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1987-05-26 第108回国会 参議院 大蔵委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十二年五月二十六日(火曜日)    午前十時開会     —————————————    委員の異動  五月二十六日     辞任         補欠選任      大城 眞順君     高橋 清孝君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         井上  裕君     理 事                大河原太一郎君                 大浜 方栄君                 梶原  清君                 赤桐  操君                 塩出 啓典君     委 員                 岡部 三郎君                 河本嘉久蔵君                 斎藤栄三郎君                 斎藤 文夫君                 高橋 清孝君                 中村 太郎君                 福田 幸弘君                 藤野 賢二君                 矢野俊比古君                 吉川  博君                 志苫  裕君                 丸谷 金保君                 多田 省吾君                 和田 教美君                 近藤 忠孝君                 吉岡 吉典君                 栗林 卓司君                 野末 陳平君    国務大臣        大 蔵 大 臣  宮澤 喜一君    政府委員        大蔵政務次官   藤井 孝男君        大蔵大臣官房総        務審議官     足立 和基君        大蔵大臣官房審        議官       石川 光和君        大蔵大臣官房審        議官       大山 綱明君        大蔵大臣官房審        議官       尾崎  護君        大蔵省主計局次        長        角谷 正彦君        大蔵省主税局長  水野  勝君        大蔵省理財局長  窪田  弘君        大蔵省理財局次        長        入江 敏行君        大蔵省証券局長  北村 恭二君        大蔵省銀行局長  平澤 貞昭君        大蔵省国際金融        局次長      畠中 杉夫君        国税庁次長    冨尾 一郎君        国税庁税部長  門田  實君        国税庁調査査察        部長       日向  隆君    事務局側        常任委員会専門        員        保家 茂彰君    説明員        防衛施設庁総務        部会計課長    大原 重信君        経済企画庁総合        計画局計画課長  西村 吉正君        郵政省貯金局経        理課長      安岡 裕幸君        自治省税務局固        定資産税課長   佐野 徹治君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和六十二年度の財政運営に必要な財源確保  を図るための特別措置に関する法律案内閣提  出、衆議院送付) ○大型間接税導入マル優廃止反対国民本  位の税制改革に関する請願(第一号外四三件) ○子ども・青少年及び国民の健康を守るためのた  ばこの広告・宣伝の制限等に関する請願(第二  号外四件) ○葉たばこ生産基盤抜本的強化対策早期確立  に関する請願(第一四号) ○大型間接税導入を取りやめ、大幅減税等に関  する請願(第一七号外一八一六件) ○大型間接税導入反対所得税大幅減税等に関  する請願(第二〇号外二三六件) ○老年者年金特別控除制度に関する請願(第六八  号) ○大型間接税導入反対に関する請願(第一三八  号外五九件) ○売上税大型間接税)の導入マル優廃止反  対に関する請願(第一六〇号外三六六件) ○売上税大型間接税)の導入マル優廃止を  やめ、国民本位税制改革に関する請願(第一  六一号外一三七件) ○大型間接税導入をやめ、国民本位税制改革  に関する請願(第一八六号外三件) ○売上税導入反対に関する請願(第二三八号) ○大型間接税売上税)の導入をやめ、増税なき  財政再建実現に関する請願(第四七八号外一  三八件) ○売上税導入マル優制度廃止に反対し、国民生  活の安定に関する請願(第四九一号外一六三五  件) ○国民本位税制改革等に関する請願(第八一九  号) ○大型間接税導入反対大幅減税に関する請願  (第九五九号外一件) ○葉たばこ生産基盤抜本的強化対策早期確立に  関する請願(第九七四号) ○税制改革関連法案反対に関する請願(第一〇九  八号外五件) ○売上税大型間接税)の導入反対マル優制度  の存続に関する請願(第一二八三号外二件) ○売上税大型間接税)の創設反対に関する請願  (第一三八〇号外一八件) ○大型間接税売上税)の導入マル優廃止を  やめ、大幅な減税に関する請願(第一三九六号  外三九件) ○大型間接税導入反対等に関する請願(第一七七  一号外一七件) ○大型間接税売上税)の導入反対マル優制度  の存続に関する請願(第二三〇八号外四件) ○売上税新設などの税制改悪反対に関する請願  (第二三七一号外二五件) ○税制改革に関する請願(第二四九四号外一二件  ) ○売上税大型間接税導入反対に関する請願(  第二八九一号外三六件) ○売上税導入マル優廃止反対国民本位税制  改革に関する請願(第二九〇三号外一五件) ○売上税創設に関する請願(第三一二二号外一  件) ○マル優郵便貯金非課税制度廃止反対に関する  請願(第三一二三号外一件) ○葉たばこ生産基盤の抜本的な強化対策早期確  立に関する請願(第三一二四号外二件) ○売上税大型間接税)の新設少額貯蓄非課税  制度廃止反対に関する請願(第三二一一号外  四  七〇件) ○大型間接税売上税)の導入をやめ、国民本位  の税制改革実現に関する請願(第三二六八号外  五九九件) ○売上税導入反対に関する請願(第三四四〇号  ) ○文化芸術活動に課する売上税反対等に関する  請願(第三六四八号外一九七件) ○文化芸術活動に課する売上税反対に関する請  願(第三六九六号) ○売上税導入マル優廃止反対に関する請願(第  四九三七号外二一件) ○大型間接税売上税)の導入マル優廃止反  対に関する請願(第五三六〇号外一件) ○売上税導入反対マル優財形非課税制度存続  に関する請願(第五七三二号外四二件) ○売上税大型間接税)の導入反対に関する請願  (第六四八六号) ○売上税大型間接税)の導入マル優廃止反  対、国民本位税制改革に関する請願(第六五  三三号外一五件) ○未婚の母への寡婦控除適用に関する請願(第七  三二三号外一件) ○売上税導入マル優廃止反対等に関する請  願(第七五一六号) ○継続調査要求に関する件     —————————————
  2. 井上裕

    委員長井上裕君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。  昭和六十二年度の財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律案議題とし、政府から趣旨説明を聴取いたします。宮澤大蔵大臣
  3. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ただいま議題となりました昭和六十二年度の財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律案につきまして、提案理由及びその内容を御説明申し上げます。  御承知のとおり、我が国財政を取り巻く環境には一段と厳しいものがあります。このため、政府は、昭和六十二年度予算におきまして、引き続き財政改革を一層推進するため、歳出の徹底した節減合理化を行うとともに、現下の経済情勢にかんがみ、景気の着実な拡大に資するためできる限りの努力を行うこととしているところであります。  まず、歳出面におきましては、既存の制度施策改革を行うなどあらゆる分野にわたり経費の節減合理化に努め、全体としてその規模を抑制する一方、社会経済情勢の推移に即応するため、公共事業事業費確保雇用対策充実を行うほか、限られた財源を重点的、効率的に配分するよう努めることといたしました。これらにより、一般歳出規模は、三十二兆五千八百三十四億円と前年度に比べて八億円の減額となっております。これは、昭和五十八年度以降五年連続の対前年度減額であります。  他方歳入面におきましては、最近における社会経済情勢の著しい変化に即応し、税制全般にわたる抜本的見直し提案するとともに、税外収入につきましては、可能な限りその確保を図ることとしております。  しかしながら、昭和六十二年度におきましては、なお財源が不足するため、特例公債発行を行うこととするほか、国債費定率繰り入れ等停止などの措置をとらざるを得ない状況にあります。  本法律案は、以上申し述べましたうち、特例公債発行等昭和六十二年度の財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置を定めるものであります。  以下、この法律案内容につきまして御説明申し上げます。  第一は、特例公債発行であります。  昭和六十二年度の一般会計歳出財源に充てるため、予算をもって国会の議決を経た金額の範囲内で特例公債発行できることとしております。  第二は、国債費定率繰り入れ等停止であります。  昭和六十二年度における国債の元金の償還に充てるべき資金一般会計から国債整理基金特別会計への繰り入れについて、国債総額の百分の一・六に相当する金額繰り入れ及び割引国債に係る発行価格差減額年割額に相当する金額繰り入れは、行わないこととしております。  第三は、政府管掌健康保険事業に係る繰り入れ特例であります。  昭和六十二年度における一般会計から厚生保険特別会計健康勘定への繰り入れについては、健康保険法に規定する国庫補助に係る額から千三百五十億円を控除して繰り入れるものとするなどの措置を講ずることとしております。  以上が、この法律案提案理由及びその内容であります。  何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。  なお、本法律案は、その施行日を「昭和六十二年四月一日」と提案しておりましたが、その期間を経過しましたので、衆議院におきまして「公布の日」に修正されておりますので、御報告いたします。
  4. 井上裕

    委員長井上裕君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  5. 志苫裕

    志苫裕君 きょうは少し時間があるようですから、所信表明にも関連をして前段お尋ねをいたします。  宮澤さんは、ポスト中曽根に擬せられるリーダーの一人として、自他ともに認めておられると思います。また、経済通としての評価もございますし、資産倍増論なるものを世にも問うておられますので、所信表明への質問とあわせて、宮澤さんの財政経済についての理論、哲学といったものも若干お伺いしたい、こう思います。現政権における立場は一切問題にいたしませんので、ひとつこだわらずに所見をお伺いできればありがたい、こう思います。  まず、よくその人の名を冠して理念なり政策体系を表現をいたしますが、いわゆる宮澤経済あるいは宮澤財政というものがあれば、ひとつ財政経済現状認識とあわせてお伺いしたいと思います。
  6. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) そのような大それたことではございませんけれども、考えておりますことは、我が国経済の現況、国民の広い意味での資質等々から申しまして、我が国経済かなり大きな成長潜在力を持っておる。しかし、その潜在力が十分にはいろいろな事情から発揮されていないという認識を基本に持っております。  そして他方において、それは供給面でございますが、需要面で申せば、所得水準は非常に高くなりましたし、また所得の配分も一番不均衡の少ない国でございますが、長い間輸出努力を傾注した結果、国民社会資本というものが今日までどちらかといえばおろそかにされてきた。第二の経済大国としてはいかにも蓄積としての社会資本は、住宅を初め広い意味での公共資本は貧しい。しかも二十一世紀になりますと、急速に人口が老齢化いたしますから、そのときには今のような潜在的な経済成長力を多分今ほどは持っていないと考えなければなりませんので、この機会に潜在力を十分に顕在化することによって経済成長を高め、その成果をできるだけ社会資本充実蓄積をしていくべきであるというふうに考えております。  そういう経済情勢判断は、我が国国民資質経済潜在力背景といたしますが、同時に、この時期にいわゆる世界全体の新しい技術であるとか、あるいは新しい素材であるとかいったようないわゆるハイテクと称せられるものが世界的に展開を始めておりますから、しかも我が国はそういう状況の中でその先頭を走っておる国でございますので、そういうことを背景にして、潜在している経済力経済成長に高めていくことができるはずである、こう考えております。  それは基本的な判断でございますが、財政問題などもそういう背景の中で、本来考えられるべきものであろう。財政が非常に弾力性を失っておりますことは確かでございますから、こういう来るべき時代に備えて何とかその弾力性を回復しなければいけないのでありますが、それは一つ財政改革という努力、もう一つは潜在的な成長力を顕在化させることによって、いわば財政の面でいえば、それだけの税収の自然増等々が期待できる、そういう経済運営になるべく持っていきたい。ただ、そこは志苫委員がよく御承知のとおり非常に難しいところでありまして、財政がそのためのいろいろ起爆力になりますためには、いかにも財政そのもの制限がございます。しかし、それでもやはり何がしかのことはしなければならない。及び、何とかこれだけ大きな民間経済力というものをやはりうまく動員すると申しますか、稼働率を高くするようなそういう政策というものを財政としてもやはり工夫をしていくべきであろう。他方で、雇用面にこれだけ問題がございますことも、やはり今のような施策を示唆していると思いますので、そういう状況の中から雇用の不安というものをできるだけ解消していかなければならない。また、対外黒字というものも同じ観点から考えられることでありまして、そもそも過去数年間の間に過度に輸出依存体質になっている我が国経済がこの対外貿易黒字の根本的な原因でございますから、それはやはりかねての課題である社会資本充実のために資源と資金とを振り向けていくという形によって、それは多少時間のかかることでございますけれども、そういうことで解決すべきものである、ほぼそういう考え方を持っております。
  7. 志苫裕

    志苫裕君 ありがとうございました。おいおいまたお伺いいたしますが、ちょっと皮肉になるかもしれませんが、前任者竹下さんは比較的大蔵大臣在任期間が長かったし、ふるさと論なるものも世に問うておられます。私が鈍感なんでしょうかね、いわゆる竹下財政というものに鮮明に接した記憶がないわけですが、国内外の経済分野にわたって今いろいろ御所見がありましたが、竹下財政との違いで鮮明な点があればお示し願えればありがたいんです。
  8. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それは申し上げるまでもないことでございますけれども、経済政策財政政策はその局面その局面でやはりどういうふうに展開していくべきかという、そういう面を持っておりまして、竹下大蔵大臣がやられましたことは、これはもとをたどりますと大変長いことになるわけでございますが、結局ボンサミット時代でございますから昭和五十三年でございましょうか、そのころに日本機関車論というものがありまして、そこから大いに財政日本経済世界経済を引っ張らなきゃならないという段階がありまして、しかしやはり非常にその結果として財政が大きな荷物をしょった。これはやはりいつまでもこうしておるわけにはいかないという状況にあったわけでございますから、したがってそれから後、いわゆるゼロシーリングでありますとかマイナスシーリングでありますとかいう努力によって、一つ一般会計国債依存率というものをともかく少しずつでも下げる努力をしてこられて、それは立派にその成果をおさめたわけでございます。  また、そういう努力の中で、従来いわば半ば惰性であったとも思えるような制度改革も行われ、また物の考え方にしましても、例えば受益者負担というような考え方なども随分導入をされてまいりました。そういう意味ではいわば放漫になろうとしていた財政について鋭いメスを入れて、これは財政ばかりではありませんで、当然政府施策各般にわたる制度の改変にもつながったわけでございますが、そういう局面を担当されたと考えておりまして、これはこれで立派な成果をおさめて今日に及んでおります。その道はなお半ばでございますから、私はその半ばの部分を承継していることに違いはございません。先刻申し上げましたようなことも、しかし財政再建というものとどうやって両立させつつ行うかという、そういう側面を持っておりますことは否定はできませんが、竹下大臣のやってこられたことはそういう長年の努力であった。これは高く評価せられるべきものであると考えております。
  9. 志苫裕

    志苫裕君 今も関連したお話がありましたが、いわゆる石油ショックがありまして、さまざまな局面がありました。国際収支構造が大きく変わったとかいろいろありましたが、長くは申しませんが、かいつまんで申し上げますと、そういうことがあった後の世界不況に対応をいたしまして、先進諸国は一斉に、公共投資その他のスペンディングポリシーとでもいいますか、そういうものを採用いたします。日本でも赤字国債大量発行に踏み切るという局面があったことは御存じのとおりです。しかしこのケインズ主義は、かつてのように有効ではなかったということ。そして、その帰結が通貨や財政の危機でもあったということから、次第に国家によるそういうスペンディングポリシーは有効ではないんじゃないか、あるいは負担の重い割には効果の薄い選択なのではないかという考え方が特に中間層などを中心に広がっていく、こういう過程だと思います。サッチャー政権レーガン政権等の成立の背景にはこういうものがあって、そしてついには完全雇用政策を放棄して小さな政府、そういうことを主張する新保守主義と言われるものに道を譲ることになるんですが、日本中曽根内閣政権存在理由と位置づけたいわゆる行革路線もこの潮流に沿ったもの、このように私は理解をしております。  そこで、改めて宮澤さんの考え方を聞きたいんですが、宮澤さんは財政による景気政策、あるいは国家によるスペンディングポリシーといいますかね、そういうものは有効だとお考えになりますか。
  10. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それは非常に難しいかつ重要なお尋ねであると考えます。その国によりまして事情はいろいろ違っているであろう。基本的に、先ほど冒頭に志苫委員の言われましたことは、最近の小さな政府、どちらかといえば政府役割を余り大きくすることは問題があるということは、私もそのように信じておるものでございます。  その次に、それならば財政あるいは政府役割は何であるかということは、そのおのおのの国によって違うのではないかというふうに思っておりまして、例えば西ドイツのようにほとんど社会資本というものができ上がっているところでございますと、政府がなす役割というのは、景気刺激策としては例えば減税というようなことにどうしてもなっていく。それは有効な政策ではありますけれども、我が国などの場合にはまだまだ社会資本充実すべき部分が幸か不幸かたくさんございます。そういう場合にはやはりそれらが有効需要に働くわけでございますから、そういうことも考えながら、しかしある程度民間の力もそれに巻き込んでそういうものの充実を図るということは、やはり私は我が国の場合まだまだ政府に与えられている責務の一つであるというふうに考えております。  したがいまして、私自身は無原則な、無原則といいますか、天井のないケインジアンではございませんけれども、しかし我が国の場合にはまだまだそういう政策が働き得る余地があるし、日本の持っております潜在的な供給力、それから労働力も失業があるわけでございますから、片一方にそれに見合う需要があるということであれば、やはりまだまだ財政のしなければならない仕事がそういう面でもあるというふうに考えます。
  11. 志苫裕

    志苫裕君 少しずつ輪郭がわかってまいりましたが、裏腹な関係で今の点を逆に聞きますと、いわゆる新保守主義と言われるものについて経済学的評価をしてみてくれませんか。
  12. 足立和基

    政府委員足立和基君) 今志苫先生言われますように、第一次オイルショック以後、財政に積極的な役割を期待されまして、各国ともかなり積極財政をとったということでございますが、その結果、大変多額な財政均衡というのを生じた。そ れの反省がまた出てまいりまして、いわゆる小さな政府、それを新保守主義と先生言われるわけでございますが、そういうような流れになってきたこと、これはそのとおりだと思います。  それで、その評価でございますが、なかなか難しい点を含んでおりますけれども、幾つかの指標で考えてみますと、まず当然に財政の問題がございます。財政均衡という問題に直面しての小さな政府という考え方が出てきたわけでございますので、我が国状況を御説明申し上げますと、確かに財政面ではかなり改善を見たと、そういう面がございます。例えば公債依存度というようなものがことしの当初予算では初めて二〇%を切った。これは例えば昭和五十四年度におきましては、御承知のように三九・六%というような大変高い依存度を示していたことから比べれば、依存度については大変な改善を示したことであろうと思います。  しかし一方、同じ財政面でございますけれども、一層厳しくなったという面もあるわけでございまして、公債残高におきましては今年度百五十二兆円というような多額な残高になる。これはいろいろな時期によってもちろん残高が違うわけでございますが、今の五十三年、例の機関車論ボンサミットのときの残高が四十二兆円でございますから、大変に大きく伸びてきておる。それのGNP対比で見ますと、今年度は四三・五でございますので、当時五十三年度は二〇・四でございますから、これも倍以上の悪化といいますか、なってきておると思います。それから、予算に占めます公債費の割合もことしはもう二割を超えておる、二〇・九でございますが、これは昭和五十年度ではわずか四・九でございましたし、五十三年度では九・四であった。そのようなことを見ますと、なかなか小さな政府を続けておりましても、財政状況としては、改善をしたところはあるけれども、依然として厳しい状況にあるのでないか、こういう見方も言えるかと思います。  一方、景気全体としてどういうことになってきておるのかということでございますが、当時の昭和五十三年度、今大臣からもお話しございましたけれども、日本機関車論ということから世界経済リード役を担うということで七%成長を旗印にいたしましたが、結果的には五・二%の成長であったということでございましたが、その後ずっと通観いたしますと、昭和五十一年度が五。一%、六十年度が四・三%と、その間五十六年度、五十七年度あたりは三%台の成長もございますけれども、まあ通観すると四%前後の経済成長、いわゆる中成長と申しますか、そのような成長が維持できた。こういうことはやはり一つ評価できるのでないかと思うわけでございます。  それから問題点といたしましては、御承知のように、国際収支が大変に大幅な経常収支の黒字を記録するに至った。こういう問題はもう御承知のとおりでございまして、経常収支で申しますと、昭和五十三年度には百十八億ドルの黒字でございましたが、六十一年度では約九百四十億ドルにまでなってきた。これは最近の事情といたしましては、レートの問題であるとか、あるいはアメリカ経済の非常な高成長とかいろいろな要因があろうかと思いますけれども、我が国経済成長の問題もやはり一因ではあったかと、輸出依存の企業体質になった、こういうところは一つあろうかと思います。それから雇用面につきましては、やはりこれも最近のこの小さな政府の問題としては一つ問題となってきておるわけでございます。御承知のように、六十一年度では二・八%というような失業率でございました。これは従来二%程度の失業率で推移してまいりましたけれども、最近これがやや高まってきておる、この懸念があるというようなところが問題でなかろうかと考えております。  しかし、総じて見ますと、内需を中心としたこの安定的な経済成長というものが図られ、限られた財政の中では日本経済というのは、物価も安定しておりますし、まあまあの成果を上げ得てきておるのでないか、このように考えております。
  13. 志苫裕

    志苫裕君 ここではお伺いをしているので今議論をしませんが、今財政景気、国際収支、雇用等々の指標でまあまあのというふうにいいますか、功罪半ばといいますかね、いろいろ御説明がありましたが、どんな指標をとるかによってこれまた随分変わってくるわけでして、これはいずれ後ほど財政再建がどのようになっているかというところで改めてやらしてもらいます。  もう一つ宮澤さんに関連をしてお伺いしますが、ナショナリズムを基調にした経済学の考え方では、もう資本主義の現実に対しては正確な判断、分析、処方せんも出せないと、こういうことがよく言われております。    〔委員長退席、理事大河原太一郎君着席〕 しかし今の日米関係を見ていると、単なる貿易摩擦というよりも、ナショナリズムのぶつかり合い、とりわけパックスアメリカーナを背景に、最大の債権国と最大の債務国が世界史的な経済覇権を争っておるような、そういう印象がないわけでもありません、これは私の感じ方ですけれども。  この間の五月の日米首脳会談、中曽根さんの政治日程は随分違ったんじゃないかなと私は思いますけれども、とにかくそのクライマックスのような雰囲気もありましたが、アメリカの新聞などを見ると、日米当局はとにかくそれは極端まで持っていかないで、貿易休戦という形に事を落ちつけた、そのかわりにFSXであるとかAWACSであるとか、そういう防衛問題で相当の密約が交わされたんだという記事があるくらいです。とにかく日米間のナショナリズムをかけた覇権争いのような感じが私にはしないわけじゃないんですが、この日米間の貿易問題についての所見をお伺いしたい。
  14. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 御承知のように、アメリカというのはああいう大きな国でございますから、日米間の経済問題が、底辺まで考えましたアメリカ人全体から見ましたときに、一番やはり意識に上りますのは雇用の問題であろうと思います。日本企業の進出によってある特定の町の例えば鉄鋼業なら鉄鋼業が工場を閉めざるを得ない。その結果、二千人なら二千人という失業者が出るといったような形において、この原因は日本であるといったような理解が広まりますと、これは今志苫委員の言われましたような問題になる。    〔理事大河原太一郎君退席、委員長着席〕 あるいはまた、アメリカの貿易赤字そのものは、これは一般のそう大きな関心になっているわけではございませんけれども、例えばそれがしかし物価の上昇になる、あるいは金利、金利と申しましても国民の考える金利でございますから、住宅ローン、モーゲージのいわゆる抵当の金利であるというようなところ、あるいは自動車等々の大きな耐久消費財の金利、そういうことになりますとこれも国民的な関心に発展する問題でございますが、雇用の問題は、確かにかなりアメリカ人の全体のやはり関心になりつつある。それから物価の方は、いろんなことで石油が下がっておることがありまして、それほどではないように思われます。金利はここに来ましていわゆる抵当の住宅金利が一〇%にまたなりつつあるというようなことで、ややまた国民的関心が起こりつつある。  大きく言いますと、私はアメリカ人全体、いわゆる国民全体からいえば、そういう形で日本というものが意識されているんではないか。ただ同時に、消費者の立場からいって、日本の製品が優秀でいわば合理的な値段であるということは、これはかなりの消費者が知っておるというようなことがございますから、前のことに対してはそれは我が国にとってはプラスに働く部分があると思われます。  全体としては私はそんな理解でございますが、政府といいますか、あるいは国民全体というよりは、むしろ政治、産業経済界のリーダーたちの立場からいえば、一つは先端産業がどうも日本に持っていかれるのではないか。そのことは、いわば世界で一番技術的にもすぐれている、産業力も強いと思われた国民にとってはやはりそれ自身が一 つの不安であるばかりでなく、実はかなり部分が国防に関係をしておるということから、そこから生まれる危機感というものがあるように思われます。また、全然別の次元で申しますと、世界一であったはずのアメリカの農業というものが、これはまたそれ自身にいろいろな危機に入っておるという意識がございますので、それらのことがいわゆる有識者からいいますと心配しなければならない問題である、こう思われておるのではないか。  ただ、我が国とアメリカとは大きな貿易関係を持っておることのもっと根本に、いわば価値観を同じくしているという、そういう認識がございますので、お互いに協力してこの価値観を守らなければならないということが幸いにしてございますので、それは日米安保関係もそこから出ておるわけでございますが、そういうお互いの共通の意識が問題をさらに先鋭化するのを防いでおる。日米首脳会談というものは、やはりそういったような根本的な意識で支えられておるというふうに考えております。
  15. 志苫裕

    志苫裕君 これは質問の本題じゃないんですけれども、ちょっと宮澤さんの全般的な考えを聞く意味で、本来ですと役所の所管は通産なり企画庁なり外務省へいくのかもしれませんが、日本の対米輸出入は一九七五年ぐらいまでは大体ほぼバランスをしておったのが、一九七八年、特に八三年から顕著な輸出超過傾向を示して、一年間で倍になるというふうな状況になったんですが、これの主要な要因は何だと見ておられるでしょうか。
  16. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) まさにただいまおっしゃいましたように、仮に一九八〇年、昭和五十五年、それから一九八五年、昭和六十年でございますが、この二つの時点を比較いたしますと、昭和五十五年度におけるこの年の我が国の貿易収支の黒字は六十七億ドルでございます。五年後の昭和六十年にはそれが六百十六億ドルになっておりますので、わずか五年の間で貿易収支が十倍になった。  この間の状況を幾つか見てみますと、五十五年のドルは二百十七円でございます。ドルがますます高くなりまして、年を追って申しますと、二百十七、二百二十七、二百四十九、そういうふうにドルがどんどん高くなっておりまして、我が国としては非常に輸出が容易な態勢にございました。また、その間の石油価格の変化を申し上げますと、三十四ドル、三十六ドル、三十四ドル、二十九ドル、これだけの石油を買わなきゃならないという国民的なコンセンサスがございましたから、余計輸出というものをみんなが考えた。輸出がしやすい状況の中で輸出をしなければならないということで、この五年間に我が国経済かなり過度の輸出依存体質に変わったと思われます。  その中で、その中心はやはりアメリカであったわけでございますが、我が国の対米輸出というのはある段階では三〇%を割っておったわけでございますけれども、現在四〇%に近い。これはまた驚くべき変化でございます。この五年間はそういう時期であったと思います。
  17. 志苫裕

    志苫裕君 私はこういう問題は素人なんですが、ただ、既に国内生産に基づく貿易よりも、多国籍企業あるいは子会社による現地生産方式に主力を置いておるアメリカと、それから今なお在外生産よりも貿易に主力を置いておる日本という、この違いを冷静に見て議論をしているんだろうか。片面である貿易だけに比較の焦点を絞って日本を非難をして、現地生産方式によるグローバリゼーションといいますかね、そういうものを不問にしているのは理論的にも欠陥があるんじゃないか。そういうことは冷静にやりとりはなさるんでしょうかね。
  18. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) まさにそれは、大切な問題を御指摘になっておられると思います。もともと多国籍企業というものが発生し始めましたときにその問題の兆しはあったわけでございましたが、今日のような状況になりますと、輸出輸入というのはこれは勢い国境でもってはからざるを得ない、計算せざるを得ないわけでございますから、仮に日本に立地しておってもその資本は実はアメリカの資本がマジョリティーである、あるいはアメリカにある企業で日本国籍の企業、日本の資本の方が大きいというようなことになりますと、一体輸出輸入というのはどういうことになるのかという問題が確かにあることを多くの人々が今指摘をするに至りましたが、それならばそれについてどういう対応があるかということになりますと、どうもこれという意見が出てこない。  日本企業がアメリカに進出いたしますことがアメリカの雇用に貢献をしておることは、私は確かだと思うんでございますし、逆はまた逆でございますが、そういう要素を取り入れるということが、やはり今のような問題には基本的な物の考え方の整理をして、そこから物差しを考えるということでありませんといけないんだろうと思いますが、どうも寡聞にしてまだそういう答えを私は聞いておりません。ただ、もう明らかにそういう問題がありますことは御指摘のとおりと思っております。
  19. 志苫裕

    志苫裕君 ですから、ナショナリズムばっかりぶつかり合っておって余り冷静な議論がされていないんじゃないかなという感じもします。  ともあれ、それは経常収支はゼロ・サム・ゲームでして、どこかが黒になればどこかが赤になる。大変わかり切った冷酷なルールがあるわけですから、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、日米間の不均衡というのは何も今に始まったことじゃないんでして、品目の構造から見たってアメリカの現地生産方式による海外経済活動というものを取っちゃえば、それと比べれば赤と黒ははっきりするということで、これは当然のことじゃないかなあという感じもしますが、とにかく余りその辺までアメリカとは突っ込んでおやりにならぬということはよくわかりました。  これに関連しますが、シュルツ長官は、日本の過剰な貯蓄が投資に回っているのがそれが原因だと、何か人の国の経済政策にも立ち入ったようなことを注文をつけておるんですが、しかしその批判されている側の日本の過剰貯蓄はもっぱらアメリカの国債の市場消化に役立っておると、こういう図柄もあるわけです。ちょっとこの辺関連しますが、アメリカの国債のうち日本が保有するシェアは何%ぐらいになっておるでしょう。できれば、それの国内における保有状況をごく簡単でいいですから話してください。
  20. 畠中杉夫

    政府委員(畠中杉夫君) 我が国の投資家によります米国国債の取得状況でございますが、これはそのときの市場環境、国債期間等によって変わってまいりまして一概に申せませんけれども、日米金利差あるいは運用対象資産の豊富さ等を背景にしまして、最近かなりの額となっております。特に我が国投資家が従来から関心を持っております三十年債の場合には我が国投資家のシェアはかなり高くなっておりまして、二割ないし四割に上ると聞いております。
  21. 志苫裕

    志苫裕君 三十年物、そのアメリカ国債日本が全体で幾ら持っているのかちょっと聞き漏らしましたが、日本におけるその保有状況はどうなっているんですか。個人、企業はどれくらい、公的なものはどれぐらいだというふうに分けて言ってください。
  22. 畠中杉夫

    政府委員(畠中杉夫君) これは私どもとしては把握しておりません。個別の投資家の銘柄、それから種類等につきましては特に報告を受けておりません。
  23. 志苫裕

    志苫裕君 いやなに、わかってないということ。
  24. 畠中杉夫

    政府委員(畠中杉夫君) はい、そうです。
  25. 志苫裕

    志苫裕君 そういうものですかね。  先ほど私ちょっといろんな幾つかの主張を述べましたが、私の言っておるのも案外ナショナリスティックなのかもしらぬけれども、しかしそういう主張とは別に、面倒なことを言ってもアメリカじゃしようがないんで、貿易がだめなら現地生産もあるさ、ということで日本の企業の多国籍化に拍車がかかるという状況もあります。やがて日本がアメリカと同じ類型の国になってしまうんじゃ ないかなあという、そういう意味では懸念もあります。同時に、これに関連してちょっと聞きますが、日米首脳会談で日本側は、そこでまあ何か米国にも言わなきゃならぬというので、米国の赤字財政、赤字圧縮を強く主張したと共同声明にありますが、それは当然だと思うんですが、肝心の日本国債に関する指標はアメリカよりも一段と悪いんじゃないですかな。ですから、ちょっとどうですか、長期債務残高のGNPに占める割合、財政規模に占める割合及び国債依存度を日米ちょっと比べてみてください。
  26. 角谷正彦

    政府委員(角谷正彦君) お答え申し上げます。  長期債務残高のGNP比でございますが、日本は、昭和六十二年でございますが、五一・六でございます。アメリカが三六・五で、日本の方が高こうございます。アメリカは六十年度の数字でございます。  それから公債依存度につきましては、日本昭和六十二年度予算で一九・四でございます。アメリカにつきましては、大統領教書におきましては六十三年一〇・五ということになっておりますけれども、アメリカの六十二年度実績見込みにつきましては一七・一でございます。これは若干アメリカの方がようございます。
  27. 志苫裕

    志苫裕君 今もお話しありましたが、新しいものは私の手元にもないんですが、一九八六年までのものはあります。今ちょっと八五年のお話をしたんでしたかね、答弁は。  いずれにしましても、長期債務残高それから財政規模に占める割合、国債依存度いずれも日本よりはアメリカがまだいいわけでして、日本の方がうんと悪いんでしてね。もちろん、アメリカはまた別の面で全然違った状況を持っていますけれども。ですから、これは特例公債十年を振り返ってみると、よくもまあアメリカのことが言えたもんだなあと。やがて日本がアメリカの立場に立つんじゃないかという懸念を感じながら、あの共同声明読んでいたわけです。  とにかく、大体宮澤さんの宮澤経済というべきか、宮澤財政というものの輪郭を伺ったような気もしますが、これちょっとこのくだりのまとめにしますが、日本が直面しておる貿易不均衡の問題は、もしも日本が現在の経済構造をそのままにして経済成長率を高めようというふうにするには、輸出成長率を輸入成長率よりもはるかに高い水準に保っておかないといけないという答えになります。しかし、それは世界の輸出市場から日本が締め出されることに通ずる。また、日本経済が経常収支の大幅な黒字を続けていく限り、円高傾向というのは市場では当然の帰結になる。さりとて、輸出入の成長率を等しくするような構造改革は容易じゃないし痛みが伴う。とすれば、その努力をする一方で、国際的な資本移動の分野にも目を向けなければならぬということになるんだが、それはまたそれで国内外の諸問題を伴う、こういうふうになってくるわけですね。ここはポスト中曽根をうかがう宮澤さんとしては踏ん張りどころになるんですがね、処方せんございますか。
  28. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) これはやはり第一に申し上げたいと思いますのは、いわゆるプラザ合意以来きょうでちょうど二十カ月でございますが、ちょうど百円でございますね、あのときに二百四十二円でございましたから、きょう百四十一円と言っておりますので、ちょうど百円ドルが下がっておるわけです。これで日米間の貿易に影響がないということは、私はあり得ないことだと思うんでございます。それはJカーブ、Jカーブと申しましても、これだけ為替が変わりましたら、これはやはり影響が出なげればおかしいと思っておりまして、そういう意味では、私はこの貿易、日米間の黒字というものは必ず縮小に入るはずである、私はかたくそう信じております。  それからまた同時に、先ほど一九八〇年から八五年間のことを申し上げましたのですが、その間に過度に輸出依存体質になりました我が国経済を改めていかなければならない、構造を改めていかなければならないというのが、前川報告の物の考え方だと思います。そのとおりでございます。しかし、これは一遍補正予算を組んだから直るというようなものではないであろう。やはりそのための努力を何年か積み重ねていきませんと結果が出てこない、そういう努力が入り用だというふうに考えております。
  29. 志苫裕

    志苫裕君 じゃ次に、財確法に入ります。今までは宮澤さんにお伺いしましたが、これからは大蔵大臣にお伺いすることになります。けじめはひとつつけておきたいと思います。  まず、この財確法の性格についてから私は始めたいと思うんですが、この法案は、さきに成立をした六十二年度予算を前提にいたしております。私は予算委員じゃないので余り予算審議の模様に詳しくはないけれども、ごく普通の頭で判断をいたしますと、この予算は欠陥予算である。歳入は架空の財源もあるし、したがって歳出は裏づけがないし、事もあろうに、審議の最中からもう既に補正が論じられて、二次補正まで取りざたされるという不見識ぶりであります。返す刀で自分の悪口言うわけじゃありませんけれども、こういう予算が白昼堂々と国会を通るというのも、国権の最高機関が聞いてあきれるという話だと思うんですね、これは。まことに構成員の一人として恥ずかしいやらむなしいやら、そういう思いが私はいっぱいなんですね。それでもなお残っておるかすかな勇気を奮って言うとすれば、こんな虚構の法案は参議院の良識において審議できないというのが私の勇気ですな。  大蔵大臣、それはまだ売上税法案は廃案になったわけじゃないし、あの辺にどこかお蔵入りになっていますが、だけども、明らかにそういう状況にもっともらしい説明をつけて出してきて、我々善良な国会議員を惑わしておるのはそっちの方なんだが何か言うことありますか、私の今言ったことについて。まる国務大臣宮澤宣二君) 政府といたしましては、税制を抜本的に改正いたしたいと考えまして、直接税、間接税にわたる税制改革案を御提案をしたわけでございます。もうあと会期は一日でございますが、ここまで参りまして、それが国会のお認めいただくところとならなかった。ならなかったことにつきましては、私どももいろいろな反省をいたしております。殊さら、このいわゆる売上税の問題につきましては、いろいろ私どもも反省をいたすところがございます。  他方で、よって来るところはともかくといたしまして、補正等々の話を本予算が通らないうちに話題に上るのは不見識だと、そのとおりと思いますが、ここまで本予算の成立がおくれたということは、よって来るところはいろいろございますけれども、私どもとしては焦燥感をやはり持たざるを得ませんで、成立後どうするかということを内内いろいろ考えたり議論をいたしたりしましたのが世の中の話題になったわけでございますが、こういうことも実は異例なことでございました。  さあしかし、それはそれといたしまして、政府の立場から申しましたならば、そういう税制改正を考え、総体としては歳入中立的でございますが、先ほどしばしば申し上げましたような財政事情から、どうしてもやはり財源確保のための特例をお認めいただきませんと予算のバランスがとれない、そういうことからこの御提案をいたしておりますわけで、政府自身としては整合性のとれたことをお願いを申し上げているつもりなんでございますが、いや、そのもとのところが悪いんだから悪いところで整合したのではいかぬとおっしゃいますと、これは立っている立場の違いということになるのでございますが、政府としてはそういう立場からお願いを申し上げているわけでございます。
  30. 志苫裕

    志苫裕君 いや、それは大蔵当局、財政当局は収支相償う原則で収支を見積もって、いろんな工夫もして、足りない分をこうしたいと、こう言ってきたわけですね。その前提はこの間の予算だったわけでしょう。この間の予算というのはもう既に、今まあ総合経済対策として補正が論じられているというのはプラス要因ですが、あの本体そのものを見直さなきゃならぬという状況にあるんで すから、収支をはかって差し引きこのようにお願いしたいという前提が狂っておるじゃないか、これは論理的にそうなんだ、あなたが頑張ってみたって。それ以上のことはあなた言わぬでしょうが。  委員長、私が今申し上げたように、こういう法案は審議に値する実態、実質を持ってないんですよ。これはだれだって考えりゃわかるじゃないですか。法案の前提がもう虚構なんでして、そのすぐ後に補正だ、第二次だということが論じられている。しかも、特例措置内容は、急ぐには急くでしょうが、今でなきゃならぬというんじゃないんで、大まかに言えば一年間に借りられる金が借りられりゃいいわけだし、繰り延べできるものが繰り延べできりゃいいというふうに考えてくると、委員会の権威のためにもこういうものは審議すべきじゃない。廃案にしておいて出し直させたっていいわけだ。それくらいの識見のある委員会にあなたしなさいよ、どうですか。
  31. 角谷正彦

    政府委員(角谷正彦君) 先ほど大臣提案理由説明で申し述べましたように、六十二年度予算におきましては歳出を極力抑制する、一般歳出も五年間連続ゼロ以下にする。歳入につきましても税外収入についてできるだけ努力をする。それでもなお財源が不足するということで、御提案申し上げていますように特例公債発行あるいは定率繰り入れ停止、政管健保にかかわります一般会計からの繰り入れ特例といったものによりまして、六十二年度に不足する財源確保するということがこの法律案内容でございます。  予算は既に成立しているわけでございまして、これを何としても円滑に執行していく必要がございます。そのためには、やはり財源について確たる根拠をいただくことが必要でございます。特例公債につきましても、本年度におきまして四兆九千八百十億円の発行を予定しているわけでございまして、これらにつきましても円滑な消化を図るためには、できるだけ早くこの法律を通して特例債の円滑な発行をさせていただくことがぜひ必要でございまして、そういった点を御理解いただきたいと存じます。
  32. 井上裕

    委員長井上裕君) 志苫君。
  33. 志苫裕

    志苫裕君 あんた、志苫君と言うけれども、それは委員長ね、こういうときは国会の権威というものがあるんだね。せめて今回は成り行きでしゃべらないんだったら、この次はこういうのは受けつけぬぞというぐらいのことあんた言いなさいよ。こっちだって権威がないことおびただしいじゃないの、あんた。
  34. 井上裕

    委員長井上裕君) おたくの理事もいらっしゃいませんし、まあ質問続けてください。
  35. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) これは、志苫委員のおっしゃっていらっしゃいますことは、今のこの段階になりますとよく私わかっておりますのですが、先般成立いたしました昭和六十二年度予算におきましては、その歳入面特例公債発行することを予算の中で考えておるわけでございますから、したがいまして、その予算の中でございます特例公債の収入というものは、この法律案をお認めをいただかないと国債発行ができない。で、志苫委員は今でなくてもよかろうとおっしゃいますが、これはちょっと言葉が過ぎるかもしれませんが、予算がそうなっております限りは、いつかはこれをお認めいただきませんと特例公債発行はできないということになりますので、そういう予算を出しました者の立場といたしましては、こういう法律をお認めをいただきませんと整合性を欠くということでございます。
  36. 志苫裕

    志苫裕君 うちの理事がいないので私の発言も空振りになっちゃうんだが、主計局長、今度あんたに聞くがね、これは極端なことをいえば一年の間にこの措置がとられればいいんでしょう。仮に七月ごろ補正予算を組むでしょう、八月になるかわかりません。補正予算は今私が言ったそういう前提も少し——恐らく必ず皆さんの方で直しますよね。まさか入りもせぬ売上税をいりまでもその財源にしておくわけないでしょう。かわり財源も用意するでしょう。あるいはまた、歳出のある分についても幾らか入れかえるでしょう。それに新しい追加財政措置も講ずるんでしょう。というふうなことになると、少しずつ前提も変わってきて、追加財政措置をとったその予算とも整合性のある財源確保の手段というようなものを提起をできる。それまで待っても支障はないんじゃないの。ありますか。
  37. 角谷正彦

    政府委員(角谷正彦君) 税制の問題につきましては、今衆議院の議長のもとに設置されました協議会におきまして検討中でございますので、その取り扱い等を見ながら決着する必要がありますので、それ以前にどうこうということは、私どもから申し上げにくいということを御理解いただきたいと思います。  ただ、この法律について申しますと、先ほど大臣が申し上げましたように、そういった問題を別としましても、六十二年度予算を執行するためにやはり確たる財源の裏づけがなければならない。しかもその中で、六十二年度予算は相当収支ギャップがあるわけでございまして、その収支ギャップを特例公債発行その他で埋めなきゃいけないといったことがこの内容でございます。したがいまして、その特例公債につきましては、当初予算におきまして四兆九千八百十億円というかなり多額の公債を発行することを予定しておりまして、こういったものにつきましては、この法律がお認めいただけなければ発行できないわけでございます。  したがって、仮にこれが年度間を通じてどこかで成立すればいいじゃないかと言われましても、これは国債の円滑な消化を図っていく、いろんなことを行っていくためには、やはり早期にこれを通していただきまして、年度間を通じまして建設公債と合わせまして国債の円滑な発行、消化計画が立てられるということがぜひ必要なことでございまして、そういった意味でもこの法律のできるだけ早い成立をお願いせざるを得ない。そういうことでございませんと、私どもとしましては、財源に大きな穴があいている中での予算の執行につきましてどうしても慎重にならざるを得ないし、そういったことになりますと、またいろんな意味で支障が出てくるというふうなことでございます。
  38. 志苫裕

    志苫裕君 いや、これは余り長々やりたくないが、それは次長は無理して言っているんで、私がその衝にあれば八月ごろでも大丈夫だという感じもしないわけじゃない。だってこれは、法律の性格からいえば限度額を決めるわけでして、しかも年度を越した何月までの間に出せればいいというんだから、何もきょうでなくたっていいんですよ。だから私は、そちらの言い分は、いやいつでもいいですわなんて返事するわけはないんだから、これ以上言いませんが、委員長、これはやっぱり、こういうことがいつもあるわけじゃないけれども、国会というところはもう少し、それは議院内閣制ですから与党の立場はわかりますがね。これと同じことは例の日切れ法案に、法人税の減税先行分が日切れ法案の処理の形で入った。しかし、あの措置税制改革全体の中であって、後について来る者を信ずと言って先の者が行ったけれども、後の者は討ち死にして来ない。そういうことがわかっていたのなら今でも直したらどうと、あそこのところをもう少し延長しますと書けば整合性がついて、後の者がみんな来たらまた直したっていいことをわざわざ言うたんです。それくらいの見識で、皆さんがだめだったら、議会がやるべきだったけれども、議会はだめだった。議会というのはそれほどむなしいものじゃないという意味で、委員長、いつまでも大蔵委員長をやっておるんじゃないんで、後世に歴史が残る名裁きをしておくべきだと、あなたのあれのために言っているんだ。
  39. 井上裕

    委員長井上裕君) 御意見として伺っておきます。  どうぞ質問を。
  40. 志苫裕

    志苫裕君 これは理事会で相談してどこかに委員長の発言を入れるとか、それくらいの見識は示しておいてもらいたいですね。
  41. 井上裕

    委員長井上裕君) ちょっと速記とめて。    〔速記中止〕
  42. 井上裕

    委員長井上裕君) 速記起こして。  どうぞひとつ御質疑をお願いします。
  43. 志苫裕

    志苫裕君 私は大蔵委員会の新入りですから、そういうときでも審議を続けるしきたりがあるのかな。今回は理事会で決めた後ですから、私も従わぬと懲罰でもされても困るから。  じゃ、この審議を進めますけれども、審議の前提として、今後、追加財政措置が今論じられていますが、それのいかんにかかわらず六十二年度の特例、もちろん新たな繰り延べなども全部含めまして、この特例は変わりませんと、これから例えば五兆円のお金出すとか、したがってまた財源が足りませんのでもうちょっと借金額をふやしたいとか、そういう意味特例措置の追加を求めることはないという確認をしていいですね。
  44. 角谷正彦

    政府委員(角谷正彦君) 補正予算との問題につきましては、去る四月二十四日に決められました自民党の総合経済対策要綱の考え方を尊重いたしまして、現在鋭意、政府としての緊急経済対策ということを策定するように検討を急いでいるところでございます。これを受けまして、補正予算につきましては、これらを踏まえて今後検討するわけでございますけれども、その財源等につきましては、今後歳入歳出全体を見ながら、それぞれ個別に検討していく必要がございますので、現在のところ具体的なことをまだ申し上げられる状況にないということについて御理解いただきたいと存じます。
  45. 志苫裕

    志苫裕君 だから、後でもおいおい触れますが、財確法の扱いについて皆さん慎重でないんですよ。先のことは先のことで、とりあえずはひとつ借金の証文に議会さん判こ押してくださいよと言っているわけだ。裏打ちをする証文に判こを押す議会側は、これから先がどうなるんだ、まともに返すのか、できるだけ借金残高減らすのにどう努めるのか、というようなことをいろいろ確かめた上で判こを押すというのが財確法の趣旨でしょう。だけれども、今その初めての法案を審議しているときに、いや今度またあるかもしれませんが、そのときはまあ頼みますわと言って、それでほいほいと判こ押しますか、あなた。だから、そういう法案は審議に値しないと言ったんだけれども、こっちの方も大した権威がなくて、まあやってくれやと言うから私もやっているんだけれどもね。それはあなた、大臣、じゃ追加財政措置の中でやっぱり財源、新しい特例も考えざるを得ないというんなら得ないという答弁しなさいよ。いろいろあるがそれはほかの工面でやって、少なくとも特例措置の追加はございませんと言うならそういう返事しなさいよ。それでなかったら審議する前提が、もっともらしい審議して採決した途端に全然前提が変わっておったというんじゃ、一体おれは何をしていることになるの、これ。
  46. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 特例債の発行につきましては、この法律をもって限度にいたす覚悟でございます。
  47. 志苫裕

    志苫裕君 それじゃわかりました。  そこで、五十一年度以来、毎年恒例のように国会に財確法が出て審議をしてまいりました。特例公債に関して言えば、十年で返すとか、借りかえはしないとか、残高はふやさないとかというふうな、そういう厳しい縛りというふうなものを付しておるからこの特別の法案の意味があるわけです。ところが、いつの間にか六十年償還の四条国債との違いも全然なくなってしまったと。違いがあるから法律の意味があるんだよ。違いが全然ないのであれば、法律の意味もないという倫理に今なっていると思うんですが、違いがなくなれば特例債でも何でもないというのは理の当然じゃないかな。改めてこの財確法の実質的な意味は何です。
  48. 角谷正彦

    政府委員(角谷正彦君) 現在の財政制度におきましては、財政法四条ただし書きで公債の発行できる場合を公共事業、出資金、貸付金の財源ということで、いわゆる建設公債の原則に限っているわけでございます。そういった意味では経常的支出の財源特例債に求めるということは財政法としては本来予定していない、いわば財政上の実態としましては非常に問題があるといいますか、非常に緊急な異例な事態であるというふうに考えているわけでございます。そういった意味で、この法律によりまして、財政法の特例といたしまして、経常的支出の財源につきましてもいわゆる特例公債発行をお認めいただくということについての授権をいただくというのがこの法律の内容でございます。
  49. 志苫裕

    志苫裕君 そんなことはあなたに言われぬでもわかっているんです。だから十年も出ていたので、なぜそうなるのか。四条があって何で特例があるかというと、四条債と特例債は違いがあるからなんですよ。ただ単に、四条債のそのすき間がなくなったら、のりを越えるために特例債があると言っているんじゃないんですね。特例債には特例債の意味があり、質の違いもあるということを前提にしなければ意味がないでしょう。じゃなかったら、四条債の枠が書いてありますわな、公共事業、出資金、貸付金がな、その枠の範囲で出せるという枠のことをまた別にすれば全体ふえるわけですから。そういうふうに考えるんですが、とにかくその違いが今度なくなっちゃう。違いがないのに特例と言っているということは、実質的には意味のない話じゃないか。あなたが言うように、特例債を出すには授権を与えられなければなりませんので法律を出しています、それじゃちょっと答弁になっていないんでね、実質的に意味ないでしょう。
  50. 角谷正彦

    政府委員(角谷正彦君) 建設公債につきましては、御承知のように、これは国民の資産として、例えば橋梁にいたしましても公共事業の施設につきましても、そういったものにつきましては耐用年数を持ちまして長年にわたって国民の資産となり、その効用を長期にわたって発揮するという観点から、建設公債につきましては、必ずしも単年度の税収がなくても公債によって財源を調達するということが、ある意味では合理的だと認められているという実態があるわけでございます。それに対しまして、経常的支出というのはその年度に費消される経費でございますので、その効果というものはいわば単年度に終わる、しかもその負担は後年度の世代が負担する、こういったことでございますので、本来はそういうことは望ましくないということでございます。そういった意味で建設公債、特例公債が違うわけでございます。  そういった意味でございますので、私どもといたしましては、特例公債依存というこの現在の体質をなるたけ早く脱却したいという思想を持っております。そういうことで毎年毎年の予算編成で努力しているわけでございますけれども、そういう中で特例公債法を毎年度出しておりますのでこれは意味がないではないか、こういうお尋ねでございますが、これは昭和五十一年当時の大蔵大臣の大平前総理がお話しになりましたように、こういう異例な事態でありますからこそ、特に異常な事態であるといったことを踏まえつつ、毎年度毎年度汗をかきながら国会で御審議をお願いしていくというのが財政当局としてのある意味ではあるべき姿ではないか。こういった考え方を踏まえまして毎年度毎年度特例公債発行をこの十年以上お願いしているわけでございますが、いずれにいたしましても、そういう特例公債発行に依存するような財政体質をなるたけ早く改善し、そのような事態にならないように、できるだけの努力をしていくのが我々の努めであろうというふうに考えているわけでございます。
  51. 志苫裕

    志苫裕君 それは次長、五十九年まではそう言うとりゃよかったのよ、五十九年で借り方も返し方も同じくなったでしょう。大蔵省の帳面の上で気分的に違っているだけで、これはみんな同じことなんです。だから私は、そのけじめがなくなったなという点を指摘して聞いているんです。そもそも論を言えば、あなたもちょっと今御答弁になりましたように、建設国債原則禁止、だけれども四十一年度以来二十年も発行を続けて、いつの間にかそれはいい国債だというふうに印象づけをし ました。欽ちゃんのテレビに「良い子悪い子普通の子」というのがあるけれども、これはいい子だと、いい子というふうに印象づけるには悪い子を置けばいいわけです。これは差別の原則です。そこで悪い子を産んで、一方はいい子で一方は悪い子というふうにして、赤字国債は悪い子だから、悪い国債だからと言って縛りをかけてきた。そこまでは百歩譲ってまだいいとして、そのうちにそういうやり方でいわば財政でいうところの財政憲法をなし崩しにしたんですが、あげくの果てにはいい子も悪い子もなくしちゃって、みんな普通の子にしちゃったですね。  こういうやり方をとってきておって、なお特例債とは何ぞや。それをわざわざ法を別にして出す意味は何ぞや。意味がないんだけれども、元法にそういう手続だけは別にしないとだめということになっておるなら、元法をどうしますかという考え方があってもいいわけだし、依然として悪い子なんですというのであれば、五十九年の取り扱いを再びもとに戻すような所信表明やそういうものがあっていいわけだし、その辺のことも何もせぬでずるずるずるときて、みんな普通の子になっちゃっているというのが現状でしょう。それはさまざまないろんな圧力もありますが、財政憲法に忠実であろうとする当局者としてはまことに遺憾なことなんですよ。政治は思うとおりに動きませんけれども。それでも、財政憲法はもう古い時代のものだから意義はなくなりましたと、あくまでも財政の収支相償うべしというような原則、基本は持ち続けても意味はございませんとでもまさか考えているんでしょうかね。その辺の認識をまず述べてください。
  52. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それはやはり、いい子悪い子というお話がございましたけれども、特例債というものは財政法では本来認めていない、そのゆえに特例になるわけでございますが、経済的な意味合いは建設国債と今や変わらないではないかとおっしゃることに、一応の経済的な意味はそうでございますけれども、特例公債として私どもが区別をしておりますのは、やはりこういうものはできるだけ早くやめなければならない、こういう意識がございます。建設国債そのものは、これは簡単に発行を見通し得る将来でやめられるかどうか、またそういうことも私ども具体的に考えてはおりませんけれども、特例公債はやはりある段階ではここから脱却をしたいという考えを持っております。  そういう意味では、それがなかなか現実的には目標の年次でできるかどうかという問題はございましても、しかし、これはやはり特例特例であって本来やめるべきものである。本則はないのが本則であって、ある将来の時点でその本則に戻りたいということを具体的に考えておるわけでございますので、そういう意味で区別をしておるというのが本当のところではないかと思います。
  53. 志苫裕

    志苫裕君 それならそのような対応をしてもらいたいと思いますが、私は率直に言いまして、予算委員会等でたびたびこういう問題にぶつかってむなしいなと思ったんですが、四条国債でも特例債でもそうなんですが、償還方法や残高の推移がどうなるというようなものを見きわめるのが国会の役割です。財政当局の言いなりになって借金の証文に判こを押すのが能じゃないというふうに考えていますが、そこで財政当局は、毎年のように中期財政の仮定計算というふうなものを出すんですが、どうでしょう、たった一年でもいいがその線に沿って財政運営が行われたことがあったでしょうか。それに明示された形で赤字削減が行われたことがあった年は一遍もないですよ。予算編成やあるいは国債発行は全くそういうものとは別の次元でやられている。それがまた不思議ともけしからぬとも思われなくなっているところが私は財政民主主義の上からいって怖い。それはもちろん、仮定計算との乖離が出るのは、こういう生き物の世界ですから難しいでしょう。であれば、当然その原因はこうでしたとか、それをこういう形で補いたいとかというふうないわば計画の中間評価というようなものを行いながら、これは国会で説明すべきですよ。前の年にアクセサリーのように仮定計算を出して、それとは全く別の予算編成や国債発行を執行をして、翌年はまた知らぬ顔して別の仮定計算を出す。これはどういうことですかね、これ。むなしいですよ、本当に。これからはやっぱりそういう取り扱いをしてください。どうですか。
  54. 角谷正彦

    政府委員(角谷正彦君) 毎年度国会に予算審議の参考資料といたしまして「財政の中期展望」あるいは「中期的な財政事情の仮定計算例」というものをお出ししているわけでございます。この「財政の中期展望」につきましては、中期的な財政運営を進めていくための一つの手がかりといたしまして、現在の制度施策を前提といたしまして、一定の仮定のもとにこれを将来に投影したもので歳出を推計している。歳入につきましても税収につきましてと同様なことでございますが、特に特例公債につきましては、六十五年度脱却を目途といたしまして機械的にその残存の年数で割った金額、本年度でいいますと一兆六千六百億でございますが、本年度お出ししたものを中期展望に即しますと一兆六千六百億ずつ減額する、こういう前提を置いて、そこへ出てくる収支ギャップといったものをいわば要調整額という形でお示ししているわけでございます。この要調整額につきましては、やはりそれぞれの予算編成の段階におきまして歳入の確保なり、あるいは歳出の削減によってこれを調整していくという姿をとっておりまして、ここ五年間は特に一般歳出をゼロ以下に抑制するということで、歳出の削減を中心に要調整額の解消を図ってきているところでございます。  ただ、委員御指摘の点は、毎年度の中期展望でお示ししておりますところの機械的に計算されました特例公債発行額が毎年度そのとおりになっていないではないかということでございますけれども、これはやはり全体の歳入歳出動向、特に税収の動向等につきましては、機械的に計算しているといったふうなことから、いろいろなことからやはりその点につきましては、若干従来お出ししておりましたところの機械的ではございますが、計算いたしました赤字公債の発行縮減予定額よりはこれを下回っているという状況にあるわけでございまして、こういった問題につきましても、今後歳入歳出全体にわたりまして、それぞれの予算編成の段階で十分に議論しながら、この要調整額を解消する方策を進めていくということによって、今後とも特例公債依存体質からの脱却を進めていく必要があろうかというふうに考えているわけでございます。
  55. 志苫裕

    志苫裕君 私は意地悪ばあさんみたいにじくじく言いませんが、私が今指摘したのはそういうことなんです。そういうことだから、でも財政当局が国会に借金の証文の判こを押してもらうに当たって、去年はこういう仮定計算を出しましたが、これこれこういう事情でうまくいかなかったとか、このように改めたいとかという対応をすべきだというんです。去年のものは去年のもの、新しいものは新しいもの。見る方もわかったようなわからないような顔して、あれだけつくるのだって大変なんでしょうけれども、そういうやり方は財政民主主義の立場からいってよくありませんよということを、私は大蔵委員になったらいつか言おうと思っていたので、きょう言ったわけですよ。その点はひとつ強く要望しておきます。  次に、財政再建について入りますが、もう一々細かい数字は聞きませんし、言いませんが、幾つかの指標が示すように、政府財政再建計画は目標が遠のいておる、破綻しておると言っていいと思います。鈴木前総理は、これは宮澤さんの大将だね、計画目標が達成できないということを理由一つとして責任をとられたと巷間言われるんですが、そうであれば政治家の進退としては立派だと私は思います。  ところで、中曽根さんはその期間を延長して、そして定率繰り入れ停止負担の繰り延べあるいはNTTの株の売却等々、計画達成の要因としてはプラスなんです。計画達成にプラスの要因があったにもかかわらず、目標達成はだんだん遠く へいく。この事実は否定できがたいですね。それでも昔修身で習った木口小平のラッパみたいに、死んでも錦の御旗はおろしませんと言って頑張っている。今、はやらぬですけれども、こういう道徳は。まあ政権への執着なのか無責任なのかですが。実は大臣ね、二十二日の本会議の答弁を聞く限りでは、あなたもそれに今近いようなことを、この錦の御旗はおろせませんと言って頑張っておりましたが、何か確信の持てる材料でもおありなんでしょうか。
  56. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) せんだって本会議で申し上げましたことは、六十五年度に特例公債依存の体質から脱却するということは容易なことでない、年とともに実は難しくなっておりますということを申し上げました上で、それならばこの目標は改めるべきであろうということになりますと、新しい目標というものをどこに置くか。そのためにはこれから何年間かの我が国経済財政の見通しを持たなければなりませんし、またこの節は特に世界経済、為替などはその一例でございますが、から受ける影響が非常に大きいものでございますから、それらのことを将来に向かって、総合してどのような展望のもとに新しい目標を掲げるかということでございませんと、ただ看板のかけかえだけでは意味がないわけでございますので、そこで、そういう新しい目標につきましてこれは達成できる、いろんな状況からこれでいいというそういう自信が持てませんと今の看板だけをおろして済むというわけではございませんのでと、さように申し上げたつもりでございます。
  57. 志苫裕

    志苫裕君 私ども毎年審議にかかおっておるんですから、何もしてないと言っているんじゃないんですね。さまざまな手を打っておることは承知をしています。けれども、目標は遠のく。さてそこで、果たして目標が目標を得ているんだろうか、今やっている手法が有効なんだろうか、もっと大きいポリシーの誤りではないのか等々、問題の解明をしないで、政治的に錦の御旗を掲げていくだけでは私は国を誤ると思うんです、率直に。そういう懸念を持つ人がいてこれは当然だと思いますね。  そこで、どうでしょう大蔵大臣、私はむしろ政治的にいろんな意味合いは持っていると思いますね、この錦の御旗というのは。実際に経済的にそれがどのような効力を持っているかということは疑問だと。旗おろしたらわあっと圧力がきて、防ぎようがないという意味合いしか持ってないんじゃないのかという気がするんですが、どうでしょうね。かたくなにそういう調子で、先ほどちょっと指摘したような問題点の解明も行わずにずるずるといった場合、国際関係を初めとして、我が国財政はもちろんですが、経済社会にどういう影響が出てくるだろうか。そこから先は面倒なんですが、そのような影響がまた政治にどのようなインセンチブを与えていくんだろうか。やっぱりそこまで考えるべきじゃないですか、ここまできますと。そういう点、大蔵大臣、またずるずるもいけませんわな。ちょっと私、あなたからそういう点をひとつ予測してほしいんですよ。その予測を明確にすれば、変えるものは変える、なにするものはなにするというふうに国民的な論議を起こさなければならぬことだと思うのですが、私はこれも一緒に答えてもらいたいんですが、財政インフレの問題であるとかあるいは財政機能の喪失であるとか、あるいはそのことが社会的な不公正をどんどん拡大をしていくだろうというふうに指摘をしておきたいわけですね。  そのうち社会的不公正の問題だけにちょっと敷衍しますが、国債残高がどんどん高まっていく、したがって利払い費が二割出ていますね。そうすると、予算に占めるウエートがどんどん大きくなっていくでしょう。利払い費というのは、国債の保有者に対して国が支払う経費で、これは税金ですよね、利払いというのは。そうすると、この国債を保有しておって利払いを受ける者、企業もしくは個人ですね、そういう者はどちらかというと社会的な強者です、経済的な強者です、国債を保有して利払いを受ける者。その経済的、社会的強者に対して広く国民から集めた税金がどんどん流れていくという機構を財政がつくり上げているわけですね。国民から集めた税金の二割ないし三割を、国が発行する国債を保有することのできる社会的な強者に対して際限なく流していくという仕組みを財政がつくっている。こういう構図がだんだん大きくなっていくでしょう。利払い費がかさむほど財政を通じて経済的強者に金が流れていくという形になる。  もう言うまでもなく財政に課された役割の一番大きいものは所得の再配分、こう言われておりますが、国債利払い費の増高に伴って所得再配分の方は機能はどんどん失われていきまして、社会的不公正はどんどん拡大をしていく。その利払いの財源に広く薄く国民から間接税等でお金を集めて流していくといったら不公正が二倍に拡大するじゃないですか。五十兆円のうち十兆円、二十兆円というふうなものが、ほかに使えばほかに使い道があるのに、それが国債を買ってくれた社会的強者に、元金は返さないのですから、まさに永久に近く財政がお金を流す役割を果たすじゃないですか。現実にそういう形が進行しているじゃないですか。こういうことも含めて、どうでしょう、このままずるずるといったら、国際的にも国内的にも経済社会等にどんな影響が出てくるんだろうかということは、それは明らかにしておく必要があると思いますよ。いかがですか、大臣
  58. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ですから、一般会計の二割もが国債費になっておるということは実際に困ることでございますから、何とかそれを減らしていかなきゃいかぬじゃないか、その結論のところは私はもうそのとおりだと思っておるのでございます。ただ、その国債の利払いをするということは、借金をしておりますから借金の利子を払うんでございますが、それが強者に払われるということになりますと、やっぱり国債というのは、持っている方から言えば金融資産でございますから、その金融資産に対して支払いをしている。強者とおっしゃいますと、それは資産でございますから、資産を持っているのはどちらかといえば資産家だろうという程度の意味でならともかく、強者、弱者というふうにそこを分けて考えることはどうも私は十分には納得をいたしません。  それから、その上にまたそこから広く薄くとおっしゃいましたのは売上税のことかと思いますが、というのは、しかしそのような社会的不公正をなくすとすれば、それはやはり借金ができなければ租税でお願いをするということにならざるを得ません。ただ最後のところで、であるからこのような国債というものはなるべく発行を縮めていった方がいい、そうでないと国債費がますます大きくなるだろうとおっしゃいますことは、私ももうそういう実感を実は持っております。
  59. 志苫裕

    志苫裕君 いや、私は非常に政治的に先鋭化した売上税のことを別に頭に置いて言っているんじゃないんでして、きょうはあなたに私は時間がないから一々聞きませんけれども、そういう財政が社会的経済的強者とさせる、国債の保有は。国債の保有をちょっと聞きましたら運用部が二割六分以上、日銀が五、六%、銀行が約三割程度、海外が三、四%あるようですけれども、その他企業、個人がかれこれ四〇%持っているでしょう。有価証券の保有状況を見ますと、それの売買益などを見てまいりますと、大体所得三千万円以上の人が大体八割以上を保有しておるという状況から見て、NTTにくじでぽつんと一本当たったというようなのはたまにはいますがね、二百万ぐらい貯金持っているのがですね。だけども、大きく言えば、やっぱり経済的に余力のある経済的な強者のところが保有しておる。そこへ国の税金が二割もあるいは三割もだんだん流れ込んでいくという構図、これは立派なわけはない。これが社会的に公正なわけじゃないので、これをこともあろうに財政が、所得再配分の役割を第一義とする財政が果たすという皮肉な現象、これは恐ろしいと思わなきゃいかぬのでして、結構だ結構だと言っておれないでしょう。  そういう問題はやっぱりあからさまにして、財 政再建計画なら計画を立て直す、及ぼす影響などももっと国民に明らかにするとかいうことで、税財政の構造について国民の関心を及ぼしていかないといかぬのじゃないかという意味で問題を指摘したわけでして、これは都合が悪いから黙っていようなんていう問題じゃない。だから私は、このままいったら国を誤りますよと、気がついたときにはどうにもなりませんよということを言うとるんでしてね。これは勇気のある仕事ですが、やらなきゃならぬですよ。そういう意味大臣財政再建は、そういう問題を抱えて今道が遠いというのが現状だということを指摘しているのですが、どうですか。
  60. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 先ほどから国債残高GNP対比等々についてお尋ねがありまして、私はやっぱり一番痛切に感じますのは、一般会計の中の国債費が多いということでございます、これが財政のもうそのときどきの弾力性を非常に奪っておりまして、これを何とかしたいということは、やはり発行をそれだけ抑えていかなければならないということにどうしてもなってまいり、このことは一番頭の痛い問題でございますから、何とかしていかなければならないと思っております。おっしゃるとおりでございます。
  61. 志苫裕

    志苫裕君 所信表明によりますと、財政改革の目標は財政の対応力の回復でありますと、こう言っていますがね。それはもちろん財政役割を果たすには対応力がなければならぬ、異存はございません。果たしてそうなっているんだろうかということで、冒頭の質疑の中で局長さんでしたか、赤字がこうなっていまして、さまざまな指標でこの政策行革路線を進めてきての中期的な総括を先ほどしてみてくれましたが、もうちょっと財政の対応力というところに焦点を絞ってみまして、幾つかの指標を挙げて私の方でも調べてみました。公債依存度であるとか残高状況であるとか、国債費の動向とかあるいは総額の問題とか税収の動向、さらには国債発行のすき間等々の幾つかの指標を挙げてみて何か改善されたものはありますか。  先ほど国債依存度が少なくなったと言いましたが、なるほど国債依存度が一九・四に、かれこれ二〇、多いときには三割以上もありましたか。だけれども、これにはもう一歩横っちょへはじき出した分があるわけでして、ここに持ってこないで後年度にツケを回したとか先ほど言いましたが、後年度へ持っていった分が約十兆でしょう。それから去年繰り入れ停止した分が八兆でしょう。等等のものを横っちょに出したものはここへ持ってきませんから、単純に下がったように見えますが、これを横っちょに出さないでここへつけ加えますと、毫も向上の精神なくというところじゃないかな。余りいい指標は出ないですな。財政対応力の回復を財政改革の目標にして数年やってきて、何か改善がありましたか。
  62. 角谷正彦

    政府委員(角谷正彦君) 昭和五十五年以降、特に歳出削減を中心といたしまして財政体質の改善を図ってきたわけでございまして、その結果、先ほど御指摘がございましたように、公債依存度につきましては一九・四ということで、特例公債発行して以降初めて二割を割るという水準まで公債依存度を引き下げることができたわけでございます。他方、長期債務残高でございますとか国債残高でございますとか、利払い費の率というのは残念ながらなお上昇傾向にございますが、その伸び率についても若干ではございますが鈍化しつつあるということでございます。  今、委員御指摘の、ほかにいろいろな臨時特例措置によりまして歳出を見かけより少なくしている分があるではないかというふうな御指摘もございましたが、確かにそういったものにつきましてはそれぞれの制度施策運営に支障のない範囲内で臨時特例措置を講じたものが幾つかあるわけでございますが、そういったものは別といたしましても、昭和五十五年以降、特に厳しいシーリングの設定、それに伴います五年連続の一般歳出のゼロ以下への抑制、そういった過程を通じまして年金、医療、補助金等々、そういったものにつきましてやはりそれぞれの制度施策について相当切り込んだ、抜本的な制度改正を実現したというふうなこともあることも事実でございまして、そういった面では、私は数字以上に実態的な面での質的な財政体質の改善かなり進んでいるというふうに言わざるを得ない。ただ、そうはいいましても我々が目標としておりますところの特例公債脱却にはなおかなり困難な道のりが将来予想されるわけでございまして、そういった意味ではその道はなお半ばであろうというふうに認識を持っておるわけでございます。
  63. 志苫裕

    志苫裕君 それは特例公債発行を減らしていく、それ自体がどうも目標期間は無理だなと、NTTの株が順調だからといって、みんな返すという仕組みでもないようだしね。とにかく特例公債発行をゼロにするというのは、幾つかの財政改革目標のうちの一つなんですね。ただ、それが終われば財政改革ができたというんじゃないんですね。だけれども、何か議論が赤字国債発行をゼロにする目標ができたかできぬかということばかり言うものだから、それさえできれば全部終わったようなことを言いますが、そうではない。  ですから、財政改革は少し幅を広げた取り上げ方をしておられるようですが、次長おっしゃるような面、あるいはまた大臣が、日には見えない、数字には出ないが、受益者負担の仕組みがそれなりにできたとか、そして今の次長の答弁があった年金、高齢化社会へ対応して諸制度改革が行われたとか、これは見ようによっては悪くなったと言うこともできるわけでしてね、一方的にばかり私は評価はできない。ということになってみますと財政当局の立場は、政治的には別ですが、実務的に見ればちっともよくなってないと言っておののきを感ずるべきじゃないかな。そういうポリシーを掲げて政権存在理由に位置づけておるなら、中身はうちはぼろ家でも気のきいたことを言わぬといかぬという立場もありますが、しかし財政を預かっておる者はむしろおののきを感ずるという状況でなきゃいかぬのじゃないかな。突っ張ることないですよ。こういうところへ出て、あれもうまくいっています、これもうまくいっていますと言うことないと言うんだ。どれを見たってよくなっているもの一つもありはせぬじゃないの。そうじゃないかな。そこのところが変わらぬと、これはうまくできぬのじゃないかなという気がしますがね。
  64. 角谷正彦

    政府委員(角谷正彦君) まず最初に、大臣が申し上げましたように、公債に依存しない財政になるたけ早く持っていきたいという目標がございます。そのためには、先ほどから委員たびたび御指摘のように、特例公債、建設公債、いろいろ発行しているわけでございますが、その中でも現に御審議をお願いしておりますところの経常経費の財源を依存するところの特例公債依存からの脱却を、特例公債を新規発行するということをやめるという目標をまず第一の目標として推進していきたい。その上で全体としまして建設公債を含めまして公債依存度の引き下げを図り、さらに可能であればそれから先に公債残高をだんだん減らしていきたい、こういった段階的な目標を一応置いているわけでございます。  その目標に対しまして達成の度合いが少ないではないかと言われれば、それは私どもある意味では認めざるを得ないことがあることは事実でございますけれども、私ども毎年毎年の苦しい予算編成を通じまして各省にもそれなりの協力を求め、それぞれの歳出削減をやっている努力の跡は、またそれ自体私どもとしても自負できるものであるというふうに考えているわけでございまして、そういった努力がなければ逆にまたそういった特例公債からの脱却、公債依存度の引き下げ等々につきましても、現在よりもなお悪い姿になっているだろうということもまた反面において言えるわけでございまして、そういった意味ではなお努力は足りないかもしれませんけれども、なお今後ともそういった意味での努力を引き続き重ねていく必要があるということは私ども十分認識しているところでございます。
  65. 志苫裕

    志苫裕君 ところで、総理が二十二日の本会議で丸谷議員の質問に答えたときなんですが、おかげさまでNTTの株の売却も順調で財政の対応力も出てまいりましたと、こういう答弁のくだりがありまして、これは一体どういう意味なんだろうかと私はそこでしきりに考えていたんですが、話は別ですがね、一国の総理がキャピタルゲインに頼ってわあわあ言っているのもこれもまた不見識な話だと思ったけれども、それはそれで別にしまして、NTTの売却益が当初の見込みよりもふえて、これは試算は幾つもあるかもしらぬ、あるいは二十兆ぐらいになるかもしらぬなと、あるいはそれを超すかもしらぬなと、今の三百万円をベースに考えておれば。三百万円で皆さんことしの予算に組んだように、危険率を見て〇・八にしましても一千万株で二十七、八兆円になりますからね。そういう計算が出ないわけでもないんですが、それはそれとして、NTTの売却益が順調なだけでは財政の対応力は出たことにならぬのでして、これをどう使うかによって対応力が出てくるんですが、総理の答弁は使い方を考えて対応力が出たと言ったんでしょうか。  ごく簡単な話が、一般会計の方にあそこから持ってこなければだめなわけでして、持ってき方はいろいろでしょうがね。隣のうちの人が金持ちになったって、貧乏人の隣が喜んでも何も意味がないので、何かの仕組みでてめえのところに向ってこなければ意味がないんですが、総理が財政の対応力が出たというのはどういうことを意味したんでしょうか。わかりませんかな。あなた方が答弁材料をつくったんじゃないかな。
  66. 角谷正彦

    政府委員(角谷正彦君) NTTの売却益の使い方の問題につきましては、現に百五十二兆円という非常に大きな国債残高がございます。これを少しでも少なくするということがやはり国民全体としての課題であるわけでございますので、NTT株式という国民共通の貴重な資産を国民共有の負債でございます国債償還に充てるということを基本として、そういったことは既に制度的に確立されて国債整理基金に帰属しているといった状況にあるわけでございます。  そういった意味で、現に御審議をお願いしております財確法案におきましても、NTT株売却益が六十二年度のような一般会計からの定率繰り入れ等を停止せざるを得ない状況のもとで、現行の国債償還ルールを何とか維持していくというためには、かけがえのない財産であるというふうに私どもは考えているわけでございます。そういう意味で、仮にNTTの株が非常に予想外に高値に売れた場合これをどうするかということについては、いろんなところで御議論があるわけでございますけれども、私どもといたしましてはやはりこういった国債償還の基本という大原則、この中に立ちました上で、仮に国民共通の貴重な財産を一時的な財源として使用する場合におきましても、こういった範囲の中でその使い道を慎重に検討していく必要があるだろうというふうに考えているわけでございます。  総理が財政の対応力を回復されたと言ったことの意味は、私どもちょっとにわかにはその御真意について判断する立場にございませんけれども、やはり行財政改革の推進によりましてNTTを民営化していくといったふうなことによりまして、こういった株式の売却益といったものを国債償還財源あるいは三分の一につきましては産投会計に帰属いたしまして技術開発等の資金に充てる、こういったふうな仕組みを含めまして、いろんな意味で有効に使い得ることをおっしゃられたものではないかというふうに理解しております。
  67. 志苫裕

    志苫裕君 あなた言葉は余計言ったけれども、何も答えてない。NTTの株の売却が順調で、基金に思ったよりも余計たまります、これはわかる。それが財政の対応力の回復になりますと言うにはもう一つ次の作業をしなきゃだめでしょう、あそこに幾らたまったって、それは。あの中でできる借りかえをもうしないとか、残高を減らしていくとか、六分の一というようなやつをそうじゃなくて、六十年と言っていたのをまた十年にするとかという、そっちの方のできることはできますが、それ以外のことはこれできないわけでしてね。財政の対応力に寄与できるということはどういうことなんですか。NTTのあれをいろんな原資に使うということですか。大臣、簡単でいいですよ、答えてくれれば。
  68. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) あの答弁は私も聞いておりました。あれは行財政改革をやった結果、NTTというものを民間会社にすることができて、その結果として政府がその株式を所有をすることによって、いわば国の処分し得る資産がそれだけできましたということを総理は言っておられました。それをどういうふうに使うかということについてはあのときも言っておられませんでした。そういう発言であったと私は聞いております。
  69. 志苫裕

    志苫裕君 あなた、とぼけちゃだめだ。それなら、おかげさんでNTTの売却が順調でありますととめておけばいい。財政の対応力もそれでつきましたと言うんでしょう。財政の対応力というのは、ぼやっと言っているんじゃないんですよ。どういう使い方するかによって出てくるわけだ。そこをお考えになっているんですかと聞いている。
  70. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 総理が言われましたのは、これだけいわば国の処分し得る資産がふえましたということを答弁をしておられました。それをどういうふうに使うかは確かに総理は言われませんでしたけれども、処分し得るそれだけの資産がふえたわけでございますから、その程度で、財政にプラスになったと、こういうことでございましょう。対応力という言葉はちょっと大きかったかもしれませんが、まあまあそういうことを言われたんだと私は聞いておりました。
  71. 志苫裕

    志苫裕君 一国の総理が本会議で答弁するなら、意味もないことを言いなさんなということを言ってくださいよ。  私は、やっぱり意味があると思うんですね。今、一方では減税財源にどうか、いや、そんな恒久的なものに一時的な金は使えないという大蔵省の意見があるようですね。それなら公共投資にどうだとか、あるいは一般財源化したらどうかとか、さまざまな意見が出てきておることを念頭に置いたのかなという意味であなたに聞いた。どうですか。
  72. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) なるほど、そうであるかもしれません。もともと減税に使うかという議論もありまして、私どもそれはやはりちょっと適当でない、国民の過去の蓄積の資産でございますから、負の資産の償還はこれは国債償還でよろしいとして、余裕がありましたら今後の資産形成のための投資的な形で使いたいということを私ども思いまして、総理もほぼそういう考えに理解を示しておられましたから、あるいはそういうことが頭にあったかもしれません。それ以上のことをいずれとも言われませんでしたので、何にせよ一つ処分し得る資産ができましたということであったんじゃないかと思います。
  73. 志苫裕

    志苫裕君 大蔵の意見は今の答弁がありました。しかし、例えば百四国会で竹下大蔵大臣が、建設、赤字国債ともに全額借りかえの話が出て、勉強中でありますという答弁のくだりがあったんですが、NTTの株式が順調であれば、ほかに使うかどうかは別として、そこの中の財布は豊かになるわけでして、少なくとも全額借りかえとかそういう勉強はやめてもいいような環境だというふうには思うんですが、この話はどうなっているんですか。
  74. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) この話は、政府に入ります前に私にちょっと関係のある問題でございまして、いかにも財政が苦しゅうございますから一部現金償還するということは、片方で国債発行している以上どんなものであろうか、全額借りかえということも考えられるではないかということをかつて申したことがございまして、それが国会でも御議論になり、竹下大蔵大臣の答弁になったといういきさつであったと思います。
  75. 志苫裕

    志苫裕君 勉強はやめたのか、しているのかを言ってくれればいいんです。
  76. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) いや、勉強はやめたわ けではございませんのですけれども、先ほどからのお話もございまして、とにかくNTTの売上代金の一部で償還期の来るものは償還ができるのでございますから、そういう意味では、それができる限りやはりその部分は続けていこう、ただ、余分のところまで償還することはないので、残りは先ほど申しましたような目的に使うのがいいかなということで、私もかつて言い出しましたことはこのごろ黙っておるわけでございます。  先々の問題としてはいろいろな問題が国債についてはあると思うんでございますけれども、国債の管理につきましては、今急の問題であることはない、こう思っております。
  77. 志苫裕

    志苫裕君 私は、まさか繰り上げ償還といっても人に売った国債期間が来ないうちに返すわけにいきませんけれども、借りかえの方に少し、借りかえはできるだけしなくするとか、あるいは赤字国債の分の、六十年に延ばした分も償還をこれまた五十九年以前のものに改善するとかいうふうにするべきだ、ましてや勉強やめたような、やっているようなこと言っていますが、つまらぬ勉強はやめた方がいいというふうにこれは申し上げておきます。  この問題に関して最後になりますが、後の年度へ繰り延べた、かれこれ十一兆円ぐらいありますが、これは六十六年度以降返すとこう言うんですが、これ、本当に返しますかね。六十五年度計画達成を前提にして六十六年から返すというふうに言っているとすれば、六十五年度計画達成のモラトリアムができると繰り延べのお返しの方もモラトリアムができるという論理になっていくんですか。まさか江戸時代の徳政令のように本日以降貸し借りなし、こうやっちゃうことはないだろうと思うが、これはどうですか。明確に言ってください、簡単でいいですよ。六十六年以降返します、繰り延べ分は返します、財政再建そのものにモラトリアムが出たらそれも、そっちの方も雨天順延でいきますということなのかどうか。はっきりしてください。簡単でいいですから、もう時間がなくなりましたから。
  78. 角谷正彦

    政府委員(角谷正彦君) 今御指摘のものが、その十一兆というのはどういう中身になるかということについて、ちょっと必ずしも私ども内訳を承知しておりませんけれども、厚生年金の繰り入れ特例とか、あるいは住宅金融公庫補給金とか国民年金の平準化措置とか自賠責とか、あるいは自治体の借入金等々、いろいろなものが恐らく頭にあっての話だと思いますが、それぞれにつきましてあるいは法律で、あるいは覚書等によりまして、一応返済をどうするかということについてはそれぞれ取り決めがあるわけでございまして、全部六十六年以降ということには必ずしもなっていないわけでございます。そういった中で私どもとしては、なお六十五年脱却目標という目標を捨てないで、できるだけそういった六十五年脱却のために歳出歳入両面から努力を引き続き続けてまいりたいというのが基本でございます。  こういった御指摘の問題につきましては、それぞれの制度施策運営に支障がないように、その段階においていろいろ検討してまいりたいというふうに考えておりますが、いずれにしても、いろいろ繰り延べしました制度施策に支障があってはならない。必要適切な措置を講じてまいりたいというふうに考えております。
  79. 志苫裕

    志苫裕君 次長、あなたの答弁をさっきから聞いていると、私がこう聞いているのに、こんなこと答えないで、繰り延べは六十六年からやるのかと聞いたら、やりますとか、場合によったら延ばしますとかとはっきり言えばいいので、今のは何か延ばすようでもあるし、支障のないようにするには決まってるんですがね、どうも余りはっきりしないな。  ちょっと私はこの際これについて指摘をしておきますが、この負担繰り延べ、六十二年十一兆くらいになっているんですが、地方財源にした臨時財政特例債千二百億円、これは、考えてみますと、臨時財政特例債と、臨時がついていますように、本来その性格からいきますと、国債をもってあかなうものなんだ。それを地方債に肩がわりしただけなんでして、これも性格的には後年度に負担を繰り延べたのと同じ意味合いを持っている。この点は確認できますか。
  80. 角谷正彦

    政府委員(角谷正彦君) 六十二年度の補助金引き下げに伴う千二百億円のことでございますけれども、六十二年度におきましては、御承知のように公共事業等につきまして補助率、負担率の引き下げを行いましたが、引き下げに伴いますところの地方財政への影響につきましては、地方財政運営に支障のないように所要の補てん措置を講じたわけでございまして、その中で、いわゆる公共事業の補助率、負担率引き下げに伴います国費の減少相当額千二百億円につきましては、臨時特例債によりまして補てんする。しかも、その元利償還金につきましては、地方交付税への算入を通じて適切な財政措置を講ずるということで、国が元利償還の九割に相当する額、具体的には交付団体に係る元利償還金の全額につきまして、後年度におきまして地方交付税に加算する措置を講じたところでございます。  そういったことでございまして、これらにつきましては、所要の法律措置も講じられておりますので、それに従って措置してまいりたいというふうに考えております。
  81. 志苫裕

    志苫裕君 そのような措置が講じられている地方債に対して九割以上を国が持ちますというのは、景気政策として国の肩がわりをしてもらったと、本来なら国債でやるべきところを、地方債に振り分けたという性格を持っているということを確認をしておれば結構であります。  最後に、追加財政措置について、残された時間若干お伺いします。  二十九日に緊急経済対策を打ち出す、それに伴う所要の追加財政措置が講じられるということになっておりますが、その中身はもう新聞報道によってほぼ言われていますからおいおい聞くことで、総括的な答弁は要りませんが、大臣、緊急対策というのは、普通の場合差し迫った事情があるということですね。緊急経済対策を講ずる差し迫った事情というのは何ですか。それは差し迫った事情がいつ発生したのか。予算編成のときには想像もつかなかったことなんですか。
  82. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) やはり我が国の貿易黒字が依然としてどうも減りませんで、政府見通しよりかなり大きく上回ることになりました。これは予算編成のときには予測をいたさなかったことでございます。そこからくる対外的ないろいろな摩擦もまた大きくなってまいりましたし、またもう一つは、それの反映でもございましょうが、為替レートが予算編成時よりはさらに円に対して強くなったといったようなこともございました。それらの結果として、またことしに入りましてから国内の製造業を中心とした不振、あるいは炭鉱、造船等々に集中しました一種のやはり企業の縮小、そこから起こります雇用問題等々、予算編成時に見通しましたよりもかなりそれらのことが深刻になってまいりました。それに加えまして、そのよって来るところは、ともかく予算の成立もかなりおくれまして暫定予算でつながざるを得ないというようなこともございましたので、そういう事態に緊急に対処をいたしたいと考えておるわけでございます。
  83. 志苫裕

    志苫裕君 それぐらいのことは予算編成のときからわかっておったわけでして、少し定見がないと思いますよ、大蔵としては。  それはそれとして、この減税一兆円程度が論じられておりますが、追加財政措置五兆円を下らないというのが自民党の経済対策要綱にも載っておりますし、そのように報道もされておりをする。減税はこの追加財政措置五兆円を下らない額の外側ですか内側ですか。それを答えてください。
  84. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 減税をどうするかということを実はまだ決めかねておるわけでございますけれども、もし実施をいたすとしますと、これは五兆円の内でございます。
  85. 志苫裕

    志苫裕君 五兆円の内側。外側だと当然に思っておるといってアメリカ筋から言ったという話が 大臣からの話で……。  じゃそのことはほぼ間違いないですね。五兆円の内側であります。それが同時にやれるか、分けてやれるかは協議会の協議なども少し横目でにらむと御答弁なさるんですね、ここでは。
  86. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 五兆円を上回る財政措置を伴う内需振興策、こういうことでございまして、減税をやらせていただくことができるといたしますと、その枠の中で考えたいと思います。
  87. 志苫裕

    志苫裕君 そこで、今度の追加財政措置の性格を少し聞くために、冒頭大臣所見なども伺ってきたんですが、今度の追加財政措置は緊急避難とでもいうか、短期の景気刺激という位置づけを持つのか、あるいは中期の視点を踏まえたものになるのか。ここのところは先ほど大臣答弁の中に一遍の補正予算をもってしては現局面の打開はできないというお話がありましたが、その限りにおいては中期の視点を踏まえたものという受けとめ方もできますが、緊急経済対策と銘打ちますと、これはまさに緊急避難、短期の景気刺激という意味合いが強くなります。中期の視点を踏まえたものということになりますと、いささかポリシーの転換をも含むという意味合いを持ってまいりますが、大臣、どういう性格を持ちますか。
  88. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 緊急と銘打ちましたのは、先ほど申し上げましたような最近起こりつつある事情を反映したのでございますが、同時にこれをお願いするといたしますと、臨時国会をお願いいたさなければなりません。補正予算、臨時国会というようなことは通例からいえば異例のことでございますから、そういう意味合いも持っておる。なるべく早い機会にというようなことを政府としては、できましたらお願いすることになるのではないかと思っております。そういう意味合いもございます。  ただ、内容は、持っております対策の性格は、冒頭に申しましたとおり、一度やれば事態が済むというようなものではございませんので、引き続き行われます来年度の予算編成にもそういう同じ考え方をもって臨まなければならない、こう思っております。
  89. 志苫裕

    志苫裕君 冒頭に少しやりとりしました宮澤経済論というふうなものを伺う限りにおいては、当然中期の視点を踏まえたものになるだろうと。また、そうでなければ論理矛盾もあるという感じが私にはいたしまして、当然それは一部政策の手直しでもある。ぜひそのような位置づけにすべきだという主張をしたいと思います。  先ほどもたびたび話が出ましたが、ボンサミットがありまして、その後いわゆる機関車論等があって、いろいろあった状況が、今度の追加措置が五十三年の模様に非常に似ていると同時に違う局面もある。類似性と違う局面もあるんですが、どうでしょう、五十三年の状況及びとった措置とその効果、そしてそれらと今度の措置のねらいなり目標なり効果予測というふうなものを対比させて御説明いただくとありがたいですが。
  90. 足立和基

    政府委員足立和基君) お話しございましたように、五十二、三年当時と現在とではある程度経済情勢等におきまして類似点がございます。  一、二申し上げますと、例えば経常収支の黒字、これは現在とはかなりけたが違ってはおりますが、当時といたしましては例えば五十一年、暦年でございますが、黒字が三十六億ドルでございましたけれども、五十二年には百九億ドル、五十三年には百六十五億ドルと急増をいたしております。現在もけたが違いまして経常収支が大変に大きくなってきておるというのは、御承知のとおりでございます。また、こういうことを反映いたしまして円レートも五十二年の初めには一ドル二百九十円でございましたが、五十三年の四月には二百二十円、五十三年の十月には一ドル百七十円というぐあいに大変急速に円高が進みました。六十年の二月、二百六十円から例の九月には二百三十円、そして現在百四十円と大変急速に円レートが上昇しているというようなことも類似点の一つだと思います。それから一方では、円高デフレというようなことで金利も非常に低下をいたしまして、公定歩合も当時では累次の引き下げで三・五%となりました。今回は、現在は史上最低の二・五%になってございますし、物価は非常に安定しておるというような経済情勢では幾多の類似点がございます。また、いろいろな国際会議等を通じまして黒字国の内需拡大策の要請があるというような状況も似ておるかと思います。  一方、財政状況は、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、当時と比べますと現在大変に厳しい状況にございまして、例えば公債の残高であるとか国債比率であるとか、詳しくは申しませんが、当時と現在とではかなり比較にならないほどの厳しい状況にある。そこは大きな相違点ではないかと思うわけでございます。  以上が状況でございますが、今度措置でございますけれども、五十三年の総合経済対策といたしましては、公共事業等で二兆五千億円の措置を行ったということで、財政面におきまして総額二兆五千億円の公共投資の追加等を行ってございます。現在は自民党の要綱を参考に尊重いたしまして、政府において緊急経済対策を策定中でございます。五兆円を上回る財政措置ということでございまして、まだ規模自体は確定はいたしてございません。  それからまた、効果でございますけれども、当時はGNPに対しまして、これは企画庁の方の発表といたしましては、一・三%程度の押し上げ効果があるというぐあいに言われたものでございますが、先ほども申しましたように、七%の成長に対しましては当時の四十五年基準で五・七%、現在の五十五年度基準では五・二%の成長になった。その後に大変大幅な財政赤字の問題が残ったということは先ほど申し上げたとおりでございまして、今回の対策の効果につきましては、まだ対策の内容が具体的に固まっておりませんので、これから検討させていただくことになろうかと思います。
  91. 志苫裕

    志苫裕君 最後にしますが、これから税制改革が論じられることになります。振り出しに戻ってやるんだと思うんですが、財政当局、大蔵省は税政改革はあくまでも税収中立性を堅持するというふうに考えておられるんですか。これが一点。  そろそろ各省から税制改正要望というふうなものが出てくるはずですが、一方ではさまざまな協議が進むという状況を考えると、各省庁から出る税制改正の要望事項はどのような扱いになるか。この二点だけ答えてください。
  92. 大山綱明

    政府委員(大山綱明君) 税収中立性の問題でございますが、私ども今回の税制改革に取り組みましたときには税収中立ということで税制のゆがみ、ひずみ、そういったものを直すということを眼目に考えて、現在国会に諸法案を提出いたしておるところでございます。協議機関において御審議が進むということで、私どもとしてはその推移を見守ってなおかつお手伝いをさせていただく、こういうスタンスでございます。  次に、各省庁から税制改革についてあるいは各種の政策要望があるかというお話でございますが、まだこれからでございまして、大体年末に近い秋も深まりました段階から要望があり、それを年末にかけまして議論をしていく、こんな段取りが例年のものでございます。現在経済緊急対策絡みで各省からの意見が若干出ておりますが、これも協議機関においてこれから税制改革についての御議論が始まるということも念頭に置きながら今後の対応を考えていかなければならない、かように考えている次第でございます。
  93. 志苫裕

    志苫裕君 終わります。
  94. 井上裕

    委員長井上裕君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時三十分まで休憩いたします。    午後零時十七分休憩      —————・—————    午後一時三十分開会
  95. 井上裕

    委員長井上裕君) ただいまから大蔵委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、昭和六十二年度の財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関す る法律案議題として質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  96. 多田省吾

    ○多田省吾君 私は、法案質疑の前に二、三当面の問題について御質問いたします。  最初に、自治省の方に来ていただいておりますので、お急ぎのようですから最初に質問いたします。  固定資産税の三年ごとの評価がえが来年一月一日にございますが、今そのための準備がなされていると思います。そこで、首都圏を初めとする大都市圏における地価高騰というものがこの評価がえにどのような影響を与えるかであります。地方税法には三百四十一条に、価格とは「適正な時価をいう。」このようにありますが、この適正というのは何を基準にされているのか。私は、国民生活を守る意味からも、この地価暴騰が今回の評価がえに絶対結びつかないよう措置すべきである、このように考えますけれども、お答えいただきたいと思います。  今、都心や山の手方面歩きますと、もう多くの方々から来年の固定資産税の評価がえはどうなるんだ、これが高くなったら東京に住めなくなる、こういう声が上がっております。大変切実な問題でございます。都心あるいは山の手方面は今地価高騰のために若い方たちがもう住めなくなっている、こういう状況でございます。また、高齢者の方々も地価高騰したからといって何にも得はない。先祖代々わずかな面積の土地または住宅を持っておられましても、もしこの固定資産税が大変高騰するようなことがあったならば、これはそこに住んでおられなくなる。そしてまた、その土地あるいは住宅を売ったとしてもまたかわりの高い住宅を周りに求めざるを得ない、こういう悪循環につながります。そういう意味で、やはり大都市圏における生活を守るために、庶民の生活を守るためにどうしてもこの固定資産税の評価がえにおける高騰というものは私は防がなければならない、これは異常現象である、このように思わざるを得ません。自治省はどのように考えておられるのか。
  97. 佐野徹治

    説明員(佐野徹治君) お答えいたします。  大都市の中心商業地等につきましては、地価の高騰が見られることは御指摘のとおりでございます。六十三年度の土地の評価がえにつきましては、現在課税団体において作業が進められているところでございますけれども、自治省におきましても全国的な観点から、評価の基準となる地点につきまして適正な評価が行われるよう調整を行っているところでございます。その場合、御指摘のような特異な地価の状況にも十分配慮をいたしながら課税団体と調整を図ってまいりたいと考えておるところでございます。  固定資産税におきます土地の評価は、いわゆる不正常な要素を除いて適正な時価を評定するものでございまして、昭和六十三年度の評価がえに当たりましては、前回の評価がえ後の状況の変化だとか、資産価値の変動等を勘案いたしまして、また固定資産税の性格等も踏まえまして適正な評価がなされるよう調整を図ってまいりたいと考えておるところでございます。
  98. 多田省吾

    ○多田省吾君 今お答えがございましたが、私どもはやはり自治体にも強くこの点は要望してまいりますけれども、自治省におかれましては、ひとつこのたびの地価暴騰を評価がえの要因になさらないように強く希望するものでございます。  これは私は大蔵省にも若干お伺いしたいのでございますが、この地価暴騰の陰には地上げ屋の暗躍とかあるいは我が国の金余り現象、これが大きな要因になっているわけでございます。こういった問題につきまして大蔵大臣はどのようにお考えになっておられるか、お聞かせいただきたいと思います。
  99. 足立和基

    政府委員足立和基君) 確かに最近のマネーサプライを見ますと、M2プラスCDで見まして三月が九・〇、四月が九・八とかなり高い水準を示しておりまして、一方では、今先生御指摘のような地価の上昇、あるいは株価の上昇というような現象が出てきてございます。全般的に金融緩和の状況にあることは御指摘のとおりでございますが、このマネーサプライの状況につきましては、四月には特に国鉄の民営化であるとか、あるいは大口定期預金の限度が引き下げられたというような特殊要因もございまして、なおしばらく推移を見守る必要があるかと思います。  地価の上昇につきましては、御指摘のように、確かに都心部においては地価の顕著な上昇が見られますが、我が国全体といたしましての上昇はかなり落ちついた土地の動きを示してございまして、私ども東京近辺、首都圏地域を中心とした上昇であろうかと思います。東京につきましての地価の状況につきましては、基本的には旺盛な事務所需要というようなものがやはり背景にあるのではないかと思っておりますけれども、いずれにいたしましても、投機的な土地の取引というようなものが行われないようにいろいろ関係各省とも連絡をとって、例えば土地取引の届け出制の創設とか、あるいは国土利用計画法の的確な運用とかに努めておるところでございます。
  100. 多田省吾

    ○多田省吾君 次に、けさも経済閣僚会議が行われたそうでございますが、いわゆる緊急経済対策について大臣にお伺いしますが、その中には公共事業とか住宅、中小企業あるいは減税あるいは輸入拡大、こういった方針が入るそうでございますが、総理も公的支出をふやしたい、あるいは真水の濃い内容にしたい、このようにおっしゃっておりますけれども、二十九日に閣議決定されるわけでございますが、内需拡大のための緊急経済対策の中に六十二年度の所得減税をきちっと入れるおつもりだと思いますが、その際私どもは、本会議でも同僚議員が質問されましたように、緊急にNTT株の売却益等による戻し税方式を入れるべきだ、このように主張しているわけでございますが、大臣はどのようにお考えか。また伊東政調会長は、この次の大型補正予算には減税も入るとはっきり明言しているそうでございますが、この点もお聞かせいただきたい。
  101. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 今月の二十九日に緊急経済対策を決定いたしたいと考えておりますが、五兆円を上回る財政措置を伴う内需拡大策ということで、これに減税措置を含めるべきであるという考え方が私ども政府・与党内部で有力でございます。その際には五兆円の中にそういうものを含めるということでございますが、ただ衆議院で議長のごあっせんによりまして、税制改革全般につきまして各党協議が行われることになりましたこともございまして、御協議との関連をどのようにすべきかということにつきまして、まだ最終的に今の点を決定に至っておりません。できるならば、所得税等の減税を盛り込みたいと、私としては希望いたしております。
  102. 多田省吾

    ○多田省吾君 私どもも所得減税は速やかにやるべきだと、このように思っております。ただ私どもは、所得減税はやるべきだけれども、この五兆円を上回る緊急経済対策の内容には含めないで別個にやるべきだと、このように主張しているわけです。けさの閣議でも建設大臣等は、含めるべきではないと、別個にやるべきだと主張なさったと聞いておりますが、そのような大臣も多かったと思いますが、いかがでございますか。
  103. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) そのような御意見もございましたけれども、全体といたしまして、五兆円の中で考えるべきであるというのが今朝会議をいたしましたときの大勢でございました。
  104. 多田省吾

    ○多田省吾君 それでアメリカや諸外国の批判に耐えられるんですか。
  105. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) これはまあこの際どのぐらいな規模公共事業等々を必要とするか、あるいは可能かといったようなこととも関連いたしまして、まずまずあれこれ含めて五兆円を上回る程度ということが適正でもあり、また適切でもあるというふうに考えております。
  106. 多田省吾

    ○多田省吾君 七月の初めに召集されると思われる臨時国会に政府は大型補正予算を出すと言っておられますが、その中には減税は当然入ると思いますが、いかがですか。
  107. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 七月とかあるいは臨時 国会とかいうことはまだ何も決定をいたしておらないわけでございますけれども、緊急経済対策は文字どおり緊急でございますので、なるべく早い機会に補正予算を編成いたしまして国会の御審議を仰ぎたいと考えておりますことは事実でございます。  なお、減税の問題は、先ほど申しましたように、今最終的な確定をしておるわけではございませんけれども、恐らく臨時国会と存じますが、決定いたしますれば来るべき国会におきまして御審議をいただくことになろうかと存じます。
  108. 多田省吾

    ○多田省吾君 重ねてお伺いしますが、このたびの減税は緊急対策でございますから、私はNTT株の売却益等による戻し税を早急にやるべきだと、このように思うわけです。NTT株の売却益等は一過性のものだとか言っておりますけれども、国民のものであることにおいては変わりない。増税を図ろうにも、これは国民のものでございますから、またNTT株の売却益はここ数年活用されるわけでございますから、少なくとも本年度の減税は早急に戻し税方式で、しかもNTT株の売却益とか不公平税制の是正とか、そういった面でやるべきではないか、このように思いますが、大臣のお考えを再度お聞きしておきたいと思います。
  109. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) NTTの株式の売却は確かに本年度だけに限るものではございませんが、しかしさりとて、恒久的な財源であるというわけでもございませんことは、多田委員のよく御承知のとおりのことでございます。そこで、戻し税というものは性格上一遍限りのものだということはそのとおりでございますが、戻し税をいたしますと、その後の税負担の水準というものは、やはり事実問題としてその水準に下がってくるということはこれはもう覚悟をしておかないとなりませんので、戻し税という名ではあっても実はそれが恒久化するということは覚悟をしておかなければなりません。  そういたしますと、一時的な財源でこれを賄うことはやはりいかがなものであろうか。他方で私どもはもしNTTの売却収入に予算で見ております以上の余剰がございましたときには、これは過去の国民努力蓄積の資産でございますので、国債償還後は将来の国民のやはり何かの財産形成のための投資、そういう役割を与えることが適当ではないかというふうに考えておりまして、政府部内でかなりそのための意見調整が進んでおります。そういうこともございまして、できますならNTTの売却収入は余剰がございましたら、そのように使わしていただきたいと思っております。
  110. 多田省吾

    ○多田省吾君 次に、六十三年度予算編成方針の中で、昨日の新行革審に対しまして総理の方から諮問が出たと聞いております。その中で投資的経費のマイナスシーリングは見直してくださいというような諮問があったように聞いております。その際、経常的経費についてのマイナスシーリングはそのまま続行される方向で諮問なさったのか、それが一点ですね。  それから、六月になりますと、今度は財政制度審議会が開かれまして、当然内需拡大の財政運営の転換が諮問されると思いますけれども、その際も現行の投資的経費のマイナス五%シーリング、それから経常的な一般行政経費のマイナス一〇%シーリング、この両方を積極財政に切りかえるために見直すという具体的な諮問をなさるのか。この二点お伺いしておきたいと思います。
  111. 角谷正彦

    政府委員(角谷正彦君) 昨日、五月二十五日でございますが、行革審の第六回の会議におきまして総務庁長官の方から、昭和六十三年度予算編成へ向けてこの夏までに当面の行財政改革の推進に関する基本方策について御提言をいただければ幸いでございますと、こういうふうにおっしゃられたようでございます。新行革審におきましては行財政改革を引き続き着実に推進するという立場から臨調、旧行革審の答申等の実施状況、あるいは今後さらに具体化させるべき課題について審議が行われたと、その一環としてこういうお話があったわけでございますが、当面の行財政改革について基本方策についてこれから検討されるということでございまして、その内容の進め方等については今後同審議会等において決定されるべき話でございまして、私どもとしては具体的に承知しているわけではございません。したがいまして、マイナスシーリングの問題等につきましてどういうお話があるか、これはその段階において私どもの方にお尋ねがあれば、その段階で私どもは審議会の方に協力してまいりたいというふうに考えております。  なお、財政制度審議会のことでございますが、財政制度審議会におきましても、概算要求基準設定に際しまして毎年会長談話という形で審議会の御意見をいただくことになっております。そういう意味では、大蔵大臣から諮問して行うということではございません。本年度につきましても、概算要求基準を含めまして、今後の財政運営に関しまして財政制度審議会の御意見を伺う必要はあるいは出てくるんではないかというふうに考えておりますけれども、具体的な手順でございますとか内容等につきましては、現在なおはっきりしたことを申し上げる段階ではございません。
  112. 多田省吾

    ○多田省吾君 今はっきりした御答弁ありませんけれども、昨日から新行革審が審議をまた再開されるわけでございます。また、六月からの財政制度審議会が再び開かれるわけでございます。はっきりした諮問があってもなくても、とにかく大蔵大臣としてはこれからの政府財政運営の方針というものを示さざるを得ないと思うんです。その際、このマイナスシーリングに関しましてはどういう考えで臨まれるのか、お尋ねしたいと思います。
  113. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それはただいまもお尋ねのように、それらの機関において何らかの御見解の表示がこれからあるという可能性がございますので、そのやさきで私がかれこれ先に申してしまうこともいかがかと思っておりますが、ただ、昭和六十二年度の予算編成が終わりました昨年の暮れに、私としまして事務当局の諸君には、やはり六十三年度の編成は新しい発想に立たないと内外ともにいろいろ問題もあるし、ひとつ検討してもらいたいということを申しておりまして、事務当局の諸君もいろいろに検討を続けてくれておりますので、多少今までと違いましたやり方をやらなければならぬのではないかと思ってはおりますのですが、ちょうど今多田委員のおっしゃいましたように、そういう各審議会等で御検討であるといたしますと、それに先んじてあれこれ申すのもいかがかと思いますので、私としてはそういうようなふうな感じを持っております。
  114. 多田省吾

    ○多田省吾君 財確法の審議に入りたいと思いますが、もう私どもは毎年質疑をさせていただいておりまして、大変むなしい感じを受けているわけでございます。私どもは、真の財政再建はまず実のある実質的な行政改革を行え、そしてまた不公平税制の改正、あるいは最も大事なことは、積極財政によって景気回復を図って自然増収、これを多くすべきである、こういった考えを主張してまいりました。この財確法に関しましても、昭和六十五年度赤字公債発行ゼロという目標に対しましてももう既に数年前からその破綻は決定的でありますのに、総理初め大蔵当局は目標を努力に変えたり、あるいはその精神を残しておくんだ、こういう答弁に終始いたしまして今日までやってまいった結果が最悪の状態になっているということでございます。景気も低迷する、赤字国債発行もなかなか減らない。ですから、私どもはこの際、先ほどの主張のほかに、やはり新しい財政再建計画を立て直してそして進むべきではないか、このように再三申し上げております。  大蔵省がことし二月に提出された「財政の中期展望」あるいは「中期的な財政事情の仮定計算例」によりましても、六十五年度赤字国債ゼロ発行のためには、六十三年度以降毎年度一兆六千六百億円ずつの発行削減をしなければならない、その上に六十五年度には七兆百億円の要調整額を何とかしなければならない、こういった状況でございますからますます政府財政再建計画は破綻した と、もうはっきり言えるわけでございます。この傷を深くしないためにも私どもは、新しい財政再建計画を立ててそしてやっていくべきではないか、このように再三申し上げているわけでございます。大蔵大臣はどのように考えておられますか。
  115. 角谷正彦

    政府委員(角谷正彦君) 先生御指摘のように、今まで行財政改革ということを中心に特に一般歳出を厳しく抑制するという形で財政再建に取り組んできたわけでございます。私どもはそれなりに一定の成果を上げ得たものだというふうに考えております。ただ、御承知のように、六十五年脱却という目標について言いますと、だんだんその日が差し迫ってくるに従いましてその目標の達成はなかなか難しい課題であるということは十分私ども認識しているわけでございますが、ただ、歳出削減を行っていくというためには、やはり何らかの目標を定めてその中で行っていくということが必要でございまして、現段階でこれを安易に変えるということは、かえって今まで営々として積み重ねてきましたそういう努力を一たんもとへ戻すということになるんじゃないかということで、やはりこれは基本的にはおろすべきではないだろうというふうに考えているわけでございます。  それから、この目標を見直した新しい財政再建計画はどうかという問題につきましては、これも大臣が前から申し上げておりますように、仮にこれを見直すといたしましても、それが目標でございます以上は、その時点におきます経済なり財政の見通しを踏まえたきちっとしたものでなきゃならぬだろう。ただ、そういうためどのあるものにするためには、やはりいろんな不確定な要素が現段階において多いわけでございますので、そういった点も考えながら今後対応しなきゃならない。そういったことからいいますと、現時点におきまして六十五年特例公債脱却というこの目標はやはりいろいろ難しい課題ではございますけれども、引き続き堅持してこの目標のもとに行財政改革を進めていくことは、基本的には必要なことではないかというふうに考えているわけでございます。
  116. 多田省吾

    ○多田省吾君 大臣はお答えしにくいとは思いますけれども、新しい財政再建計画をお立てになるお考えはないのかどうか、新しい財政再建計画、それとも六十五年度までこのままずるずるいってしまうお考えなのか、お尋ねしたいと思います。
  117. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それは今政府委員が申し上げましたように、六十五年に脱却ということは、もう非常に難しくなってきたということは私どももわかっておるわけでございますが、さて、その看板を取りかえるといたしますと、ただ裏返せばいいというようなわけにはまいりませんで、今度は可能な目標をきちっとつくらなければならないということになりますが、そのためにはこれからしばらくの間の我が国経済なり財政なりの見通し、それから殊に国際経済の動き、この節は御承知のように非常にこれに我が国経済が影響されますわけでございますから、為替等々それらの展望を総合しまして新しい目標をつくらなければならないという、これはかなり実は厄介な仕事で、殊に昨今のように内外の情勢が動いておりますと、大変にやりにくい時間のかかることであろうと思われます。いずれの時期かにそれは考えていかなければならないであろうということは今思っておりますけれども、ただいままだそういうことを具体的には始めておりません。
  118. 多田省吾

    ○多田省吾君 今回の法案によりますと、特例公債発行は四兆九千八百十億円の範囲内で行う、また国債費定率繰り入れ等停止も六年続けてやっておりますが、本年分は二兆一千三百八十三億円である。それから、三年続けていわゆる厚生保険特別会計への繰り入れの問題、これも千三百五十億円控除して繰り入れる。こういった内容でございますが、そのほかに本年度予算で見ますと国庫補助率の引き下げによる地方債増発、これは新たな六十二年度分の措置だけで千八百七十四億円、それに厚生年金国庫負担繰り延べが三千六百億円、国民年金国庫負担平準化が千二百五十三億円ですか、それから国民年金支給回数の変更七百億円、住宅金融公庫利子補給繰り延べ八百五十七億円などの会計操作による負担先送りもかなりございまして、財政再建の実態は非常に不明瞭でありまた大変深刻でございます。こういった問題で大臣はどのように考えておられるか御所見を承りたいと思います。
  119. 角谷正彦

    政府委員(角谷正彦君) 確かに御指摘のような形での臨時異例の措置といたしまして厚生年金の繰り入れ特例、あるいは住宅金融公庫につきましての繰り延べ、あるいは国民年金の平準化措置等等臨時特例措置といたしまして、それぞれの制度あるいは会計の状況を勘案しながらそれぞれ御協力いただいた施策はあるわけでございます。あるわけでございますけれども、ただ、全体を一般歳出を厳しく抑制する中におきまして、やはり先ほど申し上げましたように、年金、医療の改革というものも進みましたし、補助率の引き下げ等につきましても漸次前進を見ているということで、やはり私どもとしては財政改革につきまして十分とは言えないにしてもある程度の成果、一定の成果は上がったものであると考えておりますし、またこの数年間の財政改革努力を通じまして、やはり国民あるいは各省庁の間におきましても安易に財政に依存するべきではないというふうなといいますか、財政再建についての共通の認識というものはかなり深まってきているんではないか。  そういう意味では多田委員のおっしゃるように、私どもの行っている措置が完全、十分とは言いかねる面はあろうかと思いますけれども、それなりに十分な成果は上がっているんではないかというふうに考えているわけでございます。
  120. 多田省吾

    ○多田省吾君 御答弁に大変私たち不満でございますが、先ほど申し上げた中に、国庫補助率の引き下げによる地方債の増発というものがございます。これは申すまでもなく、国費をふやさないで公共事業量を拡大するためのものでございまして、増発地方債の元利償還費の全額を交付税に加算するということを条件にいたしまして、公共事業の地方負担を増加させているものでございます。  そこで、お尋ねしたいんですが、今政府がお進めになっております内需拡大策を中心にした五兆円を超えるいわゆる補正予算、その中に公共事業の追加というのが大変重要でございますが大きな柱になっておりますが、これは総理のおっしゃるように、いわゆる真水を濃くするということで、すべて国費によるものなのか。それから、その中に地方自治体の負担増加をやむを得ないとしてこのような方式をとられるのか。その辺ひとつ御答弁いただきたい。
  121. 角谷正彦

    政府委員(角谷正彦君) ただいまお尋ねの出ました昭和六十二年度におきます公共事業補助率引き下げでございますが、これは御指摘のように、厳しい財政事情の中で財政再建路線を維持しながら、公共事業としてはできるだけその事業量の確保を図って内需拡大の要請に資したいということの一環といたしまして、地方公共団体の補助率等につきまして一定の引き下げを行った、ただ、この補助負担率の引き下げ等につきましては、地方財政に与える影響につきましては、その地方財政運営に支障が生じないように、今も御指摘のように、国費減少額の相当額の千二百億円につきましては臨時財政特例債により補てんする。しかも、その元利償還費につきましては地方交付税の算定を通じまして基準財政需要に算入する。同時に、国は元利償還の九割相当、具体的には交付団体にかかわる元利償還費の全額でございますが、これを後年度に一般会計から交付税特別会計へ繰り入れると、こういう措置をとりまして、地方財政運営に支障のないようにしたところでございます。そういったことでございますので、全体としまして、これによりまして全体としての公共事業の事業量の確保を図ったということでございます。  後段のお尋ねの今回の補正予算の問題でございますけれども、仮に公共事業を追加いたした場合におきましては、公共事業は御指摘のように直轄事業の場合には、国が地方から一定の直轄負担金 をいただく。それから、補助事業につきましては、国の補助金に加えまして本来の地方負担を加算いたしまして事業を行うということでございますので、そういう従来のスキームの中でこれを行うわけでございますから、公共事業につきましては、国費、地方費合わせたところが全体の事業費になるわけでございます。したがいまして、仮に国費につきまして一定の金額が追加されれば、それに伴いまして当然地方費も追加され、それを合わせたところが公共事業の事業費になる。その場合の地方負担につきましては、これは起債措置その他適切に財源措置を講じまして、地方財政運営に支障のないように措置する必要があるんではないかというふうに考えております。
  122. 多田省吾

    ○多田省吾君 大蔵大臣は、総理のおっしゃるいわゆる真水の濃いものにしたいと、濃いものとは具体的にどういう内容にしたいとお考えなんですか。
  123. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それは、例えば昨年度の補正の場合に、いわゆる俗に言いますゼロ国債といったようなことをいたしまして、これは昨年の補正がずっと遅かったものでございますから、十一月でございましたから、自然にそういうことになったのでございますが、まあそのような、つまり実際の国あるいは地方、国の機関、政府機関等の支出を伴わないようなものはなるべく避けろと、こういう趣旨と伺っておりますから、そういう趣旨に従ってやろうと考えております。
  124. 多田省吾

    ○多田省吾君 次に、また別の問題でちょっとお伺いしておきますが、東京国税局管内における国税の滞納が昨年末史上最悪になったという報告がありますが、全国的にはどうなのか、また悪質なものは具体例としてどういうものがあるのか、それから焦げつきとなっているものの状況、こういったものについてもお聞かせいただきたいと思います。
  125. 冨尾一郎

    政府委員(冨尾一郎君) 国税の滞納状況につきまして私ども今一番新しい資料としては、昭和六十年度の数字、これは六十一年の五月末の数字でございますが、これしかございませんので、これに基づいて御説明申し上げたいと思います。  滞納総数は全部で六百九十八万六千件でございまして、このうち新しく六十年度におきまして滞納になって発生したものが三百八十二万件でございます。それから、前年度から繰り越したものが三百十六万件ございます。総額では一兆五千五百十八億円でございまして、この内訳は、新規発生つまりその年度中に発生した金額で六千九百二億円、前年度からの繰り越しが八千六百十六億円、このような状況でございます。  そういう状況でございますが、今先生の御指摘の悪質なというのはいろいろ見方がございましょうが、例えば賦課の段階で脱税事案というようなものでございますが、これにつきましては私どもとしては、査察をしたものとかいろいろあるわけでございますが、こういうふうに後で私ども調査をして国税を追徴するというケースにつきましては、とかく滞納になりがちでございますので、私どもとしては優先的に滞納処分にかけまして、債権の保全と登記処理に一番力を入れているところでございます。また、昭和六十年度末の滞納残高のうちで、前年度から繰り越されたものがございますが、これにつきましても、時間がたっておりますので、積極的に他のものに優先をして差し押さえや公売等の手続をとって処理の促進を図ることにしております。  なお、そのほかに私どもとして、いろいろ滞納処分につきましては、まず滞納にならないようにということで、例えば申告所得税等につきましては振りかえ納税の促進等によりまして、滞納にならずに期間内にできるだけ納めていただくという趣旨で諸般の施策を進め、できる限り申告していただいたもの、ないしは後ほどになって調査に行った結果、賦課徴収するようなものにつきましての租税の収納につきましては、今後とも努力してまいりたいと、かように考えております。
  126. 多田省吾

    ○多田省吾君 この法案の中で重要な項目に国債整理基金への定率繰り入れ停止の問題がございますが、本年で六年間連続して行われております。特例公債償還のための起債はできる限り行わないと法案にもありながら、それが行われております。政府に新しい償還ルールのお考えがあるのか。また、この現行制度をもとの健全な姿に戻すにはどうすればいいのかですね。その辺大臣はどうお考えですか。
  127. 角谷正彦

    政府委員(角谷正彦君) 現在の国債の償還ルールでございますが、建設公債等につきまして一定の耐用年数等を前提といたしまして、六十年間で国債を償還するという前提のもとに、定率繰り入れということで前年度首の国債残高の一・六%を繰り入れる、その他剰余金の二分の一繰り入れ、あるいは必要に応じて予算繰り入れ、そういったことで財源確保しつつ、現在の償還を行っていくというのが基本的な姿になっているわけでございます。  現在の厳しい財政事情のもとで、特例公債発行を可能な限り抑制するため、特に本年度におきましても定率繰り入れ停止をお願いしているわけでございますけれども、これは国債整理基金の円滑な運営という観点から見ますと、たまたまNTTの株の売却益収入をもって六十年国債償還ルールによりますところの国債の現金償還には支障がないと当面見込まれますことから、やむを得ずこういう措置をお願い申し上げているわけでございます。  なお、今後の問題といたしましても、NTTの株式がより円滑に売れるという限りにおきましては、ここ当分の間は現在の六十年国債償還ルールを維持することは可能であるというふうに私どもは考えているわけでございます。それから先ほどうなるかという問題でございますが、私どもといたしましては、現行の国債償還ルールをできるだけ維持するという基本的考え方のもとに、その枠組みの中で歳入歳出両面にわたっていろいろな対策を講じながらこういったものを続けていきたいというふうに考えているわけでございます。そういう意味で、現在の六十年償還ルールそのものを現在直ちに直す必要がある、あるいはそういうふうなことになるというふうな事態であるとは考えていないわけでございます。
  128. 多田省吾

    ○多田省吾君 次に、国債売却の問題で御質問いたしますが、きのう郵貯特会法が当委員会を通過したわけでございますが、重複する点もあるとは思いますが、国債の郵便局における窓口販売について郵政省、大蔵省にお尋ねしておきたいと思います。  窓口販売そのものは昭和二十六年まで行われていたことの再開だと言われておりますが、それ以上に今回の窓口販売による新規財源債、それから借換債合計一兆円が完売できるかどうかということです。  一般に国債を購入する場合にはマル優三百万にプラスして特別マル優三百万が適用になりますが、今回マル優廃止が事実上流れましたのでこれは継続をされると思います。ところが今回、郵便局の窓口販売のものには一切マル優は使えないわけです。郵便貯金資金の自主運用金二兆円のうち既に一兆円は新規財源債の引き受けが決まっておりますから、残り一兆円が実体上の自主運用資金でございます。そうすると、もしこの窓口販売がマル優が使えないことによって売れ残るということになりますと、自主運用財源の実体上の一兆円の中で引き受けをしなければならないのではないかと思います。郵政省では、このような状況下でこの窓口販売による売れ行きがどうなるのか、その見通し、そしてどのような方法で自主運用を意義のあるものとされようとしているのか、郵政省にお伺いしたいと思います。  また大蔵省には、この国債を何とか消化させるために、簡保資金のように財投協力という形をとらないで郵貯資金の自主運用額の半分をまず国債引き受けに充てた上、残りの一兆円についても、十分な窓口消化ができると保証されたものでもありませんが、国債発行計画を立てられたわけでございます。大蔵省としてこの辺はどのようにお考えになっているのか、ひとつお答えいただきた い。
  129. 安岡裕幸

    説明員(安岡裕幸君) お答えを申し上げます。  国債の窓口販売の募集残高を金融自由化対策資金で引き受けることにつきましては、私どもといたしましては、まず国債の販売につきまして極力残額が生じない、こういうことで最大限努力をいたしていきたいという方針でございますし、また募集残高の引き受けも市場金利を反映いたしました債券の取得であるということでございます。いわば自主運用の一環として行うものであるというふうに考えております。そういったことから特段の問題がないというふうに考えておりまして、対策資金による引き受けと、こういう仕組みをとったものでございます。  しかしながら、先生御指摘のように、仮に民間金融機関等では特別マル優の適用があり、郵便局ではその適用がない、こういう事態が生ずる場合につきましては販売の推進上大きな影響がある、こういうふうに予想されるわけでございますけれども、その場合につきましては国民のニーズであるとかいろんな事情を総合的に考慮しまして、具体的な販売方法等について慎重に対処していきたいというふうに考えております。  いずれにいたしましても、税制の問題につきましては、国会に設置されました税制改革協議機関で検討されることになっておりますので、当面私どもの立場といたしましてはその審議を見守ってまいりたい、このように考えておるところでございます。
  130. 窪田弘

    政府委員(窪田弘君) 窓販の予定額一兆円につきましては、ただいまも御説明がありましたように、最近の国債の個人消化状況あるいは郵便貯金の増加実績等を勘案いたしまして、郵政省と御相談をして販売可能な額として算出をいたしたものでございます。予定どおり円滑な販売が行われると期待をいたしております。  対策資金の方は、そもそもこのような巨額な資金の運用でございますから、現在の日本の市場規模から見ましてもかなりの額を国債へ運用せざるを得ない状況にあると考えておりますし、一応半分以上ということで国債の消化に御協力を願ったものでございます。
  131. 多田省吾

    ○多田省吾君 最後に、大蔵大臣に確かめておきたいことは、私どももこの財確法につきましてはもう毎年当委員会で質疑をしておりますけれども、ことしこそやはり私は緊縮財政を積極財政に切りかえて、また不公平税制の是正あるいはその他の方策によって行財政改革が本当に立派に進むように、積極財政に切りかえれば税の自然増収もあろうかと思いますし、また行政改革そのものは、私は自主的な行政改革は推し進めていくべきである、このように思います。本来国民の立場に立ったそういった方策転換によって、私はこの財確法がまた来年も再来年もと同じような姿で審議されるようなことのないように強く望みたいわけでございますが、大臣のひとつ信念というものを披瀝していただきたいと思います。
  132. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 今朝も申し上げておったことでございますけれども、我が国経済かなり大きなまだ成長潜在力を持っておると思いますが、ここ数年いろんな事情でそれが十分に発揮されておらない。そこから、確かに今御指摘のように、税収も伸びが悪いということでございます。財政経済運営よろしきを得まして、毎年このようなことで御審議を煩わすことがないように、早くそういうふうにいたしたいということを念願もし、また努力もいたしたいと思っております。
  133. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 我が国は、昭和五十年度からずっと毎年赤字公債発行の法律を続けてきたわけでありますが、現在の日本の赤字財政状況、これは国債残高のGNPとの比率とか、あるいは毎年度の予算の中で占める国債の比率とか、そういう点から見て、国際的に見て日本はどういう状況にあると理解していいのか、これをお尋ねをいたします。
  134. 角谷正彦

    政府委員(角谷正彦君) 我が国国債残高は、毎年毎年特例公債を含みます国債を大量に発行した結果といたしまして、既に御承知のように昭和六十二年末には残高百五十二兆円、GNPの四三・五%に達するものと見込まれておりますし、その利払い費につきましても一般会計歳出の二〇・二%ということになっているわけでございます。  こういった状況を諸外国と比較してみますと、まず国債依存度でございますが、日本は六十二年度予算では一九・四でございます。アメリカは六十三年度、これは大統領教書でございますが、一〇・五、それからイギリスは六十一年度四・四でございます。西ドイツは八・五、フランスは一一・九ということで、日本は飛び抜けて高い水準にございます。  それから、長期債務残高のGNP比率でございますが、この場合は、先ほど申しました国債のみならず長期借入金というものも含めましたところの、いわば借入金を含めた長期債務残高というところで比較させていただくのが国際的にはスタンダードじゃないかということで比較させていただきますと、日本は長期債務残高のGNP比は五一・六でございます。アメリカが六十一年度で四一・一、イギリスは四七・一、これは五十九年度でございます。西ドイツは六十一年度で二〇・八、フランスは五十九年度でございますが九・九ということで、これまた日本の場合におきましては諸外国よりもかなり高いという水準にございます。  それから、歳出枠に占めますところの利払い費の割合を比較いたしますと、日本は先ほど申しましたように六十二年度二〇・二でございます。アメリカは六十三年度の大統領教書におきましては二二・六、イギリスは六十年度におきましては六・九、西ドイツは六十二年度におきまして一一・五、フランスは六十二年度におきまして九・四ということでございまして、私どもといたしましては、国債依存度につきまして毎年の歳出削減努力によりまして漸次低下させてきたわけでございますが、いずれにいたしましても、公債依存度、長期債務残高のGNP比、あるいは歳出枠に占めますところの利払い費の割合、いずれも諸外国よりはなおかなり悪い状況にあるというふうに考えております。
  135. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 ただいまのお話を聞いておりますと、我が国財政状況は飛び抜けて悪い、そういうことか言えるんじゃないかと思います。ところが、先般もG5あるいはG7の会議等では余り我が国財政赤字は問題にならないで、むしろアメリカの方が財政赤字を削減しろと、こういうことが議題になって、そして日本は内需拡大をしろと。けれども、本当に数字的に見るとアメリカよりも、あるいは西ドイツなどよりははるかに日本の方が財政が悪いわけでありまして、そういう点、我々国民は報道から見ると何か内需拡大をせにゃいかぬわけで、財政赤字はもうアメリカよりいいんじゃないかと、そういう印象も持つんじゃないかなという、私はそういう感じがするんですけれども、なぜアメリカの財政赤字だけが問題になるのか、その点をお伺いいたします。
  136. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それはやはり基本的にはドルが基軸通貨でございまして、しかも基軸通貨の弱さは直接的には膨大な貿易赤字の結果である。なぜ貿易赤字があれだけ大きいかといえば、やはり言ってみますと、それは財政赤字の大きさに帰着する。こういうことからアメリカの財政赤字を縮小してほしいということが各国からの強い要望になっておるのだと思います。  それに対応いたしまして、我が国の場合の問題は貿易黒字でございますので、これはやはり何といっても内需に向くべき、あるいは国内の社会資本等の形成に向くべき資源や金が外に向かっているからである。したがってそういう努力をせよと、こういうことになっておるんだろうと思います。
  137. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 そこで、いわゆる内需拡大をやる。今回も五兆円の補正予算を組めという、あるいは新行革審も投資的経費については今までのよなマイナスではなしにもっとやれと、こういうような方向になりますと、結局財政改革とは相反することになると思います。じゃそういう中で、やはり我が国としては両方をどういうようにやはり 調整をしていくのか。私たちも内需拡大のために財政を転換しろ、転換しろと、このようには言いますが、しかし一方では、この国債残高のつけはどうなるんだというそういう心配もあるわけですが、そういう点、大蔵大臣としては何かお考えがあるんでしょうか。
  138. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) まさに、この二つのやや相反した命題を両方がなえていかなければならないということでございますから、どうもこれはやっぱり塩出委員と同じように、私も特にこういういい知恵がございますというようなわけにはまいりませんで、結局日本経済全体の運営がもう少し潜在力を発揮できますと、そういたしますと内需も振興しますし、税収もいわゆる自然増というような形で上がってくるのではないか。そういうような経済運営をするためにある程度財政も、財政再建の途上ではございますけれども、努力をしなければならない。財政が、財政自身の力及びそれをてこにしましての民間の力、それを動かして経済成長、内需を中心とした経済成長に持っていくために、財政はいかなる努力をすべきかということに私は帰着するのではないかと思うんでございます。
  139. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 内需拡大策をことしは暫定予算を組むということで、しかし、前々から言ってますように、そういう日本経済の体質を変えていくということになるとかなり時間もかかる。結局、内需拡大策というものも一年限りというわけにはいかないんじゃないか。やっぱり何年か続けていかなくちゃいけないんじゃないか。そのあたりのお考えはどうでしょうか。
  140. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 私はまさにそのとおりだと思います。一遍補正予算を組んだら問題が済むといったようなことではなくてそれこそ前川報告が言いますように、かなり長い間の継続した努力が必要であるというふうに考えております。
  141. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 そうしますと、私たちも一時的には国債がふえても、やっぱり何年後先にはこのような状態に持っていくんだという、そういう中長期的なビジョンというか、先ほど多田委員からもお話がありましたようなある程度の中長期的な計画がなくして、結局内需拡大というそういう大きな声に押されていくということは、私はある意味では大蔵省としてもいささか無責任じゃないかなという、行き当たりばったりで、ともかく大蔵大臣の間うまくやっておけばいいという、そういうことにもなりかねないんじゃないか。そういう意味で、ある種の長期的な計画というものはできないものかどうか。もちろん、経済は生き物ですから、実際にそのとおりいかないにしても、何らかのやっぱり理由づけというか、こういうようにしていくんだという私はビジョンぐらいは必要じゃないかなという気がするんですけれども、その点はどうなんでしょうか。
  142. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それはまことにそういうものがあることが望ましい、それは塩出委員の言われるとおりだと思いますんですが、そのためには、まず国のやや中期的な経済見通しといいますか、経済展望がかなり信頼できるものが必要でございますし、それからさらに国際経済からの影響が為替等々まことに大きいものでございますから、そういうものについてもやはり多少確たる見通しがありませんと、そういう背景の中で今の財政の見通しも出てくるわけでございますので、現実の問題といたしまして、いかにも今の変化の激しいときにそういう見通しが立てにくい。そこで、塩出委員の言われるように、そういう見通しを持たずに、いわば行き当たりばったりのことをしているではないかとおっしゃいますと、まことに見通しの立てにくい中で模索をしておるというのは事実でございます。もう少し事態が何が落ちついてまいりますと、そういう展望のもとにいろんなことを考えたいし、またそうなければならないのでございますけれども、どうもまだその時期が来ていないという感じでございます。
  143. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 六十五年に赤字国債を脱却するということが現実問題としては不可能になってきたわけでありますが、先ほどの御答弁を聞いておりますと、看板はもうおろしたいけれども次にかける看板がないから仕方なしに今の看板を置いているんだと、そういうような意味に私は理解をしているわけですが、そのように理解していいわけでしょうか。
  144. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 少しそういう感じを強く申し上げ過ぎたのかもしれませんけれども、ともかく今の目標はなかなかもう達成しにくくなってきておるということは、これはもう事実として申し上げざるを得ませんし、それならばもっと現実性のあるものを掲げるべきではないかということをおっしゃれば、それもどうもそのとおりで、ただそれがなかなか今申しましたような理由で、今のこの時点でできない。そうかといって、これ毎年毎年予算編成の努力をいたしますものですから、やはりなまらないためには何か一つ締める看板を持ってなければならぬと、こういったようなことを申し上げようとしたわけでございます。
  145. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 我が国は、いわゆる国民所得に対する租税の負担率は先進国の中で最低である。そして、ずっと今まで行政改革審議会等がいろいろやってきたその過程においては、ある程度将来の増税もやむを得ないと。しかし、やっぱりヨーロッパの国のようにそういう高い負担の国になってはいけない。そういう意味で、租税負担率と社会保険料とを合わせて四五とか五〇とか、そういうことがかつて論議されたわけですが、そういう点から考えて、私はやっぱり政府としては当然将来の増税というものをちゃんと日程の中には入れなきゃいけないんじゃないか。まずそういうものをもし増税が必要であるならば余り急にはっと出すんじゃなしに、今のうちからこういうように将来はやっぱりある程度やむを得ないんだということをはっきり言うのが筋じゃないかと私は思うんですけれどもね。そういう点で、老齢化社会を迎えて先般の売上税導入ということがあったわけでありますが、その根底には、今すぐではないにしても、どうしても財政を立て直すために増税が必要である、大体国民の皆さんもそういうことは、薄々というかはっきりというか、感じておるわけですけれどもね。そういう点は、大蔵大臣はやっぱり将来のスケジュールに考えておると、このように理解していいのかどうか。
  146. 尾崎護

    政府委員(尾崎護君) 今回、抜本的税制改正ということで私どもお願いいたしました考え方といたしましては、やはり現在の税制が持っているゆがみ、ひずみを直したいということが主眼でございまして、そのための所得税、法人税の減税売上税導入等の措置をお願いしているわけでございます。その場合には、御承知のとおり、税収の中立性ということを前提にいたしまして、現在の社会経済に合うように、また将来の我が国の社会経済にも適合できるような制度改革、それを目的としていたわけでございまして、負担の水準は現行のままということが前提となっているわけでございます。  しからば、将来におきまして財政需要が非常にふえてまいりましたときにこれをどうするのかというのは、それはそのときどきの歳入歳出経済情勢等考えましての判断の問題であろうかと存じますけれども、今回の税制改革につきましては、あくまで増減税中立と申しますか、増減税同額ということで考えられている。制度を改めたいということが目的であるわけでございます。
  147. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 これは現在の改正案、政府から出された売上税等の法案は増減税が一緒ということで、増税は考えていないということは私も理解をしているわけでありますが、将来の問題についてはそのときどきに考えると。まあ確かに余り増税をするというようなことは政治家として言いたくないかもしれませんけれども、しかし私はある意味ではやっぱり無責任でもあるんじゃないか。当然そういう長期的な計画をつくって、その中には、必要ならばやっぱりある程度の増税も入れて、そして長い日にちかけて国民に論議をしていただくという、私はそういうように国の財政状況国民にも十分理解をしていただくという、そういう努力からも必要ではないかと思うわけです が、これは先ほどの答弁とも重複するかもしれませんけれども、そういう長期的な計画をつくるようにひとつ努力をしてもらいたい。何か難しい、難しいというのはわかりますけれども、まるっきり難しいからといって羅針盤のない航海では本当に我々も心配なわけですけれども、やっぱり努力はもうちょっとしてもらう必要があるんじゃないでしょうか。
  148. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それは先ほども申し上げたことに関係をいたしますのですけれども、我が国経済というのはもう少し潜在的に成長する力があると私は思っておりまして、かつてよく国会に提出を申し上げておりました「財政の中期展望」で、毎年の名目成長率を仮に六・五といたしますと、租税の弾性値が一・一であれば七%ぐらいの自然増があるわけでございますが、しかしこの六・五というものがここのところこの何年間がなかなか出てこないということになっておりまして、やはり私は経済運営の問題としてその程度の成長力は、まあ六・五がいいかどうかは別としまして、今のような低い成長力はこれは日本潜在力を出し切っていないと考えますので、願わくはそういう成長、その程度の成長に入りまして、それによって自然増から国の税収が伸びていく、こういう経済運営が私は本当であろう。  すなわち塩出委員が増税と言われますことは、やむを得なければやむを得ないということではありますけれども、税率を引き上げる意味での増税ではなくて、願わくは課税ベースが大きくなる、自然増によって直接税であれ、間接税であれ、大きくなって、そこから出る自然増収というもの、そういう財政運営が私は望ましいし、日本潜在力からいえばそれはできる、かつてはできたわけでございますから、それがもはやできないというふうに何となくあきらめてしまうことは、私はどんなものであろうかというふうに思っております。
  149. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 ぜひ、そのような経済の方向になるように我々も期待をいたしますし、努力をしてもらいたい、このことを要望しておきます。  それから、具体的に今後の予算編成でございますが、今までは昭和五十九年、六十年、六十一年、六十二年度は経常部門はマイナス一〇%、それから投資部門はマイナス五%と、こういうことで四年間来たわけでありますが、私は今日までのいろんな本会議、委員会、予算委員会等の総理大臣あるいは大蔵大臣の答弁等から、いわゆる経常部門と申しますか、そういうものはやっぱりできるだけ小さな政府になるように努力をするけれども、投資部門はこれはもっとマイナスではなしに拡大をしていくと、このように理解をしているわけですが、具体的には、この投資部門マイナス五%、経常部門マイナス一〇%という六十二年度までの方針は、六十三年度以降はどのように変更するお考えか、お伺いをしておきます。
  150. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ただいままだ申し上げられる段階ではないのでございますけれども、先ほども申しましたように、我が国経済がもう少し潜在的な成長力を顕在化できるという考え方のためには、やや拡大再生産が大きくなっていかなければならないということとも関連いたしまして、今御指摘になりましたような問題を、六十三年度ではやっぱりひとつ従来と違って考え直さなければいけないということを昨年の暮れから事務当局に検討をしてもらっておりますので、まだ確たることは申し上げられませんけれども、何かそういう新しい方向を出してみたいと念願をいたしております。
  151. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それから、最近のいわゆる経済のマネーゲーム化と申しますか、企業が本業で利益を上げるのではなしに、資産の運用で利益を上げ本業の赤字を埋める。やっぱり企業ですからいろんなことをして利益を上げるということは、一概にこれはいけないということは言えないわけですけれども、我々いささか、このままいったらどうなるのかという、こういうことを心配をしているわけでありますが、大蔵省としてはこういうマネーゲーム化の原因は何なのか、またそういうものの弊害というのはどういうものが考えられるのか、これは経済企画庁の方にお願いした方がいいかもしれませんが。
  152. 西村吉正

    説明員(西村吉正君) 私どもへのお尋ねでございますけれども、私どもといたしましては、経済全体といたしまして現在の経常収支黒字が大変大幅であると、そういうところから導入されました資金が必ずしも内需等への拡大に向かっておらないというところに根本的な原因があろうかと存じております。
  153. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 これは大蔵省としては、こういうような状態になった原因というものは、どういうところにあるとお考えでしょうか。
  154. 北村恭二

    政府委員(北村恭二君) 最近、国民の金融資産というものがかなりふえてきておりまして、また、金融の緩和というようなことに伴って、いわゆる企業の余裕資金といったようなものも増加していると思います。したがいまして、そういう金融緩和の中で、企業として実物的な設備投資といったようなところに資金を投ずる場合と、やや余裕的な資金というものをそういう金融資産の運用に回すという、いわゆる財テク的な傾向といったようなものとがあろうかと思いますが、金融が緩和している中では、そういったことが従来に比べますとやはりふえているんではないかというふうに私ども認識しております。  もちろん、そういった企業が余裕資金の運用についていろいろと運用の仕方を多様化するということは、これは新しい金融商品等もできてきていることでもございますし、一つの企業としての財産の運用方法だとは思いますけれども、しかし、確かに御指摘のように、それが何か非常に投機的な面を持つといったようなことでございますと、やはり全体の健全な経済成長と申しますか、そういう面で行き過ぎるというようなことにもつながるかと思いますので、やはりそういういわゆるマネーゲームと言われるような余り極端な現象ということにはならないような形で資産運用がなされていく、ということが望ましいんではないかというふうに考えているわけでございます。
  155. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 これは大蔵大臣お尋ねをしたいと思うわけですが、私は一つは、このように為替が急激に変動しちゃうと、なかなか輸出産業もうかうか設備投資はできない、そういう設備投資をしても果たしてその品物が売れるかどうかわからないという、そういう点もあるんじゃないか。それからもう一つは、やっぱりこのように百四十円も切るような円高になれば本当に、国内市場ならば別ですけれども、輸出をしているような産業は採算が合わないわけですから、設備投資をしても結局もうからない。だから結局、またある意味では、そういう本業の赤字を埋めるためには何とかそちらで稼がなきゃいかぬという、こういうようなことではないかと思うんです。そうすると、やっぱり為替レートが非常に円が高過ぎる、しかも急激で見通しが立たない、そういうことが一つの大きな原因ではないのかなと、そういうように思うわけです。その点はどうでしょうか。
  156. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 私はそのとおりだと思います。殊に製造業において設備投資がほとんど見られないということは、もともと稼働率が低くなったからでもございますし、在庫投資も見られない。これは卸売物価が本当に前の年に比べて二けた、ようやく一けたになりましたけれども、も下がれば、これは在庫を持てば損をするわけでございますから、在庫投資というものもまことに元気がないといったようなことが製造業につきましては少なくとも顕著でございますから、そこから金が余ってくる。国民の貯蓄が使われないということが今のようなことになったことに大変に私は関係があるだろうと思います。  しかし、それともう一つ我が国ばかりでなくて、いわゆる財テクというのが殊にアメリカなんかでしきりに行われるようになりましたことにつきまして、やはり企業家の気持ちというのが、殊にこれはアメリカの場合に顕著であるように思いますけれども。とにかく会社というのはやっぱりもうけることが第一である。物をつくるというこ と、これは工業製品でもそうでございますし、農産物でも、私は芸術でもそうだと思うんでございますが、つくるということの大事さ、そのための努力のとうとさというのがどうも忘れられてきて、もうければいい、どういう格好ででももうけることが企業のいわば勲章である、経営者としての手柄であるといったようなどうも風潮というのが殊にアメリカでかなり強くなってきて、我が国にもたまたま今のような環境があるものでございますから、我が国はそこまで経営者がいわば堕落したと言えば言葉が過ぎますけれども、そう日本の経営者はアメリカの経営者ほどそんなに思っておらないように思いますけれども、幾らかそういう問題もやはりありまして、それが現在の環境の中でこうなっておる点はあろうと思います。
  157. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 そこで、やはり今のような状態では供給面に悪影響が出るんではないか、さらには我が国の技術革新の停滞を招くと、そういうことも懸念をされるわけであります。そういう点で、財テク制裁のための課税強化についてどう考えるか。財テク制裁というと言葉はよくないかもしれませんが、ある程度税制の面でそういう税金を取る、いろんなことが今まで言われてきているわけでありますが、そういうお考えは大蔵省にはないのかどうか。
  158. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それはそこまでいってしまいますと、またちょっといろいろ問題があり過ぎるように思いますので、できますれば、今のようないわば過剰流動性というのが、ちょっとこれは過剰でございますから、先ほどから政府委員からも申し上げましたように、これがもうちょっとおさまっていって、そうして他方でやはりこれだけ技術革新もございますし、在庫もしばらく補てんをしておりませんから、はたまた為替が、少なくとも卸売物価で申しますともう二けた前年に比べて下がっておりましたものがマイナス六ぐらいになってまいりました。前年は為替がずっと円安になっておって卸売物価が下がっておりましたが、前年対比でもう二けたなんということはこれからは私はないと思いますので、そういうことから在庫投資も出てくる。もう少しずつ経済が、今のはいかにもノーマルでございませんので、ノーマルになっていく、そういう努力の方をむしろ私どもとしてはいたしたいと思います。
  159. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それから、今まで構造調整が必要であるということを大蔵大臣もいろんな場で発言をされておるわけでありますが、民間の調査等によりますと、補正予算による貿易の黒字減らしは三十億ドルではないか、大したことはないという、こういう予測もあるわけであります。我が国の企業が輸出に頼って経営を維持していく、こういう姿勢は依然として変わっていないと、このように経済企画庁も発表をしておるわけであります。経企庁としてはこの状況についていろいろアンケート調査もされたようですが、御報告いただきたいと思います。
  160. 西村吉正

    説明員(西村吉正君) 先般、五月十四日に経済審議会から私ども「構造調整の指針」と題する御報告をいただいておるわけでございますが、そのレポートの中におきましては、輸出主導型経済成長から内需主導型の経済に変換するということは、すなわち経済成長成果国民の高水準の貯蓄を活用して国民生活の質の向上を実現していく過程にほかならないという考え方のもとに、問題点を三つ挙げておるわけでございます。低い居住水準、高い生計費、長い労働時間、こういう構造を変革していくことが、すなわち輸出依存型経済成長から内需主導型に転換するということにつながるんだ、こういう考え方でレポートをいただいておるわけでございます。
  161. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それでこの構造調整というのは、これは具体的にはいろいろな意見、いろいろな内容があると思うんでありますが、いずれにしてもつくったものを国内で消費しないで外に売っちゃう、日本の国内で使うだけ以上のものを生産をするという、こういう不均衡を是正をするには、これはやっぱり輸入を拡大するとか国内消費をふやすとか、あるいは輸出を抑えるとかいろいろあると思うんですが、いずれにしてもこれはそう簡単に一年や二年でできるものではない。そういう意味で、私はやっぱりこの数年間、中曽根さんが総理大臣になってから五年足らずの間にどんどんそういう不均衡も拡大し、我が国の輸出依存の体質がますます強化されたわけで、そういう点ではもうちょっと早く方向転換をすればそれだけ傷も浅かったんじゃないか。そういう点では、私は中曽根内閣としての責任、これは国会にも責任があると思いますけれども、これはやっぱり反省すべきではないか、私はそのように思うわけですが、宮澤大蔵大臣はどうお考えでしょうか。
  162. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 午前中でございましたか、昭和五十五年から六十年ぐらいまでの間の日本経済が今から顧みますと極端に輸出依存に傾いていったことを御説明申し上げましたんですが、これは五年間でございますが、五年間の時点でそれをそういうふうに実は強く傾向として指摘した人はほとんどなかったように思います。私自身も今になってそういうことを気がつくようなことでございますから、なかなかやはりある一定の時間が過ぎてみませんと、そのときに経済そのものがどっちへ向かっていたかということはかなりわかりにくいものである。これは責任逃れで申すのではございませんで、やはりある程度時間がたって傾向としてとらえることができるということはどうも避けがたいように思われます。  理屈の上で申せば、塩出委員の言われますように、もう何年か前にこういう緊急策をとっておくべきではなかったかと言われますれば、それに対してそうではないという返事を申し上げることは難しゅうございます。が、たまたま財政が非常に苦しい状況にあったりしたこともありまして、今から振り返りますと、そういうことはあるいは言えるのかもしれませんけれども、当時としてなかなかそういう問題意識が持てなかったということではなかったかと思います。
  163. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 次に、今回の補正予算の中に減税も入っておる、このように理解をしているわけですが、ところが減税が先行し、その財源対策については与野党の協議機関に今後任される、私はこのように理解をしているわけでありますが、したがって、私たち公明党としては、この与野党の協議機関ですぐ結論が出ればいいわけですけれども、一年、二年の間に出ればいいですが、その見通しもないままに減税を先行するということは、今までの大蔵省の慎重な姿勢、大蔵省は必ず増減税は同時だ、先に行っては困るということで特別な法律まで前つくっておったわけですから、そういう点から見ると、やはり態度が変わったのか。私たちは、むしろ戻し税そして一年限り、そしてその財源はNTT株の売却益等を考えればいい、そのように考えているわけですが、どうもそういうことではなしに、制度改革を伴う見切り発車というのは、大蔵省としての政策変更なのか。  さらに考えるならば、減税を先行させてもう既成事実をつくって、そうして強引に増税をやってくる、こういう作戦があるのかなという気がするんですけれども、そのあたりはどうなんでしょうか。
  164. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) その点は、これから協議機関が御協議を始められまして、そして私どもとしては、税制改革全体をひとつごらんの上で御検討をお願いしたいということを申し上げているのが私どもの立場でございます。  そこで、政府がもともと提案いたしました税制改正、先般来国会に御提案いたしましたもろもろの税制改正、新税等々でございますが、これ自身も昭和六十二年度に関します限り、やや減税先行ということになっておるわけでございます。最終的には歳入中立ということでございますけれども、時系列的には減税が先へ行くというある程度のことは実は私どもも考えておりましたわけで、今回この緊急対策で減税を先行をさせるべきか、いかにすべきかということをまだ決定しておらないのでございますけれども、考えております中でも、それはやはりある段階で全体としては中立的になるという、基本的にはそういう考えの中から 先行分を取り出す、こういうふうに考えるべきかなと思っているのでございますけれども、それはまたしかし最終的に決めたわけでもございません。そして、協議機関がどういうふうにお考えになるかというようなことも、確かに塩出委員の言われますような要素がございますものですから、その辺のことも慎重に考えないといけないなということで、最終的な結論を出してはおらないわけでございます。
  165. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 そういう点、減税も必要ですけれども、やはり財源もないのに制度改革だけを先行するのではなしに、我が党が提案しております戻し税方式でやはりやるべきである、このことを強く要望しておきます。  それともう一つ、法人税の減税などは既に一部、一・三%分の減税はもう法律は通ってしまったわけですが、先ほどの金余りのマネーゲーム、あるいはまた今後日本の企業も海外へある意味では進出をしていかなくちゃいかぬ。それは、そういう経済の構造調整の上からもですね。そういう点を考えますと、今まで法人税の減税は、企業の活力あるいは今のままいくと日本は法人税が高いから外国へ企業が逃げていくので法人税を安くしなければいかぬという、そういう論理はいささか現在では通用しないんじゃないか。私は、法人税にしても所得税にしても安いにこしたしとはありませんけれども、今は法人税の減税を先行する必要は余りないんじゃないか、その点どうでしょうか。
  166. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 政府は法人税の税率引き下げは考えていたわけでございますけれども、それは例えば賞与引当金でありますとか、あるいは配当軽課分でありますとかいうようなことで、いわばおもしになります増税分というものである程度のバランスをとる考えでおりましたわけですが、思わない事情からこの減税の分だけ先へ、税率の分だけ先へ行ってしまっております。言われましたとおりでございます。  それで、来るべきと申し上げましょうか、いずれ臨時国会が仮に開かれました機会には、政府としては、減税を御提案するということになりますれば、税法を提出するわけでございますので、その際に今の法人税のおもしになります部分をぜひひとつ復活させていただきまして、復活と申しますか、再提出と申しますか何と申しますのでしょうか、減税分だけ行ってしまっておりますから、そのバランスになります分を盛り込ませていただきまして、そして年度通計としてはそんなに大きなネット減税にはなりませんように、法人税はそういうふうにさせていただく方法はないものかと。確かにある程度の日時が経過しておりますので、完全に取り戻せるとは思いませんけれども、いろんな引当金とかなんとかいう関係は年度末の処理で行われることが多うございますから、それに間に合いますとかなりのものが取り戻せると申しますか、そういうことにやれるのではないかと思いますので、そういう機会がございましたらそういう点も提案をさせていただいてはどうかと、よく相談してないのでございますけれども、そんなふうに思っております。
  167. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それじゃ最後に、国債の利払いが大変大きくなりまして、しかも今は非常に金利が下がっておる。そういう意味で、やはり国債の金利の高いのを早く償還をするとか、あるいは金利の安いときには長期国債発行し、高いときには短期国債、そういうように大蔵省も大いにそういう意味での財テクをやっていただくならば、大変利払い費も減るんじゃないかと思うのでありますが、そういう点はどういう努力をされているのかお聞きして、質問を終わります。
  168. 窪田弘

    政府委員(窪田弘君) 御指摘のとおり考えておりまして、今低金利時代でございますから、二十年というふうな長期のものを出して国債金利負担の軽減に努力をしております。  高い金利の国債を償還して安いのに借りかえると申しましても、期限前に強制的に償還するというわけにもまいりませんので、買い入れ消却ということになりますが、買い入れ消却になりますと、高クーポンの国債は今非常に値が上がっておりまして、百十五円から二十円ということになっておりますので、計算してみますとどうも余り得にならないという現状でございますが、確かに御指摘のように、これが有利のような状況になりましたら御指摘のような方法を取り入れてみたいと思っております。制度は既に整っておりますので、そういう運営を今後考えてまいりたいと思っております。
  169. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 最初に、案件の前に一、二質問をさせていただきます。  一般会計の歳入歳出予算外に置かれ、国会にも提出されない正体不明の資金としてこれまで国会でも何回か取り上げられたことがある特別調達資金について、まずお尋ねします。どういう性格の資金か、防衛施設庁、説明願います。
  170. 大原重信

    説明員(大原重信君) お答え申し上げます。  特別調達資金は特別調達資金設置令に基づきまして設置されました資金でございまして、駐留米軍の需要に応じ行う役務等の調達を円滑に処理するため、米国政府にかわって日本政府が一時的に立てかえ払いするための回転資金でございます。
  171. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 大事な点を述べられておりません。この資金は、在日米軍の物資、役務の調達のための回転資金ということは今説明があったとおりですけど、これができたのは米占領下において占領軍指令に基づく政令、特別調達資金設置令で設けられた資金ですが、それが講和後もこのポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く大蔵省関係諸命令の措置に関する法律というのによって、このポツダム政令が法律としての効力を持つようになって今日に至っている。占領軍命令でつくられた法律が現在もなお効力を持っているというものです。その点の議論は抜きまして、この資金の問題は、これまでの国会でも資金の違法な取り崩し、あるいはアメリカの未返済金の問題など論議されてきましたが、米側からの償還返済額、未返済の実態等を含めて現状を説明願います。
  172. 大原重信

    説明員(大原重信君) お答え申し上げます。  六十一年度特別調達資金受払決定計算書は現在作成中でございますので、六十年度特別調達資金受払決定計算書について申し上げますが、約四億七千万が受け入れ未済となってございます。しかしながら、この大半は六十一年三月に支払いました駐留軍従業員に対する給与等に係るものでございまして、六十一年五月十九日までに米側からほとんど償還されております。
  173. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 この資金については、額はともあれ、財政法第四十四条に基づいて設けられた特別資金のうち、ポツダム政令を法律とみなし、これを法的根拠としているものはこの特別調達資金だけであり、他の資金は憲法第八十三条の財政国会中心主義の原則に沿って予決算を国会への提出が義務づけられているのに、この資金は国会に提出もされない。財政国会中心主義の原則に反する、そういう資金になっております。国会の論議の中で、政府は国会への報告を検討すると答弁していますが、答弁の結果どのようになっておりますか。
  174. 大原重信

    説明員(大原重信君) お答え申し上げます。  先生御指摘のかつての委員会、五十七年でございますが、当庁の説明員から検討してみたいと御答弁申し上げてございますが、本資金の性格上、国会に報告する規定は置かれていないものと私どもは理解いたしております。
  175. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 国会に提出しないという考えが今表明されました。引き続き正体不明のやみ資金として運用されるということになるわけですが、会計検査院もほかの資金との権衡がとれていない、制度上の問題があることを認める発言がありました。制度上の改正を行う、そういうことは考えられないのかどうなのか。
  176. 大原重信

    説明員(大原重信君) お答え申し上げます。  私どもは特別調達資金設置令に基づきまして、この資金運営を担当させていただいておりますが、かつての委員会での検査院の御答弁がございましたとおり、検査院の言う他の資金との均衡に つきましては、私ども御答弁申し上げる立場にございません。また、この改正についても御答弁申し上げる立場にございません。
  177. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 大蔵大臣にお伺いしますが、こういう性格の資金が、これは国会で論議されただけじゃなくて、参議院決算委員会の調査室などでもこの「特別調達資金制度と問題」という研究の発表も行われている問題です。今多額の国債発行しようということをここで論議しているわけですけれども、やはり新しい膨大な借金でもやろうというときに、財政をめぐっての疑問の余地がないようにすることが必要だと思いますけれども、こういう国会に提出もされないような資金の存在、こういうのはなくした方がいいとお考えになるかどうか、大臣の見解をお尋ねします。
  178. 角谷正彦

    政府委員(角谷正彦君) 今お尋ねの特別調達資金でございますが、御指摘ございましたように、特別調達資金というのは、もともとは連合軍の占領下にございまして、その時点におきましては、日本政府負担におきまして賄っておりました占領軍に対する物資とか役務の調達の経費が昭和二十六年から米国政府負担に切りかわったことに伴い設置されたものでございます。それは先ほどお話がありましたように、一定の回転基金を設けまして、米国から調達に関する経費の償還を受ける、一種の立てかえ払いのための一つの回転基金というのが性格でございます。これは確かにポツダム勅令ということで設置されたわけでございますが、これも先ほどお話しございましたように、これは現在のその後の立法過程におきまして、ポツダム勅令の中のこの部分につきましては法律ということでございますので、最終的には財政法四十四条に基づく一般会計資金ということで、適法な扱いの資金でございます。  そこで、この資金が国会に報告されてないではないかということでございますが、確かに資金量に増減があるとか、あるいはその増減につきまして受け払いという形ではっきりさせる必要があるもの、こういったものにつきましては国会に報告いたしております。例えば国税収納整理資金でございますとか、農業近代化資金でございますとか、特別会計におきますところの補助貨幣回収準備資金、そういったものにつきましては国会に報告をしているわけでございますが、この資金は今申しました回転資金でございまして、ほかの使い切りの消費的な資金でもございませんし、運用を目的とする資金でもございません。そこで、言うなれば損益が発生するとか資金が使われてしまうということではなくて、リボルビングしているといいますか、年度を越えまして立てかえ払いをし償還を受けるということでございますので、特段これにつきましては決算手続になじまないという面がございまして、国会の報告というのは制度上なされていない扱いになっておりますし、またこれはそういった性格上必ずしも国会の報告になじむものではないというふうに考えているわけでございます。ただ、この国会の報告につきましては、昭和四十七年におきまして、この参議院の決算委員会におきましていろいろ御質問がございました。そういったことから昭和四十七年におきましては、特別調達資金の受払決定計算書というものを参議院の決算委員会の調査室長あて提出いたしまして、必要に応じ国会審議の便宜に供させていただく、こういう扱いになっているわけでございます。
  179. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 私は国会への提出を求めますが、次の問題へ入ります。  もう一つ、案件に先立ってお伺いしますが、これは商社の外国税額控除制度に基づく法人税の問題です。これは国会でもしばしば問題になってきた問題で、我々は大企業への特別の優遇をやめるだけで少なくとも四兆円の財源が出てくると、こういうことを言っておりますけれども、元国税庁にお勤めになって、中央大学の富岡幸雄さん、この人の発表によると、「日本を代表する九大商社のうち、三菱商事、日商岩井、丸紅、伊藤忠商事、トーメン、ニチメン、兼松江商の七社までが昭和六十年度の法人税の納税額がゼロのようなのです。また、我が国最大の石油会社、アラビア石油は常に申告所得ランキングの上位に位置していますが、創業以来三十年間の長きにわたり日本国には法人税を一銭も払っていないということです。」と、こういうふうに述べておられます。税制上、政策論争ということじゃなくて、こういう問題、事実関係だけを明らかにしておきたいと思いますので、このお答えを願います。
  180. 日向隆

    政府委員(日向隆君) 直近の六十一年三月期について、今お尋ねになりました主要商社九社について見ますと、その申告所得金額は二千二百三十一億円でございまして、これに対する算出法人税額は九百四十億円で、これに対して、今委員御案内の外国税額控除制度に基づき外国で納付した法人税、これが五百九十八億円ございます。これを控除した残りの三百四十二億円が我が国において納付した税額であります。ちなみに、この税額三百四十二億円の内訳は、我が国における受取利子、受取配当等に課された源泉所得税額百四十四億円と申告納付法人税額百九十八億円であります。
  181. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 アラビア石油の方はどうですか。
  182. 日向隆

    政府委員(日向隆君) 今落としまして大変失礼いたしました。  アラビア石油につきましては、御案内と思いますけれども、その稼得する所得がほとんど外国で発生するものでございますし、また私どもが推測している限りにおきましては、そこにおける法人税率等の税率が極めて高いということでございますので、その諸般の事情を察しますと、外国税額控除制度の運用によりまして我が国において納付する法人税がゼロという場合も、これは一般論でございますが、あり得るということだろうと思います。
  183. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 法案の内容に入っていきたいと思います。  本法案の四兆九千八百億円に上る特別公債発行を含めて、今年度政府は新規国債十兆四千億円、借換債十五兆七千億円、合わせると二十六兆一千億円という国債発行することになります。一人当たり二十三万円、四人家族だと百万円近くになる新しい借金をやろうということになるわけですが、財政が幾ら苦しいからといっても返済のめどのない借金というわけにはいかないと思います。そういう点で、我々は今日本財政状況というのはどうなっているかということをきちっと認識していく必要があると思います。そういう点で今の日本財政状況、これをどういうふうに認識しているか、これまでも議論があったところですけれども、改めてお尋ねします。
  184. 角谷正彦

    政府委員(角谷正彦君) 現在の我が国財政の現状でございますが、昭和五十年、第一次石油危機の影響によりまして税収が大幅に落ち込みました。その時点におきましては景気維持の観点から歳出を抑制するということではなく、むしろ場合によりましては公共事業等を中心に積極的に景気を拡大するという要請があった。他方昭和四十年代後半の社会福祉の施策というものは、制度の成熟化あるいは人口構成の老齢化等に伴いまして、社会保障負担というものがどんどんふえてきた。この収支ギャップをいわゆる建設公債に加えまして、現在御審議をお願いしておりますところの特例公債といったもので賄うといったふうな状況に立ち至っているわけでございます。  その段階におきまして、政府としてもいろいろな段階で財政の健全化のための努力を払ってきたわけでございますが、昭和五十六年あるいは五十七年の段階におきまして、第二次石油ショックによりましてさらに税収がもう一度落ち込むといったふうなことから、私どもといたしましても財政をさらに立て直す必要があるということで、昭和五十五年以降でございますけれども、特に歳出削減を中心に財政を立て直していこう、同時にその第二次石油ショック後の財政状況を踏まえまして、昭和六十五年に向けまして特例公債依存体質からの脱却を図るということを一つ政策目標として、特に歳出削減を中心といたしました懸命の努力を払ってきておるところでございます。  その結果、公債依存度につきましては、先ほど申し上げましたように、昭和六十二年度当初予算におきましては一九・四ということで、特例公債発行するようになりました昭和五十年以降初めて二割を割るという状況まで改善し、また歳出削減につきましても一定の成果を上げてきたというふうに考えております。  しかしながら、この間非常に公債も大量に発行せざるを得ないといった状況が続いておりますので、国債残高につきましては六十二年末百五十二兆円ということで、公債のGNPに占める比率も四三・五%ということで諸外国等に比べますとかなり高い比率にございます。また、利払い費につきましても年々歳出に占めるウエートが増加してきておりまして、やや伸び率は鈍化しつつあるとはいうものの、歳出総額に占めますところの利払い費の比率、これも昭和六十二年度は二〇・二%ということでございます。  これは先ほど御答弁申し上げましたので繰り返し申し上げませんが、諸外国の関連する諸指標と比べますとかなり高い水準でございまして、私どもとしましては財政再建努力を今後ともなお引き続き努力する必要があるということはもちろんでございますが、そういった意味で、なお引き続き継続して努力する必要があるというふうに基本的に考えているわけでございます。
  185. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 これまでの論議の中で、今の日本財政危機の状況がどういう実態にあるかということはかなりはっきりしてきたわけですけれども、私は答弁を聞いていて非常に驚いたのは、財政改善かなり進んだが道半ばだという答弁があったことです。今の日本財政危機の状況、これを改善は進んだが道半ばだという認識では、これからの日本財政が一体どうなるのだろうかという危惧を持たざるを得ません。  先ほどの論議でもありましたけれども、ほっておけばもっと悪くなったかもしれない、それを防ぐことには一定の努力成果があったということの表現かもしれませんけれども、財政かなり改善されたというふうにはとても思えません。財政危機は激化しつつあるのか、緩和しつつあるのか、はっきりと答えてもらいたいと思います。
  186. 角谷正彦

    政府委員(角谷正彦君) 一般会計の姿、公債依存度等の状況等から見ますと、従来単年度単年度に見ます限りにおきましては、私は財政状況はよくなってきているとは思います。しかしながら、その間におきますところの財政運営というものをかなり多額の公債に依存せざるを得なかった。その残高の積み重ねというものが極めて膨大な金額になっていることも事実でございまして、そこからまいりますところの利払い費の負担、あるいは今後におきます国債の償還の負担といったものを考えますときには、ある意味ではむしろ事態は非常に悪くなっている面もあるというふうに考えておるわけであります。
  187. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 先ほども論議で明らかにされたところですが、先進国中最も高い依存度ということで、それをなお依存度が減ったという数字を最大のよりどころにして一定の改善があったように言われます。しかし、依存度が減ったと見えますけれども、それは見せかけのことであって、借りかえ等と合わせれば国債はどんどんふえているという状況です。当初予算では減っていますが、しかしこれまでも補正予算で増発するということもやられてきております。  ここでもう一度はっきりお伺いしたいと思いますけれども、補正での公債発行計画、これについてお答え願いたいと思います。
  188. 角谷正彦

    政府委員(角谷正彦君) 確かに年度年度の全体の財政運営の中で補正予算を組まざるを得ない状況のもとで、若干の公債の増額を行うということによって対処してきたというケースは過去にございます。しかしながら、補正後について見ましても、例えば昭和五十七年については、これはたまたま多額の税収欠陥があった年度でございますが、補正後におきまして公債依存度は三〇・二%であったものが、昭和六十一年度補正後におきましては二一・四%まで公債依存度が低下してきております。それは確かにそういう意味におきましては、財政体質も改善してきているというふうなことはお認めいただきたいというふうに思います。  それから、今のお尋ねは、今年度のあるいは補正予算に関するお尋ねかというふうにも思いますけれども、この点につきましては現在自民党の総合経済対策要綱の考え方を受けまして、政府一体といたしましての緊急経済対策を今検討中でございます。それを受けまして今後補正予算等の編成作業に入るわけでございますので、現時点におきましてその財源を具体的にどうするかということについて、今の段階で明らかに申し上げられるような状況にないことについて御理解いただきたいと思います。
  189. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 先ほど大蔵大臣は、補正予算で赤字公債を発行しないとお答えになりました。これは内閣としての責任持っての御答弁だというふうにとっていいということなのか、大蔵大臣の御見解なのか。それから、その補正予算というのは今問題になっている補正予算なのか、今年度内に赤字公債はないというふうにとっていいのか。その点はっきりしておいていただきたいと思います。
  190. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 先ほどなるほど今吉岡委員からお尋ねがありまして、私も気がつきましたのですが、私のお答えしましたことが不明確でありました。この法律による限度を変更することはないというようなことを申し上げましたのは、今後の、今年度の財政事情いかんにかかわらず、特例公債の増発はもうしないというふうにお聞き取りいただいたとしましたら、私の言葉、用語がまことに不適当でありましたので、あの法律そのものの限度、これをこの段階で変えていただくというようなことは思っておりませんということを申し上げようとしましたので、私のお答えが不十分でございました。
  191. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 私の聞いていたところでは、大蔵大臣のその答弁があったので志苫議員の質問も前に進んだんじゃないかと思いますので、今の答弁は非常に重大な違いだと思います。  報道によると、一兆円を超す減税先行ということに関連して、減税財源は、全額赤字国債の増発ということも考えられているということもあります。  したがってもう一度お伺いしますけれども、今後赤字国債特例国債発行が全くないということではないというふうに受け取ってよろしゅうございますか。
  192. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 大変厳密な意味でのお尋ねでございますと、今訂正さしていただいたようなことになりますので、これから補正予算を組みまして財源が要るといたしますと、恐らく多くの部分は建設国債であろうと思われます。それから、将来の減税ということを考えましたときに、もう一遍先行いたしますと、前倒してございますと財源が要るというようなことが考えられるのでございますが、その段階で、この昭和六十二年度の決算が済んで、ほぼ済んでおる段階でもございますので、どういうような余剰があるか、利用できるかといったような問題が実は残っておりまして、なるべく特例公債を増発したくないと考えておりますけれども、もうしばらく先のことでございます。六十二年度の決算もまだでございますので、御猶予をいただきたいと思います。
  193. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 大蔵大臣は、予算委員会の答弁の中で、建設国債については相当な規模のことを考えているというふうにお答えになったというふうに思いますが、その規模は大体どれぐらいと見てよろしゅうございますか。
  194. 角谷正彦

    政府委員(角谷正彦君) 現在五兆円を上回る財政措置を伴う内需拡大策といったことの内訳をどうするかということにつきまして、政府全体としての緊急経済対策の中をどう考えるかということをいろいろ部内で検討しているわけでございます。そういった中で、私どもといたしましてはまだどこをどうするというふうな具体的な成案を得るに至っておりません。それを受けまして私どもが具体的な予算編成の作業を行います段階で、そ の時点におきます不足財源を果たしてどこに求めるかといったふうなことが必要になってくるわけでございまして、そういった検討を経た段階で建設公債が幾ら必要かといったことがおのずと浮き上がってくるということでございます。  恐らく、大臣の申し上げられましたように、建設公債を相当発行せざるを得ない状況かとは思いますけれども、それがどの程度かということ、定量的なことについて現在まだお答えできるような状況にはございません。
  195. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 その額はここで示せないかもしれませんけれども、仮に特例公債合わせて三兆の国債発行されるということになれば、これは五十八年と同じ公債発行額であり、中曽根総理の出発時の振り出しに戻ってしまうということです。ですから私は、どこから見ても今財政危機が緩和されつつある、財政改善されつつあるというふうには言えないと思います。  その点で話を進めまして、毎年の借換債の問題です。この借換債と合わせれば、減るどころかどんどんふえておる。この点で私はお尋ねしますが、赤字国債の場合についての、赤字国債の新規発行とその借換債の発行額と合わせた数字を、この五年間どうなっているか、挙げていただきたいと思います。
  196. 角谷正彦

    政府委員(角谷正彦君) 新規特例公債発行について申し上げますと、さかのぼって恐縮でございますが、昭和六十二年は四兆九千八百十億円でございます。六十一年は五兆二千四百六十億円、当初予算ベースでございます。六十年度は五兆七千三百億円、五十九年が六兆四千五百五十億円、五十八年が六兆九千八百億円ということでございまして、わずかずつでございますが低下しております。  なお、借換債の中の赤字公債といいますか、特例と対応する部分について、現在手持ちございませんので、後から委員のところにわかりましたらお届け申し上げたいと思います。
  197. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 私の方は資料ありますから結構ですが、この五年間の合わせての数字を見ますと、五十八年が六・七兆、五十九年は若干減って六兆四千億ですが、六十年は七兆九千億、六十一年度は八兆二千億、六十二年は八兆八千億、どんどんふえているわけです。その当初予算だけをもって依存度が減ったという、そういう見せかけだけで赤字が減っているというふうには言えないと思います。  これはそれとしまして、国債発行残高の問題です。国債発行残高についてもこれはこれまでの論議で世界でも最高の水準、国民一人当たりにすると百五十二兆円ですから百二十六万円ぐらいな額になります。こういう残高がどんどんふえてきている。これは一体いつの時期がピークになるのか、そういうことを計算なさっているのかどうなのか、もうすぐ二百兆にもなるだろうと思いますけれども、それらの見通し、お答え願います。
  198. 角谷正彦

    政府委員(角谷正彦君) 私どもといたしましては、まず特例公債の新規発行額を極力抑制していくと同時に、それをなるたけ早くゼロに持っていきたいということを第一目標にいたしております。その次に、特例公債を含む公債の新規発行額を減らすと同時に、国債残高につきましても可能な限り減らしていきたいということでございます。  そこで、今お尋ねの点でございますけれども、これは先般国会に提出いたしました「財政の中期展望」に関連いたしまして「国債整理基金の資金繰り状況等についての仮定計算」ということで、これは一定の前提を置きました計算でございますが、昭和六十五年までに特例公債依存から脱却するという前提を置きました状況におきましての年度末の国債残高でございますが、昭和六十二年におきましては、先ほど申しましたように、百五十二兆五千億円程度の年度末残高になりますが、なおしばらくの間は公債の借りかえあるいは新規発行等の残によりまして残高がふえてまいりまして、なお、昭和七十五年時点におきましては百九十六兆円となる見込みでございます。  ただ、これにつきましてはだんだん残高が減ってまいりますので、このままいきますと昭和七十五年以降、どこかで頭をつくと思いますが、なお当分の間は公債残高は引き続き増加する見込みであるという計算になっております。
  199. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 今の見通しが仮に当たるとしても、これから十三年間はまだふえ続けるということですか。その見通しがどうなるかということは、これまでの大蔵省の提出のいろいろな資料の見通しがほぼすべて狂っているということから見ても当てにならないと思いますが、それはさておくことにしましょう。  国債発行財政法との関係ですが、私は調べてみて非常に驚くのは、まず財政法に完全に違反しての特例公債発行、これは特例によるというものですけれども、それから国債整理基金特別会計法に認めていない、しかも国会答弁では絶対やらないと言っていた特例公債の借換債の発行、それから国債整理基金への定率繰り入れ停止する、健康保険法に基づく政管健保への国庫補助の削減、これらを見ますと、法律に定められていることを次々特例とかその他の方法で変えて実行しない、そして倍金だけをふやしている、こういう形になっているわけです。こういう財政運営、これはまことに異常なものであって、こういう実態というのは国民から見れば、政府は法律があっても何でもやってもいいのかということになると思います。こういう現状について大臣、どういうふうにお考えになりますか。
  200. 角谷正彦

    政府委員(角谷正彦君) 先ほどのお答えに若干補足さしていただきますと、確かに年度末公債残高はだんだんとふえていくわけでございますけれども、ただGNP比でございます、先ほど百五十二兆円で六十二年末四三・五%と申しましたが、これにつきましては、もしそういう形で財政再建が進められました場合には、公債残高はふえますけれども、GNP比はだんだん低下しまして昭和七十五年時点におきましては二六・二%程度になるであろうということにつきましても、これは仮定計算例の中でお示ししているところでございます。  なお、ただいまの御質問でございますが、確かに特例公債につきましては、財政法第四条ただし書きの建設公債のみを認めておりますところの財政法からいいますと、この特例にならざるを得ないわけでございます。ただ、これも先ほど申しましたように、昭和五十年以前におきまして第一次石油危機の結果、大幅な税収減があった。こういうことに伴いまして、直ちにその時点で増税を行う、あるいは歳出カットを行うといったことによって財政収支をバランスさせるということは、その時点におきます経済財政状況から見ましてむしろ問題である。むしろ若干特例公債発行してでも財政自身が景気の下支えをしていくということも要請された時代におきまして、やむを得ずこれを発行したわけでございます。  確かに私ども財政再建のための努力を傾注してきたわけでございますが、現在に至るまで足かけ十三年間にわたりまして特例公債発行せざるを得ない状況に至っていることは極めて残念ではございますが、まさにそういう特例債でございますがゆえに、毎年毎年特例公債発行につきまして財源確保法等の形によりまして授権をいただき、汗をかきながら御答弁を申し上げまして、そういった授権をいただいているその努力ということをまた御理解いただきたいというふうに思います。  それから、定率繰り入れ停止あるいは政管健保等の問題についてお尋ねございました。確かに定率繰り入れにつきましては昭和五十七年以降すっと停止いたしてきております。これにつきましても国債整理基金の残高状況、最近におきましてはNTT株の売却の状況等を見まして、当面におきます国債の現金償還の財源に支障がないといったことを勘案しつつ、かといいまして、もし仮に定率繰り入れを行った場合におきましては、先ほど大臣も申し上げましたように、新たに国債の償還のための財源として特例公債を新たに発行してまた繰り入れる、こういったふうになる。逆に 言いますと、利子のつく金で国債償還財源を蓄えるといったふうなことになるような状況等も、ある意味ではまた合理的ではないという面の御指摘もございます。そういったふうなことも勘案しつつ、当面の国債整理基金の状況に照らしまして六十年間で国債を償還するというルールを守っていくため支障がない、こういった状況を見きわめつつ行っているわけでございます。  政管健保につきましても、詳しいことは申し述べませんけれども、政管健保におきます積立金の状況からいたしまして、なおその繰り入れ特例を設けましても当面支障がない。将来におきまして必要があれば適切な措置を講じ、政管健保に繰り戻すといったふうなことを考えております。そういった状況のもとにとられた措置であることを御理解いただきたいというふうに考えております。
  201. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 とても理解できるような話じゃございません。私はこの財政の今のようなやり方を見て思いますのは、戦力放棄を規定した憲法のもとで自衛隊がどんどん大きくなっている、財政は、財政法がもう全く空洞化した状況下での財政運営がやられている、そういう感じを非常に強く持ちました。これは議論しようとは思いません。  そういうふうにして行われた借金、公債ですが、私は本当のところ、これを解決する、返済する見通しあるいは財政再建の見通しがあるのかないのか。先ほどの論戦を聞いていて、いい知恵がないとか、ビジョンが持てないとかいうような答弁を聞いていましても、やはり見通しがないまま次々と公債を発行し続けている、借金をふやし続けているというのが実態じゃないかと思います。どうですか。
  202. 角谷正彦

    政府委員(角谷正彦君) 見通しがないというお尋ねでございますが、まさに私どもは、新しく特例公債発行することをできるだけ早期にそういう事態にならないように努力したい。そういうことで、いろいろ御批判ございますけれども、昭和六十五年におきましては特例公債依存体質から脱却したいということを目標といたしまして、その目標を掲げつつ全体の歳出面につきましても厳しい抑制を行う等々、全体につきましての懸命な努力を払っているということでございます。
  203. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 六十五年度特例公債からの脱却という計画ですけれども、毎年出されている中期展望を見てみますと、どんどん額がふえてきて、とても見込みがないということをこの数字を見るとはっきり言えると思います。去年の見通しに比べても六十二年度の公債発行というのが一兆円以上多く発行されております。こういうのを見ると年年目標が遠くなってきているということで、これは先ほどもお話があったとおりです。ですから、こういうものを出すこと自体がもういよいよ見通しがないということの証拠だと思います。  大蔵大臣に端的にお伺いしますけれども、今の財政再建、この方法というのは私はもう財政再建を棚上げしてしまうか、あるいは思い切った徹底した財政削減が、あるいは大増税以外にないというのがあなた方の本音じゃないかと思いますけれども、そのうちのどれがあなた方の本当の念頭にあるところなのかという点を伺いたいと思います。
  204. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それは先ほどもちょっと申し上げたところでございましたけれども、我が国成長率というのがここのところ、昭和五十五年ごろから申し上げますと四、三・三、三・二、三・七、わずかに五十九が五・一でございますが、四・三、三・〇。私はもうちょっと我が国経済には成長潜在力がある。何か五十五年あたりからもうそういうものだというふうに全体があきらめてしまったような感じがあって、これは国際的にいろんなことがあったからだと思いますけれども、石油が高いとかあったからだと思いますけれども、そんなはずはないし、またそれだけのニーズもあるわけでございますから、そういう経済運営というものをやっぱり前提に物を考えていっていいんだと思うのでございます。そういう意味では、今吉岡委員が言われました三つのうちの一つどれだとおっしゃいましても、やはり経済がもう少しうまく回っていくということを考えますと、財政もそれに従って処理の方法がある。私はやはりそういうふうに運営していくべきだと考えております。
  205. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 これは財政再建の見通しではなくて、大蔵大臣の神頼みだというふうにしか受け取れません。——神頼みに向いているかもしれません。  最後にもう一問お伺いします。  政管健保国庫補助の削減問題ですが、これはどうですか、返済はするのですか、それとも赤字が広がらない限り返済しないのかどうなのか。私はこれは明らかに隠れた借金だと思いますので、返すのか返さないのか、その点はっきりしていただきたいと思います。
  206. 角谷正彦

    政府委員(角谷正彦君) 政管健保の国庫負担の繰り延べの問題につきましては、この法律の第四条二項に「政府は、後日、政府の管掌する健康保険事業の適正な運営確保されるために、各年度における厚生保険特別会計健康勘定の収入支出の状況を勘案して、予算の定めるところにより、一般会計から当該勘定に千三百五十億円」、これはことしの繰り入れ特例額でございますが、「に達するまでの金額繰り入れ措置その他の適切な措置を講じなければならない。」というふうに規定しているところでございます。したがって、この規定に従いますと、政管健保の財政が悪化するということによってその政管健保事業の適正な運営が困難となるおそれがある場合には、繰入減額相当額に達するまでの金額を繰り戻すといったふうな措置を講ずることにいたしております。
  207. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 そうすると、困難にならなければ返さないということですか。
  208. 角谷正彦

    政府委員(角谷正彦君) 困難になった場合に、これを政管健保の運営に支障がないように返すことはもちろんでございますけれども、私どもといたしましては、今後一般会計特例公債依存体質から脱却したそれから後の状況におきましては、できるだけ速やかに今までのような準じた措置を講じてまいりたいというふうに考えております。
  209. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 先ほど来議論がありましたが、私は現在のこの国債発行の問題を私なりに一言に申しますと、借りかえがこれは赤字国債まで認めるようになったということは、大体期限到来の借金は返さない、それから国債整理基金繰り入れ停止は、返済の積み立てもしない、そして新しい借金は利払いはそれ以上ですから全部金利払いに回る。これは個人の家計でしたらもうまさにサラ金地獄で家出か自殺か、そういう状況にあると、こう思います。答弁要りません。  それで問題は、私は主に国債利払いの問題についてこれから質問をしますが、ほとんどが利払い、あるいは全部が利払い、もしくはそれ以上が利払いであるという、こういう状況がこれは今後も続いていくんじゃないかと思いますが、どうでしょうか。
  210. 角谷正彦

    政府委員(角谷正彦君) 特例公債の借りかえのために新しい借金を返さないというお話でございますけれども、現在の国債の償還制度というのは総合減債制度といったてまえをとっておりまして……
  211. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 そこは答弁要らないんです。要するに、利払いに全部新しい借金が打っちゃうんじゃないか、そこです。
  212. 角谷正彦

    政府委員(角谷正彦君) したがいまして、そういう意味では毎年その減債基金制度の運用の中で特例公債、建設公債の双方とも返済に努めてまいりたいというふうに考えております。  それから、現在の国債の利払いでございますが、確かに現時点におきましてはNTTの株等もございますので、定率繰り入れを六十二年におきましては停止さしていただいております。したがって、現在の国債費のほとんど大半が利払いでございます。
  213. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 今後もこういう状況が続きますが、そこで毎年しかもこれは十兆円超える規模ですね。国債保有の状況は、資料によりますと大体金融機関等々でありますが、その他恐らく個人だ と思いますが三三・三%。先ほども答弁ありましたが、主にこれを保有しているのはやはり資産家の方だとなりますと、これが逆所得再配分機能として働くものであること、しかもその規模が十兆円規模ですからね、全体予算の五分の一に相当する。この影響は相当大きいんじゃないかと思いますね。これは前の竹下大蔵大臣のときにも、これは予測しがたい事態につながるかもしれぬと、こういう答弁もあったわけであります。  そこで、これはどういう機能を発揮するかという点で、個人の中で所得階級別に保有がどういう分布をしているかというわけです。これは今まで何度も問題になっているんです。ところが、これ調査可能だと思うんだけれども、いまだやっていない。この調査をしてこの逆所得再配分機能がどのようになっていくのか、ここはむしろしっかりと大蔵省自身がつかむべきじゃないかと思うんですが、いかがですか。
  214. 窪田弘

    政府委員(窪田弘君) 国債は転々流通するものでございますから、どういうふうに保有されているかというのを調べると申しましてもなかなか難しいものでございます。日銀が調べておられますマネーフローの統計によりますと、個人が中国ファンドなどで間接に持っているものも含めて、大体個人は一六%程度持っているという数字になっております。
  215. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 その逆所得再配分性についてはもうこれ議論しなくても、これは共通の前提として議論していいと思うんですね。  そこで、これは私五月の十一日の予算委員会で宮澤さんと所得水準の平準化の問題で議論をいたしました。そのときの議論を整理してみますと、所得格差の大きさを示すジニ係数が最近大きくなっているということ、それから今後大きくなる可能性があるということ、それに対処するための再配分政策を強化しなけりゃならない、この点は私は宮澤さんと一致したと思うんですね。宮澤さんがそこで強調した点は、過去四十年の日本の大きな傾向としては所得格差は縮まり平準化してきた、それから最近ジニ係数が大きくなっているのは社会の老齢化からくるんだと。要するに、これはこういう趣旨だと思うんですが、老人の要するに所得が少ないのは当然のことなんで、問題は経済活動として、そこの所得配分が平準化しているというそういう趣旨だと思うんですが、そうかどうか。そしてもう一つ宮澤さんが言われたことは、ジニ係数は多くの先進国より低いと、こういう認識でありましたが、このように確認してよろしゅうございますかな。
  216. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 概してそういう趣旨のことを申し上げたと記憶しております。
  217. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 宮澤さんの意見としては、再配分政策強化のためにもその財源として薄く広く老人なり低所得者からも税を負担してもらう必要があるということになった、そこが根本的に違うわけで、きょうはその議論もう一つ奥へ進めてみたいと思います。  そこで私は、先ほど申し上げたとおり十兆規模国債利払いが逆所得再配分機能を果たすことは間違いない。となりますと、あとどこでその再配分機能を進めていくのか、社会福祉も後退しているんだからこれは余り今まで以上に期待は難しいとなりますと、税制に対する期待が大きいんじゃないかと思うんですね。  そこでお伺いしますが、税制そのものの再配分機能、その効果は強まっているとお考えですか、大臣
  218. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それにお答えする前に、確かに財政には再配分機能というものがあるというふうに考えられておりますが、それはその国のそのときの状況によるものだと私は思いますので、つまり終戦後のような我が国でございますと、非常に財政の再配分機能というのがずっと期待されてきて、ここまでまいりましたときに財政にそれほど大きな再配分機能を期待すべきものかどうか、現実の我が国のきょうの状態ででございますね。社会保障の制度はあれだけ現実に動き始めておりますから、そういうときに、今税のお話がございましたのですが、税制そのものにそんなに大きな再配分機能を期待すべきであるのか、あるいは歳入となりました税が歳出の形で再配分機能を果たしておれば、税制そのものがそんなにそれ自身が再配分機能を果たさなければならないということは必ずしもないだろう。その辺のところはそのときどきその国の状況によって判断すべきではないかというのが、せんだって申し上げたときもそういうことを申し上げましたんですが、私は考えております。
  219. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 しかし、歳出の一番大きな十兆を超える国債利払い費がこれ逆配分機能ですからね、ということはやっぱり大事なことだと思うんです。  そこで、これは私は大蔵省自身の資料で税制の再配分機能が強まっているのか低まっているのか、その辺をやっぱりこれは十分検討してみるべきだと思います。大蔵省自身が毎年発行している「申告所得税の実態」それから「民間給与の実態」こういう資料があります。それでこの中のデータを使いますとジニ係数、これ計算できますよね。私は今まで、これは前の予算委員会のときの準備ですから五月の初めごろからこれに基づいたジニ係数、そして税制による再配分効果、これを計算してみてほしいという要請をいたしましたが、予算委員会にも間に合わなかった。そして今日に至るも出てこない。一体なぜですか。
  220. 水野勝

    政府委員(水野勝君) その際にもお答えをしておるかと思いますけれども、税務統計によりますところのデータはあくまで個人単位、納税者単位でございます。こうした所得再分配的な議論をいたします際には、世帯としての所得の分配がそのポイントでございますので、全く個人単位で課税が行われております所得税の資料をもっていたしますと、その点はややミスリーディンクになるんではなかろうか。特に最近は有配偶者の半分以上がお働きになっておるという実態があるわけでございます。また、税務統計によりますと、当然のことながら税を納めることのない低所得者層につきましてのデータが全く入らない。また、申告所得税も合わせて考えた場合にも、あるいは給与所得だけの場合におきましても、何カ所かに勤務される場合があってもそれは世帯単位、個人単位に集計をされることがない。そういったもろもろの制約がございますので、かえってこういったもので議論をいたしますことは問題が多いということで私どもは考えておるわけでございます。
  221. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 所得税を納めない階層が出てこない、これは当然です。ということは、要するに実際はもっと格差が広がるはずですからそのことを考慮すればよろしいんですね。それから、これはほかのところがやっている調査よりも、税金ですから、これは一番正確に、しかも一番的確に所得状況を実際の数字でつかんでいるはずですよ。今局長が言ったような幾つかの弱点があること、これは当然です。それはまたそういう角度で考えりゃいいんです。しかし、そんなにダブっている分とかというのは、それが全体を左右するんじゃなくて、それは一定の部分ですから、それはそれでまた考慮して差し引くなりすればいいので、大勢として所得格差は広がっている。  大蔵大臣か言うとおり、シャウプ税制以来どうなっているのか、最近どうなっているのか、私は一番身近な大蔵省にある数字でやってしかるべきだと思うんですよ。これはぜひやってみてください。そしてこの委員会に提出してほしいと思うんですが、局長はまた同じことを言うから結構、大臣ひとつどうですか。
  222. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それは事務当局が持っているデータでそういうことができますのでしょうか、どうでしょうか。ちょっと私にも何とも申し上げかねますし、そうでありませんと、大蔵省でそれをやれと言われましてもちょっと大蔵省の統計ではできないというようなことになるんじゃないかと思いますが、よくまた事務当局に聞いてみます。
  223. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 計算できるんですね。できるんだから、ひとつ委員長の方からも出すように御勧告 をいただきたいと思うんですが、いかがですか。
  224. 井上裕

    委員長井上裕君) お聞きしておきます。質問続けてください。
  225. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 計算できるんです。資料を配付してください。    〔資料配付〕
  226. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 大蔵省がやらぬからこちらでやったんですよ。大臣、できるかどうかなんて、こんな簡単に——簡単でもないな、個人がやるわけだから大分苦労いたしましたがね。  まず、給与所得で見ていただきたいと思うんです。八五年は六七年以来、十八年ぐらいですね、最も高いジニ係数。ジニ係数が高いということはそれだけ所得格差が広がっているということです。それから、この十年間はジニ係数が高まるばかりです。それから、先ほど社会の老齢化の話がありました。大臣はこの間、社会の老齢化が原因でジニ係数が高まっているということでしたが、給与所得自身の中にこういう傾向があることは、これは極めて重大な問題であると思うんですが、御所見いかがですか。  時間の関係でまとめて聞いてしまいます。  シャウプ税制時代と比較しましても、七〇年代についてはたしか傾向として平準化は進んだと言いますが、八〇年代に入ってから逆行し、次第にシャウプ税制当時に近づきつつある。課税後ではほとんど近づいているということ、〇・三一八五が五一年の〇・三二六に近づいているということであります。  申告所得、これは右の方ですが、見ていただきますと、ジニ係数は八五年で〇・五一九四、物すごく高いです。課税後でも〇・四九二四、大変な高さです。しかも、申告所得で見た場合には戦後一貫してジニ係数は高まる傾向です。シャウプ税制当時には〇・三二二であったものが、八五年には〇・五一九四、格差は大きくなっている。大臣、大蔵省の数字では平準化などとんでもない。こういう状況であります。しかも、これは先ほど局長が言ったように納税者だけ対象ですから、それ以下の低所得者は含んでいない。実際はもっと大きいと思いますね。  それから、キャピタルゲイン、資産所得などもこれは抜けている。実際の格差はもっと大きくなる。先ほど局長の言ったようなものを割り引いてもこの傾向は変わらない。もしこれ違うんだったら、大蔵省自身私の何十倍何百倍の計算能力があるんですから、ちゃんとそのために税金払っているんだから、だからそれがあるんだったらちゃんと計算やってみてどこが違う、あるいはこういう点考慮すべきだ、これやってからぜひ私と議論をしてほしいと思うんです。どうですか。
  227. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 先生も御承知のように、こうした分析につきましてはいろいろの研究機関でも行われているところでございまして、そうした研究におかれましてもいろいろな問題点が指摘されているところでございますが、ただいま委員御指摘の点につきましては、申告所得税で申しますと、昭和四十年代以降土地税制が非常に影響をしているんではないかと思うわけでございます。昭和三十年代後半から土地の譲渡所得が極めて大きなウエートを占めるようになった。そこへもってまいりまして、昭和四十四年に土地税制を抜本的に見直しまして、それまでは二分の一課税でございましたのを全額にし、しかも分離・比例にした。そういうことの影響といたしまして、ここでも私ども拝見しますと、一九六九年にいきなり〇・四から〇・五に上がっている。これはどうも土地税制の改正と土地譲渡所得の動向ではないか。したがいまして、申告所得では土地税制なり土地譲渡所得に非常に振り回されるので、これはなかなか土地の所有が即先生のお話しの所得再分配と結びついているんだという議論をすればそこは結びつくんでございますが、必ずしもそこが結びつかないとすると、この申告所得税の結果を用いてのジニ係数という点につきましては、いろいろどうも考えるべき点があるのではないか、ちょっと一覧さしていただきまして、そういう感想がいたすわけでございます。  それから給与所得につきましては、先ほども申し上げましたが、各世帯の中で配偶者が三十年代、四十年代は有職業率が三割台であったのが今五割を超えている。そうしますと、どうしても子育てが終わってからパートに出られるということから割合所得水準が低いそういう勤労者がふえてきているがために、どうもこの十年来を見ますと昭和三十年代、四十年代に比べるとジニ係数が大きくなっている。これは先般も御議論があったところでございますが、そういう影響とか先ほどお話しの高齢化とか、そういった点がここらにあらわれているのではないかと思うわけでございます。
  228. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 局長ね、そんな立派なこと言うんだったらちゃんと自分でつくって、いろいろ問題がある、確かにそのとおりですよね、問題たくさんあるんだから、そういう角度で議論したらいいじゃないですか。まあ今ああいう答弁したということは、私の計算がほぼ正確だということで、ごらんのとおりだと思うんですけれども、大臣、そんなものなんです。この後時間があれば指摘する土地税制の問題もそうですが、大蔵省は都合が悪い資料はなかなか計算しない。やっと土地税制のやつを計算してきましたけれども、そういうようなもので、これは基本的なものとしてはこういう議論の対象になる。こういう問題、委員長も今おわかりでしょう、ちゃんと議論の対象になる立派な資料なんです。大蔵省がつくれば一番簡単に議論が進むし、今言ったような問題どんどん出して、そしてより正確な議論をしていくべきなんですね。ここがまず大事なことであります。  それから、この資料でもう一つ大事な点は再配分効果。給与所得で見ましても、一九五一年時代には九・一八あるいは九・三八であったものが、税制による配分効果は四・五三、もう半分以下ですね。申告所得になりますと、かつては二二・九など大変税制による再配分効果が大きかったのが、五・二〇、こう下がっておるんです。ということは、大臣認識とは逆に、税制による再配分効果が弱まっているからジニ係数がどんどん大きくなって格差は逆に広がっている。広がった要素はいろいろありますよ。あるけれどもそれも大きな傾向だとしますと、大臣は先ほどこう言われましたね、これは前回の予算委員会で、そういう再配分政策を進めるためにもその財源として税制は薄く、広くと。ところが、薄く、広く取る相手がこういう低所得者だとしますと、再配分効果を発揮するためにさらに格差が広がるようなところから税金を取っていくという、これは論理的に矛盾をいたしませんか。税制の再配分効果と今の問題、あわせてお答えいただきたいと思います。
  229. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) これは一九四八年、四九年あたり、ああいう時代でございますから、昭和二十三年、四年でございますね、ですから、これはもう税制にこのくらいの再配分効果があってもよろしいんだと思いますが、このごろになってそれが小さくなっているのは、それだけ日本の社会全体がかなり所得水準が高くなりて、税金がそんなに大きな再配分の仕事をしなくてもよくなっている。私はそういうことだというふうに思いますし、先ほど申しましたように、税制がどれだけの再配分機能を持つべきかというのは、やっぱりその国のそのときの状況というのに私はよるんだろうと思います。
  230. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 社会の必要がこのような再配分効果を低めてきたのではなくて、逆ですね。シャウプ税制のときには一応総合課税主義が確立された。ですから、税制の効果といいますと、相当再配分効果が大きいわけですね。しかし、その後次次と総合課税が崩されて、そういう中で税制による所得の再分配の機能が、これは自民党政府のもとでいわばむしろ意図的に落とされてきた。社会の必要からそれが少なくなったのではなくて、むしろ政策的に、要するに高所得者に対する優遇の立場から落とされてきたんだと、こう見る以外にないんじゃないでしょうか。その点をもう一度お答えいただきたいと思います。
  231. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それは、社会が安定す るに従って税制がより革命的でなくなるということだと思います。
  232. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 しかし、大臣は戦後一貫して大きな流れで所得が平準化していると。最近は高まっているかもしれぬというその事実は認めているが、全体としては平準化していると。しかし、大蔵省の数字、いろいろな検討課題ありますよ。しかしそれは一応別としても、大きな流れとしましては数字的には逆に格差が広がっている数字、それは特に申告所得の場合、あるいは給与所得でも、一たんは低くなったけれどもまたもとへ戻りつつある。こういう傾向がありますと、宮澤さんのお得意の要するに間接税移行論、一番基礎である所得よりもむしろ消費に着眼した課税が必要だという、その積極論の一番根拠が大蔵省自身の数字からやっぱり崩れているんじゃないか。もし違うんであれば、この計算をちゃんとやってみて、そして先ほど局長が言ったような点も全部検討してみて、その結果、いややはりそうではない、シャウプ税制以来格差は縮まっていますと言うべきで、しかし今お手元に示されたのは明らかに拡大しているんですから、科学的な事実に基づいて政治を行いませんと間違えますよね。やっぱり税務統計というのは、私はこの限りでは今日本では一番正確な数字だと思いますよ。そして、ジニ係数というのは、所得格差を示す一番今では、いろんなものがありますけれどもね、その中ではそれを最も的確に示す一つの有力な資料ということ、だからこそ厚生省はこれを使っているわけです。こういうものを重視しないと、まさしく政治の方向を誤っていく。その重大な責任を宮澤さんが負うことになるというので、これはぜひとも検討して、実際計算をした上でもう一度私と議論をしてほしい、こう思うんですが、いかがですか。
  233. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それは先ほど政府委員が申し上げました、かつて一世帯でございますか、稼得者、所得のある者が一人であった、いわゆるワンインカムファミリーであったものがツーインカムファミリーになって、しかもその第二の所得者というのは時々パートであったり、どうしてもそういうことになりやすうございますから、そういう意味ではいわば平均的な所得よりもどうしても少なくなりがちだ。しかし、家庭の中で二人の人がそういう稼得をするといいますか、所得を得るということは決して悪いことではございませんで、そういうふうに社会がなってきていることが、個人別にとりましたらやっぱりそういうことはあらわれてこないわけでございます。  それからもう一つ、ひょっとしたら、確かにこの数年の日本経済が少しいろいろな意味で変調でございますし、それから雇用といいますか、一次産業、二次産業、三次産業の構成が変わってくるにつれて、雇用が二次産業から三次産業の方に動いていく場合に、どうしても所得というものが不安定になりやすいというようなことも私はあるかもしれないと思うんですが、そういったようなことがいろいろありまして問題がございますので、なかなか責任のある資料としてはお出しできないということを先ほど主税局長が申し上げたんだと思います。     —————————————
  234. 井上裕

    委員長井上裕君) この際、委員の異動について御報告いたします。  本日、大城眞順君が委員を辞任され、その補欠として高橋清孝君が選任されました。     —————————————
  235. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 今この委員会で審議しておりますいわゆる財確法というのは、事実上財政法を踏み倒した内容でありまして、こんな状態がいいとはだれも思っていないわけでありますから、こういう状態からどうやって脱却をするか、そういった観点から一、二お尋ねをいたしたいと思います。  提案理由の中に「政府は、昭和六十二年度予算におきまして、引き続き財政改革を一層推進するため、」「できる限りの努力を行うこととしているところであります。」こうありますけれども、ではこの財政改革がどの程度進展をしたんだろう、そういったものを示す指標というのは大体どういったものがございますか。
  236. 角谷正彦

    政府委員(角谷正彦君) 私ども毎年予算編成、予算審議の参考のために「財政の中期展望」というものを出しているわけでございますけれども、その中と現在を比較してまいりますと、ここ五年間におきましては、昭和五十八年予算編成以降昭和六十二年度におきましては、一般歳出を五年間連続いたしましてゼロ以下にするという形で、歳出の削減を中心に財政の体質改善に努めてきている。これは表面的な計数はそうなっておりますけれども、その中におきましては、年金、医療の改革あるいは補助金の削減等、それぞれ制度改革等を含めましていろいろな努力をしている。そういう中で、毎年毎年の予算編成の中で努力をしているところでございます。
  237. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 細かくお答えですけれども、もう少し大きくつかみますと、私はこうお答えになるのかと思ったんです。例えば公債依存度というものも一つの指標になるでございましょう、こう答えるかと思ったんですよ。それで、昭和六十二年度の場合は一九・四%でありますが、これは特例発行が始まった昭和五十年度以降初めて二〇%を下回ったのであります、こうお答えになるかと思ったんです。それからまた、公債発行高と実際の公債費の比較、これはやっぱり意味がありますね。あるいは公債費歳出にどの程度の割合を占めているのか。六十二年度の場合には一般歳出の二〇・九%でありますし、公債費は公債発行高を上回ってまいりました、事態はいささか深刻になってまいりました、こういった答えがあるかと思ったんです。  それはいいんですが、こういったもので財政改革の進展をはかるとしますと、こう実態はなっておりますということだけで済まなくて、実は目標と実績を比べながら、この目標に対して実際はこうであります、こう説明を願えると実際の改革の進展状態というのが実によくわかるわけであります。  そこで、今私が申し上げました指標ですね、こういったもので目標が明示されておりますと実績と比べてわかるのだけれども、そういう目標というのは今あるかということになりますと、これはもう私の方から答えてしまいますけれども、これは実はないんです。公債依存度は何%が目標値でありますということは今まで一度もそういった格好で取り上げたことはなかったんです。ただ、一つだけあるのは何かといいますと、昭和六十五年特例公債依存体質の脱却と、そこだけが目標として示されて、あとは何にもないんですね。  そこで、以下が質問なんですが、この六十五年度特例公債依存体質の脱却という目標を変えるのか変えないのか、いろいろ話題になっているものですから。変えないとすると、六十五年度特例公債依存体質脱却というのはこれはぐあい悪いから、じゃ公債依存度であるとかあるいは、では一般歳出の何%を公債費が占めているのかというような新しい目標値に置きかえるようなお考えはあるんでしょうか。その点とうなっているんでございましょうかというのがお尋ねであります。
  238. 角谷正彦

    政府委員(角谷正彦君) 確かに現在お出ししています「財政の中期展望」というのは、これはもう委員御案内のように、現行の制度施策を前提といたしまして一定の仮定のもとにこれを将来に投影したわけでございまして、いわば自然体の財政状況を歳入歳出両面にわたって示したわけでございます。その中で一つ特例公債につきましては六十五年に脱却する、これをゼロにするという仮定を置きまして、機械的にそこに至るまでの計数を毎年度減額するという措置をとっているわけでございまして、確かに政策意味を持つ計数としては六十五年脱却目標が意味を持っている。したがって、そこに至る過程の収支ギャップというものはいわゆる要調整額という形でお示ししているわけでございます。本年度におきましては、六十三年度四兆七百億、六十四年度は六兆二千四百億、六十五年度七兆百億、いずれも予備枠なしてござ いますが、この要調整額という形で示しまして、これはいずれにいたしましても、歳入の確保あるいは歳出の削減等、これらの歳入歳出両面にわたるいろんな施策の組み合わせによって最終的には解消する。こういう目標を立てているわけでございますが、この六十五年脱却目標そのものが、だんだん日が迫ってくるに従ってなかなか難しい状況になってきていることも委員御指摘のとおりでございます。  それでは、それにかわりまして、例えば公債依存度とかあるいは何らかの目標を設定することができるかどうかといったことでございますけれども、いずれにいたしましても、公債依存度にいたしましても予算全体の中での分母、分子の関係でそこは決まってくるものでございまして、それ自体が一つの目標として現実の予算編成の中で果たして具体性を持ち得るものかどうか、あるいはその公債残高のGNP比ということを言う方もございますけれども、GNP比につきましても、これは非常にそのときの経済情勢でぶれるわけでございまして、そういう意味では果たして現実の政策目標たり得るかどうかといった点、いろいろ難しい問題がございます。  ここら辺につきましては、私どもある年次を限って、そこに至るまでの過程におきましてやっぱり苦しいわけでございますし、なかなかはっきりしたことを申し上げられないのは、私どもとしてもなかなか答弁しにくいわけでございますけれども、結局歳入歳出両面にわたっていろいろな努力を積み重ねていく過程の中で、やはり一つの年限を切った目標を置くということがやはり一番縛りのある、一つの実行性のある目標ではないかというふうに考えているわけでございます。
  239. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 私がこの六十五年度特例公債依存体質脱却という時期的な目標を質問いたしましたのは、これを何年か延ばしてしまえという議論が割合に多いものですからね。そこで、私の意見は今の御答弁と全く同じでありまして、そこで若干議論したいんですけれども、六十五年特例公債依存体質の脱却の年次を延ばしたとします。延ばした場合に、「財政の中期展望」の見方に立って見ると何がどう変わるんだろうか。まず一番変わると思われますのは、六十五年度が延びるわけですから、毎年の特例公債減額、削減幅といいましょうか、これが減ることは、これはわかってますね。ところが、それ以外どうかといいますと、成長率、これが五年間——五年、十年どっちでもいいんですよ、延ばしたことによってどう変わるのか、これは神のみぞ知るですよ。  今、中期展望の方はある仮定をもってはっと計算したものですから、じゃこれからどうなるかといいますと、仮に例えば十年延ばすと経済成長率が大きく変わるんだという見通しでもあれば別ですけれども、そんなことが考えられるような状況ではどうもなさそうであります。一方では例えば弾性値、これがそのころになると大きく変わるんだ、こういった見通しがあれば別ですけれども、両方とも要するにわからぬわけです。ですから、延ばすということは、毎年に割り振って減額をする、特例公債減額幅が減ることだけは間違っておりませんけれども、それだけであって、延ばすといかにも財政改革の作業がえらいゆったりして楽になるというものではないように思われるものですから、もう片一方では、おっしゃいましたように、例えば公債依存度とかなんかに目標を置きかえましても、非常に前提のある数字でして、万人が認める、うんそうかという目標値をつくるということは不可能に近い。そうなりますと、せっかく六十五年特例公債依存脱却と目標を掲げてやってきたんですから、これはやはり大切にして、その目標を追いかけながら汗をかいていくというのが僕はとるべき一番正しい道ではないかと、同じことを言っているんですが、改めてお尋ねします。
  240. 角谷正彦

    政府委員(角谷正彦君) まだ六十五年公債依存脱却を後年度へ繰り延べることについて私ども具体的な計算をしたということではございませんが、ただ栗林委員御指摘のとおり、特例公債の毎年度の削減額については確かに少なくなる。その結果として、これもまた繰り延べの時期いかんでございますが、要調整額が若干減少するということはございますけれども、現在の制度施策を前提として、いろんな意味でやはり必然的にふえてくる経費がありますし、また税収につきましても、先へ延びれば延びるほど、将来の経済情勢として不確定な要素が増してくるといったこともございますので、基本的に栗林委員の御指摘のような情勢にあるのではないかというふうに考えております。
  241. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 そこで、財政改革の進展を探る一つのメルクマールとして、端的に言いますと、例の要調整額がどういう推移をたどるかということに目を向けて議論して間違いがないということですね。そういった意味で「財政の中期展望」は、いただいた資料を読んでまいりますと、「昭和六十二年度予算を前提とし、一定の仮定の下に、中期的視点に立った財政運営を進めていく上での検討の手掛かりを示すものとして、」「今後の財政事情を展望すると、別添のとおりである。」こうして中期展望があるんですが、まさに検討の手がかりとして十分これは役に立つ資料であると、こう私は思うんですが、その前提に立って、以下二、三お尋ねをしてまいりたいと思います。  そこで、現在緊急経済対策を御検討中と伺っておりますけれども、緊急経済対策というのはこの「財政の中期展望」の面に結果としてどのような影響をもたらすとお考えになっておられますか。
  242. 角谷正彦

    政府委員(角谷正彦君) 緊急経済対策につきましては、現在政府部内で検討中でございまして、具体的なその内容がまだ固まっておりません。したがって、これについてどうこうということを具体的にまだなお申し上げられるような状況にございませんけれども、全体としまして、かなり公共投資につきましては、財政改革の枠内ではございますけれども、臨時異例の措置としてこれを増額するという方向にあろうかと思います。そういった意味では、投資部門につきましては、これは今後六十三年以降どういう形にするかということはまた六十三年の段階で考える話でございますけれども、六十二年度の計数は若干動く可能性はあるのではないかというふうに考えております。
  243. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 「財政の中期展望」は、一応前提を持った数字ながらに、歳入歳出をそれぞれ数字を中に入れて要調整額をはじいて将来を考えているわけですね。そういった面で見てまいりますと、確かにまだ決まっていないんですよ。決まっていないんですが、決まっていなくたって、ここまでの議論をしても間違いあるまいと思いますのは、公共事業の施行が声高に言われておりますしね、その財源措置としてはこれは建設公債というのがごく常識的なところでしょう。建設公債の増発になれば、当然発行残高がふえて国債費はふえますわね。それから、NTT株売却益をどうするか、この際利用しようかなどという議論もあります。これもまた結論出ておりません。出ていないけれども、もし仮にそうなったとしたらどうなるか。本来だったら、仮換債を発行しないで、NTT株で期限の来た公債の償還をしながら残高を減らしていこうというのが、一番財政的処理としては妥当なわけですね。それができないわけですから、あれを流用して何がしかのことをするとなりますと、その見返りになる公債はやっぱり出ていくわけですから、それはやっぱり流用する中身がわかりませんからいかにもそれは仮定した議論になりますけれども、結局それは何らかの公債に化けていかざるを得ない。  もっとわかりやすく言いますと、NTT株をここに使ってしまいますと、結局それは赤字国債に転化して財源調達をしていかざるを得ないようなことではないか、これはわかりません。要するに、これは結果として公債としてはふえる。まだ中身は決まっておりませんからもちろんよくわかりませんが、ただどうも言えることは、緊急経済対策の結果を「財政の中期展望」に当てはめてみると公債費はふえる。そういったものとして緊急経済対策は結局機能してしまうんじゃないだろう か、ここまで間違っていますか。
  244. 角谷正彦

    政府委員(角谷正彦君) 先ほどから申しましたように、緊急経済対策の中身は決まっておりませんので確定的なことは申し上げられませんけれども、仮に建設公債が何がしか増発されることになれば、その後年度負担といたしまして六十二年度あるいは六十三年度以降の国債費にそれなりの影響はある、プラスの方向に働く、ふえる方向に働くということは事実だろうと思います。
  245. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 そこで、これはやはり大臣お尋ねをしなければいけないんですが、結局要調整額がふえる方向で物事が動いているということなんですね。財政改革というのを最も端的に示すメルクマールは、結局要調整額が減るのか減らないのか、そこなんだと。それが入り口で確認のための議論をちょっとやっただけでありまして、要は要調整額がふえるということは、それは今のこの財政法違反の現状から我々が脱出するめどというのはますます立たなくなる、これは大変なことなんですね。  そこで、緊急経済対策というのがそんなことになっているが、ほかの項目はどうかといいますと、よく高齢化社会になるといろいろまたかかりもふえますので、という話がこれは出るものですから、これは大臣でなくて事務当局で結構ですけれども、高齢化社会になる、それによって財政需要が幾らぐらいふえるのか。あるいはまたこの間三百億ドルの黒字還流計画を議論したばかりですけれども、伺っておりますと、相当部分はこれは一般会計の金を使わないことにはやっぱりうまく動かないみたいですね。それは一体幾らぐらいになるのかわかりませんよ。ただ少なくとも見通しとすると、大蔵省の表現では「高齢化の進展や、我が国に期待される国際的責任の増大等、内外諸環境の変化に対応するための財政需要が見込まれるところである。」そのとおりです。この財政需要というのは、中期展望の試算として考えまして一体どれくらいの大きさになっているんですか。これをこのまま出してしまいますと歳入の裏づけがなければ要調整額は真っ赤になって残るだけですよ。したがって、これは一体どれくらいの大きさの歳出増になるとお考えになっているんでございますか。
  246. 角谷正彦

    政府委員(角谷正彦君) 「財政の中期展望」におきましては、委員御指摘のように現在の制度施策を前提といたしまして、機械的ではございますけれども各費目ごとに積み上げまして一般歳出の増加額を推計し、あるいは税収に応じまして地方交付税を推計し、これらに基づきまして国債費を推計している、こういう仕掛けになっているわけでございます。  そこで、一般歳出の増加額でございますが、これは既にお示し申し上げていますように、全体といたしまして昭和六十三年度におきましては三十三兆九千六百億円、これは六十二年度が三十二兆五千八百三十四億円でございますが、これに対しまして四・二%の増、六十四年度は三十六兆一千七百億円ということで六・五%の増、六十五年度は三十七兆三千七百億円ということで三・三%の増というふうに見積もられております。ただ、これにつきましては、これらの全体の個別経費をサムアップした数字でございますけれども、個別個別の経費につきましてこれを明らかにするということになりますと、いろいろと従来から一定の前提のもとに行っているという仮定上の問題のほかに、やはりそれ自体が既得権としてとられないか等々いろんな問題がございますので、各主要経費別にこれを示すことにつきましては、これは若干従来から国会において差し控えたいということを申し上げているわけでございます。  いずれにいたしましても、この中でいわゆる高齢化社会に伴いますところの社会保険支出の増、あるいはODA等の国際社会への貢献等に伴う増というものがその増加額の中の相当大きな部分を占めていることは間違いのないことだと思います。
  247. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 今お答えのとおりでございまして、財政当局としますと、これだけしゃべってあげれば皆さん勘がいいんだからわかるでしょう、という面がどうしてもつきまとってくるんです。六十五年特例債依存体質の脱却といいますと、一遍六十五年の時点で予算編成やるつもりで議論してやってみましょうかと、こうならないと本当はきちっとした財政改革のスケジュールが立たないんだけれども、そんな先のことで手形を切ってしまうと毎年の予算編成がとんでもないことになる、したがってそれは出せないんですと、いつもこうおっしゃるんです。おっしゃるものですから、どうも隔靴掻痒の感じでいつも困るんですけれどもね。私が大臣お尋ねしたいのはこれから役なんです。  というのは、今こういった格好の議論を何年もやってきたんです。ただ、財政法十一条を踏み倒した法案が出てくるわけですから、何年でも飽きないでこの議論をしていかなきゃいかぬと思うんですよ。ですから今、塩出委員も先ほどの同内容の質問の中でおっしゃっていましたけれども、野党が増税のことを言うというのはよほど思い余ってのことですけれども、この議論をしているとやはり増税を真剣に我々は考えなければいけないのではあるまいか。これが毎年言われなくても出るんです。数字はうそをつきませんからね。出口を探そうとなると、どうしてもそういった議論をしていかざるを得ないようなところに我々もまた追い込まれるわけですよ。そこで、売上税で組んずほぐれつの大げんかをやっていましたけれども、あれはあれとして、これは財政再建をどう進めるかという、売上税なんていうあんな小さな問題じゃなくて、これは重大な民族の問題ですからね、これはまじめに議論をしなきゃいかぬと私思っているんです。  そこで、これから高齢化社会になるので財政需要がふえるでしょう、これはみんなそう思いますよ。ところが、これまで財政当局がどう言っているかといいますと、例えばこう言っているんです。長いですからつまみ読みをして申し上げますと、昭和六十二年度予算における租税負担と社会保障負担を合わせると国民所得に対する負担率は三五・四%程度と推計されますと、こう書いてあるんです。これがどうなるかといいますと、抜本的に制度改革を進めることによって「ヨーロッパ諸国の水準よりはかなり低い水準にとどめるよう努める。」と書いてあるんです。そうできるかどうか、これは大変なことだと思いますよ。こうできるんなら、ほかの場所では高齢化社会の進展による財政需要の増加とありますけれども、そんなに深刻に考えなくてもいいのか、この後段の部分だけ読めばそうなります。その辺これはどうなっているのか。これもきちっとした議論を少なくも政府の中でやってもらわないと、いかにシャープな有権者といえどもわからないですよ。例えば中期展望的見方に立ってひとつお尋ねをします、  これは大蔵省の管轄では毛頭ないのでお尋ねしていいかどうかわかりませんけれども、国務大臣としての御所見があれば伺いたいという程度なんですが、先般OECDの閣僚理事会がございました。そこで農業問題が大きな問題になって、各国ともそれぞれ農業補助金を削減するということについて合意をいたしました。これはサミットのまた大きなテーマになるでしょう。そうすると、農業補助金という歳出の相当部分を占めているあの歳出に対して、我々は中期展望というテーブルでは削減されることを期待してよろしいんでしょうか。この点の見方はどうでしょうか。農業補助金がOECDの閣僚理事会のあの合意を受けながら、中期的には削減されることを当然期待していいんだろうかということです。
  248. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) OECDの合意の中で、農業助成の削減を目指して協力をすべきであるということを言っておりますけれども、その際、食糧の安定供給の確保など経済性以外の要素にも配慮が加えられるべきである、また各国に政策選択の弾力性を与えるべきであるというような一つこういっただし書きがついております。  ただ、このOECDというところで農業の問題がこのような形で取り上げられたということは、 やはり農業補助に悩むECが一番その雄たるものでございますが、アメリカにもそういう問題がございます。我が国かなり早くから改革に手をつけましたのでいっときほどではございませんけれども、まだございます。といったようにアメリカ、ECの事情がここへ重く作用してきていると私は見ておりますから、そういう国々ではやはりそういう努力がこれから行われるであろう。我が国でもそれはほっておいていいというふうに考えておらないわけでございますけれども、こういう経済性以外のいろんな要素を加えながら、少しずつ改善をしていくべきものだという程度に思うべきではないかと思います。
  249. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 非常に話を単純にして申し上げておりますけれども、例えば歳出で見ますと、社会の高齢化という点をとってみても、あるいは国際社会における日本の占めるべき役割の増大を考えてみても、それは歳出はふえる方向にある。従来歳出の中でとかく目立っておりました農業補助金についても、今お話を伺いますと、目立ってドラマチックな削減があるなどということは期待するのも難しいようであります。そうなってまいりますとふえる話ばかり。  そこで、要調整額を減らすためにはいかなる政策手法があるとお考えでございますか。これは私は、もうちょっときちんと言いますと、緊急経済対策は公債費の増ばかりが結果として反映されるんだということばかり言いましたけれども、これは不正直でありまして、もう一つ歳入面に及ぼすプラスの影響も本当はあるはずなんですけれども、それを幾らに見込むかという質問が隠れておりましたので。含めて——これは大蔵省に伺っても出てまいりませんね、これはまだ中身が決まってないものですから。  そこで、歳出の見通しに対する歳入面での増収策ですね。先ほど来大臣は、こんなにくたびれた日本経済ではなかったはずだとたびたびおっしゃっていますけれども、私もそうだと思うんです。今の日本成長を阻害している阻害要因、これはもう論者はたくさんありまして十人十色いろんなことをおっしゃるんですが、大臣の日から見まして阻害する要因というのは一体何なんだろうかということと、もう一つは、やはり日本成長力を引き出すような経済政策、これをあえて積極財政と呼ぶんならばお呼びになって結構であります。そちらの方にシフトしていくのが歳出を削ることの政治的難しさを考えますと、やはり正解なんではあるまいかと思ったりするんですが、この点については御意見いかがでしょうか。
  250. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 後段に言われましたことは、私は賛成でございます。けさもそのようなことを志苫委員に申し上げまして、あるいは御出席でいらっしゃったかと思いますが、結局我々の経済にはもう少し潜在力が今顕在しておりますよりはあるはずでありまして、それについてはこれだけ民間に強い経済力があり、供給力があり、また金もある。財政は貧乏でございますけれども、しかしそうかといって、財政がそれたついて何らかのやっぱり寄与をすることはできないはずはないというふうに私はそもそも考えております。  先ほど栗林委員がおっしゃいました中に、将来の負担率、現在が三六である、そうおっしゃいましたね、一一と二五何がしと。これが二五をふやすと言っているのか、一一の方をふやすと言っているのかはっきりいたしませんが、いずれにしても租税負担率が、これはGNPで言っておるわけでございますから、税率を上げるという意味での増税しかないのか、そうじゃなくて課税ベースがふえるという形での自然増というものがあるではないか、そういう政策をやっぱり考えていかなければ私はいけないんだというふうに思っておるわけでございます。
  251. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 そういう政策を考えたいと言うんですが、従前の大蔵省の一般的な物の見方といたしますと、例えばこれは「財政改革を進めるに当たっての基本的考え方」という大蔵省の文章なんですけれども、そこではこう書いてあるんです。やっぱりニュアンスが違っておりまして、これはどう書いてあるかといいますと、歳出項目について「歳出全体の規模については、中期的には、適度の経済成長率が維持されていることを前提に、国の一般会計歳出の伸びは名目成長率以下とするという考え方を基本的に踏まえつつ、」云々と、こう書いてあるんです。  成長率の方はほっておいたって大丈夫だと、必ずしもそう言っているんじゃなくて、わかってますよというんでしょうけれども、一般歳出だとかそういう国の景気に対するプラスの存在というのは半面あるわけですね。だから、いっとき大蔵省は、もうひところみたいな乗数効果に期待したようなああいった経済政策は古いと、ひどくそう強く思い込まれたような時期がございました。これから経済はソフト化していくんだ、ソフトノミックスなんですということをおっしゃって理論構成されたことがあったんですけれども、どうもそれが行き過ぎてしまいまして、経済政策に占める財政の機能、役割をちょっとやはり過小評価し過ぎてきたんではあるまいか、そんな気がするんですが、その点はいかがでしょうか。
  252. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 財政再建というのが何しろ非常に焦眉の問題になっておりましたし、現在でもそうでございますけれども、そういうことがございましたから、省を挙げてそれに取り組まなければだれがこれをやってくれるんだろうというような危機意識は非常に強くあったと思います。それはまたそれなりに過去五年間立派な成果を上げてきたと、私自身確かにそうだと思っておるのでございますけれども、その間にこういう貿易黒字とかいろんな外側の事情がどんどん進んでまいりましたというところから見ますと、多少栗林委員が言われましたような反省というものも我我しなければならぬのではないかなと。  ただ御承知のように、やはり政府各省庁の間に一つ役割分担のようなものはどうもあるんでございますね。ですから、大蔵省が先に立ってこれを成長成長というようなことは起こらないし、起こらない方がよろしいのかもしれません、そういう全体の役割分担みたいなものがございますものですから。その点も考えておかないといけませんけれども、まあ済みましたことは済みましたことといたしまして、このような状況になりますとやはり財政もいろいろ苦しいけれども、工夫をしなければならぬと思っております。
  253. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 これからの政策をどう進めるかということとの関連でまたお尋ねをするんですけれども、経済というのは、心理学の面が一面強いと思うんですね。そこで、日本経済を活性化していこうというためには、将来展望が明るいものとして国民の胸にしみ通っていくことが私は必要だと思うんです。  それが現状どうかといいますと、財政法を踏み倒すようなこのていたらくですからね。定率繰り入れをやらないのがどこまで続くか、これどうしようかという、これをどう抜け出していこうかという道筋をやはり国民が理解できる、ああなるほどそうだろうなあと、なるほどこれは増税がなくてもいけるわなあと、それともやっぱり増税が来るのかなあと、そういうのがわかるような形でやはりお示しになることが経済成長のために私は必要だと思うんです。これは毎回この委員会で大蔵省に要望しながら、それはとてもできませんということでお出し願えないんですが、真剣にこの問題はお取り組みいただきたいと思うんです。  今の税の議論ですけれどもね、原衆議院議長の手元に税制協議機関などという、ああいうえたいの知れないものができましたけれども、あれも何となく増税をめぐってやっているんじゃないかという揣摩憶測ばっかりが高まるだけで、私は経済効果はちっともプラスじゃないと思っているんです。あれもなるべく多くの人に広く薄く負担してくださいということをもし政府がおっしゃるんだったら、それは増税であればみんなわかるんです。ああそうかと、これからこれだけの行政需要がどうしてもあるのか、それはやっぱりみんなが負担しなきゃいかぬわなあ、それは公平に負担しようじゃないか、広く浅くが一番公平じゃない か、したがって増税の必要があるんだったら正直におっしゃっていただいた方がみんなわかるし、理解できないような日本の有権者では私はないと思っているんです。ところが、この間申し上げたんですが、こっちには減税で、財源はこっちに増税だよ、こんなやり方を最も横並び公平に敏感な日本の有権者が受け付けるものですか。  したがって、なぜこうお尋ねしているかといいますと、今の公債の支払い費用それだけ一つをとってみましても、高齢化も国際的な役割分担もどうでもいいですよ。公債費をどう払うか、そして、財政の健全性をどうやって取り戻すか、この一点だけ考えたって増税は必至ではないですか。それをなぜ率直におっしゃらないんですか。増税、減税は同額でやります、一切負担額変えません、レベニュー・ニュートラルです、こんな言い方をなぜなさるんですか。高齢化も国際的な費用も何もいいでしょう。私の言っているのは、これだけ残高があるんですよ、その利払いがこれだけになっている、財政が硬直化しちゃって本来の機能が奪われようとしている今の状態をなぜ率直に訴えられないんだろうか。それをやっぱりレベニュー・ニュートラルのような妙な言葉で逃げてまいりますと、私は本当のまじめな税に対する議論にならないんではあるまいか、そうつくづく思うものですからこの点を申し上げて、御所見を伺いました。
  254. 野末陳平

    ○野末陳平君 売上税で何もかもすっ飛んでしまいましたので、今後の税制改革の進め方について幾つか気になるところを質問していきたいと思うんです。  まず、土地税制の方ですが、特に都市部の地価が急騰した、そんなことも踏まえまして、二年の重課ですね、これはやはりどういう効果があるかどうか、これはやってみなきゃわからないでしょうが、少なくも一日も早くやるべきだったと思うんですがね。これについて、これどうするんですか。今度の臨時国会でもこれはもうすぐ法案を、どういう形でまとめるかは別として、これは出してもらいたいと思うんですが、いかがですか。
  255. 大山綱明

    政府委員(大山綱明君) 税制改革の一環として土地税制の改正を御提案申し上げているわけでございますが、これは所得、消費、資産の間における均衡のとれた税制という見地からアプローチをいたしましたその一環でもございますものでございますから、いわゆる一括法の中に入れて御提案を申し上げているわけでございます。こういったように一括法の中に入れました趣旨が、全体として所得、消費、資産に関してのバランスのとれた税制をということでございますので、その一部分だけ、つまり資産課税の中のこの部分だけを取り出して先に決めていただくというのは私どもとしては適当ではない、全体として一体をなすものだという観点に立つものでございます。    〔委員長退席、理事梶原清君着席〕  いずれにいたしましても、委員御指摘のような緊急性というものはある。一方において全体の整合性というものがある。こういった点を踏まえて、衆議院議長のあっせんに基づきます協議機関における協議が今後行われるのであろうと存じますので、その協議機関の御審議の結果として、望ましい全体として整合性のとれた税制実現される、そういったことを私どもとしてはぜひお願いしたいと、こう思っているところでございます。
  256. 野末陳平

    ○野末陳平君 一括法にこだわり過ぎて欲張り過ぎだから今回のような失敗にもなったんだと思うんだけれども、まあ協議会の結論を待っていたら恐らく何もできないんじゃないかと思うんですね。ですけれども、今の答えはそれはそれで聞いておきますけれどもね。  それから同時に、土地税制で長期短期の譲渡所得の扱いを十年を五年に短縮するという、これも四月一日にさかのぼってということになっているわけですね。そうすると、現実に非常にこれがはっきりしないために困っているというか、どうしていいかわからないというか、そういう迷っている人も現実にいるわけですよね。これも一括法の中で考えるというのが果たしていいのかどうか。つまり、これだけを取り出してやれというんじゃないんですよ。土地税制というものを今のお答えの位置づけの中でしか今後も提案しないというのでは、なかなかこれはまとまらないんじゃないかと思う。ですから、これについてもどうなんですか、四月一日というのが有名無実になるのかどうか知りませんが、やはり協議会を待たなければできないことなのかどうか、改めて聞きたい。
  257. 大山綱明

    政府委員(大山綱明君) 今回の税制改革に関します協議機関は、議長のごあっせんでは税制改革全体について御議論があるということでございますので、私どもとしてはその結論を注視してまいると、こういう態度になるわけでございます。    〔理事梶原清君退席、委員長着席〕 今回は、もろもろの角度から資産、所得、消費の課税のあり方を検討いたしましたので、全体が一括としてということで御提案を申し上げたわけでございますが、それじゃこれからも常にそういう状況のもとで提案をさせていただくかといいますと、土地だけが仮に議論になるというような場合には個別にということも当然あり得ると思いますが、今回のような税制改革全体を議論していただくという中では、ただいま申しましたような立場での御議論をお願いせざるを得ないと、こういうことでございます。
  258. 野末陳平

    ○野末陳平君 一括にこだわらずに、必要なものはやはり分離してどんどん考えていって成立させてもらわないと非常に迷惑する面も多いと思いますがね。  今回は提案されなかったけれども、相続税法なんかもやはりもうその時期に来ているわけで、税調の答申なんかにもはっきり出ていたんだから、これはどうしますかね。これは大臣に聞いた方がいいんですかね、相続税法の改正を、いろんな案があったようですけれども、そちらでも御検討なさったようですが、少なくも税調答申にはもうそういう時期だということが出ていたようで、どうですか。今後の見通しについて、検討して改正案をまとめるというようなお気持ちはあるのか。
  259. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) これは野末委員からいつぞやもお尋ねのあった、まことに私どももごもっともだと思って伺っている問題なんでございますが、今回の税制改正からはいろんな理由で見送りに一応なりましたのですが、問題はありまして、殊にその後のまた地価高騰が激しいものでございますから、いつまでもはほうっておけないという意識はみんなが持っておりますが、この際はちょっと見送りになったということでございます。
  260. 野末陳平

    ○野末陳平君 最近、路線価格がここのところ随分上がったという声があちこちにあって、聞くところによると、税務署に行って結構調べているのが多いんですね。それだけ気にしているということですよ。相続税を気にしているのか、それとも資産価値の方を気にしているのか知りませんよ。いずれにしても、路線価の問題がやっと一般の人にわかってきた。もう少なくもおととしぐらいまではそんなこと全然普通の人は言わなかったからね。ですから、路線価についてもやはりここらできちっとして、誤解のないように一般の人にしておいた方がいいと思っているんですが、これどうなんでしょう。  今のところ路線価格というのは、全国平均あるいは都市部だけ、いろんな見方があるでしょうけれども、時価に対して大体どの程度の位置になっているんですかね。
  261. 門田實

    政府委員(門田實君) 相続財産の中で土地につきましては、ただいまお話がございましたように、地価公示価格、それから売買実例価格あるいは地価事情精通者の意見価格、こういうものをもとにしまして評価することにしておりまして、いわゆる路線価格と言われておるわけでございます。私どもは、土地の価格といいますのはやはりその事情事情で相当値幅がございます。そういった点と、それからやはり相続税におきます評価でございますから課税上のものでありまして、これが目いっぱいであってはやはり納税者の方に大変であるというような点もございますので、地価公 示価格と同水準の価格の七〇%をめどとしてかた目の評価を行うと、こういうことでやってまいっておるわけでございます。  ただいま御指摘のように、六十二年分の路線価、大分引き上げたわけでございますが、この水準がどの程度になっているのかと、こういう御質問でございますが、これは仮に昭和六十二年分の四十七都市の最高路線価、この平均でいきますと、地価公示価格の水準に対しましておおよそ六〇%程度ということになっております。しかしながら、例えば東京都といったような地価の非常に高騰した地域、こういうところをとりますと、最高路線価につきましてもやはり評価かなり引き上げましたが、まだ時価に十分追随していないということで、それは六〇%より少し低い水準にあると、こういう認識をしております。
  262. 野末陳平

    ○野末陳平君 そうしますと、方針としては公示価格の大体七〇%を目指している。それに沿うべく今後も引き上げていくと、こういうことで理解していいんですか。
  263. 門田實

    政府委員(門田實君) 私どもの目標は、今お話がございましたように、地価公示価格等の水準の七〇%に近づけていこうと、こういうことをめどにいたしております。いずれにいたしましても、地価評価につきましては非常に悩みがございまして、これはやはり引き上げますと納税者の方の負担になってくる、これでいいのかという点を考えますし、また一方では、評価が低過ぎますと相続財産価格の間での不公平、あるいは評価と時価との差を利用した租税回避行為、こういうこともありますので、我々はそこは非常に慎重に対処してまいりたいと思いますが、方向としましては、今申し上げました七〇%程度をめどとしまして均衡を図るように努めていきたいと、こういうふうに考えております。
  264. 野末陳平

    ○野末陳平君 ただ、公示価格をベースに、そのほかにも意見価格とかいろいろ参考にしているようですけれども、どうしても一年ずつずれていくでしょう。だから結局、せっかく六〇近くまで近づけても、すぐまた四〇、三〇というふうに落ちていくというそれのイタチごっこになるんじゃないか。それが心配なんですが、どうですか、それは。
  265. 門田實

    政府委員(門田實君) 長期間とりますと、土地の価格というのは安定した時期もかなりあるわけでありまして、今のような非常な変動の時期はむしろ異例なんであろうと思います。その仕組みからいいましてどうしても後追い的にならざるを得ない。これはそういう宿命的なものがございますが、地価が安定した状態であればそれはさほどの差にならないんではないかと、こういうふうに考えます。
  266. 野末陳平

    ○野末陳平君 さて、これから大臣にちょっと御意見を伺いたいんですが、それにしても今の路線価を決める場合にも公示価格と、これは一番権威のある数字だけれども、これと時価は違いますからね。ですから、それを恐らく勘案してだろうけれども、実例ですね、それから専門家の意見価格でしたっけ、何かいろんなのがあるんですね。あとまた固定資産税のもあるでしょう。ですから、何本にも分かれているんだね、土地の価値をはかる物差しというのは。これがどうも——もちろんそれから今問題にしている相続税、贈与税の場合の路線価と、いろいろあって、これではわかりにくくて、もうちょっとこれは何とか単純にならないものかと常に疑問に思うんですけれども、そのたびに評価のやり方が違うわけですから。これどうなんでしょうね。
  267. 門田實

    政府委員(門田實君) おっしゃられますように、よく言われますのは固定資産税評価額、それから地価公示価格、それから相続税の評価額、こういった相違がよく言われるわけでありますが、それぞれこれは目的がございまして、課税の目的あるいは土地取引の適正な価格といったような存在理由が違うわけでございますから、なかなかこれを一元化する、あるいは一本化するというわけにもまいうないのではないかというふうに考えております。
  268. 野末陳平

    ○野末陳平君 これは確かに大蔵省で決めるわけでもないから一本化するのは難しいと思いますけれども、しかしそれにしてもいろいろあり過ぎて、この辺も今後の土地政策に何か影響があるような気がしてしようないんですが、一応路線価が一般の人に興味を持たれてきているようですから、それも相続税の面もなきにしもあらずですから、今後この面の検討もしてもらいたいと思うんですね。  それから、直間比率の見直しということを含めて与野党の協議会というのが発足しているんだというふれ込みだったんですけれども、実は野党の方の御意見をいろいろ聞いてみますと、必ずしも直間比率の見直しは急がない、不公平税制を直してという、これも当然のことだと思うんですが、ただその場合、具体的に不公平税制はいろいろあるでしょうけれども、最近割と強調されているのが例の株式の譲渡益、キャピタルゲインの問題ですね。あれ僕も考えたんですけれども、結局あれが不公平であるというのは多分それほどに異論がないと思うんですが、あの課税強化というのは、あれをどうしても不公平を直すという意味でキャピタルゲインの課税を考えたら、背番号制に行き着かざるを得ないんですがね。——いや、これは僕が考えたんですよ、だから御意見を伺いたいんですけれども、とりあえずその前に、提案された一括法の中でどの程度キャピタルゲインに関しては不公平が是正されたと、こういう認識なのか、それをちょっと。
  269. 大山綱明

    政府委員(大山綱明君) 今回御提案いたしておりますキャピタルゲイン課税の強化は、現在五十回、二十万株とされております等々でございますが、それを四割縮減するということで三十回、十二万株等の改正をさしていただきたいということで御提案申し上げているわけでございますが、今の定量的に何かこれによってどれだけ効果があるかということについては、ちょっと私どもお答えをいたします材料を持ち合わせておりません。定性的には半分近くのものになるわけでございますから、それなりの課税強化であると私ども確信をいたしておりますが、それじゃこれによって何件ふえるかというようなたぐいの定量的な点につきましては、ちょっとお答えをいたします数字を思いつかない次第でございます。
  270. 野末陳平

    ○野末陳平君 予算委員会のときの大蔵大臣の答弁だったと記憶するんですが、野党の質問に答えて、キャピタルゲインは不公平是正をややしたんだというような答えがありましたね。僕はそのときも聞いていたんだけど、現在の五十回、二十万株といったって現実にどのくらい機能しているかわからないわけだ。どれだけが申告して、あるいは後で捕捉されて申告をせざるを得なくなったかわからない。どちらにしても、現実には五十回、二十万株という縛りの中でそれほどのキャピタルゲイン課税というのはないんだよね。それはおととしぐらいですか、やっぱりこの委員会で数字をちょっと挙げてもらったけれども、微々たるものだった。そうすると、これを、今大山さんの答弁にもあったけれども定量的にはわからないということで、三十回、十二万株にしたからこれは不公平の是正、少しでも踏み切りましたと言われても、あのときもかなりアバウトな話だなと思って聞いていたんですが、これじゃやっぱり大したことないと思うんだね。やったことにならないと思うんだね。実効なしだ、これは。そう思いませんか。
  271. 大山綱明

    政府委員(大山綱明君) 定量的な評価がなかなかできにくいものでございますからお答え難しいのでございますが、定性的には私どもかなり努力でここまで課税強化の御提案をさしていただいていると、こんなふうに思っているところでございます。
  272. 野末陳平

    ○野末陳平君 難しい言葉を使うともっともらしいけれども、定性的と言うけれども、気分だけの問題ですよ。これは絶対実効ない。これは強化なんかに全くなってない。ただでさえこれはざる法的な——ざる法じゃない、ざるみたいなものなんだ。つまり、捕捉がいかに難しいかというところ に行き着くんですけれども、それにしてもこれは不公平税制一つを課税強化で少しでも是正したと言うにはお粗末過ぎて、はっきり言って問題にならないと思うんですよ。  そこで、別にいじめるわけでも何でもないんですが、こんなもういいかげんなことをやっていたって始まらないんで、捕捉ができるかということをいろいろ考える。それからもう一つ、キャピタルゲインの課税もいいけれども、キャピタルロスの場合はどうするのかと。これは当然ながら疑問になる。このキャピタルゲイン課税の難しさというのは一体どこにあるんですか、捕捉の問題ですか。その辺をちょっと聞いておきたい。
  273. 大山綱明

    政府委員(大山綱明君) 難しさは御指摘のとおり捕捉の問題でございます。十分に捕捉体制ができないままに全面課税とかいうことにいたしますと、うまく税法を逃れる者、逃れない者の間でかえって新たな不公平が生じてしまうのではないかといったことを、これまでの御答弁でも申し上げているところでございます。
  274. 野末陳平

    ○野末陳平君 一時僕も考えていて、コンピューターはここまで進歩したし、機能しているからある程度捕捉もできるようになるんじゃないかと思ったことあったんですね。視察や何かで証券会社へ行ったりしてみて、やっぱりそう簡単なものじゃなさそうで、行き着くところ、捕捉の難しさというのは番号制にするしか解決の道はないというふうに考えたんだ。  そこで大蔵大臣、この背番号制というべきか、それは納税者番号でも何でもいいんですけれども、番号をつければ少なくもこの株式の譲渡課税というのは捕捉がほぼ正確にできると、こう考えますか。
  275. 大山綱明

    政府委員(大山綱明君) 実はアメリカが番号をつけまして、それによりまして捕捉も含めましたキャピタルゲイン課税を行っているわけでございます。アメリカでは実際にどのくらい捕捉が行われておるかというような調査が行われたことがあるようでございますが、アメリカにおきまして番号を前提といたしました執行をいたしましても、たしか五九%の捕捉率であるというような公表された数字がございます。  そんなことから、完全を期するのはなかなか難しいことかと存じますけれども、番号なりという制度導入されて、国民的な合意が必要だと存じますけれども、課税資料の収集の強化が行われるようになりますれば、捕捉体制が前進はいたすであろうということは言えるかと存じます。
  276. 野末陳平

    ○野末陳平君 まあ我が国の捕捉体制はゼロに近いとすれば、番号でもって五九%はいいと思いますが、もちろん株の取引だけに番号を打つわけにもいかないでしょうから、その辺でまた難しさがあると思うんですが、ただ一つね、僕はこの番号制がプライバシーという言葉の前に全く無力になってしまうという、これは果たして今後ともこれでいってしまうのかどうか。  大蔵大臣にお聞きしたいんですけれども、番号制になることが捕捉の公平につながるということになれば、プライバシー問題とは別に、やはりこれは必要だと思う人も出てくるんじゃないかという気がするんですね。つまり、いつまでも捕捉の公平を言ったってこれは絶対に解決しないわけですよ。そうすると、せめて番号を打つことによって公平になるならば、それでプライバシーの問題ともちろん無関係とは言いませんけれども、プライバシーの侵害をおそれるというそれだけの発想で番号制が一歩も進まないということが、果たして今後の税制のあり方にとっていいのかどうかということを考えると、非常に微妙だという気がしてくるんですよ。  で、大蔵大臣の個人的な見解でも結構ですけれども、背番号制というのは、今後捕捉の公平を確保するためには必要なのか、それとも、必要ではあるがプライバシーを侵すのをおそれる余りこれはできないと考えているのか。その辺の認識はどうですか。
  277. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 租税の捕捉という観点から申しますと、それは今の株式のキャピタルゲインにいたしましても、あるいは預貯金の問題にいたしましても、背番号にしましたらこれはかなり捕捉の助けになるということは、それはもう私は疑いないことだと思います、そこまでは。問題はそれから先、まさに野末委員が自問自答なさいましたような問題でございますけれども、個人的にどう思うかとおっしゃいましたら、私自身はやっぱり国民全体としては背番号をつけて一種の管理されるという感じでございましょうかね、そういう感じは国民は恐らく喜ばない。国によることでございますけれども、これは御承知のように、昔は、昔と申しますのは、そうでございますね、今から二十年前になりましょうか、国会では背番号というのは徴兵制につながるという御議論が随分ございました。さすがにここのところもう伺いませんけれども、しかしやっぱりそういういろんな過去の記憶みたいなものが国民にもございますし、いろいろ考えますと、私は背番号で管理をするということには、個人的に言えとおっしゃいますから、私は危惧を持っております。
  278. 野末陳平

    ○野末陳平君 ただ、時代は変わるし、それから国民の納税意識もかなり変わってくる。特に今回の売上税問題以後は非常に今までとは違う意味で税に対する関心が高まっているようなんで、そこからやはり議論は新しい展開をする可能性があると思っているんですね。  僕も背番号制がいいなんて思っているんじゃないんですよ。思っているんじゃないんだけれども、これはプライバシーを侵しますからという理由だけでもってこれに消極的になると、これは真剣に検討しないんだというのが果たしてこれからも通用するかどうかということですよ。あれだけプライバシーにうるさいアメリカ人だって、もちろん便利さも含めて、それからあちらは年金もそうだから全部それで統一しているわけですけれども、日本事情が違うと言えばもうそれでおしまいですが、やはり番号制というものも必要ではないかという理解も訴え方によっては今後あり得ると思うんです。その場合も、ただ捕捉するためにやるというんじゃそれはまずいでしょうな。ですけれども、常に不公平税制と言って、税制上の不公平あるいは徴税上の、つまり捕捉の問題を含めて不公平、不公平、これがにしきの御旗のように通用するんですから。そうすると、その不公平を直すことが現実にできるか、なかなかできないですね。となると、不公平の中身も人によって随分違いますけれども、捕捉に関する限り、やはりこの背番号というものも一つの——それを解決とは言わないな、それを是正する有力な武器だという訴えも必要かなと思ったりするんですよ。  だから、大蔵大臣がもう消極的なんだから、そんな大蔵省でもないのにあれですよ、私一人で騒いで憎まれることないんだけれども、背番号ができたからプライバシーを侵されると思っておびえる人もいるだろうし、過去のいろいろな暗い歴史も影響あるけれども、しかし背番号ができてもいいよ、公平になるならやればいいじゃないかと言う人だっている。むしろそっちの方が多いかもしれない。アピールしてみなければわからないじゃないですか。だから、今までのワンパターンの発想でいくならば、不公平の是正というのは限界がある、あるいはほとんど是正は望めないというふうに僕は考えるんですが、大山さんどうですかね。だって、不公平の是正はもう国民的願望あるいは要求になっているわけだ、しかし何と何が不公平かという整理も必要ですが。本当にできますか、不公平の是正って。どこまでできると思いますか、もちろん現実にあるんですから。少なくとも捕捉の問題はある、クロヨン、トーゴーサンは。背番号抜きにしてどこまで技術的にやっていけますか。
  279. 大山綱明

    政府委員(大山綱明君) なかなか難しい問題の御提起でございます。背番号というのを税制のためだけにいたしましても、これはいろんな角度からの問題の提起があろうかと存じます。ただ最近は、労働組合などの中にも背番号を容認するような御提言がありましたりいたしております。  私ども、何年か前にグリーンカードシステムと いうことで、背番号そのものではございませんけれども、背番号制度を御提案し、成立をいたしましたが、だめになったというようなこともございます。そういったような、何と申しましょうか、世論の動き、国民的な感情の動き、そういったものも私どもよく把握と申しましょうか、のみ込みながらこの問題も今後とも検討課題として考えていかなければいけないかということを、今委員の御指摘を伺いながら考えていた次第でございます。  背番号以外にどういうような把握の方法があるのか。いろんな形で国税庁が資料の収集に努力をいたしておりますので、株式のキャピタルゲイン課税につきましても、ほかの資料収集の道というのをいろいろ工夫すべきだと思いますが、ただ現実に実名でない取引というのが、あるいは名前をもう使わないで単なる取引だけをして、配当も受け取らないというような取引があったりいたしますので、資料収集にも限界を感ずるところでございますが、番号がなければ資料収集などにもさらに工夫を重ねる余地がないかどうか、研究課題であると思っております。
  280. 野末陳平

    ○野末陳平君 きょうは番号制を論ずるつもりじゃないんで、たまたま今までタブーになっていたようなことを全部逃げて通っていたら、これから税制改革は進まないじゃないかという気がしてしようがないから、そう言っているんでね。きょうの委員会はとてもおもしろかったと思いますよ。やはり野党側の質問に増税という言葉がしきりに出てきたということも今までとは違う。やはりそういうものがもう目の前に必要であるという認識が一般の人の間にもあるということだと思いますね。そうなると、むしろ大蔵省の方の答えの方が消極的なんだな、増税と言いたがらないんだからね、逃げよう逃げようと、ごまかそうという。だから中曽根さんもそうだった。増減税同額と、これは詐欺ですよね、はっきり言って。だって、金返すよ、そのかわり取るよと、これじゃ意味ないわけですから。僕はやっぱり増税でもよかったと思いますが。いずれにしても、もうきょうでおしまいですから、この次の臨時国会なりに次の税制改革にどういう法案を出してくるのか、むしろ期待したいところなんです。  最後に一問だけですが、これは大蔵大臣ちょっと欲張り過ぎちゃもうだめだと思うんですね。今回何しろ欲張り過ぎで、あれもこれもみんな詰め込んだ。いいとか悪いとかという評価は難しいんだけれども、とにかく何でもかんでもぶち込んで一括法案にしたけれども、何しろこれがやっぱり命取りですよ、売上税の問題、公約違反の問題もあったけれどもね。  そこで、一つお聞きしたいんだけれども、やっぱりマル優は切り離して、マル優と六十二年の減税だけでもいいですけれども、これが一まとめ。間接税はちょっとやめた方がいいね、今回は。これを欲張ったら、また全部ぱあですよ。ですから、これはどういうふうになさるか知りませんよ、専門家は。ですけれども、とりあえず減税を絶対しなきゃいけないと。無理な財源減税をやるよりも今まで予定した六十二年分の減税を、規模はそこそこのものでしょうが、これはマル優とセットでこのぐらいで欲張らずにやるべきだね。それからもちろん必要な幾つかなものがある、土地税制などもありましたが、それもやる。登録免許税の引き上げた、法人税の増税だとか、それもやらなきゃいけないと思いますがね。やはり間接税を何が何でも今回またセットにしようとすると、これはもう全部またアブハチ取らずになるだろうという、予感じゃなくて実感がする。ですからどうですか、別にした方がいいと思う。ちょっと考え方を聞いて、もう時間が来たので終わりにします。
  281. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 私どもも、今回の租税改正につきましての今国会における御審議の経過を見まして、いろいろ反省をすべき点もございます。ただいまのお話もよく考えさしていただきます。  今日、この法案の御審議国際しまして、各委員からいろいろ私ども財政当局、税務当局の立場に対する御配慮かと思われるような御発言を承りまして、大変に参考になりまして、これからの問題を考えます上に参考にさしていただきたいと思っております。
  282. 井上裕

    委員長井上裕君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めます。  それでは、これより討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
  283. 赤桐操

    赤桐操君 私は、日本社会党・護憲共同を代表いたしまして、ただいま議題となりました昭和六十二年度の財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律案につきまして、反対の討論を行うものであります。  政府は、増税なき財政再建とか昭和六十五年度特別公債依存からの脱却などといった財政運営上の重大な公約をなし崩し的に放棄し、政治責任を何ら明確にいたしておりません。その上さらに今回の税制改革に当たり、大型間接税導入しないと昨年の衆参同日選挙において国民に確約しておきながら、紛れもない大型間接税である売上税創設し、さらにはマル優廃止し、大増税への布石を打とうとしたことは公約違反を重ねるもので断じて許されることではありません。政府税制改革案が、国民の強い反対と、それを背景にした野党の反対により、売上税法案等々は廃案にされることが決定されておりますが、本法案は、さらに財政運営上の公約に反するのみならず、増税につながる公債の発行を認めさせようとするもので言語道断であります。これが本法案に反対する第一の理由であります。第二に、特例公債発行財政法の基本原則に反するものであり、しかも特別措置として認めるには余りにも長きにわたっての発行が行われていることであります。言うまでもなく我が国財政法は均衡財政原則としており、四条公債すなわちいわ障る建設国債それ自体が特別、例外的なものであり、本法案の特例公債特例の上乗せとも言うべきもので、本来的には十二年間にもわたって発行される性格のものではないのであります。財政法の規定によれば、公債の発行はやむを得ない場合に、額を限定して、さらに償還計画を明確にしたときに認められております。政府は毎年みずからの財政再建の目標から逸脱した公債の発行を続け、新たな財政再建の目標を明確に国民に提示しないまま従来どおり財政運営していこうとするのは全く無責任、無原則であると断ぜざるを得ません。野方図な公債の発行に枠をはめるために、現行の均衡主義財政法そのものの見直し論さえ出てきている現状を厳しく認識すべきであります。  第三は、四兆九千八百十億円の特例公債発行が、懸命に財政再建へ取り組んだ上でのやむを得ない結果であるとは言えないということであります。公債依存度一九・四%の国債償還のための定率繰り入れ等を停止することなく、国債整理基金特別会計への繰り入れを実施するならば依存度は二三・七%となり、これは昭和五十七年度の依存度を上回ることになるのであります。また、特例公債減額も前年度当初予算よりわずかに二千六百五十億円で昭和六十一年度当初予算での減額四千八百四十億円を下回っており、政府財政再建がここでも大幅に後退していることが明らかであります。  第四に、政府特例公債減額を目的とした財政再建計画が進まない一方で、国民への負担の転嫁だけが着実に進展していることであります。国民生活にかかわりがないばかりか、かえって平和な生活を破壊しかねない防衛費などだけが突出的に優遇される一方で、年金、医療、教育など国民の生活の維持向上にとって不可欠の予算が抑制され続けております、本法案におきましても、三年連続の措置として政府管掌健康保険事業にかかわる一般会計からの厚生保険特別会計健康勘定への繰入額の削減が行われております。この背後で、いわゆる受益者負担の強化、利用者負担の増加によって受診の抑制、家計負担等々が高まっている のであります。政府は公債累積の真の原因とその責任の所在、さらに特例公債発行を継続させなければならない根本的原因を徹底的に究明する責任があります。その責任を全く放置しておいて安易に弱い立場の者に負担を押しつけることは福祉社会の理念を根本から否定するもので認めることは断じてできないのであります。  以上、原則を軽視して軌道を踏み外すと、借金財政はコントロール不可能に陥り、国の財政経済並びに国民生活を破局に追い込むことになるのでありまして、このことを強く指摘いたして、反対討論を終わります。
  284. 梶原清

    ○梶原清君 私は、自由民主党を代表して、ただいま議題となっております昭和六十二年度の財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律案に対し、賛成の意を表明いたします。  改めて申し上げるまでもなく、現下の我が国財政は、国債の利払い費が歳出予算の二〇%強を占め、また本年度末の公債残高が百五十二兆円にも達するなど、なお厳しい状況にあります。そのため、去る二十日に成立を見た六十二年度予算においては、歳出面では既存の制度施策の見直しなどの徹底した節減合理化を行うことにより、一般歳出を五十八年度以来五年連続で前年度同額以下に抑えるとともに、歳入面においても適宜見直しを図ってまいったところであります。  しかし、このような歳出歳入両面からの見直しにもかかわらず、六十二年度においてなお財源が不足するため、本案によって特例公債発行し、国債費の定率繰り入れ停止する等の措置を講ずることは、いずれも必要にしてやむを得ないものと考えます。  まず第一に特例公債発行でありますが、本年度の特例公債発行額は前年度に比べ二千六百五十億円圧縮し、四兆九千八百十億円が予定されておりますが、本年度の財政運営を適正に行っていく点から見て是認せざるを得ないものであります。  なお、本年度の公債依存度が一九・四%と、特例公債発行が始まった昭和五十年度以降初めて二〇%を下回るに至ったことに関しては、政府努力を多とするものであります。  第二は、国債費の定率繰り入れ停止でありますが、特例公債依存体質からの早期脱却を目指し、特例公債減額に最大限の努力を傾注しなければならないことを考慮すれば、やむを得ないものと考えます。また、昨年度から国民共有の資産であるNTT株式の売却収入が国債の償還財源に充てられておりますが、本年度においても同株式の円滑な売却が見込まれるところでもあり、定率繰り入れ停止しても本年度の公債償還に支障を来すことはないと認められます。  第三は、政府管掌健康保険事業に係る千三百五十億円の国庫補助の削減についてでありますが、その削減を行いましても政管健保の事業運営に支障の生じないことが見込まれることや、将来仮に事業の適正な運営が困難になるようなおそれが生じた場合には、補助金の減額分の繰り戻しを行うなどの適切な措置を講ずることとしていることから、これまたやむを得ないものと考えます。  今後とも政府におかれましては、国民の理解と協力を得て、国、地方を通ずる行財政改革に積極的に取り組み、財政収支の改善に向けて一層努力されることを切望するものでありますが、あわせて、内外から要請されている内需の振興に向けて財政政策の適正かつ機動的な運営にも十分留意されることを期待し、私の賛成討論といたします。
  285. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 私は、公明党・国民会議を代表して、ただいま議題となっております昭和六十二年度の財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律案に対し、反対の討論を行うものであります。  今回の法律案は、六十二年度において赤字国債を四兆九千八百十億円発行できることとし、また二兆千三百八十三億円の国債整理基金への定率繰り入れ停止し、さらに厚生保険特別会計への繰り入れを千三百五十億円減額する内容でありますが、本法律案は、中曽根内閣財政政策の失敗を如実に示したものであります。  周知のとおり、中曽根内閣政権発足以来、六十五年赤字国債脱却を目標として掲げ、ここ数年来ゼロシーリングマイナスシーリングと、財政再建を緊縮財政運営によって推し進めてまいりましたが、公明党は、かねてより政府景気対策と財政再建を対立的にとらえることは問題であり、内需拡大に力を入れるよう指摘しているところであります。  しかし、中曽根内閣は有効な手を打たず、貿易黒字は増大の一路をたどり、結果、我が国経済は現在異常な円高のもとでかつてない厳しい円高不況に陥っており、輸出関連産業や構造不況産業はもちろん、産業全般が深刻な打撃をこうむり、特に雇用不安は拡大するばかりであります。  その一方では、対外経済摩擦は激化の一路をたどっているのが実情であります。内外からの内需拡大要求の声が高まる中で、今まで何らの有効な対策を講じられなかった政府の責任は重大であることを指摘せざるを得ません。  さて、反対理由の第一は、破綻した財政再建目標にいまだ固執していることであります。六十五年度赤字国債脱却という中曽根内閣の公約は事実上破綻しているにもかかわらず、この目標に執着していることは、国際的にもわかりにくいことであります。財政再建目標年次を延期し、内需拡大に力を入れるよう政策転換をしたことを内外に印象づけるためにも、新しい目標を示すべきは当然であります。  反対理由の第二は、財政再建計画のないままの経済運営は、まさに羅針盤なき航海と言うべきであり、政府の姿勢はまことに無責任であるからであります。先進国の中で飛び抜けて大きな財政赤字を抱え、しかも内需拡大を目指すことは、まさに至難の航海のようなものであり、羅針盤とも言うべき財政再建計画は必要であります。我が党が主張してきた財政再建計画をつくる努力をすらもしていないことは、政府の怠慢と言うべきであります。  反対理由の第三は、国債整理基金への定率繰り入れ停止、厚生保険特別会計への繰り入れ減額するなど、こそくな手段で財政赤字の現状を少なく見せかけようとしている点であります。財政再建は、国民の理解と協力なくしては達成は不可能であり、政府のかかる措置はわかりにくく、国民の理解と協力の妨げとなるもので、賛成できません。  以上、三つの反対理由を挙げました。今こそ「一九八〇年代経済社会の展望と指針」にかわる新たなる財政計画の作成に取り組むべきことを主張し、反対討論を終わります。
  286. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 私は、日本共産党を代表して、昭和六十二年度の財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律案に反対の討論を行います。  本法案に反対する理由の第一は、今日の深刻な財政危機をもたらした原因が、二度にわたる石油ショック以来、政府・自民党が、財界の要求に従い大企業奉仕の景気対策と称して財政資金の大盤振る舞いと、アメリカの要求に沿った大軍拡を進めるため、極めて無謀な国債大量発行による財政膨張政策を強行したことにあるからであります。  さらに、中曽根内閣がこの五年間に財政再建と称して進めてきた臨調行革路線のもとで、文教費〇・五%減、中小企業対策費二一%減、自治体への国庫補助金九%削減など、まさに福祉、教育、国民生関連予算の軒並み大幅切り捨てにもかかわらず、軍事費三六%増、大企業補助金一八%増などと軍拡、大企業奉仕の歳出は異常突出させ、その結果、我が国財政の借金体質は一層拡大、深刻化し、再建どころか、まさに破綻のきわみに達したのであります。  本法案は、このような重大な財政破綻をもたらした政府・自民党、財界の責任と、その根本原因を棚上げし、そのツケを国鉄解体や電電民営化、国有財産切り売りなど、国民の財産の食いつぶしや、現在の国民はもちろん、孫子の代に至るまで負担を転嫁することになる膨大な量の赤字国債の 恒常的な発行や借りかえなどで、全く責任のない国民に押しつけ、打開しようとするものであり、断じて容認できません。  反対理由の第二は、本法案による四兆九千八百十億円の赤字国債発行や三兆八千四十六億円に上る赤字国債借換債の発行は、当面を糊塗する安易な財源確保策であり、財政危機を一層拡大、深刻化させる根本原因であるとともに、元金償還を先送りして当面の負担を軽減するものの、将来にわたって国債残高の累増と利払い費の急増をもたらし、二十一世紀に向けて財政危機の重圧を永続化させるものだからであります。  この結果、昭和六十二年度末の国債累積残高は、実に国民一人当たり百二十七万円の借金に相当する百五十二兆四千億円に達し、我が国財政は、国債償還と利払いのための国債費が一般会計歳出の二割を突破し、新規財源債収入を上回るというサラ金財政の新段階に突入しています。  反対理由の第三は、六十年度限りという約束を踏みにじり、昨年を上回る三年連続の政管健保への国庫補助千三百五十億円もの削減措置は、本人一割負担導入など、三年前の健康保険法大改悪による黒字の発生を安易に国庫に召し上げるもので、断じて認められないからです。不当な国庫補助削減をやめ、健保十割給付の復活、老人医療費の無料化を直ちに実施すべきであります。  反対理由の第四は、本法案がレーガン政権への誓約であるGNP一%枠突破の歯どめなき大軍拡と民活の名による新たな大企業奉仕を貫く半面、福祉、教育予算を実質マイナスとし、中小企業、農業、石炭などを経済構造調整の名のもとに切り捨てようとする反国民的な昭和六十二年度政府予算財源確保策だからであります。  最後に、かかる重要法案をわずか一日限りの審議で採決に持ち込もうとする議会制民主主義を形骸化するやり方でここに至ったわけでありますが、このことを強く批判し、反対討論を終わります。
  287. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 私は、民社党 国民連合を代表して、ただいま議題となりました昭和六十二年度の財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律案に対して反対の討論を行います。  反対の理由は、何よりもまず赤字公債の発行を容認している点であり、財政の準憲法規範ともいうべき財政法に取り返しのつかない穴をうがった点であります。そのときどきの対応に追われて原則から日増しに離れてしまっている我が国財政の姿を雄弁に物語っている法律案であります。  この現状を打破するために、財政当局の深い反省と勇気ある行動を要望して、反対の討論といたします。
  288. 井上裕

    委員長井上裕君) 他に御意見もなければ、討論は終局したものと認めます。  それでは、これより採決に入ります。  昭和六十二年度の財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  289. 井上裕

    委員長井上裕君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  この際、赤桐操君から発言を求められておりますので、これを許します。赤桐操君。
  290. 赤桐操

    赤桐操君 私は、ただいま可決されました昭和六十二年度の財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律案に対し、自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、民社党・国民連合及び新政クラブの各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。  案文を朗読いたします。     昭和六十二年度の財政運営に必要な財源     の確保を図るための特別措置に関する法     律案に対する附帯決議(案)   政府は、次の事項について所要の措置を講ず  べきである。  一、我が国経済の安定的発展と国民生活の質的   向上を期するため、引き続き徹底した歳入歳   出両面における見直しを行い、財政改革を   強力に推進してその対応力の回復に努めると   ともに、財源対策としては、臨時的な税外収   入に安易に依存することのないよう留意し、   中長期にわたる展望に基づいた対応を図るこ   と。  一、直面する内外経済情勢に対応し、均衡と調   和を主眼とする経済発展を図るため、引き続   き財政・金融政策運営に当たっては適切か   つ機動的に対処すること。  一、今後とも現行の減債制度の円滑な運営に努   めるとともに、公債の償還に遺漏なきを期す   るよう、所要の償還財源確保を図り、公債   に対する国民の信頼の保持に万全を期するこ   と。  一、為替相場の我が国経済に与える影響が極め   て大きいことに配慮し、今後とも各国との政   策協調等を通じて、適正かつ安定した為替相   場の実現に努めること。   右決議する。  以上でございます。  何とぞ皆様の御賛同をお願いいたします。
  291. 井上裕

    委員長井上裕君) ただいま赤桐操君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  292. 井上裕

    委員長井上裕君) 多数と認めます。よって、赤桐操君提出の附帯決議案は多数をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、宮澤大蔵大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。宮澤大蔵大臣
  293. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ただいま御決議のありました事項につきましては、政府といたしましても、御趣旨を踏まえ配意してまいりたいと存じます。
  294. 井上裕

    委員長井上裕君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  295. 井上裕

    委員長井上裕君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  296. 井上裕

    委員長井上裕君) 次に、請願の審査を行います。  第一号大型間接税導入マル優廃止反対国民本位税制改革に関する請願外六千一件を議題といたします。  本委員会に付託されております請願は、お手元に配付の付託請願一覧表のとおりでございます。  これらの請願につきまして理事会で協議いたしました結果を御報告いたします。  第一号大型間接税導入マル優廃止反対国民本位税制改革に関する請願外六千一件は、いずれも保留とすることに意見が一致いたしました。  以上御報告いたしましたとおり決定することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  297. 井上裕

    委員長井上裕君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  298. 井上裕

    委員長井上裕君) 次に、継続調査要求に関する件についてお諮りいたします。  租税及び金融等に関する調査につきましては、閉会中もなお調査を継続することとし、本件の継続調査要求書を議長に提出いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  299. 井上裕

    委員長井上裕君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  なお、要求書の作成につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  300. 井上裕

    委員長井上裕君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時五十二分散会      —————・—————