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1987-05-26 第108回国会 参議院 外務委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十二年五月二十六日(火曜日)    午前十時二分開会     ―――――――――――――    委員の異動  五月二十六日     辞任         補欠選任      大鷹 淑子君     曽根田郁夫君      三池  信君     宮崎 秀樹君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         宮澤  弘君     理 事                 最上  進君                 森山 眞弓君                 松前 達郎君                 小西 博行君     委 員                 後藤 正夫君                 嶋崎  均君                 曽根田郁夫君                 鳩山威一郎君                 林 健太郎君                 林田悠紀夫君                 原 文兵衛君                 藤井 孝男君                 宮崎 秀樹君                 中村  哲君                 矢田部 理君                 広中和歌子君                 立木  洋君                 田  英夫君    委員以外の議員        発  議  者  中西 珠子君    国務大臣        外 務 大 臣  倉成  正君    政府委員        防衛施設庁長官  宍倉 宗夫君        防衛施設庁施設        部長       岩見 秀男君        防衛施設庁労務        部長       西村 宣昭君        外務大臣官房審        議官       柳井 俊二君        外務大臣官房審        議官       遠藤 哲也君        外務大臣官房領        事移住部長    妹尾 正毅君        外務省アジア局        長        藤田 公郎君        外務省北米局長  藤井 宏昭君        外務省欧亜局長  長谷川和年君        外務省中近東ア        フリカ局長    恩田  宗君        外務省経済局次        長        池田 廸彦君        外務省経済協力        局長       英  正道君        外務省条約局長  斉藤 邦彦君        外務省国際連合        局長       中平  立君        外務省情報調査        局長       新井 弘一君    事務局側        常任委員会専門        員        小杉 照夫君    説明員        防衛庁防衛局防        衛課長      宝珠山 昇君        防衛庁装備局通        信課長      早矢仕哲夫君        科学技術庁原子        力局調査国際協        力課長      間宮  馨君        科学技術庁原子        力局技術振興課        長        田中 正躬君        科学技術庁原子        力安全局原子力        安全調査室長   尾藤  隆君        文部省学術国際        局留学生課長   雨宮  忠君        資源エネルギー        庁公益事業部原        子力発電安全管        理課長      神田  淳君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件文化交流に関する日本国政府ソヴィエト社会  主義共和国連邦政府との間の協定締結につい  て承認を求めるの件(内閣提出衆議院送付) ○商品名称及び分類についての統一システムに  関する国際条約及び商品名称及び分類につい  ての統一システムに関する国際条約改正に関  する議定書(千九百八十六年六月二十四日にプ  ラッセルで作成)の締結について承認を求める  の件(内閣提出衆議院送付) ○原子力事故早期通報に関する条約締結につ  いて承認を求めるの件(内閣提出衆議院送付  ) ○原子力事故又は放射線緊急事態の場合における  援助に関する条約締結について承認を求める  の件(内閣提出衆議院送付) ○多数国間投資保証機関を設立する条約締結に  ついて承認を求めるの件(内閣提出、衆議院送  付) ○関税及び貿易に関する一般協定ジュネーヴ議  定書(千九百八十七年)の締結について承認を  求 めるの件(内閣提出衆議院送付) ○民間航空機貿易に関する協定附属書改正する  議定書(千九百八十六年)の締結について承認  を求めるの件(内閣提出衆議院送付) ○国際花と緑の博覧会政府代表設置に関する臨  時措置法案内閣提出衆議院送付) ○日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び  安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並び  に日本国における合衆国軍隊地位に関する協  定第二十四条についての特別の措置に関する日  本国とアメリカ合衆国との間の協定締結につ  いて承認を求めるの件(内閣提出衆議院送付  ) ○国際的に保護される者(外交官を含む。)に対  する犯罪防止及び処罰に関する条約締結に  ついて承認を求めるの件(内閣提出、衆議院送  付) ○人質をとる行為に関する国際条約締結につい  て承認を求めるの件(内閣提出衆議院送付) ○国際開発協力基本法案中西珠子君外二名発議  ) ○核兵器廃絶のための国際的取決めに関する請願  (第七五一五号) ○継続審査要求に関する件 ○継続調査要求に関する件 ○委員派遣に関する件     ―――――――――――――
  2. 宮澤弘

    委員長宮澤弘君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  文化交流に関する日本国政府ソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の協定締結について承認を求めるの件、商品名称及び分類についての統一システムに関する国際条約及び商品名称及び分類についての統一システムに関する国際条約改正に関する議定書(千九百八十六年六月二十四日にブラッセルで作成)の締結について承認を求めるの件、原子力事故早期通報に関する条約締結について承認を求めるの件、原子力事故又は放射線緊急事態の場合における援助に関する条約締結について承認を求めるの件、多数国間投資保証機関を設立する条約締結について承認を求めるの件、関税及び貿易に関する一般協定ジュネーヴ議定書(千九百八十七年)の締結について承認を求めるの件、民間航空機貿易に関する協定附属書改正する議定書(千九百八十六年)の締結について承認を求めるの件、国際花と緑の博覧会政府代表設置に関する臨時措置法案日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並び日本国における合衆国軍隊地位に関する協定第二十四条についての特別の措置に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定締結について承認を求めるの件、国際的に保護される者(外交官を含む、)に対する犯罪防止及び処罰に関する条約締結について承認を求めるの件、人質をとる行為に関する国際条約締結について承認を求めるの件、以上十一案件を便宜一括して議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  3. 松前達郎

    松前達郎君 まず最初は、人質をとる行為に関する国際条約、それともう一つ、二本あるわけなんですが、それに関連したものがですね、それについて質問さしていただきます、  これを読んでみますと、この対象となるものは、人質をとる目的があってそのために人質解放させる、人質解放させるために人質をとるというふうなことがちょっと書いてあるように思えるんですけれども、この点いかがでしょうか。そういうことでしょうか。
  4. 柳井俊二

    政府委員柳井俊二君) この条約は、もう一本の条約でございます国際的に保護される者に対する犯罪防止及び処罰に関する条約と基本的には同じ構造をとっておるわけでございます。この基本的な構造は、御承知のように、国際的なテロ行為がありました場合にこれを処罰するか、あるいは処罰される国に引き渡す、このいずれかの措置をとるということによりまして、いわばテロリストに対する聖域をなくすというのが趣旨でございます。  他方、人質をとる行為につきましては、この行為性格から申しまして、犯人処罰引き渡しということと同時に、人質になっている被害者の救済ということも必要でございますので、そこで第三条におきまして、人質解放を確保するために必要な場合には人質解放のための措置をとる。正確に申しますと、第一項で、犯人が領域内で人質を捕らえている場合に、その締約国人質事態を緩和するため、それから特に人質解放を確保するため、さらに、必要な場合には人質解放後の出国を容易にするために適当と認めるすべての措置をとるということでございます。したがいまして、処罰引き渡しということとあわせて人質解放措置についても配慮したということでございます。
  5. 松前達郎

    松前達郎君 その点は大体わかるんですけれども、どうも条約の案を読みますと、これだけじゃないんですが、非常に難しいんですよね、表現が。相当時間をかけてじっくり読まないと何を言っているのかわからぬというところが大分あるんです。  まず第一条ですね、今申し上げたのは、第一条のところの三行目あたりから、「人質解放のための明示的又は黙示的な条件として何らかの行為を行うこと又は行わないことを第三者に対して強要する目的で行う」という、ちょっと後ろがわかりにくいんでお伺いしたんですけれども、これはさっき冒頭に申し上げたような意味だというふうに解釈していいんでしょうか。
  6. 柳井俊二

    政府委員柳井俊二君) 確かに、国際条約と申しますのは主として英語で交渉いたしまして、かついろいろな国のいろいろな主張が出まして妥協の産物である、これをまたさらには日本語に翻訳するという経過をとりますので、わかりにくい規定がいろいろあると思います。  ただいま御指摘の第一条一項に関しましては、目的のところで、「人質解放のための明示的又は黙示的な条件として何らかの行為を行うこと又は行わないことを第三者に対して強要する目的」というふうになっているわけでございますが、これは要するに、しばしば起こります人質の事件で見られますように、これこれのことをすれば人質解放してやる、あるいはこれこれのことをそもそもこの第三者の持っている権利を行使しないようなことを条件として要求する、そういうことを人質解放のために要求するという目的で逮捕、監禁するということであるわけでございます。「何らかの行為を行うこと又は行わないこと」というのは、簡単に申せば、作為または不作為を強要するということであろうかと思います。
  7. 松前達郎

    松前達郎君 それから第九条ですが、引き渡しについてですけれども、引き渡し請求に応じてはならない場合というのがありますね。その場合として、人種ですとかあるいは国籍、宗教あるいは民族的な問題、または政治的な意見、こういうものを背景として、これを処罰したいから引き渡せというふうな要求に対しては引き渡してはならない、こういうことがこの中に記載されていると思うんですね。実質的な根拠があるかないかの判断をしなければならないと思うんですが、この判断については非常に難しい面もあろうと思いますけれども、一体どこがこういう判断をするのか、その辺はどうなっておるでしょうか。
  8. 柳井俊二

    政府委員柳井俊二君) この第九条に定めておりますのは、いわゆるノンルフルマン原則というものでございまして、この引き渡し事案が生じましたときに、その引き渡し先で引き渡される人物が、この場合容疑者でございますけれども、引き渡される人物が政治的な理由、宗教的な理由等々によりまして迫害を受けるというような危険がある場合には引き渡してはならないというのがこの規定趣旨でございます。迫害されるおそれがあるところには引き渡さない、あるいは亡命者である場合にはこれを送り返さないというのがいわゆるノンルフルマン原則でございます。これが国際法上の原則として確立しているかどうかという点は若干争いがございますけれども、ただ、最近ではかなり広く取り入れられている原則だと言って差し支えないものと思います。  そこで、このような事案が起こりました場合にどこが判断するかということでございますけれども、第一義的には、やはり引き渡し請求を受けた国におきまして判断するということに相なろうかと思います。  先ほど非常にわかりにくい規定が多いということの御指摘がございましたが、一つは、この条約の場合には、テロリズムに対する防圧措置という面と、同時に容疑者の人権という要素と、この二つがあるものですから、その間の調整ということでいろいろなバランスをとっているという面があろうかと思います。
  9. 松前達郎

    松前達郎君 そうしますと、この判断というのは要求を受けた国が第一義的に行う。ということは結局、日本の場合ですと、日本政府要求を受ければ日本政府がやる。政府がやるとすると外務省ということになるわけですね。
  10. 柳井俊二

    政府委員柳井俊二君) 日本の場合で申しますれば、日本政府が第一義的には判断するということでございまして、対外的には直接には外務省ということになろうかと思いますが、ただ、入国管理の問題でございますとかその他のいろいろな要素がございますので、やはり最終的には政府全体として判断するということになると思います。
  11. 松前達郎

    松前達郎君 それから、国際的に保護される者に対する犯罪防止及び処罰に関する条約、これについて、国際的に保護される者ということは大分広い範囲をこの中には記載されておりますが、例えば外交官、これが一番中心になると思いますね。今まで、こういったような犯罪が起こるであろうというような予測、例えば日本から出向している外務省関係者、こういった何か例がございましたですか。
  12. 柳井俊二

    政府委員柳井俊二君) 今予測されるかという問題につきましてはよくわかりませんけれども、この条約の採択に至った背景といたしましては、この条約は一九七〇年代初めのころに検討されまして、七三年でございますかに採択されたわけでございます。その時期におきましては、かなりいわゆる外交官に対するテロリズムの例というのが頻発したということがございまして、そのような背景から国際的に保護される者に対する犯罪防止をどうしようかという問題が国連で出てきまして、いろいろテロリズム防圧措置につきましては考えがあったわけでございます。  当初は、いわゆる国際テロリズム全体を対象といたしまして、これに対する処罰その他の措置を決めた条約をつくろうというような動きもあったわけでございますが、これはいろいろな形態がございますのと、やはりアフリカ諸国中心といたしまして民族解放運動をやっている人たちがあるわけでございます。この人たちが、テロリズム防圧ということを口実にそういう解放闘争が支障を来すのではないかというようなおそれを表明いたしまして、なかなかうまくいかなかったわけです。そこで、国際的に保護される者である元首、外務大臣あるいは外交官というものに絞って措置をとろうということでこの条約になったわけでございます。  差し迫って何かそういうようなことが起こりそうかどうかということになりますと、具体的にそのような情報が現在あるわけではございません。
  13. 松前達郎

    松前達郎君 最近各国にある大使館が、大分厳重な態勢といいますか、外から入ってくる人に対するチェック等も大分厳重にやられているようなんで、何か情報等があって、最近特に日本は世界から孤立するなんというようなことも言われているようですから、日本に対する批判等を含めてそういうテロ行為がある可能性もあるということで、恐らくそういう厳重にコントロールされているんじゃないかと思うんですね。特にそういった問題がなければ大変結構なことだと思います。  それから地位協定特別措置について、今回は、我が国雇用する労働者、これはアメリカ軍基地で働くそういったような労働者、こういう労働者に対する諸手当の二分の一負担ということですね、まあ思いやりというふうに言われていますけれども。これはちょっと聞きましたら、アメリカが非常に感謝しているというふうな話をちらっと聞いたんですけれども、そういうことをお聞きになりましたか。
  14. 藤井宏昭

    政府委員藤井宏昭君) 今回の地位協定二十四条に関する特例措置国会にお願いしている件につきましては、我が国が自主的に決めたものではございますけれども、その行為自体に対してアメリカ政府は一般的にこれを高く評価しているというふうに聞いております。
  15. 松前達郎

    松前達郎君 今の二分の一を負担するというその理由として、一つ円高というのが挙げられているんじゃないかと思うんですね。これは理由として円高というのが最大理由でしょうか。いかがでしょうか。
  16. 藤井宏昭

    政府委員藤井宏昭君) この措置をお願いいたしております理由は、この協定にございますように、最近の経済情勢変化、この変化原因でございますけれども、その最近の経済情勢変化の中で最大の要因は、一昨年九月以降の円高ということでございます。
  17. 松前達郎

    松前達郎君 そうしますと、円がさらに高くなるような事態が出た場合にはまたこの二分の一がふえていくという可能性があるように思うんですね。そういうことは今後はあり得るんですか。
  18. 藤井宏昭

    政府委員藤井宏昭君) この措置は、一昨年の九月以来の急激な円高、それが日本人労務者雇用の安定に与える影響、それが在日米軍の使命の効果的な遂行ということ、それを確保していくというための措置でございまして、そのための一時的な、暫定的、限定的なかつ特例的な措置でございます。したがいまして、この措置は五年間ということで終わるというふうに考えております。
  19. 松前達郎

    松前達郎君 しかし、円高がこのままの状況で続くときはまたさらに延長もされるであろうし、というふうに受け取れるんですけれども、一遍こういうものが実施されますとこれが定着しちゃって、こういうふうな措置をするということが当たり前になってくる。そうなりますと、また円がどんどん上がればさらにまたもっと負担をふやしていくという格好にどうもなるような気がしてしようがないんですね。それが一つ。  それからさらに、それじゃ逆に今度は急速に円が安くなった場合にもとへ戻すのか、こういう問題ですね。やはりなし崩しにどんどんそういうふうな状態に入っていくと、最後は全額負担なんということへどうもなるようなところまで行ってしまうんじゃないかという気がするんですけれども、そういうことは絶対ありませんか。
  20. 藤井宏昭

    政府委員藤井宏昭君) 第一点は、この措置は、先ほど申しました急激な円高と最近の経済情勢変化ということが原因でございますが、そのような大きな今までのような円高というような事態が将来これからもあり得るのかということ、これは経済情勢の将来の見方でございます。それからいろいろな情勢、例えば日本における雇用情勢とかあるいは在日米軍労務者雇用形態とかいろいろございますけれども、そういうことを全体考えましての措置でございまして、このような状況というものが将来再現するかどうか、これは現段階において全く予断すべきものではない。  いずれにしましても、今回の措置はそういう非常に大きな変化があったという情勢を踏まえましての措置でございまして、それを五年間という時限を限りまして、さらに明示的に項目を挙げまして、最大限そのうちの二分の一という限定を明確につけまして国会にお願いしているわけでございます。  先ほどの御質問の点でございますけれども、将来例えば円安になってきたらどうかということでございます。これは、もちろんこの五年間のうちにどういうような円のレートになっていくかということは予断できないわけでございますが、一つは、もちろん運用の面におきまして、毎年二分の一を限度といたしまして、予算範囲内で日本政府が決定いたしまして米国政府に毎年の額は通報するわけでございますから、その辺の運用の中で、当然円高あるいは将来もし仮に円安という事態が起きますればその辺のことも勘案し得るということもあります。いずれにしましても、この措置はこの大きな円高ということが起きたその結果の暫定的な措置でございますけれども、それが雇用という問題の性質上、それが極めて短期間であってもいけないということで、全体として五年間という時限を限って特例を設けようということでお願いをしている次第でございます。
  21. 松前達郎

    松前達郎君 円安になった場合には、急激な変化ですわ、経済上の問題としての、そのときにはどうするということはこれには全然、協定をそのときにまた検討するというようなことは入っていないんですね。ですからこれで五年間決まってしまうわけですね。ということは、五年間円高が続くというふうに予測されて決めたんだろうと思うんですけれども、その辺いかがですか。もし円安になったときはどういうふうにこの協定を処置できるのか。五年後じゃないとできないのかどうか。
  22. 藤井宏昭

    政府委員藤井宏昭君) 先ほど申し述べましたように、特定の項目を限定いたしまして、その二分の一を上限といたしまして、毎年の予算日本政府が決定してアメリカ政府に通報するというのがこの特例システムでございます。したがいまして、これは理論的な問題でございますけれども、円安というようなことになりますと、その運用の面でそれが反映できるかどうか、その辺のことは将来の問題でございます。  ただ、基本的に五年間といたしましたのは、一昨年以来の六〇%以上の急激な円高という事態があるわけでございまして、その事態によりまして在日米軍日本人労務者雇用の安定が脅かされているという事態がございます。これを解決していくことが在日米軍目的達成に資するということでございますので、それに対して暫定的な措置を行う必要がある。その暫定的な期間をどのくらいにするかということでございますけれども、円高というものの一時的な性格を踏まえながら、しかし雇用というもののある程度長期の安定ということが必要であるということを踏まえて、五年ということにお願いしている次第でございます。
  23. 松前達郎

    松前達郎君 今藤井さんのおっしゃったことを伺っていますと、二分の一以内でということをおっしゃったのですが、これは二分の一に相当する金額と決めてあるんですね。二分の一とはっきり決まっていますね。以内でもって調整できるということなんですか、それとも二分の一と決めてやるのか。これは第一条にはそう決まっているんじゃないかと思うんですが。
  24. 柳井俊二

    政府委員柳井俊二君) 第一条におきましては、今先生御指摘のように、「当該経費の二分の一に相当する金額限度として負担する。」というふうに規定をしておりますので、この限度内であれば調整が可能なわけでございます。
  25. 松前達郎

    松前達郎君 わかりました。そうすると調整できるわけですね、その範囲内で。二分の一以内で調整できる、こう解釈していいですね。これは毎年毎年調整をするのか、その都度何か急激な変化があったときに調整できる、こういうふうに解釈してよろしゅうございますか。
  26. 柳井俊二

    政府委員柳井俊二君) 具体的な金額につきましては、第二条にございますように、日本国は、日本国会計年度ごとに、この第一条の規定に基づきまして負担する経費の具体的な金額を決定し、当該決定米側に通報するということになっておるわけでございます。
  27. 松前達郎

    松前達郎君 それでは次に移らせていただきます。  防衛庁の方お見えになっておられますが、最近OTHレーダーの問題が随分いろいろと報道されたりしておりますですね。防衛庁がこのOTHレーダーを導入するということに決まったというようなことを伺っているんです。OTHレーダーの性能、その導入の目的というのは一体どういうところにあるのか、これをひとつ御説明いただきたいんですが。
  28. 宝珠山昇

    説明員(宝珠山昇君) 御説明いたします。  専守防衛の防衛戦略をとっております我が国にとっては、警戒監視あるいは情報収集機能の充実というのが非常に重要だと考えております。特に軍事技術の進歩によりまして航空機などのスピードが高まってくるというような傾向の中でますますその重要性は高い、こう考えているわけであります。  そういう観点から、かねてからOTHレーダーについて注目しているところでありますが、米国におきましても、昨年の秋から一部について実配備あるいは実験的な運用を始めているという状況であります。そういう流れの中で、六十年の秋に閣議決定いただきました中期防衛力整備計画におきまして、OTHレーダーの有用性などについて検討の上、必要な措置を講ずるということになっております。現在それに基づいて検討を進めているという状況でございます。六十二年度予算では約六百万円の予算をいただいておりまして、現在その執行をすべく調整をしているところでありますが、その一部は、米国における運用状況などを調査することであります。一部は、我が国設置するとした場合における電波環境などの調査を行いたい、こう考えているものであります。  性能の面では、OTHレーダーは送信所と受信所とその運用センターの三つから成ると考えておりますが、送信所からおよそ千キロメートルから三千キロメートル先ぐらいの移動物体について情報が得られるというふうに理解しております。
  29. 松前達郎

    松前達郎君 今移動物体とおっしゃったんですが、航空機だとかあるいは飛しょう体、ミサイルも含まれるでしょうし、そのほか船舶の移動の情報をとることができると聞いているんですが、これもできるんですか。
  30. 宝珠山昇

    説明員(宝珠山昇君) 現在アメリカで開発中または運用中のものには二種類ございまして、空軍用をOTH・Bと呼んでおりますが、これは航空機の動静がキャッチできるというふうに理解しております。我が国で導入する場合においては、もう一つ海軍で開発中の、ROTHと呼んでおりますが、艦艇の動静もつかめるものを導入するのがよろしいのではないかという方向で検討しておるところでございます。もう一つの、ミサイルについてということでありますが、ミサイルは非常に多岐にわたりますので一概には言えないというふうに承知しているところであります。
  31. 松前達郎

    松前達郎君 今検討中ということで調査費がついているわけですね。大体、調査費がつくということは導入を決めるということにつながっていくわけなんですが、今おっしゃいましたように、艦船、航空機、こういうものの情報がとれる。アメリカの場合もまだ私は完成されたものではないような気もするんですね。そういう話も聞いておりますし、技術的な完成度については現段階ではどういうふうにお考えでしょうか。
  32. 宝珠山昇

    説明員(宝珠山昇君) 先ほど申し上げました空軍用のOTHレーダーについては、既に米本土の西海岸において実運用中であります。引き続く設置計画を既に予算化されているというのが米国防報告で発表されておりますので、既に技術的には完成しているものと申し上げられると思います。  それから海軍用のOTHレーダーにつきましては、昨年の十月と聞いておりますが、同じく西海岸においてプロトタイプと呼んでおりますが、その運用試験を行っております。来年度以降逐次実配備の予算化が計画されておりますので、これも完成について技術的な問題点が大きく残されているとは理解しておりません。  それから調査費を既にづけたことは、我が国OTHレーダー設置することを決めたことではないかということでございますけれども、現在まさに有用性についてはかなり見通しを得ておりますが、設置可能性については、これから電波環境でございますとか用地取得の問題ということで検討しなければ何とも言えない状況でございまして、決して設置を前提とする調査を行っている状況ではないということを御理解いただきたいと思います。
  33. 松前達郎

    松前達郎君 設置前提じゃないと調査できないんですけれどもね。一説によると硫黄島、喜界島とかいろいろありましたね。最近ではどうもそれが硫黄島に設置するように米軍の方からの要請があるというふうな報道もあるようですが、こうなってきますと、いわゆるOTHレーダーの監視網といいますか、こういうものが全体として構成される、その一つとして設置をされるというふうに言われているわけなんです。このレーダーそのものは、単独で十分機能するということよりも、そういうネットワークがある中で機能していくという方が有用であるというふうに聞いているんですが、その点いかがでしょうか。
  34. 宝珠山昇

    説明員(宝珠山昇君) 前段の設置場所についてでありますが、かねてから申し上げておりますように、南西諸島または小笠原諸島の島嶼部に設置するのがOTHレーダーの性能などから見て適当であろう、適当というか、それ以外にないであろうという考え方をとっております。その性能などから見れば小笠原諸島のいずれかの島の二つの組み合わせが最もよろしいのではないかというような考え方は持っておりますが、いずれかの場所を現在特定できるとか特定したというようなことは全くございませんで、むしろ用地取得の問題点の方が大きいという認識をさえ持っているところであります、  それから単独運用が可能なものかどうかという点でございますけれども、可能だということをかねがね申し上げているとおりでございます。
  35. 松前達郎

    松前達郎君 これを設置したとして、運用する場合において、単独で可能であるとおっしゃっておりますが、単独でも情報は集まると思うんですけれども、しかし総合的な情報の価値といいますと、やはり単独じゃなくていろんなものとの組み合わせ、その他のOTHレーダーの組み合わせいろいろあると思うんですね。ですから、恐らく単独で運用するというのは私はどうも考えられない。また同時に、運用の結果集まった情報をどういうふうに送り出すかという問題ですね、情報通信の問題。  これはまだ場所が決まっていないとおっしゃっていますが、例えば硫黄島あたりですね、そういうところにしたとしますと、当然そこから情報が送られてこなきゃ話にならない。そうなったときにその情報通信というのはどういう方式でやろうと考えられるのか。あるいは衛星利用しようというのか。この衛星利用の問題も非常に問題になっているわけですけれども、その辺どういうふうに予測をされているか。もし御意見があったらお知らせいただきたいと思います。
  36. 宝珠山昇

    説明員(宝珠山昇君) 設置場所を含めましてその通信系をどうするのか、それから得られた情報をどこに伝達するのかというようなことはまさにこれからでございますけれども、自衛隊の運用という観点からは、航空の警戒監視という観点では、航空総隊の司令部には少なくとも送る必要があるということは考えられます。それから艦艇の動静、あるいは航空機も同様でありますが、自衛艦隊の司令部、それから陸上自衛隊のおのおの総監部などの司令部には送る必要があろうと考えております。この通信系などをどうするかという点は、いずれ設置場所などとあわせまして、六十三年度以降場合によっては検討することがあろうかと考えられるものであります、  それから単独運用する場合で十分に有効にできるかという御質問かと思われますけれども、たくさんのOTHレーダーによって得た情報の解析の仕方というようなことについては、情報交換などを通じて相互に充実していくということはあろうと思いますが、これはOTHレーダーに限りません。情報交換一般として日米関係では行っているところでございます。その範囲で十分可能であろうというふうに考えております。
  37. 松前達郎

    松前達郎君 今ちょっとお話しされましたように、通信系がないと何の意味もない。まさか専用のケーブルを引くわけでもないでしょうし、恐らく一番簡便な方法は衛星利用だということになってくるんですね、当然。そうすると、防衛庁が独自に通信衛星を上げるなんという問題まで発展する可能性もあるんですね。しかも、衛星を使えば米軍との連絡というのも非常に簡単にできるようになってくる。そうなるとそれこそ衛星の軍事利用ということに入ってくるわけですから、そういう意味を持って私今質問さしていただいたんです。  設置するということと、それから設置した後の通信系ということですね。この二つがやっぱり解決しませんと意味がなくなってくるんですね、設置の意味が。その辺をちょっとお伺いしておきたいんですが、どうですか。将来衛星を上げて通信をするなんということはやりません、軍事利用はいたしませんということは言えますか。
  38. 宝珠山昇

    説明員(宝珠山昇君) まだ設置するかどうかを含めまして検討中の問題でございまして、衛星を利用しての通信というのも一つの検討課題であろうとは思っております。このために独自の衛星を必要とするというようなことまでは今私どもは考えておりません。仮に利用するとした場合においても、一つの通信系を一般の通信と同じように利用さしていただくということになろうかと思いますが、これも検討した結果では全くございませんので、その点御理解いただきたいと思います。
  39. 松前達郎

    松前達郎君 それからついでなんでもう一つお伺いをしたいんですが、潜水艦通信用の超長波の送信所の問題ですね。きのうの新聞に出ているんですが、えびの市に設置をしようということですね、これはもう決まったんですか。通信関係の方見えていませんか。
  40. 宝珠山昇

    説明員(宝珠山昇君) ちょっと所管外でございますが、VLFの通信所自体は潜水艦に対する、水中にいるままでの潜水艦に対する通信手段として非常に重要だと考えておりまして、かねてからといいましても十数年になろうかと思いますが、検討さしていただいているところであります。その設置候補地を、先ほど御指摘のえびの市が一つになっているということまでは承知しておりますが、決定したものかどうかについてはちょっと私どものところではわかりません。
  41. 松前達郎

    松前達郎君 通信課長見えていますね。通信課長担当じゃないんですか、これ。いかがでしょうか。
  42. 早矢仕哲夫

    説明員(早矢仕哲夫君) 今お話がございました超長波送信所の話でございますけれども、現在は、先ほど先生御指摘ございましたように、用地取得の問題について検討しておりまして、それについて私どもが聞き及んでおりますのは、今防衛課長の方から御説明したとおりでございます。それで、最終的にえびの市に決定したということについては私どもまだ聞き及んでいない、そういうことでございます。
  43. 松前達郎

    松前達郎君 大分いろいろと交渉があって、えびの市の方がまた反対だとか賛成だとかいろんな意見があるというのが情報として入ってきているものですから、当然何かコンタクトをされて候補地としては一応考えているということだろうと私思っておるんです。  そういった通信関係あるいは情報収集について、これは防衛庁にとってむしろ非常に重要な問題かもしれないわけですね。しかし、我々としては、専守防衛ということで今おっしゃったわけですから、それなりの防衛に必要な内容であれば、専守防衛ということを認めたとして考えれば、ある程度のものは必要だというのはわかるんです。ただ、さっきのOTHに関しては相当大きな戦略としてアメリカとの共同態勢というのがどうも考えられそうなんでね。例えば結果の分析とかそういうものも、日本のコンピューター技術が進んでいるからという問題もあるかもしれませんが、非常にそういった関連性が強いものですから、だんだんと全体の戦略に組み込まれていくような感じがしてならない。そういう意味できょうは質問をさしていただいたわけです。  基本的なことを質問さしていただいてわかりましたので、またいずれの機会にもうちょっと具体的な話が出てきたときにお尋ねしたいと思っております。  私の質問はこれで終わります。
  44. 矢田部理

    ○矢田部理君 質問に入る前に、委員長に一言意見を申し上げておきたいと思います。  最終的には理事会で決まったことでありますから結論は従いますが、前回六件、きょう十一案件、これを一括上程して審議をするというのはいかにも異常なのでありまして、率直に申し上げて、案件名称を覚えることすらなかなか容易でないという審議のありよう、あり方については、これは委員長もいろいろ苦慮された結果の結論だろうとは思いますが、これは特殊異例の事態として余り今後前例としていただきたくないが、いかがなものでしょうか。
  45. 宮澤弘

    委員長宮澤弘君) 御意見はしかと承っておきます。
  46. 矢田部理

    ○矢田部理君 そこで外務省に伺いますが、六月八日からベネチアでサミットが開かれます。今度のサミットのテーマはどんなことになるでしょうか、外務大臣に伺います。
  47. 倉成正

    ○国務大臣(倉成正君) サミットの議題は、今関係国の間でいろいろと協議中でございますが、恐らく経済問題、世界経済全体のマクロ政策の問題、これが一つの大きな中心課題になると思います。さらに東西関係の問題、その他もろもろの問題、各国共通の関心事項について今議題を整理中でございます。
  48. 矢田部理

    ○矢田部理君 少しく抽象的なので、もう少し中身の話に入っていただいて……。
  49. 倉成正

    ○国務大臣(倉成正君) 今各国全部いろいろ調整中でございますから、これこれの議題ということはまだ最終的に決まっておりません。ただ、御承知のとおり、マクロの経済政策というのは一番大きな問題の一つになるでしょうし、また東西関係ではINF、軍備管理交渉、こういうものがやはり一つの大きなポイントになるだろうということは間違いないと思います。
  50. 矢田部理

    ○矢田部理君 日本としては、こんな点を議題にしたいという考え方はございますか。
  51. 倉成正

    ○国務大臣(倉成正君) きょうシンガポールの外務大臣が参られまして私と会談いたしますが、やはりASEANの諸国の御要望というようなものもひとつ聞いてみたいと思っております。したがって、先ほどから申しましたような点を含めてASEAN諸国がどういう問題について御関心を持っておられるかということについても聞いて、これはアジアからサミットに参加する日本といたしましては当然その意見を反映したいと思っておるわけでございます。
  52. 矢田部理

    ○矢田部理君 アジアの問題でありますが、朝鮮問題なども日本としては考えておるんでしょうか、地域問題の一つとして。
  53. 倉成正

    ○国務大臣(倉成正君) 当然東西関係の一環として朝鮮半島の問題も出てくると思いますが、サミット全体の議題としてこれを取り上げるかどうかということになりますと、むしろ外相会談のあたりで出てくる可能性が強いんじゃないかなと思いますけれども、当然その一環として出てくることだと思います。
  54. 矢田部理

    ○矢田部理君 そこできょうは朝鮮問題を第一テーマに取り上げてみたいと思うのでありますが、五月の四日に外務大臣は韓国に行かれて日韓定期外相協議を開かれましたね。このとき三原則というのを出されたそうですが、その内容を御説明いただきたいと思います。
  55. 倉成正

    ○国務大臣(倉成正君) 三原則と申しますか、朝鮮半島の平和と安定のための三つの基本的な考え方でございまして、第一は、南北相互の信頼感の醸成、特に緊張緩和及びそのための南北の対話を促進するというのが第一点でございます。第二点は、ソウル・オリンピックが来年行われますので、この八八年ソウル・オリンピックの成功及びできる限りこれに多数の国々が参加するようにしてこの成功を祈るというのが第二点でございます。これはもちろん南北の融和ということをこれの一つの手がかりにしたいということがございます。それから第三番目は、周辺の諸国、日中、さらに米ソ、この四カ国の間と韓国、北朝鮮との関係をバランスをとりつつ進展させるということでございます。  もう少し具体的に申しますと、日本アメリカは御承知のとおり韓国と国交がございますけれども、北朝鮮とはございません。また一方、中国とソ連は北朝鮮とは国交はございますけれども、韓国とはございません。そういうこともございまして、これらの関係をバランスをとりながらひとつ進展さしていく、交流を進めていくということが大切じゃないか、こういうことをいわゆる三原則と呼んでおる次第でございます。
  56. 矢田部理

    ○矢田部理君 その外務大臣のお考えの中には、言われているところのクロス承認とか国連同時加盟とかいう考え方が含まれているのでしょうか。
  57. 倉成正

    ○国務大臣(倉成正君) これは事柄の進展次第でございますけれども、そういう情勢に各国が進んでまいりますればそういうことはあり得ると思いますし、また、そういうことになれば一つの前進ではないかと思っておる次第でございます。
  58. 矢田部理

    ○矢田部理君 韓国の外務大臣は、その二つの考え方が三原則の中には込められていると思われるので結構です、こう言ったというんですが、どうでしょうか。
  59. 藤田公郎

    政府委員(藤田公郎君) そのとおりでございます。
  60. 矢田部理

    ○矢田部理君 そこで問題だと思うのでありますが、朝鮮民主主義人民共和国はこのクロス承認と国連同時加盟ということに強く反対をしているわけですね、二つの朝鮮を演出するもの、朝鮮の分断固定化を進めるものと。こういうことで、一方の当事者が強く反対している問題を原則の中に込める、少なくともその思想を盛るということは、実際問題として、南北朝鮮の対話と言ってみても逆に対話を進めることにならないのではないでしょうか、外務大臣
  61. 倉成正

    ○国務大臣(倉成正君) やはり現実的に見まして、御案内のとおり、韓半島の情勢は大変流動的でございまして、最近アメリカも北朝鮮との接触が始まりつつある、また、金日成主席が中国を訪問するというような、いろいろ流動的に動いておりますから、バランスをとりながら進めていくということが原則でございまして、最終的にそういうクロス承認なり国連同時加盟ということが当事者の合意によってできれば、この原則というのは決しておかしいことではないと私は思っておる次第でございます。
  62. 矢田部理

    ○矢田部理君 情勢が動いていることはわかりますが、だからといって、両当事者の信頼醸成措置とか対話の促進とか言っておるのに、片方の側が主張する原則に基づいてその問題を仕切ろうというやり方は逆にマイナス効果を生むということで、そういう言い方はしない方がよろしいというように私は思っております。  もう一点でありますが、オリンピックの成功を言われております。多数国の参加をとりわけ求めたいという言い方もされたようでありますが、やはり多数国を参加させるためには、問題になっている南北共同開催ということが非常にポイントになるのではないかと思われます。そこで、日本が直接的な立場ではありませんが、そのために側面的に協力をするということをもう少し積極化すべきではないかと思われるんですが、いかがでしょうか。
  63. 倉成正

    ○国務大臣(倉成正君) これはIOCでもちろんやられることでございますから、日本がこれを決めるものではございませんけれども、少なくとも開催地としてソウルが決まって今オリンピックの準備を進められつつあるわけですから、いろいろその間の南北関係の調整はIOCでやっていただくものだと心得ております。
  64. 矢田部理

    ○矢田部理君 だから私も側面的にと言ったのでありますが、日本の立場としては共同開催が望ましいということは外相として考えられますか。
  65. 倉成正

    ○国務大臣(倉成正君) 私はそこまで踏み込んで考えていないわけでございまして、これはIOCが当然この問題はやられるべきものだと。それで、その共同開催云々というようなことを日本が踏み込んで考えるところまでは私自身考えておりません。
  66. 矢田部理

    ○矢田部理君 先ほど外務大臣も触れられましたが、アメリカが出先の外交官レベルで共和国と接触を持つことはよろしいという方向づけをされ、米朝接近が言われているわけでありますが、その内容、状況等についてはどんなふうに外務省はつかんでおられるでしょうか。
  67. 藤田公郎

    政府委員(藤田公郎君) 御承知のとおり、三月の初めにアメリカ側は北朝鮮との公的接触要領の改定というのを発表いたしまして、第三国の主催する社交の場等におきまして、先方、北側からアプローチがある場合には、米国の外交官は会話を行って差し支えないというような変更を行ったものというふうに承知いたしております。日本の態度は、これは今までも随時明らかにしていると存じますが、南北対話の促進が朝鮮半島の緊張緩和、朝鮮半島の平和と安定にとり重要だという認識に立ちまして、米国の今般の措置は、南北対話促進のための環境づくりという観点から評価し得るものというふうに考えております。  今までのところどういうふうになっているのかということでございますが、私どもが伺っているところでは、数回にわたって接触はあったということは通報を受けて承知いたしております。
  68. 矢田部理

    ○矢田部理君 中身はいろいろあるかもしれませんが、数回というのは、どんなところでどんな程度の接触か、わかる程度でお話しください。
  69. 藤田公郎

    政府委員(藤田公郎君) 私どもが伺っているところでは、たしかアフリカとヨーロッパだったかと思いますけれども、二回、いわゆる第三国が主催する場で会話が持たれたというふうに承知しております。
  70. 矢田部理

    ○矢田部理君 日本政府の立場は、そういうアメリカのレベルまではまだ達していないんでしょうか、
  71. 藤田公郎

    政府委員(藤田公郎君) 日本の方がどちらかといえば進んでおりまして、進んでおりましてといいますか、このアメリカの今回発表した程度のことはもう既に許しておりますので、第三国の場で朝鮮民主主義人民共和国の外交官との間で社交的な会話ないしは内容のある会話等は行っております。
  72. 矢田部理

    ○矢田部理君 そうですか。それはいつごろから行われ、かつどんな接触が今日まであったのでしょうか。主なものだけでも述べてください。
  73. 藤田公郎

    政府委員(藤田公郎君) これは余り内容を、どこの場でだれとだれが会ったということを申し上げるのは差し控えさしていただいた方がよろしいかと思います、先方の立場もあると思いますので。過去三年ぐらいだったかと思いますが、の間に、何回というふうに申し上げるほど規則立ったものではございませんけれども、時に応じまして、第三国の場で先方から話しかけられてきた場合にいろんな、社交を除きますと、国際情勢のお話をするとかということで接触は持っております。
  74. 矢田部理

    ○矢田部理君 倉成外務大臣の先ほどの三番目の原則ですね、南北朝鮮の関係をバランスをとりながら進展させるという意味の内容の一つに、共和国に対する政策を従前よりも一歩進める、より前進をさせるという意味内容は込められているのでしょうか。
  75. 倉成正

    ○国務大臣(倉成正君) これは周囲を見ながら進んでいくということではなかろうかと思います。バランスをとりつつというところに意義がございますので、それで御理解いただきたいと思います。
  76. 矢田部理

    ○矢田部理君 周囲を見たりバランスをとったりということに余り力点を置き過ぎるとさっぱり進まないので、バランスをとりながら進めるという方にアクセントを置くべきでないかと思うんですが、いかがなものでしょうか。
  77. 倉成正

    ○国務大臣(倉成正君) まさにバランスをとりつつ進めるわけでございます。
  78. 矢田部理

    ○矢田部理君 私としては、戦後問題というのは幾つか依然として残っておりますが、戦後問題の最大の課題はやっぱり朝鮮問題だと思うんです。この問題にもっと日本の外交が積極的な展開をすべきだ。安倍さんの時代にそんな姿がちょっぴり見え始めたのでありますが、倉成さんの時代、まだ必ずしも鮮明になっておりませんので、倉成外交の存在理由としてそこはひとつ力点を置いて考えていただきたいと思うのですが、この点について外務大臣の見解を伺っておきたいと思います。
  79. 倉成正

    ○国務大臣(倉成正君) 基本的には、やはり朝鮮半島の問題は南北双方が話し合って決めるべきものでございまして、南北の対話の促進の情勢をつくり上げていくということが日本の立場じゃないかと思うわけでございまして、そういう意味でソウル・オリンピックというのは一つの契機になるんじゃないかと思っておるわけでございます。  今、南北の関係におきましては、そうは申しましても相互の不信感というのが非常にまだ強いわけでございまして、そういう中にこの南北対話をどう進めていくかということは非常に難しいわけでございますから、一方的にこうしろとかああしろとか言うわけじゃなくて、やはり周囲からずっとそういう情勢をつくり上げていくということが現実的ではないかと思っておるわけでございます。双方がいろいろな提案を出して、そしてそれを、この提案はよろしい、これはいけないということで、なかなかうまくいっていないというのが現状でございますから、一歩でも二歩でも前進させていきたいというのが私の考え方でございます。
  80. 矢田部理

    ○矢田部理君 ちょっと観点を変えます。  政府はしばしば、西側の一員とか西側の団結ということで、西側という言葉を使うんですが、西側というのはどんな意味合いを込めているのでしょうか。西側のメルクマールは何でしょうか。
  81. 倉成正

    ○国務大臣(倉成正君) 西側というものの国際法上の定義は、もしあれば条約局長から――恐らくないと思いますので、説明させますが、私の承知している限りでは、自由主義、自由経済、それから民主主義、こういうものを政治的にも経済的にも信奉し実行している国々、それを西側というふうに私は理解しておりますが、もっと正確な意見があるかもしれませんからお教えいただければ幸せです。
  82. 矢田部理

    ○矢田部理君 それを前提にして伺いたいと思うのですが、韓国は西側の一員でしょうか。
  83. 倉成正

    ○国務大臣(倉成正君) 西側と申しますか、私どもの理解では、西側というのを、厳格な定義はございませんけれども、まあ強いて分ければ西側と申しても差し支えないんじゃないかと思います。
  84. 矢田部理

    ○矢田部理君 強いて分ければ西側ということで、少し微妙な表現なのでありますが、韓国の民主主義とか自由とか人権状況について外務省はどんなふうに認識をしているんでしょうか。
  85. 藤田公郎

    政府委員(藤田公郎君) 余りほかの国の内情につきまして価値判断と申しますか、というようなことを申し上げるのはおこがましい話かと思いますけれども、ただいま外務大臣から御答弁申し上げましたように、自由、民主主義を享有している国だという考えでおります。
  86. 矢田部理

    ○矢田部理君 これは外交課題の私は重要なポイントの一つだと思うんですが、自由とか民主主義という以上、やっぱり人権問題についても、とりわけ日本と韓国との関係ではいろいろなつながりがあるわけですから、より積極的に関心を持ってしかるべきだと思うのであります。  これは二、三例を指摘いたしますれば、現在の韓国の状況は、政治犯数千人が投獄をされているんです。改憲問題をめぐって、あるいは光州事件七周年の集会等をめぐって大量の逮捕者、弾圧者が出て、非常に強権政治が続いているわけでありますが、この状況についてどう見ておられますか。
  87. 藤田公郎

    政府委員(藤田公郎君) これは今までも政府として御答弁申し上げているところだと存じますけれども、他国の内政の問題について、それに容喙するような発言は慎むというのが我が国が、韓国に限りませんが、他の国との関係で一貫してとっている立場かと存じます。
  88. 矢田部理

    ○矢田部理君 統一民主党という野党が最近結成をされました。その綱領に、民族統一が政治的理念や体制を超越した民族の第一の課題であるということを認識してやろうという記載があるわけでありますが、これが国家保安法違反だといって捜査の対象にされる。野党の存在を許さない、統一ということを認めない、こういう態度が民主主義、あるいは自由の価値を享有する国と言えるんでしょうか。
  89. 藤田公郎

    政府委員(藤田公郎君) この綱領の問題は、委員もよく御承知のとおり、三点につきまして国家保安法等の違反の疑いありということで、五月十五日に国土統一院の長官が談話を発表いたしております。イデオロギーを超えて統一云々ということが、体制を超えた民族史的第一課題である、この部分が国家保安法等の違反の疑いがあるということで、これを書かれた、たしか事務局の方かと思いますけれども、統一党の方がいろいろ話を聞かれておるというふうに承知しております。  また先ほどのお答えに戻りますけれども、韓国の国内法上一つの政党の綱領をどういうふうにみなすかという、全くの内政の問題ですので、これをどう我が国として認識するかということを申し上げるのは差し控えさせていただいた方がいいかと思うんです。
  90. 矢田部理

    ○矢田部理君 前にも私は高順子さんの拷問の実態を取り上げたことがございます。今日では、韓国の学生の朴鍾哲君が拷問を受けて殺されたということが大変問題にされているわけでありますが、政治犯に対する拷問、あってはならないその種のものが日常化しているとさえ言われているのですが、この現状をどう見ますか。
  91. 藤田公郎

    政府委員(藤田公郎君) 本件は目下韓国の中で非常に問題になりまして、御承知のとおり、デモとか抗議運動等が行われているということは私どもも承知いたしておりますし、重要な隣国でございます韓国の情勢について関心を持って注目しているというのは当然のことでございますが、いずれにせよ、他国の内政の問題でございまして、個々の動きについてコメントを申し上げるのは差し控えさせていただきたいと思います。
  92. 矢田部理

    ○矢田部理君 韓国の文化公報部広報政策室というところから「報道指針」というのが出されておりまして、新聞社やテレビ会社、マスコミ各社に対して大変厳しい報道統制がなされている状況を御存じでしょうか。
  93. 藤田公郎

    政府委員(藤田公郎君) 今先生お読み上げになりましたもの自体私今承知いたしておりませんけれども、韓国が置かれております厳しい国際情勢と申しますか、状況と申しますか、そういう状況から、先ほどの御指摘の法律等、日本に比べましたらいろいろの面で厳しい制約があるというのは現実だと思いますし、韓国の置かれている状況から見て日本とは差もあるというのも仕方のないことじゃないかと陰ながら思っております。
  94. 矢田部理

    ○矢田部理君 韓国の置かれている状況から仕方がないという言い方が私はちょっとひっかかりますが、内容の指摘をしてみましょう。  民主言論運動協議会という団体がその資料を入手し、「マル」という表題の特集号を発行してその実態を暴露しているわけでありますが、それによりますと、報道各社に対して、報道を可、不可、絶対不可の三種類に分類をする。その例として、例えば富川警察署の性拷問事件について、まずその記事を社会面に載せること、記者の独自の取材内容は載せない、検察発表の内容だけを報道せよ、名称は強制わいせつとせず性的侮辱行為とすること、弁護人団の告発状や女性団体の声明は一切報道をしないこと、こういう指示を出しているんです。  二、三例を引きますれば、仁川事態というのがございましたが、それについて、一面トップは韓英首脳会談にし、デモ記事は準トップか社会面で扱いなさい、デモを批判的に取り上げ、デモを引き起こした新民党の問題をつきなさい、こういう指示が報道指針としてなされている。さらには、日本関係も随分出てくるわけでありますが、アメリカのソラーズ議員のワシントン・ポストに対する寄稿について、これは一々内容を指摘すると時間がかかりますのでやめますが、内容が不愉快だからコラム記事などで批判をせよ。日本の某新聞のこういう社説があるわけですが、「韓国の改憲主張、性急この上ない」、この社説については目につくように報道しなさい。  こういうことが連日のように行われているというふうに伝えられているんですが、いかがでしょうか。
  95. 藤田公郎

    政府委員(藤田公郎君) 今委員がお読み上げになりました指針と申しますか、指示のようなものは私は承知いたしておりません。
  96. 矢田部理

    ○矢田部理君 もう二、三だけ紹介をしておきますれば、例えば新民党の野党議員が質問した拷問事件あるいは抗議の焼身自殺事件、農民のデモ事件などは一切報道をしないこと。国民の九五%が軍部統治ではなく文民統治を希望しているということも質問の趣旨に込められているのでありますが、その内容も報道はまかりならぬ。  日本関係について二、三紹介をしますと、鈴木前総理が韓国を訪問した後帰国に際して記者会見をしたわけでありますが、その中でこういう発表をしたそうです。「全大統領が私に、日本は韓半島平和定着のために、韓・中共間の橋渡し的役割をしてくれ」というふうに鈴木前総理が記者会見で述べた。これは報道をしないように。もう一つ日本関係は幾つもあるのでありますが、谷洋一日・北韓議員連盟会長代理、最近ピョンヤン訪問中に金日成と会談。金日成の談話がそこに出るわけでありますが、「今年中に南北首脳会談用意……戦争の意思ない」云々した内容は報道をしないこと。などなど、報道の内容、それから扱いの記事の大きさ、見出し、用語等々に至るまで連日にわたって報道機関に韓国政府から介入が行われている。これはもう読み上げたら切りがありません。  そういう事実を指摘されてもなおかつ韓国の事情からやむを得ないとお考えですか。
  97. 藤田公郎

    政府委員(藤田公郎君) 基本的には、先ほど来申し上げておりますように、具体的な内政の問題について個々の点についてコメントを申し上げるのは差し控えさせていただきたいと思います。  ただ、ただいま委員がいろいろマスコミに対しての指示が発せられているという御指摘でございましたが、その点私自身は少なくとも承知しておりませんものですから、それについてコメントをする立場にはございませんが、韓国との関係を扱っておりましての感じを申し上げますと、それは日本ほどではないのかもしれませんが、かなり韓国のマスコミも政府攻撃、自分の国の政府ですが、政府批判等を大っぴらにやっておられるように見受けておりますし、かなりの批判的な機能は果たしておられるように私は実感では感じておりました。
  98. 矢田部理

    ○矢田部理君 外務省状況に対する認識不足か、知っていてもあるいは知らぬふりをしているか、いずれかだと思いますが、これだけの報道統制、報道に対する圧迫、干渉の中で韓国のマスコミは確かに頑張っている部分があるわけでありますが、状況はやっぱりそういうことである。  その点で、自由とか民主主義とか人権とかということについてもう一度認識を新たにしながら朝鮮問題に取り組まないと、日本の政治の対応は大変まずいことになってしまう。その点で、人権とか民主主義とか国境を越えた価値の問題については、単に、先ほど西側というのは自由と民主主義の価値感を享有する国々だ、韓国もその一つだなどという説明では賄い切れない内容になっていることをひとつ篤と認識をいただきたい。また、そこの認識を踏まえた中で朝鮮問題を位置づけていき、外交の展開を考えていかないと、中長期的に見れば大変なことになってしまう。韓国の現政権に肩入れをし、それとむつむ関係だけで朝鮮問題をはかってはならないということを厳重に警告をしておきたいというふうに思います。  そこで次の質問に移りますが、外務省、間接侵略というのはどんなふうに定義していますか。
  99. 斉藤邦彦

    政府委員(斉藤邦彦君) 国際法上、間接侵略というものにつきまして何も明確な定義があるというわけではございませんけれども、通常用いられております意味は、直接侵略というのが武力を用いまして実力をもって他国を侵害するということだと考えられますので、それに対しまして、そのような実力の行使に至らない方法をもって他国を侵害することというふうに解して差し支えないのではないかと思われます。
  100. 矢田部理

    ○矢田部理君 戦後、日本政府として、世界的に見て、これが間接侵略だというように認定をしたケースはございますか。
  101. 斉藤邦彦

    政府委員(斉藤邦彦君) ただいまの御質問が、我が国が認定したことがあるかという御質問であるとすれば、我が国は特にそのような態度を表明したことはございません。
  102. 矢田部理

    ○矢田部理君 じゃ、間接侵略が問題にされた例はございますか。
  103. 斉藤邦彦

    政府委員(斉藤邦彦君) 国際的に問題にされた例があるかというお尋ねが、ある国が、自国が他国によって間接的に侵害を受けているという主張をした事例があるかというお尋ねであるとすれば、それはそのような事例は幾つかあったというふうに承知しております。
  104. 矢田部理

    ○矢田部理君 質問を先に進める意味で申し上げますが、アメリカでニカラグアのコントラに対する援助が問題になっておりますわ。ニカラグアの反政府ゲリラに対して米政府が金銭や武器援助をしたという疑いで現在調査中のわけでありますが、これは間接侵略には当たりませんか。
  105. 斉藤邦彦

    政府委員(斉藤邦彦君) ただいま矢田部委員指摘の問題は、国連等の場で今討議をされている事態でございまして、これが間接侵略か否かという点につきまして我が国が認定を下すということは適当でないと存じます。
  106. 矢田部理

    ○矢田部理君 先ほどあなたが述べられた定義に照らして、いかがでしょうか。
  107. 斉藤邦彦

    政府委員(斉藤邦彦君) ただいまの御答弁を繰り返す以外にないわけでございまして、この具体的な事例につきまして我が国がどう認定するかということを明らかにすることは適当でないと考えます。
  108. 矢田部理

    ○矢田部理君 それは、我が国は、そういう事例があってもいつも間接侵略という認定とか見方はしない、こういうことでしょうか。  それからもう一つは、少なくとも国連で論議をされるということであれば、我が政府としても態度を迫られると思うんですが、その辺はどうお考えでしょうか、
  109. 斉藤邦彦

    政府委員(斉藤邦彦君) 冒頭にお答え申し上げましたとおり、間接侵略というものの明確な定義がございませんので、いかなる場合でも我が国が間接侵略と認定することがないのかどうかという御質問には非常に答えにくいわけでございます。  それから、具体的なケースが国連等の場で討議されますときに、我が国がその討議に加わりまして一定の立場をとるということは、これは当然あるわけでございます。
  110. 矢田部理

    ○矢田部理君 ですから、国連で論議をされているということであるとするならば、我が国としてはどういう態度をとるのですか。
  111. 斉藤邦彦

    政府委員(斉藤邦彦君) ただいまの御質問が、アメリカとニカラグアとの関係について我が国が国連でどういう態度をとっているかという御質問だとすれば、私、必ずしも一〇〇%自信があるわけではございませんけれども、我が国は、アメリカ行為が間接侵略であるというような認定をしたと判断されるような行動をとったり、あるいは意見を表明したということはないと承知しております。
  112. 矢田部理

    ○矢田部理君 そこで、先ほどの定義に照らしてどこが当たらないからそう認定できないということなのでしょうか。
  113. 斉藤邦彦

    政府委員(斉藤邦彦君) まことに申しわけございませんが、また先ほどの御答弁を繰り返すしかないわけでございまして、このような具体的な事例、現在国際社会におきまして討議をされているようなこの具体的な事例につきまして、我が国が、先走ってと申しますか、このような場で、いかに認定しているかということを申し上げることはこれは差し控えざるを得ないと考えます。
  114. 矢田部理

    ○矢田部理君 ちょっと意味がわかりませんがね。国連で論議しているんでしょう。その論議には日本は参加していないんですか。また、少なくともいずれ態度表明はせざるを得ないんでしょう。それについての考え方の基本ぐらいは示してしかるべきじゃありませんか。
  115. 斉藤邦彦

    政府委員(斉藤邦彦君) 国連でこの問題を討議されたことがございまして、我が国がその場で具体的にどのような意見を述べたかということは、私、申しわけございませんが突然のお尋ねでございますので、この場で御答弁する用意がございません。もし御必要であれば調べまして後日御報告申し上げたいと思います。
  116. 矢田部理

    ○矢田部理君 まあ用意がないというんならやむを得ませんが、やはり間接侵略という定義が確かにそれは国際法上明確なものにはなっていないが、しかし、おおむね間接侵略というのは先ほどあなたが言ったような内容になっている。そこで、アメリカ政府が直接的に関与をして反政府ゲリラに武器を提供する、お金を渡すということが国家の行為として公になれば、明確になれば、これは間接侵略と言っていいのではありませんか。
  117. 斉藤邦彦

    政府委員(斉藤邦彦君) 仮定の御質問でございますけれども、具体的な事例について我が国が国として認定を下すという際には、これは個々の具体的な事情、経緯、その他慎重に考慮した上でないとこれは物を言うべきではないと存じますので、ただいまの御質問に、申しわけございませんけれども、そうだとか、そうでないとか答える立場にはございません。
  118. 矢田部理

    ○矢田部理君 アメリカがやったことなもので、少しく遠慮し過ぎているんじゃありませんか。  次の質問に移りましょう。  そこで今度は、思いやり予算、その特別措置について伺いたいと思いますが、地位協定二十四条に「この協定の存続期間中日本国負担をかけないで合衆国が負担することが合意される。」という規定がございます。その前提として安保条約を結んだ。地位協定を重要なその中身として締結をした。そしてアメリカの駐留軍に対して日本施設及び区域を提供する、アメリカは労務費を含めて維持的経費負担を行うという基本的な合意がなされた。この維持的経費負担については、この協定の存続期間中日本国負担をかけないで合衆国が負担する、それが合意されたということです。  この基本条項、基本精神に照らしてみれば、今回のように特別の規定を置いて日本が特別の負担をするというのは、この原則、確認に反しはしませんか。
  119. 藤井宏昭

    政府委員藤井宏昭君) ただいま委員指摘のとおり、二十四条にそういう規定がございます。その前に、二十四条一項は、「日本国合衆国軍隊を維持することに伴うすべての経費は、2に規定するところにより日本国負担すべきものを除くほか、この協定の存続期間中日本国負担をかけないで合衆国が負担することが合意される。」、こうあるわけでございます。  そこで、昭和五十三年及び五十四年に我が国政府が行いました解釈は、この合衆国軍隊を維持することに伴うすべての経費ということでございますけれども、そのアメリカ負担すべき経費は、労働力について言いますれば、労働力を使用するのに直接必要な経費であるということで、すなわち福利、五十三年に行いましたことは法定福利それから任意の福利費、これらは労働力を使用するのに直接必要な経費ではないので、これは日本側がこの二十四条一項、二項の解釈上負担し得る。  さらに五十四年、翌年には、国家公務員の直接必要な経費ということは、日本の国家公務員の水準を超える部分というものについては直接必要とする経費でないということで、これは間接雇用に基づいて日本負担し得るということで、以降その国家公務員の給与を超える部分、すなわち格差給それから語学手当等につきまして日本政府が負但してきているわけでございます。その原則は今回も基本的に全く変わっていないわけでございますけれども、その解釈の上で、これ以上日本政府が、この二十四条一項、二項からは我が国としては負担し得ない部分というものがございまして、これ以上は負担し得ないわけでございます。  そこで、けさほど述べましたように、経済情勢の急激な変化ということの事態を踏まえまして、我が国におきます在日米軍労務者雇用の安定ということを、それがさらに安保条約上米軍の任意の任務の遂行に支障を来さないようにということで今お願いしております特別協定をお願いしておるわけでございますけれども、この特別協定の考え方と申しますのは……
  120. 矢田部理

    ○矢田部理君 簡単に言ってください、内容は知っているんだから。
  121. 藤井宏昭

    政府委員藤井宏昭君) この取り決め自身は、協定二十四条一項、二項自身は変更いたしませんで、これに対して特例を設ける、それを限定的、時限的に行うということでございます。
  122. 矢田部理

    ○矢田部理君 時間がなくて十何本もやらなきゃならぬのだから、知って聞いてるんだから、知らなくて聞いてるんじゃないから、経過はいいんですよ。  私が申し上げているのは、安保条約を結んで地位協定やった。物すごい論議をしたですね、このとき。そして二十四条は厳重な枠はめをしたんです。単なる条文の形式の問題じゃないんですよ。維持的経費負担、これはアメリカがやります、それから施設及び区域の提供にかかわるものは日本でやりますという仕分けをした上で、この協定の存続期間中は日本国負担をかけない、それ以上の負担をかけない、こういう基本合意ができたわけでありまして、この基本合意に反するのが今回の特別協定ではありませんか。  それまでいろいろ解釈上、運用上こんなことができるということでずっと拡大をしてきた。それももとからずっと追跡をしてみれば随分インチキな議論を外務省はしているんですよ、防衛庁も含めてでありますが。しかしその運用や解釈ではどうにもならないところへ来た、だから別条項を起こすことにはなったが、もともと安保条約締結しかつ地位協定を結んだときの基本的な合意、原則にそれは反しているんじゃありませんか。反しているんですよ。もう一回端的に答えてください。
  123. 藤井宏昭

    政府委員藤井宏昭君) ただいま申し述べましたように、二十四条一項、二項の解釈、これは直接必要とするということでございます。その直接必要とするということは、必ずしも給与全体が、労務費全体が日本が払わなければいけないというものではないということでございます。ただいまの先生の御指摘は、二十四条一項、二項というものは、労務費はすべてアメリカが払うべきであって日本は払うべきでないという解釈をおとりになっているやに見受けますけれども、我々はそういうことではないということでございます。  ただ、その解釈上も、これ以上は、我々の解釈上も、二十四条一項、二項からは、ただいまお願いしております八項目につきましては、その二分の一というものにつきましてはそれは解釈上も不可能であるということでございますので、特例を設けて今お願いしているわけでございますが、これとてもその我々の二十四条一項、二項の解釈と全く原則的に乖離しているというものではなくて、考え方としては、今お願いしております八項目、社会的諸手当、季節手当、退職手当等でございますけれども、これは従業員の福祉、報奨的な性格のものである。さらに、米国型の賃金の概念の中に、職務給の中に入ってこないということでございまして、どちらかといえば日本に特殊の考え方である。その八項目を日米で協力して、このような困難が生じてきたということでございますから、日米で協力してということで、最大限二分の一の枠を設けて特例的、限定的に、暫定的期間を設けまして、五年という期間を区切りまして、この現実に起きております雇用の不安定というこの事態、これを暫定的に解決していこうというのがこの特例趣旨でございます。
  124. 矢田部理

    ○矢田部理君 大変苦しい答弁だと思うのでありますが、思いやり予算と言われる予算がずっと急上昇してきたわけですね。そして防衛費の一%枠突破の重要な中身にもなってきている。どうしてそんなにアメリカに肩入れをしなきゃならぬのか。もともと駐留軍の経費については基本的な分担の大枠が決まっておった。それを次々に理屈をつけて、最初は直接経費とか間接経費とかという仕分けをした。その内容を問い詰められると説明ができなくなって、今度は国家公務の給与相当分とそれを上回る分だという仕分けをした。そして今回はそれでも賄い切れなくなった。一々理屈をつけてふやしていく。雇用問題と言います。アメリカ自身が責任を持つべきじゃありませんか。そういうものとしてもともとこの仕組みができてきたんじゃありませんか。  その点で私はこの特別協定はどう見てもおかしいと思う。雇用問題と言っておりますが、雇用問題が先にあったのではなくて、アメリカに対するいろんな思惑があって、その政治決定が先にあったとしか見られないのでありますが、外務大臣いかがでしょうか。
  125. 倉成正

    ○国務大臣(倉成正君) 北米局長から申し上げたとおりの経過でございますけれども、御案内のとおり、最近の経済情勢、特に為替レートの変動ということで在日米軍経費の中で労務費が急激に逼迫してきておるということは、委員も御承知のとおりでございます。  したがって、これをこのまま放置すると、在日米軍の従業員二万一千余の方々の安定的な雇用を損なう、そういうおそれがあるということは現実問題でございます、また、在日米軍の効果的活動、こういう従業員の方たちの安定的な雇用を確保するということが、やはり日米安保条約に基づいて日本に駐留している米軍の効果的活動を行うことができる、したがって、こういう従業員の安定的な雇用ができなければ米軍の効果的活動に支障を来す、そういう観点からこの特別協定一般協定の特則としてお願いをしておるわけでございます。そのように御理解をいただきたいと思います。
  126. 矢田部理

    ○矢田部理君 思いやり予算の経過を見ておりますと、一般会計に比して防衛関係費は突出してきた。なかんずくその中でも突出してきたのがこの思いやり予算なんですね。これを値上げしてきた背景を見ると、必ずアメリカに行っていろいろな防衛費の注文をつけられて、それに一部こたえるかのような対応でこれをずっとふやしてきたという経過があるわけですよ。雇用問題というのはどちらかというと後からつけた理屈だというふうに私は思うんですね。結果としてのまた理屈だとしか考えられない。事実、雇用問題だけじゃないでしょう、施設経費だってやたらにふやしてきたじゃありませんか。  雇用問題、雇用問題といいますが、それならば、例えば前に、五十三年十二月ですね、在日米軍従業員の給与問題が出たときに、日米合同委員会が開かれて、そのときに、「米軍従業員の給与につき国家公務員の給与に相当するものを基本労務契約、諸機関労務協約及び船員契約の下で負担し並びに給与改定を国家公務員と同時同率で実施するとの米国政府の立場を保証し」云々ということで、給与問題でかなりきちっとした協定をこのときに結んでいるのであります。  今度特別協定で相当額の日本負担をするに当たって、雇用問題についてはアメリカとして責任を持つというような協定でも結んだのでしょうか。その点はいかがですか。
  127. 宍倉宗夫

    政府委員(宍倉宗夫君) 雇用問題について別途の協定を結んだかというお尋ねでございますが、特別の協定というものは結んでおりません。ただ、今回この特別協定を結ぶに当たりまして、米軍に対しましては従前から、今矢田部委員指摘のように、国家公務員とベースアップの場合に同時同率にやるといったことを初めといたしまして、日本人従業員の雇用の安定については特段の努力をしてくれるよう申し入れ、米側といたしましても、事情の許す限り最大限の配慮をいたしたいと、こういうことになっております。
  128. 矢田部理

    ○矢田部理君 雇用問題がこの法案の頭にもたしか書いてありましたよね。それから盛んに強調するのでありますが、かつて給与問題のときはびしっとした文書まで作成しているわけでしょう。それほどあなた方が雇用問題を重視するならば、日米合同委員会で正式な議題とし、協定をすべきだったんじゃありませんか。どうですか。
  129. 宍倉宗夫

    政府委員(宍倉宗夫君) ただいま申し上げましたように、米軍との間の文書の関係につきましては、矢田部委員指摘のとおり、五十二年、五十四年のときにきちんとした文書があるわけでございます。その文書のとおりやってくれるということで足りるわけでございますから、改めて文書を必要とするようには考えなかったわけでございます。  先ほど申し上げましたように、五十三年、五十四年の約束については、今後ともしっかりやってほしいとこちらから注文を出し、米側といたしましてもそのように考えるということになっているわけでございます。
  130. 矢田部理

    ○矢田部理君 いや、このときは給与問題が中心でしょう。今度は雇用問題だというんでしょう。労働条件、賃金も大変大切でありますが、雇用問題についてぴしっとした協定をすべきではなかったのか。
  131. 宍倉宗夫

    政府委員(宍倉宗夫君) 今回の協定につきましては、先ほど御質疑がございましたように、協定対象といたしております八項目の費用が約四百億強でございまして、その二分の一を限度として日本側が新たな負担をしよう、こういうことでございます。六十二年度の予算について申し上げれば、百六十五億円ということで約四〇%でございます。  この協定の契機になりました経済情勢変化、端的に申し上げて円高というものがございまして、その円高によります米側負担の増加と申しますのは、いろいろな計算もございますけれども、おおむね二億ドルぐらいになろうかと存じます。したがいまして、この百六十五億円の負担をするということだけで米側の窮状がすべて解決するというわけのものでもございません、また、この協定を結ぶことが決まりました昨年末に比べまして、今日なお円高はその当時よりも進んでいるわけでございます。それだけ米側の財政事情というのが困窮していることも事実でございます。したがいまして、米側としてすべて雇用の問題につきまして従前どおりというわけにもまいらない。米側として合理化すべき点というものはなお残っているわけでございます。さはさりながら、それが日本人従業員の雇用に対しまして大きな影響を与えてはいけないわけであります。そこのところを私どもといたしましては米側に対しまして、雇用の確保について最大限努力してくれるようにということで、先ほど来申し上げておりますような申し入れを行っているわけでございます。  そういう事情でございますからして、米側との間で文書で雇用の問題について従前以上何も変わらないことを保証せよということにつきましては、私どもとしても無理かと思っております。ただ、そのいろいろな米側の工夫につきましては、雇用に大きな影響を与えないように最大限の努力をしてもらいたい、こういうことであるわけでございます。
  132. 矢田部理

    ○矢田部理君 だから、雇用雇用といっても、対応としては無責任じゃありませんか。NATOだってアメリカ労務者の労務費まで負担していることはないんです。今、米軍関係の駐留に日本が出費している費用は三千億近いんですね。大変な金額に今上りつつあるわけですよ、どうもアメリカの話だと、あなた方はぴしっとした対応ができない、追随をし押されてしまう、それにこたえる。その癖を直さないといかぬ。この思いやり予算などというのは、私はもってのほかだというふうに思っておるわけでありますが、その点でこれは明確に反対をしておきたいというふうに考えています。  時間がありますのであと二、三分でやりますが、原子力の問題です。  二つの条約が俎上にのせられているのでありますが、通報と援助と二つありますね。この通報と援助の両条約について両方署名をしておるのに締約は別だという国々が幾つかあるのですが、これはどういうことでしょうか。
  133. 柳井俊二

    政府委員柳井俊二君) お答え申し上げます。  この原子力関係の二条約も、当然のことながら多数国間条約でございます。通常、多数国間条約締結の方法といたしましては、署名に開放すると基本的にこの内容に賛同する国々は署名をする。その上でさらに批准あるいは受諾、加入等の手続をとりまして、最終的にこれらの条約に拘束されるという意思を確定するという順序をとっているわけでございます。  そこで、この条約作成されましたのは昨年の十月でございますが、それと同時に署名のために開放されまして、そのとき、あるいは我が国の場合にはこの三月に署名をいたしましたけれども、それから署名を相当の国がしたわけでございます。その上で、最終的にこの条約に拘束される意思を何らかの形で表明するという手続を現在各国がとりつつあるということでございまして、我が国といたしましては、この締結につきまして国会の御承認をいただけますれば、できるだけ速やかに最終的な締結の手続を完了いたしたいというふうに考えております。
  134. 矢田部理

    ○矢田部理君 聞いているのは長い説明じゃないんだ。二つの条約を両方署名しているのだが、一方は締約し一方は締約していない国が四つ、五つあるんですよ。この違いはどういう理由からきたんですか。簡単に言ってください、時間がないので。
  135. 遠藤哲也

    政府委員(遠藤哲也君) 若干そういう国があるのでございますけれども、その理由は恐らく、これは推測なんでございますけれども、通報条約の方はどちらかといいますと手続条約といいますか、比較的簡単な条約でございます。他方援助条約の方は、特権、免除とか、あるいはそういったような国内法体制との関係がありまして、したがいまして、そういうような観点から若干は通報条約締結援助条約締結との国の数に差があるのではないかと推測いたしております、
  136. 矢田部理

    ○矢田部理君 ちょっとよくわかりませんがわ。  それから韓国の扱いがきのう出ましたが、日本の近辺では台湾も原子炉を持っていますね。これはどういうふうな扱いになりますか。
  137. 遠藤哲也

    政府委員(遠藤哲也君) 台湾はIAEAの加盟国でもございませんですし、したがいまして、台湾をどういうふうに認めるかというのはIAEA自体の問題でございまして、恐らく、これは私の推測でございますけれども、台湾は署各国あるいは締約国になれないというふうに考えております。
  138. 矢田部理

    ○矢田部理君 それから日本にしばしばアメリカの原子力推進の艦船、原子力艦艇が寄港しますが、この日本の寄港中の事故、これはどうなりますか。
  139. 柳井俊二

    政府委員柳井俊二君) 基本的には、原子力事故早期通報に関する条約に直接関係があると思います。  御案内のように、第一条でこの通報条約の適用範囲が定められておるわけでございますが、その第二項に一この通報の対象になる事故、それにかかわる施設及び活動といたしまして、その(a)に、「すべての原子炉」というのがございます。「(所在のいかんを問わない)」ということになっておりますが、原子力潜水艦等の、まあ推進力に恐らく使っていると思いますが、推進力に使っているような原子炉の事故でございますと、軍事的なものも含めてこの通報条約対象になっているわけでございます。
  140. 矢田部理

    ○矢田部理君 原子力潜水艦そのものはなるんだが、「国境を越えて」というもう一つの定義があるでしょう。そうすると、日本の領海内とか港内で起こした事故はどうなるのか。  それから時間がありませんからまとめて聞いてしまいますと、公海ですね。領海じゃなくて公海で起こした事故で、それが日本の領域内あるいは領海内に必ずしも波及しないが、大きな広がりをもって漁業とか等々に非常に影響が出てくるというような事故の扱いはどうなりますか。
  141. 柳井俊二

    政府委員柳井俊二君) この条約趣旨は、通報の責任を負っております国が、事故の影響を受ける他国に対しましてできるだけ早期に事故の発生等を通報する、そのことによりまして事故の影響を最小のものにとどめるということにあるわけでございます。したがいまして、事故の発生地のいかんを問わず、他国の領域に放射線の影響を及ぼす等の場合におきましては、当該他国に対して通報の義務が生じるというふうに考えております。  この条約規定自体におきましては、「国境を越える」というような表現をとっております。これは一番典型的な場合といたしまして、陸上の国境を越えるという場合を念頭に置いて規定したものでございますが、同時にこの一条一項は、「他国に対し放射線安全に関する影響を及ぼし得るような国境を越える放出」というようなことも言っておりまして、要するに他国に影響がある場合というのを対象にしているわけでございます。そこで海の上で起こった事故につきましても、これが例えば公海上で事故が起こりまして、その影響が我が国に及んでくるという場合におきましては、この原子炉を管轄している、あるいは管理をしている国が我が国に通報してくる義務があるというふうに考えております。
  142. 矢田部理

    ○矢田部理君 ちょっと一点だけ確認的に伺いたいんですが、どうも今の設例に的確に答えていないように思うんですわ。  きのうも出ましたが、韓国が入っていませんでしょう。それから台湾はこれは問題外と。それから日本にしばしば訪れる原子力艦船は、どうも国境を越えて云々ということじゃなくて、領海内の事故だから果たしてそうなのかどうか。それから、公海で起こしてこっちの領域内に影響がない、しかし漁業その他には大変響きが出るというような場合に、びしっとそこら辺が押さえ切れているのかどうか。ひょっとしたらしり抜けで、余り日本の周辺においては実効性に乏しいのではないか、ソビエトの原子炉なども主として西側の方に多いわけでありますが。
  143. 遠藤哲也

    政府委員(遠藤哲也君) まず台湾でございますけれども、台湾につきましてはそういう関係でございますけれども、これは何らかの形での処理がなされることを期待しているわけでございます。これは民間ベースなり何なりを考え、期待しているわけでございます。それから韓国につきましては、近い将来に入ることを私ども期待しておりますし、韓国の担当大臣もそのように申しております。  それから、確かに先生おっしゃいますようにきちっとなっていない点はあるのでございますけれども、しかしながら、なるべく私どもは条約の義務、正確に見れば必ずしも義務でなくても、これが拡大解釈といいますか、甘い解釈といいますか、他国に影響を及ぼすようなものにつきましては、幅広くというか、通報されることを期待しております。これは実施の過程で、こういうことがなければいいのでございますけれども、実施の過程でそういうふうにやっていき、なおそのことをIAEAにも要請してまいりたい、こういうふうに思っております。
  144. 矢田部理

    ○矢田部理君 時間が来ましたので、他もありますが、この程度で終わります。
  145. 宮澤弘

    委員長宮澤弘君) 午前の質疑はこの程度とし、午後一時まで休憩いたします。    正午休憩      ―――――・―――――    午後一時四分開会
  146. 宮澤弘

    委員長宮澤弘君) ただいまから外務委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  147. 最上進

    ○最上進君 第二十六回のOECD閣僚会議も無事に終えたようでございます。倉成外務大臣におかれましては大変御活躍をいただきました。お疲れの中また引き続いて国会でのお仕事ということで、心から敬意を表する次第でございます。  OECDにおきまして論議をされました問題点は、集約いたしまして先ほど大臣からお話がございましたけれども、マクロ経済と農業問題が焦点であったというふうに理解をさせていただいているわけでございます。マクロ経済におきましては、日米独の三カ国の経済政策に焦点が絞られた感があったようでございますけれども、各国のマクロ政策上の役割分担が明確化した、そういう意味で、とりわけアメリカに対しましては財政赤字の削減、日本とドイツに対しましては財政出動で内需拡大に努めるべきである、ほぼそういう結論に達したというふうに理解をいたしているわけでございます。これら役割分担と協調路線は、今後やはりサミットに当然つながっていくというふうに私どもは考えているわけでございます。  そこで、総理が提唱いたしております緊急経済対策におきまして、けさ経済閣僚会議が行われたというふうに伺っておりますけれども、どのようなものであり、その会議におきまして外務大臣としてどのような御主張をされたか、まずお伺いをいたします。
  148. 倉成正

    ○国務大臣(倉成正君) ただいまお話しのように、OECDの閣僚理事会ではしばしばジャパン、ジャパンという名前が出てまいりまして、やはり日本に対する風当たりが非常に強いものということをひしひしと肌で感じた次第でございます。コミュニケは、ただいま委員お話しのように、アメリカについては財政赤字の削減、競争力の強化、ドイツにおいても財政出動というか、減税を中心とする、そういうものが盛られたわけでございますけれども、やはり日本としては一番その中でも風当たりが強いというのが現実でございます。これは御承知のとおり、経常収支の大幅な黒字というのがその背景、また貿易収支の黒字というのが背景にあると思うわけでございます。  そこで、いろいろ議論をすると、この日本の経常収支の黒字、貿易収支の黒字の原因がどこにあるか。日本だけの責任ではないという理屈も理論的には成り立ちますけれども、しかし現実の問題としてこういう状況の中で自由貿易体制の恩恵を一番受けておるのは日本である。すなわち資源もほとんどないこの日本がこれだけ発展しているというのは、ガットの自由貿易体制があるからこういうことになっておるわけでございますから、やはりこの体制を守って保護主義を防圧していかなきゃならない。そのためにはこれに対する誠意ある対応が必要であるということで、現在の状況は私はまさに緊急事態だというふうに思います。従来の考え方ではなかなか対処し得ない感じを率直にそういう会議に出て考えておる次第でございます。したがって、各国にもそれぞれの責任分担を求めるとともに、我が国もひとつ今回の対策では思い切った内容で、かつ対外的にわかりやすく説明し得るものでなければならないと思っております。  そこできょうは、緊急経済対策の主要検討科目について、五兆円を上回る財政措置の内容はどういうものか、あるいはいろいろな対外政策はどういうものかといういろんな各項目を一応列挙して企画庁長官から御説明がありまして、それに対しまして各閣僚の皆さんあるいは党の関係の方が議論したということで、非常に活発な御意見がございました。それで私は、こういう緊急事態であるからまず、他の各閣僚の発言を受けまして、やはり内需拡大については実質的なものにすることが必要であるということで最後の締めくくりの発言をしたわけでございますが、我が方の基本的な考え方についてもし御質疑があれば、この閣僚会議ではそこまで詳しいことを申しておりませんけれども、御報告を申し上げたいと思います。
  149. 最上進

    ○最上進君 内需拡大の内容につきましては、実質的なものであるべきであるという結論として御主張されたということでございますが、巷間伝えられておりますとおりに、五兆円を上回る、いわゆる五兆円以上の財政措置をとるということでございますが、サミットの場におきまして一番留意しなければならない点は、先般もございましたけれども、五兆円以上ということが水増しであるというような国際的批判を受けないような、やる以上は実質的に中身の濃いものに私はやはりしていかなければならないというふうに考えているわけでございます。  五兆円のその内訳もいろいろ伝えられているわけでございますけれども、外務大臣は経企庁長官もおやりになられたわけでございますから、この点はエキスパートでいらっしゃいます。とりわけ、真水という言葉が出てきておりますけれども、この真水と減税で五兆円以上であるべきであるという意見が大勢を占めてきているようでございますけれども、この五兆円を上回る財政措置の内容につきまして、外務大臣としての御所見を承りたいと思います。
  150. 倉成正

    ○国務大臣(倉成正君) この点については、最終的に経済企画庁を中心に各省と少し、公共事業をその中でどのくらいにするのか、あるいは住宅関係についての融資をどうするのかとか、いろんな問題を今詰めている最中でございますので、細部はちょっとまだ各省それぞれ、大蔵省、経済企画庁を中心にいろいろ各省と問題を詰めている段階だと思いますが、今ちょうど最上委員がお話しのとおり、やはり水増しであってはならない。昨年九月のいわゆる総合対策で三兆六千億というものの中身でいろいろ批判を受けたようなことのないようにするという点が大きな主眼点ではないだろうか思っておる次第でございます。  なお、私どもとしましては、やはり対外的な配慮と申しますか、輸入の拡大ということについても、外国製品の調達拡大のために臨時特例の枠として千五百億円を特掲して、かつこれを補正予算に計上することを求めたいと思っております。また、三年間で二百億ドル以上途上国へ還流する旨の資金還流措置についても、各国の外務大臣あるいは関係大臣来られますと、よくこれを知っておりまして、自分の方にはどのくらいくれるのかというふうな、まだ最終的に決まらない段階でいろいろそういう御要望もあるわけでございますが、これはやはり早急に資金還流措置を決めまして、またその際、外交的に効果の大きい二国間での還流も重要でありますし、海外経済協力基金の借款を拡大していくことも大切であると思います。  特に、最近、アフリカ諸国と後発の発展途上国については、資金還流計画だけでは対応し得ない、したがってノンプロジェクト型の贈与の拡大という特別な配慮が必要と考えておりまして、鋭意これらの問題を三年間ぐらいの計画でこういうことをやるという要求を今検討させて、折衝しておるところでございます。
  151. 最上進

    ○最上進君 きょうの場合の会議で建設国債増発の一兆円の話は出ましたでしょうか。
  152. 倉成正

    ○国務大臣(倉成正君) 一部の方からそういう御意見は出ました。
  153. 最上進

    ○最上進君 私は、ただいま大臣からの御説明で大体理解できるわけでございますけれども、せっかくの内需拡大策でございますから、これはもう外務大臣として、対外的にこれだけ大問題になっておりますだけに、ひとつ主張すべきところは遠慮しないで私は主張していただきたいと思っているわけでございます。  特に、水増し論の話がございましたけれども、いわゆる国庫債務負担行為あるいはまた住宅金融公庫制度融資に伴う住宅建設、こういうようなものの推計額を少なくとも含めるようなことのないような、そういうやはり五兆円以上でなくてはならないと思っておりますので、こうした点につきましてもぜひひとつ御留意をいただきたいと思っております。  また、政府調達の問題でございますけれども、これも臨時の特別ということで千五百億円が必要になってくるのではないかということが巷間伝えられているわけでございます。これは当然補正の問題が絡んでまいりますけれども、この点につきましてはどういうふうにお考えであるか、お伺いをしておきたいと思います。
  154. 倉成正

    ○国務大臣(倉成正君) ただいまお話しのとおり、千五百億円程度の臨時の特別の措置というのが必要だと考えておる次第でございまして、これは補正予算に計上することがぜひとも必要であると考えておる次第でございます。
  155. 最上進

    ○最上進君 そこで、やはり新聞発表の方が早いようでございますが、総理が専用機を買う問題あるいはまたコミューターの問題、既に報道されているわけでございます。こうした外国製品の調達はいろいろ各省庁から上がってくるわけでございますけれども、この政府専用機の問題でパイロットの問題をどうするかということが大変話題になっているわけでございますが、これはどういうふうに御処置をされるお考えであるか、お伺いをしておきたいと思います。
  156. 倉成正

    ○国務大臣(倉成正君) 政府専用機の問題についていろいろ議論されておることは承知しておりますけれども、その管理をどうするかとかその他の問題については、またどういう形にするかということについては、細部はまだ決まっていないというのが実情でございます。承知をいたしておりません。
  157. 最上進

    ○最上進君 内需拡大策にいたしましても、政府調達の問題にいたしましても、国際社会への貢献の問題にいたしましても、どれをとりましても、これは今度のサミットで重要課題として取り上げられるであろうと思っているわけでございます。したがいまして、二十九日には緊急経済対策がまとまるわけでございますけれども、どうぞひとつ万遺漏なきよう御処置を賜りますようにお願いをしておきたいと思います。  次に、在日米軍労務費の問題に関連をしてお伺いをしてまいりたいと思うのでございますが、戦後四十二年経過をいたしまして、事あるごとに最近では日本に対する圧力、あるいはまた非難とも聞こえるような声が聞こえてまいります。それはやはりそれだけ我が国経済的に繁栄をしたということのあかしてございまして、今日に至るまでにはさまざまな要因があったというふうに考えております。  そこでまず、今日の日本の繁栄というものは、過去を顧みながら、その最大の要因というものは一体何であったか、これをひとつ外務大臣にお伺いをしたいと思います。
  158. 倉成正

    ○国務大臣(倉成正君) 資源小国、また軍事小国保である日本で、ただの一度も外敵の侵入もなく、そしてまた世界の一割国家になったというのは、先ほどから申し上げました自由貿易体制、この中で日本最大の恩恵を受けてきた。もちろんこれに対応する国民の一生懸命な努力というのがあったことは事実でございますけれども、その基本はやっぱり自由貿易体制にあったと思います。  それからもう一点は、世界で戦後百五十以上、数え上げるとそれ以上の戦争とか内乱とかあるいは反乱とか、いろいろありましょうからそれを正確な定義づけはできませんけれども、至るところでそういうものが起こっているにもかかわらず、日本の場合には国が安全に保たれた。その基本は日米安保条約にあったというふうに考える次第でございます。
  159. 最上進

    ○最上進君 大臣御指摘のとおりに、今日の日本の繁栄の過程の中では、自由貿易体制をとってきた、あるいはまた日米安保条約というものが大変大きな役割を果たしてきたという御指摘は私も実は同感でございます。やはり先輩であります日本人の勤勉性、あるいはまた政治というものが比較的安定をしてきた。これは保守政権を中心にいたしまして比較的安定をしてきた。こうした要素に加えまして、何といいましても、日米安保条約中心にいたしましたアメリカの協力というものがあったということは否定できない事実であると私は実は思っているわけでございます。しかしながら、アメリカと聞いただけで拒否反応を起こされる人々もいらっしゃるわけでございます。私は残念に思っております。  今回のペルシャ湾のスターク号事件に見ますとおりに、自国のためというよりも、世界の平和とかあるいはまた世界の安定ということのためにみずからの国民の血を流し、あるいは命を失ってまで重責を果たさんとするそのアメリカの姿勢というものは、私は高く評価されてしかるべきであると思っております。米軍将兵もまた世界各地で、大変厳しい条件のもとで相当なリスクを負いながら任務を遂行していることも事実でございます。日本はといえば、他国からの軍事力を背景としたような政治的圧力を受けることもなく今日の繁栄を築いてきたと思っております。この裏にはやはり米国の努力があることを忘れてはならない。しかし、スターク号事件を契機にいたしまして米国内におきましては、日本や欧州に対しましてより大きな負担を求める声がやはり高まりつつあるというふうに伺っております。これはもう当然のことであると思います。  我が国は、御承知のとおり、現憲法下におきまして専守防衛に徹しておりますだけに、世界平和に対しまして防衛の分野でなし得るところおのずと限度があるわけでございます。それだけに我が国といたしまして、その分だけ我が国として貢献を行える分野で大きな努力をする必要性というものが当然西側の一員として、果たさなければならない責任としてあると思うわけでございます。  そういう意味で、今回の駐留米軍経費負担の問題、この措置によりましてどの程度米国の負担が軽減をされるのか、この点についてひとつ御説明をいただきたいと思います。
  160. 藤井宏昭

    政府委員藤井宏昭君) 一昨年の円高を契機にいたしまして米軍は、いろいろな時期によって、レートによって違いますけれども、百六十円程度といたしますと約二億ドルの、ドルにいたしますと、円は変わらないのにふえておるわけでございます。今回の措置では百六十五億円を計上いたしまして、六十二年度その一部に充当するということを考えておる次第でございます。
  161. 最上進

    ○最上進君 この特別協定の有効期間後、これが終了した後これはどういうふうにしていかれる考えですか。
  162. 藤井宏昭

    政府委員藤井宏昭君) この特別協定は、円高等の経済情勢変化、これに基づきましての対応策でございまして、五年ということに時限を限りましてお願い申し上げておるわけでございます。その後の状況につきましては、現時点では何とも我々として判断をしかねるというところでございます。
  163. 最上進

    ○最上進君 この措置に対するアメリカ政府の評価をお伺いをしたいと思います。
  164. 藤井宏昭

    政府委員藤井宏昭君) 本件の措置我が国が自主的にこれを行ったものでございますが、アメリカ政府はこれを日本が自主的に行ったということで大変高く評価しておりまして、先般の総理の訪米の際にも、ワインバーガー国防長官が総理及び外務大臣にそれぞれ米国政府としてはこの措置に感謝しているということを述べております。
  165. 最上進

    ○最上進君 次に、日ソ文化協定の問題についてお伺いをしたいと思うのでございます。  日ソ間に横たわります大きな課題である領土問題、こうした問題がありますだけに、この日ソ文化協定を結ぶことによって日ソ間の親善あるいはまた日ソ間の緊密さを増すという意味で、この日ソ文化協定締結というものは大変高く評価されていいのではないかと思うわけでございますけれども、この協定を結ぶことによりましてソ連との文化関係というものが一体どういうふうに変わっていくのか、この点について御説明をいただきたいと思います。
  166. 倉成正

    ○国務大臣(倉成正君) まあ文化とか芸術とかいうものは、委員御承知のとおり、国境を越えて人類の共通の財産だと思います。そういう意味におきまして、我が国としては、体制を異にはいたしておりますけれども、日ソ間で文化協定締結することによりまして、両国間の文化交流を相互主義に基づく拡大均衡という方向に持っていきたいと思っておる次第でございまして、隣国たる両国の国民間の相互理解を増進させていきたいと考えておるわけでございます。  具体的には、日ソ文化交流委員会等の場を通じソ連側とも十分協議を行いながら各種の人物の交流、展示会、演奏会等の催し物、テレビ、ラジオ出演等、本協定に盛られた交流事業を積極的に実施していく考えでございます。六月からは実は歌舞伎が歌右衛門さんを中心に一カ月ほどモスクワとかレニングラード等で公演をいたします。来年の三月には恐らくソビエトの方からは芸術座が日本の方に来るというようなことで、そういうものを少し活発にこれから、そのほか展示会であるとかあるいは音楽会であるとかいろいろございますけれども、やってまいりたいと思っておる次第でございます。
  167. 最上進

    ○最上進君 文化、芸術あるいはまた学問等の交流が一層盛んになっていくわけでございますけれども、こうしたやはり人的な交流も含めてさらに交流が深まるということ、大変すばらしいことだというふうに理解をいたしております。  かつてシェワルナゼ外相が日本におみえになったときに私は、人材の交流、特に次代を担う青少年の交流をすべきでないかということを申し出ましたら、シェワルナゼ外相は大変いいことであるからぜひ推進しようじゃないかという実はお言葉をいただいたわけでございます。したがいまして、一般の青年交流が大変大事だと思っておりますけれども、まず留学生の交換、こちらからも行く、向こうからも日本に来るという留学生の交換の問題につきまして、現段階ではこうしたことが行われていないようでございますが、きょうは文部省からもお見えになっているようでございますので、ひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  168. 雨宮忠

    説明員(雨宮忠君) 先生ただいま御指摘のように、我が国とソ連との間におきましては、従来、日本学術振興会とソ連の科学アカデミーというような機関間での学者、研究者レベルの交換はあったわけでございますが、いわゆる学生のレベルにおきます交流は、一、二の私立大学と向こうの大学との間で交流が行われているという例外ございますが、ほとんど行われてきていないというのが実情でございます。  これにつきましては、双方の関心の度合いということもあったかとも思いますし、また他の国と比べまして個人が直接向こうの大学に応募して自由に受け入れられるという仕組みがなかなかとりにくいという状況もあったかと思うわけでございますが、ソ連側におきましても、また私どもの方にとりましても、双方学生の交流ということにつきましての関心が出てきておる、あるいは高まってきておるというように私ども理解しておるわけでございます。今回の御審議賜っております文化交流協定のことを契機にいたしまして、双方の交流ということが円滑に今後いくことができるように必要な諸準備を進めてまいりたいというように考えておるところでございます。
  169. 最上進

    ○最上進君 ぜひこの点は実現できますように推進方をお願いをしておきたいと思います。  きょうはまだ農業問題とか留学生の問題とかいろいろ質問を用意いたしまして、農林省の方にも、またほかの省庁の方にもお見えをいただいているわけでございますが、時間が参りましたので、以上をもって打ち切らせていただきたいと思います。
  170. 広中和歌子

    広中和歌子君 まず、在日米軍労務費特別協定について、公明党の立場から改めてまた御質問させていただきます。  日米安保条約第六条に基づく地位協定の第二十四条では、在日米軍を維持するために伴う経費は、原則として米側負担日本には負担をかけないと規定されております。今回のこの協定は、この条項について特別措置ということでございますけれども、内容的に見て事実上の地位協定の改定ということになるのではないかと思いますが、いかがでございましょうか。
  171. 藤井宏昭

    政府委員藤井宏昭君) ただいまの点につきましては、けさほども本委員会におきまして御説明さしていただいたところでございますけれども、地位協定二十四条一項、二項の解釈といたしまして、政府といたしましては、昭和五十三年以降、米軍が駐留するに直接必要な経費というもの以外につきましては、労務費につきまして日本側が負担し得るものがあるということで、その解釈上、一部のものにつきましては日本側で手当てしてまいったわけでございます。それがいわゆる思いやりということでございます。  今回は、その解釈では不可能であるということで地位協定二十四条の特例としての取り決めを御審議いただいているわけでございますが、地位協定二十四条の一項、二項の基本的――基本的と申しますか、考え方そのものは全くこれは変わらない。ただ、時限を限りまして五年間特例的に、暫定的、限定的に特別措置を行うということでございまして、地位協定のそのものの改正ということではないということでございます。その考え方も、地位協定の二十四条一項、二項の、政府が五十三年、五十四年当時から解釈してきております考え方の延長線上にあると申しますか、それと基本的には相反するものではないというのが我々政府の考え方でございます。
  172. 広中和歌子

    広中和歌子君 この協定の効力存在期間は一九九二年三月三十一日までとなっており、一応五年間でございます。日米経済関係の現状や今後の展望から見ましても、この五年間でこうした枠組みが解消されるようなことにはならないのではないか、そういうふうに恐れるわけでございますけれども、五年後には再び継続ということになるのではないか、お伺いいたします。
  173. 藤井宏昭

    政府委員藤井宏昭君) この協定は五年間の時限協定でございまして、この協定が取り組んでおります問題は、一昨年の九月以降の急激な円高等によります経済情勢変化ということ、そのために在日米軍労務者雇用に不安定が生じている、この問題にどう対処するかということでございます。その観点から、円高といういわば一時的な現象、それからさらに雇用というある程度長期を必要とする問題、この問題を総合的に勘案いたしまして五年間の暫定ということで考えたわけでございまして、あくまでこの協定の考え方は五年間を対象にするということでございます。  その後いかに対処すべきかということについては、この協定自身を今御審議願っている段階におきまして、政府として特にその後のことについてとやかく申すべき立場にないというふうに感ずる次第でございます。
  174. 広中和歌子

    広中和歌子君 くどいようでございますけれども、もう一度確かめるために質問させていただきます。  先ほど松前委員の御質問に対しましては、一応五年間で終わるものというふうなお答えをなさいましたのですけれども、この五年間というのは一応ということなのか、五年以上は絶対に行わないことなのか、もう一度明らかにしていただきたいと思います。
  175. 藤井宏昭

    政府委員藤井宏昭君) 正確に申し上げますと、この協定は五年間で確実に終わるものでございます。そういう時限協定でございます。五年以降新しい協定が必要になるかどうか云々という問題につきまして、これは我々としてとやかく申すべきでないということでございます。
  176. 広中和歌子

    広中和歌子君 それから、今年度の予算として計上されております百六十五億円でございますけれども、これとGNP一%突破とのかかわりというものはあるのでございましょうか。
  177. 藤井宏昭

    政府委員藤井宏昭君) いわゆるGNP一%枠の突破ということでございますが、これは、昨年予算を編成いたします際に、厳しい財政事情のもとで国のほかの施策との調和等を図りながら、円高とか油の価格の低下などを踏まえて全体の規模の圧縮に努め、同時に中期防衛力整備計画の着実な実施を図るということと、そのぎりぎりの接点を探って、その結果前年度比五・二%増、三兆五千百七十四億円という結論を得たというふうに承知しております。  したがいまして、その内訳にはいろいろなものがあるわけでございまして、本協定でお願いいたしております。その関係での百六十五億円というものは、この三兆五千百七十四億円の一部ではございますけれども、このために一%突破したとか、そういう直接の関係はないわけでございます。
  178. 広中和歌子

    広中和歌子君 米軍はNATOを初め世界の各地で基地を持っておりまして駐留しているわけですけれども、この種の経費を現地に、相手国に負担させるということはあるのでございましょうか。
  179. 藤井宏昭

    政府委員藤井宏昭君) 米軍は世界に約百三十の国及び地域に基地を持っております。いわゆる施設区域を持っておるわけでございまして、正確に申しますと駐留しておるわけでございます。その駐留の経費がどのように分担されているかというのは国によって千差万別でございます。したがいまして、一概に申し上げることは不可能かと存じます。
  180. 広中和歌子

    広中和歌子君 日本だけが例外ではないと、つまり、この協定が始まりましたら例外ではないということでございますか。
  181. 藤井宏昭

    政府委員藤井宏昭君) 日本だけが例外であるかどうか、百三十分部に当たってみないと正確には申し上げられません。
  182. 広中和歌子

    広中和歌子君 唯一の例外という意味でございますか。
  183. 藤井宏昭

    政府委員藤井宏昭君) この種の費用分担というのは、例えばNATOにおきましても完全に公開していないところが多うございます。百三十の国及び地域につきまして全部調べておるわけでございませんので、それから比較の対象は、労務費と申しましても、一体何をどこに入れているかということがございまして、その点は日本だけが唯一の例外であるとかないとかいうことは断言できないというのが正確なところでございます。
  184. 広中和歌子

    広中和歌子君 日本の場合はこの協定で非常にはっきりガラス張りにしていらっしゃるわけでございますけれども、よその国はこういうことはないのでございましょうか。
  185. 藤井宏昭

    政府委員藤井宏昭君) 必ずしもそうではございません。
  186. 広中和歌子

    広中和歌子君 本協定がなければ、そして承認されなければ、駐留軍労務者の合理化が必要であるというふうな考え方がされているわけでございますけれども、この点について政府はどういうふうに認識していらっしゃいますか。
  187. 宍倉宗夫

    政府委員(宍倉宗夫君) ちょっと最後のところ……。
  188. 広中和歌子

    広中和歌子君 この協定がなければ、駐留軍労務者の合理化が必要である、必至である、そういうふうに言われておりますけれども、この点についての政府の御見解。
  189. 宍倉宗夫

    政府委員(宍倉宗夫君) 先ほども申し上げましたが、在日米軍が最近の経済情勢変化によりまして非常に財政的に逼迫している状況にございます。したがいまして、昨年の五月にはアメリカの陸軍が、六十二年の九月でございますからことしの九月末までに百五十人人員整理をしたい、こういう申し入れがございました。六十一年の九月には米海軍が同じくことしの九月末までに百人の人員整理をしたいという申し入れがございました。また、昨年の秋に在日米軍司令部から、今常用で雇っております雇用制度に、新しく時間給で、パートで臨時雇用をするという制度を導入したいという申し入れがございました。  前二者の百五十人及び百人の人員削減、整理につきましては、その後退職希望者をとるとか、定年で充足していくとかいろいろな工夫をいたしまして、実質的な生首が飛ぶというようなことにならずにどうやら済むのではないだろうかというような見込みになっておりますが、いずれにいたしましても、そういったことでの合理化というのは米軍にとって必要に迫られているわけでございます。そういった状況でこの協定締結いたしまして、六十二年度の予算で百六十五億円の予算を計上してお認めいただいたわけでございます。  これで全部済んですべての合理化がなくなるかと申しますと、米軍といたしましては、すべて済むわけでございませんものですから、なお合理化をしなければならない必要性はあるんだろうと思っております。ただ、そのことにつきましては、日本の今の経済情勢雇用情勢からいたしまして、大幅な米軍従業員の解雇というようなことのないように最大限の努力をしてもらうように米軍には申し入れをしておりますし、それから米軍の方といたしましても、そのことにつきましては事情の許す限り最大限努力いたしましょうと、こう言っております。  先ほど申しそびれましたが、この協定の本文のところにも、この協定を結ぶことによりまして雇用の安定を図り、ひいては在日米軍の効果的な活動を確保するということがうたわれております。そういったことで、今後、まだ問題がすべて解決しているとは思っておりませんが、状況といたしましては、米国側及び私どもともども努力いたしまして、よくその点については話し合い、調整を図っていきたいと存じております。
  190. 広中和歌子

    広中和歌子君 雇用の合理化ということでございますけれども、これは経済情勢とか円高とは無関係にどのような組織でも行われるというふうに考えてよろしいのではございませんでしょうか。
  191. 宍倉宗夫

    政府委員(宍倉宗夫君) 原則的には私もそのとおりだと思っております。常に合理化という問題は、何も経済情勢変化し、円高があるかないかにかかわらず合理的な雇用をやっていき、そして労務費につきましても、例えば米軍が労務費の全体的な支出を少なくしたいというところは理解できないわけではございません。しかしながら、今の日本経済情勢からいたしますと、さなきだに雇用については慎重にともかく考えなければならないときでございますから、私どもといたしましては、米軍の基本的な立場については理解はするけれども、しかしこういった時期であるから慎重にやってくれと、こういうことを申し入れているわけでございます。
  192. 広中和歌子

    広中和歌子君 これは全くの想像でございますけれども、米軍側といたしましては、海外の駐留経費の削減、そういう方向を意図しているのではないか、ですからこれがそうした傾向のいわば始まりではないか、そのようにとれば、単なる地位協定を変えるとかそういった問題ではなくなるのではないかと心配するわけでございます。今後、日米安全保障条約に基づく米軍の駐留について、こうした経費だけでなく他の分野にも負担が広がりはしないか。そのことについてお伺いをいたします。
  193. 藤井宏昭

    政府委員藤井宏昭君) 米軍の経費の削減ということに本件が関係しているわけではないということは申し上げられるかと思います。それは、先ほどちょっと申し上げましたことでございますけれども、昭和六十一年度におきますアメリカの駐留軍労務者の労務費負担推定額は約九百五十億円でございます。この同じ九百五十億円を支払いますのに、一昨年の秋のレート二百四十四円でございますと三・九億ドルで済んだわけでございますが、これが百六十二円ということで計算いたしますと、二億ドルふえた五・九億ドル。それでも同じ九百五十億円というものを支払うということでございます。この数字に端的にあらわれておりますように、アメリカとしては予算を減らすわけではないけれども、しかし予算が余計必要になってしまっている。同じ金額の支払い、これは円で行うわけでございます、ということがこの問題の最大の問題でございます。今後長期的にアメリカが海外の駐留軍経費をどのようにしていくかということは、またおのずから将来の問題としてあるかと思いますけれども、この取り決めを結ぶ背景といたしまして、アメリカが海外の駐留軍経費を減らしていくということでは必ずしもございません。  もう一つの今の御指摘の点でございますけれども、それ以外の分野で日本がどんどん負担していくのではないかということでございますけれども、日本負担し得るものにはおのずから地位協定によりまして区別がございます。もちろん、施設区域につきましては日本政府負担が近年増大しておることは事実でございますけれども、これは当然日本政府として地位協定にのっとりまして、さらに個々の案件に即しまして、その案件事案によりまして決定しているものでございまして、一般的な意味で、日本政府がこれからアメリカの駐留軍の負担を大幅に増大していくということにつながるものではないと思います。
  194. 広中和歌子

    広中和歌子君 そのような御質問をいたしましたのは、ペルシャ湾の最近の動きについてなんでございますけれども、ペルシャ湾を航行中にイラク軍機のミサイル攻撃を受けて三十七人の死者を出したアメリカのフリゲート艦スタークの被弾問題がございます。これをきっかけにいたしましてアメリカの議会などでは、ともかくなぜペルシャ湾の防衛にアメリカだけがこのように人命を賭してまでしなくちゃならないのかといったようなこと、実際にECとか日本がこうした地域から非常な恩恵を受けている以上負担をしなければならないんではないか、このような世論が高まりつつある。そういう中で、アメリカ経済事情を考えますと、そういったことがだんだん前面に出てくるんではないかと恐れるわけでございます。  こうした動きに対しまして、恐らく今度のベネチア・サミットにおいてもこういう問題が提出されるんじゃないかと思いますけれども、日本側の対応としてはどのようなことを考えていらっしゃいますんでしょうか、外務大臣
  195. 倉成正

    ○国務大臣(倉成正君) ただいま広中委員のお話しの米フリゲート艦スターク号の被弾事故につきましては、私もしばしばテレビで追悼の模様等を拝見しまして大変痛ましいことだと思っておりまして、この地域のペルシャ湾の安全のために、また世界の平和と安全のために任務遂行中の同艦の乗組員に対して、またその家族の方たちに対しまして心から哀悼の意を表したいと思います。  御案内のとおり、我が国の輸入しております石油の六割近くがペルシャ湾からホルムズ海峡を通ってきておるわけでございます。また西欧諸国もかなりの量がこのペルシャ湾から来ているということでございます。したがって、そのような議論がアメリカの議会等で起こってくるということは、私はこれは当然そういう議論は起こり得ると思っております。しかし、これをどういう形で考えていくかということになりますと、ペルシャ湾の安全航行の問題というのはやはり西側全体の安全保障にかかわる基本的な問題であるということで、アメリカは引き続きこの問題について関係国と連携をとりながらやっていこうという姿勢だと承知をしております。しかし、この安全航行について日本がどう貢献し得るかという問題については恐らくサミットでもあるいは議論になるかもしれませんけれども、我が国の憲法、またそういう与えられた枠内で、やはりこういうペルシャ湾の安全航行についてとり得るあらゆる外交努力を含めて考えていかなきゃならないと思っておる次第でございます。
  196. 広中和歌子

    広中和歌子君 前回でございましたか、このペルシャ湾で数々のタンカーなどが被弾を受けている中で日本の船というのは最近までほとんど受けていなかったわけでございますけれども、その安全航行はアメリカに負うところが多かったのか、それとも日本独自の、前回外務大臣がおっしゃいましたような、さまざまな外交ルートを通じての手を打っていらしたその結果であるというふうにお思いでいらっしゃいますか。
  197. 倉成正

    ○国務大臣(倉成正君) ことしになりましては、先般の秀都丸が二隻目でございます、日本の国旗を掲げている船は二隻目でございますけれども、御案内のとおり、船籍をリベリア船その他いろいろ、船籍は日本ではございませんけれども、しかし事実上日本のタンカーというか、日本の乗組員が乗っておりますタンカーがあることは御承知のとおりでございます。これらの被弾はかなりのものがございまして、船主協会からもあるいは海員組合の方々からも私ども陳情をしばしば受けておりまして、陳情を受けるまでもなく我が国の生命線とも言うべきこのペルシャ湾の安全航行の問題ですから、イラン、イラク双方に対しても機会あるごとにこの安全航行の問題については申し入れをし、また国連におきましても決議が行われました。  また、先般デクエヤル国連事務総長さんが来られましたとき、ちょうどたまたまイランの外務次官も見えておりましたので、デクエヤル国連事務総長に私がごあっせん申しまして、国連事務総長とイランの外務次官との会談も実現したわけでございます。私はデクエヤルさんにも申しましたし、またイランの外務次官にもこの安全航行の問題について、まあイランの次官は自分の国がこの秀都丸をということは申しませんけれども、その原因はいずれにせよひとつ十分調査をして御報告をいただきたい、我々国民として重大な関心を持っているということと、それからもう一つは、やはりその根源はイラン・イラク戦争にある、これが続く限りにおいては、もう双方必死になってなりふり構わずいろいろやっておるわけでございますから、なかなか一片の国連決議あるいはその他でこれがとまるものではないというのが現実の姿だと思います。  私もカフジに一週間ぐらいおりまして、ペルシャ湾のことはよく承知しておりますけれども、そういうことを考えますと、これはやっぱり国際的な世論を起こし、そしてみんなで力を合わせてこういうことのないようにペルシャ湾の安全航行の問題と取り組んでいかなきゃならないと考えておる次第でございます。
  198. 広中和歌子

    広中和歌子君 世論で解決すればよろしいのでございますけれども、実際にアメリカの軍艦がそちらに存在しているということ、見張っているということ、そういうことが非常に効果的に働いているのかどうか。そのことについての評価をお伺いいたします。
  199. 倉成正

    ○国務大臣(倉成正君) 今広中委員お話しでございますが、これはアメリカのみならずソ連の関係も御案内のとおりここにプレゼンスを示しておるわけでございますので、米ソ超大国がこのペルシャ湾の安全航行については関心を持っておるということは事実でございます。しかしそのほかのヨーロッパの諸国についてもやはり同じ関心を持っておる。場合によっては何らかの手段でこれについて対抗手段を講じたいというようなことが新聞等でも伝えられておるわけでございます、  私が世論を起こすと申しましたのは、何とかイラン・イラク戦争の終結のために最大のいろいろなあらゆる努力をしていかなきゃならないと思っておるわけでございまして、そのために効果的などういう手段があり得るか。一番いい方法は、もう武器が両方の国に渡らないということが最大のことでしょう。しかし、現在ある武器を取り上げるわけにいきませんから、そうするとまた非常にバランスの問題が出てくるとか、いろいろな問題があるわけでございます、率直に申しまして、私ども真剣にこの問題を考えておりますけれども、これという決め手がまだ実際ないという状況でございますから、今申し上げましたように、イランにとってもイラクにとってもこのような長期の戦争を続けていくということは好ましくない。また、この中東のイラン・イラク戦争が波及するところ非常に大きいわけでございますから、そういう意味で申し上げたわけでございまして、ただもう単に手をこまぬいて外交交渉と世論と申したわけではございません。
  200. 広中和歌子

    広中和歌子君 今度は、日ソ文化協定に絡んでソ連の問題についてお伺いさせていただきたいと思います。  ゴルバチョフ政権以後のソ連につきましてどのような評価をしていらっしゃるのか、倉成外務大臣にお願いします。
  201. 倉成正

    ○国務大臣(倉成正君) これは大変難しい問題でございまして、むしろ広中先生から教えていただくと幸いだと思うのでございますけれども、御案内のとおり、ゴルバチョフ書記長は現在、政治、経済、社会、文化等各分野で立て直し、ペレストロイカ、あるいは透明性、グラスノスチということで大変積極的にいろいろな問題に取り組んでおられるということは承知しておるわけでございます。なお、ゴルバチョフ書記長は、現在の改革路線を社会主義体制の枠内で探求する旨述べておられるわけでございますが、このような政策がどこまで真に実現するかということは、今後ともソ連の内政動向を注意深く見守っていくことが必要じゃないかということでございまして、これがどういう方向に進んでいくかという評価を私がここで申し上げるのはいかがなものだろうかと思います。
  202. 広中和歌子

    広中和歌子君 昨年七月にゴルバチョフ書記長がウラジオストクで演説をなさったわけですけれども、太平洋地域への関心というものが非常に最近高まってきている、特に高まってきているということ、その非常な積極的な姿勢が見られるわけでございますけれども、そのことについて何か対策というものを立てていらっしゃるんですか。
  203. 倉成正

    ○国務大臣(倉成正君) 私は、ソ連の対外政策、今先生お話しのウラジオストク演説、アジア・太平洋国家としての位置づけということで、アジア・太平洋に深い関心を示したということは承知しておりますけれども、私はやはり言葉より具体的行動で判断することが必要じゃないかと思います。  そういう見地から考えますと、現在のところ、ソ連の対日政策というものは実質的な変化はないんじゃないか、そういうふうに実は思っておりまして、この問題、ウラジオストク演説の言葉を今後のソ連がどういう具体的な行動で示すかということを注意深く見守ってまいりたいと思っている次第でございます。
  204. 広中和歌子

    広中和歌子君 今度の文化協定でございますか、それは日本が新しいソ連の動きというものを評価した結果というふうに受け取ってよろしいんでしょうか。
  205. 倉成正

    ○国務大臣(倉成正君) 御承知のとおり、従来も音楽家であるとかあるいはバレリーナであるとか、あるいは日本からも先方にそういう文化関係の方々が行ったり、あるいは小範囲でありますけれども学者間の交流があったりいろいろしておったわけでございますが、協定を相互主義と拡大均衡という原則のもとでひとつやっていこうという一つの基礎をつくったわけでございますので、これは直接ウラジオストク演説との関連で考えたとかいうことでなくて、隣国であるソビエトとやはりこういう交流を進めることが、そしてお互いに知り合うということが大切なことであるという見地からこの文化協定を結んだわけでございます。
  206. 広中和歌子

    広中和歌子君 外交のストラテジーの中で、それでは経済関係についてはどのようにお考えでいらっしゃいますでしょうか。
  207. 倉成正

    ○国務大臣(倉成正君) 今先生のお尋ねはソ連との関係でございますか。
  208. 広中和歌子

    広中和歌子君 はい。
  209. 倉成正

    ○国務大臣(倉成正君) わかりました。  対ソ政策を考える場合に一番基本として我が国政府が今考えておりますのは、やはり隣国であるソビエトとの間に平和条約を結ぶということでございます。  平和条約の要件として最大のものは三つあると思います。戦争の終結と賠償と領土。その前二者は解決しておりますけれども、最大の問題の一つである領土問題、北方領土問題という非常に大きな問題がまだソビエトとの間に解決していないことは御承知のとおりでございます。衆参両院においてしばしば満場一致をもってこの北方領土の返還の国民の悲願を要求する決議をしていただいておるわけでございます。我々はこの国会の総意を受けてこの問題をぜひひとつ解決したい、前進させたいということがやはり前提と申しますか、その背景にあると思います。  したがいまして、それじゃそれが解決しなきゃ何もやらないかというとそうではございませんけれども、経済的なことをいろいろ進めていく上におきましても、領土問題という大きな障害が前に横たわってそれが全然前進しないということになると、おのずから経済問題には、交流には限界があるというか、そういう感じがするわけでございまして、政経分離で、政治は政治、経済経済、どんどんやったらいいではないかという議論もございますけれども、私どもはそういう立場をとっていないということでございます。
  210. 広中和歌子

    広中和歌子君 文化協定の場合には、領土問題は余り考慮に入れていない……。
  211. 倉成正

    ○国務大臣(倉成正君) いろんな環境づくりという面で相互に、いいものはやはりいいわけでございますね、音楽にしましても何にしましても。したがって、いいものはいいということをお互いに体制は違うけれども知り合うということは、やはり双方にとって非常に大事なことじゃないかと思うんです。  実はこれ全然事柄が異なって恐縮でございますが、イギリスの国会議員、私が外務大臣に就任する前ですが、七、八人来られまして、全部ケンブリッジかオックスフォードを出たハイレベルの国会議員の方々でして、日本に何回皆さん来られたことありますかと聞いたら、もうほとんど初めてという方ばかりでしたね。もちろん若い方が多かったわけですが。そこで私が申し上げたのは、私なんかイギリスに余り行っていないけれども、少なくともロンドンには七、八回は行っています、そういうこと考えると、やはり皆さん見ていただかないといけませんよということを申し上げたことを記憶しておりますが、そういう意味での文化交流というのは、お互いに日本というものを知り、またソビエトというものを知る、また環境づくりということには役立つんではないかと思います。
  212. 広中和歌子

    広中和歌子君 環境づくりでございますけれども、例えばアメリカ日本を非常に戦後評価するようになったのは、日本のすばらしいトランジスタだとか壊れない自動車とか、そういうようなことがあったんじゃないかと思います。  いいものはいいとおっしゃいましたけれども、ソ連は最近非常に日本製品への興味を示している。何かエキスポかなんかあったのでございますか、ソ連で。見本市みたいなのがあって、もうひっきりなしに人が来たというようなことがあったわけでございますけれども、品物というのも単に経済的なものだけではなくて、日本製品を通じての文化交流というのもあり得るのではないか。日本も市場拡大ということで数カ所にばかり、自由主義圏の中で非常に困った状況にあるわけでございますから、新たな市場開拓という観点からもソ連にもっと積極的に目を向けてもいいのではないかなというような、素人でございまして大変口幅ったい言い方でございますけれども、そういう趣旨で御質問させていただいているわけです。
  213. 倉成正

    ○国務大臣(倉成正君) ただいまの件は共産圏との経済交流の問題でございますが、現在でもある程度の経済交流は進んでおるわけでございます。しかし、ココムの規制があったり、先ほど申し上げましたように領土問題という大きなとげがまだ残っている段階でそう大きな交流ができないという一つの制約があるわけでございます。一部の方は、そういうこと言わないで経済交流をどんどん進めて、出口論で領土問題は片づけていいじゃないかという御意見の方もございますけれども、日本政府としては政経分離の立場はとらないという考え方を貫いておる次第でございます。
  214. 広中和歌子

    広中和歌子君 合弁事業につきまして具体的にどのようなことが始まっているんでしょうか。
  215. 長谷川和年

    政府委員長谷川和年君) 委員指摘の合弁事業でございますが、合弁事業につきましては、先方で目下関連の法案を制定しまして、内容をこちらの関係者に周知している、こういう段階でございます。実は数週間前に日本で東レ、昔の東洋レーヨン、東レの経営研究所が主催しまして、ソ連の合弁関係者を招待しまして日本側の経済人に対してシンポジウムを開きました。現在はまだそういう段階でございまして、民間の方々の反応も今出つつあるというところでございます。
  216. 広中和歌子

    広中和歌子君 七〇年代でございますか、西ドイツなど非常にソ連と積極的な経済交流をする中で、ソ連から西ヨーロッパ向けの石油のパイプラインを建設して、そして八四年以来それが使われているということでございますけれども、日本とシベリアのシベリアパイプラインなんというようなことは考えられますでしょうか。
  217. 長谷川和年

    政府委員長谷川和年君) 先ほど大臣が御答弁なさいましたが、日本とソ連の経済関係に関しましては、一般的に無原則な政経分離というような方針は政府はとっておりませんで、やはり互恵の見地から広い観点から判断して従来から進めてきている。そういうことでございまして、個別の問題といたしまして、やはりこういった方針でもって今後ともケース・バイ・ケースで進めていきたいと考えております。
  218. 広中和歌子

    広中和歌子君 西ドイツの場合はベルリンが二つに分かれているわけでございますけれども、あちらは違うようなやり方でなさったんじゃないかと思います。  私パイプラインと申しましたのは、多少思いつき的なところもあるわけでございますが、先ほどのお言葉にもございましたように、六〇%の石油をペルシャ湾沿岸諸国に負っているということ、それは大変に危険なことではなかろうか。もっとリスク分散というような観点からいたしましても、さまざまなところに特に石油に関しましてはルートを持っていた方がいいのではないか。そしてまた、日本が石油を輸入いたしましたら、向こうは買うお金があるわけでございますから、やはりこちらが買ってあげなければ向こうはこちらのものを買ってくれない。非常に単純明快なる経済的な考え方で何かこちらからもイニシアチブをとってもおもしろいんじゃないかなんていうふうに思っているのでございますけれども、いかがでございましょうか。
  219. 長谷川和年

    政府委員長谷川和年君) 私、エネルギー関係には専門でないので、果たして正しいかどうかわかりませんけれども、日本は自由主義経済の国でございまして、こういった資源の輸入、あるいは一般に商品の輸出等に関しましては、民間の方がそれぞれ総合的に判断をして、その御判断においてリスクも分散して契約をし、また取引をしているのではないかと、そう思います。
  220. 広中和歌子

    広中和歌子君 ではソ連につきましてはそのくらいで、ただ、私といたしましては、現状にこだわることなく柔軟な姿勢をとっていただければ大変ありがたく思うわけでございます。  それからまた素人の考えで非常にとっぴなことを申し上げて恐縮なんでございますけれども、最近の貿易摩擦を見ておりますと、ともかく日本が一番非難の対象になっているわけでございますけれども、日本だけではなくて、ほかにいわゆるNICSと呼ばれる国々、それも少なくとも対米貿易黒字国という点では非常に目立っているわけでございます。  現在の段階におきましては、日本はアジアで唯一の国として西側フロック、先ほどウェスト、西側というのの定義が出ましたけれども、西側フロックに属し、サミットにも参加しているわけですけれども、西側の一員と言われながらも、やはりヨーロッパなんかでは日本のことをウエスト・アンド・ジャパンと。この場合のウエストは地理的な意味だろうと思いますけれども、ともかく日本は何か七つの国の中ではやはりちょっと離れた存在といったような傾向も今までも強かったし、最近でも完全にはそれが払拭されていないんじゃないか。そういう中で非常に大幅な黒字を抱えておりまして、アメリカだけじゃなくてECからも非難を受け、非常に孤立化というのでしょうか、それが心配されるわけでございます。  そういう中におきまして、日本もアジアの中でもっと積極的な同盟関係というんでしょうか、そうしたものがつくれないかなと。私のモデルとして頭にあるのはECなんでございますけれども、これまでNICSと日本との間には非常な経済力の差があったことは事実でございますけれども、日本は今後低成長時代を迎える、一方NICSの方はどんどん成長を早めているわけで、NICSと日本の差はこちら側の認めたくないといたしましても、非常に差は小さくなってくるんではないか。で、それだけではなくて、NICSの諸国は歴史的にも文化的にも数々の共通点を持っておりますから、その気になれば協調しやすい相手ではないかなというような考えを持つのでございます。  ついでにもうちょっと話させていただきますと、例えば西ドイツが非常な黒字を抱えていても非難の対象になりにくいというのは、やはり後ろにECの諸国が控えているからだ。もちろんそれぞれの対応の違いも日本と西ドイツとの差はあったと思いますけれども、ECの中に守られた西ドイツということを考えますときに、やはり日本も何かアジアの中で同盟国というんでしょうか、友達を持ってほしいとしみじみ思うわけでございますが、御意見をお伺いしたいと思います。
  221. 倉成正

    ○国務大臣(倉成正君) 今非常に重要な問題を御提起いただいたわけでございますが、端的に申しまして、ASEAN諸国を考えてみましても、今日本に対する留学生はほとんど――ほとんどと言うと言い過ぎですけれども、非常に少なくて、アメリカあるいはオーストラリア、ヨーロッパの方が多いわけですね。これはいろんな問題があるかと思いますけれども、基本的に考えなきゃいけない問題じゃないかと思っております。  したがって、NICSのお話ございますが、このNICSは、実はDACの事務局の文書、それから一九八五年のDACの議長報告の中で四つに分類しておりまして、一つは後発の開発途上国、LLDC、それから第二が低所得国、それから第三が低中所得国、第四が高中所得国。一々原語は申し上げませんけれども、高中所得国、その第四番目の分類の中にNICS、ニューリー・インダストリアライジング・カントリーズということでいわゆるNICS、香港、台湾、韓国、シンガポール、メキシコ、ブラジル、アルゼンチン、ギリシャ、ポルトガル、ユーゴスラビア、この十カ国が入っておるわけです。これはもう釈迦に説法でございますけれども、そういうことでございます、  そこで、最近非常に急速な拡大を示しておりまして、世界経済の中でも大変な勢いで、成長率は一番高い状況にあるわけでございまして、私も最近韓国に参りまして、韓国の自動車工業の現状、これは現代、大宇、起亜という大体三つが一番代表的なものですが、起亜工場、これはソウルの近くでございましたから、日曜日でございましたけれども見せていただきました。とにかく相当な規模でオートマチックにやっておりまして、賃金その他から考えていくと、日本の自動車工業もこの辺で相当追い抜かれていくんじゃないだろうかという感じをいたしました。また、造船になりますと、現代造船所などになりますと、日本の造船所よりも、高度の船は別でございますけれども、タンカーとかそういうのにすると非常にコストが安いということで、今一例を韓国に挙げましたけれども、他の地域につきましてもやはりそういう問題がいろいろあろうかと思います。  したがって、これらの国も自由貿易体制に依存しているわけでございますが、ECとのお話がございましたが、私は、やはり将来はどうしても水平分業をしいて役割分担ということが必要になってくると思いますが、当面の問題としては、ちょうど日米関係みたいな日本とNICSとの関係が出てくる、相当な摩擦がよほど努力しないと出てくるという感じがいたします。  具体的に申しますと、非常に安い物がどんどん日本に自由に入ってくるということになると、日本の産業構造をよほど高度化し、変えていかなきゃならないということになって、大変な雇用問題その他日本の産業構造に問題が出てくる可能性が出ると思います。ですから、水平線を眺めて、やはり二十一世紀を眺めて、先生のお話は、そういう方向にいかなきゃいけないと思いますけれども、ここ数年を見て考えるということになるとなかなか大変難しい問題があるような感じがいたすわけでございます。恐らく先進工業国の間でも現在はそれほど大きなウエートを占めておりませんけれども、NICSの問題というのはやはり一つの大きな問題として取り上げられていく可能性があると思います。  日米関係についても非常に関心を持っておりまして、アメリカが保護主義になるとNICSは輸出ができなくなるというので、日米の関係についてもそういう意味で非常に関心を示しておる。また、アメリカが不景気になればまた輸出が伸びないという問題があるということで、非常に世界経済は絡み合っておるわけでございますけれども、やはり長期的に先生がお話しのような視点で物を考えてみるということは大事じゃないかと思っておりまして、ECも大変遅い歩みでありますけれども、少しずつ少しずつ統合の道をたどっているということを参考にすべきだと思います。
  222. 広中和歌子

    広中和歌子君 まさにおっしゃいましたように、ECの場合も最初は経済関係からスタートしたことでございますし、NICSの中でもアジアの問題、例えば現在でありましたらば対米黒字、そうしたものを中心に、やはりコーディネーションとコラボレーションというんでしょうか、そういうものがあった方が、つまり摩擦以上にそうした協力というものが今望まれているんじゃないかというような気がするのでございますけれども、それについていかがですか、
  223. 倉成正

    ○国務大臣(倉成正君) ECの場合は、御案内のとおり、第二次世界大戦後の教訓から、またいろいろな意味において一つのいろんな共通の基盤があるわけでございますけれども、NICS諸国と若干事情が違うような感じがいたしますね、いろんな意味で、宗教にいたしましてもいろんな問題にしましても。ですから、ECはローマ条約の通商の問題からだんだん範囲を広げてきてはおりますけれども、しかしこの辺の問題、ちょっとまだ先生に確たるあれを申し上げる自信がございません。今、将来を展望してこれらの問題を真剣に考えていかなきゃいけないなという問題意識は持っておるわけでございます。
  224. 広中和歌子

    広中和歌子君 どうもありがとうございました、質問を終わります。
  225. 立木洋

    ○立木洋君 最初に、特別協定の問題でお尋ねしたいと思いますが、現行の地位協定が昭和三十五年六月に発効してから、この二十四条一項、二項で定められた内容に基づいて一定期間経費が出されてきたわけですね、ところがある時期からこの経費の出し方に変更が起こった。地位協定が発効してから、それまで行われてきた経費の支出について最初に変更が起こったのはいつから起こったのか、変化が生じたのはいつからですか。
  226. 藤井宏昭

    政府委員藤井宏昭君) 地位協定二十四条一項、二項の解釈といたしまして、昭和五十三年及び五十四年に解釈を行いまして、駐留軍労務者経費の一部を日本政府負担するということをいたしたわけでございます。
  227. 立木洋

    ○立木洋君 一九七一年の沖縄返還、あのときの施設費の問題、それから関東計画が提起されてから政府は統一見解を述べていますでしょう、施設費については。これはやはり維持費についてのそれまでの経費の支出が変化をした最初のことではなかったでしょうか。今、藤井さんがおっしゃったのは労務費の方ですね。労務費の方じゃなくて、私が言うのは地位協定全体、二十四条全体から見て、今までの支出と最初に違いが生じたのはいつからかということですから、施設費の方も当然入るべきではないでしょうか。
  228. 藤井宏昭

    政府委員藤井宏昭君) ただいま委員の御質問が地位協定上の解釈ということでございますと、施設費につきまして、日本政府といたしましては、地位協定上の解釈、すなわち二十四条及び協定三条の解釈について変更というものは一切ございません。
  229. 立木洋

    ○立木洋君 解釈ではなくて、支出の変化です。それまで出してきた支出の仕方にどういう変化が生じたか、
  230. 藤井宏昭

    政府委員藤井宏昭君) 委員の御質問を私正確に、支出の変化ということで、何を意味なさっているのか把握しかねるところがございますけれども、昭和四十八年にはいわゆる大平答弁というのがございまして、運用方針には一つの指針が与えられていることは確かでございます。
  231. 立木洋

    ○立木洋君 沖縄返還、そしてその後一九七三年の関東計画の統合や廃合の問題ですね、いろいろな計画をやられたそのときに、つまりそれまで行われていなかった施設費のうち新築の部分だとかあるいは改築の部分、これをそれまでは行っていなかったわけですね、一九七一年までは。ところが沖縄返還後、これを青森の三沢だとかあるいは山口の岩国だとかの米軍の兵舎、これの新築、改築を行ってほしいという要望が提起された。改めてそれが問題になって、国会では大議論になったわけですね。  それは、これまでの地位協定に反するやり方ではないかということが問題になって、そして大平外相自身が一九七三年二月の七日に衆議院の予算委員会で、こういう前例はありませんと明確に認めているわけですよ。そういう前例、つまりそういう項目で支出したことはないと政府自身が認めて、もともとは一九七一年の六月にロジャーズと当時の愛知外相が話し合って、リベラルな解釈でこれを何とか負担してもらえないかということで、結局それを負担するようになった。これがやっぱり最初の変化ではなかったのか、支出の上における。そして、その後政府は統一見解を出して、「代替の範囲を越える新築を含むことのないよう措置する」という政府の統一見解が出されましたよね。解釈の意味ではなくて、支出の上でのそういう変化が起こったのはこのときが最初ではないでしょうか。間違いないと思いますけれども、どうでしょう。
  232. 藤井宏昭

    政府委員藤井宏昭君) 大平答弁で一つの運営の方針が与えられていることは確かでございます。
  233. 立木洋

    ○立木洋君 余り先を勘ぐって答弁なさらなくてもいいんですから、これは事実であったということを認めていただければ、私はそれ以上のことを聞くつもりはないんで。  ですから今、つまり思いやり予算というふうに問題がなされるようになった昭和五十三年、一九七八年以降、結局それまでの地位協定に変わっていろいろな口実、解釈を加えながら支出がなされたというふうにされて、つまり思いやり予算としてされてきておりますけれども、実際には地位協定のそれまでの行ってきた慣例と異なることが既に一九七二、三年に生じていたということを私は指摘しておきたいわけです。  今いろいろと思いやり予算で出されている金額というのは相当な金額になっていますが、施設それから労務費の方を含めて、いわゆる思いやり予算で出されているのは、これまでの期間、六十二年度の予算も含めてどれだけになりますか。
  234. 宍倉宗夫

    政府委員(宍倉宗夫君) 昭和五十三年度から六十二年度までで約三千九百億でございます。
  235. 立木洋

    ○立木洋君 それは施設の方がどれだけで、いわゆる労務費と言われる部分が幾らになっていますか。
  236. 宍倉宗夫

    政府委員(宍倉宗夫君) 今ちょっと足してみますので……。
  237. 立木洋

    ○立木洋君 私の計算とちょっと違うから。  ではその計算しておる間にちょっと別のことを聞きますけれども、先ほど来同僚委員の方からいろいろと、あなた方は、藤井さんは解釈の変更ではないというふうな、否定をされましたけれども、しかしいろいろと口実が変わってきて、そして実際には多額の思いやり予算というのが支出されるというふうなことに現実にはなったわけですね。これは五十三年度の労務費の負担の場合、この場合に法定福利費だとか任意の福利費や管理費などを日本側が負担するようになった。それから五十四年度の場合に、労務費の負担としては、格差給だとか語学手当や退職手当のうち国家公務員の水準を上回る部分、それを負担するだとか、それ以来格差給与の負担がずっと系統的に行われてきた。  その前の施設負担分も含めて五十七年九月了承して、六十年四月から実施されているF16の三沢配備等を背景とした駐留経費中の施設費、これらの負担増というのも出てきているわけですし、六十一年の十二月に行われた特別協定で労務費の負担増ということも問題になった。こういう当然アメリカ側が負担すべきだということで昭和三十五年から昭和五十二年までやってきた、労務費の件で言えば。施設費の件で言えば一九七二年、昭和で言えば四十七年までやってきたその負担が、今度は日本側がそれを負担しなければならなくなってきたというのはどういう理由からですか。
  238. 藤井宏昭

    政府委員藤井宏昭君) 施設費と労務費と明確に分けて考えた方が正確であると思います。  まず施設費の方でございますけれども、ただいま委員指摘のお話は、要するに大平答弁までは老朽施設の改修、改築などは行わなかった、それを行うようになった、一言で言うとこういうことかと存じます。そういうことでございますと、地位協定の解釈としては、政府の立場の解釈といたしましては、それは従来から可能であったわけでございますが、実際のリロケーション等がその時点で問題になってきたということ、それから老朽隊舎等が戦後何年かを経てそういうことが出てきたという時点におきましてのその運用の方針を整理したのが大平答弁でございまして、地位協定の解釈がそこで変わったということではないということでございます。  地位協定の解釈は、先ほど冒頭にちょっと述べましたけれども、二十四条それから三条あわせまして、日本政府としては、個々のそれぞれの案件につきまして、その案件の安保条約遂行上の意義とかあるいは我が国の財政上の事由とかあるいは社会的に与える影響など、広範な見地から総合的に検討いたしまして、さらに予算という形で国会の御承認を得て、アメリカ施設区域についての支出、これの提供を行ってきているということでございまして、その解釈等については変更はないというふうに存じております。  それから労務費については、先ほど申し述べましたように、昭和五十二年、五十四年に我が国政府として一定の解釈を行いまして、その解釈は今日でも変わっておりません。その解釈のさらに特例として今回、今お願いいたしております協定国会に御提出している次第でございます。
  239. 立木洋

    ○立木洋君 大平答弁の問題についてももう少しやりたいんですが、それなら解釈を変えたということですね、五十三年、五十四年に解釈を変えたという理由は何でしょうか。
  240. 藤井宏昭

    政府委員藤井宏昭君) 変えたと申しますか、より正確に言いますと、解釈を明確にしたということでございます。その背景には、当時御存じのとおり円高等の情勢があったわけでございまして、労務費については今日と基本的には似たような情勢でございますけれども、円で支払っておるわけでございますけれども、同一の円の額でございましても、ドルでは大変に余計必要になってくるという情勢が生じました。  そういうこともございまして、日本政府としてぎりぎり雇用の安定という見地から、アメリカの支払っている労務費の一部を負担することは可能であろうかというところを検討いたしました結果、解釈の最大限ということで、五十三年、五十四年に措置が行われたわけでございます。
  241. 立木洋

    ○立木洋君 もっと端的に言えば、解釈を変えだというのは、アメリカの圧力に屈したからじゃないですか。
  242. 藤井宏昭

    政府委員藤井宏昭君) 当時もそうであると思いますけれども、今回もアメリカから圧力があったということではございません。あくまでこれは日本が自主的に進んで、アメリカ在日米軍の窮状、それから在日米軍が雇っております日本人労務者雇用の安定という見地等に立ちまして、日本政府が自主的に行っているものでございます。
  243. 立木洋

    ○立木洋君 自主的という判断がどういう判断基準によるものかということにまたなるかもしれませんけれどもね。  例えば経過を見てみますと、この労務費の新たな負担要求が出てきた経過というのは、一九七五年八月、フォード・三木会談、そしてその後の八月末、シュレジンジャー・坂田会談、七七年九月、ブラウン・三原会談、七八年六月、これは丸山さんというような話もありますけれども、ブラウン・金丸会談、八一年五片、レーガン・鈴木会談。そしてその後いろいろ担当者の話し合いがありますが、八六年九月、プッシュ・栗原会談、そしてその後大臣がサインされた特別協定。  この話の内容を全部、新聞を客観的に見ても、全部アメリカ側から出されている要求なんです。思いやりというと、何か相手が困っているから、こちらが相手の気持ちを察して出してやるというふうな、そういうニュアンスがありますけれども、思いやりというのはいわゆるそれはつくられた言葉であって、実際にはアメリカがもっと強力に日本側が分担すべきであるという要求を提起してきて、それで拡大解釈をする。だから、その過程の論議の中で常にそのときどき、これが最大の限界です、これ以上はなかなか困難ですということも外務省当局だって言ってきたわけです。だけど、それが結局アメリカ要求に押されてこういう膨大な金額を出さなければならなくなった。金額は幾らですか。
  244. 宍倉宗夫

    政府委員(宍倉宗夫君) 提供施設整備の方の合計が三千九百二十四億、それから労務費の合計が千七百六十五億、合計いたしますと五千六百八十九億ということでございます。私が先ほど申し上げたのは、提供施設整備の方だけを申し上げたわけでございます。
  245. 立木洋

    ○立木洋君 これは予算ベースですね。予算のときの金額でしょう。契約ベースになるともっとふえるんじゃないですか。
  246. 宍倉宗夫

    政府委員(宍倉宗夫君) 予算ベースの数字でございます。契約ベースの数字は予算ベースの数字と違うことは事実でございますが、いずれにしろ契約いたしたものは予算で現金化する、あるいは予算で現金化したものはその逆に契約が必ずあるということですから、ある年度たちますとこの数字は必ず同じ数字になるわけでございます。
  247. 立木洋

    ○立木洋君 私、ちょっと計算してみたんですが、予算ベースで今言われた五千六百八十九億円、膨大な金ですけれども、契約ベースでやりますと、今回また別として、六千二百八十八億円の金額になって、やはり六百億ぐらいふえるんです。これほど莫大なお金なんです。この莫大なお金というのがこれまで五十三年から出されてきた、六十二年まで、十年間の間に。それに対しては、大蔵省の圧力もあったかどうかは別としても、外務省だって、はい結構です、それなら出しましょうといって、ぱっぱっぱっぱっと出してきたわけじゃないでしょう。それは地位協定の解釈の問題からいろいろやられている。しかし結局は地位協定の解釈の問題でも押し切られて、そして外務省自身がアメリカとの関係を最も重視しなければならない。これは園田さんが言われたとおりですよ。きのうも言いましたけれども、ある国に対しては強く、ある国に対しては弱いという日本の外交上の姿勢に問題があると、私が言ったんじゃない、園田さんが言ったんです、今はおいでになりませんけれども。  そういう状態というのがこの二十四条にもはっきり出たんじゃないですか。だから、結果六千二百八十八億円、こういう金額が、事実上アメリカ負担しなければならないにもかかわらず、アメリカ要求で、圧力によって日本政府が出さなければならない。これだけのお金を日本国民のために使えば、あなた大変なものができますよ。どうですか、圧力という点に関して、圧力は一点の圧力もないというふうにあなた言い切れますか。
  248. 藤井宏昭

    政府委員藤井宏昭君) ただいまの委員の御指摘は、五十三年以降の施設区域の提供整備を含めまして全体を一緒にしてのお話でございますが、そのうちの労務費につきましては、先ほど来申し述べておりますように、五十三年、五十四年の一定の解釈を行ってきておりますが、その後労務費は、昭和五十四年度は百四十億円でございますが、それが六十一年度では百九十一億ということで、労務費の支出は若干ふえておりますけれども、大幅にふえておるわけではございません。今回お願いをしておりますのは、それに百六十五億円新たにお願いしたいということでございます。  施設区域の方につきましては、先ほど来申し述べておりますように、解釈とかあるいは運用とか含めまして、昭和五十三年以降あるいはそれ以前もそうでございますけれども、変更は全くございません。個々の案件に即して米側日本側が話し合いまして、それをさらに国会の御承認を得て支出してきているということでございます。
  249. 立木洋

    ○立木洋君 いや、その経過の点については、私はそういう経過がどうこうというふうなことを言っているのではなくて、事実上結局筋の通らない話が、解釈を変えてまで、アメリカの意向に屈してこれほど莫大なお金を出さなければならなくなってきた。  施設の問題で言えば、一九八四年度のアメリカの軍事建設計画の中には、三沢基地強化のためのいろいろな施設がありましたでしょう。指揮所や情報施設や航空機制御システムや、地下貯蔵弾薬庫やイグルー式弾薬庫や基地補給処など、F16関連施設経費全体で三億七千三百万ドル、このうち七四%に当たる二億七千五百万ドルは日本負担をするとしていたわけでしょう。問題は、ただ単なる住まいをつくるだとかどうとかといこうことよりも、だんだんそういう形で、アメリカが行っているいわゆる軍事的な戦略、それ全体に日本の金がどんどん使われるようになってきているんですよ。これは解釈がどう変わろうと変わるまいとにかかわりなく現実はそうなっている。そういう要求アメリカがどんどん出してきている。  これはアメリカの彼が述べたのを引用させてもらえば、つまり八〇年の三月一日のアメリカの下院歳出委軍事建設委員会の秘密聴聞会、ここでは国防総省のピンクニー東アジア太平洋局長は、このアメリカの議会で、アメリカ政府の目標は、つまり日本においての目標は、米兵の給与以外のすべての基地維持費を日本負担させることであると明確に言い切っているわけです。これは大変なことですよ。これで、先ほど来、五年たったら絶対にこれはもう問題がございません、短期的ないわゆる一時的なものでございますなんと言ったってだれが信用できますか。これまでずっと長年の間だんだん解釈を変えてこれほど莫大な六千数百億円の金も出してきたわけですからね。  大臣、この経過をどうお考えでしょうか。
  250. 藤井宏昭

    政府委員藤井宏昭君) まず、圧力云々でございますけれども、ただいま御審議いただいております特別取り決めに関しまして、アメリカ側からの圧力によってこれを行ったものではございません。昨年の九月栗原長官が訪米なさいましたときに、米側から、議会で労務費の負担の増大を要請しているということは伝えられましたけれども、アメリカ政府からこれをお願いしたいということではございません。したがいまして、アメリカの圧力によってこれを行っているのではなくて、自主的に行っているということでございます。  三沢につきましては、F16を三沢に配備することはアメリカの安保条約地位協定の権利のみならず、それが我が国の安全保障に役立っているということでございまして、それに対する我が国の支援といたしましては、その適切な範囲内で行っているということでございます。  最後のピンクニーでございますけれども、これは確かにそういう発言はしておりますけれども、昭和五十五年十一月二十五日の参議院内閣委員会におきまして政府委員から、このピンクニーの発言というのはアメリカ政府の統一見解でもないし、またこの発言の内容につきましては賛同しがたい部分がかなりございますということを明確に述べております。私どももそのピンクニーさんかどういう意味でそういう発言をしたかわかりませんけれども、賛同しがたい内容を含んでいるというふうに思います。
  251. 立木洋

    ○立木洋君 じゃ、これ最後の質問にするので、大臣の御所見だけ伺っておきたいと思うんです。  こういうやり方、つまり条約の解釈、今まで行ってきた双方が協定を結んだときの解釈を途中で変えなければならない状態が生じたときに、何ら相手からの圧力を感じないでやったということは、それほど大変にアメリカに従属しておるということを意味するんですよ、言葉を変えて言いますと。日本の国民の金を出すんだから、出してはならない、出さなくてもいいものを出すということになる。それを相手からがんがん要求されたらこれは圧力に感じるんですよ。圧力を感じないでこんな莫大な金を今まで平気で、はい、はいと出してきたら、そんな日本政府は全く国民の苦痛も感じないような政府が、それほどアメリカに従属しているのかと言わなければならなくなるんです。  私はその点、アメリカ自身が言っているんですよ。一九七七年にスターツというアメリカの会計検査院院長が議会で報告しています。彼が言ったのは、日米地位協定は、基地の土地使用料及び関係経費を除いて在日米軍を維持するためのすべての支出は米側負担することとしているため、この経費を相手に持たせるのには問題となり得ようとはっきり言っているんです、議会で。アメリカ自身が、今までアメリカが持ってきた経費日本側に持たせようとすることは、地位協定ではそうなっていないんだから、これは問題になりますよと、しかし日本の追加的支払いを我々は求めたいんだ、だからそういう見地で労務費の分担方式を作成するよう交渉を始めるようにといってアメリカの国務省と国防総省に報告を提出しているんですよ。それで、地位協定に反するから問題になるということを承知の上でアメリカはやってきているんです。これはアメリカの議会の報告の中にそういうことまで出されている。  それからさっきヨーロッパの問題が出されましたが、結局ヨーロッパでは、ドイツに二十五万人駐留していますよ。これは一九八四年の統計ですが、そして日本には当時は六万人以下です。だから両方で、日本政府が米軍の駐留維持に使用した金額はどれだけなのか、西ドイツにいる米軍の駐留維持に使用した金額は幾らなのか。何と日本で使用したのは、六万人足らずの米兵に対して十二億四千万ドルです。ドイツは十三億ドルを供与しています。これは八五年十月十五日、日本アメリカの南東部会合同会議の議事録の中に出ています。  これで計算すれば、まさに日本の場合は西ドイツと比較して米軍一人当たり四倍近い維持費を出しているということになるんです。大変なことですよ。これが従属的な、屈辱的なことでなくて一体何なのか。ここまで特別協定をしてやってやらなければならない、そんな屈辱的な協定外務大臣、署名をなさるとは一体いかなるお考えなのか。この点で最後に大臣の御所見を伺いたい。
  252. 倉成正

    ○国務大臣(倉成正君) ドイツとの関係は後で政府委員からお答えすることにしまして、せっかくの立木委員のお話でございますけれども全く見解を異にしております。  我々は、日米安保条約というのが日本の安全、極東における国際の平和及び安全の維持のために必要である、そして米軍の駐留を認め施設区域を提供しているわけでございます。したがって、一朝有事の際には日本が安全に守られる、そのための施設であり、また米軍の関係の労働者雇用しているということでございますから、もちろん地位協定その他についていろいろ相互の取り決めは守っていくことは当然でございますけれども、やはり我々は相手から圧力を受けるとか受けないとかいうことじゃなくて、日本がこれで守られているという観点に立つならば、やはり相互に話し合いながら我々が経済情勢全体の中で負担をしていくということは決しておかしいことではない。圧力とかなんとかそういうものじゃなくて、自主的に判断して決めたものでございます、
  253. 立木洋

    ○立木洋君 日米安保条約によって日本が守られていると言いますけれども、つまり、日本は独立しているんだとかなんとかということを常に繰り返す、だから防衛費が必要だと。  これは、例えば昭和四十五年のアメリカ国会で行われたサイミントン委員会での証言だってあるんですよ。日本の防衛、通常兵力による日本の直接の防衛に対する主要な責任は今や全く日本にある。我々は通常兵力による日本の直接の防衛に直接に関係する兵力は、陸軍にしろ空軍にしろ日本に持っていない。これを一つ挙げておきます。  もう一つアメリカの下院外交委員会アジア・太平洋小委員会の対日公聴会における防衛論議、一九八二年三月に行われています。ウェスト国防次官補は、日本だけが孤立した形で攻撃されるということはありそうにない、いかなる場合でも日本が単独で本土防衛をするという事態アメリカは想定していない、そういう事態は起こらないだろう。結局、ソ連が日本を直接攻撃する可能性は少ないんだ、だから米ソがどこかで戦った場合に日本が参加する可能性がある。この問題については、一九八一年の国防報告の中に、ここでもやはり、ヨーロッパその他で米ソ間に紛争が起こったときに、このときに日本の自衛隊がそれに対する対応措置をとらなければならなくなる。つまりオホーツク海と日本海からの太平洋への主な出口を、つまりソ連の出口を封鎖することができると確信している。これがまさに有事なんですね。  だから、問題というのは、米軍というのはアメリカの世界戦略をやるために日本に来ているのであって、日本を守るために日本に来ているんじゃないということはアメリカの証言何ぼでもあるんです。そういうふうなアメリカの議事録を十分に御研究なさらないで、そしてアメリカが世界戦略を進めるために行っている行動に日本の莫大な金を投じるというふうなやり方を、こういう協定の内容まで、いわゆる解釈を変えるだとか変更するだとかしてまでしてやらなければならない理由はない。堂々と主張すべきことは主張するということは私はやるべきだ、  この点については、今倉成外務大臣も立木委員と意見を異にすると言われたから、もちろんあなたに私の見解に同意してくれというふうな意味で申し上げているんではないけれども、しかし問題は、そういう状況になっているわけですから、だからアメリカのそうした大変な核戦略を強化していこうとする事態に対して莫大な日本の税金を使う、しかもそれを、こうした事態地位協定の解釈を変更するだけではなく、新たにこういう特別協定までつくって日米共同作戦体制が強化されていく方向に積極的に加担していくというやり方には断じて賛成できないということだけは、私ははっきり述べておきたいと思います。  次に、時間がなくなりましたけれども、多数国間の投資保証条約の問題についてちょっと二、三質問いたします。  これは、相当長期にわたって、この保証条約作成されるということが二十年近くにわたって大変な状況にあったという、そういう状況にもかかわらず、今回極めて速やかにこの条約がソウルにおいて八五年十月に確認されたというのはどういう理由からでしょうか。
  254. 英正道

    政府委員(英正道君) 委員指摘のとおり、途上国の経済発展を支援するために返済を伴わない資金が流れかつ技術が移転するということで民間投資が重要であるということは、もう戦後六〇年代から言われてきたことでございますけれども、やはりこの民間投資をどういうふうに流していくかということについては、率直に言って、投資をする側それから投資を受け入れる側、いろいろな紆余曲折があったわけでございます。いろいろな経験を経てそういう環境が漸次整ってきて今回この条約ができた、このように理解しております。
  255. 立木洋

    ○立木洋君 だんだん条件が整ってきたといったって、あなた細目がまだ決められていないんでしょう。細目上ではいろいろ問題があるわけだし、ましてや開発途上国でもこれを留保しているという国が十一カ国、フィリピンは留保をとりましたけれども、残っているわけでしょう。だから、うまくいって条件が整ってきたからではなくて、この一年間レーガンが相当これに対して積極的に促進するということがやっぱり背景には大きな力としてあったんじゃないですか。
  256. 英正道

    政府委員(英正道君) 米国政府も確かに熱心であったかと存じますけれども、これはあくまでも関係国の間の話し合いでこういうものでまとまったということでございます。
  257. 立木洋

    ○立木洋君 この二十三条で、これは前お尋ねしたことがあるわけですが、一九七四年に新しい国際経済秩序確立の宣言等、これは英さんにお尋ねしたわけじゃなくて前の局長さんにお尋ねしたんですが、その中に日本が留保している条件等も幾つかあるわけです。今回の二十三条の中に、「投資の流れを阻害する要因の除去」というふうな項目、あるいは投資環境の改善等の項目が入っておりますが、これは新しい国際経済秩序確立の宣言等の中で述べられている開発途上国側の要求とはやはり対立するといいますか、異なる内容のものではないかと思うんですが、この「阻害する要因の除去」という、この要因とはどういうことを意味するんでしょうか。
  258. 柳井俊二

    政府委員柳井俊二君) 先進加盟国及び開発途上加盟国における投資阻害要因としてはいろいろあり得ると思います。政策上あるいは制度上のさまざまな要因が考えられるわけでございますけれども、例えば先進国側におきましては、その国民が行う対外投資につき制限を行っている場合であるとか、あるいは開発途上国側におきましては、対外投資の受け入れに関するいろいろな行政的あるいはインフラ的な制約というようなものが考えられるわけでございます。この中にはあるいは法制度が整備されていないというような問題もあろうかと思います。そのようなものを除去することはやはり先進国から開発途上国への投資の流れを促進する、これはひいては開発途上国における経済発展にも資するということであろうと思います。
  259. 立木洋

    ○立木洋君 しかし、十一カ国が留保し続けているという主な原因は何でしょうか。
  260. 英正道

    政府委員(英正道君) 採択の際に態度を留保した国、それからそもそも採択に参加しなかった国とがあるわけでございますが、この採択の際に態度を留保した十二カ国のそれぞれの理由については必ずしも承知しておりませんけれども、一つは、投資の紛争について国内の裁判所以外の裁判管轄を認めたくないという理由も一部には存在しているのではないかという感じがいたします。ただ、その後、この十二カ国の一つであるフィリピンは本条約に署名しております。今後、このMIGAについての理解が深まって、さらに多くの国が署名、締結を行うということを期待しておるわけでございます。
  261. 立木洋

    ○立木洋君 時間がないので、もう一方的に私の方で若干述べさしていただきますけれども、この投資保証機関が設立して、今国際的に存在している経済問題、南北間の経済問題を本当に解決していけるんだろうかという点については、私は極めて否定的なんです。どうしてか。一九七五年当時、先進国と発展途上国とのいわゆる国民一人当たりの所得の差、約五千ドルですよ。先進国が五千四百七十ドル、発展途上国が四百七十ドルです。八四年の段階でどうなっているか。先進国では一万一千四百三十ドル、発展途上国では六百四十四ドル。つまりその差は五千ドルから一万七百八十六ドルに広がったんです。これはUNCTADの問題でいろいろ会議で議論されながらも、経過としてはこうなりました。  それから例えば債務の問題では、一九七一年当時、これはOECDの調査によりますけれども、当時の中長期の債務の合計が約九百億ドル足らずですよ。現在幾らか。一九八五年末、世銀の報告によってもこれは九千五百億ドル。八五年末ですから、現在はもう一兆ドルを超えました。大変な金ですよ。累積債務が膨大になって、もうにっちもさっちもいかないという状態です。  だから、そういうことを解決するために、それは投資が欲しい、何とかしてほしいという人があるかもしれない。もらっても、そのために結局返さなければならないお金の方が何倍もたくさん返さなければならないという状態が現実に存在しているんです。アフリカに行って調査してみると、大変な事態です。いわゆるお米の援助だといってもらった三十五億ドルですか、実際三十五億ドルもらった二十九カ国が返さなければならなかったお金が六十五億ドルだというんです。これでは一体援助してもらっても実際私たちはどうしていくんだと。まあ自助努力だとかいろいろなことがあります。しかし、南北の問題というのは大変なんです。  今度のこの投資保証条約というのは、これは投資をする側にとってはよりいいような条件を積極的に与えて、投票のやり方についても先進国に有利なようになるようになっているんですよ。こういう状態で本当に今の南北間に生じている国際的な経済問題が解決できるのか、私はこれは極めて否定的です。こういうやり方でなくて、もっと南北間の話し合いをより積極的にして打開の道を開いていかなければならないというのが私のこの条約についての考え方です。  最後にこの点での大臣の、賛成していただける点と賛成されない点があるかもしれませんが、御所見を伺って、私の質問を終わります。
  262. 倉成正

    ○国務大臣(倉成正君) 今南北問題についての立木委員の、一兆ドル以上に上る、一カ国で一千億ドルを超す債務国があるわけでございますし、またアメリカ自身が債務国になっていっておる、こういう状況の中で、この問題をどう解決するかということは単なる投資条約でできるものではございません。その点は全く同じ意見でございます。しかしその一翼を担ってくる、その一部分を、という意味においては意義があるんじゃないかと思います。アフリカ等については今回新しい、今度の対策の中で贈与分をふやしていこうということで今いろいろと大蔵省と接触しているわけでございます。したがって、この点は全然役に立たないというふうに評価されるのはいかがなものかと思います。  それからもう一点、先ほど立木委員、私の同意は求めないけれどもとおっしゃった労務費の問題について、西独との問題がございましたので政府委員から補足させるということを言って落としておりますので、一言つけ加えさせていただきたいと思います。
  263. 藤井宏昭

    政府委員藤井宏昭君) 事実だけ申し上げますと、駐留米軍経費負担額につきましては国際比較が非常に困難であるということは前にも申し上げた点でございますけれども、西独につきましてはNATO条約によって防衛義務があるということ、もちろん日米安保条約においては我が国は個別的自衛権の範囲内でのみ協力するということで、この辺に非常に大きな違いがあるというのが一つでございます。さらに防衛費そのものにつきましても、西独はGNPの三・三%という非常に大きな防衛費を使っております。そういうこと全体をひっくるめまして、さらに駐留米軍経費の比較ということはそもそも困難であるということが言えると思います。  それから先ほど委員が御指摘になりましたアメリカ日本を守らないのではないかということでございますけれども、その点につきましては、アメリカ政府が非常に明確に述べておるのみならず、例えば昨年の年末に発表されましたシカゴ外交評議会の世論調査でございますけれども、そこで八〇%以上の人が、もし日本が攻撃された場合には日本を守るべきかという問いに対して、イエスというふうに答えております。  以上でございます。
  264. 立木洋

    ○立木洋君 あのように言われますとちょっと黙っておれませんので、つけ加えさせてもらいます。  私が先ほど引用したのは、西ドイツの米軍駐留維持費については、私が引用したのはマンスフィールド駐日大使が述べている言明です。私はそれ以外のことを述べたわけではないんです。つまり、日本とほぼ同額の金額を西ドイツが負担しているけれども人数は二十五万対六万足らずだということです。日本に駐留している米軍一人に対して払っている日本のお金が、西ドイツで米軍一人当たりに払っておるお金の四倍払っている、この事実だけは明確ですから、重ねて述べておきます。  それから先ほどのアンケートのとり方については、いろいろなアンケートのとり方というのがあるわけです。それは一つの国民の感情をあらわすことはあり得ても政策の問題とは別です。明確に米軍の政策を研究されて、そして何を目的にして米軍が日本に駐留しているのか、このことは別の機会に明確に議論をしたい。以上です。
  265. 小西博行

    ○小西博行君 それでは原子力の国際協力という面で少し質問させていただきたいと思います。  最近この原子力の国際協力という問題がにわかにクローズアップされているわけですが、恐らくこれはチェルノブイリの原発事故というものが大きな一つの引き金になっているのではないか、このように私は思います。  そういう意味で、国際原子力機関の評価専門家会議が開催されまして、十三項目にわたりましていろいろ検討課題が指摘されているわけです。当然我が日本におきましてもこれらの事柄について積極的に進めていく私は責任があるんではないか。そういう意味で、十三項目あるわけでありまして、通産、科学技術庁の皆さん方はよくこれは検討されているんではないか、そのように思いまして、特にこの項目の中で各省庁がどういう分野でどのような具体的な展開をされているのか、またこれは外務省は窓口ということにもなろうかと思いますので、もし御意見がありましたらお伺いしたいと思います。
  266. 尾藤隆

    説明員(尾藤隆君) お答えします。  先生御質問のIAEAの事故後評価専門家会議においてのIAEA議長から指摘された十三項目の検討課題につきましてですが、御指摘の十三項目の検討課題は、その後IAEAの理事会それから総会等で検討が続けられまして、そういう検討の際には我が国も積極的に参加したところでございます。その結果といたしまして、現在、一九八七年以降の予算に、IAEAの予算でございますが、盛り込まれまして、そのような形で今後具体化されていくものというふうになっております。  我が国は、御存じのとおり、安全運転実績が高いとか、あるいはさまざまな安全研究の成果等を出しておりまして、こういう安全分野におきまして十分な実績を持っておるところでございます。国際的な評価も高こうございます。一方、先生のおっしゃられましたチェルノブイリの事故、それにつきまして、こういうような原子力の安全問題というのが単に一国の問題にとどまらないというふうなことが示されたわけでございますから、安全確保にかかわります国際協力の重要性というものを改めて認識しているところでございます。こういう事情を踏まえまして、今後具体化されます御指摘の十三項目にかかわるようなIAEA活動に我が国としても積極的に参加し、世界の原子力の安全確保に貢献するよう努めてまいりたいと思っておるところでございます。  特に項目のうちのマン・マシン・インターフェイスを例に挙げますと、このIAEAの予算に反映されております指摘を踏まえまして、IAEAの主催による国際会議が来年二月我が国で開催されることになっております。開催国として私ども日本が多くの貢献ができるものと期待しております。  それから疫学調査に関してもございますが、原子炉の事故によって放射線被曝した一般の公衆の状況を長期間追跡調査をするということ、その方法論に関する検討を行う会議が既に行われておりまして、我が国は御存じのとおり広島、長崎の経験を有しております。そういう関係の御専門家もございまして、それらを派遣させましてこういう会議等において貢献を図っていきたいというふうに思っておるところでございます。  また、IAEAが作成いたしました原子力安全に関する国際基準、通称NUSSと称しておりますが、この見直し等の多くの会議が企画されております。  これらに対しましても、今後関係する会議に我が国専門家が積極的に出席しまして、日本の持っております技術、知見をこういう場で反映し国際的な協力を積極的にしていきたい、そういうふうに考えておるところでございます。
  267. 神田淳

    説明員(神田淳君) 今の科技庁の室長の答弁におおむね尽きているわけでございますが、通産省といたしましても、十三項目の御指摘、それからさらにIAEAのINSAGの検討結果、これの安全性の六分野の強化策、プログラムが策定されて提案されているわけですが、こういったものに積極的に協力して、例えば人を派遣する、会議に出席する、あるいは会議を招集する、日本で招く。その代表的な例が、今申し上げましたマン・マシン・インターフェイスの国際会議を来年二月東京で開くわけですが、こういったことを通じて積極的にIAEAに貢献していきたいというふうに考えております、
  268. 遠藤哲也

    政府委員(遠藤哲也君) 外務省から一言だけつけ加えさせていただきたいと思います。  中身は科技庁それから通産省の御答弁に尽きるわけでございますけれども、IAEA、いろいろな業務があるわけでございます。御承知のとおり、セーフガードの問題あるいは技術協力、安全、殊にチェルノブイリ以降はこの安全の分野に相当力を注がなければいけないという方向が出まして、日本といたしましてもそういったようなIAEAの方向に全面的に協力しておるところでございます。
  269. 小西博行

    ○小西博行君 そういう意味では日本の原子力発電は大変安全ということで世界からも非常に大きな脚光を浴びているんじゃないかというふうに私は思いますので、そういう分野で大いに各国に協力をするという体制が必要ではないか。よくお題目のようになるわけですが、やっぱり具体的にそれで協力していくという体制を一日も早く盛り上げていただきたいというのが私の希望でございます。  それから次でございますけれども、通産省から「二十一世紀の原子力を考える」、多分去年の九月ごろだったと思いますが、こういう立派な本が出ております。中身を拝見させていただきますと、日本の科学技術者といいますか、専門家の皆さん方が集まりまして、これから特に原子力の問題についてどうあるべきか、あるいはエネルギーについてどうあるべきかということを非常に幅広く、しかも具体的にうたっております。これは通産省の方から出されたわけですから、通産省だけではなくて科学技術庁の方もよく中身は御存じだというふうに考えております。  その第二部というところで「原子力ビジョン」という一つ項目がございまして、その中で国際協力への「国の役割」という分野がございまして、これも実は三項目にわたりまして、平和利用の枠組みであるとか、あるいは国際化を推進するための二国間あるいは多国間の協定締結とか、あるいは法令の整備、こういうようなものを具体的にうたっているわけです。私はこの三項目は非常に大切だと思いますし、特に二国間、多国間の協定締結、法令の整備、こういう問題が非常に私は大切ではないかと、こういうように思っているんですが、この点についてはどのように御理解をされているんでしょうか。
  270. 間宮馨

    説明員(間宮馨君) 原子力分野における今後の国際化のあり方につきましては、現在、原子力委員会の長期計画改定の一環として審議されておりますが、我が国に対する国際貢献の要請の高まりというのがございまして、これにこたえるということで核不拡散との両立を図るということ、あるいは安全確保の重要性を認識するということとあわせまして、主体的、能動的な国際対応を進めていくということが重要であると認識しております。このために、民間との連携を図りながら次のような展開を図ることが重要であると考えております。  まず、核不拡散条約及び国際原子力機関を中心とする核不拡散体制の維持強化に努めるとともに、国際原子力機関あるいは経済協力開発機構の原子力機関等の活動への積極的な参加を通じまして、国際的な原子力の安全の確保に努めるなどによって、まず原子力平和利用の国際環境の整備を図ることが重要であると考えております。  また、プルトニウム等核物質の防護に対する国際的要請の高まりがございますので、これにつきましては、核物質防護条約への早期加入を目指しまして、所要の国内体制の整備について検討を進めるなどの措置を講じてまいることとしております。  先進国との協力に当たりましては、世界共通の利益の追求という観点から、我が国中心となってその実施に当たる、いわば主催者型の協力というようなものをこれから進めていく必要がある。同時に、相手国が同様な観点から提唱する協力についても積極的に参加していくということを考えております。  途上国につきましては、当庁に研究交流制度という制度がございますが、そういうものを用いまして、研究技術基盤の整備を進めるとともに、相手国の開発レベルに応じまして計画の初期段階から積極的に協力を進めたいと考えております。その際、核不拡散、安全確保を前提としつつ、協力促進の観点から、原子力協力協定等、協力の枠組みというものを整備するということ、あるいは協力の成果が相手国に確実に根づくよう十分に配慮するということが重要であると考えております。  これらの国際対応を円滑に進めていくためには国内環境の整備が必要であるということも考えております。このため、例えば原子力委員会を中心に、また関係省庁の緊密な連絡のもとに、研究機関の国際化であるとかあるいは国際人の養成確保等を進めることを考えております。  いずれにしましても、現在原子力委員会において長期計画の策定作業が進められているところでございますので、同計画が策定されますればその方針に沿って今後具体的な施策を講じてまいりたいと考えております。  以上でございます、
  271. 神田淳

    説明員(神田淳君) 通産省におきましては、このビジョンを踏まえまして、先進国との間の協力、それから発展途上国との間の協力を実体上進めております。  先進国では、例えばアメリカの規制当局と規制情報交換の取り決め、これに基づきまして安全規制情報事項そういった規制情報関係の交流を非常に精力的に進めております。また、フランスとの間でも安全情報関係の交流を積極的に進めておりまして、毎年一回定期会議を持つ、あるいは西ドイツとの間でも同じように進めております。  現在、我が国の原子力発電のすぐれた稼働実績、これが先進国の間でも非常に注目されておりまして、そういった観点からの我が国の協力に対する期待が非常に高まっております。我が国の事故、故障情報を伝えまして、このように処理した、このように改良した、こういうふうなことを情報として流しまして向こうの事故に貢献していく、また向こうの事故、故障の情報等をこちらに還元させていく、こういうふうなことを進めているわけです。  また、発展途上国との協力も、実態的に発展途上国からの要請が最近強まってきておりまして、具体的には、専門家を派遣して、例えば品質管理のやり方はどうしたらいいか、あるいは検査のやり方は実際的にどうしたらいいか、こういった専門家を派遣して教えていく、こういった面でも積極的に応じていく。あるいは研修員の受け入れ、実際に発電所の運転というふうなものをどういうふうにしていくのか、これは発電所に受け入れてやっていく必要がある。そういう要請が強まってきておりまして、もちろん核不拡散に配慮しつつやるわけですが、相手国の原子力開発の段階、それから需要、ニーズ、こういった面において安全面に重点を置いて協力ができていくというふうに今やっておりますし、今後も重点的にやっていきたいというふうに考えております。
  272. 小西博行

    ○小西博行君 そこで、最近問題になっておるのは人材の確保。原子力関係に優秀な人材がどんどん集まればいいんですけれども、どうも時代のニーズといいましょうか、バイオであるとかあるいは電子工学の方に優秀な人材がどんどんとられていきまして、どうも思うように人が集まらない。しかも、これは科学技術庁の方でも、あるいは通産省でしょうか、将来の電力といいますかエネルギーといいましょうか、そういうものの計画を見ていますと、どうしても原子力発電というものがやっぱり四〇%ぐらい少なくとも伸びなければいけない。現在の段階で、九州であるとか四国は大体四〇%ぐらい原子力が入り込んでいるわけです。そういう意味で、そういう状態になりますと、研究員もそうですけれども、実際の運転員であるとかあるいは保守点検員とか、そういう人材が非常に私は不足してくるのではないか、このような感じがしてならないわけです。  皆さん御承知のように、原子力発電というのはたしか三カ月でしたかね、一年間のうちで三カ月必ず点検しなければいけないのがありまして、稼働率がそういう意味では七五%以上上がらないという問題が一つの大きなネックにもまたなっているわけです。そうかといって簡単に整備をしてすぐ動かすということはこれは許されないわけでありますから、それらの人材の確保、こういう問題が諸外国へ支援するにしても非常に大きな私は問題点ではないか、そのように思いまして、それに対して具体的な対策を何かおとりかどうか、その点もお伺いしたいと思います。
  273. 田中正躬

    説明員(田中正躬君) 今御指摘の優秀な人材を原子力分野で確保するということは非常に大事な課題でございまして、この優秀な人材を確保するということにつきましては幾つかの方法があるわけですが、一つは、非常に創造的な基礎研究をやるとか研究開発のプログラムをつくって研究者に対して非常に魅力ある場所を与えるというようなことが一点あるかと思います。それともう一つは、原子力の技術分野というのは非常に多くの技術を結集して研究開発をする必要があるということで、産官学の人材交流を進めるというようなことが非常に重要でございます。そういうことで、例えば原子力研究所等におきましては、今申し上げましたように、非常に魅力ある研究開発をやるとともに、大学等と人材の交流を進めているというのが現状でございます。  また、こういう人材というのは、我が国だけで考えますとどうしても制約がございまして、そういう意味で原子力の国際的な人材面の有効活用を図っていくということで、外国とそれぞれ協力をしながら立派な研究をやっていくというようなことが重要であるというふうに考えております。  いずれにいたしましても、このような人材の確保ということにつきましては非常に重要な課題でございまして、現在原子力委員会におきまして原子力の開発利用に関する長期計画が検討されておりまして、改定作業が今進んでおる段階でございまして、科学技術庁といたしましては、そういう長期計画が策定されればそういう方向に沿ってさらに具体的な対策を講じていきたいというふうに考えております。
  274. 神田淳

    説明員(神田淳君) 特に発電所における運転員の人材の確保という観点から御回答を申し上げますと、運転員の養成というのは基本的に電力会社の仕事でございますが、通産省におきましては、毎年一回運転員の長期養成計画というのを提出させまして、運転員を毎年これくらい確保して、それをこういう計画で、例えば運転の訓練センターがBTC,NTCとあるわけですが、そこでこういう計画で研修させる、それから社内におけるオン・ザ・ジョブ・トレーニングはこうと、その辺の計画を提出させまして、必要な教育訓練カリキュラムあるいはいろんな資質向上、技能向上、こういった観点からの指導をしているところでございます。  それから運転につきましては、特に運転の当直長のいわゆる資質、能力というのは非常に大事でございます。この運転の当直長につきましては、昭和五十五年、TMIの事故の後から、特に国の認定する者でなければ当直長にはなれない、こういう制度をつくりまして、資格認定制度ですが、これをクリアしなければ長にはなれない、こういう制度を発足させて相当なレベルを維持している、こういう状況になっております。
  275. 小西博行

    ○小西博行君 大臣、この法案も非常にそういう意味ではいい時期に私は出されたというふうには感じてはいるわけです。  今、通産、科学技術庁の方からいろんな具体的なお答えをいただいたわけです。海外へ援助していくということになりますと、それだけの能力といいますか、量も質もそうでございますけれども、そういう面を十分持った上で対策をとっていかないと、空念仏に終わるようなことでは意味がないというふうに私は考えるわけです。特に、優秀な人材が行かないという、何かそこに不安感とまではいかないにしても、どうも魅力に乏しいというものがあるのではないか。  それから、私は具体的に発電所へ行ってみまして思ったのは、私は広島ですから、たとえば島根の発電所、あそこは中国電力なんですけれども、そこでもしも被曝に遭ったときにどこで治療を受けるかといいますと、地元にはないわけですね。そういう意味で、もしもということはめったにあってはいけないわけでありますけれども、そういうものをやはり十分に整備しておくということも非常に大切なことではないかなと、安全という意味で、その点はどうなんですか。最近は大分進んでおりますか。
  276. 尾藤隆

    説明員(尾藤隆君) お答えします。  先生の御質問、具体的なことにつきましては、個々の地元によりまして違うと思うのでございますが、災害対策基本法に基づきまして、原子力の特有な事故ということに関連しまして、各地方公共団体におきまして防災計画というものを立てております。それに対応しまして国はさまざまな技術的な指導、あるいは指針に基づきます研究等の成果などをもちまして支援等をしているところでございます。個々の地元につきましては基本的には地方公共団体の長が責任を持つものでございますけれども、そういう意味では、今後国といたしまして適宜必要に応じまして支援していく体制をとっていこう、そういうふうに考えているところでございますし、これからもそうしていく所存でございます。
  277. 小西博行

    ○小西博行君 先ほど言われました、人材の交流なんかを図って研究者の質を上げていくといいましょうか、そういうようなお話がございましたのですが、法律はできておるんですが現実になかなか動いてもらっていないんですね。調べますと、たしか一人ぐらいしか実は動いていないですね。例えば国家公務員の研究機関におる人、これが民間に行くとか、あるいは大学の人が民間に入る、こういうようなのはなかなか、言葉では簡単なんですけれども、交流ができないというものが実はあるわけですね。そこが私は非常に大きな問題ではないか。  科学技術庁の方で五十六年から進めております流動研究システム、まあ創造科学の方ですが、私はこの問題は実にうまくいっているような気がします。  これはもう皆さん御承知のとおり、東北大学の西澤先生初め著名な、大変優秀な、しかも意欲のある先生方がリーダーになりまして、二十名ずつぐらいのメンバーで構成して五年間やる、そういうような非常に魅力のある一つの研究システムだろうと思います。従来の研究システムということになりますと、どうしても省庁型ですから縦割りになりまして、そしてお互いのコミュニケーションというのはなかなかとりづらい。そういう問題が、実は産官学といいながらも具体的にそれが進んでいないという大さな欠点があったんではないか。そういう意味で、私は、そういう分野をこれから先もどんどん進めていかなきゃいけないんじゃないか、このように考えているわけです。  ですから、単に交流をやればいいということなんですが、具体的にそれをどうすれば喜んでそれに参加していくか、それからまた、もとへ帰ったときの処遇の問題とか、研究開発にはそういう問題がたくさん私はつきまとうだろうと思います。  そういう意味で、何か御意見がございましたらお伺いしたいというふうに思います。
  278. 田中正躬

    説明員(田中正躬君) 今先生御指摘の、例えば創造科学のような研究開発の制度で人材の流動化を図るとか、最近研究交流促進法のようなものができまして、国立の研究機関と民間の技術者の間の交流が深まるとか、そういうことで最近とみに研究者の間の流動性というのがふえてきているということだろうと思うんです。  原子力分野におきましても、日本原子力研究所というようなところが中心になりまして、先ほど先生御指摘ありましたように、非常に魅力のある研究プログラムを立てて、そういうところに日本の研究者のみならず外国からもすぐれた研究者を招いて体系的な研究を行う。そういうことで交流を図る方法とか、創造科学のように一つのチームリーダーのようなものをつくりまして、原子力分野の材料分野でありますとか人工知能を大々的に取り入れる研究を行うとか、そういう種々のアイデアがございまして、今そういうことについては原子力の長期計画を策定するに当たってかなり細かく検討がなされておりまして、そういう中で先生御指摘の点をさらに進めていきたいというふうに考えております。
  279. 小西博行

    ○小西博行君 以上で通産、科学技術庁の皆さん、ありがとうございました。  時間が余りありませんけれども、条約について少しお伺いしたいと思います。  国際保護者条約は昭和四十八年、また人質条約につきましては五十四年に国連総会で採択されたわけですね。それにもかかわらずなぜ今日まで国会承認の手続がとれなかったのか、その辺の事情についてお伺いしたいと思います。
  280. 柳井俊二

    政府委員柳井俊二君) 御指摘のとおり、この二条約はただいまお話にございましたような時期に採択されたわけでございます。  我が国といたしましては、国際テロの防圧という見地から、この採択に至る交渉の過程から積極的に参加をしてまいりました。またその後もできるだけ早く締結いたしたいということでいろいろ準備を進めてきた次第でございます。ただ、同時に、これらの条約につきましては何分にも刑罰法規に関係するものでございます。また、これらの条約は大体似たような構造をとっておりますけれども、御案内のとおり、いわゆる世界主義というような考え方に立ちまして刑事裁判管轄権を非常に広く設定するということで、従来の刑法体系の考え方からも若干違うという点があったものですから、この辺につきまして諸外国の法制等も調査しながら、外務省、法務省を中心にしましていろいろと検討を重ねてまいりまして、その結果最近に至りまして必要な刑法等の改正のめどが立ったということで、今国会にこの条約締結について御承認を求めると同時に、関係の刑法等の改正につきましても御審議をお願いしているという経過でございます。
  281. 小西博行

    ○小西博行君 条約についてはそのほかにいろいろ質問があったわけでありますけれども、同僚の議員の皆さん方から大抵のことは言っていただきましたので、そのことはこれで終わりたいと思います。  これは通告も何もしておりませんが、この間の予算委員会で、外務大臣がちょうどいらっしゃらなかったものですからお聞きするチャンスがなかったわけでありますけれども、この間ECの閣僚会議に行かれまして、特に私はお聞きしたいことが一、二点だけございます。それをお話を伺いたいと思うのですが、日本の技術水準というのを外務大臣はどのように把握されているのか。いろいろな国に行かれるわけです、先進諸国その他ですね。日本の技術が非常にある意味では高いのではないか、ある意味では非常に低いのではないか、この両論があるわけですね。大臣から見られて率直にどのようなレベルにあるかというお気持ちでございますか。
  282. 倉成正

    ○国務大臣(倉成正君) ちょっと私の能力を超える御質問でございますけれども、感じとして申し上げますと、やはり基礎研究の部門においてはまだまだ日本アメリカあるいはヨーロッパの先進諸国におくれている部分が相当あると思います。  ノーベル賞の受賞者一つ考えてまいりましても、日本は六名でございますけれども、文学賞、平和賞を除くと四名です、物理、化学は。少なくともアメリカでは百名以上超しておりますし、その他五十名というような、あるいはそれ以上のところがあるわけでございますので、そういう点から申しますと、基礎研究というのにまだまだ我々は力を注がなきゃいけない。エレクトロニクスの問題、応用技術についてはたまたま非常に進んでいる面があるし、また、そういう点での品質管理等非常にすぐれているという点があると思います。また、コンピューターの面でもハードの面ではかなりいいところへ行っていると思いますけれども、ソフトの面ではかなりおくれている、まだ格差がある、そう思っております。
  283. 小西博行

    ○小西博行君 私はそのとおりだろうと思うんですね。特に基礎研究というのが非常に少ないというのは、今おっしゃったようにノーベル賞の受賞ですね。これは科学技術の水準をどうだという問題ではないかもしれませんが、一つのデータではないか、見方ではないか。ただし、特許件数なんかになりますと一年間に大体五十二万件ぐらい出るというんですね、日本は。世界全体の中で四四%を占めるというんですから異常な状態なんですね。というのは、もう御存じのように、基礎技術というのは海外から求めてそれを応用的に、応用開発といいますか、そういう分野で日本は非常にすぐれている。実はそこが問題でありまして、最近海外からはどうも日本は商売中心にやっているじゃないか、先端技術というのは全部欧米から買っているではないか、こういうような御意見が出ているわけです。  技術貿易という面で数字を見てみましても、日本はそれが明確であります。現在でもやっぱりアメリカあたりからたくさん買っております。それに対して、輸出というのは非常に少ないわけです。ところがアメリカの場合は全く逆です。たくさん出している。  そういう意味で、私は、この辺の科学技術の問題というのを教育の観点から語ったらいいのか、あるいは社会環境なのかなかなかわかりませんけれども、これは大改革をすべきじゃないか。予算から見ますともう世界の中でも相当有数なところまでいっています。昨年で八兆九千億、これは科学技術研究ということでそれだけの予算がいっているわけですから、そういう意味では世界のトップクラスだと思います。しかしその割に、基礎研究というんでしょうか、そういう地味な分野がなかなか伸びないということがございまして、私は、外務大臣の場合は世界各国に行かれていろんなお話をされるし、現実にそういう分野にタッチされることもあるのではないか。ですから、どのような形でこれから先の日本の教育というものを、あるいは科学技術の発展する基礎的なものを整備していったらいいか。そういう意味では情報元だというふうに私は思うわけです。  そういった意味で、これから先ぜひこの分野に日本としても力を入れて、将来は技術立国である、商品は売らないんだけれども技術はどんどん各国に売っていく、こういう形をねらっていかなきゃいけないだろうというふうに私は思いましてこのような質問をさせていただいたわけです。  例えばオーストリアなんかで、これは七百五十万ぐらいの人口ですが、それでもやっぱり日本の倍ぐらいノーベル賞の学者を出しているんですね。スイスなんかでも相当なものです。そういうふうに考えていきますと何か問題点がありはしないか、そのように思いますが、所見だけで結構ですが、最後に御意見いただければ幸いです。
  284. 倉成正

    ○国務大臣(倉成正君) 文部大臣の領域にも若干入るようでございますけれども、全く個人的な意見として言わしていただけば、やはり日本の大学というのが入ってしまえば何とか卒業できるということが問題じゃないか。入るのはやさしくして卒業するのをきちっとするというのが、これは広中先生いらっしゃいますが、アメリカはすべてと申しませんけれども、そういうところも多いんじゃないかという感じがいたします。したがって、やはり基礎的なものを、レッテルということじゃなくて、もっと大事にするという姿勢はこれから国際国家日本として非常に大事なことじゃないか。  また、貿易の面で見ましても、知的所有権の問題、これがウルグアイ・ラウンドの農業の問題と同時に大きな問題になったということを考えますと、これらの問題にもっと関心を持つべきだと思っておる次第でございます。しかし、何分この問題については、文部大臣、科学技術庁長官もおられますので、よく連携をとりながらそういう問題についても我々でできることは御協力申し上げたいと思っております。
  285. 小西博行

    ○小西博行君 文部大臣、科学技術庁長官でもこれから先の教育という分野についてはやっぱり試行錯誤ではないかと思うんですね。私は、教育の中の一番基本というのは行動づけではないかと思うんですね。ビヘービアサイエンスという学問がありますけれども、行動科学、やりたくないのに一生懸命やらすというような分野が何かありはしないか。  それから、人も大の教育も同じですけれども、上手に褒めるというところが実は非常に大切でありまして、省庁の皆さん方もいつもしかられるばかりじゃなくて、やっぱりいいときにはいいと褒められるような体制というのが私は必要ではないか、そういう感じがするわけです。  たまたま広中先生の奥さんいらっしゃいますけれども、先生も実は数学が大変堪能になったのは、子供のときのそういうビヘービアサイエンスのおかげだというふうに私は伺ったことがあるわけですけれども、やっぱりその辺が基本ではないだろうか。何もかも全部頭に詰め込んで記憶して、それで将来の日本の科学技術を背負って立てというような方向ではなくて、私は、その人の特異性をうまく刺激してあげる、そういうことがすべてにつながるのではないか、このように思いまして、特に外務大臣の海外からの情報ということも含めて関心を持っていただきたいという意味で質問させていただいたわけです。  終わります。ありがとうございました。
  286. 田英夫

    ○田英夫君 質問に入ります前に、午前中の矢田部委員の御質問に対する政府側の御答弁について、私もどうも納得できない点が多いものですから、若干意見を言わしていただきたいと思います。  それは、理解はできますけれども、アジア局長の御答弁は終始、外国の問題だから意見は差し控えるということであったと思いますが、たまたま手元に、五月六日のアメリカの下院外交委員会アジア・太平洋小委員会、いわゆるソラーズ小委員長委員会ですが、その公聴会の速記録のようなものがありますので紹介をしたいと思いますが、この席に証人としてシグール国務次官補とシフター次官補、人権担当の人ですが、この二人が出ております。もちろんアメリカ日本では議会のあり方が違いますし、証人として出ているというようなこともあります。また、日韓関係と米韓関係が違うことも事実でありますから、そのまま当てはまるかどうかは別として、例えばシグール次官補の答弁の中でこういう言葉を言っています。  「われわれもまた多くの韓国人も全斗煥大統領が四月十三日に憲法改正論議をソウル五輪後まで留保すると発表したことに驚いている。」「憲法改正に向けての努力は米韓両国の発展にとって重要なシンボルであったが、そのシンボルが消えてしまった。」、こう言っています。はっきり意見言っています。  それからシフター次官補は、「韓国の人権状況を見ると、実に憂慮すべき事が多い。」「われわれは外部の侵略から国家を守るために人権が侵害されても止むを得ないとの意見には同調しない。韓国の人権侵害についてわれわれが最も憂慮していることは、韓国政府が非暴力による反対意見に対して司法当局による苛酷な厳罰で対処していることである。さらに政治犯と政治犯に対する厳しい刑の宣告も憂慮すべき事柄である。」、こういうことを言っています。  さらに、ソラーズ委員長が、「あなたは金大中氏のような多くの韓国人に加えられている政治的制約が取り除かれるべきだと考えているのか。」これに対してシグール次官補は、「その通りだ。」と。  こういうことを議会の中でやりとりしているわけでありまして、余りにも外務省の皆さんは韓国の政府側に対して遠慮しておられるんじゃないかというのが私の率直な印象であります。  それからもう一つ外務大臣は先日韓国へ行かれましたから、つい向こうの言葉になれてしまってお使いになったと思いますが、韓半島という言葉をさっき使われました。我が国では一般的に朝鮮半島と言うわけでありまして、これは言葉じりをつかまえるわけじゃありませんけれども、私も先日中国でアジア問題の議論をしたときに、私どもは日本では朝鮮半島と言いますから、あなた方は南朝鮮と呼ぶけれども、私は韓国と申し上げたいと思いますと断って使いました。これに対して、私は中国語はわかりませんけれども、通訳のを聞いておりますと、韓国という字を中国読みにしていると思われる発言をしておりましたので、この点は気がつきましたので申し上げておきたいと思います。  質問に入りますけれども、いわゆる日中問題についてでありますが、最近中国の日本に対する姿勢が極めて厳しいということは事実だと思います。先日も予算委員会で光華寮の問題を取り上げたわけでありますけれども、この最近の一連の中国幹部の日本に対する厳しい姿勢というのはどこに原因があるんだと外務大臣お思いになりますか。
  287. 倉成正

    ○国務大臣(倉成正君) 最近、今委員の御指摘のとおりに、光華寮の問題であるとか、あるいはその前にはいろいろな問題について日本に対するいろいろな批判が中国で行われていることは、先生の御指摘のとおりでございます。  これは私は、日中両国関係が非常に緊密化してくるとともに、社会体制や歴史、文化の相違から両国の間で考え方が食い違う問題もおのずから生じてくるということでございまして、中国の要人の御発言も、そういう緊密化に伴ってやはりいろいろそういう問題が出てくるという点が一面にあろうかと思います。同時に、原則的な問題をやはり中国は大事にするわけでございますから、我々としましては、日中共同声明、日中平和友好条約、これを遵守するという、厳守するという姿勢を貫いておるわけでございますが、そういう点について、中国の原則的な立場について確認を求める、そういう意味があるのじゃないか、そう考えております。
  288. 田英夫

    ○田英夫君 六月には日中閣僚会議がありまして外務大臣もおいでになると思いますが、大いにそういう場をひとつ活用していただきたいと思います。  先日、御存じのとおり、共同通信の記者が追放されるという事件がありました。私のいわば母校でありますから大変心配をしていろいろ相談にも乗ったんですが、これは実に迅速に、共同通信の幹部が中国へ飛びまして中国側と話し合って、しかもそれぞれの意見の食い違いは残ったわけですけれども、にもかかわらず迅速に解決したということは、私は日中関係の諸問題を解決するという中で、外務省と、政府と民間の報道機関とは違いますけれども、一つの最近におけるいい事例ではないかという気がするんです。  そこで、光華寮の問題にまた触れざるを得ないんですけれども、この問題が出てくる背景として、若干御参考に申し上げておきたいことは、予算委員会でも申し上げましたけれども、連休中に私ども十人ぐらいで中国へ参りまして、中国側の国際問題の専門家とアジアの平和というテーマで議論をいたしました、中国側からは国際交流協会の幹部の人たちが出てきたわけですが、同時に社会科学院日本所長、何方という人ですが、この人が日本の問題を語り、あるいは朝鮮問題の専門家、ソ連あるいはアメリカ、ASEAN、そうした地域ごとの専門家が出てきて中国のそれぞれの意見を言う、こういう場面があったわけで、三日間の会議ですが、そこで出てきた中国側の日本に対する姿勢というものは、非常にやはり厳しいものがありました。  日本の一部では、最近の中国の日本に対する厳しい姿勢の原因を、いわゆる最近の中国の保守派と改革派の対立というところに原因を求める意見があるように聞いておりますけれども、この会議に参加をした印象で申し上げるならば、この会議には保守派も改革派もいたのかもしれません。どういう人脈かわかりませんけれども、いずれにしても日本に対して厳しいことを言いました。そして数人の人が同じことを述べましたが、まず第一に、これも予算委員会で言いましたが、靖国神社の公式参拝、教科書の問題、防衛費のGNP一%突破の問題、この三つを一つにして、これは軍国主義のあらわれではないかと思っているということです。そして最近の事例として、ズ・ダン号事件のあの解決のやり方、そして光華寮の判決、これもまた前の三つの問題と関連をさせて考えるならば、軍国主義復活の問題と絡むのではないかと疑わざるを得ない、こういう論理で話をしているわけであります。  鄧小平さんはその前段の部分を除いて光華寮問題だけを話されましたが、それはもう省かれたのであって、中国の論拠は前段の部分が常にあると考えるべきだと思いますし、また、そういうことからも考えて、保守派対改革派の争いというところに問題をすりかえてしまってはいけないというふうに私は感じております。  具体的に伺いたいんですけれども、光華寮判決について、予算委員会で中曽根総理も、三権分立だから行政府が批判をしたり介入したりすることはいかぬ、こういうことで終始をされました。しかし私は非常にそこに疑問を持っています。もちろん行政府や立法府が司法に、つまり判決の内容に立ち入って干渉したりすることは差し控えなければいけないと思いますけれども、三権分立については総理自身昨年の一月に、新聞の切り抜きで見れば、「三権分立関係見直す」という見出しがつくぐらいのことを言っておられるんですね。「戦後四十年たち、三権の関係を見直す必要がある。三権のそれぞれが互いに節度を守って三権の調和をとれるようにするのが、憲法の命じているところだ、行政が独善的にならぬよう、立法が行うべきことを行っているか、また司法がオーバーランするようなことはないだろうか。」、こういう発言をされて一時期問題になったことがあります。  しかし私は、総理自身もこういう程度のことは言っておられるということを前提にして考えますと、逃げてばかりいてはいけないんじゃないかと思います。そして、お答えにくいでしょうけれども、私はきょうこの判決の内容に立ち入って伺わざるを得ないのでありますが、裁判批判ということではなくて、国際条約を結ばれた行政府の立場から、私どももそれを承認した立法府の立場から申し上げたいんで、ぜひお答えをいただきたいと思います。  まず第一に、一九四九年の第四回国連総会で採択された国家の権利義務についての宣言、その十三条、これと光華寮の判決とを比べて、つまりこの十三条では、「各国は条約及び国際法その他の淵源によって生じる義務を誠実に履行するものとし、自国の憲法または法律の規定理由にこの義務を履行しないことがあってはならない。」、こうこの条約規定しているのでありますが、外務省はこの条約と光華寮の判決についてどういうふうにお考えになりますか。
  289. 斉藤邦彦

    政府委員(斉藤邦彦君) ただいま御指摘のありました宣言は、一九四九年に国際法委員会が国家の権利義務に関する宣言草案として作成したものでございます。その後、一九五一年の国連総会決議によりまして、各国のコメントを待って検討を行うということにされましたが、その後、それ以上の検討ないし作業が行われないまま現在に至っているものでございます。  同草案の第十三条に今御指摘のような規定がございます。この宣言自体はただいま申し上げましたとおりまだ採択に至っておりませんが、どの国家も国際法上の義務の実施を免れる理由として自国の憲法その他の法律の規定を援用してはならないという点は、これは国際法上の確立した考え方と言うことができるかと存じます。  この一般原則と申しますか、国際法上の考え方も今回の光華寮裁判についての関係のお尋ねでございますけれども、光華寮の裁判につきましては、現在裁判が係争中でございまして、司法府としての最終的な判断がまだ下されておりませんので、現段階におきまして、国家としては国内法を援用して国際法の義務を免れてはいけないというこの規則がどういうふうに適用されるかというような事態、そもそもそういう事態にまだ立ち至っていないというふうに考えております。
  290. 田英夫

    ○田英夫君 同じお答えが返ってくることを予想しながら伺うんですけれども、一九六九年のウィーン条約条約、この二十七条にも、当事国は、国内法の規定理由として条約の遵守を怠ることはできないというふうに言っておりますし、国際司法裁判所の受理した幾つかの事件の中でもやはり、国家は自国法を引用して他国に対抗し、国際法または国際条約に基づく義務を逃れることはできない、こういう態度をとっている。  今条約局長自身もおっしゃったとおり、こういう考え方というのは国際法の常識として考えられる。特に国連の宣言などは、憲法とあえて書いて、憲法よりも上だ、憲法を理由にして逃れてはいけない、こういうことを書いているのであって、政府としてはおっしゃりにくいでしょうから私から言えば、ここに大阪高裁の判決があります。これも読んでみましたが、大変難解な文章で書いてありますけれども、それを一生懸命読んでみると、明らかにそういう意味では国際法の通念を逸脱した判決だと私は思わざるを得ないのです。  さらに、それどころか、日本国憲法第九十八条第二項に、「日本国締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。」という条項があります。したがって、日本国が中華人民共和国と締結をした日中平和友好条約、そしてそれに先立って行われた日中共同声明、この関連の中から内容を言えば、日中共同声明の第三項で、「中華人民共和国政府は、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する。日本国政府は、この中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重し、」こういう条項があって、それを受けて日中平和友好条約の前文で、「厳格に遵守されるべきことを確認し、」こういうところにつながってくるということを考えますと、先ほどの国際条約との関連の中で、この大阪高裁の判決にあるように、中華民国の所有というような判決は絶対に出てくるはずがないと私は思うんですが、答えられなかったらいいですけれども、これについてどう思われますか。
  291. 斉藤邦彦

    政府委員(斉藤邦彦君) 先ほど私がお答えいたしましたのは一般論でございますけれども、この光華寮の裁判について申し上げれば、予算委員会で外務大臣から御答弁申し上げたとおり、この判決を出すに当たりましては、地裁も高裁も、我が国が国として負っております国際法上の義務、これを十分考慮した上で判決を出したというふうに我々は考えております。  ただいま御指摘の、国内法を援用して国際法上の義務を免れることができない以上、大阪高裁の判決は不適当であるという御指摘でございますけれども、判決そのものにつきまして、行政府の一員である私がここでこれが適当であるとか適当でないとか申し上げることは差し控えさせていただきたいと思いますが、裁判所といたしましてはその点はもう十分に考慮した上であのような判決を出したものであるというふうに我々は考えている次第でございます。
  292. 田英夫

    ○田英夫君 先日私が予算委員会で質問をいたしましたときに、内閣法制局長官が答弁をされた中でも、憲法七十六条第三項は、「すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される。」という規定がありますということをおっしゃった一方で、「国際法にも当然裁判官は拘束されるわけでございます。」と、そういう答弁をされておられて、内閣法制局長官も、国際法国際条約というものに裁判官は拘束をされるということを答弁をされている。今も実は同じような御答弁だったと思いますけれども、これは当たり前のことなんですね。  ところが、今は、大阪高裁の判決はそういうことを十分配慮して下されたと思うとおっしゃいましたけれども、私の読んだ限りではそうなっていないんです。結論もそうなっていない。中華民国という言葉がしばしばこの判決の中に出てくるわけですよ。先ほどの国際法原則からすれば、これは行政府であれ立法府であれ司法であれ、裁判所も国家機関でありますから、当然日本国というものが中華人民共和国と結んだ条約、これには縛られる、そういう意味からすればあの大阪高裁の判決は、強い言葉かもしれませんが、憲法第九十八条の規定からすれば憲法違反の判決をしたとさえ私は言わなければならないと思うんです。こういう私の意見でありますけれども、気がいたします。  そこで、もう一つ別の問題として、果たしてこの判決に言う、中華民国と書いてあるいわゆる中華民国の訴訟を受け付けることができるのかどうかというところまでさかのぼって考えざるを得ないと思うんです。これは実は本来ならば中華民国が日本の裁判所に訴訟を提起することすらできないはずじゃないでしょうか。それをまた受け付けることはもちろんできないというふうに考えざるを得ないと思いますが、この点はいかがでしょうか。
  293. 斉藤邦彦

    政府委員(斉藤邦彦君) ただいまの御質問にお答えする前に、先ほどの田委員の御発言にちょっとお答えさせていただきたいと思いますが、裁判官といえども条約上の義務に拘束されるはずだという点につきましては全く我々も同様に考えております。田委員は、であるとすれば、この前の高裁の判決は憲法違反とも言っていいような不適当な判決だとおっしゃいましたけれども、大変失礼な言い方をさせていただきますが、それは田委員の御見解として承っておきます。私どもといたしましては、裁判所は、我が国国際法上の義務を前提として、それを考慮した上で別の考え方を今回示したというのが現在の段階であるというふうに考えております。  それから、ただいまの台湾当局が訴訟の当事者になれるかどうかという点でございますけれども、このあたりになりますとまさに裁判の内容そのものになりますので、お答えするのをちゅうちょする次第でございますけれども、全くの一般論として申し上げれば、承認されていない立場にある当局の出訴権の有無という問題に関しましては、国際法上の原則として確立された基準があるわけではなくて、この点は各国の民事訴訟法上の規則、法律に従いましてそれぞれ処理されているというふうに理解しております。
  294. 田英夫

    ○田英夫君 もう一つ別の問題として出てくるのは、今の中華民国、台湾が訴訟できるかどうかという点については私は意見を異にするわけです。できないと思いますが、にもかかわらずそれを受け付けて、しかもいわゆる中華民国の所有だという判決を下したことに大変私は疑問を持ちます。  もう一つ別の問題として、いわゆる一国の政府が例えば革命というような形でかわったときに、その国有財産というものは完全承継されるというのが国際法上の慣例ではないでしょうか。今度の判決ではこれは不完全承継であるという判断のもとに、例えば日本にある中国大使館とかそうしたものは承継をされたけれども、この光華寮については承継をされない、不完全だという判断でこれは中華民国の所有だということにしたようでありますけれども、中国のあの政治変革の経緯を見ますと一種の革命のような形で今の中華人民共和国政府ができて、そして国民党政府が台湾に逃れる、こういう経緯があったわけでありますから、一国の政府が革命によって変革をしたという状況と思わざるを得ない。そうなればこれは完全承継にならなければいけないのではないか。中国の国有財産はそっくり中華人民共和国の国有財産になるべきではないかというふうに思いますが、この点はどういう御判断ですか。
  295. 斉藤邦彦

    政府委員(斉藤邦彦君) ただいまの御質問に対しましても全くの一般論としてお答えさせていただきたいと思いますけれども、国際法上、政府が交代しました場合の国有財産の取り扱いにつきましては、国有財産のうちの外交領事財産が新たに承認された政府に帰属することについては全く異論がないところであると考えられます。その他の財産、外交領事財産以外の国有財産の取り扱いにつきましては、種々議論のあるところでございまして、取り扱いも分かれているところであるというふうに理解しております。
  296. 田英夫

    ○田英夫君 今の点ですけれども、中華人民共和国が成立をした過程を大阪高裁の裁判官は私は誤って判断をしているのではないかというふうに思うわけです。つまり、一つの国の一部が独立をしてしまう、あるいはその一部がよその国とくっついて一つの新しい別の国をつくったというような場合には不完全承継ということが認められる、こういうのが国際法上の慣例だろうと思います。したがって、もしかするとこの裁判官は、国民党が台湾に一つの政権をつくっているというこの事実をもって、これは一つの独立した政権、独立した国と言っていいかもしれませんが、そういうものが台湾にあると。要するに、これは別の言葉で言えば、承認されていない事実上の政府日本政府承認していないわけですから、承認されていない事実上の政府と認めて、そしてこれに所有権を認めたのではないかというふうに思われるわけです。果たして中華人民共和国が成立をした過程をそういうふうに受け取っていいのかどうかということにかかわってくるんじゃないか。  そして、それと日本国との関係で言えば、日本国は明らかに、日中共同声明並びにそれをもとにした日中平和友好条約によって、中国は一つ、台湾はその一部ということを明快に認めたわけでありますから、これは何も行政府が認めたわけじゃありませんね、そして立法府が認めたわけじゃありません、日本国が認めたということになるわけでありますから、その日本国の国家機関である裁判所もまたこれに従わなければならないはずであるにもかかわらず、大阪高裁の判決によると、これは承認されていない事実上の政府というような表現で、そしてあそこに一つの国があると認めた判決になっているんじゃないか。とすれば、それは重大な国際法違反であり、日本の憲法にさえ抵触するのではないかというのが私の考え方ですが、この点については政府はどうお考えになりますか。
  297. 斉藤邦彦

    政府委員(斉藤邦彦君) だんだん裁判の内容そのものにわたってまいりますので、お答えしにくくなってくるわけでございますけれども、我が国政府が一九七二年に日中共同声明を発出しまして以来、台湾を国として扱ったりあるいは台湾当局を中国を代表する政府として認めていないという点は御承知のとおりでございます。  政府といたしましては、日中共同声明、日中平和友好条約に示されました日本政府の立場、すなわち中国の唯一の合法政府としては中華人民共和国政府であるという点、それから台湾は中国の一部であるという中華人民共和国の主張、立場を理解し尊重するということ、この態度というのは不変でございまして、この日本政府の立場、これは当然裁判所といたしましても考慮をした上での今回の判決であるというふうに我々は考えている次第でございます。
  298. 田英夫

    ○田英夫君 この機会に台湾の問題について。  私も実は台湾に行ったことがありますし、またその機会に台湾の国民党の幹部あるいは総理大臣以下政府の幹部ほとんどと会談をしたことがあります。また、さきにできました民主進歩党の人たちとも何回か日本アメリカで会談をいたしましたから、台湾の状況についても若干は知っているつもりです。そして、特に台湾の人たち、つまり国民党の人は大陸から渡ってきたわけですが、本来台湾の土着の人たち、この人たちは非常に特別の感情を大陸の中国に対して持っているということが言えるんじゃないでしょうか。つまり、中国は一つだということを考えている人がほとんど大部分なんですね。ほんの一部の人が独立ということを言っていることは事実であります。  そういう中で、逆に今度は北京の方の中国の人たちが考えている台湾との関係ということについては、もちろん台湾は中国の一部だということが基本でありますけれども、現実に国民党政府がある。これに対して、先日北京に行ったときに統一戦線部の幹部の人たちと会談をする機会がありました。そこで北京の人たちの台湾に対する原則は、国民党の考え方も尊重する、こう言うんですね。同時に台湾の人たちの考えも尊重する、これが我々の基本的な台湾問題についての考えですということを話してくれたわけです。したがって、基本原則はもちろん中国の一部だが、現実にそこにある政権というものに対して国民党の考えも尊重するという姿勢をとっている。これは一見驚きでありますけれども、しかしそこが中国の非常に大きな懐の深さではないかという気もしたわけです。民主進歩党を初めとする台湾の人たちは、台湾の将来については自分たちの意見を尊重しろという点でコンセンサスを持っている、独立ということを言う人以外は。  こういうことを今我々は頭の中にとどめながら、この光華寮判決のような過ちを犯してはいけないというのが私の率直な気持ちです。  どうぞひとつ、外務大臣は六月に中国においでになりましたときに、ただ日本は三権分立だから行政府は司法に対して意見を言えないんだというようなことだけでは、中国側は到底納得しないと思うんですね。より立ち入って日本の基本的な姿勢、さっき外務大臣もおっしゃいましたけれども、日中共同声明に盛られた精神を基本にして、こういうふうに思っているんだと。ただ解決には若干時間が要るということを理解してもらう以外にないと思います。  日中友好議員連盟もこの問題については頭を痛めて、役員会で既に相談を始めておりますし、衆議院の外務委員会できのう公明党の方から御提言があったということも承っておりますが、この点は共同通信の解決に倣えとは言いませんけれども、何も時間をかけるだけが私はいいことではないと思います。また、時間をかけることはいら立ちをむしろ大きくするんじゃないかという気もいたします、  外務大臣に最後にひとつ御所感を伺って終わりたいと思います。
  299. 倉成正

    ○国務大臣(倉成正君) 田委員の大変貴重な御意見をちょうだいいたしまして、ありがとうございました。
  300. 田英夫

    ○田英夫君 終わります。
  301. 宮澤弘

    委員長宮澤弘君) 他に御発言もないようですから、十一案件に対する質疑は終局したものと認めます。     ―――――――――――――
  302. 宮澤弘

    委員長宮澤弘君) この際、委員の異動について御報告いたします。  ただいま、大鷹淑子君及び三池信君が委員を辞任され、その補欠として曽根田郁夫君及び宮崎秀樹君が選任されました。     ―――――――――――――
  303. 宮澤弘

    委員長宮澤弘君) これより十一案件を一括して討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
  304. 立木洋

    ○立木洋君 十一件のうち四件の条約協定議定書について反対の立場から意見を述べさせていただきます。  まず最初に私は、米軍地位協定に関する日米特別協定に反対の討論を行います。  第一の理由は、特別協定方式を採用したことによって米軍地位協定を事実上改定し、米軍駐留経費の際限ない日本負担への道を切り開くことになったことであります。  アメリカは、一九八〇年にピンクニー米国防次官補が証言したように、米軍人の給与を除く駐留経費日本側に負担させようとしておりますが、基地労働者の給与のように米軍負担が義務づけられたものは米軍地位協定上不可能であります。そこで、アメリカの対日要求に全面的にこたえるための措置としてつくられたのが本特別協定であります。したがって、手当にとどまらず給与本体などにもこれが拡大される危険性が十分にあるのであります。  第二の理由は、日本の軍事費拡大に拍車をかけ、福祉、教育等国民生活予算をますます削減し、犠牲を大きくすることであります。六十二年度予算に計上された百六十五億円のために国民、特に弱者は泣いているのであります。負担分の五分の一の額でもこうした犠牲をもたらしており、これが二分の一限度額まで負担拡大となれば、国民は一層深刻な事態に追い込まれることは必至であります。国民をないがしろにする特別協定はこの意味でも認められないのであります。  第三の理由は、今回の労務費分担は、一九八七年度予算におけるGNP比一%枠取り外しとともに一千海里シーレーン防衛の軍事分担と一体のものであって、日本の安全を守るどころか、反対に日本アメリカの有事に参戦させる体制づくりに一層深く組み込むものであることにほかならないからであります。  次に、多数国間投資保証機関を設立する条約についての反対の討論を行います。  本条約は、これまで国家的投資保証制度になかった在外子会社による投資、複数にわたる共同投資などを新たに加え、さらに受け入れ国での出資規制、国産品使用義務、雇用規制などの民主的規制の緩和をもくろみ、受け入れ国に投資する多国籍企業などに、より自由な活動を保障し、より一層の高収益を保障するものにほかならないからであります。MIGAは、投資に対して保証を行う前に、受け入れ国の同意を求めることを大きな特徴としていますが、これは、万一事故があった場合、MIGAの代位求償を求め、発展途上国の開発資金の枯渇という弱みにつけ込んで受け入れ国の経済主権をないがしろにする重大な内容も指摘せざるを得ません。  このように、本条約は、発展途上国の要求である新たな国際経済秩序樹立ての経済的諸権利を事実上制限し、アメリカ中心とする支配と従属の旧体制的国際秩序の再編強化につながるものであります。  また、円高不況のもとでの日本においては、我が国の産業の空洞化を一層促進し、国民に重大な打撃を与えるものであることなどにより本条約に反対をするものであります。  次に、関税及び貿易に関する一般協定ジュネーヴ議定書について反対の討論を行います。  本議定書に盛り込まれている我が国の譲許表は、東京ラウンドなどで、アメリカなどによる不当な対外圧力によって引き下げられてきた関税率を内容としており、賛成できないものであります。  最後に、民間航空機貿易に関する協定附属書改正する議定書についてでありますが、本議定書は、我が国の民間航空機の自主的開発を阻害する自由化措置を内容とした民間航空機の貿易に関する協定に基づくものであり、我が党は、民間航空機の自主的開発の立場から本議定書にも反対するものであります。  以上、四件についての反対の討論を終わります。
  305. 宮澤弘

    委員長宮澤弘君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。  これより採決に入ります。  まず、文化交流に関する日本国政府ソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の協定締結について承認を求めるの件の採決を行、います。  本件を承認することに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  306. 宮澤弘

    委員長宮澤弘君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。  次に、商品名称及び分類についての統一システムに関する国際条約及び商品名称及び分類についての統一システムに関する国際条約改正に関する議定書(千九百八十六年六月二十四日にブラッセルで作成)の締結について承認を求めるの件の採決を行います。  本件を承認することに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  307. 宮澤弘

    委員長宮澤弘君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。  次に、原子力事故早期通報に関する条約締結について承認を求めるの件の採決を行います。  本件を承認することに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  308. 宮澤弘

    委員長宮澤弘君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。  次に、原子力事故又は放射線緊急事態の場合における援助に関する条約締結について承認を求めるの件の採決を行います。  本件を承認することに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  309. 宮澤弘

    委員長宮澤弘君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。  次に、 多数国間投資保証機関を設立する条約締結について承認を求めるの件の採決を行います。  本件を承認することに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  310. 宮澤弘

    委員長宮澤弘君) 多数と認めます。よって、本件は多数をもって承認すべきものと決定いたしました。  次に、関税及び貿易に関する一般協定ジュネーヴ議定書(千九百八十七年)の締結について承認を求めるの件の採決を行います。  本件を承認することに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  311. 宮澤弘

    委員長宮澤弘君) 多数と認めます。よって、本件は多数をもって承認すべきものと決定いたしました。  次に、民間航空機貿易に関する協定附属書改正する議定書(千九百八十六年)の締結について承認を求めるの件の採決を行います。  本件を承認することに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  312. 宮澤弘

    委員長宮澤弘君) 多数と認めます。よって、本件は多数をもって承認すべきものと決定いたしました。  次に、国際花と緑の博覧会政府代表設置に関する臨時措置法案の採決を行います。  本案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  313. 宮澤弘

    委員長宮澤弘君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  次に、日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並び日本国における合衆国軍隊地位に関する協定第二十四条についての特別の措置に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定締結について承認を求めるの件の採決を行います。  本件を承認することに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  314. 宮澤弘

    委員長宮澤弘君) 多数と認めます。よって、本件は多数をもって承認すべきものと決定いたしました。  次に、国際的に保護される者(外交官を含む。)に対する犯罪防止及び処罰に関する条約締結について承認を求めるの件の採決を行います。  本件を承認することに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  315. 宮澤弘

    委員長宮澤弘君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。  次に、人質をとる行為に関する国際条約締結について承認を求めるの件の採決を行います。  本件を承認することに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  316. 宮澤弘

    委員長宮澤弘君) 全会一致と認めます、よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。  なお、十一案件の審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  317. 宮澤弘

    委員長宮澤弘君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ―――――――――――――
  318. 宮澤弘

    委員長宮澤弘君) この際、御報告いたします。  政府から、国連に対する女子差別撤廃条約実施状況報告が、本委員会の女子差別撤廃条約に関する決議に基づき本委員会に提出されました。  本日、各派理事の承認が得られましたので、これをお手元に配付することにいたしましたので、御報告いたします。     ―――――――――――――
  319. 宮澤弘

    委員長宮澤弘君) 国際開発協力基本法案を議題といたします。  発議者中西珠子君から趣旨説明を聴取いたします。中西珠子君。
  320. 中西珠子

    委員以外の議員(中西珠子君) ただいま議題となりました国際開発協力基本法案につきまして、公明党・国民会議を代表し、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。  世界に類を見ない平和憲法を持つ我が国は、宇宙船地球号のどのメンバーとも平和的共存共栄を図らねばなりません。特に開発途上国の経済的、社会的発展への自助努力を支援し、殊に、貧困や飢餓に悩む開発途上国の草の根の人々の生活の安定や福祉の増進に資するような援助や協力を行い、社会正義に基づいた恒久的な世界平和の達成のため、積極的に貢献することは我が国の国際的責務であります。  しかし、これまでの我が国政府開発援助(ODA)は貿易の伸長等、自国の経済的利益を図ることを目的としたものが多く、被援助国の支配層と日本の企業のみを潤しているとの批判が後を絶ちません。これからの我が国のODAは、開発途上国の最貧困層が人間としての基本的ニーズを満たし、人としての尊厳を保ち、開発の成果を基本的人権として享受できるようなものにしていかなければなりません。  このようなODAの重要性にもかかわらず、我が国においてはこれに関する基本的な法律がなく、またこれに携わる官庁も、外務、大蔵、通産、経企等多省庁にわたり、施策の一体化を図るための体制整備が必要である等の問題が指摘されてきました。さらに、現在の国会における予算等の審査ではODAの内容が十分に明らかにされず、援助をめぐる疑惑等が生ずることのないよう国会が事前にこれに関与すべきであるとの根強い意見があります。  このような状況から、今般ODA基本法たる本法案を提出し、ODAに関する基本原則を定めるとともに、ODAに関する計画は国会による承認を要することとし、またODAのための一元的組織として国際開発協力庁及び国際開発協力事業団を設置しようとするものであります。  以下、本法案の内容を申し上げます。  第一に、基本原則等に盛られた考え方について申し上げます。  ODAは開発途上国の経済的、社会的発展への自助努力を支援することを旨とし、主権の相互尊重、平等、内政不干渉の原則に従うべきは当然ですが、軍事的用途に当てられたり、国際紛争を助長するような、いわゆる戦略援助は行ってはならないことを明らかにいたします。  経済インフラストラクチャーの建設に偏っていた我が国のODAが開発途上国の環境破壊や住民の生活基盤の喪失をもたらした例も少なくありません。このような結果とならないよう、十分な配慮が必要であります。援助案件が被援助国の草の根の人々の生活の安定と福祉の増進につながり、被援助国の経済的、社会的発展に真に役立つか否かを見きわめるため事前調査を強化徹底する必要があります。  また、当該国に援助を行っている外国の政府や民間組織や国際機関と協議、協力し、これらの行っている援助我が国のODAとの重複を避け、相互補完的、効率的、効果的なものとするよう努める必要があります。  OECDのDAC(開発援助委員会)の最新の統計によれば、日本のODAはDAC加盟国中、ODAの質をあらわす贈与比率においても、グラントエレメントにおいても、ともに最下位であり、技術協力の割合もDAC加盟国平均の半分以下であります。六十二年一月に行われたDACの対日審査においても、ODAの質の向上と、量的増加、すなわち対GNP比の引き上げを要請されたところであります。量的増大については、政府は最近、日本の膨大な貿易黒字に対する国際的批判を和らげる目的もあって、第三次ODA倍増計画の目標達成を二年繰り上げる旨発表いたしましたが、ODAの資金は国民から徴収された税金、その他の貴重な財源で賄われるものであり、納税者である国民に対し資金の使途等を明らかにし、ODAに関する情報を公開すべきであります。また国民の理解を深めるため開発教育の振興など適切な措置をとるべきであります。  第二に、国際開発協力計画について申し上げます。  政府は、ODAは開発途上国の要請に基づいて行われるものだからと要請主義を振りかざして、ODAの総合的計画を国会に提出することなく、ODA予算の増大を年々図っておりますが、国民の税金等で賄われるODAの総合的計画を国民の前に明らかにすべきであります。それゆえ、本法案におきましては、政府に対し、国別、分野別、協力形態別の計画、並びに、国際機関への出資等の計画をその見込み額等関係参考資料を添えて、提出することを義務づけております。なお、協力案件で二年度以上にわたり実施が予定されているものについては、その内容や実施の期間を明らかにするものとしております。また、政府国会承認を受けた計画に基づかない援助を行ってはならず、ただし、災害にかかわる援助や緊急を要するものはその例外としております。さらに、政府国会に対する報告を義務づけるとともに国会の国政調査権を十分に行使できるようODAに関する必要資料を政府は速やかに国会に提出するよう努めるものといたしております。  第三に、国際開発協力庁及び国際開発協力事業団の設置について申し上げます。  ODAの量的増大のみならず、質的改善を図り、適正かつ、効率的、効果的な推進を図り責任の所在を明確化するため援助行政の一元化をすることとしております。このため、総理府の外局として国務大臣を長とする国際開発協力庁を置き、開発協力の総合的企画、立案、実施等に関する行政を行わしめ、それが管轄する実施機関として、国際協力事業団と海外経済協力基金を統合した国際開発協力事業団を置くものとすることにしております。  現在ODA予算は十五省庁にまたがり、総合調整が十分に行われておらず、特に借款はいわゆる四省庁体制で行われており、責任の所在が明確でありません。援助行政の一元化が必要なゆえんであります。  さらに、開発協力に係る調査、研究、評価、案件の実施、管理などに従事する人材の養成並びに開発途上地域に派遣する者の訓練を行う特別の機関として、国際開発協力庁に開発協力技術センターを置くものとし、現在の国際協力事業団の国際協力総合研修所の拡大強化を図っております。  なお、開発途上地域に民間から派遣する者の生活の安定に資するため、職業の安定に関し必要な施策を講じることを政府に義務づけております。  また、開発協力が開発途上国の草の根の民衆を潤すことができるよう民間の非営利団体や地方公共団体等を活用し、必要な補助を与え、欧米先進国で広く行われているコオ・ファイナンス・システムの確立を目指しております。  以上が本法案の概要でありますが、六十一年十二月の国連総会で採択された開発の権利に関する宣言にも明らかなように、開発援助という言葉を好まない開発途上国の心情を考慮に入れて、本法案においては政府開発援助という表現を避けて、国際開発協力という用語を使用しております。  何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。  どうもありがとうございました。
  321. 宮澤弘

    委員長宮澤弘君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。     ―――――――――――――
  322. 宮澤弘

    委員長宮澤弘君) 次に、請願の審査を行います。  第七五一五号核兵器廃絶のための国際的取決めに関する請願を議題といたします。  まず、専門員から説明を聴取いたします。小杉専門員。
  323. 小杉照夫

    ○専門員(小杉照夫君) 今国会中、外務委員会に付託されました請願は、お手元の表のとおり核兵器廃絶のための国際的取決めに関する請願一件でございます。  その願意は、核兵器廃絶のために、第三回国連軍縮特別総会に向けて実効ある国際取り決めができるよう努めることを要請するものであります。  以上でございます。
  324. 宮澤弘

    委員長宮澤弘君) 以上で説明は終わりました。  理事会において協議いたしましたところ、第七五一五号核兵器廃絶のための国際的取決めに関する請願は保留とすることに意見の一致を見ました。  この理事会の協議のとおり決定することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  325. 宮澤弘

    委員長宮澤弘君) 御異議ないと認め、さよう決定いまします。     ―――――――――――――
  326. 宮澤弘

    委員長宮澤弘君) 継続審査要求に関する件についてお諮りいたします。  国際開発協力基本法案につきましては、閉会中もなお審査を継続することとし、本案の継続審査要求書を議長に提出いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  327. 宮澤弘

    委員長宮澤弘君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  なお、要求書の作成につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  328. 宮澤弘

    委員長宮澤弘君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ―――――――――――――
  329. 宮澤弘

    委員長宮澤弘君) 次に、継続調査要求に関する件についてお諮りいたします。  国際情勢等に関する調査につきましては、閉会中もなお調査を継続することとし、本件の継続調査要求書を議長に提出いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  330. 宮澤弘

    委員長宮澤弘君) 御異議ないと認め、さよう決定いまします。  なお、要求書の作成につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  331. 宮澤弘

    委員長宮澤弘君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ―――――――――――――
  332. 宮澤弘

    委員長宮澤弘君) 次に、委員派遣に関する件についてお諮りいたします。  閉会中の委員派遣につきましては、その取り扱いを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  333. 宮澤弘

    委員長宮澤弘君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時四十六分散会      ―――――・―――――