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1987-07-28 第109回国会 衆議院 大蔵委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    国会召集日昭和六十二年七月六日)(月曜日 )(午前零時現在)における本委員は、次のとお りである。   委員長 池田 行彦君    理事 大島 理森君 理事 熊川 次男君    理事 笹山 登生君 理事 中川 昭一君    理事 中村正三郎君 理事 野口 幸一君    理事 宮地 正介君 理事 玉置 一弥君       新井 将敬君    井上 喜一君       石破  茂君    今枝 敬雄君       江口 一雄君    遠藤 武彦君       金子 一義君    小泉純一郎君       笹川  堯君    杉山 憲夫君       高鳥  修君    戸塚 進也君       鳩山由紀夫君    藤波 孝生君       村井  仁君    村上誠一郎君       山中 貞則君    山本 幸雄君       上田 卓三君    沢田  広君       中村 正男君    早川  勝君       堀  昌雄君    武藤 山治君       日笠 勝之君    森田 景一君       矢追 秀彦君    山田 英介君       安倍 基雄君    正森 成二君       矢島 恒夫君 ————————————————————— 昭和六十二年七月二十八日(火曜日)     午後三時二分開議 出席委員   委員長 池田 行彦君    理事 大島 理森君 理事 熊川 次男君    理事 笹山 登生君 理事 中川 昭一君    理事 中村正三郎君 理事 野口 幸一君    理事 宮地 正介君 理事 玉置 一弥君       新井 将敬君    井上 喜一君       石破  茂君    今枝 敬雄君       遠藤 武彦君    金子 一義君       小泉純一郎君    笹川  堯君       杉山 憲夫君    高鳥  修君       戸塚 進也君    鳩山由紀夫君       村井  仁君    村上誠一郎君       山中 貞則君    上田 卓三君       沢田  広君    中村 正男君       早川  勝君    堀  昌雄君       日笠 勝之君    森田 景一君       矢追 秀彦君    山田 英介君       安倍 基雄君    正森 成二君       矢島 恒夫君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 宮澤 喜一君  出席政府委員         大蔵政務次官  中西 啓介君         大蔵省主計局次         長       斎藤 次郎君         大蔵省主税局長 水野  勝君         大蔵省関税局長 大山 綱明君         大蔵省理財局長 足立 和基君         大蔵省証券局長 藤田 恒郎君         国税庁長官   窪田  弘君         国税庁次長   日向  隆君  委員外出席者         大蔵委員会調査         室長      矢島錦一郎君     ————————————— 委員の異動 七月十六日  辞任         補欠選任   日笠 勝之君     坂口  力君 同日  辞任         補欠選任   坂口  力君     日笠 勝之君     ————————————— 七月二十八日  日本電信電話株式会社株式売払収入活用  による社会資本整備促進に関する特別措置  法案内閣提出第一号)  日本電信電話株式会社株式売払収入活用  による社会資本整備促進に関する特別措置  法の実施のための関係法律整備に関する法律  案(内閣提出第二号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国政調査承認要求に関する件  日本電信電話株式会社株式売払収入活用  による社会資本整備促進に関すも特別措置  法案内閣提出第一号)  日本電信電話株式会社株式売払収入活用  による社会資本整備促進に関する特別措置  法の実施のための関係法律整備に関する法律  案(内閣提出第二号)      ————◇—————
  2. 池田行彦

    池田委員長 これより会議を開きます。  この際、新たに就任されております大蔵省局長等から、それぞれ発言を求められておりますので、これを許します。大山関税局長
  3. 大山綱明

    大山政府委員 このたび関税局長を拝命いたしました太山でございます。よろしくお願いいたします。(拍手
  4. 池田行彦

  5. 足立和基

    足立政府委員 理財局長足立てございます。どうぞよろしくお願いいたします。(拍手
  6. 池田行彦

  7. 藤田恒郎

    藤田(恒)政府委員 証券局長を拝命いたしました藤田でございます。どうかよろしくお願い申し上げます。(拍手
  8. 池田行彦

  9. 窪田弘

    窪田政府委員 国税庁長官を拝命いたしました窪田でございます。よろしくお願いいたします。(拍手
  10. 池田行彦

  11. 日向隆

    日向政府委員 国税庁次長を拝命いたしました日向でございます。どうぞよろしく御指導のほどをお願いいたします。(拍手)      ————◇—————
  12. 池田行彦

    池田委員長 国政調査承認要求に関する件についてお諮りいたします。  国の会計に関する事項  税制に関する事項  関税に関する事項  金融に関する事項  証券取引に関する事項  外国為替に関する事項  国有財産に関する事項  専売事業に関する事項  印刷事業に関する事項  造幣事業に関する事項 の各事項につきまして、今会期中国政に関する調査を行うため、議長に対し、国政調査承認要求を行うこととし、その手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  13. 池田行彦

    池田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  14. 池田行彦

    池田委員長 次に、本日付託になりました日本電信電話株式会社株式売払収入活用による社会資本整備促進に関する特別措置法案及び日本電信電話株式会社株式売払収入活用による社会資本整備促進に関する特別措置法実施のための関係法律整備に関する法律案の両案を一括して議題といたします。     —————————————  順次趣旨説明を求めます。宮澤大蔵大臣。  日本電信電話株式会社株式売払収入活用による社会資本整備促進に関する特別措置法案  日本電信電話株式会社株式売払収入活用による社会資本整備促進に関する特別措置法実施のための関係法律整備に関する法律案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  15. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいま議題となりました日本電信電話株式会社株式売払収入活用による社会資本整備促進に関する特別措置法案及び日本電信電話株式会社株式売払収入活用による社会資本整備促進に関する特別措置法実施のための関係法律整備に関する法律案につきまして、提案理由及びその内容を御説明申し上げます。  我が国現下経済情勢を見ますと、国民生活に緊要な社会資本整備促進を図ることにより、内需拡大の要請にこたえるとともに地域の活性化に資することが重要な課題となっております。  他方、国債整理基金状況を見ますと、昭和六十一年度と同様に日本電信電話株式会社株式の順調な売り払いが行われれば、国債償還等国債整理基金の円滑な運営に当面要する資金を上回る資金が同基金に蓄積されることが予想されます。  このような状況にかんがみ、現下経済情勢に緊急に対処するため、国債整理基金の円滑な運営に支障の生じない範囲内で同基金に蓄積された資金の一部を活用する無利子貸付制度を設け、社会資本整備促進を図ることとしているところであります。  これは、厳しい財政事情のもとで、建設国債の増発を可能な限り抑制するよう工夫したものであります。また、この資金については、日本電信電話株式会社株式売り払い収入の性格を踏まえ、最終的には国債償還財源に充てることとしております。  日本電信電話株式会社株式売払収入活用による社会資本整備促進に関する特別措置法案は、以上申し述べましたうち、日本電信電話株式会社株式の売り払い収入による国債整理基金資金の一部を運用し、社会資本整備促進を図るための国の融資に関する特別措置を講ずるとともに当該資金運用等に関し必要な事項を定めるものであります。  すなわち、第一に、国は、当分の間、公共事業に要する資金を、別に法律で定めるところにより、地方公共団体等に対し無利子で貸し付けることができることとするほか、特定の民活事業に対し、日本開発銀行等を通じて無利子資金を貸し付けることができることとする等の措置を講ずることとしております。  第二に、従来の補助または負担を必要とする公共事業の場合には、この補助または負担については、別に法律で定めるところにより、当該貸付金償還時において行うこととしております。  第三に、無利子貸し付け財源に充てるたか、国債整理基金特別会計から一般会計を通じて産業投資特別会計資金繰り入れを行うことができることとする等の措置を講ずることとしております。なお、この繰り入れに相当する金額については、後日、産業投資特別会計から一般会計を通じて国債整理基金特別会計へ繰り戻すこととしております。  第四に、以上の国の無利子貸し付け等に関する政府の経理は、産業投資特別会計において、新たに社会資本整備勘定を設けて経理することとする等の措置を講ずることといたしております。  次に、日本電信電話株式会社株式売払収入活用による社会資本整備促進に関する特別措置法実施のための関係法律整備に関する法律案は、ただいま御説明申し上げました特別措置法に定める措置実施するために必要な関係法律整備を図るため、奄美群島振興開発特別措置法等三十九法律及び関係特別会計法法律について所要の規定の整備を行うものであります。  以上が議題となりました二法案提案理由及びその内容でございます。  何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  16. 池田行彦

    池田委員長 これにて趣旨説明は終わりました。     —————————————
  17. 池田行彦

    池田委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、これを許します。野口幸一君。
  18. 野口幸一

    野口委員 最近ベストセラーとなっております「サラダ記念日」という俵万智さんの歌集を読ましていただきました。その中で、「「寒いね」と話しかければ「寒いね」と答える人のいるあたたかさ」という歌がありました。新人類と言われている二十四歳の高校の先生の歌でございます。私はこの年代の人たちと感覚が一〇〇%共感できるとは正直言って申し上げられません。しかし、人の問いかけに対して、その問いの中に存在する心を読み取って誠実にお返事するということは大切な心がけだと思っておりますし、そこに人と人とのつながりと信頼感ができ、人間関係によい結果を生むものであると考えるのでございます。私は、この人の持つ歌の心に拍手を送りたいと思っております。  そこで、大臣、私がこれからお尋ねいたしますことは、私個人ではなく、少なくとも国民を代表するものの一人として、大臣に対して心からなる誠意を持ってお聞きしてまいりたいと存じます。言葉は粗雑にわたって申しわけないかもしれませんけれども、お許しをいただきたいと存じます。また、大臣も、一言半句といえども虚構やその場逃れの言いわけなどをなさらずに、どうか、今日まで一貫して平和憲法擁護という立場を貫かれている信念ある大蔵大臣として御信頼申し上げておりますだけに、真実の、率直な御答弁をぜひお願いするものでございます。大蔵省の皆さんも同様でございます。よろしくお願いを申し上げます。そのことにつきましてまず大臣から所信を承りたいと存じます。
  19. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 俳人でもあられます野口先生から、たとえ政治でありましてもやはり人間同士真実のつき合いというものが大切であるということをただいま御教示をいただきまして、まことにそのとおりと存じます。御質問に対して誠実にお答えをしてまいるつもりであります。
  20. 野口幸一

    野口委員 六十一年度の補正予算も成立をいたしました。いよいよ六十三年度の財政の枠組みをする時期でございます。今さらという感なきにしもあらずでございますが、財政再建とは一体何を目的に、何がどれだけ達成できれば財政再建が完成したと言えるのでしょうか。現在の百五十数兆円という累積債務が完全償還されるときのことを指して言っておられるのか、このいわゆる財政再建完成ということは、いつ、どのような形のことを指して言われているのか、まずその点をお聞きをいたしたい。
  21. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これは先験的な定義があるわけではないと存じますけれども、私の、短い期間でございますが、経験でやはり一番こたえますのは、一般会計の二〇%が国債費に占められているということでございます。それだけ財政弾力性がない。二割だけはもう決まって借金利払いに取られるということ、しかもこの状況は簡単には改善をしないということでございますので、やはりこれを何とかしなげればならないということを感じておりますが、そのための第一着手としては、やはりある段階から借金が累増をしないということになっていかなければならないであろうと思います。殊に、債務の中で、いわゆる特例公債建設公債とを分けて考えますならば、それは利子を生ずることは同じでございましても、特例公債の方は全くの赤字公債でございますから、これを出さずに済むような財政にまず持っていきたい、これがまあいわば一里塚であろうかと思います。それで完全に財政再建が済んだということにはなりませんで、やはり累積債務からの利払いは常に一般会計を圧迫いたしますが、それでも累積がとまったということになりますればそれはやはり一つの成果になるのではないか、当面はそう考えておるわけでございます。
  22. 野口幸一

    野口委員 つまり、私流に今の御返答を解釈してみますと、現在五十四兆円ばかりの予算の中の二〇%が大体国債費である、少なくともこれに圧迫されて一般歳出に大きな影響があらわれる、少なくともこれがそんなに苦悩せずに出していける状態、つまり、現在税収は当初予算で四十一兆円そこそこでありますが、これがそれよりも上回ること十数兆円出てまいりまして、当面税収でそのことが支払いができるということがまずは一番大事だ、しかしそれはすぐにはできないので、大臣がおっしゃるようにいわゆる特例公債の分だけでもとりあえずはゼロにするのが財政再建のまず一里塚だとおっしゃいました。  そうしますと、詰めて言うならば、本当言うとこの百五十三兆という借金がゼロになるのが財政再建だとは最終的には思いますが、当面そのことは非常に難しい問題でございますから、いわば先ほど申し上げましたように二〇%余の金額一般歳出影響を与えないようなところまで持っていくのが当面のこの目的である、こう理解してよろしゅうございますか。
  23. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そのように考えております。確かに累積債務百五十数兆というのはそこから利払いが生じてくるわけでございますから圧迫要因でございますけれども、当面はただいま申し上げましたようなことを目指したいと考えております。
  24. 野口幸一

    野口委員 それでは次の課題でございますが、今目的をある程度明らかにしていただきました。そのために、最近まで、というよりも、今もまだおっしゃっておるのでありますが、「増税なき財政再建」という言葉がございます。果たして、今のその目的を達成するのに、本当に増税なくして再建ができると思っておられますか。率直にお答えください。
  25. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 その点は、私は、我が国経済成長というのがこの数年間見られましたよりはもう少し高い潜在力を持っておる、経済運営いかんではそういう力を持っておるというふうに考えております。したがいまして、石油危機以後、殊にまたドル高がございましていろいろあったことはやむを得ないことでございますが、それらが消化されてまいりますともう少し高い成長率が可能である。その結果といたしましていわゆる自然増によるところの税収というものがふえることが決して期待できないことではない。この点は、「増税なき財政再建」というのを便宜分けさせていただきまして、税率等々の変更によるものを増税と呼び、自然増収増税と呼ばないということを、一応そういう定義を御理解いただいてのことでございますけれども経済運営がうまくいきまして成長率が高くなりましたときに自然増収は当然期待ができる、そういう経済運営をやっていきますならば徐々に特例公債をやめていくことができる、決してそういうことは不可能だというふうに断ずることはないと私自身は考えておるわけでございます。
  26. 野口幸一

    野口委員 そうすると、あくまでも増税という言葉は新しい税目をこしらえるということに定義なさるわけですか。そうすると、新しい税目は絶対つくらないと言い切れるわけですね。自然増だけによってこれを賄うのだ、だから新しい税目はおつくりにならない、そういうことなんですか。
  27. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私は実は御質問に半分だけお答えをした格好になっておるわけでございますが、仮に増税ということを、いわゆる税率の引き上げであるとかそのような税率構造を変えるということでなく経済成長による自然増というものは増税というふうにこの際仮に言わないで定義をさせていただくとしましたら、そういう経済運営というものはあるであろう、それをまず考えてみるべきであって、税率構造を変えることによる増税というものは、今のようなことを試みてもどうしてもできないということでありましたらまた考えることかもしれませんけれども、その前に経済運営の問題があるというふうに思っておるわけでございます。
  28. 野口幸一

    野口委員 お言葉を返すようですが、そういたしますと、いわゆる名前が新しく変わった税、例えばこの前の国会で出てまいりましたような売上税などという新税は当然考えられない、つまり、現在ある税制度の中で税率等改正をしていけば事足りることである、こういうことになるわけですね。そうじゃありませんか。そういうことですね。そうすると、もう売上税というのは一切お出しにならない、そういう新しい税というのはお出しにならないということなんですか。そういうふうに私どもは理解してよろしゅうございますか。
  29. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ここまでが第一段でございまして、そこで、第二段の問題は、こういうことであると思うのでございます。  それはそれといたしまして、税制そのものが全体として時代に合っておるかどうかという問題は第二段の問題としてあるわけでございまして、それでシャウプ以来の税制改正というものを政府としては御提案を前国会にいたしたわけです。その中で、つまり直間比率という言葉、どうも余りお耳に快くないかもしれないのですけれども、いかにも直接税の比率が大き過ぎますから、これをやはり正常なといいますか、もっと下げて、そして、我が国所得の水準の高さあるいは分布の均等性から考えて、間接税の方にウエートを置くということは必要なことではないか。ただし、それはいわゆる税収としては中立型でございますから、決して増税ということにはならない。そういう範囲税制改正考える。その一環として売上税というものを御提案をいたした、こういうことと考えております。
  30. 野口幸一

    野口委員 ちょっとわかりにくいんですがね。増税というのは一体何かという定義づけの話がございまして、実は前国会でも私もやりました。そして、竹下大臣は、確かに大臣と同じように、いわゆる自然増収なるものあるいは税率を改定して税が増収になっていくものというものは必ずしも私は増税だと思っていない、新しい税目をこしらえることが増税だと言って、今まで私どもは聞いてまいりました。したがって、仮にニュートラルでありましても、いわゆる今言われておりますところの増減税プラスマイナス・ゼロというものですね、でありましても、新しい税目ができるということは増税じゃないんですか、それじゃ。どういう定義でそのことを発言されていらっしゃるのですか。
  31. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 過般政府が御提案いたしましたように、片方で新しい税目を設けて増収を図りますが、それと見合いに現行の税制税率構造を変えまして減税を図ったわけでございますから、そういう意味では相殺いたしまして増税でも減税でもないということを申し上げても誤りではないと思います。
  32. 野口幸一

    野口委員 それじゃ、売上税がいわゆる関連各法とともにあのような結果になりましたのはなぜだったと今お考えですか。また、その結果からどのようにその点を御反省されておられますか。
  33. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これは総理大臣もしばしばお答えになっておることでございますけれども、やはり売上税というものが国民に十分に理解をしていただくだけの時間なりあるいは努力が不十分でありましたがために、いわば食わず嫌いというのは大変に俗語でございますけれども、それに近いような反応がございまして、これはとても話にならぬといったような、つまり反対の機運が先にできてしまいまして、政府説明なり努力が後手に回った、これがまあ根本であったというふうに考えております。  その余のことはいろいろございます。いろいろございまして、大変に複雑であるとかわかりにくいとかいろいろございますけれども、まず、難しいことだったかもしれませんけれども、虚心に、これはこういうことです、そしてそのねらいは直接税等々の減税を伴うものであるといったようなことを、いわば国民が白紙の状態といいますか、予断を持たずに聞いていただき考えていただく時間が十分ございましたら結果は違ったのかもしれないと思いますけれども、事態はそのように展開をいたしませんで、いわば聞く耳を持たないといったような状況に世論が展開をした。そういうことがあの際の失敗であったというふうに考えるわけでございます。
  34. 野口幸一

    野口委員 私はとても反省しておられるとは思えませんし、残念ながらそのようなことが原因ではないと思います。とにかく始まりは公約違反という問題が一番大きく出てまいりまして中身に入るに至らなかったということが非常に大切な課題であったということをまず御指摘を申し上げなければならぬと思います。  同時に、大臣、私は少し詳細に伺いますが、これは少し小手先で税制改正をやろうという安易な考えがあったんじゃないですか。つまり、私どもが言いますのは、所得税あるいは法人税減税財源に充てるために、そしてマル優廃止売上税の導入をするという、つまりニュートラル方式ですね、プラスマイナス・ゼロという。こうすれば実は難なく新しい売上税というのは入ってくるんじゃないか、こういう甘いお考えがまず頭の中にあったんじゃないでしょうか。私は、そういった了見の狭いと言っては悪いですが、少なくとも三百人という大人数を擁せられる自由民主党は、山中先生がお見えになるようでございますけれども、もっとダイナミックな構想の中で税制改正を打ち出してほしかった。言うならば、少なくとも、先ほどから何遍も申し上げておりますように、五十四兆という歳出が必要なんだ。幾らシーリングゼロだといって、この際防衛費の問題は言いません、仮に五十四兆が必要だということにしまして、税収は四十一兆しかないんでしょう。先ほど大臣お答えになったように、頭からもう不足するのですよ。後で詳しく申し上げますが、いろいろやりくりをして今日までやってこられたですね。これは実はシャウプ以来の大改革を、税制改革をやるんだ。それならば、もっと大きな観点から、国家百年の大計の中から、税制は何としても変えてしまわなければ、この借金は返せませんし、この利息も返せません、こういう発想がどうしてできないのですか。そしてそれを国民に率直に訴えてこそ、初めて財政再建を真剣に考えるという国民立場が出てくるんじゃないですか。何か小手先だけで、増税減税とをプラスマイナス・ゼロにすれば、いわゆる新しい売上税というものが安易に入ってきて、そのうちにパーセントがどんどんふえれば増収するよなんというようなことを、仮に思わなくとも、思わしめるような税制を持ち込んでこられたところにそもそもの間違いが始まったんじゃないですか。そう思われませんか。大臣、どうですか。
  35. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 いろいろの経緯を考えてみますと、政府が最初に間接税を御提案しましたのは昭和五十四年でございますが、そのときに世論の入れるところとなりませんでした。そのとき私どもが反省しましたのは、民間は非常ないわば減量経営をしていらっしゃるのに、政府は少しもそういう努力をしていないという、そのことが国民の御批判を受けたと考えたものですから、それから行財政改革に入りまして、その後六年間にわたっていわばゼロシーリング、マイナスシーリングという、政府としては、官僚機構としては精いっぱいの努力をいたしました。その実績の上に立って国民にこの税制改正を問うたわけでございますけれども、したがってその間には、政府財政上のあるいは行財政上の努力はかなり一生懸命なされたということは国民も恐らくこれは知っておっていただいたと思うのでございます。  そうでございますから、今度は殊に終戦直後の税制を何十年ぶりに変えるということでございますし、ネットの負担増になるわけではない、さらに加えまして、老齢社会になれば少数の生産年齢人口が多数の老人を背負っていかなければならないということは、そのような社会負担は公平に広くみんなに少しづつ背負ってもらわなければ将来若い人たちが大変に図られるということも事実でありましたので、間接税を皆さんに広く薄く負担をしていただいて、勤労意欲であるとか企業意欲とかを減殺するまでに高い直接税の負担を減らしていきたいと考えましたことは、全体の考え方としては決して理に外れていないと私は今でも者えるわけでございます。  ただ、売上税というものが何であるかということについて国民に納得をしていただく時間なり、努力を私どもが十分にしなかったということに問題があったのではないかというふうに考えております。
  36. 野口幸一

    野口委員 それはどうもいただきかねますね。それはもう、大蔵大臣になっておられる方に私どものようなひよこが申し上げるよりも、十分おわかりだと思うのですね。  先ほども同じようなことを申しましたが、切り詰めても五十四兆の歳出が必要なんだ。収入は四十一兆しかない。だれが勘定したって足りないことはすぐわかるでしょう。そこでその分をどう埋めるか。先ほどの話ではありませんけれども、当面十数兆の、二〇%になんなんとする国債費税収で賄うことができるかどうかということは、国民の日からも見ていますね。決してうそではないと思うのですよ。そうしたら、今出ている税制改革が仮にニュートラルだといって出てきましても、それが本物と思いますか。片やそれが現実の状態としてあるのではありませんか。だから、そういううそみたいなことになるから、この提案は全く虚構であると言わざるを得ないのですよ。そういう立場から考えますと、国民は理解しませんよ。  ましてや、もっと言葉をきつくして言わせていただきますと、法人税減税は個人に帰属する、つまり個人の所得税減税と同じである。仮にその学説を採用させていただいて、それが個人に最終的には来るといたしましょう。そんなものいつ来るのですか。あした来るのですか、来年来るのですか、言えますか。それをあたかも来年来るかのように、一緒に所得税減税と足してその数字を並べてそれに対応して売上税はこれでございますなんて言うから、そんなもの絵にかいたもちじゃないかということになってしまうのですよ。そんなみみっちい計画でいわゆるシャウプ以来の大改革と言われる税制改革をしようと思うところにそもそも問題があったのではないか、そう反省してもらいたいと思うのですが、どうですか。
  37. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先般の税制改革の御提案では、売上税が創設せられましても、いわゆる直接税の減税によってすべての人に、大小の差はありますが、減税が行き渡るということを御説明申し上げたわけでありますが、その間に法人税についてもただいまお話しのようなことを申し上げました。それは確かに法人税減税が個人に恩恵としてすぐに降ってくるわけではございません。しかしながら、競争社会におきましては、製品価格の値下げになったり、働く人の賃金の上昇になったり、これはいろいろな形で終局的には社会にやはり帰属していくと考えませんと、その減税分は宙に浮いておることはあり得ないことでございますから、そういうところをあのときに申し上げようとした。しかし、これは実感に訴えるところが非常に乏しいものでございますから、どうも政府が何か詭弁を弄しておるような受け取られ方をいたしました。これは私ども説明の仕方あるいはプレゼンテーションが上手でなかった、不適当であったということかもしれません。ただしかし、片っ方で新しい税を考え、片っ方で直接税の減税考える、両方が歳入中立性であるとして、法人税だけはどこにも帰属しないとすれば、それはもう増税の方が多いに決まっております。ですから、それはやはりどこかに帰属するからこそ歳入中立的になるはずであったと思うのでございますが、これは、経験に徴しますと、ちょっとやはり説得力というか、理屈が過ぎたかなということは反省しています。
  38. 野口幸一

    野口委員 やはりある程度はわかっているんですね。とにかくそれは所得税だけだったら増税の方がふえてくるのです。それでつじつまを合わせるためにそこに法人税減税もひっつけて、そしてそれが個人に帰属するんだという学説を御採用なさった。私はその学説を一〇〇%否定はしませんよ。どこかに帰ってくるのですから、金ですから回っているのですから、いずれかの時点には来るかもしれません。しかし、あの説明を読めば、あたかも同じように数字が並んでいるでしょう。片や何億、片や何億と並んでいて、足して幾ら、そして片やにこう来るわけですから、いかにもあした減税された分が個人に帰属されるような言い方だったのです。だから、それは全くうそじゃないかと言わざるを得ないようなことをあなた方自身がおつくりになってしまった。そこのところは大間違いであると私は思うのです。そこは率直に私は反省してもらわなければならぬことだと思うのです。  もう一つは、厚生年金の国庫負担金の繰入金の流用、住宅金融公庫補給金の一部を繰り延べする、あるいはまた国民年金特会の国庫補助繰り入れの特例という名で財源捻出をする、たばこの値上げを一年間だけやらせてくれと言って頼んで、うそをついて、来年もまたもう一年やる。とにかくやることなすこと、とにかく何とかかんとか言って理屈をつけて今日まで財源をつくってこられ、その上国債整理基金繰り入れを停止するという五十七年度以降の手段によって、今日まで辛うじて、四十一兆しかなかったあるいはまた四十兆を切ったような財源収入を実はカバーしてこられたのです。これは限界だと思いますが、これはどう思いますか。いつまでもずっとこういうことをやるのですか。そしてその財源に充てていくのですか、どうですか。
  39. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいま御指摘になりました幾つかの点はそのとおりでございますが、いわば当面必要としない資金活用するといいますか、そういったようなことで、いわゆるやりくりをあちこちでしてまいりまして、これは言ってみればやりくりでございますから、何といいますか、それ自身にいろいろ苦労といいますか、普通ならばしないような、財政が豊かであればしないようなことを確かにいたしております。これは、しかし、財政が体力を回復するまでこういう形にしておいて、そして体力が回復してくればこれは正常に復そう、そういうための一時的なやむを得ざる措置であるというふうに考えておるわけでございます。
  40. 野口幸一

    野口委員 そういたしますと、この金は将来お返しになるのですね。それぞれの会計に対して、あるいはまたそれぞれの帰属するところに対して借りたものは全部返すんですね。利息をつけて返すのですか、利息をつけないで返すのですか。また、今まで、たしか五十七年から始まりました、六十二年まで、こういった種類のいわゆるやりくりをした、名目で言うならばいわゆる行革関連特例法等により行った歳出削減効果という形で出ておりますが、その数字はトータルで今まで幾らになりますか。
  41. 斎藤次郎

    ○斎藤(次)政府委員 今先生御指摘になりましたものにつきましては、将来それぞれの年金あるいは住宅公庫の補給金等、そのときの財政事情を勘案して適切に処置をするということになっております。例えば住宅公庫の補給金の繰り延べは四千四百八十五億となっておりますけれども、これは金利の段階制の導入等によりまして将来償還が可能という設計になっておるわけでございます。  額について申し上げますと、五十七年度から六十二年度までで、厚生年金の繰り入れ特例措置の合計額は一兆六千百十億円、住宅公庫の補給金繰り延べ額の合計額は四千四百八十五億円、国民年金の国庫負担金合計額は一兆二千百二十六億円、定率繰り入れ停止額の合計額は十兆四千六百十八億円ということになっております。また、御指摘になりましたたばこ消費税による措置分は約千二百億円というようなことになっております。
  42. 野口幸一

    野口委員 それでは、今もおっしゃった特別の、財政が豊かになりましたら措置をいたしますということはどういうことですか。返すということですか。猫ばばするのですか。ある部分については返す、ある部分についてはそのまま返さないでほっぽらかすというのですか。この性質は何ですか。借財ですか。
  43. 斎藤次郎

    ○斎藤(次)政府委員 これは、物事、いろいろ今申し述べた数字のそれぞれによってやや違います。  例えば厚生年金の繰り入れの特例につきましては、特例期間、六十四年ということになっておりますが、それ以降、国の財政状況を勘案しつつ、積立金運用収入を含む減額分を返済するということになっておりますので、これは明らかな借金でございます。これはお返しするということになっております。  住宅金融公庫の繰り延べにつきましては、これは利子については今年度予算措置をしておりますし、この住宅公庫の金利に段階金利を導入することによって将来増収を図るという措置と組み合わせて、将来は返済金が自然に返っていく、もちろん所要の繰り入れ措置は行うわけでございますけれども、将来増収措置が期待されるという意味で純粋に国が借金をしているというものではないというように、各経費によって違います。  ただ、いずれにせよ、各制度がそれぞれ将来にわたって適切に運用されていくように、そこは基本的にはかっちりして財政が責任を持つ、そういうことになっておるわけでございます。
  44. 野口幸一

    野口委員 そういたしますと、国債整理基金特別会計への繰り入れを停止した分の総計額は、いずれこれは返さなくてはならない金なんでしょう。この分も入れなければ実は国債は返せないのでしょう。そうじゃないのですか。この分は永久に入れなくてもやっていけるという数字ですか。どうですか。
  45. 斎藤次郎

    ○斎藤(次)政府委員 繰り入れを停止した額は総額で十兆四千六百億ぐらいになっておるわけでございますが、これはいわば毎年度、例えばNTTの株の売却収入によって返済をするというようなことで、法律上認められましたいわば六十年償還、毎年六十分の一ずつ前年度期首の総額を返していくという制度の根幹を維持して、その分は実は国債整理基金からお支払いをするというか、償還をしておるわけでございます。したがいまして、この分については既に処置が済んでおると私ども考えておるわけでございます。
  46. 野口幸一

    野口委員 それは本年度初めてNTTの株が売れたからそういうことか言えるのであって、今まではほっぽらかしておったのでしょう。未来永劫にNTTの株があるわけじゃないですよね、はっきり申し上げて。先ほども大臣は本会議で言っておられましたが、四年程度のものだとおっしゃってました。それから先は一体どうなるのかという問題も含めまして、決してこの国債整理基金というものが、今まで繰り入れしなかった分というのはそのまま済むものではない、いずれかの時点でこの部分についても何らかの措置をしなければならぬということは事実でしょう。違うのですか。
  47. 斎藤次郎

    ○斎藤(次)政府委員 その点については、ちょっとお言葉を返すようでございますけれども、NTT株の売却収入等がなくなりまして、将来今の国債制度の根幹をなしております定率繰り入れあるいは六十分の一の償還ができないという事態になりますれば、当然のことながら定率繰り入れを復活いたしまして、国はその分を赤字公債出してでも繰り入れなければならぬと思いますが、この今までの十兆四千六百億の停止分は、国債整理基金の方における六十分の一の償還はきちんとなされた上でのことでございますので、これは将来手当てをする必要がないというぐあいに考えておるわけでございます。
  48. 野口幸一

    野口委員 それでは次の問題に移りましょう。国債整理基金の問題は後でもう少し詳しくさせていただきます。  先ほどちっと売上税の問題を大臣にいろいろと申し上げました。ある新聞によりますと、こう書いてあるのです。  自民党税制調査会のメンバーの一人は次のように説明する。   ——売上税の導入が商工業者の反発を招くのは覚悟のうえ。頼みは所得税減税の恩恵を受けるサラリーマンの支持だというのが大蔵側の説明だった。ところが、実際は国民の多数を占める中堅サラリーマンは差し引き増税となり、反対側に回った。大蔵のいいなりに税制改革案をまとめたわれわれは、二階に上がってハシゴをはずされた——。 こうおっしゃっているのです。  ここまで言い切られるにはそれ相当の中身というものがあると思うのでありますが、実はその後にこういうことが書いてあります。売上税の平年度の税収は、公表された大蔵省案だと五兆八千億だったが、実際は七兆円だという説、それからまた、マル優は一兆六千億と言われていたが、大手証券の経済研究所は二兆円を超えるといって計算をしている。いずれにしても、合わせて年間一兆六千億を超える実質増収が短期間に中に入ってくるということをわかっていてこの問題を出したのではないかという大蔵省の思惑がある、こういう指摘がございます。  どうですか、大臣、所感はいかがですか。
  49. 水野勝

    ○水野政府委員 売上税につきましては、課税資料を初めといたしましてのもろもろの統計資料等を使いまして積み上げたものでございます。また、積み上げるとともに、国民経済計算とか、そういったものからも再度チェックをいたしまして適正に見積もったものでございまして、決して一兆円、二兆円過小になっておるということは私どもないものと考えておるわけでございます。  また、利子課税につきましても、これは課税資料等を基礎にし適正な推計をいたしまして見積もっておるところでございまして、この点につきましても、過小であって数千億、数兆円のものが出るということはあり得ないことでございまして、またそういったことを念頭に置いて全体の進め方を考えだということは全くございませんので、御理解を賜りたいと思うわけでございます。
  50. 野口幸一

    野口委員 それはそうでしょうね。主税局長が、そうでございますだなんてなことは言えるはずのものではありませんから、そんな答えが出てくるとは思っておりません。思っておりませんが、少なくとも大新聞は一応信頼すべき筋を通して調べたのでありましょうから、まんざらこれは一〇〇%うそであったとは私どもは思い切れない。だから、何かあった、そういうような疑惑を抱かせるような先ほどのやり方ですね、税制改正のやり方、これが私は気に食わぬと言っているのです。  それだから、もっと国民が理解できるような、いわゆる百年の大計に基づくところの、今日のなにから今の税制改革はかくあるべきである、しかし中期的にはこう考える、短期的にはこう考えないと例えば内需拡大とかいろいろなことがあってこういう形になるということで出てくる法案ならば別だけれども、その一番大切な大どころの話が全然何にも言われなくて、つまり五十四兆円に対して四十一兆円の歳入しかなくて二〇%の物すごい赤字があるということは国民には余り知らされなくて、そして一番下のところで所得税減税法人税減税プラスしたものに見合うものを売上税でというようなことを言うから、実は次の段階では間接税が上がっていってこれにかわるのではないかとか、あるいは五兆八千億と言っているのが実際はもっとふえていくんではないかというようなことが議論されるんじゃないでしょうか。  だから、大臣、ここが肝心なんですよね。国民とのコンセンサスが足りなかったということはお認めですね。だけれども国民が少なくとも憲法を守ろうという以上、納税の義務はあるのです。はっきりと納税の義務を国民が意識をするならば、やはりちゃんとした説明をしてやれば私は増税だって構わないと思いますよ。少なくとも私個人はそう思います。だって、どこの家庭だってそうでしょうが。歳出が五十四兆で収入が四十一兆しかなかったら、どこかから金を持ってこなければならないんじゃないですか。ところが、先ほどから言っていますように、いろいろな会計から借りてやりくりして、うそついて、たばこを上げるとか言って一年だけ我慢してくれと竹下さんはおっしゃったけれども、一年どころかまだ続いておるでしょう。そんなことばかりやっていて、やりくり算段の会計を片一方でやっていて、そしてプラスマイナス・ゼロでございます、ゼロシーリングを守りましたとか、あるいはまた財政改革のために今日までいろいろと行政改革もやりましたけれどもだめだったんでといろいろ言いながら、実際はプラスマイナス・ゼロ、いわゆるニュートラル方式によって今減税をさせていただきたい、こんなことを国民が信じると思いますか。  そんなもの、実際これは間違っておりました、もっと大義名分を明らかにして、国民の前にその実態を明らかにしながら、長期的にはこう考えます、百五十三兆という赤字をなくさなければならないのが財政改革でありますし、財政再建であります、しかしそれはちょっと簡単にできませんとするならば、先ほど大臣がおっしゃったように、少なくとも二〇%になんなんとする国債費をなくしていくことが当面の目標でございます、しかしそうはいってみても、内需の問題これあり、貿易関係の問題これありで、短期的には今即刻こうしなければなりませんというのなれば、そこのところに出てくることはわかりますよ。仮に私が自民党でなくてもわかりますよ。しかし、その説明が何もなくて、そしてあたかも安易に小手先でちょっちょっとちょろまかせば、ちょろまかせばという言葉は余りよくないかもわかりませんが、ごまかせばという言葉だって同じですけれども、何とかそこを言い逃れてくれば売上税が入ってくるなんていうことはまさかお考えになったのではないと思うのですが、結果的にはそうなってくるのですよ。まあ山中大先輩に対しては申しわけないと思いますが、私どもはそうとらざるを得ないのですが、大臣、どう思いますか。もっと大義名分に立った、大上段から振りかぶった、大政党らしい、大蔵大臣としてもっと堂々たる財政改革案がどうして出ないのですか。
  51. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それはお言葉ではありますが、またそれはいろいろ財政のことを御心配いただいての御発言であることはよくわかっておりますが、私が先ほど申し上げましたように、まず財政再建の最初の第一歩というのは、新しく特例公債を出さないで済むような状況、そこに達したいということを冒頭に申し上げておるわけであります。それが昭和六十五年度にできるかできないかというようなことは、何度もここで御議論になっておりまして、状況は大変に厳しゅうございます。厳しゅうございますが、先ほども申しましたように、この数年間の日本の経済の動きというのは、やはりかなり日本経済の地方を出し切っていない、いろいろな事情から、石油危機とかプラザ合意とかございましたけれども、日本の力よりはやや成長が低過ぎたといいますか、もう少し高くできる力を持っておるのではないかということを私は思っておるものでございます。  それで、かつて政府が「財政の中期展望」で申し上げましたことは、名目で六%ないし六・五%の成長を前提にいたしますと、弾性値を一・一としましても七・一%の自然増収がある、そういう想定を予算委員会で申し上げたことがあります。七%の自然増収ということは三光近いわけでございますから、そういたしますと、特例公債を何年かのうちに出さないで済むということは必ずしも夢ではないというふうに思います。今六・幾つという名目成長は少し高過ぎるかもしれませんけれども、しかしこの何年間かのような低い成長が日本経済の本来の姿ではないはずであると思う立場から申しますと、やはり自然増収というものが経済がうまく回ればかなり出てきておかしくない。そういうことをまずやってみるべきだ。増税をしなければ、いわゆる税率構造を変えるという意味での増税をしなければ日本の経済はやれません、財政はやれませんと申すのには、まだもう一つ日本の経済をうまく動かすという努力をしてみる、まずそれをしなければならないのではないかというふうに私は思っております。
  52. 野口幸一

    野口委員 大臣、私は冒頭に申し上げましたように真心を込めて御質問申し上げているつもりでございますが、残念ながら大臣が今本当のところのことをまだおっしゃっていらっしゃらないと私は思うのですよ、あちらこちらいろんなことをお考えになって。総裁選も近うございますからいろいろとお考えになるのは御自由でございますけれども、しかし、余りにもこれはかたくなな物の考え方じゃないでしょうか。少なくともこれはそういうことを絶対離れて、私どもも与野党の立場を離れて申し上げますならば、決して私ども増税はうれしいことはありません、安いにこしたことはありませんけれども、少なくとも、先ほどから何遍も申し上げますように、大前提というものの理解が国民になくして、具体的な小さな問題に国民の理解を求めようといったって、それはうそになりますよ。だから、私が言いたいのは、少なくとも税制改革をなさるというのには国民とのコンセンサスが必要だ。確かにそうなんであります。それならば、今国民は一体何を求めているのかというところからまず始めなくちゃなりません。  じゃ、一体国民は何を考えているのかといいますと、実は不公平税制の問題であります。それが解消されないと、何を言ってみても実はそれがうそになるというような形で、受け入れてもらえません。税制が不公平だと考えているのが約七〇%あります。そして、税制改正をすべきであるというのは、またそれよりもはるかに多く、七六%あると言われております。これはある新聞社の統計ですが、事実そうだろうと思いますよ。だとするならば、不公平をまずなくしていくということが一番初めにあって、そして、国民の皆さん方が不公平でない、平等に取られているという感じの上に立って、財政再建に対応する税制改正というものを当然そこに明らかにお示しになる必要があるのではないでしょうか。不公平税制についてどのようなお考えでしょうか。
  53. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 増税の必要がありましょうとございませんでしょうと、やはり不公平というのはこれはもう税制には最も致命的な、税務行政にとりましても致命的な問題でございますから、これがなくなりませんと、国民が税金という形で本当に心から協力をしてくれるということはなかなか難しい。これをきちんとすることは何よりも大事なことだと思います。
  54. 野口幸一

    野口委員 どのようなスケジュールでこの不公平税制問題を解決しようとされていますか。どのような段階でどのような機関を通じておやりになろうと思いますか。
  55. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 まず何が不公平であるかということは今野口委員と私とで議論をいたしておりませんから、それに触れませんままで仮に幾つかのことを申しましたら、例えば給与所得というものは、概して把握が容易でございますから、例えば事業所得に比べてはどうしても勢い当たりが強いということなどはその一つであろうと思います。そういうことに対処しましては、先般御提案いたしました所得税法の改正で、いわゆる重税感というものをなくすために最初の方の刻みの税率をいわばライフステージで二つぐらいにしたいということを御提案もいたしましたし、配偶者特別控除のようなこともお願いしようと考えたわけでございますが、そういう問題が一つございます。それから、しばしば御指摘になりますキャピタルゲインというものも、行政上可能な限りではやはりできるだけ捕捉をするように努めなければならない。これも俗に不公平税制と言われておるものの一つかもしれません。これは制度というよりは実は行政の能力の問題であるわけでございますけれども、例えばそういったようなものが幾つか考えられます。
  56. 野口幸一

    野口委員 余り時間がありませんからこの問題はいつまでもしゃべっているわけにいきませんが、いずれにしましても、まずは不公平感がどこから出てくるかということは、やはり世に言われるところのトーゴーサンとかクロヨン、これはまずその最たるものだと思います。それには、とにかくまず正確な所得というものをどのようにしてキャッチするか、捕捉するかということにかかってくると思います。  その捕捉の仕方は本当に矛盾だらけであるということは、非常に卑近な例を申し上げますが、実は私の娘が保育園の保母をいたしております。そして、保育料はもちろん取っておりますが、その保育料の金額が、前に子供を乗せ、後に荷台に乗せて自転車で送り迎えをされる看護婦さんの家庭の保育料と、自家用車で奥様が子供を連れて預けに来られる方の保育料とが逆転しているんですね。実は御主人と両方、二人とも源泉徴収で取られていらっしゃる御家庭のお子さんの方が高い保育料で来ていらっしゃる。自家用車で送ってこられる奥さんのお子さんの方がはるかに低い保育料で来ておる。お父さん、この矛盾は一体どこから出てくるのという質問に対して、私はどう答えたらいいのか戸惑うこともしばしばであります。つまり、その御家庭が税をごまかしているんだよとは、ちょっとわからないわけですが、言いにくいわけでありますけれども、少なくとも何か外から見れば一見不可解な事態が現象面としてはあらわれているのであります。だから、捕捉をもっとしっかりしなければならぬ。もちろん国税当局も努力をしなければならないだろうし、それに対して人員が必要ならば思い切って人員をふやすべきでもありましょうし、まずは捕捉をはっきりするということでありましょう。  また、今回恐らく問題になってくるでありましょうけれども、例えば私ども提案をいたしておりますいわゆる預金の金利の税の問題にしましても、一体限度額なりあるいはまたその金額がどうきっちりと法に決められたとおり守られているか、いわゆるカード制の問題ですけれども、そのことも実はまだ政府としては一遍考えてみようかとも思っていらっしゃらないような気がします。そこらは確かに不公正、不公平というところにつながってくるのですね。  だから、そういうところを地道に発掘して、そして国民の今一番悩んでいることは何なのか、国民が求めているものは何なのかということをよく御調査されて、確かに大臣が言われる不公平と私どもの言う不公平と少しすれ違いがあるかもわかりません。あるかもわかりませんが、お互いにディスカッションをする中にあって初めてその不公平が明らかになり、そしてその不公平はどういう時期にどういう形で直しましょうというスケジュールができて、そしてそれが達成された後に立って実は税制改革なるものが引き出されてくるべきものではないでしょうか。この点はどう思われますか。ここでこの税制改革の問題は終わりたいと思いますが、どうですか。
  57. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それはどういう状況にありましても不公平というものはやはり直していかなければなりませんで、殊にそれが大きな税制改革でもいたすというようなときには、国民がかねて思っておられるそういう不公平感というものがいろいろな意味で表明せられますので、税制改正を成功裏に導くためにはやはり不公平というものは改めていかなければならない、そのとおりと思います。
  58. 野口幸一

    野口委員 時間がありませんから、もう少し追及したかったのですけれども、次回にさせていただきます。不公平税制の問題は何としても税制改革の柱であって、基本的にそのことをなし遂げなければ次の課題に入り切れない、また国民が税というものに対する信頼感を取り戻すことはできないということをひとつしっかりと頭の中に入れておいていただきたいと思います。  さて、今回の補正予算のいわゆる公共事業財源にNTTの株の売却収入の一部を繰り入れられました。聞くところによりますと、明年度は一兆三千億、六十四年度は二兆数千億になると言われておりますが、なぜこの売却収入国債の買い戻しなどいわゆる国債償還財源に使わなかったのですか。今のこの四千五百八十億ですか、この金も含めまして、もちろん一部は納めて、それで残った分がこれだけだとおっしゃるわけですが、それも含めてなぜ国債の買い戻しにお使いにならなかったのですか。
  59. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは結局政策選択の問題だと思うのでございますけれども、もちろん正規の国債償還はいたしまして、さらに野口委員の言われますように、その上にいわば自発的と申しますか、上乗せ償還をすることもこれは考えられるではないか、どうしてそうしなかったのかというお尋ねでございますが、その上乗せ償還をするか、あるいは現在緊急な問題でありますところの内需の振興、社会資本の充実、殊に地域の活性化のためにこれを使うかということは、どちらが優先する緊急度を持っているかという選択の問題だというふうに考えます。私どもは、決まりました償還をいたしました後は内需振興、地域の活性化にこれを役立たせることが今の我が国経済としては優先度が高いのではないかと考えたわけでございます。  なお、そのような内需振興、社会資本の充実が非常に優先すべき課題であるとすれば、こういう金がございませんと、それだけ余計建設国債出していたすことになると存じますので、そういうことを考えますと、建設国債出しながら片方で上乗せ償還をするということは実は余り意味のないことであって、それならそれだけ建設国債を出さずにこれをそのかわりに社会資本の充実に使った方がいいのではないか、こういうふうに考えるに至りました。
  60. 野口幸一

    野口委員 私はそれは詭弁だと思うのですね。少なくとも国債償還財源に充てようということを決めたのは、たしかこの前の国会だったかで、この売却益の問題についてはそういうような内容で実は決まっているはずでございます。そして、そのときにまさかこんなにたくさん高く売れるということについてはだれも想定しなかった。ところが、案外高く売れた。それで、四千五百八十億ですかという非常に高い差額がなお国債償還しても残った。さあ、残ったからどうしようということで、それは、大臣が言われるように、一部建設国債で今賄っている分は、その分だけ違うところで公共財源に使えばその分だけは減るのだから、そういうものに使った方がいいのじゃないかという考え方もあるかもわかりません。  しかし、宮澤大臣が言われております。そのことは、実は新聞等にこういうように書かれております。これは真偽のほどをお聞かせいただきたいのですが、「宮沢蔵相の考えは、財政再建は必要だが、ここ数年間の緊縮財政が輸出志向、つまり大幅黒字の一因にもなっている。一方で、社会資本整備が遅れている。なにか財政で工夫して社会資本投資を拡大していけば、内需志向になるし、税収も増えて財政再建も進む、という考え」でこの問題を思っていた。ところが、たまたまうまく「NTT株の高騰で、そのための財源の裏付けができた。というわけで、大蔵省内ではNTT株の売却収入を、宮沢蔵相のイニシャルをとって「M資金」と呼んでいる」、こう書いてあるのでありますが、それがM資金であるかL資金であるかは別といたしまして、宮澤大臣考えはそのような御発想ですか。
  61. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 新聞がそのように説明をしているのだと思いますが、考えの大筋は、私が先ほど日本経済運営いかんということを申し上げましたところでも御理解いただけましたように、当たらずといえども遠からずというようなところがございます。
  62. 野口幸一

    野口委員 この問題の一番最後に、実は先ほども同じことになるわけでありますが、こういうことをすれば、つまり今大臣の言われたような使い方をすれば「内需志向になるし、税収も増えて財政再建も進むこという考え方、これは私も必ずしも否定するものではございません。そこで、これを減税財源に使う。減税財源に使いますと、実は購買がふえ、税収もふえ、内需拡大にも寄与すると私は思いますが、それは御否定なさいますか、肯定されますか。
  63. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これだけの金がありましたときに、それをこのような社会資本の充実に使うかあるいは減税に使うか、いずれが乗数効果が大きいかということはいろいろ議論のあるところだと私は思います。確かにそれは両方の考え方があると思いますが、今の我が国のような状況考えますと、一つはやはり雇用の問題がございますので、減税というのはどうもすぐに雇用には響きにくうございます。そういうこともございますから、あれこれ考えまして、社会資本整備はいつかはやっておかなければならないことでもございますので、そちらの方がこの際よりよい道ではないかという判断をいたしたわけでございます。
  64. 野口幸一

    野口委員 私は実はこの問題を非常に中心に御質問を申し上げたかったのでありますけれども、初めに減税財源にこのお金を使おうと言ったのはどなただか知っておられますか。このNTTの売却益を減税財源に使おうと言ったのは、一番初めにだれが言ったか御存じじゃありませんか。
  65. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 減税がやはり非常に急務である、これは何としても政治の課題としてしなければならない、そのためにはいろいろ財源考えられると言われまして、例えばという中にこれが入っておったという中曽根首相の、昨年でございましたか、そういう言明を私は新聞で読んだ記憶がございます。
  66. 野口幸一

    野口委員 そうなんです。中曽根総理自身が一番初めにこのNTT株売却の益金は減税に使うとおっしゃったのです。その意味ではこれまた公約違反ですね、選挙のときそうおっしゃったのですから。大臣、そうじゃないと言われますか。
  67. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは、御本人も言っておられまずし、私も今申し上げましたが、例えばと言って一つの可能性として例示をなさったというふうに私は当時から受け取っております。
  68. 野口幸一

    野口委員 例えばであろうと何であろうと、例示をなさったということは、可能性のあることでありまして、全然可能性のないものを例に挙げますか。それはちょっといただけない言葉です。例に挙げるということは、そういう可能性があることを秘めであればこそ、例えば電電公社の株の売却益ということが出てくるのでありまして、このことを総理みずからが選挙のときにおっしゃったのです。今回またそれを否定なさっているのですが、前の売上税と同じように、これはまた公約違反たるものでございます。
  69. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 仮に金がなくなったので減税はやめたということになりますとそうかもしれませんが、実は減税はやろうとしておるわけでございまして、そのため殊に今年度でございますと財源は何とかやはり探さなければならない、国会のお許しを得れば剰余金もございますからここはやれるというようなことで、減税をしないと言っているわけではございませんから、そういう意味では一つの選択、それによらずに減税が可能であるということになっておるのではないかと思います。
  70. 野口幸一

    野口委員 いや、私は、それは総理大臣が選挙のときに実はそう言われたとするならば、そのことはやはり明らかに理屈の立つ理由で転換してもらわなければならぬと思うのです。というのは、先ほども大臣が言われたように、少なくとも最終的にはいわゆる内需拡大を呼び、税収もふえ、財政再建に帰するところにその目的があるのだとおっしゃいました。私はそのことについて決して否定はいたしません。そうだとすると、減税だって同じ目的になるのです。なるのですから、何も全部やれとは言いません。少なくともそのことに回す可能性は当然あってしかるべきじゃありませんか。これは全然できないという代物ではありませんね。全然できないという代物ですか。どうなんですか。
  71. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私自身は適当ではないと思いますけれども、もとよりできないという種類のことではございません。
  72. 野口幸一

    野口委員 そうすると、今の法律では電電の株の売却益は減税財源には回せないけれども、別の法案が提出されてそれが可決されれば減税にも使うことは可能であるということですね。
  73. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 法律的には可能かとおっしゃれば、それは私は可能であると思います。ただ、どういう法律をつくっていいか、つまりこの財源減税とを結ぶという法律をどうやるかちょっとよくわかりませんが、法律的にあるいは方針の問題として不可能とかなんとかいう種類のことでは私は無論ないだろうと思います。
  74. 野口幸一

    野口委員 大体、国債整理基金に当然入れなければならないという法律があったのです。それを途中で入れなくてもいいという法律をつくってやめているのです。とにかく勝手なものですね。都合のいいときには法律をつくってそれを実施しようとして、都合が悪くなったら法律をつくってこれをやめて、また都合が悪くなったらどうするという、とにかく法律の上に法律を、どんどん例外規定を決めているのが今日までのスタイルでしょう。だったら、そういうやり方を決めれば、こういう法律がありますけれども実はこういう形で減税財源に使うことができるという法律だってできるのであります。できる可能性があるわけです。どうですか。
  75. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 減税歳出でないものですから、どういう法律かはちょっと私に、専門家がわかるかもしれませんが、これは不可能だとかなんとかいう話ではありませんで政策の選択の問題だと思います。
  76. 斎藤次郎

    ○斎藤(次)政府委員 大変難しい御質問でございまして、事柄は、法律をつくればそれは憲法違反でなければ何事も可能だという意味ではそのようでございますけれども、私どもの今度の法律趣旨は、一時の余裕金を活用して最終的には国債償還に充てるという建前を崩してないわけでございます。したがいまして、電電株を国債整理基金に帰属させて国債償還に充てるという基本的な大原則は崩していないわけでございます。それが今度減税に充てるということになりますと、そういう一時的なお金をいわば減税という金で使ってしまうわけでございまして、国債償還に充てるという道は完全に閉ざされるわけでもございます。そういう意味で、当、不当ということで申し上げれば不適当ではないかというのが私どもお答えになるのではないかというぐあいに考えるわけでございます。
  77. 野口幸一

    野口委員 無利息で貸すのでしょう。その利息の分はどうですか。利息はどうなるのですか。利息は本来の趣旨から外れるのじゃないですか。償還されないのじゃないですか。本来ならば、国債償還資金の中で利が利を積んでいく金でしょう。それを無利息で貸すのでしょう。そうするとその分だけ減るじゃありませんか。それはどう説明されますか。
  78. 斎藤次郎

    ○斎藤(次)政府委員 その点は先生御指摘のとおりでございます。その点につきましては、実は内部で随分議論いたしました。そこで、これは内需振興のために公共投資をするという観点から、その利息の点については目減りすることは確かに先生の御指摘のとおりでございます。
  79. 野口幸一

    野口委員 金が少ないからこれはいいのだ、金が多いからこれはちょっとまずいのだとか、金額の問題で言っているのじゃないのです。筋の問題で言っているのです。そうとするならば、減税の方はしまえてしまうから、いわゆる消費をするのだからだめだという理屈は通らないでしょう。そうじゃありませんか。どうですか。
  80. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 いや、それは違うと思います。これに利息を取れとおっしゃいますか。利息を取れということは、それはこれを借り入れる人が利息を払うということでございます。しかし、これでもって地方の活性化を図り内需の振興をしよう、地域の開発をしようというときに、その方々からわずかの利息を取るか、それとも、こちらは利息は確かに減りますが、我慢して、地域の振興をやってもらう方がいいかという、これも選択の問題であって、先ほど次長が申し上げましたのは、今度この金をやりっきりにしてしまうわけではございません、先々どういう形でか返ってくるわけでございますから、国債整理基金がこの金をなくすわけではないので、減税になればなくしてしまいますからということを申し上げたのです。
  81. 野口幸一

    野口委員 いや、それはわかっているのです。はっきり言って、意味が違うのです。理屈としては、利子は取らないのですから、よそへ貸し付けなくても自分のところへ置いておくだけでも利息はつくのです、その分は結局ただで貸すのですから、その分だけは減収になって金がどこかへ行ってしまうのです。そうでしょう。そうしたら、はっきり言ってその分はロスです。その分だけは国債整理基金から金がなくなるわけです。だから、それからいうならば、金額は違うかもしれないけれども、片方は消費に使う財源だから、つまり減税だから、減税というのは全然返ってこない金なんだから使ってはいけないのだという理屈は成り立たないでしょうというのです。そうでしょう。
  82. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 よくわかりましたが、元本をなくすのと利息をなくすのは大分違いますよ。
  83. 野口幸一

    野口委員 私はそれは理屈の問題だと思うのです。先ほどから言うように、今日までとってこられた政府のやり方というのは、はっきり言ってひきょうだと私は思うのです。簡単に言うならば、財源の問題についてもっと率直に増収なら増収ということを図ればいいのにもかかわらず、小手先で今日まで財源の問題を考えてこられて、いろいろな措置法律の上に法律を重ねて否定をしたり肯定をしたり、いろいろな形で財源を確保してこられたのです。だから、そのことについては私どももいろいろ反対はいたしましたけれども、今日まで来ているわけです。先ほど申し上げたように、たばこの値上げなんかは、一年間しかやりませんと竹下さんはここで何遍も言ったのです。本当に一年間ですねと言ったら、はい、一年間ですと言って、どうその皮でことしもやっているじゃありませんか。そういうことがたまたまあるわけですから、決して金額の多少で物を言っているわけではないのです。だから、これは減税にも使えるということを大臣からお答えをいただきたい。この法律ではできません。しかし、法律さえつくれば減税にも使うことがあり得るということを言ってほしいのですよ。
  84. 水野勝

    ○水野政府委員 所得税減税はすべて一般会計財源でもって行われるわけでございまして、それは税収である場合もございますし、結びついてはおりませんが、特例公債出しておれば、これはある意味では特例公債減税をしているとも言えるわけでございます。そのある財源を必ず減税に充てるという立法というのは、厳密に申し上げたらそれはないわけでございまして、例えば剰余金が出ましたからというときでも、その剰余金は、二分の一以上は国債整理基金繰り入れるという財政法六条の規定がございます。それを外して一般会計に残しておいてそれを事実上減税に充てているという例は過去にございますけれども、その場合でも、その部分を減税に充てるという立法をお願いしているということはないわけでございますので、これは資金繰りの話ではなかろうかと思うわけでございます。
  85. 野口幸一

    野口委員 だから、この金はひもをつけないで一般会計に入れることができるという法律をつくればいいのですよ。そうでしょう。一般会計に入れればこれはどうでも使えるわけですから、一般会計に入れることができるという法律さえつくれば、これは減税でも何でもできるということなんじゃありませんか。ひもをつけるからそういうことになるんじゃありませんか。そうでしょう。
  86. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それはこうでございますね。国債償還に充てるということがあるわけでございます。そういう法律がございまして、それは今私ども動かしていないわけでございます。ただ、余裕金を無利子で運用しようとしているわけでございますね。返ってきますと、やはり国債償還に充てるというところへ戻ってまいります。そこのところを動かしておりませんから、今野口委員の言われるようにしようとすれば、国債償還に充てるということを法律をやめてしまってということにすれば、それは法律上はできるかもしれません。しかし、それは当然のことながら国債償還に充てることをやめるということでございます。
  87. 野口幸一

    野口委員 今回の法律では、この剰余金四千五百八十億というのは一たん一般会計にお入れになるのでしょう。ただ、その使い方がいわゆる産業投資という形の中で縛られているということであって、その縛りさえ解けばいいんじゃありませんか。何も全部をそこへ入れろと言っているんじゃないのですよ。今のこの四千五百八十億の中でやり方によっては差し繰ることができるじゃありませんかということを言っているのです。
  88. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それで、国債償還に充てるということを貫こうとすれば、その金は減税に使ってしまってはいかぬわけです。そうでございましょう。私ども国債償還に充てるという建前をちゃんととっておりますから、貸すのだけれども返ってくるようにしてございます。そこのところの選択です。
  89. 野口幸一

    野口委員 二十年間かかるのでしょう。価値観そのものも変わりますよ。目減りします。利息をつけないのでしょう。そういう損失分は一切、先ほどの法人税減税と同じで、全くだましなんですよ。そうでしょう。二十年間貸しておいたら、今百円のものが二十年先にどれだけの値打ちになるのでしょうか。現に利息をつけないで貸して返ってくるわけですから。そういうことの目減りを考えれば、この財源一般会計に入れて減税財源にも使えるような幅を持たせることがどうしてできないのですか。全部を入れろと言っているのじゃないのですよ。国債整理基金にも入れ、そして元金償還をした残りが四千五百八十億あった。この金を使うに当たって一般会計に入れる、一般会計に入れてその中でいろいろなものに使いたいと大臣はおっしゃる。しかし、その目的は最終的に内需拡大であり、増収であり、財政再建だ。我我の言っているのもその目的と一緒です。ただ、ちょっと形態が違うのは、あなたのおっしゃるように直接には返ってこない。しかし、これも回り回れば返ってくるのですよ。そうでしょう。購買力がふえればそれだけ物が売れる。物が売れれば所得が上がる。所得が上がれば税収が上がってくるのですよ。その会計そのものには返ってこないかもわからないけれども、しかし何らかの形で国の中に戻ってくるのですよ。行きっきりじゃないのですよ。あなた方、おっしゃったでしょう。法人税は一たんはいただきますけれどもいつかは個人のところに返ってきますと言ったじゃないですか。我々だって、減税をしてもらえればその分はいつか国の方に返るのですよ。だから、その理論から言うならば、決して減税はできないという理屈は成り立ちませんよ。どうですか、大臣
  90. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ですから、それは不可能だと申し上げたことはなくて、それは選択の問題だというふうに私ども思っておるのです。
  91. 野口幸一

    野口委員 私、これ以上やりますとあれですから。選択の問題ですと言うのは、結局考慮の余地があるということなんでしょう。だから、今のこの法律ではできないかもしれないけれども、新たな法律を立法すれば減税財源にも使うことがあり得るということがどうして言えないの、ですか。
  92. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この点は何度も御質問がございまして、私どもそれは不可能でございますということは申し上げたことはございません。適当なことでないと政府考えておるというふうに常に申し上げておるのです。
  93. 野口幸一

    野口委員 これは選択の問題だとおっしゃいますけれども、実はこの選択は既に総理大臣自身が選挙のときに選択されているのです。選択の問題というのはもう済んでいるのです。総理大臣自身が減税財源に使うとおっしゃっているのです。だから、問題は、大蔵大臣がそれをいかに具体的に法律として内閣提出としてお出しになるか否かにかかっているのですよ。  だから、私はこれで質問をやめますが、この問題は少しく問題がございますから、どうか後にまたもう一度機会を与えて話させていただきたい。だから、大臣、どうか今の問題をかたくなに考えられずに、もう少し柔軟な対応をひとつ頭の中でお考えいただきたい。私は当初申し上げました。なぜあんな歌を引用したか。「「寒いね」と話しかければ「寒いね」と答える人のいるあたたかさ」つまり、私どもが投げかけた言葉に対して誠意を持って答えるということがいかに大切かということを私は言いたかったのですよ。だから、そこのところにお気づきになるならば、私は寒いですねと今問いかけているのです。そうすると同じように寒いですねと言ってほしかった。しかし、必ずしも寒いですねとは言えなかったかもしれないけれども、少なくとも私どもの気持ちはわかっていただけたはずです。そうだとするならば、それに対応した誠意ある態度をいずれかの時点でお示しをいただきたい。  私は重ねて申し上げますが、ちょっとこの問題だけは結論を出さずに保留をさせていただきまして、きょうの質問を終わります。
  94. 池田行彦

    池田委員長 次回は、明二十九日水曜日午前十時五十分理事会、午前十一時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時二十九分散会      ————◇—————