運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1987-08-25 第109回国会 衆議院 内閣委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十二年八月二十五日(火曜日)     午前十時三十分開議 出席委員   委員長 石川 要三君    理事 北口  博君 理事 竹中 修一君    理事 戸塚 進也君 理事 船田  元君    理事 宮下 創平君 理事 上原 康助君    理事 竹内 勝彦君 理事 和田 一仁君       内海 英男君    大村 襄治君       河野 洋平君    鴻池 祥肇君       武部  勤君    月原 茂皓君       前田 武志君    宮里 松正君       谷津 義男君    角屋堅次郎君       田口 健二君    野坂 浩賢君       広瀬 秀吉君    井上 和久君       鈴切 康雄君    浦井  洋君       柴田 睦夫君  出席国務大臣         国 務 大 臣          (内閣官房長官後藤田正晴君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 栗原 祐幸君  出席政府委員         内閣官房内閣安         全保障室長   佐々 淳行君         内閣総理大臣官         官房参事官   平野 治生君         総務庁行政監察         局長      山本 貞雄君         防衛庁参事官  瀬木 博基君         防衛庁参事官  古川 武温君         防衛庁参事官  児玉 良雄君         防衛庁参事官  筒井 良三君         防衛庁長官官房         長       依田 智治君         防衛庁防衛局長 西廣 整輝君         防衛庁教育訓練         局長      長谷川 宏君         防衛庁人事局長 松本 宗和君         防衛庁経理局長 日吉  章君         防衛庁装備局長 山本 雅司君         防衛施設庁長官 友藤 一隆君         防衛施設庁総務         部長      弘法堂 忠君         防衛施設庁施設         部長      鈴木  杲君         防衛施設庁労務         部長      山崎 博司君         外務大臣官房審         議官      渡辺  允君         外務省アジア局         長       藤田 公郎君         外務省北米局長 藤井 宏昭君         外務省国際連合         局長      遠藤  實君         通商産業大臣官         房審議官    深沢  亘君         工業技術院長  飯塚 幸三君  委員外出席者         外務省北米局安         全保障課長   岡本 行夫君         大蔵省主計局調         査課長     花野 昭男君         運輸省貨物流通         局陸上貨物課長 小幡 政人君         郵政省郵務局企         画課長     足立盛二郎君         内閣委員会調査         室長      大澤 利貞君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法  律案内閣提出、第百八回国会閣法第三〇号)  防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案(内 閣提出、第百八回国会閣法第三一号)      ――――◇―――――
  2. 石川要三

    石川委員長 これより会議を開きます。  第百八回国会内閣提出防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案及び防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。柴田睦夫君。
  3. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 防衛庁長官はことしの正月の朝雲新聞のインタビューで、「日米安保条約というのは日本国全体にアミがかかっている条約であって、日米安保体制の揺るぎない地位を確保しておくという点では国民全体が、それなりに重い荷物を背負っていかなければならないんですね。」こういうお答えをしていらっしゃるわけですが、この安保条約によって国民が背負っている重荷、これをひとつ具体的にお話しいただきたいと思います。
  4. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 御案内のとおり、安保条約目的を達成するために、施設とか区域、それの提供をしなければならぬ、これは日米安保我が国義務であります。その義務を遂行するのには国民の皆さんの御理解をいただかなければならぬ、御協力をいただかなければならぬ、そういう趣旨のことを今言われたような表現で言ったわけでございます。
  5. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 長官趣旨はわかりましたが、私は、この日米安保条約によって国民が負担させられている重荷、これはただ施設区域提供というにとどまらないで、やはりここから日本軍備拡大だとかあるいは基地問題、そしてまた対米経済問題、こうした重荷があると思うわけです。  以下、順次これについてお尋ねしたいと思います。  第一は軍備増大重荷の問題でありますが、その中で、まず法案に関連してお尋ねいたします。  提案されております防衛二法及び防衛庁職員給与法改正案は、自衛官及び予備自衛官定数増並びに予備自衛官手当の改定を内容とするものでありますが、この改正案によって予想される予算増加額、これは幾らになるかお答えいただきたいと思います。
  6. 日吉章

    日吉政府委員 お答え申し上げます。  防衛庁設置法関係といたしましては、自衛官定数増関係で三億円でございます。それから、自衛隊法関係では、予備自衛官員数増関係で二千六百万円でございます。さらに、防衛庁職員給与法関係では、予備自衛官手当増額関係で三億三千六百万円でございます。ただし、第三番目に申し上げましたものは予備自衛官員数増分と重なりますので、三番目に申し上げました三億三千六百万円は、員数増分と重なっておる部分は控除いたしてございます。  これら三つを合計いたしまして、六億六千二百万円でございます。
  7. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 海上自衛隊定数増員艦艇航空機就役に伴うもの、それから航空自衛隊については航空機就役等に伴うものということになっておりますが、これらの艦艇航空機というのは何であるか、具体的に艦艇名機名を挙げてもらいたいと思います。
  8. 西廣整輝

    西廣政府委員 増員のすべてが艦艇航空機の増ということではございませんが、おっしゃるとおり、その種、就役に伴うものが多うございます。  まず艦艇就役の主なものでございますが、五十八年度に建造に着手しましたミサイル搭載艦DDG要員、それからやはり五十八年度に建造に着手しましたDDの要員、さらに五十九年度に建造に着手したSS潜水艦要員、それぞれ一隻ずつでございますが、それらの要員。  それから航空機につきましては、主なものだけを申し上げますが、P3Cの九機、F15の十八機分、C130Hの二機分、CH47Jの二機といったところであります。
  9. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 それらの艦艇航空機はもう既に就役しているのではないかと思うのですが、就役しているとすれば、いつから就役しているかお答え願いたいと思います。
  10. 西廣整輝

    西廣政府委員 艦艇等につきましては、進水のときから逐次増員をしてきて、最終的に部隊配備する段階で定員いっぱいにするという形で逐次増員をいたしております。
  11. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 今言われたのは、就役はしていないのですか。
  12. 西廣整輝

    西廣政府委員 就役というのは部隊配備というふうに私ども考えておりますが、来年度行うということになります。
  13. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 では、ここで大蔵省の方に尋ねたいと思いますが、来年度の防衛費要求基準シーリングは六・二%になっております。昨年度の当初予算と違いまして、当初予算よりも一%上がっているわけです。ことしは去年とは違って売上税もありませんし、物価も安定していると言われますし、円高で原油、資材などが安く買えるわけです。それから去年のように退職金など人件費がふえるということもありません。それにもかかわらず、去年の伸びを超えるシーリングが決められたという、この理由をお伺いいたします。
  14. 花野昭男

    花野説明員 お答えいたします。  六十三年度予算防衛関係費概算要求基準につきましては、防衛力の着実な整備という事情他方現下の厳しい財政事情あるいは財政改革の推進という事情、これらを総合勘案いたしまして、大蔵大臣防衛庁長官大臣折衝を経まして対前年度六・二%と決定されたものでございます。  他方、お話しの六十二年度成立予算伸び率五・二%、これにつきましては、六十二年度の概算要求基準六・三%に基づきまして概算要求が行われ、予算編成過程におきまして個別経費内容につきまして精査、調整いたしまして五・二%とされたことでございまして、来年度の予算概算要求のいわゆる概算要求基準伸びとは性格が異なるということを御理解いただきたいと存じます。  今回決まりました概算要求基準の範囲内で今月末までに概算要求が提出されることとなると存じますが、いずれにいたしましても、今後の予算編成過程におきまして、もろもろの国の施策並びに現下の厳しい財政事情等を勘案いたしまして、財政当局として適切に対処してまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  15. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 何か抑えたような話でありますけれども、ほかの経費伸びなどに比べてみますと、客観的な条件はいいのに去年よりもさらに一%伸びているということに問題があるわけですけれども、結局その基本というのは、日米安保条約がありますし、それが拡大強化される、こういう中でアメリカに対する配慮が優先して予算編成をされている、そのためのものであるというように思うわけであります。  この点、アメリカの方でどう見ているかとちょっと見てみますと、ことしの一月に発表されましたアメリカ政府国防報告がありますが、この中で、「日本防衛支出における持続的な実質増の継続は、日本が、世界の民主主義諸国社会の一員としての責任を認識していることを示す歓迎すべき措置一つである。」と言っておりまして、この「責任」ということにつきましては、特に断って、「中曽根総理大臣によって公式に引き受けられた義務」、こう言っているわけであります。続いて、「一千海里までの海上交通路防衛の受け入れ、(そのための防衛力日本の一九八六年から一九九〇年度の防衛力整備計画において明らかにされている。)」こう言って、このことをあわせて評価しているわけであります。こういう中で防衛予算が増大しているわけであります。  ところで、防衛庁はこの二十二日に洋上防空構想をまとめたと報道されております。報道によりますと、「中間報告」というのもありますし、あるいは「構想の概略」と言っているものもあるわけですけれども、その内容について明らかにしていただきたいと思います。
  16. 西廣整輝

    西廣政府委員 洋上防空の問題につきましては、防衛庁の庁内に検討のための研究会をつくっておりまして、私が座長になっておるわけですが、先週に作業部会の方の一つ作業が終わったので委員会の方に報告があったというものであります。  作業内容と申しますのは、洋上防空のうちの船舶を守るための防空について二つのシミュレーションをやった。一つは、シーレーンにおいて運航されている船団あるいは独航船といったものに対して航空攻撃があった場合に、どの種の装備体系でこれを守るのが最も有効であるかというシミュレーション。もう一つは、例えば北海道といったようなところに相手が既に着上陸侵攻を行っておる、そういう地域に対して作戦輸送を行う、必要な部隊なり装備の増援をするあるいは避難民を引き揚げてくるといったような形の作戦輸送、これは相手方がその地域においてはかなりの航空優勢を持っておるわけでありますが、そういう地域にどうしても海上輸送を行わなくてはならない場合にどういう装備体系で守るのが最も有効であるかというシミュレーションを行った、そういうシミュレーションの結果の報告があったわけであります。  細部の数字等は御容赦願いたいわけでありますが、考え方は、そういったものに対応するためには、まず、広い海洋上のことでございますので、広域早期警戒監視といった機能が必要である。そのためにOTHレーダーのような設備が必要かどうか、他の早期警戒機等と比べてどちらが経費効率がいいかといったような比較をしております。さらに第二段階としては、最近の航空機なりミサイル技術の進歩から、航空機搭載かなり長射程ミサイルが発射されるわけですが、そういうものを発射する母機に対してどう対応するか、その場合にどの種の装備体系がいいかという問題。さらには、そういった母機対策をやってもなお撃ち漏らした母機から発射されるミサイルに対して、どういうミサイルミサイル対処をするかといった最終段階防空措置等についていかなる装備がよろしいかといったような研究を行ったわけであります。
  17. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 今の説明だけでは全体像を明確につかむわけにはまいりませんが、防衛庁は今度エイジス艦を導入するというように言っておられます。今までの国会での答弁などを調べてみましても、その関連で七月十七日の予算委員会ではDDGというミサイル搭載艦艇二隻をつくる経費艦艇搭載ミサイル近代化のための研究及び経費が五カ年計画の中に計上されていると言っておりますし、この経費として約三百億円を留保しているということを、これは六十年十月八日の安保持での発言ですが、明らかにしておられます。そういう点からお尋ねしますが、いわゆるエイジスシステム予算というのは幾らになるわけでしょうか。
  18. 山本雅司

    山本(雅)政府委員 エイジスシステムにつきましては、実は来年度の予算要求でこれを要求したいと今検討しているところでございます。詳細につきましては、現在最後の詰めを行っている段階でございまして、まだ発表できる段階に至っておりません。
  19. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 防衛計画が作成された当時ですが、当時は対潜水艦艇というのは四百トンクラス駆潜艇でありました。それが更新されて千五百トンから五千トンクラス護衛艦になりました。今度はさらに七千トン級のエイジス艦になるということであります。ここまで来ますと、その装備目的が変わらないということ自体が問題であります。  これを予算の面から見ますとどういうことになるか。エイジス艦というのは一隻で千五百億円だと言われています。護衛艦は一般的に四百三十億円ということであります。防衛庁は、中期防は五年でやるわけだから十八兆四千億円の中にこういうものが含まれていると答弁されているわけです。しかし、この予算というのは、DDG護衛艦の分、約七百億円と言われておりますが、これをエイジス艦でやるということになれば、千五百億円ですから五カ年計画後の後年度分を大きく膨らませることになるのではないかと思うのですが、御見解を伺います。
  20. 西廣整輝

    西廣政府委員 今先生自衛隊がつくっておる護衛艦といいますか対潜艦艇は、かつて四百トンの駆潜艇しかなかったというように言われましたが、対空ミサイルを積んだ護衛艦というのは、昭和三十三年だったと私は記憶しておりますが、それが最初でございまして、ターターを積んだ船をつくった。以後、ターター艦というものを整備してきたわけでございます。今回、五カ年計画におきまして同様の対空ミサイルを積んだ船、DDGを二隻つくることにいたしております。そのための経費として五カ年計画で予定しておりますのは、二隻分として千五百億円、うち期間内の歳出が三百億円ということであります。  なお、それに加えて、先ほど先生が言われましたように、艦艇搭載ミサイル近代化を行う、これも二隻分でありますが、そのための経費として同様に千五百億円、期間内歳出は三百億円でございますが、合わせまして、近代化されたミサイル搭載護衛艦ということで、契約ベースでいいますと三千億円、歳出ベースでは六百億円の金が中期防計画では計画として計上されておるということであります。
  21. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 このエイジス艦、これは将来四護衛隊群に二隻ずつ、八隻体制ということも計画に入っているのでしょうか。
  22. 西廣整輝

    西廣政府委員 現在のところ、DDGにつきましては二隻で一応終わりということになっております。
  23. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 DDG二隻というのは今の中期防の中にあるものでありますし、これをエイジス艦にかえるということであります。今までの答弁なんか見ておりますと、護衛隊群にちゃんとエイジス艦をそれぞれ入れていく、こういうことが将来構想としてあるのじゃなかろうかと思いますが、もう一度お尋ねします。
  24. 西廣整輝

    西廣政府委員 護衛隊群は八隻で編成されておりまして、そのうち二隻がミサイル搭載護衛艦、いわゆるDDG編成されるということになっておりまして、既に六隻、ターター艦というものが、整備し、就役し、あるいは建造中でありますので、残る二隻を整備すれば一応護衛隊群としての形は整ってしまう。  長い将来、先のことになりますと、現有のDDGが除籍をする、退役をするという時点になりまして、その段階でどの種のものをつくるかということは改めて検討することになると思います。
  25. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 エイジス艦の導入というのは、DDGミサイル護衛艦として予算の裏づけを持っている、ですから、中期防を見直すことにはならない、こういうことが繰り返して言われております。「防衛計画大綱」で言っております対潜水艦艇エイジス艦とは、その目的内容から見てちょっと質が異なるというふうに思うわけであります。調達目標数字だけを合わせて、実際には中期防を強力なものに拡大していく、これは大問題であると思うわけであります。  お尋ねしますが、「防衛計画大綱」で言っております対潜水艦艇の中に、このDDGエイジス艦は入るということになるわけでしょうか。
  26. 西廣整輝

    西廣政府委員 既に就役しておりますGMの搭載艦ターター艦といえども、対潜艦艇であると同時に対空機能を持った対潜艦ということでありまして、エイジス艦も同様の分類に入るものだと私ども理解をいたしております。  いずれにしましても、護衛艦というのは洋上にあります船舶なりまたみずからを航空攻撃から守る機能というものを持っておりますが、すべての船にその種対空装備を持つのではなくて、先ほど来申し上げているように、二隻については船団防空が可能な対空ミサイルを群の中に装備するという考え方に立っております。しかるに、最近の経空脅威、空からする脅威というものが、航続距離の長い航空機が出現し、かつまたそれが非常に射程の長い、百キロ、二百キロといった射程ミサイルを搭載して艦艇攻撃等ができるようになってきた。そういったものに対応するためには、おのずからそれに対抗するための、防御するためのミサイルというものも高性能でないとミサイルに対応することができないというものでありまして、防護対象そのものも変わっていなければ、従来の構想というものの枠組みの中であると私どもは考えております。
  27. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 どうもその説明は納得いかないのですが、洋上防空の全体像というのが明らかになっていないというところに問題があるわけであります。そういう中でエイジス艦が導入されるというような大軍備拡大が行われていくことが問題であります。アメリカからこのエイジス艦OTHレーダーを買えというような強い要求があったということが言われているわけでありますが、まさにそのためにやっているんだとしか思えないわけであります。  ところで、お伺いしますけれども、確認しておきたいのですが、防衛庁エイジス艦によって一体日本の何を守ろうとするのか、この点を確認的にお尋ねしたいと思います。
  28. 西廣整輝

    西廣政府委員 洋上防空といいますのは防空機能の一部でありまして、それがどこで使われるかという場面に着目して、洋上で使われる防空機能洋上防空というふうに私ども仮に申し上げております。  我々の防空対象というものは自衛隊創設以来変わっておりませんで、まず主たる防護対象というのは国土であり国民である。さらに、国民生存を維持するためあるいは継戦能力を維持するための海上輸送をしておる我が国船舶、あるいは我が国のそういう物資を運んでおる船舶、そういったものを守るということが目的であります。したがって、エイジス等は、まさにその種、我が国国民生存を守るためあるいは継戦能力を維持するために海上輸送に従事しておる船舶航空攻撃から防護すみことが目的であります。
  29. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 このエイジス艦を持っている国というのはアメリカだけであるわけであります。ところで、アメリカはこのエイジス艦が何のために必要であると言っているか御存じでしょうか。
  30. 瀬木博基

    瀬木政府委員 米国海軍は、艦艇並びに海上交通路を守るに当たりまして、いわゆる多層的な防御という形でこれを重視いたしております。  この多層的な防御と申しますのは、アウターディフェンス日本語で言えば外側区域防御ないしは広域防御と言っていいのではないかと思います。これは、航空母艦から飛び立つところの航空機によって遠い地域で敵を探索する、そしてそれに対して攻撃を加えるという考え方であります。その次に、ある地域エリアディフェンス、面の防御と言ってよろしいかと思いますが、この面の防御に当たりましては、長距離艦対空ミサイル、これの最新的な形式がエイジス艦であります。最後の、艦に対する攻撃を守る、これはポイントディフェンス点防御と申しておりますが、これは最後防御として、どの艦についても従来からありますような機関銃というようなもので守るということでございます。従来からアメリカは、このアウターディフェンスということとポイントディフェンスということを主体としてきたわけでございます。  しかしながら、ソ連の航空機によるミサイル、また航空機自体が非常に発達してきたこと、また潜水艦によるミサイル、特に巡航ミサイルというものが発達してまいりますと、エリアディフェンスという面の防御重要性が非常に増してきたわけでございます。これから長距離ターター等ミサイルが発展するとともに、さらに電子機器レーダー網を発達させたエイジスシステムというものを発達させ、これによって多層的な防御に生かすというシステムを考え出しておるということでございます。
  31. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 一応お聞きしておきますけれども、このアメリカの八四年の国防報告を見てみますと、エイジス艦につきまして、「これらの艦は調整された爆撃機攻撃と対艦巡航ミサイル集中攻撃に対抗する我々の空母戦闘グループ防空火力を大幅に増すであろう。」こう言っております。それから、八六年の国防報告の中には、「空母戦闘群十五と、戦艦中心水上行動群四を支援するのに十分である。」こう言っているわけであります。  結局、エイジス艦というのは航空母艦戦艦を護衛するためのものであるということがここから見られると思うのですが、そういうものではないでしょうか。
  32. 西廣整輝

    西廣政府委員 エイジス艦のような対空艦艇というものを持つ理由は、いろいろその国の立場によって違うと思います。  例えばアメリカであれば、アメリカ自身さほど海外依存度の高い国じゃございませんが、いずれにしましても、アメリカのいわゆる商船隊が通る海路というものは爆撃機行動圏内にあるものは非常に少ないと思います。したがって、爆撃機行動圏内アメリカ船舶が航行するとすれば、それは空母機動部隊とかそういったものであろうと思いますので、アメリカとしてのエイジス艦必要性というものは、例えば空母防空とかそういったことに重点が移るのは当然だろうと思います。  また、先ほど他のヨーロッパ各国等エイジス艦を持っていないという話がありましたが、イギリス等海外依存度が高い国、ヨーロッパにも幾つかございますけれども、これまた、今申し上げたように大西洋ということになりますと、現在ミサイル攻撃等ができるソ連という国から考えますと、爆撃機行動圏内ということになると、ヨーロッパ大陸を越えたところに大西洋はございますので、なかなか爆撃機が行動し得るところではない、したがってその種の防空機能というものは余り持つ必要がないというようなことがあるわけでございまして、それぞれの国の海外依存度なり地理的条件というものによって、その使い方も違えば、持つ、持たないという必要性も変わってくるというふうに御理解いただきたいと思います。
  33. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 いろいろ言いたいこともありますけれども、次はOTHレーダーの問題であります。  この設置場所選定のための調査費を概算要求で入れるということが報道されておりますけれども、このOTHレーダーというのはどういう場所に設置するというような検討をされておられるわけでしょうか。
  34. 西廣整輝

    西廣政府委員 OTHレーダーにつきましては、かねてから申し上げているように、その覆域等の関係からいいますと、我が国が知りたい情報を得るためにはどうしても南西諸島なり小笠原諸島といった島換地域に置かなければ、その効果は極めて少ないというふうに考えております。そして我々としては、現在の状況ではその角度その他から見て小笠原諸島周辺に置くことが最も望ましいというように考えておりますが、なお技術的にいろいろ問題がありますので、引き続き調査をいたしておる段階であります。
  35. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 小笠原諸島の中で何島というような候補が挙がっているところがありますか。  それから、送信と受信とがありますが、その関係はどうなって、どう検討されているのか、お伺いいたします。
  36. 西廣整輝

    西廣政府委員 OTHレーダー送受信所、二カ所要るわけでございますが、問題は、非常に長大な土地が要る、飛行場のような長い土地が要る受信所の設置場所が問題でありまして、その点から考えますと、受信所の設置が可能な地域としては硫黄島が最適であろうというように私どもは考えております。
  37. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 このOTHレーダーをそういうところに設置したというような場合には、これは三千キロメートル先までの状況を探知できるけれども我が国の上空の方は死角になって探知できないというように言われているわけであります。この洋上防空構想にありますF15戦闘機と空中給油機、早期警戒機、これを組み合わせるという対処方針というのは、日本防衛範囲というものを大きく拡大するものになるわけであります。これは、「防衛計画大綱」が予想しているところをはるかに超えたものになっているのじゃないか。  大綱を見てみますと、警戒態勢を初めとして、我が国の領域及びその周辺海空域の警戒監視、情報収集、こう言っているわけであります。海上でも空域でも、やはり周辺海域、空域の防衛、こういうことが大綱では基本になっているわけです。それを今のように、三千キロ先まで探知する、そして給油機をつけたF15で足を延ばしてはるかかなたまで攻撃に出ていくということは、これは大綱中期防を捨てるということになるのではないかと思いますが、この点についての考え方を伺います。
  38. 西廣整輝

    西廣政府委員 OTHレーダーにしろ通信情報にしろそうでございますが、情報を知り得る範囲というものが防衛範囲というふうにはお考えいただかないようにしていただきたいと思うわけでありますが、いずれにしましても、情報というのはできるだけ広範囲に前広にとり得るということが重要であると私どもは考えております。  なお、防衛範囲、いわゆる防護対象というものにつきましては、私どももう長年の間、先ほど来申し上げているようにまず第一には国土国民であり、第二には国民生存を確保するための船舶海上輸送であると申し上げておりました。また、その海上輸送については、かねがね我が国周辺数百海里、航路帯を設ける場合には一千海里の範囲内、そこを航行しておる船舶の安全を図るものを対象としておるということでありまして、その点については何ら変更を加えておるものではございません。
  39. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 どう考えても、「防衛計画大綱」ができたときの考え方が貫かれているということでありますけれども、その当時とすべての戦略が大きく変わってきている、結局、アメリカの海洋戦略というものとの組み合わせ、こういうものを見なければならないと思うわけであります。  我が国の場合は専守防衛を看板にしているわけですから、それを洋上防空ということでとんでもない方向に行動範囲を広げていくということ、エイジス艦導入やOTHレーダーの導入、空中給油機、早期警戒機、P3C、これらはアメリカ日本に対して導入を強く求めてきたものであるわけであります。結局、洋上防空というものの全体像が国民の前に明らかにされていない、そういう中でその導入という問題にアメリカと合意するということがあって、ガイドラインの関係においても合意をしたからそれを義務づけるものではないというようなことから、この理論的根拠としてこの中間報告みたいなものが出てきているわけですけれども、これは非常に拙速な構想の概略をまとめたものであるというように見なければならないと思うわけであります。  私は、安保条約のもとにおいて非常に危険な方向にさらに進んでいこうとする今の政策は、憲法の立場に立って見直されなければならないということを強く主張するものであります。  次に、日米共同作戦計画や演習の問題について、残された時間やりたいと思います。  航空自衛隊那覇基地の防空指揮所、ADCCの中に米空軍の専用施設があるということを、この八月に我が党の調査団が参りまして確かめてまいりました。防空指揮所は那覇基地の就役機F4EJのスクランブルや要撃戦闘作戦、ナイキJミサイルの発射などを指揮管制するいわば防空作戦の中枢部であるわけであります。ここに今もあります米軍専用施設の構造及びその使用状況について御報告を願いたいと思います。
  40. 鈴木杲

    ○鈴木(杲)政府委員 お答えいたします。  建物の構造は鉄筋コンクリートブロックづくり、提供面積は当該建物千七百五十三平方メートルのうちの約百平方メートル、事務所として米軍に提供しております。
  41. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 この提供された施設というのは、日米の地位協定第二条の一(a)に基づくものであるということでありますが、ことしの国会に出されました資料がありますけれども、これは在日米軍施設名と面積、所在地というものが出ているわけでありますが、この資料には那覇基地に米軍専用施設があるということは全く出ていないわけであります。これはどういうことでしょうか。
  42. 鈴木杲

    ○鈴木(杲)政府委員 御指摘の資料につきましては、在日米軍の施設名、所在地及び土地面積を表にして報告したものでございます。御指摘の施設は嘉手納飛行場の一部として建物のみを提供しているもので、その資料の中には含まれておりません。殊さらに除外したということではございません。
  43. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 そうしますと、提供したということは、いつ提供しているわけですか。また、そのことは何かによって皆さんに知らされているわけでありますか。
  44. 鈴木杲

    ○鈴木(杲)政府委員 昭和五十九年三月二十二日に提供いたしました。これは三月二十六日に官報で告示しております。
  45. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 五十九年の三月以前には、この部屋といいますか、これは米軍は使用していなかったのですか。
  46. 鈴木杲

    ○鈴木(杲)政府委員 この建物の全体約千七百平方メートルは、沖縄の本土復帰後、那覇空軍海軍補助施設の一部としてずっと提供していたわけでございます。那覇空軍海軍補助施設は、昭和五十七年の三月に大部分が返還されました。大部分が返還された際に、この部分につきましては引き続き提供されておったということで、これが返還されましたのが昭和五十八年十月三十一日でございます。その後、自衛隊がこの建物を引き続き使用することとなりまして、そのうちの百平方メートルにつきまして米側から提供要求がありまして、これを改めて嘉手納飛行場の一部として再提供したということでございます。
  47. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 納得できないのは、沖縄の県民に対しては那覇空港というのは全面返還するということを言明しておられたわけであります。ところが実際はこういう米軍施設がそのままある。これは那覇空軍海軍補助施設とか嘉手納基地の一部とか、こういうことで、県民から見たらわからないようにしているということですが、そういうやり方をとっているのですが、どうしてそういうことになっているのですか。
  48. 渡辺允

    ○渡辺(允)政府委員 お答え申し上げます。  那覇空港及び那覇空軍海軍補助施設の返還の問題につきましては、昭和四十八年の日米安全保障協議委員会第十四回会合において合意をいたしておりますが、その際も明瞭に那覇空港の返還と那覇空軍海軍補助施設の返還とを区別して合意をいたしております。したがいまして、那覇空港については返還が行われております。それから、那覇空軍海軍補助施設につきましても、御指摘の施設等、ごく一部を除きまして基本的には返還が実現しているというふうに理解をいたしております。
  49. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 一部が返還されていないのに、それをいかにも返還されたように言っていることがまず問題であります。  この点、那覇の防衛施設局に確かめてみましたところ、この専用施設というのは防空作戦チーム、ADOTが使っているということでありますが、ADOTとはどういう任務を持った部隊か、お答え願いたい。
  50. 西廣整輝

    西廣政府委員 ADOTは、もともと岡崎・マーフィー会談から始まって、当時我が国防空部隊というものがなくて領空侵犯阻止等をアメリカに依存しておったときがございます。その当時は、御承知のようにスクランブルあるいはレーダーサイトの運用等は米側がやっておったわけです。以後逐次航空自衛隊整備されるにつれてそういったものが移管されてきたわけでありますが、その際に、松前・バーンズ協定というのがございまして、それを根拠として米側はADOT、いわゆる防空連絡員というものを配備する、そのことによって日米の連絡を行っておるという状況であります。  ADOTの任務というのは、一つは、我が国防空識別圏がございますが、それと隣接する防空識別圏の状況等について米側から情報を受ける、その際の窓口であります。と同時に、有事の戦闘等になりますと、御承知のように日本自衛隊とそれを支援するアメリカとは別の指揮系統で行われるわけでありますので、そういった際の防空管制なり警戒管制、そういった情報はADOTを通じて米側に流れ、米側は独自の指揮運用をするということになりますので、その種の連絡員としてADOTが置かれておるわけであります。
  51. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 いろいろ言われますけれども、このADOTというのは嘉手納基地の主力部隊であります米空軍の第一八戦術戦闘航空団の戦闘作戦を支援する第一九六二通信群に所属しているということであります。この組織形態から見てみましても、米空軍が沖縄上空で防空戦闘を行うことを支援する任務を持っている部隊であるということは理論的に出てくるわけであります。  米軍が自衛隊防空指揮所に現在いるということ自体が従来の防衛庁説明と矛盾することになるわけでありますが、那覇施設局では、米軍機に指示を出したりするという説明もありました。このことは認められますか。
  52. 西廣整輝

    西廣政府委員 先ほども説明したように、我が国有事の際にアメリカと共同対処行動をとるわけですが、その際の指揮系統はそれぞれ別々であるということは前々から申し上げているわけであります。したがって、アメリカの空軍部隊なり航空部隊の指揮はアメリカの系列であるわけでありますから、それに必要なレーダーサイトの情報等はADOTを通じて流れていき、彼らの方の指揮系統で動くというのは当然のことというふうに考えております。  なお、ADOTにつきましては、かつて米側に多くの領空侵犯阻止等を依存していた当時には、各レーダーサイト等、非常に多くの人間がおったわけですが、現在は府中と那覇の二カ所に減っておるというふうに理解をいたしております。
  53. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 那覇の米軍ADOTには技術者それから下士官なども配置した部隊があることが、この米軍の資料、この電話帳で確認できるわけであります。そういう部隊が那覇の自衛隊基地の中にいるということは非常に注目しなければならないわけでありまして、今までそこで日本自衛隊が管制を受けていた、指揮を受けていたというような経過もありますし、そういうことから見ますと、やはり米空軍に指揮をされるような部隊になっているのではないか、そういう中で共同作戦をとっているのではないか、こういうように思わざるを得ないわけであります。  時間が非常に差し迫りましたので、次に予定しておりました演習の問題を省略いたしまして、ガイドラインでは、「自衛隊及び米軍は、必要な共同演習及び共同訓練を適時実施する。」ことを定めております。これについては、最近も行われました日米三軍の統合指揮所演習、こういった合同演習がやられるわけですけれども、この日米の共同演習というものはどういう取り決めに基づいてやられるわけでありますか。
  54. 長谷川宏

    ○長谷川(宏)政府委員 お答えいたします。  日米共同訓練は、日米間におきます具体的な協定や取り決めを準拠として実施しているものではございません。なお、共同訓練を円滑に実施するために、共同訓練の実施に当たって日米間で所要の調整は行っておりますが、これは訓練実施の準拠ではありません。  自衛隊が米国を初め諸外国と共同訓練を行うことができます法的な根拠は、防衛庁設置法第六条第十二号であります。ここでは「所掌事務の遂行に必要な教育訓練を行うこと。」ができると規定しておりまして、所掌事務の遂行に必要な範囲内のものであれば共同訓練を行うことが可能であるということであります。
  55. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 そうすると、日米の共同演習、共同訓練について、どういう計画で演習を進めていく、そういうものの全般的な取り決めはない、今の答弁はそういうことだと思うわけであります。  実は、ことしの三月十一日、アメリカの上院軍事委員会で八七年度国防総省予算権限法の審議が行われまして、その中でヘイズ米海軍太平洋軍司令官が証言をいたしております。この共同訓練、共同演習の問題につきましては、読み上げますと、「日本とわれわれとの双務的な演習計画は、アメリカ日本が共同訓練、共同演習のための協定に調印した一九八一年以来、注目すべき進展を果たした。われわれは計画を拡大し今日十五の年間の共同演習を実行し、全軍レベルの指揮所演習から陸上師団レベルの野戦演習までに及んでいる。」こういう証言をしているわけであります。ここにあります「アメリカ日本が共同訓練、共同演習のための協定に調印した」、この調印した協定というのは何のことを言っているわけでしょうか。
  56. 長谷川宏

    ○長谷川(宏)政府委員 お答えします。  ヘイズ提言、私、残念ながら知りませんでした。恐縮でございますが、わかりません。
  57. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 じゃ、この点は後で調べて回答をよこしていただけますか。
  58. 長谷川宏

    ○長谷川(宏)政府委員 調べます。
  59. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 実は、ちょうど今読み上げましたように、一九八一年以来、日米の共同訓練というのは非常に多くなっているわけです。これでは年間十五の共同演習と言っていますけれども、陸海空合わせますと十五を超える演習が行われているのが特徴でありますし、一九八一年以来特に多いわけであります。  それから、ここに言っておりますように、「全軍レベルの指揮所演習から陸上師団レベルの野戦演習までに及んでいる。」ということは、最近の現実であるわけであります。これはまさに日本の演習の実態を見ても裏づけを持っているわけであります。こういうことについて調べてもらって、協定があれば、それはやはり演習というものが作戦計画の中身を示すものですから、これは明らかにすべきものであるというふうに考えますが、御見解を伺います。
  60. 長谷川宏

    ○長谷川(宏)政府委員 お答えします。  日米の共同訓練は、昔から、ガイドラインよりも前からずっと行われているわけでありまして、その実施の細目についてのいろいろな約束はあったといたしましても、いわゆる協定というのは私は知らないわけであります。したがいまして、調べますので、しばらくお待ちください。
  61. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 それは、確かに昔から共同演習、訓練をやっていたということは知っております。特に、国民の目に届かない海から始まりまして、それから飛行機に及び、そして陸上ということでいきまして、八一年以後は堂々たる演習が国民の前でやられる、そういう事態になっているわけであります。  もう時間が差し迫っておりますが、私もさらに、今同僚議員がおやりになりました自衛隊機のニアミス問題、あるいはケーブル切断の問題、それから基地の騒音問題、防衛庁長官国民重荷、基地問題ということを言われましたけれども、その問題についての質問も十分準備しているわけでありますけれども、きょうはあとの時間もありますし、これらの問題はなお次の時間にやらせていただきたい、このことを強く要望しておくわけであります。その点、委員長によろしくお取り計らいを心からお願いして、終わります。
  62. 石川要三

    石川委員長 井上和久君。
  63. 井上和久

    ○井上(和)委員 現在の先端技術の発達に伴いまして、一般物資と軍事用というその区別が大変難しい時代になったというふうなことが現実にあろうと思いますが、その中におきまして軍事機密という問題についてお尋ねをいたしたいと思います。  これはココムの問題において特にそうでありますが、輸出の承認を得ようとする場合に、軍事機密だからという理由で却下されたりできなくなる、こういうふうになりますと、これはひとり共産圏と貿易をしている企業ばかりではありませんで、西側や中立国へ輸出業務をしておる商社とかあるいは貿易会社全体にとりましてもこの軍事機密ということが大変問題になってくるでありましょうし、同時に、理由がわからないことになりますので非常に不信感が生まれてくるのではなかろうかと思うわけであります。特に、軍事機密は日米の違いというものは当然あると思うのでありますが、ペンタゴンの軍事機密で今後日本の自由貿易が制限をされるようになると大変なことだと思うわけでありまして、この影響についてまずお尋ねをいたします。
  64. 深沢亘

    ○深沢政府委員 お答え申し上げます。  ただいま先生御指摘のココムの規制強化の関係でございますけれども、今回規制強化いたしますのは、東芝機械の事件等その影響の重大性にかんがみまして、その再発防止ということから、制裁、要するに罰則の強化、それから行政制裁の強化というところに主眼を置いているわけでございます。その限りでございまして、言うなれば、このことによりまして規制対象を拡大するとかそれから技術の範囲を拡大するとか、そういうことを内容としているものではございません。いずれにしましても、外為法の自由の原則、必要最小限の制約という目的の範囲内においてやっておるところでございます。  今、審査等々におきまして若干のおくれ等が出ていることは事実でございます。そういうところに対しまして人員の増強等適切な対応を図ってまいる次第でございますけれども、そういったことによりましてその辺のところの影響がなるべく早く解消するように努力するということを含めまして、適正な対応に努めてまいりたいと思っております。
  65. 井上和久

    ○井上(和)委員 現実問題といたしまして、今の時代の流れからいいまして、ココム自体も三年に一度の品目の見直しであったのを最近は一年ごとに変えるというふうなことになっておるわけでありますが、そういうふうになってきますと、昨年はよくてことしはだめであるというようなことが起こるということなのであります。しかもその選ばれる事柄が、アメリカの軍事機密ということに重点が置かれて、日本のココム輸出等についての制約にこれがつながらないかということをお伺いしたいと思うのです。
  66. 深沢亘

    ○深沢政府委員 お答えいたします。  確かに先生の御指摘のとおり、ココムの品目は実際上いろいろ改正される等の措置がとられてきていることは事実でございます。ココム品目リストそのものが何かという点につきましては、各国との申し合わせでちょっと申し上げられないということでございますけれども、その辺を踏まえまして、通産省といたしましては、外為法の貿易管理令別表第一のところでその辺の改正の点も含めてわかりやすい範囲をお示ししている次第でございます。そういう意味で、確かにいろいろ変更は伴いますけれども、素早くといいますか、政令でその辺のところを範囲等を確定しながらやっている次第でございます。
  67. 井上和久

    ○井上(和)委員 ともかくこの軍事機密という言葉によって不信がだんだん高まりまして、これが政府の不信につなかったり、やがて政治的な不信につながったりしては大変である、こういうふうに私たちは思うわけでありますが、この点についてしっかりとわきまえていただきたいと思います。  パクス・アメリカーナ、すなわちアメリカの威信の低下ということがありまして、現在、ココム規制の強化あるいはSDIによる科学技術の所有であるとか特許権など知的所有権の競争、こういうふうなことに流れがいっているように、特にアメリカの動きとしてあるというふうに思うわけであります。こういう中にありまして、我が国がこういう面において自分たちの技術の権威といいましょうか、覇権というのはおかしいかわかりませんが、そういうふうな戦略を持たなければならぬと思うわけであります。これについてどういうふうに考えておられるのか、お示しを願いたいと思います。
  68. 飯塚幸三

    ○飯塚政府委員 御質問の中でございましたSDIでございますけれども、これはそもそも参加は各企業の自由でございまして、我が国企業が参加する場合には、既にみずから持っている技術については何ら影響を受けないものでございますし、また参加の結果生み出す成果についても、最低限使用権は認められておるわけでございます。  それから、知的所有権の問題につきましては、ガット新ラウンドにおきまして、国際貿易に対する歪曲と障害を削減いたしまして知的所有権の効果的なかつ適切な保護を図る観点で新たなルールづくりが必要とされておるわけでございまして、現在、日本、米国を含むガット加盟国間で交渉を続けておるところでございます。我が国としてもこの問題については積極的に取り組んでおるところでございます。  以上のようなわけで、我が国といたしましては、産業技術の振興と国際貿易発展という観点から適切に対処しておるつもりでございます。
  69. 井上和久

    ○井上(和)委員 アメリカ技術一つの覇権戦略ということを立て直して今取り組んで進んでおるわけでありまして、それに対しまして、お伺いするとどうも日本は受け身的な感じがぬぐえないわけであります。将来のためにぜひともそれをもっと能動的に考えておく必要があると思うのですが、そこの点につきましてもう一度お願いをいたします。
  70. 飯塚幸三

    ○飯塚政府委員 御指摘の点につきましては、私どもも積極的に公平な、例えば知的所有権につきましても公平な対処が図られるように取り組んでおるつもりでございます。また、産業技術政策といたしましても、我が国の産業技術の向上及び発展がこのような事情によって阻害されることのないよう、一層強力にその振興を図るつもりでございます。
  71. 井上和久

    ○井上(和)委員 国家の利害というものと資本の利害というもの、このずれを調整するものとして軍事というものが出てきたり、また軍事機密というものが出てくる、それが今日の問題を複雑にしている現実であろう、こういうふうに思うわけでありますが、大切なことは、貿易、すなわち民間的な産業というものに軍事や防衛の論理が介入をすることは極力避けなければならない、こう私どもは思うわけでありまして、これについて長官の御所見をお願いをいたします。
  72. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 原則としてそういうことであろうと思います。
  73. 井上和久

    ○井上(和)委員 次に、七月十五日にジェームズ・ウェッブ米海軍長官栗原防衛庁長官が会談をなさいまして、対ソ対潜探知システムの日米共同開発、こういうことをやろうというようなお話が決まりましたというふうに伺っておるわけでありますが、この潜水艦探知システムの日米共同開発というのは、具体的にどういうことをやるということなのか、そこでの日本の役割というのはどういうものなのかということをお教えいただきたいと思います。
  74. 西廣整輝

    西廣政府委員 ウェッブ長官が来られたとき、その前にワインバーガー長官が来日されまして防衛庁長官と会見をされ、さらに総理大臣とお会いになったわけですが、その際、東芝機械の問題とは離れて、ソ連の潜水艦が逐年静粛化しつつある、そのために相対的に我が方の対潜能力というものが低下をしておる、そういった問題認識について相互に認識が一致したわけであります。したがって、そういった問題に対応するために日米が何か協力できることがあるのではないか、協力してそういった相対的な能力低下を回復する方法があるのではないかということで、お互いに今までの安保条約の枠組みの中で何かできることはやろうではないかという合意を見たわけであります。  したがって、特別の何か新しきものを開発するといったような具体的な問題が出たわけではございませんが、従来の枠組みの中で相互に協力してこの失われたものを回復する手段というものを考えようではないかということを合意して、現在ネービー・ツー・ネービーと申しますか、専門家同士の間で話し合いを始めたというところでございます。
  75. 井上和久

    ○井上(和)委員 今話し合いを始めたところであるということですけれども、その中で日本がどういう役割を果たさなければならぬのかというふうな考えはないといけないと思いますが、これはどうなんですか。
  76. 西廣整輝

    西廣政府委員 役割というのはなかなか難しゅうございますが、先般ハワイで行われました制服の専門家同士の話し合いで出ました話題といいますか、三つの問題が取り上げられまして、一つは、対潜作戦あるいは潜水艦対処ということになるとやはり海洋環境というものの状況を十分に知るということが非常に重要なことである、したがって、そういった海洋環境の調査をお互いにできるだけ強化をしようではないか、またお互いにとったそういった海洋環境調査のデータというものの交換等をしたらいいのではないかといったようなことが話し合われたのが第一点であります。  第二点は、潜水艦の捜索なりあるいは潜水艦の例えば音等をとった場合の分析、そういったものについての能力の向上ということについてお互いに役に立ち得るものはないだろうかということでございまして、この問題の中に今先生が言われたいろいろな今後の対潜探知装置等の開発といいますか、それは技術的な問題も入ってくると思いますが、まだ具体的に何をするということではなくて、そういった技術的な問題あるいは分析技術の問題、そういったことについてお互いそれぞれの技術なり経験を持っておるわけでありますが、そういったことについて意見を交換して、お互いに役に立つものは利用し合って能力向上に努めようではないかということであります。  第三番目は対潜訓練の問題でありまして、対潜作戦訓練というのは日米相互で行うこともありますが、それぞれが常々行っておるわけでありますが、そういった訓練のやり方なりあるいは反省点といったものを含めて、今後さらにお互いに意見交換をしてより充実した訓練ができるようにしたらいいのではないかといったような三点が話し合われたわけでございます。
  77. 井上和久

    ○井上(和)委員 洋上防空の件にも関連をいたしまして、北方領土の問題とかということを検討なされたという御答弁でございます。また、アメリカ日本が対潜水艦についての同盟国である、こういうふうにも言われておるわけでありますが、そういうふうに考えますと、今回の問題にしましても、対ソ対潜水艦探知でございますが、結局両国の仮想敵国はソ連であるということははっきりさせてほしいと思いますが、いかがですか。
  78. 西廣整輝

    西廣政府委員 御承知のように、日本としては仮想敵国というものを想定して物事をしておるわけではございませんが、我が国周辺で多く活動している潜水艦というものにソ連が多いということはまた否めない事実であろうと思います。  なお、潜水艦に関する知識なりデータ、技術というものは各国非常に秘密にしております。例えば、アメリカ日本と同盟国であるから対潜のもろもろのデータが日米間でそれでは十分に交換されておるかといいますと、やはりそれなりにアメリカアメリカ自身潜水艦を運航しておりますから、そういったものについてのデータはできるだけよその国には知られたくないという気持ちもございますし、日本にとっても日本潜水艦の例えば音紋その他についてはできるだけよその国に知られたくないということで、潜水艦の隠密性といいますか、それぞれが自国の潜水艦の実態というものは知られたくないということが従来ございまして、必ずしも十分にデータ交換なり意見の交換が行われたわけではございませんので、そういった点はできるだけ従来の状況を克服して日米両国のために対潜水艦能力というものを向上させる努力をしたいというのが現状であります。
  79. 井上和久

    ○井上(和)委員 シミュレーションにおかれましても着上陸の検討をなさったというふうなことを聞いておるわけでありまして、そういうふうになりますと、その検討をするときに、どこの兵隊が、どのくらいの能力を持った者たちが上陸をしたかということによって変わってくることであろうと思いますし、その検討をするのに、相手はだれかわからぬけれどもというふうなことはやるわけがなかろうと思うわけです。そういうふうな意味で、もちろん仮想敵国という言葉が適当でないにしても、皆さんが検討なさるときの状況としてはそれはあったのだろうと思いますが、いかがですか。
  80. 西廣整輝

    西廣政府委員 先生の御意見のとおり、私ども防衛のためのもろもろのシミュレーションをするといったような場合には、我々の関心のありますのは、やはり我が国周辺にある諸国の軍事力でありその軍事技術レベルというものに非常に関心がありますので、そういったものをできるだけ想定しながらシミュレーションをするというのは事実であります。
  81. 井上和久

    ○井上(和)委員 潜水艦の探知システムの日米共同開発でありますが、シーレーン防衛の一環として位置づけられておることは間違いないと思うのですが、それはそのとおりですね。
  82. 西廣整輝

    西廣政府委員 先ほどもお答えしましたが、実はまだ日米間の専門家同士の共同研究といいますか、共同の何ができるかという勉強会で、特定の対潜システムについて何か新しいものをつくろうとかあるいは新しいシステムを考えようといった話が出ておりませんので、具体的なそういった問題まで至っていないという状況を御理解いただきたいと思います。
  83. 井上和久

    ○井上(和)委員 現在そうでしょうけれども、やはりそのシステムをつくっていこうとしていることは間違いがないと思うし、そういうふうにすることがこの一環であることだけは動かしがたいのではないかと思いますが、それはどうですか。
  84. 西廣整輝

    西廣政府委員 対潜システムという意味が十分私の方で理解ができていないのですが、対潜探知のための機材としてはいういろなものがあると思います。御承知のように、我々が運航しておるP3Cだとかあるいは艦艇のソーナー、あるいはそれらのものが使うソノブイとか、そういった既に実用化されておるもろもろの機材があるわけです。そういった現用しておる機材、そういったものの性能向上といった問題も将来出てくる可能性が、ございます。  なお、私どもは利用もいたしておりませんし、その実情がわかりませんが、巷間伝えられるところ、アメリカがSOSUSというようなかなり遠距離まで届くシステムを持っているというように聞いておりますが、そういったものについて我々は十分な知識をまだもらっていない、我々自身が承知していない問題でありますし、そのほか、艦艇等が曳航するサータスであるとかあるいはタックタスであるとか、タックタスというのは既に私どもも導入しておりますが、そういったもろもろの対潜探知機材というものが現にあるし、あるいは開発中のものもあろうかと思いますけれども、現在のところ、そのあるものについて日米で共同開発しようとかそういった話は出ておりませんので、その点御了解いただきたいということであります。
  85. 井上和久

    ○井上(和)委員 この対ソ対潜探知能力の日米共同開発、それとシーレーン防衛の日米共同研究、この二つの関係というものはあると思います。これがどのような結びつきになっているかということについて教えてもらいたいと思います。
  86. 西廣整輝

    西廣政府委員 御質問の趣旨を十分理解しているかどうかわかりませんが、これから日米間の専門家同士の話し合いを重ねていきますと、おのずから先生の言われたような点も出てまいるかなという気はいたしますけれども、どうも現在のところ、具体的に何をやろうというものが出てまいりませんと、我々としてはまだこれから先どういう形になるかということは十分理解できないでおるわけであります。  いずれにしましても、現状は、日米間でそれぞれ持っておる知識というものをそれぞれ差し支えのない範囲で披瀝し合って、この中でお互いの知識を集めれば何かよりよいものができるのではないかあるいはよりよい対策が出るのではないかというようなことを模索しているというのが現状であります。しかも、現在やっておる話し合いの枠組みというのは、御承知のように、日米間ではデータ交換、いわゆる資料交換の協定が一つございます。もう一つは、御承知のように日米の技術交流の取り決めというのがございます。そういった枠組みの中で何かできるものがいずれ出てくるのではないだろうかというようなことで話し合いをしておるところであります。
  87. 井上和久

    ○井上(和)委員 六十三年度の概算要求の件でありますが、対潜探知能力関係という先ほどの予算というものはこれには入っておりますかどうか。
  88. 西廣整輝

    西廣政府委員 各年度の予算につきまして、対潜探知能力を向上していくための施策というものは毎年のようにいろいろと含まれております。  来年度要求しようとして現在検討中の問題といたしましては、五カ年計画等に計上された幾つかの事案がございまして、一つはP3Cという航空機がございます。これは今から十年ぐらい前から整備を始めておるわけですが、大体五年後ぐらいごとに、アメリカの方の開発あるいは新しいものへの改良といったものを踏まえながら逐次改善を加えてきておりまして、今回十年目でありますので、アメリカと今話し合いをしておりますが、そういったものを含めて改善型、データ処理を従来のアナログ方式からディジタル方式にかえることによってより分析が精緻に行われるようなタイプのもの、さらにはソノブイ等を多数搭載できるもの、そういったものにかえたいということで今検討いたしております。  そのほか、対潜ヘリコプターでございますが、これも何十年という間同じタイプのものを改良しながら使ってまいりましたが、五十八年ごろから研究をいたしておりました新しいタイプのヘリコプターに国産した各種の対潜装備を備えた新対潜ヘリコプターというものが一応開発を完了いたしましたので、でき得ればこれを装備をしたいということで、来年度予算要求をするかどうかということについて今最終段階の検討をいたしておるところであります。  そのほか、艦艇の対潜機器等についても逐年改良を加えてきておりますが、非常に細々したものでありますので、省略させていただきたいと思います。
  89. 井上和久

    ○井上(和)委員 ただいま御答弁ございましたのはP3CアップデートⅢ型というのだと思いますし、対潜水艦のヘリ60だと思うのですが、こういうふうなものが防衛大綱の中の別表の中には入ってないと思うのですが、これはどうでしたか。
  90. 西廣整輝

    西廣政府委員 防衛大綱では、まず本文の方で、要するに大綱にあります態勢なり装備体系というものを周辺の諸国の技術水準に合わせながらできるだけ近代化していくというふうな考え方をとっておりまして、個々の装備について、その機種であるとか、あるいは同じ機種であってもそれが改良型であるかどうかといったようなことは記述いたしておりませんので、それらはやはりグローバルな意味での軍事技術というものを見ながら、我が国防衛のために最小限どの程度のものが必要かということで選択していくことにいたしております。
  91. 井上和久

    ○井上(和)委員 日米共同研究あるいは今回取り組んでおられる共同開発、こういうことにつきまして、シビリアンコントロールという意味から申しまして、これが国会での報告といいましょうか、それが承認なりがないままで進んでいるというのが実情じゃないかと思うわけであります。先日の内閣委員会防衛庁長官がシビリアンコントロールについてみずからの決意を述べられまして、私非常に注目して聞かせていただいたわけでありますが、こういうふうに具体的なものがどんどん出ながら、それが質問があったときとかそういうときでないと国会で議論をされないというのが現実だと思うので、そういう意味からいいまして、ぜひ国会でもってまずこういう話をしっかりと通していただいて進めていくというのが正しいのじゃないかな、こういうふうに私は思うのですが、長官、いかがですか。
  92. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 これは、具体的な問題というよりも、国会で皆さんの方に知らせるべきことは知らせなければならぬし、御議論いただくことは御議論いただく、そういう姿勢でいかなければならぬと思います。しかし、それにはおのずから防衛の観点から制限があるということも御了知いただきたい、こう思います。
  93. 井上和久

    ○井上(和)委員 七月の末から八月の初めにかけまして、ハワイで日米の対ソ対潜協力協議というものが行われたわけでありますが、まず、その主目的内容を今回整理をしてもう一度聞いておきたいと思います。
  94. 西廣整輝

    西廣政府委員 先ほどウェッブ長官に関連した御質問でお答えしたのと全く同じことになって恐縮でございますが、ウェッブ海軍長官が来られた際、またそれに先駆けてワインバーガー長官が来られた際にあった防衛庁長官とワインバーガー長官との合意、あるいは中曽根総理とワインバーガー長官との会談で出たお話し合い等を通じまして、いずれにしても、ソ連の潜水艦の静粛化が逐年進んできて我々の対潜能力に非常に深刻な影響を与えておるという事実認識に立ちまして、日米双方がこういった状況を回復するあるいは克服するために何ができるのだろうかということを研究しようということで、専門家同士の話し合いを行わせたわけであります。  その結果、先ほど申し上げたように、一つは、海洋環境調査について日米がより密接に協力しながらこれを強化しようじゃないか、強化する方法があるのではないかということ。     〔委員長退席、戸塚委員長代理着席〕 第二番目は、捜索あるいは識別能力、識別分析等についての技術的な問題を含めて今後日米がさらに研究していく必要があるのではないかということ。第三点は、これまた先ほど申し上げたように、対潜訓練のやり方なりあるいは訓練用の機材の開発その他について日米がお互いに力をかし合ったらいいのではなかろうかというような点が、専門家同士の中で日米が協力するにふさわしき項目として浮かんできておるというのが実情であります。
  95. 井上和久

    ○井上(和)委員 大変しつこくて申しわけないのですが、以上三点の中で、具体的に例えばP3CⅢ型の導入の予算化を日本としてはしなさいよとかいうふうなこと、あるいは対潜哨戒機の能力の向上のために日本のハイテク技術というものを生かしていくようになるだろうなとか、あるいはP3CオライオンD型ですか、この開発に日本研究参加をしてほしいとか、そういうふうな話は何にもなかったのですか。
  96. 西廣整輝

    西廣政府委員 例えばP3CアップデートⅢ型を導入するというのは、五カ年計画、長期計画の中で既に予定しておった計画でありまして、かねがねアメリカ側にこの技術的なリリースというものを申し込んでおって、どうやら見通しがついたので今回その実現のための予算要求をしようかなという段階に今来ているわけであります。このたびのハワイの話し合いあるいは東芝事件等に関連をしてこういった問題が浮かび上がったのではございませんので、その種、来年度なり近々予算要求をするというものについて、現在のところ具体的な案件というのは浮かんでおりません。
  97. 井上和久

    ○井上(和)委員 次に、集団的自衛権ということについてお伺いをしたいと思うのです。  憲法九条のもとにおいて適用されている自衛権の行使は、我が国防衛をするための必要最小限の範囲にとどまるべきであり、集団的自衛権を行使することはその範囲を超えるものであって憲法上許されない、こういうふうに自衛権ということについての見解があるわけでありまして、今回の対ソ対潜探知能力の日米共同開発、これはここで言う集団的自衛権に抵触するのではないのかなという気がするのですが、これについて。
  98. 西廣整輝

    西廣政府委員 先ほども申し上げましたように、まだ具体的な案件として決まっておりませんので、これはこういうことでよろしいというようなことを申し上げにくいわけですが、例えば対潜探知のための何かの開発をする、システム等について研究をするということになりますと、それは従来日米間で同盟国であるということで取り決めました武器技術の日米協力のための協定、そういったものの枠組みの中でやるということになろうと思いますし、仮に相互の対潜監視等で得られたデータ等の交換が行われるというようなことになりますれば、これはまた日米間の資料交換協定というものが既にございますので、そういった枠組みの中でやるということで、そのことによって集団的自衛権の問題に及んでいくというようなことは万々なかろうというように私どもは考えております。
  99. 井上和久

    ○井上(和)委員 研究であり開発の段階という場合ですとただいまのとおりかもわかりませんが、ただ私ども思いますのは、こういうふうなことを、例えば研究開発が進んで具体的なものになって、それが行使をされるというか現実のものになったときに、なおかつこれは集団的自衛権のあれではないというふうに言い切れるかどうかということです。
  100. 西廣整輝

    西廣政府委員 先ほど来申し上げておりますように、何を研究しその結果何が行われるかということがはっきりしないで抽象的なお答えになって恐縮でございますが、そもそも集団的自衛権の行使というのは、我が国自身が攻撃されてないにもかかわらず、他国が攻撃されたことをもって我が国攻撃されたと同じようにみなして、日本が他国のために軍事力といいますか武力を行使するというものが集団的自衛権であろうと思います。  いずれにしましても、我が自衛隊が自衛権を発動するというのは我が国に対して組織的な侵略というものが発生した段階でありますので、いわゆる集団的自衛権の行使ということが起こることはまずまず考えられないということでありまして、今先生の言われた対潜のための共同研究というものの発展の結果が集団的自衛権に触れるようなものになるということは、現状では私は全く想像がつかないというのが実情であります。
  101. 井上和久

    ○井上(和)委員 この集団的自衛権というものは、逆に言えばどういうものになるのかということを教えていただきたいと思います。
  102. 依田智治

    ○依田政府委員 集団的自衛権につきましては、ただいま防衛局長からお答えいたしましたように、自国と密接に関係ある外国に対する武力攻撃を、自分の国が直接攻撃されていないにもかかわらず実力をもって阻止する権利というように国際法上も認められておりまして、国際連合憲章五十一条では、主権国家というのは個別的自衛権と集団的自衛権、両方持っているというように解釈されておるわけでございまして、我が国も当然国際法上両方持っておる。  ただ、先生御指摘のように、我が国は憲法上、やはりその範囲は最小限にあるべきということで、個別的自衛権のみであって集団的自衛権は認められてないという解釈をしておるわけでございます。
  103. 井上和久

    ○井上(和)委員 次に、個別的な自衛権ということについても対照的にお伺いをしておきたいと思います。
  104. 依田智治

    ○依田政府委員 個別的自衛権というのは、やはりこれも国連憲章五十一条では主権国家は当然持っておるということで国際法上認められておるわけでございますが、我が国の場合は九条ということで戦争を放棄しておる。しかし、国民の平和希求とか幸福追求というものは認めておるという憲法の趣旨からして、自国の平和と安全を維持するという立場からは、当然我が国自体を守るための自衛権は持っておるというように解釈されておるわけでございますが、そういう自国の平和と安全を守るために行使する比較的限られた範囲の自衛権のことを一般的に個別的自衛権というように言われておると解釈しておるわけでございます。
  105. 井上和久

    ○井上(和)委員 日米の防衛協力というものがどんどん進んでまいりますと、自衛隊は米軍の一部になって巻き込まれるといいますか、そういうふうになっていく、現実にこういうことがあるというふうに思われがちでありますが、このことについてどうでしょうか。
  106. 西廣整輝

    西廣政府委員 まず、二点からお答えしたいと思いますが、我が国アメリカ日米安保条約を結んでおるゆえんというものは、アメリカという国が日本と同じように自由と民主主義というものを基調とする国柄であり、かつまた非常に強力な軍事力を持っておって、アメリカと直接対決をするということは各国とも極力抑制するであろうということを前提としておりますので、例えばソ連がアメリカと戦争をしてその結果日本が巻き込まれるというようなことは、ソ連側においても非常に強く抑制されるであろうということが前提になっておるわけであります。  またさらに言えば、我が国防衛力といいますか自衛権の行使というのは、憲法上あくまで我が国に対して組織的な急迫不正な侵害が行われたときに初めて発動されるものでありまして、その自衛権の発動の要件というものについては厳密な規制が加えられておる、そういうことで、単に同盟国といいますか日米安保条約を結んでおるアメリカが参戦しておるからといって、ずるずると日本がそれに巻き込まれるということはないというように考えております。
  107. 井上和久

    ○井上(和)委員 次に、次期支援戦闘機のことにつきまして、いわゆるFSXの件でございますが、政府は自主開発を見送った、こういうふうに言われております。  まず一つは、F4ファントムの転用あるいは日米共同開発、これはいずれの方で進んでいこうとしているのか、ここについて。
  108. 西廣整輝

    西廣政府委員 FSXの開発の問題につきましては、御承知のように中期防衛力整備計画によりまして、大きく分けて三つの選択肢、一つは、現在自衛隊が使っておる現用機というものを中心にして考える考え方、もう一つは、アメリカその他諸外国で既に使用されておる航空機等、そういったものを前提にして考える外国機を導入するという考え方、さらには、新たに開発をする、この開発する場合も、日本独自で開発する場合、アメリカと共同して開発する場合、いろいろあろうかと思いますが、そういった新たなものを開発するという考え方、この三つの選択肢に基づいて、何がよかろうかということで、庁内でまず航空幕僚監部あるいは技術研究本部を中心にして検討し、さらに現在防衛庁全体としてどういう選択が最も適切であるかということの最終的な詰めをやっておる最中でございまして、できる限り早くに結論を得たいというように思っておりますが、まだ現段階ではこれが一番よろしいという結論を見出すに至っていないというのが現状でございます。
  109. 井上和久

    ○井上(和)委員 もうちょっと具体的にお伺いをいたしたいと思いますが、この三つの選択肢の第一になろうかと思いますが、F16とかF18の改良型の共同開発ですね、これも何か性能面で疑問が残るというふうに言われておるということなのですが、いかがでしょう。ひとつ具体的に。
  110. 西廣整輝

    西廣政府委員 私どもが既に検討が済みましたのは、F16なり18について日本側の要求性能というものを前提にしてアメリカ側からこういう改造をしたらいいのではないかという提案があったわけでございますが、それについての検討はある程度終了いたしております。  しかしながら、F16なり18というものを基盤にして、それに我が方の技術等を加えて改造した場合にどういうものができるかといったような点についてはまだ検討が終わっていないものもありますので、F16、18をもとにしたものが性能的に完全に我が方の採用しようとするFSXの対象にならないということを言い切る段階ではないというふうに考えております。
  111. 井上和久

    ○井上(和)委員 次の日米共同開発の件でありますが、これにつきましては日米両国で大きな認識の隔たりがある。まず、日本案は日本側の設計による機体生産の新機開発案、これは日本主導であって、アメリカの案というのは既存の米機の一部改良である、あくまでも国防上の見地から機種選定は行うという当初のスタンスからこれは大きくかけ離れているのではないかと思いますが、いかがでしょう。
  112. 西廣整輝

    西廣政府委員 三つの選択肢のうちの最後の選択肢、開発ということになりますと、先ほど申したように、開発の形態としては、日本だけでやると言ってはちょっと行き過ぎかもしれませんが、ほとんどを日本がやるという場合あるいは日米共同でやるという場合、いろいろあろうかと思います。  いずれにしましても、その開発というのは、日本要求する性能といいますか、そういったものに合ったものを日本自身の、日本政府の金でやるわけでありますので、その開発の主体というものはいずれにしましても日本が中心になってやるというようにお考えいただいた方がいいと私は考えております。
  113. 井上和久

    ○井上(和)委員 これは八月十三日の毎日だったと思いますが、現在の主力迎撃戦闘機F15Jの改造案が空幕の一部から急浮上してきた、こういうふうに書かれてあったと思いますが、性能面ではF15の改造型は自主開発機に及ばない、こういうふうなことも言われておりますが、これについていかがでしょうか。
  114. 西廣整輝

    西廣政府委員 F15の改良といいますか改造、あるいはそれをベースにした開発というような考え方も当然選択肢の中にあるわけでございまして、その改造なり改良の度合いによって、現用機の転用という範疇に入るのかあるいは新たな開発という範疇に入るのか、いろいろ考え方はあろうかと思いますが、引き続きそういったものも検討対象の中に入っているということでございます。
  115. 井上和久

    ○井上(和)委員 最後に、戦後処理問題についてお尋ねをいたしたいと思います。  終戦後、南方方面やイギリス領等において抑留されていた方々が日本に帰国をされました。日本政府はこれらの方々の補償をされたと思いますが、これが個別補償だったかどうだったか、お伺いをしたいと思います。  同時に、今度はシベリアを初めとしましてソ連に強制労働を強いられていたソ連抑留者についてはどういうふうになっておるのかということであります。戦後四十年を過ぎていまだ未解決のままであるというのが現実だと思うのでありますが、今日までほうっておかれた状態、なぜこういうふうになったのか。また、南方の方々には補償をしてソ連抑留者にはそのままである、こういうふうな認識を私は持っておるわけですが、これは非常に不合理じゃないのかなという気がいたしますが、これについて官房長官、お願いをいたします。
  116. 平野治生

    ○平野政府委員 今お尋ねのいわゆるシベリアの抑留者の方々につきまして、御承知のとおり昨年暮れ、十二月の末でございましたけれども、政府と党でかねていろいろ議論がございました問題について議論をいたしまして、一応の合意を見たところは先生御承知のとおりかと思います。  その合意の第一項には、戦後抑留者問題を含めますいわゆる戦後処理問題につきましては、関係者の労苦を慰謝する等の事業をもってすべて終結させるという、いわば総論めいた話が一つ書いてあるわけでございます。それにはもちろんシベリア抑留者の方々も含むわけでございますが、特にシベリアの抑留者の方々に対しましては、二項にさらに、シベリアで、そういう酷寒の地で強制労働に従事した、そういうような事情等を踏まえまして、特にシベリアに抑留された方々につきましては、関係生存者の方々に書状と慰労の品と、そして恩給受給者を除く生存者の方々にはさらに慰労金十万円を差し上げる、このために特別の基金を六十三年度に発足させる、こういうように昨年の合意が成ったところでございます。  したがいまして、私どもはその合意の線に沿って、その実現に向けて現在努力しているというところでございます。
  117. 井上和久

    ○井上(和)委員 答弁がありましたように、政府は六十三年度からソ連抑留者に対しまして一人につき慰労金十万円の支給を開始する。抑留から既に四十年を過ぎまして、この間に二十七万の方々がお亡くなりになっておられるということであります。そのうちで約六万あるいは七万の人が抑留中に死亡をしておるという現実があるわけでありますが、このような過酷な抑留が原因で亡くなられた方が大半であります。来年四月の政府が実施しようとする日までに亡くなる方もまた出てくることかと思うのでありますが、政府はこの十万円の慰労金支給に対して、亡くなられた方々の遺族を除外しようとしておられるのであります。これは私は大変不公平であろうというふうに思うわけでありますが、この点について御見解をお伺いをいたします。
  118. 平野治生

    ○平野政府委員 私どもが、先ほど申しましたとおりに、党と政府の合意に基づいて現在進めているところでございますけれども、シベリアの抑留者の方々にそういう処遇と申しますか措置をすることになりましたということはこれまでいろいろな経緯があることは先ほど申し上げたとおりでございますが、同時に、先ほど申しましたとおりにシベリア、ああいう非常に酷寒の地で戦後強制労働に従事されたというような特別な事情があるわけでございますもので、そういう御苦労された御本人に対してそういう意をあらわすのが一番適当ではないか、こういうふうに考えでこのような措置をとろうといたしておるところでございます。
  119. 井上和久

    ○井上(和)委員 そういうふうに言いますと、結局は死んだ人が損よというふうな話が聞こえてくるようで、どうも大変寂しい思いがいたします。ぜひともそういう方々に対しまして温かい手を差し伸べていただきたいと思うのですが、まず、十万円支給の対象者はどれぐらいおられるのか、これについて教えていただきたいと思います。
  120. 平野治生

    ○平野政府委員 シベリア、ナホトカから我が国に戦後帰還されました数は、御承知かと思いますけれども四十七万人余りでございます。そして、私ども昨年度そういう方々の生存者の数を一応調査させていただいたのでございますけれども、そのうち三十二万人の方々が昨年の暮れにおいて生きていらっしゃるのではないか、六十一年三月三十一日現在でございますが、昨年の調査によりますと、その時点で生きていらっしゃるのではないかというふうに思うわけであります。  したがって、三十二万人の方々には書状と慰労の品を差し上げるということになるのでございますが、今お尋ねの慰労金につきましては、そのうち恩給受給者を除くというふうになっておるわけでございます。恩給受給者の方々は三十二万人のうちおおむね四割程度というふうに私ども思っておりますので、恩給受給者を除く対象者の方々はそのうちの六割、おおむね二十万人程度ではないかというふうに考えておるところでございます。
  121. 井上和久

    ○井上(和)委員 十万円の支給についてでありますが、この強制労働による賃金というものは、これは国際法によりまして、抑留者が帰国後、その本国、すなわち我が国政府が抑留者に払わなければならないようになっておるわけであります。しかし、これがいまだ実施をされておりません。  先ほどの、遺族を除外しようとすることとか、あるいはまた十万円でそれを納得させようというか納得してもらおうというふうなことも、私どもが考えまして非常に少な過ぎるのではないのかなという気持ちがするわけであります。といいますのは、現在防衛庁で進めておられる防衛大綱の実施に伴う支出にしましても、エイジス艦は千三百億もするというふうに言われております。そういう点から考えまして、この方々に対してしっかりと補償をして差し上げるということは大切なことだし、必ずこれはやらなければならないことだと思っておるわけでありますが、これにつきまして、ぜひ政府として抑留者の方々の声をもう一度聞くという意味を込めまして、御所見を承りたいと思います。
  122. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 いわゆる戦後処理問題は、今御質問のシベリア抑留の問題あるいは恩給欠格者丁欠格者と私は考えていないのですよ、ないのですが、いわゆる恩給欠格者と言われている問題、あるいは在外資産の補償の問題、この三つが取り上げられておるわけですね。  御案内のように、既に昭和四十二年に、いわゆる戦後処理と言われている問題はこれで終結した、こうなっておったわけですけれども国民の多くの方々の中からいろいろな御要求が毎年のように出されまして、それに対して政府・自由民主党どう対処するかといったようなことでいろいろ議論があり、二年半にわたる長い間、いわゆる戦後処理懇を設けて、そこでの御議論を経まして、その議論の結果、今あなたがおっしゃるような御議論は当然その中で出たわけでございます。     〔戸塚委員長代理退席、委員長着席〕  そういうこともあったわけですけれども、やはり御意見としては、個別補償はこの上国としてやるべきではなかろうという意味合いは、私の推測でございますけれども、今度のこの戦争による痛苦というものは、なるほど今言われているような方々がお気の毒な立場にあるのはわかるけれども国民全体が大変な被害を受けておるといったようなことを恐らくお考えになったのではないかと思います。だから個別補償ということはもうやめた方がよかろう。しかしながら、こういった方々の心情に思いをいたして、政府としては何らかの基金を設けまして、その基金の運用によって特別の慰謝の念をあらわしていくというのが政府のとるべき態度である、こういう御答申を得ましたので、それに従って処理をさせていただこう、こうしておるわけです。  しかし、そうは言いながらも、なおかつ不十分であるといったような御議論がございまして、厳しい論議の末、ようやく昨年の暮れに、政府・与党の中で、先ほどお答えをいたしましたように、シベリア抑留者についてだけは基金制度の中の運用としてああいったことで処理をさせていただこう、それ以外の方はまた基金制度の中で考えていくという結論に相なっているわけでございます。  もちろん私どもとしましても、今あなたがおっしゃるように、本当に個々の事情を考えますとお気の毒な立場もよくわかっております。したがって、これらの実施に際しましては、あくまでも政府としては温かい気持ちで事務処理はさせていただかなければならぬ、かように考えているわけでございますので、いわゆる戦後処理問題については、昨年のあの政府・与党の厳しい論議の末出てきた結果によってひとつお許しをいただきたいと思うわけでございます。
  123. 井上和久

    ○井上(和)委員 みんなが大変であったということ、そのとおりでありましょうし、特にまたシベリアに抑留された方々の苦労というものも御認識をいただいての御答弁でございますが、しかしその中にありまして、こういう方々の生活実態というものもやはり見てあげなければならないと思います。現在の姿というものも大切にしなければならぬ、それが今の政府としての務めであろうと思うわけでありまして、今後、この方々の声、要望をしっかり聞いてあげる、その姿勢をどうかお持ちいただきたい、このことを要望いたしまして、私の質問は終わりたいと思います。大変ありがとうございました。
  124. 石川要三

    石川委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後零時二十七分休憩      ――――◇―――――     午後一時三十分開議
  125. 石川要三

    石川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。野坂浩賢君。
  126. 野坂浩賢

    ○野坂委員 防衛問題に入る前に、総務庁に関係をする若干の諸点について質問をしたいと思うのであります。  それは、郵政事業に関する行政監察の結果に基づいて本年六月十七日に勧告、報告がされておる問題であります。特に私は小包の郵便問題のみに絞ってお尋ねをいたしますが、この勧告によりますと、「抜本的な経営の見直し等組織・体制の簡素・合理化と事業運営の効率化、適正化を一層推進することが要請されている。」こういう前文で、郵便小包部門について、「収支均衡の目標年度を定め、計画的に業務運営の効率化による経費の縮減等に努める必要があり、これが達成できない場合には、民間宅配サービスの動向等を踏まえ経営の在り方について抜本的に見直しを行う必要がある。」と勧告をしております。御存じのとおりだと思います。  総務庁は、この勧告を通じて郵便小包事業に具体的に改善を求めていくということだろうと思いますが、その本当の意味、意図は一体何なのか、冒頭にお尋ねをしておきたい。
  127. 山本貞雄

    山本(貞)政府委員 ただいま先生から御指摘のとおり、本年六月に郵政事業、特に郵便事業に関しまして、小包の問題につきましては、まず業務の効率化等を徹底して行う、そして具体的目標年度を定めまして収支均衡を達成するように業務運営の効率化を図るべきである、もしそれが達成できない場合は、経営のあり方を含めて抜本的な見直しを行うべきであるというふうに勧告いたしましたことは、先生御指摘のとおりでございます。  それで、これを特に指摘いたしました趣旨は、御案内のとおり、郵便小包の事業がかなり長期にわたりまして赤字経営になっております。最近は約三百億近い赤字でございまして、収入をもって支出をカバーできる率が七〇%ぐらいになっておるということでございますから、今後これが続きます場合は郵便事業全体の収支バランスを悪化させて、また国民負担の増大に結びつきかねないおそれがある、そういうことからこういった勧告をいたしたわけでございますが、具体的に経営のあり方の見直しという場合にはどういうことを含むかということにつきましては、例えば業務のやり方の抜本的な見直し等々、これはさまざまな選択肢があろうかと存じます。具体的には郵政省で御検討いただく問題かと存じます。  ただ、一言申し上げておきたいと思いますのは、勧告の本旨は、あくまで業務の運営の徹底的な効率化によりまして、国民の負担を増大させることなく本来の事業目的を達成するようにすべきだ、そこに本旨がある、このように御理解いただきたいと存じます。
  128. 野坂浩賢

    ○野坂委員 今の御答弁では、経営の効率化をやる、徹底的に経費を抑え込むという話であります。  あなたの勧告を見ますと、例えば郵便の場合は、無集配特定局の廃止を推進するということもありますね、これは別ですが。民間委託が可能で、しかもその効果が期待できる小包配達について、専担者まで配置しておるじゃないか、これはだめよと書いてありますね。そして、小包配達業務については、民間委託を一層推進せよと。下請をやれということですね。郵便局員でやらないで、民間委託をしなさいと書いてあります。そして、業務量に対応した集配区の見直しをせい、こういうことも書いてあります。さらに、下請をやっておるのだけれども、極めて非効率で不経済な運行及び契約を行っておる、これも指摘しておる。     〔委員長退席、戸塚委員長代理着席〕 それから、非効率な路線設定となっているものがたくさんある、距離制の運賃に比較して割高な契約になっておる、いっぱい指摘しておりますね。  総括して、郵便小包は最近、下降傾向にあるのではないのか。だから、これだけ進んでおるということになれば、言うなればあなたのおっしゃっておるのは、これからの郵便小包業務というのは下請に出しなさい、民間に委託しなさい、民間の下請代金を減少させなさい、たたけ、こういうふうな指摘があるわけであります。そういたしますと、今の民間下請業者はただでさえ悲鳴を上げておるという状態なのに、これ以上たたいてやるということになれば、いわゆる公平、公正な運営をする、競争するという政府の考え方とは違って、たたきにたたいて二百九十億円の赤字をなくしなさい、こういうことに帰するのではなかろうかと思いますが、この辺はいかがでしょうか。
  129. 山本貞雄

    山本(貞)政府委員 確かに先生御指摘のように、当該勧告におきましてはそういったさまざまな具体的な改善策を提言しておることは事実でございます。  御案内のとおり、本来郵便事業は小包を含めまして独立採算で行われるべき事業でございます。必ずしも赤字があっていいというわけではございません。また、郵政省におかれましても、郵便事業全体といたしまして民間に委託した場合、その方が安上がりなもの、効率的なものはこれまでもどんどんと民間委託なり合理化を推進しておられるところでございます。したがいまして、私どもが指摘いたしましたのは、さらに民間にお任せした方が効率的な部分は民間にお任せした方がいいだろう、そういった指摘でございます。  それからさらに、ただいま約三百億の赤字を民間に背負わせる、これは私ども趣旨は決してそうではございませんで、先生もよく御案内のとおり、例えば民間宅配便は、税や配当もしながらなおかつ利益を上げておるわけでございますから、これは効率的なやり方によって収支均衡は可能であろうと考えるわけでございます。したがいまして、そういった民間を圧迫するのではなしに、いわば民間に部分的に業務を委託した方が効率的なものは民間に委託するとか、そういったことも含めまして、業務のやり方、システムもよく見直していただきまして、収支均衡を図ることによりまして、国民の負担を増大させないで事業本来の目的を達成していただく、そういった趣旨で勧告いたしたわけでございます。
  130. 野坂浩賢

    ○野坂委員 局長、新聞に、「郵便事業行政監察原価割れの郵便小包廃止を含め見直しを」と書いてありますね。抜本的な見直し、非効率で経営の効率化が出てこない場合の抜本的な見直しというのは、これだけ宅配便が民間として伸びてきた、一年間で三億も伸びてきた、こういうことになればその方に任せたらいいのじゃないか、民間活力という意味で、抜本的な見直しというのはそのような方策をとったらいいじゃないか、こういうふうに考えでいいですか。
  131. 山本貞雄

    山本(貞)政府委員 抜本的な見直しの意味内容でございますが、これは先ほども申し上げましたように、業務運営の方法とかサービスの内容とか、そういったことも含めまして思い切った見直しを行うということでございまして、臨調答申でも御案内のとおり、当面こういった事業を国営事業として徹底した効率化を行う、こういうふうなことを言っておりますので、私どももそのラインで、先ほども申し上げましたように勧告の本旨はあくまで徹底的な見直し、経営の合理化によりまして、国民の負担を増大させないで本来の目的を達成すべきだ、そこに本旨があるということを御理解いただきたいと思います。
  132. 野坂浩賢

    ○野坂委員 郵便事業は、公正で公平な競争の中で国民の福祉に寄与すると書いてありますね。そうすると、一つは宅配便等貨物の場合がありますね、郵便の小包がありますね。これを業者等をたたいて安くするということは、公平と公正な競争に欠けるということに常識的にはなると思いますが、いかがでしょうか。
  133. 山本貞雄

    山本(貞)政府委員 たびたび同じことを申し上げて恐縮でございますが、私ども具体的に郵便小包と宅配便等との部分的な比較もやってみたわけでございますが、例えば区分分け業務等は相当民間宅配便の方が効率的な部分もあるわけです。郵政省も相当最近は効率化努力をやっておられるわけでございますが、そういうことで郵政省自体として業務を徹底的に合理化される。それから、先ほど申し上げましたように民間をたたくのではなしに、今やっておられることを民間にお任せした方が効率的なものは民間にお任せしたらどうか。これは料金はあくまで相互の交渉によって決められると思いますので、私どもは決して民間をたたいてということではございません。  郵政省自体として徹底的な業務の合理化、それから民間に委託した方が効率的な場合は民間にお願いしてやられる、そういうことによって徹底した業務の効率化をやって、収支均衡を図って、国民の負担を増大させることなく本来の目的を達成する、私どもの勧告の趣旨はこういうふうなことであるわけでございます。     〔戸塚委員長代理退席、委員長着席〕
  134. 野坂浩賢

    ○野坂委員 公平、公正な競争をやれという政府の意図、郵便法の法的な根拠、そういうふうな面でアンバランスになるのじゃないですか。逆に民間の方が圧迫されるのじゃないですか。今は三百億の赤字だ、だから民間に委託をして、委託契約をもっと下げなさい、そうしなければバランスが合わぬじゃないですか、こう言っていらっしゃるのでしょう。そうすると、公平と公正という点には欠けるんじゃないですか、正常な民間との競争ということにはならぬ。  例えば、具体的に言いますと、今郵便事業の方は十キロまでは安いのですよ、これは知っておられると思いますから読み上げませんが、安い。七百六十円で話をして、郵便は五百六十円の切手を張って動いておるのですよ。こういう事実があるのです。それは郵便局特有の通信事務という切手を張って処理されている。民間の場合はちゃんと六十円なり二百円なり張って皆さん方に通知をするということになると、それだけでも不公平じゃないのか。役得だ。  こういう格好になってくれば民間業務は非常に厳しい状態になってくるのじゃありませんか。それでも努力して民間はもうけておるのだから、郵便局はだめじゃないか、これだけでは済まぬものが今度は民間と郵便事業の間に出てくるのじゃないですかということを私はお尋ねをしておるわけです。
  135. 山本貞雄

    山本(貞)政府委員 先ほど来申し上げておりますように、郵便小包事業の徹底的な効率化を進めて、そしてただいまある約三百億の赤字というものを解消する方向で努力をすべきである、その場合、目標年度を定めて具体的に収支均衡を達成する努力をする、それが達成されない場合は経営のあり方を含めて抜本的な見直しを行う、こういうことでございます。その抜本的な見直しにつきましては、先ほど来申し上げておりますように、効率化によって収支均衡を達成する、そういうことが必要でございますから、そのためには、見直しの問題としてはサービスの内容からあるいは業務の運営方法の問題から、あるいはそれは郵政省独自でお考えになる問題だろうと思いますが、御案内のとおり今料金が十キロ未満は確かに小包が安い、しかし十キロ以上は逆に郵便小包が高い、そこら辺も含めまして全体として具体的に収支均衡を達成し、国民負担を増大させることなく業務目的を達成するためには具体的にはどういう見直しをするか、これは郵政省で今後具体的に御検討いただきたいということでございまして、決して民間を圧迫するとかそういう趣旨ではございません。その点は先生と同じ考え方でございます。
  136. 野坂浩賢

    ○野坂委員 精神はわかりますけれども、現実はそうじゃありませんよということを私は指摘をしておるわけです。  それでは、あなたの場合はこの辺にして、郵政省の方に伺いますけれども、小包と路線運賃の関係です。  今局長がお話しになりましたように、小包の場合十キロまでは安い、それ以上は高くなってくる。小包というのは郵政省が運賃を公示をするのですね。それから、普通の路線貨物なり区域貨物の運賃というのは運輸省が申請に基づいて認可するのです。公示と認可という関係がこれからの競争場裏に立って非常に厄介なことになってくるなということを我々は感じております。そして今公平、公正な競争をやるんだという原則に立って経営の効率化を指摘をされておりますけれども、郵政省としては、小包というのは三百億赤字です。ただ、郵政事業の場合は、個別単価主義ではなしに、総合的な原価主義をやっておられる。だから、この指摘を受けて、個別、部門別に原価主義の方式をとるのか、総合原価主義でこれからいくと考えておるのか、その辺はいかがですか。
  137. 足立盛二郎

    ○足立説明員 お答えします。  郵便事業は、全国ネットワークというものを非常に維持いたしまして、そこで手紙、はがき、第三種、第四種、小包郵便物等すべて同じ施設、同じ人で運用をしております。したがいまして、個々のサービスごとの原価に基づきまして料金を決定するということがなかなかなじまない側面がありまして、郵便法第一条、第三条等によりまして総合原価主義で郵便事業の経営に当たるようにということになっておるわけでございます。  今後とも、そういう方向で対処してまいりたいというふうに考えております。
  138. 野坂浩賢

    ○野坂委員 行政監察局長のお話も聞いておいていただかなければなりませんが、行政監察局は、小包郵便は二百九十億円の赤字ですよとはっきり言っておるわけですね。だから経営効率を上げなさい、経費の縮減をしなさい、こう言っておるのです。あなたは、いや、小包は赤字が出ても、封書やはがきでもうかっておるから、総合原価主義だからこの中に埋め込んでいいじゃないか、こういう意見を述べておられるのです。  違うのです。だから小包というものを引っ張り出して、それについてこれから収支均衡を図れと言われて、あなた方は図るように対処、対応しなければならない、こういうことじゃないかということが第一点ですよ。わかりましたか。  二点目は、経費の縮減をやれと、今やかましくおっしゃった。そうなったら何をやりますかということなんです。経費の縮減ということは一体何をやるのですか。首切りですか、いわゆる下請業者をたたきますか。どっちかです。言ってくださ
  139. 足立盛二郎

    ○足立説明員 お答えします。  総合原価主義ということを原則としておるわけでありますが、だからといって、小包部門につきまして幾ら赤字があってもいいということではないというふうに思っております。できるだけ今回の勧告の趣旨に沿いまして、私ども収支均衡を目指していろいろ努力をしていきたいというふうに考えております。  現在、郵便小包の赤字ということが言われておりますが、この主な理由は、かつて郵便小包が昭和五十四年当時約二億個ございました。しかし、その後、宅配便等の影響もありまして一億三千万個まで落ち込んでしまった。それが最近、私どものいろいろなサービス改善等によりましてようやく増勢に転じておりますが、まだかつてのピークの八二%程度にしか回復しておりません。したがいまして、現在の郵便小包の増勢をこのまま続けていきますならば、かつての水準に回復することも近い将来可能であるというふうに考えておりまして、おのずから収支に関する問題につきましても解決できるものというふうに考えております。  なお、先生御指摘のありました今後どういうような形で効率化、経費の削減といったものに取り組んでいくとかということでございますが、郵便事業全体といたしましては、できるだけ外部委託できるものは外部委託するということで現にやってきておるわけでございます。さらに、この不採算地域等における施設あるいは人、そういったものにつきましては、可能な限りこれを削減していくということでやっておるわけでありまして、小包につきましても、今後配達部門あるいは輸送部門等いろいろな観点から効率化に努めてまいりたい、こういうふうに考えております。
  140. 野坂浩賢

    ○野坂委員 運輸省に聞きます。もう私は時間がありませんので、ごく簡潔にお願いしたいと思います。  例えば郵便小包は、二キロまでは五百円、四キロまでが六百六十円、六キロまでが八百二十円、そして宅配便は七百円、九百円、こういうことになっておりますね。公示料金と認可料金の違いなんです。  だから、これは公正な競争をするためにそれらについて郵政省と運輸省と話し合って、公平妥当で便利でスムーズにいくという格好で、消費者といいますか、荷主の言うものを選択させることが望ましいと思うのです。それらについて、郵政省なり運輸省は認可と公示の違いを、過当競争なり不正競争にならないように話し合ってこれから決める必要がある、こういうふうに私は思いますが、いかがですか。両方とも答えてください。ごく簡潔にお願いします。
  141. 小幡政人

    ○小幡説明員 お答え申し上げます。  宅配便の運賃を初めとする運輸サービスの対価である運賃、料金につきましては、我々、利用者の公平な負担、あるいはまた先生おっしゃられますような異なる輸送手段間の公正な競争を確保するという観点から、やはり原則としては、基本でございますけれども、コストを反映したものでなければならぬというのを実は運輸行政の柱にしてございます。そういう観点の中で宅配便の運賃等々も認可しているわけでございまして、現状、運輸サービスの物の考え方でございます。  一方、また郵便事業の小包等を初めとする料金につきましては、国家事業という中で郵便事業を預かります郵政省さんの方で、また別な形でいろいろな観点から料金を定めているわけでございまして、現実としてはそういう別趣旨の体系の中で、結果として今言ったような形になってきているわけでございまして、その辺について、我々としても具体的な競争関係等々について承知しておりますので、郵政省の料金体系について非常に関心を持って現在勉強しておるところでございます。
  142. 足立盛二郎

    ○足立説明員 お答えします。  郵便小包の料金につきましては、元来、歴史的な経過といいますか、もともと郵便というものを運んでおるということで、非常に小型な、そして軽いものが得意でございます。一方、民間の宅配につきましては、大きな荷物を得意としてやってきたという歴史的な経過がありまして、それぞれ得意な分野がやや違う面があるというふうに考えられます。  ただ、あまねく公平にサービスを提供して、官民でいい意味で競争していくという観点から、私どもとしても民間のそういった運賃の動向等に十分配意しながら料金の設定に当たっていきたいと考えております。
  143. 野坂浩賢

    ○野坂委員 運輸省は、研究します、いい意味での公正な競争をやります、こう言っています。しかし、公平で公正な競争をするという意味では話し合う必要があろう、話し合ってやらなければ民間圧迫になり、また官業圧迫にもなるかもしれな  そういう意味で、行政監察局は、一定の時期を設定してそのときにいい結論が出なければ抜本的な見直しをするとおっしゃっている。郵便局の場合は、こんな「郵便小包」というのを書いて、切手なんかは七百六十円を取りながら五百六十円でやっているわけですよ。これは後から見せてあげる。そういうことになると、民間では非常に不公平な、不公正な競争じゃありませんかと言って、文書も来ておる。それらについては十分精査をして、不公平な競争にならないように、不公正な競争にならないように、政府機関でありますから最大努力をしていただきたいと思います。せっかく政府をまとめ上げておられる官房長官も笑いながらお聞きでありますから、十分その辺は配慮をしていただいて、不公正な競争にならないように、また民間の活力というものを削減しないように配慮していただくように強く要望して、この質問は今回はこれで一応終わって、次に入りたいと思います。  次に、せっかく官房長官が、大官がおいででありますから先に質問をさせてもらいましょう。あなたが所管をしておられますシベリア抑留問題をもう一遍だけお尋ねをしておきたいと思うのです。  従来、自民党の方と野党の皆さんとがいろいろ話し合って一応法案までつくられたことがありますね。その後、官房長官は毎回の委員会等の質問に対して、それは基金をつくって全体のものをやろうと考えておるんだ、個々のことは今考えていないというふうにおっしゃってまいりましたが、昨年の十二月二十九日には、いろいろな意見、要望等もこれあって、それらも配意をして自民党と政府側とが合意をされておるわけですね。これは生きておる者については十万円だと私たちは承知をしております。その支給については「財政の状況等を勘案しつつ、別に決定する。」こういうふうに文書はなっておりますね。  非常に人情厚い温情ある官房長官が、生きておる者にはやるけれども死んだ者にはやらぬのだというような合意にされたのは一体どういう意図なのか。あなたの生来の人柄から考えてみて、私はその推測に非常に苦慮しておるわけですが、いかなるお考えでそのようにされておるわけですか。
  144. 平野治生

    ○平野政府委員 昨年、政府と党の合意に基づきまして、いわゆる戦後処理問題についての合意が成ったことは先生の御指摘のとおりでございます。  その中で、特にシベリアにつきましては、先ほどもお話がございましたとおり、全体の中で特別基金の事業としてやるということでございましたけれども、関係生存者に対して個別に慰労の気持ちをあらわすため、書状と慰労の品と慰労金を差し上げるということにいたしたわけでございますが、その慰労金十万円につきましては、恩給受給者を除く生存者に限って差し上げるということになったわけでございます。  私どもこの合意の趣旨をどういうふうに考えているかということのお尋ねでざいますけれども、このシベリアに抑留された方々というのは、戦後あの酷寒の地において強制労働に従事したという非常に大変な御苦労をされたわけでございますので、その御苦労された御本人に国としての気持ちをあらわすのが適当ではないか、こういうふうに考えて生存者と考えた次第でございます。
  145. 野坂浩賢

    ○野坂委員 死んだ者はどうでもいい、こういうことですか。死んだ者はもっと苦労して苦しみもだえながら死んだのと違いますか。
  146. 平野治生

    ○平野政府委員 既に御承知かと思いますけれども、現地で死なれた方につきましては、いわば公務で亡くなったわけでございますから、それぞれそれなりの恩給とか援護法とかの適用を受けているわけでございます。  ナホトカから我が国の方へ舞鶴を中心として四十七万人余りの方がお帰りになったわけでございますが、私どもそういう方々の御苦労というものに対しまして、先ほど申しましたとおりに、シベリア抑留者の特別な事情というものを考えて、御本人、御自身に差し上げるのが適当ではないか、こういうふうに考えておるところでございます。
  147. 野坂浩賢

    ○野坂委員 その金額はどのぐらいになるでしょうか。
  148. 平野治生

    ○平野政府委員 これは推定でございますけれども、先ほど申しましたとおりに、ナホトカから我が国にお帰りになった方は四十七万人余りでございます。そのうち、私ども昨年の調査によりますと、現在生きていらっしゃる方がおおむね三十二万人程度ではないかというふうに思っております。その三十二万人の中で恩給受給者を除く方に十万円を差し上げるということになっておるわけでございますけれども、そのうち恩給受給者の方々はおおむね四割というふうに私ども思っておりますので、三十二万人の残りの約六割の方々、おおむね二十万人程度ということになるわけでございます。そういう方々に十万円ということになりますと二百億円程度、まだ数は確定しておりませんけれども、単純に申し上げますとその程度の額になるのではないかと思っております。
  149. 野坂浩賢

    ○野坂委員 金の問題については別途協議、決定するということが書いてありますけれども、これは六十三年度にとりあえず現金で支払う、こういうことですか。
  150. 平野治生

    ○平野政府委員 これは特別基金をつくりまして、その基金から贈呈するということになるわけでございます。これは官房長官からも強く言われておるのでございますけれども、このことが正式に決まった段階では、特別基金ができてその事業を始めるということになりますと、国民の方々、関係者の方々に十分周知をすることを考えなければいけないということになるわけでございます。  過去のいろいろな例を見ますと、私ども一生懸命PRをいたしますし関係団体にもお願いいたしますけれども、例えば十万円を差し上げる対象となる方、おおむね二十万人と思われる方々に対しても、なかなかその周知徹底が行き届かないということもあるのじゃないか、あるいは事務的レベルの手続もあるということになりますと、財政事情等もあるかと思いますけれども、初年度どの程度の人が申請があるのかという点になろうかと思うのでございます。気持ちは全員の方々に差し上げるということになるわけでございますけれども、具体的な事務の運びになりますと、そのうち何割かの方々から差し上げるということになるのではないかというふうに考えております。
  151. 野坂浩賢

    ○野坂委員 室長さんは引揚者の実情、生存者、死亡者よく精査をされておると思いますが、抑留者の皆さんから、なかなか容易じゃないから県でやらしたらどうかという話をしたときに、国でそういうものは集約しておるから大体つかめる、国でやって差し上げる、こういうお答えをいただいて、その点だけは非常にありがたいと思っております。  しかし、私どもは従来自民党の皆さんと話し合ってまいりましたが、現地の死亡者あるいはこちらにお帰りになってからの死亡者、そういう方を含めて当時四段階に分けて協議されたことがございますね。十万円というのはその皆さんにとっては余り大きな金額ではないじゃないかな、こういうふうに思っているわけです。その金の集め方なりいろいろなことがありましょうけれども、二百億というのは国にとってそう大きな金でもないし、そして当初四段階で五十万から百万というのが議論されましたですが、ああいう姿でやっていけば、死没者の皆さんも、そして最低年齢六十五歳とも言われるシベリア抑留者の現在の皆さん方が、国の政策なり国の恩情に非常に感激、感動するだろう、金品にかえがたい、こういうふうにさえ思うわけであります。  したがって、拙速ということよりも、早くしなければならぬことはわかりますが、十分政府の方で検討されて、シベリア抑留者に対して、いわゆる中曽根さんの言われる戦後政治の総決算の一つの大きな事業としてこれらについては御検討をいただく必要があろう、こういうふうに思います。最後ですから、官房長官に恩情ある御答弁をいただくようにお願いをして、答弁を求めます。
  152. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 午前中にもこの問題は御質疑がございまして、それにお答えいたしたわけですが、いろいろの経過を経て、昨年の暮れ、こういった処置で処理をしようということで政府・与党の間で決定をしたわけでございますから、その中身についてはいろいろとまだまだ御不満もあろうとは思います。思いますが、私どもとしては決まった線に従って、やはり誠意を持って、温かい気持ちで、できるだけ皆さん方に政府の意のあるところを御理解を賜ることができるような処置を講じたい、かように考えているわけでございます。
  153. 野坂浩賢

    ○野坂委員 御満足のいかれるような措置をさらに前向きに御検討いただきまして、国民がみんな喜ぶような方式をぜひお願いをしたいと思っております。  それでは、官房長官も多忙でありますから、引き続いてこの防衛三法に関連をしてお尋ねをしますが、内閣官房長官談話というのがことしの一月二十四日、閣議の決定について発表されておりますね。私、頭が悪いものですからお尋ねをするのですが、「防衛計画大綱」というのがありますね。そして今、中期防衛力整備計画というのが進められておりますね。あなたの志とは違ったかと思いますし、あるいは思いどおりだったかもしれませんが、一%枠をとうとう突破させられましたですね。  防衛庁長官は、よくそれまでの新聞には「程度」ということを言われたのを、言われたのか言われないのか知りませんが、新聞には出ましたですね。それがあってかどうかわかりませんが、今度十八兆四千億という総額明示方式というのが決められております。それで、当該年度、各年度でやりますと、「おおむね当該年度の国民総生産の一%程度となるものと予想されます。」こう言って後藤田官房長官は談話で述べられました。  「程度」というのは我々もわかったようでわかりません。よく聞かれるのです、我々地域に参りますと、程度とは何だと。程度は程度だというような話をしますけれども。官房長官の談話の中でも、三木精神は堅持したい、できるだけ抑えたい。しかし今は一%程度、一・〇〇四だ。このくらいの限度が程度なのか、あるいは一%枠内に抑える場合もあるだろう。では、政府が考えておる程度とは一%内外、こう言った方が一番妥当かなあ、こういうふうにも思うのですが、数字で示していただけば一番いいのですが、なかなかあなたは老獪ですからそう簡単に明らかに言われぬだろうと思いますが、その辺を国民にわかるように御説明をいただきたい、こう思います。
  154. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 防衛力整備についての五十一年の閣議決定は、もう御案内のとおりに、当面GNPの一%以内を目途とする、こういう決定があったわけでございますね。その当面がどれくらいであったのか、いろいろの経緯があるようでございますが、政府としてはあらゆる機会に国会等でお答えをしておりますように、一%を最大限努力して守っていこうということで昨年の暮れまで来たわけでございます。  ところで、昨年の暮れの予算編成段階で、財政当局防衛当局との意見が必ずしも合わないといったようなことで、重要な案件ですから、議院内閣制の慣行として政府の関係首脳と与党の三役等との間でいわゆる政治折衝ということに任されたわけでございます。その結果、ともかく何とか一%は守らなければなるまい。しかしながら、GNPの分母の関係の伸びもあるし、片方、政府としては閣議決定で中期防衛計画はできておるわけでございます。十八兆四千億、これは六十年度に決めております。これは実質でございますね。これも計算をすると一%を若干超すということになるわけでございますね。平均的に毎年やっていけば、機械的に計算するとそうなる。それをやはり達成しなければならぬ。しかし何とか努力しようということでやった結果はどうなったかというと、後方整備が大変立ちおくれてきてしまったということでございます。  そこで政治折衝の結果、やはり後方にもう少しきちんとしたつけるべき予算をつけないと、せっかくの防衛力整備という観点から見ると均衡のとれた整備ができないではないか、後方をひとつどの程度つければいいのか積み上げてみたらどうだということで、財政当局防衛当局との間で積み上げさせた結果が一・〇〇四という結果が出たわけでございます。  そうなれば、やはり五十一年の閣議決定を何とか変更しなければならぬ。といって、これを廃止をするということになると、この節度のある防衛力整備という五十一年閣議決定の基本精神まで否定するというような印象を与えるんじゃないか、それはまずいということで、厳密に言えばこれはもちろん廃止になるわけでございますが、言葉の使い方としては注意深くする必要があるだろう。ならば、五十一年の閣議決定にかえてこういった新しい閣議の決定をしようではないかということで、本年の一月に御案内のような閣議の決定をした。  さて、そのときに、今お尋ねの一%程度というのがいいではないかという考え方がございました。しかし、御質問にあるように、程度というのは何だ、こういうことにたちまちぶつかる。というようなことで、やはり閣議決定の中に程度という言葉を使うことはまずいであろうということで、閣議決定の中ではさような言葉は私は使わなかったはずでございますが、官房長官談話その他にある、程度というのは、三木内閣当時の閣議決定の基本精神、つまり防衛費は抑制的にこれからもやっていかなければならぬ、そこで、従来からの基本の線から大きく離れた、でこぼこで一%を破ってもいいのだといったような意味合いではない、こういうことをあらわそうではないかという意味合いから、ああいった一%程度というのを官房長官談話の中に入れた。しかし、閣議決定ではそれはたしか入れてないというのが私どもの基本的な考え方。  つまりは、大きく従来からの基本方針から外れるのではないのですよ。やはり五十一年の閣議決定の精神は尊重して、防衛費というものは抑制的に整備をしていこう、しかしながら、一%というものでなければならぬというのはおかしいではないかというようなことでああいうことになった、かように御理解をしていただきたい、こう思います。
  155. 野坂浩賢

    ○野坂委員 大体わかったような気がいたしますけれども、私たちは一%以内ということを言っておるものですから、やはりきちんとせぬと、極めて弾力的なのは困るんだなというのが我々の心情です。  また、わからぬこともたくさんありまして、あなたの談話の中では、いわゆる三木内閣の五十一年の閣議決定ですね、「「当面の防衛力整備について」は適用しない」と言われましたね。この「当面」というのがようわからぬのです。この当面というのはいましばらくという意味だと思いますけれども、当面というのは十年になったり二十年になったりしますので、官房長官がお考えになっておる当面というのは、例えば日数でいえば何日か、それで言いにくかったら月数でいえば何カ月か、この辺できちんとしてもらえませんかね。当面、当面で、一年も二年も当面だということになると、我々も解釈がちょっとしにくいものですから。
  156. 西廣整輝

    西廣政府委員 たしか官房長官談話の初めの方に、いついつの閣議決定の「「当面の防衛力整備について」は」と書いてあると思いますが、これは当時決定したとき、それから当面の間これを適用しないという意味ではございませんで、その閣議決定の名前が「当面の防衛力整備について」という表題でございますので、言いかえれば三木内閣の閣議決定は適用しないという意味でございます。
  157. 野坂浩賢

    ○野坂委員 また余計悪いですね。あなたは防衛局長ですから、そういう意味では官房長官の方が人がいいですね。国民的だと思います。当面ならいいのですけれども、あなたのは永久にというような感じがしまして、あなたの顔を見ると仏の顔でも鬼のように見えます。  どなたでも結構なんですが、例えば六十二年度の三兆七千億の防衛費はNATO方式で計算すると一・五四になると我々は聞いておるのですけれども、そのとおりでしょうか。
  158. 日吉章

    日吉政府委員 お答え申し上げます。  NATO定義の中身といいますものは、NATOの中で秘扱いとされておりまして、その詳細は必ずしも明らかでございません。したがいまして、正確に我が国防衛費をNATO定義に基づきまして試算することは困難でございますけれども、我々といたしましては、現在まで調査したところによりますと、恩給費につきましては職業軍人及び軍に雇用された文官に対し政府が直接支払う恩給が含まれているようでございますし、戦争被害の補償に対するものは含まれていない、こういうようなことになっているのではないかと思います。また、一部には沿岸警備隊等の準軍隊に係る経費が含まれているのではないかと言われておりますけれども我が国海上保安庁の経費につきましては、海上保安庁の任務等からいたしまして準軍隊とは言い得ませんので、これらを加算いたしまして我が国防衛関係費をNATO定義としまして比較することはいかがなものか、かように考えられます。  したがいまして、あくまでも推計でございますけれども、恩給費につきましては、我が国の恩給関係費の中で職業軍人とその他の区分がなされておりませんために、単に旧軍人恩給等恩給費中の普通恩給と普通扶助料を加算するということで比較いたしてみますと、昭和六十二年度についてこのような経費を試算してみますと約四兆二千六百億円程度となります。したがいまして、本来の防衛関係費に対しまして一・二倍程度になろうかと思います。一・五倍というお説がございますけれども、これらは、今私が申し上げましたようにNATO定義が必ずしも明確ではございませんが、その不明確な部分をすべて合算いたしました数字ではないか、かように考えられます。     〔委員長退席、船田委員長代理着席〕
  159. 野坂浩賢

    ○野坂委員 防衛庁としてはできるだけ少な目に報告したいと思うのですが、一般に言われているのは、防衛関係費、旧軍人恩給費、援護法による援護費、海上保安庁経費、それを国民総生産を分母にして全部足したものでやりますと一・五四一になりますね。これが一般的な計算方式ですけれども、今お話があったことは話があったとして聞いておきます、これ以上やることはありませんから。  それから、今度の防衛三法の中で五百十人の人員増加を要求しておられます。法案として出されておりますね。「防衛計画大綱」というのは陸自は十八万人ですね。書いてありますね。長官海上自衛官や航空自衛官というのは書いてないですね。陸上自衛隊を決めるぐらいですから、海自も空自も一応大綱の中に入れたら非常にわかりやすいのではないかと思うのですが、いかがなものでしょうか。
  160. 西廣整輝

    西廣政府委員 先生の御意見のように、海空自衛隊自衛官の数を大綱等で決めるという考え方もあろうかとも思いますけれども、一般的に、世界じゅうの軍事力等の間口といいますか、そういったものを表示する場合に、陸上部隊については人員の数あるいは師団の数をもってあらわすということで、その人員がどういう装備を持つかということは各国その中で工夫するわけでございますが、そういった形で、陸上部隊の兵力数等の規模をあらわすものとしては人員が中心になっております。  一方、海上自衛隊航空自衛隊、よその国でいえば海空軍でございますが、それらについては、「ミリタリー・バランス」にしろ、もろもろの資料では、装備、例えば艦艇であるとか航空機の数というものが兵力量をあらわす基準として表示され、人員はそれを運航したり運用するために必要なものということでその中に含まれるという考え方で、どちらかといいますと、海空は装備主体に兵力の間口をあらわすのが一般の通念になっておりますので、大綱におきましてもそういったとり方をしておるということでございます。御理解いただきたいと思います。
  161. 野坂浩賢

    ○野坂委員 あなたは専門家ですからいろいろ理屈をつけられますけれども、我々直哉に見るわけですね。装備をだんだん近代化する、強いものにしていく、専守防衛で本土防衛が完全になります、そういう想定でこの中期計画では整備をやるわけですね。「防衛計画大綱」というのは、大体こういうことで、数は書いてありますけれども中身はなかなかわかりません。しかし、大体この飛行機には何名と決まっていますね。それならばそれに合わせたものを考えておけばいいのじゃないかと思います、大綱の見直しはないわけですからね。あるのなら、そういう人数についてもぴしっとしたものの方がわかりやすいのではないかと思うのですが、いかがなものでしょうか。
  162. 西廣整輝

    西廣政府委員 先生のような御意見、十分あろうかと思いますが、陸上部隊について言えば、一般的には歩兵、我が方は普通科部隊と言っておりますが、そういったいわゆるマンパワーが中心になっておる部隊というものがあり、それらが兵力規模に非常に重要な要素を占めておるわけでございますけれども、海空の部隊装備を運用する人間ということになりますと、ある意味では技術の進歩に伴って省力化がされて、自動化されて人間が減る場合もございますし、逆にそういった人間が減るかわりに、整備その他については非常に精密化されてきて、そのための整備要員なり修理の要員といったものがふえるとか、もろもろの要素がございまして、必ずしも装備の規模とパラレルに人間が変動しないという問題があって、とらえ方が大変難しいということもあって、現状では海空については自衛官の定数について大綱別表で定めていないということでございます。
  163. 野坂浩賢

    ○野坂委員 官房長官はもうお帰りだろうと思いますが、この官房長官の談話の中にも、これからは一層の効率化、合理化に努め、極力経費を抑制するとともに予算を決定すると書いてありますね。合理化に努める、効率を上げる、だからやるのだ。  私は、今度の法案でこんな御論議をなさらなくても、今の自衛官の充足状況というのは、例えば現行の定数は海上自衛官が四万五千五百五十一人です。だけれども現実には四万三千六百八人しかいないのです。航空自衛官は四万七千六十五人ですけれども四万四千七百五十一人しかいないのです。それならば二百三十九人や二百六十七人を改めて定員というところに入れないでも、その分を募集して、現行の定数があるわけですからやったらいかがなものかなというふうに、外から見てそう思うのです。  こんなけんけんごうごうやらなくてもいいのじゃないか。それで充足率がもっと一〇〇%近くなったときに改めて提案されたらいいのじゃないか。それこそ定員だけは、枠だけはとっておく、充足率は八六%だろうけれどもそれでいいのじゃないかというようなことではなしに、効率的と物わかりがよく国民理解ということになれば、その方がいいのじゃないかと私は思うのですが、いかがでしょうか。
  164. 西廣整輝

    西廣政府委員 定員と充足の関係について若干御説明させていただきたいと思いますが、定員はまさに先生が言われましたとおり、ある装備、海空自衛隊であれば艦艇なり航空機というものを中心にした部隊を運用していくために、実際それが運用されていくときどれだけ要るかということの裏づけとして、枠組みとして要るものでございます。特に陸上自衛隊の場合であれば、例えば師団であれば普通科部隊幾ら、戦車部隊幾らということで、有事戦うためにはこれだけの数が要るという一つの枠組みを示すものとして定員というものが必要だと考えております。  一方充足率の方は、それらの枠組みいっぱいの人間を平時から持って訓練しているというのは我々にとっては非常に望ましいことでありますけれども、一方、経費の効率的使用ということを考えますと、必ずしも高度の技術等を要さないものという人間がおります。そういったものについてまで平時から一〇〇%充足をしていくということは、かなり経費負担を伴うわけであります。  そういうことで、各国とも編成に対してどの程度の人間を平時から充足しておくかということについてはいろいろな工夫が重ねられておるわけであります。ただ、我が国の場合には御承知のように徴兵制でございませんで完全志願制でございますので、他国に比べて充足が高いということはございますけれども、それにしても一部の部分については平時は訓練その他について最小限必要な範囲にとどめるということで、陸上自衛隊を中心にして充足率を計画的に下げて経費節減をしているということでございますので、それと人員の枠組みとしての定員というものは、ひとつ分けてお考えいただきたいと思うわけであります。  なお、陸海空を含めた定員管理を一つの枠の中でやったらどうだという先ほど来の御意見でございますが、我々としても陸海空を含めて毎年毎年端数のついた細かい定員増をお願いしておるということもございまして、何らかのいい方法はないかということで研究はいたしておりますが、現在のところはまだ成案を得ていないということでございますので、そのあたり御理解をいただきたいと思います。
  165. 野坂浩賢

    ○野坂委員 枠組みと充足率という関係で、建前と本音みたいなものですね。ここで、予備自衛官を千五百人でしたか、今度法案が出ておりますね。これは今の枠組みは決めるのだけれども、充足率はその程度、経費の負担も考え、しかも予備自衛官は三千円が四千円になるということですね。経費もたくさん要る。陸自の場合は十八万人という枠が決まっておりますからそれ以上はできない、だから四万幾らに今度ふくれるわけですね。予備自衛官というのは、普通我々も軍隊におったときには、予備役というものは軍隊を経験した者、一たん入隊した者、自衛官になった者、途中でやめる人もありましょうし、OBになる人もありますが、これらを経験した者だけが予備自衛官、こういうふうに認識しておりますが、そのとおりでしょうか。
  166. 西廣整輝

    西廣政府委員 現在の予備自衛官制度のもとにおきます予備自衛官というものは、自衛隊員の経験者の中から選抜をして予備自衛官になってもらっております。
  167. 野坂浩賢

    ○野坂委員 新聞等ではよく、一般から募集するという話がありますね。今の予備自衛官というのはだんだん年をとって、そこにお座りになっておる方々や我々みたいなのでは役に立ちませんからね。そうすると、若い元気のいいのをやはり一般から募集するということだって考えられるだろう。くたびれた者が出たって、四千円もらってさっさと帰るという格好では困るという点があるのじゃなかろうかなと私たちは思うのですが、その辺はいかがでしょうか。
  168. 西廣整輝

    西廣政府委員 予備自衛官が有事にどういう形に使われるかということについては、幾つかの使われ方があるわけですが、一つは、自衛隊編成というものはあくまで国土防衛戦を中心に考えておりますから、通常の各国の部隊編成に比べまして、外地に行くわけではございませんので、もろもろの後方支援については民間に依存をするという形になって、その種の支援部隊というものは非常にぎりぎりまで減らしてあります。しかしながら、それにしても有事、例えば今各地域に駐屯しております部隊が戦闘地域に出動していく、そちらへ移動していくといった場合に、残された地域について全く空っぽにしておくわけにいかないので、そこに警備部隊をつくるというときの要員にまず充てる、あるいは戦時、戦闘によっていろいろ損耗いたします、負傷したりその他いたします、そういったものを補充するために予備自衛官が使われる。  あるいは海空自衛隊で言えば、通常の際には余り必要がない港湾等の警備であるとか、あるいはレーダーサイトなり航空基地等の防空任務、基地防空でございますが、そういったものについては我々現役の自衛官としてはごく基幹になる人間だけを持っておる、そして有事は予備自衛官をそれに補充して基地防空に当たらせるという構想を持っております。  そういった形で従来考えておったわけでございますが、最初に申し上げた戦闘支援のため、あるいは装備の修理、整備等の点につきましては、より広く民間のお世話にならないと十分な戦闘ができないという問題がございます。そういったものについて、従来のように自衛隊の経験者である予備自衛官でなければいけないのか、あるいは一般のそういう修理等の専門技術を持った方でいいのかどうか、そういったことを含めて今勉強はいたしておりますが、結論は得ていないという状況にございます。
  169. 野坂浩賢

    ○野坂委員 将来ともこれは前線部隊に出ることはない、後方支援、修理とか装てんとか、そういうことで、前線部隊に出ることはないというふうに考えていいのでしょうか。
  170. 西廣整輝

    西廣政府委員 予備自衛官制度の研究につきましてはまだ緒についたばかりで、私どももまだ十分検討いたしておりませんが、現在の着意は私が先ほど申し上げたような点でございまして、将来どういう形になるかということにつきましては、いま少し研究が進んだ段階でお答えをさせていただきたいというように考えております。
  171. 野坂浩賢

    ○野坂委員 今までは、自衛官を招集しますね、現役を。その様子を見てから予備自衛官を招集するということになっていますね。その場合は、将来自衛隊というのは侵略があったときに立ち向かうわけですから、出てみてそれから様子を見てというようなことにならないで、招集は一遍にやるという可能性が強いのじゃないかな、こういうふうに思うのです。  それから編成も、予備役といえば大体年寄りということですから、指揮命令等を考えてみて現役と混成部隊をやるということが新聞にも指摘されておりますね。防衛庁は、予備役は予備役、予備自衛官予備自衛官、現役は現役というふうにやるのか、混成をしてやる可能性があるのか。そうすれば前線と後方というものがまた矛盾と問題点が出てくる、こういうふうに思うのですが、その辺を立て分けをして明確にしてもらいたい、そういうふうに思います。
  172. 西廣整輝

    西廣政府委員 幾つかの御質問があったと思いますが、現行の予備自衛官制度でございますと、防衛出動命令が下命された段階予備自衛官というのは身柄が自衛官の身分に変わるという形になっておると思います。  それから、予備自衛官と現役の自衛官とが混成であるかどうかということでございますが、混成という意味が私必ずしも十分理解できませんが、幾つかの例を申し上げますと、一つは、先ほどの予備自衛官の使い方の中で申し上げたように、現役の自衛隊員の損耗、そういったものが予備自衛官から補充されるという場合には、予備自衛官は当然その段階では自衛官に身分が変わっておるわけでございますけれども、それは現役の人間が中心になってつくられておった部隊に入っていくということになるわけでございます。  それから、先ほど来申し上げているように、平時は編成されていない部隊、しかしながら有事必要になる部隊、例えば警備部隊であるとか、あるいは先ほど申した航空レーダーサイト等の防空部隊というものでございますと、基幹要員は現役の自衛官で確保し、それに所要の相当数の予備自衛官を加えてそういう防空部隊編成するということになりますので、それらは平時においては現役の自衛隊員と予備自衛官というものが、有事いずれも自衛官という身分になって新たな部隊をつくるということになろうかと思います。  また、先ほど申し上げた部隊が移動した後の警備部隊というのも、予備自衛官だけで編成するかといえば、それはやはり平時において学校の教官をしているとかそういった場合、有事必ずしもそのままの職務を続けないで済むというか続けることができない現役の自衛官がいると思いますが、そういった者が指揮官になったりあるいは基幹的な要員になるものに数多くの予備自衛官というものを付加して、そしてそういう警備連隊みたいなものを編成するということになろうかと思います。  いずれにしましても、それらは予備自衛官としての職種の管理をこれからどうするかということと非常に関係があると思いますが、いわゆる戦闘職種に有事充てられるべき者と戦闘支援職種なりそういったものに充てられるべき者、そういった職域の管理、いわゆる特技と管理との問題になってこようかと思います。
  173. 野坂浩賢

    ○野坂委員 予備自衛官は六十五年までに、考え方としてはいろいろ研究しておるということでありましたが、どの程度まで増員をされるのですか。
  174. 西廣整輝

    西廣政府委員 政府決定を見ております中期の五カ年計画の目標といたしましては、陸上自衛隊、これは六十二年度末で四万五千名でございますけれども、これを五万三千名までふやしたいということを目標にいたしております。なお、海空につきましてはそれぞれ八百名、六百名が現在までの予算で成立したものでございますが、それに対してそれぞれ二千四百名、二千三百名まで逐次ふやしていきたいというのが五カ年計画計画になっております。
  175. 野坂浩賢

    ○野坂委員 若干前に戻りますが、長官、十八兆四千億という歯どめがありましたね。今度は総額明示で一・〇三八になりますね。防衛庁というのは予算は単年度方式でやられる。そうすると、六十一年から始めるにしても六十年のも前からおりできますね。また後の欠は、六十五年の分が六十六年以降に、後年度負担という格好にいく。そうしますと、十八兆四千億といってもぴしっとしたものがないですね。何かだらだらっとしていますね。例えば六十年度までの分で六十一年度以降に歳出をされる金額というのは、正面装備、後方支援等合わせて二兆三千百億円でしたね。六十五年度以降ということになると大体どの程度になるのですか。
  176. 西廣整輝

    西廣政府委員 今先生が言われました十八兆四千億の中の六十年以前に既に契約済みのもので流れ込んできている数字先生のおっしゃるとおりでございますが、この五カ年計画で六十六年度以降に支払いが延びる後年度負担については、正面装備については一応具体的な計画、個々のものが大きゅうございますので計画されておりまして、それが二兆五千五百億というふうに見積もっております。ただ、後方についても若干細々した修理用部品とかいろいろなものについてそういうものが出てこようと思いますけれども、これについては今の段階で、計画段階で積算できておりませんので、それは入っていないということで御理解願いたいと思います。
  177. 野坂浩賢

    ○野坂委員 そうすると、六十一年度以降に歳出される六十年度までの金額は二兆三千百億、正面装備だけということになると一兆七千億でございますね。約六千億が後方支援という格好になりますね。昭和六十五年度になって十八兆四千億かなと思っておると、頭金をちょっと払っておいてあと後年度、これで十八兆四千億円と言われると、少なくとも計画から見ても二兆五千五百億、後年度負担にいくのです。後方ははっきりしないけれども、六十年度から見れば一兆円ぐらいあるのじゃなかろうかと我々は推測できますね。そうすると合わせて三兆五千億、四兆円に近いものということになると十八兆の二割、二〇%にもなるわけですね。  そうすると十八兆四千億というもののどこがけじめなのか、我々は非常に不安ですし、ちょっと多かったと思えば後年度負担に回せばいい、極めて弾力的で、この十八兆四千億の質問をされても答弁がずるくできるように仕組まれておる。こういうことになりますね、長官。あなたは非常にまじめですけれども、そうなっておるのですよ。今、西廣さんは笑っておられますけれども、そういうことになるんじゃなかろうかと私は思いますが、この辺のけじめを検討してもらって、後年度負担はここまで、これを含めてとか、そういうことをしなければいよいよわかりにくくなってくるんじゃないか、また、国民が不信の目をもって見るんじゃないか、こういうふうに思うのですが、いかがでしょうか。
  178. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 六十六年度以降になるものは、正面装備で後年度負担が二兆五千億、それを含んで恐らく新たな五カ年計画ができると思いますよ。その五カ年計画をつくるときには、「防衛計画大綱」の水準にもし達しておるならばそれを維持する、そういう契約になると思うのです。したがいまして、「防衛計画大綱」というものがある限り多くならぬ、こういうように考えております。
  179. 野坂浩賢

    ○野坂委員 そうすると、「防衛計画大綱」というものの水準に達するのは、昭和六十五年度には達すると見ておられるわけですか。
  180. 西廣整輝

    西廣政府委員 中期計画をつくる段階におきまして、この五カ年計画で「防衛計画大綱」の水準達成を期するということで私ども考えておりましたが、もろもろの事情で必ずしも全部達成できないという面もありますが、概成をするというようにお考えをいただいていいと思います。  ただ、お断りをしておきたいのは、計画といいますか防衛力の水準というものは、達成した段階でも常に古いものはどんどんリタイアしていくとかいうことがございますので、それを維持するためにかなり経費が要るということもまた必要でございますので、御理解をいただきたいと思います。
  181. 野坂浩賢

    ○野坂委員 長官は、今の西廣防衛局長と同じように非常にいいことを言っておられますね。これからは量より質だ、だからだめなものはどんどん除籍し、廃棄処分にする、いいものを入れていく、そうするとなかなか大綱水準に達しないなどいう気が我々はするわけです。  まあ六十五年から見て、どの程度になれば今の「防衛計画大綱」というものの水準に達するのか。長官も中国においでになって張国防相とお会いになったときに、我々はできるだけ抑えたいと思ったけれども、やってみたらちょっと超えた、決して軍事大国の意思はありません、こういうことを言っておられますね。量から質へ、しかも合理化をされても人間はふえる、強大になってくる、だから諸外国は日本が軍事大国になるのではないかという目をもって見ておるというのは事実ですね。あるいは日本国民も、一%の枠突破というのはいけませんというのが大体五九・一%ありますね。そういうことを踏まえて、今の十八兆四千億という六十五年度までの計画から見て、「防衛計画大綱」の水準にいつごろ達すると見ておられるでしょうか。長官に聞きたいと思います。
  182. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 「防衛計画大綱」水準というやつですね。これは数字でぴしっと出せるものじゃないと思うのです。先ほどの程度というのと同じで、大綱水準は、軍事技術の変化その他いろいろございますから、およそこれは大綱の水準に達してきているな、そういうことが認定される、もっと言うと、国会でその程度だな、最終的にはそういう認定の中にある、それがきちんと幾ら幾らというものではないと思うのです。
  183. 野坂浩賢

    ○野坂委員 そうすると、簡単になかなか「防衛計画大綱」というものは達しないな、中身を変えていくから、こういうふうに思われてならぬわけですが、その辺が一点。  さらに、質への姿、それから最近、先ほども午前中に柴田さんがやっていましたけれども洋上防空問題で、ここにも書いてありますように、「エイジス艦予算化 初要求」ということで大臣の写真入りで出ております。これは今検討中だというお言葉がありましたけれども、「OTHレーダーとエイジス船との組み合わせを基本に、早期警戒管制機(AWACS)、F15と空中給油機をかみ合わせた洋上防空の兵器体系に焦点を当てた研究を続行中だ。」と書いてありますね。しかし、今回長官は、エイジス艦を買ったらいいじゃないかというふうにお話があったわけでありますが、これは長官の決断によってお決めになったということであるかどうか。  もう一つ。先ほどもありましたけれども、一部八隻で、八八万式といいますか、DDGミサイル艦が二隻とヘリコプター艦が一隻とあと五隻ありますね。八隻で一部、これが四個群ある。そうすると、西廣さんがおっしゃったように除籍をしながらかえていくという意味ですが、これはエイジス艦を繰り入れていくということになるのでしょうかということをお尋ねをしたいと思います。     〔船田委員長代理退席、委員長着席〕
  184. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 業務計画として大蔵省要求するという場合には私の責任でやることになります。  あとの問題につきましては政府委員から答弁をさせます。
  185. 西廣整輝

    西廣政府委員 洋上防空につきましては本委員会で再度にわたりいろいろお答えを申し上げておりますが、私ども研究は、我々の防空対象、国土なりあるいは洋上船舶なりといったものに対する空からの脅威が質的に変化しつつある、それに対応して何をなすべきかということについて研究をして、まだ研究の途上であります。  そのうち、相手方の動向の端緒をつかむ手段としてOTHレーダーが他の手段に比べて非常に経費効率のいいものであるということについてはある程度の検討を終わっておりますけれども、一方、OTHレーダー整備するということになりますと、設置場所その他についていろいろ技術的な難しい問題がある。そういった点でそれはさらに検討する必要があるのではないかと思っております。  それから、そういった空からの脅威の変化に伴って、我が方を攻撃してくる最終段階、つまり航空機等がミサイルを発射して、そのミサイルがもう既に我が方の艦艇等に向かってきておるという段階でどう防御するかという手段については、中期防衛力整備計画にありますように、艦艇搭載の対ミサイルミサイルと申しますか、そういったミサイル能力を向上することを研究措置するようになっております。  それについて今いろいろなミサイル、例えば現在私どもが持っておりますターターというミサイル、あるいはこれをさらに近代化、改良したミサイル、あるいはまた話題になっておりますエイジスシステム、そういったものについて、それぞれ経費効率、能力については単純に申せば高いものほど能力が高いことは間違いないわけでございますが、それらを装備したときに、費用対効果の面で同じ効果を上げるためにどれだけ安いものをたくさん持つのがいいのか高いものを持つのがいいのかといったような検討を進めておりまして、今最終段階にかかっております。近々、私どもとして事務的な判断を整理いたしまして防衛庁長官のところにお持ちして御決裁をいただくという段階に近づいておるということでございます。
  186. 野坂浩賢

    ○野坂委員 そうしますと、DDGを除籍をしてエイジス艦を入れる、これは常識で考えてみますと、四個群あるからばらばらの格好ではなしに、大体同じような群をつくるということが常識的に考えられますね。そうすると、今度除籍をし廃棄をしてかわりのものを入れるということになると、考え方としてはエイジス艦システム方式というものを取り入れていく、こういうお考えですか。
  187. 西廣整輝

    西廣政府委員 これはかなり先のことになりますので、その時点における空からの脅威というものがどうなるかということもありますが、例えば今一部八隻いる、そのうちにDDGが二隻というのが定数的になっておるわけでございますが、その際二隻ともエイジス艦にするか、一隻ターター艦で一隻をエイジス艦にするかという、いろいろな組み合わせのシミュレーションをやっておるわけであります。  確かにエイジス艦をたくさん持てばそれだけ防御率というのは高くなってくるわけですが、しかしながら、あるところまで来ますと効用限界というのが参りまして、それほど効果は上がってこない。ということになると、先ほど申した経費効率という面では、二隻ともエイジス艦にするというよりも、一隻ターター艦、一隻エイジス艦ぐらいが経費効率的には最も高いところであるというような答えもあるわけでございます。  それらは現時点における経費効率についてはほぼ結論が出かかっておりますけれども、現在既に持っておるDDGがリタイアをしていく、その後をどう埋めるかという段階になりますれば、その段階でもう一回検討する必要があるのではないかと思いますが、現状で直ちに八隻がすべてエイジスシステムを積んだものになるというのはやや言い過ぎではなかろうかというふうに思っております。
  188. 野坂浩賢

    ○野坂委員 そうすると、そのことはおいておいて、一千海里シーレーンというのがありますね。これは領海、領空、領土を守るということですか。  これはよく議論されていますね、いや線だとかいや帯だとかいや面だとか。この委員会にいらっしゃる大村襄治先生防衛庁長官のときには帯みたいな話をしておられましたね、大体。このごろはちょっと広がって、いや面と線とはっきりせぬ。今の大臣は非常に頭がよくて、帯でもあるようだし、いや帯とは言えぬ、面といえばそんなに全部は守れぬけれども、その商船隊というようなものを、艦船を保護していく、ということになれば面ですね、常識的に、学校で習った方式でいくと。そのことは、面であって、本土防衛、専守防衛に徹する我が国が、そういう洋上防空エイジス艦なりCAPなりOTHというようなものから考えてくると、ちょっと外に出かかったなという感じがしないでもないのですが、その辺をわかりやすく説明していただけますか。
  189. 西廣整輝

    西廣政府委員 まずシーレーン防衛という定義から申し上げたいと思いますが、シーレーン防衛という言葉は、ほかの言葉に言いかえれば、海上交通保護という言葉そのままであろう。要は、たびたび申し上げておりますが、日本国民が有事に生存を維持するための最低の物資を海外から運んでくる、その際の海上交通を何とかして守るということ、さらには、防衛戦闘を続けておりますわけですから、そのための継戦能力、そういったものを維持するための海上輸送というものを確保するというのがシーレーン防衛の意味そのものであろうと思います。  そこで一方、線であるとか面であるとかあるいは帯といったようなことが一時期若干誤解されたというか、混乱した時期があると思います。それは、シーレーンという言葉がいかにも海の上にあるレーン、廊下のようなもののようにとれますので、それが当時航路帯方式という、いわゆる海上交通保護の一つの運用態様で航路帯防衛という考え方があります。これは海上交通保護とかそういう目的ではございませんで、一つのオペレーションの態様であります。  例えば、千海里ぐらいの範域のところの我が国船舶を守るために、おのがじし自由に独航船の形でばらばらと自分なりに一番適当と思われる航路をとるという場合もあろうかと思いますが、通常はやはりできる限り安全な航路というものを選択して指示をして、そこを通ってもらうということになろうと思います。その場合、例えば潜水艦等ができるだけ寄りつかないようにP3C等である程度哨戒をして、この航路であれば比較的安全だよというようなことを示すことになると思います。それがまさに航路帯方式、いわゆる帯のようにP3Cなり艦艇を使ってある程度哨戒をして、比較的潜水艦がそこの海域には、そのレーンの中には存在していないということを確認しつつ、そこをできるだけ多くの船に通ってもらうという方式があろうと思います。その場合は、まさにオペレーションとしては非常に細い帯かもしれませんが、帯のような格好で哨戒なりをするというオペレーションのやり方だと思います。  そういったものをとらえて、シーレーン防衛というと何かそういう航路帯防衛と同義語ではないかというようにとらえた嫌いが一時あって、その点を整理させていただいて、たしか夏目防衛局長のときでございますが、シーレーン防衛というのは、要は海上交通保護ということでございまして、それを守る手段としては、海峡のコントロールということもございますし、港湾の防備ということもございますれば、広い海域の哨戒あるいは船団の護衛といった各種の手段を使って守るというすべての総合的な成果によってこれを守るものですというように申し上げていると思います。  そこで、今先生の御質問にそれだけでは十分お答えしているかどうかわかりませんので、さらにつけ加えますと、我々が防護したい、防衛したいというように考えておりますのは、シーレーン防衛、いわゆる海上交通保護について言えば、最終的には航行している鉛そのものであります。その船が船団のような形をとっている場合もありますし、先ほど申し上げたように、比較的安全と思う我々が指定した航路を独航船のような形でおのがじし航行している場合もあろうかと思いますが、いずれにしろ、船舶そのものが防護対象になっている。その船舶の航行態様に合わせて一番被害が少ないような形に我々としては対潜作戦なり対空作戦をやるということでありまして、要は船団的な形で運航されるのか独航船のような形で運航されるのかによって、我が方のそれに対する防護措置の運用のやり方そのものについて言えば、いろいろあり得るのじゃないか。  ただ、一般的に申しますれば、面的な哨戒、いわゆる相手がいるかいないかわからないところをランダムに面として哨戒をするというのは、相当な手間がかかるわけであります。そういう意味では、それは我が国の周辺の沿岸海域しかできないのではなかろうか。それから、遠くになればだんだん点のような形でその船団を守るといったような態様でないと、我が防衛力の持っている重なり質なりからいって困難である。ですから、遠くに行けば行くほど面が点になっていくというようなオペレーションしかできないというのが実態であろうかと思います。
  190. 野坂浩賢

    ○野坂委員 そこで、これはけさの新聞ですが、いわゆる本土のあたりは面だけれども、向こうは点になる、だからなかなか守れない、それはもう本土じゃない、だからシーレーン防衛からいわゆる本土防衛への転換をしたというふうにこれは書いてあるのですが、これはそうなんですか。
  191. 西廣整輝

    西廣政府委員 自衛隊の任務といたしましては、これは繰り返し申し上げて恐縮でございますが、国土そのもの、そしてその上に生存している国民を守るということが第一義であると同時に、もう一つ日本自身が海外依存度の高い国でありますので、それらの生活必需物資等を運んでくる船舶を守るというのが自衛隊防衛の二つの大きな対象であるわけであります。いわばそれを何とか全うするというのが防衛の二つの両輪みたいなものでございますので、片っ方をやめて片方というようなことはありませんので、その点は御理解いただきたいと思います。
  192. 野坂浩賢

    ○野坂委員 やはりシーレーンというのは、ほかの国の領空や領海を通過をする場合がありますね。何よりも専守防衛というのは本土が中心でなければならぬというのは当然だと思います。今ごろは、相手国があれば、商船を守るということよりも、その基地に向かって攻撃するというのが普通だろうと私たちは思うのです。したがって、専守防衛に徹するという意味で今のようなシーレーンというものについては非常に問題があるんじゃなかろうかなと私たちは素人ながらも考えるわけです。  そこで最後に、この間、八月六日、九日、十五日と平和の式典がありまして、中曽根総理も広島においでになって、非核三原則を堅持しながら平和国家の建設のために全力を挙げますというお話がありました。十五日の武道館でもそういうお話をされておりました。  この間、ニュースによりますと、米国の太平洋軍司令部の文書問題が出ておりますね。これは、米国の民間調査機関ノーチラスの発表によりますと、米軍の公式文書、一九八四年五月八日付です。「核兵器事故に対処する方策を詳細に明示している。」と書いてあります。その対象国は、韓国、フィリピン、オーストラリア、タイ、フィジー、日本等が対象国になっておる。この核兵器の事故処理や安全確保問題については、日本においては在日米軍司令官が担当するということになっております。  そういう文書が日本にもちゃんとありますか。内部文書で、日本はそういうことは知りません、こういうことですか。御存じでしょうか、対象国は日本なんですから。
  193. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 ただいま委員御指摘の報道に接しまして、米国政府に対して右文書の照会を行っておりますけれども、いまだその文書を入手しておりません。
  194. 野坂浩賢

    ○野坂委員 この爆発物の処理のやり方は、第一グループ分遣隊が扱う、こういうことになっております。核兵器事故も含まれる。この部隊というのは十六あると書いてあります。日本にもあります、それは佐世保と横須賀で、ちゃんとあります。こういうことを明確にしてありますね、新聞等によりますと。御存じかと思います。  そうすると、こういう文書があれば、その本をごらんになっても、日本政府と協議しなければならぬことになります、常識で。当然あるわけですから。そういう手続があらなければならぬのですけれども、そういうことをおやりになった事実は全然ないわけですか。
  195. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 報道されているように、核爆発の事故に関しまして、米政府、米軍から協議を申し入れてきたという事実は全くございません。したがいまして、協議を行ったという事実もございません。
  196. 野坂浩賢

    ○野坂委員 そうすると、事実が全然ないということなのに日本対象地域に入っておる、しかも公式な文書だということでありますが、アメリカに問い合わせをされて、また、ノーチラスが発表しておるわけですから、それを取り寄せて検討をされる必要があるのじゃないか。  また、今指摘をされておるように、横須賀とか佐世保にはそういう事実がありますね。米軍の一般の中には入らないで別にあるということが新聞にははっきりしてありますし、電話もあるということが裏づけされておるというのが事実ですから、そういう私が不可思議に思うような諸点があるわけですから、佐世保なり横須賀の現地へ赴いて確かめる必要があるのではないか、こういうふうに思いますが、いかがお考えでしょうか。
  197. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 ただいま御指摘の第一点につきましては、先ほどお答え申し上げましたとおり、共同通信の報道がございましたので、直ちに米側に照会しております。現在米政府でその文書の入手に努めているところでございまして、入手次第、我が方に当該文書が参るものと期待しております。  それから第二の点でございますが、EODGP1というグループ、日本語で爆発物処理第一グループでございますけれども、このEODと申しますのは、英語で申しますとエクスプローシブ・オードテンス・ディスポーザル、すなわち爆発物処理ということでございまして、これはもともと海軍が始めたようでございますけれども、本来地雷の処理それから爆弾の処理、この二つを統合いたしまして爆発物の処理という一つにくくりまして海軍が始めたものでございまして、それが逐次他の軍にもそういう名称を採用していくということになったようでございます。  これは爆発物の処理でございますので、当然のことでございますがあらゆる爆発物を含むわけでございまして、その中に理論的には核兵器あるいはその他の化学兵器等も含まれ得るわけでございますけれども、本来爆発物を対象としているものでございまして、すなわち我が国におきましては爆弾とか弾頭、機雷、魚雷、小火器の弾丸等でございます。この爆発物の処理というものは常に軍隊には必ず必要なグループでございまして、そういう意味で何ら特殊な作業をしているものではないというふうに我々も承知しております。  先ほど申しましたように、そのEODGP1、ちなみにGP1というのは、米側に照会いたしましたところ、これは奇数はアジア、偶数は欧州という仕分けのようでございますけれども、このEODというものが日本の横須賀、佐世保その他にあるということは聞いております。  重ねて申し上げますけれども、爆発物処理でございまして、特殊な行動を行っているということではございません。
  198. 野坂浩賢

    ○野坂委員 爆発物処理ということでありますけれども、これには核が含まれているということがこのノーチラスの文書では明らかになっておりますね。あなたは、日本には核はないんだから、その他の爆発物で核ではないと言っておりますけれども、カナダにしても、あるいはフィリピンにしてもオーストラリアにしてもそれぞれに、オーストラリア、ニュージーランド等は処理に対する責任分担ということまで明確にしてアメリカと話し合っておるというのが現状ですね。それで、なぜ核を含むということで日本をそういう対象国にしたのか、それならばやはり非常に問題ではないのかな、国民はみんな心配するのではないかと私は思うのです。  したがって、この核兵器問題について、太平洋地域の核兵器について日本と他の地域とを区別なく取り扱っていることは明白であり、その意味で、アメリカ日本の非核三原則を承知し遵守しているとの日本政府の説明に新たな打撃を起こしたものだと考えざるを得ないと結んであるわけです。私たちは非常に重要だと思う。あなたはない、ないとおっしゃいますけれども、今までにも山口の方にもあるのではないか、いろいろなことが言われてきました。しかも、米軍司令官がこれらの処理には日本政府と当たるということですが、これは現実に存在していないということでありますから、早急に文書を取り寄せていただいて、それは公表してもらうということは約束できるだろうと思いますが、いかがでしょうか。
  199. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 当該文書をできるだけ早く入手しようとアメリカ側と今話をしているところでございます。もちろんこれは公表文書でございますれば、政府として、入手いたしますればそれを公表することはやぶさかではございません。
  200. 野坂浩賢

    ○野坂委員 最後に、防衛庁長官にお尋ねをしますが、次期支援戦闘機、FSXといいますか、これについては日本の国内で生産をしたいという意見がありますね、三菱重工を中心に五社で。その金額は大体二千億円程度、結構でしょう。アメリカの方に行くと、いやそれは安い、こうおっしゃっておるということですね。長官としてはいろいろ検討、研究はされておるけれども最後長官の決断ではないのか。退陣前にアメリカへお行きになってそういう話が出ることは間違いないでしょうから。防衛庁長官なり防衛局長等は、性能のいいものと何遍も言われましたね、性能のいいもの、量より質だと。そのためには一体どこでやったのが一番いいのか。  長官の胸の中というのは、新聞等で推測をすると、今貿易摩擦があってココム問題がある。この間通産大臣がお行きになりまして見た、見たとおっしゃるけれども、最近はだれもが見たということを信用していないです、大臣の行動ですら。見て、死んでも物は言えぬというふうにおっしゃっておりますけれども。あれは五年前から音は聞こえぬようになったんだ、むしろフランスの製品だということが盛んに言われておりますね。  だから私たちは、そういう性能の問題なりいろいろなことを考えて、足して二で割るような考え方ではなしに、本当に防空といいますか日本本土防衛という意味ならば、それなりに結論が出て、日本の方が性能のいい、貿易摩擦とは関係なく、そういうものではないかなと思っておるのですが、長官は一体どういうふうにお考えになっておるのだろうか。両方から技術提携をしながらより性能のいいものがつくれるのではないか、それが西側同盟の一員のゆえんであるというような答弁ではなしに、性能的に見て、また日本の企業の要求なりアメリカの要望等を見てどのように決断をされようとしておるのか、もう大体わかっておるのではなかろうか、こういうふうに思いますので、最後に御答弁をしていただいてこれで終わりたい、そういうふうに思います。
  201. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 結論的に申し上げますと、経済摩擦、貿易摩擦、そういうようなことには絡めない、それから今言ったいわゆるココム違反事件、そういうものにも煩わされない、そういう厳しい状況下にあるということは認識しているけれども、最終的な判断は、前から言っているように、いわゆる防衛としてFSXがすぐれたものでなければならない、それからもう一つは、日米安保という関係がございますから米国防総省の理解を得ておかねばならない、もう一つは、両国の防衛産業のいわゆる影響といいますか、そういうものは排除しなければならぬ、そういう観点に立って高度の観点から決断をすべきときには決断をいたしたい、こう考えております。
  202. 野坂浩賢

    ○野坂委員 純粋に性能その他を検討して決断をするということに尽きますか。
  203. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 今申しました私のいわゆる三原則に照らして、高度の政治的判断をするという場合にはその決断をいたしたいと考えております。
  204. 野坂浩賢

    ○野坂委員 それでは、今の段階では大体どういう方向かということをお決めになっておる段階ですか、いまだに決まらない、比較検討されておるという状況ですか、それを最後にお答えいただきまして、終わりたいと思います。
  205. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 私は技術の専門ではございませんで、今のところすべての情報が私のところへ来ておりませんので、まだ決断はしておりません。
  206. 野坂浩賢

    ○野坂委員 それでは終わります。
  207. 石川要三

    石川委員長 田口健二君。
  208. 田口健二

    ○田口委員 最初に、外務省の関係についてお伺いをしたいのですが、外務省見えていますか。北米局長は帰ったのですか。私は、昨日連絡をいたしまして、今、野坂委員の方から御質問がありました米軍の核兵器事故対策についてぜひ担当者に出席をしていただきたい、このように連絡をしておったのですが、今、野坂委員の質問が終わったら北米局長お帰りになったようですね。これはどういうことですか。
  209. 岡本行夫

    ○岡本説明員 昨日来私ども国会班を通じて調整しておりましたけれども、北米局長よんどころない事情がございまして退席いたしました。かわりに、私、主管課長の安保課長の岡本と申します。
  210. 田口健二

    ○田口委員 先ほど野坂委員の方から米軍の核兵器事故対策について幾つか御質問があったわけであります。なぜ今私は北米局長のことを申し上げたかといいますと、昨年も私は、長崎県の佐世保港にアメリカ戦艦ニュージャージーが寄港するに当たって、この戦艦にはいわゆる核巡航ミサイル・トマホークが積載をされておる、これは日本に対する核の持ち込みになるのではないかという点についてお尋ねをいたしました。その中で、北米局長の方から、日本には非核三原則がある、核の持ち込みは事前協議の対象になっておるから、事前協議がない以上核は持ち込まれていないと思うというように従来からの答弁を繰り返しておるわけであります。アメリカの核戦略というものが、核を持っておるか持っておらないか、それを明らかにしないことにあるというふうに私どもは思っていますから、事前協議などがあるはずはないというふうに思っております。  とりわけ、ニュージャージーに積載されておる巡航ミサイル・トマホークは核弾頭つきであるというのは世界の常識である、こう言ったのでありますが、北米局長の御答弁では、トマホークには核弾頭と通常弾頭の二種類があるので、必ずしも核弾頭とは限定されない、こういう言い方をしているのですね。しかし、今日まで、アメリカのライシャワー発言なり、アメリカから入ってくるさまざまな情報を見てみても、日本には核が持ち込まれておる、いわゆる通過を含めて、そういうことの中で私どもは質問をしたのでありますが、今言ったような答弁なのですね。  そして、私は今冒頭申し上げましたように、この問題も事前に連絡をして、お尋ねをしたい、こう言っておるのに、野坂委員に対する答弁が終わったらさっさと帰ってしまう、外務省の態度はけしからぬと思うのですよ。しかし、本人がおりませんから、あなたに言っても仕方がありませんけれども。  そこで、今、北米局長答弁の中で、爆発物処理隊というのは一般通常的な、どこの軍隊でも持っておるようなものだ、こう言っておるのですよ。しかし、この新聞報道によれば、もちろん通常の爆弾なり、あるいは化学兵器も含めてでありますが、そういうもののほかに、「核兵器の移動、移送支援任務」を持っておるということを明確に言っておるのですね。先ほど来の局長答弁は、いかにも一般の爆発物処理隊であるということを盛んに強調しておられますけれども、この処理隊の任務というのは特別なのですよ。そのことを御存じなのでしょうか。
  211. 岡本行夫

    ○岡本説明員 先ほど申し上げましたように、局長が退席せざるを得なくなったこと、私の方からおわびいたします。  局長答弁いたしましたように、この爆発物処理隊というのは、およそありとあらゆる種類の爆発物を処理することになっておりまして……(「こんな調子なら協力できませんよ。せっかく質問者が局長を呼んでいるじゃないですか」と呼ぶ者あり)
  212. 石川要三

    石川委員長 直ちに局長に連絡をして、どういう用かわかりませんけれども、可能な限りこちらに来るようにお願いしたいと思います。
  213. 田口健二

    ○田口委員 委員長のお言葉でありますから、それでは今の問題はちょっと保留をさせていただいて、次の質問に移らせていただきます。外務省の方はまだほかにもあるのですが、ちょっと待っていただきまして、防衛庁の関係に入らしていただきたいと思います。  新聞報道によりますと、七月十九日に、海上自衛隊佐世保地方総監部が主体となりまして、従来、三十四年から行われておった通称展示訓練というものを、今回かつてない大規模な計画でもって実施をする、こういうことが実は報道されておるわけであります。最終的には、たまたま当日、台風のためにこの訓練計画は中止をされたというふうに聞いておるのでありますが、この計画内容についてまずお尋ねをしたいと思います。どういう艦艇が何隻、あるいはこれに参加をする航空機はどういう機種のものがどういう基地から出てきて参加をする、あるいはどういう訓練の内容である、その辺についてまずお伺いをいたしたいと思います。
  214. 依田智治

    ○依田政府委員 お答えいたします。  先生のお尋ねは洋上展示訓練のことではないかと思いますが、七月十九日に海上自衛隊の佐世保地方隊で計画しておりました。結論としましては、当日、秒速九・五メートルというような海上の風がございまして中止したわけでございます。先生御指摘のように、これはずっと前からやっておりまして、最近では昨年もやっておるというものでございまして、その規模は、かつてない大規模ということでございますが、私ども報告を受けているところでは、昨年は八月十七日に実施しまして、艦艇十五隻、航空機十九機、約四千六百人の見学者が来た。ことしの計画は、七月十九日に計画したのですが、艦艇十七隻、航空機十九機、大体五千名程度を予定したということでございまして、それほど大きな規模のものではないというように考えております。  これは、小学生等夏休みを利用しまして各地方隊でやっておることでございますが、希望者を佐世保、長崎、福江等から乗せて、海上自衛隊は平素どういうことをやっておるかというのをよく目で知っていただくということで、体験航海というのがございます。それから展示訓練としまして、編隊飛行を洋上で通過するのを見ていただくとか、展示飛行、展示航行、それから訓練自体を展示するというようなことを中身としておるわけでございます。  参加の部隊は、佐世保地方隊、自衛艦隊、小月の教育航空集団、それから自衛隊西部航空方面隊というようなところから参加をいただいておりまして、西部航空方面隊からはF1二機、F4が二機、それから小月からはKM2という練習機が五機、それから自衛艦隊の第二護衛隊群からは「たちかぜ」、それから第四航空群のP3C一機、第五航空群からP2J三機、第一潜水隊群からSS二艦、こういうのが入っております。  いずれにしても、各航空隊で夏休みを利用してできるだけ自衛隊に親しんでいただき、自衛隊に対する国民理解を得たいということで実施しておるものでございまして、ことし佐世保で際立って途方もない計画をしたというわけのものではございませんので、御了解をいただきたいと思うわけでございます。
  215. 田口健二

    ○田口委員 今言われた中で、一般民間人の招待者といいますか、これの対象、私どもは六千人と聞いているのですが、もう一度その辺をお尋ねいたしたいと思います。
  216. 依田智治

    ○依田政府委員 これは地元の新聞とか中央紙等を通じまして、いろいろこういう計画をしておるということを実は取り上げていただいておりまして、その中身によりますと、特にどういう人というようなことで限定しておるわけでありません。何日、どこから出港する、そして応募者は、こういう電話で地方連絡部に来てください、また、平素からいろいろ御支援いただいているような方には、それぞれ地方隊等の責任者からはがき等でやっておるというような状況でございまして、今回も一応五千名ちょっとを予定していたところ、中止になりましたが、六千名を上回る希望者があったというように承知してございます。
  217. 田口健二

    ○田口委員 今の御答弁では、従来からやっておる訓練とそう変わらないのだというふうに言われるわけですね。私がなぜこのことをあえて取り上げて申し上げておるかと言えば、昨年も本委員会で、例の雫石事件にかかわる福岡での激励会、これに対する特に航空自衛隊の幹部の参加の問題について実は私は質問をいたしました。これは栗原長官が適切に対応されたというふうに私は思っておるのでありますが、そのときに一番私が申し上げたかったのは、自衛隊が、あるいは防衛庁と言ってもいいかもわかりませんが、考えておる常識と我々一般国民が考えておる常識との間に差があり過ぎてはいけない、それはもう大変危険なことにつながっていくのだ、そういう認識のもとに私は申し上げたわけであります。栗原長官自衛隊国民理解されるものでなければならないということをいつもおっしゃっておられるわけでありますから、まさにそのとおりだと思うのですね。  今回の問題は、こういう一つの背景があるのであります。長崎というのは、御存じのように広島とともに唯一の被爆都市であります。最近、この長崎の港に、昨年の十一月七日、アメリカの軍艦としては実に十九年ぶりに米海軍の海難救助艦ビューフォートというのですか、これが入ってまいりました。さらに今年になりまして、二月にアメリカ海軍の揚陸貨物艦でありますがセントルイス、佐世保が母港だと思いますが、これが入っている。そして五月二十五日ですか、海上自衛隊護衛艦が二隻ですが入ってきている。さらに六月には海上自衛隊潜水艦も入っているということで、この一、二年、長崎の港に海上自衛隊艦艇なり、アメリカ艦艇が入ってきている。  このことに対して市民の間からやはりいろいろな意見が出てきているわけです。とりわけ被爆者の方々、あるいは被爆者の団体は、これは入港ならしてはないか、このような現象というのは、佐世保には米軍並びに自衛隊の基地がありますけれども、長崎はそういう特殊な条件の中でほとんどそういう状況は今まで見られなかった、にもかかわらず、最近になってこのような状況が出てくるということで、被爆者や被爆者の団体が市長やあるいは知事に対して抗議をするということもずっと起きてきているわけですね。  そういう背景の中で、先ほどお尋ねをしたような、いわゆる海上自衛隊の展示訓練というのが七月十九日に予定をされた。七月十九日というのは、御承知のように八月九日は原爆が長崎に投下をされた原爆記念日でありますから、その直前なのであります。こういうことに対して、市民や被爆者の中から非常に強い反発が出てきておるわけですね。  ですから、私が申し上げたいのは、自衛隊が訓練なりいろいろなことを計画されるときは、そういった地域の住民の感情なり状況なりを十分配慮してやるべきではないか、意図がどこにあったのかわかりませんけれども、私はそういうふうに思うのです。長官、特にその辺の御配慮はどうでしょうか。計画があったからどんどんやればいいというものではないと私は思うのです。長官が言われておるように、国民理解をされる自衛隊ということであれば、やはりその辺の国民の感情なり地域住民の状況なりを十分判断してやられる。そうでないと、逆の効果がかえって出てくるのではないか、私はこういう気がしてならないわけでありますが、御所見があれば承りたいと思います。
  218. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 地域住民の気持ちというのは十分考えなければならぬと思います。ただ問題は、地域住民というのは一体何だ、これもよく考えなければいかぬ。いろいろの方々がある。特にこれについて非常にナーバスになっている方々があるならば、それらの方々について尽くすべきことがあれば尽くさなければならない、こう考えております。  いずれにいたしましても、原則論として地域の方々とうまくやっていく、そういう心がけは常に持たなければならぬ、こう考えております。
  219. 田口健二

    ○田口委員 次の問題に移ります。北米局長が来られるようでありますので途中でまた変わるかもわかりませんが、続いて外務省の方にお尋ねをしたいと思うのです。  実は私、先月社会党代表団の一員として朝鮮民主主義人民共和国を訪問してまいりました。ちょうど九年ぶり二回目の訪問になったわけでありますが、今回訪問をいたしまして一番強く感じましたことは、いわゆる平和統一の願いといいますか、このことをひしひしと感じさせられたわけです。同じ歴史と文化を持つ同一民族である朝鮮民族が、人為的な軍事境界線というものによって二つの国に分断されている。これはだれが考えてみてもまさに民族の悲劇であり、統一を希求する気持ちというのは当然のことだと思うのですね。これは共和国側の方々のみの願いであるかと言えば、決してそうでもないと思います。八月十五日、私もテレビで見ておりましたら、韓国の全斗換大統領も演説の中でこの平和統一の問題について言及をされておりました。  この朝鮮半島の平和統一という問題は、日本にとって決して無関係ではあり得ない。かつて三十六年間、植民地として支配してきたという一つ責任の問題もあります。また、朝鮮半島と日本というのは一衣帯水の間柄でありますから、ここの平和というのは、日本はもちろんでありますが、アジアにとっても、世界の平和にとっても極めて重要な役割、意義を持っておると思うのです。ですから、私どもは何としても朝鮮の平和統一というものを実現しなければならぬというふうに考えているわけです。  そういう意味で、日本政府としては、残念ながら朝鮮民主主義人民共和国とは国交が樹立をされておらない、南の韓国だけという今日の現状でありますが、この平和統一の問題について一体どう考え、どう対応しようとしておられるのか、このことからまずお伺いをいたしたいと思います。
  220. 藤田公郎

    ○藤田(公)政府委員 朝鮮半島の平和がアジア、それから世界の平和にとって非常に緊要な重要性を持つということ、それから隣国の我が国として重大な関心を持つべきであると申します点は、ただいま委員がおっしゃられたとおりだと存じます。  朝鮮半島の平和統一の問題について、政府としての基本的な考え方、対応ぶりいかんという御質問でございますけれども、これまで累次にわたりまして総理あるいは外務大臣から申し述べておるとおり、朝鮮半島の問題は、第一義的には南北両当事者の間の直接の対話によって平和的に解決されなければならぬという態度を表明しておりまして、このような観点から、できる限り早期に南北両当事者間の実質的な対話が再開され、双方の建設的努力により対話が積み重ねられていくことを期待するという態度でございます。このような基本的な態度に立ちまして、我が国といたしましても、先ほど委員が指摘なさいましたように、最も近接をしております国としまして、今後ともこの両者の対話促進のための環境づくりのために、関係国とも協力をしまして、できることがあれば貢献をしてまいるという方針で対処をいたしております。  御承知のとおり、一昨年はかなり、四分野にわたります南北の直接の対話が進展を見ました。昨年はこの対話が、オリンピック問題を除きますと、スポーツ問題を除きますと中断をされたままになりまして、昨年の末からまた対話を再開しようという動きが南北双方から出てまいりまして、世界各国、我が国も含めまして非常に注目をしていたわけでございますが、いろいろな提案が双方から行われましたが、言うなれば必ずしもこれがかみ合わないで、四月には若干相互に非難をし合うような形で、対話を開始しようという動きがとまりました。また七月の末から、御承知のとおり軍縮の問題、それから韓国側からは外相会談を開催しようということで相互に提案が行われておりまして、我が国としましても、このような双方の動きが早くかみ合った形で結実をしまして、対話が再開できればいいなと思っている次第でございます。  先般、倉成外務大臣が日韓外相会談のために訪韓をしました際に、五月でございますが、我が国としましても基本的に対話の促進に側面的に協力をしたいということで三原則というようなものを提唱されまして、その中で南北の信頼感の醸成、そのための対話の促進、それからオリンピックの成功のために努力したいということと、周辺の重要諸国、これは日本とか中国それから米ソという国でございますけれども、こういう国が韓国さらには北朝鮮との関係をバランスをとりながら進展をさせていくことがいいのじゃないかということを提唱されたという経緯がございます。
  221. 田口健二

    ○田口委員 アジア局長、申しわけありませんが、ちょっと中断をさせていただきます。北米局長がお見えのようですから、北米局長にお尋ねをしたいと思うのであります。  退席されたことはもうあえて申し上げませんが、私はあなたにぜひお聞きをしたいと思っておりましたのは、これは繰り返しになって皆さん方に大変御迷惑をかけると思いますけれども、昨年アメリカ戦艦ニュージャージーが佐世保に寄港するに当たって、私は本委員会で御質問をいたしました。北米局長からも御答弁をいただいたわけです。その際にも申し上げましたように、戦艦ニュージャージーには核巡航ミサイル・トマホークが積載されていることはアメリカがもう既に公表されておる事実でありますし、トマホークは常識的に言って核弾頭が装備をされておる、これは核の持ち込みになるのではないかということで確認のための質問をさせていただいたのですが、あなたは、日本には非核三原則がある、核の持ち込みについては事前協議の対象になっているし、事前協議がない以上は核は積んでいないんだ、こういう従来からの答弁を繰り返されたわけですね。また、トマホークは核弾頭と通常弾頭の二種類あるから、必ずしも核弾頭と決めつけるわけにもいかないんだ、このような趣旨の御答弁をなさったわけであります。  そこで、先ほど野坂委員の方から質問がありましたように、私も、米軍の核兵器事故対策で日本も協議対象になっておる、そしてその爆発物処理隊が横須賀と佐世保に現存しておるというこの報道内容を見て、やはりそうだったのか、今までアメリカの方から入ってきておるいろいろな発言、情報等からも、恐らく日本国民の大方は、核が持ち込まれておる、一時通過であっても、大体そのように常識的に考えておる。佐世保の住民も、ニュージャージーが入ってくれば、あるいはそのほかエンタープライズやさまざまな核搭載可能な艦艇が入ってくるたびに、そのことは思っているのですね。ですから私は、この記事を見て、やはりそうだったのか、間違いない、こういうふうに思って実はこの質問をすることにしたわけであります。  先ほど野坂委員の質問に対してある程度お答えになったので、それ以上重ねてお聞きすることもないと思うのですが、ただ一点、先ほども安全保障課長にちょっとお聞きしたのですが、先ほどのあなたの御答弁を聞いておると、爆発物処理隊が横須賀と佐世保に駐在をしておることはお認めになりましたね。それは間違いありませんか。
  222. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 田口委員の御質問に対しまして、公務により中座いたしまして申しわけございません。  ただいまの御質問でございますけれども、爆発物処理第一グループ、これが横須賀、佐世保にあるということはそのように承知しております。ただ、先ほどもお答え申し上げたところでございますけれども、この爆発物処理グループと申しますのはそもそも海軍が始めましたもので、最初は地雷の爆発それから爆弾、ボムでございますが、これの爆発、この処理の二つをあわせましてEODという名前で統一したということでございまして、それがほかの軍のほかの部門にだんだん広がっていったということでございます。これは通常の軍の属性の一つでございまして、特別な任務を帯びているということではございません。ただ、爆発物の中には理論的に核であるとかあるいは化学兵器も含まれております。  日本の場合にもこのような部隊があるわけでございまして、日本の場合には核は存在しないわけでございますから、通常の爆弾であるとかあるいは小火器の弾丸であるとか、そういう爆発物があるわけでございますので、当然それらの処理に当たるというふうに了解しております。
  223. 田口健二

    ○田口委員 あなたの今のお答えは、先ほどと同じように一般的な爆発を処理する部隊だ、こういうふうに言っておられますね。それはあなた自身が、日本に核はないから、そういう立場で言われておるのだろうと思うのです。ただ、新聞報道によれば、「この分遣隊は基地内、海上の「化学、核または重大被害をもたらす爆発物の取り扱い、保管を担当」するほか「核兵器の移動、移送支援任務」も帯びており、」と書いてあるのですよ。だから、言われておるような普通の爆発物処理部隊とは性格が違うと私は思うのです。そういう部隊が横須賀と佐世保に駐在しておる、このことについてはどうお考えになりますか。
  224. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 まず第一に、米政府の公文書なるものは、直ちに米政府に照会いたして入手すべく努めておるところでございますが、いまだ入手しておりませんので、その中身が一体どういうものであるかということを検討する必要がございます。  それから第二に、今の御指摘の点でございますけれども、これは文書ではなくて、日本にあることでございますので、アメリカ側に照会いたしましたところの回答でございますけれども、その回答によりますと、先ほど私が申し述べましたように、爆発物処理一般ということでございまして、もちろん理論的には爆発物の中に核兵器が入っているということは累次お答えを申しておるとおりでございますけれども日本にありますEODGP1は、核兵器でない通常のものについての担当をしておるというふうに了解しております。
  225. 田口健二

    ○田口委員 重ねてお尋ねをするのですけれども、今EODGP1ですか、新聞の報道によりますとGRU1となっておりますが、このことについてあなたは、日本に現在おるのだからということで、かなり自信を持って内容説明されたのですけれども、そういう状況までわかっておって、この部隊の任務の中に今申し上げました核兵器の移動とか移送支援の任務というのを持っておるのか持っておらないかということは確認ができていないのですか。
  226. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 ですから、この部隊は、私が累次申し述べておりますように、一般的には爆発物すべてについての任務を持っておるということでございます。ただ、日本におきましては核兵器は存在しないわけでございますから、核兵器についてのファンクションは行っていないということでございます。  なお、GPと申しますのはグループでございますが、グループ1というのは、米側の説明によりますと、奇数がアジア、偶数がヨーロッパということのようでございます。
  227. 田口健二

    ○田口委員 先ほどの野坂委員の御質問に対して、文書を入手すれば公表をするというふうに言われたのですが、どういう形で公表されますか。
  228. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 先ほど野坂委員の質問に対しまして私がお答えいたしましたのは、アメリカ政府が公表している文書であれば、公表することは問題ないと思いますということでございます。日本政府が公表すべき文書ということではございませんので、一般的に公表されている文書を資料として提出するという形かと思います。どういう形かということについては、現段階で特に考えておりません。
  229. 田口健二

    ○田口委員 今照会中である、現在入手をしておらないということでありますから。  その後の経過なり結果についてはどうされますか。例えば本委員会なり国会で、その後の結果について報告をしていただけますか。
  230. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 御質問があれば、その都度その段階で我々の入手し得た最善の情報を御披露いたしたいと思います。
  231. 田口健二

    ○田口委員 以上で、北米局長に対する質問を終わらせていただきます。  大変お待たせしました。アジア局長の方にお尋ねをいたしたいと思います。  先ほどのお答えの中にも出てまいりましたけれども、ちょうど私どもが共和国を訪問しておるときに、これは七月二十三日のことでありましたが、朝鮮半島の軍事的緊張を解消するために、北と南の武力を大幅に縮小することについてという共和国声明が発表されました。たまたまこの直後に私どもも金日成主席並びに朝鮮労働党の国際担当の責任者と会見をする機会がありまして、具体的にこのことについての説明を受けたわけであります。  これは、共和国側が従来、平和的統一のための具体的な手段として三者会談というものを提唱してきているわけですが、これは具体的な措置一つとして今回の声明にあらわれてきておると私は理解をしておるわけでありますが、外務省としては、この三者会談という共和国の提唱について、先ほどちょっと触れられましたが、どのように理解をしておられるのか、お尋ねしたいと思います。
  232. 藤田公郎

    ○藤田(公)政府委員 この三者会談の問題も、これまで累次にわたりまして御説明を申し上げているところでございますけれども、先ほど申し上げましたように、第一義的には両当事者間の実質的な対話、これによって双方の建設的な努力というものが積み重ねられていくべきだと考えておりますけれども、具体的にどういうような形の、三者にするのか四者にするのかということについては、基本的には両当事者たる南北双方がお考えになるべきことだと考えておりますので、ただいま委員が言及なさいました最新の北の提案につきましても、これが両当事者が納得がいく形で行われるということであるならば有益なのではないかと考えております。  すなわち、我が国としましては、三者であるべきだ、四者の方がいいというふうに特定の形を最善とか決めつけるという態度はとっておりません。
  233. 田口健二

    ○田口委員 そういうお考えなのでしょうけれども、あえて私はお尋ねしたいと思うのは、朝鮮に参りまして非常に感じることは、例えば軍事境界線がある板門店に参りましても、そこに立っておる軍人というのは、国連軍という名前の中でアメリカの兵士が立っているわけですね。いわゆる南半分、韓国にはアメリカの一個師団ぐらいが配備されておるというぐあいに聞いておりますし、いろいろな問題があるわけです。  ですから、本当に当事者同士の話し合い、もちろんこれは大事なことだろうと思うのですが、しかしこの朝鮮問題を解決するためには、アメリカの存在を抜きにしては私は考えられないと思うのですよ。その辺の御認識は一体外務省としてはどういうふうにお考えになっておられるのか、まずお伺いしたいと思います。
  234. 藤田公郎

    ○藤田(公)政府委員 ただいまの点も含めましてまず南北双方でもって話し合いをされて、どういうような形式の国際的な会談、南北当事者以外の会談が必要なのか、その場合にはどういう国を入れたらいいのかというようなことも含めて、とにかく南北で対話を深め、雰囲気の好転を図っていただくというのが一番いいのではないかと私どもも思っておりますし、最近の、委員よく御承知のただいま御言及なさいましたいわゆる軍縮提案に対しまして、韓国側は前提条件なしに南北の外相会談を、ニューヨークないしはその他の双方が合意する地で開こうという反対提案をしているのは御承知のとおりでございます。  アメリカの存在と申しますか、参加が必要ではないかというお話につきましては、例えば韓国の提案につきましても、両当事者の対話を行って、ある段階に達したときに関係国を招いた国際会議と申しますか、国際的な場での話し合いをそれと並行して進めるのも有益ではないかというような提案も行われておりますし、そういう点も含めてとにかく両当事者でまず対話を深めていただくことが大事なのではないかというのが私どもの立場でございます。
  235. 田口健二

    ○田口委員 そこで、外務省の朝鮮民主主義人民共和国に対する政策の問題で一点お伺いをしたいと思うのです。  先ほど申し上げましたように、日本と朝鮮半島はまさに一衣帯水の間柄でありますけれども、言われておるのは、北側については最も近くて遠い国という言葉が普通使われるほど国と国との関係は非常に厳しい状況にあると思うのです。これは私は、特に人的交流、このことの大事さというのも常々考えておりましたけれども、後ほどまた質問の中で出てくるのでありますが、共和国の帰りに中国に寄りまして、そこで李先念国家主席とお会いしたときに、主席がこういう言葉を言われたのです。日本と中国の友好関係というのは、お互いの政府が承認し合って平和条約を結んだとかそれだけではないんだ、そのずっと前からお互いの人たちが友好のために、親善のために交流を行ってきた、具体的に片山哲先生だとか石橋湛山先生だとか松村謙三先生とか名前を挙げられて、こういうたくさんの人たちが交流をし合いながら友好のためにお互いに努力をしてきた、また、各団体や各政党もそうなんだ、だからそういうものの上に立って今日の日中関係というのは存在しておるんだ、ただ単に政府と政府が国交を回復した、条約を結んだということではないんだということを言っておられましたが、私もなるほどそうだと思うのですね。そういう意味で、いわゆる共和国と日本との間の人的交流をもっと拡大をしていくことが将来に向かって非常に大事なことではないかと私は思うのです。  ところが、日本政府の態度は、最近は日本から共和国に行くについては割合緩やかになってきたと思うのですが、共和国から日本に入ってくることについては非常に厳しい規制をしておると思うのです。これは金日成主席も、私はお国には行きませんけれども皆さんの方からはどんどん来てください、ここに与党の先生方いらっしゃいますけれども、自民党の皆さん方にもぜひ来てもらうように言ってくれませんかというふうに言われるくらいに大変交流を望んでいるわけですね。ですから、共和国からの日本に対する入国についてもっと緩和すべきじゃないかと思うのですが、その辺はどのようなお考えをお持ちでしょうか。
  236. 藤田公郎

    ○藤田(公)政府委員 ただいま委員御指摘のとおり、北朝鮮との間には我が国は外交関係を有しておらないという状況にございますが、先ほど来申し上げました基本的な政策のもとで、今後とも経済、文化等の分野における民間レベルでの交流を積み重ねていくという方針で対処をいたしております。これは総理大臣、外務大臣から御答弁を申し上げておりますように、このような方針を変更するという考えは今のところございません。  第二番目に御指摘になりました人的な交流、特に先方の要人の方の来日の問題につきましては、やはり北朝鮮との間の外交関係がないという事実を踏まえまして、今後とも具体的な案件、ことにケース・バイ・ケースで対応していくという従来どおりの方針で対応するということかと存じます。
  237. 田口健二

    ○田口委員 それではアジア局長最後に、先ほど申し上げましたように帰りに中国に寄らせていただきまして、李先念国家主席とお会いをし、また中国共産党の対外責任者とも会っていろいろ意見を交換してきたわけですが、七二年に共同声明が出され、七八年に日中平和友好条約が締結をされて、今日経過をしているわけですが、今幾つが日本と中国との間にきしみと言っていいのでしょうか、問題点がありますね。  その中でも、言われておるように光華寮の問題というのは大変厳しい態度の表明を受けているわけです。さきに本院の予算委員会の中でも我が党の代表からこの問題についてもいろいろと質問があり、やりとりも行われているわけですから、その中身についてはきょうはあえて触れませんけれども、今、光華寮の問題に対して外務省としてはどう対応しようとしておるのか、その辺の見解からまずお伺いをしたいと思うのです。
  238. 藤田公郎

    ○藤田(公)政府委員 光華寮の問題は、私から申し上げるまでもないことでございますけれども、現在司法手続にのっとって争われている案件でございます。御承知のとおり、本年二月大阪高等裁判所の判決がおりまして、それに対しまして被告側が上告を行いまして、案件としては現在最高裁に係属中の案件でございますので、私ども行政府といたしましては、現在司法手続で争われている案件については論評したり発言したりする立場にはないというのが現在の行政府の立場でございます。
  239. 田口健二

    ○田口委員 そういう態度は無責任だと言われておるのですよ。大阪高裁の判決の内容がどうだこうだと論評することは、日本の三権分立という立場からいえば行政側としては論評する立場にはない、それはそうでしょう。  私も専門家ではありませんから、その判決の内容についてここで云々申し上げることはないと思うのですが、実際に中国側が問題にしておるのは、そういう三権分立という状況はよくわかっておる、しかし、この光華寮の問題というのは国家主権の問題であり領土の問題だ、それは七二年の日中共同声明、それから七八年の日中平和友好条約にもとるではないかと言うのですね。この共同声明や条約の中では、中国における唯一の正統的な政府は中華人民共和国であるということを明確に言っておるし、台湾というのはいわゆる中国の不可分の領土であるということもはっきりさせて、共同声明なり平和友好条約が結ばれているわけですね。日本国憲法七十三条の中には、外交問題についても内閣が処理しなければならないという責任規定があるわけです。それから九十八条には締結をした条約については誠実に遵守しなければならないという規定があるわけです。だから、そういう立場から中国側が日本政府の責任について言うのは当たり前のことだと私は思うのですよ。  それを政府が三権分立の建前から司法の判断についていろいろ論評する立場にはないと言って逃げておるということは、私は、憲法上からも外交上からも、国際的な信用の問題からいってもやはり問題があると思いますよ。そういう点から踏まえてどうなんでしょうか。
  240. 藤田公郎

    ○藤田(公)政府委員 ただいまの点も今国会予算委員会及び本会議の場におきまして総理、外務大臣からのお答えがございましたけれども、ただいま委員の御引用になりました日中共同声明、日中平和友好条約、この両文書に示されました日本国政府の立場、すなわち中国の唯一の合法政府として承認した中華人民共和国政府との間で友好協力関係を維持強化していくというこの立場は何ら変わることはございませんし、その決意は不変であるということは、累次総理及び外務大臣が申し上げているとおりでございます。  第二に、その問題とそれから今般の光華寮についての司法府が扱っている問題というのは、中国側が言っておりますように直接関係をしているものなのかどうかということなんでございますけれども、大阪高等裁判所の判決文、地方裁判所も同様でございますけれども、この判決文におきましても日中共同声明等が引用されておりますように、いずれの判決も関連国際法を考慮した上でのものであるということは私ども理解するところでございます。  これ以上内容に立ち入りまして判決がこうである、こうであると申し上げるのは、私どうかと思いますけれども、判決の言っておられるところは、政府の間の承認の問題とそれから光華寮というような学生寮の所有権の問題というのは、直接的に因果関係と申しますか、承認関係が切りかわったからといって自動的にその所有権が変わるものではない、これが国際法上の考え方であるというのが両裁判所の判決に示されているところでございまして、ただいま委員が御引用になりました憲法九十八条、憲法は最高法規であり、かつ条約及び国際法規は遵守せよということをうたってあります憲法に言及なさいましたけれども、司法府が全く条約を無視して、ないしは言及しないで判決を下しているということではなくて、十分に国際法、共同声明等々も検討の対象にした結果こういう判決が出されているというのが、私ども理解している判決の内容でございます。これ以上、それではその判決の内容がどうなのか、どう思うのかというようなことを申し上げる立場にはございませんけれども、その点だけ付言させていただきます。  それからもう一つ、何もしないでいるのは非常に無責任ではないかということを言及なさいましたけれども、私どもも全く知らぬふりをしてほっているということではございませんで、我が国における三権分立及び司法府の独立という制度のよって来るところと実際の意味ですね、言葉としてはわかっていても、実際にそれがどういう意味を持っているのかということ、それから、我が国の学者、学界の方々に判決の意義等をかみ砕いてよく中国側に説明をしていただくというような努力を、私どもは結局、周辺的かつ間接的な努力しか行うことはできませんけれども、そういうような形で中国側が日本における光華寮の問題の位置というものを理解されるように、側面的な努力はしているというのが現状でございます。
  241. 田口健二

    ○田口委員 抽象的なお答えで、本当に努力をしている、責任を持って対処しているというふうにはどうも受け取りにくいんですけれどもね、あなたの場合はそこまでしか言えないのかもわかりませんが。  ただ、一つちょっとお答えを聞いておって確認をしておきたいのは、中国政府の承認と光華寮の所有権の問題は関係ないんだ、それは外務省のお考えですか、それとも判決の中でそういうふうに言っているというふうにお考えなんですか。
  242. 藤田公郎

    ○藤田(公)政府委員 これは外務省がそういうことを考えたり判断する立場にはございませんで、判決で言っておられますところを御紹介いたしますと、中華人民共和国政府を中国の唯一の合法政府として承認をしたことによって、自動的に中華人民共和国政府の方に移るもの、疑いなく移るものは、外交領事財産、大使館とか領事館、そういうようなものは自動的に移る。そういう種類の財産でない財産については、各財産の性格、取得の経緯、使用目的等々を具体的に見て、それに応じた所有権の判定をするべきであるというのが判決に示されております司法府の判断でございますので、私どもの立場ということではなくて、判決に出ましたところを、私ども理解している判決の内容を若干御紹介申し上げたということでございます。
  243. 田口健二

    ○田口委員 それでは、この問題で最後にお尋ねをしたいと思います。  今、判決の中身について外務省としてわかっておることについてお答えをいただいたわけですが、光華寮というのは国有財産であるのかないのか、それは外務省としてはどのようにお考えになっていますか。
  244. 藤田公郎

    ○藤田(公)政府委員 これは「中華民国」という名義で登録をされている財産でございます。
  245. 田口健二

    ○田口委員 外務省に対する質問はこれで終わりますので、どうぞ、よろしゅうございます。  それでは防衛問題について、余り時間がありませんけれども幾つかお尋ねをしたいと思うのです。  まず、私は昨年の十月に本委員会で初めて防衛問題について質問をさせていただきました。特に当面する、言われておるシーレーン防衛の問題、それから洋上防空であるとかOTHレーダーエイジス艦、そういった問題について質問をいたしました。今、委員会会議録をずっと振り返って見ているわけですけれども、言わしてもらうと、随分防衛庁というのは人を食った答弁をしているなど。私の場合は、国会に出てきてからまだ三カ月になるかならないかぐらいの間の質問ですから、全くの素人でありますけれども、それにしても随分人を食った答弁をしているなということを改めて今感じているのですよ。  そういう立場からも少しお尋ねをしようと思っていますけれども、そのことはさておいても、今考えてみて、まだあれから一年たっておりません、十月三十日ですから十カ月足らず、こういう短い間にやはり随分大きな変化が出てきておる。例えば一%枠が突破をされる、十年来一応守られてきたのが撤廃をされる、あるいは先ほど来ずっと論議になっておりました洋上防空の問題にしてもエイジス艦の問題にしても、この状況というのは、私のような素人であっても、考えてみると、これから一体日本防衛というのはどういう方向に行くんだろうか、これが率直な今日時点における国民の気持ちではないかと思うのです。ちょうど防衛計画大綱が策定されたときに、当時の防衛庁長官が談話として、一体日本防衛力というのはこれから先どうなるのだということを具体的に国民の前に明示をする、こういう趣旨の発言をされておるのでありますが、まさにそういう状況と同じで、言葉をかえて言うならば、今日本防衛というのは曲がり角に来ておるのじゃないかと言う人もおるわけですが、そういう認識に立ってまずお尋ねをしたいと思うのです。  ですから、時間も限られておりますけれども、私はこの際基本的なことについてお尋ねをして、また時間があればじっくりやらせていただきたいと思うのです。だから、今さら何をというお気持ちがあるかもわかりませんけれども、お答えをいただきたい。  第一に安全保障というものに対する基本的な考え方をひとつ説明していただきたいと思います。
  246. 西廣整輝

    西廣政府委員 私からお答え申し上げるのもやや僭越かと思いますが、今日の国際社会におきまして自国の平和と安全を確保するために、御承知のように我が国としては国防の基本方針というものが早い時点に定められております。この基本方針というのは、大きく分けますと、一つは外交だと思います。近隣諸国との友好協力関係を確立する、そういった外交関係を通じて平和で安定した国際的な環境をつくるための外交的な努力というもの。さらには、国内的なもろもろの政治的、経済的あるいは社会的な安定を図っていく、そういった国内の諸施策を通じて国内の安定を図っていくというのが第二点。第三点として、我が国みずからが適切な規模の防衛力を持って、そして日米安保体制を基調にしながらいわゆる軍事的な安全を図っていくということが国防の基本方針として定められておるわけであります。  いずれにしましても、国の安全保障というのは、民族を含めて日本という国がいろいろな面で発展をしていく、あるいは生存をしていく、そういったものの基盤を支えるものであると私どもは考えております。
  247. 田口健二

    ○田口委員 今、防衛局長の方から一般的な考え方があったのですけれども、この考え方の中に、例えば、私は米国に一番象徴されるのではないかと思いますが、均衡と抑止による平和といいますか、軍事力をどんどん強化していって相手に冒険的な軍事行動をさせない、抑止していく、そういう一つの物の考え方もあると思うのです。  しかし日本の場合は、日本国憲法というものが存在します。第九条があります。いろいろな意味で今まで政府の言ってきたことを考えてみれば、日米安保条約を基軸にしながら必要最小限度の自衛力を持っていくのだ、こういう考え方で来られたのではないかなと思うのです。やはりその場合には、今もちょっと触れられたけれども、軍事力ということよりも他の平和的な手段、外交あるいは経済、こういうものを重視しながら日本の平和というか安全保障を確立させていく、こういうふうに理解をするのですけれども防衛庁はどういうふうにお考えでしょうか。
  248. 西廣整輝

    西廣政府委員 ただいま先生が言われたとおり、それは国防の基本方針と全く同様でございまして、外交なり内政というものを通じて日本の国際的な環境あるいは国内の状況を安定させることを前提にして、なおかつ必要な武力といいますか軍事力によって、侵略に対して日米安保とあわせて国の安全を確保しようというのが日本の基本方針であります。  ところで、軍事力による安全保障策については、先生のおっしゃるとおり、いわゆる抑止という考え方、自分が大きな戦略的な攻撃力を持って相手の侵略しようという意図を射止してしまおうという考え方一つあろうかと思います。ただ日本の場合は、日本自身の憲法上の行き方というものもございますし、あるいは憲法というものを除いても、日本の置かれている地理的なあるいは社会的な、経済的な条件というものがございます。例えば、日本が極めて海外依存度の高い国であり、非常に狭い国土の中で、しかも一部の地域に人口なり産業が集中しておるというようなことを考えますと、日本自身が強大な抑止力の高い軍事力を持って他国を抑止する、抑止力においてパリティを持つということは非常に困難な状況にあります。  したがって、そういう点については日米安保体制ということでアメリカに依存をして、日本自身はそういったアメリカの抑止力と日本の安全というものとの間にすき間がないような防衛的な体制を持って日米安保というものが有効に機能するようにしておくということで、軍事力については最小限の依存でやっていきたいというのが基本方針になっていると思います。
  249. 田口健二

    ○田口委員 そこで、これは政府の側も言われているし多くの人が言うわけですが、日本防衛の立場というのは専守防衛だ。我々も使っているしみんな使っている。よく使われるわけですね。しかし、では専守防衛というのは一体何なのかということをよく考えてみると、難しいんですよ。防衛庁としては専守防衛というのはどういうものだと考えておられるか、ひとつお聞きしたいと思うのです。
  250. 西廣整輝

    西廣政府委員 先ほど少し触れましたけれども、軍事力による防衛のやり方としては、大きく分けて二つある。抑止効果の高い軍事力を持って抑止しようという考え方と、いわゆる防衛力防衛的な考え方と二つあると思います。  では、抑止効果の高い軍事力と防衛力とどう違うのかといいますと、抑止というのは、相手に何かをさせない力、相手に強制する力を伴わなくてはいけないということでありますので、どちらかといいますと、抑止力というのは攻撃力に非常に近い概念であります。つまり、相手にどれだけ被害を与えることができるかというのがある意味では抑止力の持つ力の目盛りになるわけでございます。一方、防衛力というのは、相手を攻撃してどれだけ被害を与え得るかということではなくて、みずからの被害をどこまで極限できるかというのがその目盛りになるのではないかというふうに私は考えております。そういう意味で、抑止力と防衛力というのは、防衛力についても消極的な意味の抑止力というのはありますけれども、非常に性格は違うものだと思っております。  さらに申し上げれば、御存じのとおり、我が国防衛力というのは個別的自衛権の範囲のものである。つまり、その持っておる自衛権、自衛力というものを発動するにつきましても、相手の攻撃を受けて初めて発動し得るというように、発動についても非常に限定して、枠組みをきちっとしてその行使し得る要件というものを決めております。さらに、その行使し得る防衛力行使の態様につきましても、御承知のように、自衛のために必要な最小限度のことにとどめなくてはいけないということで、相手の国土そのものに壊滅的な打撃を与えるとかといったことはできないということでありますので、当然のことながら、我が国整備し得る防衛力というものも非常に防衛的なものになっているということだろうと思います。  そういう点で、憲法上あるいは政策上も含めまして、我が国の持っておる基本的な防衛力というものは、抑止効果の高い、つまり攻撃性の強いものは持たない、我が国に対する侵害があった場合に被害をいかに最小限にとどめるか、いかにしてそういう攻撃下の中で日本が生き残っていくかということを中心に考えられた防衛力であるというふうに御理解いただきたいと思います。
  251. 田口健二

    ○田口委員 今、概念について防衛庁考え方をお聞きをしたのですが、言葉の上ではなかなかわかったようなわからぬようないろいろ受け取り方もあるのですが、ただ、今まで言われてきている専守防衛という考え方で、先ほどからもちょっとあったと思うのですが軍事大国、これも抽象的な言葉だと思うのですけれども、そういうことにならないような歯どめというものが専守防衛という言葉でもって、あるいは考え方でもって可能なのだろうか。そのことになると、現実の防衛力の状況というのをずっと歴史的に考えてみた場合に、ちょっと何か疑問に思うのですよ。その辺は、あなたが今言われましたが専守防衛という考え方が軍事大国にはならないそういう歯どめになるのだ、このようにお考えですか。その辺ちょっとお尋ねをしたいと思います。
  252. 西廣整輝

    西廣政府委員 私は、先ほど申し上げたように我が国の憲法等に基づいて、例えば他国に侵略的な脅威を与えるような装備そのものも持たない、あるいは部隊としても量的、質的にその種のものを持たない、さらには海外派兵をしないとか、その種のものは十分歯どめになり得ると思いますが、ただしそういう抽象的な概念だけでは、なおかつ年々の防衛力整備なりについて、その都度、それじゃこれは憲法に違反するのかどうかとか、あるいは最小限の自衛力を超えるものであるかどうかということを、常に一品一品の装備整備等についてさかのぼって論議をしなければならないということも、これまたなかなか大変なことでございますので、政府としてはかねがね防衛力整備等について、できる限りそういった論議が繰り返されなくても済むように考えてきたと思います。  一例を申し上げれば、例えば防衛力整備について、かつて一次防、二次防という時代があったわけでございますが、二次防のときに初めて日本の持つべき防衛力整備目標として、これは政府方針で、必ずしもそれが自衛力の限界ということではございませんけれども整備する目標としては非核兵器による局地戦事態までに対応できる防衛力というものをつくったらどうだろうかということで、それを方針にして、少なくとも二次防、三次防、四次防というように防衛力整備は進められてきたわけであります。  しかし、御承知のように通常兵器による非核戦以下の事態ということもかなりの幅があります。しかも、そういう事態を考えますと、当時持っておった防衛力とそういう通常兵器による局地戦以下の事態のマキシマムな状態と比べると、なおかつ非常に差があった、そういうことでは国民自身に防衛力としてどこまで現在の政府として目標がきちっとしているのかということが十分理解しにくいという面もございますし、一方、自衛隊の側としても目標が非常に高過ぎて現実との間にギャップがあり過ぎますと、どうしても全体としてバランスのとれた防衛力ということよりも跛行的な防衛力ができてしまうおそれがある、まだまだどうせ役に立たないならこの分だけ急いでおこうとかということで、それなりにまとまった防衛力になり得ないというような自衛隊側の問題もありまして、御承知のとおり昭和五十一年に「防衛計画大綱」というものがつくられたわけであります。  この「防衛計画大綱」というのは、釈迦に説法で恐縮でございますが、日本に対する通常兵器による局地戦以下の事態という従来のかなり目いっぱいの構想ではなくて、まず日本防衛力として機能的に欠落のないものとしてはどんなものが考えられるか、その機能がそれぞれ十分であるかどうかは別にして、一応機能的に欠落のないものをそろえてみよう。  それから、各部隊なりの配備あるいは監視その他について、日本のこの地域は守るけれどもこの地域は守らないということではなくて、各地域にまんべんなく、たとえ薄くても防空の網をかぶせる、どの地域でもアラート態勢がとれるというような体制にするためにはどのくらいの防衛力が要るかという、平時における通常の配備ということでまず防衛力の量というものを想定してみて、そこで必要となる防衛力というものを、よく御存じのように通常兵器による限定的かつ小規模な事態、限定的と申しますのは、まず核でなくて非核であるという意味で限定的である、またさらに言えば、限定的というのはそう長い間相手が準備をして用意をしてかかってくるということではなくて、時間的にも地域的にも限定をして侵攻してくる、そういう小規模な事態を一部想定をしまして、先ほど言った、平時においてすき間のない一応機能のそろった防衛力というものを突き合わせてみて、検証してみて、それでそこそこの防衛能力というものが持てればいいではないか。  今、ある隣国と一割力が違ったからすぐ攻めかかってくるというような国際情勢ではないではないか、仮にそういう小規模侵攻があったときに、二割、三割というような能力しかないのでは、これは日本自身がその地域において力の空白を生むことになって、安定ではなく逆に不安定の要因となり得るわけでありますから、そういうことがないような、七割、八割といったような形で相当の抵抗力を示せるものであるかどうかということを検証して、御存じのように現在の「防衛計画大綱」というものができたわけであります。     〔委員長退席、船田委員長代理着席〕  したがって、我々としては、この「防衛計画大綱」は自衛力の限界という点では決して天井いっぱい張りついたものではなくて、かなり低いレベルのものだとは思っておりますけれども、その程度のものを持つことによって現在のような国際情勢下においてはまずまず日本の安定は図れるのではないか、それが状況が非常に変わってくれば、そのときはまた政治の判断で別の御決定をいただくということで、現在のところその「防衛計画大綱」に従って防衛力整備を進めておるという状況でございます。
  253. 田口健二

    ○田口委員 「防衛計画大綱」について大変丁寧な御講義をいただいて感謝をいたしますけれども、その定量的な歯どめの一%という問題と防衛大綱というのは無関係ですか、関係があるのですか。
  254. 西廣整輝

    西廣政府委員 先ほど申し上げたように、「防衛計画大綱」で求めておる水準というのは、平時から少なくとも日本のような立場にある国として持つべき最小限の防衛力ではないかということで一つの枠組みをつくったわけであります。そうして当時、これを十年ぐらいかかってつくる、それを一年、二年でつくるということは大変でございますので、つくるとすればどのくらいの金が要るであろうかというようなことで試算したわけであります。  一方、当時の経済計画というのがございまして、長期的な経済の見通しというものがありました。そういったものと両者を比べてみますと、一%ぐらいの金を年々投入していけば十年ぐらいでできるであろう、ということは、そういった防衛力整備をしていくテンポを決める意味の金の枠組みを決めませんと、それじゃその目標は二年、三年で急につくってしまうのか、あるいは二十年、三十年かかってもいいのかということになりますので、当時の経済見通しとあわせて十年ぐらいでやるためには、一%ぐらいが適当であるという判断でお決めいただいたものというように理解をいたしております。
  255. 田口健二

    ○田口委員 そのいわゆる一%というのが、防衛力がずっと増大していくための一定の定量的な歯どめとしての役割を果たしてきたというようにお考えですか。
  256. 西廣整輝

    西廣政府委員 先ほど来申し上げたように、一%という閣議決定がありましたのは大綱決定の一週間ぐらい後でございますが、これは皆様方がその後言われているように、必ずしも歯どめという意味よりも、「防衛計画大綱」というのは年次もございませんし、内容が、どう毎年つくっていくかという年次計画もございませんので、そういった防衛力整備をするテンポを決めるものだというように決められたと私は思っておりますが、以後一%というものが、経済計画等が改定されたにもかかわらず、そのまま置いておかれましたので、逆に歯どめというような意味合いで受け取られる向きが多くなったと思います。  そういう意味で、一%というものが防衛力整備をする上での歯どめ的効果を全く果たさなかったというようには私は決して思っておりませんが、現在一%問題というか、昨年の予算決定で一%を超えた経緯というのは、どちらかというと、防衛力整備のテンポが一時よりも上がってきたということではなくて、その土台になる分母の方のGNPというものが大綱策定時に比べてはるかに低いレベルにその後変わってきたという方がより大きな要因としてきいてきているのではないかというように私は考えております。
  257. 田口健二

    ○田口委員 一%というのが防衛力整備をしていくテンポとしての一つの基準といいますか、そういう考え方だというように今あなたは言われたわけですが、そこは私は非常に重要だと思うのです。  同時に、これがやはり一定の歯どめになっておるという考え方もまた事実だろうと思うんですね。ただ、私は個人的に言うと、これは歯どめになっていないと思うんですよ、歯どめという点から見るとね。それは結局、一%ということを決めたときに、防衛予算と当時のGNP一%との間に相当のすき間があったわけですね。成長率がずっと変わってくるという問題もあるのでしょう、今あなたが言われた成長率の問題が出てくると僕は思う。それがここ一、二年接近をしてきて、私は、歯どめであるというならば、本来ならば今からが歯どめになると思うんですよ。ところが、その時期にこれが外されちゃったわけですね。一%を歯どめとして考えるならば、私はこれからが本来の歯どめの役割を果たしていくだろうというふうに思うのです。ところが、それがその時期になってくると外されてしまうわけです。今までは関係ないわけですよ、一%と防衛予算の間の差があるわけですからね。  あなたが言っておるように一%程度をテンポの基準として整備をしていけばいいんだ、そういう考え方で通ってきた。だから私は、今のあなたの言われていることの中で、ここで一%枠は外されてしまった、だからこれはあくまでも、まあ一%程度という言葉がさっきありましたが、これが防衛力整備一つのテンポの基準だという考え方になってくれば、前の、大綱策定当時の考え方とは少し違うのじゃないかと思うのです、あなたが今言っておられる考え方とは。大綱策定当時から、あなたが言われておるような一%というのは整備のテンポの基準だ、そういう考え方を持っておったのですか。もう一遍ちょっと聞きたいのですがね。
  258. 西廣整輝

    西廣政府委員 政府として大綱をつくったとき、そしてその一週間後に一%という枠組みをつくったときを含めて、国の防衛というものを、最小限の防衛力をしなくてはいけないものをお金の範囲で決めて、この範囲なら国を守るけれどもそれ以上になれば守らないという考え方をとったことは一度もないわけでございます。  いずれにいたしましても、先ほど申し上げましたように、一%というのは当時の経済見通し、それと防衛力整備内容とを比べて、この範囲でいけばリーズナブルな期間に「防衛計画大綱」の水準が達成できるものということで決められたと私どもは思っておりますし、その点は当時の一%という枠組みを決めたときの記者発表その他を見ましても、これは例えば「当面」と書いてございますが、当面とはどのくらいの期間だというような質問があったときにも、当面と申すのは、現在見通し得る範囲では経済計画というものがありますので、それとの関連において決めておりますから、経済計画期間というのが強いて言えば当面でございます、そういうようなお答えをしているような次第でありますので、先生が言われたように、その後だんだんに一%というものに歯どめ的な性格というものを強めたいろいろな御意見が出てまいりました。それは私ども十分承知しておりますし、また歯どめとしての役割を果たしたかと思いますけれども、そういった考え方が設定当時あったというようには私は考えておりません。
  259. 田口健二

    ○田口委員 一%枠が現実的に昭和六十二年度の予算の中で外されていった。  そこで大綱の問題ですけれども、これはぜひ長官にもお聞きしたいと思うのですが、例えば一部では大綱自体を見直せという意見がありますね。私も、中曽根総理が直接関与されたと聞いておるのですが、特に平和問題研究会報告、ああいうものを読ませていただくと、もともとあの中身というのは基本的に考え方が違うのだろうと思いますけれども、それは別にして、計画大綱策定当時と国際情勢が変わっているし、こんなものは今は見直すべきだという言い方が出てきておるわけですね。一部にそういう方もいらっしゃいます。ところが長官は、ずっとこの前からお話を聞いておると、大綱を見直す必要はない、こういうお考えのように私は思うのですよ。これは私の推測ですけれども、その真意をお聞かせいただきたいと思うのです。  一%枠が外れれば、別にこの大綱を見直さなくても今のままでどんどん防衛力というものはやれるのだ。先ほど来の論議の中にもありましたね、大綱の水準とは一体何かということになると非常にあいまいな問題になってくる。質的には、他国との関係、軍事技術の発達の中で相対的にどんどん高めていかなければいかぬ。そうすると、これは量的には大綱で考えている量までなかなか追いつかない。だから片一方で質的にどんどん高めていけば、そしてさらに量的にも持っていくならば、何も今の大綱を見直しをしないでも十分やっていけるのだ。片一方では一%という枠はもうなくなっているわけですからね。こういうふうに長官はお考えになっておるのかなという気もするわですが、まずその真意を聞かせていただきたいと思うのです。
  260. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 私はそういうふうに融通のきいた考え方は持っておりません。「防衛計画大綱」というのは私も随分読みました。読み返しました。今防衛局長からも話がありましたけれども、読んでいきますと、私は大変適当な、適当といいますか我が国防衛力整備には非常に適したものだと思うのです。  ただ一般的に、「防衛計画大綱」をつくったときに、今みたいに装備や何かがどんどん大きく変わっていく、あるいは装備が変わるために戦術とか戦闘とか戦略というのが変わってくるでしょう。ですから、それから見ると、何だか知らぬけれどもこれはどんどん果てしなく行ってしまうのだ、こういうふうに思われる。特に一般素人はそうですね、私もそうですけれども。ところが防衛力というのは、限定・小規模の侵略に対応するといっても、周辺の諸国の状況が違う、あるいは軍事技術が違ってくれば、一たん決めたらもうそれ以上のことをしてはいかぬとか、あるいはこのパーセンテージ以上のことをしてはいかぬなどということになれば、これは防衛力は果たされないわけですよ。  よく防衛には金がかかる、金がかかると言うけれども、私は防衛というものは金がかかると思いますよ。金のかからない防衛なんかないと思う。だからこそ防衛については節度ある使い方をしなければならぬ。私が身を持すること厳にするというのはそういう意味です。本当にこれは大変なことを私はお任せをいただいている。そういうことでございまして、決してどんどん使っていくというのではない、しかし必要なものだけはやらなければならない。その必要なものは何かというと「防衛計画大綱」で、限定かつ小規模の侵略に対応し得るもの、こういうものが基準でなければならぬと思う。ですから、いささかほかの方と違いまして、「防衛計画大綱」この水準を維持する、達成することが必要なのだ、そのために金がかかる。だからこれはおかしいじゃないか、そういう考え方の方がいかがなものかというふうに思っております。しかし、決して一%の線を超えたからどんどんやっていくべきものではない、その点については私は責任を持って、私の良心において今自衛隊を統括しているわけでございます。
  261. 田口健二

    ○田口委員 言うならば、長官の場合には防衛大綱に盛られた理念といいますかそういう立場に立って、現状から見てこれが一番いいんだという考え方の中で大綱を守るというわけです。  ただ、これも一つの心配なんですが、それは、別表の見直しということが時々出てくるわけです。そうしますと、一つにはその一%枠が外れていった、別表の見直しというのは、現実の他国の軍事状況とかあるいは軍事技術の発達とかいろいろなものから見ていって、これは大綱本体にさわらぬでも見直しはできるのだということになって別表が変わっていきますと、今長官が言われた大綱が持っておる理念とかけ離れたものになりますよ。そうすると、これは別表と本体の大綱とは全くかけ離れているじゃないかということになって、一%枠も外れた、別表も随分変わってきた、それなら大綱もここで変えるべきだ、こういう論議になってくる危険性があると私は思うのです。  その辺はどうでしょうか。さっき長官のお気持ちを私は聞きましたけれども防衛庁の中では、別表見直しというのができるんだという話が時々出てくるんでね。
  262. 西廣整輝

    西廣政府委員 大綱と別表の関係については、累次御答弁を申し上げているわけですが、別表には、御承知のように、これは現在持っておるあるいは現在予定している装備体系に基づいて書かれておるのだという注が書かれております。防衛力というものは、軍事技術の進歩等に伴って装備そのものが変革していく、そういったことに伴って装備体系というものが変わってまいりますと、いろいろな面で変わっていく。したがって、ある時期の固定したものがそのままずっと続くということではないということはまず御理解をいただきたいと思うわけです。  しからば我々として別表を融通無碍に変える気があるのかと言われますと、そうではない。まず、大綱というものの基本的な枠組み、先ほど来申し上げている限定的・小規模対処ということで、その枠組みというものは大事にしている。しかもそれに際して当時つくった別表の枠組みというものもございます。それについても、私どもとしてはできる限りその別表の枠組みそのものを長く維持したいということでいろいろ苦労しているわけであります。  ただ、それでは別表が全く動かないかということになれば、今申し上げたように装備体系が変われば移りますし、極端に言えば周辺の小規模侵攻というものがふえてくるから、そういうものが質的あるいは量的に上がってきたから、それに対応する防衛力ももう少し強化しなければいけないという意味で別表が変わることもあるでしょうし、あるいは仮に通常兵器の軍備管理というものが進んでまいって、周辺のそういう通常兵器のレベルが下がってくるという時代も考えられるわけです。そうした場合に、それでは別表はそのままで未来永劫いくかといえば、当然下がった段階でこちらの対応する能力も下がってよろしいということになれば、これまた別表の改定になるわけでありますから、そういう点でふえる場合もあれば減る場合もあるというのが一つございます。     〔船田委員長代理退席、委員長着席〕  そのほか、全く兵力といいますか防衛力に変動のない場合であっても、例えば現在高空用の対空ミサイル・ナイキというのは航空自衛隊が運用しております。一方、低空用のホークというのは陸上自衛隊が運用しているわけです。これを仮により有効な、先ほど野坂先生のときも御質問が出ましたが、自衛官の定員管理というものをより合理的にするために、仮に陸上自衛隊がもう少し余分の仕事もしてもいいじゃないかということになったときに、それではナイキなりペトリオットを空から陸に移す、数量その他全く変更しないで運用そのものを陸に移すということになりますと、別表の仕切りで現在航空自衛隊及び陸上自衛隊で分担をしているそれぞれのものが陸上自衛隊に移るということで、これは全く防衛力については出入りがないわけですけれども、その仕切りが変わってくるという意味で別表の改定が行われることはあり得ると思います。  そういうことで、別表が固定して未来永劫変わらないものであるということは私は決して考えておりませんと同時に、大綱の基本的な枠組みの中であれば変え得るものだと思っておりますが、だからといって別表を自由自在に動かして恣意的なことをするということはまたやってはいけないことであるし、やるべきでない、できる限り現行の別表を尊重しながら工夫をしていくというのが、先ほど来大臣がお答えになっております節度ある防衛力のあり方であろうと考えておるわけであります。
  263. 田口健二

    ○田口委員 そこで、別表に関連して、先ほど野坂委員の御質問にもあったのですが、ちょっと確認をしておきたいと思うのです。  もう時間がありませんからこの問題は余り触れられませんけれどもエイジス艦を導入する、新聞報道によれば六十三年度で一隻というのを見ております。エイジス艦という従来のミサイル護衛艦に比べると格段の性能を持ったものが入ってくる。そうすると、八八艦隊と言われるミサイル護衛艦二隻の中に一隻のエイジス艦が入ってくるということになって、その一隻で従来の二隻分以上の性能を持ってくるということになれば、ミサイル護衛艦についてはエイジス艦が入れば一隻でいいということになるのか、やはり数は八八で八つで、エイジス艦が入ってもあくまでもミサイル護衛艦は二隻だ、結果的にはエイジス艦が二隻になるんだという考え方になるのか、その辺のところをまずお聞きしたいと思います。
  264. 西廣整輝

    西廣政府委員 艦艇の場合は八隻の護衛隊群ということで、これで対潜及び対空の護衛任務を果たすわけでございますから、八隻として、総合的な力としてどういう組み合わせがいいか、最も経費効率がいいかというのが決め手になろうと思います。  仮に対空だけを考えれば、エイジスシステムを積んだ艦が二隻あればあとの六隻は要らないということもあり得ると思うわけです。ところが、対潜能力ということを考えれば、船団の周辺をそれぞれ艦艇で守るということなら八隻のものが要る。ということになりますと、それでは八隻のうち一隻だけエイジス艦でいいのではないかとかということで、最も経費効率のいいものを模索していくということになろうと思います。  一方、そういういろいろな種類の艦艇を組み合わせた護衛隊群ということでなくて、例えば対潜航空機、今P3Cを整備しておりますが、そういった単一の機能を果たす対潜哨戒なり対潜護衛だけをする機能航空機ということになりますと、非常に性能のいいものが出てくれば今まで百機であったものが七十機でよろしいということになろうかと思います。現に大綱をつくった当時、対潜航空機は百二十数機持っておりましたけれども、それをP3Cに、大綱をつくった当時その程度のものにするという前提で機数をつくり直して百機という目標に下げたわけでありますから、これがさらに将来P3Cに倍するあるいは三倍するような能力を持つ航空機が出現する、そしてそれを持った方が経費効率がいいということになれば、そういう高い性能のものを数少なく持つというような形で数量が減って大綱が書き直されるということもあろうかと思います。
  265. 田口健二

    ○田口委員 時間がないようで、中期防のことを私は聞きたかったのですが、もうちょっと無理のようですから、具体的なことについて一、二お尋ねをして終わりたいと思うのです。  先ほど私は、随分防衛庁というのは人を食った答弁をするなというふうに申し上げましたけれども、昨年私はシーレーン防衛のことでお尋ねをしましたら、防衛局長はこう言っているのですよ。「我が国のように海外依存度の非常に大きな国が、国民生存していくために必要な物資等を海外から輸入する、あるいは我が国攻撃されているような場合に防衛行動というものを継続していくための最低の戦略物資等を持ってくる、そういった場合の海上交通の保護を確保しようというのがシーレーン防衛目的でございます。」これは間違いないですか。
  266. 西廣整輝

    西廣政府委員 シーレーン防衛については、過去、政府の統一見解という格好で出されておりまして、そのまま正確に申し上げますと、まずシーレーン防衛の定義というのは、シーレーン防衛とは端的に言えば海上交通の安全を確保すみことというように政府としてお答え申し上げているわけです。その目的は何かと申しますと、四面海に囲まれ、資源の大部分を海外に依存する我が国が、有事の際、国民生存を維持し、あるいは継戦能力を保持するためのものでございますということで、これは終始一貫政府のシーレーン防衛というものについての定義であり、考え方でございます。
  267. 田口健二

    ○田口委員 あなた方の説明の中には、今もちょっと言われているのだけれども、あるいはさっきの私が読み上げた昨年の本委員会におけるあなたの回答のように、国民が生活をしていくための必要ないわゆる物資、民生的なもの、このことを非常に強調して言われるから、一般の国民というのはみんなそうだと思っておるのです、大抵の人は。しかし、シーレーン防衛というのが持っている軍事的な側面というのが非常に隠されていると私は思うのですよ。  例えば、これはある新聞なのですが、こういうことを書いていますね。「今年のアメリカ国防報告の中の日本に関する部分で、気になる記述の変更があった。」それは、従来我が国で言われておるシーレーンという表現がなくなってしまって、そしてシーラインズ・オブ・コミュニケーションズ、SLOCですか、こういう表現に全部統一されている。このSLOCというのは一体何かといったら、「「有事において国が生存上または戦争遂行上確保しなければならない海上連絡交通路。本来、海洋のラインズ・オブ・コミュニケーションつまり戦線の作戦部隊と根拠地を結ぶ兵たん連絡海上交通路」である。」こういうふうに説明をしているのです。ところが、今まであなた方が言ってきたシーレーン防衛というのは、こういう側面というのは余り言わないのですね。国民の生活に必要な物資、非常に海外依存度の高い我が国においては、そういうものを守るためにシーレーン防衛が必要だというような宣伝をされるのです。だからそこに一つ問題がある。  そこで、この新聞でも指摘をしているのでちょっとお尋ねをしたいと思うのです。「昨年暮れ、日米制服レベルによって「シーレーン防衛共同研究」が調印された」とあるのですが、これは事実ですか。
  268. 西廣整輝

    西廣政府委員 最後の御質問の前に、私どもがいわゆる作戦輸送に類するものを隠しているのではないかというお話だったので、そういうことはないということを申し上げたいと思いますが、私何度も、シーレーン防衛目的海上交通保護の目的の中に、国民生存を維持するためと継戦能力を維持するためというふうに申し上げております。  継戦能力といいますのは、御承知のように、日本が侵略された際に防衛作戦をしておる、その作戦を維持するために必要な例えば弾薬であるとかいろいろな部品であるとか、そういったものを補給することも入りますし、あるいは、きょうもお話ししたと思いますが、北海道等に上陸作戦が行われておるというときに、そこに対していろいろな部隊なり補給品なりを補給する、作戦輸送でございますが、そういったものを含めたものをシーレーン防衛ということで申しておるわけで、決して私どもはそちらの方を隠しておるわけではないと思っております。  ただ、アメリカのお話がありましたけれどもアメリカ日本との非常に大きな差は、日本という国は海外依存度が非常に高い、したがって、そういう作戦輸送のための海上交通量よりも、国民生存するために必要な物資等を持ってこなければいけない、その方の海上輸送量の方がはるかに多いということであります。その点、アメリカは御存じのように非常に資源の豊富な国で、それほどの海外依存度はない、したがって、彼らにとってシーラインズ・オブ・コミュニケーションということになると、そういう部隊活動に必要な海上交通路を確保するということが主たる目的になろうかと思いますけれども日本にとってはそういったものよりも国民生存を維持するための海上交通の確保ということの方がより焦眉の問題であり、重要な問題であるというふうに理解をしておるわけであります。  それから、シーレーン研究の話でございますが、シーレーン研究は、実は昨年、長年やっておりました研究を終わりまして、調印というか、お互いに確認をしました。  それで、シーレーン研究と申しますのは、我が国有事の際に相手方が日本のそういう海上補給路というものを破壊をするということを中心にしかけてきた場合に、日本の現在の防衛力、そしてアメリカから期待できる防衛力アメリカの支援力というものを合わせでそういう海上交通保護作戦を実施した場合に、どの程度のことができるか、どういう点に問題が起きるかというようなことを検証し、検討するために行ったわけであります。  その主たる結論の出し方は、三カ月なら三カ月間相手方がいろいろな形で海上交通路を破壊するわけですが、その結果、日本のといいますか、我が方が必要とするものを運んでおる船舶がどれだけ被害を受けたか、それが相手方の潜水艦によって幾らやられ、航空機によって幾らやられたかというようなことが一つ被害として出てまいります。もう一つは、そういうことも含めて最終的に日本に入港してくる船の船腹量、トン数になりますが、そういったものがどういう形で低減していくかといったようなことを最終的な結論として導き出す、そういったいろいろなシミュレーションを含めて研究して、一つの成果を得たということであります。
  269. 田口健二

    ○田口委員 もうあと十分を切りましたので、大きい問題はやれないので、連絡をしてなかったので突然で申しわけないのですが、ちょっとお尋ねをしたいと思うのです。  先ごろ私は、本委員会の調査で沖縄の方に同行させていただいて、沖縄の基地の状況なども見てまいりました。私は、復帰の前から今日まで十回程度沖縄にはずっと行っておるわけですけれども、行くたびに思うわけですが、日本にある米軍基地の七五%が沖縄には集中しておるというふうに言われておりますし、沖縄本島の二〇%は基地だ。それで、いつも嘉手納は塀の外から見るのですが、今度実は塀の中から見てきたのですよ。那覇基地の大きいのにも私は初めて入りましたからびっくりしましたけれども、嘉手納基地というのは比べものになりませんね、バスで一回りしただけで一時間かかってしまったわけですから。ああいう膨大な米軍基地が沖縄の中にある。  この前も本委員会でのある委員の御質問を聞いておってまさにそうだと思ったのですが、沖縄の基地というのは戦後の日米安保条約の中で置かれた基地ではない、別の性格を持っているということですね。いわゆる戦前からの、沖縄戦以後の継続した形の中でああいう基地ができた。そして現在の日米安保体制に移ってきているわけですが、そういう意味では、沖縄に行ってみますとまさに今日の日米安保体制というのは沖縄の住民の犠牲の上に成り立っている、これは何とか考えなければいかぬのじゃないかという気がしてならないのです。それは防衛庁に聞いてもしようがないと思うのですけれども。  ただ、そのとき私感じたのですが、米軍住宅がよそから嘉手納基地の中に随分移転をしてきている、立派な住宅がどんどん建っているわけです。この予算は一体どこから出ているのですか、これはアメリカが金を出してあの住宅をつくっているのですか、それとも日本政府が金を払ってあの住宅をつくっているのでしょうか、それをちょっとお聞きしたいと思うのです。
  270. 友藤一隆

    友藤政府委員 お答えいたします。  駐留軍関係の経費につきましては、地位協定がございまして、駐留に必要な合衆国軍隊を維持するに伴う経費は合衆国が負担する、こういう原則になっております。ただ、新たな施設提供するという必要が生じました場合には、私どもそういった施設を必要に応じて提供するということになっておりまして、近年、駐留関連経費の軽減努力ということで、施設区域等につきましては、五十四年以降、隊舎でございますとか住宅あるいはサイレンサー等の施設を改築をいたしましたり新築をして提供するということをやっております。六十二年度は約七百三十五億、施設関係の予算をいただいておりまして、これによりましてこういった施設をつくりまして提供いたしておる、こういう現状でございます。
  271. 田口健二

    ○田口委員 詳しいことはここに専門の先輩の上原委員がおられますからまた改めて論議があると思うのですが、ずばり言って、よく本委員会でも論議になりましたいわゆる思いやり予算、そういうものが、今私が申し上げました嘉手納基地内に新しい米軍住宅がずっと新築されているのですが、そういうものに使われているのですね。それは間違いないですね。
  272. 友藤一隆

    友藤政府委員 今お尋ねのございました嘉手納におきます住宅の建設等にも使われておるということでございまして、これらにつきましては、沖縄の施設の集約、リロケーションと申しますか、そういった関係で施設を整理していく過程で一カ所へ集約していくというようなこともございまして、施設をある程度まとめていくという立場から建設しておるものもございます。
  273. 田口健二

    ○田口委員 もう時間が余りありませんので、やりますとオーバーしますので、これで終わりたいと思います。どうもありがとうございました。
  274. 石川要三

    石川委員長 次回は、来る二十七日木曜日午前十時十分理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時二十四分散会