○赤桐操君 私は、
日本社会党・護憲
共同を代表して、今月二十一日、二十二日の両日にわたりまして
パリで開かれた
蔵相・
中央銀行総裁会議について緊急
質問を行うものであります。
冒頭まず、
宮澤大蔵大臣が就任以来、異常な
円高に伴う産業
経済の苦況脱出のために、昨年十月末の宮澤・
ベーカー会談、そして今年一月のワシントン
会議と精力的にこなし、まず
日米間の
調整を済ませて、この基盤の上に
パリ会議による先進主要五カ国及び六カ国による国際
通貨安定のための
合意づくりに
努力されたことに対し、これを多とし、御苦労さまと申し上げる次第であります。
さて、今回の
パリ会議では、現在の
為替相場は
各国の
ファンダメンタルズ、基礎的
条件にほぼ合致しているとの
認識に立って、一昨年九月のG5
合意による
ドル安誘導の国際
為替市場政策に区切りをつけ、ある程度の幅はあるものの、
ドル安定を目指すことになり、
ドル調整の第二段階というように言われ、これにより
円高にストップがかかり、円相場も落ちつくことが期待されているようであります。
円高で痛めつけられ、傷ついた
我が国の産業
経済界の実情と深刻な雇用不安の情勢
拡大等から、
円高に終止符が打たれることは
我が国のあらゆる
政策の出発点と言っても過言ではないと思うのであります。
パリ会議の成果として、円相場は安定すると言えるかどうか、宮澤
蔵相の答弁を求めるものであります。
次に、今回の
会議の
共同声明を見ますると、
現行為替水準の維持が色濃くにじみ出ており、このために
各国が協力することがうたわれております。確かに、とめどない
ドル安容認と誤解されかねない
米国の言い分や行動に歯どめをかけた点を評価しないわけではありません。しかし、
我が国の
現状は、
蔵相も十分御承知のとおり、そして
政府機関の調査結果でも一
ドル百八十円程度がぎりぎりの線と言われております。もし
現行為替水準の維持が百五十円台の
円レートを指しているならば、これは妥当な
水準とは言いがたいのではありませんか。さらに、ある程度の幅はあるとはいえ、
水準維持の名目で現在の高過ぎる円相場が固定化される危険も感じられるのでありますが、
蔵相はどのように判断されて
共同声明に賛成されたのか、御答弁を願いたいと存じます。
政府はよく、
円高のスピードが速過ぎたことが弊害を招いていると説明されておりますが、そのことを否定するものではありませんが、円相場の
水準もスピードにまさるとも劣らない重大な
影響を持つはずであります。
政府は、今日の円相場を妥当な
水準で、
我が国の
経済力を適正に反映したものとお
考えかどうか。私は
現行水準が高過ぎると思っておりますので、
共同声明の二項、「これ以上の急激な
為替相場の
変動は
各国の
経済成長と構造
調整を阻害する。」との
認識には大きな疑問があるのであります。現在までの
為替相場の
変動と
水準が、
我が国の
経済運営の阻害要因となっていることは明白ではないでしょうか。
米国主導による昨年九月のG5決定で
円高に振れ過ぎた
現行為替水準を改めることを、国際
会議で
蔵相は主張する
責任があったのではないでしょうか。御答弁をいただきたいと思います。
次に、
為替相場の
水準と密接な関連がある協調介入について伺います。
これまでの一方的な
円高進行の過程を見ておりますると、
円高によって
我が国の
経済成長が阻害され、
円高倒産や石炭、造船、鉄鋼等の産業分野が立ち行かなくなっているのに、協調介入によってこの苦しみを分かち合ってはもらえなかったというのが多くの
国民の実感ではないかと思います。特に、
米国の
ドル安容認
発言や口先介入は、
円高をあおり、
自国の利益追求に走り過ぎというのが大多数の
国民の素直な気持ちであります。
今回の
パリ合意は、
為替相場を
現状程度で安定させるとしていますが、万一、百五十円台を切るような
円高相場となった場合は、協調介入の
合意ができているのかどうか、伺いたいと思います。この点が明確になりませんと、
円高に終止符を打つと言われても、有効な手段がないことになると思われますが、この点、
会議の模様はどうであったのか。
英国のローソン
蔵相は、先進六カ国
蔵相会議終了直後に、
各国中央銀行による協調介入
政策に関し
合意に達したと語ったと報じられております。他方、宮澤
蔵相は、この種の問題は言わない方が
効果的な場合もあると述べたと新聞は報じております。
為替市場への
影響や思惑といったことを
考えれば、慎重になる宮澤
蔵相の御見解もわからないわけではありませんが、今までの異常
円高と
米国の一部に言われている一
ドル百円説などを勘案いたしますると、
円高防止の
国際協調の重要なポイントが協調介入の問題でありますので、ぜひ明確な御答弁を願いたいと思います。
次に伺いたいのは、
パリ会議の結果、
我が国が負担する
内需の
拡大による
対外黒字削減に寄与する
財政金融政策についてであります。
海外からの
我が国の巨額な累積黒字の解消要請と、
国内的には
円高不況脱国策と
国民生活安定のためにも、
内需主導型の
財政、金融、
経済政策の展開が強く求められていたことは多言を要しません。しかるに、
政府はこれらの要請を無視ないしは軽視して、旧態依然の
政策運営を行い、
内需拡大を金融
政策と地方自治体に押しつけてきたと言っても過言ではありません。
私どもは、既に一昨年秋の
円高不況の兆しが感じられた時点以来、
政策転換を訴え、積極的な
内需拡大を図ることを主張してまいりましたが、中曽根
総理の節約一本やりの硬直し過ぎた姿勢は改まりませんでした。まことに残念でありました。昨年秋の補正
予算で、ほんのわずか出かけた
内需拡大のための
財政運営の芽も、六十二年度
予算では超緊縮のマイナス〇%と挫折を余儀なくされたのであります。今回の
パリ会議を見ますると、またしても外圧がない限り動かない
日本政府の悪癖をさらけ出したもので、
国際国家日本を標榜する
政府として恥ずかしい限りではありませんか。厳しく
政府の反省を求めるものであります。
パリ会議の結果を踏まえ、宮澤
蔵相は具体的にどのような
内需拡大策の構想をお持ちか、まず伺います。
新聞報道では、四月を目途に総合
経済対策の作成を
総理は指示しているとか、六十二年度
予算の公共
事業を繰り上げ執行し、秋には大型補正を組むといったことを主要閣僚が
発言いたしております。しかし、不思議なことは、
さきの衆参本
会議の施政方針演説に対する野党の
質問に、六十二年度
予算は最善の
予算である、また、国と地方を通じる公共
事業の総
事業費規模は対前年度比五・二%の伸びを確保し、
経済成長率見込みを上回る積極
予算であると大見えを切ったのは中曽根内閣ではありませんか。また、
予算審議すら本格的に始まっていないこの時点で、総合対策や秋の補正が必要と見込まれるのは全くおかしな話である。
さきの国会答弁は食言となりませんか、お伺いいたしたいと思います。それとも、六十二年度
予算は、この一年間の
政策運営の裏づけを欠く欠陥
予算だということなんでしょうか。
政府は、まず
予算の
成立を図り、その後で
対応策を
考えようとしているようですが、それは余りにもこそくなやり方であり、
議会制民主主義を無視するやり方となりますので、提案中の六十二年度
予算を撤回し、国際的な
責任も果たせる
内需拡大策を織り込んだ
予算を再提出される方が妥当ではないでしょうか。また、劇的なこうした
措置こそが
国際公約を果たす
日本政府のPRにもなると存じますが、いかがでございますか。
内需拡大策との関連でどうしても明確にしていただかなければならぬのは、中曽根内閣の
財政再建路線の変更、
転換を行うのかどうかという点であります。異常
円高を招いた大きな原因は、五十八年度以降五カ年にわたる緊縮
財政一本の硬直化した運営と、古い自由主義
経済体制を礼賛し、
経済成長促進と
景気対策を
政府が放棄し、ただただ見せかけの
財政再建にきゅうきゅうとしたからにほかなりません。したがって、
円高不況の克服も、海外
経済摩擦の
解決も、
パリ会議で
合意された本格的な
内需拡大策も、挙げてこの中曽根内閣の
経済財政運営を
転換することが出発点で、この出発点を改めずに小手先の
施策を幾らやっても、また、総合
経済対策の看板で集めてみても、その成果は上がらないことは火を見るよりも明らかであると思います。この点をしかと承りたいと存じます。
次に、六十二年度
政府経済見通しと
内需拡大の
パリ会議の申し合わせについて伺います。
先日行われた
政府の
経済財政運営演説に対し、私どもは、実質三・五%の
経済成長見込みは裏づけを欠いた過大見通しではないかとの立場から質疑をいたしました。その際、
政府は、三・五%の
成長に自信を持ち、決して過大見通しではないという旨の答弁を行ってまいりました。今回の
内需拡大の
パリ会議の要請を
政府が同意したということは、
成長率を三・五%以上に引き上げることを約束され、そのためのもろもろの
措置を講じることにしたと理解すべきだと思いますが、そう理解してよろしいのかどうなのか。
パリ会議の雰囲気は、
我が国の実質三・五%の
経済成長では
国際的責任を果たしたことにならないということであるのかも伺っておきたいと思います。
さらに、
内需拡大の国際
会議の要請は、六十二年度の
政府経済見通しは、国
内需要の伸び率が四・一%、それから輸出等の落ち込み〇・七%を差し引いて、三・五%
成長を見込んでいるわけでありまするから、実は国
内需要の四・一%の伸びでは不十分であるということになるわけであります。国
内需要の伸びを何%ぐらいにしたならば
パリ会議の
合意にこたえられることになるのか、お伺いをいたしたいと思います。
最後に、
経済の国際化は避けて通れない方向でありますが、それに伴う
我が国の協調体制について伺いたいと思います。
昨年の
東京サミットで
合意された多角的サーベイランス、
政策の
相互監視の
責務がいよいよ重くのしかかってきたというのが、この一年間の
国際経済と
我が国の
関係だと存じます。
パリ会議でも、
日本の貿易黒字の圧縮と
内需拡大政策の推進を大前提に、
ドル安
政策を手控えようというように、まさに
相互の
政策が密接に絡んでおり、当然のことですが、
自国の
政策調整の
責任を果たさずに国際的な
発言の資格なしということだと思います。多角的サーベイランスに関し、宮澤
蔵相の今後の見通しをお伺いいたします。
また、これと関連して
アメリカ通貨当局が、
ドル安定策の次の方策として
レファレンスレンジ、参考相場圏の導入をねらっていることが報じられております。
為替レートが参考相場圏の範囲内におさまるように
各国は
政策協調を行い、
相互監視をするということがポイントのようであります。今回の
パリ会議でこの問題は論議されたのかどうなのか。さらに、こうした
為替水準を一定範囲内での
変動調整に
各国が協調する
責任を負うことになると、これは自由
変動相場制が管理
変動相場制に変質するのではないかと思うのでありますが、
蔵相の見通しを伺いたいと思います。
国際的な協調体制の関連でいま一つの重要な
課題は、国際的な
累積債務問題にどう対処するかということであります。国際的な
累積債務残高は一兆
ドルという巨額に達しており、
世界経済の大きな
不安定要因であることは間違いありません。
パリ会議開催直前に、ブラジルが貿易収支の悪化を理由に、対外債務利子の返済を一時停止することを一方的に発表するという事件がありました。中南米
最大の債務国ブラジルの破綻が引き金となり、
発展途上国の
累積債務問題に火がつき、国際金融
市場に混乱が起きるおそれはないのか。
パリ会議でこの問題は討議されたのかどうかお伺いをいたしたいと思います。
国際
累積債務問題に
政府はどう対処し、どんな
役割を果たそうと
考えておられるか。債権大国
日本の
責任と
役割をお伺いいたしまして、私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
国務大臣中曽根康弘君
登壇、
拍手〕