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山田耕三郎君 私の本日の質問通告は
林業等振興資金融通暫定措置法の一部を改正する
法律案を主体に、知床原生林強行伐採問題を
関連として質問をする予定でおりましたけれども、時間等の
関係もございまして、知床問題に限定をいたしまして
林野庁長官にお尋ねをいたします。
私は、前の質問におきまして、
加藤農林水産大臣は御就任以来本件については極めて慎重に
対応してこられ、
関係の皆様方に対しても慎重を期し、第三者の納得する
調査をと指示をしておられるように承っており、その結果、白神山地の伐採を五カ年見合わすことを決定をされ、知床についても動物
調査のためたとえ短期間であったといたしましても延期を決められましたことは適切な
措置として高く評価をし、賛意を申し上げてきました。それは、たとえ短期間であっても真剣な話し合い等がさらに続けられることを期待したからであります。しかし、結果的には、何の話し合いもなく、極めて不親切な
調査報告をよりどころとして、警察官をまで導入をして地方選挙のどさくさに紛れて伐採を強行をしてしまわれましたのであります。さらにまた
大臣は、一般論だかと前置きをしてではありますが、これからは木材を生産をする施叢林と自然を守る
森林とに分けて別々に
対応していかなければならないとも語っておられます。まことに卓見と存じ評価をしてまいりました。自然を守る
森林はそれだけ公益的機能を重視する必要があるからであります。以上の考え方を合わせまして、
加藤大臣のもとで今回のようになぜ伐採が強行されなければならなかったのか、大きな疑問を持ちます
立場から、以下数点についてお尋ねをいたします。
林野庁が伐採強行のよりどころとしておいでになります委託された五人の
調査委員会が発表をされた「知床国有林の動物
調査等について」の
報告書でありますが、多くの批判や
調査方法に関する疑問があり、
大臣の言われるいわゆる第三者も納得し得る
調査とはほど遠いものがありますが、一部代表的なものを指摘をいたします。
まず第一に、その人選についてであります。依頼を辞退をされたある教授によりますと、依頼に際して林野庁側は、
調査だけしてくれればよい、結果への判断はこちらがするという条件だったから教授は拒否したと言われており、肝心の
森林施業についての判断をする委員の中には林野庁に近い委員の方もおいでになり、一種のアセスメントに当たることを実施するのでありますから、こういった疑惑を生む人選は避けるべきであります。
第二の、
調査期間の余りにも短かったという批判であります。こうした生態
調査は、動物の繁殖の一サイクルが完結をする四季を通じての一年間が最小限であり、できれば二サイクルくらいが必要だと指摘する人もございます。
第三には、生物
調査のうち鳥類についてでありますが、第二のトキとその絶滅が心配されておりますシマフクロウ、さらにはオジロワシの生息地であり、伐採は野生動物に悪影響を与えるなどを理由に反対
意見のあります中で、
調査報告書は、いずれもその二種類については個体、すなわちその鳥を目視することもできなかったし巣を発見することもできなかった上に、フィールドサインも発見できなかったとしております。短い
調査期間であった
関係で確認できなかったのか、不幸にして
調査区域にはもうすんでおらなかったのか、いずれにいたしましても、陸海の豊富な生物群集がワンセットで保存されている点では国内でも唯一の
地域である知床にとっては極めて重大な問題であるはずなのにかかわりませず、すんでいないということでこの事実がなぜ伐採のゴーサインになるのか、全く私は不可解でなりません。
次に、林分の構造についてでありますが、胸の高さ直径六十六センチメートル以上の木は、その樹種の平均的な寿命を超えているので、腐らない
うちに利用することが
資源の有効利用につながるとの
報告でありますが、私がいただいております。その
報告書は骨子だけが記されておるものでありますから、詳細はどのように記載がありますか承知はいたしませんけれども、多分このことは老齢過熱林のことかと存じますけれども、老齢過熟材はないという有力な学説もあります。原生林内に点々と枯死木の見えるのは老齢過熟の現象ではなく、個々の個体、すなわち個々の樹木が生育空間を互いに制限し合っておるからと考えるのが適当で、株分としての原生林は永続するもので、過熟というものは起こらないという説であります。孤立木あるいは超優生木で連続した林冠から突出をしてそびえているような木は、自由に自分の林冠部を
拡大できるので光合成量と呼吸
消費量との間の不
均衡は容易に生じません。そのためにこういった樹木は半永久的に生存し得るという説でございまして、かの屋久島における杉は千年の樹齢を超えておるものもあるという事実はやっぱりこの説が私は確かなものと思わざるを得ないのでございますけれども、老齢木ではあっても決して過熟ということではあり得ない。それを勝手に死にかけておるからということで切ってしまうということは、学説の支えを取り除いてしまっている説だと私は思います。だから、現地の人たちは壮年木ばかりが貯木場に積み上げられておるとさえ言っておるのでございます。
その次の問題は、原生林内における野生動物のえさについてであります。
森林の施業、すなわち択伐による林床植生の
変化は、択伐によって林内の相対的照度が高くなることにより――多分日光が入っていくことだと思いますけれども、クマイザサや大型草本植物のヨブスマソウ、オオブキあるいはシダ類などが増加をし、特につる類のツルアジサイ、ヤマブドウなど急激な増加をいたしまして、この結果、大型動物及び鳥類のえさが豊富となり野性動物の生息
環境が良好になる、こういう
報告がされておりますけれども、本当にそうなのだろうか、余りにも安易過ぎるように思えてなりません。
調査をいたしました結果の前の質問において、切り株のあるところは確かにクマイザサが群生をいたしております。そして他の植林を排除してしまっております。この
報告とは合わないところがあります。さらに百歩譲ってこのことを認めるといたしましても、本来つる草類は樹木の生育を妨げるものであります。樹木の生育が妨げられましたらどうして実を結ぶような木に成長することができるのか、その辺のところが私にはわからないのでございますけれども、こういったことから考えてみましても、まだまだ生息
環境が良好になるよりも悪化する方が強いのではないかと思います。
その次は、ミズナラの種子は動物のえさになるものでありますが、今回の択伐によります減少分は全体から見ますと約五%程度で動物類の生息に大きな影響はないものと考えます、このように書いておりますけれども、この前にお答えをいただきましたそのことを調べてみますと、今度伐採をいたしますのは立木の数にいたしまして直径二十二センチメートル以上の全体の立木の一〇%だと、こういうように言われております。そうしたら、全部を同じだけの実をつけると考えてみましても五%ではないはずでありますし、
調査によりますと最もたくさん実をつけます樹齢のものばかりが切られていくということであり、そういった切られます木は全体の容積率にいたしまして六〇%を超えると書いております。ですから五%で影響なしという考え方は当たらないものと思います。そして、こういったドングリ類はやっぱり年により豊凶の差が甚だしいものであります。そういうことからいたしまして、ヒグマが人の住んでおる人里へ数年おきに出てきますことは、山が不作であるから出てくる。現在でさえがそうでありますのに、確実にその実を生産してくれる木を切るのでありますから今よりよくなるはずがありません。そういったことを考えあわせてみますと、この
報告書には首肯しがたい点が多々あります。
以上のとおりでありまして、全くやみの中にあります
森林生態の方は別といたしましても、簡単に指摘をさしていただきましただけでも以上のとおりでございますが、
国民が納得し得る
調査とは私は言えないと思っておりますが、これで果たして専門家の学問的批判にたえられる確信を持っておいでになりますのか。私は、
林野庁長官の
立場では何ともならない原因、すなわちそれはわずか三千万円強のお金であっても自主財源の収入を図らなければならないいわゆる林野庁の独立採算制という会計
制度の締めつけによるものと考えておりますのでございますけれども、以上に対する長官の御所見を承りたいと思います。