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1987-07-28 第109回国会 衆議院 運輸委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    国会召集日昭和六十二年七月六日)(月曜日 )(午前零時現在)における本委員は、次のとお りである。   委員長 鹿野 道彦君    理事 小里 貞利君 理事 亀井 静香君    理事 久間 章生君 理事 関谷 勝嗣君    理事 津島 雄二君 理事 吉原 米治君    理事 西中  清君 理事 河村  勝君       魚住 汎英君    小渡 三郎君       亀井 善之君    北川 正恭君       鴻池 祥肇君    田中 直紀君       二階 俊博君    平林 鴻三君       増岡 博之君    箕輪  登君       山村治郎君    若林 正俊君       小林 恒人君    清水  勇君       新盛 辰雄君    戸田 菊雄君       浅井 美幸君    石田幸四郎君       中村 正雄君    中路 雅弘君       村上  弘君     ————————————— 昭和六十二年七月二十八日(火曜日)     午前十時三分開議 出席委員   委員長 鹿野 道彦君    理事 小里 貞利君 理事 亀井 静香君    理事 久間 章生君 理事 関谷 勝嗣君    理事 津島 雄二君 理事 吉原 米治君    理事 西中  清君 理事 河村  勝君       魚住 汎英君    小渡 三郎君       亀井 善之君    鴻池 祥肇君       田中 直紀君    二階 俊博君       平林 鴻三君    増岡 博之君       山村治郎君    若林 正俊君       井上 一成君    小林 恒人君       清水  勇君    新盛 辰雄君       戸田 菊雄君    石田幸四郎君       遠藤 和良君    中村 正雄君       中路 雅弘君  出席国務大臣         運 輸 大 臣 橋本龍太郎君  出席政府委員         運輸政務次官  柿澤 弘治君         運輸大臣官房長 棚橋  泰君         運輸省航空局長 山田 隆英君         運輸省航空局技         術部長     中村 資朗君  委員外出席者         運輸大臣官房参         事官      沖津 武晴君         大蔵省主計局主         計官      田谷 廣明君         大蔵省理財局管         理課長     柿沼 敏夫君         労働省労政局労         働法規課長   長勢 甚遠君         労働省労働基準         局監督課企画官 奥津 照嗣君         会計検査院事務         総局第三局上席         調査官     関本 匡邦君         参  考  人         (日本航空株式         会社代表取締役         社長)     山地  進君         参  考  人         (日本航空株式         会社常務取締         役)      長岡 聰夫君         参  考  人         (日本航空株式         会社常務取締         役)      十時  覚君         参  考  人         (日本航空株式         会社常務取締         役)      桜庭 邦悦君         参  考  人         (日本航空株式         会社取締役)  霞  重雄君         参  考  人         (日本航空株式         会社関連事業本         部業務部長)  瀬戸 博明君         運輸委員会調査         室長      荒尾  正君     ————————————— 委員の異動 七月二十八日  辞任          補欠選任   清水  勇君      井上 一成君   浅井 美幸君      遠藤 和良君 同日  辞任          補欠選任   井上 一成君      清水  勇君   遠藤 和良君      浅井 美幸君     ————————————— 七月六日  旅客鉄道株式会社建設主体とされている新幹  線鉄道建設に関する事業の日本鉄道建設公団  への引継ぎに関する法律案細田吉藏君外四名  提出、第百八回国会衆法第二〇号)  日本航空株式会社法廃止する等の法律案(内  閣提出、第百八回国会閣法第五九号)  海上保安庁の留置施設に関する法律案内閣提  出、第百八回国会閣法第九九号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国政調査承認要求に関する件  参考人出頭要求に関する件  日本航空株式会社法廃止する等の法律案(内  閣提出、第百八回国会閣法第五九号)      ————◇—————
  2. 鹿野道彦

    鹿野委員長 これより会議を開きます。  この際、国政調査承認要求に関する件についてお諮りいたします。  運輸行政の実情を調査し、その合理化及び振興に関する対策を樹立するため  陸運に関する事項  海運に関する事項  航空に関する事項  港湾に関する事項  海上保安に関する事項  観光に関する事項  気象に関する事項 について、本会期調査をいたしたいと存じます。  つきましては、衆議院規則第九十四条により、議長の承認を求めたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 鹿野道彦

    鹿野委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  4. 鹿野道彦

    鹿野委員長 内閣提出日本航空株式会社法廃止する等の法律案議題といたします。  まず、趣旨説明を聴取いたします。橋本運輸大臣。     —————————————  日本航空株式会社法廃止する等の法律案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  5. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 ただいま議題となりました日本航空株式会社法廃止する等の法律案提案理由につきまして御説明申し上げます。  日本航空株式会社は、戦後我が国民間航空が立ちおくれていた中で、我が国が速やかに自主的な国際航空運送事業を開始するため、昭和二十八年に政府の出資を得て設立された特殊法人であります。  以来、同社は、国際線及び国内幹線における定期航空運送事業経営してまいりましたが、この間、我が国における航空輸送国際線国内線ともに著しい発展を遂げ、日本航空株式会社を含めた我が国航空企業は大きく成長し、その企業基盤も強化されてまいりました。この結果、日本航空株式会社は、今日では世界有数航空企業となり、特殊法人としての同社設立目的はおおむね達成されたと見られるに至っております。  こうした状況に対応し、昨年六月、運輸政策審議会から、今後の航空企業運営体制あり方について、国際線複数社制及び国内線における競争促進施策推進を図るとともに速やかに日本航空株式会社完全民営化を実施すべきであるという答申がなされ、また、同月、臨時行政改革推進審議会からも、行政改革の一環として日本航空株式会社完全民営化について答申がなされたところであります。  政府といたしましては、これらの答申を踏まえ、昨年末、日本航空株式会社について、同社の自主的かつ責任ある経営体制の確立及び航空企業間の競争条件均等化を図るため、昭和六十二年度において同社完全民営化するとの閣議決定を行っております。本法律案は、この閣議決定に従って日本航空株式会社法廃止いたしますとともに、これに伴い所要の規定を整備するために提出するものであります。  次に、この法律案の概要について御説明申し上げます。  第一に、日本航空株式会社について、特殊法人としての根拠法であります日本航空株式会社法廃止することといたしております。  第二に、航空法の一部改正であります。現在、航空法におきましては、外国人等航空会社議決権の三分の一以上を占めた場合には、その事業免許失効することとなっております。このため、現在の日本航空株式会社法におきましては、このような免許失効を防止するために外国人等に対する株式譲渡制限規定が置かれているところでございますが、同法の廃止に伴い航空法の一部を改正し、定期航空運送事業者について、その議決権の三分の一以上を外国人等が占めることによる免許失効を防止するための措置を定めるものであります。  なお、この法律案は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行することといたしております。  以上が、この法律案提案する理由であります。  何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛成くださいますようお願い申し上げます。
  6. 鹿野道彦

    鹿野委員長 以上で趣旨説明は終わりました。     —————————————
  7. 鹿野道彦

    鹿野委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本案審査中、随時、参考人として日本航空株式会社当局出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 鹿野道彦

    鹿野委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、本日は、お手元に配付してあります方々が御出席されております。     —————————————
  9. 鹿野道彦

    鹿野委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。新盛辰雄君。
  10. 新盛辰雄

    新盛委員 ただいま大臣から説明のありました日航民営化の諸問題について、これから審議をしてまいりたいと存じます。  冒頭に、私は、かねがね政治理念として正義なくして政治なしという心構えでこれまでやってまいりました。今回の日航をめぐる、これから新しい衣がえをして厳しい過当競争の中でどう生き延びていくかという、そうした面をとらえながら今回の法改正ということになったわけでありますが、せんじ詰めて言えば、今回の手続は二つあります。一つは、日本航空株式会社法昭和二十八年に制定されたのでありますが、これを今提案がありましたように廃止をすること、もう一つは、現在の大蔵省が持っております日航の株、三四・五%でありますが、これを民間に放出するというこの二つが本議題手続そして内容であろうかと存じます。  いよいよ明日はロッキード事件高裁判決が行われるという状況に来ておりますが、こうしたいわゆる航空行政の中で、とりわけ航空行政公正中立性への疑問が投げかけられている事件として多くの関心を集めております。同時に、この事件が示しておりますように、航空をめぐる権益の争いというのは、ある意味では大きな反省を促すものとして私はとらえているわけであります。  運輸省の許認可の権限縮小、これは着実に進んできたとは申しますけれども、これからの新しい事態にどう対応するかという内容について触れるなら、一口に言って、各新聞もそうでありますが、日航をめぐる諸問題の分析がされている中で放漫経営、疑惑、癒着などなど極めて手厳しい批判がなされております。そういうことを考えてみますと、何かあるのじゃないかな、何かあるから伊藤体制は崩れて、いまだに会長は不在でありますが、これから民営化していくのに一体どうなるだろうか、不安を持たざるを得ないわけであります。きょうは多くの傍聴者も来られるのでしょうけれども、私は、公正な立場で労使の問題、労労の問題、こうした面にはお互いに歯に衣を着せないでずばり言い合うことによって新しい進展があるのじゃないか、そう思いますので、後ほどそうした問題にも触れていきたいと存じます。  そこで冒頭我が国航空輸送は、旅客や貨物が急激な発展を遂げたことは当然でありますが、遠距離の高速輸送、その主要な担い手となっておる航空行政であります。そういう中で、安全運航確保を図りつつ、航空企業間の競争を通じて利用者利便向上を図ることを基本とするという運政審答申を受けて、今大臣の方からも申されました。ところが、こうした民営化をする前提としてどうも天下りの人事配置が行われて、そして政、財、官、労いろいろな面の入り組みがあって、経営のシステムが破壊をしたというよりはむしろ停滞をしたのは労務政策にあったというふうに言われているわけです。極論すれば、これからの新しい会社を背負って立つ人たちは六つも組合のあるこの日航をどう運営していくだろうか、その危惧を持たざるを得ないのだろうと思います。  大臣は、こうした問題も十分これまでいろいろな面でお取り組みいただいておるわけでありますけれども、率直に今の日航体質改善というのはできるのかできないのか。民営化するわけですから、それができなければとてもじゃないですが、これから先安全という国民の命を守るべき航空行政が全うできないことになるわけですから、そのことについてお聞かせをいただきたいと存じます。
  11. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 大変広範な問題の御提起をいただいたわけでありますが、私なりに幾つかに整理をしてお答えを申し上げたいと思います。  まず、航空輸送に限らず運輸行政すべての面において、その一番の基本になるものが安全を確保するということであることは御指摘のとおりであります。殊に、一たび事故の起きました場合に極めて悲惨な結果を生じる確率の高い航空行政において、その安全性確保というものが何にも増して優先をするテーマであることは御指摘のとおりであります。  そうした基本線の上に立ちまして、日本航空は、戦後の我が国が速やかに自主的な国際航空運送事業に加わっていくための特殊法人として特異なスタートを切りました。そしてその後の経緯につきましては御承知のとおりでありますが、航空輸送というものが著しい発展を遂げてまいります中におきまして、日本航空をも含め我が国航空企業というものは非常に大きな成長を続け、また役割を果たしてまいりました。そして航空企業基盤というものも確立されてきたと考えております。そうした努力の積み重ねの中から国際線国内線とも競争促進というものが可能になり、その競争促進によって利用者利便向上を図ることが適当であると考えられる状態にまで至りました。  このためには企業競争条件均等化を急がなければなりません。また委員からもさまざまな角度で御指摘がございましたけれども、とかく親方日の丸的な体質というものに対して世間から厳しい批判を受けております日本航空体質改善というものを考えました場合にも、やはり特異な特殊法人という形態で今後とも企業が運営されることよりも、完全民営化によって自主的かつ責任のある経営体制を確立することが適当であると私ども判断もいたしたわけであります。そしてその完全民営化というものが果たされます中において経営効率化、サービスの向上等が期待できる、そのように考えておるわけであります。  これから先、私どもはいろいろなプロセスを経なければなりません。しかし、航空企業運営体制あり方につきまして昨年六月、運輸政策審議会から答申をいただきまして、運輸省としては、この答申趣旨に沿って安全運航確保を図りながら、企業間の競争促進を通じて利用者利便を図り、また新たな航空政策の展開を図っております。委員既に御承知のとおり、国際線複数社制あるいは国内線のダブルあるいはトリプルトラック化、これは日本航空完全民営化というものを踏まえた上で成り立つ施策でございます。  そうした中におきまして、航空業界運輸省のOBが社長あるいは副社長として存在をすることも御指摘のとおりであります。これはそれぞれの方々見識等が評価され、それぞれの社に迎えられた方々でありまして、そうした方々が先輩として航空企業の中におられることが航空行政推進に当たって判断を左右することにはなりませんし、またあってならないことも間違いがございません。私どもは、こうしたことを心がけながら今後の航空行政というものに当たってまいりたい、基本的にそのように考えております。
  12. 新盛辰雄

    新盛委員 健全な経営なくして労働なし、労働なくして安全なし、これは私どもが常々心しておかなければならないことでありますが、事航空行政は、一たん事故が起これば大変なことになるわけでありますが、それを未然に防止できる政策というのがまたなければならないわけであります。そうした面で、今大臣お答えになった内容から、完全民営化を図るために新しい器の中に、それこそ水が澄むごとくこれからの経営がガラス張りにできるようにしかけていくためには、どうしても通らなければならない諸問題がございます。それは巷間よく言われております子会社、いわゆる日航をめぐるこれからの委託とか、あるいは民営化する中では部外能力を活用しなければならない幾つかの問題があるわけですから、なおのことこれはただしておきたいと思うのであります。  前会長伊藤淳二さんが赴任されて、日本航空開発JDC監査をさせたが、その監査報告内容を私も見て愕然としたのでありますが、この会社は早晩財務的に破綻をする経営状況にあると指摘しておられます。累積損失は一九九〇年に二百億になっていく、そして約五年後には借入残高九百億円にもなるという、これは一体どういうことなんだろうか。いわゆる財テクという面で、政府のお抱えてあります日航ですから多角経営その他等結構でしょうけれども、こうした具体的な報告書が出ますと、国民の皆さんも何かあるんじゃないかと感ぜられるのは当然でしょう。それに、これは一子会社の問題ではないだろう、親会社である日航がやがてその大きな負担を背負わなければならないという問題もあります。  そして六十年の十月にはHSST社、超高速磁気浮上式鉄道、これは私も千葉に行って乗った経験があります。当時五十四億、日航は営々としてこの開発に努力されたわけであります。浮上式弾丸列車開発してこられましたけれども、これが用をなすのかなさないのかという不安を持っていたやさきに今度このHSST社をおつくりになった。そして別会社に、しかも間接その他のすべての経費を入れて五十四億かけたものを一億三千万円で払い下げたという。またラスベガス弾丸列車の問題では山地念書という問題が入っているという。こうした問題を解明しておかないと、それは別問題だとかあるいはそれは別途のところで、言いがかりだからやめてくれというなら別ですが、やはり監査報告書を公開された以上は、我々も無関心でいるわけにはいきません。  さらに日航機長組合日航先任機関士組合日航乗員組合の三乗組がさき大蔵大臣運輸大臣に、JDC放漫経営日航ドル長期先物予約HSSTの売却問題など、融資にかかわる念書問題について公開質問状を出したと聞いております。当然これについてのお答えがあるはずだと期待をするわけでありますが、先ほどはドル長期先物予約の問題については触れませんでしたので、これは大蔵省がおられますから後ほど触れますが、こうした問題について今どうなっているか、お聞かせをいただきたいと思うのです。
  13. 山田隆英

    山田(隆)政府委員 お答えいたします。  ただいま先生からお話がございました日本航空監査報告書でございますけれども日本航空監査役が種々の問題について監査をいたしまして、その中の指摘事項として今おっしゃられましたような日航開発の問題、HSSTの問題、為替長期先物予約問題等について指摘しておるということは私ども承知いたしております。  まず、日航開発の問題でございますけれども服部監査役日航子会社である日航開発について、ただいまおっしゃいましたように、累積赤字が一九八五年には三十億になる、一九九七年には三百八十億になる、あるいは借入残高が一九八五年には五百億になる、一九九六年には九百三十億になるというような指摘をされておりまして、その財務状況について将来問題が起こり得る可能性があるということが言われておるわけでございます。私どもとしては、日航開発日本航空株式会会子会社ということで、直接の監督責任日本航空においてなされるべきではないかというふうに考えておりますけれども、それに対してどのような経営状況であってもいいというふうにはもちろん考えていないわけでございます。日本航空といたしまして日航開発経営状況について適切な対応が図られるものというふうに理解しておりますし、実際問題として、日本航空といたしましても、日航開発経営改善策について現在いろいろ検討中であるというふうに承知をしております。  それから、HSSTの問題でございますけれどもHSSTにつきましては、日本航空昭和四十七年から常電導磁気浮上方式鉄道開発を進めてきたわけでございますが、その基礎技術の実験をすべて終えました昭和六十年に、その実用化を新たに設立いたしました株式会社HSSTにゆだねることといたしまして、HSSTの技量、資産のすべてを同社に譲渡したわけでございます。この問題につきましては、今御指摘ございましたけれども帳簿価格で譲渡されているというふうに承知をしております。また一部出向者人件費肩がわり日本航空がしていたという指摘もございましたけれども、これらにつきまして、その後、日本航空HSST社との間ではっきりした契約を取り交わしまして、人件費について必要なものを支払うことにしたというふうに聞いております。これらの問題につきましては、やはり日本航空がまず第一義的にこの問題をどう扱うかということが問題かと思いますが、これについても適正な指導監督が行われるものというふうに期待しております。  それから、為替長期先物予約の問題につきましては、これも監査役監査報告書の中に指摘されておるわけでございますけれども日本航空長期にわたってドルの支払いが予想されるわけでございまして、為替の変動に伴います為替リスクを回避するためにその一部について長期為替予約を行ったということでございまして、その後の急激な円高状況を見ますと、結果としては本来生ずべき円高メリットがそれだけ減殺さ札だということは言えようかと思いますが、経営判断の問題であるというふうに私どもとしては理解しておる次第でございまして、今後これらの問題に慎重に対応していただきたいというふうに日本航空に対して指導をしておるところでございます。
  14. 新盛辰雄

    新盛委員 どうも監督指導に当たる運輸省お答えとしてははれものにさわるような言い方をされるので、参考人として来ておられます日本航空株式会社山地社長、この三つの件についてどういうお考えを持っておられるか、ずばりお聞かせをいただきたい。
  15. 山地進

    山地参考人 まずJDCの問題でございますが、JDCという会社昭和四十五年に設立されまして、五十三年までは赤字が続いていたわけでございますが、五十四年度から単年度黒字になりまして、六十一年度三月期決算累積損失が解消いたしました。今、自営が二社、それから運営受託のホテルが十五カ所ございまして、現在建設中のところが九カ所ぐらいある会社でございます。  まず、監査役JDCに関する報告書が出ましたのは、昨年の二月に私ども経営者としてJDCの行き方に問題があるということで監査役に特別の調査をしていただいた報告でございまして、本来この監査報告というのは、私ども最高経営者である三人に提出されたものでございまして、先ほど先生が公表されたというふうにおっしゃいましたけれども、私どもとしては内部の資料というふうに考えていたものでございます。ただ、おっしゃるように、今外に出ておりますので、その問題について私どもも御心配をいただいているということを大変感謝いたしているわけでございます。  ところで、JDCの問題について監査役報告が出ておりますのは、このまま行けばどうなるという計算が出ていて、これについては私どもの本社の関連事業部といたしましてもいろいろと調査に御協力を申し上げた立場にあるわけでございます。したがって、一定の仮定のもとでそうなるということでございますので、その仮定をどういうふうに直していくのかというのはJDC自体の問題かと思います。そこで、そのJDCの問題について我々がどういうふうに対応しているかということでございますが、幸いなことに、JDCがやっております大都市におけるホテル展開というのは一応これでめどがついている、今後は大都市における開発ということはそうないだろう。それから、リゾートの開発ということは航空事業として今後とも大変関心を持っておりますので、それについては、日本航空の方としてホテルの建設については自分たちで努力していく、日航開発については受託という形でやってもらったらいいんじゃないか。  それから二番目に、日航開発自体の体質をもう少し財務的にも強化するということが必要だろう。それから、個々の挙げられておりますニューヨークのホテルとかサンフランシスコのホテルとかシカゴのホテルとか香港のホテルとか、それぞれいろいろ問題点があるのは事実でございますから、それらについてはどういうふうに財務的な強化をしたらいいのかということをただいま検討しているわけでございまして、JDC自体は日本航空にとって大変重要な関連事業でございますので、これが健全に育っていくこと、さらには、私どもについていささかも疑惑を持たれることのないようにするということに努力いたしている次第でございます。  それからHSSTにつきましては、これは運輸省の御指導で、本来航空事業HSST事業をやることについてはいかがなものであろうかという御見解がありまして、五十二、三年でございますか、私どもの方でHSSTを別会社にするということを機関決定いたしました。しかし、これを処分するといってもなかなか買い手が右から左へあるわけではございませんので、いろいろと各方面に御相談をいたしましたけれども、なかなか買い手がつかない。さればとて、先生のおっしゃるように、日本航空が五十何億も投資したものを今後どうするのかということは依然として経営としては関心がございます。これはHSSTというのが、技術的に航空事業が大変に関心を持たざるを得ないような技術、今の言葉で申し上げれば先端技術を含んでいるということから、私どもとしては、技術陣にHSSTにおける実用化の過程における技術レベルをぜひ調律してもらいたいという願望もございますので、これを今のHSST会社におっしゃるような一億数千万円で売却した。価格については、ほかに買い手がなかったということでございます。  それから、問題になっておりますHSST山地念書についても、本来かような書類が世間に出るということは企業として大変好ましくない。これはなぜかといいますと、ほかの企業から見ると、日本航空と取引するとそういう書類が外に出るというような評価につながるものでございますから、本来そういった書類が出ることは好ましくないのでございますが、私どもの内部では、この念書を出すにつきましては、私がもう社長でございましたので十分検討を重ねまして、HSST会社事業発展、これは私どもが技術料として、些少でございますけれども〇・五%HSSTから将来受け取るということもございますので、HSST会社発展するということは日本航空にとってもプラスになるわけでございます。そういう意味で、念書は私どもにとっても意味があるはずでございますけれども、しかし、債務保証という金銭上の問題にならないということを法律的にも十分確認の上、相手方の金融機関にお渡ししたという実情でございまして、それについては裏に何らおかしな話は一切ございません。  それから長期予約の話は、ちょうどG5のときでございますので、円安問題が大変重要な地位を占めておりまして、私ども企業といたしましては、アメリカから飛行機を購入するという購入資金が六億から七億ドルございます。そのほかに費用として四億ぐらいの金が常時動いております。これは支出でございます。収入の方は至って微々たるものでございますので、やがて十億ドルぐらいの対ドル赤字が出るわけでございます。特に航空機の購入というのは恒常的に行われますので、円安ということになりますと航空機の購入価格が高くなる、したがって、経営を圧迫するという因果関係にあるわけでございます。  これを何とか安定して、かつ安く手に入れるものがないだろうかということで苦慮していたわけでございますが、たまたま五十九年ぐらいから十年物の先物予約というものが市場に出回りました。これですと、当時二百四十円あるいはその前は二百五十円していたわけでございますが、そういったものが安定的に百八十円から九十円で手に入るということで、対ドル赤字の十億ドルの約三分の一について為替予約をした。為替予約をしたということは、円高になれば三分の二は円高のメリットを当然受ける、しかし円高になった場合は三分の一については円高を享受できない、逆に円安になった場合は三分の二についてはダメージを受けるけれども、三分の一については幾らかでも企業に貢献できる、こういう意味でヘッジということをやっているわけでございまして、先ほど局長の答弁にございましたように、結果的には円高になりまして、円高にならなかったときに比べると、企業としては得べかりし利益はなかったということでございますが、円安になるか円高になるかわからない時点の判断であったと私は思うわけでございます。  以上でございます。
  16. 新盛辰雄

    新盛委員 経営者として先見性のあるいわゆる経営の運営というのは、これだけの組織でございますから、判断を誤ったと言いわけをしている暇はないわけです。この一連の問題を見ますと、何かやはり経営上の中身に巣くっているいろいろな問題がこうして出てきたのじゃないかというふうに思われるのです。これをまだ深く追及したいのですけれども、ほかの本題の中身に触れていかなければならない議案がございますからおきますが、大臣、こうした一連の問題もあって、あるいはまたこれからまだ解明しなければならないこうした経営上の放漫的なやり方について、言葉が放漫だと言うとあなた方はしゃくにさわるかもしれませんが、そういうふうに世間は言っているわけです。伊藤前会長がおやめになったというそのいきさつを、いろいろとあったようでありますから、ひとつここでお聞かせいただきたい。     〔委員長退席、小里委員長代理着席〕
  17. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 今御指摘のありましたようなもろもろの問題を含めまして、いわゆる親方日の丸的体質と私は先ほど答弁上表現をいたしました。現在、完全民営化に向けて一層の経営努力が求められておる状況でありますだけに、私は、民営化に向けてレールを敷いてこられた伊藤会長辞任をされたということは大変残念なことだと考えております。  そしてまた、退任されましてから伊藤前会長がさまざまなお話をしておられますけれども、私の知る限りにおきまして、伊藤会長から辞意の御表明がありましたのは、たしか昨年の十二月に入るか入らないかくらいのころであったと記憶をいたしております。その際のお話は、お引き受けをしてちょうど丸一年ということと、それなりに形がついてきたと思うのでというお話でございました。これは決して公式なものではなかったと私は思います。そしてその際にも私は、完全民営化という方向に向けて今一番結束をお願いしなければならない時期に辞任ということは思いとどまっていただきたいということをお願い申し上げてまいりました。そしてその後に、世間的にはいろいろな話が飛び交っておったようでありますけれども、伊藤会長が正式に私に辞任の意向を漏らされたのは、今御審議をいただいておりますこの日航廃止に関する法律の国会提出が閣議で決定をされる状況に来たので、これを機にして引きたいということでありました。そして完全民営化に向けての論議がなお続いている時期でもあるし、定時株主総会まではせめておとどまりをいただきたいと繰り返し慰留を申し上げておりましたが、御本人の辞意が大変かたかったことから、やむを得ず私としては辞任を認める決断をいたしました。  その限りにおいて私は極めて残念であったと今も思っておりますし、踏みとどまり、なお御努力がいただければという気持ちが当時も今日もなかったわけではございません。しかし現在、社長以下社内が結束をし、全力を挙げて完全民営化への努力を続けてくれている最中でありまして、その努力が今後も継続することを私としては期待をいたしております。
  18. 新盛辰雄

    新盛委員 今経過はよくわかりましたが、確かに、日航というこういう一つ経営形態に対してメスを入れたい、何としても安全を第一義とする経営システムをつくりたいと意欲満々で乗り込んでいかれたというふうに聞いております。そして伊藤さんが掲げられた方針は、人事の公平、不正義の清算、経営責任体制の確立、この三本柱を主軸にしてやられた。しかし、おやめになった後「日航をよくするために手術室に入ったのだけれども、よく見たら医者は私一人だけだ、ほかの人はみんな窓の外から批判ばかりしている」というふうなこともぽろりとおっしゃったらしく聞いております。そこにすべてがあるような気がするのでありますが、一生懸命熱意を持って日航の改革のために、改善のためにお取り組みになった伊藤会長がおやめにならざるを得なかったというのには、いわゆる政界、あるいは財界もあるでしょう、あるいは分もあるでしょう、いろんな問題があるというふうに言われておるわけであります。したがってもうやる気を失った、こういうことになったのだろう。  しかし、後々これから経営をされる方は、会長まだ不在でありますけれども、設けることができるということですから、置かなければ置かないで済むのかもしれませんが、後完全民営化を達成される方々はこれは並み大抵のごとではないと思うのでありまして、そうした面でこれからこうした内容の問題で、パーサー、スチュワーデス、昇格昇給、あるいは一方の組合には差別がついたとかつかなかったとかいろいろな問題があります。これは具体的な問題ですから後ほど時間があれば触れますけれども、そうしたことなどを含めて、これは何としても新しい経営体に入っていく場合に起さなければならないこの状況の中でやっていけるだろうか、本当に安全を保つことができるだろうかと憂慮するのですが、大臣、もう一回その辺のところをお聞かせいただきたい。     〔小里委員長代理退席、委員長着席〕
  19. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 最初に申し上げましたように、航空企業にとってばかりではなく、運輸事業全体にとりまして安全というものは最優先の課題であります。安全のない、安全の心配されるような運輸業というものは本来存在し得ません。またその安全という点に注意を怠る企業があるとするなら、これは競争場裏において当然だれもが利用しない企業になっていく、敗北をすることになるであろうと私は思います。そして伊藤前会長辞任ということについては、私は本当に残念だと今も思いますけれども、巷間伝えられるところと私の受け取り方が違うかもしれませんが、私は少なくとも慰留の限りを尽くしたつもりでありますが、会長自身の御意思によって辞任という方途を選ばれたということでありまして、残る山地社長以下が全力を挙げて努力を続けている現状を私はできる限りの支援をしてまいりたいと考えております。  また今御論議がありました中で、労働問題等についてもお触れになりましたけれども運輸省は個別の労使問題に介入する立場にはございません。しかし、航空運送事業という非常に公共性の高い事業を監督している立場の私どもからいたしますと、日本航空の労使関係に深い関心を抱いておることも事実であります。殊に、日本航空が今後完全民営化を控えて、厳しい競争状況の中で的確に事業を遂行していきますためには、労使双方に信頼関係に基づいた健全な労使関係をつくり上げるというその気持ちが少なくとも必要であることも間違いがありません。この点、現経営陣も引き続き熱意を持って、また誠意を持って対処してもらいたいと考えておりますし、経営陣ばかりではなく、労働組合側の方々にも同じことを私は申し上げたい。そして全社一丸となって日本航空をよくしていくという体制をつくってもらいたいと考えております。  組合について、先ほど数の問題をお触れになりましたが、私どもは、私自身が民間企業におりました体験からいきましても一企業組合の方が望ましいとは思います。しかし、これは運輸省が介入をすることではなく、労使間の問題として、今後日本航空というものを真に国民が信頼し、これからも大切に利用させていただく企業として育てていくために最善の方途を選んでもらいたい、そのように思います。
  20. 新盛辰雄

    新盛委員 そろそろ中の方に入りますが、今回の完全民営化の目的、これは政府の規制と助成が廃止されるわけですから、経営の自主性、そして経営責任というのは重くなります。こうして民営化をすればよくなるんだよというのでありますが、確かに、自由に営業ができる反面、また苦しい方は資金調達やらあるいは株主への配当の問題等出てくるわけでありますけれども、今回の私企業としての健全な発展を促す完全民営化というのは、具体的にどういうメリットがあるのでしょうか。あるいはデメリットも出てくるのでしょうか。この辺の功罪をお聞かせいただきたい。
  21. 山田隆英

    山田(隆)政府委員 現在、日本航空は、日本航空株式会社法という法律によって特殊法人としての規制がいろいろ行われておるわけであります。同時にまた、政府の出資等の助成も行われているということで、今回の完全民営化によりまして、それらの規制が完全に撤廃されると同時に、助成についても完全になくなる。その結果として、日本航空は全日本空輸であるとかあるいは東亜国内航空であるとか、そのような従来から完全に民営化されている航空会社と同一の立場に立つということでございます。  まず、制約がとれるという点でございますけれども日本航空を完全に民営化することによりまして、これまで役員の人事であるとか新株の発行であるとか社債の募集、長期借入金等について政府の認可を必要とされておりましたが、これらの認可制度が廃止されることによりまして、他の航空企業と同じく自主的かつ責任ある体制というものを確立することができるというふうに考えております。  それから他方、助成が廃止されるわけでございますけれども、まず第一には、これまで政府からの出資ということがございました。これは先生が最初にお話しになられましたように、完全民営化によって、現在政府が保有しております株式というものを全部民間に放出いたしまして、政府の持ち株比率をゼロにするわけでございまして、それによる助成的な措置が受けられなくなるということでございます。さらに、現在、借入金あるいは社債等について政府保証が受けられておりますけれども、これらについてもなくなるということで、今後は自力によって資金の調達等を行わなければならないということでございます。
  22. 新盛辰雄

    新盛委員 そうしますと、これからの経営の活性化、効率化、多角化あるいは変化への迅速的確な対応というものも必要になってくるわけですが、確かに規制はなくなった、助成はなくなった、自由でございます。しかし、先ほど論議をしました日本航空子会社日本航空開発どもそうでしょうけれども、いろんな多角営業をやることにもなるわけであります。  政府側が自由を与えたということで官業から民業へという移り変わりになりますが、航空法によりまして、第百条で運輸大臣への申請及び許可が必要ということになっていますし、運賃や事業計画に関しては百五条の航空法の規制があるわけであります。だから、自由になりましたといいましても、一番肝心のこうしたサービス、それから航路、便数、運賃、こうしたことに対する運輸行政というのはやはり力を持つわけであります。これが規制といえば規制、ある意味では指導といい、監督するという上部機関としての役割を果たすということに理解すれば、それでも理解できる。一体こうした関係においてどうなるのか。だから、路線の権益上の立場が弱くなる、資金調達の面で非常に不利になってきた、社債発行だって、これも限度額が五倍から三倍、逆に減るのですから、そういうような状況を考えますと、民営化へのデメリットの方が極めて大きいのじゃないかと思われるのですが、安全の問題は後ほど触れますけれども、こういうことについてはどうお考えですか。
  23. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 そういう御論議が全くできないとは私は思いません。ただ、最初に私が御答弁申し上げましたように、お考えをいただきたいのは、我が国の現在の航空企業国民生活への密着の度合い、また国際的な役割等々を判断していきます中で、日本航空一社に特殊法人という地位を与えて、いわば不完全競争を今後とも存続をしていくメリット、デメリット、そういう視点からも問題をとらえていただきたいと私は思うわけであります。今回のいわば完全民営化された結果のデメリットと委員がお挙げになりましたような問題と申しますものは、現に他の航空企業はその条件の中で企業活動を行っている条件であります。そしてこれは、見方によって、いわば温室の中で今後も育っていきたいと思う方々から見ればデメリットかもしれません。しかし、他との完全な同一条件の中で競争をし得るということは、企業の将来を考えれば本来これはメリットであるはずであります。  ただ、委員が御指摘になりましたように、現在、一つ航空交通の容量の不足という制約もございますし、現状の中において完全に路線まで自由化をするというところまで、これが最適だと申し上げるところまで参っておりませんけれども、その条件は他の航空企業においても同一であるということをぜひお考えをいただきたいと思うわけであります。
  24. 新盛辰雄

    新盛委員 最近、日本電信電話公社のNTT化、いわゆる民営化、日本専売公社の日本たばこ、国鉄のJR、民営化という形の中で現在もう既に実施されているわけでありますが、だれが利益を得るか。これは何としても国民に還元させる政策の一環だというふうに言われておりますけれども、運賃は安い方にこしたことはない、安全は高い方にこしたことはない、そして便利はこれまた国民が期待できるようにそれぞれのニーズに合った形で消化されたにこしたことはない、これが交通、運輸の原則といえばそうなんですね。そういう中で、日航が親方日の丸、国鉄も一時親方日の丸で随分と攻撃を受けた経緯がございます。  そういうような中から見ましても、そういう具体的な面で、今大臣おっしゃったように、デメリットというのはある意味ではメリットヘ変える大きな踏み台、ある意味で大きく力を出す、そういう経営のこれからの新しい模索、これは他の全日空にしても東亜国内にしても既にやっているわけですから、そういう面でより競争を高めていくことによってこれらの問題も消化されるだろうとおっしゃるわけですけれども冒頭に議論をしましたように、かさぶたというんですか、言葉は悪いですけれども、いろいろな問題を背負っている日航ですね。それが民営化されることによって、恐らくそれをずっと継承する形になりはしないか、そこに非常に危惧するところがあります。だからサービスが——あるいは運賃は世界一高いあるいは国際競争力の面でも恐らく太刀打ちできないんじゃないかという不安を持つわけなんですよ。だけど、持たないようにといえば、それは具体的にこれから経営システムの中で解決をしなきゃならないことでしょうけれども、そうした一面をやはりとらえていかなければいけないだろう。  運政審では「航空企業全体を対象とする新たな政策金融について検討する必要がある。」と言うんです。その政策金融というのは何ぞや、具体的にどういうものだろうかというのは、答えは私どもは聞いておりませんね。もちろん今からやるのでしょうが、その辺も含めてお答えいただきたい。
  25. 山田隆英

    山田(隆)政府委員 政策金融でございますけれども日本航空完全民営化されることによりまして、これまでは政府保証により資金の調達ができたわけでございますが、それがなくなったわけでございます。そこで、運政審答申の中で、今後新しい政策金融について考えるべきであるという御提言をいただきました。  それを受けまして、私どもは六十二年度の予算要求に当たりまして、日本航空が今後調達する機材の所要資金のために輸開銀から低利、長期の融資を受ける制度を要求したわけでございます。六十二年度の予算におきまして認められました航空機融資制度でございますが、これは日本航空のみならず、今後新しく全日空なり東亜国内航空国際線へ進出の道が開かれたわけでございまして、それらの日本の航空企業全般につきまして融資制度を創設したわけでございまして、その内容といたしますのは、開銀または輸銀から融資をするということで、六十二年度につきましては開銀の融資額が四百八十億円、輸銀の融資額が六百七十億円、計千百五十億円が認められたわけでございます。  ちょっと融資内容につきまして御説明をいたしますと、融資対象は定期航空会社が導入する航空機で、六十二年度の場合は二十機相当分が見込まれております。それから融資条件といたしましては、融資比率が五〇%、金利が四・六%、期間は十五年ということでございます。そしてこのうち日本航空につきましては、輸出入銀行から九機分、五百八十億円を見込んでおるところでございます。
  26. 新盛辰雄

    新盛委員 次に安全の問題ですが、民営化するとしないとにかかわらず、安全だけは左右されないわけですから、絶対のものである。そこでコスト、営利追求、それと、安全が航空会社の生命であるとするなら安全、コストか安全か、二つともうまくいけば一番いいでしょうが、なかなか今の政策の中では一労務問題も後ほど触れますけれども、安全が恐らく人員、機材、整備、いろいろな面でコスト優先のために落とされていくのじゃないかという不安を持つのです、持ってはいけないけれども。これは大臣、コストなのか安全なのか、それをどういうふうにこれからこの中にミックスするかをお答えいただきたい。
  27. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 事務方の諸君が用意してくれております答弁は大変手がたく書いてありまして、安全の確保航空事業において最も基本的な課題であり、いかなる場合にもゆるがせにすることは許されないものである、完全民営化後においてもこの基本的命題は変わるものではなく、日本航空としては安全の確保に万全を期しつつ経営効率化に努め、民営化の実を上げてもらいたいと考えでいるというところから書いてございます。  ただ、私は、今の委員の御質問についてはちょっと無理なというよりも、航空企業というものに対してあり得ない選択を迫っておられる御質問ではないかという感じを持っております。例えば、現在アメリカ国内、御承知のように極めて多くの航空会社が熾烈な企業競争を行っております。料金もダンピングに次ぐダンピングであります。しかし、そのアメリカの航空企業の一番のポイントは何かといえば、自社の機材で事故を起こした場合には全く利用がされなくなる。競争において敗れてしまう。安全運航がまず最優先であって、その上で企業競争がある。言いかえれば、安全運航確保された上でのコスト競争、価格競争ということになっておるのが実態でありまして、コストか安全かという選択を迫るような航空企業あり方というものは、私は存立し得ないものだと考えております。
  28. 新盛辰雄

    新盛委員 明確に答えていただきました。私もそうだと思っています。  ただ、営利優先ということが往々にして、社内改善が往々にして先を走って、こうしたいわゆる安全の面、サービスその他が低下するのじゃないかという言われ方というのはあるのです。今大臣お答えのように、こういう大事な航空行政の中で安全が無視されたらこれは大変なことです。命取りです。また営利の面においても、健全な経営の運営をしなければならないことも当然であります。だから、そうした面で二者択一をということにならない。同列の中で考えていくことは当然であります。  しかし、国際線国内線を問わず激化する競争原理、これを取り入れてこれからやっていくということになれば、おのずとコストの方に力を入れざるを得なくなるのじゃないか。そうならないようにしなければいけないわけでありますが、安全の方だって、中期計画は後で申し上げますけれども、ある意味で合理化という問題が出てきます。スリムな中で力を持たせる、そして安全を確保する、経営は健全である、こういうやり方は当然ですけれども、社内のこうしたいろいろな背景がきれいに整理改善されなければならない面もあるが、それがだんだん手薄くなってしまうのではないかという危惧が出てくるわけであります。そういうことにならないように、この点はぜひひとつ今後の問題としてお考えいただきたい。  そこで、今回民営化しますと、緊急時における国家協力の問題が出てきます。今までは特殊法人でありましたが、ナショナル・フラッグ・キャリアの民営化で、これからは緊急事態のときに派遣をされるとか、航空主力会社の責務をどこが果たすのかという問題も出てくるわけであります。聞くところによりますと、政府は専用機を二機ぐらい買ってそういう救助の場面に役立たせたい、そういう国際間の協力問題を考えておられるようでありますが、かつてイラン・イラクの問題のときにトルコ航空が代替で輸送したという、日本の国としては品の悪い話でありました。国内でいろいろごたごたもめてそうなってしまったのですが、そういう問題はこうして民営化されるとどういうふうに変化し、どういう位置づけになるのか、お答えいただきたいのです。
  29. 山田隆英

    山田(隆)政府委員 緊急時における輸送の問題でございますけれども、現行の日航法におきましても、緊急輸送の際の輸送命令といったような規定はございません。ただ、日本航空特殊法人であるという性格もございまして、これまでそういった緊急時、災害時等の輸送を実際の問題としては数多く実施しておるところでございます。これらはすべて従来、日本航空政府がチャーターするという形で行ってきたわけでございますが、個別のチャーター契約は自主的に行われたということでございます。  完全民営化後、こういったような緊急輸送の場合にどういうふうに対処するかということでございますが、ただいま先生からお話が出ました政府専用機の問題につきまして、実は現在、政府部内でいろいろ検討しておるところでございまして、政府専用機の使用目的、それから運航の方法等についてまだ必ずしも結論が出ておりませんが、場合によっては政府専用機をそういう緊急災害時のための輸送に充てるということも考えられようかと思います。  ただ、その政府専用機の場合は別といたしましても、また今後、民間航空機を政府がチャーターして緊急輸送を行うことも想定されるわけでございまして、その際、完全民営化後にあっても依然として日本航空が全世界的な運航を行っておるところから、日本航空に対し緊急輸送の要請をするケースも多いと考えられるところでございます。ただ、今後は国際線に他の航空会社も進出することになりますので、他社もそういった緊急輸送のための運航が可能となってくると思われますので、緊急時の輸送手段の確保等につきましては、これまで以上に円滑に行われるものであるというふうに期待しておるところでございます。
  30. 新盛辰雄

    新盛委員 次に、運政審答申の中にも出ておりますが、航空利用顧客へのサービスの向上、あるいは国際競争力の強化、経営基盤の強化、企業競争促進というような問題が出ています。日航民営化後の国内、国際航空運営体制あり方についてお聞きしておきますが、単純に完全民営化すれば、同じ路線に他社との競合、ダブルあるいはトリプルトラッキングを設けていくわけでありますが、これは過当競争という、現在フライトしているところにほかの社が割り込んでくる、それは競争ですから当然ですが、そうした面で許可運賃との関係がどうなるのか。また民営対策で国内、国際を通じて各社のダブルあるいはトリプルのトラッキングというものをどういうふうに再編成していくのかということになるわけでありますが、お考え方をお聞きしたい。  アメリカとの競争の中では、日米航空協定がありますが、非常に片手落ちじゃないかという、片手落ちで国際線にどんどん進出をしていけば当然ぶち当たるわけでありますが、日米航空の協定の内容についても日本の政府としてはどう考えているかということ、まずその二、三をお答えいただきたい。
  31. 山田隆英

    山田(隆)政府委員 今後の航空企業の運営についての考え方でございますけれども基本的には、昨年の六月に運輸政策審議会からいただいた答申の線に沿って推進をしていきたいと考えております。その基本的な考えと申しますのは、さきにも大臣からも申し上げましたけれども、今後は安全運航確保基本としつつ、企業間の競争を通じて、利用者の要請に応じたサービスの向上経営基盤の強化、国際競争力の強化等の実現を目指していきたいということでございます。その目的とするところは、あくまでも安全で安定した良質な輸送サービスを利用者に提供しようということでございます。  今後の具体的な方策といたしましては、国際線につきましては、従来日本航空が一元的に運営しておりましたものを改めまして、他の航空企業につきましても、企業の意欲、能力に応じて国際線への進出を積極的に推進していきたいということでございます。また国内線につきましては、ダブルトラック化あるいはトリプルトラック化というものを推進していきたい、かように考えておるわけでございます。  その際に、需要のないところに競争促進した場合過当競争が生ずるのではないかという御懸念があろうかと思いますが、国際線の進出に当たりましても、もちろん相手国との関係がございますけれども基本的には、高需要または大きな需要増を期待し得る既存路線への参入というものを現実の問題としては考えていきたいということでございます。それから国内線にっきましても、年間の輸送需要が多いところを基準といたしましてダブルトラック化、トリプルトラック化を進めていきたいということで、需要の面につきましても配慮しながら競争促進策を推進してまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  32. 新盛辰雄

    新盛委員 結局、調和がとれ、各社が生き延びられるように、そしてまた需要に応じた路線をつくりながらダブル、トリプル、そういうもので再編成をしていくんだという結論でしょう。  どうも長くおっしゃるものですから、あちらこちらに飛ぶのでよくわからないのですけれども、これからの国際線複数社制、これは各企業が国際競争の中に乗り出していくわけですが、複数でやっていけるのかどうか、これは疑問を持ちます。競争力があるんだろうか。アメリカあたりでは、国際線問題で、百社近いものが三十社ぐらいに統合再編成されている。実質的には、そういうような面で、日本の場合も四五、四七体制の廃止以降、新航空政策をどうするかというのは今後の懸案なんですね。民営化すれば国際競争力が確保されるという甘い展望というのは、これはもうそれこそ大変なことじゃないかと思うのです。だから、こうした面の認識をお持ちになるのならば、低コスト運航体制によって、いわゆる賃金の抑制や労働条件の引き下げも起こりやしないだろうかという一方の不安もあります。  また片一方では、国全体の国益とかあるいは輸送力、競争力強化を基準にしていろいろな入れ込みをやられる、こういうことになって、そうした面での戦略的な方策というのは、民営化するのですから、もうかちっと出てきていいはずのものなんですよ。だから、その辺のこれからの新しい国際運航体制の必要性というのは慎重でなければならぬと同時に、どういうふうになるんだという展望を明らかにしていただかなきゃならぬのじゃないか。今おっしゃるような原則論はわかるが、これから具体的なものが出てくるだろうけれども、そういうような面でどういうふうにされるのか。やはり低コスト運航体制というのはお考えになるわけですから、さきにコストか安全かという話をやりましたが、そういう問題とのつながりからも、慎重にして、かつ、その体制をどうおつくりになるかということは、これは大事な問題だと思うのですが、どうですか。
  33. 山田隆英

    山田(隆)政府委員 今後の新しい航空企業国際線への進出につきましては、先ほど申し上げたわけでございますけれども、国際競争力の確保を図るということも十分念頭に置いて政策を進めてまいりたいということでございます。本邦航空企業全体としての国際競争力の確保につきましては、今後とも十分配慮をいたしまして、厳しい外国企業との競争市場において国際航空路線の適切な運営を確保していきたいというわけでございまして、当然その中にはコスト競争力というものを各企業ともつけていただきたいというふうに私どもは希望しておるわけでございます。
  34. 新盛辰雄

    新盛委員 ことしの二月の十八日にお出しになりました日本航空中期計画、これは民営化を踏まえての中期計画だと思うのでありますが、これを読ましていただきまして、国内外双方における高収益路線の追加取得を前提にしておられる内容がございます。路線の構造は一社だけに限って見るべきものではないのでありますが、この辺のところは利己的で独善的ではないかというふうに思われる節もあるわけであります。こういうことについては、この中期計画がこれからの競争力あるいは商品の設定とか、太平洋線あるいは各路線のそれぞれの確保のために全力を挙げるということになっておるのですけれども、この中期計画は利己的な、独善的なという感じがするのですけれども、これはどういうようにお考えですか。
  35. 山田隆英

    山田(隆)政府委員 先生が今おっしゃいました中期計画と申しますのは、自本航空企業として独自に完全民営化に対応した企業運営の目標を定めたものでございます。今回の中期計画はことしの二月に定められたわけでございまして、昭和六十二年度から六十五年度における計画になっておるわけでございます。ここに掲げられました今後の路線便数計画というものは、日本航空としてこのようなものを目指して努力したいということでございますが、今後、具体的な事案につきましては、運輸省としては個々の事案ごとに適宜判断をしていく趣旨のものでございまして、日航の揚げております中期計画がそのまま実現できるという性質のものではございません。これはもちろん運輸省判断もございますし、また場合によっては航空協定その他相手国との関係もございまして、そのような点から、中期計画のうちの路線計画等が実現できない部分は当然あるかと思います。ただ、日本航空といたしましては、そういった要素も含めまして、中期計画の目標といたしておりますところの配当し得る経営基盤の確立に努力されるものというふうに私どもは期待しておるところでございます。
  36. 新盛辰雄

    新盛委員 労使問題で少し時間をとりたいと思いますが、その前に、日本アジア航空の今後の扱い。二つの中国のはざまの中で、日航のダミーとして日本アジア航空がこれまでやってきておるわけでありますが、日中間六原則の推移を見ながらというふうに総合的に検討されておられると思いますけれども、これは今後一体どうなるのですか。アジア航空の今後の取り扱いについてお伺いします。
  37. 山田隆英

    山田(隆)政府委員 日本アジア航空は、現在御承知のように台湾路線に就航しておるわけでございますが、中国路線に日本航空が乗り入れている関係で、別会社として昭和五十年に日本航空の一〇〇%出資により設立された会社でございます。したがって、今後の取り扱いにつきましては、まず親会社である日航の意向及び中国との関係によって決まってくるかと思いますが、現在のところ、民営化したからといって直ちにこの現状が変わるものとは考えておりませんし、また日航におきましても、この現状を変える意向があるというふうには聞いておりません。
  38. 新盛辰雄

    新盛委員 状況がどんどん変わってくると思われるのですよ。だから、今後の問題としては、完全民営化されるわけですから、この扱いとしては政府としても大変苦労されることだとは思いますが、問題の整理を早急にしていただきますようお願いしておきます。     〔委員長退席、小里委員長代理着席〕  次に、先ほどから一連の労務管理、安全、事故、こうした問題で触れてまいりましたが、先般、六月十九日に航空機の耐空性確保に関する勧告、同日に一二三便、これは日本航空株式会社所属ボーイング式の例の事故の問題に係る建議であります。この二つの勧告と建議されている内容を見まして、特に建議の方の「航空機の整備技術の向上に資するため、目視点検による亀裂の発見に関し検討すること。」云々の各条項がございます。これは最近の日航ジャンボ機の墜落、そうしたことを踏まえての内容でありますが、安全よりもうけ優先というのはここで出てくるわけであります。  安全には金がかかるわけであります。金がかかるから合理化していくわけです。合理化すれば、労務政策一つとして当然人減らしが出てきますし、整備すべきものも整備できないという状況が生まれてくる、そういうようなことになるのは当然ですね。経営のスリム化というのはそういうことです。伊藤体制のもとで長いこと採用されなかった整備員が最近百二十六名か採用されたというようにお聞きしております。そうして、整備を含めたこれからの安全運航という面で、労務全体の管理、いわゆる労使の安定なくしては民営化は不可能なんですから、それだけに、今回の民営化によって労使関係が正常化するのか、安定するのか。合理化問題は労使交渉の対象であります。     〔小里委員長代理退席、委員長着席〕  そしてまた、言われる六つの組合、これはそれぞれの主張がありましょうけれども、差別があってはならない。どんな組合にあっても、それぞれの諸条件をより高めようとする労働組合法によってつくられた組合であります。そういう組合の動きを、使用者側の方として会社側がどういうように政策としてお持ちになっているのか。あめとむちというのがありますが、いい子の組合にはあめを悪い方の組合にはむちを、こういう経営に協力しないかするかということであります。労使協調というのは、あり得る姿としては今日の厳しい状況の中では考えられることではありますが、癒着というのは、これは組合もこれから先大変なことになるでしょうけれども、それを育てようとする会社側の方もこれはまた大変なことになる。平等に公正にどの組合にも対処でき得る人事的な扱い、昇給、昇格あるいはそうした全体の差別、こういうものを現存させたのかさせなかったのか。将来民営化になる、その民営化の中では一体労務政策はどうおとりになるのか。  そしてまた、今回の中期計画によりますと、最近発表されましたように、これは二万人体制で民営化だよと言っていたけれども、少し合理化しなきゃいけない、一万八千人体制だという話もお聞きしました。委託や別会社やあるいは子会社をどんどんつくって、下請拡大、パート、アルバイト、こういうものに移り変わっていくとすれば、航空行政が一番大事だと大臣はおっしゃったのですが、そういう中での安全というものに大きく響いてくるのじゃないだろうか、そんな気がしてならないわけでありますが。経営者たる山地社長のこれまでのとってこられた姿勢、これからとろうとされるこれらの問題に対する姿勢をお聞かせをいただきたいと思うのです。
  39. 山地進

    山地参考人 私どもが一昨年経営をお預かりしたときに社員に出しました通知がございますが、その中で五つのことを申し上げております。絶対安全の確立、それから効率的組織と公正明朗な人事行政の確立、労働関係の安定化、国際競争力強化の確立、五番目が御遺族及び御被災者の補償の万全、こういうことでございます。  なかんずく労務関係につきましては、労務方針というものをその後に出しております。その中におきましては、絶対安全の確立、集客力の強化、財務体質の強化に基づく経営力の強化が労使共通の基盤であり、労使共通の目標であることを確認しという、これは私どもが社員の方に出した通知でございますが、そういうことも述べておりますし、その最後の方には、労使は、会社の繁栄が組合員の繁栄につながる、運命共同体的関係にあるというようなことを組合員の方々の方に申し上げているわけでございます。私どもといたしましては、絶対安全ということと、それから労使関係の安定ということが車の両輪であるというふうに心得ておりまして、組合との対話というものを積み重ねてきているわけでございます。  今先生の御指摘のありました六つの組合についての差別ということについては、今の五つの方針の中に公正明朗なる人事ということを掲げてあるのは、そういった過去からのいろいろの問題を抱えておる私ども組合でございますので、特に私どもの方針を明確にしたわけでございます。差別ということがあってはならない。確かに六つという組合が多いことは事実でございます。その点につきましても、この方針の中では、組合は一企業内において一組合組織であることが望ましく、組合員の自主的な努力により統一組織であることを期待する、ただし、組合の組織問題は組合員の自主的解決によるべきものであるというふうに私どもも申し述べて、これはまあ常識といいますか、当然のことでございますが、そういう態度で、私どもとしては各組合を等距離に、いろいろとお話を続けて、差別のないように努力しているところでございます。
  40. 新盛辰雄

    新盛委員 今山地社長お答えで非常に明快なのでありますが、絶対安全確保である、公平明朗な人事をやっていくのだ、労使関係の正常な安定化を図りたい、そうした認識の上に立って、労働組合の方では六つあるし、労労の間で一企業組合という問題もこれから試行錯誤がいろいろあるのでしょうけれども、要は使用者側と労働者側がある意味では協力し合うという面で、これは経営発展のために大きなプラスをもたらす面があります。ただ、差別的にいい子と悪い子をつくってこれまでやってこられた経緯が実はいろいろな事故を起こしている、あるいはいろいろな面で安全を無視した状況が生まれた、これは巷間伝えられているところであります。  したがって私は、事故との関係で見ますと、本当に分裂労務政策が進められたのは昭和四十年以降だというふうに記憶しているのでありますが、それから労働組合つぶしというものを始めて、そして分断をし、だんだん組合がどっちかに振り向けられる。一方の方は非常に人事、昇格その他等ではいいぐあいになっている。一方の方はそうじゃない。私は冒頭申し上げましたように、我々はどちらにも寄らず公平に、そしてまた、労働者の幸せを考えるがゆえに、そのことについてお互いに虚心坦懐に問題の整理をしたい、その願いを込めて申し上げているわけであります。  ところが、四十七年までは余り事故はなかったのですね。四十年以降、いわゆる労働組合分断その他等が始まって一番高まってきたころ、四十七年以降だんだん事故が多くなった。もう統計的に明らかであります。これは結局、労使間の問題もでしょうけれども、お互いに一生懸命やろうという意欲を失っているものもそれに介在しているのじゃないか。だから、そうした面で、非常に残念なことでありますけれども事故が続発をしていくという傾向になった。これが労務政策の面でもやはり大きく介在をしているのじゃないか、それは大なり小なりいろいろな面であったのじゃないだろうかというふうに思うのであります。  だから、今後の民営化をされるに当たって、経営者側は一企業組合が望ましい、そうおっしゃるのですから、ならばやはり今六項目挙げられました山地社長の決意として、そして方針ですから、当然これはそれなりに各組合とも公平な立場で接触をし、そして交渉に応じてやる。こちらの組合は非常に物わかりがよいのでおれも出よう、こちらの組合はどうもいつもかみつかれるからおれは出ないよというのでは、これは労使の正常化は図り得ないわけでありますから、この点についてもう一回、今後の問題でありますから、山地社長の決意を聞きたい。
  41. 山地進

    山地参考人 私ども、先ほど申し上げましたとおり、労使関係の安定ということが企業基盤であるということを心得ておりますし、今までも各組合と私は差別なくお話をさせていただいているつもりでございます。今後とも、差別することなく公正に各組合といろいろとお話を進めてまいりたい、かように考えております。
  42. 新盛辰雄

    新盛委員 労働省の方、お見えになっていらっしゃると思いますが、最近の労働条件の各面の中でも、とりわけ日航職員の給与そして労働時間、また他社の全日空あるいは東亜、この辺の比較を求めておったのでありますが、整理されましたでしょうか。
  43. 長勢甚遠

    ○長勢説明員 私からは給与についての各社の状況を御説明させていただきます。  基準内賃金につきましては、日本航空では、地上職員については二十九歳時点で示されておりますが、二十五万七千二百円、客乗職員については二十五歳時点で乗務手当込みで二十八万八千九百円、運乗職員については二十五歳時点で乗務手当込みで七十九万三百円でございます。全日空につきましては、地上職員につきましては三十歳時点で二十七万四千四百八十五円、運乗職員については三十歳時点で八十万八千五百三円。東亜国内航空につきましては、地上職員については三十歳時点で二十六万六千四百二十二円、運乗職員については三十歳時点で六十九万五千三百五十五円。なお、全日空、東亜国内航空の客乗。職員については、地上職員に準ずるというふうな状況になっておると聞いております。
  44. 新盛辰雄

    新盛委員 それぞれの会社経営状況あるいはまたそこで働く労働者の賃金というものはそれぞれの決められ方がされるわけです。そういう中で、これから国際競争あるいは国内競争という極めて新しい状況下に入っていくわけですから、これは航空労働者のいわば先進的な役割を果たしていただいている、他の労働者より基準内賃金も少し高いじゃないかとかいろいろ言われ方をされるのですけれども、それは職務の内容、そうした面からは当然あり得るべき姿として我々は理解をしておかなければなりません。  日航体質改善、これが合理化競争の激化の中でという、いわゆる合理化を一面進めていく、そしてさっき申し上げました整備体制とかいろいろな両で、これをまた逆の意味では補強しなければならない諸条件というものはあると思うのでありまして、その面についてもこれからどういうふうな、他社と同時レベルをお考えになるのか、自分のところの、もうかったらもうかったでそれを完全配分する、それは経営の大きなテーマでありますけれども、そうした面について、日航民営化によって新会社はこれからどういうふうに労務政策をおとりになるのか、お聞かせをいただきたい。
  45. 山地進

    山地参考人 先ほど触れました私どもの労務方針というものの中に、労使が信頼し協力して国際的な競争力の激化に対応する、あるいは民主的かつ平和的な労使関係を維持するということと並びまして、国内業界においてもまた国際的にもトップクラスの競争力を目指して経営力を強化するとともに、企業の社会性、公益性にも留意しつつ、国内業界においてもまた国際的にもトップクラスの労働条件と労働環境を目指し、長期的な計画に基づいてその実現を図るというふうに私どもの考えを述べているわけでございます。  今の御質問のお言葉をもってすれば、国内業界、他の業界との格差をどうするのかというようなこともこれに入っておりますし、国際的な格差の問題もそれに考えは入っているわけでございます。ただ、前提といたしまして、やはり競争力をつけて経営力を強化する。今の先生のお言葉をもってすれば、うんともうけてうんと払うというようなこともそれは考えるわけでございますけれども、一にも二にも経営力をつけるということが大事ではないだろうかと私は思っておるわけでございます。ただ、こういった賃金制度というのは、私ども会社、三十五年の長年のいろいろなお話し合いの中で培われたものでございますけれども、この際、こういったものもよく見直して、新しい時代に即応した賃金体系というものを考えなければいけない、その際には他社との格差というものも十分吟味しなければいけない、かように考えておりまして、順次賃金制度の改正ということに取り組んでいるわけで、これらについて、各組合の御意見等もお聞きして進めていきたい、かように考えているわけでございます。
  46. 新盛辰雄

    新盛委員 労働省、勤務時間の関係でちょっと漏れておりましたが、勤務内容について、勤務条件でありますが、どういうようになっていますか。
  47. 奥津照嗣

    ○奥津説明員 航空三社の労働時間の実態について申し上げます。  必ずしも詳細を承知しておるわけではございませんけれども、一月平均の労働時間で申し上げますと、日本航空につきましては、地上勤務員は百六十七・三時間、客室乗務員は百三十三二時間、運航乗務員は百四十二時間。それから全日空について申し上げますと、地上勤務員は百五十一・五時間、客室乗務員は百二十四・九時間、運航乗務員は百二十七・七時間。それから東亜国内航空について申し上げますと、これは乗務員の一月平均のフライト時間になりますが、客室乗務員で五十六・四時間、機長で五十二・三時間、副操縦士で五十三・五時間というように承知しております。
  48. 新盛辰雄

    新盛委員 勤務時間の面では、今時間短縮という問題で政府が積極的にお取り組みになっているわけで、公務員の場合でも土曜も休まなければならないだろうという議論もございます。各種のそうした休みにだんだん前向きに取り組んでいただいているわけですけれども、今お聞きしますと、航空三社の中で日航の勤務時間は比較的長いのです。やはりこれは労使の問題です。だから、こうした勤務条件について改善をしていく、そして当然そこによってくる要員増というのも出てくるわけでありますから、そうした問題を積極的に話し合ってほしい。これは新しい労働環境を形成する意味で、お互いに理解と納得をしていかなければならないわけでありますから、その面どうお考えですか。
  49. 山地進

    山地参考人 今の労働省のお話は初めて伺いまして、もしそれがそのとおりであるとすれば、労働時間について日本航空が他社に比べて長いと感じるわけでございますが、いずれにいたしましても、勤務条件については組合の御意見も十分聞きながらお話を進めていかなければいけないと思います。
  50. 新盛辰雄

    新盛委員 フライトする乗務員の定数の問題ですけれども国際線に運航要員として六名、客室二十名というのを一定の枠としますと、外国の例えばユナイテッドとかいうのは同じ航路なのに数が非常に少ないというのがよく比較データで出るのです。これは肉体的な諸条件も違うのですけれども、時差に対する対応性が外国人は非常にいい。そういう面のサービスを高めていくために要員配置をより適切に日本の場合考えておられる、そう私は思っています。だけれども国際線乗り入れで、日本の企業と他の外国との比較で日本の方は大変たくさん乗せているじゃないか、これは数が多過ぎるよというのですぐそのとおりだと言って直してしまえば、これは数がまたずっと減るからいいじゃないかという、スリム化されることになるのだが、私はそうはいかないと思うのです。それはやはり体質の問題もありますから、その辺の比較検討に余り偏らないで、また企業間の問題ですから、他社のレベルにどういうふうに公正に近づけていくかということも含めて、これからの労働条件、勤務条件あるいは賃金その他を含めてぜひひとつ御配慮をいただきたいと思います。これは要望です。  続いて、民営化後の赤字路線の運営は一体どうなるだろうか。民営化はみずからそろばんをはじくわけでありますから、最優秀路線というのはもう積極的に各社が乗り込んできますけれども、不採算線区になりますと、これは赤字路線、いわゆる長距離の皆さん方には廃止されますと非常に不便をもたらすわけでありますが、過疎地の対策は具体的にどうされるのでしょうか。
  51. 山田隆英

    山田(隆)政府委員 ただいま赤字路線の運営の問題と過疎地における路線の運営の問題というお話があったかと存じます。  まず、過疎地の路線運営につきましては、現在、日本航空はほとんど実施しておりませんで、国内では中小の航空企業が運営しているところでございます。これについての考え方は、昨年六月の運輸政策審議会答申の中にも「地域住民の足として生活上必要な離島路線については、不採算であっても運航を維持することが求められている。このため、これら中小航空企業については、生活上必要な離島路線の維持を可能とするよう、採算路線の運営について配慮するとともに、経営基盤の強化に資するような路線展開については、企業の性格と能力に応じ、これを認めることが適当である。」と述べられておるところでございます。私ども、今後このような生活上不可欠な過疎路線あるいは離島路線につきましては、この答申趣旨にのっとって取り扱いを行ってまいりたいと思います。  また、日本航空赤字路線の場合でございますが、これは主として国際路線にそのような路線があるかと存じます。このような赤字路線の取り扱いといいますのは、基本的には企業経営判断の問題と考えられるわけでございますけれども日本航空と申しますのは我が国航空事業の先発企業としての立場を自覚し、また、これまでの日本航空の成長というものが国からの種々の支援によるということにも留意し、事業活動のあらゆる面で社会的責任を十分に果たしていかれることを私どもとしては期待しておるところでございます。     〔委員長退席、関谷委員長代理着席〕
  52. 新盛辰雄

    新盛委員 先ほどお答えがなかったのですが、また国際線に戻って申しわけありませんが、日米航空協定の不平等性について、これは一体これからどうされるか。これは当然運輸省としてもこれからの国際競争に打ちかっていくためには考えを置かなければならない問題ですから、お答えいただきたいと思うのです。
  53. 山田隆英

    山田(隆)政府委員 日米航空関係の問題につきましては、これは運輸省の所管から申しますと国際運輸・観光局の所管でございますが、私どもも同時に十分関心を持っておりますので、私の方からその面についての考え方を申し上げますと、日米航空協定は戦後間もない時期に協定が制定されたわけでございます。その際の国力その他の事情を反映いたしまして、路線の問題、以遠権の問題あるいは輸送力の決め方の問題について我が国航空企業にとって不利な状況にあったわけでございますけれども、その後長年の間、政府といたしましては、このような不平等のある日米航空協定の改定について努力を行ってきたところでございます。現在も日米航空協定の包括的な改定の交渉が行われておるわけでございますけれども政府といたしましては、今後とも、日米航空協定の不均衡の是正を目指しまして粘り強く交渉を続けてまいる所存でございます。
  54. 新盛辰雄

    新盛委員 最後の方になりましたが、日航株式政府保有分三四・五%の放出方針並びにこれからの民営化に伴う政府の規制監督の変化が生ずるわけですけれども、そういう諸問題について触れさせていただきます。  先ほどもドル先物買いの問題が出ました。資金をどうするかという問題は非常に関心の多いところであります。大蔵省来ていらっしゃると思うのですが、六十一年度三百八十四億を民間銀行から日航は借り入れしておられまして、政府保証つきの借り入れは五十億くらいあると思うのですけれども、これはどうされるのか。今の日航が株は放出する、そして完全に民営化される。これまでの借り入れ、社債、いろいろなものをこれから始末しなければならないわけですね。これは一体どういうふうなやり方をされるのかということでお聞きをしているわけであります。
  55. 田谷廣明

    ○田谷説明員 ただいまお尋ねの点でございますが、日本航空が既に借りております債務につきましては、ただいま御提案申し上げております日本航空株式会社法廃止する等の法律案の附則によりまして、その効力が継続いたしますように所要の経過措置を定めているところでございます。  それから、民営化後の新しい借入金につきましては、当然ながら民営化趣旨に沿いまして日本航空が自力で資金調達を行っていく、したがいまして、その借り入れにつきまして政府保証を付するということは考えておりません。
  56. 新盛辰雄

    新盛委員 政府が保証することは考えていないのでしょうけれども、これから先のことはそれでいいのですが、これまでの問題で既に借り入れがあるわけですから、そういうことについてはもう完全民営化された新会社がすべて責任を持ってやるということですか。
  57. 田谷廣明

    ○田谷説明員 先ほど御答弁申し上げましたように、既に借り入れております債務につきましては、政府保証の効力がなお継続し得るように所要の経過措置を定めているところでございます。
  58. 新盛辰雄

    新盛委員 どうも大蔵省の答弁らしいのですけれども、結局、政府保証つきの借り入れは五十億ぐらいになっているのでしょう。それはどうするというのですか。
  59. 山田隆英

    山田(隆)政府委員 これまで日本航空政府保証で借り入れている金額については、ただいま大蔵省の方から御答弁がございましたように政府の債務保証が続くわけでございます。それから、その返済につきましては、それぞれ借り入れの際の契約に従って返済が行われるということで、完全民営化後もその借り入れの残高というものは契約の期間終了までは存続するということでございまして、それではその間の監督をどういうふうにするかということでございますが、私どもといたしましては、完全民営化後の日本航空につきましては、日航法による監督というものは予定しておりませんけれども航空法に基づき事業監督というものを適切に行っていく所存でございます。  なお、政府が債務保証を行っている法人につきましては、会計検査院の任意検査の対象にはなっておりまして、会計検査院が必要に応じて検査し得るというふうに理解しております。
  60. 新盛辰雄

    新盛委員 この株を放出されるのですが、どういう方針で放出されるのか。大蔵省所管の四千八百万株近いものがありますね。これは額面は五百円であります。しかし現実は、御承知のようにもう一万二千円か一万三千円ぐらいになっているだろう。ところが、実質価格は七千円くらいで計算をしておられる。売却益三千五百億。この辺の取り扱いについて、その方針はどういうふうに考えておられるのか、お答えいただきたいと思います。
  61. 田谷廣明

    ○田谷説明員 お答えいたします。  ただいまお尋ねの日本航空株のいわゆる売却益でございますが、今年度の予算におきましては、処分収入総額を三千六百十七億円、うち一般会計二百八十三億円、産投特会三千三百三十四億円と見込んでいるところでございます。このうち、産投特会分の経費控除後の売却益三千二百六十二億円につきましては、関西国際空港株式会社の出資六百二十二億円及び一般会計の繰り入れ二千六百四十億円を見込んでいるところでございます。  ただいまお尋ねの点は、先生指摘ございましたように、昨今の日本航空の株価からしまして、当初予算で見込んだ以上に売却益が生じるのではないかというお尋ねではないかと思いますけれども、私ども株式売却益につきましては、市場の動向等によりまして大きく変動することが想定されておりますので、現段階におきまして、予算で見込んだ以上の売却益が生ずるといったようなことを申し上げるのは差し控えさせていただきたいと思っております。
  62. 新盛辰雄

    新盛委員 この問題はまた同僚議員の方から議論があると思いますから抜きにしまして、これで民営化されて、特殊法人では政治資金規正法は適用されていないわけでありますが、今度民営化されると政治資金規制が行われるわけです。それで、この規制が今度は新会社へも影響してくるわけですが、民営化される中のこういう航空券の取り扱いとか、これまでいろいろ言われている問題があるのですが、この点についてどういうふうになるのか。政治資金規制の問題は、公正な運営をしていく面で、これからの新しい経営をしていくためにはどういうふうにするかという問題があるわけでありますから、その辺のところをお聞かせをいただいて、私の質問を終わります。
  63. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 これは確かに委員が御指摘のように、特殊法人でなくなった日本航空株式会社に対しては従来とは違った対応が出てくるわけでありますけれども、私は、それは政治資金規正法の趣旨を踏まえて日本航空そのものが適切に判断をされると思っております。
  64. 新盛辰雄

    新盛委員 終わります。
  65. 関谷勝嗣

    関谷委員長代理 井上一成君。
  66. 井上一成

    井上(一)委員 私は、審議に先立って、二年前に御巣鷹山の山中に墜落をしたあの犠牲者の御冥福を心からお祈り申し上げます。同時に、私の友人、知人をその中に持った私としては、日航の、再びこのような事故を繰り返さないというそのような強い願いと、さらにはそれに対するあらゆる角度からの体質の問題について若干の質問をしていきたい、こういうふうに思います。  運輸大臣、あの事故によって政府日航に対してどのような対応、対処をされたのですか。     〔関谷委員長代理退席、委員長着席〕
  67. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 質問を始められるに当たって追悼の言葉から述べられた井上委員のお気持ちは私にもよく理解のできることであります。私自身が非常に親しい友人をあの事故で三名失いました。そして運輸大臣として私が初めて公式の行事に出席をしたのが、昨年行われました現地における追悼式であったことも事実であります。それだけに、今の御質問に対しては大変複雑な思いのあることでございます。  今御指摘になりましたように、この事故が発生いたしまして以来、運輸省としては、日本航空に対しまして同種の事故の再発を防止する観点から業務改善勧告、また運航及び整備体制の充実強化等の指導を行ってまいりました。日本航空は、今後このような事故を二度と起こさないようにという視点で、機材の整備点検の徹底、また定期訓練等種々の教育訓練の場におきまして乗員の安全性に対する意識の高揚を図るなど、全社一丸となっての安全対策を実施しているところでございます。この方針は、民営化後も何ら変更のないものと私は信じておりまずし、今後、日本航空の安全対策が遺漏なく実施されるように、運輸省としても指導監督を行ってまいりたいと考えております。
  68. 井上一成

    井上(一)委員 私は、あの事故によって日航経営陣の一新ということがなされたと思います。そうじゃないのでしょうか。安全対策のために経営陣を一新したのではないんですか。
  69. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 ああした事故のありました中において、その反省を踏まえ人心を一新し、企業としての信頼を国民から再び与えられるためにも経営陣の一新が行われたと承知をいたしております。
  70. 井上一成

    井上(一)委員 私は、安全のファクターというのでしょうか、幾つかの要素があると思うんです、安全運航のために。先ほど機材の整備、さらには訓練のさらなる教育と申されましたが、やはりもう一点、一番ポイントに、ベースに置かなければいけないものをお忘れではないでしょうか。
  71. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 社員が一丸となって事故を反省し、再びこうした事故を起こすまいという決意を持つということは当然のことでありまして、この点についてはあえて申し上げる必要もないかと考えておりましたが、意識の改革というものが必要であることは当然であります。
  72. 井上一成

    井上(一)委員 まさに、言葉の選択は別にして、親方日の丸だ、そういう表現が往々にして使われるわけで、そういうことを含めて意識の変革。そういう中で伊藤会長なり山地社長が誕生したと私は思うのです。そのことは私と同じ認識に立たれますか。
  73. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 私もそのように理解をいたしております。
  74. 井上一成

    井上(一)委員 さらに、いわゆる経営陣、伊藤会長なり山地社長、とりわけ今回はそのトップである会長に対しての信頼ということは、全面的に政府としても持たれておったわけでしょう。
  75. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 巷間さまざまなことが言われておることも承知をいたしておりますが、私自身、最後の土壇場まで伊藤会長の辞意を撤回していただきたいというお願いをし続けたことで御理解をいただきたいと思います。
  76. 井上一成

    井上(一)委員 伊藤会長がなぜ辞任を申し出たのか。それはどういうふうに認識されておりますか。
  77. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 これは人の心のことでありますから、私自身もどうこう申し上げられることではございません。ただ、昨年の十一月の末でありましたか十二月の初めでありましたか、正確な日時は忘れましたけれども、非公式な形でお日にかかりまして、ちょうど就任以来一年たって自分としても一応の役割を果たしたと考えておるので、この一周年を機に引かせてもらいたいというお申し越しがありましたときには、特別な理由として何かにというお話はございませんでした。  そしてその時点で、辞意の撤回、まあ撤回と申し上げるよりも、非公式に述べられたことでありますから、そのまま会長職を続けていただきたいというお願いをいたしました際に、社内が一丸となって取り組んでいけるようにしてもらいたい、そういう意向が運輸省にあることも正式に表明してもらいたいというお話がございまして、これは会長とお話をしておりましたことでありますから、それでは改めて社長、副社長にも御同席を願って、今後なお職務に精励していただきたいということを申し上げましょう。そうしたことから、運輸省大臣室に会長社長、副社長におそろいでお越しをいただきまして、今後ともに全力を尽くして民営化に向けて努力をしてもらいたいということを私は申し上げております。
  78. 井上一成

    井上(一)委員 今のお話では、いわゆる社員、会長以下、もちろん経営陣あるいはそこで働いていらっしゃる方すべてが一丸となって日本航空安全運航のための環境づくりをしていこう、こういうことのお話だと私は思うのです。社長、副社長大臣室に呼ばなければいけないほど亀裂があったのでしょうか。さらには、何かそこに問題点があったのでしょうか。
  79. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 私は問題点があったとは考えておりません。ただ、私が会長どこれは非公式にお話をしたことでありましたので、それを改めて公式にわかるように話してもらいたい、世間にわかるように話してもらいたいというお話でありましたから、それならば社長さん、副社長さんにも一緒に来ていただいてお話をいたしましょう、そうしてその際には、それこそマスコミの皆さんに一も、三人来ていただいて、お目にかかる場面を見ていただきましょう。いわばオープンの形でその話を見ていただいたということであります。
  80. 井上一成

    井上(一)委員 私は、やはりここは肝心なところだと思うのですね。日航体質改善のために伊藤会長なり山地社長が招聘された。そしてそのトップ、経営陣にすべて政府としても信任を与えてというか、信任をして協力をするという約束、約束があったかどうかわかりませんが、そういう姿勢で取り組まれたと思うのです。しかし、一年してもうそれが軌道に乗った、今の大臣お答えてあれば、何か伊藤会長が非公式で、そういう認識であったように受けとめたのですが、私は、それなら社長、副社長同席で一致協力という話も必要ない。そして今日巷間いろいろとうわさされるようなそういうことも起こり得ない。経営陣の意思の統一がそこになかった、あるいは何か問題があって経営陣がむしろ離れた、私はこういうふうに理解をするのです。そのときに、ひょっとして運輸省なりあるいは関連する人たちの約束事が、書いたものでないとしてもあったとしたら、ひとつ聞かせてほしい。同時に、一年間の伊藤会長あるいは日航の新経営陣が体質改善のために取り組んできたことは政府は逐一、大まかな重要な点は承知していたのかどうか、そのこともあわせて聞いておきたい。
  81. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 私は、伊藤会長が選任をされ、その職につかれました時点において政府との間に何らかの約束が、文章であったかなかったかは別として、あったとかなかったとかという引き継ぎは受けておりません。  また、委員がそこまでのお尋ねでありましたので申し上げますと、そのお三方にお越しをいただきました時点というのは、予算編成のちょうど内示の直前に近い時期でもございました。そしてその時点におきましては、日本航空株式の売却というものが財政当局と運輸省との間の一つの論議のポイントでもありました。これは現在御審議をいただいております日航完全民営化のための法律を国会に提出いたすにつきましても、株式の処分をどうするかという問題、その売却を一時に行うのかあるいは二回、三回に分けて行うのか、またその売却益はどう使われるのか等々の論議を含んでおりました。しかし、その場合におきましても、やはり売却をするという方針を決める以上は、復配への努力をしてもらわなければ困るという論議が財政当局との間にもございました。そして伊藤会長とお目にかかりました際にも、その問題は論議をいたしておりました。そしてお三方にお越しをいただきました時点で、私は、一日も早くきちんと配当のできる会社にしていただきたいというお願いも申し上げたことを記憶いたしております。  私は、今委員の御指摘にありましたようなさまざまな話が世間に流れており、また今日も流れておることは承知をいたしておりますけれども、少なくとも日本航空の問題についてお任せをいただきましてから、日本航空経営陣に対して不信感を持たなければならないような事態はございませんでしたし、伊藤前会長御自身にお確かめいただいても結構でありますけれども、最後の最後まで、私は辞任の意思を翻していただきたいというお願いを申し続けた、それだけの信頼感を持っておったということを申し添えます。
  82. 井上一成

    井上(一)委員 運輸大臣は、辞意をかたくされている伊藤会長に対してあなたなりの留任を求めだということですが、なぜ辞意を固めなければならなかったか、そういう状況をどう把握されているのか。むしろそれは、一緒にやろう、力を合わせてやろうといった意思が壊れたのではないか、何がそういうことを壊したか。やはりそこまで掘り下げていかなければこの問題は——民営化を願って、そして体質改善をしてすっきりとした中で国民の信頼を得ていく、そういう航空会社になってほしいと私は思っているわけです。だから、抽象論ではない認識と、具体的な事実で私は尋ねていきたい。だから、安全をより確立するために伊藤さんなり山地さんが来られた、これは間違いないわけです。一年で会長の伊藤さんがおやめになる、何てだろうか、不思議であるということなら、もっともっと深く子細を運輸大臣としては私は調べてほしかったし、聞いてほしかった。それは別にしても、これから努力して民営化に踏み切るのだ、そういうこれからの意思を求める前に、今までのことについてしっかりと事実を明らかにしていかなければいけない。  もう一度、伊藤会長の辞意がかたかった背景、原因を、運輸大臣は今それが何であるかということについてどういう認識を持っていらっしゃるのですか。
  83. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 伊藤会長当時、非常にしばしばお目にもかかり、お話も伺い、公式にも非公式にも御相談を受け、私なりの意見も申し上げてまいりましたけれども、私は必ずしもそのときのお話を逐一御報告申し上げることが望ましいことだとは考えておりません。  ただ、これだけは私は申し上げておきたいと思いますのは、伊藤会長は伊藤会長として自分の一番よいと思われる方向に努力をされた、必ずしも世間はそれをそのとおりには評価しなかった、そうした中で張り詰めていたものが崩れていかれた部分もそれはおありだっただろうと思います。そうした中で、一たん撤回をされた辞意というものを、日航廃止のこの法律が閣議決定をされます前後になりまして再び大変強い辞意として表明をされ、最終的には私もやむを得ませんというお返事を申し上げざるを得なかった、その程度で御了解をいただきたいと思います。
  84. 井上一成

    井上(一)委員 世間が認めるとか認めない、評価をするとかしないということは、むしろ私は、日航体質がどれだけ変わったかということにおいて評価をすべきであると思うのです。それは即世の中が認めてくれる。  伊藤会長経営陣に参加されてから、安全確保のために費やされたその情熱というのでしょうか、取り組まれた経営者としての、経営陣としての、もちろん社員の協力の中で確立に向けて進んだと認識をされていますか。
  85. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 私が拝聴いたしました限りにおきましても、伊藤会長日本航空の機材を利用して旅行される際に常に乗員との間に対話を絶やさず、その中で得てこられた乗員の声というものを社業の上に生かそうとして努力をされたということは、私は評価をいたしたいと存じます。また機つき整備士制度の創設等につきましても、私はその功罪は現時点においてはなお分明ではありませんけれども、しかし私は、やはり非常にすぐれた着想であったと考えておりますし、その功績は高く評価したいと思います。
  86. 井上一成

    井上(一)委員 具体的にそういう事例を挙げて評価をされたということは、説得力もありますし、事実です。私は、やはりコミュニケーション、平和というのは常に話し合いを始めることからですからね、意見の違いは別として、考えの違いはあったとしても、コミュニケーションを持つということは大事なことだと思うのです。伊藤会長が率先をされたということについて今評価をされたわけです。伊藤会長がやめられてからはそのペースはどうなんでしょうか。あるいは実態はどうなんでしょうか。そして安全の確立のためにどれほどの評価を大臣はされますか。
  87. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 私は、その伊藤会長時代の路線が伊藤会長を失った後の日本航空において失われたとは思っておりません。そして何よりも現在大きく私どもとして考えなければなりませんことは、しばらく前に一二三便の事故調査報告が正式に提出され、この中から我々は建議と勧告を受けました。そしてこれを運輸省としては、日本航空を初め他の航空会社においても守っていただかなければ、考えていただかなければならぬ部分も含んでおるわけでありますから、こうしたことに全力を挙げてまいりたいと考えております。
  88. 井上一成

    井上(一)委員 一点、運輸大臣、伊藤会長を失ったとは思っていない。私は、実際問題として今日ほど日航が混乱状況にあるということはだれの目にもはっきりと映るわけなんです。強いて伊藤会長時代にこういう混乱があったのだろうか。労使関係とか、労働組合の中の内部の問題については介入もしないし、私個人は意見を申し上げない。予算委員会でも申し上げましたように、民営化に向けてソフトにテークオフしたい、そのためにどうすべきかという具体的な問題と、やはりベースをきっちりしておかなければいけないということなんです。それはやはり今日までむしろ政府責任が大きいと私は思うのですよ。  監査報告だって、予算委員会で私がそういうことは知っているのかと言ったって、聞いてはおりませんと言ったでしょう、大臣が。そんな状況で、いわば特殊法人の性格の云々なんかも別にしましょう。今まさに何が日航に問われているか、さらに行政というものはどうあるべきなのか、そんなことを考えたら、伊藤会長のやられてきた評価と、さらにはそれ以後における日航の混乱ぶりは、まさに民営化に向けての大変大きな損失である、私はそう思っているわけです、受けとめているわけなんです。ここらはやはりしっかりしておかないと。  大臣、人間のことですから、すべてがパーフェクトであるということは申し上げません、私を含めて至らない。伊藤さんは至らない人だという意味じゃないですけれども。だから、運輸省にもいろいろのセクションがあって、しかしむしろ私は、伊藤会長がやめられたときには、運輸省あるいは伊藤会長と一緒に日航体質改善に取り組んだ人たち責任というのはやはり共同でなければいけないし、一体でなければいけないし、さらにはその上に運輸省としての責任をもう少し明確にしておかなければいけない。伊藤会長がやめられた後と在任中との評価はどうなんでしょう。
  89. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 私自身の不勉強についてはおわびを申し上げます。確かに、予算委員会で認めたとおり、私は監査報告を読んでおりませんでした。ただし、それは運輸省の事務当局がそれを知らなかったということとは別であるということはまず申し上げておきたいと存じます。  と同時に、これは多少時間をちょうだいをしたいと思いますけれども、今委員が大変大切な部分にお触れになりましたので、私は一点聞いていただきたいことがございます。伊藤会長辞任の意向を明らかにされましたとき、それ以来、私は執拗に伊藤会長を説得し続けました。そして最後の最後まで、何とかとどまっていただきたいと考えました。  この中には御承知の方もありますけれども、私の父親もかつて国会議員であり、そして占領下の吉田内閣の閣僚でありました。ある問題で財政当局との間に意見を異にし、総理の裁断を求め、当時の吉田総理の裁断が財政当局に上がったことを不満として、私の父親は閣僚を辞任いたしました。私は子供としてその父親を誇りにいたしております。しかし同時に、その辞任をした結果というものが、私の父親が求めた行政の前進に役立ったかといえば、役立ちませんでした。  私は、責任のとり方というものにはさまざまな姿があるとそれ以来考えております。やめることも一つ責任のとり方であります。しかし、残ってその後を背負っていく責任というものも極めて重いものであります。そして伊藤会長辞任という方途を選ばれました。ちょうどお三方が同時に選ばれたということで、山地さん、利光さんにも同時に責任をとらせてやめさせるべきだという御論議もございました。また山地さん、利光さんからは、その進退は運輸大臣の任命にかかるものであるから、あなたの判断に従うという意思の表明もありました。そして私は、その時点において、残ってこれから先の改革を仕上げてもらうことを彼らに求めました。  私の申し上げたいことは以上であります。
  90. 井上一成

    井上(一)委員 伊藤さんがやめられたということについて、大臣のお父さんの例を出されました。責任のとり方というのはいろいろある、確かにそうです。伊藤会長が改革を求めて、体質改善を求めて取り組んできた。そしてそれが、私もその真意は十分聞いておりませんし、那辺にあるかということはここで推測以外には申し上げられない。しかし、どうもそういうことについてすべての協力体制があったのかないのか、これは大きな疑問なんですけれども、しかし、それもおいておきましょう。  辞任をされたお父さんに、あっぱれである、誇りを持つんだということを今大臣は言われた。だから、伊藤さんを評価をするならば、この辞任は誇りを持った辞任である、立派である、しかし、これからの民営化に向けては、その辞任は必ずしも功を奏さなかったのだ、そういうふうに受けとめてよろしいですか。
  91. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 それが役立つか役立たないかは、社長以下日航全職員の今後の心の持ち方の問題だと私は思っております。
  92. 井上一成

    井上(一)委員 まさに私はその点だと思います。  それではお聞きをしましょう。伊藤会長指摘したことを、後の人たちはすべて世間にあるいは運輸省に明らかにされましたか。運輸大臣、先ほどの監査報告、事務レベルでは知って、運輸大臣は知らないんだということ、それは了としましょう。しかし本当は了としたくはないんだけれども運輸省の役人というのは大臣に対して報告の義務に近いものをしなかった。では、あとの問題は、伊藤会長指摘をされたそういう点については、大臣は十分御承知なんでしょうか。
  93. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 先日御指摘がありましてから私は、事務方の諸君の話を聞いてきた中身を調べてみました。ですから、これは一つの例として委員も御提示になりましたので例としてお答えを申し上げますならば、確かに、長期為替予約につきまして監査役方々から反対の意見があったということは確認をいたしましたが、同時に、最終的には監査役も納得をされ、稟議書にもサインをされておるという事実も出てまいりました。運輸省の事務方の諸君とすれば、最終的な稟議書へのサインがあり、その途中のプロセスのことまで大臣報告する必要はないと判断をしたと私は思います。私は、それがいかぬとは事務方にはとても言えません。私はアマチュアでありますから、専門家として最終の結論が稟議書へのサインという形で確認をされておるものについて、プロセスは報告をしなかった、これは事務方を責めないでいただきたいと思います。またほかにもあるいはそうした事例はあるのかもしれませんが、これは私もすべてを知り尽くしていると申し上げる自信はございません。
  94. 井上一成

    井上(一)委員 今プロセスの問題だということですが、しかし、片面では二年で復配という大きな目標があったわけでしょう。そういう目標を持ちながら、内部においてむだな、いわば危険な経営体質がそこに存在したとしたら、これは大変なことですよ。そういうことをそのままにしておくことが今の日航体質を変えることに役立っていくのか。僕は、役立たない、体質改善にはつながりませんよと、機材購入についても具体的に申し上げました。  やはり具体的な問題について具体的にどう対応していくか、対処していくか、そういうことでないと、一つ一つ積み上げていかないと問題の処理にならないと思うのですよ。しっかりやります、頑張りますと。ではどういう方法で、あるいは今までどういうことをしてきたんだ。私の認識では、伊藤会長がいらっしゃるときにはストもやらなかった、こんなに混乱はなかった。伊藤会長がやめて、なぜこんなに混乱が起こるのだろうか。このままで日航安全運航が保証できると運輸大臣はお考えなんですか。予算委員会でも申し上げたように、日航の安全度は、全日空と比較しあるいは世界的に比較していかに低いかということを私は数字をもって申し上げたわけです。再び八月十二日を繰り返さない、そういう強い願い、決意を込めて私は質問をしているのです。大臣、今の日航体質はどうなんですか。伊藤会長がやめられてからの混乱ぶりをどう認識されますか。
  95. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 私は、労使間の問題について容喙をいたしたいと思いません。そして労使間において決着のつかない問題に対しての労働組合としての対応手法の中にストライキがあることも事実であり、その権利を行使された組合があることも存じております。しかし、労使双方に申し上げたいことは、本当に不毛の論議を交わしていることがいかに国民から日本航空というものに対する信頼を奪っているかということを真剣に考えていただきたい、そして今日まで我が国民間航空のいわば先達として行動してきた日本航空が名実ともに信頼を回復するための努力をしてもらいたい、内輪もめをしているときではなかろう、言いたいことを申し上げればそのとおりです。
  96. 井上一成

    井上(一)委員 内輪もめをすべきでないし、今の日航にはそういう余裕がないと私も思っているのですよ。だけれども私は、問題点は一つずつ、うみを出すべきという表現がいいのか、直していくという表現がいいのか、やはり正していかなければいけない、こういうふうに思うのです。  私は限られた時間ですべて申し上げることはできませんし、午後またわずかな時間があるわけですが、私が指摘をしたドルの先物買いもそうですけれども、例えば具体的に、航空機の機材購入についてもどれほどの損失をこうむっているか。これは私自身が予算委員会でも一方的に申し上げたわけです。JAの八一七九、去年契約のその契約金についても問題はありますよ。しかし、具体的にこの購入機について日航自身はどれだけの損失を受けたか。私自身はこのときに、帳簿価格あるいは実勢レート、そういう形の中で二十八億円の損失をしている、こういう具体的なことを申し上げたのです。これは運輸省に聞いておきたいのです。数字は私なりの試算でありますが、契約時、受領時、そして値切り分、それぞれレートが違うし、キックバックの金がいわば低い円高の額で受けているわけです。運輸省はそういう事実があるということを承知していらっしゃいますか。
  97. 山田隆英

    山田(隆)政府委員 航空機の購入の際にキックバックが行われているかどうかということでございますけれども、私ども承知しておりますのは、日本航空はボーイング社からの航空機購入に際してクレジットメモという形で値引きを得ているというふうに聞いております。このクレジットメモといいますのは、ボーイング社に対してのみ使用できるいわば商品券のようなものでございまして、現金化はできないわけでございますけれども、購入航空機の値引きあるいはボーイング社の部品の購入等に使用し得るものであるというふうに聞いております。
  98. 井上一成

    井上(一)委員 時間がありません。あとは午後にしますが、航空機購入について、さらにはドルの先物買い、このことについては多くの疑惑がある、私はそう受けとめます。経営判断の問題だと運輸省は言うでしょう。同僚議員の質問でそういう答弁が返っているわけです。経営判断の問題であり、経営判断が誤りであったとしたら、責任の問題が生まれてくる。私は、会計検査院に、この問題について踏み込んだ検査をする意思があるのかないのか、ここで聞いておきたいと思います。
  99. 関本匡邦

    ○関本会計検査院説明員 お答え申し上げます。  為替予約につきましては、事柄が事柄だけに判断する上で種々困難な点も生ずると思われますが、九月に予定しております日本航空本社に対する会計実地検査の際に十分調査検討してまいりたいと思っております。
  100. 井上一成

    井上(一)委員 これは運輸大臣にはお答えをいただけないかもわかりませんが、今申し上げた為替差損あるいはもうかるためにヘッジ、いわゆるリスクを何とか最小限に食いとめるためにという思惑で取り組んだんだというお答えなんですよ、ずっと。それは、経営判断とすれば今申し上げたように責任が必ず裏側にあるわけですから。会計処理上本来ならいわば為替差損、為替差益、営業外収益だと私は思うのです。そういうふうに思われませんか。いかがでしょうか。
  101. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 私は会計法上は双方の道があり得ると思っております。
  102. 井上一成

    井上(一)委員 では、双方というのはどういう道なんですか。——いやいや、これは運輸大臣。私は、専門的なものは後で聞きます。だから大臣に。
  103. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 航空機の購入代金の清算の時点においてこれを処理していくという手法もあり得ると思っております。
  104. 井上一成

    井上(一)委員 法に反するとか反しないとかは、私自身もそれはまだわかりませんが、本来は営業外の収益。航空機の購入ということになると、それはどこに入るのでしょうか。これは資産勘定に入るわけです。それはやはり運賃にはね返ってくるし、資産償却ですね、さらには保険料、そんなことで復配なんてこと考えられますか。健全な運営なんていうこと考えられますか。おっしゃっていることとやっていることとが違うじゃないか、私はそこをやはり明らかにしたい。だから、二年目に復配だなんておっしゃっているけれども日航の本体それ自身のやっていることはめちゃくちゃなんですよということ。確かに方法は二つあるでしょう。しかし、それじゃどういう勘定科目に入れてどういう取り扱いをしているのか、私の午後の質問で答えてください。よろしいですね。きょうは五十分までということですから、時間を厳守します。
  105. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 私は会計学はCを食らいまして、細かい費目については存じませんので、事務方から答弁をしてもらうということになろうと思います。  ただ、経営上の選択として、今委員が御指摘になりましたように、資産勘定に入れました場合に確かに諸々にはね返りが出るという問題がございます。私はこれは否定をいたしません。しかし、単年度の経理で消していく方法を求めるのか、あるいは長期にわたってそれを消していく方向で対応するのか、これはまさに経営判断の問題であろうと私は思っております。
  106. 鹿野道彦

    鹿野委員長 この際、休憩いたします。     午後零時五十分休憩      ————◇—————     午後二時四十分開議
  107. 鹿野道彦

    鹿野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。西中清君。
  108. 西中清

    西中委員 日本航空株式会社法廃止する等の法律案について若干の質問をいたします。  せんだって大臣から提案理由説明を伺いましたが、今回の日本航空完全民営化、これに当たって運輸省としてその意義をどういうようにお考えになっておるか、まず伺っておきたいと思います。     〔委員長退席、関谷委員長代理着席〕
  109. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 委員承知のように、日本航空は、戦後我が国が速やかに自主的な国際航空運送事業というものに取り組んでまいりますために特殊法人として設立されたものでございます。しかし、その後の航空輸送の大変著しい発展の中で、同社も含めまして航空企業基盤も強化されてまいりました。その結果、国際線国内線とも競争促進が可能となりまして、それによって利用者利便向上を図ることが適切な時代に参ったと私どもは考えております。そしてそのためには、企業間の競争条件均等化を急ぐ必要があると考えております。  また同時に、午前中の御論議の中でもさまざまな角度から取り上げられましたような、とかく親方日の丸意識というものが批判をされております日本航空体質を改善するためにも、完全民営化によりまして自主的かつ責任のある経営体制を確立することが適当であると考え、これらによりまして経営効率化、サービスの向上といったことについて期待を寄せております。現在、日本航空は、完全民営化に向けて中期計画の策定を初め各般の体制整備を図っておられるところでありまして、安全巡航を旨として経営改善のために全社一丸となって努力を続けております。こうした状態の中で一日も早く国会としての御意思をお示しをいただきますことにより、完全民営化の実が上がることを私は心から願っております。
  110. 西中清

    西中委員 日本航空の場合は既に株式が上場されておるわけでございます。特殊法人ではございますけれども、ある面でいうと自主的な運営も、すべてではございませんけれども保障されておるわけですね。今御説明によりますと、今後、競争条件も整ってきたので、利用者利便、それから経営効率化、さらには親方日の丸的体質を改善するのだ、こういうお話でございますけれども、これは裏返して言えば、現在の特殊法人ではできないことだという判断でございますか。いかがでございましょう。
  111. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 私は、特殊法人であるから例えば親方日の丸的な体質というものの改善ができないとは決して考えておりません。しかし、特殊法人はその存立の経緯から、もちろん民間企業には許されていない特権的な地位も与えられておるわけであります。逆にそれだけの義務を負うておる部分もございます。やはり公正な競争を実施していこうと考えますと、同じ線上に立たなければ公平な競争は成立をいたしません。現在、我が国航空企業全体の発展の中で、国際競争の場におきましてもまた国内におきましても、公平競争というものを実現し得る素地は十分に整った。そうなれば、特殊法人という経営形態から、完全に民営化された、いわば同じ立場に立っての競争を行っていくことの方が今後についてはより望ましい姿である、そのように考えております。
  112. 西中清

    西中委員 公正な競争という点では後でまたいろいろ議論をいたしたいと思いますが、いずれにしても、より一層国民の足としてサービスの向上を図っていただきたいし、とりわけまた一番重要な問題は安全性ということでございます。これから、仮にこの法案が成立いたしますと民営化になって、何といっても安全だ、安心して乗れる、こういう会社であっていただきたいわけでございますが、ともあれ、今日では世界一の航空会社、一般的にそう言われておるわけでございます。当然これにはさまざま国策として国の支援があったわけでございますけれども運輸省として、最大の航空会社になるまでになった大きな要因は何か、どういう分析をしておられるか、まず伺っておきたいと思います。
  113. 山田隆英

    山田(隆)政府委員 日本航空は、国際定期航空の分野におきましては有償トンキロで一九八二年以来世界一となっておるところでございます。戦後我が国民間航空が立ちおくれていた状況から今日の姿を見ますと、まさに隔世の感がある次第でございます。これはお説のとおり、日本航空が国策会社として設立されまして、財務であるとかあるいは事業運営などの多面にわたりまして国の支援があったということが大きく寄与しておるところでございます。国の日本航空に対する助成措置といたしましては、まず政府出資がございますが、そのほかに政府の保証債であるとか政府保証の借入金であるとか、あるいは現在はございませんが、以前は補助金の支出もございました。こういう数々の助成策が日本航空というものが今のような規模の航空会社になった一因であろうかと思います。同時にまた、日本航空自身の経営努力ももちろんあったことは言うまでもないことであろうかと思います。さらにまた、我が国の経済自体も非常に著しい伸展を遂げまして、国際化の進展であるとかあるいは技術革新等と相まって航空企業発展基盤が醸成されたということもこの一因ではなかろうかと思います。  いずれにいたしましても、最近におきましては、日航のみならず我が国航空企業全体が非常に目覚ましい発展を遂げてきておる状況でありまして、もはや日航のみを特殊法人として取り扱う必要はなくなったというふうに考えておる次第でございます。
  114. 西中清

    西中委員 諸条件が重なって、とりわけ、また国の庇護といいますか支援というものが大きな要素であり、同時にまた、会社の皆さん方もそれなりの努力をしてこられたと思いますが、ただ、大きくなったからといってすべてがいいわけではないのであって、現に同僚議員からも、先ほどからいわゆる親方日の丸的体質であるとか経営の姿勢であるとか等々につきまして、数々の問題が指摘をされておるわけでございます。一方、国際的にも航空自由化という流れは主流となっておりますが、そういった面を総合して考えると、私どもとしては、やはり日本航空完全民営化というものは必要なんだろうな、こう判断をせざるを得ないようなところでございますし、同時に、ある面でいうとひょっとしたら遅かったのではないかという気も持たないわけではございません。  したがって、今回この日航法を廃止して、三四%余りの政府の持ち株を売却する、こういうことだけで会社として健全な姿になるということは言えない、そういう甘いものではない、こういうように認識をいたしておりますが、私たち眺めておりまして、何といっても一番危惧を抱くのは労使の関係ではなかろうかと思います。先ほど議論もあったので、私もじっと考えておりましたけれども、一般の会社にしても団体にしても、やはり人間関係、また組合と使用者側、こういうものが乱れたりいろいろ問題が多いと、とかくそのことだけではなくて、運送事業としては安全という問題でございますけれども、その他製造会社においては製品のミスであるとか事業のいろいろなそごであるとかいうような問題が多々起こる傾向があるように思います。そういう点で、日航の労使関係、これに対しては現在、運輸大臣、そして山地社長、どういう御認識であり、今後どういうように対応していかれるか、まず伺っておきたいと存じます。
  115. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 企業相互の競争が激化している中におきまして完全民営化という道をたどることは、確かに、企業にとりましては厳しい状況に立たされるという面があることも否定できないと思います。しかし、そうした厳しい状況の中で労使ともに努力をし、全社一丸となって経営改善に努めていただくことが自主的かつ責任のある経営体制の確立、ひいては利用者サービスの向上につながり、国民の信頼を得て発展する企業になり得るその基礎を築くものだと私どもは考えております。  それで、午前中にもお答えを申し上げましたが、私自身民間企業におりまして、労働組合の経験もありますけれども、一社一労働組合という姿が望ましいものであることは言をまちませんが、現在のような複数組合が誕生してまいったにはそれなりの経緯があることも私ども承知をいたしております。要は、労使ともにそれぞれの責任を自覚され、安全というものを基本に置いた今後の企業経営の姿を考えていただくことにより、私は、今言われるような批判を世の中からなくすための努力をしていただきたいと願っております。
  116. 山地進

    山地参考人 労使関係の安定というのが、私ども日本航空にとりまして、航空輸送の絶対安全の確保と並びまして車の両輪であると私どもは心得ております。労使関係、私どもにとって六つの組合がある、それぞれ今大臣の御答弁のありましたようにいろいろと過去の歴史を抱えて六つあるわけでございますが、私どもといたしましては、労務方針というものを社員に提示いたしまして、経営としては組合一つであることは望ましいけれども、これは組合自身がお決めになることである、これは経営としては関与する問題ではないと心得ております。ただ、希望としては一つ組合になっていただきたいというようなことを申し上げてあるわけでございます。  また、この労務方針の中には、かいつまんで申し上げますと、労使が協力して生産性の向上に努め、その成果の適正配分について話し合いにより平和的に解決を図っていきたい、こういうようなことを申し述べておるわけでございまして、今後とも、六つの組合と分け隔てすることなくいろいろとお話し合いを進めていきたいと考えております。また、民営化ということを契機といたしまして、今大臣のお話で労使ともということがございましたけれども、私どもはもちろんのこと、組合としてもいろいろと民営化後の会社あり方、労使間のあり方についてお考えをいただけるものと期待しておるわけでございます。
  117. 西中清

    西中委員 率直に申し上げまして、去年国鉄の民営化、こういう大変な法案が通過をして現実に民営化しておるわけですが、あの国鉄にも組合もたくさんあったし、同時にまたさまざまな問題を抱えておった。そして今なお問題は残っているようですが、しかし、その経緯の中で今日の民営化に至るまでにまじめに一生懸命やろうという大勢の人たちの姿、息吹というものも率直に言って徐々に盛り上がってきたことを私は思い出しております。たまに私も飛行機に乗せていただくのですけれども、もう一つそういう雰囲気が今のところ見られないのじゃないかなという率直な私の感想でございます。そして今むしろ聞こえてくるのは社内の不協和音、こういうことでございまして、極めて残念だなというように思っておるのでございます。  もちろん、これは日航労使双方の問題ないしは労労の問題等もございますが、今日のこの姿に至るまでに、大株主であり経営首脳の人事にかかわってまいりました政府、この政府の立場、これもまた大きな責任があるというように私は判断をするわけでございます。もちろん、組合のことでございますから直接どうこうと言うことはできないのでしょうけれども、こういう経営が今日の姿になってしまったというところに運輸省としての、監督官庁としての責任は免れないだろう、こういうように思うのでございますけれども大臣の見解を伺っておきたいと思います。
  118. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 特殊法人として存立をしております日本航空、今委員が御指摘のような意味で、政府が全く責任がなかったと申し上げるつもりは私はございません。ただ、私から申し上げたいのは、現在、日航の労使関係につきまして、賃金あるいは労働条件などあるいは経営問題その他につきましていろいろ議論が行われておることは承知をいたしておりますけれども、このことが首脳人事に起因するものとは私は考えておりません。これは人事の問題とは全く異質の問題だと考えております。  私の立場からいたしまするなら、先刻来申し上げてまいりましたように、伊藤前会長が任期半ばで、いわば私が一生懸命にとどめようとする手を振り払った形で辞任をされたということは大変残念なことでありますけれども、現在、社長以下経営陣も全力を挙げて完全民営化に努力を続けておるさなかでありますし、今後日航の労使双方が信頼関係に基づく健全な労使関係をつくり上げてくれることを期待をいたしております。
  119. 西中清

    西中委員 先ほども私は触れましたけれども、乗客の安全というところで我々が一番ひっかかるのは、本当に会社が労使とも全社員が一致団結して、その一点にすべてを集中して運航業務に携わっておられるかどうかということだろうと思います。伊藤前会長の経緯については先ほど議論がございましたが、大臣にあれ以上の御答弁はいただけないだろうと思うので私もあえて申しませんけれども、しかしながら、社内の状況、これはお互いの信頼関係や意思の疎通という点でさらにもう一歩も二歩も三歩も御努力をいただく。会社は当然のことながら各組合ともそのつもりになっていただいて、そして本当に安心して乗れる日本航空に生まれ変わってもらいたい、こういう観点からお互いが信頼を持ち合おう、お互いが意思の疎通をし合おうというような基本的な姿勢で立ち上がっていただきたい、私はこういうふうに念願してやまないわけでございますけれども、再度山地社長さんに決意を伺っておきたいと思います。
  120. 山地進

    山地参考人 先ほど申し上げましたとおり、航空会社にとりまして安全と労使関係の安定、これが車の両輪でございます。  そこで私、六十二年度を迎えるに当たってということで六十二年の四月一日に社員に私の考えを申し上げたときに、我々航空会社の原点は安全であります、六十一年度はおかげさまで事故がなかったけれども、こういった状態を今後とも持続していきたいというようなことを申し上げましたし、さらに四月二十一日には、改めて安全についてということで、また社員の皆様に私の方の考えを申し上げまして、航空会社の命は安全運航である、一機ごとのフライトである、これが一番大事なんですよということを申し上げ、その後に運航の実施に当たっては機づき整備長等整備確認者がまず第一に物事を判断した方がいいです、それから二番目に各部門の担当者がまた安全問題についてチェックしてください、三番目に最後は機長というものが最終的に安全というものをチェックしてください、こういうことも申し上げたわけでございます。さらに今回の再任に当たりまして、再度社員には安全の重要性についてよくお願いをして、理解に努めるようにいたしておる次第でございます。
  121. 西中清

    西中委員 いろいろと御苦心をいただいておるのはよくわかります。名実ともに、むしろ実を上げていただくということに御努力をお願いしたいと存じます。  次に、日本航空完全民営化がもし実施されるとするならば、航空業界にどういう影響を与えるのか、若干伺っておきたいと存じます。  先ほど来、国の庇護のもとで世界一の航空会社に成長した日本航空でありますけれども、その結果他の国内航空会社との間に大きな企業格差、体力格差が生じておるということも事実だと思います。この体力格差はまさしく国の航空政策そのものによって生まれたところであろうと思います。したがって、完全民営化で国のコントロールをすべて外す、すべてといかないのですけれどもかなり外していく、こういうことになりますと、今の時点で体力の格差が大変あるわけでございますから、これは公正な競争と言っても実際は競争にはならぬ、こういうことだろうと私は思っております。したがって、競争促進によって利用者へのサービスが向上する、こういう観点から航空業界全体の発展を考えてまいりますとそれなりの格差の是正というものが必要なのではないだろうか。それがまた今日まで国策でおのずから格差をつくってきたという国側の立場もあるわけでございますから、こういう点についてどういうように今後なさろうとしておるのか、大臣のお考えを伺いたいと存じます。
  122. 山田隆英

    山田(隆)政府委員 現在、我が国の主要な航空企業の間で先生おっしゃいますような格差があるということは事実でございます。そしてこの格差も、いわばこれまでの航空政策日本航空の場合国際線を一元的に運営させる、それから国内線の幹線を運営させるという政策に基づいて生じたということも一因であろうかと存じます。私どもは、今後の新しい航空政策といたしましては、昨年六月に運輸政策審議会で御答申をいただきました考え方に沿いまして、今後は競争を通じて利用者利便向上を図っていこうということにしておるわけでございます。その際、確かに、競争を自由にさせるということは場合によっては強者が勝ち残るというような事態も生ずるわけでございまして、それに対しましては、同時に適正な競争を担保するという点についても配慮を行っていくべきであるという考え方を持っておる次第でございます。  そこで、今後の航空政策推進に当たりましては、国際線につきましては、高需要または大きな需要増が期待される路線を中心に複数社化を図ることといたしました。また国内線につきましては、高需要路線及び一定の需要規模のある主要空港を結ぶ路線を中心にダブルトラック化あるいはトリプルトラック化推進していこうとしておるわけでございます。その際、将来にわたっての実効性のある競争を担保するという観点から、当分の間は航空企業間の体力格差に配慮することといたしておりまして、この行政運営に際しまして、各社の経営に与える影響等を勘案いたしまして適切に対応してまいりたいというふうに考えております。
  123. 西中清

    西中委員 ただいまの御説明によりますと、六十一年六月の運政審答申で体力格差、企業格差に対する配慮がうたわれておるわけで、国際線の複数社化、国内線のダブルないしはトリプルトラック、こういうものの推進を申されたわけでございます。その程度で後発企業は公正な競争ができる体力にあると判断をしておられるかどうか、伺っておきたいと思います。
  124. 山田隆英

    山田(隆)政府委員 今後の国際線あるいは国内線の新たな展開につきましては、それぞれの企業の能力、意欲に応じて進出を認めていきたい、競争をさせたいというふうに考えておりまして、現在、確かに企業の規模等から見て体力格差はございますが、新しく国際線に進出しようとしている国内の各社につきましても十分その能力があるというふうに考えております。
  125. 西中清

    西中委員 余り選択の余地がないのかもしれませんけれども、後発企業の育成のために、こういう路線上の問題以外に何らかの育成策をお考えなのかどうか、これを伺っておきたい。同時に、既にございます路線の後発企業への割譲ということはお考えなのかどうか、伺っておきたいと思います。
  126. 山田隆英

    山田(隆)政府委員 後発企業に対する育成策といたしましては、先ほども申し上げましたように、今後の路線展開においてある程度の配慮をしておくということのほかに、六十二年度から新たに各航空企業への航空機の調達のための財政投融資の制度を設けまして、これまでは日本航空に対しては政府に上る借入金の債務保証等を行ってきたわけでございますけれども日本航空がこの債務保証がなくなることもございまして、日本航空のみならず他の企業も含めまして、これからの新しい航空機の調達資金に対して輸開銀を通じての低利・長期の制度を設けたわけでございます。  それから、路線の割譲について考えるかという御質問でございますけれども、この前の運政審の議論の過程におきまして確かにそのような議論もあったわけでございますけれども、これまでの実際のいろいろな経緯を考えますと、必ずしも現実的ではないというようなこと。それから、日本航空の場合政府は三分の一ほどの出資をいたしておりますけれども、同時に残りの三分の二はとは一般の出資でございます。このようなものについて割譲を求めるとすれば、当然補償等の問題も生ずるという実際上の問題、それからもう一つは、国際競争力をやはり保持する必要があるというようなこともございまして、日本航空の路線の割譲は求めないということが運政審の議論でも結論として出されたわけでございまして、今後、私どもといたしましてもそのようなことは考えておりません。      〔関谷委員長代理退席、津島委員長代理着席〕
  127. 西中清

    西中委員 そこで、二月に発表されました日本航空の六十二年度から六十五年度までの中期計画でございますけれども、この計画では高収益路線の増便など意欲的な事業展開をお考えのようでございます。この計画について運輸省ではどういうふうにお考えになっておるのか、民営化後この計画はどういう取り扱いになるのか、伺っておきたいと思うのです。
  128. 山田隆英

    山田(隆)政府委員 日本航空が先般定められました中期計画と申しますのは、日本航空企業として独自に完全民営化に対応した企業運営の目標を定めたものでありまして、路線計画も日航としての目標であって、具体的に個々の計画について所要の調整が行われ、行政処分によって確定されるというふうに理解しております。このたびの日本航空民営化によってこの中期計画の性格そのものは変わるものではないというふうに理解しておるところでございます。そして企業として日本航空が高収益路線に事業展開を図りたいという希望を持っておりますことは十分理解できるわけでございますが、個別の処分に当たりましては、運輸政策審議会答申を踏まえまして、私どもといたしましては適切に対処していきたい、かように考えております。
  129. 西中清

    西中委員 日本航空には一〇〇%子会社のアジア航空、それから五一%出資の南西航空がございますが、この扱いは何らかの変更があるのでしょうか、伺っておきたい一と思います。
  130. 山田隆英

    山田(隆)政府委員 日本アジア航空は、現在日本航空が一〇〇%出資しております子会社でございまして、台湾路線を運航しておる国際線の定期事業会社でございます。また南西航空は、日本航空が五一%出資いたしまして沖縄県が一三%程度出資し、沖縄を中心とする路線を運航している会社でございます。このたび日本航空完全民営化されました場合、このような会社事業あるいはその他の子会社や関連会社事業も同様でございますが、そのまま移行するというふうに考えておりまして、特に完全民営化に伴ってそのような形態あるいは事業の運営のやり方というものが変わるというふうには考えておりません。
  131. 西中清

    西中委員 いずれにしてもこれは非常に難しい問題だと私は思うのですけれども、いわゆる公平な競争というものを目指そうとしても企業間に大きな体力の格差がある、こういう状況の中では公平というのもなかなか維持しがたい。例えば国際線に新たな路線ができると、比較的早く対応できるのはやはり日本航空だろうと思うのですね。機材も人員も比較的融通がつきやすいだろうし、今まで国内を主にしておりました他の後発企業ではそれはなかなか対応できない、海外の営業も困難をきわめる、こういうことだろうと思いますね。だから、新たな路線ができても、体力その他格差を考えていけば勢い日本航空にと、こういうケースが多くなる。一方では、私が一番心配しておりますのは、国内の生活路線がございますが、これらの路線は採算をとることがなかなか難しい、こういう問題があるわけで、比較的国内を重点的にやられているところは競争が激化する。こういう状況の中で維持が非常に困難で、最後には路線を何とかやめたいということになりかねない。  さまざまな問題があるわけで、自由な競争と公平さ、そして国民に対する足のサービス、その辺の兼ね合いが極めて難しいと思うのです。難しいのですけれども、何といっても一番大事なのは国民に対するサービスでございますから、そういった公平な競争企業間の体力格差、そういうものも十分配慮しながらも、なお国民の足を守るために十分細心な御計画なりまた御判断をいただきたい、こういうように思うわけでございます。もう一度決意のほどを伺っておきたいと思います。
  132. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 今航空局長から実務的に御説明を申し上げました状況でございますけれども、私どもは、完全民営化を契機として日本の航空企業がますます健全な発展を遂げ、国民利便向上に資するために全力を尽くします。
  133. 西中清

    西中委員 次は株の売却について伺っておきたいと思います。  山地社長は、年内十一月ないし十二月売却したいというような記者会見をされたように聞いておるのですが、これは決定でございますか。もしも違うとするならば、売却はいつごろしたいとお考えか、伺っておきたいと思います。
  134. 沖津武晴

    ○沖津説明員 日本航空政府保有株式につきましては、国会の御審議の結果を待ちまして大蔵大臣の諮問機関である国有財産中央審議会にお諮りすることとなろうと存じております。そこで具体的な売却方法等を御相談するわけでございますが、方向といたしましては年度内に売却するようなことになろうかと存じております。
  135. 西中清

    西中委員 年度内であろうとは思いますが、社長の発言は何か希望でございましたのですか。
  136. 山地進

    山地参考人 政府のお持ちの株でございますので、政府がお決めになる話でございます。私の方は予想を申し上げただけでございます。
  137. 西中清

    西中委員 これも新聞で拝見をいたしましたが、「株の売却方法は約四千八百万株のうち半分の二千四百万株は機関投資家にはめ込むとされており、既に日本航空側は銀行、保険、関連会社と協議済みであり、各社別の引受数あるいは打ち返しと呼ばれる放出後の株価対策も各社別に決められている」。まだ法案は通っておらぬわけで、おもしろい記事だなと思って眺めておったわけでございますけれども、これは一体どういうことになっているか、伺っておきたいと思います。
  138. 沖津武晴

    ○沖津説明員 御指摘の件につきましては当方承知していないところでございますが、日本航空が今後の円滑な事業活動の維持という観点から、株主構成の面におきましても安定的な形が確保されるよう希望しておられることは私ども承知しております。先ほど申し上げましたように、具体的な売却方法については国会での御審議の結果を待ちまして、国有財産中央審議会に御相談することとなろうと存じます。
  139. 西中清

    西中委員 とかく準備ということでつい早くいろいろやりたくなるものでございますけれども、それはそれで不問に付しますけれども、やはりそういうことがあってはまずいんじゃないかな、こういうふうに思っておるわけであります。  そこで伺っておきたいのですが、今回政府が三四%を超える株を放出するということになりますと、個々の株主の持ち株を見ますと、筆頭でも極めてわずかな株数でございます。こういう点で安定株主というものが必要ではないかというふうに見ますけれども、その点はいかがでございましょうか。
  140. 沖津武晴

    ○沖津説明員 先ほど申し上げましたように、私どもといたしましては日航の御意向、御要望というものも承っておりますし、また昨年六月の運輸政策審議会の御答申というものも承っておるところでございます。国有財産当局といたしましては、同時に、国有財産の処分でございますから、国民の間に幅広く購入希望がございますような場合には、そのような購入の機会を提供することにも配慮することが重要だというふうに考えております。いずれにいたしましても、国会の審議の結果をお待ちして国有財産中央審議会にお諮りすることになろうと思います。     〔津島委員長代理退席、委員長着席〕
  141. 西中清

    西中委員 会社としては当然安定株主を御希望だと思うのですが、その点はいかがでございますか。
  142. 山地進

    山地参考人 現在の株主構成を考えましても、相当多くの機関投資家の方に株を持っていただいているわけでございますが、企業といたしましては、当然今後とも安定株主に株を持っていただくということを希望して。おります。
  143. 西中清

    西中委員 残余の時間を含めまして同僚議員に譲りたいと思います。
  144. 鹿野道彦

  145. 遠藤和良

    遠藤(和)委員 きょうは日本航空山地社長以下重役の皆様に当委員会に御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。  最初に、会社の皆さんに直接伺いたいのでございますが、ことし二月十八日、先ほどもお話がございましたが、いわゆる民営化を前提にいたしまして、昭和六十二年から六十五年度までの経営を見通した中期計画を発表されましたが、これに対する評価は、例えば新聞各紙の論調でもかなり厳しいものがございました。その辺を踏まえまして質問をさせていただきたいのでございますが、例えばこの計画では、初年度に復配をする、そして安定配当を続ける、あるいは国際線を大幅に増便をする、あるいは管理部門は縮小いたしまして乗員の編成を見直す、あるいは関連事業を積極的に拡大するなど、いわゆる骨組みと申しますか枠組みというものは示してあるわけでございますが、具体的に何をどう改革をしていくのかという細目は一切わからないという大変不十分と言わざるを得ないものがあるように思います。  なぜこういう形になったのか。先ほどもお話がありましたが、日本航空には現在六つの労働組合があるわけでございますが、この組合個々の御主張に対して会社としては配慮を払わなければいけないという大変デリケートな神経といいますか、配慮が経営陣に求められておりますので、この計画について特に合理化計画の中身が十分に発表し切れなかったのではないかな、このように考えるわけでございます。日本航空というのは大変大きな会社でございまして、安全運航を初め大変重い社会的な責任を負っている会社でございます。その社会的な責任に比べて、労働組合への配慮から日航改革の全体像が示せないというのでは、これは主客転倒になるのではないか、こういうことでございまして、この中期計画について率直な社長さんの御見解を承りたいと思うのでございます。
  146. 山地進

    山地参考人 今年の二月の中期計画がかなり抽象的であるという御批判を賜っているわけでございますが、私どもの中期計画というのは、本来機材計画、路線計画、つまり事業計画といいますか、そういうものが基本にあるわけでございます。それに伴って人員をどう配置したらいいのかあるいは組織をどうしたらいいのかということが伴ってくるわけでございますが、そういった今先生のお言葉で申し上げれば合理化計画というのをどう進めるかというのは、これは路線計画、機材計画というのが一つには運輸省の御判断もまたなければいけないというようなこともございますし、いろいろな過程といいますか、前提があってでき上がるものでございますので、年次計画で逐次組合方々の理解を得ながら進めなければいけないという点がございます。  そこで、私どもとしては、先のいろいろ前提のあるものを抽象的には書いてございますけれども、それを具体化するということをするよりも、やはり年次計画で個々にお話を進めるということがまともであろうということで、物事を抽象的に書いてあるわけでございますが、ただ抽象的に書いてございますけれども、私どもがこういうふうにした方がいいと思うことはかなり率直に書かせていただいてあるというふうに私は思っております。     〔委員長退席、久間委員長代理着席〕
  147. 遠藤和良

    遠藤(和)委員 特に今回の中期計画については、民営化した後、本当に日航が十分に国民の負託にこたえられるのかという意味では、単に会社の中期計画ではなくて、私は国会審議の大変重要な資料ではないか、こういう位置づけがされると思うわけでございます。今お話のありました例えば路線計画であるとか機材の計画といいますものは、ある意味では会社一存で決められないものがございます。運輸省の御判断あるいは特に国際線に関しましては相手国とのお話し合い等もあるわけでございまして、これは日航の一存で決められないから先回りして早く出しておいたというお話でございますけれども、むしろ合理化計画については日本航空会社が一存で決められる問題でございます。むしろ日本航空の今の置かれている立場というものを考えますと、社内の問題というものがより国民的な関心を呼んでいるのではないかと私どもも心配をするわけでございますけれども、こういった社内で決められる例えば人件費の削減の問題であるとか、あるいは支店業務の外部委託化であるとか、あるいは客室乗務員の編成数の見直し等に対する具体的な案というものを出していくのが賢明ではないか、このように考えますが、いかがでございますか。
  148. 山地進

    山地参考人 ただいま申し上げましたとおり、事業計画と路線計画というものがやはり私どもの計画の基本にございます。ただ、私どもの路線計画それから機材計画というものも、大体こういうことで私どもはお願いをし、また運輸省の方にもお聞きいただけるであろうという程度に絞ってはございます。したがって、その程度のことをやらせていただければこういうふうになるという関係にあるわけでございまして、国会の御審議にたえるように民営化後の収益計画が出ております。これは六十五年度に三百八十億の利益が経常利益で出るというようなことも一応示させていただいているわけでございますけれども、ただ、そういった六十五年度に至るいろいろの条件の変化ということはそう簡単にはいかないものでございますので、年次計画の方で具体化させていただいた方がより現実的であろう。特に組合との関係は、六つの組合があるからというわけではございませんが、やはり合理化計画というものは双方にとって非常に大事な問題でございますので、その点は年次計画で具体化させていただく。またそういうふうな組合状況を考えると、やはり先の先まで議論するよりも年次計画で着実にやっていった方が現実的であろうという判断をしたわけでございます。
  149. 遠藤和良

    遠藤(和)委員 確かに、ただいま社長がおっしゃったように中期収支計画がございますね。六十二年度は経常損益四十億円の黒字、それから六十三年度は百八十億、六・十四年度は二百六十億、六十五年度は三百八十億円、六十五年には収益は一兆円強、こういうふうないわゆる結論の部分は大変明確に出ているわけでございますけれども、ではそういう結論に向かってどういうプロセスがあるのか、これがこの計画の中では十分に理解できないわけでございます。私は、この結論の算定根拠になる五カ年にわたも経費削減計画あるいは事業領域拡大計画というものがあるはずだと思うわけでございます。この全体像が示せるか示せないかという問題があるわけでございますが、今お話のありましたように、例えば単年度でこういうふうな合理化計画をやっていきたいという計画であるとすれば、初年度はいかなる計画を持っていらっしゃいますか。
  150. 山地進

    山地参考人 初年度ということでございますけれども、私どもの方の人員計画につきましては、中期計画全体の中で、地上職でございますけれども、九百人くらいの合理化効率化というものを考えておる。ただ、これは各年度積み上げの結果そういうことができるという数字でございまして、九百人というような地上職の効率化ということを頭に置いて、ただいま初年度の人員計画というものを組合と話を始めているということでございます。
  151. 遠藤和良

    遠藤(和)委員 六十二年七月二十四日、つい先日でございますが、九百人削減計画を発表されましたが、これがこの中期計画と一体になっているもの、このように理解してよろしいのですか。
  152. 山地進

    山地参考人 地上職の人員計画についてはそのとおりでございます。
  153. 遠藤和良

    遠藤(和)委員 それでは、地上職を初めといたしまして全体計画というものもおいおい発表される、このように理解してよろしいのでしょうか。
  154. 山地進

    山地参考人 中期計画の最後の三百八十億に至る過程におきましては、いろいろの前提を置いて収支計算をやっておるわけでございますから、それぞれの計算の根拠というものは、私ども経営の方で仮定の数字は持っております。ただ、それをどうやって組合方々とお話に乗っけていくのかということは、今後の、組合に対して各年次計画をどうやって提案していくのかということに関連してくるわけでございまして、逐次そういった必要な範囲内において中期計画の数字というものもお示ししなければいけないかと思います。
  155. 遠藤和良

    遠藤(和)委員 国鉄の改革と同列で論ずべきものではないかもしれませんけれども、昨年私も国鉄改革特別委員会でいろいろと論議をさせていただいたわけでございますが、一番つらい仕事はやはり人員削減ということです。民営化を前提にするとどうしてもそういうことを考えざるを得ない。これをある意味では公平に、徹底的に、オープンに論議をするということが大事ではないかと思うわけでございますが、強いて言えば、この中期計画の中で自信を持ってこういった合理化計画を持っておるということを出すべきではなかったのか、このように私は理解をするわけでございます。大臣はこの日本航空が出しました中期計画についてどのように評価をいたしておりますか。
  156. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 私は、日本航空企業として独自の立場から完全民営化に対応した企業の運営目標を定めたという視点からこの中期計画を考えましたときに、増収と同時に経費の削減に努めて安定的な配当を継続し得る企業基盤の確立を目指している点において評価のできるものと思います。しかし同時に、この計画はあくまでも目標を掲げたものでありますから、その達成につきましては今後の具体的な経営施策にまつ部分が多い、これも間違いありません。したがって、今後日本航空に対しましては、安全運航確保しながら、全社一丸となって具体的な経営改善計画に取り組むことを私としては期待をいたしております。
  157. 遠藤和良

    遠藤(和)委員 新機材の計画でございますけれども、今航空業界の中では自由化競争の中で生き残りゲームと言われるわけでございますが、その切り札はダッシュ400という飛行機だそうでございます。これは私もよく承知しておらぬわけでございますが、いわゆるボーイング747の400という機種のようでございまして、大変ハイテクの進んだ飛行機です。コックピットの中は二人でいいという状態になっているようでございますが、これを導入するかどうかが競争力を持つか持たないかというふうな選択肢になるのではないかというように言われているわけでございます。この機材計画の中には機種の明確な表現はないわけでございますが、当然この機材を購入するという計画で進めているのでしょうか。
  158. 山地進

    山地参考人 ダッシュ400につきましては、私どもの方の乗員の関係の組合、それから職制の乗員の人ということで、具体的に申し上げますと機長組合それから先任機関士組合、乗員組合、それから職制の運航本部に属しておるパイロットの人たちでこのダッシュ400の編成問題について特別の会議を持つということをやっておりまして、これは七月の下旬、恐らく八月に若干入るかもしれませんけれども、その方々の結論というものを聞かせていただけるというようなことになっております。  これは、ダッシュ400というのが今おっしゃいましたように非常に先端的な飛行機でございますし、それから一九%も燃料費が安くなるとかあるいは航続距離が非常に多くなりまして、今モスクワ経由でモスクワの空を飛ぶというのがロンドン、パリには一番近いわけでございますけれども、このダッシュ400というのを使いますと、アンカレジの上を飛んで、つまりソビエトの領内を飛ばないで日本とヨーロッパを結ぶことができる、そういうような飛行機でございますが、そういった先端的な飛行機でございますし、また今おっしゃいましたように、コックピットが三人じゃなくて二人でもいいというようなメーカーの話があるわけでございますので、それらについてどう評価するかというのは乗員にとりまして大変重要な話であるわけであります。したがって、その編成会議で十分議論、もうやがて一年近く議論を重ねておるわけでございますが、その結論を待って経営として判断してまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  159. 遠藤和良

    遠藤(和)委員 いわゆる型式等未定であるが購入を検討しているというふうにこの機材計画の中に入っている、ここの部分に相当いたしますか。
  160. 山地進

    山地参考人 御指摘のとおり、いかなる機材であるか、例えばダッシュ400じゃないとすればダッシュ300という従来の飛行機を買うということもこれは想定されるわけでございまして、したがって、そこで未定であるがというところに、もし乗員の方々の編成会議答申を得まして私どもがそういうふうな判断を下せるようなことになりますれば、その型式についてはダッシュ400ということも十分あり得る、こういうふうなわけでございます。
  161. 遠藤和良

    遠藤(和)委員 会社というものを経営していく場合に、やはり経営者の哲学というか考え方というのがまずあって、それに対して労働組合の皆さんの御理解を賜る、こういう方向ではないかなと思うわけでございますが、新機材の購入決定をするシステムと申しましたら大げさでございますけれども、これはどういうことになっているのでしょうか。やはり労働組合の皆さんがお決めになることではないと思うのですけれども会社経営に関する問題ではないかな、このように私は理解をいたしますが、その辺は社長はどのように理解をされますか。
  162. 山地進

    山地参考人 今御説明いたしましたとおり先端的な機材でございますので、航空機の安全、特にコックピットに乗っている方々航空機と生死をともにするわけでございますので、その問題について真剣なのは当然だと思うわけでございますが、したがって、そういった乗員の方々でこの新型の飛行機の編成問題について御検討するというのはそれなりの意義があると思うわけでございます。したがって、この決定自体をそういった編成会議にゆだねているわけではございませんで、あらゆる角度からこの問題について御議論をいただいて経営答申をするということでございます。答申をいただく以上、私どもも尊重はいたします。ただ、尊重してどういうふうに判断するのかということは経営の方にそれはお任せいただきたい、こういうふうに思っているわけでございます。
  163. 遠藤和良

    遠藤(和)委員 大変よくわかりました。その際にはいろいろ配慮すべきことがたくさんあろうかと思いますが、特に航空機関士等に対する配慮等も十分にされました上で、やはりある意味で競争力をつけるということは大変大事なことでございますから、そうした決断を心から望みたいと思います。  続きまして、先ほども若干お話が出たわけでございますが、伊藤淳二会長辞任をされました。労務対策にいろいろ尽力をされたわけでございますが、この伊藤会長の労務対策というものが山地社長によって継続をされるのか、あるいはある意味では新しい展開があるのか、その辺についてはどのようにお考えでございましょうか。
  164. 山地進

    山地参考人 私ども伊藤会長とともに経営をお預かりしたときに労務方針というものを出しております。絶対安全とか国際競争力の強化とかそれから労使関係の安定あるいは人事、組織を公正明朗なものにするというようなこととあわせまして、労使の安定ということを五つの中の一つに挙げているわけでございますが、そのために労務方針というものを出しているわけでございます。これは伊藤会長のいるときに、会長の御意見も十分入れてつくったものでございます。これは私どもも今もそれを継承して、立派なものだと思っております。  それから機長会あるいは先任機関士会というものも伊藤会長のときにいろいろな経緯があってできたわけでございますが、そういったものもそのまま引き継がさせていただいているわけでございまして、私自身といたしまして、特段伊藤会長がかわられて労務方針を変えるという気持ちで今の経営を預からしていただいている気はございません。同じような気持ちでやっているということでございます。
  165. 遠藤和良

    遠藤(和)委員 今労働組合はいわゆる全民労協という大きなうねりの中にありまして、当然日本航空労働組合、六つの労働組合ありますけれども、そういううねりの中であるいは再編成が行われたり、いろいろな形で変動があるのではないかなと私は見るわけでございます。  これは大臣にちょっとお伺いしたいわけでございますが、大臣は今御自分の御経験からいろいろとお話がございまして、民間会社に勤めておったときの体験等も踏まえまして、できれば一会社労働組合というのが理想ではないかなというふうにおっしゃっていたわけでございます。ちょうどこういった労働組合の再編成という大きな時代の波もあるわけでございまして、そうした中で日本航空の中の労働組合の今後、これは運輸省が介入する問題ではないとおっしゃると思いますけれども、希望と申しますか観測と申しますか、そういう率直な御見解を承れれば大変幸せでございます。
  166. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 観測というようなことはおこがましいことでありますし、また労使間に介入をするような結果になることも望ましいことではございません。ただ、私個人として今労使双方に本当に申し上げたいことは、何よりも航空企業というものの基本は安全の確保であり、その安全が確保された上でのそれぞれの企業に対する利用者の信頼というものであると思っております。そうして今日、日本航空の労使関係あるいは労労関係についてさまざまなことが言われておることは承知をいたしておりますし、私どもとしても決して関心を持たないでおるわけではございません。  一方で今民間労働運動というものが一つの転機を迎え、労働界の再編が論議をされております真っただ中に、日本航空特殊法人の位置から完全な民間企業へと転換をするわけであります。その過程において日本航空の各労働組合民間企業労働組合としてのあり方に思いをいたし、最善の道を選んでくれることを心から願っております。
  167. 遠藤和良

    遠藤(和)委員 私は、大変僭越なのでございますが、ある本にこんな話が出ておりましたので御紹介をしたいと思います。  デルタ航空という会社がございます。これはアメリカ南部のアトランタを基地にしている社員が約三万七千人の規模の会社でございます。コマーシャルは、デルタ航空は過去十三年間でお客様からの苦情が一番少ない航空会社でございますというのをコマーシャルにしているそうですが、ことしの春日本の空にも乗り入れてまいりました。  ここにこんな挿話といいますか、三つの話があるわけでございますが、一つは、アトランタ空港でのお話ということで、チェックインカウンターに長蛇の列ができた。もう飛行機の出発時刻が近づいておる。そのときに一人、スチュワーデスがたまたま休暇の旅行中でありましてお客さんの中にいたわけでございます。そのスチュワーデスがカウンターの裏側にはっと入っていって地上職員の制服に着がえてきまして、その場でチェックインをカウンターでぱぱっとやって、そして自分のチェックインまでやって、またもとの自分の服に着がえてさっと行った。こういうふうな話でございます。  二つ目のお話は、あるお客さんが空港で航空券を紛失した。そしてデルタ航空の本社に連絡をしましたら、ちょうど一人の人がそちらに行く用事があるからお届けいたします。で、お客さんが待っておると、何とデルタ航空社長航空券を持ってまいりまして、ちょうど空港に用があったので参りました、お受け取りくださいと言って社長がみずから航空券をお客さんに渡した。  それから三つ目のお話でございますけれども、アメリカの方の空の規制緩和というのは日本より早く進んでいるわけでございまして、運賃の値引き合戦が強烈に行われてまいったわけでございます。それで、このデルタは社員をレイオフしないので有名でございまして、一人も首にしない。したがって、費用がかさみまして競争力が低下をした。もうデルタはだめじゃないか、こうみんな言っておったわけでございますが、そのときに従業員の中から自然発生的に賃金の一割返上運動が起こりまして、八割の従業員がそれに賛同して、わずかな期間に百億円以上のお金が集まった。そのお金をプールいたしましてボーイング767一機を購入して会社に献上した。その飛行機はスピリット・オブ・デルタ、デルタの精神という名前でございますが、そういう飛行機がございまして今も毎日運航しておる。こういうふうなお話でございますが、そうあってほしいな、こういう願望を込めてお話をいたします。  今大臣のお話にありました安全性ということにつきましてもデルタは憲章を持っておりまして、安全というのはスローガンでもポスターでもない、それは健全な人間の肉体と精神である、これがデルタの安全憲章だ、こういうふうに言っているわけでございます。日本航空もこの法律が廃止されました後、当然こうした世界の過当競争と思われる業界の中でやるわけでございますが、そうした先発企業一つの教訓にしていただいたらいかがかな、このように思いますけれども社長の御感想をお聞きしたいと思います。
  168. 山地進

    山地参考人 今の先生のお話、私ども経営を預からしていただく立場から大変うらやましいと思いますと同時に、私ども経営陣の努力が足りないということを反省さしていただいているわけでございます。社員の諸君も恐らく気持ちといたしましてはデルタ航空の社員に負けないだけの活動をしたいという気持ちであろうかと思いますが、そういった気持ちを引き出すのが経営者の務めであるというふうに考えて、今後も自粛自戒、経営に当たらせていただきたいと思います。     〔久間委員長代理退席、委員長着席〕
  169. 遠藤和良

    遠藤(和)委員 大蔵省にお伺いしたいのは、政府の保有株の放出の時期、先ほどもお話がございましたけれども、既にことしの当初予算に三千六百億円計上されておりますね。これは持ち株を全部放出しなくても足りるのではないか、このように計算をいたしますけれども、その辺の計画はどのようになっておりますか。
  170. 沖津武晴

    ○沖津説明員 お答え申し上げます。  先生今おっしゃった三千六百十七億円という数字でございますが、これは予算編成時におきます直近の株価動向をもとに算出してそのような数字を出しているわけでございます。株式を一括売却するかどうかというお尋ねでございますが、売却方法につきましては、国会の御審議の結果を待ちまして国有財産中央審議会にお諮りすべき事項でございますが、完全民営化趣旨それから金融、株式市場に与える影響を勘案いたしますと、方向としては一括してこれを行うのが適当であろうと考えている次第でございます。
  171. 遠藤和良

    遠藤(和)委員 そうすると、一括して年内ということになれば、今株価はけさの新聞で一万三千円くらいでしたでしょうか、ですから、当然三千六百億円よりは上回る計算になるのではないか、このように思いますが、こんな感じでよろしいでしょうか。
  172. 沖津武晴

    ○沖津説明員 現在の株価一万三千五百円程度と承知しておりますので、先生の御指摘のようなことだと存じます。
  173. 遠藤和良

    遠藤(和)委員 産投会計と関西新空港の建設資金との関係をお伺いしたいのですが、六百二十二億円でしたか、関西新空港建設資金の方に産投会計から繰り入れる、こういうふうになっておりますが、これは株を全部売却するという前提のもとにこういう勘定になっているわけですね。
  174. 沖津武晴

    ○沖津説明員 おっしゃるとおり株式を一括して売却するということで計算しているわけでございますが、予算の計上に当たりましては、先ほど申し上げましたように、株価の予算編成時の直近の数字をもとに幾分かの安全率を見込んで計上しているものでございます。先ほど申し上げました一万三千五百円というのは言うまでもなく現時点での株価でございますので、それが実際に株式を売却する時点でどのようなものになっているかは株式市場次第ということは言うまでもないことでございます。
  175. 遠藤和良

    遠藤(和)委員 これは運輸省にお伺いしたいのですが、この法律をなくする、そしてさらに政府の保有株を放出する、こうなりますと、日本航空は全日空であるとかあるいは東亜国内航空と全く同じ航空会社民間会社になるわけでございますけれども、こうした中で日本航空という会社は大変大きい規模の会社でございますし、国全体の航空行政の中でどのように、コントロールと言ったら言い過ぎかもしれませんけれども日本航空会社にこうあってほしいというふうに、航空法の運用の問題になるかもわかりませんが、この辺の問題は株を全部放出した後も自由に航空行政全体の中でそこを来さない、こういうふうにはなっているのでございましょうか。
  176. 山田隆英

    山田(隆)政府委員 運輸省といたしましては、日本航空株式会社法廃止されることによりまして、特殊法人としての日本航空に対する監督権限がなくなるということは先生のおっしゃるとおりでございます。日航法による監督規制はなくなるわけでございますが、同時に航空法に基づいて路線の免許、運賃の認可制度等が残る、それによる監督規制が行われるということもお話しのとおりでございます。その結果といたしまして、日本航空は全日空だとか東亜国内と同じ立場で航空法の規制を受けることになりまして、今後、日本航空の運営につきましては、昨年の六月に運輸政策審議会から答申をいただいた新しい航空政策の考え方に沿って対応をしてまいりたい、かように考えております。
  177. 遠藤和良

    遠藤(和)委員 そこで、いわゆる航空三社の適正な自由競争あり方についてお伺いしたいのですが、今お話のありました運政審答申によりますと、「将来にわたって実効性のある競争を担保するためには、現在の企業の実情からして、当分の間、行政運営に当たって企業間の体か格差に配慮することもやむを得ない」、あるいは企業間の競争条件均等化及び日本航空体質改善を図るための日本航空完全民営化を速やかに実施する、同社には、これまでの成長が国からの支援によることに留意し、先発企業としての立場の自覚と十分な社会的責任の遂行を期待する等とあるわけでございますが、日本航空は御承知のように今でも我が国航空企業全体の売り上げの六割を占めておる。そして今では世界一の国際線会社と言われているわけでございます。  こうなったのは、三十数年にわたりまして国の財政上の保護がございました。あるいは助成がごさいました。特に国際線については、日本航空我が国で唯一の指定企業として、国の権益イコール日本航空の権益という図式のもとに特権を享受してきたわけでございますめそれだけの基盤がある会社なわけです。それが今自由競争に入ったというふうになりますと、日本航空の今持っている国際線ネットワーク及びそれを背景とした市場支配力等は今後も残るわけでございまして、ほかの二社から言わせれば、日本航空の存在そのものが後発企業の参入障壁である、このような言い方もできるわけでございまして、積極的な是正措置がとられていかなければ公正な自由競争ができないのではないか、このように心配をするわけでございますが、この辺の考え方につきまして運輸省はどのようなお考えでしょうか。
  178. 山田隆英

    山田(隆)政府委員 ただいまお話しございましたように、日本航空が今のような経営規模になった、日本の主要な定期航空三社の中でとりわけ大きな規模になったことにつきましては、日本航空特殊法人として政府から各種の助成措置を受けたこと、同時にまた日本航空自体の経営努力によるところもあろうかと思います。  そこで、今後の日本航空あり方についてでございますけれども、これまで得た権益につきまして一部他の航空企業に割譲してはどうかという議論も運政審の中でなされたわけでございますが、これまでの経緯、実績あるいは現状からそのようなことは非常に問題があるということ、それから今後の国際競争力を考えていくに当たりましても、日本航空の現在の権益の割譲は必ずしも適当ではないだろうということで、運輸政策審議会答申におきましても、強制的に権益の割譲を行うことは適当でないという趣旨答申をいただいたわけでございます。ただその中で、企業間の話し合いによって権益の譲渡が行われることは一つの方法として考えられるのではなかろうかということで、そのような考え方は運政審答申の中で示されております、私どもといたしましては、今後企業間の適正な競争関係を確保いたしますために、強制的な日本航空の割譲ということは行っていく考え方はございませんで、必要に応じて、場合によっては企業間で権益の一部の割譲が行われるということもございますでしょうし、それから今後の新しい路線展開の中で企業体力の格差に配慮した運営も行っていくというようなことで対処してまいりたいと考えております。
  179. 遠藤和良

    遠藤(和)委員 いわゆる四五、四七体制の撤廃、航空憲章の撤廃以来、国際線国内線ともにダブルトラッキングだとかトリプルトラッキングが行われてきたわけでございますが、その実情はどのようになっておりますか、御報告いただけますか。
  180. 山田隆英

    山田(隆)政府委員 四五、四七体制の廃止後の国内線及び国際線の路線展開の状況でございますが、国内線につきましては日本航空がこれまでいわゆる幹線という範囲に限られておったのが、そういう制約がなくなりまして新たに東京−鹿児島、東京−小松、名古屋−福岡、名古屋−札幌線等に進出いたしております。また全日空、東亜国内航空国内幹線及びローカル線の増便を行っております。さらに、南西航空が那覇−松山路線、それからエアーニッポン、これは以前近距離航空と申しておりましたけれども、これが福岡−鹿児島路線に進出をいたしております。  それから、国際線につきましてはこれまでは日本航空が一社独占で運営をしておりましたが、四五、四七体制の廃止後新たに全日空がグアム、ワシントン、ロサンゼルス、大連・北京線に進出いたしておりまして、また今月二十五日には香港線を開設しておるわけでございます。さらに、本年の十月にはシドニー線に進出する予定でございます。また東亜国内は国際チャーターというものをソウル、香港などに既に運航を開始しております。また日本貨物航空という貨物専用の航空会一社がございますが、これは六十一年十月に香港線を開設いたしまして、本年十月にシンガポール線、来年六月にはアムステルダム線を開設する予定でございます。またこの間、日本航空も日欧線の直行便の増便等を行っておるという状況にございます。
  181. 遠藤和良

    遠藤(和)委員 最初に国際線のことについてお伺いしたいのですが、国際線航空協定で路線の開設あるいは便数等の決定を行うわけでございますけれども、例えば日本航空が今持っている路線が、お客様がふえてきたからさらに増便ができるという権限ができたとしますと、この権限は国の権限なのでしょうか、日本航空の権限なのでしょうか。それはどのように運輸省はお考えてありますか。
  182. 山田隆英

    山田(隆)政府委員 国際線の路線であるとかおるいは便数といったものは、基本的には二国間の政府間交渉によって決められておるわけでございまして、このような意味でこれらの航空権益は国の権益であるというふうに考えております。従来はこれらの航空権益は日本航空に与えられたわけでございますが、今後は国際線の複数社化という状況にかんがみまして、ほかの各社も含めて適切に配分を行ってまいりたいというふうに考えております。
  183. 遠藤和良

    遠藤(和)委員 大変明確な御答弁ありがとうございました。国の権益ということになりますと、日本航空の増便というよりもむしろ他社のそこの路線への参入ということが優先される、このような理解でよろしいのでしょうか。
  184. 山田隆英

    山田(隆)政府委員 国際路線への新しい企業の進出につきましては、高需要路線あるいは需要の増加が期待される路線へ新しい会社の進出を認めていこうというふうに考えております。したがいまして、直ちに新しい権益が日本航空以外の新しい会社に配分されるということではございません。ただ、同時に後発企業育成といいますか、先ほど来お話し申し上げましたように、企業体力の格差にも配慮していこうということで、新しい権益等の配分に当たってそのような点の考慮はしていくということでございます。
  185. 遠藤和良

    遠藤(和)委員 よくわかりました。増便については日本航空にその路線が増便されるという決定ではなくて、各三社公平な競争である、公平な判断で参入がある。ですから、日本航空になるかもわからないし全日空になるかもわからないし東亜になるかもわからない、このような御答弁であったように思うわけでございます。  それで、今六十三年度の新規開始路線として東京−ホノルルあるいは東京−ソウル等が東亜あるいは全日空等からの強い希望があるように伺っているわけでございますが、この辺の感触については、許可と申しますか運輸省としてはどういうふうにお考えでございましょうか。
  186. 山田隆英

    山田(隆)政府委員 ホノルル線とソウル線につきまして、全日空及び東亜国内航空の双方からそれぞれの路線に進出したいという希望を受けております。この件をどのように処理するかということでございますが、本件につきましては今後相手国との交渉もございます。そのような相手国との交渉の見通し、また国内における今後の路線展開あるいは航空企業の進出希望であるとかその時期であるとか、そういったものを考慮いたしまして、今後調整を図ってまいりたいというふうに考えております。
  187. 遠藤和良

    遠藤(和)委員 国内線について伺いたいのですが、こういうふうな議論があるわけでございます。いわゆる国際線については需要が増加した分についてその増加分の範囲の中で増便が決定されるものですから、新規参入によって既存企業で為る日本航空はインパクトはほとんど受けない。しかし、国内線においては当該路線の需要の規模に基づいて機械的に受け入れが決定されるものでございますから、特に大型機を持って参入してくる日本航空によって全日空等は大きなダメージを受けておる、このようにおっしゃる方がいるわけでございますが、実態はどのようになっておりますか。
  188. 山田隆英

    山田(隆)政府委員 国際線のダブルトラック化におきましても需要の伸び以上に増便をする例氷ございまして、日本航空といたしましてもそのような点で影響を受ける面もあろうかと考えております。また国内線のダブルトラック化あるいはトリプルトラック化につきましては、運輸政策審議会答申を受けまして、昨年の六月にその実施基準といたしましてダブルトラック化は七十万人以上、主要空港にありましては三十万人以上の路線、トリプルトラック化につきましては百万人以上の路線について積極的に推進するという通達を出したわけでございますけれども、これは必ずしも自動的にそのような路線にダブルトラック化あるいはトリプルトラック化が行われるということではございません。私どもといたしましては、空港の発着能力、特に羽田の発着能力に限りがございますので、こういう発着能力も考えながら、また需要の動向というものも考えながら今後対処してまいりたいというふうに考えております。
  189. 遠藤和良

    遠藤(和)委員 特に国内線の場合は一つ企業がありまして、そこがいわゆるドル箱と申しますか黒字路線である、そこに他社も全部入っていこう、これは自由競争ですからそういうふうな競争が働くのは当然でございますし、それによって利用者は大変に利便を受ける、サービスもよくなることになるわけでございますが、そういたしましても余りにも過当になりますと、これはそれぞれのダンピング等が起こりましたり心配な面もあるわけでございますので、黒字路線だからといって一遍にめったやたらに参入するというのではなくて、ある意味では相互乗り入れをするとか各社でお話し合いをいたしまして、適正なペースで段階的にダブルあるいはトリプルに進んでいかなければいけないのではないか、これは運輸省としても当然お考えだと思いますけれども、再度御答弁をお願いしたいと思います。
  190. 山田隆英

    山田(隆)政府委員 基本的には、今後は競争促進を通じて利用者利便向上等を図っていくということでございまして、国内線の場合、具体的にできるだけドリブル化あるいはダブルトラック化を推進していこうとしているわけでございます。ただ、その具体的な実施に当たりましては、ただいまお話しございましたように、いたずらに過当競争を招くということは場合によっては好ましくない状況もあろうかと思います。運政審答申の中でも、競争促進を徹底すればアメリカ型の自由競争といいますか航空の自由化を図るべきではないかという議論もありましたが、それに対しまして、我が国の諸条件を見ますと必ずしもアメリカ型の自由化は好ましくないということで、できるだけ企業の自主的な判断を尊重して競争促進していこうというのが基本的な考え方でございまして、ただいま先生のおっしゃいました点についても配慮をしながら対応してまいりたいというふうに考えております。
  191. 遠藤和良

    遠藤(和)委員 国内線では六十三年度にダブルトラッキングの基準を乗客数の上で達成をする東京−広島あるいは東京−松山便、あるいは六十四年度以降についてダブルトラックの基準に達するであろうと思われておる東京−函館、東京−宮崎、この各路線に日本航空あるいは東亜国内航空が参入を希望しているようでございますけれども、これに対して運輸省はどういうふうなお考えを持って、おられますか。
  192. 山田隆英

    山田(隆)政府委員 東京−広島、東京−松山あるいは東京−函館といったようなこれらの路線は、現在全日空が単独で運航している路線でございまして、これらに対しまして新たに日本航空あるいは東亜国内航空が路線進出していきたいという希望を持っていることは私ども十分承知しております。  ただ、これらの路線は東京の羽田と結ぶわけでございますけれども、東京の羽田は先ほど御説明いたしましたように、現在空港の能力がほぼ限界に達しておりまして、ほとんど増便する状況にございません。現在、羽田につきましては沖合展開事業ということで拡張工事を進めておりまして、来年の七月には新たな滑走路一本が完成する予定でございまして、その際にはある程度の発着能力の増強が見込まれるわけでございます。私どもといたしましては、その時点におきましてダブルトラック化あるいはトリプルトラック化ということも念頭に置いて発着枠の使用方法を考えていきたいというふうに考えておりますし、またどの会社にどのような路線を認めるかということにつきましては、今後各社の具体的な計画等を勘案しながら慎重に対応してまいりたいというふうに考えております。
  193. 遠藤和良

    遠藤(和)委員 最後に、コミューター航空の将来と申しますか現実と申しますか、お伺いしたいわけでございますが、コミューター熱と申しますか、今、日本列島、四全総とも並びましてかなりコミューター熱が燃え上がっているわけでございます。これについては採算性の問題だとかあるいは安全性の問題であるとか、いろいろ論議があるわけでございますが、私、一番基本的な問題ではないかと思いますのは、ハブ・アンド・スポークと申しますか、中核の飛行場にコミューターは乗り入れられない、したがって、コミューターといいましても、どうしても地方の都市と都市を結ぶ路線であるとかあるいは島を結ぶ路線であるとかいうところに行かざるを得ないところがありまして、これではやはり採算性も悪いわけでございます。  どうしても考えていかなければならないのは、今も若干お話があったのですが、三大空港ですね。成田の第二期工事をやっておりますし、羽田の沖合展開あるいは関西の新空港、こういうハブ空港に、近い将来ぜひ必要であるコミューターのアクセスというものを今考えなければならないのではないか、このように考えるわけでございます。大きい飛行機で手いっぱいだというふうな実情ではないかと思うのですが、将来の問題として、三大空港にコミューター専用の滑走路であるとか駐機場であるとかあるいはいろいろな設備というものを考える構想があるのかどうか、確認をしておきたいと思います。
  194. 山田隆英

    山田(隆)政府委員 ただいまコミューター航空の羽田、成田、関西等の空港への乗り入れ問題についての御質問でございますけれども、コミューターの定義そのものが実は必ずしもはっきりしておりませんで、私どもコミューターといいます場合に小型航空機による輸送と考えておりまして、その中には固定翼の場合と、それから場合によってはヘリコプターによる輸送も含まれるかと思います。そのうちの固定翼の小型航空機による輸送の場合、空港の発着容量に対しまして非常に大きな影響を与えますために、これをアクセスとして利用することは当面困難と考えております。  今申し上げましたような三大空港がそれぞれ新しく拡張なり整備の計画を持って実施しておるわけでございまして、今後その中でそういったコミューター航空の受け入れ施設を考えていけないのかというお話かと存じますけれども、定期航空便の運航に非常に大きな影響を与えるというふうに考えておりますので、私どもといたしましては、今後その運航にできるだけ支障を与えない飛行方式であるとかあるいは環境対策について検討を行って、乗り入れの可能性について調査をしてまいりたい。現在のところ、特にコミューター航空によるこの三大空港への乗り入れについて考えてはおりませんが、今後検討を行っていくというふうに考えたいと思います。  なお、ヘリコプターの場合は、その運航特性から申しまして空港の発着容量に余り大きな影響を与えないことにかんがみまして、この乗り入れについては今後とも考えていきたいというふうに考えております。
  195. 遠藤和良

    遠藤(和)委員 この六月、七月、私海外に参りまして、例えばアンカレジだとかあるいはユーゴスラビアのスプリット空港等、いろいろな国際空港に行ってきたわけでございますが、コミューターと大きな飛行機がほとんど共存をしておる、こういう状態になっているような気がいたします。例えばアンカレジの場合なんかは、全く自家用車並みの扱いで飛行機が出入りをしておりまして、パイロットがおりてきて自分で給油所へ行きまして、そこで燃料を入れて、入れ終わるとまた乗って出発する。これは自家用機のことでございますけれども、そういう地域の方々からいろいろなお話を伺いますと、日本の航空行政は大変厳し過ぎるのではないか。安全性の追求ということで厳しいことは大変大事なことでございますけれども、厳しくするから安全性確保されたということでもないのではないか。やはり安全性は人間の問題に帰着するわけでございまして、そういった意味から、大空港に大きな定期便のジェット、ジャンボと小さな飛行機が共存しても将来の日本の飛行場の姿としてはいいのではないか、このように考えるわけでございますけれども、今、日本の飛行場はほとんどコミューターが入れない状態になっておりますね。この辺をもう少し将来の問題として考えていただきたい、このように考えるわけでございます。  特に自民党の方からはヘリポート・ハイウェイ六〇〇構想でございますか、陸と海に六百のヘリコプターの基地をつくる、そしてそれを将来の高速運輸機関の中核にしたいという案も出されておりまして、コミューター、固定翼あるいは回転翼を問わず、大変論議が盛んでございますけれども、空港の受け入れ態勢を運輸省としても十分にお考えいただきたい、このように強く要望するのでございますが、運輸大臣いかがでございますか。
  196. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 ヘリポート・ハイウェイ六〇〇構想は、御承知のように陸上部に五百四十カ所、海上部に六十カ所、合計六百カ所のヘリポートを日本全国三十キロ間隔で設置しようという大変大きな構想であります。しかしまだ、例えば事業主体でありますとか事業採算性、さらに建設工法等種々の問題がありまして、今後さらに調査検討の行われるべき構想であると考えております。  そして今委員が御指摘になりました御質問に対し事務当局から御答弁を申し上げましたように、固定翼については現時点においてなかなか簡単にお返事のできない部分を持っておるようでありますが、少なくともヘリコプターについては、ハブ空港に対する乗り入れというものも考えられるという御答弁を申し上げておりました。  大変脱線をするようでありますが、たまたま先日海の記念日に当たりまして、いろいろな話が出ておりました中で、海につきましても、日本の海上交通安全に対する対応の中で、大型船舶の航行と小型船の航路を厳密に分け過ぎているんじゃないのか。例えば、ニューヨーク港において大型船の航行する中にヨット等がすれ違う光景というのが代表的なものだというような御指摘がございまして、今たまたま委員の御質問を受けながら同じような印象を持って聞いておりました。これは一つは、国民全体のそれぞれの輸送手段に対するなれの問題というものもあろうかと私は思います。また国土が狭隘でありますために、非常に厳密に安全な空路を設定しなければならないといった視点からの問題点もあろうかと存じます。いずれにいたしましても、やはり私どもにとりましては安全性確保ということが最優先の課題でありますので、それを前提に置きながら、今後ともに検討は加えられていくべきもの、そのように思考いたしております。
  197. 遠藤和良

    遠藤(和)委員 最後に一問お願いしたいのですが、いわゆる関西新空港の建設の問題でございます。私は徳島県でございますけれども、近畿圏あるいは四国を含めまして関西新空港の周辺の地方自治体は熱いまなざしを送っているわけでございますが、特に徳島県などは対岸でございまして、ぜひ資本の参入をさせていただきたい、関西新空港株式会社に対する出資の希望を強く持っているわけでございます。こうしたものはやはり積極的に受け入れるべきではないか、このように考えますが、大臣の御見解はいかがでございますか。
  198. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 今航空局長に確かめてみましたところ、何かそういうお話も持ち上がり、内々御相談、検討もいたしておるようでありますが、一つの御意見として私も胸に残したいと思います。
  199. 遠藤和良

    遠藤(和)委員 今後の重要な空の玄関でもございますので、みんなが力を合わせてと申しますか、民活はもちろんでございますが、地方自治体もそういう意識を強く持っておりまして、これを自分たちの飛行場としてさらに推進をしてまいりたい、こういう希望を持っておりますことを伝えておきたいと思います。  ありがとうございました。以上で終わります。
  200. 鹿野道彦

  201. 井上一成

    井上(一)委員 先ほどに続いて私の残された時間、質疑を続けたいと思います。  先物予約の問題について、大蔵省運輸省はこの資金を機体、航空機の購入に充てるということについては認可をしていたのかどうか、承知をしていたのかどうか、それぞれ大蔵省運輸省から聞きたいと思います。
  202. 山田隆英

    山田(隆)政府委員 先物予約によります資金でもって航空機の購入に充てるということは、私どもこの件につきまして先生から質問主意書をいただくまでは承知しておりませんでした。またこの件については認可は必要ないというふうに考えております。
  203. 柿沼敏夫

    ○柿沼説明員 お答え申し上げます。  大蔵省といたしましては、運輸省から、先生方の方から質問主意書が提出されてそのお話を伺うまで承知はしておりませんでした。
  204. 井上一成

    井上(一)委員 運輸大臣にお伺いしますが、経営判断の問題だということになっているわけでありますが、五年も十年も先物予約するということは、むしろ非常に危険なリスクを背負わされている、投機的な意味合いがそこに多分に含まれていると私は認識するわけです。大臣はいかがでしょう。
  205. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 確かに、私も十年というのは随分長いなという感じ、この話を知りましたときに率直に感じました。ただ、今ちょうど同じことを前回と同じようにお答えをするわけでございますけれども昭和五十六年に日航法が改正されましてから、予算及び資金計画の認可制が廃止をされましたこと、またこの法律の改正趣旨を踏まえて、運輸省としては、企業経理につきましてはできるだけ日航の自主性に任せるという中で今日まで参りました過程でこうした問題が起きてきたわけでございまして、私どもとしては、今の時点になれば、その後の為替相場の推移を見て必ずしも適切ではなかったということも言えるかと思います。
  206. 井上一成

    井上(一)委員 限られた時間ですので、私の方も要領よく質問を要約したい、答弁の方もぜひ協力をしていただきたいと思います。  機体購入勘定はどの科目に算入をされているのでしょうか。これは私は大蔵省よりも運輸省から聞いていきたい。
  207. 山田隆英

    山田(隆)政府委員 資産勘定に計上されております。
  208. 井上一成

    井上(一)委員 資産勘定のどこに入っていますか。
  209. 山田隆英

    山田(隆)政府委員 資産勘定のうちの航空機という項目に計上されております。
  210. 井上一成

    井上(一)委員 航空機購入勘定に算入をされていますか。
  211. 山田隆英

    山田(隆)政府委員 私どもの理解では算入されているというふうに承知しております。
  212. 井上一成

    井上(一)委員 建設仮勘定に算入されているのじゃないのですか。
  213. 山田隆英

    山田(隆)政府委員 航空機の購入をいたしました場合に、直ちに稼働するわけではございませんので、未稼働の購入機の場合にそういった勘定に計上されている場合はあるかと存じます。
  214. 井上一成

    井上(一)委員 いや、あるかとじゃなく、私は経理処理上、航空機の購入として資金充当すべきドルの先物為替予約のこの金は建設仮勘定に入っているでしょうと聞いているのです。
  215. 山田隆英

    山田(隆)政府委員 航空機の資産勘定といたしましては、引き渡しを受けたものは航空機の勘定、それから引き渡しを受けていないまだ契約だけのものにつきましては建設仮勘定がというふうに理解しております。
  216. 井上一成

    井上(一)委員 航空機が納品されたときには、建設仮勘定から本勘定に入れるということですね。
  217. 山田隆英

    山田(隆)政府委員 さようでございます。
  218. 井上一成

    井上(一)委員 六十一年四月から六十二年三月までの決算の中では、建設仮勘定にどれだけの額が入っているのですか。
  219. 山田隆英

    山田(隆)政府委員 建設仮勘定の中に三百八十六億七百万円でございます。
  220. 井上一成

    井上(一)委員 それでは、それはいつ本勘定に入る見通しなんですか。
  221. 山田隆英

    山田(隆)政府委員 引き渡しを受けたときでございます。  それから、先ほど私が申し上げた数字、若干訂正させていただきたいと思いますが、六十二年三月期の建設仮勘定では、三百七十六億七千九百万円でございます。
  222. 井上一成

    井上(一)委員 具体的な数字については、私の資料では、建設仮勘定三百八十六億七百万円の中で、航空機購入については三百四十七億四千九百万が計上されているわけです。私は、これはむしろ圧縮記帳をしているという認識に立っているわけです。納品をされたとき、いわゆる納期が来たときに、引き取った時点で本勘定に算入する、そういうお答えをいただきました。  それからもう一点、日本航空はどれほどの利益を出して、どれほどの税金を払ったのでしょうか。
  223. 山田隆英

    山田(隆)政府委員 六十二年三月期決算において、経常利益が三十六億円でございます。
  224. 井上一成

    井上(一)委員 税金は幾らですか。
  225. 山田隆英

    山田(隆)政府委員 税金といたしまして、法人税及び住民税の合計が百十三億八千六百万円でございます。
  226. 井上一成

    井上(一)委員 大臣、日本の税法の中で、利益以上に税金を三倍も四倍も払うというような法律はあるのでしょうか。
  227. 山田隆英

    山田(隆)政府委員 六十二年三月期の税金が利益よりも多くなっておるわけでございますが、これは前年度の税金の還付等に関してこのような措置がとられたというふうに承知しております。
  228. 井上一成

    井上(一)委員 いや、それはおかしいよ。これは自己否認をしなければいけない所得があった、加算されるべき所得があった、こういうことなんですよ。それは一体何なのか。大蔵省いらっしゃいますか。——そういうことを少し私は聞かしていただきたいと思う。
  229. 山田隆英

    山田(隆)政府委員 日本航空が外債を発行いたしておりますけれども、その外債のマルク債に関する処理の結果というふうに承知しております。
  230. 井上一成

    井上(一)委員 大蔵省に伺いますが、加算されるべき所得というのは、通常一般的にはどういうものがそこに入るのでしょうか。
  231. 柿沼敏夫

    ○柿沼説明員 お答え申し上げます。  まことに恐縮でございますが、実は航空会社の決算につきましてはまず第一義的に運輸省の方で審査をなさっておりますので、詳しい内容につきましては私どもちょっと今用意をしてございません。
  232. 井上一成

    井上(一)委員 そうなんです。けれども運輸省にお尋ねをしているのですが、十分な回答がないわけなんです。  では、私の方から一般論として聞きましょう。加算すべき所得、例えば交際費は認められないとか減価償却の超過分だとか、いろいろあるわけなんです。この日本航空はどの分を指すのですか、今言った外債のマルク債だということは、すべてそうなんでしょうかということです。
  233. 山田隆英

    山田(隆)政府委員 詳細については手元に資料を持ち合わせておりませんので承知しておりませんが、マルク債ほかの経費も入っているということでございます。
  234. 井上一成

    井上(一)委員 それはマルク債の部分もあるでしょうけれども、むしろほかの経費、利益以上の税金を払うなんということは当然あり得ないことでありまして、何らかの加算金がそこにあるわけですから、それは私の持ち時間内で回答をしていただければ結構です。  運輸省に重ねて聞きます。会計の処理というのは何を原則にすべきだと運輸省は認識をされていますか。
  235. 山田隆英

    山田(隆)政府委員 会計の処理といたしましては、正確性ということではないかと思います。
  236. 井上一成

    井上(一)委員 私は真実を明記するということが原則だと思っているのです。そういう意味から私自身は質問を展開している。日本航空の決算というか会計処理は、非常に立派な公認会計士さんももちろんいらっしゃって、公正であるということで有価証券報告書をちゃんと大蔵省に出しているわけです。ところが、違法性はないとしても、社会的、道義的に大変残念な箇所がたくさんあります。そういうことではいけない。今具体的に申し上げたのもその一、二点を申し上げたわけですが、そういうことについて、午前中にも質問したとおり、要は、先物買いによっての損失を例えば単年度で出せばもうパンクしてしまうのでしょう。だから、その損失を平均化して、五年なら五年、十年なら十年で償還しようとしているわけですよ。減価償却のいわゆる資産勘定に入れていくわけなんです。通常では建設仮勘定に入れることそれ自体が間違っているのですよ。そういう点を、運輸省が会計処理は十分承知していない、これは運輸省がやるべき問題なんです。その点について、大変恐縮ですけれども、数字を挙げて明らかにしてほしい。後刻でもいいです。今すぐでなくてもいいです。よろしいでしょうか。
  237. 山田隆英

    山田(隆)政府委員 個々の数字につきましては、相手方との関係もございますし、取引上の機密に属することもございます。取引上支障のない範囲で、日本航空とも協議いたしまして必要なものは提出させていただきたいと思います。
  238. 井上一成

    井上(一)委員 私は購入先の伝票まで云々ではなくて、有価証券報告書、これは公式にだれでも見られるのです。その中に、建設仮勘定にそういうふうなことを入れているし、また自己否認しなければいけない、加算をされるべき金額が余りにも大き過ぎるから、それの詳細は明確にしてもらいたい、そのことが第一点。  さらに、運輸大臣に午前中より再三私は申し上げてきたのですけれども事故を起こさないために日航が常に努力をする、これはずっと十五年間、歴代の社長、時の責任者は再びこういうことをしませんよと言って、運輸大臣に誓約というか約束をしているのですよ。ところが一向に——こういう事故のとき、これは何回も繰り返された。そういう意味でもう一度、私は朝からも申し上げたように、今のままでは体質改善はできませんよ、またぞろ、まことに申しわけございませんというようなことの危惧を私は持つわけです。そういう点では真剣に、何がベースか、全社員信頼の中にそれを築き上げることこそ安全の確立であるという私の理念、このことについて運輸大臣に、伊藤さんが御努力をなさってきたことも含めて認識をまとめていただきたいと思います。
  239. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 午前中から繰り返し申し上げておりますように、私は、安全を無視して航空企業が存立できるとは考えておりませんし、また日航社長以下全社員は、そのことは本当に骨身にしみているという言い方は少し強過ぎるかもしれませんけれども、骨身にしみ過ぎているぐらい知っていることだと思います、それだけに私どもも、これはひとり日航に限りません、航空企業というものの本来持つべき使命において全力を尽くして安全を確保していくように努力をさせる、そうしたための指導、努力には全力を尽くしますということを申し上げて、お答えとさせていただきます。
  240. 井上一成

    井上(一)委員 私は、もう抽象論だとか決意ではなく、具体的に何をしたか、遺族の声、遺族の期待に何をなしたかということの方が大事だと思うのです。遺族のいろいろな声をあらゆる機会に聞かれているわけです。いかがでしはうか。遺族の方の声を具体的にこういうことを聞きましたということがあれば、おっしゃってください。
  241. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 最初に申し上げましたように、私自身が友人を失っております。そしてその遺族の御相談にも乗っております。しかし、その個々のケースの中から出てくるものを個別にここで申し上げることはいかがなものかと思います。要は、社長以下全社員がもう一度、あの事故の直後深刻に皆が考え直した時点に戻って、社内が一致して安全を確保するための努力をしていくことに尽きると私は思います。
  242. 井上一成

    井上(一)委員 私は個々の問題についてあなたに聞いているわけではないのですよ。五百二十人のあのとうとい生命の死をむだにしてはいけないということで、私自身は多くの人からの意見というか考えを機会あるごとに聞きましたし、あるいは報道を通して承知しているわけなんです。  例えば肩かけ式シートベルトを採用していたならばという声もあるわけなんです。そういうことを実際にやったのか。あるいは安全姿勢及び簡単なヘルメットの装備などについてはどうなんだ。もしそういうことがあれば、もっと多くの人が、大けがをしたかもわからないけれども命をなくすことから救われたのではないだろうか。あるいは残された遺品、持ち主不明であるということもあるでしょうけれども、遺品についても焼却するというようなことで、日航は遺族からとめられたでしょう。遺族の心を逆なでするような、現在の法律がそういう状況であればその法を一緒に改正しようというような心配りがやはり必要であると私は思う。  これは七月二十三日の毎日新聞の「編集者への手紙」ということで、大阪の川北さんが遺族の声として送っているわけなんです。運輸省、この声は承知していますか。あなた方は今こういう声を取り上げようとしていますか。難しい問題じゃないでしょう。シートベルト一つにしても遺族の方からこういう具体的なことについて提言があるのです。大臣、こういうことについてやはり部内で、日航はもとより、すべて安全航空、安全対策という抽象論でなく、具体的にこういう提言を受け入れる、そういうぐらいの答弁がきょうは返らなければ、本当に私自身きょうの質問は実りのあるものにならない。もちろん日航体質にもメスを入れるべきである。同時に遺族の声をもっともっと大事にしてほしい、こういうことなんです。最後になりましたが、このことについて具体的に運輸大臣からお答えをいただきたいと思います。
  243. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 お名前までは私も記憶をいたしておりませんでしたけれども、大変無残になった御遺体の中から自分の肉親の遺体を捜された遺族の声として、他の事故との対比の中で、ヘルメットの装着あるいは肩かけ式のシートベルトの採用が、こうした事故の際に少しでも助かる方をふやすのではないかという御意見がありましたことを私も読みました。そしてそれは御遺族のお心として無理からぬものと私は思います。しかし、定期航空の中で、では乗客にヘルメットの装着が義務づけられるか。あるいは私は技術の専門家ではございませんので、肩かけ式のシートベルトにした場合に安全の度合いがどちらが高いか、私には判断の力はございません。しかし、それ以前に事故を起こさないことの方が、その努力の方が必要なことだと私は信じております。
  244. 井上一成

    井上(一)委員 肩かけ式シートベルトはスチュワーデスさんはしているんですよ。そうでしょう、そうなんでしょう。それがどうしてできないんですか。事故のないことをだれもみんな願いますよ。事故がないことを願うのは当然ですよ。だから、そういうこと一つをとらえても、あなた方の真剣さというものがいかに薄いかということなんです。大いなる反省を求めて、私の質問を終えます。残余については留保したい。
  245. 鹿野道彦

  246. 中村正雄

    中村正雄委員 私は、このたび日航の完全自由化ということについて、これから日航をどう再建するか、改革するかという点についての基本的な問題だけ一、二点質問いたしまして、主として運輸政策審議会が出しました答申の中にありまする今後の航空行政について運輸大臣にお聞きいたしたいと考えます。  ちょうど前回、日航の自由化に関する法案が提案され、私も不十分ではありましたけれども賛成いたしました。当時日航の自由化の法案が出ます三、四年前から、私は日航経営あり方について非常に危惧の念を抱いておりました。極端な言い方をいたしますると、日航は第二の国鉄になるんではないか、こうような懸念を抱いておりました。  それは大臣もあるいは日航社長も御案内のように、三十数年にわたって国の保護と助成によって日航は今日までやってまいりました。またその間、航空行政自体が日本航空航空行政であったと申し上げても過言ではないわけでございます。そういう体質の中で、先ほど大臣も答弁にありましたように、日航自体、経営者も社員も親方日の丸の感覚が浸透してまいったと思うわけであります。特に日航の問題に関しまして、ここ半年ほどの間いろいろな投書なり印刷物が数え切れないほど私の手元にも参っておりますし、また新聞や週刊誌等も日航の内部の紊乱についていろいろ報道いたしております。このことは運輸大臣も御承知のとおりでございます。このことは、今の日航がこのままで完全自由化しても企業発展は期しがたい、このように見なければなりません。したがって、日航内部の問題を整然として、今後の国際競争の中で日航発展するような基盤をつくらなければならないと思います。  ちょうど今、日本航空国際線の中で、国際企業の中でトップの座を占めております。これは外形上トップの座でありますが、内部を検討してまいりますると、今申し上げましたように経営は紊乱いたしております。これは人の争いの問題、労務対策の問題、その他の問題について、日航自体の内部の体質がこのままでいいとは恐らく大臣もお考えになってはおらないと思います。例えばこれだけ国が補助をし育成し、しかもここ二、三年の間円高と燃料安という神風が吹いたにもかかわらず、日航昭和五十六年から二回しか配当いたしておりません。四回は無配でございます。何ら国の援助を受けずに自力で運営いたしておりまする後発企業でありまする全日空は毎年配当いたしております。一時破産だと言われておりました東亜国内航空も恐らく本年度は累積赤字を解消できるのではないか、私はこのように考えております。そうなりますると、今度法案をお出しになって日航を完全自由化するというのであれば、政府としてこのように日航を改善しなければならないという一つ日航に対しまする改善計画をつくって、そうして日航の改善を私は指示するのが適当ではないかと思います。  今までの質問に対する大臣の答弁は、日航の自主性に任せておる、こう言われておりますが、このことは私は監督官庁としての政府の怠慢だと思いますし、また日航自体が中期計画を出しておりますけれども、私は新聞で承知した程度でありまして、この日航法案の提出についての参考資料としても何ら添付されておりません。このように、やはり今の日航では再建は難しい。先ほどの委員もそれぞれ指摘されましたように私は非常に危ぶんでおります。まだこの法案は成立しても施行期は半年先になっております。したがって、運輸省といたしましては日航の改善計画、これを少なくとも指示すべきじゃないか、こう考えておりますし、また先ほども質問に出ましたように、日航から出されました自主的な中期計画についても、政府としてこの点はこうすべきである、この点はこう直すべきであると指示すべきではないか、私はこう考えますが、運輸大臣の見解を伺いたいと思います。
  247. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 私は、運輸省としての怠慢という御指摘を受けるならば、その言葉は甘んじて受けて何ら申し返す言葉はございません。ただ同時に、委員先刻来大変厳しい言葉を、大先輩に対して恐縮でありますが、日本航空に対してお述べになりましたが、私は、先々国会における国鉄改革関連八法の審議のときの気持ちを思い起こしていただきたいとお願いを申し上げます。国鉄百十四年の歴史を閉じて、今新生JRはそれぞれに自力で元気に働いておりますが、その時点におきましてもたびたび御論議になりましたのは、大多数の職員は一生懸命にやっているんだ、ごく一部の心得違いの者のために全部が悪名を浴びることは、そういう声が御審議の際にたびたび出ておりました。  私は、運輸省の職員をも含めまして日本航空の職員、全力を挙げてそれぞれの業務に邁進しておると信じております。しかし、それが完全であるかと言われるならば完全であるとは私も申しません。ですからその御批判は甘受いたします。しかし同時に、日本航空は既に三分の二の資本が民間方々によって持たれている。法律によって規制は加えられておりますものの、民営企業としての色彩の極めて濃い特殊法人であります。そしてそれが今日まで特権的な立場を与えられて育ってきた事実もそのとおりでありますが、今むしろ日本航空はほとんどの場面を自力で歩いており、この中期計画自身も日本航空自身が目標として設定をしたものであります。  これを具体化するにはさまざまな施策が必要なことは先刻来御指摘のとおりでありますが、こうした中でみずからがみずからの道を模索し歩もうとしておりますときに、私は、行政当局がいたずらに計画をつくり、それを押しつけるようなことはむしろすべきではないと考えております。もしその方向から逸脱することがありますならばこれは我々としても注意もし、また監督の権限をも発動することはありましょうけれども、改革に向けて社長以下が努力を続けております限りにおいて、私は、運輸省として計画を持ってこれを強制するような考え方については、大先輩の御発言でありますけれども残念ながら賛成できません。
  248. 中村正雄

    中村正雄委員 その点については大臣と私と見解が違うわけでございますが、やはり特殊法人でありまする日本航空、これは政府の監督下にあるわけでございますし、また政府は大株主の一人でもあるわけでございます。したがって、大株主としてでも発言権はあるはずでございます。このまま完全民営化した場合、政府の手持ち株は民間に放出するわけでございます。やはり日航の今日までの経営責任については政府にあるわけでありますから、政府保有の株を放出するに際しても、日航は今後優良企業として発展するんだということの裏づけは政府責任だ、こう私は思いますので申し上げたわけでございますが、いみじくも運輸大臣から、国鉄の改革の問題が出てまいりました。  私は、政府委員運輸大臣も幾分そういう点もあったと思いますが、さきにそれぞれの質問をされましたときに、やはり臭いものにはふたをするというような感じを受けます。私は、本当に日航を優良企業として発展さすためには、この際日航の持っておりまするうみは出し切ってしまわなければ再建できない、改革はできないと考えます。ちょうど、国鉄の例を引いて恐縮でございましたけれども、国鉄自身も、御承知のように国会でいろいろと議論しましたときは、できるだけ恥部は隠そうとする、臭いものは隠そうとする、こういう姿勢でございます。ところが、再建監理委員会が徹底的に国鉄の現状を分析いたします。またマスコミも徹底的に国鉄の内部のうみをさらけ出すために報道いたします。したがって、国鉄は完全にうみを出し切って、そうしてJRとして出発したわけでございます。私は、国鉄の再出発でありますJRは必ず日本の優良企業になると信じております。  したがって私は、日航を完全自由化するに当たっては、日航の持っておりまする内部のうみ、これを完全に出し切る、そうしてその上に立って日航を再建の軌道に乗せるということが一番大切ではないか。今のままで、経営陣が努力をいたしておるからそれに任しておくという体制で、果たして完全自由化して日航が優良企業として発展するか、その保証はないと私は思います。したがって、今の段階において日航のうみを出し切る、そうして新しい観点に立って再出発する、これが必要ではないかと考えますが、運輸大臣日航参考人の御答弁をいただきたいと思います。     〔委員長退席、小里委員長代理着席〕
  249. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 私は、それがうみであるか恥部であるかよくわかりませんけれども日航廃止に伴います国会審議の中におきまして、現在日航の抱えております問題点が論議の対象となり、その中から将来の方向に何らかの道を見出すことが決していかぬことだとも思っておりませんし、そういう立場から問題を隠すつもりはございません。  ただ、今委員がうみと言われるものが何か、何を指して言われるのかわかりませんけれども、例えば先ほどからの御論議の中にもありましたように、公認会計士が了承を与えた決算につきましてもさまざまな御論議が出ておりますように、私は、むしろ問題は随分オープンに議論をしていただいている、そしてそれを別に隠しておるというものでもないと思っております。ですから、具体的な御指摘をいただきますならば、私どもがそれに対してお答えのできないものがあるならば、調べてお答えをすることも、その労をいとうものではございません。
  250. 山地進

    山地参考人 日本航空、いろいろ体質問題等批判を賜っていることは私ども十分承知しておりますし、また内部の社員も、CIプロジェクトということでアンケートをとったところ、日本航空の欠点は何かという問いに対して、社員自身のかなり多くの人間が官僚的であるというようなことを言っております。したがって、私どもの意識改革というようなことでは、今後民営化するチャンスでございますので、努力いたしたいというふうに考えております。  また、今の大臣の御答弁に関連いたすわけでございますが、私ども、今回いわゆる疑惑問題といって三つの問題が出ましたときに率直に感じましたのは、本来こういった問題は企業の内部で検討され、また解決されていく問題で、外部に出るはずがないのじゃないかと思ったのでございます。他方、こういうものが出たということは、逆に私どもとしてはそれを正面から取り上げて徹底的に改善するチャンスでもあるという気持ちを持ちました。そういう意味で、御指摘はいろいろの問題がございまするわけでございますから、率直に反省をし、今後改善の方途を見出していきたい、かように考えております。
  251. 中村正雄

    中村正雄委員 私は、日航の社員は優秀な人の集まりだと思います。したがって、一人一人がどうというわけではございません。日航体質自体を問題にしているわけで、やはり意識革命と申しますか発想の転換と申しますか、それをやらなければ日航は今後発展しない、こういうことを言いたいわけでございます。例えば、いろいろと文書や投書が来ておりますけれども、私はそれが全部事実だとは思いません。けれども、こういうことがマスコミに報道されたりいろいろな印刷物が関係者に配られること自体が日航内部の経営の紊乱だと言わざるを得ないわけでございます。  また先ほど政府委員の答弁にもちょっとありましたけれども、例えば子会社の問題にしても、これは日航自体の財務に関係のない別会社であれば別でありますけれども子会社の資本金なり借入金については日航自体の財務に影響すると思います。そういう問題の始末もきっちりやらなければならない、私はこう考えているわけでございます。したがって、この点については運輸省日航経営者も十分留意していただきたいと思うわけでございます。  最後に私、日航社長一つ要望しておきたい。  この法律が成立いたしますと日航政府の手を離れるわけでございます。完全に民間企業になるわけでございます。そうなりますると、経営者、社員の力と努力しか企業発展の原動力はないわけでございます。今日まで三十数年にわたって国の援助、助成、それは裏返しますると国民の犠牲の上に今の日航基盤は成り立っておるわけでございます。したがって、これを無にすることは絶対にできないわけでございます。経営者としての責任は重大だと私は思います。特に人間は困難なことはできるだけ避けて通ろう、これは人間の本能でございますが、しかし、日航経営者にはそれは許されないわけでございます。したがって、日航が抱えております内部問題の整理、合理化効率化、これを徹底的にやりますならば、私は、世界のトップ企業としての日航の繁栄は間違いないと思います。日航経営者はこの法案が成立しましたならばその意気込みで経営に当たってもらいたい。これは要望でございます。  運輸大臣にお尋ねいたしたいと思いますが、昨年の六月九日に運輸政策審議会運輸大臣あてに答申をいたしました。「今後の航空企業運営体制の在り方について」という題のもとに答申されました。この内容を見まして、当を得たものだと私は考えます。今回の法案もこの答申に基づいて提案になったわけでございます。したがって、答申が出てから今日まで及び今後の航空行政あり方について、基本的な問題についてあるいは具体的な問題について運輸大臣に質問いたしたいと思います。  答申基本的な考え方は、サービスの向上航空企業経営基盤の強化、国際競争力の強化の実現、大体三点が中心になっておると思います。特に行政運営に当たっての留意すべき重点として、先ほど公明党の委員からも質問されましたように、企業間の格差の是正を指摘いたしております。現在の一強二弱と言われます企業の格差を是正して、経営基盤の強化を図ることが必要だ、このように基本的な問題で出ております。  また答申の「国際線複数社制」の項目のうちには、後発企業の格差是正について「未利用又は新規に取得した路線・便数枠の権益を有効に活用すべきである。」と言い、また「先発企業から路線又は便数を移譲するという方法も考えられる。」、こういうふうに指摘いたしております。  また「日本航空完全民営化」の項では、冒頭に「競争促進を図るため企業間の競争条件均等化を急ぐ必要がある」と指摘いたしております。このことは、私よりも答申を受けられました運輸大臣の方が先刻御承知でございます。  また「国内線における競争促進施策推進」の項では「競争促進施策推進に当たっては、企業格差等に起因して、企業間の適正な競争が期待できないこととならないよう配慮する必要がある。その場合、日本航空については、同社と他社との間の企業格差及び路線構成の差異に留意して対応することが必要である。」、このようにも指摘されております。  つきましては、一応お尋ねいたしたいことは、答申が出ましたのは昨年の六月九日でございます。一年以上たっているわけでございます。この答申に基づいて日本航空の完全自由化の法案が提出されたわけでございます。したがって、この一年間に運輸省としてはいろいろとおやりになりました。この企業間の格差是正のためにおやりになりました項目を具体的にひとつお聞かせ願いたいと思います。これは特に大臣に私はお願いいたしたいと思います。
  252. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 昨年六月の運政審答申は、要約すれば今委員がお述べになりましたような原則をそれぞれにうたっております。  そこで、日本航空完全民営化につきましては、今御論議をいただいている最中でありますので私から御報告を申し上げるといたしますならば、まず第一に、国際線の複数社化という目標につきましては、例えば全日本空輸の場合には、六十一年三月から東京−グアム線、六十一年七月から東京−ロサンゼルス線、六十一年七月から同じく東京−ワシントン線、六十二年四月から東京−大連・北京線、同じく六十二年七月から東京−香港線、これらが既に開設をいたしました。なお、六十二年十月には東京−シドニー線が開設の予定でございます。また東亜国内航空につきましては、六十一年九月以降国際チャーター便の運航に既に入っております。また日本貨物航空におきましては、東京−香港線が六十一年十月に既にスタートをいたしました。六十二年十月には東京−シンガポール線が開設の予定でありますし、六十三年六月には東京−アムステルダム線がそれぞれ開設の予定であります。  また国内線につきましては、競争促進及び中小航空企業経営の安定化という二つの側面を御指摘いただいたわけでありますが、日本航空も六十一年七月から東京−鹿児島、六十一年十月から東京−小松、同じく六十一年十月から名古屋−福岡、六十二年四月から名古屋−札幌にそれぞれ進出をいたしました。これはそれぞれトリプル化あるいはダブル化でございます。同時に、全日本空輸につきましては、東京−札幌便が六十一年七月に増便になりました。また成田−大阪線が六十一年七月に開設をいたしております。東亜国内航空にっきましては、東京−札幌便が六十一年七月から増便になり、同じく東京−福岡間も六十一年七月から増便を認められて、現に運航中であります。また南西航空につきましては、六十一年十一月から那覇−松山間の路線が開設をされました。またエアーニッポンにつきましては、六十二年四月より福岡−小松間、六十二年七月から福岡−鹿児島間が開設をされますが、そのうち福岡−鹿児島間につきましてはダブル化でございます。  もし申し落としているものがありましたならば事務当局から補足をいたさせます。
  253. 中村正雄

    中村正雄委員 今運輸大臣のおっしゃいましたこと、国際線の複数化についてそれぞれ日航以外の路線を認めた、こういう話でございます。こういう認め方によって、日航と後発企業との格差が是正されたとお考えになりますか。  例を一、二申し上げますと、例えば東京−グアムあるいは東京−ロス、この間、全日空と日航と複数になります。これは両方とも全体のシェアはふえておりますし、日航も乗客数はふえております。日航はもちろんゼロから出発したわけでありますから、それだけふえているわけでございます。したがって、二つ競争さすことによってこれは所期の目的が達成できていると思います。ところが、今御指摘になりましたように、例えば今度オーストラリアに二便だけ増枠になります。また香港は四便増枠になる。日航に二便、全日空に二便あるいはオーストラリアについては一便ずつ、こうなっております。ところが、私は航空の専門家ではありませんけれども日本航空は現在の便数のうちに、例えばオーストラリアにすれば一便ふえたわけでありますが、全日空が一便だけもらってそれで採算がとれるかどうかということは素人でもすぐわかるわけであります。言いかえれば、そこには企業格差が是正されるのではなくして、企業格差が拡大されておる。これは一例でございます。  したがって、企業格差の是正というものは全体を見て本当に格差が是正されるかどうか、機械的に二つ足して二で割るというような考え方でなくして、この答申にもありますように、未利用の地域あるいは増便枠等について格差を是正しろ、この格差を是正する仕方というものをどういうふうにお考えになっているか。今までおやりになりました点について、格差の是正よりも格差が増大いたしておる、私はこういうふうな見方を持っておるわけでございますが、運輸大臣の御所見を伺いたいと思います。
  254. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 なるほどそういう物事の受け取り方もあるのかと改めて感じました。  本年の一月、日本とオーストラリアの定期経済閣僚会議の席上、私とオーストラリア側との間で一番議論になりましたのは、全日空の乗り入机を認めるか認めないかであります。国際線というのは、相手側の国の同意なくして航空機の運航はできません。そしてオーストラリア側は、自国の航空政策上、オーストラリアから国際便として飛ばしている会社が一社であるので、日本側の二社というものに対して日本の政策としての理解は示しながらも、オーストラリアとしてはその受け入れに対して極めて強い抵抗を持っておりました。これは定期便だけではなく、チャーター便についても同様の問題がございました。  しかし、最終的に一便といえども全日空を飛ばすことができましたこと、またその後におきまして東亜国内航空のチャーター便が飛ぶことを許可を受けましたこと、私どもは前進だと考えております。そして仮に今申し上げましたような経緯というものが認められないといたしますならば、全日空及び東亜国内航空国際線に、日本国内において幾らどのような論議をいたしましても、相手国が歓迎をしない限りは進出はできないと私は考えております。いわば一つの突破口があいた。そしてその中で努力が認められればその枠が拡大していくということは、企業として将来につながるものであると私は考えております。  また委員企業間の格差是正の部分のみお触れになりましたけれども競争促進というテーマがこの答申の中のもう一つの柱であったことも私からは申し上げたいと存じます。そしてその路線そのものの中における便数は少ないと言いながら、競争が行われることによって利用者利便向上しサービスが向上するという側面もあることを御理解をいただきたいと考えております。
  255. 中村正雄

    中村正雄委員 大臣の御答弁のように、やはり相手のあることでございますし、航空交渉ということの内容についてはそれぞれ自国の権益を主張するわけでありますから、国内問題だけで解決できないということは十分承知いたしております。  特に日本とアメリカとのいわゆる日米航空交渉、これは非常に不合理なものであるし、やはり日本としては航空業界が後進国でありますから、不平等な条約になっております。それを直すために歴代の運輸大臣が苦労しておることも十分わかっております。特にアメリカとの関係におきましては、これからロスの増便の問題、ワシントンの問題あるいはその他の問題等があると思います。特に米国の場合は、特定の企業を指定しての航空交渉になると思います。一社とか二社とかいうことで便の枠数以外に、それぞれ航空会社の数が大きな問題になってくると思います。そういう面について、今後の日米交渉についてそういう問題に留意して、やはり増便の場合は二社、三社我が国企業が参加できるように努力を願いたいと思いますが、その点について運輸大臣の御所見を伺いたいと思います。
  256. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 今後ともに全力を尽くします。
  257. 中村正雄

    中村正雄委員 もう一つ国内線についてお尋ねいたしたいと思います。  私がちょっと奇異な感じがいたしましたのは、国内線について今まで日航はいわゆる幹線だけだった。ところが、後発企業は離島等その他非常に不採算路線を持っております。今度日航も幹線だけでなくして、先ほど御答弁のありましたように、鹿児島その他の路線を獲得いたしました。一年ほどの統計でありますから私も断定はできませんけれども、二つの会社がやることによってそれぞれ収入は減っております。例えば全日空と日本航空の鹿児島線その他を見てまいりましても、全日空は相当減収になっております。僕はこれは一つの過渡的な問題だと思う。やはり二つが競争することによって需要は喚起できると思います。しかし、国際線の代償として国内線日航の進出を認めるというようなことはおかしいのではないか。それよりも日航自体が、今国際線の中におきましていわゆる国が権益がありながら未利用の航空路が相当あると思います。その未利用の航空路あるいは既に便数が決まっておっても両国間で決まっておる便数のうちで満杯でない便数もあるのではないかと思います。これは航空局長で結構でございますから、ひとつそういうものがあれば例示をしていただきたいと思います。
  258. 山田隆英

    山田(隆)政府委員 ちょっと手元に資料がございませんので正確な状況を申し上げかねますが、未利用の権利といたしましては、例えば日本とフィンランドの間に現在航空協定がございまして、フィンランドから日本側にフィンランドの航空機が飛んできておりますが、日本側は権利がございますが、行使はしておりません。
  259. 中村正雄

    中村正雄委員 じゃ、未利用の航空路線はフィンランドだけですか。
  260. 山田隆英

    山田(隆)政府委員 フィンランドのほかに、ちょっと今手元に資料がございませんので正確に申し上げられませんが、幾つかそういう路線がある。例えば、今思いつきましたけれどもバングラデシュ、これも先方からの一方乗り入れでございますので、これも未利用権があるというふうに考えております。
  261. 中村正雄

    中村正雄委員 私も詳しくは調べておりませんからわかりませんが、数カ国あると思います。それは恐らく採算がとれないから我が国からの航空便が行っておらないのではないかと思うわけですが、航空局長、どういうふうにお考えになりますか。
  262. 山田隆英

    山田(隆)政府委員 初めに、先ほどの御質問について追加させていただきたいと思いますが、現在、未利用権といたしましては、日本からベルギー、スリランカ、フィンランド、それからバングラデシュなどがございます。  ただいま申し上げた路線でございますが、これは実際のところなかなか採算がとりにくい路線であるということでございます。
  263. 中村正雄

    中村正雄委員 今反対に、採算はとれるけれども、便数の枠があるけれども満杯でないという航空路があればお教え願いたいと思います。
  264. 山田隆英

    山田(隆)政府委員 正確には覚えておりませんけれども、季節的に一時的に便数枠が余ることはあろうかと思いますけれども、おおむね二国間で取り交わしている便数は使用しているというふうに考えています。
  265. 中村正雄

    中村正雄委員 季節的に欠航するといいますか、就航しない便数はあるけれども、平常は全部運航いたしておる、このように理解していいですか。
  266. 山田隆英

    山田(隆)政府委員 一部の路線につきましてはまだ余っている便数があるかと存じますが、おおむね二国間で認められている便数は使っているというふうに承知しております。
  267. 中村正雄

    中村正雄委員 もしそういう路線なり便数の枠があるとすれば、答申内容にありますように、未利用あるいは便数の枠内において後発企業の格差是正をやるということを明示されておりますが、こういう路線については、後発企業に能力があり、そうして希望があれば運輸省としてはそれをお認めになる意思があるわけですか。
  268. 山田隆英

    山田(隆)政府委員 ただいま申し上げましたような未利用の路線は、非常に採算がとりにくいので新しい航空企業も希望しておりませんけれども、もし仮に新しい航空企業がそのような路線を活用して新しい路線運航を始めたいということでございまして、さらに能力がございますれば認める考えでございます。
  269. 中村正雄

    中村正雄委員 便数について一点だけお尋ねしますが、韓国のソウルとの間の我が国の就航便数はどうなっておりますか。
  270. 山田隆英

    山田(隆)政府委員 日韓間は非常に多数の路線がございまして、一々の資料を持っておりませんが、確かにおっしゃいますとおり、韓国路線につきましては若干の未利用の便数枠があるかと存じます。
  271. 中村正雄

    中村正雄委員 韓国との未利用の便数について、先ほど公明党の委員の方も質問されたと思いますけれども、後発企業がそれを申請した場合はそれを許可するのは当然だと思いますが、運輸大臣、いかがですか。
  272. 山田隆英

    山田(隆)政府委員 韓国につきましては、航空協定上複数指定ということで日本から日本航空以外二社目あるいは三社目が進出できると理解しておりますが、これまでの韓国との交渉で韓国側は、自分の方が一社でありますために日本側の二社目あるいは三社目の進出につきまして非常に強い抵抗を示しております。確かに便数につきましては余裕枠がございますけれども、それを使って二社目、三社目が韓国路線に進出したいという場合に、先ほど申し上げましたように私どもとしてはそれを認めていく考えはございますが、相手国との関係がございますので、今後その辺の調整が必要かと存じます。
  273. 中村正雄

    中村正雄委員 韓国との関係だけに絞って聞きますが、韓国側は便数は満杯でございますか。それとも韓国側も我が国と同じように枠数以内の運航をしているわけですか。
  274. 山田隆英

    山田(隆)政府委員 韓国側はたしか便数いっぱい使っていたかと承知しております。
  275. 中村正雄

    中村正雄委員 ただ、常識的な物の考え方かもわかりませんけれども、国益という面から考えて、両国間で一定の便数の枠を決める、これは同数になると思います。韓国は満杯であって我が国はそれを満たしておらないということは国益上非常な損失になると常識上考えられるわけでありますが、なぜ我が国は満杯にできないのですか。やはり採算上の問題ですか。
  276. 山田隆英

    山田(隆)政府委員 韓国につきまして今運航している会社は御承知のように日本航空一社でございまして、日本航空は相手国との関係、便数取り決め等を考慮いたしましていろいろ事業計画を立てているわけでございます。現実の問題として今利用可能な便数枠を全部使っておりませんが、それは機材繰りであるとか採算の問題等によるかと存じます。
  277. 中村正雄

    中村正雄委員 我が国が全部枠数を使えないということは、採算上の問題ではなくして航空会社の能力の問題ですか。
  278. 山田隆英

    山田(隆)政府委員 個々の具体的な路線につきましてなぜ全部の利用便数を使ってないかということを承知しておりませんけれども、能力あるいは意思の問題かと存じます。特にその中で、採算がとれないということが非常に重要なファクターではないかと存じております。
  279. 中村正雄

    中村正雄委員 先ほどもおっしゃいましたように、二国間の交渉については、便数の枠だけでなくして就航する企業の数が大きな交渉のポイントになると思います。したがって、今韓国だけを例にとったわけでありますけれども、韓国は便数を満杯でくる、うちは満杯でいけない、こうなった場合は、困難ではありますけれども、やはり他の航空会社を参加させることによって韓国と同じ回数が飛べるわけでございますから、そういう点について運輸大臣は韓国との交渉をやるべきだと考えますが、いかがですか。
  280. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 私もそう思います。そうして、実は日本航空以外全く受け入れようとしておりませんでした韓国に対しまして、年来の交渉の結果だと私は思いますけれども、昨年のアジア大会を機に日本からのチャーター便が全日空あるいは東亜国内航空それぞれにようやく入るところまでまいりました。これから後もその努力は当然続けてまいりたいと思います。
  281. 中村正雄

    中村正雄委員 韓国、香港等は相当収益の上がる路線だと思いますが、それ以外の東南アジアの路線について、現在も就航いたしておるわけでございますが、これに対して今後航空行政上とのようにおやりになろうとお考えになっておるか。特に東南アジアの地域はこれから我が国の国益にとっても重要な地域でございます。現在就航いたしておる地域もありますし、先ほどおっしゃいましたように就航しておらない地域もあるわけでございますが、これに対して今後の航空行政としてどのようなお考えを持っておるか、運輸大臣からお聞かせ願いたいと思います。
  282. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 私もこうした方面全く素人でありますから的確なお答えになるかどうかわかりませんけれども、現在、日本に対して新たな定期航空路の開設を求めております国は三十九カ国であります。その中にはもちろん東南アジアの国々もございますし、中南米の国々もございますし、またヨーロッパの国もございます。そしてそれらの要請に今日まで日本がこたえられずにおります理由の中には、一つは路線としての魅力に乏しいということもあろうかと思います。同時に、それよりもはるかに大きなものとして、我が国の国土が狭隘であり、その狭隘な国土の中につくってまいりました我が国の国際空港が既に能力の限界に近いところまで現実の運航が重ねられており、それ以上の増便の枠が非常にとりづらい状況になっておるという問題点もあろうかと存じます。そうした中で、私どもといたしましては、新東京国際空港の完全空港化に向けての努力あるいは本年から工事に入りました新関西国際空港、こうしたものを急いで完成させていくことによりまして、少なくとも空港の狭隘さという理由による新規の路線設定の困難というものは除去したいと考えて努力をいたしておりますけれども、これもそれなりの時間はかかることでございます。  こうした中で私は、先刻来委員が御指摘になっておりますような問題点につきましても、一つは相手国側の体制の問題、姿勢の問題、また企業としての採算の問題、能力の問題、さまざまな原因が組み合わされて委員が御指摘のような問題を惹起しておるかと存じます。そうした問題を解消するための努力は今後とも怠らずに続けてまいりたいと考えておりまして、委員としても御支援をよろしくお願いを申し上げます。
  283. 中村正雄

    中村正雄委員 多くの国との航空路の開設という点については、我が国の空港の設備というものが大きな隘路になっておる、そのために関西新国際空港もつくらなくてはならない、こういう状態になっていることは十分承知いたしております。したがって、それらの制約はありますけれども、現在それぞれの国と協定いたしておりまする便についての確保だけは特にお願いいたしたい、かように考えるわけでございます。  また私は、答申のうちの企業間の格差是正、それだけ一つ取り上げて突き詰めて質問いたしたわけでございますが、これから日本航空も完全な民営化をするわけでございます。そうなりますると、これから日本の航空企業というものが国際競争力をつけ、日本の国益を守るためには、やはりこれからの運輸行政は、一強二弱と言われておりまする今の日本の航空企業を三強に持っていく、その格差是正というものがやはり航空行政の今後の大きな重点目標になる、こう考えますので、この点も十分留意されて今後の航空行政の運営をやっていただきたいと希望を申し述べまして、私の質問を終わります。
  284. 小里貞利

    小里委員長代理 中路雅弘君。
  285. 中路雅弘

    中路委員 航空輸送が今や国民の生活と経済活動に根差した大量輸送機関となっているわけですが、民間航空国内線だけでも年間で四千六百万人が利用するという、文字どおり今国民の足になった。公共的な使命が大変大きいと思います。日航の大事故を再び起こさないという航空の安全行政、それにふさわしい日航経営が今求められているのではないかと思います。この航空行政にとって最も重要な問題は安全の確保という問題だと思いますが、最初に大臣に一言認識をお聞きしたいと思います。
  286. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 たびたび他の委員にも申し上げてまいりましたように、航空企業のみならず運輸行政の一番根幹をなすものは安全であります。殊に、航空企業におきましては、安全の確保というのはすべてに優先する重大事項だと考えておることは先刻来申し述べたとおりであります。
  287. 中路雅弘

    中路委員 今も安全の確保ということが何よりも優先するという大臣の御答弁ですが、こうした立場から、今回の日航法を廃止する法案について何点か御質問したいと思います。  今まで日航法に基づいて、昭和二十八年ですか、日航法が制定されてから、政府の出資、保証債の発行や社債の限度枠の拡大など、国の財政的な助成あるいは役員、事業計画等の運輸大臣承認とか、また必要な監査大臣ができるようにしているわけですが、これは文字どおり日航の健全な航空輸送事業経営に資するためのものだったと思いますが、そのとおりでありますか、まず最初に。
  288. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 そのとおりであります。
  289. 中路雅弘

    中路委員 今回日航法を廃止するわけですけれども、この日航法の目的について先ほどお尋ねしましたが、この目的を果たした、日航法の歴史的な使命が終わったのだということだとすれば、何をもって日航法の今度の廃止、この使命が終わったのだということになるのか、具体的に、簡潔でいいのですが、御説明をいただきたいと思います。
  290. 山田隆英

    山田(隆)政府委員 日本航空は、戦後我が国が速やかに自主的な国際航空運送事業を開始するために特殊法人として設立されたものでございまして、その当時は我が国の国力も非常に微弱であったわけでございます。その際、国が官民通じて総力を挙げてそういった航空事業を支援するということのために、特殊法人をつくってそれを育成したわけでございますが、昨今、日本航空も非常に発展を遂げまして、そのような助成も必要なくなった、そのような助成なしに十分外国航空企業とも伍して競争していく体質ができたということでございます。
  291. 中路雅弘

    中路委員 今回、日航法を廃止する法案の提案理由として、日航の自主的かつ責任ある経営体制を図るためということが述べられていますが、今まで日航の自主的かつ責任ある経営が、例えばこうした規制でできなかったために航空安全のための健全な経営に重大な支障があったということがあるのかどうか、そうであるならば具体的に明らかにしてほしいと思います。
  292. 山田隆英

    山田(隆)政府委員 日航特殊法人として種々の規制を受けていた結果として安全運航等に支障が出ていたというふうには、私ども考えておりません。このたびの日航法の改正といいますのは、このような規制を外すことによって自主的かつ責任ある経営体制が確立されるということを期待して行うものでございます。
  293. 中路雅弘

    中路委員 私は、最初に安全の確保こそが優先されなければいけないという大臣の答弁もありましたけれども、今、日航に求められているのは事故多発的な体質あるいは放漫経営と言われていますが、マスコミ等にも幾つも報道されていますけれども、こうした日航体質にこそ今メスを入れなくてはならない、ここが最重点の問題ではないかというふうに思うわけです。  この問題に関連して幾つかお尋ねしますけれども、今まで日航法に基づいて政府日航に対する出資ですね、政府保証債及び政府の保証借入金ですね、あるいは社債の発行額、それぞれの発行総額と残高は現時点でどうなっているのか、御答弁いただきたいと思います。
  294. 山田隆英

    山田(隆)政府委員 まず、政府の出資額から申し上げますが、政府の出資は、当初二十八年に十億出資いたしておりまして、その後増資を重ねまして、現在において政府出資の累計額は総額で二百四十億五千万円でございます。それで次に、政府保証債及び政府保証借入金についてでございますが、まず、国内借り入れにつきましては、六十一年度末の残高が百億円でございます。それから、社債につきまして政府が保証しておりますが、この残高が六十一年度末において七百六十三億二千九百万円でございます。次に外債でございますが、これも政府が保証いたしておりまして、この総額が六十一年度末で二千四百八十一億七千九百万円でございます。
  295. 中路雅弘

    中路委員 日航子会社といいますか、関連会社があるわけですが、この子会社を含めたいわゆる関連会社、現在何社あるか、またこれらの会社への日航からの出資及び融資、債務保証はそれぞれ現時点で総額幾らになるのか、残高はどうなっているのか、お尋ねしたいと思います。
  296. 山田隆英

    山田(隆)政府委員 まず、子会社に対する債務保証の残高でございますが、六十一年度末で百十億七千三百万円。それから子会社に対する出資総額が六十二年七月現在で二百五億三千四百万円でございます。
  297. 中路雅弘

    中路委員 今の御答弁ですと、子会社に対する債務保証の残高が六十一年度末で百十億七千三百万、子会社に対する出資総額が二百五億三千百万ですか、大変な額になっているわけですが、このような子会社、関連会社への出資、融資、債務保証は、本体である日航の健全な経営に支障を与えるようなものであってはならないと思いますが、いかがですか。
  298. 山田隆英

    山田(隆)政府委員 ただいま申し上げましたような、日航から子会社に対する出資並びに債務保証に関連いたしましては、日本航空としても十分慎重に審査をいたしまして行っているものでございまして、日航経営に支障はないというふうに理解しております。
  299. 中路雅弘

    中路委員 そこで、具体的に日航開発についてお尋ねをしたいわけです。  日航開発日航から六十年度末までに百十六億八千九百万の債務保証になっていますが、資本金百二十億のうち六七・一%を日航が出資をしている。先ほども質問もありましたけれども、六十二年の二月ですか、監査報告書ですね、私も全都読ませていただきましたけれども、これを見ますと、この日航開発は、いろいろ見通し、予測も含めてこの監査報告書で述べられていますけれども、大変な状況にありますね。特にこの二年間、自社系列のホテル経営の世界的な展開を目指して、ロンドンとニューヨークでホテルを買収して開業する、一方で、サンフランシスコ、シカゴ、香港で相次いでホテルを建設し、投資規模は約八百億に上っているわけです。日航社内にも、こうした問題について、財務の健全性から危ぶむ声も強く出ているわけです。  この監査報告書で予測も述べていますけれども、それを見ますと、この日航開発とその傘下の会社について、連結ベースで算出した累積損失は一九八五年度末で三十一億円だったのが、新ホテルの展開に伴って業績が急速に悪化して、八八年には日航開発の資本金百二十億を上回る債務超過となっている、その後も累積損失が雪だるま式にふえている、九五年には三百億に達するだろうと予想が出ているわけです。また不足資金の追加借入残高が、八五年度以降の約十年間に一千億円を超し、監査報告では「当社のJDCに対する子会社管理上の問題点」というところで「早晩財務的な行き語りが危惧される所であるが、かかる事態に到ったことについては、JDC自体の経営責任の問題であるとしても、当社の親会社としての指導管理上の責任が同時に強く指摘されなければならない。」と言っています。  この指導管理上の問題という中で見ますと、JDCの発足以来昭和六十年に至るまで、合同役員会という日航日航開発の非公式な会議体、実際の正式の決定機関はそれぞれの会社の役員会であるはずですけれども、この合同役員会で、まだ調査段階にあるものまで了承された、そして事実上撤回しがたい状況が形成されてきた。「サンフランシスコ・ホテルなどは、昭和五十九年に合同役員会に報告されたのみで、事実上承認とみなされ、日本航空において何ら正式決裁を得ていないままとなっている。」というような指摘もございます。財政的にも今救いがたい状態に追い込まれている。そしてやはりこの監査報告の中の十四ページに、この債務の「その規模からして、親会社たる当社の経営にも重大な影響を及ぼすおそれがあるので、早急に抜本的な対策を講ずる必要があるものと判断される。」というふうに述べているわけです。  山地社長はどこかの座談のときに、これは一つの見方、意見だということを述べられたことがあるのですが、正式に監査役監査ですから、商法上でも職権を持った監査がやられているわけですね。その監査の結果のこういう文書が外へ出るのが残念で心を痛めているというお話も述べていますけれども、心を痛めていただかなければいけないのはこの中身なんですね。外へ漏れるのを心を痛める前に、こういった中身について社長がもっと心を痛めなきゃならないと私は思うのです。こうした監査報告について、日航経営にも重大な影響を及ぼすということを言っていますが、このような状況運輸省日航はそれぞれどのように受けとめられているのか、お尋ねしたいと思います。
  300. 山地進

    山地参考人 この監査報告と言われている文書でございますけれども、これは昨年の二月ごろでございましたか、日航開発経営状況について一回全般的によく見てもらった方がいいのじゃないかということを経営陣の中で議論いたしまして、監査役によく見てもらいたいということで、監査役はもちろん子会社監査は商法上の権限に基づいてできるわけでございますから、その商法上の権限を使って監査をしていただいたということでございます。しかし、監査報告そのものは、商法に規定しております監査を受けなければいけないというような監査報告書もあるわけですが、そういうものではない。  私どもの理解では、監査役が我々経営陣の依頼を受けて調査をした内部の資料であるというふうな位置づけをしているわけでございます。したがって、今先生が御引用になられたような表現というのは、むしろ監査役として内部の経営者に対して警鐘を乱打するという意味からはかなり激しい言葉というようなものが使われているわけです。通常外へ出す文書というものでございますれば、もう少しいろいろ言葉遣いというものは違ってきたのではないかと私は思っております。  いずれにいたしましても、実態がどうなっているのかということが我々経営陣の最大の関心事でございまして、そういうものについて、どういう言葉であろうと率直に問題があるぞという御指摘がありましたのは、私どもにとって大事なことでございます。したがって、この監査役報告書にあります事実について、どう認識し、どう対策を講じるかということだと思います。  先ほどお述べになりました、欠損の状態がどうなるかあるいは借入残高がどうなるかというのにつきましても、私どもの関連事業部が十分御協力を申し上げて、一つの仮定に基づいてやったわけでございまして、そのまま必ずそうなるということじゃございませんで、監査役が最後に抜本的な、対策を講ずる必要があるというように述べられているわけでございますから、私どもとしても今鋭意検討しているわけでございます。  ただ、検討の過程で既に決まったことを申し上げれば、既に大都市周辺のホテル展開というのはおおむねめどがついた、あとはリゾート地帯のホテルの展開であるということ、それから日航開発自体も体質改善に努力しなければいけないだろうということで、日航開発の私ども日航としての位置づけは、ホテルの展開というのは日本航空と一体不可分の重要なものである、しかし、都市のホテルについては展開が終わった、リゾートの展開については日航自体でこれをやっていきたい、したがって、日航開発はホテルの受託業務をやっていただくことが適切ではないか、こういうことを中心にやっているわけでございます。  個々のホテルの問題につきましては、それぞれ違った意味の問題がございますから、それぞれにまた対応策を講じていきたい、かように考えているわけでございます。
  301. 山田隆英

    山田(隆)政府委員 日本航空開発株式会社に関しまして、財務内容の悪化が懸念される等、監査役から指摘を受けているということについては私どもも十分承知をいたしてお力ます。  本件につきましては、日航開発というのは、先ほど来お話がございましたように日航子会社でございまして、運輸省といたしましては、直接その経営について云々する立場にはないというふうに考えておりますが、日航を監督する立場から関心を持って見守っておるところでございます。日本航空といたしましては、日航開発経営内容に問題があるという認識のもとで、ただいま社長からいろいろお話がございましたが、その経営改善に努めるべく努力をしておるところでございまして、運輸省といたしましても、日航に対しまして、子会社経営について十分管理指導を行い、いやしくも日航本体の経営に問題が生じることのないよう適切に対応するよう要請したところでございます。
  302. 中路雅弘

    中路委員 個々の指摘について一つ一つ述べませんけれども、例えば、私も驚いたのですが、日航開発が八五年の七月にマリオット社から一億七千五百万ドル、当時の為替換算で約四百二十億で買収し、十一月に開業しましたエセックス・ハウス・ホテルというのがあるのですが、これが年じゅう満室でも赤字で、開業後十五年にわたって毎年金利さえ支払えない、一九九九年には三千万ドルという金利支払いの額になるということが出ています。資本金百二十億の日航開発一つのホテルを購入するのに資本金の三倍の借入金でやるとか、そして日本生命のアメリカ支社より年利一二%、調べてみましたら、六十年当時国内の市中銀行ですと金利が七・五九%ですから、はるかに高い金利でその資金総額の八〇%を日本生命から融資を受けているというような、大変驚くような経営がやられているのですね。  この問題についてきょう会計検査院にも来ていただいているのですが、先ほどお話しのように子会社でもありますけれども日航が資本金の六七%を出資している会社でもありますし、この問題についてこうした報告も出されているわけですから、会計検査を一度当然やるべきではないかと私は思いますが、御意見をお伺いしたいと思います。
  303. 関本匡邦

    ○関本会計検査院説明員 お答え申し上げます。  御指摘の点につきましては、近く予定しております会計実地検査の際に、先生指摘趣旨も踏まえまして調査検討してまいりたいと存じます。
  304. 中路雅弘

    中路委員 報告にも、これは一子会社の問題にとどまらない、日航の大きな負担となって経営に重大な影響を及ぼすということを述べているわけですから、今お話しのように会計検査院にも、秋口ですか日航の検査の際に、日航開発についても私の質問を踏まえて検査をするという御答弁なので、これはぜひやっていただきたいと思います。  それで、この日航開発が現在のようになる以前に、運輸省日航に対して、日航開発の問題について通達で行政指導されているのですね。いつどのような経過で出されたのか、その内容についてお尋ねしたいと思います。
  305. 山田隆英

    山田(隆)政府委員 日航開発に対しまして運輸省から出した通達でございますが、これは昭和五十四年三月二十二日付でございまして、当時の航空局監理部監督課長から日航の関連事業室長あてのものでございます。  ここで言っておりますのは、五十三年度の資金計画の予備費使用の承認をした際に、この日航開発の再建に当たって日本航空指導、支援が必要不可欠であるので、万全を期して同社の健全運営に当たってほしいということを申し述べ、さらに「同社が今後展開を予定しているもののうち、今後の事業運営に大きな影響を与えると考えられる本格的都市ホテルの確保及び中国へのホテル展開については、あらかじめ当局に説明し、同意を得てから実施に移すこととされたい。」という文書でございます。
  306. 中路雅弘

    中路委員 今お話しになりました五十四年三月に出された通達に基づいて、日航開発について具体的な通達等出されたわけですから、日航に対して運輸省としてその後どういう指導を行ってこられたのか、もう一度お聞きしたいと思います。
  307. 山田隆英

    山田(隆)政府委員 この通達は、先ほど申し上げましたように、日航開発が当時展開を予定しておりました東京、大阪及び北京のホテル開発を念頭に置いたものでございます。この指導もありまして、大阪のホテル展開は進められましたが、残りのものにつきましては具体化されなかった経緯がございます。その後、昭和五十六年に日本航空株式会社法の一部が改正されまして、日航の予算について認可制が廃止され、またこの通達が対象としておりましたホテル展開も決着を見たことに伴いまして、本通達は現時点においては実質的にその意義を失ったというふうに理解しております。
  308. 中路雅弘

    中路委員 先ほど内容を御説明いただきましたけれども、この通達で、日航開発の再建に当たっては貴社、日航の「指導・支援が必要不可欠であるので万全を期して同社の健全運営にあたられたい。」ということも述べているわけですね。そして「ホテル展開については、あらかじめ当局に説明し、同意を得てから実施に移すこととされたい。」としているわけです。  その後の状況は今お話しのように幾らかつかんでおられますけれども、ここで言う運輸省承認ないし同意や説明を事前に受けてやるべきだということが十分やられていない。そして先ほど御答弁にありましたけれども、特にその後の八一年の日航法の改正ですね、一部改正で、お話しのように日航の予算について運輸大臣の認可が必要なくなった。毎営業年度の資金計画及び収支予算の許可制を廃止をしたわけですから、最近、御答弁のように運輸省自身も、この一部改正によって日航のホテル展開についてその後何ら具体的な手は打たれていないわけです。前回の日航法の改正による規制緩和によって、日航開発の問題が十分指導されない、チェック機能がなくなったわけですから、それがまた一層今日の深刻な問題を起こしているということにもつながってくるわけですね。私は、こういう点で規制をただ外せば自主的な経営が進展するというのではなくて、逆にこうした十分な指導、規制が行われなくなったということが放漫経営を一層助長する要因にもなったのじゃないかと思います。  山地社長が、日本航空新聞の八六年の十月二十三日付をお読みしますと、こう言っているのです。なかなか、かつてのように航空輸送産業で高収益を期待しにくい。だから、グループ全体として発展していく。つまり多角化の推進という観点からも、完全民営化というものをなし遂げたいと考えているわけですというふうに述べているわけですね。  航空輸送産業ではなかなか高収益がこれから期待しにくいから、もっと日航が多角化の推進という観点からやっていく、利潤をそれて追求していく、こういう観点に立ちますと、今の日航開発で私、例で挙げましたけれども、こうしたホテル展開を含めて事業の方に一層仕事が促進されてくると、最初に大臣にお尋ねしましたように、日航自身が一番やらなければいけないのは、まず安全輸送の確保ですね。そのためのいろいろ労使関係の問題もあるでしょう、あるいは機材の整備もあるでしょう、こうしたところを重点的にやらなければいけないけれども、今度は利潤を上げる、高収益ということになれば、その本来の航空事業から今度は多角化ということですね。放漫経営指摘されているようなこうした問題が再び助長されるということになりはしないか。  私は、この監査報告を受けとめて、まずどのように反省されているのかということをいろいろ文書で見たのですが、やはりこうした経営の機密が次々出ていくのに心を痛めるとか、あるいは今度は多角化に行かなければいけないとかいう認識じゃなくて、今までのように適正な需要予測に基づかないで収益確保を目的にしていろいろ過大な設備投資をやるとか、こういうことじゃなくて、やはり安全の向上とか部品の必要な確保労働条件の問題、適正な人員の配置とか、こういうところに日航が今メスを入れる、適正な施策が必要になっているんじゃないかと思うのですが、この航空新聞を私読みまして、利潤追求のためのグループ化の推進と、そのために完全民営化が必要だという認識ということになれば、こうした日航開発の問題などの再発防止どころか、航空事業以外の分野でどんどんこうした問題がさらに助長される、そういう懸念を持つわけです。日航法を廃止する目的の重要な一つに、日航経営多角化ができるように規制をなくしたのかどうか、そういう認識なのかどうか、運輸省それから山地社長にもう一度尋ねたいと思うのです。
  309. 山田隆英

    山田(隆)政府委員 このたびの日航完全民営化によりまして、従来日航株式会社法によりまして行われました規制が撤廃されるわけでございまして、それによって日本航空は自主的かつ責任ある体制が確立されることを期待しておるわけでございます。その結果といたしまして、日本航空が多角的な毒薬経営を行うということについては、当然そういうことも予想されるところでございまして、私どもとしては、日本航空安全運航確保ということを第一の前提といたしまして、それ以外の点で収益を上げる事業に展開をしていくということは決して好ましくないことではないと考えております。収益を上げることによって安全巡航に対するいろいろな措置も可能になってくることがあるのではなかろうか、そういうふうに考えておる次第でございます。
  310. 山地進

    山地参考人 今御引用になりました記事につきましては、若干舌足らずであったかと今反省はしております。と申しますのは、私は航空事業が衰退産業とか問題がない産業だとか思っておりません。今度の中期計画で私どもが計画いたしましたように十分収益を上げる事業だろうと思います。しかし、やはり事業の多角化というのは、人のまねをするわけではございませんけれども、どの事業でも考えていることでございます。  ましてやホテルというのは航空事業と一体不可分の関係があるわけでございまして、全日空がマニラ、シンガポール等にまだ飛行機の行っていないところまでホテルを持っておられる、あるいは溜池のところに五百億もすると言われておりますホテルをお建てになっているのをごらんになっても、あるいはヒルトンが十億ドルのホテルを持っている、これを売ったときに買いに出たのはユナイテッドエアラインでございます、あるいはルフトハンザ、KLM、こういうような会社がオファーをしているわけでありまして、私は、ホテルを確保するということも航空事業の必要な事業だろうと考えております。したがって、日航開発を私どもの関連事業の中核に据えておるわけでございます。  今のような多角化のために民営化をしていただくというつもりはございません。しかし、日本航空としては、民営化後も多角化ということで航空事業と関係のある総合輸送事業として各方面において活躍をさせていただきたい、かように考えております。
  311. 中路雅弘

    中路委員 新聞の談話については少し軌道修正するような発言をされましたけれども、では具体的に幾つかお聞きしたいと思います。     〔小里委員長代理退席、委員長着席〕  日航の大事故後、日本航空が世界で起きているイレギュラーやインシデントの情報交換やその分析をやったり、特定の機材に特定の整備関係者が当たる機つき整備士制度を実施するなど、一定の安全のために改善策をとっておられるということは承知しておるわけですが、しかし、この機つき制度についても現場の人たちの御意見をいろいろ聞いてみますと、現場の人員不足とパーツ不足のために、部品の不足のために、いわゆる機つき整備士制度に対応した人員がいない。だから、労働強化になったりあるいは部品の不足のために有効に機能しているとは言えないというのが多くの現場の人たちの意見なんです。また昨年末のアンケート調査を見ましても、整備ラインで働く十名のうち六・五人が機材の整備については以前と全く変わらないとか悪くなったということさえ答えを出されています。  こうしたことを裏づけるように、資料を見ますと最近イレギュラーやインシデントが続出しているわけです。ことしの三月、四月、五月の三カ月間、これは乗員組合の資料を見ましたけれども、十五件発生しています。機つき整備士制度という制度を採用されてきているわけですけれども、実際に現場で言われているように、それに対応した体制がないということからこうした事故も発生しているわけですが、こうした問題の改善についてどのようにお考えですか。
  312. 中村資朗

    中村(資)政府委員 機つき整備士制度につきましては、日本航空事故後の安全対策の一環といたしまして昨年の七月から設けた制度でございます。安全の確保に関して向けられた同社の工夫のあらわれであるというふうに我々としては受け取っているわけでございます。発足して一年の制度でございまして、これまでの結果からも、飛行中の故障発生率の頻度は若干下がっている、これは当然のことかもしれませんが、一定の改善効果は見られるということでございますので、そういうことを頼りにこの制度の存続につきまして考えてまいりたいと思っておるわけですが、まだ途中でございますので、評価そのものに言及することは避けたいと思うわけでございます。  ただ、今先生おっしゃいましたように、この機つき整備士制度のためにそれだけ現場で人が張りついてしまうということがございますので、そういう意味で、人員の養成その他ということでの困難点が出ているということは聞いておりまして、その点については今後日航の中でもお考えになってまいるのであろうというふうに考えております。  なお、インシデントのお話がございましたが、具体的な数字は私は持ち合わせておりませんが、新聞に出たのも結構ございますので、この件につきましては、私ども、整備審査官その他四名つけていただきましたので、そういう審査官等を十分利用いたしまして、いろいろな定例会議等の席で日本航空その他の航空会社と十分連絡をとって、少しでも減らすような努力を続けてきておるところでございます。
  313. 中路雅弘

    中路委員 機つき整備士制度という改善策をとられていることについて私たちも評価をしているわけですけれども、今お話ししましたように、それに伴った現場での対応が十分ないというところから、今御紹介したような現場からの直接の意見もたくさん出ているわけです。ぜひこれは改善をしていただきたいと思います。  日航で乗務している人たちは比較的条件が優遇されているという話を一般に聞いていたのですけれども、実際の資料を見ますと、労働条件の問題やその他についても十分検討しなければいけないのだということを、安全の確保ということも絡めて思うのです。  健康問題についてのいろいろな資料が出ている中で、これは機長組合、乗員組合等が出されましたパンフレットで見たのですが、例えばボーイング747、この機長の八六年十月のスケジュールからライン稼働のグループリーダー以下二百四十八名の平均で出ていますけれども、機長の一カ月間の平均乗務相当時間、拘束を含めた相当時間で外国他社との比較が出ていますけれども、例えば日航は、今言いました八六年の十月現在で一カ月間九十三・三時間ですね。ノースウエストで見ますと、八二年十一月ですが七十一・二時間。英国航空は、八四年ですが六十五・六時間というのが出ています。実際の月間の休日で見ますと、日航が十一・八日、ノースウエストが十六・三日、英国航空が十五・六日、パンアメリカンが十六・五日というのが出ています。こうした表から見ますと、日本航空の機長の場合、欧米の会社に比べて実乗務時間が多い。月間の休日数は平均して月三、四日下回っている。年間にすれば約四十日前後の差が出てくると思うのですね。休日の一つである有給休暇を見ましても倍近い差が出ているわけです。  もう一つの国内航空会社の全日空との比較で出ている資料がありますけれども、B747の副操縦士ですが、三十五歳、七、八年の経験で、扶養家族三人という同じ条件で比較してみますと、給与の面で、JALの方が年間百三十三万円水準が低いという数字も出ているわけです。  人件費の営業費に占める比較ですが、これは各社の年次報告書の比較が出ていますけれども、営業費に占める人件費の比率で見ますと、八五年ですが、JALが二四・三%、アメリカンが三六・五%、デルタで見ますと四三・〇%ということでして、やはり著しくJALが低いということも言えるわけです。  私は、こうした面を見ますと、少なくとも他の航空会社並みに是正が検討される必要があるのじゃないかということを感じるのですが、いかがですか。
  314. 山田隆英

    山田(隆)政府委員 ただいま先生から日航のパイロットの勤務条件であるとかあるいは賃金の他社との比較についての話がございました。このようなパイロットの勤務条件、賃金の比較につきましては、外国との比較の場合には、その社会環境であるとか賃金制度の相違あるいは為替の要素もございますし、また国内の他社との比較でございましても、勤務条件はある会社の方がいい、しかしながら、賃金の条件はある会社の方がいいというようなことで、千差万別ではなかろうかと思います。そのようなことで、他社との単純な比較というのは非常に困難な面がございます。  今JALの勤務が非常に悪いのではないかというような御指摘、数字を挙げて述べられたわけでございますが、例えば乗務員の編成数について見ますと、東京−米国の西海岸におきまして、ユナイテッド航空はシングル編成ということで、操縦士一名、副操縦士一名、航空機関士一名の三名で運航しておりますのに対しまして、日航はマルチ編成ということで、操縦士二名、副操縦士一名、航空機関士二名の五名体制になっております。そういう意味では、日本航空の方が勤務条件が良好といいますかあるいは勤務が緩いということが言えるのではなかろうかと思います。  また賃金の問題についてただいま全日空との比較がございましたが、ある一定のモデルの賃金をとってみました場合に全日空の方が高いということ、確かに比較した資料は私どもも手元に持っております。全日本空輸の場合、三十五歳のボーイング747の副操縦士ですと年間の収入が千三百六十万四千円ほどでございます。それに対しまして日本航空の年収が千二百五十七万円ほどでございますので、今おっしゃいましたように百何十万円かの差がございます。ただこれは、私ども聞いておるところでは、日本航空の職員は、どちらかというと年功加給的で、ある年を超えるとだんだん給与が上がっていく。その場合には全日空よりも日本航空の方が給与が高いというふうに聞いております。そういう意味で、生涯賃金を比較した場合に必ずしも一概に全日空の方が日本航空よりいいと言えないのではないかということで、これも、賃金につきまして単純な比較が非常に難しいと思います。ただ、今おっしゃいましたように、ある一定のモデルをとってみれば全日空の方が確かにいいという統計資料はございます。
  315. 中路雅弘

    中路委員 私も今詳しくいろいろ条件をつけてお話ししているわけじゃなくて、幾つかのモデルでお話ししているのです。それはお認めになったように、例えば一つのモデルをとってみると確かに低いというのが現実にあるわけですから、そういう点で、そちらをずっと優遇しろという意味じゃなくて、少なくとも皆同じ航空会社で勤務しているわけですから、平均して低いところは他社並みに検討もする必要があるのじゃないか、是正をする必要があるのじゃないかということを主張しているわけなんですね。日航の方はどうですか。
  316. 山地進

    山地参考人 私どもも、いろいろな機会に組合方々からいろいろな数字を伺っております。そういった数字をどういうふうに客観化して今後の賃金あるいは勤務条件に反映していくかというのは、私どもの非常に大事な役目だと考えております。したがいまして、人事、賃金制度というもの、これはプロペラの飛行機のときから長年私どもの方に培われたものでございますので、この民営化の機会に人事、賃金制度というもの全体をよく見直したいということを考えておりまして、そういった勤務条件あるいは賃金というものについてもいろいろな角度から検討をしてまいりたいと考えております。
  317. 中路雅弘

    中路委員 時間が限られて、きょうはあと十分くらいしかありませんので、残されたものはまた後で御質問しますが、残された時間十分で一、二問お聞きします。  これはアメリカの航空事業者の団体で、御存じのATA、これの航空安全委員会が出している資料で私は見たのですが、世界の航空会社の中での全損事故率が出ています。日航の場合お調べになっていると思いますが、日航の全損事故率についてどういう状況であるのか、最初にお伺いしたいと思います。
  318. 中村資朗

    中村(資)政府委員 日本航空では、昭和三十五年から昭和六十一年の間に、訓練機を除きますと十件の全損事故がございました。それで有償飛行時間四十八万九千時間に一件の割合でございます。また四十五年から六十一年ということでデータをとりますと、全損事故は八件でございまして、有償飛行時間四十九万七千時間に一件の発生率でございます。  なお、米国の航空会社の全損班故率の話、ATAの話がございましたが、こういう資料はなかなかとりにくいものといいますか、データが公表されておるものではないというふうに存じておりまして、比較が困難だと思います。それと、いろいろなブロックタイムその他をとって計算をするわけですけれども、なかなか比較データがそのときそのときによって違っておるようでございます。  ただ、国際的に非常によく使われておりますデータといいますのは、ICAOと言っておりますが、国際民間航空機関の統計がございます。これによりますと、昭和三十五年から六十一年の間の十万飛行時間当たりの死亡事故率でございますけれども、これは〇・二三になっておりまして、同期間の日本航空の死亡事故発生率と比べますと、日本航空の方が〇・一二でございますので、国際民間航空機関の方、世界の定期航空会社の死亡事故発生率の方が高いということになっておるわけでございます。
  319. 中路雅弘

    中路委員 これは指摘だけしておきますけれども、私、予算委員会の議事録を見ましたら、運輸大臣が、全損事故率の質問で、資料もお持ちでなかったのでしょうけれども、この十年の間は相当多いけれども二十年をとってみるとそうでもないという答弁をされているのを見たのですが、今御答弁がありましたように、一九六〇年から八五年の間、それから七〇年から八三年を見ますとそう変わらないですね。だから、今御答弁にあったように、運輸大臣が予算委員会で答弁されているのは、ちょっと資料もなかったかもしれませんけれども、やはり事故が多いということは十年、二十年とっても同じなんですよ。  それで、私の持っています、ATAの今言いました資料ですけれども、これで見ますと、一九七○年から八三年の間で日航の場合に三十七万時間に一回ということになっています。アメリカン航空の場合に四百二十二万五千時間に一回、全日空の場合に二百八十七万五千時間に一回、各社皆出ていますけれども、一、二引き出しますとそういう状況なんですね。ちなみに米国全体、各社合わせたものの平均は百二十一万時間に一回ということになっています。単純にいえば、日航に比べてアメリカの方が平均で三倍、全日空では八倍、アメリカン航空では十二倍の安全保障が得られているというようなことにもなるわけです。  いろいろ資料のとり方がありますから細かい数字の違いも出てくると思いますけれども、しかし、この日航の現状は、日航事故多発の体質ということはこうした幾つかの資料でも明白なんですね。最初にお話ししましたように、安全確保ということが航空行政にとってとりわけ大事な問題ですけれども、その中でも日航がこれほど十年、二十年事故が多発している。この体質をあらゆる面から検討して、その改善を具体的にやっていくというのが国民日航に求めている今最大の問題ではないかということを私は改めて痛感するわけです。  そういう点でもう一問、これで時間ですから最後にお聞きしますけれども、六十一年度の運輸白書で、日航機のこの前の事故航空輸送に与えた影響、輸送人員、いわゆる逸走率、逸走量というのが資料に出ています。昭和六十一年の六月までですが、事故の翌日から、この事故がなかったと仮定した場合の予測輸送人員と輸送実績との差ということで出ていますけれども、約四百四十万人、逸走率が一〇・七%、運賃収入の約一一%が減収になっているという資料が出ています。  こうしたものを見ましても、事故経営にもどれほど大きな影響を与えたかということは明白でありますし、やはり最初にお話ししましたように、安全の問題を中心に確保していくことに今、日航は全力を挙げるべきだ。先ほど若干軌道修正されましたけれども山地社長が新聞で述べられているそのままを見ますと、これから航空の収入で高収入が期待できないから多角経営でやっていくのだということになると、そういうことで今度また枠を外して、この日航法の規制も外してやっていくということになれば、ますます合理化ということが当然問題になってきます。  きょうは時間ありませんからまた改めて聞きますけれども、最近新聞等でも日航の九百人削減計画というのが報道されています。こうした問題を改めてまたお聞きしますけれども、最後に、日航に今求められているのは安全の確保の問題、そのための施策こそ国民が求めているんだということを私もう一度強調しまして、時間になりましたので、きょうの質問は終わりたいと思います。
  320. 鹿野道彦

    鹿野委員長 次回は、来る三十一日金曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時五十一分散会