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1987-08-20 第109回国会 衆議院 本会議 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十二年八月二十日(木曜日)     —————————————  議事日程 第五号   昭和六十二年八月二十日     午後一時開議  第一 国土開発幹線自動車道建設法の一部を改     正する法律案内閣提出)  第二 大豆なたね交付金暫定措置法の一部を改     正する法律案(第百八回国会内閣提出     )  第三 日本電信電話株式会社株式売払収入     の活用による社会資本整備促進に関     する特別措置法案内閣提出)  第四 日本電信電話株式会社株式売払収入     の活用による社会資本整備促進に関     する特別措置法実施のための関係法律     の整備に関する法律案内閣提出)  第五 日本航空株式会社法を廃止する等の法律     案(第百八回国会内閣提出)  第六 国際緊急援助隊派遣に関する法律案     (第百八回国会内閣提出)  第七 学校教育法及び私立学校法の一部を改正     する法律案(第百八回国会内閣提出)     ————————————— ○本日の会議に付した案件  議員請暇の件  日程第一 国土開発幹線自動車道建設法の一部   を改正する法律案内閣提出)  日程第二 大豆なたね交付金暫定措置法の一部   を改正する法律案(第百八回国会内閣提出   )  日程第三 日本電信電話株式会社株式売払   収入活用による社会資本整備促進に関   する特別措置法案内閣提出)  日程第四 日本電信電話株式会社株式売払   収入活用による社会資本整備促進に関   する特別措置法実施のための関係法律の整   備に関する法律案内閣提出)  日程第五 日本航空株式会社法を廃止する等の   法律案(第百八回国会内閣提出)  日程第六 国際緊急援助隊派遣に関する法律   案(第百八回国会内閣提出)  日程第七 学校教育法及び私立学校法の一部を   改正する法律案(第百八回国会内閣提出)  外国為替及び外国貿易管理法の一部を改正する   法律案内閣提出)の趣旨説明及び質疑     午後一時十二分開議
  2. 原健三郎

    議長原健三郎君) これより会議を開きます。      ————◇—————  議員請暇の件
  3. 原健三郎

    議長原健三郎君) 議員請暇の件につきお諮りいたします。  春日一幸君から、八月二十二日から三十日まで九日間、三野優美君から、八月二十四日から三十一日まで八日間、五十嵐広三君及び岡田利春君から、八月二十四日から九月四日まで十二日間、右いずれも海外旅行のため、請暇の申出があります。これを許可するに御異議はございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 原健三郎

    議長原健三郎君) 御異議なしと認めます。よって、いずれも許可するに決しました。      ————◇—————  日程第一 国土開発幹線自動車道建設法の一部を改正する法律案内閣提出
  5. 原健三郎

    議長原健三郎君) 日程第一、国土開発幹線自動車道建設法の一部を改正する法律案議題といたします。  委員長報告を求めます。建設委員長村岡兼造君。     —————————————  国土開発幹線自動車道建設法の一部を改正する法律案及び同報告書     〔本号末尾掲載〕     —————————————     〔村岡兼造君登壇
  6. 村岡兼造

    村岡兼造君 ただいま議題となりました国土開発幹線自動車道建設法の一部を改正する法律案につきまして、建設委員会における審査経過及び結果を御報告申し上げます。  本案は、国土開発の基盤である高速自動車交通網整備を図るため、国土開発幹線自動車道予定路線について、北海道横断自動車道等既定路線を一部延伸するとともに、日本海沿岸東北自動車道等路線を新たに追加することとし、既定予定路線七千六百キロメートルと合わせて一万一千五百二十キロメートルの予定路線を定めようとするものであります。  本案は、去る七月二十四日本委員会に付託され、同二十九日天野建設大臣から提案理由説明を聴取し、同日質疑を終了、昨十九日採決の結果、本案全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決した次第であります。  なお、本案に対しましては、高規格幹線道路網早期整備等五項目の附帯決議が付されました。  以上、御報告申し上げます。(拍手)     —————————————
  7. 原健三郎

    議長原健三郎君) 採決いたします。  本案委員長報告のとおり決するに御異議はございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 原健三郎

    議長原健三郎君) 御異議なしと認めます。よって、本案委員長報告のとおり可決いたしました。      ————◇—————  日程第二 大豆なたね交付金暫定措置法の一   部を改正する法律案(第百八回国会内閣   提出
  9. 原健三郎

    議長原健三郎君) 日程第二、大豆なたね交付金暫定措置法の一部を改正する法律案議題といたします。  委員長報告を求めます。農林水産委員長玉沢徳一郎君。     —————————————  大豆なたね交付金暫定措置法の一部を改正する   法律案及び同報告書     〔本号末尾掲載〕     —————————————     〔玉沢徳一郎登壇
  10. 玉沢徳一郎

    玉沢徳一郎君 ただいま議題となりました大豆なたね交付金暫定措置法の一部を改正する法律案につきまして、農林水産委員会における審査経過及び結果を御報告申し上げます。  本案は、最近における大豆及びなたねの生産をめぐる諸情勢の変化に対処し、大豆なたね交付金について、生産状況等を的確に反映させるとともに、一層の生産性の向上及び品質の改善に資するようその金額の算定に関する規定整備しようとするものであります。  本案は、第百八回国会提出され、本委員会に付託されたものでありますが、同国会においては審査に至らず今国会まで継続となっていたものであります。  今国会におきましては、七月二十八日加藤農林水産大臣から提案理由説明を聴取し、七月二十九日質疑を行い、八月十九日質疑を終局し、同日日本共産党革新共同から反対討論が行われた後、採決いたしました結果、本案賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと決した次第であります。  なお、本案に対し附帯決議が付されました。以上、御報告申し上げます。(拍手)     —————————————
  11. 原健三郎

    議長原健三郎君) 採決いたします。本案委員長報告可決であります。本案委員長報告のとおり決するに賛成諸君起立を求めます。     〔賛成者起立
  12. 原健三郎

    議長原健三郎君) 起立多数。よって、本案委員長報告のとおり可決いたしました。      ————◇—————  日程第三 日本電信電話株式会社株式売払収入活用による社会資本整備促進に関する特別措置法案内閣提出)  日程第四 日本電信電話株式会社株式売払収入活用による社会資本整備促進に関する特別措置法実施のための関係法律整備に関する法律案内閣提出
  13. 原健三郎

  14. 池田行彦

    池田行彦君 ただいま議題となりました二法律案につきまして、大蔵委員会における審査経過及び結果を御報告申し上げます。  両法律案は、建設国債の増発を可能な限り抑制しつつ、現下の経済情勢に緊急に対処するため、日本電信電話株式会社株式の売り払いによって国債整理基金に蓄積された資金の一部を活用して無利子貸付制度を創設し、社会資本整備促進を図ろうとするものであります。  初めに、日本電信電話株式会社株式売払収入活用による社会資本整備促進に関する特別措置法案について申し上げますと、  第一に、国は当分の間、公共事業に要する資金を、別に法律で定めるところにより、地方公共団体等に対し無利子で貸し付けることができることとするほか、特定民活事業に対し、日本開発銀行等を通じて無利子資金を貸し付けることができることとする等の措置を講ずることとしております。  第二に、従来の補助または負担を必要とする公共事業の場合には、この補助または負担については、別に法律で定めるところにより、当該貸付金の償還時において行うこととしております。  第三に、無利子貸し付けの財源に充てるため、国債整理基金特別会計から一般会計を通じて産業投資特別会計資金繰り入れを行うことができることとする等の措置を講ずることとしております。なお、この繰り入れに相当する金額については、後日、産業投資特別会計から一般会計を通じて国債整理基金特別会計へ繰り戻すこととしております。  第四に、以上の国の無利子貸し付け等に関する政府の経理は、産業投資特別会計において、新たに社会資本整備勘定を設けて経理する等の措置を講ずることとしております。  次に、日本電信電話株式会社株式売払収入活用による社会資本整備促進に関する特別措置法実施のための関係法律整備に関する法律案は、ただいま申し上げました特別措置法に定める措置実施するために必要な関係法律整備を図るため、奄美群島振興開発特別措置法等三十九法律及び関係特別会計法法律について所要の規定整備を行うものであります。  以上が二法律案の概要であります。  両法律案につきましては、去る七月二十八日宮澤大蔵大臣から提案理由説明を聴取した後、質疑に入り、八月十九日質疑を終了し、討論を行い、採決いたしましたところ、両法律案はいずれも多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。  なお、両法律案に対し附帯決議が付されましたことを申し添えます。  以上、御報告申し上げます。(拍手)     —————————————
  15. 原健三郎

    議長原健三郎君) 両案を一括して採決いたします。  両案の委員長報告はいずれも可決であります。両案を委員長報告のとおり決するに賛成諸君起立を求めます。     〔賛成者起立
  16. 原健三郎

    議長原健三郎君) 起立多数。よって、両案とも委員長報告のとおり可決いたしました。      ————◇—————  日程第五 日本航空株式会社法を廃止する等の法律案(第百八回国会内閣提出
  17. 原健三郎

    議長原健三郎君) 日程第五、日本航空株式会社法を廃止する等の法律案議題といたします。  委員長報告を求めます。運輸委員長鹿野道彦君。     —————————————  日本航空株式会社法を廃止する等の法律案及び同報告書     〔本号末尾掲載〕     —————————————     〔鹿野道彦登壇
  18. 鹿野道彦

    鹿野道彦君 ただいま議題となりました日本航空株式会社法を廃止する等の法律案につきまして、運輸委員会における審査経過及び結果を御報告申し上げます。  本案は、第百八回国会内閣から提出され、今国会継続されているものであります。  本案は、日本航空株式会社の自主的かつ責任ある経営体制の確立及び航空企業間の競争条件均等化を図るため、日本航空株式会社法を廃止するとともに、これに伴う必要な措置として、航空法の一部を改正して、上場会社またはこれに準ずる会社である定期航空運送事業者について、外国人等がその議決権の三分の一以上を占めることとなるときは、外国人等の取得した株式名義書きかえを拒むことができることとしようとするものであります。  本案は、七月六日本委員会に付託となり、同月二十八日橋本運輸大臣から提案理由説明を聴取した後、同月二十八日、八月十八日及び十九日質疑を行いました。十九日質疑を終了し、討論を行い、採決の結果、本案は多数をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。  なお、本案に対し附帯決議が付せられたことを申し添えます。  以上、御報告申し上げます。(拍手)     —————————————
  19. 原健三郎

    議長原健三郎君) 採決いたします。  本案委員長報告可決であります。本案委員長報告のとおり決するに賛成諸君起立を求めます。     〔賛成者起立
  20. 原健三郎

    議長原健三郎君) 起立多数。よって、本案委員長報告のとおり可決いたしました。      ————◇—————  日程第六 国際緊急援助隊派遣に関する法   律案(第百八回国会内閣提出
  21. 原健三郎

    議長原健三郎君) 日程第六、国際緊急援助隊派遣に関する法律案議題といたします。  委員長報告を求めます。外務委員長山口敏夫君。     —————————————  国際緊急援助隊派遣に関する法律案及び同報告書     〔本号末尾掲載〕     —————————————     〔山口敏夫登壇
  22. 山口敏夫

    山口敏夫君 ただいま議題となりました国際緊急援助隊派遣法案について、外務委員会における審査経過及び結果を御報告申し上げます。  本案は、我が国としてその国力にふさわしい国際的責務を果たすため、海外地域、特に開発途上にある海外地域における大規模な災害に対し、緊急の援助活動を行う人員を国際緊急援助隊として被災国派遣するに当たっての根拠及び手続等必要な措置を定め、もって国際協力推進に寄与することを目的とするものであります。  本案の主な内容は、被災国政府等から国際緊急援助隊派遣要請を受けた外務大臣は、派遣が適当であると認める場合には、関係行政機関の長と協議を行うこと、協議を受けた関係行政機関の長、協議に基づく国家公安委員会の指示または消防庁長官要請を受けた都道府県警察または市町村消防は、その職員国際緊急援助活動を行わせることができること、国際緊急援助隊派遣は、外務大臣の命令に基づき国際協力事業団が行うこと、及び国際緊急援助隊は、救助活動医療活動等を行うことを任務とすること等について規定しております。  本案は、第百八回国会提出され、今国会継続されたものでありまして、七月二十九日倉成外務大臣から提案理由説明を聴取し、昨十九日質疑を行い、引き続き採決を行いました結果、全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。  なお、本案に対し附帯決議が付されましたことを申し添えます。  以上、御報告申し上げます。(拍手)     —————————————
  23. 原健三郎

    議長原健三郎君) 採決いたします。  本案委員長報告のとおり決するに御異議はございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  24. 原健三郎

    議長原健三郎君) 御異議なしと認めます。よって、本案委員長報告のとおり可決いたしました。      ————◇—————  日程第七 学校教育法及び私立学校法の一部を改正する法律案(第百八回国会内閣提出
  25. 原健三郎

    議長原健三郎君) 日程第七、学校教育法及び私立学校法の一部を改正する法律案議題といたします。  委員長報告を求めます。文教委員長愛知和男君。     —————————————  学校教育法及び私立学校法の一部を改正する法律案及び同報告書     〔本号末尾掲載〕     —————————————     〔愛知和男登壇
  26. 愛知和男

    愛知和男君 ただいま議題となりました学校教育法及び私立学校法の一部を改正する法律案につきまして、文教委員会における審査経過及び結果を御報告申し上げます。  本案は、臨時教育審議会の答申を受け、高等教育の改革の推進に資するため、大学に関する基本的事項について調査審議する等の機関として、新たに大学審議会文部省に設置するとともに、私立大学審議会及び大学設置審議会を再編統合し、私立大学等設置認可について総合的に調査審議する等の機関として、大学設置学校法人審議会文部省に設置しようとするものであります。  その主な内容は、  第一に、大学審議会については、文部大臣の諮問に応じ、学校教育法によりその権限とされた事項及び大学に関する基本的事項を調査審議して答申するとともに、必要に応じ文部大臣に勧告することを所掌事務とし、文部大臣内閣の承認を経て任命する二十人以内の委員で組織すること、  第二に、大学設置学校法人審議会については、学校教育法私立学校法及び私立学校振興助成法によりその権限とされた事項を調査審議し答申するとともに、必要に応じ文部大臣に建議することをその所掌事務とし、大学関係者及び学識経験者のうちから文部大臣が任命する六十五人以内の委員で組織すること、また、同審議会大学設置分科会及び学校法人分科会を置くことなどであります。  本案は、第百八回国会提出され、塩川文部大臣より提案理由説明を聴取した後、今国会継続審査となっていたものであります。今国会におきましては、七月二十九日及び昨十九日に質疑を行い、同日、質疑終局動議提出され、賛成多数をもって本動議可決し、次いで、本案に対し、本案施行期日を「公布の日」に改める修正案提出され、採決の結果、本案賛成多数をもって修正議決すべきものと決した次第であります。  なお、本案に対し附帯決議が付されました。  以上、御報告申し上げます。(拍手)     —————————————
  27. 原健三郎

    議長原健三郎君) 採決いたします。  本案委員長報告修正であります。本案委員長報告のとおり決するに賛成諸君起立を求めます。     〔賛成者起立
  28. 原健三郎

    議長原健三郎君) 起立多数。よって、本案委員長報告のとおり決しました。      ————◇—————  外国為替及び外国貿易管理法の一部を改正す   る法律案内閣提出)の趣旨説明
  29. 原健三郎

    議長原健三郎君) この際、内閣提出外国為替及び外国貿易管理法の一部を改正する法律案について、趣旨説明を求めます。通商産業大臣田村元君。     〔国務大臣田村元登壇
  30. 田村元

    国務大臣田村元君) 外国為替及び外国貿易管理法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。  今回の東芝機械外国為替及び外国貿易管理法に違反した不正輸出事件は、我が国を含む西側自由主義陣営安全保障に重大な影響を及ぼすおそれのあるものであり、極めて深刻な問題であります。これにより、我が国国際的信用が著しく損なわれたことは、まことに残念と言うほかありません。  このように、我が国産業及び技術発展並びに国際社会において我が国が担うべき責任の増大等状況のもとで、国際的な平和及び安全の維持を妨げると認められる違法な貨物輸出及び技術提供が、我が国対外取引の正常な発展及び我が国経済の健全な発展を阻害するおそれが強まってきております。  このような状況のもと、我が国といたしましては、今回の事件重大性を深く認識し、このような事件再発防止のため、あらゆる角度から対策を講ずることが必要であります。この一環として、国際的な平和及び安全の維持を妨げると認められる違法な貨物輸出及び技術提供に係る罰則及び制裁の強化等措置を講ずる必要があると考えられます。  このような要請に対応するため、今般、本法律案を提案した次第であります。  次に、この法律案の要旨を御説明申し上げます。  まず、国際的な平和及び安全の維持関連のある特定技術提供等役務取引については、従来から通商産業大臣許可を受けなければならないこととされておりましたが、今般、これを特掲し、その規制趣旨をさらに明確化することとしております。  第二に、通商産業大臣は、許可を受けずに特定技術特定地域において提供する取引を行った者等に対して、三年以内の期間を限り、一定の役務取引貨物輸出等を禁止することができることとしております。  第三に、国際的な平和及び安全の維持関連のある特定貨物輸出について、従来から役務取引に用いられていた表現と同じ表現をもってこれを特掲し、通商産業大臣許可を受けなければならないものとすることにより、その規制趣旨を明確化することとしております。  第四に、通商産業大臣は、許可を受けずにこれらの貨物特定地域に向けて輸出した者に対して、三年以内の期間を限り、貨物輸出及び特定技術提供する取引を禁止することができることとしております。  第五に、この法律施行に必要な限度において、主務官庁職員が立ち入ることができる場所に、この法律の適用を受ける取引を行うことを営業とする者の工場を追加することとしております。  第六に、通商産業大臣は、国際的な平和及び安全の維持関連のある貨物輸出及び技術提供について、特に必要があると認めるときは、外務大臣意見を求めることができることとするとともに、外務大臣は、国際的な平和及び安全の維持のため特に必要があると認めるときは、通商産業大臣意見を述べることができることとしております。  第七に、無許可特定技術特定地域において提供する取引を行った者及び無許可特定貨物特定地域に向けて輸出した者は、五年以下の懲役または二百万円以下もしくは目的物の価格の五倍以下の罰金に処することとして、罰則強化することとしております。また、無許可特定貨物特定地域に向けて輸出する者は、未遂をも罰することとしております。  なお、この罰則強化の結果、時効期間は五年に延長されます。  以上がこの法律案趣旨でございます。(拍手)      ————◇—————  外国為替及び外国貿易管理法の一部を改正する法律案内閣提出)の趣旨説明に対する質疑
  31. 原健三郎

    議長原健三郎君) ただいまの趣旨説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。与謝野馨君。     〔与謝野馨登壇
  32. 与謝野馨

    与謝野馨君 私は、自由民主党を代表いたしまして、ただいま議題となりました外国為替及び外国貿易管理法の一部を改正する法律案につきまして、総理及び通産大臣に質問をするものであります。  今回の東芝機械不正輸出事件は、我が国を含む西側自由主義陣営全体の安全保障に重大な影響を及ぼす極めて深刻な問題であります。これまでに判明したところによりますと、東芝機械は、虚偽の申請により、高性能の工作機械外為法規制を受けないものであるかのように偽り、計画的に不正輸出を行いました。さらに、この問題に注目し、その重大性を最初に認識したのは米国でありました。我が国は、米国の強い警告を受け、本格的に対応策を検討することとなりました。事件の大宗の展開はこのようなものであったと承知しております。  今回の事件を冷静に検討してみますと、このような事態が発生した背景には、我が国企業及び政府我が国が置かれた立場に対する基本的認識が十分でなかったのではないかと考えられます。  このような事件が発生する客観的背景として、今や我が国技術力が国際的に極めて高い水準となっていることが挙げられます。もし我が国技術力がソ連の水準以下であれば、このような事件が発生することはあり得ません。ココムの申し合わせに基づく規制は、昭和二十七年から外為法により実施されてきました。しかし、昭和五十年代前半までは、ココムに関する重大な不正輸出事件はほとんど発生しておりません。昭和五十年代後半に入ってから、社会的にも注目される不正輸出事件が数件発生し、東芝機械事件のような重大な事件が発生しているのであります。このことは、まさに我が国経済の国際的な位置づけが重要になるとともに、我が国技術水準が国際的にも一流のものになってきたことを背景としているのであります。  問題は、我が国の経済が拡大し、技術水準が向上している一方で、我が国企業及び政府が、それに見合った自覚と責任感を十分に有しているかどうかという点であります。我が国は、既に西側自由主義諸国の中で米国に次ぐ経済力と高度技術分野における実績を有しており、西側自由主義諸国におけるかなめとして米国と並ぶ位置にあること、これに伴い相応の役割と責任感を有することについて十分に認識することが必要であります。  これまでの事件の推移を見る限りでは、このような我が国の置かれた立場というものに対する基本的認識、自覚が我が国企業及び政府に欠けていたのではないかと考えられます。このような認識を改めることなく、単に小手先の対応策をとるのでは、今後このような事件の再発を根絶することも困難ではないかと考えますが、総理の御見解を伺います。  また、今回のような事件再発防止のために政府として厳正な態度で臨む必要があることは当然でありますが、他方、単純に外国の各方面の意見を筋論に照らして見きわめることなく、いたずらに迎合し、危機感をあおるかのような姿勢をとったり、安全保障の重要性に乗じて、原則として自由化の方向にある対外取引を必要以上に規制強化することは、長期的に見て適切な判断であるとは言いがたいものであります。  我が国としては、今回の事件を冷静に分析し、効果的な再発防止策を確立するため、改める点は改める一方で、主張すべき点は主張し、どのような対応をとることが必要であるかをみずからの判断により決していくべきものであります。  このような観点に立って、通産大臣は、今後、米国議会の東芝制裁法案の推移に対してどのような姿勢で臨まれるつもりか、また、今回の法改正で、安全保障の名をかり必要以上の規制強化を行っていないか、改正の内容再発防止に有効かつ合理的なものかについてお伺いします。  さらに、同様の事件再発防止のためには、現実に輸出取引に携わる民間企業が、我が国が西側諸国の一員として西側全体の安全保障の確保について責任ある地位にあることを明確に認識し、外為法輸出関連法規を厳正に遵守することについて強い倫理意識を持って取引に当たることがぜひとも必要であると思いますが、この点について通産大臣の御所見をお伺いいたします。  以上であります。(拍手)     〔内閣総理大臣中曽根康弘君登壇
  33. 中曽根康弘

    内閣総理大臣(中曽根康弘君) 与謝野議員にお答えをいたします。  今回の東芝機械不正輸出事件は、我が国を含む西側自由主義陣営全体の安全保障に重大な問題を投げかけており、かつまた、我が国みずからの安全保障についても大きな背信行為をしていると考えており、まことに遺憾な事件でございます。  この事件の再発を防止するためには、三つの方法を今考えております。  第一は、政府内部において機構を整備することと監督を厳重にすることであります。したがいまして、必要な閣僚協議会を設定し、関係各省の高級事務レベルによる協議会、連絡会をこれからは設ける。この中には、防衛庁を初め必要な各省庁を網羅するということでございます。それと同時に、通産省の内部監査体制をさらに強化する。このために、人員の増強そのほかの増強政策を今とりつつあるわけでございます。やはり今までのような書面審査だけでは不徹底でありまして、必要に応じて取引の実態調査までもこれを行い得るようにしておく必要があるのであります。  第二は、産業界の管理体制を産業界みずからやっていただくということでございます。今政府からいろいろ指導いたしまして、産業界みずからも、業界としても個別企業としても自主的な監査体制の強化を図っておりますが、これらを有効に継続的に実施し得るように、さらにこれをきわめていくということを行い、指導を強化してまいりたいと思います。  第三番目は、国際的な協力関係でございまして、これらの共同行為は平和あるいは安全保障強化し、日本にとってはそれがひいては貿易の正常化あるいは国民経済の発展に資する、そういう考えに立って行うものでありますので、各国が協調して行い得るようにさらに連絡を密にし、協議を濃密にして万全を期していく必要があると思います。  これらの三つの点につきまして、政府としては諸般の対策を講じておりまして、再発防止等について万全の措置を講じつつあるところでございます。  残余の答弁は関係大臣がいたします。(拍手)     〔国務大臣田村元登壇
  34. 田村元

    国務大臣田村元君) 米国議会における東芝制裁の動きとしましては、七月二十一日に上院において東芝グループに対する制裁条項を含んだ包括貿易法案が可決されました。そのほか、下院におきましては、包括貿易法案とは別個に、東芝製品の輸入を一年間禁止することを内容とするコーツ法案が提出されるなどの動きがございます。今後は、夏季休会、これは九月の八日まででございますが、この夏季休会明けに開催されます両院協議会における検討を経て、本件の米国における対応ぶりが決まるものと考えております。  我が国といたしましては、東芝機械の対ソ不正輸出のような事件再発防止のための諸措置の実現に全力を挙げて取り組んでおりまして、その軸となる外為法の改正につきお願いをしておるところでございます。  東芝制裁法案につきましては、ココム違反に対する制裁はそれぞれの国がみずからの責任で行うべきでございまして、他国の違反に対して米国独自の制裁を一方的に科すことは問題があるなどの観点から、反対の立場を表明いたしております。また、米国の行政府も東芝制裁法案に反対するとの立場でありまして、外為法改正を含む我が国再発防止策を評価いたしております。  先般の私の訪米等によって理解は深まりつつあるものと考えておりますが、米国議会の対応はなお厳しいものがございまして、今後とも外務省と連携しつつ、米国議会、行政府の理解を深めるよう努力してまいる所存でございます。  次いで、今回の法改正は、東芝機械事件でも明らかなように、ココム関連貨物及び技術に係る違法輸出等影響重大性にかんがみまして、このような事件の再発を防止するために罰則及び行政制裁を強化しようとするものでございます。今回の改正によって規制対象貨物及び技術の範囲を拡大するものではございません。したがって、適法な取引を行っている限りは従来と変わりはなく、原則自由、例外禁止という外為法の基本的考え方を変更するものではありません。  また、今回お願いしております外為法改正は、再発防止策の軸となるものでございまして、審査体制の拡充など輸出管理体制の強化、民間企業の遵法意識の徹底などの対策と相まって、違法輸出事件再発防止に有効に機能するものと考えております。  今回のような不正輸出事件再発防止は、政府の力だけでできるものではございません。産業界みずからが襟を正し、法令遵守意識を徹底していくべきであることは御指摘のとおりであります。  通産省としましては、産業界の自主的な対応を促すため、七月二日と七月七日の二回にわたりまして貿易、産業関係団体の責任者を緊急に呼びまして、各団体において再発防止指針を策定し、傘下企業に徹底するよう指示いたしました。これに対し、現在までに指示した百四十九団体すべてから報告を受けておりまして、輸出関連法規遵守の必要性を産業界に認識させるという点につきましては成果を上げつつあると考えております。  通産省としましては、この基本方針の内容について、必要に応じ指導を行うとともに、その徹底が図られるよう状況を的確に把握していきたいと考えております。また、今後とも、あらゆる機会を通じ、産業界に法令遵守の徹底を訴えかけていきたいと考えております。(拍手)     —————————————
  35. 原健三郎

    議長原健三郎君) 緒方克陽君。     〔緒方克陽君登壇
  36. 緒方克陽

    ○緒方克陽君 私は、日本社会党・護憲共同を代表いたしまして、ただいま議題となりました外国為替及び外国貿易管理法の一部を改正する法律案につきまして、中曽根総理並びに関係大臣に対して質問を行います。  今回政府外為法の改正を行う理由は、東芝機械による外為法違反の不正輸出事件にその原因があります。こうした事件が再び起こらないように、再発防止のための法改正と聞いております。しかしながら、今回の事件は、東芝機械によるうそを記載した申請書によった非該当証明書の取得に原因があるのでありまして、企業の不正行為によって引き起こされた事件であります。したがいまして、問われるべき問題は、企業が二度とこのような法律違反をしないよう企業モラルの確立と、虚偽の申請を見抜けなかった政府の監視体制の見直しであります。政府におかれましても、関係企業に対する厳正な処分や政府部内の体制整備などを含む再発防止策を七月二十二日に講じたところであると聞いております。  法律体系の不備が原因で起こされた事件ではないため、このような一連の法運用の見直し、そして改善によって、不正輸出事件再発防止は万全になったと理解をしております。したがいまして、今回政府が、国際的な平和及び安全の維持を妨げると認められる違法な貨物輸出及び技術提供にかかわる罰則及び制裁の強化目的とした外為法の改正案を提案することについては理解しがたいものがあります。現行の法律で十分対応できるものをなぜ法改正する必要があるのか、理由がわかりません。不正輸出事件再発防止のためになぜ法改正が必要なのか、明確なる答弁を求めるものであります。  次に、ココムの問題について質問を行います。  ココムは、言うまでもなく、条約でもなくまた国際協約でもなく、あくまでも加盟各国間の紳士協定でしかないわけです。しかも、ココムは外交上の秘密とされ、その実態は国民の前には一切明らかにされておりません。ココムリストについても貿易管理令別表でしかうかがい知ることができません。  そもそも、ココムの発足は一九四九年、昭和二十四年であり、外為法の成立も同じ年であります。当時は米ソ冷戦時代でもあり、東西関係が冷え切っており、共産圏諸国の封じ込めが西側諸国の主要課題でありました。こういう時代背景のもとでココムが成立したわけでありますが、その後時代は大きく変わっており、ココム規制については緩和ということで現在に至っています。  そのことは我が国においても同様であり、昭和四十三年、当時の水田大蔵大臣は、衆議院大蔵委員会で、当時の大蔵委員長は田村通産大臣ですからよく御記憶だと思いますが、今後やはりココム規制緩和というような方向に努力していけばいいのじゃないかというふうに考えておりますと答弁しています。このように、政府は過去二十年にわたり緩和の方針を堅持し続けてまいったわけであります。  ココム加盟各国においても、ココム目的である共産圏の軍事力抑制ということから、ココム規制を利用して東側市場へ他国が参入することを抑制し、自国の東側との通商を確保するという、自国の東側市場の拡大に利用するための道具としてココムが使われているのであります。  こうした傾向は特にアメリカに多く見られ、アメリカから出される特例認可申請は毎年ふえているのであります。一九七八年では、千六百八十件の特例の申請のうち、アメリカは一千五十件の申請を出しており、その全部が認可されているわけであります。その年以外で見ても、アメリカが出した特例認可申請は全部認可されているわけであります。  このように、ココムの運営がいかに変容し、各国の恣意的な利害によって運営されているかが十分おわかりだと思います。ココム自体が既に時代の遺物であり、規制緩和の方向は時代の流れであり、ココムは自然死の方向を求めなければならないのではないでしょうか。  総理に答弁を求めますが、アメリカに代表されるココムの恣意的な利用についてどう思われるのか、また、今後ココムをどのような方向で考え、どのような運営をする所存なのか、お答えを願いたい。  三番目の質問は、改正内容の問題であります。  外為法は、その目的にもあるように、外国との取引が自由に行われることを基本とした経済立法であり、その制限は最小限としなければなりません。現行法では、国民経済の健全な発展に必要な範囲でしか制限ができないことになっています。それを今回、国際的な平和及び安全の維持を妨げることとなるものを特定地域輸出するものについては許可制度を導入しております。いわゆる安全保障条項が挿入されているわけであります。また、安全保障許可基準も明確に法文に書き込まれているわけではありません。  経済立法に安全保障の概念を入れること自体、バランスのとれた法律とは言えず、また、安全保障の基準がどこにあるのかもよくわからないという法的な不備を指摘せざるを得ません。自由な通商と安全保障をどのように調整していくのか、また、安全保障の基準とは具体的にどのようなものなのか、明確な答弁を求めます。  次に、対米関係について質問いたします。  外為法強化、改正のねらいの一つとして、アメリカ議会による東芝制裁を初めとした包括通商法案の緩和を考えているということが総理を初め政府関係者の中で表明されているところであります。しかし、この法律改正でそのような保障が得られるかどうかの確証があるわけではありません。何もしないよりはいいのではないかという理屈も確かにあるでしょう。しかし、問題は、アメリカ議会の対日貿易不均衡のいら立ちをこのような小手先の法改正で対処しようとする政府の姿勢にあるのではないでしょうか。  最近のアメリカのハイテク戦略に対して政府の認識がいま一つ明確ではなく、総合的な対応がとれていないのではないかということであります。今回の東芝機械違反事件は、アメリカのハイテク戦略の見地から仕掛けられたものであると認識する必要があるのではないでしょうか。そうであるとすれば、これからもさまざまなカードを思いがけない方向から次々と出され、そのたびごとに右往左往することとなります。日本とアメリカでは余りにも戦略的な落差があり過ぎるのではないかと思えるのであります。日本としての長期的に見た対応を早急に策定する必要があるのではないかと考えますが、総理並びに通産大臣の答弁を求めます。  最後に、今回の事件が起きてきた背景についてであります。  我が国には武器輸出三原則並びに政府統一見解があり、戦後一貫して武器輸出を禁止し、国際平和の維持に貢献してきたところであります。汎用の取り扱いについては、過去、国会においても大きな議論となっており、検討課題であると理解をしております。しかし、中曽根内閣が発足してから、対米軍事技術供与を突破口として武器輸出三原則に穴があき、また同時に防衛費の飛躍的な伸びがあり、防衛産業の大きな期待がかかっていることは事実であります。こうしたことから軍事物資に対する緩みが企業の側にあったことは否定できないことだと思います。  つまり、中曽根内閣の発足と同時に始まった軍事大国への道が、結果として今回の事件を引き起こす環境をつくり出したのではないかということであります。総理のお考えをお聞きいたします。  以上をもちまして質問を終わらせていただきますが、この際、この法案の審議については、拙速主義を慎み、問題点を余すところなく出し尽くして、慎重な審議を行うべきであるということを表明いたしまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)     〔内閣総理大臣中曽根康弘君登壇
  37. 中曽根康弘

    内閣総理大臣(中曽根康弘君) 緒方議員にお答えをいたします。  まず、法律改正の必要性でございますが、今回の事件は、東芝機械が法令に違反して虚偽申請を行って不正輸出が行われたということで、それを見抜けなかったということが一つの原因です。そういう意味において、政府の管理体制に万全を期するということ、企業側におけるそのような自覚あるいは自粛体制を強化してもらうということ、こういう点に重点を置きまして政策を進めておるところでございます。外為法の改正はその軸となるものであると考えております。  次に、ココム規制の方向でございますが、これは緩和の方向に向かうべきではないかという御質問でございますけれども、最近における高度の技術進歩という面を考えてみますと、安全保障の面にかかわる部分が非常に微妙に、かつ高度化してふえてきております。特に日本は世界でも最も大きな技術貿易大国であり、高度の技術と膨大な貿易量を持っておる国でございます。最近の情勢を見ますと、仕向け地が、その当該国でなくして、最初は第三国に向けて設定されるというケースもあるようであります。そういうような面からいたしましても、やはりこの状況に合うように諸般の体制を整えるということは大事な点でございまして、そのような、今の状況に合ったような措置を我々は適切に進めていくべきであると考えておるのであります。  次に、ココムの恣意的利用という点についての御質問でございますが、西側あるいは我が国自体の安全保障を全うしていくためには、戦略的物資が不法に輸出されて、その結果我が国及び自由世界全体の安全保障が損なわれるということは、我々のとるところではございませんし、国益を害するところでございます。しかし、その場合に各国がばらばらの基準で勝手にやっておったのでは、有効な効果を上げることはできません。したがって、各国が一定の基準を設けまして、各国が協議しながら実施する、その意味においてココムというものが設けられ、我が国はこれに参加しておるところであります。  したがって、ココムの本質というものは今日においても変質はしておりません。また、これをある国が東側の市場を確保するために利用しているという点も当たっておりません。我々は今のような観点に立ちまして、我が国といたしましては外為法第一条における立法目的に沿うように、今もこの法改正を行っておるところでございます。  このココムへの政府の対応でございますが、やはり一面においては、平和共存あるいは東西の交流、緊張緩和という政策は強力に進めていく必要がございます。しかし、また一面においては、自由主義世界や我が国安全保障の面も我々は確保していかなければならないのであります。そういう意味から、その分野分野におきましてそれぞれの配慮をもってしかるべき対策を行うことが国家としてとるべき対策なのでありまして、今回の措置もそういう意味の対策であるとお考え願いたいのであります。  自由貿易主義と安全保障政策との調和という問題も、そういう観点からお考え願いたい。今回の改正によりまして自由貿易の原則及び原則自由、例外禁止という外為法の基本的考え方を変更するものではないのであります。また、今回の改正により許可の対象となるものの範囲は従来と同様であり、改正後の外為法の運用に当たりましても、法第一条に規定されている対外取引の正常な発展及び我が国経済の健全な発展を図るという目的に照らして適正妥当な対策を講じていく、こういうことなのであります。  安保条項の問題でございますが、許可に当たっては、政令により規制対象とされた貨物または技術の特性、その技術水準等に着目しまして、当該取引が国際的な平和及び安全の確保のために妨げとなり、我が国対外取引の正常な発展及び経済の健全な発展に支障を来すかどうかという点から審査が行われるものでございます。  アメリカのハイテク戦略の御指摘がございましたが、今回の事件が日本のハイテク産業をねらい撃ちして行われたということは全くございません。むしろ相互間の安全保障の面及び国際貿易の関係から見てそれが行われておるものであります。特に我が国の場合には、明白に虚偽の申請のもとに法に違反した不正な輸出が行われておるのでありまして、我々はこれらを深刻に受けとめておるのでございます。  今回の事件の原因につきまして、中曽根内閣の政策がこういうことを起こしたのではないかという御質問でございますが、これは全く関係がございません。一企業が今のような不正な意図を持って虚偽の申告を行って、シェア拡大のためにやった行為でありまして、厳重にこれらは批判され、監督さるべき問題であると考えております。  残余の答弁は関係大臣がいたします。(拍手)     〔国務大臣田村元登壇
  38. 田村元

    国務大臣田村元君) 通産省といたしましては、去る七月の私の訪米時を初めとする種々の要人との会談の状況などから考えまして、米国側は、今回の東芝機械事件を奇貨として日本のハイテク産業をねらい撃ちしたということではなくて、西側全体の安全保障について大きな影響を生じかねない重大問題であるとの危惧のもとに対応しているものと考えております。  今回の事件につきましては、我が国として調査を行いました結果、本来輸出承認を要するプロペラ加工を行い得る高度な工作機械につきまして、企業の虚偽申請によって外為法に違反する不正な輸出が行われたことが判明したものでございまして、我が国みずからの問題として受けとめるべきであると考えております。政府としましては、このような重大な事件が再度発生しないように、再発防止に万全を期する所存でございます。(拍手)     —————————————
  39. 原健三郎

    議長原健三郎君) 薮仲義彦君。     〔議長退席、副議長着席〕     〔薮仲義彦君登壇
  40. 薮仲義彦

    ○薮仲義彦君 私は、公明党・国民会議を代表して、ただいま議題となりました外国為替及び外国貿易管理法の一部を改正する法律案について、総理並びに関係大臣に質問するものであります。  総理、あなたは、去る八月六日、広島被爆四十二年平和記念式典に出席され、多くの今は亡き方々に献花をなさいました。そして今、八月十五日、終戦の日を迎えられました。総理、総理の胸に去来するさまざまな思いがあることと思います。国民もまた、めぐり来た四十二回目の終戦の日を迎えました。国民は、その戦争の悲惨さ、残酷さを胸に刻み、再び戦争など断じて起こしてはならないとかたく決意したことでありましょう。そして、余りに大きく悲しい代償の中に得た平和の重み、平和の大切さ、そして平和のぬくもりを改めてかみしめた日でもあったと思うのであります。さらに、国民は、日本が平和の中にしか存在し得ないこと、そしてそのことがいかに大切であるかを再確認した日でもあったと思います。  総理、改めて申すまでもなく、我が国が世界で初めての、しかも唯一の被爆国家として、国際社会の中で核廃絶に、そして世界平和へと大きな役割と責任を果たさなければならないことは言うまでもありません。私は、この思いの中で、ただいま上程された外為法改正につき、総理並びに関係閣僚に質問するものであります。  我が党は、基本的に、対外貿易は自由であり、その原則は堅持されなければならないと考えております。本来自由な経済活動の中で我が国が世界に対し何をなすべきか。それは申すまでもなく、すぐれた技術と優秀な製品をもって世界経済の発展に寄与すべきことが大切であると考えます。この本来自由であるべき対外貿易に、安全保障という国防上の概念が今回さらに強化されるということについてであります。  我が党としては、世界貿易が建前どおり自由に行われているものではなくしかも国の安全保障が確保されずに貿易の自由が存在するものではないことも十分承知いたしております。しかし、貿易という経済活動に安全保障という観点からの政治の介入が強化された場合、それはひとり貿易にとどまらず、国の経済活動や社会の体制にまで影響し、すべてが国の安全保障という政治力に支配される事態にならないかとの懸念を持つものであります。  すなわち、我が国の経済の発展、特にその基礎となる自由な研究や新しい技術の開発、また、これからの世界経済の中で最も大切な最先端技術であるエレクトロニクスやバイオテクノロジー、新素材の開発等の阻害要因になることはないかとの懸念を持たざるを得ません。  なぜかならば、現代のすべての高度な産業技術や機械製品を汎用、軍事用に区別することは、今やほとんど不可能に近いと言わざるを得ないからであります。そこへ防衛というイデオロギーが持ち込まれれば、すべてのすぐれた工業技術や機械製品が軍事用とみなされる事態にならないかとの危惧であります。したがって、外為法の中で国の安全保障という概念が強調された場合、日本の全産業に国防優先のゆゆしき支配体制が出現しかねず、一歩踏み誤れば日本の将来に重大な禍根を残すことになるのではないかとの懸念を持つものであります。  特に、我が党としては、中曽根内閣になってからの五年、日本が唯一の被爆国であるとの立場から、世界平和の旗手として、世界に誇れる平和国家として行動してきたかどうか、疑念を持たざるを得ません。それは、東西の緊張緩和に確かな足取りを示したでありましょうか。また、特に、最も近い国々、お隣の中国を初めアジアの国々に対し、平和への確かな安心感を与えてきたでありましょうか。断じてノーと言わざるを得ないのであります。  なぜかならば、中曽根内閣になってからの日本を中心とする東西関係はどうであったでありましょうか。あるときは三海峡封鎖、あるときは日本列島不沈空母論、そして防衛費の一%突破、さらにはSDI参加へと、危険な、もと来た道へと歩みを進めているのではないかとの危惧をぬぐい去ることができないのであります。  そこで、質問の第一は、日本国憲法の前文とココム規制についての見解であります。  日本国憲法は、その前文において、基本原理として、国民主権、基本的人権の尊重及び平和原則を宣言しております。とりわけ平和原則が明示され強調されているのは、総理が十分御承知のことであります。  前文冒頭は「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたって自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によって再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。」とあります。このことは、すなわち、現在はもとより将来の世代に至るまで、政府の行為によって戦争の惨禍を再び起こさない決意、さらに決して戦争の被害者にも加害者にもならないことを確認し、恒久平和を念願し、いかなる国をも仮想敵国視することなく、相互を信頼し、平和主義に基づく国際協調の精神を明らかにしております。  この憲法の精神に立脚するならば、ココム規制強化をすることは、憲法の平和主義、国際協調の精神に反することにならないか、総理の見解を求めるものであります。  また、今日東西関係が再び緊張緩和の方向をたどろうとしているとき、我が国がそれに背を向けるような施策を国としてとることが日本の平和と安全の維持に役立つと考える理由を明確にしていただきたい。我が党としては、ココムの体制の強化ではなく、東西交流を通じた緊張の緩和と平和の維持へと努力することが国のとるべき道であると考えますが、あわせ総理の見解を求めるものであります。  質問の第二は、このたびの外為法改正案によれば、二十五条及び四十八条において「国際的な平和及び安全の維持」という表現で、ココム規制地域とその他の地域を区分した法案の立て方になっております。  ここで通産大臣にお伺いしたいのは、いわゆる「国際的な平和及び安全の維持」とは具体的に何を意味するのか、また「国際的な平和及び安全の維持を妨げること」を政令で定めるとしておりますが、その判断はだれが行い、また具体的にはどのような基準で行うのか、明確な答弁を求めます。  また、総理は、今回の東芝機械事件に関し、今回の事件はひとり自由世界の安全保障のみならず、我が国の安全にも重大な危険性をもたらす背信行為であるとの表現での発言がありますが、我が国は防衛政策の基本として仮想敵国を持たないことを明らかにしております。しかるに、いかなる国のいかなる危険を脅威とするのか、この点明確な答弁を求めるものであります。  第三は、外為法は本来経済法であり、しかもその第一条で明確に対外取引の自由を定義しております。しかるに、その経済法に安全保障という異質の、しかも本来自由であるべき貿易に逆に働くであろう安全保障の概念を持ち込んだことは、明らかに立法上矛盾ありと思いますが、見解を求めます。  また、運用上、もしその運用を誤れば重大な事態を引き起こしかねない点についてであります。それは、運用に際し、安全保障が強調された場合、日本の全産業が防衛という立場からコントロールされる危険性があるのではないかという危惧についてであります。もしその危険なしとするならば、その歯どめについて。また、産業界のみならず、自由な学術研究や基礎研究の分野にも及ぼすことがないのかとの懸念に対しても、あわせて通産大臣に明確な答弁を求めるものであります。  第四に、防衛庁及び外務省の関与についてであります。  初めに、防衛庁が今後どのようにココムに関与するのか伺いたい。また、ココムに関する関係閣僚会議の設置が検討されましたが、この会議目的並びに構成メンバー、さらには協議されるべき内容、開催の時期について明確にされたい。  次に、外務省は、いかなる事態のとき、どのような意見を述べるのか、また、その意見の及ぶ範囲を具体的に説明されたい。  第五に、東西の緊張緩和及び世界平和の観点からするならば、総理は、将来ココムをどのようにすべきものと考えておられるか伺いたい。すなわち、強化拡大が、それとも縮小削減を期待するのか、明確にお答えいただきたい。  もし強化を望まれるのであれば、なぜ強化することにより世界平和が前進し、しかも我が国の平和と安全の維持に役立つのか、明快な答弁を求めます。また、縮小を期待するのであれば、今後どのようにココムに対し働きかけるのか、決意を伺いたい。  第六に、今回の東芝機械事件を通じてのアメリカ議会の対応について総理の見解を求めます。  その第一は、本来ココム規制は国際条約ではなく紳士協定であり、違反については、あくまでそれぞれの国がそれぞれの国の国内法で処理すべきものであります。今回のアメリカ議会の対応は、かえって日米友好関係に亀裂を生ずるのではないかとの深刻な危惧がありますが、総理の見解を求めます。  また、第二には、アメリカの世界における軍事及び先端産業におけるヘゲモニーの確保のためのいら立ちとの批判もあるようですが、総理はいかがお考えか、お伺いいたします。  第七に、今日の我が国と中国との友好関係を維持発展させることの重要性の立場から、外為法改正により日中関係に悪影響があってはならないと考えますが、今後の中国との貿易の発展向上にはどのように取り組もうとするのか、総理の見解をお伺いいたします。  第八に、政府はSDIの研究参加を決定しましたが、このことは、昭和四十四年五月九日の、宇宙の開発利用は平和目的に限るとした国会決議の無視に当たるのではないか。また、新しい技術の使用権、機密保持などは、今回のココム強化と同列で、我が国の先端技術へのアメリカの介入及び軍事機密の名のもとでの防衛庁の産業活動への介入にならないかとの懸念にどう答えられるのか、明快な答弁を求めます。  最後に、今回の東芝機械の問題をめぐって国家秘密法制定に対しての動きがあるように思いますが、総理の国家秘密法に対する見解、並びに今国会提出の考えがあるのかどうか答弁を求め、私の質問を終わります。(拍手)     〔内閣総理大臣中曽根康弘君登壇
  41. 中曽根康弘

    内閣総理大臣(中曽根康弘君) 薮仲議員にお答えをいたします。  憲法、平和主義とココム規制の問題でございますが、もちろん憲法に違反するものではございません。平和や安全保障というものは抽象的、観念的に維持されるものではなくして、具体的な、現実的な政策によって保障されるものであります。そういう意味において我が国は自衛隊を持ち、日米安全保障条約等を持ちまして、現実的に安全が保障されておるわけであります。ココム規制我が国のこれに対する対応も、同じように、戦略物資等が共産圏に無制限に流出するという場合には、我が国安全保障はもとより西側全体の安全保障も危うくなる、そういうふうに現代社会は変化してきておるのであります。  そのような事態に対応するように、各国がばらばらにやるよりも、共同してやる方が効率的であり、かつまた我々の目的を達することができる、安全保障を確保することができる、そういうような考えに立ちましてこのココムの紳士協定というものはできており、各国はそれを尊重しつつ、国内法の範囲内においておのおのが自主的にやっておるわけなのでございまして、この点は憲法に違反するものでもないし、あるいは貿易自由の原則に違反するものでももとよりないのであります。  我が国がとるべき道といたしましては、やはり平和、安全のための国際協力強化し、そのために東西間の緊張緩和を行い、平和共存の実を上げるということが基本政策であります。それと同時に、自国の安全保障を確保するという点からも、このようなココムの協定にも参加いたしまして、各国との協力のもとに、我が国の自主的な管理体制を強化することによって我が国安全保障も確保し、貿易の自由も確保していきたい、そのように考えておるところなのであります。  この貿易自由の原則と安全保障の原則というものの調和点が大切でございますが、これはいずれも外為法第一条の精神を基本にしつつ、現実的に、具体的に考えていくべきものである、このように考えております。日米友好はこれによってますます促進されるものであると考えております。  次に、防衛庁の関与の問題でございますが、我が国政府としては、今回の不祥事件を踏まえ、ココムについてより積極的に取り組むという考えを持っております。防衛庁についても、今後ココム関係業務に対しては、防衛庁の所掌事務の範囲内で適切に関与すべきものであると考えております。閣僚会議とかあるいは高級事務レベルの連絡協議等については、やはり防衛庁の発言も我々は確保しておかなければならぬと考えております。  この閣僚会議につきましては現在検討中でありまして、協議内容や開催時期等の具体的内容についてはまだ申し上げる段階ではありませんが、構成メンバーについては、現在のところ、法務大臣、外務大臣、大蔵大臣、通商産業大臣内閣官房長官、国家公安委員会委員長、防衛庁長官などを一応念頭に置いておる次第であります。  次に、ココムに対する今後の対応でございますが、必要になってきたものはこれを追加して漏れなくしていくと同時に、必要でなくなったものについては規制を解除していく、そのような弾力的な措置が必要であり、常時見直しを行い、各国とも協調して継続的に検討していくということが大事であると考えております。  次に、米国の対応に対する見解でございますが、米国におきましては、現在包括的貿易法案を審議中であり、この問題が保護主義への傾斜を高める議会に対する効果を持っておることは言うまでもございません。しかし、我々は、みずからなすべきことをなす、そういう意味において今回の立法等も行っておるのでありまして、アメリカの貿易法案をにらみつつ、それのみをもってこのようなことをやっておるものではないのであります。我々としてはやるべきことはやる、しかし、その結果によって我々はアメリカに対して言うべきことは言う、そういう態度をもって今後ともやりたいと思っております。  日中関係につきましては、日中貿易は一九七二年の国交正常化以来着実な発展を遂げまして、昨年の貿易量は、国交正常化当時の十四倍である百五十五億ドルの水準にも到達いたしました。政府としては、今後とも日中経済関係の順調な発展を期するという立場は不変であります。今回の外為法の改正は、我が国輸出管理体制の強化趣旨とするものでありまして、我が国の中国に対する立場はいささかも変わるものではない、このように考えております。  SDIと国会決議との関係でございますが、この席上において何回も御説明申し上げましたように、国会決議の有権的解釈は国会がみずから行うものであります。しかし、我が国における国会決議を見ましても、宇宙開発等については我が国における開発及び利用を対象としたものでありまして、他国の開発及び利用に対する我が国の関与は、我が国みずからが行う開発及び利用とは同列に論ぜられないものである、これは前から申し上げていることであります。SDIの研究計画への参加は、あくまでも米国が今行っている研究計画に対する参加でありまして、このような計画の個々の具体的プロジェクトの特定の局面への参加というふうにお考え願いたいと思います。  次に、前から申し上げておりますように、SDI研究計画は、非核の防御手段によって弾道弾を無力化して、究極的に核をなくそうという目的のために行われておるのでありまして、この研究計画への参加は我が国の平和国家としての立場に合致するものである、こう考えておるものであります。  次に、SDIと先端技術の問題でございますが、我が国の企業がSDI研究に参加した結果生み出した情報について具体的にいかなる権利が与えられるかは、個々の契約において定められることとなりますが、最低限使用権が与えられることは米国との間で確認いたしております。いずれもこれらは契約において規定さるべきことです。  SDI研究の成果として生み出された情報は、そのすべてが秘密情報に指定されるわけではありません。また、米国政府からあらかじめ参加企業等に示される基準に従って機密情報の指定がなされておるので、生み出された情報が研究実施者の知らないところで秘密指定されるということはないと承知しております。なお、参加企業等がSDI研究契約締結前から有していた情報は、秘密指定の対象とならないことは言うまでもありません。いずれにせよ、参加するか否かは、参加を希望する企業等の自主的判断に任せられるものであります。  防衛庁の産業への介入の問題でございますが、我が国の企業のSDI研究参加に伴う秘密の情報の保護については、現行の我が国国内法及び日米間の取り決めの枠組みの範囲内で、通産省と参加企業との契約関係により、当該企業に対し適切な秘密保護措置を講ずることを義務づけることとしておりまして、御指摘の点は当たっておらぬと考えます。  国家秘密保護法、いわゆるスパイ防止法案については、自民党におきまして、この種の立法は必要であるとの見地から現在いろいろ検討されております。しかし、この種立法については、国民の基本的人権やいわゆる知る権利などの問題もありまして、国民の十分な御理解が得られることが望ましい、そういう観点から慎重に検討しておる次第でございます。  残余の答弁は関係大臣がいたします。(拍手)     〔国務大臣倉成正君登壇
  42. 倉成正

    国務大臣(倉成正君) 薮仲議員の御質問にお答えを申し上げたいと思います。  御質問は、外務省の外為法改正案についての立場についてのお尋ねでございましたけれども、今回の改正案は、「外務大臣は、国際的な平和及び安全の維持のため特に必要があると認めるときは、第二十五条第一項の規定の運用に関し、通商産業大臣意見を述べることができる。」旨規定いたしているものでございます。  本条項に基づき外務大臣意見を述べることのできる範囲は、改正後の外為法第二十五条第一項等の規定の運用方針、許可準則等の制定といった一般的な枠組みに関する事項にとどまらず、これらの規定に基づく個別の輸出案件の審査許可、承認の付与に関する事項を含むものでございます。したがって、外務大臣は、諸外国から得た情報等に基づき、国際の平和と安全の維持の見地から、個別の案件の許可を含む輸出管理の運用につき意見を述べることになります。  もとより、外務大臣がこのようにして述べた意見は尊重されることとなっておる次第でございます。  以上でございます。(拍手)     〔国務大臣田村元登壇
  43. 田村元

    国務大臣田村元君) 「国際的な平和及び安全の維持」とは、国際的な紛争の発生もしくはその拡大を助長するような取引または西側諸国の安全保障に重大な影響をもたらす取引などを規制することによりまして、我が国を含む国際社会の平和及び安全が脅威にさらされることがないようにすることを意味していると考えております。  国際的な平和及び安全を妨げるものと認められる貨物輸出及び技術提供の具体的範囲は政令で定めることとしております。政令の制定に当たりましては、我が国を含む国際社会の平和及び安全を脅かし、我が国対外取引の正常な発展及び我が国経済の健全な発展に重大な支障を及ぼすと考えられるものに限定することとしておりまして、具体的には、個別に貨物及び技術の特性等を判断して決定することとしております。なお、政令は閣議決定事項でございますから、内閣の責任において作成されるものであります。  今回の外為法改正は、新たに国際的な平和及び安全に係る規制を導入するものではなくして、従来から規制を行っていたこれらの取引に係る違反について罰則及び行政制裁を強化することを主たる内容とするものでございまして、対外取引の原則自由、例外禁止という外為法の基本的考え方を変更するものではございません。  国際的な平和及び安全の維持を妨げる取引を何らの規制もなく放置することは、我が国を含む国際社会の平和及び安全を脅かし、ひいては我が国対外取引の正常な発展及び我が国経済の健全な発展を阻害することとなります。したがいまして、我が国対外取引の正常な発展を期し、もって我が国経済の健全な発展を図ることを目的とする外為法におきまして、このような取引規制強化することは、立法上矛盾があるものではないと考えております。  外為法の運用は、同法第一条に定められました「対外取引に対し必要最小限の管理又は調整を行うことにより、対外取引の正常な発展を期し、もって我が国経済の健全な発展に寄与すること」という同法の目的にのっとってなされるべきことはもとより当然のことでございます。したがって、今回の法改正によりまして、国際的な平和及び安全の維持に係る規制の運用が、御指摘のような過剰な規制に至ることはないものと考えております。また、今回の改正は、戦略物資、技術に係る輸出等規制につきまして、罰則及び行政制裁を強化しようとするものでございまして、今回の改正を機に、規制対象貨物及び技術の範囲を拡大するものではございません。  今回の改正は、ココム関連貨物特定貨物の設計、製造または使用に係る技術についての規制に関しまして、罰則及び行政制裁の強化を図るものでございまして、何ら規制範囲を従前に比べて拡大するものではございません。純粋な学問的研究、国内の公開の学会、シンポジウム等で発表されました技術は、従前どおり規制の対象とはなっておりません。したがって、今回の改正が、自由な学術研究や基礎研究を広範に規制するといったことにはならないものと考えております。(拍手)     —————————————
  44. 多賀谷真稔

    ○副議長(多賀谷真稔君) 神田厚君。     〔神田厚君登壇
  45. 神田厚

    ○神田厚君 私は、民社党・民主連合を代表し、ただいま議題となりました外国為替及び外国貿易管理法の一部を改正する法律案について、中曽根総理並びに関係大臣に質問をいたすものであります。  我が国最大手の機械メーカー東芝機械による不正輸出事件が、今や日米関係を根底から揺るがしかねない重大な政治問題に発展したことは、まことに憂慮にたえません。半導体や市場開放問題などによって戦後最悪と言われるまでに日米間の貿易摩擦が激化し、その解決のために官民挙げて必死の取り組みを進めている最中でのこのような事件の発生は、これまでの努力をすべて水泡に帰するに等しく、関係企業と監督官庁である通産省の責任は極めて重大と言わざるを得ないのであります。  東芝機械の親会社である東芝の会長、社長が辞任し、田村通産大臣が謝罪のために訪米したにもかかわらず、米国、とりわけ議会の対日批判は一向に静まる気配がないのであります。七月二十一日にアメリカ上院で可決された包括貿易法案は、東芝などココム規制違反企業からの製品輸入を二年から五年間禁止し、損害賠償をも要求するといった制裁条項が盛り込まれるなど、かつてない厳しい内容となったことは、まことに遺憾であります。  こうした米国議会の激しい怒りは、東芝機械不正輸出は、西側自由陣営の約束を破り、西側全体の安全を脅かした裏切り行為だという認識に基づいており、安全保障問題に対する日本の認識の甘さに米国の対日不信が一気に爆発したものであります。まさにここに東芝機械ココム違反事件の本質があるのであります。これを見失うことなく適切に事後の対策を講ずることが、今や言うまでもなく最も重要な課題となっているのであります。  その本質とは、第二次世界大戦後の国際関係が米国とソ連の厳しい対峙と微妙なバランスの上に成り立っており、その中で日本は、日米安保条約によって安全が保障され、戦後驚異的な経済発展をなし遂げることができたという厳然たる事実があるのであります。この事実を深く認識することなく、我が国の企業が西側自由陣営の約束を破り、西側全体の安全を脅かすおそれのある戦略物資を不正な手段を使ってソ連に輸出したことに対し、まさに裏切り行為だとして米国が憤慨するのも当然であります。  厳しくなる一方の日米経済摩擦について、最近では、悪いのは米国である、あるいはこのたびの東芝事件は日本たたきの一環であるといった議論がなされておりますが、今やこうした短絡した議論を繰り返していることは許されないのであります。日米貿易の不均衡は、言うまでもなく日米両国の責任であり、その改善のためには、まさに日米両国が努力すべきものであります。特に我が国においては、本事件を教訓として再発の防止に努めるとともに、西側自由陣営の一員としての国際的責任を十分に果たしていくことが、問題解決の最大かつ最良の手段であると考えるのであります。  私は、以上の認識に立った上で、政府の今後の対応について見解をお尋ねするものであります。  まず第一に、総理にお尋ねいたします。  本件がこうした事態に至った背景の一つは、戦略物資の輸出規制問題に対する政府の認識の甘さにあり、この点についての政府の責任は極めて重大であります。東芝機械の親会社である東芝の会長、社長が責任をとって辞任をいたしました。この辞任が、日本的な腹切りであり、欧米人には理解されず、かえって東芝が罪を認めたものとして逆の結果を生むとの意見もあります。霞が関に頼っていたのでは企業の防衛はできないという政府・通産省に対する怨嗟の声が、日に日に大きくなっているのであります。日米関係全体に与えた影響の大きさにかんがみ、企業にのみその責任があるとは到底言えないのであります。政府としての責任のあり方について、まず総理の御所見をお伺いいたします。  第二に、安全保障と自由貿易との関係について総理に質問いたします。  この種の事件の再発を防止するためには、国民全体に安全保障なくして自由貿易の維持発展はあり得ないという認識が深まっていくことが必要不可欠であると考えます。したがって、政府はその責任において、安全保障と自由貿易とのバランスをいかにとるか、自由貿易を守るための安全保障はいかにあるべきかを明確に国民に示すべきであります。しかるに、今回の改正においては、外為法の中にいわゆる安全保障条項が明記されたのみであり、国民全体がこの問題を深く認識するには甚だ不十分であります。今後安全保障と自由貿易とのバランスを適切に保っていくため、どのような対策を講じていこうとお考えか、お伺いをいたします。  あわせて、今回の事件の発端がKGBからの働きかけであり、この事件の当事者でもある元和光交易モスクワ事務所長の熊谷独氏は、雑誌文芸春秋に手記を寄せて、ココム規制、貿易管理令をすり抜けて戦略物資をソ連などコメコン諸国に輸出する、ソ連貿易業界で使われている典型的な手口を八つのパターンで分類、紹介し、今回の事件などはまさに氷山の一角にすぎないと断定しているのであります。折しも国内においては、横田基地スパイ事件、航空関係資料のKGBへの横流し事件などが摘発されております。現行の外為法及び貿管令のみの対応で十分と考えておられるのかどうか、お考えをお聞かせいただきたいのであります。  第三に、通産大臣に具体的な再発防止策についてお伺いいたします。  政府は、再発防止策として、外為法の改正を初め、審査体制の強化拡充、産業界に対する再発防止策の指示等を検討しております。しかし、その実効性については甚だ疑問であり、実際に禁輸品の不正輸出を完全に防止することはできないのではないかとする指摘があるのであります。この種事件再発防止には、審査、検査の現場でのチェック能力を質量ともに充実させ、迅速な処理が可能となるよう改善措置を講ずることが不可欠であります。こうした課題を解決するには、通産省だけの審査体制の強化では限界があります。外務省との協議云々が議論となりましたが、実際的にはむしろ税関との協力体制を整備することも必要と考えますが、この点も含め御所見をお伺いします。  第四に、問題になっております米国の包括通商法案に盛り込まれた東芝制裁条項への対応についてお伺いをいたします。  もしこの条項が発動されれば、下請を含め約一万八千人の従業員が、直接的責任がないにもかかわらず深刻な影響を受けることになります。さらに、東芝は十八日までに、グループ全体としてココム違反の再発を防ぐことを目的とした法令遵守計画の概要をまとめたと伝えられております。まさに真剣な努力に敬意を表するものでありますが、今後この種の問題に通産省はどのように対処、指導していくおつもりなのかお伺いするとともに、行政の遅滞を感ぜざるを得ないのであります。  また、米国政府としては東芝制裁条項が削除されることを強く望んでいると言われておりますが、私どもも、こうした米国政府の姿勢を評価するとともに、この方針を断固貫くよう期待するものであります。日米関係を極めて危険なものにしかねないこの制裁条項を回避するため、政府はあらゆる努力を惜しむべきではありません。特に外務大臣の積極的な答弁を期待いたします。  最後に、日本バッシングの続く中で、外務省の対応にも問題が指摘をされております。例えば、なぜ東芝機械と東芝が同一会社でないとの納得した明快な説明ができなかったのか、なぜアメリカ国会議員が国会前庭において東芝製品をハンマーで打ち壊したのに対し厳重抗議をしなかったのか、毅然とした外交を展開すべきであります。あえて外務省に苦言を呈するものであります。  以上、政府の御見解をお伺いするとともに、今後再びこの種の事件が発生することのないよう万全の措置を講ずることを強く要請いたし、私の質問を終わります。(拍手)     〔内閣総理大臣中曽根康弘君登壇
  46. 中曽根康弘

    内閣総理大臣(中曽根康弘君) 神田議員にお答えをいたします。  まず、東芝機械事件の責任の問題でございますが、今回の東芝機械事件は、結果的に見れば企業の行った虚偽申請を見抜けずに不正輸出が行われてしまったものでありまして、そういう意味におきましては政府においても責任があると考えておるのであります。遺憾の意を表する次第です。政府としては、あらゆる角度から再発防止のために全面的な努力をして、実質的にもあるいは形式的にもあらゆる努力をすることによって我が国に対する信頼を回復することが責任を全うする道と考えており、今回外為法の改正をお願いしておるのもその一つなのであります。  次に、安全保障と自由貿易のバランスの問題でございますが、今回の改正は、原則自由の体系を維持しつつ、ココム関連貨物など国際的な平和及び安全の維持関連がある場合について法文上明記するとともに、罰則強化を行うものであります。西側の安全保障確保の観点からココムの申し合わせを尊重することは、我が国の主要貿易相手国である西側諸国との間で自由な貿易関係を発展させる上でも重要であります。このような認識を民間企業が十分持つことは、かかる事件再発防止の上で重要であり、法改正を軸とする輸出管理体制の強化とあわせまして、民間企業に対してもこの点を徹底させたいと思う次第であります。  外為法のみで対応できるかという御質問でございますが、もとより、お願いしている外為法改正を軸といたしまして、政府における管理機構の万全の体制強化及び民間業界団体、各企業における遵法意識の徹底、管理体系の確立、また、過去に不正輸出があったかどうかについても徹底的に調査する等、政府としては引き締めてやっておると同時に、国際協力をさらに円滑ならしむるための諸般の対外的措置も考えていきたい。こういうような一連の措置を着実に実施することによりまして、このような事件の発生の未然防止につきましても努力してまいる所存でございます。  残余の答弁は関係大臣がいたします。(拍手)     〔国務大臣田村元登壇
  47. 田村元

    国務大臣田村元君) 通産省といたしましては、今回の事件の反省に立ちまして、このような不正輸出が行われることのないよう全力を挙げているところでございます。その際、今回の事件の教訓を十分取り入れたものとすることといたしております。  すなわち、今回の事件は企業の虚偽申請によるものでございまして、当省としましても、膨大な申請件数を少数の者が判定せざるを得ず、ややもすれば個々の案件の処理が画一的に流れる嫌いがあった点を踏まえまして、輸出審査・検査人員の大幅増加、重点分野について厳格な審査を行うための省内審査会の設置、違反防止のための調査体制強化を進めているところでございます。また、不正行為に対する抑止力の強化を図るため、外為法改正について御審議いただいているところであります。  また、不正輸出防止の上で税関段階でのチェックが極めて重要であることは御指摘のとおりでございます。大蔵省、税関との間で新たに、七月十日でございますが、輸出管理強化対策連絡会を設けまして、協力関係を特に強化しているところでございます。  また、米国議会における東芝制裁の動きとしましては、先ほど申し上げましたように、七月二十一日に上院において東芝グループに対する制裁条項を含んだ包括貿易法案が可決されましたほか、下院におきましては、包括貿易法案とは別に、東芝製品の輸入を一年間禁止することを内容とするコーツ法案が提出されるなどの動きがございます。今後は夏季休会、八月八日から九月八日まででございますが、これの休会明けに開催される両院協議会における検討を経て、本件のアメリカにおける対応ぶりが決まるものと考えております。  我が国といたしましては、東芝機械の対ソ不正輸出のような事件再発防止のための諸措置の実現に全力を挙げて取り組んでおりまして、その軸となる外為法の改正につきお願いしておるところでございます。東芝制裁法案につきましては、ココム違反に対する制裁はそれぞれの国がみずからの責任で行うべきでございまして、他国の違反に対して米国独自の制裁を一方的に科すことは問題があるなどの観点から、反対の立場を表明しております。また、米国の行政府も、東芝制裁法案に反対するとの立場でありまして、外為法改正を含む我が国再発防止策を評価しております。  先般の私の訪米等によって理解は深まりつつあるものと考えておりますけれども、米国議会の対応はなお厳しいものがございまして、今後も外務省と連携しつつ、米国議会、行政府の理解を深めるよう努力してまいる所存でございます。(拍手)     〔国務大臣倉成正君登壇
  48. 倉成正

    国務大臣(倉成正君) 神田議員にお答えを申し上げます。  私に対する御質問は二つであります。  一つは、東芝機械の問題が日米関係に悪化を及ぼしはしないかという問題でございます。  御案内のとおり、東芝機械不正輸出事件に関し、米議会を中心とする米国内の雰囲気は依然として厳しいものと承知しております。政府といたしましても、事態の推移を重大な関心を持って注視しているところでございますが、我が国としては、米議会においていわゆる制裁法案が成立しないよう、今後とも米政府、議会関係者に精力的に働きかけていく所存でございます。  次に、東芝機械と東芝が同一視されている点と米国の日本たたきに関しお答えいたしたいと思います。  外務省としては、これまで外交ルートを通じ、米行政府及び議会に対し本件事件について十分説明し、その鎮静化に努めて、鋭意働きかけてまいったところでございます。にもかかわらず、このような事件米国、特に米議会で大きな問題となったこと、特に一部議員の方々が御指摘のような行動を行ったことはまことに残念でございます。  これは、本件が自由主義陣営全体の安全保障に重大な影響を及ぼす事件であるとの認識に基づくものと考える次第でありますが、我が国政府としても、今回の違反事件重大性は認識しており、かかる事件再発防止のため、政府全体として外為法改正を初めとする輸出管理体制の強化のための諸施策を鋭意検討いたしているところでございます。  なお、この一部の議員の行動に対しましては、先般、先方の高官から、まことに遺憾であるという意見の表明がございました。(拍手)     —————————————
  49. 多賀谷真稔

    ○副議長(多賀谷真稔君) 東中光雄君。     〔東中光雄君登壇
  50. 東中光雄

    ○東中光雄君 私は、日本共産党・革新共同を代表して、いわゆる外為法の一部改正案について質問いたします。  本法案は、東芝機械事件を契機として、米国政府並びに議会からの異常かつ執拗なココム規制違反の主張、東芝たたき、日本たたきともいわれる不当な非難、攻撃に屈して、我が国政府が東芝のココム規制違反の事実を認めて陳謝をし、再発防止措置の名でココム規制の一層の強化を推し進めようとするものであり、違憲の措置であります。私は断じて容認することができません。問題の中心はココムであり、ココム規制そのものであります。  一九七八年一月、我が党の宮本議長は、参議院本会議において、社会主義国に対する貿易制限であるココムは国際貿易をゆがめる偏狭なナショナリズムであると指摘をして、平等互恵の貿易関係を要求したのに対して、当時の福田首相は、ココムはだんだん適用範囲が縮小されつつあるとして、社会主義社会と自由社会との間の交流もあって初めて完全な経済繁栄となっていくと考える、そういう観点から、経済繁栄のために今後もココムの整理縮小に努力すると答弁をしています。  ところが、総理、中曽根内閣成立の一九八二年以降、ココム規制は逆にその範囲を拡大し続け、強化し続けてきておるのであります。今回の改正もまたココム規制の格段の強化を進めるものであります。政府方針は、わずか数年にしてココムの整理縮小から拡大強化へと百八十度の転換ではありませんか。総理、なぜこのような方針転換をされたのですか。答弁を求めます。  もともと、ココムは、NATOの結成に伴い、アメリカがその加盟国のソ連への戦略物資輸出を統制するために一九五〇年から発足したものであり、旧安保条約発効直後の五二年八月、我が国もこれに加盟したものであります。ココムは、軍事同盟と一体となった社会主義国への経済封鎖、輸出統制機関でありますが、レーガン政権の誕生によって異常に強化拡大されてきたのであります。  一九八二年二月、ワインバーガー米国防長官は、その就任後の最初の国防報告ココム規制強化の方針を打ち出しました。国防総省が商務省や国務省を乗り越えてココム規制強化に乗り出したのであります。この国防報告ではこう書いてあります。米国安全保障を前進させ、ソ連の前進を妨害するために、技術の移転、輸出を統制することが政策目標だというのであります。アメリカの対ソ軍事優位、技術優位を確保するために、米国防総省がつくった新しい軍事重要技術リストをココムリストとして、ココム加盟各国に認めさせる方針をこの国防報告で打ち出しています。  一九八七年度米国報告は、我々が一九八一年に始めたココムに関する措置は成功をおさめてきた、一九八二年秋に始まったココムリストの徹底的な再検討は三年後に首尾よく完了したと述べています。アメリカがその軍事的な方針で首尾よくそれを完成させたというのであります。  要するに、ココム規制は、アメリカの軍事的利益のためにアメリカ国防総省がつくったアメリカの仮想敵ソ連に対する戦略的な輸出統制であり、日米安保条約で日本に不当に押しつけられたものであります。自民党総務会においてさえ、ココム規制強化立法は、仮想敵を持たないとしている日本国憲法に反するという発言があったと報じられています。今回の外為法改正が、アメリカの戦略的輸出統制の強化に協力するものであり、仮想敵を持たないことを決めた日本国憲法に反することは明白ではありませんか。総理の答弁を求めます。(拍手)  ところで、総理は、先日の予算委員会での正森質問に対して、ソ連原潜の低音化は「東芝の問題が原因であるか、あるいはそうでないか、これはわかりません。」「しかし、これは因果関係だけの話であって、日本側の東芝がココム違反という重大な違反事件を起こしたことはもう厳然たる事実である」、こう答弁されました。総理は、あえて外為法違反とは言わずに、重大なココム違反と断定されたのであります。しかしながら、私は、東芝のココム違反ということはそもそも成り立ち得ないと考えております。  昭和四十四年東京地裁判決は、 ココムについて、ココムは非公式、非公開の国際機関であり、その申し合わせは国際法上も国内法上も条約としての効力を有しない、こう判示をしています。ココム規制は、国民に対して直接拘束力を有しないことは明白なのであります。まず、この点について総理の見解を求めます。  次に、ココム規制内容は、ココムの申し合わせにより秘密とされ、国民には一切開示されておりません。したがって、東芝機械は、内容の知らされていないココム規制に違反しようがないのであります。総理が重大なココム違反だと断定をして東芝機械を制裁することは、「知らしむべからず、よらしむべし」というあの徳川時代の専制封建領主のやり方と同じなのであります。憲法三十一条が保障するデュープロセス、適法手続の法理に明らかに反しております。断じて許されません。総理の答弁を求めます。(拍手)  今回の改正の最大の問題点は、いわゆる安全保障条項、「国際的な平和及び安全の維持」の条項を入れたことであります。紛争当事国に対し戦車などの武器を密輸出しても、その国がココム対象国でない限り、平和、安全の維持を妨げる輸出とはならないのであります。ところが、ワープロやパソコンなどのような平和的なものでも、半導体を含む商品の輸出になりますと、輸出先がソ連の場合は、あの規定によりますと、平和及び安全の維持を妨げる輸出として特別に規制され、制裁を強化するということになるのであります。この安全保障条項は、まさにココム規制強化のためのものであり、アメリカの軍事的要求を優先させて、我が国の貿易、経済の統制を一層強化するものであって、断じて許されません。  これまで外国貿易の管理について、我が国は、武器輸出禁止の国会決議を行い、いかなる国に対しても武器、武器技術等の輸出を認めない、輸出は厳正に慎むことを運用の基本方針として決めてきました。ところが、中曽根内閣は、米国に対しては、安全保障を口実にして武器技術の供与を決定し、今回の東芝事件を口実にソ連潜水艦探知能力強化のための米海軍への武器技術提供などを約束しているのであります。一方、ソ連等に対しては、逆に、武器技術ではなくて民用商品、汎用技術であっても、アメリカがソ連の潜在的軍事力増強につながるいわゆる戦略物資、戦略技術と判断するものは、同じ安全保障の名前で輸出規制し、それを強化しようとしています。これは憲法と国会決議に基づく貿易管理の基本方針をじゅうりんするものと言わなければなりません。  また、改正案六十九条の六は、国際的な平和及び安全の維持を妨げることとなると認められる貨物輸出については、安保条項のかからない貨物輸出と区別をして、特に懲役五年の重刑に処するとしています。平和と安全の維持という極めて不明確な概念を構成要件とする特別の刑罰規定は、明らかに憲法三十一条が規定する罪刑法定主義に反し、許されないものであります。あわせて総理の御所見を求めます。  通産大臣は、貿管令別表第一に規定するいわゆるココム関連百七十八品目の輸出承認権者であります。年間約二十万件の輸出承認申請を受理し、審査し、承認しているのであります。ところが、通産大臣輸出承認の可否を決める基準は、我が国の法令上根拠のない秘密のココム基準なのであります。しかも、このココム規制基準は、米国防総省の軍事重要技術リストをベースにしてつくられ、そのリストの内容ココムの場においても開示をされていないのであります。通産大臣もその内容を知らされていないことになるわけであります。したがって、ハイテク技術、ハイテク製品については、ココム違反の有無、輸出特別認可の可否について、通産大臣はみずから決めることができなくて、パリの米大使館別館にあるココムとアメリカの国防総省の判断を仰がなければならないことになるのです。これは明らかに通産大臣輸出承認権限がアメリカを中心とする秘密機関ココムによって侵犯され、日本の主権が侵されているものと言わざるを得ないのであります。(拍手)  改正案で、外務大臣は安保条項に関し意見を述べることとなりました。しかし、その実態は、外交ルートを通じて外務大臣米国防総省などのココム規制についての意見を聞いて、通産大臣に述べるということになるのではないでしょうか。通産大臣外務大臣の答弁を求めます。  ココム規制の基準は、規制対象国の範囲も規制商品の範囲も、時期により米国の政治的判断、方針で変化しているのではありませんか。ソ連に対する輸出商品の規制と中国に対する規制は同じなのか、違うのか。昨年は輸出承認されたものが、ことしは輸出規制されることになるということがあるのか、ないのか。現在のココム規制対象国は何カ国なのか。この点を明らかにされたい。  米国は、中国を準同盟国扱いとして高度技術輸出禁止を解除したのではありませんか。ココムは対中国輸出規制をどのように緩和したのですか。我が国の対中国輸出規制はどのように変わったのですか。中国への規制緩和は、中国が日米安保条約及び自衛隊を認めたからではありませんか。外務大臣通産大臣のはっきりとした御答弁を求めます。  貿易管理の基本である輸出の自由は、憲法第二十二条が基本的人権の一つとして保障する職業選択の自由、営業の自由の具体的内容であります。したがって、通産大臣が経済上の理由により貿易の調整を行う場合ならばともかく、経済外の安全保障なるものを理由として、ココムの秘密基準によって輸出を制限し統制することは、憲法の保障する基本的人権の侵犯になり、許されないことと考えますが、いかがですか。(拍手)  通産大臣は、第二の東芝事件を起こさない、三菱、住友などがやられたら労働者は大変だ、こう言ってココム規制強化外為法改正の必要性を強調しておられますが、それは全く逆ではありませんか。そもそも、ココム規制の拡大強化が東芝事件を引き起こしたのではありませんか。ココム規制を整理縮小し、規制をやめることこそがこういう事件再発防止の真の道ではありませんか。  今米国議会で策動している包括貿易法案の東芝制裁条項のごときは、かってカナダやECが米国に強く抗議したように、明白な我が国の主権への侵犯行為となるものであります。政府は断固抗議して、これをやめさせるべきであります。一九八二年シベリア・パイプライン事件のとき、イギリスも西ドイツもフランスも、アメリカによる制裁措置を断固としてはねのけて、フランスの担当大臣は、フランスは国家独立及び契約尊重の原則については譲歩することができない、こう述べて、米レーガン政権の制裁を拒絶し、ついにこれを撤回させたではありませんか。なぜ我が国はこうした断固たる態度がとれないのですか。明確な答弁を求めます。
  51. 多賀谷真稔

    ○副議長(多賀谷真稔君) 東中君、申し合わせの時間が過ぎましたから、簡潔に願います。
  52. 東中光雄

    ○東中光雄君(続) 最後に、私は、ココム規制強化に断固反対し、本法案の撤回はもちろん、直ちにココムから脱退することを要求し、その根源にある日米軍事同盟、安保条約を廃棄することを強く要求して、質問を終わります。(拍手)     〔内閣総理大臣中曽根康弘君登壇
  53. 中曽根康弘

    内閣総理大臣(中曽根康弘君) 東中議員にお答えいたします。  今御質問を聞いておりまして、法律に違反して日本にこれだけ迷惑をかけておる東芝の味方をするがごとき言辞をお聞きして、私は共産党の態度に甚だ疑問を持っているものであります。(拍手)  今回のこれらの措置は、要するに、時代の変化によりまして技術とかあるいは貿易の変化というものがあるわけでございます。特に最近のように、ハイテクというものが非常に重要視されてまいりました。日本はまた、膨大な貿易を行っておる大きな経済国家になっております。こういうような新しい時代の変化に即応して規制の対象を変化させるということはあり得べきことであり、要らなくなったものはやめ、新たに必要になったものは追加する、それを国際的合意をもって行おうというのが我々の基本的考えであるのでありまして、特に拡大しようというような意図的な考えを持ってやっているのではないのであります。  次に、仮想敵国の問題でございますが、仮想敵国というようなものは日本は考えてないということは、前から申し上げておるとおりであります。貿易政策上、いろいろな案件について対象国がいろいろ変化し、またニュアンスの差もあるということは、貿易政策上の対象国としてはもちろんあり得ることでございます。  ココムの法的性格については、これは条約等の法的拘束力のあるものではありません。国際間の合意であり、申し合わせであります。これは、戦略的物資が無制限に、ばらばらに共産圏に輸出されるということ自体が自由世界あるいはおのおのの国の安全保障に重大なる侵害を起こす、そういうところから貿易政策上の共同行為として申し合わせを行って、これを実行しているということなのであります。おのおのがその申し合わせに基づいて国内法で規制してその実効を上げよう、そういうことを行っておるのであり、我が国といたしましては、平和と安全を維持し、そのことがひいては日本の貿易を正常化し、かつ国民経済の健全な成長に役立つ、そういう観点によってこの共同行為に参加しているということなのであります。  ココム規制といわゆるデュープロセスの問題でございますが、対外取引の正常な発展及び我が国経済の健全な発展を図るために、外為法に基づいて輸出承認を行うことを必要としている範囲を貿易管理令等で具体的に明示しておりまして、規制対象は明確であって、憲法第三十一条に違反するものではありません。また、今回のような事件の違法輸出は、外為法輸出承認を受けることを義務づけられているにもかかわらず、これを受けないで輸出を行ったものであり、外為法違反は明らかであるのであります。(発言する者あり)ココム違反という意味は、法に逸脱して行ったということを私は言っておるのであり、それは外為法を意味するものであります。  次に、輸出規制強化の問題でございますが、西側の一員としての責任を果たし、特に密接な関係にあるこれら諸国との貿易関係を維持発展させていく上から必要不可欠の措置として行っておるのであって、憲法の趣旨に反するものではございません。  対米武器技術供与については、日米相互援助協定の関連規定に基づく枠組みのもとで行っていることは前から申し上げているものであり、国際紛争等の助長を回避するという平和国家としての基本理念を確保して行っているものであります。もとより武器輸出問題等に関する国会決議の趣旨を尊重する方針は変わってはおりません。  罪刑法定主義との関係でございますが、国際平和及び安全の維持を妨げると認められるものとして許可を要する技術取引または貨物輸出については、政令で具体的に明示することといたしておりまして、その範囲は明確であります。無許可の行為を罰することとする場合においては、許可の対象となるものの範囲等を法律により一定の要件のもとに政令にゆだねることとしていることも罪刑法定主義には反しないものなのであります。  次に、東芝制裁条項への抗議の問題でございますが、今回の不正輸出事件に関して、米国議会を中心とする米国内の雰囲気は依然として厳しいものがございます。政府としても、事態の推移について重大な関心を持って注視しておるところであります。米議会に提出された種々の制裁法案は、特定企業の製品の対米輸入禁止あるいは政府調達の禁止等、米国内における措置内容としておりまして、国際法上かかる措置我が国の主権の侵害に当たるものではない。米国内法の範囲内において行っておるものであります。しかし、いずれにせよ、我が国としては、米議会においていわゆる不当な制裁法案が成立しないよう、今後とも米政府、議会関係者等に精力的に働きかけてまいる所存でございます。  残余の答弁は関係大臣がいたします。(拍手)     〔国務大臣倉成正君登壇
  54. 倉成正

    国務大臣(倉成正君) 東中議員の御質問にお答えいたします。総理からお答えしました点を除きまして申し上げます。  今次外為法の改正案は、今回の東芝機械不正輸出事件を契機として、我が国輸出管理体制において国際的な平和及び安全の維持の観点からの管理体制が不十分であることが内外で大きく問われるに至ったこともあり、この面での法制上の整備目的とするものでございます。  お尋ねの今次改正法案に規定されている外務大臣意見を述べる制度は、我が国輸出管理の運用を国際的な平和及び安全の維持の観点から実効性のあるものとすることを目的とするものでございます。外務大臣意見は、種々の情報をもとに独自の判断に基づき述べることになるものでありまして、御指摘の点は当たらないと思います。  次に、お尋ねのココム規制の基準づくりについては、ココム参加各国は対等の立場でこれに臨んでいるのでございまして、米国やその他一部の国の意思だけで左右されるということはございませんから、この点はお間違いないようにお願いします。  ソ連と中国に対する規制に関しては、品目の一部について中国向け規制が緩和される旨の申し合わせが成立しており、現在同申し合わせに従った取り扱いがなされているところでございます。ココムにおいては、技術進歩の実態に応じて常に規制品目の見直しを行っておりますが、規制品目は変わりつつあるものでございます。対象国については、ココム参加国の申し合わせにより、これは公表できないことになっております。  次に、お尋ねの対中輸出規制緩和等の質問に関して、米国が中国を準同盟国と考えているかどうかについては、米国自身の問題であり、政府としてコメントすることは差し控えたいと思いますが、八三年に米国が国内政策として対中輸出規制緩和を行ったと聞いております。ただし、これは対中輸出規制の国内審査手続の簡素化にかかわるものであり、規制対象品目につき許可不要とするといった緩和措置ではないと承知しておるのでございます。手続の問題でございます。ココムとしては、八五年に対中輸出緩和の申し合わせを行ったわけでございます。  最後に、東芝機械不正輸出事件に関し、米議会を中心とする米国内の雰囲気には依然厳しいものがございまして、政府としても事態の推移を重大な関心を持って注視しております。主権の侵害でないということについては、総理からはっきり申されたとおりでございます。いずれにしましても、我が国としては、米議会においていわゆる制裁法案が成立しないよう、今後とも米政府、議会関係者に精力的に働きかけていく所存でございます。  以上でございます。(拍手)     〔国務大臣田村元登壇
  55. 田村元

    国務大臣田村元君) 国際的な平和及び安全の維持を妨げると認められるものとして許可を受けなければならない範囲は、現在と同様、輸出令等の政令で具体的に明示することとしております。その範囲が不明確になることはないものと考えております。また、我が国の貿易取引の過半を占める主要西側諸国と円滑な貿易関係を維持発展させていくためには、ココムにおける申し合わせを遵守し、我が国の高度技術の共産圏への流出によって西側諸国全体の平和及び安全を脅かすような事態を未然に防止することが必要でございます。したがって、このような規制は、対外取引の正常な発展我が国経済の健全な発展のために必要とされるものでございまして、軍事的理由により経済をコントロールするというものではございません。  主要西側自由主義諸国は、戦略物資等の共産圏への無制限な流出を制限する必要があるとの認識に立って、ココムの申し合わせを遵守して、各国の国内法で規制を行っているところでございます。我が国としては、自由主義陣営の一員としてその規制の必要性を認識し、主要西側自由主義諸国との円滑な貿易関係を維持する必要があるとの認識に立ち、みずからの判断によってココムの申し合わせを遵守しているところであります。したがって、我が国としてこのような規制を行うことによって我が国の主権が侵されることになるとは考えておりません。  外為法に基づく通産大臣の承認に係らしめられているものの輸出につきましては、その性能、品質、最終使用目的、転用可能性、国際情勢等を踏まえ審査を行い、承認するかどうかを決定しております。したがって、同様のものであってもそうした要素が異なる場合には、承認されるかどうかの結論が変わることはあり得ることでございます。  また、ココムにおいて、中国向けのコンピューターを初めとする三十五品目の輸出に関し、ココムへの協議なしに各国政府限りで輸出承認を行い得るとの申し合わせがなされておりまして、規制は緩和されております。我が国においても、ココムにおける上述の申し合わせを踏まえまして、中国向け輸出規制を緩和しているところであります。  外為法上、輸出承認を必要とする範囲は輸出令等で具体的に明示しておりまして、規制対象が不明確であるとは考えておりません。憲法上の営業の自由は、国際的な平和及び安全を妨げ、我が国対外取引発展及び我が国経済の健全な発展を阻害するおそれのある取引までも自由に行うことを認めているものではないと考えております。  我が国を初め主要西側自由主義諸国は、戦略物資の共産圏への無制限な流出を制限する必要があるとの共通の認識に立ってココムに参加しているものでございまして、このようなココム趣旨から規制すべきものについて申し合わせております。ココム規制対象につきましては、その必要性につき常時見直しが行われておりますが、現在の東西関係を踏まえれば、このようなココム規制の廃止といったことは現実的ではないと思います。  政府としては、ココム違反に対する制裁は、それぞれの国がみずからの責任で行うべきものであり、他国の違反に対し一方的な制裁を科すことは問題がある等との立場から、東芝制裁法案につきましては反対の意を表明しております。私も、訪米の際などに、その旨強く表明してきているところでございます。(拍手
  56. 多賀谷真稔

    ○副議長(多賀谷真稔君) これにて質疑は終了いたしました。      ————◇—————
  57. 多賀谷真稔

    ○副議長(多賀谷真稔君) 本日は、これにて散会いたします。     午後三時三十二分散会