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1987-08-21 第109回国会 衆議院 外務委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十二年八月二十一日(金曜日)     午前十時十分開議 出席委員   委員長 山口 敏夫君    理事 甘利  明君 理事 浦野 烋興君    理事 奥田 敬和君 理事 北川 石松君    理事 中山 利生君 理事 永末 英一君       石破  茂君    石原慎太郎君       大島 理森君    木村 義雄君       鯨岡 兵輔君    椎名 素夫君       竹内 黎一君    武村 正義君       中山 正暉君    水野  清君       森  美秀君    上原 康助君       岡田 利春君    佐藤 観樹君       伏屋 修治君    渡部 一郎君       岡崎万寿秀君    松本 善明君  出席国務大臣         外 務 大 臣 倉成  正君  出席政府委員         防衛施設庁労務         部長      山崎 博司君         外務大臣官房審         議官      渡辺  允君         外務大臣官房審         議官      柳井 俊二君         外務省アジア局         長       藤田 公郎君         外務省北米局長 藤井 宏昭君         外務省欧亜局長 長谷川和年君         外務省条約局長 斉藤 邦彦君         外務省国際連合         局長      遠藤  實君         外務省情報調査         局長      新井 弘一君         通商産業大臣官         房審議官    深沢  亘君  委員外出席者         防衛庁防衛局調         査第二課長   伊藤 康成君         防衛庁教育訓練         局訓練課長   柳澤 協二君         防衛庁装備局航         空機課長    江間 清二君         外務省経済局次         長       池田 廸彦君         大蔵省主計局主         計企画官    杉井  孝君         大蔵省主税局国         際租税課長   入谷 盛宣君         国税庁調査査察         部調査課国際調         査管理官    川田  剛君         厚生省援護局庶         務課長     大西 孝夫君         中小企業庁計画         部下請企業課長 桐山 正敏君         海上保安庁警備         救難部参事官  向山 秀昭君         郵政省電気通信         局電気通信事業         部監理課長   品川 萬里君         外務委員会調査         室長      門田 省三君     ————————————— 委員の異動 八月二十一日  辞任         補欠選任   大石 正光君     石破  茂君   坂本三十次君     大島 理森君   村上誠一郎君     木村 義雄君   土井たか子君     上原 康助君 同日  辞任         補欠選任   石破  茂君     大石 正光君   大島 理森君     坂本三十次君   木村 義雄君     村上誠一郎君   上原 康助君     土井たか子君     ————————————— 本日の会議に付した案件  連合審査会開会申入れに関する件  所得に対する租税に関する二重課税回避及び  脱税防止のための日本国政府カナダ政府と  の間の条約締結について承認を求めるの件  (第百八回国会条約第二号)  政府調達に関する協定を改正する議定書締結  について承認を求めるの件(条約第一号)      ————◇—————
  2. 山口敏夫

    山口委員長 これより会議を開きます。  この際、連合審査会開会申し入れに関する件についてお諮りいたします。  ただいま商工委員会において審査中の内閣提出外国為替及び外国貿易管理法の一部を改正する法律案について、連合審査会開会申し入れを行いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 山口敏夫

    山口委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、連合審査会開会日時等につきましては、委員長間において協議の上決定いたしますので、御了承願います。
  4. 山口敏夫

    山口委員長 次に、所得に対する租税に関する二重課税回避及び脱税防止のための日本国政府カナダ政府との間の条約締結について承認を求めるの件及び政府調達に関する協定を改正する議定書締結について承認を求めるの件の両件を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。佐藤観樹君。
  5. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 今提案お話しのございました二法案の審議に入る前に、外務大臣二つ大きな要件のことについてお伺いしておきたいと思うわけでございます。  それは申すまでもございませんが、昨日、ソ連が在モスクワ日本大使館防衛駐在官、それから三菱商事の次長に国外退去を求めるということが起こりました。それに合わせて外務省の方も、過日の駐日ソ連通商代表部代表代理国外退去を求めるということに相なったわけでありまして、その辺の経過、それから私たちから見ると、確かにスパイ横田基地の問題あるいは東京航空計器の問題等々、これは事実関係については、ある程度正確に言いますれば裁判でしかわからないということになろうかと思いますけれども、何かお互い報復が始まったというふうに感ぜざるを得ないわけでございます。  これは、外務大臣自体も九月には日ソ外相会議もニューヨークで予定をしていらっしゃるわけでございますし、また墓参の問題あるいは長期的な日ソ関係の問題からいいますと、何か暗い冬が始まるのかなあということを大変心配をしているわけであります。スパイ事件は、もちろんお互いに、これはあるとすれば決して私たちが容認をするところではございませんけれども、担当の外務大臣として所見をまず冒頭にお伺いをしたいと思います。
  6. 倉成正

    倉成国務大臣 ただいま先生お話し竹島防衛駐在官等に対するソ連からの退去要請につきましては、今回のソ連側措置は全く事実無根の遺憾なものであると我々は心得ております。したがいまして、これは日ソ関係に水を差すものでありますけれども、かかる措置が繰り返されて日ソ関係に悪い影響が出ないように強く希望するところでございます。  先ほどお話しポクロフスキー通商代表部代表代理に対する我が国のとっております措置は、その身分にふさわしくない行動をとってきましたので、我が方が累次出頭要請をいたしましたけれども、その出頭要請に応じないということであるので、やむを得ず退去を要請したということでございます。したがいまして、ごく当たり前のことをやったというだけのことでございますので、我々は冷静にこの問題に対処して、この問題が日ソ関係に悪影響を及ぼさないように努力をいたしたいと思っておる次第でございます。
  7. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 これは今お話しがあったように、ポクロフスキー代表代理、これをいわばペルソナ・ノン・クラータ、受け入れがたき人物という扱いにせず国外退去を求めたというのは、一つ外務省の、これ以上事が拡大をしないような、あるいは日ソ関係に悪い影響を与えないような、そういう配慮であるということなのか。  外相としても、これから北方墓参の問題も控え、また日ソ外相会議の開催も控えということで、最大限、これはでき得る限り——もちろん刑事的なスパイ問題ということは、これは刑事問題でありますから覆うべくもないわけでありますけれども、それ以外の点につきましては、今後とも日ソ関係は少なくも後退をしない、前進をするような配慮をしているということなのか。  また、ソ連側もある程度これ以上拡大をさせないというような考え方は、外務大臣は見通しとしておありになるのかどうか、その点をお伺いしたいと思います。
  8. 倉成正

    倉成国務大臣 かような問題につきましては冷静に対処するということが必要でございますから、我が方としては、やるべきことはきちっとやる、しかしそれはそれ、これはこれということで、いたずらに感情的になったり報復措置をするとか、そういうことではございません。やはり主権国家としてやるべきことは当然やるということで対処している次第でございます。
  9. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 やはり心配なのは、この問題によって北方墓参を待ちに待っていた方がだめになるとか、あるいはとかくきしみがちな日ソ関係、特に外務大臣もいろいろお骨折りになっておられますけれども日ソ外相会議がだめになるというようなことがあってはならぬと思いますけれども、そのための努力はなさいますか。
  10. 倉成正

    倉成国務大臣 ソ連も大国でございますから、こういうことによって今先生おっしゃったようなことがないと私は信じております。
  11. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 それと、もう一つ外務大臣にお伺いしておきたいのは、きのうの新聞の報道するところによりますと、総理に、九月でありますか、国連総会の折に、レーガン大統領がINFのソ連との交渉の結果というものを事前に伝えたいというのか、サミット参加国ばかりではなくNATOの参加国にもひとつ集まってもらいたいという呼びかけがあったと報道されたわけであります。  しかし、その日の夕刊を見ますと、官房長官は全く知らないと言う。総理大臣は検討しているがごとき発言が新聞にも出ている。何か国連総会では外務大臣にかわって総理大臣演説をするのではないかと。これは九月二十日ごろでございますか。総理大臣にかわって外務大臣演説をするという話はよく聞いたことがありますけれども外務大臣が行く予定になっているのを総理大臣が行ってかわるというのも余り聞いたことがないのでありますけれども、いやしくも総理訪米一つは貿易問題を持っておりますし、大変な時期に総理訪米をするということ、あるいはこれには総理の中南米の訪問ということと絡んでいるのかなという気もするのでございますけれども、一体外務大臣はどう御承知で、これは一体真実どういうことなんでございますか。  何分とも総理訪米ということになりますと、事は非常に重要だと思っておりますが、例の調子で官邸筋外務省を差しおいてまたやっているということでございますか。
  12. 倉成正

    倉成国務大臣 官邸外務省との関係はぴったりいたしておりまして、いささかのすき間もございません。  しかしながら、今先生お話しの昨日の新聞で報じられているような拡大サミットについては、現時点で私は具体的には聞いておりません。したがいまして、お答えのしようがないと申す以外にございません。
  13. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 きょうの報道では大分修正がされて、いや、それは国連総会のときにレーガン大統領夕食会をやりたいということから事が発したのではないかというようなことが報道されておりますけれども、どうなんですか。  これは要するに今の外務大臣答弁ですと、そういうアメリカ側あるいはレーガン大統領の方から呼びかけは全くなかったということなのか。外務省がかやの外に置かれて、ホット電話レーガン大統領筋中曽根総理が直接にやっているということなんでございますか。
  14. 倉成正

    倉成国務大臣 少なくとも外交に関する限り私が知らないことはございません。したがって、私の方を差しおいて官邸だけでそういうことがやられるということはあり得ないことでございます。
  15. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 外務大臣がそういうふうに言われるのでしたら、これは恐らくなかったことというふうに私は理解をしておきます。  それでは、本議題でございます所得に対する租税に関する二重課税回避及び脱税防止のための日本国政府カナダ政府との間の条約、いわゆる日加租税条約について質疑を始めさせていただきたいと思います。  外務省説明によりますと、この日加租税条約の改正というのは、二十年前からあったものを改正するもので、カナダ側から申し入れがあったというふうに説明書に書いてあるわけであります。カナダにいらっしゃる日本人が一万七千人、日本にいらっしゃるカナダ人が二千五百人、明らかにカナダでいろいろな経済活動をしていらっしゃる、あるいはその他の活動をしていらっしゃる方がはるかに多いわけですね。にもかかわりませず、この日加租税条約というのがカナダ側から提案があったということはどういうことなんでございましょうか。
  16. 渡辺允

    渡辺(允)政府委員 お答え申し上げます。  現行日加租税条約は、先生も先ほど御指摘ございましたように、発効以来既に二十年を経過しておるわけでございまして、その意味で何かと現状に合致しない点も出てきているということがあるかと思われます。  また、その後一九七七年にOECD租税条約についてのいわゆるモデル条約というものが採択されておりまして、その後主として先進国間では特にこれを踏まえて租税条約をつくっているわけでございますが、そのような情勢を踏まえまして、一般的に現行条約を新しい情勢に合わせて改定をしたいという趣旨カナダ側申し入れてきたというふうに私ども理解をいたしております。
  17. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 今、冒頭言いましたように、むしろこれで恩恵をこうむるという言い方はおかしいかもしれませんが、二重課税回避する恩恵というのでしょうか、利便を感ずるのは、人数的にはどちらが多いかといえばカナダにいらっしゃる日本人の方が多いわけで、そういった意味からいったら、むしろ提案日本側が率先してやるべきものではないのかなと思うのでございますけれども外務省はこれはサボっていたということなんですか、どういうことでございますか。
  18. 渡辺允

    渡辺(允)政府委員 租税条約の目的が二重課税防止するということでございますので、確かに現状で見ますれば、日本人カナダに居住しておる者の方がカナダ人日本に居住しておる者より多いわけでございますので、結果としてはそれだけカナダに居住しておられる日本人の方々が二重課税の問題を回避することができるという意味では先生指摘のとおりだと存じます。  カナダ側から申し入れがございまして、私どもとしてもそれに応じて早急に交渉をしたわけでございますが、それもそのような事情は踏まえてのことというふうに御理解をいただきたいと思います。
  19. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 外務省説明書にもカナダ側から申し入れがありというのを堂々と書いていらっしゃるところを見ると、一体外務省というのはどういう感覚を持って事に当たっているのかということが、私は今の御答弁でも納得できない。  それで、今お話しにあったようにOECDモデルを基本にしてやったわけでありますけれども一体OECDモデルと違うところというのはどういうところがあって、それはどういうところからそうなっているのか、簡単で結構でございますので、御説明をいただきたいと思います。
  20. 柳井俊二

    柳井政府委員 お答え申し上げます。  御指摘のとおり、OECDモデルに沿った形の改定ではございますけれども日本側におきましても、またカナダ側におきましても、いろいろの条約先例あるいは国内法制等もございますので、若干の相違点があるわけでございます。細かい点は別といたしまして、主な点だけ挙げさせていただきます。  一つは、例えば投資所得に関する課税関係規定でございます。OECDモデルにおきましては、投資所得に対する源泉地国課税につきましては限度税率を設けております。これは配当の場合には一般的には一五%、親子関係がある場合には五%ということになっております。また、利子につきましては一〇%、特許権等使用料につきましては免税ということになっているわけでございますが、今回の日加間の新条約におきましては、配当に関しましては一般税率は一五%でございますが、親子間につきましてはOECDの五%に対して一〇%ということになっております。利子につきましてはOECDモデルと同じでございます。他方、使用料につきましては一〇%ということになっておりまして、免税となっているOECDモデルとは違っております。  そのほか、例えば芸能人所得につきましては、OECDモデル条約どおり一般源泉地国課税権を認めるということになっておりますけれども、このような活動が両国の政府間で合意された文化交流のための特別の計画に基づくものである場合におきましては、源泉地国免税としているわけでございます。これは文化交流の促進という観点から規定したものでございます。  その他退職年金規定でございますとか、あるいは明記しておらない種類のその他所得に関する規定等、若干の点で相違点がある次第でございます。
  21. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 そこで、少し逐条的に、簡単に新たに加わったものあるいは趣旨についてお伺いしたいのでありますが、まとめて言いますので、お答え願いたいと思います。  一つは、六条の一項の不動産所得に関するものですが、これは今までなかったわけですね。これが新たに入った理由というのは何なのか。  それから、第十条の配当。十条は、これはおのおの新たに加えられたもの、あるいはパーセンテージを下げたものもございますね。この辺のところはどういうことになっているのか。  それから、今御説明があった十七条の芸能人所得のことでございますけれども、「そのような活動が両締約国政府間で合意された文化交流のための特別の計画に基づき」ということなんですが、これも今御説明があったようでありますけれども、一体この「特別の計画に基づき」という具体的な必要要件というのはどういうものを想定しているのか。例えばお互い文部省同士補助金を出しているものというように事を限るようなことなのかどうなのか。  それから、これは恐らく、私も全部は見ていないのだけれども、これからの租税条約というのはこういった新たに入ったものは入れていくということなのか、ちょっとその点についてお伺いしたいと思います。
  22. 柳井俊二

    柳井政府委員 まとめて何点かお尋ねがございましたので、できるだけまとめてお答え申し上げたいと思います。  六条の不動産所得に関する条項につきましては、御承知のとおりOECDモデルには入っているものでございます。一般租税条約締結いたします場合に、いろいろな種類活動ないし所得につきましてできるだけこの租税条約制度を整備するということが望ましいわけでございまして、その観点から不動産に関する所得につきましてOECDモデルに沿った規定を入れたということでございます。  また、十条の配当につきましては、先ほど触れさせていただきましたが、OECDモデルとは若干違った規定でございますけれども、この税率等につきましては、我が国及びカナダの種々の条約先例も参考にいたしまして、また日加間の経済関係、特に投資関係というものを踏まえましてこのような規定にしたわけでございます。  また、利子条項につきましては、この税率そのものOECDモデルと同じでございます。  それから、最後お触れになりました芸能人に関する条項でございますが、これは御指摘のごとく政府間の交流に係る場合には特別の免税措置をとっているわけでございますが、この政府間の交流計画としてどのようなものを取り上げるかということでございますけれども、これは必ずしも包括的に、例えば一年の初めにことしはこういう計画でやるというところまで合意する必要はございませんで、特定の文化交流事業政府間で行われるという性格を持ったものであるということが両政府間で確認されれば、これが対象になるということでございます。したがいまして、何か具体的な交流計画がある場合に、これはカナダの方から言い出すかあるいは日本から言い出すかわかりませんけれども、どちらかからこの計画政府間のものであるということを言いまして、また相手側もそのとおり同意すれば、これも対象になるということでございます。  また、最後お触れになりました点の中で、このようなものをほかの租税条約にも取り入れていくかというお尋ねでございますが、既に第三国との租税条約でこのようなものを取り入れた例が何件かございます。しからば、今後どうするかという点でございますが、これはそれぞれの相手国との交流実態等を踏まえましてケース・バイ・ケースに判断していくべきものであろうというふうに考えております。
  23. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 そこで、さらに突っ込んで二重課税排除問題、脱税問題についてお伺いをしたいのであります。  ことし売上税問題が大問題になったときに、いやいや、そんなことをしなくても明らかに幾らでも、幾らでもとは言いませんけれども、財源は随分あるではないかということで、これは大変問題になったというか話題になったというか、反響を呼んだのでありますが、文芸春秋のことしの三月号に中央大学の富岡幸雄教授が「税金を払わない大企業リスト」というのを文書にして出されているわけであります。  その中には九大商社のうちの三菱商事、日商岩井、丸紅、伊藤忠商事、トーメン、ニチメン、兼松江商、これは有価証券報告書等によれば、税金を払ったことにしているけれども日本国内には六十年度には法人税納税額はゼロであったという書き方がしてあるわけであります。ただ、いろいろ考えてみますれば、支店から来る配当等につきましては、これは税金を取られていると思いますので恐らくゼロということにはなってないと思います。  しかし、いずれにしましても、今ざっとこの外国税額控除自体が五千億円単位になってかなり大きくなってきた。これはある意味では企業国際活動が活発になれば当然そのことはそうなってくるのだと思いますけれども、問題はこれが本当に正確に納税されているのかどうか、しかも調査権の問題が、外国に行っているということもありますので、このあたりが国民としても釈然としないところでございます。  そこで、そんな観点に立って外国税額控除方式というものについてお伺いをしたいわけであります。  今度の日加租税条約でも、日本側外国税額控除方式を使っておりますけれどもカナダにおきましては、外国子会社からの配当については外国所得免税方式を使っている、そしてそれ以外の所得につきましては外国税額控除方式ということになっておりまして、いわば二通りの控除方式が採用されているわけであります。カナダカナダ独立国でありますからどのようなことを採用しようともそれは自由でありますけれどもカナダ外国子会社からの配当について外国所得免除方式を使っているのはどういう意味を持つのだろうか、この二つを使うことによって税の不公平というのは生じないのだろうか、その辺についてまずお伺いしたいと思います。
  24. 柳井俊二

    柳井政府委員 今の外国税額控除の問題につきましては、御指摘のとおりカナダの場合には二つの方法を使っているわけでございます。  現行日加租税条約におきましては、日加双方ともいわゆる外国税額控除制度をとっておるわけでございますが一カナダ側におきましては、一九七一年に税制改革がございまして、この改革によりましていわゆる非課税剰余免税とするという措置が講ぜられたわけでございます。  この非課税剰余と申しますのは、一般カナダ租税条約締結している国に存在しておりまして、カナダ側の表現によりますとアクティブな活動を行っている関連の外国法人の税引き後の所得ということを意味するようでございますが、これから払われます配当につきましては、カナダ側の二重課税排除措置といたしまして、新たに配当に対する外国所得免除方式というものを取り入れだというのが背景でございます。  先ほど先生も御指摘になりましたように、二重課税排除方式を具体的にどのようなものにするかという点につきましては、各国それぞれの税制がございますので、これは租税条約当事国の選択に任されているというものでございます。OECDモデルにおきましても、この点は各国に判断を任せているということでございますが、日加間におきましてはこのような背景がございましてカナダに関しては二つ方式が採用されたということでございます。  そこで、これがどのような効果を持つかということでございますけれども、私どもといたしましては、いずれにいたしましても、我が国カナダのように税率に大差のない国の間での租税条約の場合には特にこの税負担に大きな差が生じるということはないものと考えております。
  25. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 そこで、外国税額控除方式についても、先ほど具体的な商社名を挙げましたように、国民の間にも、何だ、あんな大きな会社が、いろいろ国のものを使っていながら日本国に法人税としてほとんど税金を納めていないというのはおかしいのではないかという話が国民感情としてあるわけです。  それで、大蔵省なり国税庁にお伺いしたいのでありますけれども外国税額控除方式そのものに大変疑問が呈せられているわけであります。例えば現行制度では外国で納めたとして認める法人税の範囲が広過ぎるのじゃないかということやら、国外所得と国内所得の区分があいまいで、国外所得をできるだけ多く企業に有利に計算できるようになっている、あるいは控除限度額の計算が国外所得全体を一括して計算しているので、税率の高い国と低い国との外国税額がミックスされ、税率の高い国の外国税額についても控除が受けられる、あるいは発展途上国との租税条約で、外国でまけてもらい実際に納めていない税金が納めたものとして控除できるみなし外国税額控除制度等々、いろいろ批判があるわけでありますけれども、一体、大蔵省としてこの外国税額控除方式というのは本当に今のままでいいのだろうか。  この題名にもございますように、これは「二重課税回避及び脱税防止」と書いてあるわけです。ところが、企業は経済団体でありますから節税に走るということは、私は違法なことじゃないと思っておりますが、制度そのものが合理的なものでない限り、これは節税だから結構でございますというわけにはいかないと思うわけでありますが、現状を今私は具体的に挙げたわけでありますけれども、現在の外税控除方式というのがうまく機能しているというふうに思っていらっしゃるのか、その点はいかがでございますか。
  26. 入谷盛宣

    ○入谷説明員 お答えいたします。  外国税額控除方式が現在まで有効に機能していると考えるかどうかという御質問でございますが、外国税額控除制度そのものは国際的な二重課税排除するという制度として国際的に確立されたものでございまして、これによりまして我が国企業の国際取引に伴う税の障害を取り除くということで制度を発足、昭和二十八年に導入されたわけでございますが、それ以来重要な役割を果たしてきたというふうに考えております。
  27. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 それではちょっとお伺いしますけれども、前国会に法人税法の改正としてこの外税控除自体について、例えば控除限度額の計算のあり方あるいは外国法人税の範囲の問題等について、ひとつ厳しくする方向で改正をしようじゃないかというふうに法案を出されたけれども、今国会には提出されていない。それは政治的ないろいろな判断が働いていらっしゃることだと思うので、またこれはおいおい議論するにいたしましても、やはり現在のままの外税控除方式というのが今申しましたように控除限度額の計算の仕方とかあるいは外国法人税の範囲が今のままではいいということになっていないということじゃないかと思いますが、その点はいかがでございますか。
  28. 入谷盛宣

    ○入谷説明員 ただいま先生指摘のように、外国税額控除制度そのものは、これまで二重課税排除を目的とするということで確立された制度として機能してきたわけでございますが、同時に、御指摘のありましたような現行制度には幾つかの問題点が出てきていることも事実でございます。例えば外国で非課税とされている所得によって控除の限度額余裕枠というものがつくられて、それをほかの高率外国税を控除するために使われるというようなことで、制度本来の目的は国際的な二重課税排除する、そういうことであったわけでございますけれども、基本的には現在有効に機能しているわけですが、ただ現行制度ではその国際約二重課税排除という本来の目的、趣旨を超えて控除が行われるというようなことがあることもまた事実でございます。  そのような問題意識は昨年の十月に出されました税制の抜本的見直しについての答申におきましてもるる述べられているところでございまして、私どもといたしましても国際約二重課税排除、この制度そのものは維持しつつ制度に伴って現在起こっている問題点を解消するというために制度の見直しを行う必要があるという認識は持っております。
  29. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 これから国際化が進みますと、具体的な経済活動というのはいわば支店なり子会社がほとんどやる。そうすると日本国内の本店といいましょうか本社と申しましょうか、ここでは具体的な所得というのは末端のところから上がってくるだけだ。そして日本国内での法人税というのはどんどん少なくなってくるということは、経済の国際化の中では傾向として当然あり得るわけでありますし、その際に、外国税額控除方式、基本的にはこのこと自体は間違っているとは私言いませんけれども、税というのは具体的なところでどれだけ上がってくるかということでありますから、今課長から御説明があったように、ひとつこれは早急に直していかないと、国民感情として随分合わないものがどんどん出てくるというふうに思っておりますので、この際大きく指摘をしていきたいと思っております。     〔委員長退席、甘利委員長代理着席〕  さて、時間もありませんので、もう一つの法案に入らせていただきたいと思います。  政府調達に関する協定を改正する議定書について若干お伺いしたいと思いますけれども、この議定書の最も重要な基本理念あるいは精神というのは、いわば内外無差別、どの国でも一定の額以上のものは公開入札をしなさい、あるいは選択入札をしなさいという最も基本的な理念というのは、どの国の物でもいい物、安い物は買いなさいという内外無差別の原則と申しましょうか精神と申しましょうか基本理念、これによってひとつ貿易の拡大あるいは国際的な競争を公平にしていこうということだと思いますが、いかがでございますか。
  30. 池田廸彦

    ○池田説明員 まことに先生の御指摘のとおりでございまして、ガットの基本理念でございます国際貿易の拡大政府調達の分野に及ぼそうというのがこの協定趣旨でございます。したがって、今度の議定書趣旨でもございます。当然のことながら政府が行う調達でございますので、とかく恣意的になりがちな場合が多い。ここに着目いたしまして政府調達に関する協定をつくり、今般それを拡充するという形で新しい議定書をつくったわけでございます。
  31. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 そこで、どうも我々も必ずしも実態がわからないのでありますけれども、八五年度の予算では調達の契約額が三千億田、うち外国から買ったものは四百億円で一二%という数字を聞いているわけでございます。今度の協定議定書の改正によりまして、この協定の適用を受ける調達契約の最低価格を十五万SDRから十三万SDR、約二千四百四十万円に引き下げるということなんでありますけれども、三千億円のうちの四百億円、一体三千億円というのは官報に載せる調達件数としては何件ぐらいそういったいわば入札を求めるものになって、四百億円外国の品物を買いましたというのは何件ぐらい現実に入札というのは行われているのですか。
  32. 池田廸彦

    ○池田説明員 お答え申し上げます。  最初に調達の件数を見ますと、六千二百四十二件でございます。もう少し国際的な比較も加えましてブレイクダウンいたしますと、次のとおりでございます。国際的に比較いたしますので、恐れ入りますがSDRを使わせていただきたいと思います。  八五年でございますが、日本政府調達協定対象となる機関の総調達額が三十三億SDRになります。ちなみにアメリカの場合は二百二十八億SDR、このうち、基準額十五万SDRでございますが、基準額以上のものを見ますと、日本の場合は十二億四千六百万SDR、アメリカの場合が百八十七億九千万SDR、したがいまして、十五万SDR以上の調達を見ますと、日本の場合は三七・四%、アメリカの場合は八二・四%。それでは外国産品を買った割合は幾らかと申しますと、日本の場合は一億六千六百万SDR、金額にしまして一二・四%、アメリカの場合は二十二億九千五百万SDR、金額ベースで一二・二%、こういう状況でございます。
  33. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 それで日本の一三%というのは、今アメリカとの比較がございましたけれども、一体このパーセンテージ自体は他国と比べて高いのか低いのか。いろいろこれまた調達のやり方によっても違うでしょうし、それから、いわば精神として、これは後でちょっと他の二件を、関連します別の件を質問いたしますけれども、やはりこれは特に日本の置かれている状況というのはなるべく買えということじゃないかと思うのですよ。公正に買えと。しかし、これはどうも、今度は十三万SDRにしますけれども、具体的な契約のやり方次第によ一では、随分これは網の目から——石油を買うとか言っていらっしゃいますけれども、石油だって何度かに分けてやれば十三万SDRから逃れることもできるのだろう。  しかし、なるべくこれは、今の日本の環境の置かれているところから言えば、できるだけ、そうでなくてもかねや太鼓をたたいて外国製品、特にアメリカのものを買え買え、こう言っているわけでありますから、この辺についても当然なるべく買えということだと思うのでありますけれども、この一二%というのは客観的に過去のデータとしてはそうなのだと思いますけれども、なるべくこういうふうに上げようということで考えていらっしゃるのか、これについては従来どおりのやり方でいいや一もっとも外務省が全部これを管轄をしているわけじゃないと思いますけれども、その辺はどうなんでございますか。
  34. 池田廸彦

    ○池田説明員 まず国際比較でございますが、アメリカの場合は先ほど申し上げましたように一二・二%になります。  ECの場合は二・一%と非常に下がります。ただし、これには補足の説明が必要でございまして、まず、イタリー、アイルランドの数字が出そろっていないという事情がございますし、それからECの場合は域内の取引が非常に多うございます。取引名上はEC加盟国それぞれが締約国になっておりますが、現在域内貿易の統計というのはなかなかとれない状況にございます。したがって、域内貿易を抜きますと二・一%で低い数字になる。  それから、カナダを見ますと、同じく八五年で外国品調達八・二%という数字になっております。  以上が事実関係でございますが、その次に先生指摘の点、日本の場合はなるべく輸入をふやすという方針で取り組んでいるわけでございます。  この場合、問題は二つに分けることが可能でございまして、まず第一に、政府調達コードを遵守するというこの法律的な日本の国際的な義務という観点から見ますと、これは内外無差別という原則でございます。したがいまして、外国産品を国内産品に比べてより不利に扱わないというところが義務でございます。以上は法律的でございますが、しかし現在の経済的な状況を考えてみますと、これはやはり積極的に輸入をふやすということを考えていかなければいけない。この意味からは、御案内の、先般十億ドルの政府外国品調達という構想を実現していただいたわけでございます。  ただし、この場合でも、決して外国品を内国品に対してより有利に扱うということではございません。為替のレートがこういうふうになってまいりましたから、従前では買えなかったような外国品も競争力を持つようになったものもある、あるいは外国でなければつくれないものもある、そういうものについて政府調達を緊急の措置としてふやしていこう、こういうことでやったわけでございます。  したがいまして、法律的な側面と実際的な側面と二つに分けて考えられますが、いずれにしましても、そこを貫く原理は最恵国待遇原則であり、内国民待遇原則である、こういうふうに申せると思います。
  35. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 その辺の問題、ちょっと後で別の角度からお伺いしたいと思います。  それから、ここで言うところの政府調達協定対象機関という問題でございますけれども、衆議院、参議院あるいは最高裁、会計検査院、それから総理府本庁及び公害等調整委員会ほかいわゆる内閣の省庁、それから旧国鉄、旧専売、もちろん今日本たばこ産業株式会社でありますが、それから旧電電、日本電信電話株式会社、それからいわば財投諸機関と申しましょうか、政府関係金融機関ですね、国民金融公庫、住宅金融公庫、農林漁業金融公庫、中小公庫、公営企業金融公庫、北海道東北開発公庫、社会福祉・医療事業団、中小企業信用保険公庫、環衛公庫、沖縄振興開発金融公庫、開銀、輸銀ということになっておるわけでありますけれども、何かこの表を見ますと、政府関係機関というのもどういうところでこれを区切ったのかな。長い歴史があるのでしょうけれども、どういうところで区切ったのかな。どうも余り区切ったメルクマールがよくわからない。例えば政府関係機関といえば道路公団だって入ってくるだろうし、いろいろ、いわば財投諸機関といえば八十幾つあるわけです。それが入ってない。  それから、旧国鉄の場合には、株を完全に放出してしまって民営化したときに一体これはどうなるのか。NTTもしかり。日本たばこ産業もしかり。全部政府から離れたときにこの協定から自動的に離れるというようなことになっているのか。それであわせて外国の場合も、イギリスの場合には政権がかわれば、特にサッチャーさんになって以後は、どんどん国営化したものを民営化していますね。それからフランスの場合には、逆に民間のものを国営化したりなんかしているというようなことで、立場が変わりますね。  後でちょっとお伺いしますけれども、関西新国際空港の場合には、特殊法人株式会社ながらいろいろとアメリカの無理無理にこたえる格好にしていますが、いずれにしろ、この協定ではそういった政府との関係というのが変わった場合には、フランスでもイギリスでも経営形態が変わった場合にはこの協定から外れるという前提に立ってこの協定というのはできているのですか。  そして一番目の質問は、一体この対象機関というのは、一番最後は輸銀になっていますけれども政府関係の金融機関あるいは政府関係の機関といえばまだまだあるし、恐らくこれは厚生省の病院等あるいは学術研究所等々も当然入って文部省という言い方になっていると思いますが、一体この日本対象機関というのはどういう区切りにこれはなっているのでございますか。民営化したらまた変わるのでございますか。
  36. 池田廸彦

    ○池田説明員 お答え申し上げます。  最初の、日本のいわゆる調達体、いかなる基準でこれを選定したかという点でございますが、これはそもそもの政府調達協定を東京ラウンドの過程で交渉しました際、交渉によって決めたわけでございます。  すなわち、その時点では、その調達協定に入る諸国が、それぞれ自分のところはこれこれの機関について協定を適用する用意がある、そのそれぞれの機関の調達する額は大体これくらいであるといういわばオファーを持ち寄りました。これをもとに各国で、あるいは多過ぎる、あるいは少な過ぎるという話をして決めたわけでございます。したがいまして、御指摘のように日本の場合でございますと、特定の性格によって区分をした機関別ということにはなっておりません。でこぼこがあることは御指摘のとおりでございます。  二番目に、民営化された場合の取り扱いでございます。  まず日本の場合は、民営化後もNTT、JR、日本たばこ株式会社、この三社につきましては政府調達協定を適用するという方針で臨んでおります。御指摘のように、理論的には民営化された以上当然純粋コマーシャルベースで行動するはずでございますから政府調達コードの目的は達成されたんではないかという考え方は確かにございます。  しかしながら、このNTT、JR、日本たばこ株式会社は、我が国の、先ほど申し上げましたオファーの中では非常に重い地位を占めております。これを仮に適用対象から外します場合には、それに見合う機関をオファーしなければならない。ところが、それは残念ながら見当たらないわけでございます。それから御案内のとおり、アメリカ、EC、いずれも旧三公社の調達に対して強い関心を持っているという状況がございまして、ぜひ残しておいてほしいという要請がございましたので、我が方としてはこれに応じているわけでございます。  しかし、それでは最初の理論的な問題とどう接合するかという点がございます。これにつきましては、このたびの議定書交渉の過程で我が方から再三問題提起をいたしております。しかしながら、今申し上げましたような事情で、ともかく現在ガットとして一定の方向を出すということはまだ時期尚早であるということになりまして、我が方の問題提起のみに終わっております。これから先も問題提起は続けます。  ちなみに英国及びフランスの場合、フランスはむしろ逆かもしれません、英国の場合、これまで民営化されましたような大きな機関、旧国営企業のほとんどのものはイギリスのオファーの中に含まれておりません。したがいまして、日本の旧三公社の場合と類似の問題というのはイギリスについては生じないわけでございます。
  37. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 この法案に関連をして、私はこれは内外無差別というのが大原則だということを確認をさせてもらったわけでございますが、それに反する大きなことが二つあるわけですね。  一つは、今アメリカの東芝関係の制裁法案というのがたくさん出されているわけであります。その中でガーン修正法案、これは上院で六月三十日に議決されているわけでありますけれども、東芝グループからの調達を禁止するということが出ているわけであります。そのほかハンター法案、四月三十日に提出されたものでも東芝グループの国防省の調達停止ということが出ているわけでありますが、まだ幾つかございます。  これは確かにこの法案の今回の修正にはなっておりませんが、第八条の「この協定の適用除外」というところに「この協定のいかなる規定も、締約国が自国の安全保障上の重大な利益の保護のために必要と認める措置又は情報であって武器、弾薬若しくは軍需品の調達又は国家の安全保障のため若しくは国家の防衛上の目的のために不可欠の調達に関連するものにつきその措置をとること又はその情報を公表しないことを妨げるものと解してはならない。」といういわば免除規定が、適用除外の規定があることは私も存じているわけでございます。  しかし、いわば安全保障条項というのでしょうか、この条項をどんどん適用していったら、これはいわば内外無差別というアメリカも入っているこの政府調達議定書の精神からどんどん離れていってしまうのではないか、極めて恣意的に安全保障条項というのが使われる可能性というのは大変多いんではないかというふうに思うわけでありまして、これはアメリカの議会がおのおの議員立法でやることだ、だから、こちらは知らぬというのではお互いに十二カ国が議定書をつくって政府調達を内外無差別でやろうという精神から大いに逸脱をしていくのではないか。  その意味では東芝関係政府調達を見合わせるということ自体は、この議定書幾ら第八条の適用除外があったにしても、乱用すれば、精神そのものを、基本理念そのものを破壊することになっていくんじゃないかというふうに思いますが、いかがでございますか。
  38. 池田廸彦

    ○池田説明員 お答え申し上げます。  ガーン修正案を初めといたします先生指摘の修正案につきましては、当然のことでございますが、これはまだ法案の段階でございます。御指摘の点も含めまして私どもといたしましては重大な関心を持って動向を注視しておるところでありますし、それから、この関心につきましては米国政府、議会関係者に対しても随時表明しておるところでございます。したがいまして、あたかも例えばガーン修正案が成立した場合どうなるかというたぐいの議論はこの際は差し控えさせていただきたいと思います。  したがいまして、それでは協定第八条というのはどのように乱用が担保されるのか、全くの一般論としてお答え申し上げますと二つございます。  第一は、自制でございます。まさに先生指摘のように乱用しようと思ってこれを使い始めたら本当に歯どめがなくなります。やはりこれはそれぞれの国がこの条項には本当に必要やむを得ざる場合、ぎりぎりの場合しか訴えてはならないということをもう一遍確認するということが第一でございましょう。  それから第二に、それにもかかわらずもしもある国から見て他国の八条援用が乱用であるということになった場合には、これは協定上の紛争処理手続を援用していく。さらにはガット上の紛争処理手続を援用していくということにしかならないだろうと思います。やはり一番大事なことは、こういういわゆる安全保障上の重大な利益を援用するというケースは最小限に限るという自制であろうと思っております。
  39. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 大臣、今の東芝関連のアメリカの議会の動きあるいは政府調達の動き、この問題ともう一つ伺いをしておきたいので、最後に大臣の見解を求めたいのでありますが、もう一つは関西新国際空港建設の問題でございます。  確かに日本も国際入札して、各国とも高い技術をいろいろ提供しているわけでありますから、国際的な大きなプロジェクトについて外国も入ってくるようにしなければならない、これは私は原則的にいいと思うのであります。ただ、きのうも会議があって少し前進したようでございますが、細かいデテールのことは今申し上げる時間がありませんけれども、一番問題なのは、それじゃアメリカが言ってくることがこうだから関西新空港株式会社、法律に基づいた特殊法人ということで、いわばこの法案に関係しますガットの政府調達手続に基づいたものにしましょう、今論議をしているこの議定書に準ずるような扱いにしましょうと言っているわけですね。  私が問題だと思いますのは、内外無差別が国際的な精神であり、基本理念であると思うのです。ところが交渉をしているのはアメリカだけで、アメリカが言うことをずるずる日本の方は受け入れてくる。あの六十日だってそんなら初めから受け入れていた方ががたがたしなかったんじゃないかというふうに思う。これは交渉のいろいろなテクニック、トータルの問題があるから別といたしましても、問題はアメリカとだけ入札その他工事参加の問題を交渉しているのは、片方では政府調達に関する協定、この内外無差別ということから言うならば大変問題があるのじゃないか。それならばヨーロッパにもその他の国にも——私も、当時は電電でございましたけれども、電電の物資購入の問題のときにいろいろ研究したことがございますけれども、やはり広く、こういう仕様でこういう工事をやります——今仕様まで何とか発言させろということが入っているわけでありますが、そんなことは別といたしましても、いずれにしろ、それならばアメリカだけの問題ではなくて、これはやはり内外無差別にヨーロッパの国も参加をさせてやるというのが私は本当ではないかと思うのでございます。これは次長か大臣かわかりませんけれども、次長がお答えになるならちょっとまずそれを答えていただいて、最後に大臣にまとめてお伺いしたいと思うのです。
  40. 池田廸彦

    ○池田説明員 御指摘のとおり、MFN原則に従って行動すべしというのはまさにそのとおりでございまして、関西空港株式会社といたしましてもその原則を遵守しておるところでございます。  例えば、少し古くなりましたけれども説明会を開きましたときにはヨーロッパももちろん招致しております。それから、現在アメリカと話をしております改善案と称してよろしいかと思いますが、措置につきましても、合意ができました場合には、当然MFNベースで均てんされます。ですから、要求を持ち込む段階でアメリカの行動が目立っているというふうに御理解いただければよろしいのではないかと思っております。できました結果は、欧州にも当然均てんする、それから欧州だけではございません、その他の国にも均てんいたすものでございます。
  41. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 関西新国際空港の建設の問題に関する今までの経過の問題は、今後これだけではなくて、羽田なりあるいは成田の拡張工事の問題もあるし、あるいは私のところの名古屋に新国際空港をつくろうという問題もあるし、広島の空港の問題もあるし、あるいは東京湾横断道路という大プロジェクトの問題もあるということで、いわば一番最初の入り口の問題ではないかと私は思うわけであります。国際的に非難を受けないように、対アメリカだけの問題ではなくて当然これは内外無差別という原則のもとにやるべきではないか。  いずれにしろ、このごろ日米関係において日本もいろいろと考えなければいかぬことがあろうかと思いますが、アメリカの方もかなり無理をしてくるという感じが日本国内で見ていてするわけでございます。日米関係において、トラの尾を踏んだ日本経済、いわば技術力も経済力もそこまでアメリカが脅威を感ずるような日本の力ということになったかとも思いますけれども、その意味では、大事な日米関係がそれによって損なわれることがあってはならぬと思います。  大臣の御見解をお伺いしたいと思います。
  42. 倉成正

    倉成国務大臣 ただいま政府委員からお答え申し上げましたけれども、この問題についてはもう全く内外無差別で透明性を確保するということが我々の基本的な方針でございます。同時に、御案内のとおり空港の建設の場合に、いろいろな漁業権の補償の問題であるとか、その他の第一期の工事等の問題になりますと、これはやはり現地と非常にかかわりのある人がやらないと、私も幾つかの経験がございますけれども、なかなか難しいという面はあろうかと思います。上物に関する問題あるいはいろいろな機器に関する問題については、アメリカであると欧州であるとを問わず、優秀な技術を内外無差別で吸収していくというのがこれからの国際国家日本の立場であると存ずるわけでございまして、まさにそのような形で進めておるところでございます。
  43. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 終わります。
  44. 甘利明

    ○甘利委員長代理 次に、上原康助君。
  45. 上原康助

    上原委員 佐藤先生の関連で少しお尋ねをさせていただきたいと存じます。  恐らく佐藤委員の方からも冒頭お尋ねがあったと思うのですが、昨日、日ソ間に大変ショッキングな外交案件が発生をいたしております。そこで、簡単に私も外務大臣の御見解をお尋ねしておきますが、ソ連側から在ソ日本外交官あるいは三菱の代表者に早急に退去しなさいという通告がなされる。また一方、日本側も例の東京航空計器事件に端を発して、警視庁の出頭要請に応じない在日ソ連外交官の退去を求めた。これは両国にとって大変遺憾な事件だと言わざるを得ません。  そこで、なぜソ連側が在ソ、しかも防衛関係の駐在官を退去させようとしているか。一方、三菱の駐在代表だ。なぜそういう要請をしたと外務省は見ておられるのか。両国がこういう応酬を繰り返すことは、日ソ関係、ひいてはアジアあるいは世界の安全保障という立場からしても好ましい事態ではないと思うのですが、その背景をどのように御認識しておられるのか。  また、こういうことがあっても日ソ間の親善友好を早期に、この種の問題を平穏に解決をして懸案事項を促進をしていくことが日本外交の私はとるべき姿勢だと思いますが、そういうことに対しての御所見をお聞かせいただきたいと存じます。
  46. 倉成正

    倉成国務大臣 事実関係について必要があれば政府委員から詳しく申し上げたいと思いますが、我が国の大使館員が通常の視察旅行をいたしておりまして、オデッサを訪問して写真を撮った、それを諜報活動というような形でとらえられたということでございまして、そういう先方の主張は全く事実無根のもので、これは今委員の御指摘のとおり日ソ関係に水を差すものであると考えております。  しかし、このような不当な措置が繰り返されたからといって日ソ関係全体について悪い影響が出てくるかどうかという問題については、こんなことはないことが望ましいことですけれども、これがあるからといって、日ソ関係の大きな動きというものについて影響が及ぶと私は考えておりません。私は、このことについては強く先方にも抗議を申し入れておるところでございます。  また、例のポクロフスキー通商代表部代表代理の問題に対して、我が国の出頭要求に応じない、したがって退去命令を出すということで、それぞれにそれぞれの国の国内法また国際法があるわけでございますから、その規定に従って厳正にそのことは対処する。しかしそのことと日ソ両国の友好関係、動かすべからざる隣国である日本とソビエトとの関係は、こういう問題を離れて考えていくべきではなかろうかと思うわけでございます。しかし、いずれにしても、かような事件が起こったことは非常に残念なことだと考えておる次第でございます。
  47. 上原康助

    上原委員 事実関係とか事の次第がこうなったこと等については既に報道され、また外務省首脳のいろいろな御見解もあるようですので、あえて求めませんが、いずれにしても外相定期会議の問題とか、一説にはゴルバチョフ書記長の来日ということも、中曽根首相を初め中曽根内閣は大変期待をしておった外交案件だが、最近のココム、東芝問題等々をめぐって日ソ間にぎくしゃくした面があることは、これは否定できませんね。  そうしますと、やはり経済交流文化交流日ソの友好親善という面で、相当冷却期間というものがより長いことになる可能性もあると思います。そういうことのないように、これ以上日本側から報復措置をとる、あるいはまたもっと強硬手段に出るとか、そういうお考えはございませんね。
  48. 倉成正

    倉成国務大臣 これはもう別の問題でございまして、報復措置をとったということではございません。この点は誤解のないようにお願いを申し上げたいと思います。  我々は当然のことを、当然日本主権国家としていたしただけのことでございますから、冷静にこういう問題は相互に対処していくべきだと考えておるわけでございまして、日ソ間はやはり北方領土という問題がございますが、これらの問題を念頭に置きつつ将来の友好関係をしっかり片づけていくということが日本の外交の基本方針として大切なことだと考えております。
  49. 上原康助

    上原委員 ぜひひとつ、今大臣おっしゃったように冷静に御判断をなさって、日ソ関係がこれ以上ぎくしゃくしたり、あるいは悪い方向に展開しないような外交措置というものをおとりになることを強く御要望を申し上げておきたいと存じます。  そこで、きょう私がこの委員会でぜひ発言の機会を得たいと思ったのは、実は去る百八国会で、本委員会で日米地位協定二十四条に基づく新たな労務協定審議をされ、締結されたことは御案内のとおりです。あのときも質問なり、あるいは発言の機会を得たいとは思っておったのですが、当時の事情からして少し遠慮もしたわけです。だが、その後の経過を見てみますと、どうしてもただしておかなければいけないことがあるような気がしてなりません。  そこで、きょう改めてこの点をお尋ねさせていただきたいわけですが、そもそもこの新労務協定を結んだ目的あるいは意義は一体何だったのか、お聞かせいただきたいと存じます。
  50. 倉成正

    倉成国務大臣 この労務協定を結びました理由は、基地に働く日本の従業員の安定的な雇用を維持するためということでございまして、御案内のとおり、最近の円高によりまして米軍側の財政事情も非常に苦しくなってきている。したがって、その状況を踏まえまして、雇用の安定に役立つようにということであのような協定を結んだ次第でございます。
  51. 上原康助

    上原委員 確かに協定を議論をする過程でも、そういう御説明、御答弁がなされておりますし、同時にこの協定の成立経緯あるいは締結の意義等々を見ましても、今大臣おっしゃったように、「この協定締結は、在日米軍従業員の安定的な雇用の維持及び在日米車の効果的な活動の確保に資するもの」と考えられる、こういうふうに明確にしておるわけですね。  そうしますと、在日米軍従業員の安定的な雇用の維持ということには、解雇あるいはそういった不利益的な措置をとられない、とることを防止をするという意味は当然含んでいますね。
  52. 倉成正

    倉成国務大臣 そのとおりでございます。ただし、御理解いただきたいのは、米軍の財政事情が非常に苦しくて、先般の労務協定によって我が方が負担しただけでは米軍側の苦しい財政事情を解消するには十分でないということはしばしば御説明申し上げているとおりでございます。したがって、我が方としてはできる最大限のことをいたしまして、先方において、特に沖縄の方々が基地の存在ということによって大変いろいろな生活上の問題を持っておられるということにかんがみまして、その従業員の安定的な雇用ということには十分配慮してほしい、そういうことで先方にはお伝えいたした次第でございます。
  53. 上原康助

    上原委員 後段の方はもう少し具体的にお尋ねいたしますが、要するに大量解雇とか、そういうものを防止をするのを目的としてこの協定締結をしたということはお認めになる。ただし最近の、もちろんこれにも触れてございますように、「日米両国を取り巻く最近の経済情勢の変化により、在日米軍経費、なかんずく労務費が急激に逼迫して」云々、いわゆる円高・ドル安ということでしょう、それだけでは不十分だから、全く解雇措置はとらないということにはならないということをいろいろ問題が起きてから強調しておられるわけですが、問題は、六月一日にこの新協定が発足をして、七月二日、わずか一カ月後に三百三名の在日米海兵隊クラブ従業員を解雇する、そういう措置をとったことが果たしてこの協定を結んだ意義に合致するかということなんです。これは余りにもおかしいんじゃないですか。  しかも百六十五億四百万という国民の税金をこの円高・ドル安ということ、そういう労務事情によって新たに日本側が負担をするということは、それなりの重きがあったと私は思うのです。にもかかわらず一月もすれば大量解雇の通告をやるということは、これは協定に違反すると見ざるを得ないのが常識じゃございませんか。これは私だけじゃなくて、どなたもそう思っていると思うのです、与党の先生方だって、あるいは政府の皆さんだって。その点はどういう御認識ですか。
  54. 倉成正

    倉成国務大臣 正式に申しますと、協定の違反とは私は考えません。しかし、大変残念なことである、遺憾なことである、特に沖縄住民の感情を考えると、こういうことが行われることは大変遺憾なことであるという感じを持っておりますし、その後、日本に参りました海軍長官ともかなりの時間をかけて懇談する機会がございましたので、海軍長官がその後沖縄に行くということでございましたから、ぜひひとつこの問題について十分な検討をしてほしいということでございまして、長官の方では、少し二、三の地域を回って必ず沖縄に行くから、そのときには現地の司令官とも十分相談をしてみるというお話でございました。  その後まだ正式の回答を得ていないわけでございますけれども、鋭意その問題についてはさらに折衝を続けておるというのが今の実情でございます。
  55. 上原康助

    上原委員 これは確かに厳密に協定に違反をしているとか、あるいは違反していないというのは、それぞれの立場の違いとか問題の受けとめ方の濃淡はあると思うのですが、常識的に考えると、こういう手だてをすれば当分は円高・ドル安であっても大量解雇というものはあり得ないという前提に立って恐らく外務大臣外務省防衛施設庁も進めたと私は思うのです。そう受け取るのが常識でしょう。だから、それは大変遺憾なことだ、その点はお認めになった。  そこで、今私がお尋ねをしようとすることもお答えになったわけですが、私は予算委員会でもあるいは本会議でも、また直接大臣にもお目にかかっていろいろ御要望申し上げたり、その都度またこうすれば解決の方法もあるんじゃないかという若干の御提言もしてきたつもりなんですが、七月二日に解雇通告が出されて、ウェッブ海軍長官が来たのはたしか先月の上旬ですよね。もうきょうは八月の二十一日ですから相当経過をしてきた。いまだに回答がないということはどういうわけなのか。  また、現在どういうレベルでこの解雇問題——これは全面的に撤回をさせなさい、撤回という言葉が皆さんに抵抗感があるならば、棚上げをさせなさい、その方がこの新協定趣旨からしても意義からしても、あるいは今後の日米間のいろいろな問題を扱っていく上からもベターの方針だ、双方がとるべき態度だ、こういうことでやっているわけですが、まだ回答がないということと、どのレベルでどういう話し合いをして、どのくらい進んで、見通しは何かということもそろそろ明らかにしていかないと、もう九月に入ればあっという間にタイムリミットが来て、結局は努力はしたけれども解雇はやむを得なかったというようなことで済まされる問題ではないと私たちは思うのです。この点はいかがですか。
  56. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 本件につきましては、七月二日米側より通告がありまして、直ちに米側といろいろ話を始めております。  主なところだけ言いましても、七月七日には日米合同委員会におきまして正式に本件について米側の立場の再考を求めました。それから、先ほど来お話が出ておりますように、七月の十四日には倉成大臣からウェッブ海軍長官に対し直接当方の関心を伝えております。  さらにその後、在日米軍司令官あるいは在京米大使館等との間で極めてインテンシブな話し合いを行っております。これは防衛施設庁長官以下、それから外務省も私ども含めまして直接種々の話し合いを行っております。担当課長がワシントンに参りまして海兵隊幹部、国防省、国務省等に申し入れを行っておりますし、背景の説明をしておるということもございます。  現在鋭意交渉中でございますので、その内容について明らかにするわけにはまいりませんけれども外務省、施設庁の担当者が現地に行きましてスタックポール米海兵隊司令官と話をしたり、あるいはスタックボール自身がワシントンに帰って本件について話をする等、米側の中に本件の重大性については相当な認識が進んできたというふうに考えます。  ただ、いかんせん本件についての本海兵隊クラブの財政状況が大変に悪いということがございますので、その問題の解決に苦慮しておるところでございます。米側からはそう遠からず米側の態度の提示があるというふうに聞いております。
  57. 上原康助

    上原委員 そう遠からずという言葉はたびたび聞かされていることですが、相当インテンシブになさっているということは私も間接的には聞かされているわけですが、問題はこの協定に対する認識というか理解、受けとめ方が日米間で果たして共通なのかどうかという疑問を私は持たざるを得ないのですね。  そこで、具体的にお尋ねをしておきたいわけですが、この協定の第一条は、「日本国は、この協定が効力を有する期間、労働者に対する次の手当の支払に要する経費の一部を、当該経費の二分の一に相当する金額を限度として負担する。 (a) 調整手当、扶養手当、通勤手当及び住居手当 (b)夏季手当、年末手当及び年度末手当 (c) 退職手当」、こう三つに区分をしておりますね。  今度在沖米海兵隊が解雇通告をしている三百三名の解雇対象になる従業員というのは、この第一条の(c)項は適用されるのですかされないのですか。
  58. 斉藤邦彦

    ○斉藤(邦)政府委員 今度の解雇の予定対象になっております人員がこの協定対象になるかどうかという点につきましては、このクラブでの従業員もこの協定対象になっております。  しかしながら、ただいま御質問の趣旨が、解雇されることの結果として発生いたします退職金の支払い、この退職金がこの協定一条で言っている退職金に当たるかどうかという御質問であるとすれば、それは御承知のとおりの合意議事録におきまして、そのような退職金というのは対象にならないという規定があるわけでございます。
  59. 上原康助

    上原委員 結局、対象にならぬということでしょう。
  60. 斉藤邦彦

    ○斉藤(邦)政府委員 ただいまお答えいたしましたとおり、その退職金の点についてのお尋ねであれば、対象にはならないわけでございます。
  61. 上原康助

    上原委員 これは全くもって新しい事実で、そうしますと——その前に対象にならない。だから、そうなると、冒頭おっしゃるように、在日米軍従業員の安定的な雇用の維持に資するというこの協定の目的というものは一体何なのかという矛盾が起きるのですね。  しかもこの議定書において、いわゆる合意議事録がありますね。全文読むと長ったらしくなりますので、要するに地位協定第二十四条についての特別の措置に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定についての合意された議事録、説明があって、その一項、「協定第一条に掲げる手当には、協定の効力発生の際日本国による負担の対象となっている部分を含まないことが確認される。」これは従来日本側が負担しておったものは継続して負担をするよということでしょう。それはこの百六十五億とは別だよということなんでしょうね。そうですか。それが一つ。  その二項で、さっき私が指摘をした「協定第一条(c)の「退職手当」には、人員整理のため合衆国軍隊又は地位協定第十五条1(a)に定める諸機関により解職される労働者及び業務上の就労不能又は業務上の傷病による死亡により雇用が終了する労働者に対する退職手当を除くすべての退職手当を含むことが確認される。」だから、アメリカ側が勝手にというかアメリカ側が人員整理をする者に対する退職手当の手だてはしないということなのか。この二項の解釈はどうなんですか。そこを具体的に説明してください。     〔甘利委員長代理退席、委員長着席〕
  62. 斉藤邦彦

    ○斉藤(邦)政府委員 今二点御質問があったかと存じますが、一点目につきましては委員指摘のとおりでございます。  それから、二点目の合意議事録第二項の解釈でございますけれども協定第一条には幾つかの経費が掲げられておりまして、その二分の一を限度として日本側が負担するということになっております。その中に退職手当というのがあるわけでございます。  したがいまして、通常の場合の退職に伴います退職手当は、その二分の一を限度として日本側が負担するというのが協定趣旨でございますが、米側の都合によりまして人員整理のために解雇されるような労働者、これのための退職手当というのは、この協定趣旨からいたしまして、日本側が負担することは適当でないだろうという考え方から、このような退職手当は協定一条に言います退職手当、すなわちその二分の一までを日本側が負担することとされております退職手当には含まれないということを確認したのがこの合意議事録第二項の趣旨でございます。
  63. 上原康助

    上原委員 これは大臣もぜひよく聞いていただきたいのですが、これは重大な問題だと私は思うのですよ。  今度の三百三名というのは、まさしく米側の都合によって解雇されるわけでしょう。だから、金目の問題がいろいろ言われていますけれども、果たしてそれは百六十五億の範囲内で解決できないものなのかどうかというのが私がまず第一に感じたことでした。円高・ドル安といっても、たとえ半分半分負担するといっても、三百三名の年間の所得というのは九億程度なのですよ。四億五千万ずつ折半すれば十分できるわけなのです。  そういうくらいのことの捻出は不可能じゃないと私は見たのだが、そうではなくして、米側の都合による解雇に対してはこの協定の枠外に置かれている。だからアメリカ側は、解雇者に対しては自分たちで退職手当規則に基づいて退職手当は丸々支給しなければいかぬということになるわけでしょう。そこは私の解釈が正しいのか、今までの答弁からすると、そういうふうに私は理解せざるを得ないわけですけれども、はっきりさせてくださいよ。だからもたついているのじゃないの。
  64. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 ただいま条約局長から御答弁申し上げたとおりでございますが、その意味でございますけれども、まず第一に、この協定に言っております、例えば一条その他に言っております労働者、これには今回解雇の対象になりましたいわゆる十五条機関の職員も含まれます。したがって、この取り決めは十五条機関の職員を含めて、その雇用の安定を目指しているものでございます。それが第一点でございます。  それから第二点は、ただいま退職手当を第一条の計算から除いておるというのは、これはアメリカの都合で行う退職手当でございます。アメリカの都合で解雇をする、それをエンカレッジするようなことはいけないという趣旨でございまして、その分も第一条に載せますと、その半分までを負担するということでございますから、日本の負担分がそれだけふえるわけでございます。アメリカの都合で解雇する退職手当までも上乗せして、それでその二分の一まで負担してやるという義理はないだろうということで、したがって合意議事録の二項で除いておるわけでございます。  今回の問題、それは日本は百六十五億円負担いたしたわけでございますが、アメリカはアメリカの全体の経費の中でいろいろやりくりいたしまして、その中で、沖縄の海兵隊の費用が資金繰りが非常に悪化しておる。そこで、この大量解雇があった。そのアメリカが、百六十五億円を、あるいは全体の資金をどういうふうに使うかということはこの協定に書いてないわけでございまして、今回の問題と、この合意議事録二項で言っております退職金とは関係がないわけでございます。
  65. 上原康助

    上原委員 それはさっきの条約局長答弁と少し違いますよ。あなたが今おっしゃっているのは、それは運用の問題でしょう。この合意された議事録を厳密に解釈すれば、米側の都合で解雇するものには退職手当は日本側の、この協定の負担にはならないんだよ。厳密に解釈すれば、そうじゃないですか。今北米局長がおっしゃるのは、それは運用の問題でしょう。  そうすると、この百六十五億のうち、あなたが言うように、米側がどういうふうに利用していくかはそれは米側の問題ですが、施設庁も来ていると思うので、では、ちょっと別の角度から聞いてみましょう。いかにこの協定が矛盾だらけで、こうなると、まさに食い逃げどころかペテンですよ、これは。当時は、六月のボーナスも払うのが難しいから、ぜひひとつ野党の方も協力してくれ、これをやれば解雇も当分はないだろうということで、いろいろあったけれども、我々もやむを得ないと思ったのです。  それでは、百六十五億四百万のうち沖縄関係費は幾らですか、配分というか割り当ては。——施設庁の労務部というのは一体何をしているのかね、そのくらいの数字も。では、私が言うから、当たっているかどうかだけ答えてください。沖縄関係はたしか四十八億七百万ですね。そのうち在沖米海兵隊クラブ関係は一億四千三百万、間違いないですか。
  66. 山崎博司

    ○山崎政府委員 ちょっと手間取りまして失礼いたしました。  百六十五億の内訳でございますが、本土関係が百十七億円、沖縄関係が四十八億円でございます。
  67. 上原康助

    上原委員 四十八億七百万、今、クラブ関係はたしか一億四千三百万でしょう。  そうしますと、この配当の仕方というのも、僕らもそこまで議論しなかったのも問題といえば問題ではあるのですが、極めておかしいですね。あなたが言うように、本土関係というのかな、百十七億、正式には百十六億七百万でしょう。佐藤先生がおっしゃるように、本土対沖縄というのもどうも抵抗感があるけれども、配分は七〇対三〇ですよ。基地従業員の本土対沖縄の比率というのは六五対三五、専用基地の面積は、沖縄が七五%、本土が二五%。基地の重圧とか、そういう面でのいろいろな雇用の厳しさ、あるいは従業員の置かれた立場というものは全く疎外して、どんぶり勘定だけでこの協定はやっているんです。     〔委員長退席、甘利委員長代理着席〕  だから、こういう点を、これは最初のことだったから、なかなかそこまでは外務省も施設庁もアメリカ側との相談ができなかったかもしれませんけれども、今私が指摘をしたことについては、やはり再検討をする必要がありますね。だから、クラブの維持運営が非常に窮屈だ、なかなか協定だけでは貯えないというような条件をもし在沖米海兵隊が言っているとすれば、こういう皆さんのやり方によりネックがあると私は見ざるを得ない。この点はひとつ外務大臣も御理解をいただいて、今の点は是正をする。  そうして、私は今数字的にこういうあれがあるよということを説明申し上げたわけですが、厳密に解釈すれば、恐らくアメリカが解雇するものは対象外なんだよ。さっき条約局長がそういうふうに答弁をした。そうであると、ますますおかしい問題。これは雇用の安定にはならない。維持にも役立たない。  したがって、北米局長がおっしゃるように、運用の面でできるとするならば、今私が指摘をした数字等も勘案をして、この解雇問題についてはやはり日米間でより協議をする十分な根拠があるし、また可能性はあるのじゃないかと私は見るのですが、いかがですか。
  68. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 ただいまの委員の御指摘は、一つ協定の問題と一つは運用の問題があると思います。  協定そのものは、委員十分御存じのように、この金額を一体日本幾ら出すかということは、年々の予算を勘案いたしまして日本政府が決めるということでございまして、その目安が第一条にあります諸項目の二分の一を超えないということでございますので、協定そのものの中に沖縄と本土とをどういうふうにするかとか、そういうことを記入するということは考えられないことではないかと思います。したがいまして、問題は協定の運営の問題でございまして、その運営を行っていく中でいろいろと配慮していくということかと思います。     〔甘利委員長代理退席、浦野委員長代理者席〕  それから、その運営につきましてでございますけれども、アメリカがこの円高によりまして直接的にこうむった労務費における被害というものは一体幾らかということはなかなか計算が困難でございますけれども、一億六千万ドルともいい、二億ドルともいい、いろいろな計算があるわけでございます。  仮に日本が支出しましたのが、レートの計算によりますけれども、一億ドル程度でございますけれども、いずれにしましても半分あるいは半分を少々超える程度でございまして、在日米軍といたしましては、なおいろいろ財政的に困難がある。全体としては、日本がこの特別協定を行ったがゆえに在日米軍の労務費における困難がかなり解消されて、状況は全体としてはよくなったということはあるわけでございます。  他方、沖縄について海兵隊クラブについて三百三名の大量解雇という甚だ遺憾な事態が発生したということで、これについて今鋭意全力を挙げて取り組んでおるわけでございますので、それが協定の瑕疵であるというお考えがもしあるとすれば、それは必ずしも我々の考えるところと同一ではないという感じがいたします。
  69. 上原康助

    上原委員 そうは言ってみたって、金を出すのは我が方でしょう、百六十五億も。そう少ないお金じゃないですよ、百六十五億というのは。さっき私が言ったように、これはIHAの五千五百人分の給与に相当するのですよ、百六十五億というのは、北米局長。しかも一年限りでないの、これは。五年間この協定は有効なのですよ。百六十五億より多くはなっても、少なくはならぬでしょう、今の円高・ドル安傾向では。そういう面から考えると、もう少しは知恵を出してもいいのじゃないですか、もう少しは。  しかもこの合意議事録の中で言うように、アメリカ側が勝手に解雇する者については、これは純理論的に言えばそれは日本側がそこまで面倒を見ないというのは当たっているかもしれない。だが、それじゃ雇用の安定維持にはならないですね。その面もどう包含してそうさせないように歯どめをするかというのが、そもそものこの新協定を結んだ本来のスタートじゃなかったのですか、皆さんの。  だから、この点はぜひ米側ともっと——さっきも密度の濃い交渉をやっていると言うのだが、これはやはり問題ですね。極めて問題です。私は何もここで本土対沖縄というあれを余り言いたくはありませんけれども、従業員比率からしても基地の面積という面からしたって、本土が百十七億で、わずかに四十八億程度、三分の一ですよ。こういう点などもやはり実際にそういった行政なり事務を担当している皆さんがもう少し中身を分析してやっていただかないといかない問題があるということ。  そこで、その点はある程度明らかになりました。今後の見通しについては近々回答があるだろうとおっしゃっているわけですが、外務大臣、今度の問題というのは単なる事務レベル段階で解決できる問題じゃないと私は思うのですよ。  日米間の今のいろいろな案件があるにしましても、今回のこの解雇問題というのは、冒頭に申し上げましたように、協定ができてわずか一カ月後に、だれも予想しなかったことを強引にやってきたというところに大きな問題があるわけですから、私が今指摘したような問題等含めて、これはもう外交案件というか、あるいは政治的判断で米側に理解を求め、今後のこの基地従業員の雇用の維持安定という観点から、実質的に解雇をさせない方向で決着をつけるという外務省なり防衛庁長官の重大な御意思がないとこの問題は解決しないと私は思うのです。そして、それだけの言い分は日本側に私は十分。あると思う。その点、大臣の決意を改めてお伺いしておきたいと思います。
  70. 倉成正

    倉成国務大臣 沖縄の米軍における日本人の雇用の問題につきましては、今るる上原委員からお話しのとおりでございます。  もちろん、法的な問題、手続の問題、いろいろあろうかと思いますけれども、この協定を結んだゆえんのものは、日本人従業者の雇用の安定にあった。そして、皆様方に大変御無理をお願いしたという経過があることも私よく承知しております。また、特に沖縄におきましては、基地の問題その他で住民の方々に大変いろいろな御負担をかけているということもこれあり、そういうことを踏まえて、海軍長官、また在日米軍司令官同席のもとで私から海軍長官にお願いをしておるわけでございます。しかし、まだ残念ながら満足な回答を得るに至っていないというのが現状でございますので、さらにひとつ督励をいたしまして、速やかにこの問題についての回答をもらうべく最善を尽くしてみたいと思っておる次第でございます。
  71. 上原康助

    上原委員 もう九月三十日までそれほどゆとりもないわけですから、やはりワシントンとの関係とか、これは外務省が御専門ですから私なんかが申し上げるような筋合いでないかもしれませんが、どんなに急いでやっても少なくとも二週間ないし三週間はかかりますよね、事務段階が。仮にウェッブ海軍長官なりあるいは米側から回答があっても、解雇撤回できませんとか解雇しますとか、あるいはもう五、六十名しか数を少なくするわけにはいきません、そうなっても我々は納得できませんよ、とてもじゃないがその程度では。完全白紙撤回。あくまで実質的にそうなる方向で決着をつけるというのが我々の強い要求であり、またこれは何も私だけの問題じゃないのですよ。党派を超えてそう言っているのです、沖縄の方々も。聞いている方はどの方が聞いてもおかしいと思うはずですよ。疑問を持つはずですよ。  ですから、第一回のアメリカからの回答が出ても、そこで、はい、そうですかと決着すれば結構なことなんだが、できないとなると、やはり二、三週間の期間はないと次の手は打てない。そういう面からしますと、きょうは二十一日ですから、二十五、六日、どんなに遅くても今月末までには米側回答を日本側が求めるということでないといかないと思うのですが、いかがですか、その点は。
  72. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 鋭意話し合っておりますので、できるだけ早期にアメリカの回答を求めたいと思います。
  73. 上原康助

    上原委員 これはひとつ、先ほど外務大臣の御決意にもありましたが、そういう方向でやっていただくように改めて強く要望をしておきたいと思います。  次に、あと幾ばくかありますが、最近の米軍の演習というか軍事行動というのは実に目に余るものがありますね。首は切るわ、ロケットは飛んでくるわ、大砲は打つわ、戦車道はつくるわ、もう数限りない。沖縄だけではなくして、奈良あたりでもそういった艦載機がロープウエーをぶった切っている。これは新たな現象というよりは、最近の日米の軍事演習の強化、あるいは日米安保体制の変質だと見ているわけですね。きょうはこの議論は時間がありませんからできませんが、非常に憂慮すべき事態を迎えつつあるようで、懸念をいたしております。  そこで、まず一つは、七月二十三日に起きた第一一徳丸の被弾事件ですが、七月二十三日に起きてきょうまでもう一カ月です、ちょうど二十一日ですから。これがまだ犯人が特定できない。なぜ犯人が特定できないのか、その点をまず防衛庁あるいは海上保安庁、また外務省はこの件をどう見ているのか、それぞれお聞かせください。
  74. 向山秀昭

    ○向山説明員 第一一徳丸の被弾の事件でございますが、まず発生の場所でございますけれども、第二徳丸の船長の供述によりますと、同船の位置は北緯二十五度十二・〇六分、東経百二十八度二十六・六九分の海上というふうに述べておりまして、この上空は自衛隊の訓練空域にはなっております。  それから、事件の発生以後、関係機関に訓練等の実施状況につきまして照会いたしましたところ、ほぼこの時刻に自衛隊が訓練の実施中であったということも聞いております。  ただ、自衛隊の訓練とこの事故と直接の関係があるかどうかということは、船上に残されました遺留の物件につきまして鑑定をする必要がございまして、現在この鑑定を行っているところでございます。  ただいまの状況はそういうところでございます。
  75. 上原康助

    上原委員 防衛庁はこの件はどうお考えなのか。事故当日の自衛隊機の行動は、F4EJ四機、七月二十三日午後零時二分那覇空港を離陸、沖縄南部訓練空域でスパローミサイルの実弾射撃訓練を実施した後、午後一時二十五分に二機、一時四十二分に二機編隊で那覇基地に帰任をした。この訓練は、F4ファントム四機のうちの二機が標的に対してそれぞれ一発ずつミサイルを発射した。パイロットからの報告は、二発とも標的には当たらず燃料切れで海上に落ちたというようなことをパイロットは確認をしているということです。  時間帯からすると、第一一徳丸の近くでロケットらしいものが落ちてきた、あるいは爆発したということと非常に符合する、一致するわけですね。パイロットが視認しているはずだ。船がおったかいなかったか確認しているはずだ。またパイロットは、どのあたりに落ちたかもわかるはずなんだよ。なぜ現在までこのことをひた隠しに隠しているのか、明らかにしないのか。その点をぜひ防衛庁の見解を聞いておきたいと思います。
  76. 柳澤協二

    ○柳澤説明員 お答え申し上げます。  ただいま先生の御指摘されたような時間帯そのものの正確な経緯はあれでございますが、被弾されたとされる同時刻ごろにおきまして、先ほど海上保安庁の方から自衛隊の訓練空域という御答弁がありましたけれども米軍の訓練空域でございまして、そこを使いまして航空自衛隊がミサイルの実射の訓練を行っていたことは事実でございます。  ただ、私ども訓練を実施する際には、ミサイル等の性能によりまして射撃を実施する危険な海面を定めておきまして、その海面の中に、下に船がいないということを確認した上で実施するという手順をとっております。  当日、パイロットの報告によりましても、事前に確認したところでは船は存在していなかった、それからミサイルの海没の地点も視認したわけでございますが、その付近にも船舶がいなかったというような状況がございますので、ひた隠しにするとかいう問題ではございませんで、厳密に、正確に因果関係がどうであったかという観点からすると、今のこれだけの材料では防衛庁のミサイルによるものかどうかということがもうひとつ断言できないのではないかという考え方を持っておりまして、当初から海上保安庁に御協力しておりましたが、特に船の上に残されたとされる物件の鑑定を嘱託を受けまして今鋭意努力しておるところでございます。
  77. 上原康助

    上原委員 これは、いずれ明らかになることだと思うのです。自衛隊が一発目のミサイルを発射したのは午後零時四十六分ごろ、二発目の発射は午後一時七分、第一一徳丸が被弾というかそういう事件に遭ったのはわずか三分程度の差ですね。こういう面からしても、米軍機でなければ自衛隊機、どっちかなんです。  その拾得した物件の鑑定はいつまでにできるのか、外務省はこの件についてはどう見ておられるのか、それぞれお答えください。
  78. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 本件事故発生後、米軍に対して照会いたしましたところ、当該時間帯には米軍機は演習を行っていなかったという米軍からの報告を受けております。
  79. 江間清二

    ○江間説明員 鑑定の方の御指摘の件について御説明いたします。  七月二十九日に海上保安庁の方から私どもの航空幕僚監部の方に鑑定の依頼がございまして、現在技術研究本部等の協力を得まして、当該漁船に落下したとされるその金属片及び船体の付着物につきまして分析、鑑定を進めておるところでございます。  しかし、依頼のありました金属片は、二つございますけれども、いずれも一グラム程度で大変小そうございまして、もとより外観だけから当時訓練に使用していたミサイルの構成品であるかどうかということを判定できるようなものではございません。したがいまして、現在エックス線等を使いましてその成分、組成等についての調査、分析をやっているところでございます。  また、船体への付着物でございますけれども、これも大変少量でございますことから、分析がなかなか容易ではないというふうに聞いております。しかし、現在厳正かつ早急にこの鑑定を進めるということで、鋭意努力しておるところが現状でございます。
  80. 上原康助

    上原委員 米軍は演習していなかった。自衛隊は演習をしておった。また、ミサイルも発射しておった。現にロケットらしいもの、ミサイルらしいものが落ちてきた。そんなミステリーみたいな話じゃ、これは困りますよ。早目に犯人を特定してください。  時間がありませんので、あと一、二分間委員長にお願いをして、もう一点だけ。  ポメックス・サガ号の被弾事件についてお伺いをしておきます。  これは米軍のFA18戦闘機であったことははっきりしているわけですから、この原因調査について、米軍から回答が来ておったのかということ。たとえ午後八時過ぎという夜間とはいえ、三千フィート、約九百メートルの高さから五千九百トンクラスの貨物船を視認できないはずはないわけですね。しかも、模擬録弾が一個ならず二個も命中しているというのは、いたずら半分というよりも、故意に貨物船をターゲットにしたのではないかという疑いさえせざるを得ない重大な事件なんですね。  これについて、米軍は、一体どういう原因調査をし、報告があったのか、この点をぜひ明らかにしていただきたいということ。  もう一つは、FA18が訓練していた場所は、海上保安庁の言い分ではウォーニングエリア176内ではない、外だと言っている。しかし、在沖米海軍の報道部は、この176の訓練空域内だというような見解をとっているようですが、これは実際はどうなのか。  そして今後の事故対策、防止はどのようにやるのか。この三点について、それぞれ事務当局から御説明を求めます。  最後に大臣の方から、この種の事件、事故というのが頻発しているわけですね、しかも一〇四号線を挟んだ実弾射撃というのは、従来一日であったのが二日になり、今三日もやっている。なぜこのように激化をするのか。このことについては、我々もいささか神経質にならざるを得ませんね。いつまでこういう環境に沖縄は、我々は苦しまなければいかぬの。沖縄だけじゃない、基地周辺住民は。幾ら日米安保の必要性を認めるにしても、基地周辺住民の生活環境ということについても、もう少し外務省なり政府は特段の配慮をしてもらわぬと、これは我慢できない。  このことについて、最後に大臣の方からまとめて御答弁をいただいて、少しく時間をとって申しわけありませんが、お願いをしたいと思います。
  81. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 ポメックス・サガ号の事件につきましては、七月三十日に在京米大使館のアンダーソン公使を招致いたしまして、この事件に関しまして我が方の強い遺憾の意を表明いたしました。と同時に、米海軍による調査の迅速な実施、それから再発防止に万全を期すべきことを申し入れました。これに対して先方は、米側としてもこの事件は極めて遺憾に思っているということを表明しまして、迅速なる調査及び再発防止のためにあらゆる措置をとる必要があるということを述べたわけでございます。  さらに、八月六日の日米合同委員会におきまして、正式に本件に対して同趣旨申し入れを行ったところでございます。米政府及び在日米軍におきましては、本件を重大視いたしまして、慎重に事実の調査を行っているということでございまして、原因及び今後の再発防止について、いまだ米政府からの回答に接しておりませんけれども、そう遠からず本件についての先方の回答が得られるものと期待しておる次第でございます。  それから、位置につきましては、この当該船のサガ号の船長の供述によりますと、サガ号の被弾位置は、北緯二十六度四十二分、東経百二十六度五十二分ということでございまして、もしそういうことでございますれば、訓練水域及び訓練空域の外ということになるわけでございまして、この問題が我が政府としても看過できない問題であるということでございます。  この点につきましては、米軍にもこういう供述が行われているということを十分伝えまして、現在、事故原因、事実関係の調査の一環として、米軍の方でも本件を検討しているということでございます。
  82. 倉成正

    倉成国務大臣 日米安保条約日本の安全にとって重要な役割を果たしておることは、上原委員も御承知のとおりでございますが、他方、基地の方々が大変御苦労されておる、そしていろいろな生活上の問題についての支障を来しておられるということも事実でございます。  したがいまして、我々はこれらのことに対しましてはきめ細かく、誠実に対応していかなければならないとかねてから考えておる次第でございまして、ただいまるる上原委員の申されたことを参考にしながら、部下を戒めて基地対策については万全を期したいと思っておる次第でございます。
  83. 上原康助

    上原委員 終わりますが、こういうこともやって首まで切るというのは、これはよくないですね、大臣。その意味でも、せめて解雇ぐらいは撤回させるように改めて求めて、終わります。
  84. 浦野烋興

    ○浦野委員長代理 この際、暫時休憩いたします。     午後零時十六分休憩      ————◇—————     午後三時十分開議
  85. 山口敏夫

    山口委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。伏屋修治君。
  86. 伏屋修治

    ○伏屋委員 日加租税条約、また政府調達に関する議定書の質問に入る前に、けさほども同僚議員の方からいろいろと質問がございましたソ連における駐在武官と三菱商事の駐在員、この二人に対してソ連からの国外退去を求められたことにつきまして少しお尋ねをしたいと思います。  この事件というのは戦後初めてのケースのようでございますが、新聞報道によると、ゲラシモフ・ソ連外務省情報局長から、ソ連滞在が不可能である、こういうように通告されておるわけでございまして、竹島武官はできるだけ早く、大谷駐在員は一週間以内にというような言葉で掲載されておったわけでございますが、通常、外交官が国外退去を命ぜられる場合はペルソナ・ノン・クラータ、好ましからざる人物という言葉を使って即刻国外退去、こういうようなケースが今までのケースであったように思うわけでございますが、今回の二人の追放というのですか国外退去というものは強制退去なのか自由退去なのか、新聞報道にはいろいろと書かれておるわけでございますけれども、どういう内容なのか、その辺、詳しくお知らせいただきたいと思います。
  87. 長谷川和年

    ○長谷川(和)政府委員 お答えいたします。  今回の竹島駐在武官あるいは三菱商事の次長の件でございますが、今先生が御指摘になりましたような文言で先方から発言がございまして、武官につきましてはできるだけ早く、また三菱商事の支店の次長につきましては御指摘のように一週間以内にということでございますが、外交官の場合、ペルソナ・ノン・クラータという場合には好ましからざる人物ということでございまして、通常そういったペルソナ・ノン・クラータが出た場合にはできるだけ早い機会、即刻といいますか早い機会に出ております。  今回の場合には、できる限り短い期間の中に、先方がそういうことを言っておりまして、そう言う以上は当方としてもモスクワに滞在して勤務することは事実上不可能と思いますので、文字どおりできるだけ早い期間の中に出ざるを得ないと思います。先方が言っておりますのはそういうことで、ペルソナ・ノン・クラータという場合には今申しましたように即刻といいますか可及的速やかに、そのようなことだと思います。
  88. 伏屋修治

    ○伏屋委員 そうすると、今回の場合はソ連滞在が不可能である、今まで余り外交用語になじまないような言葉で一応国外退去を言っておるわけでございますが、ペルソナ・ノン・クラータでなかったということで理解をいたします。  それと同時に、きょう同じように日本側がポクロフスキー駐日ソ連通商代表部代表代理にとった措置もいわゆるペルソナ・ノン・クラータ、この人は民間人ではない、ソ連政府を代表しておる人だと思いますが、好ましからざる人物というような言葉ではなくて、新聞記事にある、いわゆる日本滞在が不可能である、そういうような措置であったと理解してよろしいですか。
  89. 長谷川和年

    ○長谷川(和)政府委員 御指摘のとおりでございます。  ちょっと補足して申しますと、昨日私が東京におりますソ連の臨時代理大使を招致いたしまして、ポクロフスキー通商代表代理の行動が日本の国内法令の規定に触れるものであって、身分にふさわしくない、そういうことで実は過去何回か日本側関係当局への出頭を当方から要請したところでございますが、本人が出てこないということでございますので、私の方から、ペルソナ・ノン・クラータとすることまで事を荒立てたくないけれども、同代表代理が今後とも我が国に滞在することは不可能であり、なるべく短い期間内に我が国を離れることを要請する、そういうことを申し渡した次第でございます。
  90. 伏屋修治

    ○伏屋委員 今答弁の中にもございまして、過去何回か出頭を要請した、それにもかかわらず出てこないということであった。そのことが一応日本における滞在不可能である、そういう措置をとったということであるとするならば、きょうの新聞、まさに日本ソ連から不法滞在だと言われたのと時を同じくしておるということは、午前中の同僚議員の質問に対しては、外務大臣は、これは報復措置ではない、こういうようにお答えになっておられるわけでございますけれども、きょうの同時に載った新聞記事を見て、報復措置をとったな、こういうふうに解釈する人の方が多いのではないか、このように考えるわけでございますが、日本に滞在することが不可能だというのであれば、もっと時間をずらして後にするとか、もっと前に日本滞在は不可能だという形の措置をとった方がむしろ誤解を招かないで済んだのではないか、このように考えるわけですが、その辺はどうお考えですか。
  91. 長谷川和年

    ○長谷川(和)政府委員 ただいま委員指摘の点に関しましては、けさほど大臣からも御答弁ございましたが、我が方がとった措置は対抗措置でもなく、また報復的な措置でもございません。累次御案内のとおり、当方から関係当局に出頭するように要請したにもかかわらず出なかった。私たちとしても再度この種の措置をとらなければならないとちょうど思っていたときでございまして、偶然タイミングが同じになったというようなことでございまして、政府としては報復措置とかあるいは対抗措置とか、こういったことは一切考えておりません。
  92. 伏屋修治

    ○伏屋委員 今ここでそういうふうに何遍御答弁なさってもやはりそういうふうにとらざるを得ない、そういう事実だと思うのですね。  だから、外交配慮が余りにも欠け過ぎておったのではないのか、もう少し前にやるとか後にずらすということであるならば、報復手段でないという今大臣の答弁、また政府委員答弁も国民も納得するし、関係筋も納得するだろうと思いますけれども、その辺の外交配慮が欠けておったのではないかどうか、その辺をお答えいただきたいと思います。
  93. 長谷川和年

    ○長谷川(和)政府委員 私たちにとりましては、ソ連というのは重要な隣国であって引っ越しをすることのできない国でございまして、ソ連との通常の関係というのは今後とも増進すべく努力しております。  また、それなりにいろいろな外交的な配慮を行っておりますが、今回の件に関しましては、主権国家たる日本として当然のことを行ったまでで、淡々としてこれはこれ、あれはあれということで措置をとったわけでございます。申しましたように、我が方としては、ポクロフスキーにつきましてはペルソナ・ノン・クラータとしなかったということが外交的な配慮でございまして、できるだけ短い期間の中に出国するように、こういうことを向こうに申し渡した次第でございます。
  94. 伏屋修治

    ○伏屋委員 やはり外交というのは相手国があっての外交でございますので、報復的な措置という誤解を招くようなことはできるだけ避けた方がいいのではないか、今おっしゃったように日ソ友好はさらに進めていかなければならない、そういう重要な段階にもかかわらず誤解されるような措置というのは非常にいかがかと私は思うわけでございます。それ以上は言いません。今後そういうことのないようなきめ細かい配慮をしていただきたい、こういうふうに思います。  それから、防衛駐在武官の退去理由というのに対しまして、鹿取大使ですかが、事実無根であると反論しておるわけでございますが、それを一応指摘されたということは、この竹島武官がオデッサヘ出かけまして、いわゆる風景写真を撮っておった、そのそばに軍港があった、しかもそれは一外交官ではなくて海上自衛隊の駐在武官が風景写真を撮っておったということであって、事実無根であると幾ら強弁したところで、やはりそういうことに極めて神経を使っておるソ連にとっては、それは諜報活動とみなされても仕方がないのではないか。  したがって、外交官という方はそれなりにその国においての行動というものは慎重の上にも慎重を期しておられると思うのですけれども、この竹島武官のとられた行動は非常に軽々しい行動であったのではないか。李下に冠を正さずという例もあるわけでございますが、行動に十分注意すべきではなかったのか。また、聞くところによれば、そのことを注意されたことによって大使の方に進退伺いを出しておったという事実もあるやに聞いておるわけでございますが、その辺のこれからの心構え、そういうものについてお答えいただきたいと思います。
  95. 長谷川和年

    ○長谷川(和)政府委員 これからの心構えということでございますが、ソ連駐在にかかわらず、私たち外交官として、ただいま委員指摘のとおり、任国にありましては日常の行動あるいは公務における行動におきましても常に慎重に行動しなければならない、そう思います。これを一つの他山の石としまして、今後とも慎重に行動をいたしたいと思います。  今回のこの武官の行動につきましては、七月二十九日に向こうに参りましてたまたま写真を撮っていた。これは通常大使館員が年に一回ないし二回行う任国内の視察旅行の一環でございまして、こういった海岸等の風景の写真を撮ることをもって諜報活動と言うのは事実無根であると言わざるを得ません。事実、こういった武官の行いは諜報活動でございませんし、私どもは事実無根であると思っています。また、進退伺いを出したということは聞いておりません。  重ねて申し上げますが、今後とも委員指摘のとおり慎重に行動していきたいと思っております。
  96. 伏屋修治

    ○伏屋委員 重ねてきめ細かい外交的配慮をよろしくお願い申し上げたいと思います。  先ほどの御答弁にもございましたが、これはこれとして、日ソ友好関係というものは別であって、この問題で一喜一憂しない、そして日ソ関係をさらに進めていく、こういうような午前中の答弁もあったわけでございますが、これに対してどういう対応をなさろうとしておるのか。シェワルナゼ外相が訪日されたときにもゴルバチョフ書記長の訪日を強く要請されたというような経緯もあり、誤解としか受け取れないこういうようなことの中で、これはこれとして、日ソ友好親善を深めていくというその対応の仕方はどうしていきたいとお考えになっておられるのか、大臣にお聞きしたいと思います。
  97. 倉成正

    倉成国務大臣 お互いにいろいろ誤解があったり間違いを犯すことはあると思いますけれども我が国我が国の主権、法律に基づいてしかるべき行動をとるのは当然のことであると考えております。  先方が我が方の武官に対しましてとりました措置につきましては、我々が報告を受けている限りにおきましては全く問題がない、オデッサにおいて普通の人がカメラを持っていって風景写真を撮ることは決して諜報活動ではないと我々は確信いたしておる次第でございますけれども、不幸にしてそういう受け取り方をして我が方の武官が今後活動が非常に難しいということでございますので、帰朝命令というやむを得ない措置に至ったわけでございます。  しかし、こういうことは日ソ間においては非常に少ないわけですけれども、ヨーロッパその他の国等の間においてはしばしばあることでございますから、こういうことで全体の大局が動くということはあり得ない、また、あってはならないと思いますので、私はもっと大きな問題について十分話し合っていきたいと思っておる次第でございます。
  98. 伏屋修治

    ○伏屋委員 今大臣の答弁の中に、ECとか諸外国にもそういうことはよくあるということがございましたが、とりわけソ連という国に対してはほかの国に対する外交より以上に細かい神経を使わないといけないのではないかと考えますので、今後とも細かい配慮をよろしくお願いしたいと思います。  次に、この問題で三菱商事の次長が一週間以内に退去ということになったわけでございますが、この問題が今後の日ソ貿易に悪影響を及ぼすのではないかと懸念されるわけでございますけれども、その辺の見通しはどうお考えでしょうか。
  99. 倉成正

    倉成国務大臣 三菱商事の方からも全く事実無根という報告を受けている次第でございます。  しかし、我々細かい実態をまだ見ておるわけではございませんので、詳細についてはよく承知しておりませんけれども、少なくとも全く事実無根という報告を受けておりますので、このことを信頼しておる次第でございます。
  100. 伏屋修治

    ○伏屋委員 事実無根ということで、今後の日ソ貿易に支障はないとお考えである、こう解釈してよろしいですか。
  101. 倉成正

    倉成国務大臣 これは、先方がどういうふうに考え、どういうふうに行動するかということを私がここで推測することはいかがかと思いますけれども、いずれにしましても、このことをもって日ソの貿易全体に大きな影響が出てくるというふうには私自身は考えておりません。  しかし、ソビエト政府あるいはソビエト当局がどういう考えでどういう措置をとってくるかということを私がこの場で申し上げることはいささか分が過ぎたことではないかと思いますので、コメントは差し控えさせていただきたいと思います。
  102. 伏屋修治

    ○伏屋委員 事実無根とこちら側が言っておることにもかかわらず、今回ソ連側ソ連滞在不可能という形の措置をとった。やはり日本のSDI参加の問題あるいはココム規制問題というものをソ連が多少意識した出方ではないのか、そういう見方もできるわけでございまして、その辺の大臣の御認識はどうですか。
  103. 倉成正

    倉成国務大臣 これもまことに恐縮でございますが、先方の意図がどこにあるのかということを私が推測することは差し控えさせていただきたいと思います。  したがって、私はソ連という国はそういうことでこういうことを一々やるような大国ではないと信じておりますけれども、しかし、どういうことでどういう考え方を持っておるかと言われましても、それはゴルバチョフ書記長ないし関係当局の方に聞かないとわからないことでございまして、私の能力を超えることでございます。
  104. 伏屋修治

    ○伏屋委員 そういう外交的配慮を重ねてしていただくような措置を考えていただきたいということをお願い申し上げまして、今の質問を終わりたいと思います。  次に、日加租税条約に入らせていただきます。  最初に、本条約というのはOECDモデル条約にできる限り沿ったものである、こういうふうにあるわけでございますが、租税条約には国連モデル条約もあるわけでございまして、OECDモデル条約と国連モデル条約の基本的な違いというのはどのあたりにあるのですか。
  105. 柳井俊二

    柳井政府委員 お答え申し上げます。  ただいま先生指摘のとおり、モデルといたしましては、OECDモデルのほかに国連のモデル条約があるわけでございます。両者の間の比較でございますが、あらゆる面で違うということではございませんで、いろいろ共通の面もございます。他方、先進国間の経済交流を見ますといわば相互乗り入れ的な形になっている場合が多いわけでございますが、開発途上国との交流ということになりますと、例えば事業活動につきましては先進国の方から投資をして出向いていくということが多うございます。また、例えば海運などの例を見ますと、先進国の船が開発途上国の方に配船されるということが多いわけでございます。そういう経済の実態を背景といたしまして、開発途上国が多数入っております国連の場合におきましては、開発途上国の立場を反映したモデルをつくったわけでございます。  したがいまして、基本的な違いと申しますか主な違いを若干例示させていただきますと、例えば事業所得に対する課税でございますけれども、これはいわゆる恒久的施設、事務所でございますとか工場でございますとか、そういうものでございますが、そういう恒久的施設を通じて事業活動を行った場合にのみ恒久的施設のあるところで課税されるというのが両者の原則でございます。この点は共通点でございますが、国連モデルの場合におきましては、開発途上国の事情を反映いたしまして恒久的施設の範囲がOECDモデルに比べまして若干広くなっているという点が一つあろうかと思います。  また、先ほどちょっと触れました海運の場合でございますが、OECDモデルの場合には海運会社の属する国においてのみ課税できるということになっておりますが、国連モデルの場合にはそういう原則をいわばA案といたしまして、B案といたしましては、それ以外の相手国の側でも課税ができる、双方で課税ができるというふうになっております。  また、投資所得利子配当使用料でございますが、OECDモデルの場合には源泉地国における税率を低くするということでございますが、国連モデルではこの点は各国の交渉に任せるというふうになっているわけでございます。  なお、今回御審議いただいております日加租税条約につきましては、基本的にはOECDモデルに沿って作成したものでございますが、例えば二十条というのがございますが、その他所得というものについての規定がございますけれども、これにつきましては国連モデルと同様の規定になっているということが言えると思います。
  106. 伏屋修治

    ○伏屋委員 時間もありませんので、日加租税条約について幾つかお尋ねをしたいと思いますが、少し割愛をさせていただきまして、租税条約締結の意義として、一応経済交流の促進というのが挙げられておるわけでございますが、日本カナダ両国間の経済交流現状、及び最近の急激な円高が両国間の経済、貿易にどういうような影響を及ぼしておると考えておられるのか、お答えいただきたいと思います。
  107. 渡辺允

    渡辺(允)政府委員 お答え申し上げます。  日本カナダの間の貿易関係は、基本的に申し上げますと、日本からの製品関係の輸出、それからカナダから日本への原材料関係の輸入という、いわば相互補完的な形で比較的順調に推移しているというふうに私ども考えております。例えば輸出入を合わせました貿易総額の数字で申しますと、一九八〇年には輸出入合計いたしまして七十一億六千百万ドルでございましたものが、八五年には九十二億九千万ドルに達しておりますし、さらに八六年には百四億ドルに達しております。このように順調に伸びてきております。  その間にございまして、実は日本の統計で申しますと八五年まではむしろ日本側の輸入超過でございましたのが、八六年から数字上は実は輸出超過に変わっております。その間、為替レートの変動がございまして、例の八五年のプラザ合意のときからことしの夏までの間に大体三〇%ほど円高になってきておる。その結果のJカーブ等の問題がございますが、ただ、円ベースで申しますと、八五年から八六年にかけて輸出は減少の傾向になっております。八七年の上半期の数字を見ましても、比較的貿易はバランスの方向にまた向かっているやに見えるわけでございます。  日加間では、政府間の貿易経済関係を、一年半ごとでございますが、レビューをいたします日加経済協力合同委員会というような場も設けられておりますし、私どもといたしましては今後とも日加間の貿易が両国に利益のある形で順調に伸展していくようにしていきたいと思っております。
  108. 伏屋修治

    ○伏屋委員 今御答弁の中にもありましたように、今まで我が国の入超であった対カナダの貿易というものが八四年に出超に転じた。そして、一九八五年にはその数字が三億六千万ドルというようにふえておるわけで、この傾向がこのまま進んでいくと、現在我が国とアメリカ、ECとの間に見られるような貿易摩擦が起こることが予想されるわけでございます。そのあたりを政府はどういうふうにお考えになっておられますか。
  109. 渡辺允

    渡辺(允)政府委員 私どもといたしましては、現在のところ確かに貿易のカナダから見た逆超がございますけれども、その額もほかの場合に比べまして、日本から見た場合、カナダから見た場合、いずれもそうでございますが、それほど大きなものではございませんし、直ちに貿易摩擦の原因になるというようなことはないのではないかと考えております。  先ほども申し上げましたけれどもカナダの場合、例えば製品輸出の割合をなるべくふやしたいとか、先方にもいろいろ要望もございますし、日加双方の経済界の間でいろいろの交流もございますので、そのような活動を通じまして今後とも良好な貿易関係が進んでいくように官民ともに努力していくべきだと思っております。
  110. 伏屋修治

    ○伏屋委員 そういう貿易摩擦が起こらないような一層の努力を要望いたします。  日加条約は終わりまして、政府調達協定議定書の問題に入らせていただきます。  外務省作成の議定書説明書によりますと、日本はこの議定書の作成に当たって積極的な役割を果たしたとなっているわけでございます。具体的にどういう役割を果たしてきたのか、そのあたりからお尋ねをしたいと思います。
  111. 池田廸彦

    ○池田説明員 お答え申し上げます。  たまたまこの議定書作成交渉の終わりになっております段階で、我が国政府調達委員会の議長を務めておりました。この場合、議長としての当然の責務に加えまして、やはりこの際、政府調達協定をさらに拡充するべきであるという考え方に立ちまして、我が国協定のもろもろの条文につきまして妥協案を提出し、あるいは各国の説得、これは議場のみでなく議場外の説得、こういうものを含めまして努力したわけでございます。結果といたしまして、お手元にございます議定書が作成されたわけでございます。
  112. 伏屋修治

    ○伏屋委員 これは私が余り考え過ぎかもわかりませんが、積極的に議定書について役割を果たしてきた、こういう背景には、どうも今の日米あるいはEC等々の貿易摩擦、これを何とか解除しなければならないという背景があったのではないか、このように考えるわけでございます。  午前中も佐藤委員からそういう御質問があったと聞いておりますけれども、関西新空港がアメリカにとっては今後の大型公共プロジェクトに対する一つの入り口である、いわゆるテストケースである、こういう見方をアメリカではしておられるようでございまして、そういうのがいろいろな節々に日本に対する交渉の中であらわれてきておるわけでございますが、関西新空港あるいはスーパーコンピューター導入をめぐるそういう摩擦、そういうような具体的な懸案がこういう協定に具体的に積極的な役割を果たしたという背景にあるのではないか、そういうように、私は、考え過ぎかもわかりませんがそう思うわけでございまして、こういう問題をめぐる圧力、摩擦があったかどうか、そのあたりをお聞きしたいと思います。
  113. 池田廸彦

    ○池田説明員 お答え申し上げます。  我が国が先ほど申し上げましたように積極的に努力いたしましたそのゆえんは、やはりガットのコードの一つであります政府調達協定、これをこの際拡充することがガット加盟国全体にとってプラスになるというのが動機でございます。ちなみに今度の改正はコードの適用範囲の拡大でございますとか入札手続の改善、落札情報の公示等々でございまして、例えば先生指摘の関西空港株式会社あるいはスーパーコンピューター調達といった二国間の具体的問題とは直接の関係はございません。  それから、さらにつけ加えさせていただきますが、もともと現行協定の最終規定第九条の中に協定が発効してから三年以内に協定をさらに見直して交渉に入るようにという条項が設けられております。このたびの議定書の作成は、まさにこの条項を実際に実行したという趣旨でございます。ただし、この議定書が早くまとまり、また早く発効するということは、御指摘のような我が国が当面しておりますもろもろの経済摩擦の改善の方向に役立つ、これは疑いを入れません。ただし、それが動機ではなかったということでございます。
  114. 伏屋修治

    ○伏屋委員 関西新空港はもう少し後にお尋ねしたいと思います。  協定附属書に各国別にその通用を受ける機関が記載されておるわけでございますが、国鉄、専売、電電公社も対象となっておるわけでございます。その間、今申し上げた国鉄、専売、電電公社というものは民営に移管されたわけでございますけれども、例えばNTTが調達をしたという場合には、これは政府調達、こういうふうにみなしてよろしいわけですか。
  115. 品川萬里

    ○品川説明員 お答え申し上げます。  先生お尋ねのNTTにつきましては、昭和六十年四月に公社から特殊会社に経営形態が変わったわけでございますが、その際、考え方といたしまして政府調達協定は加盟各国のオファー類のバランスの上に成り立っておりまして、NTTを対象機関から外すにつきましては、それに見合う代償措置が必要であるということ、NTT自体が引き続き内外無差別の調達手続を継続したいという意向もございまして、引き続き政府調達協定対象機関としたわけでございます。なお、取り扱いといたしましては、公社時代と同様に政府調達の実績としてカウントされているものでございます。
  116. 伏屋修治

    ○伏屋委員 わかりました。  関西新空港というものについてお尋ねをするわけでございますが、関西新空港でこういう調達を行った場合、新聞記事等によりますと政府調達を準用する、こういうようなことがあるわけでございますが、政府調達と考えてよろしいですか。
  117. 池田廸彦

    ○池田説明員 この場で政府調達と申します場合には、政府調達コードの対象機関というふうに考えております。その意味では、関西空港は現在の政府調達協定の別表に掲げられておりません。したがいまして、協定上の政府調達には該当いたしません。
  118. 伏屋修治

    ○伏屋委員 イギリス、アメリカは依然として関西新空港をめぐって、先ほど申し上げましたように非常に不満を募らせておるわけでございますが、アメリカではコントラと並んで関西国際新空港のことをカンター、カンターが問題だ、こういうようなことを言っておるほど関心が非常に高いわけでございまして、日本側も今まで大変苦慮されておられるようでございますが、その日本措置がこの改正議定書規定を満たすものになるのか、またイギリスやアメリカの要求に対し今後どのように対応しようとしておるのか、そのお考えをお聞きしたいと思います。
  119. 池田廸彦

    ○池田説明員 関西空港株式会社にいろいろお願いしておるわけでございますが、同社といたしましても、空港建設に関しましてすぐれた実績や能力を有する外国企業の協力をも広く求めて、できるだけ世界での最もすぐれた技術、ノーハウを活用したいという基本方針で臨んでおられると承知しております。  こういう観点から今後の空港諸施設の主要な調査、それから建設工事、また機器の発注に関しまして外国企業に対して我が国企業に対すると同様の公正かつ無差別の参加の機会を与える、こういう方針で臨んできておるわけでございます。この観点から手続の透明性、公平性を確保するための方策、この部分がいわば政府調達協定を準用するという部分に相当するわけでございます。  政府といたしましても、本件空港建設工事に参入を希望する外国企業我が国企業と同様の公正、無差別の参加の機会を与える、これが非常に重要だと考えております。当然のことでございますが、この場合、外国企業というものは特定国を念頭に置いたものではございません。ですから、一方では内国民待遇、一方では最恵国待遇。ただし協定上の意味ではございません。そういう姿勢で取り組んでおるわけでございます。
  120. 伏屋修治

    ○伏屋委員 関西空港について非常に関心が高いのは、先ほどと重複しますけれども日本の大型公共プロジェクトに対する日本の市場開放のテストケース、こういうように見ておるもので、執拗なまでにアメリカからいろいろな申し入れがあるわけでございますし、今アメリカの国会、上下両院は休会中でございますが、九月から開会される。それが一つの関西新空港に対するアメリカのタイムリミットである。そこで日本がどういう措置をとってくるのか、そのことによって改めてまた大きな摩擦現象が起こってくるのではないか、このように大変危惧されるわけでございます。新聞記事を見ましても、三〇一条の発動を準備するというような報道から見ても、日本が何か恫喝されておるようにしかとれないような、そういうような思いも向こうは持っておるようでございます。  それだけに、そういう今後の日本の市場開放のテストケースとしての関西新空港の問題である、こういうようにとらえて基本的にこの問題について、いよいよタイムリミットも近づいておるようでございますので、今後どのような措置をとろうとしておるのか。アメリカは具体的な受注企業名まで挙げてきておる。こういうことを考えると、この政府調達というのは内外無差別が原則であるにもかかわらず、アメリカが受注会社の名前まで挙げておるということは、これは随意契約を日本に押しつけてくる、こういうようにとらえられても仕方がないような行動に出てきておるわけでございますので、関西新空港についても今後の市場開放というものを頭に置きながら基本的に日本としてはどういう姿勢でこれに臨もうとしておられるのか、お尋ねしたいと思います。
  121. 池田廸彦

    ○池田説明員 基本的な姿勢といたしまして、内外無差別の原則に立脚いたしまして公正な競争機会を外国企業にも提供する、こういう趣旨でございます。
  122. 伏屋修治

    ○伏屋委員 今答弁なさったような方向で、今までもいろいろなあの手この手と全部をさらけ出さないで一つ一つ出しながら相手の動きを見ながらやってこられたようでございますけれども、いよいよタイムリミットも近づいておりますので、その基本姿勢で内外無差別の原則というものを貫いて、しかも透明度の高いそういう公開入札の方向をたどらなければやはり日本はさらに貿易摩擦の嵐が吹くのではないか。このことを危惧いたしておりますので、その面はより一層の御努力をお願いしたい、こういうふうに思います。
  123. 池田廸彦

    ○池田説明員 御趣旨を体しまして今後ともさらに努力いたしたいと思っております。
  124. 伏屋修治

    ○伏屋委員 関西新空港が一つの入り口になるわけでございますが、それと同じように通信の自由化ということで第二KDDというのが大きな問題としてクローズアップされておりまして、今まで郵政省の中にもいろいろな意見の食い違い等々があったやに聞いておりますが、現況はどうなっておるのか、また外国資本はどのように参加しておるのかお尋ねしたいと思います。
  125. 品川萬里

    ○品川説明員 お答え申し上げます。  国際電気通信分野への新しい企業の参加につきましては、既に日本国際通信企画、国際デジタル通信企画、それぞれITJとIDCと称しておりますが、この二つの会社が参入の希望を表明しておりました。これらの会社の名前にございますように企画会社の段階でございますけれども、それぞれの株主の大半が実は共通であることもございまして、それぞれの会社の主要な株主の間で一本化の話し合いが進められてきました。しかし、最近に至りましてこの一本化の話し合いは不調に終わりまして、今後別々に事業会社の設立に向かう方向にあるわけでございます。  したがいまして、事業会社としてどのような株主構成になるかというのは今後の課題でございますけれども、今現在においては、先ほど申し上げました二つの会社が企画会社という段階にございますけれども、この二社のうちIDCの側にはケーブル・アンド・ワイヤレス、これはイギリスの会社でございます、パシフィック・テレシス・インターナショナル、これはアメリカの会社でございます、それからメリル・リンチ、この三社が資本参加を希望しております。なお、ITJの方には今の段階ではございません。先ほど申し上げましたように、これから事業会社として再編される段階でございますので、あるいは新たな参加企業が出現するかとも考えられるわけでございます。
  126. 伏屋修治

    ○伏屋委員 国際通信というもののシェアは国内通信に比べまして非常に狭いわけでございますけれども、KDDが独占でやっておるよりも、むしろ国民にとってはそういう国際通信の分野も今後倍増していくのではないかと思いますので、国民のサービスを考えればそういうふうにあってほしいと思いますので、今後そういうことになお一層の努力をお願いしたいと思います。  その次に、スーパーコンピューターというものの購入をアメリカから非常に迫られておるということがあるわけでございますけれども、この対応は一体どうなっていますか。
  127. 池田廸彦

    ○池田説明員 御指摘のように、スーパーコンピューターの調達問題、日米の懸案の一つになっておったわけでございますが、今般我が国はスーパーコンピューター導入の手続における透明性の増大、無差別な競争機会の確保、これを趣旨といたしましたスーパーコンピューター導入手続を決定し、これを自主的に実施することにいたしたわけでございます。アメリカ側もこの手続を高く評価しております。さらに御指摘がございますれば、導入手続の主要点について必要があれば補足いたします。
  128. 伏屋修治

    ○伏屋委員 このコンピューターの導入、それからさきの委員会で佐藤委員からも質問がありました政府専用機の購入、こういうものを目玉にして十億ドルの緊急輸入というものが補正予算にも計上されたわけでございますが、その緊急輸入に当たってはやはり政府調達という形で内外無差別を貫いたであろうと思いますけれども、その辺の確認。それから、十億ドルが補正予算の中に具体的にどのように配分されておるのか、大蔵省来ておられますか、その辺をお聞きしたいと思います。
  129. 杉井孝

    ○杉井説明員 お答え申し上げます。  先生指摘の補正予算に計上いたしました政府調達特別対策関係の主要な調達品目は、政府専用機二機、スーパーコンピューター二台、ヘリコプター十三機、飛行機五機、そのほか試験教育研究用機器あるいは医療研究用機器、検査用機器、外国図書などとなっております。  これらにつきましては、各省庁において緊急に調達して整備すべきものを予算措置したものでございまして、その調達に当たりましては政府調達協定及び国内法令に従いまして原則として競争によることになりますので、先生指摘のように内外差別が許されないばかりでなく、外国間の差別も許されないということになるわけでございます。
  130. 伏屋修治

    ○伏屋委員 内外無差別の原則を貫いたかどうか、確認をしたいと思います。
  131. 池田廸彦

    ○池田説明員 あくまでも政府の行う調達でございますので、政府調達協定に定められた内外無差別の原則、各国間無差別の原則、これを堅持することとしております。     〔委員長退席、甘利委員長代理着席〕
  132. 伏屋修治

    ○伏屋委員 時間がありませんが、この十億ドルで国会に当年度分として十一億というように配分されておるわけでございます。聞くところによりますと、五十年来一度も故障がなかった国会の扉の取っ手をかえようというような方向にこれが使われようとしておるわけですが、貿易摩擦解消ということにそれが使われることにおいては私も別に異議を挟むものではございませんけれども、国内のものを使えばもっと安くやれるということから考えて、もう少し配分をきめ細かくむだなところに使わないで有効に十億ドルというものを政府調達で使った方がよかったのではないか。また、外国の方ではいわゆる黒字が大幅に減らなければこのようにして政府調達で十億ドル使ってみても余り効果がない、このような外国の冷ややかな見方もあるやに聞いておりますので、そのあたりの所感をお願いしたいと思います。
  133. 倉成正

    倉成国務大臣 ただいまお話しのとおり、日本の貿易の黒字は一千億ドルになんなんとしておるわけでございますから、十億ドル海外から調達したからといってそれが大きく減るものではございません。しかし、外国にいいものがあればこれを政府がみずから手本を示して調達する、海外からいろいろな物資を入れていく一つの刺激にしたいというのが十億ドルの海外物資の調達の金額でございます。したがって、そのように御理解いただければ幸せだと思うわけでございます。  やはりおつき合いというものがございますから、千億ドルずっと黒字を出し続けるということは世界経済の中で絶対に許されないことでありますから、そういう意味で、まず隗より始めよということで政府に十億ドルの枠をとったというのが実態でございます。
  134. 伏屋修治

    ○伏屋委員 以上で政府調達議定書の質問を終わりたいと思います。  次に、国際情勢の問題に移りたいと思います。  まず最初に、この八月十五日は四十二回目の終戦の日を迎えたわけでございます。その新聞の中に、いわゆる太平洋戦争の最激戦地であったと言われる硫黄島の日本車戦死者の遺骨、その遺骨の一番重要な頭蓋骨というものがアメリカに持ち帰られておるという記事が出ておったわけでございますが、外務、厚生両省、この事実を確認しておられるかどうか。
  135. 大西孝夫

    ○大西説明員 お答えを申し上げます。  硫黄島におきます遺骨収集は、昭和二十七年、平和条約締結後最初の調査団が派遣されたわけでございますが、当時のその調査団の中に、その新聞に載っております和智さんとおっしゃる硫黄島協会の会長さんが調査団員として入っておられましたし、厚生省職員もそこに入っておったわけであります。  そこで、集められた遺骨をいろいろ見ておる中に、頭骨、頭の骨がない遺骨が非常にたくさんあるのではないかということにお気づきになられたのですが、正直言いまして、なぜかということはわからないわけでございます。そこで、恐らく米国関係者がお持ち帰りになったということではなかろうかという推測をされまして、その後、実は昭和三十一年に、米国におきます。ある新聞記者が出された「硫黄島」という題名の本に硫黄島協会としてのアピールを書いていただくようにお願いして、それを載せてもらったのでありますが、そのときは全く反応がなかったということで、その後ずっと年月がたったわけであります。  昭和六十年になりまして、実はちょうど硫黄島の戦闘の四十周年記念ということで、六十年二月に米国の海兵隊協会と硫黄島協会合同で記念行事が行われたのですが、そのときに頭骨の返還の話を先方にされたということで、その事実につきましては後ほど私ども伺いました。  それから、六十年三月に、今度は和智会長がアメリカに行かれたときに、別の新聞記者がやはり「硫黄島」という題名の本をその当時出しておられたようでありまして、そこに硫黄島協会のアピールを載せてくれないかとお願いをしましたところ、その年五月に第二版が出されまして、巻末にアピールを載っけてくれたということでございます。そのアピールを読まれたある米国市民が、その年の暮れになりまして二体の頭骨の返還の申し出をされまして、米軍の協力も得まして私どもの方にお引き渡しをいただいたという経緯がございます。  それらの動きは逐一硫黄島協会から伺っておりますし、実は、硫黄島におきまして依然毎年遺骨収集をやっておる関係もございまして、硫黄島協会とは常に密接な連絡を維持させていただいておりますので、逐一その辺の事情も私ども承知はいたしておりますが、ただ問題の、一体、何体ぐらいの頭骨が米国へ持っていかれているのか、あるいはそれを何人ぐらいの方がお持ちになっているのかというのが皆目わからないのが実情でございます。自主的に返還の申し出をしていただくのを待つしかないのが実情でございます。  以上でございます。
  136. 伏屋修治

    ○伏屋委員 これはとんでもないことでございまして、ことしの四十二回目のいわゆる終戦記念日の、硫黄島協会という民間レベルの慰霊祭の席上において会長がそういうことを言った。少なくとも一千個以上の頭蓋骨がアメリカに行っておるだろう。日本の国のために殉じていった方々の頭蓋骨が、事もあろうにアメリカで灰皿にされたり飾り物にされておるというような事実。そういうことを厚生省が、民間レベルから出てきてわかりました、連絡はとっております、それでは済まない。  もっと政府としてそういうことは——この新聞記事を見ましても、できるだけ戦後の日米間の友好を損なわないようにしようというので硫黄島協会の方々も神経を配って今まで辛抱してきておった。そのことは政府の方も既に承知のはずであるわけですね。ですから、その民間レベルの硫黄島協会が言うまでもなく、現時点においての日米間の状況から見て、その問題について話を出してもこれはもう友好を損なわない、こういう判断は八月十五日以前にできるのではないか。だから、硫黄島協会から出る前に、日本の国のために殉じていった方々のために、政府主導でそういうことをやっていくべきではなかったのか。このことを考えると私も無性に腹立たしい思いなんでありますけれども、そのあたりはどうなんですか。
  137. 大西孝夫

    ○大西説明員 先ほども申し上げましたように、米国関係者の方が個人的にお持ち帰りになったという推測がなされるわけでありますが、これにつきましては、現時点で一体どれくらいの方々がお持ち帰りになったのか、あるいはその方々がどこにおられるのかというのも全く把握ができないという状況でございます。  したがいまして、そういう方々の自主的な返還をいただけるような雰囲気づくりということでとにかくアピールをして、返還をしていただくように働きかけをしていく、こういうアプローチが、先ほど申しましたように現時点で一応の成果を上げ得るところに来ておりますし、引き続きそういうアピールを今後続けながら粘り強くやっていかなければいかぬのではないかというふうに考えておりまして、民間団体でございますが、今後ともそういう運動をやっていただくことが現時点では現実的かつ効果的ではないかと思っておるわけでございます。  ただ、私どもとしても全く無関心でいるということではございませんので、協会の方からいろいろ御要望がある場合は、従来も協力をさせていただいておりますし、今後も協会と十分連絡をとりながら対処してまいりたいと思っております。
  138. 伏屋修治

    ○伏屋委員 今の回答には全く不満でございまして、政府がやるべきことである、こういうふうに私は考えるわけでございます。  それにも増して、頭蓋骨の返還について厚生、外務両省は民間レベルで進めるべきであると言って、その民間団体の申し入れを突っぱねておるという、そういう事実はあるのですか。
  139. 大西孝夫

    ○大西説明員 お答えを申し上げます。  その申し入れを受けたということはございませんで、先ほど申しましたように、常時その協会の会長さん初め関係の方々は私ども接触を密にいたしております。実は昨日も協会長さんにも来ていただいていろいろお話をしておるのでありますが、硫黄島協会としては協会独自で今後も行動していくということで、現時点で政府にお願いするという考え方は持っていないということでございます。  しかし、今後こういう形で協力せよという御要望があれば、できる範囲内の協力をさせていただくつもりでおりますし、この問題、政府は全く無関心でいるということではございません。
  140. 伏屋修治

    ○伏屋委員 当然のことでありまして、もっと積極的にこれを推進してもらいたい、こういうように思います。  これは、今厚生省はそういうお考えですが、外務省はどう考えているのですか。
  141. 倉成正

    倉成国務大臣 十七、八年前になると思いますけれども、当時、硫黄島に初めて慰霊塔を建てるときに、亡くなられました厚生大臣内田常雄さん、私が社会労働委員長でございます、各県の遺族の方、YS11だものですから乗れる数が限られておりますが参りまして、慰霊塔をつくり、慰霊塔の落成式を行い、そして故人が非常に好んでおりましたお酒を塔にかけたり、好きなだんごを飾ったりいたして御冥福を祈りました。その機会に、私自身洞窟を幾つか自分で歩きまして、そしていろいろな遺品が残っておる、そして若干いろいろな骨等が残されているという事実に気づきまして、これはもうこういうことであってはならないということで、当時の厚生省に非常に強く要請したことがございます。  しかし、ただいま先生お話しのような、頭蓋骨を海外に持ち出したという、そしてそれがどういう経過、どういう形になっているかという事情については、私も寡聞にして余りよく承知しておりませんでしたので、厚生大臣の方にも十分注意を喚起をいたしまして、しかるべく処置をとりたいと思います。     〔甘利委員長代理退席、浦野委員長代理者席〕
  142. 伏屋修治

    ○伏屋委員 アメリカの方々が日本に頭蓋骨を返還しておるというようなケースがあるわけでございまして、そういうケースからしましても、一千体以上の頭蓋骨というものがアメリカに散在しておる、これはもう事実だと思います。その辺を外務、厚生両省が積極的に、硫黄島協会、そういうものを先導しながら、やはり一日も早く頭蓋骨を日本に返還していただいて、御遺族の方にお返しする、これが我々人間としてとるべき道ではないのか、こういうふうに考えるわけでございます。  ただ、厚生省は、大腿骨二本あれば一体とみなすというような考え方で遺骨収集したということも聞いております。そういうことから考えましても、国のために殉じたそういうとうとい方々の頭蓋骨を、何としても一日も早く返還するように、厚生、外務両省が積極的に推進していただきたい、このことを心から要望する次第でございます。  もう時間がありませんので、次の問題、たくさんございますが、一つだけお尋ねしたいと思います。  軍縮の問題でございますが、一連のソ連の軍縮提案、三回にわたってのいわゆるダブル・ゼロあるいはグローバル・ダブル・ゼロオプションというようなことで軍縮、INFを全廃しよう、こういうような動きがあるわけでございまして、かつてのソ連がとらなかったようなそういうような行動が、現在ゴルバチョフ書記長によって提案をされておるわけでございますが、その背景をどう考えておられるか、どういう背景からこういうものが出てきたのか、そういうことをお聞きしたいと思います。
  143. 倉成正

    倉成国務大臣 INF交渉につきましては、もう委員承知のとおり、戦略核の削減とあわせて、とにかくINFの範疇に属するものについてひとつ双方で削減をしよう、その際に、我が方の主張はゼロオプション、そして特にアジアに不利にならないようにしてほしいというのが我々の主張でございまして、幸いにして、日本が主張しております主張、また西側もグローバルな全廃ということを主張しておりまして、紆余曲折を経ましたけれども、今ジュネーブの軍縮・軍備管理交渉のテーブルにのっておるということでございます。  したがって、この問題の一つのネックは、御案内のとおり、西ドイツにありますパージングIa、核弾頭はアメリカが持っておる、そしてパーシングの方は西ドイツが所有しているという問題と、それから検証をどうするかという問題、こういう問題について、ジュネーブにおける専門家同士が相当納得のいく交渉を続けるということで、今鋭意交渉が続けられておると思うわけでございますので、我々としてはこの成功を心から祈っておる次第でございます。
  144. 伏屋修治

    ○伏屋委員 この九月十五日から十七日にかけてアメリカにおいてシェワルナゼ外相外相会議が開かれると聞いておるわけでございますが、ジュネーブでその話が続いてきたこの軍縮提案、いわゆるINF全廃、こういう問題が外相会議の主題になるのではないかと思いますし、その会議の結果が米ソ首脳会談につながっていくのではないか、このように考えるわけでございますが、そういうことをアメリカのレーガン大統領も考えておられるようでございまして、アメリカ大統領が日本中曽根総理にも国連総会前に訪米してもらいたいとサミット諸国の首脳に呼びかけ、また、異例なことでございますけれども、NATO加盟国のメンバーにもそれを呼びかけておる。いわゆる緊急拡大サミットというものをやろうではないか、こういうような呼びかけが新聞に出ておったわけでございますが、後藤田官房長官の発言によれば、そういう打診はなかったというし、片一方ではそういうようなことがあった、こういうことでございますが、その辺の真偽はどうなっておるのですか。
  145. 倉成正

    倉成国務大臣 私も新聞では承知しておりますけれども、そのような呼びかけは聞いておりません。また、そういう計画を今日本もいたしてないというのが現実でございます。
  146. 伏屋修治

    ○伏屋委員 九月の下旬には国連総会外務大臣は出席され、代表演説をされると聞いておるわけですが、今その打診はなかったということでございますけれども、それは全くそのとおりに受けとめてよろしいのですか。新聞記事等々を見ますと、そういうような記事ではないわけでございますけれども
  147. 倉成正

    倉成国務大臣 そのとおりでございます。
  148. 伏屋修治

    ○伏屋委員 最後に、ソ連が最近日本の核について余りとやかく言われなくなったということですね。今までは韓国、フィリピン、日本ということを名指しでされておったわけでございますけれども、その名指しをされないような状況に今なっておるのでございますけれども、そのあたりをどう評価しておられるのですか。
  149. 倉成正

    倉成国務大臣 日本は非核三原則を堅持しておりますから、ないものについてそれを別に相手にしないということ、至極当然のことを言われたことだと心得ております。
  150. 伏屋修治

    ○伏屋委員 時間がございませんので、以上で終わります。
  151. 浦野烋興

    ○浦野委員長代理 次に、永末英一君。
  152. 永末英一

    ○永末委員 かかっております二案件につきましては後で質問するといたしまして、今きょうの委員会でやりとりを聞いておりまして気にかかること等につきまして御質問申し上げます。  今硫黄島の話がございました。我々硫黄島の作戦に参加をしておった者といたしましては、四十二年後の政府が一体何を考えておるかという感じで承りました。あの戦争中にもガダルカナルで戦死をした日本人の頭蓋骨について報道がございました、アメリカの方が持っていってああだこうだという。それは戦闘しておった者の気持ちに著しく響いたのでございまして、今我々とアメリカとは友好親善の間柄であって、この友好親善は平和のシンボルであります。しかし、なおかつ、そのような事実がありとするならば、政府としてはやはり真剣に対処していく問題ではないかと思います。その気持ちが私はアメリカと日本の間のさわりのない友情を温めるものだ、あるいは厚くするものだと思います。  この四月十七日に半導体のダンピングについてアメリカ政府が半導体を売っておる日本企業が生産をし、あるいはアメリカに売っておるその他のものについてまで一〇〇%の関税をかけまして、その関税について報復関税という言葉をつけました。四月十七日というのは、日本暦に直せば四月十八日でございまして、それは一九四二年、昭和十七年、ドゥリットルがホーネットからB25を飛ばして東京を爆撃した日でございました。そのことに触れた我が方の新聞のコラムにさえございました。  私は、アメリカのしかるべき人に聞いてみましたら、いや、それは偶然の一致だ、決してその日をねらって報復関税一〇〇%をかけたのではないと言っておりました。それを信じたかった。しかしながら、きょうのやりとりで、硫黄島で戦死をした我々の戦友たちの頭蓋骨が、なおかつ日本政府が知らないような雰囲気の中でアメリカにおるということであるならば、それは責任を持って日本政府日本国にそれを持ち帰り、丁寧にお祭りをするというのが当然ではないか。大臣の答弁を求めます。
  153. 倉成正

    倉成国務大臣 先ほどお答えしたとおりでございますけれども、私が参りましたときも、僧籍になられました和智元大佐、そして遺族の、硫黄島に御縁のある方々、飛行機の関係上非常に制約がございましたから各県一人ずつということでございましたけれども、私自身、相当滞在時間のすべてを費やして、自分自身洞窟の中に入って様子を見まして、これではいけない、やはりもっと真剣にこの遺品を収集しなければならないということを痛感いたした次第でございます。  しかし、今お話しの、いろいろなものを持ち帰っておるというような事実、それが正しいとすれば、この問題については真剣に政府として対処すべき問題と思います。したがって、厚生大臣にも、きょうの委員会の模様を十分伝えまして対処したいと考えておる次第でございます。
  154. 永末英一

    ○永末委員 戦争というのは戦った二個間を仲よくさせる一つのくさびかもしれません。しかしながら、我々がアーリントン墓地へ行きましたときに、硫黄島の摺鉢山に星条旗を立てている像がなおございますし、まねしたようなものがマレーシアにもあるようでありますけれども、またそれをアメリカの海兵隊の募集のポスターに印刷をされていることも見てまいりました。私自身も硫黄島へ参りまして、戦友の立てこもった洞穴に行きましたけれども、しかし、それは過去の事実であって、我々がこれから未来へかけてアメリカとの本当の友好親善をやっていくとするならば、戦争の記憶は残りましょうけれども、戦闘、敵がい心をあおり立てるようなものはさらっと歴史の過去の中にやはり消し去るべきだ、これは外務大臣の一番の責任であろうかと私は思います。そういう気持ちが残っておれば、いろいろな貿易摩擦といい、いろいろなことが言われますけれども、なかなか直らない。これは真剣に取り組んでいただきたい。要望しておきます。  七月の終わりに私どもの民社党の塚本委員長が訪ソをいたしまして、ソ連共産党の国際関係の最高責任者であるドブルイニン部長と会いました。そのときにドブルイニン部長いわく、今ソ連が世界の各国といろいろ外交関係を結んでおるが、日本との関係が一番悪いと言ったようでございまして、その証拠として、SDIに対する日本の民間企業の参加を政府が認めたこと、そしてまた、第二には今の東芝機械のココム違反事件、それから第三には東京航空計器と横田基地に対するスパイ事件というものを挙げたようでありました。これらに対しまして我々の塚本委員長からは、その三件は何も反ソ感情を沸き立てるために日本がやったことでも何でもないんだということをその一つ一つについて我が方の考え方を申しました。  しかし、そういう一つの雰囲気の中で今回のソ連がやりました我が方の一等書記官への態度やあるいはまた三菱商事会社に対する態度が出てまいったのでございまして、我々もまたその横田基地に関してソ連の通商代表部の者に対しての措置をしておる。こういうことを並べてまいりますと、これは何をやっているのかという感じがいたします。私はそういう意味合いで今の三つのソ連側の見解、日本は今反ソ感情を沸き立てることをやっておる、その証拠に三つ挙げました。今までいろいろなことがございました。例えば三沢のF16であるとか、あるいはまたニュージャージーの寄港であるとかというようなことを我々に言ったことはございますけれども、しかし、この三つの件について日本政府はソビエト政府並びに関係——共産党もいろいろなところがございましょうが、どういうことを言ってきたのですか、それをまず簡単に御説明願いたい。
  155. 倉成正

    倉成国務大臣 個々の問題に入る前に、ソビエトとの関係ではつい一月前、正確に申しますともう二月になりますけれども、歌舞伎をソビエトに送りまして、歌舞伎がソビエトの公演ということになると、これは大がかりな仕事でございますけれども、羽左衛門丈を中心にしまして、とにかく一番の役者の方々ほとんどそろいましてモスコー、レニングラード、各地を回りまして大好評を受けたわけでございます。  そういうことで、我々はソビエトという動かすことのできない、お互いに移転することのできない隣国との間ではいろいろな形で文化交流もやり、あるいはいろいろなことをやっておるわけでございますけれども、ただ、北方領土という基本的な問題が日ソ間にある、この事実は動かすことのできない事実でございまして、やはりこの問題を頭に置きながら今後日ソ関係の問題を進めていかなければならない。したがって、北方領土の問題についての前進、そういう方向が出ない限りにおきましては、やはりおのずから経済交流その他については一定の限界があるのではないかと思います。  それからまた、SDIその他の問題についてお触れになりましたけれども日本は日米安保条約を結んでおります。したがいまして、友邦国であります。アメリカに対するもろもろの協力についてソビエトの方からいろいろ御意見があろうかと思いますけれども、それはそれなりにやむを得ないことではないかと思います。
  156. 永末英一

    ○永末委員 歌舞伎の話を聞いているんじゃないのですよ、大臣。それはお互いに文化的なことは、あっちも歌舞伎をそうやってあちらこちらへしますことを喜んで見てくれたと思いますし、我々もボリショイのバレエを見たりサーカスを見たりして喜んでおるわけでございますから、それはそれです。  今、当面彼らがこの三つの事件から我々日本の国で、日本政府の行為に関して、反ソ的感情をあおっておるんだ、こういう見解を持っておることは塚本委員長が帰ったときにあなたのところへ知らしているはずであります。あなたのところの大使も報告しているはずだ。したがって、そういうものについてどういう手を打ったのか、それから一月ならずしてこの事件が起こっておりますから聞いておるのです。ほかの話は要りませんが、そこだけ答えてください。
  157. 倉成正

    倉成国務大臣 日本としては当然のことをやっておることでございまして、ソビエトがどのように考えているかということは別といたしまして、決して反ソ感情をあふるような立場でやっておりません。したがって、そのことは大変な誤解であろうかと思いますから、そういうことについてソビエト側と懇談する機会もいろいろございますから、私はシェワルナゼと会えばまたその話もしましょうし、また外交ルート、事務レベルでもそれぞれ話をしていく必要があろうかと思うわけでございます。
  158. 永末英一

    ○永末委員 正確に答えてほしいのですよ。我々は正確に問題を提起しているわけである。東芝事件も横田基地関係の事件も、これは日本の刑法に触れる、一つは貿易管理法、外為法でありますけれども、法律に触れる問題として事件が起こっているのであって、反ソでも何でもない。SDIは別個の核消滅に関する研究課題である。だから、どう説明をしておられるのか。我々が行ったときに、そういうぐあいに相手が受け取っておる。それは反ソでも何でもなくて、法律に触れる問題として今かかっておるんだということをきちんと説明をしておる。その説明をしながら、我々の方は、外務省は一体どういう説明をしておるんだろう、こういうことをいぶかしく思ったから御質問申し上げておるわけであって、もう一遍正確に答えてくだぞい。どういう説明をしてきたのか。
  159. 長谷川和年

    ○長谷川(和)政府委員 お答えいたします。  横田基地スパイ事件の問題につきましては、先生指摘のとおり、日本の国内法令に触れる行いを在京ソ連大使館あるいは通商代表部の部員が行ったわけでございまして、外務省、私の方から警察当局とも協議をいたしまして、五月二十一日に東京のソロビヨフ大使を招致いたしまして、東京の大使館員及び通商代表部員が我が国の国内法の規定に抵触する行為を行ったことに対して抗議をいたしまして、今後ともこういったことを繰り返さないように強く要請した経緯がございます。     〔浦野委員長代理退席、甘利委員長代理者席〕
  160. 永末英一

    ○永末委員 横田事件は聞きましたが、ココム事件はどういう説明をしたのですか。
  161. 長谷川和年

    ○長谷川(和)政府委員 お答えいたします。  ココムにつきましては、西側の一員として我が国がココムのメンバーであり、ココムの申し合わせを尊重する立場にありまして、西側の中でこういう事件が起こったこと、日本企業がココムの申し合わせに反した行いをしたわけでございまして、私が知っております限り、ソ連側に対しては特にこの問題につきまして連絡あるいは通報等を行っておりません。
  162. 永末英一

    ○永末委員 気になることが一つあるのですが、ココムに反したということよりも日本の法律に反したのでしょう。通産省の行政事務に対してそれに虚偽、それをごまかしてやったということは、法律に触れておるのではないですか。正確に言ってください。
  163. 斉藤邦彦

    ○斉藤(邦)政府委員 御指摘のとおりでございまして、法律的には日本の法律に触れたということでございます。  ただ、一般にこの違反事件がココム違反という表現であらわされておりますので、そこのところが法律的に非常に正確さが必要なときでないと時々ココム違反という形で言われることがあるということだろうと存じます。
  164. 永末英一

    ○永末委員 ココム違反などという考えを持っておるから、アメリカの議会が包括貿易法案に対して日本企業に対する制裁条項を盛ろうとするわけなんです。ココムというのは国際協定でも何でもない。したがって、日本国としてはココムなるものに対して縛られておらぬわけです。そこで、そこにおける申し合わせ、日本政府の合意に基づいて我々が法律をつくってその運営をやっておる。そこは正確に外務省が思ってもらわないと、ココム違反でどうだこうだとかということはあるのですか、本当に。それは日本の国内のものを縛るのではなくて、我々と話をしている、ココム協議をやっておる連中にはございましょうね。しかし、日本の国内に対して、おまえココム違反だ、こういうことがあり得ますか。
  165. 斉藤邦彦

    ○斉藤(邦)政府委員 ココムの申し合わせ事項というのはあくまで紳士協定でございますので、それに対する違反ということが法律的にはあり得ないことは御指摘のとおりでございます。したがいまして、今回の事件も法律的には全く日本の国内法令違反ということでございまして、国際約束の違反ということはないわけでございます。  ただ、繰り返しになりまして恐縮でございますが、簡単に言うときあるいはジャーナリスティックに言うとき、国内法違反と正確に言うかわりにココム違反という言い方がされているということを先ほど御説明した次第でございます。
  166. 永末英一

    ○永末委員 外務省は極めて官庁的な官庁だと思いますが、そんなジャーナリスティックな表現がお好きなんですかね。なぜこんなことを申すかといいますと、私はアメリカの議会も間違っておると思うから申し上げておる。日本外務省がココム違反でどうだこうだとかと言えば、アメリカの議員が、ああそうか、それならば我々との約束を破ったかと受け取っても理由があるような雰囲気が出ますわね。  そうじゃないのだ。あくまでも紳士協定だし、そしてそれを取り締まるのは一にかかって日本政府なんだから、もし言うならば日本政府をだました企業が悪い。それは法律に触れる。しかし、それをきちっとやれなかったのは日本政府の責任なんだ。しかし、外国から、それをやったやつがいるからおまえのところのやつはどうだと言われたのでは筋違いも甚だしいことだから、その辺のけじめだけはかっちりしてやっていただかないと、その辺がぼけてしまったらおかしなことになるのじゃないですか。  今我々はアメリカの方から制裁を受ける筋合いは一つもない。しかし、日本政府はアメリカ政府に対して、いや、おれの監督不十分で申しわけない、それはございましょう。そこのところをはっきりしていただかないと、私は日米関係もおかしくなると思います。お答え願いたい。
  167. 斉藤邦彦

    ○斉藤(邦)政府委員 ただいまの点は全く御指摘のとおりだろうと存じます。  日本政府といたしまして、米国政府と話し合いをいたします際に、ココム違反というような言葉はもちろん使っていないわけでございまして、これはあくまで法律的には日本の国内法令に日本企業が違反した事件というふうにとらえているわけでございます。
  168. 永末英一

    ○永末委員 そのようにきちんと筋だけは通してやっていただきたいと思います。  昨日、我が方の衆議院の内閣委で事前集積の問題を取り上げて、これは防衛庁から答弁をいただいたのでありますが、七月三十日の本会議で我が方の議員から質疑を行いました。総理からは有事における支援のあり方について「御指摘の点は、今後情勢に応じ検討課題とすべきものと考えております。」という答弁がございましたので、聞きました。  しかし、もともとこれは日本国とアメリカ国との関係にかかわることであって外務省も十分承知をしておかねばならぬことであります。日本の自衛隊が自衛力を保有しているのは抑止力といたしたい、こういうことで持っておると言っておりました。我々もその点はそのとおりだと思います。しかし、抑止力なるものにはそれをやっておく条件があるのであって、すなわち、その抑止力そのものの装備と配備というものは十分にされなければなりませんし、そしてまたそれは有事即応でなくてはならない。その有事即応というのは、有事になった場合にきちんとそれが即応され相手方の力を排除するのだ、それまでの力を持たなければ抑止力とは言えないと思います。  そういう観点から考えますと、我が国の自衛隊が保有している抑止力なるものは、米軍との支援関係において初めて、完成とは言いませんが、十分とも言えませんが、抑止力になり得るものだと思います。したがって、米軍との連携整備というものは極めて重要な我が方の持たなければならない抑止力にとっての重要なファクターだ。その米軍との連携整備を行うためには有事における米軍来援に対する協定というものが政府間でなければならぬ、これはこの前の委員会で大臣からも御意見を承りまして、その点については大臣、私の指摘したような問題については検討いたしてまいりたいと言われたのは五月十八日でございまして、きょうはもう八月でございますから、検討されたのであろうと思いますが、同時に有事に至るまでに一体どのように米軍との連携を実あらしめるようにするか、米軍は我々の日本の領土内に区域並びに施設を持って米軍を配置しております。しかし、一たん有事のときに動き得る陸上兵力というのは沖縄におきます海兵隊しかございません。  そこで問題は、一たん有事の場合に、アメリカのどこの一体陸上部隊が日本へやってくるかということは既に研究はしておられようと思いますが、明らかではないのでございまして、本院のいろいろな委員会の質疑におきましても、このハワイの第二十五経歩兵師団が来るとかなんとかということはございますし、アメリカ側もそのことは隠しておりません。ただ、問題は、それならばそれが来たときに使用する兵器の事前集積があるかということにつきましては極めてあいまいでございまして、総理大臣の認識は、三年ほど前は施設、区域内にあるであろうと思います程度でございました。しかし、今度は、ヨーロッパではその整備が行われつつあるが、日本ではアメリカ側からそういう要請はまだございません、こういう答弁になっておるわけですね。私はこのことについても外務大臣が研究をするのだというお話を承っております。  さて、きょう伺いたいのは、外務大臣は事前集積というのは必要だと思いますか。
  169. 倉成正

    倉成国務大臣 委員お話しのように、一たん有事の際に大型の車両であるとか大砲であるとか、いろいろなそういうものが一定の場所に集積してあるということになれば、人員をそこに送れば兵たんを省いて直ちにある期間は戦闘することができるということでございますから、極めて有益であると思います。  ただし、日本の場合にそれをどう応用していくかということになりますと、ヨーロッパの場合は、西ドイツとかその他の部分についてそういうものがあることを承知しておりますけれども、どういう作戦行動をとり、どういう態様を想定するかということによって、これが決まることであろうかと思うわけでございますので、我々が今どこにどうしたらいいかというような問題については申し上げる筋合いではございません。  しかし、一般論として申しますと、日本も安保体制の抑止力の効果的な維持、そういう意味から、我が国に対する武力攻撃が発生した場合に米軍の来援の問題を含めて研究、検討することが大切であると考えておる次第でございます。
  170. 永末英一

    ○永末委員 五月と似たような御答弁でございますが、ドイツはどうなっておると外務省承知しておるのですか。
  171. 渡辺允

    渡辺(允)政府委員 米軍の事前集積の状況でございますが、八八会計年度の国防報告によりまして私ども調べましたところでは、米国が持っております計画というのは西ヨーロッパと南西アジアに重点が置かれておるようでございます。その考え方は、西ヨーロッパの場合に有事の際に非常に短時間で大規模の兵力を動員する必要があるということ、それから南西アジアの場合は、逆に米国から非常に距離も遠うございますし、常時駐留する兵力がないこと等からでございます。  そこで、米国が今目標としておりますのは、西ヨーロッパの場合に全体として陸軍の六個師団用の装備、さらに十個師団用の支援装備を集積する。それから海兵隊用に一個両用戦旅団用の装備を集積する。空軍については六十個飛行隊増援の場合のための装備を集積するのが目標ないし計画である。それから、陸軍用につきましては、いわゆるポンカス計画によりまして四百七十二トンの装備を現在までに集積している、そういうふうに承知をいたしております。
  172. 永末英一

    ○永末委員 西ドイツの場合には現在既に集積しておるものがありますね、有事の場合に来るものはこれからやるかもしれないけれども。それから、アジアにおきましてもタイがアメリカとの間の協定に基づいて武器の集積をやっておると思います。インド洋のディエゴガルシアには船に積んだものを用意いたしております。  ドイツはなぜ現に事前集積をしておるのですか。
  173. 渡辺允

    渡辺(允)政府委員 申しわけございませんが、私、ただいまの先生の御質問に非常に正確にお答えする自信がございませんけれども、先ほど申し上げましたように、米国全体として見まして西ヨーロッパ正面、それから南西アジア正面を重視して事前集積の整備を現在進めておるということで、その一環として西ドイツにおける集積が行われているということではないかと考えられます。
  174. 永末英一

    ○永末委員 防衛庁の方、来ておられると思いますが、同じ質問をいたします。  ドイツはなぜ既に事前集積をしておるか。また、その他に現にアメリカのドイツ駐留軍が武器を持っておるでしょう。そのほかに事前集積をやっておる。その事実を明確に言ってください。そして、なぜかという理由を防衛庁としてはどう見ておるか、御答弁願います。
  175. 伊藤康成

    ○伊藤説明員 お答えいたします。  先生、ドイツはというふうに仰せでございますが、ドイツと申しますか、アメリカの場合、当然NATOということで見ておると思います。もちろん、主要な部分がドイツであることは申すまでもないわけでございます。  そこで、NATOにおいて事前集積をするのはなぜか、こういうことになううかと思いますが、私どもアメリカの国防報告等で承知しておりますところでは、基本的にはNATOに対する米軍の増援部隊の急速な展開を図る、それによって戦争初期の段階における戦闘能力の維持向上を図りましてワルシャワ条約車に対抗する、これをもって抑止力とする、こういうことだと理解をしておるわけでございます。  なお、御指摘のとおり、現在、私、今手元に具体的な数を持っておりませんが、重装備を持った師団と事前集積に頼る軽師団、両方複合して西ドイツにはあるというふうに記憶しております。
  176. 永末英一

    ○永末委員 NATOの一番の米軍が駐留しておる場所がドイツでございますからドイツで申し上げたのであって、ノルウェーにも同じように事前集積がございます。それは、戦闘が始まった場合には戦闘の初期における兵力集中が必要である、この原則に従ってやっておるのだと私は思います。米軍は、陸上軍も空軍もドイツにたくさんおるわけでございまして、その数は御存じのとおりだと思います。にもかかわらず、なお増援しなければならぬということで今のような六個師団分の集積を行っておる。  日本は同じように長い間米軍の占領、引き続いて駐留がございました。そして使える、動く部隊というのは今のようなものがあることは御承知のとおりです。しかし、その部隊で十分であるかどうか。その研究は昭和五十三年以来指針に基づいてしておられるわけでございますけれども、それで十分だと思われるならば事前集積は要らない、十分でないと思うならば来援を求めなければならぬ。指針に基づいての文言はすべて限定かつ小規模以上の場合には米軍の支援を求める、あらゆる場合に書いてございますね。十年たって今の外務大臣の御答弁ではなお検討を続ける。  ドイツは三十万になんなんとする米軍部隊がおるのです。そして、なおかつ十個師団の来援をドイツ、アメリカ間の協定で結び、そして既に六個師団分は兵器の事前集積を行っているのです。我々とドイツとは条件が違います。ドイツは地続きである。我々は地続きではございません。  しかし、現在の航空能力、それからソ連の渡洋能力をもってすれば、こんなものは同じことですね。そういう条件であるのに我々はなお検討を続けておる。この違いは一体どこから来るのでしょう、外務大臣
  177. 倉成正

    倉成国務大臣 ちょっと私の能力を超える御質問でございますが、どういう態様の侵略が行われてくるかという判断の問題、それに一番ふさわしい集積をどこにするかという問題でございますから、これはまさに作戦上の問題であろうかと思いますので、これは私が御答弁するのはいかがなものかと思います。  しかし、先生おっしゃるように、迅速に展開するためにはそういう兵たんにかわる戦車であるとか大砲であるとかあるいはいろいろな弾薬、食糧等であろうか、そういうものが一定の場所に集積されておれば、非常に迅速に展開ができるということはもう御意見を一にする次第でございます。
  178. 永末英一

    ○永末委員 外務大臣に今のような戦闘の想定など聞いているわけじゃございませんので、日本国とアメリカ国との間柄で日本の領土の防衛について研究を行ってきておると言っておられるから、研究に基づいて国と国との作業が行われるべきだと私は思います。ところがその作業は一向に行われていない。研究ばかりやっておるのでございまして、幾ら勉強したって入学試験で試験を受けなければ何ぼ勉強したかわかりませんよね。勉強ばかりしているので。  ところが同じような状況にあるドイツではきちんとしたことを政府の行為としてやっておる。その辺が一体どういう気構えで日本の安全保障を考えておられるのか。外務大臣日本の安全保障を考える責任者でございます。中身のことは防衛庁長官が考えるかもしれませんが。しかも防衛庁長官がこの国会が終わりましたらまたアメリカへ行くのだなんということを言っておりまして、アメリカに行きますと、次期支援戦闘機について何か物を言うのか言わぬのかわかりませんけれども、我々は何もアメリカの兵器を買い込むことをやっているのではなくて、我々の安全保障を完全ならしめるために一生懸命やっておるわけでございます。  そうであるならば、我々の力がもし不十分だと思われるならば、思われるならばというのは、政府が決めておる米軍との間の指針の中では、全部小規模かつ限定以上の侵略に対しては米軍の来援を求めると書いてあるのだから、それなら、米軍の来援を求めるつもりになっておるなら、なぜそれに基づいて政府の行動を行われないのか。もう十年たって何も行われていないというのならば、さらにもう十年、昭和七十三年になってもまだ研究をやるのか。ドイツのやっておることと違うから私は申し上げておるのです。  外務大臣は、今、そういう事前集積があれば、迅速に兵力が移動された場合に、よりやりやすいという御判断を示されました。そのとおりであって、このことを申し上げるのは、兵器があれば人間だけ来れば戦闘に参加し得る、兵器がなければ人間だけは来れない。結局、武器を積んだものが来なければならぬ。それは船に積んでくるでしょう。小さなものは飛行機で来るかもしれませんが、重装備のものは船で来る。そうすれば、船の方が、その来る船に対する戦闘が起こることは当然考えられることで、したがって、外務省は戦闘の中身について考える役所ではございません、しかし、今のような判断をお持ちなら、つまり事前集積の価値をお認めになるのなら、政府の行動としてアメリカ国との間に早く何をすべきか、これが抑止力である。言葉だけの、感じの抑止力じゃだめなんだ。  西ドイツが安全であるのは米軍の駐留と西ドイツの国防軍と、そしてアメリカ軍との協定に基づくこれらの準備、こういうものが、圧倒的なワルシャワ機構軍が横におりましても、なかなかそうはいかない。我々もまた、同じように努力をしなければならぬ。  こういう観点から、あなたは防衛庁がぼんやりしておるならば防衛庁に督促をして、日米間の政府でより協力の実を挙げるための一つのかぎとして、私はこの前は米軍来援時における協定を早く結ぶべきではないか、きょうは事前集積について研究をしておると言われるならば研究の成果を具体的に移すべきではないか。これは反ソ行動でも何でもありません。これについてのお考えをひとつ承りたいと思います。
  179. 伊藤康成

    ○伊藤説明員 防衛庁からお答えをさせていただきたいと思います。  先ほど外務大臣からも事前集積の意義ということについては御答弁があったわけでございますが、防衛庁といたしましても、従来から申し上げておりますように、一般論として米軍の来援の問題を含めて研究、検討というようなことをすることは大変有意義であるということは承知しておるわけでございますが、他方、現在の段階において米軍の事前配備ということにつきましては、米国からももちろんそういう話がないわけでございますし、私ども我が国に実施するということについてまだ具体的な検討に入ってないという段階であることを御承知いただきたいと思う次第でございます。
  180. 永末英一

    ○永末委員 外務大臣、今防衛庁が申しましたが、総理大臣もアメリカから言ってきておらぬと言うのですな。この問題はアメリカから言ってくるまで日本は言わぬ方針ですか。それとも日本が必要と認めれば日本国からアメリカへ言うべきものだと思いますか。お答え願いたい。
  181. 倉成正

    倉成国務大臣 いかなる態様の侵略があるかどうかという判断の問題でございますから、これはちょっと、先ほども申しましたように、私が今、基本的にはそういうものが必要である、あれば非常に迅速に展開できるということまでは申し上げられますけれども、しかし、これ以上どうすべきかという問題についてはいささか私の能力を超える御質問であると思います。しかし、今お話しの点は十分防衛庁長官にもお伝えいたしたいと思います。
  182. 永末英一

    ○永末委員 いわゆるシーレーン共同研究というものが行われまして、数年かかりました。昨年の十二月にこれがまとまりまして、総理大臣にも報告がございました。双方の研究会も一月ハワイで行われました。その中には、明らかに米軍の来援の分量が研究されておるのであります。したがって、我々から見るならば研究は完了しておる。ただ研究しただけである、こういうことでありますからこの質問を申し上げておるのであって、これから研究すべきことではない。既に研究はその部分については、シーレーンとは申しますけれども北海道が舞台になったことについて研究は完了いたしておる。  したがって、それについて政府はなぜまだ見ておるのか、そういうことでございますので、外務大臣の能力ではなくして、僕は義務だと思うのだ。もし防衛庁長官が、こういう問題をほっておいて飛行機がどうだこうだと言っているのは僕はおかしいと思う。日本の安全保障について真剣に取り組んでいくのだということが、僕は逆にかえってアメリカからの信頼も受け、ソ連もまた我々の姿勢に対してある意味での信頼をおくのじゃないかと思います。もう一度お答え願いたい。
  183. 倉成正

    倉成国務大臣 今先生の御指摘になりました点は大変重要な問題と心得ておりますけれども、ただいまの段階で私がお答えし得ることは、先ほどお答えしたとおりでございます。
  184. 永末英一

    ○永末委員 これで三回にわたって申し述べておるのでございまして、外務省も安全保障に関する部課があるわけでございますから、十分ひとつ検討願い、そして我が国の安全保障のために、組織として、システムとしてもきちんと整えていくという努力日本の国の安全のためにしていただきたいと強く要請しておきます。  議案の話に入ります。  二重課税回避し、脱税防止する、そういう条約を結んでいる国がございますが、我が国は、国会は合いかにして所得税減税を行うべきかを一生懸命やっておるところでございまして、同時にその財源はどこにあるかということを横目でにらみながらやっておる。六十二年度の減税につきましては既に六十一年度の決算剰余金がございますが。  さてそのときにやはり問題になるのは、このかかっておりますのは日本カナダとの間の条約でございますが、地球上にはタックスヘーブンというのがございまして、そこでは税金を取らないか、非常に軽くいたしておる。そして、為替が自由になっておりますから、日本の経済が国際化しておりますから、そのタックスヘーブンの国ないしは地域を利用したいろいろな商行為が行われておるのでございまして、そうなりますと、普通の国民の目から見ますと一体そういう企業税金は全部払われているのであるかどうか。我々はいわば先進工業国向きの租税条約を今まで結んでまいりました。ところが、タックスヘーブンの国ないし地域はそうではないのであって専らペーパーカンパニーだけがあるような地域でございまして、そうすると、タックスヘーブンに対する税金をどうするかということを真剣に考えること、これが現在の我々の所得税減税に対する財源を求めるには非常に重要な問題だと思います。したがって、日加租税条約の反面教師みたいなものですが、タックスヘーブンについてひとつ御見解を承りたい。  タックスヘーブンと言われる国または地域は幾らあり、そこにはどのくらいの日本税金を取り得る事業があると見積もっておられますか。
  185. 川田剛

    ○川田説明員 お答えします。  タックスヘーブンと称される国は、現在指定しておりますのは三十三カ国ございます。昭和六十年四月から昭和六十一年三月までに決算期が到来いたしました法人の申告状況で見てみますと、これらの国々に進出しております企業は、親会社ベースで四百九十社、特定外国子会社等で見てみますと二千四百九十九社、留保所得金額で二百六十四億円になります。  なお、主な進出先といたしましては、パナマ、リベリア、香港、この三地域で全体の九二%を占めております。
  186. 永末英一

    ○永末委員 その留保金というのは極めて法律的な名称でございますが、ある学者の調査によりますと、このタックスヘーブンと呼ばれる国並びに地域はもっとたくさんあるのであって、それらのところで、これは外国における租税をきちんとつかまえるということをやった合計額でございますけれども、一兆二千億円ぐらい課税所得があるのではないかと見積もっておられる人がある。今言われた計算の結果の留保所得の二百六十四億とは非常に額が違うのでありますが、どういうことになっておりますか。
  187. 川田剛

    ○川田説明員 先生の御指摘になりました数字、私ども現在手元に持っておらない数字でございますが、私どもの方で把握しております数字は二百六十四億円というふうになってございます。なおちなみに、これらにつきまして調査した結果、私どもの方で申告漏れ所得として把握しておりますのが十六億円ほどございます。
  188. 永末英一

    ○永末委員 国税庁の判断によりますと、タックスヘーブンで、これに対する租税対策を一生懸命やっても税金は余り集まらぬということですか。
  189. 川田剛

    ○川田説明員 先ほど申し上げましたように、留保所得金額として申告が出ておりますのは二百六十四億円でございますが、もちろんそれ以外に漏れているところがございますれば鋭意調査を重点的に行っていくということで対処してまいりたい、かように考えております。
  190. 永末英一

    ○永末委員 それは申告の出ているのが二百六十四億ですね。しかし、大体は申告しませんね。それはやはり国税庁が調べに行かねばならぬ。  ところが、今お話しがございました二千四百九十九社というのは、それだけがこの学者の調査と同じ数字でございまして、しかし我々は言葉でケーマン島であるとかカリフ海の何とかとか、太平洋にもバヌアツとかなんとか聞いておりますが、大体国と地域は幾らあるという計算ですか。
  191. 川田剛

    ○川田説明員 先ほど申し上げましたように三十三カ国及び地域でございます。
  192. 永末英一

    ○永末委員 これは一覧表をいただけますか。つまり、三十三カ国で全部で二千四百九十九、そこへそれぞれの留保金はこうだ、決算だとあなたは言われましたから、それでこれだけ税金を取った、こういうことははっきり既に出ていると思いますが、それはいただけますか。
  193. 川田剛

    ○川田説明員 二千四百九十九社、これはお出しできると思います。これを国別にどうかという話でございますが、私どものところで現在国別にはとってございません。ちょっとそちらの方の数字は提出できないかと存じます。
  194. 永末英一

    ○永末委員 それは調べればわかるのでしょう。調べるつもりがないのですか。調べればわかるのですか。
  195. 川田剛

    ○川田説明員 先ほど申し上げました二千四百九十九社、この企業の進出先別の数はわかります。ただし、二百六十四億の内訳と申しますか、これにつきましては特に国別の明細表はとってございません。
  196. 永末英一

    ○永末委員 その学者の言っておるところによりますと、これらのタックスヘーブンの国は税金から収入を得ているのではない、税金をかけないから。しかし、そこで会社設立とかなんとかといういろいろな証書に印紙を張る。したがって印紙税、登録料というようなもので、大体日本円に直して五十万円程度だが、日本企業がこれらの三十三地域に対して落としている金が年間一兆円だと言われておる。したがって、一兆円のそういうものを払ってもなお利益が上がるのだから、もっとたくさんの所得がこれらのタックスヘーブン国・地域を利用するとあるはずじゃないか。これをつかまえれば先ほどのように課税所得が一兆二千億円ぐらいあるのではないか、こう言っておるのでございますが、国税庁はどう思いますか。
  197. 川田剛

    ○川田説明員 先生指摘のように、二百六十四億円のほかにたくさんあるのではないかというお話でございます。私どもの方もその点につきましては問題意識を持っておりまして、大法人の調査に当たりましては海外取引関係に重点を置いた調査をするようにという指導をしております。  その一環といたしまして、タックスヘーブン対策税制に係る調査に当たりましても、的確な調査対象の選定を行うとともに、特定外国子会社等には税制の適用除外要件というのがございます。例えば現地で実際に営業活動をやっておりますような会社は適用除外ということでこれから外れます。申告上はそういうので外れますと言っておりますのが実際は外れない、課税として取り込めるというものがございます。こういったものを特に注意して調査をするように、それから、その課税対象の留保金額につきましても、算出してあるその金額が正確かどうか、その辺を中心に検討いたしまして、必要に応じまして調査官を海外に派遣するというような措置も講じまして調査の充実に努めております。
  198. 永末英一

    ○永末委員 国税庁としては正確な数字を言わなければ責任に関するかもしれませんが、私が挙げましたような数字が全く架空だと思われますか、似たようなことがあるかもしれぬと思われますか、どうですか。
  199. 川田剛

    ○川田説明員 先生指摘の内容でございますが、これは非常に難しい話でございまして、例えば日本国内脱税幾ら、アングラマネーがトータルで幾らあるかというお話と同一性質のものでございます。  私どもといたしましても、タックスヘーブン国にあります特定の子会社にそういった所得があるんではないかという問題意識は持って対処をしておるというようなことで御容赦をいただきたいと思います。
  200. 永末英一

    ○永末委員 日本の国から遠く離れたカリフ海の島や国あるいは南太平洋のところへ子会社やら支店やらつくって、それとの取引の形をとっていろいろな会計処理をしておるというのは、よほど考えてやっているのでしょうね。利子課税をやめると言って、零細な所得者がつめに火をともすようにしてためた三百万円以内の利子にも税金を取ろうなんということを大蔵省は考えているんだから。もっと大きなやつをねらってもらいませんと。取りやすいやつをつかまえて取るぞと、しかしそこまではなかなかと。三十三カ国に調査官、全部行きましたか。
  201. 川田剛

    ○川田説明員 行っておりません。
  202. 永末英一

    ○永末委員 これは外務大臣の所管ではございませんが、やはり税というものは公正でなければいけませんね。公正というのは、税金を取られる方がおれもつらいけど出さにゃいかぬ、しかし日本政府はちゃんと取るべきところから取っておる。取るべきところから取らないで、取られて痛いやつばかり取ったんじゃ、これは公正ではない。  そこで、全部行かぬと言うのですから、これは外務省が代行するわけにはいきませんので、閣議でもあったら、やはり外の国に関係あることでございますから、きちんと調査をして、そしてもし脱税があるのならばこれはいかぬことであります。殊に、国内の零細な納税者にとっては非常に考慮すべきことでございますから、ちゃんと調査に行って、十分その調査が行き届いて、取れる税金は取ってくる。数からいたしまして留保金がたった二百六十四億では、どう考えても計算が合わぬわけですね。だから、学者も決して勝手なことを言っておるとは思いませんが、責任ある国税庁としてはなかなか言いにくいことはわかります。根拠のないことを言うわけにはいきません。  しかし、それはやはり今御答弁がございましたように全部きちんと調べられない状態だからである、やはり調べるように日本政府努力をする、このことをひとつ外務大臣、閣議ででもあるいは大蔵大臣でもよく言いまして、国税庁がこの我が委員会でもあるいは大蔵委員会でも、全部調査をいたしまして、これこれありますと言えるように、そういうことをやらないでおいて、零細な預金者の利子税金をかけることは、これは公正を欠く。外務大臣のお気持ちをお聞かせ願いたいと思います。
  203. 倉成正

    倉成国務大臣 これもまた所管外でございまして、また私の能力を超える御質問でございます。  ただ、一般論として申し上げますと、非常に大きな国のタックスヘーブンの場合にはいろいろな取引関係その他でキャッチすることができると思いますけれども、南米とか非常に僻遠の地におけるそういう地域のタックスヘーブン、そしてそこでは随分苦労しながらいろいろそういうことを求めていって仕事をしているところのものまで一々国税庁が調査をするということは、これは実際問題としてなかなか難しいことではないか。また、仮にそういうことをやれば経費の方が余計かかるのじゃなかろうかという実感を、私自身世界じゅうある程度歩いておりますので感じております。しかし、これは全く私見でございますので、お聞き流しをいただきたいと思います。
  204. 永末英一

    ○永末委員 外務大臣が世界各国を多かれて経費をたくさん使われても、ああ我が外務大臣日本国の外交のために粉骨砕身しておられるのだということで、だれも経費はいといませんよ。国税庁も同じことだからね。経費がかかるからそれはやめておこうなんてそんな考えはやめておいてください。経費がかかっても公正さをきちんと国民にわかってもらうために行政は努力しているんだ、こっちの方を考えていただきたいと思います。  時間がありませんので、もう一つの案件、政府調達に関する協定を改正する議定書ですが、このごろ円高にどんどんなっておりまして、今回のこの提案は十五万SDRから十三万SDRに限界を下げようというのですが、円高がどんどん進みますと、円高によってSDRに対する円が強くなります。そうしますと、逆にこの協定議定書によっていろいろの手続をするものがふえますね。これはその手続をする者にとっては面倒くさい話だと思いますが、どうですか。
  205. 池田廸彦

    ○池田説明員 お答え申し上げます。  御指摘のとおり、我が国の場合につきましては基準額の引き下げ、それから円高と二重に働く面は確かにございます。この問題意識はございました。  そこで、私どもとしましては、こういう為替変動を基準額に何とか反映させる方法はないのかという問題提起をいたしました。しかしながら、これは各国とも切り上げの場合、切り下げの場合、それぞれあってなかなかできないということでございました。  そこで、それでは我が国の場合をも踏まえまして、十五万SDRからさらに切り下げるにしても、その切り下げの幅はどれぐらいがいいだろうかということを真剣に考えました。実は一部の国からはもっと深い引き下げということが言われたのでございますけれども、そこをいろいろと折衝いたしました。お手元にございますような十二万SDRというところで妥協したわけでございます。問題意識はございましたが、技術的に余りに複雑なために現在のような解決で納得せざるを得なかった、こういう事情でございます。
  206. 永末英一

    ○永末委員 十三万SDRですか、十二万SDRですか。
  207. 池田廸彦

    ○池田説明員 大変失礼いたしました。十二万でございます。
  208. 永末英一

    ○永末委員 質問を終わります。
  209. 甘利明

    ○甘利委員長代理 次に、松本善明君。
  210. 松本善明

    ○松本(善)委員 カナダとの租税条約について大臣に伺いたいと思うのです。  我が国はこの種の二重課税回避租税条約を三十六カ国との間で結んでおりますが、これが外国税額控除制度と結びついて海外進出大企業に不当な税制上の優遇を与えている。これは今も問題になった点であります。  大臣にお聞きする前に、まず大蔵省でしょうか、国税庁でしょうか、お答えいただきたいのですが、大商社、大会社が莫大な所得を上げていても法人税納付がゼロだということは予算委員会などでたびたび問題になっているわけです。六十年度は九大商社のうち七社までが法人税ゼロ。三菱商事などは五十五年度以降国内法人税は納めていないというようなことをみずから認めているということが新聞報道でも出ております。  それで六十年度はこのとおりなのかどうか。それから六十一年度は九大商社のうちで法人税ゼロは何社で、一体どこなのか、これをお答えいただきたいと思います。
  211. 川田剛

    ○川田説明員 六十一年の三月期について申し上げますと、申告所得金額は九社合計で二千二百三十一億円でございます。これに対する算出法人税額は九百四十億円になります。  なお、納税額がある会社、ない会社ということでございますが、個別にわたる部分でございますので、回答は控えさせていただきます。
  212. 松本善明

    ○松本(善)委員 私の言いました六十年度については、新聞報道を挙げて申しましたが、それでいいのか。  それから、個別の名前は、あるいは言わないかもしれないが、法人税ゼロというところが六十一年度何社あるのか。質問をよく聞いておってくださいね、さっきもそう言ったんだから。
  213. 川田剛

    ○川田説明員 先生の御質問、六十年度の申告法人税を納付していないところがあるかどうかという御質問……(松本(善)委員「六十年度は七社がということを聞いたのです」と呼ぶ)具体的な数についてはあれでございますが、あるかないかという話につきましては、ないとは申し上げられません。あえて否定いたしませんということでございます。  六十一年度も同様でございます。
  214. 松本善明

    ○松本(善)委員 外務大臣にお伺いしますが、新聞報道では、今私が申しましたようなことがはっきりと言われております。それについて大蔵省からの反論は一つもありません。六十年度は、九大商社のうち七社が法人税申告ゼロだということですね。そして、個別の企業については言いませんけれども、予算委員会でも明らかにしておる点もあります。そういう状態が今生まれておる。今も、答弁でもゼロのところがないとは言えないということをはっきり言いました。  先ほど来言われておりますし、今国会でも大問題になっているマル優だとか直間比率の是正だとかいうことで、庶民に対する増税というのが大問題になっている中で、九大商社の中で法人税がゼロだということは、もうどうしても国民感情に合わないと思うのですね。  外国税額控除制度というのは、直接控除もあるし、間接控除もあるし、みなし税額控除もあるわけです。特に外国子会社の払った外国法人税の一部も親会社が払ったものとして控除をするという間接控除、実際に減免などで払っていないのにその分控除を受けるというみなし控除が特に問題だと思うのです。この条約には間接控除が含まれております。この種の租税条約が保証になって大商社の法人税ゼロという、どうしても国民感情に合わない事態が生まれているわけですね。  大蔵大臣ではありませんから直接ではありませんけれども、国務大臣として、また政治家としてこういう事態はおかしいのではないか。何らかの改善が要るのではないか。資本進出を税制面で保証していくということが、結構でございます、結構でございますというわけにいかないのではないかというふうに私は思うのです。そういう点で、外務大臣はどうお考えになっているか伺いたいと思います。
  215. 倉成正

    倉成国務大臣 この件もまた所管外のことでございますので、一般論としてお聞き取りをいただきたいと思います。  外国税額控除制度は、我が国の居住者が外国所得税等を納付した場合、その税額を我が国租税の額から控除するという制度でございます。したがいまして、租税条約の目的は、国際的な二重課税排除するということが目的でございます。すなわち、二国間の交流の促進に当たって、一つの障害となっております国際約二重課税排除し、資本、物資及び人的資源の円滑な交流のための素地をつくることにあると思うわけでございます。  我が国は、外国税額控除制度を採用することにより、このような国際的な二重課税排除を図っているが、諸外国との間で租税条約を結ぶことによってこれらの諸国間の二重課税回避等の制度がさらに整備される、また経済交流及び文化交流が一層促進されるという見地から、この外国租税条約を結んでおるわけでございまして、所得がないところに課税をするというわけにはまいらないというふうに私は考えるわけでございます。  今先生おっしゃる、かなり大きな仕事をやっておるのに税金を払わないのはどうもおかしいじゃないかという、いわゆる庶民感情的なお話でございますが、これは当然、固定資産税とか、あるいはその他の税金は払っておるわけでございますから、所得の税に関する限りは、こういう制度が国際的に常識として通用しておるわけでございますから、私、専門ではございませんけれども、これは決して間違ったごとではないと思っております。
  216. 松本善明

    ○松本(善)委員 今は外務大臣だけれども、かなり造詣も深いだろうと思うので、さらに聞いておきたいと思うのですけれども、私はそういうように常識的にそうなっているからということでは済まなくなってきているのではないかと思うのです。  前国会で廃案になりました税制改正の中でも、やはりこの外国税額控除制度を何とかしなくちゃいかぬというのが入っているわけですね、非常にささやかで、私どもからすればそれでは非常に不十分だと思いますけれども。我々は、みなし税額控除とか間接控除を廃止するということを含めて、外国税額控除を抜本的に縮小すべきだというふうに考えているわけです。  これは、私どもはずっとこの条約には反対をしてきたのですけれども、今の時点でやはり考え直さなければならぬ矛盾が大きくなってきているんだというふうに思うのですね。  海外投資の促進を図るのだという建前なんですけれども、こういう条約改定を進めることによって、いわゆる産業の空洞化問題、例えば本社だけが日本にあって、外国事業所や工場がある、そこで税金を払っております、本社、日本では一切税金を払いません、そういう状態が、先ほど言ったようなことが起こるわけですね。一体それでいいのか。  政府の案でも、それはちょっとまずいから変えようということになったわけですよね。私は、全体の税制改正から抜き出しても、これだけでもやるべきだと思いますけれども。そういうのがいわば産業の空洞化ですね。外国に工場がある。日本には全然税金を払わない、日本の労働者もほとんど雇わない、そういうのがどんどん進んでいくという事態が、今重大な問題になってきているのだと思うのです。大失業時代が到来するかもしれぬとも言われておるし、日本の財政危機も非常に深刻なんですね。  この問題について、いや今までどおりで結構でございます、結構でございますというわけにはいかなくなってきているのではないか、そこに目を向けなければならなくなってきているのではないか。これも私は、閣僚の一人として外務大臣、どうお考えになるか。これは先ほどの話でいけば、そのままで結構でございます、結構でございます、悪いことじゃないと思います、何の見直しもする必要はないというふうにお考えになっているかどうか、お聞きしたいと思います。
  217. 倉成正

    倉成国務大臣 専門の松本先生のお話でございますから、十分傾聴して承った次第でございます。  しかし、税は、御承知のとおり私、全く素人でよくわかりませんけれども、やはりメリットとデメリットとあるわけでございまして、その双方を比較勘案してメリットの方が大きければそれをとる、非常に税金は取れるかもしれないけれども、徴税に物すごい手間がかかり、また徴税費がかかるというような場合には、なかなかそういう税金は採用しにくいというのが常識ではないかと素人なりに考えているわけでございますが、今松本委員が御提起になりました問題が、具体的にこういう形にすればやれるんだ、そしてまた、国際的にもそれが通用するのだ、そういう御提案があればこれは十分検討に値すると思いますし、また大蔵大臣も松本委員のところに門を請うてひとついろいろ御指導を賜ることになると思います。  したがって、具体的に中身を十分詰めてこういう問題は議論すべき問題であろうかと思います。感じとして、先生がいろいろおっしゃったことについては私もよく理解をいたします。
  218. 松本善明

    ○松本(善)委員 時間が十分ありませんので、ここはきょうはこの程度にしておきますが、今の外務大臣の御意見を踏まえて今後ともいろいろと議論をしていきたいというふうに思います。     〔甘利委員長代理退席、委員長着席〕  私はきょうは沖縄問題を少しお聞きしようというふうに思うのです。  私たち共産党の国会議員団は八月の上旬に沖縄の基地の調査をいたしました。自民党も後から調査団を出されることになったということを聞いておりますけれども、今復帰後十五年たちまして沖縄の基地は非常に大きく変貌してきている。私どもの見方でいいますならば、やはりアメリカの海洋戦略が採用になってから日本の基地全体がそれに沿うように再編をされて、沖縄はその最先端で、核戦争を含むどのような戦争にも対応できるようなそういう総合的な基地に変貌、強化されつつある、こういうふうに思っているわけであります。  調査をした結果は——本委員会でもポメックス・サガ号の問題を前にお聞きしたこともございます。きょうも第一一徳丸の航空自衛隊の被弾事件が問題になりましたが、いわば戦場さながらということが沖縄の現地新聞では言われる状況でありました。私は保守的な方々にも随分お会いしたのですけれども、例えば沖縄の県漁連の方々、皆保守的な方々です。もう一回起こったら沖縄の漁業は崩壊する、そういうふうに言っておられる状況でありますし、ちょうど私が沖縄に行っていたときにポメックス・サガ号に被弾をさせたFA18の大演習がありました。F15と合わせて三十機ぐらいです。本当に戦場さながらというのがまさにぴったりするような状況でありました。日本の基地の七五%が集まっておりますだけに、これは深刻な問題である。  そこで、外務大臣としてアメリカ政府と折衝してもらわなればならぬ問題が幾つかあるということを発見してきましたので、それについて伺いたいというふうに思うわけであります。  一つは、基地のそばの小学校の問題なんです。これは驚いたことなんですが、普天間第二小学校というのですが、校長先生に聞きますと、四十五分の授業の間に授業を中断すること六、七回というのです。これはもう授業にならないと思いますね。子供は完全に耳をふさぐし、先生はそういう爆音が聞こえるときには、例えば電話をするときには、大変失礼ですが、今爆音がすごいのでちょっとお待ちくださいと言うぐらいなんだそうです。そうすると、これは到底授業ということにはならないのです。標準学力検査をやったときに、十数回から三十数回中断、これでは学力検査はできないですよ。ですから、よくまあこの状態が続いておると思うのですが、児童にとっては一日一日が非常に大事。これが一年続いたら学力の低下が物すごいことになりますから、すぐに解決をしなければならない。  宜野湾の市長さんは基地をやはり返還してほしい、こういう話でございました。私も、やはり基地を返還すべきだ。日本の基地全体の七五%が集まっているようなところで、沖縄県民は本当に大変な状態だと思うのですね。私は、外務大臣に基地の返還の折衝をしてやってほしいと思いますが、一体この普天間第二小学校の状況をこのままにしておいていいと思われるかどうか、返還問題とあわせてお答えいただきたいと思います。
  219. 渡辺允

    渡辺(允)政府委員 先生ただいま御提起になりました普天間第二小学校の移転の問題というのは私ども承知いたしておりますけれども、問題の経緯を若干申し上げますと、宜野湾市から防衛施設庁に対しまして、この学校の移転のためにキャンプ瑞慶覧の一部返還をしてほしいという要請が出ております。それに基づきまして、日米合同委員会の下部機構でございます施設分科委員会において、日本側から米側に対して、キャンプ瑞慶覧の一部返還について申し入れを行いまして、米側から、これこれのことであれば返還に応ずるという回答を得ておるわけでございます。  それで、現在私ども承知しておりますところでは、防衛施設庁から地元宜野湾市に対しまして、米側はこういうことであるという回答を提示しておられまして、その結果を待っておるところであると承知をいたしております。
  220. 松本善明

    ○松本(善)委員 外務大臣、今返還の問題ということで外務省はお答えになったのだけれども、これは私、今の市長さんに聞いたのでは、前の市長さんは学校の移転という提起をしたのだけれども、今の市長さんは基地を返してほしい、こうおっしゃっている。私は今度沖縄に行ってみて、保守の立場の、自民党の支持された市長さんとか町長さん、村長さんなど、基地を返してほしい、それから縮小してほしいということをたくさんの方から聞きました。  沖縄の状況では、この問題はやはり検討しなければいけないのではないか。基地は動かせないものだ、小学校の方を動かすのだという考えでは、私はそれだけでは済まないのではないか。今の話は話として聞きますけれども、そういうことを検討さるべきではないかということを外務大臣にちょっとお聞きしておきたいと思います。
  221. 倉成正

    倉成国務大臣 今政府委員がお答えしたことにつけ加えることはございませんけれども、不必要な基地、これはもう当然返還をしてもらうべきものだと思います。しかしながら、日本防衛を担当する米軍に対しまして日本がある程度の基地を提供するというのは当然の義務でございますので、その問題と民生の安定の問題についてどう調和を図るかということが課題であろうかと思います。     〔委員長退席、中山(利)委員長代理着席〕  今、小学校の問題の御提起がございましたけれども政府委員が先ほどお答えしたとおりでございます。しかし、なお足らざるところがあれば我々ももっと勉強させていただきたいと思います。
  222. 松本善明

    ○松本(善)委員 新聞の世論調査では、沖縄県民の七〇%が基地の縮小あるいは撤去を要求しています。もう一つ申し上げたいのは、これも全会一致で、県議会も全会一致、それから村議会も全会一致で問題にしているところなんですけれども、北部訓練場の中の、核攻撃が可能なAV8Bハリアー垂直離着陸戦闘攻撃機、このハリアー機の離着陸場の建設の問題です。  これはブルドーザーの前に村民が命がけで立ちはだかって今建設ができないでいる状態でありますが、この国頭村というところの村長さん、これまた保守の方です。しかし、この方もこれは反対だということをはっきり言っておられましたし、村議会ではもちろんこの建設を即時中止すること、それから北部訓練場と安波訓練場——この北部訓練場というのは国有地、安波訓練場というのは村有地だそうですが、これを早急に返還することということが村議会で一致して意見書が決められて、外務大臣あてにも出ているのですが、お読みになりましたかな。出ているのですよ。  それから、県議会もこの建設は絶対に容認できないということで意見書を全会一致でやっているのですよ。そういう県民が党派を超えて反対をしているところを強行的にやっても、これは絶対にトラブルが起こるだけであります。  これは私は外務大臣がハリアー基地の建設はやめろということをアメリカ政府に、米軍に言うべきではないかと思いますが、外務大臣の御答弁をいただきたいと思います。
  223. 渡辺允

    渡辺(允)政府委員 この問題の経緯につきましては、先生指摘のような事情がございまして、現在工事は一時中断されております。現地でいろいろな調整の努力も続けられているというように私ども承知をいたしております。政府といたしましては、米軍の施設、区域の存在と、それから米軍の活動に伴って生ずる周辺住民の方々への影響が最小限に食いとめられまして、可能な限りその関係地元住民の方々の御理解と御協力が得られる形で施設、区域の運用がなされることが重要と考えておりますし、かかる観点から必要な調整が図られるように、また私どもとしても努力をしていきたいと思っております。  ただ、御指摘ではございますが、米軍は日米安全保障条約に基づいて我が国に存在しておりますし、またこの場所におきましてはそのために必要な訓練を実施するというものでございます。その訓練のための施設を提供された訓練場の中で、その課された使用条件の範囲内で建設するということでございますので、法律的に申せば地位協定上も認められた米軍の権利であるということになるかと思います。したがいまして、私どもといたしまして、この建設計画の撤回ないしこの基地の撤回を米軍に申し入れるという考えは持っておりません。
  224. 松本善明

    ○松本(善)委員 外務大臣、基地問題というのは、今権利というふうに言いましたけれども、基本的には日本が基地を提供している、私たち安保条約は反対でありますが、法制上は日本が基地を提供しているという形ですから、この基地は提供できないということ童言う権利もまたあるわけですよ。私は、その辺がすっかり主客転倒といいますか、米軍は絶対なんだということになっているように思います。あわせてお聞きしますので、先ほどの国頭村の意見書を見ているかどうかということも含めて後で御答弁いただきたいのです。  もう一つ伺いたいのは、これもとても大事なんですが、嘉手納RAPCONと言われます管制権の問題なんです。これは一九七二年の復帰の際に那覇空港と沖縄の空域の管制権が日本に返還されることになったのですが、そのときに日米合同委員会で、日本政府が嘉手納飛行場や那覇飛行場に対するレーダーの進入管制業務を行うことのできるまでの暫定期間、米軍が進入管制業務を行うという覚書が交わされて、そしてアメリカ空軍がレーダーで航空機を管制しているという状況になっているのです。那覇空港の利用者は、復帰のときは七十万人ぐらいでしたが、現在年間五百万から六百万と全国第四位になっています。そして、那覇空域までは日本の管制で飛んでいって一進入管制は米軍がやる、那覇空港の着陸は日本側と三段階なんです。非常に危険な状況で、早く一本化すべきなんです。  このことについて、運輸委員会でも一昨日、私たちの党の中路議員が取り上げて質問をいたしました。沖縄視察のときにも聞いたのですが、今では管制業務を日本側が全部引き受けてやる自信は大いにある、技術的には大丈夫なんだ、問題は政治の方にあるんだということで、これは運輸省に聞いたところが、技術的には問題はない、あと施設と人員の配置があればやれる、今、日米合同委員会の事務レベルで話しているけれどもアメリカ側は受け入れないとの回答である、しかし橋本運輸大臣は外務省と話してみるという答弁をされた。きょう、運輸省、来ていると思うのですが、時間がありませんので、もし私の言ったことが違っていれば答弁をしてください。違っていなければ、もうそのまま外務大臣答弁をお聞きいたしますけれども、そういう状況にあるわけです。  それで、この日米合同委員会の覚書も、これは単一の施設によって進入管制を行う必要があるんだ、日本がやれるまでの間暫定的にやるんだということになっているのですね。もう今や完全に日本が単一的に那覇空港の管制をやるべきだ、沖縄の上空だけはアメリカ軍が、アメリカが支配している、日本の空ではないという状態は解消すべきだと思うのですね。そのことをアメリカ軍あるいはアメリカ政府交渉をして、沖縄の空を日本の手に取り戻すということをやるべきだと思うのですけれども、先ほどのハリアーの問題も含めまして、外務大臣の御答弁をお聞きしたいと思います。
  225. 渡辺允

    渡辺(允)政府委員 那覇空港の進入管制の問題につきまして、ちょっと技術的でございますので、なるべく簡単にでございますが、私から申し上げさせていただきたいと思います。  御承知のように、那覇空港と嘉手納空港が非常に近接しておりますために、むしろ航空交通の安全という観点からはこの進入管制を単一の施設で行う必要があるということでございます。そういう事態を前提といたしまして、返還の時点で我が国としてはこの進入管制業務を行うような能力がまだないという状況を前提にして、そういう意味で暫定的に米側がこれをやるということになったわけでございますが、私ども理解は、この暫定的ということの意味するところでございますけれども、これは日本側がその進入管制業務を行う能力を備えるようになった段階で改めてその進入管制業務については日米間で那覇空港、嘉手納空港両方の調整を図るということでございまして、その時点で自動的に日本側に返ってくるということでは必ずしもなかったというふうに考えております。  そういう状況でございますが、現在の時点では日米合同委員会の合意、これは先生先ほど御指摘の四十七年、その後五十年とございますが、米国が地位協定に基づいて使用を認められております飛行場とその周辺の管制業務を行うことを認めております。また、嘉手納飛行場が米軍にとって非常に重要な施設、区域であるという状況でございますので、この進入管制業務を含みますこの一帯の広域的な進入管制業務の移管というのは相当困難な問題ではないかというふうに考えております。     〔中山(利)委員長代理退席、委員長着席〕
  226. 松本善明

    ○松本(善)委員 外務大臣、今の時点でアメリカ政府交渉するべきじゃないかということについての見解を聞いているのですよ。
  227. 倉成正

    倉成国務大臣 ただいま政府委員から詳しく御報告申し上げたとおりでございまして、私から特別つけ加えることはございませんけれども、沖縄の住民の方々が日本における基地の七五%の負担をこうむっておられる、いろいろ日常生活の面で御苦労されているという面については私も十分承知しておりますので、いろいろな問題については住民の方々と御協議をしてまいりたいと思っております。
  228. 松本善明

    ○松本(善)委員 私は終わりますが、運輸大臣は相談すると言っているんですよ。アメリカに対して何にも物を言わぬと——私は今の御答弁を聞いていますと、アメリカに対しては何も問題提起しないという姿勢の外務大臣ではやはり非常に問題があると思いますね。
  229. 倉成正

    倉成国務大臣 まだ運輸大臣から何も伺っておりませんので、伺った上で検討させていただきます。
  230. 松本善明

    ○松本(善)委員 終わります。
  231. 山口敏夫

    山口委員長 次に、岡崎万寿秀君。
  232. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 政府調達協定についてまずお尋ねします。時間が迫っていますので、端的にお答え願いたいと思うのです。  旧三公社は御承知のとおり民営化されました。しかし、本協定政府関連機関には残されています。その理由として、先ほどの御答弁では、外国産品の調達に占める割合が非常に重い、ほかにかわるべき機関もない、アメリカなどからの強い関心もあるという理由を示されまして、それはそれでお聞きいたしましたが、これはどのくらいの割合を占めていますか。何%ぐらいでしょうか。
  233. 池田廸彦

    ○池田説明員 お答え申し上げます。  八五年のペースで申し上げますと四二%でございます。
  234. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 外国産品を調達した額の割合は二六・四%でございますね。もう時間がありませんから私の方で言いましたけれども、そうしますと約四分の一を占めているわけでございます。  一方、中小企業についてお尋ねしますけれども、いわゆる官公需法ですが、ここでは旧三公社は「国等」に含まれていましたけれども、民営化によってそれが外されているわけでございます。ここでの比重はどのくらいですか。パーセントでお願いします。
  235. 桐山正敏

    ○桐山説明員 お答えいたします。  日本電信電話公社、それから日本専売公社は六十年度から、国有鉄道は六十二年度から分割・民営化されておりますが、この三つの公社がいずれも三公社として存在しておりました五十九年度について見ますと、官公需の総実需額に占めるシェアは三〇・一%、それから中小企業者向けの契約実績額に占めるシェアは二六・〇%というふうになっております。
  236. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 ここでもやはり中小企業向けは四分の一を占めているわけでございます。  そこでお尋ねいたしますけれども、中小企業のための官公需法においてこれだけの比重を占めていながら、何の配慮もなく旧三公社は外されたわけですね。ところが外国の多国籍企業について、大いにこれが利用する政府調達協定についてはそれらの要望も入れて最大限の配慮が払われている。円高不況でただでさえ仕事がない中小企業に対してもっと配慮ある行政が必要じゃないかというふうに私たちは考えますが、外相、これは行政として不公平ではございませんか。  旧三公社は国が最大の株主でございますので、そういう点でも中小企業向けの官公需の中に入れるべきであると私は思うのです。政府調達協定に残すならば官公需法を適用すべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。
  237. 倉成正

    倉成国務大臣 ただいまお話しの旧三公社、NTT、日本たばこ、それにJRについて官公需法を適用すべきという御意見でございますけれども、旧三公社は民営化に伴いまして官公需法の対象から外されております。しかし、通産省からは、監督官庁に対し引き続き中小企業の受注機会の増大に努力するよう指導するように文書によって要請しておると承知しておる次第でございます。  いずれにしましても、中小企業者に対しては温かい気持ちで、国際関係にも留意しつつ種々の方法により適切な配慮を行うことが大切であると考えておる次第でございます。
  238. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 これは単なる要請書でございまして、中小企業向けにどのくらいの発注をしたかということを報告を求めるものではない。そういうことで、これにどれだけの効果があるかは甚だ疑問なんですね。外国に対する配慮をしながらもなお中小企業に対する発注を続けるようにすべきであるとおっしゃいましたけれども、現に少なくとも外国の多国籍企業が利用する政府調達協定では残っているわけでございますので、ぜひ官公需法の中にも適用するように一層の努力をお願いしたいと思います。  それでは、時間が大変追っていますので、本協定自体につきましては、本来その国が自主的に判断しなくてはいけない政府調達、官公需、これの手を縛るものになりますし、さらに外国の多国籍企業に無差別的に門戸を開放することによって我が国の中小企業を犠牲にするという性格のものであるということを強く指摘しておきたいと思います。  二番目の問題は、先日質問してまだ残っていました米軍機のワイヤ切断事件の問題について重ねて質問しておきたいと思うのです。  この切断事件につきましては、我が党の国会議員団、辻第一議員などが現地調査をいたしました。  これは当日作業中の滝本さんという方の証言でございますけれども、「ロープを切られるのじゃないかと思うことは何回もありました。去年からずっと。何しろ、八月は四回目でこの事故になったのですから。そのたびに物すごい危険を感じていた。同じ飛行機で、同じコースだった。」このように言われています。さらに、以前から超低空でこの種の飛行機が飛んでいたということについては新聞等においても目撃証言がたくさん紹介されているわけでございます。  そういう状況から見ますと、これは当該の米軍機の個別的なミスであったというふうにはどうしても思えない。やはり米軍部隊が一年ないし二年来繰り返してきた組織的、計画的な訓練であった、間違いないと思いますけれども、どうでしょうか。
  239. 渡辺允

    渡辺(允)政府委員 私ども、米軍の具体的な演習が個々にどういう形で行われているかということを承知する立場には必ずしもございませんけれども、安保条約は、特段の定めがございます場合を除きまして米軍が安保条約の目的のために軍隊としての機能に属するいろいろな活動一般的に行うことを前提としているというふうに考えております。(岡崎委員「今度の事故について聞いているのですよ。一般論じゃなくて今度の問題について」と呼ぶ)はい、ですから今度の問題に関係するわけでございますけれども、したがいまして、これが米軍の訓練、特に通常の飛行訓練ということでございますれば、私どもそのことについて特に問題はないと思っております。  ただ、もちろん米軍といたしましても我が国の公共の安全に対しては妥当な考慮を払わなければならないということは当然であろうと考えます。
  240. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 そういうことを聞いているんじゃないのです。今度の事件というのが個別的なミスであったのか、それとも部隊の組織的、計画的な訓練であったのか、それを聞いているのです。どっちなんです。
  241. 渡辺允

    渡辺(允)政府委員 米側によりますれば、米軍はこの事故の発生いたしました場所の周辺で時折飛行訓練を実施していたということでございます。ただ、先ほど申し上げましたように、私どもといたしましてはその一々の詳細については承知する立場にございません。
  242. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 いつごろから時折やっていたのですか。一言、いつごろから時折。
  243. 渡辺允

    渡辺(允)政府委員 その辺のところは私どもとしては承知いたしておりません。
  244. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 そこが問題なんですね。単なる個別的な、偶然的なミスではなくて、時折やっていた。一年ないし二年間くらいやったというふうに証言があるわけですね。これは起こるべくして起こったんじゃおりませんか。原因究明を求めているというのだったら、こういうところを徹底的に調べるということを申し入れるべきなんです。そういう姿勢がないということはまことに残念だと思います。  さて、この事故を起こした米軍機というのは、EA6Bという電子戦専用機なんですね。超低空侵攻の能力を誇っていると言われていますけれども、これには電子偵察員と電波妨害操作員が搭乗しているわけでございます。  ここの状況を新聞等で見ましても、とにかく紀伊半島の南端から北上しまして、山脈、これはV字形の谷でございますけれども、そこを本当に百五十か二百くらいの超低空で舞い上がっていくわけですね、はうようにして。そして正面にはだかっている山にかかると、一転、反転するようにして急上昇する。皆さん、これが果たして通常の航法訓練であるというふうに言えるのでしょうか。米軍の方はこういうふうに言っていると思いますけれども、これは状況から見るならば、この飛行機が電子戦専用機、電子戦の専用機ですから、電子戦を想定した訓練であったというふうに思わざるを得ないというふうに思いますが、その辺の判断はどうでしょう。
  245. 渡辺允

    渡辺(允)政府委員 私ども承知しておりますところでは、この飛行機の行いました訓練は、地図に基づきまして低空で飛行をいたしまして、パイロットの練度の向上を図る訓練、すなわち航法訓練であるということでございます。
  246. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 米軍の言うままでなくて、日本の立場に立ってきちっとした調査をする必要があるように思うのです。  さて、これの法的根拠は何かということが大きな問題でございまして、地位協定の第五条、これには施設間の移動飛行が認められておるわけでございますけれども、この間質問しましたら、藤井さんでしたか、これじゃなくて、つまり基地外でも射撃訓練などのような危険を伴わないものだったら全国どこでも一定の訓練をすることができるのだという答弁をされまして、これは重大問題だというふうに思いますけれども、それならばお聞きしますけれども、どんな訓練が基地外でできるのでしょうか。そして、その法的根拠は何でしょうか。これも端的にお願いしますよ。
  247. 斉藤邦彦

    ○斉藤(邦)政府委員 その点は従来より政府が何度がお答えしている点でございますけれども、具体的にどのような訓練が施設、区域外でできて、どのような訓練が施設、区域内に限られるかという点については、それぞれの具体的な例に即して判断するしかないというふうに考えられます。  飛行訓練に関して申し上げれば、実弾射撃を伴うような訓練、これは施設、区域内で行われるべきものでございますけれども、そのようなことを伴わない通常の飛行訓練であれば、これは安保条約及び地位協定に基づきまして我が国が米軍の駐留を認めております関係上、施設、区域外におきましても認められるというのが政府の考え方でございまして、これは従来より国会におきましても御答弁申し上げている次第でございます。
  248. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 今回のようなものも通常の飛行訓練ですか、ああいう大問題を起こすようなことも。ああいうことが、通常の飛行訓練という名称のもとにどんどん全国的にやられることが可能だということになるわけですね。そういうことを地位協定で認めているのですか。どういう法的根拠が、おっしゃってください。
  249. 斉藤邦彦

    ○斉藤(邦)政府委員 法的根拠という点でございますけれども、先ほど申し上げましたとおり、安保条約及び地位協定に基づきまして我が国が米軍の駐留を認め、施設、区域を提供しているわけでございます。したがいまして、米軍が訓練というような軍隊の機能に伴う一定の行動を行うということは当然の前提となっているわけでございます。したがいまして、法的根拠といたしましては、安保条約及び地位協定に基づく現在の体制、これに基づいて米軍が一定の権利を有しているということであろうと存じます。  今度の事件に関しましては、先ほど来大臣、政府委員から申し上げておりますとおり、米軍の通常の飛行訓練は施設、区域外でも認められる次第でございますけれども、その際、我が国の公共の安全に一定の注意を払うべきことは当然であると考えている次第でございます。
  250. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 一昨年でしたけれども、三宅島の今の飛行場にタッチ・アンド・ゴーをミッドウェー艦載機がやったのです。このことに関連しまして、やはり外務省の方は、タッチ・アンド・ゴーそのものについては問題であるけれども、そのことが慣熟訓練としてやられる場合だったらいいというふうに言いましたね。ああいうことも結構だ、今度のようなことも結構だ、これで皆さん地位協定ということはどうなるのですか。  地位協定第五条というのは、基地間を移動することができると、限定的にしているんですよ。地位協定自身が、これは米軍に基地を提供する、そしてその利用を保証するというような特権を規定するのであって、それ以外のところを自由に我が物顔で使っていいということは書いてないはずなんですね。これは地位協定違反じゃありませんか。どうですか。
  251. 斉藤邦彦

    ○斉藤(邦)政府委員 繰り返しになって恐縮でございますけれども、米軍は地位協定に書いてないようなことができないかというと、そうではないわけでございまして、その点は安保条約及び地位協定に基づきまして我が国が米軍の駐留を認めていることの当然の結果として一定の行動を許されているというわけでございます。
  252. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 当然の結果だということは大変なことですね。これはやはり安保条約のもとで日本の空がどんな危険にさらされているかということをまざまざと示すものだというふうに考えるわけです。全土基地化ということがよく言われましたけれども、これは日本の国土を提供するのがどこでも一応検討対象になるということだったのです。今の御答弁と今回の事件等からいいますと、日本の空は自由に訓練することができる、こういうことは当然だということになりますし、大問題であろうというふうに思うのですね。  外相、これで主権国家と言えるでしょうか。安保条約というものはそういうものであるかどうか。地位協定をはるかに飛び越えた問題だと私は思いますけれども、それで外相は結構だというふうな御判断でしょうか、お答え願います。
  253. 倉成正

    倉成国務大臣 今回の事件は我々にとっても大変不幸な出来事であったと思います。法律的に申しますと、ただいま条約局長が申したとおりだと思いますけれども、こういう事故が起きたということはまことに不幸なことであり、こういう事故が再度起こらないようにというためには、やはり米軍に対しましても公共の安全ということについて十分な注意を払うように我々は強く申し入れをし、またこの事故が、どうしてこういうことが起こったかという原因も解明してみたいと思っておるわけでございます。
  254. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 米軍のやることなら何でも野放しになっているという状態、これは主権国家としてゆゆしい事態だということを強く抗議をして、時間も参りましたので、私の質問を終わります。
  255. 山口敏夫

    山口委員長 これにて両件に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  256. 山口敏夫

    山口委員長 これより両件に対する討論に入ります。  討論の申し出がありますので、これを許します。岡崎万寿秀君。
  257. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 私は、日本共産党・革新共同を代表して、日加租税条約についての反対討論を行います。  本件が短期滞在者や芸能人など一般国民についても二重課税回避する点は評価するものでありますが、OECDモデル条約に基づく本件租税条約の最大の眼目は、独占資本の海外進出を税制で保証することにあります。これは外国税額控除制度と結びついて海外に進出する日本の大企業にとって大きなメリットであっても、日本にとっては、日本課税権を制約し、税収を減少させるという点で問題があります。また、今日問題になっている産業空洞化を推進するてことなるものであります。  以上の理由から、日本カナダの独占資本の相互進出を保証するために税制の面で特別優遇を図る本条約には反対するものであります。  次に、政府調達に関する協定を改正する議定書について反対討論を行います。  我が党は、それぞれの国における自主的、平和的経済発展を尊重する立場から、本来、政府調達、すなわち我が国で言うところの官公需については、独自の判断、やり方があってしかるべきと考え、本協定そのものについて反対してきたところであります。  今回の改正は、まず第一に調達限度額を十三万SDRに引き下げるなど対象枠を拡大することにあるが、これは米国を初めとした外国の大企業に対して、我が国の官公需の門戸を一層開放しようとするものであり、これが国民本位の内需拡大に逆行し、我が国中小企業、労働者に新たな犠牲をもたらすものとなることは明らかであります。  さらに、入札手続の簡便化や入札期間の延長などのサービス向上のための改定も、これが、市場の拡大を求める一握りの大企業、多国籍企業の要求に基づくものであることは明らかであります。  よって、本議定書の採択に反対であることを表明し、反対討論を終わります。
  258. 山口敏夫

    山口委員長 これにて討論は終局いたしました。     —————————————
  259. 山口敏夫

    山口委員長 これより採決に入ります。  まず、所得に対する租税に関する二重課税回避及び脱税防止のための日本国政府カナダ政府との間の条約締結について承認を求めるの件について採決いたします。  本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  260. 山口敏夫

    山口委員長 起立多数。よって、本件は承認すべきものと決しました。  次に、政府調達に関する協定を改正する議定書締結について承認を求めるの件について採決いたします。  本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  261. 山口敏夫

    山口委員長 起立多数。よって、本件は承認すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました両件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  262. 山口敏夫

    山口委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  263. 山口敏夫

    山口委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時十一分散会