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1987-07-09 第109回国会 衆議院 本会議 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十二年七月九日(木曜日)     ―――――――――――――  議事日程 第三号   昭和六十二年七月九日     午後二時開議  一 国務大臣演説に対する質疑  (前会の続)     ――――――――――――― ○本日の会議に付した案件  国務大臣演説に対する質疑  (前会の続)  裁判官弾劾裁判所裁判員予備員辞職の件  裁判官弾劾裁判所裁判員予備員選挙     午後二時二分開議
  2. 原健三郎

    議長原健三郎君) これより会議を開きます。      ――――◇―――――  国務大臣演説に対する質疑  (前会の続)
  3. 原健三郎

    議長原健三郎君) これより国務大臣演説に対する質疑を継続いたします。永末英一君。     〔永末英一登壇
  4. 永末英一

    永末英一君 私は、民社党民主連合を代表し、中曽根総理所信表明に対し質問いたします。  酷暑の夏休みシーズンをぶっ通して国会を開会するということは、極めて異例、異常であります。この異常なことをあえて求めた中曽根総理考えを、直面する重要問題に焦点を当て、お伺いいたしたいと存じます。  本臨時国会に対し、当初、自民党は会期九十日間を求めてまいりました。これでは総理・総裁の任期いっぱい会期が続くことになり、国会で方針を決めても、それを行う総理がすぐやめるというのでは、まことに無責任のそしりを免れません。(拍手)なぜ任期いっぱいの国会会期を求めたのか、国民に説明をしていただきたい。  先国会におきます売上税等関連法案廃案によりまして、六十二年度予算は骨を抜かれ、到底執行にはたえ得ない代物になっております。責任を感ずる内閣なら、当然総辞職すべきものであります。自民党総裁任期が今年十月までという理由で、自民党内では内閣の延命にだれも文句をつけなかったようでございますが、それは内閣政治責任より与党の内部事情を優先させる本末転倒の政治でありまして、議会政治における政治責任を捨てて顧みないものと言わなければなりません。(拍手総理は、その政治責任をどう感じておられるか、明らかにせられたい。  総理は、昨年七月の衆参同日選挙により、衆議院は三百名の大台に乗せる大勝を博したので、リンカーンの言うところの「時には人民すべての、常には少人数の政府」の指導者として、あたかもいわゆる受任的独裁者のように行動できると考えられたのか、売上税を強行しようといたしました。総理は、若いころ首相公選論を唱え、首相の座を占めてからも、大統領的首相でありたいとの意を表明しておられましたが、足かけ五年に及ぶ中曽根政治の特徴は、まさしく総理中心政治運営でありました。  政治解決を必要とする重要問題が生まれますと、すぐに公的ないし私的諮問機関審議会をつくり、そこに自分の発想を押しつけて結論を出させる。我々がその問題への対処を迫りますと、審議会審議中ですからと逃げる。そして、審議会が結論を出した後は、我々の追及に対して、これは審議会の結論でございますからと責任逃れをするのであります。審議会国民との直接のつながりを持ったものでありません。したがって、もともと国民責任を持ち得ないものであります。これを隠れみのに使うことは、国民軽視議会無視政治手法と言わなければなりません。売上税国会で粉砕されたのは、このような密室的な政治手法に対する国民の鋭い批判ではなかったでありましょうか。  私は、この臨時国会が、議会政治名実とも国民責任を果たす代表機関として機能し、国民の信頼のきずなをかたくする場にすべきであると考えます。総理は、自分が果たし得なかった方針の決定を性急に国会に求めるより、国民責任を果たす本来の議会政治への回復に努力すべきだと思うが、総理の御所見を伺いたい。(拍手)  総理政治改革に熱心であります。しかし、総理の言う改革は、それを完全になし遂げるのではなく、単なる問題提起に終わっているものが多いと言わなければなりません。行政改革も、昭和六十五年度赤字国債依存体質からの脱却も、「増税なき財政再建」も、すべてスローガン倒れであります。臨教審も、総理任期終了間際の八月にその最終答申を出すことになっております。土地問題も、今ごろ本来これに無関係の新行革審に諮問しましたが、総理任期中には答申が得られそうにもありません。総理は、靖国神社公式参拝の道を開いたと胸を張られましたが、その後は参拝を中止、継続審議中などとうそぶいておられる。「戦後政治の総決算」というには、まことに竜頭蛇尾と言わなくてはなりません。  総理は、この国会で、やり損じた税制改革の一部でもと意気込んでおられるようでありますが、議会への国民の信頼を確保するためには、何よりも先にやらねばならぬことがほかにあるではありませんか。それは議会改革議員定数是正であります。昨年、暫定措置としてでっち上げた選挙区制で、総理はよしとしておられるのでありましょうか。  総理は、昨年秋の臨時国会においても、また本年の通常国会においても議員定数抜本的改正の必要を説いていますが、この臨時国会では一言も触れておりません。しかも、自民党側からの我々野党への働きかけは全くありません。総理は、何もしないで放置しておくおつもりなのか。衆議院は昨年五月、定数の抜本改正を本会議で決議し、国民に公約をいたしております。総理は、衆議院定数抜本改正をあなたの最後の仕事としてこの国会でやる決意をお持ちですか、伺いたい。  本臨時国会提出補正予算は、六月ベネチアサミットでの総理の公約に基づく緊急経済対策を遂行しようというものであります。もっともそれは、五兆円の公共投資等の追加を主軸とするものでありますが、もともと総理が、サミットに先立って四月の終わりに訪米し、レーガン大統領に約束したものであります。  中曽根レーガン会談当時は、我が国会ではなお六十二年度当初予算審議中でありました。この当初予算は、貿易摩擦解消内需拡大のために最善のものと総理が言い張っていたものであります。この当初予算審議中に、同じ内需拡大を理由にして追加予算を事もあろうにアメリカ大統領に約束するとは、総理みずからが当初予算の欠陥を告白したものであったと言わなければなりません。昨年末の当初予算編成時と四月の中曽根レーガン会談並びに六月サミット時との環境変化は、アメリカまたはヨーロッパにおいて日本たたき、ジャパン・パッシングの傾向が極めて強くなったという以外に変化はないではありませんか。まさに今回の補正予算は、外圧に対するその場逃れ予算であると言わなければなりません。  ところが、この補正予算を初め総額六兆円以上の内需拡大策を実行しても、経企庁の試算によれば、その黒字削減効果は五十億ドル前後にすぎないと見られております。昨年の貿易収支黒字九百二十八億ドルに比較すればまことに焼け石に水であり、貿易摩擦緩和にはほど遠いと言わねばなりません。総理は、この予算によって貿易黒字が減り、貿易摩擦が少なくなるとでも思っておられるのか、お答えを願いたい。  思えば、これは、総理が今日まで進めてきた縮小均衡型経済財政運営内外ともに完全に破綻した結果ではありませんか。我々の再三にわたる政策転換要求を無視してきた総理が、外圧によって初めて政策転換を図ろうというのは、一体どういうことでありましょうか。それが国際国家日本なんでしょうか。総理政治責任とあわせて承りたい。  総理は、内需拡大策の柱の一つとして、総額一兆円規模の所得税減税先行をやりたいと言っておられます。しかし、これは既に成立しておる予算に計上してある額であります。内需拡大のための緊急経済対策として追加予算が必要だとするならば、なぜ減税額もふやそうとされないのか。我々が二兆円規模の所得税減税を主張する理由はまさにここにあります。総理のお考えを明らかにせられたい。  総理は、所得税減税先行実施年度内実施を図ると言っておられますが、我々も賛成です。  我々民社党は、中堅所得層減税率を大きくして、その負担軽減を図る所得税改正法案をこの臨時国会でぜひ成立させたいと考えております。その財源としては、二兆四千億円以上に上る六十一年度の税収の伸びやNTT株売却金を充当すればそっくり賄えると判断しております。不公平税制是正による恒久財源を制度化するまで、総理が昨年言ったように、NTT株売却金を応急に充当しようとするものであります。こうすれば自前の財源所得税減税は可能であります。  ところが、自民党は、所得税減税制度化と同時に恒久財源も法定しなければならないと強弁し、マル優廃止案税制改革協議会で主張してまいりました。もともとマル優廃止は前国会で廃案になったものであり、この臨時国会では提案しないと与野党間で合意されている代物ではありませんか。しかも、政府予算では、マル優廃止十月実施による収入は、国と地方分合わせ一千億円余りにすぎず、到底所得税減税財源とはなり得ません。この国会利子課税制度の改組がぜひとも必要であるという総理の主張は、前国会売上税法案とともにつぶされた総理のメンツを回復し、ベネチアサミットでの放言のしりぬぐいをしようとする意図に基づくものと言わざるを得ません。総理の見解を伺いたい。(拍手)  所得税減税に対する恒久的財源措置は、まず行政改革の徹底、そして不公平税制是正によって行うべきであると我々は主張しております。  マル優制度に関しましては、マル優を仮名で数十口、いや数百口も設置している悪徳預金者が多数存在することを我々も知っております。これを撲滅することは、不公平税制是正の重要な焦点であります。だからといって、低所得者が粒々辛苦の上蓄積した郵便貯金やわずかのマル優利子に、これら悪徳預金者と同率の分離課税を課するのは、全く公平を欠くものと言わなければなりません。(拍手)したがって、マル優枠設定希望者には、マル優だけに通用する預金者カードマル優カードとでもいうべきものを交付し、限度管理を徹底し、マル優制度本来の趣旨を生かして課税の公平を期すべきであると考えます。総理のお考えを伺いたい。  不公平税制是正といえば、何よりもまずキャピタルゲイン、株の売買譲渡益への課税土地売買譲渡益への重課等を先に行わねばなりません。  ある評論家は、今もうかる順番は、まず為替であり、そして土地であり、株であり、ゴルフ会員権であって、いずれも投機性の高いものであると言い、今、日本では一日に千八百億円もの金がたまり続けていると述べております。この莫大な余剰資金が、いわゆる財テクマネーゲームに踊っているのであります。しかし、経済活動というのは、もともと人間が額に汚し、泥まみれになって築き上げるものであり、額に汗して働いた結果が余裕を生み出し、お金の形となるのであります。マネーゲームでお金がお金を生むように見えるのは、金融秩序の上にあらわれる錯覚であり、しょせんそれは花見酒にすぎません。実体のない財テクに狂奔すれば、人心は荒廃し、企業は滅び、ついには国自体が崩壊してしまうことを私は恐れているものであります。(拍手)  例えば、昨年の株式時価総額の上昇は約百六十兆円と見込まれ、国土価値の上昇は昨年一年だけで二百兆円に達しているものと言われております。しかも、株の売買譲渡益原則非課税とされ、年五十回以上かつ二十万株以上の継続的取引から生ずる所得を課税対象として申告制度をとっております。この結果、六十年度の課税件数はわずかに七十件にすぎません。課税対象を広げても、原則非課税申告制では捕捉はできません。株の売買譲渡益課税は、原則非課税原則課税に改め、捕捉の方法を工夫しなければなりません。この不公平の是正総理は一体どう考えておられるか、御所見を伺いたい。  今や、首都東京に見られるような土地価格の暴騰は、内需拡大策の最大の障害であります。社会資本生活環境整備をおくらせ、交通渋滞をつくり、住宅問題のネックとなり、また物価上昇の要因となっております。この問題解決のためには、土地私有権の制限を含め、土地公共性を実現する方策が必要であります。  しかし、すべてを新行革審審議にゆだねて、異常な地価高騰に手をこまねいていてはなりません。先国会で決められている諸対策を速やかに講ずるとともに、銀行の土地融資を規制し、買いかえ特例の見直し、三大都市圏生産緑地対象外市街化区域内農地への宅地並み課税など、土地税制見直しを急ぐべきであります。総理の見解を伺いたい。(拍手)  また、六月二十日に閣議決定された四全総案によれば、今後、東京一極集中を排除し、国土の均衡ある発展を促すことが必要である、そのためには、特に政府機関地方移転が必要であると述べ、中央省庁の一部部局等政府機関の移転再配置等を検討するとなっております。中央省庁の一部部局ではなく、省庁そのものを移転せしめたらどうか。例えば、関西学研都市を二十一世紀へ向けて建設中の関西・京都に文部省を思い切って丸ごと移転させる、いわゆる分都を検討すべきではないか。総理の見解を伺いたい。  我が国労働者にゆとりある生活を保障するのは、国際国家日本の重大な責務であります。また、内需拡大のために、労働時間の短縮は、国際経済バランス回復という観点からも速やかに実現しなければならぬ最重要課題であります。いわゆる新前川レポートは、千八百時間への労働時間の短縮によって内需を拡大し、貿易黒字削減の効果を生み出そうと主張しております。経企庁の試算によれば、一%の時間短縮内需は〇・五%から一%伸び、休日を十日ふやせば経常収支は五年で九十二億ドル減るとしております。  我が国労働者の年間総労働時間は二千百六十八時間に及び、欧米諸国と比較すれば二百時間から五百時間も長く働いております。我が国労働者の勤勉さが働き過ぎと言われ、貿易摩擦の一因と言われては、たまったものではありません。労働基準法改正による法定労働時間の短縮、公務員、金融機関の週休二日制実施、五月一日の休日化など、時間短縮の実現を急がねばなりません。総理のお考えはどうか。  また、労働時間の短縮は、雇用創出に大きな効果を持つものであります。労働省調査によれば、完全週休二日制実現で五十万人の雇用創出が可能であり、また経企庁調査によれば、労働時間一%短縮で雇用は〇・四三%ふえるとされております。今や完全失業率は三・二%と昭和二十八年以来史上最悪の状態であり、雇用創出最大緊要事であります。離職者の再就職のためには職業能力開発を積極的に行うとともに、産業、企業間の労働移動を円滑にする情報ネットワークをつくる必要があります。  労働時間短縮及び雇用創出について、総理の所見を伺いたい。  三年前、総理は我が民社党の提言を入れ、臨時教育審議会総理直属諮問機関として設置されました。以来、臨教審は三回にわたる中間報告を発表いたしましたが、政府は何ら改革の名に値する措置をとっておりません。教育には、大学入試の混乱、日の丸、君が代問題をめぐる教育委員会教職員組合との対立、陰湿化しているいじめなど、解決を要する問題は多く残っております。この八月には臨教審最終答申を出しますが、総理任期は十月終了いたします。総理はこの短い期間で一体何をやろうとしておられるのか、お考えを伺いたい。  それにつけても、臨教審がせっかく答申をまとめても、これをどのような機関実行保証するか、全く明らかではありません。文部大臣諮問機関である中教審がありますが、もともと現下の教育問題は文部省的発想や手法では解決し得ないとして、総理直属機関として臨教審が設置されたはずであります。この考えに立つならば、臨教審答申実行保証文部省の枠を超えた機関が当たるべきであると存じます。臨調の実行保証行革審、新行革審と続いていることと考え合わせ、この点についての総理のお考えを伺いたい。  総理は、ベネチアサミットレーガン大統領からの、ソ連のSS20百弾頭アジア配備対抗手段としてアラスカINF配備をしたいという提案に同意したときのう述べましたが、もってのほかであります。唯一の核被爆国であり、また非核国としての我が国核政策は、世界から核兵器を根絶することでなければなりません。したがって、ソ連INFアジアに残置されることをいかなる理由にもせよ絶対に認めるべきではありません。  先般、ソ連のSALTⅠ交渉時の責任者であったセミョーノフ氏と会談したとき、彼は、ソ連アジアINF日本を目標とするものではないと力説いたしましたが、私は断固その撤去を求めました。総理ソ連アジアINFアメリカアラスカINFとのバランス我が国の核に対する安全保障の度合いが高まるとでも考えられたとすれば、それはとんでもない見当違いと言わなければなりません。ソ連アジアINF我が国致命的打撃を与えますが、我々は対抗手段を持っておりません。しかも、アメリカアラスカINFソ連にとって何ら致命的なものではないのであります。この状況はヨーロッパの場合と全く異なるものであります。総理の言われるゼロに至るための一里塚という考えは百害あって一利ないものであります。総理は直ちにレーガン大統領に、双方ゼロにせよと提言すべきではないか、総理の見解を伺いたい。  また、中国は、米ソの核交渉が進展すれば核軍縮の話し合いに応ずることを明言しております。アジアINFを含め、核軍縮のために中国を含めたあらゆる核保有国が話し合うときが来たと私は思いますが、総理はそう判断されませんか。今後の核軍縮の進め方について総理はどう考えておられるか、所見を伺いたい。  総理所信表明で、基本的な日中関係の中で最近幾つかの問題が生じていると述べ、これに関し、日本国家意思は一つの中国であり、二つの中国等の立場をとるものでないことを強調されました。これは光華寮問題を指していると思いますが、この寮が私の選挙区、京都に存在するだけに、日中友好を願う者として、この問題解決重要性を人一倍強く感じるものであります。  昨日、自民党伊東政調会長の指摘の点については、私も重大関心を持っておりましたが、今、日中間には、総理の言うように政治的、経済的にぎくしゃくした現象が見られます。総理は、我が方の考え方を中国に説明をし、理解を求めると言っておりますが、なぜ一体こうした現象があらわれるのか、この原因について総理の率直な見解を承りたい。  六月三十日、アメリカ上院は本会議で、東芝機械ココム規制違反事件に関連し、包括通商法案東芝グループ全体への制裁条項を加えることを圧倒的多数で可決いたしました。さきに、日本電気機器会社アメリカ半導体会社を合併しようとする案を、アメリカ国防省が横やりを入れ挫折せしめたと伝えられたことがありました。また、日本次期支援戦闘機FSX導入について、ワインバーガー米長官の訪日など、日米双方防衛関係者の往来が激しく行われております。  このように、日米間の貿易摩擦の激化に伴い、安全保障をめぐる日米間の関係にきしみがあらわれております。我が国の安全が日米の緊密な安全保障体制によって保障されている現状を直視すれば、我が国アメリカに対する構えを明確にする必要があると考えます。  昭和五十三年十一月、「日米防衛協力のための指針」が了承され、これによって日本に対する武力攻撃がなされた場合にどのような共同作戦をするかが日米合同で研究されてまいりました。しかし、指針そのものは両国間の協定といったものではなく、その取り扱い日米両国政府のそれぞれの判断にゆだねるというあいまいなものであります。  指針が了承されて以来十年になりますが、日米両国間の有事における具体的共同対処取り決め、すなわち、来援する米軍の規模やその武器または宿舎、輸送等日本側支援規模や範囲に関する取り決めは一切ありません。この点、西ドイツ政府は十アメリカとの間に、NATO条約とは別に、危機のときまたは戦時における受け入れ国支援に関する協定を締結しています。同協定は、西ドイツ武力攻撃が発生した場合、十日以内に六個の機械化師団歩兵師団飛行中隊を追加増強すると定め、これに対する兵器の事前集積も行われ、また、西ドイツ側支援の種類と範囲、費用の負担等、詳細に定めております。我が国にはこのような取り決めは必要ではないのでしょうか。総理の所信を伺います。  また、政府の防衛に関する感覚の鈍さはココム事件にもあらわれております。ココム案件対処に関し、政府に手抜かりはなかったと言い切れるのでしょうか。総理考えを求めたい。  また、次期支援戦闘機FSX選定をめぐり、日米政府間で協議中でありますが、さきに来日したワインバーガー米国防長官が、最終的な決断は日本政府が下すと述べました。当然でございまして、兵器の選択は国家主権の行使であり、政府自身決定事項であります。  ワインバーガー長官は、FSXについて、第一に、既存のアメリカ戦闘機を、第二に、これにアメリカ技術改良を加え、第三に、それにさらに日本のテクノロジーを加えたらいかがかという考えを示しました。FSX開発費全額我が国の負担と聞いておりますが、アメリカ側開発費を負担することになったのでしょうか。また、アメリカ側開発資金の提供を申し出た場合に、政府はこれを受け入れる考えはあるのか。この点をお聞きしたい。  また、米政府高官の中に、日本FSX自主開発の能力を持つことは、近隣諸国に脅威を与え、専守防衛の枠をはみ出すとの発言を行った者があると伝えられております。専守防衛は、中曽根総理防衛庁長官時代に言い出した言葉であります。FSX選定に対し、総理の基本的な御所信を伺いたい。  総理、私は、あなたとの半世紀に及ぶ交遊を振り返り、あなたが今国政の最高責任者として締めくくりをなすべき段階に立っておられると思います。  あなたは、国際国家日本の行く手が前人未到の進路だと、国民に苦難を乗り切る協力を求めておられます。しかし、政治指導者の最高の任務は、国民に苦難の道を歩ませないところにあると私は信じます。国民は、政治指導者の示す目標とそれに至る道筋を納得すれば、その道を歩むことを何ら苦難と思わないはずであります。そのためには、国民の納得を得るまで辛抱強く説得の努力を続けなければなりません。議会政治家としてのあなたの仕事は、まず何よりも議会政治に本来の機能を果たさせることであります。  税制抜本的改正が二十一世紀に向かう我が国に必要なことは、我々も痛感いたしております。それだけに私は、税制改革協議会の一員として、この協議会を大切に運営し、実りある成果を期したいと、同僚とともに懸命の努力を続けております。あなたは、税制改革協議会における審議の推移を注視してまいりたいと述べておられるが、あなたもこの税制改革協議会を大切にし、性急に結論を急ぐことなく、手を尽くし、順を追うて合意の形成に努めるべきであります。もともと議会制民主主義は、結論に到達するには時間がかかるものであります。  決断の政治家であるあなたに、「決断と忍耐とは最も高貴な性質である」というゲーテの言葉を贈り、議会主義政治家としてあなたが有終の美をなされることを期待して、質問を終わります。(拍手)     〔内閣総理大臣中曽根康弘君登壇〕
  5. 中曽根康弘

    内閣総理大臣中曽根康弘君) 永末議員お答えをいたします。  まず、会期九十日の御要請についてでございますが、今回の臨時国会は、補正予算あるいは減税税制改革問題、地方財政取り扱い、そのほか重要案件が山積しておりまして、そういう意味におきまして九十日を最初お願いをしたわけでございます。六十五日となりましたが、しかし、最善を尽くして努力してみるつもりでございます。政治には小休止はございません。私も「命の限り蝉時雨」、こう言っておるわけであります。  次に、今国会に臨む心構えでございますが、やはり補正予算案及び法案の成立に全力を尽くしますし、政府が現在やっておりまする施政について、この国会を通じて国民皆様方にいろいろ御説明申し上げ、御協力、御理解を得るように努力したいと思っております。私は、総理大臣にしていただきましたときに、中曽根内閣仕事内閣であり、また難問山積で、ノーダウン満塁のピッチャーみたいなものです、そういうふうに申し上げましたが、やはりピッチャーは一たびマウンドに立ては全力を振るって完投を期すべきものである、そう考えておるわけであります。  次に、総選挙の結果でございますが、永末さんも私も矢部先生の弟子でありまして、矢部政治学を信奉している者であります。矢部先生は、数は理に勝てないということをよく申しておりました。私は、非理法権天という言葉がありますが、やはり権力は天に勝てない、天とは国民である、そういうふうに心得て努力してまいるつもりなのでございます。  審議会の問題につきましては、政府は、独善に陥らないようにするために広く国民の皆さんの御意見を聴取いたしまして、政治に万全を期してやっておる次第であり、しかも、最終的にはこれは政府が決め、また必要あるものは法案として国会へ提出いたしまして、国会皆様方の御審議を経て初めて実行されるものなのでありまして、民主的な手続を経ていると考えるものであります。  議会政治への国民信頼回復の問題でございますが、私は、日本は明治維新以来、民主政治におきましては、必ずしもほかの国に引けをとらないだけの過去の歴史を持っていると思うのであります。明治十八年に内閣制度がしかれ、あるいは二十三年から国会が開設されまして以来、日本の歴史というものは、官僚あるいは藩閥政府に対する野党や民衆勢力との闘いの歴史であり、特に大正デモクラシー時におきましては、二大政党が一時現出したこともございました。これらの日本の先人の民主的努力は、ライシャワー博士が非常に評価しておるところで、決して日本は民主政治の歴史において卑下する必要はない、あの戦時中の独裁政治的なやり方は一時の現象である、そういうふうに指摘しておるのでございます。  私は、この伝統を受け継ぎまして、与野党間によき慣行をつくり上げ、先人に負けないような立派な民主政治議会政治の実績を残して努力してまいりたいと思っておるところでございます。  この点で、我々がここで考えなければならぬことは国会改革であります。中央政府あるいは地方政府ともにいろいろな改革をして、国民の皆さんにも御迷惑をかけておるところでございますが、国民の皆さんが今指摘しているのは、国会改革が進まぬではないか、そういう御議論でございます。今あなたがおっしゃいましたように、議員定数の問題、これは大問題でありまして、これも早期に解決しなければなりませんが、国会の運営やあるいはその他の制度あるいは実情につきましても、大いに反省をし、改革しなければならない。(拍手)この点につきましても、与野党で合意を得まして、皆さんと一緒に改革に前進いたしたいと念願するものでございます。  次に、中曽根政治問題提起だけではないかとおっしゃられますが、ともかく私が、私のような鈍根が今日まで政権を担当することを得ましたのは、国民皆様方の御協力と野党の御鞭撻のおかげでございまして、心から感謝しているところでございます。私は、柄にもなく「戦後政治の総決算」というような命題を掲げまして、行政改革や財政改革や、あるいは国際国家への移行、税制改革教育改革、そういうものをいろいろ申し上げてきているのでございますが、行政改革、財政改革、国際国家への移行等はある程度前進したと思います。しかし、税制改革教育改革はまだ残っております。これらにつきましては、ただいま、衆議院税制改革協議会等の結果も踏まえまして、与野党一致して努力してまいりたいと思っておる次第でございます。まだ踏破すべき連山ははるかにありまして、望むがごとしである、こう考えております。(拍手)  次に、緊急経済対策の問題でございますが、政府調達十億ドルも加えまして、大体経常収支黒字に及ぼす影響は、御指摘のように五十億ドルから六十億ドルぐらいになると思っております。しかし、最近は貿易の関係も潮目が少しずつ変わりつつありまして、この間の統計でもありますように、輸出も輸入もマイナスに転じてきました。これは円高の傾向もございますけれども、市場開放やそのほかあらゆる面における国民の皆さんの御努力が実を結んできたと思い、この傾向を促進してまいりたいと思っております。  それから、内需対策につきましては、決してこれは外国のためにやっているのでもなければ、外国に言われてやっているのでもありません。これは、政府・自由民主党におきまして、どうしても経済対策は新しくやろうという議を一致させ、そして自民党の政調会におきましてこの内容をいろいろ作成していただき、それを政府と一緒になって実行しよう、こういうことで先般緊急対策を決め、補正予算として提出しておるものなのであります。しかし、そういう考えを持つに至ったことは、世界における国際国家としての日本考え貿易摩擦というものを解消するという国策の必要上から自主的にそのように実行しているのである、そういうふうに御判断願いたいと思うのでございます。  所得税減税の問題につきをしては、総額一兆円を下らない規模のものをぜひ実行したいと思っております。これらにつきましては税制協議会の御協議を見守っておるということも申し上げる次第でございます。  財源につきましては、これは六十二年度に関しては、六十一年度の剰余金を含め、歳入歳出両面を通ずる六十二年度財政運営全体の中で処理していく。NTT株の売却益金につきましては、もう既にきのうも大蔵大臣が申し上げましたように、国民共有の負債である国債償還に充てるとしておりまして、この原則は今回の補正予算に盛り込んだ無利子貸付制度の導入によって変わるものではありません。いずれにせよ、収入が見込めなくなってしまうおそれがあるという一時的な財源であるNTT株式売却益を恒久的な財源としてとることは適当ではないと考えるものであります。  次に、預金者カード、いわゆるマル優制度の問題でございますが、永末議員はカード制度を導入したらどうか、そして限度管理を厳重にやれという御指摘でございますが、いかなるカード制度をお出しになるのか、具体論を実は拝聴したいと思います。また、限度管理の方法というものが具体的にどうなるか。我々が今まで検討したところでは、どうしてもこれは、厳重な限度管理をやろうとするとグリーンカードにいかざるを得ない。これは民社党が一番反対した制度であります。そういう点を考えてみまして、これは相当具体的な案の内容をお聞きして判断をする必要がある。どうぞお出し願いたいと思うのであります。  我々が心配していることは、この限度管理のやり方を背番号制というような形でやりますと、ややもすると役所というものはひとり歩きをしたりするものであります。そういうような今までのことも考えてみまして、税務署に対して国民が恐怖感を抱かないような税務署にしなければならぬと思っておるのです。  そういうような点から見まして、これを失敗してまずくするというと、まず第一に預貯金が逃げてしまいます。この預貯金が、逃げたお金がどこへいくかと言えば、株式へいくか、土地投機に結ぶか、外国へ逃げてしまうか、そういうおそれが必ず出てくるのであります。そういう税の問題については、国民心理というものをよく考えてやる必要がある。(拍手)そして、急激な変化を起こすということは、金融政策については考え物であります。金融政策というものはやはり漸次、要するに着地を非常にソフトにやるということが大事なのであります。そういう意味におきまして、国民の皆さんが安心して協力できる方法は何であるか、ぜひ御教授願いたいと思う次第でございます。  キャピタルゲインの問題につきましては、有価証券譲渡益を原則課税としても、その適正公正な執行を図るためには、捕捉、管理等のための実効ある措置が不可欠であります。現在の納税環境等に顧みますと、直ちに原則課税とすることは、今のところは適当でないと考えておる次第でございます。いずれにせよ、税制協議会協議を見守ってまいります。  土地の問題につきましては、個人の居住用財産の買いかえ等の特例制度について何らかの制限を設けるべきではないかという御意見であります。しかし、転勤等によって自宅を買いかえざるを得ないという場合等、そういうような問題への配慮として設けられているこの特例制度について制限を設けるということが果たして適当であるかどうか、慎重に検討すべき課題であると考えております。  宅地並み課税につきましては、昭和五十七年度に宅地供給促進と農業経営の継続、安定性との両課題の調整策として現行制度が創設されたことは御承知のとおりです。先般取りまとめました緊急経済対策の中で「現行制度発足以来五年間の長期営農継続農地に対する徴収猶予の運用実績を調査検討し、その結果を踏まえ、本制度の運用について地方団体を指導する等必要な措置を講ずる。」こういうふうにいたして、自治省において実情調査を今厳重にやっておるところでございます。  市街化区域農地に対する宅地並み課税のあり方については、農業をまじめにやっている方々に対する配慮を十分行いながら、宅地供給の観点から、土地利用のあり方、都市における緑地等の配分、そういうような問題も踏まえて十分検討してまいりたいと思います。  分都論につきましては、今度の四全総におきましても多極分散型ということを申しておりまして、各地方地方が個性のある独特の地域を形成するということを助長しておるわけでございます。東京にある中央政府の機能の一部を地方に分譲するということは前からあるアイデアでございまして、もし、実際行いまして支障がなくしかもそれが好ましいというものがあれば、これは検討しても結構である、そういうふうに考えております。  労働基準法改正の問題は、週四十時間をできるだけ早くやりたいという意味で今法案を提出しておるのでございまして、これが成立いたしますならば、段階的に早期実現を期してまいりたいと思います。もちろん中小企業等に対する配慮は十分行わなければなりません。  公務員につきましては、やはり四週六休を制度化するという問題、それから年次休暇を思い切ってもっととらせるということ、それから土曜閉庁の問題、こういう問題も真剣に検討してまいりたいと思っております。  五月一日を休日としてどうかという御質問でございますけれども、実は、休日は日本は非常に多いのでございます。日本が十二日、フランスが十一日、アメリカが十日、西ドイツが十日、イギリスが九日、ソ連は八日であります。これを見ると、休日は日本が一番多いという形になっております。それで、既に勤労感謝の日というものが設けられておりまして、この五月一日、メーデーの大事な日をそういう休日にするということが果たして適当であるかどうか、どうもこれは難しい問題ではないかと思っております。  次に、週休二日制のための金融税制上、金融制度の改革でありますが、中小企業週休二日制を導入するための条件としては、中小企業の生産性の向上、経営基盤の強化が大事であります。政府としては、中小企業の経営基盤の強化及び技術力向上、情報化への対応、人材養成の強化等による中小企業の生産性向上、この強化策を講じまして、そういう推進を通じて、週休二日制の採用を含め、中小企業における労働条件の向上が図られるように推進してまいりたいと思います。  雇用政策につきましては、先般来申し上げますように三十万人雇用開発政策を懸命に追求して、努力してまいるつもりであります。  教育改革の問題につきましては、臨教審の三次にわたる答申を受けまして、教育内容の改善、教員の資質向上、大学入試改革等諸般の政策を推進しております。教育改革は国政の最重要課題一つでありますから、今後とも臨教審答申を受けて誠実に実行してまいるつもりであります。  INFアラスカの問題。これは前から申し上げておりますように、日本はグローバル・ゼロである、世界から核兵器を追放するということ、そしてアジアヨーロッパも平等でなければならぬ、アジアヨーロッパの犠牲になることは許さない、そういうことをまず私ははっきり申しておるのでありまして、世界から核兵器を根絶させたいということはあなたと完全に一致しておるのであります。ただ、交渉のテクニックといたしまして、グローバル・ゼロを実現するためにこのようなやり方を一つ考えてもいいのではないか、そういうことを申し上げた次第なのであります。  核軍縮の全体会議につきましては、我が国は従来から、中国を含む全核兵器国が参加する国連及びジュネーブ軍縮会議の場で、核軍縮を初めとする軍縮促進のための国際的努力に積極的に貢献しております。今後とも、究極的な核廃絶に向けての実現可能でかつ実効ある具体的措置を進めるよう核保有国に訴えるとともに、核軍縮へ向けての国際的努力に積極的に参加してまいるつもりでございます。  光華寮の問題につきまして、背景に何があるかという問題でございますが、中国側としては、やはり日中国回復の際に、一つ中国であって二つの中国はないと我々が誠実に約束したことを注目しておる。言いかえれば、台湾の問題について非常に強い関心をお持ちである、そういうことであると思います。我が国の側におきましては、三権分立あるいは司法権の独立、そういうような国内体制上との問題がありまして、そこに若干の解釈あるいは見方の乖離があるわけでございます。しかし、我々はできるだけ努力をいたしまして、我々は国家意思として中国一つであると厳然としている、これは不変不動であると申し上げていることもよく御理解をいただくように努力したいと思います。  東芝のココム違反事件というものは重大な問題でございます。これがアメリカ国会における保護主義的傾向を非常にあおったことは遺憾千万でございます。先般、上院において包括貿易法案の修正決議がガーン議員によって提出されましたが、たしか二年か五年の間東芝からの物の輸入を禁止しようという案だったと記憶していますが、これが実に上院で九十二対五で圧倒的に可決されておるわけでございます。  このような雰囲気がそのまま持続すると、包括貿易法案に対してレーガン大統領は、保護主義的傾向が強過ぎる場合には拒否権を使おうとしておるわけです。拒否権を使うと明言しておる。拒否権を有効に成立させるためには、三分の一プラス一票が必要でございます。この三分の一プラス一票が今危なくなりつつある。それを我々は心配しておるのでございます。そういう意味におきまして、拒否権をもしレーガン大統領がお使いになる場合には、これが有効に成立するように、保護主義に反対している我々は協力してまいりたい。そういう意味で、いろいろな誤解やその他を解くために全面的な努力を今いたしておるという状況なのでございます。  緊急時のための日米防衛協力の問題でございますが、安保体制の効果的運用確保のため、平時、有事を問わず米国に対する我が国支援が緊要であるということは御指摘のとおりです。いわゆる有事の際についても、米軍の円滑な活動を確保するために我が国がなし得るだけの支援を行うこと、また、かかる協力効果的に実施されるよう協力のあり方について平素から共同で研究を行っておくことは当然であり、「日米防衛協力のための指針」というものはこのために行われておるものであります。  ホストネーション・サポートの具体的内容、やり方等はおのおのの国の実情によって生まれると思います。戦時接受国支援についての西独と米国との協定一つの参考になる材料であると思いますが、我が国としては御指摘の御趣旨も踏まえ、今後とも指針に基づく研究を推進いたしたいと思っております。  FSX開発費負担は、もとより我が国自分で行うことでありますから、我が国負担すべき部分は当然我が国負担すべきものであり、ライセンスとかそういうようなものは契約によって決まるべき問題である、そう考えております。  このFSXの選定につきましては、私は栗原長官が提起した三原則というものを支持しておるのであります。すなわち、第一は機能中心である。そのつくるべき戦闘機はどういう機能を持っておるか、費用とそれから成果、いわゆるコストとその成果、機能というものもまた考えなければなりません。それも含めて機能を重視する。第二番目は、安保条約を有効に運用し得るようなインターオペラビリティー、共同動作というものも我々は考えなければならない。第三番目は、軍需産業の影響をお互いに受けてはならぬ。この三原則を支持いたしまして、今長官を中心にして検討しておるところであります。いずれにしても自主的かつ公正に、防衛上の技術専門的な見地も踏まえて、費用対効果も検討しつつ、日米防衛協力考え、そして適正に決定したいと考えております。  今議会のあり方についていろいろ御助言、御鞭撻をいただきまして、感謝いたしております。私は、やはり政治家国民とともに楽しみも苦しみも悲しみもともにする、喜びも汗を流すことも一緒に行う、それが政治家のあり方であると思っております。国民が今一番注目しているのは、税制協議会の作業がどういうふうに進み、結果が生まれるかということで、その成果を期待しておると思うのでございます。我々も努力してみたいと思いますが、どうぞ永末さんにおかれましても御奮闘あらんことを心からお願いいたしまして、答弁を終わる次第でございます。(拍手)  残余の答弁は、もしあれば関係大臣がいたします。(拍手)     ―――――――――――――
  6. 原健三郎

    議長原健三郎君) 小林恒人君。     〔小林恒人君登壇
  7. 小林恒人

    ○小林恒人君 さき通常国会におきましては、この演壇において牛歩という初めての好ましからぬ体験をさせていただきました。本日は、中曽根総理を初め閣僚の皆さんに、日本社会党・護憲共同を代表して御質問をさせていただく機会を得ましたことを光栄に存じます。  「政治家は文化・学問・芸術の権化である」というのは、中曽根総理の母校、高崎高校における講演の一節、また、「政治の目的は文化に奉仕することにある」というのは、国連総会における総理演説の一節であります。私自身、個性、文化というものを大切にしたい、でき得れば私の政治活動の指針としていきたいという希望をささやかながら持ってまいりました。したがって、総理の見識に対しては大変感銘を受けたところであります。しかし、中曽根総理が昨年の自民党軽井沢セミナーにおいて、「現代は視聴覚時代であり、活字文明よりも感触でキャッチする層が大きくなっている。自民党はそういう感覚のマヌーバー、パフォーマンスをやってきている」とされ、パフォーマンスを自賛するかの発言を伺いまして、中曽根政治論に大きな疑問を持ちました。  むしろ私は、総理がマヌーバーを大切にするがゆえに自由民主党という保守政党を危険な体質へと追いやり、国民の声、日本国憲法の精神との乖離を大きくしていると考えます。(拍手国民政党、平和主義、民主主義、議会主義の政党、進歩的であり、福祉国家の実現を図る政党、これが国民に約束した結党以来の自由民主党の性格とされています。しかし、一九八二年以来の中曽根政治によって、自由民主党の政治姿勢と施策は、平和にとっても、民主主義にとっても、国民生活と福祉にとっても、そして何よりも社会の進歩や文明にとって弊害となってきている感じがします。これは、最近の自由民主党の長老、そしてニューリーダーと呼ばれる皆さんの著作を拝見してみても、等しい疑問であるかに感じられます。総理の五年間の回顧に立った中曽根政治の文化、文明に果たした役割について拝聴いたしたいと存じます。(拍手)  さて、思いやりと責任というのが中曽根政治のモットーでありました。総理は、その政治内容として公正を強調されています。優しさと公正ということが総理の言わんとしていることかと推測いたします。また、たくましい福祉と文化の国日本の創造を強調され、その基礎としての人づくりや教育、そして社会の公正について多く語られております。そこで私が思い起こすのは、田中元首相が道徳教育を提唱されたことであります。田中首相は、その後にみずから国民、子供たちの指針たり得ないことを不幸な形で実証いたしました。総理のスローガンである「戦後政治の総決算」に基づく政治は、優しく公正であったでしょうか。中曽根内閣の主要な政策を振り返り、御所見を伺いたいと存じます。(拍手)  まず、税制は社会の公正、公平の基本とも言えるものでありますが、私がうそをつくような顔をしていますかと有権者に大見えを切り、総選挙に大勝すると、低額所得者はもとより、中堅層すら大増税となる売上税マル優廃止を提案し、不公平税制は温存するという税制改革案のどこに優しさと公正が存在するでしょうか。いまだに六十二年度減税ですらマル優廃止という増税が条件であるとされております。六十一年度決算剰余金は二兆円をはるかに超え、NTT株の譲渡益は政府が計上している額よりも三兆円を超える増収が確実であります。なぜ直ちに大幅減税実施できないのでしょうか。なぜ勤労国民の住宅、教育、老後のためのささやかな貯金に課税をしようとするのか、国民には理解はできません。  総理は、所信表明演説の中で、税制改革について国民の理解を得るに至らなかったことを真剣に受けとめ、周到な配慮をもって検討を加えなければならないとされております。官房長官が以前に表明されたように、六十二年度減税は自前の財源先行実施し、そしてキャピタルゲイン課税を初めとする不公平税制是正税制改革協議会においてじっくり煮詰め、新政権のもとで実施すべきであります。総理や大蔵大臣の決断を促したいと存じます。(拍手)  次に、働くことは社会の公正の基本であります。労働を保障することは近代国家における政府の最も基本的な責務であります。総理が政権を担当して以来、失業率は年平均で二・四%から二。八%へと上昇し、今日においては、失業者は史上最高の百九十一万人を記録しております。総理が就任されて以来、失業者が着実にふえています。つまり、政府が現在宣伝している三十万人雇用開発プログラムは、その中身が上げ底であるだけではなく、中曽根政治によって生み出された失業者数すらカバーできないものであります。我が党は、五十万人雇用創出プランの実施政府に要求しておりますが、その推進、実現によって初めて国民雇用情勢は中曽根政権誕生時より前進したと言えるものであります。みずから生み出した雇用不安に対する責任について、総理所見を伺いたいと存じます。(拍手)  また、働きバチと言われる状態を早急に是正しなければなりません。このことは同時に、ワークシェアリング、高齢者や女性を含めた労働の分かち合いの推進でもあります。我が国においては、政策誘導はまず公共部門から率先して行う必要があります。具体的に、国、地方の公共機関の土曜休日制を進めるべきと考えます。また、我が国産業の中で最も長時間労働の典型であり、二千六百労働時間ともいわれるトラック輸送関係については、通達行政などではなく、思い切った法的規制が必要と考えますが、総理所見を問います。  さらに、失業率六・四%という雇用不安の著しい沖縄にあって、アメリカ軍基地労働者の大量解雇問題が発生しております。先般、日米間で新協定を結んだばかりであるのに、アメリカのこのやり方は余りにも理不尽であり、総理はこの問題に対してどのような対策を講ずるのか、見解を求めます。(拍手)  同時に、経済の不健全化が進行しております。貿易摩擦の解消のためにも内需主導型経済への転換が叫ばれておりますが、実効ある政策は何ら推進されず、過剰資本は海外への財テク流出と国内における株式や土地などのキャピタルゲイン志向を強めています。  総理は、国際社会の中の日本の地位を強調されます。所信表明演説もその半分はサミット等に関する内容となっていますが、肝心の国内における実行については後ろ向きの姿勢を貫いております。私は、国民一人当たりのGNPの水準にふさわしい生活水準の達成と、あわせて我が国の災害に弱い国土、都市構造の弱さを克服するため、公共住宅、下水道、山林整備と都市における公園、緑の拡大、そして北国においては雪を克服する克雪事業の推進を図るべきと考えます。生活施設の整備、町づくりに余っている資金を誘導し、経済の健全化と内需主導型経済への転換を図るべきであります。  経済大国日本と言われながら、北海道や沖縄あるいは九州に住む人々は、日常生活の中で経済の繁栄による生活の質の向上を全く感じておりません。東京一極集中、世界都市東京が強調される中で、過疎と衰退を深める地域が温存されていることを常に認識し、そうした地域における社会資本の整備に国を挙げて取り組む必要があります。総理が国内経済と地域格差是正にどのような成果を上げられ、克服すべき問題、乗り越えるべき連山としてどのようなことを新政権に言い残されるのか、伺いたいと存じます。(拍手)  我が国は資源の少ない国です。限られた資源は、国民の共有財産として社会的に有効に活用することが公正の原理です。中曽根内閣は、民間活力の活用と称する国公有地の大規模な払い下げ、そして規制緩和などによって列島改造時を上回る地価暴騰が発生し、住宅ローンや家賃、固定資産税など国民負担は大上昇となっています。しかも、地価暴騰は不動産ブローカー、暴力団などの暗躍を引き起こし、暴力的追い出し、地上げ行為が横行し、放火事件まで発生しております。中曽根政治は、国民の共有財産を切り売りし、社会の腐敗をつくり出しています。  総理は、新行革審において土地臨調の設置に熱意を燃やしているとされますが、中曽根政治の常套手段である少数・密室・諮問政治総理が振りまいた矛盾が解消されるでありましょうか。総理は、新行革審の設置目的から逸脱し、しかも、みずからの任期内には答申すら受けることのできない新行革審への土地問題の諮問を撤回し、我が党の言う国有地の払い下げの中止、そして庶民の住宅費の抑制と固定資産税の凍結、土地税制強化などの実施について、新政権への要請とすべきであります。総理並びに国土庁長官の所見を伺います。  また、議員立法である国土法制定時は建設委員会理事でもあり、独自の御意見を持たれている建設大臣の所見もあわせて求めます。(拍手)  さらに、水問題並びに環境問題について伺います。  私は、政府が世界都市東京を強調し、全国的に規制緩和、都市開発を叫んでいながら、水問題については何ら触れないことを不思議に思ってまいりました。高層ビル一つを建設すれば莫大な水を必要とします。大型ダムの建設は自然破壊を巻き起こし、災害に弱い国土環境の増幅となるだけであります。私は、むしろ大都市におけるオフィスビル建設を抑制し、建設する際は循環システムの整備を義務づけるなど、都市計画の上での節水構造を追求すべきと考えます。  さらに、水質汚染とともに、大都市においては大気汚染や土壌汚染など都市環境の悪化の問題があります。政府は公害被害者補償制度の改悪法案を提案していますが、これは錯誤も甚だしいと言わざるを得ません。  中曽根総理の国連演説の締めくくりはどうであったでしょうか。「地球は一つであり、全人類は、緑の地球の上で、全生物の至福のために働き、かつ共存している」とされました。地球環境は悪化の一途をたどり、緑は減少し、砂漠化が進行し、酸性雨が降り注ぐ状態となっています。大都市は、環境悪化から人類の生存環境を損ない、死滅する危機にあるという認識が強まっています。OECDがなぜ都市問題に熱心に取り組んでいるのか、政府・与党においては認識されているのでしょうか。緑、大気、水、土壌など、人間の生存環境を保全し、回復する都市整備が必要と考えますが、総理並びに関係閣僚の所見を問います。(拍手)  中曽根政治は、地域に冷たく無関心でありました。私は先ほど地域問題に触れましたが、政府の四全総を見ても極めて遺憾なのは、地域振興の具体策がない点であります。地域の社会経済衰退の基本要因を放置し、おいしい言葉だけ並べることは不公正きわまりないと考えます。  ある調査機関が、全国六百五十二都市の成長力指数の試算を行っています。大都市圏が軒並み高順位を占めています。最下位の六百五十二位は北海道夕張市です。産炭地の宿命を乗り越え、町は挙げて夕張メロンの生産で全国の好評を得てかくのとおりであります。下位二十位の半数は、北海道の都市が占めています。指数一〇〇、すなわち平均を超えている北海道の都市は、三十二市中札幌と恵庭の二市だけです。  一九五〇年の国土総合開発法制定以来、過疎と過密の是正、地域格差解消が課題とされましたが、いまだに何らの是正も進まず、むしろ格差拡大の方向にあります。政府は、例えば新全総、三全総の柱の一つでもあった苫小牧東部開発の後始末をどうつけるのでしょうか。新潟東港、秋田臨海開発など自治体の財政負担のみが取り残されています。四全総では整備新幹線問題が政治課題となりましたが、自治体負担を導入し、国鉄の分割・民営を強行し、ローカル線を切り捨てようとしながら、財源対策も確立せず、新幹線整備が進め得るでありましょうか。  産炭地を初めとする過疎と不況、産業調整に苦しんでいる地域にどのような展望を示されるのでしょうか。地方は、不況地場産業対策、農林漁業対策、そして生活環境整備、さらに情報化時代にあって、地方圏の情報アクセス整備とそのための人材養成などについて、具体的に国はどのような責任と役割を果たすのか、回答を求めているのであります。政府はこうした地方の問いかけに明確に答える義務があります。総理関係大臣の回答を求めます。(拍手)  地域経済の基盤である農業について具体的に伺います。  政府は生産者米価の引き下げを決定しましたが、これによって政府の言う中核農家や規模拡大が進むでしょうか。むしろ生産意欲が減退し、農業離れが進むと考えるのが常識であります。また、閣議においては、米の自由化は行わないとされたと伺っておりますが、本当か否か。同時に、十二品目についてもこれ以上の輸入拡大は行うべきでないと考えますが、総理所見を伺います。(拍手)  補正予算案も大いに問題があります。六十二年度補正予算においては、NTT株の譲渡益の活用と建設国債の増発による思い切った公共投資の増額が必要であります。政府は五兆円規模の事業追加を閣議決定しておりますが、その総額が不十分であるとともに、その内容についても、一般会計においてはわずかに二兆円程度のものであり、それに匹敵する地方負担増を盛り込んでおります。地方財政逼迫の今日において歳出増のみを求める姿勢は、結局は地域経済と住民生活に悪影響を及ぼすこととなります。  政府は、八月中に地方交付税法案を成立させたいとしております。では、補助金カットの打撃に続くこの補正による負担増、税制改革の混乱による交付税、地方税の減収をどう穴埋めしようとされているのか、具体的にお示しいただきたいと思います。また、地方単独事業の上積みが要請されていますが、現在の自治体財政の情勢において八千億円の追加が本当に可能と考えておられるのか否か、総理並びに大蔵大臣の答弁を求めます。(拍手)  六十三年度以降ゼロ・マイナスシーリングは中止をし、経常経費も含めて積極財政へと転換すべきです。高齢化社会への対応、生活水準向上には、投資的経費の計画的拡充とともに、福祉、文教などの経常経費、行政サービスの充実が不可欠です。例えば、たび重なる老人保健法改悪などにより国民健康保険料の払えない滞納者が急増しておりますが、保険料を払えない人には保険給付を行わないという措置さえ実施されようとしています。病に伏しても病院に行けない、健康であっても保険料負担に苦しむという政治に、優しさと公正、高齢化社会への対応や福祉国家の展望を見出すことができるでありましょうか。総理所見を求めます。(拍手)  以上のように、中曽根政治国民生活の向上に対して全く無関心で、何ら貢献せず、むしろ矛盾を拡大させたと言えます。  では、平和、文化、人権等についてはいかがであったでしょうか。この分野においては、より強く中曽根政治の本質が露呈しております。  総理は、所信表明演説では、世界は軍縮への機運を現実のものへと結実させる重要な岐路に立っているとされています。しかし、防衛費の対GNP比一%突破を政治的に強行し、世界が核軍縮に懸命な努力を行っているときに、アメリカレーガン大統領アラスカへのINF配備を提案するという倒錯した軍拡論が世界平和に貢献するでしょうか。不沈空母発言を初めとして、軍拡推進が総理の現実の姿ではないでしょうか。  総理の軍拡志向の典型が三宅島軍事基地建設問題です。総理が本当に平和を目指すのなら、住民の八五%が反対署名し、村長も再三にわたって上京し、その旨を訴えている三宅島における軍事基地建設計画は直ちに取りやめ、気象観測柱の設置強行はやめるべきですが、お答えをいただきたいと存じます。(拍手)  また、我が国企業のココム違反が問題となっておりますが、私は、冷戦構造の亡霊であるココム規制の転換と、武器輸出に関する東西、南北を問わない厳しい規範強化が必要と考えますが、いかがでありましょうか。(拍手)  総理は文化を強調されますが、画一化、集権化によって地域文化を破壊しようとしているのは政府であり、地域の特性、個性を守り、育てているのは自治体と住民であります。中曽根政治が地域にもたらしているのは、霊感商法、地上げに象徴される詐欺や拝金思想、いじめに見られる弱者切り捨てなど人間性の破壊であります。  また、マッキーバーの黄金律を引用されておりますが、アイヌ民族への差別発言、アメリカに対する知的水準発言、アパルトヘイト問題に対する消極的姿勢、さらには国家秘密法制定策動など、こうした総理の人権に対する政治姿勢に黄金律を見出すことは困難であります。(拍手総理は、中曽根政治による人間性の荒廃、人権無視についてどのように責任を感じられているのか、伺いたく存じます。(拍手)  さらに、政治倫理の問題があります。司法の一定の判断が示されたにもかかわらず、ロッキード事件にかかわった政治家の倫理責任は不間にされ、総理自身も口をつぐんでおります。ここ三代の内閣は、直角、仰角、月影内閣などとも呼ばれ、田中曽根内閣などとも指摘されております。このような総理に倫理を語る資格はないと考えますが、いかがでありましょうか。(拍手)  ある財界人は、中曽根総理について、靖国神社に公式参拝した人物が、次は広島に飛んで原爆犠牲者を悼む市民の気持ちになり切った俳句がつくれると評したと言われます。中曽根流パフォーマンスに基づき、多くの不幸せと不公平を振りまいたのが思いやりと責任政治であり、「戦後政治の総決算」であります。どこに思いやりと責任があったのか、総理所見を伺いたく存じます。(拍手)  私は、政党政治ということをさきに述べました。自由民主党の立党の精神とその目指す政治はこのようなものなのでしょうか。「戦後政治の総決算」と言う中曽根総理に対して、次代を担うニューリーダーの一人、主要閣僚である宮澤大蔵大臣は「戦後政治の継承」と言われていますが、自由民主党の中にあって、不幸せと不公平のまさに立党の精神に反する政治を継承されようとするのか否か、所見を求めます。(拍手)  また、あなた自身、中曽根政権下にあって主要ポストを務められ、軍拡、増税を象徴とする中曽根政治への責任をどう感じられておるのか、あわせて伺いたいと思います。  私は、総理政治姿勢の根本に疑問を持ちます。総理は「増税なき財政再建」を公約といたしました。そして増税を提案し、また、その増税法案さき国会において成立したと仮定しても、財政再建は既に破綻しております。これで総理の政権担当者としての政治生命は終わりであります。歴代の内閣はすべて、みずからの内閣に課した課題、公約を達成するか、それが挫折したかで進退を決定してきました。あなたの所信表明演説、また昨日の質問に対する答弁を聞いても、何らそうした姿勢は見られません。総理土地問題や税制改革について語る資格は既にないのであります。  それにもかかわらず、総理は、今の続く限りセミ時雨は実行したいとされました。私は、中曽根総理がやり残されたこと、あるいは率直に言わせていただければ振りまかれた矛盾の是正については、もはや新しい政権への総理の申し送りとし、これ以上の矛盾のばらまきを慎むことが政権担当者としてのモラルであり、総理の文化への消極的貢献であると考えます。中曽根パフォーマンスは、まさにハプニングとして終わらせるべきであると申し添え、私の質問を終わります。(拍手)     〔議長退席、副議長着席〕     〔内閣総理大臣中曽根康弘登壇
  8. 中曽根康弘

    内閣総理大臣中曽根康弘君) 小林議員にお答えをいたします。  その前に、先ほどの永末議員の質問に対して補足を申し上げます。  臨教審のフォローアップの問題でございますが、臨教審終了後の教育改革の進め方については、答申のフォローアップのあり方等も含め、現在臨教審自体において審議中と承知しておりまして、その審議を見守りたいと考えております。  次に、中曽根政治の文化、文明に果たした役割という御質問でございましたが、私は「戦後政治の総決算」を目指しまして文化のためにも努力したところでございます。国際性とか日本のアイデンティティーとか、あるいは日本の文化の発信についても努力をしよう、そういうことで国際日本文化研究センターをつくるとか、そういう面につきましても努力もいたしました。がんの研究に対して非常な力を入れたことも事実でございますが、しかし、今後とも大いに努力してまいりたいと思います。  次に、「戦後政治の総決算」についてでございますが、これらの成果についてはいずれ歴史が判定するものと考えます。  次に、税金の問題でございますが、減税はぜひ実施したいと思っております。社会的弱者に対しましては、私も税をつくるときにいろいろ考えまして、あらゆる点につきましても配慮した次第であり、税については税制協議会答申を見守っております。  雇用の創出につきましては、ここで御答弁を申し上げましたように、今三十万人雇用開発プログラムを実施しておる最中でございます。円高の関係やら産業構造の変化によりまして失業も出てまいりました。また、私の政権担当中には、統計のとり方の変化もあったのでございます。しかし、いずれにせよ、雇用創出については今後とも大いに努力をいたします。  土曜閉庁あるいは休暇の問題、時短の問題等につきましては、先般来申し上げているように、これは真剣に取り組んで検討してまいりたいと思っております。  沖縄における海兵隊クラブの人員整理問題につきましては、今外務省といたしましてもアメリカ当局ともいろいろ相談もし、善後策を講じておるところでございます。  生活関連の社会資本の整備につきましては、今回、公共事業費の追加一兆三千五百八十五億円を計上するとともに、NTT株式売却収入を活用して、産業投資特別会計への繰り入れ四千五百八十億円を計上して整備に努めておるところでございます。なお、下水道とか公園等の生活関連公共事業には重点的に配分してまいりたいと思いますし、この方針は当分の間継続すると考えております。  地域格差の是正につきましては、これは四全総でも指摘されておるところでございまして、東京や大阪だけに集中しないように、今後とも多極分散の点から見まして、北海道、東北あるいは九州、沖縄等について十分検討したいと思います。  地価の高騰対策につきましても、先般来申し上げておりますように、閣僚会議を中心にしまして今懸命の努力をしております。また、新行革審に対しても意見の御提示を願っておるところでございます。  水の対策につきましては、従来より計画的にダム建設等の水資源開発をやっておると同時に、節水意識等の向上も大事であり、今後とも総合的に実施いたします。  環境問題は、今や世界的にも重要な問題でありまして、さきベネチアサミットでも合意をしたところでございます。今後とも二国間の協力あるいは国連等を通じた国際協力についても努力をしてまいります。  不況地域対策や情報アクセス整備等につきましては、特に石炭、造船、鉄鋼等の特定不況産業、あるいは地域における不況産業、あるいはいよいよ今回減反を実施するということになりまして農村関係に出てくると予想される問題、これらにつきまして十分手当てをしてまいりたいと思っております。  整備新幹線の問題につきましては、整備新幹線財源問題等検討委員会において検討を進めておるところであり、その結論を待って対処するつもりでございます。  中核農家の育成というものは、今後農業生産性を向上させるためには必要不可欠の政策でございまして、先般の農政審の答申を中心に、大いに生産性向上のためにその一環として努力してまいります。  米の輸入自由化の問題等につきましては、国会の決議を我々は尊重いたしまして、この問題について対処してまいるつもりでおります。  十二品目の農産物の輸入の問題については、今ガットのパネルの場で審査が行われており、今二国間協議等も含めまして懸命の努力をしております。  地方財政措置につきましては、補正予算による追加公共事業等に係る地方負担が極めて多額に上ることから、事業の円滑な実施に支障を生じないよう適切な財源措置を講ずる必要があり、具体化しております。また、今後税制改革取り扱いいかんによって必要となる地方財政対策見直しとあわせて関係省庁で協議して、追加公共事業等に伴う地方負担に係る具体的な財源対策、交付税法案の改正内容等について決定してまいります。地方単独事業の追加についても、地方団体の意向もある程度踏まえつつ、八千億円の追加措置を要請することといたしたものであります。緊急経済対策措置に従ってやったものでございますが、地方団体とも協力してやれば、これは可能であると考えております。  老健法の問題については、二十一世紀においても安心できる老後生活を保障するために、老人保健法を改正するなど所要の制度改革をやりました。今後とも老人等に対する社会保障制度の安定的運営が図られるように必要な予算は確保してまいります。  防衛費の問題については、専守防衛等の先般来申し上げた原則を維持いたしまして、今後とも節度ある防衛力の整備に努力してまいります。  アラスカの核兵器の問題は、ここでも何回も申し上げましたように、私は、グローバル・ゼロ、アジアヨーロッパは平等、そしてゼロを目標にする、そういうことを実現するために、交渉一つのテクニックとして過渡期的にそういう発言を認容する、そういう意味で、それはあくまでアジアヨーロッパはゼロにする、そういう目的のために言っておるのでございます。  ココムにおける武器輸出の規制の問題につきましては、東西関係の持つ重要性等にかんがみまして、我々自由主義諸国においては、安全保障の観点からも戦略物資の共産圏輸出の規制の必要を痛感しておるわけでありまして、協力を行っておる次第であります。今後ともこの協力関係は持続するつもりであります。なお、武器輸出については、武器輸出三原則、武器輸出に関する政府統一見解等に基づきまして、厳正に対処してまいります。  三宅島の艦載機訓練場の問題は、三宅島の皆さんの御理解、御協力をいただきまして、ぜひ実現したいと考えておる次第であります。  私の人権に対する政治姿勢あるいは政治倫理、政治に対する愛情等の問題についていろいろ御質問がありましたが、結局、政治家の業績というものは歴史が判定するものである、そういうふうに考え努力してまいりたいと思っております。  なお、先ほど、靖国神社に参拝して、また翌日広島に行って参拝するというのは変だと疑問視していましたが、そういう考え自体が問題であると私は申し上げるのであります。(拍手)靖国神社に国会議員が参拝する、翌日広島に行って平和を念ずる、これは普通の人間なら当然考えられることなのであります。(拍手)何らかの偏見をお持ちの方でなければ、こういう質問は出ないと私は考えるのであります。  残余の答弁は関係大臣がいたします。(拍手)     〔国務大臣宮澤喜一君登壇
  9. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 六十二年度の減税とその財源についてお尋ねがございました。  ただいま税制改革協議会において種々御協議中でございますので、その結果がまたどのような規模減税になりますか、ただいまのところ予測をいたしかねておりますが、しかし、御協議の状況を踏まえまして、できますならば、六十二年度のいわゆる先行分の減税につきましては、六十一年度分の剰余金がかなりたくさん出ておりますので、それを含めまして今年度の歳出歳入のやりくりの中で処理をさせていただくことができるのではないだろうか、御協議の結果にもよりますが、ただいまさよう考えております。  ただ、同時に、そのような所得税の減税が行われますと、これは一年度限りということは恐らく考えにくいことであって、明年またもとに戻るということはないであろうと思われますので、そういたしますと、やはりこれは将来に向かっての恒久財源を講じさせていただきませんと、財政の運営としては問題があると存じます。  それならばNTT株でいいかというお尋ねのようでございましたが、これは先ほど総理も言われましたように、もう繰り返しては申しませんが、過去の国民の蓄積でございますから 過去の債務の償還あるいは将来の財産的な投資に用いていきたいと考えておりまして、また、これはいっときの収入でございますので、恒久財源としては適当でないと考えております。  それから、不公平税制のことにつきましては、御指摘のとおりと存じます。私どもも、有価証券の譲渡益課税等々につきましては、税務の執行体制が許します限り、それの体制を強化しつつ、また課税も強化いたしたいと考えまして、先般、通常国会でこの点も御提案を申し上げたところでございます。  それから、地方財政のことにつきまして御懸念がございまして、これは私はごもっともな御懸念だと思います。と申しますのは、ただいまのところ税制改正は協議会で御協議中でありますために、その税制改正の結果いかんによりまして地方財政が非常に大きな影響を受けます。したがいまして、税制改正の取り扱いが固まりました段階で地方財政見直しをいたさなければならないと考えております。  もとより、その際には、昭和六十一年度の地方交付税の精算分の増がございますし、さらに、おっしゃいますように、今回の補正による地方負担が相当大きいのでございますから、このたびの緊急経済対策を実行いたします上で地方財政の円滑な運営に支障が生じませんように、自治大臣とよく御相談をいたしまして処置をいたします。  最後に、中曽根内閣政治につきまして大変に難しいお尋ねがございましたが、中曽根首相のもとに、戦後の自由あるいは平和、基本的人権の尊重がさらに推進をされてまいりましたし、また国民生活も高い水準にございます。その中で、過去四十年間に生じたいろいろな制度上の欠陥あるいは社会のひずみを、いろいろな改革の形で中曽根総理が主導権をとって是正を図られました。同時に、国際国家としての我が国の進路を定めよう、こういうことを指導者として図っておられるものと私は考えておりまして、このような基本政策は、もとより引き続き承継せられるべきものであると考えております。(拍手)     〔国務大臣綿貫民輔君登壇
  10. 綿貫民輔

    国務大臣(綿貫民輔君) 地価対策の問題でございますが、さきに地価対策閣僚会議の申し合わせを受けまして、百八国会におきまして国土利用計画法の改正もさせていただきまして、いよいよその中の監視区域を設けるという条項につきましても、八月一日からこれが各自治体で施行されることになりました。さきに東京都では、条例によりまして五百平方メートル以上のものについての規制を決めておりますが、捕捉率が非常に低いということでございまして、さらに規模単位を下げることによって大きな効果が得られるというような話も聞いております。  またさらに、土地税制につきましては、小規模の短期の転がしを封ずるために、短期の譲渡所得に高率の税金をかける短期譲渡益の法律をさき国会に提出したわけでございますが、残念ながら廃案になったわけであります。あの法案が成立しておりますと相当効果があっただろうと言われておりますので、来るべき国会にはぜひ成立をさせていただくようにお願いを申し上げる次第でございます。  なお、四全総の中におきまして具体的な地方振興についての目玉がないという御指摘でございますが、私どもは、地方振興につきましては、それぞれのプロジェクトが十分発揮できるような位置づけと地方のインフラ整備について位置づけしたわけであります。そのために各知事さん方から感謝の電報がこんなに来ております。  また、特に北海道につきましては、北海道において北海道を考える二百人委員会という皆様方の御意見等も承っておりますし、私の諮問機関としての北海道を考える会も、数回北海道について協議をしておるわけでございまして、一昨日は現地においてもその会合を開いております。私どもは、北海道についても具体的なプロジェクトが生かされるようにいろいろ努力をしておるわけでございまして、四全総の中に地方振興の具体的な項目がないとか、おいしい言葉だけが並べられておるというようなことは当たらないと思います。(拍手)     〔国務大臣天野光晴君登壇
  11. 天野光晴

    国務大臣(天野光晴君) 小林議員からの私に対しての質問は三つございます。  一つは、私の権限外でございます、土地の問題でございますが、それは今国土庁長官が御説明されましたから、それで結構だと思うのであります。私たちが中心になって国土利用計画法という法律を今から十三年ばかり前につくったのでありますが、十年という歳月は非常に変わりました。そうですから、そういう意味でやはり大きな見直しをする必要もあると思いますし、そう長くこの席におりませんから、そろそろ皆さん方と同じ方に座るようになりますから、その段階において十二分検討するようにいたしたいと考えております。(拍手)  水の問題につきましては、総理大臣からも答弁がございましたが、私この問題をやっていますと時間がとても大変でございますから、私の行政の範囲内において現在やっておりますが、現在の状態では利根川水系と琵琶湖水系と筑後川水系は救うことができないということでございまして、これは内容を変えて始末をしないといけないという考え方を持っております。その間、都市の内部において使った水の再生利用というような方法手段も講じておりますが、なかなか金がかかりますから容易でないと思いますが、何らかの措置を講じなければならないと考えておりまして、この始末は十二分いたしたいと考えております。  それから、大都市の始末の問題については、こういうことを言うから私は悪いのですが、東京は余り人が集まり過ぎていますから、余り考えなくてもいいんじゃないかなというような感じがしないわけではありませんが、地方都市については十二分考えもいたしますし、大都市についてはある程度のことはやはり考えなければいけないと思っておりますから、これもひとつ皆さん方の御協力を願いまして何とか始末をつけたいと考えております。  以上です。(拍手
  12. 多賀谷真稔

    ○副議長(多賀谷真稔君) 松本善明君。     〔松本善明君登壇
  13. 松本善明

    ○松本善明君 私は、日本共産党・革新共同を代表して、総理並びに関係閣僚に質問をいたします。  総理、あなたが八つ裂きにされてもやると言った売上税マル優廃止は、公約違反の大増税を許さないという国民の怒りの爆発と一斉地方選挙における自民党の大敗の前に、前国会でついに廃案になりました。退陣して当然である中曽根内閣国民の厳しい批判を受けたマル優廃止の大増税法案を再び提出し、総理はこれを将来の政治復活の布石にしようとしておりますが、私は、まずこれに厳しく抗議をして質問を始めようと思います。(拍手)  あなたは、廃案から半月もたたないのに、ベネチアサミットマル優廃止を各国に言明いたしました。自民党は、マル優廃止所得税減税実施の大前提であるなどと言い、今回の補正予算では当然削除すべきこれらの増税による税収を、売上税まで含めてそのまま残したのであります。これこそ民意無視、国会軽視の最たるものではありませんか。  あなたは昨日もその必要性を強調しましたが、衆参同時選挙中に国民に対してはっきりやらないと言ったこの公約は厳然たるものであります。総理、あなたは、あなたが外国に言明すれば国民への公約がなくなるとでも思っているのですか、明確な答弁を求めます。(拍手)  議会制民主主義の破壊という点では、税制改革協議会なるものも極めて重大であります。総理所信表明で、これが衆議院に設置されたと述べておりますけれども、衆議院に設置されたというなら、院を構成する日本共産党をなぜ除くのでありますか。衆議院議長も、あっせん案の中にある各党には日本共産党・革新共同も含まれることを確認しており、これは我が党があっせん案を拒否した後にも変わりませんでした。だからこそ、自民党も当初、共産党を含めた構成を提案していたのであります。社公民三党の主張した共産党排除の構成に自民党が同調したのは、議会制民主主義に反するのではありませんか、総理見解を伺います。一体総理は、衆議院のいかなる機関がいつこの設置を決定したと考えているのか、聞きたいと思います。  国会が賛否両論、意見の異なる政党で構成されていることは、天下の常識であります。それを、一方の賛成者だけで事を処するようなことをするなら、もはや国会はその機能を失い、独裁政治の場になるでありましょう。今想起すべきは、戦前、反対者なしの翼賛議会のもとであの無謀な十五年戦争を遂行し、破局を招いた歴史であり、これを再び繰り返してはなりません。共産党を排除してつくった税制協議会は、みずから非公開を決めている密室協議の場であり、私的なものにすぎないことは明白であります。総理見解を求めます。  宮澤大蔵大臣、あなたは財政演説で、売上税マル優廃止による税収分を予算から削除しないのは税制協議会協議が続けられているからだと言っておりますが、私的な話し合いの場にすぎない税制協議会協議が続けられていれば、なぜ廃案になった売上税マル優廃止による税収を残しておくことができるのでありますか。それとも、税制協議会協議の推移いかんによってこれらの法案が復活することがあるというのでありますか。密室協議をしている人たちだけでなく、国民にわかるように具体的に答弁をしていただきたいと思います。(拍手)  この協議会は、今直間比率の見直しをうたった議長あっせんを受けた党だけで構成されておりますが、総理所信表明で強調した直間比率の見直しは、現在の七対三を六対四に変えただけで、間接税は実に六兆円の売上税に倍する大増税であります。総理は、あくまで直間比率の見直しと称して公約違反の大型間接税の導入を、昨日言った不撓不屈の精神で進めるつもりでありますか、はっきり答弁をしていただきたいと思います。  民主主義の根本問題として、共産党幹部に対する盗聴の問題も極めて重大であります。この事件で現職警察官が被疑者として検察庁の取り調べを受けていることは、天下周知の事実であります。もし警察機構が政府・与党に反対する党への盗聴を行っていたとすると、警察法の規定する不偏不党、公平中正に反するだけでなく、あからさまな憲法じゅうりんであり、ウォーターゲート事件同様、民主主義の根本問題であります。だれが見ても関係者と目される警察幹部の異動などというトカゲのしっぽ切りでごまかそうとしても、だれが納得をいたしますか。民主主義の名において許せません。  総理は、この糾明はあくまで厳正、公平、公正に、だれであろうとこれに遠慮することなく行うべきだと本院で私に答弁をされました。これは、警察官が被疑者であろうと遠慮することなく、厳正、公平に捜査するべきだということと思いますが、総理の明確な答弁を求めます。(拍手)  警察庁が盗聴によって得た情報は、最終的に内閣に入っていると思われますが、官房長官、あなたは職責上その情報を受けているでしょう。このことについてはよく知っていて、総理にも報告をしているでありましょう。正直に、率直に答弁をしていただきたいと思います。  国家公安委員長は、参議院で我が党の橋本議員に対し、検察庁の捜査に警察は包み隠さず積極的に事実を解明するという姿勢で協力すると答弁をいたしました。警察は、警察官が取り調べに対して積極的に事実を供述するよう指導すべきではありませんか。また、警察として積極的に事実を解明し、調査の結果を公表すべきだと思いますが、国家公安委員長の明確な答弁を求めます。  最近、政府高官や警察庁首脳が検察庁に対し、何とか不起訴にと執拗に働きかけているとのことでありますが、このようなもみ消し工作が事実であり、万一それが成功するとすれば、日本の司法の根幹にかかわる重大なことであります。総理が事実の有無を調査をし、そのようなことを許さないと断言できますか、明確な答弁を求めます。  第二に、世界政治の課題と外交問題について質問をいたします。  総理は、所信表明演説の冒頭以来、核軍縮について、政府があたかも核兵器のない世界実現のために全力を傾けているかのような自画自賛的な発言をしております。しかし、中曽根内閣の実際の路線と行動は、核兵器による抑止論に依拠し、核兵器の維持存続を当然のこととして、国民の非核の世論と運動に真っ向から逆らっております。  総理は、ベネチアサミットで、アメリカは新たにアラスカに中距離核ミサイル百弾頭を配備するようにとレーガン大統領に提案をいたしました。また、倉成外務大臣は、さきの拡大ASEAN外相会議で、東南アジアの非核地帯化を公然と非難し、事もあろうに、感情的な意味での構想であってはならないとか、航行の自由という国際法の原則に合致することも必要ではないかと述べ、国際的な非難を受けております。しかも、倉成外務大臣は、長崎出身であるにもかかわらず、長崎では毎年世界じゅうの人が集まり平和宣言をやっているが、それによって世界の平和がもたらされたかなどと驚くべき発言をしております。かつて、倉成外務大臣は、国連総会で長崎の被爆の実相に触れ、私の揺らぐことのない結論は、核兵器は廃絶さるべしということでありますとまで述べておりました。しかし、今や政府は、世界の大勢に逆らい、みずからのかつての発言にも全く反しているのであります。  世界の現実は、総理、約百カ国を結集した非同盟諸国首脳会議のハラレ会議が、中曽根首相も信奉している核抑止論を痛烈に批判し、このような考え方は現在の最も危険な神話であると宣言をいたしました。日本国内でも、自民党の公然たる妨害をけって、全自治体の三四%に当たる千百三十五自治体が非核決議、宣言を行いました。これは、住民数に換算すると我が国の全人口の五五・六%に相当いたします。核戦争阻止とともに核兵器廃絶を緊急の中心課題としてその実現を求めた広島、長崎からのアピール署名運動は、世界の百五十カ国に広がり、我が国でも今日までに二千四百万人分を超えました。  このような世界の非核の大勢に逆らう中曽根内閣の立場の根底には、自民党自身の文献が明確に述べているように、米国が対ソ核優位を確立することが必要だという考えがあると言わざるを得ません。総理は、昨日、我が国も含めアジアに配備されたアメリカの核トマホークや核攻撃機に全く触れず、INFアラスカ配備発言が交渉のテクニックであると弁明をいたしました。これはまさに米国の対ソ核優位を確立することが必要だという考え方だと思いますが、総理の明確な答弁を求めます。  また、この立場が、昨年来国会でたびたび問題になっている自治体の非核宣言を攻撃する自民党パンフレットの、世界の核兵器にはよい核兵器と悪い核兵器がある、アメリカの核兵器はよい核兵器だとする立場と共通なのではありませんか。この自民党のパンフレットは、当初、核兵器廃絶は日本の平和にとって危険と書き、核兵器廃絶を敵視する立場をとっておりました。そして、国会で追及されると、小さいゴム印をただ一カ所に押して、「核兵器廃絶」の上に「一方的」という言葉をつけ加えました。しかし、それがいかなる意味でも核兵器廃絶への敵視論を捨てたものでないことは、このパンフレット自身、今でも、核兵器廃絶を達成しても通常兵器が残り、核兵器廃絶は有害であるとか、ソ連は絶対に核兵器を廃絶しないなどと強調して、核兵器廃絶の課題への反対を表明しているところから明らかであります。  総理は、今日、ソ連が期限を切った核兵器廃絶の大胆な提案を出して、これを世界の具体的な政治課題にのせ、これに対する諸国政府の対応を問うているとき、そのソ連が核兵器廃絶を絶対に行うことはないという頑迷な悪意ある決めつけにあくまで固執するのでありましょうか。総理はこれまで、ゴルバチョフ書記長の来日を望むとたびたび言ってきましたけれども、そのようないいかげんな認識でソ連側と内容のある討議ができると思っているのでありますか。  さらに総理は、通常兵器がなくなるまでは核兵器をなくさないという立場に立っているのかどうか、それが総理の言う核兵器の究極廃絶の中身なのかどうか、あわせてお答えいただきたいと思います。(拍手)  核兵器全面禁止・廃絶を求める世界の大勢に逆らって、軍事ブロックで対決関係にある他方の側の最大の核兵器保有国アメリカに向かって、核兵器をふやせなどと言った中曽根首相のような核兵器容認の政治家こそ、核兵器廃絶を妨害した最も重大な核軍拡競争促進論者として、後世までその悪名をとどめることは確実であります。何と弁明されるのか、明確な答弁を求めます。  核兵器の廃絶、抜本的な軍縮と世界の経済の問題でありますが、世界経済の今日の深刻な事態を引き起こしたアメリカ責任は極めて重大であります。アメリカの財政と貿易の膨大な赤字、この双子の赤字をなくす方向に向かわない限り、経済摩擦の激化は避けられず、ドル暴落、世界恐慌への不安も消し去ることができません。双子の赤字はレーガノミックスの破綻の結果であり、その根底にはレーガン政権によるとめどなき核軍拡と多国籍企業の暗躍があることは、アメリカ政府議会内部からさえ指摘されているところであります。  あなたは、一度でもアメリカの大軍拡を指摘し、軍縮を要求したことがありますか。東西交渉において常にレーガン大統領の立場を支持するあなたの態度では、それは不可能なことであります。しかし、客観的には、アメリカの大軍拡予算に思い切ってメスを入れることこそ、日本経済の危機の根源である異常円高の是正にもつながります。また、一兆ドルに達する世界の軍事費の削減、累積債務に苦しむ発展途上国への援助強化はもとより、人類の未来にも明るい展望を切り開くことになります。その決意があるかどうか、総理の答弁を求めます。(拍手)  また、国家補償に基づく被爆者援護法制定を決断すべきときではありませんか。この機会に質問をしておきます。  次に、中国との関係について質問をいたします。  中曽根内閣になってから、政府中国との間で相互信頼関係ということを何度も確認し合ってきました。総理所信表明演説の中で「中国との間に長期にわたり安定的な友好協力関係を発展させていく」と述べているのも、そのような立場の確認でありましょう。総理日中間の相互信頼とは何を内容とするのでありますか。光華寮問題など個々には問題や矛盾があっても相互信頼関係が変わらないということは、日米安保条約の容認を中心とする基本関係が揺るがないことだとしか受け取りようがありません。  中国は、一九七二年の米中接近以来、ソ連が世界で一番悪い敵だとする三つの世界論などということを唱え、それまでの態度を百八十度転換させて、日米安保条約や自衛隊を大っぴらに肯定するようになりました。このことは、最近、栗原防衛庁長官が訪中した際にも、中国側が重ねて確認しているところであります。しかし、軍事同盟を大っぴらに肯定し、支持するなどということは、今日世界の大勢に逆行するものであります。特に、社会主義国がそういう態度をとるなどということは言語道断であります。総理中国との間の相互信頼をうたうのは、まさに相手側の社会主義にあるまじき態度を信頼してのことではありませんか。総理見解を伺いたいと思います。(拍手)  第三に、経済の問題であります。  世界一の貿易黒字、対外資産、外貨保有を誇る我が国で、圧倒的多数の勤労国民は、大企業による大量首切り、下請発注の打ち切りに脅かされ、購買力で比較をすればアメリカの二分の一という低賃金、西ドイツよりも三カ月分も長い労働時間に苦しめられ、ウサギ小屋と皮肉られる劣悪な住宅を強制をされております。ニューズウイーク誌が指摘するように、まさに富める日本の貧しき民であります。これが一方で貿易摩擦を引き起こし、一方で内需拡大の妨げになっているのであります。  補正予算を見ると、政府専用機などの政府緊急輸入、民活大企業への無利子融資などがありますが、借金ができなくて自殺や夜逃げをしなければならない中小企業の経営者は怒りを禁ずることができないでありましょう。(拍手売上税マル優廃止の税収を削除しないばかりか、建設国債を大量に発行し、財政再建なき大増税への転換を明確にした補正予算は、国民の期待に全く反するものであります。  今実行すべき具体的な経済政策を四つ提案し、質問をいたします。  その第一は、増税なしの三兆円減税であります。  大企業、大金持ち中心の減税ではなく、サラリーマン四人世帯の課税最低限を三百万円に引き上げること、専業主婦にとどまらず、パート、内職、業者など、すべての婦人を対象とした主婦減税を行うことを要求するものであります。  財源がないなどという反論は成り立ちません。世論調査でも、日本国民の多くは軍事費の削減を望んでおります。円高とともに実質世界第三位になった軍事費を大幅に削減すべきであります。金融、土地、為替の投機、円高差益のひとり占めなどでぼろもうけしている大企業や大金持ちに適正な負担を課すべきであります。それができないというなら、理由を具体的に示していただきたいと思います。(拍手)  第二に、大企業の横暴を厳しく規制し、労働者雇用と暮らしを守ることであります。  五月の失業率は三・二%と史上最悪記録をまたもや更新いたしました。石川島播磨七千人、新日鉄一万九千人などという大企業の大量人減らしが行われておりますが、これを野放しにせず、これら大企業に社会的責任を果たさせるために強力な指導を行うのかどうか。労働時間の短縮アメリカ水準まで行われれば三百五万人、西ドイツ並みなら七百六十万人の雇用の拡大につながります。時間外手当なしに長時間労働を強制して八時間労働制を骨抜きにする労働基準法改悪など、もってのほかではありませんか。(拍手)  国鉄新会社JRでは、国労組合員というだけで新幹線運転士をおろされ、隔離部屋に入れられるというような差別が続発しております。フランスのル・モンド紙が、やめるようしむけるための差別的措置と報道しているとおりであります。これをやめさせますか。  第三は、中小企業、農業の経営危機を打開する緊急対策をとることであります。  異常円高を放置、エスカレートさせて輸出産地を壊滅状態に追い込み、大企業の海外移転、発注先の切りかえを奨励して下請中小企業に塗炭の苦しみを負わせたのは、まさに政府自身であります。中小企業には展望のない事業転換を押しつけただけではありませんか。日本の産業空洞化をもたらしている大企業の海外直接投資の規制措置が必要になっていると思いますが、答弁を求めます。  水田面積の三割に及ぶ米作減反は、農家だけでなく地域経済にも深刻な打撃を与えています。これは、外国農産物の大量輸入を進め、米作に集中せざるを得なくしてきた政府自民党責任であります。減反政策を対策の中心に据えることはやめるべきであります。これ以上減反をやらないと約束することができますか。アメリカはさらに米の輸入自由化を要求しています。米はもちろん、無原則的な農産物の輸入をやめ、日本農業の多面的発展を図るべきではありませんか。総理の答弁を求めます。(拍手)  第四は、公共事業を生活密着型に切りかえることであります。  国際居住年のことしこそ、公共住宅の建設を急がなければなりません。しかるに、そのための経費は補正予算でほとんどゼロに等しいではありませんか。金融措置の拡大だけでウサギ小屋を克服できると思っているのですか。その具体策を伺います。  次に、交差点の事故対策であります。  前国会政府答弁によると、昨年だけで交通事故の死者は一万人近く、負傷者は七十一万人であります。これは、イラン・イラク戦争の年間死傷者よりはるかに多い数であります。しかも、死者の四一・五%が交差点の事故で発生しているということであります。青信号を信じ、安心して人が渡り出したやさきに、これまた発進してきた左折車と接触、衝突という事故であります。大体、通行人が青信号に従って歩くと死傷するというようなやり方は、人命軽視、車尊重ということにほかならず、こういう交通対策そのものが根本的な誤りだと思いますが、総理、国家公安委員長の答弁を求めます。(拍手)  前国会で、総理も、内閣を挙げて努力していると、また宮澤大蔵大臣も、我が堂上田参議院議員の、歩道橋、地下トンネルなどを内需拡大一つとして考えよという質問に対し、重点を置いて考えてきていると答弁をしております。予算上の措置を含めた政府の具体策を質問いたします。  公共事業を進める上でも、また大都市住民の生活を守る上でも、地価高騰対策は急務であります。天野建設大臣が失政と言わざるを得ないほどでありますから、のんびり土地臨調などというのではなく、地価凍結を直ちに実行すべきであります。総理所信表明で、国土利用計画法の効果的運用を言いましたが、そこに定めている規制区域の指定、土地取引の許可制度さえいまだに発動しないのはなぜでありますか。  公害健康被害補償法に反対する集会や請願は連日のように行われております。これは、公害被害指定地域全面解除、患者の新規認定打ち切りを図る財界の意向そのものの悪法であり、撤回すべきではありませんか。(拍手)  以上、答弁を求めます。  第四に、教育の問題であります。  継続審議となっている大学審議会設置法案は、大学の管理運営から大事に至るまで、政府が介入できるようにしようとするものであります。こういうことは、大学の自治を破壊し、学問の自由を奪って、大学を政府の支配下に置くことになります。かつての軍国主義教育のように、今度は、日米軍事同盟と財界のためになる人づくりを進めようというものであります。臨教審はその方向を目指しており、大学審議会設置法はその突破口となるものであります。既に東大では、大学院重点大学へのつくりかえや財界の寄附講座の導入などの策動が始まっています。財界の寄附講座は、陰に陽に財界の大学支配を許す結果に通ずると考えるのが常識でありますが、答弁を求めます。  国立の研究機関や大学と大企業や外国との研究交流を進める研究交流促進連絡協議会への防衛庁の正式参加は、軍産官学協同の方向で国立研究機関を再編するものではありませんか。総理の答弁を求めます。(拍手)  総理、あなたの進めてきた戦後政治の総決算路線は、日米軍事同盟最優先の国家をつくるために、平和と民主主義という戦後政治の原点に挑戦し、憲法の明文さえも改悪しようとするものであります。私は、このような中曽根内閣の即時退陣を要求をいたします。(拍手)  同時に、あなたの進めてきたこの日米軍事同盟を最優先する政治は、自民党のだれが後継者になろうと変わりません。対ソ戦争に国民を巻き込む危険のある安保条約を廃棄して、非核、非同盟、中立の日本をつくることが根本的解決の道であることを指摘し、日本共産党はそのために全力を尽くす決意を述べて質問を終わります。(拍手)     〔内閣総理大臣中曽根康弘登壇
  14. 中曽根康弘

    内閣総理大臣中曽根康弘君) 松本議員にお答えをいたします。  各閣僚にお尋ねでございますから、要点だけを私は申し上げ、特に財政問題については大蔵大臣から答弁していただきます。  まず、マル優廃止の問題を冒頭に申されましたが、マル優の問題は、実は戦争前から貯蓄増強組合あるいは国民貯蓄組合、そういうところで認めておったようです。昭和十六年の太平洋戦争勃発の前後にこれが増強されまして今のような制度に変わってきた。つまり、戦時国債消化のための貯蓄増強政策であった。それが戦後ずっとまだ続いてきておるわけでございます。  外国はこういう制度は余りとっておりません。いわんや国民全般に認めているというようなところは先進国ではないのであります。そういう面から外国は、これは貯金に補助金を与えている制度である、そういう考えに立ちまして、それで日本の貯蓄が増加し、それが円高をつくっている、そういう意味で貿易摩擦一つとして従来取り上げてきたものなのでございます。そういうようないろいろな面から見まして、これは検討を要するという面がございました。  それから、多くの不正の貯金者がおった。これは野党の皆さんも御指摘のとおりでありまして、そういうようなものをこのまま放置していいかということで、グリーンカード制というものも一時は採用されかかったのであります。しかし、このグリーンカード制というものは、特に民社党の皆さんが御反対になりまして、そして、これでやると人権が損なわれる、そういうわけで、こういう制度を続けて、いわゆる背番号制というような形でやって、国民の懐に一つ一つ手を突っ込んでお金を取り出すというようなやり方はどうであろうか。こういうものを認めるとひとり歩きいたしまして、どうしても人権が損なわれるところにいく。そういう意味で、納税については国民が快く御協力願うような体制がいいのだ。そういう面から我々は、この問題については慎重に考えておるわけでございます。  この点につきましては、今税制協議会で御審議願っておりますから、こういう問題も含めまして我々は慎重に検討してまいる予定なのでございます。  それから、共産党を除いた税制協議会に対する御質問がありましたが、これは、国会における各党が御協議した結果こういうことになったので、政府にそういうふうに八つ当たりされても、実は困るのであります。(拍手)  次に、直間比率の見直しの問題でございますが、これもやはり皆さん方の今までの御意見は、高齢化社会が参りますと、今のまま続けていけばこれは相当お金がかかる。そのお金所得税や法人税で取り上げるということはもう限度にきて、むしろ所得税を減らさなければならぬというときである。そういう面からして、結局薄く広く、国民の皆さんに余り負担をかけないで税収が集まるというので間接税という発想が出てきておるわけなんで、そういう点につきましては衆議院議長あっせん、もっとも共産党は直接は余り関係なかったようですが、「直間比率の見直し等今後できるだけ早期にこれを実現できるよう各党協調し、最大限の努力をはらうこと。」こういうふうになっておるので、共産党もぜひ御協調願いたいと思う次第なのでございます。  盗聴事件につきましては、捜査当局において捜査中と承知しております。この種の違法行為に対しては厳正、公平な態度で臨みたいと考えております。  米ソの核兵器の問題でございますが、私は均衡による抑止ということを一貫して申し上げているので、レーガン大統領も、SDI等についてはソ連に対する優位を望まない、そう言っておるのでございます。これを念のために申し上げます。  自民党のパンフレットに対する質問は何回も何回も行われておりますが、一方的廃止は平和を阻害するおそれがある、そういう意味のことが書かれておるのでありまして、一方的廃止ということは、私はまさにそのとおりであると考えておるわけであります。  それから、ソ連の核廃絶の提案の問題でございますが、理想とか観念論は幾らでも言えるのであって、やはり現実的な核兵器廃止論というものは有効な検証が伴うということが大事なのです。(拍手)その有効な検証というものがどの程度前進するか、我々は注目していきたい、そう見ておるわけなのでございます。  さて、その次に、被爆者援護法の問題でございますが、この点につきましては、前から申し上げておるとおり、現行法で、まずこれでいくと考えておりまして、新しい法律をつくる考えはございません。  米国の双子の赤字につきましては、サミットにおきましても随分議論が出まして、そしておのおのが、この点については各国責任を持って自分の課題について努力する、そういうことで決着した次第でございます。  日中間の相互信頼関係の基礎という問題は、やはり世界的大局に立ち、両国人民の幸福というものを考え、また戦争の教訓を十分学んで、その上に立って、周恩来首相が言うように、小異を捨てて大同に立つ、そういうことでこの信頼関係ができておると考えておるのであります。  減税対策財源等については大蔵大臣から御答弁があります。  労働時間の短縮につきましては、これはぜひとも今提案している基準法の改正を速やかに御通過願いたいと思うのでございます。そしてこれが成立した暁は、段階的に、できるだけ早期にこれを具体化していきたいと考えます。もちろん中小企業等に対する配慮は行わなければなりません。  また、公務員に対して、今までの四週六休制とか、あるいは土曜閉庁であるとか、年次休暇の増加、十分なる獲得であるとか消化であるとか、そういう問題につきましても、政府は大きな関心を持って前進させる方向でこれを進めてまいるつもりでおります。  JR各社において組合差別があるとは聞いておりません。  中小企業の不況対策につきましても、六十年十二月以来、新転換法、新地域法等の制定あるいは金融の優遇、あらゆる問題について努力しておるところであり、今後も努力いたします。  海外直接投資の規制という問題については、日本の経済力が増大するにつれまして、この問題は大いに考えなければなりませんし、また、国内産業の空洞化という面も考慮しなければなりません。総合的な観点からこの問題は対処してまいるつもりです。  減反政策につきましては、これは二十一世紀を踏まえました農政審の答申を踏まえまして、農協と協力いたしまして努力してまいりたいと考えております。  米の輸入自由化あるいは農政の問題等につきましては、衆議院、参議院における米自給化等に関する決議を踏まえまして、農政審の答申を尊重してまいりたいと思う次第でございます。  公共住宅の建設につきましても、今後とも住宅建設五カ年計画にのっとりまして、計画的な建設に努めてまいるつもりであります。これからは質的向上、居住水準の上昇という点を特に心がけたいと思います。  交通対策につきましても、政府は重大な関心を持って努力しておりまして、昭和六十五年までに交通事故死者を年間八千人以下に抑制するという目標をぜひとも達成したいと思います。  それから、規制区域の指定の問題でございますが、これは私権に対する厳しい規制を伴うため、慎重に対処すべきものであると考えております。さき国会国土利用計画法による監視区域制度の的確な運用ということが言われておりまして、これを善用してまいりたいと思う次第です。  公健法の問題については、前から申し上げておるとおり、これを撤回する考えはございません。  大学審議会の問題でございますが、これらにつきましては、大学改革を推進するため各方面の英知を結集するものでありまして、寄附講座の導入は、国立大学の教育研究の一層の豊富化、活発化を図るために必要な措置であると思います。これらの施策は各大学の自主的な改革を尊重して促進するためのもので、政府は大学を支配するというような考えはございません。  研究交流促進連絡協議会、これは各省庁が従来から進めている交流を適切に行おうとするものであります。なぜ防衛庁を忌み嫌うのか、私、理由がわかりません。防衛庁も日本のれっきとした官庁の一つでございます。今後ともこれらの研究交流が円滑に行われるように努力いたします。  残余の答弁は関係大臣がいたします。(拍手)     〔国務大臣宮澤喜一君登壇
  15. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 過日の財政演説におきまして、私が税制改革関連の歳入歳出については今回補正を行っておりませんということを申し上げましたことについてのお尋ねでございます。  先般の国会におきまして政府が御提案いたしました税制改革菜の大部分が廃案になりました。したがいまして、形式的に申しますと、ただいまは、それまでの税制と申しますか、それがもう一遍復活したというふうに申すべきであろうかと思いますが、しかし、廃案になりましたときに議長のごあっせんがありまして、いわゆる税制政草協議会が設けられました。この協議会には共産党は御参加でございませんけれども、公党が御参加になって議長のごあっせんのもとに税制改革について御協議をされ、結論をお出しになるということでございますので、これは私どもは決して私的な話し合いの場とは考えておりません。そういうふうには私どもは思いません。  当然、この税制改革協議会の御協議の推移については、私ども敬意を持ってその推移を見守らなければならないと考えておりますし、しかも、この協議会におきましては、何かの税制改革が必要であるということで御議論が進んでおりますので、それに先立ちまして現行税制でもう一遍補正を組むということは、むしろ極めて適当なことでないというふうに考えました。さりとて、この税制改革協議会のこれからの結論を私ども先取りするわけにもまいりませんし、また、そのことも適当なことでない。これは前例のないことでございましたので、どのようにいたすことが政府として最も適当であるかと考えました結果、税制改革協議会の御推移を見守りつつ、今回としては税制改革関連の歳入歳出についての補正を行わないままにいたしておく、これが最も穏当な結論であろう、かように考えた次第でございます。  それからもう一点、交差点の交通事故についての予算上の措置につきまして御指摘がございましたが、これはその節御答弁を申し上げましたとおり、今回の補正予算でも重点的な配分をいたしまして、事業費として四百七十億円を追加いたしましたので、前年度比では二五%の増額になっております。政府としてはこの重要性を十分認識をいたしております。(拍手)     〔国務大臣後藤田正晴君登壇
  16. 後藤田正晴

    国務大臣(後藤田正晴君) 内閣の重要な政策に関する情報、この収集、分析、そしてまた調査は私どもの職務でございます。したがって、それぞれの省庁から必要な情報は入ってきておりますが、松本議員のおっしゃるような情報は内閣の重要施策の範囲の外にあることでございます。したがいまして、そういった情報は一切私のところには入ってきてない。私のところに入ってきてない以上は、総理に私から報告をすることもござい幸せんので、万一、御懸念がございますれば、さようなことはありませんので御安心を願いたい、こう思います。(拍手)     〔国務大臣葉梨信行君登壇
  17. 葉梨信行

    国務大臣(葉梨信行君) 御質問の事件につきましては、ただいま警視庁及び東京地検において捜査中でございます。また、警察といたしましては、検察庁の捜査に対しましては必要な限りの協力をしていると聞いております。ただ、詳細につきましては、ただいま捜査中でございますので、御答弁を差し控えさせていただきたいと思います。  それから、交通対策についての御質問でございますが、昭和六十一年度の統計でございますと、交差点内におきまして三〇・六%、交差点の近くにおきまして一〇・九%、合計して四一・五%の死者が発生しているわけでございます。  警察といたしましては、交差点におきます交通事故の発生を防止するため、人命尊重の理念のもとに、従来から歩行者用の信号機等の交通安全施設を整備いたしまして、また、悪質、危険な違反者の取り締まりを行い、歩行者や自転車の保護活動を活発に行い、そして運転者に対しまして、正しい右折、左折方法等の指導を行ってきたところでございます。今後とも、関係機関、団体と協力の上、引き続きこれらの施策をより一層強力に推進いたしまして、不幸な交通事故の防止を図ってまいりたいと考えております。(拍手
  18. 多賀谷真稔

    ○副議長(多賀谷真稔君) これにて国務大臣演説に対する質疑は終了いたしました。      ――――◇―――――  裁判官弾劾裁判所裁判貝の予備員辞職の件
  19. 多賀谷真稔

    ○副議長(多賀谷真稔君) お諮りいたします。  裁判官弾劾裁判所裁判員予備員村山喜一君から、予備員を辞職いたしたいとの申し出があります。右申し出を許可するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  20. 多賀谷真稔

    ○副議長(多賀谷真稔君) 御異議なしと認めます。よって、許可するに決しました。      ――――◇―――――  裁判官弾劾裁判所裁判貝の予備員選挙
  21. 多賀谷真稔

    ○副議長(多賀谷真稔君) つきましては、裁判官弾劾裁判所裁判員予備員選挙を行います。
  22. 谷垣禎一

    ○谷垣禎一君 裁判官弾劾裁判所裁判員予備員選挙は、その手続を省略して、議長において指名され、その職務を行う順序については、議長において定められることを望みます。
  23. 多賀谷真稔

    ○副議長(多賀谷真稔君) 谷垣禎一君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  24. 多賀谷真稔

    ○副議長(多賀谷真稔君) 御異議なしと認めます。よって、動議のとおり決しました。  議長は、裁判官弾劾裁判所裁判員予備員に安井吉典君を指名いたします。  なお、その職務を行う順序は第三順位といたします。      ――――◇―――――
  25. 多賀谷真稔

    ○副議長(多賀谷真稔君) 本日は、これにて散会いたします。     午後四時三十三分散会      ――――◇―――――