケースにつきましては、個々の具体的なケース、そのそれぞれの特殊な事情に着目してケースごとに解決を図っていく以外にないのではないかというふうに考えております。
  13. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 今、大使館、領事館などの土地、建物は、中華人民共和国政府に所有権、支配権が移ったというふうに認められたわけですね。  そうしますと、今日大変問題になっております光華寮は、移ったのか移らなかったのか、事実関係を伺いたいと思います。
  14. 斉藤邦彦

    ○斉藤(邦)政府委員 ただいま御説明申し上げましたような考え方に従いまして、旧台湾当局が所有しておりました外交領事財産につきましては、中華人民共和国政府の所有になるように所有権の移転が行われております。  他方、それ以外の国有財産、この中に光華寮も入っておりますけれども、これにつきましてはそのような所有権移転の措置というものは行われておりません。
  15. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 その光華寮が中華人民共和国に移らなかった理由、そうするとそれは、他の国有財産とともにといいますから、この光華寮のほかにそういうものがまだたくさんあるのですか。
  16. 斉藤邦彦

    ○斉藤(邦)政府委員 若干繰り返しになりますが、光華寮は、国際法上新政府に所有が移るということについて確立した考え方がございます外交領事財産ではございませんので、日本政府といたしましては、このような性質の財産の所有権の帰属につきましては、個々のケースに即しまして最終的には裁判所の判断で決めていただかざるを得ないという判断を下したわけでございます。  二番目のお尋ねかと存じますが、光華寮のような類似の財産がほかにあるかという点でございますけれども、私の承知しておりますところでは、ほかにもごく少数でございますけれども、そのような性質の国有財産、すなわちいまだに中華人民共和国政府に所有権が移転していない財産というものも若干あるというふうに聞いております。
  17. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 そうすると、それは私有財産だったから移らなかったのですか。
  18. 斉藤邦彦

    ○斉藤(邦)政府委員 私有財産というわけではございません。これはあくまでいわゆる台湾当局が所有しておりました国有財産でございます。ただし、国有財産ではございますが、外交領事財産ではなかったために、当然のこととして自動的に中華人民共和国政府に所有権が移るという事態になっていないということでございます。
  19. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 光華寮の登記名はどうなっているのですか、伺いたいと思います。
  20. 斉藤邦彦

    ○斉藤(邦)政府委員 ただいまお尋ねの点、私の方から御答弁するのが適当かどうかちょっと自信がございませんが、私の了解するところでは、台湾の当局の所有権のままに残っているというふうに了解しております。
  21. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 今、法的なことをお尋ねしているのですからそういうあいまいなお答えじゃ困るので、登記上どうなっているか、どこの所有になっているか。
  22. 斉藤邦彦

    ○斉藤(邦)政府委員 登記上は中華民国政府の所有ということになっていると了解しております。
  23. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それなら総理、今お聞きのように中華民国政府の所有だ、こう言うのですね。そうなりますと、日中共同声明中国が唯一の合法政府、こういうことでお互いが確認をし、宣言をし合い、それを大原則でやってきているわけです。そうしますと今この問題は、裁判にかかわりなく、政府の承認取り消しというものが行われた時点で私は移るべきだ、そう思うのですよ、今は中華民国政府のものだ、こう言うのですから。いかがですか。
  24. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 そのこと自体が今係争中の問題でありまして、日本政府としては裁判の判決がどういうふうに出てくるか、それを注目しておる、そういうことなのでございます。
  25. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 外務省、条約に関するウィーン条約というのがありますね。条約法条約でございますが、この条約法条約の二十七条には、「当事国は、条約の不履行を正当化する根拠として自国の国内法を援用することができない。」こうあります。「自国の国内法」というのは、いわゆる三権分立というのが今の国内法の問題であります。そうしますと、光華寮は中国政府財産に移らせないということを正当化することはできない、こういうふうに思うのですが、外務省の見解を伺いたいと思います。
  26. 斉藤邦彦

    ○斉藤(邦)政府委員 条約法条約の中にただいま御指摘のような規定があることはそのとおりでございます。したがいまして、我が国といたしまして、国内法を理由に国際法上の義務を果たさないとか、あるいは三権分立のような国内体制、政治体制を理由として国際法上の義務を果たさないということを正当化できないのはそのとおりでございます。  したがいまして、司法府といえども、我が国が国として負っております国際法上の義務に拘束されることは当然でございます。現に京都地裁、大阪高裁の判決におきましても、我が国が国として負っております国際法上の義務、これを十分考慮した上で判決を出したというふうに我々は考えている次第でございます。
  27. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 そうしますと、次に一般論ですが、国際法上の問題としまして、新たに承認された政府は、承認を与えた国家の法廷で訴訟を提起する権利があるのか。換言すれば、新たに承認された政府は、外国法廷における当事者能力を有することができるのか。いかがですか。
  28. 斉藤邦彦

    ○斉藤(邦)政府委員 その点はそのとおりでございます。
  29. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 そうしますと、次に、承認を取り消された政府は、承認の取り消しを与えた国家の法廷において訴訟の当事者能力を有しないという説と当事者能力を有するという説と二つあるわけですが、外務省はどういう見解をとりますか。
  30. 斉藤邦彦

    ○斉藤(邦)政府委員 その点は必ずしも確立した国際法上の原則がないという点は御指摘のとおりでございます。
  31. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 そうしますと、未承認政府に出訴権、つまり訴える権利を認めるか否かは条約または国際慣習法で認められているのか、それとも認めるか否かはあくまでもそれぞれの国の問題なのか。いかがですか。
  32. 斉藤邦彦

    ○斉藤(邦)政府委員 その点はその出訴を受け付ける側の国のそれぞれの国内法ないし制度の問題であるというふうに考えております。
  33. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 その各国の国内法の問題だ、こういうことになればそれぞれ異なると思うが、主要国家の中で出訴権を認めておる国は、または否認している国はどこか。
  34. 斉藤邦彦

    ○斉藤(邦)政府委員 申しわけございませんが、その点、突然のお尋ねでございますので、ただいま資料が手元にございませんので、調査の上御回答したいと思います。
  35. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 これは総理、僕は総理も大変悩んでいると思います。その点は伺いません。ただ、しかし、これはやはり間違ってはいかぬと思いますね。それで、これからこの問題についてはなお議論をしていかなければならない、こういうふうに思いますが、今、外務省の方も検討したい、こう言っておりますし、私の方もこれはまた詰めていきたい、こういうふうに思います。  でありますから、私は、先ほど言いましたように、当然、承認をしたとき、取り消されたとき、そのときにきちっとしておくべきであった、こういうふうに思います。そのことを主張をいたしまして、この点については一応これはおいておきたい、こういうふうに思います。  そこで、次には東芝の問題をお尋ねしたいと思いますが、田村通産大臣が委員会の最中にアメリカに飛ぶということは、私は大変異常な問題だと思います。異常な問題でありますが、それだけによほど冷静にこの問題には対処していかなければいけない。アメリカの大変異常な雰囲気というものの中で、日本の国内がまた異常な対応、こういうことであってはならない、こう思うのです。  そこで、私は栗原防衛庁長官お尋ねしたいのです。  ワインバーガー・アメリカの国防長官が六月の末に来ましたね。東芝機械の研磨機によってソ連の原潜の音が小さくなった、大変打撃を受けた、こういうことでございましたが、ワインバーガー国防長官に会いましたのは総理と栗原長官と倉成外務大臣ですね、田村通産大臣はお会いになっていませんね。といたしますと、私は、栗原長官は、これは外務大臣かもわかりませんが、ソ連の何という原潜の音が小さくなったのか。事実関係です。これは既にマスコミもそれぞれ一九七九年からソ連の原潜の音が小さくなった、こう言っているんですね。ところが、東芝機械のこの工作機械は一九八二年にレニングラードの造船所に送られたんだ、こう言っているんですから。  そういたしますと、この事実関係というのは大変大事なんですね。その事実関係を通産省の諸君が確かめる気がないわけですから、アメリカからやってきて一生懸命こう強調するわけですから、ワインバーガー、つまり国防省が今これはたたき出しているわけですからね。そうしますと、ワインバーガー国防長官にあなたは当然この問題をお尋ねになったはずだと思うのです。いかがですか。
  36. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 実は、私のところへワインバーガー長官から私信が来ましたのは四月の末だったと思います。それにはこういうふうに言ってあるのです。それは、いわゆるソ連の原潜の音が小さくなったということと同時に、東芝機械がココム違反をしている、これは非常に重大な問題である。ついては、貴長官はココムについて担当の大臣ではないけれども、安全保障という観点からひとついろいろと御留意いただきたい、そういう趣旨の話がございました。  私は、いわゆるこのココム違反の問題と原潜の音というそういう因果関係は別にして、いわゆる東芝がココム違反をしておるという指摘でございますから、大変これは重要な問題である。そこで、私が担当の大臣ではございませんけれども、関係省庁に対して、こういうようにワインバーガー長官から話がありますよ、ひとつ御留意賜りたいという連絡をしたわけでございます。  それに基づきまして、この間来たときには、ワインバーガー長官の方から、日本政府としてココム違反の問題について適切な御処置をいただいておる、これについては感謝をしておる、こういう話でございまして、それ以上の何物でもございません。
  37. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それじゃ、外務大臣防衛庁長官以上に経済外交についても責任がありますから、外務大臣はお会いになったときに、今の、つまり私が先ほどお尋ねをしたことを、具体的な事実関係というものをつまりは伝達したというだけでは、これはアメリカが言ってきたことをただ伝えただけですかるね。それじゃいけないと思うのですよ。だから外務大臣はその点をしっかりお尋ねになりましたか。
  38. 倉成正

    ○倉成国務大臣 御質問の趣旨が私必ずしもよく理解いたしておりませんが、その中身、どういう原潜の音が小さくなったかとかいう具体的な問題については私は伺っておりません。しかしながら、東芝機械のココム違反の問題についてアメリカ政府並びにアメリカの議会が大変深い関心を持っておるということでございますので、この問題については我々についても最善を尽くして再発防止に努力したい、そういうことについて話し合いをいたしたところでございます。
  39. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 私の質問がわからないというのは、これは大変困るのですよ。困るのですよ、本当につまり八二年に東芝の工作機械は輸出された、こう言うのですよ、事実関係は。ところがソ連の原潜の音が小さくなったのは七九年からだ、こう言うのですよ。いろいろそれはジェーン年鑑やら何やらで調べて発表しておるマスコミもございます。  そういたしますと、今のこの問題というのは、そういう事実関係をまず確かめてきちっとした姿勢で対処しなければいかぬのですよ。言われたから、そうですか、それは悪うございましたと、ただ頭を下げたらいいという問題ではないのでしょう。それはもう外務大臣がそういうへっぴり腰じゃ困りますよ。いかがですか。
  40. 倉成正

    ○倉成国務大臣 ただいまの御質問で御趣旨はよくわかりました。  事実関係の細かい詳細についてワインバーガー長官と私の間では話をいたしませんでした。しかしながら、事務当局間で十分これらの問題についてはいろいろと話し合いをしているはずでございます。しかしながら、艦名であるとか個々の問題について私とワインバーガーとではいたしておりません。
  41. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 肝心の問題を詰めないで行くという、これはいけません。やはりきちっとそれらはしなきゃいけないと思います。  じゃ、ココムをお尋ねしますが、ココムは事務局はどこにあるのですか。
  42. 渡辺幸治

    渡辺(幸)政府委員 ココムはフランスの首都のパリにございます。
  43. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 そんなことは聞いとらぬよ。パリにあるのは知っているよ。パリのどこにありますかというのですよ。
  44. 渡辺幸治

    渡辺(幸)政府委員 ココムは、先生御承知のように、西側自由民主主義諸国が非公式に対共産圏輸出について相談をしている場でございます。事務局はパリにございまして、アメリカ大使館の別館であるというように承知しております。
  45. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 国際機関が大使館の中にあるというのは、これはもう本当に不思議ですよ。だから、これは紳士協定によった、秘密協定によった機関ですよね。それが縛っているのですね。  アメリカ大使館の中にある、こういう状況であります。そういたしますと、やはりドイツやイギリスやフランスは、西側は、紳士協定ですし秘密協定ですが、これは自主的に対処してきている。ただ、今佐藤内閣の繊維問題以来ずっと日米間の摩擦は非常に大きくなっております。そして、先端技術はまさに軍事用と民事用の境がわからぬぐらいになってきている。それだけにますますこういう問題は大きく出てまいると思います。そういたしますと、私はやはり事実をきちっと確かめて対処していくということが大事だと思います。外為法違反なり輸出貿易管理令違反なりといういろいろな問題があるとしたら、それはきちっとしなければならぬ問題ではございますが、しかし、そういう事実関係というのはきちっとしなければいけない、こう思います。  そうしますと、田村通産大臣が異常な状態でお出かけになるということについては、これはもうまさに異常な状態だろうと思います。ですから、田村通産大臣がアメリカに行かれるについてどういうおつもりで行かれるのか。アメリカに行って外為法を変えますとか罰則を強化しますとか、そういうことの説明に行くのかどうか。議会をなだめに行くんだ、こういうことのようでございますけれども、そこらはきちっとしていただきたいと思います。田村通産大臣の訪米の理由を伺いたいと思います。
  46. 田村元

    ○田村国務大臣 御承知のように、アメリカの政府は、東芝問題についての日本政府、すなわち通産省のとった措置を、ワインバーガーも迅速であったと非常に高く評価しております。同時に、議会の保護主義の高まり、あるいはまた東芝問題についても若干の懸念を抱いておることも事実でございます。  私が今度参りますのは、もちろんアメリカ政府に対していろいろと意見を聞くし、また当方の意見も申し述べる。これは当然のことでございますけれども、先ほど来のお話の潜水艦のスクリューの問題は、これは我々エビデンスをはっきり持っていない。でありますから、これをもって争点とするということは私は必要ないと思うのです。それよりもスクリューをも加工し得る非常に高度な性能を持っておる工作機械が法令に違反して出ていったということに対して、これに対してどのように我々は対応したか、そして今後その再発をどのように防止するかということで先方意見も聞き、また当方の意見も述べる、こういうことであろうと思います。  いずれにいたしましても、我々の場合は日本が売り手であるという弱味はありますから、その点では、日本の先般の半導体にしても、今度の東芝問題にしても、我々が日本の経済を守らなきゃならぬ立場にあることは事実でございますけれども、しかしながら対応は毅然としていきたい。特に再発防止に対する私どもの意見を述べると同時に、向こう意見も十分聞きたい、このように考えております。
  47. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 これは大変難しい問題だと思います、正直に言って。しかし、いずれにしましても日米間の経済関係というのはこれからますますこういう問題は出てくる、こう思います。それは先ほど冒頭に言いましたように、アメリカ覇権国家から落ちてきたということ、そういう中で今後のいろいろな問題というのは、経済関係はまさに経済摩擦から経済戦争という方向に発展をしてきつつあるというふうに思います。それだけにそれに対応する内政といいますか、国内経済政策の問題も大変重要になってくるのじゃないかと思います。そういうことで、通産大臣の苦衷は私はわかりますけれども、この予算委員会の最中に行くということについては大変残念に思います。  それで、中曽根首相は、中曽根政治四年半というのは歴史に判断をゆだねる、こう言われておる。私は、歴史の判断をまつまでもなく、今国民の皆さんの間には中曽根内閣の特に経済政策については大変不満が大きい、こう思います。自民党の河本さんもきのう、自民党への不信は今非常に大きいと言われた。これは売上税法案等の問題を言っておられるのだろうと思いますが、衆参の本会議においてそれぞれ社会党あるいは野党の各党から、中曽根内閣の政策については厳しい批判をいたしました。  それで、内政の問題全部をやってまいりますとなかなか時間がございませんので、私は、中曽根内閣が歴史に残すであろう五つの足跡というものをひとつ端的に申し上げておきたい、こういうふうに思います。  それは、社会党の岡田副委員長初め指摘をいたしましたように、防衛費の突出と生活予算の後退です。その結果は国民負担の増大であります。これがまず第一。  第二には、ロン・ヤスという個人の関係を大変親密な関係に置かれた。私は、そのことは今ツケが随分回ってきていると思うのです。そこで、ロン・ヤス会談に始まる対米従属外交、その結果は、最も今端的にあらわれておるのが薬づけ食糧の大量輸入、そして農林漁業の破壊。第一次産品の地域はもう怨嗟の声です。  第三番目には、国有地投げ売りに始まる異常な地価の値上がり。これはあなた自身が国有地等有効活用推進本部の本部長になって国有地売っ払いを始めたわけでありますから、国有地投げ売りに始まる異常な地価の値上がり、その結果は土地ブローカーや大企業による都市の占領、これは三井不動産の江戸会長もそういうことをはっき立言っておられますね。  その次の四番目には、政策失敗による急激な円高不況、その結果は果てしない雇用の不安、史上最高ですね。つまり、完全雇用が政治の眼目ですが、雇用の不安は果てしなく続いておる。それが第四。  第五は、スパイ防止法案に象徴される行き過ぎた国家管理。その結果は自治の後退と教育の荒廃。  大体私は五つに集約ができると思っております。いかがですか。
  48. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 御批判は御批判として、よく耳を澄まして拝聴したところてございます。政治はやはり一歩でもよい方へお互いの力で努力し合うことでございますから、野党の御批判の声にもやはり虚心坦懐に耳を傾けなければならぬ、そう思っております。
  49. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 そこで、最後に申し上げました教育の問題について、これは時間の関係で一点だけお尋ねします。それは高校の中途退学の問題であります。  先日新聞の投書がございました。投書欄を見ておりましたら、私大変胸打たれました。それは四十二歳のお母さんでございますが、こう言っているのです。「自分のことで中退者も必死」、ちょっと長くなりますが、恐縮ですが、これは非常に今の問題を全部包含をしておりますから、読ませていただきます。  「ひとなつっこく明朗活発だった長男が、二度の高校中退の結果激しく面変わりした。アルバイト先の二十代後半の新人に「先輩、あしたもよろしくお願いします」と神妙に頭を下げられたという。十七歳だった息子を幾つと思ったのだろう。バイク、酒、たばこ、無断外泊と荒れた日々が薄皮をほぐように軌道修正され大検合格」、大学検定試験ですね。「そして人並みの浪人生活に入った今も、時折、笑っている幼い息子の夢をみる。そしてさらに夢みる。」  これからが大事なんです。「例えば偏差値中心の受験ガイドが、校風の詳しい紹介や、先生・在校生・父母の率直な情報交換に変身したらと。どんなランクの高校へ入れるかより、どの高校を選ぶかという指針が得られるように。高校中退者がふえる背景に、不本意な入学があるという。また中退者の多くが、みんなで通れば怖くない式に、まじめに高校へ行こうとする者を引きずり込むとも聞く。「本当の友達ではないね」と息子に言うと「それはちょっと違うな。みんな自分のことで精いっぱいなんだよ」という答えが返ってきた。折しも降りそうで降らない曇り空、高層のわが住居の窓下にすべてをたたきつけた見知らぬ高校生の一周忌がやってくる。」  あなたは偏差値より人柄、偏差値教育の是正を、こういうことで臨教審も発足したはずでありました。しかし、それに今の教育はこたえていないのです。でありますから、中途退学十一万という大変大きな、今不幸な事態がございますが、今のお母さんのこの投書を聞いて、総理の御見解を伺いたいと思います。
  50. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 中学あるいは高校、あるいはもっとさかのぼった小学校の教育におきまして、ついていけない子供たちとか、あるいは家庭のいろいろな状況から、ややもすれば正常な学業が妨害されているというような状況の子供たち、そういうようなことを考えてみますと、やはり教育もここで大きく改革するときに入った。そういう意味で、私は三年前から、偏差値教育とかあるいは共通一次テストとか大学入試とか、そういうものの改革を叫びまして、臨教審もつくっていただき、三次にわたる答申もいただいて、いよいよこの八月で臨教審も幕を閉じるということになって、最後の答申をやっていただくということになって、お待ちしておるわけでございますが、一歩一歩教育の改革に向かって前進を続けております。大学の入学試験にしましても、共通一次テストにいたしましても、あるいは偏差値に対する考え方にいたしましても、大分昔とは変わってきている、そして子供本位、受験者本位という方向に変わりつつあると思うのでございます。  教育というものはやはり二十年、三十年を要することでございまして、速成的なことを考えると邪道でございますが、一歩一歩基礎的なところから必要な改革を加えまして、二十年、三十年後にはがっちりとしたいい教育体系になるように大いに努力してまいりたいと思っておる次第でございます。
  51. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それでは文部大臣にお尋ねをいたしますが、高校の多様化というのが進められましたね。そうすると、高校には今学科の種類が幾つあるか御存じですか。時間がございませんから少しまとめてお尋ねをしますが、大変多いのです。  私の方から申し上げますと二百九十九、学科の種類があるわけです。そういたしますと、多様化ということでいたしますと、つまり高校が多様化をしておりますと、これはもう受験生もそれから進学指導の先生も大変なんですよ。こういうことをしておりますから、結局はどうなるかというと、偏差値で、成績で、おまえはあそこの学校へ行け、おまえはあそこの学校へ行けという輪切りにならざるを得ない。そのことが不本意入学になる、ついていけない、やめちゃう、こういう今の状態なんです。でありますから、こういう状況から考えますならば、今の高校の問題については多様化をやめなさいということが一つです。高校を細分化しちゃいかぬ、こう思います。どうお考えになるか。  それから、八八年、八九年には高校生がピークに来るわけですが、そこからぐっと減るわけですね。そして高校の進学率も非常に高いわけでございますから、やはりみんなが入れるようにする。さらには、減ってくるこの時期には四十人学級を急ぐ、こういうことが必要だ、こういうふうに思います。そして本当に行き届いたものにしなければいけない、こう思います。文部大臣の御見解を伺います。
  52. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 先ほど来お話を聞いておりまして、高校生の中退がふえたということから非常に心配されておられますが、確かに最近はふえてまいりました。このふえてきた中身を割ってみますと、十一万四千人のうち、傘として多いのは職業専門学校の生徒の率が多いのです。人数では普通科が多うございますが、率では職業専門学校の方が多いのでございます。ここに不本意入学というのがございますが、これがなぜかということをもう少し私は掘り下げで検討していく必要があると思っておりまして、六十三年度にこれの本格調査をする予算を今要求しようとしておるところでございます。  この不本意入学が中途退学の一番中心的な理由になっておるわけでございますが、これをさらに分析してみますと大人の社会に大きい問題がある。要するに、学歴社会というものを大人がつくってしまったのです。大人の意識と子供の意識、学生の意識と、そこに随分違いがあるということがこの調査で私は的確に出てきたと思っております。先ほど総理もお話ございましたように、今までの入れる学校じゃなくて、そうじゃなくてやはり受験生中心に考えた教育体制を組まなければいかぬという、私はそこにあると思うのです。  そこで、多様化をやめろというお話でございますが、その学科の中で何を指しておられるか、私も十分資料を持っておらないのでわかりませんが、私たちは選択科目をある程度職業的なものをふやしていってやろう、そうすることが――日本の高等学校でほとんどが普通科になってしまっておりまして、普通科のカリキュラムについていけない、しかし、職業を希望しておる学生が相当数いるということもこの十一万四千人の中で確かめられました。この進路を変更するというのは何かというと、やはり職業志向をしておるということも見られると思っております。でございますから、一方においては職業教育的なものをどのようにして配慮して、そういう学生が中学から高校へ進むときにその進路指導にある程度含みを持たしてやるということが大事であろう、こう思っております。
  53. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 先ほど言いました学科の種類というのは、普通科は一つですよね。農業に関する学科というのは九十あるのです。それから、工業に関する学科が百十一あるのです。そして、商業に関する学科が三十二、水産に関する学科が十六、家庭に関する学科が十五、看護に関する学科が一、その他の学科三十三と、こうなんですね。工業などは百十一あるのです。だから、職業別に分けたらいいと言うけれども、そうじゃないのですよ。では希望するところへ行けるかというと、そこへ行けぬわけです。だから、逆に不本意入学になってしまうわけなんです。そこは本当に検討し直さなければいけません。一生懸命分類してみる、進路指導の先生がこの子はこの学校にと言ってみても、そこに行かぬわけですから、結局成績で、輪切りでいくわけです。偏差値でいくわけです。これは総理が言う偏差値教育はだめだというのと逆行してしまうわけです。だから、この点はひとつ十分検討してほしい。今の細分化をすればいいというのではないということを私は申し上げておきたい、こう思います。  次に、経済の問題に入ります。  三重野副総裁お見えですか。どうも大変お忙しいところを済みません。ありがとうございます。  三重野さんには大変失礼なんですが、実は澄田総裁が一昨年のG5会議に竹下前大蔵大臣と一緒に行っておられるわけですから、私はずっとこの委員会では澄田さんにお尋ねをしてきているわけです。あなたは直接それに行っておられないわけですから、あなたに日銀の立場を、プラザ会議の問題をというわけにはいかないのではないか。今国際決済銀行に、BIS会議に出ておられるというふうに伺いましたので、その点は残念ながら、澄田さんにお尋ねをしなければならぬものは総理お尋ねをする以外にない、こう思います。あなたが最高の責任者なんですから。そういう意味で、三重野さんにはその点はおわびを申し上げたいと思います。  そこでお尋ねをしたいのは、今一ドルが百五十円台ですね。これで高値安定になってしまうのかということが一つ。それから、随分本も出ました。ドルの暴落というのはないのかという、ドルの信認の問題を伺いたいと思います。
  54. 三重野康

    三重野参考人 お答え申し上げます。  先生御案内のとおり、きょうの為替レートは百五十一円台でございまして、ひところに比べるとやや落ちついた兆しが見えております。  これの背景でございますけれども、それはやはりここに来てこれ以上のドル安は困るんだ、これ以上のドル安は世界経済の安定成長に非常に害があるというアメリカを含めて世界的なコンセンサスができてきたことが一番大きい背景だと思います。その次には、今まで日本銀行は累次にわたり公定歩合を下げてきて、国内金利が非常に下がってきておりますが、アメリカもここへ来てドル安を防止するために金利を高めに放置しております。したがって、日米間の金利差がかなり開いてきておりまして、一時は六%、今でも四・五ぐらい開いておりますが、そういった金利差をもとに、一時下火になっておりました日本の対米投資が再び活発化してきた。この二つが一番大きな原因だというふうに思われます。  これから先の見通してございますが、もちろん先生御案内のとおり、通貨当局が先行きの見通しを述べますことは市場に不測の憶測を与えることになりますので差し控えたいと思いますが、いずれにせよこういったちょっと落ちついてきた気配はぜひ長続きしてもらいたい。ただ、そうは言っても日本の大きな黒字、アメリカの大きな赤字というのは、幾分改善の兆しはございますが、まだ残っているわけでございますので、引き続きいろいろな動きをすることと思いますのでよく注意してまいりたい、こういうふうに考えております。    〔委員長退席、林(義)委員長代理着席〕
  55. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 副総裁、大変ありがとうございました。御苦労さまです。失礼ですけれどもちょっと聞いておってください。  去年の二月、本委員会で当時澄田さんと竹下大蔵大臣に為替の問題をお尋ねしました。そのときに澄田総裁は――つまり、一昨年の九月のプラザ会議から数カ月後の問題でございますから、大変動きが激しくなってきたときですね。そのとき、当時の江崎貿易摩擦担当大臣は、大体二百円ぐらいという期待、百七、八十円から二百円ぐらいという期待を述べられた。澄田さんはこう言っている。  ドルの急落ということがもし万が一にもありますれば、それは非常に影響の大きいことでございます。そういう意味におきまして、ボルカー議長はもとよりでございますが、アメリカの政府もドル急落を防ぐということにおいては完全に一致をしていると思います。のみならず、世界全体にとりましてもこれは望ましくないことでありますし、そういう意味合いにおいて、この点については最大の注意が払われていかなければならない、こういうふうに思うわけでございます。  現在の状態、ドル安の方に振れやすいような地合いがありましたが、しかし一方、ドルの底値というようなことの警戒感も市場にも出ているわけでございます。それが最近のいろいろな発言によっていろいろ動く市場の背景にはあると私は思うわけでございまして、そういうことを考え合わせますとドル急落等のおそれというものは全くない、こういうふうに思うわけでございます。だから、去年の二月、「全くない、」こう言った。百三十七円までいったのです。これはやはり急落ですよね。つまり、どんどん上がった。しかも、総理も思い起こすでありましょうが、東京サミットで、あなたはその前にアメリカに行って、何とかしてくれると思った。してくれなかった。東京サミットもそうだった。ピューッと通り越しましたね、高くなりました。三月から五月にかけて日本政府が介入を要請したけれども、それに対しては拒否をされた。そして円は急速な円高にいったわけです。私はこれはやはり、その前の年の一九八五年のアメリカの円高が二月でございますから、二月以降の対処の仕方にもいろいろあったと思います。この澄田総裁は、そういう「ドル急落等のおそれというものは全くない、」こう断言をしたのですから、前の年のG5をそういうふうに受けとめていたと思うのです。しかし、実際はそうではなかった。最高の責任者としての中曽根首相は、その点についてどうお考えになりますか。
  56. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 為替相場の問題は、各国それぞれの事情、それから国際関係、あるいはそれを背景となす政治的ないろいろな現象、そういうものの総合性の上に、今度は投機業者の思惑等が短期的には入ってまいりまして動いていくものでありまして、自由経済でいわゆるフローティングシステムをとっているもとにおきまして、幾らにするとか幾らがどれぐらい続くとか、そういうようなことを予見するということは余り適当でない。    〔林(義)委員長代理退席、委員長着席〕 ただ我々がやることは、いわゆる経済のファンダメンタルズと称するものを安定させて、そしてその基礎条件をしっかりさせることによって長期的安定をもたらす、そういう方向努力するのが正攻法ではないかと思いまして、そういう努力もしてきつつあったところであります。
  57. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 そういたしますと、澄田総裁が急落はないと断定をしたわけでありますが、それはG5の中ではそういう約束はなかったわけでありまして、そういう意味では、ファンダメンタルズ云々、こういうことを言われるが、この点については澄田総裁の発言は行き過ぎであった、こういうふうに思いますか。
  58. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 澄田総裁がある時点に限定して、そして断言するというようなことは、私はやってないのじゃないかと思います。いろいろ前後に言葉が差し挟まれているのだろうと私は思います。あの人は非常に注意深い人ですから、軽率な発言をする人ではありません。しかし、大体の傾向というものは言うことがありますですね。新聞記者からの質問や何か受けた場合に、日銀で記者会見する場合に、大体の傾向はこうである、地合いがこういうことでしょう、そういうようなことは言ってきておるのですが、幾らが限度であるとかもうこれ以上はないとか、そういうようなことはあの人は言ってはいないと私、確信しております。
  59. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 三重野さん、どうぞ結構です。ありがとうございました。  それでは次に、やはり日米間の問題で少しお尋ねしたいのですが、つまりアメリカの対外純資産が一九八二年には千四百九十五億ドルで最高ですね。それが一九八五年には千七十五億ドル。わずか三年の間に世界最大の債務国に落ち込んだわけです。つまり、この期間は日米間の経済政策としては非常に大事だったわけです。去年もこの問題は、私は総理のいない一般質問でございましたが、いたしました。そのとき申し上げましたのは、やはりこの期間に日本が超緊縮予算をとったことは間違いであった、こう思うのですよ。アメリカの双子の赤字、日本の超緊縮予算、それがこの時期にちょうどぶつかるのですね。そして私はやはり異常な輸出、こういう状況になってきたと思うのです。まさにこの時期に異常な黒字の体制ができるわけですから、だから国際的な役割からいたしますならば、日本は、つまりこれは大蔵省の中の問題になれば、主計局に引っ張られて超緊縮予算をやってきたわけですよ。そのことが今日の異常な日米の経済関係もつくっている、そう思うのですね。ですからこの時期には、つまり一昨年の、先ほども言いましたようなアクションプログラムからずっと参りました経過を振り返りますならば、私はこの時期に超緊縮予算をとったのは間違いだ、こう思うのです。  それを経済研究所の資料で見ますと、今日ぶつかっております経常黒字、一月は八十八億ドルで過去最大ですね。貿易黒字は九十六億ドルで過去最大です。外貨準備は五月末で六百八十九億三千五百万ドルで過去最大ですね。そして先ほど言いましたように円も上がってきた。それから先ほど言いましたような円高不況。円高不況のために全産業の売上高というのを去年の十月から十二月期をとってみますと、前年同期比で一%減になっておる。つまり、なべ底景気の三十三年の四月から六月、その期以来、二十八年ぶりに二期連続マイナス、こういう状況が続いておるわけです。そして先ほども指摘をいたしましたように、失業率は過去最高、こうなるのです。  そういたしますと、今この補正予算を議論をしておるわけでございますが、本予算が通って本当にごくわずかの期間でまた補正予算をやらざるを得ない。といたしますならば、去年の暮れ、なぜきちっとした――社会党はこれまで繰り返し内需拡大の方針をとるべしということを歴代の大蔵大臣、官房長官には申し入れてきました。だから後藤田官房長官なんかは嫌というほど、耳にたこが出るほど内需拡大をしなさい、間違えますよということは聞いてきたと思うのですね。しかし、それをやらぬで、超緊縮予算をとってきた。その結果が今日のこういう状況になっておるわけでありますから、私はやはり政策は失敗をした、こう思うのです。総理、いかがですか。
  60. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいま御指摘になりました一九八〇年から八五年、その時期にアメリカが債務国になってまいります。そのことと我が国の経済の対応とに因果関係があったという御指摘は、私は確かにそうだと思います。  ただ、私が考えておりますことは少し川崎委員と結論が違っておりまして、一九八〇年の我が国の貿易黒字はわずかに六十億ドルでございますが……(川崎(寛)委員「八二年と八五年」と呼ぶ)ちょっとお待ちください。八〇年には六十億ドルでございますが、八五年には六百六十億ドルになっておりますから、この期間に我が国の経済体質が非常に輸出依存度が高くなった。それは、検証してみますと、一つは、この期間に非常にドルが高いわけでございます。円が安いわけでございますから、輸出がしやすかった。それからもう一つは、石油価格が上昇を続けましたために、どうしても輸出をしないと日本はやっていけないという意識がありまして、両方から貿易黒字が実に十倍になったというこの五年間の事態でございました。  ですから、その期間がちょうどアメリカが債務国になっていく、これは貿易が赤字になりますからなるわけでございますが、それが我が国の黒字と傾向としては一致するということは御指摘のとおりだと思いますが、そこで川崎委員の言われますことは、だからその間に財政はもっと緊縮をしないで、いわば大きな財政を組むべきであった、こう言っておられるのでありますけれども、過去を振り返ってみますと、実は一九八〇年の一般会計の公債依存度は三二%でございます。三二、二七、二九、二六と非常に公債依存度が高こうございまして、しかも、それならば一般会計をいわばゼロベースでやっておったかといいますと、伸びで言いますと一〇、九・九、六・二、五十八年になりまして初めて一・四ということをやっておりますから、事実に徴しまして財政は案外その最初の期間には小さくなっておりませんし、国債依存度は減っていない。問題があるといたしますと、最後の二年くらいのところでもっと速やかに対応できなかったか、こういうことになるのではないかと思います。
  61. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 だから私は先ほど八二年-八五年をとって、ちょうど中曽根内閣の超緊縮予算がそこのところにぶつかった。だから双子の赤字に対して、ロン・ヤスの関係で率直にレーガン大統領に言うとしたならば、そこのところはもっと率直に軍事費なりを減らすということについては言うべきであったのではないだろうか、こう思うのです。  先ほどの点でもう一つ指摘をしておきますと、ことしの六十二年度の本予算、これは三十二年ぶりの低い伸び率であったわけでありますから、なお一層その点は指摘をしておきたい、こういうふうに思います。  大分、予定をしましたものが、少し時間の関係がございますのではしょりまして、私は、内需拡大の一つの問題として週休二日制の問題を取り上げてみたいと思うのです。  総理も本会議で、社会党の岡田副委員長を初め、自民党の伊東正義さんに対しましても、それぞれ大変丁寧に前向きの答弁をしてこられました。内需拡大が今日大きな役割を持っておることは言うまでもありません。経済企画庁の「内需拡大と成果配分」という分析をとってみましても、全勤労者世帯が完全週休二日制に移行した場合の消費拡大効果は、消費支出が一兆七千億円増加をする、また昭和五十九年の個人消費支出全体の〇・九%に相当する、こういうふうに分析をしておりますし、また、失業問題と関連をして言えば、ワークシェアリングとして、労働時間一%の短縮は雇用を〇・四三%増加させる、こういうふうに分析をしておるわけでありまして、時間短縮の問題が大変大きなテーマであり、金丸副総理もこの臨時国会の非常に大きな課題だ、こういうふうに言っておられますが、その週休二日の問題についてお尋ねをしたいと思います。  まず、人事院総裁、御苦労さんです。総裁にお尋ねをしたいのでございますが、完全な土曜閉庁による完全週休二日を、今こういう要求が高まっておりまして、総理も本会議で人事院の御研究、御検討をと言われておるわけですから、勧告に向けての人事院総裁の御見解を伺いたいと思います。
  62. 内海倫

    内海(倫)政府委員 お答え申し上げます。  完全な週休二日というものはやはり一つの大きな目標ではございますが、現在、国家公務員につきましては、御存じのように、昨年の給与勧告の際に四週六休をまず試みに行って、要するに試行してもらいたいということを国会及び内閣に御報告申し上げ、政府によりましてそれが現在試行されております。その結果が現在いろいろな面で資料として私どものところに集めつつあります。今年の勧告の機会に、とりあえずといいますか当面四週六休というものを積極的な形で対応していきたい、こういうふうに考えておるところでございます。
  63. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それでは山下総務庁長官の御見解を伺いたいと思います。
  64. 山下徳夫

    山下国務大臣 この週休二日制を推進してまいります過程において、当然、完全閉庁も検討されるべき問題として私ども今検討しておる次第でございます。ただ、今日まで役所の出勤日あるいは土曜日半ドンであるとかいう休みは長きにわたって国民の間に定着をいたしておりますので、やはりこれを変えるということになりますと、まず国民の理解を求めなければならぬ、あるいはまた行政サービスが落ちるようなことがないかという面も検討しなければなりませんので、この点に配慮しつつ検討を重ねておる次第でございます。  同時にまた、完全閉庁になりまして非常に無理がいきはしないかという部門もございます、窓口事務であるとかなんとか。したがって、どこどこは完全に実施できるか、あるいはできない部門はどこなのか、さらにまた完全閉庁をやった場合にどういう影響が起きるのかという点まで十分掘り下げて検討した上で、この実施をいたすべき方途をさらに進めて検討してまいりたい、かように思っておる次第でございます。
  65. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 これはひとつ前向きに進め、また実施をしてもらいたいと思いますが、それについても、学校の場合はこれはなかなか難しい。  そこで文部大臣、学校が変形なんです。人事院の方は正常な形をと、こういう要求をしておるわけでございますが、学校におけるこの問題について、文部省としてはどういうお考えですか。これをやはりその方向に、つまり学校現場が、国際公約にもなり国際的にこう進んでいるときに学校が異常な状態を続ける、教育の現場が異常な状態を続けるというのはいけないと思いますし、あるいはリゾートだ何だと、こうなってまいりました場合にも、これは親子がともにでなければならぬ、こう思うのですね。そういう意味でも、文部大臣の見解を伺いたいと思います。
  66. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 お話の中にございましたように、学校が一番難しくなってまいりました。今、四週五休制、これの実施をしておりますが、これが完全実施がなかなか難しい状態でございます。今、各県で約半分ぐらいしか実施できないような状況でございます。これはなぜかといいますと、やはり子供を土曜日休みだからほったらかしておくというわけにいかないということがございます。そういたしますと、やはり先生も勉強してその土曜日が休めない。そうすると四週六休でも結局夏休みにまとめてとるというようなことになってしまう。これを何とか改善したいと思っておりまして、このためにはやはり教員の定数の問題もございます。が、しかし、これからの児童数の減少を見ていきますと、いたずらに定数だけでこれをする、増員するというわけにいかない。やはり児童数の減少と教員との関係、教員が余ってくるという、教員の余裕が出てまいりますから、それとの関係でだんだんと週休二日制に踏み切っていく準備を固めていかなければならぬ。  それから一方、それじゃ休ませますと子供は喜んでしまって、土曜、日曜休みだということで、これでは困るのでございまして、やはり休ます一日は有効な教育的効果のある休み方をさせなければならぬのでございますから、これをどうするかという、これは難しい話でございまして、私たち方向としては週休二日制を積極的に進めているということはひとつ申し上げられると思っております。
  67. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 足を引っ張らぬように、ひとつ文部省も努力してほしい、こう思います。  総理、この間ロンドンから帰った友人の話を聞きますと、親が一週間なら一週間旅行する。そうなりますと、子供がその親についていく。これは欠席扱いじゃないというのですよ。年間十日ぐらいは出校扱いにする。それは社会見学、こういうことでそのことをちゃんと見ているというのです。国際国家になりつつあるのですから、あなたのあれでいくと。ですから、そういう方向一つ申し上げておきたい、こう思います。  それで労働大臣にお尋ねをいたしますが、大変これは時間、せっぱ詰まっておるものですから、三点お尋ねします。  ひとつ簡潔にお願いしますが、先ほどワークシェアリングの問題も言いました。それから効果も言いました。そこで、今回の労働基準法改正案では週四十時間労働制への移行時期が明らかになっておりません。いつになったら週四十時間労働制になるのか。つまりドイツはもう既に千六百時間、三十八時間、七時間、こうなっておりますね。ですから、この点についてが一つ。  二番目には、ワークシェアリングの観点からも労働時間短縮を進めるべきであり、そのために助成金制度の創設等も検討すべきである、これは前川レポート等にもあるとおりでございます。  三番目は、小零細企業の労働時間の短縮を進めるため特別の援助措置を講ずるべきではないか、こう思います。  三点についてお尋ねをいたします。
  68. 平井卓志

    ○平井国務大臣 お答えいたします。  まず、四十時間労働制への移行時期がこのたびの改正法では明確になっておらぬでないかという御指摘でございますが、御案内のように新前川レポートでは画歴二〇〇〇年のできるだけ早期に千八百時間程度を目指す必要がある、かように指摘をいたしております。週四十時間と申しますのは、言いかえましたら週休二日制の完全実施と年次有給休暇の二十日程度の完全消化ということがちょうど四十時間になるわけでございまして、現在国会にお願いしております労働基準法の改正法案、これを実現するためには政府主導型と申しましょうか、かなり踏み込んだ施策が必要である。ただ、御案内のように、この労働時間と申しますのは本来的に労使間で協議すべき非常に重要な労働条件の一つでございます。同時に、我が国の場合、法制時間のみを問題にするのではこれは十分でございませんで、やはり実労働時間としてとらえていかに短縮するかということが極めて重要でなかろうかというふうに私は考えております。  いま一つ、労働基準法と申しますのはすべての事業場に罰則つきで適用されますので、これはやはり最低基準を明示するのが適当であるというふうに私は考えております。中小企業等の労働時間の実態等も十分に踏まえまして過大な負担にならないようにこれは当然の配慮をしなければならぬ、そういうことも配慮しながらできるだけ早期に実現できますように環境整備を順次図るように全力を挙げてまいりたい、かように考えております。  二番目に御指摘のワークシェアリングの問題でございますが、このワークシェアリングの観点から労働時間短縮を進めるための助成金制度の創設ということになりますと、個別企業の労働時間短縮と雇用増の直接的な関係が必ずしも明確でないという問題点もございますので、今後の問題として検討してまいりたいと思うわけであります。  いま一つ、中小零細企業の労働時間短縮のために特別の援助措置を講ずる必要があるのではないかという御指摘でございますが、当然、御指摘のように中小零細企業はなかなか実態が難しいわけでございますから、やはり政府の指導援助が重要であると認識をいたしております。そのために労働省では現在、中小零細企業集団による自主的な労働時間短縮への取り組みをただいま援助いたしておるところでございまして、今後御指摘の点を踏まえてさらに突っ込んだ助成措置があるかないかということ等も含めて改めて検討してまいりたい、かように考えております。
  69. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 売上税法案等六法案が廃案になった、これは私は大変大きな政治責任の問題でもあったと思うのです。国民の理解を得られなかった、こう本会議でも言っておられるのでありますけれども、なぜ得られなかったのか、その反省は本会議の御答弁では何らうかがえないのです。その点を、それでないと、今また総理が仕掛け人になってやっているいろいろなことを観じますと、また同じ過ちをやろうとしておる、そういうふうに思われてなりません。なぜ得られなかったのでしょうか。
  70. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 割合に時間が短かったという点もありまして、国民の皆さんにさらしてまずいろいろ御意見を伺う、そういう時間が足りなかった。実は大蔵委員会にかかってからじっくりいろいろ御批判、御意見を伺おう、そういう考えであったのですけれども、野党の大攻勢に遭いまして、やはりそういう説明をする前に恐怖心が先に植えられてしまった。特にジャーナリズムのメディアを通じまして非常に恐怖心を関係者に与えた。そういう点ではやはり我々の考え方や姿勢というものが甘かった。そういうふうな意味では十分反省もした次第なのでございます。
  71. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それでマル優、非課税貯蓄の利子課税の問題でございますが、大蔵省が出しました資料によりますと、つまり前の第百八国会に出してきた資料ですね、それを見ますと、利子課税非課税の対象人員というのは千五百万人から二千万人近くに達するとも見込まれます、こう言っているのです。非常に不正確なこういう数字で税法、税制を改めるということは大変危険なことだと思うのです。  そこで、千五百万人は何年何月の時点における対象か、それから二千万人は何年何月を予定しておるのか、伺いたいと思います。
  72. 水野勝

    ○水野政府委員 御指摘の人数等につきましては、これは先般の政府提案におきますところの、引き続きまして非課税の対象となる方々のことの数字を御引用になっているのではないかと思われるわけでございますが、例えば年齢六十五歳以上の方でございますと千二百八十万人ぐらいおられる。そのほか寡婦年金、遺族年金、こうした受給者につきましては百八十万人ぐらいおられる。それからまた身体障害者手帳の交付を受けている方、これは約三百六万人おられる。こういった数字を積み上げて千五百万人から二千万人ぐらいと申し上げておったところでございます。ただ、こうした方につきましては重複されるケースもございますので、概数といたしまして千五百万人から二千万人ぐらいの方が引き続き対象になりますというふうな御説明を申し上げていたかと思うわけでございます。
  73. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 だから、千五百万人がいつごろで、二千万人がいつごろですか、こう聞いているのです。
  74. 水野勝

    ○水野政府委員 そうした点につきましては、それぞれの項目につきましての最新の時点での調査し得る限りでの数字でございます。
  75. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 わからぬですよ、そんなのでは。  いや、これは名前を言ったら懲罰にかかりますから名前は言わぬが、各党協議、税制改革協議会で本来なら資料を出して、もっと議論が進まなければいかぬわけですよ。ところが、税制改革協議会では、税制改革の一環です、こう言いながらも、全体の資料も出ない、マル優廃止の問題についても出てこない。そして、総理ベネチアサミットで仕掛け人としてみんなの前で言った、国際公約になった、こういうことになると、そういう手法がいけないと言うのですよ。だから、もう少しまた税制改革協議会で議論ができるように私はお尋ねしているのですよ。社会党から大出君と伊藤茂君と二人出ておりますよね。二人一生懸命やっている。――いやいや、一生懸命やっているのだ。そこで、その議論ができるように、私は、資料を出さぬですから、ここで出してもらうようにしないとしょうがない。  では厚生省にお尋ねしますが、いろいろな案が今新聞に出ていますね。六十五歳を六十歳に下げるとか対象範囲を広げるとかいろいろあるわけですよ。そうなると議論のしょうがないわけだ、この本委員会は。だから厚生省にお尋ねをしますが、六十五歳以上の人口の六十年から五年刻み。その前に六十歳以上だな、六十歳以上がまず一つ、それから六十五歳以上が一つ、それを六十年から五年刻みで八十年まで出してください。
  76. 長尾立子

    ○長尾説明員 先生、昭和六十年という意味でございますね。――お答えをさしていただきます。  昭和六十年の六十五歳以上人口の数字でございますが、千二百四十七万二千人でございます。それから昭和七十年の数字は千八百万九千人、昭和八十年の六十五歳以上の数字が二千四百十九万五千人でございます。  次に、六十歳以上の人口を申し上げます。昭和六十年の数字が千七百八十七万四千人、昭和七十年の数字が二千五百四十六万九千人、昭和八十年の数字が三千二百六十万六千人でございます。
  77. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 ありがとうございました。  そうしますと、もう一つ今度はお年寄り、それから身障者、母子家庭とこう言われますが、そういう関係の受給者ですね。これを今の年代ごとにお願いしたいと思います。
  78. 長尾立子

    ○長尾説明員 年金の受給者ということでお答えをさしていただきます。  普通は各共済組合、厚生年金もそれぞれの独自給付がございますが、一応基礎年金の対象受給者の数字で申し上げたいと思います。  現在の制度を前提にいたしまして、現在受給者は基礎年金総計が千二百六十一万人でございます。昭和七十年に千六百七十四万人、昭和八十年に二千五十二万人というふうに推計いたしております。
  79. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 そうしますと、これは限度管理をどうするのですか、大蔵大臣。非課税貯蓄をこういうふうにいろいろな案を言っておられますね。新聞にいろいろ出てくるんですよ、大蔵省がしきりにリークするのですが。しかし、今のようなことでずっといきますと、この非課税貯蓄を受けられる人の限度管理、どうするんですか、これは。膨大な数ですよ。
  80. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それに先立ちまして、何かそういう年齢について新しいことを考えているのかということでございますと、これは税制協議会で御協議中でございますので、いろいろ報道はございますけれども、私どもそういうことを具体的に考えておる段階ではございません。  それから、先ほど主税局長が申し上げましたのは、いわば延べと申しますか、老齢の方、身体障害者の方、母子家庭の方、重複がございますから、延べで二千万人近く、こう申し上げたのでありまして、行政上、その点は限度管理ができるということで申し上げております。
  81. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 六十歳以上ということになれば、今言いましたように八十年には三千二百六十万、また年金の方の関係で言いますと、つまり老人、母子家庭等のそういう範囲というと二千万を超すわけです。ですから、そうなりますと、この限度管理の問題というのは、できますと言うけれども、簡単な問題じゃないわけなんですよ。大変な問題で、これはいずれここで議論というよりも、今数字を出してもらいましたから、税制改革協議会の方で議論をしてもらわなければいかぬ、私はこういうふうに思います。  そこで、そうなりますと、最後に、今の関係で言いますと、六十二年度の税収、国税、地方税でこれはどれくらい予定しておったわけですか。
  82. 水野勝

    ○水野政府委員 六十二年度、国の場合でございますと四十一兆一千九百四十億円、これが一般会計の予算額でございます。地方税につきましては正確なところは持ち合わせておりませんが、自治省の方からお答えがございますかと思いますが、おおむねこの五、六割程度の規模になっておろうかと思います。
  83. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 非課税貯蓄の廃案になった案での六十二年度の税収を国税と地方税で挙げていただきたいと思うのです。
  84. 水野勝

    ○水野政府委員 御指摘の先般の政府原案の関係でございますと、国税におきましては四百五十億円、それから地方税関係では六百三十五億円となっておったわけでございます。
  85. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 そこで、所得税の減税の問題先行、こういうことについては各党協議でも一致してきたわけですね。そういたしますと、野党は今足並みをそろえて二兆円、こういう要求をいたしているわけです。二兆円を上回る大幅減税をやりなさい。そうすると、財源といたしましては、大蔵大臣も本会議お答えになっておりますように決算剰余金が一兆七千億を超してある、それからNTTの株の売却、これもやはり国民共有財産ですよね、みんなが積み上げてきたNTTなんですから、そして経済の全体に内需拡大、こういうことのためですから、私たちはNTTの株の売却も含めて二兆円を超す大幅の減税をやれと要求をいたしているところです。  そこで、減税の財源の問題についてはいかがですか。減税についての考え方ですね。
  86. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 税制改革協議会において御検討中でございますので、その推移を私ども注意深く見守っておるところでございますが、いわば今年度において所得税を中心にした減税を先行ということでございますと、その規模いかんにもよりますが、ただいま御指摘のようにかなり多くの過年度の剰余金が出ておりますので、国会のお許しを得まして、この剰余金を中心になお歳入歳出幾らかやりくりをするかと思いますが、規模にもよりますが、今年度の先行分はそれで処理ができるものというふうに考えております。
  87. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 そうなりますと、減税も税制改革の一環だ、こういうことではございますが、減税については、額がまだ与野党の間に食い違いがございますけれども、政府とも食い違いがございますけれども、一応処理の方向はあるわけですね。そういたしますと、この減税の問題を切り離す、そしてマル優廃止の問題を初め税制全般の問題というのはやはり私は腰を据えてやるべきだ、こう思うのです。総理が任期中に何としてでもこのマル優廃止の片をつけたいというお気持ちはわかります。しかし、このまま不公平税制という大事な問題を通り越しちゃって、そしてマル優廃止、こういうことに行ってはいけないと思うのです。やはり不公平税制の是正ということが世論調査を見ましても明らかなんですから。そういたしますと、不公平税制の是正、そしてマル優廃止の問題を含む税制全般、こういう議論にいかなければいけない、こう思うのです。  振り返りますと、大平内閣のときに一般消費税が、大平さん自身が引っ込められましてこれはつぶれたわけです。それから売上税法案は今度の前の国会で廃案になったわけなんです。そういたしますと、売上税、一般消費税という大型間接税に関しては、国民の皆さん方はノーという御判断を出したわけです。そのことはやはり総理は素直に受けとめて、そして今後の税制改革の方向というものを各党協議でやっておる、各党協議というのはこれはかってない経験でございますから、その点については、私はやはり議会の子としてあなたが謙虚に今の事態を受けとめて、この問題をやるべきだ、こう思います。でありますから、総理の税制改革についての部分の問題を解決しよう、そして何か足跡を残そう、こういう焦りを私は捨てていただきたい、そして税制改革の方向というものを誤らないようにしてもらいたい、こういうふうに思います。総理の御見解を伺いたいと思います。
  88. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 税制改革はぜひやらなきゃいけないと思っております。それで、衆議院議長の裁定、あっせんによりまして各党の協議が成立をいたしましたので、今それを見守っておるわけでございますが、まず減税はぜひとも思い切ってやりたい。これは申し上げて、所信表明でもはっきり申し上げたとおりで、我が党の緊急対策でも一兆円を下らざる減税を考えておるわけであります。  この減税をやるについては、その財源をどうするかというと、ことしぐらいは剰余金でこれを手当てすることができますが、こういうたまたま出てきた財源を頼りにするということは非常に不安定で、減税をやる以上は、減税が毎年毎年続けて行われるような恒久的財源手当てをやらなければ、税制改革としては無責任な税制改革になる。そこで、恒久的な財源手当てをした所得税減税を思い切ってやろう、こういう立場で一貫しておるわけです。それが第一であります。  それから、協議会でどういうふうなお考えになるか見ておるところでございますけれども、マル優という問題につきましてはいろいろな議論があります。我々が今まで主張してまいりましたものは、国際的に見ましてもこれは非常な批判を受けでおる。つまり、日本がこれだけ円高になっているというもとはお金を持ち過ぎているからだ、お金がどっから来るかというと、郵便貯金そのほかで貯金がうんとたまっておる、なぜこんなにたまっておるかというと、補助金を出しておるからだ、外国はそういうふうに考えておる。つまり、利子について優遇して、そして税金を全然取らないというのは外国ではあり得ない、所得の発生するところには必ずそれに対する税金が伴うというのが外国の原則であります。  利子だけなぜ日本はそういうふうに優遇して税金を取らないのかといいますと、これは戦時中、国債消化のために貯蓄をうんと増強させよう、そういう動機で昭和十六年に大改正をやりまして、貯蓄増強本部とかあるいは国債消化のための貯蓄を奨励するとか、それで税金取らないでうんとお金をためてもらおう、それを使わしてもらおう、その延長で今までずっと来ておる。ですから、外国からすると、結局これが続いていくと日本の円高というものはやまらないじゃないか、外国並みにしなさい、これが強い外国の主張で、まあ一言で言えば日本は貯金に補助金をやっている、そういう表現をしておるわけです。  それから、今お話しになりました不公平税制の是正でありますが、マル優問題というものも大きな不公平税制になっておるとよく言われるのです。社会党は、あの税金問題で出したパンフレットを読んでみますと、約七千億円というものをこのマル優の不正から取り出して税源に充てよう、そういう案になっておりました。七千億円もマル優の不正利用からお金を取り出すという面を見ると、これは相当な不正が行われていると社会党もお認めになっておる。我々もそう考えておる。したがって、これが最大の不公平税制じゃないか、インチキが行われておるわけですから。この不正をなくすということもやはり社会正義に合致した考えだ。  したがって弱い方、例えば今お話しになった御老人であるとかあるいは母子家庭であるとかあるいは身体障害者の皆さんであるとか、そういう方々には当然優遇は今までどおり認める。がしかし、不正をしている人をこのまま認めるわけにいかぬ。じゃ、どうして不正をしている人を排除するかといいますと、ここで考えが違ってきまして、あなた方の方はグリーンカードをやれ、まあ、ある党はマル優カードをやろう、そういうお考えでありますが、結局グリーンカード、マル優カードというものは、限度管理を厳重にやるということと同じものにならざるを得ないのです。そうなると、預金している人はどうなるかというと、いつがさっとやられるかもしれぬ、限度管理という形で。不正を摘発される、そうすると今貯金しているのが、だっと逃げていくわけです。これが土地に逃げるか株式に逃げるかあるいは外国に逃げるか、相当な資産逃避が行われるであろう。これはもう当然経済学の現象として考えられるところであります。  そういうような点からも考え、果たしてそれが適当か。それよりも、今のような弱い方は免税だけれども、それ以外は一律に二〇%いただくとか何%いただく、そのかわり文句言いません、摘発はしません、そう言えば安心して預金ができる。資産逃避は起きない。お金が逃げるということはない。税金も入ってくる。そういう方が国民心理に受けて、心配を起こさせない妥当な税制ではないか。我々の方は、背番号制というようなものをつくって国民の皆さんの懐に手を突っ込んでお金を取り出す、そういうやり方よりも、やはりみんなが喜んで自然な形で税が納められる形の方が自由主義経済に合致する。我々は統制経済に反対ですから。そういうような考えもありまして、今いろいろな発想を持っておるわけなのでございます。  これらにつきましては、税制協議会の成り行き等も見まして、我々の方も党内でいろいろ協議してまいる、そういうことになると思うのでございます。  なお、議長のあの裁定、あっせんの中では、直間比率の是正は急務である、そしてこれについては各党協力し合う、そういう約束をしてあのお達しができておるわけでございます。ですから、直間比率ということは結局何であるかと言えば、間接税を認める、今の体系を変える、直接税だけに偏重しておるのを間接税もふやしていく、これが直間比率の是正ということになるだろうと思うのです。  じゃ、どういう間接税がいいか、これは問題であります。これはいずれ将来、税制協議会等で御論議願って、この前のような失敗を起こさないように、国民の皆さんが受け入れられるような考え方で相談していったらいいんじゃないか、そういうのが我々の考え方なのでございます。
  89. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 上田委員に後の時間をお願いすることになっておりましたが、今のまま引き下がるわけにまいりませんから。  所得を生むものは全部、こう言われていたけれども、じゃ土地のこの異常な値上がり、株式、それは逃げようとしておるのですね。やろうとしません。  それから、このマル優という問題が不公平を拡大をしていくということは明らかです。私たち、これは野党がみんな一致をして、限度管理の問題についてはマル優の限度管理のカードを、こういう方向で足並みをそろえているわけでありますが、あなたは脱税者や不正利用者を擁護しようとしている。アメリカもどこもみんなやっているのですよ、ちゃんと。(中曽根内閣総理大臣「税金をもらおうとしておるのです」と呼ぶ)税金をもらう、それなら限度管理をきちっとして、そして資産課税もきちっとやって、そのためにはやはり納税の背番号ということも必要なんですから。そして、この背番号をやればひとり歩きすると言うが、この年金の番号というのは全部あるわけです、今は。源泉徴収ですから、給与者にはみんな番号があるわけです。それもあなたはひとり歩きする、こう言うのですか。  ですから、プライバシーの問題は、これはあくまでもきちっとせなければいかぬ。しかし、そういうことを考えますと、あなたの脱税者や不正利用者を大変弁護するような極端な議論の展開というのは、私は国民の皆さんは大変不信を持って見ておるだろう、こういうふうに思います。  でありますから、それらの問題はひとつ税制改革協議会の方で、そのかわり政府は資料はきちっと出す、こういうことで議論が進みますように私はお願いをして、終わりたいと思います。
  90. 砂田重民

    砂田委員長 この際、上田哲君より関連質疑の申し出があります。川崎君の持ち時間の範囲内でこれを許します。上田哲君。
  91. 上田哲

    ○上田(哲)委員 三宅島が非常に緊迫をいたしております。米軍空母の艦載戦機飛行場の建設問題で、環境庁の許可もおりたので、政府はいよいよ今週中に観測柱を三本立てる、また三宅島では島民の二千人を超える規模で断固としてこれを阻止する、実にまさにきょうかあすかという状態になっております。これを力ずくで強行するということになれば、流血の事態をすら予想しなければならないという心配を持つのでありますが、総理、これを力ずくで強行されますか。――総理にお伺いをしたいのであります。総理が本会議でもやると言っていらっしゃる。総理の決断でありますから、お伺いいたしたい。
  92. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 まず私から。私が担当の主管大臣でございますから、私から。  三宅島の問題については、上田さんともいろいろ今まで議論をしてまいりました。私どもは、三宅島にNLPの飛行場の問題についてお願いをしたいというのは、いろいろ考えてみたけれども、三宅島以外には適当なところがない、ぜひ三宅島の皆様方も日米安保という、そういう観点からもお考えをいただきたい。それと同時に、私どもは、三宅島の将来のことについてもお手伝いをすることはいたしたいと思う、そういうことでお願いをしてきたわけです。できることならば、私どもの意見をよく聞いた上で、いろいろと御意見を承りたい、こう言ってきたのでありますが、御案内のとおり聞く耳は持たないというような格好で反対運動がここまでまいった、これは甚だ残念でございます。  しかし政府といたしましては、この上とも三宅島にお願いをいたしたいということで、実は……(上田(哲)委員「時間がないのですよ、結論を出してください、時間がないのです」と呼ぶ)これは非常に重要ですから。私どものは強行といいますか強行の内容ですが、私どもは、これは事務的にやらしていただかなければならぬことである、そういう意味合いで静かにやりますから、島の方々も静かにこれを見守ってもらいたい、これが私の結論であります。
  93. 上田哲

    ○上田(哲)委員 非常に時間が食い込んでおりまして、非常に時間がないのです。どうか端的にお答えいただきたい。  総理に伺っているのです。総理は本会議で断固やると言われた。いよいよあすかきょうかというような状態になっている中で、このまま強行されれば流血の惨の憂いもある。それでも総理は力ずくでおやりになるか。やれば、その責任総理に帰することになるんだ、私はそう申し上げたい。イエスかノーかのところで、しっかりお答えください。
  94. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 これは何も飛行場をすぐつくるという話ではなくて、気象条件を調査しようという予備的段階の調査の材料をつくろう、そういうことでございますから、ぜひやらしていただきたいと思います。
  95. 上田哲

    ○上田(哲)委員 そんな言い方ではだめなのです。今まで政府のやってきたことは因循こそく、しかも卑劣に尽きると私は思います。  この二、三日来、この予算委員会で私が質問する、こういうことになったら――環境庁からオーケーが出なければできないところです、これは自然保護法に基づく許可がなければできないところなのです。そこへ鉄柱を立てる。そのオーケーが出たにもかかわらず、何番地のどこへ立てるということを村民にもどこにも明らかにしない。そのことを追及してきょう私が質問すると言ったら、実はきょう午前中にあわててオープンにしているのであります。調べてみたら、何と皆さん、その三カ所というのがまさに薄木地区、下鏡地区、これがまあ制限のあるところでありますけれども、そのうち九百二十七の一、これはまさにこの地図をごらんいただけばわかるのですけれども、何とこの九百二十七の一、平野セメントというところにちゃんとその機材があるのであります。防衛庁、一体これはどういう手順でやるのかと聞いたら、環境庁がオーケーと言わなければ草一本立てられないところなんだから、鉄柱を立てるということがオーケーになってから業者に発注をして鉄柱をつくるので、島などにはそれが到着するのがうんと遅くなるのだと言った。九百二十七の一、平野セメントの画に、数日前から二つの山でテントをかけて、もう用意してあるじゃないですか。やることは常にこういう因循こそく、卑劣なやり方であります。こういう仕方で何が話し合いに乗る、乗らぬということになるのですか。全く時間が制限されていますから、その事実を認否をしている時間は省かなければなりません。  しかし私は、ここで皆さんにぜひ申し上げておきたい。今も総理が言われたように、そんな口先のごまかしをしていながら、国会の中ですら本当のことを言えぬ。四千三百人の島民が泣いているじゃありませんか。そういううそをつかなければならぬ状態の中でこんな軍事基地をつくることがどうして政治のやることですか。今総理が言われる、まさにこれは予備調査だという言い方になっている。予備調査だということになっているが、売上税で強行採決をされてしまったあの六十二年度予算の中に、三億二千万円という調査費と称するものがついている。この調査費は基本調査一億四百万円、環境予備調査一億六千七百万円、こういう数字が出ております。  残念ながら、時間の制限の中で細かいことは申し上げられないが、地形調査、地質調査あるいは環境アセスメント、幾つかの項目があります。その中の一つが、風向と風速、風向きと風の速さを調査しようという観測塔であります。どうしてこれが建設工事の第一段階と言えないのですか。どうして言えないのですか。本格工事とこの工事が違うところがあるというのなら、具体的に言ってみてください。
  96. 友藤一隆

    友藤政府委員 お答えいたします。  私どもは、今回の調査はあくまで本格的な建設ということでございませんで、まだ場所については、ほほまあこのあたりというところまでしか私どもの頭にございません。したがいまして、詳細な地形等を調査をいたし、あるいは風向、風速等も調べ、地盤等も調べて、精密な状況を資料として入手し、今後の検討の資としたいということでございますので、御了承いただきたいと思います。
  97. 上田哲

    ○上田(哲)委員 そういういいかげんな答弁があるんじゃないかと思って、あらかじめ防衛庁から文書でもらったんだ。二つの問題があります。  もし百歩譲って、これが予備調査であって、本格建設工事ではないと言われるなら、二つの問題がこの中で明らかになっている。それは何かと言えば、風速だ、風向だ、地質だ、地形だ、全部調べても、その調査の結果によってはやらないこともあり得るというなら予備調査だ。やらないこともあり得るというなら、そのことで一つ認めましょう。  もう一つ、本格工事の決定というのであれば――これはちゃんと書いてあるんだ、防衛庁の資料として。閣議の決定ないしは日米合同委員会の議決が要るんだと書いてある。それはまだやっていないですね。時間がどんどんないから、やっていないという事実は間違いないんだから、私は確認をしておきます。  そういうことであるのなら、これは本格工事ではないんだということを私は百歩譲って認めてもいい。風向きあるいは風の速さ、地質、地形、環境アセスメントその他の調査が終わって、不適当であるというならやらないこともあり得る、これは形式的でありましょうが。事務的には日米合同委員会、閣議の決定がない間は本格工事の決定ではないんだと言われるのであれば、半分だけは認めておきましょう。いかがですか。一言で答えてください。
  98. 友藤一隆

    友藤政府委員 お答えいたします。  調査の結果、不適と判明したときはどうするか、こういう御質問が一つございました。  これにつきましてはこれから調査を行うわけでございますし、具体的データをまだ持っておりません。こういう状況時において申し上げるのもいかがかと思いますけれども、単なる生データだけで具体的な判断をするということではございませんで、これらを総合的に収集いたしまして判断をしていく、こういうことでございます。  それから次に本格建設の場合の手続でございますが、通常の提供手続ですと合同委員会にかけ閣議にかけ、こういうことになるわけでございます。ただ、それはやはり候補地としてきちっと地籍等も決めまして、位置も決めまして、そこへつくるということを完全に確定をいたしましてから合同委員会でここを着陸訓練場として提供申し上げる、こういうような形になっていくわけでございまして、現段階ではそういったことを行うための詳細なデータも場所もまだはっきりと決まっておるという状況ではございませんので、御了承いただきたいと思います。
  99. 上田哲

    ○上田(哲)委員 ぐじゅぐじゅ回った答弁ですけれども、はっきりしたことで確認をしておきます。  合同委員会の決定ないしは閣議の決定がないということであれば、それは事実上はあり得ないけれども、形式的にはまだ正式決定もしていないし、この内容、調査の結果によってはやらないこともあり得るのだということを留保しておくということで、これは予備調査だということにしておきましょう。  そういたしますと、これも事務方から具体的なデータとして文書でいただいているのですが、例えば風速、風向の調査には、この風速、風向のデータをイエスかノーかと決めるのは三年かかるというのです。三年かかるということのデータをこれからとるのであれば、少なくとも本工事は手続を含めてあと三年はできないということになります。これは確認していただけますね。
  100. 友藤一隆

    友藤政府委員 お答えいたします。  お尋ねの風向、風速等につきましては、目的は風の影響等によります航空機の離着陸、こういったものを安全に行うための調査をやるということでございますので、一応ワンシーズンと申しますか、春夏秋冬のデータがとれれば最低よろしいわけでございますので最低一年間はやりたい。丁寧にやればもっと続けてもよろしいわけでございますが、大体そういった状況については一年間やれば。データが得られるというふうに考えております。
  101. 上田哲

    ○上田(哲)委員 さんざん今まで、予備調査をした段階では三年なければ技術屋としては笑われると言っているのですよ。この場では一年でもなどということは、これはまことに許しがたいことです。大まか決まったことなんと言うが、この番地が九百二十七の一まではっきりしているのに大まかなところだなどという、きょう発表しておきながら、こんないいかげんな言い方は許せません。  時間がありませんが、最後にもう一つ大きな問題があります。  これが今回防衛庁が出されて島へ配ったチラシです。このチラシの中にはまさに軍事空港としての予備調査をするのだと書いてあります。今まで防衛庁が言っているのは官民共用空港だと言っています。八十日から七十日軍が使うが、あとは民間にほとんど使わせるのだと言っています。これが書いてないのです。なぜ書いてないのか。はっきりしてきた。軍事空港だからであります。  もっと具体的に言えば、もし一年のうら七十日が軍で二百日が民間だと言うなら、この申請は運輸省が中心になるべきであります。運輸省が中心になって民間航空のためにどういう飛行場の適地であるかどうかをやらなければならない。それが全然ないのであります。運輸省と防衛庁がやる、このために交渉したという形跡は全くない。あるかないかを聞いていては時間がないから、全くないという事実を指摘しておきますけれども、なぜそういうことをしているかといえば、実はこの後に来るべき土地収用の問題があるからであります。運輸省がやる場合には土地収用法、国内法規としての土地収用法の適用であります。それではできない、できないから、日米安全保障条約に基づく地位協定に基づく特別措置法をここに準用ぜんがために運輸省ではなくて防衛庁が申請をしているのです。まさにその場合には国内法と違って内閣総理大臣の認定によってできるのです。こういうことをやるというのは、まさに国内法を無視し、国民の立場を、権利を抑圧するやり方であると私は言わざるを得ないのです。そういう意図があっては困ります。  運輸省もしっかりしてもらいたいけれども、総理、こういう日米安全保障条約に基づく地位協定の特別措置法によって、総理大臣の認定によって土地を収用するなどという底意を持ってはならないのだと私は思いますが、いかがですか。――総理総理
  102. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 上田さん、この問題、あなたのお話を聞いていると、何か知らぬけれども騒然たるという格好ですけれども、私どもはこれは静かにやはり対話をすべきだと思いますよ、静かに。  それで、私が言っていることはどういうことかというと、何回も何回も、一遍防衛庁の話を聞いてくださいというのです。話を聞いた上でいいとか悪いとか言ってくださいとお願いしているのです。島の人たちにも言っておるのですよ、これは。また、私の聞くところでは、これはあなたの言うようなことばかりじゃないのです。しかも、私どもは強行とかなんとかでなくて、島の人たちと、あるいは地方自治団体とよく話をしていこう、そのルールをぜひあなたもひとつしつらえていただきたい。これは私が逆にあなたにお願いいたします。
  103. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 三宅島の件は、やはり米軍にも供用する、そういう飛行場をつくるということですから、これは防衛庁が中心になって防衛庁の予算でつくって、そしてそれを民間の方にも利用していただく。大体あれは夜使うものですね。それから、空母が日本に来たとき、その技量を下げないために使わせていただく。そういうことですから、あいているときはこれは民間航空がどうぞジェット機が入ってください。三宅島にはジェット機は入れない。これから観光の時代を迎えると、どうしてもジェット機が入る必要がある。そういう意味で、ジェット機の空港に使えますからどうぞ民間でもお使いください、そういうことで運輸省と防衛庁で話し合って、どういうふうに使うか、できるだけ民間にもお使い願えるようにしたい、そういう形で持っていこうと思っておるものでございます。
  104. 上田哲

    ○上田(哲)委員 総理、私は静かに話をしたい。しかし、まじめに答弁をしていただきたい。ここは静かでも島は必死ですよ。  周囲三十六キロの小さな島、四千三百人の島民が、あなたの党から七百億円の札束であの島に理解を求めようとされたけれども、金は要らない、芋を食っても、この土地の緑、この土地の水を捨てたくはないのだと頑張っている。今、民間航空で使わせてやるとおっしゃった。ジェット機をあそこに持っていって一体採算がとれますか。とれないことははっきりしているではありませんか。今、YS11が三宅島に通っています。これは大島と一緒に飛んでいます。ジェット機に三宅島がかわったら、大島に行っているYS11は単独では採算がとれません。民間航空でこんなことは成り立たないのであります。  島には鳥がいます。オオミズナギドリというのは国際保護鳥であります。二百万羽いるのです。夜だから心配ないと言われるが、夜、ねぐらを求めてこの鳥は帰るのです。その程度のことも御存じない中で静かにしろとか話を聞けと言われても、島の人たちは懸命になって、今、村議会も全員そろって反対、村長も反対、村民は警察官や公務員を除けば、実に実質全体である八五%がみんなしっかりした意識を持って、何とかしてこの私たちの祖先からの土地を守らしてもらいたい、こう言っているのです。あなた方がどんなに話をしても、聞く耳は持っていても話し合いができないという内容の問題じゃありませんか。  総理、最後にもう一遍言います。力ずくで押し切るようなことをしないでいただきたい。何遍もここで私たちは確認をした。あなたは民主主義を大事にする、住民の意思を尊重して温和に話し合いをしたいと今おっしゃった。どうか温和な話し合いを続けて、きょう、あすに迫っている力ずくの強行はしないということを国民の前にひとつはっきり言明をしていただきたい。総理、最後のあなたの政治家としての見識をもって、力ずくで国民の権利、幸福を侵害することはしない、今、目の前に迫っている強行突破という事態をあなたの見識でとめるということをお約束をいただきたい。――総理です。防衛庁長官ではありません。総理にお願いしたい。総理向こうを指してはいかぬ。これは総理です。
  105. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 前々から言っているように、この観測計はいわゆる資料を集めるものですから、これを立てたからすぐに空港をつくるというわけではございませんから、その点はどうぞ御理解いただきたいと思います。したがってこれは整々と事務的にやらしていただきたい。  なお、先ほど来申し上げているとおり、強行するなというならば話し合いに応ずるようにぜひ道をつくってください。お願いします。
  106. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 もちろんこれは話し合いで、静かによく両方で意見を述べ合い、そして御理解を得てやるべきものであります。
  107. 上田哲

    ○上田(哲)委員 きょう、この強行をしないということを言ってください。
  108. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 これは事務的に進めている問題で、今すぐ建設するという問題ではない、前から申し上げましたように、風向、風速等を調べる、そして予備調査としてやるのですから、それぐらいのことはお認めいただいたらいいと思うのです。
  109. 上田哲

    ○上田(哲)委員 島民を代表して力いっぱい良識を求め、全力で阻止することを申し上げておきます。  終わります。
  110. 砂田重民

    砂田委員長 これにて川崎君、上田君の質疑は終了いたしました。  次に、細谷治嘉君。
  111. 細谷治嘉

    ○細谷委員 少し地味な話になりますけれども、これから所定の時間だけ質問をさせていただきたいと思います。  昨年春の国会で、この予算委員会で、補助金、負担金の性格と責任が法定されておるのだからひとつ法律に基づいて予算書の補助金なり負担金ということをきちんと分けてやるべきじゃないかということを提言いたしました。その結果、大蔵省の方では大変努力をしていただきまして、この春、いわゆる昭和六十二年度の予算では経常経費についてはかなり整理されております。例えば生活保護なりあるいは厚生省関係でも、かなり思い切った整理を経常経費について、負担金、補助金で分けて整理されております。私は、この点については大変な努力に対して敬意を表します。  ただ、大蔵省の方では、この臨時国会でやっております公共投資については時間的の関係もありますので、負担金、補助金を分けて予算書をつくることはできません、しばらく時間を待ってほしい、こういう言葉がございました。それで六十二年度の予算を調べてみますと、そのとおりですね。社会保障関係では負担金が全体のおよそ八二%、文教及び科学関係費では約八〇%、きちんと負担金である、こちらが補助金でありますと金額もきちんと明示されております。ところが公共事業については、わずかに七十九億円が負担金であって、あとは全部補助金だ、こういう整理がされております。これも時間をかけてじっくりやるということでございますけれども、この点について、公共投資について整理するめど、これをひとつお示しいただきたい、こう思います。  と申しますのは、今、概算要求基準を設定する、そして八月末までに各省の予算要求がそろう、そして予算編成作業に入っていくわけでありますから、この時期にこの問題を提起して大蔵省の確たる答えをいただくことが大切だ、こう思うので、あえて直接予算そのものではありませんけれども、お尋ねしておきたいと思います。
  112. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これは大変に専門。的なお話で、私も説明を聞きまして、後ほど主計局長から申し上げますが、細谷先生の言われるような問題が確かに存在するのでございます。しかし、例えば河川改修にいたしましても、河川改修のための計画的な部分は負担金である。しかし、局部改良のための予算は補助金でございます。そうで、事実上は事業が一緒に行われるというようなことは、一括して執行管理されることでありますので、分けることの意味合いあるいはその実行上の難しさというものがございます。そうでございます。御指摘が昨年ございましたので、私から一度そこまでお答えいたしまして、なお主計局長から補足をさせていただきます。     〔委員長退席、今井委員長代理着席〕
  113. 西垣昭

    ○西垣政府委員 六十一年度の予算審講の際に先生から御指摘がございました。つまり、地方財政法上の負担金、補助金の区分あるいは実定法上の負担金、補助金の区分と予算書上の科目計上が違うではないか、予算書上は負担金であっても補助金ということで便宜一括計上されているものが多い、ここのところをきちんと整理するようにという御指摘がございまして、私ども慎重に、真剣に検討させていただきまして、その結果といたしまして、非公共の分につきましてはほとんど全部、先生の御指摘のように負担金と補助金とを区分整理して予算書に計上したところでございます。公共事業の分野につきましても真剣に検討いたしました。しかし、今大臣がお答えいたしましたように、負担金が補助金の中に一緒になって計上されているわけでございますが、例えば、河川改修の中の本来負担金であるべき種類の工事とそれから補助金で負担すべき工事とが、実は地域の実情に応じまして、あるいは災害の発生状況に応じまして、負担金であるべきものになりましたり補助金になるべきものになりましたり、そこのところは機動的に工事を執行する必要があるというふうなこともございまして、今回の六十二年度の予算書の計上につきましては従来どおり補助金として計上したわけでございます。  予算書の改善につきましては、私ども不断の努力をしなければなりませんので今後とも検討を続けたいと思いますが、公共事業の分野につきましては、その分だけ予算書が複雑になるという問題と、予算執行が例えば流用の手続等煩瑣になるというふうな問題もございまして、私どもとしては慎重に検討しなければならない、六十三年度以降どうするかということにつきましても慎重に検討しなければならないというふうに考えておりますので、今直ちにいつから区分計上できるだろうかという点につきましては、さらに執行官庁ともよく協議をしながら検討したいと思いますので、さらに検討を続けるということでお許しをいただきたいと思います。
  114. 細谷治嘉

    ○細谷委員 投資関係の費用については負担金、補助金なかなか区別できぬと。法律ではぴしゃっと書いてあるのですよ、それぞれの法律で、道路法でも河川でも。これについての国庫負担をする、そして補助金はこういうことの補助をする、ちゃんと法律で書いてあるのですよ。それに基づいて分けたらいかがですか、こういうことを言っているわけです。そして地方財政法では十条の一、二と、こうずっと書いてあるのですね、これは負担金ですよと。それで十六条に奨励的な補助金、これは十六条ですとぴしゃっと書いてあるのです。それに基づいて仕分けをなさったらいかがですか。私は新しいことを言っているわけじゃないのですよ。  従来は言ってみますと補助金、負担金のごったですよ。補助金等ですよ。法律ではきちっと分けてあるのを補助金等で負担金も補助金も一緒くたにして、補助金カットするときは一緒にカットですよ。区別も何もないですよ。こういうことではいけませんから、負担金については国の責任が当然ある、補助金についてはこういうことだ、法律に明記してあるわけですから、それに基づいてお書きになったらいかがか。今の主計局長の話ですと、やる意思は持っているけれども、複雑だというけれども、そんなに複雑じゃないですよ。経常経費の場合、例えば生活保護、新しい目を一つ起こしたのですよ。そして、きちんと整理しているでしょう。そして、あなたの方から出た資料によりますと、総額十四兆円ぐらいのものがあるわけですね。十四兆円ぐらいの補助金、負担金、大蔵省流に言いますといわゆる補助金等、これがあります。その内訳は、あなたの方からこの予算委員会に出された資料によりますと、負担金というのが七兆六千八百四十億円です。全体の五四%あります。補助金というのは四兆六千七百六十二億円ですと、こう書いてあるのです。この表はあなたの方から出ているわけです。  ところが、自治大臣お尋ねしますが、この地方財政計画、その三十四ページの「国庫支出金に基づく経費の総額」、これを見ますときちんと法律に基づいて整理されております。しかし、子細に検討しますと、確かにおっしゃるように補助金か負担金かわからないものがありますけれども、これは補助金、負担金と整理されております。ですから、一〇〇%完璧と申し上げませんけれども、整理しております。この自治省の地方財政計画、これは国会に出された公式文書です。予算委員会に出した大蔵省の資料もこれは公式な文書です。それが甚だしく数字が違っております。これはどうにもならぬでしょう。もっと権威ある資料を出していただかなければならぬ。そのためには若干の苦労があるでしょうけれども、法律に基づいて整理していただきたい、こう思います。大蔵大臣いかがですか。あわせて総理大臣の決意のほどもお聞きしたい。
  115. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 昨年、そういう御指摘があることを承知いたしております。そして非公共の方は、先ほど申し上げましたようにまさに整理がうまくできたのでございますけれども、公共になりますと、現実には一緒に施行した方がいいというようなことがしばしば河川なんかの例にございますものですから、そういうふうに分けることがかえって事態を非常に難しくして複雑にするのではないかということが現実にはあるように私は説明を受けたのでございますけれども、なおよく検討させていただきます。
  116. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 大蔵大臣の答弁のとおりでございます。
  117. 細谷治嘉

    ○細谷委員 ぜひ、せっかく法律があるんですから、くどいようでありますけれども、きちんと整理する。私は六十三年度の予算編成で全部片づくとは思いませんけれども、自治省も出しておりますから、その数字がやはり国会に出された公文書の中ではバランスしているように、きちんと筋が通るようにやっていただきたいと思います。  そこで、自治省、長い間地方財政計画でこの数字を出しておるわけですよ。今後大蔵省と十分詰めて権威あるものにしなければならぬと思うのですが、自治大臣いかがですか。
  118. 矢野浩一郎

    ○矢野政府委員 国庫負担金と国庫補助金の違いというものを踏まえた上で地方財政計画上もきちんとし、また予算の名称、予算の科目上の名称もはっきりさせるべきであるとかねがね御指摘をいただいておるところでございまして、また先ほど大蔵省の方からも御答弁ございましたように、非公共の分野につきましては整理がかなり行われたわけでございますが、公共の分野としてはまだ行われておりません。  私ども自治省の方といたしましては、やはり地方財政法十条ないし十条の三あるいは三十四条の負担金と、それから御指摘の十六条の奨励的な補助、この区別を踏まえて、この予算上の名称もこれに合わせていただくようにぜひしていただきたいということで今後とも大蔵省の方にそういう要請を続けてまいりたい。また、その点を踏まえて地方財政計画の上でもそういった点がはっきりするようにしてまいりたい、このように考えておるところでございます。
  119. 細谷治嘉

    ○細谷委員 これ以上申し上げません。ただ、大蔵省の方に、きちんと自治省でやっているじゃないかと言ったら、自治省が勝手にやっておるんでしょう、こういう言葉が返ってきた例があります。これではいけませんから、両省よく突き合わせて法律に書いてあるとおり対応していただきたいということを重ねて要望いたします。  ところで、今度の補正予算、まあ六兆円、大変自画自賛してサミットまで持ち込んでいった、こういうふうに言われております。ところが、この間、衆議院本会議、参議院の本会議で、総理所信表明演説、大蔵大臣の財政演説をお伺いいたしました。あの演説の中には地方財政の問題については二言もないんですよ。ちょうど春の国会で、予算編成の重要な柱が売上税であったが、売上税のウの字もなかった、これと全く同じような格好になっております。どういうことですか。
  120. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 政府の、前国会、通常国会に御提案いたしました税法改正案がほとんど廃案ということになりましたために、これからどのような税制を考えていくかということは協議会で御協議中でございますが、それいかんによりまして地方財政の対応が非常に変わってまいります。したがいまして、ただいまの段階で、その税制協議会がただいま御検討中のことを先取りいたしましてかれこれ国の税制についてあるいは地方財源について申し上げることが非常に困難だ、こういう状況は御理解をいただけると思います。  もとより、これは御質問がありましてお答えいたしたことでございましたが、このたびの補正予算は相当大きな地方の負担を伴うものでございますし、また、昭和六十一年度の自然増収も相当出ておりますから、地方に対する精算増が当然予想されるところでございますので、そういうことを踏まえながら、地方財政の運営には決して御迷惑をかけないように処置をいたしますということは御答弁を申し上げました。また現実に政府はそう考えておるわけでございますけれども、具体的に地方財政について申し上げ得なかったのは、先ほど申したような事情でございます。
  121. 細谷治嘉

    ○細谷委員 確かに所信表明演説なりあるいは財政演説の中では地方財政のチの字もございませんでした。衆参で、代表質問の中において、地方財政をどうするのか、こういう質問がありました。それに対する答弁、衆議院の分は私は直接お聞きいたしておりますが、要するに、大変な今度の補正予算で巨額の負担が地方財政にも起こってくる、その巨額の負担については地方が困らないように対応したいと思います、それだけですよ。問題は、あとは税制の問題が片づかなければ何もできません。何も答えなかったのと同じなんですよ。そうじゃございませんか。私が聞いている範囲、また新聞で報じているのはそのとおりです。いかがですか。
  122. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これだけ大きな補正予算による公共事業を施行していくためには地方にも相当大きな負担をおかけをすることになるが、それでやっていけるのかというお尋ねでございますので、片方で税制の姿が固まってまいりませんと地方財政のきちんとした姿がかけませんけれども、しかし、この補正予算を施行していただくために決して地方に御迷惑はかけない、事業が支障なく消化されていきますように措置をいたしますと、こう申し上げておるわけでございます。
  123. 細谷治嘉

    ○細谷委員 自治大臣にお尋ねをいたしますが、今度の補正予算で地方財政の負担はどういうふうになりますか、具体的にお答えいただきたい。
  124. 矢野浩一郎

    ○矢野政府委員 お答え申し上げます。  今回の補正予算によりまして追加される公共事業等による地方負担額は、普通会計分で九千七百四十二億円、それから公営企業会計分で二千二百二十一億円でございまして、合計いたしますと一兆一千九百六十三億円になるものと見込んでおります。
  125. 細谷治嘉

    ○細谷委員 この中には、大蔵大臣が財政演説で述べております八千億円の単独事業による財政負担というのは入っておりませんね。そうでしょう。
  126. 矢野浩一郎

    ○矢野政府委員 緊急経済対策に盛り込みました地方単独事業八千億の追加、これはこの中には含まれておりません。
  127. 細谷治嘉

    ○細谷委員 この八千億円を加えますと、大体あなたが言う金額というのは二兆円をはるかに超えますね。総理所信表明演説に対する質問の中で、地方も莫大な負担を負うのでと言って、そして大蔵大臣は、自治大臣と相談をして今後いきます、こう答えておるのですよ。自治大臣、どういう相談があってどういうふうに進んでおるのか、お答えいただきたい。
  128. 葉梨信行

    ○葉梨国務大臣 公共事業の追加補正におきます地方負担につきましては、通例は地方債によって行っておりますが、今先生おっしゃいましたように、今回は多額に上りますので一般財源からも仰がなければならないであろう、そういう意味で、ただいま大蔵省と自治省で協議中でございます。ただ、それにつきましても、税制改革協議会の御協議の結論を待って定まる部分もございますので、この御協議の結論が早く出るよう期待をしているところでございます。
  129. 細谷治嘉

    ○細谷委員 今のお答えの中に、一般的な公共事業と一緒に、世間でよく言われておりますNTTの株の売却によります社会資本増加のための特別な公共事業というのがありますね、別枠のが。これはどのくらいありますか、一般会計と特別会計でお答えいただきたい。
  130. 西垣昭

    ○西垣政府委員 国費の方について御説明申し上げますが、四千億円でございます。
  131. 細谷治嘉

    ○細谷委員 私がいただいた資料によりますと、今回の補正追加予算関係で、普通会計分については、事業費として五千七百二十四億円、それに基づく地方費は二千七百十二億円、公営企業部分といたしましては、事業費千六百二十三億円、そして地方費は八百十五億円ということになっておりますが、そのとおりですか。そして、これの負担というのはどうなりますか。
  132. 矢野浩一郎

    ○矢野政府委員 NTTの株の売却益を活用して行われる分につきましては、普通会計分の地方負担が二千七百十二億円、公営企業分が八百十五億円でございます。この地方負担につきましては、これはいわば国が国庫補助負担事業の一種の前倒しとして行われるものでございますから、この国費に見合う部分は一たん無利子貸し付けとして公共事業に支出されるわけでございますが、将来これを返済する場合に同額の補助負担金をつける、こういうことになっておるわけでございます。その地方負担につきましては、通常の、その他の公共事業と同様に地方負担に対する財源措置をしてまいりたい、このように考えておるところでございます。
  133. 細谷治嘉

    ○細谷委員 その地方負担分については他と同様に財源措置をしてまいりたい、こういうことであります。その裏負担分について、法律に基づきますと、大体五年据え置き、十五年償還、こういうことになるわけでありますから、昭和六十七年以降の返済、こういうことになります。その返済する分は、全部国で裏づけするのですね。どうですか。
  134. 矢野浩一郎

    ○矢野政府委員 私の方からお答え申しますが、先ほど申し上げましたように、これは国庫補助負担金の身がわりといいますか前倒しとして支出されるものでございますので、これは一たん地方公共団体にはいわゆる公共事業の国費に当たる部分として無利子で貸し付けられ、これを御指摘のように五年据え置き、その後十五年、合わせて全部で二十年でございますが、これで償還をしていく際には、その償還分について国庫補助負担金が支出をされる、したがいまして、通常の公共事業における国庫補助負担の扱いと実質的には同じになる、このように承知をいたしておるところでございます。
  135. 細谷治嘉

    ○細谷委員 地方の裏負担分については、無利子で貸し付けて事業をやらせて、そして返済期が来ますと、返済額について国の方で見るんじゃないですか。交付金を出すんじゃないですか。そうじゃないんですか。混乱していますよ。どうなんですか。
  136. 矢野浩一郎

    ○矢野政府委員 先ほど来の御質問の趣旨に基づいてお答え申し上げておりますのは、いわゆる公共事業等の国費に当たる部分についてそういう措置がされる。当然でございますが地方負担に当たる部分があるわけでございます。この地方負担部分につきましては、通常の、こういったNTTの売却益活用によるものでない普通の補助負担金の裏負担と同様に地方財政対策を通じて措置をしてまいりたい、こういうことでございます。
  137. 細谷治嘉

    ○細谷委員 そうしますと、何のことはない、とにかく五年間は無利子で貸してやるけれども、後は国がやったいわゆる負担分については取り上げるということですか。そうじゃないでしょう。そうじゃないでしょう、この法律で言えば。これは非常に重要な点なんですよ。
  138. 西垣昭

    ○西垣政府委員 本来国が補助すべき額に相当する額を無利子の貸付金で地方団体に貸し出しまして、五年据え置き後一定期間にわたって償還されるものにつきまして国が後年度に補助金を少しずつ払っていく、その補助金でもって地方はその借入金を返済していく、こういう計画でございます。
  139. 細谷治嘉

    ○細谷委員 わかりました。これはちょっと大変なからくりですね。大変なからくり。わかりやすく言いますと、とにかく事業をやるための国の負担分を無利子で貸し付けてやりますよ。そして五年以降になりますと償還分については国から交付金を上げますよ。これは国費の負担になってくる。国の方で予算を組まなければいけない、NTTの分を返すために。地方の方は、今度はその事業についての裏負担分というのは、何でとりあえず見るか知りませんけれども、恐らく金がないわけですから地方債か何かを充当するというわけでしょう。充当しますと六十七年度以降その地方債を返さなければいかぬ。これには毎年毎年利子がついていきます。しかも、私が心配するのは、新聞にもそう書いてありますが、六十七年度から、五年以内に返済が始まります。したがって、六十六年になるか六十七年になるかわかりませんけれども地方債の元利の償還が始まり、地方の財政負担が始まります。今まで国も地方も財源不足額をあたかもごみためのように全部六十六年以降に追いやっておるんですよ。そうなってまいりますと、新聞に書いてありますように、果たして今日実現不可能だと言われておる国の財政再建計画というのはこの点から破綻していくのじゃないか、この点から破綻を加速されるのではないか、こういうふうに言われております。また地方の方は地方で、交付税が足りませんでしたので、六兆円を超える交付税特会の借金があります。この借金の返済というのも六十六年度以降返していくわけです。負担が全部そこに集中してくるわけですよ。この集中については、国においても地方においても財政再建が可能なように、そういうふうに対応する、こういうことなんでしょうか。いかがですか。これは心配なんです。
  140. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 前段のお話は、御了解いただけたと思いますが、結局、このように内需拡大、社会資本充実が大事なときでございますから、いわば補助金を何年間にわたって前渡しをした、こうお考えくださいますと比較的御理解が得やすいと思います。それをNTTの無利子貸し付けという形で渡しておきまして、償還期になりますとその償還時に国が補助金を出しますから相殺をされる、こういう形を考えた、そういうふうに御理解いただきますと非常におわかりやすいと思うのでございます。  後で御指摘になりました問題は、交付税特別会計の改革をやりましたときに資金運用部から借り入れをいたした、その借り入れ分の、国が五兆何千億、地方がやはり六兆ぐらいでございますが、その元本分の償還が六十六年でございますか七年でございますか、六十六年度以降来る、そういうことをおっしゃいましたので、したがって、先々国がそういういわばある意味での債務を負っているであろうとおっしゃられればそのとおりでございますが、これは決して無計画でやっておることではございませんので、御心配要らないと思います。     〔今井委員長代理退席、委員長着席〕
  141. 細谷治嘉

    ○細谷委員 無計画だとは言っていないのですよ。しかし、能力を超えたような財政負担というのが国の方においても地方の方においても起こるのではないかということを私は心配しているのです。それがわかっておるのになぜこんなことをやらなければいかぬのか不思議なんであります。  そこでお尋ねします。  ちょうど建設大臣いらっしゃいますが、この特別なNTT公共事業と言われるものについては、ことしは金額は少ないのですけれども、来年度以降になりますと、NTT株の利益をまだしばらく、当分の間、臨時緊急の措置という名においてつぎ込んでいきますね。そうしますと、来年つぎ込めるのは大体一兆三千億円程度あるだろう。ことしよりはるかにふえてくるわけですよ。そうしますと、NTT公共事業というものと今までの公共事業というものの中身は、そこまで無理して事業をやる以上は、今までの公共事業と違ったねらいが構造的にあるのではないか、こう思っておりますけれども、私の承知している範囲では、確かに生活環境、こういうものについては若干力点が置かれているようでありますけれども、依然として従来の公共事業と構造は変わっておりません。  なぜこんな二本立て、しかも後に負担が集中するようなことをやらなければならぬのか、この辺が私はわからない。あるいはこれは建設大臣の問題じゃなくて、大蔵大臣なりそれを受けた自治大臣の問題だろうと思いますが、いかがですか。
  142. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それでは概括、私がち説明を申し上げますが、これはABCと三つタイプがございまして、今建設大臣にお尋ねになりましたのはBに当たるわけでございます。  まずAから申しますと、これはいわば将来開発利益等々で利益を生ずる種類のプロジェクト。例えて申しますと、駅前の再開発をいたしましたときに、下に自動車の駐車場をつくるといったような事業の場合には、それが収益になるわけでございますから、全体として無利子貸し付けの対象にいたしますと、将来その収益から返済ができる、しかも工事が速やかに進む、そういうメリットがございます。  それからBの場合は、これは今の公共事業、下水でありますとか公園でありますとか治山治水でありますとかに関するものでございますが、特に面的な開発と申しますか、つまり地域を一体として開発いたしますときには、道路も河川も公園も等々、たくさんの公共事業が一度に行われる必要がございます。それは五カ年計画考えておりますシェアのいわばちょっと外になってまいりますから、そういうものについては、一度にNTTの無利子貸し付けをすることによりまして、関連の公共事業がすべて一体になって施行ができる、これまでの五カ年計画のシェアの外で施行ができるということになります。ただし、この場合には収益性がございませんから、その返済になりましたときには、国がそのときに出すべきであった補助金を十何年、何年か後に出すことによって相殺をする、こういう形をとったわけでございまして、それによって面的なあるいは地域的な開発に伴う諸種の公共事業を一斉に同時に一体にして施行することができる、こういうふうに考えております。  Cに当たります部分は、これは開発銀行なりあるいは地域の銀行、開発銀行を経由してと考えておりますが、いわゆる民活によりまして、例えばテクノポリスであるとかあるいは大規模なリゾート開発でございますとか、こういうときに民間が仕事をいたします、その仕事を開発銀行を通じて無利子で融資をしようというものでありまして、その場合には、地代を別にいたしますと、三大都市以外ですと実際の施設費の大体半分ぐらいを貸し出すことができると思います。補助率にいたしますと実は相当高い補助になりますが、これは民活による収益事業でございますから将来収益をもって返してもらうことができる。  大体そういう三つのタイプを考えております。
  143. 細谷治嘉

    ○細谷委員 収益、収益ということでどうも勘定は合うようでありますけれども、法律に書いてあるその収益という条文もありますよ。そのうち、事業をやっているわずか八十数億でしょう。あとはほとんど大部分一般の公共事業ですよ。そして、今やりとりをやったような方向ですよ。複雑怪奇。公共事業というのは、大体仕事をやると、国の負担と補助金と地方の負担があればそれでできるものが、二本立てになっちゃうわけですよ。そして五年後に借金が来る、こういうので、私はもっと単純化すべきじゃないか。建設大臣がよく言う真水、この真水論というのがやはり重要だと思うのですよ。まあしかし、それは余り時間がありませんから飛ばすことにいたしまして、私はこのやり方については問題があると思っております。  そこで、お尋ねしたいことは、こういうことでNTTの株を売っている間、四年か五年か続くでしょう、四年か五年がこういうあれが続くと思うのですが、私が心配しているのは、これだけの問題について、自治大臣を目の前に置いて大変恐縮なんですけれども、どうも本当のところ地方の方は税も含めて――ちょっと税は後でやりますけれども、とにかく支障のないように金をもらえばいいという、もっときちんとした地方自治、地方の自主税源、こういうことを念頭に置かない、何か金さえ裏づけてもらえばいいんだというこじき根性があるのではないか、こういうような気がします。現に、衆議院の本会議でもそれから参議院の本会議でも、自治大臣に対して莫大な負担が伴うがこれはどうするのかということについて、自治大臣一つも答えていない。国家公安委員長としては答えていましたけれども、ほかのは答えていないのですよ。どう思いますか。軽視されておりませんか。地方財政の軽視に対して、自治大臣はどう受け取っておるのですか。
  144. 葉梨信行

    ○葉梨国務大臣 地方財政が大変厳しいことは、もう御指摘のとおりでございます。しかし、その厳しさの中で、地方住民の福祉を増進し環境整備をするためにいろいろな仕事がございまして、その仕事をするために地方自治体ではいろいろな工夫をしているところでございます。また、自治省といたしましても、その自治体の努力にこたえるために、地方税源、地方財源の充実のためにいろいろな努力をしておりまして、財政当局との折衝、あるいはまた税制改革等各般の措置の中で工夫をし知恵を働かせている、こういうことでございます。  今、地方自治体がこじき根性というお話がございましたが、それは地方の首長あるいは地方議会の皆様の御努力に対しまして、ぜひ撤回していただきたいと思います。それぞれ自主的な計画、自主的な財源のやりくりをしながら、しかも自治省の指導とか援助を仰ぎながら地方の仕事を進めているということであると私どもは理解しておる次第でございます。
  145. 細谷治嘉

    ○細谷委員 撤回しろということでありますけれども、この委員会にあなたの方から出た資料、大蔵省から出た資料、いずれを見ても一番大切な地方税財源、こういうのを見ますと、やれ譲与税がふえたりそれから税割がふえたり、本当の意味の地方税そのもの、プロパーの自主税源というのは間違いなく減っておるんですよ。私はそれを言っているんです。ですから、私は、もっと地方の自主税源というのを増加する努力をすべきである、その努力が足りないんだ、それが金さえもらえば判を押さっておらぬのだからいいじゃないかというこじき根性があるのではないか、こう思いますから、そう申し上げたわけであります。  そこで、時間もありませんからお尋ねいたしますが、先ほど来の質問でもそうでありますけれども、税制改革、これが大切だ、所得税はやる、そして住民税はやる、これが今度の税制改革の出発点だったんですね。ところが、最近の動き等を見ますと、住民税の減税――所得税の減税はともかく、住民税の減税というのは消えてなくなりつつあるんじゃないか、こう思うのですが、実態はどうなんですか。
  146. 葉梨信行

    ○葉梨国務大臣 住民税の減税は、税制改革の一環としまして、恒久的な財源措置をしっかりととりました上で実施したいと考えているところでございます。  ただ、昭和六十二年度におきます住民税減税の実施につきましては、住民税の仕組み上、課税事務の全面的なやり直しをしなければならない、市町村や給与支払い者の事務処理量が膨大となるというような問題がございます。詳しく申し上げますと、さらにそれらについてのいろいろな困難性ということが申し上げられると思いますが、そういうこともございますので、減税の内容や実施方法、実施時期等につきましては、今、衆議院の税制改革協議会で御協議中でございますので、これらの結論を待って判断をしたいと考えているところでございます。
  147. 細谷治嘉

    ○細谷委員 すぐに、答弁に困りますと税制改革協議会というのが出てくるわけであります。  それは、地方の方はどうかといいますと、税がまず決まる、決まることによって基準財政収入額というのが確定してくる。そして一方、基準財政需要額というのがありますと、それに対して交付税をつけていく。交付税の計算というのは、まず総額が決まって、そして税が決まって、その上に立って初めて交付税というのが配れるわけですね。しかも、それは八月中にやらなければいかぬ。八月中にやらなければ、大変な公共事業をやりますけれども、やりようがないでしょう、地方は銭がどうなるかわからぬわけですから。財政措置がわからぬわけですから、公共事業なんて前倒し前倒しといったって、言葉だけ、推進できませんよ。今度の公共事業の追加といっても、これは九割は地方公共団体がやるわけでしょう。それができないわけですよ。どういたしますか、お答えいただきたい。
  148. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 つきましては、税制改革協議会におかれまして税制の改革につきましてひとつお示しをお願いいたしたいと。まさにそれがおくれますと、今おくれていくわけでございますので、心配をいたしております。
  149. 細谷治嘉

    ○細谷委員 まあ端的に言って大蔵大臣、やらなければいかぬものが目の前に迫ってきているけれども、逃げ場はいつでも税制改革。交付税の総額を決めるのも税制改革に関係がありますよ、地方税を決めるのも、まあ知りませんけれども、マル優かなんかというのが前提なんだと、一つも決まっていない。  先ほど川崎委員が、もしやるというなら、そして重要性を認識するのならば、資料を出してどんどん進めたらいいとおっしゃっておりましたけれども、それについては余り熱意がないようです。これはどうにもならぬです。――野党が逃げているといったって、資料を出さぬというのですから……。  大蔵大臣、これはやってもらわなければ、今度の補正予算というのは意味ないでしょう。おくれちゃうのですよ。やがて冬が来ます、どうなりますか。決意のほどと言うとまた税でしょう。
  150. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これはしかしそう言われましても、政府といたしましては、前国会に総合的な税制改革案を御提案をいたしたわけでございます。それは廃案となったわけでございまして、その際に税制改革協議会が議長のごあっせんでできたわけでございますので、どうもただいまのように申し上げるしか方法がない。  それで、もちろん公の御協議の機関でございますから、必要な資料は政府としても提出をいたしてまいりましたし、今後もいたします。
  151. 細谷治嘉

    ○細谷委員 自治大臣に申し上げたいのですけれども、住民税の減税、おっしゃるように、これは事務的にもここまで来ると容易ならぬものがあるということは私はよくわかります。しかし一方、所得税の減税だけやって、所得税よりももっと低所得者にとっては過酷な住民税の減税をやらぬということは、国民生活そのものを軽視している、こういう批判が起こってくるのは当然だと思う。私は、そういう意味において、所得税をやるというのならばやはり住民税をやらなければいかぬ。どうしても事務的に不可能ということならば、後年度においてそれに対する穴埋めなりあるいはそれに対する財源措置等を十分に考慮しなければならぬと思いますけれども、自治大臣いかがですか。
  152. 葉梨信行

    ○葉梨国務大臣 六十二年度に住民税の減税を実施しないこととなった場合についての御質問でございますが、その点については配慮をしたい。また、補てんのための恒久財源をどうするか、それを決着をつけなければできませんけれども、恒久財源について見通しを立てるということ、また六十二年度の地方財政事情の見通し等を考慮して、六十三年度における減税規模を決めることが適当と考えている次第でございます。  いずれにしましても、減税の規模、内容、実施方法、実施時期等につきましては、先ほどから申し上げております税制協議会におきます御協議を鋭意進めていただきまして、その審議の結果にまちたいと考えておる次第でございます。
  153. 細谷治嘉

    ○細谷委員 大蔵大臣、財源がないということですけれども、今私が申し上げたように、住民税が減税されるでしょうかされないだろうかということが大変な関心になっております。新聞等を見ますと、どうも六十二年度はオミット、先ほど、六十二年度の財源等については税収の伸び等で何とかやれる、六十三年度以降が一つの問題だ、こうおっしゃっておりましたが、六十二年度も住民税の減税というのがやれるように早急な対応をしていただきたい、大蔵省も努力していただきたいと思うのですが、いかがですか。
  154. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これは、私ちょっとつまびらかでないのでございますけれども、住民税というのは前年のなにが課税標準になるのだそうでございますけれども、もう既に今年度の住民税の計算はできておって、それを全部やりかえるかどうかということは大変難しい問題があるというようなことを聞いておるのでございます。したがって、財源の問題よりはそういう実質上の実施に非常に問題があるのではないかと、私、間違っておるかもしれませんが、そういうようなことをちょっと聞かされておりましたが。
  155. 細谷治嘉

    ○細谷委員 大蔵大臣、それはそのとおりなんですよ。前年度課税ですから、住民税は。そのとおりなんです。だから、これは大変です。それから、税だけをカットして単年度でやろうということもなかなかできないでしょう。そういうことがありますものですから、自治大臣とよく相談して、国民生活にとって重要な問題でありますからどう対応するか。これは自治省だけで片づかぬ問題だと私は思います、六十三年度にかかわってくるかもしらぬ問題ですから。そういう点で十分な善処をお願いしたい、こう思います。  時間もありませんから、この春の予算編成、昨年の暮れのことでありますけれども、大蔵省は銭がなくなりますとすぐあちこち切り込もうという癖が最近あります。その一つの代表的な例というのが、全く関係のない国民健康保険について県費を出させようということが出てまいりましたけれども、これは、全国知事会なり全国市町村長会で猛烈な反対があってさたやみになりました。それに基づいて、その結果、厚生大臣を中心に大蔵大臣と自治大臣との三者の覚書に基づいて、この研究会をつくろうということで、国保問題懇談会というものができて、今何かこそこそやっているようでありますけれども、それはどういう状況になっておりますか、お聞かせいただきたい。
  156. 斎藤十朗

    ○斉藤国務大臣 これからの医療保険制度を考えていく中で最も喫緊で重要な問題は、国民健康保険の安定的な財政を確保していくということが非常に大事でございます。そういう観点から、先ほど先生御指摘のございましたように、大蔵大臣、自治大臣、そして私との覚書によりまして、国保問題懇談会というのが本年五月から発足をいたしました。各界の関係の有識者の皆様方にお集まりをいただき、国保問題の幅広い御議論をいただいておるところであります。ただいま三回ほどその御検討をいただいておるのが現状でございます。
  157. 細谷治嘉

    ○細谷委員 三回ほどやった、近く四回目をやる、こういうふうに伺っております。どういうことが議論されておるのですか、その懇談会で。
  158. 斎藤十朗

    ○斎藤国務大臣 国民健康保険の根本的な置かれている状況を踏まえまして幅広い議論をしていただくということになっておるわけでございます。  具体的に申し上げますと、国民健康保険が置かれております、例えば加入者の年齢階層による偏り、この問題から派生する問題をどのように考えていったらいいかというような問題。また、地域の医療保険を担当する、その地域のいろいろな格差に基づくいろいろな問題が出ておる、そういうことをどのように考えたらいいかというような問題が主であります。こういうことから派生をいたしまして、この財政の負担の国と地方とのあり方ということも含めて御議論をいただく、こういうことになっておるところでございます。
  159. 細谷治嘉

    ○細谷委員 時間がありませんからはしょりますが、大体国民健康保険というのは四千二百万人ぐらいが対象になっていると思うのであります。社会保険制度としては一番対象者が多いのですね。その四千二百万程度の人たちは国保税が極めて過酷だと泣いております。私が調べたのですが、国保税が過酷だという意味は、低所得者にとって大変な負担なんです、これは。  例を挙げますと、住民税と比べますと、全体としては国保税料というのは大体一・九倍ぐらいということになっております。住民税の一・九倍ぐらいの負担。これが国保税、料の現況です。ところがその中身を探ってみますと、二十六万から三十万ぐらいの所得層、これは住民税に対して十四倍ぐらいの国保税を取られておるわけです。それから五十万から七十万ぐらいの人は十一・五倍の国保税を納めております。そうして三百万を超えますと、住民税の大体一・四倍ぐらいで、所得が上がるに従ってだんだん住民税と同じようになるのですけれども、低所得者、二十万から三十万、五十万ぐらいの人はとにかく年間十倍以上の国保税を取られております。  私も調べましたら、ここ二、三年逐次その辺の格差が是正されておるようでありますけれども、依然として大変な負担が低所得者に起こっております。これは御存じでしょうか。言ってみますと、住民税というのは所得税よりもはるかに低所得者に過酷だ、これは直さなきゃいかぬというのが税制改革の一つのポイントでありました。低所得者を見ますと、その住民税よりももっと過酷なのが国保税であります。そして対象者は大体国民の四割を占めておる、こういうことであります。私は、もはや国保税をもうこれ以上取るということは限界じゃないか、こう思います。  地方団体はどうかといいますと、そういう限界ということを心得て可能な限り一般会計からの繰り入れによって財政運営を補っておるのですよ。御承知のような地方財政の現状でありますから、これも今やどうにもならぬ。ということになりますと、これは市町村への委任事務なんですよ、責任は国にあるのですよ。国の方でそれに対して的確な対応をしていただかなければならぬと思います。時間がありませんから詳しく申し上げませんけれども、その国の方がいわゆる雇用者の保険とかなんとかで出すべき金を渋っておって、まあちょっと計算しても一千億円ぐらいの出すものを出さないで後へ後へと送っております、これは大蔵省の問題ですけれども。ですから、そんなことで、条件をつくることに努力しないで、そして県の方に一割程度持っていこう、なすりつけようというのは言語道断、言葉は適切じゃありませんけれども不届き至極だ、こう言ってもいいと思うのですが、どう思いますか。
  160. 斎藤十朗

    ○斎藤国務大臣 今先生が御指摘になられました国民健康保険の保険料につきましての細かい数字につきましては、今ちょっと手元にございませんので、私ははっきり申し上げられませんが、傾向としては、先生のおっしゃったような傾向であるというふうに私も認識をいたしておりますし、そういう中で保険料の上限の引き上げというものも年々改善をいたしてまいっておるところでございます。  同時にまた、今御指摘のように、国民健康保険の運営が大変厳しい状況にあるということも承知をいたしておるところでございますし、国といたしましても、厳しい財政状況の中ではございまするけれども、昭和五十九年、六十年、六十一年と、それぞれ可能な限りの努力をいたしまして、財政的な補てんもさしていただき、そしてなおかつ、昨年の老人保健法の改正等によりまして、国保に若干のゆとりが出たかというふうにも考えておりますが、なお、まだそういう厳しい財政的な負担というものについて、私どもとしても今後とも努力をして、その財政の安定に寄与いたしてまいりたいというふうに考えておるところでございます。  しかしながら、基本的に、先ほど申し上げましたような国保の置かれているいろいろな条件というものがあるわけでございまして、そういう条件を幅広く御検討いただいて、そういう中で、今後の国民健康保険の制度としてのあり方というものも考えていただかなければならない時期に来ておるというふうに考えておるわけでございます。  そういう中で、国と地方との負担のあり方ということが、先生も今御指摘をいただいたわけでございますが、これはいろいろ御意見のあるところだと思いまするけれども、国民健康保険はまさに地域の医療を確保していくという非常に大きな使命を持っておるわけでありまして、市町村も、また県も、それぞれ応分の責任を分担しつつ地域の健康を向上さしていくという観点からの考え方というのも一つあるべきでなかろうかというふうに私は考えておるところでございます。
  161. 細谷治嘉

    ○細谷委員 大切な制度でありますから、検討することについて私も反対しているわけじゃありません。ただ、私が心配していることは、いつでもそうであります。今度の懇談会もやがて四回目の懇談会を迎える。そして八月に概算要求が出てくる。そうして十一月の二十日ぐらいから、あるいは十二月に入るか入らないころに、予算が決まるときになると、それまではこの懇談会は足踏みして余り結論が出ないのですよ。  ところが最後に、八回か九回目ぐらいの最後のそのころになるとぱちっと結論が出る。それがすべて。補助金カットのあのやり方もそのとおりですよ。そういうことにならないように民主的にやってもらいたい。公開主義でやってもらいたい。最後にもう金がないんだからしようがないというわけで、強引にとは申しませんけれども懇談会の結論を出させて、この結論が出たんだから、県は持て、地方は持て、あるいはこうやるんだ、こういうやり方は厳にやめていただきたい。これを特に要請しておきたいと思いますが、厚生大臣、やりませんか。
  162. 斎藤十朗

    ○斉藤国務大臣 国保問題懇談会に御検討をお願いいたしておりますが、これについていつまでに結論を出してほしいというようなことは申しておりません。十分な議論を詰めていただきたい、こう考えておるところでございますが、そうは申しましても、二年も三年も五年もというわけにはまいりませんので、できるだけ早くに十分な御議論をしていただきたい、こう考えておるところでございます。  そこで、今先生御指摘のように、財政のためのみの結論なり改革の案を出す、こういうことではなくて、先ほど来申し上げておりますように、国民健康保険制度が地域の多くの住民の健康を確保していくという面で非常に大事でありますので、そういう観点から国民健康保険の将来にわたっての制度の見直しを行い、そして健全に安定的に運営できるような制度にするにはどうしたらいいか、その結果どうか、こういうようなことで御議論をいただけるものというふうに考えておるところでございます。
  163. 細谷治嘉

    ○細谷委員 終わります。
  164. 砂田重民

    砂田委員長 これにて細谷君の質疑は終了いたしました。  次に、上原康助君。
  165. 上原康助

    上原委員 私は、しばらくぶりで本委員会で発言をする機会を得ました。お尋ねしたいテーマがたくさんございますが、時間が大変限られておりますので、できるだけお聞きをしたい事項についてお尋ねをしたいわけですが、ひとつ総理初め関係大臣の誠意ある御答弁をまずお願いしたいと思います。  そこで、いきなり本題に入るのもいかがかと思いますので、本会議における代表質問なりあるいは先ほど来先輩の川崎先生や細谷先生とのやりとりをいろいろ聞いてみて、総理初め、この一〇九国会締めくくり国会だ、あるいはまた過去五カ年間近く政権を担当してこられて、まあ言うところの戦後政治の総決算をする決算に当たる国会なんで、それなりに仕事師内閣でなお頑張りたいというようなことをおっしゃっておるわけですが、大変失礼なお尋ねになるかもしれませんが、後のお尋ねの方との関連もありますので、総理はいつまで総理大臣をお続けになるおつもりなのか、また締めくくり内閣とか、いろいろ野党の方から言われると、さすがに泰然自若の中曽根総理も時々ストレスを出されたりしているわけですが、この五年間近く振り返ってどういう御感想なのか。残りは少ないかもしれませんが、この短い期間にこれだけはぜひやはりやり遂げておきたいという重要課題もなおあろうかと思いますので、そこいらからひとつお聞かせをいただきたいと存じます。
  166. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 五年近くの間、皆さんから大変御支援、御鞭撻をいただきまして感謝にたえないところでございます。  政治に小休止はないし、国政全般はもとより、世界情勢も毎日動いておるわけでございますから、日本をおくらせるわけにもまいりませんし、また全国隅々に至るまで目を配って、国民の皆さんのことを考えてやらしていただかなければならぬ立場にあります。一日も休まずに、ともかくいろいろな問題について最善を尽くしてまいりたいと考えておる次第でございます。
  167. 上原康助

    上原委員 余り中身のある御回答ではありませんが、これから一つ一つお尋ねをしましょう。  そこで、できれば防衛問題などを少し時間をかけてやりたい気持ちなのですが、残念ながら、私の立場はそうも許しません。どうしてもお尋ねをしなければいけない質問から入りたいわけですが、過般の衆議院における我が党の岡田副委員長や小林国対副委員長お尋ねなり、あるいは参議院においてもいろいろあったわけですが、御承知のように、ことしは沖縄が復帰をして満十五年を迎えました。これまでの沖縄開発庁初め政府関係省庁の御努力によって相当復帰後の課題が前進をし、一定程度沖縄の民生も安定をしてきたことは私たちも否定はいたしません。しかし、後ほどお尋ねをしたいいろいろな問題とのかかわりでも、まだまだ我々が期待をしておった復帰にはほど遠い、そういう立場からお尋ねをするわけですが、総理の復帰十五年を迎えた沖縄に対する御認識をぜひ率直にお聞かせをいただきたいと存じます。
  168. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 復帰十五年の間に沖縄の皆さんもよく一生懸命頑張ってくださいました。海洋博というものはやはり一つの時期を画したことであったと思いますが、しかし、全般的に見ますと、やはり失業の状況とか産業の振興の状況を見るとおくれている面がかなりあるように思います。そういう点におきまして馬力を入れてこれらを挽回する、そういう形で今後とも大いに努力してまいりたいと思いますし、十五年を記念して行われる沖縄国体が大成功裏に終わるように祈念してやまない次第でございます。
  169. 上原康助

    上原委員 総理も沖縄の失業の問題が大変深刻であるという御認識はお持ちですね。
  170. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 よく知っております。
  171. 上原康助

    上原委員 米軍基地、基地の実態についてはどういう御認識ですか。
  172. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 日本にある米軍基地の中で相当の数というものは沖縄に集中しておりまして、沖縄の皆さん方にいろいろ我慢をしていただいて、何かと不便をおかけしておることは甚だ申しわけない状態でございますが、我々は与えられた条件の中で最善を尽くしてまいりたいと考えておる次第でございます。
  173. 上原康助

    上原委員 我慢をしてもらいたいという、もちろんそれだけではないと思うのですが、確かに一定限度我慢をしなければいかない点も、社会環境というかあるいは国民生活の中においてはあると私は思うのですね。その点もまるっきりわからぬわけではございません。しかし、私たちが十五年前の復帰に期待をしたことは、少なくとも復帰をすれば本土並み・核抜きということが大前提でしたから、私も随分この場でも、あるいはこの十七、八年間努力をしてまいりましたし、またお尋ねもしてまいりました。核も基地もない平和で豊かな沖縄、これはスローガンとか目標と言われればそれまでかもしれませんが、要するに一口で言うと軍事色をもっと薄めたいというのが百万県民の偽らざる心情なんですね。しかしそのことがなされておらない。  まず基地問題から入りたいと思うのですが、特に最近、米軍事件、事故というのが頻発をいたしております。ちょっと資料を配ってください。これは総理、今お配りしますが、私が何も社会新報とか、あなたがお好きでない赤旗あたりからまとめたものじゃないのですね。実際に今年の一月から七月十一日まで、沖縄百万県民ほとんどが読んでおる琉球新報であるとか沖縄タイムスであるとか、主にそういうものに出た事件、事故なんであります。恐らくこれは本土のマスコミ等には余り報道されませんで時々しか出ませんが、私がお尋ねしたいことは、皆さんは日米安保体制は我が国の安全保障に必要なんだ、そういうことで事を進めるわけですが、四十七都道府県で二日に一遍ないしは一日に三件の割でこれだけの基地被害を受けている都道府県というものがあるかということなんですね。  この実態を総理を初め内閣全体が御理解をした上で、沖縄の復帰十五年あるいはこれからの問題というものをやっていくという基本にもう一度返っていただかないと、私は県民は納得しないと思うのですね。どれだけ犠牲になっているのかということをぜひこの数字を見て――具体的にこれは表に出たものだけなんですよ、まだまだこういうふうに出ない分もたくさんありますよ。四十七都道府県で、どこの府県にこれだけの犠牲を受けているところがありますか。しかも、私がこういう資料をまとめている間に、また水道パイプが破裂してやられている。これは全閣僚にはお配りしてありませんが、総理大臣と外務大臣防衛庁長官にはお手元に行っていると思うのですが、金武町で簡易水道のパイプも米軍の演習によって破裂しているわけでしょう。まさにやりたいほうだいの米軍の最近の演習なんですね。  こういうことに対して、私たちはその都度善処措置を防衛庁に対しても外務省に対しても、また時には内閣官房に対しても要望をしてまいりましたが、政府はこういう実態をどう御認識をし、これの対策をどのようにおとりになり、今後県民の納得のいく線で解決をしていかれるお気持ちやあるいは御方針があるかどうか、ひとつお聞かせをいただきたいと存じます。
  174. 倉成正

    ○倉成国務大臣 お答えいたします。  ただいま上原委員が申されましたとおり、今沖縄は、日本の安保条約の効果的運用のために大変重要な役割を果たしておられまして、その意味において日本の防衛のために大きく貢献されていることに厚く感謝申し上げる次第でございます。  一方、ただいま御指摘のように、ことしに入りまして沖縄において米軍関係事件、事故が多発していることは、政府としても十分承知しております。ただいまお配りになりましたキャンプ・ハンセンの演習場における水道管の破裂の事故というようなことは、まことに遺憾なことでございます。この際、米側に対してもしかるべき申し入れを行うことが必要と考えまして、昭和六十二年六月二十五日に開催された日米合同委員会におきまして、日本側代表より、一連の米軍関係事件、事故に関して深く憂慮の念を表明するとともに、日米安保条約の円滑かつ効果的運用のためには沖縄の地域住民との関係を十分に配慮すべきことを強調し、さらに、米軍の訓練及び活動の安全性を確保すること及び米軍の規律を維持することが重要である旨を述べ、当該事件及び事故の原因を究明した上で所要の再発防止策を講ずることを要請いたしたところでございます。  これに対しまして米側代表から、当該事件、事故が起きたことについて遺憾の意を表明するとともに、その原因究明及び再発防止に万全を期する旨回答をいただいたところであります。  政府といたしましては、米側の対応を見守りつつ、必要に応じて沖縄の地域住民の生活及び安全確保に十分な配慮が払われるよう求めていく所存でございます。これまでも沖縄県民より理解と協力を得てまいりましたことに政府としても感謝申し上げるとともに、地元の御理解と御協力をお願いする次第でございます。
  175. 上原康助

    上原委員 そういった申し入れをおやりになっておられるということは私も聞いていないわけじゃありませんが、従来パターンのこの対米交渉だけではこれは無理ですね。  そこで、細かいことまで触れたいわけですが、冒頭申し上げた制約がありますので、総理、どういう御感想をお持ちですか。現にこれだけ被害を与えているわけですよ、地域住民、沖縄県民に対して。今、外務大臣からそういう対策はとっておるという御答弁でしたが、総理の率直な御感想とこれに対してどう対策をおとりになろうとするのか、お聞かせください。
  176. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 最近におきます米軍の事故の頻発というものはまことに遺憾にたえないところでございまして、外務省等を通じましてそういう再発を防ぐようにともかく一生懸命努力させたいと思います。外務大臣お答えしたとおりでございます。
  177. 上原康助

    上原委員 そこで、これは聞かずもがなのことですが、米軍基地の沖縄に占める割合についてひとつ説明をしておいてください。
  178. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 我が国におきます米軍基地の専用の施設、区域をとりますと、七五%が沖縄に存在するわけでございます。
  179. 上原康助

    上原委員 それだけで結構です。専用基地の七五%は――沖縄の面積は、国土のわずか〇・六%しかないのですね。それだけに、現在沖縄に重い荷物を背負わせているのですよ。だから、こういう事件も起きるわけです。しかし反面、基地交付金であるとか基地調整金であるとか、そういう面においてはまだまだ沖縄への交付というのは非常に足りないですね。これはまあいずれ別の面で議論したいわけですがね。  だから、こういうもう日常茶飯事のように次から次へ皆さんが善処策を申し入れても起きるというこの基地の密度の高さというものを、総理、外務、防衛庁、やっていただかないと困るということ、この点を強く念を押しておきたいと思いますし、ぜひひとつこういうむちゃな事件、事故が起こらないように特段の政府の御努力を要求しておきたいと思います。  そこで、こういうふうに事件、事故が多い、基地の密度は高い。その反面、今度どういうことが起きているかというと、去る七月二日に起きたあの米軍海兵隊クラブ関係の三百三名の大量解雇の問題ですね。一体沖縄基地を何と思っているというのです。米軍が撤退をしてクラブがクローズをするというなら、これは望むところ、話はまだわかる。理解のしようもあるんですね、大臣。このことについて、既に七月二日から、きょう十三日ですから十日余りたっていますね。その間、米側とどのような交渉をし、この問題を――私は既に申し入れをしましたように、白紙撤回を前提としてこの問題は解決をすべきである。その理由については、お答えをいただいてからまた申し上げましょう。
  180. 倉成正

    ○倉成国務大臣 ただいま上原委員御指摘のとおり、在日米軍の米海兵隊クラブの従業員の人員整理の通報につきまして、我々は大変残念なことであり、深刻に受けとめております。  政府としては米側に対しまして、我が国としても特別協定の締結等の努力を行っており、米側においても従業員の安定雇用の維持のためさらに努力を行うよう申し入れており、政府の本件に対する重大な懸念を伝えるとともに、米側が本件についての立場を再検討し本件人員整理の影響を最小限とするよう、また再びこのような人員整理が行われることのないよう要請しているところでございます。政府といたしましては、今後とも引き続き従業員の生活の安定と雇用の安定維持のために最大限の努力をいたす所存でございます。
  181. 上原康助

    上原委員 最大限の御努力は結構だし、当然おやりになってもらいたいわけですが、そういう抽象論ではこれは私は理解できませんね。納得しかねます。  ただ、この問題が起きて以後、珍しくと言えば失礼になるかもしれませんが、非常に素早い反応があったことは、私はある程度評価をしたいと思う。しかし、総理大臣が労働大臣に何か指示をしたというんだが、これはお門違いですね、失礼ですが。首切られた後の始末をどうするかが労働省のお仕事なんですよ。我々は、首を切らすなど言っているんですね。そのことは、しかし反応があったということはまあいいとしましょう。  そこで、雇用主はやはり防衛施設庁、防衛庁長官なんだな、最高の一応の雇用主、法的雇用主は。今外務大臣からございましたが、これだけ事件、事故を頻繁に起こしながら、専用基地の七五%は沖縄に依然としてある。そういう状況下の中で、撤退をするのでもないのに三百三名も生首を切るということは、これは合点いかないですね、どう考えても。客観的に見ても、これはどなたが聞いても理不尽だと思いますよ。私が白紙撤回の線でやれということは、総理、初め私が言ったように、失業率が非常に沖縄は高い。五月段階で六・四%、これはもうお認めになりましたね。基地の密度が専用基地の七五%ある。しかも、一〇八国会で私たちは、防衛費の一%問題等もいろいろありましたが、雇用の安定という立場から特別協定にも理解を示しました。そういうやさきであるということ、さらに、さっき申し上げたように基地の事件、事故が頻発をしている。同時に、総理もおっしゃいましたように、この秋には海邦国体を控えていて、今沖縄全体が県民の総力を挙げてそういう難題というか課題努力をしていかなければいかないというやさきに解雇問題が突如として起こるということは、私はどうしてもこれは政治立場として許せない問題なんですね。しかも、米軍側ももっと自助努力をやってみたらどうですか。そういう五つの観点から、この問題は白紙撤回の線で当面棚上げにして日米間で十分協議をし、関係者が私が今申し上げたようなことにこたえるというのが、私はせめてもの中曽根内閣のお仕事として県民の期待を裏切らないことになると思うのですが、この点について総理防衛庁長官の御所見をお聞かせいただきたいと存じます。
  182. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 上原さんの御指摘は、私も本当につらい気持ちで聞いております。御案内のとおり、いわゆる思いやり予算というのが、皆さん方の御協力をいただきまして国会を通ったわけであります。そのやさきでございますので、私も本当にこれは心を悩ましておるところでございます。  しかし問題は、だからといってそれではアメリカ側がノー文句でこれは撤回すべきだというふうに言うためには、それなりの根拠がなければいかぬ。例えば百六十五億積んだから、あとは一切あなた方は私どもの言うことを聞かなければならぬぞという、そういう縛り方はこれはしていないわけです。ですから問題は、なぜアメリカがそういうふうな態度をとったか。今そういう意味合いで施設庁長官に事情というものをよく問いたださせ、その事情については日本側としてよく吟味する、その上でアメリカに対してさらにどういう対策をとるかということを決めようということになっている。  いずれにいたしましても、この問題は私も非常に重要に思っておりまして、これは近くアメリカの海軍長官のウェッブというのが参りますから、これは海兵隊の方もやっておりますから、ウェッブ海軍長官ともこの点について、沖縄の置かれている立場、私ども政府の立場というものをよく話をして、そして何らかの対策を講じたい、そういう努力をいたしてみたい、こう思っております。
  183. 上原康助

    上原委員 総理は後でひとつまとめてお答えいただきたいわけですが、私もアメリカとのやりとりはある程度やった経験がありますので、なかなか容易じゃないと思いますよ。向こうはコーヒー代だって割り勘にするようなところだからね。しかし、客観的に見てもどう見たって、政治的に見たって実態からしても、今度のやり方というのは、これは一方的過ぎますよ。  そこで、もう少し具体的なことを聞いておきますが、施設庁がまとめておると思うのですが、一体今のIHAの、このマリン関係の従業員の年間の所得はどのくらいですか。
  184. 友藤一隆

    友藤政府委員 お答えいたします。  沖縄のIHAの職員の給与支払い額でございますが、年間六十三億一千三百万でございます。
  185. 上原康助

    上原委員 それは違うでしょう。それはIHA全体でしょう。今解雇対象になっているマリン関係が幾らかと言っているのです。私の方から言いましょう。この間もらった、あなた方の方から。三百万に足りませんよ、三百万に。そうでしょう。二百七十か八十ぐらいじゃないですか。それをはっきりしてください。
  186. 友藤一隆

    友藤政府委員 お答えいたします。  二百七十九万四千円程度でございます。
  187. 上原康助

    上原委員 そうなんですね。IHAというのは諸機関労務で、MLC――こういうことを言うといろいろごちゃごちゃしますから申し上げませんが、諸機関の皆さんの給与は比較的低いのです。三百万に足りない。三百万としても、三百名では九億じゃないですか。九億、ざっと計算して。そうでしょう。その半分は日本側が持つというわけでしょう。百六十五億のうちから九億。九億の半分仮にアメリカが持ったとしたって四億五千万。一年分としてですよ、一年分として。だから、どう考えてもこれは海兵隊の司令官のオペレーションかマネジメントの問題があるということ。したがって、日本側が新たに、極めて我々も問題とは思ったのですが、追加負担をしたというやさきにこういう仕打ちをやるということは、一体皆さんアメリカとの友好関係というのはどこに根拠があるんですか。こんなことまでされて大蔵大臣も、金を出している方としても問題よ、これは。  そういう面で、金高の面からしたって、日本側が丸々持つわけでないし、そしてアメリカが自助努力をすれば、そういう生首を切らないで、直接解雇をしないで、日米間で十分協議をし、万一自主退職者があればそういうものも詰めていく、あるいはトランスファーができる、転職ができるとか、そういう措置を十分講じたあげくになおできないというなら、関係者、当事者が相談をするというのが通常の社会通念じゃないですか、常識論じゃないですか。そういう面でも、この問題は、先ほども申し上げましたが、白紙撤回を前提ということでぜひ当面棚上げにして、解決策を政府全体として見出していく、これが私は日米間のいろんな関係からして得策だと思うのです。これは総理がそういうふうに、そういう方向で外務省や防衛庁、防衛施設庁にやってもらいたいという御指示をすれば、私はかなり前進すると思う。  先ほど来の議論をお聞きになって、やりとりをお聞きになって、総理の決意のほどをお聞かせください。
  188. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 上原さんのおっしゃることはよく理解できますし、現地の方々の身になってみれば大変なことである、そういうふうにも痛感しております。  善後策につきましては、今防衛庁長官から御答弁がありましたが、ともかく最善を尽くしてこの事態を改善するように努力させるつもりでおります。
  189. 上原康助

    上原委員 細かいところまでは触れませんが、総理あるいは外務大臣、また防衛庁長官からも、一応何とかせにゃいかぬという、まだ私の質問に対するお答えとしてはなかなか不満足ですが、しかし、この問題をうやむやにしたとか九月三十日が来たからもう、はいさようならでは、これは納得できませんよ、これからの問題は。そういう面でぜひひとつ最善の努力をしていただくように要望をしておきたいと思います。  次に、今そういう基地問題あるいは失業問題が大変深刻になっておるわけですね。この夏から秋にかけて海邦国体というのを控えて、十五年の一つの節目を乗り切ろう。もちろんそれにもいろいろまだ乗り越えにゃいかない幾つかのハードルはあるような感もいたしますが、この海邦国体後の沖縄の振興策というものに非常に懸念をしているわけですね。  どうも日本の政府の振興策というのは一点集中主義というか拠点集中型で、大阪万博だ、東京だ、海洋博だということで、そこに集中豪雨的に公共工事を投資をして、あとはペンペン草が生えたとかギンネムが生えたとか、そこまではいかないにしても、そういうこともなきにしもあらず。そこで、先ほど総理もおっしゃいましたように、基地問題、失業問題、いろいろな面でまだ課題が残っているということであるならば、このポスト国体の二次振計後期からやはり三次振計の必要性というものは、私は内閣全体としてぜひ方向づけていただきたい。そういう立場お尋ねをするわけですが、そういったことについて、これは開発庁長官からお答えをいただいて、また総理の御見解もお聞かせを願いたいと思います。
  190. 綿貫民輔

    ○綿貫国務大臣 沖縄開発の二次振計後の三次振計についての御質問でございますが、ただいま第二次振興開発計画のちょうど折り返し点にあるわけでございまして、この後期の達成のために全力を尽くしてまいりたいと思っております。  なお、沖縄全体の問題につきましては、先般発表いたしました第四次全国総合開発計画の中で長期的には位置づけをしておるわけでございます。二次振計ができるだけ達成された後に、第三次振計のことを考えたいという考えでございます。
  191. 上原康助

    上原委員 考えたいということは、その必要性はあるように思うというか、消極的肯定だと思うのですが、総理はどういうお考えですか。少なくとも私は、今言ったような問題がまだ山積をして、なかなかこれは二次振計期間中に片づかない。後期も一生懸命やるにしても、格差の問題であるとか基地の整理縮小、きょう触れませんでしたが、そういう問題等をやっていくにしても、やはり継続性という面で三次振計の必要性というのは県民の望んでいるところだし、そういう面については、ひとついつもおっしゃる総理のイニシアチブ、リーダーシップで、やはり沖縄の二十七年のあの異民族支配、復帰十五年を迎えても今私が言ったような状態であるということを含めるなら、三次振計の必要性というのは否定できないと思うのですが、総理のお考えをひとつぜひ明らかにしていただきたいと思います。
  192. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 今、長官お答えのとおり二次振計が進行中でございまして、この二次振計の消化状況あるいはそのときにおける沖縄の開発の進行ぐあい等もよく見た上で、三次振計の時期が近づいてきましたら、その必要性あるいはどこに重点を置くか、そういうような問題を検討したいと思っております。
  193. 上原康助

    上原委員 今までは二次振計後期のプロジェクトを最優先するというにとどまっておったんですがね、沖特その他で私がいろいろお尋ねしても。まあ、もう少しやっぱり必要がなあというところのような感触を受けましたので、恐らく海邦国体が済むと三次振計の問題については、明日もいろいろ開発庁でやるようですが、県なり関係団体から強く要求、要望が出てくると思うので、そういうのを受けてひとつぜひ政府全体としての御努力を強く要望しておきたいと思います。  そこで、冒頭総理お尋ねしたのですが、参議院でのお尋ねの中で、秋季国体は海邦国体が二十五日から始まりますよね、二十五日から三十日。何か総理は、御要望があればぜひ天皇のお供をして参上したいという強い意欲を示されたということで、実は沖縄現地でも大変話題になって、天皇もおいでになる、総理大臣も来る、閣僚も次から次来る、一体この警備体制をどうするんだと、今てんやわんやなんですね、正直申し上げて。  どうも当分はまだ総理大臣をお続けになるようなさっき冒頭の御答弁でしたので、任期の問題と一体どうかかわっているのか。本当に沖縄まで中曽根さんも行かれるのかなと思って期待もするし、半ばまた、解雇の問題とか、三次振計もつくらなければ来てもどうしようもないのじゃないかと思ったりするのですが、そこいらはどうですか。
  194. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 参議院の本会議で伊江議員から御質問がございまして、そして、天皇もおいでになるからおつきしておいでなさい、そういうお勧めがございましたので、先ほどのようなお答えをしたわけでございます。  もっとも、そのときの状況により、いろいろな都合もございましょう、そういうことも申し上げたのでありますが、私の総裁任期というのは十月末まであるのでありますが、いろいろ国内の状況あるいは自民党の内部情勢等も見て考うべきことでもございましょう。しかし、やはりピッチャーというものは一たんマウンドに上がったら完投するのが責任あるピッチャーではないか、そう思って、おる次第であります。
  195. 上原康助

    上原委員 そうしますと、キャッチャーはだれですか。
  196. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 キャッチャーがだれであるか知りませんが、ともかく総理大臣というものは主戦投手の一人である、そう考えております。
  197. 上原康助

    上原委員 なかなか言い得て妙なお答えですが、私も何も中曽根総理来るなとは申し上げません。しかし、いらっしゃるならその前に三次振計ぐらいはきちっとめどづけるとか、さっき言った解雇問題はぴしゃっと片づけるとか、あるいはまた米軍の演習は海邦国体期間中は慎んでもらいたい、後はドンパチまた続けるとか、そんな、ごまかしと言ったら非常にお怒りになるので言いにくいのですが、ごまかしとしか言いようがない。そんなのにごまかされるような県民じゃないですよ。その点はしかと受けとめていただきたいのですが、改めて決意のほどを伺っておきます。
  198. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 先ほど申し上げましたように、沖縄の問題につきましては私は前から大きな関心を持って、一日も早く本土に追いつくように努力してきた一人でございまして、今後とも誠心誠意努力するつもりでございます。
  199. 上原康助

    上原委員 我々も海邦国体を県民の納得のいく線で成功させたいという気持ちにおいては変わりはありませんので、この点はひとついろいろな角度から十分御配慮いただいて、少し冗談まじりに申し上げましたが、余りかた苦しい質問だけでもお互い肩が凝りますから、その点は御理解をいただいて、ひとつ期待に沿うようにお願いを申し上げておきたいと思います。  そして次に移ります。  次は、人事院総裁おいでいただきましたので、簡単にお尋ねしておきたいのですが、ことしの人事院勧告の時期が迫っていると思います。民間賃金の調査の経過、いろいろマスコミ報道等もありますが、やはり私たちは人事院の主体性というか自主的立場で勧告はやるべきだという立場に立っておるわけですが、この点についての経過と、今後の見通しをひとつ明らかにしていただきたいと存じます。
  200. 内海倫

    内海(倫)政府委員 お答え申し上げます。  勧告につきましては、もう先刻御存じのように、官民比較の上でこれをどうするかということを考えて、長年にわたってそういう措置をとっておるわけでございますが、現在、官の方の調査につきましては一応これを終えて、集計も終え、一応の結論、官の側の給与の実態というものは明らかにすることができました。民の方につきましては、これは御存じのように非常に膨大な調査を必要といたしまして、現在その資料の収集は終わりました。これをさらに総合して、どういうふうに答えが出てくるか、目下、それの検討といいますよりも資料の集計という段階におります。したがって、差がどういうふうに出るかとか、そういうふうなことを我々が見通す段階まではまだ作業はいっておりませんが、早晩これは進めていかなくてはいけませんし、例年に比べて順調に進んでおるもの、こういうふうに考えております。  作業の状態はそういうことでございますが、さて勧告をするのかどうかという問題ですが、この点につきましては、一つはその官民の較差というものがどういうふうに出てくるか、これは調査を完全にやってみないと何とも言えないことでございまして、今私からその調査の結果がどういうふうになるかということを申し上げることはできません。  しかしながら、勧告というもの、その前に公務員の給与というものは、やはり国家公務員法に定められておりますように、そしてまた労働基本権の制約のもとにあるわけですから、できるだけ厳密に考えていかなければならない。その場合、あるいは公務員の生計の実態あるいは我々と同じ国家公務員であります現業の皆さん方の給与がどういうふうに決まるか、こういうふうなことも考え合わせなければいけません。  特に私どもは、それらのほかにやはり国民の皆さんの理解というものも必要でございますから、そういう世論というものにも十分耳を傾けねばならない、そういうふうなものを総合した上で私どもの結論を出したい、こういうふうに思っておりますが、やはりここで大事なことは、昨年政府において完全実施をしていただきました。これは非常に条件苦しいところをやっていただきました。これによる公務員の勤務意欲というふうなものあるいは公務倫理というふうなものには非常にいい影響を与えております。こういうことも私どもは十分給与という問題を考える上で考えていかなきゃならない。そういうふうなものを総合勘案しながら本年における給与についての問題に対処していきたい、これが私どもの現在の考え方でございます。
  201. 上原康助

    上原委員 まあ微妙な問題ですからなかなかすぱっとお答えしにくいかと思うのですが、しかし昨年も内閣委員会で随分この問題議論しましたよね、五%以内云々で、二十八条ですか。そこでまあ、公務員賃金は厳密に考えなければいかないというアクセントにウエートを置くならば、やっぱり勧告は必要だというふうに私は理解をいたしましょう。  そこで、総務庁長官と官房長官に、これは要望等を含めてですが、勧告がなされた場合は完全実施を前提にやるということ、同時に、既に従来の公労協関係は八年ぶりに国会議決にならずに実施をするということを閣議で決定したわけでしょう。そういう前例があるということ。そういうことと、国会がたまたま開会中であるというようなことを考えますと、まあいつも官房長官はこの問題になるとにやにやなさるのですが、せめて最後の置き土産として、国会開会中に勧告がなされたら直りにこの給与関連法案をつくって立派に完全実施をするということでなければいかないと思うのですが、両大臣から御見解を聞いておきたいと思います。
  202. 山下徳夫

    山下国務大臣 国務大臣の一員でございますから、勧告につきましては国政全般に考慮しなきゃならぬことはこれまた当然でございますけれども、また給与担当の大臣として、私はそれが完全実施をすることを一つの建前として臨んでまいりたいと思っております。
  203. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 人事院総裁今おっしゃいましたように、お取り扱いどうなさいますのかまだわかりませんが、例年のように仮に勧告がなされたと仮定いたしますれば、これはやはり労働三権制約の代償措置でございますから、かねてから政府の態度を申し上げておりますように最大限これは尊重をして、そして国政全般との関連の中で完全実施をするように最大限の努力をいたします、こういうことでございます。
  204. 上原康助

    上原委員 何かわかったようなわからぬような、しかし去年の回答よりは、答弁よりは少し前向きですね。そうしますと、人事院総裁、ますますあなたは勧告をしなければいけない立場に今なりましたが、その決意はありますね。
  205. 内海倫

    内海(倫)政府委員 先ほど御答弁を申し上げたとおりでございまして、今そういうふうな気持ちで私は一生懸命努力をしておるところでございます。
  206. 上原康助

    上原委員 皆さんお聞きのとおりですから、これは期待をしておきましょう。  次に、どうも防衛問題というとなかなか十分そこいらでは難しい面がありますので、INFの問題について、これは主に総理お尋ねをしておきたいと思います。  本会議でのやりとりも私も聞きました。また、かねがね総理のこの核廃絶というか軍備管理。軍縮に対するお考えというのも聞いているわけですが、どうもしかし理解がしにくい面が多いわけです。  そこで改めてお尋ねしますが、ベネチアサミットにおける総理INF発言、要するにソ連アジアというか、SS20を百弾頭保持するから、その対抗手段というか、それを将来なくさせていくための一つのカードとして、米側もアラスカを含む米本土に百弾頭を保持させる、それが真意だとかなんとかおっしゃっているわけですが、一体そういう御発言をした総理の真意、意図というのは那辺にあったのか。本会議の質問だけでは余り納得しがたいし、また理解し得ない面もありますので、改めて総理の率直なこの問題についての、サミットにおけるやりとりを含めて明らかにしていただきたいと思うのです。
  207. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 これはおっしゃったように、アジアにおいても百を置いてはならない、アジアヨーロッパとの間において犠牲になってはならない、ヨーロッパ・ゼロ、アジア百、こういう不平等を認めてはならぬ、そういう意味におきまして、どうしてもアジアに置かせないようにするために、交渉の一つのカードとして、材料としてそういうことを容認する、そういう意味のことを申し上げたのであります。
  208. 上原康助

    上原委員 それは総理の側からレーガン大統領があるいはサミットの白熱した論議だったという言い分もあるのですが、そこで提案をしたということですか。
  209. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 サミットで首脳部がいろいろこの問題について議論している最中に、私が終わりのころになって、日本立場というものを明らかにしておく必要がある、つまり、アジアの百は絶対認められないんだ、何としてもこれはやめてもらいたい、そういう交渉のカードとしてやむを得ずそういうものは認めでもよろしい、しかし、それはあくまでもアジア百をやめさせてもらうためである、そういう意味の趣旨を申し上げたのであります。
  210. 上原康助

    上原委員 そこでいろいろな疑問が出るわけで、納得しがたい面があるわけですね。  確かにアジアにあるソ連のSS20というもの、これも含めて廃絶をする、いうところの世界規模ゼロオプションというか、ゼロにする、これは結構なんです。だが、ソ連が百弾頭をアジアに置くということであれば、これはソ連と交渉しなければいかない課題なんですよ。ソ連の方にそう言わなければいかない、そうでしょう。  我々が疑問に思うのは、また国民が大変、総理の御発言としては失礼な言い方かもしれませんが軽率ではないのかという理由は、第一は被爆国日本であるということ、しかも非核国日本であるということ、私は非核三原則は遵守されているとは見ておりませんが、そういう日本の首相が、どの国が対象であれ核兵器の新たな配備を促すような御発言をするということは、私はやはり被爆国、非核国日本の宰相としてはいささかどうかと思うのですね。しかもアラスカを特定したということは、アメリカ側もこれはアラスカが一応念頭にあるというような見方もあるわけですが、今の総理の御発言からすると、総理がそういういろいろな会議の後で提案をしたということですから、なお問題だと思うのですね。  総理のそういう論理からしますと、もし、ではアラスカに配備をするのは米側が結構ですよと。しかしペルシャ湾の安全保障の問題をめぐっても今いろいろ日米間でありますね。さっきの思いやり予算を含めての日本側の基地維持の負担の問題も、五十三年以降膨大な額になってきている。日本総理がそういう提案をして、米側が、それなら建設費とか維持費とか、そういうものは日本分担をしてくれ、今のような貿易摩擦、日米関係ではそういう提案もないとは言えないですね、これは。そう言われた場合、あなたはどうなさいますか。
  211. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 日本はそんなものを分担する責任はないので、もちろん断ります。しかし、今最初に、核兵器を配備することを促すような発言と言われましたが、そうではないので、シベリアに百置くことをやめさせるための発言なんです。その点は誤解のないようによく理解していただきたいと思っております。
  212. 上原康助

    上原委員 しかし、それは主観的な受けとめ方でありまして、我々から見ると、やはり新たにないものをアラスカに置けというわけだから、促しているんじゃないですか。  では、もう少し聞きましょう。もちろん、それは簡単に国民世論も許さぬでしょうね、そういうことまで、核配備の問題まで。しかし、分担をせよと言われた場合、お断りしますと。当然ですが、さっきのココムの問題にしても、アメリカ側の議会の動き、あるいはいろいろな日米関係貿易摩擦その他のことからして、そういう議会筋の意見なりあるいは国民の声が出ないとは言えないと思うのです。それだけに慎重であってしかるべきだということを私は申し上げたいわけですよ。  二点目に、ソ連アジア部の百弾頭を撤去させるためのカードということですね、アラスカに配備をするということは。そうすると論理上はアラスカよりももっとソ連に近い方でもいいんじゃないかという話にもなるわけです。そうなると北海道でもいいし、日本に核持ち込みで有事の場合に。むしろカードに使わなければ、ソ連アジア部にあるものを撤去させるにはその方がベターだあるいはベストだと言われた場合は、もちろんまた断ると言うでしょうが、そういう懸念も国民の中には出ているのです、この問題は既に。そういう口実を、米側なりあるいはサミットという先進国首脳会議の中で非核国日本の宰相がそういうことを言うことは、そういう誤解や懸念を与えるということは否定できないと思うのですね。この点どうお考えなのか。  もう少し聞きますが、それともう一つは、確かにアジアに配備をしているSS20というのは、あれは射程距離はたしか五千キロくらいでしょうから、日本も一応そのターゲットの範囲に入るでしょう。入るのですが、我々が軍事的に見ていろいろソ連なりの言い分を聞いてみると、必ずしも日本だけをターゲットにした配置じゃないですね。これはもう防衛庁長官よりも軍事問題は一番私が知っているという中曽根総理なら、これは否定しないと思うのですね。そういう配備のターゲットは日本ばかりじゃなくして、どこかをねらっている。そういう面からしても、戦略的に見ても、アラスカに新たに配備をせよということは、アジアにあるソ連の百弾頭を撤退させる、撤去させる決定的なカードにはなり得ない、これはどうしても。こういう面も総合的に判断をした上で、私はやはり一国の総理というものは、あるいはまた非核国日本として、被爆国日本としてもっと慎重な態度をとるべきであったというのが、私たちが言わんとするこの問題の重要視をしている理由であり、また根拠なんですが、今指摘をした二点についてはどのような御見解ですか。
  213. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 レイキャビクの幻の合意と言われたものの中で、レーガンさんとゴルバチョフさんが話し合った中身の中で、ソ連側、アメリカ側おのおの自己の領土に置く、そしてソ連側はシベリアに百、アメリカ側は自分の領土ということですからアラスカを含むアメリカの本土、そういうことで百、百という話が出たと私は聞いております。ほかの国の領土に置くというような話は全然出ないのです。それはジュネーブあるいはレイキャビクにおける米ソの軍縮交渉というものはちゃんとそういう定型がありまして、同じカテゴリーのもの同士の削減で話が進められてきておる、これが軍縮のパターンであります。ですから、米ソの軍縮交渉というものはどういう筋で、どういう枠組みで話されているかということをよく御理解願う必要がまずあるのであります。  そういう意味においては、SS20に対してはアフリカのパーシングⅡ及びクルージング・グラウンド・ミサイル、これがおのおのの削減の対象になっているわけです。そういう点から見まして、どこの位置に置くか、どこの領土に置くか、それからどの兵器に対してはどの兵器を対抗として削減するか、これは決まっているわけですから、そういうカテゴリーの中の話としてこれは持っていかなければだめなんだ。日本の場合、我々の場合には、また非核三原則が厳然としてありまして、アメリカのそういうものが来るなんということはもちろん断る、そういう形になっていることは明らかであります。  もう一つ、我々が心配しなければならぬのは、もしそういう場合が、アメリカの百というようなものがないという場合にソ連が百単独で置くことができるような事態がもし万一出てきた場合には、ソ連の否やめさせろ、そういう場合に、日本の千歳の基地をやめるとか三沢の基地をやめるとか、そういう問題が交渉の対象に出てきた場合には、これは全く筋違いな話である。しかし、最近ソ連側の二、三の言動を見ると、そういう紛らわしいような考えがなきにしもあらずです。そういうような点からいたしましても、きちっとそれはレイキャビクあるいはジュネーブの軍縮交渉のパターンを守ってこれはやるべきである。そういうことも頭の中にあって言っているわけであります。
  214. 上原康助

    上原委員 ますます反ソというか、反共のリーダーの最たるものということが、改めて後半の部分でわかったわけです。  それはそうじゃないのですよ。ですから、新たに配備を促すということは、どう考えてもあなたが本気で核軍縮あるいは軍備管理を縮小していく、究極的にはゼロだ、地球規模での、そうおっしゃっても、本音はもうやはり核は抑止力なんだから必要なんだという前提であなたは絶えず核問題というものをお考えになっているということ。  また一方、ソ連のリーダーがそう言うことは紛らわしいとおっしゃいますが、これはその議論をするあれはありませんが、青森の三沢へのF16にしたって、これはソ連にとってはやはり核攻撃能力と見ていますよ。横須賀、そうでしょう。沖縄基地、そうでしょう。佐世保、そうですよ。だから、トータルの面において皆さんはバランス、バランスと言うけれども、ソ連側からするとそういうものもやはりある。韓国にだって現に核は存在している。フィリピンだってそうだ、戦域核はある。したがって、それを新たにアラスカに配備をさせて、それをカードにしょうということは、実質的な核軍拡にしかつながらないということを私たちは改めてここで指摘をしておきたいわけですよ。その点を今のような御答弁でお答えになっても私は納得しがたいですね。  それともう一つ注目すべきことは、あなたは今回だけでなくして、八三年のウィリアムズバーグ・サミットでもINF問題を取り上げて、いわゆる欧州にその年度内に配備をせよということで物議を議したのですね。そういったいきさつから考えても、今回の発言はさっき御答弁なさるような意図じゃないということを私たちは指摘をしておかにゃいかぬと思うのです。  同時に指摘をしておきたいことは、最近は、公式な提案ではございませんけれども、ジュネーブの米ソ軍縮交渉において、交渉の過程でソ連代表が米側代表に、ソ連アジア部に百の核弾頭を残さないで一括全廃をする非公式な口頭提案もして打診をして、こういう面で進んでいるじゃありませんか。あと残されたのは、欧州にあるSRINFをどうするかというところに問題が絞られてきている。  そういうやさきに、新たにアラスカに配備をせよということは、ソ連を刺激をし、結局ジュネーブの核軍縮交渉というものも阻害をする要因になる懸念があるから、私たちはこの問題を指摘しているわけですね。この米ソの核軍縮交渉の見通しと、今私が指摘をしたことについてどうお考えですか。
  215. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 ソ連がシベリアに置くのをやめるということになればこれは結構なことで、私の目的は達せられたということになる。しかし、そういうふうなことにいろいろ今度は話が変化をしてくるというのは、やはりアメリカ側の態度というものがあるから、ソ連の方もやめよう、そういうことも出てくるのであって、もう一つは検証という問題から、百残しておくということになると検証という問題で非常にややこしい問題が実は出てくる。そういうような面もあって、真相はどこが原因でそういうふうなソ連の態度が出てくるかわかりませんが、私は、そういうようないろいろな複雑な要素もあってソ連がやめる場合にはやめるんだろう、そう思うので、ともかくシベリアにソ連が百SS20を置くことを絶対やめさせるために我々としては全力を尽くして考えていきたい、そう思っている。私自体は抑止と均衡理論に基づいて世界的、日本的戦略を考えているということは前から申し上げたとおりである。  それから、日本は非核三原則を厳然と守っておるのであって、先ほど上原さんの話を聞いていると、いかにも日本に核兵器があるようなことを、思わせっぷりなことを言っておられる。甚だ遺憾千万である。御議論を聞いてみると、どっちのサイドに立った御発言なんだろうかと疑問を抱かざるを得ない、そういう感じもして、誤解を受けるおそれがあると私は思うのであります。
  216. 上原康助

    上原委員 どっちの立場にも立っていない、上原康助立場に立っていますよ、それは。日本社会党立場に立っておる。おかしいんじゃないですか。総理がそういう――まあそれはお考えだからいいですがね、そう言われるなら、じゃ私も少し申し上げましょう。  ゼロオプションにするという前提でそういうことを言っている。しかし、核疑惑のことについて皆さんは、非核三原則があるから守られているんだ、事前協議の対象としてあるけれども、事前協議の申し込みがないから核は持ち込まれてない。そんな子供だましのことがあなた通りますかよ。冗談じゃないですよ、幾ら総理大臣でも。それは納得できませんね。  同時に、あなたは絶えず検証とおっしゃいますね。これは確かにレーガン大統領が相互検証しようと言っている。そうおっしゃるなら、じゃ非核三原則が守られているという自信がおありなら、なぜカール・ビンソンやそういう核を積んでいると思われる米艦船の入港について検証しないのですか、実地検証。矛盾するんじゃないですか。そういうことをやらないでおいて、今日のアメリカの第七艦隊にしても、アメリカの軍備配置から、核能力があって核装備をしていないという、こんなばかげたことで軍事問題を見る人がおりますか。あなたがどっちの立場に立ってと言うならそういう反論をいたしましょう。我々は依然として、沖縄やあるいは三沢にしても佐世保にしても横須賀にしても、核は非公式に、非公式というか公然と持ち込まれていると見る。トランシットである。もちろん陸上は、貯蔵されているか、これは検証してみないからわかりませんが、少なくともトランシットにおいては持ち込みは守られていない、否定されていないと思うのですね。いかがですか。
  217. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 その論争は、もう長い間ここで上原さんや皆さんと我々の間に交わされてきた論争でありまして、日本政府立場考えというものは厳然としておりますし、それは実施されていると私は考えております。
  218. 上原康助

    上原委員 これは核が爆発すると大変ですから、そういうことでいつも水かけ論にならざるを得ませんが、いずれまた機会を見てやるとして、しかし、INFの問題についてはきょう総理の意図したところはある程度わかりましたが、国民が非常に不審に思っていることは、被爆国日本、非核国日本の宰相としては、新たな核配備を促すような言動というものはやはり合点がいかない、むしろ撤回すべきだ、こう強い世論があるということ。あなたは永田町の論理では政治はいかぬというわけでしょう。永田町論理でいかないならば、そういうことにも耳をかしたらどうですか。改めて、そういう御発言をしたことに対する責任は全然感じませんか。
  219. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 永田町の論理じゃなくて、世界戦略に通っている筋からの理論である、国際的に通用する理論を申し上げておるのであります。
  220. 上原康助

    上原委員 防衛問題についでもお尋ねしたかったのですが、冒頭申し上げたようになかなか十分そこいらでできませんので、それはまたいずれやるとして、きょうはこれで終えたいと思います。
  221. 砂田重民

    砂田委員長 これにて上原君の質疑は終了いたしました。  次回は、明十四日午前九時より開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時四十二分散会