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1987-09-01 第109回国会 衆議院 農林水産委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十二年九月一日(火曜日)     午前十時五分開議 出席委員   委員長 玉沢徳一郎君    理事 近藤 元次君 理事 鈴木 宗男君    理事 月原 茂皓君 理事 保利 耕輔君    理事 松田 九郎君 理事 串原 義直君    理事 水谷  弘君       大石 千八君    大原 一三君       太田 誠一君    木村 守男君       菊池福治郎君    小坂善太郎君       田邉 國男君    谷垣 禎一君       野呂田芳成君    森下 元晴君       保岡 興治君    柳沢 伯夫君       山崎平八郎君    石橋 大吉君       田中 恒利君    竹内  猛君       辻  一彦君    前島 秀行君       草川 昭三君    武田 一夫君       玉城 栄一君    藤原 房雄君       吉浦 忠治君    藤田 スミ君       山原健二郎君  出席国務大臣         農林水産大臣  加藤 六月君  出席政府委員         農林水産政務次         官       衛藤征士郎君         農林水産大臣官         房長      甕   滋君         農林水産大臣官         房総務審議官  吉國  隆君         農林水産大臣官         房審議官    青木 敏也君         農林水産省構造         改善局長    鴻巣 健治君         農林水産省農蚕         園芸局長    浜口 義曠君         農林水産省畜産         局長      京谷 昭夫君         農林水産省食品         流通局長    谷野  陽君         農林水産技術会         議事務局長   畑中 孝晴君         食糧庁次長   山田 岸雄君         林野庁長官   田中 宏尚君         林野庁次長   松田  堯君         水産庁長官   佐竹 五六君  委員外出席者         議     員 宮崎 茂一君         議     員 白川 勝彦君         厚生省生活衛生         局乳肉衛生課長 難波  江君         厚生省生活衛生         局食品化学課長 内山 壽紀君         農林水産省経済         局統計情報部長 松山 光治君         農林水産省構造         改善局次長   内藤 克美君         建設省河川局河         川計画課長   角田 直行君         建設省住宅局建         築指導課長   立石  真君         消防庁予防課長 木下 英敏君         会計検査院事務         総局第四局農林         水産検査第一課         長       吉田 日麿君         会計検査院事務         総局第四局農林         水産検査第三課         長       奥田 義雄君         農林水産委員会         調査室長    羽多  實君     ――――――――――――― 委員の異動 九月一日  辞任         補欠選任   武田 一夫君     草川 昭三君 同日  辞任         補欠選任   草川 昭三君     武田 一夫君     ――――――――――――― 八月三十一日  米の輸入反対等に関する請願外一件(藤田スミ  君紹介)(第八八七号)  同外一件(山原健二郎紹介)(第八八八号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 八月二十六日  農業基本政策確立に関する陳情書外七十五件  (第六七号)  農産物輸入自由化阻止等に関する陳情書外十四  件  (第六八号)  畜産物等輸入対策に関する陳情書外五件  (第六九号)  マグロ漁業経営安定対策強化に関する陳情書  (第七〇号)  竹島周辺漁業安全操業の確保に関する陳情書  (第七一号)  日朝民間漁業暫定合意書の再締結に関する陳情  書  (第七二号)  林業振興対策拡充強化に関する陳情書外三件  (第七三号)  宇都宮営林署の存続に関する陳情書外一件  (第七四号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  流通食品への毒物の混入等防止等に関する特  別措置法案宮崎茂一君外五名提出、第百七回  国会衆法第六号)  農林水産業振興に関する件      ――――◇―――――
  2. 玉沢徳一郎

    玉沢委員長 これより会議を開きます。  農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。前島秀行君。
  3. 前島秀行

    前島委員 きょうは、先般社会党国有林野中心にして現地調査を行いましたので、その現地調査の結果等々を中心にしまして、今後の国有林の運営あるいは森林全体の今後のあり方についでいろいろ御質問をさせていただきたいと思っています。具体的な問題に入る前に、国有林野中心とする森林全体の現状認識について、大臣基本的な点をまずお伺いしたいと思っています。  今年の七月に決定された改善案の中でも、いわゆる国有林野使命という点で、御案内のように林産物計画的な、持続的な供給を図るのだとか、公益的な機能を発揮する、あるいは農山地域への寄与をするのだという使命を持っているということははっきり言われているし、また全体的に山の持つ使命ということは再三言われているわけであります。林政審の答申とか改善計画等々を見ますと、現状認識という点で林業経営的側面は非常に厳しいのだということは、非常に極端に言いますと耳にたこが張るほど出てくるわけですけれども、そのことは事実だろうと思います。その国有林野を初めとする森林の持っている公益的な機能を発揮するために、とりわけ国土基盤としての森林とか環境資源としての森林、そういう機能を確保するための実態はどうなっているんだろうかという現状分析というのはなかなか出てこない。例の世界的な森林の問題、森林年が設定されたというような世界的な課題森林国民生活に持たされている影響という点から非常に注目されているんですけれども、そういう国土保全だとか国土基盤としての森林だとか環境資源としての森林という観点から見た現在の日本の山の実態はどうなっているんだろうか。管理保育の面でどうなんだろうかという認識についてはなかなか出てこない、そういうふうに思うわけであります。  そういう面でこれから具体的に国有林事業を展開していく、あるいは農水省として日本の全体の森林をどうこれから持っていくか、こういう具体的な実施をする段階の中で、その辺の現状、そういう機能を果たしている認識は一体どうなっているんだろうかということをまず大臣に、最初にその辺の現状認識を伺っておきたい、こういうふうに思っているところです。
  4. 加藤六月

    加藤国務大臣 森林問題は、国際的にもまた国内的にも大変重要になり、また最近活発に議論されておるところでございます。  前島委員のおっしゃいました問題、一言で申し上げますと大変時間がかかり、相当な幅広い問題を提起されたわけでございますが、今の御質問の御趣旨は、公益的機能という問題と山を守り育てるというような基本的な考え方はどうかというように伺ったわけでございます。まずそういう中で国有林事業というものを考えてみますと、今も御指摘になったわけでございますけれども、林産物計画的、持続的な供給をしていくということも一つの大きな仕事でございます。また、同じく御指摘になりましたが、最近特に活発に議論されるようになったのは、これから申し上げます国土保全水資源の涵養、自然環境保全形成保健休養の場の提供等公益的機能を持っておるし、またこの公益的機能を発揮していかなくてはならないという点が非常に国民各界各層の関心、議論を呼ぶようになったと考えておりますし、ここら辺の機能の問題が議論されるようになってきておると思います。  いま一つは、国有林野活用等を通じた農山地域振興への寄与あるいは活性化のもとにしなくてはならない、こういった問題も真剣に考え、検討しなくてはならぬときに来ておると思うわけでございます。  以上申し上げましたような使命国有林野事業は果たしておる、私はこう考えるわけでございます。  そして、この国有林野事業につきましては、去る七月三十一日に改訂・強化された改善計画に基づきまして、最大限の自主的改善努力を図っていくことといたしておるところでございます。そしてその推進に当たりましては、国有林の適切な管理経営国有林野事業基本であるという考え方に立ちまして、山を守り、育て、今申し上げましたような使命を十分に発揮するように取り組んでまいる所存でございます。
  5. 前島秀行

    前島委員 私が大臣認識として確認したいのは、御承知だろうと思うのですけれども、要するに、みずから言っていますようにもろもろの使命を達成しなければいかぬということがあるのだけれども、それを達成させる条件として、今現実の山を見たと岩には果たして十分だろうか、その辺の認識をはっきりした上でこれからの国有林野の問題あるいは全般的な山の政策というものを立ててほしい、そういうことなんです。  例えば、政府みずから発表しているように、間伐一つにしたって、やりたい間伐はあるけれどもその六割しかやれていないだとか、そういう国土基盤としての森林あるいは環境資源としての森林という面から見て十分達成されているだろうかという現状認識をするときには、不十分だという認識から出発して、これからの改善計画あるいは具体的な施業方針等々を立ててほしい、こういう出発点認識をぴしっと確認をしてほしいという意味なんです。  例えば、私自身富士山のふもとで育ってきていますから、四十年間冨士山を見てきているわけです。あるいは国有林のある伊豆の山、具体的には天城とか河津等々の山の実態を見ると、この四十年間山が、富士山が荒れていることは間違いないわけです。全国的に見れば比較的管理が届いているといいましょうか、いい方だと言われますけれども、それでも四十年間見てきた富士山、特にこの一年間がない伊豆の山だとか富士山等々は、こういう国有林改善という観点から何度か現地に入ってみますと、まだまだ管理は不十分だ。とりわけ国土基盤としての森林とか環境資源森林という観点から見るならば、これは非常に不十分だ。この認識をまずした上で、具体的にこれからの作業といいましょうか改善計画を練ってほしいということをまず大臣認識として持ってほしい、こういう意味であります。  それで具体的にお聞きをしたいと思っているわけです。  今般の改善計画の決定とかあるいは具体的な施業計画変更等々の大きな特徴、我々の側から見れば問題点、こう指摘せざるを得ないのでありますけれども、その改善計画一つの大きな特徴として、天然林施業の一層の展開あるいは広葉樹林のより積極的な造林、こういうことが特徴として出ていると私は思うのであります。天然林施業それ自体をこれから進めていくということはいいことだろうと私は思うし、賛成をするわけでありますけれども、ただ、技術的な検証がないままに進められたりしますと、これは手抜き作業を結果として意味するし、あるいはその結果として山の荒廃につながる、こういうふうに言わざるを得ないと思うわけです。  現実に、今度の社会党調査団としていろいろ現地調査した地域には、特にこういう点を指摘せざるを得ない箇所がたくさんあるわけであります。天然林施業と言いながら十分な更新が図られなければ、結局成林の見込みがないままで放置されている林分というのが非常にたくさん見られたわけであります。私たちが行った前橋だとか福島営林署の管内ではそういう現象が非常に見られたわけです。天然林施業というのは、それぞれの地域の自然的な条件とか技術開発蓄積等を踏まえて慎重に進めるべきものだと思うわけです。そういう面で、これから大きな柱になるであろう天然林施業の具体的な基本的な考え方、そしてまたその実態は今どういうふうになっているのか、その辺のところをまずお聞きしたい、こういうふうに思います。
  6. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 天然林施業がここのところ取り上げられてまいった経緯につきまして、ただいま先生からも若干お話がございましたけれども、少し触れさせていただきますと、我が国の経済社会というものが非常に成熟化してきたわけでございます。それに伴いまして森林の持っておりますいろいろな多面的な機能高度発揮でございますとかあるいは木材需要というものも、従来の針葉樹中心ということから広葉樹への木材需要傾斜等というようなこともございまして、いろいろと森林に対します国民的要請というものが高まると同時に多様化してきているわけでございます。そういう中で、従来から行ってまいりました森林整備あり方というものにつきまして一昨年、昨年と二年間審議会審議をしていただきまして、ことしの七月二十四日に森林資源に関する基本計画というものを改定するに至ったわけでございます。  この計画では、天然林人工林にするためのいわゆる拡大造林という従来の路線から大きく転換いたしまして、既に造成されております人工林は戦後一千万ヘクタール、森林面積の四〇%というものを人工林という形で造成してきたわけでございますけれども、これを適正に管理するということに加えまして、今お話がございました複層林の造成でございますとか、あるいは天然林施業等というようなものにこれから真剣に取り組んでいくというふうに整備方針を大きく転換させていただいたわけでございます。  そして、この中で特に御議論が出ております国有林につきましても同様な傾向でございまして、特に国有林の場合には全国の天然林の約三五%というものを保有しているわけでございまして、その配置状況でございますとかあるいは資源内容、それからただいま言いましたように国民広葉樹資源に対する傾斜等というようなこと、さらにはいろいろなレクリエーションであるとか景観の維持等というような公益的、文化的機能国有林にも期待されているということからいいまして、同じように天然林施業というものを国有林でも取り入れていくことが肝要かと思っております。  しかし、先生からも御指摘ありましたように、天然林施業というものが、げびた言葉で言いますと手抜き作業というふうになっては元も子もないわけでございまして、あくまでも天然林施業といいますのは、天然更新力という自然の力というものを十二分に活用いたしまして、技術的に見て妥当な場合にこれを採用すべきでございまして、場合によりましては、全く自然の力に放置するのではなくて人間みずからが、例えば必要な植え込みでございますとかあるいは稚幼樹の刈り出してございますとかの人工補整作業というもので手を加えてやりまして、十分な管理保育というものが実現して初めて十分なる天然林施業が行われるというふうに考えておるわけでございます。
  7. 前島秀行

    前島委員 私たち社会党調査に行った地域の結果、これは長官の方にも申し入れという形で行っていると思います。例えば前橋営林局沼田営林署での実態調査なんかの結果を見てみますと、ブナの伐採した跡を天然林施業として放置している、もう八年経過している、今日に至ってもササとか何かがいっぱいになっちゃって、更新樹種としてのブナの主体性は、成林としてはもう不能になっちゃっているとか、そういう実態なんかもたくさん報告されているわけであります。あるいは福島の例なんかを見ましても、いろいろ天然林に移行するという方針のもとで、何年か前からそういう方針でやってきていると思うわけです。  そういう意味で、我々の調査した地域だけですから総体的なことはともかくとして、この地域だけを見る限りについては、その天然林施業というものが結果としては手抜き方向に、あるいは山が荒れるという方向に行っている、そういう現象として認めざるを得ない、こういうふうにこの調査をした地域の結果だけを見ますと言わざるを得ないと思うわけです。そういう意味で、この天然林施業への移行化ということが、今長官等々が言われた目的が十分達成されていないのではないか、その方向というものが必ずしも納得するような方向ではないんじゃないか、こういうふうにこの実態を見る限立言わざるを得ない、こういうふうに思うわけでありますけれども、その辺長官どうでしょうか。
  8. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 ただいまも申し上げましたように、天然林施業の施行に当たりましては、あくまでもその地域実態に応じまして、植え込みでございますとかあるいは稚幼樹の刈り取りというような人工補整ということを加える必要がございますし、それからさらに道路網整備でございますとかいうものも行いまして、確実な更新が図られるということが我々の願いであり、我々の目的であるわけでございます。しかし、ただいま先生から御指摘ありましたように、社会党も何カ所か調査していただいたわけでございますけれども、それにつきましては我々としてもこれからさらに精査いたしまして、どういう現況にあるかということを的確に把握したいと思っておりますが、一般論といたしまして、残念ながら地域によりましては十分な管理保育というものがなされていない天然林施業と称されている林区も見受けられることは事実でございますので、こういうものにつきましては、これからのいろいろな施業の過程におきまして十分な手直し等を行ってまいりたいと思っております。
  9. 前島秀行

    前島委員 私たち社会党調査した地域もさることながら、そういう意味で結果として手抜きだとか山が荒れるような現象にならぬように、かなり具体的な御努力をぜひお願いをしたいと思います。  そういう意味で、天然林施業を推進する、また本来の目的を達成する、こういう意味から見てその技術的な問題ということが重要だ、こういうふうに思うわけです。この調査の中でも天然林施業という方向に行くんだ、行っているんだけれどもその技術が伴っていない結果、現象として荒れちゃっているという報告もたくさんあるわけですね。そういう意味で、天然林施業を一層推進するに当たっての技術開発といいましょうか検討といいましょうか、その辺のところの進みぐあいといいましょうか、私もそれぞれの局の中で、また具体的な署の中で天然林施業に向かっていろいろな検討をされている、技術開発をされているということは知っているわけでありますけれども、この調査結果等々を見ても、まだまだ技術開発が進んでいないので結果としてそうなっている、こういう指摘があるわけでありますので、そういう技術開発現況は一体どうなっているのか、その体系は早期に確立されるのだろうか。そのことが伴いませんと、この改善計画自身も非常に達成できなくなるだろうし、結果として山が荒れてしまう、こういう結果になると思いますので、その技術開発状況、それから、これからこの技術体系を整えていくための見通しなんかをちょっと具体的に御報告を願いたい、こういうふうに思います。
  10. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 林業そのものがそうでございますけれども、それぞれの地域によりまして、それぞれの樹種によりましていろいろと技術のかかわり合いなり組み合わせも変わってくるわけでございます。特に天然林施業につきましては、先生も御承知と思いますけれども、北海道のエゾマツ、トドマツでございますとかあるいは針広混交林施業、それから東北地方ではブナ林でございますとかアカマツ、こういうものにつきましてはそれぞれの地域の特性に応じました技術体系というものの確立を図ってまいりまして、それぞれ相当の成果を上げております実験林的な天然林施業実行地というものも各地に出てきているわけでございます。  それからまた、天然林施業重要性に特にかんがみまして、国有林野事業の中でも重要な技術開発課題ということで取り組んでおりまして、例えば昭和六十二年度でも、こちら側から指示しまして技術開発課題として取り上げました箇所数が三十八カ所、それからそれぞれの営林局なり支局の段階で自主的に技術開発課題として取り組んでおりますのが十三カ所ということで、天然林施業に関します技術開発課題、トータルで五十一カ所というものにつきまして六十二年度におきましても取り組んでいるわけでございます。今後とも従来の実績なりそれからこれらの研究課題成果というものを反映させまして、一日も早く天然林施業の全国的な一層の充実というものを図ってまいりたいと思っております。
  11. 前島秀行

    前島委員 全部で五十一カ所ですか、それぞれの技術検討をしている、それは事実だろうと思うのですけれども、それが具体的にどの程度進んでいるのか。あるいはこの天然林施業というものの特徴といいましょうか、あれから見ると、北海道でのことが九州に通用するというものでもないし、それぞれの地域の自然的な条件とか、あるいは地域の経済的な側面との兼ね合いを総合的に検討しないとその技術開発というものの効果があらわれないという意味で、その地域に合った技術開発ということが必要だということが言われているわけですね。  私の静岡の地域なんかでも、やはり天然林移行に向かって、あるいは広葉樹拡大、いよいよ広葉樹拡大という形でいろいろな検討をしているということは私も聞いておりますし、そのいろいろな成果の発表なんかは読ましてもらっているわけですけれども、正直言ってまだまだこれからたくさんの課題がある、研究せにゃいかぬという報告になっているわけですね。そういう意味から一日も早く技術開発をしなくちゃいかぬ。しかし、この改善計画国有林野実態から見て、七十二年には収支均衡という課題との兼ね合いの中で、十分な技術開発地域に合った、実態に合った技術開発が進まない中で天然林施業というものをどんどん進めていく、その結果として、私たち社会党調査をした地域特徴的に出ているようにやはり山が荒れてしまっている、こういうことだと思うのですね。  そういう意味で、その地域に合った技術開発ということをより積極的にやってもらいたいし、また、それとの兼ね合いを考えながら具体的な施業計画変更といいましょうか、そういうものをやらないと結果的に山が荒れてしまう、こういうことですので、これからの具体的な施業計画変更というものは、技術開発とあわせた形でそれぞれの地域実態に合ったような施業計画をぜひつくってほしい。我々社会党調査した結果は、その技術開発が伴わないにもかかわらず施業計画天然林云々という形でもってやろうとして、結果として放置をしているという現象がたくさん出ている、こういうことですので、その具体的なこれからの施業計画を詰めていく段階で、ぜひその技術開発との兼ね合い十分配慮をしてつくってほしい、こういうふうに思うわけであります。  そういう意味で、天然林施業を推進するということはいいのですけれども、結果として山が荒れてしまったらどうしようもないわけなんで、実施するに当たっての更新完了基準だとか、あるいはこれから天然林施業をやっていく上での保育管理基準みたいなものは一体整っているのだろうか。人工林はもう過去長い歴史がありますから一定の基準というのがなされて、それが定着して現在の人工林実態というものができてきていると思うけれども、天然林施業の方は、そういう更新完了基準だとか保育管理基準というのは、私たち調査実態から見るとまだ暗中模索の段階だ、全然確立されてないというのが実態調査の結果として出てきているわけでありますけれども、そういう天然林施業更新完了基準だとかあるいは保育管理基準というのは一体どんなふうになっているのか、その点をちょっと長官の見解をお聞きをしたい、こういうふうに思います。
  12. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 天然林の取り扱いの仕組みは、天然林樹種構成でございますとかあるいは生産目的、こういうものによりましていろいろと違ってくるわけでございますが、ただいま御指摘がありました更新完了なり保育の基準という施業体系につきましては、施業対象地の気象条件、それから地形、土壌、標高等の立地条件でございますとか、それからさらに外分の現況等々に応じまして相当変わっておりまして、全国画一的ではございませんで、それぞれの地域施業計画、こういう中で位置づけることになっておるわけでございます。  それで、天然林施業の実施に当たりましては、更新完了の目安といたしまして、育った稚幼樹の本数、こういうものにつきましてはほぼ全営林局、営林支局で定めておるわけでございますけれども、更新完了基準というものにつきましては、この更新完了基準として調査時期なり調査方法というものを具体的に定めておりますのは、現時点では秋田局のほかに五局というような形に相なっております。それからまた、保育基準につきましては、地域施業計画の中で現地実態に応じて行うということが定められておりまして、日常の森林管理、こういう中でそれぞれ適切に処理しているわけでございます。  いずれにいたしましても、現在の施業体系というものにつきましては、五年ごとの地域施業計画の樹立見直しということを行ってきておりますので、こういう地域施業計画の改定樹立の都度、従来の施業の結果を十分分析いたしまして、従来の知識なり経験というものを積み上げて、今後とも天然林施業の十分な確立を図ってまいりたいと思っております。学理的には天然林施業の学理というものは十分確立されておりまして、それぞれの適地ではそれなりに効果も上げてきているわけでございますけれども、そういう立地なり樹種なりとのいろいろな絡み合いもございますので、これからも大学でございますとかあるいは試験研究機関、こういうものとも十分連携をとりながら、より技術的合理性の高いものに精度を高めるべく努力を積み重ねてまいりたいと思っております。
  13. 前島秀行

    前島委員 その完了基準にしても、今長官みずからも認めているように、秋田等々ではやられているけれども、その他の局というのは試行錯誤の段階というのが実態だろう、こういうふうに思うし、ましてや保育基準というのは全く皆無の状態と言ってもいいと思うのですね。そのことは技術開発が伴っていないから、こういうことになると思うのです。  問題は、技術開発が十分進まない、そういう実態の中で、地域施業計画を一斉に見直していく、そのときの姿勢といいましょうかやり方という問題が問われてくる。そこを一歩間違うと、計画そのものも挫折するであろうし山も荒れてしまう、こういうことになると私は思うのです。そういう意味からいきますと、現在の実態認識するならば、施業合理化といいましょうか、技術合理性というものと投資の効率化という問題で、投資の効率化だけが先行をしてきて、結果的に、我々が見た地域なんかに代表的にあらわれているように、荒れてしまっているというのを私は指摘せざるを得ないわけですね。  要するに天然林施業の実施は、大きな意味で、歴史的に長い目で見ると大いにいいことだけれども、今まで進めてきた結果を現時点で見るならば、この方針というのは結果的に安上がりの結果になっているんだ、あるいはこれから改善計画の大きな柱として、特徴の第一として考えているならば、これは人減らし以外の何物でもない、こういうふうに指摘されざるを得ないような現象になると私は思うのですね。そういう意味で、この天然林施業技術開発というものを一刻も早くやってほしいし、そういう完了基準、保育基準確立というものもぜひやってほしい。そういうものが伴わなければ、効率というものだけを前面に出した天然林施業の実施ということについてはぜひ見合わせるような努力をしてもらわないと山が荒れてしまう。そういう点で、ぜひその辺の基本的な認識といいましょうかとらまえ方といいましょうか、方針を据えた上で、具体的にこの施業計画の改定、見直しについて指導をしてほしい、こういうふうに思います。  この調査の結果から我々が要望するのは、結局、天然林施業の推進にしても、やはり人と金をかけなければ満足した山の管理はできないというふうに言わざるを得ないと思うのです。そういう面で、その点の認識といいましょうか、今後の指導をぜひお願いしたい、こういうふうに思います。  それから、次の問題としまして、やはりこれもこの改善計画の大きな柱でありましょうし、あるいは一歩間違えれば大きな問題点として指摘をせざるを得ない民間への請負化の問題があると私は思うのです。これはいろいろな面で、これからの改善計画を実施していくとかあるいは山を管理していく、先ほど私が最初に言いましたような森林、とりわけ国有林の持っておる使命を達成する上では大きなポイントになるのではないだろうか、私はこういうふうに思うわけです。これから国有林事業を進めていく中で請負化を一層進める、こう言うけれども、具体的には国有林野事業の中のどんな事業の請負化をこれから進めていこうとしているのか、またそれがこの計画の中で、結果としてどんな比率といいましょうか割合になっていくのか、その辺の方針を聞かしてほしい、こういうふうに思います。
  14. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 今回の経営改善計画の改訂・強化で請負化の推進、それから直直の特化という大きな方針を打ち出したわけでございますけれども、これにつきましてはいろいろと過去も御議論をちょうだいしているわけでございますが、我々の基本的な立場といたしましては、国家公務員という身分の国有林野職員のやるべき仕事というものは本来何であるだろうかという原点に返りまして、ここ二年間いろいろと作業の中身を検討してきたわけでございます。  その結果、単に経済的合理性でございますとか効率化ということだけじゃなくて、仕事の性格そのものとして国家公務員みずからがなすべき仕事と、それから地域の民間に期待して、地場産業の振興でございますとか地域活性化ということもこいねがいながらお渡しする仕事というふうに分類してきたわけでございます。そういうことからいいますと、従来ともすると国みずからがやってまいりました単純な伐採でございますとか単純な造林でございますとか、ある程度の技術がございますとどういう方にでも平均的にできるというものにつきましてはむしろ地元の労働力を活用しながらやっていく。国家公務員みずからは先導的な技術を要する仕事でございますとか、あるいはこれからますます高まってまいります森林の公益的、多面的な機能に着目しての管理でございますとか、そういう仕事に純化していくということが仕事の進め方の基本なりルールとしては適切じゃないか、こういう結論に林政審議会といたしましても到達いたしまして、その答申を受けて先般の経営改善計画の改訂に移ったわけでございます。  それで、将来の見通してございますけれども、造林部門、生産部門、それぞれいろいろと見通しとしては違っておりますけれども、一割なり三割というものが、技術の問題でございますとかあるいは地域の特性でございますとかこういう問題で、今後国の仕事としては残ろうかと思っております。
  15. 前島秀行

    前島委員 もう少し具体的に、イメージとして、民間に大きな比重を置いていく作業というのはどんなものか。国有林は具体的に今いろいろな事業をしているだろうと思うのです。現在ももちろん請負というのはしているわけですけれども、残す部分じゃなくして、残す部分というとちょっと言葉は悪いですけれども、林野庁みずからやる仕事じゃなくして、今後請け負わせる部分の具体的な仕事をちょっと挙げてほしい。それから、それが今七割ですか、大体その辺のところの比重の問題を、トータルで無理なら大ざっぱな問題でいいですけれども。
  16. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 林政審議会なりそれから我々の思考過程といたしましては、国家公務員がみずから今後ともやる必要のある仕事はどれかということから接近してまいったわけでございますけれども、ただいま先生からお話ありましたように、一般の地元にやっていただくのは何かということになりますと、単純に申し上げますと木を植えるとかそれから木を切るとか、こういう作業的、物理的な仕事の大方というものはそれぞれの地元にやっていただく。  しかし、そういう中でも国家公務員みずからがやるべき仕事といたしましては、一口に言って請負になじみがたいもの、例えば境界画定の仕事とか収穫量調査とかあるいは巡視とかこういうものは、やはり国家公務員が公的権力の行使の一環として見張りなりあるいは監視するということが必要になってまいりますので、こういうものは国家公務員みずからしたいと思っております。それから、作業によりましては、直用で実行する方が個々の地元に任せるよりは効率的に行われるというようなものも、例えばごく小規模に分散している木の間伐とか保育とか、こういうものについて一々地元と契約してやるということもなんでございますので、こういうものについては我が国有林マンが境界画定であるとかいろいろな作業で山に入ったときにそれぞれ並行してやるというような仕事もあろうかと思っております。それからさらに技術的に、民有林なりあるいは民間作業体に対して先導的な仕事あるいは模範となるような新しい技術導入、こういうものにつきましてはやはり国の責任として国がまず示していくということが必要かと思っておりますので、そういうものも国が従来と同じようにやっていきたいということで、大きく分けましてこういう三つの仕事は国に残しまして、それ以外の純作業的な仕事につきましてはできるだけ地元にお願いしていくという考えに立っているわけでございます。
  17. 前島秀行

    前島委員 そうしますと、簡単に言いますと、管理だとか調査だとか巡視だとかそういう部分は直用でいく、あとの切ったり植えたりという部分は請負でいくよ、こういうふうに大ざっぱに認識をしていいと思うのですね、今の長官お話を伺っていますと。  そうすると問題は、そういう請負化、仕事を民間に委託しているわけですけれども、現在の民間の事業体の実態との兼ね合いをそこで大きく問題にせざるを得ないと私は思うのです。私はさきに、森林組合法の改正の中で、民間事業体の実態についていろいろ調べてみたり、また当委員会でお伺いをしたわけでありますけれども、そのように直用部分というのは、文字どおり管理したり調査したり見回ったりこういう部分だけだということになると、その民間の事業体は大丈夫なんだろうかというふうに非常に心配になるわけです。そういう意味で、民間の事業体の実態をどういうふうに認識をしているのか、長官、ひとつ見解を承りたいと思います。
  18. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 先生からお話がありましたように、国有林の経営改善を進めるに当たりましても、それから山村地域の経済の活性化という一般論といたしましても、民間の事業体の健全な発展ということが緊要なわけでございます。我々といたしましてもいろいろな施策を講じてきているわけでございますけれども、現時点におきましては、全国津々浦々まで民間事業体が十分に機能し得るような状況になっていないことは確かだと思っております。これも、卵が先か鶏が先かという話もあるわけでございますけれども、要は、仕事がたくさんあるかないかということで民間の事業体の育ち方も違ってくるわけでございまして、従来からも、例えば素材生産だけじゃなくて造林も並行してやっていただくとか、あるいはほかの仕事もあっせんするとかいうようなこともやってきているわけでございますが、先ほど言いましたような基本ラインに沿いましてこれから国の仕事を徐々に縮小していくとなりますと、その仕事という点では民間側の期待にこたえられるわけでございますので、仕事に見合った事業体が育成されますよう、これからいろいろな施策を講じてまいりたいと思っております。
  19. 前島秀行

    前島委員 その事業体もさることながら、労働力ですね。この前のときも伺っているわけでありますけれども、働いているほとんどの人たちは、高齢化の問題だとか賃金の問題、それから年間の実働時間、日数等々を考えてみますと、全くこの先本当に不安を感ずるというのが実態ではないだろうか、私はこういうふうに思うわけです。そういう面で、その事業体を育成するうちの一環に当然入ると思うけれども、要員を半分に減らそう、こういうことですから、それに耐え得るような労働力をどう確保するのか、こういうことも大きな問題だろうと思うのです。その事業体の育成、労働力確保はどんなふうな形でやろうとしているのか、その辺の見通し、考え方を伺いたいと思っています。
  20. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 山村の労働者につきましては、今御指摘ありましたように高齢化が進んでおりまして、全体の四分の三程度が四十五歳以上というような形になっているわけでございます。これから林業重要性というものがますます高まってくるわけでございますので、我々といたしましても何とか魅力ある山村にして、山に人が残り、あるいは継いでもらうということをこいねがっておるわけでございますけれども、そのために林野庁といたしましては、一つ造林でありますとか林道でございますとかこういう生産基盤整備、それから間伐対策あるいは林業構造の改善というような一般の林業振興施策というものを通じまして、何といいましても林業なり山村の活性化を図ることが、人に住んでいただくための大前提だと思っております。  そして、こういう一般的な林政施策の強化に加えまして、特に林業労働力対策といたしましては、一つはその林業事業体の経営基盤を強化する、これは国有林の仕事をどういうふうに配分していくかということも加えてでありますけれども、その林業事業体の経営基盤の強化、それからこういう林業事業体での雇用体制というものにつきましても、従来から御指摘ありますようにいろいろな問題もございますので、そういう点の整理を図る施策を進めているわけでございます。  それから二番目に、大口の組織体でございます森林組合、これの事業の強化でございますとか組織体制の整備というものにつきましても、先国会で森林組合法の改正ということもお願いしたわけでございますけれども、そういう道も通じまして森林組合を育てていきたい。  それから三番目に、個別的なあれとしましては、何といいましても高度な技能を持っております林業従事者というものをできるだけ育成、確保すると同時に、山元の仕事の性格といたしまして、その村だけで仕事をするというわけにもなかなかまいりませんので、広域就労体制といいますかそういうものにつきましても、いろいろ施策面でも、あっせんでございますとか研修、情報の提供ということを行っているわけでございます。  それから、さらに個別の労働者問題といたしまして、林業労働者の安全衛生というものが長くて最近まで引き続いている大きな問題なわけでございますけれども、このための施策を強化してまいりたい、こういう一般林政に加えまして個別の林業就労者対策というものをいろいろ講じて、何とか山元に人が残ってくれるということを実現したいと思っておるわけでございますし、それから特に六十二年度からそういう問題意識に立ちまして、素材生産の担い手の育成を特別に推進します事業でございますとか、あるいは地域ぐるみでの取り組みによります林業従事者の計画的な育成事業というような新しい事業も興しまして、将来の山村への定住化、活性化というものに全力を挙げてまいりたいと思っておる次第でございます。
  21. 前島秀行

    前島委員 今の現状、特に民間の林業の従事者の実態、労働者の実態から見ますと、残ってくれという実態ではないと私は思うのです。例えば私の方の伊豆あるいは沼津の方の営林署が民間事業に委託して、そこで民間の方から派遣された人たちは全部実は出稼ぎなんですよ。地元の人がやっているどころじゃなくて、全部東北、北陸の方からの出稼ぎの人たち現実に静岡の方で仕事しているというのが実態なんで、今いる人たちを今後も残ってもらうようにするのだじゃなくして、それよりもっとおくれていて、出稼ぎの人たちでもってようやく賄っているというのが今の実態だろう、これは間違いないですよ。  そうすると、片一方でこの改善計画というのは六十八年までだと、正直言って目前ですわね。事業体そのものも小さくて、独立するような、今後の請負化の仕事を賄い切るような実態ではない。そこで働く労働者というのは現地の人ところか、出稼ぎの人たちでもって何とかやりくりをしているのが実態だ。ましてやこの計画で見ると、六十八年までに完了するのだ、七十二年には収支とんとんにするのだという大命題が与えられておる。長官、これで見通しとしてどうですか。現地のいろいろのところを私たち歩いてみて、営林署の現場の人たちは、そこがこうなった場合人が出られるのだろうかというのは本当に頭が痛い。また町や当局者も、そういう仕事を提供してもらうのはありがたい、活性化に通ずるかもしらぬけれども、現実には継ぐ人がいない。  私もこの春先富士山に登って、営林署の皆さんと現場を見てきたわけです。そしてあの木を切るのを現実に見させてもらったりあるいは枝打ちをやっているところを見た。私も危なかったですけれども、みずからちょっとやってみたらこれは大変な仕事なんですよ。三月だったと思いますけれども、まだ雪が残っている状況で切る、あるいは枝打ちをする、これは大変な仕事なんです。これからの若い人たちが来るか。ましてや民間の労働者の実態、給与面とか社会保障面等々を見たら、出稼ぎでようやく賄っているというのが実態なんです。六十八年、改善計画が目前に迫っている。それまでに何とかしろよという命題が与えられているときに、長官、一体これは七割、八割の山を切ったり植えたりするのは全部民間に委託するのだと言うけれども、できる見通しありますか、自信ありますか、その辺のところをちょっと聞かしてほしいと思っています。
  22. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 労働力事情は地域によって画一ではありませんで、ただいま先生から御指摘ありましたように、現時点でも労働者が非常に少ないというところももちろんあるわけでございまして、これから改善計画を進めていく上に当たりまして、その辺が正直言いまして我々といたしましても非常に頭を痛めているところであることは事実でございます。  しかし、これもやりようでございまして、現に山村では仕事がないという地域も多々あるわけでございます。そういうところにつきましては国有林の仕事をしていただくということで、現に不十分に燃焼し、あるいは出稼ぎに行っている地帯の方々の地場での燃焼というものは期待できるところもあるわけでございますし、それから、これからそうやって山をやっていただく場合には何といいましても山で仕事のやりやすい環境というものも並行してつくっていく必要があろうかと思っております。そのためには林道網の整備、従来の形の立派な林道だけではなくて、作業道なりあるいは施業道というような簡易な道路網も含めまして林道網全体として整備していく、あるいはここのところ比較的進み始めてきております機械の導入、そういう基盤的なものの整備も相加えながら、労働力の調整というものを地元のいろいろな森林組合を初め、あるいは従来から国有林の仕事を請け負ってまいりました事業主体、こういうところとも十分協議しながら進めてまいりたいと思っております。  それから、ここのところ林業だけではない、木を植えたり育てたり切ったりするだけではなくて、森林を全体的に活用するということで、森林のレクリェーション的な利用でございますとかいろいろな形で山元にも新しい仕事というものが出始めてきておりますので、そういう仕事を一方であっせんし、そういう仕事とも一体となりながら、地元での労働の場の確保というものをしながら労働力も引きとめ、あるいは十分に燃焼するように努めてまいりたいと思っております。
  23. 前島秀行

    前島委員 方針としてはそういうふうになると言わざるを得ないと思うけれども、いずれにせよ果態は長官は十分御存じだろうと思う。民間委託をして事業所が育って、そこでちゃんと山を管理してくれるような労働力は、今の実態から見るとそう簡単に確保できるものじゃない、これは間違いないことなんです。現場の皆さんがそう言っているわけです。営林署の現場の皆さんもさることながら、営林署を取り巻いて大きくかかわっておる町の役所自身も言っておるわけです、一番実態がわかっておるわけですから。そういう面で、この事業所の育成というものが整わない限り、ただやみくもに民間に委託すればいいんだという方針はとってもらいたくない、結果としては山が荒れてしまう、手抜きになることは間違いないので。その辺のことは六十八年改善計画終了、七十二年収支とんとんという命題だけにこだわってそういうことを押しつけないで、ちゃんとその辺のところの見通しを立てなければそういうことはぜひ実施しないでほしい。直用部分はまだまだ確保しておいて初めて山が守れるだろう、こういうふうに私は思いますので、ぜひその辺のところをお願いしたいと思うのです。もう一つ要望として、こういう国有林野事業をやりながら、サイドからそういうものを育てていくと同時に、それだけではやはり足りない。行政的な指導というものも伴ってこないとなかなか難しい、こういうふうに私は思うわけです。そういう面で、行政的サイドから見ると、具体的に六十一年度、六十二年度予算を見ると、労働力対策費なんかふえるどころか減っている、そういう状況でありますので、この民間委託というのは単に画一的にやるのではなくて、直用部分というものをなるべく確保するという前提でぜひお願いしたい、こういうふうに思います。  もう一つ、事業体との関係の中で立木販売指向というのが大きなウエートを占めてきているわけです。もちろん民間事業体との兼ね合いの問題がありますけれども、これの地域経済との兼ね合いの問題も無視できない、私はこういうふうに思っています。  私の地域なんかの話を聞いてみますと、立木販売だけに限らぬ問題でありますけれども、地元の業者が目の前で九州の方の大手の業者にぼっと持っていかれちゃってというふうな状況の話をよく聞くわけですね。私が実際聞いてきたいろいろな業者も、この立木販売指向というものが出てくると、地域の製材業者等々はますます取り残されていく危険性というものを物すごく心配しているわけです。そういう意味で、立木販売指向というものをそう簡単にやっていいだろうか。先ほど言った山村地域振興という兼ね合いから見てそこを非常に懸念するわけです。私たち調査の中で、これは単に立木販売指向との兼ね合いだけで言えるわけではないけれども、高知の営林署の実態等々を見ますと、国有林の事業の縮小といいましょうか、等々の地域の村へ与える影響というのを非常に心配しているわけですね。そういう観点から見ても、この立木販売指向が地域経済に与える影響というのは非常に大きいので、その辺のところの基本的な考え方等々についてちょっとお聞かせいただきたい、こういうふうに思います。
  24. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 今度の経営改善計画で立木販売を指向しているということは確かでございまして、そういう方向に今後進めたいと思っておりますけれども、ただこれも、すべて立木販売ということではございませんで、林政審の答申におきましてもそうでございますけれども、例えば国有林野所在地の素材による木材供給に依存する林産業に対し供給する必要があるもの、こういうものについては立木販売じゃなくて素材販売を行って結構であるというようなことで、地場の林産業に対する特別な配慮というものも十分加える予定にしておりますし、それから立木販売の過去の経緯を見ましても、一件当たりの平均材積というものは九百立米ということでございますので、このくらいの規模ですと地元で落札するということが大方でございますし、それから我々といたしましては、むしろ地元での産業なり雇用の活性化ということをこいねがって、地元で働くチャンスを与えるということで立木販売ということを念頭に置いていることも事実かと思っております。
  25. 前島秀行

    前島委員 立木販売が地元の活性化といいましょうか、仕事をふやしていくという方向には、私が聞いている範囲ではならぬですよ。河津あたりでやったら、ほかの地域の業者が来て島田へ持っていっちゃったという話を現実に何回も聞いているわけです。天城とか沼津なんかでも聞いている。立木販売方式の指向が地域活性化に通ずるということは断じて言えないと私は思うのです。もちろんやり方の問題もあることは正直言って認めますよ。あることは認めますけれども、そこを単にいろいろな経営改善、あるいは人を減らしていく、要員を民間に委託していくという方針、それだけを追求する中で、ただ立木販売方式を指向すればいいんだということは地域の関係から見れば絶対間違いだと言えると私は思うので、その辺のところは基本的なとらえ方として、立木販売方式の指向が地域活性化の道になるということは逆だ、こういうふうに言わざるを得ないと思いますので、その辺は十分実態を把握してほしい、こういうふうに思います。  時間がありませんので、最後に、組織、機構との兼ね合いの問題をちょっとお聞きしたいと思っています。  改善計画とか員体的な施業計画の柱が軽量経営だ。人を減らせ。そのためにはどういうことをやったら人が減るかという観点が大きな柱になっていることは間違いないわけなんです。そういう面で営林署等々の統廃合、いわゆる閣議決定の一割云々という形がありますね、来年実施するということのようですけれども、営林署の統廃合の基準というのは一体何なのか。またこれを実施していく過程について、そこをどういうふうに具体的にやろうとしているのか聞きたいと思います。
  26. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 営林署につきましては、今先生から御指摘がありましたように全体として当面一割を目途に削減するということで、十二月の行政改革の大綱におきまして六十二年度で十カ所という基本方針を既に策定いたしまして、現在作業に入っているわけでございます。統合についての基準でございますけれども、これは抽象的に申し上げまして、事業量、面積それから交通条件というようなものを加味いたしまして総合的にこれから判断することになろうかと思っておりますが、営林署というものがそれぞれの山村地域において非常に大きな社会的、経済的機能というものも従来から背負ってきておりますので、いろいろな指標を総合的に勘案しながら、できるだけ地元とそごのないような相談もしながら円滑に取り進めたいものというふうに考えておるわけでございます。
  27. 前島秀行

    前島委員 その十カ所の統廃合はやるわけですか。それで終わりますか。その辺のところを伺います。
  28. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 六十二年度においては十カ所ということでやっておるわけでございますけれども、現在改訂・強化いたしました改善計画におきましては、「昭和六十二年度に十営林署の統廃合を行うことを含め、今後の業務運営の簡素化・合理化に対応して、営林局・営林署を通ずる組織機構の徹底した簡素化を図る」というふうに書いてございますので、今後における営林署の統廃合につきましては、国有林野事業の経営改善の動向なり、あるいは社会情勢の変化等の諸情勢というものを十分踏まえまして今後判断してまいりたいというふうに考えております。
  29. 前島秀行

    前島委員 時間がありませんので質問を終わりますけれども、大臣、要望として、いずれにせよ経済的側面等々だけを追求した改善計画、具体的な施業方針変更ですと結果として山が荒れてしまうということは実態論からして事実なんで、あるいは機構の問題等々もただ数だけを考えていけばいいのではないということを間違いなく私は指摘できると思いますので、その辺の国有林の持っておる使命を全うするという意味で、ただ経済的効率だけを考えて民間にするのだ等々ということがないように、そして天然林施業等々に当たってもぜひ地域実態地域に合った施業という点を十分配慮し、これからの具体的な事業を進めていただきたいということを最後に要望して、終わりたいと思います。  どうもありがとうございました。
  30. 玉沢徳一郎

  31. 草川昭三

    草川委員 草川昭三であります。  本日は、差しかえで皆様方にお願いをいたしまして発言の機会を与えていただきまして、厚くお礼を申し上げます。  大臣、私はかつて予算委員会あるいは決算委員会、物価問題等特別委員会等で今から申し上げることを繰り返し主張してきたわけでありますが、きょうはひとつ大臣に直接日ごろの私どもの問題提起をしたい、こう思います。  まず一番最初に砂糖の問題を取り上げます。  砂糖の問題につきましては、御存じのとおり国際的には原糖価格が三年間で約半値に下がってきた。低落をしておるのでございますけれども、国内の精糖価格というのは下がっていない。いわゆる円高差益の還元ということは行われていないわけであります。私の地元の名古屋商工会議所の方からも、中小の菓子業者が非常に困っておるということ、そしてまた製あんが海外で、安い小豆、安い砂糖、人件費、こういうもので加工されて、対前年度比率では五〇%近い増加率で我が国に入ってきておる、こういう非常に苦しい現状があるわけであります。  そこで、私もいろいろと考えてみたのですが、問題点は安定資金にあると思うのです。安定資金の残高が今一千百五十億円、農林省というか我が国にあるわけです。砂糖業界は、キロ当たり百九十五円といたしまして計算をしても、国内消費量約二百五十三万トンといたしましても大体四千九百五十億円、五千億ぐらいの規模なんです。そこへ千百億の積んだ金が滞貨しておるというのはいかにももったいないし知恵がない。うわさによりますと、外務省の方もそんな金があるならばODAというのですか、海外の飢餓資金がなんかに使ったらどうだろうなんという話がちらほら出てくる。大蔵省の方も、千百五十億もデッドストックがあるならこっちに回せというような意見もあるという話。全く危ないお金で、それは消費者に還元すべきではないだろうかというのが私の意見なんです。  そこで、前回も聞きましたところ、ただいまのところ直ちにこのことについて取り崩す意思はないという答弁なんですが、もう一歩踏み込んで、この安定資金が千百億もたまってくるいろいろな原因を探っていきますと、砂糖の価格安定等に関する法律第三条「安定上下限価格等」というのがございますけれども、ここで「粗糖の国際価格の通常の変動の上限及び下限を基準として」価格を決めていくというのがあるわけでございます。現在ロンドンの相場、ポンドで出ておりますけれども、何カ月分を基準にしてこの価格というものが決まるのか、これをまずお伺いしたいと思います。
  32. 谷野陽

    ○谷野政府委員 ただいま御指摘のように、砂糖につきましては上下限価格という制度がございまして、上限を超えましたときには安定資金を放出する、下限を下回っておりますときには安定資金に積み立てるという制度があるわけでございます。  砂糖の価格はかなりの間隔を置きまして上下をいたしてきておるわけでございまして、過去で申しますと、非常に高かったのは四十七年から五十年へかけての時代、それから五十五年から五十六年へかけての時代、こういう時代につきましては安定資金の放出を行い、あるいは安定資金が不足をいたしましたので関税の減免を行っておるわけでございます。したがいまして、私どもは、この上下限価格というのはそのような価格の上下を相当程度カバーするような期間をとるべきである、こういうふうに考えておるわけでございます。したがいまして、具体的に法制度的に何年をとれということは決まっていないわけでございますけれども、高いとき低いときが両方入るように相当長期にわたる期間を採用すべきものというふうに考えておるわけでございます。
  33. 草川昭三

    草川委員 だから、具体的にただいま何カ月をとっておられるのか。百五十四カ月でしょう。
  34. 谷野陽

    ○谷野政府委員 昨年度の計算では百五十四カ月を採用いたしております。
  35. 草川昭三

    草川委員 百五十四カ月というと十年プラス三十四カ月ですよ。昔から百五十四カ月ですか。昔はそうじゃないでしょう、これはだんだんふやしてきたのでしょう。その点どうですか。
  36. 谷野陽

    ○谷野政府委員 御指摘のように、砂糖の価格安定制度の歴史が重なるにつれまして糖価の変動があるわけでございまして、過去においてはそれより短い期間をとった場合もございます。
  37. 草川昭三

    草川委員 早く言うならば土俵がだんだん広がっていくんですよ。そういう恣意的な行政はやめていただきたい、私はこう思うのです。  なぜ土俵が広がるのか。すなわち、これは昭和四十九年はロンドンのポンドが六百五十、それから翌年の昭和五十年が四百七十、これが一番高いんですよ。この高いのは十年過ぎるともう消えるわけです。消えればその値段が下がるわけで、その高いのを保持したいために土俵をどんどん広げていって、十年、百二十カ月が三十四カ月プラスの百五十四カ月に膨らんでいるのです。またことしも広げるのでしょう。広げるというのは、すなわち私が言う四十九年と五十年の一番高いのをキープしたいために広げるのです。そういう行政というのは、これは全く法律外の話なんで、そのためにどれだけの中小企業が困っておるか。これは率直に認めていただいて、安定資金の千百五十億でございますか、これを取り崩すような行政の努力があっていかがなものか。これはもう大臣の見解を問うてこの問題を終わります、また今後もやりますから。
  38. 谷野陽

    ○谷野政府委員 ただいま御指摘のように安定資金もかなりの金額になってきておるわけでございます。私ども、ユーザーの皆様方に砂糖を使っていただくということは砂糖行政の上でも大変重要だというふうに考えておるわけでございます。本年の糖価の基準につきましては現在検討中でございますけれども、ただいまお話しのようなことができるかどうかということにつきましてはいささか自信がございませんが、糖価の水準は最近かなり低い水準で推移をいたしております。そういうことからいけば、高いところよりもむしろ下限価格の低いところをどのように評価をするかということが現実の糖価に非常に大きな影響があると考えておりますので、かような近年の動向をよりよく反映するような方向で現在検討させていただきたいというふうに考えておるわけでございます。
  39. 草川昭三

    草川委員 一合局長がおっしゃられましたので、もうこれ以上申し上げません。  ぜひ知恵を出し合っていただいて、そして今世紀中には安定資金を使うということはもうなかろう、こう言われておるわけでありますから、今の答弁がさらに前進をすることを期待して、大臣もし御見解がございましたらお答えを願って、次に移ります。
  40. 加藤六月

    加藤国務大臣 先ほど来局長がお答えいたしましたが、また農産物価格の決定を目前に控えてきておるわけでございます。それに当たるに当たりましては、国内の奄美大島、沖縄あるいは北海道等のてん菜生産者の関係あるいはまた異性化糖の問題等々あるわけでございますが、それら全体を幅広く考えまして十分検討していきたいと思います。  それにつきましても、前の通常国会で砂糖消費税を廃止するように、そこからいろいろな手を講じていきたかったわけでありますが、あれが流れたことを私は大変残念に思っております。
  41. 草川昭三

    草川委員 私の聞いてないことをおっしゃられたので余分なことでございますが、その議論は時間がございませんのでやめます。  二番目に、蚕糸価格事業団の在庫の問題について申し上げたいと思います。  これは私は過日も質問主意書で質問をしておる点でございますけれども、また決算委員会の議決事項でも円滑な処理が決議をされておる問題でございます。在庫の動向についてどうかという答弁におきまして、「蚕糸砂糖類価格安定事業団の在庫生糸については、昭和六十二年六月に事業団の売買業務に関する新たな運営方針を定め、同年三月に引下げを行った安定基準価格等の下で、この方針に即しその計画的処理を行うこと」、現在の在庫数量は十四万二千俵で、五年前の水準に減少した、こう言っておるのですが、この問題について私は疑義があるわけでございます。  その前に、会計検査院がお見えになっておられますので、過去にどのような検査結果をなされているのか、お伺いしたいと思います。
  42. 吉田日麿

    ○吉田会計検査院説明員 お答えいたします。  過去に二回の検査報告をいたしております。その概要を申し上げます。  一つは「昭和五十八年度決算検査報告」に、「特に掲記を要すると認めた事項」として「繭糸価格安定制度について」を掲記いたしております。これは事業団の生糸在庫量の増大と在庫期間の長期化により多額の利息、保管料等が生じ、事業団の財政負担が著増しております。そのことから、国産生糸の価格維持に係ります価格安定制度の抜本的見直しを図り、過剰在庫の解消等に努める要があることを掲記したものでございます。  他の一つは、「昭和六十年度決算検査報告」に処置済み事項として、「生糸の保管に要する経費を節減するよう改善させたもの」を掲記いたしております。これは事業団の生糸保管について、農林水産省が行政財産であります倉庫を直接事業団に使用させることによりまして、保管料が約一億一千万円節減できることを指摘し、その保管方法を改善させたものであります。  以上であります。
  43. 草川昭三

    草川委員 私はこの蚕糸事業団の在庫について、かつてカビ糸が発生した、こういう趣旨のことを申し上げたこともあります。そういう延長線でこの問題を見てまいりますと、今答弁書には五年前の水準に在庫が減少したということを言っておりますけれども、実は中国から一万二千五百俵というのが近く入るわけですね、ことしの十月から来年の三月にかけて。これは二国間交渉で決まっておるものであります。このほか韓国との関係では、価格がまだ未定ではございますけれども、韓国の方からも八千八百俵買ってくれ、こういうことを言っておるわけですから、約二万俵以上のものが輸入をされていることになるわけでありますから、五年前の水準に下がったというのは瞬間風速で見たところの数字であって、年間を通じて見るならば依然として在庫はふえるわけであります。  今の会計検査院の方からの報告がございますように、臨調でもこの在庫については非常に心配をしておるわけでございまして、私としては、一体いつになったら計画的にこれが減少するのか、本当にいいのかということを繰り返し問題提起をしたいわけであります。カビ糸の発生についてはこの前の私の質問の中で申し上げておりますように、五百十二俵あったわけですね。長期間在庫をいたしますと品質が劣化をすることは当然であります。  そういうことから申し上げますと、つい最近でございますけれども、これはことしの五月でありますが、埼玉県の小川というところと滋賀県の長浜の機屋さんに、蚕糖事業団から新規用途分として十俵ずつ放出をされておるわけです。これを六月に機織りの機械にかけたところ糸がずたずたに切れてしまったというのが発見をされました。そこで七月になりまして埼玉県の小川と長浜の機屋さんは、日本生糸問屋協会の事故糸審査委員会にこれを持ち込みまして、一体これは本当に事故なのかどうか調べてくださいよ、事故ならば、我々が積み立てておるところの損失補てんをやってもらいたいという訴えをいたしました。審査結果として、長浜の場合は二十七デニールというのですか、事業団からの買い入れ価格はキロ当たり八千百五十円だったけれども、事故糸だということを認定してキロ当たり五千円、差額三千百五十円を補てんします、小川についてもキログラム八千六十円、三十一デニール、これをキログラム七千五百円という評価額にいたします、五百六十円補てんをするという決定が出ておるわけであります。こういう事実について当局は御存じでありますか、お伺いします。
  44. 浜口義曠

    ○浜口政府委員 ただいま先生指摘の切れの問題につきましてお答えをしたいと思いますが、その前に事業団の在庫の数量でございますが、現在のところ、この前の答弁書にお答えをした時点から八月の末をけみしております関係から、事業団の八月末現在の数量は十三万九千四百四十八俵であります。これは五年ぶりに十四万俵を下回る水準ということでございます。  この点に関連いたしまして先生の御指摘は、これは瞬間風速ではないかというお話がございましたが、御指摘のとおり瞬間風速ではございますけれども、あくまでもそういう水準になった。かつて十八万俵というような水準に比べまして、現時点において具体的な事実といたしまして十三万俵台になったということでございますので申し上げさせていただきたいと思います。  さらに先生指摘の中国、韓国の問題がございます。  中国の問題につきましては、一万二千俵という問題がございますが、これはまだ応札に至っておりません。韓国については、この数字は具体的な数字がございませんので、先生おっしゃるように二万俵という数字の問題は、現時点におきましてまだ具体的な事実となっていない。そういう意味で具体的な計画的な売却といったようなもの、さらには決算委員会で御決議のあった点につきまして、農林水産省といたしましてその点、価格の状況というものに応じまして先生指摘のような、在庫の古いものからできるだけ売っていこうというふうな心構えていることを申し上げさせていただきたいと思います。  第二の点でございますが、今御指摘の点につきまして、事業団が本年の五月に新規用途として売り渡しました八百九十二俵の中から、特定の製糸会社一社の製造に係る四十四俵のうち三百キロと申しますから、五俵分につきまして糸切れが発見されまして、今先生お話しになりましたような契機で、現在日本生糸問屋協会で現地調査を実施した上で事故認定審査会を開催いたしまして、その損害補てんの手続を進めているということを聞いております。
  45. 草川昭三

    草川委員 当局も認められたわけでございますが、その原因は一体何か、あるいはその在庫管理は適正であったのかどうか、あるいはメーカーに原因があったとするならば、現在在庫の中にそのメーカーのものはあるわけでありますから、そのすべての在庫についても速やかに調査をする必要があると思うんです。そういう点について私はきょうこの委員会で長々と申し上げる時間がございませんけれども、ひとつ厳正な調査とそして今後の対応、あるいはまた他のメーカーにも同様なことはないのか、そういう心配について調査を要求をいたしましてこれは終わりたいと思いますから、後日またその報告をしていただきたい、こう思います。  時間がございませんので、次に乳価の問題を取り上げさしていただきたいと思います。 これは過日の物価問題特別委員会等におきまして、私ばかりではなくて社会党の竹内先生も大変熱心に取り上げられていた問題でございます。そこで、この酪農経営の実態というのが私の選挙区にもたくさんあるわけでございますけれども、私が考えていた以上に非常に苦しい酪農経営の実態だということをつぶさに私どもも調べてまいりました。これは農林省の統計でございますけれども、昭和五十年に十六万戸あった酪農家が七万九千に減ってきておる、こういう事実もあるわけであります。また、酪農経営は一戸当たり平均千二百万円の負債をしょっておる、大変苦しい状況だということでございますが、問題点一つ、いわゆる大手メーカー、乳業メーカーでございますが、生乳取引の契約が正常に行われているかどうかというところだけに問題点を絞ってきょう私は議論をしたいと思うのです。  七月二十九日の農水委員会で、局長は酪農法十八条にあるところの生乳取引契約の文書化という問題について、契約の文書化ということは取引近代化の基本である、だから指導しておる、大部分が文書により整備されているというような答弁をしておるわけであります。あるいは乳価交渉も事実上決着しておるよ、これは竹内先生に対する答弁ですね。特に大きな紛争が生じている事例はない、こう言っておるわけであります。私は本当に今、大手乳業メーカーとの間でそういう交渉がうまくいっておるのかどうかを、これは農林大臣加藤先生にお伺いをしたいわけであります。  これはことしの四月でございますが、岡山県の酪農協同組合連合会が、これは大変たくさん買っていただいておるわけでございますが、「オハヨー乳業」という会社があるわけであります。ここで年間三万二千トンの取引があったわけでございますけれども、突如一万二千トン減量通告をする、こういうことで、岡山県の指定生乳生産者団体であるところの岡山の県酪連は大変な混乱が起きまして大騒ぎになっておるわけであります。結局、いろんな交渉が行われましてマイナス三三%、二万一千二百トンの取引で終わったわけでありますけれども、こういう事実は大臣はどのように御理解なすっておみえになるか、お伺いしたいと思います。
  46. 加藤六月

    加藤国務大臣 報告は聞いておりますが、詳しい中身は存じません。局長からお答えいたさせます。
  47. 草川昭三

    草川委員 京谷局長に後でまとめて答弁していただきたいのですが、岡山県の話は、私が指摘をしたいのは、牛は三百六十五日ですから、土曜、日曜はないわけですから一定のものは出荷されるわけですね。ここで非常に交渉が難しいわけです、普通の商品と違いますから。だから農水省は県の段階で指定団体というのを認めながら、そこで集荷をしてそれぞれ多元販売をする、こういうことになっておるわけでありますけれども、その場合でも安定的な契約というのは絶対必要ですね、あしたもう乳は要りませんよと言われたら困るわけでありますから。そこが普通の流通と全然違うところなんだ。だから、手厚い保護も農水省はしておるわけでありますよね。私どもはこの前も公正取引委員会を呼んで、文書契約は必要じゃないだろうか、こう聞いたら、取引近代化の基礎で文書化というのは非常に必要だということを公正取引委員会直言っておるわけです。また農水省もそういうことを言っておみえになる。しかし、現実にはそうではないという問題があるわけであります。その点についてどのように御理解なすっておみえになるか局長に改めてお伺いをしたい、こう思います。
  48. 京谷昭夫

    ○京谷政府委員 先生指摘のとおり毎日生産をされておるものでございますので、生乳の取引の安定を図ることが生産者にとりましても大変重要な事柄であるというふうに考えております。その生乳の特殊性ということも踏まえながら生乳取引の安定を図るために、その契約を文書化していくということは、御指摘のとおり酪農及び肉用牛生産の振興に関する法律十八条でその方針がうたわれておるわけでございまして、私どももこの規定に則しまして指導を図っておるわけでございます。しかしながら、御承知のとおり、地域の実情によりまして相当異なった状況がございまして、ところによりましては基本的な部分の契約を文書化しまして、数量とかあるいは価格といったような点については毎年度口頭協議で取引を行っておるという実情も間々あるわけでございます。  私どもこれを文書化をするように努力をしておりますが、まことに遺憾ではございますが、完全にそれが励行をされていないという実情にあるわけでございます。私ども改めてこの問題について調査をしてみますと、いろいろ不十分な点がございますし、また実情把握につきましても手抜かりがあった点がありますこと、大変遺憾に存じておるわけでございます。現在取引当事者であります乳業メーカーあるいは指定生乳生産者団体、さらに都道府県に対しましてその実情調査をしておりまして、早急にその実態を把握した上でこの文書化の励行について指導をしていきたいというふうに考えておる次第でございます。
  49. 草川昭三

    草川委員 七月二十九日の農水委員会の竹内先生の答弁よりは大分変わってきておりますね。その当時は今申し上げたように、文書化については大部分は整備されておる、こういうようなことを言っておみえになりますが、多少ニュアンスが違ってきたんですね。そこで問題は、私は農水省の姿勢にあると思うのです。  実は八月二十五日の物特のときに、農水省は、ホクレンについては文書化はきちっとできておるという言い方をしておるんです。これは議事録からの抜粋ですが、私が大手三メーカーと具体的に文書化しておるという例はないんじゃないですかということを聞いておるわけです。答弁は、先生のお言葉ですが、生乳の取引につきましては、午前中にも答弁をしたのですけれども、既に調査報告が来ているところでございまして、例えば北海道につきましては、生乳の取引契約書はそれぞれの項目について定められているということでございます。この北海道のものには期間刈取引数量とか用途別だとか乳質基準というものが明記されているのですかと私が質問したら、明記されている。それは三社ともきちっとしておりますか。三社ともございます。こういう答弁が八月の二十五日の物特であるわけでございます。  そこで私が農水省に、では具体的にホクレンの契約をしておるところの契約書の写しを欲しいということを言ったらこれを持ってきていただきましたね。今の御答弁にありますように生乳取引の基本契約なんです。私は、いわゆる生乳取引の契約書はあるのか、その生乳の取引の契約書というのは農水省が示した模範受託規程に基づく契約書のつもりで質問しておるわけです。そうしたら、それと違う生乳取引基本契約書がありますよと言って持ってきたのです。ところが、これも中身を見ると、取引数量、受け渡し場所、取引価格が書いてないのです。「別に覚書により定める」なんです。だから同封されてないのです。農水省の指導するところのモデルの取引契約書はきちっと別表一で定めろ、一緒につけておけ、こういうことを言っているのです。だから、農水省は違うことを私に答弁しておるわけですが、その点はどういうことでございますか。
  50. 京谷昭夫

    ○京谷政府委員 ただいま先生から北海道の場合の実情、基本契約が契約として締結をされておりまして、私どもの模範契約例で、その契約の別表で同時に決めるべき事項を毎年毎年のいわゆる覚書で決めておるという御指摘、そのとおりでございます。物特におきまして私どもの担当課長が申し上げましたことは、恐らくこの覚書も事実上契約と同様の効果を持つものであるという認識のもとに契約内容が事実上整備をされておるという答弁をしたものと思いますけれども、私どもの従来から進めております指導方針とややそごする点がありますこと、またそのことについて明確に答弁で申し上げなかったことにつきましては大変遺憾に存ずる次第でございます。
  51. 草川昭三

    草川委員 さらに問題がありますのは、私どもは、あくまでも酪農家の生活が苦しいという実態から、とにかく契約だけはしっかりしなさいよという当たり前のことを言っておるわけです。そこで、今も取引の契約書と基本契約とはほぼ同じだという趣旨のことを言っておみえになりますけれども、農水省が私に渡したホクレンが結んだという生乳取引基本契約書はどういうものかというと、契約の期間は昭和六十一年四月一日から昭和六十二年三月三十一日までとする。それを一体いつ締結をしたかといったら昭和六十二年二月一日に締結しておるわけです。だから、去年の四月一日から年度末までの契約をことしの二月一日にするというのは一体どういうことですかと聞きたいわけです。  それから、この基本契約書に「覚書により定める」とあるが、その覚書の中には、今はそういうことはないと言っているがはっきりした答弁ではないのでもう一回念を押しますけれども、取引の数量、取引価格、用途別の内容あるいは乳脂率、グレードですね、そのものが明確に添付されて、取引基本契約書に付随をしておるのか分けてあるのか、とりあえずこの基本契約だけを結んだのか、どちらかを明らかにしていただきたいと思います。
  52. 京谷昭夫

    ○京谷政府委員 二点お話があったわけでございますが、第一点の契約締結時期の問題でございますが、御承知のとおり生乳取引契約につきましては、契約当事者であります乳業者と生産者団体であります指定生乳生産者団体との間で事実上の交渉を進めまして、双方が合意をした時点で正式の契約書なり覚書が取り交わされるということでございまして、その間いわば仮契約というふうな形で取引が行われるという商慣習になっておるわけでございます。現物が取引される以前に取引についての合意を得てこれを文書化するということが望ましい建前でございますけれども、取引内容についての双方の合意が完全に形成されるまでに大変時間もかかるし、また正式契約が完了するまで空もの、毎日出てくる商品の取引をストップしておくということは大変実態にそぐわないということもございましてこのような実態になっておりますことを御理解を賜りたいと思うわけでございます。  それから、覚書が本来契約書の別表で決めるべき事項を完全にカバーしているかどうかという問題でございますが、私ども完全なチェックをしておるわけでございませんが、覚書の別表として必要な事項については双方の合意が確認をされておるというふうに理解をしておるつもりでございます。
  53. 草川昭三

    草川委員 そうしたら、これが終わってからでいいですから、生乳取引基本契約書、二通持ってきたのだから、覚書を一緒にすぐ持ってきてくださいよ。どうして私の方に分けて持ってきたのですか。農水省の私に対する態度というのは、押せば下がる、黙っておればそれでいいこと、態度が違うのですよ。少なくとも国会答弁では、その中身については明記をされておりますね、それは三社ともきちっと明記されているという答弁をしているのです。だから、私はうそを言ったとか言わぬとかそういう言い方は嫌ですから申し上げませんけれども、少なくとも私の質問に対して農水省の態度は誠意がないですよ。本当になければないで今のような答弁になってしまうと思うのですけれども、今の局長の答弁もおかしいですよ。空ものだから、交渉は時間がかかりますよというならばそれは法律違反ですよ、酪振法第十八条に、契約の文書化ということを明確にやらなければいかぬと言っているわけですから。  結局大手メーカーがそれだけ強いのですよ。大手メーカーが強いから、酪農家は自分たちで農業協同組合をつくってそれでメーカーと団体交渉をやろうじゃないかというので、全国生乳需給調整農業協同組合連合会をつくったのです。農業組合連合会をつくって、メーカーに対等に交渉してくださいよ、こっちは空ものを扱っているのだから、弱いのだから、団体協約をとにかく結んでもらいたいというお願いをする。農林省ひとつよろしく頼む、声をかけてくれと言うと、十九条の三でだめだと言って断るわけでしょう。農水省はだれの立場に立って行政をやるのか。しかも、私がこうやって追及すると、農水省の課長は二十九日に北海道に飛んだのでしょう、ホクレンに行ったのでしょう。わざわざ土曜日に何のためにホクレンに行ったのですか。つい一カ月前にもう一回行っておるでしょう。農水省の本省の役人が二回もホクレンへ行くというのはどういうことなんですか。何か国会答弁の調整に行くのですか。私はそういうことは言いたくございませんけれども、ホクレンの問題は別として、ホクレンが一番強いのですね。ホクレンが一番大きな力を持っていても、翌年に私が申し上げたような協約しかとれないわけです。それだけ大手が強いわけです。  ではホクレン以外の弱い酪農組合は一体どういう現状がというと、これは東京近郊の指定団体であるところの酪農団体でありますけれども、昭和四十六年から大手四社との契約はやっていないというのです。四十六年までは雪印だとか明治だとか森永とか協同と協約を結びました、しかし四十七年以降は残念ながら文書契約はやっていない、こう言うのです。そこへ農水省は、今度は経済局だと思うのですが、関東農政局が監査に来るわけでしょう。それで、一つの単位で二百億、三百億の生の牛乳を扱ってメーカーの方へ売るわけですから、契約がないのはおかしいじゃないかという指導をしておるはずでございますけれども、農業協同組合法第九十四条第四項の規定に基づく検査結果、この点についてどういうような検査結果になっておるのか経済局にお伺いしたい、こう思います。
  54. 青木敏也

    ○青木政府委員 ごく最近の実績につきまして御答弁申し上げます。  農協法に基づきまして、指定生乳生産者団体たる農協につきまして私ども検査をいたしておりますが、六十一年度におきましては八組合を検査いたしております。その中で文書化の必要性について指摘をいたしました組合数は四組合、それから六十年度におきましては十組合を検査いたしておりまして、うち三組合について、また五十九年度におきましては、六組合の検査対象組合のうち一組合について契約の文書化について指摘をしたところでございます。
  55. 草川昭三

    草川委員 私も、今の答弁で、あとは本当に全部文書化してあるのですかと聞いたら、そうじゃないと言うのですね。相変わらず文書化はないんだ。ないけれども、メーカーに対して、文書化をしないと、あるいは県知事に届け出をしないといけないので、農水省からも怒られるから、早くメーカーさんやってくださいという手紙を持っていっている。ところがメーカーはそれを受け取らないから預かり証だけとってくるわけです。預かり証を検査官に見せて、我が酪農組合はこのように一生懸命やっておるけれども、残念ながら文書化はできません、また今度も御指摘あると格好が悪いから、悪いけれどもこの指摘を免れるように御配慮願いたい、こういう実に気の毒な酪農組合とメーカーとの間柄になっておるわけですね。  だから、この際農水省は本格的に対等の立場に立って酪農家の声を取り上げて、そこで交渉してあげなさい、そういうヘルプをするのが私は農水省の立場だと思うのです。その団体が、私は今申し上げたように全国生乳連、全国生乳需給調整農業協同組合連合会であるはずなんですけれども、諸行動をしていないからだめだと言う。しかも、この前の答弁では、本来ならば法律ができたときには考えられなかった、酪農等の組合に団体交渉権があるやのごとき御答弁をなすっておみえになる。  これはもう時間がございませんのでまた別の機会になると思いますけれども、私はこの際農林大臣にぜひ聞いていただきたいのでございます。今申し上げましたように、酪農経営というのは三百六十五日休むことができません。非常に苦しい状況にある。しかも、相対的にはメーカー側の方が優位に立つ。本来の近化的な契約関係からいえば、文書化というのは当然だ。しかもそれは法律で、酪振法でもきちっとしてある。しかし、それがなかなかできない。一番強いホクレンにおいても翌年回しになってしまう、こういう実情を私は申し上げたわけであります。かくなる上は、この全国の生乳需給調整ができる農業協同組合連合会、ここが大手のメーカーと、労働組合でいうならば総評あるいは同盟、こういうような立場に立って、現場とは離れておるけれども、そこでメーカーにこういうふうにしなさいよ、せめてこういうモデルで話し合いをしなさいよ、そして単位の指定団体が、県でそれぞれまた数量の問題だとか細かいことを相談する、こういうルールがあってしかるべきだと思いますし、そのルールをつくるのは私は農水省以外にはないと思うのです。ここで決断のある大臣の答弁を求めたい、こう思います。
  56. 京谷昭夫

    ○京谷政府委員 生乳取引に関する契約の文書化の問題につきまして、実態がなかなか法律に定めるところに従って行われていないという実情につきまして御指摘も受けまして、契約当事者はもちろんでありまするし、私どもないしは都道府県を通じた指導のあり方について今後十分強化をしてまいる必要があるというふうに考えておるわけでございます。  それから、御指摘の、生乳取引に関する生産者団体と乳業者との関係でございますけれども、御承知のとおり、不足払い法が制定をされまして原則的に県一本の、県の連合会ベースでの一元集荷、多元販売という体制が今日確立をしておりますので、両者の交渉力について、生産者側がいわゆる大メーカーとの取引上非常に不利な状況下に置かれておるというふうには必ずしも言えないのではないかということを申し上げたいと思うわけでございます。乳価を初めとします生乳取引に関する交渉につきましては、現在の指定生乳生産者団体、各都道府県の県連段階の団体において乳業者を相手にそれぞれ行われておるわけでございまして、これが適切な内容で、双方が公平な立場で交渉が進められ、円滑な生乳取引が進められるように私どもも努力をしていきたいというふうに考えておるわけでございます。
  57. 草川昭三

    草川委員 もう時間が来ましたので、残念ですが私はこれで終わりますけれども、今の局長の答弁は非常に不満であります。本当に酪農経営の困難きを御認識なすっていない。そしてまた、私は数々の具体的な事例を挙げて申し上げましたけれども、私が知り得た範囲内でも以上のとおりであります。私が知り得ていないところの酪農経営の実態はもっとひどいわけでございますので、いま一度取引契約の内容が、事前に具体的な数量まで、用途別に、しかも乳質基準にまでわたって行われるようにやっていただかないと、今の御答弁の端々に私の言った事実を否定するような御重言もあるわけでございまして、私は非常に残念でございます。  時間がないのでこれで終わりますけれども、ぜひ農水省として、酪農経営の今後のあり方、特にこれは国際的にも非常に重要な時期になってきておりますので、真剣な対応を要望して終わりたい、こういうように思います。大分残りましたけれども、これで終わりたいと思います。
  58. 玉沢徳一郎

  59. 山原健二郎

    ○山原委員 今回の農薬汚染、オーストラリア産牛肉事件、これについて質問をいたします。  厚生省、お見えになっておると思いますが、問題の農薬の暫定基準値と検査方針を明らかにしましたね。これについてですが、厚生省の方針によりますと、検査対象を豪州産の牛肉に限っております。他国産のものあるいは牛肉以外の食肉についても検査をすべきではないかと思いますが、この点はどういうふうにお考えになっておりますか。
  60. 難波江

    ○難波説明員 お答えを申し上げます。  現在まで問題となっておりますのはオーストラリア産の牛肉であるということから、これについて優先的に検査を実施するという措置を今回とったものでございまして、今後とも他の輸出国の状況等も含めて情報収集に努め、問題が生ずるおそれのあるような場合には必要に応じて検査対象を拡大したいというふうに考えておるところでございます。
  61. 山原健二郎

    ○山原委員 東京都の食品衛生監視員協議会の昭和六十二年度研究発表抄録、これをちょっと持ってきていますが、この中で「輸入食品の残留農薬実態調査」の結果がまとめられております。時間の関係で他のところは省略しまして食肉類について見ると、二十八検体中十八検体から農薬を検出し、特に鶏肉については一〇〇%という結果が出ている、生産国も多数に及んでいる、こういうふうに出ておりまして、このレポートの最後に、「今回の調査では、すでに禁止となった農薬が高濃度に検出される等、ある程度実態をつかむことが出来た。 一方で、農薬の使用状況は国により異り、今後各国の使用状況を把握しながら、的確な検査を実施し、輸入食品の安全を確保して行かなくてはならないと考える。」こういう指摘がなされておりますが、今情報の収集というお答えがございましたけれども、少なくとも輸入国の農薬使用状況、規制の実態等を把握しまして、その実態に応じた検査を行うべきではないかというふうに思いますが、その点はどうお考えですか。
  62. 難波江

    ○難波説明員 お答えを申し上げます。  ただいま先生指摘の東京都の食品衛生監視員協議会の研究成果については私どももデータを把握しているところでございますが、確かに検出率は高いわけでございますが、私どもが今回定めました農薬の残留許容値に比べましていずれも下回っているレベルであるということでございます。確かに世界各国で有機塩素系の農薬はかつて使われておりまして、我が国も含めまして多少の汚染はいまだに残っている実態がございますし、微量の検出ということはあり得るわけでございますが、私どもといたしましては、さらに今後とも諸外国の状況実態の把握に努めながら、必要に応じて検査体制を強化してまいりたいというふうに考えているところでございます。
  63. 山原健二郎

    ○山原委員 輸入農産物が急増する中で、現在検査、検疫に当たる人も体制も弱体である、まさに四苦八苦している現状ではないかと思いますが、こういう状態でそのことが果たしてなし得るのかという点はどうでしょうか。
  64. 難波江

    ○難波説明員 お答えを申し上げます。  先生指摘のように食品の国際交流が盛んになる中で、水際チェックと申しましょうか、輸入食品の検査体制につきましては非常に重要なことは申すまでもないことでございますし、私ども厚生省といたしましても、従来から食品衛生監視員の増員等その強化を図ってまいっておるところでございますが、すべての食品のすべての項目を検査するということは到底不可能なことでございますし、今後とも諸外国の情報の入手に努めるなど優先的に、どういうもの、どういう食品、どういう物質を定めて検査をするかというようなことについて十分配慮しながら、効果的、効率的な検査の実施を図ってまいりたいというふうに考えているところでございます。そういう意味におきましても、今後とも輸入食品の監視体制の充実強化について一層努力してまいりたいというふうに考えているところでございます。
  65. 山原健二郎

    ○山原委員 検査、検疫体制が弱いために輸入食品が滞留をして商品価値を失うというようなケースもあると聞いておりますが、そういうことは経験しておりますか。
  66. 難波江

    ○難波説明員 お答えを申し上げます。  食品によって、また汚染物質等の程度によって取り扱いが違うわけでございますが、生鮮食品等につきましては、できるだけ早く通関措置をとった上で検査結果が出た時点でそれを国内で押さえて、もし違反があった場合は処分できるというような運用もとっておるところでございまして、極力検査を急ぐとともに、そういう生鮮食品がむだに廃棄されることのないような努力をしているところでございます。
  67. 山原健二郎

    ○山原委員 たばこの問題が先般ありました。さらにまたトウモロコシ、小麦などの問題についてもいろいろ問題が出ているわけでございまして、そういう意味で人的にも予算的にも手当てを厚くして改善を図るということが今日の情勢の中で非常に重大な問題だと思います。そういう意味で、厚生省もさることながら農水省の方においてもこの体制の強化ということが必要だろうと思いますが、農水省はどういうふうにお考えですか。
  68. 京谷昭夫

    ○京谷政府委員 私どもといたしましても、安全な食糧供給という観点から厚生省とよく連絡をとりまして、食品衛生法上の要件充足のために努力をしてまいりたいと考えております。
  69. 山原健二郎

    ○山原委員 今回の事件から何を学ぶかという問題ですが、安いからということで食糧を安易に外国に頼る、輸入をどんどん拡大することがいかに危険かということを浮き彫りにした事件ではなかったかと思うのです。そういう点から見ましても、安全性に関する監視も行き届きやすい国内産をもっと振興し、自給率も高めていくことが必要だと思うのでございます。この点については当然大臣もそうお考えだと思いますが、大臣のお考えを伺いたいのです。自給率の問題です。
  70. 加藤六月

    加藤国務大臣 近年、輸入食糧の増大に伴いまして、国民各界各層からその安全の問題について大変大きな関心が寄せられておるところでございます。農林水産省としては、国民に対し安定的に食べ物を供給していくという基本的な立場に立ちまして、安全性の問題につきましては関係省庁とも十分連絡をとりながら今後やっていきたい。  自給率の問題につきましては、当委員会でたびたび御議論いただき、また私もお答えをいたしておるところでございますが、できる限りの向上をしていかなくてはなりません。そして国民においしくて安いものを供給するということも夢寐にも忘れてはならない、こういう立場でおるわけでございます。
  71. 山原健二郎

    ○山原委員 八月の十二日、農水省は八七年度下半期の牛肉輸入割り当て量を決めておるわけですが、それによりますと、前年同期に比べ三万八千トン増の十二万一千トンで、上期分と合わせますと八七年度総枠は二十一万四千トンになるわけです。この量は、日米、日豪間で取り決めた八七年度輸入総枠より三万七千トンも上回っておるわけでございますが、どうしてこういう事態になったのか、この点を簡単に説明してください。
  72. 京谷昭夫

    ○京谷政府委員 本年度の牛肉の輸入割り当て数量につきましては、ただいま委員から御指摘のあったとおりでございます。このような数量を設定しました理由は、国内におきます需要の見通し及びこれに対する国内生産の見通しの結果、不足する分についてはやむを得ず海外からの輸入を行っていくということで決定をしたものでございまして、国内の需要増加、それに対して国内生産が十分に追いついていないという実情を反映したものでございます。
  73. 山原健二郎

    ○山原委員 その問題ですが、需要が前年比五・四%増なのに国内生産が前年と同水準にとどまる、こういう事態がどうして起こったかという問題とまず関連してきます。本日から日米貿易委員会が開かれまして、この中で牛肉輸入枠撤廃を米側が強く迫ってくるのではないか、現在開かれているわけでございますが、予想されているわけでございます。今回の農水省の輸入枠の大幅拡大は米国の自由化要求に弾みをつけることになるのではないかと考えられますが、その点はどういうふうに判断をしておりますか。
  74. 京谷昭夫

    ○京谷政府委員 牛肉輸入問題につきまして、現在開かれております日米貿易委員会においてどのような話が行われるか、まだ私ども何らの情報も得ておりません。ただ言えますことは、一九八七年、本年度の輸入割り当て数量につきましては、そういった問題とは全く関係なく、国内の需給問題に対応した措置であることを申し上げたいと思います。
  75. 山原健二郎

    ○山原委員 そういうお答えならば、国内牛肉生産振興に取り組むべきではないでしょうか。和牛が高値続きの最大の要因は、供給量が需要に対して少ないということでございます。幾ら安いと言われる輸入牛肉を多くしましても、和牛とは品質が全く違うために和牛相場の引き下げには単純には結びつかない。やはり和牛供給量をふやすことが重要になっていると思います。国内牛肉生産振興に取り組むことがまさに必要なときではないかと思いますが、この点についてはどういうお考えを持っておるか伺います。
  76. 京谷昭夫

    ○京谷政府委員 国内の牛肉生産の状況を申し上げますと、御承知のとおりその六〇%強は酪農部門から供給される乳牛肉でございます。残りの四割弱が御指摘のような和牛生産でございます。この両者の状況を見ますと、乳用牛につきましては、御承知のとおり牛乳あるいは乳製品原料として使われる生乳の生産が飼養の主目的でございますが、いわばその副産物として生産をされる牛の肉を肉として仕向けるということでございますけれども、御承知のとおり牛乳、乳製品の需給事情を反映いたしまして、乳用牛の飼養頭数そのものが相当の制約を受ける状況でございます。したがいまして、そこから生産をされる肉の量にも大変限度があるという状況でございます。  それから和牛につきましては、御承知のとおり伝統的な肉用牛飼養として行われてきておるわけでございますけれども、肉の価格あるいはそのもとになります子牛価格の変動によりまして飼養頭数が大きく変動するわけでございます。昨今の状況で申し上げますと、昭和五十七年から五十九年にかけて子牛価格が大変暴落をいたしましたために、資源の再生産要素となる雌の母牛の頭数がその当時大変激減をいたしまして、その結果、和牛肉そのものの生産基盤が大変弱化をしておるわけでございます。  私どもそういった状況を踏まえながら、酪農部門から生産される乳牛の肉の生産を拡大するために、酪農経営と肉用牛経営の合体をするようないわゆる酪肉複合経営というものの育成でありますとか、あるいは和牛で申しますと、資源増強を図っていくことが基本であるということで各般の施策を展開しておるわけでございます。特に昨年十一月の農政審議会報告も踏まえまして、飼料基盤の拡充あるいは繁殖経営の規模拡大、合理的な肥育の推進等々の施策を進めておりまして、その長期的な方向を示すために、従来からございます「酪農及び肉用牛生産の近代化を図るための基本方針」、これは五十八年につくった方針でございますが、これの見直しに着手をしまして、長期的な肉用牛生産の振興方策について現在検討を進めておるところでございます。
  77. 山原健二郎

    ○山原委員 牛肉とともに今輸入自由化の攻勢を受けておりますかんきつについてでございますけれども、御承知のようにことしのミカン生産は表年に当たることや天候にも恵まれたということで、新聞を見ますと二百六十万トンを超す大豊作が予想されております。昨年は裏年だったにもかかわらず価格が低迷をしまして生産農家は苦しい状況に置かれたわけですが、ことしはさらに価格暴落という事態が起こりかねない情勢を迎えております。政府は果樹農業振興特別措置法に基づく生産出荷安定指針を定めまして摘果運動や出荷調整に取り組んでおりますが、より総合的な対策が求められておると思います。この点についての政府の対策を最後にお聞きしたいと思います。  そして同時に、大臣に対しまして、こういう状況に加えましてオレンジの輸入制限枠撤廃となれば、日本のミカン生産農家は壊滅的打撃を受けることは必至だ、こういうふうに思われます。現在開かれております日米貿易委員会でも米側から要求が出される可能性があるわけです。牛肉とオレンジの輸入枠の拡大、撤廃は断じてしない、こういう立場で交渉に臨んでおると思うのでございますが、その点についての大臣の決意を最後に伺って、私の質問を終わりたいと思います。
  78. 浜口義曠

    ○浜口政府委員 先生質問のことしのミカンの状況でございますが、温州ミカンにつきましては、先生お話しのように本年産は表年になります。さらにことしの冬が温暖に推移したことから開花状況は極めて多く、生産量が、去年の場合は二百十七万トンでございましたけれども、これに対しまして大幅に増加することが見込まれるわけでございます。一方需要につきましては、果汁消費は天然果汁の需要増によりまして微増が見込まれるものの、全体に需要量はほぼ前年並みと見込まれるものですからこの需要が均衡を失するおそれがあるということであり、また生産者団体からの強い要請もございまして、ただいまこれも先生お話のように、果樹農業振興特別措置法の第四条の三第一項の規定に基づきまして、六十年の法改正後初めて計画生産から計画出荷に至る一連の措置を講ずることを内容といたします生産出荷安定指針を定めて、七月八日に公表したところでございます。  産地におきましては、それぞれの地域に応じましてこの指針に従いまして、生産目標量二百二十万トンを達成するために摘果を内容とする計画生産を推進しております。八月一日現在で、統計情報部の公表されたところから見ますと、生産出荷予想で二百六十一万五千トンの生産出荷という時点ではございますが、全国各地におきまして、昨年は小粒のもので、先生おっしゃるように裏年の関係で値段が低迷したということもございますので、より良質のミカンをつくるべくこの摘果が行われているわけでございます。これは今月いっぱい行われるというふうに考えております。私どもは、既に今御指摘のとおり計画出荷というところまで定めておりますが、この強力な摘果といったような状況を踏まえまして、総合的な対策、需要等々も含めまして指導を行っていきたいというふうに考えているところでございます。
  79. 加藤六月

    加藤国務大臣 牛肉の輸入につきましては、合理的な国内生産による供給基本としつつ、これで不足する分を輸入割り当て制度のもと、計画的、安定的に行っているところでございまして、今後ともこの基本方針を堅持してまいりたいと考えております。  また、かんきつの輸入自由化が困難である事情というのは変わっておりません。米国にはこれまでも我が国のかんきつ農業の置かれている厳しい状況について十分説明し、その理解を得るよう最大の努力を払っているところであります。今後の交渉に際しましても、我が因果樹農業の健全な発展を損なうことのないよう努力する所存でございます。
  80. 山原健二郎

    ○山原委員 終わります。
  81. 玉沢徳一郎

    玉沢委員長 午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時二十一分休憩      ————◇—————     午後一時開議
  82. 玉沢徳一郎

    玉沢委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。石橋大吉君。
  83. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 私は、きょうはかねて大変な懸案になっております島根県の中海・宍道湖淡水化・干拓問題を中心に農水省のお考えをただしたいと思います。  まず初めに、七月十八日付の島根県の地元紙山陰中央新報によりまして、前日、七月十七日に都内の某ホテルにおいて、島根県選出の衆参両院自民党議員の皆さんと澄田島根県知事、高木島根県農林水産部長が出席し、農水省からは構造改善局長さんが出席になって、中海・宍道湖の淡水化問題について非公式な協議が行われた、こういうふうに報じられておるわけであります。そしてその席で農水省側から、従来の方針と異なる淡水化試行について、中満水門のゲート十個のうち一部分を開放したままでの試行開始案が示された、こういうふうに報じられておるわけであります。これは事実かどうかをまずお伺いしたいと思います。
  84. 鴻巣健治

    ○鴻巣政府委員 昭和五十九年の八月に、現在の試行計画、つまり三年間で中海ですとほぼ現状の七分の一程度の塩分濃度に引き下げていくという形で徐々に淡水化したいという試行の計画について、それで水質にも影響がないという中間報告をいただいて、同日島根と鳥取の両県に試行させてほしいという協議をいたしまして、御承知のような形で賛成とかまたいろいろ反対とかということでなかなか事態が打開できませんで、現在まででちょうど三年を経過いたしております。私ども農林水産省といたしましては、この五十九年八月の中間報告あるいは六十一年二月に出されました助言者会議に対する私どもの六十二年八月の回答に示されますように、現況程度の水準を維持しながら宍道湖なり中海なりの淡水化が可能であると考えておるわけです。両県ともこれまで十分議論を尽くしておりまして、私どもとしては、もはやデスクの上で議論するよりも安全を確かめながら実際に水門を閉めていくという試行をやる時期に来ていると考えているわけです。  今お話しの七月十七日ですが、島根県の六十二年度予算重点要望が知事から県選出の自民党の国会議員等にお話があった席が終わった後で、県から六十三年度予算要望といたしまして、揖屋それから安来工区、そういうところを早期に部分完了してほしいとか、負担金の軽減問題の要請があったわけです。そこでその際私たちも呼ばれまして、この中海干拓の現状はどうなっているかということをきちんと聞かせてほしいという話があって、私ども出席をいたしました。したがって、いわば現状問題点お話しするというつもりで私ども出かけていきました。その席上で最終的な結論は特段具体的にあったわけでなくて、淡水化を試行するそのやり方については、県なり地元なりの納得のいく形で具体的に考えてくれというのがそのときの会合の最終的な結論であったというように記憶をいたしております。したがって、私どもが何かそういう具体的な提案をしたとか新しい提案をしたということではなくて、現状問題点について話をして、その中で水質監視を十分にやるとか、試行中にもし水質が悪くなれば後戻りをすることにも配慮したらどうかとか、そのために水門のあけ閉めを弾力的にやったらどうかというようなことが話題になったということを記憶しております。  その席上で私どもの方から申し上げましたのは、今まで中海干拓の水質問題について御検討いただきました専門家グループがありまして、これは京都大学農学部の市教授を委員長といたします宍道湖・中海淡水化に伴う水管理及び生態変化に関する研究委員会、俗称南委員会と略称いたしておりますが、そこに、水門を一部あけることは今までなかったのだけれども、一部あけっ放しにしておくことも検討をお願いしたらどうかなと思っているということを私どもの方でお話ししただけでございまして、その席はもちろん具体的な提案をしたわけではありません。なぜならば、これは出ていらっしゃる方も島根県の関係者でございますが、御承知のとおり中海干拓は島根県と鳥取県と両県にまたがる話でございますので、鳥取県の関係者がおられない席で具体的な提案をするというのは片手落ちになるし、また私たちも今それほど詰まっていた段階ではございませんので、これからそういうスケジュールで専門家グループに検討を依頼しようかと考えているというお話をしたわけでありますが、新聞では今お話しのような形で報道されたということだと思います。  その後両県からその具体的な内容を明らかにしてほしいという照会を受けましたので、ただいま申し上げました南委員会の意見を聞いた上で、これから具体的な案を取りまとめまして両県に提示するように現在作業を進めているところでございます。
  85. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 マスコミの報道と私ども地元の県民が受けとめておることは、今局長さんが言われたことと非常に違いまして、率直に言いますと、農水省の方から、ある意味では島根県選出の自民党の国会議員が県知事を招いて、従来と違った試行方法で試行をするかのような新聞報道になっておるわけであります。今局長さんの話を聞くとかなり違うということのようです。そういう意味でもう一遍今の話を再確認しておきますが、この席は、島根県の六十三年度の予算重点要求のために農水省にも出席要請があって出席をした会議であって、そしてその中で、中海・宍道湖の淡水化問題について現状をいろいろ聞かせてほしいということで説明をする中で、例えば一部をあけて試行することについてこれから専門家の意見を徴した上で検討する、こういうようなことをいわばつぶやいたという言い方はよくないかもしれませんが、そういうこともあり得る、こういう程度の話だったということですね。再確認しておきます。
  86. 鴻巣健治

    ○鴻巣政府委員 七月十七日の席は今お話しのように、私たちちょうど六十三年度予算編成の真っ最中でございまして、中海干拓もここ三年ぐらい水門の試行の話が岩礁に乗り上げたような形で進んでおりませんので、予算の組み方といいますか要求の仕方も難しいと思っていましたところに、県あるいは県選出の自民党の国会議員の先生方から、自分たちもそう体系的に最近中海干拓の話を聞いていないので、一度現状なり問題点なりを聞かせてほしいということで私ども参ってお話をしていたわけでございまして、今申しましたように一部具体的な提案をしたやに報じられましたが、事実は、もちろん鳥取県もおりません席上でございますので、今からこういうことを考えてはどうかということで専門家グループに研究を委嘱したいと思っているのですよと申し上げました。それがそんな形で報道されたのは大変遺憾なのですが、私たちとしては、今地元にもいろいろな不安もございますので、できるだけ地元の気持ちといいますかそういうものを理解した上で、地元の理解なり協力なり得られる形での試行の中身というのを、この三年間の膠着状態を打開してやる方法はないかどうかということを考えたいのですというように、アイデアがあるということを申し上げただけでございまして、具体的な提案をその場で申し上げているわけではございません。
  87. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 続いて伺いますが、今の話は、今度は八月十三日に朝日新聞が、今局長が言われますように専門家グループにそういうことで検討をお願いした、こういう報道が出ておるわけであります。十七日の話とも、それから今の専門家グループに検討を依頼したという新聞記事の中身とも関係するわけですが、その場合、恐らく専門家グループの検討を待って最終的に具体的なことが決まるのじゃなかろうかとは思うのですが、一部開放イコール一門開放というふうに専ら地元では受けとめられておるわけであります。一部開放ということの中身は、一門開放ですか二門開放ですか、その辺ちょっと確認しておきます。
  88. 鴻巣健治

    ○鴻巣政府委員 専門家グループには八月七日に私どもの方から検討をお願いいたしております。私たちの方は、七月十七日に申し上げておりますのは、一門開放ということでいったときに、特に宍道湖の水質が、三年前にお示しをしている試行案よりももう少し塩分濃度が高い、つまり現状の半分程度ぐらいになることを目標にしてはどうかということを考えていると申し上げました。そのときに、私どもが今まで部内で検討してもらっておりますシミュレーションの結果ですと、大体水門を一門あけっ放しにしておけば現状の宍道湖の塩分濃度は半分程度になるという結果が出ているものですから、そのとき頭にありましたのは一門でございますが、問題はむしろ宍道湖の塩分の濃さをどの程度にするかというのが一番大事なものでございまして、それによって、例えば渇水期だとかあるいは四季の中でも時期によっては塩分が濃くなるときもございますので、そういうときは一門だけあけっ放しにするということじゃなくて、検討の結果一門じゃなくて二門あけろということになれば、またそれはそれなりに弾力的に考えなければいけないと考えているわけでございます。
  89. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 次に、恐らくきょうの段階では、今までの局長さんの答弁を聞くと、すべては専門家グループが検討をした上だ、こう言われるかもしれませんが、あえてここでお聞きをしておきたいと思います。  この一部開放試行という問題は、従来の淡水化試行の基本方針を根本的に変えるものか変えるものでないのか。といいますのは、将来的にも中海・宍道湖の淡水化は一部開放したものでずっといくんだということであれば従来の方針の根本的な転換だと思います。そうではなくて、とりあえず当面の試行だけは一部開放でやるけれども、基本方針はあくまでも全面締め切りだということなのかどうか、ちょっと聞いておきたいと思います。
  90. 鴻巣健治

    ○鴻巣政府委員 今でも宍道湖の西の方で、渇水期に水田にかんがいする水が足りないとか塩気の多い水が来て塩害を受けているので、できるだけ早く宍道湖の水を淡水化してかんがい用水に使わせてくれという要望は非常に根強くあります。それから、今申し上げました干拓で造成して六十三年度中には干上がるといいますか、干陸と私ども申し上げておりますが、干陸可能になる揖屋とか安来工区は、湖に面したところにポンプ場を設けまして、淡水化を前提として、淡水化した湖の水をくみ上げて揖屋とか安来工区の水を補給する、かんがい用水などに使うという前提に立っておりまして、私どもといたしましては、そういう当初設計して今日まで至りました中で、やはり最終的にはどうしても淡水化というのを全門締め切ってやらなければいけない、それが一番大事なことだというように考えております。  ただ、先ほど申しましたように、五十九年八月の試行計画は、塩素イオン濃度が二〇〇ppmになることを目標とする本格的な淡水化の準備といたしまして、湖内の生態系の急激な変化を避けるために三カ年程度ゆっくり時間をかけまして、中海は一〇〇〇ppm、宍道湖は三〇〇ppmという目標に徐々に塩分濃度を下げていく、つまり塩素イオン濃度といいますが塩分濃度を下げまして、その間あわせて水質なり生態系なり、そういった各種の調査なり研究なり検証を実施しようと考えているものでございます。そういう意味で、五十九年八月にお示しをしました試行計画そのものも完全な淡水化というものでなくて、その過程の一段階と考えております。  七月末に両県から照会を受けまして、現在農水省で検討を進めております水門を一部開放した淡水化の試行計画も、湖の水質なり魚介類に大きな影響を与えない範囲内で水質などの調査、研究、検証を行いまして、デスクワークでなくて、本当にフィールドで水質予測の精度の向上を図りたいと考えでございます。こういう試行をやりまして、最終的には、今申しましたように宍道湖の西側なり干陸し終わりました工区に対する水を補給するという必要性にこたえるため、宍道湖・中海を二〇〇ppmとするという本格的な淡水化計画基本的に維持いたしていくものでございますから、私どもが言っております今のアイデアといいますのは、本来から申し上げております淡水化計画を修正するものでもございませんし、見直そうとするものでもないわけでございます。
  91. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 引き続いて伺いますが、今局長さんの御答弁を聞いていますと、当面、地元の県民、市民の方々が、漁業問題、環境問題、生態系の破壊の問題などを非常に心配をしておるので、できるだけそういうことが起こらないような水準で淡水化を試行する、こういうことでしたが、基本はあくまでも既定方針どおり、全面閉鎖の方向は修正をする考えは毛頭ない、こういうことでございます。  しかし、宍道湖のシジミの問題などを初めとして、そういう魚介類や生態系に影響が出ないような形で試行したとすれば、あとの淡水化問題もやはりそういうことでやらないと、せっかくの関係漁民の皆さんや地元の人々の期待を、結局はより悪い形で裏切ることになるのではないかという心配があるわけでございます。その点がどうかということ。  もう一つは、いろいろと科学的、専門的な領域の話になろうかと思いますが、一門か二門開放して三年間の淡水化試行をやって、全面閉め切ったらどうなるかという結論を導かれるような感じにもとれるわけでありますが、具体的には、細かいことはいいですが、大ざっぱな方向として、どういうことでそういうことが可能なのか、ちょっとお伺いいたします。
  92. 鴻巣健治

    ○鴻巣政府委員 御承知のように、今までの私どものお願いいたしました専門家グループから、水門を完全に閉め切った後でも、水門に向かっての一定の方向のスムーズな流れが実現できるから、水質の悪化に影響を与えない、あるいは上層の軽い真水と下の方の重い塩水の境目にできます層が淡水化によってなくなりまして、酸素が湖の底に届く結果、湖の底にたまっている燐が溶け出してきて水質を悪化させることはないという中間報告を出したのです。それについても助言者会議の方からは、風の影響を受けにくい米子湾の中では依然として湖底から燐が溶け出してくるのではないかとか、アオコの定量的な発生予測は現在の汽水湖——汽水湖というのは低い塩分の湖でございますが、そういう状況であってもある程度可能ではないかとか、水質予測を行う場合のブロック分割は細かいほどいいじゃないかというような話が出ました。  昨年私どもの方でまたそれに回答いたしまして、米子湾域でも風が吹いて、風の力で湖底まで酸素が届いて燐の溶け出すのはかなり抑制されるとか、アオコの発生予測は現在の学問レベルでも未解決な問題が多い、霞ケ浦や諏訪湖で豊富なアオコの実測データが整っても、現在ある汽水湖つまり低塩分の湖では、仮に発生予測が可能であっても結果は信頼しがたいとか、ブロック分割は細かいほど望ましいが、精度、計算量を考えますと、研究レベルで可能であっても実用レベルでは難しい、ほかの湖沼でも、湾の奥の部分とか局部に限定した予測ではない、こんな形でお互いにデータの上ではいろいろ理論を立て、反論し合っています。もうこれから先は、どちらが正しいかは更際にやってみるしかないということでございます。  宍道湖の塩分濃度を今の半分ぐらいに下げるということを考えておりますのは、これは今でも毎年四月になりますと、宍道湖の湖心の全層平均で大体一〇〇〇ppmを下回りまして、また平均値では昭和五十五年に一〇〇〇ppm程度まで下がった経緯もございまして、一〇〇〇ppmでありますと自然環境に大きな変化はもたらさないと考えておりますことと、また一方、必要なデータの把握という点から考えますと、宍道湖におきまして一〇〇〇ppm程度になりますと、日本海側から逆流してくる海水量が減りまして、夏に発達をする湖の底の上の今申しました塩分躍層の安定度が弱まります。塩分躍層の発達が弱まることによって、溶存酸素量が底まで届きまして水質にどの程度の影響を与えるかという調査も可能になりますし、淡水性の植物プランクトンの割合もふえて、植物プランクトンの種の変化による水質予測モデルの構築に必要なデータも得られる。  そういうことで水門を一部開放する、あけっ放しのままでしばらくやってみる、それで三年ぐらいやって問題がなければ、これは本格的な実施をしないと、揖屋、安来の工区でやはり水が欲しいし、それから斐伊川とか弓浜半島の方にも水を補給しなければいけないという問題もございますので、最終的には本格的な実施をしなければならない。そういうために、今言いましたようにこの三年間試行のやり方を穏やかな形でやって、その期間の調査あるいは研究、検証の結果をもって地元関係者の理解を十分深めていただきたい、そして事業を進めていきたいと考えているわけでございます。
  93. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 余りこの問題に時間をかけるわけにいきませんので、先に進みます。  もう一つ基本的なことで聞いておきたいのですが、島根県の高木農林水産部長が去年の十月二日の県議会で、六十三年度予算編成までに事業の見直しを農水省と詰めていきたい、こう答えておるわけですね。これはそれ以外のところでもいろいろと言っておるわけですが、今度の一部開放の試行の問題はそれとはどうも無関係なように思えるわけであります。この六十三年度予算編成までに事業の見直しについて詰めていきたいと農林水産部長が語っておることの具体的な中身は、農水省としてはどのようにお考えになっているのか、ちょっとお伺いいたします。     〔委員長退席、月原委員長代理着席〕
  94. 鴻巣健治

    ○鴻巣政府委員 この事業、御承知のように現在、総事業費八百八十億円で六十二年度完了という予定になっております。ただ、工期がだんだん延びてくる、その間の建設物価も上昇してきている、それから整備水準を見直していくというようなことで、総事業費とか工期の改定を行う必要がありまして、現在その改定の作業中である、そういう意味で、一つは総事業費の見直しのことを意味しております。  もう一つは、恐らく高本部長が言っておりますのは、揖屋工区はできるだけ早期完成をして、余り金利がかからないうちに地元に売り渡してもらいたいと言っているために、揖屋それから安来の工区も早期に完成をしてほしいということを言っていると思います。  それから三つ目は本庄工区について、これはよく言われるのですが、県の意見を聞いてこれからの将来の進め方、これもやはり事業化が必要だと思いますが、干陸は必要だと考えておりますが、どういう作物をつくっていくかとか、いつからいつまでの間に着工していくか、今御承知のとおり堤防はできておりますが、そういう中の干陸をしてどんな作物をつくっていくかというのはよく研究した上でやりたいと思っておりますので、その辺のところを県の意見を聞いてもらいたい、よく県と国との間で調整をしてもらいたい、そういうことを言っているのだと思っております。
  95. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 ここでちょっと建設省に伺っておきたいと思いますが、この中満水門の一部開放での試行の問題について農水省から話があっているかどうかということと、あっておれば建設省としてはどう考えておるかということ。それから、時間がありませんのでもう一つ伺っておきたいと思いますが、五十九年十一月六日の参議院の決算委員会におきまして、我が党の目黒今朝次郎氏の質問に答えまして、建設省は、淡水化に対する疑問点が約七十八項目、続いて四十六項目も質問している、目下農水省から回答をもらって検討中だ、整理できれば公表できると思う、こういうふうにお答えになっておりますが、その後この点は公表されているのかどうか、公表されておれば、後でいいですから私もその内容をひとついただきたい、こういうこと。  それからあわせて、今やほとんど農水省なり中央段階では試行までの準備は終わって、あとは両県の回答を待つばかり、こういう段階に中央レベルではなっておるように思うわけでありますが、この段階で、今建設省から出された疑問点のほとんどは全部解決済みなのかどうか。もし残っておるとすればどういうところ、大きな問題点だけで結構ですから、残っておる問題があるのか。この点、ちょっと聞いておきたいと思います。
  96. 角田直行

    ○角田説明員 御説明いたします。  中海・宍道湖の淡水化にかかわります中満水門の開放の件でございますが、ただいまお話がありました一部開放の試行につきましては、現状を確認いたしましたところ、出先機関において農水省から最近その状況を説明を受けたというふうに報告がありました。建設省といたしましては、今後農水省から具体的説明を伺った上で、河川管理者として島根、鳥取両県等関係の行政機関の意見も留意しつつ、河川管理上も重大な障害が発生することのないよう十分検討するなど、適切に対応してまいりたいと思っております。  それから、さきの検討項目での公表をしたか否かということでございますが、まだ公表に至っておりません。  以上、報告いたします。
  97. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 淡水化試行までに解決すべき問題、あるいは未解決の問題、大きな問題が残っておるかどうかということについてはどうですか。
  98. 角田直行

    ○角田説明員 水門の全面閉鎖ということで従来詰めてきておったわけでありまして、一部開放、一部開門ということになりますと全く状況も違いますので、現時点では発言いたしかねます。
  99. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 一部開放でずっといくのなら発言しかねるということもわからぬでもないのですが、さっきからの農水省構造改善局長さんの答弁では、これはあくまでも段階的な問題であって、究極的にはあくまでも全面閉鎖が前提だ、こういうことですから、全面閉鎖を前提にした検討結果をひとつ答えてもらいたい、こう思います。
  100. 角田直行

    ○角田説明員 整理がついておらないということで公表にも至っておらない状況でございまして、まだ御説明できる状況にございません。
  101. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 時間がありませんから、これはこれぐらいにしておきます。  次に行きますが、先ほどからも構造改善局長さんの方から、一部開放による試行の効果の問題についてかなり詳しい話があっているわけですが、地元の住民団体がいろいろと試算をした結果、一部開放で試行しても宍道湖の塩分濃度は現在の大体二〇〇〇ppmが二〇〇ppmに下がる、したがって全ゲートを閉めたと同じような結果になる、こういう住民団体の試算もあるわけであります。そういうことと、先ほどの局長さんの答弁を重ね合わせてみると、やはり一部開放でやっても全面閉鎖とほぼ同じような結果が出る、こういうところに今度の一部開放による試行のねらいがある、こういうふうに見ていいですか。
  102. 鴻巣健治

    ○鴻巣政府委員 たしか八月になりまして私どものいわばアイデアに対しての御批判として新聞に報道されましたけれども、私たちの水門を一部開放した場合、宍道湖の塩分濃度を一〇〇〇ppm程度にする、また、それを目標に水門を一部開放するという考え方に対しては、それは潮位変動を加味してないのじゃないかという御批判がたしかあったと思いますが、私どもは、プログラムでは塩水道なり大橋川への海水の逆流の重なり、河川流なり、さらに潮位変動も加味をいたして水門を一部開放した場合のシミュレーションをやっているわけでございます。そういうことは、最初三年ほど前に御提案をいたしました試行、これはいきなり水門を全部閉めてしまって、水質なり生態系に変化を与える、それを三年間で緩やかに与えようと考えたものですが、それでもなかなか、今申しましたように、現状の急激な変化を心配する立場の方の御意見がありますので、さらに地元の御意見を考えまして試行のやり方をもう一つ考え出して、つまりもうちょっと塩分濃度を濃くするような形ですが、しかし現在の宍道湖の塩分の濃度よりは半分ぐらいにする、そして、それが水質なり生態系に実際本当に影響を与えるのかどうかというのをやってみる、その間にやはり、ただ、やってみるといったって、もし問題が起こるといけませんから水質の管理については相当厳密に、今まで最初に御提案した以上にいろいろな形で濃密な監視をする、その結果も必要に応じては公表する、そういう形で水質の監視体制も整備した上で地元の理解なり納得が得られるような形でいわば実証していきたいと考えているわけでございまして、それは決してすぐにいきなり淡水化ということを考えているものではございません。
  103. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 大変丁寧な答弁をいただいておるわけですが、残念ながら時間がありませんし、私は聞きたいことはたくさんありますので、簡単にひとつ答えていただくとありがたいと思いますので、よろしくひとつお願いしたいと思います。  次に進みますが、淡水化は、御承知のように、干拓地の農業用水を確保するために、もちろん既耕地の農業用水の問題もありますが、始まっているわけです。どうも農水省の説明が非常にうまいのかどうなのか知りませんが、今まで国会でも相当議論されておるけれども農作物と塩分の関係についての議論は全然ないのですね。  ちょっとお聞きしておきたいと思いますが、一つは、淡水化試行中のさっきの塩分濃度で干拓地での農作物の影響評価みたいなものもやるのかどうかということ。それから、今のような塩分濃度、で農作物の影響評価は一体万全な評価ができるのかどうかということ。それから、最終的に全門閉鎖をしたときに、さっきから話がありましたように塩分濃度があるわけですが、あれで一体農業用水として役に立つのかどうか。  それから、時間がありませんからついでにもう一つ言いますが、御承知のように作物によっては非常に塩分に強い作物もあるし弱い作物もいろいろあると思うのですよ。ですから、塩分の程度によっては、干拓地につくるべき農作物が逆にかんがい用水から制約をされるというような問題もあるのじゃなかろうかと思うのですが、今まで国会の議論でも一つもこの点議論になったことがございませんので、ちょっと改めて聞いておきたいと思います。
  104. 鴻巣健治

    ○鴻巣政府委員 簡潔にお答えをいたします。  今水稲についての塩分濃度のデータが手元にございますが、塩分濃度が、苗代のときは約五〇〇ppm、それから田植えから活着期までは三〇〇ppm、それから根が分かれる分けつ期のときは七〇〇ppm、それから穂がはらんでくるときには二〇〇〇ないし三〇〇〇ppm、それから穂が出てくる前後、出穂期は五〇〇ppm、豊熟期、実り出してくるころには七〇〇ppm、こういうふうにいろいろございます。  今お尋ねのように、一〇〇〇ppmというのを目標にいたしまして、その間に水質なり生態系の予測といいますか、実際にどうなっていくかということを調査研究、検証したいと考えていることを目標にいたしております。結果的に見ますと、宍道湖の西側とかあるいは雪解けの水が多いとか雨が多いとかいったようなとき、時と場所によりまして農業用水として利用することもできるというように考えております。
  105. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 どうも時と場所によって農業用水として利用できると言われると、これは大分地元の受けとめ方は違うような感じがするのですね。今までの地元の受けとめ方からすれば、中海はもちろん宍道湖の水も全面閉鎖の段階ではどこの場所でも農業用水として使用可能だ、こういうふうに受けとめているわけですね。時と所によって違うということになりますと、これはなかなかどこだといって特定できないわけですから非常に困るのですが、それはそれとして次に進みます。  仮に今のような話であったにしても、既に構造改善局長さん御承知のとおり、当初の干陸計画、干拓計画は稲作を前提にして大規模な干拓をやったわけですね。ところが、御承知のように米は減反減反ということで国の政策によって減反が進んでいる。したがって、稲作を中心にした干拓地の利用というものは根本的に転換をしてしまっておるわけです。そこで他の作物との関係も同時に明らかにしてもらわないと、果たして干拓地を買ったけれども物ができるのかできないのかちょっと確信が持てないようなことで非常に困るわけです。この点についてどうかということをひとつ端的にお伺いしたいということ。  もう一つは、仮に一時的に作物に影響ないとしても、御承知のように世界的に農地の荒廃が進むその大きな要因に、いわゆる塩類の堆積というか、こういうことが農地の荒廃にとって非常に大きな問題だということもあるわけですね。干拓地ですから山や林はないわけですから、天気よければかんかん照りでもうよく日は当たるわけですよ。暗渠で排水施設をどうするかということとの関係もあると思いますが、そういうかなりの塩分を含んだ水を農業用水として長期的に使用した場合に、塩分の堆積が進んでいつかの時点で農地としてはだめになるんじゃないかということも心配されますが、この点どうですか。
  106. 鴻巣健治

    ○鴻巣政府委員 最初の御質問は、私どもお答えいたしましたのはちょっとすれ違ったかもしれませんで申しわけありませんが、今新しく水門を一部あけっ放しにした場合、宍道湖の湖心で全層年間平均一〇〇〇ppm程度になる。そうなると、農業用水として使うのはぎりぎりの線だという意味のことを申し上げたわけでございまして、完全に水門を締め切りますと、これはもう最初に三年前に提案したやり方でも、三年後には完全に真水というか淡水化になる。完全土言うと言葉がよくないかもしれませんけれども、淡水化してきて農業用水としては使用可能になると思っております。  二つ目は、今県等にもお願いをいたしまして、既に干陸が終えました工区でいろいろ野菜の試作をお願いいたしております。これからは野菜で阪神市場あるいは九州市場あるいは遠く首都圏の市場に進出をするということが大事だと思っておりまして、幾つかの品種についてことし成功したという話をこの間伺いましたけれども、野菜の生育といいますか生産を中心にして検討して、何が一番収益性があるかということは、いろいろな作物を植えて土地の条件なり市場条件なりを見ながら県と相談をしてやっていきたいと考えております。  それから三つ目は、水門を締め切った後でゆっくりとした時間で本格的な淡水化をいたしますので、塩害による問題が起こることはあり得ないというように考えております。
  107. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 今、淡水化に関しては塩害は起こらないという感じの答弁でしたが、私の聞いているのは、それもありますけれども、長期的に一体大丈夫なのかということですね。  それとあわせて、私も正直言いまして国会図書館で塩分と農作物の関係についてデータがないかどうか探してもらったのです。残念ながら、あの国会図書館でそれがないわけですね。農水省も、今の答弁を聞いていますと、稲についてはあるけれどもほかのものについてはどうも——あるかもしれませんが、今局長さんはお答えにならない。あっても余り大したものではないのではないかという気がするわけですよ。もしそうだとすれば、今後の営農に根本的に影響してくる問題でありますし、何よりも農地を買うか買わぬかというようなことにも関係してくるわけですから、ぜひ検討の上できちんとしたデータを出して、もし農業をするならするで安心して農業ができるような説得力のある材料を提示していただきたい。ここではこのことだけお願いをしておきます。  時間がありませんので次に行きます。大分たくさん質問を準備したのですが、二、三時間ないととてもだめなので、そういう点ではしょっていきますが、島根県の水質管理委員会、ここでは中間報告や助言者会議の意見などを受けて水質変化、水資源、生物影響、治水防災という四つの班を設けて専門的にかなり検討して、各論的にはある程度結論が出るところに来ている。しかし、問題なのは、中心になる水質基準の問題をめぐって中浦水門の管理規定ができていないことが一つのネックになっておるような話も聞くわけであります。これは今まで衆参両院の質疑の中でも再々繰り返し他の委員からも質問をされている事項でもありますが、この水門の管理規定は一体どうなっているか。  話によると、本当かうそか知りませんが、農水省と建設省との間の協議が整わないためにいまだにできていない、こういう話も聞くわけであります。その点、お聞きをいたしたいと思います。
  108. 鴻巣健治

    ○鴻巣政府委員 三年前にお示しをいたしました試行計画につきましては、中浦水門の管理規定を含めまして建設省と打ち合わせを行ってまいりました。現在、淡水化の試行につきまして、水門を一部開放した試行という形について私ども検討を始めたところでございまして、今までやっておりました打ち合わせは現在中断をいたしております。近くこの水門を一部開放したままでの試行というものについて案がまとまり次第、建設省と所要の協議を進めたいと考えております。
  109. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 引き続いて、今の一部開放の試行の問題に関連をして、我々の立場からすると、全面閉鎖を前提にして学者グループの中間報告が出されておるわけでありますし、そういう意味では、あの中間報告自体も根本的に見直しをして出してもらいたい、こういう気もするわけであります。そういうことなのかどうか知りませんが、今学者グループに検討を依頼したということであります。結論は大体いつごろ出るのか、それは今まで出されておる中間報告の根本的な見直しに関係するようなものになるのかどうか、この点、ちょっと伺いたい。
  110. 鴻巣健治

    ○鴻巣政府委員 できるだけ九月中に結論が出るように私どもお願いをいたしております。
  111. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 次に、財政問題についてちょっとお伺いします。  御承知のように、今まで公式な発表では、六十三年度完成、八百八十億円の総事業費、こういうことに専ら言われておるわけであります。去年の六月の島根県議会で農林水産省の中海干拓事業における借入金停止措置の効果、検討、こういう内部資料が明らかにされました。それによりますと、七十年完成、事業費は千八十九億円、こういうふうに言われておるわけであります。一体総事業費が現段階で幾らになると考えられておられるのかということが一つ。  もう一つは、地元負担の問題等いろいろ検討したいこともありますので、事業費を淡水化工事、用水工事、干拓工事の各事業科目ごとに、年度別にひとつ資料として提出をしていただきたい、これは私の方にもらえば結構ですから。局長さんの方からとりあえず総事業費の関係がどうなるかということについてお伺いいたします。
  112. 鴻巣健治

    ○鴻巣政府委員 現在、総事業費あるいは工期も六十三年完成と言っておりますが、とても今の様子では、御承知のとおり本庄工区はああいう状態でございますから、完成をいたしませんので、総事業費あるいは工期の改定を行う必要がありまして、現在その作業中でございます。  年度別なり工事別の事業費につきましては、改定作業が終了後にお示しをいたしたいと考えております。
  113. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 続いて伺います。  次は、農地の配分価格について。御承知のように、六十三年完工、事業費八百八十億円、こういう前提で今まで、十アール当たり百六十万円、こういうふうに言われておるわけですね。先ほど言いました七十年完成、事業費千八十九億円、こういうことにした場合には十アール当たり二百八十万円だ、こういうふうに言われておるわけであります。現在の農業情勢などからいいまして、こういう高い農地を購入して一体農業をやるものがあるのかどうか、こういうような感じもするわけでありますが、この点についての農水省のお考えをちょっと承りたいと思います。
  114. 鴻巣健治

    ○鴻巣政府委員 現在の総事業費八百八十億円で工期が六十三年度完成ということで、単純に試算をいたしますと、御指摘のように干拓地十アール当たりの配分価格は、県と農家分を合わせまして百六十万円となります。現在、その総事業費、工期につきまして見直し中でございます。したがいまして、見直しをした後での県なり農家なりの分を合わせました配分価格はまだ決まっておりません。ただ、ほかの国営の干拓事業でも県に応分の負担をお願いをいたしておりますのが通例でございます。確かに中海の干拓事業は工期が長期化をいたしまして、地元の負担に相当いたします財投からの借入金とか、それにかかわります建設期間中の利息もふえております。そして現在、県から、この間知事にお会いしたときも負担金の軽減についての要請も確かに受けております。したがいまして、今後この問題については県と十分に相談をしていくつもりでございます。
  115. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 時間が来ましたので、残念ですが、最後にもう一つだけ伺います。  恐らく農水省の方にも耳に入っておると思いますが、地元では将来的な営農の見通しなどからいいまして、既に完工しておる彦名、安来、揖屋の三地区についてはできるだけ早く条件整備をして配分をする。それで打ち切って、本庄工区については、一番広いところですが、まだ水に沈んだままですから、もうこれで干拓事業を打ち切ってしまったらどうだという意見もあるわけであります。私もその方がいいのじゃないかという感じがしてならないわけでありますが、どうでしょうか。
  116. 鴻巣健治

    ○鴻巣政府委員 本庄工区は現在、堤防工事と排水機場が完成をいたしまして干陸可能な状態になっております。これが五つの干拓工区の中で一番大きい、しかもそのための事業効果も一番期待できるものでございます。このため、私ども、なるべく早く干陸をすることが望ましいと考えております。ただ、本庄工区の土地利用につきまして、島根県の方から、干陸する前にもう一度今の計画を再検討してほしいという意向も示されておりますので、今後県と十分意見の交換などを行いまして、詳細な詰めを行った上で干陸をしたいと考えております。
  117. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 最後にお願いですが、この間安来市の農業委員会で安来市の全農家二千四百六十一月を対象にして、安来地区の干拓地百三十ヘクタールの配分についてアンケート調査を行った。干拓地の取得を希望したのは四・七%の八十戸、しかも購入希望価格は平均して百二万円ということになっておるわけであります。先ほど言いました百六十万円はおろか、二百八十万円などとなった日には、とてもじゃないが入植をしたり、増反をしたりすることはなかなかできないと思うのです。そういう意味で、配分に当たって国なり県の地元負担に対する援助なしには、恐らくせっかくつくった農地も草が生えたままにほったらかしにせざるを得ない、こういうことになろうかと思っておるわけであります。  この点についてぜひひとつ十分な配慮をいただくと同時に、先ほど言いました本庄工区の問題などを含めまして、この際思い切って、先の見通しは余りないわけでありますから、大幅な計画の修正なり中となりをされますように最後にお願いを申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
  118. 月原茂皓

    ○月原委員長代理 竹内猛君。
  119. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 私は前回に引き続いて、また先般二十五日の物価対策特別委員会質問のときにもやりましたが、先ほど公明党の草川委員からいろいろ質問がありましたように全国生乳連の問題、この問題を中心として重複しないように質問をしていきます。同時にまた、農家負債という問題が今酪農地帯においては非常に問題になっておりますから、この問題にも触れながら質問をします。  まず最初に農家負債について質問をしますけれども、社会党は党内に農家負債対策特別委員会を構成して、昨年から岩手県の葛巻町、そして本年は同県の大東町で現地懇談会をして、関係機関のそれぞれの意見を聞きながら実態に触れてまいりました。なお、現地の方ではさらに安代町、江刺市、玉山村等の調査もしております。これは一つの例でありますけれども、そういうことを各地でやっておりまして、その中の共通点を持ち寄って農林水産省にも県にもいろいろな要求をしております。岩手県では農家の更生計画というものをつくって、約三千戸の農家をA、B、C、Dに分けてそれぞれの更生計画に沿って県及び農協が指導をしております。また茨城県においても農家負債に関連をして、その負債を徴収するためにコープエードというような制度をつくっていろいろ努力をしておるようでありますし、長野県でも静岡でもそういう制度をつくっておるようであります。  昨年も農林水産省に窓口をつくってはどうかという要請をしましたが、窓口をつくるのでなしに経済局の金融課を窓口にしようということで、金融課から先般農家負債、農家経済に関する報告が出されてきました。これを見ておりますと、北海道、東北、南九州、北関東がかなり負債の多いところであって、近畿、北九州あるいは東海、南関東のようなところでは比較的負債が少ない。つまり畜産地帯はどうしても負債が多いという傾向であります。  特にその中で酪農に関連をして質問をするわけですが、とりあえず先般経済局が報告をしたその傾向というものについて、今私がちょっと概略言ったようなことと違ったことがあるならば、それについて経済局の方から報告をしてもらいたい。
  120. 青木敏也

    ○青木政府委員 農家負債の状況につきまして竹内先生から概略触れられたわけであります。私どもの認識におきましても基本的にはそういうことでございまして、現在私ども、農家経済調査によりまして全国平均的な農家の負債状況を把握いたしてございます。六十年度末で二百五万ということでありますが、地域別に見ますとかなり開きがございまして、先生指摘のとおり北海道が約千二百万、東北が二百二十万程度、九州が二百万という地域的な開きがある。またこの辺の負債の持ち方につきましても、経営規模との関連を見てみますと、やはり経営規模が大きくなるに従って負債も大きくなる、上位階層ほど負債が多くなるという傾向は、内地、北海道ともに共通に見られるわけでございます。また、経営部門別には、御指摘のありましたように多額の資本装備と経営費を要する畜産経営、なかんずく酪農部門におきましては一千三十二万、それから養豚が八百九十万という形で、ほかの作物部門に比して負債が相対的に非常に大きい、こういうことでございます。  以上、御報告申し上げます。
  121. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 大体はそういう方向に沿っていると思いますが、そこで統計情報部に、これは要請もしたいし、今後検討してもらいたいことがあります。  というのは、確かに農家といっても専業で農業だけで生活をしていく農家というのは非常に少なくなった。二十万戸そこそこである。そういうことになって、他は農業だけでなしに兼業で生活をする。三カ月は農業収入で生活をするけれども九カ月は農外収入による。しかもそれはその周辺の建設業に行ったり、あるいは市町村の役場や農協や、あるいはその辺の工場の勤労者が多いということになっておりますが、統計の調査のとり方が平均的であり、そして地域的に見てもやはり平均的なものをとっている。  そこで、階層別の業態別の地域別の品目別くらいの調査をしてもらわないと、従来の標本のとり方について、よく私はわかりませんが、それを検討して今の状況に沿ったような統計にしてもらわないと大変困る。先般、経済局の青木審議官からの話を聞いたけれども、聞いた者の一同がすべて、やはりこの統計は抽象的でどうもならぬという強い意見がありました。これに沿ってしっかり実態に沿ったものをやってもらいたい。どうですか。
  122. 松山光治

    ○松山説明員 農業の状態が変わってまいりますから、そういった変化の実態というものを頭に置きながらできるだけ的確に実態の把握ができるように日々見直し、改善を行っていく、これはある意味では当然のことでございます。今経済局の審議官からも御報告したところでございますけれども、農家負債の問題自体について申し上げますれば、御案内のように農家経済調査の一環としてこの調査を行っておるわけでありますけれども、その統計のあらわし方といたしましては、単に全国の農家平均ということだけではなくて、地域別にあるいは経営部門別にあるいは階層別に、一定の制約は伴いながらもできるだけきめ細かな統計表章をしていくということで心がけてきておるつもりでございますし、また一般的な傾向としては十分御利用いただけるような形になっておるのではなかろうかというふうに思っております。  御案内のように、農家負債の問題として私の理解するところでは、例えば北海道の酪農地帯は一般的に負債が多いわけでございますし、そういうことは私どもの調査結果にも出ておるわけでございますが、北海道の酪農地帯の中でも押しなべてどの農家も同じように負債を持っているかと申しますれば、同じ地帯の中で非常に負債の多い農家と比較的少ない農家というふうに個々の農家によって違っておるというところがこの問題の特色であり、また調査いたします場合のなかなか難しいところである、こういうふうに考えておるわけであります。そういうふうになってまいりますと、今の先生の御趣旨を踏まえたことをいろいろと考えていきますと、例えば負債の多い農家というものを対象にした何か特別の調査ができるのだろうかというようなことにも相なるわけでございますけれども、御案内のように負債問題というのはプライバシーの中でも最もプライバシーの厳しいものでございます。そうなりますれば、どういった農家を対象にしてやっていくのかという入り口のところではてなと考え込むこともございますれば、あるいは調査をやる上での難しさというものも実はあるわけでございます。特にその辺のところが、私どもの統計情報組織のような一般的な統計調査として物事を実施していくという場合にはその制約が非常に強いわけでございます。  そこで、今の私どもの取り組み方といたしましては、私どもの行っております農家経済調査におきましてできる限りきめの細かい形の統計表章を行い、そういう中で一般的な傾向をつかんでいただくと同時に、そういうことを踏まえまして業務等の面で必要な情報を補完的に集めていただき、色づけをして利用してもらう、こういうふうなことで臨んでおるつもりでございます。そういうことで、基本的な態勢としてはそういうことでいかざるを得ないのではないかというように思っておりますが、私どもといたしましては、農家経済調査の取りまとめ等を行うに当たりましてなおできるだけ細かな統計表章ができないかどうか、あるいは再集計といったような形で処理する道がないのかどうかといったようなことを行政部局ともよく相談してまいりたい、こういうふうに考えております。
  123. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 例えば北海道と都府県にわたって酪農の経営の経済の統計を見ると、北海道は五十年のときに収益が三百三十二万八千円あった、六十年には六百三十六万七千円だということになっております。その場合に負債利子が、五十年には三十九万一千円、六十年には百四十七万八千円というようになっているわけです。これはちゃんと統計には出てきているが、負債の問題については収益という形でというか、収益には負債がのっていない。負債というのは負債金利ですから、利子ですから懐に入らないわけです。一体なぜ負債を収入から引かないのか。それで引いたとしたら、北海道の場合には五十年は二百九十四万七千円、六十年は四百八十八万九千円、これが本当ではないのか。なぜ負債金利というものをマイナスにしないのかということについて、そういえば確かにそれは生活費に使ったか経営費に使ったかわからないから分離ができないからそういうふうにしたのだとおっしゃるかもしれませんが、それでは実感が出てこないではないか。その点はどうですか。
  124. 松山光治

    ○松山説明員 農家経済調査におきます利子の扱いの問題でございますが、結論から申し上げますれば、支払いました利子もそれから預貯金等から入ってまいります受け取りの方も両方とも農外収支として計上いたしておるわけでございます。そういうふうにいたしておりますのは、今先生の御質問の中でもお触れになりましたように、農家の場合には経営と家計の未分離ということがございまして、借入金につきましてもそうでございますし、特に預貯金についてそういうことが言えるかと思いますけれども、いわば源泉なりあるいはその用途というものを事細かに把握していくということが極めて難しい状況にあるわけでございます。特に、プライバシーにかかわる調査ということでなかなか調査環境が難しくなっておるだけに、そこのところにはおのずからなる限界がございます。そういうことも頭に置きながら、確かに資本利子は農業の部面で発生いたしましたものは農業の経費という扱いにはなるわけでございますけれども、そこのところが分離できないということで便宜農外収支の扱いとして、そのかわり預金利子の方も収入は農業の方ではございませんで、農外の方で整理しておる。ちなみに六十年度の平均の姿で申し上げますと、支払い利子が十二万五千円余りでございますのに対しまして、受け取りました利子が三十六万何千円というオーダーでございますので、逆に全体を農業の収支の中で扱いましたときにはかえって農業所得の把握の仕方として問題が出るのではなかろうか、こういうこともございまして、今の扱いとしては農外収支の扱いにいたしておる、こういうことでございます。
  125. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 いろいろそれは問題があると思うけれども、とにかく利子の問題の扱いというものはやはりどちらかに整理しないとまずいじゃないか。実態に触れられないじゃないか。そういう統計にするように努力をしてもらいたい。  そこで、借入金についての問題を現地で調べますと、前々からこの委員会で私はしばしば質問をしてきたわけですが、補助金や助成金等々をもらう場合にあるいは農協や系続から金を借りる場合でもそうですが、担保が必要である。それには一定の規則がある。木材であるとか機械であるとかあるいは基礎工事であるとかについては厳しい注文がある。それについて、以前、これは十年ほど前ですけれども、渡辺美智雄農林政務次官のころですが、この委員会で、大変農家は施設に金を使っていて実際に運転資金とかそういうものについての金がなくなってしまう、立派な施設をつくったからといって経営がよくなるはずはない、これは補助金のためにそういうものをつくるものであって、鉄骨屋あるいは機械屋はもうかるかもしれないが農家はそれによってもうかるのじゃないのだから、これは古村でもいいしあるいは間伐材でもいいではないかということで話をして、そういうふうにするという通達を出したと思っておりました。ところが、一昨年も本委員会が鹿児島、宮崎調査に行ったときに、これは都城ですけれども、やはり間伐材で和牛の畜舎をつくって立派に和牛が育っている。あるいは木材の貯木場の二階の天井に合板が張ってある——大体木材を集めるところで合板の天井をつくるなんておかしい、こういうことを言ったところが、いやそれは建築基準法に沿っていてできないのだあるいは消防法によってしかられるのだ、こういう話があった。帰ってきて、これは農林水産省と建設省あるいは自治省と話をして、そういうことのないように通達を出すし、また一方で言えば会計検査院がうるさくてしようがないのだという話がある。だから、きょうはここへ建設省、会計検査院、それから消防関係に来てもらっているからここで合意をして、古村でもよろしいというようなことをしておかないと危なくてできない、そういうものに金をかけるということは借金をふやすだけの話なのだ、その点についての合意状況というのはどうなっているか、一つ一つ言ってもらいたいと思うのです。まず会計検査院から言ってもらいましょうか。
  126. 奥田義雄

    ○奥田会計検査院説明員 お答え申し上げます。  会計検査院が国庫補助事業につきまして検査をいたします場合には、従前からその適正かつ効率的な実施という観点から検査をしてまいってきておるところでございます。  御指摘の畜舎等の古材利用ということにつきましては、既存の施設ですとかあるいは資源の有効利用というふうなことから見まして、その地域なり事業の実情に即しまして必要があると認める場合には積極的に推進するよう、こういう内容の農林水産省におきます通達が出されておるわけでございまして、本院といたしましても、検査をいたします場合には従前からその趣旨にのっとりまして検査をしてまいってきているところでございます。農林水産省の方でそのような古材利用というものを畜舎に認めております以上、私どもの方でその点につきまして指摘をするということはございませんので、御了解いただきたいと思います。
  127. 立石真

    ○立石説明員 お答えいたします。  建築基準法では、その建築物の構造耐力上主要な部分と言っておりますが、そういう部分に使用する木材については、耐力上十分なものでなければならない、欠点がないものでなければならないということは決めておるところでございますけれども、この場合に一般の製材と古村あるいは間伐材とを特に区別する規定は入っておりません。そういう趣旨でございますので、建築基準法に関連いたしまして特に古村あるいは間伐材を使用できるというような通達を出す必要がないわけでございます。しかしながら、農林水産省の方が中心になりまして間伐材等を使って畜舎をつくる標準をまとめるのには協力しておるところでございます。
  128. 木下英敏

    ○木下説明員 消防法令の観点から申し上げますと、建築物そのものにつきましての法令上の規制はございません。  ただ、牛舎等の畜舎につきましては、消防法令上その他の事業所というところに分類されておりまして、法令上一定の面積に応じました消防法上の設備の規制がなされております。例えば延べ面積が三百平米以上でございますと消火器を設置しなければいけないとか、千平米を超えますと屋内消火栓とか自動火災報知設備を設置しなければいけないといった法令上の規制はございます。  ただし、畜舎等にあっては特にその状況に応じました弾力的な運用を図っているところでございまして、例えば周辺に余り人家もない、十分な空き地があるといったような状況、つまりほかへの延焼のおそれがないというものにつきましては、政令の三十二条の特例規定を適用いたしまして、例えば消火器だけが設置されておればよいとか、そういったような基準の緩和を図るような方向での弾力的な運用を現実には図っているところでございます。
  129. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 それで大体わかりました。農林水産省は通達を出しているのですから、その線に沿って進めていただきたいと思います。  さて、そこでもう一つ問題があります。私どもが調査したのは農用地開発公団が開発したところが中心になっておりました。そこで、ある農業評論家がこういうふうに言っている。   農用地開発公団は酪農家育成の目的で、一農家当たり一億円〜一億五〇〇〇万円の事業を行なっている。このうちの八割五分〜九割は補助金だが、これだけ優遇されていながら借金返済がままならず、離農する農家が続出している。   というのも牛舎を坪三〇万円で建てるとか、一基五〇〇〇万円もするようなサイロを建てるなど無茶な装備をするからだ。   アルミサッシを使って、なぜ坪三〇万円もの牛舎を建てるのか。   そうしないと、建築基準法に違反することになるからだという。   なぜ建築基準法の適用を受けるのかといえば、そうしないと担保に取れないからだそうだ。要するに国が金を貸すためには担保を取らねばならず、担保を取るには建築基準法に合致したものでないと担保価値がないとの発想だ。   酪農経営の基本は、牛の飼育にはどのような環境が必要か、投資効率はどうかといったものだろう。担保を取れるかどうかを発想の基本にすれば、経営効率が無視されるのは当然だ。  また八割も九割も補助金を貰えば経営効率などという発想自体薄れてくるのは人情である。大きな補助金を受けた農家ほど脱落するといわれるのは、補助金と抱き合わせに借りる融資が分不相応に過大になるからだ。   補助金がふんだんにあり、融資も低利資金が一兆円準備され、その融資ワクが常に余っているとなれば、コスト意識など育たぬのが当然だろう。   (中略)農家の負債利子は、五十八年までの一〇年間で五・五倍に増えている。   このため政府は農家の負債を低利の資金に借り替えさせて、差額の利子を補給する制度をはじめた。農家が苦しければ補助、借金で首が回らなくなれば利子補給というのは、善政のようだが、はたしてそうか この点はどうですか、担保との関係は。
  130. 鴻巣健治

    ○鴻巣政府委員 私も公団の事業の方は所管をいたしておりますが、金融の担保の方までは、公団の担保の方が建築基準法の規格に合っているかどうかというところまで今調べておりませんので、調査した上で後日御報告申し上げます。
  131. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 今の問題は時間の関係でこれ以上進めません。後日にしたいと思いますが、そういう問題がある、そういう指摘があるということをひとつ覚えておいていただきたい。  そこで構造改善局長にもう一つお尋ねするのですが、土地改良をやると負担金がかかりますね。県営、国営、団体営によってそれぞれ負担率が違います。今水田の方はかなり進んだけれども、畑の方になると、何を植えてどういう採算があるのか、工事の方の団体営か何かということでの負担の問題、それから終わった後の収益率で負担をするのかどうかという問題。これは私の新しい質問かもしれませんが、今のように、減反をしている、そして金がかかる、期間のうちには終わらない、そういう状況のもとで面積の広い農家ほど非常に問題が多いということでありますから、この点をどういうふうに考えたらいいのか、お尋ねいたします。
  132. 鴻巣健治

    ○鴻巣政府委員 土地改良の補助金あるいは負担金の割合ですが、これは事業の規模あるいは公共性というものを考えるとともに、農家の負担能力とか過疎にあるとか山村だとかという地域の特性なども勘案した上で現在決まっているわけです。また、規模が大きい事業ほど一般的には公共性が高いということで、そういった事業内容のものについては補助率なり負担率を高くしているというような形になっております。  今のお話のような形で、収益性との関連ですが、これはやはりそういった今一般的に決められておる補助率あるいは負担率を地区ごとに、事業の着手に先立ちまして、末端の関連事業を含めた事業の効果を考えながら、また農家の負担が過重とならないように、事業の策定をいたしております。  今竹内先生のおっしゃるように、こういう時代なのだから、補助率なり負担率をもう少し事業の収益性に応じてアクセントをつけたらどうかという御意見はよくある議論で、私も伺っておりますが、一つの考えだと思うのですけれども、私たちが今のところ一番苦慮していますのは、むしろ補助率を切って事業費を伸ばせというぐらい財政事業がきついと言われているさなかなものですから、なかなか収益性に比例した補助率というのは極めて難しいと思っております。一つのアイデアとして承らせておいていただいて、また検討させていただきたいと思っております。
  133. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 これは非常に難しい提案ですから、ひとつ検討していただきたい。  もう時間もありませんから、この間の物価等の特別委員会で窪田課長からお答えがあったのは、全酪連も経済連も団体交渉権があるんだ、こういう話がありました。確かに定款の中にはそれが盛り込まれるかもしれませんが、実際、先ほど草川委員の言ったように、なかなかそれはできていない。全国生乳連ができる過程において非常に難しい経過を経ておりますから、この問題については、やはり憲法上の問題もあり、それから農協法十条の一項の十一の問題もあり、あるいは酪振法の十八条、十九条の問題もありますね。そういう点で、あらゆる点から検討をしてみて、先ほども話があったように、生産者と事業者、それからメーカー、この三つの関係というものを調整しない限り、例えば加工原料乳のごときは、ことしは乳価が実際は大分下がっていますね。まず保証価格で下がり、それから取引基準価格で下がり、それから補給金で下がっている。そこへ持ってきて、二百三十万トンが二百十万トンになったから、この二十万トン分がまた下がり、それから、脂肪が三・二が三・五に上がったから、〇コンマ一で八十銭ですから二円四十銭が下がっているわけです。こういうように、生産者にとっては大変な値下げの要素ばかりあって、これについて文句を言うことがなかなかできない状態でしょう。だから、そういうような問題を交渉していくためには、どうしても全国生乳連のような、そういう機関、団体が発生をして、生まれたのだから、それを活用していくというのが非常に大事なことだと思うのですね。そのことについて、草川委員調査にもあるように、それが今非常に無視されているということでは困るわけであって、この点をどのようにしていくかという点については、もうこれは課長に質問をする時期が過ぎて、局長の答弁をもらわなければならぬような段階になったから、局長から最後の答弁をもらいたい。
  134. 京谷昭夫

    ○京谷政府委員 昭和六十二年度の生乳の取引価格につきましては、御承知のとおり従来から、加工原料乳については加工原料乳不足払い法の規定に基づきまして保証乳価さらには基準取引価格等が決められることになっておりますが、その保証価格及び基準取引価格は、畜産振興審議会の御審議を経て、コストの状況に対応しまして一定の引き下げを行ったことは御指摘のとおりでございます。また、飲用乳の原料になります生乳取引につきましては、御承知のとおり、不足払い法の規定によって決められております指定生乳生産者団体による一元集荷、多元販売というシステムのもとで乳業者との乳価交渉を通じて形成をされる、こういうことになっておりまして、この建前のもとで年度当初から当事者間で交渉が進められておるわけでございます。まだ最終決着がついていない地域が多うございまして、その間、御承知のとおり、ある種の仮契約のもとで日常の取引が仕切られておるわけでございまして、私どもも取引当事者に対して、できるだけ早期の決着を図るように督励をしてまいりたいと考えておるわけでございます。  そういった過程で、前回の委員会でも御指摘ございました全国生乳需給調整農業協同組合連合会の問題でございますが、ここの構成員は御承知のとおり、その大部分が全国酪農業協同組合という全国農協団体の会員でもございます。重複して加入をしておるという状況に相なっております。そのほかにまた、先生承知のとおり、総合農協系については全国団体として全国農業協同組合連合会がある。さらに、先ほど申し上げました生乳取引の一次的な取引当事者になります指定生乳生産者団体を農協系統の別なく統合した団体としまして、中央酪農会議という全国組織もございます。したがいまして、これらの団体の諸活動を背景にして、指定生乳生産者団体の行います乳業者を相手にしたいわゆる生乳取引に関する交渉の上での力というものは、それなりの補強をされておるという理解を私どもは持っておるわけでございます。  そういった中で、御指摘の全国生乳需給調整農業協同組合連合会の活動のあり方についてどのように調整をされていくかという問題につきましては、既存の他の団体の機能との調整問題もございますので、やはり当事者であります諸団体の自主的な話し合いと申しますか御議論というものも踏まえて対処していく必要があるかと私ども思っておりまして、そういった観点で、既存の全国団体にもそういった問題があることを十分注意喚起をしまして対処してまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  135. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 時間が来ましたけれども、今のあれに対してちょっと要請をしておきます。  まず、せっかくそこまで話がいったのですから、できるだけ行政が入って、農林水産省も団体を認めているのですから、いろいろなことがあると思いますけれども、それを整理して、その性格、機能、役割等々の調整をぜひやってもらいたい。これが第一点。  それから第二点は、この前から私はこの委員会で申し上げましたが、ダイドーファーム、五大産業が倒産をして、関連をして養鶏農家やえさ会社が倒産をしております。特に関東方面に多いわけですが、ひとつこれの調査をして、その背景にあるものが、卵の値が下がったということではなしに、金融操作によって、融資手形によってそれが倒れているんだということがはっきりしておりますから、この金融調整についてはひとつ努力をしてもらいたいというのが第二点。  それから第三点は、熊本の問題です。ここにも熊本から投書がありますけれども、熊本の問題は大変深刻な問題になっておりますから、これは経済局の方で十分に調査をしてもらって、早急に、九月十四日に総会を開く予定になっておるようですが、ともかく円満にはなかなかいきそうもありませんが、余り酪農家に迷惑をかけないように処理をするような指導をぜひしてもらいたいということを要請をして、終わります。
  136. 京谷昭夫

    ○京谷政府委員 ただいま先生から御指摘のありました諸点でございますが、全国生乳需給調整農業協同組合連合会の問題につきましては、生産者の自主的な団体であります全国農協連合会の問題でございますので、関係当事者の自主的な調整を前提にして考えていくことが必要であると考えております。  第二点の、ダイドーファームの問題につきましては、前回の委員会におきましても概要を御報告いたしましたが、大変に関連倒産企業も生じておるという実情にありますけれども、ただ、その処理につきまして関係都県あるいは中小企業を預かります通産省とも連絡をとっておりますけれども、特別に行政的に対応するような実情なり要請というものが現在のところないという報告を聞いております。  それから、第三番目の熊本酪農業協同組合に関する問題でございますが、これも前回概要を御報告をいたしたところでございますが、私どもといたしましても、面接農協指導の任務を持っております経済局の方とも十分連絡をとりながら、出先機関であります九州農政局あるいは都道府県に対しまして所要の指導を行うようによく連絡をとってまいりたいと考えておるわけでございます。
  137. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 時間をちょっと超過して恐縮でした。
  138. 月原茂皓

    ○月原委員長代理 玉城栄一君。
  139. 玉城栄一

    ○玉城委員 きょうは、御存じのとおり、防災の日でもあるわけですが、大型の台風十二号がきょう、けさですか、北海道地方を抜けていると思うのですが、台風十二号によりまして沖縄地方、農作物に甚大な被害を与えているわけであります。例えばサトウキビとか野菜とか果樹とか花卉園芸、関連する施設等ですが、農水省として、この台風十二号による農作物に対する被害をどのように掌握され、どういう対策をされようとしておるのか、まず最初にお伺いいたします。
  140. 青木敏也

    ○青木政府委員 今回の台風十二号による農作物等の被害状況につきましては、現在、関係県を通じまして、鋭意、早期の把握に努めているところでございます。現在、金額的なものはこれから十分整理する段階になっております。ただ、今回の台風十二号の特徴的な点を申し上げますと、一つは、風台風だったわけですね。非常に強い風を伴った台風でございました。そういう意味から農作物の被害の態様も、ただいま御指摘のサトウキビ、それから水稲関係の倒伏、それから二十世紀ナシとかリンゴ等の果樹の落果の問題、それから、やれ養鶏だ、畜舎だといったものの施設の倒壊、そういうパターンにかなり被害のウエートがかかる。そういう意味では、洪水を伴った災害の場合の農地、農業用施設の被害といったものは、恐らく今回の災害においては相対的には比較的軽いあらわれ方が見られるのではなかろうか、こういうふうに考えております。  現在の段階ではその程度のことしか御報告できないわけでありますが、いずれにいたしましても、私ども早期に被害状況を把握いたしまして、農作物共済等につきましては農業共済金の早期支払いとか被災者に対します資金対策等につきましては自作農維持資金の問題あるいは天災融資法の発動の検討等々、災害対策につきまして万全を期してまいりたいと考えております。
  141. 玉城栄一

    ○玉城委員 きのう、おとといのことですから、実態掌握はなかなか難しい面もあろうかと思いますが、地元の県あるいは農水省の出先機関を通して早急に被害の実態を掌握されまして、その救済措置をとっていただきたいと思います。  この機会に私は要望しておきたいわけですが、御存じのとおり沖縄県は台風の常襲地帯であります。したがいまして、沖縄の農業の実態はある意味で非常に無防備なままにきておるわけですね。例えば、沖縄県で離島の宮古島は御存じのとおり道路とサトウキビ畑かぴったりと張りついていまして、あるいは防風とか防潮あるいは排水とかそういう緩衝地帯もないままに、大雨が降りますと畑から土が道路に流れ込んでいくとか、台風が来るとサトウキビの根っこを吹っ飛ばす。ですから、そういう意味では防災のための構造改善事業は、特に沖縄はこれから亜熱帯農業、水産業を振興しようということで非常に重要だと思うわけでありますので、これは構造改善局になるのでしょうが、その点ぜひお答えいただいて、次の質問をさせていただきたいと思います。
  142. 内藤克美

    ○内藤説明員 お答えいたします。  構造改善事業については、先生おっしゃるとおりに非常に重要なウエートを占めているわけでございます。農業基盤整備は、この数年来御存じのとおり公共事業の伸び率はほとんどゼロでございますが、基盤整備重要性、特に沖縄における重要性を考えておりまして、六十一年度においても全体としては約三%、六十二年度においては対前年比は一〇一・三という格好で伸ばしております。なお、若干畜産関係が減っておりますので、構造改善関係だけですと一〇二・四というような格好で、鋭意努力しながら伸ばすような格好にしております。なお、補正でも相当のウエートを持って伸ばすような格好にしております。
  143. 玉城栄一

    ○玉城委員 基本的な点についてお伺いしたいのですが、六月三十日閣議決定で国土庁の第四次全国総合開発計画、いわゆる四全総が決定されているわけでありますが、その中に沖縄地方に関してはこういう位置づけ、方向性がされているのですが、「亜熱帯気候を生かした花き、果樹、野菜、魚介類等の農林水産物の生産を振興するための基盤、流通機構の整備及び食品関連産業等の地場産業の振興を図るとともに、バイオテクノロジー等の活用を図る。」こういう基本的な方向が「沖縄地方整備基本方向」として四全総の中に方向づけされているのですが、これは当然農水省とも合議の上にこういう位置づけがされたと思うのですが、このことについて改めて農水省はどういう考えをお持ちであり、またそういう方向で行こうというのであればどういうふうに具体的に推進しようとされるのか、お伺いいたします。
  144. 衛藤征士郎

    ○衛藤政府委員 玉城委員にお答えを申し上げます。  ただいま委員指摘のように、過般発表になりました四全総のことでありますが、沖縄県の農林水産業については、四全総の位置づけとしまして、「亜熱帯気候を生かした花き、果樹、野菜、魚介類等の農林水産物の生産を振興するための基盤、流通機構の整備及び食品関連産業等の地場産業の振興を図るとともに、バイオテクノロジー等の活用を図る。」このようになっておるわけでありまして、我が省としましても、沖縄県においては亜熱帯地域としての温暖な気候を生かした農林水産業振興を図るために、干害防止のためのサトウキビあるいはパイナップル等の畑地かんがいを初めとする生産基盤整備や中央卸売市場の整備、熱帯農業研究センター沖縄支所による研究開発等を積極的に進めてきておるところでありまして、四全総における沖縄の農林水産業の位置づけというものは妥当なものである、このように考えておるわけでございます。
  145. 玉城栄一

    ○玉城委員 政務次官はきょうは大臣のかわりに出席しておられます。政務次官の方にお伺いしたいのですが、今いろいろな農業関係の会合では、農業の大転換であるとか、農業の危機であるとか、そういう一つの時代と申しますか、外圧、内圧含めまして確かに農業が今重大な曲がり角的な場面にあるという感じもするわけであります。  そこで、農林省として一日農林水産省の開催を昭和六十年からずっとやってこられておるのですね。昨日ですか宇都宮市でも開催されて、テレビでも放映されておりましたけれども、その趣旨は「地方各界関係者と農林水産省幹部との率直な意見交換を通じて、農林水産行政に対する国民の理解を深めるとともに、地域の実情に即したきめの細かい農林水産行政の推進に資する」云々、特に「農林水産行政を更に開かれた、分かりやすいものとしていきたい」という趣旨で、きのうでしたか八回というふうに伺っておるわけであります。それで政務次官にお願いしたいわけですが、そういう意味で沖縄地方というのは我が国唯一の亜熱帯地域として亜熱帯農林水産業をこれから二十一世紀に向けて振興していこう、そういう位置づけでもあるし、おっしゃったとおりですから、そういう意味では、沖縄県が本土復帰しましてちょうど十五年になるんですね、ですからぜひ一日農水省というのを沖縄でも開催をしていただいて、やはりじかにその声を聞いていただいて農林行政に反映をさせていただきたい。これは私一人ではなくして多くの関係者が強く期待もし要望もしておるところであるのですが、いかがでしょうか。
  146. 衛藤征士郎

    ○衛藤政府委員 玉城委員にお答えを申し上げます。  御案内のとおり、昨日宇都宮で関東ブロックの一日農林水産省が開催されたばかりでございます。御指摘のとおりでありまして、過去八回この一日農林水産省が開催されておりますが、一日農林水産省はただいま玉城委員指摘のとおりに「地方各界関係者と農林水産省幹部との率直な意見交換を通じて、農林水産行政に対する国民の理解を深めるとともに、地域の実情に即したきめの細かい農林水産行政の推進に資する」、このようになっておるわけでございます。  この一日農林水産省でありますが、地方農政局のブロックごとに開催をしておるわけでございまして、四十七都道府県ごとということではなくブロック別でございます。そういうことからいたしまして、沖縄県につきましても、今後九州農政局管内で実施する機会があれば沖縄県を含めまして九州・沖縄ブロックとしての開催地の対象にいたしまして検討してまいりたい、このように考えておるわけであります。ただ、今時点におきましていついつ九州・沖縄ブロックにおいて云々というわけには、現時点ではまだ決定を見ておりませんが、九州・沖縄ブロックという単位で開催の対象にいたしてまいりたい、このように考えておる次第でございます。
  147. 玉城栄一

    ○玉城委員 きょうは政務次富、そういうふうにお書きになったものを読んでいただくというのでなくて、ぜひこちらの要望としましては、九州ブロックというのはよくわかりますが、その位置づけからしましても沖縄というのは沖縄ブロックとして独自に国土庁も四全総の中で位置づけしているわけですし、また非常に農業の形態が水産業も含めていろいろと、それは各県全部、当然違いますよ、ですけれども、沖縄の場合そういう意味でいろいろな大きな違い等もある、あるいは本土復帰して十五年になる、御存じのとおり、ことしは四十七都道府県を一巡する最後の国体が沖縄でも開催される、陛下もいらっしゃる、そういう一つの節目みたいなことがあるわけです。ですからそういう一般論的でなくて、ぜひ沖縄でも早い機会に一日農林水産省を開催をして、地元の声も聞きながら振興していきたいということをおっしゃっていただいて、それは大臣と相談するとか何とかおっしゃっていただかないと……。どうぞひとつ御答弁をお願いします。
  148. 衛藤征士郎

    ○衛藤政府委員 玉城委員にお答えいたします。  本日、残念でございますが、大臣が出席しておりませんが、この件につきましては私も事務当局と十分打ち合わせをいたしましての答弁でございまして、ただいま玉城委員指摘のとおり、復帰後十五年を経過しておりますし、また復帰後十五年というよりも沖縄県は我が国の四十七都道府県の中でも農業、林業、水産業等におきましてもまだまだ構造改善等おくれている地域でありますから、こういう後進地域に一日農林水産省を持っていって地域の皆さんときめの細かい意思の疎通、あるいは農業に対するお互いの知恵を出し合って農政を推進していくことが極めて大切なことである、これは論をまたないところであります。ただ、ブロックごとにやっておるわけでありまして、沖縄でいつやるということを今時点ではお答えできませんが、今私が申し上げましたとおりに沖縄県は特別な地域であるということからしまして、政務次官の答弁としては、次回できるだけ早い機会にという気持ちも十分に込めまして、大臣にかわりましての答弁でございますので、御理解をいただきたいと思います。
  149. 玉城栄一

    ○玉城委員 精いっぱい何とかお話しになっていらっしゃる。私も理解しないわけではないのですが、そういう意味で早い機会に——おっしゃいましたとおり後進地域とかなんとかといいますよりは、サトウキビは基幹作物ですよ。パインも含めてそうなんですが、今、米がいろいろ問われている。サトウキビも来月かに価格決定がされるのですが、基幹作物がどうなるのかというところで、これからどういうふうに沖縄の農業を振興しようかと非常に深刻な問題を抱えているわけです。十五年間、復帰してもそうですが、復帰以前二十何年間はそういう日本農林行政の手当てがされないままに来たわけですから、ぜひ早い機会に開催していただくよう要望いたします。  それから次に、バイオテクノロジーの問題についてお伺いしたいのですが、農林水産省もバイオテクノロジーの課をことしの五月ですか、新設されまして、本格的に取り組みを始めていらっしゃるわけですが、このバイオテクノロジーに対する農水省としての基本的な考え方をまず最初にお伺いしておきたいと思います。
  150. 畑中孝晴

    ○畑中政府委員 私どもとしてもバイオテクノロジーの研究につきましては将来の農林水産業技術の基礎になる大変大切なものであると考えておるわけでございまして、この数年来力を入れてやってまいっておりますが、直接国が研究をいたします、例えば「ハイテク育種二〇〇〇年」というような目標を立てましていろいろなプロジェクトをつくって、国もいろいろな試験研究機関の総力を挙げて研究もいたしております。また都道府県に助成をしたり、あるいは技術研究組合という、そういう民間の団体への助成等もやっております。  さらに、民間会社への出資なり融資をやる機関として生物系特定産業技術研究推進機構というのを昨年十月につくったわけでございますが、そういうような万般の施策を通じて産学官の全体の技術レベルというようなものを上げて、将来の農林水産業技術発展の基礎固めをしたいということで力を入れているところでございます。
  151. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこでまたお伺いしたいのですが、先ほども政務次官が四全総の沖縄の亜熱帯農業の位置づけのところでもおっしゃっておられましたけれども、沖縄の亜熱帯農業振興についてバイオテクノロジーの活用ということがあるわけですが、今申し上げた点についてどういうお考えをお持ちなのか、お伺いしたいと思います。
  152. 畑中孝晴

    ○畑中政府委員 沖縄県の場合も、県の試験場においてもことしの春バイオテクノロジーの研究室ができたというふうに聞いております。試験場全体に対しましても沖縄特別措置法の一環として私どもも助成をしたりということもやっておりますが、さらにこういうお金だけではなくて、技術的に沖縄の場合にはいろいろなウイルスとか病害虫なども亜熱帯の地域ですから非常に多いものですから、そういったものに対しても、現在のテーマでは弱毒ウイルスを利用したウリ類の防除技術というようなものを国と関係の県で共同して研究をするというようなことも沖縄県に対して助成をしてやっておるわけでございまして、バイオテクノロジーというのは非常に範囲が広うございますので、畜産あるいは今沖縄で盛んになっております果樹とか花とか、いろいろな分野がございますのでなかなか一概に申し上げるのは難しいのでございますけれども、そういった全体のハイテクの技術水準を上げて、それをできるだけ早く実用につなげていくという点で、国も、あそこに熱帯農研の支所などもありますので、そういったものも使いながら今努力をしているところでございます。
  153. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこで、この問題に関連するわけですが、沖縄でこういう提言があるのです。ハイブリッドライス、多収穫米の種子産地にすべきではないかということで、「ハイブリッド・ライスの種子産地、研究の場としては、国内では沖縄が最適地。」である。沖縄では自然の状態でも年二作はできるし、ほかの県では年一作ということで、余計どれるということですね。したがって、「早急に、しかも大量に種子を増殖できる。また、離島が多いのも生かせる。ハイブリッド・ライスの開発、種子産地となると、秘密保持も重要になってくるが、離島だと人の出入りがチェックしやすく、秘密保持も比較的容易になる。それに、他品種の花粉が飛んでくる可能性も少なく、自然交雑の心配がなく、狙い通りの品種が育成できるメリットもある」、こういう提言があるのですが、農水省はどのようにお考えでしょうか。
  154. 畑中孝晴

    ○畑中政府委員 ハイブリッドライスにつきましては、先生承知のように沖縄の琉球大学の新城先生が大変苦労をされてその品種育成をされておるわけでございますが、私どもも新城先生と連携をとり、私どもの試験場でもやっておるわけですが、現実にまだ種をとるところまでなかなかいきませんで、ハイブリッドライス、両方のF1の有利性といいますか非常に多収になる可能性があるとかいろいろな有利な面はあるわけですけれども、一方、種をとるということになりますとなかなかとりにくいという欠点もございまして、その辺を研究をして整理をいたしませんと、なかなかハイブリッドライスそのものが実用化にならない、そういう状況でございます。  したがって、まだそのハイブリッドライスの種をどういう地域でとるかというところまではなかなか考えにくいところでございますけれども、私ども水稲の育種をやります場合に、できるだけ世代を更新するといいますかできるだけ早く、一年に二作とれればそれだけ世代が縮まるわけでございますので、そういった点では沖縄県の試験場等を利用させていただいて、内地でいえば二年分が一年でできるということもございますので、試験研究の中では利用させていただいておりますが、まだハイブリッドライスは種をとっていくという実用的な段階にはなっておらないという状況でございます。
  155. 玉城栄一

    ○玉城委員 しかし、こういう考え方は農水省の方もちゃんと理解していらっしゃるようでありますので、したがってそういうことで、これは沖縄県の県米穀種子協会というものをつくりまして、県、市町村、農協が構成員になりまして事業計画をつくって、おっしゃいました琉球大学の新城先生中心に、本格的にそういう種子産地として沖縄でやっていこう、ですからこういういろいろな事業についても農水省としても当然御理解されて、あるいは助成もできる部分はやっていくという体制もぜひ必要だと思うのですが、いかがでしょうか。
  156. 畑中孝晴

    ○畑中政府委員 普通の稲の品種をどこでつくるかということで、これは各県で奨励品種等になりましたものを原種あるいは採種圃をつくりましてそれぞれ種をとっているわけでございますが、従来水稲の場合ですと種のいい品質のものがとれる産地としては富山県などが割合に有名な産地でございますが、沖縄の場合には今まで水稲の生産が少なかったということで各県の種場としての認識は余りないのだろうと思います。したがって、私ども、この協会がどういうふうにつくられ、どういう運営をされるかというのもまだ十分お聞きしておりませんので、十分伺いまして対応は検討いたしたいと思います。  ただ、稲の場合には割合にほかのものとまざりにくい品種というか性質を持っておりますので、野菜の種とかそういうものと比べますと、必ずしも離れた島でなくても、普通の圃場でも多少周辺に気をつけてやればできるというような性格のものですので、わざわざ種場をそういうところへ設けるかどうかということについて、そこまでやらなくてもいいのではないかという感じがいたしますが、よく調べてみたいと思います。
  157. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこで、今のお話にさらにまた関連しまして、沖縄県の農水部の方でこのハイブリッドライスの当面の開発目標について、沖縄の地酒である泡盛の原料米は御存じのとおりタイの方から砕米を輸入して使っているわけですが、その泡盛の原料米の開発は、新城先生お話によりますと二、三年後には十分可能であるというふうにおっしゃっているわけです。どうでしょうか。     〔月原委員長代理退席、委員長着席〕
  158. 畑中孝晴

    ○畑中政府委員 泡盛の原料はどうもいわゆる日本米、普通に食べる米ではアミロースの含量が低過ぎてだめだ、むしろインディカ米といいますかそういう高アミロースのものが非常に適しているというようなことでございまして、そのために海外から入れているのだろうと思います。  それで、私どもの方も、従来は炊飯用ということで本当にうまい米をつくろうということで農林省も力を入れてやってきたわけでございますが、できるだけ米の需要をふやすという意味からいいますといろいろな用途に応じた他用途のお水もつくっていこう、そのためには食べておいしいという米だけではなくて、それぞれの用途、用途に合ったものをつくろうということで、五十六年から超多収稲の研究をかなり大きなプロジェクトを組んでやっておるわけでございます。恐らく新城先生が言われたのは、ハイブリッドライスをやりますときには、同じようなもの同士をかけ合わせてもハイブリッドの効果が余り出ませんので、日本稲とインディカというようなものをかけ合わせた場合にかなり大きな効果が出る、そういう意味で、どうしてもインディカの血が入ってこないとハイブリッドライスとして多収なものが得られないので、そういったものをつくっていけばかなりアミロース含量の高い、いわゆる泡盛に向いたものもできるのではないか、恐らくこういうことが背景にあっておっしゃっているのだろうと思いますけれども、我々の方でも今インディカの血を入れたような品種をつくっておりますので、そういったものが泡盛に合うかどうかというところまでは試験をやっておりませんが、従来のものよりはいわゆるぱさぱさのお米といいますか、タイなどでつくっているインディカ種に近いような米の品種も品ぞろえの中で、我々の品種開発の中で出てまいりますので、そういったもので泡盛に向くのかどうかというようなことも検討してまいりたいと思います。
  159. 玉城栄一

    ○玉城委員 これは後で食糧庁の方にもお伺いしたいのですが、沖縄の場合、泡盛というお酒の原料でタイから年間一万二千トンぐらいでしょうか輸入しているのです。ですから、その一万二千トンについても今おっしゃるようにできるだけ国内産の米で原料供給できる体制にしていきたいということを食糧庁は盛んにおっしゃるわけですね。ところが今のお米は原料にならない。ですから、そういうものを開発しようということは非常に結構なことだ、私は、それがいわゆるバイオテクノロジーの方に活用したことになるのではないか、こう思うのですが、この研究は、ちょっと待ってください、そういう意味ですか、それとも大いにやっていただきたい、推進するということですか、ちょっとはっきりさせてください。
  160. 畑中孝晴

    ○畑中政府委員 いや、待っていただく必要はございませんで、それは沖縄は沖縄でやっていただいたらいいだろうと思いますし、私どもの方でも、米として炊飯用に食べる米だけではなくて、いろいろな用途に向いたものの開発をむしろ進め始めているということでございます。
  161. 玉城栄一

    ○玉城委員 ぜひひとつ、大いにバイオテクノロジーを活用した農業振興をやっていただくことを要望いたしておきます。  それから次は、農水省が考えていらっしゃるリゾート構想について、この機会にお伺いをしておきたいわけでありますが、総合保養地域整備法が制定されまして、農水省としても農山漁村の地域性豊かな総合保養地域整備するという考えを持っていらっしゃって、農林漁業体験施設を初め、緑豊かな農地、森林及び海洋の自然的資源、郷土色あふれる生活、文化、芸能等の歴史的資源や風土に根づく農林水産物の持ち味を生かした諸施設の整備等を通じて、農林漁業への国民の触れ合いを促進するとともに、就業機会の増大等による農山漁村地域振興農林漁業の健全な発展に結びつくよう努めたい、こういう考えでリゾート構想を持っていらっしゃるわけですが、今申し上げましたこの農水省のお考えで、私は選出が沖縄でありますから、沖縄の亜熱帯地域というのは、今お考えになっていることに非常に適していると思うのですが、この問題も含めて、ちょっとお考えをお伺いしておきたいのです。
  162. 鴻巣健治

    ○鴻巣政府委員 リゾート地域整備開発といいますのは、今御指摘がありましたように、農山漁村地域活性化、それから農林漁業の健全な発展ということに寄与する、また、その整備に当たりまして農林漁業の振興との調和を図るという必要もありますので、農林水産大臣も、今お話しの総合保養地域整備法の主務大臣の一人となっております。  リゾート地域整備に当たりまして、農林水産省といたしましても、民間活力を積極的に活用しながら、国民農林漁業、農山漁村生活との触れ合いを促進をするという観点から、体験農園とか観光牧場とかいった農林漁業関係の施設の整備、それから国有林野の活用を図るほかに、リゾート開発と関連いたしました公共施設の整備など、農山漁村の特色を生かしまして、農林漁業とリゾート開発の調和のとれた形での整備が図られるように、沖縄県など都道府県を指導してまいるつもりでございます。  現在、主務六省庁ございますが、その主務六省庁で総合保養地域整備法に基づきます基本方針づくりをやっておりまして、この基本方針づくりの後に都道府県がリゾート地域に関する基本構想をつくりまして、主務大臣の承認を受けるための申請をするということになっております。こういった総合保養地域整備法の運用に当たりましては、これからも主務六省庁十分提携をしてまいるつもりでございます。  また、農林水産省では、リゾート地域整備を促進するために、来年度予算要求の中で、NTTの株の売却益を使いまして、リゾート地域に関連した総合的な農林漁業の基盤整備をやりたいという要求を出しておるところでございます。
  163. 玉城栄一

    ○玉城委員 ある意味で大変夢のある、二十一世紀に向けてやはりそういう時代かなというふうに感じながら私は勉強させていただいているわけですが、都市と農村の交流といいますか、触れ合い、そういう意味のしとも書いてありますけれども、最近、沖縄の場合、宮古島あたりでパパイアであるとかマンゴーであるとか熱帯果樹、これが非常に盛んになっていまして、またこれがよくできて、例えば宮古島のマンゴーの木を都市の方がオーナーになって、そしていわゆる産地直送型のそういうことをやる。それもある意味では都市と農村の交流、触れ合いといいますか、例えば東京で生活していまして自分の木が沖縄県の宮古島にあって実はちゃんと送ってくるとか、そういうことは、私のリンゴの木とかありますし、フィンであるとかいろいろそういう新しい考え方というものは、これからやはり非常に大事なことだと思うのですね。ですから、さっきおっしゃいましたように、これから九月の中旬ですか、国がリゾート、いわゆる総合保養地域整備法についての国としての基本的な計画を出して、それを受けて今度は地方の知事が、またそれぞれの、例えば沖縄県であれば沖縄の知事が沖縄のそういう構想を出してくる、それをまたそこでチェックしてそれをやるかどうかというのはこれからの作業になっていくと思うのですが、私は最初から申し上げておりますように、沖縄というのは、亜熱帯地域というのはこれから日本列島の中で非常に貴重な南の地域であると思いますので、その構想の中にぜひ沖縄も入れていただきたいということを要望しておくわけであります。  それから次に、これも同じ農水省の考えていらっしゃるグリーントピア構想についてでありますが、これは地域においてニューメディアなど最新の情報処理、通信技術を利活用し、農林水産業の生産性の向上、農林水産物の流通加工の合理化、地域コミュニティーの活性化などに役立てて、二十一世紀に向けて情報化により魅力ある農林水産業農山漁村を築いていくことを目的としたグリーントピアに沖縄の宮古地区も指定されているわけですが、この構想を今後具体的にどのように推進されようとするのかお伺いいたします。
  164. 吉國隆

    吉國政府委員 ただいま先生お話しございましたとおり、宮古地域が六十二年度の構想推進地域として指定をされているわけでございます。  この構想の策定につきましては、一般的にはどんな農村の将来像を描くか、また、それに伴いましてどんな情報ニーズが生まれてくるかといったこと、あるいはどんなシステムをつくっていくか、また、それに対して地元の合意、関係者の合意というものをどういうふうにつくっていくか、そういったことを構想の中で策定をしていただくという考え方になっているわけでございますが、どういう内容のものにしていくかということにつきましては各地域でみずから計画、構想を立てていただくということを基本にいたしておるわけでございます。一般的に申しまして、ニーズの高い、また、運用可能性が高い、こういった面から逐次整備をしていくというような構想になるということを私どもとしては期待をしているわけでございます。  また、そういう構想が策定された後の実施という面につきましては、御存じのとおり、新農構の事業でございますとかあるいは農村総合整備モデル事業あるいは融資でございますと公庫資金とかあるいは農業近代化資金、こういったものの活用ということも含めまして、地域の実情に合わせてできるだけ有効な整備を進めていただくように私どもとしても努力をしてまいりたいというふうに考えているところでございます。
  165. 玉城栄一

    ○玉城委員 これは沖縄県だけではありませんけれども、例えば沖縄でいいますと、花卉とか園芸とか野菜を本土の市場に供給しようということで農家の方々が一生懸命やっている。ただ、例えば東京であれば東京の市況がよくわからない、だから私も東京の例えば花の競り市場だとかをずっと回っていまして、毎日毎日市況も変わるし、また、いろいろな好みも変わるわけですからね。そういう生の情報がストレートに地域の、例えば沖縄であればそういう関係する農家の方々に入るようなそういう直結した形のものも入っているんだと私は思うのですが、これはそれと関係ないのですか。
  166. 吉國隆

    吉國政府委員 グリーントピア構想で目指しております情報化の活用の領域といたしましては、先生もお触れになりましたように農業生産面の問題、それからただいまお話のございました流通面の問題、それから農家生活の問題、こういうふうに私ども幅広く考えてまいりたいと考えておるわけでございます。おっしゃいましたように流通面の市況情報を的確にキャッチをし、また消費者ニーズを的確に拾い上げて、それに応じた流通ということを瞬時の情報化技術を駆使いたしましてやっていくということが非常に重要な領域であるというふうに考えております。
  167. 玉城栄一

    ○玉城委員 今おっしゃるように非常に重要な今後の課題だと思うのです。農業技術の情報であるとか農産物の市場情報であるとかたくさんあるわけですよ。農業経営から農産物の販売、地域活動、そういう情報システムをきちっとこれから力を入れてやっていただきたいわけですが、おたくの方で来年度何かそういうことでの制度改正について考えていらっしゃるのですか。
  168. 吉國隆

    吉國政府委員 先ほど関連の補助事業なり融資制度について申し上げましたが、こういったものにつきましては所要の予算、全体御存じのような厳しいシーリングのもとでございますけれども、できるだけのものを確保したいということで要求をいたしております。  なおまた、NTT資金の活用の問題につきまして民間活力型の資金活用という道が開けないかということにつきましても、今大蔵省がアイデア募集をしているというような、俗に言えばそういった段階でございますが、これから私どももそういう点も含めて議論をし、検討してまいりたいと思っております。
  169. 玉城栄一

    ○玉城委員 ぜひ御努力をお願いします。  農水省もいろいろな構想、そういうアイデアの時代かと思うのですが、このマリノベーション構想というのを前から農水省はずっと考えていらっしゃって、これは水産庁の方になるのですが、これは沖縄も調査地域に指定されているわけです。その状況を今後どういうふうに流れとしてなっていくのか御説明をいただきたいのです。
  170. 佐竹五六

    ○佐竹政府委員 このマリノベーション構想でございますが、このねらいといたしますところは、二百海里時代を迎えまして日本の二百海里内の沿岸・沖合漁業の見直しが迫られているわけでございます。  すなわち、一つは水産物の需要が非常に高度化し多様化する。また、失業率三%というような時代を迎えて雇用の場として漁村が見直される。さらにまた余暇時代を迎えて海洋レクリエーションの場としてまた漁村を見直さなければならない。しかも、こういう要請にしたえるために、従来では考えられなかったような自然条件の不利な点を技術によってカバーしていくことが可能になった。  こういう現状を踏まえまして、私どもこのマリノベーションで考えておりますのは水産を核とした地域振興計画、こういうことになるわけでございます。要は地域の特性を生かして、つまりその地域が非常に水産都市であるか、あるいはまた純漁村であるか、そういうような地域の特性を生かしてその活性化を図るということが一つ。それからまた、計画の内容といたしましては、つくり育てる漁業を中心とした漁業生産の振興から流通加工施設の整備、さらに生活環境の整備を一体的にやる、こういうような計画を立てることをねらいとしておるわけでございます。  具体的には、昭和六十年から各地で沿岸・沖合域総合整備開発条件調査検討事業という長い名前でございますが、そういう事業を実施しておりまして、六十年度五地域、六十千年度は十二地域を対象にして実施したところでございます。本年度は沖縄県を含めて十二地域を実施することになるわけでございます。  沖縄県における本調査事業でございますが、先ほど申し上げましたようなねらいを沖縄の地域の特性に生かして具体化するわけでございまして、既に漁港として整備されております糸満市の周辺地域におきまして、まず沿岸ではサンゴ礁を利用した熱帯性海洋牧場を造成する。これは沿岸漁業になるわけでございますが、さらに沖縄の特性でございます回遊魚をねらいにいたしまして、浮き魚礁によるカツオ・マグロあるいはトビウオ、カジキというものの開発を図る。そしてそれらの漁獲物について糸満漁港を多目的に利用することによって水産物の供給ないし地域の開発効果を図るということでございまして、計画年次としては一年間で調査を行うこととしておるわけでございます。  なお、その計画をどのように実行していくかということでございますが、これは第八次漁港整備長期計画、それから第三次沿岸漁場整備開発計画等を現在計画中でございます。さらにまた、新沿岸漁業構造改善事業につきましても、現在その見直しを図っているところでございまして、これらの事業におきましてそれぞれ優先的な採択を図って、県がつくりました計画を事業化していくということを考えているわけでございます。
  171. 玉城栄一

    ○玉城委員 このプロジェクトも大変夢のあるすばらしい事業でございますので、ぜひ推進をしていただきたいと御要望申し上げます。  次に、これは国会でも取り上げられて、また国民の皆さんも大変重大な関心を持ついわゆる豪州輸入牛肉の残留農薬の問題についてですが、これは御存じのとおり沖縄の場合は復帰特別措置によって特別に輸入牛肉の割り当てがされているわけです。農水省それから厚生省、この対策につきましてはきょう国会でお話もありましたので、沖縄についてはどういう対策を両省はとっていらっしゃるのか、また状況はどうなのかをお伺いいたします。
  172. 京谷昭夫

    ○京谷政府委員 御指摘のとおり、豪州産牛肉の少数のサンプルに農薬残留問題が発生した経過なりこれに対する対応措置は御承知のとおりでございます。  また、沖縄におきます牛肉消費の安定のために、お話がございましたように現在沖縄の特別枠ということで割り当てを行いまして、本年度の場合ですと総体で割り当て枠が、年間を通じまして六千二百五十トンという割り当てを行ったところでございます。この割り当て枠の中で、沖縄県内の輸入の衝に当たる団体が適宜輸入先を選びまして選択をしておるわけでございますが、最近の状況を見ますと、この中で豪州産もののウエートは、本年の場合まだ途中でございますので確定的な数値は申し上げられませんが、一昨年、昨年の状況を見ますと二〇%前後というような状況になっております。  いずれにしましても、この豪州産牛肉の問題につきましては、過般御報告あるいは報道されておりますように厚生省が許容基準を決めて、この基準に沿って安全なものが国内に流通されるように方針を決めましたので、農林水産省としても畜産振興事業団、沖縄の場合には関係ございませんけれども、さらにそのほかに関係団体に対しまして、この厚生省の基準に従いましたチェックを十分に行って、安全な牛肉の流通に十分を期するように、沖縄総合事務局に対しまして連絡をとり、沖縄県にも連絡をして、お互いに連絡をとり合いながら関係団体の指導に当たっておるという状況でございます。
  173. 玉城栄一

    ○玉城委員 厚生省の方はどうでしょうか。
  174. 難波江

    ○難波説明員 お答えいたします。  厚生省がとりました当面の対応措置については省略をさせていただきますが、そういうことで対策をとりました八月二十六日以降、那覇検疫所に対してオーストラリア産の牛肉の輸入届けが一件ございました。これについては現在検査を指示してございまして、結果が判明次第、輸入を認めるかどうかの措置を講ずることとしておるところでございます。  さらに、既にその時点で輸入されていたオーストラリア産牛肉につきましては、沖縄県に対しまして、輸入時における今回指示した対処方針に準じて対策を講ずるよう指示をしているところでございまして、現在沖縄県は関係商社等を招集し、基準を超えるものが流通することのないような対応策について協議をしているというふうに承知しておるところでございます。
  175. 玉城栄一

    ○玉城委員 これはお読みになった方もいらっしゃると思うのですけれども、四、五日前の新聞に子猿の奇形問題が大きく写真で取り上げられまして、奇形の原因がやはりこういう農薬に関係するのではないかという報道もあるわけですから、ぜひひとつ両省、特に厚生省の方はこういう問題を今後厳重にやっていただきたい、このように思います。  時間もございませんので、次に食糧庁の方にお伺いをいたしますが、沖縄の場合は、食管法の適用がいよいよ来年から全く本土と同様な状況になって、特別措置が消えていくわけであります。そういうこともあってかもしれませんけれども、沖縄のやみ米追放キャンペーンというのを大々的に食糧庁はやっていらっしゃるので、これはどういうことなのか、沖縄におけるやみ米の実態はどういうことなのか、ちょっと御説明いただきたいのです。
  176. 山田岸雄

    ○山田(岸)政府委員 お答えいたします。  数量的な問題等につきましては、事の性格上はっきりつかめないわけでございますが、従来から多少なりとも本土の方から良質米を中心としたものが持ち込まれておる、これがほかのコンテナなどと一緒に入っておるのではなかろうか、こういうようにも聞いておりまして、私ども食管法の健全な運営を図っていくためには、やはり正規のルートを通じて政府米なり自主流通米が販売されるということが好ましいわけでございますので、出先機関ないしは沖縄県を通じて、できるだけそういった不正規流通がはびこらないようにということで一応防止策を講じておる次第でございます。
  177. 玉城栄一

    ○玉城委員 それで、お聞きになっているかもしれませんけれども、沖縄では食べるお米がまずいという声をよく耳にするのです。私もそういう体験を持つわけですが、食糧庁の方は決してそんなはずはないということを盛んにおっしゃるわけです。それで、これは御飯の炊き方に問題があるのか、水に問題があるのか、沖縄に持ってくる輸送の段階に問題があるのか、あるいは沖縄で保管している段階に問題があるのか、どの辺に問題があると思いますか。
  178. 山田岸雄

    ○山田(岸)政府委員 お答えいたします。  お米がまずいかどうかにつきましては、非常に細かく観察してみますと、まず最初にお米の品種がどんな品種のものであるかという点から始まるのではなかろうかと思うわけでございますが、そのほかに、同じ品種のものにありましても、収穫、調製段階において水分を過度に飛ばした過乾燥になりますと味が落ちるとかいう問題もあるわけでございます。さらに、収穫されて消費者の口に入るまで相当の時間があるわけでございまして、特にとれ秋、直ちに食べられるものと、また端境期ということになりますれば約一年間の期間があるわけでございます。  その間いかなる環境のもとに置くかということにつきましては、私ども政府米にあっては夏の気温の高くなるもとにおきましては品質の劣化が激しい、こういうことにも相なっておりますので、摂氏十五度C以下の低温倉庫に保管いたしまして、梅雨季以降も米をそういった好条件のもとに置いて品質の劣化を防止しようと考えておるわけでございますし、沖縄に本土から輸送しておるものにつきましても、御案内のように沖縄で消費されておるものが大体七万八千トンぐらいであったかと思うのですが、そのうち島内産のものが二千トン弱でございます。あと七万五、六千トンのものが政府米と自主流通米で本土から供給されておる。それらの運送につきましても、沖縄は温度が高くなることが多うございますので、沖縄で長期間保存するよりは、むしろ内地において低温倉庫その他にも保管しておきまして、一月に大体四回ぐらい千五百トン程度の船で輸送してやる、また、輸送されたものについてはできるだけ短期間のうちに精米し、販売していただこう、こういうふうに操作しておりますが、手持ち在庫等も必要なわけでございますし、そうした手持ち在庫については低温倉庫に保管するという手だてを講じておるわけでございます。  さらに味の問題につきましては、精米を長期間高い温度のもとに置いておきますと、これまた品質劣化が激しいということもございますので、精米にされて以降はできるだけ早く消費者の口に入るように、こういうことを販売業界の方々にも励行してもらうよう指導もしておるわけでございます。また、家庭に入りまして御飯の炊き方というのも非常に微妙でございまして、できるだけ一時間ぐらい前に洗って水につけておく、こういうこともおいしい御飯の食べ方に関連するようでございまして、いろいろ万般の事情が総合的に作用して最終的な消費者の舌の感覚として評価されるものであろう、そのように私どもは理解しているわけでございます。
  179. 玉城栄一

    ○玉城委員 ちょっと時間がございませんので、沖縄に持っていくお米、いろいろ食糧庁の方から伺いますと、東北、四国、九州1やはり夏場というのは低温でなくてはならない、いわゆる十五度以下の状態が望ましいということをさっきもおっしゃいましたね。そうすると、東北から沖縄まで千二百トンから千五百トンの船で運んでいく。最低四泊五日はかかります。夏場の船の中の倉庫の暑さというのは、クーラー装置というか、その辺はどうですか。私は、米の品質管理というのは食糧行政の中で非常に重要な柱だと思うのです。ですから、その辺には問題がないのかどうか。低温倉庫といいましても、保管倉庫がみんな低温ではないわけですから、その辺いかがでしょうか。
  180. 山田岸雄

    ○山田(岸)政府委員 今の運送状態における品質劣化というのは期間も短いわけでございますが、航海日数等が長期にかかる場合におきましては、ベンチレーションなどを十分働かせるというようなことも考えられるわけでございますし、また今先生指摘の沖縄の倉庫につきましては、主食用のものについてはおおむね低温保管するだけの収容力はある、このように私たちは見ておるわけでございます。大体一万トン弱でございますが、その程度の低温倉庫の設備は沖縄にございます。しかしながら、泡盛の原料の砕米等につきましては、年間一万二千トンぐらいの需要量があるというように記憶しておりますが、それをも全部低温倉庫に入れ得るかどうかということになりますとその辺までの収容力は沖縄の方には全体としてはないのじゃないか、こういうように見ておりますが、主食用のものはおおむね低温保管が可能だと見ておるわけでございます。  沖縄のお米の味の問題につきましては、内地におきましては全国平均で大体四割ぐらい自主流通米がウエートを占めておるわけでございます。東京都あたりでは六割ぐらいが自主流通米というようなことでございますが、沖縄にありましてはだんだんとふえてまいりまして、現在七万八千トンのうちの一万数千トンが自主流通米になっておるような次第でございまして、これらの比率もだんだんとふえてまいりますれば味の方もよくなってくるのではなかろうか。いずれにいたしましても、品質その他の劣化しないような方向で流通関係の業界の方々また私どもの需給操作等もやってまいりたい、このように私ども考えております。
  181. 玉城栄一

    ○玉城委員 時間ですから、最後に一点食糧庁の方に御質問しますが、今もおっしゃいましたようにだんだん味もよくなってくるだろうということは、暗にやはりまずいということを認めていらっしゃるようなことなんです。お米の値段も特別措置等がありましたから差がありましたがもう一緒になりましたから、食管法が沖縄も完全に本土並みに適用されるという一つの区切りとしまして、そういう沖縄で食べる米はまずいというふうにお聞きになっていらっしゃると思うのですが、我々もよく聞くわけですが、そういう汚名を返上するためにも食糧庁が本格的に、こういう大きな広告を出してやみ米追放も結構ですけれども、お米について何か沖縄県民にアピールすることを考えることが必要だと思うのですが、いかがでしょうか。
  182. 山田岸雄

    ○山田(岸)政府委員 お答えいたします。  この問題につきましては、お米に関係する販売業者の方々またそれを指導していただく県の担当の方々、こういった関係の方々と今後とも十分協議しながらお米の味につきましてはできるだけ好評を得るように努力してまいりたいと思っております。
  183. 玉城栄一

    ○玉城委員 時間も参りましたので、サトウキビの問題とパインの問題、それから林業の問題をお伺いしたかったのですが、これはまた次の機会で、サトウキビの問題はまたもう一回価格の問題でお伺いする機会があると思いますので、一応きょうはこれで終わります。ありがとうございました。
  184. 玉沢徳一郎

  185. 藤田スミ

    藤田委員 まず最初に、養鶏問題についてお伺いをいたします。  この問題はマスコミ各紙も取り上げましたし、我が党の山原議員の当委員会での質問もございました。私も地元で養鶏業者の陳情を受けたわけですが、卵価がここまで下がってくるともう経営のめどが立たないのだという深刻な訴えを聞いております。その点、卵価下落の大きな原因になっております大手企業養鶏のやみ増羽は極めて許すことのできない問題だというふうに言わざるを得ません。したがって、このやみ増羽に対する厳正な態度が今後の卵価安定にとって不可欠のものと言えると思います。  そこで、このやみ増羽問題、たびたび取り上げられておりますが、阪神鶏卵グループについてお伺いをしたいわけです。この阪神鶏卵グループは島根県の羽須美村、ここで四十万羽というやみ増羽を計画しておりますが、農水省は現在この羽須美村の実態及びこの地域での他の養鶏農家に及ぼす影響をどういうふうに把握していらっしゃるか、まずそこからお答えをいただきたいのです。
  186. 京谷昭夫

    ○京谷政府委員 鶏卵の需給失調及びこれに伴う鶏卵価格の低迷の状況につきましては、私ども大変憂慮をしておるわけでございます。最近の卵価の状況をまずお話し申し上げておきますと、季節変動もございまして、お盆過ぎから若干回復基調をたどっておりまして、本日東京での市場価格キログラム当たり百六十八円というレベルにまで回復をしてきております。  いずれにしましても、基本的に需給失調の状況を招来しております一つの要因としまして、御指摘のような計画生産に従わない養鶏が各地域において行われておるという問題がございまして、その一つとしまして、いわゆる赤玉と呼ばれる卵につきまして、ひなの生産から卵の流通に至る過程をグループ化していくという構想のもとで生産拡大を進めていく事例が生じております。御指摘のございました島根県羽須美村における問題もその一環として生じておる問題でございまして、老朽化した地元の鶏舎の建てかえ等を契機にしまして、ただいま申し上げました全国的なグループ化構想のもとで島根県におきまして鶏舎を十棟ほど建設をしてその構想を実現していくということで、八月中旬まで私どもの得た情報によりますと四棟が完成をいたしておりまして、八万羽ほどの成鶏が飼養されておるという状況を把握しております。私どもこの生産者に対しましては、計画生産の必要性及び計画生産の枠組みに沿った生産の実施を再三にわたって説得をしてきておりますけれども、まだ現時点におきまして是正措置がとれない状況になっております。大変遺憾でございますけれども、村、県あるいは県の養鶏協会の指導、説得を今後さらに続けてまいりたいというふうに考えております。
  187. 藤田スミ

    藤田委員 おっしゃったように、八万羽がもう既に飼育されているわけです。これは記載羽数枠では二万四千羽、この枠を守るのだ、こういうふうに言っているわけですが、実際にはそうなっていない。赤玉だ、何か白い卵と別の、競合しないように言いますけれども、阪神鶏卵グループはコストダウンをもっと図っていってそして白玉の生産農家にストレートに影響を与えていくのだとは言っていませんけれども、もっと生産コストをダウンさせて白玉並みの卵価にまで近づけていきたいのだ、こう言っているわけです。だから、これは非常に周辺の白玉生産農家にとっては脅威の存在であることは言うまでもありませんが、おっしゃるように二万四千羽、記載羽数枠を守るのだと現地の責任者が言いながら八万羽、これは一体どういうことなのですか。せんだって山原議員の質問に対して畜産局長は、代表者に会って生産調整の枠内での生産活動を行うように要請をすると言いましたけれども、そのとき相手側は何と答えたか、そのことをもう一度お答えください。
  188. 京谷昭夫

    ○京谷政府委員 この阪神鶏卵グループにつきましては、各都道府県あるいは県の養鶏協会を通じました要請、説得と並行いたしまして、グループの首脳部に対しまして私ども国といたしましても地方農政局あるいは本省の担当者を通じまして計画生産の理解あるいは計画生産の枠組みに沿った生産の実施ということを強く要請してきておるわけでございます。直接、当事者の発言の詳細はともかくといたしまして、それなりの自分たちの構想についての説明を述べた上、計画生産についてどのような対応をしていくかについては検討していきたいというふうな発言も聞いておりますけれども、具体的にまだその成果を得ておりませんが、私ども、粘り強く相手側の理解とそれに沿った計画生産枠組みへの対応を要請していきたいと考えておるわけでございます。
  189. 藤田スミ

    藤田委員 私は、子供の使いじゃないのですから、その要請をした相手がそれに対して幾らお約束を口先だけで繰り返しても、現に記載羽数の二万四千羽が八万羽にふえている、そして堂々と四十万羽にしてやるのだということを豪語している、そういう姿勢では本当に養鶏農家の不安にこたえることができるのかということを言わざるを得ません。  私は島根県の地元の県養鶏協会の福田定夫さんという会長さんからお手紙をいただきまして、ここに切々とした訴えがございます。おっしゃるようにこの県養鶏協会というのは養鶏農家七十二名で組織しておりますけれども、この養鶏農家一軒当たりに大体七千羽ぐらいずつ、今まではそれで違反者はなかった、無断で増羽する者もなく記載羽数を守りながらずっと今日まで営業を進めてきた。ところが、阪神グループによる四十万羽というような大変なものが出てきて、今その阻止運動に立ち上がっているのだ。「先方は着々工事を進め計画の十棟もほぼ完成に近く鶏も現在八万強の物が入り生産が進んでいる実情でございまして、養鶏協会も行政当局と共に去る八月十二日にも実情調査と羽数ワクを守る様指導の為現地に入りましたが、国の示しております行政指導にも大きな拘束力もございませんので、先方の主張と私共の主張が平行線をたどり計画生産指導の無力さをまざまざと見せつけられた場面もございました。」こういうふうに言っているわけであります。最後に「正直者が馬鹿を見ない養鶏施策が進められ、養鶏農家が安心して仕事に励む日が来ますことを心より念願致しておるものでございます。」というふうに結んでおられますが、まさに切実な思いで苦労している零細養鶏農家を農外資本の攻勢から守っていく強力な行政指導並びに法規制で国が対応していく、そういうことが求められているのじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
  190. 京谷昭夫

    ○京谷政府委員 私ども、現在の鶏卵の計画生産につきましては、生産者団体の皆さん方の御協力も得ながら全国、地域あるいは県の段階で需給調整協議会というものを設けて御相談をし、その実効を期しておるわけであります。また、並行して日本養鶏協会を通じました自主減羽運動といったものもその推進に努めておりまして、これらを通じて鶏卵需給の安定、価格の安定を期したいと思っております。  また、こういった官民一体となった努力あるいは民間団体の自主的な努力に対応しまして、御承知のとおり、この計画生産のフレームに参画をしない養鶏家に対しては再三にわたって指導すると同時に、各種の政策的な援助、例えば施設の整備に関する補助金あるいは制度融資を遮断しますと同時に、価格低落時におきます価格補てん事業を行っております卵価安定事業から排除するというふうないわゆるペナルティー措置を課してこの実効性の確保に努めておるわけでございます。  自由経済のもとで養鶏産業がこれまでに発展した経過を考えますと、法制化というふうな形で権力的な統制をしてこれを実行するということについては、私ども率直に申し上げまして消極的でございます。違反者に対する指導をさらに徹底し、またペナルティー措置をより厳正に実施していくことを通じて計画生産の円滑な実施に努めてまいりたいと思っておりますが、特に権力的な介入をする法制化問題につきましては、産業の実態、実情に必ずしもそぐわないし、また法律論といたしましても営業の自由あるいは財産権に対する制限というふうな大変難しい問題がございまして、私ども、現在のシステムをできるだけ着実に粘り強く実行していくことが現実的な方策であると考えておる次第でございます。
  191. 藤田スミ

    藤田委員 大体この阪神鶏卵グループなどというのは、初めは表面に出てこないのです。そして、その地域で莫大な負債を抱えている農家に目をつけてそこに借金援助をするというような形で、その人を現場責任に置いてそしてずっと計画を進めていって、言うことを聞かないでどんどん増羽していくという形をとっているわけですから、権力的な統制と法制化のことをそういうふうにおっしゃいますけれども、権力的な統制ということじゃなしに、まさに産業の実態に即して本当に養鶏農家を守っていくという立場で必要なものなのだ、私はそういうふうに考えています。ペナルティー措置を厳正に行うのは当然のことでありまして、私は改めて法制化ということを要求しておきたいと思います。  ところで、養鶏業者の救済手段であります卵価安定基金につきましては九月で底をつくという状況で、九月に入ったら救済手段もなくなる。幸いに卵価の方は、今お伺いするとかなり変わってきているということなのですが、もし九月に入っても八月のような状況が続いた場合国としても出資をする、あるいはまた卵価安定基金が借金をした場合に利子補給をするなどの検討ということは必要じゃないか、そういうふうに考えますが、いかがでしょうか。
  192. 京谷昭夫

    ○京谷政府委員 御承知のとおり、生産者の自主的な共済組織として卵価安定基金の制度があるわけでございます。これに対して団体の御要望も承りながら所要の財政援助を行っておるところでございますけれども、現在の時点で、七月末現在でございますが、補てん金財源の残額が、二つの基金がございますけれども、これを合算して約二十四億円余り残存しておる、こういう報告を聞いております。  卵価の状況を踏まえてこの支払いがどのように行われていくかということについては、両基金におきまして今後またいろいろな検討が行われようかと思います。私どもとしては、現下の財政事情から考えますとさらなる財政援助というのは大変無理であるという考え方を持っておりますし、また今後、計画生産の徹底あるいは鶏卵価格の季節変動ということを考えますと、この財源によって本年度を切り抜けることは可能ではないかというふうに考えておるわけでございます。
  193. 藤田スミ

    藤田委員 液卵公社による卵の市場隔離は、七月までに三千トンなされたわけでありますが、八月はどの程度になりますか。また、九月についても卵価安定のために市場隔離を進めるべきだというふうに考えますが、どうでしょうか。さらに、会計検査院による卵価安定基金への調査が入って以降、卵価安定基金からの支払いがスムーズにいかないというような声を私たちは聞いております。これは末端の養鶏農家から訴えられております。「羹に懲りて膾を吹く」という言葉がありますけれども、そういうことでは困るわけで、迅速に対応していただきたいと思いますが、できるだけ簡単に御答弁をお願いしたいのです。
  194. 京谷昭夫

    ○京谷政府委員 余剰卵の市場隔離は、実は二つの方法で行われております。一つは液卵公社による買い入れ保管であります。これは七月までで三千トン強でございますが、八月は七百トンの見込みでございます。さらにもう一つの方法として、生産者団体の調整保管がございますが、これは八月から実行に着手をいたしておりまして、八月中に約一千トン程度行われるであろうという見込みであります。なお、九月以降の状況に対応する市場隔離の考え方でございますが、先ほど申し上げました卵価の状況から考えて、恐らく発動する必要はないのではないかというふうに思っておりますけれども、もしそのような事態になりますれば、液卵公社による買い入れ処理ということを重点に考えてまいりたいというふうに思っております。  それから、卵価安定基金からの補てん金の支払い遅延問題でございますが、年度当初におきまして会計検査院から指摘を受けた問題がございまして、末端での補てん金支払いがやや円滑を欠いた地域もあるやに聞いてございます。六月までの補てん状況を見ますと、所要額の約九七%の支払いは既に完了しているとの報告を聞いておりますが、残額につきましては一部の県においてまだ基金本体の方に請求が行われておらないということで、若干遅延しているとの報告であります。会計検査院からの指摘という問題もあって、若干の事務的な混乱はあろうかと思いますけれども、また実情を聞きまして正常な補てん金支払いが過度におくれることのないようよく注意をしてまいりたいと思います。
  195. 藤田スミ

    藤田委員 それでは次の問題に移ります。  化粧野菜の問題について聞きたいわけです。野菜への燐酸塩使用は、昨年の六月五日に厚生省が通達を出しまして禁止されることになったわけです。ところが、年が明けてことしの八月十九日、東京都の発表でも五百七十一件の野菜のうちの二三・三%もの野菜への燐酸塩使用というものが見つけられたわけです。昨年の調査結果二六・九%をやや下回った程度であります。レンコンなどは去年の三倍ふえている、こういうことでありますし、さらに野菜への使用が法律で禁止されている亜硫酸塩も見つかっているありさまで、現在の規制の仕方ではとても十分じゃないと言わざるを得ないわけです。現にことし、「食品衛生研究」という雑誌があります、この八月号で、燐酸塩については「業界での問題意識が薄いことが判明した。」こういうふうに述べられております。厚生省は昨年の発表のときに、さらに強い措置をとるかどうかはもう少し様子を見てから判断をしたい、こういうふうに言っておりますが、やはり行政指導ではなく食品衛生法本法に取り込んで、そして食品衛生法本体で罰則も入れる中で規制を強化すべきではないかと考えますが、いかがでしょうか。
  196. 内山壽紀

    ○内山説明員 生鮮野菜などに対します燐酸塩などの食品添加物の使用につきましては、このものが生体構成成分の一つでありまして、安全性が高いものと考えておりますが、消費者の商品選択の際、その鮮度、品質に関する判断を誤らせるおそれがあることから、その使用を行わないよう、先ほど先生の御指摘のありましたように昨年の六月に指導通知を出したところでございます。その後、この通知に基づきまして、農林水産省とも協力しながら指導を行っておりまして、一部の生鮮野菜等では食品添加物の使用が総体的に減る傾向が見られております。現在、都道府県などに対しましてこれまでの指導、検査実績の取りまとめを依頼しているところでございまして、その結果等を見まして、農林水産省とも連携しながら今後の対応を検討していきたいということでございます。
  197. 藤田スミ

    藤田委員 燐酸塩については安全だ、安全だ、こうおっしゃいます。しかし、これは食品添加物として相当広範囲にいろいろなところで使われているわけです。そして、例えば去年の第四回国際毒科学会議で東邦大学の大本助教授などは、この燐酸塩の過剰摂取は、老化と同じ腎臓障害だとかカルシウムを奪って骨の障害を起こすとか筋肉萎縮を起こす作用があるというような研究報告も行われているわけです。いずれにしても、安全、安全と言いますが、そういうことも指摘されているわけです、ここで議論しようとは思いませんが。  まして、本来使ってはならないという野菜への燐酸塩の使用は、当然法律に基づいて規制する、これが本来の筋ではありませんか。二六・九%が二三・三%にしか減っていない、こういう状態で少しも状況は変わっていないわけですから、私はもっと実効あるものに責任を持って行うべきだと考えるわけであります。もう一度お答えください。
  198. 内山壽紀

    ○内山説明員 燐酸塩の安全性につきましては、これは生体構成成分等でもございまして、相当に安全性は高いものと私どもは理解しております。なお、先ほど申し上げましたように、現在取りまとめをしておりますこの一年間の全国的な指導、検査実績あるいは燐酸塩の使用のあり方、及び先ほど来申し述べております安全性の高い燐酸塩の本質等の要件を総合的に勘案いたしまして、今後いかにすべきかについては検討していきたいと考えております。
  199. 藤田スミ

    藤田委員 農林水産省にお願いします。  農作物に対する信頼を確保していくためにも生産や流通の段階で燐酸塩は使用しない、これは法律以前のモラルの問題だと思うのです。だからそういう立場で指導を強化すべきだと考えます。いかがですか。
  200. 谷野陽

    ○谷野政府委員 ただいま厚生省から御答弁がございましたように、燐酸塩につきましては野菜に使用することは法律上は禁止をされていないわけでございますけれども、生鮮野菜類の鮮度を誤認させる原因になるということでございまして、野菜の生産、流通、消費の健全な発展を図る見地から決して好ましくないというふうに考えまして、昨年都道府県を通じましてこのようなことは厳に慎むように指導したところでございます。先ほど御指摘がございました東京都の調査結果も私どもも入手をいたしておりまして、早速再度農政局を通じまして関係の都道府県に対しましてその前に出しました指導通達の徹底方につきまして連絡をとっておるわけでございまして、今後さらに努力をしてまいりたいというふうに考えております。
  201. 藤田スミ

    藤田委員 私は、農水省としてこういう問題に本当に腰を据えた積極的な指導を進めていただきたいということを再度要請をしておきます。  また、厚生省の方はもともとこれは禁止をしようということで通達まで出して指導しているわけですから、その本旨が本当に全うするようにしていくために、やはりここら辺でその成果を振り返って効果がなければ次の対応へとその強化の段階を進めていくということで、ぜひとも検討をしていただきたい、法制化ということもぜひ検討していただきたいということを申し添えまして、私の質問を終わります。      ————◇—————
  202. 玉沢徳一郎

    玉沢委員長 第百七回国会、宮崎茂一君外五名提出、流通食品への毒物の混入等防止等に関する特別措置法案を議題といたします。  本案につきましては、第百七回国会において既に趣旨の説明を聴取いたしておりますので、これを省略いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  203. 玉沢徳一郎

    玉沢委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————  流通食品への毒物の混入等防止等に関する特   別措置法案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  204. 玉沢徳一郎

    玉沢委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本案審査のため、明二日、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  205. 玉沢徳一郎

    玉沢委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次回は、明二日水曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時十三分散会      ————◇—————