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1987-07-29 第109回国会 衆議院 農林水産委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十二年七月二十九日(水曜日)     午前十時三分開議 出席委員   委員長 玉沢徳一郎君    理事 近藤 元次君 理事 鈴木 宗男君    理事 月原 茂皓君 理事 保利 耕輔君    理事 松田 九郎君 理事 串原 義直君    理事 水谷  弘君 理事 神田  厚君       阿部 文男君    上草 義輝君       尾形 智矩君    大石 千八君       大石 正光君    大原 一三君       太田 誠一君    菊池福治郎君       小坂善太郎君    桜井  新君       谷垣 禎一君    中尾 栄一君       野呂田芳成君    森下 元晴君       保岡 興治君    柳沢 伯夫君       山崎平八郎君    五十嵐広三君       石橋 大吉君    田中 恒利君       竹内  猛君    辻  一彦君       前島 秀行君    玉城 栄一君       藤原 房雄君    吉浦 忠治君       藤田 スミ君    山原健二郎君  出席国務大臣         農林水産大臣  加藤 六月君  出席政府委員         農林水産大臣官         房長      甕   滋君         農林水産省経済         局長      眞木 秀郎君         農林水産省構造         改善局長    鴻巣 健治君         農林水産省農蚕         園芸局長    浜口 義曠君         農林水産省産         局長      京谷 昭夫君         農林水産技術会         議事務局長   畑中 孝晴君         食糧庁長官   後藤 康夫君         林野庁長官   田中 宏尚君         水産庁長官   佐竹 五六君  委員外出席者         北海道開発庁水         政課長     佐々木賢一君         防衛庁教育訓練         局訓練課長   柳澤 協二君         防衛施設庁施設         部連絡調整官  芥川 哲士君         国土庁大都市圏         整備局筑波研究         学園都市建設推         進室長     野村 信之君         外務省北米局安         全保障課長   岡本 行夫君         外務省経済局漁         行室長     野上 武久君         農林水産省経済         局統計情報部長 松山 光治君         海上保安庁警備         救難部警備第一         課長      垂水 正大君         建設省河川局治         水課長     近藤  徹君         自治省行政局振         興課長     吉原 孝司君         自治省税務局固         定資産税課長  佐野 徹治君         農林水産委員会         調査室長    羽多  實君     ————————————— 委員の異動 七月二十九日  辞任         補欠選任   木村 守男君     大石 正光君   佐藤  隆君     桜井  新君   田邉 國男君     尾形 智矩君 同日  辞任         補欠選任   尾形 智矩君     田邉 國男君   大石 正光君     木村 守男君   桜井  新君     佐藤  隆君     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  食糧管理法の一部を改正する法律案内閣提出  、第百八回国会閣法第六〇号)  大豆なたね交付金暫定措置法の一部を改正する  法律案内閣提出、第百八回国会閣法第六一号  )  農林水産業振興に関する件(捕鯨問題等)  鯨類捕獲調査実施等に関する件      ————◇—————
  2. 玉沢徳一郎

    ○玉沢委員長 これより会議を開きます。  農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。神田厚君。
  3. 神田厚

    神田委員 昨日に引き続きまして捕鯨問題について御質問をいたします。  昨日来の大臣答弁を聞いておりますと、昨日、本日の委員会の意向を踏まえて、政府としていろいろな決断をしていただけるような考え方でもあるようでありますが、まず最初に、捕鯨問題の経過等につきまして大臣並びに水産庁長官の御意見を伺いたいと思うのであります。  捕鯨問題につきましては、国際捕鯨委員会における捕鯨禁止動き米国の対日漁獲割り当て量についてここ数年の動きを見ておりますと、昭和五十七年七月の第三十四回IWC会議商業捕鯨禁止決定をされ、我が国は十一月にこの決定に対しまして異議申し立てを行ったのであります。しかしながら、五十九年十一月に日米間で協議を行い、日本異議申し立てを撤回する見返りとして、米国モラトリアム発効後、二漁期分、すなわちことしまででありますが、捕鯨についてはPM法及びペリー法の発動は行わないとの約束をしたのであります。この協議結果に基づきまして、翌六十年の四月には異議申し立てを撤回する旨の閣議決定が行われ、その効果は来年四月から発効することになっております。このようなことで我が国商業捕鯨はとりあえず終了することとなっておりますけれども、この背景には米国パックウッド・マグナソン法圧力があったからであるというふうに私ども考えております。  昭和五十九年の対日漁獲割り当て量は百十六万トンでありましたが、その水準を維持する限りにおきましては、商業捕鯨をとめることにもそれなりの理由があったわけであります。しかし、その後の米国からの割り当て量は、昭和六十年に九十万トン、昭和六十一年に四十五万トン、ことしはわずかに七万五千トン、当初割り当ては二万五千トンであります。このような経過を見ますと、米国長期戦略に乗って商業捕鯨もやめさせられたし魚も失った、こういう結果になり、言ってみればだまし討ちに遭ったようなものであります。これは米国水産外交が巧みであったということであるわけでもありますが、政府の見通しの悪さと外交のまずさの結果である、このようにしか言いようがありません。  私は水産外交を見ておりますと、日ソにしろ日米にしろ、長期戦略に欠けると思われてならないわけであります。昨日、参考人として出席をいたしました海員組合土井一清組合長さんが、日本水産外交はもっと決然として長期的な戦略をもって行うべきだということを強調しておりましたけれども、私もまさに同感の思いであります。こういうふうな状況でありますから、点もとれない、鯨もとれなくなってしまった、こんなふうな状態になったわけであります。しかも、さらにごく近時点にはアメリカ沖合いの二百海里外の、つまり公海におけるところの漁獲禁止をされるというような状況だというふうに聞いております。  以上述べましたけれども、これらのことについてどういうふうに水産庁長官並びに農林水産大臣はお考えになっておるのか、さらに、これからの水産外交の基本的な姿勢につきましても同時に御答弁をいただきたい、このように思うのであります。
  4. 佐竹五六

    佐竹政府委員 捕鯨並びにアメリカ二百海里内における漁獲割り当てにつきましては、ただいま先生指摘のとおりでございまして、確かに結果的に見れば商業捕鯨もできなくなり、かつ、クォータも減らされたという格好になっておることは事実でございます。しかしながら、この鯨の問題の有無にかかわらず各国が二百海里体制をしき、その二百海里内の漁業資源自国漁民のために最も有利に活用する、こういう方針をとっていることは、これは鯨の問題の有無にかかわらないわけでございまして、今後の我が国遠洋漁業を守るためには、諸外国はそのような方針で臨んでくることを前提に対応してまいらなければならないというふうに思うわけでございます。  したがいまして、御指摘の五十九年十一月の日米捕鯨に関する取り決めにつきましても、その時点で直ちに、当時九十万トンの割り当てを確保したわけでございますけれども、それを失うことなく、五十九年、六十年というふうに割り当てがなお継続されていたという点でやむを得ない選択ではなかったかというふうに考えているわけでございます。今後は私どもは、日本漁船を排除することはそれぞれの国にとってもマイナスになる、そういうような関係をつくり上げていくことを基本に我が国遠洋漁業を守ってまいりたい、かように考えている次第でございます。
  5. 加藤六月

    加藤国務大臣 捕鯨問題の対処につきましては、政府としてはそのときどきで最大限の努力をしてきたところでございます。今後とも政府としては諸般の状況に留意をしながら、いかに国益を確保するかという視点に立って水産外交を推進していく所存でございます。
  6. 神田厚

    神田委員 捕鯨問題の途中でありますが、ただいま田中控訴審判決の結果が出たようであります。ニュースによりますと、二審も懲役四年の実刑判決、つまり一審判決を支持して控訴棄却という結果であります。このことにつきまして、加藤農林水産大臣ロッキード事件当時運輸政務次官の職にありまして、本件発覚時に灰色高官というような形の嫌疑をかけられたこともございました。ただいまロッキード事件控訴審判決が下されている最中でありますが、現在農林水産大臣の要職にあります大臣のこのロッキード判決控訴審棄却実刑判決の所感をお伺いしたいと思うのであります。
  7. 加藤六月

    加藤国務大臣 控訴審判決の中身は私まだ聞いておりません。  それから、私自身につきましては、昭和五十一年のロ特ではっきり関係はないということを申し上げております。判決文をいずれゆっくり読ませていただきたいと思いますが、司法におけるそういう判決は厳粛に受けとめなくてはならないと考えております。
  8. 神田厚

    神田委員 続いて捕鯨問題に入ります。  調査捕鯨中止勧告の問題でございますが、ことしのIWC委員会の結果につきまして、これからの政府の対応についてお伺いをしたいと思うのであります。  ことしのIWC委員会では、日本提出をしました南氷洋での鯨類調査捕獲計画につきましての勧告採択をされたわけでありますが、長官中止勧告ではなくて延期勧告だとしきりに強調されております。しかし、勧告文を見ますと、科学委員会調査手段についての不確実性が解決されるような時期まで差し控える、こういうことになっておりまして、またキャリオ提案は、科学委員会で合意が得られない場合は本会議で再度検討する、こういうことになっておるわけでありますから、反捕鯨国の多いIWC中止勧告をしたと理解しているというふうにこちらの方でも理解をするのが正しいのではないか。実質的には韓国アイスランド等に対する勧告と何ら変わりはないと考えられる面もありますけれども、この点につきましてはどのようにお考えでありますか。
  9. 佐竹五六

    佐竹政府委員 現在のIWCの運営の状況から見まして、そのような御判断一つ考え方であろうかと思います。ただ、私どもといたしましては、韓国に対する勧告我が国に対する勧告とは明らかに表現が異なっているということはやはり注目いたします。我が国調査捕獲計画内容がそれだけ科学的に十分に詰められ、そのことを反捕鯨国側科学者としても認めざるを得なかったからではないかと思うわけでございまして、そのような観点から延期勧告であることの意味を今後生かしてまいりたい、かように考えているわけでございます。
  10. 神田厚

    神田委員 さらに中止勧告有効性の問題でありますが、日本に対しますところの勧告決議キャリオ提案決議条約第六条に基づく、こういうものであります。昨日もこの条約の問題についていろいろ質問がされておりましたが、本日は外務省からも来ていただいておりますのであわせて外務省の方の御意見も聞かしていただきたいわけでありますが、条約第八条は御案内のように、条約に全く拘束されることなく締約国が独自の判断調査捕鯨を行うことができると、締約国権利を保障しているわけであります。したがって、条約第六条に基づくこれらの決議条約八条に反しているわけでありまして、条約に反する決議はその条約に基づく決議ではなく、また、条約に反する決議案IWC採択したことは締約国条約遵守義務に反し、決議自体が違法であって無効である、このように私ども考えております。そのような意味外務省及び水産庁長官はこの問題についてどのようにお考えでありますか、お聞かせをいただきたいのであります。
  11. 佐竹五六

    佐竹政府委員 御指摘のように、今回の延期ないし中止勧告は八条の趣旨を全く無視するものでございまして、その意味で大変私どもは不当な勧告であるというふうに考えておるわけでございます。  これはIWC条約そのものが、さまざまな見解の国々IWCの中にとどまれるように、八条の規定とかあるいは異議申し立てとかそういうような規定を設けて全体として非常に弾力的にできているわけでございますが、そういうIWC条約の基本的な精神にも反するものであるというふうに考えております点では先生の御意見と全く同じでございます。ただ、六条を見ますと、いかなる事項についても勧告ができるということになっておりまして、これが全く無効であると言い切れるものであるかどうか、私どもは若干疑念を持っているわけでございます。
  12. 野上武久

    野上説明員 お答えいたします。  IWC条約第八条1は、科学的研究のための鯨の捕獲等締約政府判断実施し得る、また、この捕獲等を同条約の適用から除外するということを定めております。今回のIWC会合採択されました決議につきましては、かような意味におきまして条約第八条一の趣旨を損なうおそれのあるものでございまして、そういう意味で大変遺憾な決議であったと考えておりますが、この決議勧告でございまして、法的拘束力を有しておりません。したがいまして、この決議によって条約八条に基づく締約国捕獲調査権利が制約を受けるということはないと考えておりますので、かような意味におきまして、この決議IWC条約違反するとまでは言えないと考えております。
  13. 神田厚

    神田委員 ただいま外務省からも答弁がありましたが、どうもはっきりしないですね。この勧告決議拘束性についてお尋ねをいたしますけれども、私はこのような決議は無視をしてもいいのではないかというふうに思っております。ただ、外務省考え方では、このIWCのいろいろなものに違反をしてはいない。そうしますと、決議それ自体外務省としては最終的に有効だというふうに考えられておりますのかどうか、その点もうちょっとはっきりお答えをいただけますか。
  14. 野上武久

    野上説明員 ただいま申し上げましたとおり、この決議条約八条1の趣旨を損なうおそれのある内容ではございますけれども法的拘束力がございませんので、条約八条に基づく締約国権利を制約するものではない、かような意味におきましてIWC条約違反決議であるということまでは言えないと考えております。
  15. 神田厚

    神田委員 そうしますと、この条約採択に際しまして、一つ米国の行政府の行為を米国裁判所に提訴したらどうか、こういう意見があります。またもう一方では、国際司法裁判所に提訴して白黒をつけたらどうかというような意見もあるわけでありますが、この点についてはどういうふうに考えておりますか。
  16. 野上武久

    野上説明員 お答えいたします。  アメリカ国内裁判所に提訴するという件でございますけれども、現在のところアメリカ側の出方が必ずしもはっきりしないという状況にございますので、現段階米国内法上の司法的救済方向について云々することは適当でないというふうに考えております。  また、今回の決議国際司法裁判所に訴えてはいかがかという御指摘でございますけれども国際司法裁判所規定によりますと、国だけが裁判所に係属する事件の当事者となることができるということでございますので、国際機関でございますIWCを相手取って国際司法裁判所に提訴するということは手続上不可能であると考えております。
  17. 神田厚

    神田委員 それでは、捕鯨存続方針等についてお聞きをしたいと思います。  昨日来の質疑の中でも、どうもアメリカのやっていることがわからないというような意見がたくさん出ておりました。私もちょっと本で読んだのでありますけれども、幕末の日本開港、港を開放せよというアメリカ要求の中には、その当時非常に捕鯨が盛んであって、捕鯨船の補給その他で日本開港が必要であった、こんなふうなことがあると言われておりました。当時は鯨油が産業資源として非常に珍重されたというような時期でもありましたから、一昔前といいますか、ほぼ一世紀前くらいまではアメリカ捕鯨船が盛んに世界の海で鯨をとっておった、こんなふうなことでありました。時が変わって現在になりますと、今度は鯨をとってはだめだというような環境団体の、非常な宗教的な反捕鯨団体圧力で最終的に日本が鯨をとれなくなってしまったというようなことであります。  昨日も日本食文化あるいは伝統、こういうものを平然と破ってそれを押しつけてくる、そういう考え方についていろいろな意見が出ておりました。私もそういう意味で、日本日本として、特に日本の二百海里の中におけるところの鯨をとることなどについては堂々と、それはミンククジラであろうと何であろうと権利主張してしかるべきだというふうに考えておりますし、アメリカのこのような、日本のいわゆる食文化を無視したようなこういう考え方に対しましては強く抗議をして、そして日本側主張をすべきだというふうに考えておりますが、この点についてはどういうふうにお考えでありますか。
  18. 佐竹五六

    佐竹政府委員 御指摘になりました御意見については、私どもも同じように考えているわけでございます。  問題は、いかにしてIWCの中で多数の国々我が国主張を認めさせるかということにかかっているのではなかろうかと思うわけでございまして、今後粘り強く各国に対して働きかけていきたいと思います。また、そのような成果は、今回のIWC会議におきましても、我が国の立場を直接、間接に支持してくれる国々モラトリアム当時に比べて若干なりとはいえふえてきているということに着目すれば、そのようなことも可能性がないわけではない、大変難しい問題であろうと思いますが、可能性がないわけではない、かように考えておるわけでございます。
  19. 神田厚

    神田委員 それでは、調査捕鯨実施の時期であります。  これも昨日来論議になっておりまして、まだ明らかになっておりません。水産庁長官は去る七月三日の私の質問に対しまして「今回のIWC総会勧告決議韓国あるいはアイスランドに対するものと違いまして、延期勧告というようなことになっておる点も考慮しなければならないと思います。」こんなふうに答えております。それでは、調査捕獲をいつから実施する考えなのか、この点について明確にしてもらいたいと思います。
  20. 佐竹五六

    佐竹政府委員 我が国調査捕鯨実施がいやしくも国際的な非難を受けることのないように種々検討すべき事項がございますけれども、それらについて配慮した上でできるだけ速やかに実現を図りたい、かように考えておるわけでございます。
  21. 神田厚

    神田委員 できるだけ速やかにというのは、今漁期において出漁するということに解釈してよろしゅうございますか。
  22. 佐竹五六

    佐竹政府委員 もちろんそれも当然含まれるわけでございます。
  23. 神田厚

    神田委員 今漁期において出漁するのかということに対してそれも含まれるというのは、それ以外のことも考えられるということになるわけであります。私は今漁期において出漁すべきであると考えておるのでありますが、その点はいかがでありますか。
  24. 佐竹五六

    佐竹政府委員 それを目指して最大限努力していきたい、かように考えておるわけでございます。
  25. 神田厚

    神田委員 今漁期において出漁できないことは、やはりこれからの捕鯨存続が非常に危ぶまれるということであります。したがって、今漁期にぜひとも出漁するという決意を水産庁長官自身が固められることを私は希望しているわけであります。  ところで、アイスランドアメリカではいろいろ交渉が裏で行われているということでありますが、日本の場合も米国政府に対しまして、今漁期の出漁を目指してのそういう交渉というものはあるのですか、やっておるのでありますか、いかがでありますか。
  26. 佐竹五六

    佐竹政府委員 これは交渉でございますので、アメリカ側が応ずるかどうかという問題はございます。しかしながら、どういう形になるかわかりませんけれども、私どもとしては、捕鯨もそれから二百海里内の操業も両方生かしていきたい、こういう考えでございますので、何らかの形でアメリカとの交渉を行うことは当然考えなければならないことだと思いますし、またそのためにどういうカードが持てるか、そのカードをあらかじめ私どもとしては準備する必要があると思いまして、現在そのような方向で作業を進めておるところでございます。
  27. 神田厚

    神田委員 ですから、具体的にそういう交渉に入っているのですか、まあ言えない面たくさんあるでしょうけれども
  28. 佐竹五六

    佐竹政府委員 ただいま申し上げましたように、交渉にはカードが要るわけでございます。カードを持たずに交渉に臨みましても、到底こちらの主張を通すことは難しいと考えられますので、そのカードづくりをやっている最中でございまして、現在交渉に入っているということはございません。
  29. 神田厚

    神田委員 先ほど日漁獲割り当ての問題をずっと話しまして、結局当初二万五千トンだ、最終的に現時点では七月の段階で七万五千トンくらいになっているようでありますけれども、そんなふうなことで年々漁獲量自体は減らされる。さらに入漁料は約倍くらいまで上げられる、一トン当たり。そんなふうな状況ですね。したがって、どういうカードを使ってどういう話をするのかわかりませんけれども、今までのやり方では鯨もとれなくなってしまう、魚もとれなくなってしまう、八方ふさがりみたいなものですね。洋上買い付けだけはふやされて、五十六年からはアメリカ日本に対する漁業の輸出は第一位、約二〇%ほどアメリカから魚を買っているというような状況です。したがって、どういうカードでどういう話をするのか。むしろこの捕鯨の問題はそういうカードを提示して取引をするというようなことではなくて、やはり日本主張を堂々と主張して、アメリカに対して説得を続けるという努力が必要ではないかと私は思うのです。結局は鯨もとれなくなってしまった、漁獲割り当てがなくなってしまうというようなことをまた繰り返すということは私は非常にまずいやり方ではないかと思うのであります。その点について、特に今国会この委員会において、本日捕鯨存続決議もするわけでありますから、日本国民意思としてこういう強固な意思アメリカに伝えるということをやるべきだというふうに考えますが、その点はいかがでありますか。
  30. 佐竹五六

    佐竹政府委員 先ほども申し上げましたけれども、二百海里内の資源自国漁民のために最も有利に使おうというのは、これは各国方針でございまして、そのこと自体を不当とかけしからぬとか言いましても一向に沿岸国は影響を受けないわけでございます。特にアメリカとの関係について言えば、アメリカ漁船日本の二百海里内に来て操業しているわけではないわけでございまして、この点がソ連との交渉と全く違う側面を持っているわけでございます。したがいまして、私ども、もちろん主張すべきことはきちっと主張いたしますけれども主張した上で相手方に日本漁獲量を確保させる、日本に対する漁獲量割り当てさせるということをやらなければいけないわけでございます。これはもちろん先ほど来申し上げておりますように、漁業資源はできるだけ自国民に有利に使う、アメリカ漁民漁獲能力がふえるに従って割り当てを減らすというのが基本方針でございますから、これは一定の期間を経れば必然的にゼロに限りなく近くなるわけでございますけれども、私どもはその時間をできるだけ延ばそう、かように考えているわけでございます。  その間に一方、我が国遠洋漁業者もまた対応を考えていくという時間的余裕を持つことができるわけでございまして、私どもはそのような点について現に努力してまいりましたし、今後も努力してまいりたい、かように考えているわけでございます。
  31. 神田厚

    神田委員 水産庁長官の説明もわかりますけれども、三年間で九十万トンあったものが七万トン、十分の一になる、こんなばかげたことはないわけでありますね。それはやはりアメリカにしたって日本漁業の事情をわかっているわけでありますが、しかしながらあえてそういうことをしてくるということに関しては、アメリカ日本に対する漁業的な配慮というようなものは考えられない。したがって、限りなくゼロに近づくというような立場でもしも交渉に臨むということであるならば、それはもう外交交渉というものを放棄したことだと言わざるを得ないわけであります。三年間で十分の一にされてしまったということ自体がやはり非常に問題なのであります。アメリカの二百海里の中で我が国漁業が活動してきた実績とそういう事情があったわけでありますから、そんなことは遠慮することなく堂々と権利主張すべきであって、いろいろなそういう魚のとり方や何かの違いであって、日本の二百海里でアメリカが魚をとる必要もないわけでありますから、そういう意味では、その辺については水産庁長官考え方は非常に後ろ向きだということを断ぜざるを得ないわけであります。  そういうことではなくて、もう少し堂々と主張して、アメリカに対しましてもう少し強腰で交渉に臨まなければいけない。そういう意味で、我が委員会におきましても水産対抗立法というものをつくって待っているわけでありますから、場合によってはこの対抗立法の発動を示唆して交渉に臨むぐらいの立場に立ってもいいのではないか、こういうふうに思いますが、その点はいかがでありますか。
  32. 佐竹五六

    佐竹政府委員 私が申し上げましたのは、主観的な問題は一応離れて客観的にどう動いていくかという見通しを申し上げたわけでございます。現に我が国二百海里内で操業しておりますソ連は、我が国に対して、少なくとも自分の国がメリットを受けると同等の範囲では日本側にメリットを与えよう、こういう態度で臨んでいるわけでございます。ソ連が日本二百海里内のイワシ、サバ資源について評価している限りは、これは絶対ゼロになることはないわけでございまして、そのような意味日米日ソ漁業関係は基本的な性格の差異がある、かようなことを申し上げたいわけでございます。  それからまた、交渉に際しては私どもはあらゆる有効な材料は使うわけでございまして、もちろん従来当委員会で議決された議決も、これは日本国民意思であるということを強調しているわけでございまして、ただいま御指摘の対抗立法についても、そういう動きがあるということもこれは交渉一つの材料になることは間違いないわけでございまして、一々どのような材料をどのように使うかということは交渉の中身でございますので御勘弁いただきたいわけでございますが、およそ使える材料は全部使って何とか我が国漁獲量の確保を粘り強く図っていきたい、かように考えておるわけでございます。
  33. 神田厚

    神田委員 アメリカのこのごろのいろいろな対応といいますか、それを見ていますと、例えば半導体問題でも、ダンピングをした半導体の会社に対する制裁ならばわかりますけれども、その半導体を使った工作機械まで一〇〇%の関税をかけるとか、あるいは東芝機械問題でも、東芝機械に対する制裁は当然あり得るでありましょうが、東芝そのものに対する制裁措置が行われるというようなことを考えてみますと、どうもやっていることが非常にヒステリックだというふうなことを考えざるを得ないわけであります。  水産問題でもアメリカのやっていることを見てみますと、一体これで本当にアメリカの正義が通されているんだろうかということを感ぜざるを得ないわけでありますが、対抗立法を発動することがすべてではありませんけれども交渉に臨むに当たって、もう少し日本の立場を強硬に、明確に主張していかなければ、いつまでたってもこのような追い込まれた水産外交になってしまうということを私どもは大変心配をするものであります。したがって、そういうヒステリックになっているアメリカの今のような状態の中では、譲歩すれば譲歩するだけ日本側が不利をこうむるという形にならざるを得ないという状況考えれば、今回の捕鯨問題は一つの象徴的な問題としてこれを取り上げて、日本は断固決断をして、今漁期におきまして調査捕鯨を、調査捕獲実施すべきだと強く訴えたいと思っておりますが、いかがでありますか。
  34. 佐竹五六

    佐竹政府委員 今回のIWCにおきまして一応勧告がなされている。その勧告はまさにキャリオ提案に基づいてなされたわけでございまして、これはパックウッド・マグナソン法あるいはペリー修正法の発動をしやすくするためにやったことは否定できない事実でございます。そういう環境の中で、私どもとしてはこの捕獲調査も北洋の漁業割り当ても両方確保していきたい、かように考えておるわけでございます。大変狭い道ではございますけれども、何とかそこに活路を切り開いていきたいと考えておるわけでございます。
  35. 神田厚

    神田委員 例えば規模を非常に縮小してやるとか、あるいは残念ながら今漁期はできないで時期がずれるとかいうような場合には、やはり業界では捕鯨を維持するだけの力がない。例えばもっと先になったりするような状況、そういう場合には捕鯨を続けるだけの装置、船とか人員とかそういうものを維持していくことが難しいというようなことを言っております。捕鯨というのは日本の伝統的な一つの文化でもありますし、そういう意味では非常に今希少価値のような存在になってしまいました。これを守っていくということについては、やはり国としてそれを守るだけの決意を持って、しかも具体的な計画を持ってこれを守っていかなければならないと考えておりますが、その点についてはどのように考えておりますか。
  36. 佐竹五六

    佐竹政府委員 先ほど答弁申し上げましたように、私どもは当初計画どおり出漁できるように現在せっかく努力中でございます。したがいまして、万一おくれた場合どうするかという仮定に基づいたお答えができないわけでございます。しかし、確かに御指摘のように共同捕鯨も民間の会社でございますので、万一おくれればいろいろ大変難しい問題が出てくるということは私どもも十分認識しております。
  37. 神田厚

    神田委員 大臣に、調査捕獲実施について決意をひとつお聞かせいただきたいと思います。
  38. 加藤六月

    加藤国務大臣 昨日来申し上げましたように、我が国食文化、伝統あるいはそれぞれの地域における非常に重要な問題等を念頭に置きながら、さらにはこれ以上の国際的非難、攻撃をどうやって防ぐか等もろもろの問題を慎重に検討しながら、最大限の努力をしてまいりたいと考えておるところでございます。
  39. 神田厚

    神田委員 最後に、先ほど途中で大臣に対しましてロッキード裁判についての御感想をお聞きいたしましたが、農林水産委員会という委員会でございましていささか場違いな面があったかと思うのでありますが、農林水産大臣という要職でございますので、御勘弁をいただきたいと思っておるのであります。  ところで、最後の質問でありますが、大臣は、田中審判決の有罪については実刑判決控訴棄却ということを予想しておりましたでしょうか、御感想を述べていただきたいと思います。
  40. 加藤六月

    加藤国務大臣 司法におけるいろいろな判断判決に対し、我々がいろいろ予想することは失礼であると考えておりました。
  41. 神田厚

    神田委員 終わります。
  42. 玉沢徳一郎

    ○玉沢委員長 山原健二郎君。
  43. 山原健二郎

    ○山原委員 加藤農林水産大臣に対しまして最初に、今神田委員の方からもお話がありましたが、本日、いわば世界を震駭させた一国の宰相の問題につきまして判決が出されました。懲役四年、追徴金五億円という一審と同じ判決になっているわけでございますが、この点につきましては政治家の政治倫理の問題といたしまして、またこういうことの再発を絶対に防止するという意味におきまして極めて重大な判決であったと思うのでございますが、これにつきまして加藤農水大臣の御見解をまずお伺いしたいのであります。
  44. 加藤六月

    加藤国務大臣 司法における判決は、これは厳粛に受けとめなくてはならないと考えております。それから、政治家はおのれを持するにさらに厳しく律していかなくてはならないと考えておるところでございます。
  45. 山原健二郎

    ○山原委員 当時灰色高官という言葉もはやりまして、国民としてはやりきれない思いがしておったわけでございますが、ついに今回、控訴棄却という問題も含めまして裁判所の断罪が出たということになりまして、この問題についての裁判上の決着はまさに有罪ということになったわけでございます。これを受けとめる政治家としての重さ、これは当然大臣もお考えになっておると思いますが、かかることが再度起こらないための政治家としての倫理観、これをもう一度お伺いしたいと思います。
  46. 加藤六月

    加藤国務大臣 政治の身にある者は常に身辺を清潔にし、そしておのれを律すること厳にしていかなくてはならないという気持ちは、今後ますます強くしていかなくてはならぬと思います。
  47. 山原健二郎

    ○山原委員 私、捕鯨の問題について質問する予定でございますが、最初に、海上保安庁の方にもおいでいただいておりますので、去る七月二十七日午後八時四十分に起こりましたマレーシア船籍の貨物船ポメックス・サガ号の事件でありますが、当初国籍不明航空機からロケット弾、後で模擬爆弾となっておりますが、これが命中いたしまして乗組員の中に重傷者が出ております。  調べてみますと、鳥島の北約十二キロ、米軍の射爆場が半径、海で五・五キロ、空で九・三キロとなっておりますが、その訓練空域を外れた十二キロの地点においてこういうことが起こっておるわけでございまして、これは今後漁民にとりましても操業の不安がつきまとうわけでございます。去る七月二十三日にも、訓練空域内でありましたけれども、マグロはえ縄漁船の近くに爆発物が落ちるという事件が発生しております。これはたしか自衛隊であったと思います。私の経験では数年前に、これは鹿児島沖でありますけれども、日昇丸事件が起こりまして、このときも大変な事態を起こしたわけでございますが、これについての現在の状況はどうなっているか、その原因はどこにあるかということをまずお伺いしたいのです。
  48. 垂水正大

    ○垂水説明員 お答え申し上げます。  二十七日午後八時四十二分ごろ、沖縄西方の鳥島、この島から北側約十三キロメートルの海上におきまして、マレーシア船籍の貨物船ポメックス・サガ号が被弾したということで、甲板員一名が負傷したという事件が発生しました。  海上保安庁といたしましては、この情報を得ましてすぐに巡視船、航空機を出動させまして、負傷者につきましてはヘリコプターでつり上げまして那覇市内の病院に入院させました。また、当該船舶はその被弾の影響で航行が不能になりまして、この船舶につきましてはうちの巡視船で曳航しまして、昨日午後六時ごろに那覇港へ入港させております。なお、その後昨夜、船舶の調査、船長、乗組員等からの事情聴取を行いましたところ、現在までに判明している内容につきましては、次のとおりでございます。  まず、被弾した位置につきましては鳥島の北約十三キロメートルの地点ということを船長等の供述から得ておりまして、さらに具体的な地点につきましては詳細な調査を行いたいと考えております。  さらに、船内から模擬弾と思われる弾頭が二個、その他複数の金属片が見つかりまして、その弾頭に刻印されております文字等から米軍で使用されております模擬弾と思料しておりますけれども、これにつきましては、詳細については米軍に調査をお願いしているところでございます。さらに、今後米軍とも調整を図り事件解明を図りたいと考えております。  以上でございます。
  49. 山原健二郎

    ○山原委員 日昇丸事件のときは海底から潜水艦が浮かび上がって日昇丸が沈没しまして、船長ほか一名、二名が亡くなっております。しかも、航空機が上空を飛びまして、日昇丸そのものが沈んで船員たちが海に浮かんでいる姿を見ながら飛行機は去っていって、そして結局原因不明という事態になろうとしたときに、たしかあれは米潜水艦ジョージ・ワシントンであるということが後でわかるわけでございますが、こういう事態を見ましてもこの水域が非常に危険な状態であるということですね。  水産庁長官漁民の操業の安全を保障するために今後どういう措置をとるのか、また、これに対する補償はどういうふうな形で要求されていくのか、そのことを伺いたいのです。
  50. 佐竹五六

    佐竹政府委員 自衛隊あるいは米軍の演習につきましては、防衛庁との間で協議いたしまして、事前に水産庁に通報していただくことになっております。私どもはそれを関係の水域で操業する可能性のある漁業団体の中央団体に通知し、中央団体からそれぞれ現場の漁協等に通知されることになっております。また一方、中央無線局を通じまして現場の漁船にその通報が直ちに流れる、そういうシステムをつくっております。今回の事故にそれが有効に作動したかどうかも、私どもとしてはそれぞれ関係の機関に通知したところまでは把握しておりますけれども、現場の漁業者等がそれをどう受け取っていたかということについては、さらに貴重な教訓としてよく調べてみたいというふうに考えております。  補償問題につきましては、これはまだ原因者がはっきり自衛隊というふうに判明したわけではないようでございますけれども、万一そういうふうに判明すれば自衛隊とその漁業者の間で処理されるわけでございますが、水産庁として何かそれに対してなすべきことがあれば当然漁業者の立場に立ってお手伝いしてまいる、かように考えております。
  51. 山原健二郎

    ○山原委員 時間がございませんのでこれ以上質問するわけにいきませんけれども、海上保安庁の今の御答弁で、弾頭が出てくる、刻印は米軍のものであるという確たる証拠まで出てきているわけでして、これに対して適切な抗議をするとかいうようなことは当然やるべきでございます。しかも、訓練空域外でこういう事故が起こるということになりますと、私は四国の高知県ですけれども、足摺岬沖のリマ海域でしばしばこういう事故が起こっているわけですね。タンカーの上に曳光弾が落ちてくる、もうちょっとでタンカーに当たって大事故が発生するなどということがしばしばあるわけですから、そういう意味では、この問題については十分な原因の調査と、そしてこれに対する対応をぜひやっていただきたいということを申し上げて、この問題を終わりたいと思います。  次に、商業捕鯨のいわゆる一時禁止の不当性について質問をいたします。これはもうしばしば質問があったところでございまして、重複すると思いますがよろしくお願いします。  国際捕鯨委員会IWCは国際捕鯨取締条約に基づいて設置された機関でありますから、したがってIWCの活動が条約の精神に沿ったものでなければならぬということは当然のことなんですね。しかも、この点につきまして条約前文では「鯨族の適当な保存を図って捕鯨産業の秩序のある発展を可能にする」ことを条約の目的として明記しているわけでございますから、鯨は保護されると同時に天然資源として利用されるものと位置づけられているわけでございまして、反捕鯨という考え方はこの条約にまず第一番になじまないという点を明確にしたいと思いますが、その点はそのように解釈してよろしいでしょうか。
  52. 佐竹五六

    佐竹政府委員 国際捕鯨取締条約の目的は、鯨資源の適切な保存と有効利用を図るため、科学的根拠に基づき、捕鯨産業及び鯨の消費者の利益を考慮に入れ、鯨資源の合理的な管理を行うことを目指しているわけでございまして、そのような観点から見て、ただいま先生の御指摘されたとおりでございます。
  53. 山原健二郎

    ○山原委員 全く答弁のとおりでございまして、この点をしっかりと踏まえまして、次に、この条約で大事な点は、新たな捕鯨制限措置をとる場合、科学的認定に基づくことが要求されていることであります。科学的認定について重要な役割を果たすのがIWC総会のもとに置かれた科学委員会であるわけでございますけれども、八二年モラトリアム決定の際に、科学委員会としてすべての商業捕鯨モラトリアムが必要などの勧告が出されたのかどうか、この点を伺いたいのです。
  54. 佐竹五六

    佐竹政府委員 そのような科学小委員会決定または勧告は行われておりません。
  55. 山原健二郎

    ○山原委員 いわゆる不確実だという点の指摘によって、そのために不確実な認定によって商業捕鯨の全面禁止決定するなどということは、条約の精神を二重に踏みにじるものでございまして、日本政府はなぜこれに対する異議申し立てを貫くことができなかったのであろうか、この点はいかがでしょうか。
  56. 佐竹五六

    佐竹政府委員 米国の国内法でありますパックウッド・マグナソン法の発動により、アメリカ二百海里内における我が国漁獲割り当て量が半減させられる、このようなことを回避するためにやむを得ず異議申し立ての撤回を行ったわけでございます。
  57. 山原健二郎

    ○山原委員 これは不当な恫喝であって、一国の主権の立場からするならば全く不当なことであることは間違いないのですが、米国圧力問題についてはちょっと後に回しましょう。  反捕鯨国の常套手段は、日本などが科学委員会提出する科学調査データについて不確実性を理由にクレームをつけ、両論併記の形で総会に上げ、総会では数の力で押し切る、こういうやり方ですね。不確実という烙印の最大の口実として、日本のデータが商業捕鯨によって得られたものであることが言われております。それなら、不確実なものを確実な科学的なものにするための科学的調査捕鯨実施は不可欠な問題だと考えるのでございます。彼らの主張からいってもこの調査捕鯨が不可欠な問題であることは明らかだと思いますが、それはどうお考えでしょうか。
  58. 佐竹五六

    佐竹政府委員 鯨に関する従来の情報は、すべて商業捕鯨による現実の捕獲された鯨から得られてきたわけでございます。しかるに、それをもとにいたしまして日本側がいろいろな主張、特に鯨資源、南氷洋のミンク資源が必ずしも枯渇していない、むしろ漸増していると主張したところ、それはデータの根拠に問題ありということが反捕鯨国側科学者主張であったわけでございまして、そのような観点から私ども商業捕鯨による偏りを排除した調査捕獲計画を計画したわけでございます。その意味におきまして、私ども調査捕獲は、先生が今御指摘の不確かさを確かにするためにどうしても必要である、かように考えているわけでございます。
  59. 山原健二郎

    ○山原委員 商業捕鯨モラトリアム決定した八二年のIWC総会では、同時に、九〇年に鯨資源の包括的評価をやることも決めております。そのための科学的データ提供という点からも、調査捕鯨は当然実施さるべきだという点が一つと、しかも条約八条は申し上げるまでもなく、科学的研究のための鯨の捕獲を特別許可するかどうかは締結各国の権限に属することをうたっているわけでございまして、このように見るならば、調査捕鯨実施については論理上も道義上も全く問題はないはずでございます。あとは政府が決断をするのみだと思います。新聞の情報によりますと、調査捕鯨実施方針を固めたとの報道がありますが、明確な決意を大臣からいただきたいと思います。
  60. 加藤六月

    加藤国務大臣 昨日来お答えいたしておるところでございますが、私としてはもちろん調査捕鯨実現に向かって最大限の努力をいたす決意でございます。また一方、これ以上日本に対する非難、攻撃というものをいかにして回避していくかという総合的な判断というものも大切でございまして、国際国家日本として国際的に協調し、協力していくという今日の日本そのものに与えられておる一つの大命題もあるわけでございます。こういうことを総合的に判断しまして、今後方針を明らかにしていきたいと考えておるところでございます。
  61. 山原健二郎

    ○山原委員 何となくきっぱりとしたお答えがいただけないわけでございまして、何となく相手側の非難を回避するという姿勢がいつまでも続いていいのであろうかという感じを持ちます。  いわゆる慎重に対応するという御答弁、昨日もあったようでありますが、この慎重さには米国のさまざまな圧力についての配慮が反映していると推測されるわけでございますけれども、しかし、商業捕鯨モラトリアムに対する異議申し立てを取り下げたときのことを思い起こしてみますと、いわゆるPM法による米国二百海里内での日本への漁獲割り当て削減の恫喝の圧力のもとで鯨をとるか魚をとるかの選択に迫られる、そこで水揚げの大きい魚を犠牲にするわけにはいかないということで鯨を切ってしまう、しかし、現実には日本異議申し立てを取り下げたにもかかわらず、米国二百海里内の日本への漁獲割り当ては八五年度九十万トンから八六年四十七・五万トン、そしてことしはついに七万五千トンに激減をしているわけでございます。結局、鯨も魚も生かせないという事態を生じたのでございまして、この教訓を忘れてはならぬと思います。そういう意味では、いつまでもこういう理不尽な攻撃に対して対米屈服外交をとるべきではないと私は思うのでございますが、大臣のお考えを伺いたいのです。
  62. 加藤六月

    加藤国務大臣 対米屈服外交と言われますと甚だ心外でございます。  昨日来申し上げておりますように、私たちは最大限の努力をする、また各委員の皆さん方からアブハチ取らずになるのではないかという御指摘もございました。私たちはそうではなしに、総合的に判断し、勘案する、こう申し上げておるわけでございまして、米国二百海里並びにそれに関連する漁業者もたくさんおるわけでございますし、また鯨の重要性についても昨日以来いろいろ議論が熱心に行われておるところでございます。そういうことと、そしてまた国際的により非難を少なくしてやるということをぎりぎりまで最大限の努力をするのが私は政府の責任である、こういうことも考えながらお答えをいたしておるところでございます。
  63. 山原健二郎

    ○山原委員 PM法あるいはペリー修正法とかの武器行使を相手がするならば——率直に言って今度の米の問題にしましてもココムの問題にしましても、こちらの弱点を突いてきているわけですね。それに対して我が国も正当防衛的な手段を持つのは主権国家として当然のことでありまして、本委員会で継続審議となっている対米漁業対抗法案を速やかに成立させるために政府努力をすべきではないかと思いますが、この点について現在どうお考えでしょうか。
  64. 加藤六月

    加藤国務大臣 野党の皆さん方が御提出になっております対抗法案、私は昨日来これに対してもお答えいたしておりますが、これは対米対抗法案とは考えていないので、ワールドワイド、世界的な問題であると判断をいたしております。
  65. 山原健二郎

    ○山原委員 時間の関係がありますので、先へ進めたいと思います。  日本の沿岸捕鯨存続できるかどうかにつきましても、IWC総会までに検討がなされることになっております。条約前文では「広範囲の経済上及び栄養上の困窮を起さずにできるだけすみやかに鯨族の最適の水準を実現する」ことがうたわれております。この精神の具体化として、第五条では捕鯨の新たな規制は「鯨の生産物の消費者及び捕鯨産業の利益を考慮に入れたものでなければならない。」と明記しておることは御承知のとおりでありまして、この点からしましても沿岸捕鯨存続さるべきである。この存続のためにどういう手だてをするおつもりなのか、この点を伺いたいのです。
  66. 佐竹五六

    佐竹政府委員 我が国の沿岸小型捕鯨につきましては、現にIWC条約の枠組みの中で原住民生存捕鯨として認められておる捕鯨と同様な性格を持つ部分があると考えておるわけでございます。現に認められておる原住民生存捕鯨アメリカ、ソ連、デンマーク、それから本年からセントビンセントについて認められたわけでございます心したがって私どもとしては、我が国の沿岸小型捕鯨のうち商業捕鯨の要素を払拭したものに限定して生存捕鯨として提案し、来年のIWCで認知させていきたいと考えておるわけでございます。ただ、これにつきましては条約附表の改正が必要になるわけでございまして、四分の三の多数を得なければならないわけでございます。これは現在のIWCの運営から見まして大変困難な問題がございますけれども我が国の鯨文化の重要性等を訴え続け、何とか多数国の、その必要な国々の理解を得ていきたいと考えております。
  67. 山原健二郎

    ○山原委員 この反捕鯨国のいわば理不尽な姿勢、これについて申し上げる必要はないかもしれませんが、日本加盟の翌年、一九五二年から一九七七年までの四半世紀の間には新規加盟国は全くなかったわけです。ところが、米国自国の反捕鯨政策をIWCに押しつけようと活動を活発化させました一九七九年以降新規加盟国が相次ぎ、二十五カ国に上っています。このうち捕鯨国はたった三カ国で、残り二十二カ国は非捕鯨国となっています。しかもこの二十二カ国のうち、過去に捕鯨実施した実績のある国は三カ国で、残り十九カ国はいわば捕鯨に縁もゆかりもない国であることは明らかです。明らかに反捕鯨国の多数派工作の結果であると言わざるを得ません。これらの多数の力によって科学が無視され、条約の精神が踏みにじられてきている現在のIWCの運営は異常と言わざるを得ない状態でございます。こういう非民主的な運営のもとで我が国の最低限の主権の行使さえ阻害されるならばIWCから脱退も辞さない、そういう強い態度でこの難局に処すべきだと私は思いますが、この点につきましての大臣の見解を伺いたいのであります。
  68. 加藤六月

    加藤国務大臣 我が国は、従来からIWCの正常化のために努力してきておるところでございます。評決の結果を見ますと、五十七年の商業捕鯨モラトリアム決定の際に比べればある程度の改善は見られていると考えられます。もっともその改善の程度は不十分であり、今後とも引き続き努力していく必要があると考えております。
  69. 山原健二郎

    ○山原委員 鯨の問題につきましてはなお質問がありますけれども、時間の関係で次に、養鶏農家の問題につきましても御質問があったと聞いておりますが、改めて私の方からも伺いたいと思います。  現在卵価は戦後最低の水準を低迷しておりまして、養鶏農家は深刻な打撃を受けております。一キロ当たり平均相場百五十円に満たない、昭和二十八年の平均相場二百二十四円に比較をいたしましてもまさに深刻な事態でございます。この背景の一つに、第三次大規模やみ増羽と言われる農外資本による大がかりな無断増羽があり、生産調整の重大な障害になっています。厳しい実効ある規制措置をとるべきだと思いますが、この点が第一点。  時間の関係でまとめて伺いたいと思います。  次に、養鶏農家経営者はこの難局に当たりまして、七百五十万羽に及ぶ自主減羽に取り組み卵価の引き上げ、安定に懸命になっています。ところが一方で、農外資本が数十万羽という規模の無断増羽を何カ所も進めておりまして、これが黙認されるならば中小養鶏農家の努力は水泡に帰し、生産調整は破綻しかねません。生産調整による卵価安定を軌道に乗せる上で、この大規模やみ増羽を抑えることができるかどうかが重要なかぎとなっております。したがって、何としてもこの大規模やみ増羽をとめるというかたい決意に基づく指導、措置が求められておりますが、この点について農水省の御見解を第二点として伺いたいのであります。  第三点といたしまして、具体的ケースでお聞きしますが、阪神鶏卵グループが、愛知県渥美町の十六万羽に続いて島根県羽須美村で四十万羽ものやみ増羽の計画を進めております。政府はことし三月に出された我が党の寺前議員の質問主意書に対し、御指摘の会社に対しては直接に指導したと答弁をしておりますが、具体的にどのような指導をしたのか、結果はどうなったのか、指導に従わない場合実効を上げるためにどのような措置を講ずるつもりか、具体的にお伺いしたいのであります。  次に、阪神鶏卵グループだけではありません。イセグループが新潟県豊浦町に六十万羽、旧タケクマグループが青森県木造町に四十万羽規模のやみ増羽計画を進めております。木造町のケースは農地法、農振法にも違反しているとも言われております。この点は昨日の委員会での質疑答弁がありますので詳しくお聞きすることはいたしません。  ここで委員長に一言お願いをしたいのでありますが、一連の大規模やみ増羽については国会としても手をこまねいているわけにはいかないことだと思います。そこで、検討の上関係企業の責任者に国会の方へ出ていただきまして事情を聞くなどの措置を講ずることも一つの方法ではないかと思うのでございますが、この点について委員長の御見解を承りたいと思います。  また、農水大臣に対しまして、行政指導に一定の限界があるならば法的措置を講ずる必要も出てきているのではないか。我が党は先般農外資本の採卵養鶏分野の進出を規制する法案を国会提出した経緯もありますが、農家養鶏を守り、農外資本の採卵養鶏分野の横暴な進出を規制し、大規模やみ増羽を抑えるための法制定を政府としても前向きに検討すべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。  幾つかお伺いしましたが、簡単で結構ですからお答えいただきたいと思います。
  70. 京谷昭夫

    ○京谷政府委員 ただいまお尋ねの最近における卵価の状況でございますが、御承知のとおり鶏卵価格は従来から一定の周期で変動しておりますけれども、最近の状況は、六十年夏から六十一年の末にかけまして比較的好調な時期がありまして、その後本年に入りましてから大幅な低位水準での停滞が見られるわけでございます。この要因は、ただいま申し上げました前の時期におきます大変好調な価格水準、あるいはまたこの時期に並行して進行しましたえさ価格の低位安定という状況に刺激されまして、生産がかなり増加をしてきておるというふうな事情が背景にあるわけでございます。  かねてから私ども、地方公共団体あるいは生産者団体と協力をして計画生産の推進に努めておるわけでございますが、ただいまのような価格の状況に対処してこの計画生産がさらに徹底して励行されるように、超過増羽者に対する各種のペナルティー措置の実行、さらに生産者団体が進めております自主減羽運動に対する協力、さらにまた価格の状況を回復させるために緊急措置として液卵公社による余剰生産物の買い上げを実行し、また必要がありますれば生産者団体による調整保管についても現在検討を進めているところでございます。  また、御指摘のございましたいわゆる超過増羽者に対する指導問題でございますが、御指摘の阪神鶏卵グループが全国六カ所におきまして種鶏の生産それからひなの育成、採卵鶏の飼養というそれぞれの段階に進出をしておる問題でございますが、私ども関係の都道府県から直接このグループの代表者にお会いして、計画生産の枠組みの中でこれらの行動がとられることを強く要請してきております。また、六月になりましてからは、私どもの地方農政局あるいは私どもの担当官が直接この代表者にお会いしまして、この計画生産の必要性なり、この枠組みの中において生産活動を行うよう繰り返し指導を行っておるところでございます。現在のところまだ日に見えた効果は出ておりませんが、今後引き続きその努力をしてまいりたいと思っております。  さらに、こういった状況に応じていわゆる超過飼養者に対する法的措置を検討してはどうかというふうな問題がございますが、私ども我が国における鶏卵生産の実情なり経過考えますと、権力的に介入してこれらの活動を規制するということは必ずしも適当ではないと考えてございまして、先ほど申し上げました各般の措置を行政的に実行し、また生産者の理解、協力を得ていく現在のシステムが最も適当ではないかと考えておる次第でございます。
  71. 玉沢徳一郎

    ○玉沢委員長 山原君申し出の件につきましては、理事会で後ほど協議いたします。
  72. 山原健二郎

    ○山原委員 終わります。      ————◇—————
  73. 玉沢徳一郎

    ○玉沢委員長 この際、お諮りいたします。  鯨類捕獲調査実施等に関する件について決議いたしたいと存じます。  本件につきましては、先般来、各党の理事間におきまして協議を願っておりましたが、その協議が調い、案文がまとまりました。  便宜、委員長から案文を朗読し、その趣旨の説明にかえたいと存じます。     鯨類捕獲調査実施等に関する件(案)   鯨は人類共通の自然の恵みであり、その資源を保護しつつ、人類の役にたてようとするのが国際捕鯨取締条約趣旨である。この人類共通の利益を享受するには何よりもまず資源調査が必要である。特に鯨資源の豊富な南氷洋において、これまで商業捕鯨および各種の科学調査を通じて科学的知見を蓄積してきた我が国としては、人類共通の財産の有効利用のため的確な調査を進める責務を有している。   本年の第三十九回国際捕鯨委員会年次会議において、我が国が計画している南氷洋における鯨類捕獲調査の実質的中止を求める勧告採択された。   この勧告決議は、国際捕鯨取締条約第八条第一項に基づく締約国権利を否定しようとする不当なものであるばかりでなく、同条約の企図する人類共通の利益を追求するために必要な資源調査の途を閉ざそうとする自殺行為である。調査なくして資源保護も有効利用もあり得ない。   よって政府は、我が国の伝統的文化と産業を堅持するとともに、人類共通の利益の増進に資するため、科学的に必要な調査を行い、これに基づいて一九九〇年に予定される包括的評価を通じ商業捕鯨の再開を期することとし、左記事項の実現に遺憾なきを期すべきである。      記  一 不退転の決意をもって関係各国の理解を求めつつ、また必要とあらば国際捕鯨取締条約からの脱退をも辞さぬ覚悟で、今漁期からの鯨類捕獲調査の実現に向けて最大の努力をすること。  二 休廃業を余儀なくされる漁業者及びその従事者に対しては、適切な対策を講ずるとともに、沿岸捕鯨については、その存続のため格段の努力を尽くすこと。   右決議する。 以上でございます。  ただいま読み上げました案文を本委員会決議とするに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  74. 玉沢徳一郎

    ○玉沢委員長 起立総員。よって、本件は本委員会決議とするに決しました。  この際、ただいまの決議につきまして、農林水産大臣から発言を求められておりますので、これを許します。加藤農林水産大臣
  75. 加藤六月

    加藤国務大臣 ただいまの決議につきましては、決議の御趣旨を尊重いたしまして、十分検討の上、善処してまいりたいと存じます。
  76. 玉沢徳一郎

    ○玉沢委員長 なお、ただいまの決議の議長に対する報告及び関係当局への参考送付の取り扱いにつきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  77. 玉沢徳一郎

    ○玉沢委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  78. 玉沢徳一郎

    ○玉沢委員長 第百八回国会内閣提出食糧管理法の一部を改正する法律案を議題とし、審査に入ります。  まず、趣旨の説明を聴取いたします。加藤農林水産大臣。     —————————————  食糧管理法の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  79. 加藤六月

    加藤国務大臣 食糧管理法の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び主要な内容を御説明申し上げます。  麦は、国民の食生活において米と並んで主食としての地位を占める農産物であるとともに、我が国農業において、代表的な土地利用型作物の一つとして、また、水田農業の確立を図る上での有力な転作作物、裏作作物として、重要な地位を占めております。  一方、麦作をめぐる現下の諸情勢を見ますと、生産性の一層の向上を図るとともに、実需者等のニーズに即した品質のよい麦の生産を誘導していくことが重要な課題となっております。このため、これらの課題にこたえることを基本として、麦作の振興を図っていくことが必要であると考えております。  麦の政府買い入れ価格につきましては、食糧管理法の現行規定において、昭和二十五年産及び昭和二十六年産の麦の政府買い入れ価格の平均価格に農業パリティ指数を乗じて算出したいわゆるパリティ価格を下回らず、かつ、これを基準とするものとされておりますが、昭和二十五、二十六年当時と現在とでは麦の生産構造は大きく変化しており、また、現行規定では、生産性の向上、良品質麦への生産誘導といった今日的課題に十分対応し得ない等の問題を有しております。  このため、この法律案により、麦の政府買い入れ価格については、生産性の向上及び品質の改善に資するように配慮しつつ、生産費その他の生産条件、需要及び供給の動向、物価等を参酌して定めることとするものであります。  以上が、この法律案の提案の理由及び主要な内容であります。  何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決いただきますようお願い申し上げます。
  80. 玉沢徳一郎

    ○玉沢委員長 次に、補足説明を聴取いたします。後藤食糧庁長官
  81. 後藤康夫

    ○後藤政府委員 食糧管理法の一部を改正する法律案につきまして、提案理由を補足して御説明申し上げます。  本法律案を提案いたしました理由につきましては、既に提案理由説明において申し述べましたので、以下その内容につき、若干補足させていただきます。  この法律案におきましては、麦の政府買い入れ価格につきまして、麦の生産費その他の生産条件、麦の需要及び供給の動向並びに物価その他の経済事情を参酌し麦の再生産を確保することを旨として定めるものとするとともに、この場合においては麦作の生産性の向上及び麦の品質の改善に資するように配慮するものとすることとしております。  なお、附則におきましては、この法律の施行期日を公布の日から一年を超えない範囲内で政令で定める日とするとともに、この法律による改正後の規定は、昭和六十二年産の麦から適用することとしております。  以上をもちまして、食糧管理法の一部を改正する法律案の提案理由の補足説明を終わります。
  82. 玉沢徳一郎

    ○玉沢委員長 以上で本案の趣旨の説明は終わりました。     —————————————
  83. 玉沢徳一郎

    ○玉沢委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本案審査のため、参考人出席を求め、意見を聴取することとし、日時、人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  84. 玉沢徳一郎

    ○玉沢委員長 御異議なしと認めます。よってさよう決しました。      ————◇—————
  85. 玉沢徳一郎

    ○玉沢委員長 第百八回国会内閣提出、大豆なたね交付金暫定措置法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。五十嵐広三君。
  86. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 法案の御質問を申し上げる前に、この機会でありますから二、三懸案の諸問題について御意見を伺いたいというふうに思います。  その一つはいわゆる農産物交渉絡みのことでございますが、七月六日のジュネーブにおけるガット新ラウンドの農業グループ会議で、アメリカから二〇〇〇年までに農業補助金を全廃する、こういう交渉提案があった。しかし、アメリカは最近ソ連に小麦を輸出したわけでありますが、この四百万トンの小麦についても大変な輸出補助金を出している。対ソ輸出価格はトン当たり約八十ドルくらい。シカゴの穀物相場は百二十ドルくらいでありますから、結局差し引き四十ドルくらいの補助金を出しているということになる。もしこれが工業製品でそんなことがあったらばダンピングということで大騒ぎになるわけでありますが、しかし事実そういう輸出補助金が出ている。ECの場合でも、最近でも域内価格の三分の二にも及ぶ、トン当たり百五十ドルもの輸出補助金が出ているということを我々も聞いているのであります。どうも世界のいわゆる農業問題というのは、結局供給過剰に悩む輸出大国の国々がこういう輸出補助金というものを出して輸出競争をしている、これが今の世界の農産物市場混乱の第一の原因でないかというふうに我々は実ば思うわけであります。  アメリカの農産物の補助金等を資料で見せていただきましても、八四年度で七十三億ドル、八五年で百七十六億ドル、八六年で二百五十八億ドル、本年もほぼそのぐらいの水準のようでありますが、八六年はECも二百十八億ドル。日本は、同じような意味で計算をいたしますと二十九億ドルぐらいかというお話も伺っているわけであります。どうもこういうような事柄を見ながら今度のこのアメリカ側からの農業補助金全廃提案というようなものを見てみますと、甚だ奇異に感じないわけにもいかぬというふうに思うのでありますが、この機会に大臣から、これらの提案についてどのようなお考えであられるか、御意見を伺いたいと思います。
  87. 加藤六月

    加藤国務大臣 今回の米国の提案は、農業についても市場原理を貫徹させようという従来からの主張に基づくものであると考えております。  農業問題につきましては、これまでOECDやベネチア・サミットの場で各国が論議を積み重ねたコミュニケや経済宣言の内容が十分考慮に入れられていないことは問題であると考えております。ベネチア・サミットあるいはOECDにおいてもそれぞれ議論したわけでありますが、各局はそれぞれ置かれた状況等に応じて、必要と考えられる農業助成措置等を講じているところであり、これらの状況の違い等を無視して一律に撤廃せよという主張は現実的ではないと考えております。したがいまして、我が国としましては、OECDやベネチア・サミットの場での議論、合意を踏まえまして、農業の有する特殊性や社会的役割等も考慮に入れた上で、今後の農業政策、農産物貿易秩序を形成していくことが必要であり、この方向で今後とも努力してまいりたい所存でございます。
  88. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 この間、七月の二十一日に、アメリカの上院本会議で、一九八七年包括貿易法案を大変な大差で可決した、非常に我々としてもこれを見て憂慮にたえないものがあるわけであります。もちろん、我が国の黒字突出、こういう特異な責任というようなものも痛感をしなければならぬと思うのであります。しかし、アメリカのこういうやり方というのはいわゆるガットの原則に照らしてどうもおかしい、あるいは貿易赤字の責任を一方的に外国に転嫁するというような印象が非常に強い。アメリカ自身の責任も大変あいまいにしているのではないかとも思われるのであります。  しかし、いずれにいたしましても、上下両院とも農産物でいえば、米、牛肉、かんきつ、十二品目などの市場開放への政府努力を求める決議を含んでこれが通っているというようなことから考えまして、どうも一層強い市場開放を迫ってくるのではないかというふうにも思われます。これからいよいよ正念場を迎えることになるわけでありますが、この機会にこれらについての大臣の決意、殊に先般来米の自由化等につきましては完全自給体制という信念を堅持しておられるわけでありますが、それらを踏まえての御見解をお伺い申し上げたいというふうに思います。
  89. 加藤六月

    加藤国務大臣 米国の包括貿易法案は四月三十日に下院で、また七月二十一日に上院でそれぞれの案が可決されましたが、その中には我が国の農産物貿易を直接のターゲットにした決議が含まれております。これらの決議はいずれも議会の意図表明でございまして、直接行政府を拘束するものではありませんが、行政府の行動に対し一定の圧力となることは否めないものと思われます。いずれにしましても、日米農産物交渉をめぐる状況は一層厳しさの度合いを加えてくることになりますが、我が国としましては、今後の両院協議会における調整、行政府の対応ぶり等を十分注視しつつ、在米大使館等を通じて、日米農産物貿易の実情等につき議会関係者のより一層の理解を求めていくこととしたいと考えておるところでございます。  なお、農産物関係米国我が国が抱えておる十二品目、牛肉、かんきつ、米等の問題につきましては、我が国の基本的なポジションは従来から申し上げているとおりでございまして、今回の包括貿易法案可決という動きにより特に影響を受けるものではないと判断いたしております。  米は我が国民にとって主食であり、また我が国農業の根幹をなすものであり、そして歴史と文化と伝統という問題あるいは治水治山、いろいろな問題があって大変重要であるということは繰り返しお答えいたしておるところでございまして、我が国としては、輸入自由化は認めない、困難であるということをはっきりしていき、そして二国間協議にも応じないということは、先ほどもお答えしたように変化がないということで御理解いただけるものと思います。
  90. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 いよいよ大事な時期に入りますので、大変な貿易摩擦の渦巻きの中で日本の農業がその基本的な未来への展望というものを失わないように、ぜひひとつしっかり御交渉いただきますように心から御健闘をお願い申し上げたいというふうに思います。  それから、余り聞きなれない名前だと思うのですが、アワヨトウという虫が異常発生を見ております。しかし、どうもことしはアワヨトウだけでなくて全国的に病害虫が異常発生傾向にあるというふうにもお伺いしているのであります。これらの発生状況、殊に今大変な被害を生みつつあるアワヨトウの状況等について手短に状況をお知らせいただきたいと思います。
  91. 浜口義曠

    ○浜口政府委員 ただいま先生から、全国的な病害虫のことしの状況について報告しろというお話でございます。  御案内のとおりでございまして、本年は春先から好天少雨でございます。こういった形は六十年にやや近い点が見られますけれども、こういう気象条件のもとにおきまして、稲の最も重要な病気でありますいもち病あるいは紋枯れ病等の病害の発生は少のうございます。ただ、それに対しまして、稲のカメムシ類あるいは果樹のハダニ類あるいは野菜のコナガ等害虫の発生が全国的に多くなっております。稲のウンカ類、あるいは先生今お話がございました移動性の大きいアワヨトウの発生が多いというのがことしの特徴でございます。  病害虫は広域に蔓延して被害を及ぼす性質もあるものでございますので、天候、気候といったような状況等も十分配慮いたしまして、病害虫に対しての病害虫発生予察事業というものを国でやっております。こういうことで、農林水産省といたしましては全国的な情報というものを逐次出させていただいております。最近におきまして、七月二十四日、金曜日でございますが、病害虫発生予報第五号というものを出させていただきまして、今後とも病害虫の発生が多くなると予想されることから、都道府県が具体的に発生いたします地域の発生予察情報にも注意をして、農家の方々が的確な防除の実施に努められるよう指導してまいりたいと考えておるところでございます。
  92. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 七月二十七日付でおたくの局でお取りまとめになった調査があるわけでありますが、殊に北海道の場合、牧草で十二万二千六百七十九ヘクタール、あるいは麦類で四万五千五百九十二ヘクタール、これらを含めて全体で十八万一千八百二十ヘクタールのアワヨトウの発生状況が報告になっております。これは北海道だけではなくて、青森であるとか秋田であるとか、主として日本海側が中心にそれぞれ発生を見ているようでありますが、殊に北海道の場合は、今釧路、根室を除いてもう北海道全域にわたって異常発生をしているということであります。私もこの間現地で見てきたのでありますけれども、ちょうど舗装道路を集団で移動しているところで、百メートルくらいの幅にわたって真っ黒ですよ。もうすさまじいものであります。この間、美深では、これは町営の牧場でありますが、百二十ヘクタールが全減をした、農家から預かっている牛四百三十二頭を一斉に退牧させたというようなこともございまして、本当に大変なことに今なっているわけであります。しかも、二次発生の予想がまず間違いないだろう。そうしますと、これから水田の水がなくなり、稲も今までと違って大きく育っていくわけでありますから、今度は水稲の被害が大変でないかということで、それぞれ非常にこれを危惧しているのでありますが、どうかこれについてしっかり現状を掌握されて、適切な指導と対策をとっていただきたいと思いますが、局長、よろしゅうございますか。
  93. 浜口義曠

    ○浜口政府委員 先生指摘のとおり、このアワヨトウの異常発生ということについて私ども強い関心といいますか危惧を持っているわけでございます。現在のところ、まず牧草ということでございます。このアワヨトウは、私どもの勉強によりますと、どうも一部枯れた葉が出るといったところ、あるいは緑が残っているということでイネ科の植物に大きな影響を与えるところでございまして、これも先生指摘のように、この後の今サナギになっております部分の発生というものが危惧されるところでございます。過去の歴史におきまして、五十七年にこれがございました、あるいは五十三年にございました、あるいは四十四年ということで、大きな水稲の被害といったようなことがございますので、ただいま先生お話しのように、現地に対する指導の徹底方等につきまして十分配慮してまいりたいと考えるところでございます。
  94. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 この前、これに関してちょっといろいろありまして、それぞれ現地では道庁、その出先のそれぞれの支庁あるいは市町村自治体、あるいは農協はもちろんそうですが、一緒になって対策を講じてやっておるわけです。しかし、畑の方で薬剤の駆除を一生懸命やるのはいいが、同時に国の管理している、あるいは都道府県なんかが管理している河川だとか道路の敷地も一斉に駆除をしない限り、これは畑の方でやりますとそっちの方へ逃げていって、やがてまたそっちからやってくるということではいけないので、そういう要請があったときには建設省あるいは北海道の場合ですと開発庁でありますが、それぞれ国道であるとか国の河川等の敷地について薬剤散布を含める万全の対策を講じて、一緒にその駆除についての努力をしてもらいたいと思いますが、建設省、開発庁、ちょっと御意見を。
  95. 近藤徹

    近藤説明員 お答えいたします。  北海道の事例等においてはまだ後で御説明しますが、今後のアワヨトウの発生状況等につきましては、その状況を踏まえつつ、また地元の要請あるいは河川管理への影響等を総合的に判断しつつ、今後、適宜対処してまいりたいと考えております。
  96. 佐々木賢一

    ○佐々木説明員 お答えします。  先ほど先生指摘のとおり、北海道で異常発生しておるわけでございまして、私ども北海道開発庁所管の河川、道路にもそれなりの事例が見られるようでございます。今後とも現地との連携を密にいたしまして対処していく所存でございます。
  97. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 一斉に駆除しない限り効果は半減するわけでありますから、そういう点について現地の要望があったらすかさず対応して、一緒に駆除するという態勢をとってほしいと思うのですが、何か今の話ではそうであるようにも受けるが、もうちょっとどうですか、そうするということですか。
  98. 佐々木賢一

    ○佐々木説明員 現地との連携を密にいたしまして、今後とも適切に措置するつもりでおります。
  99. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 開発庁の場合はこの前もう適切にやっておりましたから、二次発生等についても迅速に対応していただきたい、ぜひお願いを申し上げたいと思います。  それからもう一点、大豆、なたねの問題に入る前に、それにも関連をすることでありますが、御質問あるいは御要望を申し上げたいと思うのは、例の基盤整備事業における負債問題であります。  七月二十一日、ついこの間、北海道士別市で既土地改良費対策協議会というのが、上川管内の北部の農協あるいは土地改良区、いずれも十数組合あるわけでありますが、これが参加して行われて、償還の重圧にあえぐ大変悲痛な声が相次いでおりました。この三十日には全上川管内の農協と土地改良区による危機突破大会も予定をされているようであります。一方、七月二十三日には札幌で北海道土地改良事業団体連合会の事業推進合同委員会が開かれて、償還条件の緩和の要望やこれからの運動等を決めたと報ぜられています。それから、北海道庁及び道内の各関係市町村自治体も、議会での意見書議決を初めとして積極的に要望運動を展開し始めているようであります。  北海道内の例でいいますと、道内における農業基盤整備資金の六十一年度末現在の貸付残高は、道営と団体営合わせて千八百八十億円、また国営が約百九十億円といいますから、合計二千七十億円に上っているわけであります。上川管内の北部、さっき言った地域でありますが、ここのある町では当初予定の総事業費百七億円が、二回の計画変更あるいは工事期間が延長になるというようなこともあって、完成した段階では三百三十二億円に膨らんでいる。この間御承知のように年々減反が強化されて、この町の減反率は実に七二%という状況で、しかも米価は長く据え置かれて、ことしはとうとう五・九五%ダウンするという状況。これは麦価もそうでありますし乳価等も同様であります。減反奨励金も切り下がったというようなことで、計画当初の収入見積もりが大幅に食い違ってきているという状況になっているわけであります。  この町の地元負担は、調べますと道営、団体営合わせて約七十三億円、組合員六百六十五戸がこれを償還するわけでありますが、管理費も含めました農家負担は十アール当たり年に二万七千円ぐらいに上る。そうしますと、平均的な七ヘクタールの農家で年間百九十万円の償還をしなければならぬという計算になるわけであります。ここに限らず、当時着工したときの国などの説明は、大体十アール当たり米一俵だというような説明が通常であったわけでありまして、それはちょっと計算すればおわかりのように大幅な差が生じているわけであります。ですから、農協の組合勘定、いわゆる組勘も土地改良区の賦課金支払いを農協が拒否するということさえも生じている。そのために改良区が滞納農家の強制差し押さえ手続を申請するというような事態さえ実は起こっているわけであります。こういう例がかなり多くの町村で出始めておるだけに、非常に我々も懸念をしているのであります。従来ずっと問題になっているわけでありますし、この前の委員会でも要請を申し上げたところでありますが、こういうような状況についてどういうふうに掌握し、御理解になり、これからについて御検討をいただいておるのか、お伺いを申し上げたいと思います。
  100. 鴻巣健治

    ○鴻巣政府委員 国営あるいは都道府県営のかんがい排水事業と圃場整備を一緒にやっている地区とか、あるいは地形条件が悪いといったことなどで事業費の単価が高い地区で、最近の金利水準が下がってきているということから地元負担の割高感が出ている場合もあると私は受けとめております。それにこの間委員からもこの議場で御質問があり、またその後で委員がわざわざ私の部屋に足を運ばれて同じ趣旨での調査なり検討なりの御依頼もありましたので重く受けとめているわけです。  その後で北海道庁の農家経営の実態調査の結果の要約というので、七千戸について五十九年度にやりました負債の結果を調べてみますと、稲作、畑作、酪農、肉用牛とございますが、稲作について調べてみますと、負債の額が一戸当たり約千四百五十万円、正確には千四百四十九万円、そのうちで一番多いのが四百九十六万円の農地の取得、つまり土地を買ったから、農地を買ったからということでこれが三四・二%。それから第二が借りかえ、これは恐らく自作農維持資金なんかに借りかえたのだと思いますが、それが四百二十八万円で二九・五%。これで大体六割強を占めているのですが、三番目が農機具あるいは施設、例えばトラクターを買ったとか、あるいは畜舎をつくったとかというようなことで百五十八万円の負債、これが一〇・九%。四番目が土地改良で百四十六万円。百四十六万円といいますと、さっきの千四百四十九万円の借入金の残高の中では一〇・一%。これで大体十割ぐらいになっています。全体にはまだこういういろいろな負債がある中で土地改良関係の負債があるということがわかったわけであります。  私どももこれからやることとして、前回申し上げましたけれども、できるだけ安上がりに土地改良をやっていくという意味で、地元が整備水準について高いものか安いものかを選択できるようにするというようにいたしまして、七月十日付で構造改善局長通達を出しまして、これからやっていく地区については道路とか水路を舗装するかしないかということで、コストをどのくらいかけるか、地元負担はどのくらいになるかということも見定めながら整備水準を選択するというようにいたしました。これが一つ。  二つ目は、私どもやはり御要望があってなかなかつらいのですが、新規の地区はできるだけ御遠慮願って、継続の地区に重点的に予算を投入するということにせざるを得ないと考えております。これは六十二年度予算のときも思い切ってやりたいと考えております。それから、お話しいたしましたように、農林漁業金融公庫による補助残融資の金利についても引き下げをいたしました。  そういうことでいろいろやっておりますし、まだそれでもなお負債がたまってなかなか苦しいという農家については、農林漁業金融公庫の自作農維持資金を活用していただきたいと思っています。ただ、この間北海道の町村長に聞きましたら、かなり限度いっぱい借りている農家も少なくないという話でございまして、そうしますと、借りていただいてない方は借りていただきますが、使ってしまった方はこれだけでは簡単な解決にはならないと思っています。そこで、今農家負担の実態というものを洗っているわけです。すべてがすべて過重ということではないと思っています。やはり金利が下がってきているとかいったような事情、あるいは稲作の転換といったような問題に当面してなかなか苦しいわけだと思います。  北海道の場合は十アール当たりの負担はそんなに高くはないのですが、今お話しのように二戸当たりの経営面積が大きい。したがって、一戸当たりの負担の総額になるとなかなか無視できないという問題があるのだろうと考えております。いずれにいたしましても、北海道あるいは都府県を含めまして、今大体どういうところの地区でどんなに負担が重いのか重くないのか、重いとすればそれは農家所得なり農業所得の中でどの程度の重さがあるのか、その他の借金はどんなふうになって農家にあるのかというふうなこともできるだけ洗いたいと思っております。これはちょっと時間がかかるので、八月いっぱいに終わるかどうかわかりませんが、八月、九月、秋まで続いてでもやりたいと思っています。  その結果によりますが、今私どもとしては六十三年度予算以降の問題として、これはどんな形で取り上げられるかということで内部で汗をかいて検討して議論をしているところです。これは御承知のとおり、要するに今までのように事業費を伸ばすために補助率をカットしてきたここ数年の財政の運営を逆に行きまして、特定の地区についてはいわば補助率をかさ上げするようなものでして、そのために事業費を全体として削減せざるを得ないというようなことでございますし大変難しい。こういうことを持ち出すと、おまえはばかじゃないかとかアナクロニズムじゃないかとかいうような話になりかねない非常に深刻な問題もたくさん入っていると思います。しかし、例えば特定の負担の重い農家なり土地改良区についてどんな形のやり方があるかということを、今私ども部内で汗をかいて一生懸命検討いたしておるところでございます。
  101. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 きょうは法案の審議でありますから余り詳しいお話を続けていくわけにはまいりませんけれども、ちょうどここに一つ資料があるのです。  今、北海道のいろいろな話が出たわけでありますが、今年北海道の乳価引き下げというようなことの関係で、総売り上げは対前年比一〇%強、二百四十二億円の減少であります。これは酪農家一戸当たりで百五十一万円の収入減ということになるわけであります。麦価の四・九%引き下げでは、作柄は前年どおり、こう考えてやりますと三十六億円の減収になる、二戸当たり十一万六千円です。それから、米の方の減反と米価の引き下げ等は、大体粗生産額で四百五十億から五百億ぐらいになるだろう、対前年比一八%程度の減少。これはこの前の委員会でも御指摘をさせていただいたのでありますが、稲作農家二戸当たりでは七十五万円ぐらいの粗収入の減ということになるようであります。そうしますと、この乳価、それから麦、米、この三品目の総収入の減少を合わせますと、実に北海道だけで七百五十億円前後に達する。これにこの秋に決定される畑作三品が、これも仮に他作物とやや横並びというようなことになりますと大変なことなわけでありまして、まさに北海道経済が大冷害に見舞われたと同じような状況になっていることは御推察がつくのではないかというふうに思います。  さっき負債のことで局長から一般的な単純計算のお話がございましたが、もちろん現地の事情をよくお調べいただかなくてはならぬわけで、それには非常にでこぼこの深刻な地域が存在しているということも当然理解をいただけるのではないかと思うのでありますが、今お伺いいたしますと、懸命に汗をかいて実態の調査をしている、あるいは六十三年度予算等について何か反映する方法がないかということで御努力をいただいているというようなお話を聞いて、一面心強くも思うわけであります。非常に深刻な状況になり、一種の社会不安というような状況さえも地域によっては生まれてきているわけでありまして、御説明のように新規の基盤整備事業についてはああいうようないわゆるメニュー方式といいますか、そんなこと等の配慮でいち早く出していただいたことについては敬意を表するのでありますが、しかし一番深刻な問題なのは既往の債務の問題だ、それがどうにもならぬ状況になっているということでありますので、ぜひこの点をよく御認識の上、お話しのようにどんな地域で実態を調査して、どういう地域でどういうような方法論で負担を軽減するかということについての一層の御努力をいただきたいと思うのですが、これを機会に、これについての大臣の一応の見解をちょっと伺いたいと思います。
  102. 鴻巣健治

    ○鴻巣政府委員 大臣がお答えする前に私の方から一言申しますが、法技術的に言いますと、土地改良法の同意をとってやっているものですから、財政当局とやり合うときには大変難しい問題があると思っています。ただ、加藤農林水産大臣からも折に触れて土地改良の負担金問題については何か知恵がないか考えてみろ、検討してみると言われておりますので、私の方も大臣の意向を受けて鋭意検討いたしておりまして、できれば六十二年度予算の中で何か知恵がないかというように考えているところでございます。
  103. 加藤六月

    加藤国務大臣 全国的な問題と、特に北海道における負債問題というのは先般も来まして、先ほど鴻巣局長が数字に基づいて報告をされておりましたが、稲作、畑作、酪農、乳用牛等々の借入残高の問題その他の問題についての数字等も詳しく承り、勉強してきました。五十嵐委員の御指摘のような情勢で、負担感は非常に強くなってきております。  これからの問題については、先ほどお答えしましたように七月十日付通達でやっておりますが、さて過去債務という問題になりますと、これまたある面で言うと各省庁横並びの問題もございますし、あるいは既に発行済みの百何十兆の国債の問題にまで絡んでくるということでございますが、農業関係は特にそういう意味で厳しさを増しておるわけでございますので何とかならぬものかということで、目下鋭意勉強、検討中でございます。
  104. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 大臣、今回の五・九五%の米価の切り下げという大変大きな問題を経過した中で、当然こういう中での周辺対策というものに力を入れていかなければいかぬ。なかんずく土地改良の問題というのは土地利用型農業の基礎的な問題でありまして、ここのところから目を離さないで、しかもこういう機会に、米価は下がったけれども、しっかり未来の農業を展望して毎日、毎日またやっていけるようにこんな手を同時に打っていくよという配慮がない限り、僕はうまくないと思うのであります。周辺対策あるいは関連対策と言われるものの第一がこれだと思うわけで、なかんずくその中でも既往の債務、難しいのは百もわかっている。この間から局長さんからも再三それをよく聞いているわけで、利子補給あるいは借りかえあるいは償還期限を延ばすとかさまざまな方法があるにしても、その一つ一つになかなか難しい問題があるということも承知はしているけれども、その方法については何といっても皆さんが編み出す以外にはないわけでありまして、何としても知恵を絞って、つまりことし五・九五%米価を下げたという関連対策として考えるとすれば、これは来年の予算に反映させるということでなければ僕は意味がないというふうに思うわけで、その決意について大臣、もう一遍御返事ください。
  105. 加藤六月

    加藤国務大臣 今回の生産者米価決定に際しまして、各方面から周辺対策、関連対策に対する強い御要望がありました。その中では特にコスト低減対策という問題、あるいは地域の活性化問題等々各方面にわたるものがあったわけでございまして、政府としては、これらの問題に真剣に取り組んでいくことによって初めて生産性の向上、あるいは経営規模の拡大あるいは意欲ある農家が希望を持っていただけるようになる、ここら辺のことを十二分に配慮していかなくてはならぬと決意を固めておるところでございます。  そしてまた、一面これとも関連があるのかどうかという問題でありますが、北海道方面の調査をしますと、農地の売買価格が数%から一〇%近く下がっておるという問題も見逃すことのできない非常に重要な問題でございまして、ここ二、三年、そしてまたその傾向がことしもさらに強くなってきたのではないかということを考えますと、過去債の問題どこれからの関連対策という問題等でも大いに検討し、前向きにやっていかなくてはならぬのではないだろうか。情勢分析においては五十嵐委員と全く同じでございますが、具体的にどういうようなものを打ち出すか、目下シーリング、概算要求基準をめぐり、あるいはまたその中身の前向きのものをいかにするかということで省を挙げて鋭意取り組んでおるところでございます。
  106. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 しつこいようだが、この間米価が五・九五%切り下がったときに、政府としてもいろいろなお話をなさっている中で、これらの関連対策については同時に十分な配慮をしていかなければいかぬだろうということは、どなたも責任ある立場でお話しになっているわけですね。それは、今の基盤整備事業における過去債務の償還の問題、負担軽減の問題にいたしましても、そういう意味でやるとすれば、少なくとも来年の予算に影響をもたらすような措置を講じていってもらわなければ意味がないと僕は思うのですよ。政府の農家に対する約束といいますか、そういう態度というものはしっかり責任を持って具体化してもらわなければいかぬと思うわけで、大臣のような偉い人に何遍も立ってもらうのはまことに恐縮なのですけれども大臣、もう少し力強い一言をもらえないですか。
  107. 加藤六月

    加藤国務大臣 私が先ほどお答えしたのは、これからの問題については、相当積極的に関連対策としてあらゆる知恵と努力を出してやろうとするものはそれぞれある程度の成果、効果というものは、先般通過しました補正予算におきましても、来年度の昭和六十二年度予算においても何とか実現できると思うわけでありますが、先ほど来申し上げました過去債務の問題については具体的要望、例えば据置期間の問題、償還期間延長の問題あるいはまた借りかえ等による金利の問題、こういう問題は御要望を聞いておるわけでございますが、先ほど来お答えいたしておりますように、ある面で言いますとこれは横並びの問題もございます。低金利時代になりまして、こういうときに、農業関係者もそうでありますが、例えば住宅金融公庫問題、この問題も政治的に見ますと相当大きな問題になってきておるわけでございます。過去の住宅金融公庫の金利と現在の市中金融機関の金利という問題、ある面で言いますと、住宅金融公庫は一括払いを拒絶せざるを得ないような問題になっている。  それはある面で言いますと、資金であります財投資金というものが国民の預貯金であり、年金というものが財源になっておる。これの長期的な運用ということも大変大切な点でございまして、資金の性格とそれに対する運用そしてまた低金利時代ということ、いろいろな問題があるわけでございまして、これらすべての因果関係を十分に調整しなくてはならぬというところに、五十嵐委員もうちょっと前向きにとおっしゃるのでありますが、私たちもそういう問題を含めて目下一生懸命検討し、勉強しておるわけでございます。御要請の趣旨というものも私たちはよく認識はしております。さらに頑張らなくてはならない、こう思うところでございます。
  108. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 いずれ内閣もかわるわけでありましょうが、あるいは御留任ということもあろうとは思いますが、歴史的な米価切り下げというようなことについての実施大臣として、私は、大臣が在任中にこの問題についての責任も関連対策としてぜひ具体化していただきたい、そのことを強く御要望申し上げたいと思います。  さて、余り時間がなくなったのだけれども、大豆なたね交付金暫定措置法の改正案について、以下主な点について御質問申し上げたいと思います。  まず今回の改正措置は、法制定当時のあの精神あるいは制度の根幹というようなものを変えるものではないのかどうか、この点についてお伺いを申し上げたいと思います。
  109. 加藤六月

    加藤国務大臣 今回の大豆なたね交付金暫定措置法の改正は、最近における大豆、なたね生産をめぐる諸情勢の変化に対処しまして、大豆またはなたねに係る交付金について生産性の向上及び品質の改善に資するように配慮しつつ、生産状況等を的確に反映して交付することを目的としておるものでございます。提案理由の説明にも申し上げたところでございますが、このためには生産構造や生産性の向上等を的確に反映した基準価格の算定方式を導入すること、輸入大豆に比べ品質的にすぐれている国産大豆がその品位にふさわしい適正な価格で販売されるよう、標準販売価格に最低標準額を設けること、良品質生産を誘導するため、基準価格を種類、銘柄または等級別に定めることができるようにすること等の改正を行うものでございます。  以上申し上げましたような改正事項は、大豆の輸入自由化という状況のもとで生産性の向上を図り、輸入に係る大豆に対抗し得る大豆またはなたね生産の確保に資するという本制度の基本思想を変更するものではありません。
  110. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 今、大体国産大豆の主要用途である食用需要に対しましては自給率が三一%ぐらいになるわけであります。これは言うまでもなく外国産に比べてたんぱく質分が非常に多くて脂分が少ないというようなことから、豆腐やみそや納豆や煮豆用など、日本人としては欠かせない伝統的な食品にすぐれた加工適性を持っているわけであります。この三一%という低い自給率は、これは全体の大豆でいうと五%程度でありますが、食用に関して三一%というもの、これは海外の状況が変わってまいりますとたちまち需給が逼迫するということも過去の幾つかの例がそれを示しているのではないかと思います。今も大豆の生産では四大国、アメリカ、ブラジル、中国、アルゼンチンですか、これで世界の約一億トンの生産のうちの九〇%、九千トンを生産しているという状況でありますから、これはもう異常気象等がありますとたちまち相場が左右されるということになるわけでありますが、四十八年でありましたか、あのときもいわゆる百日騒動があって、アメリカが輸出のうち約五〇%くらい削減したことがございまして、たしかあのときで四・六倍ぐらい大豆の価格が暴騰したということもあったのは、まだ我々忘れていないところなのであります。そこで、我が国のこういう大豆の自給率を一体どのくらいにしていこうというお考えでおられるのか。
  111. 浜口義曠

    ○浜口政府委員 先生お尋ねの大豆の自給率の問題でございますが、この点については私の方からちょうちょう申し上げるまでもございませんが、私どもの扱っております国産大豆というものにつきましては、まず食品の上からいきましてもたんぱく質の点でアメリカあるいは中国に比べましても優良なものでございます。それから具体的な我が国におきます食生活といったようなものを考えますと、米を主食にするといったようなことと関連を置きますと、例えば必須アミノ酸といったようなものも米とちょうど相補うような組成になっておるわけでございまして、さらにまた最近におきます大豆ブームといいますかリジンブームといいますか、そういったようなことから考えましても、健康食品という意味におきまして、我が国の国産大豆の持っている価値は高いわけでございます。  他方、油脂の面でございますが、現実の問題といたしまして国産大豆がいろいろな意味で使われているかという点につきましては、これは主としまして油脂の量が大きいというような意味アメリカ大豆というものが圧倒的に大きな位置を占めておるわけでございます。そういった点をまず考えていかなければならないという点が一つございます。  他方、今先生が御指摘のとおり、過去におきます、特に四十八年の大豆のいろいろな貿易の問題ということを振り返ってみますと、あらゆる意味におきまして私どもの食生活あるいは健康食品としての大豆の位置づけを考慮しながらこの自給率というものをある一定の考え方考えていかなければいけないということでございまして、昨年の十一月末に御報告をいただきました農政審の答申におきましても、一定程度の国内生産の確保に努めていかなければならないというふうに言われているところでございます。  そういった点を考えてみますと、まず先生指摘のとおりの食品の需要といったようなものを中心に考えますと、かつて八〇%ございました自給率といったものが現在三〇%ちょっとという状況でございますが、私どもといたしましては、そういった農政審の答申というものも踏まえながら一定の自給率、あえて一つの問題として申し上げれば、過半を上回るような自給率といったようなものも考えていかなければいけないのではないかというふうに考える所存でございます。
  112. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 過半を、つまり半ばを過ぎる、半分以上の自給率は当面考えていかなければいかぬというお答えのようでありますが、昭和五十五年でございましたか、農産物需給の長期展望で、六十五年見通し、当時四十二万トンくらいの見通しを立てていたと思いますが、この見通しについてはどうですか。
  113. 浜口義曠

    ○浜口政府委員 今先生のお話の農業基本法に基づきます昭和五十五年の「農産物の需要と生産の長期見通し」、これは目標年次が六十五年の見通してございますが、これによりますと、作付面積で二十一万ヘクタール、十アール当たり収量二百二キロ、生産量四十二万トンという数字で見通しが行われているところでございます。  現在の大豆の生産につきまして、この目標年次につきまして形式的に言いますとあと三年といいますか、私どものデータでいきますと六十一年の数字がございますのであと四年といったような状況でございますが、この生産におきます十アール当たりの単位収量でございますが、これは後でも触れさせていただきますけれども、大豆の二重構造だというようなことでございまして、北海道畑作を中心とするかなり高い収量、一方またあぜ大豆ということに表現されます都府県の低い収量、こういうのがございますが、そのうちの単純な平均でございましても六十一年で百七十七キロという数字がございます。そういった数字と今申し上げましたこの見通しとを比べてみますと、約九割というような数字でございますが、他方、先生指摘のとおりでございまして、作付面積につきましては六十一年の達成率と申しますか、その数字におきましては約七割、六六%、十アール当たりでまいりますと、収量当たりは先ほど申し上げました九割でございますが、生産量は六割といったような状況に達しているといいますか、そういう状況になっている。今申し上げましたように、反当収量については射程距離に入っておりますけれども、生産量及び作付面積という点につきましては相当低い水準というような状況でございます。
  114. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 そういう状況の中で、今度の法改正の中で一つ懸念があるわけであります。今度の改正を機会として、今まで一度も限度数量というのは発動されたことがないわけでありますが、新たにこれを機会に限度数量を設けるというようなお考えはないと思いますが、大臣、いかがですか。
  115. 加藤六月

    加藤国務大臣 交付対象の限度数量は、大豆の輸入の自由化以前に通常出回ったと認められる三十一年ないし三十三年産の平均販売数量を基準として定められることとされていますが、本法の制定後、出回り量が減少していることもあって現在まで定めたことはございません。今回の法改正におきましても、あくまでも大豆の生産性の向上と品質の改善を図ることを重点に交付金制度の改善を行うこととしたものでございまして、限度数量の設定には慎重に対処してまいりたいと考えております。
  116. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 今度の改正案で基準価格の参酌要素というのは三つ出ているわけでありますが、生産費を、販売することを主たる目的として生産を行っていると認められる農家の生産費、こういうぐあいに限定しているわけであります年この線引きの具体的な基準はどうお考えなんですか。
  117. 浜口義曠

    ○浜口政府委員 今回の法律案内容一つといたしまして、ただいま先生お話しのように、特に大豆につきましては、「販売することを主たる目的として大豆又はなたねの生産を打っていると認められる生産者の生産費」というふうに書かせていただいているわけでございます。これはるる申し上げる必要はないと思いますが、先ほどの点を繰り返しますと、やはり大豆におきましては、かつては特に都府県の場合にはみそ、しょうゆ等の自家用でございまして、現在それを販売する農家というのは収穫農家に比べましてもかなり少のうございます。そういう歴史的な実態あるいは現実のそういう姿といったようなものを前提にいたしまして、この商品生産といったようなことを行っていらっしゃる農家とそれを取り巻く多くの収穫農家というものは大分格差があるわけでございまして、そういう意味で、端的に申しまして、その農家には生産性あるいは労働時間といったようなものにも明白なる格差がございます。  今先生のお話しになりました点は、どういったような線を引くのかというようなことでございます。まず抽象的に申し上げますと、やはり販売を主たる目的としているという程度の販売を行っている生産者の生産費ということに相なろうかと思いますが、ややもう一歩具体的な内容として考えてみますと、これは現在の自家用の消費といったようなものが基準になろうかと思います。逆の意味考えていかなければいけないだろうと考えます。そういう点を考えますと、大豆にありましては、一農家当たりの自家消費は、現実の姿でございますが、大体九十キロから百キロというのが統計の示す数字でございます。そういったような点からいたしますと、現在の生産力といいますか単位当たりの収量を前提にいたしまして、約二十アールから三十アール以上の生産者が一つの販売を目的として生産を行う農家と考えられるのじゃないかと現時点では考えるものでございます。そういった点につきまして、今後適切な生産費のあり方について考えていきたい、検討してまいりたいと考えるものでございます。
  118. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 従前、生産費算定の土台になっていたいわゆるパリティ指数でありますが、今度の改正案で言うと、「物価その他の経済事情」ということになっているわけでありますが、パリティ指数をこれからの算定の上でどう継続して位置づけていくか、その辺のところの御説明をお願いしたい。
  119. 浜口義曠

    ○浜口政府委員 ただいま先生お話しのように、今回の算定の考え方ということでございますが、現行の算定方式から、言うならば三つの参酌条件を前提にいたしましてこの算定条件の改善をさせていただきたいということでございます。今先生が御指摘のとおりでございまして、物価その他の経済状況あるいはまたその他の生産条件、さらに需要の動向といったようなことで三つのことを挙げておりますが、まず第一に挙げておりますのは生産条件というようなことでございますので、そういった三つのものを総合的に考えさせていただきたいというのが私ども考え方でございます。ただ、一方ではこれまで大豆の計算におきまして、算定方式について三十六年以来麦と並びましてパリティを使わせていただいております。そういったような過去の経緯等も踏まえながら、総合的に勘案する三条件の扱いについて対応していきたいと考えるものでございます。
  120. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 今度のこういう法改正で大きな制度の転換が行われるわけだけれども、今の生産費の調査等の土台になる大豆農家の生産費調査の標本数は非常に少ないのではないかというお話を我々よく承るのであります。これは一体何戸ぐらい調査戸数をお持ちなんですか。
  121. 松山光治

    ○松山説明員 生産費調査の対象の戸数を決める際には、調査を行います上で必要な経費なり手間、そういうことを一つ頭に置きながら、それぞれの利用目的等の各作物ごとの事情も頭に置いて必要最小限な数を選んでおります。したがいまして、作物ごとに標本数が若干違っておるわけでございますが、お尋ねの大豆につきましては、昭和六十一年の調査でございますけれども、従来から大豆については事例的な調査ということで行ってきたということもございまして、九十戸を対象にして調査を行っておりますが、その後の状況の変化も踏まえ見直しを行いました上で、昭和六十二年から百九十戸にふやしまして現在調査実施中でございます。
  122. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 米だとかあるいは小麦、酪農なんかの標本率は、単純に数だけで結構ですから、どのぐらいですか。
  123. 松山光治

    ○松山説明員 母集団の大きさの違い等がございますが、米につきましては三千戸、小麦につきましては二百二十五戸、牛乳につきましては八百戸でございます。
  124. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 これはそれぞれの農家の何%ぐらいに当たりますか、大豆も含めて。
  125. 松山光治

    ○松山説明員 万分比で申し上げますと、米につきましては一万分の十二、小麦につきましては一万分の七、牛乳は母集団が少ないこともございまして一万分の百十でございます。大豆につきましては、六十一年は一万分の四ということで比較的少のうございましたけれども、今度の六十二年からは一万分の八になるわけでございます。
  126. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 六十一年などの標本数の選定の仕方は、例えば階層別になっているとか、その辺はどうなんですか。
  127. 松山光治

    ○松山説明員 対象農家の抽出方法かと思いますが、まず各県ごとの作付面積なりを基準にいたしまして、十アール以上の販売農家が母集団になっているわけでありますが、そういったものを基準に、しながら事務所ごとに標本数を配付いたします。その場合、一事務所最低五戸というのを一つ基準にして配付してございます。六十一年の場合で申しますと、各事務所ごとにその県内をよく代表するような両町村を選びまして、その市町村の中の大豆生産者、販売農家でございますが、これを作付規模の順にずっと並べまして五等分し、それぞれの階層から任意抽出する、こういうやり方をとっております。
  128. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 非常に少ない調査戸数で、これは今度のような制度改正の根拠、議論の根拠にする資料としては全くいかがなものかという感じがしますね。  それから、今度最低標準額の設定をする、いわゆる交付金単価算出の下限設定でありまして、実質上の交付金の足切りであります。この算定基準なのでありますが、非常に国際相場の変動がある、あるいは為替レートが今日のように大きく上下するというような変動の要素がありましたときには、これを反映して最低標準額というのは常に変更していくものかどうか、つまり国際価格等そういう要因にスライドしながら変動していくという方式になるのかどうか。この点はいかがですか。
  129. 浜口義曠

    ○浜口政府委員 最低標準額でございますが、この点につきましては先生御案内のとおりでございまして、先ほど来申し上げておりますように、国産大豆というのは率直に申し上げまして外国の大豆と比べましてもやはり優位性を持っているものでございます。現に具体的に高く売れるといったような状況が具現されておりますが、現実の場合におきまして、価格形成がその点について必ずしも具体的にされていないという問題もございます。そういったようなことから、生産者団体の販売努力を促進するためにも、最低販売価格の下限となる最低標準額といったようなものを考えていきたいというのがこの改正の一つの柱になっているわけでございます。まずこういうことにつきまして、国産大豆あるいは輸入大豆の動向とか、あるいは想定されます流通経費等々を総合的に勘案いたしまして最低標準額を設けるというようなことで対処してまいりたいというふうに考えるところでございます。  今先生指摘の、この変動等につきましてはどういうふうに考えるかということでございますが、今申し上げましたような形で一つ努力目標といいますか、そういう意味での最低標準額ということでございますので、原則としてそれは変えないというのが一つ考え方だろうと思います。努力目標ということでございます。ただ、先生指摘のように、大豆が国際的に今は極めて過剰な状況になっておりますが、徴調整とか大きな変動があるということになってくるような状況においては、それに応じて対処できるような仕組みも考えていかなければいけないと考えるわけでございます。
  130. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 いろいろ新しい制度についての検討をしていかなければいけないわけでありますが、麦の新算定方式につきましては米審で小委員会をつくって来年六月まで一年がかりで練り上げる、こういうことになっているようであります。しかし、大豆は三カ月間を超えない程度にということでありますので今年の十月に間に合わせる、どう考えてもいかにも拙速ではないかという感じがするのですね。銘柄にしてみても市場の評価が定着しているのかどうか。七十六品目も銘柄がある中で、銘柄の格差の決定の条件が整っているのかという疑問もあるのであります。しかも、米と大豆の検査時期がぶつかるというようなことから、検査体制なんかも我々としては非常に危惧するところが大きい。いろいろな面からいって時間が要るのではないか。恐らく諸般の検討については、局長のもとに研究会か何か知らないがそういうものを持って作業に当たるのだろうというふうには思うのですが、それも一つ意見をお聞きしたいと思うところであります。  しかし、今お聞きいたしましても、生産費の調査の基礎等についてはまことに微々たるものの調査にすぎないようで、そんなものではまた話にならぬのではないかと思います。しかも基準価格の決定時には六十二年の作付は終わっている時点でありますから、大豆の耕作農家に対する関係というのは一体それでいいのだろうかという疑問もあります。今言いましたように銘柄別の検査体制が極めて不備だ。こういう点から見ると、少なくとも六十二年産からこれを実施するということには非常な無理があるのではないかという疑問を持たざるを得ないのであります。小麦と同様に一年くらい関係者や識者の討議機関における十分な議論、研究の結果を経た上で具体的な提案を行い、合意を図るというのが常識からいうと本当でないのかな、大豆だけを未熟な体制のままにとりあえずスタートさせる必要がどういうぐあいにあるのかなという印象を大変強く持つのであります。  あるいはこの改正案で言うと、価格決定における行政の裁量権というものが非常に大きいことになるのではないか。これはある意味では、財政上の意味からいうと大蔵省、あるいは一方では議会筋からの圧力というようなものを大変ストレートに行政は受けるということになるわけで、一体それでいいのかなという感じもいたします。だから、そういう面からいうと本当は何か、審議会がいいのかどういうのがいいのか知らないが、一応御相談する機関というのがあって、客観的な判断を示すというようなことが必要でないのかなという感じもするのであります。それら全体についてかなり疑問が多いということをこの際指摘を申し上げておきたいというふうに思います。  なお、今の中でお答えをいただく分についてはお答えをいただきたいというぐあいに思います。
  131. 浜口義曠

    ○浜口政府委員 先生指摘の二点につきましてお答えを申し上げさせていただきます。  一つは、銘柄格差のグルーピングが果たしてできるか、こういうお話でございます。  この法案の一つの大きなねらいは、具体的に良質のものを国民の需要に応じたような形で的確に供給をしていくということが喫緊の課題であろうというような観点に立ちまして、この法案の提出をさせていただいているところでございます。現実にこの銘柄格差の設定等につきましては、私ども、いわば商品学といいますか、そういったような実態調査も行っております。そういう中でのグルーピングといったようなものも十分勉強をしているという状況でございます。  もう一点の、米価審議会に準じるようなことが考えられないかというお話でございます。  この点につきましては、先ほど先生指摘していただいたとおりでございまして、関係方面の御意見というものをずっと聞いてまいったわけでございます。それから、この法律の建前といたしまして、価格等々につきまして生産者団体というものの意見を聞けという条文も従来から入っております。そういったような状況で私ども勉強してまいったわけでございますが、特に、私的という言葉が正しいかどうかわかりませんが、昨年からことしにかけまして生産者団体、地方公共団体、さらに学識経験者の方々にお集まりをいただきまして、名づけて大豆研究会というものを開催していただきまして、ここで長期間にわたって御議論を闘わしていただいたわけでございます。そういった中で大豆研究会報告というものもできておるわけでございまして、そういうところに結集されました各方面の方々の御意見といったようなものもこの運営の上で反映させていただければというふうに考えるところでございます。
  132. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 いずれさらに議論を深めていくことになろうと思いますが、こういう法改正がこれからの農家の生産意欲というようなものに非常に大きく影響を与えることになろうと思うのであります。あるいは行政の、殊に政策価格の継続性というような意味等からいいましても、大変に多くの点で危惧されるものがあるわけであります。  大臣、この機会にこういう点につきまして一言御発言をいただいておいた方がいいのではないかと思うのでありますが、いかがですか。
  133. 加藤六月

    加藤国務大臣 趣旨説明のときにも申し上げましたが、生産性の向上と品質の改善ということを目的としたものでございます。また、それらをにらんだ価格算定方式の改定でもあるわけでございまして、価格決定に当たりましては、積極的に大豆生産に取り組んでいる生産者の生産意欲が損なわれることのないよう、慎重に検討してまいりたいと考えておるところでございます。
  134. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 どうもありがとうございました。
  135. 玉沢徳一郎

    ○玉沢委員長 午後一時三十分から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時五十五分休憩      ————◇—————     午後一時三十一分開議
  136. 玉沢徳一郎

    ○玉沢委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。竹内猛君。
  137. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 大豆なたね交付金暫定措置法を改正する法案について関連をして幾つかの質問をしていきたいと思います。  まず最初に質問したいことは、ことしは特に米の減反が七十七万ヘクタールになり、米価は三十一年目の引き下げ、その率も五・九五という引き下げになり、一俵にしてみたら千百十一円の引き下げという形になる。海外からは自由化の波が押し寄せ、国内の財界からは過保議論という形で、日本の農業がこれからどういう方向に進んでいくのかということに関連をして先ほど質問がありましたが、特に今回の場合には、大豆、なたねというのは次の麦の関係もありまして、畑作農業の基本に関する問題でありますから、やはり畑作農業のこれからという問題を含めて質問をしたいと思います。  そこで、問題は、何といっても今度の法案の中では、交付金や価格の問題に関係することでありますが、この法案によって生産農家にどういうメリットがあり、何がデメリットになるのか、こういうことをまず先に聞いておきたいと思います。
  138. 浜口義曠

    ○浜口政府委員 先生質問の点でございますが、大豆及びなたねにつきましては、昭和三十六年から大豆なたね交付金暫定措置法に基づきまして、その生産の確保と農家所得の安定に努めてきたところでございます。ちょうど制度発足後四半世紀をけみしたわけでございまして、その後の生産事情あるいは需給事情の変化によりまして、現在の制度については、これまでの二十五年間の変化に的確に対応し得ない場面が生じてきているというふうに認識しているところでございます。このような情勢に対処するために、大豆及びなたねに係る交付金制度につきまして生産状況等を的確に反映させるとともに、一層の生産性の向上、さらにまた品質の改善に資するよう今次の改正を行うというものでございます。  先生指摘の、農家においてどういうことになるのかというお話でございますが、この交付金制度のもとで大豆作の生産性の向上及び国民食糧としての大豆の品種の改善が図られることであり、農家経営の安定が確保されるものとなるというふうに我々は考えているところでございます。
  139. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 三十六年以来ちょうど四半世紀、二十数年が経過をしている中で、その間にいろいろのチャンスもあったと思いますが、なぜこの間にこの問題に対して手をつけられなかったのか、その理由についてちょっとお聞きしたい。
  140. 浜口義曠

    ○浜口政府委員 先生指摘のとおりでございまして、ちょうど二十五年たったわけでございます。この経過を振り返ってみますと、いろいろな大豆にまつわる問題がございました。一つは、国内的に特別に申し上げなければならない点は、三十六年当時から私どももいろいろな指導等々も行いましたけれども、具体的に大豆の生産が減少してきたという点がまず特記されなければならないと思います。これにつきましていろいろ私どもの生産対策あるいはこの法律に基づく価格対策を実施したところでございますけれども、具体的な状況において今申し上げましたように量が減ったということが大きかったわけでございます。  ただ、こういう状況に対応いたしまして、水田再編対策というものが昭和五十三年から実施されたわけでございますが、これを一つの契機といたしましてこの減少の趨勢といったようなものが反転いたしまして、従来から大豆に対して期待されておりましたような国産大豆の食糧需要に対する位置づけというものを反映いたしまして増加してまいったわけでございます。一つのピークといたしまして昭和五十六年がございます。再編対策のいわゆる転作面積のピークというようなことでございまして、約六十六万ヘクタールといったようなものに相呼応いたしまして、十万ヘクタールを切っておりました大豆におきまして一つのピークをなしております。そういうようなことで今日まで参ったわけでございますが、今先生指摘の水田農業確立対策というものを本年度から実施しておりまして、この具体的実施状況について現在まだ調査中でございます。  さらには、具体的には八月一日の実態調査というものによってこの動きというものを追っておかなければならないわけでございますが、今のところの大体の各県からの御報告を総合いたしましても、五十三年において一つの契機となったということと同様に、大豆の面積が拡大するということになるのではないかというふうに考えております。全体に七十七万ヘクタールということにつきましては、六十万ヘクタールに比べまして二七%の増ということでございます。そういうようなことで、一方では水田農業確立対策、すなわち田畑輪換というようなことから大豆の農業生産上の見直しというのが行われまして、昨年に比べましても大体三〇%くらいふえるのではないかということが考えられるわけでございます。  以上のようなこれまでの経緯といったようなものから特記すべきは、それぞれの時代に応じまして具体的な生産面積というものの消長があったということでございまして、現在いわばその上昇といいますか拡大の局面を迎えているということでございます。これはもう少し深く考えてみました場合に、もちろん農業生産全般にわたる問題ではございますけれども一つは都道府県におきましてあぜ大豆と言われていたもの、そういったものがいわば水田の大きい面積において展開をできるような一つの技術革新があらわれてきているということだと思います。その一つの技術革新の典型的な象徴的なものと申しますのは収穫機でございまして、小型のものについてはハーベスターというものがございますけれども一つは大豆専用機が機械化研究所によって検討をされ開発をされた。さらに、大型のものにつきましては汎用コンバインというようなことでございまして、生産性の向上に直接影響するような技術が開発をされ、本年から実施に移されようとしている、そういう技術的な段階がこれに反映するかと思います。  他方、もう一度、ちょっとくどいようでございますが、こういった国内におけるいわば減少の局面から拡大の局面に至るというちょうど境目の時あたかも、国際的に見ましても、従来五千万トンのオーダーであったものがアメリカあるいは中国さらにブラジルといったところで拡大したということでございまして、そういう意味で、現在国際的な大豆の生産量は今申し上げました五千万トンから七千万トンを経過いたしまして、達観して申し上げまして約一億トンになろうという状況になっているわけでございます。このことはもちろん大豆が十分安定的に供給されるということでございますが、一方、生産量がグローバルな意味において拡大したということは国際市況についてかなり低迷した状況を呈しているということでございまして、それに引きずられまして我が国の国産大豆も、優良な特性を持っておりますけれども、具体的な市況製品としては価格が低迷をしているという状況でございます。  以上三つの点を簡単に申し上げましたが、一つは国内生産の問題あるいは技術上の問題、さらに国際状況というものが今日まであったわけでございます。先生の御指摘のとおり、こういった二十五年の中でいろいろな手を打つべきチャンスがあったのではないかということでございますが、今までのような状況をけみして、今の時点が一番施策として今後打つべき契機が出てきているというふうに考えるべきではないかということでこの法案を提案させていただいた、これがこの法律の背景でございます。
  141. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 これは大臣に伺いたいのですが、農水省が農政審議会の議を経て六十五年の長期展望というものをつくったですね。あれによると、六十五年まであとわずかですけれども、四十二万トンで自給率八%を見込んでおりますが、現在の大豆の生産量からいえば二十四万トンぐらいになっておりますか、面積にしてもあの当時よりは大変減少しておりますし、収穫も少ない。大豆が転作畑作の重要な一環を担っているものであるとすれば、この間にもっと大豆に対する手厚い技術的あるいはその他の品種改良なりの指導があってよかったのじゃないか、こんなに目標と現実が違うということについて、これは政治責任があるのじゃないかと思うのです。これは何も別に大豆に限ったことじゃありませんね。  例えば養蚕でいえば、繭の生産と生糸の需給状態からいっても当時の六十五年の展望が狂っている。ああいうふうに数字を出して農家にこれを示して、しかも農政審議会の議を経て閣議で決定をしたものが狂ってしまっているときに、その責任をすべて生産農民に押しつけるというのはどういうものか。これは大変問題ではないか。それはそのときの管理者がやったことであって後の者は責任がない、そういうことを言っては困るのですが、大臣、この辺のことについて答えてもらいたいですね。
  142. 加藤六月

    加藤国務大臣 午前中、五十嵐委員の御質問の中にも今の御趣旨の問題、数字の問題はあったわけでございますが、大豆生産の中長期的展望としましては、昭和五十五年に農業基本法に基づく「農産物の需要と生産の長期見通し」、六十五年の長期見通しが策定、公表された中で、作付面積二十一万ヘクタール、十アール当たりの収量二百二キログラム、生産量四十二万トンが見通されているところでございます。それが予定どおりいかなかったという問題については、いろいろな原因あるいは要素があったと思うわけでございますが、現在大豆生産は、十アール当たりの収量についてはおおむね見通しの線に沿った伸びを示しております。昭和六十一年物で百七十七キロという数字も出ております。それから作付面積及び生産量につきましては、一時水田における転作等目標面積の軽減調整が行われた等の理由によりまして、見通しに比べ相当低い水準にあるところでございます。そこで、昨年十一月の農政審議会の報告に付された「九〇年代の食生活及び農業生産の見通し」もこの現状を踏まえたものになっておるわけでございます。  大豆は、食物性たん白質資源として国民の食生活上欠くことのできない重要な農産物であり、また農業生産面においても輪作体系を構成する基幹作物であるとともに水田農業の確立を図る上でも重要な農作物でありますことから、今後は諸対策の推進により徹底した生産性の向上及びコストダウンを図るとともに、実需者のニーズに応じた良品質大豆の生産、流通を促進し、財政への過度な依存からの脱却等も図りながら生産の振興に努めてまいる所存でございます。
  143. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 ちょっと責任がはっきりしません。ただそれは報告ですからね。私は、この目的と現状が狂っているところの政治的、行政的な責任を聞こうとしているのです。  それではもう一つ明らかにしますが、三十六年のときには大豆の自給率は二五%であったわけですね。ところが、六十五年計画では八%をもくろんだ。しかし、現状は五%ですね。しかもそれは北海道が、地域的にもあるいはいろいろな条件がよかったのかもしれませんが、二百キロ以上の生産になっており、本土都府県は百キロ以内になっている。いずれもこの二十数年の間に四十五キロずつふやしていることはよく理解できますけれども、全体としてはそういう形になっていない。  そこで、七十七万ヘクタールの水田の減反が行われて、今大豆の作付は十三万八千ヘクタールですか、その中で、聞くところによると八万ヘクタールが転作の部分である。とするならば、七十七万のうち八万を差し引いた六十何万ヘクタールの転作の中身において一体何をどういうふうにつくろうとするのか、何が定着したのか、大豆は一体五%のままにとどめてしまうのか、こういう問題もある。だから、今ここで政治責任、行政責任を追及してみたところで、別にそれは一言何か言えば済むと思うけれども、そうではなくて、それを償うにはやはり今後の政策において従来のものを上回ったような手当てをしていかなければそれの償いにはならない、こういうふうに私は思いますから、その行政上のこれからの方向を大豆の問題についてはぜひ明らかにしてもらいたいと思うのですけれども、この点はどうですか。
  144. 浜口義曠

    ○浜口政府委員 先生指摘の、今後大豆を日本の農業生産の中でどういうふうに位置づけていくかという問題でございます。  昨年以来いろいろな御議論を賜りながら本年から実施をしてまいっております水田農業確立対策におきまして、一つの技術的な柱といたしまして水田の輪作体系、地域輪作農法の確立ということをうたっているところでございます。先生今御指摘のとおり七十七万のうちでどういうものをつくっていくのかということにつきましては、地域の状況に応じてそれぞれの特色ある作物を農家の方々につくっていただこう、こういうことでございますが、やはり日本におきます気候あるいは食生活というようなものをにらみますと、基本となりますのは、米を中心にいたしまして、そのほかに例えば麦、大豆というようなものが今申し上げました日本型の輪作体系の根幹になるのではないかと考えておるわけでございます。先生指摘のとおり再編対策におきまして約十四万ヘクタールのうち転作の部分が約八万ヘクタールということでございまして、その他水田におきましても従来から一部つくられておりますが、北海道の畑作を中心に畑作物の大きな位置づけを示しております。大豆はそういった従来からの水田のもの、それから今後の水田農業確立対策を契機といたします水田につくるところの大豆、さらにまた北海道等の畑作大豆の三者が両々相まちましてこの位置づけを確保していかなければいけないのではないかと考えます。  ちなみに、先ほど申しましたように、この七十七万ヘクタールの中でどういうふうな転作の状況になったかということにつきましては現在調査中でございまして、八月一日をけみした後にいろいろな状況が具体的になろうと思いますが、従来の水田再編対策といったようなものの経験から推しはかりますと、一つは飼料作物、今申し上げました畑作物といたしましての麦と大豆、さらに野菜というようなものが四巨頭になるのではないかと考えております。そういった中におきましても、繰り返すようでございますが、水田農業確立対策の柱といたしまして輪作農法の展開ということを言っておりますので、その意味合いからいきましても、大豆及び麦の位置づけが今申しましたものの中で特に重点を志向して拡大していかなければならない作物だというふうにも考えるものであります。
  145. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 いろいろな話がありましたが、国際的に見ても、日本の場合に大豆の生産というものが条件的にいえば、北海道、東北、北関東、北陸、南九州というようなことでほぼ定着をしているようですが、それでもその単収が余り上がらない。北海道が中心だ。麦との関係もありますから、したがって次の麦の法案のときにはまた改めてこの問題をやりますが、そのときにはひとつもう少しわかりのいい答弁をしてもらいたいということです。  ここで一つ戦略物資として大豆が問題になった時期がありますね。七二年の一月ごろには三千円であったのが、その年の三月ごろには一万五千円にはね上がった。豆腐や納豆が物すごく上がった時期がありました。あの当時はアメリカから大豆が大変入ってきた、中国からも一部入ってきたけれどもアメリカ戦略物資に使ったのか、あるいはまたそれを輸入してきたところの商社が倉庫の中にしまい込んで思惑をしたのか、いずれにしても国内で大豆が非常に大きな問題になったことがあります。そういうときに備えるためにも、やはり大豆というものをもっとかわいがって、畑作の中に定着させるために努力すべきではないかと思うのです。  十一月二十八日の農政審の報告によると、大豆については、昭和三十六年の輸入自由化の影響に対応するための措置として政府による不足払いが行われているが、転作による生産量の増加及び販売価格の低下によって財政負担が増大しており、ますますその傾向が強まるおそれがあるため、現行制度の見直しが重要な課題となっている。  このため、生産者の手取り価格である基準価格の水準を生産性向上を反映したものとすることが必要であり、現行算定方式の見直しを検討する必要がある。  また、現在は品質に関係なく数量に応じて交付金が交付されることとなっているが、交付金交付対象数量の限定、生産者の品質向上及び販売努力の促進等の見地からの検討を行うとともに、流通コストの縮減・合理化等についての検討を行うことも必要である。という形で、大豆について追い打ちをかけるような、冷や水をかけるような非常に厳しい文章が出ている。戦略物資とされてきた経過からして、大豆というものを一体どうしようとしているのか。これは大臣の方から答えてもらった方がいいですね。
  146. 浜口義曠

    ○浜口政府委員 今先生がお話しになりました経過等に関連いたしますので、私から簡単に申し上げてみたいと思います。  一つは、四十七年あるいは四十八年といったようなところでアメリカの大豆の輸出の規制が行われております。こういった意味戦略的な商品として使われたのではないかというお話でございますが、先ほども申し上げましたように、この時期におきます国際的なトータルの生産量といたしましては、四十六年に四千八百四十八万トンといった低い数量でございまして、そういったものを背景にいたしまして、価格の面につきましても、CIF価格で輸入価格が二千六百三円であったものが、翌年の段階におきまして三千円あるいは四千四百四十五円といったような形で上げられてきているわけでございます。先ほどからの繰り返してございますが、国際的にかなり低い水準であった、量が少なかったということがその背景にあったと考えております。  大豆等につきましては、大豆研究会というのがございますが、大豆におきますいろいろな商品性あるいは農作業におきます位置づけ等々から極めて重要な作物だというふうに御結論をいただいております。  一つは、食生活の面でございます。一つだけ申し上げますれば、食生活の場合、たんぱく質というのがアメリカの大豆あるいは中国の大豆に比べて高いという特性を国産の大豆は持っております。百グラム当たりの中で三十五グラムということでございます。さらにアミノ酸の諸要素といったものにおきましても、国産大豆におきましては特異なる優良な品位を持っているわけでございます。さらに農業生産におきましては、北海道におきます畑作の輪作体系の中での重要な位置、さらに先生お話しのような関東あるいは九州地方におきます大豆の輪作体系の位置づけといったものから、私ども農業生産の振興を預かっている部局といたしましては、大豆の重要性というのはこれからもますます高まるだろうというふうに考えております。  そういう意味で、米と相補完し合う栄養素を持っている大豆の農業生産上の位置づけといったものに十分配慮をしながら、今後ともその拡大、あるいは定着、あるいは良品質の安定的提供といったようなことを行っていかなければならないと考えるところでございます。
  147. 加藤六月

    加藤国務大臣 アメリカが大豆の輸出規制を行ったときに、私は議運の理事をいたしておりまして、社会党の現山口書記長、公明党の現大久保書記長等々とともに、国民の大切な大豆というものをいかに確保するかということで、国会における決議あるいはまた中国大陸からの緊急輸入等々あらゆる方法を当時講じたことを覚えております。また、一丁十円を切っておった豆腐が数十円に暴騰したということ等の苦い経験もあるわけでございます。そういうことを考え、なぜアメリカは大豆の輸出規制を行ったかという問題につきましてもいろいろ原因の究明その他をやったことがあるわけでございます。先ほど局長からお答えいたしましたように、その時分の国際的な生産量が五千二百三十四、五万トンから六千万トンである。そしてまたその価格もいろいろあるわけでございますけれども、今日においては一億トンになんなんとする国際的な大豆の生産並びに需給というものがあるわけでございます。  そういう中で、先ほど来お答え申し上げておりますように大豆というのは国民の食生活上欠かすことのできない重要な農産物であります。また、生産面においても輪作体系を構成する基幹作物として、また水田農業の確立を図る上でも重要な農作物であり、今後ともその振興を図っていく必要があります。しかし、先ほどの御指摘もありましたように大豆作の現状というものは、生産性の向上が立ちおくれていることあるいはまた内外価格差の拡大に伴い財政負担が増大していること等の問題に直面しておるわけでございます。このため、今後におきましては徹底した生産性の向上及び実需者ニーズに即した良質大豆の生産を促進するとともに、あわせて財政への過度の依存からの脱却を図りつつ国内における自給力を確保していくことが必要であると考えておるところでございます。
  148. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 大豆の問題については基本的に大事な問題でありますから、戦略的に使われないためには、輸入をしなければならない状況にあるのですから、何としても輸入の多元化ということによって安全の確保をしていかなければならない。アメリカだけではなくて、アルゼンチンでも中国でもあります。  私はこの間中国に行ってまいりましたが、特にハルビンに行ったときに黒竜江省の責任者と会いました。そのときに、三江平原の開発という問題が取り上げられた。既に七、八年前から三江平原には農林水産委員会の代表も現地に入っておりますし、その当時の農林水産大臣も現地でいろいろな約束をしてきている。それから、農林省と中国の関係の方との間にある協定も結ばれていて、調査もしているし援助もしているし、いろいろ努力もされてきた経過があります。ところが、最近はこれに余り熱が入らなくなってきたという感じです。中国の方からしても、どうも金の使い方が余り効果がないというようなこともあるのかもしれません。しかし、面積にして四百万ヘクタールの開発対象地、これが今四万ヘクタールしか開発されていないということで、目標の百分の一ぐらいのところで生産をしている。大豆、トウモロコシ、コウリャン、こういうものができるわけであります。特に三井なりトーメンが入って大豆の買い取りをしたという経過もあり、いろいろな経過があるけれども、この三江平原の開発について、現状と将来のことについて、今まで手を加えてきた関係省としてはどういうぐあいにこれから考えられているのか、ちょっと伺いたい。
  149. 眞木秀郎

    ○眞木政府委員 お答え申し上げます。  三江平原の農業開発計画につまましては、御案内のとおり一九八〇年二月に中国側から計画策定に対して協力要請がございまして、八〇年十二月の日中閣僚会議におきまして当時の亀岡農林水産大臣から協力を表明いたしました。その後、調査を開始して取りまとめたわけでございます。  その内容は、約四・六万ヘクタールの農地を対象とするかんがい排水を中心としたモデル農業開発計画、これをまずやってみようということでございまして、これについて中国側でさらに検討を行ったわけでございますが、中国側の財政事情なり借款対象の優先度——中国においてはほかにも優先すべきインフラストラクチャーの建設、例えば通信でありますとか港湾施設でありますとかそういうものとの比較というような問題がありまして、全体の計画を直ちに実施することは困難というような事情が生じたわけであります。そこでその後、この農業開発の基礎となります三江平原の農業試験場計画について改めて協力要請がございまして、八四年度にこの協力を行いまして、八五年度からプロジェクト方式の技術協力が開始されているわけでございます。しかし、ただいま御指摘ありましたように、全体の農業開発、これを進めていこうという、また我々もそれに協力をしていこうということでございますので、今後中国側の要請等も踏まえまして、これについては前向きに対処してまいりたい、このように考えております。
  150. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 前向きに対処していくということは非常に結構なことだと思うのですが、実際、中曽根総理がサミットに行ったときにも、あるいはその他前川レポートの中にもあるように、内需拡大ということが言われている。内需拡大はいろいろあるけれども、どうも日本は言うことは言うけれどもやらないじゃないか、どこでそれをやるんだということになれば、その一つは、既に国際協力事業団が調査をしてかなり詳しい資料が出ているし開発の拠点もあるわけですから、長い目で見た場合に三江平原の開発に協力していくということはやはり非常に大事なことだ、農業を通じての日中友好ということは非常に大事なことだ、こういうふうに考えているわけです。あの地域で開拓をされた方々が各地に帰ってきて、今農業の中で牛を飼ったりいろいろなことをして仕事をしております。こういう人たちからその話を聞くとやはりあの当時のことを思い出す、こういうことです。大変大事なことでありますから、ぜひこの点については加藤大臣、前向きに取り上げるようにちょっと発言してもらいたいと思う。
  151. 加藤六月

    加藤国務大臣 先般行われました日中定期閣僚会議におきまして、その全体会議で中国側の農牧漁業部長さんあるいは対外経済貿易部長さん、お二人から日本のいろいろな問題に対して感謝するという言葉が出たわけでございまして、私たちは要請があれば、それについて一つずつ誠意を持って前向きに検討し、推進していく覚悟でございます。  先ほど経済局長の方からお答えいたしましたような三江平原の開発については、中国側の基本的姿勢、あるいはそれに対する要請に応じて我が方も遅滞なくやっていく考えでございます。
  152. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 この際、大豆の話から少し話を変えて恐縮ですが、私の地元の筑波研究学園都市の合併問題について質問をします。  きょうはその関係者が来ていると思いますが、実は、この間中国から帰ったときに、いきなり茨城の県知事が筑波研究学園の六カ町村の合併問題を打ち出してきた、そして全面合併あるいは部分合併、あるいはある町に吸収合併、こういう三つの方式を出してきて、十一月二十日までにやれ、このような期限を切っての要請をしてきました。今から四年前、五十八年のときにもやはり同じような合併の問題が出てきて、これは万博が六十年にあるからということで途中で思いとどまったわけでおりますが、万博が終わって二年もたっている段階で、なぜ一体、この二年の間にそういう合併の話をしないで、いきなりこの段階で十一月二十日に合併をしろというようなことについて何か中央から指示をしたのか、それともしなかったのか、この点について伺いたい。
  153. 加藤六月

    加藤国務大臣 私、ただいま先生が御指摘されました五十七年、五十八年のときには国土庁長官をいたしておりました。六カ町村の合併問題についていろいろ苦労し、また、ある面では努力した一人でございます。いろいろな問題があったわけでございますけれども、知事さんがどういうお立場で、どのように今回それを慫慂せられたのかわかりませんけれども考えてみたら、私は、一つの地方公共団体になるのが一番いいのではないかと思われます。
  154. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 それは私も合併に反対じゃない。それは、桜村という村に公務員が移ったわけでもないし、谷田部町という町に公務員が移ったわけじゃない、やはり学園都市に研究所が移ったからそこに行ったわけですから、当然それは一つになっていくことがいいと思うのですね。ところが、四年ごとに選挙が行われる。町村会議員の選挙あるいは市長選挙があるから、そのためには特例法を使って議員の任期を延期するとかなんとかということで、それで四年目ごとにこういうことを上からやってくるということは、移った住民あるいは在来からそこにいた住民にとってみれば全く不愉快な話だ。こんなばかな話はないじゃないか。議員とか町村長が相手にされて住民はそっちのけで十一月二十日という形をとってくる。これは国土庁の推進室長がそこへ来ているから、推進室長は新聞でちゃんと一定の答えをしている、知らないはずはないのだから、それについてはどういうような考え方を持っておるのか、それをはっきりしてもらいたい。
  155. 野村信之

    ○野村説明員 国土庁としましては、基本的に町村合併の問題は地元の意向によるものであると考えております。つまるところ地元の意向によって合併の問題は決定されていくのではないかと理解いたしております。
  156. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 地元の意向によるというのは、地元に誘いかけて何かしなければ地元の意向を固めるわけにはいかないんだ。現在のようなやり方をしておったのでは、合併するものもできなくなってしまう。自治省はそのことを知らないはずはない。自治大臣はそんなこと言わないけれども、隣の選挙区であるし知らないはずはないのだから、自治省はこれについては何がしかの接触があるはずだ。これはどうです。
  157. 吉原孝司

    ○吉原説明員 筑波研究学園都市、御承知のとおり国家的なプロジェクトとして進んでいるわけで、それを受けまして茨城県も町村の境界を越えて、またがった格好で町づくりが行われておりますので、それをできるだけ一体的な町づくりができるようにいろいろ努力しているというように今までも伺ってきたわけであります。  このたびの県のこの六町村の合併に関する提案でありますが、そうした提案もこれまでの筑波に対する県の努力、対応の一環として打ち出されたというように私ども理解しておりまして、その性格も、関係町村に対して同じテーブルに着いて合併問題を考えてほしいというような呼びかけと私どもは理解いたしております。私どもも直接どういう言葉でもって呼びかけられたか、そこまでは正確に把握しているわけではございませんが、性格的にはそういう呼びかけと理解をいたしております。したがいまして、それを受けて関係地方公共団体であるそれぞれの六町村がどういう対応をするのか、それは文字どおりそれぞれの町村が自主的に判断すべきものと私ども考えております。したがいまして、各町村がその対応の姿勢の中で、個別の地域内において住民との間でどのようにこの問題を協議し、町村としての態度を決めていくのか、それもまた同じように全く自主的に判断すべきものと考えております。
  158. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 そういう考え方は私も賛成だからそういうふうにしてほしいわけですが、現実にはそういうふうになっていないがら注意をしてもらいたいということをまず申し上げておきたい。  加藤農水大臣が国土庁長官のころから大分手をかけていただいたその学園も、既に出発してから二十年近くなろうとしておりますが、依然として学園内の人口を十万にしようというその人口が十万に達しない。それから、周辺人口を十二万にしようというけれども、それも達しない。二十二万の目標が今十五万で低迷をしているというのが現状ですね。特に公務員の宿舎なんというのは、これはここでこんなことを言っても意味のない話ですが、七千七百二十五戸の住宅があり、家族用のものが四千八百八十一、独身寮が千五百五、単身が千三百三十九というようにできておりますが、その中で一割以上が空き家になっているという事実がある。これは大蔵省が、関財がやっておることですけれども、どういうことかというと、やはり人間がそこに定着をしないわけだ。それは医療施設や教育施設や図書館あるいはショッピングやたくさんのいろいろな手当てをしてもらったけれども、依然としてここはまだまだ住みにくい土地になっている。  そういうようなときに合併のビジョン、これから合併したらどうなるかというビジョンもない、メリットもデメリットも明らかにしない。こういうわけのわからない印刷物を出して、そしてひそかに地方課長が町村長のところへ行って、今度あなたを町長にするとか市長にするとかしないとか、こういうことをやったら一緒になれるはずがない。あなたが今度新市長ですよ、あなたをしますよと言えば、みんなそう思っている、ボスが六人いるんですから。それは大変な話だ。そういうやるべきことじゃないことをやっているから話がまとまらないのだ。だからきのうあたりの新聞でもこれは年内には無理だろうという話をしているわけですが、私はやはり合併するにはその合併のビジョンというものを明らかにして、メリット、デメリットを明確にして、合併すればこういう利益もあるしこういうこともあります、それから学園の区域内と区域外が今度なくなるのですから、そのときには区域内と同じような形にはいきませんが道路なり下水なりというものを整備する。今日だって二十年たっても整備されないものを、合併をして取り残されたら、その中心地は変わりがあるだろうけれども、その周辺なんか変わりがあるはずがないじゃないですか。  日本だってそうでしょう。東京の人たちは大分やられるけれども、地価が上がるけれども、それこそ僻遠の地は過疎地帯になってしまっている。同じようなことが行われるんだ。それを考えたら簡単に合併問題というものを上から、ある実力者の地位の保存のためにやるようなことについては注意をしてもらいたいということ、これはひとつ大臣、葉梨自治大臣から、地元だからよく注意をするようにしてもらいたいと思う。私は合併に反対をしておるわけじゃないのですよ。ちゃんと住民の意思と手続をしっかりしてもらいたい。それは野村室長がこの間新聞に発表したけれども、あれは賛成なんだ。ああいう点でひとつ指導してもらいたいということを要望する。大臣には関係ないけれども、恐縮だけれどもひとつ。  今度は大豆に関係のある話をします。  全国生乳連というのが出発をしてきたのですけれども、この生乳連の要請に従って先般は公明党の草川議員が文書によって質問書を出しておりますが、その文書だけではとても間に合わないからこの際私は委員会でただしていきたいと思う。  前々から、この生乳連の皆さんから、農協法に基づいて全国生乳連の設立ができた。それは五十九年から六十年の間にできたわけですが、畜産局はこれに対して執拗に阻止をし、かつ封じ込めるようなことを大変やられて妨害をした。今日でもこの生乳連の存在というのは余り好ましいものじゃないと思っているのか、それともできたことに対してよかったと思っているのか、これはどうなんです。
  159. 京谷昭夫

    ○京谷政府委員 ただいま御指摘の全国生乳連、全国生乳需給調整農業協同組合連合会でございますが、六十年の四月二十六日に農林水産大臣の設立認可を得て発足をしました農協連合会でございます。この認可のための審査の過程で省内で種々論議があったわけでございますが、当時畜産局としましては、この問題については先生御承知のとおり、加工原料乳の不足払い法に基づきます生乳取引体制がほぼ確立をしている状況下で新たな連合会の機能について若干疑問なしとしない、さらにまた、生乳取引に関係をする諸団体が既にたくさんあるわけでございますが、それらとの機能重複があって整理を要するのではないかというふうな論議があったと承知をしております。そういった内部論議があったことは事実でございますが、最終的には農協法に基づきまして設立される団体でございまして、関係者の自主的な判断で運営をされていくものであろうということで認可をしておるわけでございます。
  160. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 確かに言われるように農協法第十条の一項の十一「組合員の経済的地位の改善のためにする団体協約の締結」という事業を明確にしているが、全国生乳連としては、この事業規定を自覚的に行使すべく定款にうたい込み、設立後約二カ年かけて内部的な準備段階を経て、本年三月に大手メーカーに対して団体協約締結についての交渉を申し込むとともに、酪振法の定めるところに従い、同連合会は農林水産大臣にもこれに関して申し出を行ったのであるけれども、農水大臣はどのように対応したのか。聞くところによると、今日まだ回答がないと聞いていますけれども、これは大臣、いかがなものですか。
  161. 京谷昭夫

    ○京谷政府委員 御指摘のございました全国生乳連が昭和六十二年の生乳取引に関しまして、御指摘のような生乳取引に関する団体協約締結のための交渉申し入れを一部乳業者に申し出をしたという事実は私どもも承知をしております。この要請を受けた乳業者側は、結論的に申しますと、そのような交渉には応じられないという見解を相手側に伝えたという事実も承知をしております。  また、そういった状況を踏まえて、酪農及び肉用牛生産の振興に関する法律第十九条の三の規定に基づきまして、農林大臣が乳業者に対してこの交渉に応ずる旨の勧告をすべきではないかというふうな意向表明が当方に対してなされたことも承知をしておりますが、これにつきましては、ただいま申し上げました酪農及び肉用牛生産の振興に関する法律第十九条の三で決めております農林水産大臣あるいは都道府県知事が行う生乳取引に関する交渉というのは、一方の当事者である農協またはその連合会が生乳販売の権限を持っておることが必要であるということが定められておりまして、この全国生乳連についてはそのような意味での交渉上の資格要件を持っていないものであるという見解を私ども持っておりまして、そのような勧告の要請には応じられないということを事実上相手側に知らせておるつもりでございます。
  162. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 メーカーは口頭によって交渉拒絶を告げたままであって、既に四カ月も経過している。また農林水産大臣へは、この間に公文書をもってメーカーが交渉のテーブルに着くよう酪振法所定の勧告をしてほしいとの要請を再三に行っているが、この事実はあったのかどうか。
  163. 京谷昭夫

    ○京谷政府委員 御承知のとおり生乳取引についての交渉は、加工原料乳不足払い法に基づきまして、原則的に各都道府県に設けられましたいわゆる指定生乳生産者団体が一元集荷、多元販売の原則のもとで、これがいわば生産者側の交渉当事者として乳業者を相手に乳価交渉を進めるというシステムになっておるわけでございます。私どもただいま得ている情報では、多くの地域におきましてこの指定生乳生産者団体を通じた乳価交渉が進められておりまして、実質的に妥結し、ないしは妥結に近づいておるという状況でございます。少なくとも現時点におきまして大部分の地域では事実上の決着がつきまして、日常の生乳取引に大きな支障が生じているという実情にはないという理解をしております。
  164. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 大体畜産物価格の政策価格の決定というのは三月に行われている。にもかかわらず、七月になってもまだこういう問題が引き続いているということ、しかも法律があって、それが適法に行われていないというような状態で、生産者団体とメーカーとの間でトラブルが起きている。六十二年度の生乳の取引交渉は今日いまだに正式に妥結したという指定団体は少なく、例えば栃木県が六月二十七日というようなことを聞いているけれども、この中に入っている組織が、関係団体が二十一あるでしょう。そうですね。したがって、メーカーからの支払いの代金は、仮払いはあるとしてもそれが決定的なものではない、メーカー側の寸法による暫定支払いのままにされているということであるが、その事実を把握しているかどうか。非常に不安定な状態で取引が行われている、つまり不平等な状態で行われているということなんです。これじゃおかしいじゃないか、こういうことなんです。
  165. 京谷昭夫

    ○京谷政府委員 御承知のとおり、六十二年度の生乳取引時期というのは既に大分経過をしておるわけでございますが、確かに形式上六十二年の生乳取引交渉の結果を取りまとめた協約の確定というものは見ていない案件がまだ多数ございますが、事実上妥結をし、特別大きな紛争を生じておるという事例は、私どもの方にはまだいずれからも申し出がなされておらないというふうに考えておるわけでございます。恐らく現在仮払いという形式で処理されているものが、近い将来最終的に決着をして形式上の処理もされると考えておる次第でございます。
  166. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 混乱をしていることは局長も認めているんだから。仮払いということを認めているわけでしょう。ですから、どうしてもこういう牛乳のように最終価格が決まらない、仮払いという形である、場合によってはそれを受け取らないなんということになったら、生乳だから腐ってしまいますね。メーカ−はすぐ結束できるけれども、生産者団体というのはばらばらだから、各個的に抑えられてしまって最終的には物を言えぬことにされてしまうということになると、これは容易ならざることになりますからね。特に本州においては用途別の大宗を占める飲用向けにおいて、建て値は関東地帯ではキロ百十八円と、実際価格との間にはかなり格差があると聞いていますが、それはどういうことになっているのか。建て値と実際の問題、まず第一の問題ですね。  いわゆる用途無指定、その地向けが関連しているのではないかと思うけれども、この点の事実を把握しているかどうか。もし知っているとするならば、不公正取引と見るべきものであって、その内容は独禁法との関係で違法性のあるのを容認していると言うべきではないのかという点で、非常に独禁法との関係に触れるような面もないことはない。私どもは、この問題は畜産問題であると同時に、物価等の特別委員会でも問題にすべき問題じゃないかなとも思っておりますが、きょうは畜産の問題としてこれを取り上げているわけですから、この点についてはぜひ明確なお答えをいただきたい。
  167. 京谷昭夫

    ○京谷政府委員 御承知のとおり生乳の取引は用途別に行われておりまして、国が法律に基づいて保証しております加工原料乳を除いたその他の生乳の価格につきましては、乳業者と指定生乳生産者団体との間の自由取引交渉を通じて決定をされるということになっております。したがいまして、先生がおっしゃる飲用乳についての建て値というものが正式の形で存在をしているというふうには私ども考えておりませんで、個別の指定生乳生産者団体と個別の乳業者の間で、それぞれに独自の加工原料乳以外の生乳についての用途別価格が形成されておるというふうに考えておるわけでございます。その詳細について私ども完全には掌握しかねるところがございますが、御承知のとおり最近におきます生乳の需給状況、あるいは生産コストの状況等の変化を踏まえて加工原料乳価格を本年四月から改定をしておりますけれども、そういった動きも踏まえた上で当事者の間で適切な価格形成が図られていくであろうというふうに考えておるわけでございます。
  168. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 いろいろまだ言いたいこともあるけれども、時間の関係上、先の方に進みます。  酪振法の第十八条には、生乳取引の当事者間の生乳取引契約については、「書面によりその存続期間、生乳等の売買価格及び数量、生乳等及びその代金の受渡の方法その他その契約並びにこれに附随する契約の内容を明らかにしなければならない。」とあり、これは強行規定と言うべきものであるが、にもかかわらず、現在、メーカー側の不応諾によってほとんど未整備と聞いておりますけれども、この事実関係を掌握しているかどうかお伺いしたい。     〔委員長退席、月原委員長代理着席〕
  169. 京谷昭夫

    ○京谷政府委員 御指摘のとおり生乳取引契約については、酪振法の規定も踏まえてその文書化を図るよう私どもも指導してきておりますし、大部分が文書により整備されているものと考えております。一部に従来の長い慣行の中でまだ完全な文書化がなされていない面もある例があるようでございますが、これは指定生乳生産者団体相互間におきますいろいろな取引内容の漏えい防止といったような観点での配慮等も働いておりまして、これを機械的に強制することはなかなか難しい面もありますけれども、いずれにしても契約の文書化は取引近代化の基本であると考えておりまして、関係者に対してその努力をさらに続けるよう私ども努力をしていきたいと思っております。
  170. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 これはぜひそういう努力を続けてほしいということを要望します。  続いて、直接的には会員にかわって、究極的には生産酪農家にかわって、会員が行う生乳販売先であるメーカーとの間においてその生乳取引が公正かつ対等になし得ることを悲願として、その法的能力を自覚的に踏まえた全国生乳連に何ら手をかさずに傍観しているとすれば、しかも今日の生乳取引の面での矛盾は深刻であり、酪農家の立場の容易ならざるものを無視していることとなり、その不当、不法を論難されても仕方がない、こういうぐあいに考えるわけですけれども、その点についてはいかがでしょうか。
  171. 京谷昭夫

    ○京谷政府委員 先ほど来申し上げておりますように、加工原料乳以外のものにつきましては、加工原料乳不足払い法の体系のもとで、指定生乳生産者団体と乳業者との間の自由な取引交渉を通じて価格形成その他の取引条件が決められることになっておるわけであります。  さて、その乳業者と指定生乳生産者団体の間のいわば交渉力の問題でございますけれども、私ども、現在の状況下で、生産者側、指定生乳生産者団体側が非常に弱い立場にあるというふうには必ずしも考えておらないわけでございます。御承知のとおり、指定生乳生産者団体のいわば組織的な背景といたしましては、一方に全国酪農業協同組合連合会の専門農協系列、さらには総合農協系では全国農業協同組合といったような系列がございますし、また、より幅の広い生産者団体の集まりとして中央酪農会議というふうな全国組織があるわけでございまして、そういった重畳的な組織的背景のもとで個別の指定生乳生産者団体の交渉力が十分に発揮されているのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  172. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 これについてもなかなか議論のあるところだと思いますね。法的に団体を認めておいて、それを疎外をしてはいないけれども横っちょの方に置いて、誠実に取り扱ってもらえていないというような感じがします。いずれこれはまた委員会に諮って集中審議でもしなければならないし、現地へ局長関係者も一緒に行って現場で話し合いをする、こういうような機会をぜひつくって、お互いに法律をつくった以上は法律の前には平等であってほしいことだと思いますから、ぜひそのようにしてほしい。  そこで、一方、同じ農水省の中でも、全国生乳連を十分吟味の上で許可をした当事者である経済局においては、このほど全国制乳連に対する常例検査を行い、健全な発展を期したかなり積極的な事業展開を促したと聞いています。また、経済局は、かねてから地方農政局を通じての指定団体に対する常例検査の際、しばしば生乳取引契約の文書化不在について指摘し、その改善を求めてきたところでしたが、両局の対応の差は奇異に感ずるところであります。いかがですか。
  173. 京谷昭夫

    ○京谷政府委員 農協連合会の検査そのものは経済局の所管でございますが、仕事の内容については私どもの所管でございます。私どもが承知をしております経済局サイドでの検査姿勢というものは、特段私ども考え方とそごを生じておるというふうには考えておりません。
  174. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 この点についても、ちょっと時間の関係からもうこれ以上は詰められませんし、最後に、酪振法と不足払い法には、その第一条の「目的」に「生乳等の取引の公正」と「生乳の価格形成の合理化」をうたっており、言いかえれば取引の近代化を法の課題として重視していると解釈をします。全国生乳連はこの課題に対し、合法的、遵法的な法秩序に基づいて、日本酪農ひいては乳業の健全な発展のためにも真剣に取り組んでいる団体であると思っております。当面の団体協約締結権が行使できるよう農林水産大臣の支援を求めたいと思いますが、これは大臣いかがですか。
  175. 京谷昭夫

    ○京谷政府委員 生乳取引の合理化、近代化の必要性、私どもも十分に感じております。そのために、具体的に不足払い法によって指定生乳生産者団体を通じた一元集荷、多元販売の体制が確立をされておるわけでございます。こういうメカニズムを通じて当初の目的が達成できますように、関連団体のあり方、運営の仕方等については私どもとしても既存の団体の皆さん方とそれなりの御相談をしていく姿勢は保持をしてまいりたい、かように思っております。
  176. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 この際、委員長の方で理事会にお計らいをいただいて、後でちょっと養鶏問題を出しますが、養鶏の問題も含めて、酪農、養鶏それから飼料というようなことで集中の審議をひとつ理事会でしていただきたいし、場合によったら委員の現地調査などして——今の問題については現地との間でかなり食い違ったところもあるように思います。親切にひとつしていただきたいと思います。委員長、いかがですか。
  177. 月原茂皓

    ○月原委員長代理 お話は伺っておきます。
  178. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 最後に、きのうも公明党の吉浦委員、それから午前中には共産党の委員の方から養鶏問題についての御発言がございました。先般来の新聞を見ると、ダイドー養鶏というようなのが二百三十億の赤字で倒産をしている。あるいは五大養鶏も倒産をした。昭和二十八年以来の卵価の下落というものが今特徴であります。私は、去年の十二月の委員会で、六十年のときに社会党、公明党、民社党の三党が卵価の安定と需給に関する法案を議員立法として提案をしたことがあります。その中には、まじめに養鶏に従事する者についてはやはりカバーをしていかなければならないし、それから自主的な調整を打ち破る者については厳罰に処していかなければ、弱者が負けて強者が勝っていく、こういう競争の原理だけではだめだということを強く主張してきた。当時の畜産局長は今の農林事務次官の石川さんです。自来畜産局にその伝統が受け継がれていて、今日までその伝統が余り動いていない、そういう中で増羽が行われてどんどんふえてしまって、それで今調査をしておりますけれども、その調査といっても、最終的には調査権が限られている。税務署の署員が脱税の調査をする場合には調査権限があるからどんどん入って調査ができるけれども、自主的調整に関してはなかなか難しい。だから、金も借りない、基金も要らないという者についてはしようがないのですね。こういう者が今日卵価を引き下げている元凶であることは間違いない。これに対する行政の指導が不徹底だからこういうふうになったということは間違いがない。えさが下がった、卵価が上がった、だからやろうじゃないか、やった者が得だ、こういうことになってしまったら、これは強者の論理だけなのです。これに対してのしっかりした検討をしていただきたい。  社会党としては近く大阪に調査に行きます。倒産しているものを、その根源をほうっておくわけにいかないから行きますけれども、ちょっと時間がオーバーしたようで恐縮ですが、この点について一言お答えをいただきたいと思うし、先ほど委員長にお願いしたような集中審議の中にこの問題を加えていただかないと、農林水産委員会としての任務が果たせないのではないか、私はこういうふうに思います。
  179. 京谷昭夫

    ○京谷政府委員 鶏卵をめぐる問題についていろいろお尋ねがあったわけでございますが、御承知のとおり鶏卵の需給、価格については季節変動あるいは周期的な変動の組み合わせで従来から山あり谷ありの経過をたどっておるわけでございまして、これを平準化するために私どもかねてから計画生産を行っておるわけでございます。この計画生産の進め方をめぐりましていろいろ御議論のあることを私ども十分に承知しておりますけれども、やはり生産者の皆さん方の御理解、御協力を得、これを我々ができるだけサポートをしていくという態勢でいろいろな努力を積み重ねていくことが基本であると考えておるわけでございます。ただ、いろいろ事態が深刻な一面もありますけれども、だからといって権力的な介入を招くような法律の仕組みをつくることは養鶏産業の長期的な発展のためには余り望ましいものではないのではないかという見解を私ども持っておりますことを申し上げさせていただきたいと思います。
  180. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 時間がオーバーして恐縮です。林野庁の方にもちょっと御質問をしたいと思いましたが、時間がありませんからもうこれ以上しませんが、ひとつ委員長の方で先ほど来の集中審議の方を理事会に諮ってよろしくお願いしたいということをお願いして、私は終わります。ありがとうございました。
  181. 月原茂皓

    ○月原委員長代理 水谷弘君。
  182. 水谷弘

    ○水谷委員 法案の質疑に入る前に、先ほども五十嵐委員がお触れになっておりましたが、米国の包括貿易法案に対する今後の対応についてお尋ねをいたします。  先ほど大臣答弁がございまして、内容について重複は避けてもよろしいのではございますが、これは七月二十一日米国上院本会議で、特に通商法三百一条を強化、拡大するスーパー三百一条、これを核として包括貿易法案を賛成七十一、反対二十七の大差で可決したわけであります。この賛成票数は、大統領が拒否権を発動してもそれを覆すに必要な三分の二を上回っているわけでございます。日本などの貿易障害を三年間で撤廃させることを目指す条項や、特に今回のココム違反で問題になっております東芝グループの対米製品輸出を二年から五年間禁止というような制裁条項を盛り込んでおり、さらにまた四月三十日に可決をいたしました下院案とともに、米、牛肉、柑橘十二品目など市場開放へ政府努力を求める議会の意図表明、こういうことになっているわけであります。このことはアメリカ議会の意思を明確に表示して、今後これが両院ですり合わせがあり、さらに両院においてこれがどういう形で法案ができ上がってくるにしても、いずれにしても米国政府に対する政治的圧力として、日本への市場開放要求というのは従来にない厳しいものになってくるということは十分予測することができるわけであります。  先ほど大臣答弁の中で、OECD閣僚理事会における共同コミュニケ、また、さきのベネチア・サミットにおける経済宣言、これらを踏まえて基本的なポジションは変えずにしっかりとした対応をしていくという御答弁があったわけでありますけれども、私も予算委員会においてこの問題について御見解をただし、前の委員会においてもこのことについては触れさせていただいたわけであります。IWCの問題にしろココムに関するアメリカ議会の対応にしろ、いずれにしても最近の米議会におけるいろいろな問題については、さらにまたアメリカ側の出方については、私たちとしては言うべきことはしっかりと言いながら、当然、両国の友好とか両国間の貿易などの問題については十分な配慮をせざるを得ませんけれども我が国の農業がこれからしっかりとした新たな展開をし確立をしていこうという非常に重大な時期に差しかかっているわけでありますし、いよいよまたこれが休み明けの九月ごろから本格的に日米の農産物交渉等も始まっていくわけであります。再三まことにしつこいような質問でございますけれども加藤農林水産大臣は、この間のOECD閣僚理事会で活躍をされたときから本当に難しいときにすばらしい大臣が就任されたなと私は前から考えているわけであります。これが加藤農林水産大臣の決意だけではなくて、我が国政府のしっかりとした見解として今確立をしていかないと大変だなと私は感じているわけであります。  これらの包括貿易法案がアメリカ議会において議決されたということだけではなくて、国内においてもかつて農政に対するいろいろな非難がございまして、一時期それが下火になったような感がございましたけれども、こういうものが米議会において議決されたということと相呼応して、風向においても農産物貿易やあらゆる貿易に対するいわゆる障壁を積極的に取り除くべしという議論がまた起こりつつあるわけであります。これらの内外の圧力に屈することなく、毅然たる態度でこれから交渉を進めていっていただきたい。また、実際に現場でその交渉に携わっていかれる農水省のそれぞれの担当部局の皆様方も、これは非常に困難が予測されるわけでありますけれども、断固たるこちらの主張をしっかりと相手に伝え、とことんまで話し合って、我が国農業を守っていく上での大事な役割をぜひ果たしていただきたいとお願いをするところでありますが、大臣にお答えをいただきたいと思います。
  183. 加藤六月

    加藤国務大臣 ただいまおっしゃいましたように、我が国の農業、農政というものは内外ともにまことに厳しい立場に置かれております。私も先生と共通の認識を持っておるわけでございます。そういう中におきまして、言うべきことは言い、また相手の言うことにも謙虚に耳を傾けながら、すべての話し合いを誠意を持ってやっていかなくてはならない、こう考えておるわけでございます。国内におきましても、予算委員会でお答えいたしましたように、本当の、正しい、まじめな、よく勉強した上での各種御提言というものに対しては謙虚に耳を傾け、また今後の農政に取り入れるべきものは取り入れる。ただ、不勉強あるいは感情的な国内の方々の我が国の農政あるいは国境保護措置に対する一連の問題には敢然として説明し、またあるときには闘わなくてはならない、こう決意を固めておる次第でございます。  また、先般、全部ではございませんが、米の問題に関しましても、閣議で私は自給方針を貫く、食管制度の基本は堅持していくという発言をいたしまして、数名の閣僚から賛成の意見があり、閣議において異議なく了承せられました。今後とも政府はそういう線に対しはっきりした方針を堅持していかなくてはならない。  それにいたしましても考えさせられるのは、こういうときに生産者の皆さんにまことにお願いしにくい問題ではありますけれども、私は、血を流してくださいという表現がいいかどうかわかりません、この委員会で怒られたこともあるわけでありますが、その趣旨は高品質なものを安くつくるように頑張ってください。いろいろな比較は難しゅうございますけれども、内外価格差の縮小、是正ということも、ある面では政府としても一生懸命やらないといけないわけでございます。消費者、納税者、国民の方々のお考えというものも常に念頭に置きながら農政を展開していかなくてはならない、こう思うわけでございます。  アメリカ政府あるいはまたアメリカのキャピトル、議会筋、上院、下院の議員の皆さん方に。対しては、午前中もお答えいたしましたように、大使館を通じあるいはあらゆる方法を通じまして我が国の立場に対する理解と納得を求めていかなくてはならぬし、本質的にはOECD並びにベネチア・サミットにおいて議論をし意見を交わしてまとめたあの案を今後折衝の過程においてもはっきり打ち出していかなくてはなりません。アメリカは市場原理という一つの大義名分をもって今後ともいろいろな方法、手段を講じながら我が国にも言ってくることは想像されるわけでございます。国内世論を背景にし、また国民の皆さん方の良識と常識の線に乗って今後とも頑張っていきたい、こう考えておるところでございます。
  184. 水谷弘

    ○水谷委員 ぜひそういう決意で最後まで粘り強く頑張っていただきたいと思います。  大豆なたね交付金暫定措置法の一部を改正する法律案について以下御質問をいたします。  まず最初に、これは各委員からも指摘があったことでありますけれども、七十七万ヘクタールもの転作が現在行われております。そのことによって生産農家は大変な御苦労をされております。また、円高による輸入農産物の急増、雇用悪化や地域経済の低迷等による農外収入の減退、いずれにしても現在農業、農村を取り巻く環境が非常に厳しい中にあるわけであります。その上、先般は三十一年ぶりの米価五・九五%の引き下げが決定をされました。今回の交付金制度の見直しによるこの法案は、大豆、なたね、さらには食管法の改正について先ほど趣旨説明がございましたように麦、これらのいわゆる価格政策の大幅な転換を目指しているわけであります。私は数回この委員会において御指摘をしてまいりましたが、価格政策の導入というのは、それが余りにもトラスチックに行われた場合は大変な影響を与える。そのことは決してこれからの新たな我が国の農業の展開にプラスにはならない。価格政策を導入しようとするときには、それとセットでいわゆる構造政策、さらにはそれぞれの将来展望というものも明確に示して、そういう中で漸次価格政策の導入というものを図っていかなければならない、このように申し上げてきたわけでございます。私はここで申し上げておきたいことは、急激な価格変動が起こって生産農家が生産意欲を減退するようなそういう措置だけは断じて講じてはならない、このことを申し上げておきたいのであります。  大豆のことについてここで詳しく議論を申し上げる必要もございません。我が国の食生活における大豆の重要性、また食生活、食文化の中における大豆の重要性についてはいまだかつてない、最近は特に健康食品というところまで位置づけがされてきておりますし、私どもも、みそ、納豆、しょうゆ、豆腐、こういうものについては本当に我々が育ってきた骨格の大半であると言ってもいいほど、今日まで我が国の食生活においては大変重要な柱となってきたわけであります。しかしそれが、過去のいろいろな経緯の中で自給率三%と本当に極端に落ちてきた。そういう状況の中から、特に五十二年以降の水田利用再編対策の推進に伴って国産大豆の生産は急速に増加をしてまいりまして、五十六年には十四万九千ヘクタールまで増加してまいりました。その後は横ばい状況が続いておりますけれども、六十一年産では十三万八千四百ヘクタール、このようなところまで伸びてきているわけであります。  しかし、今も申し上げましたように、国内産大豆がここまで伸びてきたというのは、水田転作の特定作物という位置づけによるものでありまして、その実態を調べてみますと、全国の作付面積の十三万八千四百ヘクタール、昭和六十一年産、このうち田作大豆、いわゆる田んぼでつくられている大豆が畦畔も入れて八万七千五百ヘクタールになっております。それが本地作ということになりますと八万六千四百、ほとんどこれは変わりありません。全体の六三%は田でつくられているわけであります。この田でつくられている大豆の比率が特に大きいのは東山以西でございます。ブロックからいいますと、一番多いのは近畿でございまして、全体の数量の九〇%、さらに北陸も全体の作付面積の八五%は田でつくられている。我が栃木県においても、八三%が田でつくられている大豆であります。これは今日まで水田利用再編対策の中の転作作物の重要な位置づけをされてきたということでございまして、大豆生産者にとっては、生産技術がまだ進まない、環境も悪い、収量も非常に少ない、機械化も進んでいない、そういういろいろな悪条件を克服しながら今日まで努力を続けてきておられるというのが実情ではないかと思います。  そこで、今回このような価格政策を導入をされるわけでありますけれども、このことによって政府は国産大豆の今後の体系をどういうふうに持つていこうとなさっていらっしゃるのか、生産目標、生産構造、担い手、それらについて明確なプロセス、そういうものを同時に今提示をなさいませんと、これはいよいよ政府は価格政策を導入して価格を引き下げることによっていわゆる国産大豆の生産についてはより後ろ向きに考えているのではないのか、そういうふうな御懸念を生産者に抱かれるようなことがあってはならない、そう思うから申し上げるわけであります。  「農産物の需要と生産の長期見通し」、これが昭和五十五年十月に公表されたわけでありますが、そこでは六十五年目標として作付面積は二十一万ヘクタール、生産量は同年目標で四十二万トンとなさっているわけでありますが、六十一年の収穫量は二十四万五千二百トンでありますから、まだまだこの目標にはほど遠い現状であります。  そういうことも考え、これからもまた水田農業確立対策における転作作物としての重要な位置づけもなさっている。水田の高度利用という形でも、米、麦、大豆の二毛作体系や二年三作の作付体系等についても大豆は重要な位置づけをなさっておられる。こういうことも両方向勘案しますと、いや、政府は今後も国産大豆については真剣な取り組みをされるのだなと私たちは思いますけれども、今回の価格政策の交付金制度の見直しに当たって、一生懸命御努力をされておられる生産者の方々に、政府としては国産大豆の今後の生産についてはこういう位置づけをし、このように真剣に取り組んでいきますよという展望というものを明確に余していかれるべきだと思いますけれども、御見解を承りたいと思います。
  185. 浜口義曠

    ○浜口政府委員 今、水谷先生は、国産大豆の生産の展望はどうかというお話をされたわけでございます。  先生既に御指摘のとおり、大豆につきましては植物性たんぱく資源あるいは油脂資源として国民の食生活上欠かすことのできない重要な農作物というふうに考えております。また先生は、それに大豆の文化的な側面ということも強調されたわけでございまして、私どもそういう日本の古来の伝統といいますかあるいは日本型食生活にあらわれます文化的側面といったようなものも含めまして、大豆の国民生活上の位置づけというものも十分認識していかなきゃいけない。米を主食としていく場合に、それに相補うものは大豆ということであろうということでございまして、米と大豆というものを骨格にして考えていかなければならないと思っておるところでございます。  また一方、これも先生が御指摘のとおりでございまして、水田農業確立対策というものを始めております。この中におきまして、水田農業を確立する上においても重要な農作物でございます。田畑輪換と申しますか、あるいはいや地現象の防止といいますか、そういったようなことから考えますと、古来のいわば日本の農法といったものにおきまして極めて重要な作物であるというふうに考えます。  近畿あるいは東山等につきまして先生指摘になりましたが、北海道におきましての畑作物の位置づけにおきましても、四大生産物のうちの輪作体系の大きな一つの欠くべからざる作物であるというふうに考えておるところでございます。このように、大豆の国民食生活及び農業生産上の重要性は将来ともに変わらないというふうな考え方に立ちまして、生産対策あるいは構造対策というものを考えていかなければならないというふうに考えるものであります。  しかしながら、大豆作の現状というものを見ますと、生産性の向上が極めて立ちおくれております。もちろん私どもが持っております平均的に反当百七十七キロという現状の数字は、これまでの自給の生産あるいは具体的な商品作物ではない形で行われている生産というものの反映であるかもしれませんが、現実の問題といたしまして、戦後におきます米の生産の状況あるいは麦の生産の状況等々比較いたしますと、大豆におきましては率直のところ生産性の向上は極めて立ちおくれていると言わざるを得ません。また、国際的にいきましても、先ほど大臣からもお話がございましたように、全体でかつて五千万トンのオーダーといったようなものが一億トンになんなんとするような規模に拡大しているということと相まちまして、内外価格差が拡大しております。そういうようなことで、現在の制度におきます財政負担が増大をしている、結果として財政負担が増大しているという問題に直面をしているわけでございます。  そういうことから、今後におきましては、国民の食生活における重要な位置づけというものに思いをいたし、国民の皆様方の御支援、御支持あるいは納得といったようなことをいただくためにも、農家の方々に生産性の向上というものを図っていただこう、あるいはまた豆腐等々の古来の食品をつくっておられます実需者のニーズに即した良質の大豆の生産を促進するためにも、生産性の向上あるいは良質の生産というものをしていただこう、こういうふうに考えているところでございます。  したがいまして、農林行政におきまして、今後の大豆生産は、一つは北海道、一つは都府県といったようなものに考えられるかもしれませんが、技術上の発展に即しまして、北海道におきましては栽培技術水準の向上あるいは機械の共同利用を行い得るような生産性の高い担い手の育成、都府県におきましては生産単位を拡大いたしまして栽培技術水準を高位に平準化していただく、そういったような諸施策を総合的に担当いたしまして、これらの生産の相当部分がいわゆる大豆生産の担い手によって担われるというようなことをしていかなければならないのではないかというふうに考えるものであります。そういうことで、適正な輪作体系のもとで高生産性あるいは良質品種の大豆の生産が展開される必要があるというふうに我々考えるところでございます。
  186. 水谷弘

    ○水谷委員 今も局長答弁がございましたが、大変問題なのは生産性が非常に立ちおくれているということでございます。これはいわゆる技術水準についてはもう全く、特にいわゆる都府県においては自家用として長い間伝統的につくってきたという歴史的な問題もございまして、技術水準に格差が非常に大きいということ、それから新品種の育成や栽培技術の改善についても非常におくれが目立っておる、さらにはビーンハーベスターとかビーンスレッシャー等の高性能の機械の開発等についても非常におくれている、また作付規模が非常に零細であり、またその圃場も大変分散をしておって生産組織のおくれが目立っている、こういうことがいわゆる生産面の問題として指摘をされております。  さらに、流通の問題として指摘をされているのは、北海道の一部を除く地域においては作付面積の小さい農協等が多いことから、いわゆる作付の品種もばらばらでありまして、農協ごとに出荷単位が小さいので流通コストが非常に割り高になってきて、品質もふぞろいだ、実需者から見ますと大変に都合が悪い、必要なときに必要な数量がまとまった品質で集まってこない、こういう流通における指摘もあります。さらに、三等以下の下位の等級が大体五割から六割を占めている、また共同選別調整体制の未整備のために、品質の向上や実需者のニーズにこたえられる品質の大豆が安定的に供給されない、こういう流通の問題がある。  そこで、具体的にお伺いをするわけでございますけれども、まず、この新安定多収品種、いわゆる新品種の育成、開発、試験研究、これについては今後どのようにお取り組みをなさっていくか、あわせて、非常に省力化で大切な大豆生産に使用される機械の開発がほかのものと比べまして大変におくれている、また、その機種も限定されたものしかない等々、機械の開発等も含めて、試験研究についての今後のお取り組みについてお伺いをしておきたいと思います。
  187. 畑中孝晴

    ○畑中政府委員 初めに品種の開発でございますが、これは大体国と北海道、長野県というようなところが中心になってやっておりまして、安定多収というのは基本でございますが、そのほかにも、品質をよくしなければいけないということで、食品用について、そういった素質を持った品種をつくる、あるいは最近は線虫とかあるいはウイルス病という非常に防除がしにくいものが広がっておりますので、そういうものへの抵抗性のある品種をつくっていくというようなことで、現在実際に植えられておりますのは昭和五十年代の半ばから後半に出てまいりました品種でございますが、最近、六十二年度におきましても、タチユタカとかホウレイとかコスズとか、新しい品種が登録をされたところでございます。特に納豆小粒のような特殊な用途に用いられるような品種、そういったものも国の方で育成をいたしまして、これからの多様化といいますか、そういうものにもぜひ役立てていきたいというふうに思っておるわけでございます。  それと、機械化のお話でございますけれども、いわゆる米、麦というものに比べますと、大豆というのは小型化をしていくのが非常に難しゅうございまして、一言で言えば姿勢が悪いわけでございます。米、麦ですと、非常に上の方に集団的に粒の部分が来ておりますので、その部分を扱えばいいわけですけれども、大豆ですと、草全体にさやがついているということで、大きな機械でありますと始末がいいわけですけれども、小型化していくのに非常に難しいということでございます。そこは、いろいろな刈り倒しをしてやっていくような機械とか、それから米、麦と一緒に使いませんとコンバインも大変高くなりますので、そういった汎用型のコンバインというようなものを国の試験場でもやっておりますし、また、生研機構の中にあります農業機械化研究所というようなところでも取り上げて、試験をやっておるわけでございます。  さらに、六十二年度からは水田農業確立対策ということが行われることに呼応しまして、私どもの方も十年がかりくらいで、麦とか大豆とか、そういった畑作物の高品質、高生産性を上げるための試験研究という大型のプロジェクトに取り組んでおるわけでございます。こういう試験研究を通じて、今先生のお話のございましたようなできるだけ生産性の高いものになるように試験研究を進めてまいりたいというふうに考えております。
  188. 水谷弘

    ○水谷委員 やはり麦、大豆、それから米、大豆というような二作体系をつくっていく、それから今いろいろな提言がありますけれども、いわゆる輪作、それから二毛作体系というのは、もう一年ではなくて二年、二年三作、そういうような体系も必要になってくる、そういうことで、それができていくためには、いわゆる田畑輪換が可能な土地基盤の整備というのが非常に大事になってくるわけであります。  今期も、ことし豊作で、作況が一〇五ぐらいになると、一%で十万トンだから五十万トン、これはまた米の需給が大変になってくる。本当にこれは転作をしないで米だけつくっていればいいという議論は、もう日本の国では通用いたしません。水田を高度に利用していろいろなものをつくっていかなければならない。その場合、一番大切になってくるのは基盤の整備でありますが、構造改善局長、これはひとつ本格的にお取り組みをいただきたいと思うわけでございます。特に、こういう時期に合わせて地下水位を下げていく努力をするような本格的な基盤整備の取り入れ、そういうことについてもお取り組みをいただきたいと思うわけでありますが、いかがでございますか。
  189. 鴻巣健治

    ○鴻巣政府委員 水田の高度利用とか田畑輪換ということが可能になるためには、委員に対しては釈迦に説法で大変恐縮ですけれども、かんがい期でない非かんがい期、冬場に地下水位が低い方がよいというわけで、冬場の地下水位が七十センチ以下という水田が一番いいわけですが、現在でそういう田畑輪換が可能な水田が幾らあるかといいますと、大体百九十万ヘクタール、といいますと、全体の水田の約三分の二になります。このうち大型あるいは中型の機械が導入可能な区画整備済みの面積は、昭和六十一年の三月末で約百九万ヘクタールでございますから、全水田の三七%と私どもは推定いたしております。  それで、現在の米の需給事情から見まして、水田の高度利用あるいは田畑輪換を進めることは大変急務であろうと考えておりますので、そのための基盤整備事業といたしましては、水田の排水条件の改良を緊急に行います水田農業確立排水対策特別事業を初めといたしまして、圃場整備事業あるいは土地改良総合整備事業を重点的に推進いたしております。それで、この間成立を見ました補正予算におきましても八百二十億円、うちNTTの売却益の関連で二百六十五億円を計上いたしておりますが、これで六十二年度の当初予算と今の補正予算を合わせますと四千三百四十億円というような形になっております。これは六十一年度の補正後の予算額に対して一一八%と、格段の拡充を図っております。今後とも必要な予算の確保に努力をいたしたいと思っております。
  190. 水谷弘

    ○水谷委員 具体的な法案の中身について何点かお尋ねをいたします。  まず、基準価格の算定についてでございますが、従来の、現行のパリティ価格参酌方式にかえて、生産費その他の生産条件、需要及び供給の動向、物価その他の経済事情の三つを総合的に参酌して生産性の向上等を価格に適正に反映させる価格の算定方法に改めるということでございます。そこで問題なのは、算出の基礎となる要素が大変多くて算定方式が複雑化して、また、特に政府の裁量幅が大変広がってくるわけでありますけれども、この取り扱いについては厳正公平に行わなければなりませんし、生産者も実需者も納得のいく方式が定められなければならないと思うわけであります。本法では、本法に基づく生産者団体等から意見を聞いて定めるとしてありますけれども、生産者団体等の意見を聴取するだけではなくて、こういう裁量幅または算式、算定、こういうことによって大きく基準価格が動いていくわけでございますが、ぜひ私は、学識経験者や団体代表、そういう方々によって構成される組織体——今回、六十二年の二月ですか、農水省の中に大豆研究会が設けられて、この価格政策また交付金制度の見直しのためにいろいろな議論がなされているわけでありますが、あのような研究会に御参加をいただいているような方々、そういう方々の意見も反映されるような形での基準価格の設定でなければならないのではないか、このように思うわけであります。それが第一点。  二点目は、今回、最低標準額を法制化しようとされているわけでありますが、この理由として、生産者の品質向上努力を促す、もう一つは、生産者団体の販売努力を促す、このようにおっしゃっているわけであります。しかし、この最低標準額には私はいろいろな問題があると考えております。  まず一つは、法律上の保護措置が講じられていないにもかかわらず、いわゆる全国団体の販売活動の結果、全国のいろいろな団体が販売活動をした結果、標準販売価格が最低標準額を下回った場合、生産者は基準価格水準での手取りを得ることができないわけでありますが、それはどのようになさるのか。それからまた、生産者団体等の販売努力を喚起する、そのためにとおっしゃっておりますけれども、その義務規定が法体系の中でない、果たしてこれが実現可能なのか。さらにまた、改正後の最低標準額というのは水準としてどの程度見込んでいらっしゃるのか。特にお尋ねをしたいのは、六十年産及び六十一年産の大豆について最低目標販売価格の設定をされました。これと今回のこの最低標準額との関係、これは両方やっていかれるのか、それとも二年間おやりになった最低目標販売価格というのはもうとらないというお立場なのか、時間の関係でまとめて御質問をさせていただきます。
  191. 浜口義曠

    ○浜口政府委員 先生、ただいま二つの点についてお話がございましたが、後で御提起なさいました最低標準価格の点につきまして、最初にお答えをさせていただきたいと思います。  この最低標準額でございますが、先生野にお話しになりましたように、国産大豆は転作の推進に伴いまして急増するということが見込まれるわけでございまして、そういったような中で品質のばらつき、あるいは集荷単位が小規模である、非効率であるなどの問題が今後も生じるおそれがあるわけでございます。国産大豆の本来持っておりますたんぱく質の高さ等々の優位性に即しまして価格形成が行われる必要はあると思いますけれども、これ自体も必ずしも有効に機能するかという問題もございます。そういったようなことから、生産者団体などのこれにあずかっておられます方々の生産、販売努力を促進するために標準販売価格の下限となる最低標準価格を設けようとするものでございます。これにつきましては従来行っておりましたものとの関係、それから先生指摘のとおり、この標準価格をどういうふうに算定をしていくかというようなことも含めまして、これから具体的に私どもの事務ベースで考えていかなければならないと思うところでございますが、国産大豆は米国産及び中国産に比べましても、いろいろの持っている特徴といったような商品学が現実において機能しているわけでございます。そういう実態を勘案いたしまして、輸入大豆よりも一定の高値で販売された市場実勢といったようなものの中でこの水準を考えていかなければならないと考えます。  ただ、これにおきまして、御提起になられました第一の問題とも関係をするわけでございますが、具体的な行政だけの決定ということではなくて、法律に基づきます生産者団体の御意見というものも聞いていかなければいけないだろう。さらに先生、これは強くお話がございましたように、これに関連いたします学識経験者の意見といったものもぜひとも聞いていかなければいけないだろうと私ども考えております。この点につきましては、これも先生が御提起になりましたように、ことしの二月に農蚕園芸局の中で御議論賜った各界の諸先生がいらっしゃいまして、そういった方に御議論を賜った結果、大豆研究会の一つの御意見をまとめた集約の文書がございます。そういった点を一つの導きといたしまして、私どもさらに事務的に進めていきたいと考えますが、さらにお話しのような点も含めまして、この方々にさらにお集まりをいただいて御意見を賜っていきたいというふうにも考えておるところでございます。
  192. 水谷弘

    ○水谷委員 大臣、最後に一言。今お話がございました大豆研究会の報告書、四回にわたって鋭意いろいろな検討を重ねられた報告書の中にも、「今後の大豆対策の方向」として、一番に「今後の大豆生産及び流通の基本的考え方」、二番目として「生産・流通対策の方向」、それから三番目として「交付金制度の改善の方向」、三本の柱でこの報告書はでき上がっております。今回出てまいりましたのは交付金制度の見直しであります。この前段の二つ、私は冒頭にも申し上げましたけれども、価格政策を導入されるに当たってはいわゆる生産、流通対策の具体的な推進をより一層確立をしていっていただきたい、こういうように考えているわけでありまして、価格政策と構造政策、これは両輪の輪のように常に並行してしっかり行われていきませんと、価格引き下げありき、将来どうしていったらいいんだ、一生懸命やっておられる方の生産意欲をそぐことのないように万全のお取り組みをいただきたい。最後に、大臣、お答えをいただきたいと思います。
  193. 加藤六月

    加藤国務大臣 大豆研究会報告書、今御指摘のとおり「今後の大豆生産及び流通の基本的考え方」というところの分におきましては、最後の方に諸「対策の推進により、徹底した生産性の向上及びコストダウンを図るとともに、実需者のニーズに応じた良品質大豆の生産・流通を促進し、財政への過度な依存からの脱却を図りつつ、国内生産の確保及び健全な大豆作経営農家を育成していくことが必要である。」それから「生産・流通対策の方向」として、当委員会でも御指摘になりましたが、「国産大豆の商品性を大幅に向上させるため、地域ごとに良質品種への作付けの統一を図るとともに、共同乾燥調製施設の整備及び品質に留意した共同施設の適正利用を推進し、品質の均一化、広域的な案出荷体制の確立及び出荷単位の大型化を進めること。」それから「交付金制度の改善の方向」として、最後のところに「本制度の運営に当たって、大豆の生産性の向上及び品質の改善が一層促進されるよう努めること。」という御趣旨もいただいておるわけでございます。また、農政審その他のいろいろな問題もあります。今回のこの法改正をお願いいたしておる趣旨もこの三つを兼ね備えたねらいを持ってやらせていただいておるわけでございますけれども、交付金制度の改善ということばかりに意見が行ったのではいけないんで、生産性の向上、品質の向上ということに対しても私たちあらゆる努力をする。そしてまた、流通あるいは消費、私は今水谷委員の御質問を承りながらふっと思ったのでありますが、アメリカでは大豆のアイスクリームが大変最近流行しまして、これが非常に出ておるということでございますので、こういうものも勉強し、今後、流通性、消費の面においてもこういう分野も開拓していくという努力をする必要があると思うわけでございます。
  194. 水谷弘

    ○水谷委員 ありがとうございました。以上で終わります。
  195. 月原茂皓

    ○月原委員長代理 藤原房雄君。
  196. 藤原房雄

    ○藤原(房)委員 せっかくの機会でございますので、法案に入る前に二、三ちょっとお伺いをしておきたいと思うのであります。  昨日からずっとお話もございました漁業問題、特に鯨の問題についてはいろいろお話もございましたが、私は、北海道を取り巻く漁業問題については非常に厳しい状況の中にあることは今さら申し述べることもないだろうと思うのであります。特に、地元漁業者が多年にわたりまして要望いたしております、そしてまた強く訴えております日韓政府間の漁業の問題であります。これは、過日ソウルにおきまして第三回のお話し合いがあったようでございますが、この問題につきまして若干お伺いをしておきたいと思うのであります。  いろいろ報道されていることについてはそれなりに読んではおるわけでありますが、七月十五、十六日にことし第三回目の日韓漁業協議が行われたわけであります。さらにまた、七月二十七日にジュネーブで倉成外務大臣韓国の外務大臣が会談された、その中でいろいろコメントされておりますのが報道に出ておりました。日韓漁業韓国側の態度変わらずといいますか、「漁業協定見直し困難」という見出しで報道されておりますが、水産庁としても関係のあることでありますから当然把握していらっしゃることだと思うのでありますが、ジュネーブでの倉成外務大臣韓国の外務大臣との話というのは、どういう経緯で、また水産庁としてはどのようにお受け取りになっていらっしゃるのか。まず、その辺の経緯からちょっとお伺いしておきます。
  197. 佐竹五六

    佐竹政府委員 日韓漁業問題の解決は日本側にとっては焦眉の急でございまして、このまま放置する場合には、非常に取り返しのつかない不祥事の起きる可能性なしとしないということでございまして、私どもとしては、あらゆる機会をとらえてあらゆる方々から韓国側にその旨を申し入れる、こういうような趣旨でございます。  外務大臣もジュネーブで韓国外務大臣とお会いになる機会がございました。その機会をとらえて日本側主張のポイントをお申し入れしていただいたというふうに承知しておりまして、私どもも、その内容は電報を通じて承知しておりますけれども、遺憾ながら韓国側の態度は従来と変わらず、枠組みの改正ということは韓国としては現段階ではのむことができない、これは長期的な検討課題であって、問題のある海域別に個々に問題を取り上げ解決していけばいい、こういう主張を繰り返していたというふうに聞いておるわけでございます。
  198. 藤原房雄

    ○藤原(房)委員 次回の協議は八月上旬とも伝えられておるわけでありますが、日韓漁業協議のことにつきましては、今水産庁としましてはこのお話し合いの場はどういうことになっているのですか。  これは、鯨を初めとしまして昨日からお話がございましたから、長いお話もしたくないと思うのでありますが、アメリカとの漁業問題にしましても、またIWCの問題につきましても、日本の立場というのは非常に厳しい状況の中にある。そういう中で、やはり主張すべきことは主張すべきだということで、昨日以来、各委員から厳しいお話がございました。確かに農林水産省としましてもその努力は重ねてきたのだろうと思いますが、努力をしてきましたとかこのような経緯をたどってまいりましたと言いながら、しかし事態はどんどん後退している事実は事実であります。そういう中で、できるだけお話し合いの場を広げるといいますか回を重ねるということが大事なことなのだと思います。そういう点では、ジュネーブで外務大臣がお会いしたということは、そういう場をさらに利用したということで大事なことだろうと思います。  いずれにしましても、暫定協定につきましても九月というとあとわずかということでございますから、早急に協議の場を持ってこの話し合いを進めなければならない、こう思うわけであります。この八月上旬というふうにも報ぜられておりますけれども、水産庁としては、現在どのように話し合いが進んでいらっしゃるのか、その辺をお聞きしておきたいと思います。
  199. 佐竹五六

    佐竹政府委員 先般の七月の協議におきましても、日本側は枠組みの変更の必要性を主張し、それに対して韓国側は個別海域ごとに問題を解決するというふうに、アプローチに基本的な差異があるわけでございます。  しかしながら、ともかくも会合を重ねる、協議を重ねる、一回でも回数を多くするということのうちに解きほぐしの可能性が出るわけでございまして、とにかく全然協議が行われないでは話は一歩も進む可能性はないわけでございます。そのような観点から、とにかく七月中にもう一遍やろうという提案をいたしましたところ、韓国側の事情でどうしても七月はできないということで、八月の上旬に日程をセットしております。具体的日取りはまだ外交ルートを通じて調整することになっておりますが、今後とも、とにかくできるだけ協議の頻度を上げて何とか解決の糸口をつかみたい、かように考えております。
  200. 藤原房雄

    ○藤原(房)委員 この漁業交渉は、五十二年の二百海里以来今日まで繰り返してきたことであります。こちらは誠意を持ってということでありますけれども、我々漁業者の立場からするとずるずる、後退という言葉を使わざるを得ませんが、そういう現状にあることは否めない事実だろうと思います。相手のあることでありますから、こっちの主張を一〇〇%通すことはなかなかでき得ないことかもしれませんが、今長官のお話もございましたように、これは農林水産省サイドだけではなくして国として、できるだけいろいろな機会を利用して話し合いの場を持ち、そしてこちらの意向というものを強く訴えることが大事なことだろうと思うのであります。  今長官からのお話を聞きましても、昨日以来のお話もございますけれども、非常に厳しい現況にある。農林水産省としましては、北海道で強く主張しております問題、また済州島沖の自主規制の措置、これは九月の末で切れるわけでございまして、指折り数えて幾日もないわけでございますが、八月上旬ということでまた話し合いの場が持たれる、こういうことで解決の糸口といいますか、それが持てるのかどうか、そこら辺の長官の御決意といいますか、今後の推移に対してのお考えを聞いておきたいと思います。
  201. 佐竹五六

    佐竹政府委員 本件につきましては、確かに先生今お話しございましたように北海道の浜の空気は大変切迫しているわけでございまして、これは九州、山陰の沿岸漁民にとっても同じことでございます。したがいまして、私どもとしては、単に、政府はもとより政府・与党におかれましても、これは政府だけには任じておかれないということから、五月には政府・与党水産部会の部会長それから副部会長が韓国に、ソウルに赴かれまして、日本側の実情を政治的な立場からるる訴えていただきました。それからまた、その他日韓議員連盟のいろいろな会合、それからこれは私も正確には承知しておりませんけれども、経済協力の関係協議が現在ソウルで行われているようでございますが、そこにおいても漁業問題を訴えていただく。とにかく、日本にとっていかにこれが深刻な問題であるかということを、あらゆるルート、あらゆる機会を通じて訴えていただいておるわけでございます。  私ども交渉先ほど申し上げましたように、アプローチの根っこのところで以上申し上げましたような対立があるわけでございまして、大変厳しいわけでございますが、ただ一点、救いがあるのではないかと思われますのは、韓国側もまたこれは放置できないという認識を、韓国政府のかなり高いレベルの方々がお持ちいただいておるように判断されるわけでございます。これは先ほど申し上げましたような政府及び政府・与党の努力が多少効果があったのではないかと思うのでございますけれども韓国側としては現在の状態に必ずしも不満はないわけでございまして、現在の事態が続くことが一番いいわけで、そういう意味で時間稼ぎをやられることは、私ども大変おそれたわけでございますけれども韓国側もまた、この問題は放置できないという認識を持っておることは、その交渉の節々にうかがわれるわけでございます。その一点に私ども希望を見出しまして、先ほども申し上げましたように事務的な詰めも、できる限り機会を多くして詰めていくことによって何とかぎりぎりの決着点を見出し、北海道それから九州、山陰の漁業者からも一応の評価が得られるような解決を図りたい、かように考えておるわけでございます。
  202. 藤原房雄

    ○藤原(房)委員 これは十分に御存じのとおり、韓国日本との主張の相違があるわけでありますが、今長官から韓国側も放置できないという意識においては共通面があるということのようであります。そういうことではありますけれども先ほど来お話ございましたように、相当回を重ねて、また具体論になりますと時間のかかることだろうと思います。  韓国主張は個別問題で解決という、当面のことについてはそういうような主張のようでありますけれども、やはり北海道の漁民にとりましてはそれは根本的な解決にはならぬということで、強くこの二百海里適用という主張をいたしておるわけであります。これは漁業資源という漁業にとっての根本的な問題でありますから、これが枯渇して根が絶たれるということになりますと、もう漁業が成り立たぬという危機感があるわけでありますので、根本的な問題に対しては強い主張漁民から上がってくるのは当然のことだろうと思います。今日まで漁業で栄えた北海道が最近北洋から締め出され、またアメリカからもどんどん制限が加えられるという中にありまして、近海、沿岸を初め二百海里内をという、そういう中でその国内の規制を受けない韓国漁船が、資源を維持しようということでいろいろな規制をしている、その規制を受けないからということで根こそぎ資源問題に触れるようなことをされたのでは、これは漁業が成り立たなくなる、将来性に対してますます希望を持てなくなる、こういうことから出発しているわけであります。北海道の漁民の方々の強い主張も念頭に置いて、交渉の中で強く、回を重ね、そしてまた主張資源確保といいますか、こういうことの中でこれをぜひ貫き通していただきたいものだと思うのです。  当面は非常に厳しい話し合いの中で個別問題の解決、こういうことを韓国主張されているように伺っておりますが、我が国もやはりそういう意向に添わなければならない現状にある、このように考えざるを得ないことなのかどうか。その辺、水産庁はどういうふうにお考えになっていらっしゃいますか。
  203. 佐竹五六

    佐竹政府委員 ただいま先生のお話の中に二百海里適用という御意見がございました。私ども、北海道の漁業者はもとより全漁連等においても、二百海里を即時に韓国に対して適用すべきである、こういう御意見があることはよく承知をしております。しかしながら、この二百海里体制に移行いたしますためには、日韓漁業協定を解消しなければならないという問題があるわけでございます。日韓漁業協定が締結されたままで二百海里体制をしくことは法律上不可能でございまして、日韓漁業協定はもちろん通告して一年たてば廃棄できるわけでございますけれども、仮に廃棄した状態がどういう状態になるかといえば、そのときは直ちに李ラインが復活するということになるわけでございまして、その日から拿捕というような事態がまた発生するわけでございます。したがって、仮に二百海里を引き合うとしてもお互いに合音づくで、つまり二百海里を引いた後、今の協定を解消した後の姿がある程度両国の間で合意された、そういう状態でなければ二百海里を引き合うこともできないのではないかと私ども思うわけでございます。かような観点から、私どもは、これは話し合いで解決する以外にはないというふうに判断しているわけでございます。話し合いで解決する際に、この北海道周辺においては国内規制を韓国側に遵守させるということは、今回の交渉一つのハードコアというふうに私どもとしては心得ているわけでございます。  私も七年前に、現在の自主規制の仕組みの創設には交渉を通じて参画したわけでございますが、昨年も韓国に参りまして韓国側に言ってまいりましたことは、日本側として七年前と決定的に異なることは、北洋で我が国の沖合底ひきは減船をしているんだ、したがって、韓国にとらせる魚があれば日本の船は減船をしなくて済んだわけで、したがって、韓国漁船日本の沖合底びきが操業できない海域で操業できるという現在の自主規制の仕組みは、日本側としてはどうしても認めるわけにはいかないということを強力に主張してまいったわけでございます。  資源の保全が漁業交渉の基礎である、これはお互いに共通の理解の場である、理解がし合える場であるということは先生指摘のとおりでございます。そのような観点に立ちまして、今後の交渉を進めてまいりたい、かように考えているわけでございます。
  204. 藤原房雄

    ○藤原(房)委員 これはなかなか厚い壁といいますか、期日は詰まっておりますし、また主張に距離があるようであります。しかし、これは世界の趨勢として、また資源問題としまして、漁業の秩序維持ということからしまして放置のできない問題でありますので、これはひとつ積極的にお取り組みをいただきたいと思うわけであります。主張主張としまして、実現、それまでにはなかなか時間のかかる、そしてまた御努力の要ることだろうと思うのでありますが、しかし、現行法令の中でできる範囲内のことについてはきちっとしていただきませんと、資源にかかわる問題、また漁業の秩序にかかわる問題ということになりますと、それにまた減船のさなかで、目の前で韓国船が国内法に触れないということで新しい漁法でどんどんなさるということになりますと、これは漁民にとりましては本当に腹に据えかねる問題と言わざるを得ません。こういうことから、領海侵犯とか船名隠ぺいとか新しい漁法によっていろいろなことをやっているようでありますけれども、現行法令の中でもできることについては最大限きちっと取り締まりをするなりまた対処をするということで、取り締まり体制といいますか、こういうものをよりきちっとして秩序あるそういう体制にいたしませんと——交渉交渉といたしましても、ぜひひとつそういう毅然たる態度で処していただきたいものだと思うのですが、いかがでしょう。
  205. 佐竹五六

    佐竹政府委員 取り締まり問題について申し上げますと、私どもの現実認識としをしては、北海道沖以上に九州、山陰沖に問題が多いように思っているわけでございます。北海道沖の場合には千トン以下で、一番小さい船でも三百四十九トンぐらいの船でございますし、数が限られておりますので比較的監視の目が行き届きますけれども、九州、山陰沖には非常に多数の零細な韓国船が出てまいりまして、しかも船名隠ぺい等がなされているわけでございます。これにつきましては、確かに現行法令という御指摘がございましたけれども、現在の日韓漁業協定のもとにおきましても少なくとも操業海域については四十年時点日本の国内規制を韓国側は遵守しなければならない義務は負っているわけでございますので、それを根拠に韓国側に対しては強く改善方を主張しているわけでございます。  また、旗国主義云々につきましては、これはまさに枠組みの問題に触れるわけでございまして、韓国側の最も強く反発するところでございます。この旗国主義は船名が明確に表示されているという前提で初めて機能するわけでございまして、韓国船の大部分が船名を隠ぺいしている場合には旗国主義では現在の協定のもとに決められた制度がうまく機能しないということ、これは常識的に韓国も認めざるを得ないわけでございますので、そこを強く訴えまして何らかの有効な解決を図りたい。ただ、この問題が恐らく今回の交渉の一番難しい点だろうかと思います。協定を直さない限り現在の旗国主義を直すことが難しいという問題でございますので、しかしまた我が国漁業者からいえば一番この点が納得のいかない点でございますので、私どもそのような認識に立って取り組んでまいりたいと考えております。
  206. 藤原房雄

    ○藤原(房)委員 きょうは法案の審議ということでございますので長いこともできませんが、大臣、今いろいろお話し申し上げました。これは昨日来の鯨の問題、それからまたアメリカとの問題やソ連、韓国の問題、水産王国日本という言葉で七つの海をと言われた時代もございましたが、今時代は大きく変わって、少なくとも日本を取り巻く二百海里内だけはいろいろな形でひとつ有効利用しなければならぬ、そういう時代に変わったのでありましょう。しかしながら北海道や西の方ではそれぞれ韓国とのこういう問題が今日までもずっと続いてきておるわけでありますし、またその解決が急がれておるわけでございます。国と国とのことでございますから、それぞれの主張や歴史的な経過もありますのでなかなか時間のかかることだろうと思いますけれども、将来の漁業に関する資源問題や漁業の秩序に関する重要な問題をはらんでおりますので、今日まで諸外国からのいろいろな要求があってそれらの問題についても積極的にお取り組みになりました加藤農林水産大臣、この漁業問題につきましても何とかひとつ方向性を見出すように最大の御努力をしていただきたいものだ。特にこの韓国問題についてはぜひひとつ積極的な御姿勢、今長官からもお話がございましたが、ひとつ大臣のお考え、御決意をお伺いしておきたいと思うのであります。
  207. 加藤六月

    加藤国務大臣 私も農林水産大臣をお受けする前までは日韓議員連盟の幹事長をやっておりました。たびたびの会議でそこら辺は主張してきたわけでありますが、農林水産大臣になりましてその責任はさらに重大になってきたわけでございます。あらゆるルート、パイプを通じまして日本側考え方韓国側に正確に伝えるように努めてきたところでございます。先ほど長官からお答えいたしましたような韓国側の態度、我が方の主張というものがあるわけであります。ある面で申し上げますと、今旗国主義の話が出ましたが、二十年前には韓国がそれを主張し我が方が反対したというのが、二十年たつと全く逆になるんだな、その間に水産というものの変化あるいは韓国漁業の進展といういろいろな問題もあるわけでございます。一番近い国であり一衣帯水の韓国我が国との漁業問題、話し合いを通じて何としてもうまく解決していかなくてはならぬということであります。  それから日本海における漁業資源の問題でございますが、我々としても今まで以上に力を用いてここの資源の確保あるいは今後の増強ということも考えなくてはならないと思っておるわけでございます。  先般、北海道へ参りましたら、久しぶりにニシンが帰ってきた、イカもことしはたくさんとれそうだという話を聞きまして、大変喜んだわけです。喜んだのでございますが、帰ってきたから、イカが多いからというのでまた根こそぎとるようなことをしてしまったのでは、すぐ希望の芽が摘まれてしまうのではないかという心配も実はいたしておるわけでございます。そこら辺の問題を十分念頭に入れながら、今後、水産外交といいますか、その中での一つでございます日韓の漁業問題をあらゆるパイプを通じて精力的にやっていきたい。さはさりながら、あと正式の交渉が二回できるのかな、三回できるのかなという時間の切迫という問題もあるわけでございますが、そういう中で英知を結集して一生懸命頑張っていく決意でございます。
  208. 藤原房雄

    ○藤原(房)委員 次に、これはお願いといいますか御検討いただきたいということでございますが、御存じのとおり今北海道で炭鉱閉山、また合理化ということであります。過日、石炭対策特別委員会で視察に参りましたときに、夕張の地方自治体から要望といいますかお話があったのでございますが、北海道全体としますと二千名を超す離職者ということで、合理化といいましても三百人、四百人、五百人ということですと一つの山が閉山になったと同じような現況であります。その中にはいろいろな方々がいらっしゃるわけでありまして、特に夕張でお話がございましたが、皆さん方農水省のお力によって夕張メロンというような特産品もつくっておったりいろいろ工夫して努力していらっしゃるわけでありますが、離職者の中には農業に携わりたいという方がやはりいらっしゃるようでございますし、確かに二千名を超す多くの離職者の中にはそういう方も何人かはいらっしゃるのだろうと思います。そういう中で、今、ある程度土地を持っていて、畑を持っていてなさるとか、親元へ帰ってやるということならば、それなりのこともあるのかもしれません。しかし、それにしましても、今の面積では十分でないということになりますと、ある程度の規模を拡大するなり施設をするなり、いろいろな制度にのっとったことをするには、新しいことをするわけでありますから、それなりの配慮をしなければならないことだろうと思います。どこかにすぐ働き口があって、そこへ就職するというのと違いまして、施設をするなら施設費にまたお金がかかる。農地取得には農地取得のいろいろな制限があったり、またお金も当然必要になる。こういったいろいろなことで、産炭地振興の方策としてすぐ企業誘致というようなことも考えられる。これは唯一の逆かもしれませんが、しかし広大な北海道の中には、やはり農業、特にいろいろな立場の方々がいらっしゃるのでございまして、こういうことについては農林省の方にはお話が行っているのかどうかわかりませんけれども、そのうちまた地方自治体からいろいろなお話があろうかと思います。ぜひひとつこれは御検討いただいて、そういう方々で炭鉱をやめた後に農業をしたいという方々に、その地域に合った形でいろいろな工夫をしていくのだろうと思いますけれども、農業でやっていけるような御配慮をぜひひとつお願い申し上げたいと思います。  現在、産業構造転換ということで、不況産業また雇用を必要とする産業、これは地域を見ますと、ミスマッチといいますか、すぐ右から左というわけにはいきません。どちらかといいますと、一次産業を中心として非常に不況感の中にあるわけであります。みんなで英知を集めて、そしてその地域の発展のために力を合わせていかなければならぬ、こんなことは当然のことであります。北海道におきましては、北海道の地方連絡会、各省庁間でいろいろな連絡をとり合っておりますし、中央でもそのような連絡会議を開いているように聞いております。その中に農林水産省が入っているかどうかわかりませんが、そういう各省庁間の総合戦略で地域の活性化といいますか、そういうことにぜひひとつ農林省としましても十分に力を注いでいただきたいと思いますが、いかがでしょう。
  209. 加藤六月

    加藤国務大臣 先般、政府におきましては四全総を決定いたしたところでございます。来年は北海道の総合開発計画を決定するようになっておるわけでございます。その中におきましても、私たちは大いに活力ある北海道を考えていかなくちゃならぬ。今までふえ続けた北海道の人口もこの一、二年減る傾向にあるという問題、しかし四全総におきましては、北海道の五百七十万人口がこれから六百二十万にふえるという計画を立てておるわけでございます。  そういう中で、北海道の問題を勉強してみますと、有効求人倍率におきましても、あるいは失業率におきましても、他の地域と比べようのない有効求人倍率の低さ、失業率の多さ、そして北海道の鉄鋼、造船、石炭というものの不振、あるいは農業、林業、漁業というものの不況、こういうもろもろの問題に直面されておることもよく存じておるところでございまして、農林水産省としても、そういう状況を踏まえながら、基盤整備事業を中心とするもろもろの予算の重点配分、あるいはまた北海道全域におけるそれぞれの地方の活性化の問題、あるいは活力を取り戻す問題につきましても、万般の配慮をしていかなくてはならないと考えておるところでございます。
  210. 藤原房雄

    ○藤原(房)委員 もう時間残り少なくなってまいりましたが、先ほど同僚委員からもいろいろお話ございました、今度のこの基準価格の算定の方法の改正やそれから交付金単価の算定の方法の改正、もろもろのこのたびの改正につきましては、一つの時代の推移の中で当然考えなければならない問題だろうと思います。  しかしながら、過日米価の引き下げによりまして、北海道で農政懇談会、何カ所か回っていろいろなお話をしましたが、地域によりますと、作付の大きいところですと、米価引き下げによりまして三十万から五十万の減収になるんじゃないかというところもございます。これは作付面積の大きい、小さいでいろいろあるのだろうと思いますが、今までの収入から三十万、五十万減収になるというところに、さらに減反を強いられておりまして、このたびの大豆、なたね、そしてまた食管法改正によります麦、改正になったからといって決して上がるんじゃなくて、財政ということが一番の眼目であるということ、またいろいろな試算、こういうことからいいますと、決して引き上げにはならぬだろう。そういうことを考えますと、これは農家の方が今四八%の減反を強いられて、その中で一生懸命稲作をする、そしてまた転作で大豆をつくる、麦を植える、その方々が生産性向上、品質向上ということで努力はしておりますけれども、実質的な手取りがそれだけ、何十万というオーダーで減るということは、これは実際農家の方々にとりましては大変なことです。品目ごとに考えますと、当然米もよい品質でなければならぬ、また大豆もいい品質で銘柄をきちっとしなければいかぬ、個々の問題についてはわかりますが、一農家にそれが一遍にしわ寄せになるということになりますと、これは実施する年によりましては大変な問題になるだろう。  農家の方々も、何とかいいものをつくらなければならぬ、また生産性向上の努力をしなければならぬ、こういう気持ちではおるようでありますけれども、やはり激減緩和といいますか、あれもこれも一遍に集中的に参りますと、第二種兼業のように農外収入がある方ならいざ知らず、専業農家一本でやっていらっしゃる方の多い北海道にとりましては、その農家に集中的にしわ寄せが来る。加工業のようにいい機械を入れたら生産が二倍になった、三倍になった、何割増しになったということと違って、農業の場合には生産性向上といいましても、一年に一回しかとれない作物にどれだけの生産性向上が期待できるか。  こういうことを考えますと、これはぜひひとつ、今度の基準価格の算定の方法や交付金の単価の算定の方法とかいろいろなことについては、どうもフリーハンドといいますか、どういう形で進められるのか我々もちょっと理解できないような面もありますし、複雑な要素をいろいろ勘案なさるようでありますが、兼業ではなくて、こういうまじめに農業に生きようという方々がやはり希望の持てるような、そして子供も後継者としてちゃんと喜んでやれるような農政というのが必要ではないかということを痛感をするわけであります。  特に今問題になっておりますのは、負債といいますか、今まで借りておりましたものの返還、これは土地改良から何からいろいろなことで、いろいろな立場でお返ししなければならない。金利が非常に高いということで、これも何度も言われておりますが、今まで借りておりましたものに対して、やはりある程度これが軽ければ対応力もあるのでしょうが、金利は下がらないでそのままどんどん引かれる。一方ではこのようにどんどん価格が下がる。それが一農家に集中豪雨的に来ますと、これはとても対応ができないのじゃないか。その点ひとつ大臣、十分に御勘案をいただいて、この実施に当たりましては、営農が継続できるように——離農者もひところは減っておりましたが、地域によりますとまた最近ふえつつあるという現況等も考え合わせまして、やはり窮状というのはそういう中に如実にあらわれていると思うのであります。ひとつ時間もございませんが、一言で結構ですが、大臣、御答弁いただきたいと思います。
  211. 加藤六月

    加藤国務大臣 全国平均から見ますと、北海道の専業農家の比率、一種兼業農家の比率というのは非常に高くなっておりまして、そういうところに価格政策から構造政策に転換していく場合のいろいろな問題が起こってくる。そしてまた、ある面では過去債務の関係、先般も北海道庁の調査を克明に見さしていただきました。水田、畑、そして酪農、乳用牛の関係のそれぞれの負債の性質の中身等も克明に勉強さしていただきました。そういう中で意欲ある農民の皆さんが、あるいは地域営農に真剣に取っ組んでおる皆さん方が耐えしのいでいけ、そして、逆に希望を持ってもらうように十分配慮しながらやっていかなくてはならないという感じを強く持った次第でございます。  きょう、いろいろ今回の改正案についての御意見、御質問等出ておりますが、今後十分そういう御懸念等を配慮しながらやっていかなければならないと思っておるところでございます。
  212. 月原茂皓

    ○月原委員長代理 玉城栄一君。
  213. 玉城栄一

    ○玉城委員 私は、漁船の操業安全の問題について、この機会にお伺いをしておきたいと思います。  実は、水産庁の方の出しておられる漁業白書、漁船の操業安全という項目があるわけですが、私たちがちょっと懸念しております部分については触れられておりませんので、この機会に、具体的な問題も出ておりますのでお伺いをしておきたいと思うわけであります。  時間が限られておりますので端的に御質問をさせていただいて、まず最初に海上保安庁の方に伺いたいのです。  今月の二十三日に沖縄の南側百三十キロですか、マグロはえ縄漁船第一一徳丸がミサイルらしきものの爆発によって被弾したという事件が起きて、大変ショックを受けておるわけでありますが、その事件の概要について概略、ポイントだけ簡単に御報告いただきたいと思います。     〔月原委員長代理退席、委員長着席〕
  214. 垂水正大

    ○垂水説明員 七月二十二日に発生しました第一一徳丸の事故の概要について御説明させていただきます。  二十三日、うちの第十一管区海上保安本部でございますが、そこでこの事故の情報を入手するとともに、すぐに巡視船を現場に派遣させまして、第二徳丸の船長さん等から事情を聞いたとこるによりますと、二十三日午後一時十五分ごろ、沖縄喜屋武崎南東約百三十五キロの海上で漂泊中でございますが、突然船の左舷側の海面でどかんという大きな音がしまして、ぱっと船長さんたちがその海面を見ましたら、船の舷側から約五メートルぐらい離れた海面にばらばらという、何か物の落下音というものを聞くとともに、赤黒い煙が漂っていたということでございます。また、当時上空を見上げますと、ジェット機二機が飛行中であるというのも視認しましたということでございます。  なお、船内に金属片が二個、小さなものでございますけれども、約〇・五センチ掛けの三センチ、もう一つが〇・五センチ掛けの一センチの金属片が発見されまして、現在我々といたしましては、その金属片を受領しまして、本日、防衛庁の方へ鑑定依頼をしたところでございます。  以上でございます。
  215. 玉城栄一

    ○玉城委員 この空域、海域は日米間で取り決めて訓練空域になっているわけですが、当日この空域において航空自衛隊がミサイル発射訓練をやっていた、そのことをお伺いしたいんですが、時間がありませんので、やっていたのはいわゆるスパローですか、空対空のミサイル実射訓練をやっていた。もう一つ、これは外務省の方から、これだけちょっとお答えいただきたい。当日、やはり同じ空域において米軍が訓練をしていたということを伺っておりますが、御報告いただきたいと思います。
  216. 岡本行夫

    ○岡本説明員 全く念のために私どもから米軍に照会いたしましたところ、この日米空軍は飛行訓練を時間帯を区切ってやっておりましたけれども、この事件が起こった時間帯は、米空軍は飛行しておりませんでした。
  217. 玉城栄一

    ○玉城委員 いずれにしても、その当日、同空域において自衛隊、米軍機が訓練をやっていたということは、いろいろなことはあるでしょうけれども、さっき申し上げました第一一徳丸の被弾事件の原因究明は、今海上保安庁がおっしゃられたように、防衛庁で分析をして鑑定をされる、その結果を待たなくちゃいかぬと思うのですが、防衛施設庁、沖縄周辺海域にはたくさんの米軍に提供した空域、海域があるわけですが、今の問題になったその空域について自衛隊あるいは米空軍がこういう演習を行うんだということを事前に関係者あるいは関係機関に周知徹底せしめるようなどういう方法をとられたのか、それをお伺いいたします。
  218. 芥川哲士

    ○芥川説明員 お答えいたします。  沖縄周辺の訓練水域、空域というものは、先生おっしゃいましたとおり若干あるわけでございますが、そこにおける船舶、航空機の航行の安全、それから漁船の操業の安全というものを図るために、防衛施設庁としては官報による告示、それから、これは私どもではございませんが、運輸省の航空局あるいは海上保安庁さんの方から航空情報あるいは水路通報というものを出していただいておるというふうに承知しておるわけでございます。  それからさらに、実際に米軍が訓練を実施するというときになりますと、これは原則として十五日前ということになっておりますけれども、事前に我が方に通報してくるという合意が日米間にあるわけでございます。したがいまして、米軍の方からこの通報、私どもはこれを演習通報と簡単に申しておりますが、これを米軍の方から発出していただきますと、私ども防衛施設庁としましては、その都度関係省庁、それから関係の地方公共団体に連絡をしまして、そしてこれらの機関を通じて漁船等に演習に関する情報が的確に届くようにしておる。それによって演習に関する情報の周知徹底を図る方法をとっておるわけでございます。もっとも、この米軍からの演習通報の発出という点につきましては、個々の訓練空域の性格でございますとかあるいはそこにおける米軍……
  219. 玉城栄一

    ○玉城委員 ちょっと、時間がございませんので。  沖縄南部訓練空域について、二十三日、航空自衛隊、それから米軍機は、当日、何時から何時、何機、どういう訓練をやりますよということを、事前に漁船あるいは漁業関係者にどういうふうに知らしめたかということをお答えいただきたいわけです。ほかの方はいいですから、それはまたいつか機会があるときにお伺いいたします。
  220. 芥川哲士

    ○芥川説明員 あるいは正確には海上保安庁の方からお答えすべきものかもしれませんけれども、私ども承知しておりますところでは、沖縄南部訓練空域における今回の米軍の演習に関しましては、この訓練空域と申しますのは海面を使わない、空域における訓練だけを認められておるところの訓練空域でございます。したがいまして、航行に関する制限がない、あるいは漁船に対する影響がないという前提のもとに、米軍からは通報が行われなかったものというふうに承知しております。
  221. 玉城栄一

    ○玉城委員 簡単に言いますと、米軍からの通報もなかったから、全然そういう予告もしてないということですね。これはいろいろな問題がありますので、またいつか別の機会にお伺いします。  防衛庁の方、もし今回のこの事件で、因果関係が防衛庁にありということがはっきりしましたら、防衛庁としてはどういうふうな措置をとられるのか、それを簡単にお答えいただきたいと思います。
  222. 柳澤協二

    ○柳澤説明員 事件の事実関係については、ただいま私どもの方も鋭意調査中でございまして、仮にあったらということをなかなか申し上げにくい面もございますが、私どもとしては、従来からの演習時におきますところの安全の確保というのはできるだけの努力をしてこれを図っていかなければいかぬと考えておりまして、そういう観点から、仮に事故がありましたらなおさらのことでございますが、今までのようなやり方でいいかどうかということは当然考えていかなければいかぬ問題であろうと考えております。
  223. 玉城栄一

    ○玉城委員 これはまだ結論が出ておりませんので、お答えにくい点もあろうと思うのですが、私たち素人が考えましても、非常に不思議な、ちょっと理解しにくい点が多々あるわけであります。もし仮に、今回の第一一徳丸の被弾事件と航空自衛隊の訓練との因果関係ができた場合は、いろいろな問題があるわけですから、それはやはり国民に理解できるようにきちっと措置をとっていただきたいことを要望しておきます。  それと、今度は外務省の方に、これは一般論で結構ですが、もしこの空域においてこういう民間漁船が米軍機の訓練によって被害を受けた場合、その補償はどういうふうになるのか、簡単にお答えいただきたいと思います。
  224. 岡本行夫

    ○岡本説明員 公海上の訓練により、事故について米側に何らかの責任がありということが証明されれば、それは米国の法律により処置されることになります。  それから、漁業補償という点でございますが、南部訓練空域におきましては漁船は現在操業されておりませんので、通常の場合は、日米間の漁船の操業制限等に関する法律に基づきまして漁業補償が行われる場合がございますが、この場合はその措置はとられておりません。
  225. 玉城栄一

    ○玉城委員 今おっしゃるところにも大変問題があるわけですが、確かにこの訓練空域下の海域は公海上であるわけですが、そのことによって、日本船籍の漁船が米軍機によって損害を受けた場合に、米国の法律によってどうのこうのということはちょっと理解できないわけです。沖縄の島の周辺海域で、日米間でそういう空域を決めて、そこで訓練して、そのことによって被害を受けた漁船の損害賠償請求はアメリカの方でやる、これでは何のために地位協定の十八条、そういうものがあるか、これは一つの課題としてぜひ研究していただきたいのです。  もう一つは、これと関連しまして、こういう事件が起きて、さらにおととい、二十七日、沖縄の久米島沖においてマレーシア船籍の貨物船が被弾をして、重傷者が出て航行不能になっているという事件が起きて、さらにショックが出ているわけです。海上保安庁の方でもうほぼ、報道では、これは当日米軍機の訓練によるいわゆる模擬爆弾ですね、既に現場検証の結果その弾頭二つあるいはそのほかを被害船から回収したということです。外務省はどのように判断しているのかですね。
  226. 岡本行夫

    ○岡本説明員 御指摘のとおり、被害を受けました船から回収されました模擬弾頭は米国軍のものでございまして、これは米軍も認め、深甚なる遺憾の意を表しておるところでございます。  私どもとしましても、このような事件はおよそあってはならない種類の事故でございます。今後、今米側は鋭意本件につきまして調査を続行中でございますが、その結果を踏まえた上で、私どもとしては厳正な対応をとらせていただく、同時に、再発防止についてはあらゆる角度から米側とも協議しつつ、かかる事故が二度と起こらないように万全の措置をとっていくつもりでございます。
  227. 玉城栄一

    ○玉城委員 今おっしゃることは、米側はそのように認めて、遺憾の意を表明した、そして外務省としては、再発防止等について米側に申し入れるのはまだこれからですね、こういうふうに理解してよろしいわけですか。
  228. 岡本行夫

    ○岡本説明員 現在、米軍の調査はなお続行中でございます。ただ、その船から発見されました模擬弾頭が米軍のものであること、これは米側としても確認しているところでございます。私どもはこれから、一体どうしてこのようなことがそもそも起こったのか、当時その船のそばを飛行しておりました、FA18という航空機でございますが、この戦闘機からどのような経緯で、そしてどのような瑕疵によって模擬弾頭が落下されたのかというようなことも含めまして、今米軍が検討中と承知しております。そして、その調査結果の内容に即しまして、私どもとしては米側にしかるべき措置を申し入れ、そして予防策を講じていく、こういうことでございます。
  229. 玉城栄一

    ○玉城委員 これは海上保安庁の方が事実関係は詳しいかもしれませんけれども、まあ時間がありませんので。  沖縄本島から久米島、それから鳥島という射爆訓練場がございますね。その間というのは約二十キロぐらいですね。そして、サガ号ですか、この貨物船が被弾したのが約三十五キロぐらいですが、多少この距離はあれですが、この訓練空域から大分離れていますから、あるいはこれは標的にされたのではないかというふうに指摘する人もいるのですが、どうですか。外務省、どう思いますか。
  230. 岡本行夫

    ○岡本説明員 鳥島の射爆撃場の提供水域は、鳥島を中心といたしまして三海里でございます。この船が当時この提供地域外にいたのかどうか。この船からの報告によりますと、約八海里ほど外へ出たところで起こった事故と報告されておりますが、なお正確な位置等につきましては、米軍、そして我が方におきましては海上保安庁が引き続き調査中と存じております。
  231. 玉城栄一

    ○玉城委員 問題はこれの補償ですね。我が国の領海に第三国の船が入ってきて、今おっしゃるように提供施設、区域内か外かはこれからの問題として、いずれにしましても、この被害船に対する補償はどういうふうにするのか、お答えいただきたいと思います。
  232. 岡本行夫

    ○岡本説明員 提供施設、区域内、外であるとを問わず、我が国の領海内で起こったことであれば、日米の地位協定の規定が当然に適用されます。それは国籍区別がございませんので、被害者の方が日本の方であろうと第三国の方であろうとそれは同様でございます。  地位協定に従いますと、協定第十八条五項に基づきまして、我が国がこの請求権を処理いたし、損害賠償をめぐります民事裁判は我が国裁判所において処理されることになると承知しております。
  233. 玉城栄一

    ○玉城委員 そうしますと、今回のマレーシア船籍の貨物船の被害の補償については、いわゆる地位協定十八条によって我が国政府も関与し、ということは、補償もやはり我が国政府が——今後の問題になると思うのですけれども、これはちょっと理解しがたいです。先ほど漁船の問題で、あのとき日米間で決められた空域下において漁船が被害を受けたときにはアメリカの法律によってやるんだ、アメリカに訴えればいいんだというような意味なんですが、今度の場合は、領海だからといって地位協定十八条でこれをするということはちょっと理解できません。それは時間がございませんから……。  ただ、大臣、ちょっと最後にお伺いしたいわけですが、私は漁船の安全操業という問題でこの問題をお伺いしているわけですが、御存じのとおり、こういう具体的な事件が発生しまして、関係者は大変ショックを受けているわけですね。しかも、最初に申し上げました沖縄周辺の海域はマグロの好漁場と言われて、常時二百隻ぐらい操業しているわけですが、突如としてそういう訓練——自衛隊か米軍機か、いろいろたくさんありまして、しかも今度の場合、予告も、いつ、何日の何時に何機、どういうふうに——空対空といいましても、当たらない場合は、今回は、海に落ちてくるわけですから、そこに漁船がいたらえらいことになるわけですね。ですから、こういうものはこういう機会に何らかの予防策をきちっとしておかないと取り返しのつかない惨事が起こりかねない。また、現にこれは貨物船ですが、起きているということから、大臣、どのようにお考えになりますか。
  234. 加藤六月

    加藤国務大臣 この問題につきましては、農林水産省としてもいろいろ勉強いたしたわけでございます。安全操業という問題と訓練という問題との関係でございますが、今まで確立しておりますシステムを使いまして、十分にそれぞれの漁船に伝わるような努力、方法、手段をさらに確立をしていかなくてはならない。また、ある面で言いますと、そういう問題について水産庁としてもさらに勉強するようにという指示を出しておいたわけでございます。  今回の経緯につきましては、水産庁長官からお答えをいたさせます。
  235. 佐竹五六

    佐竹政府委員 現在、自衛隊ないし米軍の演習があります場合には事前に防衛庁から水産庁に通報がございまして、中央漁業無線局を通じ、あるいは漁業団体を通じて、それぞれ現場の漁船に伝わるシステムは一応確立されております。しかしながら、ただいま御指摘のございましたような沖縄周辺における訓練の実態、それから漁船の操業の実態から見まして、そのシステムが有効に働いているのかどうかというようなことについては、ただいま大臣からもお答えがございましたように、なお検討の余地があろうかと思うわけでございまして、私どもとしても、関係省庁とよく連絡して漁船の操業の安全に遺憾のないように検討してまいりたいと思います。
  236. 玉城栄一

    ○玉城委員 以上で終わります。
  237. 玉沢徳一郎

    ○玉沢委員長 神田厚君。
  238. 神田厚

    神田委員 大豆なたね改正法案につきまして御質問を申し上げます。  国内産大豆はたんぱく質の含有量が高いことや食料品としてすぐれた品質を持っていることに加えまして、根粒菌による窒素同化作用によります地方の維持向上、連作障害の防止という点におきまして農地の有効利用に多大なる貢献をしているわけであります。また、政府は、本年度より実施します水田農業確立対策の趣旨におきまして、稲作、転作ともに担い手を中心とした生産組織の育成や農地流動化を通ずる規模の拡大を進めつつ、稲作と転作との合理的な組み合わせによる地域輪作農法の確立を促進することによりまして、本年度の七十七万ヘクタールの減反に伴う水田利用の高度化のための複合的土地利用体系を確立しようとしております。また、農政審報告におきましても、転作作物は麦、大豆、飼料作物が主体となってきているが、これらの作物について一層の生産性及び品質の向上対策を進めることが必要である、こういうふうに述べておりまして、大豆の重要性を認めているわけであります。あわせまして、さきの第百八国会提出の「昭和六十二年度において講じようとする農業施策」におきましても、「主要作物の生産対策の総合的推進」として大豆の生産性の向上と品質の向上を述べております。一方、農政審報告におきましても、効率性が高く国際化にも対応し得る農業を幅広く確立していくとともに、構造政策の推進や価格政策の見直しなどによる農産物の内外価格差を縮小させることを主張しておりまして、同時に農産物市場のアクセスにつきましては、ガットにおける新しいルールづくりを踏まえ、我が国農業の健全な発展との調和を図りつつ市場アクセスの一層の改善の観点から農産物貿易政策につきまして所要の見直しを行っていく、こういう必要性も同時に挙げているところであります。そのために効率的な生産システムの確立、個別経営の規模拡大、生産組織の育成、農業生産基盤の整備等を推進する、こういうふうに述べております。以上のことから、生産性の高い農業を実現をするための構造政策の推進と大豆、小麦等の転作作物を導入すること、及び農業の国際化が一層進む中にありまして、今回の改正法律案によって内外価格差の是正を図る、こういうことが言われているわけであります。  そこで、まず第一に質問を申し上げたい点は、さきに述べましたように、一方で内外価格差の縮小、市場アクセスの改善、公正な農産物ルールの構築を述べながら、昭和六十一年度の価格においては、輸入大豆二千七百八十七円、生産者価格一万七千二百十円という約一対六の内外価格差のある大豆の普及拡大を図ることは財政負担の増加を招くことでもありますし、農政審の述べている財政負担の軽減という趣旨に反するという意見もあるわけでありますが、この点につきましてはどのようにお考えでありますか。
  239. 浜口義曠

    ○浜口政府委員 ただいま先生お話しになりましたように、我が国の大豆作につきまして、最近におきまして農家の方々の御努力により生産性の水準は着実に増加をしておりますけれども、今数字をもってお話しのとおりでございまして、内外の主要諸国と比較いたしますと、特に円高の反映を受けましてその水準は依然と低く、したがいまして、生産性の向上による内外価格差の縮小が喫緊の課題だと考えるものであります。これも先生指摘のとおりでございまして、国産大豆につきましては、たんぱく質の問題あるいはさらに必須アミノ酸の問題等々も含めまして国民の食生活上不可欠な食品でございます。その安定的な供給を図っていくことがこれまた必要だと考えるものでございます。農業経営上にいたしましても、麦等の作物と日本の主食でございます水稲との合理的な組み合わせによりまして土地利用型作物、土地利用体系といったものを確立していく上で、大豆は重要な作物でございます。このように国民の食生活あるいは農業生産に占める位置といったようなものは、六十二年から水田農業確立対策を推進するということもございまして、従来よりも一層重要性を増しているわけでございます。  ところで、国産大豆の生産量、これが近年におきまして、水田利用再編対策、さらにまたことしから実施いたします水田農業確立対策等の推進によりまして増加するわけでございます。それによりまして国の財政負担の急増の問題が出てまいります。また一方、実需者の方々からも、良質大豆の安定的な供給の要望というものも最近とみに高まっておるところでございます。このために今後の大豆の生産につきましては、先生指摘の構造政策等々諸対策の推進によりまして徹底した生産性の向上あるいはコストダウンを図るとともに、豆腐製造業等の実需者のニーズに応じました良品質の大豆の生産流通を促進いたしまして、また一方、財政への過度な依存からの脱却も図りながら、国内生産の確保及び健全な大豆作経営農家の育成に努めなければならないと考えております。
  240. 神田厚

    神田委員 昭和六十年を基準といたしまして比較した場合は、大豆の輸入価格が二千七百八十七円、国内基準価格が一万七千二百十円、内外価格比は六・二倍、また六十一年度予算で見ますと、トン当たりの財政負担額は大豆が二十四万一千四百六十七円、米が六万一千八百五十三円、小麦が十三万八千六百四十円、こういうことになっております。このように内外価格差やあるいは財政負担が非常に大きいということは大変問題ではあるわけでありますが、しかしながら、将来価格の下がる農作物を農家に普及拡大しようとしておりますことは農政の矛盾だと言わざるを得ないと思います。その点はどうでございますか。
  241. 浜口義曠

    ○浜口政府委員 今回の法律案の提案でございますが、そのこと自体生産者の価格それ自体の逓減ということを提案をしているということではございませんで、我が国の伝統的な食品であるみそ、豆腐、納豆、煮豆等々の原料として、国民の食生活上欠かすことのできない重要な農産物という大豆の重要性というものを認識をいたしまして、一方、るる申し上げましたけれども、農業生産面におきます位置づけといったようなものの上に立ちまして、大豆の将来性、大豆が国民の食生活あるいは農業生産に占める地位というものが今後さらに一層重要性を増しているということを背景にいたしまして、今回この法律案の提案をしたわけでございます。この点におきまして、一つの眼目といたしまして良質品種の生産流通を図ろう、あるいは具体的な品種、銘柄等々に応じた一層の改善を図っていこうということでございまして、そういう中におきましての農家のお立場の上から、国内生産の中に、量はもちろんふえるわけでございますけれども、その中に農業経営の上におきましても足腰の強い農家の育成というものを図っていきたい、そういう観点に立つものでございます。そういう意味で今回の法案等におきまして、現下水田農業確立対策というものをことしから出しておりますが、そういう農政上の一環の中で提案をさせていただいたという考え方でございます。
  242. 神田厚

    神田委員 大豆の収量は、転作という理由もあるわけでありますが、農家によりましてばらつきが大変大きいわけであります。単収は昨年の場合はおおむね百七十七キログラム、こういうふうに言われています。また、農家の平均耕作面積は約七アールであります。したがって農家平均約三万五千五百三十九円の農業粗収入にしかならない。こういう点を考えますと、農政審で「産業として自立し得る農業」、これを言いながら、このように財政負担が大きく、しかも農家にとっては収益性の低い作物を推進し続けるという理由は一体どこに、あるのか。また、構造改善政策を推進しても、農産物の輸出国におけるような一戸当たりの耕地面積、アメリカは百八十二ヘクタール、オーストラリアは二千八百四十ヘクタール、けた違いでありますけれども、そういうことにはならないのではないかということで、その辺についてお考えをお示しいただきたいと思います。
  243. 浜口義曠

    ○浜口政府委員 御指摘のとおりでございまして、現実におきます米国我が国との大豆生産におきます懸隔はかなり大きゅうございます。こういったものにつきまして一挙に埋めるというようなことは、彼我におきます自然的条件あるいはこれまでの農業生産の経過といったようなことから、一朝一夕にできることではないということは十分認識しております。  ところで、我が国における気候条件あるいは我が国における食生活の条件等々からいきまして、本年から発足をしております水田農業確立対策、すなわちこの場合におきます田畑輪換であるとかあるいは水稲とその他作物との合理的な組み合わせといったようなことから申しますと、我が国の農業政策の上からは、この大豆というものは極めて重要な位置づけ、どうしても作付の一環として展開をしていかなきゃいけないものだということでございます。  そういうような中で私どもの具体的な経営目標といったものは、今先生の御指摘のようなアメリカの姿といったものをそのまま移すということは極めて難しい問題ではございますけれども我が国の農業生産あるいは我が国の地域的状況にふさわしい展望を持ちつつ、その中に大豆を位置づけていかなきゃいけないだろうと考えるものでございます。その場合、もちろん先生指摘のとおりでございますが、構造政策的な視点から、今申し上げました作付体系というものを実現していくような経営規模のものを早急に全力を挙げて育成していかなければならないのではないかと考えるものでございます。
  244. 神田厚

    神田委員 政府は自立し得る農家の育成ということをずっと言い続けております。そして土地利用型作物の導入と構造改善を中心に水田確立対策を提唱しているわけでありますが、自立し得る農家とは、少なくとも農業所得で生計を営むことのできる農家を指すものであると考えられます。しかるに米の転作として小麦、大豆を推進し、政府日本の平均的農家、約一・二ヘクタールが米、麦、大豆で農業をやっていくことができる、生計を立てていくことができると考えているのかどうか。また内外価格差が大きいものを主として拡大しようとしているように見えるわけでありますが、このように、財政負担の重みに加えまして将来価格の下がる可能性の高い作物の導入は、農家に対しまして農政不信をさらに進めるものだと考えておりますが、この点につきましてはどういうふうに考えておりますか。
  245. 加藤六月

    加藤国務大臣 我々は、農政審の報告は前川レポートといいますか経済構造調整の第一弾であるという認識を持っております。その農政審の報告に従いまして誠意を持って鋭意、確実にこれを実施していくという一つ我が国の大きなテーマがあるわけでございます。しかしそういう中にありましても、いつも申し上げておるわけでございますが、農業は他産業と異なり生産が自然条件に左右される等の産業としての基本的な条件そのものに制約があります。したがいまして、各国とも相当の保護措置を講じておるところでございます。我が国としましても、こうした農業の特殊性を踏まえながらも各種の助成あるいは規制は適切な範囲にとどめまして、農業経営者みずからの創意と工夫により国民の必要とする農産物が国民の納得が得られる条件で供給されるよう、コスト意識に立脚した生産性向上対策を強力に進めることが産業として自立し得る農業を確立する道であると考えておるところでございます。そして、いつも当委員会で議論されておりますように、これを推進していくためには、まず第一は、効率的な生産基盤の整備、それから次はバイオテクノロジーと先端技術の積極的活用、それからすぐれた技術と企業者マインドを持った農業経営者の育成、さらに創意と工夫を助長するような競争原理の導入、あるいは生産性向上成果というものと需給動向とをより反映させた価格政策等を進めていく必要があると考えております。  そういう中で、施設利用型農業というものと土地利用型農業という問題、両面がまたある面では考えられるわけでございまして、先ほど申し上げました我が国の国土条件、自然条件を考えまして、土地利用型農業においては相当の内外価格差がありますけれども、そしてまた農作物個々においていろいろな内外価格差はございます。そういう中で鋭意努力していく。そしてまたある面では、土地利用型農業あるいは土地利用をする生産物、農産物に対してはある程度国民の理解と納得をいただくように私たちも努力していかなくてはならない、こういう基本的認識のもとに進んでおるところでございます。
  246. 神田厚

    神田委員 産業として自立し得る農業、こういうことを言っているわけでありますが、平均面積が一戸当たり七アール、この大豆が一戸当たり何アールぐらいになれば成り立っていくと考えられるのか。生産者価格や消費者価格などは大体どのくらいが適切だというふうに考えているのか。あわせて、こういうことはできないことだろうと思うのですが、大豆の値段と財政負担がゼロになるまでといいますかゼロに限りなく近づくまで下げていくつもりなのかどうなのか。生産者としては大豆の値段がどのくらいになるということをめどにして経営努力をすればいいのか、その点については農林省としてはどういうふうにお考えになられますか。
  247. 浜口義曠

    ○浜口政府委員 先生指摘のとおり、現在大豆の二戸当たりの平均的な経営面積と申しますか作付面積はわずかに七アールでございます。ただ、この場合におきますのは具体的には北海道の畑作あるいは各地域、関東、東山等において輩出しております自立的な農家といったものと、いわば自家経営と申しますか自家消費と申しますか、みそ、しょうゆ等を中心に、あぜ大豆というものを中心に経営しておられる農家というものも全く平均的に出てきた数字でございます。私ども実施しております大豆の共励会というのがございますが、そういったところにおきましても、単収だけとりましても農林大臣賞に輝く農家というものは大体におきましてこの数年間四百キロぐらいの水準に達しているところでございます。  そういった状況でございますので、一概に現在スタートといたしまして何アールでいいかという問題につきましては、この経過等々からいって極めて難しい問題を含んでおりますが、逆に現在の私どもの技術水準等々から勘案いたしますと、例えば農政審の答申の参考ということで高水準水田農業における生産性水準として出されたものにつきましては、二年三作地域におきましては大豆の面積を十二ヘクタール、あるいは二毛作地帯におきましては大豆の面積も十ヘクタールということを入れまして、水稲あるいは麦とのコンビネーションを考え、実面積二十ヘクタールの経営を前提にしたような経営をしております。  そういったときにおきまして、例えば今申し上げました大豆等の労働時間については十分の一と言われるような五時間というところにもまいりましょうし、二毛作においては四・六時間といった数字になるわけでございます。ただ、そういった状況におきます費用合計といたしましては、それぞれ二年三作地帯、二毛作地帯におきまして五千七百円、五千九百円という数字が費用の必要経費として試算されるところでございます。もちろん、こういったものが先ほどの平均的に七アールといった大豆経営から一挙にいくことはなかなか難しゅうございますし、また、個別の経営という形でアプローチができるということもなかなか難しゅうございます。そういった地域連檐の集落とかそういった中で生産組織の育成を図りながらこういった作業規模というものを打ち立てていただく、さらにまた地域地域の特質性というのに基づいた経営というものを工夫を凝らしてつくっていただくということができますれば、近代的な、自立的な経営が実現できるのではないかと考えるところでございます。
  248. 神田厚

    神田委員 そこまで持っていくにはかなり時間もかかるしいろいろなことをやらなければならないわけでありますが、現実的になかなか難しい問題を含んでいると考えております。ただ、そういう形でやらざるを得ないわけでありますけれども、一方、財政的な面を見ますと、現在大豆の交付金は販売数量相当分を交付しているわけであります。しかし、本法は数量に対しまして農林水産大臣の定める数量についてのみ交付金を交付することとなっております。したがって、財政事情がこのような状況の中にありますと、大豆の転作面積が幾らふえても交付金を出すことは不可能になってくるであろう、このように思うのでありますが、特にトン当たり財政負担が二十四万一千四百六十七円もする大豆交付金制度が永続することはこういう状況ですと考えにくいということを言わざるを得ないわけであります。  政府は、交付金を大豆の生産量の何万トン程度まで交付可能だと考えているのか、この交付金の交付のめどといいますかそれについて考えを示していただきたいと思います。
  249. 浜口義曠

    ○浜口政府委員 先生指摘のとおり、この法律におきまして農林水産大臣の定める数量というのが規定をされております。本法改正案におきましてもそれの前提の上にこの法律案規定というものもあわせて提案されている部分がございます。  ただ、この交付対象の限度数量というものにつきましては、この法律の自由化ということに関連いたしまして導入されました昭和三十六年の数字というものが一つのベースとなっているということがあり、さらに今日まで大豆の生産が水田再編対策実施のときまでは逓減をしていたということもございまして、交付対象の限度数量についてこれまで定めていないわけでございます。  今後の設定の問題等につきましては、財政の問題に関連をいたしまして先生指摘のところでございますが、今次法改正の趣旨を踏まえ、かつ水田農業確立対策の整合性等も十分留意をいたしまして、慎重に対応してまいりたいという考えでございます。
  250. 神田厚

    神田委員 非常に抽象的でわかりづらいのでありますが、その辺のところがもう少し明らかにされないとやはり問題が解決をされないというふうに考えております。同時に、現在、大豆の生産者や生産組織あるいは農協などにおきまして、大豆の生産効率化に向けての設備投資を推進をしているわけであります。政府は、国際競争に耐え得る大豆価格の形成が一体可能だというふうに考えているのかどうか、また、いつごろまでにそういうものが達成できるというふうに考えているのか、その点をお聞かせをいただきたい。  それから、最後になりますが、六十二年産価格につきまして、生産費、生産条件、需給動向、経済事情、これをどのように価格に反映をさせ計算をしていくのか。その点をお示しをいただきたい。
  251. 浜口義曠

    ○浜口政府委員 先生指摘の第一の点でございますが、先ほど申し上げましたように、全体的な、平均的な姿というものをスタートにいたしますれば、かなり国際競争力と申しましょうか国際的な大豆生産との対比において、我が国の大豆生産というのは貧弱のように見えるようでございます。ただ、具体的にさらに現実の生産構造といったものを見ますと、地域、地域におきます格差というのが欠きゅうございます。そういうことを逆に裏返しに申し上げますと、具体的な我が国の農業の営みといったような中で、かなり有力なる大豆経営策というものが各地域で輩出をしてきているというふうに認識をしております。そういう意味におきまして、我が国古来の伝統的食品を担うべきこの大豆農家といったようなものは、構造政策等々よろしきを得れば、我が国における農業の基幹的な経営として定着していくことも困難なことではない、実現が不可能であるということはないというふうに考えるものでございます。  第二番目の六十二年度の価格決定等につきましては、従来の方式を変えさせていただきまして、生産費、生産条件、あるいは需給動向等を勘案しまして総合的に算定するということを現在行おうとしているわけでございます。先ほど申し上げましたけれども、現在の生産構造というものから、特に大豆につきましては自家消費部分と区別しまして、販売することを主たる目的として経営を営んでおられる農家の生産費等を中心に考えていかなければいけないというのが第一点でございます。  それから、第二点といたしまして、大豆等の需要動向というものを勘案をして対応していくべきであろう、こういうことが第二点でございます。さらに、物価その他の経済情勢というものを総合的に勘案をいたしまして、大豆の生産性の向上あるいは大豆の品質の改善に資する観点から算定をしていかなければならないというふうに考えるものでございます。  この場合におきます具体的算定方式につきましては、これまでも申し述べましたが、私どものところでいろいろ御議論を賜ってまいります生産者の方々あるいは学識経験者の方々等のメンバーで構成していただきました大豆研究会の御意見等も十分参酌をいたしまして、算定の点を実施してまいりたいと考えるものでございます。
  252. 神田厚

    神田委員 農家の人と話をしていますと、転作奨励作物という形で大豆をつくる、しかしながら買い上げ条件が非常に厳しくて大分等外に落とされてしまう、したがって、転作奨励という形でつくらせているんだから、せめてもう少しその辺についても、品質の悪いのは技術指導や何かを綿密にしてやってくれないかという声が大変多く入ってまいります。どうか農林省の方でもそのような声があるということを十二分に留意をしていただいて指導していただきたいということを最後に申し述べまして、質問を終わります。
  253. 玉沢徳一郎

    ○玉沢委員長 藤田スミ君。
  254. 藤田スミ

    ○藤田委員 大分おくたびれのようですが、私で終わりですので、よろしくお願いいたします。  大豆の生産の歴史というのは随分古いなということをこの機会にいろいろで見て思いました。日本の歴史にあらわれたのが縄文時代というふうに言われていますし、三世紀、邪馬台国の女王卑弥呼が納豆とかかわりがあったというようなこともあるわけです。したがって、日本食文化の重要な位置を占めていることは言うまでもありません。  私たちの食卓から豆腐、しょうゆ、みそ、納豆というものが消えたらどうなるだろうかということを思うわけですが、その大豆が昭和三十六年に輸入自由化されまして、約四十万トン生産されていたものが、昭和五十一年には十万トンにまで激減しました。作付面積で、二十八万六千七百ヘクタールが五十二年には七万九千三百ヘクタール、こういうふうに激減しています。いわゆる安楽死させられたわけであります。私は、この歴史的経緯は今日の米など食糧政策を考える上でも重大な教訓を与えているというふうに考えざるを得ないわけですが、大臣は、大豆の輸入自由化によって日本の大豆が激減されたことからどのような教訓をくみ上げていらっしゃいますか。
  255. 加藤六月

    加藤国務大臣 いろいろな教訓を得たと思います。特に、昭和四十八年のアメリカの大豆輸出規制という問題は、我が国国民生活に大変な影響を与えた、また、ある面ではあのことが狂乱物価の引き金になったのではないかという感じも持っております。  また、別の面でいきますと、私たちは子供のころ、田に稲を植える前にあぜをつくりまして、そのあぜにくわの先で穴をあけて大豆を植え、焼いたすくもをかけておった経験があります。そのことがいわゆる一般の畑作大豆、あるいは最近は田んぼの大豆植えつけということになって、ある面では生産性向上あるいは規模拡大ということを真剣に考えるようになったという経験を持っております。そして、そういう中で我が国の良品質の大豆というものの国民各界各層からの熱心な需要というものも脈々と息づいてきておるということ等も教訓の一つとして考えております。
  256. 藤田スミ

    ○藤田委員 生産性向上というのは農民の努力に帰するところであって、私は、大臣が食糧政策を考える上でこの問題をどう考えておられるかということを聞きたかったわけです。  実際。あの大豆騒動と言われる昭和四十七、八年当時は本当に大変でした。私はここに当時の切り抜きを持ってまいりましたけれども、「大豆ショック 食卓に悩み 米国の輸出禁止 豆腐も油も納豆も」「当面の必要量確保買い占め不安は残るが…」「台所への影響は?」「まさか5割とは 深刻な農林省」、こういうふうにこの当時のことを思い出す非常に生々しい見出しがついているわけです。だから大臣のおっしゃるように、確かに大豆をもっとふやしていこう、そのことが非常に大事なことだ、国民的要請でもあるんだということで振興奨励補助金の交付などを内容とする生産振興対策が推進されてきたわけであります。そしてようやく、特に水田利用再編対策で転作特定作物として位置づけられることで二十四万トンにまで回復をしてきました。このいわば自給率向上対策というのは極めて当然なことでありまして、ECなどでももっと重点的にこういう自給率向上ということでは施策をとっているわけであります。もう一度お伺いいたしますが、こういう大豆生産の流れをどう評価していらっしゃるか。
  257. 加藤六月

    加藤国務大臣 評価と言われますと、この二十年、昭和三十六年大豆輸入自由化をやって以来いろいろ山あり谷ありということでありますから、一概にどういう評価を申し上げていいかわかりませんが、要は需要者ニーズにあった質のいい大豆を安くつくるように頑張っていかなくてはならない。おっしゃったように、あの昭和四十八年のときには一丁七、八円の豆腐が五十円、七十円というふうにはね上がりました。また気の早い御婦人は、仕入れてからしょうゆやみそは数カ月かかるのに、これも高くなるんだろうというので早く買い占め、買いだめに走ったという経過があります。ああいうことを二度と起こさないようにという立場で私たち政治の場にある者は当たらなくてはならない。そういうところで長期見通しも食用大豆の分については立てたわけでございますが、今日までいろいろな面でまだ十分そこまで達してないということにつきましては反省をするところもあるわけでございます。
  258. 藤田スミ

    ○藤田委員 国産大豆は輸入大豆にない品質のよさを持っているということは先ほど来の質疑の中でも何遍も御答弁をいただいております。大豆研究会の報告書でもそのことは十分うたわれているわけであります。私、最近市場に行きまして納豆だとかみそだとかそういうものの表示を気にして見ておりますと、あえて十勝大豆を使用とかあるいはまた国産大豆を使用、こういうふうに大豆は大豆でもこれは国産だということを非常にクローズアップして売り出している納豆、お豆腐もそういうのがございます。やはり消費者のニーズになっているんだな。健康食品の話も出ましたが、アイスクリーム、それから豆乳、牛乳のかわりにそういうものを食する人もあるわけです。したがってそういう消費者の要求及び食糧自給率の向上の観点から考えましたら国産大豆の生産量はどの程度まで引き上げていかなければならないとお考えなのか。
  259. 浜口義曠

    ○浜口政府委員 ただいま先生お話しのように、国産大豆というのは最近におきまして、特に具体的な産地の銘柄等々も含めまして脚光を浴びているわけでございます。こういった大豆の位置づけといった商品学みたいなものを一通り見てみますと、我が国におきます大豆の使われている大宗は、約四百八十万トンのうち四百万トン、これが油糧でございます。この場合率直に申し上げまして、我が国の国産大豆が使われているものはほとんどないといっていいものでございます。それは我が国でつくられております先ほど来優位点と申し上げたたんぱく質が極めて高いことの裏返してございまして、アメリカ大豆あるいは中国大豆等々に比べましても油脂の含有量が低いということに起因するものであろうというふうに思います。もちろん経済的なコストの問題等々入れなければいけませんが、単に品質等々から申し上げてもそういう直接的な起因条件があろうかと思います。  そういうような観点に立ちますと、当面我が国の大豆の優位性、そういう特徴に重点を置いてみますと、やはり食用大豆といいますか先生がお話しになりました納豆であるとかあるいは煮豆であるとか、そういったようなものになるのではないかというふうに考えられます。そういうものが主要な需要先であるのではないかと考えられます。こういったものの状況は、もちろん健康食品の普及といったようなこと、それから先ほど先生が御指摘のようなゆとりある生活に起因いたしましていろいろ消費者の方々がそういったものに目を向けられるということで、いわゆる健康食品としての大豆の食品といったものはこれからも少しずつ伸びていくものだろう。その数字は大体八十万トンといったようなものが一つのベースになるのではないかというふうに思われます。  この場合、大きく分けまして八十万トンの大体半分ぐらいのものが我が国伝統の豆腐、油揚げでございます。この場合におきます現状においての国産大豆のウエートはわずかに一〇%程度、四十万トンに対して大体四万トンだというふうに達観的に申し上げられるのじゃないかと思います。他方煮豆でございますが、この場合にはほとんど一〇〇%国産大豆が使用されておりますけれども、煮豆の生活というのは若い方々に果たして受け入れられるかという問題がございまして、その量はわずかに一万七千トンくらいということでございます。しかしながら中年の方以上の方に愛好されているということを考えますと、国産大豆というのはまず第一に煮豆の方で一〇〇%くらい行くのではないか。あるいは価格のよろしきを得れば先ほど申しました豆腐あるいは油揚げといったものがだんだんと国産大豆に置きかえられる可能性があるのではないかというふうに考えられます。以上考えてみますと、一つの試算ということで、今の大豆に与えられたものにつきましてはかなり生産の可能性の余地、需要の余地が残されているというふうに思います。  ところで、数字といたしましては、先生御案内のとおりでございまして、六十五年長期見通しという数字が実はあるわけでございまして、現在六十二年でございますが、六十五年の数字といたしましては、作付面積二十一万ヘクタール、生産量四十二万トンというふうに見通されておりまして、この見通しにおきましては一応六割の先ほどるる申し述べました需要のシェアを予想しているところでございます。ところで、現実の六十一年の数字につきましては、今申し上げた作付面積につきまして大体六六%、それから収量、生産量につきましては五八%といういわば相当低い水準でございます。他方、この長期見通しにおきまして、収量については二百二キロを目標として掲げておりますが、これにつきましては六十一年度ベースで八八%という数字になっておりますので、この点についてはかなり高い達成率ということでございます。  そういった点を総合的に考えていきます場合に、一方におきまして我が国の健康食品等々の需要というものをどういうふうに見るかということが一つございますし、他方におきまして、現在置かれておりますこの六十五年度の目標といったものをどういうふうに考えているかということを勘案いたしますと、少なくとも私どもといたしまして、この目標の中におきまして現状の国民食糧としての需要に対して過半以上のものを供給していくということを考えていかなければならないのではないかと考えております。
  260. 藤田スミ

    ○藤田委員 随分回りくどい御答弁で、できるだけ簡潔にお願いしたいんです。  要するに、六十五年に四十二万トンの長期見通しを立てた、その程度までは引き上げたい、こういうふうに考えておられるわけですね。数字から言ったらそういうことになりますね。現在でも需要量が八十三万七千トンですよね。それに対して、六十五年の長期見通しが四十二万トンですからね。過半数を上回るといったら、これは単純に考えたら四十二万トンだから、ちょうど過半数ぐらいのところが長期見通しの数字になっていますが、そうすると、その長期見通しの六十五年四十二万トンというのは大いに目指していくんだというふうに受けとめ、その後も食品用の総需要量には近づけていくということを政府としては方針として考えているんだというふうに考えていいですね。簡単で結構です。
  261. 浜口義曠

    ○浜口政府委員 簡単に申し上げますと、現在の私ども政府が出しております数字というものは、今申し上げました長期見通しの数字しかないわけでございます。ただ、昨年十一月報告がございました農政審議会の点におきましても、生産性等の向上あるいは品質等の点ということから、国産大豆を一定の数量を持っていかなければいけないという御提言を受けているところでございます。
  262. 藤田スミ

    ○藤田委員 農政審の一定程度の国内生産の確保というのは非常に抽象的ですからね。だから私はあえてお聞きをしたわけです。  私は、今回の大豆なたね交付金暫定措置法の一部改正案は重大な改悪法案だと、あえてそういうふうに言わなければなりません。まず第一に、今まで参酌事項一つであるパリティ価格を外し、パリティ指数が上昇しても価格がそれに連動することがなくなり、さらに新たに参酌事項に入れた生産費についても、販売することを主たる目的として生産を行っていると認められる生産者に限定しており、運用いかんでは中核的担い手の生産費を反映した価格策定につながるものであります。また、需要と供給の動向や生産性の向上、品質の改善に資するという配慮規定も、生産者の意欲を高めるどころか逆にその意欲を奪って、低価格政策の一里塚になるであろう、こういうふうに私は考えるわけであります。さらに、最低標準額、限度数量の導入についても、生産者犠牲の財政負担軽減策だと言われても仕方のないものですし、極めて不当なものだと思います。また、種類、銘柄別価格導入についても、実質農家の手取りの格差は一層拡大することになり、品質格差の水準次第では再生産の確保を旨とするという基準価格の基本が崩れかねないものになっていると思うわけです。  私は、このような法改悪によって、大豆の自給率が取り返しのつかない、再び安楽死と言われるようなことになりはしないかという大きな危惧を持っておりますのは、実は大臣もいらっしゃったそうですが、私もついせんだって北海道に行ってまいりました。そして、北海道の大豆の主産地であります十勝地方あるいは旭川、上富良野、こういうところを回ってまいりました。  ちょっと確認をしておきたいと思いますが、今回の、全国の大豆生産地において、十勝地方だとか上富良野だとかあの辺の大豆の生産は単収も非常に高いし生産性も高い主産地と考えていいでしょうか。
  263. 浜口義曠

    ○浜口政府委員 北海道の畑作の大豆等は、我が国における大豆生産の中核的な分野でございます。さらにまた、北海道におきまして畑作以外の水田地帯における畑作、大豆の生産も我が国の大豆を担うべき地帯と考えております。
  264. 藤田スミ

    ○藤田委員 この十勝地方で大豆生産の意欲が落ちてきているわけです。私がこんなことを言うのは、もう大豆はつくらぬよという声が非常に多いわけです。十勝の音更農協というところに行って聞きましたけれども、昨年の全耕地面積の二六・六%が大豆である、それがことしは一五・八%まで減った、こういうわけです。御承知のように音更は米づくりはもう減反がほとんど九〇%を超すぐらいのところになっているんじゃないですか。そういうところで大豆の生産も減ってきているわけです。こういう大豆の主産地での動向を御存じでしょうか。また、その理由どういうふうにお考えでしょうか。
  265. 浜口義曠

    ○浜口政府委員 先生指摘の地域における具体的な点につきまして私十分把握はしておりませんが、北海道における大豆の位置づけは、一方畑作物におきましては飼料作物、てん菜あるいはその他の輪作体系の中での組み込みというものが実際行われております。さらにもう一つ、これは油糧作物ではございませんが、いわば糖料作物と言っても過言じゃないかもしれませんが、小豆等とのバランスといったようなものも経営農家の方々は十分勘案して行っておられるというのが実態だろうと思います。そういう状況の中で、天候、あるいはそれぞれの、大豆というだけではなくて小豆の価格の動向等々を勘案されまして実際に農家の方々は作付をされる、どういうものを有利に販売したらいいかというような点も含めて耕作をされているという実情にあるのではないかと考えるものであります。
  266. 藤田スミ

    ○藤田委員 これから生産性の向上だとかあるいは質の向上だとかおっしゃるなら、どうしてこういう大豆の生産地が大豆生産に魅力を失ってきているのかということについてもっと認識を深めていただきたい。先ほどもサンプル数の問題が出ておりましたけれども、そういうことも十分認識をした上でこの法案を考えるべきじゃないかと思いますが、一つ一つ聞いてまいりたいと思います。  まず、大豆生産というのは非常に難しいわけですね。例えば、その一つのネックになっているのが大豆の乾燥なんです。これは品質や貯蔵の上で重要な、いわば大豆づくりの最終作業になるわけです。旭川の農民も、大豆の乾燥は非常に難しい、秋が短いし、それに加えて天候が不順で天然の乾燥がうまくいかないんだ、さりとて機械乾燥にしても大豆にしわりといってしわが寄るそうです。それからまた、汚れといってちょっとの土が、油脂分があるわけですからまざって汚れてしまう。こういうことで旭川の皆さんはだからもう大豆は難しいと言われます。そしてそこで言われたのは、十勝の方は天候的には旭川よりいいからあっちの方が適しているんだ、こう言われた。ところが、旭川から今度十勝に入りましたら、現地の農民の皆さんは、乾燥時には雪が降るんだ、そして雪がどんどん大豆の中に突き刺さるように食い入って大豆をだめにしてしまうんだ、大豆の農作業が厳寒の中で行われるために、奥さんは泣くというのです。もうお父ちゃんやめてくれ、大豆だけはやめてくれというふうに泣いてしまうというわけです。これが単収の高い、生産性のよい大豆生産現場の声なのですが、生産性向上などというきれいごとでは済まされない厳しさ、努力があると思いますが、大臣はどう受けとめられますか。
  267. 加藤六月

    加藤国務大臣 ある面で申しますと、農家、大豆生産者の皆さんも一つは市場動向、需給動向というものを考えながらおやりになる。それからまた、農業にも、安易な農業もあるかもわかりませんが、やはり苦労し努力し、そして品質向上を考えながら伸びていくという点もあると思います。  私も、今おっしゃったような意見も実は承りました。承ったけれども、逆に激励しておきました。それをもう一歩乗り越えるためのいろいろな努力があってこそ初めて大豆生産というものが安定してき、またそれが実需者に合うようになるんだからいま一踏ん張りしてください、こうお願いをして帰ったところでございます。
  268. 藤田スミ

    ○藤田委員 乗り越えるための努力というのはやっておられますよ。やっているから土から離れないで頑張っておられるわけです。  それだけ厳しい思いをして大豆をつくって農協に持っていく。そのとき農民に基準価格の全額が手に入るならまだしものこと、そうではありませんよね。六十一年産では基準価格の七〇%を農協が立てかえ払いをするわけです。そしてその残額が手に入るのは実に二正月越した後、二年後になるわけですね、そうでしょう。生産費はいや応なしにその当年度に払うわけです。ところが、当年度の収入は七〇%にしかならない。これでは厳しい生産状況の中で意欲を失うのは当然のことであります。しかも、この立てかえ払い率は六十年は七五%だったけれども、さらに低下をさせられて現在七〇%に下げられています。  こういう点から考えて、幾ら何でもこれは立てかえ払い率を、基準額のせめて九〇%くらいには引き上げるべきじゃないか。よもや現在の立てかえ払い率七〇%をさらに引き下げるというお考えはないだろうか、この二点をお伺いしたいわけです。
  269. 浜口義曠

    ○浜口政府委員 先生の御指摘の概算金の問題でございますが、これは生産者が個々で販売をするという形ではございませんで、今の制度におきましては生産者が登録出荷業者に出荷した後に登録出荷業者から生産者に清算払いで払うのではなくて、一部概算払いを払う、こういう形になっているわけでございます。この点におきまして、支払い日から交付金が交付されるまでの期間に発生しております金利につきまして、流通経費として国が支払いを行う、国が負担をしている、こういう形になっているわけでございます。  この概算金利の問題、財政負担等につきましての問題等については、近時交付金の対象大豆の増加という点が、数量がふえるということが一方ではございます。  それから、販売価格が国際価格の動向等に影響を受けまして低下をしておりまして、交付金の金額がかつてのような一〇%とか二〇%を補てんするという形ではなくて、大きな幅で増加をしておりまして、生産者側におきましても流通経費について努力していただける範囲内で、その点におきまして節減を行っていただくことといたしまして概算払い率の縮小を図ったところでございます。  今後の概算払いの取り扱いの問題でございますが、大豆の生産状況あるいは基準価格の水準あるいは販売価格の動向等々を総合的に検討いたしまして、大豆の安定生産を確保する観点を含め、慎重に検討してまいりたいというふうに考えております。
  270. 藤田スミ

    ○藤田委員 はっきり言ってください。そうすると、これは今は七〇%に落とされたけれども、もう少し引き上げられる可能性があるのか、見通しとしては七〇%をもっと割るということなんですか。
  271. 浜口義曠

    ○浜口政府委員 この点につきましては、一つの条件というようなことでございまして、ほかの基準価格をどういうふうに考えていくか、そういった点も含めまして、ただいま申し上げました点は、大豆の生産状況あるいは基準価格の水準、販売価格の動向あるいは金利水準の動向等々を総合的に検討いたしまして、大豆の安定生産を確保する観点も含め慎重に検討したい、今後検討していきたい、こういうことでございます。
  272. 藤田スミ

    ○藤田委員 やはりもっと立てかえ払い率を高めていかなければならない、私はそのことを思います。ボーナスだってそうでしょう。その年のボーナス一〇〇%もらわないで七〇%もらって、その明くる年のその次の春にようやく入ってくる、こんな生活だったらたまりませんよ。全部その七〇%しか入らない。生産費は払わなければいかぬ。結局そういうところも負債が大きくなるのです。大規模の農家ほどまたこういうところで負担がかかってくるわけですから、検討するときにはぜひとも負担率を高めるということで検討していただきたいということを申し上げておきたいと思います。  所得を手に入れるのに二年かかるだけではなく、品質の規格が非常に難しいわけです。これも難しくなって厳しくなってきました。五十九年度までは規格外も交付金の対象にしてきました。六十年産からは規格外は交付金の対象外だ、六十一年産からは四等の半分を交付金の対象から除外する、こうなりまして、六十二年産からは四等のすべてを交付金の対象から除外する、こういうふうに交付金の対象枠をどんどん狭めてきたわけです。これもまた意欲を低下させる一つの大きな要因になっているわけです。現に帯広では天候不順で規格外がふえ、十アール当たり一俵しか交付金対象大豆ができなかったというようなところもあるわけです。よく御存じでしょう、大臣。これで大豆生産の意欲が持てると思われますか。
  273. 加藤六月

    加藤国務大臣 今委員がおっしゃった最も被害が大きいのは我が国山県だと思っております。私はそういう生産者に会いまして、頑張ってほしいということをよくお願いし、よし頑張る、意欲は失わないということを言ってもらって喜んでおるところでございます。
  274. 藤田スミ

    ○藤田委員 頑張れと言っても限度があります。  最後に価格の問題ですが、北海道あたりでは十アール当たり八万円は欲しいと言っているのです。そうでしょう。これが農民が意欲を持って生産に当たれる金額であります。政府の資料によっても六十一年度の北海道の平均単収は十アール当たり二百十八キロ、基準価格が六十キロ当たり一万六千九百二十五円ですから、十アール当たりの収入は六万一千四百九十四円です。もう農民の要求とはやはりかけ離れているわけです。ところが、今度の法改悪で交付金の引き下げとなるわけですから、大豆の生産はこれでまずまず意欲がそがれ、展望が持てなくなるのではないですか。
  275. 浜口義曠

    ○浜口政府委員 今回の御提案申し上げております改正案におきましては、現実におきます良質生産の実需者からの要請あるいはこれから国民的な課題であります生産性の向上あるいはコストダウンといったものの上に立ちまして、算定方式の改定等を御提案申し上げているところでございます。  この点におきましても、従来からありますとおり、農家の方々が意欲を持って生産にいそしめるように、その点におきましての考え方も変えることなく決めておるところでございまして、そういう意味で、国民各層の御要望等々の上に立ち、大豆の生産の発展ということに気を配りまして実施をさしていただきたいというふうに考えるものでございます。
  276. 藤田スミ

    ○藤田委員 「交付金制度の改善の方向」、これは研究会の報告の最後のところに書いてあります。どうも皆さんのおっしゃることは「国産大豆の生産性の向上及び品質の改善を促進するとともに、」生産性の向上、品質の改善を促進するというところを強調されますが、「とともに、過度な財政負担への依存からの脱却を図るとの観点、」こういうことで今回の法案が提案されているわけなんです。だから、私はこれがトラスチックな大豆の生産減につながっていくという心配をするわけであります。  先ほどもおっしゃいましたけれども、意欲を失わせることがないように配慮する必要がある、確かに研究会の報告書には、その続きの文章に「なお、その場合、」「農家の意欲を失わせることがないよう配慮する必要がある。」ということが書かれています。私は大臣にこれをお聞きしたいわけです。  もう我慢我慢という言葉じゃなしに、実際に政府は、「意欲を失わせることがないよう配慮する必要がある。」この意欲を失わせないために、この提案の中で一体どういう配慮をしたと言えるのでしょうか。どういう点が配慮に入っているのですか。
  277. 浜口義曠

    ○浜口政府委員 大豆等におきましての施策、生産政策を挙げてみますと、先ほどの御議論にもございましたけれども一つは国等のいろいろの指導等々によりまして、現実におきます収穫の場面における技術革新であるとか、あるいはその実効といったようなものが一方であるわけでございます。また、この問題は、大豆の価格政策以外におきましての構造政策等々も勘案していかなければいけないわけでございまして、そういった生産対策あるいは構造政策等々をもちまして、大豆の振興といったようなものを図っていかなければいけないのではないかというふうに考えます。  ただ、この場合、特に政府の具体的な点といたしましては、今次、ことしから実施をいたします水田農業確立対策といったものの中で、はっきりと大豆を位置づけていこう、そういうことでありまして、今先生がおっしゃいました真剣に大豆の生産に取り組んでいる生産組織や農家が、意欲を失わないような態度というものを講じていかなければならないというふうに考えておるところでございます。
  278. 藤田スミ

    ○藤田委員 大変御丁寧な御答弁をいただきましたが、私がそれで、よっしゃ、わかったと言うわけにはいきません。この法案は「過度な財政負担への依存からの脱却を図る」、初めにその結論があって出されたものであって、私は、これは第二の安楽死になったら大変なことになるぞというふうに、非常に危機感を感ぜざるを得ないわけであります。  時間がありませんので、次の問題に移りますが、納得をしたわけではありません。本当に現地を調査したり、あるいは参考人を呼んで聞いていただくなどの十分な御配慮をぜひともいただきたいものでございます。  農地の固定資産税の評価の問題をお聞きいたしますが、六十二年度から水田農業確立対策が行われ、全国で七十七万ヘクタールもの水田が転作になり、多くの農民に犠牲が課せられているわけです。農民の皆さんは、今それが北海道であっても、それこそ大阪、淡路であっても一体何をつくったらいいのかわからない、そういう声が満ち満ちています。そういう農民にとって腹に据えかねる問題は、転作田に対する固定資産税の評価の問題なんです。大臣政府に協力をして転作をして畑作にかえても、固定資産税の評価は水田のままなんです。水田というのは畑地の評価と比べましたら、水田は畑地の大体三倍になっているのです、平均で。北海道は四倍になっています。こういうような固定資産税が、転作しても水田のままかかってくるわけです。これは全く不合理だと思われませんか。私の言っていること、大臣に答えてほしいのです。
  279. 佐野徹治

    ○佐野説明員 固定資産の評価の問題でございますので、私の方からお答えをさせていただきます。  現行の固定資産評価基準では、地目の認定につきましては土地の現況による、こういうようになっております。この場合、土地の現況、それから利用目的に重点を置きまして、土地全体としての状況を観察していく、こういうことで市町村の方で地目の認定の作業をやっておるところでございます。  御指摘の田んぼと畑の区分の問題でございますけれども、基本的には田というのは、農耕地で用水を利用して耕作する土地を言っております。また、畑につきましては、農耕地で用水を利用しないで耕作する土地、こういうふうになっておりますけれども、その現況を判断するに当たりましては、単にその利用状態のみではなくて、耕地の形態、利用状態等を総合的に考慮いたしまして、山なり畑の認定を行うということでございます。  具体的に申しますと、田の耕地設備の有無、それから植栽作物の種類等、こういった個別の土地の具体的な状況を十分に把握いたしまして、一般の社会通念等にも照らしまして、客観的に妥当なものと認められる地目をするようにいたしております。  したがいまして、水田を転作いたしました場合におきましても、先ほど申しましたような考え方をもとにいたしまして、適正な評価が行われるように指導もしてまいっておるところでございます。
  280. 藤田スミ

    ○藤田委員 非常に具体的なことを聞いているのですが、答弁が長くてよくわかりかねますね。  要するに、こういうことですか。それじゃ、あぜだとか、あるいは用水利用の施設がある、こういうことだから、田んぼはそこでもう米が転作でつくれなくなっても、やはり田んぼとしての価値があるから、それは評価としてはかえないんだということなんですか。それとも、それは地方自治体によってもう転作をしているということがはっきりわかっていたら、そこはやはり畑として利用するんだから、畑地で地目変更して評価をしたらいいんだということなんですか、どっちなんですか。
  281. 佐野徹治

    ○佐野説明員 具体的な御質問でございますので、具体的にお答えをいたしたいと思います。  一般的には、その耕作地が田んぼの設備、湛水設備だとか、これに用水を供給し得るような設備、こういったものを存置をいたしながら、稲から例えば大豆のような作物に転作された場合につきましては、耕地の形態が田の設備を存置をしておるということ。それから、耕地の利用状態が湛水を必要としない作物を耕作しておると申しましても、いつでも田として利用し得る状態にあると認められること。また、こういったことからもう当該土地の本来の利用目的が、田として耕作することにあると認めることが適当である、こういったことから、今お話しのような場合には、原則として田として認定をするのが妥当であるということでございます。
  282. 藤田スミ

    ○藤田委員 田として耕作に適当であるといったって、そこで米をつくるなど言っているのが農水省でしょう。田として利用できる、そういう施設があるといったって、これは利用できない、かえって難儀しているのですよ。水が入らないようにどうしようかなと難儀しているのです。耕地の形態そのことにとらわれたら、これはあれですか、もしか、そういう設備があれば、土地売買をするときに田んぼとして売れるから、だからその評価はそれでいいんだ、こういうことなのですか。しかし、それは農民からしてみたら、そんなもの、土地ブローカーでもありませんから、そんな土地を売買するわけじゃありません。土地にへばりついて農業に携わっているのが農民なのです。だから、現に畑作をやっていて、そして水田の評価をされるというのは本当に不合理だというふうに思います。もう少しはっきり言ってください。
  283. 佐野徹治

    ○佐野説明員 具体的なお話でございましたので、私の方も具体的にお話をしたわけでございますけれども先ほど申しましたように、やはり円として利用し得る状態にあると認められるかどうか、それから、その土地の本来の利用目的が円として耕作することにあると認めるのが適当であるかどうか、こういった観点から地目の認定をいたしておるわけでございます。
  284. 藤田スミ

    ○藤田委員 これは検討する考えはありませんか。当然生産者の方からもそういう声は出てきている。大きな矛盾だというふうに言われていると思うのですが、どうですか。
  285. 佐野徹治

    ○佐野説明員 現行の評価基準におきまして、今申しましたような考え方の基準それから施行通達、それを受けましての運用をやってきておるところでございます。従来からの運用の積み重ねと申しますか、そういうことで、私が今申しましたような取り扱いに至っておるわけでございまして、今後ともこの考え方で地方団体を指導してまいりたいと考えておる次第でございます。
  286. 藤田スミ

    ○藤田委員 大臣、聞いてわかっていただいたと思うのです。七十七万ヘクタール減反というのです。そこで米をつくったら御法度だというのです。そこで農民は、その水田をほかの作物に切りかえる。税金の方は、そこは田んぼの形態をとっているからといって田んぼ並みに相変わらず税金が取られる。こんな矛盾したことないですよ。私はとても納得することができないのです。大臣はどう思われますか。
  287. 加藤六月

    加藤国務大臣 私は、あらゆる機会をとらえて生産性向上と経営規模拡大ということを訴えておるわけでございますが、現実にその方法はいろいろあるわけであります。例えば、売買によって経営規模を拡大する場合に、最近農民の皆さん方の間では実際に米の稲をつくれる田んぼの面積と減反割り当てとの比率を勘案しながら、そこに相場が成り立つという具体的な話を承りまして、ある面でいいますと、農政上水田農業確立対策の影響、問題というものがこういうところにもあらわれてきておるのかなという率直な感じを持っております。  そしてまた、先ほど来の固定資産税の問題でございますが、固定資産税というものは各界、各方面からいろいろな御要望、御要請が今来ておるわけでございます。そういう中で、基準その他をくるくる変えるということになりますと、またそれによるいろいろな変動、変化あるいはひずみが出てくる可能性もあるわけでございます。そして、そういう面から見ますと、永年作物というものの方が今の通達、法令その他から見た場合にいいのかな、どちらを農林水産省としては奨励すればいいのか、あるいはまた農家はどちらを選択すればいいのかということは、一つの税制の中にもそういう知恵を働かすようなことになるのかなと思ったりなにかいたしておるわけでございます。  水田農業確立対策というものが単に固定資産税の上だけでなしに、今申し上げましたような経営規模を拡大する上においても非常に大きなウエートを持ってきつつあるということを今私は各地において承っておるところでございます。
  288. 藤田スミ

    ○藤田委員 これでもう終わりますが、もう一問だけお許しをいただきたいのです。  永年作物の問題で大臣言われておりますが、永年作物を植えている場合は固定資産税は畑地評価になるそうですね。これは間違いないですね——首を振っておられます。それで、一部の市町村ではその趣旨が徹底をしていません。地目の変更をしなければだめだ、こういうふうに言われているところもあります。当然地目の変更をしなくても、永年作物を植えていればいいはずであります。自治省として、この点は指導の徹底を図っていただきたい、このことを最後に御答弁をいただきます。農水省としても、この矛盾解決のために頑張ってください。最後に、自治省から。
  289. 佐野徹治

    ○佐野説明員 固定資産税の地目の認定は、土地登記簿上の地目のいかんにかかわりなく、現況の地目によりまして各市町村が認定する、こういうことになっております。この地目の認定は評価の基本にかかわる問題でもございますので、従来から適正な地目の認定につきまして指導もいたしておるところでございますけれども、今後ともこの指導が十分徹底いたしますように私どもも十分留意してまいりたいと考えております。
  290. 藤田スミ

    ○藤田委員 終わります。
  291. 玉沢徳一郎

    ○玉沢委員長 次回は、来たる八月四日火曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時八分散会      ————◇—————