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1987-04-14 第108回国会 衆議院 予算委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十二年四月十四日(火曜日)     午前十一時二分開議 出席委員   委員長 砂田 重民君    理事 今井  勇君 理事 野田  毅君    理事 浜田 幸一君 理事 林  義郎君    理事 吹田  愰君 理事 上田  哲君    理事 川俣健二郎君 理事 池田 克也君    理事 吉田 之久君       相沢 英之君    愛野興一郎君       伊藤宗一郎君    上村千一郎君      小此木彦三郎君    小渕 恵三君       越智 通雄君    奥野 誠亮君       海部 俊樹君    片岡 清一君       片岡 武司君    小坂徳三郎君       左藤  恵君    桜井  新君       志賀  節君    田中 龍夫君       西岡 武夫君    原田  憲君       福島 譲二君    細田 吉藏君       武藤 嘉文君    村田敬次郎君       村山 達雄君    谷津 義男君       山下 元利君    井上 一成君       井上 普方君    稲葉 誠一君       川崎 寛治君    菅  直人君       左近 正男君    嶋崎  譲君       細谷 治嘉君    坂口  力君       冬柴 鉄三君    水谷  弘君       宮地 正介君    木下敬之助君       楢崎弥之助君    金子 満広君       寺前  巖君    野間 友一君  出席国務大臣         内閣総理大臣  中曽根康弘君         国 務 大 臣 金丸  信君         法 務 大 臣 遠藤  要君         外 務 大 臣 倉成  正君         大 蔵 大 臣 宮澤 喜一君         文 部 大 臣 塩川正十郎君         厚 生 大 臣 斎藤 十朗君         農林水産大臣  加藤 六月君         通商産業大臣  田村  元君         運 輸 大 臣 橋本龍太郎君         郵 政 大 臣 唐沢俊二郎君         労 働 大 臣 平井 卓志君         建 設 大 臣 天野 光晴君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     葉梨 信行君         国 務 大 臣         (内閣官房長官後藤田正晴君         国 務 大 臣         (総務庁長官) 山下 徳夫君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)         (沖縄開発庁長         官)         (国土庁長官) 綿貫 民輔君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 栗原 祐幸君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      近藤 鉄雄君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)     三ッ林弥太郎君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 稲村 利幸君  出席政府委員         内閣官房長官 渡辺 秀央君         内閣法制局長官 味村  治君         内閣法制局第一         部長      関   守君         警察庁交通局長 内田 文夫君         総務庁長官官房         審議官         兼内閣審議官  勝又 博明君         総務庁長官官房         交通安全対策室         長       矢部 昭治君         総務庁人事局次         長         兼内閣審議官  田中  史君         総務庁統計局長 三浦 由己君         防衛庁参事官  瀬木 博基君         防衛庁参事官  古川 武温君         防衛庁参事官  児玉 良雄君         防衛庁参事官  筒井 良三君         防衛庁長官官房         長       友藤 一隆君         防衛庁防衛局長 西廣 整輝君         防衛庁教育訓練         局長      依田 智治君         防衛庁人事局長 松本 宗和君         防衛庁経理局長 池田 久克君         防衛庁装備局長 鎌田 吉郎君         防衛施設庁長官 宍倉 宗夫君         防衛施設庁総務         部長      平   晃君         防衛施設庁施設         部長      岩見 秀男君         防衛施設庁労務         部長      西村 宣昭君         経済企画庁調整         局長      川崎  弘君         経済企画庁国民         生活局長    横溝 雅夫君         経済企画庁物価         局長      海野 恒男君         科学技術庁長官         官房会計課長  武田  昭君         環境庁長官官房         長       山内 豊徳君         環境庁企画調整         局長      加藤 陸美君         環境庁企画調整         局環境保健部長 目黒 克己君         環境庁自然保護         局長      古賀 章介君         環境庁水質保全         局長      渡辺  武君         国土庁長官官房         長       清水 達雄君         国土庁長官官房         会計課長    佐々木 徹君         外務省北米局長 藤井 宏昭君         外務省経済協力         局長      英  正道君         外務省条約局長 斉藤 邦彦君         外務省国際連合         局長      中平  立君         大蔵省主計局長 西垣  昭君         大蔵省主税局長 水野  勝君         大蔵省国際金融         局長      内海  孚君         文部大臣官房長 古村 澄一君         文部省教育助成         局長      加戸 守行君         文部省高等教育         局長      阿部 充夫君         文部省体育局長 國分 正明君         文化庁次長   久保庭信一君         厚生大臣官房総         務審議官    長尾 立子君         農林水産大臣官         房長      甕   滋君         農林水産大臣官         房予算課長   上野 博史君         通商産業大臣官         房審議官    末木凰太郎君         通商産業省産業         政策局長    杉山  弘君         資源エネルギー         庁長官     野々内 隆君         資源エネルギー         庁次長     見学 信敬君         中小企業庁長官 岩崎 八男君         運輸大臣官房国         有鉄道改革推進         総括審議官   林  淳司君         運輸省運輸政策         局長      棚橋  泰君         運輸省地域交通         局長      熊代  健君         運輸省海上技術         安全局長    間野  忠君         運輸省海上技術         安全局船員部長 増田 信雄君         郵政省貯金局長 中村 泰三君         労働大臣官房長 岡部 晃三君         労働省労政局長 小粥 義朗君         労働省労働基準         局長      平賀 俊行君         労働省職業安定         局長      白井晋太郎君         建設大臣官房長 高橋  進君         建設大臣官房会         計課長     市川 一朗君         建設省都市局長 北村廣太郎君         建設省道路局長 鈴木 道雄君         建設省住宅局長 片山 正夫君         自治省財政局長 矢野浩一郎君         自治省税務局長 津田  正君  委員外出席者         予算委員会調査         室長      右田健次郎君     ――――――――――――― 委員の異動 四月十四日  辞任         補欠選任   宇野 宗佑君     片岡 武司君   原田  憲君     谷津 義男君   松野 幸泰君     片岡 清一君   井上 普方君     左近 正男君   大久保直彦君     冬柴 鉄三君   不破 哲三君     野間 友一君 同日  辞任         補欠選任   片岡 清一君     松野 幸泰君   片岡 武司君     宇野 宗佑君   谷津 義男君     原田  憲君   冬柴 鉄三君     大久保直彦君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  昭和六十二年度一般会計予算  昭和六十二年度特別会計予算  昭和六十二年度政府関係機関予算      ――――◇―――――
  2. 砂田重民

    砂田委員長 これより会議を開きます。  昭和六十二年度一般会計予算昭和六十二年度特別会計予算昭和六十二年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、総括質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。上田哲君。
  3. 上田哲

    上田(哲)委員 今回の選挙の結果について、総理は、これを厳粛に受けとめると発言されているようであります。厳粛に受けとめるということの意味合いをもう少しく突っ込んでお聞かせいただきたいと思います。
  4. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 民主政治主権在民政治でございまして、主権在民という場合の意思表示の一つとして選挙ということがあるわけでございます。今回の選挙統一地方選挙でございまして、地方自治体建設を主眼にいろいろ住民意思を問う、そういう選挙であったと思います。そういう意味におきまして、地方自治体建設に対して住民がどのようにその意思を表明したか、そういう点をよく我々としても理解もし、また住民の欲しているところもよくわきまえまして政治参考にさせていただかなければならない、そう考えた次第でございます。
  5. 上田哲

    上田(哲)委員 大変平板な御感想でありまして、政治参考という言葉にとどまってはならないと私は思うのでありますが、どれほど重要な参考にされるとお受け取りでありますか。
  6. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 今回の選挙は、統一地方選と言われますように、自治体建設府県なりあるいは市町村、今回の場合は都道府県に関するものでありあるいは政令都市に関する問題でございましたが、それらの都市あるいは都道府県建設につきまして、それをだれにゆだぬべきか、そういうような観点から首長並びに議会議員に対して投票が行われました。それらにつきまして、その結果等については我々も厳粛に受けとめておる。  我々はしかし国会議員でございまして、国権の最高機関を構成する一員として国政に携わる者でございますが、地方自治体国政に関係するものもございますが、地方自治の本旨にかんがみまして、地方を主体とするというそういう場面もかなり多い面もあるわけでございます。そういう意味におきまして、我々といたしましては、適正に住民意思というものを尊重し、また厳粛に受けとめておる、そういうことでございます。
  7. 上田哲

    上田(哲)委員 総理の御見解は、今回の選挙がやはり地方自治にかかわるものであるという点を特に強調されて、故意中央政治に対する大きな指針が与えられたものであるという観点が欠落していると私は思います。今回の結果はかなりトラスチックなものでありまして、これは政治の潮流を大きく変えるものである、こういう御認識はお持ちになりませんか。
  8. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 これは今後の政治の動きというものを見なければわかりませんが、国政地方自治というものはまたおのずから別の面もあり、また権限も違うわけでございます。地方自治体首長あるいは議会議員皆さんは法律をつくるわけにはまいりません。国家予算をつくる立場にはございません。しかし、地方自治体の条例なりあるいは予算をつくる権限はお持ちでございます。おのずからそういう分業が行われているわけでございまして、そういう点もわきまえなければならない。  しかし一面において、売上税というものもいろいろ論議の対象になったということも知っておりますし、売上税影響もあったというように私も認識しております。そういう意味におきましては、それらについてもよくこれを受けとめて、そして我々としてどういうふうに適正に処理したらよろしいか考うべき点もあると思っております。
  9. 上田哲

    上田(哲)委員 ようやく、今回の選挙売上税選挙という側面を大きく持っていたものであるということをお認めになったように伺いました。絞って申し上げると、この選挙の結果というのは自民党にとって大きな敗北であったというふうにお受け取りになりませんか。
  10. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 いろいろな結果が出ていますが、一般的に言えば我々が期待したほど振るわなかった。しかし、東京のような場合は、上田さん御存じのように都会議員補欠で五人のうち四人は自民党がとった、そういう局部現象もありました。しかし、全般的に見ればただいま申し上げたとおりであります。
  11. 上田哲

    上田(哲)委員 どうも言葉で言えば負け惜しみの御発言のようでありまして、私は、厳粛にと言われる言葉はもっと本当の意味で厳粛に受け取られるべきであると思います。群馬という話も出ていますが、そうした話は武士の情けで別にいたしましても、特にやはり国民全体が注視しておりました焦点の場所、知事選挙で申し上げれば北海道福岡、これは我が方の勝利であり、自民党の思わざる敗北であったと思います。いかが御認識でありますか。
  12. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 北海道及び福岡はいわゆる革新系現職知事さんがおられまして、やはりいろいろやってみましたが、二期目の現職知事さんというのはいかに強いか。今までやはりそうでした。東京でも、美濃部さんに対して秦野さんが二期目に挑戦しましたが、かなり水をあけられました。今度もやはり同じような県があります。ただし福岡はかなり健闘していただいた。我々の候補も本当に御苦労さまであったと思っております。
  13. 上田哲

    上田(哲)委員 これは将棋の勝敗などというものではないのであって、紛れもなく総理の心中にも、この北海道福岡勝敗というものが今、国会でも中心になっている税制問題に非常に大きな影響を与えるものだという御認識があったはずであります。そういう立場がもしおありになったとするならば、この敗北というのは非常に深刻に受け取らるべきものではないか、その税制問題についての影響を深くするものではないかと思うのですが、いかがですか。
  14. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 確かに売上税問題というものも影響があったと私は申し上げておるところでございます。
  15. 上田哲

    上田(哲)委員 この選挙の結果は、そうした北海道福岡等知事選挙の問題もあります。勝敗は所を変えませんでしたが、岩手や島根の接戦の状況というものも非常に大きな示唆を与えていると思うのですが、それ以上に、都道府県議会議員選挙、この結果というのは、自民党にとってはより深刻なものとしてお受け取りになってはおられませんか。
  16. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 期待したほど伸びないで不振でありまして、まことに残念であり、我々も反省しなければならぬところがあると思います。
  17. 上田哲

    上田(哲)委員 どういう反省ですか。
  18. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 住民意思が那辺にありや、我々の日常の組織活動等が当を得ていたかどうか、そういうような諸般の酢について我々として反省しなければならぬと思います。候補者を立て過ぎたという面もまた一面にはあったと思います。
  19. 上田哲

    上田(哲)委員 これは選挙技術論でとりえられてはならないと思うのであります。  道府県議会選挙の結果というのは、自民党にとっては、前回五十八年の千四百八十七から何と百五も減らしているわけでありまして、この千三百八十二というのは五十年の千三百九十一にも及ばない、保守合同以来の最低でありますね。政令都市は二百三十二から二十八も減って二百四。つまりこういう史上最低の打撃というのは、知事選挙のような大きい選挙では勝ち負けというところではまだあらわれ切れなかった部分があろうかとは思いますけれども、こうした草の根のレベルで自民党がこれまでにない大敗を喫したということは、選挙技術の問題ではなくて、自民党への草の根からの大きな批判というものがあった、その意味では私は政権党としての深刻な反省があってしかるべきだと考えるのですが、いかがでしょうか。
  20. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 府県会議員につきまして非常に振るわなかった点は、大いに反省しなければならぬと思っております。
  21. 上田哲

    上田(哲)委員 総理反省の弁は非常に平板であって、私はやはり、この選挙の持っていた意味合い故意に深く受けとめまいとされるように思えてならないのであります。  率直に申し上げるけれども、このような大きな選挙の結果、自民党大敗というべき姿、史上最低敗北というべき数字というのは、一番大きな問題としてやはり総理公約違反、もっと生の言葉で申し上げると、総理大臣うそというものに対する批判であったと受けとめるべきではありませんか。
  22. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 売上税につきましては、いろいろ御論議をいただいたことも承知しております。しかし、前から申し上げておりますように我々の努力が足りなかった、特に売上税内容あるいはやり方等についていろいろ御理解をいただくことが不足であったという点を、また大いに反省をしておるところでございます。
  23. 上田哲

    上田(哲)委員 総理は、昨日の新聞報道によりますと、お話の中で、この税制について、つまり売上税について、かなり国民の中にはわかってきてくれているというような趣旨のことを言われておるようであります。とすると、それにもかかわらず、自民党を大きく後退せしめた世論というのは、まだわかっていない国民が多かったということになるのですか。
  24. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私が申し上げたのは、税制改革は必要である、特に所得税法人税の大きな減税を大至急やってくれ、そういう強い御意思国民皆様方にあり、これは実行しなければならぬ、そう思っております。それを埋め合わせる財源として間接税に移行する、そういう意味の、所得税法人税の大減税の見合いとして間接税方向に移行していくというそういう方向についで、大体国民皆さんもわかりかけていただいた、そう申し上げたのでございます。  売上税につきましては、我々として、内容やらあるいはやり方その他についてまだ努力不足であり、国民皆さんに御理解を得ることができなかったことはまことに残念でありますと、そう申し上げている。でありますから、できるだけ大蔵委員会におきましてその税それらについて議論をして、そして国民皆さんあるいは野党の皆さんの声にも耳を傾けて、謙虚な態度で相対したい、そういうことも申し上げた次第なのであります。
  25. 上田哲

    上田(哲)委員 私は、大変総理反省が足りないと思うのであります。国民売上税を十分に理解をしていたと私は思います。各新聞等のあらゆる世論調査を見ましても、売上税に対する反対が八〇%を超えておる。こういう数字というのは大変異常な数字でありまして、これをもってなお国民が十分な理解が届いていなかったというふうな御見解では、私はこれは衆愚政治の感覚につながるであろうと思います。  そういう売上税理解も十分透徹したと思うし、なるがゆえにこそこのような大きな激変が生まれたのであるが、そのやはり第一の課題は総理公約違反にあった、内容の問題もさることながら、それ以前の公約違反にあった、この点をやはり総理は明らかに認識されるべきであると思います。
  26. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 その点は前から申し上げたとおりでございますが、税制調査会にも諮問したり、党の税調でもいろいろ議論していただき、その結果、公約違反にならないようにいろいろ注意してつくっていただいたわけでありますが、その点に対する、国民皆さんはそういう細かいところはわからない点でございますから、そういう意味におきまして誤解を受けたということは申しわけない、そう考えておるところでございます。
  27. 上田哲

    上田(哲)委員 これは非常におかしい発言でありまして、総理は、公約違反をしていないうそはついていないが、国民がわかってないのだ、これは私は基本的な反省の欠如だと思うのです。  数字が明らかにしているところでありまして、もう一遍伺うのだが、総理はやはりこの数字選挙の結果を文字どおり厳粛に受けとめられて、国民に対して公約違反であったと率直に言われるべきだと思いますが、いかがですか。
  28. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 この点は、私といたしましては非常に注意をして、そして政府税制調査会にもまた党の税制調査会にも、こういう言明をしておりますから公約違反にならないようにおつくりくださいとお願い申し上げて、そしてそのためにいろいろ、一億円以下は課税義務者にしないとか、あるいは食料品以下五十一品目は除外するとか、税率を外国に比べて安くするとか、あるいは額にいたしましても、フランスあたりは税収の四五%が売上税ですが、我々の場合は、来年度は三%、平時になりましても一二%で、地方税との差し引きをしますと約八・七%ぐらいになる、そういういろいろな面から考えていろいろ御配慮をいただいたところでありまして、私は公約違反だとは自分は考えていない。そういう配慮をわざわざしていただいた、そう考えておるわけなんです。  しかし、そういう細かい点につきましては国民皆さんにはよくわからない点でもございますから、そういう点で誤解を受けましたという点は申しわけないと申し上げておる次第なのでございます。
  29. 上田哲

    上田(哲)委員 非常に不満でありまして、これほどの結果を経てもなお総理公約違反ではないと、こう言われるというのは、私は本当に言葉がないのですが、したがってもう一遍御確認いたします。この段階でも総理は、部分的な技術的な問題は誤解を受けたかもしれないが基本的には公約違反ではなかった、つまり売上税大型間接税ではないんだというふうに主張されるわけですか。
  30. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 売上税大型間接税でないと私は申し上げておりまして、今でもそう思っております。
  31. 上田哲

    上田(哲)委員 この選挙の前までは、売上税大型間接税であるかどうかという問題は、総理言葉定義として議論されました。多段階的であるとか網羅的であるとか普遍的であるとか縦横十文字であるとかというような定義の問題として、五十一品目あるいは一億円以下の非課税の問題等々ですり抜けられるかどうかという定義議論がございました。これは国会内の議論で終始しておりました。それを戸外に転じて、全国民の、地方選挙とはいいながら御投票をまった結果こういう結果が出てきたということは、総理定義にもかかわらず国民は、つまり売上税に対する住民投票の中で、売上税大型間接税であるという判定を投げ返してきた、こういうふうに理解すべきだと思うのですが、いかがですか。
  32. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 今回の選挙自治体選挙でございまして、知事さんなりあるいは市長さんなりあるいは議員さんをお選びになる。それはやはりその地域の建設というものが中心で、教育をどうするとか福祉をどうするとか、そういうような地域の建設を主にする、それが地方自治の本旨、憲法にも沿うゆえんでもあると思うのです。法律をつくるとか国家予算をやるというのは我々衆議院議員あるいは参議院議員の仕事で、国会の機能でございます。そういう意味において、やはり国政というものは分業が行われておりまして、例えば北海道なら、当選なすった知事さんが北海道を治めるのに一番いい知事だ、能力もあるし、あるいは住民の気持ちもわかるし、あるいは政策もいい、いろいろそういうような面について地域の問題について支持が強くあった、そういう結果がやはり地方自治選挙である。私はまず一般的にそう考えておるところであります。
  33. 上田哲

    上田(哲)委員 これほどの結果を踏まえてなお、あくまでも地方自治体選挙であったがゆえに国政に対する意識は含まれていなかったなどと言うのは、私は詭弁だと思うのです。まさに総理はその詭弁を弄して、大型間接税はイコール売上税ではないということをおっしゃってきたけれども、その解釈が住民投票によって否定されたということは、地方自治体への投票でありつつ、国政への大きな批判であったと認められるのが私は筋だと思う。それでもなおそうではないとおっしゃるのなら、あえて国政選挙に訴えるべきではありませんか。いかがですか。
  34. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 売上税というものの内容が細かく国民の前に提示されて、これが第一議題です、そういうふうに提示されて、そして与党はこう考え、野党はこう考える。しかし野党は統一的対案というものもお出しにならなかったでしょう。国民皆さんは、与党はこういうふうに考えているけれども、じゃ野党はどういう対案を持っているのか、その点は国民皆さんは判断する材料がなかったのですね。そういういろいろな面からして、これは国政選挙ではないんです。しかし、間接的にそういう問題に対する一般的な反応というものはあった、その点は我々も厳粛に受けとめておる、そういうことを申し上げておるわけです。
  35. 上田哲

    上田(哲)委員 議論のすりかえでありまして、地方選挙であることは疑いを入れませんが、国政選挙というものがその機会を得ていない段階では地方選挙を通じて国民国政に向かって意思表示をした、このことを私どもは謙虚に受けとめるべきだと申し上げておるのでありまして、そうでないということと対案あるなしの問題は次元を異にいたします。対案は、既に総理のところに私どもの組み替え案も御提出してございますから御議論をいただければいいのですが、それをあえておっしゃるのであれば、申し上げておるのは、国政選挙に訴えたらいかがですか、その自信がおありですかということを伺っているのであります。
  36. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 今何しろ円高不況ということで、緊急にやらなきゃならぬことが幾つもございます。そういう意味において、国政選挙をやる適当なときではないと考えております。
  37. 上田哲

    上田(哲)委員 国政選挙に訴えればやはり自民党大敗するとお考えですか。
  38. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 勝敗の問題よりも、国家の経済をどうするか、国民の生活をどうするか、対外関係をいかに処理するか、失業で悩んでおる地域の皆様方の生活をどうするか、そっちの方が急であると考えておるのです。
  39. 上田哲

    上田(哲)委員 言葉のやりとりを交わしていることの無意味がございますから、総理反省の度合いがまことに希薄であるということを国民の前に私は声を大にして訴えつつ、少し先に進みますけれども、総理国民自民党員の反対するようなものはやらないと言明されましたね。これは公約であり、間違いありませんか。
  40. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 反対する大型間接税と称するものはやらない、そういうふうに申し上げました。
  41. 上田哲

    上田(哲)委員 同じことで結構です。国民自民党員の反対するような大型間接税と称するものはやらない。そういう立場でいうと、国民はこの選挙売上税にはっきりノーを言った。つまり、当然わかっていると言ってはなにですけれども、自明な結果が見えているところでない争点となった選挙区では、知事選は明らかに自民党にノーと言った、売上税にノーと言った。あるいは自民党の立候補者あるいは推薦候補売上税反対を津々浦々で唱えた。こういうことは、まさしく売上税こそ国民自民党員が反対するものであったということになるのではありませんか。
  42. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 自治体選挙でございますから、やはり第一は自治体の問題というものが主になるべきであると思って、投票の瞬間には、この人は県なり市の建設に役立つか役立たぬか、自分たちの身の回りの問題を処理するのに適当かどうか、やはりそういう判断も非常に強く動いておる、そう私は思っております。もとより売上税の問題も議論され、論議の対象にもなっておりましたから、判断の一つの要素にはなっておると私も考えております。そういう点については我々もよく反省もし、また考えなければならないとさっきから申し上げているとおりです。
  43. 上田哲

    上田(哲)委員 よくわからぬのであります。もう一遍伺いますが、つまり今回の売上税は、この選挙の結果を徴してみるに、明らかに国民自民党皆さん方が賛成しないものであったというふうに理解せざるを得ないと思うのですが、いかがですか。
  44. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 今回は統一地方選挙であって、国政選挙ではないのです。それで、ただいま申し上げましたように、国政選挙ならば防衛についてどうであるとかいろいろな与党の考え、野党の考えというものがはっきり出ておる。野党の場合。今回の場合は、先ほど申し上げましたように、税制改革については統一対案というものをお出しになるということでありましたが、それはお出しにならなかったようであります。国民は何で判断をするか、そういう意味におきましては国政選挙とは違うのであります。そういう意味におきまして私は申し上げておるのでございます。
  45. 上田哲

    上田(哲)委員 どうにもこれは総理としての反省のかけらが見られないのが残念なのであります。  国民はそれではどういう実は手段を通じて国政に向かってノーと言えるのか。真っ異なものであれば真っ黒と言うしかないのでありまして、もう一つほかの色を見せてみろなんということは、黒さの黒さを弁護する理由にはならないです。国民にとっては極めてシンプルに、これほど売上税について反対の声がちまたに満ち満ちた。こういう問題を為政者としてはあらゆる尺度やバロメーターを通じて吸い上げるべきでありまして、総理のようになるべくそれを見ないようにするという態度は、為政者最高の任にある者の立場ではないと私は思います。  したがって、幾らでも資料があるわけでありますが、例えば自治省の調査でも、この売上税について反対を決議したところが十五道府県、慎重な対応を決議したところが二十一県に及んでいますね。十の政令都市のうち九つの市議会で反対を表明しているでしょう。また、売上譲与税の計上を見送ったのが市町村で八百八十二、反対を決めた市町村は八百七十一。これほどの、つまり過半数という言葉が民主主義の原理であるなら、過半をはるかに超える四十七都道府県のうち実に三十六道府県がノーと言っている形で、なお国民の意向の過半を見ることができませんか。
  46. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 まあ、地方議会の御意見というものはそれなりに参考にすべきものであります。しかし、反対というのと慎重に扱えというのはやはり性格は違うわけでございます。そういうようないろいろな面から見まして総合的に我々は判断もし、また謙虚に参考にしなければならぬ、そう思っております。
  47. 上田哲

    上田(哲)委員 ちっとも謙虚じゃないじゃないですか。これは、国民皆さんがこの審議、御答弁を聞いていれば全くむなしい気持ちになるだろう。政治は何でこたえてくれないのかということになる。政治不信を今振りまいていらっしゃるように私には思える。  どうしても国民とのそうした立場をお考えにならないというのであれば、自民党の範囲に限ってお伺いをするけれども、総理は一体、選挙前と選挙後とこの売上税についての態度を変えないのでありますか。つまり、あなたの下で自民党公認されたそういう方々は、大部分が売上税反対を表明されておりました。売上税を断固通すとおっしゃっている、国民は必ずしも反対していないとおっしゃるが、売上税を断固通すとおっしゃっている総裁であるあなたと、その下で公認を受けて反対を叫んだ人と、これで一体どういうふうにつながってくるのか。もし総理が、あなたの下で公認を受け戦った自民党候補者立場にそろえて態度を改められるのでなければ、これから先はどっちかがうそをついたことになる。どっちのうそをおとりになりますか。
  48. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 国政地方議会政治とは違うと前から申し上げたとおりでございまして、やはり地方議会皆さん方の御意見というものは、国政を預かる我々にいたしましてもこれは参考にすべきものである、そういうふうに申し上げておるところなのでございます。
  49. 上田哲

    上田(哲)委員 国政地方議会が関係ないと言うのなら、何で地方議会に立候補した自民党の方々が売上税反対を唱えたんですか、とめなかったんですか。
  50. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 それはその人に聞いてみなきゃわかりませんが、しかし、いろいろな情勢から見て、国民世論、考え方というものを参酌して自分の考えもお決めになったのではないかと思います。
  51. 上田哲

    上田(哲)委員 これはもう論理になりません。総理としての欠格を問わなければならぬと思いますけれども、こういう形で党の名において行われた地方選挙というものが、党総裁においてはそれぞれの個人の勝手であったろうなどということで指導性が成り立つのかどうか。こういう支離滅裂な姿というのは、そのこと自体について、今回の選挙の結果は全国民住民投票としての中曽根政治への、政治姿勢への批判であったというようにはお受け取りになりませんか。
  52. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 選挙の結果につきましては、先ほど来申し上げますように厳粛に受けとめて反省すべき点は反省しなければならない、そう申し上げているとおりであります。
  53. 上田哲

    上田(哲)委員 三百四議席をおとりになったときに高々と鼓吹されたいわゆる八六年体制への批判であり、その体制は破綻をしたとお考えになりませんか。
  54. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私は、これからの日本の将来を考えてみまして、生産業者等も大事にしなければならぬけれども、やはり都市のサラリーマンという、いわゆるミドルクラスといいますかグレーゾーンと申しますか、それを大事にしなければならない、そういうふうに申し上げたところであります。そういう点から見ますというと、今回の地方選挙における結果は我々の意に反するところであり、そういう意味においては私の考えが実現されなかった。まあ将来はわかりませんが、今日の時点においてはそういうことであります。
  55. 上田哲

    上田(哲)委員 言葉だけなんですが、四野党の国対委員長会談で合意事項をまとめましたが、「統一地方選挙の結果は売上税及びマル優廃止全面反対という国民の審判がくだったものである。」こういう認識であります。四野党の一致した見解についていかが御認識ですか。
  56. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 野党の御認識として、新聞でもそれは拝見いたしました。
  57. 上田哲

    上田(哲)委員 総理はいかがですか。
  58. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私の考えは先ほど来申し上げているとおりでございます。
  59. 上田哲

    上田(哲)委員 もう言葉だけが、今ようやく立ち上がって発言されているように思えてならないのですが、総理はそのようにおっしゃる、非常に強い発言をなさるように聞こえるのですが、実際に政府・与党の中では、領袖とされる方々の発言がふらふらふらふら聞こえてならないのであります。よくわからぬのであります。総理がどのように強い立場で御答弁されようと、やはり今日の情勢というのは危機である、破綻である、このままでは成り行かぬであろうという認識は常識的なものであると私は思うのです。そういう意味で、政府・与党の中からのいろんな発言が聞こえてくる。  総理は、三月二十三日に党本部の前の庭で、いろいろあぶくはあっても黒潮の太い流れを続けていくうちにあぶくは消えていくんだとおっしゃった。あぶくは消えるどころか、もっといっぱい政府・与党の中から沸き上がっていると私は言わなければならないと思います。  三月二十九日に元特命相の河本さんは、売上税は凍結して新しい角度で考え直すべきだと言う。竹下幹事長は四月の四日に札幌で、税制改革案は大衆の反発を買っている、国民の合意がどこにあるかを見出していくことも国会のあるべき姿と考える。安倍総務会長は四月六日札幌で、売上税反対が国民の声ならば、慎重にこれを踏まえ、率直にかつ謙虚に取り扱っていかなければならない。渡辺美智雄税制調査副会長は、大型間接税の導入が確定するなら臨時的に減税を先行することもやむを得ない、実施時期の延期、税率の引き下げ、非課税品目の範囲縮小、納税手続の簡素化が修正論議の主たる点になろうなどなど、まあとにかくさまざまな、百家争鳴というべき状況であります。  お一人お一人が何を考えるか本人に聞いてみなければならぬとおっしゃった総理でありますが、少なくとも遠くで頑張っている地方議員の立候補者ではない、領袖とさるべき方々がこういうふうに百家争鳴というふうな感じを国民に与えておるのも事実であります。わからぬのであります。総理はこうしたさまざまな見解についてどのようにお取りまとめでありますか。
  60. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 それは謙虚に国民皆さんの声を聞かなければならないという表現であると思います。私自体も選挙前及び選挙中を通じまして、これは予算が上がったら、予算の成立後において大蔵委員会で慎重に審議してもらって、そして国民皆さんあるいは野党の皆さんの声もよくお聞きをして、そして弾力的に対処しよう、謙虚に耳を傾けましょう、そして合意を形成しましょう、そういうふうに申し上げてきておるところなので、大体似たようなお考えではないかと思っております。
  61. 上田哲

    上田(哲)委員 大体似たようだということになると、これは常識的に考えればこのままでは通らぬぞと思っていらっしゃるわけですね。
  62. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 要するに、委員会の審議の状況に応じまして、我々も皆さんの声にも耳を傾け、国民の御要望もよく聞き、そして最終的には与野党と合意を形成するように努力をしましょう、そういう意味であります。
  63. 上田哲

    上田(哲)委員 全然よくわかりません。  二階堂前副総裁は四月九日福岡市で、首相が間違えましたと言えばいいんだ、今のままの法案を通すのは絶対無理だし、通すべきではない、こういうふうに言っておられる。前副総裁の発言であります。総理の今の御見解とはかなり違います。いかがですか。
  64. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 その御発言にはいろいろ前後もあるようです。先ほど来私が申し上げたとおりでございます。
  65. 上田哲

    上田(哲)委員 わかりません。どういう前後があるのですか。
  66. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 要するに、国民の声に耳を傾けて弾力的に対応すべきである、そういう趣旨のお言葉を言っていたと記憶しております。
  67. 上田哲

    上田(哲)委員 どういう前後があろうともここに言っている大事なことは、総理が間違えましたと言うべきだと言っているのです。間違えましたとおっしゃったらいかがですか。
  68. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 その点は先ほど来申し上げているとおりであります。
  69. 上田哲

    上田(哲)委員 もう一遍聞きます。間違えてないということですか。
  70. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 この場所で何回も申し上げているとおりであります。
  71. 上田哲

    上田(哲)委員 これはますますわからぬです。まさにガバナビリティーの喪失だと思わざるを得ないのですが、いない人のことを聞いてもしようがない。  金丸副総理が四月十日におっしゃっている。自民党の支持率が二四%になった、政治国民のためになければならない、国民の過半数が反対なら考えなければならない問題だと副総理、言われましたね。その真意を。
  72. 金丸信

    ○金丸国務大臣 その発言地方選挙で山梨に参ったときに申し上げたわけでありますが、選挙前の予算委員会で総理が、いわゆる予算だけは通してほしい、そうしなければ、このドル安あるいは円高あるいは景気浮揚あるいは内需振興、こういうようなものがこのままほうっておいてどうなるのだ、こういうような考え方の中で、予算だけは通してほしい、それからこの売上税の問題については、大蔵委員会で十二分に慎重に審議してくださいという話をたびたびいたしておるところであります。この慎重という言葉については、一カ月も慎重であり、半年も慎重であり、一年も慎重であるという考え方の中で、皆さんそこを重点に考えてほしいという趣旨で私は申し上げた、こういうように御理解願いたい。
  73. 上田哲

    上田(哲)委員 お足が悪いから、ちょっともう一つ。  任せてほしい、私に任せてほしいとおっしゃった。任せてほしいというのはどういうことですか。
  74. 金丸信

    ○金丸国務大臣 それは、私はこの問題は、何とか自分が努力してこの問題を慎重審議の中で解決したい、そういう意味で征してほしい、こう言ったわけであります。
  75. 上田哲

    上田(哲)委員 副総理が任せてほしいと言うのですね。総理はどういうことになるのですか。
  76. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 いや、副総理国家を常に憂えておられまして、国家国民のために自分は全力を尽くす、そういうことを言っておられる。そういう国家的見地に立って副総理としての立場で党あるいは内閣について私を補佐してくださる、そういう意味であると考えております。
  77. 上田哲

    上田(哲)委員 と考えているというのは、総理は副総理に対して、あなたに任せると言ったのですか。言わないのに任せてほしいと言っているのですか。もうここまで来るとわからぬです。
  78. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私と副総理の間は実にあうんの呼吸で、目と目を見ればわかる、お互いの気持ちはわかる、そういう関係にあるということを申し上げたいのでございます。
  79. 上田哲

    上田(哲)委員 どうもよくわからない。昨日の夕方の記者会見で官房長官は、「相当程度の修正を含む見直し論が出てくれば、それを率直に受けとめて論議すればいい」とおっしゃっていると報道されております。これが事実であれば、私どもは修正論に乗るわけではありませんが、今まで断固として修正をやってはならぬと言われていた態度からすると変わってこられた。これもよくわかりません。
  80. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 最初に二つばかり申し上げたいと思うのです。  私は、今回のこの税制の改正は、今やらなければならない国民的な重大な課題であって、そのやり方については間違いはないということは終始一貫をいたしております。それは、法人税あるいは殊にまた所得税減税、そして直間比率の改善、その財源としての今日の財政事情を考えれば、当然この間接税の創設、その形としての売上税というこの基本の考え方に私は間違いはありませんよということは終始一貫をしております。  ただ私が、今初めて言っていることではない、前から言っていることは、こういう基本の問題が、国会の審議が一向に進まないということは大変残念に思う。やはり歳入委員会である大蔵委員会で、こういう重大問題であればあるほど真剣に与野党の皆さん論議を重ねていくべきではないのか。そして、私の方はこの案は最善と思っておるけれども、しかし、我々といえども神様ではないんだと言っている。やはりこれを上回る御意見というものが国会論議の中で出るならば、それはそれなりの受けとめ方はあるのではないのかということを私は申し上げておるのです。そうすると、それはマスコミ等では修正を言った、こう従来からとられております。それは修正というとり方をせられても私は結構です。しかし、私が言っておるのは、神様でないんだ、議会制民主主義というものは、そういうより以上の意見があるならば率直に耳を傾けるのが当たり前でないかということを申し上げておる。  もう一つは、直接の私に対する御質問でありませんが、先ほど来今回の選挙の結果についてあなたから厳しい御意見がある。私はそれなりにあなたの御意見としては拝聴させてもらっておるのです。しかしながら、全国には四十七の都道府県がある、あるいはまた市町村は三千三百ある。みんなそれぞれ置かれた条件は違うんですよ。やはり地方自治というものは、その地域の特性に応じて、その地域の発展をどう考えていくのがいいのか、こういったようなことを中心に争うのが私は地方選挙のあるべき姿である。  今回の選挙は、知事選全体としての評価はあなた方は大勝、こうおっしゃる。私は昨日来大勝とは認めておりません、これは変化はないではないのか。しかし、都道府県議会議員選挙については、これは自由民主党に大変厳しい結果で、ある意味において敗れたということは認めざるを得ないであろう。しかし、この原因はさまざまのものがあるはずである、売上税もその一つであるかもしらぬよ、しかしながらこれはそれだけではない、いろいろな問題がある、これは自由民主党として真剣に選挙の結果というものを分析をすべきである、こう言っておるのが私の今までの考え方で、終始変わっておりません。それがいろいろな表現になっておるんだというふうに御理解を賜りたい。
  81. 上田哲

    上田(哲)委員 あうんの呼吸が出てきたり神様が出てきたり、全く混乱してわからぬです。  二階堂前副総裁は、このままでは法案成立はできないと言っておられるし、副総理は、おれに任せてくれ、国民の声を聞かなければならぬ、官房長官は、私は修正と言っておらぬが、マスコミが修正と言ってくれるならそれも結構、総理は、断固としても筋一つ動かさぬという姿勢を見せる。これはめちゃくちゃでありまして、修正を構えていろんなら国会に対して非礼のないように、修正を予定して論議させるのではなく、はっきりした組み替えを出すべきであります。少しずつ修正の構えを見せていけば野党が乗ってくるんだろうなどということは、大変審議権を無視した形であります。  先ほども読み上げましたように、野党四党一致した見解を私は代表して申し上げる。野党は一致して売上税の撤回を求める、それ以外ありません。一切の修正、つまり来年度から実施しようとか一年延期しようとか当面凍結しようとか、六十二年度当初予算から削除して法案を切り離して大蔵委員会で審議しよう、あるいは継続審議、非課税項目の縮小、税率の引き下げ、納税手続の簡素化、検討機関の設置等、一切の考えられる修正は認めません。このような大型の歳入、税制改革を切り離して予算委員会で予算の審議ができるわけがない。大蔵委員会に持っていって云々などということはまことに予算委員会の審議権そのものを無視したものでもありますし、この予算案の審議中に撤回以外に解決の道がない。私どもは、予算の速やかな通過を今日の経済情勢、国際情勢の中で同じく希求をいたしますし、その認識を持ちますけれども、このような国民全体に大きな悪影響を及ぼす法案をそのままにして何の手も加えず、何らかの形で通そうなどという立場ではやはり本末転倒であると考えます。  以上申し上げたような立場で我生は一致して、予算案審議中の完全撤回が予算通過の一番早い道であるということ、しかも、先ほど来申し上げた政府・与党首脳の発言がまことにわからない。こんなことで審議の進められるはずもないです。その意見も統一をしていただき、撤回と答えていただくことを求めます。
  82. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 撤回の考えはございません。大蔵委員会におきまして時間をかけて慎重審議して、そしてその間に国民皆さんや野党のお考えも聞いて、そして我々としては耳を傾けて適切な処理をしよう、そういう考えでおります。
  83. 上田哲

    上田(哲)委員 総理、ここは政治的な見識を示すときですよ。あなたは今いろいろおっしゃるのだが、アメリカにも行きたいとおっしゃっているわけです。予算を一日も早く通過させなければならないという点は私たちもわかるのです。私たちは、自民党が、先がなければ、出口がなければ予算委員会の審議は始められないといった議論も押しのけて、きょう積極的に審議に入りました。そういう形でいうなら私たちは一日も早くという立場をとっておりますよ。しかし、このままの形で、我々が慎重に真剣に前向きに審議をしたとして、予算案はこのままでは通りませんよ。その自信があるのですか。
  84. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 議会ですからいろいろのお考えがあることはよくわかっております。今の野党の御見解は御見解として承っております。我々の考えは前から申し上げておるとおりであります。
  85. 上田哲

    上田(哲)委員 撤回なしには予算案は所期の日程どおりには通っていかないであろう、こういう御認識をお持ちですか。
  86. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 野党の一つのお考えとして我々はそれはお聞きいたして認識しておる、そういうことで、我々は我々として一日も早く予算案を成立させて、今円高やあるいは不況に悩むあるいは失業に悩む国民皆さんにお金を早く回してあげなければいけない。予算というものは国民の生活費でありますから、生活費が渡らないという状態ではますます日本は寂れていきます。その重大責任を我々はしょっておるので、一日も早くこれはやらなければいかぬと考えておるところであります。
  87. 上田哲

    上田(哲)委員 予算の速やかな通過のためには、売上税法案の撤回であるというふうにお考えになりませんかと聞いておるのです。
  88. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 その点が認識の違うところで、我々は一日も早くお金を国民の方へお回ししたいと念願しておるものです。
  89. 上田哲

    上田(哲)委員 そうなりますと、報道されるところによると、昨晩、政府・与党の八者会談が行われたそうであります。その報道によりますと、六項目の確認事項があったそうでありますけれども、伝えられるところでは、二十一日までの衆議院通過には強行採決も辞さず、こういう立場で、衆議院本会議が混乱した場合についても話し合ったというふうに報道されております。これが事実であったら、円満に着実な審議をし、予算を一日も早く通過させようという我々の意思とは違って、まさに全力を尽くして暴力をもって多数の力で強行採決をするということ以外ないではありませんか。いかがですか。
  90. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 予算案につきましては、一日も早くこれを成立させよう、そういう申し合わせをした、そう聞いております。国民は一日も早く成立させることを待っておられる、そう確信しておるわけです。
  91. 上田哲

    上田(哲)委員 私どもは、この会談は他党のものではありながらほぼ確認をしているところでありますが、二十一日までの強行採決ということがちらほら出てきているという状況の中では、とてもじゃないが予算の円満な進行、通過ということよりも、もっと大きな混乱が起きるだろうということを御警告しないわけにはいかない。私どもは、何としてもこれは売上税の撤回であるということ以外には予算通過の道はないと考えるからこのことを御理書申し上げているのであり、先ほど来さまざま御指摘申し上げている政府・与党首脳の発言がまことに混乱をしております。これをひとつ整理していただいて、はっきり撤回ということをお答えいただくということをそちらで御討議いただきたいと思います。
  92. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 撤回しないということは前から申し上げて、先ほども申し上げたとおりです。予算委員会あるいは国会対策等については幹事長と国対委員長にお任せしよう、そういうことで幹事長、国対委員長が協議なすっておやりになる、そういう形になっておるわけであります。
  93. 上田哲

    上田(哲)委員 総理は、いかなる場合にも単独採決ということはしないとここでお約束になりますか。
  94. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 国会というものはやはり審議すべきところであり、また最終的には多数決で物が決まる。そういうのは最終的な処置として憲法でも保障されているところであります。
  95. 上田哲

    上田(哲)委員 ただいまの御意見は、単独採決があり得るというふうに理解せざるを得ませんが、それでよろしいですか。
  96. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 それはあるともないとも言えません。それは国対委員長とそれから幹事長にお任せしてあるということでございます。
  97. 上田哲

    上田(哲)委員 総理が基本的に選挙の結果についての反省を深くされていないということが非常に不満であることが一つの前提。そして私どもは、可及的速やかに予算を通過させたいという立場からすれば、その唯一の道はこの選挙の結果を受けて売上税の撤回、完全撤回を今明らかにされることだ、そう申し上げているんだが、既に政府・与党の中にもさまざまな見解が揺れ動いている。これを総理は全体として掌握されていないように私には理解できる。ぜひこれを早く整理されて、撤回といってとでなければ予算の進行は進まないのですよ。  そうでなければと申し上げると、これはいかにも単独採決があるような発言をされることは、私はこれはやはり整理をちゃんとしていただいて、はっきり単独採決なんということはない、この際国民的課題である景気の回復その他の問題について、あるいは総理訪米についての立場からいっても、国民及び野党にも撤回という立場で協力を求めるという発言がなければならないと思うのです。再度このことについてはっきりした御見解を承りたいと思います。
  98. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 ゆうべも報告を聞きますと、党の最高首脳が集まりまして我が党の方針を決めておるのでありまして、それが我が党の考え方であります。したがって整理の必要はない。先ほど申し上げたとおりの方針で我々はいくと党でしっかり固まって結束しておるところでございます。  それから、国会というところは、やはり自分の言うことが聞かれなかったらもう相手の言うことは一切だめだ、そういうところではないと思うのです。やはりいろいろ審議をしていくという、そういう場所ではないか、それが議会というところではないかと私は思っております。そういう意味におきまして、自分の考えが一切聞かれなかったらもう何も言うことを聞かないという、それではもう初めから議会政治というのは成り立たなくなる危険があると私は思います。
  99. 上田哲

    上田(哲)委員 予算委員会でも、昨日与党側からは、二十一日の予算の衆議院通過ということを前提として日程を細めという提言があり、私たちはこういうことは審議権の制約ですから受けるわけにいかない、きょうはそうした出口を決めないで、きょう一日だけの日程としてこの審議に立っているわけであります。こういう形では極めて不正常な運行と言わなければならない。そのためには二十一日であれ何であれ、いわゆるXデーに、先ほど総理の言われた言葉をそのままお返しするが、野党が言うことを聞かなければ多数でもってやってしまうのだというのでは、これは多数横暴そのものであります。そういう形で、いかにもいわゆるXデーに単独採決があり得るというニュアンスの中では、私たちは今後の日程には協力できないではありませんか。総理は、撤回、そしてそのことを含めて単独採決なんということはあってはならぬということを明らかにここで約束をしてください。それ以外、私たちはきょう以降の審議日程というのをつくることもできないじゃありませんか。
  100. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 先ほど申し上げたとおりであります。
  101. 上田哲

    上田(哲)委員 単独採決をしないということをはっきり言っていただきたいと言っているんです。
  102. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 予算委員会で審議を行うということを国民は期待していると思いますが、自分の考えが聞かれなければ自分たちは相手の立場を一切否定する、そういう態度では国民は失望するんではないかと私は思います。いずれにせよ議会政治というものは最終的には多数決で決まる、それが人類が生み出した英知であるのであります。そういうような国会法あるいは憲法の規定に従って最終的には処理さるべきものである、具体的な手順等については、これは幹事長及び国対委員長にお任せしてある、そういうことであります。
  103. 上田哲

    上田(哲)委員 幹事長、国対委員長に任せてあるとおっしゃるが、その上にまさに責任をお持ちになっているのは総理なんですからね。  私は予算委員会の野党側の理事としまして、きょうだけの日程というような予算審議というのは大変不正常だと思いますよ。その審議をきちっと認めるためには、単独採決なんということはよもやらないのだというぐらいのことははっきりしていただかなければ、私たちは予算の成立のためにも、総理訪米のためにも、協力のしようがないではありませんか。なぜそれぐらいのことが、議会制民主主義という言葉を口にされるのなら、単独採決はしないのだということを、その一言が言えませんか。そうでなければ、これは審議はできませんよ。
  104. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 やはり議会というものは生きているところでありまして、そのときの情勢によって、国会法あるいは憲法に従って最終的には処理さるべきものである、そういうふうに考えております。
  105. 上田哲

    上田(哲)委員 非常に不満でありますけれども、時間でありますから休憩後の審議にいたします。
  106. 砂田重民

    砂田委員長 午後二時に再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時一分休憩      ――――◇―――――     午後二時九分開議
  107. 砂田重民

    砂田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。上田哲君。
  108. 上田哲

    上田(哲)委員 午前中の質疑の中で、総理の御発言は、この緊迫した事態の中で予算案の単独採決あるべしというふうに懸念される部分がございました。私どもはこの趣旨のお取り消しを求めているわけでありますが、ただいま理事会の協議を経まして、この予算委員会を運営される責任者の予算委員長から、その旨の御確認をいただきたいと思います。
  109. 砂田重民

    砂田委員長 上田君にお答えをいたします。  午前中の上田君の御質問、総理の御答弁を聞いてまいりましたが、委員長といたしましては、議会制民主主義の本旨にのっとりまして、各理事の御協力をいただきつつ、円滑な運営を心がけてまいります。
  110. 上田哲

    上田(哲)委員 委員長の御発言は、理事会の協議の内容も含めまして、単独採決などがあり得ないという御判断として受け取らせていただきます。  念のため、総理、一言。
  111. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 委員会の運営は委員長理事皆さんがお決めになることで、行政府の長たる総理大臣がとかく申し上げるということは越権のさたではないか、そう私は思って遠慮しておるわけでございます。
  112. 上田哲

    上田(哲)委員 今朝来の御答弁の中で一番謙虚な御答弁であります。議会民主主義の本旨に基づいてしかと承ってまいりまして、今後単独強行などはないということを確認をして先に進めます。  なお、私どもは、予算の速やかな成立のためには売上税の完全撤回以外ない、これが一番近道である、そしてそのためには閣内のさまざまな意見の浮遊する状態をしかと統一されて私どもの意向をお受け取りいただくべきであるというふうに再三申し上げておりましたが、これについて御理解はいただけましたでしょうか。
  113. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 これは先ほど申し上げましたように、撤回する考えはございませんと申し上げたとおりであります。
  114. 上田哲

    上田(哲)委員 我々四党としては売上税の撤回以外には方法がないと考えていることについては御理解をいただけましたか。
  115. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 上田さんの御発言はよく拝聴いたしました。
  116. 上田哲

    上田(哲)委員 これ以上は総理政治的良心、政治家としての振る舞いにかかわるところでありますから、今度の選挙の結果を厳粛に、大きな反省を持って受け取られて今後の運営に資されていくことを強く要望しておきます。  そこで、今非常に大きな問題は円高であります。四月八日のG7で、その共同声明では日本の内需拡大と市場開放だけが厳しく責められた。これは、パリ合意から今日まで幾ばくの期間も経ていないにもかかわらず、ファンダメンタルズが、百五十円中葉でもファンダメンタルズ、百四十円突破するに至ってもファンダメンタルズ。きょうは一時百四十一円七十銭まで行ったようでありますが、こういう状況では一体パリ合意というのは何であったのかという非常に大きな疑問と不安を持たざるを得ないわけであります。  田村通産大臣、伝えられるところによりますと大臣は職を賭してもこのような合意事項は認められぬと発言されたそうでありますが、真意を率直に伺いたいと思います。
  117. 田村元

    ○田村国務大臣 私は、閣議の発言ですから、閣議の発言は外へ本来出すべきじゃない。一々外へ出しておりましたら閣議で討論はできないわけです。ただいまおっしゃったので違いますことは、職を賭してもG7の合意を認めるわけにいかぬということは言った覚えありません。この大変な時期に、もう百四十円ぎりぎりまで来ておるこういう時期に、まあ対外関係ももちろんさることながら、国内的にも円高不況というのがひしひしと身に迫っておる、特に製造部門の中小企業というのは本当に苦しんでおります、でありますから、より大きな、中身の濃い、立派な内需拡大策を打ち出してもらいたい、そのためには職を賭しても頑張りますよと、こう言ったわけです。
  118. 上田哲

    上田(哲)委員 つまり通産大臣は、これまでの政府の無為無策、ここに向かって厳しい一石を投じられたと私は理解をいたします。  六十一年度貿易の黒字がJカーブの効果が続いてついに八百九十七億ドル、これはまあ前年を四百億ドル上回る、七〇%上回る空前の伸びだと。これはオイルショック直後のOPEC十三カ国の経常収支黒字の六百五十五億ドルをさえ大きく超えるものでありまして、こういう状況の中で大蔵大臣、きょうは一時百四十一円七十銭、このままいけば、介入によってようやくすれすれのところへ来ていますが、百四十円台も当然はっておけば突破する。どこまで行くのか。百二十円台の話もあります。つまり、一体こういう状況を、政府は何をしてきたのか。無為無策ではないのか。その結果がこうなってきたのではないか。ファンダメンタルズという大変器用な言葉がひとり歩きをして、百四十円台を超えそうになってなおファンダメンタルズの中にあるというようなことを言われては、どうも私どもは政府を信頼する気が起きてこない。ちまたの声であります。無為無策であったという指摘、百四十一円の数字とあわせて、どうお考えですか。
  119. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 いわゆる協調介入ということは、日米間では昨年の九月に私とベーカー財務長官が話を始めまして、十月の三十日に日米間では協調介入のシステムが生まれたわけでございます。それをさらに多国間に拡大しようということがパリ合意の意味でございまして、パリ合意とは何であったかというお尋ねでございましたが、一つは各国がそのための政策協調の努力をすること、これは各国別に努力目標が述べられておりますが、そういう条件のもとに為替の乱高下に当たっては各国が共同の努力を、それは協調介入ということでございますが、しようという、そういう合意であったわけでございます。  御指摘のように、その後、パリ合意は二月二十二日でございますけれども、三月二十日を過ぎまして円が急上昇を始めまして、せんだってのG5、G7はIMFの暫定委員会のときに行いますいわば定例のものでございますので、これは定期的に行わざるを得ないということで集まったわけでございますが、その席上、いわば三月の二十四日かるは円だけが上昇しておりましたので、我が国がさらにどのような政策努力を行うかということについて各国から質問もあり、私もまた私どもの党で用意いたしました政策努力を行うことを述べました。それに対して各国は共同の協調介入を続けるということを再確認いたしたわけでございます。  各国から申しますと、この間上昇いたしましたのは円だけでございましたが、日本に対しては各国がすべて貿易の赤字国でございますから、本来から申せば円が高いことの方が実は短期的には利益であるということは否定できないと思いますが、それにもかかわらず長期的な目標を持って各国が介入を続けることに努力をいたした、こういうのがせんだってのG5、G7の決定の趣旨でございます。また、そのために必要な資金の手当てについてもいろいろ相談もいたしたわけでございます。  したがって、基本にありますものはやはり各国の政策努力ということになるわけでございますが、関係各国の間の政策努力が必ずしも思ったようにいっていない。我が国はかりではございませんが、我が国におきましても、率直に申しまして、昭和六十二年度の予算が例年どおりの時期に成立いたしますとその執行も行われたはずでございますし、またその後の措置もいろいろ考え得る時期であったかと思いますが、やむを得ないこととは言いながらそれがそうなっておりません。また、米国におきましても、貿易赤字あるいは財政赤字の削減の努力は行政府としてはしておるようでございますけれども、十分にその成果が上がっていないといったようなおのおのの事情が、いわばファンダメンタルズと称しますものが十分に実現するに至っていない一つの原因であろうと思います。介入はやはり乱高下を防ぐための手段でございまして、基本的には、政策協調が行われ、政策努力が遂行されるということでございませんと、ファンダメンタルズの安定というものはできない、こういうふうに考えるべきではないかと思います。
  120. 上田哲

    上田(哲)委員 よくわからないですね。大変長い御説明ですが、つまりわからない。ずばり伺いますけれども、今お話の中にあった介入というのも限度がある、私はやはり今日までの介入の額を考えると、一定の限界に来ていると思いますね。そういう状況でいうと、ずばり伺って百四十一円、百四十円を超えるような事態になってもファンダメンタルズの範囲であるということになるのですか。
  121. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 私は、今の相場が我が国の経済運営にとって非常に厳しいものであるということをよく存じておりますし、本来からいえばプラザ合意から一年七カ月でございますから、これはアメリカのファンダメンタルズというものが本来かなり改善をしなければならない時期に来ておる、そういうふうに思っております。
  122. 上田哲

    上田(哲)委員 いや、日本の百四十一円、百四十円を超えてもファンダメンタルズの範囲である、正しく反映しているとお考えですかと聞いているのです。
  123. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ただいま申し上げましたように、百四十一円というのは円とドルとの関連でございますから、どちらかのファンダメンタルズが十分に成就していない、あるいは両方とも成就していないかもしれませんが、私はその場合、殊にプラザ合意以来一年七カ月もたってなおアメリカのファンダメンタルズが向上していないという感じを持っておるわけでございます。
  124. 上田哲

    上田(哲)委員 非常にやはり政策努力というものが効果を上げていないということを言われたわけであります。  塩川文部大臣、文部大臣も閣議で述べられたと報道されていることでありますけれども、一方では財政再建、一方では内需拡大を言っているのは大変わかりにくい。これもやはり今日の政策破綻といいましょうか、矛盾をつかれたんだと思いますが、御趣旨を伺いたいと思います。
  125. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 私は大体単純な方でございまして、わかりやすくしてもらうためには行政改革、財政再建、その枠内で内需拡大をやるという範囲がどの程度までできるのか、これはやはり明確にしてもらった方がわかりやすいということで、意見として申し上げたということでございます。
  126. 上田哲

    上田(哲)委員 もう一遍通産大臣。五兆円と言うけれども、五兆円というのは一体何物なんだという御見解があったようでありますね。いかがですか。
  127. 田村元

    ○田村国務大臣 政府・与党首脳会議ではその数字は出ておりません。ただ、伝えられるということで、五兆円というものは一体真水なのかあるいは事業費なのか、どういうことなんだということは言いました。私は、とにかく今勇気を出して内需拡大策を大きなものをやるべきだ、私は野党を信じている、こう言いました。私は国対委員長予算委員長もやりましたから、野党をよく知っております。今、その予算案の審議と並行して大きな内需拡大策の策定の作業をしても、今の成熟した野党が今のこの予算案審議に絡めることは絶対あり得ない、私は野党を信じている、こういうことを言ったのです。
  128. 上田哲

    上田(哲)委員 御信頼をいただくために先ほどの前提に戻りたいのですが、まあそれはおくとして、真水なのかどうかというのは、野人通産大臣としてはなかなかいい表現だとお返ししておきます。そういう真水でなきゃ……。だから、そこまでの発言があるいは文部大臣からまで出てくるというようなことを含めて、これは所管というところからですよ、そういうところからいって、今例えば政府がしきりに強調されておられる総合経済対策というのは、まことに戦略展望なき場当たりなものだ。予算の早期成立というのがうたい文句で、公共事業の大幅前倒しとかマイナスシーリングの修正とか積極財政への転換、大型補正を七月か八月、NTT株の売却益を景気対策にしようなんというのは、発想がまことに従来のものから何にも出ていなくて、何一つここに何というか血沸き肉躍るものがありませんね。元気が出るものがありませんね。真水を飲むような清澄感がありませんね。私は、こういうものしか出てこないところに問題があるが、今日時点でとらえれば、まさにこれは失政の結果だと思いますよ。一体どんな展望がこの中から、総合経済対策と称するプログラムの中から出てくる自信があるのか。大蔵大臣いかがですか。
  129. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは実はいろいろございます。残念なことに予算を御審議中でございますから、こうしたいああしたい予算通過後には、考えておりますことを申し上げるのは非礼に当たりますので申し上げることができませんけれども、いろいろ考えております。なるほどというようなことをお目にかけたいと思っております。
  130. 上田哲

    上田(哲)委員 ふろしきだけ見せて中があるぞと言うのは、これはやはりどうも論議は熟しようがないわけで、私は深追いすることは避けるにしても、通産大臣やあるいは文部大臣、他の閣僚が、これじゃ右へ行っているのか左へ行っているのかわからないじゃないか、一体これは、かめの中に入っているのは真水なのか塩水なのかというふうな議論が出てくるほど、やはりそれは正しい感覚だと思うのですね。あけてみれば、予算さえ通してくれれば、立派な目をむくようなものが出てくるよという話をにわかに信じるというのは、むしろおとぎ話の方を信じろということになってしまう。だから絞って伺います。  一体、そういうことになると、総理大臣、中曽根内閣の金看板だった六十五年赤字公債脱却との関係はどうなるのですか。伊東政調会長は、しれはもうぼろほろの古い旗だと言っておる。中曽根内閣の金看板は、現在の総合積極経済対策とどういう関係に立つのですか。総理に聞きたい。
  131. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 その金看板のもとに過去六年間いろいろなことをやってまいりました、行財政改革と言いまして。これは意識も随分変わりましたし、制度もそれによって変わった部分がたくさんございまして、大きな役割を果たしたと私は思います。そこで、いろいろな事情からそのことがなかなか実行が厳しくなってきたろうとおっしゃることはそのとおりでございましょうが、しかしこの看板を仮におろしまして、かわりに今後行財政改革、財政のむだを排除する目標を何に求めるべきかということをよく考えておきませんと、看板を下げただけでは、これはだれでもできることでございますから、後のことをちゃんと考えでおかなければいけない。六十五年といいますとまだ時間がございますから、それはよく考えさせていただきたいと思っております。
  132. 上田哲

    上田(哲)委員 これはどう言ったってわかりませんよ。六十五年まで時間があるからというのは、こんな何か借金催促の引き延ばしみたいな話をしていたのでは、これは今日中小企業があえいでいる、もう本当にきょうは円が幾らになったなどということで冷や冷や、首をつろうかと思っているような人々に対する説明にはならぬですよ。これは私どもも財政再建、六十五年度の金看板というのは守るべきだ、前回の予算委員会でも私は自民党より先を行くような話をして、総理がおかしいじゃないかと言われるくらい私は守れと言ってきた側なんだけれども、事ここに至っては、そんなきれいごとを言ってちゃもうだめだろうというので、ついに私も踏み切りましたよ。  だから総理、これはこっちもやります、あっちもやりますにはならないのだ。六十五年度までの問題というのはしばらく、古いぼろほろの旗かどうかは知らぬが、これはおろすと言ってしまっていいのかどうか知らぬが、少なくともこれは見送るということになるのでしょう、総理総理です。だめだ、総理。それを隣に手を回しているようでは、あなた総理としての立場がない。これは総理ですよ。
  133. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 上田委員がおっしゃいますように、おろすと言ってしまうのは何だけれどもというところがこの問題にはあるわけでございます、よく御承知のように。ですから、もう非常に実行は厳しく難しくなったということは、私も上田委員と同じようによくわかっておりますが、さあそれならおろすと言っては何だが、おろしたときに何を持っておくかということをやはり、また御教示も仰ぎたいと思うわけでございますけれども、考えておかなければならない。
  134. 上田哲

    上田(哲)委員 御教示を申し上げるほどのことはありませんが、総理の方に社会党の案を、抜本組み替えの案をお渡ししてあります。私どもは、つまり予算編成の大前提が大きく変わってきただろう、例えば為替相場も大きく変わっておるし、あるいは成長率の見通しももう半分以下になっていくというような状況などなどある中でいうと、これはやはりここで予算の組み替え、修正ということが正しい選択じゃないかというのが、まあ御教示申し上げるほどじゃありませんけれども、昨日、よく読んでおいていただくように提出してあります。  それをやっておると時間がないので、総理、もう一遍伺います。六十五年度の金看板はどうなさるのですか。これはひとつ総理からお答えいただかなければなりません。
  135. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 六十五年赤字公債依存体質脱却というこの理念あるいは考え方というものは、言いかえれば冗費を節約してできるだけ税金を重くしないように、そうして赤字公債を出さない、依存率を減らしていく、そういう点についてかなり効き目があったと思います。現に赤字公債依存率は五年前と比べると、二七%から一九%台に落ちてきている。このことは、財政の弾力性がやや回復されつつあるということで、国民皆様方にいろいろ御苦労願ったかいも出てきておる、そう思うのであります。この理念というものは、言いかえれば、政府のむだをなくせ、小さい政府でいきなさい、効率的な政府を続けよ、冗費を省け、そういうような趣旨が根本にあるのでありまして、この理念はやはり堅持していくべきであると思っております。  そこで、臨調におきましても行革審におきましても、景気の状況そのほかを見まして臨時緊急の措置はとってよろしい、そういう幅を持たしていただいた答申をいただいておる。そういう意味におきまして、去年も三兆円の事業規模の補正予算を組みましたし、あるいは公定歩合に至っては、五回もここ一年ぐらいの間に引き下げてきでおる。これらはみんな緊急の措置としての弾力性ある経済政策の対応をやってきたわけでございます。  この予算が成立しましたら、やはりできるだけ早期にいわゆる経済対策というものをつくり上げまして、そして、どうせ下期の仕事を上期に思い切って繰り上げてこなければなりません。そうすると下期に仕事がなくなりますから、その準備をやはり去年やったようにしなければならぬ。それについては、去年どことしは状況が違いますから、また国際的にも日本は内需を振興すると約束しているわけでございますから、相当規模の予算を組んでそういうふうに持っていこう。その中にはいわゆる真水を多くする、言いかえれば実行力のある、力のある予算を編成しなければならぬ、私はそう思っておりまして、それらの中には建設公債というような考え方も当然含まれてしかるべきである、そう私は考えております。  しかし、今の旗をどうするかというような問題については、それは臨調、行革審の流れの中でそういうことが出てき、また私が約束してきたことでございますから、今この予算を審議しているという過程におきまして、この旗をおろすなどということは言えません。その旗のもとにこの予算は編成されておるからであります。  秋以降の経済政策等の問題につきましては、今大蔵大臣が申し上げましたように、いろいろなファクターを考えながら検討を今続けておる。行革審も近く成立するやに承っておりますが、行革審の意見もやはり我々としては尊重し、参考にしていかなければならない。そういう行政的な手続の上に立ったしっかりとした、思いつきでない、がっちりした経済政策なり行政改革政策というものをつくる段階に今来て、今はそういう過渡期にあると思っておるわけです。いわんや今、予算の審議長中でもございます。そういう意味におきまして、今のような発言で一応御了承願いたい。そういうふうなことで、近く行革審がもし成立いたしますれば、それらについていろいろまた意見も聞きたい、そう考えておるところであります。
  136. 上田哲

    上田(哲)委員 総理の御発言に勇気がないのですよ。私はわかるのです。これまで冗費節約等々の意味で役割を果たしてきたとおっしゃることは認めるのです。句とかしてそういうことをしなきゃならぬという意識は私たちにもあったのです。現に、ここで私は半年前にはそれを主張したのです。  しかし、今日の経済失調の中では、これは今いみじくもお言葉にありましたように、建設国債の大増発というところまで行くわけでしょう。五兆円という数字が出て、十兆円と言う人もいるわけですよ、自民党内の有力な幹部の中にも。そういう問題を一方に置きながら、毎年定額の削減をしていかなきゃならないという計画がない限りは、六十五年脱却ということはできない、これは算術なんでありますから。できないことをできるような顔をしながら、あっちもやりたい、こっちもやりたいということを言っていられるような状況であり、そこに踏み切らなければ、実際の経済刺激策ということがみんなに対してエンカレジしないだろうということを言っているわけですから、こっちがエンカレジしているのだから、総理はそこでやはり、ぼろぼろの旗とはあえて言わないけれども、一遍くらい横に置くよとか、そういう言い方というのが一つぽんと出るというときじゃないのですか。
  137. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 やはり行政改革、財政改革というようなものは、国民の皆様を前にしまして、また国会皆様方の御意見も承りまして、ちゃんとした手続を経て、そしてしっかりとした足腰を持って、長期的展望のもとにがっちり進められておるわけであります。こういうがっちり、ちゃんとした手続で重々しく進められているこの手続は、やはり尊重さるべきものなのであります。そういう意味で、思いつきでがたがたっとその場でやるということは政府としてはとるべきものではない。国政はそれぐらい重々しいものでなければならない、そう思っておるわけでございまして、それで今申し上げたような御答弁、しかるべき手続というものをしっかり踏んだ上で、そして十分慎重に検討していく、こういうのが現在予算を審議していただいている政府立場なのであります。
  138. 上田哲

    上田(哲)委員 重々しくと、がっちりという言葉をそのとおり受け取りますよ。受け取りますから、そうすると、今はそうなんだが、秋以降にはそういうことになるんだということですね。
  139. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 ともかく今、行革審ができましたらそれにも御相談もする、そういうことで御了承を願いたいと思うのであります。
  140. 上田哲

    上田(哲)委員 では物理的に聞きますよ。建設国債の増発という形で進んでいくということになれば、六十五年度赤字公債依存体質脱却ということは物理的にできなくなりますね。これはきちっと答えてください。
  141. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 今総理が言われましたのは、仮に先々補正予算でも編成するというときに財源としては建設公債の増発も考える。そのときの歳出歳入の状況をいろいろ見まして自由に考えてまいりたいと私も思っておりますが、今総理の言われましたことは建設国債のことを言っておられますので、したがいまして六十五年度そのもの、赤字国債の関連とはちょっと別のことを言われたと思います。
  142. 上田哲

    上田(哲)委員 赤字国債と建設国債をここで色分けしてみせるというほどもう余裕はないんですよ、建設国債は赤字国債に全部変わるのだから。  ちょっと飛び離れた言い方をしますけれども、そういう大増発になるとこれはインフレ政策になりませんか。
  143. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 かねて総理大臣が言っていらっしゃいますのは、六十五年度に特例公債すなわち赤字国債依存の体質から脱却するということを言っておられるわけでございますので、その点では建設国債のことを言っておられるわけではない。ただ、上田委員の言われますように、建設国債も赤字国債も国債費を必要とすることは変わりはございませんのですから、幾ら多くてもいいんだというふうには考えてはおりませんけれども、こういうときに建設的な目的を達するための建設国債を考えるということは、とにかく卸売物価が一〇%近く前年より下がっておるわけでございます。消費者物価もゼロあるいはマイナスであるというときに、いわゆるインフレということを私どもは今心配することはないだろうと思います。
  144. 上田哲

    上田(哲)委員 こういう中で総理は訪米日程を立てておられるのですが、私どもには総理訪米の目的がわからない。例えば、総理が行かれてこの円高問題を何とか好転させる可能性があるべしとは思われない。四月十七日には半導体のあの制裁措置が発動されるでありましょうし、総理が来ても関係ないよという声が海の向こうから聞こえてくる。  こういう状態の中で、さなきだに予算成立、予算成立とおっしゃるし、秋だ、秋だとおっしゃるが、自民党案である経済対策をお持ちになって向こうに行かれる。これはどうも大変我々としても消化しにくいところではありますけれども、つまりそれらを考えて、総理が向こうへ行かれるというのは、国賓で呼んでくれるから行くだけだという以上には、何ら国民のためになるべき理由が見つけがたいのであります。これは簡単に言うならば、総理がこの段階で無策で向こうに行かれるということは、国内のここまで累積された失政の上塗りに行くだけではないか。私は、その辺は総理の訪米にしっかりした納得がいかないのでありますが、今私が挙げたどれか一つぐらいにでも効果があるとお考えになるのかどうか。
  145. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 今のようなこういう厳しい日米関係にあればこそ、なおさら行かなきゃいけない。私は、今度の訪米についてレーガン大統領から正式の招待をいただきまして、いろいろ研究を命じまして、私も考えたのであります。アメリカの中にも、今どきどうかなという議論を言う人も私の友人でおりました。日本の中にもそういう方もおります。しかし、こういう厳しい、苦しいときにこそ国の、行政の最高責任者にある者は逃げてはいかぬ。苦しければ苦しいだけそのときに行って、向こうと胸襟を開いて、よく事情も説明し、向こうの意見も聞き、こっちの言い分も言い、そして完全な理解と協調路線をさらに確実に強くしていく、そういう時期が今大事なんです。そういうふうに考えまして私は行かしていただきたいと考えております。  さらに今、御存じのようにシュルツ国務長官はモスクワへ行っておりまして、大事なINF等あるいはSRINF等の問題で非常に詰めをやっておると思います。ABM条約の扱い一つだけでも大事な問題であります。そういうような電報も我々は受け取って、今も読んできたところです。そういうような国際軍縮、平和の問題についても非常に大事なときでもありまして、いわんやベニス・サミットが開かれれば、当然それに対する我が方の見解あるいは我が方の主張というものも言わなければなりません。準備が要ります、勉強も要ります。それには米ソの交渉相手であるアメリカの考え方を一番よく聞き、またこっちの意見を言う必要もあります。そういう大事なときでもございますから、やはりこの際は行かしていただきたい、そうお願いしたいと思っておるのであります。
  146. 上田哲

    上田(哲)委員 国内緊急の状況に対して私は今の説明、全くよくわかりません。総理が行かれる。国賓ということであれば、それを私たちは決して送り出さないわけではありませんけれども、例えば予算が通らなければ行けないでしょう。どうですか。
  147. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 このアメリカとの関係も予算が通った方がいいに決まっておりますけれども、それ以上に現在の円高や中小企業の苦難、失業問題というものを考えてみますと、一刻も早くこの予算を成立さしていただくことが円高に歯どめをかけることになるのです。今円高に対する御質問がございましたが、お金を使ってもらわなければ円高を阻止する力は弱まるのです。そういう意味におきましても、中小企業や国内景気を考えてみますと、国民皆さん予算の成立を一日も早く待っておるし、政府はその責任をしょっております。その点をよく御理解願いたいと思うのであります。
  148. 上田哲

    上田(哲)委員 重大な発言でございまして、通るにこしたことはないがということは、通らなくても行くというふうにしかならない。そんな乱暴なことはないだろうと思うのですが、先ほど来申し上げているように、それならば、売上税の撤回ということ以外にはないんだということをしきりに私は申し上げているが、それもうべなわれない。全くかたくなな、一つ一つ、一歩進もうが下がろうが、もはや意味がない。しかも円高問題に象徴される、もちろん半導体問題もありますけれども、それに象徴される失政の累積というのは、もう国民の信を失った。こういう言葉は非常に失礼を言い方だが、現職総理大臣が日本列島を覆う地方選挙の展開の中で全くマイクを持って外に出ることを阻まれているというような状況は、信ここに落つるということだと思うのです。総理はここでやはり退陣をされる。撤回をされ、予算を通し、そしてやはり速やかに退陣をされる時期を迎えているんではないか。失礼だが、私は政治家としてその出処進退を総理に求めたいと思います。
  149. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 見解を異にいたします。
  150. 上田哲

    上田(哲)委員 みずから出処進退をお決めになることが政治家の最後の要請でありましょうから、私はそれ以上申しませんが、これまでの歴代総理の中で大変長い期間執政の職におられた。そしてかなりの業績も上げられたと自負されるだけに、ここまで来た状況の中で、やはり時期を誤らないように、私は、今速やかに売上税撤回、そして景気対策に転じ、そうした意味でアメリカへ花道をとられることが正しかろうということを申し上げておきたいと思います。御見解ありますか。
  151. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 貴意に沿いかねます。
  152. 上田哲

    上田(哲)委員 私の進言に沿っていただく日が多分早かろうことを思っておりまして、残念であります。  最後の問題に入りますが、軍事費の問題であります。  今回、GNP一%枠が乗り越えられてしまいまして、十八兆四千億円の計画が出てきたわけでありますが、この政府の談話の中に大綱という言葉が一つもないんです、総理。大綱という言葉が一つもないというのは、やはりこの計画によって大綱を超えるという感覚、見解が含まれているからではありませんか。
  153. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 ちょっと私この資料を拝見しておりましたので、大綱の意味が……(上田(哲)委員「中期防の中に大綱という言葉、守るという言葉がない」と呼ぶ)これは、大綱の水準を達成するために一生懸命努力しています、中期防もその努力の一環でございますと、そういうことは前から申し上げでいるとおりでございます。
  154. 上田哲

    上田(哲)委員 一%という、つまりGNP対比で防衛費、軍事費を考えるということは合理性がないというふうにお考えですか。
  155. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 一%というのは、御案内のとおりいろいろの経過を経てきておりますので、それはそれなりに重要であるというふうに考えておりました。ただ、私は申し上げているとおり、一%という枠を守れば日本の防衛は大丈夫なんだ、一%を超えれば軍事大国なんだ、一%以内ならいい、そういう考え方は、これはとれない。どうしても一%の問題と「防衛計画の大綱」の問題とを比べてみれば、計画を達成することの方が優先する、そういうふうに申し上げておるところでございます。
  156. 上田哲

    上田(哲)委員 非常に曲解された言葉が流布されておりますが、私どもは一%を一円超えれば軍事大国、そうでなければ軍事大国ではないなどということは一回も言ってないのであります。一%でも軍事大国だということを主張しているのでありますし、この一%枠が設定されたときに私どもが反対いたしましたのは、当時二けたを超える成長率、あの閣議決定の年は名目一三%でありました。少なくともGNPを分母にしてパーセンテージで上限を決められたという決め方のときは、GNP比で物を決めるという合理性はあったということになりますね。
  157. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 一%を決めたときは、御案内のとおり「当面」と「めど」になっている。これは永久という意味じゃございません。だからそういう意味でやはりこれはとらえなければならない。  それから、一%以内でも軍事大国だ、これはやはり軍事大国とは一体何か、その定義を究明した上で議論をしなければならぬ、こう考えております。
  158. 上田哲

    上田(哲)委員 そんなこと聞いてないのですよ。五十一年閣議決定のときはGNPを分母にして上限を決められたのだから、それで決められたということは、そのときはGNP比で物を決めるということは整合性があるというふうにお考えになったことは言うまでもありませんねと言っているわけです。イエスかノーかだけで答えてください。
  159. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 そのときはそのときの合理性があったと思います。ただ、「当面」と「めど」というのがついておる。これをお忘れなく。
  160. 上田哲

    上田(哲)委員 そんなことは枝葉末節でありまして、もっとちゃんとした議論をした方がいいと思いますよ。つまり、そのときは二けたの成長率一三%を背中に背負って、一%なら相当なところへいくという計算がついていたんですよ。これが低成長になったから、これを分母にしていちゃぐあいが悪いということになったのでありまして、ここのところは整合性の使い分けなんですよ。この議論をさんざんしたいのですが、そこを指摘して、軍事大国とは何かという議論を大いにしようじゃありませんか。きょうは時間がありませんから、ひとつ一点に絞って伺っておきたいのは、何としても六十二年度から一%枠を超えてしまった。これも後で時間がありますときにやりますが、初めに一%突破ありきでありまして、積み上げたらそうなってしまったなどということは詭弁に属するが、これはここにおいておきます。  さてそこで、私がきょうどうしても双方同じ土俵の上で納得してもらいたいと思うことは、簡単に答えてくださいね、一点だけ確認しておきますが、一%の精神は守ると言っているわけですね。だから、一%である方がいい、守れるならその方がいいということは違わないのですか。
  161. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 できるだけ防衛費は少なくて済めばそれが一番いい、これは当然のことであります。
  162. 上田哲

    上田(哲)委員 一%の中におさまるならおさまった方がいいとお考えになっているということですね。――いいです。  それで、私はここで支出官レートの話を取り上げてみたいのであります。  支出官レートは、六十二年度は百六十二円になっています。ずっとこれまでの支出官レートを見てまいりますと、資料のⅢでありますけれども、資料のⅠからいきましょうか。外国為替及び外国貿易管理法の七条、それから基準外国為替相場及び裁定外国為替相場、大蔵省告示第九百七十号によって、大蔵省が日銀に省令レートを公示させるということで、この省令レートがあります。これで省令レートができているということは確認するまでもないのですが、よろしいですね。いいですね。うなずいておられますから、それでいいです。  ずっと見てまいりますと、この省令レートというのが、五十四年二月六日の当時の長岡主計局長の答弁をそこに出しておきましたけれども、前年の六月から十一月までの六カ月間の平均のレートをとっている、こういうことでやっているわけですね。そうですね。そこまで、当然のことですが、ちょっと出てきてそうだと言ってください。――時間がないから、そうですね。はい、結構です。主計局長がそうですと言うから、時間がもったいないから、先に進みます。  そうしますと、ここにありますように、五十四年から五十七年までは、この日銀の省令レートと支出官レートはぴったり同じなのですよ。ところが何と中曽根さんが総理大臣になられてから、五十八年からずっと日銀の省令レートに比べて支出官レートが昨年までは十三円、一円、五円、二十二円という円高になっているのです。これもどうしてこういうことになったかと調べてみると、これは実は今申し上げた法令に基づいて決める決め方ではなくて、前年の十一月の中値をとっているわけですね。こういう形で支出官レートというのが日銀省令レートと変わってきて、言うなれば中曽根さんが総理になってから、何と支出官レートまで変えられて、この時期は円高志向をあらわしていた。そして六十二年からは百五十九円に対して百六十三円という四円円安ということになってきた。どうもそういうこれまでと全く違う、今申し上げた法令、そうだとうなずいていただいたものと全く違う支出官レートが取り上げられるようになった。これはどういうわけですか。
  163. 西垣昭

    ○西垣政府委員 技術的な問題でございますので、私からお答えいたします。  基準外国為替相場あるいは日銀レートと予算積算レートは別の目的のものでございまして、たまたま一致していた時期がございますけれども、別に考えてよろしいわけでございます。  それで、予算積算レートにつきましては、暮れの予算編成時点で、それまでの為替の経緯等を見ながら、そのときに適当と判断されるところでレートを決めております。先ほどおっしゃいましたように、半年の平均で決めていた時期もございます。その後、一年間の平均で決めていた時期もございます。  六十一年度につきましては、プラザ合意以後、それまでの様子と変わってまいったものですから、プラザ合意以後の二カ月間の平均で決めたわけでございます。六十二年度につきましては、日米の蔵相会議がございまして、十一月になりまして為替が安定したということもありまして、十一月の平均をとった、こういうことでございます。
  164. 上田哲

    上田(哲)委員 いずれにしても、支出官レートというのは政府にとっての基準であるということでいいのですね。いいのですね、言うまでもないから。
  165. 西垣昭

    ○西垣政府委員 先ほど基準外国為替相場の話が出ましたもので、それとは別の系統の話で、予算執行上の基準でございます。
  166. 上田哲

    上田(哲)委員 だから、それは政府の基準ですね。  そこで、私が言いたいことは、全く政策的にというと言葉がいいけれども、かなり恣意的に支出官レートは決められているんだということを言いたいわけでして、恣意的に決められているんだが、いかに恣意的に決められたとしても、これは政府の基準レートであるということを今確認さしていただきましたから、そうすると六十二年度は百六十三円である。  そこで、資料Ⅳを見ていただきますと、六十二年度の歳出化計上分がずっと出ているわけであります。御存じのように、外貨建ての装備品の支払いというのは、FMS、政府間の直輸入と、一般輸入、それから国産品中の輸入分というのが三つあるわけです。よく言われるように、例えば今百四十一円、二円になっているんだから、それで直してみたらいいじゃないかというのは、多分おとりにならぬでしょう。それは俗論だと言ってもいいです。そう簡単にはできないよということでしょうから、それは言いません。仮に言うと、FMSと一般輸入について、ことしで二十二億円安くなるのですね。だけれども、これはとりません。いいですか。間違わないように申し上げておくが、大口のFMSとか一般輸入の方はきょうは議論しません。国産品の中で輸入のドル建ての部分についてだけ議論しますから、これはもうFMSのように、防衛庁が日銀に払って日銀が差益の分は大蔵省に返すからというのとは違いますから、これはまさに支出分になるわけですから。いいですね、そういう立場でここだけとらえていくわけであります。  そうすると、輸入品の納期と歳出化の関係なんですが、例えば六十二年度予算に計上申の五十八年度歳出化分四十七億円、五十九年度分の四百九十二億円、これは五十八、五十九年度の調達装備費に係るものであって、六十二年度に納期が来るものだ、こういうことで歳出化が決まっていると考えていいわけですね。
  167. 池田久克

    池田(久)政府委員 お答え申し上げます。  資料Ⅳでございますが、外貨建てのうちドル建てのものにつきまして、ここに示された数字のとおりでございます。  五十八年度のものは、御承知のように、多分これは五年線表のすべてでございますから、納期になります。五十九年度以降のものにつきましては、このうち四年線表のものは納期になりますが、五年線表のものについては一部残る、こういう仕組みになっております。
  168. 上田哲

    上田(哲)委員 だから、ここにあるものは六十二年度の納期分ですね。
  169. 池田久克

    池田(久)政府委員 これは六十二年度に歳出化される金額でございまして、最終年度のものもございますし、六十三年度以降納期になるものも計上されているわけでございます。それは前金の支払い方が、一部中間年度で払うもの、最終年度で払うもの、いろいろございますから、そういう趣旨になります。
  170. 上田哲

    上田(哲)委員 ちょっと待って。つまりそうすると、次の年度へ行くものもあるけれども、ここに歳出化されるものは六十二年度納期分というものでしょう。
  171. 池田久克

    池田(久)政府委員 これはただいま申し上げましたように、うちのものは五年線表それから三年線表、いろいろございます。それで五年線表のものが一番長いわけでございまして、五十八年度の契約分という四十七億は、これは間違いなく五年線表でございますから、六十二年度に、最終年度になるものではございます。五十九年度以降のものにつきましては、例えば四年線表のものであれば、これは最終年度になって六十二年度に納期になりますが、このうち五年線表とかそういうものは六十二年にも一部歳出化が出てくる、こういうものでございます。
  172. 上田哲

    上田(哲)委員 そうすると、この中で六十二年度納期分というのは選別できますか。
  173. 池田久克

    池田(久)政府委員 国産品中の輸入の千百九十六のうち、最終年度のものにつきましては細別はできます。ちょっとお待ちください。今すぐに……。
  174. 上田哲

    上田(哲)委員 大まかに何割というのでいいですよ。
  175. 池田久克

    池田(久)政府委員 国産品中の輸入が全体で千百九十七億でございますか、そのうち最終年度のものは九百五十八億でございます。全体の八〇・一%に相当いたします。
  176. 上田哲

    上田(哲)委員 わかりました。つまり、六十二年度の歳出化分千百九十七億のうち八〇%というのは、全部六十二年度に納期が来るわけです。  そこで、これを全部含めて計算したわけですが、防衛庁訓令第三十五号、昭和三十七年五月二十五日の調達物品等の予定価格の算定基準に関する訓令によりますと、ここに書いてあることは、「変更前の契約の締結後に当該数値が著しく変動したため、これによることが適当でないと認められる場合は、当該変動を考慮のうえ、数値の変更を行なうことができる。」というのにこれは該当するわけですね。まあいいです、時間がないから先に言っておきます。  そうしますと、今お配りした数値、つまり、私が言いたいのはこういうことなんです。これだけあるわけですね、千百九十七億円というのが、六十二年度に前年度からずっと繰り越してきた歳出分というのがあるわけです。そのうち納期が来るのが九百五十八億円。これが八〇・一%もあるわけです。この九百五十八億円については、まさにここで精算をするわけですよ、今の規定に基づいて。だから、きょうの実勢値の百四十一円七十銭でどうしろとは言いません。さっきから申し上げているように、恣意的な理由があるにせよ、今年度の、六十二年度の支出官レートが百六十三円と決められたのだから、その百六十二円の支出官レートで計算をして、当該年度の歳出化計上額を契約したときの、具体的に言うと五十八年が二百四十七円、五十九年が二百三十八円、六十年が二百九円、六十一年が百六十二円です。この数値で決めてあるわけですから、国内メーカーへの装備品発注分のドル建ての支払い分が五十八年からずっと今日まで来て、六十二年度百六十三円支出官レートで納期を持ってきて精算をするものです。  そういうもので、ひとつ百六十三円で精算をしてみたらどうなるかといいますと、今ここにお配りいたしましたように、そこにxと書いてあるものを当該年度の歳出化計上額から引くわけですから、yiが十六億円、五十八年度はつまり十六億円浮くのです。五十九年度は百五十五億円浮くのです。六十年度は百三十四億円浮くのです。これはさっき申し上げたように千百九十七億円のあれですから、この八割ということになりますから、二百四、五十億ということになりましょう。これだけの数値は、防衛庁の調達物品等の予定価格の算定基準に関する訓令にも明らかなように、ここで精算をするわけです。精算をすることになれば、今ついに一%を超えてしまったというのが百三十四億円なんですが、こういう計算をすれば、くどいようですが実勢値に合わせろなんて言っていませんよ、減額分はまさしく六十二年度の支出官レートで計算をして十分に百三十四億円を大きく上回る計算になってくる。これを精算すれば大蔵省にも日銀にもどこにも迷惑はかからない。日本のメーカーにはいろいろ問題があるとは思いますね。この四年間で、二百一件、二百二十六件、二百三十五件、二百五十五件あると防衛庁から件数の数字が出ています。随分件数はあるけれども、細かい計算の仕方というのは、御苦労願うとすれば、明らかにこれは一%を突破しないで十二分なんです。装備品が多過ぎるとか後方負担がどうだとかという問題はいっぱいありますけれども、そうした議論は平行線になると思うから、私は今支出官レート、政府のいろんなじぐざぐがあったけれども、六十二年度を百六十三円と決められた支出官レート、基準レートによってこうした歳出化計画をきちんと計算し直せば一%以内におさまる。これは当然の精算ではないかというふうに思うのですが、いかがですか。
  177. 池田久克

    池田(久)政府委員 かなり技術的な要素がありますので、私から御説明を申し上げます。  その前に、国産品中の輸入の外貨建てについてどうしているかということについてちょっとお聞きいただきたいのですけれども、これは防衛庁といたしましてはもちろん会社に円で払います。会社が、例えば四年とか五年の線表で流す際に、外国から材科とか部品を先行手配いたします。それで、その先行手配をいたしました上で、会社はそこで自分の負担で外貨で払います。そのときの実勢レートでしょう。後でチェックいたします。そして、それを前提にしてラインを流して、最終的にうちは飛行機なり船を会社側から受ける、こういう仕組みになっております。したがいまして、これは基本的に先行手配が前提でございます。  先ほどの先生の資料のⅣでございますか、各歳出化の年度ごとを見ていただきますと、千百九十六億のうち五十九年度と六十年度の契約に係る歳出化が全体の九二%でございます。これは多分四年線表とか三年線表で、この段階で材料の先行手配をしてまいります。そうすると、会社はどうなっているかと申しますと、その時の実勢レートで契約をいたしております。これは御承知のように五十九年度の後半から六十年度の前半にかけましては大変な円安でございます。先ほどの賢科一には書いてございませんけれども、非常に高い。  そこで、そうすると我々としましては、後ほどに、これは契約にそうなっておるわけでありますが、会社がどの段階で、どのレートで実際に部品、材料を外国から手配したかを個々に証拠書類でチェックしてまいります。これはF15の場合ですともう大変多い。したがいまして、例えば二百四十円とかその段階で契約しているものを会社へ払って、契約しているものを、今レートが百六十三円だからといって官側は百六十三円しか払わない、こういう仕組みにはいかない。防衛庁といえども民法の双務契約の原則に従っておりますから、会社が先行して手配するものについては、我々としてもその段階で会社がいかに支払ったか等精査して、そして中途確定なり、最終的には精算をして払うわけでございますから、今先生の計算のように、今百六十三円なんだから昔も百六十三円でできたではないかということは、我々としては採用ができないということであります。
  178. 上田哲

    上田(哲)委員 だめだ、こんないいかげんなことを言っては。これはとんでもないですよ。何が先行投資ですか。先行投資は装備品だけじゃないですよ。あらゆる産業でそんなことやっているじゃないですか。当たり前なことですよ。そして今、円安から円高へ来て苦しんでいるのは全産業じゃありませんか。防衛庁だけがそれを守らなければいかぬなんというばかなことはない。だから、防衛庁だけが苦しめなんということは言っちゃおりませんよ。これが全産業の実態であり、しかも防衛庁の規定の中には、この変動が大きいときにはちゃんと精算する、精算することになっているじゃありませんか。  しかも、あなたの、池田さんの答弁の中に、だからちゃんとここに印刷してあるんだ、池田さんの答弁の中に、差益が出てもそれは、差益、差損は同じですけれども、こちらの方は関知しませんということを答弁しているじゃありませんか。ここに至ってこんなばかなことはありませんよ。  防衛庁長官が言われたように、一%にとどめることがいいと政府は言っておるわけですよ。精神を守ると言っているわけですよ。だったら守れるのですよ。飛行機を削れとか実勢値に合わせるとか言ってないですよ。まさに政府が、勝手と言っては悪いけれども、お決めになっている基準価格の百六十三円で、しかも精算するということがしっかりと出ていて、国会答弁も出ていて、そのとおりやったら明らかに百三十四億の二倍以上の金がここで出てくるんだから、業者にはちょっとつらいかもしれないが、これは日本じゅう業者はそういう苦労をなめているのですから、防衛庁だけがその苦労をしなくていいという理屈は、これは国民的には納得しない。これはやはりちゃんと答えを出してもらわなければいけませんよ。ちゃんとやってください。こんなの答弁になりません。そんな答弁要りません。だめですよ、そんなわかり切った商慣習のようなことを言ってもらっては困る。時間がない。
  179. 池田久克

    池田(久)政府委員 お答え申し上げます。  先般来答弁申し上げましたように、差益が出れば厳格にそれを支払わなかったり返上させることを現に我々は守っています。しかし、この話と今申し上げたのは違いまして、長期に国産で要する場合に部品を外国から購入するものについては、その段階のレートで各会社はそれぞれの負担で購入をしておるわけであります。ですから、例えば五十九年度後半ですと二百六十円二十四銭までいっています。そういうものを個々に精査をして見るわけでございますから、それを現在円高で百六十三円だからそのレートで払えるはずだ、こういうわけにはまいらぬ、こう申し上げておるわけであります。
  180. 上田哲

    上田(哲)委員 そんなことないじゃないですか。――それじゃ何がわかっているんだ。わからない人が物を言ってもしようがないな。議事妨害しないでもらいたい。その訓令三十五号というのはここに適用されるじゃないですか。適用されないと言うのですか。
  181. 池田久克

    池田(久)政府委員 これはそれぞれの実勢レートで契約するものについてはそういう指導をしております。今国産品中の輸入につきましては、非常に長期にわたりますので会社との契約でございます。もちろん実勢レートで契約できるものもございます。しかし、長期にわたるものについては、支出官レートで精算をして、それを後で厳格にそれぞれの証拠書類を突合して差益が出れば調整する、整理するということになっているわけでございまして、これはぜひ御了承をいただきたいと思っております。
  182. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 今いろいろ計算のお話がございましたが、それはそれとおきまして、問題は、計算からすると一%以下になるじゃないか、だからそう直せと、こういう話でしょう。一%の問題は、一%が予算のときにどうなるかというのが問題なんです。その後のものは予算の執行の問題ですから、執行の問題と予算を決める場合の一%は別でございます。だからこれは計算上ですよ、予算執行としてやるべきことはやるでしょう。それは当然であります。
  183. 上田哲

    上田(哲)委員 そんな答弁全然納得しません。わかっていらっしゃらないから――ではひとつこの分だけ保留しまして、理事会なり何なりで御協議いただく。ことでいかがかと思いますが、それでいいですか。
  184. 砂田重民

    砂田委員長 これにて上田君の質疑は終了いたしましたが、ただいまの問題については理事会で協議をいたします。  次に、金子満広君。
  185. 金子満広

    ○金子(満)委員 私は、日本共産党・革新共同を代表して、当面の重要問題について総理並びに関係の閣僚に質問をいたします。  質問に入る前にどうしても触れておかなければならないことは、予算委員会における私の質問が今日まで封殺されてきた問題であります。予算委員会は、自社公民各党代表が総括質問をした後、前の発言予定者が発言を保留したので、当然次の発言予定者である日本共産党・革新共同を代表しての私の質問になるべきところ、社会、公明、民社の関係委員予算委員会の開会に反対し、自民党予算委員長が、理事の意見がまとまらないなどの理由で私の質問を封殺してきたのであります。  しかも、絶対に容認できないことは、決定されていた二時間五十分の私の質問時間に対し、時間制限、質問内容についても、売上税導入と不可分の問題である軍拡問題などに触れてはならないなどの不当な制限を加えようとしたことであります。これは国会での許すべからざる言論封殺であり、議会制民主主義の基本に対す至言語道断な侵害であります。事の本質は明白であります。私は、改めて予算委員長及び自民、社会、公明、民社各党関係者の重大な責任を指摘するとともに、二度とこのような事態が繰り返されないように強く要求しておきます。  そして、私の質問なしにこの予算委員会を、我が党委員の反対を押し切って四月一日から一斉に地方選挙前半戦の終了まで政治休戦として、開会を今日まで放置してきたことであります。  このことについて、四月八日、民社党の塚本委員長は、岐阜市で演説をして、「竹下幹事長から、この選挙が終わるまでは政治休戦にしていただけませんかと頼みに来たんですから。それで国会は、予算委員会が政治休戦してるんですよ。もうちょっとわかりやすく言うと、東京や大阪や福岡では、自民党と公明党、民社党が一緒に知事さんの推薦をしておるもんですから、国会でどケンカをやったら東京の鈴木さんが落ちてしまう、大阪の岸さんも落ちてしまう、あるいはまた福岡田中さんが落ちてしまうもんだから、やっぱりこの際は国会を休戦にしておいたほうがいいといってですね、そうして自民党の申し入れによって十二日までは政治休戦になっているんですよ」こう述べておりますが、総理に伺います。  このようにして政治休戦をして、国会国民の前に果たすべき義務を放棄したことは重大であります。自民党の総裁としてのこの責任をどうするか、明確にお答え願いたいと思います。
  186. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私が聞いている範囲では、自民党側は予算委員会の開会を常にお願いをして、そうして理事からも申し入れが何回かあった、そういうふうに聞いて、自民党委員会の開催に消極的であったということはないと聞いております。
  187. 金子満広

    ○金子(満)委員 政治休戦の問題はどうですか。
  188. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 つまり、委員会を開いて質問をどんどんしてくださいと自民党は申し入れしておるわけでありまして、休むということを我々は考えていないし、政府もそれで待機しておったわけでございます。
  189. 金子満広

    ○金子(満)委員 事実は違うと思いますが、いずれにしても、やはりこの問題は共産党・革新共同の代表の質問を封じたということ、それからまた、政治休戦というのはもちろん党利党略だということは明白であろうと思います。議会制民主主義、これを擁護する見地からも、こういうようなことは今後ないように、ひとつ厳重に意見を述べておきます。  さて、そこで地方選挙の前半戦が終わった後での現在における政局の問題及び売上税の問題に関して質問をしたいと思います。  一斉地方選挙の前半戦が終わりました。そして選挙の結果は、売上税導入と自民党・中曽根政治に対する厳しい国民の審判が下されました。これはかってない厳しさと言っても言い過ぎではございません。これは総理公約違反、つまり大型間接税はやらないやらないと言いながら売上税という大型間接税を導入しようとしていること、そういうことに対する国民の審判であったということが言えると思います。  今、売上税反対の声は全国に津波のように広がっています。そして全国では千四百八十七の地方自治体売上税の反対を決議をしております。その中には、首相の公約違反ということを明確に織り込んだところも数多くあります。そしてまた、自民党が推薦した知事や市長などの中でも、売上税反対というのはたくさんの候補者がそれを述べてきました。こういうように、売上税反対というのはまさに天下の声、国民の声になっているということはもう否定できない事実であります。  しかも、そういう中で、これは政党政治の中ではこれまで前例のない、首相がこういう選挙でどこへも遊説に出られなかった、こういう事態さえ起きているわけであります。総理選挙の初日に、この売上税反対という国民の声に対して、いろいろあぶくは立っても、黒潮の太い流れであぶくは消えていくものだ、こういうように言ったり、また政府首脳、これは後藤田長官かもしれませんけれども、国益に反する、民主主義の危機の一歩手前だ、こういうように売上税反対の問題について述べていることが報道をされています。  こういう点はやはり主権者に対する、国民の運動に対するあざけり笑うということであり、国民的な運動を敵視する考え方だと思います。しかし、売上税反対の国民の声は完全に良識を発揮いたしまして、こういうような主張、論点を払いのけて、そして選挙の結果、立派に答えを出したわけであります。  こういう中で今、総理政府首脳は、今度の選挙の結果は厳粛に受けとめるあるいは謙虚に受けとめると言っております。厳粛に謙虚に受けとめるということを言葉ではなくて行動で、態度で示すということは、売上税そのものがこれだけ痛烈な批判を受けたのですから撤回をすることだと考えますが、総理、どうですか。
  190. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 今回の選挙統一地方選挙でございまして、都知事さん、あるいは北海道以下の知事さん、あるいは県会議員さん、あるいは指定都市議員さん、市長さん、こういうものをお選びになる。したがって、その土地、地域の建設を中心にした選挙であります。恐らく有権者の皆さんは、最終的に御投票になるときには、やはりだれが一番知事さんとして適任であるか、実力もあり、実行力もあり、地域の建設に役立つ方であるか、四年間任せるのだから、じゃ県会議員としてはどの人がいいだろうか、そういうように自分の地域、自分の生活、そういうものを考えて、いわゆる地方自治の本旨にのっとりまして自分の身の回りを片づけてくれる人、一番適任者、そういう意味で御判断なすったと思います。  そういう意味で今回の選挙地方統一選挙、そう言われておる。もちろんその中には売上税の問題も影響を及ぼしたということは判断の中に入っておった点も否定はできないと思っておりますが、やはり最終的にはそういう地方の住んでいらっしゃるところの建設にだれが一番いいかという判断でなすったのだと思うのです。  売上税や、そのほか税制の改革の問題は、この前の衆議院あるいは参議院の総選挙の際に、自民党税制の大改革をやります、そして所得税法人税住民税の思い切った減税をやります、そういう公約をいたしまして、やはり減税ということが、また減税をやるための税制改革ということが大公約の中心にあったわけであります。でありますから、それを実現するために政府の税調に諮問し、あるいは党でいろいろ御研究いただいて、そしてまず第一に四兆五千億円に及ぶ大きな減税をやろう。  じゃその減税のお金をとこから調達するか。赤字公債でやるということは子孫に大きなツケを残すので、それはできない。じゃどうかというと、それは間接税以外にないじゃないか。所得税法人税を減らすということになると、あと残っている税金というのは、物品税とかガソリン税とか、あるいはいわゆる有取税、有価証券取引税、あるいは財産税――財産税はありません相続税、こういうようなものでやらなければならぬ。そうなると結局それらをふやすわけにいかぬ。  じゃどこかからというと、やはり間接税に頼らなければならない。そういう関係で、間接税の一つとして売上税というものが出てきました。そういうような状況で、減税というものがやはり一番大きな我々の目的であったわけで、今でもやはり所得税法人税住民税の大減税は実行したい、そう考えておるところなのでございます。  そういう中で、売上税につきましてはいろいろお考えもあり、我々の説明不足の点もあり、そういういろいろな点で大きな誤解を受けたりしまして、大変私は申しわけない、そう思っておるわけでございますが、この税制改革の大きな眼目は、特にサラリーマンそのほかの大きな減税をやる、それが我々の税制改革、公約の第一義であったということをここでまた申し上げさせていただきたいと思います。
  191. 金子満広

    ○金子(満)委員 私が聞いているのはそのことではないのです。後でいろいろ具体的に質問いたしますが、私は、今度の選挙の最大の争点は売上税の問題だったと思います。  これは自民党の諸君もそうであります。売上税に言及しない候補者は全国一人もいなかったと思います。それで多くの自民党候補もみんな反対反対を言ったんですから、これは。間違いなくそうです。そして、国政だ、地方政治だということではなくて、全国民売上税に異常なほどの関心を示し、反対の意思表示投票という行為によって示したと思うのです。  この点で今総理売上税影響した、もじゃなくて、売上税そのものをみんな戦ったと私は思うのです。そういう点からいえば、多くの主権者というのは、売上税の導入というのは公約違反だということを明確に指摘をして投票したと思うのです。それからまた、売上税そのものは大型だとか大型でないとか、そういうことではなくて、仕組みも内容も大型なんだ、そういう認識でやったと思うのです。  内容を知らない知らないという説明があります。説明不足のところは責任を感ずるということでありますけれども、今内容はどんどん知れ渡っている。内容を知れば知るほど反対は確信になって燃え広がっているというのが現実だと私は思うのですね。ですから、世論調査を見ても、売上税反対は八〇%を超えますよ。それから公約違反だというのが七〇%を超えている。これが現実であります。  ですから、そういう中で、今私たちがこの選挙の結果をどう見るかということを考えたときに、どこへ行っても私たちが耳にしたのは、あの昨年の夏の衆参同時選挙のときの中曽根総理の全国を、回っての演説、公約ですよ。これは場所が変わってもせりふだけは同じことを言っていたんです。これはもう全国津々浦々、暗記するぐらいみんな覚えていますよ。  国民が反対し、自民党員が反対するような大型間接税というようなものはやりません、総理がやらないと言ったらやりません、この顔がうそつく顔かと言ってやるくらい、まさにもう有名な言葉になったんです。ですから、こういう点で国民が、売上税もじゃなくて、売上税そのものにノーの回答をしたということが現実だ。だから、総理が厳粛に選挙の結果を受けとめるとか、謙虚に受けとめるんだったら言葉ではなくて態度で示さなければ国民は納得しない。私は、そういう意味で撤回をするのが道筋で、撤回反対という国民はいないと思うのです。  私は、自民党の中にも、閣僚の中でも撤回したら困るなんという人はいないと思うのです。総理が撤回したと言えば、ああよかったと感ずる人がいっぱいいるんじゃないですか。みんなそうだと思うのです。だから、ここのところで国民がこういう意思を表明したんだから、地方政治と違うとかなんとかいっても、売上税というのは全国民が払うのですから、取られるのですから、地方自治体も大きな打撃を受けることは言うまでもないことですよ。  いろいろ学校の建設から、福祉の施設から、電気税もガス税も今度取られてしまうわけですから、そういう点で売上税を納めるのも取られるのも国民だ。これは天下の悪税だ。そして地方自治あるいは地方財政そのものが深刻な打撃を受けるんだから反対だということですから、潔く撤回をする。総理ですから、もう弁解とか言いわけというのはしない方がいいと私は思うのですね。もう悠然として、わかった、撤回するということをすれば全部納得するんです。納得しないでごり押しをするから、今問題になっているんです。  そういう意味で、ひとつ撤回することをもう一度強く求めておきたいと思うのです。
  192. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 撤回する考えはございません。
  193. 金子満広

    ○金子(満)委員 そういう点で、公約違反という点でいえば、実はあの去年の選挙のときには、確かに大型間接税をやらないという自民党候補者がいっぱいいました。当選した人の中でも、自民党の衆参の約七割、三百二十一名が大型間接税は反対、導入しないということを選挙公報とかいろいろのところを通じて発表しておったし、公約しておった。今の閣僚の中で十七名おりますね、大型間接税反対を選挙公報に出し、いろいろ約束したのは。実際いっぱいいるわけです、十七名ですからね。そういう中だから国民の多くが、売上税というのはやらないんだなと思って自民党投票された方はいると私は思うのです。  ここに一つ、これは全国でも大変有名な問題でありますが、百貨店協会とか、それからまた小売商のいろいろの組織、全国の七十七の業者団体が新聞に一ページの大きな意見広告を出しました。そしてここに「拝啓 内閣総理大臣殿」として、「大型間接税は、先の衆参同日選挙において、総理自民党がこれを導入しないと公約し、国民はそれを信じ、自民党は大勝しました。」ところが、大型間接税の導入というのはやられたんだから、「政治倫理にもとる公約の無視」である、こういうふうに厳しく指摘しております。     〔委員長退席、吹田委員長代理着席〕  それからもう一つは、東京の台東区の商店連合会ですが、これは私と自民党の二人の議員、三名が現職でありますけれども、一緒に並んだとか並ばなかったとかで全国に大変有名になったところであります。五千を超える商店がございます。その商店連合会が売上税反対で決議をしておりますけれども、そこでは   われわれは、本日ここに「売上げ税断固粉砕」を旗じるしに立ち挙った。そしてその中で中曽根総理は、先の衆参同日選挙で大型間接  税導入は行わないと、繰返し明言、声を大にして公約しながら、われわれの支持で我々の支持でというのは、商店連合会の支持でという意味ですよ。   三百四議席を獲得するや、手のひらを返すように売上げ税を導入、選挙公約を踏みにじり、われわれを塗炭の苦しみに落し入れようとしている。〝正直ものは馬鹿をみる〟政府自民党のかかる公約違反を許すことは、断じてできない。   われわれ台東区商店街連合会さん下の中小小売商は、本大会の名において政府自民党総理の「大型間接税は導入しない」と明言した選挙公約を、厳しく履行することを求めるとともに、売上げ税に対しては、台東区商店街連合会の総力をもって、断固粉砕することをここに決議する。こういう種類の決議はもう業者関係、中小企業、たくさん山のようにあります。  それから、最初にも指摘しましたが、地方自治体の決議の中にもあります。閣僚の皆さんの地元の幾つかの市町村の決議にも、売上税公約違反だというのがたくさん決議されているわけでありますから、そういう売上税公約違反だという声に、どのように総理、お答えになりますか。
  194. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 この点は、前もここでもお答えしましたとおり、大型ではないと私は考えておるわけでございます。つまり、大型間接税という定義、これは国によって違いますけれども、外国との比較において果たして大型かどうか、国内のほかの税金と比べてみて大型かどうか。間接税ですから、影響を受ける方はみんな同じように広く受けるんです。  例えば砂糖消費税というものがありますが、これはお菓子にもあるいはみりんにもあらゆるものに入ってきますね、味つけても。ですから、国民一般にそれは及んでくるので、及んでくるから大型とは言えないわけです。ガソリン税にしても石油税にしても、プラスチックまでもなっていくわけです。ですから、みんな国民影響は及んでくるわけです。  しかし、いただく金額がどれぐらいか、そういうような面から見ますと、今度の売上税というものは歳入総額の税金の中で三%であります。フランスは四五%を売上税で取っておるし、また、英国がたしか二二%、ドイツは二九%です。日本は三%です。そのほかいろいろ、一億円以下は納税義務者にしないとか、あるいは口に入るものや、教育、衛生、医療あるいは土地関係、住宅関係、そういうものは全部除いた。そういうようないろいろな大きな例外をつくりまして、大型にならぬように配慮してやってくだすった。そういう意味で大型ではないんです、そういうことを申し上げたのです。  しかし、そういう細かいお話は、国民皆様方よく耳に達しない憂いがございました。そういう意味において、国民皆様方にそういう説明も足りないし、十分そういうPRの機会もなかったことはまことに申しわけない、そういうふうに申し上げている次第なのでございます。
  195. 金子満広

    ○金子(満)委員 小さい話じゃなく、そういうのは非常に大きい話でありますけれども、私が聞いているのは公約違反であるかどうかでありますが、公約違反でないということを言われているんだと思うのです。ですから、公約に違反したか違反しないかというのは、違反した総理にはもう決められないのです。  ちょうど選挙違反をやった人に、選挙違反をやりましたかと言ったら、やりませんと言うに決まっているんです。だから、違反しているか違反していないかを今判断をするのは主権者である国民だ、これは非常にはっきりしていると思うのですね。そして今度の地方選挙の前半戦は、公約違反であるという答えを出した。  私は、やはりここではっきり指摘しておきたいことは、少数の人を短い時間だます、ごまかすことはできるだろう、しかし、多数の人を長時間にわたってだまし続けるということは困難だ、できない、これだけはもうはっきりしていることだと思うのですね。ですから、今ここになって総理が、公約違反ではない、あれは大型ではないんだ、そして説明不足だった、説明すれば理解してくれるだろう、こういうことを言えば言うほど、総理の姿が小さくて惨めに見えてくるんだと私は思うのですね。やはりこういう点はもう国民世論なんだから、ここのところははっきり受けとめていかなければならぬ。  そして、総理は今も大型でないという理由にいろいろ挙げていますけれども、要約すれば三つ言っているんだと思うのです。一つは、非課税品目をうんとつくった。それからまた、税率は低い。それからもう一つは、一億円以下、今言葉にありませんでしたけれども、売り上げ一億円以下は非課税だからということを言われるのだと思うのですね。そういう中で、従来から総理がよく言われていることでありますけれども、家計には余り影響しない、薄いのだ、こういうことを言われるわけです。そして、家計の消費支出の中では六五%は非課税の分野だ、課税の分野というのは三五%で大したことはない、だからということを言われる。これを説明すれば納得するだろうと言うけれども、そうじゃないのだよ。  私はそこのところで一つ、これは何回もいろいろのところで議論されるのですけれども、改めて伺っておきたいのは、よろしいですか、非課税品目だけでできている商品というのはあるのですか、ないのですかという問題なんです。非課税だけで、そういう品物だけでできている商品があるかないかということなんです。
  196. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは、お尋ねの意味は、仮に食べ物が非課税であるといいましても、その生産をするための施設、あるいはもっと言いますと肥料もございましょうし、それから今度はその運搬のための施設等々、あるいは容器、いろいろなものが課税であれば、非常に厳格な意味で申せば、本当に全く純粋に非課税だけでできるというものはないと申し上げる方が正確かもしれません。     〔吹田委員長代理退席、委員長着席〕
  197. 金子満広

    ○金子(満)委員 やはりそうだと思うのですね。非課税品目だけでできている商品なんというのはこの世に存在をいたしません。それは、海に裸で入って手で魚をつかんで、それで焼くことも煮ることもしないでかじれば、これは非課税かもしれませんけれども、そんな芸当できるわけもありません。したがって、売上税から無縁のものというのはないわけです。これは非課税品であっても何らかの形で売上税の要素がみんな加味されて、これが物価に転嫁してくる。これは後で言われるかどうか知りませんけれども、それは一回だけ、一・六%だ、これはよく言われるわけですが、しかしそういう中で私は具体的に一つ質問したいと思うのです。  建設大臣、新築の住宅は非課税ですね、そうですね。それではそこで伺うのですが、建設大臣も大型間接税絶対やらないという、選挙公報にこんな大きく出した閣僚の一人ですからね。今家を建てる場合に、新築住宅非課税がどこかにあるのかということです。柱、材木、課税ですね。畳もそうですね。かわらもそうですね。ガラスもそうでしょう。おふる場のタイルもみんな課税ですね。くぎ一本まで課税でしょう。どこかに非課税というのはあるのですか。この新築の住宅非課税というのでちょっと伺いたいと思うのです。
  198. 天野光晴

    ○天野国務大臣 お答えしますが、いわゆる住宅建設に関する各資材は非課税ではありません。
  199. 金子満広

    ○金子(満)委員 ないのですよ。幾ら探しても一つも見つかりません。あえて非課税だといえば建設業者、大工さんの手間賃だけですね。それを政府、大蔵省のいろいろの宣伝物では非課税だ非課税だと、これを宣伝するわけです。そうすると何かうんと得したような錯覚をみんな持つよ。看板に偽りありというのはこうなんです。だから総理が説明すればわかってくれるのじゃないですよ。説明をしなくとも、見れば見るほどうそだ、インチキだ。これは何で急いでこんなものをつくったのか。これは同じことで住宅の増改築も非課税です、同じです。原材料はみんな課税なんですから。飲食料品で家を建てるなんてことないのですから。米で家を、そんなものないのですから。  それで建設大臣、もう一つ伺います。  土地は抜きにして、木造の住宅で千五百万円の家を建てたとしますと、原材料はその中で大体六〇%前後だと思いますが、そうですか。
  200. 片山正夫

    ○片山政府委員 標準的な木造住宅の場合で申し上げますと、機器それから資材等の住宅価格の中に占めます割合は約六割でございます。
  201. 金子満広

    ○金子(満)委員 これは天下の常識ですよね、六割は。そうすると、その六割に全部売上税が課税されるわけでしょう。そうすると、千五百万円ですから九百万円が原材料分ですね。そこに五%ですから、四十五万円の売上税が入っているわけですね。これを加えると千五百四十五万円になりますね。何%になります。これは三%でしょう。住宅費は、新築の住宅の場合、三%の値上げになるわけです。その値上げの分の四十五万円、だれが払いますか。
  202. 片山正夫

    ○片山政府委員 三%がかかりました税金相当分は、最終需要者であります住宅購入者が支払うことになります。
  203. 金子満広

    ○金子(満)委員 したがって、そういう単純な計算をしてもそれが全部家計の方へ回ってくるわけですよ。結局、建ててくださいと言った人が払わなくちゃならぬ、そういうことですね。  ところが、そこでまけろ、まけないという問題が出るわけですよ。ああそうですか、五%入っているんですか、ようござんす、じゃ、四十五万円、結構ですから、中曽根さんがそういうのをつくったんなら払いますね、こう言う人はいないですよ、これ。そこで業者が泣くか、住宅を頼んだ人が泣くか、そこが一番問題だ、こういうように思うのですね。  ですから、私は、宮澤大蔵大臣、こういうようなところに住宅非課税だと言うのは、これはやめた方がいいと思うのです。新築の住宅のときには、大工さんの手間賃は非課税です、これはいいですよ。そうでなかったら、これは全く看板に偽りありで、こういう点は直しておいた方がいいと思うのです。後にもほかにいっぱいありますから、きょう。
  204. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 私はそう思いません。今御指摘になりましたことは、それは実はもうごくごくこの税の初歩のことでありまして、別に新しいことをおっしゃったわけではございません。  そこで問題は、そういうことを全部含めまして、産業連関表を使いましても、消費者物価に及ぼす影響は全部で一・五%、一・六%だというところなんでございまして、毎日毎日人は住宅を建てるわけではございませんから、消費者物価に一・六%という意味は、全国押しなべて一年間に消費者物価にその程度の影響でございますということを申し上げておるわけです。  もう一つございます。売上税だけを政府は提案をしているわけではございません。これは直接税、所得税法人税減税とパッケージにしてお願いをしているわけでございますから、そういう人たちにとっては、所得税なり、あるいは法人にとっては法人税でございますが、そういうことの減税、可処分所得がふえてまいります、そういうことも御勘案の上でひとつ御判断を願いたいと思います。
  205. 金子満広

    ○金子(満)委員 私の言っているのは、これは初歩的でも何でもない、だれでも一番疑問に持つやつですよ。だから、一番初歩的なところだと言えば、そこが間違っているんだから、初歩で間違ったらみんな間違うことになるんじゃないですか。単純なんです。だから私は、ここに新築の住宅は非課税だなどと言うなと言うのです。そこのところを言っているのです。  これで文部大臣、あなたにもちょっと伺いたいと思うのです。これにも書いてありますが、教育費は非課税だとあるでしょう。そうですね。教育費非課税の中に何と書いてある。「小学校、中学校、高等学校、大学、短期大学、幼稚園、養護学校など」と書いてある。各種学校、その他ありますけれどもね。小学校、中学校で何か非課税があるのですか。
  206. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 ちょっと質問がわかりませんが、小学校、中学校で非課税というのはどういうことですか。
  207. 金子満広

    ○金子(満)委員 じゃ、もう一遍言います。  四月は入学期でもあり、新学期ですから、いろいろ支出も多いわけですね。そこで、鉛筆もノートも消しゴムもクレヨンもランドセルも全部課税ですよ。そこで、小学校、中学校はほかに何か非課税のものがあるのですかと聞いておるのです。
  208. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 もし教材として教科書なんか買う場合は非課税でございます。
  209. 金子満広

    ○金子(満)委員 文部大臣ですから、小学校、中学校の教材、教科書がどういうものになっているか御存じだと思います。これは無償ですから税金はかけようがないのです。人間ですから理解不足で、初歩的な問題だと言えば初歩的な問題なんですが、この初歩的な問題をここで間違っているのですから、私は「小学校、中学校」というのは、間違いは改める方は何ぼ早くてもいいわけですから、範を示して「小学校、中学校」は間違いだと、隣に宮澤さんもいますから、これは大蔵省ですけれども、この「小学校、中学校」のところは削ってもらう、これをしたらいいと思うのです。
  210. 水野勝

    ○水野政府委員 小学校が何でも非課税ということを申し上げておるわけではございませんで、法律で申し上げれば、学校におきますところの教育として行う役務の提供、これが非課税の対象でございますし、そうした点を明らかにさせていただくために資料としていろいろお配りしておるものでございましても、小学校、中学校におきますところの「学校教育の対価である入学金や授業料など」、このように明記させていただいておるわけでございます。
  211. 金子満広

    ○金子(満)委員 ですから、入学金はないのでしょう、小学校に。――私立でしょう。私立だったら私立と書けばいいのです、全国の中で私立はこのくらいしかないのだから。だから授業料も入学金もないのですよ。そういうところは、やるのなら区別しなければならぬ。
  212. 水野勝

    ○水野政府委員 学校教育法第一条の「学校」ということで、そこは公立も私立も国立も全部包含をさせていただいているわけでございます。
  213. 金子満広

    ○金子(満)委員 問題ははっきりしていると思うのです。やはり政府というのは一度出すとなかなか改めないのですよ。これが一番悪い癖なんですね。素直にならなければいけないと思うのですよ。だって、これは国民全体が見ているのですから、みっともないと思うのです。  学校教育法に何とかと言ったら、確かに「小学校、中学校」と書いてあります。これは教育法に書いてあるのであって、売上税に書いてあるのじゃないのです。だから、そんな小さいところで、私立がありますなんで蚊の鳴くような声でやったってだめなんです。そういう点では、この点は訂正するように要求しておきたいと思います。  同じようなことはたくさんありますけれども、運輸大臣、いますね。  国鉄が今月から新会社になったということですけれども、赤字だ赤字だということで来たわけですね。さて、売上税が導入されますと、国鉄は非課税のものというのは余り扱わないですね。車両その他購入物件などは全部課税になるわけです。ですから、購入者である新会社が買うわけです。例えば新幹線、十六両ですか、あれがたしか三十八億八千万すると思います、今の価格で。これは売上税がかかるのですね。三十八億八千万ということになりますと幾らになりますか、一億九千四百万円になりますか、そういうようにたくさんのもの。電車一両約一億円、五百万円かかりますね。これは膨大なものになると思うのです。事務用品その他たくさんなんですが、その売上税で新しく払わなくてはならぬのは全国の新会社の中でどのくらいになりますか。
  214. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 全国の新会社で幾らかということは私は今承知をいたしておりません。  しかし、今御指摘のとおり、これはJR各社ばかりではございませんで、運輸事業者が購入をいたします物件費等につきましては売上税が課されるということであります。
  215. 金子満広

    ○金子(満)委員 新会社だけでなくて、それは私鉄もパスも、運送関係、輸送関係、全部同じですね。みんな売上税を払わなくちゃならぬわけですね。悪い意味でこれが家計にどう還元されてくるか。  国鉄再建監理委員会のときに、分割・民営化しろ、そしてその中で一定の運賃値上げを五カ年間でこのくらいという水準を出したわけですね。これは、運賃値上げはするという前提で一つの指数が別々に出ているわけですよ。あのときにはまだ売上税問題という形はなかったわけですよ。今度は入ってきたわけですから、これが運賃の値上げに一層拍車をかけるという結果になると思うのです。そうしなければ、売上税を払う購入主体者がよそから銭を持ってくるわけにいかないわけですから。その点はどうですか。
  216. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 確かに国鉄改革関連八法の御審議をいただきました段階で国会に提出をいたしました収支試算等につきましては、売上税が入っておりませんでした。その後、この問題が提起をされましてから新会社が発足までの間に、それぞれの会社の収支の見直しを行っております。  もちろんそれは、例えば北海道、九州、四国の各三会社の経営安定基金の利回り等の見直し等もございましたから、売上税影響だけではございません。しかし、これらの見直しをいたしました結果、経営安定基金につきましても所要の積み増しをいたしておりますし、本州の三つの会社あるいは貨物会社等が旧国鉄から引き継ぎます債務につきまして所要の減額等の修正を行いまして新会社をスタートさせておりますので、この点につきましては、新会社スタート時におきまして数字はきちんと整っております。  また同時に、今の御指摘でありますから一点補足をさせていただきますと、私どもは確かに一定の運賃改定幅というものを見込んで試算を提出いたしました。しかし、これには関連事業の見積もりは非常に低く抑えております。関連事業収入は低く抑えております。ちなみに、旧国鉄の関連事業収入というものはほほ三%程度の収入でございましたが、初年度につきましてこれを四%程度に私どもは見込みました。そして、おおむね五年ぐらいの間に七%程度までこれがふえるであろうという前提を立てておりますが、現在、新会社のスタート後まだ非常に短い時間でありますけれども、それぞれの会社の関連事業に対する熱意というものは非常に大きなものがございます。これが仮に見込んでおりました以上の事業収入を上げることができますならば、これはそれだけ経営の安定にも資するものでありまして、運賃改定の時期を延ばすあるいは当初予定をしておりましたよりも上げ幅を縮める等の効果が生ずるものと思われます。
  217. 金子満広

    ○金子(満)委員 いずれにしても、売上税導入によって新会社、つまり分割されたその状態の中で支出が多くなることは、これはもう当然のことであります。それから、一般の輸送機関も先ほど指摘するように支出が多くなるわけですから、結局はほかで収入を上げる上げるといっても、運賃の方にそれが回ってくるということは、これは否定できないことであります。  さて、こういう中で、これも家計に関係することですが、防衛庁長官長官も非常に派手に売上税反対を選挙のときやったメンバーの一人なんですが、なかなか派手にやっています。「私は、今後の政治活動の公約の一つに「大型間接税導入反対」を加えるとともに、中小小売商業の発展振興に努力することを誓約いたします。」日本専門店会連盟のアンケートに答えて誓約しているわけですけれども、そのとき防衛庁のことを考えたかどうか知りませんけれども、防衛費がだんだん伸びて異常突出の連続でありますけれども、さてそういう中で、自衛隊の装備その他に全部売上税がかりますね。これは相当のものだと思いますよ。  私どもいろいろ調査をして、政府関係者からも全部単価を聞いてみました。例えば陸上自衛隊の六四式の小銃一丁が十八万四千円だ。そうしますとこれに売上税が九千二百円かかる。それからP3C、約百億ですね。百億ですから五%で五億円かかるわけです。それから、あの飛行機の中に冷蔵庫が積んでありますね。これもいろいろ調査いたしました。P3Cの中の冷蔵庫というのは、何かうんと高くて二百八十六万円だそうです。この二百八十六万円にも売上税がかかるわけです。これも五%ですから十四万三千円になりますか。そういうように売上税がどんどんかかってくる。  ですから、来年度の防衛庁の予算の中で、正面装備その他その他で売上税にかかる分というのは相当あるんじゃないですか。どのくらいありますか。
  218. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 数字の点については事務当局から答えさせます。  それから、私が売上税について反対というものがどこにあるのか。(金子(満)委員大型間接税」と呼ぶ)大型間接税、私は、選挙公報ではそういうことを言ってないはずでございます。どこで言ったのか、後で資料をいただきたい。
  219. 金子満広

    ○金子(満)委員 後でなくて今言っておきますよ、それは有名なことでありますから。それは、アンケートにしっかり書いて写真まで入って、もういっぱい配られているのです。今申し上げますが。  ですから、そういうように大型間接税反対というのは皆さんの方はずっと本当に派手にやっておる。これは閣僚の中に、笑い事じゃない、笑っている人もいますけれども、ほかの人もそれをやっているわけですから。今ここで読み上げたのですからあるわけですが、後でやります。  では、先に答えてください。
  220. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 計算上百十六億で、予算面で九十三億だったと思います。
  221. 金子満広

    ○金子(満)委員 ありました。「私は、今後の政治活動の公約の一つに「大型間接税導入反対」を加えるとともに、中小小売商業の発展振興に努力することを誓約いたします。(日専連)」これは日本専門店会連盟のことであります。これはちゃんとここに写真まで出てありますから、あなたの三島の住所も全部ありますし、議員会館のことも全部書いてありますから、そういう点で私がいいかげんなことを言っているんじゃありませんから、その点は申し上げておきたいと思います。  そういうように、結局家計の消費支出が非課税の分野というのは六五%だ、こっちの方は三五%だから、薄いから大したことない大したことないという説明ですけれども、こういうことを考えてくると、これは大きく影響してくることだけは間違いないし、その点を指摘しておきたいと思うのです。  それから、同じようなことで言えば、それはたくさんあります。本当に具体的な問題になると、細かいようだけれども、実は地域では、商店会などで大問題になるのは、缶ジュースが非課税だ、こうなるわけですね。これは非課税ですよ、百円で。ところが、缶その他輸送費などなどで物価が若干上がってきますね。仮にそれが缶詰業界などでも三%から四%近く上がるのではないか、缶そのものが。だとすると、仮にこれが百三円になったとします。自動販売機はどうするんだという問題が出るのです。今は百円入れてガチャッと押して出ますけれども、百三円にするわけにはいかない、百十円にしたら一割値上げになる、こういう問題が出てくるのですね。ですから、非課税品目をうんとつくったから大型ではないということには、これはもちろんならないわけですね。  こういう点も一つ一つ見ていくと、今一斉地方選挙前半戦の中で、どこに行ってもこういう問題が議論になるのです。議論になるから、自民党候補者売上税反対をみんなやっているのですよ。これは間違いなくやっている。その点を見て見ぬふりをしているんだと思うのです、総理の方も。そういう形のところを、総理自身がそういうことを今までも言ってきて、権限のない者の意見表明だと、だからということで触れないことにしていますけれどもね。そういうように内容を知れば知るほどひどいことになる。  それからもう一つは、年商一億、つまり売り上げが一億円以下のところは税金はかからないんだ、何か一億円以下のところは売上税真空地帯みたいにすかっとなるような感じがありますけれども、細かいことは別として、非課税業者から仕入れるもの以外はみんな五%かかってくるわけですから、これは消費者に転嫁すればいい、それは簡単に言いますけれども、だから商店の皆さん、自分で払うんじゃないのです、それは消費者が払うんですからと簡単に言うけれども、今度売上税導入で仕入れに五%かかってきているので、お客さん済みませんが五%あなたに乗っけますから、転嫁しますからどうですね、こんな商売できないですよ。転嫁がそんな簡単にできるものじゃないのですね。ですから、結局一億円の税金がからない真空地帯というのは、これは宣伝はできるけれども、そのとおりにはならない。計算はするのです。確かに消費者に転嫁する、計算は成り立ちます。しかし、実際の商売やっているときにはそんな形にはならない。  さて、そこでもう一つは、大型でないというのに税率の問題がありますけれども、もともとこの売上税というのは仕組み、仕掛け、それ自身が大型だ。すべての商品、すべてのサービスに課税される、これはもうそのとおりです。すべての人に全部課税されるわけですね。幼児からお年寄りから、亡くなった先まで課税されることは間違いないのですが、それ自身が大型である。一%上げただけで現在の政府の計算でも一兆一千六百億円になりますか、五%で五兆八千億ですから。そうしますと、大蔵省の中には売上税というのは打ち出の小づちだ、これが制度さえできてしまえば、一%上げるとそれで一兆一千六百億円になる。三回振って三%になると、今審議している予算の防衛費が出ちゃうのですね。そのくらいのものだ。  こういうようなことを考えると、仕組みそのものが大型である。そして、幾らでも伸縮自在というより、縮がなくて伸ばかり出てくるわけですね。減らした例はない。みんな伸ばしていく、税率をふやしていくということですから。私は、こういう点で、一%上げてもこうなんだから、この仕掛け自身が大型だ。  こいつを全部、今度の選挙の中でほとんどの人が見抜くわけですよ。だから、悪い病原菌みたいに、一たん入ったら根こそぎなくしてしまわなければだめなんだ。ちょっと修正して残そうとか、五%だからそれを三つにしようとか二つでどうやとか、非課税ふやすとか、こんなことで済むものじゃない。ですから、私は選挙の結果から至言えることは、この売上税については修正とか先送りとかいうのでなくて、完全に根をとめる。根っこを残しておくと必ずそこから芽が出るのです。これはもう間違いなく出るのですから。それで芽は、中曽根総理大臣はそういう点を育てるのは相当の腕があると思って見るのですけれども、芽がすぐ幹になるのですよ。そういう意味で、私は修正もだめ、先送りもだめだ。そして売上税というのは撤回して、予算も撤回して、それを除いて出し直しをするということを要求をしておきたいと思います。  さて、そういう中で次の問題ですが、総理は身命を賭してやるということを繰り返し言われておるわけだし、きょうも撤回はしない、やるということを言うわけですね。そういう中で、何でそんなに夢中になって力を入れてやるのか。これは重大な内容があるわけですね。今まで、例えば時によってはこれは所得税減税の財源ですと言ったり、あるいはまた法人税減税の財源になる、さらには高齢化社会の対策だ、だんだん幾つか出てきますけれども、高齢化社会対策は、これは税率を引き上げるという宣言にもなるわけですね。そういう中で私は、いろいう言っているけれどもねらいは三つあるだろう、これをやろうという考え方、動機の中には三つあるだろう。いろいろあるけれども、一つは、やはり売上税というものは軍拡の財源として今必要になってきているということだ。もう一つは、財界がずっと要求してきた大企業に対する大幅な減税、高額所得者に対する減税という問題。それから、マル優の問題は後で具体的に触れますが、アメリカに対する公約と、その実行だと思うのですね。  そこで、まず軍拡財源のことであります。  ちょうど売上税導入を政府が決めたのは去年の十二月だ。軍事費GNP一%の枠を超したのも去年の十二月だ、二十九日の深夜である。ですから、この売上税と一%枠外しが一緒になって出てきておる。これを別に表現すれば、軍拡、増税が抱き合わせになっておるということであります。  これをいろいろ見ると、例えば自民党の、これは選挙中にまかれたビラであります。税金の使い道のことで出ているのですが、「私たちが払った税金は国や地方自治体が一時預かって、それを福祉や教育・道路・治安・ゴミ集めなど私たちの生活を守るために使っているのです。」と書いてある。これ自身はそうだと思いますよ。しかし、何かここのところに軍事費なんか全然入っていません。政府がよく言う防衛費という名前もここに入っていないのですね。こういう点を考えたときに、一体これはどういうことなんだということになります。その点は、竹下幹事長はなかなか正直に物を言っています。  その点でいきますと、竹下幹事長は二月の自民党の市長を集めた会議で、売上税の問題で「国防であれ、国民生活に必要なことであれ、政策遂行のために国民全体が税を薄く広く負担する時期にきている」、売上税が国防のための税負担であるということをはっきりうたっているわけですよ。こっちはそれを隠すわけですね。  だから私は、こういう点で今総額明示方式十八兆四千億円が当面の目標、これは枠ではありません、これは枠とかなんとかじゃなくて目標としてやっておるわけですけれども、この点について、売上税というのがそういう意味で軍拡の財源だというのははっきりしているのですね。この点、総理はどう考えますか。
  222. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 まことに残念でありますけれども、所見を異にいたします。  売上税を導入いたしましても、その財源は所得税法人税減税で食われてしまいますので、申立てゼロでございます。何にも国防のために新たに加えるものはございません。  それからもう一つ、強いて申せば、一般会計の一般歳入というものは一般会計の一般支出に充てられるものでございますから、その中に国防費がある、防衛費があるということは自明のことでございますけれども、売上税そのものが防衛費のために設けられたといったようなことでないことは、新しい歳入がそれによって追加されるのではないということでも明らかでございます。
  223. 金子満広

    ○金子(満)委員 別に、税金とか札に印がついて、これは軍事費です、これは福祉です、そういうものじゃないので、全体からしてこれが異常突出を続けている軍事費に使われるということは紛れもない事実だし、私はそういう点では竹下幹事長は本当に、大蔵大臣をやった経験もあり、今、党の中心にいる方でありますけれども、こういう点は正直に言っているんだと思うのですね。ですから、もう少し政府も素直にそうだと言えばいいと私は思うのですね。  そういう点からいって私は、今の防衛費の増大、異常な突出という形で出ていますが、これは軍事費ですから、これが日本だけじゃなくてアメリカの要請だという点も、これはしばしば指摘した点でありますが、改めて伺っておきたいと思います。  ことし一月のアメリカの国防報告ですね、その中では日本関係の部分というのがあります。そこで日本の位置づけというのがされています。それは、「東アジアおよび東南アジア地域では、」「日本はこの地域の防衛上重大な役割を果たしている。」「日本はその地理的重要性に加え、自衛力を近代化して、新しい任務を引き受けており、自国の防衛に主要な役割を果たすとともに、米国の前進展開戦力に対して不可欠の支援施設を提供している。」ですから日本というのは、地理的にも、そしてまた自衛隊の戦力を拡大することも自国のためばかりでなくてアメリカに対してというのがここでうたってある。そして、この軍事費増額についてどのように言っているか。「日本がこのように防衛支出を引き続き実質ベースで増やしてきた事実は、中曽根首相が公式に受け入れた義務、すなわち民主主義社会の一員としての責任を日本が認めたことを物語っている」非常にそのものずばりで言っていると思うのですね、義務を果たしたと。  実は、去年の十二月二十九日に軍事費がGNP一%の枠を外したとき、アメリカではワインバーガー国防長官が記者会見でこういうふうに言っているのですね。このGNP一%の枠外し、突破の問題で、「これが一層大きな自衛カベの非常に良い一歩となるとわれわれは考えている」そこで、次に「これは中曽根首相、粟原防衛庁長官が自国防衛について行った約束以上のものを果たそうとしていることを示している」こう述べているわけですね。ここでもやはり一%の枠外し、そして軍事費の増大というのがはっきり何のためで、どういう性格かを物語っていると思うのですね。  こういうアメリカ側からの談話があると同時に、国内ではどうだったろう。今、いろいろの世論調査でも、この枠外し、一%の問題、こういう点では七〇%、七七%、この辺が世論調査で出る一%枠外し、軍事費増額反対のところですね。ですから、一%の枠を外したというときに全国から反対の声が出る。そして一%枠外し結構ですという運動なんかないわけですから、全国から怒りの声があったことは事実だし、今もそういうことだ。特に婦人の中で猛烈な反対があるわけですが、日本の国内ではずっと批判、反対がある、アメリカでは歓迎されるという点から見て、今度の売上税の問題に関連をして、私はそれが、宮澤大蔵大臣の話もありますけれども、売上税が軍事費につながっていっている、その必要から、総理も身命を賭してやるという意味がはっきりしてきている、こういうふうに思います。  さて、そういう中で、次は大企業の大型の減税、つまり大幅減税、そして国民には大増税という問題であります。  政府の言うところの増税それから減税が四兆五千億で同額だ、それは数字はそういうことになります。しかしこれはつじつまを合わせているだけで、結局は国民全体は売上税とマル優で四兆五千億円の増税ということになるわけです。新しい税金ですから、そこから上がるということになります。つまり、庶民は丸々増税そしてその負担ということになります。  ところが、今度は四兆五千億円の減税の方はどうだろうか。四兆五千億の減税の四割の一兆八千億円が法人税減税、つまり企業減税であります。そして、しかも計算をしてみますと、一兆八千億円の法人税、企業減税の中で、資本金十億円以上の企業の減税はどのくらいになるだろう。それは一兆を超えます。資本金十億円以上といいますと約二千七百社でありますから、そこで一兆円の減税。それから、資本金一億円以下の企業というのは、これはもう数字でも約百六十四万企業あります。そうすると、その百六十四万企業で残りの七千数百億のところをするわけですね。これはやはり大企業の減税になることはもう間違いがないわけで、どのくらいになるだろうか。  一九八五年度の実績で言いますと、上から例えばトヨタ自動車は一社で四百億円の減税になります。そうすると、一日一億円以上の減税になるわけですね。それから日立製作所が百七十二億円、東京電力百五十五億円、松下電器が百五十四、野村証券百三十、関西電力百二十三、中部電力百十一億円というふうにずっとありますけれども、こういうように大企業は相当の減税になります。  資本金一億円以下の大部分の中小零細企業、我々の周辺にたくさんいる方々の減税というのは、これは平均しても、黒字のところでも、全体を含めて年三十万円ちょっと切れるぐらいだと思います。そういうような状態で、結局は庶民から、国民から増税四兆五千億、売上税、マル優、そしてその中で大企業の大幅減税方向にかなりの部分がいく、こういう計算になりませんか。
  224. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 今のお話を承っておりますと、何か法人税法にあたかも累進税率があって、大きい方の税率が非常に小さくなっている、こういうふうに聞こえますけれども、御承知のように非常な中小法人は別にして、法人税はフラットの税率でございますから、納税額が大きいところは一定の減税をすればそれだけ減税額が大きくなるのは当然のことであります。その間に別に税率を変えたりなんかしているわけではないのでありまして、小さいところの減税は小そうございますけれども、それは実は一億円以下の法人は赤字法人が非常に多いのでございますから、納めてないところは、これは減税をいたしましても、どうも減税が少ないのは仕方のないことでございます。
  225. 金子満広

    ○金子(満)委員 今の話ですけれども、結果から見るとやはり売上税、マル優というのは確かに国民全体の負担ですから、しかし法人税、企業減税というのは今言ったとおりだ。同時に、今度は所得税の方でいきましても、所得税減税で例えばどういうことになるか。中堅サラリーマンにうんと減税だと言われますけれども、これは後で増減税のプラス・マイナスはありますが、例えばサラリーマン四人家族で年収五百万円の場合には、これは減税は年間六万円になります。それから一方、高額所得者、例えば松下幸之助さんのような方は十二億円所得があります。そうしますと、この人の減税というのは二億六千万円になる。この点で見れば高額所得者にうんと減税だというのは数字ですぐわかるわけですが、この点は、数字はそうですね。
  226. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それもいかがかと思いますので、その場合の減税はパーセンテージで何%減税になったと言っていただきませんと、私の納めている所得税と松下さんの納めている所得税を比べて松下さんの減税額が大きいのは、それは当たり前のことでございます。問題は減税率なんだと思います。
  227. 金子満広

    ○金子(満)委員 率で話をすれば人がわからないから、私はあえて五百万円の年所得と十二億円を比べるとこういうことになりますという話をしているんですよ。だから、宮澤さんいろいろ言うけれども、具体的に一皮むいて生の話をすればそうなるという話で、これは個人の名前を挙げましたけれども、所得が公表されているから私は申し上げたので、別に秘密でも何でもないわけですから、その点で聞いていただければすっきりするわけですね。  それから、企業減税が回り回って家計に還元されるという問題ですね。この点で、それを計算に入れるとプラス・マイナスで勤労者は減税ですという、こういうことになりますね。それでやっているんですね、宮澤さん。
  228. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは前にも申し上げたことがございますけれども、いろんな説がございますけれども、結局法人税減税というのは半分は株主に帰属する、半分は消費者に帰属するということを、ある一定の時間をかけてのことでございますけれども、そういう推定をいたしておるわけです。
  229. 金子満広

    ○金子(満)委員 伺いたいと思ったのですが、ある一定の時間というのは大体どのくらいに見積もっているのですか。
  230. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは定数的に申すことはできないと思いますが、しかしそう申しませんと法人税減税が空中でとまっているということにならざるを得ないので、そういうことはあり得ないことだという意味でございます。
  231. 金子満広

    ○金子(満)委員 結局これは具体的ではないのですね。回り回ってと言うけれども、たびたびであれなんですけれども、これは自民党がやはり選挙の中でまいたやつで、回り回って還元論ではないのですよ。これは非常にはっきり書いているのですね。「法人税減税は企業を「元気」にするだけではありません。企業が外国へ逃げ出すのを防ぐためでもある」しかし、その次ですね。「企業はより多くの収益をあげるのが使命です。税金が安ければ収益は増えます。」こうやっている。これはあなた方の党が全国にまいたビラですからね。  これは宮澤さんよく御存じのように、政府税調が去年の三月二十日に法人税に関する専門小委員会の報告というのを出しました。この中にははっきり書いてあるんですね。「法人税の負担が、賃金、製品価格等に影響を及ぼすことを通じ被傭者、消費者等株主以外の者にも転嫁されるかどうかについては、従来から理論、実証の両面にわたり種々の研究が行われ、大いに論議されてきたところであるが定説が確立されるには至っていない。」だから定説がないのですね。ですから、今宮澤大蔵大臣も一定の時間というのは、ぼやっとしているわけですよ。しかし、それを言わないと何か空中に浮くと言うけれども、その点で、それでは実際のところ減税分が価格に戻るのか、価格を下げるのに。そんな奇特な企業というのはないんですね。  これは三月十三日に朝日に出ていますけれども、経済同友会の諸井さん、これは秩父セメントの会長ですけれども、「米国企業と違って日本企業は配当性向にそれほど敏感でないし、製品価格や賃金は税金と別の要素で決まることが多い。減税分は内部留保に回るケースが多い。」ということを言っているわけです。だから、回り回って何年か先、とにかく抽象的に返ってくるというようなことではだめですから、これを計算に入れないと、政府の計算でも国民の、サラリーマンの約八割、国民全体の八割ですね、これは増税ということになります。こういうことになるんじゃないですか。
  232. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 そこが私どものやっております市場経済のいいところでありまして、確かに値段を下げようという奇特な経営者はいないかもしれません、本当は。しかし、競争によって下げざるを得ないというのが市場経済の社会である。法人税減税になったから労賃を上げたいという経営者も余りいないかもしれませんが、これもいろんなことで競争関係ということでやはり上げていくことになる。配当をふやしたい経営者も余りいないかもしれませんが、それでは株主が承知しないというのが、それが市場経済でございますから、経営者の主体的な意識というものはともあれ、とにかくやはり市場経済というのは競争関係でそうなっていくということが大事なことだと思うのであります。
  233. 金子満広

    ○金子(満)委員 結局架空の数字合わせ、つじつま合わせというので、中堅サラリーマンそしてサラリーマンは減税だということになりますが、さて、そういう中で、マル優その他の問題もありますが、ここでマル優で一つだけ聞いておきたいのです。マル優を廃止してくれという要請が政府に来たことありますか、どこからか前川リポート以外に。
  234. 水野勝

    ○水野政府委員 マル優は、極めて技術的、大量の貯蓄につきまして管理をするものでございますから、その管理面等々につきましては従来からいろいろな指摘や要望があったところでもございます。
  235. 金子満広

    ○金子(満)委員 マル優で一つだけ総理に伺っておきたいと思います。  二月十日の自民党の集会で、アメリカのシュルツ国務長官からもマル優の廃止の問題を言われたということが出されていますが、あれはどんな形でどんなことを言われたのですか。
  236. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私が言われたというんじゃなくて、シュルツさんがシカゴの大学がどこかで演説した中でそういう趣旨のことを言っておった、そういうことであると思います。
  237. 金子満広

    ○金子(満)委員 結局、マル優の廃止というのが前川リポートから始まってアメリカの要求にこたえてやったということは、これはもう経過的にもはっきりしているのですが、さて、そういう中で税金問題の最後に、減税の問題について要求だけして次に移りたいと思います。  これは、既に昨年の十二片に今の予算案をつくるときに不破委員長が中曽根総理に申し入れた中にはっきりしておりますが、一つは、公約違反大型間接税の導入、マル優廃止、これをやめる、そして増税なしの三兆円の減税を実施することというので、具体的に、一つは、生計費非課税の原則を貫き、国民生活を擁護するために、増税なしの三兆円の所得減税を行う。これは所得税二兆二千億円、住民税八千億円、所得税の標準世帯課税の最低限を三百万円に引き上げる、これを実施する。それからそういう中で、専業主婦だけでなく、パート、内職それから業者・農家の家族専従者も含めて、すべての婦人を対象にした主婦減税、住宅費・教育費控除、単身赴任の控除などを行う、これが一つです。  それからもう一つは、減税の実施に必要な財源措置は軍拡から軍縮への転換で一兆八千億円の削減を軍事費からして、それを行う。さらに不公平税制、大企業優遇のこの不公平税制を是正する。これを要求しておりますが、このことを申し上げて、次の質問に移りたいと思います。  次は、我が国への核兵器の持ち込みについての真実を明らかにするため、具体的に質問をいたします。  既に政府は、昨年の衆参同日選挙の直後に、核兵器を積んでいることが国際的な常識になっているアメリカの戦艦ニュージャージーを佐世保にそのまま寄港させました。またその翌月、九月には、閣議決定で核軍拡を宇宙にまで広げるSDIへの参加も決定しました。そして昨年は、アメリカの原子力潜水艦がこれまでの最高四十一隻日本に入ってきました。  これらの廣船が核兵器を積んでいる、そしてまた、核兵器を積むことが可能な艦船であることは周知の事実であります。こういうときに日本に寄港するアメリカの艦船が、核兵器を途中でおろすとか途中で外すということは事実上ないし、そんなことをまともに考えている人はないと思うのですね。日本への核兵器の持ち込みというのは、日本が被爆国であるということだけではなくて、これは安保条約の核つき安保だ。そしてアメリカの核戦路体制の強化に日本がますます深く引き込まれていくことだ。これは国際的にも非常に重大な問題だということであります。  我が党は、そういう中で、この問題は国の安危にかかわる重大な問題だ、そういう点で一九六〇年の安保改定以来、本院を通じこの予算委員会でもあるいはまたいろいろの調査研究、検討の仕事でも系統的に積極的に行ってまいりました。そして、核兵器が持ち込まれていないなどと考える人はいないわけですから、その点を解明するための努力を続けてきました。これから質問する内容というのは、長年にわたって我が国への核持ち込みが灰色のベールの中で行われたことを明らかにするものであります。事は一億二千万の国民の命にかかわる問題であり、我が国の安全と世界の平和にかかわる重大な問題であります。その点で政府は包み隠さず事実を率直に答弁してほしいと思います。  我が党は、これまでの調査活動に続いて、今年一月、参議院議員の橋本敦議員を団長とする調査団をアメリカに派遣をいたしました。調査団は、ワシントンのアメリカ議会図書館の中で、ついに重大な発見をいたしました。膨大なアメリカ政府の解禁資料の中から、我が国への核持ち込みについてのアメリカ政府の一通の公文書の発見であります。  そこで、実は日本への核兵器の持ち込みについて日米間に重大な秘密の取り決め、合意がある、そういう文書を発見したのであります。このような文書が発見されたのはこれが初めてであります。今総理その他皆さんに配付をいたしましたから、それを見ていただくわけでありますが、我が党は既に四月の六日に政府にこの文書を添えて真相の公表、真実を明らかにすることを求めましたが、総理はこの文書の存在を確認できますか。
  238. 倉成正

    ○倉成国務大臣 お答えをいたします。  御指摘の文書につきましては、在米大使館を通じ国務省に照会したところでございますが、米側から得た回答は次のとおりでございます。「当該文書は一九六六年二月一四日に国務省から在京米大使館に宛てて発出された電報(の写し)であり、米国の関係法令に従って、秘匿されるべき内容を何ら含んでいないと判断されたので、一九七七年に、秘密指定解除の上、公開されたものである。」ということでございます。
  239. 金子満広

    ○金子(満)委員 アメリカの国務省がこの文書は本物であることを認めていることは重大なことであろうと思います。その点について、今言われるようにアメリカは秘匿されていないというので解禁した、しかし、そこに秘密の取り決め、秘密の合意があるということはこの中にうたわれているわけであります。  そこで、この秘密の合意、秘密の取り決めについてはっきりさせておきたいのは、今のアメリカの国務省の報道官レッドマン氏は、四月十日に記者会見をやりました。そして、この解禁された公文書が本物であることを確認した上でいろいろのことを言っていますが、認めればそれでいいわけですけれども、同時に、その公文書の中にある事項について、私ども共産党の機関紙赤旗のワシントン特派員が、この文書を起案した人、承認した人にも会いました。そこで次のようなことが明らかになっています。  この文書の日本語の、これは原文と同じようにそのままの形でタイプしてありますからすぐわかります、下の方に「承認」「書式」その他こうありますが、ここに五名の名前が出ています。この中の二番目ですね、国防総省国際安全保障局ハーバー氏です。この人に会いました。当時この方は国防副次官補であります。「この電報にあなたの名前があるが、覚えているか。」という記者の質問に対し、「この電報のことは覚えている。当時私は国防副次官補で、世界中の核兵器政策を扱っていた。ラングは基地合意を扱っていた。」ここにある「ギブンズが起案した電報案文を承認したのは、五人だ。(国防総省からの二人のほか)国務省からガルトフ、バーガー、軍備管理軍縮局からフィッシャーだ。五人が案文を検討し、承認を与えた。」と言っています。  それからさらにこのハーバー氏は、「あなたは「秘密の一九六〇年合意」をみたことがあるか。」「オー、イエス。二十七年前のものだが、以前みたことがある。私はたしかに覚えているが、この「合意」は核兵器の配置をとりきめてはいない。しかし、艦船寄港のこと、将来そのほかの核兵器持ち込み問題を話し合うかもしれないことを記してある。」そのように言っています。こういう点でも非常にはっきりしているわけですが、さらにこのハーバー氏は、「「秘密六〇年合意」は長文のものか。」「それほど長文の「合意」だという記憶はない。われわれは外交用語で「エイド・メモワール」とよんでいた。長文の協定といったものではなく、多かれ少なかれ両国政府の見解を反映させたものだ。私は、日本政府が解禁、公表すべきだと思う。私の考えでは、すでに告げられている以上に新しいことは何も含んでいない。」そしてこの本文の中にある秘密の取り決め、秘密の合意について、その「「合意」はどんな文書か。」「私がみたのは、ちょうどこのように、国務省電報にタイプされていたコピーだ。せいぜい二~三ページのものだった。」こういうように述べております。  さらに「この承認を与えたガルトフ氏というのは、当時政務担当の副国務次官、政治・軍事担当であります。その当事者であります。この秘密の極秘訓令電報に承認を与えたあなただから聞くというので問うたところ、「恐らく私が(国務省)日本部の求めにより、(国務省)政治・軍事問題担当部門を代表して電文を承認したということだ。」「これは私がみて承認を与えた電報だ。そのことを疑う理由はない。」こういうように述べているわけです。  外務大臣がこの私どもが発見した、入手したアメリカの公式文書を認めたわけですから、そこで幾つかの問題があります。  これは若干説明を加えないとわかりませんからその文書を少し見ていただくわけですけれども、この文書は、もともとは一九六六年ということを思い出していただければわかります。総理もそのときには国会におったわけですから。この公文書は、一九六六年二月、当時国際的に核拡散防止条約の問題が大きな議論になっていたときであります。そして、アメリカ、ソ連ともこれに対していろいろの発言をしておりましたが、当時、ソ連のコスイギン首相が、二月の二日に、核兵器を配備していない国に対しては核兵器を持っている国が攻撃をしないということを条約に織り込む、そういう提案を行いました。その月の二月の十七日に、当時の下田外務次官が談話を発表しました。その談話は当時大きく報道されておりますが、日本は核兵器を持つ大国の核の傘の中に入って日本の安全保障維持を考えるべきではない、こういう談話を発表しました。これが二月の十七日であります。この国会でも議論になりました。この予算委員会のメンバーの中でもこの議論に参加した人はかなりいます。  そこで、重大なのは、その談話が二月十七日に発表され、二月の二十二日にアメリカのハンディ国務次官補が米軍機でやってきました。そして翌二十二日にバンディ氏と下田外務次官の会談が行われています。この会談の模様は、結果は、新聞にも当時大きく報道をされました。その二十二日に下田・バンディ会談が行われた翌日二十四日に、当時、ラスク国務長官から在日米大使館に長文の極秘電報が送られたわけてあります。我が党が発見したというこの公式文書は、その極秘電報の全文であります。  これを受けたのは当時のライシャワー大使であります。そうしてこの電報を受けてから五日目、三月一日に、当時の椎名外務大臣の発言で、下田次官の発言は事実上消されました。この電報が生きた、内容が実行されたということになります。そして三月四日、当時ライシャワー大使は、本国の訓令に基づいて日本政府に感謝の意の伝達をされました。これも報道されています。したがって、この電報というのは、そういう重大な役割を果たした極秘の電報であります。  そういうことをひとつ、当時国会議員であった方はたくさん閣僚の中にもいるわけだし、外務省関係にもいるわけですから、思い出してほしいと思うのです。そういうようなことがあったということ、この電報が非常に重大な役割を果たしたんだということ、これを政府はそういうことがあったということを思い出されると思いますが、これは総理に聞いてもどうか知りませんが、当時のことを総理、何とか考えますか、思い出しますか。
  240. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 安保条約を岸さんが改定しましたときには、岸・ハーター交換公文あるいは藤山・マッカーサー口頭了解、そういうものがはっきり取り決められて、そうして、それが後に非核三原則というようなものにもなっていった、そう考えておりまして、日本の非核原則というようなものは事前協議の対象という形ではっきり取り決められて、我々の方の意思は決まっておった、そういうことであります。
  241. 金子満広

    ○金子(満)委員 それでは、具体的に言います。今の総理の点がいかに身勝手な解釈であるかが全部わかります。  これは、この中には二カ所に日本への核持ち込みについての秘密の取り決めがあることをそのものずばり明確に書かれています。はいだ一枚目のところ、本文の二行目同です。「一九六〇年の安全保障条約にもとづいた核兵器持ち込み(イントロダクション)にかんする米国との秘密取り決め「複数」(コンフィデンシャル・アレンジメンツ)」これが一カ所です。  それから三枚目ですね。回、回とありますが、同の五行目です。「日本政府はまた、秘密の一九六〇年合意(コンフィデンシャル一九六〇アグリーメント)が、日本への核兵器の持ち込み(イントロダクション)について日本政府の合意を求めるアメリカの権利を認めていることを、想起すべきである。」日本政府はそれを想起すべきである。「このような同意を排除するコスイギン提案にもとづく日本政府のいかなる誓約も、日本の米国反撃部隊から、その任務の主な要素を遂行する能力を奪うことになる。」つまり、核持ち込みの秘密の合意が存在していることをここで生々しく言っています。  その秘密の合意の具体的内容は、一枚前に戻ります。算用数字の3の同と(b)にそれが書かれています。「コスイギン提案を採り入れることは、日本ならびに他のどこにおいてでも、米国の安全保障上の立場に深刻な否定的影響を及ぼすことになろう。」この深刻さをそこで言って、その次が問題です。これは今総理が言っていることに非常に関係があります。「もし提案が採り入れられたら、」コスイギン提案が日本政府によって下田発言のようになったら、「日本の港湾の中の米国の艦船」日本の港に入ってきているアメリカの軍艦ですね、「と通過(トランジット)中の米国の航空機に積載された核兵器の存在にかんして、日本政府が受付入れてきた曖昧さは、もはや受け入れられなくなる可能性がある。これは、日本の米基地の有用性をいちじるしく低めるものとなる。」よろしいですか。ここが大事なところであります。その同項とあわせて、トランジットとイントロダクションをここで分けました。そして、この「日本政府が受け入れてきた曖昧さ」というのを具体的に私たちが見たときに、それはどういうことになるかということであります。  現に、米軍の海軍基地というのは横須賀、佐世保、ホワイト・ビーチであります。民間港にもこれが入っているといろことであります。これは外務省の調査資料でもわかるわけですけれども、核積載可能産船が寄港したことのある港、一九七〇年から八五年の十二月三十一日まで、北海道の小樽、釧路、室蘭、函館、青森の大湊、八戸、千葉県の館山、静岡の熱海、伊東、下田、以下、名古屋、鳥羽、舞鶴、江田島、呉、松山、小松島、別府、大分、佐賀関、博多、鹿児島、こういうように二十二港であります。そして、米軍の空軍基地は三沢、横田、厚木、岩国、嘉手納、普天間ということになります。ここへはこの同項に言うところの「米国の艦船と通過中の米国の航空機」が自由に出入りをしているということになります。  その点について総理に伺いますが、こういう文書に明確にされていますが、どうですか。
  242. 倉成正

    ○倉成国務大臣 金子委員にお答えいたしますが、まず最初申し上げましたように、この文書の解禁は一九七七年、今から十年前に解禁されているわけでございまして、何ら秘匿すべき内容がないと判断されたので解禁されて十年たっておる次第でございます。  また、同電報の内容は、国務省に照会したところによりますと、「語句の使用方法等の点で厳密であるとは言い難く、例えば、核持込みについての事前協議に関する交換公文及び右にかかる口頭了解を、秘密でないにもかかわらず、「コンフィデンシャル・アレンジメンツ」ないし「コンフィデンシャル・アグリーメント」として言及しているように、全体として不正確なものであり、右文書の表現の一々をとらえて厳密な考証・分析を行うことは、上記の次第に鑑み、無意味であると考える。いずれにせよ、同電報は、核持込みを可能とするような秘密の合意があることを示すものではない。」という回答を得ている次第でございます。  本文書については、以上のとおりでございますが、我々日本政府が従来より申し上げておりますとおり、核持ち込みの問題については、安保条約第六条の実施に関する交換公文、いわゆる岸・ハーター交換公文及び同交換公文の解釈を日米両国間でいたしました了解事項としての交渉当事者が口頭で確認しましたいわゆる藤山・マッカーサー口頭了解がすべてでございまして、秘密であると否とを問わず、このほかに何らかの取り決めがあるという事実はございません。
  243. 金子満広

    ○金子(満)委員 えらいでたらめを言ってはいかぬですよ。国の安全と国民の生命にかかわることですよ。よろしいですか。今アメリカは秘密でないのです、やっているんだから、自分であなたがどう言おうとアメリカは、ここで言われているように日本政府が受け入れたあいまいさに基づいて、現に毎日入ってきているわけですから。こういう点を、今アメリカは秘密がないからこれをどうとか言う。  確かに六〇年のときに岸・ハーター交換公文があります。これは事前協議で来ました。それから、六〇年安保の国会と言われたときに既に、藤山・マッカーサーという言葉は出ませんでしたけれども、藤山・マッカーサーの口頭了解の中身はもう出ているわけです。一九六四年に、よろしいですか、六四年十月の七日に藤山・マッカーサー口頭了解の内容は全部国会に出ているのですよ。だから、岸・ハーター交換公文と藤山・マッカ-サーと言うけれども、この電報はそれから二年たって出ているのですよ。それをでたらめに、あなた、そういう形でごまかしてはいかぬ。もう岸・ハーターも全部知っている、藤山・マッカーサーも知っている、その上に立って秘密の取り決めがあるんだということをこれは言っているのです。そこのところは全然回答がないじゃないですか。  あなたはアメリカ側がどうとか言いましたが、そのアメリカの前に、これは不正確だとかなんとか言った。どこが不正確なんですか。どこのところが、指してごらんなさい。何が不正確ですか。何ページのどこが不正確か言ってみなさいよ。
  244. 倉成正

    ○倉成国務大臣 ただいまアメリカの国務省の回答によりますと、コンフィデンシャル・アレンジメンツないしコンフィデンシャル・アグリーメントと言及しておる部分についていろいろと言うことは不正確であるということでございます。
  245. 金子満広

    ○金子(満)委員 あなた、何を言っているのです。あなた、書いたものを読んでいるのでしょう、それ。そうじゃなくて、この極秘の電報が本物であるということは、アメリカの国務省の報道官が十日に発表した。しかし内容は、外務大臣、あなたが今言うように、いろいろなことを言って、とんでもない話だ。そこにあるのは、例えば秘密の合意というのは六〇年の安保条約のことだ。とぼけたことを言っちゃいけないのです。六〇年の安保条約はどこで秘密ですか。この国会でも一年半も議論したですよ。日本じゅう大問題になった。当時のアメリカの大統領アイゼンハワーは日本に来られなかったじゃないですか。それをアメリカは知らない話じゃありませんよ。それなのに、秘密の取り決めとは六〇年の安保条約のことだ、こんなむちゃくちゃなことは天下の笑い話ですね。話にも漫画にもならないですよ、はかばかしくて。こういうことをやっているわけだ。  しかも、このアメリカの国務省の報道官は、例えば、電報の中の秘密の合意というのは、「軍艦上の核兵器の存否については肯定も否定もしないというわが国の首尾一貫した全世界でよく知られた政策を誤解している。」ばかを言っちゃいけないですよ。二十一年もたって何が誤解ですか。現にこれに基づいてやられてきているのですよ。だから、この報道官は十日にアメリカで記者会見して、しどろもどろになって立ち往生じゃないですか。新聞にも報道されていますね。  もう一つ言えば、外務省がどういうことをやったか知らぬけれども、前日に日本の外務省のスポークスマンはこのことについて記者会見をやっています。そして、これはUPIの電報でアメリカへも行っていますよ。不正確な記述があるということを、何を根拠にして言っているんだか知らぬけれども、間違ったんじゃないかと言っているのです。それで翌日は、こういうように報道官のあれが出る。とにかく、こんなしどろもどろで通りもしないようなことを、あなたそこで、いいですか、秘密のものは何もありません。アメリカがあったから出たんですよ。秘密は公表しないことになっているんだ、それでもあなた、これわからないですか。明確じゃないですか。
  246. 倉成正

    ○倉成国務大臣 ただいまいろいろお話がございましたけれども、核持ち込みの問題については、岸・ハーターの交換公文及び藤山・マッカーサー口頭了解のほかに何らの取り決めも存在いたしません。  本件米国文書における御指摘の記述が何を意味しているか不明でございますが、米政府が、本件文書は語句の使用方法等の点で必ずしも厳密であるとは言いがたく、全体として不正確なものであり、その表現の一々をとらえて厳密な考証を行うことは無意味であるとしている以上、文書における個々の字句ないし表現を解釈することは本来差し控えるべきでありますが、あえて推測いたしますと、御指摘の電報が、上記の藤山・マッカーサー口頭了解が公開の文書として作成されていないため、誤って、コンフィデンシャル・アレンジメンツあるいはコンフィデンシャル・アグリーメントという表現を用いているものではないかと考えられる次第でございます。
  247. 金子満広

    ○金子(満)委員 あなた全然わかってない。何言っているんだ、あなた。いいですか、藤山・マッカーサーの口頭了解、そのもとになっている岸・ハーターの交換公文、これは秘密でも何でもないのですよ。全然秘密ないでしょう。文書になったのは確かに一九六八年ですよ。しかし、一九六四年の十月の七日に藤山・マッカーサーの口頭了解というのは国会に全部出ているんですよ。秘密でも何でもないのですよ。それを、これは二年たった後でしょう。しかも国務長官がこれ間違えますかね。あなた、そういう中でいいかげんなことを言ってもらっては困るのは、アメリカ政府はと、国務省のことでしょう、今のスポークスマンの言っていることですよ、それは。記者会見して一つも答えられなくて立ち往生じて、安保条約が秘密協定の取り決め、秘密の合意のことだなんて言って、全然支離滅裂で、そうして解禁されたのは七七年ですけれども、六六年のときにそれをまたやっている、とんでもない話だ。  そういう中で、例えば、この中には確かに二カ所に、今大臣が言われるように「誤解」とか「不正確な起草」があると、こう書いてあります。よく考えてみてください。最初に私が申し上げたのはそれなんです。ラスク国務長官といえば、事前協議をやるかどうか、その衝にある中心の責任者ですよ。それがいいかげんな電報を打ちますか。そんなアメリカの外交がいいかげんで、世界じゅうのこれは笑い話で、大失態ですね。しかも、二十一年たって今そんなことを言っているなんというのは、明らかに隠そう隠そうという、それだけじゃないですか。ごまかそうということだけじゃないですか。はっきりしているのです。  そうして、私が言うのは、コスイギン提案でびっくりして、下田提案でびっくりして、そういう中でもし受け入れられたら、これまで自由に入っていたアメリカの艦船が入れなくなるから早くやれ、高いレベルですぐ交渉せいと書いてあるじゃないですか。その役割を果たしたんですよ。それがこの電報なんだから。それを、スポークスマンがどうこう言ったとか「不正確な起草」、そんなことで、いいかげんなことでこの問題できますかね。  それで、あなたがわからなかったら、外務省知っているんでしょう。アメリカのこれを起案した人、承認した人はちゃんと、さっき私が言った談話を発表しているんです。文書があるというんだから。アメリカは解禁したんだから日本も解禁したらどうだねと言っているじゃないですか。それがなぜ解禁できないんですか。あなた、そんな同じことばかり読んだってだめです。だれが納得しますか。
  248. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 ただいま大臣がお読み上げになりました点は日本政府見解ではございませんで、本件につきまして、米側にこの文書が真正なる電報であるかどうかということ、それからこの内容について何らかのコメントがあるかということを照会いたしました結果の回答でございまして、その正式な回答が、先ほど大臣から御説明いたしましたように、「事前協議に関する交換公文及び右にかかる口頭了解を、秘密でないにもかかわらず、「コンフィデンシャル・アレンジメンツ」ないし「コンフィデンシャル・アグリーメント」として言及しているように、全体として不正確なものであり、右文書の表現の一々をとらえて厳密な考証・分析を行うことは、上記の次第に鑑み、無意味であると考える。」さらに、「いずれにせよ、同電報は、核持込みを可能とするような秘密の合意があることを示すものではない。」ということで、これはアメリカ政府の正式な本件に関する回答でございます。  さらに申し上げますと、先ほどの御質問の点でございますけれども、ラスク国務長官云々ということでございますが、この電報の内容は、推測するに部内の連絡でございます。本省、国務省から在京米大使館に対しまして意見を求めているということでございまして、その主題はコスイギン提案にあるわけでございます。したがいまして、本件についての日本の核との関係についてアメリカ政府の正式な見解を代表したものでは全くないということでございます。  例えばどこが不正確かということを、アメリカ政府も言っておりますので、これは一々この字句に入って云々することは確かに差し控えたいと思いますけれども、例えば先ほど委員が御指摘になりました点、一つは、日本政府は一九六〇年の秘密合意が、核兵器の日本への持ち込み、イントロダクションについて日本政府の合意を求める権利を米国に与えていることを想起すべきであるということを言っておりますけれども、これは安保条約をちょっとでもやった人には当然でございますけれども、アメリカは秘密であるどころか、安保条約そのもの、岸・ハーター交換公文によりまして、藤山・マッカーサー口頭了解によりまして、常に核兵器を日本に持ち込むかどうかについて事前協議を要請する義務がある、これはアメリカの側から見たら権利と言い得るのかもしれませんけれどもあるわけでございまして、その点について何ら秘密の取り決めを要するものではないという一点から見ましても、この電報の文章は全体として不正確であるというアメリカ政府の公式の言明は信ずるに足りるというふうに存ずる次第でございます。
  249. 金子満広

    ○金子(満)委員 いいですか。アメリカの今の言明というのは、この電報、ラスク国務長官からライシャワー大使にあてたあの時期から二十一年たっているのですよ。二十一年間アメリカは間違ったその内容でずっとやっていたということですか。そうじゃないでしょう。現にこの中にある、「日本政府が受け入れてきた」核兵器を積んだ船の日本への寄港を認めているのじゃないですか。この「曖昧さ」というのは、日本政府が受け入れてきたんですよ。あなたが受け入れているのだ。あなたはそれは専門家ですよ。――専門家じゃない、専門にやらなければならない衝にあるのですよ。  だから、そういう点では、この日本の港湾の中の米国の艦船と通過する航空機というものを、二つを「日本政府が受け入れてきた曖昧さは、もはや受け入れられなくなる」というのは、六六年の二月の二十四日までは受け入れてきたんですよ、あなた方は。何と言おうと受け入れてきたことは事実だからこうなっている。これがだめになるから早くやれということじゃないですか。それで交渉をしたんでしょう。その役割を果たしたのがこの電報でしょうが。  それを今ごろになって、そうでないなんて言うから、アメリカのレッドマンという報道官が全然答えられないのです。これは日本の新聞にもみんな報道されていますね。それを隠そう隠そうというその一念からいろいろなことを並べ立てているけれども、そういう中で我々が全部、関係者からいっても本物なんだから、文書になっているんだから、日本政府も解禁したらどうやねと言っているのよ。秘密の合意というのはあるのでしょう。なくて何で入ってきますね。
  250. 倉成正

    ○倉成国務大臣 何ら秘密の合意がないものを出せとおっしゃっても、ございません。
  251. 金子満広

    ○金子(満)委員 あなた、ないと言っても、アメリカはちゃんとあると言っているのだから。あってやっているのでしょう。六〇年に秘密の取り決めと秘密の合意がある。そして、そこで日本がアメリカに認めていたことは何か。核兵器を積んだ船がトランジットで日本に入る場合には日本政府はそれを受け入れてきたのだ。あいまいにして、灰色にして受け入れてきたのだ。向こうがはっきり言っているのです。核兵器を日本に持ち込むのは日本政府じゃなくてアメリカですよ。いいですか。あなたが持ち込んでくるのじゃない、アメリカが持ち込んでくるんだから。アメリカは日本があいまいなまま受け入れてきている、そのことを根拠にしてやってきているのじゃないですか。そうじゃないですか。それがどこのところが――さっきはいろいろ字句に入るとかなんとか、字句に入るのじゃなくて、問題は具体的になっているのだから、そこのところを答えなければだめだと言っているのです。
  252. 倉成正

    ○倉成国務大臣 もう先ほどからお答えいたしておりますように、この文書に関しましてアメリカの国務省に照会をして、その答えが、「同電報の内容は、語句の使用方法等の点で厳密であるとは言い難く、例えば、核持込みについての事前協議に関する交換公文及び右にかかる口頭了解を、秘密でないにもかかわらず、「コンフィデンシャル・アレンジメンツ」ないし「コンフィデンシャル・アグリーメント」として言及しているように、全体として不正確なものであり、右文書の表現の一々をとらえて厳密な考証・分析を行うことは、上記の次第に鑑み、無意味であると考える。いずれにせよ、同電報は、核持込みを可能とするような秘密の合意があることを示すものではない。」ということでございまして、私は、そういう意味でいろいろ、藤山・マッカーサー口頭了解を公開の文書として作成していないために誤ってこういうふうに出したのではないかと思うわけでございます。  ちなみに、米政府がプレスからの照会に対して、本件文書の中のコンフィデンシャル・アレンジメンツ及びコンフィデンシャル・アグリーメントとの表現は、ともに公表されている安保条約の取り決め、一九六〇年のトリーティー、アレンジメントに不正確に言及したものであろうと応答したと承知している次第でございます。
  253. 金子満広

    ○金子(満)委員 いいですか、さっきはアメリカの部内のものだ、そういう連絡の電報だという話もあった。だから大事なんですよ。外交辞令もなければ言い回しもないんですよ。だからストレートで入ってくるんです。そのものずばりで入ってくるんです。だから書き出しからもうそのことなんですよ。そういう中でこういうように言っているものを、今アメリカ側がどうと言った。そうしたら、一々字句に触れたくない。触れたくないのは当たり前じゃないですか。はっきり書いてあるのに触れられないんです、それは。それを何とかの一つ覚えでうのみにして、そればっかりここでやったってだめですよ。そんなことで通るわけがないんですね。  いいですか、この報道官の記事は日本でもずっと出ているんです。アメリカでこのレッドマンが立ち往生したというのは、記者がやたらに質問しなくても、普通の質問でも、今さら、公表済みの安保条約自体が当時の核持ち込みに関する秘密の取り決めなんて、そんなばかみたいなことを平気で言っているんだよ、これを。ラスク国務長官はまだ健在ですよ。それで、先ほど私がだから説明したんですよ。これだけのところを通過してくるんですよ、みんな。こういうように五人の人が全部やって、みんなその責任ある衝の人ですよ、そうして最後にラスク長官が承認をして出しているのが、今になってうそで、それで誤解があるとか不正確だとか、どこがと言えば文書の中には触れることはできない。だから隠していると言うんですよ。  それでは、ついでにもう一つ外務大臣、あなたに伺いますよ。あなたは去年、ニュージャージーがあなたの出身の長崎県に入るときに、国会でいろいろこの問題が議論されたときに、当時その点で米国の条約上の不履行を前提にした確認は不必要だ、確認する必要はない、つまり核兵器を積んでいるということはもう世界周知のものであっても、あなたはそういうことを言っているのですね。  それでは、米国の条約上の不履行という条約は何ですね、これは。あなた、自分で言ったんだから。
  254. 倉成正

    ○倉成国務大臣 私がニュージャージーの入港に際しましてマンスフィールド大使を招致しての件についてお触れになりましたが、御案内のとおり、政府は非核三原則を堅持する所存であることは累次明らかにしているとおりでございまして、また国会等でも御説明しているとおりでございます。したがって、日米安保条約上、いかなる核兵器の我が国への持ち込みも事前協議の対象でございまして、核持ち込みについての事前協議が行われた場合には、政府としては常にこれを拒否する所存である、非核三原則を堅持するとの我が国の立場は確保いたしている次第でございます。  しかし、昨年八月、ニュージャージーの本邦寄港に際し、私も外務大臣に就任した早々でございますから、念には念を入れるという意味から、マンスフィールド大使に対しまして、この点についての事前協議制度を確認した次第でございます。その際にも明らかにされましたけれども、米国政府は安保条約及びその関連取り決めに基づく日本に対する義務を誠実に履行してきており、今後とも引き続き誠実に履行する旨を保証した次第でございます。したがって、政府としても核持ち込み問題については、日米安保条約及びその関連取り決めに従って対処していく所存でございます。
  255. 金子満広

    ○金子(満)委員 もう一つ違った角度から見ましょう。  アメリカは、核兵器がどこにあるかないか、積んでいるか積んでないか、その存否を言わないことがアメリカの国策であり、原則だということを、わかりますね、認めていますかどうですか。
  256. 倉成正

    ○倉成国務大臣 抑止力の点からそのような政策をとっておると心得ております。
  257. 金子満広

    ○金子(満)委員 そこですよ。アメリカがその核兵器の所在を言わないということを原則にし、あなたはそれを認めているわけです。そうしたときに、アメリカがわざわざ私はここに核兵器を積んでおたくに入ります、核兵器を積んで入るということをアメリカは言ってくる。そして、そういうような事態のときに、あなたが言うように、申し出がないから核兵器は持ち込まれていない。論理的に成り立たないでしょう、これは。  あなたは、核兵器の所在をアメリカは言わないのだ、これは国策で原則だと今認めたわけです。それを言いっこないじゃないですか、入るのに。――いや、あなたに聞いているのじゃないよ。だめだよ、あなた。  いいですか、わかるでしょう。そこの点ですね。全く論理的になっていないのだから、論理的に成り立たないのだから。その点をどう思いますか。
  258. 倉成正

    ○倉成国務大臣 お答えします。明確にお答えします。  御案内のとおり、内閣総理大臣と米国務長官の岸・ハーター交換公文によって……(金子(満)委員「そんなの知っています」と呼ぶ)重要ですから、よく聞いてください。軍隊の装備における重要な変更ということでございまして、核装備その他につきましては、事前協議をしてくる義務があるわけでございます。したがって、今お話しのように、核の存在を明らかにしないというのがアメリカの戦略上の必要から出てきておることも委員御指摘のとおりでございます。  しかし御案内のとおり、安保条約というのはやはり同盟関係としてお互いの信頼の上に成り立っておるわけでございますから、相手を信頼しないで、そして相手の言うことを、事前協議がなかった場合に、それは核を積んでいるかもしれないというような相手を疑ってかかるということになれば、これは信頼関係、日米関係の基本が失われるわけでございますから、我々はその安保条約の基礎にある観念というのをやはり理解していただきたいと思うのでございます。
  259. 金子満広

    ○金子(満)委員 答弁は時間がないですから簡単にやってくださいよ。  私が聞いているのは、アメリカを信頼するとかなんとかじゃないのです。核兵器の所在を言わないというのはアメリカの国策で、原則で、絶対言わないのですよ。言わないのに、何でそれを今度は、事前協議がないから。これは通らないですよ。だから、そこのところは論理的に全然一貫性もなければ、むちゃくちゃですね、これは。何かあってくると、出てくると、信頼関係だと言うのですよ。だから私はそういう意味で聞いているのであります。  じゃ、この二十七年間事前協議をやりましたか。一回もない。答えてください、イエスかノーかだけで。二言で答えてください。
  260. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 事前協議はございませんが……
  261. 金子満広

    ○金子(満)委員 もういいです。  核兵器が持ち込まれたことというのはあるのですね。この九日に、これも私どもが、ワシントンの特派員がそこを求めましたよ。ライシャワーさんに会いました。ライシャワーさんはそこで何と言うたか。一九六六年に日本の岩国に核兵器が持ち込まれている、自分で言っているのです。言っていますよ。何と言っているか。  ――六〇年合意が「ワーキング・ドキュメント」だということについて、説明をうけたことがあるか。  …………  ――ノーということか。  ノーだ。というのは、だれかが何かを変えようと望む事態が生じなかったからだ。ただし私の知る限り、一度だけ変化があったのは、岩国ではしけに核兵器が積んであり、しかもずっとそこにあることを私が発見した時だ。これは、はるかに「モチコミ」に近い。私はそれをとり除いた。送り出した。六六年夏のことだ。 大使が言っているのですよ、これは。国会でも議論になりましたよ、大議論に。それで事前協議があったかと言ったら、あらへんのや。  だから、なぜ事前協議がなくて入ってくるかといえば、ラスク国務長官の電報にあるように、それはあいまいにして日本政府が受け入れてきたからだ。それがずっと二十七年続いているのです、今でも。世界じゅう見て、日本にはアメリカが全然核兵器を持ち込んでいないなんてだれが考えますね。そこのところが、私が最初に言ったとおりに国の安危にかかわる問題だから率直に答えてくれと言ったのはそのことなんですよ。よろしいですね。そういうようにちゃんと言っているんだもの。事前協議なんかありはしないですよ。
  262. 倉成正

    ○倉成国務大臣 先ほど委員にお話を申し上げましたとおり、私はアメリカ政府を代表するマンスフィールド大使を招致いたしまして、我が国の国民感情も伝え、我が国の非核三原則も伝え、その上で米国政府は安保条約及びその関連取り決めに基づく日本に対する義務を誠実に履行してきており、今後とも引き続き誠実に履行する旨、保証していただいた次第でございます。  詳細については、その際申し上げましたから省略いたしますけれども、現職のアメリカ政府を代表する大使が言われることを信頼したいと思います。
  263. 金子満広

    ○金子(満)委員 大使より何より、国務長官でしょう、この電報は。岸・ハーターといえば、アメリカのハーター国務長官は日本の総理大臣と同じ格でやっているのですよ。その国務長官の電報と、今マンスフィールドさんかどう言った、こう言った、そのマンスフィールドさんの話を聞いているのじゃないですよ。だから、アメリカは核の所在は言わないことになっておる。言わないことになっているのに、何で持っていますから入りますということを言いますかね。言うはずがないじゃないか。それを今度は待っていて、言ってこないから持ち込まれていないと思う、それを言われたアメリカを信頼します、安保条約がある。何ですね、これ。そこを言っておるだけの話ですよ。1だめですよ、あなた。一生懸命本人がやっているのだから、外務大臣が。
  264. 斉藤邦彦

    ○斉藤(邦)政府委員 核の持ち込みに関しましていかなる秘密の取り決めもないということは、先ほどから外務大臣が申し上げておるとおりでございます。  ただいまの一連の金子委員の御質問は、今回、ただいま御提示になりましたアメリカの電報をもとにして行われていると了解しておりますが、この電報の内容につきましては先ほど外務大臣から申し上げましたとおり、我が方からの照会に対しましてアメリカの政府から正式の回答といたしまして、「いずれにせよ、同電報は、核持込みを可能とするような秘密の合意があることを示すものではない。」という回答をもらっている次第でございます。  それから、金子委員のもう一点先ほど申されました、アメリカは核の存在を否定も肯定もしないという政策を持っているので事前協議が行われることはないのではないかという点でございますけれども、我が国へ核を持ち込むに際しまして事前協議を行うことは、安保条約及び関連取り決め上の米国の義務でございます。仮にこれと抵触する内容の米国の国内法があったといたしましても、あるいは政策があったといたしましても、国際約束上の義務が優先するものであることは、これは国際法上当然のことでございます。  ちなみに、この問題につきましては何度か国会議論が行われておりまして、昨年の秋にも参議院の外務委員会で詳細な議論が行われておりますが、その際政府の方から、理論上の問題として、否定も肯定もしないという政策と矛盾することなく核の持ち込みに関して事前協議が行われる可能性があるということを答弁した次第でございます。
  265. 金子満広

    ○金子(満)委員 あいまいにして受け入れてきた秘密の取り決めだから言えないのですよ。ここが一番大事なんです。そこが今度アメリカでどうだこうだという、その答えを今大臣が言われたわけです。少なくともこれは単なるだれかの作文じゃないのですよ。一つの行為を訓令の電報としてやったのですよ。訓令の電報がどういう意味かは、あなた、日本の外交の責任者だから知っているはずですよ。いいかげんなことでちょこちょこっとやって、後でしばらくたってから、あれは誤解であったとか、不正確であったとか。突かれれば何にも言えないのです。言わないことになっているんだ、これは。もみ消しじゃないですか。いかに必死になって隠そう、隠そうとしているかがよくわかりますよ。  そういう点でするから、ライシャワー元大使も今度の問題について、もうそのものずばり言っていますね。六〇年の合意については大使赴任前に私も説明を受けていた、内容を。そうして、そういう日米の秘密の合意に基づいて、その理解のもとにやってきた。それは何か。核兵器積載艦船が日本の領海を通過するのは持ち込みに当たらず、つまりイントロダクションではないんだ。核兵器積載艦の通過は日米安保条約上の米国の権利であり、事前協議の対象にはならないと考えておる。それでずっとやってきたんだ。だからこれに基づいて、あいまいさでやってきたのですよ。  それで、これは総理がことしの施政方針演説で引用した「ライシャワーの日本史」ですよ。これは総理は前文のところを言いましたけれども、その一番後ろのところにはこういうことが書いてありますよ。   核兵器に関する「イントロダクション」(日本語で「もちこみ」)という言葉をめぐり、アメリカ政府と日本国民の間で解釈の食い違いがあった。アメリカ側の解釈では、核兵器の「イントロダクション」の禁止とは、アメリカの核積載艦が日本水域を通過することまで禁じるものではない、としていた。これに対し日本政府は、これまでのこのアメリカの解釈の妥当性を国民に説明するにはあまりにも憶病で、そのかわり、政府はアメリカが核もちこみの事前協議の取り決めを順守するものと全面的に信頼している旨のあいまいな声明でお茶をにごしてきた。 と言っている。これとこのラスク電報は完全に符合している、一致していますよ。  それから、さっき言った九日の問題で言いますと、  日本の首相や大臣が国会で質問に答えて「われわれはアメリカ人を信頼している」といい、艦船が(核)兵器を積んでいないと思わせていた時、この件について 当時ですよ。これは六三年ですね。  大平氏に、核兵器積載艦船が日本の水域を通り過ぎることは「モチコミ」にあたらないので、これは「マズイ」種類の答弁だと話し、思いあたらせた。私が質問にたいする答弁の仕方をとりあげたのは、われわれが不誠実だとみられ、むずかしい困った立場に置かれているからだ。 日本の港湾の中にそれでは入っているのかということに対しては何と言っているか。  日本側が問題を提起したことはなかった。かれらは問題を避けていた。私が思うには、そのごとが曖昧(あいまい)さをもたらした。というのは、そうするうちに日本の国民が、実際の合意と違ったうけとり方をし始めたからである。 つまり、持ち込んでいないんだというような錯覚を持ってきたんだということを言っておるわけです。そしてしかも、ライシャワー氏はこういうふうに言っているんですね。  日本の政治は私が判断を下すようなものではないが、すべてが明らかになり、ラロック証言もあったのだから、日本政府がまたも「われわれはアメリカ人を信頼している」といった答弁を始めるのはまったく賢明でないと考えた。そうすることは、みずからをばかげた立場に置くからだ。みずからを袋小路に追い込むようなものだ。 と言われているじゃないですか。そんなもの読むなと言ったって、これはこれを発表した後、当時の当事者のライシャワー大使に必要があるから今の問題でやったのです。今言ったとおりでしょう。これもちゃんとこれに合致しているのです。  今までラロックさんやそれこそマッカーサー大使が言ったことも全部これと同じなんです。違っているのはあなただけなんです。何か詰まると、信頼しています、これ一片で終わりですね。それで、所在を明らかにしない大原則をもってそれを守り続けているアメリカから核兵器持ち込みの事前協議ありませんから持ち込まれておりませんねと、こう言う。そればっかり、二十七年同じせりふで通してきたのです。それがだめです、秘密の取り決めがあるのです。こんなものは何回繰り返そうが、岸・ハーターとか藤山・マッカーサーじゃないのですよ。そんなものは全部わかった上で、日米間に秘密の取り決め、合意があった、その内容はこれこれだ、あなたが言っているトランジット、寄港、通過は事前協議の対象ではないとみんな言っているのだ、全部。あなただけが対象だと言っている。じゃ、事前協議の対象に寄港、通過がなるという、そういう文書がここにありますか。どこにあります。
  266. 倉成正

    ○倉成国務大臣 先ほどからしばしば御答弁しておりますとおりに、今ライシャワー博士の「日本史」の御引用がございましたけれども、私どもはアメリカの現政府の、現役の方のお話を信頼して、そしてアメリカの国務省に対して照会をした、回答を得たのが先ほどからるるお答えしたとおりでございます。したがって、政府としては米政府の文書の表現を確定的に解釈する立場にはございません。  あえて推測しますと、今トランジットの問題について、寄港、通過の問題についてお話がございましたけれども、米国は、艦船によるものであれ航空機によるものであれ、核を持ち込む場合には事前協議を提起しなければならないということが事前協議制度の趣旨でございます。したがいまして、核を持ち込まない場合には、個々の艦船ないし航空機ごとに一々核不搭載を特段明示的に証明することなく寄港ないし通過を行い得ることになっているということを念頭に置いているものではないかと考える次第でございます。  いずれにしましても、従来から繰り返し述べているように、イントロダクションの中に寄港、通過が含まれていることについては、合衆国軍隊の装備における重要な変更を事前協議の対象とするいわゆる岸・ハーター交換公文の規定及びいわゆる藤山・マッカーサー口頭了解からして十分明らかであり、この点に関し日米間の了解に違いはないと心得ている次第でございます。
  267. 金子満広

    ○金子(満)委員 壊れたレコードみたいに同じところばかり回っている回答で、これは一つも進まないのですが、それが手で、時間さえたてばいいと思っているかどうか知らぬけれども。  核兵器の持ち込みについて、あいまいさの中で出てくるという中で、そこのところで日本に一カ所だけ持ち込んでないところがありますね。一九七五年から神戸には入っていないのです、あの港には。これが神戸方式です。これはアメリカの核兵器、アメリカ以外も含めて核兵器を積んでいないということをはっきりさせなければ神戸港には入港させませんということになったのです。御存じですよね。それで、それを外交措置をとったから一隻も入らないのです。七五年から、外務省が調べても、あそこの港だけは入っていないのです。これは存否を明らかにすることができないから、持っていませんというのが言えないのですよ。それ以外は自由に入ってきているのです。だから、私がさっき一つ申し上げたように、岩国に持ち込まれてきたことは、今度はアメリカがはっきり認めているわけです。事前協議がありましたかと言ったら、ないのです。そして、極めて持ち込みに近いというのは、はしけに積んだままいりまでも置いたからこれは通過ではない、一時寄港よりもっと長くなった、これをライシャワーさんが自分で見つけてやっているわけです。だから、事前協議は向こうはかけてこないのですよ、核の所在を言わないんだもの。それを、来ないものをまだかまだかと待ったって来っこないのだから、そこがあいまいさということでここで指摘している内容であります。  ですから、今二つあります。大臣が言っているのは、事前協議の申し出がないから持ち込まれていないということと、もう一つはアメリカを信頼するからという、これしかないのです。ほかに何にもないのです。これはみんな抽象的な概念きりなんです。そう思うからそう思ってくれと人に言うだけなんです。うんと単純なんです。こんなことで持ち込まれていて、国民全体の命にかかわることですよ。世界じゅうが今核兵器を積んだ船を入れるか入れないかというのが、ヨーロッパでもニュージーランドその他でも国際的に問題になっているときに、日本にこれが今集中しているのですよ。どうなるか。しかも主管大臣である外務大臣がどうかということになれば、そうでしょう、そういう中で私が見たときに――きょうも人一でいるのですよ。だからそういうときに、このラスク国務長官がこういうことが約束してあるのだから、秘密の合意があるのだから、それはトランジットの場合には、いいですか、トランジットの場合にはあいまいにして受け入れるということが日本政府との間にできているのだから、そういうことでやれということで。だから、それほどの大事なことを守り抜くために訓令の電報を打ったわけですよ。それを今ごろになって不正確だとかないとか、いろいろの形で秘密協定、秘密の合意はないとか言っても、だれが信用しますか。する人なんかないのです。  そういう中で私はもう一つ問いただしておきたいのは、あなたがないと言ってもアメリカは明確にあると言っているのですから、そうしてこの電報の文書は本物ですと言っているのだから、だから今までそれに基づいてやってきた。あなたが知ろうが知るまいが、これは国際法上、秘密の合意というのは知らなくても効力を発揮しているのですよ。  一九七八年に参議院の予算委員会で我が党の上田耕一郎副委員長参議院議員が当特質問しました。このときにもう核兵器の持ち込みについては密約があるだろうという疑惑を我々はうんと持ったわけです。それで質問しました。これは沖縄返還のときですよ、日米間に核兵器の再持ち込みという密約が行われたのではないかという疑惑を持っている、そのことについて聞いた。それで上田議員が、「もし日本の首相あるいはその代理人が外国の元首あるいはその代理人と秘密の取り決めを行った場合、そういう取り決めは国際法上効果がありますか。」当時、園田外務大臣が法制局長官に答弁を促してやりました。長官は答えました。「一国の条約締結権者が他国の条約締結権者との間に結んだ取り決めその他の国際条約は、それが密約、いわゆる不公表であるということのみをもって無効だと言うわけにはいかない」とちゃんと言っているのですね。  そうして、そういう中で上田議員が、ではそういう秘密の取り決めがあった場合、その秘密の取り決めはその内閣を拘束するだけじゃなくて、政権が交代した場合、次の内閣も拘束しますかと言っている。そうだ、不公表であるということだけをもって無効だとは言えないというような事態になった場合、それは国と国との間の取り決めてございますから、その拘束を受けるのは国ですから、政府が交代しても、国が同一である限りはその効力は続くのだ。だから、あなたが何回言っても、アメリカは現にこれに基づいて日本への核兵器を積んだ船、航空機を自由にトランジットの場合やっているのですよ。全く自由にやっている。だから、あなたは今おまじないみたいに事前協議がないから、あればかり言っている。やっているのはアメリカなんですから、ここにこのようにあるのだから、そういう点をはっきりさせなければだめだ。あなたは同じことを繰り返し、岸・ハーター、藤山・マッカーサー、そればかり。そのこと以外にあるから秘密の取り決めというのです。そういう点をもっともっとあなたがはっきりしなかったら、だれも納得しないですよ。だから、ラスク電報なんてそんないいかげんなものじゃないんだ。こういうことをしっかりつかまなかったらえらいことになるのですよ。それを私は言っているのです。
  268. 斉藤邦彦

    ○斉藤(邦)政府委員 ただいま金子委員が御指摘になりました上田委員と法制局長官のやりとりにつきましては、我々も承知しております。ここで論ぜられておりますのは、秘密協定、秘密取り決め一般に関して、それが秘密であるがゆえに効力がないということになるかどうかという論点でございまして、それに対しまして法制局長官の方から、協定が不公表だからといって拘束力がなくなるということはないという趣旨をお答えしたものでございまして、核の持ち込みに関して秘密取り決めがあるかないかという点とは関係がないわけでございます。  それから、日本側は秘密取り決めがないと言うけれども、アメリカ側はこの電報で秘密協定があると言っているではないかという御指摘がございましたけれども、その点に関しましては、繰り返しになりますが、日本政府からの照会に対しまして、アメリカ側から、この電報は秘密取り決めの存在を示すものではないというはっきりした回答をもらっている次第でございます。
  269. 金子満広

    ○金子(満)委員 ここでは秘密協定はあると言っている。今アメリカはないと言っている。そうすると、これはいつからなくなったのですか。今度の問い合わせでなくなったのですか。あるとちゃんと電報にあるのですから。
  270. 斉藤邦彦

    ○斉藤(邦)政府委員 その点は先ほどから外務大臣がお答えしているところだと存じますが、アメリカ側の回答によれば、ここで秘密取り決めと言っているのは、事前協議に関する交換公文及びそれに関連する口頭了解を不正確に言及しているのであろうという回答を得ている次第でございます。
  271. 金子満広

    ○金子(満)委員 岸・ハーターも藤山・マッカーサーも誤解を生むようなものではないです。あれはあれだけなんです。あれだけでは秘密に入ってこられないのです。あの中にトランジットとかありますか。どこかにありますか。一言もないでしょう。ないのですよ。だから、あの二つの交換公文と口頭了解以外のものなんだ。それは全部、二つは出て知っているのです、みんな。その上で秘密の取り決めをやっているのだから、そこが問題の分かれ目なんですよ。そして、そこのところをあいまいにしておこうということで日米の政府が合意しているのです。それが秘密なんですよ。だから、アメリカがあります、秘密の協定ですと言ったらあなた方は困るのでしょう。それでも、アメリカはこの文書を解禁してしまったのですよ。私どもがこれを発見したのは、日米関係で発見したのじゃないのですよ。ちゃんと言っているように、これはソ連関係のところの書類の中にあったというわけですよ。でも、このくらいはっきりしていることを、ここまで言われたのを、今アメリカの国務省だかどこか、公式に回答があったというのはアメリカのだれですか。この十日のレッドマン報道官のあれでしょう。それはアメリカの国務省が発表したのでしょうが。そんなことを、それを後生大事に取り次いで、それで前の日には間違いがあった、不正確だということを、記者会見して、それをアメリカが言っているじゃないですか。だから、私はあらかじめ日本政府の担当者と、だれか知らぬけれどもアメリカの当局者、関係者が事前に何かあったということを示し合わせたということははっきり言えるんじゃないですか。そこのところが一番今問題なんだから、私はそういう点でもう一度、アメリカが存在を否定している、それはどんな否定なんです、だれなんですか。
  272. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 先ほどお答え申し上げましたように、在米大使館を通じまして米国政府にこの電報の真偽と、それからこれについてのコメントを問い合わせたわけでございます。その結果が、先ほど大臣がお答えいたしましたように、この文書は表現等不正確な点が多いということと、いずれにせよこの電報は核持ち込みを可能とするような秘密の合意があることを示すものではないという正式なアメリカ政府の回答に接したわけでございます。  なお、先ほどからこの電報がラスク国務長官ということでございますけれども、確かにラスク国務長官の名前で発信されておりますし、相手はライシャワー大使の名前でございますが、これは往々にしてあることでございますけれども、この起案、決裁等はより下のレベルで行われておるわけでございまして、さらに、これは内部の文書といたしまして、先ほどの繰り返しになりますけれども、コスイギン提案について書いてあるものでございます。したがいまして、これはアメリカもそう言っておりますように、個々の点につきまして不正確な点が多いということでございますので、この電報をもちまして先ほどから金子先生おっしゃっていますようにアメリカは秘密の合意があると言っているということは、事実の問題といたしまして正確ではないというふうに考えるわけでございます。  例えば先ほど一点御指摘申し上げましたけれども、このイントロダクションの秘密合意という点につきまして、先ほど申しましたように秘密の合意と言っているその中身が事前協議の権利がある、これはもう当然のことでございます。これは秘密である必要は全くないわけでございますし、そういうことに触れているだけではなくて、その第一の方で言っております核兵器のイントロダクションに関する米国との秘密取り決めということにつきましても、両方とも秘密取り決めにつきましてはイントロダクションという言葉を使っております。  こういう個々の文章の問題に入るのはいかがかと思いますけれども、いずれにしましても、その中身が寄港、通過であるということではない。その辺のことも寄港、通過とイントロダクションを分けて書いてあるということではないというふうに思いますし、この文章はそういう点でアメリカ政府の意見をつくるというような、代表するというような文章でございませんので、種々不正確な点があるというふうに思うわけでございます。
  273. 金子満広

    ○金子(満)委員 不正確な点があるという、そこはどこも指摘できない、だれも指摘できないのです。いいですか。これが一つ。  それから、寄港、通過と陸揚げ、配備とはこの電報で全部分けてあります。ところが日本の側の、外務省の、政府の考えというのは寄港、通過も全部事前協議の対象であるという考え方でしょう。アメリカはそうでないと言っているんだから。寄港、通過は対象外だともう繰り返し繰り返し言って、この訓令の極秘電報も、ライシャワー発言も、そして今度私どもがインタビューした内容も、ラロックさんもマッカーサー大使もみんな同じことを言っている。違ったことを言っているのは日本政府だけですから。そういう点で、不正確な点が多いといったら、それで秘密協定がないといったら、書いてあるのはどうです、どこが間違っているのですというのを問い合わせない限り、これはだれも納得しないですよ。言っているあなたも納得してないと思うのですよ。いかにこの秘密の合意を隠すかということで一生懸命、頭がいっぱいだ、それだけですよ。だから、ここのところを解明しなければならぬ、そういうように思います。  さらに、もう一歩突っ込むのは、外務省の担当官が答えるのですけれども、ラスク長官が見ていなかったとか、そういうのはあり得ることだとか、何か人のうちへ行って自分でやったような話をするけれども、そんなことは、これだけ大事な内容ですよ、それで動いたのですよ。軍用機で特別に飛んでくるぐらいの慌て方でやったのですから。いいですか、そういうことについて長官が見ないとか、その辺で事務ですっとやったとか、そんないいかげんなものだったら、これは笑い話ですね。世界外交の中でアメリカの外交というのはいいかげんなものだ。同時に、いいかげんなことに乗ってやっていたのは皆さんじゃないですか、今までわからないでやったんだから。じゃ、うそをやられたことになりますよ。そんなものじゃないですよ。否定できない現実がこの中にあり、そして、それでアメリカは動いているんだもの。あなた方が信頼していますと何も言わないから、事前協議なんかしませんよ。今後だって米やしないんだ。もうわかっているのです。事前協議なんかありませんとここに書いてあるんだもの。あいまいなところを認めてきたのだから。  そういうことで、ここまで客観的にも論理的にも明らかになり、核の所在を言わないものが、何で核の所在を明らかにして入ってきますかね、事前協議で。そんなことはだれだって知っているのです。それを条約があるからアメリカを信頼します、そんなのんきなことで日本の安全が守れると思うのですか。あなたは長崎じゃないですか。被爆地でしょう。佐世保にしょっちゅう入ってきているのじゃないですか。それがちゃんとこの国務長官ラスクさんの指摘している秘密の存在する六〇年の取り決めてあるのですよ。だから、それが藤山・マッカーサーだなんて、そんなのんきなことを言っている段階じゃないです、今。ここのところは、政府が責任を持って真実を明らかにしなければならないのですよ。そこのところをはっきりしなければ、エンタープライズだって入ってきたでしょう。そうして今度は空母のミッドウェーの母港でしょうが、横須賀は。C5Aギャラクシー、あれは核弾頭が百発も積めるのですよ。横田に来ているじゃないですか。  積んでいるか積んでないかわからない、非核三原則を守るという。非核三原則は、一と二はいいけれども、三はどこで守るのですか、持ち込ませないというのは。目をつぶってアメリカに物を言わないのがあの項目ですか。非核三原則の適用というのは、我が国の領土、領海の接点までがそうでしょう。国是だもの。アメリカの国是はその接点でストップしなければならないのですよ。ところが、アメリカの国是と国策と原則が日本の港の中まで入ってきて、こちらの国是はおまじないだけじゃないですか。持ち込ませずを、どんなことで持ち込ませないをやるのですか。具体的に持ち込ませずを一言で答えてください。どんなことをやるのですか。
  274. 倉成正

    ○倉成国務大臣 まず申し上げます。  秘密協定はございません。また、事前協議制度が厳然として存在しております。
  275. 金子満広

    ○金子(満)委員 アメリカは、大変気楽だと思っていると思いますよ、日本は。こういう関係だから、あしたもきょうも自由にまた持ってきますよ、事前協議がありはしないのですから。そうしてこのことは、電報を受けたライシャワーさんじゃありませんけれども、全くばかげた話で、袋小路に追い込まれるというのはそうだと思うのです。今の外務大臣の言葉は世界に流れますけれども、あれは真実だなどと思っているのはだれもいないのですよ。だれもいないのです。随分わかり切ったことをごまかすのに大変な努力をしていると思うだけですよ。ひどいものだと。なぜアメリカをこのようにかばうのかということになってしまうのです。  私はそこで、中曽根総理、事は重大だと思うのです。いいかげんな、事前協議の申し出がないから持ち込まれていないとか、アメリカを信頼しますとか、条約関係はどうだとか、そんなことじゃないのです。核兵器が持ち込まれているか持ち込まれていないかという一番大事な問題が今ここで議論になっている。政府は知っているのですよ。だから、ここではっきりさせなさい。中曽根総理もアメリカとの関係は深いわけですから、知らないはずはないのです。知らないとしても、アメリカがあると言っている以上、これは効力をアメリカは発揮しているのですから、アメリカは秘密ではないのです。何も秘密ではありません。ないと言っても入ってきているのです。日本が秘密にしておきたいのです。それだけの話ですよ。アメリカはどこの国だってやっているのだもの、それで。日本だけ合意してやっているのですから。  そこで総理、この問題は非常に大事な問題で、私は今後ともこれはやっていきます。やっていきますけれども、日本の主権にかかわる問題ですよ。非核三原則を厳守すると言いながら、結局は、アメリカの核の所在は言わないというアメリカの国策にこれが打ち消されているのです。やはり主権行使というそこのところをはっきりして、アメリカに身を任せるのじゃなくて、今選択すべきは非核三原則のあのつくらず、持たず、持ち込ませずの、持ち込ませずの三項を政府が責任を持って実行することなんです。総理も厳守するということは随分言っているのですから、そういう意味で、もうこれ以上真実を隠し切ることはできないのだ。何ほ隠しても向こうは国際法に基づいて取り決めでやってきています。  私は、そういう中で、今後ともこの核持ち込み反対、非核三原則を守る、この秘密の取り決め合意の真相を明らかにしろという運動は、国内はもとより国際的にも重大な問題として大きな世論になると思いますよ。そういう意味で、今国際的には核兵器廃絶、軍縮という世論がどんどん起きています。私はそういう点で、ソ連も核兵器の廃絶をうたい、中距離、短距離の核ミサイルの削減、核軍縮を言ってきているという状況の中で、今この核持ち込みの問題については必ずこれは明らかにしていかなければならない。だれにも気兼ねすることなく秘密協定を破棄する。ないものを破棄できるか、向こうはあると言っているのですから、そういう点で総理見解を受けたいと思うのです。総理
  276. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 やはり基本的にアメリカに対する見方というものが共産党と我々と違うと思います。基本的に我々は安保条約を結んで、そして共同防衛をやっておる。お互いの信頼関係の上にこれは立脚して誠実に履行している。そして安保条約及びその関連取り決めである岸・ハーター交換公文あるいは藤山・マッカーサー口頭了解というものは厳然と存在し、それ以外の秘密協定というものはありません。私は総理大臣として、そういうものを見たこともないし聞いたこともないし、そういうものがあるかと聞いたら、ないとはっきり答えられておるのであります。そういう意味におきまして、先ほどの御答弁にもありましたように、アメリカ側においてもそういうものはない、そう言っておるのであります。
  277. 金子満広

    ○金子(満)委員 これは見解が違う問題じゃなくて、事実をどう見るかという問題なんです。立場が違うからじゃないです。現実に核兵器を積んだ船が入ってくる、その飛行機が飛んでくる、これをあいまいにして受け入れていた、そのことを続けるというのがラスク国務長官の当時の訓令の電報なんだから、それは古い話じゃない、それに基づいて今もやられているのですから。だから二十七年間、こういうことがあるにもかかわらず、これをずっと国会国民に隠し続けてきた、そういうこの事の重大さです。ですから、総理が、やはりアメリカを信頼しますという、そのことでこの問題を終わらせようとするけれども、事は重大でありますから、我々はこの真相、真実を徹底して解明する。政府もまたそのことを解明するように、私はここで強く要求して、質問を終わりたいと思います。
  278. 砂田重民

    砂田委員長 これにて金子君の質疑は終了いたしました。  次回は、明十五日午後二時より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時六分散会