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1987-07-28 第109回国会 衆議院 法務委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    国会召集日昭和六十二年七月六日)(月曜日 )(午前零時現在)における本委員は、次のとお りである。   委員長 大塚 雄司君    理事 井出 正一君 理事 今枝 敬雄君    理事 太田 誠一君 理事 熊川 次男君    理事 保岡 興治君 理事 稲葉 誠一君    理事 中村  巖君 理事 安倍 基雄君       逢沢 一郎君    赤城 宗徳君       稻葉  修君    上村千一郎君       加藤 紘一君    木部 佳昭君       佐藤 一郎君    佐藤 敬夫君       塩崎  潤君    丹羽 兵助君       宮里 松正君    伊藤  茂君       小澤 克介君    坂上 富男君       山花 貞夫君    橋本 文彦君       冬柴 鉄三君    塚本 三郎君       安藤  巖君 ————————————————————— 昭和六十二年七月二十八日(火曜日)     午前十時二分開議 出席委員   委員長 大塚 雄司君    理事 井出 正一君 理事 今枝 敬雄君    理事 太田 誠一君 理事 熊川 次男君    理事 保岡 興治君 理事 稲葉 誠一君    理事 坂上 富男君 理事 中村  巖君    理事 安倍 基雄君       逢沢 一郎君    赤城 宗徳君       上村千一郎君    木部 佳昭君       佐藤 一郎君    佐藤 敬夫君       宮里 松正君    井上  泉君       小澤 克介君    山花一貞夫君       橋本 文彦君    冬柴 鐵三君       安藤  巖君  出席国務大臣        法 務 大 臣 遠藤  要君  出席政府委員        法務大臣官房長 根來 泰周君        法務大臣官房司        法法制調査部長 清水  湛君        法務省民事局長 千種 秀夫君        法務省刑事局長 岡村 泰孝君        法務省訟務局長 菊池 信男君        法務省人権擁護         局長      高橋 欣一君        法務省入国管理        局長      小林 俊二君  委員外出席者        警察庁刑事局捜        査第一課長   広瀬  権君        林野庁林政部長 安橋 隆雄君        自治省行政局行        政課長     濱田 一成君        最高裁判所事務        総局総務局長  山口  繁君        最高裁判所事務        総局経理局長  町田  顯君        最高裁判所事務        総局民事局長  上谷  清君        最高裁判所事務        総局家庭局長  早川 義郎君        法務委員会調査        室長      末永 秀夫委員の異動     ————————————— 七月二十八日  辞任        補欠選任   伊藤  茂君    井上  泉君 同日  辞任        補欠選任   井上  泉君    伊藤  茂君 同日  理事稲葉誠一君同日理事辞任につき、その補欠  として坂上富男君が理事に当選した。     ————————————— 七月六日  下級裁判所設立及び管轄区域に関する法律の  一部を改正する法律案内閣提出、第百八回国  会閣法第五二号)  外国人登録法の一部を改正する法律案内閣提  出、第百八回国会閣法第六二号)  民法等の一部を改正する法律案内閣提出、第  百八回国会閣法第八一号)  刑事施設法案内閣提出、第百八回国会閣法第  九六号)  刑事施設法施行法案内閣提出、第百八回国会  閣法第九七号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事辞任及び補欠選任  国政調査承認要求に関する件  参考人出頭要求に関する件  下級裁判所設立及び管轄区域に関する法律の  一部を改正する法律案内閣提出、第百八回国  会閣法第五二号)  外国人登録法の一部を改正する法律案内閣提  出、第百八回国会閣法第六二号)  民法等の一部を改正する法律案内閣提出、第  百八回国会閣法第八一号)      ————◇—————
  2. 大塚雄司

    大塚委員長 これより会議を開きます。  この際、理事辞任の件についてお諮りいたします。  理事稲葉誠一君から、理事辞任したいとの申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 大塚雄司

    大塚委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  引き続き、理事補欠選任の件についてお諮りいたします。  その補欠選任につきましては、先例により、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 大塚雄司

    大塚委員長 御異議なしと認めます。よって、委員長坂上富男君を理事に指名いたします。      ————◇—————
  5. 大塚雄司

    大塚委員長 国政調査承認要求に関する件についてお諮りいたします。  裁判所司法行政法務行政及び検察行政等の適正を期するため、本会期中  裁判所司法行政に関する事項  法務行政及び検察行政に関する事項並びに  国内治安及び人権擁護に関する事項について、小委員会設置関係各方面からの説明聴取及び資料要求等の方法により、国政調査を行うため、議長に対し、承認を求めたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 大塚雄司

    大塚委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  7. 大塚雄司

    大塚委員長 お諮りいたします。  本日、最高裁判所山口総務局長町田経理局長上谷民事局長から出席説明要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 大塚雄司

    大塚委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  9. 大塚雄司

    大塚委員長 内閣提出下級裁判所設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案外国人登録法の一部を改正する法律案及び民法等の一部を改正する法律案の各案を議題といたします。  まず、趣旨説明を聴取いたします。遠藤法務大臣。     —————————————  下級裁判所設立及び管轄区域に関する法律の   一部を改正する法律案  外国人登録法の一部を改正する法律案  民法等の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  10. 遠藤要

    遠藤国務大臣 下級裁判所設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。  この法律案は、簡易裁判所設立後の社会事情変化にかんがみ、その配置適正化し、その機能の充実強化を図るため、簡易裁判所新設廃止及び管轄区域変更を行うとともに、市町村廃置分合等に伴い下級裁判所設立及び管轄区域を定める法律別表について必要とされる整理を行おうとするものであります。  以下、簡単にその要点を申し上げます。  第一は、社会事情変化により事件数が著しく減少している小規模簡易裁判所については、その配置適正化により簡易裁判所全体の充実強化を図るため、統合される簡易裁判所事件数及び受け入れ序となるべき隣接の簡易裁判所までの所要時間を基本としつつ、各地域個別事情を考慮して、三崎簡易裁判所ほか百庁の簡易裁判所廃止統合することとしております。  第二は、東京大阪名古屋及び北九州の大都市地域に存する簡易裁判所については、その配置適正化により増大する住民の需要にこたえ、裁判所の人的、物的な執務態勢を強化するため、これらの各都市に所在する十七庁の簡易裁判所廃止統合することとしております。  第三は、裁判所法第三十八条に基づき、その事務のすべてを他の簡易裁判所に移転し、全く事務を取り扱っていない五同市簡易裁判所ほか二十庁の簡易裁判所について、その実情に合わせ法律上も廃止することとしております。  第四は、人口の増加等により相当数事件が見込まれる町田市及び所沢市に簡易裁判所新設することとしております。  第五は、行政区画状況、交通の利便等にかんがみ、新島簡易裁判所ほか八庁の簡易裁判所管轄区域の一部を他の簡易裁判所管轄区域変更することとしております。  以上の簡易裁判所廃止新設及び管轄区域変更については、法制審議会答申にのっとり、地元自治体を初め弁護士会等関係機関意見を十分聴取し、各地の実情の把握に努めた上でこれを行うこととしたものであります。  第六は、市町村廃置分合等に伴い、下級裁判所設立及び管轄区域を定める法律別表中の市町村名変更等所要整理をすることとしております。  なお、この法律施行の時期については、東京大阪及び名古屋の各都市簡易裁判所統合並びに簡易裁判所新設を実施するためには、別に予算を得て庁舎整備をする必要がありますので、庁舎整備が完了し次第施行できるよう施行期日を政令に委任することとし、その他の簡易裁判所統合管轄区域変更等は、昭和六十三年五月一日から施行することとしております。  以上が下級裁判所設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案趣旨であります。  何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。  次に、外国人登録法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。  外国人登録法に基づく指紋押捺制度については、在日外国人等から種々議論がありますところ、この制度が正確な外国人登録を維持するために果たしてきた役割は大きく、その改正外国人の出入国・在留管理の根幹に係るものであることから、慎重に研究、検討を行ってまいりました。その結果、外国人の心情を考慮して指紋制度中心外国人登録制度の適正、合理化を図る必要があると認められるため、この際外国人登録法の一部を改正しようとするものでありまして、その改正要点は次のとおりであります。  その第一は、登録等申請をする場合における指紋押捺原則として最初申請の場合に限ることとすることであります。すなわち、登録されている者と当該申請に係る者との同一性指紋によらなければ確認できないとき等時に指紋の再押捺を命じられたときを除き、重ねて指紋を押すことを要しないこととするとともに、押すべき指紋は、登録原票及び指紋原紙に押せば足りることとし、登録証明書には指紋を転写することとするものであります。  その第二は、登録証明書をラミネートカード型のものに改めることを前提に法律規定整備することであります。  その第三は、登録確認期間適正化することであり、外国人は、新規登録を受けた日または前回確認を受けた日から五年を経過する日前三十日以内に登録事項確認申請をしなければならないこととなっているのを、新規登録を受けた日等の後の五回目の誕生日から三十日以内に確認申請を行わなければならないこととするとともに、在留期間が一年未満である等のため指紋を押していない者等については、新規登録等を受けた日から一年以上五年未満の範囲内において短縮することができるとするものであります。  以上がこの法律案趣旨であります。  何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願い申し上げます。  次に、民法等の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。  この法律案は、養子制度充実等を図るため、従来の養子制度のほかに、子の利益のため特に必要がある場合に、家庭裁判所審判により養父母との間に実の親子と同様な強固で安定した親子関係を成立させる特別養子制度新設するとともに、従来の養子制度についても配偶者のある者が縁組をする要件を緩和し、あわせて、親族関係変更に伴う氏の変更に関する規定整備する等の目的から、民法家事審判法及び戸籍法の一部を改正しようとするものであります。  改正要点を申し上げますと、まず、民法中、特別養子につきましては、第一に、この特別養子縁組家庭裁判所審判によって成立させることができるものとし、その審判養親となるべき者の請求に基づいてするものとしております。そして、家庭裁判所は、審判に先立ち、養親となる者が養子となるべき者を監護、養育する状況を観察して、これを決すべきものとしております。  第二に、特別養子縁組実質的要件としましては、実親による監護が著しく困難または不適当である等の特別の事情のある子について、その利益のため特に必要があるときに限るものとし、原則として養子となる者が六歳未満であること、養親となるべき者が二十五歳以上の夫婦であること及び実親の同意があることを要するものとしておりますが、これらの要件については、いずれも実際の必要に応じ、特定の場合に若干の例外を認めております。  第三に、縁組の成立によって、養子養親嫡出子の地位を取得するとともに、養子と実方の親族との親族関係は、婚姻障害を除き終了するものとしております。  第四に、離縁原則としてこれを許さないものとしておりますが、養親養子利益を著しく害する事由があり、実親が相当監護をすることができるときは、家庭裁判所は、実親等の請求に基づき、審判により離縁をさせることができるものとし、離縁により養子と実親との親族関係が従前に復するものとしております。  次に、従来の養子制度等につきましては、第一に、現行法においては夫婦は必ず共同で縁組をしなければならないものとされておりますが、これを改め、養子未成年者である場合を除き、夫婦の一方でも、配偶者同意を得て、単独で縁組をすることができるものとしております。  第二に、現行法においては、十五歳未満の子について、離婚等の際親権者でない父母の一方が子の監護者とされているときでも、親権者は、監護者の意思にかかわりなくその子の縁組の承諾をし得るものとされておりますが、これを改め、そのような場合には子の監護者同意を得なければならないものとしております。  第三に、子がその氏を父母の氏に変更するに当たって家庭裁判所の許可を要しない場合を認めるとともに、縁組後七年を経過した後に離縁をしたときは、養子は、戸籍届け出によって離縁後も養親の氏を称することができることとするなど、親族関係変更等に伴う氏の変更について規定整備することとしております。  次に、家事審判法につきましては、前述の特別養子縁組及びその離縁に関する処分を、同法第九条第一項甲類審判事項として新たに規定することとしております。  最後に、戸籍法につきましては、第一に、民法改正により特別養子制度新設されることに伴い、特別養子縁組届け出及び届け出のあった場合の戸籍の取り扱いに関し所要規定を設けるものとしております。  第二に、民法改正により氏の変更についての規定整備されることに伴い、その届け出及び届け出のあった場合の新戸籍編製等に関する規定について所要整備をするものとしております。  第三に、その他の民法改正に伴い、届け出に関する規定について所要整備をするものとしております。  以上が民法等の一部を改正する法律案趣旨であります。  何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。
  11. 大塚雄司

    大塚委員長 これにて趣旨説明は終わりました。     —————————————
  12. 大塚雄司

    大塚委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  下級裁判所設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案審査のため、参考人出頭を求め、意見を聴取することにいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  13. 大塚雄司

    大塚委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、参考人の人選、出頭の日時につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  14. 大塚雄司

    大塚委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————
  15. 大塚雄司

    大塚委員長 下級裁判所設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案について質疑に入ります。  質疑申し出がありますので、順次これを許します。稲葉誠一君。
  16. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 法案質問に入りますが、私は、法案質問につきましては、主として法律案提案理由説明と、この資料法制審議会答申というのがございますが、それを中心にしてお聞きをしたいというふうに思っております。  私は、法案質問のときには質問内容というものを細かく通告する必要はないのだ、これは政府が責任を持って提案している以上は、これに対して答えるのが当たり前の話ですから、それについてかれこれ政府委員室から質問内容などを聞いてくるというのはこれは筋が違う、こういうふうに今思っておるわけです。余り言っても悪いけれども、そういうふうに思っておるのですね。ただ、一般質問の場合は違うわけですよ。一般質問の場合は何を質問されるかわからないのですから、その場合には聞いてくるのが当たり前なんですけれどもね。そういう点は念を押すというか、くぎを刺しておきます。そのかわり私は、法案質問の日には法案だけ質問いたします。そこで、この法制審議会答申などを見てみますと、まず法制審議会というものは一体どういうものなのか、それから、なぜこの法案法制審議会にかけられなければならないのかということからちょっとお聞きしたいと思うのですが、法制審議会というのは法務省設置法か何かでどういうふうに規定されておるものですか。
  17. 清水湛

    清水(湛)政府委員 お答えいたします。法制審議会法務省設置法等によりまして法務大臣諮問機関、こういうことで設置されているものでございます。
  18. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 法務省設置法のどこですか。——それは調べればわかることですからいいのですが……。ここで、当初五百五十七カ所に設置された、こうありますね。設置されたという意味はどういう意味なのかちょっとよくわからないのですが、このうち看板だけかけていて実際何にもやらなかったところが相当ありますね。もう古い記憶では都島簡易裁判所その他あるわけですが、これはとことどこで幾つぐらいございましたか、全然何もしなかった……。
  19. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 御指摘の点は裁判所法三十八条の、特別の事情によって簡易裁判所執務ができないときに、当該簡易裁判所の所属しております地方裁判所管轄区域内にあります他の簡易裁判所にその事務の全部または一部を移転することができる、これは地方裁判所裁判官会議決議によってやるわけでございますが、それによって事務移転をされております庁についての御指摘であろうかと思います。  当初、昭和二十二年五月三日の段階におきまして既に八つの庁についてそれぞれ事務移転がなされております。ただいま御指摘都島簡裁につきましても、大阪簡易裁判所事務移転がなされたわけでございます。その後さらに事務移転がなされております庁がふえておりまして、現在では合計で二十一ございます。
  20. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 その事務移転というのは規則でやるわけですか。あるいは法律でやるのですか。どういうふうになっているのですか。
  21. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 先ほど申しましたように、裁判所法の三十八条で、特別の事情がある場合に地方裁判所裁判官会議決議によって事務移転をすることができる、こういうふうになっております。
  22. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そうすると、それは五百五十七カ所の中に入っているのですか。
  23. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 ただいま申し上げました事務移転庁につきましては、いずれも管轄法設置が定められておりますので、現在管轄法で定められております五百七十五の簡易裁判所の中に入ってございます。
  24. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 私の聞いているのは、結局同じことかもわかりませんが、五百五十七カ所当初設置されたという中に入っておる、こういうわけですね。そこでその後十八庁がふえた、こういうわけでしょう。そうすると、二十一というのは初めから事実上五百五十七から引いたものが現実には設置されたものである、こういうふうに理解をしてよろしいのですか。
  25. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 ちょっと言葉が足らなかったかもしれませんが、当初発足いたしました五百五十七の中には八つ事務移転庁が含まれております。
  26. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そこで問題は、事務移転というのは、現実には簡易裁判所という看板みたいなものはちゃんとかけてはあるのですか。あるいはないのですか。どうなんですか。  よくわからないのですけれども、一時日比谷公園の角のところに杉並簡易裁判所という看板がかかっていたことがあります。看板じゃないか、何というのかな、かかっていたことがありますね。通ってみて、あ、杉並区が移転したのかなと私は思ったのですが、どういうふうになっているのですか、実際には。
  27. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 事務移転をいたしました場合の執務のありようにつきまして、かっては、例えば都島簡易裁判所大阪簡易裁判所事務移転をされました場合、都島簡易裁判所の名において事務をとるのだというような考え方がとられた時期がございまして、その当時都島簡易裁判所看板が掲げられたことがあったのではないかと思います。ただ、現在におきましては、例えば渋谷簡易裁判所東京簡易裁判所事務移転いたします場合、そっくり東京簡易裁判所事務移転をすることになりまして、東京簡易裁判所の名におきまして渋谷簡易裁判所管轄に属する事件を処理するというのが現在の考え方になっております。
  28. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そうすると、現実にはそれが廃止されたことになるわけですね。渋谷簡易裁判所というのは、私も行ったことがあるのですが、あれは目黒の通り渋谷の方から行って左側のところですね。それは事務移転されたのですか、今のお話だと。違うでしょう。今後の話でしょう、それは。何だか話がおかしくなってきた。
  29. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 今のは例えて申し上げたわけでございまして、渋谷簡易裁判所は現に立派に存在いたしております。
  30. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 立派かどうか別ですけれども、あることはありますよ。私も何回かあそこに行きましたから。なかなかわからないのです。通り過ぎてしまったりなんかしてわからなくてあれでしたが……。  そこで問題は、今までのように事務移転されたものは現実にはもう廃止になっているわけでしょう。あったというのもおかしいのかな、初めからなかったと言った方がいいのかもわかりませんが、そこは別として、私がお聞きしたいのは、最初にできた、ここに書いてあるのは、十八庁が増設された、こう書いてありますね。それは別として、逆な意味で、実際には最初できたものがその後廃止になった、現実になくなった、こういうふうなものが相当あると思うのですよ。それは全然ここに書いてないですね。別に書かなければならぬこともないかもわかりませんが、全然書いてないですな。ここのところをちょっと説明をしていただきたいのですが……。
  31. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 提案理由説明のところに詳しく具体的には書いてございませんけれども……(稲葉(誠)委員提案理由じゃない、法制審議会」と呼ぶ)失礼いたしました。法制審議会の御審議過程におきましては、答申の中には記載はされておりませんけれども、事務移転庁が現に、その当時におきましては二十二カ庁存在しておりました。二十二カ庁存在するということとその理由等につきまして詳細に御説明申し上げまして、御審議過程におきましては、そういう事務移転庁が存在する、そのことにつきましても、例えば小規模独立簡裁の見直しを行う場合の基準の定め方等についてはそれも十分踏まえた上で御審議がなされてきたというように私どもは受けとめております。
  32. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 その事務移転というのがよくわからないのですが、事務移転というと、今裁判所法の三十八条でしたか、でやるということなんですが、そうすると、国会審議は要らないわけですね。既にもう法律があって、それによってやるのだから、事務移転ならば。廃止となると、今度は国会審議が要るわけですか。
  33. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 確かに発足当初から今日まで事務移転状況が続いております庁につきましては、これまでも当委員会稲葉委員初め各委員から御指摘がございましたように、事実上の廃庁状態ではないか、こういう御指摘がございました。しかし、事務移転は当分の間ということで、本来的にはあくまで暫定的な性質を持つ措置のものでございます。これまでも四十庁ほど事務移転をいたしておりますが、二十庁につきましては事務移転を解除いたしまして現実にまた執務を行うというようになっているわけでございます。
  34. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 私が聞いておるのは、事務移転の場合には法律改正ではないから国会審議は要らないけれども、事実上廃止ということならば国会審議が要るということになるではないか。この法律の一部を改正することになるわけですな、廃止ならば。それを避けるために事務移転事務移転というやり方をやっていて、実際には廃止とちっとも違わないのではないのですか、こういうことを聞きたいわけですよ。そういうふうなものが一体どことどことどこにあるのかをちょっと説明していただけませんか。
  35. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 事務移転を行ってまいりました理由は、例えば庁舎敷地の確保困難、未開庁はいずれもその理由で事務移転を行ったわけでございます。そのほかの事務移転庁につきましては、庁舎が老朽化いたしまして、それで早急に建てかえるめどがついていない、こういうような理由で事務移転をいたしておりますが、その当時の段階におきましては、そういう状況が解消されました場合には事務移転を解除して復活するという前提で事務移転がなされてきたわけでございまして、決して廃止の先取りという形でやってきたわけではございません。
  36. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 いや、私の聞いているのはそんなことを聞いているんじゃないのですよ。廃止ならば法律改正が必要なんでしょう、こういうのですよ。ところが事務移転ならば裁判所法の三十八条で、裁判官会議で決められるからということなんでしょう。だから、それは法律改正じゃありませんわな。実質的には廃止であるけれども、それも事務移転という形を今までみんなとってきて、それで国会審議を、言葉は悪いかもわからぬけれども免れてきたんじゃないですか、これは。  だから私も、何でもかんでも国会審議しろということを言っているんじゃない。例えば今までのように、入管の場合なんかの警備官の派出所みたいなちっちゃいのがありました。あれも国会審議にかかっていたわけです。あれは変わりましたけれどもね。そういうふうなところがありますから、何でもかんでもやれということを言っているわけではありませんけれども、そこら辺のところはどうも最高裁側がテクニックを用い過ぎているのではないか、こういうふうに私は思うから聞いているので、だから廃止というのは、それじゃなかったのですか。今のおっしゃることを聞くと、簡易裁判所廃止というのはなかったんだというふうに聞こえるのですよ。そこのところ、どうなんですかね。
  37. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 大変お答えしにくいわけでございますが、法律上の廃止はございませんでした。事実上の廃止の状態が継続したのではないかというふうに御指摘がございますと、そのとおりであると申し上げるよりほかないと思います。
  38. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 じゃ、一つ具体的にお聞きいたしますと、一つの例ですよ、例えば浦和地方裁判所に小川簡易裁判所というのがありますね。私も一遍行ったことがある。東京から行って、何だか随分遠いのですよ。道をよく忘れましたが、寄居でおりて何か戻ったような感じがするのですがね。農地調停か何かで行ったのかな、簡裁だから農地調停ではないかもわかりませんが、何かで行ったのです。ここは廃止になったのでしょう。これは廃止のためにもう大変なお骨折りをしたので、浦和地裁の所長の一番大きな仕事というのは、いかにしてこの小川の簡易裁判所廃止するかということにあったのじゃないですか。これは三代がかったのじゃないですか。今最高裁判事をやっておる、元法務省の民事局長をやっておられた、非常に有能な方がいらっしゃるのですが、この方のときに初めて廃止になったのじゃないですか。三代がかったのじゃないですか。なぜそういう質問をするかというと、それだけの手数をちゃんと踏んでいるのですよ、普通の廃止の場合に。三代がかって何をやったかということをこれから聞くのですけれどもね。  ところが、今度の場合は何をやったのかわからないで、いきなりぱあんと全部百一も廃止してしまうということがおかしいではないかというところに質問が行くわけです。前もって質問内容まで知らしてしまうのもちょっとあれですけれども、これは私の方で開示するわけですけれどもね。そこなんですよ、問題は。  だから、小川の簡易裁判所が、それじゃなぜ事実上廃止になったのか、どういう経過でやったのか。私の聞いているのでは、とにかく三代がかったというように聞いているのですよ。直接お聞きしたんだから。これはしかし、これ以上言いませんけれども。
  39. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 小川簡易裁判所は、五十六年八月三日に、庁舎の老朽、代替庁舎の確保困難という理由で事務移転がなされております。  実は、私たまたまこの当時東京高裁におりまして、この間の事情を承知しているつもりでございますが、これは私の記憶によりますと、三代がかったわけではないように承知いたしております。その当時庁舎の老朽化が進んでおりまして、この庁舎執務を行うことは困難であるというふうに地裁の方で判断なさいまして、管内の各市町村にいろいろ御説明を申し上げました上で事務移転の措置がとられたように承知いたしております。
  40. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そのときの、今山口さんの言われた浦和の所長さんは、今最高裁判事をやっている方ですね。法務省の民事局長をやっておられた方ですね、ちょっと名前を忘れましたが。  そこで、市町村と何とかかんとかという話がありましたね。あなたの方に言わせれば廃止じゃないのですよ、事務移転なんですよ。事務移転だけれども、大変な努力がかかっているわけですね。三代はちょっとオーバーかもわかりませんが、少なくとも二代がかったことは間違いないわけですよ。これは前の所長さんのときからの懸案事項だったのですからね。ちょっと、これまたいろいろ差しさわりがあるから言いませんけれども。  だから、それじゃその経過をちょっと説明してくださいよ。そうすると、局長東京高裁の事務局長さんをやっておられたときですかな。あの東京高裁の事務局長というのは一番怖いんだと言っていますよ。えらい権限を持っているんだと、裁判官はあれを一番怖がっているのですよ。人事の権限を握っているというので、これは大変なあれですよね。  まあそれは余計なことになりましたけれども、その経過を聞きたいのはなぜかというと、私の言うのは、その事務移転というのは法律上の廃止ではないんだというのでしょう。それだけでも大変な努力をしているのですよ。話し合いというか、説得を何回もしていってやっているのですよね。それを今度の場合は、また後で聞きますけれども、そこの辺がどうなっているのやら、実際にはどうなっているのかわからないのですよ。わからないというか、説明がないからわからない。そこを私、お聞きしているのですよ。大変な骨を折っているのですよ、これ。私も聞いているのですから。それを、骨折って努力をしているというものを、やはりこの百一なら百一を廃止しようとするならそれだけのことをしなきゃいけないんじゃないですか。それをやってないじゃないかということ、私はそこにポイントを置くわけですよ。
  41. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 御指摘のとおり、今回御審議をお願いいたしております管轄法改正につきまして、簡裁の整理統合ということが生ずるわけでございます。私ども、この問題を提起いたしました段階より後の六十年五月、六月の段階、それから翌年の六十一年三月、四月の段階、それから六十一年十月以降今日まで続いているわけでございますが、それぞれ関係する管内の市町村を所長あるいは事務局長がお伺いいたしまして、自治体の首長であるとかあるいは議会の議長さん、副議長さんの方々にお日にかかりまして、問題になっている簡裁が置かれている問題状況、それからその当時は、最初の段階では三者協議で議論を進めていたわけでございますが、三者協議での議論の進展状況、それから裁判所の現状認識、こういうものを御説明申し上げた。六十一年の三月の段階でございますと、法制審の答申がそろそろ始まる段階でございまして、それまでにある程度議論の進展も見ておるものでございますから、その辺の事情も御説明申し上げたわけでございます。六十一年の秋の段階では、答申案が出ておりますから、答申案の内容について御説明申し上げまして、個々の庁につきまして裁判所考え方を申し上げ、地元の御意向も伺いながら御理解を深めるような作業をして今日まで来ているわけでございます。したがいまして、地元の市町村のところに足を運びました回数は最低でも三回、場合によりますと相当回数足を運びまして現状を御説明申し上げて、この適正配置について御理解をいただくようお願いしてまいってきたという状況でございます。
  42. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 今お話にも出てまいりました裁判所の所長さんの仕事の一番大きなものは、いかにして簡裁の統廃合を実施するか、円満にさせるかというところにその司法行政上の手腕があるかないかということがかかっていて、そこが最高裁側から評価されるかされないかの分かれ目になってくるわけですよね。そうでしょう。  だから私が聞いているのは、もとへ戻るのですが、小川の簡裁のときに大変骨を折ったという話を聞いているのですよ。非常に熱心にやられたわけです。それと同じようにみんなやったのですか。どうもよくわからないですな。本来ならば、百一ということなら百一のものについて現在向こうの同意状況がどういう状況だと、ちゃんと一覧表を出してもらわないといかぬわけですよ。我々はそれを見て認否するということになるかもわからぬけれども、とにかくそうしなければいかぬわけじゃないのですか。話があまり打っちゃうといけないから、まず、小川の簡裁のときに事務移転でどれだけの努力をしたのですか。わかっている範囲でお答え願いたいのです。
  43. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 小川管内の市町村に所長がいらっしゃいまして、小川簡裁の庁舎の老朽度合いというようなものを御説明申し上げて、事務移転の必要があるのだということを御説明申し上げたというふうに伺っております。もちろん、町長さんあるいは町議会の議長さんにも御説明申し上げているわけでございます。
  44. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そうすると、今度の百一は、まず最初百一じゃなかったですね。最初は百四十九だったわけですか。それはどういう基準であったのですか。それがどうして百一になったのですか。
  45. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 法制審議会におきましては、小規模独立簡易裁判所整理統合を考える場合、全国的な問題でございますので、何らかの基準が必要であるというふうに考えられたわけでございます。その前の段階で三者協議会におきまして、日弁連それから法務省、最高裁とでこの問題について協議を進めてまいりました。やはり全国的な問題でありますので、二百八十三ございます独立簡易裁判所整理統合を考える場合、何らかの基準が必要である。基準を考えます場合に一体何を尺度にするか、こういうことが問題になってまいりました。  私どもといたしましては、二つの点から尺度を考えるべきである。一つは、裁判所の利用度を示すものとして事件数を取り上げる。一つは、裁判所に対するアクセスを示すものとして、統合される場合の受け入れ庁までの公共交通機関による所要時間を考える。この二つを組み合わせて二百八十三の独立簡裁を位置づけてみて、その中でどういうふうな基準を立てるかということを考えていこうではないかというふうに申し上げたわけでございます。  裁判所の利用度を示すものといたしましては、いろいろ要素の立て方があろうかと思います。人口を基準にするとかいろいろあるわけでございますが、やはり将来の裁判所の利用度合いを直接示すものといたしましては、事件数を基礎にするのが一番いいのではないか。その事件数につきましても、民事訴訟、刑事訴訟、民事調停という当事者が裁判所出頭しなければならない、しかも基本的な事件、これを指標にすべきではないだろうか、かように考えたわけでございます。公共交通機関による所要時間につきましては、ある簡易裁判所の所在地から受け入れ庁まで公共交通機関を利用いたしましてどの程度の時間が必要になるか、これを考えたわけでございます。  その結果、この関係資料の八ページ、九ページにございますように、相関表というものができ上がったわけでございます。この中で百二十件以下、これは民訴、刑訴、調停の五十五年から五十九年までの五年間の年間平均件数でございますが、これが百二十件以下の庁については所要時間が六十分以内のところ、これをひとつ統合の検討対象にしてはどうか、事件数が半減いたしまして六十件以下になりますと二時間以内のところ、そこまで広げて検討対象にしてはどうか、かように考えたわけでございます。それから事件数が少なくなりまして十二件以下のところ、天塩、中頓別がそうでございますが、これにつきましては二時間を超えるところも含めて考えてはどうだろうか。国民の裁判を受ける権利に関連する事柄でございますので、離島につきましてはいかに事件が少なかろうと今回の統廃合の対象にはしない、こういうことを考えたわけでございます。  百二十件というような件数の切り方でございますが、これはもろもろの要素を考え合わせながら、例えば裁判官非常駐庁あるいは管内人口等々をいろいろにらみながら考えますと、大体百二十件以下のところに問題庁がかなりあるように見受けられる。さらに、この百二十件と申しますのは、簡裁判事の一人当たりの負担件数からいたしますと三分の一くらいでございます。その辺がいわば御納得のいただける線ではないかということで百二十件以下一時間以内、事件数が半減いたしまして六十件以下になりますと二時間以内というふうに膨らませまして、こういう基準案ではどうかということで三者協議会にも出したわけでございます。  この基準のとりようにつきましては、三者協議会の協議の過程におきましてもいろいろ御意見がございました。御意見がございましたが、最終段階ではこの基準については特に意見を述べないというふうにおっしゃられまして、御異論はなかったわけでございます。このような考え方を法制審の場におきまして法制審議会の幹事案としてお出しいたしました。いろいろ御論議いただきました結果、御承認いただいたわけでございます。  ただ、法制審議会それから三者協議会の過程におきましても、この基準で一律に統廃合を決めてはいけない。やはりそれぞれの地域実情というものがあるから、その地域実情を加味しながら統廃合庁を決定していくべきである、こういうふうに弁護士会等からも指摘がございましたし、法制審議会の御審議におきましてもそういう御指摘があったわけでございます。したがいまして、この関係資料の六ページにございますように、具体的な統合に当たっては、この枠内にございます百四十九の庁について、例えば管内人口、その動態、事件数の動向、家裁出張所の事件数、管内面積、それから自家用車両の保有状況等管内全般の交通事情地域の開発計画その他簡易裁判所の存置の必要性に影響すると思われる事項を考慮し、相関表上の位置を基本として、存置の必要性を総合的に判断すること、こういうふうにうたわれたわけでございます。  私ども、この答申を受けまして、それまでにも種々関係機関の御意見も伺っておりましたが、答申を受けました後に、改めて弁護士会、司法書士会、調停協会等の関係機関、さらには市町村等にもいろいろ御意見を伺いまして、地域実情を踏まえながら、この百四十九の中から百一庁の統合対象庁を選定したわけでございます。
  46. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 お話をお聞きいたしておりますと、事件数の問題なりあるいはアクセスといいますか、そうした問題なりで、いかにしてまず統廃合をするかという前提といいますか、それをもとにしてずっと話が進んできているように考えられるのですね。現在あるものがいかにして充実さるべきかというふうな観点が全然というか、ないように考えられるのですがね。そうなってくると、話として考えられてくるのは、じゃ簡易裁判所というのは一体何のために設けられたのか。それは、最高裁当局の考え方によれば、その目的を達しなかったということになるわけですか。全部じゃないにしろ、達しなかったものがある、達しなかったというから統廃合しようということになるのだろうと思うのですが、それじゃどういう理由で目的を達成できなかったのかというところの原因などについてどういうふうにお考えになっておられるのでしょうかね。各地にあるそういう独立簡裁なら独立簡裁というものを本当に地域裁判所として充実させるという視点から考えないで、いかにしてこれを早く統廃合するかというところを中心に考えているようにしかとれないのですよね。どうもそこら辺のところがよくわからないのですが、この辺はどういうふうにお考えなんですか。
  47. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 戦後、昭和二十二年に簡易裁判所が発足いたしまして、その当時は物資等も非常に不足いたしておりましたし、例えば庁舎にいたしましてもバラックを借りるとかあるいは倉庫に間借りするとか、そういうような劣悪な状況でスタートしたわけでございますが、二十年代、三十年代にかけまして、かなりの予算を投じまして、木造ではございますが、庁舎の新営を図る、そういうふうな形で物的施設の充実にも努めてまいりました。その後、簡易裁判所の判事につきましても充実を重ねて、簡易裁判所の機能がよりよく発揮できるように努めてきたわけであります。  しかし、戦後二十年代を経過いたしまして三十年に入ってまいりますと、社会生活の安定に伴いまして、当時、二十年代には非常に多うございました簡裁の刑事事件が激減してまいりました。それから簡裁の管内の人口が、都市集中によりまして都市部の方へ移動してまいりました。それもあわせて相乗作用を営みまして、民事事件の数におきましても非常に減少してまいりました。三十年代におきまして、既に利用度の少ない簡易裁判所が数多く存在してきたということもあったわけでございます。  したがいまして、その三十年代におきまして、例えば日弁連の各ブロック連合会におかれましても、簡易裁判所整理統合を行うべきであるというような建議がなされました。日弁連におかれましても、三十六年の九月に簡裁・区検の整理統合に関する特別委員会というものもおつくりになりまして、三十九年三月には、百三十三庁の簡易裁判所、区検について整理統合すべきであるという御意見を出されまして、法務大臣あるいは最高裁長官に上申されたわけでございます。その三十九年のちょうど八月に臨時司法制度調査会の意見が発表されまして、やはり交通事情、人口分布等の社会事情変化にかんがみ簡易裁判所整理統合を検討することというような御指摘もいただいていたわけでございます。その後さらに二十年ほど経過しておりまして、三十九年当時指摘されておりました問題状況はますます深刻化しているのが現状ではないかと思われます。  したがいまして、そういうような社会事情変化裁判所の運営に反映してまいりますと、極端に利用度の少ない簡易裁判所が存在すると同時に、他方、都市部の簡裁におきましては事件数が非常に集中している。いわゆる事件数の両極化現象というものが生じてきたわけでございます。私ども、国民の負託を受けて裁判所の運営をつかさどらせていただきます場合、やはり全国民の負担において裁判所を運営しているわけでございますから、予算、人員の公平な、適正な配分というものを考えなければならない。現在の状況は、戦後四十年の間に生じました大きな社会事情の変動に必ずしも裁判所配置がマッチしていないのではないか、そういうことが強く認識されるわけでございまして、現在の、あるいは将来の社会事情にマッチするように裁判所配置を見直すべきである。交通事情が飛躍的によくなっている今日でございますし、昭和二十二年当時に比べますと、人の行動範囲、生活圏というものはかなり広くなっているわけでございます。そのような状況を踏まえて簡易裁判所整理統合を行い、それによって生じました余力を存続する簡易裁判所に振り向けまして、簡易裁判所全体の機能の充実を図らなければならない、こういう視点から現在の統廃合の問題を考えてきたわけでございます。
  48. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そうすると、お話が出ました、最初百四十九を廃止しようとしたものが百一になったというので、具体的に言うと四十八減ったわけですね。そうすると、それはどういうふうなところが減ったということになるのですか。減ったというか、対象から外れたということになるのですか。例えば二、三例を挙げるとどうなんですか。
  49. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 先ほどの関係資料の八ページ、九ページの相関表をごらんいただきたいと思います。  まず、順次御説明申し上げますと、八ページの上の方で事件数で百一件から百二十件のところがございます。事件数百件を超える庁でございますが、この枠の中には十七ございます。この十七庁につきましては、いずれも人口が相当多数でございまして、現在も人口の増加傾向がございます。それにつれまして事件数も増加傾向を示しておりますか、あるいは近年急増しておる、そういう状況がございまして、今後の動向に留意をする必要がございます。地方自治体はもとより、関係機関意見を伺いましても、このような事情を背景といたしまして、存置を相当とする意見が極めて強うございました。将来の動向を十分把握する必要があるという観点から、この枠内の庁十七庁につきましては、全部統合の対象から外したわけでございます。  その次に、事件数で申しますと六十一件から百件の庁でございまして、所要時間が四十六分から六十分の枠内にある庁、これは例えば取手、相生、亀岡、笠間、このあたりの枠に入っている庁でございますが、これにつきましては、ある程度の人口、事件数を有しておりまして、交通事情につきましても、所在市町村から受け入れ庁までの所要時間が四十六分から六十分と比較的良好でございます。ただ、四十五分以下の庁のように交通至便というわけにはいかない、いわば中間的な領域に属するわけでございます。したがいまして、この範囲の庁につきましては各庁別に人口動態、事件数の動向、管内全般の交通事情等、法制審答申に示しております個別事情を検討したわけでございます。  これらのうち取手、亀岡、瀬戸、鳴門、笠間につきましては、人口増、事件増の傾向がございます。今後も相当事件数が予想されるということ。それから、築館、棚倉につきましては、管内に市町村が散在しておりまして、管内全般の交通事情がよくないということが見受けられます。大船渡につきましては、管内全般の交通事情がよくないと同時に、人口増、事件増の傾向が見受けられるわけでございます。これらの八庁につきましては存置すべきものと思われまして、残る今市、巻、桜井、喜多方、相生、備前、村山、島根大田、宇佐については統合すべきものと考えたわけでございます。  その次に、事件数が二十一件から六十件で所要時間が七十五分を超え百二十分の庁でございます。九ページの下の方に串本、浜坂、男鹿等がございますが、この枠の中に入っている庁でございます。これらの枠内には十四庁ございますが、いずれも少ないとはいいましてもある程度の事件数を有しておりますし、所在地から受け入れ庁までの所要時間が七十五分を超えまして相当の時間を要する。それから、管内全般の交通事情も甚だ悪いわけでございまして、最遠地からの所要時間が百十四分から、ひどいところになりますと二百九十二分ほどかかる。それから、この中で男鹿と串本を除きましてはいずれも家裁出張所が併設されております。これらの各庁につきましても、関係機関意見も存置を相当とするというものが大部分でございまして、この枠内にある庁は全部統合の対象から除外するのが相当であると考えたわけでございます。  それから、事件数が五十一件から六十件、所要時間が六十分を超え七十五分の枠内にある長門、国東、野辺地、徳島池田でございます。これは交通事情は必ずしも良好とは言えませんで、特に野辺地、徳島池田につきましては管内も広うございまして、全体の交通事情が甚だ悪い。それから長門につきましては近年著しい事件増の傾向が見られるということからいたしまして、これらの三庁は存置すべきものといたしましたが、国東につきましては、人口の相当の割合を占める部分におきまして、比較的短時間で受け入れ庁である杵築あるいは豊後高田へ行けるという状況がございますので、統合すべきものと判断したわけでございます。  それから、九ページの下の方になりますが、事件数が十二件以下で二時間以上かかる五片、天塩、中頓別、足尾、広尾、松前でございます。事件数が僅少ではございますが、所在地の中心から受け入れ庁までの所要時間が二時間以上を要しておりまして、管内全体の交通事情等について慎重な検討が必要とされるわけであります。このうち松前、天塩、中頓別の三庁につきましては非常に交通事情が思うございまして、いわば陸の孤島と言ってもいいようなところが見受けられます。そこで、離島を外したのと同じような意味合いで、今回の統合の対象からは除外するのを相当としたわけでございます。足尾、広尾につきましては、今の天塩、中頓別、松前ほど交通事情が悪くはないということ、事件数もこの五片の中でさらに少ないということ等を考えまして、統合すべきものと判断したわけでございます。  これらを除きました九十二庁につきましては、いずれも相関表上の位置からいたしまして統合の必要性がより高いものと考えたわけでございますが、この中でも橋本、深川、吉野、この三庁については存置すべきものといたしました。吉野と深川の二つの裁判所はいずれも管内面積が広うございまして、管内全体の交通事情が著しく悪い。事件数に照らしましても、統合によって生ずる不便が大きいと思われるわけでございます。また、橋本につきましては近年人口の増加傾向が見られまして、むしろ受け入れ序となるべき支部併置の妙寺簡裁の所在地自治体よりも、これはかつらぎ町になりますが、それよりも橋本の方が人口も多く発展傾向が見られ、将来その周辺の地域中心となることが予想されますので、将来は支部を含めた配置の見直しも考える必要がございます。そういう状況を勘案しまして、橋本は存置することに決したわけでございます。  このような検討を加えまして、百一庁に絞り込んだわけでございます。  以上でございます。
  50. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 今お話の中に、今度の独立簡裁の統廃合によって余力を残して云々という言葉がございましたね。余力というのはどういう意味がよくわかりませんが、恐らく一つの意味は、これによって経済的な余裕が生ずるということも含んでいるのではないかと思うのです。そうすると、今度百一庁を廃止することによって予算面ではどう影響してくるわけですか。
  51. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 今回の統廃合によりまして、先ほど申しました余裕というものの中で一番大きなものは人的余裕でございます。百一庁を統合いたしました場合、その庁に所属いたします一般職の書記官、廷吏、事務官の数ということになりますと二百数十名に上るわけでございまして、この二百数十名を受け入れ片あるいはその他の繁忙庁に振り向けて、簡裁並びに裁判所全体の機能をより高めることに費やしたい、こういうふうに考えております。  予算的に申しますと、簡易裁判所の運営維持に要する経費というのは比較的微々たるものでございまして、人件費は、別に人が減少するわけじゃございませんので、人件費が節約になるわけじゃございません。結局、庁舎維持の費用が若干ゆとりを生ずるということになりますが、それは殊さら大きく評価するほどのものではないというように考えております。ただ、人的余力につきましてはかなり大きなものではないかと考えております。
  52. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 最初におっしゃったのは余力というふうに私は聞いたのですが、お答えが余裕というふうになって、また後で余力になったように聞いたのですが、まあ言葉はどうでもいいです。そうすると、そのことによってまず問題になってくるのは、職員の人との話し合いといいますか、それから今二百何十人が移るということを言いましたね。その人たちは待遇が悪くなる場合もあるのではないですか。例えば、独立簡裁なら庶務課長をやっておられる。ところが、ほかへ来れば庶務課長にはなれない。あるいは書記官になれば調整手当がついてかえってふえるのかもわかりません。そこはどういうふうになるのですか。そのことで全体の職員との話し合いは何回くらいやって、どういうふうにいって、どこがポイントになっているのか、それが一つですね。それから、現実に対象となる人たちは不利になるようなことはないのかどうか。そこですね、問題は。
  53. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 簡易裁判所の再編成と申しますか、配置の見直しということになりますと、これは国の高度の管理運営に関する事項になるわけでございまして、その事柄自体につきましては、職員団体との間でいろいろ話し合いをやるとか協議をするとかいうことはいたしておりません。しかしながら、裁判所の職員でございますから、この問題について十分理解を深めていただく必要がございますので、事ある都度その趣旨説明し、理解を求めるようにしてきたわけでございます。  この統合の問題が実現いたしますと、勤務地の変更というふうに職員の勤務条件にかかわる事柄が生じてまいるわけでございます。そのことにつきましては、具体的に職員団体との間で交渉を持たなければならないだろうと思います。これまでいろいろ経過がございますけれども、いろいろ職員の御意向等も伺いまして、これからまた作業を詰めていかなければならないわけでございますが、勤務条件について不利なことにならないように配慮していかなければならないと考えております。  それから、今御指摘の適正配置の実現によって、勤務場所が変わることによって不利なことにはならないかという御指摘でございますが、そのようなことのないように努めてまいるつもりでございます。
  54. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 不利なことのないように努めてまいるというのは、これは当然といえば当然なんですが、現実に庶務課長なんかやっている場合、どういうふうになるのですか。独立簡裁がなくなれば、本庁なり支部へ帰って庶務課長をまたやるわけにいかぬですね。そうすると、どうなるのですか。書記官になればかえってふえる場合もあるし、そうでなければ減っちゃうのですか。管理職手当がなくなりますね。どういうふうになるのですか。
  55. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 例えば独立簡裁の庶務課長さんが本庁へ移転いたしましたような場合には、そこに本庁の簡易裁判所の庶務課長がおります場合、それはいわば庶務課長にはなれないという面はございますけれども、そのことによって待遇面で不利になるというようなことはございません。独立簡裁の庶務課長さんは管理職手当を受けているわけではございません。独立簡裁の課長さんは、稲葉委員よく御承知のように、書記官が庶務課長をいわば兼務しているような形でございますので、実質的にはそう変わらないと考えております。
  56. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 私も、独立簡裁の庶務課長は管理職手当を受けているんだと思っていたのですよ。聞いてみたら独立簡裁の場合は違うのだというので、ああそういうものかなと思ったのですが、近いところに勤務できたのが遠くになるとか、これはあり得ることだろうと思うし、ある程度はしようがないかもわかりませんけれども、職員が勤務条件で不利になることのないように、それについては十分配慮していく、こういうふうに承ってよろしいですね。これはまた後でほかの方からもいろいろ御質問が出るんだ、こういうふうに思うのです。しかし、今の庶務課長ということは形の上ではなくなるわけですね。そうするとどうなっちゃうのですか。何があるのですか、そういう人たちは。
  57. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 いろいろなポストが考えられるわけですが、例えば相当のキャリアを持っている方でございますと、本庁で、あるいは支部で主任書記官に昇任する場合もございましょうし、本庁の係長ポストあるいは課長補佐ポストにつく場合もございましょう。必ずしも昇進するというふうには限りませんけれども、並行異動ということもございましょうが、そのようないろいろなポストを考えられると思います。
  58. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 きょうは第一回目の質問ですから、まとめてお聞きするというか、あれなんですが、今百一の独立簡裁が統廃合で廃止されるとなると、お話を聞いていると、所長や事務局長が行ってずっと説得しているということなんですけれども、まだいろいろな状況を考えて、自分のところは廃止してもらったのでは影響が非常に大きいから困るんだ、こういうふうに言って、反対といいますか、そういうことをしておられるところが相当あると思うのですよ。これはこの百一の中でどのくらいあるとあなたの方ではお考えなんですか。
  59. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 各自治体の陳情等につきましては、これは先ほど申しました六十年五、六月ごろ最初に地元に御説明に伺いました前後から今日に至るまで、いろいろあるわけでございます。最初の段階ではかなり多うございました。これは私どもの方の職員団体がいろいろ陳情書を持ってまいりまして、簡裁がなくなるから署名してくださいというような形でお願いして、それてそのまま送ってこられたようなところもございました。その後、六十一年の三月の段階で御説明申し上げ、六十一年の秋の段階で御説明申し上げ、答申も出たわけでございますが、だんだん段階的に少なくなってまいってきております。この法案が閣議決定を経て国会に提出されました後は、私どもの了解している限りではほとんどございません。もっとも、最近一件来たのがございますが、三月九日以降の時点では私どもの方へ陳情書が参ったのはかなり少ないだろうと思います。今その数が幾らかというのは、詳細には、手元に置いておりませんので申し上げられませんが、非常に少ないはずでございます。
  60. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 きょうの質問はこれで終わるのですが、非常に少ないというのですけれども、それはどことどこだということを言うのは、あなたの方としては立場上なかなか言いづらいところだと思って、私もそれはわかっていますから、あえて聞かないのです。いろいろな事情から見て、殊に将来の発展の問題、立地条件その他から見て、まだ残してほしいんだというところが相当相当かどうかは別として、あるように私は聞いておるわけなんです。あなたの方として、それはどことどこだということを言うと、またいろいろ立場もあるから言いづらいのかもわかりませんが。  それともう一つの問題は、百一のところがどうなるかわかりませんが、仮になったときに、そのあとの敷地だとか建物は一体どうなるのですか。ここはどういう話を進めているのです。これは最高裁の一存でもいかぬし、法務省でもいかぬし、どういうふうになるのかわかりませんが、そこは現在どういうふうになっているのですか。それを聞いて、きょうは終わります。
  61. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 建物、敷地につきましては、整理統合されますと裁判所の方で用途廃止をいたしまして、普通財産になります。普通財産として大蔵省へ引き継ぐわけでございます。したがいまして、大蔵省におかれまして普通財産としてその処理を考えられるわけでございますが、裁判所の今日までの設置、運営につきまして、地元からは絶大な御支援、御協力をいただいてきたわけでございます。中には地元から寄付を受けた財産もございます。それから、地元がいろいろ協力していただいて廉価に譲渡していただいたものもございます。いろいろ御説明に伺ってまいりまして、地元の方ではぜひ公共用に使いたいから跡地の払い下げをしてほしいというような御要望もいろいろ出てまいっております。私ども、法制審議会過程におきましても大蔵省の関係官に出ていただいておりまして、大蔵省の方にも十分御連絡申し上げまして、できる限り地元の御希望に沿うように大蔵省に働きかけているというのが現在の状況でございます。  これは、一応法律が確定いたしませんことには跡地の処分等の問題が出てまいりませんので、法律が確定いたしました後に跡地の関係につきましてはさらに作業を進めてまいりたいと考えております。
  62. 大塚雄司

    大塚委員長 井上泉君。
  63. 井上泉

    井上(泉)委員 この裁判所の統廃合の問題について、これをやるに当たっては慎重な検討がなされ、関係自治体の意見も聞いて、そしてこういう法案を提出された、こういうことになっておるわけですが、この中には廃止されたら困る、そういう自治体の陳情も幾らかあったと思うのですが、それについてはどうですか。
  64. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 御指摘のとおり、昭和六十年五、六月以来これまで何回となく地元に御説明に伺っているわけでございますが、特に裁判所が所在いたします自治体につきましては、それはもう廃止されては困るという御意見が当初の段階では非常に強うございました。その後いろいろ御事情を申し上げまして、こういう状況であるから何とか御協力いただけないかというふうに申し上げてまいりまして、だんだんこれはやむを得ないな、積極的に賛成とは言えないけれども国の施策としておやりになるならこれはやむを得ませんというふうにおっしゃっていただいてきているわけでございます。  そういうような経過を経ておりますので、当初の段階では反対という御意見が強うございましたが、最終段階では、積極的に賛成とはおっしゃらないにいたしましても、国の施策としてやることについてはやむを得ないものとして御理解いただいているように考えているわけでございます。
  65. 井上泉

    井上(泉)委員 簡裁といえども地域の中に存在をしておる役所がなくなるということは、地域の住民としても、特にこれは地方にあるわけですから、地方の住民としてはそういう存在がなくなることには、やはり住民の利便から考えてよくないということで反対するのは大方の気持ちだと思うわけです。  これと同じように、前に法務局、俗に田舎では登記所と言うわけですが、登記所なんかが随分廃止されて、それが住民と相談なしにどんどん廃止をしていくような方向にあるわけですが、この登記所、法務局の廃止統合、こういうふうなことについては簡裁を廃止統合する際にとったような措置はとらなかったのですか。
  66. 清水湛

    清水(湛)政府委員 登記所の整理統合の件について、私直接の所管の者ではございませんけれども、若干の関係がございますのでお答えさせていただきます。  登記所の整理統合につきましては、行政改革の一環といたしまして、政府の一つの基本的な方針として進めてまいったところでございます。この登記所の整理統合につきましても、法務大臣諮問機関でございます民事行政審議会というのがございまして、そこで統合の基準あるいは実施に当たって考慮すべき事項というようなものが定められているわけでございます。これによりまして一定の基準は決まっているわけでございますが、具体的な実施に当たりましては関係市町村の十分な理解が得られるように努めるということも同時に答申に示されていたわけでございまして、この答申にのっとりまして、それぞれの法務局、関係機関関係市町村と十分な折衝をいたしました上で統合をいたしておる、こう理解いたしております。
  67. 井上泉

    井上(泉)委員 そういう経過をたどって統廃合したという説明でありますし、また簡裁の統廃合についても関係住民、自治体との話し合いを進めて、積極的賛成は得られなかったけれども、まあしようがないなという消極的賛成の気持ちを受けて法案の提出に踏み切った、こう言われるわけでありますけれども、やはりそういうことは住民にとっては反対である。市町村役場、自治体においては、上の役所からいろいろ言ってこられるとそれにいつまでも抵抗することがなかなかできぬ。抵抗しても上で決めることやからしようがないという、いわゆる主権在民の思想から外れた、上の言うことは何でも聞かなければいかぬ、こういう古い考え方の中で、いわば押しつけられたという感情を強く持っておるということを認識しておっていただきたいと思うわけです。  例えば高知県あたりでは、あの広大な地域で四カ所も簡裁が廃止されるということは関係住民にとっては大変な不利益、不便をもたらすものではないか、こう思うわけですが、地元のことを言って恐縮ですけれども、高知県の場合なんかは自治体の反対は格段なかったですか。
  68. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 自治体の反応といたしましては、先ほども申しましたように、裁判所が所在する自治体と、それから管内にはあっても裁判所がその地元にはないという自治体とで反応が違うわけでございますが、裁判所が自分のところにはない自治体は、おおむねこういう時代の状況であるからそれはやむを得ないな、こういうふうにおっしゃられますし、裁判所が所在する自治体におかれましては、やはり理屈抜きに存続してほしいと当初は言っておられたところもございます。しかしその後、時代の趨勢で廃止もやむを得ないだろうとおっしゃいまして、跡地の払い下げを受けたいというふうな御希望を出されたところもございます。中には積極的に、むしろ統廃合は賛成なんだとおっしゃっておられる地元自治体もございます。そういう状況でございます。
  69. 井上泉

    井上(泉)委員 法務局にしてもあるいは簡裁にしても、長い歴史の中に設置をされて歴史を経過しておるわけですから、地域住民としてはそれがなくなっていくことについては寂しさを感じ、そういう点からも積極的な賛成はできないという気持ちが強いと思うわけでありますが、私は、法務行政、法務省の存在というものは国民から非常に離れた存在のように一般的には認識をされておるのではないか。一般国民にとって法務省の存在は非常に大事なものではないか、こういうことについての国民の認識をもっと喚起する必要があるのではないか。特に人権擁護、こうした問題については法務省としては重視をして人権擁護局としても活動を展開せねばならぬと思うのですが、現在の態勢で十分だとお考えになっているでしょうか。これは大臣に伺います。
  70. 遠藤要

    遠藤国務大臣 人権擁護の問題はもちろんのこと、法務行政ということはやはり国民の身近な問題と申し上げてはどうかと思いますけれども、今日の社会を形成している中において、やはり法制の確立があってこのような社会ができ上がっているんだということを国民に十分御理解いただくような親しみのある法制でなければならぬと、こう私は感じており、人権擁護については今もろもろ問題が生じておりますが、我々としてはこの人権擁護についてはあくまでも差別という問題をなくしたいというようなことで啓発運動を行っておるわけでございますけれども、しかしまだ完全とは残念ながら申し上げかねておりまして、そのような点は悪質なものはやはり取り上げ、それを十分正していきたいというような考えでおるということを御理解願いたいと思います。
  71. 井上泉

    井上(泉)委員 大臣の人権擁護に関する見解は、私はそれなりに評価をするものでありますけれども、ところがそのことが実際地域の中で活動されておるのかということを考えますというと、非常に言葉は立派だけれども内容は伴ってない、内容は逆に差別を助長するような側に立った人権擁護のやり方ではないか、こういうことが幾つかの事例の中であるわけです。  私はそういう幾つかの事例を挙げる時間がありませんので、例えば高知県の高知市の市民図書館という、いわば市民が多く出入りするところの壁等に、「エタを殺せ」こういういわば殺人を促すような落書きをして、その落書きがそこだけならいいけれども、各所にこのことが、何カ所も市内に書いてある。このことについて、人権擁護の立場から高知の法務局の人権擁護課長に、こうした実態をもっと取り締まってもらわなければいかぬじゃないか、これはどうしてくれる、こう言って申し入れしても、こちらには捜査権がないからできませんというようなことで、少しも積極的に立ち上がろうとしない。  そういう中で、部落関係の者がこうしたことについて前にはよく糾弾闘争というものを展開したわけですけれども、糾弾闘争をしなくてもこうした人権の問題については人権擁護局、法務省の方が取り上げてやるから、そういう糾弾闘争をやらずに、事件が起こったらすぐに連絡をとって、これに対処するような措置を講ずるからというような話は、私ども部落解放の推進委員会の中での当局との交渉の中でも言われてきたことでありますけれども、この高知市における「エタを殺せ」という、全くこういう差別を大きく宣伝するような、しかも全く部落の者といたしましてはこういうえたという言葉で、しかもそれを殺せというような、人間としての生きる権利まで否定をするようなそういうことに対して大きな憤りを感じておる。その憤りを感じておることに対して、これに対応する人権擁護局の方での対応の仕方というものが余りにも手ぬるいのではないか、こう言わざるを得ないわけですが、人権擁護局長の方ではこの問題をどういうふうにとらえておられるのか、承りたいと思います。     〔委員長退席、井出委員長代理着席〕
  72. 高橋欣一

    ○高橋(欣)政府委員 ただいま御指摘のような極めて悪質な落書きが本年の六月二十日以降高知市内で執拗に行われておりますことを私どもも承知いたしておりまして、このような行為に対しては、私どもがかねて進めてまいりました部落差別解消に向けての努力を踏みにじる行為でございまして、このような行為がいかに許すことのできない行為であるかということを一般に啓発するということが私どもの役目であろうと存じます。  地元高知地方法務局におきましても、先週、こういう行為に対して、これがいかに悪い行為であるか、部落差別というものをどのようにしてなくさなければならないか、みんなが協力しなげればならないというようなことを訴える文書を配布したところでございます。このような形で鋭意啓発に努めていきたいと存じております。
  73. 井上泉

    井上(泉)委員 局長、そういう御答弁をなされるわけですけれども、この高知の法務局の人権擁護課というのは、これはどういうスタッフでやっておるのか知りませんけれども、こちらから文句室言って要請をするとやってきて、やってきたけれどもその落書きを写そうともしない。そうして内容のメモもしない。ただ見ただけでそのまま立ち去った。こういう現実の姿であって、これでどうして人権擁護の仕事ができるか、こう思うわけです。私は、この担当者の方の不誠実な態度というものは、そのまま人権擁護局の不誠実な態度でないか。個人を何も攻撃をするつもりはありませんが、こういうふうなものに対して、今、なにを配った、こう言うけれども、どういうなにを配ったのか、私その資料を見てないのですが、局長、お手元にあればその配った通知書なりを示していただきたいのです。
  74. 高橋欣一

    ○高橋(欣)政府委員 これは地方法務局から私どもも最近報告を受けた文書でございますが、こういう文書を配っております。「市民の皆様へ 悪質な差別落書きが市内で発生」という題で、「人権の尊重は人間みんなの願い」。表題の柱をまず読ましていただきますと、「人権の尊重は人間みんなの願い」、それから次に「部落差別解消を妨害する事件発生」、三つ目の表題としまして「明るく住みよい社会づくりのために努力を」としまして、「皆さん、お互いに、差別落書きを二度と「しない」「させない」「許さない」よう、一人ひとりが努力しましょう。」といったような啓発文書を、高知地方法務局と高知県人権擁護委員連合会の連名で作成いたしまして配布した次第でございます。
  75. 井上泉

    井上(泉)委員 その配布、何枚ぐらい配布したのですか。それから、あなたのところに報告はいつ来たのか。
  76. 高橋欣一

    ○高橋(欣)政府委員 二千枚配布したという報告を最近受けております。
  77. 井上泉

    井上(泉)委員 高知市に十万の世帯があるわけです。十万世帯のあるところに二千枚といったら、これはあなた、適当な宣伝、そういうふうな数字と、こう思いますか。
  78. 高橋欣一

    ○高橋(欣)政府委員 二千枚とりあえず配った詳細についてはまだ私ども存じておりませんが、できたものからまず配るということではないかと思いますが、予定として報告を受けておりますところによりますと、来月上旬に同種の文書を二万枚用意して配布するというふうに事前の報告を受けております。
  79. 井上泉

    井上(泉)委員 それで、この差別落書き、それを僕も現地へ見に行きましたが、その落書きの内容というものは本当に慄然とするような、合えたなんというような言葉、これはなくなっておる言葉ですが、それをそのままにして「エタを殺せ」というような、これでは、人権擁護局がそれを啓発するだけじゃ、文書を配るだけじゃ、私はやはりこうした問題に対する対応の仕方とは言えないわけです。殺せということは、これを書いた者はいわば殺人を唆すような、殺人をしてもよろしいぞ、あれをやれよというようなことをしておるのですが、この点について、警察庁と連絡でもとったのですか。
  80. 高橋欣一

    ○高橋(欣)政府委員 今御指摘の殺せという文言が殺人の犯罪とどう結びつくかということは、私どもそこまで検討して警察にお願いしたということはございませんが、特に市民図書館の落書きにつきましては、高知市の方でその建物の所有者という立場から告訴しておられまして、それにつきまして高知地方法務局の方からも警察の方に事情説明をしているというふうに報告を受けております。
  81. 井上泉

    井上(泉)委員 これは告訴はしてないですよ。これは、告訴するに当たってもだれをどう告訴するか、不特定多数の者を告訴することになるわけですから、告訴はしていない。告訴はしていないけれども、市民図書館の設置者である市長がこれに対していわゆる器物破損ということで警察へ、公共の器物を破損されたということでいわば被害届を出している。告訴じゃないですよ。間違ったらいかぬですよ。被害届を出した。そういう被害届が出てきておるわけですから、警察はそれに対してどういう対応をしてきたのか、その問題はまた後で警察庁に問います。しかし、あなたか言う告訴じゃないですから、告訴に至る段階まで行ってないから、もっともっと積極的に人権擁護局としては出向かなければならない。これが発生したのは七月五日、今日までもう二十日経過をしておる。本省からしかるべき人でも派遣するとかいうようなことをなぜしないのですか。する意図はないですか。
  82. 高橋欣一

    ○高橋(欣)政府委員 現在のところ何分にもまだ行為者が判明しておりませんし、そういう段階では私どもといたしましては先ほど申しましたような一般啓発に力を入れるべきであろうと考えまして、高知地方法務局ではそのような対応をしておりまして、私どもといたしましてはそういう動きを現在見守っておるところでございます。
  83. 遠藤要

    遠藤国務大臣 先生の御指摘、私ここで聞いていても、今の答弁を聞いておられて全く情けないなという感じを持たれたのではないかな、こう懸念しますが、ただいま私、大臣の立場として、この問題は人権侵害の悪質な事犯だということで警察庁と協議をして、所轄警察にも捜査を依頼したい、そして厳重な対応をしたい、このような考えを持っております。特に高知地域でこの十月に人権擁護の大会を開くことになっております。そういうふうな点で、その地域でそのような事犯が起きているということは、全く心ならずも、こう申し上げたらいいか、全く遺憾でございますので、先生の御指摘の点について十分対応していきたいと思いますので、御了承を願いたいと思います。
  84. 井上泉

    井上(泉)委員 今私が手を挙げたのは、大臣の見解をただしたいと思いまして手を挙げたわけでありますが、大臣の方からそれについての意見の開陳がなされ、誠意のある答弁として私は受け取ってまいりたいと思います。  しかし、それにしても事務当局の方が大臣にそんなことを言われては困る、これは一般的な啓発宣伝をやろう——一般的な啓発宣伝といいましても、具体的な事例があってそれで初めて一般的な啓発宣伝をやるべきであるから、具体的な極めて悪質な、部落民にとってはまさに屈辱的な差別キャンペーンですから、こういう事例に対してもっと私は積極的な対応の仕方があるべきはずだと思うわけですが、今の大臣の御見解をお聞きして局長はどうお考えになっていらっしゃいますか。
  85. 高橋欣一

    ○高橋(欣)政府委員 大臣の今のお話を外しまして、積極的に対応していきたいと存じております。
  86. 井上泉

    井上(泉)委員 積極的に対応ということになりますとすぐ敏感に私どものところへははね返ってくるわけですから、すぐわかりますから、この場の言い逃れとして終わることのないように、これは大臣の見解をあなたも了承しておるのだから、それをきちっとやっていただきたい。事件が七月五日に起こって、その以前にもいろいろあった。前は「エタを殺せ」じゃない、「エタは死ね」であった。ところが、殺せになっている。こんな状態を放置してきた人権擁護局のやり方に私は非常に不満を感じておるわけでありますけれども、今大臣の言われた見解が現実に実行されることを期待をして、そのことによって部落差別を少しでもなくしていくような、そしてこんな悪質なものは徹底的に処理をするようなことが望まれるわけでありますので、なおひとつ人権擁護局としては、機構いじりの中で簡裁の統廃合あるいは登記所の統廃合というようなことで人減らしが強くなっておるわけですが、少なくとも人権擁護の仕事に携わっておる人が、一人でカメラも持たずにメモもせずに現地に行って、そして机の上で文書を書いて、その文書を印刷に回して、そしてどういう方法で配ったか知りませんけれども、少なくとも新聞あたりへ広告くらい出すべきだと私は思います。そのくらいの積極性というものがなければ人権擁護局として国民の人権を守ることはできぬじゃないか、私はこういうふうに思うので、さらにそのことについての御奮闘をお願いするわけであります。  それと同時に、警察庁の対応の仕方であります。今局長は告発と言い、私も告発と受け取っておったわけでありますけれども、調べてみると告発ではなしに被害届が出されておる。こういうことになって、その被害届に基づいて警察は恐らく捜査——被害届が出てきたら、ああそうかと言ってそのまま机の中に忍び込ますものじゃないと思うわけですが、被害届の取り扱いはどういうふうにされておるでしょうか。警察庁としての対応の仕方をお聞かせ願いたいと思います。
  87. 広瀬権

    ○広瀬説明員 お尋ねの落書き事案につきましては、警察庁といたしまして次のような報告を受けておるところでございます。  本年六月二十六日、高知市民図書館副館長が所轄高知署を訪れまして、本年六月二十三日午前十時三十分ごろから午後零時十分ごろの間に、高知市本町に所在いたします市民図書館二階男子便所におきまして、何者かが赤色マジックでタイル製壁やスクリーンにお尋ねのような記載をし、一部消すことができないようになったという旨の届け出がありましたことから、警察といたしましては事案を認知いたしました。その後、高知市等の御協力によりまして高知市内で合計二十五カ所に同様の落書きがなされていることを認知いたしております。  これらの事案につきましては、その落書きの書かれた対象物及び落書きによる汚損程度によりまして器物損壊罪に当たるものと認められましたので、高知県警察におきましては現場の実況見分、関係者からの事情聴取等所要の捜査を行い、犯人像の似顔絵を作成し、これを聞き込み等の捜査に活用するなど被疑者の検挙に向けまして所要の捜査を推進いたしております。また、この種事案の再発防止を目的といたしました警ら警戒活動を推進いたしておるところであります。  以上のような報告を受けております。
  88. 井上泉

    井上(泉)委員 そういう事態というものを警察庁の方としては十分認識をされており、そういう報告も受けられておるわけでありますけれども、なおこれに対して捜査というものを、それは事件はたくさんあるでありましょうけれども、少なくとも不特定多数の人の人権に関することであるし、そしてそれはこの関係者のみならず、これは一般地域住民の人権を守るためにもこういうふうなことは厳重に取り締まるべきであるし、またその犯罪行為を犯した者は、重要犯罪者として摘発に積極的に対応していただかなくてはならないと私は思うわけであります。しかし、肝心かなめの国民の人権を守る、そして差別しても糾弾してはいけない、人権は法務省、法務局で守る、こう言って今までもたびたび言われてきたわけでありますが、その法務局の、法務省の対応の仕方というものが非常にいわばよそごとに感じておる。  質疑時間がなくなったので終わりますけれども、これについて最後にひとつ、今の警察庁の答弁を踏まえまして、この高知県に起こった人権無視の、人権侵害のこのいわば大キャンペーンともいうような落書き事件について、私はいま一度大臣の御意見をお尋ねして、私の質問を終わりたいと思います。
  89. 遠藤要

    遠藤国務大臣 今先生お話しのとおり、人権問題は日本の国としてこれは大きな一つの国是だ、特に法務省として、やはり法の確立と人権、そして国民の財産の保全ということが一番大切な任務でございます。その中において、人権問題については今日までもろもろ先生御指摘がございましたけれども、私から弁解するのもどうかと思いますが、陰に陽に苦労して今日を築き上げておるということも御理解願いたいと思います。  このたびの問題については、私としてもまことに先生御指摘のとおりでございまして、悪質な人権侵犯と申しましょうか、差別を扇動するような行為であるというような点で許すべきではない、このような気持ちを持っておりますので、今警察庁のいろいろ報告もございましたけれども、さらに長官にも改めて私からも要請をいたして、さらに出先の法務局にも厳重に先生の御指摘の点を指示いたしまして対応していきたい、このように感じており、ぜひやはり日本国にはもう差別がないというような国にしていくことが私どもの基本的な姿勢でございますので、その方向で一層努力してまいりたいと思います。御了承願います。     〔井出委員長代理退席、委員長着席〕
  90. 井上泉

    井上(泉)委員 ありがとうございました。
  91. 大塚雄司

  92. 坂上富男

    坂上委員 関連事項として二、三御質問を申し上げたいと思います。  まず一つは、裁判に当たりまして、国の利害に関係のある訴訟についての法務大臣の権限等に関する法律法務大臣権限法というのだそうでございますが、この第四条の適用について、光華寮問題との関係において御質問を申し上げたいのであります。ずばり言って、法務大臣はこの権限法第四条に基づいて、現在最高裁で係争中の光華寮問題について、この条文を発動いたしまして意見陳述をなされるかどうかという点についての御質問をしたいと思っておるわけであります。  そこで、前提をひとつ確認だけしておきたいと思っておるわけであります。まず、これは裁判所から言われなければ申し出ないのだろうかどうかという問題でございますが、これは第一回国会の衆議院司法委員会議事録六十六号あるいは六十五号あるいは六十三号によりますと、こういうふうに政府委員側は述べております。「もちろんそういうことが問題になっているということを法務庁で」当時法務庁です、「法務庁で聞き知った場合には、進んで許可を求めにいくことがあると思いますが、」だから、みずから積極的に裁判所に第四条該当事項があれば許可を求めに行くという行為、こう言っているのです。しかし「多くは裁判所の方から意見を求められるようなことがあるのじゃないかというふうに思うのであります。これは法務総裁の法律的な顧問的職務上の単なる意見の開陳でありまして、もちろんこれは裁判所をどうこう拘束するということはあり得ない。裁判所の方で単に参考に供するだけでありまして、これがために裁判所の独立、判決の独立を乱すようなことはあり得ないことだというふうに考えておるのであります。」こう言っておるわけであります。だから、裁判所が積極的に法務大臣意見を求めなくとも、必要ありと認めるならば法務大臣みずからが裁判所に許可を求め、意見を述べる、こうなるわけでございます。これがどうも法律の解釈上の見解だろうと思うのであります。  そこで、私の知る限りでは、本年の四月に森林の共有林分割の制限についての違憲判決が出たわけでありますが、これに対して政府意見書が提出をされたわけであります。そこで私は、百八国会の建設委員会で、違憲になるような条文を行政官庁が残しておくことに行政上の責任があるのじゃなかろうか、いかがですか、こうお聞きをいたしたわけであります。そしてまた、それに基づいて、一体この違憲判決の結果森林行政に大きな影響があるのじゃなかろうか、こういうこともお聞きをしたわけです。林野庁の方ではどういう答弁があったかと言いますと、百八国会の六十二年五月十五日の私の質問に対し、「この森林法第百八十六条の規定の削除による特段の影響は生じない、このように考えているところでございます。」削除されたって、憲法違反だってどうってことはないという答弁だ。  そうかなと思いまして、私はこの第四条に基づいて提出された意見書、これはどう書いてあるだろうかと思いまして、理事会で取り寄せをしていただいて、本日いただきました。これを読んでみますると、こういうふうに書いてあるわけであります。「仮に、森林法一八六条が違憲とされるようなことがあるならば、現下の厳しい不況の下で危機的状況を迎えている林業の振興を図り、森林の保続培養を図るためになされている林野行政の遂行にとって、有形・無形の多大な悪影響を生じることは必定であり、ひいては、国民生活の安定と国土の保全を害する結果になりかねないものである。」と言って意見書を出しておるわけです。国会の答弁は大したことありませんということですが、裁判所にはこういう意見書を出しておるわけであります。それで、結果的に裁判所はこの意見は採用しなかったわけであります。時間がありませんから詳しく質問しませんが、林野庁、今言ったようなことについてどのような御見解なんですか。
  93. 安橋隆雄

    安橋説明員 一月二十六日の法務大臣意見書というのは、先生が今述べられたとおりでございます。これは、森林法百八十六条自体の合憲性を前提といたしまして、公共の福祉との関係で百八十六条自体に合理的な立法目的があり、規制の態様もそういった観点で許されるという見地から述べられたものでございます。  ただ、先生今御指摘のとおり、その後四月二十二日に最高裁から百八十六条自体が違憲であるという判決が最終的に下りまして、これは最高裁の判決で最終判断であるということでございましたので、私ども林野庁といたしましてその対応を検討いたしました結果、やはり最終判断がそのように出た以上削除せざるを得ないのじゃないかということで削除法案を出したような次第でございます。その場合に、この百八十六条自体の削除によりまして影響が出ないようにするために、現行の生産森林組合制度とか金融制度等を活用いたしまして、従来と同じような意味におきまして林野行政が円滑に行われるようにしたいという認識に立ちまして、既存の制度の充実に努めてまいりたいというようなことで、百八十六条自体の規定の削除とそれの対応策をお答え申し上げたところでございます。  そういうようなことでございますので、私どもといたしましては、判決が出た以上削除ということで、その影響ができる限り出ないように今後とも対応を考えていきたいと考えているところでございます。
  94. 坂上富男

    坂上委員 あなた方が意見書を提出するに当たってのあなた方の認識と現実の林野行政に対する皆様方の認識が著しく違うからだ、私はこう言っているのですよ。しかも、違憲判決などというようなことは行政の中であってはならぬことでございます。さっきのは私の質問に対する答弁なんです。  いま一つ調べてもらいましたら、五月十五日の農水委員会で、寺前先生が質問しているのにあなたの方で田中さんという方がお答えになっている。「あの規定によって細分化が防止されたという事例もそれほど聞いておりませんので、あの規定がなくなった後における経営なり所有の零細化ということについてはそれほど心配する必要はないのじゃないかというふうに我々としては認識しているわけでございます。」こんな条文あってもなくてもいいんだ、あなた方はこう言っているのだ。憲法違反という重大なことなんです。それについて、こんな程度のあなた方の認識で裁判所意見書を出しているわけですよ。もう時間がないからこれ以上は別のところでやりますが、そんな程度の意見書が出されている、こう言っているわけでございます。  さてそこで、大臣、光華寮問題は今国際的にも大変な問題であります。しかもまだ、裁判の独立、三権分立という観点からもいろいろな問題があります。第四条については、第一回の国会で、これは裁判の独立に対する侵害になるのではなかろうかという質問もあるのです。これについて政府当局は、全くそういうことにはなりませんということを第一回の国会で御答弁になっているわけであります。前回の本会議でございましたか、自民党の政調会長さん、どなたかど忘れしましたが、内閣総理大臣に御質問になった。一体、裁判所から求めがあったら調査嘱託に応ずるのかどうか、こうおっしゃっているわけであります。たしか総理大臣だと思いますが、前向きに検討するというようなことをおっしゃっているわけであります。これはどういう意味か、私ちょっとわかりかねてはいるのでございますが、この第四条を指摘したわけではなさそうであります。やはり今日本が三権分立をとっており、裁判の独立を侵害しないという範囲において、また政府としてやるべきことは何かというようなことを問われた場合に、この条文が最も大きな問題になるのではなかろうかと思っておるわけであります。  そこで、法務大臣とされましては一体、裁判所から求めがあれば出しますけれどもではなくして、任意に出せるわけでございまして、ただ、裁判所が許可するかどうかは別のことでございますが、この発動をなさるかどうか、お聞きをしたいと思います。
  95. 菊池信男

    ○菊池(信)政府委員 大臣にお尋ねでございますが、前提といたしまして、運用の関係で若干御説明をさせていただきたいと思います。(坂上委員「時間がないから大臣にずばり聞きたいのです。前提は私は言ってあるのだから、大臣にずばり聞きたい」と呼ぶ)そうですか。失礼いたしました。
  96. 遠藤要

    遠藤国務大臣 四条問題については、さきの衆議院の本会議だと記憶しておりますが、自民党の伊東先生の御質問に対して総理が答えられております。それは四条の面が含まれているか含まれていないかということがちょっと私としても鮮明にはしておりませんけれども、先生の御指摘の点については、今係争中のところに法務大臣が割り込んでいって意見を言うということはやはり三権分立の趣旨に反するのではないかという点がございますので、こちらから割り込むと言うと語弊がございますが、特に今申し入れをするというようなことは今のところ考えておりません。また、裁判所の方から要請があった場合に、今ここで係争中に法務大臣意見を申し述べるとか述べないということは、いろいろマスコミや何かでも問題になっているさなかにおいてそういうふうな答えを出すということも慎重を期すべきではないかなということでございますので、その点で御理解をちょうだいいたしておきたいと思います。
  97. 坂上富男

    坂上委員 もう一点。第四条はこう書いてあるわけです。「法務大臣は、国の利害又は公共の福祉に重大な関係のある訴訟において、」裁判中という意味でございます。裁判所の許可があれば「自ら意見を述べ、又はその指定する所部の職員に意見を述べさせることができる。」こう書いてあるわけであります。この問題、「国の利害又は公共の福祉に重大な関係のある訴訟」という御理解はまだないのでございましょうか。
  98. 遠藤要

    遠藤国務大臣 これは国としても重大な問題であるということは十分認識をいたしており、その面で今争っているというような状態でございまして、財産の取得の問題を通じて争っているという係争中の問題でございます。これは法律によって決定をするということが当然なことか、こう思っておりますけれども、特に裁判所法務大臣意見はどうかということになったときになって改めて私は検討してまいりたい、こういうふうに思っております。
  99. 坂上富男

    坂上委員 この問題は、また一般質問等でもう少し各論に入りまして御質問をさせていただくつもりでございます。さらに御検討いただきたいと思っておるわけでございます。  それから、弁護士や行政書士に関する問題でございますが、この間、外国人在留の延長、再入国許可等の手続の代行に関する省令が出されたわけでございます。新聞にも報じられておりますし、省令もいただきましたが、結局のところこのような認可を与えますと弁護士業務や行政書士の業務の侵害になるかと思うのでありますが、御当局、いかなる御見解でございましょうか。
  100. 小林俊二

    ○小林(俊)政府委員 お答え申し上げます。  今回の手続の取り次ぎにつきます新しい制度は、本年五月の先生御指摘の省令改正によって設けられたものでございますが、その根幹には近年におきます在留に関する手続の大変なふくそうというものがございます。そのふくそうの結果、在留外国人そのものが非常な負担を強いられている、あるいは入管当局が大変過剰な負担を強いられているという現況があるわけでございまして、こうした状況を前提として、何とかこれに合理的に対応していこうという工夫の一環として設けられたものでございます。  先生御指摘の行政書士あるいは弁護士関係の法令との関係は、私どももこの制度について検討いたしました際十分に協議、検討を尽くしたところでございます。すなわち、今回の制度の結果申請の取り次ぎを認められますのは一定の、特に私どもの管理の観点から見て信頼するに足ると認められる企業あるいは学校等に関しまして、その企業が雇用している外国人職員あるいは学校に在籍している外国人学生、修学生等についてのみその人々の在留にかかわる申請の取り次ぎをその機関、すなわち企業であるとか学校であるとかに認めていこうということでございまして、その取り次ぎをする人間もその企業あるいは学校に経常的に雇用されている職員でございます。その職員の中で適当な者を法務大臣が認定をして、そしてその取次者としての資格を認める。そうした場合におきまして、すなわちまず機関についての承認があり、次にその機関の雇用する特定の職員についての承認がございます。そうした承認を受けた場合におきまして、その企業あるいは学校に属する外国人職員、外国人修学生について取り次ぎの申請を行うことを認めるということでございまして、言いかえれば、これらの職員はそうした取り次ぎを行うことを報酬を受けて業として行う者ではございません。したがって、そうした取次業務についての手数料を受け取るということもないわけでございます。そういう意味で、行政書士法あるいは弁護士法の規定するところに違背することにはならないという判断のもとでこうした制度設置したものでございます。
  101. 坂上富男

    坂上委員 自治省はどうですか。
  102. 濱田一成

    ○濱田説明員 今回創設される制度は、在留資格の変更等の手続に際しまして、申請書類の提出のみの代行を当該外国人を雇用いたしております者等ができる特例であるというふうに承知いたしているわけでございます。したがいまして、申請書類の作成につきましては従来どおり本人または行政書士等が行うこととなっているわけでございまして、御指摘の問題は生じないものと考えているところでございます。
  103. 坂上富男

    坂上委員 それはそれで結構ですが、この窓口の混雑緩和をねらうために管理局に出頭原則を緩めるということが問題なのでございまして、そっちへ行った方が出頭が緩められるということになりますと、今度はあなた方の御商売のところへ行ってもやはり行かなければだめだから書いてもらうだけではいやだわねと言って、非常にこの仕事が減るのじゃなかろうかということを心配しているわけでございます。だものでございますから、これは行政書士会などとよくお話しなさったのでございましょうか。こういう話は、殊に行政書士さんはこれでもって生活をなさっておる皆様方が相当おるわけでございまするから、きちっとやはり連合会の意向をひとつお聞きをくださいまして、これからお話し合いをくださいまして、何らかの意見相当あるようでございまして、私のところにきのう夜遅く駆け込み陳情が実はあったわけでございまするので、御配慮賜りたいと思うのですが、いかがですか。
  104. 小林俊二

    ○小林(俊)政府委員 私どもに対しましても、行政書士会から接触がございました。そこで私どもとしては、今後引き続き具体的な問題について話を進めていこうということを申し上げた経緯がございます。先生の御発言の趣旨を体して、さらに問題について詰めるべき点があれば詰めてまいりたいと存じます。
  105. 坂上富男

    坂上委員 それはありがとうございました。  それでは本題に移らせていただきますが、お二人の先生方の御意見、御質問を聞いて、ダブる点もあるものですから、できるだけ削除しながらお聞きをいたしたいと思いますので、詳しい説明は結構でございます。  端的に言いまして、廃止する役所の所在する地方自治体と管轄内の地方自治体では対応が違った、こうおっしゃっている。まず、裁判所はだれが一体そういう地方自治体の人と会って、そして一般的にどういう返事があったのか。さっきから聞いていますと、何か抽象的です。本当に責任のある市長なり町長さんなりにお会いをなさったのか。最初は反対があったけれども、最後になるともう反対の声が聞かれません、これも賛成したわけじゃないでしょう。積極的によろしゅうございます、賛成ですと言ったのは一体何人いたのです。  三点ばかりまずお聞きしましょうか。
  106. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 最初のお尋ねでございますが、管内の市町村を回りましたのは、それぞれの関係する地方裁判所あるいは家庭裁判所の所長でございます。もちろん事務局長を帯同して参ることがございますし、また、事務局長が単独で参ることがございますが、原則として所長がお伺いいたしております。お会いする相手の方々は原則として市町村長、それから市議会、町村議会の議長さんでございます。こういう方々にお目にかかりまして、種々御説明を申し上げたわけでございます。  先ほど御説明申し上げておりますように、この問題の検討を進めるに当たりましては、単に御賛成いただくとか、あるいは御同意をいただくとか、そういう形でお伺いしているわけではございません。法制審議会答申にもございますように、何よりもこの問題につきましては、所在地を中心とする地元自治体の御理解をいただくことが極めて重要であるというふうに考えて、検討の早い段階から御説明にお伺いして御理解を賜るように努めてまいってきたわけでございます。したがいまして、中には積極的に賛成するとおっしゃっておられる方もございますけれども、賛成あるいは同意の書面を出していただくとか、そういうことでは事柄の性質上ございませんので、それぞれの簡易裁判所が抱えている問題状況、各都道府県内の他の簡易裁判所との比較において一体どう見ていけばいいのか、その辺のことをるる御説明申し上げまして、御理解をいただくように努力してきたわけでございます。
  107. 坂上富男

    坂上委員 各市町村ごとにそういう文書なりあるいは調書なり、そういうのはみんなあるのですか。これは私はこの間の理事会から言っているのです。こうやって質問の中でお答えをいただこう、こうなったわけでございます。全部あるのだったらひとつ見せていただきたい、こう思っております。それで一つ一つ聞きたいと思います。というのは、裁判所のことでございますからそうむちゃなことはなさらぬと思うのでございますが、やはり必ずしも理解はいただいてなかったのじゃなかろうか。理解が得られないところについても、得られなくともこれはだめだ、こうなったのでございますか、調書はあるのですか。
  108. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 それぞれ地元に御説明に行かれました所長方から、このような御説明をし、相手方の御意見はこうであったというような報告書はございます。報告書はございますが、こういう非常にデリケートな問題でございますから、その報告書の記載の仕方もそれぞれ庁によってまちまちでございますし、いろいろなやりとりの中での微妙なニュアンスというものを書面に正確に映し出すということは、これはなかなか困難でございます。したがいまして、そういう報告書形式のもので軽々に、あるいはそれをそのまま考えていくのは必ずしも妥当でない面があろうかと思います。しかし、私どもは一回限りのやりとりの中で御理解をいただいたとかいうふうに考えているわけじゃございませんで、何回も足を運んでまいりまして御説明を申し上げております過程の中で御理解が深まってきたであろうというふうに認識するわけでございます。それぞれの御意見の中にはさまざまなものがございまして、一律に同意とか不同意というような形で集約しがたい面がございます。  この問題は、最終的にはそれぞれの地域における住民の裁判所利用の便に係る事柄でございまして、形式的には各自治体の長の同意をいただけば済むという性質のものではございませんし、裁判所といたしましても、決してそういう意味での自治体の同意をいただいたと考えているわけではございません。ただ、法制審答申でも指摘されておりますように、具体的な集約庁の選定に当たっては、地元自治体等の意見を聴取し、それぞれの地域実情を把握し、総合的に判断することとされているわけでございまして、そうした地域実情と、これを踏まえた各自治体の御意向を伺うという観点からこのようなプロセスを踏んできたわけであります。そういう結果を踏まえまして、答申の中から四十八庁を除く百一庁というものを選定してきた、こういうわけでございます。
  109. 坂上富男

    坂上委員 時間がありませんから、そう詳しくは結構です、数字だけで。  簡易裁判所意味というのは、理念というのは、民衆裁判所、駆け込み裁判所、町医者、こういうような概念であったわけでございます。したがいまして、民衆の簡易裁判所、国民のための裁判所であればあるほど、その管轄内の地方自治体の理解を得ること、同意を得ること、これはもう裁判所が率先してやるべきことだろうと僕は思っておるわけです。これは意見ですから、まあいいです。  そこで、今言ったような条件を加味して統廃合なさるというお話でございますが、事件数がふえた、こういうような場合になったら簡単に復活できるのですか。もちろん法律手続はあることはわかりますよ。実態として事件が急にふえてきたような場合は簡単に復活できるのですか、もとへ戻して。ここは六十件以下だから削除になったところが、今度は時間と件数の関係でふえてきた、こういうよう」な場合は復活可能なんですか、どうなんです。
  110. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 一般論として申しますならば、簡易裁判所配置は、今回検討に当たって考慮しましたような社会事情の変動に応じて弾力的に行うべきものであろう、今後の交通事情事件数の推移によりましては新設を考えるべきところも当然あると思われます。法制審答申の枠内の百四十九庁のうち近々事件増が予想されるような地域につきましては今回の統合から除外しているわけでございまして、仮に今回の統合庁の地域において予想に反しまして急速な事件の増という事態が生じまして、裁判所設置を必要とするような事態が生じましたならば、その段階でまた簡易裁判所新設ということで法律改正をお願いしなげればならないというふうに考えています。
  111. 坂上富男

    坂上委員 その基準を聞いているのです。基準は前と、この廃止をした基準と同じかと聞いているのです。そう聞いているのです。
  112. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 今回の統廃合の基準の枠から外れたという、その一言のみによって今後裁判所新設を考えるべきかどうかということになりますと、これはそう簡単にはまいらないだろうと思います。
  113. 坂上富男

    坂上委員 それでは、あなたのところは事件数が五十件だから、統合するところと近いからあれだったのですよ。実際私らこういうふうに裁判をやっていることは御存じだろうと思う、合意管轄。そこの裁判所へ一件持って通うのは大変だからというわけで、お互いに弁護士はそこの、決まりましたら合意管轄書を出して、町の裁判所から新潟の裁判所へ裁判をやっている。これはみんなそうなんじゃなかろうかと私は思うのです。  でありまするから、この実態を調査してみますると、必ずしも件数だけで言えないわけです。しかも、件数でもって大きな削減の、統廃合の理由になっているわけでございますから、復活の基準もあるいは新設の基準もやはり今言ったようなことが基準になければならぬ、私はこう思っておるわけでございます。そうでなければ廃止を納得させるわけにはなかなかいかないのじゃなかろうか、こう思っております。  きょうは第一回の質問でございますから、時間を超過しますからやめまするけれども、どうか委員長、今言ったように各地方自治体についての報告書、これは理事会で出して見せていただきたい。それから、復活の基準あるいは新設の基準というものについてももう少し明確に、この際はっきりさせていただきたい。これは次回に御質問申し上げることにいたしますから、準備だけお願いをしたい、こう思って終わります。
  114. 大塚雄司

  115. 安倍基雄

    安倍(基)委員 きょうは次に本会議がありますので、私いろいろ盛りだくさんあったのですけれども、ちょっと後に延ばす、特に私自身がきょうは本当は私の地元の浜松地区における暴力団の話を取り上げたかったのですけれども、それは後の機会にさせていただいて、また改めてと思います。  今いろいろお話が、今までも質疑がありましたけれども、一つは、行革という面ではこの法案というのは悪くはない。ただし、行革というのはそれによって得るところと失うところとのバランスの問題だと思うのですね。今話もありましたけれども、一つは件数が少ない。それから逆に、要するにスーパーがあれば買いに行くけれども、なくなったらもっと減る。件数というのは、そこが簡単に使えるか使えないかという一つの関数でもあるわけです。そういう意味で、今度の統廃合がどの程度行革に沿うのか、経費的にも、人員的にも。そういう面と、逆にそれがどういうマイナスを持つのかというバランスの問題が常に行革問題にはあるわけですよ。この点について、一体今度の措置によってどの程度の、要するにプラスというか、お金の面でも人員の面でもあるのかということをまず第一にお聞かせ願いたいと思います。
  116. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 今回の適正配置の問題、簡裁の整理統合の問題は、社会事情変化にマッチするように機構を改革するという点におきましては、行政改革と似たような発想がございます。しかしながら、行政改革が仮に人員、予算の縮小を目的とする、ミニガバメントをつくるのが行政改革の目的であるというふうにいたしますと、裁判所の場合、適正配置によりまして予算、人員の縮小をねらっているわけではございませんので、そういう点では必ずしも行政改革と同じというわけにはまいらないだろうと思います。ただ、人員、予算の公平、適正な再配分ができるという点におきましては、行革に似通った面もあるわけでございます。  具体的に申しますと、今回簡易裁判所整理統合をすることによりまして、書記官、事務官、廷吏等の一般職員が約二百数十名でございますか、余裕が生ずるわけでございます。これを受け入れ片あるいはその他の繁忙庁に振り向けて人員の適正な配置をする、こういうメリットがございます。先ほども申しましたように、庁舎の維持に要する経費というのも若干浮くわけでございますが、これはさほど大きな金額にはならないだろうと思います。  いま一つのメリットと申しますか、現在の百一庁をそのまま存続いたすといたしますと、九十数カ庁の庁舎の建てかえが必要になってまいります。これを整理統合いたしますことによりまして、その建築に要する費用というものが、いわば冗費の節約ができる、こういうメリットがあろうかと思います。
  117. 安倍基雄

    安倍(基)委員 余り金目のもののことを言って悪いけれども、ずばりどの程度の節約になるのか、要するに人員にしても、つまりお金の面で言ったときに、建てかえ費を考えたときに、それを聞きたいと思います。
  118. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 先ほど九十幾つかと申しましたが、百四十九庁の中で九十幾つかでございまして、百一庁の中で建てかえを要する庁はたしか六十庁ばかりであったかと思います。これにつきまして一庁当たりほぼ一億というふうに見ますと、六十億円ほどの金額になろうかと思います。
  119. 安倍基雄

    安倍(基)委員 六十億円というのは一時的なものであるのか、あるいはこれからずっと、今の給与なんかの場合ありますけれども、今非常に気にしているのは、社会党の方も聞かれましたが、やはりそれによってこうむる周辺のマイナスですね、これは決して少なくないですよ。特にこれから、今まで日本人というのは割合と争い事を嫌がっていたけれども、簡単な問題を割合と簡易に、いわゆるホームドクター的にやるものに対する需要はあるいはふえるのじゃないかという気もするのです。その面で、手近なところにないということがついついおっくうになって、そうするとトラブルがなくていいじゃないかと言われるかもしれぬけれども、それは逆に病気を抑え込むみたいな話で、ちょっとした解決を、それこそ裏の暴力でやるとかなんとかでやるという可能性もあるわけです。  今度の法案について、我々としては行革という面では非常にいいのだけれども、マイナス面が相当あり得るぞ。その辺はどう考えているのだ。それに対してどう手当てをしていくのか。例えばあるところから引き揚げる。話を聞きますと、場合によってはちょこちょこ簡単にいくとか、あるいは東京あたりはこれから各地区のどこをどうするという計画もあるらしいですけれども、そのいわばアフターケアというか、地元にどうやってその問題を起こさない形で——今、同意書をとったかとらないかというような話もございましたが、全市町村とるのもあれでございましょう。しかし、私は裁判所がそれぞれ各地と接触してなさったことは知っておりますし、その努力は多としますけれども、基本的には、市町村もさることながらそこに通う人間ですから、その人間がやはり近所に手軽な小売屋がなくなれば遠くまで行かなければいかぬ。ついついおっくうになるという要素は十分あるのですよ。特に僻地になりますと、そこまでのこのこ出かけていくのが大変だ、途中にちょっとあれば、それは電話一本で済む話ならいいけれども、そういう争い事というのはなかなか電話一本では済まない話ですから、こういったことに対するいわばそれぞれの現地の実情に応じたアフターケアということについてどう考えていらっしゃるのかということが一番の問題点だと思うのです。この点について、どういう支障が起こり得るかなという想定のものと、それに対するいわばとるべき手段をどう考えていらっしゃるか。
  120. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 確かに今回の法案が成立いたしますと裁判所がなくなるわけでございまして、所によりますと受け入れ庁の方が近いというところもございますけれども、おおむねやはり足を延ばしていただかなければならない、これは確かにデメリットの面でございます。  私どもといたしましては、現在の裁判所を置いておりましても、週に一回あるいは隔週一回、月に一回という裁判官のてん補をお待ちいただかなければならぬ。曜日が決まって出向く日をお待ちいただくということになりますと、期日の指定もなかなかやりにくくなる。ついつい先へ延びていく。これは多少足を延ばしていただいて、人的、物的に充実した簡易裁判所を利用していただきますと、期日の指定も入りやすくなってかえって裁判所を利用しやすくなる面もないわけではない、そういうことでカバーしていただきたいというのが一つでございます。  それからいま一つは、御指摘の、遠くなるのであるからアフターケアを考えなければならないという点でございまして、地元の自治体をお回りいたしましたときにもそういうような御要望がかなり出てまいっております。そういう御要望を承りながら、一つは月に一回あるいは二月に一回というふうに定期的に出張いたしまして調停事件を処理する、あるいは審判を処理する、その傍ら受け付け相談をやるというのが一つでございます。  それからいま一つは、随時に出張していく、こういう形態も考えなければならないと思っております。このようなアフターサービスの形態につきましては、この法律成立後また地元自治体と種々折衝いたしまして、どのような場所を提供していただくか、どのような形態で行わせていただくか、その辺を詰めて検討してまいりたいと思っております。  いま一つの点は、例えば町役場等に各種の申し立て書の用紙とかあるいは記載例等を備えつけさせていただきまして、それを利用して郵送することによって申し立てをしていただく、そういうような手だても考えてまいりたい、かように考えております。
  121. 安倍基雄

    安倍(基)委員 もう一つ。いわゆる跡地なんかはどうなるのかな。これは、一つの考え方は自治体に利用してもらうという考えもありましょうし、また反面、行革をやったのだからそれを国庫にとろうという考えもあるのです。これは二つの考え方がございますね。私はケース・バイ・ケースかとば思いますけれども、ただ、この問題はせっかくそうやって行革、今行革じゃないとおっしゃいましたけれども、その辺が私もいささか疑問なので、適正配置というのは一種の行革には違いないので、それは別に行革なら行革だとはっきり言えばいいのであって、何も遠回しな言い方をする必要はないので、この跡地問題なんかはどうなさるのか、この辺もちょっとお聞かせを願いたいと思います。
  122. 町田顯

    町田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。  委員御承知のとおり、国有財産法の規定によりますと、行政財産につきまして用途を廃止いたしますと大蔵大臣に引き継ぐということになるわけでございまして、簡易裁判所の場合もこれを廃止いたしますと行政目的がなくなるわけでございますから、用途を廃止した上、大蔵大臣の方に引き継ぐ、そしてその後は大蔵大臣の方が普通財産として管理、処分されるということになろうかと考えております。
  123. 安倍基雄

    安倍(基)委員 跡地について、例えば東京あたりだと、昔はそういうところは地方自治体に無償貸し付けとかなんとかやったことがあるのですね。その辺は、東京あたりはそんなのはばんばん売ってもいいのじゃないか。地方で、特に過疎地的なところであれば何かそういう公共的なものに使わせてもいいのじゃないかな。ただ、それが莫大な資産であれば、その辺余り自治体を甘やかすことはない。けれども、今回、いろいろの不便を皆さんに一面ではもたらす要素もあるという面では部分的にはそうしてもいいのじゃないか、まあケース・バイ・ケースで考えるべきじゃないかと思っておりますが、時間も大分少なくなりましたから、聞きたいことが山ほどあるのですけれども、大臣にまず第一の点、アフターケアをどうするか、それは地方の実情に応じて伸縮自在と言っては悪いけれども、状況によってはまた裁判官がちょこちょこ行くようにするとか、その辺をどうお考えになるのかなということが第一点です。それじゃ、そのことを先にお答え願いましょう。
  124. 遠藤要

    遠藤国務大臣 先ほどお答えしておるようでございますが、各地域で既得権が剥奪されたような感情が多少残ると思います。それを緩和するのは、先生のお話しのようにアフターケアや何かにおいて気分的に、果たしてそれで満足するかどうかということは問題がありますけれども、気分的に緩和せしめるということになりますと、関係町村と相談をして裁判所から出張していくとか、いろいろまとめて相談所を設けてお話し合いをするとか、いろいろそういうようなことを今までの質疑や何かの中でやってもらわなければならぬなという感じを持っております。  それからいま一つ、これはお尋ねは受けませんけれども、跡地の問題について関係市町村なりそれぞれが、自分たちの経験から言うと地域が協力して土地の提供なり安く購入してあげたというような点もございますので、これもアフターケアと同じようなもので、市町村や何かどの相談にも乗っていかなければならぬのではないかな、こういうふうな感じを持っております。
  125. 安倍基雄

    安倍(基)委員 私は、第一のアフターケア、ちょっと大臣の答弁ははっきりしないと思うのですよ。怒っているから、なだめるためにやるなんというのはアフターケアじゃないのですよ。例えば、その地域から移した、ところがその地域から随分数が出てくるというので、もう一遍その辺を、再配置じゃないにしても、ちょこちょこ行くようにするとか、そういう意味のアフターケアで、ちょっと頭をなでましょうという意味のアフターケアじゃないのですよ。常時その状況に応じて、小売店がそばからなくなると買い物に行く客が少なくなるかもしれぬけれども、いろいろな問題が起こってくると、例えば廃止対象の地区から何度も何度も通ってくる人がいるかもしれないわけですよ。そのときはそれなりの出張所なり巡回なりを考えるという余地も残す必要があるのだという意味のアフターケアであって、向こうの御機嫌をとるのがアフターケアじゃないのですよ。その点、もう一遍はっきり言ってくれませんか。
  126. 遠藤要

    遠藤国務大臣 今先生のお話しのとおりで、私は、激変させたくない、にわかになくなって地元が困惑するというようなことのない住民サービスという点を考えてのお話でございますので、御了承願いたいと思います。
  127. 安倍基雄

    安倍(基)委員 もう本当に本会議が近づくので、五十分でやめる話をしておりますので、きょうはあれでございますけれども、いずれにせよ一番の眼目は、こういったものは、それは証書を取れとかなんとかいうことよりも、地元の理解をどの程度得ているか。しかもそれに関連する人々の、たまたま司法書士会とか弁護士会の連中はまた聞くようでございますから、その話はきょうはやめておきまして、裁判所意見を聞いた上で御質問いたしますけれども、こういった地元の人々の理解を得るということが第一であるし、それからそれのサービスの低下が起こらないようにというのが大眼目でございますから、もう一度その点についての法務大臣の御決意をお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。
  128. 遠藤要

    遠藤国務大臣 今先生のお話しの点、十分私としても、自分の地域も三カ所ほど廃止になるものでございますので、その気持ち、やはり住民に対するサービスといいましょうか、そういうような点を考えて検討してもらおうという考えを持っております。
  129. 安倍基雄

    安倍(基)委員 ちょうどベルが鳴りましたから、終わります。
  130. 大塚雄司

    大塚委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後零時五十一分休憩      ————◇—————     午後二時四十四分開議
  131. 大塚雄司

    大塚委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、お諮りいたします。  本日、最高裁判所早川家庭局長から出席説明要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  132. 大塚雄司

    大塚委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————
  133. 大塚雄司

    大塚委員長 質疑を続行いたします。橋本文彦君。
  134. 橋本文彦

    橋本(文)委員 今回の簡裁の統廃合の問題につきましてお尋ねいたしますけれども、百二十二庁の独立簡裁が廃止される、そのうちの二十一がいわゆる事務移転庁である、このように聞いておりますが、この二十一の事務移転庁の実態について若干お尋ねいたします。  現在、五日市、小川、直江津、長崎小浜、この四つの裁判所については敷地だけはあるけれども建物が存在していないという話を聞いたのですけれども、その余の十七の裁判所はどうなっておりますでしょうか。
  135. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 現在事務移転をしております簡易裁判所のうち土地のございますのは、先ほど仰せの五日市、長崎小浜等がございますが、そのほかに本宮も建物、敷地は残っております。それ以外につきましては、現在裁判所の方では管理いたしておりません。
  136. 橋本文彦

    橋本(文)委員 そうすると、事務移転庁としまして五片分については土地を裁判所が管理しておる、こう理解すればいいわけですか。
  137. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 御質問の御趣旨を取り違えまして、失礼いたしました。  本宮については現在返しておりまして、現在土地を管理いたしておりますのは五日市、小川、直江津、長崎小浜でございます。
  138. 橋本文彦

    橋本(文)委員 ところでこの事務移転庁の問題なんですけれども、昭和二十二年に簡易裁判所ができました。そのとき初めから事務移転庁だったわけではないと思うのです。現在二十一の事務移転庁はどういう経過をたどって移転庁になったのか、その推移を簡単で結構ですから説明してください。
  139. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 昭和二十二年五月三日の発足当初に事務移転をいたしました、いわゆる未開庁というものが八つございます。これは韮崎、都島、東淀川、西成、灘、柳生、十津川、鹿野でございます。  その後、宝塚が昭和二十四年四月十一日に庁舎敷地の確保困難という理由で事務移転されております。  それから、すさみが昭和二十九年三月一日、やはり庁舎敷地の入手困難ということで田辺に事務移転しております。  三十年一月一日、これは愛知横須賀簡裁が、庁舎が類焼いたしまして急速な復旧が困難であるということで半田に事務移転いたしております。  三十九年三月一日になりまして、横浜南簡裁が庁舎の老朽狭隘、代替敷地の確保困難ということで横浜簡裁に事務移転しております。  三十八年九月一日、西枇杷島簡裁が名古屋事務移転をいたしております。これも今申したと同じ理由でございます。  それから、三十九年三月一日、津久井簡裁が相模原簡裁に事務移転いたしております。理由は同じでございます。  四十三年八月一日、本郷簡裁が岩国に事務移転いたしましたが、これは庁舎の明け渡しを求められまして、代替庁舎敷地の確保が困難であったという事由でございます。  四十七年四月一日になりまして、大宮簡裁が新宮に事務移転いたしました。庁舎老朽でございます。  五十一年になりまして、一月十九日、木古内簡裁が函館簡裁に事務移転いたしております。庁舎老朽、敷地不適、代替敷地の確保困難という理由でございます。  それから、五十三年十月十六日、五日市簡裁が八王子簡裁に移転いたしました。庁舎老朽、代替庁舎確保困難でございます。  五十三年十一月一日、長崎小浜簡裁が島原に事務移転いたしております。庁舎腐朽という理由でございます。  五十六年八月三日になりまして、小川簡裁が庁舎老朽、代替庁舎確保困難で事務移転いたしました。  最後に、五十七年十二月一同、直江津簡裁が同様の理由によりまして高田簡裁に事務移転いたしております。  以上でございます。
  140. 橋本文彦

    橋本(文)委員 建物が老朽化した、あるいは腐ってしまった、建てかえが困難だということでもって事務移転をしておるようですが、そうしますと、土地そのものは初めから裁判所管轄するものではなかった、いわゆる借家であったということですか。
  141. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 中には、すさみのように借り上げ庁舎執務していたところもございます。敷地も借りて建物を建てていたところもございますが、おおむね敷地は確保していたわけでございます。ところが、先ほど申しましたように代替敷地の確保困難という場合には、その敷地を手放さなければならない事情があったわけでございます。庁舎老朽狭隘というふうに申しておりますものは、敷地は裁判所のものであったわけでございます。ただ、建物の建てかえにつきましては、その当時それぞれ優先度の高い、例えば地家裁の本庁でございますとか支部の庁舎でございますとか、その建てかえの方が優先順位がございまして簡裁の建てかえを早急にやるめどがつかない、こういう状況がございまして事務移転をいたしておる、こういうことでございます。
  142. 橋本文彦

    橋本(文)委員 私がなぜこんな細かい問題を聞くかといいますと、簡裁の置かれている現状というものがよくわかると思うのです。最高裁判所は立派な、世界に威容を誇る建物ができた、高裁もしかり、地方裁判所もすばらしい建物が建っている。しかし、簡裁については予算がないからということで簡単にけられている。本来どういう趣旨で簡裁が設けられたのか、その辺のことが相当後退しているように思われてなりません。その気になれば簡裁の建物は幾らでも建築できた、新築できた。でも、違う建物の方を優先するために簡裁はできないから、事務移転をして本庁の方に附属している簡裁に移転する、なし崩しに簡裁をなくして、その数が二十一になってしまった、このように思えてならないわけです。  今回、百一が新たに廃止になるわけでございますけれども、この百一個の簡易裁判所について、その敷地、建物の所有関係あるいは管理関係はどうなっているのでしょうか。
  143. 町田顯

    町田最高裁判所長官代理者 百一庁のうち、敷地を借り上げております庁が五庁でございます。その中で、さらに建物も借りているところが一庁ございます。それはいずれも国有地でございます。
  144. 橋本文彦

    橋本(文)委員 そうしますと、今まで事務移転庁とされておった二十一庁については、やはり相当多数のものが裁判所が管理しておった、それが事務移転庁となった段階で国有地になった、国有地になってそれが大蔵省の所管になり、その後は裁判所は管理しておらない、そういうお話になるかと思います。そういたしますと、今回廃止される百一庁の中で五つを引いた九十六というものは、裁判所の財産であるけれども、今回廃止されると国有財産になってしまう。必然的に大蔵省が管理するであろうと思うのですが、なし崩しに裁判所の管理する財産がなくなる。裁判所の資産というとおかしい表現かもしれませんけれども、これは大蔵省の方の強い意向でもってぜひともそういう土地は返してもらいたい、大蔵省において管理したい、運営したい、こういうお話があったのでしょうか。
  145. 町田顯

    町田最高裁判所長官代理者 お尋ねのとおり、今裁判所が所管しております国有地でございますが、簡易裁判所廃止いたしますと大蔵省に引き継ぐことになります。これは大蔵省の意思ということではございませんで、国有財産法で実は決まっていることでございまして、所管の行政財産につきまして用途を廃止いたしました場合には大蔵大臣に引き継ぐということになっているわけでございます。したがいまして、その規定によりまして大蔵大臣に引き継ぐということでございます。  ただ、これらの土地はそれぞれ地元の市町村とも密接な関係があるところでございます。地元の市町村の方からもそれらの土地につきまして活用したいというお話も、御説明に歩いた間でいろいろ私ども聞いております。私どもといたしましては、これらの土地が地元の御要望に沿う形で御利用いただけるようになるよう、一応大蔵大臣に引き継ぐことになり大蔵大臣の所管事項でございますけれども、裁判所といたしましても、地元の意向が実現するよう最大限の努力はいたしたいと考えております。
  146. 橋本文彦

    橋本(文)委員 局長の今の話はわかったのですが、そうしますと、いわゆる事務移転庁もやはり国有財産になりました。それはどうなっておるでしょうか。それから、今残っている五日市、小川、直江津、長崎小浜、これについてはどのくらい前に移転庁になって、その土地は今だれが管理しているのか。この事務移転庁の取り扱い方いかんによっては、今回の百一の裁判所の土地問題にダイレクトに影響するのではないかと思っておるものですから。
  147. 町田顯

    町田最高裁判所長官代理者 事務移転庁は、先ほど総務局長から御説明申し上げましたとおり、二十一庁あるわけでございます。そのうち八庁は当初から未開庁でございまして、したがって、土地、建物が当初から見つからなかったところでございますので、一度も裁判所の土地、建物になったことがないということになります。それから、一庁は適当な土地、建物がありませんでしたので、神戸の宝塚簡裁でございますけれども、土地が見つかるまでということで伊丹支部の一部を使用いたしまして開庁したわけでございますけれども、結局適地がないということで事務移転になりました。その意味では、やはりここも当初から土地、建物がなかったということになります。二十一庁のうち九庁は当初から土地、建物がなかったということになります。  残り十二庁でございますけれども、十二庁のうち半分の六庁は国有地ではございませんで、地元地方公共団体等からの借り上げの土地でございました。したがいまして、六庁につきましては、事務移転とともに返還いたしております。残りの六庁が国有財産たる土地があったわけでございます。このうち、御指摘の五日市、小川、直江津、長崎小浜の四庁は現在も、裁判所が、土地は空き地になっておりますけれども、裁判所の土地として依然所管しております。二庁だけ大蔵省に引き継いだということになっております。  現在裁判所が所管しております。その四庁につきましても、今度の法案の中で、事務移転はしておりますが、廃止する予定になっておりますので、廃止が確定いたしましたときには先ほど申し上げましたような形になるかと思いますけれども、この中にも地元の市町村の方から利用したいという御要望があるところでございます。これにつきましては、先ほど申し上げましたのと同じような形で処理していきたいと考えております。
  148. 橋本文彦

    橋本(文)委員 それでは、いわゆる独立簡裁の問題について入っていきます。  けさ資料をいただきました。今回廃止される百一の簡裁の中で、何と二人庁、二人しか職員がいないという簡易裁判所が四十一、それから三人しかいないと言われている三人庁が五十五、それから四人庁が五カ所、合計百一あるわけでございますけれども、この百一の裁判所はほとんどが裁判官の常駐していない裁判所だと思うのです。こういうことを素直に数字の上から見てまいりますと、要するに裁判官が常駐していない簡易裁判所がまず廃止される。いろいろな理由があるでしょうけれども、地元のそれぞれの声なんというものを聞きますと、裁判官が本庁のあるところあるいは支部のある簡易裁判所からわざわざ独立簡裁まで出張してくるのが面倒くさいのじゃないか、裁判官が出張するよりも住民が本庁なり支部の方の裁判所に来なさい、そういうようなことでもって、国民のための簡易裁判所がいわゆる裁判所のための裁判所、裁判官のための裁判所だというような声がちらほら聞こえてくるわけなんですけれども、こういう実態はどういうことなんでしょうか。  裁判官がおるけれども廃止するというのならまだわかるけれども、もう裁判官がいない、裁判官が月に二回あるいは月に四回、多くて八回しか行けない、だから、この際そういう非能率的な簡易裁判所は切って捨ててしまおう、交通事情もよくなったし、社会事情変化もあるだろうから、どうか地域の住民の皆さん方は遠くの本庁あるいは支部の方にある簡易裁判所までお越し願いたい、こんなふうに思えてならないわけです。いかがでしょうか。偶然に数が、非常駐裁判官の裁判所廃止されるという現実を目の当たりにして、そう思わざるを得ないのであります。
  149. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 今回の簡易裁判所配置の見直しの趣旨は、戦後昭和二十二年に発足しましてから四十年たった現在において、非常に人口分布の変化でございますとか、交通事情の飛躍的発達でございますとか、あるいは広域行政圏というような問題とか、いろいろ社会事情変化してきているわけでございます。ところが、裁判所配置昭和二十二年スタートした時点と全く変わらない状況にあるわけでございます。その結果どういうことが生じたかと申しますと、人口の都市集中等の影響によりまして、地方における簡易裁判所の利用度合いが極端に減ってきたわけでございます。極端に減ってまいりますと、その簡易裁判所に裁判官を常駐しておくわけにはまいりません。一人分の仕事がない裁判所に一人の裁判官を配置いたしまして、国費で運営していくというのは国民全体の立場から考えますといかがであろうかということになりまして、やはり事件の多い裁判所配置をいたしまして、週一回でございますとか、あるいは隔週に一回でございますとか出向いて事件を処理する、こういう体制をとらざるを得なかったわけでございます。  他方、裁判所が門戸を構えております以上、少なくとも裁判所を維持するに足る職員を配置する必要がございます。簡易裁判所の場合でございますと、最低限書記官、事務官、廷吏の三人が必要でございます。ところが、その三人を配置するほどの事件量もない庁すら出てきたわけでございます。その結果、最小限度必要な人員ということで二人庁というものも置かざるを得ない、こういう状況が出てきたわけでございます。その二人庁におきましても、事件が非常に少のうございます。中には民訴、刑訴、調停、年間に一件もないという庁すら現出するわけでございます。そういたしますと、やはりそういう状況簡易裁判所をかなりの国費を投じて運営することが国全体の立場からしていかがなものであろうかというような反省が生ずるわけでございます。  他方、そのような裁判所は、これを利用する国民サイドから見ましても非常に不完全な裁判所と言わざるを得ないわけでございまして、例えば一定の曜日を決めて出てまいります裁判官を待たなければならない。裁判官が常駐している裁判所へ足を運んでいただきますと、これは期日はもっと入りやすくなる、こういう面もあるわけでございます。  交通事情が非常によくなりまして、それで国民の行動範囲と申しますか、生活圏が非常に広くなっております今日、やはり裁判所配置を見直して、そのような利用度の少ない簡易裁判所は隣接の簡易裁判所統合いたしまして、そこを人的、物的に充実いたしまして、より利用しやすい簡易裁判所にすることが地域住民全体にとっても簡易裁判所をよりよく利用していただけるようにするゆえんではないか、かように考えて今回の適正配置の問題提起をし、この法律案の提出をお願いした次第でございます。決して非常駐の裁判所を単純に切り捨てるというような発想に出たものでないことをひとつ御理解いただきたいと思います。
  150. 橋本文彦

    橋本(文)委員 簡易裁判所のスタートの当時は、いわゆる裁判官の経験を持っていない者も簡裁の判事になれる、要するに素人でも裁判官になれるという形で出発いたしました。ところが、だんだんそういう数が少なくなってまいりまして、現実には裁判官がいない、裁判官の不足だということが今回のこの簡裁の廃止にもつながっているのじゃないかと私は思うのです。  確かに、事件数が少ない、もったいない、国民側から見ればむだ遣いであると言われるかもしれませんけれども、逆に考えれば、どうしてそういうふうに裁判所事件が来なくなってしまったのだろうかという点を黙視しているように思えてなりません。皆さんがトラブルを起こさないんだ、もう姿勢が穏便で、非常に従順な、おとなしい人間ばかりだから裁判になってこないんだ、すばらしいユートピアなんだというのだったら、これはいいのです。現実にはそうじゃなくて、裁判所に行っても仕方がないんだというような、裁判所の不信感というものがこういう結果になったケースも中にはあろうかと思います。決して単純に事件数が少ないとか、人口あるいは産業の変化によって過疎になってしまったというだけじゃないと思うのです。いかがなものでしょうか、そういう住民が使いにくくなってしまったというような裁判所があったのではなかろうか。
  151. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 事件数の増減はいろいろな要素が絡み合っておりまして、一義的にこうだというふうに決めかねる面がございます。やはり一番大きな要素をなしますものは、事件の基礎をなします人口の移動であろうかと思います。人口三万を数えておりました町が例えば五千に減少するといたしますると、たちまちこれは事件数に反映いたしてまいりまして、事件数が激減するわけでございます。そのほかには、やはり産業構造の変化というものもございましょう。それから、国民の法意識の問題もあろうかと思います。もとより裁判所サイドに起因するものも決してないとは言えません。ないとは言えませんけれども、かなり多くの部分は人口的な問題あるいは産業経済活動の問題あるいは社会生活の安定の問題に起因するのではないか、このように考えております。
  152. 橋本文彦

    橋本(文)委員 この簡裁の設置された昭和二十二年は、警察署、これを二つに対して一つの簡易裁判所という形でもってスタートしたように聞いております。しかしその後、警察の方はなくなってしまったり、あるいは一つになってしまったり、そういうような現象が進んでおります。そういう事態が発足した当初からあったようでございますけれども、したがって、今回の簡裁の統廃合の問題も相当前からあったように思います。思うけれども、なぜ二年前突如としてこの問題が出てきたのか。しかも、これは地域からでもない、他の警察庁でもない、もちろん法務省からでもない、最高裁判所の側からこの問題が提起されたこと、これを非常に我々は不思議に思うのです。  例えば一つの問題として、関係官庁と連絡をとると思いますので、例えば警察の方から、簡裁のあり方を少し見直してもらいたい、当初の方針としては二つの警察に対して一個なのだから、そのパターンが崩れてきた、どんなものだろうかとか、そんなようなことで議論されておったのならわかるのですけれども、そういうことは一切なしにして、突然二年前に出てきた。今聞いてみますと、いわゆる事件数の問題とか人口あるいは産業の問題から含めて、いわゆる効率のよい裁判をするのだ、それが国民の側から見ても非常に税金のむだ遣いには映ってこない、裁判所にしては非常スマートに見えるわけでございますけれども、国民から見ればやはりこんなことでいいのかなという疑念も残るのです。なぜならば、簡裁というものは単に少額、軽微な事件をするのではなくて、民衆、国民が気軽にげだ履きでも行けるような裁判所という形でもって出発したように聞いております。簡裁ができるときのいわゆる法案説明の中にも、本当に気軽な裁判所、それが提案理由であったように聞いております。しかし、どうもお話を聞いていると、気軽という問題は二の次になりまして、どっちかといえば軽微な事件、少額な事件も迅速に処理するのだということが大事なのだ、こんなような気がしてならないわけであります。  話はまた前後して恐縮なんですけれども、いずれにしても二人庁、三人庁、四人庁という裁判所廃止されます。職員の合計数は約二百六十七人、これは新たに統合される裁判所に行くであろうと思います。問題は、従来この二人庁、三人庁、四人庁、合計百一の裁判所における人員を、人件費を除外したいわゆる裁判所の予算というのはいかほどあったのでしょうか。今年度でも結構です。去年でも結構です。
  153. 町田顯

    町田最高裁判所長官代理者 裁判所の予算の仕組みでございますけれども、簡易裁判所単位に予算は組む形になっておりませんで、地方裁判所単位に支出官が置かれ、地方裁判所で管内の簡易裁判所も含めました支出全体を行うという形になっております。したがいまして、特定の簡易裁判所分が幾らであったかという形では統計上出てこないような形になっておりますので、正確な形で幾らということは非常に申し上げにくいことになるわけでございます。  しかも今度の場合、事件の数そのものが減るわけではございませんので、簡易裁判所にかかります人件費以外の費用といたしましても、純粋な、その裁判所におきます、例えば電話代とか水道代とかあるいは電気代といったようなものもございますし、それからその当該事件を処理するためにかかる各種の費用というのもあるわけでございます。その当該事件の処理のために必要とします経費そのものは今度の統廃合によっても変わるものではございませんので、そこら辺ひっくるめた数字も非常に出しにくい、この場でお答え申し上げるほど正確な数字はちょっと手元にないと申し上げざるを得ないわけでございます。
  154. 橋本文彦

    橋本(文)委員 予算の組み方の問題としては今お話しのとおりかもしれませんけれども、いわゆる裁判所の内部の問題として、どこどこの地方裁判所あるいはどこどこの支部という段階では当然出ますね。それとも高等裁判所で一本で出るのですか。それはいいのですけれども、そういう形でもって出てきたものを裁判所の内部で、例えばどこどこ簡裁については年間予算はこのくらいであるというのは当然持っているでしょう。その単純な集計で出るわけじゃないですか。どうもよくわからないのですけれども。
  155. 町田顯

    町田最高裁判所長官代理者 先ほど申し上げましたとおり、地裁単位では出るわけでございますけれども、支部単位あるいは簡易裁判所単位ということでは、支出官が地裁一本でございますので、そこまで細かい数字ということになりますとちょっと出てこないということになるわけでございます。
  156. 橋本文彦

    橋本(文)委員 地方裁判所までは予算の総額は出てくる。では、その各地方裁判所がそれぞれの支部あるいは簡裁に割り振る金額というのはだれが把握しているのですか。
  157. 町田顯

    町田最高裁判所長官代理者 簡易裁判所で必要とします費用にもいろいろございまして、例えばその簡易裁判所が直接払わないと困るようなものもあるわけでございますけれども、同時に地裁単位で統一的に購入し、それを配ればいいというものもあるわけでございます。例えば裁判の調書用の用紙とか判決用の紙とか、そういったものがかなりのウエートを占めるわけでございますが、そういうものは簡裁単位で調達するわけではございませんで、地裁単位なり、場合によっては高裁単位なりで調達して必要枚数をそれぞれ配付するということになるわけでございまして、お金で配付するものは簡易裁判所で必要としますものの中のごく限られた部分になるわけでございます。そういう関係にあるものでございますから、簡易裁判所で幾ら費用がかかったかということが出しにくいと申し上げておりますのは、今申し上げましたような事情があるからでございます。
  158. 橋本文彦

    橋本(文)委員 なぜこんな問題を細々聞いているかといいますと、いかに簡易裁判所が軽視されているかということを言いたかったのです。少なくとも法律で決められた裁判所です。その裁判所が予算も持っていなければ支出する権限も持っていない。一本で地方裁判所に集約されてしまっている。現実的にそれぞれの簡易裁判所の経費すらもわからない。まさに簡易裁判所の軽視なんだ。軽視されているがゆえに平気でこのように廃止もできるでしょうし、と私は思えてならないのですよ。予算の面においてももう少し簡易裁判所に権限を付与しておれば、また違った動きをするのじゃなかろうか。  要するに私の言いたいことは、簡易裁判所は一体何のためにあるのだろうか、何のために存在したのだろうか、そのことを今私は聞いているのです。よくわかりました。予算の裏づけもない、支出する権限も持っていない、全部地裁から、事務用品にしても配付されてしまう。簡易裁判所が自分の力、自分の個性を発揮できる余地が全くないじゃありませんか。そういう簡易裁判所ですからどんどん事件数も減ってくるのじゃなかろうか、また、どんどん国民が裁判所を利用する意欲もなくなるのじゃないでしょうかということを言いたいがために聞いてみたわけなんです。  少なくとも一つ一つの簡易裁判所について、光熱費が幾ら、何が幾らというふうに出るわけでございます。出たら百一の集計が出るわけなんですよ。それからプラス人件費で幾ら、それから裁判官が出張してくる、その裁判官の出張する旅費は合計で幾らになるか、そういうものが、今回廃止されることによってこれだけ浮くんですというデータがなければ、それは廃止される方だって納得できないじゃないですか。こんなにこの経費がかかるんだけれども浮くんですよとか、経費は余りかかりませんとか、何にもない、予算面につきましては。ただ効率のよい裁判を行いたい、そのために廃止するんだというのではなかなか納得しがたいものがあります。いかがでしょうか。
  159. 町田顯

    町田最高裁判所長官代理者 今回の簡易裁判所の適正配置の結果、どういう経済的効果があるかということでございます。  先ほど来総務局長等からも御説明申し上げましたとおり、一つは人員の有効な活用ができるということが挙げられようかと思います。ただ、これも人員の有効な活用によって金額的に幾らくらいプラスになるのかということは非常に難しいわけでございます。従前〇・四人分の仕事をしていたのが一人分になったとかというようなことは言える場合もあろうかと思いますけれども、全体としてそれを把握するのも困難でございますし、ましてや金額に換算するということは非常に困難であろうかと思います。  そのほかにも、今回廃止が予定されております庁舎のうち六十庁が木造庁舎でございます。これは存続するといたしますと早晩建てかえが必要となるわけでございますけれども、今回の改正廃止が決まりますとその建てかえが必要でなくなる、そのための費用が不要になるということもあろうかと思います。さらに、先ほどお尋ねの国有地の有効利用という問題も出てまいります。そういった経済的効果があろうかと存じますけれども、それを金額でということでございますと、今申し上げましたようなことでございますので、なかなか明確にお答えするのは困難と申し上げざるを得ないと思うわけでございます。
  160. 橋本文彦

    橋本(文)委員 時間がなくなりましたけれども、もう本当に出発点でつまずいてしまった感じで、今の言葉でも、お言葉を返して恐縮なんですけれども、木造の家屋が老朽して建てかえる。建てかえる気持ちなんかありませんよ、初めから。そういう庁舎は自動的に事務移転ということになればいいのでしょう、何もこの際しなくたって。逆に今度はマンモス簡裁ができますね。この予算が幾らかかるのか。一説によると十年後にできるんだという。総予算は幾らか、それもわかっていない。わかっていないけれども、マンモス簡裁にゴーサインが出てしまった、出そうとしている。本当はきょうここで、一体簡易裁判所というものは何だったのだろうかということを議論したかったのですけれども、肝心かなめの予算面で、お金の面でつまずいてしまいまして私の持ち時間がなくなりましたので、また改めてお願いしたいと思います。  終わります。
  161. 大塚雄司

    大塚委員長 冬柴鉄三君。
  162. 冬柴鐵三

    冬柴委員 検察庁にお尋ねしたいのですけれども、検察庁法第二条には「区検察庁は、各簡易裁判所に、それぞれ対応してこれを置く。」このような規定がありまして、最高検察庁の位置並びに最高検察庁以外の検察庁の名称及び位置を定める政令、このようなものによって各地に区検察庁というものが設けられていますね。今回、簡易裁判所が百一庁もし廃止になるとすれば、一体この区検察庁はどのようになるのか、その点についてお尋ねいたします。
  163. 清水湛

    清水(湛)政府委員 お答え申し上げます。  区検察庁は、お説のとおり各簡易裁判所に対応して置くこととされております。簡易裁判所廃止新設されるということになりますと、これに伴いましてその裁判所に対応する区検察庁も当然廃止あるいは新設される、こういうことになるわけでございます。
  164. 冬柴鐵三

    冬柴委員 最高裁家庭局にお伺いいたしたいと思います。  裁判所法三十一条あるいは三十一条の五、この二つの条文によりまして、最高裁判所家庭裁判所事務の一部を取り扱わせるためにその管内に出張所を設けることができる、このように規定されていますが、廃止されるという百一の簡易裁判所に対して、その場所を出張所としている家庭裁判所の出張所は何庁あるのですか。
  165. 早川義郎

    ○早川最高裁判所長官代理者 お答えいたします。  三十七カ所でございます。
  166. 冬柴鐵三

    冬柴委員 法務大臣簡易裁判所廃止するということで先ほど来かんかんがくがくやっているわけですが、区検察庁がなくなる、家庭裁判所の出張所がなくなる、このような観点の説明がこの法案提案理由説明の中になかったように思うのですが、その点どういうふうなことになっているのでしょうか。
  167. 遠藤要

    遠藤国務大臣 先ほどお答え申し上げたように、この法案成立後に廃止統合等を政令で定めるということになっておりますので、これを見守っておるというところが現実だ、こう思いますので御了承願いたいと思います。
  168. 冬柴鐵三

    冬柴委員 ただ、区検察庁がなくなる、家庭裁判所の出張所がなくなるということは国民の生活に重大な影響が及ぶのでありまして、簡易裁判所の存在理由とはまた別の観点で非常に大きな問題があると思うのでございますが、その点についていかがでしょうか。
  169. 遠藤要

    遠藤国務大臣 これは簡易裁判所また区検察庁なり出張所なりも大同小異だ、こう思いますけれども、先ほど来御指摘を受けておるとおり、簡易裁判所というのは少額、軽微な事件を処理していこうということで昭和二十二年に設立されたと承知をいたしております。しかし、四十年たった今日、一般情勢も大分異なっており、事件件数その他を考えますと、今の情勢に見合うて簡易裁判所として、また検察としてより以上充実した方向でいくべきである、こういうふうな考えを持っておるわけでございます。先ほど橋本委員からももろもろお尋ねがございましたけれども、どうしても予算との絡まりがあるように先生方も御印象を持たれておるような点もございます。私も確かに今までの法務関係の予算、先生方の御期待に沿うような予算の獲得ができたかどうかと思いますけれども、法制と予算というのは全く別個の問題で、これはタコの足のように自分の足を食ってまとめていくというようなことであってはならぬ、こう考えておりますので、私自身としては、この提出に当たっては、予算の面がこうだから統合していこうということではなく、充実した簡易裁判所として、検察庁として国民の期待に沿うように一層努力したい、こういうふうな考えであるということを申し上げておきたいと思います。
  170. 冬柴鐵三

    冬柴委員 法制審にこの点について、区検察庁もなくなる、家庭裁判所についてはちょっと異質がもわかりませんけれども、区検察庁は簡裁を廃止するのと表裏一体ですね。当然になくなってしまうということを、法制審になぜそういうことも添えて審議してもらわなかったのか、その点についてひとつ。
  171. 清水湛

    清水(湛)政府委員 先ほどお答えいたしましたとおり、区検察庁は各簡易裁判所に対応して置かれておりまして、簡裁がなくなりますと当然区検察庁もなくなる、こういう法律上の関係になっているわけでございます。このようなことから、今回は裁判所制度を改善する必要があるかという諮問第九号に基づいて、簡裁の整理統合の基準あるいは実施に当たって考慮すべき事項等についての法制審議会意見を求めたわけでございますけれども、そういうような区検察庁との関係も当然あるという認識のもとに、この点につきましても検察の代表者が委員に加わるというような形で十分に審議されたわけでございます。  先ほど大臣からもちょっとお話がございましたように、簡易裁判所をめぐる客観的な諸情勢の変化というのは、これはそれに対応して置かれております区検察庁をめぐる諸情勢の変化とも相共通するものがあるわけでございまして、簡裁の整理統合についての基準がそのまま即区検の整理統合の基準に実質的になるということについても十分審議された上で法制審議会におきまして全員一致の賛成を得た、こういうふうな経過になっているわけでございます。
  172. 冬柴鐵三

    冬柴委員 その点については、ちょっと時間がありませんので、次に参ります。  今回の改正で、二つの大きな問題点を一つにまとめた法案になっていると思うのでございますが、その一つは、大都市圏における簡易裁判所を集約する、こういうことが一つである。もう一つは、地方の小規模独立簡易裁判所統合廃止をしていく、こういう二つ。  異質なものがあるように思われるわけでございますが、まず大都市簡裁の集約につきまして、大都市簡易裁判所が抱えている問題の現状と問題点、簡単で結構でございますが、その点について答弁を求めたいと思います。
  173. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 大都市部におきまして、人口の集中、交通網の発達整備、住民の生活形態の変化等、小規模庁に見られます以上の大きな変動があったことは、これは周知の事実であろうかと思います。このような状況の中で、現在大都市部の各独立簡裁は利用者にとってその配置が合理的であるとは必ずしも言い得ない上に、大量に提起されます事件の処理に繁忙を極めておる、こういう状況がございまして、その改善の必要が痛感されるわけであります。  現在、御承知のように東京二十三区内に十二、それから大阪市内に四、名古屋、北九州市内にそれぞれ三の簡裁が設けられておるわけでございます。交通即日処理事件、これにつきましては東京では墨田簡裁、大阪では三国本町の交通分室、名古屋は花ノ木の交通分室、北九州は小倉簡裁にそれぞれ集約して処理しているのが現状でございます。これらの簡裁はいずれも相当数事件を抱えております。人員も相当数擁しております。それなりの機能を果たしておりますけれども、それでもいろいろ問題が出てまいります。  一般に管轄が複雑に細分化されますと、利用する当事者、特に原告、申立人にとって非常に利用しにくくなるというようなことが言われております。特にこれが事物管轄の問題と絡んでまいりますと、一層繁雑さが加わるわけです。一体どの裁判所に提起すればいいのかという選択に悩むわけでございます。例えば東京大阪あたりでも、土地管轄を誤って申し立てがなされるというケースもかなりあるようでございます。  現在、交通網が非常に発達しておりまして、それぞれの都市によって多少事情は異にしておりますけれども、いずれの都市におきましても本庁または支部併置簡裁付近が交通網の中心になっておりまして、各地域からの出頭は極めて容易である。各独立簡裁の最遠地からのそれぞれの独立簡裁への所要時間と、併置簡裁に集約した場合の最遠地からの所要時間とを比較してみますと、ほとんど大差がございません。しかも、現在の各簡裁の当事者と申しますものは、その居住地と管轄関係について見てまいりますと、かなり管外の利用者が多い。経済活動が全般的に広がっておりますから、それぞれよその裁判所を利用する、こういう状況が出てきてまいっておるわけでございます。  弁護士利用の便を見ましても、本庁あるいは支部併置簡裁の所在地の管内に、東京の場合でございますと七四%、大阪でございますと九九%、名古屋でも九四%、北九州が九九%というふうに集中しているわけでございます。当事者サイドから弁護士さんに御依頼する便、これから見ましても、集約をするということによるメリットは出てこようかと思います。  裁判事務の処理の面につきましては、事件が非常に集中しておりますので、比較的少数の裁判官、それから少数の職員を置いております大都市管内の簡裁におきましては、いろいろな種類の事件を一人の裁判官が処理しなければならない。職員についても同様でございます。大都市部の独立簡裁の職員の負担は、ほかに比較しますと事件数以上の負担があるだろうと思います。こうした事務処理のあり方を反映しまして、庁によりまして事件処理もかなり不均質になっておる。  こういうことから考えますと、交通事情の非常によくなっている今日、大都市部の簡裁はできる限り一カ所に集中し、専門部の体制をとるとかいうことによりまして専門的事務処理体制をつくる、さらにはOA機器を導入して事務処理の能率向上を図る、このように考えた方が、これからますます増大いたします都市におけるニーズにこたえるゆえんではないだろうか、将来を見越しますとそのような形態で大都市部の簡裁の集約をいたしまして、大都市簡裁の機能の全体的な向上を図るべきであろうか、かように考えまして今回の問題提起をしたわけでございます。
  174. 冬柴鐵三

    冬柴委員 簡潔で結構ですが、しからばなぜ四大都市に限ったのですか。高等裁判所はなお札幌、仙台、広島、高松にもあるはずでございますし、なお今るる説明された事情は、高裁はありませんけれども横浜等につきまして顕著な事例でありまして、なぜそこを集約するというような発想にならなかったのか、簡単で結構ですからお答えを願いたいと思います。
  175. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 札幌、福岡、それから神戸につきましては、事務移転も加わりまして、現在簡裁は一つでございます。横浜と京都がそれぞれ数カ所の簡裁を擁しております。  大都市部における簡裁の集約につきましては、小規模独立簡裁と異なりまして、ある基準を立ててそれを当てはめながら考えていくということでは済みませんで、それぞれの都市の抱えております規模でございますとか、住民の居住状況、交通網の発達事情、そういうものを個々具体的に検討していかなければならない。それから、いま一つ大きな問題は、そのような大規模の簡裁を設置するにふさわしい敷地があるかどうか、余地があるかどうか、そういうことも加わってまいりまして、かなり具体的な形で検討していかなければならない。現在の時点におきましては、大都市部の簡裁の集約を考えるにふさわしいものとして東京大阪名古屋、北九州が浮かび上がってきた、こういうことでございます。
  176. 冬柴鐵三

    冬柴委員 最高裁判所とされましては、日本弁護士連合会に対してですか、六十一年六月三十日付で「大都市における簡裁の集約構想について」という書簡を出していられるようでございますが、その中で大都市簡裁集約の具体的構想というものが相当具体的に書かれています。これは私は非常に結構なことだと思いますし、大いに進めてもらわなきゃならない構想であろうと思いますが、現状におきまして、残念ながらこれは構想でありまして、どのようにこれを実施されるのか、その保証はあるのか、立法措置は必要なのかどうか、その点についても簡単で結構ですし、なおこの法律がもし通りました場合、完全にやるのだということを大臣ひとつ表明していただけるかどうか、その二点についてお尋ねします。
  177. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 この点につきましては、委員御承知のとおり、例えば東京大阪におきましてはそれぞれ新設されます簡易裁判所のありようについて今後とも弁護士会、司法書士会等の関係機関と協議を続けていくということになっております。したがいまして、私どもといたしましては、協議を続けて実現することを期しているわけでございまして、特にその点についての立法措置が必要であるとは考えておりませんが、必ず構想に掲げておりますような事柄を実現すべく努めてまいりたい、かように考えております。
  178. 遠藤要

    遠藤国務大臣 大臣としては、今の問題について先生の御質問対してお答えするということになりますると、中身、行政の面においては別ですが、財政面において努力をする。先ほど申し上げたとおり、予算によって司法が狭まったり伸びたりするようなことのないように充実させたいという点で努力をしたいということを申し上げておきます。
  179. 冬柴鐵三

    冬柴委員 このように大都市部の簡易裁判所の集約ということにつきましては、いろいろな価値観がありまして、賛否がありますが、その中で簡易裁判所というのは、先ほどから再と言われているように駆け込み裁判所といいますか、庶民の身近にある裁判所、このような性格を失ってはいけないと思うのですね。そういう意味で、どうも今大都市部の簡易裁判所を巨大なものにしてしまうということは、一つの小型地方裁判所をつくるようなことになってはならない、このように思うわけでございます。しっかりとその点、簡易裁判所の本質を見失わずに、事務の能率化、あるいは庶民の不便さとか入りにくさということがないようにされるべきである、このように考えます。  それから、集約されるゾーンの中、圏の中でも、やはり大都市とはいえ非常な人情の違い、例えば山の手そして下町、それぞれいいところがあると思うのですが、また、その中で起こっている事件内容というものもやはりそれを反映するものもあると思います。そういうようなものも配慮していただいて、それが一つに統合されることによって全く均一、画一化されてしまうということにならないように、非常に難しい要望ですけれども、簡易裁判所整理統合される場合にはこの点についても重々配慮していただきたい、このように思います。  次に、いわゆる小規模の独立簡易裁判所の統廃合の問題に移らせていただきたいと思いますけれども、この基準として、法制審では三種事件、いわゆる民事事件、刑事事件ですか、民事訴訟事件、刑事訴訟事件、それから調停事件の件数を昭和五十五年から五十九年までの五カ年間に限っておとりになって、その平均値を求められ、それの一定の件数以下はどういうふうにする、このようなことになっているように思われるわけですけれども、この三種事件の中に、まず刑事訴訟事件の中に交通即日処理事件が入っているのかどうか、そのことについて、一言で結構ですけれども、お答え願いたいと思います。
  180. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 刑事訴訟事件は公判請求のあったものをとらえておりますので、交通即日処理事件は含まれてございません。
  181. 冬柴鐵三

    冬柴委員 この小規模独立簡易裁判所が、特に後に触れますけれども、民事訴訟に関する事務を取り扱わない庁というのはたくさんあるようですけれども、そういう裁判所が最も機能を発揮しているのはこの交通即日処理事件ではないでしょうか。その点について、一言で結構です。
  182. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 民訴不取扱庁におきましては、民訴事件等は取り扱いませんけれども、民事調停事件は取り扱っております。したがいまして、民事調停を処理する機能、それから所によりまして交通即日処理をしているところもあるわけでございます。
  183. 冬柴鐵三

    冬柴委員 先ほど来たくさんの方々からいわゆる事務移転、一部移転についてお尋ねがありましたから、重複しますので詳しくは聞きませんけれども、この三種事件数の統計の中に、事務移転をしてしまった民事事件、民事訴訟事件、こういうものはカウントされているのかどうか、その点についてお尋ねします。
  184. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 民訴事務不取扱庁につきましては、民事訴訟事件はカウントされておりません。
  185. 冬柴鐵三

    冬柴委員 それはちょっとアンフェアといいますか。年間十二件以下の庁はもう当然廃止する、もちろん離島とかいう例外は除きまして、原則廃止。一年間十二件といえば、それはもう庁舎を構え、職員を置き、遠くから簡易裁判所裁判官がてん補に行かれるということについて、廃止するのはやむを得ないだろうなという国民の合意が得られると思うのですけれども、その十二件の中に、例えばいわゆる交通即日処理事件というのが含まれていない。それから、その庁がいわゆる事務一部移転によって民事事件がもう扱われていない、これは隣接の庁に行っている。そしてその残ったものだけカウントされたのでは、その地域住民にとってはそんなはずはないのじゃないか、そんなに我が町にある裁判所が機能を果たしてないというのは一部取り上げているから、あるいは統計から外されているからそうなっているのではないかという文句が出るのではないかと思いますが、その点はどうでしょうか。
  186. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 民訴事務不取扱庁につきましては、それまでの民事訴訟事件数等を勘案しまして民事訴訟事務不取扱庁の指定をしていったわけでございます。したがいまして、もともとは扱っている民事訴訟事件数が少なかったわけでございます。現在の時点におきましても、その庁で民訴事務を取り扱うとすればどの程度の件数があるかという、いわゆる仮定新受件数というものはカウントいたしております。それを含めましても民訴事務不取扱庁はいずれも統合の枠内に入っておりまして、外れることはないわけでございます。そのことも踏まえまして統合対象庁の検討はいたしております。  それから、先ほど御指摘の交通即日処理事件につきましては、これもそのことを統合庁を選定する場面におきましていろいろ配慮はいたしております。所によりますと、警察、検察庁とも御相談申し上げまして出張処理、これを考えさせていただく、そのことによって地域住民の方々の御不便をできる限り避けてまいりたい、かように考えております。
  187. 冬柴鐵三

    冬柴委員 これはひとつさわりのところでございますので、検察庁の方から。今最高裁が言われたように、交通即日処理事件につきまして出張所を設けるとか、いわゆる簡裁が廃止され当然に区検察庁が廃止されちゃう、そのときにはそういうことをやられる用意があるのですか。
  188. 岡村泰孝

    ○岡村政府委員 実情に応じまして、ただいま最高裁の方から申されましたように、出張して三者処理で行うということももちろん検討いたしたいと思っておるところでございます。
  189. 冬柴鐵三

    冬柴委員 家庭局に同じくお尋ねいたしますけれども、家庭裁判所の出張所が、簡裁が廃止されるから当然になくなるのか、それとも一つの裁判所内の手続、いわゆる意思決定というものでなくなるのか、その点はどうなんでしょうか。
  190. 早川義郎

    ○早川最高裁判所長官代理者 現在家庭裁判所の出張所は全国で九十六カ所ございますが、これは家庭裁判所出張所設置規則というものによって定められているわけでございます。ですから、今回の百一庁のうちに三十七庁の出張所が含まれておりますが、この法案が成立し簡易裁判所廃止されれば、それに伴ってこの規則を改正してこれらについても廃止になる、こういうことになろうかと思います。
  191. 冬柴鐵三

    冬柴委員 これも非常に重大なことでございまして、例えば御主人に暴行を受ける、あるいは家計費を入れてくれない、そのようなことで女性が身近な裁判所、いわゆる駆け込み寺のような感じで裁判所の窓口で相談をする、ここで家事調停をやってくれますよ、こういうような場所が出張所ではなかったかと思うのです。これはこの法制審の答申にも触れられてないんじゃないですか。これは大事なことだと思うのですけれどもね。先ほど最高裁が言われた交通即日処理事件のように、なくなるけれどもまた出張してやるという思想があるのかどうか、その点について明確にお答えをいただきたい。
  192. 早川義郎

    ○早川最高裁判所長官代理者 先生御指摘のとおり、家事事件は家庭の紛争に関する事件でございますので、国民生活に非常に密着しておる。それからまた、出頭につきましても、原則として本人出頭主義をとっておる。そういう意味で、当事者の出頭の利便ということを考えなければならない点はごもっともでございます。今回、管轄法改正等に伴いまして出張所が廃止されるような場合には、家庭裁判所事件処理に当たりましても出張処理を考えております。
  193. 冬柴鐵三

    冬柴委員 これは大事なことなので確かめておきますけれども、例えば先ほど質問された高知の方、高知管内で簡易裁判所廃止されるのが四庁だと思いますが、いずれもこれは家裁の出張所に指定されているんじゃないですか。そうすると、高知では、非常に広いところですけれども、家裁の出張所が一挙に四つなくなっちゃうということを意味するわけですが、今家庭局長からお答えになったように、高知だけじゃありませんよ、ほかももちろんありますけれども、今高知が非常に典型的ですからお尋ねするわけですが、出張処理をされるとこれは約束できるのですか。
  194. 早川義郎

    ○早川最高裁判所長官代理者 御指摘のとおり、高知家裁管内の四つの出張所は、今回の統廃合庁の中に全部含まれております。そのすべてについて出張処理をするかどうか、これは地元の希望等もありますし、事件数等の関係もございますが、そういった点を加味して、地元の要望等も加味しながら最終的には決めさせていただく、これから煮詰めていく、こういう段階でございます。
  195. 冬柴鐵三

    冬柴委員 法務大臣にここでやはり答えておいてほしいのですけれども、こういうふうに簡易裁判所廃止されることにより区検察庁が当然になくなってしまう、それから今まであった家庭裁判所の出張所が後追いでなくなってしまう、こういうことですから、今述べられたような補完措置を国民の不便にならないようにきっちりやっていただくという点について、ひとつ大臣からお答えをいただきたいと思います。
  196. 遠藤要

    遠藤国務大臣 先ほどもお話し申し上げたとおり、余りにも国民に激変を与えないということが大切だろうということで、言葉が当てはまるかどうかわかりませんけれども、アフターサービスということも出ておったわけですが、ただいまの最高裁の答弁に対して自分も努力したい、こう思っております。
  197. 冬柴鐵三

    冬柴委員 廃止庁に関する意見調整ですけれども、これは法制審の中でもそのようなことを述べておられますし、当然いろいろやられたということを先ほど来の答弁の中で再々お答えになっているのですけれども、その意見調整の中身ですね、これは簡易裁判所だけをやられたのか。そして、簡易裁判所廃止されるんだったら区検察庁もなくなります、それから今家庭裁判所の出張所もありますけれども、なくなります、こういうようなことも全部おっしゃって、これは法律に書いてあるんだからということじゃなしに、そういうこともおっしゃって、それぞれの担当しておられる、例えば区検察庁であれば検事正が行かれるのかどなたか知りませんけれども、そういう方が地方自治体と意見調整をされたのかどうか、その点についてお尋ねしたい。
  198. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 冬柴委員指摘のとおり、簡裁の廃止に関連いたしまして、区検察庁が廃止、あるいは家庭裁判所の出張所が併設されております場合その廃止が考えられるわけでございます。地元の方に御説明に伺いましたのは、私ども裁判所サイドで伺っております。  ただ、それにつきましては、区検察庁がそれに伴って廃止されるというようなこと、あるいは略式事件がどのくらいあるかというようなこと、さらには家裁出張所が併設されている場合には、家裁出張所の件数はこれくらいですよというようなことも十分資料等を添えまして御説明申し上げまして、その上で御理解をいただくようにしてきたわけでございます。地検の方にお願いいたしまして検事正サイドから動いていただくということは、裁判所からはとっておりませんけれども、そのような周辺事情も含めまして御説明申し上げて、御理解をいただくように努めてきたつもりでございます。
  199. 冬柴鐵三

    冬柴委員 そうすると、私はやはり家庭局あるいは検察庁から、三種事件だけじゃなしに、今までの出張所で、そんなに大げさな資料じゃなくて結構ですけれども、やられた調停あるいは審判等について資料を提出していただきたい。  それからまた、区検察庁については、廃止される区検についてどの程度の、これは本人が出頭しなければいかぬわけですから、事件があったのか、いわゆる刑事訴訟事件だけじゃなしに、略式とかそういうものがどの程度あったのか、資料を出していただきたいと思うのですけれども、その点委員長に、この委員会に対してそういうものを出していただきたいと思うのですが、いかがでしょう。
  200. 清水湛

    清水(湛)政府委員 後日検討いたしまして対処いたしたいというふうに考えております。
  201. 冬柴鐵三

    冬柴委員 私どもは、今回の改正は時代の進展に即して簡易裁判所をより充実させて強化する、そういう意味ではそれは正しい方法だろうと思うのですけれども、このようなことのために国民の身近な裁判所がなくなってしまうということに対する一つのきちっとした説明がつかないといけないのではないか、このように思います。  そしてまた、現在少額紛争とか少額事件というものに対する国の取り組みというのは十分ではないのではないか。これは弁護士も含めた意味で、法曹としてもう少し取り組まなければならないのではないかと私はいつも考えているわけですけれども、必ず将来そのようなニーズというものは顕在化してくるであろう、これに対応しなければならない時代が来るであろう。このようなときに、これにこたえる裁判所は何かといえば、もちろんもう簡易裁判所以外には考えられないのではないか、このようにも私は考えます。したがいまして、今回統廃合百一というのは相当な数ですけれども、実際には全部事務移転が既に進んでいるとか、あるいは今回廃止される庁のほとんどが多くて月に八回、少ないところは月一回という回数しか裁判官がてん補に来ていられないという実情もありますので、これを補って余りあるような改正を考えてもらわなければいけないと思うわけでございます。  そのような意味で、単に三種事件というものだけじゃなしにきめの細かい配慮をしていただいて、国民がそれによって非常に不便になってしまったな、こういうことにならないようにぜひ補完をしてほしい、こういうふうに思うわけでございますが、その点について、重ねてで申しわけありませんけれども、法務大臣のそういう面についての所信をお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。     〔委員長退席、井出委員長代理着席〕
  202. 遠藤要

    遠藤国務大臣 ただいま先生のお話しのとおり、機能を充実強化せしめていくということで、これからも住民を中心とした進め方をやっていくというような方針で努力したいと思いますので、御了承願います。
  203. 冬柴鐵三

    冬柴委員 終わります。
  204. 井出正一

    井出委員長代理 安藤巖君。
  205. 安藤巖

    安藤委員 今度のこの簡裁の統廃合法案をおつくりになるに当たっては、交通事情を初め経済活動あるいは住民の生活形態など、いわゆる地域の実態を十分考慮して行ったというようなことはこれまでの質疑に対する御答弁の中でもいろいろあらわれておりますし、私も再三お聞きをしたわけでありますが、この地域実情につきましては、もちろん申し上げるまでもなく、その地域の地方自治体の長あるいはその幹部の方々あるいは議会が一番よく知っておると思うのです。だから、統、廃合に当たってはこの地方自治体の意向というものは十分尊重をしてきておられるというふうに伺ってよろしいですか。
  206. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 地方自治体の御意向を聴取いたしまして廃止対象庁の選定作業等を進めてきたわけでございまして、簡易裁判所の存廃についての地方自治体の御意向はできる限り尊重してきているつもりでございます。
  207. 安藤巖

    安藤委員 その関係につきまして、いろいろ簡易裁判所の統廃合のことが議論になり、法制審議会答申が出され、法案提出の準備がされるという段階で、ですからこれは一昨年の十二月ごろからだと思うのですが、それぞれの地方自治体の議会が地方自治法第九十九条第二項の規定によって意見書を採択しまして、これはだから最高裁判所に出すわけにいかぬだろうと思いますので、法務大臣あてに出されていると思うのです。私もその写しを二、三持っておりますけれども、大臣は、もちろんこれは大臣が法務大臣になられる前も入っていると思うのですが、この法案審議に当たりましては、あるいは法案を提出されるに当たりましては、そういう意見書が自治体から出されているということについては御存じだと思うのですが、あるいは引き継ぎもなされておられると思うのですが、いかがですか。
  208. 遠藤要

    遠藤国務大臣 市町村長から要望書、議会からは意見書が出されております。
  209. 安藤巖

    安藤委員 大臣はその数を御存じでしたらお答えいただきたいと思うのですが、大臣が御存じでなかったら法務省の方からその数は幾つ、意見書あるいは要望書に分けて、あるいは一緒くたにしかわからなければそれでもいいですが、それと大体の傾向を教えていただきたいと思います。
  210. 清水湛

    清水(湛)政府委員 お答えいたします。  簡裁の廃止対象庁となっている市町村の数は六百三十四でございますけれども、このことが問題になりました全期間を通じまして、二百十三の市町村から要望書なり意見書が提出されております。うち、答申後が百四十八、法案提出後に二十八、こういう数字でございます。
  211. 安藤巖

    安藤委員 最高裁判所にも要望書なり意見書なりというのが出されておると思うのですが、最高裁判所の方に何通来ているのか、教えていただけますか。
  212. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 大体似たような数値でございまして、全期間を通じまして二百十、答申後は八十一、法案提出後は十五というふうになっております。
  213. 安藤巖

    安藤委員 先ほど法務省に対しましても申し上げたのですが、その傾向、反対とか賛成とか保留とか、そういうようなのは今わかりますか、最高裁判所も。わかりましたら大体内訳、反対がこれで賛成がこれだけでというのは、今わかったら教えてください。
  214. 清水湛

    清水(湛)政府委員 ただいま正確な資料を持ち合わせておりませんので、果たして正しい答えができるかどうかわかりませんけれども、私どもが要望書なり意見書に目を通した印象で申しますと、賛成というのはなかったように記憶いたしております。できるならば存置していただきたい。その理由として、当該地域の経済情勢等からして将来事件がふえる可能性があるとか、あるいは行政サービス、これは裁判所のサービスということだろうと思いますけれども、そういう面でもっといろいろな策を講じていただきたいというような趣旨のものが大半であったというふうに承知いたしております。
  215. 安藤巖

    安藤委員 裁判所、どうですか。
  216. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 書面の内容はさまざまでございまして、いろいろな観点から分類することができるわけでございます。例えば、初期の段階では特定の庁を対象としたものではなくて、一般論として簡裁の配置の見直しについて慎重な配慮、検討を要望するというようなものがございました。特定庁の存続に関するものといたしましては、やはり賛成というものはございません。
  217. 安藤巖

    安藤委員 大体私が想像しておったとおりであります。  そこで大臣、今お聞きになったようなことなんです。となると、山口総務局長さんは、先ほどこういう地方自治体の意向はちゃんと尊重して、意見をちゃんと聞いて配慮してやっておるんだというふうにおっしゃったのですが、今のお聞きしました、そしてお答えいただいた内容からすると、地方自治体は、法務省の方へ来たのは賛成はなかった。それから最高裁判所の方へも慎重にというのと、それから特定の場合は賛成なし。そうすると、みんな賛成なしですよね。それか、慎重にですよ。となると、これは法務大臣、この法案を今提出なさっておられるのですが、地方自治体の意向というのはどういうふうに考えておられるわけですか。法務大臣としても、宮城でもいろいろおありだというお話がありましたが、どういうふうにしてこの調和を図っていかれるおつもりなのか、それは無視というふうにもう割り切ってしまっておられるのか、その辺のところをお伺いしたいと思います。
  218. 遠藤要

    遠藤国務大臣 ただいま先生のお話ですが、反対の意見書なり要望が出ているということでございまして、賛成の意見書なり要望書というのは出ていないということは、これははっきりしていることですが、これはわざわざ出すことないということだろうと思うのです、残った地域の人たちは。やむを得ないのじゃないかとか了解しているという人は、改めて意見書なり要望書なりを出す必要がないというような考えでなかったかなとも思いますが、さらに私の承知しているところでは、意見書を出された、要望書を出された可なり市なりの当局なり議会なりも、その後裁判所の所長が何回か足を運ばれて、了解までびちっといっているかどうかわかりませんけれども、言葉では何という話をされているか知りませんが、心ではやむを得ないと了解されている地域相当数ある、こういうふうに承知をいたしておるわけでございます。改めてその人たちに、それでは要望書を取り消してほしいとか賛成の要望書をいま一回出し直してくれというまでにはいかなかったようでございますが、そういうふうな裁判所として努力をされているということも、先生も御承知の地域もあろうと思いますが、そういうふうなことに私は承知をいたしておるわけでございます。
  219. 安藤巖

    安藤委員 六百三十四市町村のうち二百十もしくは二百十三ですから、あとは出しておられないではないかとおっしゃられればそうですが、少なくとも二百十三の市町村が賛成できないというふうに言っているという事実は、市町村の意向を尊重するという立場からすれば、これはやはり問題にすべき数だというふうに思うのです。  そこで、これは後からもいろいろこの関係についてはお尋ねしたいと思いますので、いろいろ出されております、先ほど来お尋ねしております意見書の中身は大体こういうものだろうというふうに思っておるのです、これは愛知県の西尾簡易裁判所管轄内の市町村から出されてきているもので、大体こういうような中身だろうと思うのですが、とにかく廃止をされると困る、一層充実強化をしてほしいということを強く言っておられるわけです。これは西尾の市議会。それから、裁判官の常駐施設の改善などが望まれるところであります。今不在庁などは常駐してくれということ。これは幡豆郡の吉良町議会。それからやはり幡豆郡の一色町議会。裁判官の常駐施設の改善こそ大事だということを強く要望しておられるわけです。  それで、最高裁の話をよく伺いますと、初めのうちはなかなかうんと言ってもらえなかったけれども、いろいろ説得をし、何度がお邪魔をしというようなことをしているうちにだんだん了解していただいて、まあやむを得ないというところまでは大体来ているのだというようなことをよく伺うのです。そこで、私実際にこの西尾市、それから幡豆町、一色町、吉良町にお邪魔しまして——これは念のために申し上げておきますが、私の選挙区ではありませんよ。そして、ここは共産党が与党ではありません。唯一の野党で頑張っておるところなんです。それで、実は市長さんや議長さんにお会いをしてきたのです。  そしてお伺いしたところ、例えば西尾の市長さんは本多貫一という方なんですが、この方のお父さんが前に西尾町と言っておったころに町長をしておられたのだそうですね。そのときに西尾の簡易裁判所設立をされた。そして裁判官が常駐だった。それが不在庁になって、息子のわしの代になってからこの裁判所がなくなるということは、まことにもってこれは父親に対しても面目ない、個人的なこれも含めまして絶対反対だということを、これは七月二十日の段階で言ってみえておるのです。ところが名古屋地裁管内でいろいろ伺いますと、名古屋地裁の所長さんがいろいろねじをお巻きになって納得していただいた、こういうようなことになっておるのです。そうかと、実は私も確かめたのです。そんなことを言った覚えはない、それだったら私の方から最高裁判所に対しまして陳情書を書きますということで、これは私、写しをいただいたのです。議長さんと連名です。最高裁判所、行っておるでしょう。——うなずいておられる。それから幡豆町、これも行っておりますね。——うなずいておられる。一色町、行っておりますか。——行っております。これは私あてにも来ておるものだから。それから吉良町、行っておりますね。これはみんな七月の二十三日、二十四日、それから二十三日、二十二日付になっておるのです。  となりますと、最初はそうだったけれどもだんだん理解をしていただいて、今はもう納得していただいているという話は、事西尾簡易裁判所に関する限りは違うというふうに私は理解するのですが、この点はどういうふうに思っておられますか。
  220. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 西尾市からの陳情の状況につきましては、五十九年七月十一日の段階で、適正配置に関し人的、物的な充実が図られること、地域住民の合意と納得を得ること、三者協議は慎重で十分な討議が行われることなどを内容といたします要望書が提出されたわけであります。昭和六十一年九月九日には、法制審議会の司法制度会議決の直後に西尾簡裁の存続の要望書が再度出されております。その前にもその後にも名古屋の地裁の所長さんが西尾市の方にお伺いしているわけでございまして、ただいま安藤委員指摘のとおり、市長さんのお父様の時代に西尾簡裁が設立された、そういうふうな苦労話も所長を通じて私ども承知しているところでございます。  しかし、名古屋地裁の所長が昨年の十月九日、二十七日、十一月十八日、十二月十六日と前後四回にわたりまして、法制審議会答申趣旨や西尾簡裁の実情統合趣旨につきまして重ねて御説明に伺いました。その理解が得られるよう努めた結果、十二月の段階では、やはりいろいろ横並びの問題がございますので、そういう横並びの問題なんかもあわせて御説明申し上げまして、十二月の段階では統合もやむを得ないとの御理解をいただいて、その後は統合後の跡地をどうするかの問題に関心をお示しになるようになった状況でございます。ところが、本年七月二十日、安藤委員が西尾簡裁の方へ御視察をいただいたわけでありますが、その後七月二十二日付で西尾市から、それから先ほど御指摘のような日付でそれぞれの町から統合反対の書面が出てまいりましたので、あれあれというふうに思っているのが現在の状況でございます。
  221. 安藤巖

    安藤委員 あれあれと思っていただいただけでは済まないのでありまして、やはり最初お答えいただきましたように、それは尊重するというのは貫いていただきたいと思うのです。私は何も特別ねじを巻いてきたわけじゃありませんよ、先ほど申し上げましたような関係ですから。この西尾市長さんも、ここは愛知五区ですね、愛知五区の法務委員を担当しておられる自民党の偉い先生にも統廃合にならないように頼んできたんだというふうに言ってみえておりましたから、何も私がねじを巻いた結果こうなったわけではない。これが西尾市長さん、それから西尾市議会の本当の声なんです。  それから、先ほども御答弁を伺っておりますと、まさに西尾市は西尾市内に西尾簡易裁判所があるわけですね。簡易裁判所の所在しない自治体はやむを得ないという声が強いみたいな御答弁を先ほど来おっしゃってみえたのをお聞きしておったのですが、大体そうですか。
  222. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 先ほど来御説明申しておりますように、地元には再三にわたり御説明に伺っているわけでございます。したがいまして、その都度地元の御意向というものは承ってきているわけでございますが、私どもの承知している限りにおきましては、七月二十三日付の書面が出ます前の段階では、つまり所在地外の町におかれましては、これはやむを得ないなというふうに御理解いただいていたというように認識いたしております。
  223. 安藤巖

    安藤委員 ところが、そうではないのですよ。先ほどもちょっと申し上げましたが、西尾簡易裁判所管轄区域内で、その町の中には簡易裁判所のない幡豆郡幡豆町、二十三日付、町長さん、町議会議長さん連名で、これは先ほども御確認いただいたのですが、最高裁判所へ届いているわけであります。「幡豆郡の地域を含め、農業や商業活動も活発で今後大きな発展が予想されます。」経済状態なども考慮するというのですが、こういう経済状態もきちっと言っておられるのです。だから「簡易裁判所は極めて重要な機関であり、住民に対する法的サービスを向上させることこそ必要であります。」こう言っておるでしょう、全部詳しくは申し上げませんが。そうして吉良町。吉良町でも「西尾簡易裁判所の統廃合に強く反対し、その存続とともに人的配置及び物的設備の一層の充実に格別なご配慮をお願いします。」逆に充実してくれと言っておるのです。一色町。大体同じ趣旨ですが、とにかく「地域住民に対する法的サービスの機関として不可欠であります。」  ですから、その地方自治体に簡易裁判所が所在してなくて管轄区域内であるその自治体でも、こういうふうに強く存続を希望しておられるわけです。こういう自治体の希望に対して、どういうふうにおこたえいただくつもりですか。
  224. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 各自治体の首長あるいは議会のお立場といたしましては、それぞれ地域住民なり、首長の立場からいたしますと議会に対する関係なり、いろいろお立場があろうかと思います。私ども、これは別に西尾管内に限りませんけれども、陳情書を出してこられた自治体にお伺いをいたしまして御事情を伺うこともございます。そのときおっしゃいますお言葉の中には、やはり議会との関係もあるので、何もしなかったということでは理事者の立場は立たない、とにかく書面は出させてもらうけれども、裁判所の言うこともわかるし、国の施策としておやりになるならこれはやむを得ないものと思うというふうにおっしゃる方もございます。やはり首長といたしましては、地域住民のことをいろいろお考えになられる。他方、私どもが申し上げます国側の論理と申しますか、国側の要望というものにも理解を示さなければならない。非常におつらい立場であろうかと思います。その辺のところを十分踏まえて考えていかなければならないというように考えている次第でございます。
  225. 安藤巖

    安藤委員 どうも自治体の意向をよく理解しておられないみたいな感じがするのですが、対議会のこともあり、何とかのこともあり、だからそういうような意見書なり何なりをおやりになったんだ、議会は対住民のこともあり、何とか格好をつけなくてはいかぬということでそういう議決をしたみたいなお話ですが、しかしそれも大事なことで、まさにだからこそそれが住民の意向を反映したやり方だというふうに思うのですが、何とか格好だけつけているんじゃないのかなというような受け取り方は間違っていると思うのですよ。だから、今お答えになったようなお考えで何とか格好をつけているということではなくて、やはりこういう意見書を出しているんだ、必要性があるんだ、簡易裁判所に対する期待が大きいんだ、こういうふうにしっかりと受けとめていただく必要があるんだと思うのです。私は、西尾の場合は実例として申し上げているわけで、全国の百一の中にはこういうふうにお考えの自治体はまだまだ幾つもあるんじゃないかというふうに思って申し上げておるわけです。  そこで、これは先ほど来もお話がありましたが、法制審の適正配置に関する答申、そこの事件数と交通関係の時間の相関表で、五年間の平均をとって、それが西尾の場合でいうと五十件以内、そして隣接の安城の簡裁に統合ということになっておるのですが、それへの交通時間が六十分以内、たしか相関表はそうなっておるね。  ところで、これは私がこの前お邪魔したときに簡易裁判所からいただいてきた資料なんですが、これを見ますと、確かに五十五年から五十九年までの間の事件の取り扱い件数、いわゆる民事訴訟、調停、刑事訴訟関係では五十件以内かもしれません。しかし、昭和六十年度で民事訴訟三十一、調停三十九、刑事訴訟一、これで優に七十一件。それから、昭和六十一年度で民事訴訟三十三、調停二十四、刑事訴訟三、六十件ですね。だから、五年間の平均というのは一応合理的なように見えますけれども、先ほど来紹介させていただいております西尾市の方の陳情書によりましても、産業活動が活発化して裁判所に対する潜在的な要望は強いんだというのも、やはりこれが反映しているんじゃないかと思うのですね。七十一件、六十件ですよ。だから、五年間の平均というのはおかしいんじゃないかと思うのですよ。何かためにする魂胆があってそういうことを言ってみえるんじゃないか、一応の合理的な装いを凝らしてという感じがするのです。これはこうやってずっとふえていますから。これはどういうふうに考えていかれるのか。やはり五年平均だというふうにいかれるのか、これからのこういう需要の状況というのは無視されるのか。その辺はどうですか。
  226. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 裁判所の利用度合いを示します事件数として五年間をとりましたのは、一年ではもちろん問題になりませんし、三年でございましてもやはり長期的な変動を予測する資料としては不十分であろう。一応五年というものをとったわけでして、ちょうどその真ん中にあります五十七年に事物管轄改正がなされております。事物管轄改正がなされますと一たん簡裁の事件は多くなりますけれども、それからまた減ってくるというような状況もございまして、ちょうど事物管轄改正の年を真ん中にとりました前後の五年をとるのが将来を予測するのに一番いい尺度ではないか、こういうふうに考えたわけでございます。  ただ、そういう尺度を使いましても、私ども常に、最近の事件も含めまして、三十年、四十年、五十年、五十五年以来の逐年の事件傾向というものをにらみ合わせながら、単に平均が五十件だからという頭で考えているわけではございません。基準はあくまで基準でございまして、法制審の答申におきましても事件数の動向というものを考えろというふうに言われているところでございますから、そういう長期的な時系列的な検討も踏まえてどうすべきかを考えているわけでございます。  御指摘のとおり、西尾におきましては五年の平均が五十件でございますが、実は五十八年も五十九件でございまして、五十九年が六十二件というふうになっていたわけです。五十五年、五十六年が四十四件、三十五件と異常に低かったという状況がございます。ただ、六十年に七十一件になりましたが、六十一年には六十件とまた減ってきているわけでございます。この西尾地方は、隣の安城に比較しますと人口当たりの事件数は低うございます。土地柄等もございまして、人口等がなかなかその事件数に反映してきていない、そういう面もあろうかと思います。そういういろいろな点を勘案しまして、一応五十の枠の中で考えてしかるべきかなというふうに考えております。     〔井出委員長代理退席、委員長着席〕
  227. 安藤巖

    安藤委員 確かに六十年七十一件、六十一年六十件ですが、今年度また七十件にならないという保証はないと思うのですよ。やはり西尾市長さん、議会の議長さんの陳情書にありますように、こういうふうに経済が発展していくんだ、だから要望は強いのですよと言っているその声には真摯に耳を傾けていただく必要があると思うのです。  それから、これは民事訴訟、調停、刑事訴訟の件数が取り上げられておるのですが、督促手続、それから先ほどもお話がありました交通即決処理事件、略式、これが抜けておるのです。これは先ほど来の西尾簡易裁判所からいただいた資料ですが、六十年度で督促が三百二十一、六十一年度二百六十三、略式が昭和六十年で二千六十九、六十一年度が二千三百十九、こういう数なんです。これはどうして件数の数から落としてしまうのですか。
  228. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 事件数を取り上げました場合に、どのような事件をとるかというのが問題になってくるわけでございますが、裁判所サイドに立って考えますと、事務量という形で考えるのも一つの方法かもしれません。しかし、簡裁の再配置を考える場合には、全体としての当事者の便というものがやはり基本的な尺度になるだろうと思うわけでございます。全体的な当事者の便ということを考えた場合にどのような事件をとるかということになりますと、裁判所へ出向かなければ処理できない事件、こういうものを尺度としてとるべきであろう。そういたしますと、出頭しなければならない事件となりますと民事訴訟、刑事訴訟、調停ということになるわけでございまして、しかもこれが簡易裁判所における基本的な事件でございます。  支払い命令につきましては、私ども調査いたしましたが、ほとんど九十数%が管外の債権者からの申し立てでございまして、郵送によるものが多うございます。したがいまして、これを事件数にカウントしなくとも、ある簡易裁判所管内の住民の裁判所の利用度を示す指標としては決して差し支えないだろうと考えております。  略式につきましても、これは対応する区検察庁に出頭しなければなりませんけれども、全体の刑事司法の立場からしますと、その点もあわせて考えなければならないと思います。しかし、略式事件につきましては種々さまざまな事件がございまして、最寄りの検察庁よりはむしろ離れた検察庁で調べてもらった方が望ましいというような場合もあるわけでございまして、そういうさまざまな観点から、略式事件は基本的な事件数の中には入れなかったわけでございます。
  229. 安藤巖

    安藤委員 督促手続につきましては、それは確かにおっしゃるとおりかもしれません。しかし略式は、これはほとんど交通事件だと思うのです。裁判を受けて罰金を払いに行く、好ましいことではありませんが、一応生活に密着したことなんですね。となると、この件数をやはり入れなかったら、裁判所出頭して、裁判所を利用するというのはあれかもわかりませんが、起訴されちゃうという格好になるのですが、裁判を受ける権利そのものなんですが、それと大いにこれは関連のある数字だと思うのですよ。これをネグレクトしてしまって、やれ五十件以下だ、六十件以下だというのはやはりおかしいと思うのですよ。これはどうしても入れなければならぬと思うのです。  それから、時間がありませんから時間いっぱいお尋ねして、あとは次回に譲りたいと思います。  これは陳情書にもいろいろありましたけれども、西尾市の人口は、私調べてきましたけれども、これは昭和三十五年で六万七千五百九十二、それから四十年で七万四百三十二、四十五年で七万五千百九十三、五十年で八万二千、それから五十五年で八万六千、六十年で九万一千、大体五年ごとに四、五千人ずつふえていっておるのです。それから、この西尾簡易裁判所管内の人口も、三年ぐらい申し上げますが、十四万九千四百三十三から十五万四百七十九、それから十五万二千百四十五、これはずっとふえていっておるのですよ。ということからしますと、やはりこの陳情書で言ってみえておる、意見書で言ってみえておるのが本物だというふうに思うのです。だから、この点はまた違った意見を出してきて一応納得したはずなのにおかしいなということではなくて、やはり裁判所の判断が間違っておったかな、何か押しつけみたいなことをやったんじゃないのかなということをきっちり反省をしていただいて、きちっとこの要望にこたえていただく必要があるのじゃないかと思うのです。  それから、さっきの交通にかかる時間とそれから事件の相関表の関係でも、西尾は五十件以内で臨接の庁へ行くのに六十分以内というふうになっておるのですが、これも西尾簡易裁判所でいただいたものですが、「西尾簡易裁判所実情」という名古屋地方裁判所のがあるのです。これによると「安城簡裁へは一時間十分ないし二時間十分程度」、二時間十分ですよ。この相関表にあるように、六十分以内じゃないですよ。これも大きく食い違っているのですね。だから、こういうようなこともありますので、その辺のところをもう一遍十分お調べいただきたいし、これは西尾簡裁に限ったことではなくて、全国津々浦々あっちこっちにまだ百一庁の中にあると思うのです。だから、それを十分お調べいただいて、再検討をお願いしたいと思うのですが、いかがですか。これにお答えいただいて、終わります。
  230. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 西尾につきましては、先ほど来御指摘のございますように、七月二十三日の段階で陳情書が出てまいっておりますので、早急にまた地元の方にお伺いいたしまして、よく実情をお伺いしてまいりたいと思っております。
  231. 安藤巖

    安藤委員 以上で本日は終わります。
  232. 大塚雄司

    大塚委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時四十四分散会      ————◇—————