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1987-08-27 第109回国会 衆議院 内閣委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十二年八月二十七日(木曜日)     午前十時三十分開議 出席委員   委員長 石川 要三君    理事 北口  博君 理事 竹中 修一君    理事 戸塚 進也君 理事 船田  元君    理事 宮下 創平君 理事 上原 康助君    理事 竹内 勝彦君 理事 和田 一仁君       有馬 元治君    内海 英男君       江藤 隆美君    大村 襄治君       河野 洋平君    鴻池 祥肇君       佐藤 敬夫君    佐藤 文生君       武部  勤君    月原 茂皓君       前田 武志君    谷津 義男君       角屋堅次郎君    小林 恒人君       田口 健二君    野坂 浩賢君       広瀬 秀吉君    井上 和久君       鈴切 康雄君    川端 達夫君       浦井  洋君    柴田 睦夫君       中路 雅弘君  出席国務大臣         内閣総理大臣  中曽根康弘君         国 務 大 臣         (内閣官房長官後藤田正晴君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 栗原 祐幸君  出席政府委員         内閣官房内閣外         政審議室長   國廣 道彦君         内閣官房内閣安         全保障室長   佐々 淳行君         防衛庁参事官  瀬木 博基君         防衛庁参事官  古川 武温君         防衛庁参事官  児玉 良雄君         防衛庁参事官  筒井 良三君         防衛庁長官官房         長       依田 智治君         防衛庁防衛局長 西廣 整輝君         防衛庁教育訓練         局長      長谷川 宏君         防衛庁人事局長 松本 宗和君         防衛庁経理局長 日吉  章君         防衛庁装備局長 山本 雅司君         防衛施設庁長官 友藤 一隆君         防衛施設庁総務         部長      弘法堂 忠君         防衛施設庁施設         部長      鈴木  杲君         防衛施設庁建設         部長      田部井博文君         防衛施設庁労務         部長      山崎 博司君         外務大臣官房審         議官      渡辺  允君         外務大臣官房審         議官      川上 隆朗君         外務省北米局長 藤井 宏昭君         外務省欧亜局長 長谷川和年君         外務省経済局長 渡辺 幸治君         外務省国際連合         局長      遠藤  實君         外務省情報調査         局長      新井 弘一君         通商産業大臣官         房審議官    深沢  亘君  委員外出席者         外務大臣官房外         務参事官    渋谷 治彦君         外務省北米局安         全保障課長   岡本 行夫君         大蔵省主計局主         計官      岡田 康彦君         運輸省航空局首         席安全監察官  大竹 勇二君         海上保安庁警備         救難部長    邊見 正和君         内閣委員会調査         室長      大澤 利貞君     ――――――――――――― 委員の異動 八月二十七日  辞任         補欠選任   宮里 松正君     佐藤 敬夫君   広瀬 秀吉君     小林 恒人君   浦井  洋君     中路 雅弘君 同日  辞任         補欠選任   佐藤 敬夫君     宮里 松正君   小林 恒人君     広瀬 秀吉君   中路 雅弘君     浦井  洋君     ――――――――――――― 八月二十六日  旧軍人軍属恩給受給資格欠格者の救済に関する  陳情書外一件  (第四〇号  )  国家機密法制定反対に関する陳情書外三件  (第四一号)  国家秘密法制定反対に関する陳情書外二十四件  (第四二号)  スパイ防止法制定に関する陳情書外八件  (第四三号)  地域改善対策に関する陳情書  (第四四号)  人事院勧告完全実施に関する陳情書外二件  (第四五号  ) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法  律案内閣提出、第百八回国会閣法第三〇号)  防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案(内  閣提出、第百八回国会閣法第三一号)      ――――◇―――――
  2. 石川要三

    石川委員長 これより会議を開きます。  第百八回国会内閣提出防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案及び防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。上原康助君。
  3. 上原康助

    上原委員 この防衛二法と防衛庁職員給与法審議もそろそろ大詰めにきたような感がするのです。そこで、きょうはできるだけこれまでの防衛庁見解あるいは政府見解について基本的な点をただしながら少しく議論をしていきたい、こう考えております。  といいますのは、最近の防衛庁のいろいろな方針であるとか、また政策であるとか、あるいは野党の委員の質問に対する答弁等をいろいろ聞いたり見たりしておりますと、こんなに変わってしまったのかと思って非常に気が重くなるときが多いですね。今さらこんなことを聞くのか、あるいはもう見解は出尽くしているのではないかという受けとめ方もあるかと思うのですが、私はもう一度、一体、国の安全保障とか防衛というのはどうあらねばいかないかということを、よく憲法の精神というか、敗戦後のスタートラインに立って吟味、検証をしないと、容易ならぬ事態が来るのじゃないかという懸念を持つ一人でありますので、そういう立場からお尋ねをしますから、ひとつ長官初め各答弁者の誠意ある御答弁を求めたいと存じます。  そこで、まず最初防衛庁長官お尋ねをしてみたいわけですが、防衛計画大綱が五十一年に策定をされて今日まで十年有半来ているわけですが、改めて我が国安全保障あるいは防衛の目指すというか、目標としているものは何なのか、いろいろこれまでの答弁が返ってくるとは思うのですが、最近のいろいろな国民懸念なり、また予算委員会や本委員会初め安保特等で指摘をされている問題等を含めて、政府防衛庁が目指している防衛のあり方というものは一体どういうことを基軸にし、何を目標にしているのか、その点からひとつお考えを聞かしていただきたいと存じます。
  4. 西廣整輝

    西廣政府委員 大臣に対するお尋ねでありますが、まず事務方からお答え申し上げます。  私どもの防衛力整備目標というのは、御承知のように大綱を常に基準として考えております。それじゃ大綱は何かと申しますと、一口に申しますと、今の東西関係、マクロ的には力の均衡というものが保たれておる、そういった中で、直ちに、少々の力の変化があることによって力によって現状を変更しようというような状況にないという国際情勢というものを踏まえて、そういう状況下において最小限平時から持つべき防衛力というものを持たなければいけないというものであります。  その最小限平時から持つべき防衛力とは何かといいますと、我が国自身が所在する東アジア地域において、力の空白になってしまうというようなことではかえって地域の安定を乱す、そういう意味日米安保体制というものを基軸にしながら、それと日本の安全というものとの間にすき間のない態勢というものを日本自身がとっておかなければいけない、そういうものであるというように考えております。
  5. 上原康助

    上原委員 そこで、最小限平時から持つべき防衛力とか、あるいは大綱基準にした防衛力整備等々、これはだれが聞いてもそういう答弁ですね。それはまたそういうお答えしか、お答えしかというか、お答えをするのもわからぬわけではないわけですが、今、東西関係を力によって変えていこうということではなくとか、日米安保体制基軸にして平和時の最小限度防衛力、大変言い得て妙なる表現、回答なんですが、ひとつ振り返っていただきたいことは、私も余り勉強している方ではないわけですが、ちょうど防衛計画大綱ができた時点昭和五十年前後、沖縄が復帰したのが四十七年ですから七二年、七〇年代後半からこの大綱策定された時点というのは、今後の日本防衛力整備はどうあるべきかということで非常に議論された一時期だったと思うのです。  振り返って、十年余り経過をして今日の計画大綱あるいはさらに中期防、またポスト中期防等、後ほど触れたいと思うのですが、とやかく言われている洋上防空から本土全般防衛態勢シーレーン防衛を含めると、これはとてつもない防衛力整備に向かっていくような気がしてならないわけですね。だからこの一%というものも非常に手かせ足かせになって、最初に一%ありきというあれで、六十二年、これは本当は六十年から取っ払われておったと見るのが当を得ていると私は思うのです。  そういう経過をたどってみますと、防衛庁長官、私はちょうど今この時期というのは、あの防衛計画大綱政府策定をしなげればいかなかったときの事態と似ているような気がしてならないわけです。我が国防衛力限界というのは一体どうなのか。憲法理念とか専守防衛とか必要最小限度防衛力整備とか大綱水準目標だ、しかし、この大綱水準といったって、限界、上限はどこかとなると、なかなかはっきりしない。だから今国民の方は、改めて一体日本防衛力整備の方向というのは、限界というのはどこまで行くのかという懸念を持っていると思うのです。そういうことをひとつぜひ念頭に置いていただきたいと思うのです。  そこで、今、防衛力整備に対する基本的な考えをお述べになったわけですが、それだけでは若干不十分と思います。そこで、一体政府防衛計画大綱をおつくりになった当時の背景、またそれをつくらなければいけなかった理由はどこにあったのか、ひとつ改めて見解を明確にしていただきたいと存じます。
  6. 西廣整輝

    西廣政府委員 大綱をつくった当時あるいはそれ以前からだと思いますが、その背景となった事情は非常にたくさんあると思います。  しばらくお時間を拝借して申し上げますと、まず第一に申し上げたいのは、六〇年代というものを通じて東西関係というものが、かつてはアメリカの圧倒的な優位というものから逐次相対的にソ連アメリカに追いつき追い越せということで、六〇年代後半に至り、さらに七〇年代ということになって、ソ連アメリカというものがほぼ力が均衡してきたという全般的な情勢があったかと思います。  もう一つ大きな状況としては、七〇年代前後というのはデタントというふうに言われております。そのデタントの実態というものをさらにつぶさに見ますと、その要因を大きく分けると二つあろうかと思います。  一つは、中ソ対立というものが六八年ごろから起きた、そういうことでソ連としてはヨーロッパ中心兵力配備、当時ヨーロッパ中心兵力配備をしておったわけですが、そのうち相当部分というものを中ソ国境に回さなければいけなかったという事情があります。事実、当時中ソ国境を含めて東アジアアジア方面には二十個師団ぐらいしかいなかったものが、わずか一年、二年足らずの間に西十数個師団まで増強されたという状況でありました。そういうことで、軍事的な大国であるソ連としてもそう急速に増強ということはできませんので、ヨーロッパの方をある程度手を抜かざるを得なかったという状況にあったと思います。  たまたま当時西独の方が、長年続いておったキリスト教民主同盟ですか、それから社民党にかわった、ブラント政権というものができまして東方政策というものをとられたわけです。そういったことで、ヨーロッパにおいては東西間の緊張緩和といいますか、かなり接近が行われた、そういうことでヨーロッパではデタントというように言われておったわけであります。そういう状況が一方にありました。  もう一つは、当時長年続いておったベトナム戦争というものが泥沼状態になっておって、アメリカとしては、その戦闘そのものもさることながら、アメリカ国内状況からその種の戦争を長く続ける状況にもなかった、国民の空気その他から。そういう意味で、東西の話し合いといいますか、米ソがある程度話し合い、緊張緩和のムードに進まなければいけないといういわゆるデタントという状況があったわけであります。  ただ、デタントと言いながら、今申し上げたようにそれは中心的にはヨーロッパデタントあるいは米ソ間のデタントであって、東アジア方面においてはソ連軍事力があのときほど短期間に増大した時期はなかった、つまり我が国周辺軍事力というものが急速に増強されて、我が国自身は非常に危機感を持ったわけですが、そういう状況が一方にありました。  もう一点、国際的な点で申し上げますと、そういったベトナム戦争、そういったものの反省から、六九年だったと思いますが、ニクソンドクトリンというものが出されまして、いわゆる自助努力をしない国に対してアメリカとしてはそういうものは支援できない、要するにかつてはアメリカは余りにも強大だったために、アメリカ同盟さえ結んでおればよかったということでありますけれども、その国自身、独立なりみずからの安全のために努力しない国に対してはアメリカとしては協力できないというようないわばニクソンドクトリンというものが当時発表されたということで、日本自身に対しても自助努力というものが強く要請されておった時代にあると思います。  以上が国際的な環境であったと思います。  一方、我が国の方の状況から申しますと、長年防衛力整備というものについては五カ年計画――一次防は三カ年でしたが、一次防、二次防、三次防という形で五カ年計画防衛力整備をいたしておりました。五カ年計画制度のよいところは、五カ年間の事業というものがかなり詳しく記述をされ、決められる、また、その五カ年の事業に伴って必要な防衛力整備のための経費というものがある程度積算可能である、そういう点では精緻なものができるという利点はあります。しかしながら、防衛力整備というのは非常に時間のかかるものでありますので、五カ年ごと一つの固定した明確な目標を定めるということは困難であります。したがって、三次防以降、五カ年計画目標としては通常兵器による局地戦以下の事態に最も有効に対応できる態勢をつくるんだという大目標を掲げて、そのための一里塚というような格好でこの五カ年計画があるんだというように三次防、四次防は規定されておったと思います。  そういうことで、防衛力整備そのもののわかりやすい目標というものが五カ年計画ではどうも示されないのではないか、要するに買い物計画中心になって、防衛力整備で何をしようかということがどうも明白にならないのではないかという御意見が議会等でも多々出てまいったと思います。そういう点におこたえをするために、やはり現在やっている防衛力整備の一応の目標というものを示す努力をすべきではなかろうかということが「防衛計画大綱」をつくる非常に大きな動機になっておったと思います。  さらに申しますと、当時第一次石油ショックの後で経済財政状況というものが非常に見通し困難な状況になっておりました。そういう点で、従来のような五カ年計画、きちっと財政的な裏づけを持った計画をつくる状況になかったということもございます。そういう点で、もう少し目標を示し、かつ、整備そのもの経費計画その他については年度年度でやらざるを得ないのではないかということがありまして、五カ年計画という方式をそのまま踏襲することは非常に困難な状況にもあったということもまた一つ事情であろうと思います。  さらに、今度は自衛隊自身の問題について申し上げますと、先ほど申したように通常兵器による局地戦以下の事態に最も有効に対応できる状況ということになると、かなり大きな侵略事態というものが想定されます。それは、現在の持っておる防衛力の実力に比べるとかなり高い目標だった、としますと、それに到達するには相当な時間がかかるものですから、整備優先度というようなことになりますと、時間のかかる船とか飛行機とかいうものについてはある程度力を注ぐにしても、他の分野、後方支援であるとかあるいは弾薬の備蓄であるとか、そういったものについては必ずしもそれと並行した形で進めなくても、短時間でできるんだから後からやってもいいではないかというようなことで、防衛力整備そのものの内容に跛行性があった、でこぼこがあったということもあろうと思います。  しかしながら、先ほど申したようにニクソンドクトリンというものが出て、それぞれの国がそれなりの力でみずからの安全のためにやらなければいけないということになりますと、レベルは低いなりにも、ある程度まとまったそれなり防衛能力というものを発揮できるものにしなければいけないではないかという反省なり要望というものがあったと思います。そういったものを満たすために、やはり今までのような局地戦以下の事態に最も有効に対応できるというようなことではなくて、より低い水準であってもそれなりにまとまった一つ目標というものを設定することが、防衛力整備のためにも、我が国防衛のためにも、また当時の国民なりあるいは国会等における御要望にもこたえる道であろうということで大綱というものがつくられたものだというふうに私は考えております。
  7. 上原康助

    上原委員 あなたがおっしゃっているのは半分は当たっているのか、よくわからないんだが、そういうことを僕は聞いているわけじゃないのですよ、局長。あなた、あのころ何しておられたのですか、失礼ですが。簡単に答えてください。現在は基盤的防衛力構想というのは生きているのですか、死んでいるのですか。
  8. 西廣整輝

    西廣政府委員 基盤的防衛力構想というのは、大綱というのは閣議決定としてつくられたものですが、基盤的防衛力構想はその前提となるものとして防衛庁として御提案をしたといいますか、防衛庁として一応まとめたものであります。  当時、私は防衛課長をいたしておりました。
  9. 上原康助

    上原委員 そうしますと、防衛庁として提案したものなら、現在も基盤的防衛力構想は踏襲していると見ていいのかということと、もう一点、あなたの今の御答弁で大変重要だと思うのは、防衛計画大綱あるいは中期防を含めて、四次防までよりもより低い、局地戦以下に対応できるより低い水準防衛力整備目標にする必要があったということを言いました。これは話がちょっと飛躍しますが、あなたがおっしゃったから聞くわけです。大綱も今の中期防というのも、当時の一次防から四次防までよりもより低い水準防衛力整備目標にしているという認識ですか。この二点、答えてください。
  10. 西廣整輝

    西廣政府委員 おっしゃるとおりでありまして、三次防、四次防までの目標というのは通常兵器による局地戦以下の事態に最も有効に対応できるということを目標にしておりまして、四次防なり三次防自身でそれに対応できるものができるというふうに思っていなくて、目標そのものはまだまだ高いという考え方でつくられておったものであります。
  11. 上原康助

    上原委員 これは見解の違いというよりも、重要な認識の問題だと思うのですね。確かに所要防衛力構想という前提で一次防から四次防までは概念としては立てられておった。そういう防衛戦略というか防衛対処論からすると、それはあなたがおっしゃるように、基盤的防衛力構想というのは、後ほど少し具体的に触れますが、必要最小限度奇襲対処というような概念を取り入れたものだから、所要対処論でないから、それは防衛論としては低い水準目標としているということになるかもしらぬ。中身は違うでしょう、政策的中身というのは。どうしてそう論議をすりかえるのですか。  そこで、私の開かんとするところは、これは防衛庁長官もぜひ御理解を、御理解というか聞いていただきたいわけですが、要するに七六年の十月に防衛計画大綱を決定したことは、それまで第四次にわたる防衛力整備というものを進めてきたわけですが、さっき言いましたように、国会でも国民の方も、一体日本防衛力整備というものはどこまで進んでいくのか、限界はあるのか、平和憲法とかあるいは専守防衛とかいろいろ言っているけれども、それは定性概念というか、あるいは一つの定義的な面では言われているが、装備の面あるいは防衛費の面からとてつもない防衛力整備になるんではないかという懸念が非常に強かったわけですよね。  したがって、政府がこの基盤的防衛力構想という新しい考え方を取り入れてこの防衛計画大綱策定せざるを得なかったことは、四つ理由があるんですね。四つ理由を挙げている。このことは昭和五十二年の防白に明白にされているのですよ、「基盤的防衛力構想採用背景」ということで。これは、一つは「国民的合意を確立するための努力」、これが第一点ですね。さっきから言いますように、憲法であるとかあるいは専守防衛であるとか、非核原則、これなんかももうまさに形骸化されていると私たち見ているわけです。名存実亡ですね、まさに非核原則持ち込み云々というものは。これも後で時間があれば触れますがね。「国民的合意を確立するための努力」、それと「自衛隊現状に対する反省」ですね。  しかもこの「国民的合意」の面では、「わが国の防衛力はどこまで大きくなるのか、際限のない増強を目指しているのではないか」といった声が生じた。「今回の「防衛計画大綱」は、このような声にも応えて、陸上、海上、航空各自衛隊ごとに具体的な目標を明示しようとしたものである。」これが別表だったと思うのですね。「自衛隊現状に対する反省」ということで、今もありましたが、自衛隊内部にもいろいろ反省すべき点が生じてきた、これが第二点目ですね。  そして第三点目に、「防衛力整備上の国内的諸条件への配慮」というものが明確にされている。ここはある面ではこの大綱をつくらざるを得なかったことのポイントにもなっておったかと思うのですが、「第三点は、防衛力整備していく上での国内的な制約なり条件に対して、諸種の配慮が行われたことである。」「その一は、経済財政上の制約である。」当時、確かに第二次オイルショックの後で、我が国経済というものがそろそろ高度から低成長へ移行する、また国際的にもオイルショックというのがあって、経済の見通しというものが幾分緩やかであるというようなことで、こういう設定をしているわけですね。そして、第四点目が「国際情勢に対する見方」なんですね。  この四つ背景にして、しかも量的には概成されたものになっている。第四次防までの防衛力整備において陸海空とも量的には概成されたようになっている。今後は後方支援質的改善を図るとというのが基盤的防衛力整備一つ基本理念概念となり、そしてそれをやっていくための目標として別表をつくり、その別表水準に持っていくための財政措置というものは国民総生産の一%以内にとどめるということ、まさに三位一体の形でこの防衛計画大綱ができたというのが私たち認識なんですね。  だから、今日振り返ってみて、この概念というか、あるいは方針というのか、そして政策を含めて、全くなし崩しにされてきたというのが今日の事態だと私たちは思っているのです。このことについて大臣はどうお考えなのか、ひとつここいらで御見解を聞きましょう。
  12. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 今おっしゃったとおり、その当時、大綱水準に達成している、概成しているというのは、そのときの認識で正しいと思いますよ。ただ問題は、大綱にも書いてあるように、軍事技術の進歩、そういうものによって質を高めていかなければならぬ、こういうことでございますから、しかも枠としては「防衛計画大綱」、それと一体である別表ということでございますので、そういう意味合いではいささかも逸脱をしていない、こういう認識でございます。
  13. 上原康助

    上原委員 逸脱をしているか、していないかは、これはそれぞれの受けとめ方、とらえ方、判断の仕方があると思うのですが、私たちは、これは後でもっと具体的に触れますけれども、明らかに逸脱をしているものと思う。  そうしますと、科学技術の進歩とかあるいは近隣諸国の防衛力の質的向上云々ということを言うわけですが、これも端的にお尋ねしておきますが、今のような言い方をいたしますと、じゃ量的には概成されたものと見ていい。しかし、量も実際問題としてどんどんふえていますね。これも後で具体的に触れましょう。量的にも概成されたものじゃなくて、質的には防衛力整備というのは限界があるのですか、ないのですか。それはまず最初にきちっと答えてください。
  14. 西廣整輝

    西廣政府委員 大網策定のころ量的に概成されたものであるという言い方をされていると思いますが、その点からまずお答え申し上げます。  当時の状況でいいますと、いわゆる大綱別表で定めてあるような数量でいくと、陸の十八万、十三個師団体制というものは当時もう既にできておった。それから海上自衛隊であれば、大綱は約六十隻という艦艇数を言っておりますが、大綱策定当時の艦艇の数というのは五十八隻まであったと思います。――失礼しました。対潜水上艦艇、五十一年度時点で六十隻がございました。それから航空機でいいますと、航空自衛隊の航空機の大綱目標というものは四百三十機でございますけれども、当時の作戦用航空機の保有機数というのは五百機を持っておったということでありまして、当時の数量としてはかなりのものにいっておる、中には、大綱目標よりも当時の保有航空機の数の方が多かったというようなものもあるわけでございます。  そこで、質との関係でございますが、大綱策定したときそのものにおいても、質というものを当然見込んで数を決めた。例えば当時、航空自衛隊の作戦用航空機五百機と申しましたが、既に次のFSXというものを想定をいたしておった。その段階になった場合に、質的な問題も考慮して四百三十機という当時現有しておったよりもさらに、低い数字を目標として定めたということでありますので、質と量というものは当然相関関係にあるということは事実であります。  そこで、以後質的にもさらに向上されているものがございますが、仮に周辺の諸国の軍備というものが質的に全く固定してしまっておる、あるいは量的にも固定してしまっておるということであれば、大綱水準というものはそのまま質的にも何ら変更なくいけるわけでございますが、やはり防衛力というものは相対的なものであることは否めない。その相対的である範囲というものを我々は通常兵器による限定的な事態、しかも小規模な事態という事態で限定してとらえておりますが、その範囲内でも質的な変化なり量的な変化というものはやはり行われるわけでありますから、全般的な軍事技術の動向というものに追随をしてある程度の装備の質的な向上というものは図られなければいけない。したがって、物理的にここが限界であるということは質については申し上げられませんが、国際的な水準というものに追随できる、要するに防衛可能な範囲内で質というものは上がっていかざるを得ないというように考えておる次第であります。
  15. 上原康助

    上原委員 そうしますと、国際的水準とか防衛可能な防衛力整備ということになりますと、これは防衛庁あるいは政府の主管ですね。質との問題についてはもう少し聞きます。  そこで、今、防衛計画大綱策定をしたときを逸脱をしていない、あるいは量的には概成をされておるということには異存はない、だが、量的にはむしろ減っているんだ、少なくなっているんだ。これは確かに四次防段階と大綱完成目標時の表を見るとそういう面はありますね、航空自衛隊にしても。ただ、海上自衛隊の場合は、DDG、DDH、そういうものの護衛艦のいわゆる不足というのは指摘はしております。ただはっきりしているのは、陸上自衛隊の十八万人体制だけなんです。だから、この間も長官がおっしゃっておったように、この計画大綱というのは実によくできている。伸縮自在、優柔不断、どこまでも勝手に拡大解釈をできるような内容なので、これは防衛庁にとってはとても便利のいい表であり、概念だと思うのですね。  そこに問題があるわけで、そういう立場で防衛力整備を進めてきておるという言い方なわけですが、防衛力整備をするということは、やはり脅威の対象がなければならないわけですね。脅威の対象がないと軍事力整備する必要はないわけで、今あなたが言うように国際的水準に見合った――脅威の対象はどこなんですか。また、国際的水準ということになりますと、どこを対象にしてどこの国の水準を対象にするのかということ、ここに非常に矛盾点があるわけですよ。  必要最小限度の自衛力である、憲法九条、憲法前文からして当然大幅な制約我が国防衛力整備においては受けているはずなのであります。だが、それが国際的水準ということになると、いうところのICBM、B52とか核兵器、これは持てるが政策上持てないんだという言い方。そういった核装備ができないということが一つ制約であり、歯どめであると我々は認識しないわけですね。それは政府の勝手な言い方なんです。憲法概念とか専守防衛というのは先手必勝のあれじゃないわけでしょう。脅威の対象は何を見ているんですか。国際的水準防衛力整備、質というのは何を基準にして日本がそれをやらなければいかぬということになるわけですか。それを明確にお答えください。
  16. 西廣整輝

    西廣政府委員 我が国が通常から、平時から仮想敵国を持っていないということはたびたび申し上げておるとおりでありますが、同時にまた、我が国が存在している条件というものはまた動かしがたいものでありますので、その周辺にある国、それらの国の軍備の動向なり、その国が何か意図が変わった場合にやり得る能力というものについては我々としては常に着目しておるところであります。  私どもは、かねがね、脅威というのはその持っておる軍事力そのものの事実と意図というものが結びついて初めて脅威になるというように考えております。その意味で、我が国に対して現在ただいま侵略の意図を持っている国というものはないと思いますので、私は顕在化した脅威はないと思います。  潜在的脅威、いわゆる軍事力そのものについて言えば、相当な力を持っている国が我が国周辺にはある、そういったものについては我々としては常に着目しておかなくてはいけない。つまり、そういう潜在的能力、軍事力そのものについては、それをつくるのに非常に時間がかかります。しかしながら、意図というのは比較的変わりやすいということを考えますと、我々としては、意図と能力というものが結びついた脅威が顕在化してから防衛力整備をしたのでは間に合わない。やはり潜在的な能力である軍事能力そのものに着目して、そういったものが仮に意図を持った場合に、我が国に対してどの程度のことがなし得るかということを前提にして防衛力というものを考えざるを得ないというように考えております。
  17. 上原康助

    上原委員 これも今までしばしば政府が言ってきたことですね。もちろん、能力はあっても意図がないと、それは侵略にはならぬ、意図と能力は別だ。また、我が国を侵略しようとする意図のある国はないと思う、これも全くばかげた言い分ですね。それなら必要ないじゃないですか。しかし、そういう能力を持っているのは周辺諸国にある。だれがどう見たって、ソ連を対象にして今日本防衛力をやろうとしているのは、これは常識じゃないですか。西側陣営の一員という立場でやっているというのは何ですか、それは。防衛局長、そういうごまかしや詭弁はもう通りませんよ。だから防衛論議が余計おかしくなる。  しかも、今、政府が進めようとすることは明らかに基盤的防衛力構想を、無視したという言葉がいいでしょうね、無視したものであり、大綱を逸脱しているし、中期防あるいは中期防以降の今構想されていること等からしますと、やはり際限ない防衛力整備という懸念をより我々は抱かざるを得ません。  対処すべき侵略の事態に対しても、いわゆる基盤構想あるいは防衛大綱の中ででき得るのは「限定的かつ小規模な侵略」、これは限定的な侵略の中でも小規模なものを指す、こう皆さん自体が防白で明白にしたわけですよ。「限定的かつ小規模な侵略」のうちでも限定侵略というものは小規模なものなんだ、そう言いながらどんどん新たな装備を、近隣諸国の防衛力の質の向上とか、あるいは科学技術の進歩というような抽象的概念を取り入れて、今どんどん軍拡路線を歩もうとしている。これはやはり我々から見ると、憲法概念憲法理念専守防衛防衛計画大綱、その精神は尊重すると言ってみたって、失礼な言い方かもしれませんが、それは全くの野方図な防衛力整備になっているという点を改めて指摘をしておきたいと思うのですね。  そこで、ではもう少し言葉を変えてお尋ねをしてみたいわけですが、防衛計画大綱の言う、今私がちょっと触れました直接侵略事態についてなんですが、大綱専守防衛、今私が言う専守防衛というのは、あくまでもたたかれればたたくということでしょう。国土の防衛でしょう、一口で言うと。領海、領空、国土でしょう。もちろんそれは公海上のことも、私も全くないとは否定はしませんが、しかし主体となるのはあくまでも国土であり、領空であり、領海であり、国民の生命財産の安全を確保することだと思うのですね。矛盾点があるということ。  そこで、真に専守防衛の枠組みの中にあるのかということを私たち懸念を持っておるわけですが、明確にしていただきたいことは、この直接侵略事態について、「限定的かつ小規模な侵略」とは、今私が言ったように小規模な中でも限定的小規模のものだということ。限定的かつ小規模な侵略については原則として独力で対処するということを言っているわけですが、この場合の侵略脅威の相手の規模、それから態様はどういう脅威なのか、必要な投入兵力の量はどういうものなのか、対処行動のシナリオ、作戦要領はどうなっているのか、こういう面をひとつお聞かせください。
  18. 西廣整輝

    西廣政府委員 「限定的かつ小規模」な事態ということは、まさに先生のおっしゃるとおり、限定的な事態の中でもさらに小規模なものという意味で我々は考えております。通常、限定戦と申しますと、核全面戦、核を含んだ全面戦に対して限定戦と言われますから、単に限定戦争あるいは限定的な侵略ということになると、かなり大きな規模のものまで入ってくるというふうに私どもは考えております。そこで大綱では「限定的かつ小規模」という言い方をしたわけであります。  その「限定的かつ小規模」の意味合いをもう少しかみ砕いて申しますと、私は、限定的と申しますのはまず手段において核を使わない、通常兵器のものであるという意味で限定戦であろうと思います。さらに言えば、その限定的というのは時間的にもあるいは地域的にも限定されたものでなくてはいかぬだろうというように考えております。例えば、仮に限定戦であったにしても、非核戦であったにしても、グローバルな戦争というものがあるかもしれません。そうではなくて、我が国に対する侵略というように非常に世界的に見れば局地的なものであるべきであろうと思います。さらに、時間的な問題から考えれば、私どもとしては、二年も三年もというようにかつての世界大戦のように長期間にわたって戦うということではなくて、やはりアメリカ、日米安保の存在というものを考えて、そういったものが有効に働くまでの間少なくとも日本としては独力で戦える態勢を持ちたいということで、時間的にも限定されたものであろう。そういった意味で小規模な事態というように申し上げているわけでございます。  そこで、今の先生のお尋ねは、具体的に限定・小規模事態というのはどのくらいのもの、例えば何個師団がどこから来るかというお話であります。この点については、先ほど申し上げたように、我が国としては特定の国を、少なくとも公の場で、ある国を挙げて申すというのはいかがなものであろうかということで答弁を差し控えておるわけでございますが、先生のお尋ねでありますので、一つの例示として周辺の国を挙げさせていただきますと、例えばソ連という国がございます。  御承知のように、ソ連はウラル以東に五十数個師団の兵力を持っている。戦闘機で言えば二千数百機持っている。艦艇で言えば二百万トン近いものを持っております。しかし、そういったものがすべて日本に指向するということを考えるのは、これは決して限定的小規模事態ではないと我々は考えております。しからば、仮にソ連が限定的・小規模事態考えだとすれば、ソ連東アジアに配備をしておる兵力というものが、それはそれなりのそれぞれの目的を持っていると思います。例えば中ソ国境に配備されている部隊は中国というものを意識して配備された部隊であるというように、固定したものじゃないにしても、一応固定して考える。あるいはSLBMとかその他大陸間弾道弾等はアメリカを意識した部隊であろうか。あるいはみずからの防空のための部隊というものもあろうと思います。  そういうことを考えると、そういった現配置を前提として直ちに日本に指向し得るものということになると、例えば師団で言えば三個師団か四個師団程度のものになってしまうのではないか。それに機動的に運用できる例えば空挺師団であるとか空中機動旅団であるとかそういったものがプラスアルファされる程度のものが恐らく小規模限定という事態では考えられるマキシマムではなかろうかというような思考をして、我々としては周辺の状況を見ながら小規模・限定対処を考えるものであるというようにお答え申し上げたいと思います。
  19. 上原康助

    上原委員 ですから、ソ連を対象にした防衛力整備ということを仮に想定をして、近隣諸国の防衛力の近代化あるいは水準というものをやるというところにそもそもの矛盾があるわけです。それは何遍も言うように、憲法専守防衛、諸制約の枠を離れる概念というか目標を皆さん自体が想定をしてやろうというところにこういったいろいろな矛盾点というものが出てきて、どんどんエスカレートする。この基本をやはり国会なりシビリアンコントロールで、そういった全体でもう一度歯どめをかけるということでないと、これは防衛論争の舞台というのは狭められませんね。共通の土台はないですね、こういうような状態では。その点を申し上げておきたいと思います。  同時に、そうしますと我が国への直接侵略あるいはそういった小規模・限定戦争という有事には独力でそれは対処していくんだ。それは一つ政策というか概念というか、そういう面で僕はあっていいと思いますよ、防衛論としては。だが、実際問題として、これも端的にお尋ねしておきますが、米ソ間の衝突ということがない限りにおいて我が国の有事あるいは防衛出動ということが考えられるのかどうか、そういうことも想定をして今のいろんな防衛力整備をやろうとしているのかどうか、この点もひとつ明らかにしてください。
  20. 西廣整輝

    西廣政府委員 まず前段で、ソ連前提にした防衛力整備というのはおかしいのじゃないかというお話でございました。私ども、ソ連ということを具体的に申し上げておるわけじゃございませんが、いずれにしましても、自衛権というのは国家としての本質的に持っている権利だと私どもは思っております。その自衛権というのは、例えばAという国が攻めてきたら守るけれども、Bという国が攻めてきたら守らなくてもいいとか、そういうものではない。相手が大きかろうが小さかろうが、どういうものであろうが日本を不正に侵害するものからは守るというのが自衛権であろうというように私どもは考えております。  それから、次の問題でございますが、日本に対する侵略というものは米ソ戦というものを前提にしない限りないではないかというお話でございますが、私どもは必ずしもそう考えておりません。例えばソ連なりアメリカなりがやむを得ず戦争をしなくてはいかぬ、あるいは自分から戦争をしかけたいと思うこともあるかもしれませんが、そういう際に、ソ連にとってはアメリカが、アメリカにとってはソ連が最も手ごわい相手、今の現在の戦略核戦力というようなことまで考えますと、これはお互いに勝つことのできない相手、共倒れになってしまう相手ということになろうと思いますから、最も戦争したくない相手ではなかろうかと思います。そういう点、それ以外の国の方がより戦争しやすい相手と考えるのが常識的ではなかろうかというように考えております。したがって、我々としては、日本に対する侵略というものが米ソ戦というものが前提にあって初めて起きるというようには考えておりません。
  21. 上原康助

    上原委員 それはもちろん国際情勢ですから断定はできませんけれども、有事というかあるいは緊張状態が起こるとすると、米ソの対立というかそういう状態ということがより密接なかかわりがあるんじゃないのか、それを聞いているわけですよ。といいますのは、それを想定をして皆さんはこれまでも防衛力整備を進めてきたし、西側陣営の一員あるいは同盟、日米同盟、軍事同盟としての有事態勢、日米防衛協力、そういう面からして想定して進めているということはこれは常識じゃないですか。それを私は指摘をしながら言っているわけです。  そこで、次に進みたいと思うのですが、中期防衛力整備計画と、防衛庁防衛行革とかもっともらしい命題というか大義名分をつけてやっている防衛改革委員会研究というのは一体どうなっているのか。これは大綱とはどういう関係にあるのか。さらに防衛改革委員会のもとに設置をされている洋上防空体制研究会及び陸上防衛態勢研究会はどういうことを研究をしているのか、また、その研究成果というものを中期防衛力整備計画の中にどう反映をさせようとしているのか、そういう関係等についてお答えをいただきたいと存じます。
  22. 依田智治

    ○依田政府委員 お答えいたします。  先生御指摘のように、現在防衛庁におきましては、防衛改革委員会を設けまして、防衛力整備、運用の合理化、効率化等を図る等の検討を行っているわけでございます。  これは、昭和六十年九月に閣議決定されました中期防衛力整備計画におきまして、この中で防衛力整備、運用の両面にわたる効率化、合理化の徹底を図るということが書いてあるわけでございますが、こういう趣旨から業務運営や作戦機能面等についてみずからの手で厳しく点検するということで設置したものでございます。  当初は、六十年十月に業務・運営自主監査委員会というものを設けまして、防衛庁の業務運営全般にわたりまして精力的に点検を行ってきたわけでございますが、さらに六十一年の五月にこれを発展的に解消しまして、我が国防衛環境、統合運用の重要性等十分考慮しまして、防衛計画大綱の総枠の中で、もちろんこの総枠の中でございますが、総枠の中で自由な発想に立って創意工夫を凝らし、我が国防衛態勢全般にわたって検討するということで防衛改革委員会を設けたわけでございます。  現在この防衛改革委員会のもとには、業務のいろいる細部について点検する、これは三十二項目にわたって点検し、もう既に中間発表をしたわけでございますが、業務監査小委員会、それから洋上防空体制研究会、陸上防衛態勢研究会、自衛官人材育成・確保研究会、この四つを設けまして、それぞれ検討を行っておるという状況でございまして、これらはいずれも中期防の中における、先ほど申しましたような防衛力整備、運用の両面にわたる効率化、合理化の徹底を図るというこの計画の一環として行っているものでございます。
  23. 西廣整輝

    西廣政府委員 ただいま防衛改革委員会の全般について官房長からお答え申し上げたところでありますが、そのうち洋上防空体制研究会と陸上防衛態勢研究会について若干補足して申し上げたいと思います。  御承知のように、防衛改革委員会は、基本的なねらいとしては行政の簡素化、そういったことも中心課題に置いて研究いたしておるわけでございますが、行政事務と違いまして、防衛力につきましては単に合理化、簡素化だけでは済まない、そのために防衛力そのものが損なわれてはいけないという問題もございますので、そういった防衛力そのもの、防衛能力そのものに関連するような問題については、別途洋上防空体制研究会なりあるいは陸上防衛態勢研究会ということで研究会をつくっておるわけでございます。  その一つ洋上防空につきましては、御承知のように中期防衛力整備計画閣議決定されました中期防衛力整備計画の中で、洋上防空体制のあり方について研究をする、あるいは洋上防空体制のあり方と関連をして艦艇搭載のミサイルの近代化について研究をするといったような課題が与えられ、かつまた経費的な枠組み等も用意されておりますので、そういった問題も含めて洋上防空体制研究会では研究をし、なおかつ中期防衛力整備計画で掲上されているものについては逐次それを検討結果に従って処理をし、予算要求等をお願いして御審議をいただくという段取りにしたいというように考えておるわけでございます。  一方、陸上防衛態勢研究会の方は、合理化その他となりますと最も人員等多く抱えておりますのは陸上自衛隊でございます。陸上自衛隊そのもののあり方というものを十分抜本的に検討いたしませんと、単に人員の合理化とかいった面だけでこれをいじるということは大変危険なことでございますので、我々としては陸上防衛態勢というもの、これは何十年続いてきた十八万、十三個師団体制というものでございますが、こういったものをこの際一度抜本的に勉強し直すことが必要ではなかろうかということで、今勉強をしている最中でございます。
  24. 上原康助

    上原委員 洋上防空についてはこれから聞きますからね。  そこで、粟原防衛庁長官に今の関連等を確かめておきたいわけです。  言うところの防衛行革というか防衛改革という中で、前加藤長官時代に、要するに自衛隊の効率化あるいは合理化という面で主に基幹部隊の再編統合を図りたい、そのための研究を進めていくのだ、そして、特に陸上自衛隊の統全部隊を北海道に新たにというか配置をしたい、これから議論しようとする北方重視、ポスト四次防というか、あるいは中期防の後期で位置づけようとする構想と連動していると見るわけですが、そういうことも含めて今の陸上防衛態勢研究会あるいは洋上防空体制研究会等々を進めているのかどうか、明確にしていただきたいと存じます。
  25. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 これは今までの経緯がございますので、政府委員から答弁させます。
  26. 西廣整輝

    西廣政府委員 陸上自衛隊の体制につきましては、先ほどちょっと触れましたように十八万、十三個師団体制ということで、その師団編成というものは、第七師団、いわゆる機甲師団を除きましてはほぼ一律編成というものをとって長年やってまいったわけであります。しかしながら、その間、陸上の体制にとってそういう一律編成が果たしていいのだろうかという御疑問が外部からも参っておりますし、私ども自身の中にもいろいろ出てきております。さらには、十三個師団そのものを見直すべきではないかという御意見もいただいております。  そういったことも含めまして、中期計画におきましては、その点もう少しバラエティーに富んだ師団編成があってもいいではないかということで、例えば、在道師団については戦車とか重車両といったものをより重視した師団にし、その分だけ本州にあります師団については軽装備のものに変えていくというようなことで、師団の種類を幾つかに変えていくという計画に中期計画そのものがなっております。  しかし、それはまだ現在の装備の持ち方を変えるという一つの試みでありますが、さらに言いますと、例えば、北海道の師団であれば十分な全般防空の支援が得られないのではなかろうか、そういう意味では、防空の傘というものはある程度自分自身で、本土にある師団に比べればよ力重視しなければいけないのではなかろうかとか、あるいはある師団は、ある地域、沿岸、特に他国から着上陸侵攻を受けやすい沿岸の防備を分担をしておるということであれば、そのような沿岸防備に見合った装備というものがあってもおかしくはないのではないか、そういったいろいろな要請なり疑問なりがあるわけでございます。  そういったものを含めて、中期五カ年計画で既に計画されておるものはそれなりに実施していくと同時に、今後そういった面についてどうあるべきかということについて部内としてもう少し研究してみたいということで研究会を進めておるものでございます。
  27. 上原康助

    上原委員 その結論はいつごろ出るのですか。そうしますと、要するに陸上自衛隊、あるいは海空含めての基幹の統合編成というか再編統合というか、そういうことも一応研究対象になっている、こう理解していいのかどうか。
  28. 西廣整輝

    西廣政府委員 例えば洋上研究のように、先ほど申しました中期計画としてもう既に閣議決定で課題として与えられておる、研究をし、かつ必要な措置をとれというように定められておるものにつきましては、期間内に結論を得、結論の内容によって期間内に着手をするというものがあろうかと思います。それ以外のものにつきましては、今のところこれをすぐ実施に移すということではございませんので、研究を重ねて、六十六年度以降の防衛力整備についてはまだどういうやり方でするか、五カ年計画をつくるのかどうか等も含めてこれから政府内で御決定になることになると思いますが、それを受けて、その際にそういった研究の成果を御披露して次の防衛力整備のときの参考にしていただくということになろうかと思います。
  29. 上原康助

    上原委員 もう一点、この法案とも関係するわけですが、予備自衛官を未経験者、いわゆる自衛官経験者以外の民間人からの起用ということも研究対象になっている、またそういう方針を持っているという報道なり指摘があります。そうなると、これは当然法律改正、今の自衛隊法というものを整備していかなければいけないのです。それが一つ出てくると思うのです。それはどういうお考えなのか。さらに、予備自衛官を大幅に増員しようという考え防衛庁が持っているその理由は何なのか。この二点も明らかにしておいていただきたいと思います。
  30. 松本宗和

    ○松本政府委員 お答えいたします。  予備自衛官につきまして、予備自衛官の現在適用されておる業務の拡大といいますか、これを防衛改革委員会で検討するとか、ただいま防衛局長からも御説明がありましたけれども、いろいろな角度から現在検討されている中にその予備自衛官の問題も含まれております。  そういうことで、予備自衛官の適用業務を拡大してまいりましてその予備自衛官の数が膨らんでくるということになってまいりますと、現在のように自衛官を経験した者から予備自衛官を採用していくというような法律制度のもとでは所要の員数を採用し切れないのではないかという問題が出てくるわけでございます。そういうところから、一つの発想といたしまして自衛官を経験していない一般の方から予備自衛官として採用していくという方法もあるのではないかという考えが浮かんできたわけです。  この点につきましては、予備自衛官の適用業務の拡大の問題との関連で、これの結論が出てまいりませんと、どの程度の数が必要になるかというようなこととかあるいはどのような業務に適用されていくかというようなことが決まってまいりませんので、具体的な中身について検討してまいるわけにはいかないわけでございますけれども、少なくとも、例えば応募資格をどうするとか訓練招集をどうする、あるいは任用期間はどうだとか、また、自衛官を経験していない人から採るわけですから階級をどうするのだとかいうようなことについては考えていかなければならないだろうということで、項目的な整理はやっているという段階でございます。  ただ、ただいまも申し上げましたように、その根っこになります予備自衛官の適用業務の拡大あるいは予備自衛官をどの程度までふやしていくのかという問題につきましては現在まだ検討中でございますので、ただいま申し上げましたいわゆる自衛官未経験者から採用していく具体的な方法について、問題については検討中ということでございます。
  31. 上原康助

    上原委員 それは検討しても恐らく不可能でしょうね。経験者だって渋っているのを、一般の自衛官未経験者が予備自衛官に応募をして訓練を受けたり、失礼な言い方だが、場合によっては弾よけにされるとか、それに賛成する人はいないと思いますよ。人事局長、それはやめた方がいいよ。これは聞いただけのことですから、私、やれと言っているわけじゃないですよ。  そこで次に、中期防洋上防空のことについてしばしば議論されているわけですが、もちろんこれは、海上自衛隊というのがあるわけだから、洋上防空とか洋上体制確保というのは自衛隊発足当初からあったといえばあったということになろうかと思うのです。しかし、これが政策として具体化をされようとしてきたのは中期防衛力整備計画に初めてですね。これは計画大綱になかった。だから私たちは、中期防大綱を逸脱しているということを言っているわけです。しかも、OTHレーダーであるとかあるいは早期警戒機、AWACSAWACSという場合も、今装備をしようとしているE2Cに限るのか、また近代水準ということになるとこれはE3Aあるいはそれ以上のものとどんどんエスカレートしていくと思うのですね。そういった高価な買い物を次から次とやる。  防衛局長、あなたは大変失礼な答弁もしているのですよ。質において防衛力整備は青天井だ、これはこの本委員会でやっていますね。そういった、まさに青天井で、どこまでいっても青天井だ、これは防衛力整備概念としても絶対それはあってはいかぬと私は思うし、ましてや制約を受けるという場合はそういう考え方に立った質的整備というものもできないと思うのですが、そういう面からしても、この洋上防空確保という面でのいわゆるOTHレーダー、早期警戒機、それから要撃機、F1についても時間があればお尋ねしたい。F1というのも大変問題ですね。それをどういう位置づけをしているのか。当初は支援戦闘ということであったのが、まさにこれは新たな戦闘爆撃機でしょう。これもこの洋上防空と関係していないとは言えませんね。FSX、要するに次期支援戦闘機、次期戦闘爆撃機ですよ。新戦闘爆撃機なんだ、これは。しかも、これはかつての防衛庁の高官であった人が、FSXは新型戦闘機じゃないのか、こういう、非常に疑問を提示をしている面もあるわけです。これは時間があればやります。  洋上防空の面からいきましょう。こういったエイジス護衛艦ですね。巨額の装備をどんどんやろうとしているところに大変疑問があるし、歯どめがないのじゃないかということです。  そこで、この洋上防空体制確保ということとアメリカの海洋戦略に連動して、にわかに――にわかにと言うとそうでないとおっしゃるかもしれませんが、中期防の中でこれが大変強調されて前面に突出してきた背景理由があると私は見ているわけですが、今指摘をしたOTHあるいは早期警戒機、その機種ですね。また、要撃機F15も中期防ではこれも増機しましたね。これも中期防段階で機数はふえている。同時に、エイジス艦は六十三年度一隻というのだが、将来八八体制になると、これは四個の護衛隊群に全部配備をするのかという問題ですね。  さらに、まとめてお尋ねしますから、P3Cの性能改良の問題、ココムの関係、東芝とのかかわりでアメリカ側からP3Cの性能をもっと強化をせよという強い要望が出されて、既にハワイですか、ワシントンでその協議がなされた。いわゆるP3Dの導入を考えておる。こういう事態になりますと、やはりこれは歯どめのない、際限のない防衛力整備と見るのがだれが見ても至当ですね。当然のような、当然というより、そういう方向で進んでいると見るのが私は妥当だと思うのですね。  なぜ、それだけの高価な買い物、しかもたくさんの防衛費、軍事費を必要とする装備をやらなければいかぬのか、ここがどうしても疑問として残るわけですね。憲法の規制、専守防衛必要最小限度防衛力整備、今言う洋上防空の本質、あるいはなぜこれだけのものを買い物をして洋上防空体制を確保しなければいかぬのか、ぜひ明確にしてもらいたいと思うのです。
  32. 西廣整輝

    西廣政府委員 大変多くの御質問があったと思いますが、若干答弁漏れがあるかもしれませんが、後にまた補足させていただきたいと思います。  まず洋上防空、洋上における防空の問題でございますが、私は、この問題が最近非常に深刻な問題になってきたというのは、やはり航空機の技術あるいは航空機に搭載するミサイル等の技術というものが進歩してきたということが非常に大きな理由であるというように考えております。御承知のように、航続距離の長い爆撃機等は一時期だんだん減っていく傾向にありましたけれども、それが最近になって、またハイスピードの航続距離の長い爆撃機がふえてきておる。しかも、それらに搭載するミサイルというものが非常に精度がよく、しかも射程の長いミサイルというものが搭載されるようになり、多用されるようになったということであります。  したがいまして、従来であれば、例えば洋上にある船舶というのは、そこに到達する航空機そのものが少なかった。仮に長距離の爆撃機等があって頭上にあらわれたにしても、船舶の上まで来て爆弾を落とすというような方法で攻撃をしておったわけでありますから、頭上にある敵機を撃破する方法さえあれば防空が可能であったわけであります。しかしながら、今申し上げたように、技術の進歩によって百キロ、二百キロと非常に離れた空中からミサイルを発射する、それが船舶に飛んでくるということになりますと、そのミサイルを何とかして防がなければいけない。ミサイルを防いでいただけでは相手は余り痛痒を感じませんので、その発射する母機に対応しなければいけないということになりますと、現在艦艇が装備しておりますミサイルなり対空火砲というものでは全く対抗手段がない、つまり、おりの中にいる動物が屠殺されるように自由自在にやられてしまうという状況が出現しつつあるということであります。  これはまた、船舶だけでなく、地上のレーダーサイト等についても同様な問題があるわけでございますが、いずれにしろ、そういった問題を何とか解決しなければいけないというのが最近洋上防空についていろいろと論じられているゆえんであろうと思います。  そこで、お尋ねの幾つかの具体的な問題について申し上げますと、OTHという問題がございます。OTHは、御存じのように、非常に広い範囲についての航空機の運航状況とかあるいは船舶の行動というものが把握できるレーダーということで私どもは理解をいたしております。そういった、かなり離れたところにある航空機なり艦艇がどちらを向いているかということが早期に把握できるということは、それに対して我が方の船舶等がそういった航空機からの攻撃から回避をするチャンスが出てくるということが第一点にあろうと思います。第二番目には、そういう時点で発見できれば、それに対して戦闘機等を急派して、途中で船舶が攻撃を受ける前に要撃することも可能ではなかろうかということで、OTHはそういう早期の広域の監視機能としては非常に有効なものであろうというように考えております。  エイジス艦でございますが、従来から、御承知のように船舶、艦艇には対空火砲、それからCIWSといったような対空機関銃、さらにはターターといったような対空ミサイルを搭載して、船舶あるいは船団等の防空に当たっておったわけでございます。しかしながら、先ほど申したように、ミサイルが船舶に対して攻撃をしかけてくるという状況になりますと、現在のターター艦、ターターシステムのように、レーダーの覆域が狭い、あるいは射程が短い、さらには発射速度が遅いといいますか、リアクションタイムが比較的長いということになりますと、飛んでくるミサイルを撃ち落とすチャンスというものは非常に少ない、確率が低いということになります。  それでは、現状のように洋上における防空に対して特段の要撃措置ができないような状況では船舶は全く無防備で航行せざるを得ない、それを何とかしてやりたい、最終段階の相手の発射したミサイルに対応するための手段として、より高性能なミサイルシステムを積んだ艦艇が必要ではないかということで現在検討をし、エイジス艦、エイジスシステムというものが適当ではなかろうかという結論を得つつあるところであります。  それから、F15については洋上防空とは離れて御質問がありましたが、御承知のようにF15はかつて我が方の主力戦闘機でありましたF4あるいはその前の104、そういったものの退役に応じまして逐次補充をしていくということで、十三個飛行隊というもので平時からの領空侵犯措置を行うとともに、有事、小規模限定的な事態に対応するという飛行部隊の基軸をなすものでありまして、周辺諸国の航空機というものが第三世代、第四世代にかわっていくのに対応して、我が方としてもF15に逐次かわりつつ既存の飛行隊というものを維持していこうというものであります。最後に、P3Cの近代化の問題でございますが、ただいま先生、ココム事件に関連してというお話がありましたが、我々としては周辺の国の潜水艦の高性能化、音などが小さくなることも含めまして、そういった状況は過去ずっと続いております。そういったことに対応するために、対潜能力として探知機材あるいは魚雷、そういったものを含めて逐年近代化というものを研究しながら図ってきておるわけでございます。  そういう意味で、建造する護衛艦というものは、たとえ同じDDならDDということであっても、搭載している対潜探知機材なりそういったものについては、開発等が終われば新しいタイプのものをつけていくということで進めてきております。  P3Cにつきましても、P3Cは昭和五十三年に確か最初の発注をしたと思いますが、その後五年ぐらいたちました五十八年に、一度、近代化をするために新しく幾らか近代化したものに五十八年以降かえております。さらに五年ほどたちまして、今回、来年度は新しい音響分析の処理についてより能力の高いものにかえたいという希望を持っております。  これは、アメリカで大分前に開発されまして、アメリカ海軍は既に使用しておるものでございますけれども、我々としてかねがね早く日本にもリリースしてくれということを申し入れており、幸いにしてそれが可能になったということで、来年度からアップデートⅢという新しいタイプのものに移っていきたいということでございますが、これらは中期計画あるいは年度年度の業務計画の中で既定の計画としてやりたいということで進めておったもので、先般のココム事件とは特段に直接的には関係がないというものであることを御理解いただきたいと思います。
  33. 上原康助

    上原委員 要撃機F15の追加というのは、確かにリタイアするF4であるとかそういうのがあってということですが、これもしかし百五十五機から一気に六十五年に百八十七機にする決定をしている。P3Cに至っては七十五機を百機体制、当初アメリカに行って、百二十五機体制というような、まさにその勢いに乗ろうとしている。しかも今、P3Cについては性能改良でやる、私も直接ココムと関連するかどうかということを言ったわけで、しかも長官もよくお聞きになっていただきたいわけですが、このP3Cというのは単に探知能力だけではないのですよ。航続距離は三千八百キロ以上だ、大型コンピューターの装置、自動処理能力、レーダーやソノブイ、赤外線探知装置など、まさに近代装備をしている飛行機なんですね。魚雷、対潜爆弾、対潜ロケット、ハープーンを含む各種機雷を搭載をしている。P3C一機でカバーできる海域面積は最大で四国ないし九州と同程度の面積であるというふうになっている、現在のP2Jの二十倍の能力を持っているわけですね。  そうしますと、P2Jの二十倍の能力を持ち、このくらいの戦闘能力を持っているものを百機も装備をしなければいけない、それで、四次防までこれだけだったから中期防においても機数においては同程度だ、性能は二十倍、これじゃ納得できないのじゃないですか。当然これだけ質の高いものの買い物をすれば、量的にも削減あるいは少なくするということであれば、それだけ防衛費も軽量負担になるから国民としてはある程度納得できる面も出るかもしれない。皆さんがやっている防衛力整備というのはこういった極めて矛盾点があるということを強く指摘をしておきたいと思いますし、この点について見解があれば聞きたい。  そうしますと、エイジス艦は最終的にはどのくらい装備をする考えなのか、その点は端的にお答えをいただきたいと思います。  そこで、この洋上防空体制の確保ということと中期防後の防衛構想に変化が出てきたのじゃないかという見方が一つにあるわけですね。まさに脅威の対象はどうかということを聞いたのも――今度の洋上防空構想が出てきたことは、さっきあなたはアメリカの海洋戦略の連動性、関係についてはお答えになりませんでしたが、これはまさに米海軍が新しく打ち出している海洋戦略と全く符合をするわけですね。米軍の対ソ前方展開戦略に深くかかわるものだ。こうなりますと、我が国の置かれている位置あるいは対ソ友好という面からもソ連を著しく刺激をすることは間違いない。  ただでさえ今ぎくしゃくした面が日ソ間にはある、こういう面からしても非常に問題だと思うのですが、この中期防以降の防衛構想に変化があるのかということを含めてお答えをいただきたいと思いますし、確かにあなたが言うように洋上防空構想というのは、近年、航空機の航続距離が長くなったり、あるいは長中射程のミサイルの開発がなされたというところの経空脅威ということに対処するものだと思うのですが、しかし果たして有事の際にそういうものが、皆さんが言う船団護衛であるとかあるいは国民の必要とする諸物資の確保に必要だ、こういうことではこれだけの高価な軍事力整備ということは納得できないですね。この点はいかがお考えなのか、あわせて御答弁を願いたいと思います。
  34. 西廣整輝

    西廣政府委員 幾つかのお尋ねがありましたが、あるいは答弁漏れがあるかもしれませんけれども、まず一番大きな、アメリカの海洋戦略にのっとったものではないかというお尋ねでございますが、この点はしばしば申し上げておるように、日本防衛力というのは自衛のための最小限必要なものを整備するという前提でございます。  そして、何度も申し上げているように、日本防衛力の防護対象というものは国土であり、国民であり、あるいは国民の生存を維持するためあるいは継戦能力を維持するための、我が国のために必要な物資を輸送しておる船舶そのものであるということを申し上げておるわけであります。したがって、それを防護するために必要な措置というものは我々としては持つべきであると思っておりますし、それに対する脅威のあり方というものが変わってくれば、それに全く対応のしようがないということでは防衛の任務を果たせないわけでございまして、それに応じた能力というものを持たなければならないのではないかというように考えておる次第であります。  さらに、エイジスの数の話でございますが、エイジスについては中期防衛力整備計画の中で二隻のミサイル搭載艦DDGを建造するということになっております。その二隻について艦艇搭載ミサイルの近代化を行うということになっておりますので、現在政府として決められておる建造計画というものは二隻限りでございます。したがって、それ以後の問題については今後検討されることはあるかもしれませんが、現状としてはそれ以上のものはないというように申し上げたいと思います。
  35. 上原康助

    上原委員 確かにこれは政府としては、自衛のための必要措置だ、あるいは国民の必要な生活物資というものを確保するための船団護衛だとか、そういう大義名分がないと、これはそうできないわけですね。そんなことを言ったって、実際問題として、しかし有事というか戦争状態になれば航路帯の保護とかそういうことは絶対できない。明らかにソ連の潜水艦を探知するとかあるいはエイジス艦というものは第七艦隊とかそういうものを補完していくための戦力として位置づけられていることは間違いない。  だから、さっき私がP3Cの能力を言ったでしょう。一機でP2Jの二十倍も能力のあるものを何で百機も装備しなければいかぬのか、こういうことで果たして国民は納得すると思うのですか。しかも、OTHレーダーあるいは給油機だ。あなたはE2CとかE3Aも考えているのかということについても触れなかった。どんどん高価なおもちゃというか買い物をしようとしている。これではとてもじゃないが憲法の枠であるとかあるいは専守防衛であるとかいっても、専守防衛という概念も極めてあいまいもことしておって、いろいろ検討を要する防衛概念だと私は思うのです。  そこで、きょうは粟原長官は何かお答えするのを遠慮しているようですが、今いろいろ議論をしてきたことについて、やはり防衛力の歯どめというものは必要だと私は思うのですね。これは概念的歯どめじゃなくして、量的な点だけでなくして、やはり質も含めて。  そういう面からすると、冒頭にも言っておったのですが、四次防からこの計画大綱に移る場合に五カ年の防衛費の固定化方式から単年度方式に変えたのは、もっとわかりやすい防衛費のあり方、整備をやるべきじゃないかということを指摘された、さっき防衛局長そういう答弁をしていましたね。だが、皆さんあのときはそういう理屈を立てて一次防から四次防までおおむね五年単位でやってきた固定方式というものを、今度一%を取り外すためにまた五カ年の固定化方式に変えたわけですね。その理由一体何なのか。これではとてもじゃないが、その都度皆さんの防衛力増強のために理屈をつけて防衛計画を進めようとしていることではないのか。  しかも、十八兆四千億というものは六十年度を基準にした価格なのですね。そうしますと、十八兆四千億というのはさらに増額をしていく可能性があるのか、もう一遍単年度方式に戻していくお考えがあるのかどうか、これが二点目。やはり防衛費というものは、質量ともに規制をする意味においては、予算措置において国民の合意として形成されておった一%以内ということを物差しとすべきだと私たちはこの時点においてはなおさら強く思うのですね。この点についてはひとつ長官の方からお答えを願いたいと存じます。
  36. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 今までの議論、結論的に言いますと、いわゆる「防衛計画大綱」に基づいて必要最小限度防衛力整備をやっているわけでございますけれども、要するに周辺の情勢あるいは軍事技術の状況、そういうところを勘案をして、やはりそれにたえるようにやっていかなげればならぬ、そういう意味合いではこれは金がかかるのですよ。あるいは新しい装備をする、それは大綱を脱しているとか専守防衛に反するのではないか、そういうことは私は当たらないと思うのです。ある一定のところで固定してしまえばこれは防衛力になり得ないわけです。そういう意味合いでこの基本的な認識においてお考えをいただきたいと思います。  それから、一%の問題も私も極めて厳粛に受けとめてきております。しかし、「防衛計画大綱」というものの水準に達するということ、これは継続的、計画的にやっていかなければならない、そういう意味合いで昭和六十二年度の予算では一%を超えた、そこで新たな防衛力整備方針閣議決定をした、それはいわゆる昭和五十一年十一月の閣議決定の精神を踏まえて節度のある防衛力整備をするということでございますので、大きく何でもかんでもむやみやたらに防衛費が膨張する、そういうものではないことは当然でございます。
  37. 西廣整輝

    西廣政府委員 先ほど答弁漏れになっておりましたP3CとE3Aについてお答え申し上げます。  先生P2Jの能力とP3Cの能力を比べて、二十倍というふうに仰せられました。実はP2JからP3Cへの転換というのは、先ほど来洋上防空の関係で新しいミサイル等があらわれてそれに対応するための措置として我々考えていると申し上げましたが、同じようなことが、十数年前実は原子力潜水艦というものが逐次ふえてまいってこれにどう対応するかということが問題になったわけでございます。  御承知のように、当時は在来型の潜水艦というものが攻撃型の潜水艦の大部分を占めておりまして、それらを発見するのはP2Jをもって行っておったわけでございます。それは、在来型の潜水艦というのはどうしてもある時期浮かんできてシュノーケルで航走して充電しなければいけないというようなことで、必ず浮かんでくるということを前提にしておったわけでございます。したがって、P2Jのレーダーで見つけてそして攻撃するという考え方をとっておったわけでありますが、原子力潜水艦になるともう浮かんでこない。  ということになると、水中にあるものを音響探知機等で捜索しなければいけないということになりますと、そういう哨戒、捜索能力としてはP2Jは沈んでおる船に対してはほとんどゼロに近い能力しかない。それに対してP3Cはソノブイをまいて水中における能力を得たわけでありまして、捜索面積からいいますと、在来型潜水艦に対するP2J一機当たりのレーダー哨戒能力に対して、P3Cは水中にある潜水艦捜索能力として約八〇%ぐらいの能力であります。したがって、P2J一機に対してP3C一機ということは、潜水艦の性能が在来型から原潜に変わりますと八割方に落ちますけれども、かなりのものができるということでP3Cに逐次置きかえてきたというのが実態でございます。  それからE3A、AWACSの問題でございますが、確かにAWACSと我々が今整備しておりますE2Cと比べますと、値段も違えば性能も違います。仮に同じ働きをするために一機ずつ要るということであれば、私はE2Cをとるべきだと思っております。ただ、あるオペレーションをし、一つの機能を果たすために、E3Aであれば例えば一機で済むものがE2Cだと五機かかるというようなことになれば、全体としての経費効率で何がいいかということを検討した上でどちらをとるかを決めるべき性格のものであろうと思っておりますが、いずれにしましても、E3Aについては五カ年計画でもこういったものを整備する計画は今のところございませんし、我々としてはまだ検討いたしておりません。
  38. 上原康助

    上原委員 長官にしても今の局長答弁にしましても、認識の違いだ、あるいは金のかかるのはやむを得ない、我々もそれこそ真剣に聞いているわけですが、こういうことでいつも片づけてしまうわけですよ。問題はそうじゃないのですよ、長官。そこに重大な認識の違い、全然議論がかみ合わない。これはまた続けるとしまして、我々はそう思っていないですね。  今の局長答弁にしても、潜水艦の探知能力はむしろ八割程度だというような、そういういつも下限、下に見積もって装備というものをやる。脅威だ脅威だと言う。これは戦前から同じですよ。そういった論理というか、そういった姿勢で防衛力をどんどん整備していった場合に、冒頭言ったように、かつて言われたように、一体我が国防衛力整備限界というのはあるのかないのかということで行き詰まってしまう。そのことを防衛庁自体がもう一遍真剣に考えていただかないとならない重要な段階に今あるという点を強く指摘しておきたいと私は思うのです。  次に移らせていただきます。  これは何回も聞いてきたことなのですが、今、基地周辺の住民というのはいろいろな面で大変迷惑をしているわけですね。逗子にしてもとうとう市長選までやり直す。三宅島しかり。沖縄だってそうだ。宜野湾市のごときは普天間飛行場があるので、基地の爆音被害でとうとう学校そのものを移動しなければいけないという大きな荷物を背負わされている。基地がなければそんなことは起こらぬですね。それだけじゃない。事件、事故も相次いでいる。この安保体制の中でいかに国民が不幸な状態というか住みにくい状態に置かれているかということは、防衛庁も外務省も、政府全体としてもっと真剣にわかってもらわなければいかぬですよ。  まずそれを冒頭申し上げて、既に何回もお尋ねしてきたわけですが、いわゆる在沖米海兵隊の解雇問題。これは米側も真剣に検討している、あるいは政府もそれぞれアメリカ側に再考を申し入れて、解雇を少なくするとか――私は、今度の場合、全面撤回以外ないと思う。どういう観点から見ているか。いまだにはっきりしためども立てずにやっているということに対しては極めて不満であり、政府は本当に真剣にこの問題の解決に当たっているのかどうか、そろそろ疑問も持たざるを得ない。この点についてまずお答えをいただきたいと思います。
  39. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 お言葉ですけれども、政府は真剣にやっているのか疑問を持たざるを得ない、それは慎んでいただきたい、真剣にやっておりますから。
  40. 友藤一隆

    友藤政府委員 お尋ねのございました駐留軍従業員の大量解雇問題についての現状等について、お答えをいたしたいと思います。  御案内のとおり、今回の在沖米海兵隊クラブ関係の従業員の人員整理につきましては、米側からの通報では、人員整理の必要というところでは、円高・ドル安の影響を受けてこのクラブの経営が著しく悪化し、一部のクラブは閉鎖せざるを得なくなってきておる、こういうことから経営上の理由を挙げまして人員整理が避けられない状況である、こういう理由を言ってきております。  したがいまして、私どもといたしましては、在沖の米海兵隊クラブの財務状況、それから申し越しております人員整理の対象となっております人数の根拠、こういったものを詳細に今伺っておりまして、その状況等を踏まえまして、極力人員整理数を縮減し、場合によっては引っ込めていただきたいということを現在米側に強く要請いたしておるところでございまして、こういった根拠や状況をめぐりまして、私どもと在日米軍あるいは在沖海兵隊司令官のスタッフとやりとりを現在まで何度がやってきておりまして、米側も経営状況、人員整理を言ってきておるぐらいでございますので、実態は相当よくないということを申しております。  しかしながら、日本側の諸事情というものもよくわかるので誠意を持って検討していきたいということで、我々との間で何度がこういったことについて交渉を持たせていただいております。具体的な内容につきましては、日米で折衝中のことでもございますので、ここで細部を申し上げることは差し控えさせていただきたいと思っております。ただ、私どもは沖縄の実情あるいは先般の特別協定の趣旨等にもかんがみまして、できる限りこういった人員整理の影響が最小限となりますように、ぎりぎりまで最大限の努力をいたしたいということで現在交渉に当たっておるところでございまして、この辺の事情を御理解賜りたいと思うのでございます。
  41. 上原康助

    上原委員 防衛庁長官、それだけ強い調子でおっしゃるくらいなら、じゃ、これまで米側からどういう回答があったのですか。私はそろそろ疑わざるを得ないという表現で、一応、政府がこれまで努力をしていることについては敬意を表するという前提で物を申しているわけなんですが、七月二日に出されて、いまだに経営状態について米側の言い分を調べている、あるいは双方が煮詰めているので言えない。いつまで待てばいいのですか、もう八月も終わりですよ。  しかも、こういう暑い中で好きこのんでストライキをしたり座り込みをしているのじゃないんだ、労働者というのは。ウェッブ長官からの回答はあったのですか。私は、そういうことについてはもう少し明らかにしていただきたいと思うのです。見通しは立つのか立たぬのか。
  42. 友藤一隆

    友藤政府委員 いつごろ具体的な回答が出るのかという御質問でございますが、先ほども御答弁申し上げましたように、私どもとしましては、ゼロ回答であるとかほんの少しの圧縮というようなことではやはりぐあいが思うございます。したがいまして、徹底的にこういった面、中身をよく私どもも聞き取りまして、納得のいく説明が得られなければさらに具体的な説明をお願いをして、合理的な形でなければ私どもとしても受けるわけにはいかないということで、強力に折衝いたしておるわけでございます。  海軍長官のお話ございましたが、大臣並びに外務大臣から海軍長官に申し入れをしていただきましたことも極めて効果を上げておりまして、相当上層部の方でもこの問題について大変御関心をいただいておりまして、そのためもございまして、相当上部とも相談してこの問題に取り組まなければならない、こういう状況にもございますので、いささか時間がかかっておるという事情になっていると承知をしております。
  43. 上原康助

    上原委員 外務省はどういうふうにしているのですか。
  44. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 この問題は、委員御存じのとおり、本来性質からいいますと、米軍が持っております条約上の権利の行使という面があるわけでございますし、海兵隊クラブの運営が相当厳しいということも事実であろうかと思います。しかしながら、累次御答弁申し上げておりますように、外務省といたしましても、沖縄という日米安保条約の実施におきまして大変大きな負担をお願いしておる地域に対して非常に大きな影響を及ぼす問題であるという認識のもとに、外務大臣から防衛庁長官とともにウェッブ海軍長官に対して申し入れる等、その後も防衛庁防衛施設庁とともに協力いたしまして、いろいろな折衝をしてきているわけでございます。  例えば、本日の朝もマンスフィールド大使が外務大臣に対して、別件でございますけれども訪問があったわけでございますが、その際もこちらの方から本件を持ち出しまして、沖縄のリフの件について米側と大いに折衝しているけれどもよろしく頼むということをマンスフィールド大使に外務大臣からも申し入れているところでございます。  こういう状況でございまして、ただいま防衛施設庁長官から御答弁申し上げたとおり、米側から近く返事が来るというふうに期待しておりますが、その返事ができるだけ内容のいいものであるということを期待しております。しかしながら、全体の状況は極めて厳しいものでおるという状況の中で、最大限米側としても努力をしてもらいたいというふうに思っておるわけでございます。
  45. 上原康助

    上原委員 相変わらずの抽象論ですね。それじゃ納得しかねますね、本当に正直申し上げて。  解雇通告は出したの、個々人への。
  46. 山崎博司

    ○山崎政府委員 ただいま御質問の通告書でございますけれども、これについては、労務管理事務所の所長がサインをしたものを米側に渡しまして、米側から本人に通知するということになっておりまして、まだ本人には通知いたしておりませんけれども、管理事務所の方から米側に渡っている、こういう状況でございます。
  47. 上原康助

    上原委員 本人に通告してあるの、ないの。それと、いつですか、通告するのは。
  48. 山崎博司

    ○山崎政府委員 失礼いたしました。これは協約上、発効日の三十日前に通告することになっておりまして、現在のところは通知はいたしておりません。近日中に通知するということになると思います。
  49. 上原康助

    上原委員 私が冒頭に言ってありますように、そういうタイムリミットが来ているのですよ、防衛庁長官。個々人が、あなたは九月三十日付で解雇になりますよともう通告を受けるわけだ。しかもこれだけ大きな問題になって、今、外務省もいろいろ言いましたが、実は私も、初めて明らかにするが、アメリカ筋に書簡を送った、マンスフィールド大使にも。恐らく皆さんも聞いているかどうか知らないが、四、五名の方から返事が来ている。内容はそんなに期待の持てるというか、あれじゃないですが、真剣に検討されていることは間違いない。だから私は、外務省なり政府がこの問題についてもう少し該当者の気持ちに立って、せめて解雇通告を受けない前に米側からの回答を引き出して、こうこうこういう内容ではまだ納得しかねるのでさらに政府としても努力をするという、そういう真剣さというか誠実さを見せてもらいたい。それはまたやるべきだと思うのですよ。それがあるから、私はそういうお尋ねをしたわけです。  そこで、これは直接的には防衛施設庁長官かもしれませんが、防衛の問題であるとか基地の問題であるとか、いわゆる政治的判断というか、政治的に決着をつけなければいかないという面からすると、やはり国務大臣である防衛庁長官の働きというのは軽くはないと私は思うのですね。大きいと思う。それだけに今私が指摘をしたような問題等を含めて、このことを真剣にやっていらっしゃると言うわけだから、長官としてどのように解決しようとするのか、ぜひ決意も聞かしていただきたいし、本当にそういう期待にこたえてもらいたいという要望を含めて私は言っているのですよ。長官、その気持ち、わからないですか、お答えいただきたいと思うのです。
  50. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 先ほど私の言った意味も、決して逃げたりごまかしたりするという意味じゃない。真剣にやっている。真剣にやっていないのではないかというように受けとめたので、ああいうお答えをしたのです。  反面、この間、西銘知事も来られましたよ。そして、あなたからはるるお話がある、大変頭の痛いことである、本当にそういう意味合いでは、よく気持ちがわかる。ただ、私の場合でも、それぞれ一応のことはやっているわけですね。これに対する回答がまだ来ないわけです。私は、回答が遅ければ私みずからが話をする、こういうふうに言っているのです。私みずから、何をしているかということでアメリカ側の回答を督促する、そういうのが私の気持ちです。まだ今はいろいろの段階でやっておりますから、私はそれを見守っておるということであります。あなたの苦衷もよくわかるし、私も皆さんの御要望にできるだけ沿うように最大の努力を今後もいたしたい、このように考えます。
  51. 上原康助

    上原委員 そこで、タイムリミットの問題がありますから、私は特に現場の事情、気持ちというのも、より生の声を聞いていますし、臨場感覚がありますから、それを申し上げているわけで、いつまでも待たされて、結果的に見たけれどもさらにワシントンとの交渉もしなければいかないとなると、これは二週間、三週間はかかる。ぜひ早急に回答を引き出す、回答を引き出すというのは中身の問題で私が言っている方向。これは私は、日米間がその気になれば解決できない問題とは見ていないのです、長官アメリカ側のクラブ経営でどれだけの赤字であるとか、あるいはどういう状態であるとかということはおおむね出尽くしている、あとは要するに、しかるべき立場にある方々がどういう御判断をするかということにかかっていると思うのですね。これまではアメリカ側にボールを投げかけておったのが、むしろそろそろ投げられてきたのじゃないですか、皆さんの方に。
  52. 友藤一隆

    友藤政府委員 現在アメリカ側の回答待ちの状況であることは事実でございますが、いずれにしましても、アメリカ側も、現地レベルだけでなくてワシントンにもよく御相談をいたしておるやに伺っております。
  53. 上原康助

    上原委員 そこで、この百六十五億というのはどういうルートで払うのですか。払ったのですか。その支払いの方法はどうしているかという、これが一つ。これはお答えください。  あとは資料要求しますから。この新労務協定の第一条で言う(a)、(b)、(c)とありますね。(a)の調整手当、扶養手当、通勤手当及び住居手当、(b)の夏季手当、年末手当及び年度末手当、(c)の退職手当、それぞれの項目についてどのくらいかかっているのか、内容の明細の資料を後で提示をしていただきたい。その点、いいですね。この二点。
  54. 友藤一隆

    友藤政府委員 後ほど提出をいたしたいと思います。
  55. 上原康助

    上原委員 支払いはどうなっているのですか。それは答えてくださいよ。
  56. 山崎博司

    ○山崎政府委員 お答え申し上げます。  こちらの負担いたします百六十五億については給与の一部として支払うものでございまして、米側からの償還請求によりまして払っておるということでございます。
  57. 上原康助

    上原委員 いや、だからその具体的な支払い方法は、どういうふうに、月ごとに払うのですか、年度末に一回に払うのか。
  58. 山崎博司

    ○山崎政府委員 各月ごとに支出に応じて払うということでございます。
  59. 上原康助

    上原委員 そうすると、六月だから、まだ九月ですから三カ月ないし四カ月しか支払いしてないということですね。  それと、大蔵も来ていると思うのですが、施設庁かもしれませんが、あと一点確かめておきたいことは、百六十五億四百万というのは六月から来年三月までのいわゆるこれは十カ月分ですよね。そうしますと、一年分となると、たとえ仮に六十二年度ベースにしても百九十八億くらいになりますね。そういう理解でいいのかどうか、それも確かめておきたいと思います。
  60. 山崎博司

    ○山崎政府委員 先生お尋ねの趣旨が、六十二年当初からこの種の負担をするということであれば幾らかかるかということであれば、先生の申された金額とほぼ近いと思いますが、二百億強ということになると思います。
  61. 上原康助

    上原委員 あとほかにも尋ねたいこともあったのですが、時間になりましたので、大蔵省にも来てもらいましたが、これは問題提起だけしておきます。  爆音公害ですね。住宅防音に対しての予算の問題であるとか、特に原因者負担という面からすると、全額これは国が持つべきだと思う。だが、なかなかそういかない、今の財政事情経済状況で。やり方もまた極めて不満がある、これは沖特かどこかで私は一遍時間をかけて取り上げてみたいことですが、特に施設庁なり大蔵省に聞いてもらいたいことは、この防音工事をやっている生活保護世帯に対してはやはり国が措置すべきだと思う。嘉手納町や北谷町あるいは周辺の市町村は、生活保護世帯については乏しい自治体の財政から支出をしているという実態はおわかりでしょう。  この点、きょうは具体的には触れませんが、そういう立場で努力をしてもらうということ、ま病施設庁は予算要求もしておるようですが、施設庁と大蔵の方からそれぞれお答えをいただきたい片思います。
  62. 鈴木杲

    ○鈴木(杲)政府委員 お答え申し上げます。  生活保護世帯につきましての住宅防音工事に伴う電気代の国庫負担の問題でございますが、この必要性も十分理解できますので、従来より予算計上に努力しているところでございます。  財政事情等諸般の事情によりこれまで計上に蚕っておりませんが、今後ともこれが実現については努力してまいりたいと思います。
  63. 岡田康彦

    ○岡田説明員 お答えいたします。  自衛隊飛行場等の周辺における住宅防音工事の対象世帯数は膨大な数でございまして、現在、毎年十戸でも二十戸でも多くということで、予算の規模も極力ふやすようにし、早く全戸完成するようにということで努力をしております。そのため、したがいまして目下のところは数の方を満たしていくことに主力を置いておりまして、御指摘の空調機器の使用に伴う電気料金等につきまして補助の対象としておりません。  今、先生御指摘の生活保護世帯につきましては、確かに施設庁の方から昭和五十四年度以来要求をいただいております。そういう中で毎年施設庁の方と協議、議論を重ねておりまして、今申し上げましたように、まず数の方を優先するという方をとらしていただいておりますが、来年度以降の問題につきましては、今後予算要求が出てまいりましたならば、その段階で改めて防衛施設庁の方と相談をさせていただいて検討をしていきたいと思っております。
  64. 上原康助

    上原委員 もうこれで終えますが、皆さんの答弁というのは、えてしてはぐらかすというのか、そういうのが役人の特技だからこれはしようがないけれども、もう少しまともに答えれば終わるのだが、そういう答弁をされると一応反論せざるを得ない。  それは性格が違うのですよ、大蔵省。性格が違う、僕が提起していることは。まだやってない方を早くやるためにそこに予算を回している、だからそのことは後回しだ、それは違うのじゃないか。生きているのです、生活保護世帯も。せっかくやったってどうにもならないで、宝の持ちぐされ、機能しないんじゃないですか、そういうことでは皆さんがやっている防音対策なりそれの消音にならないから、そこは考えたらどうかと言うのです。全く次元の違う話、性格の違う話。少しそういう発想も、もちろんおわかりでそういうことを言っていると思うが、ぜひこの点は考えていただきたいと思います。それは防衛庁長官の方からも、そういう実態であるということ、これは自衛隊基地周辺もそういう面は多いのですよ。米軍基地だけじゃないですよ。  そこで、若干時間をとりましたが、防衛論議の問題にしましても、もう少し土俵を狭めていろいろ国の安全ということあるいはできるだけ政策の整合性というものを見つけ出そうという努力を我我がやろうとしても、まだ政府の今までのような答弁ではなかなか理解しがたい。むしろ皆さんの方は、あなた方の認識がどうかというようなことじゃ、これじゃいかぬと思うのですね。その点はぜひ我々が指摘をすることについても十分配慮してもらいたいということ。  特に後段申し上げた解雇の問題については、非常に深刻な問題ですから、それほど余裕を置いて回答待ちとか、これから検討していくという段階じゃないと思いますので、その点ぜひ白紙撤回、そういう方向性でこの問題は解決をしてもらうことを強く要求をして、私の質問を終えたいと思います。
  65. 石川要三

    石川委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後零時三十九分休憩      ――――◇―――――     午後二時開議
  66. 石川要三

    石川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。広瀬秀吉君。
  67. 広瀬秀吉

    広瀬委員 官房長官がお見えになりましたので、時間も四十五分と制限されておりますから、最初に官房長官に四十五分の間質問をさせていただきたいと思います。  まず、日本防衛考えるに当たって世界の情勢、特に防衛白書では、非常に緊張が高まっている、特にソビエトの日本周辺における軍備が著しく増強されているという面ばかり強調されているような気がしてならないわけです。御承知のように、これは釈迦に説法はいたしませんけれども、東西首脳会談もしばしば開かれるようになっている、レイキャビクの会談も合意寸前まで行ったというようなことで、ちょっとした行き違いでこれが合意に至らなかったということはあるにしても、ゴルバチョフ書記長なりあるいはレーガン大統領なりのやりとりは最近いろいろございまするけれども、今、東西にわたって、欧州でもまたアジアでも一番脅威を与えている現実的な核戦力であるINFを削減しようということでの合意の方向が一つ大きく世界情勢として展開されておるではないかというように思うわけです。  また、アジアでの緊張というのは何と言っても南北朝鮮関係である、こういうところでありますけれども、時々中断いたしますけれども、南北の間でも情勢が徐々に話し合いの方向に向かって進展しておるし、特に南では北の南進ということを非常に言うわけでありますが、そういう問題に対しても、金日成主席が十万の軍隊をとりあえず削減しようということで、これを実行に移したという報道もあるわけであります。  そういうようなもろもろの状態を考えまして、きょうも安保条約を純経済問題、純貿易問題に絡ませた外為法の衆議院の通過という事態にもなったわけでありますが、そういう点も含めて、今日の世界情勢を、さらに緊張が高まり軍事衝突の危険性が著しく増しているのだという見方なのか、日本政府としては一体どういうスタンスを持って今日の国際情勢、特に東西関係状況を見ておるのか、この辺のところが防衛問題を考える一番基本の問題になるだろうと思いますので、まずその辺をひとつお伺いいたしたいというふうに思います。
  68. 瀬木博基

    ○瀬木政府委員 官房長官に対するお尋ねでございましたが、防衛白書について言及がございましたので、その面から若干発言させていただきます。  防衛白書におきましても、国際情勢というものはいろいろな面がある、いろいろな発展があるという面で書いてございます。  一方においては、ただいま委員もおっしゃいましたように、米ソ首脳会談も行われている、また、核軍縮・軍備管理というものについてもかなり明るい面が出ている、おっしゃるとおりであると思います。また、委員御指摘のように、日本の近くに目を転じましても、朝鮮半島において南北対話の動きもあるということ、こういうような明るい面もあると思います。  他方、それではそういうことが世界のすべての情勢を覆っているか、それは必ずしも言えないだろうと思います。全世界的に見ましても、相変わらず地域紛争というものは、ペルシャ湾におきましても、またアフガニスタン、またインドシナというようなところで引き続いて行われている。また、東西対立の面をとりましても、先ほど申し上げましたような核軍縮・軍備管理というものに動きがある一方、基本的には依然として厳しいものがあると思います。  我が国をめぐる情勢におきましても、アジアというもの全体を見れば、世界の中で非常に発展をする地域、比較的安定度の高い地域ということはございますものの、やはり我々としては緊張の影というものを認めざるを得ないということであると思います。我が国としては、そういう中にあってできるだけそういう明るい面を助長していく、影の部分と申しますか、緊張の種を少なくしていく、こういうことに努めていかなければならないし、また、その基本になるものとして、我が国安全保障について生きを期するということから、自衛力を堅持する、また日米安全保障体制についてこれを堅持する、こういう態度で臨んでいるものであると思います。
  69. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 これは私がお答えするのが果たして適切かどうか、多少の疑問もございますが、御質問でございますので、国務大臣という立場でお答えをいたしたいと思います。  今、防衛白書について事務当局から御説明がございました。私も、やはり今日世界のいずこの国の指導者も平和を望み軍縮を希望しておるという事実については、おおよその傾向として間違いのない事実であろう、こう考えております。  しかし、同時にまた、今日の平和というものはやはり核の均衡という中での平和であるということもこれまた一つの事実でございましょう。しかし、それだけに核兵器、いわば業の兵器でございますから、これはお互い均衡を保ちながらこれを削減していこうという動き、殊に中距離のINFについては御案内のような一応の交渉の進展の傾向も見られておる、こういう状況があることはこれまた事実でございましょう。  しかしながら、一方、地域的な点について目を開いてみれば、やはり中東の関係であるとかあるいはベトナムの状況であるとか、アフリカの状況であるとかあるいは朝鮮半島の問題であるとか、中米の問題であるとか、各地に各種の武力紛争があることも事実でございますし、同時にまた、我が国をめぐる北方の状況というものの軍備、これも増強せられていることも事実でございます。  したがって、一方において、何とか軍備の拡大を防いで軍縮に持っていき、核の廃絶に向かって努力しようという世界各国の指導者の意向というものはある、これは私は認めなければならぬし、我々もその流れに沿った努力をする必要はあるだろう、こう思います。しかし一方、国際緊張が相当高いものがあることも事実でございますから、それに対応する我々の考え方としては、やはり核に対する問題は日米安保条約ということを基本に考えながら、同時に、局地的な、地域的な紛争に対応するものとしては自衛隊自身整備ということも当然やっていかなければならぬのではないか。したがって、余り一方に偏った措置ということはかえって危険性を生む、やはりそこは情勢を真剣に判断をしながら、バランスのとれた国の安全施策というものを講じていかなければならぬのではないかなというのが私の考え方でございます。
  70. 広瀬秀吉

    広瀬委員 一部に、東西関係、特にアメリカとソビエトの間に緊張緩和の方向を目指す努力も認められておるわけでありますが、そうはいっても、それぞれ中東でもその他でも戦争が今でもいろいろな箇所で行われつつあるという、そういう危険というものもあるんだということだから、自衛隊としてはやはりやるべきことはちゃんとやっておかなければいかぬのだ、こういうことだと思うのです。  例えば、中東の戦争などにおきましても、米ソがかなり深く、武器等についてあるいは経済的な点などについてそれぞれ交戦国に対して援助をする、武器を輸出する、そういうことがあるわけですね。  そういうことを考えてみますと、戦後、特に米ソの対立、東西対立と一言に言われますが、そういうものを機軸にして、世界の平和問題そしてまた戦争の問題というものは常にそのことを抜きには考えられないような状況になっている、そういうことでありますから、私ども平和憲法を持つこの日本としては、東西両陣営、米ソの中に入って、両陣営がもっと相互不信をなくして、軍備拡大競争、そしてまた局地の戦争等に対してもどちらかの国に支援の態勢をとっているというような状況をなくすために、これからやはり真剣に、平和憲法を持つ立場において米ソ両国に向かって、これはもう圧倒的な世界に並び立つ両陣営のチャンピオンでありますから、その両者が不信感をなくすような外交的努力、その他さまざまな努力というものを、これは中正な立場で、どちらかに偏るというようなことではない立場で努力していく、こういうことがこれからの平和を守るために非常に必要ではないか、私はこういうように思うのですが、いかがでございますか。
  71. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 広瀬さんの御意見も私はそれなり理解できるのですけれども、やはり日本というものは自由主義国家群の一つとして国が立っておる、いわば西側の一員としての今日の世界の中における立場というものを堅持してやってきておるわけでございますから、そういう立場に立ちながら、おっしゃるように米ソの二大対立、その結果の軍備競争、そしてそれらが背景にあるのかどうか必ずしも私は証拠を握っているわけではありませんけれども、そういう背景のもとでの局地戦争といったようなことがなくなるというようにできる限りの努力をするということは当然であろうと思いますが、基本のスタンスはあくまでも西側の一員としての立場を堅持していきたい、かように考えております。
  72. 広瀬秀吉

    広瀬委員 日米安保条約を持っている、私どもは必ずしもこの日米安保条約を肯定するものではないし、私どもも六〇年安保のときに、実は私が国会に出る気になったのもあの安保条約を契機にしてでありまして、私どもの社会党の同期生は安保会議員団と実は称しているわけでありますが、そういう立場もありまして、今日自衛隊違憲論あるいは日米安保条約違憲論というようなものがあるわけであります。  私は、どう考えても、真剣に憲法を一生懸命読んでそこから出てくる結論に従えば、自衛隊も違憲の存在である。しかし、もう既に三十年以上もこういう軍事大国とまで言われかねないようなところまで発展してきている、しかも、防衛二法は常にこの内閣委員会で議論をされてきている、そういう点で、法的存在というか、言うならば違憲ではあるけれども、裁判所でも違憲という判断は下さないで、判決では統治行為論というようなことで、政府の統治行為の一つのスケジュールとして存在する、こういうような形になっていると思うわけであります。したがって、現実にあるものを我々は無視してどうこうという気はありませんけれども、そういう立場からやはり憲法違反の疑いが極めて濃厚である。  こういう立場で、例えば今問題になっておりますGNP一%、防衛費の予算はGNPの一%以内であるべきであるということは、これは政府閣議決定でずっと続けられてきておるわけでありますから、そういうものも、憲法に対して違憲的存在であるという立場でこのことは正しく今後も守らるべき一つの枠ではないか、こういうことも考えます。あるいはまた、本当に防衛ということを真っ正面から出していくという立場、これはもちろん憲法上自衛権が認められるかどうか、その自衛権の発動は、防衛戦争だけはやる、専守防衛だけはやるのだということなのか、それ以外の方法はないのかという議論ももちろんあります。  そういうような点から考えまして、日米安保条約に絡んで、集団的自衛権の行使は本来ならば国連憲章で許されているけれども、その方針をとらないというようなことも、憲法への気兼ねというか、そういうものでそういう自制をいたしているだろうと思うし、非核原則というものも憲法との関係において当然出てくる問題でもありましょう。もちろん原爆の被爆原体験を持つ日本であるというようなこともあるでしょうけれども、そういうような点でもそうだろうし、あるいはまた、海外派兵の問題等に対する厳格な規制というようなものがそういうところから出てくるだろう、いろいろなそういう論争点になるような問題は、常に憲法に対して違反をしている存在ではないかという極めて重大な疑義というものを持ちつつ存在をしている。統治行為論としての法的存在というような形でやるのだという、その基本認識を忘れて専守防衛の幅をどんどん広げていくというようなことがあったのでは、これはいかぬだろうと思うのです。  だから、そういう点で官房長官にもう一回聞きたいのは、日本憲法前文あるいは第九条、こういうものについてこれをやはり最大限遵守をしていく、尊重をしていくのだ、そういうお気持ちでおられるかどうか、この点をひとつあえてお聞きしたいと思うのです。
  73. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 今日のこの厳しい国際社会の中で、一国だけでその国を守り抜く、いわば絶対的な安全性を一国だけでという国はない、ソ連もそうだろうし、アメリカだってそうだろうと私は思います。やはり相対的な安全性を求めていくというのが現実であろうと思います。  その相対的安全を求めるという立場に立った場合に、我が国のような憲法を持っている国はなおさらのこと、やはり西側の一員として、そして同時に日米の安保条約というものを一方に結びながら国の相対的安全を図っていく、そして同時に自分自身の最小限の自衛力というものもそれなりに整えていく、こういうことで安全と独立を維持し得るものである、私はかように考えております。  その際に、日本自衛隊というものが憲法違反ではないのかというお話でございますが、これはもう今さら申し上げるまでもありませんけれども、憲法といえども国の自衛権を否定するということはできないはずでございます。自衛権はまさに国家の固有の権限である、その自衛権の一部として今日の九条の解釈が征われて自衛隊というものの存立がある、私はこう考えております。  それだけに、自衛権の発動として認められる自衛隊でございますから、それにあくまでも今とっておるような専守防衛、あるいは非核原則であるとか軍事大国にならぬとかいろいろ言われておりますが、要は最小限専守防衛の立場に立っての自衛力の整備だ、こう私は考えているわけでございます。  政府はそういう方針のもとに、五十一年の閣議決定等もあったわけでございますが、しかし、これは議論そのものとして、一%そのものが自衛力である、こういったような逆転した発想があったと思います。これは私は間違いである。最小限の自衛力というものを整備をするのには、客観条件を判断しながら、どの程度が一番最小限の自衛力として認め得るものであるかどうかという中身を議論すべきである。しかしながら、あくまでもそれは最小限ですから、それだけに節度のある抑制的な立場に立たなければならないということでやっていくべきものであろう。そういうことで、ことしの予算も御案内のような結果になったわけでございます。  したがって、あくまでもその精神、抑制的な精神、これはやはり日本のような平和憲法を持っておる国における自衛力整備の根本的な考え方である、こういうことでこれからもやっていくのが適切なあり方であろう、かように考えておるわけでございます。
  74. 広瀬秀吉

    広瀬委員 重ねてお伺いしますが、憲法第九条の解釈は、それはいろいろ学者によって、またこの委員会でも随分論争をされてきた点でありますが、とにかく日本憲法は、平和主義、それから基本的人権尊重主義、そして民主主義、国民主権主義、こういう三つの理念によって組み立てられている憲法である。その中でもやはり特にこの三つは平和であってこそ達成される、たとえ防衛戦争であっても、戦争ということになったら基本的人権の尊重なんということは言っていられなくなる。  後でもお伺いしますが、有事立法というような段階を迎えれば、国民の主権はめったやたらに厳しい制限をされるというようなことにならざるを得ないし、そういう中で議会制民主政治というようなもの、なるほど自衛隊に対するシビリアンコントロールということも大きな国会の任務になっておるわけであります。一番重大なものはシビリアンコントロールである、しかもその頂点に立つものは国会における審議である、国会の態度であるということは粟原防衛庁長官もこの委員会で答えられておるとおりでありますが、そういう立場にある以上、これはやはり日本憲法全体を本当に、特に平和主義というものを――これは解釈のいかんによって今日自衛隊という、もはや完全に軍隊になっておる、そういうものが存在するけれども、その基本においてかなり問題がある。  そういう点と、それから憲法理念をやはりしっかり尊重する、そういう立場が非常に必要であろうという点で、憲法を尊重するという精神には変わりない。若干の解釈上の問題点はあろうとも、我々と見解を異にするところがあろうとも、憲法のそういう平和主義、その三つの理念というものを尊重する立場を持っていかれる、これは憲法九十九条を援用するまでもなく、そういう規定も憲法上にもあるわけですから、天皇、摂政以下、総理大臣、国務大臣みんな、それから公務員に至るまで尊重しなければならぬという義務があるわけですから、聞くだけやぼのようであるけれども、やはり今の自衛力増強の方向、それから次次に、日本だけを防衛するのではなくて、日米安保条約との関係においてガイドライン以来どうも概念的にどこまで広がっていくかわからぬという危惧がある際に、やはりそのことを聞いておきたい、こう思うのです。
  75. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 憲法をめぐるいろいろな議論があることはお互い御案内のとおりでございます。しかし、私はやはり広瀬さんがおっしゃるように、現行憲法の中の平和主義あるいは民主主義あるいは基本的人権、こういった三つの大きな柱、これは将来にわたって絶対に忘れてはならない重要なる原則である、かような理解を持っておるつもりでございます。当然のことながら、そういうような立場で今日私どもは仕事をさせていただいておる。  自衛隊そのものについては、そういった考え方に立ちながら、やはり憲法九条というものがあるのだということも頭の中において、この整備は客観条件ということを忘れてはなりませんが、やはりあくまでも節度を持って、抑制的な立場で、しかしやるべきことだけはやらさせていただくのだといったようなことが一番適切なのではないのか。  こういうことを申し上げますと、お互い立場が違いますから御反論もあろうかと思いますけれども、こういう国の基本の問題については、本当に政党政派を超えまして真剣な論議を重ねていただいて、あるべき結論を導き出していくことができればこれほどいいことはないのではないのか。いかにもこの点については、まるきり考え方が違ったお互いの政党の立場というものは本当に残念に思っておるのが私の心情でございます。
  76. 広瀬秀吉

    広瀬委員 最後の部分は、あなたは残念がもしらぬけれども、私の方は、これは節度を持って、九条があるということを自衛隊としてもちゃんとしっかり腹に置いておかなければいかぬというところまでで結構なんです。  さて、防衛庁長官、これは東西両陣営に分けないで結構ですから、今世界の軍事費というものは大体どのくらい使われているか。一説によれば八千億ドルから一兆ドルにもなっているのではないかとすら言われている。百四十円換算でもいいのですが、百四十兆円、こういうようなことになるわけだど思うのですが、その辺のところを調べたものがありますか。
  77. 瀬木博基

    ○瀬木政府委員 私どもの承知しておる限りでは、八三年に調べた資料で八千億ドル強ということが出ておりまして、一兆ドルという数字までは、まだ少なくとも発表された数字にはないと思っております。
  78. 広瀬秀吉

    広瀬委員 私も実は八三年の調査の八千億ドルというところまでは見ているのですけれども、もうそれから四年ばかりたつわけですから、恐らく一兆ドルになっていると見てもいいのじゃないかと思うのです。特に、アメリカ等ではSDIの研究を本格的に始めるというようなこともありますし、ソビエト等でもSS24などという大変な、原子力潜水艦ですか、核装備をした原潜等も開発しているというようなことがありますので、そうだろうと思うのです。  さあそこで、私は実はそのことをちょっと確かめて、これだけの金をせめて三分の一減らしただけでも、あるいは半分に減らしただけでも、今日地球上に存在する――先ほどからの議論で、東西の対立あるいは南北の対立というようなものもいろいろありまするけれども、そういうものを解決していく。一番危機の根源というのは一体どこにあるのかということは、やはり南北格差の問題であり、東西の拮抗、軍事力対決、そういうような姿勢の中にあるだろうと思うのです。  そして、そういうはざまの中で、南北問題に象徴されるような飢えと貧困、人類の多くの後進開発国、こういうところに、あるいはNICS等において、常に飢えと貧困、そういう問題を中心にしてやはり軍事的な対立が起こる、危機がそういう中から醸成されてくるというところがあるわけでありますから、世界に存在する国ごと経済力あるいは国民の生活水準格差、こういうようなものをこの際何とか先進国が、北の先進国と言われるところが南の地域に対して、先ほど申し上げたように三分の一でもあるいは半分でも減らして、そういうところに経済的な貧困をなくしていく、そして生活レベルをアップして近代的な生活ができるように援助をしていくというようなところに大きく頭を転回させていかないと、いつまでたっても東西の対立、そして南北の格差、そこからくる摩擦現象、戦争への危機というようなものが絶えないのではないか。そういう基本の点で、やはり軍事力をどんどん増強していくというような立場ではなくて、そういう方向に人類の未来の夢をかけて向かっていくのが、これからの二十一世紀における我々のグローバルな任務ではないか、こう思うわけです。  大変抽象的な質問ですけれども、これはやはり極めて重大な、防衛問題を論ずるに当たって欠かすことのできない基本的な問題であろうと思いますので、その辺の見解を官房長官にお願いしたいと思います。
  79. 新井弘一

    ○新井政府委員 先生の、二十一世紀に向けて軍備力をできるだけ軽減し、むしろリソーシズを飢えと貧困、そういう方向に向けるべきであるという御説は、基本的にまさにそのとおりかと思います。これがまさに人類の理想であろうと私ども考えます。  ただ、現実問題としてどういうふうにこの理想に向かって進むか、この点については、冒頭官房長官から既に申し上げましたけれども、現在の国際間の平和というのが実際問題として核を含む均衡と抑止によって成り立っているのは客観的な事実である。そこで、我々西側を含めて現在努力しているのは、一方において西側の安全を確保しつつ、できるだけ話し合いによって東西間の軍備力のレベルを徐々に引き下げていく、そういう努力が現在具体的にはジュネーブにおける米ソ交渉という形であらわれている、私は、こういう行き方、進め方というのは、現実の国際社会において最も実際的な方法がというふうに考えております。いずれにしろ、先生が理想として説かれた点については、私は同感でございます。
  80. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 今、新井君がお答えいたしましたが、私はお伺いしておって、広瀬さんの理想的なお立場からの御意見、これは私も全く同じ考え方でございます。  ただ、私どもは、国民の生命と財産をこの厳しい国際社会の現実の中で守らなければならない、それがための最小限の自衛力を持ち、また積極的な外交活動を行うといったようなことで、国民に安心を与えなければならない役割を担っておるのだという点もひとつ御理解を賜りたい、かように思います。
  81. 広瀬秀吉

    広瀬委員 実は、これはきのう、八月二十六日の朝日の夕刊でございますが、ソ連のゴルバチョフ書記長が代表団を通じて国連本部の安保理事会において、安保理事国十五カ国の首脳会議を開こうと提案した、これにはアメリカがボイコットして入っていないということでありますが、「米ソ軍縮交渉をにらんだ政治的な発言」があったということが報道されております。それは「ソ連が軍縮を通じて第三世界の開発に協力していく姿勢を表明。」したものである。「軍縮で浮かせた軍備費をもとに開発のための基金を設立するよう提案している。」皆さんもお読みになっているだろうと思いますからあとずっと読みませんけれども、そういうことがソビエトからも提案されてきたということは、私は非常に重視しなければならない問題点であろう、こう思うのです。  このゴルバチョフ提案に対してアメリカは大変つれない返事をしている。見返りがない、メリットがない、こういうことのようでありますが、安保理事会等で安保理事国十五カ国が本当に全部こぞってこういうものを考えていく段階に来ているのではないかなという感じがするわけであります。それについての見解を聞きたいわけであります。  戦後、米ソ両極の軍事大国が相対峙して、最初アメリカが核兵器の開発が完全に早かったということでアメリカの優位な態勢、言うならば大陸封鎖的な考え方が行われてきた。しかし、ソ連もずく原爆をどんどん開発して、その面での優劣はつけがたいようになってきて、大陸封鎖戦略が崩壊せざるを得ない状況になる。その次には、今度は海洋封鎖、特にポラリス型潜水艦を中心とした戦力の全面的展開によってソ連を海洋から封じ込めようとする。こういうようなものに対して、SLBMの開発がソビエトでもどんどん行われる。これは物すごい金がかかっているだろうと思うのです。そういうようなことで、むしろ最近では核装備をしたソ連の原子力潜水艦がどんどんふえてきて、アメリカの優位が失われつつあるという事態を迎えている。そしてまた、そういうところから今度は宇宙からの対ソ封じ込めだということで、核抑止力というものを基本的な姿勢にしながら、核を使わない防御体制ということでSDIが構想されてきた。こういうような大きな戦後の変遷があるだろうと思うのです。  そういう中で、特にSDIの段階になったらアメリカ一国体制では到底経済的にあるいは技術的にそういう構想はでき上がらないということから、先進技術を持つ各国に協力を求めている、そういうこともあるわけであります。日本はこれに参加をした。そして、官房長官談話もそのことでお出しになった。ABM条約にも違反はしないとか、特に、核を廃絶するための非核の防御兵器である、これはレーザー光線だとか粒子ビームだとかいうものでやるのだということでありますが、そういうことを考えていきますと、これはもうとめどもなき国民に対する経済負担、国民の生活を必ず圧迫せざるを得ないような大変巨額な数字の試算をSDIではされているようであります。  これらの問題に対して私は、もうそろそろ自制をしないと、宇宙船地球号の運命はもちろんのこと、宇宙全体の軌道まで狂わせてしまうような大変なことになるのではないかというおそれを抱くわけであります。このおそれは私ひとりのものではないだろうと思うのです。というのは、例えばSDI構想によってそれが完成されたとき、X線レーザーだとか粒子ビームで撃ち落とすにしても、核ミサイルを三段階にわたって撃ち落としたということになれば、それが地球上に大変濃密に拡散するでありましょう。このことを忘れてはいけないだろうと思う。  あるいはまた、やがててアメリカがSDIを研究開発されれば、そういう装置を打ち上げて、そこからレーザー光線を出す、粒子ビームを出す、静止衛星になるのでしょうが、宇宙衛星的なもの本体に対する攻撃が行われることになったら、百兆円だとか百五十兆円だとか言われる開発費が、これもまた次の新しい対抗技術によって無意味に化することになったら、一体どれだけ行ったらやめるのか、これはもう本当にどうにもならないことになるのじゃないか。  取り越し苦労かもしれぬけれども、そういう点も私は考えて、これは経済の問題とは切り離して考えられないし、技術の援助だけではなくて、日米安保条約もあり、経済協力もその中ではあるのですから、やがて日本にも応分の負担を求めてくる。今や日本アメリカにかわって世界一の債権国になっておることも踏まえて、アメリカからSDI開発についての技術協力だけじゃなしに、経済面あるいは財政面での援助を要求してこざるを得ないような状況にまで発展するのではないだろうか。そして、それが人類に想像もつかないような危険を及ぼすのではないか、こんなふうに考えるのです。官房長官、その辺はいかがでございますか、SDI参加を、これは積極的に意義があると認められて談話まで発表された官房長官に、この点をお聞きしたいわけであります。
  82. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 今おっしゃるように、今日のような核兵器のとめどもなき拡充ということは大変な段階に達しておる、これは廃棄に向けて全力を挙げなければならない、人類の英知を傾けるべきであるという広瀬さんの御見識でございますが、全くそのとおりであろうと思います。  そういった中でSDI構想というものは出てきたと思います。SDIをめぐって、これは宇宙を核戦争の場にしてしまうのだといったような考え方も一部にあるやに承知しておりますけれども、私どもはさようには理解していないのです。このSDIの研究というものは、非核の防御兵器で核兵器を無力化することによって核兵器を廃絶する一つの研究である、こういう理解のもとに、同時に、これは次の世代への大きな技術発展の礎石を築くといったような意味合いもあるわけでございますが、そういったようなことで我々としてはこのSDI研究に理解を示し、参加するということを決定したわけでございます。決して宇宙を核の戦場にするといったような意味でこの研究に参加しておるわけではございません。
  83. 広瀬秀吉

    広瀬委員 SDI問題にお答えをいただいたわけでありますけれども、官房長官の時間もありますものですから時間を守りたいと思いますので、ちょっとおいでになるのが遅かった時間も考慮いたしましてちょうど四十五分でございますので、やむを得ません、SDIの問題についての私の見解とかなり距離があるということを確認いたしまして、もっと懸命な対策をこの問題ではやっていただかなければならないし、私の懸念についても的確には答えておられませんが、約束の時間でございますのでやむを得ません、続いて質問をさせていただきます。長官、どうぞ。  さて、官房長官がいなくなりましたから、今度は防衛庁長官お尋ねしたいと思います。  防衛庁長官、これはまさに防衛庁長官であり責任者でございます。しかも、国務大臣でございますので、閣議の構成メンバーでございます。そういう意味で、官房長官の続きをお伺いしたいのですけれども、これは外務省の方がいいのですか、その辺のところは判断をしてください。  先ほどSDIの問題で、これは大変な費用もかかるということで、日本にも費用の負担を要請されるような事態というのは全くないと言い切れるのかどうか、この辺のところをひとつ御答弁いただきたいと思います。
  84. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 SDIはやはり外務省からお答えをいただいた方がいいと思います。  ただ、先ほど来のお話を聞いておりまして、本当に世界の軍事費というのは大変なものだ、しかもその中の大半が米ソ両国ですよ、ですから、そこら辺を貧困にあえぐ人たちにやったらどんなにかよかろうというのは、私もこれは同感です。  私はワインバーガー長官とこれで三回会談したのですが、この間六月に来たときにはそういう話まで触れられませんでしたけれども、第一回目の昭和五十九年におけるワインバーガー長官との会談、昨年のワシントンでのワインバーガー長官との会談、一番最初に私が切り出したのは、私どもは防衛担当の責任者であるけれども、どうしたならば戦争がなくせるか、軍縮とか平和とか、そういう問題についてひとつ意見を聞きたいということで、両方二時間ぐらいの会談のうちの約一時間近くは私とっておるのですよ。ワインバーガー長官の最終的なあれは、私も同感なんだけれども、やはりソ連の方がなかなか応じない、どこに応じないかというと、検証のところになるとソ連はいつも逃げちゃう、だから実行可能な検証のところが問題なんだということを言っておりました。そこまできますと私の方はその実態がわかりませんから、そうですかということで話を終わったわけでございますが、最近グローバルな意味で、INF等の問題について、検証まで含んで話し合いがだんだんとできてきているという状況を聞きまして、これは大変結構なことだ、そういう方向でまとまればよいなというふうに考えております。
  85. 渡辺允

    渡辺(允)政府委員 先生から、SDIの問題で特に米国が日本に対して財政支出を求めてくるのではないかという御趣旨の御質問がございましたので、私からお答えをさせていただきたいと思います。  まず最初に、SDIと申しますのは、これは従来からもたびたび御答弁申し上げておりますけれども、今のところは技術を研究する研究計画の段階にあるわけでございます。研究をいたしまして、その結果、先生がおっしゃっておられましたような攻撃用の大陸間弾道ミサイルを防御するようなシステムができるかどうか、そういうことを検討するためのいわば技術を研究するプログラムなわけでございます。我が国といたしましてはそういうものとして理解をしてこれに参加をしたわけでございます。  それから、我が国が参加をしたということの意味でございますけれども、これは政府としてどうこうということではございませんで、このSDI研究計画の中に非常に数多くの技術の研究のプロジェクトがございます。それで、そのプロジェクトの一つ一つにつきまして、日本でそれに参加をしてみたいという希望を持たれる企業なり研究機関なりがありました場合に、その手続に応じてそれに参加をするということなわけでございます。  これまでのところ、米国政府は当初五カ年で二百六十億ドルという研究費を計上して研究を始めたわけでございますが、その後、議会でこの予算については査定を受けておりますので、たしか全体で八十億ドルくらいだったかと思いますが、その程度の研究費をこれまでに使っておるということでございます。いずれにいたしましても、米国といたしましては、この段階で外国からの財政支出を求めるという考えは全く持っておらないというふうに私どもは理解しておりますし、そういう兆候は全くございません。  いずれにいたしましても、我が国の場合には、先ほど申し上げましたような形での参加が我が国の参加でございますので、政府の資金をこのSDI参加のために支出するということは全く考えておりません。
  86. 広瀬秀吉

    広瀬委員 SDIの問題では、軍事問題評論家、学者などからそういうことも危惧されているというようなことで私もそういう質問をしてみたわけですけれども、最初研究段階で五カ年で二百六十億ドルだということですから、まだまだその段階ではそういうことにはならぬでしょうけれども、そういう危険性だってある。そうでもしなければアメリカ経済が恐らくもたないくらいの大変な出費になるであろうということで、アメリカ国民の反響も呼び起こしておるという事実もあるようですし、この導入の問題をめぐって、やがて配備をするというような問題についても、研究開発の問題についても、アメリカの良心的なというか、あるいは非常に現実的に物事を見つめる科学者の多くが反対しているというようなこともあるわけであります。  そこで、ちょっと関連して伺いたいのですが、それぞれのプロジェクトに日本の企業で参加をしたい、協力をしたいというものはその後どういう状況になっておりますか。どういう部面でどのくらいの数の企業グループがそれに参加をする表明をして、現実にもう手続は終わっているのかどうか、その辺のところを説明してください。
  87. 渡辺允

    渡辺(允)政府委員 お答え申し上げます。  我が国のSDIの参加の問題につきましては、御承知のように、七月二十二日でございましたか、ワシントンで政府間の取り決めを結んだわけでございます。この取り決めの中身と申しますのは、先ほど私が申し上げましたような日本の企業等の参加がありました場合に、その参加ができる限り円滑にいきますような一つの枠組みと申しますか、そういうものを政府の間であらかじめ合意をしておこうという性格のものでございます。  したがいまして、その取り決めができまして、今後はそれぞれの企業が関心を持った場合に参加をしていくということになるわけでございますが、基本的に申し上げますと、おおよその場合にプロジェクトにつきましてはそれがある意味の競争入札にかけられるわけでございます。したがって、それに参加を希望する企業はそれに応札をいたしまして、ほかの企業との競争の結果、それを落札した場合にその研究を行うという段取りになるわけでございます。  それで、日本の企業の中でもこのSDIの問題に関心を持っておられる企業はあるというふうに私も聞いてはおりますけれども、現在それ以上その参加の具体的な段取りがあるかどうかについては必ずしも承知をいたしておりません。
  88. 広瀬秀吉

    広瀬委員 続いて伺いますが、どのくらいの分野でどういう企業が幾つくらい参加をするという状況にあるのかということ、これは通産でないとわからないですか、そういう点は把握をされてないか。あるいはまた、現実的に企業が向こうのプロジェクトに参加をしたい、それではこの技術開発のために日本の企業は幾らで応札しますというような段取りが実際に進行するのは一体いつごろになるのですか。
  89. 深沢亘

    ○深沢政府委員 お答えいたします。  今、先生のそういう具体的な動きいかんという点でございますけれども、そういう希望をしているところはあるというふうには聞いておりますけれども、具体的に現在何社がどういう形で向こうのその入札に応じていくかということにつきましてはまだ把握してございません。
  90. 広瀬秀吉

    広瀬委員 それでは何にもわかってない、後はもう企業に任せっきり、国内における審査だとか希望の受け付けであるとかいうようなことは、お互い向こうのプロジェクトとこちらの企業グループで関心のあるものは勝手にやる、通産省も知らなければ外務省も知らない、こういう事態の中で進行するわけですか。
  91. 深沢亘

    ○深沢政府委員 入札等いたします場合に事前に所管の官庁の方に報告する等にはなってございません。
  92. 広瀬秀吉

    広瀬委員 この問題はこれ以上お聞きしてもむだだと思いますので、次の質問に移ります。  防衛庁に聞きますが、これは長官でなくても結構です。  ソビエトが保有している核弾頭及び運搬手段であるミサイル、特にICBM、今度のSDIの目指すものはやはりICBMが中心になるだろうと思うのです。これを三段階に分けて攻撃をして破壊をする、炎上させるというような構想のようですから、どのくらいの数をソビエトは保有しているのでしょうか。
  93. 瀬木博基

    ○瀬木政府委員 先生の御質問の趣旨は、恐らくいわゆる核の手段といいますか、それの数であろうと思いますが、戦略核兵器、核戦力と申しますか、大陸弾で米ソ間でありますものはICBMというもので、一番新しい数字でソ連でおよそ千四百基、それからソ連のSLBMと申します潜水艦から撃つ弾道弾がおよそれ百八十基、それから戦略爆撃機がおよそ百六十基、こういうことでございます。  これはいわゆる大陸弾、米ソ間に届くものでございまして、他方、今問題になっておりますINFというものがございます。これは、最も有名なものといたしましてSS20というものがあるわけでございますが、このSS20が百四十一基ということが言われております。他方、そのINFの中でSS20のような長距離でないいわゆるSRINFというもの、さらに短いSNFというものがその外数としてさらにございます。
  94. 広瀬秀吉

    広瀬委員 SDI構想、スターウォーズ作戦だとかなんとか言われておりますけれども、SDIというのはやはり核弾頭をつけたICBMに対する対抗ということで、核をなくすのだ、核弾頭を地球上から消滅させる究極の核抑止戦略である、こういう核絶滅の考え方であるということが構想として出されているわけですね。そうだと思うのですが、いかがですか。
  95. 瀬木博基

    ○瀬木政府委員 まず冒頭、私先ほど数字を申し上げた中で、INFの中のSS20について百四十一と申したかもしれませんが、四百四十一の誤りでございます。  それで、SDIにつきましては、レーガン大統領がこの構想を発表いたしましたときのねらいはやはりICBMというものをねらいにした構想であると思いますが、他方、これはあくまでも一つの構想でございますから、さらにこれが成功するということになった場合にICBM以外のものにも応用できるかどうか、そういうような発展ができるかどうかというのは、これからの研究課題であろうかと思います。
  96. 広瀬秀吉

    広瀬委員 SDI問題は、そのくらいにしまして、冒頭から申し上げておりますように、自衛隊憲法違反的存在であると仮にいたしましても、非核原則というのは、広島、長崎の被爆原体験を持つ日本国民として当然の国是ともいうべきものであることは間違いないわけであります。これはこの委員会でも、いろいろ最近のノーチラス報告というようなものをめぐって、もう既にそういうものが持ち込まれておるのではないか、そしてそれを処理する組織も日本にあるのではないかというような疑問が呈されて質問が行われたわけでありますが、非核原則は厳格に守られているというように言うことができますか、防衛庁長官、いかがでございますか。
  97. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 これは所管が外務省になっておりますが、国務大臣としては、守られておると確信しております。
  98. 渡辺允

    渡辺(允)政府委員 非核原則は厳格に遵守をいたしております。したがいまして、ただいま先生の御質問のいわゆる核の持ち込みの問題の関係から申しましても、これも従来から御答弁申し上げておるところでございますけれども、いわゆる核の持ち込みないし装備における重要な変更につきましては事前協議を行うことが安保条約及び関連取り決め上の米国の義務となっております。米国はこの条約上義務を誠実に遵守するということを何回も申しております。我が方としては、事前協議があればこれを必ず拒否するということを言っておりますので、その観点においても非核原則は厳重に遵守されていると考えます。
  99. 広瀬秀吉

    広瀬委員 これはどうしても押し問答になってしまいまして、はっきりしたことを我々は検証するすべもないという問題です。これはもう当然事前協議の対象になるのだということも言われておるのですけれども、事前協議がないからないはずであるという推測の域を出ないといういら立ちを何となく感じながら、これを検証するすべがないということで我々大変残念に思うわけでありますが、もはやライシャワー証言などによっても、もう日本に核が持ち込まれたりあるいは通過をしている、原潜が寄港していたり核兵器を運搬をして立ち寄ったというようなことなんかがある、あるいは持ち込まれているのは当然じゃないかというようなことまで言われている。そういう意味で、二原則半だとか、あるいは、厳密にはつくらず、持たずはそのとおりだけれども、持ち込ませずということはほとんど無意味になっているのではないかという国民の疑惑はなかなか晴れないだろうと私は思うのです。  そういう点でも、これは常にアメリカ政府というか軍部というようなところへ、平和憲法を持つ日本において非核原則の持つ意味がどれほど重要なものであるかということを、事あるごとに、長官も最近またアメリカに行かれるようでありますが、そういう中でも厳しくそういう要求はしておいていただくようにお願いをしておきたいと思います。これは答弁は要りません。  さて、専守防衛という問題でございますが、一つの理論的なというか頭の中で考える構想として専守防衛ということは現実に我々もイメージできるのですけれども、その専守防衛という枠の中でどれだけの装備が必要なのかというようなことは、本当に時々刻々あるいは相手の出方によって変わるかもしれないということもあるわけであります。これは最近いわゆるシーレーン防衛というような問題、さらに洋上防空というようなことで、防衛の範囲というものが、打って出る形、日本国の領土、領海からさらに千海里先、その千海里だってわかったものではない、マラッカ海峡までということになれば二千七百海里になる、ホルムズまで将来延びるというようなことなんかについて、何かどうも歯どめがないような気もいたします。専守防衛というものの範囲というものは一体どういうものなのかということと、シーレーン防衛あるいは洋上防空、最近の相手側のミサイルも非常に長距離化しているというようなことが一つの契機にもなって、防衛局長もそういう説明をされておったようですが、こういうものとの関連を防衛庁長官としてはどのように整理をされお考えになっているのか、その辺のところをお聞かせいただきたい、こういうふうに思います。
  100. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 専守防衛というのは、既にたびたび論議をされておりますように、我が国が武力攻撃を受けた、そのときに我が国の固有の自衛権の発動、そういうことで必要最小限度防衛力を持つ、これが基本的な考え方だろうと思います。具体的にそれをどうしてやるんだというようなことから大綱ができ、そして中期防衛力整備計画というようなものになっておるわけでございます。  それから、洋上防空とかシーレーン防衛とかいろいろなことが出ますけれども、これもるる申し上げているとおり、いろいろ軍事技術というものが非常に進歩してくる、特に経空脅威というものが、今まで考えられないように大変性能のいい航空機が出てきたあるいはミサイルが出てきた、そういう装備とかそういうものが変わるに従いまして戦術とか戦略というのは当然変わってくる、それに対応するものとしていろいろと出てくる、こういうふうに考えております。
  101. 広瀬秀吉

    広瀬委員 日米安保条約の範囲というのか、有効に機能する範囲というのは、随分これはこの協定ができるころ、あるいはまた六〇年安保のころも議論されたはずであります。極東の範囲世どうなんだということで、十八回同じ質問を吉田総理に向かって我が党の横路節雄さんがやったこともあるわけですね。そういうものが、いわゆる日米防衛協力指針ですか、ガイドライン、あれを設定して以来どんどん広がってくる。  そして特に、鈴木総理がレーガン大統領と会った際にいわゆるシーレーン防衛千海里というようなことを出された。この千海里に今とどまっていると見ていいんですか、それともマラッカ海峡まであるいはホルムズまであり得るのか。兵器の開発、武器の開発というようなものが非常に急激に変化している、進展しているというようなことで固定的にはなかなか考えられないといったような答弁があったわけですけれども、その辺のシーレーンの防衛範囲というのは一体どの辺のところまでアメリカからどういう要求を受けているのか。鈴木総理が言った千海里、これでも当時国内に大ショックを与えたわけですが、その辺のところは一体どういう状況になっているんですか。これは無限なんですか。
  102. 西廣整輝

    西廣政府委員 先生のお尋ねにありました安保条約の極東の範囲というのは、日本の基地を使用して行うアメリカの極東の範囲、アメリカが行動する極東の範囲という意味で、後からお尋ねシーレーン防衛の関係とは若干違うと思いますが、シーレーンの方についてお答え申し上げますと、日本自身、本委員会でもたびたびお答えしたように、我が国の生存を確保するための物資等の輸送に当たっている船舶の安全を守るということで、海上交通の保護ということは随分昔から考えられておりました。  例えば二次防時代、ですから昭和三十年代でございますけれども、当時の、今で言うシーレーン防衛、海上交通の保護の考え方は、大体船団護衛という形でサイパンあたりまでやりたいという考え方を持っておったようであります。その後いろいろ変遷は経ましたけれども、現状も当時と基本的な考え方は変わらない、やはり千マイルといいますとほぼサイパンあたりになろうかと思いますけれども、その程度のものについては自分である程度の船舶護衛ができるようにするということであります。  ただ、先ほど申しましたように、国民の生存を守る物資といいましても、逐次日本の工業が発展し、その他いろいろな面で人口がふえたりしてまいりますと、そういう必需物資というものがふえてまいります。したがって、二次防当時のようにすべて船団護衛でやるというようなことでは間に合わないということも考えられますので、その後いろいろ研究された海上交通保護の考え方というものの中に、いわゆる航路帯防衛というような考え方があります。航路帯防衛というのは、ある航路帯、一つの航路について相手の潜水艦なり航空機が近寄らないように哨戒をする、そしてその航路帯を船舶におのがじし走らせるというような考え方であります。  その場合について、これまた政府がかねがね申し上げているように、航路帯を設ける場合には千マイルということを申し上げておるわけであります。したがって、我が国の海上交通保護能力につきましては、いわゆる面として守るといいますか、そういうものについては我が国周辺数百海里の海域、それから航路帯を設けるような外航航路につきましては、内航航路、外航航路というような二方面について千マイル程度のものをやり得る防衛力というものを……(広瀬委員「マイルと海里と同じですか」と呼ぶ)マイルと海里と同じでございます。大体一海里が千八百メートルぐらいになりますが、それが可能な海上防衛力というものを整備するということで、大綱以来終始そういう考え方で進んでおります。
  103. 広瀬秀吉

    広瀬委員 鈴木総理が約束したその千海里ぐらいのところだということですから、マラッカ海峡まで行くというようなことは考えていないと確認してよろしいですね。イエスかノーかで。
  104. 西廣整輝

    西廣政府委員 防衛力整備の対象といたしましては、たびたび申し上げるようですが周辺海域数百海里、航路帯を設ける場合に千海里程度の防衛力を持つということでございます。  なお、実際のオペレーションの際にどうなるかということにつきましては、これはそのときの態様によるわけでございますが、いろいろな使い方があろうと思います。一昨日ですがお答え申し上げたと思いますけれども、結局同じある一定の防衛力でございますので、遠くなればなるほど面が線になり線が点になってしまうということで、おのずからやり得ることの範囲が狭まってくるというようにお考えいただいたらよろしかろうと思います。
  105. 広瀬秀吉

    広瀬委員 防衛白書の何ページでしたか、北朝鮮は、韓国軍が保有している米国製のヒューズ500ヘリコプター、これは対戦車ヘリコプターだと思われるのですが、これが第三国を経由して導入されている、北朝鮮にある、こういう表現があるのですが、少なくとも権威ある防衛白書にこういう文言があるわけですね。記述があるわけです。  これは一体、ココムの問題というのは、東芝のNC工作機械輸出で、東芝バッシングだけじゃなくて外為法まで改正しなければならぬというように、日本に対する大変日本たたきに利用されたのに、そういうものが第三国を経由して向こうに行っている。これはまさに対共産圏、朝鮮民主主義人民共和国もココムの対象に当然なっているはずでありますが、そういう問題をこういう言い切った形で書いておられる。そこでココムの問題は何ら提起されなかったのでしょうか。その辺のところを伺います。
  106. 瀬木博基

    ○瀬木政府委員 防衛白書に記述いたしました事実につきましては、これは八五年にアメリカの商務省が発表いたしておりまして、この関連で、貿易に従事いたしましたアメリカの会社及び西ドイツの会社がそれぞれの国の法律のもとで何らかの政府による制裁措置を受けておると承知いたしておりますが、ココムの関係については防衛庁としてはちょっと存じません。
  107. 広瀬秀吉

    広瀬委員 どうもアメリカのやり方というのは、こういうことを自分のところで発表しておって、これは国際的情報化時代ですから、我々の耳にだって、こういうことがココム違反であった、まさにココム違反だろうと思うのですが、軍用のヘリコプターがアメリカ製の同じものが向こうへ行っているということを言い切って、それで西独も関与したらしい、アメリカの企業も関与したらしい、そういうものはどういう制裁を受けて、あるいは西独との関係でどういう話があったのか、その辺のところを少なくとも防衛白書に書く。  そしてまた、東芝問題であれだけ東芝バッシングが行われたというようなことで、これは日本としては、こういうことを自分のところでやっておきながら、自分のところの企業がやっておきながら、西独を通じて行ったのかどうか知りませんけれども、その辺のところは、これは余りにも自分のところはいいかげんにして、貿易摩擦の非常に熾烈化している日米関係においてその代表として東芝を血祭りに上げたという、こういうようなことは何ともどうも一日本人としても了解しがたいところなんですね。  これなんかはやはりアメリカに対して、こういうことをやっておってなぜ、東芝のNC工作機械がソ連の潜水艦のスクリュー音を低音化するために役立ったんだという、これだって確証があるわけではない。その疑いはあるであろうということを日本政府も決めたようですけれども、そういう因果関係なんということではなしに、そのものずばりの武器を輸出しているというようなことについて、もっとシビアにアメリカに対しても対処すべきだろうと思うのですが、いかがでございますか。
  108. 渋谷治彦

    ○渋谷説明員 ヒューズ社のヘリコプターにつきましては、北朝鮮に渡ったという事実が新聞に問題になりました時点で私どもは調査いたしましたけれども、あのヒューズ社のヘリコプター自体はココムの規制対象にはなっておりません。いわゆる汎用品ということでございます。
  109. 広瀬秀吉

    広瀬委員 これは軍用に使われてないヘリコプターですか。それならなぜこの防衛白書にそんなことを書くのですか。
  110. 瀬木博基

    ○瀬木政府委員 このヘリコプターは韓国が非常に問題にしておるわけでございますが、それは韓国軍が同じ型のヘリコプターを使っているという意味で、軍用品であると汎用品であるとを問わず、同じ型のヘリコプターを仮に北朝鮮が使用して韓国の国内に対して何らかの行動をとった場合に、これは見分けがたい、そういう理由で韓国軍が問題にしたと我々は承知いたしております。
  111. 広瀬秀吉

    広瀬委員 どうも答弁もあいまいなところを残したままですけれども、これ以上追及しませんが、少なくとも向こうの軍用に使われているということで、アメリカ製のものが第三国を通じて朝鮮民主主義人民共和国で使われているのだ。汎用品だというならば、一体こういうことを書く必要があったのか。外為法はきょう衆議院を通過したわけですけれども、汎用品とココム違反品目というようなことで、ココム違反品目にはヘリコプターの輸出というようなことがないのですか、どうなんです。  ココムの問題についてもこの際聞いておきたいのですけれども、ココムというのは一体何なんですか。そしてどこに事務所があって、どういう人が国際的に駐在をして、どこが主導権を持ってこの運営を図っているのか、これは外務省になるかと思いますが、この辺のところも聞かしていただきたい。
  112. 深沢亘

    ○深沢政府委員 先生今ココムとはどういうものかという御指摘でございますけれども、一九四九年に発足してございまして、御案内のとおりの自由主義諸国の非公式の協議の場でございます。それで、自由主義諸国の安全保障上の観点から戦略物資の流出ということについての規制をいろいろしようとしているわけでございますが、御質問の事務所などにつきましてはパリにございます。
  113. 広瀬秀吉

    広瀬委員 そういうことになりますと、これはまことにあいまいもこたる存在であって非常におかしいあれだし、東西対立の緩和というような世界的な大勢からいきましても、そういうものはむしろ東西の交流というものを、これは西の陣営と東の陣営が分かれている、一方の極はアメリカである一方の極はソ連であるという対立の構図というものを打破するためにも、それらの問題についてはむしろ、片方がやれば必ず何年がおくれてでもソビエトが追いついてくるということで、とめどもなき軍拡競争にならざるを得ないわけですから、本来ならばそういうものは、日本にも武器輸出禁止法というようなものがあるのですから、そういうような形で処理をすればいいのに、外為法まで改正してというようなことはどうも行き過ぎだなという感じがするわけです。  結局、今の答弁によりますと、アメリカのペンタゴンが考えて、これはいかぬと言えばもうそれにみんな従わなければならぬというようなことで、まことにあいまいな存在だなという感じが否めないわけであります。  時間も余りなくなったものですから、最後にGNP一%、これは冒頭から申し上げましたけれども、防衛庁長官としてはこの問題について今後どういうようにしていくか。ことしはGNPがどれだけ膨らむかまだ確たるあれはございませんけれども、しかしGNPの%はこれからもふえていくだろうという想定で、総額明示方式十八兆四千億ということも五年間で出しておられるというようなことでいけば、ことしの経済成長がどのくらいであるかこれはまだ未知数であるけれども、少なくともことしの予算では〇・〇〇四%超過をしたということで、もう突破の実績をつくろうとされたわけであります。  この歯どめが、一%という歯どめさえあればもう自衛隊はそれでいいのだということではありません、もちろん我々も、自衛隊増強というのは、内部の装備のあれは相対的な関係ですから変えていくにしても、総枠では一%枠というようなものの中で専守防衛というのは図られるし、しかも日本は、最近の円高・ドル安というような状況を踏まえてドル計算をすれば世界第三位か第四位、イギリスとほぼ同じぐらいのレベルだろう、米ソ日あるいは英というぐらいになっているというような状況も踏まえて、軍事大国にならない、そして専守防衛を貫くんだということになれば、一%枠というものを、十年間尊重してきた政府の態度でもあるのに、なぜ今突破せざるを得ないのかという点で疑問を持たざるを得ない。そういう意味で、この点についての防衛庁長官の所見を伺って、私の質問を終わりたいと思います。
  114. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 一%の枠を超えざるを得なかった、そこで新たな防衛力整備閣議決定を一月二十四日に行ったわけでございます。その閣議決定に従いまして、節度のある防衛力整備をこれからも続けてまいりたいと考えております。
  115. 広瀬秀吉

    広瀬委員 防衛庁長官、再任をされるかどうかわかりませんけれども、しかし政治家としても与党の中で大物であるわけですから、日本憲法の平和主義というものを大事にする、そして平和主義は同時に基本的人権を守ることであり国民の生活を守ることであるという理念を踏まえて、意味のない一%ではなかったんだということをよくよく肝に銘じてこれからもしっかり努力をしていただきたい、このことの要望を最後につけ加えて、質問を終わります。
  116. 石川要三

    石川委員長 鈴切康雄君。
  117. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 私は、いわゆる防衛三法の質疑に入る前に、私の地元の問題として三宅島の問題がございますので、ぜひその問題から入らせていただきたいと思うわけであります。  三宅島の問題についてはもう既に政治問題化いたしております。今回、防衛庁が気象観測用の鉄柱を立てるということで、三本のうち二本立てて、一本が現在島民の反対に遭って中止をしているわけでありますが、この問題についても少なくとも九月に入りますとその攻防が続けられるのじゃないかという心配がされてなりません。私は、この種の問題については、島民の意思を尊重するという立場からいうならば、一刻も早く解決をしてもらいたいなと願う一人でございますけれども、そういうことから考えまして、この問題を含めて、これからなるべく抽象的なことを省いて具体的な問題でいろいろと質問をしてまいりたいと思っている次第でございます。  御存じのとおり、米軍の艦載機の夜間離発着訓練で厚木基地周辺では政治問題化し、その代替地として、防衛施設庁としては三宅島を候補地として固執しているようでありますけれども、三宅島の島民の八〇%以上が基地建設には反対の意思を明確にしているわけでございます。防衛施設庁、防衛庁は、島民が反対しているにもかかわらずなぜこれに固執されようとしているのか。なお、代替地について、防衛庁としては三つの可能性、その一つとして既存の飛行場、二つ目が新しい飛行場、三つ目には洋上の浮体構造工法による飛行場ということを検討されたと言っておりますが、米側では三宅島を名指しでNLP基地として指定をしてきたのか、さもなければ、防衛庁として候補地として最善であるという判断で選定をされているのか、どちらなんでしょうか。
  118. 友藤一隆

    友藤政府委員 お答えを申し上げたいと思います。  お尋ねの空母艦載機の着陸訓練場の問題でございますが、御案内のとおり、日米安保体制の効果的運用には艦載機のパイロットの練度維持が大変重要でございまして、ぜひその練度維持に必要な訓練場を確保してもらいたい、これは米側の切なる要請でございます。したがいまして、私ども、今お尋ねがございましたように現在厚木で行っておりますが、厚木が基地といたしましても、そこから合理的に訓練に出かけられる範囲、大体百五十キロ圏ということになりますが、その範囲内で適切な訓練場を検討いたしたわけでございます。  それで、なぜ三宅島かということのお答えになるかと思いますけれども、その際、既設の飛行場あるいは新設の可能性、浮体構造、こういったものについて我々としては相当精密に一生懸命検討させていただいたわけでございますが、諸条件から申し上げまして三宅島ほど立地条件がすぐれておるところがほかにございませんので、現在、三宅島にぜひお願いをしたいということで御理解を求めておるところでございます。  その理由を若干申し上げたいと思いますが、まず、今申し上げましたように厚木から一応近いということ。それから、内陸部の既設の飛行場について検討したわけでございますけれども、いずれも周辺に人家が相当集まっておるとかあるいは地形的に無理があるとかで、内陸部においてはこれに向く訓練場がございません。それが内陸部に適地が見つからなかったということの立地条件上の大きな理由でございます。  それから、今お尋ねの浮体の飛行場でございますが、これは空母の艦載機のパイロットの訓練に使います上からは、空母は比較的短いところから発艦したり着艦したりするわけでございますが、そのための訓練ということになりますと、どうしても約二千メートルクラスあるいはそれ以上の長さを必要といたします。したがいまして、この程度の長さになる構造物を外洋に浮かべて訓練をするということになりますと、そもそもそういった構造物をつくるための技術的な問題、これがまだ世界に例が御案内のとおりございませんし、未知の分野であるということがございます。それに、海の上でございましても、近海ということになりますと、設置場所の点で広大な海域が必要でございますし、漁業でございますとか航路等の障害になる可能性もございますので、そういった点の配慮もしなくてはいけないという問題がございます。それからさらに、こういった大きな構造体をつくるということになりますと、建設経費、それに維持のためのメンテナンスの経費が大変膨大にかかるということもございます。さらに、使用期間が年間七、八十日ということになりますと、それ以外の間の維持管理をどうするかというような管理上の問題もございますし、何よりも米軍がこういった形での訓練というものについて希望していないというような問題が多々ございまして、浮体飛行場については私どもとしては適切でないという検討結果が出ております。  したがいまして、適地調査ということで先ほど申し上げましたように内陸部から島嶼方面すべて精密に検討いたしました結果、三宅島が一番すぐれた立地条件であるということで私どもは判断をいたしておるわけでございますが、それには近いということが一つと、それから、海岸側に滑走路を設定いたしましてNLPのための周回コースを海上側に設定いたしますと騒音の影響はほとんど海上の方へ出てまいりますので、騒音の影響が最小限になるということが一つ。それから、そういった形で運用をいたしますと、住宅地区での飛行というものがほとんどございませんので、若干かかる部分については十分な防音措置を行いますにしましても、ほとんど多くの住宅地域はかかるというようなことはございません。そういうことから墜落事故の被害の心配もない、あるいは夜間照明も少のうございますので……
  119. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 あなた、私の質問に何も答えてないじゃないですか。そんなことを私は聞こうとしているのじゃありません。  具体的に米側では三宅島を名指しでNLP基地として指定をしているのか、さもなければ、防衛庁は最善の基地だということで候補地にしているのか、それしか聞いていませんよ。あなた何を言っているのですか。そんな防衛庁のPRを聞こうと私は思いません。
  120. 友藤一隆

    友藤政府委員 失礼いたしました。今、それを御答弁申し上げるところでございます。  そういうような検討をいたしまして、私どもが自主的にここが最適であるというふうに決断をいたしたものでございまして、米側から特にこの場所というようなことではございませんで、私どもの判断でございます。
  121. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 それだけ言えばもう事は済むわけであって、何もそんな防衛庁のPRを私は聞こうと思っていないのです。防衛庁が三宅島に標的を絞って強行の態度に出れば出るほど、島民の反対の意思は強化されるばかりか、しかも三宅島を最善の候補地であると防衛庁は言っておりますけれども、これは私にしてみればまことに近視眼的な見方である。  私の方から申し上げますと、こういうことじゃないですか。三宅島というのは十数年間に一回噴火が繰り返されているわけです。地震の多発地帯であるわけです。そこにNLP基地をつくるとかうことは、危険性からいって問題がまずあるということ。  それからもう一つは、三宅島というのは動植物の豊庫である。世界的に有名なアカコッコ等の鳥類の絶滅も心配される。既にイギリスのエジンバラ公が、自然保護関係の会長をされている立場から中曽根総理大臣に、三宅島のタッチ・アンド・ゴー基地については考慮してもらいたい、すなわち反対であるという要請が来ているわけです。  もう一つは、アメリカは、たとえNLP基地が防衛庁の言うような強引なやり方でつくられたとしても、五〇%以上の島民の反対がある以上、何といっても日米関係にもひびが入り、影響するし、運航自体にも支障を来すおそれがあるということで大変に心配している向きがある。それにもかかわらず、なぜ三宅島に固執されるのか。  しかも、三宅島を中心として伊豆七島は一千二百万都民の憩いの場であり、国立公園ですよ。その自然環境を破壊するようなやり方をあえてやる。もう観光客だって恐らく三宅島には来るはずはない。騒音でうるさいのにどうして憩いの場所とすることができましょうか。  今まで政府は代替地案について本当に熟考してきたかどうか、私は疑問を抱かざるを得ません。今言いましたように、もちろん日米関係の悪化あるいは噴火の危険性、自然環境の破壊、動植物の絶滅、こういうことからも代替地としては余りにも多くの欠点があるわけです。このことについてはアメリカのジャパンタイムズにおいても、まことに近視眼的な政府の見方だということで随分批判をしているという状況であります。  先ほどあなたは、アメリカは浮体工法を希望していない、こう言いましたね、希望していないという答弁がありましたけれども、それでは、アメリカとして公式に意思表示をされたの赤、もしそうだとするならば、いつ、いかなる場所で、だれが表明したのか、具体的な問題としてお聞きします。
  122. 友藤一隆

    友藤政府委員 まず最後の問題についてお答えいたしますが、公式に返事があったということではございませんで、私どもが検討の過程で内々に希望等についていろいろ聞き合わせた過程において出てきておる意見でございます。
  123. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 実際には公式にいわゆる意思表明していないのです。なぜかというと、それは日本政府が厚木基地の代替地として三宅島ということで今一生懸命やっています、検討しています、こういうふうにあなたの方でアメリカに報告しているにすぎないわけです。だから、アメリカはそういうことからいうとじっと見ているわけであって、先ほどもお話があったように、アメリカが名指しで三宅島ということを言ったというんじゃないのじゃないでしょうか。そうでしょう。要するに、あなたの方で、三宅島が私どもにとっては最善ですからと言う以上、アメリカの方ではそれ以上のことが言えますか。それ以上のことを言ったら、さらにその問題で日本に足かせをしたら、それこそ主権の問題でしょう。だからあなたが言っていることは要するにいいかげんなんですよ。公式にアメリカではだれもそんなこと宣言っちゃいませんよ。いいですか。何かそのことについて反論しなさいよ。
  124. 友藤一隆

    友藤政府委員 一応お答えを申し上げたいと思いますが、御案内のとおり、施設、区域の提供ということになりますと、相当かたい話と申しますか、しっかりした根拠に基づいて今まで話題に上せてきておりましてそういう意味合いから非公式というふうに申し上げておるわけでございます。  ただ、提供に先立ちましては、いろいろ意向を伺ったり内意を聞いたりすることは通常でございますし、それに沿って提供についての諸般の手続を進めて、最後に公式的な形で持っていくということでやっておりますので、その辺の御理解はいただきたいと思います。
  125. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 いや、それはもし公式でそういうふうな話があるならば、いつどこでだれがそのことについて明確に話をしたということを明らかにしていただかなければ公式ではありませんよ、そんなのは。そうじゃないですか。  それでは、アメリカはNLPの基地は絶対に陸上でなくてはだめだと今でもそのように主張されていますか。だめだというならその根拠を示してください。
  126. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 三宅島が適地だというふうに認めているのは防衛庁であります、これは当然のことながら。ただし、アメリカが浮体工事でやれるものならやってもらいたいという意思表示は一つもない。なぜないか。日米間ではいろいろな話をしょっちゅうやっているのですよ、そういうことよりもこういうことをした方がいいということはこれに限らずあるわけです。ところが、アメリカの方から浮体工事について考えてみてください、やってくださいということはない。むしろ我々の方が、浮体工事についていろいろ検討してみたところ、これはなかなか大変だということについて、それはそれなりに了承しているわけです。  ですから、本当にアメリカが困って浮体工事でもいいというならば、今までもそれが出てくるはずだ。私は三回も四回もワインバーガー長官と会っている。そういう話の中でアメリカとしては浮体工事は望まない、これはそういう意思表示です。文書に書いてどうこうじゃない、これはもう長官同士の話の中でそういうことなんです。ただし、三宅島にお願いしているのは防衛庁考え方でお願いをしている、そういうことです。
  127. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そうしますと、今アメリカでは浮体工法では希望してないということであるとするならば、私が今質問するのは、NLPの基地は絶対に陸上でなくてはだめだというふうに主張されているのかどうか。だめだというのはどういう根拠なんでしょうかと私は申し上げている。
  128. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 ですから、物事の言葉ですね。もう陸上でなければ絶対だめですよ、こういう言葉を使う使わないでなしに、浮体工事か陸上かということです、今の選択肢とすれば。その場合に、浮体工事については向こうの方は触れてこない、そういうことからしますとアメリカが望んでないことは明瞭であります。
  129. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 あなたは、アメリカは浮体工法について何ら言わないんだ、そういうことをおっしゃいましたね。  そこで、私はあなたにお聞きいたしますけれども、洋上における浮体構造工法による飛行場について、NLPの必要項目である機能及び設備を十分に満足をさせるものであるならば。米側がNLPの浮体工法を受け入れるかどうかということをアメリカ防衛庁は聞いてみたことがありますか。
  130. 友藤一隆

    友藤政府委員 非公式には聞いておるということでございます。
  131. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 それじゃ、非公式に浮体工法はだめですよとアメリカの方でそのように言われた、こうとっていいんでしょうか。今のこの時点において、あのようにして三宅島がもう大変な騒ぎになっています、島民の方々は大変です、こういう状況の中にあって、ごり押しの態度を防衛庁がずっと続けるというよりも、むしろ話し合いを続けなければならないのはアメリカ防衛庁との関係じゃないですか。防衛庁アメリカとの関係で話し合いもしないで、ただ三宅島、三宅島と言うんでは、これはもう何をか言わんやですよ。  先ほども言いました。確かにお金がかかる、それからまた運営上に若干金がかかる、これはそのとおりだと思いますよ。しかし、浮体工法というものは、今やこれだけ科学が進歩し、今日までいろいろと研究もされ、一点係留方式で約百メートルから二百メートルくらいの深さであるならばもう完全。あなたはそれはまだ未知だ。未知なわけです、まだできていないんだから。しかし、あらゆる角度から運輸省の方ももう研究しているし、あらゆるところが研究した結果、そういう問題については、例えば百年に一遍の大きな台風があったってびくともしませんよ。風速二十五メートルではわずか何センチかのずれしかないですよ。それはアメリカの方だって研究しているんですよ。  だから、防衛施設庁長官も、三宅島、三宅島と言うんでなくして、少なくともアメリカと浮体工法について、アメリカはあなたが言うとおり浮体工法は非公式ではそれを好まないと言っているけれども、国会で論戦して、このような格好で一応浮体工法についてもアメリカに聞いてみなさい、ただしてみなさいということがここで言われたとするならば、あなたは当然防衛施設庁長官としてそれをやるべきじゃないでしょうか、それについてどうなんですか。それでもおやりにならぬというのですか。
  132. 友藤一隆

    友藤政府委員 先生がかねてから浮体工法について大変御関心が高いということは私どももよく承知をいたしておりますし、その辺の経緯については米側もよく承知をいたしております。  それで、先ほどのお答えでございますが、米側に問い合わせてみました結果は、否定の結論であったということでございます。     〔委員長退席、宮下委員長代理着席〕
  133. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 航空母艦だって洋上に浮いているんですよ。そうでしょう。それならば、少なくとも航空母艦よりもさらに長い、幅の広いタッチ・アンド・ゴーの基地を洋上につくれば、それは夜間においても全く理想的なタッチ・アンド・ゴーの基地ができるし、どこにも迷惑をかけないで済むんじゃないですか。そのことについて、余りにも三宅島、三宅島と策のないようなやり方をしておったら、例えば防衛庁がこれを強引にやって土地を強制収用したら、それこそ国民全体が見ていますよ。そんなこと許されるわけないじゃないですか。島民が反対だと言うんなら、これから十年たったってできませんよ。浮体構造工法であるならば、これは設計をすれば少なくとも三年でできるんだから。そういうふうにすべてができているわけだから、防衛施設庁もただ建前論なんというんでなくして、本当に国民のためを思ってやるならば、ここでアメリカとも話し合ってみる必要があるんじゃないかというふうに思うのです。  防衛庁長官、私は話し合ってくださいと言っているんですよ。あなたは浮体工法はだめだと言っていると言うけれども、アメリカじゃどこでもそんなこと言っちゃいませんよ。アメリカは言っていない。私はいろいろ友達がいるから、そういうルートなんかもあるから、聞いてみたらどうもそういうことじゃない、だから、一度話し合ってくださいよとこういうことですから、いかがでしょうか。
  134. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 大変専門的な知識がおありのようで、敬服いたします。  私自体も、常識的に考えてみて、今の航空母艦なんかの話もあるし、今の非常に技術が進んでいるときに浮体工事が技術的にできない、そういうことはどんなものかということを、素朴な疑問を持った。で、いろいろ検討させた。しかし、総合的にはこれはなかなか難しい。  それから、アメリカ側にも、公式、非公式は別といたしまして、これだけなかなかできないのですから、アメリカの方でも、そんなに日本さん頑張っているなよ、おれたちでそれはこういうことだからいいと思うよというのが当然あってしかるべきですよ。それが、今までの経過でもないのです。これは私に対してもないわけですよ。ですから、これだけもめていること、これだけ大変なことであれば、日米間で非常にそこら辺は緊密に話をしていますから、向こうからないはずがない、私はそう思う。  ただ、せっかくのお話ですから、今度ワインバーガーさんに会ったときには、日本国会でこういう意見がございますがあなたはいかがでございますか、これは聞いてみます。
  135. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 防衛庁長官、私は、あなたが話し合ってみようというふうに言われたということは、本当に救いようがあるなというふうに感じています。  今言われましたように私は初め、三十万トンタンカーというのがたくさんあるから、そういうのを利用すればできるんじゃないかと素人的な考え方でおりました。しかし、それはもう難しい。そうなると、本当に浮体構造工法によるあれがだめなのかどうかということになりますと、これは、運輸省を初め科学技術庁、そういうところから浮体構造工法というものについてはもうコンピューターシミュレーションによって証明されるし、あらゆるところからそういうふうなことになっておりますから、アメリカの方でも研究しているはずですから、あなたがそのことでお話しくださるということは、私は非常に救いようがあるなと。  私は何も日米安保条約反対というんじゃないですよ。私どもは日米安保条約は実は肯定をしている立場にあって、それでも島民の皆さん方が八〇%以上反対しているんだから、それを無理にしちゃいけないよ、こういう気持ちで言っていることだけ私としては申し上げて、次に進みたいと思います。
  136. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 誤解のないように。この話し合ってという意味が、これで協議をするという意味じゃございませんから、その鈴切さんの御意見を、ワインバーガーさんに会ったときに、日本国会でこういうことがありますよ、そういう話をするということですから、これによって過度の期待を島民に持たせることのないようにお願いいたします。
  137. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 今あなたの方も三宅島ということでやっているんですから、それはもうそういうことでしょう。そういうことでしょうけれども、しかし、少なくともここの国会で論議されたということはこれは公で論議されたことですから、だからそれは当然アメリカにおいても無関心ではいられないでしょう。だから、あなたがそうやってお話しになるということは、私はそれはそれなりに評価をするということですから、ぜひやっていただきたい、こう思います。  それでは、次に参ります。  これは防衛局長だと思います。防衛改革委員会、これが六十一年の五月に設置されました。その中で業務監査小委員会洋上防空体制研究会、それから陸上防衛態勢研究会の三つができたわけであります。  そこで、日本の有事のシーレーン防衛のための共同対処を効果的に行うために、日米両国部隊の作戦能力を検証するものとしてシーレーン防衛共同研究が、昭和五十七年九月、ハワイで日米安保事務レベル協議によって合意され、六十一年の十二月二十四日、一応の作業がまとまり、六十二年一月七日、第十七回日米安保事務レベル協議で報告されたとありますが、これで一応防衛共同研究は終わったことになるのか、それとも将来の研究の余地を残しているのか、もし余地を残しているとするならば、いかなる目的で進めようとされているのか、まずその点をお聞きしましょう。
  138. 西廣整輝

    西廣政府委員 シーレーン防衛研究は、今先生のおっしゃったとおりの経過を経て研究を開始し、終わったわけでございますが、私どもとしては、この研究はことしの一月のSSCへの報告で一応完結をしているというふうに考えております。  ただ、この研究は、御承知のように五十八年時点防衛力、つまり五十八年の予算で発注される防衛力整備された時期、六十三年になりますが、その段階での防衛力前提とした研究でございますので、必要があれば、時点修正をした格好で、それをどうなるかという検証等には使えると思いますけれども、これを日米間でやるというような計画は今のところございませんので、研究としてはそれで完結しておるというふうに考えております。
  139. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 これはいわゆる日本有事ということが前提になるわけですけれども、指針の前提条件には事前協議とか憲法制約非核原則の研究は対象となっていないけれども、日本の主権にかかわる問題はどうされるつもりなのか。結局、有事ということになりますとこの問題が絡んでくるわけですから、どうされるつもりか。ガイドラインでは日米両国の役割が決められているにしても、ガイドラインそのものは有事を想定しての防衛戦略にかかわるものであり、アメリカの指摘や分析のもとに行われるとなれば、アメリカ防衛戦略の一環に組み込まれるおそれがあり、我が国の自主性が失われ、主権が絡むおそれが出てくると思うが、その点についてはどうお考えでしょうか。
  140. 西廣整輝

    西廣政府委員 御質問の趣旨、必ずしも十分理解したかどうかわかりませんが、お答え申し上げますと、このシーレーン研究と申しますのは、まず五十八年時点防衛力と申し上げましたが、そういったものを前提として、その当時の周辺諸国の状況から、日本のためにもろもろの海上輸送が行われている、この海上輸送の破壊というものを目的とした行動を相手方がとる場合にどんなことができるだろうかという、相手方の行動をまずシミュレーションの前提として組み込むわけですが、そういうシナリオをつくる。  それに対して我が方の防衛力は、もちろんこれに全力をもって当たるわけですが、当時の研究相手であった、研究を共同して行っておった米側に対して、米側としてはどの程度の軍事力日本のために提供しますかというお話し合いの結果、米側からこの時点ではこのくらいまでは出せるかもしれないというものを前提として日米が共同対処をしたということでございますので、これはあくまで日本防衛日本のために海上輸送が行われている、それに対して侵害が行われたときに、海上自衛隊及びそれに加うるに日米安保条約に基づいてアメリカが提供し得る兵力というものを前提として行ったものでありますので、アメリカ側の意向といいますか、彼ら自身の戦略というものとは必ずしも関係ない、あくまで日本防衛のためのシナリオというものを中心に措置されたというふうに考えております。
  141. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 私は前提を言うのをちょっと忘れておりましたけれども、我が党は中期防に対してはこれは反対であります。防衛庁がGNP一%枠をオーバーするようないわゆる中期防に五九中業を格上げされたということは、軍事力を強化するという、そういう意味からいうと問題があるという立場には立っております。立場には立っておりますけれども、やはり私どもの言い分だけで論議をしていきますと、防衛庁はこれから何を考えていくのかということがよくわかりません。ですから、私は一応防衛庁の中に入り込んで防衛庁考えを聞いていきたいというふうに前提条件をつけて、これから論議を進めてまいります。  そこで、洋上防空体制研究会では今洋上防空のあり方についての検討がなされているということでございますけれども、具体的には検討の対象としてはどういうものでしょうか。
  142. 西廣整輝

    西廣政府委員 この洋上防空研究につきましては、まず、そもそもの研究開始に当たって、現状の世界のといいますか軍事技術を分析いたしまして、仮に航空攻撃を行うとすればどの種の装備が使われ、その装備はどういった性能を持っておるかということを前提としましてさまざまな攻撃側の攻撃対応がとられる、それに対して我が方の防空をいかにすべきかという研究でございますので、その際、現在までに手がけましたシミュレーションを申し上げますと、二つのシミュレーションをやった。  一つは、かなり離れた海域で航行している船舶、これは船団で航行している場合と独航船でおのがじし走っている場合と二種類のものを想定しまして、それに対して相手方が航空攻撃を加える、その際に、どういったこちらの防御態勢をとるのが最も被害を局限できるかということで、こちらの組み合わせとしましては、例えばCAP方式をとって、船団の防衛の場合ですとできるだけ船団の近くに戦闘機等を配備するようにする、あるいはP3Cを武装したような形のものを配備する、あるいはOTHというものが既に使えるという状況で、それで事前にとらえて、CAPで常時守るということではなくて、相手が来た際にこちらから要撃に飛び立って相手に対抗するといった各種の組み合わせをやった場合に、どういうやり方が一番味方の被害が少ないか、また、味方の被害をとめる程度に比べてどういうやり方が一番お金がかからないか、そういったシミュレーションをまず一つやりました。  もう一つは、遠い海洋上ということではなくて沿岸海域でありますけれども、そこの海域の航空優勢を相手方にとられておる、つまり北海道にも着上陸侵攻があるような状況で、そこに増援部隊なり補給物資を送らなければいけないという想定で船団を送った、したがって、こちらももちろん戦闘機等の護衛がつくわけでありますが、相手方はそれ以上の航空勢力を持っている、それが船舶攻撃を加える場合に、この船舶を防護するのにどの種の装備体系がいいか、例えばターター艦、エイジス艦その他を置きまして、どういったものが、被害とそれからそれを守るために要る装備経費、そういったものを比べてみまして経費効率のいい守り方であるかといったシミュレーションをやったわけであります。  以上が今回今までにやったシミュレーションの内容でございます。
  143. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 洋上防空のあり方について、防衛庁としては洋上防空を効率的にやるについて何を中期防の中で考えておられるか、また、ポスト中期防にはみ出すものはどの部分になるのか、その点についてはどうお考えでしょうか。
  144. 西廣整輝

    西廣政府委員 洋上防空に直接的に言及されている箇所は二カ所あると思います。  一カ所は、洋上防空について、各種の装備を組み合わせてどのようなことをしたら最も有効であるかということを研究しなさいというのが第一点であります。これは各種装備の組み合わせということですから、洋上防空全般についてどういう構想が一番いいかということでありましょうから、いずれもこれはこの五カ年計画以降に解決される問題というように理解いたしております。  それからもう一つ、艦艇搭載ミサイルの性能向上というのがございます。これは洋上防空の研究と十分にらみ合わせてそれをお決めなさいということになっております。そして、これにつきましては、ミサイル搭載護衛艦が二隻分五カ年計画に計上されております。さらに、それに搭載するミサイルの近代化経費として二隻分の経費がやはり組まれておりますので、これはこの五カ年期間中に結論が得られれば着手をする、しかしながら、もちろん艦艇のことでございますので取得そのものは五カ年計画後何年かたってからということになろうと思います。  なお、OTHレーダーにつきましては、洋上防空等とももちろん関連はございますけれども、これはそれ以外にいろいろな情報収集手段ということで、洋上防空ということと必ずしも絡めないで、OTHレーダーの有用性について研究し、所要の措置をとるということが閣議決定で定められております。したがいまして、OTHレーダーは独立してその有用性等を勘案することになりますが、その際に洋上における防空での有効性ということももちろん検討いたしております。これにつきましては三百億ほどの契約機能額としての経費が五カ年計画として準備されておりますが、全体としては相当時間のかかるものだと思いますので、できる時期としては、やはりこれも六十六年以降に送り込まれるものと考えております。
  145. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そうしますと、大体お話を要約すれば、まずDDG二隻はエイジス艦である、これは中期防でやるんだ。それからAEWは五機、これもやはり中期防でおやりになるというふうにお考えだろうと思うのですが、もし違っておりましたら直してください。  それから空中給油機の問題です。これが今非常に問題になってきているわけですけれども、空中給油機はポスト中期防、ポスト中期防になるか何かわかりませんけれども、それに入り込むのじゃないか。  それから、OTHレーダーについては、これはもし時間があればいろいろと具体的に聞きたいわけですけれども、防衛庁としては調査団を出されて報告を受けた。少なくともそれに対して、これから、調査団の報告を受けてOTHレーダーもある程度前向きにということになるのでしょう。となると、少なくともさらに調査する部分の費用と、あるいはまた土地の取得の費用、これは六十三年度の概算要求の中では盛られているのですか。
  146. 西廣整輝

    西廣政府委員 AEWにつきましては、先生のおっしゃったとおり、E2Cを五機購入するということが計画に盛られております。  それから、給油機につきましては、閣議決定の文書の方で、給油機については今後引き続き検討するという文書の中に入っておりまして、これにつきましては特段の予算的な手当て、枠とか、そういったものは全く入っておりません。これは、いろいろな面で給油機の使い方というものはあろうかと思いますけれども、少なくとも装備には着手しないということでございます。  それから、OTHレーダーでございますが、先ほど私このための金の枠を三百億と申し上げたかと思いますが、五百億なので訂正させていただきます。  先生の御質問にありましたように、ついせんだってアメリカの方でOTH・R、いわゆる海軍型のOTHの実用実験をやっておりました。それに視察に行かせまして、いろいろ技術的な問題について調べてまいりました。我々の調べたい主たる項目は、OTHレーダーで得られる情報の精度がどの程度であるかということももちろん必要でありますし、と同時に、このOTHレーダーによって例えば電波干渉が出ないかどうかというようなこと、そういった点について調査してまいりました結果、我々が使用しても一般の民間の船舶等に電波干渉したり、そういったことはないというような事実がありましたので、そういう点の問題はない。逆に、よりOTHレーダーというものを採用する方に前向きな結論を得ているわけであります。  ところで、問題はOTHレーダーの設置をどこにするかという問題であります。かねがね申し上げているように、OTHレーダーというのは非常にレンジの長いものでございますので、自分の国土に置いたのでは必要なところが見られない、国土といいますか本土そのものに置いたのでは必要なところを飛び越してしまって見えなくなりますので、やはり海上にある本土から離れた島嶼の上に置かなくてはいけないということがございます。一方、日本の所領の島嶼というのは限られておりますし、OTHレーダーの、特に受信設備というのは飛行場と同じぐらいの、二千メートル近い長さの土地が要るということになりますと、設置できる場所というものは非常に限定されてまいります、  そういう点で、我々としては、設置するとすれば、方角からいっても現在全く使用されてない状況からいっても硫黄島がいいのではなかろうかなという見積もりを立てまして、ここで果たして設置できるものかどうかということを引き続き来年度は検討いたしたい。検討する内容につきましては、いろいろございますけれども、例えば地盤が変動する、そういったものに対応するためにどういう措置がとり得るか、あるいは地熱がある、硫黄分が噴き出してくる、そういった点それぞれについていろいろ調査をしてみたいということであります。  なお、用地取得等につきましての措置は、そういった検討が終わってゴーということになったときに措置するということで、来年度予算要求はいたしておりません。したがって、調査費用として三千数百万でございますが、そういった技術的調査のための費用を概算要求する予定でおります。
  147. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 OTHの論議が今ちょっと出たものですからそっちの方に触れざるを得ないわけなんですけれども、硫黄島がいわゆる受信基地という形になれば、当然八十キロから百キロぐらいの間に発信基地ということになるでしょう。となると、北硫黄島、南硫黄島、あそこはちょっと高くてもうどうにもならない。ある程度平たん地で海が開けていなければいけないということになれば、おのずと小笠原ということになろうと思うのです。恐らくまだ硫黄島ということは決まってないから小笠原という具体的な名前は出ないということでしょう。だけれども、硫黄島自体はあなたがおっしゃるように非常に火山活動が激しいわけですね。地殻が変動している。だからこそ硫黄島島民を向こうに帰島させなかったということがあるわけですね。もしそれが何でもないというなら、それでは島民を帰してくれという声だって出てこないとも限りませんよ。その問題が一つ。  それからもう一つは、硫黄島は防衛施設庁やアメリカが使っている基地だけについては地主にお金を払っていますね。ところが、全体的にかといいますと、正直なところを言って払ってないために、先日若干支給をされたという経緯はありますけれども、そういうものがもしできるということになれば、これはもう全体的な地主を対象に、言うならば土地の買い上げという問題も出てくる。これについては防衛局長さん、そういうふうなことも考えられておりますか、どうですか。
  148. 西廣整輝

    西廣政府委員 これはいずれも技術的な調査の結果を見なければわからないわけでありますが、要は先生今おっしゃいましたように、硫黄島というのは火山活動が非常に激しい。現実に大きく隆起したりしておりますし、地盤そのものがよく言う地獄という、ぶくぶくした、ずぶずぶしているような格好でありまして、非常に地熱もある、しかもそれが隆起したりしておるという状況でありまして、これを技術的にクリアするということは、そういう隆起があったり、あるいは非常に地熱が高くても、それを修正するような機械的ないろいろな方法があるのではないかといったようなことを私ども調査することになると思います。  いずれにしましても、地盤沈下なり隆起が起きない、あるいは地熱がなくなることがあるかもしれないという調査ではございませんで、あるという前提で、それを機械的ないろいろな方法で克服できるかどうかという調査になろうかと思います。そして、そういうことが可能であるということになりますと、それではいよいよ硫黄島に設置するという前提で、またいろいろ検討しなければいかぬと思います。おっしゃるように、その際には土地をどうやって取得するかという問題等に着手することになろうかと思っております。
  149. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そのことについてはやはり電波障害とか人体への影響とかというものがもう大変な問題になってくるわけですから、そういう点もクリアしなければならぬだろうと私は思います。  それでは次に行きます。  陸上防衛態勢研究の実施に当たっては、防衛庁は、北部日本防衛を重視するとともに、地域の特性に応じた地域別、任務別部隊等の編成に留意するという考えのようだけれども、具体的にはどういうふうにされるつもりなんでしょうか。
  150. 西廣整輝

    西廣政府委員 陸上防衛態勢については、まだ私の段階の研究会というものが開かれておりませんので、細部は私も十分やってない、またそれぞれの担当者が勉強している段階だと思いますが、先生の御質問にありました北部重視といいますか、重視というのはやや語弊があるかもしれませんが、北部に重装備なりあるいは岩上陸に直接関連した装備というものを重点的に配備するという考え方は、今回の陸上防衛態勢の研究という中でももちろん研究されると思いますが、中期計画そのものの陸上自衛隊装備計画なり部隊編成計画の中に既にあらわれておるというように御理解いただきたいと思います。  例えば、今までの師団というものが一律に、九千師団であれば、六十両の戦車を九州の師団も本州の師団も北海道の師団も持っておったというものを、現状では九州あるいは本州に直接相手が着上陸侵攻してくるということはまずまず考えられない、とすれば、訓練がし得る範囲のものであれば、できるだけ北海道の方に集積というか、そちらの部隊が持っておった方がよろしいというようなことを含みまして、北海道の方に戦車とかそういったものを中心に移していく。そして、本土なり西日本の方の師団はどちらかといえば対戦車火器といったような軽量の装備品を中心にして、いざという場合に北海道の防衛、増援に行く場合にもできるだけ身軽にした方がいいのではないかというようなことも配慮した編成をこの五カ年間で行うことになっております。  引き続いて陸上防衛態勢で今研究しておるわけでございますが、要は、北部日本というのは、洋上防空その他でも出てまいりましたけれども、航空優勢が非常にとりにくい地域でございます。例えば稚内なら、札幌を中心としてお互い制空戦闘機が活躍できる五、六百キロという範囲でとりますと、日本側の軍用の飛行場というものはごくわずかしかない、民間の飛行場を入れても五つか六つしかないという状況であります。一方、それに対してソ連は北方領土、樺太、沿海州を含めて日ごろから使っておるのでも三十幾つある、使わない飛行場まで入れれば五十幾つあるということで、もうそこに持ってこられる部隊、航空機そのものの数が十対一ぐらいに差ができてしまうわけであります。そういう意味で北海道の上空でお互いに航空優勢を争った場合には、とることはまずまず不可能に近い地域であります。  ということは、航空優勢がない地域では艦艇部隊も十分な活躍はできません。航空の援護がない艦艇部隊は働き得ない。とすると、やはり陸上にあって粘り強く戦うことのできる陸上自衛隊というものが中心になって北海道は防備しなければいかぬだろう、特によその国と非常に至近の距離にあります北部北海道、稚内正面、あるいは北方領土と至近の距離にあります根室正面、そういったところについてはやはり大部分を陸上自衛隊に依存した防衛態勢をとらなければいけないのではないか。それは単に相手が上がってきてからどうこうということではなくて、上がろうとする敵を洋上で撃破するあるいは水際で撃破する、そういったことも含めて陸上自衛隊の任務としてやってもらわないと海空はそれほど貢献できないのではないかという観点から、陸上自衛隊装備その他についてどういう見直しをする必要があるかというようなことが研究課題の主たるものであろうかと思っております。
  151. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 六十一年の防衛白書に、「別表の内容を変更することも可能である。」ただしそれは安全保障会議あるいは閣議決定を経て。この場合の変更の内容も、無制限ということでなく、大綱の基本的考え方の枠内で行われる以上おのずから限度がある。「限定的かつ小規模な侵略までの事態に有効に対処し得る防衛力を保有すること」ということでできた「防衛計画大綱」に付随した別表の見直しは、大綱そのものまで変えてしまうおそれがあるわけでありますが、大綱の基本的考えの枠内で限度があると言うからには、やはりそれなり基準というものがなくてはならないと思いますけれども、基準としては具体的にはどう考えておられるかということが一点。  それからもう一つは、低空域の防空用、これはミサイルですか、これは陸上自衛隊が持つわけですね。ところが、高空域の防空用というのは航空自衛隊が持っているわけです。しかし、低空域あるいは高空域といっても、今のような状況の中にあってはその使用というものについては格別分ける必要はないのじゃないか、そういう意見もあります。となると、その問題についてはこの別表の枠内だというふうに判断されるのか、あるいはこれは修正だから若干そういう手続が必要であるなというふうにお考えになっているのか、どちらでしょうか。
  152. 西廣整輝

    西廣政府委員 大綱別表あるいは大綱そのものについての修正なり改定なりという話については、いろいろ御説明したと思いますが、大綱別表及びこの別表と密接不可分になっております点で、本文の方の「体制」という部分がございますが、その辺については、仮に大綱の基本的な考え方が全く変わらない、あるいは持っている装備なり防衛力の量が全く変わらなくても、動き得る可能性がある部分だと私どもは考えております。  そして、その基準は何かというお話でございましたが、基準は基本的には小規模・限定的な侵略に独力で対応できる能力を維持するという点が基本で、これを動かしてはいけない。例えば、小規模・限定でございますから、何度も申し上げているように、ほとんど現状のままのような体制で相手が来るということで、仮に日本に侵略するとしてもこの程度であろうという量的な限界を決めておるわけでございますが、それがえらい遠くにいるものをわざわざ持ってきて攻めてくるというようなことを前提にして、だからたくさん要りますというようなことはいけないのではないかというように私どもは考えております。  そして、お尋ねのSAM部隊、いわゆる対空ミサイル部隊でございますが、まさに先生おっしゃるとおり、ここなどが一番別表等の変わりやすい部分だと思います。例えばナイキがペトリオットに変わった。ペトリオットは必ずしも高空用と言わず、低いところから高いところまでカバーできるミサイルでありますから高空用ミサイルと言うのが果たして適切かどうかということは、ペトリオットを導入した段階で議論をいたしまして、当時の国防会議事務局等とも論議をして、ホークというものがまだ現存し、それと比べて高空まで用いられるものということで、そのままでよかろうということで名前は変えませんでした。しかし、これが仮に陸の方もホークでなくてペトリオットにするんだということになっていたとしますと、同じペトリオットについて空が高空用と言い陸が低空用と言うことは通らないと思いますので、当然その部分については装備体系なり装備が変わったということで、別表の名称を変えざるを得なかったのではないかというふうに思っております。  また、そういう装備が変わる場合もございますが、仮に今のままで装備もそのままだとしましても、陸上自衛隊により多くの仕事を、十八万も人間がいるんだからもう少しかぶってくれというような事態が起きまして、例えば今言ったナイキ部隊、ペトリオット部隊のようなものを空の所属から陸に移すといったようなことがあろうかと思います。その場合、自衛隊全体としては一つもナイキ部隊なりペトリオットの部隊は異動はないわけでございますけれども、その所属が移るということによって別表が航空自衛隊の枠から陸上自衛隊の枠へ移るという意味の改定が行われる可能性がある、そういうように別表は可変的なものがあるというようにお答え申し上げたいと思います。     〔宮下委員長代理退席、委員長着席〕
  153. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 別表に示す範囲内でやりたいということはわかるわけでありますけれども、例えば諸外国の技術的水準の動向で、沿岸防衛師団規模のミサイル部隊を陸上自衛隊に新設の可能性とか、日本の国土の特性から沿岸防衛型が必要になってくるとすれば、陸上自衛隊が防空力、洋上、水際の戦力を持たねばならなくなるとすれば、十三師団の中で機甲師団をふやすかどうか、あるいは対艦ミサイル部隊を独立させ、一つか二つの師団を減らし沿岸防御ミサイル部隊とか防空部隊を新設するという考えなんかも、常識的に言えばそういうふうな考え方も出てくるのじゃないか。しかし、これはいわゆる別表の問題がありますから別表の枠内とか枠外とかということはさておいても、そういうふうなこともやはりこの研究会の中には大きくクローズアップされるかどうかの問題、これはどう考えますか。
  154. 西廣整輝

    西廣政府委員 陸上防衛態勢そのものを研究していきますと、防衛態勢として持つべき装備体系ということももちろん重要でございますし、最終的にはそれをどういう形で部隊として編成するかという問題もやはり研究することになると思います。  その結果として、今先生御指摘のように、必要な装備というものをつくるためにある部隊を新設しなければいけない、仮にその新設する部隊が大綱別表に載せるべきほどの大きな部隊でなくて、例えば群レベルの部隊等は別表に書かれておりませんけれども、それもそういったもので賄うにしましても、急にゼロから生み出すことはできませんので、どこかを削っていかないとできないことになります。  おっしゃるとおり、そのために例えば師団一つか二つ取りつぶしてそういうものが出てくる結果、師団の数が今の十三が減ってしまったというような形で整理されることもあり得るかと思います。あるいはまた、やはり今先生御指摘になったように、一つ師団を他の師団と少し形態を分けて、例えば沿岸防備師団というような特定の任務を与えて沿岸防備に適切な部隊というものを混在させた師団にするということになりますと、現在機甲師団とあと普通の師団ということで分かれておりますけれども、その際に、そのままほうっておいていいのか、師団の数は同じであるけれども、名前としては沿岸防備師団が一とか二とかというようにさらにそこを書き分けた方がいいのかといったような問題も検討の結果によってはあるいは出てくるかもしれない、そういうことだろうと思います。
  155. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 いずれにしても、中期防の場合においては大綱の達成ということですから、別表の範囲内でやるということだけれども、将来はやはりそういうふうな問題も出てくるのじゃないかという感じがするのでお尋ねをしたわけであって、決して軍事力増強せよという意味ではないわけであります。  官房長官、御苦労さまです。  そこで、「今後の防衛力整備について」安全保障会議の決定がなされ、さらに閣議決定がされました。その決定を踏まえて内閣官房長官が談話を発表された。ところが、中期防自体がわずか一カ月の間に五九中業から格上げされて、そしてぽんと中期防という形になったということで、まず国民がびっくりしたわけですけれども、よくわからないという点がいっぱいあります。  そこで、きょうはちょっとお尋ねしなければなりませんけれども、まず初めに、文民統制、シビリアンコントロールあるいは文民統制の確保、これが本当に防衛の中においては大切な問題であるわけですから、その点についての認識とか、あるいはまたシビリアンコントロールの最高機関は国会でありますけれども、例えば国防会議あるいは安全保障会議あるいはまた閣議決定とかいうその位置づけですね、シビリアンコントロールの中の位置づけについてはどういうふうにお考えになっているのか。シビリアンコントロールの認識についてお伺いいたします。
  156. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 一口に申しますれば、シビリアンコントロールというのは政治が軍事を支配する、こういうことであろうと思います。政治の決定に軍事は従っていくべきである、これが根本の考え方でございます。  そこで、仰せのように、最終のシビリアンコントロールの機関として作動するのは国会である、国会は国権の最高機関として行政のあり方を監視する、こういう建前になっておるわけでございますから、そのもとで、政府、つまり閣議、その閣議の前提としては国防会議、これが基本的な方針は決めていく。それと同時に、防衛庁の内部においても、防衛庁長官を長として、その下にいわゆるシビリアンスタッフというものを持って、そして制服部隊との調和を図りながら調整をしていく、こういった仕組みが上から下まで通っておるわけでございます。これらをひっくるめて、我が国のシビリアンコントロールのあり方であるし、考え方である、私はかように理解をいたしております。
  157. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 シビリアンコントロールの認識はよくお聞きしたわけですけれども、「今後の防衛力整備について」というのは、たしか六十年の九月に中期防ができた、その中期防を受けて今後の防衛力整備ということが閣議決定され、安全保障会議で決定された、それは昭和六十二年一月二十四日であるということです。  その中で、二番目の問題ですけれども、「「中期防衛力整備計画」(昭和六十年九月十八日閣議決定)は、上記の基本方針の下に策定されたものであり、その期間中の各年度の防衛関係経費については、同計画に定める所要経費の枠内でこれを決定するものとする。なお、同計画を三年後に作成し直すことについてはこれを行わないものとする。」というのが、これが閣議決定ですね。  それを受けて官房長官が、「中期防衛力整備計画の実施に必要な防衛関係経費の総額の範囲において、各年度毎の防衛力整備が行われ、これが限度となることを明らかにするため、同計画の定めるところを一部改め、三年後に新たに計画を作成し直すこと、いわゆるローリング方式はとらないことにいたしました。」これが、これを受けた官房長官の談話になるわけですけれども、この意味はどういう意味なのですか。よくわからないのですね。
  158. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 若干の経過があるわけでございます。  我が国防衛力整備は、いわゆる「防衛計画大綱」、これをできるだけ速やかに整備していく、こういうことでやっておるわけでございますが、その中で中期防衛力整備計画というものは御案内のようにできておるわけでございます。これは五カ年で、六十年度価格で十八兆四千億、実質ベースですね、ということで決まっておる。そうすると、毎年の予算は御案内のように名目でございますから、これはデフレーダーがかかります。したがって、金額はデフレーター分ふえることもあれば減ることもある、こういう仕組みでございます。いずれにせよ、実質できちんと上限が抑えられておるわけでございますね。そこで、これが総額明示方式、こう言われておる。  ところで、これを決める過程で、財政当局と防衛庁当局とは当然立場が違いますからお互いの主張が食い違うということは当たり前の話でございますが、そこらぎりぎり詰めた話し合いとして、五カ年、十八兆四千億と決まったわけでございます。しかし、五カ年ということになると何分にも相当な、役所式の考え方をとれば長い期間になりますから、三年目に一応見直そうということに話し合いがなってこれは書いてあったわけですね。  そうしますと、一部の野党の皆さん方からあの当時強い御要望が私どものところにあったのは、三年見直しということになると、そのときにまた十八兆四千億であった実質がふえるのではないか、これは甚だもってよろしくない、これは削除すべきであるという強い御要求がございました。私どもは別段、三年見直しで必ずしもそれをふやすなんということを直ちに約束をしておったわけでも何でもありませんが、そういう御心配があるならば総額明示方式、五カ年間ということではっきりさせましょうという意味合いにおいて、三年ごとの見直し、いわゆるローリング方式というのはこの際はっきりと廃止をいたしましょうということで取りやめることにした、こういうことでございます。
  159. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 それでなおさらまたわからなくなってくるわけです。それはどういうことかといいますと――まず確認をいたします。  この中期防というのは、いわゆる五カ年固定方式である、そして六十年度の価格だ、そして総額明示方式をとって十八兆四千億である、こういうことでしょう。これは中期防ではっきり決めたのでしょう。中期防でそのように決めたのに、その中期防の中になぜ「計画の見直し等」という部分が入るのですか。おかしいじゃないですか。そうでしょう。固定して十八兆四千億なんですよ。全然動きようがないじゃないですか。それにさらに「計画の見直し等」という部分を入れるというのはどういうわけですか。おかしいじゃないですか。ここはおかしいから国民は迷ったんじゃないですか。だから、この中期防自体がおかしいんだよ、あなた、「計画の見直し等」というのを入れるのは。
  160. 西廣整輝

    西廣政府委員 今、先生の御質問は、中期防の最後の記述に、この計画は、三年後には、その時点における状況を見て、新たに作成し直すことについて検討するものとすると書いてございますが、その部分についての御意見だと思います。  当時の討議で出た考え方というのは、この五カ年計画で一応フィックスしてつくられておりますが、そこで三年後に見直すというのは、残りの二年を見直してそれを変えるということではなくて、三年後に新たな計画をつくるということについて検討の余地を残してあるというようにお考えいただきたいと思います。したがいまして、その五カ年計画の残り二年分について見直すということではなくて、そこからまた新しい五カ年計画をつくる場合もあり得るという前提でこの項目が入ったのだと思うのです。それがことしの閣議決定でその種のことはしないと変更されたと御理解いただきたいと思います。
  161. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 なおさらそれはおかしいですよ。いいですか、五カ年計画の中で三年ごと計画を見直すというのは、いわゆる中業の見積もりのやり方ですよ。見直せば必ず予算はふえてくるのですよ。あなたたちは中業はそうやったのですから。五三中業にしてもあるいは五六中業にしても、あるいはまた五九中業にしてもですよ。五九中業について、あなたたちは実際には国会に提出していないですね。しかし、五三、五六、五九となれば、そういうことで見直し経過は必要なんだ。なぜ必要かといいますと、それは予算が単年度で、しかも三年ごとに見直しをして、その上にGNP一%粋なんじゃないですか。枠が入るのですよ。だからどんなに見直したってGNP一%以内におさまって今日まで来た。そうでしょう。  ところがこれはもう既に初めから十八兆四千億と決めた、五カ年計画、五カ年固定した。そしておまけに、今度は六十年度の価格でやりますと言っているのに、この「計画の見直し等」というこの部分は入れる必要はないのじゃないですか。だからこそ「今後の防衛力整備について」というところでこれを取ろうとしたわけだ。  中期防が失敗したのだ。なぜ失敗したかといいますと、五九中業が検討されて国防会議に報告された。されて、そして一カ月のうちに中期防に格上げしたでしょう。あたふたしているうちに格上げしちゃったのですよ。だからこの問題が実は大変な問題に今なっているわけです。  なぜかというと、例えて言うならば、ここに「防衛計画の体系」というのがある。統長、統中、そういうことでいわゆる「防衛計画大綱」を推進するために防衛庁長官が訓令を出しているわけでしょう。この訓令自体だって直っていなかったのですよ。これは三年の見直しなのですよ。私が言ったように、中業方式に基づいて訓令が出ているわけでしょう。その訓令を直していない。  そうなってくるとやはり「計画の見直し等」というものを入れざるを得なかったというのが現状だと思うのです。思うけれども、これは随分おかしい話だ。もともとから「計画の見直し等」なんて要らない。私は小さいところの微調整を云々と言っているんじゃないのですよ。すなわち、明らかにこの十八兆四千億というのは過去の実績の配分方式によって予算を組んでないでしょう。積み上げ方式によってできたのが十八兆四千億じゃないですか。それなら動かしようがないはずですよ。そうじゃないですか。ここのところ、おかしいですよ。  それから、官房長官、これはもう本当におかしいのですよ。おかしいからあなたが早速やったのですよ。やったのが何と六十二年一月二十四日でしょう。やりません、あなたそんなことで閣議決定を守っているのですか。閣議決定を守ってないじゃないですか。  なぜ守っていないかといいますと、「この計画は、」この計画というのは中期防です。中期防は、「随時必要に応じ見直しを行い、三年後には、その時点における経済財政事情国際情勢、技術水準の動向等を踏まえ、新たに作成し直すことについて検討するものとする。」というのでしょう。三年後にやったのですか、あなた。三年後じゃないじゃないですか。おかしいじゃないですか。あなたは早速やっちゃった。ここにあるのはそうじゃないのです。「経済財政事情国際情勢、技術水準の動向等を踏まえ、新たに作成し直すことについて検討するものとする。」と書いてある。三年後ですよ。六十三年ですよ。六十三年にあなたがこういうことを――あなたは、これを入れたこと自体が大変に間違っていることだ、間違っていることを早く取り消そうとしてここでまた間違いを起こした。これでシビリアンコントロールを尊重しますなんということは言えるはずないじゃないですか。こんなことをやって審議ができるわけがない。だれが聞いたってそれはおかしい。
  162. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 鈴切さんの御質問は、まことに残念ながら私には理解が難しいのです。格上げしたのはまず一つけしからぬ、こういうお話ですね。そうじゃない。これはあの当時の経緯を御承知のことだと思いますが、防衛庁内部だけの計画ではいかぬではないか、やはりシビリアンコントロールという立場からこれは閣議の決定として格上げをすべきであるということで、シビリアンコントロールの観点を強化するという意味で格上げしたのだ、これはひとつぜひ御理解をしておいていただきたい、こう思います。  それから、三年ごとの見直し規定、これは五十一年の閣議決定にかわるものとしてことしの一月に新しく閣議決定をしたわけでございます。  その際に、三年の見直し規定というものは、一般の受け取り方はこれによって五年間の計画といいながら三年目にはまたふやすなという印象があるのはよくないというのが一部の野党の強い御要求でもあった。私どもも、そういう誤解があるならば、私どもとしては必ずしもそういうことを考えてないから、この際閣議決定を変更する際に変えよう、こういうことで変えたわけでございます。  私は、そういう意味合いから、何かあなたの御質問を聞いていると、けしからぬことをした、こう言われるのだが、私は一つもけしからぬことをしたという印象じゃなくて、シビリアンコントロールを強化し、しかもまだ一部の野党の方がそういう御心配があるならば、そういう心配のないようにきっちりしようということの立場に立って新しい閣議決定をしたものである、かように御理解していただきたいと思いますが、私自身はまだあなたの御質問の理解が困難なところがございますから、それについては事務当局が恐らくよくわかるはずでございますから、局長から答弁させます。
  163. 西廣整輝

    西廣政府委員 先生幾つかの点を御指摘になったと思いますが、全部お答えできるかどうかわかりませんが、お聞き取りいただきたいと思います。  まず第一番目に、五カ年計画について、御承知のようにローリングするシステムとフィックスするシステムと二つあります。  ローリングの利点というのは、いかに積み上げたとはいえども四年先、五年先になると十分に見通し切れない問題もある、その間に状況の変化もあればいろいろな点で変わってくる点もある、したがって、三年ぐらい実施して、次にまた五カ年計画が始まっていくというローリングシステムの方がより状況に柔軟に対応できる利点があるというように前から言われておりました。一方、フィックスする、五カ年で固定してしまって、五カ年たった後に次の五カ年計画を出発させるという、五カ年でも三カ年でもフィックスした計画の場合には、計画と実績との比較が非常にたやすくできるという点で、計画が尊重されやすいというか計画の実施状況が明確にわかるという利点がございます。一方、今申し上げましたように、四年目、五年目になるとやはり計画者の先見性その他の問題から、いろいろ状況の変化が生じてきて、それに柔軟に対応しにくいという不利点があるわけでございます。  いずれにしましても、現在の五カ年計画が決められる時期には、形としては従来五カ年間のローリング方式ということで中業がつくられておったことは先生の御指摘のとおりでございまして、その方式によって防衛庁からは財政当局等に協議がなされておったわけであります。当時、野党の先生方を含めまして、中業方式というのは防衛庁限りの計画であって、これではいかぬではないか、もっと政府レベルのものに上げるべきであるという御意見がかなり早くから出ておりまして、例えばその前の中業は政府決定にはいたしませんでしたけれども、国防会議に御報告するというようなことで、ある程度国防会議の議を経るという手段を経たわけでございますが、この五九中業、現在の中期五カ年計画につきましては、作成当初から政府決定にすべきではないかという意見が政府部内にございました。  そこで、今度のものは政府決定にするよというお墨つきといいますか、そういうことをいただいて始める方法もあったかと思いますけれども、当時の状況としては、まず防衛庁なり財政当局なりで事務的に詰めてみなさい、そのできばえによって、それを政府決定にするかどうするかということについてはその段階で国防会議審議をして決めようではないかという行き方であったわけで、突然一カ月前に政府決定に変わったということではなくて、当然のことながら、政府決定になることはあり得べしという前提で作業をされておりましたし、特に財政当局の方はぜひ今回は政府決定にしたいという御意向を持ちながらこの作業に当たられたということでございますので、ある日突然政府決定に変更されたというものではないと御理解をいただきたいと思います。  それから、今般いわゆるローリング条項を削除した点でございますが、この五カ年計画閣議決定される時期に、それではこの五カ年計画を五年間のフィックスした計画にするか三年のローリングにするかということについては、実はその段階でお決めにならなかったわけであります。したがって、最後のただし書きのところでありますように、三年後に新たなものをつくることも検討するということで、この五カ年計画をローリング方式によるかあるいは五カ年固定方式によるかということについてはその後の検討にゆだねられた格好で決められておると私どもは理解をいたしております。したがって、それがその後の検討の結果、この一月の閣議決定で五カ年固定方式に確定されたと理解をいたしております。  なお、これが三年後の確定でなくて現在確定したから、ここで決められている手直しを二年目においてなされたのではないかということでございますけれども、今回の閣議決定計画を作成し直されたわけじゃなくて、このまま固定されただけでありまして、何ら新しいものを作成し直したわけではございませんので、その点も御理解いただきたいと思います。
  164. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 実にわからない話で、とにかくこの中期防については、今までの中業とは違いますよ、五カ年の固定方式、そして価格は六十年度で十八兆四千億をめどということできちっと決められたのですよ。計画の見直しをするということは、中業の常識からいいますと、そのときには必ず予算がふえているのです。固定をした十八兆四千億の中で、計画の見直し云々というこの項目を入れられるということ自体がナンセンスです。いわゆる中期防自体の決め方としては、これは大変に問題があるということですよ。  それはなぜかというと、先ほども申し上げましたように、実はここに「防衛計画の体系」というのがある。統長の場合においては当初は八年から十年を見通すということになっていた。それをあなたの方は九年に直された。その一年ぐらいの違いは、そんなこと問題じゃありません。問題はない。となると、統長の場合は昭和八十年からのことを見通して、言うならば作戦を練るのですよ。統長はそういうことで練るのです、昭和八十年。そして、それを今度は統中におろしてくるわけです。統中もいわゆるすべて見直しで、ローリング方式、すなわち三年の見直しをやるということは大前提なんです。もともと「防衛計画大綱」をつくったときにそういう形で単年度において三年ごとに見直しをし、そして言うならばGNP一%以内ということでこれが決まったのだから、だからこの「防衛計画の体系」を検討もしないでいれば、こういうものを当然入れざるを得ないわけです。これを入れてきたから、私はおかしいじゃないかと言ったのです。  きょうは本当は皆さんに資料を配るつもりでいた。これはおかしいじゃないですか、これじゃまるっきり違うのじゃないですかというふうに申し上げたら、そうしたら六月二十日ですか、六月になってから訓令を出された。それでは、今まで作成等については「三年毎」というのを「五年毎」に直され、「翌々年度」というのを「三年後」に改められ、それから「三年毎」というのを「五年毎」というふうに改められたわけです。そういうふうなことを訓令を出した。訓令は実は五六中業からずっとつながってきているのですよ。防衛庁長官の訓令ですから、それに従ってやっているわけです。そうでしょう。やっているものを手直しもしないから、だからこういうふうないわゆる防衛計画の見直し等というものがここに出てきたわけです。ところが、これはおかしいということに気がつかれたから、言うならばこれを外します。私ども防衛庁でどんなことが論議されたかということはわからぬ。こういう書類が出たときに初めて検討するのです。検討して、おかしいじゃないかとなるわけです。  そして、三年後に「経済財政事情国際情勢、技術的水準の動向等を踏まえ、新たに作成し直すことについて検討するものとする。」これは「する」ということになっている。ところが、何のことはない、皆さん方は六十年のを、ここにありますけれども、六十二年一月二十四日、二年になったときに、一月二十四日だから実際にはもっと短い期間なのに、こうやってお直しになったのじゃないですか。三年たってから直さなければならない――例えばあなたのこれが正しいとしてみたとしても、三年後にいわゆる見直さなければならないはずであるのに、二年たってもう見直してしまったじゃないか。これはあなた、閣議決定中期防でやっていながら、言うならばまたここで閣議決定で手直しをするなんて、こんなのはいわゆるシビリアンコントロールを無視した随一の問題じゃないですか。そうじゃないですか。
  165. 西廣整輝

    西廣政府委員 大変申しわけないのですが、先生、一、二事実を誤認されているのじゃないかと思うのです。一、二誤解されている点があるのじゃないかと思うので御説明申し上げたいと思うのですが、一つは、中期防衛力整備計画、六十年の九月にできましたこの計画は、「計画の見直し等」というところで明記してありますように、当初から五カ年計画フィックスの計画というように確定されていなかったということであります。先生は確定されておって云々というようにおっしゃられますが、確定していなかった、つまりこれをローリングでいくか五カ年計画フィックスでいくかということはその後の検討にゆだねられておった、そのために「計画の見直し等」というところにわざわざこのように書かれておるわけであります。その点ひとつ御認識をお改めいただきたいと思うわけであります。  もう一つ、我が防衛庁内部の事務手続であります計画体系の訓令についてでございますが、当然のことながら閣議決定等は訓令等より上位にありますので、それに合わせていろいろな手続訓令をつくっていくわけであります。さきに大綱というものができた五十一年当時、大綱ができることにより、かつ政府決定の五カ年計画というものがなくなりましたので、我々の作業上必要だということで、五カ年間の中業というものをつくるというようなことも含めた計画体系訓令をつくったわけでございます。  それが六十年の中期防衛力整備という政府計画ができましたので、それによって当然この計画手続といいますか計画体系は変えざるを得ない。まず、何を変えたかと申しますと、その訓令で定めておりました中業をつくるということそのものをやめたわけであります。それはもう政府決定でつくられることになりましたので、防衛庁としては改めて五カ年計画をつくる意味がございませんので、それをまず廃止をした。  さらに、この五カ年というものが、昨年までの段階ではローリングされるのか五カ年間フィックスであるかということが明確でございませんでしたので、一応ローリングされるかもしれないということで中期見積もりなり長期見積もりについてはそのまま据え置きになっておったのでございますが、この一月に、先ほど申したようにローリングはしない、五カ年間のフィックスであるということが閣議で確定をされましたので、それに従って、五カ年計画政府計画と合わせまして、途中段階で中期見積もり等をつくりましてもそれを計画に反映することができませんので、年限を延長して五カ年ごとにそういう見積もりをするというように改正をいたしたわけであります。  なお最後に、先ほどの答弁と繰り返すことになりますけれども、新たに作成し直したわけではございませんで、作成し直すことをもうやりませんということを確定したわけでありまして、決して中期五カ年計画というものは六十年当時につくられたものから変わっていないというように御理解をいただきたいと思います。
  166. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 十八兆四千億は総額明示といいますね。総額明示ということは、もうこの中でやりますよということで、それは政府答弁にも出ていますよ。あるいはまた、五カ年の固定方式、六十年度の価格ですよ、こういうふうに言われて、そしておまけに明細に書いてありますよ。例えば、この中において隊員の俸給とか年金等の人件費が七兆六千億で全体の約四一%、航空機、艦艇等の正面装備の運用、修理、隊員の教育訓練等の後方関係経費が六兆五百億で約三三%、正面装備の調達経費が四兆七千五百億で約二六%だ、こういうふうに明確にいわゆる積み上げ方式でやっているのに、そのこと自体が決めてないなんてことは言えないでしょう、あなた。はっきり言って、もう実際に決めてあるんです。それは私は微調整とかそういうものの見直しをとやかく言うものではないけれども、もう大きな大枠は五カ年計画で十八兆四千億となっているんですから。それは為替の相場等で六十年の価格はどういうふうになるかということは、これはまた別問題ですよ。しかしそのように計画の見直しの項目が入るなんていうのはおかしいということが一つ。  それからもう一つは、これは三年後というのですから、もしそういうことで明確にしなければならぬというならば、六十三年のときにさらに国際情勢とか財政事情とか技術の水準ということで検討をして、そのときにこういう「今後の防衛力整備について」というふうな見解を出されたというならばまだしも、それを決めた閣議で――中期防というのは閣議決定されているのですよ。閣議決定されたものを閣議決定で消すのは、それはいいですよ、いいけれども閣議決定自体が守られない。まず中期防閣議決定が守られないというのはおかしいと私は言っているんだ。どんなことがあったってこれはおかしいですよ。幾ら言ったってこれはおかしいんだから。こんなことで防衛二法を上げてくれ言われても、そのこと自体おかしい。こんなのは白紙撤回しなさいよ。白紙撤回して、そしてもう一度やり直しなさいよ。
  167. 西廣整輝

    西廣政府委員 先生は、五カ年計画ができたときに、これは五カ年間の積み上げであり、総額明示でフィックスした制度であるというようにおっしゃいましたけれども、それは大変先生の誤解でございまして、その当時から野党その他の先生方の御質問に、これは検討項目があるのでローリングする場合もあるのじゃないか、その場合にはローリングしてしまったら総額というものがわからなくなるではないかというような御批判があって、いや、それはたとえローリングしても、そのローリングした新たな五カ年計画の二年度分というものを切り離して十八兆四千億と比べることは可能でございますというように私どもは御説明をいたしました。  しかし、そういうことで次の五カ年計画が並行してスタートしてしまうという形になると、確かに五カ年というぽっきりとした形で比較が困難である、あるいはすっきりしないという御意見がなお絶えなかったというのが、今年に入りまして、先ほど官房長官からもお答えがありましたように、それではこの際五カ年計画フィックスにしよう、ローリングさせまいという決心をされ、新たな閣議決定がなされた理由でございまして、決して初めから五カ年計画固定方式というものでスタートしたものではないという点は御理解をいただきたいと思います。
  168. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 あなたがどんなに詭弁を言おうとそれはおかしい。予算委員会ならこれは完全にストップものですよ、おかしいんだから。三年後に計画をどういうふうにするかということを検討するというのに、二年でやっちゃって、これだっておかしいんだから。  どうしてこういうふうになったかというと、中期防が本当に国民の前に出てきて、それが衆参でも触れられていますよ、触れられているけれども綿密に検討されていなかった。これは議事録を読んでみるとよくわかる。だから、防衛局長が言うような論議はあったかもしれない、あったかもしれないけれども、こういうふうな閣議決定をして安易にまた閣議決定をし直すというようなやり方、また、国民からそういうことはおかしいじゃないかと言われるような内容を入れ込んで閣議決定したということに大きな問題があるし、GNP一%を突破するためにそういうものを一気に決めてしまって格上げしたということには問題があるということを私は指摘しておきたいと思います。ここで論議したことは議事録にきちっと残ることですから。  官房長官、済みません、お時間だということですから、どうぞ結構でございます。私もあと幾らもないので、別な論議をします。  それで防衛局長中期防というのは政府の決定による計画でしょう。防衛庁がつくったいわゆる業務見積もりとは違うわけでしょう。どう違いますか。
  169. 西廣整輝

    西廣政府委員 中期業務見積もりと申しますのは、御承知のように、大綱目標は示されておる、一方、年度年度の予算というものは、計画というものは年度年度でやっていこうということが政府間の了解でありますので、としますと、単年度単年度で事業というものを積み上げてまいりますとどうしても長期的な観点が欠けてしまったりするということで、要するに防衛庁の業務の利便、予算要求等に際してできるだけ合理的な予算要求をしたい、そういうために、防衛庁の部内の作業上の利便のためにつくられたものであるというようにお考えいただきたいと思います。  一方、政府計画といいますのは、この五カ年間に、大綱というものは現存しておりますが、そのうち五カ年間にやるべき事業の主要なものはこれこれであるということを政府として確定され、かつ、それに要する経費の枠組みというものについても、これは上限でございますけれども、十八兆四千億という六十年の時点経費枠というものが示されているということで、これは内閣として決定した枠組みであるというふうに私ども考えております。したがって、それに従った年度の予算なりを年々組んでいくという考え方に立っておるものであります。
  170. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 この中期防衛力整備計画は、防衛庁段階よりも政府決定ということで決められたのに、なぜそれじゃ国際情勢の分析が入らないのですか。防衛計画大綱でそのときに国際情勢の分析をしたからそれでいいというものじゃないでしょう、国際情勢の分析というものは。なぜそれじゃエイジス艦が必要なのか、なぜOTHが必要なのかあるいは給油機が必要なのかというようなものは、国際情勢の分析というものがなくしては、これは言うならば、全く国民はあれよあれよという間に、ただただ科学的な進歩により近代的な装備をやりますという理由だけでどんどんと増強されていくんじゃないですか。納得がいきませんよ。国際情勢の分析というものは一番必要じゃないですか。  例えて言うなら、皆さん方の防衛白書だって真っ先に国際情勢の分析をやっている。だから中期防には国際情勢の分析をしなくてもいいとは言えないよ。そうじゃないですか。防衛白書の中にもこう書いてありますよ。五十二年七月に、国際情勢の分析の必要性、「「リスク」を最小限にとどめるためには、国際政治や軍事情勢の動向を常に的確に分析し、情勢の重要な変化の兆候をできる限り早期に察知すること、察知した結果を適時、適切に防衛政策に反映させることが極めて重要である。」と書いてあります。そうじゃないですか。いいですか、あなたたちが中期防衛力整備計画の中で何を言っているかといいますと、「計画策定の経緯」でしょう、それから二番目が「整備方針」、三番目が「主要整備内容」だ、それから四番目が「計画実施による能力」、五番目が「所要経費」、六番目は「計画の見直し等」、これだけしかないじゃないですか。これで中期防衛力整備計画と言えますか。  国際情勢の分析が一番必要なんだ。必要でこういうものを買いますというなら、これは買い物計画じゃないですか。よくマスコミで買い物計画と言うのは、国際情勢の分析がないからだ。十八兆四千億、GNP一%をオーバーする、もうそのことだけが頭にあってこういうようなことがなされた中期防衛力整備計画を認めると言ったって――中期防衛力整備計画というのは各国だって見ているのですから、実に日本の中期防衛力整備計画はお粗末だ、軍事情勢の言うならば分析もない。そういうようなものをつくって買い物買い物で、どちらかというとGNP一%を突破させることに眼目があるとしか思えないじゃないですか。なぜ国際情勢の分析をしなかったのですか。
  171. 西廣整輝

    西廣政府委員 中期の防衛力整備計画書に国際情勢見積もりというものが必ずしもなければいけないということにはならないと私は思います。御承知のように、二次防、三次防当時、情勢見積もり、防衛構想、それから整備計画内容というように三本立てになった時期がございます。当然のことながら、我々中期防衛力整備計画を行うに際しましては、各種の国際情勢見積もり、国内の情勢見積もり、さらには現状分析、能力見積もり等を行いました結果を十分国防会議で御報告をし、御審議の上、この中期防衛力整備計画ができたわけであります。  しかし、それを計画書そのものに入れるか入れないかということになりますと、情勢見積もりを入れれば防衛構想がどうだということになります。ところが、防衛構想につきましては計画大綱でかなり詳しく書き込んであるということになりますと、この整備計画書そのものに情勢判断から含めて入れていく必要があるかないかということが、当然のことながら当時我々と国防会議事務局、事務局に参画している各省庁の方々と論議があって、今の形式が最もよろしいという御判断を得まして計画書の内容は現在のような形になったわけでございまして、決して情勢等についての論議なり審議がなされなかったということではございませんので、御理解をいただきたいと思います。
  172. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 防衛庁でいろいろ検討しましたとか防衛庁でやった、そんなのは蚊帳の外だ、我々は全然あずかり知らないのですもの。そうでしょう。防衛というのは国民にわかるようにするということが防衛庁考え方じゃないの。国民によくわかってもらうんだ、理解してもらいたいと言っていながら、なぜ国際情勢の分析もなくして突然買い物計画だけ出したのですか。そんなのは問題ですよ。防衛庁内にだってやはりこういうふうなものについては国際情勢の分析が必要だというふうに言っている人はいるのですよ。あなただけじゃないのだ。国際情勢の分析がなされないでこういうものがぽんぽん出てきたら、だれも国民はわからない。おかしいのです。中期防衛力整備計画というのは政府の決定であり、断固として政府としてはこれを推進しなければならないという立場にある計画なんでしょう。それが国際情勢の分析もなく、整備計画買い物計画、それだけを出したんじゃお粗末でしょう。  お粗末なわけは、とにかく五九中業をわずか一カ月で格上げして政府計画にしたから、こういうものについて綿密な時間をかけてやることができなかった。いいですか。五九中業にはそれなりのことは書いてあるかもわからない。だけれども五九中業は国防会議に報告したというだけで、国会に提出しなさいと言ったって提出しないじゃないの。こういうふうな資料は出してはいません。それじゃマル秘ですか、極秘ですか、出さないということならば。五九中業は、報告されたのはマル秘ですか極秘ですか、その点を明確にしてください。どうなんですか。
  173. 西廣整輝

    西廣政府委員 幾つかの質問があったと思いますが、たびたび申し上げますが、情勢認識等については十分な審議がなされたと私は思っております。また、その際に、書式としてそういったものを入れるか入れないかについては部内外でいろいろ各省庁で意見があったことも事実でありますが、最終的に決まったのは現在のような形になったので、それについては一応御容赦いただきたいと思います。  そこで、国防会議で一カ月で急に政府決定に変わったとおっしゃいますが、それは非常に違うわけでございまして、例えば五九中業の前の五六中業については国防会議に御報告いたしましたが、国防会議としては御審議は一日だけでございました。それに対して五九中業は当初からこれは政府決定になることあるべしということでございますので、非常に回数を重ねて御審議をいただいておりますので、決して一カ月で急に変わったというものではございませんので、その点御了解をいただきたいと思います。  さらに、五九中業についてマル秘かどうかということでございますが、これは我が方としては全体としては秘文書にしておりますが、これは防衛庁限りの事務的な作業の資料でございまして、これ自身が政府内で正式に認められたというものでもございませんし、内容的にも非常に細部にわたっておるものでございますので、外部には出さないということで措置をさせていただいております。
  174. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 その問題はいろいろの問題を抱えているということだけきょうは実は指摘をしたわけですが、最後に防衛庁長官、いわゆる防衛行革ということが言われているわけですけれども、その中で、今の防衛庁の本庁それから防衛施設庁は六本木の一等地にあるわけです。近所の方々は、あそこの場所にあんなものがあって、町の発展は阻害されるし、少なくとも六本木がこういうふうになってきたのはそれなりの歴史があるにしても、何とかならぬものだろうかという声があるわけです。だから、防衛庁といっても国民の財産であるわけですから、その点について、もっと場所的にいってもそれなり防衛庁としてふさわしい場所があるだろうと思うし、例えばあそこをそういう形にされた場合に、かなり地価の高騰等を招くようなことは厳に慎まなくてはならぬだろう、それについては防衛庁長官としてはどうお考えになるか、それを聞いて、きょうは質問を終わります。
  175. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 防衛庁が六本木から市谷へ移る、この問題は防衛庁の施設があそこにあることが絶対に必要なのかどうか、これが一つありますね。市谷に移った方がいいかどうか、そういう比較検討の上で市谷へ移ることが適当であろう、こういうことなんです。市谷の施設はほかへ移す、こういうことになると思います。  それで、跡地の問題は、これはまさに防衛庁の問題じゃないですね。これは国有財産でございますから。したがいまして、今御指摘のとおり跡地が地価高騰の原因にならないようにというのは、私もそうあってほしいと思いますが、私が有権的にここでお答えをすることは適当でないと思うのであります。
  176. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 時間が来ましたので、これで終わります。どうもありがとうございました。
  177. 石川要三

  178. 中路雅弘

    中路委員 最初に、逗子の池子弾薬庫跡地の米軍住宅建設問題について二、三お尋ねします。  昭和五十八年七月に施設庁がこの池子を適地として通知をされました。その年の十月六日の当内閣委員会で、当時の塩田施設庁長官に私はこの問題で質疑を行いました。今の西廣防衛局長友藤施設庁長官も当時は参事官として出席しておられますから記憶にあるかと思いますが、私の質問に施設庁長官は、地元の市当局あるいは住民の方の理解を得たいと答弁しておられますし、その後もこのことは絶えず繰り返しておられます。地元の市当局及び市民の理解を重視する態度については今も変わりありませんか。
  179. 友藤一隆

    友藤政府委員 お答え申し上げます。  今御指摘のように、五十八年十月六日に塩田政府委員から、「できる限り努力いたしまして地元の県当局あるいは市当局あるいは住民の方の理解を得たいと念願しております。」、こういう御答弁を申し上げております。  私どもとしましては、池子の米軍家族住宅の建設につきまして、その後の昭和五十九年六月、当時の逗子市長さんから神奈川県環境影響評価条例を厳守することを条件一つとして協力する旨の御回答がございまして、当庁としても、そういった地元の意向を尊重し理解を得るということで同条例による手続をとってきております。  それから、市長が交代をされた後におきましても、御案内のとおり、本年三月、県知事さんからの早期解決の呼びかけに応ぜられまして、国、県、市による三者会談が持たれて調停案が提示されておりますので、そういう形で市長さんも加わられまして、地元の御意向、市長の御意向も私どもとしては十分参酌をしておるということで理解を得てきておると考えております。
  180. 中路雅弘

    中路委員 今の三者会議の調停案については、地元の市長は基本的な見解を異にするということを表明されていることは御存じだと思います。  きょうのテレビでも放映していましたし、先ほど見た夕刊各紙が報道していますが、粟原長官が、「二十七日午前、自民党本部で開かれた同党の国防関係三部会の合同会議でのあいさつの中で、神奈川県逗子市の池子米軍家族住宅建設問題について、「これまで神奈川県の仲介で進めてきたが、富野逗子市長の辞職で、県も憤慨している。県は、いつでも工事の手続きをとっても結構だと言っている」と述べ、神奈川県の姿勢を明らかにする形で、九月中にも着工に踏み切る意向を示した。」こういうふうに表明されていますが、県のだれがいつ、施設庁にいつでも工事の手続をとってもいい、結構だと言ったのですか。
  181. 友藤一隆

    友藤政府委員 この件につきましては、ただいま若干答弁申し上げましたとおり、市長の御意向をも踏まえて知事が調停案を作成され、私どももぎりぎりの考慮を払いまして、地元の御意向を十分入れて調停案をつくっていただいて、それに従って現在一連の手続を行っておりまして、工事の準備が整いつつあるところでございますが、残念ながら、先般逗子市長さんが辞任を表明されまして、調停案についてはお返しをしたいというような御見解を新聞紙上でも拝見をしておるわけでございます。  それらの状況を踏まえまして、神奈川県からお話が私のところへ、昨日、一昨日でございますか、ちょっと日取りは正確に今覚えておりませんが、お見えになりまして、一連の手続については進めるということについて異存はないというお返事を承ったわけでございます。
  182. 中路雅弘

    中路委員 同じ新聞の報道でも、神奈川県は、「「いつでも結構」などと県が積極的に着工を促すような考えを述べた事実はないと反論している。」という記事もあります。私は先ほど、五時ごろ、直接確かめるため神奈川県に電話をしました。長洲知事と私たち見解を異にしていますけれども、事実は正確にしなければいけない。宇野渉外部長の電話の話ですが、いつでも結構などと言ったことは全くない、知事の公式の表明は八月二十一日の記者会見以外にはありませんということを言っています。八月二十一日の知事の表明というのはこう言っています。逗子の市長の辞職の問題ですね。「意外な展開に驚いている。富野さんから事情考え方を詳しく聞いて、県として今後の対応を決定するつもりだ」これが知事の公式の表明です。  防衛庁長官、事実に反することはひとつ取り消してもらいたい。
  183. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 物事には公にできないことがある。内議というのがある。その内議では、今、施設庁長官の言ったようなことだったということです。
  184. 中路雅弘

    中路委員 全国に各紙新聞で報道されているのです。これを皆見ているのです。そして、私の問い合わせで、県の正式の担当者が、そんなことは全く言ってないということを言っているのです。私は、先ほど言いましたように、今、県知事の調停案については賛同していません。立場を異にしています。しかし、事の経過はきちっとしておかなければいけない。だからお話ししているのです。
  185. 友藤一隆

    友藤政府委員 先ほど御答弁いたしましたように、工事に着手していいということを直接申しているわけでございませんで、手続を進めていただいて結構でございます、こういうことでございますので、私どもはこれから手続を進めて、その結果、一連の手続が終わりました段階で工事に着手する、こういう段取りになるわけでございまして、そこのところは若干言葉の行き違いがあるのではないかと思います。
  186. 中路雅弘

    中路委員 皆さんの意向はわかりますよ。防衛庁長官も言っておられるし、先日施設庁の次長も、九月中に着工を辞さない、評価書は九月に出しますということを言っておられる。この意向はわかりますよ。しかし、県がアセスの手続の説明は当然するでしょう、しかし、ここで言っているように、結構ですと着工を促すようなことは言ってない、今対応を考えている、逗子の市長の考えをよく聞いてということですから、その事実はやはり正確にしなければいけないというふうに思うのです。  それで、御存じのように、この九月の時期というのは、きょう逗子の選管が日程を決定しましたけれども、十月四日告示で十二日投票ということですが、二十一日の富野市長の辞意表明によって十月に市長選挙が行われる前であります。  市長の辞意表明は、その中に述べられていますけれども、長洲県知事の調停案の可否を住民投票で決める目的で市民から出された市民投票条例案が議会で否決されて、市民の意思表示の機会が閉ざされたもとで、市長選挙で市民の選択を問う場を保障したい、私は道理がある主張だと思うのです。  住民の意思をここで表明されたい、それの機会を得たいということなので、国民主権、住民自治の立場からいっても、あるいはこれまでも市当局や住居の皆さんの理解を得てということを繰り返し言っておられたわけですから、既に決まっている市長選の直前に着工ということになれば、まさにこうした市長選に対する介入といいますか、また地方自治に対する介入にもなるし、一方的な強行ということにもなるわけですが、市長選後までやはりこの着工については待つというのが当然ではないでしょうか。
  187. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 私のけさ言ったことは、今、施設庁長官が言ったように、工事をするのにいろいろな手続がございますな、それに必要な手続を済ませたその後で着工ということになるわけですよ、そういう趣旨のことを言ったわけだ。いつ着工する、そこまで私は言っていない。しかし、あなたの言うように、だからあなたの言うことはわかりました、そうしましょう、そういう立場には私は今ないということです。
  188. 中路雅弘

    中路委員 アセスの手続のことですね。手続のことは私もよく知っています。しかし、今長官がおっしゃったように、手続はこういう手続になるけれども、いつ着工するかということまで表明していないということでいいですか。
  189. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 それは、できるだけ早く着工したいという気持ちはありますよ、しかし、いつということを確定しているわけじゃない。
  190. 中路雅弘

    中路委員 私は、今言いましたように、この問題で市長が調停案を持ち帰った、受け取ってきたというのも、重要な問題だから最終的に住民の意思をもう一度聞いてということで帰ったわけですから、市民の皆さんが、住民投票条例の否決ということでその機会がない、市長選ということで改めて表明したいということですから、市長選が十月に既に日程も決まっている、私は、その前に強行するということについては断じて容認できないという意見をはっきり述べておきたいと思うのです。  とりわけ、御存じのように、神奈川県の環境影響評価条例、アセス条例を尊重するとして手続を進めてこられたわけですが、この条例は手続の条例なんですね。その基本になるのは県の良好な環境の確保に関する基本条例、これに基づいて定められたもので、この基本条例は三つのことが柱になっているのです。一つは住民参加、次は情報の公開、三つ目が合意の形成、これが神奈川県の基本条例の三つの重要な柱です。これに基づいてアセスの手続条例がつくられているわけです。すなわち、住民の合意形成が重要な柱ですから、合意のないまま、事務的にアセスの評価書の提出あるいは着工ということは、皆さんが尊重すると言っているアセスの基本条例からいっても許されないことだと私は思いますので、その点では重ねて、市民の意思のはっきりとした表明が示されるまで一方的な強行は許されないということを、もう一度はっきりさせておきたいと思います。  この際にもう一言触れておきますけれども、昨日、逗子で市民の集会がありました。この集会で、市民条例の制定の請求人の一人であります、よく御存じの評論家の古谷綱正さんが発言をされています。私は、この発言は市民の共通の声だろうと思いますので紹介しておきます。国は安保を強調しているけれども、安保は百年も長く続くものではないが、逗子の森は千年、二千年も子孫に残しておかなければならない、安保で池子を犠牲にするのは、お国のためとしてたくさんの犠牲を強いられた戦争中の過ちを繰り返すことになるというのが古谷さんの訴えだったわけですが、これは恐らく逗子市民がこれまで五度におたって多数の声として示された、この米軍住宅建設計画を白紙に戻してほしい、この根底にある共通の声だということを私はこの場所においてはっきりと述べておきたいし、防衛庁長官もひとつとの点は耳を傾けていただきたいと思います。保
  191. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 いろいろな考え方があって、それを述べられることは自由です。しかし、私どもも、この池子の問題はきのう、きょうの問題ではないんだ、これは、ずっと六年越しの問題だ。そして、神奈川県知事さんが入って国と自治体との間でいろいろ調整をして、御本人も尊重しますと言ってきたのです。それで突然やめられて住民に対して何かやる、私はそういうことについても大変遺憾ですよ。そういうことについてもよく国民の皆さんにわかっていただきたいと思う。
  192. 中路雅弘

    中路委員 私が最初に引用しました当時の内閣委員会の質問のときにも引用していますけれども、当時長洲知事は、この問題はアセスにはなじまないのだ、核も基地もない神奈川ということを柱にしている神奈川県政になじまない、だからアセス以前の問題だということを繰り返し言っていたのです。県知事の方が今変節して皆さんと同じ立場に立っている。逗子の人たちは一貫しているのです、その点では。そのことははっきり述べておきたいと思います。
  193. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 あなた政治家でしょう。政治家の信義というのは現実に即しているのですよ。
  194. 中路雅弘

    中路委員 だから、逗子の市長が三者会議で尊重するというのは受諾したことじゃないでしょう。三者会議をやったのですから、調停案や意見が違っても出れば、一応それは調停案として尊重して持って帰って、住民の皆さんの意向を聞くということで持って帰ったのですから、尊重するということと受諾するということは全く違うのですよ。それははっきりしておきたい。
  195. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 あなた、余り我々のやりとりの内容を知らぬで、一方的にそういうことを言われることは慎んでいただきたい。
  196. 中路雅弘

    中路委員 私は、この問題の調整に当たった長洲県知事、特に今度副知事になった久保副知事あるいは富野市長とも、何年にもわたってこの問題では絶えず意見を交換していますし、話し合いもしている仲です。事情はよく知っている中で話をしているのです。それだけに言っておきたいと思うのです。防衛庁長官は何代がかわったけれども、私はこの委員会で何遍池子の問題を質問しているか、むしろ長官よりも歴史的な経過についてはよく知っているはずです。  次に進めますけれども……
  197. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 この問題について、調停のいきさつの中で私がやったのです、私のところで、私の段階で。政治的な問題は現在どうするかということになる、あなたはその点については触れない、過去のことばかり言っている。
  198. 中路雅弘

    中路委員 私は、先ほど言ったようにこれだけの長期間かかっているのは、何遍もリコールがあり、御存じのように議会選挙、市長選挙、絶えず反対だという意思表明が出されている、この住民の意思を尊重しなさいということを繰り返し言ってきているのです。それが住民自治、憲法で定められた国民主権の原則じゃないですかということを言っているのです。  限られていますから次に進みますが、先ほどちょっと質問のありました防衛庁本庁の移転の問題です。六十二年度の予算でも防衛庁本庁の市谷の移転の問題が出ていますが、調査費六百万円というのが組まれていますが、これは何に使われるのですか。既に移転の方向というのは決められているのですか。
  199. 児玉良雄

    ○児玉(良)政府委員 六十二年度予算に計上されております調査費は六百万円でございまして、市谷周辺におきます交通量の調査その他を調査することにしております。現在調査中でございます。  それから、この市谷移転に関しましては、先ほど鈴切先生からお尋ねがあり、大臣からお答えいたしましたようなことで検討してまいりましたが、現在その最終的な取りまとめをしておるところでございます。
  200. 中路雅弘

    中路委員 報道によりますと、この市谷の移転費用ですが、六本木の防衛庁本庁の売却代金ですね、先ほどもありましたけれども、公示価格で見ても今約一兆六千八百億円という莫大なものになることが新聞でも報道されていますが、これを特定国有財産整備特別会計、いわゆる特待会計で行うということを私は八月二十二日の東京新聞で見たのですが、この特別会計で行うお考えなんですか。
  201. 児玉良雄

    ○児玉(良)政府委員 この件につきましては、先ほど申し上げましたように、現在取りまとめをしておるところでございまして、この場でどうするということをお答えいたしかねるということを御理解いただきたいと思うのです。
  202. 中路雅弘

    中路委員 新聞報道ですと、既に大蔵省と防衛庁で合意しているという報道もあるわけですが、一般会計では到底、膨大な費用ですからね、しかしこの特待会計というのは、今まで米軍基地の移転、集約の際にはこの特別会計で基地の集中が行われたわけですけれども、もし今度この方法で行われるとすれば、防衛庁としては初めてなんです。六十二年度で軍事費がGNP一%を突破して、五十一年の閣議決定も変えられたわけですけれども、今度特別会計で防衛庁本庁を移転するということになれば、これはさらにこうした一般会計の防衛費とは別に膨大な防衛予算がそこで予算化されるということになるわけです。  再度お聞きしますけれども、新聞でも合意されているということが言われていますけれども、大体この特待会計でやられるという方向で検討されているのですか。
  203. 児玉良雄

    ○児玉(良)政府委員 繰り返しになりますけれども、現在最終的な取りまとめをしておるところでございまして、その内容であるとか方法であるとかいうことをここでお答えいたしかねるということを御理解をいただきたいと思います。  それから、仮に防衛庁本庁舎のある檜町駐屯地からほかへ移転をするということになった場合には、その跡地につきましては防衛庁の所管をすることではないので、私どもとしてそれについてどうこう言える立場にはないと思っております。  それから、今、特待会計では米軍関係のしかないというお話がございましたけれども、そのほかのものにつきまして、自衛隊のものにつきまして特待会計制度を利用したケースは過去にございます。
  204. 中路雅弘

    中路委員 防衛庁長官、昼も食事していないというから、これはお互いに武士の情けたから食事くらいいいです。共産党は食事させないということになるとあれですから、いいです。  今おっしゃった、ほかに特待会計でやったのがあるというのは、どういう例があるのですか。
  205. 児玉良雄

    ○児玉(良)政府委員 今までにいたしましたものの例を挙げますと、例えば官舎などを集約、再配置をしたというケースがあります。
  206. 中路雅弘

    中路委員 この六本木の防衛庁の本庁内に、御存じのように九十億もかけて中央指揮所を建設したばかりですね。これを壊して市谷に移って新たに強固な中央指揮所を建設するということにもなりますし、これ自身でも大変なむだ遣いだと思います。  これも日経新聞を見ますと、「防衛庁は本庁の市谷移転のため、現在市谷にある施設のうち①陸上自衛隊東部方面総監部を練馬区の朝霞駐屯地に移す②陸海空三自衛隊の幹部学校、統合幕僚学校を目黒区の防衛研修所敷地に移す」「これらの費用も現庁舎敷地の売却費から」いわゆる特待から「まかないたい考え。」だということが報道されています。これは新たな大軍拡になると思うのですね。こういう形で次々と新しい施設を一般会計、防衛予算ではなくて、別の会計でやる。  私は、もし市谷に移るということになれば、今の六本木の跡地のあれは当然国庫に入れて、できるだけ国民生活の方向にこうした金は使われなければいけないと思うのですが、こうしたやり方で、特別会計で別枠にして膨大な施設をもし新しくつくっていくということをとられるならば、これは絶対許せないということを述べておきたいと思うのです。
  207. 西廣整輝

    西廣政府委員 先生、今、軍拡と申されましたけれども、軍拡というのは部隊がふえるとかそういう話でございまして、あるところのものがよそに移転したら軍拡ということじゃございませんので、その辺は御認識を改めていただきたいと思います。
  208. 中路雅弘

    中路委員 ただ移転するだけじゃないのですよ。例えば、これも新聞に出ていますが、市谷に今、旧大本営の跡の大きな地下施設が残されていますね。今、自衛隊は全国の主要な自衛隊施設を地下化している。それは六十年十一月ですか、参議院の予算委員会で神谷議員が質問していますけれども、皆さんから資料も出ています。地下化していますが、市谷に移って自衛隊の地下化の施設の総仕上げもやろうということです。これは単に施設をつくるということじゃないのですね。そして、神谷議員の質問の中で、こうした今全体の防衛庁の施設の地下化が核に備えたものではないかという質問で西廣局長は当時こういう答弁をされています。「コンクリート、あるいは鉄板が入っておるかもしれませんが、そういったもので核攻撃に耐えられるというようには私どもは考えておりません。」という答弁をされています。  朝日新聞の八五年八月五日の夕刊が、アメリカの本土で核戦争に備えてワシントン郊外に政府高官の核シェルターを設けていることを詳しく報道されていますが、それは地下一、二階で、地表から一・八メートル、厚さ四十六センチの鋼板と二十八センチのコンクリートを重ねて、これは八キロ離れたところに十メガトンの核爆弾が爆発しても耐えられるものだということが詳しく報道されている。私たちの調査では、今、自衛隊の行っているこうした重要な施設の地下化は、この報道されているアメリカのシェルターの数倍の鋼板とコンクリートを使っているんですね。この前も防衛局長が、核に耐えられない、耐えられるようになっているというようなことは考えられないと、何の根拠もなしにおっしゃっているんじゃないかと思うのですが、市谷が、このように単に施設の移転ではなくて、新しい全国的なこうした施設のシェルターを含めた強化、そういうものであるということは間違いないと思うのです。
  209. 西廣整輝

    西廣政府委員 根拠がないわけじゃございませんで、例えばアメリカのNORADという宇宙軍指令部というのがございますが、これは山をくりぬいて、山の中にばねの上に乗せたビルを建てるというようなことをやっておりますが、それでも原爆の直撃には耐えられない、やはり空中に飛んでおる司令部というものが要るというふうに聞いております。  さらに言えば、ソ連等は党の幹部であるとか政府の要人であるとか軍の要人であるとか、そういった者が生き延びられるように各所にシェルターをつくっておる。例えばモスクワにおいては、たしか地下八百フィートだか八百メートルたかの事務室をつくり、かつそこからの抜け道といいますか、郊外の飛行場までの平時使用していない道路までつくっておる、そういったような状況でございますが、それですら完全に安全だということじゃないと思いますので、コンクリートの壁とかその程度ではとても核に耐えられないというふうに私どもは考えております。     〔委員長退席、船田委員長代理着席〕
  210. 中路雅弘

    中路委員 今のお話は参議院の委員会で同じお話をされているのですが、だから私は言っているのです。直撃弾の話をしているんじゃない。神谷議員も言っていますけれども、新聞でも、核に耐えられるシェルター、少なくとも、核の直撃じゃなくとも、アメリカでも八キロ離れたところに十メガトンの核爆弾が爆発しても耐えられるものだ、そういうものではないかということを言っているので、直撃の話だけをしているわけじゃないということも指摘しておきたい。  いずれにしてもこうした膨大な一兆五千億を超える費用が特待会計ということで防衛庁の新しい施設のために転用されるということについては、私は容認できないということをもう一度述べておきたいと思います。  後で柴田議員から関連質問がありますので私の時間が限られていますから、あと二、三、残された時間で質問しますが、先日、八月の上旬に五日間、沖縄県の米軍基地、自衛隊基地の視察に党の議員団で行ってまいりました。幾つも御質問したい問題があるのですが、時間が限られておりますから、一、二の問題をその中で御質問したいと思います。  第一の問題は、七月二十三日の第二徳丸の被弾事件の問題です。この問題で県漁連の会長あるいは海上保安庁の本部長自衛隊の航空司令、みんなお会いしてお話も聞きました。特に県漁連の会長や専務は、一番いい漁場ですから、二、三百隻、沖縄の漁船がいるだけではなくて静岡あたりからも来る漁場になっているのですね、だから、もう一回あのような事件が起これば沖縄漁業は壊滅するとか、あるいは操業どころじゃないという不安を皆さん表明しています。  海上保安庁の本部長にお会いしたのですが、第一一徳丸の被弾事件について往来危険罪で捜査中だ、事件当時、航空自衛隊のF4ファントム戦闘機が演習を行っており、同機が空対空誘導ミサイル・スパローを発射した直後に事件が発生した、その時刻に米軍は演習を行っていない、ここまではわかっているんだということで、第一一徳丸から発見された小指大の二つの金属片の鑑定を今防衛庁に依頼しているというお話です。現地の人たちは、鑑定先が防衛庁というので、容疑者に犯行の証明を頼むようなものじゃないかということを新聞も書いていますけれども、いずれにしてももう一カ月以上もたっているのです。回答はどうなっているのですか。
  211. 邊見正和

    ○邊見説明員 お答えいたします。  本件につきましては、事件発生以後、第一一徳丸船内で発見、領置しました金属片については、七月二十九日に防衛庁の方に鑑定依頼を出しております。現在まだ結果をいただいておりません。
  212. 中路雅弘

    中路委員 一カ月以上たって、海上保安庁、何をやっているのですか、回答ももらわないで。責任を明確にしなければいけない。
  213. 邊見正和

    ○邊見説明員 防衛庁から伺っていることでございますが、金属片の鑑定につきましては、現物が非常に小さいということ、それからミサイルに使っております材料も非常にいろいろあって、鑑定には一カ月以上かかるというように伺っております。
  214. 中路雅弘

    中路委員 航空自衛隊の南西航空混成団の大塚司令にもお会いして時間をかけてお話をしました。司令は、航空自衛隊は関係がないとか航空自衛隊がやった蓋然性がないとかは言わないという言い方で、しかしなお責任は明確にされていない、パイロットに安全確認したのかと言ったら、それは事実だと言っているから、よくわからない。安全確認をやって、そして被弾事故が起きているなら演習をやめるよりしようがないのです。  海上保安庁は、被弾の金属片だけでやっているわけじゃないでしょう、いろいろ聞き取りもやっているのでしょう。そういうところから、ほかは、米軍はやっていないということは明白なんですから、また自衛隊の現地の司令も、自衛隊がやっていないとは言わないということは言っているわけですから、この問題の責任は明白だと思いますけれども、はっきり原因と責任を明確にするということで、いつまでにどうされるのか、ここでもう一度海上保安庁と防衛庁にお聞きしておきたい。
  215. 邊見正和

    ○邊見説明員 海上保安庁では防衛庁に金属片等の鑑定をお願いしておりますほか、該船の乗組員の方あるいは付近で操業しておりました僚船の乗組員の方、そういう方からの事情聴取等も行っておりますし、また、無線交信記録等をもとに鋭意捜査をやっているところでございます。防衛庁からの鑑定の結果が出ますれば、さらにその捜査を進めてまいりまして原因の解明を急いでいきたい、このように考えております。
  216. 筒井良三

    ○筒井政府委員 七月末に海上保安庁からいただきました金属片、小指の頭ぐらいのものでございますけれども、その二つ、それらをただいま防衛庁の技術研究本部を主体として分析を続けております。これは私も物を見たのですけれども、一見したところではとてもミサイルの部品というようなものではないように見えますが、予断することなく、金属の元素の分析でありますとか慎重に進めております。試料片が大きいものですとみんなで手分けしていろいろな分析を並行して進めることができるのですが、何分にも大変小さいものなので、シリーズといいましょうか。一つの試験を終えたらまたその後それを少しずつ使ってというやり方になりますのでいささか時間がかかっておりますけれども、できるだけ速やかに鑑定のお答えを差し上げたいと思っております。
  217. 中路雅弘

    中路委員 話を聞いておるとどうもやはり犯人に証明を頼んでおるような気がしてなりませんけれども、はっきりと原因を究明し責任を明確にしてほしいと思います。  もう一点だけお尋ねしますが、沖縄の海洋観測所の問題ですけれども、この海洋観測所は施設に入れてくれなかった。四十億かけて防衛庁がつくった施設ですね。もちろん、ここはちょっと困りますということで説明はしないとか、施設によっては見せないところもあるでしょう。しかし国会議員が五人行って門のところで、事前に話したのに全然入れない。国の予算でつくった施設ですよ、しかも自衛隊の施設です。少なくとも応接間がどこか通して概略の説明はすべきじゃないでしょうか。私は最初にこのことを強く抗議しておきたいと思います。  この海洋観測所に、米軍人と軍属の車であることを示すYナンバーの車両が、私たちの調査では毎日頻繁に出入りしています。それも昼夜含めて車両が随分出入りしていますが、これらのナンバーの車両を調べますと、ほとんど米海兵隊の基地キャンプ・バトラーや嘉手納航空基地に居住するアメリカ人名で登録されている車両であります。まれには普天間海兵隊の基地のもあるわけですが、アメリカ人が昼夜兼行の二十四時間体制で行っている仕事なんです。海洋観測所長の田中準三氏は、アメリカ人が海洋観測所に働いているという事実は認めていますけれども、このアメリカ人の身分について一切答えていません。答えられないということですが、この出入りしているアメリカ人の身分について、所属する組織、政府か民間会社なのか、こういった点についてお答えいただきたいと思います。
  218. 西廣整輝

    西廣政府委員 我が方の海洋観測所、海洋環境を調査する施設を沖縄に最近つくりましたけれども、海洋観測の機材についてはアメリカが非常に進んでおりまして、米側の協力を得て機材等も整備をいたしたわけでありますが、そういったものの整備、調整等について、アメリカの民間人が来てそういった仕事に携わっていることは事実であります。私どもの聞いているところでは、彼らは身分的には米海軍の軍属になっていると聞いております。
  219. 中路雅弘

    中路委員 今おっしゃったように機材の補修等で来ているとすると、この給料はどこが払っているのですか、自衛隊が払っているのですか。
  220. 西廣整輝

    西廣政府委員 機材購入のアフターサービスみたいな形でございますので、私どもとしては給料は払っておりません。
  221. 中路雅弘

    中路委員 給料を払っていない、アメリカの軍属だということはお認めになったわけです。  先日、私どもの党の訪米調査団がアメリカから幾つも資料を持って帰りました。また現地でアメリカの軍事問題の専門家からいろいろお話を聞きました。その話によりますと、世界約五十カ所で、アメリカは直接または間接に同盟国のこういう施設の中で、アメリカ海軍のソ連潜水艦隊の探知のための音響監視システムといいますが、そのチームの分遣隊が活動しているということが資料で出てきています。私たち調べましたら、横須賀にあります在日米海軍司令部幕僚第三部、これは作戦、計画、通信等を扱うのですが、横須賀海軍基地のコマンド・ケープ内のC39号というビルにいますけれども、ここに所属しているソ連潜水艦探知の音響監視特別プロジェクトチームの分遣隊が、沖縄海洋観測所を初めこうした自衛隊の潜水艦探知水中ソナーケーブル等の陸上施設に派遣されて日常的に活動しているのではないかということがはっきりしてきたわけです。  今お話しの日本自衛隊で給料を払ってないこのアメリカ人というのは、この分遣隊ではないのですか。
  222. 西廣整輝

    西廣政府委員 先ほど申し上げたように、我が方の施設に出入りしておりますのは、機材等の修理、調整等に当たる民間人でございます。
  223. 中路雅弘

    中路委員 機材の修理ですと、昼夜兼行で米軍基地からこうした出入りをするということは考えられないのですね、客観的な私たちの調査でも。所長も、集めたデータはアメリカに提供しているということは認めています。横須賀の海上自衛隊の業務群に送り、後どういう方法がわからないけれども提供しているということは認めています。  柴田議員の関連の質問がありますので、私はこの問題できょうは一応終わりますけれども、最初にお話ししましたように、この沖縄海洋観測所、四十億の国費を使って建設したわけですが、この施設が米軍のホワイト一ビーチの中にあるのですね。ゲートがホワイト一ビーチのゲートから五十メートル中にあるから、所長も副所長も米軍のガードの承認なしに観測所の中に入れないということで、私たちを観測所の看板が出ているゲートのところまでも入れないということなんです。共同使用の施設でもないわけです。自衛隊の施設に国会議員が行って、あいさつもできない、説明もできない、これはどういうことなんですか。
  224. 西廣整輝

    西廣政府委員 海洋環境を調査する、そういう海象状況等を十分知悉しているということは、潜水艦を運用する場合、逆に今度は潜水艦に対処する場合に非常に重要なことであります。海洋というのは一面一様のようでございますけれども、やはりその中に水温の分布なり層、層の角度等いろいろなものがございます。そういったものを常時、四季それぞれの気候の中でどう変化するかといったものを十分知悉していないと、本当にもうこちらの船の直下にいても音の屈折によってわからないといったような問題があるわけでございます。したがって、どこの国でも潜水艦を運用している国、あるいは潜水艦に対応しようとしている国については、この海洋環境の調査ということが致命的に重要な事項になっておるわけであります。そしてそのデータは非常に大事にしておる、なかなか外に見せられないといった性格のものでございます。  我が国においても海洋観測所が二カ所ありますが、南側としては沖縄が今度つくられておるわけでございますけれども、たまたま海浜に面した基地がございませんので、米軍のホワイト・ビーチを利用してそこに建設をしたというものであります。
  225. 中路雅弘

    中路委員 だから、米軍のホワイト・ビーチの中にあるのですけれども、しかしこの施設は共同使用じゃないのですね。自衛隊の施設、国の施設なんです。しかも国の費用を使ってつくったわけですから、私は詳しいデータや何かを見せると言っているのじゃない、どういう仕事をやっているのか説明をするのは当然じゃないかということを言っているのです。今のお話の中でも、この海上自衛隊の中に常時アメリカ人が出入りしている、そして、いずれにしても潜水艦の作戦の一翼を担っている施設だということははっきりしています。国会議員も視察に入れないという中にそういうことの象徴的な姿を示しているのではないかということを感じるわけですが、こうした問題、それからあと幾つか通告しておきましたが、沖縄に行って感じた問題については改めて別の機会に質問します。  最後に一問だけお尋ねしておきますが、実弾演習の問題です。  国道を遮って実弾演習をやっています。私は六年ほど前に視察に行きまして、恩納岳という沖縄で一番美しい富士山のような山ですけれども、そこへどんどん実弾を撃ち込んでいますから、山の姿も変わってしまって、資料で見ましたら、去年暮れまで八十九回山火事が起きているのです。六年前に行って、施設庁のヘリコプターで着弾地に視察に行ったことがあります。焼けぼっくいを持ってきて瀬長議員がこの委員会で追及したことがありますけれども、その際に、水源地の涵養林にまで実弾を撃ち込んでいるということで、少なくとも涵養林に実弾を撃ち込むことはやめるということを約束したのです。  しかし、今度現地に行きましたら、村長さんにも区長さんにも訴えられた。当時約束してもらったけれども、二年もすればどんどん司令官は交代して、もう約束関係なしにまた撃ち込まれている。しかも、私も見てきましたけれども、民家の牛小屋の屋根を撃ち抜いたり、あるいは給水タンクに実弾が当たるという、まさに準戦場のような状態なんです。  こうした無法な射撃は絶対やめるべきだと思いますし、とりわけ、以前約束した、少なくとも涵養林には絶対撃たさない、この点はきちっとアメリカ軍に約束させていただきたいということを最後に要請したいと思います。
  226. 鈴木杲

    ○鈴木(杲)政府委員 金武町伊芸地区にございます水源涵養林、これはキャンプ・ハンセンの着弾区域内にもかかっていることは承知しております。  防衛施設庁といたしましては、米軍の射撃によりこの涵養林に被害が生ずることのないように、機会あるごとに米軍に注意を喚起してきているところでございます。また、訓練実施部隊が水源涵養林であることを明認できるような標識を、昭和五十六年六月に日本側において設置いたしました。また、昭和五十九年には米側においてこの標識を設置したところでございます。  米軍は、水源涵養林の重要性についてはよく承知しておりまして、日本側の申し入れにつきましては十分理解していると考えておりますが、今後とも機会あるごとに、この水源涵養林を避けて射撃訓練を行うよう米軍に注意を喚起してまいる所存でございます。
  227. 中路雅弘

    中路委員 では、柴田議員に譲ります。
  228. 船田元

    ○船田委員長代理 関連して、柴田睦夫君。
  229. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 私は、軍用機の事故問題についてお尋ねいたします。  まず最初は、自衛隊機のニアミス問題です。この八月に入りまして、米軍機と自衛隊機の航空事故やニアミスが相次いております。八月十一日には、自衛隊機と全日空機のニアミス事故が高短県沖上空で起きました。翌日の十二日には、米軍機が奈良県十津川村上空を超低空飛行して林業用ケーブルを切断しました。十九日には、千歳空港付近で自衛隊機と全日空機のニアミスが発生しました。これらは大惨事には至りませんでしたけれども、空の安全を確保するということから見ますと本当に重大な問題であります。  初めに、二件のニアミスに関連して運輸省の方に伺いますが、これまでのニアミスについての件数を、民間機と民間機、それから民間機と軍用機、それぞれのトータルでお示しいただきたいと思います。
  230. 大竹勇二

    ○大竹説明員 お答えいたします。  過去十年間、昭和五十二年から六十一年までにつきましては六十三件の報告がございまして、そのうち十三件が異常接近であったというふうに判定されております。また、その内容につきましては、民間機対民間機は三十七件のうち九件、それから、官民と申しましょうか軍民と申しましょうか、それについては二十三件のうち四件ということでございまして、あとの三件は軍用機と軍用機の報告でございますが、ニアミスというふうには判定されておりません。
  231. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 ちょっとお伺いしますけれども、運輸省の場合は、機長や管制官からの異常接近報告がありますと、全体の中の一部ということになりますか、その中から一部を異常接近として公表しておりますが、この公表する目的は一体何でしょうか。
  232. 大竹勇二

    ○大竹説明員 お答えいたします。  航空法第七十六条の二に基づく異常接近に関する機長報告件数は、昭和四十八年から六十一年までの間では百四十三件、先ほどは十年間のものを申し上げましたが、そういうものがございます。この異常接近の報告は私どもが現在時点で持っておる一番長い数字でございますが、その異常接近の報告があった場合には、航空の安全に対する国民の関心が極めて高いことから、その事実を公表し、その原因の解明に努めているところでございます。
  233. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 そうしますと、結局原因を解明するというのは将来の安全対策を図るということも含む、そういうことであると思います。  今度は防衛庁の方にお伺いしますが、運輸省のお話によりますと、航空法第七十六条の二の報告義務に基づきまして機長が報告する。そうした航空機の異常接近報告では、先ほど言われましたように、昭和四十八年から六十一年まで十三年間に軍用機との異常接近が五十五件報告されております。そのうち五件を運輸省としては異常接近として公表しているわけであります。  防衛庁に対して異常接近として運輸省から通知があった事案はこれまで何件あるか、また、その内容はどんなものであるか、防衛庁お答えを求めます。
  234. 長谷川宏

    長谷川(宏)政府委員 最近の十年間におきまする異常接近、自衛隊機関連は四件であります。  五十二年の二月九日に、六甲山付近の上空におきまして航空自衛隊のC46型機と全日空のYS11型機との間に発生した事案、これは両機とも計器飛行方式であり、管制の問題があったというふうにされております。二番目は、五十五年十一月十八日、福岡南方上空におきまして航空自衛隊T1型機と日本航空B747型機との間に発生した事案でありまして、三番目は、五十八年四月七日、岐阜飛行場北方で航空自衛隊第一航空団所属のT33型機と全日空B737型機との間に発生した事案、それから四番目は、五十八年五月二十三日、那覇空港南方におきまして航空自衛隊第八三航空隊所属のF104型機と南西航空B737型機との間に発生した事案であります。
  235. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 それは防衛庁の方でもニアミスとして認めるものでありますか。
  236. 長谷川宏

    長谷川(宏)政府委員 お答えします。  これは主張に隔たりがあったまま終わったわけでありまして、最初の一件はミスだろうと思っておりますが、管制ミスということでございましょうか。残りの三件については、防衛庁の方では最後までニアミスには該当しないものという見解をとり続けて今日に至っているというのが実情でございます。
  237. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 運輸省の方では異常接近と言う、その同じ事実を防衛庁の方では異常接近と認めない、これは重大な問題であります。航空法があるわけですけれども、この航空法というのは自衛隊機についても適用されているわけであります。ニアミスというのはこの航空法に基づいて運輸省が判断することになっているわけであります。その運輸省の判断を防衛庁はニアミスとして認めていないということ、これは本当におかしなことであると思いますが、御所見を伺います。
  238. 長谷川宏

    長谷川(宏)政府委員 これまでのところでは両者の見解に差があったまま推移したということでございます。
  239. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 見解に差があったというのはどういうことなんですか。
  240. 長谷川宏

    長谷川(宏)政府委員 運輸省の方では異常接近であるとおっしゃり、防衛庁の方では、いや私どもの方はちゃんと飛行していたと言っている、こういうわけであります。
  241. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 これはいよいよ重大な問題であるわけです。防衛庁の方には航空機の運航に関する訓令というのがありまして、その二十六条におきましては、「他の航空機と六百メートル以上の水平距離又は百五十メートル以上の垂直距離を保たなければならない。」こう言っております。そしてこの規定に反する接近が行われた場合は、「航空交通異常接近として、すみやかに長官に報告するものとする。」こういうようになっているわけであります。     〔船田委員長代理退席、委員長着席〕 ここでは「航空交通異常接近」という記述を、強い言葉を使っているわけでありますが、これでは、防衛庁の場合は六百メートルと百五十メートル以内の接近が異常接近、いわゆるニアミスだということになるのではないでしょうか。
  242. 長谷川宏

    長谷川(宏)政府委員 お答えいたします。  先般も御説明したのでありますが、この規定は、私どもの航空機が他の航空機にそこまでなら接近してよいというふうな意味で定められたものではないわけであります。私どもは、いろいろな回避動作等によって避けたあげくにやむを得ずこういう距離になってしまったというふうな場面、行き合いの場面もありますし、交差する場合、横切り関係の場合もあると思います。あるいは並行で近寄ってしまったという場面もあるかもしれませんけれども、そういうふうな場面のすべてを通じて回避動作をとるわけでありますが、それにもかかわらずこういう近間まで寄ったような場面では、これは長官に報告しなさい、そういうことを義務づけている、そういう意味の異常接近なんであります。  したがって、その趣旨におきまして、航空法の七十六条の二に言うそれとは若干性格が違うのではないかという感じもします。しますが、航空法の方につきましては御存じのとおりそういう定めをしておられません。したがいまして、六百メートル、百五十メートルよりも大きな距離であっても、当然衝突または接触のおそれがあったと認めた場合には報告が出るわけであります。私どもの航空機もそういう恐怖を感じたような場面にはそういう報告をすることになるわけであります。
  243. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 どうも納得がいきません。ともかくこの訓令に、航空交通異常接近として長官に報告しなければならぬ、それは先ほどの六百メートル、百五十メートルの距離の規定に反する接近が行われた場合ということを言っているわけですから、今の答弁ではとても納得できないわけであります。  しかも、訓令で言っております長官へ報告する異常接近の相手の飛行機、これは自衛隊機同士ではないわけであります。訓令は、「編隊飛行その他の接近が予定される飛行以外の場合においてはここう言っているわけでありまして、ということになれば民間機ということになるわけであります。これは単に防衛庁の内部規定という範囲にとどまるものではないわけであります。  少なくとも訓令を航空法並みにしないと、自衛隊機と民間機の間の法律上の整合性という面からおかしなことになるのではないかと思うのですが、この点についてはどう考えておりますか。
  244. 長谷川宏

    長谷川(宏)政府委員 私どもの方も、航空法が異常接近については距離を明示しておられないということから、そういう点が問題であると考えまして一応御照会もしたのですけれども、立て方が違うというふうなこともあり、必ずしも何百メートルならば大丈夫であるというふうなことは明示できないというのが現在の航空法のお考えのようでありますから、私どもの方も、例えばこれを六百メートルを外してしまったりいたしますと、あるいは適当な見えもしないような距離を定めたりいたしますと、非常なふぐあいが別の意味で出てくる、こういうことから、代々続いてきました六百メートル、百五十メートルについては十分検討してから改正するならば改正するということにしたいと思います。今は、防衛庁防衛庁の立場で従来どおりのシステムを守っていきたいというふうに考えておるわけであります。
  245. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 そこで、防衛庁長官の御見解を伺いたいのですが、要するに運輸省の方では異常接近だと言う、そして防衛庁の方ではそうではないと言う。このニアミスというのを判断するのに、運輸省と防衛庁の二つの部署が一つ政府の中にあるということと同じだと思うわけです。この訓令というものを改定することが必要でありますし、航空法という法律があるわけですから、これに基づいて運輸省がニアミスと判断したものに対して、これを認めないというような防衛庁の態度、これは航空の安全を確保する上からも、法律的にもまた行政的にも問題であるわけで、こういう考え方は改めなければならないと思うわけであります。防衛庁長官に、シビリアンコントロールでもありますから、全体を見渡して庁内を指導していただきたいと思いますが、見解をお伺いします。
  246. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 今度、俗に言う二つのニアミス事件というのがございますので、この点については十分に真相を究明してはっきりさせなければいかぬ、そういうことで、この間も参議院の本会議で私は申し上げたのです。積極的に運輸省に協力して究明する、こういうふうに言ってあります。いろいろな問題についても今後運輸省と防衛庁との間でどうしたらよろしいかというような話し合いをざせねばならぬ、そう考えております。
  247. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 それでは次の問題ですが、八月十二日に起きました米軍機の林業ケーブル切断事故の問題であります。  この事故につきまして、二十一日、米海軍から防衛施設庁に正式回答が来たということでありますが、その全容はどのようなものであるかお伺いいたします。
  248. 弘法堂忠

    弘法堂政府委員 お答え申し上げます。  八月二十一日までに在日米軍司令部から得た情報によりますと、米海軍は調査委員会を開きまして現在調査中でございます。その調査の結果が判明するまで、事故発生地域における同種の飛行訓練を行う計画を海軍は持ち合わせていない、それから空軍またはアメリカ海兵隊側も今後そのような訓練を当該地域で行う計画はないということでございます。
  249. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 事故を起こしましたEA6Bプラウラーが電子戦専用機であるということはもうあまねく知られております。このEA6Bプラウラーはいわば空の忍者と言うべきものでありまして、ジェーン年鑑を見てみましても、戦術電波妨害システム、最新型電子収集装置、新型通信・航法・識別装置を持つ偵察機であるとあります。実際には、空母の攻撃力を増すために、先頭で電子戦を行う任務を持っております。だから、敵のレーダーから隠れて敵の偵察を行うために超低空飛行での航法を必要とするのでありますし、今回の超低空飛行もこの電子戦の訓練のためではないかと当然推測されますが、この点についてはいかがでしょうか。
  250. 岡本行夫

    ○岡本説明員 私ども、事故を起こしました飛行機がミッドウェーの艦載機であることは承知しておりますが、その個々の運用、その飛行機の詳細な使命等については承知する立場にはございませんことを御理解いただきたいと思います。
  251. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 飛行機の種類まで知らないというわけですね。  それではお聞きしますけれども、こういう飛行機がミッドウェーの艦載機にあるということであります。知らないと言いましたけれども、このEA6Bプラウラーはフライトプランを厚木基地に出していたそうでありますから、そこでもわかると思うのですけれども、この切断した飛行機ではなくて、私が言った名称を持つ飛行機の任務とフライトプランの内容がどういうことになっていたのかお聞きします。
  252. 岡本行夫

    ○岡本説明員 失礼いたしました。私どもは、事故を起こしました飛行機が先生のおっしゃるとおりEA6Bプラウラーという飛行機であることはもちろん承知しております。  当時この飛行機は、航法訓練といいまして、ある地点がら別の地点まで地図を用いて低空で飛行し、パイロットの練度の向上を図るという訓練をしていたことは承知しております。そして、そのフライトプランが自衛隊の方に提出されていたことも事実でございますが、そのフライトブランの内容につきましては、恐縮でございますが、航空機の個々の運用に関することなのでここで御説明を控えさせていただきたい、こういうことでございます。
  253. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 納得できないことでありますけれども、それでは次に移ります。  このプラウラーは有視界飛行を行っていたということでありますが、自衛隊のレーダーでは十分捕捉できるはずであります。この地域には笠取山のレーダーがありますし、これで航跡は十分に確認できると思いますが、それはどうなっていたのかお伺いします。
  254. 長谷川宏

    長谷川(宏)政府委員 わかりません。
  255. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 わからないというのは、知らないということですか、それとも映っていないということですか。ちゃんとはっきりしてください。
  256. 長谷川宏

    長谷川(宏)政府委員 私どもの知らないということでございます。
  257. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 それじゃ、それは調べられますか。
  258. 長谷川宏

    長谷川(宏)政府委員 米軍の行動に関することでございますので、申し上げることができないということでございます。
  259. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 この事実関係を明らかにしないで原因の解明ができるわけはないのです。そして、事故の再発を防ごうというのであるわけですから、事実関係を明らかにするためにちゃんと照会もして調べるという態度をとるべきだと思うのです。  このような訓練というのは、地位協定上も訓練空域外でできないということは明らかだと私は思います。地位協定が締結された当時には、このような電子戦を展開する偵察機は就役しておりませんでした。電子戦専用偵察機の低空飛行は地位協定上予想されない訓練でありますし、しかも訓練空域外であるわけであります。地位協定上予想されない訓練は日本政府の同意を得て行うというのが外務省が示してきた見解ではありませんか。
  260. 岡本行夫

    ○岡本説明員 日米間の地位協定は、演習、訓練といったものの個々の態様を取り上げて規定しているという立て方をとっておりません。  私どもの考え方は、安保条約に基づいて我が国に駐留している米軍は、我が国防衛目的、そして極東の平和と安全に寄与するためにおるわけでございますから、そういった軍隊の属性として当然に認められるこの種訓練は一般的に許容される。どのような訓練が指定された訓練空域でなければできないかということは、個々の事例に即して判断するより仕方がないわけでございます。  ただ、今回のような飛行は一般的な航法飛行でございますので、地位協定上も今回事故が起こりましたような場所で行うことは認められているというのが私どもの考えでございます。その際、米軍が公共の安全、飛行の安全ということに十分な注意を払わなければならないことはもちろんであります。
  261. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 この極めて特殊な訓練をこういうところでやることを許す、こういうことを引き続き認めれば大惨事が起こるかもしれないわけです。そういう危険が現実にあるわけです。  外務省は米軍に対して、このような訓練はやめるように要求すべきであるわけです。人命を失いかねない、また大変な事故を起こしかねないそういう訓練をやめるように要求すべきだと思いますが、どうですか。
  262. 岡本行夫

    ○岡本説明員 私どもは今回のような事故が起こったことは大変残念なことであると考えております。深刻に受けとめております。したがいまして、米側に対しては、事故原因の究明とともに再発防止について強く要請を行っているところでございます。私どもとしましては、今後米側が私どもの要請に沿いまして、このような事故を再び起こすことのないように十分気をつけて訓練を行うということを確信しているわけでございます。  先ほど申し上げましたように、安保条約、地位協定上は、このような一般の航法訓練といいますのは、米軍機であるからといって差別して制限しなければいけない理由はないと考えておりますので、訓練そのものを差しとめる考えはないわけでございます。
  263. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 ともかく、そういう態度をとっていると本当に大事故につながっていくということを心しておいてもらいたいのです。  米軍機の超低空飛行というのは、紀伊半島のこの飛行機だけではなく、各地で起こっているわけです。F16が増強されております米軍の三沢基地周辺では、訓練空域外の超低空飛行が頻繁に起こっております。  昨年の九月の初めには、青森県の青森市、弘前市、秋田県の一部の地域の上空に米軍三沢基地のF16が超低空で飛来して、青森県が米軍に中止の申し入れをしているわけです。ことしの七月初めには、八郎潟付近上空にF16が超低空で飛来して、小学校の授業が中断しております。八月三日には、やはりF16が二機秋田空港上空に超低空で飛来しております。続いて八月十日、能代市上空にF16が二機飛来して、市民を大変驚かせております。このときも市当局が米軍に超低空飛行の中止を申し入れているわけであります。  このような事実は掌握しておりますか。簡単に答えてください。
  264. 岡本行夫

    ○岡本説明員 私どもも、昨年九月、盛岡市から花巻市にかけてジェット戦闘機が飛来し、低空で飛行したために、住民の方々から多くの苦情が出たという事実は承っております。
  265. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 私たちにわかる範囲でもこれだけあるわけです。  なぜ三沢基地のF16がこのように訓練空域外の市街地上空で超低空飛行訓練を頻繁にやるのか、政府の方はこれらについて米軍に照会したことがあるのかどうかお伺いします。
  266. 岡本行夫

    ○岡本説明員 そのときに飛行いたしましたジェット機が米軍のものかどうか、ただいま現地の防衛施設局より米軍三沢基地に照会中であると承知しております。
  267. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 去年の九月のことも言っているわけです。それがまた照会中ということは本当に解せません。本気で調べる態度がないと言わなければならないと思うのです。訓練空域外の市街地上空を超低空で飛んできて市民生活に影響を与えているというのに、実際は米軍に対して何にもしないということと同じことです。照会している、しかしもう去年の九月から始まって、私が言ったのは八月十日、もう二週間以上もたっているわけですが、それらも照会中、これでは何にもしていない、これではどうにもしようがないということになります。米軍に照会ぐらいしなければ、一体どうするのか。そういう態度だものだからこの林業ケーブル切断事故も起きているわけであります。  三沢基地には七月にF16が五十四機配備されました。自衛隊機を含めますと三沢には百機を超す戦闘機が配備されていると言われております。付近には四カ所の訓練空域があるのですが、大量の戦闘機の配備のために訓練空域におさまり切れなくなった、そのためにこの訓練空域を飛び出して、その外で超低空飛行をやっているのじゃないかと思うのですが、どうですか。
  268. 岡本行夫

    ○岡本説明員 三沢におります米空軍機も含めまして我が国に駐留いたします米軍は、我が国防衛とそれから極東の平和と安全の維持のためにいる、先ほどそれは申し上げたとおりでございます。したがいまして、その目的の範囲内で米軍は活動を行うわけでございますが、それは当然、公共の安全、住民の方々の利益との調和といったものを十分考えながら行わなければいけない、これは当然でございます。私どもも米軍とそのような方向で常に話し合い、申し入れを行っている次第でございます。
  269. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 今、利益との調和というようなことを言われましたけれども、訓練空域でない、しかも人口が密集している市街地の上空で超低空飛行をやる、これは調和どころか、ただ国民に被害を与えるだけの行為であるわけです。本来訓練空域があるのに、そこでやればいいことをわざわざやる、これは本当にけしからぬことであるわけです。こういうことが行われているというのは、やはり三沢に飛行機が余りにも多く配備されたということによるのだということも明らかだと思うのです。  市街地上空で墜落したら、これは大惨事となります。横浜緑区のファントム墜落の二の無となるわけです。現にことし三月には八戸沖でF16が訓練中に墜落しております。四月には三沢の自衛隊機F1が太平洋上で墜落しております。これが市街地に落ちたらどういうことになるのか。そういうことが考えられるのに、市街地の上空での超低空飛行ですから、市民の安全を守るという立場からそんなことはやめさせなければならないと思うのですが、どうですか。
  270. 岡本行夫

    ○岡本説明員 再々申し上げておりますとおり、私どもといたしましては、安保条約に基づきまして我が国に駐留している米軍が、その諸活動を行うに当たりまして、公共の安全に十分配慮しなければならないということは私どもの信念でもございますし、それは米側も十分理解しているところでございます。例えば、射爆撃訓練のような公共の安全と著しく衝突するような行為は、当然に地位協定に基づきまして提供しております施設、区域内で行われるベきでございます。(柴田(睦)委員「市街地の超低空飛行のことを聞いているんだ」と呼ぶ)超低空飛行も含めまして一般の航法訓練、ただ飛んでいるだけでも訓練と言う場合もございまして、訓練という名がついたからといってすべての航行、軍隊の活動を規制するということは、地位協定のとるところではございません。  ただこれは、繰り返しの答弁になりまして恐縮でございますが、米側との間で、公共の安全に十分注意をする、住民の方々に極力迷惑をかけないような方法で今後継続していく、これについては私ども一層気を引き締めて当たってまいりたいと思っております。
  271. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 ちょっとあと一点だけ。  今の御答弁を聞いておりますと本当に腹が立ってきます。アメリカに句にも言えない、この態度です。  そこで、最近十年間での米軍と自衛隊の航空事故はどうなっているのか、これをひとつお答えを願います。
  272. 弘法堂忠

    弘法堂政府委員 最初に、防衛施設庁から米軍機の事故等につきまして御説明申し上げます。  最近、五十三年四月一日以降、米軍機による主な事故の状況は、墜落十四件、航空機部品等の落下事故五件、その他事故二件、計二十一件でございます。
  273. 長谷川宏

    長谷川(宏)政府委員 過去十年間に発生いたしました自衛隊機の主要な事故は五十四件であります。
  274. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 もう終わりますが、要するに、これは資料もいただいたんですけれども、毎年大事故が起きているわけです。米軍と自衛隊で、十年間で年平均七・五件ということになります。それから、そのための死傷者が、自衛隊の方だけで年平均十四人近くになっている、大変なことであるわけです。  防衛庁長官、こうした事故がたくさん起きているという問題についてどう思われるか、御所感を伺います。
  275. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 これも私、再三申し上げているとおり、日米安全保障条約というのは非常に重要なものであるから、それに基づいての米軍に対するいろいろの便宜供与について、国民の皆さんにも御協力をいただきたいということでお願いをしておるわけです。それだけに、アメリカ側においても、この安全保障条約の重要性というものを考えて慎重な行動をしてもらいたい、これを必要のあるときあるいは機会あるごとアメリカ側に伝えたい、こう申し上げておるところであります。
  276. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 この二つのニアミス、それから米軍機、自衛隊機の事故、これは本当に第二の雫石事故発生の危険を感じるわけです。この自衛隊機の事故がたくさんあるということ、こういうことは、結局基地機能が強化されているということと不可分であるわけです。そういう意味で、米軍、自衛隊の軍事優先の運輸行政を抜本的に改めることが緊急の課題であるということを指摘いたしまして、終わります。
  277. 石川要三

    石川委員長 これより内閣総理大臣に対する質疑を行います。上原康助君。
  278. 上原康助

    上原委員 恒例ですが、きょう防衛関係法案がいよいよ議了されそうな段階ですので、総理、大変遅くからおいでをいただいてお尋ねに対してお答えをしてくださることに敬意を表したいと思います。  そこで、いきなり直球を投げるわけにもいきませんので、まず少し総理の御心境でもお尋ねをしたいと思います。  中曽根内閣が発足して五カ年近く、少数派閥で基盤が安定していないということで、当初は一、二年間もつかと思って我々も期待をしておったのですが、今までの与党自民党内でも佐藤、吉田元総理に次ぐ長期安定不安定政権のような形になっているわけで、特に防衛問題では、かつては改憲論者として、あるいは、言葉は悪いですが右の盟主として軍備増強路線を内閣発足以来進めてきた。そういう意味で、ある面では防衛論議をかなり活性化させた面はあったのじゃないかという気がするわけですが、振り返ってみて、この五年間の中曽根総理のやってこられたこと、特に防衛問題についてどういうふうな評価をしておられるのか、また、まだまだ思い残すことがたくさんあるというお考えなのか、そのあたりの御心境を含めてひとつ所見をお聞かせいただきたいと思います。
  279. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 憲法に従いまして、専守防衛、外国に脅威を与えるような軍事力を持たずに、そして節度のある防衛力を築いて日本の平和と独立を守るために努力してきたつもりでございます。一%問題というものもその過程において起きましたけれども、やはり三木内閣の決定を尊重するという精神においては変わりはないので、今後ともその精神を踏まえまして節度のある防衛力を築いていきたいと思っております。  この間に、上原さん初め社会党の皆さんから大変な御鞭撻をいただきまして、感謝にたえないところでございます。最近は社会党も前進を示してまいりまして、山口新見解というものが出てまいりまして、これをいかに党として処理されるか注目しておる次第であります。
  280. 上原康助

    上原委員 私は、あるのは仕方がないという立場には立っておりませんので、お喜びになるのはまだ早いと思うのです。  そこで、防衛問題についても一、二点お尋ねをいたしますが、せんだって私が予算委員会でいろいろお尋ねしたときにも、ピッチャーは完投するのが責任なのでというようなことでおっしゃっていましたが、しかし、いずれにしても終わりのない始まりはないということで、中曽根首相が総理というポストから引くのはそう遠くはない年月になりつつありますね。今、新聞報道その他見ますと、「首相、「完投」へ日程づくり」ということで、確かに外交の中曽根首相と言われて、この間、日米関係あるいはいろいろな面で外交舞台での活躍というのが相当国際的にも国内的にも総理のお立場を印象づけたことは間違いないと思うのです。しかし、政権末期といいますか十月末を控えて、対米政策あるいは対中政策、あなたがぜひ来てもらいたかったソ連のゴルバチョフ書記長の来日等等も実現をしなかった。特に貿易摩擦等々では、日米関係というのも一時期のようにロン・ヤスの蜜月時代というのは私たちはなくなってしまったのじゃないかという感を否めないのです。  それをもう一度というお立場かもしれませんが、報ずるところによりますと、九月二十一日の国連総会にぜひ出かけたいとか、そこでまた日米首脳会談をやりたいというようなお気持ちのようですが、そういう日程なのかどうか。また仮にお出かけになるとすれば、一体テーマはどういうものをお考えになっておられるのか。政治には小休止はない、継承原則ですから、後継者にも引き継ぐということを含めると、現職であられる総理が出かけるということについて、とやかく言う立場にはありませんけれども、今私が指摘をしたことについて、どういうことなのか、それは外交日程として今進めておられるのかどうか、お聞かせをいただきたいと思います。
  281. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 外交日程としましては、タイにつきまして、本年は日タイ修好百周年に当たりまして、バンコクでも記念式典がございますし、そのころタイの皇太子殿下が御訪日になられます。昨年からタイのシチ外相、本年に至りましては、タイを訪問いたしました田村通産大臣それから農水大臣に対してプレム首相から非常に強い私の訪タイの御要請がございまして、その後もそういう熱烈な御招待があるわけでございます。そういう情勢国会審議等いろいろ踏まえまして、国会の御意見等もいずれ参酌しなければならぬと思いますが、タイの訪問につきましては検討しておるところであります。  しかし、国連、アメリカというケースは、目下のところそういう考えは決まってはおりません。
  282. 上原康助

    上原委員 外務省おいでだと思うのですが、国連総会、日米首脳会談というような外交日程、何か準備なさっているのですか。
  283. 遠藤實

    ○遠藤政府委員 国連総会につきましては、九月の十五日から始まりまして、一般演説が二十一日からございます。事務当局といたしましては、当然事務当局に期待される準備は行っておりますけれども、そのほかのことは決まっておりません。
  284. 上原康助

    上原委員 御本人がまだ決まっていないと言うわけだから、それはそういうふうに受け取っておきましょう。  しかし、どうも総理としては相当そこに未練を持っておられるのではないかという気がしてならないのですが、そういうお気持ちはないのですか。
  285. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 何しろ今重要法案を審議中でございまして、この重要法案をぜひ成立させていただきたい、与野党挙げての御協力も今懇請しておるところでありまして、そういうところまで考えが及んではおらないし、そういうことも決まってもおらない次第であります。
  286. 上原康助

    上原委員 大体わかったような気がしますね。  そこで、次にINF問題についてちょっとだけお尋ねしておきます。  今、国連総会なり日米首脳会談というものをさらに予定しておられるのかとお尋ねしたのも、総理のINFに対するお考えはいろいろな曲折はあったわけですが、やはり米ソの軍縮、国際平和あるいは反核ということを考えた場合には、核超大国である米ソのINF交渉というものが合意に達して協定が結ばれるということは、それだけ核に対する人類の不安というか、また、我々日本国民にとっても期待、願望するところなんですね。  最近、米ソの動きについても前進が見られることは御承知のとおりでありまして、特に二十六日には、コール西独首相が西独にある短射程中距離核パージングⅠaというものを近代化せず廃棄することに同意を示した、これはもちろん条件も付されているような感もしないわけではありませんが、ソ連側もいち早く反応を示して一定の評価をしておりますね。そして、米レーガン大統領も、この分ならINF交渉というものは合意に達することは可能だ、こういう見解を明らかにしておるわけでありまして、かねがね米ソの首脳会談というものを積極的に推進したい、また核軍縮というものを米ソがまず合意に達してもっと推進強化していくべきだ、そういうお気持ち、見解を表明しておった総理として、あるいは表現に誤解があるかもしれませんが、中曽根内閣の総仕上げとしてこの問題に一つの区切りをつけるということもまた花道になるのじゃないか、こういう感じもしないわけでもありませんが、いかがでしょう。
  287. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 INF交渉を成功させよう、そのために米ソ交渉、レーガン・ゴルバチョフ会談が開催されるように、また交渉が推進されるようにということはかねて私が強く申し上げ、かつ推進してきたところでございます。最近の情勢から見ますと両方に歩み寄りの気配も見えてまいりましたところへ、コール西独首相の声明が発表されました。きょうその声明の内容を正確に外務省から取り寄せて読んでみましたら、コール首相の選択というものはかなり苦渋に満ちた選択ではなかったかと思います。しかし、内政、外交、国際関係全般を考慮されましてあのような態度に踏み切ったということについては、よく理解し、敬意を表し、これを支持したいと思います。  ある意味におきましては、このパージングⅠaというものが今後の米ソ交渉における一つのアイテムになりかねまじき様相でありました。INF交渉というものは同じカテゴリーのものの間の交渉であって、西独の所有し管理しておるパージングⅠa、核弾頭は別ですけれども、それについて言及するということは、軍縮交渉の筋からいったら筋違いの話である、それは厳然としたところであります。しかし、西独首相が西独として独自の見解で以上のような御選択をなすったということにつきましては、世界全体を考えての御判断であると思いまして、そういう意味において先ほど申し上げましたような判断を示しておる次第であります。
  288. 上原康助

    上原委員 西独首相がそういった選択をなさったということについては、今の国際情勢、特にNATO、欧州の国民というか、そういう国々の思惑反映というものがあると思うのだが、ぜひこのINFの米ソ間の交渉合意、さらに協定の締結というところに政府としてもさらに御努力を願いたいと思います。  そこで、限られた時間ですから進みますが、冒頭お尋ねしましたように、中曽根内閣誕生後の防衛問題というのは、我々から見ると――先ほど総理は、いつものことですが、憲法を守り、専守防衛に徹し、節度ある防衛力整備、これは総理を初めだれに聞いてもそうおっしゃいますね。よくそういうことで統一されているなと思って、むしろこちらの方が感心する。防衛庁長官もそうおっしゃるし、外務大臣も言うし、防衛局長も言うし、みんなそういうふうにオウム返し。しかし、本当に憲法を守って専守防衛であって節度ある防衛力整備ということになれば、今日のような防衛力増強路線というものは生まれなかった、出てこなかったと私は思うのです。その点は極めて遺憾であり、私たちとしてはそういう御説明では納得できないという点を申し上げておきたいわけです。  中曽根内閣になって日本防衛力が著しく変質、変化を来したということ、すなわち歯どめがすべて取っ払われたと言っても言い過ぎではないという感じさえ持つわけですね。今、際限ない軍備増強路線というものがしかれてしまった。もう一点は、日米の軍事同盟を深化させ、西側陣営の一員ということで米国の新たな対ソ封じ込め戦略というか包囲戦略にどっぷりとはまり込んだのがこの中曽根内閣の安保政策であり、防衛政策であり、ある面では外交政策、外交方針だと言っていいと思うのですね。我々から見るとそういう感じしかしない、理解しかできない。私は、中曽根内閣の五年間のこの軍備増強路線というのは、必ずやどこかで軌道修正を余儀なくされる時期が来ると信じたいし、またそう期待をいたしております。  そこで、先ほどもありましたが、今私が指摘をしたこととあわせて、中曽根首相が目指してきた防衛力整備目標というのは一体何なのかということ。精神は守る、三木内閣時代のあの防衛費の一%枠云々というものを守る。しかし、これは精神だけではどうにもならないのですね。定量的歯どめというものは一体あるのかどうか。また、特にこういった困難な財政経済状況の中で、財政面における歯どめというものがない限り軍備というのは自己増殖を続けることは間違いない、これは戦前の歴史を見れば明らかであります。あるいは今日、さっき申し上げたINF交渉にしても、ソ連にいたしましても米国にしても、余りにも軍備にお金をかけ過ぎだから今日の経済の行き詰まりになり、INF交渉をやって軍備を抑制しなければいけないという立場に立っていると思うのです。  そこで、あなたが目指してこられた防衛力整備目標というのは一体何なのかということ、また特にポスト中期防防衛力整備というものはどうあるべきだとお考えになっておられるのか。あなたがどなたにお譲りになるかわかりませんが、後継者に、少なくとも日本防衛の歯どめということを考えた場合に、単に概念的に精神は守りますよ、憲法を守りますよ、専守防衛ですよと言ってみても、実際にはどんどんエスカレートしてきている、こういうことに対してどういう御認識を持ち、これからどのような歯どめを防衛力整備においてかけようとしておられるか、また、かけようというよりも、この歯どめはどういうところに求めていくべきだとお考えなのか、明らかにしていただきたいと思います。
  289. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 定量的歯どめはできておるわけです。それは、閣議決定をもちまして中期防を実行すると決めました。この中期防の総枠が金額で決められておりまして、これが定量的歯どめになっております。  何を目標にしてきたかと言われますが、抽象的な目標は別として、当面我々が一生懸命努力しているのは防衛計画大綱水準にできるだけ早期に達するということであります。それがために中期防策定されまして、そして金額的な歯どめというものも設定したわけで、その追求、その到達点というものを努力することによりまして我々の目標を達成したい、そう考えておる次第でございます。
  290. 上原康助

    上原委員 今のお答えも何遍も議論されてきておりますし、また、我々も相当聞かされておるわけですね。  定量的歯どめというのは、中期防における金額も明示されている。おっしゃるように、十八兆四千億ということでしょう。しかし、十八兆四千億というのは御承知のように六十年度ベース。大綱水準に速やかに達したいというのが目標だ。そうしますと、仮に平和時の限界とか防衛力限界ということがあるとする。定量的歯どめは十八兆四千億円と総理がおっしゃるのだから、そういうふうに一応受けとめましょう。そういうことで、この大綱水準に達するのが当面の目標である。  そうしますと、それは上限ですね。その後どうなるのですか。その後もまた装備の近代化とか諸外国の装備水準ということで、どんどんエスカレートしていく可能性があると私たちは見ているわけで、大綱水準に達すること、中期防をつくったのも大綱水準に早目に到達したいためにこれをやったのだ。中期防を達成すれば、その後は、あるいは質的な若干の変化はあるにしても、それが一応我が国整備をする防衛力のマキシマム、上限と断言できますか、言い切れますか、そのことをひとつ明確にしてください。じゃ、ポスト中期防はどうなさるのですか。
  291. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 ともかく大綱水準に達する、中期防目標を実現する、そういうことで努力しておるところでございまして、その大綱水準に達する過程におきましては、別に別表を変えようとか大綱の内容を変えようとか、そういう考えはないのであります。  その後はどうかといえば、達成後のことについては、その時点情勢に基づいて、客観情勢がどういうふうに推移しているか、国の財政がどういう状況にあるか等々、諸般の情勢考えて、新しい内閣が、そのときの内閣が決めるべき問題である、そう考えておりますが、いずれにせよ、いずれの内閣にいたしましても憲法のもとに専守防衛を守って節度のある防衛力を漸増していく、そういう方針は変わらない、そういうふうに考えております。
  292. 上原康助

    上原委員 なかなか抽象論で、節度のある防衛力といっても、それなら、例えばエイジス艦を取得する、あるいはOTHレーダーだとか、かつては空中給油なんという話は防衛論議の中でタブーだったですね。洋上防空ということで、もうあの手この手を使ってやっている。P3Cも百機体制、けさの議論ではこれもP3Dに切りかえる可能性が強い、だから歯どめはないのじゃないですか。我々が心配する、懸念をするのは、国民が知りたいのはそこだと思うのですよ、歯どめというのは。今までは、少なくとも財政上あるいは予算上の歯どめというものが一%という枠で決められておったわけですよ。これは非常に大きな歯どめだったのです。  だが、あなたは一%があるとどうしてもこの中期防以降の防衛力整備というものの足かせになる、また思うようにいかない、これは非常に強い総理の意思が働いたと私は思うのですね。実際には、十八兆四千億を決めた六十年段階で、中期防策定時にもう一%というものは突破しておった、何も六十二年の予算段階で一%を突破したと私たちは見ていないのですよ。  我々から見ると、この一%突破ということが中曽根内閣の最大の汚点だと思う。だが、自衛隊制服組あるいは防衛庁、与党の、そういうもっと防衛力増強せよという立場にお立ちになる人々は、あるいはそれが総理の最大の功と見るかもしれませんね、お手柄だと。いろいろ防衛論議について与野党間の考え方の接近ということに期待をする向きもあるようですが。私はそういうことでは決して土俵は狭くはならないと思うのですね。共通の土俵というものは生まれないと思う。  しかも、昭和四十五年段階は中曽根総理は防衛庁長官をしておられた。あのときには自主防衛ということを大変強調しておられましたね。自主防衛原則というものをあなたは防衛庁長官時代に打ち出しておられる。今考えてみますと、どうも中曽根さんの目指しておられる防衛力整備ということは、建前上は憲法とか専守防衛とかいろいろ言っておられるが、安保の補完性ということを言っておられるけれども、やはりあなたが志向しているのは、総理になってから言われたように、不沈空母論、三海峡封鎖論等々あわせて、要するに我が国防衛力を自主的な方向に持っていきたいという強い意思が働いているのじゃないですか。潜在的意識というのか、そういったようなねらいがある。それがだんだん高じていって、最終段階で、あなたの総仕上げである憲法を改正していって日本の本当の軍隊というものを全うする、こういう目標で今日まで中曽根内閣の防衛政策というのは進められてきたと私は思うのですが、いかがです。
  293. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 先ほど申し上げたとおりでありますが、中期防における総額明示方式というやり方は、実は、民社党の大内書記長の予算委員会における質問、御勧誘、あるいは党首会談における塚本委員長等の御見解等を大いに参考にして取り上げさせていただいた、そういうことであるので、私の独断でやったというものではないのであります。
  294. 上原康助

    上原委員 それは中曽根総理らしくないですよ。あなた、そんなに主体性のないお方ですか。しかも、個性が強くて、敵百万といえども我行かんというのが宰相の器の資格だとか言っている人が、民社党のせいにしては困る。後で民社党さんが何を言うかわかりませんが、冗談じゃないですよ、そういう逃げは。幾らあした、あさってやめるからといって、そんなことで濁されては困る。  総理、なぜ私たちがこの問題をしつこく聞いたり問題にするかといいますと、けさもいろいろやってみたんだが、同じことを言う。防衛庁長官やほかの人は民社党とは言わなかった。実際、一次防から四次防までいろいろ防衛力整備をやってみて、五カ年の固定化方式ではどうも際限ない防衛力整術になる、あるいは国民からもいろいろな意見がある、財政上も非常に困難な事態にある、そういう反省の上に立って固定化方式というものを切りかえたわけでしょう。これを切りかえて、政府の決定でやっておきながら、今度は民社党さんの方から意見があったからといって。じゃ社会党の言うことも聞いてくださいよ。こういうやり方には社会党は反対なんだよ、あなた。一%を守りなさいと言っている。じゃ、せめて、この間民社党の言うことを聞いたなら、今度は社会党の言うことを聞いて一%に戻したらどうですか、単年度方式に。今の発言は納得できませんので、もう一度あなたの本心を聞かせてください。
  295. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 やはり水と水は合いますけれども、水と油は合わないところがある、これはやはりどうも性質の差があるからやむを得ないのじゃないかと思います。
  296. 上原康助

    上原委員 ますます悪くなるのじゃないですか。これはきょうの段階は聞き流しますが、社会党を油にしちゃいけませんよ。油揚げにされますよ。  冗談はさておき、そうしますとポスト中期防は次の内閣がお決めになることだ。それはやってみて、その段階で国際情勢なりあるいは経済事情というものを勘案してその後の方針を決めるのだということですが、少なくともそういう立場で変更したということ、政策を変えだということは、今後も五カ年固定化方式でいくという立場に立っておられるのですか。民社党さんがもう一遍変えなさいと言ったらまた変えるのですか。
  297. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 現内閣はそういう方針をとっておりますが、将来のいろいろな情勢判断というものはそのときの内閣がやるべきもので、私がここで制約を加えておくことは必ずしも適当でないと思います。  しかし、一応常識的に考えてみたら、道路でも港湾でも、いわゆる五カ年計画というようなもので大体の輪郭を示して、ある程度長期的展望も示してやっておるので、行政のやる筋からいうとそれが普通のやり方ではないかなと思います。  しかし、防衛という問題は普通の港湾建設や道路建設とも違う要素がありますから、それはいろいろ慎重にやるべきで、そのときの内閣が最善の判断を示して、国民の皆さんに、我々がやっておるこの憲法の範囲内で、そして他国に脅威を与えないような専守防衛の節度のある防衛力という趣旨を踏まえてやるべきである、そう考えております。
  298. 上原康助

    上原委員 次に、核問題について若干触れたいのですが、時間がなくなっても困りますので、どうしても聞かなければいけない点がありますから、それから先にいきたいと思います。  在沖米海兵隊クラブの従業員解雇問題ですが、この件については私は七月十三日の予算委員会でもお尋ねをいたしました。あのときに、白紙撤回を前提として強力な対米交渉をしてもらいたい、またやるべきだということを強く総理にも要望いたしまして、総理のお答えは一これは総理のお答えですから会議録もここへ持ってきていますが、「上原さんのおっしゃることはよく理解できますし、現地の方々の身になってみれば大変なことである、そういうふうにも痛感しております。  善後策につきましては、」「ともかく最善を尽くしてこの事態を改善するように努力させるつもりでおります。」努力させるつもりということは、恐らく外務省や防衛庁、あるいは施設庁にということでしょうね。  また、その後、七月三十日の本会議においてもこの問題を取り上げました。私は、そのほか沖縄・北方対策委員会あるいは外務委員会、きょうの本委員会でも防衛庁長官や施設庁長官、あるいは外務省の北米局長等々の意見をただしてきたわけですが、防衛庁長官は、目下鋭意努力をしているので近々何らかの回答があるということをおっしゃっているわけです。  しかし、七月二日に出されて今日までまだはっきりした見通しが立たないということは、私は極めて遺憾なんです。いろいろと御努力しておられることについては敬意を表することにやぶさかではありませんが、総理も公式の場でそういうお答えをした、あるいは本会議において私の質問に対してもお答えをしているわけですね。「ワインバーガー長官や海軍長官が来たときに、我が国の外務大臣防衛庁長官から重大な懸念を伝え、そして速やかにこれらの人員整理問題がよき結果の方向に改革されるよう強く要請したところなのでございます。」こういうお答えをしておられる。速やかによい結果をもたらすようにということであるならば、既に二カ月になんなんとしております。総理の手を煩わすような問題でないというあるいはお考えかもしれませんが、改めて、どうなっておるのか、見通しはどうなのか、ぜひ総理の口から、この問題についてどういう御認識を持ってどういう解決策を今お考えになっておられるのか、お聞かせをいただきたいと存じます。
  299. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 沖縄の皆様方には基地の問題等で大変お世話になっておる折から、我々としても誠意を持って努力しなければいけない、そう思いまして、防衛庁、外務省、内閣、おのおのあらゆる筋を通じて努力しているところであります。  きょう実はマンスフィールド大使にほかの用事でお会いしましたときも、アメリカ側の最近の状況について私はお尋ねいたしました。マンスフィールド大使も、この問題は大事な問題である、そういうことで、誠意を持っていろいろな対応を考えなければいけない、そう思っていろいろアメリカ内部においても今努力をしている、そういう返事がございました。結果がどうなるかわかりませんが、我々が一生懸命努力して、日本側も日本側なりにいろいろ努力もしているという点はアメリカ側もよく理解しておりまして、特に先般海軍長官日本へ来ましたときに、直接防衛庁長官や外務大臣からも意見を聞いて、それをワシントンにも持って帰っているという事実もございまして、我々としましてはさらに一層努力すべきものであると考えておるところであります。
  300. 上原康助

    上原委員 相手のあることですから一定の時間がかかるし、善意に解釈すれば、それだけ回答がおくれているということは米側も真剣な協議というか善処策を考えておるからと思いたくもなるわけですが、しかし反面、九月三十日の解雇となりますと、解雇される三百三名の個々人に対しては既に通告がなされる時期なんですね。きょう、あすじゅう、あるいは三十一日月曜日かもしれません。  今、沖縄の現状というのは、この間も基地問題、基地被害についてはいろいろ記録をお示しして、ごらんになられたと思うのできょうは割愛をいたしますが、先ほどもいろいろありましたように、米軍の演習というのは、今、日本全国的に非常に激しくなっている。沖縄の場合ですと、漁船が、僕は恐らく自衛隊のミサイルだと思うのですが、原因ははっきりしない。そうかと思うと、今度また米軍機のロケット弾落下事件があって負傷者が出ている。重傷者が出てきている。それだけではない。海だけではない、空も陸もこういう基地被害をどんどん与えておるという状況。同時に、失業雇用の状況というのは、総理も予算委員会でもお答えになっておりましたように、本土の二倍以上。  内外ともに非常なそういった基地被害、あるいは雇用状況、失業状況等々から考えて、新たに三百三名の解雇というのは我々にとっては死活問題なんですよ。総理、防衛庁長官、これは該当者にとっては死活問題です。だから私は何回でもこの問題を取り上げざるを得ないのです。しかも、御承知のようにもう来月から十一月にかけて国民体育祭が開かれようとしている。こういう大事な時期に、日米間が本当に誠意を持ってこの問題を解決をしようということであるならば、該当者が納得いく線で解決できない問題ではないと私は信じて見ているのですよ。  しかも新たな特別協定ができたこと、日本全国の米軍専用基地の七五%が沖縄に存在しているという事実、雇用情勢、最近の基地の被害、そういうようなことを考えた場合に、これだけインパクトを与えておきながらこの解雇問題を日米間で協議をし、円満解決というか納得のいく線で解決できないというのなら、一体何の日米友好関係ですか。けさ防衛庁長官は、私がまだそんなに真剣に受けとめておられないのじゃないかと言ったら、むしろ私がどぎもを抜かれるように、やっているんだとおっしゃっていましたが、やっているならそろそろ回答があっていいと私は思うのです。  ぜひ今私が言ったような事情を御認識の上で、この解雇問題については、再三申し上げて恐縮なのですが、白紙撤回の線で早期に解決をするということを、改めて総理と、防衛庁長官も大きな責任があるわけですからお二人から、もう一度念を押して恐縮なのですが、御答弁を煩わしたいと思います。
  301. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 先ほど私が申し上げたとおり、私自身は誠意を持ってやっているのですよ。そのことを信じてください。
  302. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 先ほど申し上げましたように、一生懸命努力をいたします。
  303. 上原康助

    上原委員 一生懸命努力をして、結果がまずければどうなるのですか。そのときは、やってみたがもうこれ以上はできませんでしたで終わるのですか。それが心配なんです。いや、そういうことが今まであるんですよ、時間切れで。よもやそういうことはやらないという前提で一生懸命やっていると理解していいですか。
  304. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 その言葉は少し言い過ぎですね。こっちが一生懸命努力しているというのに、その結果がどうだこうだということをおっしゃって、そうしてこっちの誠意と努力を無視するような発言というものは、我々にとっては甚だ心外です。こっちだって一生懸命努力しておるのだから、していると言った言葉を信用してもらいたいと思う。
  305. 上原康助

    上原委員 これは珍しく、中曽根さんあなたにしては開き直りですね。僕は信じていないとは言っていないですよ。信頼しているから言っているんじゃありませんか、期待しているから。今までだって基地問題なりいろいろなことについて我々は誠意を持ってやってもらいたいということで強く要望もしてきたが、結果を見てみるとそう芳しいことでなかったことが多いわけですよ、基地問題に対しては。だからこそ、こっちもそれだけ真剣だから強く申し上げておるので、そういう点はぜひ御理解の上、早目に結論を求めて、もしその結果が思わしくない、白紙撤回の線でないということであるならば、さらに外交交渉を続けていかれる、こういう認識でいいですね、理解でいいですね。  次に、さっき申し上げましたように、核問題について、まだ若干時間がありますからお尋ねをしておきます。  これも恐らく非核原則を厳守をしているというお答えしかはね返ってこないと思うのですが、今回明るみに出たこの米太平洋軍司令部の内部文書、「核兵器の安全確保」という面で、また日本への核持ち込みあるいは核疑惑というものが非常に強くなったことは事実だと思うのです。もちろんこの文書というのは米国の民間調査機関のノーチラスが入手したものだと言われているわけですが、外務省はこの資料を入手しておられるのかどうか。  また、この文書によると、佐世保、横須賀に分遣隊が置かれておって、要するに核処理部隊だから、実際に日米間で協議をしてやっていくというわけだから、これは従来以上に核疑惑が濃厚になることは間違いないと思うのです。したがって、非核原則を厳守しているからそんなことないと突っぱねるような筋合いのものでないと思うのですよ。  そこで、総理の方からこの事実関係を明らかにしていただいて、少なくともそういった疑惑を持っている沖縄県民あるいは佐世保、横須賀等々の基地周辺の県民、住民に対しては、もっと事実関係を明らかにした上で、米側に対してもただすべきはただす、そういうことでないと、事前協議の申し入れがないから、あるいはそれは民間調査機関の文書だからということで政府として何も善後措置を講じないでよいというものではないと思うのですが、総理の御見解はいかがですか。
  306. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 前から申し上げておりますように、非核原則は守られております。具体的なことは政府委員から答弁いたします。
  307. 渡辺允

    渡辺(允)政府委員 ただいまの上原先生の御質問にお答えいたしますが、まず先生御指摘の文書でございますけれども、私どもこれが報道されまして以来、米国政府からこの文書を入手すべく鋭意現在努力中でございます。現在のところまだ入手をいたしておりませんので、入手いたしました上で文書の内容等については正確にお答えを申し上げたいと思います。  ただ、報道されておりますような日本政府と在日米軍との間の核兵器に係る事故に関する計画についての協議というようなものは一切ございませんので、その点だけは申し上げておきます。
  308. 上原康助

    上原委員 せんだってから、こういうお尋ねに対しては、非核原則は守られている、文書は照会をする、入手するように努力をするといういつものとおりのお答えですが、時間ですから、総理の御日程もあろうかと思うので時間どおり終えますが、私はやはり非核原則は守られているという、そう紋切り型でこの核疑惑というものは国民は納得しないと思うのです。恐らく聞いておられる自民党の皆さんだって、あるいは政府の役人だって、事前協議の通告がないからということで、今のアメリカの軍事戦略というのは核戦略でしょう、これだけの軍事基地が日本にありながら、核が一時通過もあるいは全然イントロダクションもされていないという、それを信じる方がむしろおかしいです。  その点は我々としては依然として納得しない、やはり日本に核が持ち込まれている疑いは極めて強い、その可能性があるということを指摘して、時間ですから質問を終わります。
  309. 石川要三

    石川委員長 竹内勝彦君。
  310. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 総理、大変お忙しい中、御苦労さまでございます。  恐らく本委員会で最後の御答弁でございますし、あと三人で終わりますので、この防衛問題、日本の国の将来がどうなっていくのか、国民が最も注目しておる問題でございますので、ぜひ率直な誠意ある御答弁をよろしくお願いしたいと思います。  第一番目にお伺いしたい点は、本日、衆議院の本会議におきまして通過いたしましたココム規制問題、この問題に関連して若干お伺いしておきます。  まず、総理は過日衆議院の本会議におきまして、このココム規制に関して、輸出管理体制強化のための関係閣僚会議の構成について述べられました。それは、法務、外務、大蔵、通産、内閣官房、国家公安委員会防衛庁、この七閣僚を念頭に置いておる、こういうように述べられました。この関係閣僚会議というものはどうしても置く必要があるのか、それから、この関係閣僚会議防衛庁長官が加わるのは何なのか、その点からまず最初お答え願いたいと思います。
  311. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 ココムの問題につきまして我が国の管理体制に必ずしも万全でないところがあったということは、我々は反省せざるを得ないのであります。そういう意味で、内閣レベルあるいは各省レベルあるいはさらに各省間のレベルあるいは高級実務者レベル、そういう各レベルにおきまする管理体制を強化する、そういうことを図っておりまして、その一環として閣僚協というものを今検討しているところであり、頭に浮かんだ、念頭に浮かんだ大体のメンバーはこの辺だと私は御答弁申し上げた次第なのでございます。やはり今の情勢全般を見ますと、そういう行政の執行面におきましても万全を期する、そういう必要がある、そう考えておる次第なのであります。
  312. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 この外為法改正案の中に、平和、安全維持の条項が新たに設けられたことに関して、総理は、自由貿易と安全保障政策の調和の観点からしかるべき対策を行うことが重要だ、ただ、外為法が定める貿易の自由、例外禁止という考え方を変更するものではない、このように述べられております。基本的に自由貿易の原則に合致するものである、こうされておるわけでございますが、経済問題を背景に、ハイテク産業等、その力関係の中で、平和、安全維持の名のもとに、自由貿易との調和というものが果たして保っていくことができるのかどうか、その点をお伺いしておきたいと思います。
  313. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 自由貿易原則というものは大原則でございまして、これは今の政府が追求しておりまする政策の大きなよりどころになっておるわけです。しかし、その自由貿易体制を行いながら、その一部分、部分的に安全保障あるいは平和問題というものも考えなければならない、そういう意味におきまして今回の法改正もお願いをしたところであり、そういう管理体制もつくっていこう、そういう意味で御理解願いたいと思うのであります。
  314. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 それで、米国のココム規制というものを見ると、国防総省が強力な発言権を持っておるわけですね。防衛庁が加わるとするならば、先ほど私が質問いたしましたが、防衛庁長官が加わるというところに、米国と同様にこの制度の本質というもの、こういったところに強力な発言権が出てくるのではないか、そういった面で懸念するわけですが、そういった点はいかがでございましょうか。
  315. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 安全保障上の問題になりますと、兵器との関連という問題も出てくるわけで、そういう面から見ますとやはり防衛庁の専門的な知識経験というものも貴重な場合もあり得る、そういう意味において防衛庁の参画も認めることは当然であると考えております。
  316. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 そこで、パリのココム本部へ日本の担当者が常駐していく、こういったことが決定したやに伺っております。その中には防衛庁の関係者も入るのかどうなのか、そういったことも考えておるのか。それからまた、これも重要な意味を持つものでございますので、これは首相自身のお考えなのか、あるいは閣議におきます決定なのか、あわせてその面をお伺いしておきたいと思います。
  317. 渡辺幸治

    渡辺(幸)政府委員 委員御指摘のとおり、ココムの本部はパリにございます。  他方、今回の東芝の不正輸出事件との関連でございます。このような不正輸出事件の再発を防止するために、政府全体としてその再発防止のための体制を充実するということを現在検討してございまして、パリの我が方大使館にココムに出席する館員がございますが、この点の充実も考えてございますけれども、パリにございますココムの本部に我が方の職員を派遣するということを現実に検討しているということはございません。
  318. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 総理、あなた自身はその問題に関して、今も私質問したわけですが、どうお考えですか。防衛庁関係者が果たして入るのかどうなのか、あるいは入った方がいいとお考えなのか、その点を明らかにしていただきたいと思います。
  319. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 ココムの事務局に日本防衛関係者が入る必要はないと思います。
  320. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 そこでもう一点、ココムに絡んでお伺いしておきます。  中国を訪問されておる自民党の議員の関連の皆さんが北京で会談をされた。その中で、八月二十二日、中国側から話があったのは、東芝機械事件に伴うそういった関連から、ココムの問題ではソ連よりむしろ中国の方が被害が大きいのだ、こういうような発言をされておりますね。そして、具体的にも日本側の対中契約キャンセル額は十八億ドルに上っている、こういうようなことも述べておる、そういった報道もございますけれども、日中関係いろいろございました。こういう悪い風が吹いてきているようでございますが、この問題と日中関係全般についての総理の御所見をお伺いしておきたいと思います。
  321. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 日中平和友好条約及び国交回復のときの共同宣言あるいはその後の四原則等にのっとりまして日中関係を盤石不動の友好協力関係に推進していきたいというのは政府方針で、その方針のもとに我々としては政策を誠実に推進してまいっておるものでございます。  今回の東芝関係の問題が中国側にどういう反応、影響を及ぼすかということは詳細にまだ報告を受けておりませんが、日本としてはそういうような影響ができるだけ少ないように中国についてはいろいろな配慮をすべきである、そうして、従前どおり中国の近代化に対して協力していく、そういうような考え方でまいりたいと一般的に考えておるところであります。
  322. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 それから、洋上防空問題に関して若干お伺いします。  去る七月三十日、衆議院の本会議におきまして、私の質問に対して、  洋上防空の問題については、最近の爆撃機の航続距離の長距離化あるいはミサイルの同じような長距離化等に基づきまして、護衛艦あるいは輸送船等の自己防衛の必要上からこれらの問題が検討されておるわけでございます。これはあくまで個別自衛権の範囲内において日本防衛中心にして考えておるのでありまして、憲法及び専守防衛方針には変わりはございません。このように総理は答弁されております。  そこで、お伺いしますが、この洋上防空というのは日米の協力のもとに行われるのかどうか、その点をお伺いしておきたいと思います。
  323. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 単独で行う場合もありますし、協力関係で行う場合もあり、それはいろいろな対応があり得ると思います。
  324. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 そこで、総理が言われるように、爆撃機の航続距離が非常に伸び、それからミサイルの射程が従来に比して伸びたことに伴って、洋上防空のための装備が検討され、エイジス艦の導入の検討あるいはOTHレーダー設置のための調査費が検討されるなど、ますます装備が拡大されようとしております。これはシーレーン防衛の日米共同研究というものと密接な関係性を保っておりますね。しかしながら、このシーレーン防衛の日米共同研究はその中身が明らかにされておりません。そして、専守防衛方針である、他国に脅威を与える軍事的大国にはならない、このように言いながら、この中期防を進め、今も問題になりました本年度防衛費はついにGNP一%枠を突破させましたね。ますます軍事大国化、そういったものにエスカレートしていっておる、もうこれには国民は納得できないと思います。  日本防衛という問題で、まず総理の、専守防衛というものに徹していくその基本的な考え方、この問題をここでもう一度明らかにしておいていただきたいと思います。
  325. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 兵器は日進月歩、科学技術も日進月歩でございまして、国際関係におけるそのような兵器の進歩というものを無視して防衛が成り立つはずはないのです。あくまで防衛というものは相対的なものであります。そういう意味において、相手の足が長くなるとかミサイルの射程距離が長くなる、最近はたしか三百キロ以上になってきておると記憶しております。そういうものに対応できるような防御力を持たなければ防御自体が意味がないのであります。  そういう意味から、エイジス艦というようなものはまさにミサイルに対する防御兵器を積んだ艦である、護衛艦である、そういうものであって、そういう攻撃性というものはないわけです。自分及び自分の周囲を守るという意味においてエイジス艦というものは機能を果たしておるわけです。あるいはOTHレーダーにしても同じです。決して攻撃性というような意味を直接的に持っておるものではない、防御のためにやっておるものであるということは明らかであります。  そういうような面から見ましても、これが攻撃的な兵器であると断定されることは私はどうかと思っておるのであります。エイジス艦なんかお金がかかるという点は、これはあると思いますでそういうような問題は、中期防の範囲内においてどういうふうに動くか、ほかの政策とのバランスにおいてどう動くかというような点で考慮すべき点はありましょう。しかし、エイジス艦やOTHレーダーを攻撃兵器としてとらえることは私はどうかと思う、そう思っておるのであります。
  326. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 それでは、そこまで総理お答えですので、あわせてお伺いしておきますが、この中期防におきまして、総理としては、エイジス艦の導入、OTHレーダーの導入、あるいは空中給油機、さらにはAWACS等、どのように考えておりますか。どのような考えで、導入はどれくらいのものでしていくお考えでございますか、総理のお考えをまず聞いておきます。
  327. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 防衛庁で検討してもらっておる、そういうものであると思います。検討の結果を見て我々は判定すべきものである、そう思います。
  328. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 それじゃ防衛庁長官、ついでですから、あなたが今念頭に置いておるものをここでもう一度御答弁ください。
  329. 西廣整輝

    西廣政府委員 中期防衛力整備計画におきまして、OTHについてはその有用性について検討するということ、検討の結果によってはしかるべき措置をとるということが定められており、現在防衛庁において鋭意検討中でございます。  なお、エイジス艦につきましては、この五カ年間に対空ミサイルを積んだ護衛艦二隻を建造することになっておりますと同時に、艦艇搭載のミサイルの近代化についてこれまた検討の上措置をするということで、二隻分の経費の枠が一応計上されております。これらについても検討の上、防衛庁で結論を得次第、必要な予算措置等のお願いをしたいというように考えております。  なお、空中給油機につきましては、期間中に検討するということで、それを整備するといったような計画はございません。
  330. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 この中期防衛力整備計画を六十一年度から六十五年度まで政府は強力に進めているわけですが、この中期防が六十五年度で終わり、六十六年以降の計画はいまだ決まっていない。  そこで、防衛政策の基本である専守防衛、そして基盤的防衛力構想に基づきまして「防衛計画大綱」の推進、その現実的具体化のための中期防衛力整備計画であると思うわけですが、この六十六年以降の計画がかぜないのか。それから「防衛計画大綱水準の達成はいつなのか。また、この六十六年以降の防衛構想に関しても今までと同じ考えでいくのか、それともまた新たな防衛構想を考えておるのか。最初に総理、どういうように考えておりますか。
  331. 西廣整輝

    西廣政府委員 総理がお答えになる前に、事務的に申し上げたいと思います。  現在五カ年計画を実施中でございまして、ただいま二年度に入っておる、まだ残りが三年残っておるということでございまして、その後の防衛力整備がどうなるかということにつきましては、この一月に閣議決定があって防衛力整備について五カ年を固定化したわけでございますので、その先の問題については、時の情勢、内外の情勢その他を見てさらに検討され、しかるべき措置がとられると思っておりますが、まだそういうものに着手する段階に入っていないということであります。
  332. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 今、西廣局長答弁したとおりであります。
  333. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 総理の任期もあとわずかになっておりますが、FSXの機種決定問題については、時期的にもこれまた微妙な段階に来ているときでもあり、総理として、このFSXの機種選定についてはどうお考えですか。
  334. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 これは粟原三原則というものを指示しまして、防衛庁において鋭意検討するようにと、また米側ともいろいろ協議するようにと、そういうことで今作業が行われておると考えております。
  335. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 それじゃ栗原長官、御苦労ですが、もう一度ここで整理しておきましょう。お願いします。
  336. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 これも毎回申し上げておりますけれども、防衛上すぐれたものでなければならない、それから、日米安保ということがございますから米国防総省の理解を得なければならない、それからもう一つは、内外の防衛産業の圧力はそれを排除する、そういう観点から今鋭意検討を進めているところでございます。
  337. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 時間の関係で、項目を飛ばしまして、できるだけ大事なものだけ若干お伺いします。  まず、去る八月二十日に、在ソ日本大使館の防衛駐在官、三菱商事の次長も含まれていますが、このソ連国外追放という事件が起きました。これはもう戦後初めてのことと言われている、全く喜ぶべき事件ではございません。日ソ友好に水を差すものであり、ゴルバチョフ書記長来日ということも延期になった、こういうような形でございますし、この事件に関して総理の御所見をお伺いしておきたいと思います。
  338. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 我が方の防衛駐在官、たしか竹下とかなんとかいいましたが、この防衛駐在官は違法なことはやっていないと私は確信しております。それがああいう処置を受けたということは甚だ遺憾であります。日ソ関係に水を差すような結果をもたらす、甚だ遺憾である、そういうふうに申し上げたところであります。  我が方は別にそれに対する報復行為、対抗行為としてやったわけではありませんが、かねてから出頭を要求して、出頭しないということをやっておった通商代表部の次席について、しかるべき処置をやったということで、以上に尽きるものであります。
  339. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 私、この委員会で尋ねてあるのですが、とにかく全く同じ日に、今までずっと出頭を求めてやっておったとはいえども、報復措置にも似たように外務省がそのソ連の大使館員に対して退去を命じた、そういった措置をとったことは、報復措置じゃないと今総理は言いましたが、どう見ても余りにも時期が一致し過ぎですよ、それからいきますと私は報復措置のように思いますが、その点は総理、くどいようですが、もう一度答弁ください。
  340. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 たまたま時期が一致したわけで、別に対抗措置としてやったわけではありません。
  341. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 もう一点、別の問題をお伺いしておきます。  先ほども我が党の議員からいろいろと、長官に対してもまた防衛施設庁長官に対しても質問をいたしましたが、三宅島に米空母艦載機の夜間離着陸訓練飛行場建設問題、防衛施設庁は気象観測用の鉄柱設置を強行いたしました。こうした強引なやり方は住民の反発を強めるだけですね。三宅島住民の八割を超える人が反対をしておる、こういう中で、夜間離着陸訓練飛行場建設計画は白紙に戻すべきであると考えます。また、本委員会で先ほども栗原長官に我が党の議員からいろいろと質問いたしました。東原長官は、ワインバーガー長官にも国会においてそういう議論があったということは言っておきましょうというような答弁でございましたが、総理、何でも事を進めるにはやはり大衆の皆さんの協力がなければできません。そういう中で、これほどの人たちが反対している限り、私はこれは非常に難しいのではないか、こう思います。  総理のこのNLPの問題に関しての御所見をお伺いしておきたいと思います。
  342. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 三宅島にNLPの練習場をつくるということでございますが、これはあきらめる気持ちはございません。やはり現在の神奈川県の状況等を考えてみますと、厚木の状況、周辺はもうほとんど限界ぎりぎりまで来ていると思うのです。そういうようなことから、いろいろな情勢を勘案いたしまして、ほかに場所はどうかという面から見まして、やはり三宅島以外にはちょっとないというのが最終判定であります。ですから、住民の皆さんにぜひとも御理解を得て、御協力を得て、住民の皆さんが納得するような方法でこの問題を解決したい、そう思って、今後とも鋭意粘り強く我々としては目標達成に向かって努力する考え方でおります。
  343. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 総理、総理が知っておかなければならぬことがあるのですよ。これは三つの考え方がございまして、現在ある飛行場を利用する、あるいは新たにつくる、それからもう一つは浮体工法で海に浮かべてのもの、この三つがあるのですが、ここまで来るとその浮体工法というものをもう一度検討する必要があるのじゃないかという論議が本委員会でずっと行われたわけなんですよ。その面も含めて、総理は今のこの飛行場を三宅島につくるということを断固進めていくのか、あるいはもう一度その点まで振り返って、その浮体工法も含めたそういったもので検討し直すという可能性があるのか。  それともう一つ、順序が逆になってはいかぬですからもう一度答弁しておいてください。三宅島住民の合意が得られるように努力するのが先決だと思います。それが先決で、そしてその目標に向かって進んでいくのだという答弁だ、こう受けとめましたが、そのとおりでよいのか、その点を御答弁いただきたいと思います。
  344. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 浮体工法というやり方も、私も説明をいろいろ聞き勉強もしてみましたが、まだ非常に不安定なものであって、いわゆるプルーブン、確実だといって証明されたものではないんですね。未来においてどういうことかそれはわかりませんけれども、現段階における技術やそのほかの面、それからそれを置く場所の場合になると、漁業権の問題とか、またこれはいろいろな問題が出てくるのです。そういういろいろな問題を考えてみまして、安定性あるいは陸上固定性というような面から考えてみまして、私は三宅島がいい、そう思っておるんです。  しかしこれは住民の皆さんの御理解を得なければできないことなのでありまして、ですから御理解を得てと申し上げておるわけなんであります。
  345. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 ぜひその御理解を得るように努力をし、それにはいろいろと検討しなければならぬということでございます。  もう時間ですから、もう一点。先ほど同僚議員からも質問がございました。外務省、同じことを答弁する必要はございませんが、総理が国連総会で演説できるように今外務省は努力しているんでしょう。それを、同じことを答える必要はないから、最初外務大臣が演説するような予定を、できたら総理ができるように努力しているんでしょう。その辺のもうちょっと進んだ答弁しなはれや。
  346. 遠藤實

    ○遠藤政府委員 国連総会におきます一般演説の日取り等につきましては、現在、国連の事務当局等と調整中でございますが、まだ確定しておりません。
  347. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 総理、また同じ答弁する必要はないですが、もしそれが確定したら、総理は意欲あると思いますが、そしてレーガン大統領とも会えればまたそれにこしたことはないというようなお考えもあるんじゃないかと思いますが、もう一度御答弁ください。
  348. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 先ほど申し上げましたように、今重要法案を審議して、重要法案成立に向かって今一生懸命努力している最中でございまして、国会優先という考えでおることは政府が一貫してとっている態度でございます。そういうことで今専心努力しておる最中で、そちらの方まで頭がまだめぐらない、そういうことを申し上げているとおりであります。
  349. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 総理はこの五年間、大変なことをやりましたね。まず防衛費、これは五十七年二兆五千八百六十一億円、これが三兆五千百七十四億円になりました。プラス三六%。あとは金額は言いませんが、文教、科学振興費、これはマイナス〇・三%です。社会保障費、プラス一一・一%です。公共事業費、マイナス八・六%です。あなたは戦後政治の総決算と称し、今の数字から見てもわかるとおり、軍事優先、そして生活、福祉は後回し、こうとられても仕方ないのではないかと思います。多くの国民我が国の軍事大国化への懸念を強めております。今まさに中曽根政権の終幕を迎えるに当たりまして、このあなたの防衛政策全般をどのように受けとめておるのか、感想で結構でございますから述べていただいて、私の質問を終わりたいと思います。
  350. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 やはり日本の平和と安全を保障して、一億二千万に及ぶ人口、それからこれだけの高度の経済あるいは技術力を持った国家、そしてかなり高度の教養を持った国民、こういう大事な大事な祖先からの受け継ぎものを擁護していくというためには、国家を防衛するということも基本であります。あなた方がおっしゃっている憲法を守るためにも、国家を守らなければ憲法は守れなくなるのであります。そういう面からぎりぎりの選択をして努力をしてきたというふうに評価願いたいと思うのであります。
  351. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 終わります。
  352. 石川要三

    石川委員長 和田一仁君。
  353. 和田一仁

    ○和田委員 総理、大分時間も遅くなりましたけれども、あとわずかでございますので、ひとつよろしくお願いしたいと思います。私の時間は少ないので、エールの交換はやめて、いきなり直球で投げるのでひとつしっかり受けとめていただきたいと思います。  先ほど来、私ども少数政党ではございますが、民社党の防衛に対するいろいろな提言あるいは意見に対しては非常に耳を傾けていただいて、いろいろと改善をしていただいておるという御答弁でございました。きょう私がまた申し上げることについても、ぜひひとつそういう角度でしっかりと御答弁をお願いしたいと思います。  まず初めに、先般、国際緊急援助隊法というものが成立をいたしました。御案内のとおり、これは特に途上国等で災害等が発生した場合に援助に行くというための法律でございます。これには警察とか消防とか海上保安庁とかあるいは厚生省等、十六省庁が対象になっておるわけでございますけれども、防衛庁は含まれておりません。自衛隊というものは初めから参加をするようにはなっておりません。これを審議していく過程の中で自衛隊参加の問題についていろいろ御質問をいたしましたら、将来必要と判断されれば、その時点で改めて検討される課題だという政府見解が示されております。  私は、災害というものはいつ起こるかもちろんわかりませんし、予測しがたい問題でございますが、被災国は災害が起きれば間髪を入れずにまず救援の要請をしてくると思うわけでございます。また、そう思わなければなりません。そして救援の依頼をするその対象として、日本がぜひ頼むと言われるということは、やはり日本に対する期待が非常に大きいからであろう、こう思うわけです。  総理、そういった場合に、その期待に背かないためにもせっかくこの援助法というものができたわけでございますが、さらにこれを有効ならしめるためには、私は自衛隊の参加という問題について、でき上がった法案には全然自衛隊参加がございませんけれども、検討するという政府見解がございますので、これは一体いつごろどういうふうに検討されるのか。私はすぐ検討していただきたい、こう思っております。これはもちろん海外派兵という問題ではございません。そこの国の要請によって出かけていって救援をするという人道上の問題でございます。ただ、法律上自衛隊の任務、権限として規定をされていないものでございますので、そういった部隊を外国へ派遣することはできないというのが現状だと思います。そのような海外派遣の問題については、政府見解としてはそういうことがかつて何回も述べられているわけでございます。  そこで、そういった法的な整備が必要であるというならば、南極観測に対する協力ということで、自衛隊法第百条の四、これが改正をされまして、防衛出動、治安出動等のほかに南極観測に対する協力というものが法改正でつけ加えられておるわけでございまして、こういう方法があると私は思うわけです。確かにこれは災害の救援に行くというような場合の救助隊法でございますので、消防とか救護とか防疫とかあるいは復興、再建というような問題については、それぞれ専門部署が政府機関の中にあると思います。が、しかし、自衛隊はそうした能力は付随的なものとして持っているにすぎませんけれども、今、法律で決まった人たちが救援作業に出かけていく、その救援作業の任務を迅速に、そして有効に達成させるためには、今自衛隊が持っている輸送や通信、設営能力、こういうものを南極と同じような方法によって、自衛隊法を改正することによってできるのですから、やるべきではないか、私はこう考えております。  この点について総理の御見解をいただきたい。これは私はこの委員会で後藤田官房長官にも伺いました。大変慎重な御答弁でございましたが、政府見解としては検討する、こういう前向きの答弁がございましたので、総理の御見解をまず伺いたいと思います。
  354. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 自衛隊参加の問題は検討課題であると申し上げたとおりに思います。法律が成立しまして、ともかく救助隊を発足させて、そしてある程度の演練等もやってみて、その後どういう災害等について要請があるか、そういういろいろな若干の経験もしてみた上で、そういう必要があるのかないのかということを検討しつつ考えていく、そういう問題ではないかと思います。  民社党の方がかつて私に、自衛隊は災害出動というのがあるじゃないか、府県で大災害があれば自衛隊が出動して非常に感謝されておる、そういう外国の災害に対しても出動するのを禁止するというのは筋からいってどうかね、いや、それは海外派兵禁止と、そういうものにだんだん接近してくるから、引火性を呼ぶといかぬから、これは危ないからやめるのだ、そういうような議論がある。しかし、それに対して、今おっしゃったような南極の「しらせ」はどうだ、あれは科学技術に対する貢献で非常に感謝されておる、別に自衛隊があれを運航しているからといって差しさわりがあると思っている国民は一人もいない、むしろ乗っている科学者も非常に安心感を持って乗っているんじゃないか。あれをやるときに、海上保安庁でどうかという議論が大分あったのです。学者の方からもありました。しかし、私はあのころ長谷川峻代議士と一緒になってあれをやったわけでありますが、安全性ということを考えると、科学者の命を守ってやらなければならぬので、自衛隊以外にないというので法改正でやった、そういう張本人の一人であります。  そういう意味から、あなたの言うことには若干いいことをついていらっしゃるという気分もなきにしもあらずです。しかし、今言ったような国民感情とか、あるいはにわかにそういうことをやってうまくいくかとか、やはり物事というのはよほど国民の皆さんが理解してもっともだと、自然に流れるようにこの問題は持っていく方がいい。ついては、やはりケース・バイ・ケースでいろいろ検討した結果、もし必要があらばそういうことになっていくというのが穏当なやり方ではないか、そう思って検討課題である、そう思っておるのであります。
  355. 和田一仁

    ○和田委員 この救助隊法が必要になった遠因を考えますと、六十年の九月にあったあのメキシコの大地震、それから同じ年の十一月のコロンビアの火山噴火の災害、こういったときに、確かに日本からは医療チームであるとか復興のための専門家のチームというようなものは行きました、しかし、救助隊が行かなかったという諸外国からの批判にこたえてこういうものができたわけですね。  こういう二つの災害に対して、米英はもちろんのこと、西ドイツもフランスも軍隊あるいは軍用機を現地に出して被災者の救出に当たった。こういう列国の中で、日本は、こういった災害の際に救援を求められても金は出すが人を出さないというような批判をかわしていくためにも、総理が絶えず言っておられる国際社会の一員としての責任を果たすためにもこれは必要だという趣旨でこういうものができたと思っておるわけですが、そうであるならば、ぜひこれは総理が在任中にこの検討を始めていただきたい。私は、総理と栗原防衛庁長官のコンビならばこれは検討をすぐしていただけるものというふうに思っております。  大体、民間機を借りて飛んでいくというようなことですと、例えば救護隊にしてもほかのチームにしても、設営の問題、どういうところへ泊まるのかから始まって、そういう災害時の混乱しているときですから、自衛隊というものはそういう点は能力があって、特にC1とかC130とか足の長い輸送機を持っているのですから、こういうものを使って、そして行って、輸送能力、通信能力を発揮する、あるいはまたこういう自衛隊機ならば飛行場が混乱しているときにでも優先的におりられる、こういう点もあるわけなので、民間機をチャーターして行くのとは雲泥の違いである、こういう点を踏まえて私は至急に検討に入っていただきたい。重ねてお尋ねしますが、いかがでしょうか。
  356. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 御意見として承らせていただきますが、検討の時期は政府にお任せ願いたい、そう思います。
  357. 和田一仁

    ○和田委員 災害等はなるべく起きないでほしいと思っておりますが、冒頭申し上げたように、いつどこでどのような災害が発生するかわからない、そのときのための対応としてこの国会で今法案が審議されているわけなんで、ぜひそれを有効ならしめるために、私は総理と防衛庁長官在任中にこの検討は始めていただきたい、御要望申し上げて、次の問題に移ります。  次はペルシャ湾問題でございますけれども、ぺルシャ湾から日本の船舶が日本の国の経済活動にとって欠かすことのできない物資である石油を運送いたしております。そういう石油運送の航路上に機雷が浮流している、こういう脅威があるわけでございます。海上自衛隊が掃海作業をするということは武力行使でも何でもありません。そういうことを知っておりますので、現にこういう危険な航路帯を往復しております海員組合の諸君にとりましてはみずからの今、生存にかかわる重大な問題でございますから、こういったペルシャ湾の安全確保に対して政府に強い要請をしておるわけで、先般もそういう意味での請願デモがあったわけでございます。こういう海運関係者の大変大事な切実な願いに対して、こういう掃海等について、総理は海上自衛隊に掃海作業をやるよう指令する御意思がございますかどうか、お伺いしたいと思います。
  358. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 ペルシャ湾まで行ってやるということを指令する考えはありません。
  359. 和田一仁

    ○和田委員 これはシーレーンで、けさほどもシーレーンの範囲というものが問われておりました。これは面では数百海里、航路帯としては一千海里、が、しかし、その先はだんだん防衛能力限界があるので点になる、こういう防衛局長の御答弁もありました。私は決して、一千マイル以遠は何もしない、日本の大事な国民経済を支えるような物資輸送のための安全が守れなくてもそれはほっておいていいんだという見解では洗いと思うのですね。  しかし、私はこれは今の自衛隊法でできる、こう考えております。これは何も派兵でも何でもございません。ですから、これはやろうと思えばできることです。先ほどの救助隊の問題は、やりたいけれども法改正がなければできない、ですから、それは法改正を待って、至急に検討をした上で法改正をして万全を期してもらいたいと私は思いますが、掃海については自衛隊法九十九条に、「海上自衛隊は、長官の命を受け、海上における機雷その他の爆発性の危険物の除去及びこれらの処理を行うものとする。」ちゃんと規定されているのです。やれるのです。これは、そういう意味で法律的にはやれるが、しかし今なかなかやりにくい、ペルシャ湾まで行ってやる意思はない、総理はそういう御答弁でございましたが、これは、やれるけれどもやらないのですね。その点、もう一回お答えいただきたい。
  360. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 機雷を除去するという行為は武力行使ではないのです。ですから、これはむしろ航海の安全を守るための防御的な行為、あるいは防御という名前すら、障害を排除する、そういう意味の方が適当であるかもしれません。そういう行為であって、例えば日本海、舞鶴の沖で、公海上でそういう障害が起きた場合に海上自衛隊が除去する、こういうことはもちろん合法であります。公海上においても合法でありましょう。  では、ペルシャ湾においても、公海上で日本のタンカーが来るというのに危ない、そういうところで除去するのは法的にどうかと言えば、法的にそう差があるとは思わない、同じ日本の船舶の安全のために、障害を除去するということであります。ですから、私は、法的には武力行使にも当たらないし、遠いところに行ったからといって海外派兵という、いわゆる派兵というものに当たらないものであろう、そう解釈されます。  しかし、国際紛争の場所に今なっておる、そういう場所に日本自衛隊をはるばる派遣して、そしてそこに巻き込まれるようなおそれのある場所に行くことは必ずしも適当でない、そういう政治判断から、私は今、やりません、こう申し上げたので、その考えは変わらないのですけれども、法的解釈を問われればそういうものである、そう考えざるを得ないと思います。
  361. 和田一仁

    ○和田委員 総理は、やれるけれども、今の国際情勢下の中で、紛争の発生地であるペルシャ湾に行ってのそういう行動はとらない方がいい、こういう判断を示されたわけでございます。  なお、自衛隊法の八十二条には「長官は、海上における人命若しくは財産の保護又は治安の維持のため特別の必要がある場合には、内閣総理大臣の承認を得て、自衛隊の部隊に海上において必要な行動をとることを命ずることができる。」いわゆる海上警備行動というものがございます。これはそういう規定がきちっとあるわけでございます。が、しかし、そういったことをするのにはさらに慎重な政治判断が必要だ、こういうお考えのようでございますが、こういう航路帯で働いている同胞もあり、そのことによって、それこそ自衛隊が責務として与えられている海上交通の保護、こういうことが危険にさらされている、こういうことを総理としても十分お考えを願わなければいけない、私はこう思っております。ぜひこのことについては、そういう意味での人命にかかわる――これはもちろん派兵でも何でもありませんので、本来の任務としてきちっと規定されている。直接難しければ、外交上何としても安全を確保するための手だてをぜひひとつ講じていただきたい。アメリカやフランスやあるいはイギリスにだけ一番大事なところのそういう海上警備を任せておくというので果たしていいかどうか。  その点について最後にお答えをもう一回願っておきたいと思います。
  362. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 ペルシャ湾における安全航行の問題については、まず外交手段をもって懸命に努力をしております。でありますから、倉成外務大臣をイランのテヘランにも派遣いたしまして自重を要望いたしましたし、イラク側に対しても、同じように事務当局等を通じましてやはりやっておるわけでございます。  日本が行うのはやはりそういう外交的努力が一番適当なことであり、安全保障理事会の非常任理事国でもございますから、そういう立場も利用しつつ、速やかにイラン・イラク戦争をやめさせる、あるいは武力攻撃的行為を双方にやめさせる、そういうような考えに立って今後とも努力していきたいと考えておる次第であります。
  363. 和田一仁

    ○和田委員 最後に、そういう外交的手段にぜひ訴えて我が国の平和と安全のために御努力をいただきたい、あわせて、世界人類の共通の悲願であります核軍縮の問題についても、日本の総理大臣としてのお立場で努力を願いたいと思うわけです。  そういう意味で、新聞紙上等に来月国連総会に出席の予定があるやに先ほど来質問がされております。行かれるならぜひ行かれて、こういうINFの削減問題を確実なものに推進していただいたり、こういう航路帯の安全についても、アメリカや列国にお願いをしてあるならばさらにそういうことをきちっとお願いをして、外交上そごのないようにしていただきたいものだ、こう私も思っております。渡米については本当にお考えになってないのかどうか、最後にもう一回お伺いして、質問を終わります。
  364. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 国連総会、アメリカ行きというものは、まだ日程には上っておりません。
  365. 和田一仁

    ○和田委員 終わります。
  366. 石川要三

    石川委員長 柴田睦夫君。
  367. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 私は、自衛隊機のニアミスと軍用機の事故問題に関連いたしまして総理大臣にお伺いをいたします。  この八月十一日の高知県沖合、それから十九日の千歳空港上空と、自衛隊機と民間機のニアミスが相次いで発生いたしました。また、沖縄での第一一徳丸被弾事件、ポメックス・サガ号事件、吉野山中林業ケーブル切断事件、自衛機と米軍機の訓練による被害も多数出ているわけであります。これらの事故は、我が国航空交通の大型化、高速化、交通量の飛躍的増大、こうしたこと等あわせ考え、空の安全に対して国民の不安が非常に大きくなっていると思うわけであります。  総理はこの事態をどう御認識なさっていらっしゃるか、御所見をまずお伺いいたします。
  368. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 今、実情は調査中でございますので、調査の結果を見て判断をいたしたいと思いますが、いずれにせよ、それに紛らわしいようなとすら思われることが起こるということすら甚だよくない。やはり民間航空の安全というものを中心考えて空域も設定したわけでありますから、そういう点については両者が厳重に規則を守って、お客さんの安全第一に徹すべきであると考えております。
  369. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 米空軍機の訓練空域外での超低空飛行というのは紀伊半島だけではありませんし、これは各地で起きているわけであります。  特に、F16が増強配備されました米軍三沢基地周辺が非常にひどいわけです。弘前、青森、秋田、盛岡、横手、八郎潟、能代の各地の市街地上空に超低空で飛来しまして、すさまじい爆音に子供たちは震え上がり、お年寄りは床に伏す、こうしたちょっとしたパニック状態になったところもあるわけであります。しかも、ことしに入りまして、三沢基地所属のF16とF1が海上に墜落しております。これが市街地だったら大惨事になるところだった、こうして市民の不安を募らせているわけであります。  一方、ニアミスについて申し上げますと、航空関係の労働組合で組織しております航空安全推進連絡会議が民間航空パイロット八百九十八人を対象にアンケートを行いましたが、その調査によりますと、八百九十八人のうち七十二人のパイロットが去年中にニアミスを経験したと答えております。そして、その七十二人のうち軍用機が三十五件と一番多くなっております。また、全運輸省労働組合がきのう発表いたしました千二百人の管制官によるアンケート調査では、去年一年間で八四%がニアミスの経験があると答えております。ニアミスの航空機の種類は、民間機同士が五五%、民間機と軍用機が三〇%、軍用機同士が五%、こうなっております。これらの結果から見ましても、さきに申し上げました二件のニアミスというのはほんの氷山の一角にすぎないわけであります。  総理は、このような米軍機による危険な訓練がたくさん行われているということや、軍用機と民間機のニアミスが続発しているこの根本的な原因はどこにあるとお考えでしょうか、お伺いいたします。
  370. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 もしそういうことがあるとすれば、それはレギュレーションを無視した乱暴な行為によってそういうことが起こり得るのであろう、レギュレーションをお互いに厳重に守るようにしなければならないと思います。
  371. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 御見解を伺いましたが、私はこの根本的原因といえば、やはり安保条約にあると思っております。現在、アメリカの対ソ戦略に沿った日米共同作戦の実戦的訓練で、訓練飛行時間の延長や高度化、そうした内容の訓練行動が強化されているわけであります。  ところで、政府は、雫石事故の教訓から、再発防止のために航空安全緊急対策要綱というものを決められました。しかし、これを決められた後も、軍事優先の航空行政が基本的には変わっていないわけであります。防衛庁の訓練空域はこの要綱ができましたときに九カ所でありましたが、これが十四カ所に拡大しております。また、一九八四年には当時の行政管理庁が行政監察の結果、「空の有効利用」という表題のもとに、自衛隊の訓練空域内に民間機を通過させることを積極的に進めるように運輸省に勧告しているわけであります。さらに、ニアミスがありました千歳空港を初めといたしまして全国には十五カ所の軍民共用空港が存在しているということも、空の安全、航空の安全を図っていく、その上の障害になっているわけであります。  先ほど全運輸省労働組合の発表のことを申し上げましたけれども、その発表を見てみましても、管制官が安全対策上不安を感じることの第一に、日本の空を複雑に覆った軍用訓練空域の存在、このことをやはり不安の第一の原因に挙げているわけであります。さらに、軍用機のニアミスの発生が民間機と軍用機が共同で使用しております軍民共用空港や軍用訓練空域の近くで多く発生しているということでもこれははっきりしてくるわけであります。  こうした観点から見てみますと、米軍及び自衛隊の訓練空域を縮小するとかあるいは廃止するとか、こういう問題も含めて再発防止の対策を検討する必要があるのではないか、このように私は考えてまいりますが、御所見をお伺いいたします。
  372. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 安全保障条約に基づく基地の存在というものは、一面においては住民の皆様方には御迷惑をおかけしている面もありますが、国家の安全保障という面においては大きな効果を上げて、日本の現在の経済繁栄の有力な目に見えない貢献をなしておるわけであります。  したがいまして、物は一面的にだけ見るのは適当ではないので、現在の状態からいたしますれば、防衛関係の方もあるい植民間の方もみんなレギュレーションを厳重に守ってやれば事故あるいはニアミスは起こることはないのでありますから、まずその点で厳重に督励していくようにいたしたいと思います。
  373. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 ルールを守る、これはパイロット自身が事故というのは一番怖いわけであります。しかし、現実には空気の中を飛ぶ飛行機であるわけです。風もあります。そういうところから本当に安全対策というものを考えなければならないわけであります。ルールを守るといっても、例えば航空自衛隊のあの訓練状況、自分の体重よりも八倍の体重を加えるようなそういう訓練があるわけですから、現に起こった事故においても、失神された、こういうケースがあるわけであります。  そういう点から考えてみましても、重なり合った空域、航路、こういう問題、今の状態では、単にルールを守るということだけでは防ぎ切れない問題が出てくる、そういう点から、ともかく航空交通事故という大惨事を決して起こしてはならない、この立場から私は申し上げているわけであります。  そこで、そういう点から今の状況を見てまいりますと、米軍機事故が発生する、それから自衛隊機のニアミスが続いて起きる、こういう問題も、航空行政の中においても軍事優先になっている、このことが問題だというように思うわけであります。  一九五九年六月の日米合同委員会で航空交通管制に関する合意ができました。これによって米軍の航空機に航空交通管制承認の最優先権を与えたわけであります。しかしこの合意ができた後、雫石事故がありまして、この雫石事故の問題をめぐって、この最優先権を与える、このことが国会の論議で厳しく批判されまして、そういう中で一九七五年にはこの合意を改めたわけであります。しかし、この合意文書の筋というものは公表されておりますけれども、その全文は公表されてはいないわけであります。ただ、国会の論議を通じて見ますと、米軍に優先的取り扱いを与えると規定していることは国会の中でも答弁があって明らかになっているわけであります。これが米軍機に関する問題。  一方、自衛隊機の方について見ますと、運輸省と防衛庁との間で覚書が交わされておりまして、これも公表されておりませんけれども、自衛隊機に事実上の優先権を与える、そういう内容になっているわけであります。さらに、航空特例法というものがありまして、これによって航空機の安全運転のためのもろもろの法規が米軍機には適用されない、適用除外ということになっているわけであります。こういう問題があります。  これら軍事優先の航空行政の体系ができているわけですから、これはやはり改めなければならないというように思うわけであります。航空の安全を守るという立場から考えれば、これは米軍機の訓練空域以外での訓練を規制をする、あの吉野山中の林業ケーブルを切断するような、あんなふうな訓練を初めとして、規制を強化するということが必要であると思うわけであります。それから、何といっても米軍機に優先的な特権を与えております。日本の空が、施設の上だけではなくて日本の領土全体の空が米軍によって支配されていると説く人もいるわけであります。そういう点から、日米合同委員会の合意書それから航空特例法によって適用除外にしている問題、こうしたものも再検討をしなければならないと考えております。再度総理の御所見をお伺いしたいと思います。
  374. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 日米間及び自衛隊と民間との関係、運輸省と防衛庁との関係、いろいろ交通管制あるいは人員の安全のための取り決めがおのおのあると思います。それらにつきましては、皆関係当局が合理性を目指して話し合いをし、そしてそういう合意をつくっておるのでありまして、現在の日本の民間航空の非常な発達あるいは防衛の必要上、また日本列島の上空においては非常に空域が狭いという状況を踏まえて、大体自衛隊の訓練空域というものは外洋のかなり離れたところへ設定しております。そういういろいろな考慮をもって調節をとられておるのでありまして、現在ある諸規則を、関係各省としても、また航空機を運用する者としても厳重にこれを守って交通の安全を正していく、そういうやり方が正しいと思っております。
  375. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 おっしゃる趣旨はお聞きいたしますけれども、現実にこのようなやり方でニアミスが起きておりますし、ニアミスというのはいつ事故につながるかもわからない、そんなものがたくさん起きているわけであります。こういう体制の中で現実に軍用機による国民への被害というものが起きているわけです。これは航空の安全を長しかねない事態を引き起こしているわけでありますから、この今日の状況をこれでいいということにしてはいつ大惨事につながるかもわからない、こういう事態であるわけであります。  そういう点から、根本的な航空大量交通機関の安全という問題について、この軍事優先の体制というものを改めるということまで含めた検討がなされるべきであります。何よりも、全地球よりも重い人命であるわけで、この人命を失わないように、軍事優先の政治、航空行政を改めることを強く求めて、私の質問を終わります。
  376. 石川要三

    石川委員長 これにて両案に対する質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――
  377. 石川要三

    石川委員長 この際、防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案に対し、戸塚進也君から修正案が提出されております。  提出者から趣旨の説明を求めます。戸塚進也君。     ―――――――――――――  防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案に対する修正案     〔本号末尾に掲載〕     ―――――――――――――
  378. 戸塚進也

    ○戸塚委員 ただいま議題となりました防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案に対する修正案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。  案文は、お手元に配付いたしておりますので、朗読は省略させていただき、その要旨を申し上げますと、原案では、この法律は、昭和六十二年四月一日から施行することとしているのでありますが、既にその日が経過しておりますので、これを公布の日から施行し、本年四月一日から適用することに改めようとするものであります。  よろしく御賛成くださるようお願い申し上げます。
  379. 石川要三

    石川委員長 これにて修正案についての趣旨の説明は終わりました。     ―――――――――――――
  380. 石川要三

    石川委員長 これより討論に入ります。  両案及び防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案に対する修正案を一括して討論に付します。  討論の申し出がありますので、順次これを許します。谷津義男君。
  381. 谷津義男

    ○谷津委員 私は、自由民主党を代表して、防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案並びに防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案について、賛成する立場から討論を行うものであります。  我が国の独立を確保し、平和と安全を守ることが国家として最も重要かつ崇高な責務であることは今さら申し上げるまでもありませんが、さらに国際社会における西側陣営の一員としての我が国の地位が著しく高まった今日、世界的視野に立って国際社会の平和と安全の強化に貢献することが我が国に強く求められております。そのためにも、我が国がみずからの安全保障を確かなものにするため自主的努力を続けることが極めて重要であります。  もとより世界の平和と安全は人間最大の願いであり課題であります。しかしながら、現下の国際情勢は、軍備管理・軍縮交渉への努力が続けられておるにもかかわらず、ソ連の一貫した軍事力増強と、これを背景とした勢力拡張の動きや地域的紛争の継続により依然として厳しいものがあると思われます。  こうした中で、東西両陣営間ではさまざまな核軍縮の提案が行われ、軍縮のための努力が続けられております。先ごろレーガン大統領が主張していたINFの地球規模のダブル・ゼロオプションにソ連のゴルバチョフ書記長も歩み寄る姿勢を見せております。我が国としては、この問題は極めて重要であり、今後とも注目していかなければなりません。  また、我が国の周辺におきましても、極東軍の顕著な増強どこれに伴う行動の活発化によって我が国に対する潜在的な脅威が増大し、また、朝鮮半島における緊張も依然続いております。このような状況のもと、我が国としては今後とも日米安全保障体制を堅持するとともに、有効で効率的な防衛力整備に努めることが極めて肝要であります。  今回のいわゆる防衛三法の改正案は、艦艇、航空機の就役等に伴って必要となる海空自衛隊及び統合幕僚会議の自衛官並びに有事の際の後方警備要員の充実等のために必要となる陸空の予備自衛官を必要最小限増員するとともに、予備自衛官手当の月額を物価上昇等にかんがみ改定することを内容とするものであり、いずれも極めて当然の措置であると考えます。  もとより我が国の平和と安全はひとり自衛隊のみで全うし得るものではなく、防衛問題に対する広範な国民理解と支持に立脚すべきものであります。今や国民の大多数は我が党及び政府防衛政策に対する理解と支持を表明しております。  政府は今後とも日米安全保障体制を堅持し、有効で効率的な防衛力整備に努めるとともに、防衛問題に対する国民理解と支持をより一層広めるべく努力し、アジア、ひいては世界の平和と安全に貢献されることを強く要望して、私の賛成討論といたします。(拍手)
  382. 石川要三

    石川委員長 野坂浩賢君。
  383. 野坂浩賢

    ○野坂委員 私は、日本社会党保護憲共同を代表いたしまして、提出されております防衛三法案に対し、反対討論を行います。  今日の国際情勢は一九八五年十一月のジュネーブ首脳会談以来、米ソ両大国の核兵器削減交渉が進展し、既に米ソ首脳会談による中距離核戦力の政治日程が浮上するなど、世界の情勢は核軍縮へと傾いているのであります。このときこそ我が国政府は、唯一の被爆体験国として非核原則堅持の姿勢を明らかにしながら、核兵器削減、廃絶を強く求め促進する重大な責務を持っているのであります。  しかるに、トマホーク搭載艦船の寄港、SDI研究参加等非核原則の空洞化と核安保体制の懸念される中での自衛隊の戦力増強の一環として打ち出されている本法案は、世界の潮流に逆行するものと言わざるを得ないのであります。  第二に、米国は、政治経済、軍縮、科学技術等あらゆる対外政策を駆使しての対ソ戦略を西側同盟国全体を律するものとして全面に押し出しているのであります。  この戦略に基づく新海洋戦略が結実し、強力に推進されつつあります。すなわち、政府のSDI研究参加の協定調印、対米武器技術供与、ココム規制強化、日米共同作戦体制の強化とともに、今日の自衛隊の人員増強も対ソ防衛戦略の一環と言えるのであります。  第三に、新海洋戦略下の米軍部隊と共同連携するために自衛隊は北方前方防衛戦略を強力に推進し、洋上防空体制研究会において、OTHレーダー、AWACS、エイジス艦を組み合わせた前方展開、艦隊防空、三海峡封鎖作戦を練り上げ、陸上防衛態勢研究会もSSM1、FSX、多連装ロケット、AH1S等による洋上撃滅、三海峡地域防衛を遂行するための陸上自衛隊近代化構想であります。  本法案は、攻勢的戦略を遂行するための継戦能力増強を企図するものであり、平和を希求する我我は了承することはできないのであります。  最後に、政府はこのような軍事戦略を国民の前に覆い隠し、洋上防空体制研究会、陸上防衛態勢研究会で作戦、編成、装備に関する攻撃的構想を練り、防衛費対GNP一%枠を取り払い、今また本法案による防衛力増強を図るとともに、他方ではこれを専守防衛と強弁し、国民を対ソ戦略に引きずり込もうとしているのであります。  我々は、そのようなことは断じて許容できないのであります。日本の平和、アジアの平和、世界の平和を希求する我が国国民の期待にこたえるため、我が党は本法案に反対することを明らかにして討論を終わります。(拍手)
  384. 石川要三

    石川委員長 井上和久君。
  385. 井上和久

    ○井上(和)委員 私は、公明党・国民会議を代表して、防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案に対する反対の討論を行うものであります。  我が国は本年、戦争放棄、恒久平和主義を明示した世界に類例のない平和憲法の施行四十周年を迎えました。しかしながら、「戦後政治の総決算を標榜する中曽根内閣は、あからさまにこの平和憲法を空洞化していく政策を浮かび上がらせ、無理やり国民に押しつけようとしております。  その端的なあらわれが、とどまることを知らない我が国防衛費の拡大であります。六十二年度予算で、これまでの国民的コンセンサスとして定着してきたGNP比一%枠の平和のあかしとしての歯どめを破棄し、軍事大国化への第一歩を踏み出すという強硬姿勢に出たことであります。昭和五十七年に発足した中曽根内閣は毎年、防衛費の増大を図り、本年までの五年間で実に三六%も防衛関係費を増額してきました。この間、社会保障関係費が一一・一%、文教、科学振興費がマイナス〇・三%、公共事業費がマイナス八・六%であることを見れば、防衛費の増大がいかに異常なことであるかは明確であります。  さらに、防衛庁は来年度予算案の概算要求にエイジス艦やOTHレーダーの導入を盛り込むことを決め、本格的な洋上防空体制、シーレーン防衛に乗り出したことであります。本来「防衛計画大綱」は、日本への限定的・小規模な攻撃に対処するものであります。しかし、政府が着々と進めようとしているシーレーン防衛のための装備拡大は、大綱の趣旨を大きく逸脱するものであります。また、シーレーン防衛の日米共同研究も多くの疑問を含みながら調印され、さらに、東芝ココム問題から一挙にソ連を仮想敵国とした対潜探知能力システムの日米共同開発を開始しようとしております。これら国家主権や国家安全保障にかかわる重要問題が、国会の論議、承認を経ないまま次々と進んでいくことは、極めて重大であります。  こうした防衛費の拡大、シーレーン防衛の強化、日米共同演習等は、自衛隊の行動範囲の拡大となり、専守防衛を掲げる我が国防衛のあり方に大きな変更を迫ることになっております。シーレーン防衛の名のもとに米艦隊を護衛し、共同作戦行動をとり得る能力を自衛隊が備えることにより、集団的自衛権に踏み出す危険性がますます高まっていると言わざるを得ません。  このままでは、国民が何の具体的説明も受けないまま、気がついたら太平洋上に強力な日本軍事力が存在していたなどという事態を招きかねないのであります。中国を初めとしたアジア諸国に広がる日本軍事大国化の懸念は年々高まっており、それは外務省の対日調査報告にも歴然と結果が出ております。これを政府は真剣に受けとめるべきであります。  このように国民を無視した防衛力増強は、我が国が平和行動に徹するという定性的歯どめをも著しく逸脱するものであり、シビリアンコントロールに対する重大な挑戦であり、公明党は絶対に容認することはできません。私は、我が国がかつて誤った道に再び逆戻りしないためにも、今こそシビリアンコントロールの強化を強く訴えるものであります。  我が党は、以上の基本的立場から、防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案に反対するものであります。  なお、防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案につきましては賛成であります。(拍手)
  386. 石川要三

    石川委員長 川端達夫君。
  387. 川端達夫

    ○川端委員 私は、民社党・民主連合を代表し、ただいま議題となりました防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案並びに防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案について、賛成の討論を行います。  言うまでもなく、安全保障政策は国政の基本であり、国民生活の向上や福祉の充実も国家の平和と安全が確保されてこそ初めて可能となるものであります。したがって、国の安全保障のための防衛力の整術は、今日の国際情勢考えるとき、不可欠のものと言わざるを得ません。  我が党は、我が国防衛体制は、憲法の平和主義を踏まえた自主的な防衛努力とこれを補完する日米安保体制によって形成することを基本とし、今後とも専守防衛非核原則を貫き、国民合意とシビリアンコントロールを強化し、軍事大国への道は明確に否定するものであります。  こうした見地から、いわゆる防衛大綱の見直し問題に関しては、国際情勢の変化に対応して誤りなき運営をするよう、幾つかの提言をしてまいりました。また、有事法制の問題についても、有事における法体系に不備があることが明らかである現状において、これに何ら具体的対応をとっていない政府の姿勢を厳しくただしてまいりました。  このように、我が党は結党以来一貫して、真剣に、真正面から我が国安全保障問題に取り組み、現実を直視して責任ある政策を提起してまいりました。いわゆる防衛二法についても、それが必要な改正である場合には、国家と国民の利益を守るため、勇気を持って賛成してまいりました。今回の改正もその軌を一にするものであり、賛成であります。  政府におかれましても、真に国家と国民の安全を守るための防衛のあり方が、今までのような、ややもすれば偏りがちな、そして国民にとってわかりにくい、そしてその場限りの議論でなく、国民の合意として形成されていくよう、さらなる努力要望いたしまして、私の賛成討論といたします。  以上です。(拍手)
  388. 石川要三

    石川委員長 柴田睦夫君。
  389. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 私は、日本共産党・革新共同を代表して、ただいま議題となりました防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案並びに防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案に対する反対討論を行います。  本法案に反対する理由は、日米軍事同盟路線のもとで、日米共同作戦体制を一層強化するために自衛隊増強を図るという点にあります。  第一に、対潜哨戒機P3C九機、要撃戦闘機F15を十二機、さらに護衛艦二隻、潜水艦一隻、地対空誘導弾パトリオット一部を新たに配備することなどに伴い、自衛官五百十名を増員するというものであります。これは、アメリカが強く求める一千海里シーレーン防衛に対応するもので、対潜水艦作戦能力の強化、洋上防空体制づくり、有事の際の海峡封鎖能力の強化などであります。本法案に盛り込まれている予備自衛官一千五百人の増員もその一環であります。  わけても対潜水艦作戦はアメリカの海洋戦略の中心をなすもので、防衛庁はこのためにP3Cの百機体制を進めているのであります。今日、重大なことは、東芝ココム事件を口実にして、ソ連原潜への探知能力を向上させるため、日米共同研究を始めようとしていることであります。さらに、高額な新型P3Cの導入が計画されるなど、来年度予算においても対潜水艦作戦向上のための手が既に打たれているのであります。これは、ソ連を仮想敵国とみなすとともに、日米共同作戦体制のもとでの自衛隊の危険な性格を一層浮き彫りにするもので、本法案の本質を如実に示すものであります。  同時に、今回の措置によって、中曽根内閣のもとでの自衛官の増員が三千九十四名に上ることは極めて重大であります。この五年間、他方で一般の公務員は実に二万人も減らされ、明らかに臨調行革路線が軍事、自衛隊を聖域にして福祉を切り捨ててきたことをも示しているのであります。  第二は、日米共同作戦研究のために統合幕僚会議増強しようとしていることであります。日米共同作戦なるものは、アメリカ有事の際の自衛隊参戦のための態勢を強化するのがその実態であります。来年度予算で導入が図られようとしているエイジス艦が、実際にはアメリカの空母群、戦艦を守るためのものであると指摘したのはその一例であります。  最後に、私は、自民党が本法案の早期成立を図り、我が党の質問時間を削減するなど、本重要法案の審議を十分に尽くさなかったことは重大な問題であることを指摘し、抗議の念を表明しておきます。  以上、本法案等において進めようとしている自衛隊増強が、日本憲法の恒久平和主義と全く相入れないものであることを厳しく申し述べて、反対討論といたします。(拍手)
  390. 石川要三

    石川委員長 これにて討論は終局いたしました。     ―――――――――――――
  391. 石川要三

    石川委員長 これより採決に入ります。  まず、防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  392. 石川要三

    石川委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  次に、防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案について採決いたします。  まず、本案に対する戸塚進也君提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  393. 石川要三

    石川委員長 起立多数。よって、本修正案は可決されました。  次に、ただいま可決されました修正部分を除いて、原案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  394. 石川要三

    石川委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました両法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  395. 石川要三

    石川委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ―――――――――――――     〔報告書は附録に掲載〕     ―――――――――――――
  396. 石川要三

    石川委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後九時三十三分散会      ――――◇―――――