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1987-05-20 第108回国会 参議院 予算委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十二年五月二十日(水曜日)    午前九時開会     ―――――――――――――    委員の異動  五月十九日     辞任         補欠選任      塩出 啓典君     太田 淳夫君      神谷信之助君     上田耕一郎君      勝木 健司君     三治 重信君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         桧垣徳太郎君     理 事                 佐藤栄佐久君                 原 文兵衛君                 降矢 敬義君                 村上 正邦君                 吉川 芳男君                 野田  哲君                 峯山 昭範君                 沓脱タケ子君                 橋本孝一郎君     委 員                 石本  茂君                 大塚清次郎君                 梶木 又三君                 金丸 三郎君                 北  修二君                 坂野 重信君                 坂元 親男君                 下稲葉耕吉君                 杉元 恒雄君                 関口 恵造君                 竹山  裕君                 名尾 良孝君                 永田 良雄君                 野沢 太三君                 鳩山威一郎君                 林 健太郎君                 林田悠紀夫君                 増岡 康治君                 森山 眞弓君                 吉村 真事君                 稲村 稔夫君                 粕谷 照美君                 福間 知之君                 矢田部 理君                 安恒 良一君                 山口 哲夫君                 太田 淳夫君                 高桑 栄松君                 中西 珠子君                 上田耕一郎君                 吉岡 吉典君                 三治 重信君                 田  英夫君                 青島 幸男君                 木本平八郎君    国務大臣        内閣総理大臣   中曽根康弘君        国 務 大 臣  金丸  信君        法 務 大 臣  遠藤  要君        外 務 大 臣  倉成  正君        大 蔵 大 臣  宮澤 喜一君        文 部 大 臣  塩川正十郎君        厚 生 大 臣  斎藤 十朗君        農林水産大臣   加藤 六月君        通商産業大臣   田村  元君        運 輸 大 臣  橋本龍太郎君        郵 政 大 臣  唐沢俊二郎君        労 働 大 臣  平井 卓志君        建 設 大 臣  天野 光晴君        自 治 大 臣        国 務 大 臣        (国家公安委員        会委員長)    葉梨 信行君        国 務 大 臣        (内閣官房長官) 後藤田正晴君        国 務 大 臣        (総務庁長官)  山下 徳夫君        国 務 大 臣        (北海道開発庁        長官)        (沖縄開発庁長        官)        (国土庁長官)  綿貫 民輔君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  栗原 祐幸君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       近藤 鉄雄君        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)      三ッ林弥太郎君        国 務 大 臣        (環境庁長官)  稲村 利幸君    政府委員        内閣法制局長官  味村  治君        内閣法制局第一        部長       関   守君        警察庁交通局長  内田 文夫君        総務庁長官官房        審議官      百崎  英君        総務庁長官官房        会計課長     塩路 耕次君        総務庁行政監察        局長       山本 貞雄君        総務庁統計局長  三浦 由己君        防衛庁参事官   筒井 良三君        防衛庁防衛局長  西廣 整輝君        防衛庁経理局長  池田 久克君        防衛庁装備局長  鎌田 吉郎君        防衛施設庁総務        部長       平   晃君        防衛施設庁建設        部長       田部井博文君        経済企画庁調整        局審議官     田中  努君        経済企画庁物価        局長       海野 恒男君        経済企画庁総合        計画局長     及川 昭伍君        経済企画庁調査        局長       勝村 坦郎君        科学技術庁長官        官房審議官    川崎 雅弘君        科学技術庁原子        力局長      松井  隆君        国土庁長官官房        長        清水 達雄君        国土庁長官官房        会計課長     佐々木 徹君        国土庁土地局長  田村 嘉朗君        外務大臣官房領        事移住部長    妹尾 正毅君        外務省アジア局        長        藤田 公郎君        外務省北米局長  藤井 宏昭君        外務省経済協力        局長       英  正道君        外務省条約局長  斉藤 邦彦君        外務省情報調査        局長       新井 弘一君        大蔵省主計局長  西垣  昭君        大蔵省主税局長  水野  勝君        大蔵省証券局長  北村 恭二君        大蔵省銀行局長  平澤 貞昭君        大蔵省国際金融        局長       内海  孚君        文部省教育助成        局長       加戸 守行君        文部省高等教育        局長       阿部 充夫君        文部省学術国際        局長       植木  浩君        農林水産大臣官        房長       甕   滋君        農林水産大臣官        房予算課長    上野 博史君        農林水産省経済        局長       眞木 秀郎君        農林水産省構造        改善局長     鴻巣 健治君        農林水産省畜産        局長       京谷 昭夫君        農林水産省食品        流通局長     谷野  陽君        食糧庁長官    後藤 康夫君        通商産業大臣官        房審議官     末木凰太郎君        通商産業省通商        政策局次長    吉田 文毅君        通商産業省貿易        局長       畠山  襄君        通商産業省産業        政策局長     杉山  弘君        通商産業省機械        情報産業局長   児玉 幸治君        工業技術院長   飯塚 幸三君        資源エネルギー        庁長官      野々内 隆君        運輸省運輸政策        局長       棚橋  泰君        運輸省地域交通        局陸上技術安全        部長       神戸  勉君        運輸省航空局長  山田 隆英君        郵政省電気通信        局長       奥山 雄材君        労働大臣官房長  岡部 晃三君        労働省労働基準        局長       平賀 俊行君        労働省職業安定        局長       白井晋太郎君        建設大臣官房長  高橋  進君        建設大臣官房会        計課長      市川 一朗君        建設省建設経済        局長       牧野  徹君        自治大臣官房長  持永 堯民君        自治省行政局選        挙部長      小笠原臣也君        自治省税務局長  津田  正君    事務局側        常任委員会専門        員        桐澤  猛君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○昭和六十二年度一般会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和六十二年度特別会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和六十二年度政府関係機関予算内閣提出、  衆議院送付) ○継続調査要求に関する件 ○委員派遣に関する件     ―――――――――――――
  2. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 予算委員会を開会いたします。  昭和六十二年度一般会計予算昭和六十二年度特別会計予算昭和六十二年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。  昨日に引き続き、締めくくり総括質疑を行います。三治重信君。
  3. 三治重信

    三治重信君 一番初めに、今問題になっております国立大学入学試験期日のA、Bのグループの問題についてちょっと。  今、新聞情報によると調整が困難になっていると。去年は五月七日にA、Bが決まった。ところが、京大が変更するかしないかというようなことで今非常に新聞をにぎわしておりますが、A、Bグループを地域的にも、また足切りを少なくするためにも、各大学自主性だけでなくて、ある程度の地域的に均衡を持ったものに決めた方がいいんじゃないかと思うんですが、総理文部大臣のこれに対する対処の仕方、五月二十七日には国大協の最終的な決定があるようなことを聞いておるんですが、いかがでございますか。
  4. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) 御指摘のように、ことしは去年よりは少し日程がおくれておるように思いまして私たちも心配して憂慮しておるところでございますが、この二十七日に国大協役員会を開きまして、来月総会を開き、そこで最終的な決定をするということになっておるわけでございますが、これはできるだけ確実に実施いたすようにいたしたい、こう思っておる次第でございます。  なお、A、Bグループ分けといいましょうか、入学試験全体についてでございますけれども、これは申すまでもなく大学が自主的にやっておるものでございまして、それだけに大学の自主的な決定を尊重しなければなりませんけれども、しかし文部省としては、できるだけ機会均等とそれから複数化をやったその趣旨を生かすように、学校に対しまして強力に勧告なり指導をしておるところでございます。
  5. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 入学試験改革問題というもののそもそもの発端は、やはり受験生チャンスをうんと与えるようにしたらどうか、今のような試験地獄というものの様相をできるだけ解消したい、それからいわゆる機械的な試験方法でなくして、もう少し深く入った、思考力等も見る試験に変えたらどうか、そういうような趣旨で改革が行われていると思うんです。そういう趣旨に沿ってできるだけ受験生チャンスを与える、そういうやり方が望ましい。  国大協もそういう線に沿ってA、Bというような線を決めたわけですが、しかし、やってみるというと定員不足とかあるいは学生の質の問題というような問題も出てきたんでしょう。しかし、大学自体立場もさることながら、試験という制度自体を考えると受験生立場も半分は考えてやらなきゃいけない。そういう意味において、できるだけ機会均等で、広く、何と申しますか、多様化するようなチャンスを与えるというやり方が好ましいと考えます。
  6. 三治重信

    三治重信君 この問題はこれまでにしておきますが、とにかく三十万人からの若い大学受験生が目をみはって見ているところですから、大学自主性ということを尊重しながらうまいところ導いていただきたいと思います。よろしくお願いします。  私は、きょうは主に円高の問題を中心にして、日本がこのまま円高どんどん進むということになると、日本経済からあらゆるものがだめになる、円高を何としても防がなけりゃならぬ、そういう見地に立ってきょうは二、三の問題を御質問したいと思うんです。  まず第一に宮澤大蔵大臣に。大臣になられてからすぐ昨年の十月訪米されて、これは百六十円時代だと思うんですが、ベーカーさんと一応現状維持ということのように話し合いをしてきた。それから二月になってまた現状維持と。ところが、その間に日本の円は百六十円から百五十円に上がり、またこの間の五月のOECDの理事会では今度百四十円になってしまっている。これでは、G5なり何なりで大臣が行って、ファンダメンタルズ現状は大体いいんだというふうなのが、何だか日本だけどんどこどんどこ上げられて、それで現状どんどん現実を認められている、こういうような格好になるんじゃないかと思うんです。  こういうような問題に対して、もう少し円を、固定と言っちゃ悪いかもしれませんが、円高を防ぐ具体的な対策というものが何か考えられぬものか。これを中心に質問したいんですが、まず総括的にどういうふうにお考えになっているかお聞きしたい。
  7. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 私が就任いたしましたのは昨年の七月の終わりでございましたが、百五十四円ぐらいの相場でございました。九月にベーカー財務長官と話をしまして、十月の末に両者で共同声明を出しまして、年内大体百六十円というところがらみで推移をいたしましたが、御指摘のように、一月の二十日手前で相場がまた動き始めまして、それからおっしゃいましたような幾つかの、ルーブル合意であるとかワシントン合意であるとかございますが、今百四十円がらみのところでございます。  せんだって、中曽根総理大臣レーガン大統領首脳会談を行われまして共同声明が出されました中で、ここまで来るとこれ以上のドル下落アメリカ自身にとっても有害であるという、大統領がそういうことを言われたのは初めででございますが、そういうことがまたついせんだってございましたことは御記憶のとおりであります。両国とも、我が国としては内需拡大等々の努力アメリカとしては財政赤字の削減、貿易赤字の縮小というような努力をしつつ、それがしかしなかなか思ったとおりに結果が出てこない、あるいは時間がかかるというようなことから、その都度市場に何と申しますか、やや失望感というのでございましょうか、そういうものもございまして今日に及んでおるわけです。  それより前に、プラザ合意からもうほとんど二十カ月でございますので、これだけドルが下がりますと、これがアメリカ貿易赤字影響を持たないはずはないと私は考えておりますから、先行きとしては、そういう意味アメリカファンダメンタルズは少しずつよくなっていって、それが円ドル相場に反映をするはずであるというふうに考えております。また、我が国輸出数量では少なくとも微減ということになり始めておりますから、両方から考えましてそう期待をしております。  さしずめのところは、せんだって中曽根レーガン大統領のお二人の間の合意があり、また、見ておりまして、どうもやはり国内にいわゆる投機的な要素が為替取引にあるということは否定できないところでございますから、自由経済に決して口を挟むつもりはございませんけれども、いわゆる投機的な部分は、これだけ国民生活に大きな影響がある問題でございますから自粛をしてほしいということをせんだって申しましたようなことで、ただいまのところ相場は落ちついてはおりますけれども、実はしかし、これは先ほど申しましたように、これだけドルが下がりますと貿易収支というものはアメリカにとって改善をしないはずはない。我が国輸出数量としてはふえどまっておるというようなことから、やがて円ドル関係というのはいわばもう少しドルの高い方に変わっていくはずだというふうに私は考えております。
  8. 三治重信

    三治重信君 大蔵大臣としてはそう言わざるを得ないのでしょうが、しかし、最近の新聞報道で時事通信社のカウフマン氏のインタビューでは、大体年内には百二、三十円に上がるであろう、長期的には百円になるんじゃないかというようなことをアメリカ証券界のコンサルタントなんかが言っている。こういうことを考えると、政府はそういうことを言っておっても産業界やなんかはどんどん日本の円の高いのを希望しているようなことになっているんじゃないか、こういうふうに思うんですが、それに対する御意見を一つ。  それからもう一つ、不思議なのは、ドルは円やマルクに対してはどんどん安くなっているけれども、ほかのカナダやメキシコや南米やNICSなんかに対してはドル相場は下がっていない、だからドルは全体として見ると決して安くなっていないというふうに言われているんですが、こういう問題を同時にやらぬと、アメリカ赤字でも日本からだけがどんどんふえているんじゃなくて、同じようにほかのカナダNICSからもどんどん赤字がふえている。ドル相場は全然、日本と西独には高くして、ほかの国は同じだというんじゃドルは左うちわじゃないかと思うんですが、いかがですか。
  9. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 昨年の九月ごろ、私がベーカー財務長官と話しましたころと今とアメリカ側の事情がかなり変わってきたと思われますのは、御承知のようにまた金利が上がり始めまして、そのことがいわゆる住宅ローン金利と申しますか、モーゲージの金利にまでそろそろ二けたになるというようなことになってまいりましたので、ドル下落というものがアメリカのいわば政治の問題といいますか、国民生活の問題にまた金利を通じてなり始めておるということ、これが大統領などがあれだけのことを言われました一つの理由であろうと思うのでございます。そういう意味では、ドル下落というのはアメリカ自身にとってかなり深刻な問題になりつつあるということがこの半年間の一つの変化ではないかと思っておりまして、そういう意味でも、どんどんこれからさらに落ちていくというようなことはアメリカ自身が何とかして防がなければならない、こういう状況になっておるかと思います。  それから、御指摘のように他の通貨との関連でございますが、確かに、最初にマルクが昨年の初めごろ上がり始めまして、次に円ということになって今日に及んでおるわけですが、それに対してカナダドルに対してはアメリカから申しまして三%ぐらいの切り下げでございますね。それから韓国に対しては多分七%ぐらい、台湾には一九%ぐらいと言われておりまして、この韓国台湾の問題が我々にも非常に大きな影響があるわけでございますが、中南米の国はこれはもう向こうの通貨が非常に落ちるものでございますから、逆にドルにとっては切り上げになっておる、こういう状況でございます。  これはしかし、我が国マルクがいわゆるフロート、変動相場に入っておりますに対して、韓国台湾ドルにいわばリンクをしておるということでございますから、かなりアメリカが正直に言うとある意味で圧力をかけておるのだと思いますけれども、しかし、殊に韓国の場合には、債務国であるということも申しまして、アメリカの言うようにはウォンはなかなか上がっておらない、台湾の方はそれよりは少し上がっておる、こういう状況でございます。
  10. 三治重信

    三治重信君 先ほどお話があったように、投機的な動きに対して大蔵通産事務当局でその業界に注意を促したというのは非常に結構だと思うんですが、また一面、アメリカのこの間の国債の売却について一生懸命たくさん買うように、殊に日銀もたくさん買ったというふうな話が出るんですが、これは逆行じゃないか。何でアメリカ国債なんかに一生懸命になって、日本がこれだけどんどん円を高くされるのに国債なんか一生懸命になって買う必要があるか、こういうような感じ、むしろアメリカには、そんなに円を高くするならもうアメリカへの投資を控えるぞ、こう言うのが本当じゃないかと思うんですが、その点いかがですか。
  11. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) この点は、実際問題として全くそういう事実がなかった。つまり、政府が勧奨して五月の初めのアメリカの三百億ドルに近い入札、殊に三十年物について勧奨したというようなことがかなり報道にいろいろございました。あれくらい報道がございますと、大抵何か事実があるというのがお互いの経験法則でございますけれども、どうもこの場合は、ニューヨークで起こったことが、何と申しますか、我が国で起こっておればかなり情報総合ができますけれども、必ずしもそれはできないというようなことがありまして、日米情報の谷間みたいなものでああいうことが言われたというふうに思われます。  事実、三十年物の入札は四割ぐらい近くございましたので、従来とそんなに変わらない、まあまあであったんですが、これは私どもは一切勧奨というのは、勧めるというようなことをいたしておりません。日本銀行が七億ドル程度の、あれは三年物でございましたか、これも普通の運用の域を出ないんで、特に珍しいことではありませんで、何か政府が勧めたといったようなことが報道されましたのはこれは事実と違っております。
  12. 三治重信

    三治重信君 次に、円高にかかわらず円高にするというのは、貿易の不均衡を直す、貿易黒字を少なくする、こういう意図があったんだろうと思うんですが、現在までのところむしろ円高によってますます貿易黒字が高くなってくる、これはJカーブ現象だ、こう言われているんです。しかし最近、先ほど大蔵大臣もおっしゃったように、数量ベースでは微減をしているんだというような話もあったんですが、通産大臣、これは実際どの程度円高輸出数量減少傾向が出てきているのか。さらにこれが百三十円台になり百二十円台になるというような傾向になってくるとどういうふうに減る可能性があるのか、これのひとつ見通しをお伺いしたい。
  13. 田村元

    国務大臣田村元君) 現在までに出ておりますのは、八七年の第一・四半期をとりますと、ドルベースで、貿易収支動向で対世界が五六・三%プラスで、対米が五・九%プラス円ペースでいきますと、対世界が二八・六%のプラスですが、対米では一四・二%のマイナス、こういうことになっております。  それから、おっしゃるとおり、数量ペースでは確かに微減ではありますが減少傾向が出ておりますけれども、問題は、原油等の価格が非常に安くなっておるものですから、輸入の額を従来のような常識で見ることはできないというところに悩みがあるということは事実であります。現在の円高、幾らがいいかという問題より、むしろ余りにも急激で大幅であったということでありますので、これ以上の為替レートの調整というのは、もう我が国としても、新たなJカーブ効果の発生とか、それから黒字国における成長鈍化とそれに伴う輸入需要の減退、それから赤字国における物価上昇圧力の高まりというふうに、不均衡の拡大と世界経済縮小を招く可能性が多分にあります。でありますから、マイナス面の方がはるかに大きいというふうに受けとめておりますが、いずれにいたしましても、現在のところ、傾向としては確かに円高によって貿易収支調整がやや進んでおるということは事実です。
  14. 三治重信

    三治重信君 そういうことになると、今度政府は新しく三十万人雇用開発プログラムをつくって、先日も地域雇用開発等促進法も三月二十七日には成立をしたわけですが、こういうような円高傾向から見ると、当初の三十万人雇用開発プログラムをオーバーするようなことになるんじゃないかというふうにも考えられるわけですが、この実行予算が不足してくれば追加予算でも何でも支出してでも雇用対策はやるつもりですか。労働大臣、お願いします。
  15. 平井卓志

    国務大臣(平井卓志君) おっしゃいますように、非常にただいまの雇用情勢はかつてない大型でございまして、特に取り巻く環境の諸条件が大変に厳しいわけで、常々申し上げておりますように、基本的には、経済運営も産業政策もさらに雇用対策も合わせましたかってない総合的な対策でないと対応できないのではないかという判断に立っております。  特にこの雇用情勢の見通しというのが非常に不確かでございまして、かつ環境は厳しいわけでございますから、ただいま御指摘のございました三十万人雇用開発、それで大丈夫かということでございますけれども、雇用関係全般で約二兆三千七百億、失業給付費が相当部分でございますけれども、三十万人の開発に対して約一千百億ということで、全般で一〇%を超す予算をお願いいたしておるわけでございますが、非常に流動的でございますと同時に、この予算関係はやはり常用雇用等に対する半年以上の実績を見てみませんとなかなか結果はわかりませんけれども、今後制度を十分御理解いただいて、また私どももその運用については特に弾力的にやらなければならぬと思っております。  そういう意味で、この予算関係でございますが、私は決してこの三十万または一千百億にこだわっておるわけでございませんで、そのときどきの情勢を常に見直しながら、そういうケースの場合は応分の処置をして万全の体制で臨みたい、かように考えております。
  16. 三治重信

    三治重信君 ぜひひとつ、情勢がどう展開しても雇用失業問題は重要ですから、万全の対策をとってやっていただきたいと思います。  それから海外投資の問題なんですが、最近、貿易黒字以上に海外投資が行われているのは、国内の投資余剰ばかりでなくて、さらにユーロ市場からの短期のやつも借り入れて、そしてアメリカやほかへ投資をしている、こういうふうなことになっているようでございますが、最近の海外投資の類やそれかも投資の対象地、それから投資対象、こういう問題がどう変わっているのか、説明願いたいと思います。
  17. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 詳細は政府委員から申し上げますが、六十一年度、昨年度の長期資本のネットの流出、千四百四十九億ドルでございます。その前の年は七百三十一億ドルでございますから、かなり大きくなっておりまして、一般的に長期投資の半分はアメリカの債券だというふうに、ごく大まかにそういうことは言われておりますが、政府委員からなお詳しく。
  18. 内海孚

    政府委員(内海孚君) 昭和六十一年度における本邦企業の対外直接投資の数字でございますが、これは二百二十三億ドルでございまして、前年度に比べまして一・八倍というふうに大変ふえております。その内訳といたしましては、現在計数整理中でございますが、六十年度につきましては対米直接投資はその約四四%の五十四億ドルでございまして、恐らく六十一年度もほぼ同じような構成ではないかと思われます。  それから本邦投資家によります対外証券投資でございますが、これもネットの取得額で、昭和六十一年度は千九十七億ドルということで、前年度の約一・七倍でございます。これを種類別に見ますと、債券が九百九十億ドルでその大宗を占めており、株式が百八億ドルでございます。六十一年度の対米証券投資は、先ほど大臣の御答弁もありましたように、全体の半分弱、約五百億ドルでございます。
  19. 三治重信

    三治重信君 単に、日本で投資機会がないから海外へ資本投資するというのならまだ理屈がわかるんですが、外から金を借りてまで、円高で減価をするアメリカへほかから借りてまで金融機関が投資に走る。その結果先日は、生命保険会社なんかは一昨年で六千億、昨年で一兆円からの帳簿上の損失を出したと、こういうふうなことが報ぜられておるんですが、政府としては、こういうふうな海外投資に対する何らかの投資の基準とそれから損失の処理の基準、そうしないというと、これは何かスペキュレーション的に動いてきているんじゃないかと思うんです。そういうふうな円高に伴う海外投資、それから金融機関、これは大衆から預金を集めているわけですが、その信用の保持に対する対策というものはぜひ必要じゃないかと思うんですが、いかがでございますか。
  20. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) この問題は基本的には、私どもここ何年か自由化の方向を推し進めてまいりまして日本もこれだけの国際的な立場を持つ国になりますと、私はその方針は変えてはならない、日本の信用にもかかわりますことでございまして、自由化はさらに進めることはありましてももとへ戻ることがあってはならないというふうに基本的には考えております。  そこで、先ほど機関投資家の為替損のお話がございましたが、これはまさに委員が言われましたとおり、現実に損失を生じたのではなくて帳簿上そういう為替差損というものが出た、こういうことでございます。事実問題としては、これらの機関投資家は、昨年の経緯で申しますと、アメリカ金利がずっと下がってまいりましたから、そういう意味では証券価格が上がっておった。したがって、損は恐らく証券価格の値上がりでカバーできたはずでありますし、また逆に今度は金利が上がってまいりますと、日本との金利差が出ますものでございますから、日本に投資するよりはアメリカに投資する方が有利である。そういう両方のことから十分に為替差損はカバーできるだけの投資をしていたように思われます。  ただ、機関投資家の中でも、保険会社などは一種の免許企業でございますから、国としても当然契約者の保護ということに関心を持たざるを得ません。したがいまして、その辺のことはよく事情も聞いておりますし、また帳簿上の損失であっても早くその差損というものは処理をしておいた方がいいという程度の指導はいたしておりますが、基本的に見まして、機関投資家が全体の投資方針を誤って損失を招いたというようには見ておりませんで、事実問題としては、為替差損を超える潜在的な利益が生じておるというふうに見ておりますので、私どもは今そういう自由経済の動きに口を突っ込む気持ちはございませんし、また目下のところ、それらの免許企業についても口を突っ込むような心配な状況はないというふうに見ております。
  21. 三治重信

    三治重信君 アメリカの最近のヘリテージ財団の発表によると、アメリカへの投資の累計で千三百五十億ドルも出てきている。殊に昨年は対前年比三〇%も増加している。こんな状況からいくと、今のアメリカ財政赤字貿易赤字を早急に改善するということは、日本貿易黒字改善するのと同じように非常に難しい。そういうことになって、これは四、五年こんなことが続いていくというと、結局アメリカが大債務国に陥ってドルが暴落にいくんじゃないか。そうすると日本も、円高対策も必要だけれども、アメリカドルが暴落をする契機は何であろうか、こういうことについて特に検討し、暴落対策というものをしっかりやる必要があると思うんですが、いかがですか。
  22. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) せんだっての中曽根・レーガン共同声明にあらわれておりますレーガン大統領のいわば懸念、アメリカ自身の問題である、そうして財政赤字を縮小したいし競争力を回復しなければならない、この後者は貿易の問題であろうと思いますけれども、にあらわれておりますように、実はアメリカ自身が今御指摘のような問題についてかなり憂慮し始めておるわけでございます。それは昨年などに比べますと大きな変化でございますから、アメリカ自身のそういう意味での自律的な政策努力というものが強化されるであろう。そうされざるを得ない。また金融でも、これだけ金利が上がりますとそうせざるを得ないということになってまいったと思っておりまして、それは全体の問題について改善に貢献するであろうというふうに考えております。  ただ、アメリカ自身財政赤字をどのようにすれば縮小できるかということは、私どもがはたで見ておりましてあれこれ申しましても、その国にはその国のいろいろな方針もあり事情もございますから、それは差し控えるべきだと思いますけれども、やはりそういう努力がいろんな意味で強化される必要があるということは疑いないところだと思います。また、中曽根・レーガン声明でもそういうことは言われておるところでございます。
  23. 三治重信

    三治重信君 そういうふうな危険があることを予想すると、結局国際通貨の再調整といいますかをやる必要があるんじゃないか。日本アメリカへばっかり投資するのではなくて、ほかの国の政府と直接とか、国際機関とか、そういうふうに投資の対象を少し広げるとか、アメリカに対しては日本の円で借りてくれ、こういうこともきちんとやるべきじゃないか。それから欧州通貨のEMSに対するのと同じような、ある程度の変動幅を円とドルとで持ってきちんと歯どめをするとかというような国際通貨改革へ向かって少し出るべきじゃないかと思うんですが、いかがでございますか。
  24. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 我が国がこれだけ輸出をして輸入をしておりますものを円建てでということは、確かにそういうことを考えたいところでございますけれども、実は円の利用というのはまだ一けたでございます、一〇%にならない。これの一つの原因は、農産物であるとかあるいは石油でございますけれども、そういったものが一種の市場商品でございますものですから、国際的な、例えばロイターならロイターにしても相場ドルで建っておるということが円決済になっていかない一つの理由ではないかと思っております。ただ、それにしましても、だんだん円が各国の準備に占める割合も、これも一けたでございますが、少しずつ上がっておりますから、国際的な円の問題というのは、私どももどちらかといえばやはり前向きに考えていかなければいけないだろうというふうには思っております。  一昔前には、なるべく円にそういう役割を負わせない方がいいという考え方が御承知のようにございましたけれども、そういうわけにはまいらないので、やはり円の国際的な役割については前向きに考えていかなければならないのではないかと思います。
  25. 三治重信

    三治重信君 そういうふうなことなら、ぜひロンドン、ニューヨークに次いで第三の国際金融センターに東京を育て上げるようなことを積極的にやっていただきたいと思うんです。  それから今度は実物的な方面になるんですが、通産大臣、石油が安くなって、非常に輸入しても黒字が減らないということなんですが、日本は備蓄するということをやっていたんですが、現在、その実績はどうなのか。さらに、石油の値段をある程度底入れするためには、やはり日本が積極的に備蓄を宣言して備蓄をやっていくべきじゃないか、こういうふうなことを考えておりますが、どうなんですか。  それから農水大臣世界的に農産物は過剰で、今度OECDでも大問題になっているんですが、この過剰問題処理に対して、日本が在外で備蓄買いをするというふうな対策をすると農産物の過剰問題が少しでも解消になるんじゃないかと思うんです。  それからもう一つは、やはり今後ドルが暴落なんかすると、結局、金、銀その他貴金属が非常に上がってくるんじゃないか。そういうようなものに対する備蓄を考えたらどうかと思うんですが、そういうことに対する考え方はいかがでございますか。  各大臣、お願いします。
  26. 野々内隆

    政府委員(野々内隆君) 石油の備蓄の問題でございますが、御承知のように、第一次石油ショック以降、エネルギー安全保障のためにこれはぜひやるべきであるということで、IEAを中心としまして先進各国で備蓄の積み増しを行っております。現在、日本では民間備蓄が九十四日分、国家備蓄四十四日分、合計百三十八日分の石油備蓄を持っておりまして、毎年計画的に国家備蓄の積み増しを行っておりまして、六十二年度予算では三百万キロリットルの積み増しをお願いするという形で予算をお願いいたしております。これはIEAの平均が百六十五日でございまして、このIEA方式でやりますと日本はまだ百十八日でございますので、今後とも備蓄の積み増しは積極的に行いたいと思っております。  五月十一日に行われましたIEAの閣僚理事会でも同様の議論がございまして、各国、積極的に備蓄の積み増しを行っていこうということで合意をいたしております。
  27. 加藤六月

    国務大臣(加藤六月君) 食用小麦につきましては、約二・六カ月分の在庫を持っております。そして、二カ月先の船積み分を考慮しますと、買い付けをやっておるわけでありますが、考慮しますと、四カ月以上のものがあります。それから飼料用のトウモロコシ等は、これは全量外国から買い付けておるわけでございますが、これを今先生がおっしゃいました海外備蓄という点を考えますと、いろいろな問題があると思います。  そういう中で、特に食べ物等を考えた場合に安定供給ということが重要でございますが、いろいろな問題点があると思いますが、私たちが海外備蓄を考える場合に、例えばアメリカにおける一九七九年輸出管理法というのがあって、持ち出しを禁止されるという可能性もあります。また、一九七〇年の農業法におきましてもそれに類する問題があります。アメリカがそういう制度を発動するについてはいろいろな条件がついておりますけれども、例えば日本に対する大豆の輸出禁止とか、あるいはソ連に対する小麦の輸出等もやっておるのは、そういう法的根拠に基づいてやっておるようでございます。そこら辺の問題等も考慮していかなくてはならぬ。  なお、飼料用のトウモロコシ等につきましては、これは自由な民間取引のもとにあるわけでございますけれども、社団法人の配合飼料供給安定機構というものを国が助成し指導しながらその積み増し増加をさせておるところでございますが、少々の購入の増や少々の海外備蓄では、今日の世界の穀物の八千万トンを超す在庫、あるいはアメリカだけでも五千万トンの在庫ということ等を考えますと、これではなかなか、少々のことをやったんでは解消にならぬのではないか。私たちとしましては、国民に対する食糧の安定供給ということを常に念頭に置いてやっていかなくてはならぬと考えでおるところでございます。
  28. 三治重信

    三治重信君 もう一つ、貴金属の方。
  29. 野々内隆

    政府委員(野々内隆君) 金属の中で特に問題のございますのはレアメタルでございますが、これはほぼ全量を輸入に依存をいたしておりまして、かつ供給不安定な国が多いということで、将来日本の先端技術産業が発展するためにはどうしても必要なものでございますので、その中で特に七鉱種を選びまして備蓄制度が現在実施されております。六十一年度末で二十六・四日分備蓄されておりまして、六十二年度予算では五日分の積み増しをお願いいたしておりますが、将来これを六十日分まで高めたいということで計画的に備蓄の増大をいたしたいというふうに考えております。
  30. 三治重信

    三治重信君 今、備蓄も若干ずつ制度としてあるようなんですが、しかしそれは予算で少しずつというんでは、円高を抑制するためにもある程度日本の将来のためにもなりということで貿易の役に立つと思ってやっていることなんですが、予算だけでは対策としては非常にまずいんじゃないかと僕は思うので、もう少し機動的な備蓄対策というものをぜひ考えてもらいたいと思うんです。  次に、物価対策なんですけれども、円高によって今や日本世界生活物資の高い国で、いわゆる物価から見ると住みにくい国となった、こういうふうに言われているわけなんですが、OECDの発表による昨年の購売力平価でも一ドルが二百二十三円だ、こういうふうに発表されております。また一面、卸売物価で百八十三円とか工業製品の卸売物価だと百七十二円、購買力平価でいくとこういうふうに。それでも円高によって日本は非常に高くつくようになっておるんです。一方、経営者の方は、サラリーマンに対する支払い賃金では今や世界二畳い賃金を払っているんだ、これ以上払えぬ、こういうふうなことが今労使関係で問題になって、賃上げが非常に抑えられる。  こういうふうになってくると、一面物価をどうして抑えるか。殊に、円高のメリットを利用して物価を下げるということに対して政府は一生懸命やっているんですが、私が言いたいのは、特に政府の統制している、また料金を公定しているものが非常におくれているんじゃないか、こういうふうに思うわけですが、そういうものに対する円高差益の還元の方向というものをひとつ御報告願いたいと思うわけであります。  今国、経済企画庁の物価局から「円高・原油安と我が国の物価」という非常にいい資料が出されていて、私も見て、具体的に一々聞こうかと思ったんですが、この中に資料が全部出ているから一々は聞きませんけれども、例えば、東京とニューヨークの比較でも、牛肉は三・三倍している、ガソリンは二・八倍している、牛乳は二倍になっている。こういうことで、アメリカ日本の勤労者の食料品価格だと五三%も日本は損をしている。結局見えざる負担をしている。税金と同じような負担の関係になるんじゃないか。こういうふうに考えるわけですが、いかがでございましょうか。
  31. 近藤鉄雄

    国務大臣(近藤鉄雄君) 先生も御指摘のとおり、日本のGNPを今の円ドルレートで換算いたしますと、日本の労働者の賃金は世界最高になるわけでございますが、その割には豊かさの実感がございませんのは、これも先生御指摘がございましたように、食糧だとか光熱エネルギーだとか住居、こういった生活に必要な商品の価格が高くて、もしも今の商品をアメリカの価格で買えば、食糧では半分以下とかエネルギーでも半分以下、住宅でも七割ぐらいで済むわけでございますので、やはりそうした食糧とか光熱エネルギー、そして住居というものを国際価格並みに安くするための構造的な政策を積極的に進めていくことが急務でございまして、まさに経済審議会の経済構造調整特別部会の建議もその線に沿ったものであると考えているわけであります。  実は今、総理の御指示も得まして緊急経済対策を準備中でございますが、この対策の中にも積極的な、前川報告の趣旨に沿った政策実施ができるように今政府を挙げていろいろ配慮している次第でございます。
  32. 三治重信

    三治重信君 私は、政府が農産物の価格統制を直接非常にやっている、ここのところは円高差益を返してもらうような値段の下げ方をぜひやってもらいたい。  それから運輸省や郵政省には、航空運賃や国際通話料なんか、こんなものは認可じゃなくて届け出制ぐらいにして、実質的にはわずかの独占会社がやっているわけなんだから、価格統制を外したらどうかと思うんですが、御意見いかがでしょうか。
  33. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) これは委員よく御承知のとおりのことでありますが、国際航空運賃は世界的にそれぞれの関係国の認可に係らしめているのが原則でありますし、また発地国の通貨建てが原則であります。私どもは、この枠組みの中で、為替の動向とか企業の経営状況等を踏まえながら、方向別格差の縮小とかあるいは個人割引運賃の拡大等、利用者の立場に立った運賃設定に今までも努力してきたつもりでありますし、これからもまた努力をしてまいりたいと思います。  ただ、今の委員のお話の中で多少御理解を願いたいと思いますのは、航空企業におきましては外貨建ての収入と同時に外貨建での経費がございます。例えば今、原油の価格低下等に伴いまして燃料費については確かにかなりの費用削減を見ておるわけでありますが、例えば昭和六十年度の日航の収支を見てみましても、外貨建て収入は確かに二七%程度を占めておるわけでありますが、外貨建ての経費もまた大体二七%、そういう状況にあることも御理解をいただきたいと思います。
  34. 唐沢俊二郎

    国務大臣唐沢俊二郎君) 電話料金につきましては、利用者と企業とのバランスをとる、できるだけ安いサービスを提供するという観点から認可になっておるわけでございます。  それから、よく国際電話料金は円高メリットがあるのでこれを還元せよというお話でございますが、実はKDDは円高の差損を受けておるわけでございます。外国の電気通信事業者は両国間で差額を決済いたしますが、日本は着信が多いわけですから、相手国からの支払いが多い。その支払いが大体ドル建てでございますから、円高差損を受けておるわけであります。しかしながら、KDDは過去、五十四年から七回外国の電話料金を引き下げておりまして、特に昨年の九月には一三%引き下げている。そして、西ドイツやイギリスには及びませんが、アメリカカナダとはとんとんになった。イタリアやオランダに対しては日本の方が割安であると胸を張っておったのでございますが、それもつかの間でございまして、その後の円高によりまして、今は特にアメリカに対して割高感がある。まだイタリアやオランダに対しましては割安でございますが、アメリカに対しては高い。  そこできっと、もう一回引き下げを考えたらというお話だろうと思うわけでございますが、KDDの年間の収益は二千億ちょっとでございまして、利益は百億台でございますから、例えば一割引き下げたら利益がなくなってしまうわけです。そういう非常に厳しい経営状態でございますが、先生からの御指摘もありますし、日本の直際国家としての立場も考えなければならないということで、できるだけ著しい不均衡が解消するように、格差が解消するように努力するよう指導いたしたいと思います。
  35. 三治重信

    三治重信君 運輸、郵政の大臣の御発言はわかったんですが、それならそれをもっとはっきり国民に、この円高差益はこういうぐあいになっているんだ、十分還元しているんだと。航空料金は国際的に認可に保っていて、関連がこうあるんだというようなことをやらぬと、我々も新聞や雑誌を読んで一方的にそう考えちゃうわけだから、ましてや一般の国民はもっと――実際に航空運賃でも、アメリカで切符を買うと二割も安く買えるというようなことの方が真実になってきちゃうわけですね。ぜひ国民に対して円高メリットに対するPRというものをやらぬと相互誤解が起きる、こういうふうに思うんです。  その次には、同じような相互誤解になるかもわかりませんが、市場開放の問題です。  総理、アクションプログラムを昨年やったんですけれども、最近言われるのは、確かに政府の規制緩和はできたんだけれども、現実の第一線は全然変わっていないんだと。それは実際、政府の役人はやったけれども、役所の外郭団体がみんな実際上の市場介入をやっていてちっとも開放されていないんだ、こういうのが定説になっておるわけなんです。こういうようなことに立って考えると、あくまで日本がやると言ったことはやらぬと、市場開放、非関税障壁でも、やらぬということに対して実効のあるような査察制度や査察関係をもう少しやらぬといかぬじゃないかと私は思うんですが、御意見いかがですか。
  36. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 日本の輸入の改善、アクセスの改善についてはアクションプログラム等の実行によりまして推進しておりまして、私は大体ヨーロッパ並みにはもういっていると思っております。最近は具体的な問題についてはそれほど、物品については苦情が減ってきていると思うのであります。しかし、今おっしゃいますように、外郭団体が下請をしておりまして、そういう面で、我々が知らないところで障害が起きているという可能性はあると思っております。  そういう点からも、我々としてはさらに査察を大にし、また外国商社からのクレームを十分うんと受け付けて、一つ一つをチェックしていく、そういう体制を推進してまいりたいと思っております。各省にそれぞれのそういうような体制はできておりますけれども、大いに督励してまいりたいと思っております。
  37. 三治重信

    三治重信君 次に、内需拡大の問題なんですが、今度七月に五兆円以上の内需拡大のための補正予算をやると、こういうふうに言われておるわけなんです。昨年の内需拡大の補正予算は一兆四千億と言われているんだが、今やったかたの泡のように消えちゃったような格好になっているんです。この五兆円も大体事業量で五兆円、こういうような考え、昨年の補正予算と同じような考え方なんですか。
  38. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 今年の場合はこれからの問題でございますが、本日予算を成立さしていただきましたら本格的に後のことを考えさしていただきたいと思っております。実は減税の問題は、衆議院で協議機関を設けられて云々ということになっておりまして、先々予算の補正を考えます場合に、減税をある程度実現させるべきではないかというふうな考え方が私ども自由民主党の中にございます。それをいわば補正とどう組み合わせるかという問題があるわけでございます。  これにつきましては、協議機関がまだ実は発足をしておられない状況でございますものですから、各党が協議機関でいろいろその点も御検討なさるのだろうという問題もございまして、ちょっとただいまの段階でその部分を明確に私から申し上げにくいような事情にございます。
  39. 三治重信

    三治重信君 その問題も後で聞きますが、結局去年の補正では、債務負担行為なんというやつが六千億も入っているんですよね。そうすると、今度は支払いはことしの予算でこう入っているわけでしょう。今度のまた五兆円も、債務負担行為を一兆何ほか二兆円も組んだら、また来年の予算で支払いは組むのだなんというようなことになって、いわゆる外から見ればごまかし予算。これはしかし、総理アメリカまで行ってきちんと約束し、OECDまで行って大蔵大臣やみんなが五兆円五兆円と言って約束してきたからには、何か実のあることをしっかりやってもらわぬと、これはえらい赤恥をかくようなことになるんじゃないか。だから、減税と離して、きちんと五兆円の中身をしっかりひとつ鮮明にしてしてもらいたい。
  40. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 昨年のがごまかしたということは、どうも三治委員ばかりでなくそういう声が今聞こえますので――いえいえ、どうも私は実は心外なところがございます。現実にあれでかなり公共事業がつなげたと思っておるんですが、それはそれといたしまして、昨年は年末でございましたが、今度はかなり補正の時期が早うございますし、こういう状況でございますから、かなりの建設国債を発行し、また実際の国費等々を計上しなければならないということは、私もかなり今度はそういう状況を考えでいろいろな腹づもりをしております。
  41. 三治重信

    三治重信君 もう一つは減税の問題ですが、いわゆる衆議院の議長あっせんによる協議機関を待っていたら、これは結論はつかぬと思うんですよ。これはだれでもみんなわかっておる。それを口実にして、まだ決まらぬなんというのは、これもまた言い逃れになる、こういうことなんです。  だから、減税は五兆円の中へ入れるなりして、外でも何でもいいんだが、第一次補正でやるからということは、これは協議機関と関係ないの。内需拡大のために減税をやるということに踏み切ってもらわぬことには、仮定を置けば、国際公約と国内の関係を断ち切って、国際公約を先に出していく減税をひとつぜひやってもらいたい。我々働く者から見ると、この円高によっていろいろの、雇用の首切りの問題がある、それからいわゆる円高によって見えざる負担がある、その上減税が行われない、こういうことになってくると、全部今までのやつ以上に負担がかかる。こういうことですから、それはひとつ国際公約から減税をやる、こういうふうに踏み切ってもらいたいと思います。  時間がなくなりましたのでひとつ建設大臣に、この五兆円の内需拡大には大いに公共事業の、そういうような負担行為とかじゃなくて、しっかりした内需拡大ができるように頑張ってもらいたいと思うんですが、決意のほどをひとつ。
  42. 天野光晴

    国務大臣(天野光晴君) いろいろ御意見ありがとうございます。  昨年度の予算のような内容はことしは私の方で引き受けないつもりでございますから、御安心願いたいと思います。
  43. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 以上で三治重信君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ―――――――――――――
  44. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 次に、田英夫君の質疑を行います。田君。
  45. 田英夫

    ○田英夫君 外交問題に絞って御質問をしたいと思いますが、まず総理に伺いたいのは、最近の日本と中国との関係総理はどのように受けとめていらっしゃるか、お答えいただきたいと思います。
  46. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 中国側からの報道や関心を見ますと、光華寮の問題あるいは靖国に関する岩手判決等々もありまして、中国側からの情報報道によりますと非常に危惧を持っておる、そういう状況であると思います。我々の方も、しかし日中関係は非常に大事でございますから、我々としては事態の改善のために今後とも努力していかなければならぬと思っております。
  47. 田英夫

    ○田英夫君 実は、この五月の連休中に私は宇都宮徳馬参議院議員らとともに北京を訪ねまして、日中懇談会という名前の会議に出席をいたしました。これは日中両国の国際問題の専門家が集まりまして、今回はアジアの平和というテーマでそれぞれ率直に意見を述べ合う、こういうことで昨年十一月に東京でやり、今回中国側の招きで北京でやったということでありますが、非常に双方とも率直に物を言い合うという意味で有意義な会議だと思っております。  そこで、今回は中国側は、日本にもおなじみの張番山氏が中国側の全般的なアジアの問題についての意見を言い、日本側は私が日本側の全般の意見を言って、その後それぞれの専門家、例えばアメリカの問題、ソ連の問題あるいはASEANのこと、そういう地域別の問題とか、あるいは軍事戦略上の関係の問題、こういうことにそれぞれ意見を言い合う。三日間やりましたけれども、その中で一つ目立ちますことは、今総理も言われましたように、張番山氏の最初の意見陳述から始まりまして、数回にわたって日本に対して厳しい意見が述べられました。もちろん日本側からも、中国の核拡散防止条約に加わっていないというような問題について批判の意見が出、これに反論があるというような形で会議が進んだわけでありますが、その日本に対する批判というのは、決して光華寮の問題だけではありません。  一つは教科書の問題、もう一つはいわゆる靖国神社公式参拝の問題、三番目に防衛費GNP一%突破の問題、この三つを挙げまして、これがまさに日本の軍国主義復活の兆してはないかと危惧をしているというのが皆さん共通の発言であります。そしてそれに加えて、最近いわゆる北朝鮮のズ・ダン号事件、台湾日本政府の人間が政府の飛行機で送り込んだということに対する問題、そして最後に光華寮判決という問題を挙げて、これまたそうした中で軍国主義の復活につながるものと疑わざるを得ない、こういう発言が続いたのでありますが、このことに対して総理ないし外務大臣はどういうふうに受けとめられますか。
  48. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 委員並びに閣僚各位に要望を申し上げます。  委員席及び閣僚席での私語は慎んでいただきたいと思います。
  49. 倉成正

    国務大臣(倉成正君) ただいま総理からもお答えになりましたとおり、両国関係の緊密化に伴い種々の問題も生じておる次第でございます。また、今委員お話しのような諸問題があるわけでございますが、政府といたしましては今後とも、日中共同声明、日中平和友好条約に基づき、平等互恵、内政に対する相互不干渉等の基礎の上に、率直な意見交換を通じて中国との間の友好協力関係の発展を図る所存でございまして、その都度それぞれの問題について中国側の理解を得るべく最善の努力をいたしておる次第でございます。
  50. 田英夫

    ○田英夫君 五月五日の日に、今度参加しました全員が鄧小平さんと会談をする機会がありました。そのときに鄧小平さんもやはり厳しい発言をしておられますが、その一部を紹介します。  最近中国の人民が心配していることがあります。日本の少数の人、そのうちには政治的影響力のある人が含まれていますが、軍国主義復活の動きをしているということです。そして二番目に、大使が、つまり中江大使ですが、大使がおられるから中曽根首相にお伝えいただきたい。それは光華寮問題について何らかの方法をとってほしいということです。これは簡単な問題ではありません。アメリカ台湾関係法をつくったけれども、日本はこれに学ぶべきではないと思う。アメリカ台湾関係法や今回の日本の裁判所の光華寮判決は政治的問題をはらんでいると疑っている。中国人民はその経験に基づいて、これらは軍国主義と関係していると疑っている。日本政府はこの問題に真剣に取り組んでほしいと要請をします。そして、中曽根総理は何事にも勇敢に立ち向かう人だと私は思っているのでぜひやっていただきたい、こういう発言がありました。  そして私は、今回の中国側の主催者である国際交流協会の幹部と話しましたところが、この鄧小平さんの総理に対する要請は、大使に対して、同席した大使に対して行われたものであるから、公式の外交ルートを通じて伝えられるべきものと判断をしていると、こういうことでありましたので、当然外交ルートを通じて中江大使から伝わっていると思いますが、総理は、この鄧小平さんの要請に対してどういうお答えをされたのか、伺いたいと思います。
  51. 倉成正

    国務大臣(倉成正君) 光華寮の問題についてのお尋ねでございますが、本問題に関しては、我が方からは中国側に対し、三権分立体制のもと司法手続にのっとり争われている民事訴訟に対し行政府として介入したり論評を加えることはできないこと、また、今後とも日中共同声明立場を堅持するなど、日本立場を繰り返し説明するとともに、中国側の冷静な対応を希望いたしているところでございます。しかしながら、当方のかかる説明にもかかわらず、中国側におかれましては要人の発言、また、ただいま先生のお話しのような御発言、あるいは外交スポークスマンの発言等の形で従来の主張を繰り返す論評が行われておるのは残念でございます。  政府としては今後とも、辛抱強く我が方の立場を必要に応じ説明し、中国側の理解を得るべく努力いたす次第でございまして、いずれにしても、本問題が日中両国関係影響を与えぬように最善の努力をいたす所存でございます。
  52. 田英夫

    ○田英夫君 そうしますと、総理はまだお答えになっていないということですね。
  53. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) あの電報を読みましたときに、個人的意見としてという注釈がたしかついていたというふうに私記憶しております。しかし、その後外務省をしていろいろこれに対する対策を講ぜしめまして、そして日本側の考え方は外務当局を通じていろいろ話しておるところであります。  しかし、ここで特に申し上げたいのは、日本は今の自由主義、民主主義、憲法のもとにこういう三権分立の制度を持っておりまして、この国家の基本的体制というものはあくまで憲法の趣旨に沿って尊重していかなければならぬのが政府立場であります。そういう意味におきまして、司法に対して政府が介入するということは絶対やってはならぬことなので、そういう国家の体制というものはやはりお互い尊重し合って守っていかなければならぬ。しかし、その間において、仮に誤解その他があるとすればよく話し合って理解を求める、これは当然のことであります。  それから軍国主義云々の問題につきましては、日本の体制は自由主義、民主主義でありますから、個人がどういう思想を持つか、これは憲法の範囲内において自由であって、それを一々統制することはできません。しかし、一つの勢力としていわゆる軍国主義と言われるものが日本の国内に最近顕著に台頭しているかといえば、私はそういうことはないと。やはり民主主義の体制のもとに、憲法の精神のもとに日本の社会は厳然として平穏裏に推移していも、そう考えておるのでありまして、中国側はかつての大戦で被害を受けた方々でありますから、そういう危惧を持つという心情はよく理解できますが、日本の社会の現実を見れば、軍国主義が最近顕著に台頭しているというようなことはないと確信しております。
  54. 田英夫

    ○田英夫君 私に与えられた時間が極めて短いので、残念ながら、もっと議論を深めたいのでありますけれども、今外務大臣は三権分立を言われましたし、総理も言われました。しかし、三権分立が憲法の基本であるから行政府ないし立法府が司法に対して意見を言うことすらできないということであったならば、これは司法こそオールマイティーになってしまうんじゃないですか。司法も人間ですから誤ることがある。そういうことに対して、厳然として行政府も立法府もみずからの立場から意見を言うことができるはずであります。特に憲法には明確に、「国会は、国権の最高機関」であると書いてある。きょうはもう法制局長官の御答弁を求めることはいたしませんけれども、これは一体どういうことを意味していますか。私は、国権の最高機関である国会の一員として、この問題について明快に裁判所に対して意見を申し上げたい。  第一に、条約、つまり行政府が中国と結び、そしてそれを国会が、国権の最高機関が承認をし批准をした日中平和友好条約、そしてその基本になっている日中共同声明、これにはどう書いてありますか。このことは繰り返して申し上げるまでもありませんけれども、その三項目目に「中華人民共和国政府は、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する。日本政府は、この中華人民共和国政府立場を十分理解し、尊重し、」と書いてあります。そして、これを受けて平和友好条約が結ばれている。言うまでもありません。そして、この条約はあらゆる国内法に優先をする。むしろ国内法はこれに基づいて合わせなければいけない。裁判所もまた国家機関の一つでありますから、当然日本国が結んだ条約には従わなければならない。その意味で今回の裁判所の判決は明らかに違反をしている、こう思います。
  55. 倉成正

    国務大臣(倉成正君) ただいま先生お話しのように、我が国は一九七二年の日中共同声明において、中華人民共和国政府が中国の唯一の合法政府であることを明らかにしており、かかる立場にはいささかの変更もございません。  また、ただいまお話しの点につきましては、司法府といえども我が国が国として国際法上負っている義務に拘束されることは当然であり、現に地裁、高裁いずれの判決も関連国際法を考慮した上でのものであると理解いたしておる次第でございます。
  56. 味村治

    政府委員(味村治君) 三権分立は我が国の憲法の基本的な統治組織でございます。したがいまして、国会、内閣、裁判所というそれぞれの三権を担当する機関がそれぞれ独立に職権を行うこととなっております。ただ、その相互の間の牽制作用というのはもちろんございまして、内閣は議院内閣制でございますし、国会が御制定になりました法律、これについてはそれの解釈を裁判所がするわけでございますから、裁判所が判断をするについては、国会の御制定になりました法律に拘束されるということに相なっているわけでございます。  また、裁判所は御承知のように違憲立法審査権というのを持っておりまして、国会の御制定になった法律でございましても、憲法違反であるということになればその旨の判断をするというように、あるいは内閣は裁判官の任命をするというように、相互の間の牽制作用があるわけでございますが、それぞれそういうふうにお互いに介入するのには憲法に基づく機能が必要であるということでございまして、その憲法に基づく機能以外の介入というものはこれは憲法上許されていないというふうに私どもは解しております。  ただいま先生がおっしゃいましたように、「国会は、国権の最高機関」であるというふうに憲法に規定してございますが、これは、国会は国民から直接に選挙されました、国民を直接に代表されます議員の方々から成ります合議機関でございますから、したがいまして、当然にそれは国民に直結するという意味におきまして最高の機関であるという、いわば美称と申しますか、そういうことでございまして、最高機関であるからといって憲法の規定に従わないで司法に干渉するということはできないというように考えております。  なお、憲法第七十六条第三項は、「すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される。」というふうに書いてございまして、独立にということは、他から干渉を受けないのだ、他から圧迫、干渉を受けないでということでございますので、したがいまして、先ほど申し上げましたように、行政権が憲法によらないで裁判所に対して何か干渉、介入を行うということは憲法上許されていないわけでございます。  なお、ただいま読みました条文の中に「この憲法及び法律にのみ拘束される。」とございまして、条約というのはございませんが、主権を有する国家と主権を有する国家との間の主権国相互間の関係というのはこれは国内の裁判所が裁判する限りではございませんが、およそ国内法上の権利義務関係影響を及ぼすような国際法は、これは国内法としての効力を持っているというのが通説であり私どもの考え方でございまして、したがいまして、国内法としての効力を持っておる国際法にも当然裁判官は拘束されるわけでございます。  具体的な裁判につきましてコメントすることは、行政機関でございます私の職責上差し控えたいと存じますが、先ほど先生がおっしゃいましたように、日中平和友好条約、共同声明、これにつきましては、先ほど外務大臣もおっしゃいましたように、裁判所はその法的効力というのを検討いたしまして裁判をしておる。日中共同声明が中華人民共和国政府を唯一の合法政府と認めたこと、そのことが原告の訴訟当事者能力を奪うものか、あるいは訴訟当事者適格を奪うものか、あるいは本件問題となっております光華寮の所有関係につきまして変更を生ずるものかどうかということを我が国の裁判所は判断をしているわけでございまして、それは判決文の上で明らかになっております。  以上でございます。
  57. 田英夫

    ○田英夫君 法制局長官の言われたようなことは全くもう常識でありまして、私ももちろんそうした考えの上に立って言っていることでありますが、にもかかわらず、というよりもだからこそ、今最後の部分で法制局長官が言われたように、国際条約が結ばれているんですから、主権国家同士で。その条約によって判断をすべきであることは裁判所といえども当然でありますから、今回のこれをいわゆる台湾の所有とした判決は、明らかに日中平和友好条約に違反をしている、こう言わざるを得ないんですね。これはもう明らかだと思います。そして、それに対して行政府が何らかの意思表示をするということは、決して裁判の内容に立ち入って私は批判をしろと言っているのじゃないんですよ。そうした国際法あるいは憲法、そうしたものの考え方にのっとって行政府としての意見を述べる、国民に対しても中国に対しても意見を述べるということがあって一向に差し支えないと私は考えています。  ここで私は、もうお互いに戦争のことを少し忘れているんじゃないかという気がいたしますから、あえて残りの時間だけを使って申し上げたいことがあります。  一九七一年、十六年前ですが、私は中国を旅して日本軍の侵略のつめ跡を見せてくれということを求めたことがあります。ところが、さすがに国交正常化以前ですから、それには検討が必要だということで三日ほど待たされましたが、わかりました、見せましょうということで旅をしました。南京大虐殺の生き残りの人にも食えました。また南京と上海の間の無錫というところの近くにある太湖という湖の中の農村を一人で訪ねました。これは日本軍によって村が全滅をしているところであります。その村の中央の木には怨恨の場と書いてある、そしていつこういうことが起こったかということが書いてある。村外れの洞穴のところには血涙の淵と書いてあった。そこでお年寄りや女、子供、みんな逃げ込んでいるところを上から機銃で撃たれて皆殺しになったのであります。その中で辛うじて生き残った人が当時の模様を私に語ってくれた。  中国の人たちはこういう目に遭っているわけですよ。軍国主義復活の兆しはないと総理は言われたけれども、中国の人たちから見れば日本の、しかも、国会議員やあるいは総理大臣が靖国神社に参拝をされるという、そうした行動すらも、過去のそうした記憶に照らして、胸が痛む思いがするのは当たり前じゃありませんか。そういうことを考えながら、光華寮問題その他対処をすべきだと思いますよ。私はきょうの政府側の御答弁には極めて不満であります。  時間が参りましたので、意見だけを申し上げて終わりたいと思います。
  58. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 以上で田英夫君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ―――――――――――――
  59. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 次に、青島幸男君の質疑を行います。青島君。
  60. 青島幸男

    ○青島幸男君 まず総理にお尋ねをいたしますけれども、人類にとって最も大切なことは、戦争のない平和な世界の実現だと思います。総理も常々このことに言及しておられまして、今や非常に平和に向かいつつあるという兆しを見ることで大変希望が持てるというような御発言も承りましたけれども、現今の世界の情勢についてどういう認識をお持ちか、改めてお伺いいたします。
  61. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 最近の情勢を見ますと、明暗こもごもの情勢があると思っております。  レイキャビクにおきまして米ソ首脳が会談をして、核兵器の思い切った廃絶に向けて一歩前進しようと。またそのフォローアップを今続けているということは、明るさを思わせる一つの面でありますが、イラン・イラク戦争の現状等々を見ますというと、まだ国際情勢の中には暗い部面がかなりあるということも否定できません。しかし、その中にやはり平和を求め人類の共存を求める力というものは次第次第に盛り上がりつつあり、かつ情報化の推進によりまして国際的な理解やあるいは国際的な状況の把握というものが民衆の中にも及んでまいりまして、そういう意味においてテレビやそのほかの持っておる大きなインパクトと、そのシステムというものが非常に大きく平和のために貢献している、私はそう思っております。
  62. 青島幸男

    ○青島幸男君 確かにおっしゃられるとおりだと思います。レイキャビクで米ソの首脳会談が行われまして、それまでお互いに許しがたいというような格好で対決していた双方の国でありましたけれども、レイキャビクで話し合いをするということ、これは世界じゅうが期待を持って眺めたわけであります。残念ながら世界じゅうの期待に完全にこたえるという状況ではなかったようですけれども、しかし、それまでの相互の話し合いは、査察というようなことで、軍備管理の話し合いぐらいまでしかいかなかった。それが今度レイキャビクでは、結実はしなかったけれども、それを超えて、現実の軍縮の具体的な点にまで触れるような話し合いになったということは大いなる前進であった、その後も好もしい形で推移しているということは大変望ましいと世界の人々も見ているわけだと思います。  世界が軍縮を望み、その方向に向かっているときに、あえて我が国の防衛費がGNP一%の枠を超えようとしているというのは、多くの国民にとって非常に理解しがたいことだという認識を私は持ちますが、その点、総理のお答えを期待します。
  63. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 我が国は、憲法のもとに専守防衛の考え方を持ちまして、節度ある防衛力を整備してきておることは御承知のとおりでございます。必要最小限の節度のある防衛力というものは、客観的な流れの中で把握されるものでありまして、それが抑止力となり、そして戦争を防いでいる力にもまたなるわけであります。  そういう意味におきまして我々の方は、客観情勢等も眺めつつ、また兵器、武器の進歩というものも考えつつ、いわゆる大綱というものをつくったわけでありますが、この大綱水準を達成するというのが当面の目標であるというので努力してきて、それによって日本防衛のための基盤を、基盤的防衛力を概成しよう、そういうことで鋭意努力している。その過程におきまして今のように、防衛努力が今まで必ずしも十分でなかった点を今努力しておる最中でございまして、そのこと自体が軍国主義とかあるいは軍事優先というものに直接当たってくるものではない。我々としては必要最小限の抑止力を形成し、平和を維持していくための努力を続けている、そうお考え願いたいと思うのであります。
  64. 青島幸男

    ○青島幸男君 おっしゃられるのは総理の側の論理、あるいは政府の側の論理でありまして、一般の国民の見方といたしましては、あの忌まわしい太平洋戦争の後、我が国は平和憲法のもとに新たに平和国家の歩みを始めたわけです。憲法九条の建前からも多くの疑問を残したまま警察予備隊というものが生まれまして、やがてなし崩しに軍備が増大してまいりまして、いつの間にやら世界でも第三位とか四位とが言われるように、自衛隊はどこから見ても明らかに軍隊に違いないというようなところまで肥大化してしまったわけですね。軍国主義への逆戻りかと非常に不安と恐怖で見守る人も多いわけです。実際に閲兵式などを見まして、こんなものが要るんだろうかという大げさな武器が並んでいるのを見ると、身のものよだつ思いのするという方も大勢おいでになるわけです。  なお、国民世論は、五十一年の閣議決定国民総生産の一%以内という歯どめで、それを見てやっと安堵の胸をなでおろしたと言っても過言ではないんじゃないか、そこに辛うじてすがっているという格好であると私は思います。五十一年の決定は抽象論ではなくて、多くの国民に支持されて、今や悲願というような格好にまでなっていると私は思います。これはどうしても外してはならない侵すべからざる国民合意でありまして、守らなければならない、平和を念ずる国家のせめてもの良心であるというふうに私は信じます。ですから、今回の一%突破の予算はぜひ撤回していただきたいと思いますし、しかも、多くの国民は、この一%の枠が守られるであろうという認識のもとに、前回自民党に票を投じている方もかなりおいでになられたと思いますね。  しかし、その多くの有権者の願いを踏みにじって、選挙後、三百四議席という力を得てあえて踏みにじるような格好で一%枠を突破してしまって倍として省みないというような格好は、私はこれも国民を欺いたことだ、有権者を歎いたことだという気がいたしますけれども、その点についてはどうお考えでしょうか。
  65. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 政府は三木内閣の閣議決定をできるだけ守りたいと努力してきたところでありますが、最近における日本経済成長のGNPの率等々いろいろな変動要因がありまして、大いに努力をしたけれどもやむを得ずはみ出した点がある、そういう状態なので、これをはみ出すために一生懸命努力したというのとはまるっきり違うのであります。そういう点はよく御理解願いたいと思うのであります。
  66. 青島幸男

    ○青島幸男君 きのうも他の委員とのやりとりで非常に明確になったことなんですけれども、官房長官が盛んに力説なさっておられました「今後の防衛力整備について」という閣議決定の書類ですけれども、六十二年度における「当面の防衛力整備についての取扱い」というのがあるんですけれども、六十一年十二月三十日に閣議決定をして、「六十二年度の防衛関係経費については、標記閣議決定を適用しないこととする。」、つまり五十一年の一%枠を突破することという意味ですね。「新たな歯止めの基準は必要とするが、これについては今後慎重に検討する。」というふうにしてありまして、その後、六十年ですか、六十年から五年計画で中期防衛力整備計画というのをお立てになって、その総額が十八兆四千億、この枠内でおさめるわけだから歯どめはあるというふうにおっしゃられているわけですね。  その中期防衛力整備計画の基本になるものは防衛計画大綱による、その大綱は別表によるということらしいんですが、しかし、その別表が三木内閣のときつくられたと同時に、あたかもセットのように国民総生産一%の枠を出ないということで歯どめをかけたわけですね。ですから、その後の話は全然意味をなさないわけですよ。なぜそういうふうになっているかということについて私は大変な疑問を感じますね。  それで、ここにうたってあることは、きのうも委員が申されておりましたけれども、防衛水準といいますか、防衛大綱の水準というのは何をもって水準となすべきかということの明確な規定がない。しかも、防衛力というのはどんなに大きな力を持ってもこれで万全ということはあり得ない、しかも相手国との相対的な力によって決まるんだ、しかも、日進月歩の技術からすると、きょう買ったものはもうあしたすぐ古くなってしまう。置いて磨き立てて並べておくだけでももう使い物にならなくなるというようなものを次々買いかえていかなきゃならぬ、子供がおもちゃを買うように歯どめがないようになってしまうではないかというのが国民の懸念です。  「我が国は、平和憲法の下、専守防衛に徹し、他国に脅威を与えるような軍事大国とならない」というようなことをうたわれたりして、もっともらしく閣議決定をされておりますけれども、閣議決定というものはそれほどの意味を持つものだとは私思いませんね、独裁国じゃないんですから。閣議決定の本来の意味は、これを国民がどう評価するかという、主権者たる国民の認識によると私は思いますね。それを勝手に、閣議決定を金科玉条のごとくに、こうしたんだからいいんだというような格好はとても承服できないと思います。  この閣議決定の折に、ここにおいての皆さん方、閣僚の皆さんは、私は不幸にして閣議に出たことがないんでどういう格好で閣議が行われるかわかりませんが、総理が招集なすって皆さんとお話し合いをする、そこで皆さんが了承して判こを押されるとかいう話ですけれども、皆さんはこの決定を了となすったわけですね。  方角、角度を変えまして大蔵大臣にお尋ねをいたしますけれども、大蔵大臣は日夜御努力をなさっておられますが、貿易収支は改まらず、日米摩擦はエスカレートするし、円高はおさまらない、景気は一向に上がらない、福祉関連費等出費はかさむばかりで、財政は逼迫する一方ですね。一般歳出も年々下げざるを得ないというような状況になっているのに、防衛費だけは確実に、それも一〇%近く毎年伸びているわけですね。事の性質上景気に見合った額でやるというわけにはいかないんだということを申されますけれども、防衛力の整備というのは、先ほども申し上げましたようにこれで絶対ということはないわけですね。おまけに一%枠を突破しますとこれで財政にとって今後どれだけ負担になるかというようなことをお考えにならなかったのか、その際、閣議の際にですね。国民がそのことについてどれだけ不安を持っているかというようなことは一切お考えにならずに閣議に臨まれたわけですか、その点をお話しいただきたいんですが。
  67. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 防衛費の毎年の伸びでございますが、中曽根内閣の発足、昭和五十八年でございますか、ここのところの伸びは五十八年から今日まで六%台でございます。七%に達したことはございません。今年度は五・二%でございますので、青島委員の言われるほど大きな伸びをしているわけではございません。  ただ、おっしゃいますように、一般歳出がゼロであるあるいはマイナスであるということから申せば、防衛費については特別の扱いをいたしております。そのとおりでございます。それはやはり国の安全ということ、最小限のしとはしなければならないということであれば、景気が悪いからちょっと休んでおこうというような種類のことではございませんので、これはやはり一つの計画に従って大切なこと、しなければならないことはしなければならない。それが過大にわたるということになりますと今おっしゃいますように国民の御心配につながるわけですが、いわゆる中期防衛計画の十八兆四千億というものは不変価格で、これをきちっと定めてございますから、これを上回っていくということはないというきちんとした歯どめがございます。  それならばこのこと自身が過大がどうかということになりますが、それはまた防衛計画の大綱というものに裏づけをされておって、専守防衛ということでございますから、全体として私は過大であるとは思わない。財政は苦しゅうございますから少なく済めばよろしいことでございますが、やはりお互いの安全ということは、苦しいからちょっとやめておこうといったような性格のことではないというふうに思いますので、最小限度のことは国民の、納税者の御理解を得られるものというふうに私は考えております。
  68. 青島幸男

    ○青島幸男君 必要最小限度がどの程度のものかというのが国民の前に提示されないので不安に思っているわけですね。それで、その五年計画が終了した後どうなのかという保障は何にもありませんですね。この先が問題だと私思いますね。  ここに六十一年度所得確定申告書というのがあるんですけれども、六十一年と六十年の分があるんですけれども、この裏の最後の欄に「国を守るため」の費用というのがありますね。「六十円」となっています。六十一年は「六十二円」になっていますね。ここを見るたんびに納税者は、これからどんどんこれがエスカレートしていくんじゃないかなという不安を禁じ得ないというふうに言うわけですね。どこまで伸びるかわからないということで不安を与えている。その上に今度は間接税にして、直接税金の痛みで民主主義に参加するというその道をなし崩しにやめさせようとして、民主国家の礎を崩そうとなさっているということもあるわけですな。その点を明確にお考えいただきたいと思います。  ついでに外務大臣にお尋ねいたしますけれども、我が国は今や大変な経済大国になっておりまして、世界的に大きな影響力を持っていることはもう御異論のないところだと思います。さきの戦争で大きな迷惑をこうむった近隣諸国は言うに及ばず、先ほど田さんの御質問にもありましたけれども、他の国も、日本がもし大きな軍備を持つ軍事大国に変身したら大変だ、そういう懸念は持っているわけですね。  我が国は十年来、国民総生産の一%を超えないという程度の自衛力しか持たないんだという姿勢を一貫して持ち続けております。このことがある程度近隣諸国の信頼をつなぎとめているかもしれませんね。しかし今あえてこの枠を外すということになりますと、諸外国の目にこれがどう映るか、この辺不安を与えないだろうかなというような御懸念を閣議のときに少しもお持ちになりませんでしたか。お尋ねします。
  69. 倉成正

    国務大臣(倉成正君) 防衛費は、我が国の平和憲法に基づきまして専守防衛、またただいま先生お話しのように過去の不幸な経験にかんがみまして近隣諸国に脅威を与えない、そういう配慮のもとに行うべきものでありますけれども、必要にして最小限のものはやはり日本の防衛費として計上すべきものと考えておる次第でございまして、慎重に検討した結果のものであると心得ております。
  70. 青島幸男

    ○青島幸男君 ここにいろいろ各国のその一%枠を超えたときの印象とか評論、各新聞社のがあるんですけれども、これを一々読んでいると時間がございませんから申し上げませんけれども、閣僚の方々ね、閣議へどういうおつもりでお臨みになっているかということを、今伺いまして皆さん方に本当は一人一人どういうお覚悟でお臨みになっているか伺いたいんですが、時間がありませんのではしょりますけれども、そういうことでは困ると思いますよ。こんな状態では私、失望しましたね。こんな態度で閣議に臨まれておるんだったら、何回閣議を繰り返しても国民の要望を国政に反映させるような民主国家の運営なんかできっこありません。あなた方は身の安全だけにきゅうきゅうとして中曽根さんの言いなりになっているだけじゃありませんか。何ですか。あなた方は――――――。責任を全うしていない。―――――、あなた方は。(「ひとりよがりだぞ、それは」「独断だ」「だめだ、それは」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)  質問を終わります。(「懲罰だ、懲罰だ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)
  71. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 以上で青島幸男君の質疑は終了いたしました。  ただいまの青島幸男君の発言につきましては、その取り扱いについて理事会において協議いたします。     ―――――――――――――
  72. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 次に、木本平八郎君の質疑を行います。木本君。
  73. 木本平八郎

    木本平八郎君 私は、今の国際貿易摩擦の問題に関連して、総理は来月ベネチア・サミットに向かわれるわけですね、その姿勢というか方針についてお伺いしたいわけです。  それでまず、私がこの予算委員会を通じましての議論を聞いておりまして非常に不思議に思ったのは、皆さんの認識にずれがあるんじゃないか、あるいは私の国際感覚が狂っているのかもわかりませんけれども。  まず総理にお伺いしたいのは、今度サミットに行かれますけれども、この問題は大変な事態だと思うわけですね。それに対して五兆円の補正予算ということが一応お土産になるようですけれども、これだけで乗り切る自信がおありなのかどうか、もう少しそれ以外に何かお土産を考えておられるのかという点をまずお伺いしたいわけです。
  74. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 五兆円という補正予算の発想は、ベネチア・サミットのお土産でやっておるのじゃありません。これは日本が内需振興をやって、そして輸出に傾き過ぎている力を内需の方向に向けて内外のバランスを回復しよう、そして世界経済の正常的な運営に貢献しよう、そういう考えで独自にやっておるものであります。その点は念のために申し上げる次第です。    〔委員長退席、理事原文兵衛君着席〕
  75. 木本平八郎

    木本平八郎君 要するにそういう内需拡大ということも、国際的な場面から見ますと、やはり日本が内需を拡大して輸出に向かわないようにという期待があると思うんですね。そうしますと、やはり今回のサミットでもそういう面でインバランスが解消していくとか、国際的なずれがなくなるというふうな方向に日本努力を示さないと問題解決にならないんじゃないかと思うんですけれども、それでは総理はどういう面から各国の説得といいますか、了解を求められるのか、その方針をお伺いしたいわけです。
  76. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 先般OECDの閣僚会議がありまして、その席でも各国がやるべき仕事について皆さん議論をなさいました。これはずっと続いておる一つの仕事でございますが、アメリカの場合は財政赤字の削減あるいは競争力の強化、あるいは輸出意欲をもう少し企業が持つようにやるべきである。日本の場合はこの膨大な黒字の削減、そのために内需の振興等々、ヨーロッパの場合は産業構造の調整等々、そういうように仕事が決められておりまして、そして一致している点は、国際通貨関係をできるだけ長期にわたって安定しなければならぬ。それについては各国が政策協調、それから構造改革、それを行っていこう、この点においては一致しておりまして、その線を今度も確認をし、それを具体的にいかに実効あらしめるかという話が大事になってくるのではないかと思っております。
  77. 木本平八郎

    木本平八郎君 私の友達の外人の話ですけれども、今の現状のままで中曽根総理がベネチア・サミットに行けば、その場で袋だたきになるんじゃないか、むしろ中曽根総理は出席しない方がいいんじゃないか、そういう意見を言う外人もおるわけですね。    〔理事原文兵衛君退席、委員長着席〕それは、やはり今までの日本やり方が――これは後で申し上げますけれども、国際公約に違反しているというふうに見ているわけです。例えばもしも日本がアクションプログラムあるいは前川リポートの内容をそのまま実行していたらこういう国際摩擦の問題にはならない、インバランスがあったにしてもならないというふうな見方があるわけですね。ところが、日本は口だけではいつも約束するけれども実行しないということの不満といら立ちが基本にあるというふうに外人は――これは一部がもわかりませんけれども、見ていると思うんです。私もそういう点があるんじゃないかと思いますが、その辺はどういうふうに受けとめられておりますか。
  78. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) その外人さんは認識不足が非常に大きいと思っております。それは日本も相当な努力をしてきておるわけで、それを一つ一つトレースしていただけば、なるほど随分努力もしているし、変わりつつあるなということは御認識いただけると思うんです。  じゃほかの国の努力はどうであるかということを考えると、日本ぐらいいろいろ言われながらも一生懸命一つ一つまじめに努力している国はない。ただ、それほど実効が上がらないと言われれば、それは時間のかかる問題、構造調整というような問題については時間もかかることであり、また円ドル関係というものについてはこれは日本だけでやったってできるものではないのであって、やはり両方あるいは世界的な協力関係で成り立つものであります。そういう意味において、日本だけが責任者で、日本だけが物をやれば物が解決するという発想自体が私は認識不足である。もちろん日本はこれだけの大きな経済力を持ち、また金融的にも世界的な影響力が増大している折でありますから、責任は非常に大きいということは認識して努力はしておりますが、その結果を今のように過早に考え、また日本だけを対象に責任者として考えるという点は認識不足ではないかと思うんです。
  79. 木本平八郎

    木本平八郎君 そういう議論がこの国会でもずっと聞かれたわけです。  また私は、これ率直に申し上げますけれども、どうも尊王攘夷論みたいな感じがする。日本はいいんだ、外国が悪いんだということで必死になって一億で抵抗している、一億か国会だけか知りませんけれども。そういうことではこの摩擦というのはどんどん大きくなるんじゃないか。私ずっと調べているんですけれども、もう十五、六年前から貿易摩擦の問題というのは言われているわけですね。同じことを何回も何回も言われ、それでもう最後にぎりぎりのところに来て、非常に今回はいら立っているという受けとめ方を私はしているわけです。  そこで、ちょっと田村通産大臣にお伺いしたいんですけれども、OECDの閣僚会議なんかに出られて、彼らが求めているのは日本に対する輸出量なのか、その前に日本がまず市場を開放しろということなのか、その点いかがでございますか。
  80. 田村元

    国務大臣田村元君) 市場開放という意味でございますけれども、鉱工業部門製品なんかは日本の市場開放度は先進国の中ではすぐれているんです。ただ、市場参入がしにくいということだと思うんですね、営業の仕方が違いますから。それに対してのいら立ちが大変強うございますが、しかし合いみじくもおっしゃった、非常にいいことをおっしゃったんですが、先般の四極貿易大臣会合でも、またOECDでも、だからといってインバランス改善のための輸出削減というような手法に頼らないでむしろ拡大均衡の方向を求めよう、そしてその拡大均衡の線で日本が輸入により重点を置いていくということが大体皆さんの合意でもありましたし、各国の要望でもあったわけです。
  81. 木本平八郎

    木本平八郎君 農水大臣にお伺いしたいんですが、突然で申しわけないんですけれども、アメリカとの牛肉交渉がございましたね。あのときにアメリカから牛肉をフリーにしろと言われて、それに対して日本側が、フリーにするとアメリカの牛肉よりも豪州の牛肉がどんどん入ってくる、したがって余り意味がないんじゃないかという回答をされたと覚えているんですけれども、そのときにアメリカ側は、いや、いいんだと。アメリカの牛肉は入らなくてもいい、豪州のが入ってもいいんだけれども、とにかく日本は市場を開放しなさいという議論があったと思うんですけれども、その辺いかがですか。
  82. 加藤六月

    国務大臣(加藤六月君) どの国との外交折衝においても日本はいつも本音で言っておるわけでありますが、国によっては本音と建前が少し違う国があるのではないかなと思います。そういう要求を政府がしておきながら、実際のアメリカの業者は絶対自由化しないでくれ、頼むと言ってくる連中もおります。  それからもう一つは、どちらかというとアメリカ自身も食肉輸入禁止法という法律を持っておりますが、そういう中で、アメリカの牛肉の外国に輸出するうちの数十%は我が国にしておる。豪州と比較することもありますが、私は、豪州その他から入ってきますよということと、もう一つは、あなたの国からトウモロコシ等飼料作物のほとんど全部を、酪農用、牛肉用の牛を飼う物の輸入をしておる、牛肉を自由化するとあなたの国のトウモロコシの輸入は減るという因果関係を御存じですかと、そういったこと等を申し上げたこともございますが、まあ全体の二割ないし三割が外国の輸入牛肉に頼っておるということでございますから、そうそこら辺の問題について目くじらを立てるほどのことはございませんが、一九八七年度中のある月において牛肉の輸入交渉の問題は話し合いをいたしましょうということで、自由化ということに対しては拒絶いたしております。
  83. 木本平八郎

    木本平八郎君 また突然で申しわけないんですけれども、外務大臣にお伺いしたいんですが。  先日のOECDの閣僚理事会でも、日本とドイツが同じような、貿易黒字額はちょっと違いますけれども、同じような立場にありながら、まあ今回は大分ドイツも責められたようですけれども、従来ドイツは余りやられずに日本が非常に的にされたというのはいろいろ理由があると思うんです。そのうちの一つに、やはりドイツは完全に市場を自由化しているということがあるんで、これはもう同じ土俵の上での勝負ですから強いのが勝ってもしようがないということがあると思うんですね。ところが、日本はその市場の開放度が不十分だというふうなことで非常にやり玉に上がっているというふうに私は思うんですけれども、大臣はどういうふうにお感じになりましたか。
  84. 倉成正

    国務大臣(倉成正君) 先生がおっしゃった点、全く同じにそのように思います。
  85. 木本平八郎

    木本平八郎君 私は、日本は非常に表面上は市場はオープンになっていると思うんですね。ところが実際は、先ほど田村大臣からも御答弁がありましたように、非常に入りにくくなっている。まあ日本語が一つの大きなバリアかもしれません。非関税障壁が非常に大きい。あるいは規制、許認可のようなものがひっかかっているということでなかなか入れないといういら立ちがあると思うんですね。こういうものは、やはりこの際積極的に市場開放に向かっていかなきゃいけないんじゃないかと思うんですけれども、その辺田村大臣いかがでございますか。
  86. 田村元

    国務大臣田村元君) もちろん改善しなきゃならぬ点はどんどん改善しなきゃいけないと思いますが、ただ、あなたは私以上にお詳しいわけですけれども、例えば関税でも、鉱工業面ではもう平均二・一%とけた外れに安いわけですね、ECやアメリカなんかは皆四%台ですから。ですからやっぱり、市場開放ということよりむしろ市場参入ということで現実問題としてこの問題と取り組んでいった方が、私は諸外国に対してよりよき方法じゃなかろうか。要するに制度論じゃなくて、入りにくいということですからね。私はそのように思いますけれども。
  87. 木本平八郎

    木本平八郎君 次に内需拡大策、補正予算の関連で、またこれも突然で申しわけないんですけれども、天野建設大臣にお伺いしたいんですが、先般の一般質疑のときに大臣、補正予算五兆円が出てくるんならその七割ぐらいは建設省でやりたいんだというふうな希望を述べられましたね。私は大臣にお聞きしたいのは、そういうお考えの中に外国の企業がどんどん参入できるようなプロジェクトをお考えになっているのか、それとも非常に小さいものがたくさん全国的に散らばって、ちょっと外国企業が食いつくにはスケール的にも小さいというふうなものをお考えなのか、その辺お伺いしたいんですが。
  88. 天野光晴

    国務大臣(天野光晴君) ちょっとお聞き違いされておるんじゃないかと思うんですが、七〇%やりたいと言っているのではなくて、過去の例から見ると建設省の受け持つ公共事業は大体全額の七〇%前後ですという話を申し上げたわけであります。それから外国企業の参入は、日本はオープンですから、おいでになられる方はどんどんおいでになって結構でございます。
  89. 木本平八郎

    木本平八郎君 建設の仕事も、これは建前上は完全にフリーになっておるんです。私もよく存じ上げております。しかしながら、実際にそれじゃ外国の企業が来てやろうと思うとなかなか入れないというふうなことで、関西新空港の問題なんかも出てきたと思うんですね。今度の補正予算でも、やはりそういった面で外国企業が入れるとか、あるいは外国からの輸入がふえるとか、そういった効果が少しでもないとやっぱりいけないんじゃないか、ただ単に国内の不況対策ということで内需拡大をしたということだけでは今回はおさまらないんじゃないかと私は思うわけですね。  したがって、外国が求めているのは、もっとインバランスを減らしていくんだと。まずインバランスが千百億ドルあるということを認識して取りかからないと、平常の場合とは違うと思うんですが、総理、いかがでございますか。
  90. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) その点は同感でありまして、形式的な機会均等ということもさることながら、やはり実質的に参入が実現する、そういう点をもっと政府も突っ込んで考えていく必要があるし、企業の皆さんも突っ込んで御協力を願わなければならぬ、そう思います。
  91. 木本平八郎

    木本平八郎君 それで、外務大臣にお伺いしたいわけですけれども、今後この問題をほうっておくと私は、非常に極端な言い方ですけれども、現在日本は開戦前夜にあるんじゃないか、あるいは下手なことをすると国際連盟脱退のああいう局面に押しつけられていくんじゃないかという感じさえするわけですね。したがいまして、このインバランスは少なくとも数字的にはもちろん下がった方がいいんですけれども、とりあえずは、日本が必死になってインバランスの問題に取り組みますという姿勢を、必死な気持ちをわからせて、そして今度こそは日本も大丈夫だというふうな期待を持ってもらうということが一番重大なことじゃないかと私は思うんですが、いかがでございますか。
  92. 倉成正

    国務大臣(倉成正君) 先生お話しのように、日本貿易黒字また経常収支の黒字が非常に膨大である。したがって、この点についてはちょっと多過ぎるのじゃないか、マージャンをしても碁をしても、あるいはゴルフをしても、いつも勝ってはかりいるというのではおもしろくないということではないかと思います。  しかし、御案内のとおり、今、世界経済の構造全体が大きく変わりつつあるという現状を考えますと、これは日本だけでできるものではございません。やはり、日本努力をする、またドイツも、市場がオープンであっても貿易黒字が大きければこれについて減税その他の措置で対応する、アメリカ財政赤字の削減あるいは競争力の強化をしてもらう、あるいは欧州におきましても社会制度その他の制約で産業競争力がおくれている、これを直していただくという、それぞれの国がそれぞれの役割をしっかりとやるということが大事だ、そういうことがやはりOECDでも話されたところでございます。
  93. 木本平八郎

    木本平八郎君 私は、この問題を逆の点から見ますと、これは内政問題じゃないかという気がするんですね。  それで、経企庁長官にお伺いしたいんですけれども、今まで日本はメーカー中心、第一次、第二次産業中心に来たわけです。しかしながら、一人当たりのGNPが世界で一番になるというふうな大国になったわけですね。こういう大国になっていながら、相変わらず昔と同じように輸出促進というふうな考え方で来ていて、このずれが今非常に国際摩擦を呼んでいる原因の一つではないかと思うんです。  したがいまして、結論的には、やはり構造転換をして第三次産業に向けていくというふうなことを積極的にやり、また対外的にもそういう観点からこの問題に取り組まないと、いつまでたっても貿易のインバランス問題はもっとどんどんどんどん深刻になっていくと思うんですが、その産業構造の転換とか将来の方向ということについては、長官、どういうふうにお考えですか。
  94. 近藤鉄雄

    国務大臣(近藤鉄雄君) 先生御指摘ございましたように、資源の少ない日本経済で成り立っていくためには、輸出をして必要な資源を輸入する、そして加工して輸出するということが基本的な経済発展のパターンであったわけでございますが、ある意味ではそのパターンの見事な成功が現在の膨大な経常収支の黒字ということになっているわけでございますので、これは正していかなきゃならない。各大臣から御答弁がございましたが、私は、日本の市場アクセスは決してほかの国と比較して劣るとは思わないが、さはさりながら、一千億ドルにも及ぶような貿易収支黒字があるのは厳然たる事実でございますから、これを減らす必要がある。  最近の円高傾向を見てまいりますと、この円高輸出は停滞、低迷しておりますし、輸入特に製品輸入が大幅にふえておりますので、この傾向が続けば私は漸次国際収支の改善がなされると。しかし同時に、もっと大幅に輸入を拡大するためには、やはり国内的に輸入品と競合する分野もございますので、こういった産業分野が違った分野への構造転換をしていかなければならない、こういうことだと思うわけであります。そうしたまさに経済構造調整の方向というものがさきのいわゆる新前川レポートに示されておるわけでございますので、具体的にこれとこれからの政策で取り組んでいきたいということを政府挙げて真剣に考えておるということでございます。
  95. 木本平八郎

    木本平八郎君 これで最後なんですけれども、私は実はまだ国会というのがよくわからないものですから、当然今回のサミット対策として、今行政府がお持ちになっている権限だけではちょっと対処できないんじゃないか、立法府としても決議をするなり相当バックアップするようなことをやらなきゃいけないんじゃないかと私は思っていたんです。それは現実にはやられていないんですけれども。そういう点で、今回の問題はなかなか一筋縄ではいかないんじゃないか、中曽根総理といえども今度は立ち往生されるんじゃないかと私は思っているわけですね。  したがって、これはあとはもう頑張っていただきたいということをお願いするしかないんですけれども、私は、今回のこの国際問題については、日本が一般に認識しているよりももっともっと厳しいものがあるんじゃないかと思うわけです。極端なことを言えば、今回は総理に、ポーツマス条約に行った小村寿太郎氏のような覚悟、あるいは帰ってきたらたたかれるかもしれない、しかし国のためにはこういう方向で行かなきゃいかぬという、相当な政治生命をかけたような覚悟を持って行っていただかなきゃいけないんじゃないかと私は思うんですが、最後に総理の御感想を承りまして、私の質問を終わります。
  96. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 非常に温かい、ありがたいお言葉に感謝いたす次第です。  先般ファンファーニ・イタリー首相がサミットの打ち合わせでまず日本へおいでになったと、きに、今度のベニス・サミットはやはり世界の転機である、非常に重要であると思う、一つはレイキャビク以後の米ソの平和と軍縮の問題をどっちへどういうふうに我々はプッシュして推進していくかということ、これは人類の運命を決めるぐらいの大事な問題である、もう一つ世界経済をどういうふうに調整して、みんなに望みのある世界経済を我々として用意する努力をするか。その中でやはりインバランスの回復であるとか構造調整であるとか、あるいは通貨の長期的安定、こういうような問題について我々が確固とした前進を行う、それと同時に発展途上国やあるいは債務累積国に対しても我々としてできるだけの組織的な協力を行えるように持っていく、そういうことができるかできないかということによって世界の動きというものが大きく変わる大事な分岐点に来ている、そういうふうに申したら、この分岐点という言葉に非常にファンファーニさんは感じた様子でありまして、まさに分岐点だ、そういう言葉を今度の政治声明の中に入れてもいいと言っておりました。  私はそういう認識を持って行ってまいりますし、また日本の国家のためのみならず世界全体のためにも我々は考えをいたして、汗をかくことはかくように努力してまいりたいと思う次第でございます。
  97. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 以上、木本平八郎君の質疑をもって締めくくり総括質疑は終了いたしました。  この際、委員長から申し上げます。  先ほどの青島君の発言につきましては、取り扱いを理事会で協議いたすことといたしておりますが、委員長といたしましても、速記録を調査の上、不穏当な部分がありました場合には適当な処置をとることといたします。  これにて質疑通告者の発言はすべて終了いたしました。昭和六十二年度総予算三案に対する質疑は終局したものと認めます。     ―――――――――――――
  98. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 昭和六十二年度一般会計予算及び昭和六十二年度特別会計予算の修正について山口哲夫君から発言を求められておりますので、この際、これを許します。山口君。
  99. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 私は、提案者を代表いたしまして、ただいま議題となりました日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議共同提案の昭和六十二年度一般会計予算及び特別会計予算の修正案につきまして、その提案の趣旨及び概要について御説明申し上げます。  昭和六十二年度予算政府案につきましては、衆議予算委員会においてはほとんど実質的な審議が行われず、しかも強行採決という異例の事態を経て本院に送付されたわけでありますが、参議院予算委員会における審議の中で軍備優先、国民生活圧迫予算の実態が一層明らかにされており、政府案の欠陥を是正することが必要となってまいりました。  とりわけ、防衛費の対GNP比一%枠の撤廃は、昭和五十一年度三木内閣が決定した防衛費は国民総生産の一%以内という閣議決定趣旨を踏みにじるものであり、平和を願う国民世論、軍縮を求める国際世論に逆行するもので、到底容認できないものであります。  日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議は、防衛費の対GNP比一%枠突破の重要性、問題の緊急性にかんがみて、防衛費のGNP一%枠厳守に焦点を限定した予算修正を行うこととした次第であります。  本修正案の特色は、第一に防衛費の対GNP比一%枠を突破させないため防衛費の削減を行い、第二に特例公債の減額を図る等の修正を行うことであります。  以上の結果、昭和六十二年度一般会計予算における防衛関係費は三兆四千八百四億円となり、対GNP比は〇・九九三%と一%以内におさまることとなります。  また、一般会計予算の規模は、政府案を三百七十五億円減額した五十四兆六百三十五億円となります。  次に、修正案の具体的な内容について申し上げます。お手元に修正案が配付されておりますので、修正内容の中身について簡潔に御説明いたしたいと存じます。  まず、歳入についてでございますが、特例公債の発行を三百七十五億円減額し、財政再建を進めることといたしております。  次に、歳出でございますが、第一に防衛関係費を三百七十億円減額いたします。防衛関係費を削減するに当たりましては、政府・与党折衝における復活相当部分を削減することといたしております。防衛関係費では、教育訓練費、油購入費などを中心に本庁経費を六十億円、武器車両等購入費を六十一億円、施設設備費を百二十八億円、装備品等整備諸費を二十六億円それぞれ減額し、また、防衛施設庁関係では、施設運営等関連諸費を九十五億円減額することとしております。第二に国債費を五億円減額いたしております。これは特例公債の発行額を三百七十五億円減額することに伴う利払い費等の減額措置であります。  次に、特別会計予算の修正は、一般会計の修正に関連して、国債整理基金特別会計について、歳入と歳出をそれぞれ五億円減額いたしております。  以上、修正案の概略を申し上げましたが、修正案の内容とその意図するところは、我が国の将来に思いをいたし、平和と思いやりのある社会を建設するために必要最小限の修正を行ったものであります。これらの点を考慮いただき、全会一致で御賛同くださるよう強く要望し、提案の趣旨説明といたします。(拍手)
  100. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 以上で両修正案の趣旨説明は終わりました。  別に御発言もなければ、総予算三案並びに両修正案に対する討論に入ります。  討論の通告がございますので、順次これを許します。なお、発言者は賛否を明らかにしてお述べ願います。野田哲君。
  101. 野田哲

    ○野田哲君 私は、日本社会党・護憲共同を代表して、ただいま議題となりました政府提出の昭和六十二年度予算三案に反対、日本社会党・護憲共同及び公明党・国民会議の共同提出に係る修正案に賛成の討論を行うものであります。  中曽根総理は本院での予算審議が開始されてすぐ日米首脳会談に臨んだのでありましたが、結果は、見るべき成果もなく、明らかに失敗であったと言わざるを得ません。  百三十円台突入という行き過ぎた円高の原因は、我が国だけの責任ではないはずであります。アメリカの巨額な財政赤字貿易赤字、この双子の赤字の解消なくして、為替相場の安定など到底期待できないのであります。  とりわけ、米国の軍事費削減が財政赤字削減の決め手となり、米国の経済構造改革にも資する点を何ら具体的に要求もせず、内政干渉に当たると称して黙認している総理の態度は断じて納得できません。  その一方、内需拡大、短期金利引き下げ、市場開放など、数々の課題を背負い込まされております。総理は、日米両国の政策協調が大切だと述べておりますが、事の真相は単なる対米追随策にすぎないのではないでしょうか。  総理の対米追随政策は経済面だけではありません。戦後政治の総決算と銘打った軍拡政策と軍事面での対米追随政策がきわまったのが、六十二年度予算における防衛費の対GNP一%枠突破という一大暴挙なのであります。  自衛隊の機能と役割が日米共同作戦体制の中に組み込まれ、SDIに象徴される新たな米国の世界核戦略に従属している中曽根内閣の軍拡体質は、極めて危険なものと言わざるを得ません。  私は、反核、軍縮、平和を求める内外世論に背を向け、平和憲法をじゅうりんする軍拡予算に断固として反対を表明し、以下、政府案に反対する具体的な理由を申し上げます。  反対理由の第一は、防衛費の対GNP一%枠突破が強行され、歯どめなき軍拡、戦争への道を開く極めて危険な予算となっていることであります。  我が党の再三再四にわたる警告を無視し、中曽根内閣は、ここ五年間のマイナスシーリングのもとで異例の防衛費突出を定着させてきました。六十二年度予算においても、一般歳出が伸び率ゼロの中にあって、防衛費は五・二%増、三兆五千百七十四億円、一般歳出の一割を突破するまでに急膨脹しております。  この結果、防衛費の対GNP比は一・〇〇四%と一%枠を突破し、歴代自民党内閣が厳守してきた定量的歯どめが撤廃されるという暴挙が強行されたのであります。これにかわる十八兆四千億円の総額明示方式も有効な歯どめとはなり得ません。累積総額二兆六千七十八億円に達する後年度負担が次年度以降の防衛費増加の圧力となることは必定であり、このような軍拡予算は到底認めることはできません。  反対理由の第二は、一般歳出伸び率ゼロという歳出抑制策が見せかけ倒れとなっており、しかも財政再建目標が完全に破綻していることであります。  一般歳出伸び率ゼロの中身は、公務員給与改善費の二年連続未計上、厚生年金国庫負担の先送りなど歳出の繰り延べや特別会計、財政投融資へのツケ回しなどによって巧妙に操作されたものであり、単なる見せかけの圧縮にすぎないのであります。このように財政再建のあり方を一般会計のみに矮小化させてしまうことは、財政再建に逆行する粉飾欠陥予算と直言うべきものであり、断じて容認できません。  また、昭和六十五年度特例公債脱却を掲げながら、その財政再建公約が完全に破綻したにもかかわらず、その政治責任を何らとっていないことも言語道断と言わざるを得ないのであります。  反対理由の第三は、内外からの内需拡大要請に極めて冷淡な予算となっていることであります。  我が国経済現状は、中曽根内閣の経済政策の失敗によってもたらされた急激な円高によって不況のどん底に追い込まれております。雇用情勢も一段と悪化、六十年十一月から本年四月までの円高倒産は累計で九百一件に達し、失業率は史上最悪を記録しております。  加えて、累増する貿易収支黒字幅は、六十一年度一千億ドルの大台を突破しており、これに対する国際的批判はもはや一刻の猶予も与えられない状況となっております。  このような内外からの内需拡大要請にこたえるべき政府予算案が、一般歳出の五年連続伸び率ゼロ、公共事業費の四年連続削減という超緊縮予算となっていることは、断じて納得できないのであります。しかも、中曽根内閣の超緊縮型の財政運営が結果的に輸出に活路を求めることに追い込んだという反省が見られない点も納得できません。  今、政府に求められていることは、大幅な所得税減税の先行実施であり、財政の積極的活用を通じて、雇用を確保し、住宅、社会資本の充実、福祉の増進、労働時間の短縮などを大胆に実施していくことであります。円急騰の数字合わせで、一人当たりGNPが米国を追い抜き世界一となったと聞かされても、実感などわくはずはありません。つくられた虚像と現実とのギャップを少しでも解消し、真に豊かな国民生活を築くための内需拡大策を目指すことが肝要なのであります。  最後に、中曽根内閣が推し進めてきた税制改革問題で一言申し上げます。  選挙公約を無視し、売上税を強行した結果はどうだったでしょうか。中曽根内閣の支持率は急低下し、統一地方選挙の結果は自民党の敗北に終わったのであります。売上税廃案は、まさに国民の声というほかありません。  数のおごりや国会軽視、国民無視の態度を今後二度ととることのないよう、政府・自民党の反省を促し、政府予算案に対する反対討論といたします。  日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議共同提出の修正案の提案理由、内容については、ただいま詳細に述べられましたが、この修正案こそ我が国の平和と安全、国民生活を守るために必要不可欠なものであり、賛成を表明して私の討論を終わります。(拍手)
  102. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 次に、佐藤栄佐久君。
  103. 佐藤栄佐久

    佐藤栄佐久君 私は、自由民主党を代表いたしまして、ただいま議題となりました昭和六十二年度予算三案に対しまして、政府原案に賛成し、日本社会党・護憲共同及び公明党・国民会議から提出された修正案に反対する討論を行います。  我が国では、一昨年秋以来の円高をめぐり種々の論議が展開されております。  円高それ自体は、円の対外評価が高まることであり、長い目で見れば我が国にとってプラスであることは言うまでもありません。既に、この円高と原油安によって十一兆円近い差益が国民生活に還元されており、消費が堅調な動きを示すなど、景気の下支えに寄与しているのであります。これらは、政府の適切なる指導によるところが大きく、私はその労を多とするものでありますが、反面、この円高が急速かつ大幅であったため、輸出依存型産業とその関連産業を中心影響があらわれており、雇用情勢も厳しくなるなど日本経済円高デフレの様相を色濃くしているということも否定できません。  また、日本貿易黒字が依然大幅な水準を続けていることから米国議会でも対日批判が強まり、見過ごせぬ状況にあります。  もちろん、政府としてもこの間、総合経済対策を決定し、これに基づく補正予算で思い切った建設国債の増発を断行するとともに、金利水準の引き下げ、国際会議における為替安定に向けた要請など、あらゆる機会、政策を通じてこれらに対処してきたのであります。時期を逸することなく適宜適切に行ったこれらの行動を私は高く評価するものであり、同時に、円高貿易摩擦問題の解決に向け総理みずから米国を訪問し、レーガン大統領と忌憚のない意見を交わすことにより日米間の関係をより緊密なものとし、為替の動きを落ちつかせたことは総理努力のたまものと、これまた高く評価いたす次第であります。  しかし、為替レートは何分にも市場が決めることであり、乱高下に対してはその安定のため引き続き政府努力が必要とされますが、基本的には我が国経済産業構造を内需中心のものとなるよう粘り強く取り組んでいく必要があると思われます。  昭和六十二年度予算三案は、こうした内需型の経済を目指して編成され、また、懸案の財政改革にも配慮するなど、我が国が抱えている課題に十分こたえた内容となっており、賛成いたす次第であります。  以下、その主な理由を申し上げます。  まず、財政改革をより一層推進したことであります。  高齢化の進展、国際社会への対応等が今後十分行われるためには、早期に財政の対応力を回復することが必要であります。このため、政府は、昭和六十五年度までに特例国債依存体質からの脱却という努力目標を立て、懸命なる努力を続けてきたところであり、その効果も徐々にではありますが着実に上がってきております。今年度予算においても、一層の努力を払うことにより、一般歳出は五年連続で前年水準を下回ることとなり、公債依存度は、特例公債を発行して以来初めて二〇%を切りました。このことは財政の対応力が回復しつつあることのあかしであると言えましょう。  次に、内需中心経済への転換を進めるとともに、当面する円高影響についてきめ細かな対応を図っていることであります。  一段と厳しい財政事情にかんがみ、公共事業関係費を前年度当初予算に対し減少させながらも、内需の拡大に資するため一般公共事業の事業費については、財政投融資の活用や民間活力の活用等の工夫により、名目経済成長率見通しの伸びを上回る五・二%の伸びを確保しております。内需の拡大に重要な役割を果たす住宅建設に対しても、住宅金融公庫の融資戸数の増加、貸付限度額の拡大等対策の拡充を図っております。また、厳しい情勢が見込まれる雇用に関しても、三十万人雇用開発プログラムを実施し、地域雇用対策の充実等積極的な推進を図ることとしております。さらに、産業構造調整を推進するため、種々の配意をし、産業基盤整備基金を設けるとともに、中小企業の近代化、構造改善を促進するための施策を講じているのであります。  これらの施策は、当面する円高デフしから来る影響を緩和するとともに、我が国経済が内需型へと地道に脱皮することを可能にさせるものであり、時宜にかなった措置であります。  そのほか、国際社会への貢献に向け、海外援助、防衛関係費については特段の配慮をし、それぞれ高い伸びを確保するとともに、恵まれない方々への福祉施策や、明日の日本を築く上に欠かせない教育研究環境の整備についても重点的に配分を行うなど、厳しい財政状況にもかかわらず政策優先順位に応じて十分な配慮がされているのであります。  以上申し上げてきましたように、昭和六十二年度予算三案は、現下の我が国が抱える諸問題によく対処し、また、将来展望を切り開こうとする意欲に満ちたものと高く評価したいのであります。  なお、日本社会党・護憲共同及び公明党・国民会議提出の修正案は、防衛費の削減を求めるものでありますが、もとより防衛費は日本を独立国としてみずからの手で守るため、また西側の一員としての国際的責任を果たすために重要な経費であり、これの削減は認めるわけにはまいりません。  今回、経済の伸び悩みもあり、わずかではありますが、この防衛費がやむを得ずGNP一%枠を超えることとなりました。しかし、我が国は平和国家を貫くことを基本としており、このことにより軍事大国への道を歩むなどということは全くの杞憂にすぎないということも申し上げておきたいのであります。  これをもちまして私の討論を終わります。(拍手)
  104. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 次に、峯山昭範君。
  105. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 私は、公明党・国民会議を代表して、ただいま議題となりました昭和六十二年度予算三案に対して反対、公明党・国民会議と日本社会党・護憲共同が共同で提出した修正案に対し賛成の討論を行うものであります。  昭和六十二年度予算は、急激な円高、大幅な経常収支不均衡貿易摩擦の激化といった厳しい内外経済情勢の中で、世界のGNP一割国家となった我が国がいかに内需拡大国民生活の充実、対外的貢献を実現していくかを示す試金石でありました。ところがその内容は、政策的経費である一般歳出は五年連続でマイナスという超緊縮予算であり、中身を見ても、防衛費突出の一方で住宅対策費など公共事業関係費が軒並み削減され、国民生活を圧迫する二極分化の予算となっており、我が国が抱える政策課題に何らこたえる内容となっていないのであります。  以下、政府予算案に反対する主な理由を申し述べます。  反対の第一の理由は、政府案が、今日における我が国経済最大の課題であり、内外から強い要請がある内需拡大に何ら積極的な取り組みをしていないことであります。  年々増加してきた我が国貿易黒字は、昭和六十一年度遂に一千億ドルを突破し、貿易摩擦は激化の一途をたどっております。こうした事態を招いた責任は、再三の公約にもかかわらず何ら実効ある内需拡大策を実行してこなかった中曽根内閣の無策の経済運営にあると言わざるを得ないのであります。  一方、急激な円高輸出関連産業を中心に深刻な影響を与えており、早急に景気刺激策が実施されなければ六十二年度政府見通しの実質三・五%成長が困難なことは、政府みずからの認めるところでもあります。しかるに、四年連続で公共事業費を削減し、財源問題を理由に所得税減税の実施を確約しない政府の態度は、到底認めることはできないのであります。  私は、個人消費拡大のためにも、速やかに総額二兆円規模の所得税減税を実施するとともに、生活関連の社会資本を充実する公共事業の追加を行い、積極財政への転換を図るよう政府に強く要望するものであります。  反対の第二の理由は、防衛費の対GNP比一%枠を意図的に突破させた軍拡予算となっていることであります。  政府案における防衛費は、超緊縮予算の中にあって対前年度五・二%増と突出し、その対GNP比は一・○〇四%とついにGNP一%枠を突破いたしました。防衛費の対GNP比一%枠を守るべきであるとの声は国民世論であり、対外的にも我が国の平和政策の基盤をなすものであります。GNP比一%枠の撤廃は際限のない軍事費増大への道を開くものとして許すことができないのであります。しかも、今回新たな歯どめとされたいわゆる総額明示方式は、単年度の防衛費について何ら歯どめがないばかりか、六十六年度以降の後年度負担についても縛りがなく、到底歯どめたり得ないものであります。  反対の第三の理由は、六十五年度赤字国債脱却という政府の財政再建が完全に破綻しているにもかかわらず、今なお有名無実化した目標を掲げ、政府がみずからの責任を覆い隠そうとしていることであります。  毎年度一兆円の赤字国債減額は、計画初年度から目標を下回ったばかりか、六十年度以降年々その減額幅が縮小し、六十二年度は前年度に比べ四千四百五十億円の減額にとどまっております。このため、六十五年度赤字国債脱却には、今後毎年度一兆六千六百三億円という今年度の六倍以上の削減が必要となり、もはや政府の財政再建が不可能であることは火を見るよりも明らかであります。しかるに、六十五年度赤字国債発行脱却の目標をいまだに掲げ、財政運営の手を縛り、景気対策の弾力的実施を困難にしている政府の責任は極めて重いと言わなければなりません。中曽根内閣は、もはや財政政策の失敗を率直に認め、政治責任を明らかにした上で、実現可能な財政再建計画を策定すべきであります。  最後に、衆議院に協議会を設置し検討することになりました税制改革につきましては、売上税導入、マル優廃止が国民の厳しい批判の前に廃案に追い込まれた教訓を生かし、過ちを二度と繰り返さないよう、国民の声に耳を傾け慎重審議をするとともに、税制の抜本的改革はまず不公平税制の是正が急務であり、この実現に真っ先に取り組むよう強く要求するものであります。  以上、反対の主な理由を申し述べてまいりましたが、我が党と日本社会党・護憲共同が共同で提案した修正案については、その意をお酌み取りの上御賛同いただきたく強く要望して、私の討論を終わります。(拍手)
  106. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 次に、沓脱タケ子君。
  107. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 私は、日本共産党を代表して、昭和六十二年度政府提案の予算三案に反対の討論を行います。  本予算案は、円高不況のもとで国民生活の防衛と真の内需拡大が切実に求められ、また、核兵器の廃絶と軍縮の声が全世界で高まっているときに、これに全く反する大増税、財界、大企業への大幅減税と歯どめなき大軍拡で、暮らしと民主主義、平和を踏みにじる最悪の予算案であります。  私は、このような重大な反国民的内容を持つ予算案が、当委員会において極めて不十分な審議のままで採決に付されることに対し、遺憾の意を表するものであります。  我が党幹部への電話盗聴事件が警察による計画的、組織的犯罪であるという事実が次々と判明する中で、本院議員である我が党の上田副委員長宅に盗聴器が仕掛けられたことは、人権と議会制民主主義をじゅうりんする重大な政治的犯罪であり、本院みずからが調査、究明に当たるべき問題であります。にもかかわらず、その解明に必要な参考人並びに証人の招致喚問要求が自民党の反対で実現できなかったことは、国会の審議権をみずから制約するものであり、極めて遺憾であります。  以下、本予算案への反対理由を申し上げます。  第一は、本予算案が、廃案が明確な売上税、マル優廃止が盛り込まれたままにされているいわば欠陥予算であることです。政府の手によって再編成、再提出されない以上、国会において否決されるのは当然であります。  政府は、衆議院議長裁定にうたわれた直間比率の見直しを足場に、売上税の名を変えた新たな大型間接税の導入を企図していますが、国民を欺瞞するこのような策略については厳しく糾弾するものであります。  反対理由の第二は、政府みずからが課した軍事費GNP一%枠さえ取り払った大軍拡予算であるということです。  我が国の軍事費は、NATO並みの基準で比べれば、米ソに次いで世界第三位にまでなっているのです。今や軍縮を求める声は我が国におきましても、また国際的な世論ともなっており、大軍拡を進める道はこの世界の大勢に逆行するものであります。今、日本がとるべき道は、軍縮と軍事費の削減、核兵器廃絶への道であることを強く指摘するところであります。  第三の理由は、異常円高を追認し、対米公約の前川レポートに基づく産業構造調整を強行する予算であることです。百四十円前後という異常円高のもとで中小業者は塗炭の苦しみに突き落とされています。  この異常円高の加速は、大企業の労働者、下請いじめを放置し、さきの日米首脳会談の屈辱的な結果にも見られるごとく、アメリカ側の身勝手な要求を一方的に諾々と受け入れてきた政府の大失政によってもたらされたことは明白であります。その責任を厳しく指摘するものであります。  第四は、国民生活と地方財政の破壊を進める予算であることです。  社会保障費は、当然増経費まで削り込み、二・一%増に抑えられ、中曽根内閣五年間でもわずか一一・一%の伸びに抑えられています。文教費に至っては、この五年間で〇・五%のマイナスです。軍事費の伸び三六%との対照はまさに中曽根内閣の政治姿勢を鮮明に示したものであります。  地方財政について言えば、高率補助金の大幅カットは三年目になり、一兆五千億円にも達しています。その結果、各自治体では国保料の引き上げを初め、福祉、教育に関係した補助金の廃止や、あるいは縮小など住民負担が一層大きくなっているのであります。  以上のとおり、本予算案は大軍拡と大企業優遇の一方で福祉、教育を切り捨て、国民生活と地方財政を破壊に導くものであり、断固として反対するものであります。  なお、社会党、公明党提案の修正案につきましては、政府提出の本予算案の反国民的な骨格を何ら変えるものではなく、軍事費の大部分の容認を前提としたものでありますので、反対であることを申し上げて、私の反対討論といたします。(拍手)
  108. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 次に、橋本孝一郎君。
  109. 橋本孝一郎

    橋本孝一郎君 私は、民社党・国民連合を代表し、ただいま議題となっております昭和六十二年度予算三案に対し、一括して反対の討論を行うものであります。  反対する第一の理由は、内需主導による積極予算を編成せよとの我が党の再三にわたる要求を無視し、五年連続のマイナスシーリングにより、依然として無責任な縮小均衡型予算にとどまっている点であります。構造不況、円高不況、雇用危機に代表される現下の経済の実情に即した政策のビジョンを欠いた欠陥予算であり、断じて容認できるものではありません。  反対する第二の理由は、予算案に大衆増税たる売上税導入、マル優制度廃止が盛り込まれている点であります。売上税等の大衆増税をもくろんだ政府の税制改革案は事実上廃案となりましたが、公約を破り、なし崩し的に悪税を導入しようとした強硬なやり方に対して不満を表明しないわけにはまいりません。  総理は、中堅所得者層に厚い減税を断行すると公約されましたが、減税どころか、逆に増税となる案を打ち出され、公平な税制改革とはおよそかけ離れてしまったと評価せざるを得ません。政府・自民党が行おうとした税制改革は、不公平税制是正にはほとんど手をつけず、財政当局が企図する財源確保のみを念頭にしていた点でシャウプ勧告以来の抜本改革に値するものとは到底言えないものとなっております。  反対する第三の理由は、行政改革に対する真剣な姿勢が見られないことであります。行革はいまだに道半ばであり、これからがまさに本番であるにもかかわらず、国鉄などの改革を除いては満足すべきものが実行されているとはお世辞にも言えない状況であります。  第四の反対の理由は、教育、福祉に対する切り捨てが盛り込まれている点であります。政管健保事業にかかわる一般会計からの厚生保険特別会計健康勘定への繰入特例は安易な財源確保措置であり、断固反対するものであります。  反対の第五の理由は、円高不況、雇用不安に対する政策が小手先だけのものであり、実効のある内容とはなっていない点であります。政府の無為無策な為替外交によりもたらされた一ドル百四十円前後という余りにも急激な円高が、我が国経済の危機を一層深刻なものにしたことは極めて明白な事実であります。このような事態を招いた政府の責任は重大そのものと言えるのであります。にもかかわらず、円高及び雇用危機に対して十分な措置が講じられていないことに、私は遺憾の意を表明したいのであります。  反対の最後の理由は、貿易摩擦解消に対し、何ら実効的な措置が講じられていない点であります。また、先日の日米首脳会談、OECD閣僚理事会において我が国が公約した内需拡大を本予算案で実施するには不十分で、諸外国の期待にもこたえられないことを申し上げます。  さらに、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議共同提案の修正案に対し反対するものであります。  理由は、一%枠を守ることは長年持続され、しかも国民に定着したものであります。したがって、でき得る限りこれを守ることは必要であると思いますが、しかし対比されるGNPが不確定な要素のものでありまして、理論的に非常に不確定であります。したがって、それにかわる新しい歯どめをつくり、それを国民に理解きして国の安全を守ることが必要ではないかと思います。  以上のような理由をもちまして反対をいたします。  討論を終わります。
  110. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 以上で討論通告者の発言はすべて終了いたしました。討論は終局したものと認めます。  それでは、これより採決に入ります。  まず、山口哲夫君提出の両修正案を一括して採決いたします。両修正案に賛成の方は起立を願います。    〔賛成者起立〕
  111. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 少数と認めます。よって、山口君提出の両修正案は否決されました。  それでは、昭和六十二年度一般会計予算昭和六十二年度特別会計予算昭和六十二年度政府関係機関予算、以上三案を一括して採決いたします。  三案に賛成の方は起立を願います。    〔賛成者起立〕
  112. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 多数と認めます。よって、三案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。(拍手)  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  113. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ―――――――――――――
  114. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 次に、継続調査要求に関する件についてお諮りいたします。  予算の執行状況に関する調査につきましては、閉会中もなお調査を継続することとし、本件の継続調査要求書を議長に提出いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  115. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  なお、要求書の作成及び提出の時期につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  116. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ―――――――――――――
  117. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 次に、委員派遣に関する件についてお諮りいたします。  閉会中の委員派遣につきましては、その取り扱いを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  118. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。  本日はこれにて散会いたします。    午前十一時五十分散会      ―――――・―――――