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1987-05-19 第108回国会 参議院 予算委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十二年五月十九日(火曜日)    午前十時開会     —————————————    委員の異動  五月十八日     辞任         補欠選任      永野 茂門君     大塚清次郎君      上野 雄文君     粕谷 照美君      村沢  牧君     矢田部 理君      鶴岡  洋君     塩出 啓典君      馬場  富君     高桑 栄松君      吉川 春子君     吉岡 吉典君      小西 博行君     勝木 健司君  五月十九日     辞任         補欠選任      秋山  肇君     田  英夫君      下村  泰君     青島 幸男君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         桧垣徳太郎君     理 事                 佐藤栄佐久君                 原 文兵衛君                 降矢 敬義君                 村上 正邦君                 吉川 芳男君                 野田  哲君                 峯山 昭範君                 沓脱タケ子君                 橋本孝一郎君     委 員                 石本  茂君                 大塚清次郎君                 梶木 又三君                 金丸 三郎君                 北  修二君                 坂野 重信君                 坂元 親男君                 下稲葉耕吉君                 杉元 恒雄君                 関口 恵造君                 竹山  裕君                 名尾 良孝君                 永田 良雄君                 野沢 太三君                 鳩山威一郎君                 林 健太郎君                 林田悠紀夫君                 増岡 康治君                 森山 眞弓君                 吉村 真事君                 稲村 稔夫君                 粕谷 照美君                 福間 知之君                 矢田部 理君                 安恒 良一君                 山口 哲夫君                 塩出 啓典君                 高桑 栄松君                 中西 珠子君                 神谷信之助君                 吉岡 吉典君                 勝木 健司君                 田  英夫君                 青島 幸男君                 木本平八郎君    国務大臣        内閣総理大臣   中曽根康弘君        国 務 大 臣  金丸  信君        法 務 大 臣  遠藤  要君        外 務 大 臣  倉成  正君        大 蔵 大 臣  宮澤 喜一君        文 部 大 臣  塩川正十郎君        厚 生 大 臣  斎藤 十朗君        農林水産大臣   加藤 六月君        通商産業大臣   田村  元君        運 輸 大 臣  橋本龍太郎君        郵 政 大 臣  唐沢俊二郎君        労 働 大 臣  平井 卓志君        建 設 大 臣  天野 光晴君        自 治 大 臣        国 務 大 臣        (国家公安委員        会委員長)    葉梨 信行君        国 務 大 臣        (内閣官房長官) 後藤田正晴君        国 務 大 臣        (総務庁長官)  山下 徳夫君        国 務 大 臣        (北海道開発庁        長官)        (沖縄開発庁長        官)        (国土庁長官)  綿貫 民輔君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  栗原 祐幸君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       近藤 鉄雄君        国務 大 臣        (科学技術庁長        官)      三ッ林弥太郎君        国 務 大 臣        (環境庁長官)  稲村 利幸君         —————        会計検査院長   辻  敬一君         —————    政府委員        内閣官房内閣安        全保障室長        兼内閣総理大臣        官房安全保障室        長        佐々 淳行君        内閣法制局長官  味村  治君        内閣法制局第一        部長       関   守君        総務庁長官官房        審議官      勝又 博明君        兼内閣審議官        総務庁長官官房        審議官      百崎  英君        総務庁行政管理        局長       佐々木晴夫君        防衛庁参事官   瀬木 博基君        防衛庁参事官   筒井 良三君        防衛庁長官官房        長        友藤 一隆君        防衛庁防衛局長  西廣 整輝君        防衛庁教育訓練        局長       依田 智治君        防衛庁人事局長  松本 宗和君        防衛庁経理局長  池田 久克君        防衛庁装備局長  鎌田 吉郎君        防衛施設庁長官  宍倉 宗夫君        防衛施設庁総務        部長       平   晃君        防衛施設庁施設        部長       岩見 秀男君        防衛施設庁労務        部長       西村 宣昭君        経済企画庁調整        局審議官     田中  努君        経済企画庁総合        計画局長     及川 昭伍君        経済企画庁調査        局長       勝村 坦郎君        科学技術庁研究        開発局長     長柄喜一郎君        国土庁長官官房        長        清水 達雄君        国土庁長官官房        会計課長     佐々木 徹君        国土庁土地局長  田村 嘉朗君        法務省入国管理        局長       小林 俊二君        外務省アジア局        長        藤田 公郎君        外務省北米局長  藤井 宏昭君        外務省欧亜局長  長谷川和年君        外務省中近東ア        フリカ局長    恩田  宗君        外務省経済局長  渡辺 幸治君        外務省経済協力        局長       英  正道君        外務省条約局長  斉藤 邦彦君        外務省国際連合        局長       中平  立君        外務省情報調査        局長       新井 弘一君        大蔵省主計局長  西垣  昭君        大蔵省主税局長  水野  勝君        大蔵省理財局長  窪田  弘君        大蔵省理財局次        長        入江 敏行君        大蔵省証券局長  北村 恭二君        大蔵省銀行局長  平澤 貞昭君        大蔵省国際金融        局長       内海  孚君        大蔵省国際金融        局次長      畠中 杉夫君        文部大臣官房長  古村 澄一君        文部大臣官房会        計課長      野崎  弘君        文部省初等中等        教育局長     西崎 清久君        厚生省年金局長  水田  努君        厚生省援護局長  木戸  脩君        農林水産大臣官        房長       甕   滋君        農林水産大臣官        房予算課長    上野 博史君        通商産業省通商        政策局次長    吉田 文毅君        通商産業省機械        情報産業局次長  山本 雅司君        運輸大臣官房国        有鉄道改革推進        総括審議官    林  淳司君        運輸省航空局長  山田 隆英君        郵政省貯金局長  中村 泰三君        労働大臣官房長  岡部 晃三君        労働省職業安定        局長       白井晋太郎君        建設大臣官房総        務審議官     渡辺  尚君        建設大臣官房会        計課長      市川 一朗君        建設省建設経済        局長       牧野  徹君        自治大臣官房長  持永 堯民君        自治大臣官房審        議官       森  繁一君        自治省税務局長  津田  正君    事務局側        常任委員会専門        員        桐澤  猛君    参考人        日本銀行総裁  三重野 康君     —————————————   本日の会議に付した案件参考人出席要求に関する件 ○昭和六十二年度一般会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和六十二年度特別会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和六十二年度政府関係機関予算内閣提出、  衆議院送付)     —————————————
  2. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 予算委員会を開会いたします。  昭和六十二年度一般会計予算昭和六十二年度特別会計予算昭和六十二年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。  まず、締めくくり総括質疑に関する理事会における協議決定事項について御報告いたします。  質疑を行う日は、本日十九日及び明日二十日とすること、質疑時間総計は二百五分とし、各会派への割り当ては、日本社会党護憲共同七十五分、公明党・国民会議四十三分、日本共産党三十二分、民社党・国民連合二十二分、新政クラブ、二院クラブ・革新共闘及びサラリーマン新党参議院の会それぞれ十一分とすること、質疑順位及び質疑者等についてはお手元の質疑通告表のとおりとすること、以上でございます。  右、理事会決定のとおり取り運ぶことに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  4. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 次に、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  昭和六十二年度総予算案審査のため、本日、日本銀行総裁三重野康君を参考人として出席を求めることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  6. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) それでは、これより締めくくり総括質疑を行います。     —————————————
  7. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) この際、後藤田内閣官房長官から発言を求められておりますので、これを許します。後藤田内閣官房長官
  8. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) 日米防衛協力のための指針閣議における取り扱いについて申し上げたいと思います。  日米防衛協力のための指針閣議における取り扱いに関する五月十二日の参議院予算委員会における野田委員の質問につきましての政府立場は次のとおりであります。  一 一般に、閣議閣議書をもって付議される案件には、その内容によって、「閣議決定」、「閣議了解」及び「閣議報告」がある。このほか、閣議の席上国務大臣所管事項等について説明等を行うものがある。  二 「日米防衛協力のための指針」は、日米安全保障協議委員会下部機構たる防衛協力小委員会における研究協議の結果を取りまとめて文書として作成したものであり、昭和五十三年十一月二十七日に開催された第十七回日米安全保障協議委員会において報告され、了承されたものである。これは、あくまでもその後行われるべき研究作業等のガイドラインとしての性格を有するものであって、外務大臣及び防衛庁長官が処理すべきものであり、また、政府としての具体的行政措置等を定めるものではないので、閣議書をもって付議される案件として処理されなかったが、その内容上、日米防衛協力の在り方にわたるものであることから、シビリアン・コントロールの確保という面も考慮し、昭和五十三年十一月二十八日の国防会議審議を行い、さらに同日の閣議において、資料を席上配付の上、所管大臣たる外務大臣及び防衛庁長官発言し、その経緯内容を報告し、了承されたものである。  三 「日米防衛協力のための指針」に係る経緯は前述のとおりであるが、一般に、閣議における案件取扱いは事柄の性質に応じ適正に行われるべきことは当然であるので、政府としては、閣議案件取扱いについて今後とも万全を期していく所存である。以上でございます。     —————————————
  9. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) これより野田哲君の質疑を行います。野田君。
  10. 野田哲

    野田哲君 まず、四年半政権を担当されて、遅くともことしの十月末までにはその任を終えようとされている中曽根総理の今日までの政治を総括して、中曽根政治総決算という立場総理にまずその政治信条について伺いたいと思います。  ことしの一月二十六日のこの通常国会の初めに行われた総理施政方針演説、これは総理にとっては恐らく最後施政方針演説になると思うんですが、この総理施政方針演説に対する各新聞論評社説を見ると、その見出しはこういうふうになっています。朝日新聞は、「「言うこと」と「すること」の差」。毎日新聞、「演説政策矛盾はないか」。東京新聞、「首相演説自己矛盾」。日経、「言葉と現実が矛盾する首相演説」。読売だけは別の論調を書いておりますが、読売は「中曽根政治の総決算演説」。  こうなっているわけでありまして、読売以外の各社の社説で共通している論評は、中曽根政治には、常に言うこととすることが違うではないか、そういう感じがつきまとっている、こういう論評で共通しているわけであります。つまり言わんとしているところは、公約をしなかった売上税を導入する、あるいは、それまで守る守ると公の場では言っていた防衛費のGNP一%の枠を外したこと、そうして昨年の六月の寝たふり解散、こういう総理政治手法に対する批判が各紙共通して行われているわけであります。  中曽根総理最後施政方針演説がこういうふうに論評をされていることについて、総理は四年半の在任を振り返りながらどういう所見をお持ちでございますか。
  11. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私は、不敏にして、総理大臣の重職を拝命いたしまして、自分といたしましては一生懸命努力してきたつもりでございますが、必ずしも皆様方の御満足を得る結果でないことを大変残念に、恐縮に存じておる次第であります。  私の考えは、ともかく戦後四十年の日本のこの過程を顧みまして、いいところはますます伸ばす、しかし悪いところやあるいは疑問に思う点はこれを解明して直すべきところは直す、そういう考えに立って大きな改革を行うときに来ていると。それが戦後政治の総決算という表現で出たわけでありまして、行政改革あるいは財政改革、あるいは教育改革、あるいはがんに対する挑戦、あるいは税制改革、そういう諸般改革挑戦したつもりでございます。国民皆様やあるいは与党、野党の皆様のいろいろな御鞭撻あるいは御批判の中に、一生懸命その改革を推進するという意味においては全力を尽くしたつもりであり、かつまたもう一つ国際国家としての日本を明らかにして、その軌道を敷き前進をする、世界の中において名誉ある地位を占めたい、そういうことを重ねて申してまいりましたが、そういう国際国家日本前進するという点もまた努力してきたつもりでございます。  この過程におきまして、いろいろ御批判をいただいたり、あるいは共鳴をいただいたりした面もあります。あのころの社説を読んでみますと、こういう点は同感だという面も社説の内部には多々あり、また、この点は批判する、これはよくないと指摘された面もあります。そういう皆様方の御批判等については謙虚に耳を傾けて、そして政治は結局百点満点というわけにはいかないのでありますから、したがって常に反省し、そしてよりよきものを目指して再検討を行い、前進を続けていく、そういう考えに立って今後も前進してまいりたいと考えておるところであります。  政治家に対する評価というものは、いろいろその過程においてはあるけれども、いろいろ過去の政治史等を勉強してみまして、やはりあるときには国民皆さんにつらいこともお願いしなけりゃならぬのは政治家の宿命でありまして、そういうやらなきゃならぬというときにこれを回避する、逃避するということは許されないという面もあると思うのであります。といって、やはり国民皆さんの声には謙虚に耳を傾けなければならぬのも政治家であり、謙虚と反省というものが民主主義の根底になければならぬとも考えております。結局はしかし、政治家に対する評価というものは棺を覆うて定まる、そういうことであると考えます。
  12. 野田哲

    野田哲君 これ以上この問題はそう繰り返しをするつもりはないんですが、もう一つ総理に伺いたいのは、この施政方針演説の中で「民主政治改革議会政治の新たな前進挑戦する意欲が欠けてはいないかという憂慮を持つ」と述べているわけでありますけれども、これは一体だれが議会政治の新たな前進挑戦する意欲が欠けていると言っていらっしゃるわけですか。ここの意味がよくわからないわけであります。今度の国会に、昨年の総選挙で全く公約もしていなかった売上税の導入を提案したり、あるいはそれを前提とした六十二年度予算案強行採決を容認したり、あるいは選挙のときには一切触れていなかった防衛費の一%枠を突破すること、これがここで総理が言っておられる新たな前進挑戦をする議会、こういうことなんですか。どうなんでしょうか。
  13. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ことしは、今の日本国憲法が施行されて四十年という節目の年に当たります。そういう意味において、この四十年間の我々の責任を持ってやってきた政治足取りというものを反省してみる。我々は行政府におったり、あるいは立法府におったりしておりますが、やはり憲法というものを大事にし、憲法が理想どおり行われるように努力している、しなければならぬということは、与野党共通のことでございます。公務員は憲法にもそういう点は明定されておるところでございます。  そういう意味において、我々がたどってきた足取り、特に憲法においては三権分立というものが行われ、おのおのおのおのの職分を果たしていかなければならない。行政府行政府としてやっておるか、内閣総理大臣として常に反省もし、また行政改革もそういう意味で推進しているところであります。また、自民党総裁といたしましては、立法府一員として責任を果たしているか、この点もまた考えなければならない。私はそういう両方に足がかりを持っておりますから、立法府行政府関係はうまくいっているかという点も反省し得る立場にあるわけであります。  そういう意味において、この戦後の歩みというものをもう一回点検してみて反省する必要がある。行政については、議会で随分御批判もいただき、国民からも御批判もいただいておりますが、自民党総裁といたしましては、例えば選挙法の改正、衆議院定数是正という問題については、議長のもとで、国会決議があって、抜本的見直しをやるという約束を国民の前にしておるけれども、この定数是正ということはなかなか進んでおらない。私は、国会立法府一員として国民に対する責任を果たしているかどうか、そういう点も厳格にみずからむちを打たなければならぬ、そう思っておりまして、そういう諸般の点について我々としては謙虚に反省していく必要がある、そう考えておるわけです。
  14. 野田哲

    野田哲君 どうもすれ違いなんですが、総理の書いたものや演説にどうしてもこだわるわけなんですが、総理演説場所と相手によって内容が大きく変わるということを私は感じているんです。言うこととやることが違う、こういうふうに評される。これは時と場所によっても大きく変わる、こういう感じを持っているんです。  ことしの一月に総理ベオグラードで、「欧州の友人へ」、こういう表題演説をされている。このベオグラードにおける演説を読むと、これはやはり内容としては大変立派な内容になっているんです。もしこれ表題中曽根総理演説と書いてなければ、私の方の土井委員長演説ではないかと錯覚を起こすような内容なんであります。  ちょっと触れてみますと、「チトー大統領がイニシアティブをとられた非同盟運動が巨大な前進を遂げたことに敬意を表したいと存じます。」「この真正非同盟が、今後、東西緊張緩和のためますますその重要性を高めていくことを確信いたしており、これを評価するものであります。」、そして、「我が国民は、かつて軍国主義の跳梁を許し、戦争にいたる悲劇を体験した過去に対し厳しい反省を有しております。」「私が総理就任以来、自由と民主主義という価値を共有する諸国との連帯の下に、究極的には地球上からの核の廃絶を目指した軍縮軍備管理促進を主張し続けてきたのも、以上のような国民の痛切な体験からする平和への悲願に基づくものにほかなりません。」、こういうふうになっているわけであります。  さらにまた国連演説、これもなかなか私は立派なものだと思うのでありますけれども、外国でこういう内容演説をされる総理が、就任間もない八三年の一月のワシントンでの発言日本列島を不沈空母化しソ連のバックファイアに対抗する、三海峡を封鎖する、シーレーン一千海里を軍事力によって防衛する、こういう趣旨の発言ベオグラードでああいう演説をされた同じ人がなぜこういう演説をされるのか。あるいはまた、一昨年の七月の自民党のセミナーにおける演説皇国史観をとうとうと語られ、極東軍事裁判批判し、そして一%突破に向けての意欲をむき出しにされている。  一体どっちの演説総理の本心なのか。総理は本当に非同盟運動敬意を表し、これを評価して、核の廃絶軍縮促進を主張し続けてこられたのですか。
  15. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私は、施政方針演説等におきまして国民皆さんに明らかに申し上げておることは、我々の外交政策は、世界の平和、人類の福祉のために国連を中心として国連憲章を守っていく、そして自由と民主主義を奉ずる同じ価値を持っておる諸国との連帯の上に立って平和を築いていくということ、それと同時に、我々はアジアの一員としてアジアの国々の問題について大きな関心と協力関係を生み出そうと努力をしているということ。さらに発展途上国につきましても、我々は百年前は発展途上国でもあったわけでありまして、発展途上国の繁栄、福祉のためには最大限努力するものであり、かつまた我々は自由貿易推進という点において、我々の経済政策、経済外交政策というものを力強く前進さしていきたい、そういうことを我が外交方針として申し上げてきておるので、その線に沿ってすべてを言っておるわけであります。
  16. 野田哲

    野田哲君 各論に入っていきたいと思います。  先ほど官房長官の方からガイドラインについて、「具体的行政措置等を定めるものではないので、閣議書をもって付議される案件として処理されなかった」、こういう政府側の統一見解が示されました。しかし、このガイドラインに基づいて日米間で進められているソ連を仮想敵国とした共同作戦計画そのもの、これが日本の外交、防衛の根幹にかかわる問題であります。これが閣議書もなしに軽々と扱われているということについては非常に問題を感じるわけであります。  そこで、今までこのガイドラインに基づいて、一項、二項、三項によって進められてきた共同作戦研究の項目、概要、進行状況はどのようになっているのか、まずその点から説明をいただきたい。
  17. 倉成正

    国務大臣(倉成正君) お答えいたします。  日米防衛協力のための指針の第三項にいう「日本以外の極東における事態で日本の安全に重要な影響を与える場合に日本が米軍に対して行う便宜供与のあり方」についての研究、いわゆる六条事態研究作業については、昭和五十七年一月以降、審議官クラス、外務省は北米局の審議官でありますが、研究グループの会合を計三回開催いたしております。必ずしも大きな進展は見られておりませんが、日米間の種々のレベルにおける接触等を通じ、研究作業の進展を図るべく努力が行われておる次第でございます。  本研究作業の内容については、その公表は米軍の行動等にかかわる種々の機微な側面をも明らかにすることとなり得るほか、あり得べき便宜供与の分野における日米間の協力体制をあらかじめ明らかにすることになり、その結果日米安保体制の効果的運用に支障を来しかねないと存ずる次第でございます。したがって、日米間でこれを公表しない旨、合意しているところであります。この点御理解をいただきたいと思います。いずれにせよ、現在進められているのはあくまで研究のことでございます。  また、本件便宜供与のあり方が日米安保条約、その関連取り決め、その他の日米間の関係取り決め及び日本関係法令によって規律されることは、日米防衛協力のための指針に明記されているとおりでございます。
  18. 野田哲

    野田哲君 今の外務大臣の答弁では私は私の質問に対する答弁になっていないんじゃないかと思うんですが、政府委員の方で正確に答えてください。
  19. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) お尋ねは、ガイドラインに基づいております日米共同作戦計画の研究についてどういうことだということだと思いますが、本件につきましては、五十六年夏に一つのシナリオといいますか、ある様相、想定に基づく研究というものを概成いたしまして、五十九年末に一応の区切りがついてその研究を終わったというふうに考えております。その後、次のといいますか、別のシナリオに基づくものを手がけようということで現在研究中という、準備中という状況でございます。  なお、これらは先ほど外務大臣がお答えになりましたように、我が国有事の際に有効な日米共同対処行動ができるように作戦計画についての研究をしようということで、作戦計画そのものは、日本について言えば年防というものがございますので、そういったものに共同作戦が有効に行われるためにどう反映をするかというような研究を行うものでございます。  その内容につきましては、先ほど外務大臣もお答えになりましたように、我が方の手のうち、日米間の共同対処のやり方、そういったものが研究されておりますので、内容を発表することは控えさしていただきたいと思います。その点御了解いただきたいと思います。
  20. 野田哲

    野田哲君 このシーレーン防衛のための共同研究、これはガイドラインの第何項、どの項に基づいてやられているものですか。
  21. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 第何項というように具体的に、共同作戦計画というような形で具体的な名称を挙げられておるものではございません。もろもろの作戦上必要な共通の問題として各般にわたるものでありますから。いずれにしろ、ガイドラインの枠組みの中でやろうということで行われておるものでありまして、この項目がずばりシーレーン共同研究に当たるというようには考えておりません。
  22. 野田哲

    野田哲君 このガイドライン第一項は侵略を未然に防止する態勢、第二項は日本に対する武力攻撃に際しての対処行動、そして第三項は日本以外の極東における事態で日本の安全に重要な影響を与える場合の日米間の協力、この三項目になっているわけでしょう。シーレーン防衛の共同研究というのはこの中のどの項によって行われているわけですか。
  23. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 強いて申せば、最終的にはこれは共同作戦計画の研究にかかわる基礎作業というふうに言えると思いますが、本件につきましては、五十七年九月に、シーレーン防衛共同研究ということで日米安保事務レベル協議において個別に取り上げられまして、指針に基づく研究としてこれを実施をするということで、特別に取り上げたものでございます。
  24. 野田哲

    野田哲君 そこのところがどうもあいまいなんですね。  そこで伺いたいのは、まずシーレーン防衛の概念、そしてその地理的範囲について伺いたいわけなんです。  シーレーン防衛というのは、これは用語としては国際的には使われていないんじゃないんですか。防衛庁の外郭団体でつくっている国防用語辞典、この中でも、今まで国会で何回か言われたことなのでありますけれども、シーレーンという言葉は出ていない。SLOC、シーラインズ・オブ・コミュニケーション、こういう用語で使われているわけですが、アメリカの文献などは全部SLOCという言葉になっていると思うんですが、このSLOCという用語の意味は、この国防用語辞典の解説によっても、これはいわゆる海上輸送路、国民生活に必要な交通ラインを守るということではなくて、戦線の作戦部隊と根拠地とを結ぶ兵たん海上交通路、こういう解説をされているわけです。この点はいかがですか。
  25. 瀬木博基

    政府委員(瀬木博基君) 本件につきましては内閣委員会でも御質疑がございましたけれども、私が既にお答えいたしましたが、米国の権威ある筋におきましても、シーラインズ・オブ・コミュニケーションとシーレーンについては、特に内容として差を持って用いておらないということでございます。ちなみに、ことし出ました大統領の国家安全保障戦略という文書、これはことし初めて大統領が出したわけでございますが、その中でもシーレーンという言葉を用いでございます。それで、シーレーンの場合に海上安全を維持するという場合には、シーレーシディフェンスというような言葉を使っているようでございます。
  26. 野田哲

    野田哲君 日本で今アメリカと一緒にやっているシーレーン防衛研究の地理的範囲についてはどう考えているわけですか。端的に言えば、ラインという言葉を使って国民に錯覚を起こさしている。面か線か、どっちなんですか、これは。
  27. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 先ほどちょっと触れましたけれども、シーレーン防衛研究というのは一つの想定に基づく研究でございますので、我が国に対する直接攻撃がなされている事態において我が国の海上交通の破壊が行われる、その中には、多くは国民生活を維持するための輸出入、そういったものに対する一般民間船に対する攻撃、それと、一部我が国に上陸作戦等が行われておりますので、そういうところに対するいわゆる作戦輸送を相手が阻害しようとする、それに対するプロテクト、そういう二つを含んでおりまして、特に地理的にここの範囲であるということではなくて、我が方がこういう形で船団の護衛なり船団の民間船が航行するという想定に対して相手方もいろいろな出方をするわけですが、それに対してできるだけこちらとしては有効と思われる手段をもって防衛をするということであります。  したがって、ある線を守るとかある範囲を全部守るとか、そういう海域防衛という考え方ではございませんで、我が方の船舶が最も被害を受けないような形はどういうことであろうかということで、種々のこちら側が工夫をして守り方を考えるということでありまして、今先生の御質問に直接的にはお答えできないので恐縮なんですが、そういう考え方で研究を進めております。
  28. 野田哲

    野田哲君 防衛庁長官外務大臣に伺いたいんですが、これはラインに限定することは軍事的にはできない、こういうふうに思うんですが、両大臣いかがお考えですか。
  29. 栗原祐幸

    国務大臣(栗原祐幸君) 今政府委員からも話しましたとおり、我々の言っているシーレーンというのは、国民の生存を維持する、継戦能力を確保する、そのために護衛とか哨戒とか、あるいは港湾とか海峡の防備をする、そういう作戦行動の累積効果によって海上交通の安全を確保する、こういうことでございますから、線とか面とか、そういうものじゃございません。
  30. 倉成正

    国務大臣(倉成正君) 防衛庁長官が申したとおりでございます。
  31. 野田哲

    野田哲君 そうすると、線とか面とかそれに限定するものではない、こういうことですね。今まで、線です、フィリピン、グアム、そこに至る一千海里の線だ、こう言っていたのは、面だ、あるいは面になる場合もある、こういうふうに言われるわけですね。
  32. 栗原祐幸

    国務大臣(栗原祐幸君) 私の言うのは、私どもの考えでいるシーレーン防衛というのは、そういう行動を言うのであって、特に線とか面とかいうものじゃない。今おっしゃったとおり、いわゆる航路帯の問題ですね、これと混同されないようにお願いをいたしたいわけなんです。
  33. 野田哲

    野田哲君 一九八一年の三月に伊東正義外務大臣が訪米した際に、アメリカ側から面的要素を含めた海域防衛、これが要請された。これに対して外務大臣はこれを断っているわけですね。そのことを国会でも報告されている、議事録も明快なんですけれども。そうすると、かって伊東正義外務大臣が断った、これを今度は受け入れた、こういうことに理解してもいいわけですね。
  34. 栗原祐幸

    国務大臣(栗原祐幸君) それは全く違う話でございまして、私は何も面を認めたと言っているんじゃないんです。シーレーン防衛の定義というものはこういうものでございますと、定義を申し上げているんです。したがって、伊東外務大臣が面の問題は認めない、これは集団的自衛権になるから認めない、これは当然のことでございます。
  35. 野田哲

    野田哲君 今栗原長官が答えたことと、伊東正義外務大臣がアメリカを訪問したときに要請をされて、それは面に及ぶことになるから断ったということとは、これはあなたの答弁は違うんですよ。だから、政府の方針は変わったんですかと、こう聞いているんです。
  36. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 私の承知しておりますところでは、当時伊東外務大臣のお話では、アメリカ側との間で太平洋地域あるいはインド洋を含めてソ連の潜水艦の問題というものが一般論として取り上げられた、そういうことの話の一環として、日本としてもできるだけフィリピン以北ですか、それとグアム以西についての対潜能力を持ったらどうだというようなお話があったやに聞いております。それに対して伊東当時の外務大臣は、そういった海域分担的な考えになりかねないようなお話は問題がある、日本としては、ある海域を日本が分担をしてそこにいる与国なり西側の船を全部守るとか、そういったことになると集団的自衛権に触れることになりますので、そういったことはできませんよということをはっきり明言されたというように理解をいたしております。  なお、防衛庁長官がただいまお答えいたしましたのは、シーレーン防衛というのは、先ほど来申し上げておりますように、我が国の国民の生存を確保するための物資の輸入等をしておる船舶の安全を図る、あるいは継戦能力、防衛作戦が十分行われるようにするための海上交通路の確保を図る、そういったことでございますので、これはどちらかといいますと、面とか線と言うよりも点と言った方がいいかもしれませんが、船舶そのものを守る行動であります。  その際の作戦の態様としては、これは従来から申し上げているように、哨戒作戦という形でありますとそれは面として哨戒をするということでございまして、そういうことによって相手を、潜水農を発見して撃破するということがありますし、一方、船舶の護衛作戦ということになりますと、船団なら船団を、これは線というよりも点かもしれませんけれども、海の中で考えますと、ある地域からある地域までその船団というものを護衛しながら行くということになりますと、時間的な経過を追えば線になりますけれども、瞬間的には点という格好で守っていくという守り方もあるというように御理解をいただきたいと思います。
  37. 野田哲

    野田哲君 伊東元外務大臣は、海域分担というのは集団自衛権に関連することになりますのでこれは断ったと、こうなっているわけです。海域というのは、つまり面は集団自衛権になるからお断りをしたと、こういうわけです。先ほど長官や今西廣防衛局長が答えられたことは、守る船は確かに点ですよ、それは点ですよ。船が動くのはラインですよ、それは線ですよ。しかし、それを守るための行動については点とか線にこだわるわけにいかないと、こういうわけでしょう。範囲、いわゆる海域になるわけでしょう。点とか線とか、こういうことに限定してはいけない、限定することはできない、こう言われたわけでしょう。だから面になるわけですねと。だから前の伊東さんの答えと違いますね、変更されたんですかと、こういうふうに聞いているんです。
  38. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) もう少し詳細に御説明しますが、今私が申し上げている緑なりあるいは哨戒という形で面になると申しますのは、オペレーションのやり方の問題であります。一方、伊東外務大臣について言われておりますのは、そういう海域について日本がそういう役割を負うという問題であろうと思うんです。  私が先ほど来申し上げているオペレーションは、日本の船舶を守る、あるいは日本の艦艇を守る、あるいは日本と共同対処しておる米艦を守るということもあるいはあるかもしれませんが、そういった問題でありまして、海域そのものを日本自身の防衛、日本の船舶自身の安全とかかわりなくほかのものを守るという問題とは別でございまして、私どもがシーレーン防衛で研究しておること、あるいは自衛隊が行動し得ることは、先ほど来申し上げておる日本国民の生存を確保するためのものであり、あるいは日本の防衛作戦を有効に遂行するためのものであるという大前提がございますので、先生のおっしゃるような海域分担的な問題とは切り離された問題であるというふうに御理解いただきたいと思います。
  39. 野田哲

    野田哲君 その点はもうちょっとやっていくとはっきりしてくると思うんですが、栗原さん、ことしの初めじろにある報道によって、去年の暮れに完成をしたといわれるシーレーン防衛の共同研究の概要というのが発表されているんです。これ表にするとこういうふうになるわけで、これ一部。(資料を手渡す)これは大変なことが発表されているわけですよ。  概略を言いますと、中東での米ソの軍事衝突がアジアに波及をする、そしてソ連が日本に侵攻する、こうなっているわけです。そしてこれによって対日侵攻兵力の見積もり、対日侵攻に関して想定されるケース、そして出動する自衛隊の勢力、米軍の勢力、コンピューターではじき出された日本の損失、そして悲惨な結末、七項目の提言。まことにリアルに内容に触れているわけですが、これは一体どういうことなんでしょうか。防衛庁はこういう構想でやっているわけですか。
  40. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) シーレーン防衛研究内容についてのお尋ねというように受けとれるわけなんで、そういう面でお答えいたします。  個々にこの研究内容を申し上げるわけにいかないわけでございますが、本研究は、先ほど申したように、日本に直接侵略が行われておる、その際に、主として海上交通の破壊、そういったものを相手が意図してきた場合にどういうことをするであろうかという際の一つのシナリオ、そう幾つもできませんので、一つのシナリオをつくってみて、それに対して我が方がどういう対応行動をしたらいいかという研究をしたものであります。  すなわち、日本を攻撃している側としては、船舶に対して潜水艦あるいは航空機によってこれを攻撃する。さらに、主要な日本の港湾等に機雷を敷設するであろう。あるいはまた、日本の船舶を保護するために我が方の艦艇部隊なり航空部隊が行動するわけですが、そういった行動を阻害するために相手方はそういった基地、海上基地であるとか航空基地を攻撃するであろう。さらに状況が進んでくれば、海洋の出口に当たる主要な海峡等、そういったものについて、自由航行といいますか、自由にその海峡を利用し得る態勢を確保するために着上陸侵攻もあるかもしれない。そういったような想定で、相手がいろんな出方をしてくる、それに対してこちらはどう対応すべきかという研究をしたわけであります。  そして、その成果というものは、現在我々が持っておる兵力、そういったものを前提としてそういうシミュレーションをやったわけでありますから、シミュレーションでございますから、人的な要素といいますか、ヒューマンファクターも入りませんので、心理的に怖いから海に出ないとか、そういったことは入りませんけれども、純物理的に軍事的な面だけでシミュレーションをした結果で、その結果どの程度我が方の民間船の被害が出るか、我が方の防衛力についで被害が出るか、相手方に対してどの程度のダメージを与えることができるか。最終的には、日本に対する出入港、入港する船舶の量というものがどの程度減殺されるかというような形でこのシミュレーションはなされておるわけでございます。  なお、私、新聞等に出ましたいろいろなものについてコメントする立場にありませんけれども、拝見したところ、幾つかの提言ということで、私も見ましたけれども、これらの提言は、言うなれば、現在の陸海空の自衛力そのもの全般にわたってそれぞれ問題もあり、それぞれ強化すべきだということでありまして、特にシーレーン防衛からの研究から出てくるというものよりも、もっと広い立場の、防衛力を強化すべきだというような内容のように私には思えるわけであります。
  41. 野田哲

    野田哲君 何か人ごとのように西廣さんは言っているんですが、防衛庁あるいは外務省とアメリカがやっているのがこれだと、こういう形で報道されているんですが、これは大体こんなことなんですねと聞いているんですよ。
  42. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) ただいまお答え申し上げたように、新聞で書かれたものが私どものものだというふうに私は思えませんが、私はそれよりも、現実に私どもがやっておる研究はこういうものでございますという内容を申し上げたので、それで御理解いただきたいと思います。
  43. 野田哲

    野田哲君 総理、一九八四年の国防報告、一九八五年の国防報告、この中でこういうふうに言われています。日本の防衛上の扱い、これをNATOと同格、こういうことにして、米国の安全保障政策は太平洋においては同盟国との連携によって同地域の重要なシーレーンと米国の利益を確保することにある、これは八四年です。八五年になると、アメリカの東アジア政策のコーナーストーンは日本との安保条約に基づくパートナーシップである、中曽根首相は、アメリカとの国家的分業下でのシーレーン一千海里防衛に関する日本責任がどうあるべきかをより率直に表明している、日本が一九八〇年代にこの防衛要請にこたえる戦力水準を達成するよう引き続き促す、このように述べているわけであります。アメリカの要請によって総理は、国際的な分業、こういう位置づけでアメリカの要請を了承されているわけですか。
  44. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) アメリカ側がどういう考えを持ってやっているか、これはアメリカ側が議会に対する報告の文章としてそういうものを書いたのかもしれませんが、日本は、日米安保条約を有効的に運用する、しかも日本防衛の見地に立ってこれを運用する、憲法の範囲内において個別的自衛権の運用としてこれを行う、こういう国策、国是ははっきり決まっておるのでありまして、あくまで日本の自主性においてそれは行われておるのです。  日本防衛という点から見ますと、日本列島の生存のために、あるいは独立と平和のために自衛隊というものが第一義的には当たっており、アメリカとの協力においてこれを行う。この本義ははっきり、しっかりしておるのでありまして、人の国のためにやっておるものではない、個別的自衛権の範囲内において日本防衛を主にして行われておる、そういうふうにお考え願いたいと思うのであります。  それで、安保条約を有効に機能的に活用していくという面においては日米の共同対処行為が必要でありまして、その共同対処行為をやるためにガイドラインというものを研究させて、また研究しつつあるところでございます。そのガイドラインの方向に沿いまして協調行動をとる、そういうことは当然共同対処の中にあるのであって、そういう意味において、日本日本側の共同対処の中における役割というものも出てまいりましょう。しかし、それはあくまで日本が自主的に決めたことで、そしてアメリカとの話し合いにおいでそれが協調されていく、そういう形において行われているというふうにお考え願いたいと思うのであります。
  45. 野田哲

    野田哲君 ここでは中曽根総理はそういうふうに答えられると思いますがね。アメリカの国防報告という政府の方針の中では、私が申し上げたような形で、中曽根総理は国家的な分業としてその責任を果たすことを表明した、こうなっているわけです。  そこで、シーレーン防衛といいますか、あるいはSLOCということで表現をいたしますか、栗原長官、もう二回も防衛庁長官を務められたわけですが、NATOにおけるシーレーン防衛、これがどういう段階で進められているか御存じですか。
  46. 瀬木博基

    政府委員(瀬木博基君) 防衛庁といたしましては特に詳細には存じておりません。
  47. 野田哲

    野田哲君 NATOの文献を見ると、NATOにおけるシーレーン防衛計画というのは三つの段階に分かれている。第一段階というのは、対米核攻撃任務を持つソ連の戦略核原潜戦力をその基地で破壊をする。そのターゲットはコラ半島のムルマンスク、ここが標的になっているわけです。第二段階というのは海峡封鎖、これはGIUKという表現になっております。つまり、グリーンランドとアイスランドの間、それからアイスランドとイギリスの間、ユナイテッドキングダム、UKです、この間の狭い海域を封鎖するんだと、こうなっているわけです。そして第三段階で航路帯を確保する。その航路帯というのも経済的な航路帯ではない、兵たん線を確保する、こうなっているわけです。  これと同じ方式を北西太平洋においてもとる、こう言っているわけです。日本との防衛関係はNATOと同格に扱い、そして同じ戦略に基づいて実施をする、こうなっているわけです。NATOにおいて行われる第一段階、第二段階、第三段階、これをアジアに当てはめて、こうなっているわけです。第一段階というのは、カムチャッカ半島のペトロパブロフスク、それから沿海州のウラジオストク、ここにまず第一撃を加える。そして第二段階で宗谷、津軽、対馬、この海峡の封鎖をする。そして第三段階で航路帯の確保に入る。これはもう線がどうのとか点がどうのとかというような問題じゃないですよ。アジア全域ということになってくるわけです。こういう行動が許されるんですか、日本憲法のもとで。いかがですか。
  48. 栗原祐幸

    国務大臣(栗原祐幸君) 先ほど総理からもお答えがありましたが、我が国は憲法のもとに専守防衛、そういう立場でやるわけです。しかも、シーレーンの問題についてNATOがどうのこうのという話がございました。それは参考になります。しかし私は、NATOの問題よりも日本のシーレーン防衛という定義、これは我が国がすべきである。その定義は何かというと、先ほど申しましたとおり、生存を維持し云々のことであります。この点は、私二回目の防衛庁長官でございますが、最初のときに、ハワイ協議等もございますので、このシーレーン防衛についていろいろのことを言われるけれども、我々の言っていることについてアメリカは同調しているのだな、この点が定点だということを言っております。その点については間違いないわけでございます。  あとのいろいろな問題につきましては、政府委員からお答えをさせます。
  49. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 今先生からNATOのシーレーン防衛構想についてのお話がありましたが、NATOと比べる際、私今お聞きして二つの問題点があると思うんです。  一つは、NATO条約と申しますのは、NATO加盟国のある船舶が攻撃された場合、加盟国全体に対する攻撃と同じようにNATO条約というものが発動されるという点が日米安保と違いまして、日米安保は、日本の領域が攻撃された場合アメリカがそれを支援する義務があるというものでありまして、その点非常に違うということをまず御理解いただきたいということであります。  それからもう一点、NATOのシーレーン防衛構想で、相手の策源地を攻撃するとか、いろいろなお話がありましたけれども、仮にそれを今先生が言われたように西太平洋・アジア地域に当てはめたといたしますね。そして、ソ連ということを先生おっしゃいましたので、ソ連について考えますと、仮にペトロなり、特にウラジオストクというようなことをおっしゃいましたが、策源地であるウラジオストクを攻撃するということになりますと、御承知のようにウラジオストク周辺、沿海州には非常に多くの兵力があるわけであります。例えば航空基地で言えば、現に使われている基地がもう三十幾つある。使われていない基地も含めれば有事は五十ぐらいはある。そういうところを攻撃するとなれば、仮に航空母艦であれば五十隻、六十隻の航空母艦が要るというようなことでありまして、そのようなことははなからできないような話であろうと思うわけです。  そういったことは、ですから余り常識的なお話ではないわけでありまして、やはり我々としては、先ほど来総理も申されましたように、個別的自衛権、日本に対して侵害がなされた場合にその被害を最小限にとどめ、いかにして防衛を全うするかという観点のシーレーン防衛を行っておる。シーレーン防衛研究等も含めまして、それはガイドラインのもとでやっている。ガイドラインは何かといいますと、日本が攻撃された際に日米間がいかにして有効に対処するかという大きなまず枠組みが決まっておるわけであります。その点を十分御理解いただきたいと思います。
  50. 野田哲

    野田哲君 それでは、具体的にシーレーン防衛のための共同作戦行動を起こすという場合は、どういう情勢のもとで起こすという想定をされているのか。その前提といいますか、情勢はどういうときにやる、どういう状態が迫ったときにやる、こういうことになっているのか、その点はどうなっているわけですか。
  51. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) ただいまの御質問は、今般のシーレーン防衛研究がということでよろしゅうございましょうか。
  52. 野田哲

    野田哲君 はい。
  53. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 今般の研究は、日本に対して海上交通の破壊を中心とした行動がなされるという前提でございますので、まず日本に対する攻撃の当初としては、まだ具体的といいますか、直接的な攻撃が始まる前に、隠密裏に港湾なり海峡等に相手方が機雷を敷設するのではなかろうか。これは、潜水艦なり航空機を用いて機雷敷設をやるのではなかろうかというところからが一番早い時期にあります。それが終わった段階から海上交通の破壊が始まる。つまり、船舶に対する直接攻撃、あるいは先ほど申したように港湾なり航空基地等に対する直接攻撃が始まる、そういった推移で次第次第にエスカレートしていく、こういうように考えております。
  54. 野田哲

    野田哲君 それは、どこの国がどういう状態になったときに起こす行動なんですか。
  55. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) どこの国がということで具体的に仮想敵国を持ってやっておるわけじゃございませんが、我が国周辺諸国のうちのそういう能力を持った国がやり得る範囲内のものを一応想定として考えております。
  56. 野田哲

    野田哲君 我が国の周辺諸国でそれがやり得る能力を持ったものといえばもう特定されているわけでしょう、頭の中では。その国がどういう状態になったときにやるという想定なんですか。波風が立っていないのに突然そういうことをやるはずはないんで、その点どうですか。
  57. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 私どもの研究は防衛能力、防衛行動をどのように有効にやるかという点の研究でございますので、どういう事態になったらそのようなことが起き得るかという研究についてはいたしておりません。
  58. 野田哲

    野田哲君 栗原長官それから倉成外務大臣総理、防衛庁がやっていることは過剰なんですよ、オーバーアクションですよ、これは。  アメリカのあるレポートがあるわけですよ。これは防衛庁の資料の中でもちゃんとあるんですよ、「読後焼却」とはなっておりましたがね、この資料は。海幕の資料の中にアメリカの海軍大学のレポートがあるわけです。「一九八五年に向って太平洋における米国政策と海軍力との関係」、こういうことでアメリカの太平洋におけるネービーの政策を詳細にここに記述しているんです。海幕が持っているんですよ、それは。その中ではこういうふうに書いているんですよ。  ソ連の太平洋艦隊の使命、「ソ連太平洋艦隊の任務を、優先順位に従ってあげれば、次のとおりである。すなわち戦略的攻撃、本土の防衛、陸上部隊の支援、及び示威である。」、こうなっているわけです。そして能力の記述では、「ソ連太平洋艦隊は、大量の攻撃型潜水農を保有し、米国及びその同盟国の船舶運航を妨害する上で大きな能力をもつが、少なくとも米国とソ連を含む紛争の初期の段階においてそのような任務が考えられているという証拠はほとんどない。組織的なSLOC(シーライン・オブ・コミュニケーション——海上交通路)破壊作戦は、彼等の第一任務の遂行をさまたげることになろう。」、こうなっているわけですよ。そういうことをやる状況にはないとこれをはっきり書いているわけであります。  こういうアメリカの海軍の情勢分析は隠して、あなた方の方ではひたすらにソ連が交通路の破壊に当たろうとしている、こういう想定ばかりをしている。これはやはりその前提条件に問題があるんじゃないですか、いかがですか、長官。いや、これは大臣の答えることですよ、これは。
  59. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 大臣がお答えになる前に私の方から技術的なことをお答え申し上げますが、ソ連の太平洋艦隊というものはかなりの勢力を持っておるわけでございますが、ソ連の西太平洋における海上交通、いわゆる輸出入量とかそういったものを見ますと、そういった自国の海上交通の保護あるいは沿岸警備、そういった面に必要な兵力量というものから考えますと、太平洋畳隊の装備なり量というものは非常に大きいもの、そういったものから超えているのではないかというふうに我々は思います。したがって、そういったソ連の持っておる軍事力、海軍力からしますと、それらが例えば他国の海上交通の破壊等に十分使い得る能力を持っているということについて、我々は前々からそれは潜在的な脅威であるというように申し上げておるわけでございます。
  60. 栗原祐幸

    国務大臣(栗原祐幸君) いろいろの報告書等ございますが、なかなかそれが断定的にこうだと言えないという部面があろうかと思います。  日本の今の防衛が過剰防衛だ、こういう御趣旨でございますけれども、これは大綱に基づいて、しかも現実には大綱の別表、こういうものを基準としてやっているわけでございまして、私はこれが過剰防衛であるというふうには考えません。
  61. 野田哲

    野田哲君 別表をあなた方は勝手な解釈をしてどんどん膨らましているところに問題があるわけですよ。これはまた後で同僚の矢田部委員が触れると思うんですがね。  さらに、先ほどのレポートはこういうふうに書いているんですよ。「我々は、ソ連の計画担当者に与えられている兵力量の現実をもってしては、SLOCの問題はこのような情勢においては強調し過ぎであると思う。」、強調し過ぎだと、ソ連の能力について。アメリカの海軍のかなり高級なところでつくられたものがこういうふうに書いているわけです。あなたの方はこういう情勢は伏せて、膨らますことだけに集中をしているところに今日の一%突破という問題が起こっているわけです。  具体的な問題で伺っておきたいと思うんですが、中期防衛力整備計画、これは明らかにもう一%を超えているわけですが、その六十五年が終わった段階で私は計画の中に航空母艦が顔を出してくるんじゃないかという懸念を持っているんです。制服のOBの方々がいろんなところで座談会をやったり物を書いたりしている。その中では航空母艦というものが非常に強調されておりますね。対潜ヘリを飛ばせる小型の航空母艦を持つべきだと、これが制服のOBの皆さんから非常に強調されているわけですが、この点は近く顔を出してくるという懸念、どうなんでしょうか。——これは事務方が答えることじゃないですよ。
  62. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 空母というものにつきましては、今から恐らく二十年以上前に、三次防のころだと思いますけれども、対潜ヘリコプターを積んだ対潜空母というものを考えた時期があったと思います。これは、対潜作戦をやるために、対潜ヘリコプターを数機積んだ空母を持ってそれをやるのが有効ではないかということで提案されたことがありますが、これはいろいろ研究した結果、その空母がやられてしまいますと非常にダメージが大き過ぎるというようなことで、分散して護衛艦に一機か二機ずつ積んだ方がよろしいということで別の選択になったわけであります。  その後、空母について私ども研究いたしておりませんし、現在あるいは近い将来にそのようなものを持つという計画はございません。
  63. 栗原祐幸

    国務大臣(栗原祐幸君) 私がまず最初に政府委員の方に答弁をさせたのは、今、幕の方で云々ということがありますから、幕としょっちゅう接しているのは内局ですから、内局の方の経過を聞こうと、こういうことでございます。  今話したとおり、そういう計画はございません。
  64. 野田哲

    野田哲君 総理は、近くバトンタッチされると思うんですが、やはり持たないというなら持たないで、ここで総理からも明確に否定をしておいていただきたいと思うんですが、いかがでしょうか、そういうものは持たないという……。
  65. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 我々は、専守防衛を主眼にして防衛政策を推進しておるのでありまして、他国に脅威を与えるような、他国に対して壊滅的打撃を与えるような攻撃性を持っているものは持たない。その例示といたしまして、長距離重爆撃機であるとかあるいは航空母艦であるとかあるいは長距離ミサイルであるとか、そういうものは今までどおり挙げてまいっておりますが、そのとおりであります。
  66. 野田哲

    野田哲君 攻撃型であろうが防御的であろうが、大型であろうが小型であろうが航空母艦は持たない、こういうふうに明確にしてもらいたいと思うんですが、いかがですか。——何でこれが防衛局長の答弁になるんですか。僕は総理にここではっきり後世に残るように答えてもらいたいと思うんです。
  67. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 従来から申し上げていますように、我が国がいわゆる持てない、持つべきでない、憲法上持てない装備として、総理がお挙げになりましたように弾道弾ミサイルであるとかあるいは攻撃重爆撃機であるとかあるいは攻撃用空母というようなことが過去言われております。それらは持ってはならないものでありますし、一方、防御的なものであれば持てないことではない。あとはそれを持つことがいいか悪いか、有効であるかどうかということで判断されるべきものであろうかと思いますが、現在のところ持つ計画はないというように申し上げておきます。
  68. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 今局長が申し上げたとおりでありまして、防衛計画の大綱の別表の中にも入っておりませんし、今そういう計画もございません。
  69. 野田哲

    野田哲君 現在は別表に入っていないからということじゃないんで、私が懸念をしているのは、六十五年以降にそういうものが顔を出してくるんじゃないか、こういう懸念があるので、ここはひとつ責任ある総理の答弁、議事録に残るように、そういうことはあり得ないということであるならば、そういうふうに答えていただきたいと思うんです。
  70. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 我々は憲法の許さない攻撃性を持っておる今のような兵器は持たないとはっきり憲法に従って明言をしております。しかし、それ以外のものについては、これは将来兵器がどういうふうに進歩していくか、客観情勢がどういうふうに推移していくか、科学技術がどういうふうになるか、そういう面の絡みもあり、あるいはまた国の財政状況や国民世論、そういうようなものも十分考えなければならぬ、そういうことでありまして、中曽根内閣においてはそういうことはやりませんが、ほかの内閣でどういうふうになるかということは、憲法の許容する範囲内において国民世論を見ながら、また国の防衛の必要性、必要不可欠のその最小限の、そういう要請を考えつつ考うべき問題であると考えております。
  71. 野田哲

    野田哲君 そういういろんな注釈を私は求めているんじゃないんです。持つべきでない、こういうふうに明確にしてもらいたいと思うんですが、それはできないんですか。
  72. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ただいま申し上げましたとおり、憲法に反することはやってはなりませんが、憲法の許容する範囲内の問題については、将来の情勢について今の内閣がこれをきつく制限しておくということは差し控えた方がいい。しかし私は、そのとき国民世論やら財政状況やらあるいは内外の情勢というものを見て良識でそのときの国民世論に従って判断は行われると考えております。
  73. 野田哲

    野田哲君 これは、どうも明確な答えになっていない。中曽根総理らしくない不明確な答弁で、了解できないということにしておきます。  総理、これは政府の数字ですから、極めて簡単なことなんですが、最近の十年間の防衛費の動向を表にしてみました。非常に際立った特徴というのは、昭和五十八年以来、すなわち中曽根内閣の五年間の防衛費のGNPに占める比率、それから一般歳出に占める比率、これが急速にふえ続けていることであります。  特に、五十七年以来一般歳出はずっと減り続けている中で、防衛費一般歳出に占める比率が大きくふえ続けている。一般歳出に占める防衛費の比率、これはここ十年間の例を見ると、五十三年七%台の前半であったものが、五十七年に七・九%、そしてあなたの代になっていきなり八・四%、そして九%、九・六、一〇・三、一〇・八、こうなっているわけであります。GNPに対する比率も同様にずっと上がってきているわけであります。  防衛庁長官、それから大蔵大臣、総理にそれぞれ答えていただきたいんですが、防衛計画の大綱では、防衛力整備の具体的実施に際しては、そのときどきにおける経済財政事情等を勘案し、国の他の諸施策との調和を図りつつ行う、こういうふうに明記されているわけであります。その具体的な歯どめとして、数字で百分の一に相当する額を超えない、こういう決定がされたわけであります。一体この五十八年以来ずっと一般歳出が減り続けている状況の中でこれだけ防衛費がふえ続けている、こういう状態が、大綱に言うところの前提条件としての国の他の諸施策との調和を図っている、こういうことが言えるかどうか、その見解を伺いたいと思うんです。三人に聞きたいんですが。
  74. 栗原祐幸

    国務大臣(栗原祐幸君) 御案内のとおり防衛計画の大綱、この達成を期すると言ったのは昭和五十九年です。五九中業です。それからいわゆる中期防衛計画になっていく。ですから、大綱水準の達成を期するというときから防衛費がふえていることはこれは事実でございます。しかし全体的に見ますと、いわゆる他の経費、例えば社会保障経費というものは昭和六十二年度において十兆円、文教及び科学振興費は四兆八千億円、公共事業関係費は六兆円、こういうふうになっておりまして、総体としますと、累積効果といいますかそういうものからいいますと、防衛を除くものは着実に固まってきておる、防衛につきましては防衛計画の大綱水準を早く達成しなきゃならぬ、そういう観点から御配慮をいただく、そして財政的見地からぎりぎりのところをお認めいただいた、そういうふうに理解をしております。
  75. 野田哲

    野田哲君 調和が図られているかどうかということを聞いている。
  76. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) この資料をちょうだいいたしましたので、私もちょっと検討してみました。一般歳出に占める比率は上がっておりますけれども、これは、あるいは一般歳出の方がだんだん小さくなってきておりますので、そこに一つ問題が比率でございますからあるということは当然考えてよろしいわけで、念のためそこで私は対前年度伸びがどうなっているかをちょっと計算をさせてみましたので、申し上げてみます。  五十八年からということでございますが、その前五十六から申し上げますと、五十六が七・六、五十七が七・八でございます。五十八から申しますと六・五、六・五五、六・九、六・五八、五・二となっておりまして、伸び率としてはむしろ低くなっておるといいますか、六%台を超えたことはありませんで今回は五・二でございますが、でございますから、おっしゃいますようなことは、一つはやはり一般歳出の方が伸びていないあるいは減っておるのに対しまして、防衛費の方は理由がありましてシーリングを別にいたしておりますから必要に従ってこういう結果になっておりますけれども、決して伸び率において過去を上回ってはおりませんで、むしろ多少低目になっておるというふうに見ております。
  77. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ただいま防衛庁長官及び大蔵大臣が申し上げたとおりでございます。  やはり他の諸経費との調和という点は非常に大事な点で、予算編成のたびに私、心がけてきておるところでございますが、やはり防衛計画の大綱水準達成ということは、これが我々の目標でありまして、その意味におきましてもある程度の努力はしなければなりません。しかしその中におきましても、五十七年までは七%台対前年の要求でありました。しかし、五十八年以降は六%台対前年比増ということにしまして、ことしは五・二%にまた下げておる、こういうことは財政状況その他、他の経費との関係も勘案しつつ行われておるものなのであります。
  78. 野田哲

    野田哲君 一般歳出がずっと減り続けている、そして諸事万端マイナスシーリングという形で抑えられているという状況の中で、今大蔵大臣は伸び率もこうなっていると言われましたけれども、いずれにしても六%台の伸び率がずっと続いている、続いてきたということは間違いないことなんです。だから、こういう状態は、防衛計画の大綱の達成が求められているからということでありますけれども、その達成をするには国内諸施策との調和を図れ、こういうことになっているんじゃないですかと、そのことが忘れられているんじゃありませんか、こういう私は指摘をしているわけなんですよ。だから、いろいろ理屈を、減った理屈やふえた理屈を私は聞きたいんじゃないんです。調和してないじゃないですかと、こういうことなんですよ。
  79. 栗原祐幸

    国務大臣(栗原祐幸君) 大蔵大臣からいろいろ伸び率の数字がございましたが、私は、先ほど申しましたとおり社会保障費、文教費、公共事業費、そういったものと比べてみまして防衛費というものは調和がとれておる、こういうふうに思います。
  80. 野田哲

    野田哲君 金額で言ったり率で言ったり、そのときどきによって使い分けをされては困るんですよ。特に社会保障費などは、法律によってこれは義務づけられた経費が膨らんでいくのをどんどん削ってきているんですよ。そういう状態の中でこれだけふえ続けるというのは、これは調和がとれていない。大蔵大臣いかがですか。
  81. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 問題はそういたしますと、いわゆる一般歳出についてゼロあるいはマイナスのシーリングを設けておりますけれども、防衛費については別の、そこから分けまして別のシーリングを考えでいるということの意味ということになろうと思いますが、私思いますのに、我が国が最小限度のいわゆる防衛のための備えを持っていなければならないことはこれはまことに明らかなことであって、それが防衛計画の大綱というものであろうと思います。それを一定の時間の間に達成をしなければ我が国の安全というものに支障があるということになりますと、ほかのことも大事でございますけれども、このことはちょっと景気が悪いからことしはやめておこうとか減らしておこうとかいう性格とは、私はやはり違うと考えるべきであろうと思っております。  もとよりそれは、全体が過大であればこれはまた別の問題でございますけれども、私自身は防衛計画の大綱は過大であると思っておりませんので、やはりこれを達成するということは、ほかのことを多少犠牲にしましても場合によりますと努めなければならないことである、こう考えております。
  82. 野田哲

    野田哲君 防衛計画の大綱というのは政府が決めたことなんですよ。そして、その政府が決めるに当たっては、国内の諸施策との調和を図ってやります、こういうことなんですから、調和を図るということは、ほかがどんどん減っているのに飛び抜けてふえ続けるというのは調和を図っているということにならないじゃないですかと、私はこういうふうに指摘をしているんです。  総理、この問題はもう終わりたいと思うんですが、総理国連の四十周年の総会や、ベオグラードでことしは大変立派な演説をされているわけであります。総理のこの演説が本心であるならば、このシーレーンの安全というのは軍事力によって、そして軍事同盟を強化して守る、こういうことではなくて、シーレーンの危険がどのような国際情勢のもとで起きるのか、そしてそのときには軍事力以外にどのような選択肢があるのか、そのような情勢を招来せしめないためには外交的な措置はどうあるべきか、こういうことをまず第一義として、総合安全保障政策ということの中で位置づけて検討すべきではないのでしょうか。そういうことに全く思いをいたさないで、国民に犠牲を押しつけながら、軍事力だけ増強して軍事力に依存していく、これでは私は国民のコンセンサスを得る道にはならないと思うんです。この点、総理の見解を伺っておきたいと思うんです。
  83. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) その点ははっきりした定見を持ってやっておるのであります。  現在の国際情勢、世界情勢というものを見ますというと、東西関係あるいは地域紛争等においてもまだ厳しいものが非常にあるわけであります。そういう中で、ともかくしかし戦後四十年間いわゆる大戦が勃発しないでなぜ平和が維持されてきたかということを考えてみますと、やはり抑止と均衡の理論というものによって戦争の勃発を防いできた。その抑止と均衡をもっと効率的にやろうというのでレイキャビクの会談も行われて、これをレベルダウンをしようと。そういう意味において長距離の戦略兵器もこれは五〇%削減するとか、あるいは五千キロ程度のINFというものはこれはもうやめちまおう、ただしアジア部に百ぐらいは残したらどうかとか、いや地球上から全部それは取り除くべきだと、そういうような議論が今行われて、つまり抑止と均衡によって平和が維持されているということは米ソの両方が認め、ソ連も認めておるわけで、それで両方とも平和を維持しようという努力で、均衡がどの線にあるかという努力を軍縮交渉でやっておるわけであります。  私は、やはりこのやり方が実績も上げておるし、今後も当分の間現状が続く限りそういう理論に頼らざるを得ない。日本もそういう考えに立って日本列島防衛のために、やはり日本へ来たら大変なことになるという程度のそういう抑止力は持っておらなければならない。必要最小限のものは持っていなければならない。それがこの大綱の水準達成という目標であり、それは三木内閣がつくりました基盤防衛力の整備という考え方の上に立脚している。まだその基盤防衛力ができていないんです。したがって、基盤防衛力をできるだけ早期に達成して一応の基礎骨格をつくろうという努力を目下しておる最中なのでありまして、そういう抑止と均衡という考えに立ってこれをやっているので、非同盟申立ていらっしゃる社会党とは、そういう戦略的な起点において相連があります。  しかし、それは我々が選択している道であり、安保条約を是認している国民もこれを支持してくださっていると私は確信しておるのであります。
  84. 野田哲

    野田哲君 非同盟申立の社会党の立場とは違うと言われたんですが、あなたはベオグラードではチトー大統領の非同盟政策敬意を表しておられた。  残念ながらこの防衛問題は幾らやってもすれ違いということは、これは大変残念に思うんです。  別の問題に入っていきたいと思うんですが、この委員会で今まで何人かの人が触れましたけれども、最近の土地の高騰、目に余るものがあると思うんです。私は東京の武蔵野市に住んでおりますけれども、私のところへ来る毎日毎日の折り込み広告、部屋の数が三つか四つでもう値段が二億、三億です。これはもうほっておけない状態になっているんじゃないか。かなりこれは強い政治行政が発動しなければ、もうとてもじゃないけれども大変なことになると思うんです。で当面する政府の土地政策について伺いたいと思うんで、具体的なことを粕谷委員から伺いますのでよろしくお願いいたします。
  85. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 関連質疑を許します。粕谷照美君。
  86. 粕谷照美

    粕谷照美君 憲法は私有財産の不可侵を保障しておりますが、同時にまた、公共の福祉に供されなければならないとも明記をしているのであります。しかし、現実にはそのような状況は裏切られていると言って過言ではないというふうに考えます。  この地価高騰の元凶は一体どこにあるのかという分析をいただくと同時に、東京都心部のように土地需要が逼迫をして狂乱の地価上昇の現在は、有効な対策をとらなければ、投機的な思惑によって高値で落札をされるということは必然であるというふうに思います。これを回避するために、一般競争入札、いわゆる国公有地の払い下げは地価安定まで一時凍結すべきであるというふうに考えますけれども、建設大臣、運輸大臣、国土庁長官、そして総理はどのようにお考えになりますでしょうか。
  87. 綿貫民輔

    国務大臣(綿貫民輔君) 地価の高騰問題については、先般来この委員会におきましてもたびたびお尋ねがあり、お答えをしておるところでございます。特に、全国的には安定をいたしておりますが、東京を中心にした地価高騰が問題になっておるわけでございますが、これは最近の国際化、情報化による需要増、これに対する供給とのアンバランス、もう一つは、最近の金余り現象がこれに便乗して短期の譲渡利益を生むための行為、こういうものが重なって高騰現象が起きておると思います。  これに対処するためには、供給面についてこれをふやしていくということと、規制の面においてさらに強化をする、この二面の政策を行おうとしておるわけでございまして、供給面につきましては、先般来お答えしておりますように、関係省庁とも鋭意その方法について協護をいたし、今回国会に提出いたしております、十年の保有に対する税制を五年に短縮する等、その保有地が供出されるような方策も今御提案をしておるところでございます。  また、規制面につきましては、短期の譲渡所得に対する重課税を課する等、あるいはまた今度国土利用計画法の改正を提出いたしておりますが、監視区域を設けて小規模の取引についても監視を続ける、こういうようなことで規制を強化していきたいということを考えておるわけでございまして、今回提出しております法案等が成立いたしますならば相当の効果が得られると確信をいたしておる次第でございます。  なお、国公有地等の処分の問題につきましては、地価対策関係閣僚会議におきましてもいろいろと協議をいたしておりますし、今回国土利用計画法の中にも、国有地の処分につきましては適正な地価の形成が図られるようにということで規定をいたしておるわけでございます。今後関係省庁とも、国公有地の処分については地価対策閣僚会議等を通じまして十分協議をしてまいるつもりでございます。
  88. 天野光晴

    国務大臣(天野光晴君) 国公有地の処分の問題でありますが、この前もここでちょっと意見を述べてありますが、国公有地の処分が今の地価の暴騰をあおるような結果になってはいけない、この基本的な考え方だけはやっぱり考えておかなければいけないと思います。そういう観点では、完全に地価暴騰対策を講ずるまで私は、いろいろ事情のある役所もありますが、その段階まではやっぱり我慢して処分をしない方がいいじゃないか、これは個人的な意見であります。
  89. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私が御指名を受けましたのは恐らく清算事業団の用地の問題についてであろうと思います。ただしれは、委員御承知のとおり、長年にわたる日本国有鉄道の長期の債務を返済すべく清算事業団が用地を処分してその財源を捻出するわけでありまして、一つには、できるだけその用地の売却によって最終的に残る国民の負担を軽減するという目的もございます。この点はぜひ御理解をいただきたいと思います。また同時に、この用地の売却というものが国民から見て公正、適切に行われるということを担保するために、私どもは公開競争入札というものを原則にいたしておることも委員御承知のとおりであります。  なお、これが地価の暴騰等を招かないという観点からは、国有地の売却に対して対処すると同等の措置を講ずるつもりでおりますし、また資産処分審議会を清算事業団の内部に設けまして、一定規模以上の用地につきましては、それぞれの地域における利用実態等々をも勘案の上その売却の方針を定めていくことにもいたしております。  私どもの立場から考えますと、確かに今地価の高騰というものは大変なものがございますけれども、例えばこの東京都の中における地価の高騰の大きな原因の一つというものは、事務所用地等の非常に根強い需要がありますのに新規の用地が全く供給されていないという、需給のバランスを極めて大きく欠いた状況が一つの大きな原因であろうと考えております。そうした中におきましては、この清算事業団用地の適正な処分によってむしろ地価高騰のブレーキをかける役割もある程度は果たせるのではないか、そのような気持ちも持っております。
  90. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 国公有地の処分を凍結せよという御議論ですが、にわかに賛成しがたいところがあるのであります。それは一面におきましては、供給を増加させるという面から見ましてもある程度の放出は供給増加にもつながります。問題はそれが野方図に、今建設大臣が答弁されましたように、地価の暴騰をあおるようなことであってはならない。その点につきましては、最近におきましてもいろいろな制限を課しておりまして、短期の譲渡の禁止であるとか、あるいは重課であるとか、あるいはそこへビルをつくるという場合には居住性を持たしたものにしなければならないとか、そういういろいろな制限を課しておりまして、できるだけ地価抑制あるいは住民福祉の向上、地域の福祉の向上に資するような政策を一歩一歩今とりつつあるところであります。  片方におきまして、今の運輸大臣のお話のようなこともあり、あるいはまた国有林野における大きな赤字の処分という問題もあり、そういうことを全般的に考えますと、今のような抑制措置を厳格に行いつつこれは適切に行うということがいいのではないかと思います。
  91. 粕谷照美

    粕谷照美君 建設大臣、個人的な意見でありますというのと、私は建設大臣に質問をしたわけでありまして、その辺の乖離をどういうふうに理解をしたらよろしいのでありましょうか。  そして、今国鉄の用地を公開入札によって出しているということが地価の高騰につながらないという判断をしていらっしゃるとすれば、運輸大臣、私はやっぱり問題があるんじゃないだろうか、こう考えておりますので、一定の地価安定の条件が見られるまではその辺については十分な留意をしていただきたいというふうに思いますが、いかがでございますか。
  92. 天野光晴

    国務大臣(天野光晴君) もとより、今運輸大臣が申し上げましたように、一円でも高く売って借金を返そうという役所もあるんですから、そういう点からいけば私の個人的な意見で、統一した意見ではありませんから、そういう意味で個人的な意見と申し上げたわけであります。  それは需要供給のバランスをきちっととれるような措置を講じてからでも遅くはないと思うんです。それを講ずる気なら私は半年かそこらでもできると思っておるんですから、そういう点を、私も閣内では二十分の一の発言権はありますから、担当大臣ではありませんけれども、その点十分踏まえてやりたいと思っております。
  93. 粕谷照美

    粕谷照美君 国土庁長官は、そういういろいろな意見を持ちながら私はやっぱり集中的に国土庁がしっかりした対策をとらなければならないというふうに思うわけでありますが、この現在の狂乱地価対策の決め手は何といっても土地税制の抜本的な改正にあるというふうに思いますけれども、総理、大蔵大臣、そして自治大臣はこの点についてどのようにお考えになっておりますか。  また、国土庁長官及び国土庁にお伺いするのは、我が国と同様に国土が狭いイギリスや西ドイツでは地価が安定していると言われておりますが、政府はその実態と地価安定の理由をどのように理解をしていらっしゃるか。また我が国に大変参考になるものがあるというふうに考えますが、その点についてはどうお考えになっておられますか。
  94. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) この問題につきまして税制が一つの役割を果たすということは、私は御指摘のとおりと思います。殊に短期の譲渡につきまして重い税を課するということは一つの有用な施策になりますので、そういう意味で今回の税制改正におきまして、そういうことを国会に御提案を申し上げておるわけでございます。ただいま税制改正が衆議院で議長のごあっせんが出ておりますのでまだこれは成立をいたしておりませんけれども、ぜひそういうことを行政としてもやらせていただきたいと思っております。
  95. 葉梨信行

    国務大臣(葉梨信行君) 地価抑制のためには土地税制が有効ではないか、抜本的改正をすべきではないかという御質問でございますが、地価抑制のためには土地利用計画とか土地の取引規制であるとかあるいは土地税制、さらには全国的な総合開発計画等、幅広い土地政策と国土政策を総合的に推進することが必要であると考えております。昨年十月の、税制調査会におきます税制についての抜本的見直しについての答申でも指摘されておりますように、土地政策におきます土地税制は補完的、誘導的なものでございまして、果たし得る役割は限界がございまして、税制以外の措置とあわせて行うことによって実際に効果が上がっていくのではないであろうか、このように考えております。
  96. 田村嘉朗

    政府委員田村嘉朗君) まず、イギリスとか西ドイツ等の外国の地価動向でございますが、取り急ぎ調べたものでございますから十分なデータはございませんけれども、社団法人日本不動産鑑定協会の調査によりますと、イギリスのロンドンでは、一般住宅地の価格は一九八〇年から八二年にかけて七五%上昇しているというふうに聞いております。それから西ドイツのフランクフルトでは、商業地で一九八二年から一九八四年までに二八%、それから一般住宅地では四%の上昇、こういうふうなことでございます。  日本とこういった国との比較でございますけれども、日本の特に東京を中心とする地価上昇の原因は、再三言われておりますように、東京都心部における床需要が非常に大きくなってきておる、また金融緩和、いわゆる過剰流動性のもとで投機的取引が非常に活発化している、こういうことが原因でございます。イギリス、西ドイツ等にはこういった事情というのは余り見られない。こういった国内事情の差というものが大きく出ているのではないかというふうに思います。  土地政策で参考になるものはないかということでございますが、西ドイツにおきましては、市町村が一定の区域で先買いをするあるいは収用するという制度が非常に整備されております。また、都市計画の上でも詳細な土地利用計画というものが定められるようになっておるわけです。イギリスでも、都市農村計画法におきまして開発許可という大変厳しい制度がございます。フランスでも先買い権が整備されている。こういうふうなことで土地取引あるいは土地利用規制に対する制度が整備されているということがございまして、これが土地利用の適正化あるいは土地価格の安定にそれなりの寄与をしていると思っておりますので、私どもとしても参考にさせていただきたいと思っております。
  97. 綿貫民輔

    国務大臣(綿貫民輔君) 諸外国のいろいろの例をお引きでございますし、先般も台湾方式というような御提案等も委員会でもあったりいたしましたが、先ほど御指摘のように、我が国の憲法の第二十九条によりまして財産権の保障をしておりまして、公共福祉の用に供する場合には法律でこれを規定することができるとなっておるわけでございます。現在、そのような財産権の尊重と同時に公共福祉のために土地が十分供給されるように、いろいろ知恵を絞りながら、国土利用計画法等の改正、先ほど申し上げました税制の改正、これらを今御提案申し上げておるところでございます。
  98. 粕谷照美

    粕谷照美君 最後に、もう上がりに上がっている土地の値段でありますが、国土庁長官がさっきおっしゃったように、一生懸命に協議をしております、小田原評定じゃ困ってしまうわけであります。強力な施策というものを、総理、やるべきではないかというふうに思いますけれども、今出されている法律だけでは私どもは足りないというふうに思いますが、いかがお考えでしょうか。最後にお伺いして質問を終わります。
  99. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) やはり土地価格問題というのは複雑な問題でありますから、非常に総合性を要すると思います。税金対策というものも非常に有力な一つの武器ではありますけれども、他面におきましては規制緩和というようなものももっと思い切ってやらせるということも必要でありますし、あるいは周辺地域に対する諸般政策というものも、広義に考えてみて大事な点でもあると思います。そのような点につきましては、土地に関する経済閣僚会議ができておりますから、そこで十分取り上げさせていただきたいと思っております。
  100. 野田哲

    野田哲君 天野建設大臣、二十分の一ではなくて、ひとつもっと大きい声を出して頑張っていただきたいと思います。  斎藤厚生大臣に伺います。  この間中国へ残留孤児の問題で行かれたそうでありますが、中国残留孤児の受け入れの問題で一言伺っておきたいと思うんですが、厚生省の方では中国残留孤児の日本での定住について、資料を見ると、「適度の集中、適度の分散」、こういうような方針をとって、しかし実際には、東京で定住したいと言う人についてもかなり執拗に地方へ行くことを慫慂している、こういうことも聞くわけでありますけれども、地方に行くとやはりいろいろ困る事情があるようでありまして、例えば中国語の通じる人が非常に少ない、こういうことや、あるいは日本語を勉強する学校とか機会が非常に少ない、それから就職の機会が非常に少ない、こういうことで、精神的に安定を得るためにはやはり東京、大阪、こういうところに住みたい希望を持っている人が非常に多いというふうに聞いているわけであります。  できるだけやはり東京を希望する人にはそれをかなえてあげる、こういうことを柔軟に考えるべきではないかと思うんですが、一つは東京では住宅難という問題があるのではないかと思うんですけれども、しかし最近の東京都の広報を見ると、都営住宅の空き家があるから入居者募集をしているというような例もあるわけでありますから、そこのところは、ひとつできるだけ本人の希望をかなえるように考えてもらいたいと思うんですが、いかがですか。
  101. 斎藤十朗

    国務大臣(斎藤十朗君) 中国からの帰国孤児の皆さんの中で、東京とか大阪とかいう大都会に定着をしたいという御希望がかなり多いということは私も認識をいたしております。ただ、適度な集中とまた適度な分散ということも望ましい姿ではないかというふうに思っておるわけであります。  地方の方に参りますと就職の機会とかまた日本語の問題とかいうようなことを今御指摘になられましたが、そういった点もあるわけでございまするけれども、同時にまた地方におきましても、身元引受人になってやろうという方もたくさん出てきております。また、中国語がしゃべれるボランティアの方々で、援助してあげようという方々も地方に非常に数多く今出てきておるわけでございまして、そういうようなことを考え合わせまして、この御審議をいただいております六十二年度予算案におきましても、定着センターの地方におけるサブセンターを北海道とか福島とか愛知、大阪、福岡というようなところで、地方における都市をも含めてそういったサブセンターを設けて、そこで定着の指導をしてまいろう、こう考えておるわけでございます。  身元引受人との関係は、就職との関係に大きな影響があると思いますし、またことしから、これまで生活指導員というものをいたしておりましたが、名称を変えまして自立指導員というふうに変え、内容を充実いたしてまいりますが、そういう生活指導員の方々による定着後の日本語教育指導というようなことも今後十分やってまいるというようなことで努めてまいりたいと思います。  問題は、御本人の希望に対して日本の事情とかいうようなことについて、やや誤解をされての希望というものも中にあるわけでございますので、よく実情を御説明しよく納得していただけるような、そういうきめ細かい配慮、相談ということが大事でありまして、そういう中から御本人の希望がどこにあるかということを的確につかんでいくというふうに、きめ細かく指導していくということが大事だというふうに考えております。
  102. 野田哲

    野田哲君 大臣ね、四十年もとにかく大変苦労してこられた方ですから、ぜひひとつできるだけ本人の希望を尊重する、こういうことで、私が今申し上げたことは五月七日、朝日新聞の「論壇」にお世話をしている代表の方が細かく述べておりますので、十分ひとつ勉強していただきたいと思います。  総理、レーガン大統領と会われて為替相場の問題を協議してこられたわけで、また間もなくサミットが迫っているわけですが、為替相場の安定について合意をしたということでありますけれども、もう二十日たちましたけれども、一向に円高の勢いはとまらない。大体百三十九円から四十円のところで固まってしまう、こういう傾向になっていると思うんですが、総理の見通しといいますか、認識はいかがでしょうか。
  103. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私とレーガン大統領との間で特別の声明を出しまして、そしてこれ以上のドル安というようなものは貿易の不均衡是正のためにもよくないし、また経済のためにも成長のためにも害になる、そういう認識をはっきり打ち出しまして、そして日米両国政府はこれ以上のドルの低落防止というものについては緊密に協力し合う、そういう声明を明確に出した。大統領と総理大臣がこういう声明を出すということは珍しいことでありますが、アメリカ内部におきましても危機感が出てまいりまして、それが非常に今やびまんしつつあるところであります。議会にも微妙な影響を与えつつあります。  そういう意味におきまして、ベネチア・サミットにおきましても国際通貨の安定問題というものは重要問題として登場してまいりますが、いよいよこれは、もう通貨の手先だけの操作ではだめだ、お互いが持っておる経済構造の問題について真剣に取りかからなければだめだ、そういうところへ今や突っ込んでまいりまして、そういう実効性のある政策をお互いが責任を持ってとり合うということによりまして、長期的安定という面へさらに前進していきたいと考えております。  日本といたしましては、内需振興という具体的な目標を持っておりますので、これについてもしっかりしたものをつくりたいと考えておるところであります。
  104. 野田哲

    野田哲君 大蔵大臣に、いろいろ取りざたされている、国際公約にもなっている補正予算の問題で伺いたいと思うんですが、私は、本委員会で本予算審議中に補正予算に言及するとは不見識じゃないか、こういうことで委員長席を通じて政府に苦言を呈したわけでありますけれども、ここまで来ればもう触れざるを得ないと思う。大体どのくらいの規模の補正を考えておられるわけですか。
  105. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 国会がまだ会期がございますので、殊に衆議院におきまして議長のごあっせんがありまして税法を協議機関でこれから御検討になるという問題がございますものですから、その辺の見通しが実は非常につけにくくなっておるのでございますが、いずれにしても内外の情勢を考えますと、昨年とは格段にやはり内需拡大の必要がございます。そういうことになりますと、特に新しい財源がたくさんあるわけでもございませんから、やはり必要があれば建設公債を増発いたしまして内外の要望にこたえなければならない、そういうふうに考えております。
  106. 野田哲

    野田哲君 その規模を、大体どういう構想を持っておられるのか。
  107. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) それはただいまのところ全く申し上げることのできない段階でございまして、手順といたしましては、間もなくいわゆる緊急経済対策の取りまとめを閣内、党内でいたしまして、その上に乗りまして補正を考えていこうと思っておるわけでございますが、まだその作業がこれからでございますので、それにつきましての答えはもう少し御猶予をお願いいたしたいと思います。
  108. 野田哲

    野田哲君 総理は構想をどういうふうにお持ちですか。
  109. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 先般自由民主党におきまして四月の初旬にその基本方針をつくり、それから私が訪米する前にその緊急政策の要綱をつくりました。その内容は、五兆円を下らざる額にしよう、内需振興を中心に実のあるものにすると。そういうことがあって、その中には減税分も含むという意味に解釈されております。私は、自由民主党はこういう考えを持っているということは、アメリカとの話し合いの中においても自由民主党の考えとして紹介をしてきたところで、今申し上げたようなことは今後の補正予算の編成について着実に実行していきたいと考えております。
  110. 野田哲

    野田哲君 五兆円ということでその中に減税も含むと、こういうことであれば、税制協議については減税先行と、こういうことで理解していいわけですか。
  111. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) もっとも、減税というものの説明の場合には、私は税制全般の体系の一環としてそれが先行されるということならばそれは結構であると思っておると。しかし、将来において財源がどうなるか不安定な状態のもとにおいてそういうことを行うことは無責任なことである。しかし、そういう財源の見通しがはっきり決まっておるならば、これを先行させるということを行うにやぶさかでないと、そういうことも言ってきたところであります。
  112. 野田哲

    野田哲君 田村通産大臣、OECDで日本がとるべき措置としての五兆円を超える追加補正、この中に減税を含むということで関係諸国の了解が得られますか。
  113. 田村元

    国務大臣田村元君) 減税をその枠の中に入れると、減税といってもネッ十分でしょうけれども。これは各国、またその代表それぞれによって微妙なニュアンスの違いがありますから、諸外国の統一された見解というわけでもありませんし、しかも中曽根総理がアメリカでレーガン大統領と会われたときにもこの話が出ておりますから、今のお話はその結果を出してみないと何とも言えないということだろうと思います。
  114. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 野田君、時間が来ています。
  115. 野田哲

    野田哲君 最後に。  税制協議全体の道筋をつけて、その中での減税を五兆円の中に入れて補正に出すと、こういうことであれば、そう六月や七月にはできない、やっぱりこれはかなり先になる、こういうことになるんじゃないですか。これは大蔵大臣いかがですか。
  116. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 実はその協議機関というのをひとつ早く発足させていただきたいという、これが先決でございまして、ちょっとそこのところがなかなかこの一両日難しい問題がございます。ただ、いずれにいたしましても、先ほど総理の言われましたように、全体の税制改正の見通しというものがあってその中で減税ということでございますとこれは先行することは私は一向に差し支えないことだと思っていまして、願わくは協議機関におきまして早急にその辺のひとつ御検討をしていただきたい。ただいまとしてはそこまでのことを申し上げておきます。
  117. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 以上で野田哲君の質疑は終了いたしました。(拍手)  午後一時二十分から再開することとし、休憩いたします。    午後零時七分休憩      ——————————    午後一時二十三分開会
  118. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 予算委員会を再開いたします。  昭和六十二年度総予算三案を一括して議題といたします。  これより峯山昭範君の質疑を行います。峯山君。
  119. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 総理は連続で御苦労さんでございます。  きょうは防衛問題を中心に質問させていただきたいと思っております。時間があれば経済問題にも入りたいと思っております。  総理が初めて総理就任をされまして国会で所信表明をされましたときの会議録がここにありますのですが、総理は初めての演説でこういうふうにお話しになっておられます。「私は、「わかりやすい政治」、国民皆様に「話しかける政治」の実現を心がけてまいりたい。」そして、「政治を支えるもの、それは、国民の信頼であります。」、こういうふうにお述べになっていらっしゃるわけでございますが、私も非常にこの点は賛成でありますし、大事なことだと思っておりますが、現在の総理の御心境なりお考えを初めにお伺いしたいと思います。
  120. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 少しも変わっておりません。  しかし、その文章の前後に、困難にもめげず波に向かってへさきを立てて全開前進で進む、困難にたじろがない、そういうことも申し上げておるはずであります。
  121. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 そのとおりであります。しかしながら、予算委員会、ずっとこの席で私も総理の御答弁をお伺いいたしておりまして、極端にはっきりいたしておりますのは、総理の防衛とか外交問題に対する御答弁と経済や財政に対する御答弁とは大分違う、そういう感じを受けました。特に防衛問題に対しては大変強気、そういう姿勢が目立っているのではないか、私はそういうふうに思っているわけであります。  そこで、きょうは私は幾つかの例を挙げてみたいと思いますけれども、まず二つあれしたいと思います。これは私がいつも質問の前に申し上げることでありますけれども、国の防衛という問題を考える場合に一番大事なことは、何としてもやっぱり国民の理解と協力が必要である、私いつもこういうように申し上げるわけでありますが、この点に対する総理とそれから防衛庁長官のお考えをお伺いしておきたいと思います。
  122. 栗原祐幸

    国務大臣(栗原祐幸君) 私も同様に考えております。
  123. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私もそのように考えております。
  124. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 まさにそのとおりなんです。総理はいつ至言葉では、先ほど同僚議員の方からも質問がありまして、言っていることとやっていることが違うというふうな意味発言がありました。私はこれは内外ともに、総理、あるんじゃないか。日本総理大臣ですから、外国に行って総理が元気いっぱいにまた日本の主張をはっきり述べてくる、これは大変すばらしいことだと私は思います。しかしながら、これは食い違いというのは日本だけじゃなしにアメリカでも相当あった。あの記者会見やいろいろな席上でも、もう口先での約束はいい、実践をしてもらいたいという、きつい、実行が第一だというお話がありました。これもやはり食い違いの証拠だと私は思います。  そこで、先般我が党の同僚議員の方から世論調査に対する質問をさしていただきました。防衛費の一%枠突破、昨年の暮れ閣議決定をし、ことしの一月にはっきり決めたわけでございますが、実はその問題に対しましてことしに入りまして世論調査を行いました。その世論調査の結果、これは総理にも申し上げましたが、朝日新聞、毎日新聞そして読売新聞がいたしました。朝日新聞は六一%の方が反対、毎日新聞は七七%の方が反対、こういうふうに我々が申し上げましたら、早速その答弁に出てまいりました防衛庁長官は、いや読売はこうだぞとすぐ反論をする。まあ私は反論は反論でいいと思うんですけれども、やっぱり国民の声を厳粛に受けとめる。  総理はどういうふうに答弁をされたかといいますと、世論調査というものは時の流れによって変わるものだと。それはそうかもしれません。しかしながら、私は、その時点における国民の声というのを少なくともそれなりに——質問の仕方はいろいろありましょう、しかしながらそれなりに私はきちっとあらわしているのは間違いないと思うんです。そういうふうな意味で厳粛にやっぱり受けとめて、そしてそれからの政策やいろいろなものに反映をさせる、それが私は大事なんじゃないか、それが国民の声を聞くということ、あるいはわかりやすい政治ということにもつながるんじゃないかと、こう思いますけれども、どうですか。
  125. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) その点はおっしゃるとおりであると思います。為政者といたしましては、国民のその時点におけるお考えというものをよく理解して、そして自分たちの政策の足らざるところを反省し、また理解が不十分であるという点についてはさらに汗をかいて努力をして、改善して理解を得るように努力する、それがやはり政治のあり方であると思います。
  126. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 ぜひそうあっていただきたいと思います。  それでは次に、もう一点私はぜひ申し上げておきたいと思います。それは、午前中に統一見解がありましたガイドラインの問題であります。ガイドラインのこの問題、非常に重要な問題であります。防衛庁長官の答弁を何回か聞いておりますが、何となく重要でないみたいな意味発言をとっております。それは私は非常にいかぬと思っております。  そこで、これははっきりさしておきたいことが二つあります。一つは、前の国防会議における取り扱いはこれはどういうふうになっていたのか、この点も明確にしていただきたいと思います。
  127. 佐々淳行

    政府委員(佐々淳行君) お答えいたします。  前回も御答弁申し上げたことでございますが、国防会議審議のうち決定を要する事項につきましては、防衛庁設置法の「国防会議」、第三章第六十二条によりまして、「国防の基本方針」、「防衛計画の大綱」、「前号の計画に関連する産業等の調整計画の大綱」、「防衛出動の可否」、そして五番目、「その他内閣総理大臣が必要と認める国防に関する重要事項」、こういうふうに法定されておりまして、この内閣総理大臣が諮問すべき決定を要する事項につきましては、閣議決定及び国防会議決定によりまして、「自衛隊法の改正を要する部隊の組織、編成又は配置の変更」、二番目が「自衛官の定数及び予備自衛官の員数の変更」、三番目、陸上自衛隊の戦車であるとか海上自衛隊の護衛艦、航空自衛隊のミサイル、航空機等これら主要な装備の数量と、その性能といいますか「その整備に数か年の長期を要しかつ、多額の経費を要するもの」、こういうものに決められておったわけでございます。  このガイドラインがそれではどういう扱いを受けたかということでございますが、五十三年の十一月二十八日、国防会議にかけられまして、資料を席上配付の上、これについての所管大臣からの報告がございまして、これを質疑の上、了承したと、こういうことで、分類上は、官報に示しましたる過去の審議の状況の中では、決定ではなくて審議ということで分類されておりますが、内容は報告、了承というふうに理解をしております。
  128. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 今までの国防会議会議にかけられた議案はどの程度あって、決定がどのくらい、了承どのくらい、審議どのくらい、これわかりますか。
  129. 佐々淳行

    政府委員(佐々淳行君) お答えいたします。  国防会議につきましては、国防会議決定が四十八回。なお、安全保障会議に入りましてから四回行っております。  国防会議審議でございますが、この審議が、前回申し上げましたように、決定に至る過程として何回か審議をした。例えば新五カ年計画、八回審議をやっております。今回の安全保障会議になりましてからも、一%の問題につきましては数次にわたるその審議を行っておりますが、この決定までのプロセスとしてのもの等を含めまして、国防会議審議が三十一回、安全保障会議審議が二回と相なっております。
  130. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 了承は。
  131. 佐々淳行

    政府委員(佐々淳行君) 失礼いたしました。  了承につきましては、五十六年のいわゆる中業、五十九年のいわゆる五九中業、これに関しましてはこの決定事項ではございませんが、先生御指摘のような了承と審議と、ただ報告を聞きおくだけ、例えば国際軍事情勢なんというのも報告を聞くだけのものと。ごちゃごちゃではないかということが当時やっぱり問題になったようでありまして……
  132. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 ごちゃごちゃ言うのはいいです。了承が幾つか言ってください。
  133. 佐々淳行

    政府委員(佐々淳行君) 了承は五六中業、五九中業、この二回が了承。かつ、昨年の七月一日、安全保障会議になりましてから、その点をきちんとしようという考えから、F4ファントムの量産改修、これについて了承。合計三回でございます。
  134. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 そうしますと、今のガイドラインはこの審議の中に入るわけですが、その審議の中のどういうふうなところに入るんですか。
  135. 佐々淳行

    政府委員(佐々淳行君) お答えいたします。  これは明らかに決定に至る審議ではないし、また報告を聞きおくだけというのでもないので、先ほど御答弁申し上げましたように、五十三年十一月二十八日のは報告、了承というふうに位置づけられるべきものかと考えております。
  136. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 私も、これは総理も聞いておいてもらいたいんですけれども、非常にこれはややこしい。国防会議審議というのがありまして、この間、内閣委員会で私が詰めましたら、この審議というのは決定に至る審議が一つあるというんですね。そしてもう一つは、ただ聞きおくだけという審議がある。そして、その報告を聞き、了承したという審議があるという、こう言うんですよ。あとの三番目のやつは、このガイドラインがあるからわざわざつくった了承なんです、これね、後で。了承というのは別にあるんですよ。今の私が言うた審議というのとは別に、決定と了承と審議という別にあって、審議の中に三つある。それで、ガイドラインをつくるためにわざわざこの報告を受けて了承したということにするというんですから、こんなばかなやり方はない。そういうふうになっているということだけわかっていただきたいと思います。  さらに、今の閣議の扱いが先ほどの閣議書もないという扱いであります。しかも、統一見解であります。これからの日本の防衛にとって大変大事なこういうふうなガイドラインなんていうようなものは、この統一見解の中にもある程度含まれているのかもしれませんが、私は、こういうふうなものは、少なくともこういうふうな手続はやっぱりきちっとすべきだ、後で疑惑を招くようなことを残しておいてはいけないと、私実はこう思うんですけれども、この点についての官房長官のお考えをお伺いしておきたいと思います。
  137. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) 峯山さんのおっしゃるように、国防に関する問題というのは極めて重要な問題でございますから、御趣旨はよく私どもも拝聴さしていただいておりますから、けさ統一見解を私が読まさしていただきましたが、あの第三項目の運用、これはまさにそういう点を頭に置いてお答えをしたつもりでございますから、将来にわたって皆さん方に御心配をかけるといったようなことのないような運営にいたしたい、かように思います。
  138. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それでは次に、政府はことしの一月に「今後の防衛力整備について」ということで新しい歯どめをお決めになられたわけでございますが、その概要について御説明いただきたい。
  139. 佐々淳行

    政府委員(佐々淳行君) お答えいたします。  「今後の防衛力整備について」、昭和六十二年一月二十四日、安全保障会議決定、閣議決定内容でございますが、 1 我が国は、平和憲法の下、専守防衛に徹し、他国に脅威を与えるような軍事大国とならないとの基本理念に従い、日米安保体制を堅持するとともに、文民統制を確保し、非核三原則を守りつつ、節度ある防衛力を自主的に整備してきたところであるが、かかる我が国の方針は、今後とも引き続き堅持する。 2 「中期防衛力整備計画」(昭和六十年九月十八日閣議決定)は、上記の基本方針の下に策定されたものであり、その期間中の各年度の防衛関係経費については、同計画に定める所要経費の枠内でこれを決定するものとする。   なお、同計画を三年後に作成し直すことについてはこれを行わないものとする。 3 「中期防衛力整備計画」終了後の昭和六十六年度以降の防衛関係経費の在り方については、同計画終了までに、改めて国際情勢及び経済財政事情等を勘案し、前記の平和国家としての我が国の基本方針の下で決定を行うこととする。 4 今回の決定は、「当面の防衛力整備について」(昭和五十一年十一月五日閣議決定)に代わるものとするが、同閣議決定の節度ある防衛力の整備を行うという精神は、引き続きこれを尊重するものとする。以上が閣議決定内容でございます。
  140. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 防衛庁長官、これが一%枠を撤廃するに当たっての政府の歯どめですか。
  141. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) 今も佐々室長から御説明を申し上げましたように、この閣議決定がこれからの歯どめになるという私どもは考え方でございます。  それは第一項目は、申し上げるまでもありませんが、改めて従来からの我が国の防衛方針の再確認をこの際はっきりしておこう、今度のこの一%問題で日本の防衛方針が変わったんじゃないんだということだけを改めて再確認をしておく必要が国民皆様方にわかりやすいであろうとこういうことが第一項目。  それから第二項目の意味合いは、これは一つは中業ですね。この中業については、各年度の防衛関係経費については年度ごとに枠内でこれを決定するんだと、これは従来どおりだと思いますが、一番問題は、この中期防衛力整備計画というのは御案内のように五年間で六十年度実質価格で実質十八兆四千億という決定をしておるわけですが、これも率直に言いますと、この五年計画を決める間に防衛当局と財政当局との間には相当厳しい実はやりとりがあったことは事実でございます。そういったようなやりとりの中で出てきておったのが三年後に見直しがあり得べしと。つまりローリング方式ということでございます。しかしこれは、ローリング方式というのは事と次第によるとはみ出てくるおそれのある規定であることも間違いがない。ならばこの際そういうおそれのある規定ははっきりとやめた方がよかろうということでローリングを廃止しておる。これは私は大きな意味合いであろうとこう考えるわけでございます。  それから第三項目は、それじゃ六十五年まではそれでいくとして、六十六年以降は一体どうなるんやと、こういう疑問が当然出てきます。そのときに私どもとしては、これはかねてから総理が申し上げておりますように、まさか総理それまで内閣をやっていらっしゃるというお考えもないんだろうと思うわけですね。そういうようなこともあって、次の内閣までのことを我々として拘束するのはいかがなものであろうかという考え方が一方にあった。しかしながら、さればといって野方図にするわけにもいかぬ、事柄の性質上。ということで、ここでそれ以後もやはり平和国家としての我が国の基本方針、つまり第一項目で述べておりますね、これによって決定を行うとこういうことを決めてあるわけでございます。  それと同時に、最後のこの締めくくりで、今回の決定はやはり五十一年の閣議決定の精神は引き続いていくんだと。つまり、あくまでも防衛の整備というものは整々としてやるべきであることは当然でありますけれども、それは抑制的な物の考え方でやるべきであろうと、こういうことでございますので、これを全部読んでいただければ、我が国の防衛力の整備のあり方はちっとも変わっておらぬよということ、それから年度途中でローリングなんということはやりませんよと、それから六十六年度以降も五十一年の閣議決定の精神の延長線上でありますよということでございますから、この第二項目にあることはこれは例の五カ年計画でしょう。その五カ年計画で六十六年度以降野方図にやるんじゃないかというところについての歯どめもある。  しかも、何といいますかね、必ずしもそれ以後野方図にやるということは一切我々としては考えてないんだというようなことを決めて、総額明示という方針はやっぱり、三項目目に総額明示をもう一遍やりますよとは言っておりませんけれども、それは次の内閣を拘束したくないからだと、しかし考え方は同じですよとこう言っておるわけでございますから、私は明確にこれは総額明示という物の考え方で、しかもそれは従来の延長線上でやるんだと。ここまで書いてあってなおかつ青天井だという非難はこれはもうまるっきり当たらぬ。私どもはそれくらいのきついつもりで抑制的にしかもやるべきことだけはがっちりとやっていこうと、こういう基本方針を決めてあるというふうに御理解をいただきたいと思います。
  142. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 長官そうおっしゃいますが、これ本当に私、一項目目は今までの精神的なものを言ったもの、二項目目は中期防の問題について一応十八兆四千億の点、これが本当に歯どめになればなるかもわかりません。三項目目は、六十五年までですよということを言っているわけですね。そして四項目目は、要するに一%を廃止しましたよ、ただし精神だけは守りますよ。何にもないわけです、結局これは。本当に歯どめになるというようなことに全く私はならないと思います。それはこれからいろいろ質問しながら聞いていきます。  まず第一項目の、今までの平和項目あるいは専守防衛の項目をわざわざ閣議決定で再度言わなくちゃならない、言わなければ防衛政策にそこを来すおそれが出てきているのかどうか。これはどうですか。
  143. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) それは道なんですよ。私どもの考え方は、ともかく今までの論議は何か防衛論議といえば一%が防衛論議だというような論議になっているでしょう。しかし私は基本的にそれはおかしいと思っておるんだけれども、一般はそう思っておりますね。ならば、ここで一%をできる限り守ろうとしたけれども、結果としてはわずかな金額であっても超した以上は、基本の方針はしかし変わってないんだということを改めて確認しておく必要があるのではないのかと、こういう意味合いで書いたものでございます。
  144. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 今までの方針を再度確認をした、しなければならなかったというところに私は問題があると思います。  それでは一つずつお伺いしてまいりますが、この「他国に脅威を与えるような軍事大国とならない」、これは具体的にはどういうことですか。
  145. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 他国に侵略的な脅威を与えるような軍事大国にならないということには二つの意味が私どもはあるのではないかというふうに受け取っております。一つは、軍事大国といいますとやはりそれなりの条件がございます。軍事大国になり得るか、なり得ないかという条件がありますし、それからその軍備の質、量、そういったものについて圧倒的なものでなくちゃいかぬというようなことがあろうかと思います。一方、この文面の中には、従来言われておりましたいわゆる軍国主義的な国家という意味も入っているんじゃないか。これは、必ずしも軍事大国でなくても軍国主義というのがございますので、なれる、なれないとは別にそういうことも戒めた両方の意味であろうというふうに私どもは受け取っております。
  146. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 脅威になるかならないかというのは、これは日本の国が決めるというよりも相手の国が決めることではありませんか。そして脅威の中身はどういうことになっているんですか。
  147. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 現在の世界の情勢の中、そして軍事技術の中で見ますと、おのずから常識的にどういう軍備が他国に脅威を与えるようなものであるかということはわかるかと思います。例えば、現在では戦略核戦力というようなものを持たない軍備と持つ軍備というものでは画然たる質の違いがある。我が国は、そのような戦略核はもちろんのこと、他国に壊滅的な打撃を与えるような攻撃的な兵器は持たないということでありますので、その点は非常な違いがある。そのほか通常兵器でありましても、例えば攻撃的な長距離爆撃機であるとかあるいは攻撃型空母であるとか、そういったたぐいの質的なものもございますし、さらには、その国の守るべき人口なり産業なり国土なりというものと比べて軍備そのものが非常に大きなものであるか小さなものであるかというようなことも含めて、他国に脅威を与えるかどうかということは判断されるべきものであろうと考えております。
  148. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それじゃもう一つ方角を変えて聞きます。  現在の日本憲法改正もしないで、現在の防衛政策のままで日本の国は軍事大国になるおそれがあるんですか。
  149. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 先ほど私、軍事大国というそこで書かれておる枠組みの中に二つの意味があると申し上げましたが、いわゆる軍事大国、今の世界における軍事大国になるためには、それなりの国土の広さとか資源とか人口とか、そういったものを含めて条件があると思います。そういう点で言えば日本は軍事大国になり得る条件は備えていないのではないかというように考えております。
  150. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 広さとか資源だけでそういうことが言えるわけですか。日本はやっぱり憲法とか現在の防衛政策の上でなれないんじゃないですか。
  151. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 私は、なれる、なれないという可能性の問題について申し上げたので、ならないといいますか、憲法その他について、我々の政策なり基本的な政策でならないという決意の問題でありまして、そのほかにそういう物理的条件等があるということを申し上げたわけでございます。
  152. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 いや、そうじゃないんですよ。物理的な条件じゃなしに、憲法とか現在の防衛政策というものがあるでしょう、今の一項目ですよ、こういうふうな制約があるから日本の国は軍事大国にはなれないんでしょう。
  153. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 従来から申し上げておりますように、憲法九条のその中におきまして防衛力整備なり日本の防衛が行われているわけでございますから、その意味で、軍事大国にならない、あるいはなれないということは、憲法九条から来ているもの、それを別の言葉で言っているものだというふうに私どもは理解をいたしております。
  154. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 その点、総理のお考えをお伺いしておきます。
  155. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 今、西廣君が申されましたとおり、今回の閣議決定において、ずうって延々と上から下まで余すことなく我々の考えを申し述べました。そういう周到な配慮に立って今後も防衛政策というものは継続される、そういうことであります。
  156. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 「節度ある防衛力」、それから「自主的に整備」する、この二つの点について御説明願いたいと思います。
  157. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 私ども、ただいま防衛計画の大綱に基づいた防衛力整備を行っておりますが、これ自身は、先ほど来申し上げておる憲法九条の中にある自衛のための最小限の防衛力という範疇に当然入るものというふうに考えておりますが、それをたとえ整備するにしろ、その整備については経費その他の面を含めて節度を持ってやっていく、必要だからといって一年でやってしまうとかそういうことではなくて、他の施策との兼ね合いを見ながらやっていくということだというように私どもは考えております。
  158. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 「自主的」というのは。
  159. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 「自主的」ということにつきましては、防衛力整備についてよく我々日米安保というものを基調にした防衛ということを日本の国防の基本政策にいたしておりますが、その間、同盟国でありますのでアメリカ側の意見というものもいろいろ聞いております。そういうものは十分参考にいたすということは間違いありませんが、実際に防衛力整備をするのは我が国自身でございますので、その点最終的には日本自身の判断で行うということのように理解をいたしております。
  160. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 節度がある、ないを判断する基準はどういうところに置いておられますか。
  161. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) これは私から申し上げるのはいかがかと思いますが、私どもといたしましては、例えば予算について言えば、概算要求そのものについて自分たちとしてはこれは節度あるものだということで出しますけれども、それはさらに財政当局なりあるいは他省庁も含めて閣議というところで御審議をいただいて、これが他の施策との調和というもののぎりぎりの接点というものが求められた結果決められるものだというふうに理解をいたしております。
  162. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 これは官房長官ですが、節度のないケースあるいは自主的でないケースというのはどういうケースを考えられますか。
  163. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) 今事務当局からお答えしましたように、やはり全体の国の他の政策との調和の中に必要最小限度のものを整備していくというのが節度のある防衛力というものの性格から来る整備のあり方であろうと思いますが、同時に、基本は、やはり我が国の憲法、平和憲法があって、我が国のこういった武装というものは、憲法九条があるけれども、自衛権を認められておるではないか、ならばその自衛権を守る必要最小限度のものということが根本にあって、その上で他の経費との調和の上に立って整備をする、こういうことであろうと思います。
  164. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 いずれにしましても、こういう点につきましてはあくまでも抽象的であり精神的なものにすぎないんじゃないかな、大事ではありますけれども、私そう思います。  それから第二項目の問題ですけれども、これはもともと、防衛計画の大綱の防衛力の水準の達成を図ることを目標として中期防衛力整備計画ができ上がっているわけでございまして、政府の防衛力整備の目標がどうして防衛費の歯どめとなるのか、これは防衛庁、詳細説明していただきたいと思います。
  165. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 今回の新しい歯どめと言われております閣議決定というのは、防衛計画の大綱と一対の、一体のものというようにお考えいただきたいと思いますが、防衛計画の大綱におきまして我が国が平時から保有すべき防衛力として目標を掲げておりますので、そこに目標がある。それをどう実施していくかというときの枠組みとして今回の閣議決定がなされておるわけでございまして、その両者、両々相まって歯どめといいますか一つの枠組みがきっちりとできておるというふうに理解をいたしておるわけでございます。
  166. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 そういう説明では、大綱と一対のものでしょう、中期防というのは。だから大綱だけでは歯どめにならないからGNP一%というのはできたんでしょう。大綱と一対のものがどうして防衛費の歯どめになるのかというんですよ。
  167. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 防衛力整備をしていく最終目標というものについて一つの歯どめがある、きっちりとした歯どめが大綱で定められておる、それを年々どの程度に実施をしていくか、どういうテンポで実施をしていくかということについて、今回の閣議決定が歯どめになるということでございます。
  168. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 中期防の説明のときにあなた方は、GNP一%を守るというのを原則にしてきちっとして中期防ができているわけですよね。だから中期防と一%を守るというのは一対になっておるわけですよ。どこで切り離したんですか、これは。
  169. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 御質問の趣旨を必ずしも十分理解しておるかどうかわかりませんが、中期防をつくる当時に、中期防の計画が一応固まりましたその段階で十八兆四千億という数字が出まして、これを当時ありました経済計画と比較いたしますと、平均して面積的に言いまして一・〇三七%かそのくらいの、一%をやや超えた額になっていたと思います。  当時防衛庁としては、これは年々の防衛予算として一%を上限とするという閣議決定があった当時でありますから、中期計画といえどもそれが超えた場合には閣議決定をあるいは変える必要があるかなということも考えたわけでありますが、その当時いろいろ御議論があって、一%の閣議決定というのは年度年度の予算の問題である、したがって、五カ年計画の総経費が超えているからといって、その計画をつくった段階で直ちに一%の方の、三木内閣当時の閣議決定を直す必要はないと、それは年度の問題として実際に超えざるを得ないかどうかというときに検討すればいい問題であるというように処理されたというように理解をいたしております。
  170. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 私は、ただいまの説明ではとても納得できません。できませんが、きょうは時間の問題がありますから次へ参ります。  それでは次に、今の閣議決定の中に「三年後に作成し直すことについてはこれを行わない」ということになっていますね。この問題と中期防の問題とを絡み合わせるとどういうことになりますか。
  171. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 中期防におきまして、その付記されたところで、三年後にさらに次の五カ年計画につくり直していくということも含めて検討するという箇条があります。今回その部分が削除されたわけでありまして、ということは、十八兆四千億というものは六十五年までの五カ年間の総経費でありますけれども、仮に、中期防に付記されておった検討の結果、次の五カ年計画というものが、六十四年度から始まる五カ年計画というものができますと、十八兆四千億というものが宙に浮いてしまうといいますか、次の五カ年計画に移ってしまって、その境が分明でなくなってしまうというような問題がございまして、今回の閣議決定では五カ年間フィックスして十八兆四千億という金額的な上限の枠組みというものが明確にどう実施されるかということが確認できるようにされたというように考えております。
  172. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それでは少し逆の方向の質問をいたしますと、今回の措置によって、本来中期防が持っておりました情勢等の変化に柔軟に対応すると、こういうところは完全に固定されてしまうわけですね。
  173. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 中期防衛力整備計画の主要事業について閣議決定されていることも事実でありますし、また五カ年間の事業すべてについて細部まで閣議で決定されていないということもまた事実であるわけですが、いずれにしましても、先生のおっしゃられましたとおり、ローリングシステムとフィックスしたシステムということになりますと、ローリングシステムの方がより柔軟性があるということは事実でございまして、その点において柔軟性が若干失われたということはそのとおりでございます。
  174. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 この第三項でございますが、これは官房長官からも先ほどお話がございましたが、六十六年以降の防衛費につきましてはこの項目では具体的には何の歯どめもないわけでございますが、しかしながら、今後のことも考えてこの総額明示方式をこれからも、この後も堅持していくことを文章の中には書いてないけれどもそういうようなことを言わんとしていると、そういうような意味の話がございましたが、そういうことでよろしいんですか。
  175. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) 先ほどお答えしたとおりでございますが、ああいう経緯で明示をしていないんですが、常識的には、やはり何らかの意味合いにおいて現在のような年度計画とでもいいますか、中期業務計画とでもいいますか、そういうものがつくられるのが常識的であろうということをお答えいたしておきたいと、こう思います。
  176. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 白紙ということでもないんですね。
  177. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) さて白紙というのがどういう意味がよくわかりませんが、今私が言ったような趣旨で御理解をしておいていただきたいと、こう思います。
  178. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それから、この四項目が非常にわかりにくい。これは何を言わんとしているんですか。
  179. 佐々淳行

    政府委員(佐々淳行君) お答えいたします。  特に工夫いたしましたのは、五十一年閣議決定にかえてという表現でございます。このかえてという言葉を選びました理由は、廃止をするという言い方をいたしますと、その節度ある防衛力の整備を行うという精神も否定されたという誤解を招いてはいけないということから、いろいろ言葉を選び出していただきまして、三木内閣の節度ある防衛力の整備を行うという精神はそのまま尊重すると、こういう趣旨を強調するためにその表現を用いた次第でございます。
  180. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 三木内閣の閣議決定は具体的にどうなっていましたか。
  181. 佐々淳行

    政府委員(佐々淳行君) お答えいたします。  これ息大変短い簡潔な閣議決定でございまして、「当面の防衛力整備について」、昭和五十一年十一月五日、国防会議決定、閣議決定、「防衛力整備の実施に当たっては、当面、各年度の防衛関係経費の総額が当該年度の国民総生産の百分の一に相当する額を超えないことをめどとしてこれを行うものとする。」というものでございます。
  182. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 この閣議決定を廃止した閣議決定はどうなっていますか。
  183. 佐々淳行

    政府委員(佐々淳行君) お答えいたします。  御承知のように、五十一年閣議決定、二つなされております。防衛計画の大綱、約一週間おくれまして行われましたこの閣議決定は、その防衛力整備の経費に関する決定でございますが、この決定は今回の一月二十四日の閣議決定によってその精神は残ったわけでございますが、この閣議決定そのものは実質的には廃止されたと、こういう趣旨でございます。
  184. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 この五十一年の閣議決定のいわゆる国民総生産の百分の一に相当する額を超えないことをめどとする、ここを取ってしまってあと何が残るんですか。
  185. 佐々淳行

    政府委員(佐々淳行君) お答えいたします。  五十一年の防衛関係経費の決定に当たってはいろいろな議論が行われたと承知をいたしております。国会におきましても議論が行われておりますが、その精神、これは今回の一月二十四日の閣議決定の第一項、軍事大国にならないとか、節度ある防衛力、自衛のために必要最小限と、こういう議論がなされておりますので、この総額明示方式をもって新五カ年計画、六十年の九月の十八日に決定をされた新五カ年計画、いわゆる中期防の総額明示方式をもってこれにかえるという趣旨でございます。  何が残るかということをお尋ねでございますと、一%という一つのめどを決めたその決定に至る過程の精神、物の考え方、こういうものが残ったものと理解をいたしております。
  186. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 官房長官、四項目目の「節度ある防衛力」、これをわざわざこの中に入れて残したというのは私は非常に不審なんですけれども、わざわざそれを残した理由というのを私はお伺いしたいんです。  現実の問題として、例えばこれと同じような言葉は国防の基本方針の中にもあるんです。これは、国力、国情に応じて自衛のための防衛費を漸進的にやるとか、あるいは大綱の中にも、いろいろな政策と調和を図るとか、いろいろあるわけですよ。わざわざこの一%の精神を残すということは、これが国民に対するごまかしたと私は思うんです。片一方では、一%の枠をやむを得ず破ったと言っておりますけれども、実際はそうじゃなしに、破るべくして破ったと我々は、僕は考えているわけです。そこは違っても結構ですけれども。  いずれにしても、国民に対する印象を和らげるために、ごまかすためにわざわざこの精神を残していると言わざるを得ないと私は思うんですけれども、これはどうですか。
  187. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) 私どもの気持ちは全然峯山さんとは違うわけでございまして、やはり何といいますか、一%の枠を超えたということで、本当にこれから大変な軍備整備が行われるんじゃないかなといったような危惧の念を持たすということは、これは我々の本意でもないし、またやる意思も全然ないわけでございますから、そこでこの第四項目を入れまして、従来とは変わったところはないんだと。  本来言えば、従来も、先ほどお答えしたように、当面めどとするとあるんですよ、あれは。一%以内とはありましたけれども、当面めどとすると、こう書いてあるんだけれども、いつの間にやら、一銭一座超えてもいけない、こういうようなことになってしまっておったわけですね。しかしそれは今回超さざるを得なくなった。したがって、あの閣議決定は本当は法律的に言えば、この第四項目で「代わるものとする」と、こう書いたことによって廃止になっておると理解していただいて結構だと思います、法律的には。  しかしながら、あの精神、つまり一%をめどとして整備をするということによって節度あるやり方をやっておったんだ、この精神だけはやはり今後も政府としては守っていきたい、こういうことで「代わるものとする」という言葉にかえて、あの精神、気持ちは今後も生かしたい。つまりは、一%を大きく、ここでもう二%にしていいわ、三%にしていいわ、そんなことは全然考えておりません。しかし、さればといって、幾ら何でも、一銭一睡超せばもうこれは甚だもって日本軍国主義になるなんて、そんな議論はそれはおかしい。やはり必要な整備はさせてもらうが、そこはやはり従来からやっておったような一%云々というあのやり方の中に生きておった気持ち、精神だけは引き継いでいこう、こういう我々の気持ちでございますから、これはひとつぜひ誤解のないように御理解をしておいていただきたい、こう思います。
  188. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 大臣そうおっしゃいますけれども、この一%枠というのは、少なくとも政府の力でどうしようもないきちっとした数字が出てくるわけですよね。そういうような意味では、今回の新しい歯どめというのは政府の力で自由に動かせる、こんなものは本当の歯どめじゃないと私は思うんです。辛うじてこの四項目の中で少し中身を詰めておかないといけないなと思うのは第二項目だけです。そこでこの第二項目につきましてこれから詳細にお伺いをしてまいりたいと思います。  まず、政府は、この中期防衛力整備計画の総経費見積もり十八兆四千億円、これを新しい歯どめとしているわけでありますが、これはその六十年度価格、こういうことであります。この六十年度価格といいましても、もう既に御存じのとおり六十一、六十二と二年間たっているわけであります。  そこで、ここで一つお伺いしておきたいのは、この六十年度価格という場合に、この中に入っていないいわゆる項目というのはどういうふうな項目が考えられるのか、これをちょっとお伺いしておきたい。
  189. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 項目と言えるかどうかわかりませんが、入っておりませんのは、いわゆる六十一年度以降に出てまいります名目的な部分が入っていないということになります。したがいまして、二、三の例を申し上げますと、例えば人件費について言えば、六十一年度以降のベア分に関するものは入っていない。それから物価等が値上がりして、同じ装備を買うのに値上がりをした、あるいは値下がりをした、値下がりをする、そういった部分については入っていない。さらに言えば、最近の例で言いますと、例えば円高等によって装備品が仮に安くなる。そうすると名目的に値段が下がります。その下がる部分は除いて考えなくちゃいけない。それから例えば売上税のようなものが仮に決定されたとしますと、そのようなものは六十年度価格に入っておりませんからそれが上積みになる。その種名目的な上積みになるもの、あるいは削減されるべき性格のもの、そういうものは入っていないというように御理解いただきたいと思います。
  190. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 地位協定等から出てくる今回の特別協定がありますね。ああいうふうな経費についてはどうですか。
  191. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 後方経費については個々の具体的な中身があるわけではございませんが、地位協定に伴う労務費の新たな負担をするということになりますと、私どもは、十八兆四千億という総額の歯どめがあるとすれば、その金額の枠内のやりくりでそれは賄わなくちゃいけないんではないかというふうに考えております。
  192. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それは結局やりくりをするということですね。  それでは次に、既にこの中期防は六十一年から始まっているわけですから、六十一年、六十二年は六十年度価格にしてどういうふうになるかということはもうほぼ明らかになっているわけであります。その六十年度価格にしてどういうふうになるか、これを防衛庁、説明していただきたいと思います。
  193. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 本来でありますれば、防衛庁限りのデフレーターといいますか、そういったものを積算いたすべきことになろうかと思いますが、これは、防衛庁で調達いたしますもの、支出する費目というものは大変多うございますので、我が方としてそういう能力はございませんので、やはり一般的には、私どもは通常の総合物価指数としてのGNPデフレーター、これを用いるのが通例でありまして、過去防衛費を実質換算する場合はそれを用いておりました。ただ、例えば六十二年度のように、非常に防衛費に及ぼす影響の大きな面で大きな変動があった。先ほど申し上げたように、非常に円高で装備品等の価格が下がった、あるいは石油等の値下がりによってその部分が大きく下がったというようなことがございますので、そういったものについては別途それをピックアップして計算するというようなことになろうと思います。  そこで、六十一年度について申し上げますと、六十一年度の名目的な増加要因としては、ベアの関係、それから油のような特に値下がりしたものを除く一般的な物価の増のもの、光熱水科の増、そういったものが合わせまして約七百億程度あったというように考えております。それに対しまして下がったもの、これは油価格の低下による減、それから円高による外貨関連経費の減といったものが二百数十億あったということで、それぞれ相殺してみますと、先ほど申し上げた六十一年度の一般の総合物価指数としてのデフレーター一・一とほぼ同じものになったというように考えております。したがって、六十一年度予算について、六十一年度価格に総額を引き直してみますとデフレーター一・一を掛けたものになろうかというふうに考えております。  それから六十二年度につきましては、ベアが比較的小さかったこと、三百五十億ぐらいと、それに今回の予算には売上税とかそういったものが入っております。そういった増要素のほかに、今度減要素として油の購入費の減とか円高による減が非常に大きく出てまいりました。そういう点の中身を比べてみますと、デフレーター、仮に防衛デフレーターとして申しますと、マイナス〇・二ぐらい効いてきたのではないかというように考えております。
  194. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 今のその六十一年、六十二年のただいまのデフレーターで計算して、六十年度価格で、いわゆる防衛費総額でどういうふうになるのか、正面経費だけでどのくらいになるのか、この二点、具体的な数字で六十年度価格でどうなるか、一遍教えていただきたい。
  195. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 正面等ちょっと計算を分けておりませんので、総額で言わしていただきますが、六十一年度防衛費を六十年度価格に換算いたしますと、六十一年度の防衛費は三兆三千四百三十五億円でございますが、これを一・一%のデフレーターで割り戻しますので約三兆三千七十一億円という数字が出ますから、約三兆三千百億円ということになります。それから六十二年度でございますが、先ほど申し上げたように、マイナス〇・二ということでございますから、それで割り戻すことになりますので、現在お願いしております六十二年度予算三兆五千百七十四億円が三兆四千八百六十一億円、約三兆四千九百億円と申し上げておきたいと思います。
  196. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それでは、ただいまの問題、大蔵省はこれをどういうふうに試算をしておられますか。
  197. 西垣昭

    政府委員(西垣昭君) ただいまの防衛局長の答弁は私どもと調整が終わったものでございまして、私どもも同様に見ております。
  198. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それでは、今の数字が出てまいりましたが、この数字が出てくる基本的な計算式、これはどういうふうになりますか。
  199. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) お答えいたします。  最終的な計算は非常に単純でございまして、六十一年度予算について言いますと、先ほど申し上げたように、六十一年度予算の三兆三千四百三十五億円という数字がございますね。それ割ることの一・〇一一という計算式で先ほどの三兆三千七十一億円という数字が出たわけでございます。同様に六十二年度につきましては、三兆五千百七十四億円という現在お願いしておる予算額に〇・九九八というものでそれを割りまして、これは二回かかっておりますから六十一年度のデフレーターも使わなくちゃいけませんので、さらに一・〇一一という六十一年度のデフレーターをもう一回割るということにしますと三兆四千八百六十一億円という数字になります。
  200. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 今の六十一年、六十二年のデフレーターの計算方式ですね、これはだれが計算してもぱっとわかるように計算式を一遍説明していただきたい。
  201. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 計算式と申し上げるほどのものではございませんが、先ほど申し上げたように、例えば六十二年度でございますと、まず名目的な増加所要の方を拾ってみるわけです。そうしますと、ベア所要が三百五十億、売上税が百十六億、油等を除く物価増が約七十億ということで、トータル五百三十六億という数字が出てまいります。それは名目的に一・六%ほど引き上げる要素であります。  一方、下がる要素として、油価格の低下による油購入費の減が二百六十億、円高による外貨関連経費の減が三百二億、それからこれもやはり油等の値下がりと関連ありますが、燃料費、光熱水料といったものの減が五十五億というマイナス要因が六百十七億あります。これが名目的な物価を一・八%引き下げる要因でありますので、この両者を相殺いたしまして〇・二のマイナスデフレーターになると、こういうことでございます。
  202. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 これは、GNPのデフレーターとの関係はどういうふうな関係になります。
  203. 及川昭伍

    政府委員(及川昭伍君) GNPデフレーターにつきましては、各種の物価指数等を総合し、さらに交易条件の変化等も総合して、いわゆるインプリシットデフレーターといいますが、結果として出てくるデフレーターでございますが、防衛庁の防衛費デフレーターはそれとほぼ同様の手法に従いまして、防衛経費のそれぞれの費目について個別の物価上昇率あるいは物価下落率等々を総合し、結果として出てきたデフレーターでございまして、事務的には防衛庁当局と相談した上、防衛費デフレーターとして防衛局長が申し上げました数字はほぼ整合しておるものと考えているわけであります。
  204. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 そうしますと、防衛庁、これはやはり六十年度価格で今後防衛費が実際に十八兆四千億の中に守れたか守れないかというのは非常に大事な問題であります。したがいまして、防衛庁として今回の、先ほどのデフレーター計算の方式についても御説明ございましたが、これは資料として後ほど提出をしていただきたいと思います。よろしいですか。
  205. 栗原祐幸

    国務大臣(栗原祐幸君) 後刻資科として提出いたします。
  206. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 六十二年度の防衛力整備の概要の中には、今防衛関係費、正面、後方、そういう分けていないと御説明ございましたが、既に資料の中には、正面契約額としておおむねこの程度になるというのは御説明あるわけですよ。これは中身は今説明ございませんでしたが、これはどういうことになりますか。
  207. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 手元に資料がありませんのと、先ほど来申し上げているように、例えば円高とかそういった問題でございますので、個々の装備品に一つ一つ掛けていくということじゃなくて、外貨払いのもの全体に今の円高がどう効いてくるかというのを掛けておりますので、それを後方、正面に分けていないということを申し上げているわけでありまして、その種の細部についての資料の提出はひとつ御容赦いただきたいと思います。
  208. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 容赦していただきたいと言いましても、我々の資料の中に出ておりまして、この計算の仕方がどうなっているかということは、やっぱり明らかにしていただかないといけないと私は思いますよ。  それから、これは大蔵省ですか防衛庁ですか、もう既に中期防、二年間過ぎているわけです。現実の問題として、あと三年間で防衛費は総額でどのくらいになるのかと、これは非常に我々国民としても心配な問題であります。現在の経済情勢の中で、あと三年間で試算をするとどうなるか、これは具体的に御説明いただきたい。
  209. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 先般本委員会でも同趣旨のような御質問があってお答えしたと思いますが、先ほど申し上げた六十一年、六十二年度のデフレーターで六十年度価格に修正した金額によりますと、六十一、六十二と防衛費はほぼ実質的には五・四の増加ということになっております。したがいまして、中期防衛力整備計画の平均伸率は五・四%でございますので、ほほ一八兆四千億の線を歩いているというふうに申し上げられますが、今先生の御質問は名目値のようでございますので、名目値につきましては、今後の物価の動向、どういうことになるかということが全く見当がつきませんので、ちょっと試算はいたしかねるというのが実情でございます。
  210. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それでは次に、防衛庁長官並びに総理もしょっちゅうおっしゃっておりますが、大綱の水準達成という問題です。これをちょっと私はお伺いしたいと思うのでありますが、大綱の水準を達成したというのは一体どういうふうな状態を指すのか、ちょっとお伺いしておきたいと思います。
  211. 栗原祐幸

    国務大臣(栗原祐幸君) 大綱の水準を達成するという状態は、具体的に言うと、中期防を着実に実行するとその時点でおおむね達成ができる、そういうことであります。
  212. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 ですから、中期防の話じゃなくて大綱の達成ですから、やっぱり話はもとに返って、中身できちっと御答弁いただきたい。
  213. 栗原祐幸

    国務大臣(栗原祐幸君) 中期防というのはどこから出てきたかというと五九中業から出てきたんです。五九中業というのはどこから出てきたかというと大綱水準の達成を期するということが前提、私が前の長官のときに、大綱水準の達成を期するということで五九中業をつけた、その五九中業が作案をされて中期防衛力整備計画と、こういうことになったわけです。そういう意味で、大綱水準の達成というのは具体的には中期防を実現するということであります。
  214. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 一つずつ追及していくのは、これは非常に困るんですけれどもね、大臣、中期防というのは何ですかと。それで、中期防というと、また五九中業何ですかと、こういきますね。その根っこのところは何ですかと私聞いているわけですから、そこのところをわかりやすく説明いただきたい。
  215. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 先生も十分御理解いただいていると思いますが、大綱というのは、御承知のように我が国防衛のための平時から持つべき力として、大綱では三つの側面から書いてございます。  一つは、防衛上必要な各種機能、これは後方支援体制も含めての機能でありますが、そういったものが欠落なく取りそろっていることだ、また組織なり配備においても均衡のとれた、この地域は配備されているけれどもこの地域には穴があると、そういったことがないようにするといったことが第一点。  第二点は、それによってなし得る能力として、能力面から平時から十分な警戒態勢がとれること、さらに有事においては限定的なかっ小規模な侵略までの事態には独力で有効に対応できることという能力面の一つの基本的な枠組みが書かれております。  もう一点は、情勢の変化がいろいろあると思いますが、そういった情勢の変化に円滑に対応し、移行し得るような配備がなされている基盤的なものであること。  三つの面が書いてあるわけであります。  さらに、これは抽象的でございますが、それに基づきましてそれぞれの陸海空の体制として別表に書かれておるような、いわば防衛力の重なりが例示してあるわけでございます。そういったものを含めまして防衛計画の大綱の水準と申しておるわけですが、全部御説明申し上げますと大変量が多うございますので、一例をもってかえさせていただきたいと思います。  例えば防空体制の中の戦闘機の態勢ということを例にとって申し上げますと、我が国で平時から二十四時間、領空侵犯の警戒の態勢をとるためには、仮に相手が中高度以上の航空機で入ってくるとした場合にしても、全国で七カ所で領空侵犯待機というものをしなくてはいけないということであります。それでないと我が国の領土上空に来るまでに相手に会敵できないということで、七カ所で領空侵犯待機をとらせたい。  そうしますと二十四時間、二機が五分待機であり、残りの二機が十五分待機というようなことになりますと、そういったものに張りついておる兵力、さらにはそういった人員等を常に養成し、訓練をしておくためのものを考えますと、本来であれば各基地に飛行隊がいるわけでございますが、沖縄県につきましては自衛隊独自の飛行場がございませんので、増加配分をした一個飛行隊ということで、七基地、十三個飛行隊というものが領空侵犯を三百六十五日、二十四時間待機体制をとるためには要るということで、総戦闘機の重なり飛行隊が決まっておるわけであります。  そうして、そういうことで導き出した勢力というものが予備機を含めて戦闘機三百五十機ということで大綱でも決まっておるわけでございますが、それらをもって今度は小規模限定侵略対処、そういった段階で、そういう持っておる三百五十機という総防衛力をもって防空任務に当たらせた場合にどの程度のことができるかということを大綱策定当時シミュレーションいたしまして、それでかなり優位性のある防空能力となり得るということで大綱水準というのが決まっておるわけであります。  そのように個々の機能なり部隊についてそれぞれの積算基準等もありまして決まっております。そういう基準を集大成したものが別表になっておるわけですが、それを世界軍事力の趨勢等に対応させながら完成をしていくというのが大綱水準の達成であり、中期防衛力整備計画の内容になっておるわけでございます。
  216. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 防衛庁長官、えらい簡単にいつもここで大綱の水準達成とおっしゃっておりますが、ややこしいですな、これ。どこら辺で達成したのかわかりませんね。今の話を聞いてもわかりません。今の最終の話で、集大成したものが別表になっている。それじゃ、別表のあれをきちっと達成するということが、これは大臣、達成したということになるんですか。
  217. 栗原祐幸

    国務大臣(栗原祐幸君) 大綱水準というのは、いろいろ言われましたが、結論的に言いますと、その主なところは限定かつ小規模の侵略にどう対応するか。その対応というのは具体的にはどういうふうになるかというと別表である。別表の枠の中、組織とか配備とか、いろいろのことがされるわけです。いわゆるそれが現実的な防衛力の整備の内容になるわけです。それを今言ったように集大成してそれぞれ計画を立てていく、こういうことだろうと思います。
  218. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 本当にわかりにくいですね。限定かつ小規模の侵略に対応するための——私はわかっているんですよ、大体は。要するに、それだけの能力を持たないといけない、能力の中身にはやっぱり質と量がある、こうおっしゃっているんだと私は思うんですよ。大臣はそんなことおっしゃっていませんで、要するに限定かつ小規模のやりくりと、そしてこの別表。結局、別表の中身を達成したら達成したということになるんですか。これ結局そういうことなんですか。
  219. 栗原祐幸

    国務大臣(栗原祐幸君) 大まかに言いますと、別表を達成するということであります。ただし、それは防衛局長も言ったように、いろいろと技術の進歩の問題等ございますので、国際情勢その他ございますので、これは質の高いものでなきゃならないということであります。
  220. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 結局それは、そんなことを言っているといつまでたってもできへんということですわ、技術の進歩なんてどんどんどんどんいくんですから。  それじゃもう一つ違う方向で聞きましょう。達成したかどうかは、これはだれが判断するんですか。
  221. 栗原祐幸

    国務大臣(栗原祐幸君) それはまず第一義的には原案をつくります防衛庁ですが、それから閣議ですわな。それからその前に安全保障会議、そういうものがあると思いますが、そして最終的には国会ですね。
  222. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 これは総理、大綱の水準達成が最優先とさんざん言っていますけれども、実際はその判断を、例えば量的にどうなっているか、質的にどうなっているか、大変難しい問題、そうじゃありませんか。
  223. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) やはり大綱というものは、あの時点においで一次防から四次防まで来まして、一応それらの過去を振り返ってみて、当面こういうことで日本の防衛力の骨格を概成しよう、言いかえればそれを基盤防衛力ということで言っておりますが、その中心課題というものを正確に限定小規模、非核侵略に対する防衛措置、そして安保条約との連携において日本がやり得る能力内容、そういうものをあそこで一応示した。そういう具体的に示されたのが量的には、いや量的というよりも外から見えるという面から見れば別表、そういうものが一応示された、そう考えております。  しかし、防衛の本質から見ますと、あくまでこれは相対的なものでありまして、科学技術の進歩とか、相手方の状況とか、そういうものによって移行し得るという余地もあの中には残されている、そう考えております。
  224. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 ということは総理、大綱水準の達成達成どここで大きな声でみんな各大臣おっしゃっていますけれども、そんなものできないということじゃありませんか。相対的なものです。日本が幾らどんないい立派な航空機や何か購入しても、諸外国がそれに応じてどんどんどんどんいいのをそろえていけば、それに対応してこちらもやっていかなきゃいかぬ。そんな相対的なものというんじゃこれはできないということじゃありませんか。それは総理、実はこの防衛白書の中にそう書いてあるんですわ。最近変えてきただけ。  これは例えば五十二年の防衛白書ですけれども、この中に、「量的不足分については可及的速やかに実現したい」、「質的向上の面についてその完成がいつかということであれば、それは」、今皆さんおっしゃっているとおり、「周辺諸国の軍事技術の進歩のすう勢に応じて実施していくべきものであり、一定時期をもって完成する性格のものではない。」と、あかんとこれ書いてあるがな。防衛庁長官、違うんですか。これは考え方が変わったんですか。達成はできないと書いてあるんじゃないですか。違いますか。
  225. 栗原祐幸

    国務大臣(栗原祐幸君) 私は言葉の解釈の問題だと思うんです。私の言うのは、やはり軍事技術、近隣諸国の動向と関連しまして大綱水準というものが考えられるべきだ。それは相対的なものだというが、そのとおりですね。これを固定していること自体がおかしいんです。ただし、相対的ではあるけれども、別表その他の関係からいくと、それは一応完成の域になっておる、その完成になっているのが浮動しないというわけじゃない、こういうことであります。
  226. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 これは私は量的な面、質的な面、いろんな角度から今までの防衛白書を全部読ましていただきました。検討したんですよ。実際これ無理だと書いてあるんですよ。ところが、最近の白書はまた全然違うんですよ。書き方を百八十度変えているわけ。これは総理の意向だと私は思っています。まるっきりこれは——今あけるの面倒くさいですからあけませんが、現在の白書の書き方は、要するに防衛計画の大綱の水準の達成にはまだまだだと、まだまだだと書いてある。だからそのために一生懸命やらにゃいかぬといっぱい書いてある。国民はこれだけ毎年毎年防衛費をつぎ込んで一体どないなってんねと、こう考えますよ。そう思いませんか。
  227. 栗原祐幸

    国務大臣(栗原祐幸君) 私は、基本的には元来防衛というものは相対的なものだと思うんです。ただ、それが達成されているか達成されてないかというのは、いわゆる別表との関係において一応達成されている。しかし、達成されているからそれが変わらないんだというものじゃない。それはいろいろの状況で変わる、こういうことだろうと思うんです。
  228. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それじゃ量的に別表のとおりまだ達成してないということですか。そこのところをおっしゃっているんですね。
  229. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 大綱の達成状況につきましては、後ほどいろんな分野がありますので資料でお出ししてもよろしゅうございますが、基本的には、先ほど三つあります大綱で決めてある一番我々重視しておりますのは能力ということで、これは相対的なものでございますが、その能力を別表で定められている数量の枠内で質的向上を図りつつそれで達成をしたいということでやっております。  なお、数量的に達成できていないものの一番大きなものは、やはり航空機が大綱をつくった当時には別表の水準以上の数量を持っておったわけですが、急速に古いものが耐用命数に達しまして、落ち込んで、まだ回復し切れていなくて穴があいておるというのが中心でありまして、ほかに一部艦艇等ございますが、一番大きなものは航空機が足りないということでございます。
  230. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 ちょっと待ってくださいね、資料を読みますから。  今防衛局長がおっしゃるように、長官、別表の中で何が足らぬかというと航空機が足らないんですと、これならわかりやすいわけですよ。それじゃ航空機が足りないんならそこをどうかしないといけないんだなと、こうわかるわけです。ところが、今のいろんな大綱水準の達成達成、確かに中身については私よくわかっているつもりです。能力はやっぱりきちっとしないといけない、能力には量的な問題と質的な問題がある、それはよくわかるわけですが、現実の問題として今我々の、あなた方の先輩がおっしゃっていること、あるいは白書の中でおっしゃっていることは、要するに量的に見ても質的に見ても、これは諸外国のいろんな問題があるから達成は不可能だと、相対的なものだから達成したとかしないとか言えない。だから大綱水準を達成する達成すると言ったって困るわけですよ、我々としては。そんなことはめどにも何にもならない。国民は、これだけお金をつぎ込んだのにどうなっているんだということになりますよ、実際。  さて、今防衛局長がおっしゃった量的な問題ですね。これはあなた方は、五十二年の防衛白書七十八ページですが、「基盤的防衛力の観点に立って防衛力の現状を見ると、規模的には、すでに目標とするところとほぼ同水準にある」と、ちゃんとなっているじゃないですか。既にこの大綱をつくったときに規模的には同水準にあると言っているんです。同水準にあったものをあなた方は、要するに新しい立派な世界最優秀の航空機や何やかやをじゃかすか買う。そんなことをして変えていきゃ、それは幾らでも際限がない、私はこう思いますが、当時の防衛白書に書いていることはどういうことなんですか。違うんですか、これ。
  231. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) お答えいたします。  防衛力のうちの例えば装備について申しましても、装備というのは一度買ったらそれが未来永劫使えるものじゃない、寿命があるわけでございます。例えば航空機で言えば、大綱作成当時、私申し上げたように、大綱の目標というのは当時持っておった航空機の数より少ない目標をつくったわけです。それはなぜかと申しますと、当時持っておったF104なりの航空機というものより、より能力の高いF15、そういったものが既に採用する計画が固まっておりましたから、そういったものに換算をして新しい目標を立てた。  一方、その当時持っておった航空機がどんどん寿命が来るわけであります。つくらずにおれば落ち込んでしまう。一時、大綱をつくった当時、恐らく作戦用航空機というのは、例えば戦闘機で言えば四百機を超える数を持っておったと思います。大綱の別表にある戦闘機の枠組みというのは三百五十機でありますけれども、現在それ以上に減ってしまっておるというのが実情でございまして、大綱水準というのは、あるとき到達すればもうそれでお休みしても大丈夫ということではなくて、装備というのは逐次古くなり、そして命数が尽きてまいりますからそれをつくり直していかなくちゃいけない。そういったものを維持するだけでもなかなか大変でございます。  一方、先ほど来お話がありますように、防衛力というのは相対的な面がございますから、各国の能力向上に応じて近代化していくということになるとさらに努力が必要であるということは御理解賜りたいと思います。
  232. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 五十二年の七月の白書の中身はこのとおりなんでしょう。
  233. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) ほぼ量的に達成しているのは、例えば陸上自衛隊であれば十三個師団十八万体制ができておったし、航空機等の数について言えばほぼ数量を持っておったわけであります。当時、数がかなり下回っておったのは艦船の数だと思います。
  234. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 だから、艦船の数だろうと何だろうと、我々国民に対してはほほ達成しているよ、同水準にあるよと、こう言っているわけですよ。これ合っているんでしょう、このとおりなんでしょう。
  235. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 当時数量的にはほぼ満たしておったわけでありますが、その後少し怠けておったので落ち込んだということでございます。
  236. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 だれが怠けておったの、これ。どういうことなの、その怠けておったというのはどういう意味なの。
  237. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 先ほど申し上げましたように、航空機なり艦船には艦齢なり飛行機の寿命というものがございます。したがって、船であれば、この船は二十五年たつと退役していくことですと、その船が退役する前、四年ぐらい前に新たな船をつくってそれを代替しませんと数が減ってしまうわけでございます。そういうことで、おおむね主要な装備についてはいつ寿命が来るということを私どもつかんでおりますが、それに対応する代替措置というものが十分にとられませんとその差額というものが数的に落ち込んでいくということでございます。
  238. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 能力的には当時と比べて落ち込んでいるんですか。そんなことないでしょう。
  239. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 防衛力の絶対的能力については私は上がっていると思います。ただし相対的能力については、周辺諸国の軍備も進んでおりますから、例えば、当時在来型潜水艦が大部分であったものが原子力潜水艦にかわっていくということになりますと、原子力潜水艦に対して在来型潜水艦と同じ程度の例えば捕捉率なり撃破率を得ようと思えばそれなりの能力が要るということで、我が方としても、先ほど申し上げたように、それぞれの機能について小規模限定対処ができるような能力についで大綱水準というものを達成しようということを追求しておるわけでございますので、能力的には落ちているものもあれば上がっているものもあるというように御理解いただきたいと思います。
  240. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 この白書の書き方を見ておりますと、相当落ち込んでいると、そういう感じの書き方ですよね。そこで結局はその別表が大きな問題になります。  そこで、これは局長で結構ですが、この別表の数量、これは私はこんないいかげんなものはないと思っているわけです。例えば陸上自衛隊のほとんどすべての装備品は大綱のどこに書いてあるのか、ちょっと説明していただきたい。
  241. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 結局、防衛力の規模なりを決めるものが別表であるわけですが、陸上自衛隊については、その規模を決めるものは師団の数とか人員の数というものが基準になっておるわけでございます。一方、海上防衛力なり航空防衛力については、艦艇の数とかあるいは航空機の数というものがその防衛力の規模を示す基準として世界共通的に使われておるものでございますから、別表についてはそのような記述がしてあるわけです。したがって、あとはその師団というものがどういう装備を持つか、どの程度の力を持つかということは、先ほど申し上げたように、周辺諸国の軍備の動向というものとにらみ合わせながら小規模限定侵攻に対してどう対応できるかということで判断すべきだと思います。  師団の数にいたしましても、日本の師団というものと例えばソ連のような大陸国の師団と比べますと、その戦闘力というか火力を比べれば、大綱をつくった当時でも二対一ぐらいの差がございますし、現状で言えばもっと差があると思いますが、そういったことで、その枠組みの中でいかにして大綱で定めておる能力なり態勢をとり得るかという工夫の問題であろうかというふうに考えております。
  242. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 そんなことを言うと、陸上自衛隊なんかもう際限なくふやしていかなくちゃならないということになるんじゃありませんか。少なくともこの五十二年の白書では、規模的には既に目標とするところは達しておるわけですから。例えば、あなたも例を挙げましたから私も挙げますが、戦車、これは大綱ができた当時何両あったんですか。
  243. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 戦車は、定数的には甲師団が六十両、それから乙師団が四十五両ほどでございますので、総定数的には千二百両ぐらいが規模だと思いますが、実際持っておったのは千両を若干切る程度であったと思います。
  244. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 いや、それはそんないいかげんなことをおっしゃってもらっては困りますね。大分違うじゃないの、千両なんというのとは。そんないいかげんなことを言うたらあかんわ。
  245. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 手元に資料が出てまいりましたのでお答え申し上げますが、戦車の数は七四式が当時八十一両、六一式五百六十両、計六百四十一両であります。
  246. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 六百四十一両と千両、大分違いまっせ、これ。それが現在はどうなっているんですか。
  247. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 六十一年度末で千四十六両でございます。
  248. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 千百じゃないの。
  249. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 失礼しました。千百四十六両でございます。
  250. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 こんなもの、六百四十両が千百四十六両にもなって、これ実際戦車というのは要るんですか。これ要るんですか。
  251. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 戦車というものは、やはり陸上自衛隊の機動打撃力としては非常に重要な火力の根幹をなすものだと考えております。したがいまして、昭和三十五年だと思いますが、現在の師団というものがつくられたとき、先ほど申したように、六十両という定数を決めまして、定数的には千百五十両持たなくちゃいけないということがもう三十五年当時から決められておったけれども、充足しないままにずっと大綱当時まで来て、現在まだその充足を図っておる最中であるということでございます。
  252. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 いや、そういう言い分は私納得できませんね。それだけ足りないんなら、結局数的にも相当不足しておるということがはっきりしておりながら、実際はこの五十二年の白書には大体ほぼ充足しておるなんという書き方じゃないですか、これ。規模的には、その目標とするところとほぼ同程度になっていると書いておりながら、それだけ数が全然足りないなんというその考え方は後でつけ足した考えじゃありませんか。  私が戦車は要らぬのと違うのかと申し上げておりますのは、防衛庁の元技術担当参事官で夏村繁雄さんですか、この人のお話によりますと、要するに戦車は要らぬと。「差し当り日本の防衛には不要である。」と。それで、いっぱい書いてあるんだ、これ。要するに、「国内で、戦車戦が行なわれる時はどんな事態になっているのか冷静に考えてみることだ。日本の防衛というのは、敵を上陸や着陸させないというこの一点にかかっている」と。そして、そういうような中から、当時の、これ大分前の話ですけれども、「装備品購入費の中から、一両数億円もする戦車のようなものを多数購入する必要がいったいどこにあるのだろうか。」と。そういうふうな中から、いっぱい書いてあるんです、戦車が要らないという話。これやっぱり極端かもしれません。しかしながら、あなた方の仲間ですよ。  だから、私は全部要らぬ言うのと違うんです。だけれども、少なくとも五十二年当時六百四十一両あったわけです。それが、量的にはそれで満足だと書いてあったのに、それを我々知らぬところでどんどん、いや実は千両だったんだ、千両になったら、いや実は千五百両だったと、そういうふうにどんどんふやしていったら結局この水準の達成なんというのはこれはもう遊びだと、要するに。具体的な問題をもうちょっとやりますけれども、非常に私はこれは納得できない。どうですか。
  253. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) まず、二点お話があったと思いますが、数的に量的に達成しておるというのは、私先ほど申し上げたように、陸上自衛隊としては師団の数とかそういった規模で示すものとして考えていると。そういう点では、一次防、二次防のように師団を一つ二つとふやしていく、一万人ずつ増員をして師団をつくっていくという時期からもう既に十三個師団というものを充実、近代化していく時期に変わってきているということでありまして、量的に私は陸上自衛隊の規模としては十三個師団十八万体制ということででき上がっておるということでそういう表現になろうと思います。個々の装備については、新しい装備が入れば当然のことながらゼロから始まるからふえていくものもあり、古い装備でなくなっていくものもあるということであろうと思います。  それから戦車の必要性でございますが、確かに、例えば夏村氏が言われるように一兵も国土に上げないということができればそれにこしたことはございませんが、これは島国の我が国といえどもなかなか難しいことでございます。例えば稚内を中心にそこに配備し得る航空機の数ということを考えますと、我が方の使っている飛行場、自衛隊の飛行場は二つか三つであります。一方、周辺諸国の飛行場といえば、先ほど申したように三十から五十あるということになると、そこにもう配備できる飛行機の数が違う。そうしますと、例えば、航空機を使って航空攻撃で洋上で阻止をするということはその地域ではなかなか難しいことであります。そのような航空優勢がとれなければ、当然のことながら艦艇部隊も活動できないということになります。そうしますとどうしても陸上に上がられてしまう可能性の高い地域というものがあるわけであります。そういうところについてはやはり陸上部隊で守らざるを得ない。  特に戦車について言えば、例えば、相手方の空挺部隊のようなものがある地域にぱっとおりてくるというようなときにいち早く駆けつけてそれをつぶしてしまう、そこに根づかないうちにつぶしてしまうというような機動打撃力としてはやはり戦車というものは現在の陸上戦においても必要欠くべからざるものであるというように考えておる次第であります。
  254. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 そんなことを言ったら、結局は幾らあったらいいのか水準の達成なんてわかりませんよ。それはもう本当に私は納得できません。  それから、あなた先ほど海のことをおっしゃったが、この五十二年大綱当時、海はどうなっていたんですか。
  255. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 例えば対潜艦艇、護衛艦でございますが、約六十隻というのが大綱で決められていると思います。当時護衛艦として持っておりましたものは四十四隻であります。そのほかに駆潜艇がございまして、当時駆潜艇は四隻を一隻の護衛艦に換算いたしておりましたが、四隻加えますと四十八隻分の護衛艦がおったということにお考えいただきたいと思います。  それから一方、固定翼対潜機でございますが、固定翼対潜機は当時百二十六機持っておりました。一方、その固定翼対潜機の大綱水準というのは百機ということで現在決められております。
  256. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 いや、それ局長ね、そういうごまかしをしたらいけませんわな。大綱のとき六十隻と決めたのは、要するに、当時の護衛艦とそれから駆潜艇の十二隻が含まれてほほ六十隻というのが数じゃありませんか。それをあなた方はいつの間にか、この駆潜艇というのは当時四百トン級ですね、これを全部なくして全部護衛艦にして六十隻にしようと。それではやっぱり時間もかかるしお金もかかりますよね。だから、当時からすると相当の……、総トン数で言えばどうなりますか。
  257. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) トン数についてはちょっと今計算しておりませんので後ほど計算してあれいたしますが、六十二隻、約六十隻というのは今先生が言われたような算定で出ておるわけではございませんで、機動的に使う海上部隊として護衛隊群というのがございますが、これを常にレディーのものを一個群保持するためには四個群必要である、これは八隻で一部でございますので四、八、三十二隻要ると。そのほかに地方隊、いわゆる沿岸警備等を行います、あるいは港湾警備等を行います地方隊所属の艦艇として十個隊欲しいと。十個隊をそれぞれ、三隻隊十個隊ということで、三隻おりますれば常に一隻はドックに入ったりしておってもレディーの状況で置けるということで三隻隊十個隊置くと。それが三十隻、合わせて六十二隻、約六十隻ということで当時の大綱の数字が決められたものでございまして、当時持っておる駆潜艇を含めた数が六十隻ほどあったから六十隻という数字を決めたというものではございません。
  258. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それはそうであったにしても、実際問題として大綱制定当時の十九万二千トンですか、それから現在の三十万トン近くになっておるわけですから、少なくとも相当な装備になってきておるわけですよね。その点は僕は間違いないと思いますよ。  そこで防衛庁長官ね、長官はこれここで質問されるたびに大綱水準の達成ということをいろいろおっしゃっておりますけれども、実際問題として、大綱の水準達成なんというのは非常に難しいいろんな場面があるわけですよ。質のことなんか言い出しますととても無理なんです。どこの時点でも達成したなんて言えませんわ、相対的なものですから、こちらがふやせば相手もふえるんですから。どこを想定しているかわかりませんけれども。そういう点でいきますと、国民立場からいくと、政府が必要最小限のいわゆる防衛力の整備をする、そういうような観点からいけばそれなりの理解を持っていただいていると私は思うんです。しかしながら、これだけ防衛力の整備を毎年毎年やりながら、ことしの白書なんかを見ると、いまだにそんなにないのか、足りないのかと、そういうふうに思うわけですよね。これはやっぱり私は誤解だと思うんですよ、実際。大綱制定当時と現在と比べてみればもう想像もつかないほど大変なことになっているというのも事実です。私、そこら辺のところの説明は大臣の口からわかりやすくもう一遍説明していただきたいと思います。
  259. 栗原祐幸

    国務大臣(栗原祐幸君) 大綱水準というのは、先ほど申したとおり、別表との関係、限定かつ小規模の侵略態勢との対応、そういうものが中心になって大綱水準ができておると。しかしこの大綱水準は、いわゆる軍事技術の進歩、周辺諸国等のいろいろの環境の変化、そういうものによって変わってくる、変わってくるけれども水準達成ということはできると。しかし、その水準そのものは確定はしない、浮動しておる、そういう筋のものだろうと思うんです。そういう意味合いではこれは永久に達成できないという言い方もできるでしょうし、いや達成はできているんだ、水準は達成じゃなくただその水準そのものが浮動しておるんだ、そういう言い方もあろうかと思います。いずれにいたしましても、防衛大綱のできたときから比べてみて現在が相当防衛力の整備ができておるということは事実でございます。
  260. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 そんなわからぬことをたびたびこういうところで出していただいて、それであたかもそれが金科玉条のごとく持ち上げるというのは非常によくないと私は思いますね。  それで、今回の一%突破についての理由、これもここで何回も御説明いただきました。官房長官の口からもこれは御説明いただいた。もう一回説明していただきましょうか。これは私、何回もお聞きしておりますが、三百七十億の上積みの中身はいわゆる後方の経費だと、こういうお話がございました。これは大臣、そうですね。どうですか。
  261. 栗原祐幸

    国務大臣(栗原祐幸君) 詳細につきましては政府委員の方から答弁させますけれども、最後の段階でいわゆる指揮通信機能の充実、それから練度の向上、隊員の宿舎、隊舎等の整備、そういった後方方面に主として費用を使っておる、そういうことでございます。
  262. 池田久克

    政府委員(池田久克君) お尋ねの三百七十億の中身について御説明を申し上げます。  まず第一に、隊員への施策を推進するために、隊舎とか宿舎、食堂とか浴場が大変傷んでおりまして、こういうものを一気に整備できませんけれども順次整備していきます。そのほか補給関係の施設、後方保安関係の施設、そういう後方支援の施設の整備、合わせて施設整備費で百二十八億円。  第二に、周辺対策の経費、基地対策の経費でございますけれども、住宅防音が御承知のように民間と比べて非常におくれております。それからそのほか米側に対する施設の整備等についても引き続き行わなきゃいけないということで九十五億でございます。  第三が、車両とか通信機とか、これはもう部隊を維持するためのものでございますけれども、これが損耗更新が非常におくれております。例えば陸上自衛隊でいいますと二年おくれております。二年おくれというのは二年前になくなったものを二年後の予算でいただく、こういう仕組みになっておりますので、こういう老朽器材を何とか更新したいということで六十一億円。  第四が、練度の向上でございます。パイロットの訓練時間が非常に少なくなってきておりますし、これもひとえに油が高かったためでございます。また、学校の教材等が非常におくれておりますので教育の効率も非常におくれておるというようなことで、この関係で二十三億円。それから次が修理費でございます。修理費はいろいろ細々としたものを積み上げてございますけれども、これが十七億円。それから油の価格でございまして、油の価格はちょうど予算が決まりましたときに非常に低い市況になりまして最近は上がりぎみになっております。そこで六十二年度につきましてはある程度のアローアンスを見なきゃいかぬということで三十九億円を計上いたしました。その他細々としたものは七億でございまして、御説明申し上げましたように後方関係の経費で三百七十億計上しております。
  263. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 これは官房長官、今時分三百七十億を上積みして一%を突破させるというのは意図的だと我々が言うのは、何でそういうふうに言っているかというと、要するに防衛計画の大綱ができた五十二年当時、既にこの問題については白書の中でも明確に言っているんです。こういうふうにすべきだと言っているわけです。そのことに対して、これは防衛庁としてこういうふうに反省してこういうふうに取り組まにゃいかぬと書いてある。そのことに全く反省の意図も見せないで、今時分になって正面が多過ぎだから、あるいは後方がおくれているからという話は本当によくない。長官、一遍読んでみましょうか、どうなっているか。  どういうところかというと、「自衛隊の現状に対する反省」というところです。これはもちろん、「基盤的防衛力構想採用の背景」とかその中のところですが、「わが国の防衛力は、正面に比して後方関係の整備の遅れが目立ち、全体としての能力は意外に低い水準にとどまるのではないかと憂慮されるに至った。」、このような実情の反省に立ってこの大綱を推進する、こう言っておるわけです。それを決めてからもう何年たっているんですか。今時分になって、自衛隊の隊舎がちゃんと整備されてないから、あるいは後方がちゃんとしてないからわざわざ一%突破させてまでもやらにゃいかぬ、それならもっと前からやりゃいいんです。  きょう同僚委員の方から資料を配付いたしました。この資料を見てください、これ。正面と後方の割合を見てください。ずっと毎年、五十一年以来毎年減ってきているじゃないですか。これは三百七十億突破させたから済むという問題じゃありませんよ。だからそこのところを私は明確にやっぱり考えていただきたいと思うし、国民に出した防衛白書の中でこういうふうに言っていることに対して、先ほどから幾つかの点を挙げましたけれども、少しは反省しておるのか、少しはちゃんとする気があるのか。  そんなことをちゃんとしなくて幾ら三百七十億が後方だなんて、私たち後方だと言われればやっぱり自衛隊員の皆さん方の処遇はちゃんとしてあげたいと思うわけです。しかしながら、それより前に航空機を一機なり二機なり辛抱してそっちの方をやった方がいい、逆に言えば。戦車も、私は全部必要でないとは言わないんです。だけれども、あしたから戦争が始まるわけじゃあるまいし、戦車に乗る自衛官が足りないというぐらい戦車が余っておるわけですから、実際問題として。そんな中では私は戦車をつくるのを一時延ばしてでもそちらの方へお金を向けた方がいい。おかしいですか、私の言っていること。御答弁いただきたい。
  264. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) 防衛白書の中でかねがね、後方の整備がおくれておる、これに力を入れなきゃいけない、こう言いながらも今日までそれに対する手当てがおくれて、そしてことしの予算の編成に至ってそれを理由に一%を超したのは甚だもってよろしくない、こういう御指摘でございますが、まさにその点は私ももう少し、やはり自衛隊の整備というものは戦力全体が小さいなりにもバランスがとれなきゃいけないという点から反省すべき点はあるであろう、こう率直に認めざるを得ないと思います。  しかしただ、ここで理解をしてやっていただきたいのは、やはり戦後脚案内のような事情で防衛庁というのはいわばゼロから出発をしたわけです。ところが出発の当時から、いろんな意味合いにおいて自衛隊というものに対する一般の理解と支持が遺憾ながら得られていなかったといったようなことから、万般にわたって立ちおくれがあったわけです。その立ちおくれの中でも、自衛隊の諸君という立場に立ってみれば、ともかく自分たちさえ我慢をするならば、例えば宿舎の問題一つ挙げても、我慢をするならばやはり第一線の優秀な立派な兵器を整備したい、こういう気持ちにならざるを得ない。この自衛隊員の気持ちというものは私は理解をしてやる必要があるだろう。そこらを考えてやるのが私どもシビリアンの責任である、こう思います。ただ御指摘の点は私はごもっともな点が多い、かように理解をいたします。
  265. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 官房長官、これは防衛庁長官も聞いてもらいたいんですけれども、官房長官がおっしゃるのはそのとおりなんですけれども、ちょっと違うところがあるんですよ。どこが違うかというと、戦後正面装備が足りなかった、だからそちらの方に力を入れた、だからそういう点では自衛隊員の皆さん方、我々は辛抱すると、そういうようにおっしゃっていた、だから後方がおくれたんだ、こうおっしゃっているわけです。ところが違うんです。これは明らかに同僚議員の資料、これは一遍見ていただきたいんですけれども、この資料によりましても、これは私の資料によりますと昭和五十一年から五十五年まで、これは後方に物すごく力を入れているんです、明らかですよ。そして後方に力を入れなくなったのは中曽根さんが総理になってからなんです、これは数字の面で明らかですから。  これは総理、これを見てくださいよ、後方と正面のパーセントが書いておりますがね。中曽根さんが総理になられたのは五十七年でしょう、五十七年。それまでは正面が一で後方が一・七、五十六、五十七は一・七、その前は五十一年から五十五年までは正面が一で後方が一・九六とか、一・八五とか九五、九五、九〇であったわけです。ところが中曽根さんが総理就任された以後どうなったかというと、正面が一で後方が一・四七、これが最高です、一番、五十八年。それからは減り続ける、後方が。五十九年には一・四〇、それで六十年には一・三九、六十一年には一・三七、そして六十二年には一・三一まで減ってきている。後方を重視するするなんて言いながら、実際はそうなっていないじゃないですか。官房長官の説明と全く違うでしょう、これ。そんなばかな話ないですよ。
  266. 池田久克

    政府委員(池田久克君) 正面と後方の比率の問題でございますが、歳出ベースにいたしますと先生おっしゃるとおりでございますけれども、仕事は後年度負担を含めた契約ベースで行ってきておりまして、これにつきましても過去と比べれば確かに減ってきていることは事実でありますけれども、最近の例を申し上げますと、五十九年が一対一・一九、六十年が一対一・一四、若干落ちましたが、それから一・一五、一・二九と後方に力を入れているわけであります。もう一回申し上げますと、六十年度は一・一四、六十一年度は一・一五、六十二年度は一・二九でございますから……
  267. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 何ベース……。
  268. 池田久克

    政府委員(池田久克君) 契約ベースでございます。六十二年度は特段後方に力点を置いたところでございます。
  269. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 だけれども基本的には、この資料は防衛庁から出してもらった資料です。やっぱりそれはいろんな出し方があるのかもしれませんが、これは総理、大勢については変わりませんよ。だから私は、こういう点についてはもう少しやっぱりきちっとしていただきたいと思います。これは後で総理、まとめて御答弁いただきたい。  それから次に、装備の調達の問題、これも先ほどから調達の問題とそれから減価償却の問題があるわけです。これも私は非常に納得できない問題がたくさんありますが、これは余り時間がありませんので、端的にお伺いいたします。  まずP3C、このP3CとF15、これはいわゆる六十年九月十八日の閣議によりまして、それぞれP3Cにつきましては七十五機から百機を調達すると、こういうふうにふやしました。その理由を説明していただきたい。それからF15につきましても、百五十五機から百八十七機にふやしたわけですけれども、その理由を説明していただきたい。
  270. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 先ほど大綱のところで、それぞれの任務に応じて規模が決められたと申し上げました。  そのうち、まずP3Cといいますか、固定翼対潜機がち申し上げますと、固定翼対潜機につきましては我が国周辺海域の哨戒用について八隊、それから護衛用の別のオペレーションをします船団護衛用として二隊ということで、一隊十機でございますから、百機ということで大綱で決められたわけでございます。大綱策定当時は固定翼対潜機を百二十六機持っておりましたが、その後大幅に寿命が来てダウンをして、一時七十機台まで落ちまして現在八十四機まで回復してきておりますが、いずれにしましても、古い対潜機、P2Jとかそういったものが減ってまいります。それをP3Cに置きかえて、最終的に大綱の百機体制まで持っていきたいということでございます。  一方、要撃戦闘機でございますが、要撃戦闘機については先ほど申し上げましたが、七カ所、十三個飛行隊、支援戦闘機を含めて戦闘機三百五十機体制ということが大綱で決められております。これまた大綱策定当時は四百五十七機の戦闘機を持っておりました。それが現在、六十一年度末で二百九十六機まで落ち込んできておりますが、これも当時持っておりましたF86F、F104といったものが逐次減耗してまいりまして、それが急速に減耗しましたのでなお補てんし切れていないという問題があります。それを三百五十機という枠内で逐次新型のF15に置きかえていくということで、所望の機数が新たに調達が必要となっておるということでございます。
  271. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 これは私は、まず防衛局長、P2JとP3Cの性能の差がどういうようなものなのかを一遍教えてもらいたい。  それから大体P3C百機体制なんというのは、アメリカを除く、世界にどういう国があるのか。これを一遍教えていただきたい。
  272. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) P2Jと申しますのは、主としてレーダー哨戒によって潜水艦を発見するという性能が主体になっておりまして、かつてのような潜水艦が在来型であって、潜望鏡を出す、あるいはシュノーケルを出す、そういうことで、必ず浮かんでこないと航行し続けられないものを見つけるには有効であったわけでございますが、その後逐次潜水艦が原子力潜水艦にかわっていくということで、これを所望の撃破率、捕捉率、探知率を確保するためにはP3Cのような水中におる潜水艦を捕捉できる航空機に置きかえていかなくちゃいけないということで、先ほど申したような周辺海域哨戒用、護衛用というようなことで計算をいたしまして、かつてP2Jが在来型潜水艦に対して果たしておった機能、それにほぼ近いところのものを維持するためにはP3Cで百機のものが要るという計算になっておるわけでございます。  なお、P3Cをどの程度持っておるかということでございますが、これは各国によって違いますし、そのお国柄によっても違います。例えばNATO諸国で申しますと、大西洋という比較的太平洋に比べれば狭い海域をNATO諸国全般で共同してそれぞれ海域分担をしているという格好になっております。P3C類似、同じようなものを持っておるものとしましては、カナダとかそれからオランダ等がございますが、それ以外の国は、アメリカ以外の国は、例えば英国がニムロッドを持っておるとか、あるいはフランスがアトランチックを持っておるというように独自の……
  273. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 どのくらいですか、それは。
  274. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 機数的に申し上げますと、アメリカがP3CとP3B合わせまして約三百五十機ぐらい、英国がニムロッド三十機、オーストラリア二十機、オランダ十機、カナダ二十機、フランス三十機といったようなことでございます。
  275. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 これを見ましても、アメリカ以外の国はもうほとんど日本の三分の一、四分の一じゃありませんか。そんなもの話になりませんよ。  それから次に、時間がありませんからどうしてもやりたいことをやっておきますが、偵察警戒車というのがありますね。これは一両当たりどのくらいするんですか。それから自走高射機関砲、この二つについて御説明いただきたい。
  276. 鎌田吉郎

    政府委員(鎌田吉郎君) 偵察警戒車でございますが、初度部品なしで一両当たり二億三千二百万円。それから新高射機関砲でございますが、これも初産部品なしでございますが、十五億五千八百万円、こういうことになっております。
  277. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 八二式指揮通信車というのがあるでしょう。この指揮通信車に二十五ミリの機関砲を搭載したのがこの偵察警戒車と聞いておりますが、そうですか。
  278. 鎌田吉郎

    政府委員(鎌田吉郎君) 基礎になります車両自体につきましては、先生御指摘のとおり指揮通信車の車両を使っているということでございます。
  279. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 機関砲、二十五ミリの機関砲を載せただけでしょう。
  280. 鎌田吉郎

    政府委員(鎌田吉郎君) はい、その価格の差ということでございますが……
  281. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 二十五ミリの機関砲を載せただけかと聞いている。
  282. 鎌田吉郎

    政府委員(鎌田吉郎君) はい、機関砲を載せて射撃管制装置、最近の技術開発の成果を取り入れまして、非常に精巧な射撃管制装置を取りつけたものでございます。
  283. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 だから、これね、長官、僕はきょうは原価計算をどういうふうにしてやっているか聞きたかったんですけれども、今おっしゃった八二式指揮通信車、ここにこの二十五ミリの機関砲を搭載したのが偵察警戒車になっている。この今の八二式指揮通信車というのは八千万、それに二十五ミリの機関砲を載せただけで二億三千二百万になる。しかも先ほどの、前の自走高射機関砲というのは十六億五千八百万、これアメリカでもこんな高いもの高過ぎて手が出ない、そんなものにことしの予算でも四面買うとなっている。こういうようなもの、これいろんな資料から読みますと、いずれにしてももう高過ぎて、西ドイツにしてもアメリカにしても手が出ないようなものをどんどん購入しようとしている。これは私は本当に納得できない。  それからこれは外務大臣、時間ありませんから、最後に一つだけお伺いしておきたいんですが、あの例の特別協定、これ思いやり予算でありますが、これも非常に大変なことになりつつある。地位協定からいきましても、昭和五十三年、きょう金丸さんはいらっしゃいませんが、あの人が始めてからこれ現在約十年近くなるわけですけれども、要するに五十三年当時は歳出ベースで幾らだったのか、それが現在幾らになっているのか、そして今回の特別協定で駐留軍労務者のいわゆる雇用という問題は完全に確保できるのかどうか、そういうことも含めて御答弁いただきたいと思います。
  284. 宍倉宗夫

    政府委員(宍倉宗夫君) お答え申し上げます。  労務費の関係でいわゆる思いやり予算が始まりました五十三年度は六十二億円。五十四年度は百四十億円でございます。今度の六十二年度予算は百六十五億円の特別協定分を加えまして三百六十一億円でございます。  それから二番目に、この百六十五億円の特別協定ができますれば雇用の安定はできるのかと、こういうことでございましたが、百六十五億円を私どもの方で分担するということで雇用の安定がしないときよりは安定が保たれることは事実でございますが、しかしながら、アメリカの方での分担が百六十五億円ですべて解決するほど、分担の厳しさがそれで済むほどの程度ではないわけでございます。それで、特て年末にこの特別協定を決めましたときから今日までさらに円が高くなっているということもございまして、米軍側といたしましては財政運営に非常に困っているという事実は間違いなくあることではございます。しかしながら、私どもといたしましては今回の特別協定をお願いしておりますわけでございますからして、米側に対しましては駐留軍従業員の雇用の安定に最大の努力をしてくれるよう機会あるごとに申し入れを行っておりますし、米側におきましてもそのことにつきましては十分な配慮をするというように言っておるところでございます。
  285. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それでは、もう時間がございませんから最後の質問にいたしますが、今の思いやり予算、今のは労務費の問題でありますから、いわゆる施設整備費と合わせますと、初め六十二億がトータルで千九十六億というように非常にふえていますね。そういう点からいきますと私は、総理、この米軍の住宅やああいうふうないろんなものを提供しますね、提供施設。こういうようなものが今日本の自衛隊員が住んでいる施設と比べて余りにも格差があり過ぎると、これは思いやり予算が行き過ぎてしまいますと逆効果があるわけですよ。そういうような意味で私はもうちょっとちゃんと配慮すべきであるというのが第一点。  それからもう一つは、先ほどからずっと議論をしてまいりましたように、やっぱり防衛予算というのは非常にこれは重要な問題があります。ですから、私は際限なくふえていくものだと思いますし、また大綱の水準の達成といいましても非常に難しい問題がある。そういうふうな意味では、ぜひこのGNP一%枠を守るという精神だけじゃなしに、実体的にもやっぱり守るという方向が国民が安心していわゆる防衛を任せられるもとになるんじゃないかなと、こう考えております。この点を含めて御答弁いただきたいと思います。
  286. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) やはり節度のある防衛力の整備を心がけまして、先般官房長官の談話を出しましたが、五十一年の閣議決定の精神を守って努力していきたいと考えております。  思いやり予算関係につきましては、米軍の最近の円高の情勢から見ての苦情を見、また雇用の安定というものを考えまして、特に協定の改正を行い御審議を願っておるわけでございますが、おっしゃるまでもなく大事な国民のお金を使うことでございますから、慎重にやっていきたいと思っております。
  287. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 どうもありがとうございました。
  288. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 以上で峯山昭範君の質疑は終了いたしました。(拍手)     —————————————
  289. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 次に、矢田部理君の質疑を行います。矢田部君。
  290. 矢田部理

    矢田部理君 私は、外交、防衛問題に関して締めくくりをします。  きょうはどちらかというと防衛問題の集中審議のような観を呈しますが、まず外交問題でありますが、軍縮についてであります。  総理にまず伺いたいと思うのでありますが、レイキャビクの米ソ首脳会談の後、その前からも核実験の一方的停止などあったわけでありますが、ゴルバチョフ提案は従来になく踏み込んだ提案として注目されております。西側の方にはいまだ足並みの乱れもあるようでありますが、政府としてはこのソビエト側の提案をどのように受けとめ、どう対処しようとしておるのか、まず伺いたいと思います。
  291. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) レイキャビクにおきましては、かなり放胆な提案がなされて西側もちょっと驚いたようでありますが、レーガン大統領もそれに対応いたしましてそれに対する西側の考え方を述べて、平和に向かってさらに前進すべく努力したところです。SDIの問題でこれが暗礁に乗っかってしまいまして妥結には至りませんでしたけれども、いわゆるINF以下の重要な幾つかの点について潜在的合意というところまで至りまして、今それらの問題について具体的交渉がジュネーブを中心に進められ、あるいはシュルツ長官のモスコー訪問等によりまして一々前進しつつあるようであります。最近のいろんな情報を見ますというと、INFについてはSDIと切り離してこれを進めていいという方向に馴致されつつあるやに聞いております。  そこで一つのポイントは、全世界的にゼロにするか、あるいはソ連が言っておるようにアジア部に百残すかという問題がございます。これらについては我々は重大な関心を持って、全世界ゼロということを行うべきである。西欧の陣営の各国も、アジアに百置くといってもアジアのどこに置くんだろうか、あれは移動性を持っているわけですからいつでも西の方にもすっ飛んでこれる、それからいろんな訓練とかいろんな修理施設とか、そういうものは西の方に置きっ放しにされているらしい、そうなるというとまた西の方にそれはそのたびごとに移動する危険性もあるではないか等々の問題がありまして、これらの問題がどういうふうに展開するか。  私は、この間レーガン大統領に会いましたときに、このINFは切り離してこれが合意に達すればそれは非常に結構である、一歩前進である、ただし全世界的にゼロにすべきである、もし万一どうしてもやむを得ずアジアに百置かなければならぬという事態になった場合には、それはあくまで暫定合意として、そしてある時期を経た後にはこれをゼロにする。そういう方向の話し合いを必ずやってもらいたい、アジアの犠牲において話が行われるということは我々は黙視できない、そういうことも重ねて言ってまいったところでございます。  それからその次はSRINFの問題がございますが、これに対するNATO側の反応はいろいろありまして、例えば西独の場合は連立内閣でありますから、連立内閣の調整がどう進むか。しかし、大体一般的に申すと、SRINFもゼロにじょう、全世界ゼロにしよう、そういう方向に緩やかではあるが世論が動きつつあるのではないかと考えております。じゃ五百キロ以下のものをどうするかという問題でありますが、これは通常兵力の問題との絡みで恐らくこれをどういうふうにするかというネゴシエーションが進められるのではないかと思っております。  それから検証の問題が出ておりますが、検証の問題は割合にソ連が前進してきている気配がありまして、検証の問題についてもこれは妥結されることを強く期待しております。これはやや有望になってきたやに聞いております。  あとは核実験の停止とかその他の問題がございますが、これらについてはまだ必ずしもどの程度、どこまで進んでいるかはっきりしない点があるのであります。
  292. 矢田部理

    矢田部理君 総理からLRINFのグローバルゼロという議論が出され、かつまたLRだけでなしにSRについても、さらには短距離の戦術核をも削減、廃止の方向に進めるべきだという考え方が示されたわけでありますが、私もそうだと思うのであります。  ただ、その点で総理に申し上げたいのは、日本自身がグローバルゼロを主張する以上、単にこのINFだけではなく、戦略核や特に短距離戦術核ミサイル等についてもこれまたグローバルゼロを主張する必要がある。そして同時に、総理も触れられましたが、検証の問題を総理も言っておられます。ソ連に対して検証で削減なり廃絶のあかしを求めるとするならば、我が方もソ連に対してそのあかしを示さなきゃならぬ、こういうふうに思うわけであります。つまり、ソ連に対しても日本に核がないことを納得させる措置をとってしかるべきだというふうに実は考えているわけであります。特に日本については、核艦船の寄港、これがあるのではないか、さらには沖縄や三沢などに核が持ち込まれているのではないかというような内外からの疑惑があるわけでありますから、これらについて核なしの証明をする必要がある。  在日米軍等に対して検証をどのように受け入れさせていくのかというような努力が総理としてもなされた上で、グローバルゼロなりあるいはその検証の問題を提起することがより力もあり説得力もあることになるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  293. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これは、まず第一は米ソ首脳会談の話であって、日ソ間の話の問題ではない。しかし、米ソ首脳会談の話であっても全世界的な大事な案件でありますから、我々は重大な関心を持って見守り、またアメリカ側に対して我々の意見も言うべきことは言っておる。そういうことで、日本が当事者として直接ソ連とどうするかという問題ではない、この点はもうはっきり申し上げでおきます。  このことは英国やフランスにおきましても、これは米ソの問題であって英国やフランスの核の問題とは関係ない、そう言っておる。いわんや日本は非核三原則を堅持しておりまして、核兵器はないのであります。そういうことははっきりさせておるわけでありますから、念のために申し上げる次第です。
  294. 矢田部理

    矢田部理君 米ソの核軍縮交渉ということは私も十分踏まえておりますが、総理自身が、単にINFだけではなしにさらに短距離のものあるいは戦術的なものも含めてグローバルゼロを目指すということになるとするならばという前提に立つわけでありますが、ソビエトにも核がないという証明をしてください、その検証をはっきりさせよう、こういうことのためには、日本に対しても核疑惑があるわけでありますから、その検証を受けさせるような対応を積極的にとること、これがあって初めて世界に向かって核軍縮を本格的に叫ぶことができるのではないか。日本関係ない、米ソの問題だということで、人様のことにだけ物を言うのでは力がないということを私は申し上げておきたいと思います。  それから二番目にはSDIについて質問したいと思うのでありますが、アメリカの政府は従来、SDIについてABM条約を厳格に解釈する立場をとってきました。その立場に立ちますが、しかしそのもとでも研究ないしは室内で実験することまでは可能だ、こういう見解をとってきたのであります。この後段については私は問題なしとはいたしませんが、このたびレーガン政権は、そういう厳格な解釈ではなしに、ABM条約の拡大解釈ということに踏み切りました。宇宙における実験まで可能という道を開こうといたしております。アメリカ議会筋にもこれに対しては厳しい批判があるわけでありますが、このようなアメリカ政府の態度変更についてどう考え日本政府はどういう見解をお持ちなのか、お示しをいただきたいと思います。
  295. 倉成正

    国務大臣(倉成正君) お答えいたします。  ABM条約は御案内のとおり米ソ両国間の条約でございますから、当事者でない日本がこのABM条約の解釈についてコメントするのはいかがかと思います。  しかし一般論として言えば、今アメリカがABM条約の解釈についての調査報告書を議会に提出しておるわけでございまして、SDI計画とABM条約の関係につき詳細な情報を入手すべく行われている一連の作業の途中の経過でございます。これらの報告の議会に対する提出は、より多くの情報を議会と共有するというアメリカの議会行政府との関係がございますから、米政府考えに基づくものでございまして、このこととSDI研究計画の推進がどのようにかかわっていくか、一連の作業がまだ終わっていない段階でございますから、現時点で判断するのは困難ではないかと考えておる次第でございます。
  296. 矢田部理

    矢田部理君 レーガン自身が報告書を議会に出しているわけですね。従来の狭義の解釈から、厳格な解釈から拡大解釈の方向を出したことはもう明々白々じゃありませんか。これまた基本的には米ソ間のことではありますが、しかし日本もSDI研究に参加するという方向性を出したわけでありますから無縁ではないのでありまして、少なくとも従来の厳格解釈の方向で考えておられたのに、全く違った方向でレーガンは仕切ろうとしておるわけでありますから、これについてのコメントはしてしかるべきだと思いますが、いかがでしょうか。
  297. 倉成正

    国務大臣(倉成正君) 今、国務省の報告は条約本文及び交渉記録、それから批准手続記録を出しておるわけでございますが、まだ米ソの条約運用に関する慣行についての報告は出していないことは御承知のとおりでございます。したがいまして、米政府として、すべての調査報告書が完成し、大統領が報告書の詳細な検討を下した上で議会及び同盟国と協議する以前にSDI計画について云々するという立場ではないと思うわけでございます。  ABM条約についての最終的な解釈は決め得ないと思います。
  298. 矢田部理

    矢田部理君 どうも大変あやふやで、答えにくいのだろうと思いますが、もう一つ問題が出てきております。  日本政府はこれまでSDIについて、研究と開発配備とは別だと分けて考えていた。そして、前者には参加をするが開発配備は別問題だと、こういう態度をとってこられたのは、そのとおりですね。ところがアメリカの国防総省は、九〇年代の初めには開発配備の可能性が出てきているということを言ってきているわけであります。そういう方向になった以上、開発配備にかかわらないということはもとよりでありますが、そこまで具体的に状況が進んできているわけでありますから、研究への参加ももうこの段階で取りやめるべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  299. 倉成正

    国務大臣(倉成正君) 御案内のとおり、日本が参加決定したのは研究に参加していくということでございますから、当然それより先に進む場合にはまた新たな問題が起こってくると思うわけでございまして、研究に参加することを現在やめる必要はないと思います。
  300. 矢田部理

    矢田部理君 SDIの問題はこれは本格的にいずれ場を変えてやらなきゃならぬと思うのでありますが、従来はこの研究そのもの、それから屋内実験室内における実験、ここまではまあまあ仕方がないかなと、ソビエト筋も事実上認めるかのような対応をしてきたのでありますが、それが今度は解釈上、宇宙における実験というふうに発展をする。これは明白にABM条約違反だということになるわけです。のみならず研究段階から、九〇年代の初頭には配備という方向づけがなされてきた。純粋な研究室内における研究というようなところからはるかに状況は進んできておるということになりますれば、従来政府のとってきた態度は改めてしかるべきだ、下がってしかるべきだと思うのは当然じゃございませんか。総理の方から答弁をいただきたいと思います。
  301. 倉成正

    国務大臣(倉成正君) ただいま申し上げましたとおりに、研究に参加するわけでございまして、配備というようなことになれば、当然同盟国と協議するということを明らかにしておるわけでございますから、この点について別に矛盾はないと思います。
  302. 矢田部理

    矢田部理君 状況の進み方についての認識を意図的に外して答えるやり方には我慢ができませんが、もう一点外交課題について、ODAについてであります。    〔委員長退席、理事原文兵衛君着席〕 先般総理はアメリカに行かれた。そのとき、開発途上国への二百億ドル、まあ三百億ドルという数字もありますが、資金還流計画、さらにはODA倍増計画の前倒しの発表をされたのでありますが、その具体的な内容はいまだ不明であり、期待だけが先行したのでは問題を残し過ぎはしないのかというふうに思います。特に、私から言わしむれば資金計画も十分な手当てがないまま先日付の小切手を、開発途上国へではなく別方向のアメリカ筋に出す。いかがなものかとすら思うのでありますが、この辺どうなっているんでしょうか。
  303. 倉成正

    国務大臣(倉成正君) ただいまの点は、決してアメリカにだけということではなくて、OECDの閣僚理事会においても、自民党が出しました総合経済対策要綱、もちろん予算審議中でございますから今回の予算の成立後のことでございますけれども、この自民党の総合経済対策を尊重していくと。その中の一環として、総理から、党の政策を踏まえて今後日本政府は三年間で新たに二百億ドル以上の完全にアンタイドの官民資金を、国際開発金融機関を通じまたは二国間で、債務問題で苦しむ諸国を中心とする開発途上国に還流し、さきに世銀に創設された日本の特別ファンド、スペシャルファンド等の、これは約百億ドル、正確には九十五億ドルでありますが、資金と合わせて合計三百億ドル以上還流する方針である旨を表明されたわけでございます。実施に当たっては、二国間の要請、それからまた国際開発金融機関との話し合いを通じて先方のニーズにこたえる必要がございます。  三年間にわたり順次行っていくわけでございますが、あらかじめ具体的金額を特定できませんけれども、おおむね目途としては、世銀の特別ファンド方式等による国際開発金融機関を通じた官民の協力、これが約八十億ドル程度、それから輸銀のアンタイドの直接融資三十億ドル程度、海外経済協力基金、輸銀、民間銀行、世銀等との協調融資の拡大、及び途上国の各般の経済政策支援のための海外経済協力基金の借款の計として九十億ドル以上として、これらの手段により二百億ドル以上の還流を実施していきたい考えでございます。
  304. 矢田部理

    矢田部理君 なるほどアンタイドローンを拡大することは一歩前進だと思いますが、どうもアメリカ筋からも物が買えるということで貿易摩擦の緩和策としての意味を込め過ぎている。実際、開発途上国の立場に必ずしも立ち切れていないのではないか。国際的に見ますれば、もうアンタイドローンの問題ではない。全体の無償をどれだけふやすか。アンタイドであっても借金は借金として残るわけであります。依然としてこの累積債務の解消にはほとんど役立たない。ヨーロッパ諸国の無償援助、まあ贈与と言っていいと思いますがね、これはどんなふうになっているか、外務省、説明してください。
  305. 英正道

    政府委員(英正道君) 極めて一般的な御質問でございますので、お答えになるか存じませんけれども、ヨーロッパの国の考え方は、援助というのは贈与が主体である、こういう考え方に立つ国が多うございます。  それから、むしろOECDの先般の議論のように、公的な裏づけのあるいわゆる借款なり輸出信用というもので貿易がゆがむということがないようにするべきだ、このような考え方が基調にあるかと存じます。
  306. 矢田部理

    矢田部理君 私から指摘するまでもありませんが、先進諸国、ヨーロッパなどでは贈与、無償援助というのがもう基本なんですね。改めて指摘するまでもありませんが、例えばスウェーデンはそれも一〇〇%です。イギリスにして九八・五%。全部無償援助、贈与になっているわけです。ところが日本の現状はどうでしょうか。これは八三年の統計でありますが、何と四六%。全部お金を貸している。これでは開発途上国から喜ばれないし、本当の意味での協力にはなっていない。  無償援助を今度の還流計画なり前倒してどの程度考えておられるのか、説明をいただきたいと思います。
  307. 英正道

    政府委員(英正道君) 今度の還流計画というものの基本的な性格でございますけれども、一方で日本が大幅な黒字を経常収支で出している、それがやはり先進国、特にアメリカに資金が流れているというような状況は適当でない、バランスを回復するためにやはり途上国の方にそういうものを還流しなければならないということが基本的な発想であって、それが日本の輸出振興につながらないようにアンタイドでなければいけないというところが大きな特徴になっている、このように了解しているわけでございますが、その中で、やはり途上国といっても借金のできない国もございます、御指摘のように。ですからそういうところにはやはり無償資金協力を出していくということになりますが、私どもとしては、ODAとこの還流計画というものは完全に全部重なっているわけではなくて、還流計画の一部分がODAによって行われる。それによって非ODA、いわゆるOOFといいますが、公的な流れ、例えば輸銀の資金でありますとか東京市場における起債であるとか、そういう割合金利の高い条件でも流れる国にも還流するし、また、先ほど外務大臣から答弁申し上げましたように、海外経済協力基金の円借款、これは金利が非常に低うございますが、そういうもので還流するものもふやしていきたい。また、無償資金によるものも、アフリカ諸国を中心とする後発開発途上国のために贈与の拡大をするということも考えていかなければいけない。  要は、いろいろな形態の資金の流れによって途上国の、途上国もいろいろなレベルがございますけれども、必要とする途上国に適当な形態の資金が流れるように努力していきたい、このように考えております。
  308. 矢田部理

    矢田部理君 無償援助を拡大していく計画、プランみたいなものがあるんでしょうか。あるのなら具体的に数字で示していただきたい。
  309. 倉成正

    国務大臣(倉成正君) 基本的にはアフリカとか、非常に債務に苦しんでおる小さな国々について無償援助をやりたいという気持ちはいっぱいでございます。したがってこれをできるだけふやしていこうという方針でございますけれども、これを一体どれくらいにするかということは、これから隣に並んでおられる大蔵大臣と御相談しながらやっていくことでございます。  同時に、御案内のとおりODA、すなわちグラントエレメントによってODAの定義が一応決められているわけでございますけれども、できるだけソフトローン、譲許性の高いものにしたいといういわゆるソフトローン、金利が安い、償還期間の長い、そしてそういうものを多くしたいというのが我々の基本的な考え方でございます。  今、詳細な計画はまだ最終的に詰まっておりません。
  310. 矢田部理

    矢田部理君 これはもう終わりたいと思うのでありますが、宮澤大蔵大臣、また総理にも伺いたいと思うのでありますが、ニュージーランド、オーストラリア、スウェーデンなどは一〇〇%無償援助なんですね。DAC諸国はもう八割以上が無償援助になっております。我が国だけまだ五割に満たない。これで国際国家日本などと言えるんでしょうか。また、外務大臣の話によれば無償にするプランもない、いつどういうふうにレベルアップしていくか。そういうことでは少しくお粗末に過ぎるんで、その辺、どう考えるのか、お答えをいただきたいと思います。
  311. 倉成正

    国務大臣(倉成正君) ちょっと申し落としましたけれども、ODAの計画は、二年繰り上げてODAの先食いをするということを今度新たに決めたわけでございます。  それから無償援助の額を幾らにするかということは、御案内のとおり、相手国のニーズと合わせてそれぞれ考えていかなきゃいけないわけでありますから、つかみで幾らというわけにはいかないということで、今いろいろと詰めておるところでございます。
  312. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 今のそのODAを二年繰り上げるというのは大変大事な点でございまして、これを忘れていただいては実は困るわけでございます。その上で今度は、日本考えてみますと四十年前には援助をもらっておった国でございますから、一生懸命ここまで参りました、それでアンタイドも一つの万法でございますし、だんだん無償分を大きくしていくというのがやっぱりこれからの方向でございます。
  313. 矢田部理

    矢田部理君 少しく寂しい話でありますが、次のテーマに入ります。  防衛改革委員会というのが今防衛庁に次官をキャップとしてつくられているんですが、これはどんな経過でできたんでしょうか。
  314. 友藤一隆

    政府委員友藤一隆君) お答えいたします。  防衛庁におきましては、現在防衛改革委員会を設けまして、防衛力の整備、運用の効率化、合理化を図るための検討を行っておりますが、これは御案内のとおり、昭和六十年九月に閣議決定を見ました中期防衛力整備計画におきまして「防衛力の整備、運用の両面にわたる効率化、合理化の徹底を図る。」、こういうこととなっておりますこと等から、自衛隊の業務運営全般あるいは作戦機能面についてみずからの手で点検をし、効率化、合理化を図るということを目的に設置をいたしておるものでございます。  当初は六十年十月に、中期防衛力整備計画ができました翌月でございますが、業務・運営自主監査委員会、こういう形で主として業務運営面の点検に取り組んだわけでございます。さらに、それを六十一年、昨年でございますが五月に、これを作戦運用面あるいは機能面にまで広げまして、我が国の防衛環境、統合運用の重要性等も十分考慮いたしまして、防衛計画大綱の総枠の中で、自由な発想に立って創意工夫を凝らし、我が国の防衛体制全般にわたって検討をいたしていくために防衛改革委員会という形にしておるものでございます。  現在の状況でございますが、当初の業務・運営自主監査委員会の業務を現在引き継いでおります業務監査小委員会というものが一つ、それから作戦運用面、機能面の研究を行います研究会といたしまして、洋上防空体制研究会、それから陸上防衛態勢研究会がございますほか、自衛官人材育成・確保研究会を現在設置いたしております。  これらの検討状況でございますが、まず業務……
  315. 矢田部理

    矢田部理君 そこまででいい。  どうも防衛庁は、中曽根内閣の行革路線、行革ということを基本にした政治政策があったにもかかわらず、ずっと聖域化されてきた。その行革の中でも自衛隊員をふやす、軍事費を増額するということでずっとやられてきたわけでありますが、六十年の十月にみずから行革をやると称して防衛庁の中に業務・運営自主監査委員会なるものをつくったわけであります。これはどんな作業をして、どんな結果を生んだのでしょうか。
  316. 友藤一隆

    政府委員友藤一隆君) お答えいたします。  現在、業務監査小委員会においてやっております事項でございますが、六十一年一月に検討項目三十二項目を拾い出しまして、大きく分けますと、統合の強化・業務の一元化に関する部分、それから民間能力の活用、それに組織・定員の見直し、調達・補給業務の見直し、それから研究開発業務の見直し、施設業務の見直し、その他の検討項目、合計いたしまして三十二項目を取り上げたわけでございますが、その後六十一年四月に中間報告を行っておりまして、改善検討状況について報告を行っております。  この三十二項目のうち十九項目につきましては、検討目標スケジュールを一応定めまして、六十一年度あるいは六十二年度から実施できるものは逐次取り組んでいくということにいたしておりまして、残りの十三項目、これはいろいろ難しい問題が若干ございますもので、六十二年四月以降に検討目標スケジュールを決めていこう、こういうことで現在取り組んでおります。  それで、実施に大体近づいております部分といたしまして七項目ばかりを公表いたしておりまして、その主なものを挙げることにいたしましょうか。
  317. 矢田部理

    矢田部理君 簡単に。
  318. 友藤一隆

    政府委員友藤一隆君) その主なものは、統合訓練の統幕の調整・関与の強化、それから各自衛隊間の作戦通信の円滑化の推進、それに有事の部隊運用における統合のより一層の充実、それに共同使用駐屯地における同種業務の一元的処理、婦人自衛官の活用、地区病院の任務・運営等の見直し、データバンクシステムの採用、こういったものについて一応の結論を得て、その他のものについても現在結論を得るべく作業を進めておるところでございます。
  319. 矢田部理

    矢田部理君 長々と説明があったわけでありますが、中身は実際はほとんどなかった。そして行革をやるとしてつくった業務監査委員会は、六十一年の五月には、先ほどお話があったように、防衛改革委員会に格上げをしている。行革の方は小さい小委員会に落とし込んでしまっている。何をやったかというと、洋上防空体制研究会、これをメーンにした買い物計画づくり。マスコミなどに言わせれば、これは軍拡委員会に格上げになったと言われておるのでありますが、そういうことになったのではありませんか。今そこでできた洋上防空体制研究会——陸上防護勢研究会というのもありますが、この洋上防空体制研究会というのはどんな仕事をしているんでしょうか。
  320. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 研究会がやっておりますのは、先生おっしゃられたように軍拡の研究じゃございませんで、先ほど官房長が申し上げたように、現在の組織運営について合理化できるところはないかということをやる一方、前々から申し上げているように、現在の軍事技術からいって、洋上防空、例えば長距離の空対艦あるいは空対地ミサイルなどが出現したことというのは非常に防衛体制に大きな影響を与えるわけであります。そういった問題について、そういった技術の進歩等に対応するために新しい機能、新しい部隊をつくって対応していくということですととめどなく防衛力というのはふえていく可能性がありますから、やはり現在の兵器体系といいますか、装備体系なり部隊、そういったものでどう対応できるか、それをどう更新近代化する際に変革していけば対応できるかというようなことを研究しませんと、片方で幾ら効率化を図っても防衛力の増大というものは避けられないということで、並行的に研究しているものであります。  洋上防空研究につきましては、前々から申し上げておりますが、簡単に申しますと、現在長距離の非常にスピードのある爆撃機がかなり多数出現しつつある。そこで、今まで洋上で余り航空機の脅威というものを感じなくて済んだ地域においてもその種防衛機能が必要になってくるということが第一点。もう一つは、今申し上げた相当な射程を持っているミサイルというものの出現によって、本土防空につきましても、従来は国土上の敵機に何とか対応すれば防空ができたものが、五十キロ、百キロ離れたところからミサイルで攻撃してくる。そういったものに対してどう対応して国土防空を全うするか。あるいは艦船の護衛等につきましても、従来の艦船が積んでおります対空兵器では対応できないような離れたところからミサイル攻撃をしてくる場合にどう対応するかといったようなときに、どの種の装備なりを備えればそういったことが可能になるかという研究を合しているところでありまして、各種の装備の組み合わせなりあるいは運用の仕方を変えるということで、いかにして最も効率的なその種洋上における防空が可能になるかということを追求しているわけでございます。
  321. 矢田部理

    矢田部理君 洋上防空体制研究会、実際は中期防で検討課題になっている各種兵器の買い物計画づくり、こういうことをやっているのじゃありませんか。この点はまた後ほど触れます。  それからもう一つは、大綱の枠組みの中でやっていると言いながら、実際は大綱の見直しあるいはどんな拡大解釈ができるかという研究をやっているんじゃありませんか。あわせて伺いたいと思いますのは、中期防で大綱の水準を達成すると。その中期防の終期は六十五年でありますが、六十六年以降大綱はどういうふうに位置づけをされるのか、その辺の検討もやっているのではないかと思われるのですが、その辺も含めてお答えをいただきたいと思います。
  322. 栗原祐幸

    国務大臣(栗原祐幸君) 六十六年以降の問題につきましては、これは官房長官からも話がございましたとおり、そのときの政府の手を練るわけにはまいらない。したがってその前においてそのときの軍事情勢、諸外国の動向あるいは財政経済等、そういうもろもろの要素を勘案した上で決定をするということでございます。しかし、これまた官房長官からも話がされましたように、私どもは現在の中期防衛力整備計画、こういったものが引き続き行われるのではないか、また行われるべきであると私は考えております。
  323. 矢田部理

    矢田部理君 一応この中期防で大綱の水準は達成するわけでしょう、後年度負担その他は残りますが。そうすると、その後の防衛政策はどこに基本を置いてやるのかということはそろそろ考えなきゃならぬわけでしょう。その基本の土台ができないまま、先ほど後藤田官房長官は、その後も恐らく総枠規制方式ですか、というようなことになるであろうという見通しなどを語られているわけでありますが、その土台はどういうふうにするのか。大綱を維持していくという方向なのかどうかということは防衛庁長官としていかがですか。
  324. 栗原祐幸

    国務大臣(栗原祐幸君) だから、私は申し上げたんです、そのときの政府の手を練るわけにはまいらないと。しかし、防衛庁長官であります現在の私は、これは大綱の水準を維持する、そういうところでいくべきだと考えております。
  325. 矢田部理

    矢田部理君 将来の手を縛るとか練らないとかじゃなくて、防衛政策というのは一貫性がなきゃならぬ、継続性がなきゃならぬわけでありますから、四年間だけは自分でやるがその後は縛れないということではおかしいのであります。この点でも大変大きな疑問と不安を持つことにならざるを得ないという点を指摘しておきたいと思います。  それから会計検査院に伺いますが、会計検査院は防衛庁も検査の対象にしているわけでありますが、最近不当事項その他で指摘をしたことがございますか。それから、どんな調査をされているか概況を述べていただきたいと思います。
  326. 辻敬一

    会計検査院長(辻敬一君) 防衛検査の実施に当たりましては、三課体制で相当の人員を配置いたしまして、重点的に検査を実施しているところでございます。その結果、過去十年間に検査報告に十二件掲記しているところでございます。一番新しい六十年度の検査報告におきまして、保有する弾薬の転用により予算を効果的に執行するよう改善させた事案を掲げているところでございます。今後とも防衛関係の検査につきましてはさらに充実を図りますよう努力してまいりたい、かように考えております。
  327. 矢田部理

    矢田部理君 先般、一億以上の弾薬のむだ遣いについて指摘をされたわけでありますが、どうも会計検査院として防衛庁に対する検査は防衛秘の厚い壁に阻まれて、秘密の壁に阻まれて思うようにいかないというようなことをしばしば耳にするのですが、いかがでしょう。
  328. 辻敬一

    会計検査院長(辻敬一君) 防衛上の秘密があるために検査に支障が生じているということはございません。
  329. 矢田部理

    矢田部理君 会計検査院に対しては防衛上の秘密、庁秘みたいなものはあるんでしょうか。
  330. 池田久克

    政府委員(池田久克君) 防衛庁は従来から会計検査院の厳正な検査を受けておりまして、検査院の検査に役立つ説明は十分実施してまいっておりますし、今後とも実施してまいる所存でございます。特に会計検査院に対する秘密というものはございません。
  331. 矢田部理

    矢田部理君 会計検査院に対しては秘密はないということでオープンになっているわけでありますが、そうなってきますと、会計検査院としてもう少し突っ込んだ検査をやっていいのではないでしょうか。後で問題にし、先ほど峯山委員からもお話がありましたが、例えばP3Cという飛行機、NATO諸国の三倍も日本は持っているんです。それは予算で決まったとか、国会で議論されたとかということではなしに、本当に日本の防衛にとってそんなものが必要なのか、多過ぎはしないか、なぜ多いのかというようなことを含めて、会計検査の立場からも、私はシビリアンコントロールの一つの機関だと思います、その面でいえばもうちょっと突っ込んだ検査をやってもいいのではないかと思いますが、いかがですか。
  332. 辻敬一

    会計検査院長(辻敬一君) 会計検査は、御承知のように、予算の執行につきまして検査を行うことを任務としておるわけでございます。したがいまして、装備品の運用状況でございますとかあるいは管理状況等につきましては当然検査をいたしているところでございまして、先ほど申し上げましたように、その結果弾薬の転用の問題等について報告に掲記しているところでございます。
  333. 矢田部理

    矢田部理君 予算の執行も確かにその一つでありますが、そういう予算をつけた支出についての当不当についてもやることが任務づけられておるのでありまして、もう少し立ち入った検査体制が望まれるのでありまして、その点はやっぱり留意していただきたいと思いますが、いかがですか。
  334. 辻敬一

    会計検査院長(辻敬一君) 一般論として申し上げますならば、執行の問題を離れまして装備品の量それ自体を取り上げますことは、検査の性格から見まして必ずしもなじむものではないと考えておりますが、執行に問題がございますならば、それとの関連におきまして装備品の量等について取り上げることはこれはあり得るものと考えております。いずれにいたしましても、具体的な問題が生じました際には、その状況に対応いたしまして適切な判断をしてまいりたい、かように考えておるところでございます。
  335. 矢田部理

    矢田部理君 会計検査院、結構です。  シーレーン防衛について午前中、野田委員からの指摘もございましたが、昨年末日米共同研究がまとまりました。その内容については幾つか新聞報道などもあり、野田委員からの指摘もあるわけでありますが、研究の結果、対潜能力の向上あるいは洋上防空能力、通峡阻止能力の向上などが指摘をされ強調をされたのではありませんか。その点いかがでしょうか。
  336. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) シーレーン防衛研究の目的そのものが、現に装備しておる防衛力、あるいはその研究を始めた当時もう既に予算が成立しておりましてこれが就役するであろうという時点を想定しまして、その我が方の持ち得る防衛力、それとアメリカから支援が得られるであろう防衛力というもの、軍事力というものを前提にした研究でございますので、これは主としてオペレーションに関連する研究でございますから、これをもってその結果防衛力をどうするかとか、そういった防衛力整備に直結した研究ではございませんので、その種の、確かにこういったものがあればもっとよかろうということの感想はあるかもしれませんけれども、研究自体の目的はそういうものではないことを御理解いただきたいと思います。
  337. 矢田部理

    矢田部理君 従来、ガイドラインができた、日米共同作戦の研究が始まる、その一翼としてシーレーン防衛の研究が行われた。その研究の結果としていろんな日本の共同作戦における弱点なり、防衛力における問題点なりが指摘をされ、その結果、洋上防空能力などもこの筋からも問題に供されてきたのではありませんか。
  338. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 具体的なシミュレーションをやりますと、それぞれ結果が出てまいります。例えば我が方が被害を受ける、その被害を受けた相手方が潜水艦がどのくらいであるかあるいは航空機による被害がどうであるかというようなことがわかってまいります。そうしますと、従来から申し上げておりますように、これはもう我々の常識として洋上防空というのは大変だということは申し上げておりますけれども、シミュレーションの結果でも、そういった洋上における航空機からの、しかもミサイル等を使ったスタンドオフ攻撃については我々何ら対抗手段を現在持っておらないわけですから、おりの中にいる動物を射撃するみたいな形で我が方の被害だけが出て、相手方に対しては全く反撃の余地がないということで、その種被害がいつまでたっても減らないで累積していくというようなことは当初から予想されたことですが、シミュレーションの結果としても出てまいります。しかしそれは、そういうことがシミュレーションの結果として出できたということで、そういったことを導き出すための目的の研究ではないということは先ほど申し上げたとおりでございます。
  339. 矢田部理

    矢田部理君 それから、これも午前中問題になったのでありますが、アメリカで言うSLOCとシーレーンというのは同義語であるという合意はなされたんでしょうか。
  340. 瀬木博基

    政府委員(瀬木博基君) アメリカでは二つを同様に使っているということを確認してございます。
  341. 矢田部理

    矢田部理君 ここにアメリカの統合参謀本部で作成をした軍事関連用語辞典というのがありますが、アメリカではラインズ・オブ・コミュニケーション、これは兵たん線というふうに見るわけですね。軍事面だけに限定した用語になっているわけでありまして、その点日本の生活補給路あるいは油ないしは食糧の輸送路という意味合いは持たされていないように思うのですが、いかがですか。
  342. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 私、先ほど瀬木参事官が御答弁申し上げたとおり、シーレーンの防衛といい、SLOCの防衛といい、その言葉によって使い方が違っているというようには考えておりません。これは米側もそのように申しております。  ただ、同義語であっても、アメリカがシーレーン防衛といった場合何を主体に考えるか、あるいはソ連がそういった場合に何を考えるか、イギリスが考えればどう考えるか、それぞれのお国柄によって非常に変わってくると思います。例えば日本のように非常に資源が少なくて他国からの資源を多く運んでくる国柄では、シーレーンの防衛といえば国民生活の生存のための輸入、そういったものが非常にクローズアップされてまいります。もちろん我が方もシーレーン防衛といいながら継戦能力の維持ということも考えておりますけれども、比重からいえば国民生活の維持を図るための海上交通の保護というものが重点になってまいります。イギリスなんかも同じだろうと思います。  一方、ソ連なりアメリカのように、資源大国であってその種のものがそれほど多くなくて、それよりも海上作戦輸送といいますか、そういった軍事目的に伴う輸送というものを中心に考えておけばいい国もあると思います。したがいまして、シーレーン防衛だからどうこう、SLOCだからどうこうということよりも、お国柄でやはり重点を置いている点は違うのではないかと私は思っております。  したがって、例えばシーレーン防衛研究をするといったような場合に、ただそれだけでぽっと研究を始めるわけにはまいりませんので、お互いに同床異夢ということが起きますから、その基本的な枠組みというものをはっきりさせて研究をしていくということになろうかと思います。
  343. 矢田部理

    矢田部理君 ですから、共同でシーレーン防衛をやろうというんですから、重点の置き方もお互いの国々で違うんだということでは共同の行動はとれないわけですから、日本の言っている立場をアメリカは言葉としても理解をし、共通語として共同防衛に当たるということの議論はきちっと煮詰まっているんですかと、こう聞いているんです。
  344. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) おっしゃるとおりの問題が起きないように、シーレーン防衛研究に当たりましてはガイドラインの枠組みの中でやるということになりました。ガイドラインの枠組みと申しますのは日本有事、日本に対して直接侵略が行われた際における日米の共同対処行動をいかに円滑にやるかという枠組みがはっきりしておりますので、これは日本有事の際の、つまり日本防衛のためのシーレーン研究ということになろうと思います。
  345. 矢田部理

    矢田部理君 それだけでは説明にならぬでしょう。
  346. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 私は十分説明になっていると思いますが。  アメリカ海軍なら海軍が関心を持っておる自分の作戦輸送、アメリカは全世界に前方配備しておる部隊等がおりますが、それに対する作戦輸送の研究ではなくて、日本の防衛、日本国民の生存の維持、そういったもののためのシーレーン防衛、海上交通の保護の研究であるということで、枠組みは非常にはっきりしておると思います。
  347. 矢田部理

    矢田部理君 そうすると、アメリカはこの言葉の意味を変えたわけですか。アメリカのこのSLOCという言葉の説明には、そういう日本の言う油とか食糧の輸送路を守るという意味合いは含まれていないから聞いているんです。
  348. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 先ほど申し上げたとおり、シーレーン防衛といい、SLOCの防衛といい、いずれもその国その国の国民生活を維持するための資源なりそういったものを輸入するための海上輸送路の確保ということと、それから軍事的な目的のための作戦輸送、そういったものの維持のための問題、二つが常に含まれているということでありまして、そのどちらを重点に置くかはそのお国柄によって違うということでありまして、アメリカのシーレーン防衛だとその種一般の物資の輸入というものが全く度外視されてその種のシーレーン防衛というものはないということではございませんので、その点は誤解のないようにお願いしたいと思います。
  349. 矢田部理

    矢田部理君 さっきの国防報告は、こう書いているわけですね。日本防衛費を非常に伸ばしたという点が第一に挙げられるが、その他の積極的な措置としては千マイルまでのSLOCの防衛を日本は受け入れたというふうに国防報告は言っているわけです。まさにこれはアメリカの兵たん線の防衛を受け入れたというふうにとるのが読み方だから私は言っているのであります。
  350. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) アメリカの日本の防衛力に対する要請なり同盟国としての期待というのは、日本がみずからの防衛のために必要なことをより多く自分でしなさいということでありまして、アメリカが日本の防衛力に対して何かを期待するということでないことは、自衛隊そのものが日本の防衛のため以外に行動できないということからも当然のことでございまして、その点はアメリカは十分理解をしているわけでございます。要は、日本日本のために必要なSLOCの防衛なりその他もろもろの機能が必要であるわけですが、そういったものについて、少なくとも線としては一千マイルぐらいのものを日本が自分自身のためにやることをアメリカが期待しているということはまた当然のことであろうと思うわけです。
  351. 矢田部理

    矢田部理君 私は、アメリカのSLOC論と日本のシーレーン防衛論とはかなり違うと。アメリカは日本の状況について意思統一ができていない、むしろアメリカのSLOCの防衛に重点を置いているというふうに言わざるを得ないのでありまして、その点今の説明では納得できませんが、そこでシーレーン防衛、わけても洋上防空ということを今盛んに言われるわけでありますが、この洋上防空のシステムをどのように検討しているのか。先ほどちょっと触れましたが、その課題を含めて説明してください。
  352. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 洋上防空と申しますのは防空機能の一部というようにお考えいただきたいと思いますが、従来、洋上防空が必要であるとすれば、船舶の護衛をしておる、あるいはみずから行動しておる、そういった船舶が洋上において航空攻撃を受けた場合にどうするかという対応だったと思います。その際、従来の軍事技術ですと、頭上に敵機があらわれて爆弾を落とすというようなことでございますから、当然相手の航空機が自分の至近の距離まで来る。それに対して高射砲なり対空ミサイルでこれを撃墜する機能を持っておれば十分である。しかも洋上にあらわれるような航空機は、それほどスピードのない大型の航空機であれば、その対応は比較的容易であったわけであります。  しかしながら、先ほど申し上げたように非常に射程の長いミサイル、百キロ、二百キロという射程の長いミサイルを航空機が搭載いたしまして、それで艦艇なり陸上を攻撃するという技術がもう既に実用化され、どんどん装備されつつある。そういう状況になりますと、例えば艦艇がみずからを守ろうと思って持っておった従来の自衛火器、高射砲なり対空ミサイルというものの射程では相手の航空機に届かない。相手はその射程の外から攻撃してくるということになります。  そうしますと、それに対してどう対応するか。まず相手が撃ってくるミサイルをどうやって落とすかということもございますし、ミサイルだけを落としても相手はそれほど痛痒を感じませんので、いつまでたっても攻撃が続くということになりますから、その母機をどうやって撃破するかという問題が出てまいります。そのために我々が必要だと考えておりますのは、敵の航空機が仮に出現してこちらに向かっておるということになりますと、そういった状況を早く把握する、探知するということが一番重要だろうと思います。それによって我が方が回避行動をとって相手の矛先から避けるということもできるでありましょうし、あるいはまた、こちら側から戦闘機等を差し向けてそれを要撃するということも可能になりますから、そういった広い地域の監視能力、探知能力を持つということがまず何よりもの前提ではなかろうかと思っております。  これは本土防空についても同様でございまして、従来であれば都市なり施設の上まで来て相手が爆撃をするということであったものが、百キロぐらい離れたところからミサイルで例えばレーダーサイト等を攻撃する。そうしますと我が方は目が見えなくなってしまって、十分な防空行動もできなくなるわけであります。そうしますと、従来のような国土に来てから要撃するということでは間に合わないので、もう五十キロ、百キロ先で相手の航空機をいかにして要撃して、その種攻撃をさせないようにするかということが必要になってくるわけであります。その場合もやはり必要なことは、早期に相手の襲撃というものを探知するということが何よりも重要であろうというように考えております。
  353. 矢田部理

    矢田部理君 今度の中期防の大きな特徴は洋上防空体制を強化するということにあろうと思うし、その洋上防空のシステムを仕上げていくということになろうかと思うのでありますが、そのポイントになりますのが、OTHレーダーであるとかエイジス艦とか、AWACSとか空中給油機ということになろうかと思うのであります。  中期防で検討課題とされていたエイジス艦の導入あるいはOTHの導入等については、来年度の概算要求では踏み込むのでしょうか。その辺、防衛庁長官、どんなふうにお考えですか。
  354. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) まずエイジス艦でございますが、中期防で対空ミサイル艦二隻をつくることになっております。これについて、従来のようなターターシステムを積むかエイジスシステムを積むかということはまさに早急に検討して決めなくてはならない問題ですが、来年度予算にそれを要求するかどうかということについては現在検討中のところでございます。  なお、OTHレーダーにつきましては、これはこの委員会で何度か御説明申し上げたと思いますが、OTHレーダーそのものがまだ実用化されているものではない。そういった点で、もう少しOTHレーダーそのものについて調べなくてはいけない。さらに、それを日本が整備するということになりますと、置く場所なり電波の環境なり、そういったものも調べなくてはいけません。そういったことで、もう少し基礎的な調査というものを引き続きやる必要があるというように考えております。
  355. 矢田部理

    矢田部理君 私どもは、もともとこの一千海里シーレーン防衛あるいはそのための洋上防空というのが大綱の範囲をはるかに超えておるということを指摘したわけでありますが、特にこのエイジス艦などはもってのほかだというように考えています。  問題は、この中期防の中にターター艦にするかエイジス艦にするかという二様の考え方を込めているわけでありますが、ターター艦の値段というのは幾らぐらいでしょうか。
  356. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) ただいま担当の局長がおりませんので、私正確に、間違っていれば後ほど訂正さしていただきますが、ターター艦を購入したのは少し古い時代でありますが、その時点で恐らく七百億から八百億の間ぐらいではなかろうかというように考えております。
  357. 矢田部理

    矢田部理君 エイジス艦はどのぐらいになりますか。
  358. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) エイジス艦について私まだ細部資料を、そういったものを受けておりませんので、今にわかに幾らということは申せませんが、中期防衛力整備計画をつくる時点で、エイジスシステムというものの値段というのがやはり七、八百億ではなかったかというように考えております。
  359. 矢田部理

    矢田部理君 エイジスシステムだけでなくて、船も含めて考えればどのぐらいになりますか。
  360. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 千五百億強になるのではないかと思います。
  361. 矢田部理

    矢田部理君 本来ターター艦程度を考えておった、それは七、八百億程度。それを倍以上のエイジス艦の導入に踏み切ろうとしている。こんな高い買い物をして一体何を守ろうというのですか。
  362. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) ちょっと質問を十分とらえているかどうかわかりませんが、要は、今申し上げたターターシステムにしろエイジスシステムにしろ、船舶を護衛しているその艦艇みずからを守る、船団を守るために必要最小限の、最も消極防御のための装備でございまして、それが役に立たないものではどうにもならない。役に立つものとして一番経費効率のいいものは何かということが我々の選択の対象になろうかと思います。
  363. 矢田部理

    矢田部理君 アメリカは何のためにエイジス艦を配備していますか。
  364. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) エイジスシステムは先ほど申し上げたように艦艇に搭載する対空ミサイルシステムでございますから、当然のことながら、搭載している艦艇及びそれのグループとなっておる船団等を空からの攻撃から守るためのものであろうというように理解しております。
  365. 矢田部理

    矢田部理君 船団全体を守るというほどの力はないでしょう。やっぱりその中心になる空母機動部隊の空母を守るということがポイントじゃありませんか。
  366. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) エイジス艦を空母に随伴させれば、空母が主たる防護対象になると思います。また、そのエイジス艦を輸送船団なら輸送船団の護衛に使うとすれば、輸送船団を守ることがその主たる対象になるということになりますし、また、例えば陸上部隊をどこかに持っていく、増援するというようなときにそれを護衛する船団にエイジス艦が参加すれば、それら輸送船を守ることが主たる目的となるということで、その使用はあくまで自艦及びその船団を守るための防空システムというようにお考えいただきたいと思います。
  367. 矢田部理

    矢田部理君 だれでも笑い話のように出るのでありますが、護衛艦というのは一隻で四、五百億円ですよ。その四、五百億円の護衛艦を守るために一千五百億も二千億もするエイジス艦を買う、一体どういうことになっているんだ、防衛庁というのはと。  長官、答えられますか。
  368. 栗原祐幸

    国務大臣(栗原祐幸君) 防衛局長から話がありましたとおり、経空脅威というやつが随分変わってきていますから、それに対応する措置ですから当然のことだと考えます。
  369. 矢田部理

    矢田部理君 守るべき大きな価値があってそのためにお金をいっぱいかけるというのならわかるんですが、守るべき価値が小さいのに、それ以上にこのエイジス艦にとてつもないお金をかける。結局何なのかということになると、先ほどのSLOCと関係があるのでありますが、アメリカの空母機動部隊を守るために買うのじゃありませんか。そういう役割を担わせられようとしているのではありませんか。
  370. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 我が国の国民の生存のための必要な物資を運ぶということは極めて重要なことであろうと思っております。そのための海上交通の保護、それに対して航空攻撃が行われるについて何ら対抗手段を持たないということでは、船に乗ってくれと言うわけにもまいりませんし、海上交通そのものが途絶してしまいます。それらを守るということは非常に重要なことだろうと思っております。
  371. 矢田部理

    矢田部理君 船団といったって一カ所に固まって走るわけじゃない。むしろそうすれば攻撃されやすくなる。相当な広がりを持っているところで一隻だけで何を守るのかという軍事常識の基本ですよ、これは。  こんな高い買い物をする、最高の買い物をすることが一%突破の本当の意味なんですよ。これはもってのほかだということをまず第一に申し上げておきたい。  それからAWACSの導入問題がマスコミ等で議論をされておりますが、特に総理に伺いますが、アメリカの議会筋から総理が訪米される際に大統領あてに、中曽根さんが来られたらAWACSを買うように話をしてくれという注文が出されたというのですが、何か話がありましたでしょうか。
  372. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私がアメリカへ伺う前にアメリカの四人の有力な議員から手紙がありまして、日米間の諸問題解決についての彼らの考え方を私に示した事実はありますが、その内容につきましてはここで公開することは差し控えた方がいいと思います。
  373. 矢田部理

    矢田部理君 アメリカの議会筋に、対米黒字削減の一環としてこのAWACSその他相当のもの、軍需品を調達すべきだ、買わせるべきだというような動きがあることは御承知でしょうか。
  374. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) アメリカの議員さんは好きなことを言っておりますから、あるいはそういう意見がアメリカの議会内にも起こり得ることはあり得ると思っています。何しろ日本との貿易インバランスは余りにも巨大で、五百八十億ドル、そういうような数字に上っておるものですから、この解消について必死になっておるという面もあるのであります。
  375. 矢田部理

    矢田部理君 そこで問題なんでありますが、対米黒字削減の一環として、貿易摩擦とリンクをさせて装備の調達などをアメリカからすることはしないということは、防衛庁長官、約束できますか。
  376. 栗原祐幸

    国務大臣(栗原祐幸君) 防衛力の整備というのは継続的、計画的にやらにゃならぬし、貿易摩擦と絡めてどうのこうのと、そういう問題ではございません。
  377. 矢田部理

    矢田部理君 総理に、内容は明らかにできないけれどもアメリカの議員筋からそういう向きの話があったということですが、それについては、その態度はきちっとされたんでしょうね。
  378. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私はアメリカへ行く直前に返事を書きまして、きちっとしたことを言っておきました。
  379. 矢田部理

    矢田部理君 その内容については概括的にも話せませんか。
  380. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私がそういう個人的に出した手紙については、こういうところで公にしない方が礼儀にかなうと思います。
  381. 矢田部理

    矢田部理君 それ以上深追いをしないことにしますが、中期防でAWACSというのは位置づけがされているでしょうか。また、どんなふうにお考えでしょうか。
  382. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 中期防では、早期警戒機ということで既に航空自衛隊が八機装備しておりますE2Cという早期警戒機がございますが、これを引き続き整備するということで五機E2Cを購入するという計画が計上されております。AWACSについては、中期防では何ら計画されておりません。
  383. 矢田部理

    矢田部理君 検討課題にもなっていないし、もちろん所要経費の見積もりにもない、転用も考えていないということですね。
  384. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 中期防の対象には全くなっておりません。
  385. 矢田部理

    矢田部理君 にもかかわらず、先ほど問題にした洋上防空体制研究会ではかなり検討が進んでいるという指摘もあるんですが、いかがでしょうか。
  386. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) これまた先生よく御承知のように、中期防衛力整備計画では洋上防空について研究をするということになっております。したがって、どのような装備体系がいいか、現在の装備体系をどのように活用すべきかというようなことについて研究しておりますので、その中では、各種の装備についてどういう取り合わせが最も効率的であるか、どういうことが最もよかろうかというようなことを、いろいろな装備について、あるいはいろいろな運用方法について研究をいたしております。
  387. 矢田部理

    矢田部理君 かつて、E2CにするかE3Aにするかということを検討した際、E3Aではだめだ、適当でないとした経過がありますが、それはどういう経過だったんでしょうか。
  388. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 本土防空の装備体系の一環として早期警戒能力が必要だということで、かつて早期警戒機の研究をいたしたことがあります。その当時候補となりましたのはE2CとそれからE3A、いわゆるAWACSと言われるものも候補というか研究対象にはなりました。しかしながら、いわゆる本土防空のためのレーダーの探知距離を延伸させるだけの目的であるならば、AWACSよりも安いE2Cの方がより経費効率がいいということでE2Cに決めたわけであります。
  389. 矢田部理

    矢田部理君 一九七九年の「防衛アンテナ」でありますが、「早期警戒機の導入」というところで、E3A、AWACSが大変不適当だと。値段も高いし、それから重量も重いので飛行場の施設等にも大幅な改修がかかる。もともと作戦指揮用のものであって早期警戒用のものでもないと。その理由づけは忘れていないでしょうね。    〔理事原文兵衛君退席、委員長着席〕 したがって、そういう一たん不適当だといって取りやめた飛行機をまたまた、中期防ではやらないにしても、その後の洋上防空のかなめにするというのはいかがなものかと思いますが、いかがでしょうか。
  390. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 目的によって何が、どういう機種が向いているかということはあろうかと思います。先ほど申し上げたように、本土防空のためのレーダーの覆域の延伸を図る、いわゆるアーリーウォーニングという面だけであればE2Cが最も私は適しておるし、実際のコントロールについてはレーダーサイトが行うわけですから、早く発見をするという意味であればE2Cで十分である。仮に、洋上防空でレーダーサイトの覆域から遠く離れたところで、戦闘機を発見するだけでなくて、戦闘機についてそれをコントロールして運用するということになれば、E2Cではそのような能力は不足するだろうからAWACSというものが向くかもしれない。しかしながら、これらは今後洋上防空についてどういうものが必要であるかということを研究した結果でありまして、それぞれの用途によって向き不向きというものが出てくるものと理解をいたしております。
  391. 矢田部理

    矢田部理君 それからOTHについては、その際また検討課題になる。これまた幾つかのやっぱり弱点、問題点を指摘しているのでありますが、それはどんな点だったのでしょうか。
  392. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) OTHにつきましては、その有用性について検討の上所要の措置をとるということが中期防で決められておるわけですが、OTHの有用性ということになりますと、幾つかの分野があります。  一つは、一般的な戦略情報といいますか、これは地上も含めて、相当の大部隊等が移動すれば探知できるのではないかというふうに言われております。しかしこれも、実際に実現して、実装備化されないと能力的にはわかりませんが、そういう面で日本が最も不足しておる戦略情報の収集の機能としてその種のものが役立つのではないかというのが第一点。  第二点は、本土防空、洋上防空を含めまして、航空機の大まかな動静というものについて、早期にしかも広い範域について探知ができる機能としてOTHレーダーが有用ではなかろうかということが第二点。  さらに、洋上における船舶の行動というものがOTHレーダーによって把握できるというように聞いておりますが、そういったことも含めて、日本のような専守防衛の国柄としては、その種情報能力の強化というものは非常に重要でありますので、我々としてはOTHレーダーというものについて強い関心を持って今調査をしているということでございます。
  393. 矢田部理

    矢田部理君 防衛庁として、先ほどの一九七九年二月号の「防衛アンテナ」でOTHレーダーの弱点を何点か指摘しておりますが、それはどういうことなんでしょうか。
  394. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 今申し上げたように、OTHレーダーというのは非常に広い範囲のものについて概略の情報を知るという代物でありますから、それを直ちに戦術目的に使う、例えばレーダーサイトにおいて、相手の航空機というものの位置をしっかりと把握をして、味方の航空機を誘導して戦闘に使うといったような使い方はできないわけでありますから、そういう点でOTHレーダーでとらえられる情報というものはかなり大ざっぱなものであるということをまずよく理解しておかないと、過大な期待をしてしまうということになろうと思います。  もう一つは、OTHレーダーというのは、今申したように非常に広い範囲のものを一つのレーダーで見られるということで大がかりな装置でありますので、非常に広い施設が要る。言うなれば飛行場ぐらいの長さの施設が要るということで、その設置についてはなかなか難しい問題がたくさんございます。そういった点がありますと同時に、そういう広い施設であるということは、ある意味では攻撃に弱いという面もあろうと思います。いろんな面でいい点もあれば悪い点もあるということは事実であります。
  395. 矢田部理

    矢田部理君 早期警戒機の導入の際にここでもOTHが検討されている。今言われたように千キロ以内はまず見えない、その先もぼんやりしか見えないから識別が果たしてできるのかどうかわからぬ、広大な土地を必要とするので攻撃をされやすい、などなどを含めて防衛庁は非常に低い評価しかOTHに与えていない。それをまたまたここで持ち出して洋上防空体制のこれまたポイントにしようというのはいかがなものかと思いますし、特にアメリカがずっとまだ実験配備というレベルである、まだ確定的にどうするかということは決まっていない。仮にアメリカが配備をするとすればそのすき間を日本が一部担当することになる。運用上もアメリカの重要な一翼を担うことになる可能性が強いというような問題もありまして、このOTHレーダー問題もこれはやっぱりこの際あきらめるべきだ、取りやめるべきだと思いますが、長官いかがですか。
  396. 栗原祐幸

    国務大臣(栗原祐幸君) 政府委員から申し上げましたとおり、これを取り上げるかどうかまで含めて今検討中でございます。
  397. 矢田部理

    矢田部理君 いずれにしても、どうも太平洋のかなたの船団の護衛あるいは海峡封鎖というようなことを盛んに言うのでありますが、ソビエトが日本を攻撃するとすれば日本本土をもろにやるんじゃありませんか。わざわざ遠いところの船まで行って攻撃をされるなどということは、常識的には我々素朴に考えたって逆じゃないか。どうしてそんなことまでするのかということになると、結局アメリカの対ソ戦略あるいは海洋戦略の一翼を日本が担わされている、分担をさせられているということにポイントがあるのじゃありませんか、どうでしょうか。
  398. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 結局のところ専守防衛の防衛力というのは相手方に日本を侵略しようという気を起こさせない未然防止のためのものでございますが、その際、この攻め方をすれば日本は全く手も足も出ない、全く対応措置がないという状況がないように、その意味で大綱では防衛上の各種機能において欠落のないものにしておこうというのがまず大前提であろうかというふうに考えております。  海上交通の保護につきましても、日本の本土攻撃については日本はハリネズミのごとくしっかりしているけれども、洋上で日本の生命線の一つである海上交通を撹乱しようとすればそれはいともたやすくて全く日本としては対応措置がないということでは防衛というものが全うできないのではないかというように考えておる次第でございます。
  399. 矢田部理

    矢田部理君 かつてアメリカから対潜能力の強化を言われたとき、先ほども指摘がありましたように大量にP3Cを買い込んだ。NATO諸国の何倍になっていますか。
  400. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 海上交通保護能力というのは、やはりその国の海洋の利用度とそれからそれに対応するための防衛措置についての仲間の数というものとの兼ね合いであろうと思います。例えばNATO諸国について言いますと、海洋利用度というものももちろん相当高いものがありますが、それらは主として大西洋という太平洋に比べればはるかに狭い海域で行われており、しかもそれを守るためにはNATO諸国というたくさんの同盟国がありまして、それらが分担をしてやっておるということでございますので、あの狭い大西洋でアメリカを含めNATO諸国が持っておる対潜航空機というものは大変な数、大変な密度であります。  それに対して太平洋におきましては、日本の与国というものはアメリカだけでありますが、アメリカ自身太平洋における海上交通ということについてはそれほど一般の利用度はない。恐らく日本の百分の一以下であろうと思います。したがって彼らとしては自分に必要な、先ほど来話のあります軍事的な作戦輸送のための保護能力さえ持っておれば済むということで、日本の必要としておるような一般船舶の保護のための勢力としては日本がみずからやらざるを得ない、それを一緒になってやる仲間というものはいないということになりますと、百機という数は決して多くはないというように御理解いただきたいと思います。
  401. 矢田部理

    矢田部理君 シーレーンにかかわると思われるソビエトの通常型、通常目的の潜水艦は、西側と太平洋側でどのくらいの数になりますか。
  402. 瀬木博基

    政府委員(瀬木博基君) 太平洋艦隊に所属しております潜水艦は全体で百四十隻、そのうち原子力推進が約半分というふうに把握しております。
  403. 矢田部理

    矢田部理君 通常目的の潜水艦。
  404. 瀬木博基

    政府委員(瀬木博基君) 通常目的とおっしゃいますと。
  405. 矢田部理

    矢田部理君 戦略型でない。
  406. 瀬木博基

    政府委員(瀬木博基君) SSBNでないということでございますか。
  407. 矢田部理

    矢田部理君 そう。
  408. 瀬木博基

    政府委員(瀬木博基君) ちょっとお待ちいただけますか。——「ソ連の軍事力」というものによりますと、SSBNはおよそ二十隻から三十隻の間と言われておりますので、その百四十隻から引いた数ということになると思います。
  409. 矢田部理

    矢田部理君 ソ連の北洋、バルト、それから黒海艦隊の通常目的を果たす潜水艦の数はどのくらいでしょうか。
  410. 瀬木博基

    政府委員(瀬木博基君) 今ちょっと手持ちがございませんので、後刻調べさせていただきます。
  411. 矢田部理

    矢田部理君 シーレーンにかかわると思われる通常目的の潜水艦、戦略型の潜水艦というのはもっとアメリカの本土攻撃ですからシーレーンには直接関係がない、その潜水艦の数は太平洋で七十から八十八ぐらい、それから西の方、NATOにかかわる部分で百五十隻ぐらいというふうに一般の統計では言われているわけであります。したがってNATOでP3Cとか固定翼の対潜哨戒機が多いならわかるけれども、NATOははるかに少ない。日本が決定的に多いのであります。その倍率は、私の調査によれば三倍を超えるのであります。こんなべらぼうなP3Cの購入はないと言わざるを得ないのでありますが、いかがでしょうか。
  412. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 私はNATO諸国といいますか、大西洋正面と太平洋側と比べて数がこちらが多いというふうには全く思っておりませんで、先ほどちょっと申し上げましたが、NATO諸国で申し上げますと、まずアメリカがP3C、P3B合わせて約三百五十機持っております。そのうちの三百機近くは大西洋側にいるというのが第一点。それからカナダの二十機も主として大西洋側で行動しておる。それからオランダの十機もそうでございます。ノルウェー、スペイン等も全部十三機おりますし、それから先ほど申し上げたようにイギリスのニムロッド、それからフランスのアトランチック、これらがそれぞれ二、三十機持っておりますが、そういうものを合わせますと大西洋におる対潜機の数、いわゆるNATO諸国の持っておる対潜機の数というものは四百機以上になって、非常な多くの密度で対潜活動をしているというように理解をいたしております。
  413. 矢田部理

    矢田部理君 とんでもない話だよ。三百二十二機のうちアメリカの本土に張りついているのが太平洋岸で百十五、大西洋岸で百五十一なんであります。ヨーロッパのNATO諸国の方に展開しているんじゃありませんよ、全部。いいかげんなことを言っちゃ困るよ。
  414. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) アメリカ大陸側といいヨーロッパ側といい、大西洋全域についてNATO諸国は海域分担でそれぞれ哨戒区域というのを決めておりまして、そこでNATO諸国として持っておる総機数で分担して、まさによく言われております海域分担で哨戒をいたしておるわけであります。
  415. 矢田部理

    矢田部理君 日本だって一千海里の範囲内でやっているわけであります。全然違いますよ、比較が。
  416. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 日本だけで、日本一国で日本の周辺海域あるいは一千海里シーレーン防衛については分担しておるわけでありまして、アメリカは太平洋につきましてはほとんど彼らのいわゆる民間船というかそういうものはありませんので、平時からそういう自分たちの作戦輸送に伴わない海域防衛のためのP3Cというものは配備しておらないわけでございます。
  417. 矢田部理

    矢田部理君 配備しておりますよ。沖縄にだって十八機持ってきているわけであります。だめだよ全然、うそを言っちゃ。
  418. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 先ほど来お答え申し上げておりますように、アメリカが例えば西太平洋に配置しておりますP3Cは、アメリカ側の西太平洋におけるアメリカの艦船、アメリカ船籍の船というものがそれほど行動しているわけじゃございませんので、そういう一般的な海上交通保護に使うためのP3Cではございませんで、アメリカの海上部隊が行動をする、あるいは情報を収集する、そういったために必要なP3Cを配備しているというふうに理解をしておるわけでございます。
  419. 矢田部理

    矢田部理君 アメリカがNATO関係に配備をしているのは二十機ですよ。あとは本土に全部張りついている。日本のシーレーンあるいは周辺に張りついているP3Cが圧倒的に多い、物すごい濃密な張りつき方をしている。こういうものを大量に買い込むことがこの中期防のポイントなんです。エイジス、OTH、P3C。これでは日本の正面装備重視、シーレーン防衛、洋上防空、アメリカの対ソ戦略体制と、こういうことに全体が和していくような軍拡の路線こそがまさに一%突破のポイントだと思う。その点で、一%問題は単に数字だけの問題ではなくて、日本の防衛政策の根本的な転換を伴っている、重要な戦略変更を伴っているという点で私は許しがたいと思うのであります。  その点で、ひとつ正面装備等を大幅に切り捨てる、新しい洋上防空システム体系などは全部やっぱり中止をすべきだということを強く要求して、私の質問にしたいと思います。
  420. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 以上で矢田部理君の質疑は終了いたしました。(拍手)     —————————————
  421. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 次に、吉岡吉典君の質疑を行います。吉岡君。
  422. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 きょうのこの予算委員会は、衆議院参議院通じてのいよいよ大詰めの段階の委員会になっております。最近自民党の中はなかなかにぎやかで、それに関連して総理予算委員会もこれが最後ではないかというような議論もありますが、それはさておき、きょうのこの予算委員会中曽根政治四年半の全面的な総決算を行う委員会だと考えます。  そこで、お伺いします。  まず第一に、中曽根総理が最も力を入れて推進してこられた問題の一つは臨調行革の推進であり、また六十五年に赤字国債ゼロということも掲げてこられました。この目的は達成されたかどうか、まずお伺いします。
  423. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) まだ達成されません。
  424. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 見通しはどうですか。
  425. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私は、行革は内閣としては三代十年の仕事である、そう申し上げておるのでありまして、息の長い、そして粘り強くやる仕事であると思っております。
  426. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 国債残高は八二年と現在とどういうふうになっているか、大蔵省。
  427. 窪田弘

    政府委員(窪田弘君) 普通国債残高でございますが、一九八〇年度末、七十兆五千九十八億円、一九八五年度、六十年度末、百三十四兆四千三百十四億円、一九八七年度末の見込みで約百五十二兆円となっております。
  428. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 今の数字でもわかるように、財政再建、これは私ははっきり失敗していると思いますが、総理は認めませんか。
  429. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 公債の依存率は私が就任したときから二七%から一九・四%に落ちておりまして、その成果は上がっていると思います。
  430. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 膨大な借金が蓄積している。それを自分の政治が成功しているというふうに言われるその立場、私は非常に疑問を持ちます。  しかし、次に話を進めていきたいと思います。改めて総理にお尋ねします。  売上税、マル優は廃案という事態になりました。この原因はどこにあったとお考えになるのか。地方選挙結果は売上税について国民のノーの審判が出たというふうにお認めになるのか、ならないのか。
  431. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 税制改革、なかんずく売上税につきましては、時間も少なく、国民皆様方に対して十分御納得のいく説明を行うこともできずに甚だ残念な結果でございました。
  432. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 残念という中には国民のノーの審判を受けたということが含まれているというふうにとりたいと思います。  そこで、売上税、マル優廃止、これが国民の明確な審判を受けた以上これをはっきり断念すべきだと思います。今の時点での税制改革についての総理の見解を承ります。
  433. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 御承知のように、もしこの会期中に税制改正案が審議未了となりますと、いわば売上税は廃案ということになるということでございましょうが、それに関しまして衆議院議長があっせん案を示されました。協議機関を設けてそれについて御検討を願う、こういうことになっております。
  434. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 総理及び中曽根内閣の認識を尋ねているところです。政府の見解を尋ねている、認識。
  435. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 政府といたしましては、過去を考え将来を思いますと、この際やはり税制の根本的な改革は必要であるというふうに考えております。一応、議長のごあっせんがございましたので、協議機関の御協議をしばらく見守りたいと思っておりますが、将来を考えましてもこれは必要なことであるというふうに考えております。
  436. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 協議機関があるので見守るという答弁がこの委員会でしばしば行われました。もしそうだとすると、政府協議機関の答えが出るまでは政府考えは述べないということなのでしょうか。
  437. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 協議機関が御検討の過程政府の意見を求められることはあるかもしれないと思います。その場合にはもちろん申し上げますし、できます協力はできるだけいたさなければならないと思っております。
  438. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 一般国民には例えばテレビでも総理府番組などで税制のあり方についての宣伝が行われております。それであって委員会では政府の意見は控えるという態度はこれは筋が通らないと思います。もしそういう態度であるとすれば、当面政府国民に向かっての税制改革についてのPRは中止すべきだと思いますが、どうですか。
  439. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 御質問の趣旨がちょっとわかりかねましたが、協議機関においては政府はできるだけの御協力をいたしまして、求められれば所信を申し上げるつもりである、そう申し上げましたのでございます。  国会における御審議政府の思うとおりに十分に行われなかったということは、これはまことに残念なことだと思っております。
  440. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 中曽根内閣が掲げてきた税制改革内容にかかわるものですけれども、直間比率の見直しという点ですが、これは税収は同額の中での比率の見直しなのか、それとも間接税がふえることによって税収の増加も期待するのか。
  441. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 今回御提案いたしましたのはいわゆる歳入中立てございますから、全体としては増減税とんとんということで見積もっております。
  442. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 現在提案された法案はそうなっています。しかし、税制改革そのもので中曽根内閣が目指したもの、これは増減税同額にとどまるその枠内での税制改革であったのかどうなのか。これは例えば六対四あるいは五、五というような比率の議論もありますけれども、政府としてはどういう比率がいいと思っているかということを含めて、今の法案だけでなく、将来へ向かっての税制改革についての認識とあわせてお伺いします。
  443. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 将来間接税の、売上税でございますが、税率を上げるという意味での増税ということは考えておりません。ただ、経済成長に伴いまして直接税にしても間接税にしても自然増収というものはこれは十分あり得ることでございますので、それは将来にわたって十分あり得ることだと思っておりますが、それはいわゆる税率を上げるという意味での増税を考えておるわけではありません。  そこで、いわゆる間接税を考えましたのは、しばしば申し上げることでございますけれども、やがて我が国が老齢化社会になってまいりますと少数の若い人が私ども老人を背負ってくれなければならぬことになりまして、いかに所得税を増徴いたしましても若い人たちにはとてもそれは背負い切れませんので、今からいわば老人も、老人はだんだん所得が少なくなってまいりますから、所得税という形よりは間接税という形でそういう費用を少しずつ広く負担していくという制度をつくっておくことが必要だ、こういうのが一つの発想点でございます。
  444. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 老齢化社会に向けて老人にも負担してもらう、もう所得もなくなった老人にまで税金をかけようということだというふうにとります。  問題は、今の説明ですけれども、臨調の答申その他自民党内部の一連の宣伝物、これらを見ましても、結論のところでは高齢化社会に向かって将来の税収の増ということをうたっております。自然増だけであって将来とも税率を上げるというふうなことが一切ないというふうには自民党のパンフレットでも書いておりません。その点はどうですか。
  445. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 所得のない老人にも税金を払わせるのかとおっしゃいましたが、老人にはもとより国からもらうものの方が出すものよりはるかに多いということを御留意願いたいと思います。なお、私どもが提案いたしました売上税については将来の増税ということを考えておりません。
  446. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 老人が年金をもらっていることは宮澤さんに聞かなくても私もよく知っております。  今の、将来とも税率を上げることは考えていないということですが、それは臨調行革が目指したところもそういうことだったという解釈ですか。
  447. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 特にこの点につきまして臨調行革が何かを言われたことはないと思いますが、要するに基本的には将来老齢化社会になる、しかしこれはいわゆる借金では長いことは負担してまいれませんから、そのための財政基盤はしっかりしておくというのが基本的な臨調行革の立場と思います。
  448. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 臨調答申は、国民の租税負担率及び社会保障費負担を高齢化社会に備えて長期的には上げざるを得ない、こういうふうに言っております。したがって、今の税制改革、これを受けての税制改革の本当のねらいがそこにあることは明白だと思います。  それから、これは先ほども言いましたけれども、自民党の一連のパンフレットでも、例えば間接税の率を上げるかどうかということは将来の問題であって、将来とも率を上げないということは言っておりません。今の税制改革の本当のねらいがそこにあることは明白だと思いますが否定されますか。
  449. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 今おっしゃいましたように、租税と社会保障負担の合計を臨調行革は言っておりますから、それが租税のいわゆる税率引き上げによる増税であるのか、あるいは社会保障関係の保険料の負担の増であるのかということは、そこはいずれともはっきりいたしておりません。  それから第二点に、租税負担というのは一般にGNPとの対比における負担を申しますから、その負担率が上がったということ即税率が上がったということには必ずしもなりませんで、自然増が多くなれば多くなるということはあり得ることでございます。
  450. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 この問題、押し問答しても答えは出ませんから進みたいと思いますが、いずれにせよ中曽根総理が掲げた増税なき財政再建というこの最大の課題として提起された問題は、やはり今明確に破綻している。財政再建は進まず借金がふえただけ、六十五年の赤字国債ゼロという見通しもない。しかも打ち出したのは増税の方向であったというふうに私は言えると思います。  話を進めて、日米経済関係について一、二お伺いします。  まず、レーガン政権の対日要求は非常に露骨なもので、例えばスーパーコンピューターなども企業、機種まで指定してこれを購入するように迫ってくるということで、政府部内でも大いに当惑しているという声を頻繁に聞きます。これは外務省等からも聞こえてくる話です。今、政府が物品を購入する場合には、私の理解では随意契約での購入ということは原則的には許されていないと思いますが、そういう問題の実際はどうなっているのか、総理にお伺いしたいと思います。
  451. 渡辺幸治

    政府委員渡辺幸治君) お答え申し上げます。  米国のスーパーコンピューターについて、日本の国立大学を含む公共機関において調達が可能になるようにしてほしいという要請がございまして、過去数カ月にわたって米国と協議を続けておるところでございます。日本の調達手続の透明性等の問題について米国側と現在協議中という段階でございます。
  452. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 ということは、一般入札をやめて随意契約で購入の道を開くこともある、そういうことですか。
  453. 渡辺幸治

    政府委員渡辺幸治君) 国立大学を含む日本の公共機関のスーパーコンピューターの購入に関しては、原則として随意契約、随契で行っている。これは日本の国産のスーパーコンピューターの購入についても同様でございます。
  454. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 性質は同じ問題ですが、関西国際新空港へのアメリカ企業の参入問題、この問題でもいろいろな話が伝わってまいります。特に、アメリカ側は多数の外国人労働者を使用するという形での参入を希望しているという話であり、それは今の法令のもとでは原則的には不可能なこと、そういうことをアメリカが要求してきているということですが、実態はどうですか。
  455. 小林俊二

    政府委員(小林俊二君) ただいまのお話の中の、米国側が具体的に関西空港建設に関連して外国人労働者の導入を求めているということは、正式には聞いたことがございません。  また、そうした要求が出てきた場合に、法令上これに対応することができないというふうに了解されているというお話がございましたが、これは政策の問題でございまして、法令上はこれに対応する、もちろん政策上の種々の条件を考慮の上これに対応することは法的には可能でございます。
  456. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 実態はどうなっているのか。——労働省ですか。
  457. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 今、外国人労働者を国内に受け入れる点についての御質問と理解をいたしましたので法務省当局から御答弁を願ったわけでありますが、関西国際空港プロジェクトへの外国企業の参入につきましては、調査及び機材調達の分野におきましては一部既に実績を上げております。例えばターミナル施設の基本構想調査の下請として米国のベクテル社が参加をすることとなっているほかに、船位測定装置でありますとか大型建設機械等についても外国企業からの購入実績は出ております。  先般関西空港株式会社が発表いたしましたとおりに、空港諸施設の工事、調査及び機材の調達につきましては、公正かつ内外無差別というルールを徹底しておるところでありまして、外国企業にも十分参加の機会はあると考えられますが、どの程度外国企業が参加できるかにつきましては、それぞれの外国企業みずからの企業努力によるところが大きいと心得ております。  なお、今お話がありましたように、米国の特定社が外国人労働者を多数日本国内に連れてくることによって工事に参加したいといった話は、私は聞いておりません。
  458. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 法務省は正式には聞いていないという話であり、運輸大臣は私は聞いていないということでした。しかしそういう問題は、やはり公式の場できちっとすべきだと思います。アメリカの企業の参入問題が困難なのは、一般的な企業の参入ではなく、数千人の外国人あるいは他の地域の労働者によって参入をやりたいという希望が表明され、そうなれば大変なことだ、これは内需拡大どころではないということで問題になっている。私らのところに非公式には幾らでもそういう話が入ってくるけれども、こういう公式の場でこそ、そういう問題で当惑している問題があればきちっとすべきではありませんか。  それから今、法令の問題じゃなくて政策の問題だとおっしゃいましたけれども、法令的にも原則的には単純労務者の日本への導入という問題は禁止され、例外として認められているというふうに思いますが、それはどうですか。
  459. 小林俊二

    政府委員(小林俊二君) 我が国の出入国管理法は在留資格制度という制度をとっております。入国する外国人の在留活動に応じて資格を定めているわけであります。この資格の中には、単純労働あるいは非熟練労働という活動を目的とする資格はございません。そういう意味におきまして基本的に我が国の法令は単純労働者の導入について否定的な態度をとっておる、それが基本的な態度であるということは申すことができると思います。ただ、出入国管理法には同時に、法務大臣が特に入国を認めることを適当と考える者について入国を認めることができ各条項がございます。したがってこの条項を例外的に適用、援用するならばあらゆる外国人の入国を認めることができるという意味におきまして、政策上それが特に必要であると考える場合にはこれに対応することができるというふうに申し上げたわけでございます。
  460. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 総理、四千人も五千人もの外国人労務者を連れてきての参入という問題、あとは政策問題だという答弁ですが、政策的にどうですか、こういうことをやる可能性はありますか。それともやらないという方針ですか。
  461. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 委員は数千名の労務者を連れてきて参入の希望が既に表明されておるという前提で御質問でありますが、そういう事実自体がございません。
  462. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 それは公式にないというだけです。そういうことはもう我々いろいろ調べて聞いております。しかし、否定されますからこれはそのままにして進めます。  次の問題。ドル暴落で、大量のアメリカの国債を買っていた生命保険会社がことしは二兆円とも言われる差損を出したと言われています。ところが報道によると、日銀はそういう危険なアメリカ国債を七億ドルも買ったと報道されていますが、これは事実関係はどうですか。
  463. 内海孚

    政府委員(内海孚君) 我が国の外貨準備の運用は安全性、確実性、流動性、それからより有利な点ということを追求するなどの観点から運用しており、ただいまコメントされました関係も、その一環としての行動だということでございます。
  464. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 マスコミも、異例な出来事だとこれについては書いております。  ここでただしておきたいと思いますが、郵便貯金の自主運用で一兆円まで外国債も買うことができるようになります。庶民の少額貯金である郵便貯金でアメリカの国債を買うということがあるか。これはないというふうに言い切れますか。
  465. 唐沢俊二郎

    国務大臣唐沢俊二郎君) 郵貯の自主運用制度は、金融自由化に対処して適切に対応をいたしまして、金融自由化対策資金を高利、有利に運用してそして預金者の利益の増進を図ろうという趣旨でございまして、現在、関係法案を国会に提出して御審議をいただいております。運用対象は、今言われましたように国債、地方債、金融債とともに外国債があるわけでございます。  為替差損の起こる外国債、非常に気をつけろというお話でありますが、たとえ為替差損がありましても、高金利でそれ以上の利子収入があれば、トータルでは国内債よりも有利になる場合も実はあるわけであります。しかしながら、郵貯というものは国民からお預かりした大事な資金でございますし、国が運用するわけでございますから、外国債の購入に際しましては、金利や為替相場の動向を十分見きわめまして、慎重の上にも慎重を期してまいりたいと思っております。
  466. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 同じく自主運営が認められている年金の積立金についてはどうですか。
  467. 斎藤十朗

    国務大臣(斎藤十朗君) 米国債を購入するかどうかということにつきましては、安全かつ効率的な運用という観点から判断をするべきでございまして、日米の金利差、為替相場等を十分に見きわめた上で、慎重に判断すべきものと考えております。
  468. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 郵便貯金にしても年金積立にしても、それが投機の対象に使われるというようなことが絶対ないように求めたいと思います。  次に、国鉄問題です。  総理が最も力を入れ、戦後政治の総決算、臨調行革の二百三高地とも言って力を入れてこられた国鉄の分割・民営、これはこの四月一日に発足しました。それで百十五年の歴史を持つ国鉄は幕を閉じたわけですが、ここへ至る過程、この過程で私は特に指摘し重視しなくちゃいけないと思いますのは、この臨調行革に沿った国鉄の分割・民営化が進められる過程で、労働者に対するさまざまな攻撃の中で実に九十二人の自殺者が出ているということです。こういう大量の自殺の上に強行された国鉄分割・民営化、これを総理はどのように考え、今もこれを世紀の大事業をやり遂げたと誇るのかどうなのか、率直な感想を聞きたいと思います。
  469. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 亡くなられた方々には心から哀悼の意を表したいと思います。  国鉄につきましては、さまざまな理由によりまして民有・分割が適当であるという審議会の答申を得まして、その答申を実行して、新しい分野、新しい天地に旧国鉄を勇躍前進せしめまして、国民の期待に沿うような新しいいわゆるJRとして今スタートしたばかりでございまして、ぜひ成功して国民の期待にこたえるように念願しておる次第であります。
  470. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 ここで私は、一般質問の中でも取り上げられました国労、全勤労組合員に対する不当な差別問題についてただしたいと思います。  国鉄分割・民営に対して、国会では次の附帯決議が行われています。職員の採用については「所属労働組合等による差別等が行われることのないよう特段の留意をすること。」。また運輸大臣の答弁でも、その際所属組合等による差別があってはならないと明確に答弁されてきました。この国会での決議、運輸大臣の答弁、これが厳格に守られていると思っていますか、どうですか。
  471. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) そのとおりに思っております。
  472. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 関連質疑を許します。神谷信之助君。
  473. 神谷信之助

    神谷信之助君 全くこれは無視をされて、ひどい差別が全国各地で横行しています。  例えば北海道です。北海道では、勤労、鉄労などの改革労協の組合員、その採用率は九九・四%。ほぼ全員の採用です。ところが国労の方は四八%、全勤労は二八・一%。もう明らかに差別されているということが示されていると思う。まず、実態はどうかというと、改革労協それから鉄産労を採用して、足りない穴を国労や全勤労で埋める、こういうやり方が実態です。この結果から見で、組合の所属別による差別が行われていないということが言い切れますかどうか、もう一度聞きます。
  474. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 国鉄におきましては、個々の職員の希望を調査し、その調査の結果の希望を最大限に考慮すると同時に、新会社の円滑な業務運営についても配慮しつつ、設立委員会の示した採用基準に従って新会社の職員となるべき者を客観的かつ公正的に選定した旨の報告が設立委員会に行われております。新会社の職員となるべき者の選定は適正に行われたと考えております。
  475. 神谷信之助

    神谷信之助君 問題は、採用基準なり、実際にその採用基準の運用に当たって差別が残されている、隠されていると言わなきゃならないと思う。  そこで、具体的に聞きますが、総局長褒賞というのがありますね。これはどういう制度ですか。
  476. 林淳司

    政府委員(林淳司君) 国鉄におきましては、種々の功績等に対しまして各段階、総局長とか管理局長とか、あるいはさらに功績の大なものは総裁とか、こういう段階に応じまして種々の褒賞制度がかつて国鉄時代にはございました。その一つの制度であろうかと思います。
  477. 神谷信之助

    神谷信之助君 現場の方では現場長の褒賞、運輸長褒賞、総局長褒賞の三段階がある。したがって、総局長褒賞というのは最高のもの。もちろん総裁のやつがこれは全国的なものなんです。だから、北海道の総局でめったに出さない、最近も出した記憶がないと言われるほど模範的な職員に出されるもの、こういうように理解をしていますが、それでいいですか。
  478. 林淳司

    政府委員(林淳司君) 現場段階におきますところの褒賞としては、北海道については総局長褒賞というのが最高の褒賞であろうかというふうに思います。
  479. 神谷信之助

    神谷信之助君 その総局長褒賞を受け、しかも勤続二十二年間無欠勤で無事故、こういう機関士さんは当然模範的な機関士というように思うんだけれども、運輸大臣どうですか。一般的にそう思いませんか。
  480. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) ほかの条件を一切抜きにして今例示に挙げられた部分のみを考えるならば、一般的にはそのとおりでありましょう。
  481. 神谷信之助

    神谷信之助君 なかなか慎重な答弁をなさるんですけれどもね。  このAさんという人は、総局長褒賞を受賞しました。機関区の区長室で席上首席助役は、これは機関区の名誉になるとこう言って称賛をしました。そのときに、褒賞の賞状にはこうある。土砂崩壊を発見、直ちに臨機の処置をとり、運転事故を未然に防止した、これは旺盛な責任感と周到な注意によるものであって、他の模範であると。あなたがおっしゃるほかの条件というのは、そのA君が実は全勤労の活動家である、このことだけじゃありませんか。  現に、北海道の苫小牧の機関区では、全勤労の組合員が九十九人中採用されたのは五人、国労も十三人中一人、全勤労の採用率は五%で国労は八%。明らかに組合所属による差別ではありませんか。今一例ですがね。あなたがおっしゃるように、ほかの理由がなければと。このような二十二年間無欠勤で、無事故で、しかも沈着で周到な注意を持ってやっている、そういう褒賞をもらった人がなぜ採用されないのか。だれが考えたって、それは全勤労の活動家だから。ほかの理由というのはそれしかないじゃないですか。私はこれは大変なことだと思います。このような模範的な労働者も、所属をする組合が気に入らぬとか考え方が気に入らぬといってそうして差別するというのは、これはまさに憲法違反でしょう。そういうことを、憲法遵守義務を持っている政府がそのまま見逃したり放任したりしていることは許されないと思うんです。  それで、こういう点についてこれはきょう例を申し上げましたが、一例ですが、全国的にいろいろ出ている。これについて、運輸省として即刻調査をして、実際にあなたがおっしゃるように、また国会決議を尊重して、差別をせずに採用しているのかどうか、その実態を調査して改善措置をすべきだと思うんですが、この点いかがですか。
  482. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 四月一日に発足をいたしましたJR各社の職員採用に当たりましては、設立委員会から示されました採用基準に従って個々の職員に着目して適正な選定が行われたものであり、職員の所属組合による差別は行っていないという報告を受けております。したがって、組合による差別の事実があるとは私は思いませんし、そういうものを調査するつもりはございません。
  483. 神谷信之助

    神谷信之助君 報告を受けていないからないというようなばかな話はない。中には自首をしてくる人もありますけれども、泥棒が自分から物を盗みました、泥棒をしましたと言って名のり出る者はない。そういうことが行われていてもやっていませんという報告が来るだけの話です。  これは単に不採用の問題だけじゃなしに、採用された労働者も配属をされる場合、また差別をされています。例えば東京第二運転所の、これは新幹線の運転所ですが、六十一年二月現在の国労の組合員が二百六十人、勤労が百三十人。ことしの四月、国労の組合員は百二十七人、減っていますが定数が減ったのか。定数は減っていないんです。勤労の組合員百三十人はそのまま採用され配属されています。北海道、九州、これは百五十七人来ています。国労の脱退者が九十三人。結局、勤労の組合員は三百八十人に膨れ上がった。そして、その前の採用された国労の百二十七人の組合員のうち、本来業務に従事をしているのはその半分以下の六十一人だ。半分以上の六十三人は整備とかあるいは直営売店とか出向とか派遣などいわゆる兼務の仕事に回されている。それぞれがみんな経験年数を持ち、新幹線のベテランの運転手であっても、そういうふうに所属組合の別によってなされているというのが実態なんです。私は、これを放置するということは、新会社が差別しておりますと言うはずがないんです。そうでしょう。  だからこれは、憲法違反を許さない、そういう立場からも政府はちゃんと見なきゃいかぬ。憲法違反を野放しにすることは許されぬ、そういう立場からもう一度是正する指導を求めたいと思いますが、いかがですか。
  484. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 設立委員会はそれぞれの会社に対する職員の採用基準を示し、それによって採用された職員の方々を適正に配置したと考えております。それが憲法違反というおしかりは当たらないと思います。
  485. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 全く、具体的な事実を挙げての指摘に対して、事実を認めない態度だと思います。  次の問題ですが、国会審議過程政府は、国鉄労働者を一人も路頭に迷わせるようなことはしないという趣旨の答弁を繰り返し行ってきました。今なお北海道、九州を中心に七千四百人の労働者が採用されない状態でいます。この労働者について、国会で答弁してきた一人も路頭に迷わせないという方向で政府責任を負うかどうか、きちっと答えてもらいたいと思います。
  486. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 昭和六十一年四月一日時点で国鉄には二十七万七千の職員がおられました。そのうち二十万六百名が新事業体に採用され、残る七万六千四百人のうち公的部門に二万九百人再就職が決定あるいは内定いたしたほかに、一般産業界で一万二千四百人、国鉄関連企業に一万四百人が再就職するなど、いわゆる希望退職で三万九千百人が退職をされる。また、退職前提休職等の一般退職で八千七百名が退職をされあるいは退職が決定をいたしております。そこで、今委員七千四百と言われたと思いますが、その結果再就職先が未定のまま清算事業団に移行していただいた職員は七千六百人でありまして、私どもとしては、ここまで各分野において御協力をいただき、国鉄職員の採用に協力をいただいた方々にはお礼を申し上げたいと思います。  これらの職員のうち非常に多くの部分が北海道地域並びに九州地域におられるという状況の中で、一方ではJR各社スタート時採用通知を差し上げた方々の中でその後辞退をされた方々等もありますので、既に北海道株式会社、九州株式会社はこれらの方々に対して再募集を行っており、既に内定通知も発送済みであります。  そこで現在、東日本、東海、西日本、四国の各旅客鉄道会社並びに貨物鉄道株式会社は、そのほかの方々に対して再募集の御案内を申し上げておるところでありまして、我々としては全力を尽くすつもりであることには変わりはありません。
  487. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 これは責任を持ってもらいたいと思います。  次の問題です。大蔵省に尋ねます。  中曽根内閣のもとで五回予算編成が行われましたが、この中で次の項目の増減の数字を挙げてもらいたい。軍事費、中小企業費、社会保障費、文教費、食管費。
  488. 西垣昭

    政府委員(西垣昭君) 五十七年度から六十二年度までの五年間の予算金額の推移の御質問だと思いますが、五十七年度と六十二年度と両年度だけでよろしゅうございましょうか。
  489. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 比較。
  490. 西垣昭

    政府委員(西垣昭君) 防衛関係費につきましては、二兆五千八百六十一億円、五十七年度でございます。六十二年度には三兆五千百七十四億円でございます。中小企業対策費……
  491. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 伸び率。
  492. 西垣昭

    政府委員(西垣昭君) 伸び率は年平均伸び率で六・三%。
  493. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 年平均じゃなくて。
  494. 西垣昭

    政府委員(西垣昭君) 全体でございますか。——三六・〇%の伸びでございます。  それから中小企業対策費、五十七年度が二千五百一億円、六十二年度が千九百七十三億円でございまして、マイナスの二一・一%でございます。  社会保障関係費は、五十七年度が九兆八百四十九億円、六十二年度が十兆八百九十六億円でございまして、伸び率が一一・一%でございます。  文教及び科学振興費は、五十七年度が四兆八千五百二十五億円、六十二年度が四兆八千四百九十七億円でございまして、大体同じ水準でございます。  それから食糧管理費が、五十七年度は九千九百三億円、六十二年度が五千四百六億円でございまして、マイナスの四五・四%でございます。
  495. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 この予算の数字は四年半の中曽根政治の基本姿勢を端的に示すものだと思います。この数字で私は総理が一番力を入れてきたのはやはり軍事費の増加による自衛隊増強、こういうことだったと思います。そして、その到達点として一%枠を突破する、こういう結果になったと思いますが、総理いかがですか。
  496. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 防衛関係はおくれておりまして、いわゆる大綱水準に達するという、前から申し上げている点につきまして鋭意努力をしておるわけなのであります。しかし、絶対額から見ますと、社会保障関係は大体十一兆前後、それから公共事業費が六兆、それから文教関係が四兆六千億円でありましたか、科学技術も入れまして。そして、防衛費は三兆五千億円でありますから、絶対額から見ればやはり防衛費というものはバランスがとれていると考える次第であります。
  497. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 何を基準におくれているかという問題です。中曽根総理は、八四年一月十七日に来日したシグール米大統領補佐官に、一%枠には自由世界の先進諸国を納得させる合理的な根拠はない、国際国家の日本責任逃れをしているのではないことを示すためいずれ私の手でこの枠を外すと語ったと報道されております。総理が言うおくれているというのも、こういうことと関連があると私は思います。この約束、私の手で一%枠を外すという約束を実行したのがことしの予算だと思いますが、どうですか。
  498. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) シグール氏にそういう約束をしたことはありません。
  499. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 総理はこれまでも、都合の悪いことは否定することを繰り返してこられました。もうこれ、挙げれば切りがありません。これはもう新聞に報道されておりますし、シグール補佐官とマンスフィールド大使と一緒に総理が会われたことも首相動向にも出ていることで、私は間違いないことだと思います。  そこで次の質問ですが、先ほど発表されたアメリカの国防総省の共同防衛に関する同盟国の貢献報告、この国防総省の発表の中では、日本の軍事費について、西側陣営の公平の原則に反する、こう言っております。総理が今否定されましたけれども、一%枠は自由世界を納得させる根拠がないとおっしゃったこととも通ずることだと思いますけれども、この西側陣営の公平の原則に反するという国防総省の指摘についての見解、総理及び防衛庁長官外務大臣、どなたかお伺いします。
  500. 倉成正

    国務大臣(倉成正君) 一九八七年の米国の国防総省の報告書につきまして、NATOの諸国及び我が国の計十六カ国について分析を行ったものでございますが、我が国は、例えば防衛費の対GDP比では最下位、一人当たりの防衛費では十三位、総人口に占める兵員数の割合では最下位となっており、右記述はこれらの点を踏まえたものと考えております。米国を中心に我が国の一層の防衛力に対する期待が強いことは承知しておりますけれども、我が国は、先ほどからるる述べられたとおりに、我が国の防衛努力については、憲法及び基本的な防衛政策に従ってあくまで自主的に節度のある防衛力整備を行っていく方針であることは、累次政府が答弁しておるとおりでございます。米政府としても、かかる我が国の立場を理解しているものと承知しておる次第でございます。
  501. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 日本の軍事費というのは、諸外国の軍事費と比較して論ずることができないと思います。それは、日本国憲法は本来戦力の保持、いかなる軍隊の保持も認めていない。したがって、比較するのがそもそも無理な話だと思います。アメリカが公平の原町に反すると言ってきている、これに対して今外務大臣の説明がありましたけれども、そういうことはそもそも比較にならないということがはっきりと言えるかどうかお伺いします。
  502. 倉成正

    国務大臣(倉成正君) これは、アメリカの国防総省の報告の中で、NATOの諸国との比較をして、NATOの諸国と比べると日本防衛費は非常に少ないということを言っただけのことでございまして、日本は独自で自主的に憲法に基づき、また専守防衛を旨として、日本が必要最小限の防衛費を決めておるわけでございますから、ただいまの先生の御指摘は当たらないと思います。
  503. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 指摘が当たらないといっても、私ははっきりアメリカにそういうことが言えるかと言ったわけです。  アメリカが比較しているだけだとおっしゃいますけれども、そうではありません。アメリカは、同盟国である以上公平な分担を行うようにということを言い続けてきている。しかも公平な原則とは何か。これは、軍事費において同率の負担をすること。アメリカが五%なら同盟国も五%、アメリカが七%なら日本も七%、それが公平の原則だということまではっきり言ってきています。そういうことには一切応じない、日本の防衛力増強。こういう立場を貫くということをやっておれば問題にしませんが、日本の今の立場、これは否定された総理の報道された発言、これによってもそういう方向へ向かう危険がある。  しかも一%枠突破、この問題についても、これは結局軍事費の自民党政府自身が決めた枠を、歯どめを取っ払って、際限のない軍事費増大への道を開くものだと思いますが、どうですか。
  504. 倉成正

    国務大臣(倉成正君) アメリカを中心に我が国に対する一層の防衛努力に対する期待が強いことは承知しておりますけれども、日本の防衛力は日本が自主的に決めるものでございます。  また、ちなみに先ほどの報告書の中でも、我が国の近年の防衛努力を評価するとの趣旨もあわせて書いてあることを先生御承知と思います。
  505. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 防衛庁長官にお伺いしますが、一%枠突破の問題についての答弁の中で私は特に重要だと思うのは、必要なものはやはりいただく、こういうことでございます、そうおっしゃっていますね。ということになると、必要がある限り軍事費はふえていくということになると思いますが、その歯どめも今やなくなった。これどのようにお考えになっていますか。
  506. 栗原祐幸

    国務大臣(栗原祐幸君) 私が必要なものはいただくと言う意味は、何でもかんでもがむしゃらにいただくという意味じゃないんです。いわゆる防衛計画の大綱水準を達成する、そのために中期防衛計画がある、それの達成のために継続的、計画的に必要なものだけはぜひいただきたい、こういう意味でございまして、それ以上のものを望んでいるということじゃございません。
  507. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 次の防衛計画もまた基準を取っ払ってつくられれば、同じことが繰り返されることになります。  そのことを私は指摘して、次のテーマに移りますが、総理、去年九月の臨時国会の本会議の代表質問で私は、自民党の「非核都市宣言は日本の平和に有害です」というパンフレットについて質問しました。総理の答弁では、舌足らずもあったという趣旨の答弁がありました。その後このパンフレットには「「核兵器の廃絶」は、日本の平和を破壊します。」というところに「一方的」というスタンプ印が押されて、「「核兵器の一方的廃絶」は、日本の平和を破壊します。」として今も発行されております。総理の言う説明不足、これはこの一方的ということが抜けていただけだということでしょうか。
  508. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 核兵器はやはり地球上から追放して廃絶すべきものであると私考えており、そのために全面的に努力しておるところです。米ソ首脳会談におきましてもゼロシーリング、ゼロを目的に両方とも努力しておるけれども、過渡期的にいろいろな措置を講じておるところであります。それはやはりある程度の均衡性、安定性を持たせないとそれ自体が大きな破局をもたらすという危険性があるからであります。そういう意味において抑止と均衡ということは平和を維持している今日の基礎原理なのであります。私が核兵器は業の兵器だと言っているのはそういう意味もあるわけであります。  そういう意味で、一方的にやってしまうということは甚だしい不安定状態をもたらすので、現在、レイキャビク以後両方でレベルダウンをしよう、我々もそのレベルダウンをもっと促進しよう、そういう考えに立ってやっておるので、そういう意味において一方的という言葉が入ってきたと思います。
  509. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 同時に核兵器をなくそうということがここで書き込まれた意味ではないところが問題です。このパンフレットは、核兵器廃絶が危険だというのを二つの理由を挙げて述べております。一つは、核兵器の廃絶が達成されても通常兵器やBC兵器が同時に廃絶されない限り危険だということ、もう一つの理由は、ソ連は絶対に核兵器の廃絶をしない、この二つの理由が述べられております。  この二つの理由を挙げて核兵器の廃絶が危険だと言う限り、これは核兵器廃絶という答えは出てきません。これは総理立場と同じ立場ですか。
  510. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) それは私が書いたんじゃないから私はそれについて論評しませんが、自民党考え方は今言った均衡と抑止、そういう理論に基づいて過渡期的にも安定性を害さないように、そして破局が誘導されないように、そういう配慮でこれはやっていかなきゃならぬ。ちょうど米ソが今その水準において努力しているということを私たちは多としているわけであります。
  511. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 先ほどの総理の答弁を聞いてみましても、ソ連が絶対に核兵器の廃絶をしないというふうな前提に立つ理論というのは、これはもう事実に反すると思います。しかし、こういう考え方のパンフレットが出ているその根底には、これも臨時国会で不破委員長が大いに問題にしたところですが、このパンフレットの中でも、ソ連の核兵器は攻撃的な兵器だ、米国の核の傘は防衛のためであり性格が違うと。つまり簡単に言えばアメリカの核はよい核、ソ連の核は悪い核だと、こういう見地に立っているからです。総理、この点は総理も同じ立場ですか、どうですか。
  512. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 核兵器が廃絶されるかどうか、アメリカやソ連がどういう態度をとるか、これは今後を見なければわからないと思いますし、我々は廃絶さるべきであると考えております。  核兵器については、いい核兵器だ悪い核兵器だという判定はなかなかしにくいだろうと思いますが、侵略的な核兵器というものがもしあるとすればそれは悪い核兵器であるでしょうし、また戦争抑止のためにやむを得ず使われているという場合に、戦争抑止力として働いているという場合にはそれはそれなりの機能を果たしている、業の兵器としての機能を果たしている、そういうことも考えられるのではないでしょうか。
  513. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 臨時国会でも総理は、よい核と悪い核があるという立場はとらないと答弁しておられます。そうだとするとこういうパンフレットをいまだに普及するということはやめ、総裁として残された期間がどれだけあるかわかりませんが、絶版にするという手続をとっていただきたいと思います。
  514. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) その程度の内容のことは逆の意味から共産党も相当出しているんで、お互いに気にしない方がいいと思うんです。
  515. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 それでは共産党の気になるものを挙げてもらいたいと思います。——今の発言は私は撤回してもらいたいと思います。私は、具体的によい核、悪い核、総理考え方とも違うという答弁があったものを、それを絶版にすべきだと私は言ったわけでして、自民党の出版物一般について言っているわけじゃありません。
  516. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 共産党の出版物やあるいは赤旗等を見ますと、我々に対してあることないこと適当に随分書いてあるのが多い、そう思うんです。例えば新宿西戸山のあの国有地の開発の問題等について、いかにも汚職があるようなことを赤旗は書きまくっていました。ああいうことはまるっきり事実無根であります。ああいうのは一つのいい例だろうと思います。
  517. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 今の意見はすべて受け入れるわけにいきません。我々は総理のように都合の悪いことは否定したりはしません。  次に、ことしは憲法施行四十周年という年です。総理は八三年、レーガン大統領との会談の際に、私はいわば非常に長期的な時間表を心中に抱いているということを憲法に関連して述べられました。その時間表はその後予定どおり進んでいますか。憲法問題についての基本的な総理の見解をお尋ねします。
  518. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 中曽根内閣は憲法改正問題というものを政治日程に乗せないと、そう申し上げておるので、今申し上げたとおりであります。
  519. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 憲法はすべての面で厳格に貫かれなければならないし、それは防衛の面でもきちっとしなければならないと思います。そういう点で憲法施行四十周年という年に、この憲法制定議会では憲法に言う戦力不保持、これについてどういう答弁が行われているかはっきりと述べてもらいたいと思います。
  520. 味村治

    政府委員(味村治君) 憲法制定議会におきましては、憲法九条二項の戦力の解釈なり意義なりにつきましていろいろ答弁がございます。その中で、定義づけとして、当時の金森国務大臣昭和二十一年九月十三日、貴族院の憲法改正特別委員会におきまして「比ノ戦力ト申シマスノハ、」戦争等において「之ヲ使用スルコトニ依ツテ目的ヲ達成シ得ル一切ノ人的及ビ物的力ト云フ」というふうに言われております。  さらに吉田総理大臣は、将来「若シ二大国ガドツカト戦争スルコトガアツテ、日本ガドツチカニ附カナケレバナラヌ破目ニナツタ時ニ、」「比ノ二章ノ規定ハドウ云フ効カラ生ズルノデアラウカ、」、また軍備ということについては、「警察力ノ」「後楯トシテ或程度ノ軍備ヲ置イテ置カナケレバ、国内ノ秩序ノ完全ナル維持ト云フコトハ頼ル困難ナル場合モ出来ヤシナイカト思フ、」という質問に対しまして、「私ハ万事ハ比ノ問此処デ申上ゲマシタガ、講和条約ガ出来テ後ノ状態ニ依ツテ判断スベキモノデアツテ、今日治安ノ乱レタ場合、或ハ戦争ノ危険ガ再ビ生ジタ場合ニドウスルカト云フ仮定ノ場合ニ付テハ甚ダ御答ヘシ難イノデアリマス」と、そういう答弁をされております。  なお、今日における政府の見解といたしましては、憲法九条二項の戦力とは自衛のための必要最小限度を超える実力を指すということでございまして、これはもう昭和二十九年以来繰り返し述べているところでございますし、憲法が我が国に固有の自衛権を否定していないという以上、論理的に帰納される解釈でございます。
  521. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 一九四七年に文部省が「あたらしい憲法のはなし」というパンフレットを出しております。文部省はお認めになると思います。この十八ページの後半から二十ページのあたりに今の憲法制定議会での答弁と関連する叙述があると思います。これを文部省、どういうふうに書いてあるか紹介してください。
  522. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) 昭和二十二年に発行いたしました図書といたしまして書いてございます。
  523. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 十八ページの後段から二十ページのところに書いてあること、文部省、読み上げてもらいたい。
  524. 西崎清久

    政府委員(西崎清久君) 御指摘の書物につきまして、十八ページのところでは、「日本の国が、けっして二度と戦争をしないように、二つのことをきめました。その一つは、兵隊も軍艦も飛行機も、およそ戦争をするためのものは、いっさいもたないということです。」、ちょっと段落がありまして「これを戦力の放棄といいます。」。それから少し飛びますが、「もう一つは、よその国と争いごとがおこったとき、けっして戦争によって、相手をまかして、じぶんのいいぶんをとおそうとしないということをきめたのです。」、ちょっと段落が飛びまして「これを戦争の放棄というのです。」。概要、そのようなことが書いてあるわけでございます。
  525. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 コピーをちょっとお渡しします。総理には現物で見てもらいます。(資料を手渡す)  文部省は四十年前にはこういうパンフレットを出しております。この叙述、今の時点でどのようにお考えになるのか、文部大臣、防衛庁長官総理にお伺いします。
  526. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) 教科書は不磨の大典ではございません。時の流れ、時代が変わりまして、ましてや政治、経済、国際情勢が変わりますと、教科書はその時点における正確なことを教えなければなりませんので、その当時の教科書と現在とは変わっております。
  527. 栗原祐幸

    国務大臣(栗原祐幸君) 戦後の大変混乱した時期の記述だと思います。そういう背景的なものも見ながら考えなければならぬと考えております。
  528. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 憲法に対する解釈については、占領下とそれから独立後におきましては変化があったと私も考えており、独立国家、主権国家、自衛権を有する国家としての解釈からいたしますれば、今我々が持っておる解釈が正しいと思っております。情勢にもよっておると思います。共産党もあのとき、徳田球一君以下皆さん今の憲法に反対されたのであって、それが憲法擁護と言っていらっしゃる。それはどういうわけだろうかと時々私は考えさせられるのであります。
  529. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 我々は憲法の平和的、民主的条項を擁護すると言っております。  今の答弁を聞いていると、混乱した時代のパンフレットだというお話もありました。そうだとすると、憲法制定議会での答弁もまた混乱した答弁だ、こういう考え方に通ずる、そういうふうに思います。憲法は明確にこのパンフレット、また金森国務大臣の答弁のように、あらゆる軍隊の保有を禁止しております。今、日本における自衛隊の到達点、これは国際的にも大変な事態です。我々も自衛権は認めております。しかし、その自衛権を行使する手段としての軍隊を持つことを禁止しているのが日本憲法だ。その枠の中でどう日本の主権を守るかということが大事な問題になっております。  ところが、そういう憲法下で、これも去年の臨時国会での質問でも取り上げましたが、金丸総理の監修なさっている本、この本の中では自衛隊が千島、サハリン等への侵攻作戦まで行う、そういう計画が行われている。研究は自由だとおっしゃいましたが、研究であればどういう内容のものでもいいとお考えになっているのか、金丸総理の見解を尋ねます。
  530. 金丸信

    国務大臣金丸信君) 私は防衛庁長官をやりまして、ちょうど一月の八日、習志野の落下傘部隊に仕事始めということで出向きまして、五十四歳の隊長と十九歳の自衛隊員が三百メートルの上空から落下傘をしょって二人飛びおりた。私は、これが指導者原理がということで感銘をいたしました。その後、八百人ばかりの隊員の前で、自衛隊は精強の部隊でなければならない、日本を攻めるものがあったらこれを波打ち際でせん滅しなければならぬ、こういうことを申しましたら、それが国会へ来て、精強の部隊とは何だ、こういう質問を受けたわけでありますが、皆さんきょうも防衛の問題でいろいろお話しされておりますが、いわゆる国民のとうとい金を使いながら、のらくら部隊の自衛隊じゃとても任すわけにはいかないと私は思うわけであります。  そういう意味で、私は、国民に防衛という問題の認識を持ってもらわなくちゃいけないということで、我が国の防衛のあり方に関しては、防衛庁のみならずさまざまな場においていろいろの観点から自由な立場研究を行うことが重要であると考えており、私が戦略研究センターの所長についているのもこういう考え方でついておるわけでありまして、研究センターの運営は、センターとしてまとまって一つの提言等をするということではない。メンバーがそれぞれ自由に意見を表明し得るようにしてあるわけでありまして、御指摘の報告書もその一つであると思うが、かかる研究と現実の防衛政策は別個であることは当然だと思っております。
  531. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 そうおっしゃいますけれども、序文を書いて、その中で「願わくば、本書が日本の防衛論議を、より現実的で、より具体性があるものにし、論議が軌道に乗るための何らかの役割を果たすことを願う」、そうお書きになっているわけです。ですから、こういう方向で国民の防衛意識の結集を図ろう——序文じゃない、巻頭言ですね。そういうことだとしか私には受け取りようがありません。  いずれにせよ私は、中曽根内閣の四年半を振り返って考えますに、うたい文句の財政再建、これはもう全く見通しがない。それに比べて、税制改革といって国民一般への増税が打ち出された。そして、自民党政府自身がつくった一%枠という防衛費の歯どめも……
  532. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 吉岡君、時間が来ました。
  533. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 みずから取り消した。そういう中曽根内閣の政治姿勢、これは非常に重大なものだと私は思います。  一言つけ加えますけれども……
  534. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 時間が来ました。
  535. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 はい。それじゃ私はそういう点で、国民の意向に沿って中曽根首相が今後の政治の中でこういう批判をどういう態度で受けとめられるかを見届けていきたいと思います。
  536. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 以上で吉岡吉典君の質疑は終了いたしました。(拍手)  明日は午前九時から開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後六時三十分散会