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西廣政府委員 私は、先ほど申し上げたように
我が国の憲法等に基づいて、例えば他国に侵略的な
脅威を与えるような
装備そのものも持たない、あるいは
部隊としても量的、質的にその種のものを持たない、さらには海外派兵をしないとか、その種のものは十分歯どめになり得ると思いますが、ただしそういう抽象的な概念だけでは、なおかつ年々の
防衛力整備なりについて、その都度、それじゃこれは憲法に違反するのかどうかとか、あるいは最小限の自衛力を超えるものであるかどうかということを、常に一品一品の
装備の
整備等についてさかのぼって論議をしなければならないということも、これまたなかなか大変なことでございますので、政府としてはかねがね
防衛力整備等について、できる限りそういった論議が繰り返されなくても済むように考えてきたと思います。
一例を申し上げれば、例えば
防衛力整備について、かつて一次防、二次防という時代があったわけでございますが、二次防のときに初めて
日本の持つべき
防衛力整備目標として、これは政府方針で、必ずしもそれが自衛力の限界ということではございませんけれ
ども、
整備する目標としては非核兵器による局地戦事態までに対応できる
防衛力というものをつくったらどうだろうかということで、それを方針にして、少なくとも二次防、三次防、四次防というように
防衛力整備は進められてきたわけであります。
しかし、御承知のように通常兵器による非核戦以下の事態ということも
かなりの幅があります。しかも、そういう事態を考えますと、当時持っておった
防衛力とそういう通常兵器による局地戦以下の事態のマキシマムな状態と比べると、なおかつ非常に差があった、そういうことでは
国民自身に
防衛力としてどこまで現在の政府として目標がきちっとしているのかということが十分
理解しにくいという面もございますし、一方、
自衛隊の側としても目標が非常に高過ぎて現実との間にギャップがあり過ぎますと、どうしても全体としてバランスのとれた
防衛力ということよりも跛行的な
防衛力ができてしまうおそれがある、まだまだどうせ役に立たないならこの分だけ急いでおこうとかということで、それなりにまとまった
防衛力になり得ないというような
自衛隊側の問題もありまして、御承知のとおり
昭和五十一年に「
防衛計画の
大綱」というものがつくられたわけであります。
この「
防衛計画の
大綱」というのは、釈迦に説法で恐縮でございますが、
日本に対する通常兵器による局地戦以下の事態という従来の
かなり目いっぱいの
構想ではなくて、まず
日本の
防衛力として
機能的に欠落のないものとしてはどんなものが考えられるか、その
機能がそれぞれ十分であるかどうかは別にして、一応
機能的に欠落のないものをそろえてみよう。
それから、各
部隊なりの配備あるいは監視その他について、
日本のこの
地域は守るけれ
どもこの
地域は守らないということではなくて、各
地域にまんべんなく、たとえ薄くても
防空の網をかぶせる、どの
地域でもアラート態勢がとれるというような
体制にするためにはどのくらいの
防衛力が要るかという、平時における通常の配備ということでまず
防衛力の量というものを想定してみて、そこで必要となる
防衛力というものを、よく御存じのように通常兵器による限定的かつ小規模な事態、限定的と申しますのは、まず核でなくて非核であるという意味で限定的である、またさらに言えば、限定的というのはそう長い間相手が準備をして用意をしてかかってくるということではなくて、時間的にも
地域的にも限定をして侵攻してくる、そういう小規模な事態を一部想定をしまして、先ほど言った、平時においてすき間のない一応
機能のそろった
防衛力というものを突き合わせてみて、検証してみて、それでそこそこの
防衛能力というものが持てればいいではないか。
今、ある隣国と一割力が違ったからすぐ攻めかかってくるというような国際情勢ではないではないか、仮にそういう小規模侵攻があったときに、二割、三割というような能力しかないのでは、これは
日本自身がその
地域において力の空白を生むことになって、安定ではなく逆に不安定の要因となり得るわけでありますから、そういうことがないような、七割、八割といったような形で相当の抵抗力を示せるものであるかどうかということを検証して、御存じのように現在の「
防衛計画の
大綱」というものができたわけであります。
〔
委員長退席、船田
委員長代理着席〕
したがって、我々としては、この「
防衛計画の
大綱」は自衛力の限界という点では決して天井いっぱい張りついたものではなくて、
かなり低いレベルのものだとは思っておりますけれ
ども、その程度のものを持つことによって現在のような国際情勢下においてはまずまず
日本の安定は図れるのではないか、それが状況が非常に変わってくれば、そのときはまた政治の判断で別の御決定をいただくということで、現在のところその「
防衛計画の
大綱」に従って
防衛力整備を進めておるという状況でございます。