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山田英介君 私は、公明党・
国民会議を代表して、ただいま
議題となりました
日本電信電話株式会社の
株式の
売払収入の
活用による
社会資本の
整備の
促進に関する
特別措置法案並びに
日本電信電話株式会社の
株式の
売払収入の
活用による
社会資本の
整備の
促進に関する
特別措置法の
実施のための
関係法律の
整備に関する
法律案に対しまして、中曽根
総理大臣並びに
関係大臣に
質問いたします。
まず初めに、私は、本
法案提出に至るまでの政府の経済
財政運営に関して伺います。
総理、あなたが
総理に就任された
昭和五十七年、
日本の対米
貿易黒字は約百二十二億ドルでありました。その後毎年黒字幅は
拡大し、四年経過した
昭和六十一
年度では何と五百二十億ドル、約四倍以上に膨れ上がっております。過度の外需依存の経済
財政運営の結果が、一昨年九月、円高誘導とのプラザ合意につながったのであります。その後の円高への軌跡は改めて申すまでもありません。
今
我が国は、円高倒産、失業者の増大、雇用の悪化等極めて深刻な事態を迎えております。これはひとえに、
内需拡大への
努力を怠ってきた中曽根内閣の重大な失敗、失政であります。積極
財政への転換が必要であったにもかかわらず、
総理、あなたは臨調緊縮
財政一本やりで、既に破綻した六十五
年度赤字国債依存体質からの脱却との方針に固執され、積極
財政へ転換し
内需拡大を図るべきであるとの主張に耳を傾けようとなさらなかった。いや、むしろ
財政再建、六十五
年度赤字国債脱却は中曽根内閣の掲げた金看板であったがゆえに、政治的にこれをおろすことができなかったのであります。
異常な円高の中に
国民を突き落とし、
国民生活の犠牲の上にみずからの政権の延命を図ったと言わざるを得ないほど現状を無視し続けたこの責任は極めて重大であり、見過ごすことはできないのであります。(
拍手)一体、
総理、この失敗、失政に対してあなたはどのような責任を感じておられるのか、
答弁を求めます。
今回の
補正予算の編成にしても、積極
財政への転換がおくれたそのツケの
一つであります。六十年九月のドル高調整、円高誘導のG5以来、我が党が強く主張してまいりましたように、六十一
年度予算から積極
財政に転換していたら、ここまで深刻な事態には至らなかったはずであります。少なくとも六十二
年度当初
予算で、きちっと積極
財政への転換、
内需拡大を図るべきでありました。
思い出してください。昨年十一月、政府は六十一
年度の
補正予算を編成しました。そこで
公共事業関係費は五千四百九十億円追加しております。総合経済対策の一環として
内需拡大を図るためであったことは当然であります。ところが、この六十一
年度補正予算を受けた六十二
年度予算では、
公共事業関係費は、何と補正後比較でマイナスの
予算を組んでいる。すなわち、補正後比較で実に八千六百三十九億円ものマイナス、六十一
年度当初比較でも一千四百九億円のマイナスという編成であります。
世に、木に竹を接ぐと言います。竹を接ぐならまだしも、政府のこのような編成方法は木を折ってしまうやり方であります。六十一
年度補正予算という木を折ってしまったところに、
内需拡大が進まないより根本的な原因があるのであります。政府は常に、みずから編成した
予算案について、最良最善のものだとして我々の意見に耳をかそうとしない。このたびの
補正予算の編成は、それが誤った
姿勢であることを如実に証明しているではありませんか。このような
姿勢は改めるべきであります。御所見を伺います。また、この際、積極
財政への転換を明確にし、少なくとも二、三年は継続的な
財政出動が必要であると
考えるかどうか、明らかにされたいのであります。
次に、
NTT株式売却収入の
使途についてであります。
NTT株式売却収入は、
電電公社改革法制定当時、その三分の二は
国債整理基金特別会計に帰属させ、
国債償還に充当する旨定められたのであります。衆議院逓信委員会の附帯決議においても、「
株式処分に伴う
売却益の処分については、」「
国民にとって有効であり、かつ疑惑を招かぬような方法で行うべきものとすること。」と決議されております。ここで明らかなように、
国民にとって有効である
使途は
社会資本の
整備財源だけでは決してありません。
減税財源としてその一部を使用することも
国民にとって有効な
使途であります。政府は、本
法律案によって
公共事業の
財源として使える仕組みをつくろうとしているのですが、
公共事業だけと
使途を限定する必要はないはずであります。
NTT株式売却収入についての
基本原則である
国債償還を
考えてみても、この
国債の中には特例公債も含まれているのであります。つまり、過去の
社会資本の形も全くない
赤字国債、しかもそれは、政府の経済
財政運営の失敗の結果であります。この
赤字国債の穴埋めには使用すると決めておきながら、
減税といえば、それは
社会資本として残らな
いからだめと言う。一体その根拠はどこにあるのでしょうか、伺います。
しかも、
総理は昨年の同日選挙で、
減税財源として
NTT株売り払い
収入を充てられるとの発言をされております。また、さきの通常国会の
予算委員会におきましても、我が党の大久保書記長の
質問に対しましてそう発言したことを認めておられるではありませんか。野党の要求を封じ込めるために、とりわけ
減税財源として使うことを阻止するために、本
法案で
社会資本の
整備に限って使うとした点が最大の問題であります。このようなこそくな方法を用いることは、私は政治的に最もよくないやり方であると思います。
既に指摘したとおり、
NTT株売り払い
収入は、その一部を
減税財源として使うことはできるのであります。しかも、所得税
減税は消費需要を喚起し、
内需拡大にも寄与し、ひいては税の増収につながるものではありませんか。問題は、多くの勤労
国民の切実な
期待にこたえて、政府がやるという決断をなさるかどうかであります。ここに明確な
答弁を求めるものであります。
宮澤
大蔵大臣、あなたは
NTT株について、
国民の過去の蓄積である、
減税財源で食ってしまうのはいけない、
資産として残すのだとおっしゃる。それも
一つの
考えではありましょう。しかし、
減税もまた
国民の強い要請であります。それを初めから蔵相は、
減税財源はだめだと言います。私は、蔵相たる者、その
選択は議会の議論の結果を踏まえて決定をするという
姿勢に立つことが最も大事であると申し上げたいのであります。
大蔵大臣の政権構想は
資産倍増論であります。二十一世紀までに
社会資本を二倍にするというものでありましょう。
NTT株売り払い
収入の
使途について、蔵相がもしこれを政権構想のために
活用されようとお
考えになるのであれば、今まであなたが
国民に示してこられたことが余りにもきれいごとであり、
国民が
期待している宮澤蔵相らしからぬと失望せざるを得ないのであります。この点、所信をお聞きします。
我が党は、六十二
年度所得税
減税は、六十一
年度決算剰余金、
NTT株式売り払い
収入金などにより、二兆円規模で速やかに
実施することを要求しております。そして、これは可能であります。まず、六十一
年度決算剰余金は二兆四千二百八十四億円、
補正予算計上分、
地方交付税、追加交付金等を差し引いてもネットで一兆三千五百億円の剰余金が出ます。これに
NTT株式売り払い
収入金などを加えれば二兆円規模の
減税が可能であります。
私は、六十二
年度所得税
減税は、六十一
年度決算剰余金と
NTT株式売り払い
収入の一部を
財源として、二兆円規模で速やかに
実施することを重ねて強く要求するものであります。
総理の御決意を伺いたいのであります。(
拍手)
ところで、今月二十四日、与野党税制改革協議会の伊東座長は、中間経過報告を原衆議院
議長に提出をいたしました。政府・自民党は、これを受ける形で六十二
年度減税とマル優廃止をセットにした所得税等
改正法案を今国会に提出する方針であるやに聞いておりますが、まさか、さきの国会で廃案となった
売上税関連法案は再提出しないとの二回にわたる与野党国対委員長会談の合意があるのでありますから、これを踏みにじるようなことをすれば、まさにこれは暴挙であります。
総理、あなたは再度約束違反を犯すことになるのであります。六十二
年度減税とマル優廃止をセットで出さないと明言をしていただきたい。
答弁を求めます。(
拍手)
もし、それでもセットで提出するというのであれば、何ゆえ不正利国是正のための限度管理の徹底、カード制の導入について検討すらせず、ひたすら六十二
年度減税に何ら必要のないマル優廃止に固執なされるのか、
説明を求めます。しかも、政府は、マル優廃止を不公平税制是正の一環としておりますが、それでは何ゆえ、我々が十項目にわたる不公平税制是正の事例を挙げているのに、マル優のみ取り上げ、性急にこれを廃止しようとするのか、納得できる
答弁を伺いたいのであります。(
拍手)
減税とマル優はこれを切り離し、区別して扱うべきものであります。我が党は、
減税とマル優廃止のワンセット
法案の提出を断じて認めることはできません。マル優制度廃止は断固反対であります。
総理、今あなたがなさろうとしていることは、およそ税制改革の名に値しないものであります。直間比率の是正、
売上税創設で
減税財源をというあなたの目指された税制改革は、つい二カ月前に
国民に受け入れられず廃案になっているのであります。
売上税に政治生命をかけるとおっしゃったあなたの信念とは、一体何であったのでしょうか。あれがだめならこれでいこう式でマル優廃止に執着をなさるあなたの
姿勢は、いたずらに
国民を混乱に陥れるだけでありまして、マル優廃止に固執することはおやめになるべきであります。これ以上国会を愚弄することはやめていただきたいと存じます。御所見を伺いたいのであります。
次に、本
法案において創設しようとする無
利子貸付制度について伺います。
通常の
公共事業に対する
NTT株式の
売却収入金の
貸し付けはBタイプとされておりますが、
地方公共団体が
返済する際は、
建設国債発行による補助金、
負担金の交付によって充当されることとされております。何ゆえこのような紛らわしい方法をとられるのか。
建設国債で対応すれば済むことではありませんか。
予算の制度や
財政の仕組みをますます複雑にし、わかりにくくしてしまうではありませんか。これは
予算制度の民主化あるいは
財政民主主義を空洞化させる危険性があるのではないでしょうか。何ゆえこのような手段を講じようとなさるのか、納得のできる
答弁を求めるものであります。
また、Cタイプとして、
事業主体が第三セクターの民活法
対象事業等に無
利子貸し付けを行おうとしておりますが、これも問題があります。もともと
NTT株式の三分の一は政府の義務保有分でありまして、
産業投資特別会計に帰属しているのであります。その配当金、さらに前
年度剰余金を五百四十二億円以上も受け入れて、民活法
対象事業等に既に投資がなされております。今、政府はこの産投特会に
社会資本整備勘定を新たに設け、さらに
NTT株売り払い
収入金の一部を民活法
対象事業等に投入しようとしているのでありますが、本当にその必要性があるのでありましょうか。政府の言う
国民の過去の貴重な蓄積を、何ゆえ
国民のために有効である
減税財源に使用することをせず、すべて民活のためのみに使おうとなされるのか、その理由を伺いたいのであります。
今や
我が国は世界第二位の経済大国、世界最大の債権国であります。しかし、
生活環境や
国民生活の上から見て、経済大国とは一体どこの国のことだというのが大多数の
国民の実感であります。二十一世紀を展望し、豊かで住みよい
生活大国
日本を築くために、政府は今こそ
内需拡大の柱たる所得税
減税を実行するとともに、公共投資にありましては
生活関連
社会資本の充実に最優先、最大限の
努力をなさるべきことを申し上げまして、
質問を終わります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣中曽根康弘君
登壇〕