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1987-03-30 第108回国会 衆議院 予算委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十二年三月三十日(月曜日)     午前十時一分開議 出席委員   委員長 砂田 重民君    理事 今井  勇君 理事 野田  毅君    理事 浜田 幸一君 理事 林  義郎君    理事 吹田  愰君 理事 上田  哲君    理事 川俣健二郎君 理事 池田 克也君    理事 吉田 之久君       相沢 英之君    愛野興一郎君       有馬 元治君    上村千一郎君       臼井日出男君   小此木彦三郎君       小渕 恵三君    越智 通雄君       海部 俊樹君    片岡 武司君       小坂徳三郎君    左藤  恵君       桜井  新君    志賀  節君       杉山 憲夫君    田中 龍夫君       武村 正義君    西岡 武夫君       原田  憲君    福島 譲二君       穂積 良行君    細田 吉藏君       松野 幸泰君    武藤 嘉文君       村田敬次郎君    村山 達雄君       山下 元利君    井上 一成君       井上 普方君    稲葉 誠一君       川崎 寛治君    菅  直人君       嶋崎  譲君    細谷 治嘉君       神崎 武法君    坂口  力君       水谷  弘君    宮地 正介君       木下敬之助君    楢崎弥之助君       工藤  晃君    寺前  巖君       正森 成二君  出席国務大臣         内閣総理大臣  中曽根康弘君         国 務 大 臣 金丸  信君         法 務 大 臣 遠藤  要君         外 務 大 臣 倉成  正君         大 蔵 大 臣 宮澤 喜一君         文 部 大 臣 塩川正十郎君         厚 生 大 臣 斎藤 十朗君         農林水産大臣  加藤 六月君         通商産業大臣  田村  元君         運 輸 大 臣 橋本龍太郎君         郵 政 大 臣 唐沢俊二郎君         労 働 大 臣 平井 卓志君         建 設 大 臣 天野 光晴君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     葉梨 信行君         国 務 大 臣         (内閣官房長官後藤田正晴君         国 務 大 臣         (総務庁長官) 山下 徳夫君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)         (沖縄開発庁長         官)         (国土庁長官) 綿貫 民輔君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 栗原 祐幸君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      近藤 鉄雄君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)     三ツ林弥太郎君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 稲村 利幸君  出席政府委員         内閣官房長官 渡辺 秀央君         内閣法制局長官 味村  治君         内閣法制局第一         部長      関   守君         公正取引委員会         委員長     高橋  元君         公正取引委員会         事務局経済部長 厚谷 襄児君         総務庁長官官房         会計課長    塩路 耕次君         総務庁人事局長 手塚 康夫君         総務庁統計局長 三浦 由己君         防衛庁参事官  瀬木 博基君         防衛庁参事官  古川 武温君         防衛庁参事官  児玉 良雄君         防衛庁参事官  筒井 良三君         防衛庁長官官房         長       友藤 一隆君         防衛庁防衛局長 西廣 整輝君         防衛庁教育訓練         局長      依田 智治君         防衛庁人事局長 松本 宗和君         防衛庁経理局長 池田 久克君         防衛庁装備局長 鎌田 吉郎君         防衛施設庁長官 宍倉 宗夫君         防衛施設庁総務         部長      平   晃君         防衛施設庁労務         部長      西村 宣昭君         経済企画庁調整         局審議官    田中  努君         経済企画庁調査         局長      勝村 坦郎君         科学技術庁長官         官房長     矢橋 有彦君         国土庁長官官房         長       清水 達雄君         国土庁長官官房         会計課長    佐々木 徹君         国土庁土地局長 田村 嘉朗君         外務省北米局長 藤井 宏昭君         外務省経済局長 渡辺 幸治君         外務省条約局長 斉藤 邦彦君         大蔵省主計局長 西垣  昭君         大蔵省主税局長 水野  勝君         大蔵省理財局長 窪田  弘君         大蔵省理財局次         長       入江 敏行君         大蔵省銀行局長 平澤 貞昭君         大蔵省国際金融         局長      内海  孚君         大蔵省国際金融         局次長     畠中 杉夫君         文部大臣官房長 古村 澄一君         文部省高等教育         局長      阿部 充夫君         農林水産大臣官         房長      甕   滋君         農林水産大臣官         房予算課長   上野 博史君         通商産業大臣官         房会計課長   田辺 俊彦君         通商産業省貿易         局長      畠山  襄君         通商産業省産業         政策局長    杉山  弘君         通商産業省基礎         産業局長    鈴木 直道君         通商産業省機械         情報産業局次長 山本 雅司君         資源エネルギー         庁長官     野々内 隆君         中小企業庁長官 岩崎 八男君         運輸大臣官房国         有鉄道部長   丹羽  晟君         運輸省運輸政策         局長      棚橋  泰君         郵政省貯金局長 中村 泰三君         労働大臣官房長 岡部 晃三君         労働省労政局長 小粥 義朗君         労働省労働基準         局長      平賀 俊行君         労働省職業安定         局長      白井晋太郎君         建設大臣官房長 高橋  進君         建設大臣官房総         務審議官    渡辺  尚君         建設大臣官房会         計課長     市川 一朗君         建設省建設経済         局長      牧野  徹君         自治大臣官房審         議官      森  繁一君         自治省財政局長 矢野浩一郎君         自治省税務局長 津田  正君  委員外出席者         参  考  人         (日本銀行総裁澄田  智君         予算委員会調査         室長      右田健次郎君     ――――――――――――― 委員の異動 三月二十四日  辞任         補欠選任   木下敬之助君     伊藤 英成君 同日  辞任         補欠選任   伊藤 英成君     木下敬之助君 同月三十日  辞任         補欠選任   伊藤宗一郎君     穂積 良行君   宇野 宗佑君     片岡 武司君   奥野 誠亮君     武村 正義君   小坂徳三郎君     有馬 元治君   松野 幸泰君     杉山 憲夫君   大久保直彦君     神崎 武法君   金子 満広君     正森 成二君   不破 哲三君     工藤  晃君 同日  辞任         補欠選任   有馬元治君      小坂徳三郎君   片岡 武司君     宇野 宗佑君   杉山 憲夫君     松野 幸泰君   武村 正義君     奥野 誠亮君   穂積 良行君     臼井日出男君   神崎 武法君     大久保直彦君   工藤  晃君     不破 哲三君   正森 成二君     金子 満広君 同日  辞任         補欠選任   臼井日出男君     伊藤宗一郎君     ――――――――――――― 三月二十七日  昭和六十二年度一般会計暫定予算  昭和六十二年度特別会計暫定予算  昭和六十二年度政府関係機関暫定予算 同日  防衛予算の削減に関する請願(上田利正君紹介  )(第一二五五号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  昭和六十二年度一般会計暫定予算  昭和六十二年度特別会計暫定予算  昭和六十二年度政府関係機関暫定予算      ――――◇―――――
  2. 砂田重民

    砂田委員長 これより会議を開きます。  昭和六十二年度一般会計暫定予算昭和六十二年度特別会計暫定予算昭和六十二年度政府関係機関暫定予算、以上三案を一括して議題といたします。  まず、三案について政府より趣旨説明を求めます。宮澤大蔵大臣。     ―――――――――――――  昭和六十二年度一般会計暫定予算  昭和六十二年度特別会計暫定予算  昭和六十二年度政府関係機関暫定予算     〔本号末尾に掲載〕
  3. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 このたび、昭和六十二年四月一日から五月二十日までの期間について暫定予算を編成することといたしましたが、その概要について説明を申し上げます。  まず、一般会計について申し上げます。  暫定予算が本予算成立までの応急的な措置であることにかんがみ、今回の暫定予算におきましても、暫定予算期間中における人件費事務費等経常的経費のほか、既定の施策に係る経費について行政運営上必要な最小限度のものを計上することといたしております。  なお、新規の施策に係る経費につきましては、原則として計上しないこととしておりますが、生活扶助基準等の引き上げ、国立大学の学生の増募等教育及び社会政策等への配慮から特に措置することが適当と認められるもの及び既に成立した法律に係るものにつきましては、所要経費を計上することとしております。  また、公共事業関係費につきましては、暫定予算期間中における事業継続的執行を図るため、所要額を計上することとしております。  すなわち、一般公共事業につきましては、六十二年度予算額のおおむね七分の二を目途に計上することとし、その枠内において、積雪寒冷地事業については、その円滑な実施を図り得るよう特別の配慮を加えることとしております。なお、補助・負担率の引き下げに係る事業についても計上することとしております。  災害復旧等事業につきましても、災害復旧緊急性にかんがみ、過年発生災害復旧等のため必要な六十二年度予算額のおおむね三分の一を目途として計上することとしております。  地方財政につきましては、四月に交付する地方交付税交付金として、六十一年度補正後予算の国税三税収入見込み額基礎として算定した普通交付税相当額の四分の一を計上するほか、地方債についても所要措置を講ずることとしております。  歳入につきましては、税収及び税外収入についての暫定予算期間中の収入見込み額並びに前年度剰余金を計上するほか、公債金について、暫定予算期間中において財政法規定により発行を予定する公債に係る収入見込み額一兆五千八百億円を計上することとしております。  以上の結果、今回の一般会計暫定予算歳入総額は二兆五千三百七億円、歳出総額は八兆八千二百九十億円となります。  なお、これは六兆二千九百八十三億円の歳出超過となりますが、国庫の資金繰りにつきましては、十兆九千億円を限度として、必要に応じ大蔵省証券を発行することができることとしております。  次に、特別会計及び政府関係機関暫定予算につきましては、いずれも以上申し述べました一般会計の例に準じて編成しており、三十万人雇用開発プログラム、第八次石炭対策産業基盤整備基金等に係る経費についても計上することとしております。  なお、財政投融資につきましては、中小企業金融公庫日本道路公団等二十四機関に対し、総額二兆五千八百三十八億円を計上し、一般会計に準じて暫定予算期間中の事業が行われるよう措置することとしております。  以上、昭和六十二年度暫定予算につきまして、その概要説明いたしました。  何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださるようお願い申し上げます。
  4. 砂田重民

    砂田委員長 以上で大蔵大臣説明は終了いたしました。     ―――――――――――――
  5. 砂田重民

    砂田委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  三案の審査のため、本日、参考人として日本銀行総裁澄田智君の出席を求め、意見を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 砂田重民

    砂田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ―――――――――――――
  7. 砂田重民

    砂田委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。浜田幸一君。
  8. 浜田幸一

    浜田(幸)委員 諸先輩のお許しを得て、当面する問題について質問さしていただきたいと思います。時間が一時間制限でありますので、簡潔に質問をいたしますので簡潔にお答えいただきます。  まず、大蔵大臣にお伺いいたします。  今のような不正常な状態の中で、あなたは今提案された八兆八千億の暫定予算を提示されましたが、このような非常事態のときには、やはり五十兆円なら五十兆円の暫定予算を組むのが常識なのではないですか。なぜかと言えば、それは審議に応じない野党がいるのにどうやって国民の利益を守るのか私には非常に心配だから申し上げるのですが、これは財政法上の問題ではなくて一般常識論としてお伺いをいたしておきます。
  9. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 このような非常に難しい経済状態でございますので、政府といたしましては、なるべく早く国会におかれまして本予算成立をお認めいただき、これを可及的速やかに執行いたしたいということをかねて念願をいたしてまいりましたが、本委員会における御審議状況等を考えまして、今月の半ばに、この状況では暫定予算を組まざるを得ないと考えまして、まことに残念なことでありますが、暫定予算を組みますことを閣議で御了解を得て決定をいたしました。  このような経済状況でございますので、なるべく一刻の猶予もならないような状況に対応いたしたいと切に考えましたが、浜田委員も御承知のように、ただいまの財政法におきましては、暫定予算成立しなかった場合にいかなる予算的な措置をとり得るかという規定が一切ございません。戦前のようにその場合には前年度の予算を踏襲できるという規定がございませんために、暫定予算というものは必ず国会でお認めいただける性格のものでなければならない。すなわち、御議論のない、いわば極めてだれが考えてもこれはやむを得ないというものしか盛れないというふうに財政法が考えている、こう考えざるを得ないという状況がございまして、したがいまして、御発言の御趣旨はよくわかりながら、それに沿いまして、しかもその中では最大限の処置をいたしたつもりでございます。
  10. 浜田幸一

    浜田(幸)委員 そうすると、今のような状態が続いている限り、あなたが、先進国蔵相会議、G5といいますかG7と言われていますが、そういうものの中で約束をしてきた、例えば日本世界に果たすべき責任をどうするのかという内需拡大方程式や新政策、そういうものは暫定予算の中には全然組めないということになりますね。そういう考え方でよろしいですか。
  11. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先般の先進国少数グループ会議におきまして、御承知のように、アメリカアメリカ日本日本におのおの各国が求めるところがあり、またおのおのがそれを最大限の努力で実行するということを約束をいたしておるわけでございます。  そのようなことを考えますと、この六十二年度本予算すらなかなか成立見込みがないという状況は、私どもが各国に対して約束いたしておりますことを遺憾ながら十分には果たし得ないという状況と考えざるを得ませんし、また、各国も我が国に対してそのような見方をするということは避けられないと思われます。民主主義におきましてはこのようなことはありがちなことではございますと思います。しかしながら、経済的な問題といたしましては、そのように申し上げなければならないかと思います。
  12. 浜田幸一

    浜田(幸)委員 私は政府だけを追及するのが目的ではないのです。ただし、国会の不正常な状況のときには、政府が果たさなければならない指導理念というものはもっと的確でなければならないような気がするわけであります。  ですから、もう一点だけお伺いしたいのですけれども、もしも野党の諸君がこれ以上審議に応じない場合には、それではもう一回暫定予算を組むのですか。
  13. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そのようなことはますます異常なことでございますので、国会におかれましても、どうぞそのような事態になりませんように御配慮をお願いいたしたいと思います。
  14. 浜田幸一

    浜田(幸)委員 それでは、時間がありませんから、この問題は国会全体の考えるべき問題として、異常な事態発生の場合には、国民要求を一〇〇%満たすことはでき得ずして我慢をするにしても、少なくとも、国家の存立に影響を与えるような世界会議における公約だけは守り得るような予算執行だけは政府責任においてやっていただかなければならないということだけを、この際、声を大にして申し添えておきます。お願いいたします。  次に質問させていただきますが、それはどういうことかというと、現在ドルはどのような状況になっていますか。そして円はどのような状況になっているか。わかりやすく聞きますと、きょうの寄りつきは幾らですか、お伺いします。
  15. 宮澤喜一

    吉澤国務大臣 再度円が急上昇いたしておりまして、ほぼ百四十五円と承知しております。
  16. 浜田幸一

    浜田(幸)委員 この百四十五円という状況はやはり異常だと思うのです。しかし、その異常性はどこから来たかというと、一つには、日本世界に対して果たすべき責任を果たしていない、そのあらわれが円高という形で、罰則的な可罰性を持った形で出てきたように考えられるのですけれども、いかがですか。
  17. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 相場の原因について大蔵大臣が申し上げることは差し控えるべきであると思いますけれども、先ほど来浜田委員が御指摘になりましたような客観情勢というものは国の内外がよく知っておるということは事実だと思います。
  18. 浜田幸一

    浜田(幸)委員 私は、きょうこの問題については、日銀総裁が来られた後でもう一回詰めさせていただきたいと思うのですけれども、今回の本年度予算の中で、例えば円高で困っている人、雇用、働く場所を失おうとしている人あるいは生活権が奪われようとしている人、そういう人のために予算に計上してある部分は大体どのくらいですか。
  19. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 詳細に分析をして申し上げることが急にできませんが、予算全体が今日本経済最大の問題である、そういう状況に、雇用にいたしましても、公共事業にいたしましても、産業転換円滑化にいたしましても、ほとんどそれが予算の大きな主眼になっておるということは事実でございます。
  20. 浜田幸一

    浜田(幸)委員 そうすると、何を差しおいても、各政党間の中にどのような意見があるにしても、やはり国際的に我々が存立していくための絶対条件というものは、予算を一日も早く通さなければならないということになりますね。この点には間違いありませんか。
  21. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 民間企業設備投資意欲が非常に盛んでございますと財政負担は軽うございますけれども、御承知のように、設備投資意欲が全くございません。在庫投資意欲も非常に少ない。そういうことになりますと、やはり民間にやってもらえること、国民にやってもらえることは、例えば住宅である、あるいは健全な消費である。それについても、しかしそれは住宅建設促進のための金融もあり税制もございます。その分についてすら財政役割がございます。いわんや、公共投資あるいは雇用確保雇用調整、その他産業転換等々は財政がかなり大きな役割を担わなければならないことはまことに事実でございます。
  22. 浜田幸一

    浜田(幸)委員 そこで、総理にお伺いします。  総理クロヨンという言葉を御存じですか。
  23. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 徴税上の言葉として、いわゆる徴税度がどの程度行われているかというのでそういう言葉があること係を知っております。
  24. 浜田幸一

    浜田(幸)委員 私はわからないからお伺いするのですけれども、そのクロヨンのうちの九というのはだれを指すのですか。
  25. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 サラリーマンを指すと思います。
  26. 浜田幸一

    浜田(幸)委員 六はだれを指すのですか。
  27. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 六については中小企業者あるいは流通業者だろうと思います。
  28. 浜田幸一

    浜田(幸)委員 四はだれを指しますか。
  29. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 大体農業者のことあるいはそれに関連する関係のことを言っているだろうと言われております。
  30. 浜田幸一

    浜田(幸)委員 ということは、その九の中におられる人たちサラリーマンということですね。
  31. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 そのように受け取られていると思います。
  32. 浜田幸一

    浜田(幸)委員 そうすると、今あなたが提案をされている直間比率改正減税問題と増税問題、一緒に出ているわけですけれども、その増減税最大目的は何か、お答えください。
  33. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 シャウプ税制以来の税のひずみを是正する、そうして今の課題である減税、特にサラリーマン中心にする減税、あるいはいわゆる長寿社会に備える租税あるいは財政構造転換していく、あるいはさらに内需振興、今大事な内需振興のためのさまざまな税源、財源を確保する、そして国際競争力を付与する、そういう目的を持って税制改正が行われておりますが、一つの重大な目的サラリーマン中心にする減税を断行しようということであります。
  34. 浜田幸一

    浜田(幸)委員 そうすると、あなたは気の毒な立場におられますね。国家百年の大計のために、ばかを見ている人たち言葉は悪いのですけれども、ばかを見ている人たちを守ろうとして一番悪く言われているのがあなたということになりますね。そうですね。
  35. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 これは政府税調にも諮問して、政府税調からも答申が長い間、一年有半にわたる審議の結果出てきたものであり、党の税制調査会においても御論議を願いまして、今のサラリーマン減税というものが非常に重大なしかも焦眉の急を要するものであるという御判定になりまして、それを受けて実行をさしていただきたいと思っておるところです。
  36. 浜田幸一

    浜田(幸)委員 大変恐縮ですが、私はここに図を持ってまいりましたので、ひとつその点で大蔵大臣総理大臣にお伺いをして確認をしておきたいと思います。  これは裏表につくってありますから。これは本年度提案されている予算額予算の中の三十九兆四千四百億円が税で取るものだということが書いてあります。その内訳はどういうことかというと、所得税で払っている人たちが十六兆四千億、そして法人税が十一兆七千億、あとは酒税が二兆円、物品税が一兆六千億、揮発油税が一兆六千億、印紙収入が一兆五千億、相続税が一兆四千億、その他が三兆三千億ということになっています。間違いありませんか、大蔵大臣
  37. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 間違いありません。
  38. 浜田幸一

    浜田(幸)委員 そこで総理大臣、あなたが直そうとしているのは、この十六兆四千億、すなわち給与所得に対する源泉所得税、逃げ場のない税金を払っている九兆二千億円、ここと源泉所得税まで入れますと十三兆円、このところを安くしたいと考えているわけですね。
  39. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 十六兆の中で九兆二千億円というのはサラリーマンの源泉所得課税でございますから、この減税を行うという場合に一番恩恵に浴するのはサラリーマン、特に一番働き盛りのサラリーマン中心にやりたい、そう考えておるわけです。
  40. 浜田幸一

    浜田(幸)委員 しかし、どう考えてもおかしいのは、そのサラリーマン人たちが、あなたが提案しているこのことに反対しているのですけれども、その点はどう思いますか。
  41. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私にもよく理由はわかりませんが、しかしサラリーマン減税についてある一部の団体から五百万以下は減税にならない、そういうような議論が出まして、その誤解があるのではないかと思うのです。しかし、それは明らかに全般を考えれば減税になっておるのであります。
  42. 浜田幸一

    浜田(幸)委員 具体的な問題に入ってきましたので、この点もうちょっと進めてお伺いしたいのですけれども、どうもおかしいのは、本来であれば国民の方々のために税の公平を行う、さっき言われたように、クロヨンという言葉改正するために、例えば三千三百万人と言われる、数字に間違いあるといけませんが、この所得税を払っている人たち、そういう中で安くしようというのに反対というのは、これは私はおかしいと思うのです。だれかしらがどこかで作為的な宣伝をしているとしか思えないのですけれども「その作為的な宣伝をする以前の問題として一点だけ明確にしておかなければいけないことがあるのですが、あなたは公約に違反したことがありますか。
  43. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 この問題で公約に違反していると私は考えておりません。これは、政府税調及び党の税調でこの税制改革を論議する前あるいはその最中におきましても、私はこういうような公約を議会で行い、また選挙でこういうことを言っております、したがって、違反にならないようにおつくりください、そうお願いして、それに合うようにおつくりいただいたのがこの結果でございます。
  44. 浜田幸一

    浜田(幸)委員 そうだとすると、私は国民の方々にも明確に申し上げておかなければいけないのですけれども、総理が公約に違反をして、そしてこういう問題を提案したからそのことには反対だということは、私はどうも納得できないと思っています。ですから、あなた胸を張って提案をしなければならないのですが、ただ、きのう総理、座弾を組みましたか。
  45. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 おとといの晩、座弾を組みました。
  46. 浜田幸一

    浜田(幸)委員 そのときに何か反省したことはありませんでしたか。
  47. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 座弾というのは年じゅう反省するために行っておるのでありますが、税制の問題に関しましてこれだけのいろいろな議論、御批判をいただいたということは申しわけない、政治としてはやはり十分反省しなければならぬところがあると思っております。  私は公約に違反しないようにということを念願いたしまして、政府税制調査会及び党の税制調査会にそういうふうにおつくりくださいと申し上げ、またそれらの調査会におきましてもそれをお考えいただいて、例えば売上税につきましては除外例を設けて、一億円以下の方は課税義務者にならないとか、あるいは品目にいたしましても大体三五%は課税になるけれども六五%は課税の対象にならないとか、あるいは売上税の税率にいたしましても外国は一五%とか二〇%ですが我が国は五%ということにし、しかも簡易税額票という制度でこれをやろう。さまざまないろいろ工夫をしていただいてできておることで、私が前から申し上げている投網でがさっと全部取るようなやり方ではない、したがって、大型ではないと私は考えております。  しかし、国会の中で、こういうようなものが大型間接税でありますと矢野書記長やあるいは大内書記長にお答えをいたしましたそういう細かい議論は、国民の皆様にはよくわからないところであると思うのです。ですから、国民の皆様方が今のようにあるいは違反ではないかとお考えになるという点は無理のない点もあると思います。これは、私のあるいは我々の説明が十分でなかったし、御理解をいただけなかった、そういう点で御不満があるということは十分反省しなければならぬし、今後もよく御説明申し上げて、御納得いくように行動していかなければならぬと思っております。  とにかく税の問題というのは国民全体の財産や生活に関係する大きな問題でございますから、十分国民の皆さんの御議論も承り、いずれ大蔵委員会において、これがかかるわけでございますから野党の皆さんのお考えも十分承りまして、謙虚な立場に立って、そして十分御意見も承って、国民的な合意をつくるように積極的に努力してまいりたい、そう考えておる次第でございます。
  48. 浜田幸一

    浜田(幸)委員 そこで大蔵大臣、この直間比率という言葉、これはプロの世界では平気なんですけれども、例えば直接税と間接税、この直間比率改正したいというのが今回の提案の目的ですね。その場合に、世界と比較した場合に日本が一番直接税が高過ぎるから、だからその直接税を下げることに上って間接税を上げたい、こういうふうに解釈してよろしいですか。
  49. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 大筋でおっしゃっておるとおりでございますが、直間比率というのはその国のあり方にも関係いたすと思います。我が国のようにこれだけ所得水準が高くなり、かつ所得格差が少ない社会において、なお余りに企業意欲、勤労意欲を妨げるような直接税、高過ぎるということは問題でございますから、しかも間接税を先ほど申しましたような理由で国民負担していただけるような生活状況であるというところにおきまして、七、三という比率はいかにも直接税が高過ぎる。アメリカは、これは特殊な事情がございまして直接税が非常に高い国でございますが、その他の国では間接税のバランスがもっともっと高くなければ一国によりますが、高い方が適当である。我が国では、戦前は、これはもう極端に間接税が高かったわけでございますけれども、シャウプ税制ごろにはちょうど五五と四五ぐらいになっておったかと思います。今七、三は、これはいかにも極端で直さなければならないと思います。
  50. 浜田幸一

    浜田(幸)委員 そこで、例えば直さなければならないという場合に、今の大蔵大臣が提案している問題を見ますと、五十歳から五十四歳、これは減税問題ですけれども、その辺を、一五%ですか、減税したいという形で、二十代、三十代、四十代、すなわち三百万の所得、四百万の所得、五百万の所得、その辺の所得の税の下げ方がちょっと浅いような気がするのですが、その点いかがですか。
  51. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これはこういうふうな考え方をいたしたわけでございます。冒頭におっしゃいましたクロヨンにも関係することでございますけれども、今勤労所得者が感じておりますことは非常に税が重い、よその人々に比べて重い重税感があるのみならず、会社に入りまして給与がちょっと上がりますと、すぐ税率の上の刻みに行くというその重税感に耐えられないという問題があることはよく御承知のとおりでございます。  そこで、このたびの税制はこの点を抜本的に改めまして、学校を出て会社に入る、そうしますと最初の、免税点以下なら別でございますが、税率としては一〇%である。そうしていわば生涯、ライフステージを経ていきまして会社をやめるころにもなお一五%の税率で済むように、つまり社会に出たときに一〇と一五の二つの税率でほぼライフステージがいわば退職まで至る、こういう税制にいたしますならば、働けど働けど税金ばかり多くなるというそういう感じ、重税感はなくなるであろう、このように考えたわけでございます。給与収入で申しますと四百三十三万円までが一〇%でございます。八百八十八万円までが一五%でございます。八百八十八万円と申しますと、それはかなり高い給与収入でございますから、ほぼ退職に近いところまでそれでカバーできると考えてよろしいのではないかと思います。  ところで、そういうふうにいたしましたゆえんは、ちょうど今言われましたように、四十過ぎから五十過ぎぐらいのところが手供さんが高校から大学、あるいは大学を出るような段階になあ、住宅ローンの返済がかさんでくる、こういうことになりますので、そこのところが一番実はサラリーマンとしてはつらい。その人たちに比較的大きな減税をしてさしあげることが必要ではないかという判断を持っておりまして、全体の税率構造をそのようにいたしました。もっとも、そういたしましても、例えば三百万円のところの減税率は三六%ぐらいでございます。千万円のところの減税率は一九・五%ぐらいかと思います。その間に全部二けた台の減税率が入っておるわけでございますから、減税分がないというようなことはもとよりございません。  そこで、今浜田委員の言われましたように、確かに、五百万円とか六百万円とかいうところの軽減割合がどちらかといえば下よりも土よりも薄いではないか、一四、五%になるわけでございますが、そういう問題はございます。ございますが、これは例えば自分が課長である、どうもおれの減税率より部長代理の減税率の方が大きい、これは不公平だというふうにお考えになるよりは、自分もやがて部長代理になるわけでございますから、そのときに自分の暮らしが苦しいのでそのために部長代理の減税率が大きくなっている、結局自分自身の問題、また現にそれが現実でございますから、そういうふうな生涯の減税率を考えた、こういうふうに御理解を願いたいと思います。
  52. 浜田幸一

    浜田(幸)委員 ここにあるのですが、ちょっとわかりにくい。これは私がつくったものではなくてあなた方がつくったものですから、わかりにくいのです。これは、つくったというのは、後ろの方では誤解していますけれども、数字のことを言っているので、絵は私がつくったのですけれども。  ただ問題は、この中で大事なことは何かというと、私が一点だけ申し上げたいのは、例えば三百万の人、四百万の人、五百万の人、そして六百万の人、この中で見ますと、二・〇、五・五、五・七、六・六、一〇・〇という形がその該当者になるわけです。ところで、今あなたは、課長部長になり、部長が次長になり何になる、そういう御意見だったのですけれども、私がこれから質問しようとしていることは、一流企業と二流企業、三流企業、言葉は悪いのですけれども中小企業、この問題についてあなた方が真剣にお考えになったかどうか、もう一回お伺いしておきたい。  ということは、働けど働けど我が暮らし楽にならずという言葉がようやくなくなりかけているのですけれども、そこにもう一歩希望を与えるために、三百万、四百万、五百万で、一生働いてもそれ以上上がらないであろうと思われる人たちも中にはいるわけですね。その人たちに対する課税をいま少し心優しく減税をすることができないのか。例えば四百万円の人を中心にして議論する場合に、あなた方の説明では四万九千円、約五万円の減税がされるということになっていますね。しかし、野党の反論を聞いていると、これが売上税で物を買って払う税金とプラス・マイナスすると一方的にマイナスになるという宣伝もされています。  これは実際問題として、政府では一万四千円プラスになると言っているけれども、野党が言うと逆に一万五千円マイナスになると言っているのですね。そこに減税感を与えていない理由があるのではないか。例えば総理大臣が公約違反をしたから反対だという人たちを扇動して明け暮れしている人たちもいますけれども、それも一つの反対の理由であるかもしれない。しかし、もっと反対の理由の中にあるのは、減税感がサラリーマンの肌にしみ込んでいないのではないか。そうだとすれば、この三百万、四百万、五百万、六百万以下の人たち、その人たちに対していま少し温かい減税政策というものがあっていいのではないかと思いますが、その点いかがですか。
  53. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先ほどちょっと申し上げたことでございますけれども、いかに地方でございましても、やはり勤労者でありますと昇給をしてまいりますので、したがって、頭が五百万円ということはすべての給与所得から申しますとまあ中堅ぐらいと考えてよろしいのではないか。それは八百万円というところまでいかない場合は往々にあろうと思いますけれども、やはり自分自身の給与はある程度は、五百万円、六百万円ぐらいまでは上がっていきますので、人の問題としてではなく、自分の生涯に応じて減税率が少しずつ高くなっていくといったような仕組みは、これは私は決して間違いではないように思いますので、確かに、言われますように階層別でいいますと六百万円というところが一四%の減税率は、所得税、住民税合わせまして八万六千円でございます。一四%で、このところが少し減税率の割合が低いということはそうでございますけれども、しかし、やはり一四%の減税というものはかなりのものでございます。そして法人税、売上税等々含みますとネットの減税になる、だれもネットの増税を受ける人はないという仕組みは御理解をいただきたいと思うのであります。
  54. 浜田幸一

    浜田(幸)委員 それでは、私も自民党員ですから、これは自民党総裁が提案したものに対して反対をするとか修正をしてほしいとかというのじゃないのです。しかし、愛の施しをとか温かい減税施策をというのは、今回の税法上の修正だけでなくて、例えばサラリーマンの主婦に対する控除の問題とか何かほかの方法であるんじゃないですか。そういうことも考えられませんか。
  55. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは確かに考えられます。いわゆるサラリーマンが勤労所得を得るに要した費用について、勤労控除以外に特定のものについては実額の控除を認める制度を今度導入をいたそうとしております。あるいはまた、先ほどのクロヨンとの関係もございまして、いわゆるみなし法人の経営者の妻が給与を得ておりますときはこれは給与所得になるわけでございますが、それとのバランスもありまして配偶者特別控除を今度導入いたしまして、これはいわばサラリーマンの奥さん方の何と申しますか家庭における貢献とでも申しますか、そういうものを新しく考えまして配偶者特別控除を設けた、これなどもその一例でございます。
  56. 浜田幸一

    浜田(幸)委員 そうすると大蔵大臣、実際問題として三百万円の人、四百万円の人、五百万円の人、六百万円の人、あるわけですけれども、私は八百万円以上の人についてはきょうは触れませんけれども、私はもう八百万円以上の人たちはあなた方が決められることでいいと思っている。  ただ、でき得るならば、総理、これは総理にお伺いしますが、あなたは自分が提案したことですから全然変えようとしないと思うのですけれども、例えば共産党は三百万まで非課税を言っていますね。これは自民党の私も三百万円まで非課税にしろと言っておるのです。これは二百五十七万とか二百六十万までいっているからもういいということでいじられていないのですけれども、三百万の人、四百万の人、五百万の人に例えばもう三万円ずつ減税することは可能ですか不可能ですか、どうですか。
  57. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 非常に技術的な専門的な問題でございますから大蔵大臣からお答え願いたいと思っておりますが、要するに、一般論といたしまして、我々は、この税制改革案というものは、日本の将来も見据えて、日本がこれから内需を振興し、あるいは国際社会に生き残っていくためにはこういうやり方でやる以外にない、ベストの方法であると考えて提案したものであります。  しかし、人間がやることですから間違いが全然ないとはそれは言えません。我々も謙虚な立場に立たなければならぬと思っております。したがって、国会でよく審議する例のように大蔵委員会におきまして十分詰めていただいて、そして建設的な合理的な考え方については与党も耳を傾ける、国民の声についても耳を傾ける、そういう謙虚な立場に立って大蔵委員会で詰めを行う。よく法案で与野党でやっていることでございます。そういうような余裕を持って我々も国民に対して謙虚でいかなければならない、そう考えております。
  58. 浜田幸一

    浜田(幸)委員 大蔵大臣、今総理大臣が言われたわけですけれども、やはり私は、内需の拡大という言葉を想起してみますと、内需拡大というのは一体どういうことかというと、消費の拡大も考えなければいけませんね。その場合に、あなた方が今一番減税しようとしている二〇%、一五%を配慮している人たちは、子供たちの大学教育に追われ、あるいは嫁にやる、婿をもらう、花嫁をもらう、そういう形に追われて非常に大変だからそうしてやるということはわかるのです。これはありがたいと思っている。ただし、その場合に、その消費だけではなくてどこかしらで、内需拡大を考える場合には、二十代、三十代の独身貴族といいますか、独身の方々が減税されることによって消費が進む場合もありますね。そうだとすれば、本当の意味で、今日本が置かれている立場を考えると、内需拡大をしなければアメリカの鉄槌が下りますね、ヨーロッパの鉄槌も下るでしょう。そうだとすれば、内需拡大を考えた場合に、実際問題として、三百万から五百万、六百万までの人たち減税をいま少し、四百万の人が四万九千円と言われているものをこれを八万円にする、十万円にすることによって、減税感を与えながら消費の拡大を伸ばす可能性もありますね。その点についてはどうお考えになりますか。
  59. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 具体的な問題になりますとそれから起こります歳入減等々いろいろなことを考えなければなりませんので、今にわかに申し上げられませんが、おっしゃいますことは、要するに減税によって可処分所得が大きくなればそれはそれだけ消費を拡大することになるではないか、それはそのとおりだと思います。
  60. 浜田幸一

    浜田(幸)委員 今、自民党の後ろの方で、物の考え方が甘いよと言っておりますから、また後でよく彼の言うことも聞かなければいかぬのですけれども、自民党がやっているときはあなたも静かにしていなさい。野党がやるときはいいけれども、自民党がやっているときは私語はやめなさい、あなた。利口なのはわかっているけれども、利口過ぎるということはいいことじゃないから。  さて、私はここで、日銀の総裁をお呼び立てをして、お忙しいと思いますからちょっともとへ戻らしていただきたいと思います。  総裁、円高についてどうお考えになりますか。
  61. 澄田智

    澄田参考人 一昨年のプラザ合意以来の急激な円高によって日本経済にデフレインパクトが生じ、そうして景気の停滞感が非常に強くなっているということは、私どももそのとおりだと思います。そういう意味合いにおきまして、現在の先週以降の為替相場の動きについては極めて我々としても警戒をいたしているものでございます。円高方向で為替が不安定な動きを続けますということは、内需拡大あるいは経済の調整、そういうことを通じて対外不均衡の是正を図るという我が国の基本的な課題に対して大きな障害になりかねない、そういうことであろうと思います。したがいまして、私どもといたしましても、円高方向での為替の不安定に対しては各国と緊密なる協調をとりまして、そうして密接にお互いに連絡協調をし合いながらこれを何とか安定をさせるという努力を傾注していきたい、かように考えている次第であります。  ちょっとつけ加えますが、市場におきましては、一方におきましてやはり円高の行き過ぎに対する警戒感というものも底流には強くあるものでございまして、したがって、このままどんどん進んでいくというようなものでない、そういうふうに考えておる次第でございます。
  62. 浜田幸一

    浜田(幸)委員 なかなか難しい答弁ですからわかりやすく聞きますが、日本政府の対外経済政策の例えばふまじめさといいますか、対応、そういうものが的確でないからこういう現象が起こってきたというのも一つの例として挙げられますか。
  63. 澄田智

    澄田参考人 まず、私どもの方のことから申し上げますが、私どもの方におきましては昨年の一月以来、先月の公定歩合の引き下げを含めまして五回にわたって公定歩合を引き下げました。金利水準としては既に過去最低になっておったわけでありますが、それをさらに引き下げを行った次第でございます。したがいまして、これは、金利コストをそれだけ下げるという意味合いにおいて景気に対する対策としてそれなりの効果が十分あるものと思っておるわけであります。  なお、政府においても、財政再建という命題を抱えながらいろいろと工夫を今までも凝らしておられますし、また、これからもいろいろと総合対策等で考慮をされるということでありますので、対策につきましてはそれなりに努力はしている、こういうふうに考えておる次第でございます。
  64. 浜田幸一

    浜田(幸)委員 例えば、私がお伺いしたいのは、約束をしたことを果たさない国に対する可罰性が含まれているのではないかということなんです。例えば、輸出は腹いっぱいします、輸入は制限しながら輸入します、そういう貿易上のバランスシートといいますか、そういうものがきちっとな?ていないことに対する一つの可罰性が含まれていますかということをお伺いします。
  65. 澄田智

    澄田参考人 変動相場でございますので、市場がいろいろと動くわけでございます。そうしてその中には円の先高観というようなものが働き、そうしてしばらく為替相場が小動きでもって落ちついていた時期も続きました。そういう間に為替市場といたしましては次の材料を探すというようなことで、ちょっとした発言とかあるいはニュースとか、あるいは殊に先週来の動きの中には半導体をめぐる貿易摩擦の問題、そういった動きに対してこれを材料として動く、こういうような要素があることはこれは否定できない、かように思います。
  66. 浜田幸一

    浜田(幸)委員 最後にもう一点だけお伺いします。  それでは、余り心配しなくても大丈夫ですか。
  67. 澄田智

    澄田参考人 私、先ほど、市場に円高の行き過ぎに対する警戒感があるので、どこまでも円高方向で不安定になっていくというものではないと期待をしているということを申しましたが、それは、決して心配しないでいいという問題ではございません。今後とも為替市場の状況には十分に注意を払い、そうして各国と緊密に協力をとりながら協調をして対応していく、そうしなければならない、一層そういうふうに考えておる次第でございます。
  68. 浜田幸一

    浜田(幸)委員 お忙しいところをおいでいただいて感謝します。お引き取りください。ありがとうございました。  それでは続けて大蔵大臣、今の問題について詰めさせていただきますが、結局、円高が急激に、例えば百四十円なりに定着した場合に、何を考えなければならないかというと、国内における雇用問題を基調とした企業の存立ですね。企業は企業で、自由経済社会ですから競争しながら生存していかなければいけないのですけれども、当然これが原理になりますから。ただし、その場合でも、政治が、政府が、国家予算が手を差し伸べることによって一時的な雇用不安、そういうものから救出することによって、長期的な生存への道を与えなければならないのが政府のやるべき仕事ですね。その場合に、予算が今のままでは、これはもとに戻って申しわけないのですけれども、暫定暫定というようなことが続くような場合では救いかないと思いますが、その点どうですか。
  69. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 まことに残念なことでございますけれども、おっしゃることに御同意をせざるを得ません。現実にそういう事態がありますほかに、国民各位は本予算の実態を見ておられますから、それがいつまでたっても実行されないことから来る心理的な失望感、そういうことがそれに加わってまいると思います。
  70. 浜田幸一

    浜田(幸)委員 この問題については、国民の方方が一番心配している問題は、百四十円台になったとき具体的にどのような悪影響が出て――これではだめだだめだということが盛んに言われているものですから、その点について百四十円台に定着するようなことがあった場合には、相場は変動制であることもよくわかっておりますが、総理、やはり愛情ある政策を厳然として行っていただくようにこの際御要請を申し上げておきますが、いかがでしょうか。
  71. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 全く同感でございます。まず第一に、何としても予算を早く成立さしていただきまして、お金が使えるようにさしていただきたい。しかも、ある程度中長期的な政策を展開できるようにする。内需の振興といってもやはり時間もかかる問題で、早く手を打つ必要があります。それには早くお金を使わしていただかなければできません。そういう意味におきまして、ただいまの暫定及び本予算について一日も早くこれを成立さしていただくように我々も努力いたしますが、御協力をお願いいたしたいと思う次第です。
  72. 浜田幸一

    浜田(幸)委員 そこで、もとに戻らしていただきます。大変恐縮です。  総理、もう一点だけお伺いしたいのですが、三百万、四百万、五百万、六百万ですね、この辺の人たちに、あなたが決断をしてもう一歩愛情ある減税政策を行う意思はありますか。念のために聞いておきます。
  73. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 先ほど来申し上げましたように、我々はこの税制改革は党としてもベストの案である、そう思って出しておるわけでございます。しかし、先ほど申し上げましたように、一般論といたしまして、大蔵委員会審議において十分御議論も承り、そしてまた建設的な御議論あるいはもっともな御議論等については自民党としても耳を傾ける、そういう立場で余裕を持っていきたいと申し上げました。これはどの委員会においても我々がとっておる態度でございます。  今我々は予算を提出している最中で、その予算の中にはこの税制が入っておるわけでございますから、これを修正するとか撤回するなんてことは絶対言えないことです。そんなことを一言でも言ったら、この予算はもう審議しないと言われてしまうわけであります。そういうような時期でもあり、我々としては先ほど来申し上げているように、これはベストな案であるとして提出しているわけでありますから、これを速やかに成立さしていただいて、そして大蔵委員会審議においてよく与野党で協議し、審議を尽くしていただきたい。我々は、建設的な、我々がもっともであると思う考えについては十分耳を傾ける用意があるということを申し上げる次第なのであります。
  74. 浜田幸一

    浜田(幸)委員 私は、ここで大蔵大臣にもう一点どうしても聞いておかなければならないことがあります。  法人税の減税をされることになっておりますが、法人税の減税をする目的をわかりやすく、明確に、簡単に答えてください。
  75. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 法人税も、個人所得税と同じようにシャウプ税制においてそのもとをつくられて今日に及んだものでございますから、我が国の国情が過去四十年近くの間に変わりましただけに、現在の法人税が非常に現状に合わない状況になっておるということは御想像にかたくないことであると思います。  現実には我が国の法人税の負担がかなり重い、非常に重いかもしれません。その結果といたしまして、今日多国籍企業の時代になりますと、本社をどこに置くことも各国の法人が自由でございますために、我が国からつまり法人が外へ出ていく、安い税を求めて出ていくということは容易に起こり得ることでございます。また、我が国の法人が国際競争力においてそういう重荷をしょうということもございまして、かたがた両方の理由から法人税の減税を必要だと考えております。
  76. 浜田幸一

    浜田(幸)委員 ということは、御答弁の中で想像できることは、今の法人税のままでは企業が外国に逃げていってしまうおそれがあるということが一つ、もう一つは、そのことによって働く人々の場所が少なくなる危険性がある、それから勤労意欲というものを失う可能性がある、この三つと考えてよろしいですか。
  77. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 まさに企業だけの問題ではありませんで、それが我が国の雇用並びに産業の構造に大きな影響を及ぼす、そういうことはそのとおりでございます。
  78. 浜田幸一

    浜田(幸)委員 その法人税の減税は、今をして行わなければこれは機会を失うというふうに考えてよろしいですか。
  79. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これは今回の税制改正全般について申し上げられることでございますが、第一に、四十年近く一つの建前をとっておったことが現実に合わなくなったという事態がございます。なぜ今かと申しますと、二十一世紀に向かいますと我が国の人口がかなり急速に老齢化をいたします。このことは我が国の経済力に相当の影響があるということを今から予見しておかなければなりません。したがいまして、ただいまのうちにそういう改正をやっておく必要があると思っております。
  80. 浜田幸一

    浜田(幸)委員 今まさに大切な問題が指摘されましたが、大蔵大臣が言うと、やはり私たちがなかなか理解するのが難しい言葉で出てくるのですけれども、今言われたことはこういうことですか。  ここにある図面、昭和六十年にはお年寄りを五・九人対一、すなわち六人で一人のお年寄りを面倒見ている、守ることができる。しかし、昭和七十五年になると四人で一人のお年寄りを面倒見なければならなくなる。そして昭和九十五年になると二人で一人のお年寄りを守らなければならなくなる。そういう時代のために、やはりこの問題については今のうちにやっておかなければならないということと考えてよろしいですか。
  81. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 まさにそのとおりでございます。ただいまお示しになりました図表は、社会全体に非常に大きな影響が二〇〇〇年あるいは二〇二〇年に起こるということでございますが、財政だけ、税制だけについて考えましても、二・三人の若い人が六十五歳以上の一人を背負うとなりますと、その二・三人の負担というものは大変なことになります。これを所得税だけで負担せよといっても恐らくできることでありません。私どもがこのたびいわゆる売上税を御提案いたしましたのも、したがって、今のうちから年寄りもそういう費用を負担しておく制度をつくっておこう、そういたしませんと将来二・三人の若い人は年寄りを背負うことができない、今から年寄りもその費用を背負うことをやはり制度としてつくっておかなければならない、こういうことでございます。
  82. 浜田幸一

    浜田(幸)委員 そこで私は総理大臣にお伺いしたいのですが、新聞で発表になっている例えば野党修正案があります。あと時間が七、八分しかないからそこで詰めなければいけないのですけれども、野党案というものをごらんになられてどう思いますか、野党の案に対して。このところははっきり答えてください。
  83. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 野党の皆さんの修正案は今各党のものがあるだけで、共同統一修正案というのはまだ公表されていない。なるたけ早く出していただきたいと思いますが、新聞で報ぜられたその統一の共同案と称せられる、話のまとまったと言われておる中身を見ますと、まず第一に減税の額が我々の半分であります。我々は四兆五千億円ですが二兆七千億、減税の額が半分である。  第二番目に、今まで野党が言われておった富裕税とかグリーンカードとか、そういうものとの関連がどうなるのか、その辺が明らかでありません。グリーンカードは残すような感じがしております。しかし、あれで五千億円ぐらいの、いわゆる限度額を強化することによって収入を得ようとされておりますが、五千億円という大金を得るためには、グリーンカードを実行して名寄せをやらなければ、これは見つからないわけなのであります。そうなると、結局国民背番号制になるんじゃないか。  また、いわゆるキャピタルゲインと称して株式の譲渡益をもっと強く捕捉しようとされておるのですが、これも、もうけるときもあれば損するときもある。店頭で売買する場合もある。そういうものを把握しようとすれば、これもアメリカがやっているように国民総背番号制で中身をもっと厳重に調べ上げなければ、もうかった、損したというのはわかりません。結局国民背番号制に移行せざるを得ぬじゃないか。  それから、二兆七千億円を子細に調べてみますと、財源が二兆五千億円しか載ってない。二千億円足りないです、あれを読んでみますと。あの二千億円というのは計算違いかあるいはつくり方が疎漏であったのかよくわかりませんが、それが足りません。  それから、財源の中に例えば株式会社の保留金を転用すると言うんですが、あれは一回しか使えないわけです。恒久的な毎年毎年続く減税の額としては、二年目からは金が足りなくなる、そういう内容等々であります。  あるいは、見逃すべからざるものは、例えば公的年金、老人の公的年金につきまして特別控除額を政府案は二十五万円から五十万円に上げているんです。このことが入ってませんですね。  ですから、子細に勉強してみると、なるほどまだお出しにならないのはよくわかる、それだけまだハチの巣みたいなものがかなりある、そういうように感ぜざるを得ない。しかし、国会というのは両方が対案を出し合って論戦して国民に聞いていただく場所ですから、できるだけ早く正式の案を出していただいて、大蔵委員会で両党でいろいろ論議し合う、また、国民の前に見せていただいて論議の材料を出していただくということを期待しておる次第でございます。
  84. 浜田幸一

    浜田(幸)委員 私は、野党人たちの総合提案、四野党提案と思われるようなものを新聞で読んだんですけれども、私が新聞で読んだ以外に出してもらえないから新聞の判断でやるしかないんですけれども、大蔵大臣、実際問題として今の野党共同提案とされるものは全然数字が合わないし、間違いが多過ぎるんじゃないですか。その点いかがですか。
  85. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 御指摘のように、野党の共同提案として正式に発表されておりませんので、それがあるもののように申しますことは天下の公党に対して礼を失するおそれがございます。なお発表され新聞に伝えられましたところでも第二弾の方策もまだ考えておられるというようなことも伝えられておりますので、それも含めまして、そういう前提のもとに、報道されましたところで私の考えを申し上げさせていただきたいと思います。  それは、やはり一つは、有価証券についてのキャピタルゲインを非常に大きな金額、歳入を見積っておられます。六千億円でございますが、これは現実に、今まで一度やりました経験からいいましても到底簡単には行い得ないという、徐々にやらなければならないことはそのとおりでございますけれども、よほどこの納税者をきちんと把握をいたさなければできないことでありますし、またキャピタルロスの扱い方についても問題がございます。  それからもう一つ、非課税貯蓄の限度管理の問題でございますが、これも何か一挙に五千億円ぐらいの収入があるというふうに述べられております。つまり不正な人に三五%の課税をすればいいということでございますが、それは簡単に行えるものとも思えません。背番号をやりましても簡単に行えるものとは思えませんし、かたがたこの制度は、十年ぐらいの貯蓄がございますから、一度に全部歳入化することはできませんで、かなり長い時間をかけなければならないという問題がございます。  そのほかの点で申しますと、土地譲渡の重課あるいは登録免許税の重課、法人の受取配当金の益金不算入、それから支払い配当分を軽課する、これらの点は方向としては政府としても考えておることでございますので、ある程度これは激変緩和という程度の問題になろうかと存じます。  総じて申しまして、今申し上げました二つの点は、これはどうしてもかなり大きな歳入のいわば過大見積もりかと思われますし、そのほかに行財政改革の徹底により三千億円の節約というものが報道されておりまして、これは中身がございませんのでやや不安な思いを持って報道を読みましたが、総じて申しますと、先ほど総理大臣が言われましたように、総体の直接税関係減税額は政府案の半分にすぎないわけでございますが、それでもなおこれだけの個々のいわば穴埋めをもってしては到底必要な歳入を確保し得ないということがこの報道から読み取れます。したがいまして、これだけ大きな直接税の減税を考えるとすれば、穴埋めでないやはり根本的な一つの別の新税を考えなければ、これだけの大きな直接税減税はできないということをこの報道は示しておるように思われます。
  86. 浜田幸一

    浜田(幸)委員 私が今発言している間に社会党の代表の方が、ハマコーには良識がない、大蔵大臣には良識がある、やっぱり総理大臣候補だなということが言われておりますが、私は、四野党が報道している中で許せないことがある。  それは今、たまたま大蔵大臣が言われました非課税の問題に対して、三十兆円の不正利用に対して金利を五%かけてそれに三五%の課税をするという。ところが、この年利五%という金利がどこにも見当たらないんですね。私が愚かなことだと言っているのは、私のことを良識がないと言うから、ここは触れないでやめようと思っていたんですけれども、余りにばかばかしい野党案ですから、言っておかなければいかぬのです。  それはどういうことかというと、金利五%に三五%の課税をする、そのことによって五千二百五十億円の税額見込みを取りたい。ところが、現行の金利は、銀行では三・三九%であり、郵便局は三・三九、そして住宅金融公庫ですら四・七%だ。だから、一たん金は、その金を野党に預けて、それから課税しなければ五%にはならないということになる。ですから、どっちが良識があるかないかはこの辺で明確にしておかなければならないことです。  ただし、質問の時間がやってまいりましたのでこれを終わらなければなりませんが、総理、あなたは十月に好むと好まざるとにかかわらず総理をやめるんです。そうだとすれば、大蔵大臣そして他の閣僚の協力を得て、やはり国民が安心して暮らすことができるような長期的な政治決定をあなたがしなければなりません。ですから、悪かったことは率直に認める、そして、ただしこれだけはどうしても天下万民のためにやっておかなければならないという自信を持って、各閣僚の責任においてこの時局を乗り切っていただくよう御要請を申し上げ、私の質問を終わります。
  87. 砂田重民

    砂田委員長 これにて浜田君の質疑は終了いたしました。  次に、川崎寛治君。
  88. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 アメリカ政府が半導体協定に違反だ、こういうことを理由にして、我が国に対して一〇〇%の高率関税をかけて報復措置に出てまいりました。これは極めて遺憾なことであります。ちょうどこれは中曽根首相の訪米の日程が決まったところでこの報復関税措置の発表があったわけでありまして、その前には、きょう、まあ百四十五円の寄りつきでございますけれども、為替についてのベーカー発言もございました。大変そういうものが合わさって出てきているという感じがいたすわけであります。このことは、ただ単に半導体だけではなくて、日本の電気通信産業に大変大きな影響があります。協定を結びますと同時に、労働者もこれに協力をしてきておったわけであります。ちょうどこれは、下手をいたしますと、あのニクソンの時代の大豆の輸出禁止という問題と似たような方向にも行きかねない問題だと思います。  そこで通産大臣に、政府の基本的な姿勢というものを、態度というものを伺いたいと思います。
  89. 田村元

    田村国務大臣 半導体問題でああいうことになりましたことはまことに遺憾千万であります。我我としましては、早速きょうにでも緊急協議を申し入れまして、日程の段取りをして、そして、本来なら私が訪米すべきでありましょうけれども、国会関係もございましょうから、とりあえず審議官、つまりバイスミニスターレベルで話し合いをしたいというふうに考えております。
  90. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 来月の末に総理が訪米をされる、こういうことでございますが、総合経済対策も今はたはたと党の方で、自民党の方に検討願っておるようでございますが、こうした半導体の問題も、報復措置の問題も出ておりますので、そうなりますと、よほど総理としては腹を据えて行かざるを得ないし、これまでの総理の訪米によります日米首脳会談では、結果は悪い結果が大変余計今まで出てきておるわけです。その点ではアメリカの方に追随をするということであってはならない、こう思います。そこで、総理の基本的な姿勢というものについて伺いたいと思います。
  91. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 今回の訪米は、レーガン大統領から正式の御招待がありまして、私は何回もアメリカに今まで行っておりますが、みんなこれはいわゆるワーキングビジットと言われるもので、正式招待ではないわけです。レーガン大統領は、日本は正式に招待をして日本にもおいでになり、サミットでもおいでになって公式のいろいろな接待を受けておられる、日本総理大臣に対してまだそういう公式の正式の招待をしてないので、一回ぜひしたい、そういうお話がございまして、これはそういう礼儀の上からも受けた方がいい、こういうことでお受けすることになったわけです。  しかし、今非常に日米間、国際経済情勢等は重大でございますから、そういう諸般の問題について隔意なき懇談、協議をして、そして世界的な平和、軍縮、それから世界経済の問題、日米間の懸案や問題の解決、こういう問題に体当たりでやってこよう。今行くのはどうかという議論も随分あります。ありますけれども、この一番厳しい、一番辛いときにあえて行って、そして日本側の真意を説明し、我々の考えも説明し、向こうの考えも聞き、そして共同歩調でこれらの問題に対処していくという、そういう日米間の積極的な協力関係を打ち立てていくことこそ大事である、そう考えまして、あえて行くことにしたわけでございます。
  92. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 日銀総裁、お忙しいでしょうから先にお尋ねしたいと思います。  一昨年の二月がドルの一番高い時期でございまして、ここから大変急速にいろいろと深刻な問題が出てまいりました。日本もアクションプログラムなりなんなりそれぞれ対応はいたしてまいったのでございますが、プラザ会議の後を振り返りますと、これは本当は全部細かに検証しなきゃいかぬのです。しかし、大変限られた時間でございますので後の総括に譲りますが、そういうプラザ会議以降を見ますと、竹下大蔵大臣も今はおられませんから、当時出られました澄田さんは、その後について責任者としてのいろいろお感じになることもあると思うのです。  中曽根首相、当時の竹下大蔵大臣、そして澄田さん、こぞって大変円高を歓迎しました。そのことは十分な円高政策というものを、つまりプラザ会議に臨むに当たって円高に切りかえたわけでありますから、そのときの通貨政策産業政策雇用政策について果たしてどうであったかということについては総括でまた改めてやりますけれども、そこからまいりますと、大変準備不足のまま入ったし、そして円高を歓迎したということが、後に中曽根首相がアメリカに行き、あるいは東京サミットを経てみましてもずっと円を急速に上げてきた、私はそういう感じがいたします。その点について、百四十五円というきょうの寄りつきなどを考えますときに、澄田総裁としてどういうふうにお感じになるのか。  それから、何遍もお尋ねしますと時間をとりますので重ねてお尋ねしますが、先ほども浜田委員の質問に対して、金利政策としてはもう精いっぱいだ、こう言われました。しかし、あのパリ会議の後、イギリスもフランスもドイツもそれぞれ金利を下げましたし、減税もやる、あるいはドイツは財政再建を延ばすということもやってきておるわけですね。そういたしますと、そういうときに、今の金融責任者としての澄田総裁のお考えを伺いたいと思います。
  93. 澄田智

    澄田参考人 お答えを申し上げます。  プラザ合意以降の円高の進展、ドル高の修正ということにつきましては、率直な感じを申し上げますと、それまでドルは確かに高過ぎました。その高過ぎた状態が数年にわたって続いていた、これはいわゆる経済のファンダメンタルズを外れてドルが高い状態であった、こういうふうに考えておりました。また、その点は私、間違ってはいなかった、こういうふうに思うわけでございます。  その後のドル高の修正、円高の進展につきましては、これは当時の合意で目標を定めたわけではございません。しかし、そのファンダメンタルズから見て高過ぎるドルの修正をするということでありましたので、それはやはり対外不均衡の是正、為替だけでは是正されるものではございませんが、しかし是正に資するという点において、ドル高の是正についてはこれに賛成と申しますか、これを進める方向に動いたわけでございます。  そり結果として、その後、例えば石油の価格が下がるというようなほかの条件も加わったことも事実でございますが、何といってもこのように円高が進んだ背景は、アメリカの赤字にしろ日本の黒字にしろ、対外不均衡がますます拡大をする、こういうようなことが市場にどうしても、先行きドルは安くて円は高い、こういうセンチメントを根強く持たせたということがあると思うわけでございます。貿易不均衡に伴う諸般の動きというようなものがやはりそういうドル高の修正を加速した、こういうことがあると思います。この点について、変動相場というものはどうしても資本の取引の占める割合が非常に大きいというようなこともありまして、為替相場が過度に振れやすい面のあることは事実でございます。そういうようなことと相まって、その後急速過ぎる円高というものをもたらした、こういうふうに考えておる次第でございます。  今後の金融政策の問題についてお尋ねでございますが、公定歩合は申すまでもなく、物価あるいは為替相場あるいは景気、内外の金融経済情勢等を総合判断して行うものでございます。しかし、現在マネーサプライは高目である。そうして、このところに来てさらに伸びを高めているということも事実でございますし、そうして土地あるいは株価あるいはまたゴルフの会員権というものに至るまで、既存のそういう資産に対するキャピタルゲインねらいの取引というようなものが非常に活発になって値上がりを来しているというような状態でございます。したがいまして、現在の金融緩和の状態というものについては、今後は従来にも増してその金融緩和の影響、これが将来のインフレの萌芽になるようなことが万が一にもあってはならないというようなことをやはり細心の注意を持って見守っていかなければならない段階に既になってきている、こういうふうに思っております。  今まで日本政策協調、内需の拡大を図り、そうして経済構造を調整し、対外不均衡を是正する、そういうことのために日本銀行といたしまして公定歩合の引き下げが必要である、有効である、こういうふうに考えてここまでやってきた次第でございますが、現時点におきましては、今後につきましては十分に慎重に考えていかなければならない、このように考えておる次第でございます。
  94. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 どうぞ、御苦労さまでした。  要するに、もう金融は目いっぱいですよね。そこで財政という問題が出ておるわけでして、自民党の三役さんも随分積極的な発言を合しておられるわけです。  公債依存度というのを国際的に見ますと、これは一々お尋ねをする方がいいのかもわかりませんが、アメリカが八七年で一七・一%、それからイギリスがこれは八五年でございますが三・六、それから西ドイツは八七年で八・五、フランスは一一・九、日本が八七年の予算で一九・四、こうなりますと、「増税なき財政再建」という、赤字公債発行ゼロということを至上命題としてそれで縛ってしまおうということが、今大変大きな問題にぶつかっておる。ですから、中曽根内閣の超緊縮予算というのが日本の輸出を大変大きくしましたし、アメリカの双子の赤字というものと結んでおるわけでありますから、このことは去年の予算委員会でも追及をしてお尋ねをしてきたところでございますけれども、そうなりますと、「増税なき財政再建」ということで国際公約を果たせない、つまり内需拡大を果たせないでおるというところに今日の日本の問題があると思うのです。それはアメリカ側からも繰り返し指摘されているし、今度もまたこういう形で突きつけられてきておる、こういうふうに思います。  総合経済対策というのを今自民党の三役の皆さんに御命令になったようでございますけれども、そういたしますと、この六十二年度の予算案については、予算審議の前から補正予算の議論も出てきておった。今また総合経済対策が必要だ、こう言っておる。そうすると、六十二年度の予算案はそうしたものを含んでいない。情勢を見ていなかった。  宮澤大蔵大臣は、予算編成の際に、一ドル百七十円程度で安定してくれたらなあ、こうつぶやいたわけですね、余りいいつぶやきではなかったわけだけれども。そして百五十円は警戒水準だ、こう言われた。しかし、それをも越してきておる。そうなりますと、やはり日本の国際的な、つまり債権大国としての日本の立場というのは、国際的な公債依存度の問題から見ましても、赤字公債六十五年度発行ゼロということを至上命題にして補助金を切ったり超緊縮予算をやったり公共事業費マイナスで来たりということが今日のこういう事態を招いておる、こう思います。ですから私は、当然ここで財政方針の転換を図らなければならないところに来ておる、こう思います。総理の見解を伺いたいと思います。
  95. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 今の御審議願っておりまする予算につきましては、十二月の党と合意をした予算編成方針及び経済見通しに基づいて編成をされ、御審議を願っておるわけであります。  ことしの下半期にかけての経済の見通し等につきましては、経済は生きておるものでありますから、一応の見通しを立ててやっておりますが、その生きておる経済の変動に応じて適時適切な緊急政策を打って出るということは毎年やっておることで、昨年も三兆六千億円の事業規模の補正予算を組んだところでございます。恐らくことしも下半期の仕事を考えてみまうと、そういう必要性が出てくるであろうと予想されております。  そういう意味におきまして、この予算成立いたしましたら、可及的速やかにそういう問題も含めた総合経済対策というものを行って打って出よう。臨調の答申の中におきましても臨時緊急の措置というものは認められておるわけでございまして、その線でやってきたわけでございます。しかし、全般的に見まして、今の世界情勢及び国内の情勢、円高、貿易摩擦、そういうような問題も考えまして、とるべきいろいろな経済政策について党で研究していただこう、そういう意味で予算成立後の処置についていろいろ御検討を願っておる、そういうことでございます。
  96. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 予算成立後の検討を願っておるということは、つまり要するに、ことしの情勢分析が不十分であった、だからこの予算成立した後、総合経済対策をと。そういたしますと、いろいろ動いておるんだ、生き物だ、こう言っておられますけれども、我々は、三・五%なんて無理ですよ、二%台ですよ、こういう議論もこれまでしてきているわけです。しかし、「増税なき財政再建」に縛られてできなかった。大蔵大臣は、積極財政転換せにゃいかぬということを去年からやってきて、去年の補正予算ではいささかの苦労もされた。しかし、「増税なき財政再建」という枠に縛られてやりましたから、見通しが狂っちゃう。だから、予算成立をしたら総合経済対策ということは、予算を編成したのは十二月でございますから、今三月ですから、わずかこの二カ月、三カ月の間でこの一年間の見通しは間違っておったんだ、狂っておったんだということをお認めになるということですね。
  97. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 やはりその年度の財政経済施策は、基本に本予算がございませんとそれから先への展開ができないものでございまして、殊に今回の場合は、昨年の秋に補正予算を組ましていただきまして、その関連の公共事業などがおかげさまでかなり後へ残っておりますので、それをまず本予算で受けてと、こういう順序になりませんと、私どもは補正という言葉を決して口にいたしてはならない立場でございます。本予算というものがやはり基本になってその年の経済政策が展開をいたしまして、その上でどういうふうにするかという問題があるというふうに考えるわけであります。
  98. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 これを議論しておると防衛費と売上税に入れませんから次に譲りますが、きょう労働省発表の賃金の状況を見ますと、大変深刻になってきておりますね。二%台に終わるのじゃないか、こういうことで、GNPも低い、賃金も低い、こうなりますと、今春闘の時期でございますけれども、これはやはり賃金を上げられるところは上げる、これをやらなきゃ、GNPの六割は個人消費でございますから、その大きな柱が賃金であるわけですけれども、この点について労働大臣並びに経済企画庁長官の見解を伺いたいと思います。
  99. 平井卓志

    ○平井国務大臣 御指摘の点でございますが、経済審議会のリボルビング報告、また同審議会の経済構造調整特別部会中間報告等によりまして、経済成長成果の賃金、労働時間短縮への適切な配分が必要ということにつきましては、これはもうまさに適切な指摘であると認識いたしております。  賃上げにつきましては、いつも申し上げておるわけでございますが、基本的に労使の自主的決定が原則ではございますが、私としましては、労使がこのような指摘を十分に踏まえまして国民経済的観点から円満な解決を図るということ、同時に産業、企業の実力に見合った適切な賃金決定を期待いたしたい、かように考えております。
  100. 近藤鉄雄

    ○近藤国務大臣 昨年の経済は、円高によって一部相当影響を受けた企業もございますが、しかし反面、円高その他によって大変採算性の高まった企業もございます。したがいまして、円高で影響を受けたセクターの所得の減が円高その他の要素で所得増のセクターの所得と相殺いたしまして、消費の伸びは私ども当初見込んだと同じ程度実現したわけでございます。  したがいまして、今年度におきましても円高の影響、円高のプラスとマイナスの両方の影響がございますから、深刻な企業や業種におきましてはまさに雇用確保のため真剣な努力をしていただく、そのためには賃金については我慢していただくような面もあると思いますけれども、しかし好況企業、好況セクターにおいてはそれ相応の所得増、ベースアップをお考えいただくことが、日本経済全体として消費を中心として安定成長するために必要なことではないか。しかし、賃金の問題につきましては、それぞれ個別企業の労使の間で十分に慎重に御決定いただくことであると思います。
  101. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 では、防衛問題に入りますが、中期防ですね。中期防が決定されましたのが六十年九月ですが、当時ドルは一ドルが二百三十七円で計算しておりますね。そうすると、きょうが百四十五円。そういたしますと、中期防が決定されたときの二百三十七円で中期防をドル換算をいたしますと、七百七十六億ドル。ところが百四十五円で換算をいたしますと、千二百六十九億ドルなんですね。大変大きいのです。そしてこれをことしの、六十二年度の防衛予算三兆五千百七十億円を一ドル百四十五円でまいりますと、二百四十億ドルを超すわけです。二百四十億ドルを超すのです。そうしますと、二百四十億ドルと、二百億ドルを超しますのは、イギリスの戦略研究所の「ミリタリー・バランス」で見ますと、これはもう西側ではアメリカ、イギリス、日本と、こうなるのです。ですからドイツ、フランスを超すわけなんです。そういう軍事大国になっておるわけですかうね。ですから、この円高で来ております今日の状況を考えますと、日本の防衛力増強の姿勢というのは世界の国々が大変注目しておるし、なかんずく日本に近接をいたしております南北の朝鮮なり中国なりソビエトなりというところが最も関心を持つし、かつて侵略されたアジアの国々も非常に大きな関心を持っておるわけなんです。  そういたしますと、大変大きな、世界で西側で三番目の規模の軍事予算になっておる、当年度をとってみますと。その中で兵器の価格。兵器の価格は当然、円高になりますから安くなっておりますね。兵器の価格は、P3CやあるいはF15、これをとってみましても、これは一つ一つ防衛庁に聞いておったら時間を食いますから私あれしますが、例えばF4をF15に切りかえましたね。F4は五十二年度価格で三十七億七千万円」ところがこのF15は五十八年の一番高いときが百十四億。一機ですね。六十二年度の、ことしのやつは何ぼですか。
  102. 鎌田吉郎

    ○鎌田政府委員 お答え申し上げます。  来年度予算案でお願いいたしておりますF15の価格でございますが、FAC価格、これは初度部品を含まない価格でございますが、これで八十一億ということになっております。
  103. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 下がっているのです。ばあっと下がっている。つまり百十四億しておったやつが、大蔵大臣、八十一億に下がっておるのです。  それからP2J、これをP3Cに切りかえますね。そうすると、P3Cは五十八年が百十二億ですが、ことしは幾らですか。
  104. 鎌田吉郎

    ○鎌田政府委員 六十二年度予算におけるP3Cの価格でございますが、一機約八十六億円ということになっております。
  105. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 総理大蔵大臣、聞いてくださいね。つまりF15も百十四億が八十一億に下がっておるのです。それからP3C、これはもうヨーロッパでは日本に勝つところはないのです。日本が一番、サウジと一緒だ。そうしますと、百十二億しておったP3Cが八十六億なんです。これは国民の皆さんは、超緊縮予算を組んでおる、そういうときにこういう買い物計画というのが果たして妥当だろうか。しかも円高不況で釜石や室蘭や、どんどん日本産業を支えてきた鉄がつまり撤退しよるわけです。そういうときにこういう買い物をしなければならぬというのはなぜなのか。総理はこの点についてどうお考えになりますか。     〔委員長退席、今井委員長代理着席〕
  106. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 最小限度の防衛というのは経済状況のいかんにかかわらずやはり必要であるというふうに私どもは考えておりまして、円高によりましていわゆるメリットが出てまいりますことは事実でございますから、六十二年度の防衛庁関係予算編成でもその点は財政当局としてはかなり実は、両省庁でメリットに合意をいたしまして、したがって、伸びとしては実はかなり長い過去に十、ひょっとしたら二十年余りかと思いますが、何年ぶりがな――五・二%というのは二十七年ぶりだそうでございますが、小さい伸びにとどめておりまして、こういうメリットが続きますと、今後ともそういうことは予算編成のときに十分考慮してまいりますが、しかし、そうかと申しまして、やはり必要最小限度のものはどうしても計上しなければならないと思っております。
  107. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 それは数の問題ですね。そうすると、価格の問題、金額の問題、予算の問題、そこは今の、あなたは大変苦労されたからつらい答弁だろうと思いますけれども、しかしこれだけ価格が下がっているのですから、そして機数をそれでいくならば、うんと防衛予算は下がっていいはずなんですね。百三十四億円はちょっとだけだ〇・〇〇四%一%枠を超した、これはちょっとだけだというのが総理の当時の発言だというふうに新聞で拝見しました。私は、ちょっとだけの問題ではない、こう思うのです。     〔今井委員長代理退席、委員長着席〕 百三十四億円といいますと、P3Cが八十六億ですから、八十六億に戦車何台か、こういうことになるわけでございますけれども、その〇・〇〇四を超した、百三十四億円超したということの重みは、私は、飛行機の一機や二機の問題ではない、こう思うのです。  この決定をしましたときに、それぞれいろいろなコメントが各国でやられておりますね。世界の世論をずっと見てみますと、ニューヨーク・タイムズなどは「日本防衛予算、象徴的一%枠を超える」こういうことを言っておるわけであります。ワシントン・ポストも「日本の防衛費、制限枠はずれる」イギリスのフィナンシャル・タイムズは「日本は錘りを噛切った」こういうふうに言っておりますね。それからドイツでは「ハードルを越えた日本」つまり、あなたがちょっとだけと言うその百三十四億円について「ハードルを越えた日本」こう言っておりますね。当然ソビエトは「危険な政治的一歩」こういうことで厳しく批判をしておりますし、一番大事なのは、私は、中国、南北朝鮮だ、こう思います、一番接触しているのですからね。  そうしますと、中国は竹下氏が行かれましたときに、鄧小平氏が厳しくこの点について指摘をされたことはもう新聞でも報道されたとおりです。人民日報は「十年来遵守してきた「一%枠」をいったん越えてしまえば、アセアンなどのアジア諸国に不安を与えることになろう。」こういう批判をしておりますし、また、「日本防衛予算限度突破」ということで工人日報も厳しい批判をしております。  韓国は、藤尾発言その他いろいろございました。総理の知的水準の発言もございました。そういう中で今、「日本、防衛費「GNP一%」を撤廃-軍事大国志向-韓国・中国等アジアの隣接国憂慮」こういうことで韓国側は、「「平和国家」としての日本の諸原則の一つが、変質するという意味を持つことになり、日本の軍事大国化と関連して、大いに注目される。」こういうぐあいに東亜日報は指摘をしておるわけであります。それから、さらに朝鮮日報は「日本の軍事力突出は不安である」「偏狭な軍国主義に悪用され易い日本の、度を過した軍備拡張だけは、米国が余りにも煽りたてることをしないよう望む。」こういうふうに米国にも厳しい要求をしておるわけでありますが、朝鮮民主主義人民共和国、北朝鮮の方は、当然、軍国化に拍車をかけている、こういうふうに言っております。  そういたしますと、私は、やはりこの一%枠を突破したということは非常に深刻な問題だと思う。しかも、昨年の同日選挙では、自由民主党さんの安全保障政策の中には、一%枠撤廃という方針はないのですね。あなた自身も、一%枠を守りたい、こういうことを演説をしておられるわけです。そういたしますと、同日選挙が終わって、そして、三百議席をとった、だから突破せいと、これは民主主義に反する、私はこう思います。総理の御見解を伺います。
  108. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 一%を少し出ましたが、このことと三百議席獲得とはまるきり関係のないことでありまして、防衛につきましては、防衛計画大綱水準達成を目途に、今まで歴代内閣営々と努力してきたわけでございます。  今回は一%を多少出ることになりましたが、今まで政府が持ってまいりました防衛に関する節度のある保障、あるいは国会中心にする文民統制あるいは三木内閣の五十一年の閣議決定の精神の尊重、そういうような点については前とまるきり変わってはおらないのでありまして、今後も引き続き節度のあるやり方で防衛力の整備を行おうとしておるものであります。  詳細については防衛庁長官から御答弁申し上げます。
  109. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 我が国の防衛費が先進諸国の中で非常に上位になった、大変なものじゃないかというお話がございました。円が非常に高くなりまして、それで換算すると確かに水準がぐっと上がるというのは事実であります。ただ、三位であるかどうか、これは私承知しておりません。もし詳しいことでありますれば、政府委員から後ほどお伝えをいたしたいと思います。  ただ同時に、防衛力というのはストックといいますか、今まで長年軍事力を増強してくる、その累積というものも考えなければならぬ。そういう観点からいたしますと、日本は決して大きなストックを持っているというものじゃないのです。この点をひとつお考えをいただきたい。先ほど、円高でドルが非常に安くなったから、装備品とか兵器を買う場合に安くなるじゃないかというお話でございます。これはそのとおりでございますが、中期防衛力の整備計画というのは、いわゆる六十年価格で十八兆四千億、これは実質価格なんです。ですから、革年度におきます防衛費というのは、いわゆるベースアップがあったりあるいは物価が高くなったりあるいは物価が安くなったり、油が安くなったり、そういうものを全部調整してやるのでございまして、あなたのお話の中で、何かそのために中期防衛力整術計画そのものの妥当性がないように考えられますと、これは誤解でございますので、改めていただきたい。  それからもう一つは、諸外国の例をいろいう言われまして軍事大国になるのではないか、こういうことでございますけれども、私どもは諸外国に対しまして、軍事大国になるような意思はございませんし、また、そういう誤解を持っているところについては積極的に理解を求めなければならぬ。私は、基本的には日本の民主政治体制というものについてもっと諸外国に話をしなければならぬと思います。御案内のとおり、昔は天皇の軍隊だったのです。統帥権の名において軍事が政治を制したのです。  ところが、今はいわゆる議会制民主主義でございまして、総理大臣が陸海空三自衛隊の統括責任者なんです。最高責任者なんです。この総理大臣は、選挙で選ばれる国会議員でまた選ばれるわけでございまして、国民とか国会を無視して防衛力の増強などというものはできるものではない。そのほか日本は物理的にもいわゆる軍事大国にはなり得ない、そういうふうに私は信じております。そういった点を諸外国にもよく理解をしていただかなければならぬ。今御指摘のありました中国なんかもございますが、私も中国から招待されておりますが、その際には、昔の政治体制と今の政治体制とは違っておる、そういうことについて向こうの御理解をいただくつもりでございます。  一%を超えだというのは、これは総理がおっしゃったとおり、練度の向上とか隊員宿舎の問題とか、いろいろ正面と後方とのバランスをとる、それから労務費の問題等もございましてやむなく一%を超えた、そういうことでございますので、御理解を賜りたいと思います。
  110. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 防衛論争をやっていたらもう時間がなくなりますから、また総括に譲ります。  税制の問題に入りますけれども、薄く広く、そして平準化している、こういうことです。つまり平準化しているから薄く広く売上税を、こういうことですね。しかしそれは一九七五年、ちょうど高度成長のときは確かに接近してきたのです。しかしここを境にしましてぐっと開いてきているのです。だから、政府が平準化の数字に使いますジニ係数、これもぐっと開いてきているんですね。それから、賃金に大変格差が出てきている。それから、大失業時代に入っている。製造業と非製造業の状態というのはもう明暗がはっきり出てきている。そういう状況の中で、平準化というのが今崩れてきているわけです。そこにこの逆進性の売上税を入れるということは私は大変問題だし、このことはヨーロッパにおいても見られるとおりでございますが、これから格差をつくっていく、こういうことになると思います。  それで、ジニ係数は一昨年の国民生活白書で取り上げられておりましたが、私さらに経企庁で最も新しいところまで計算してもらいました。そうしましたら、昭和四十五年が全世帯で見ますと〇・二六六九、一番小さいときです。その前は、高度成長の前はうんと開いているんですよ。それがずっと来ます。それから今度は五十年、五十五年、五十八年とずっと開いてくるのです。それを申し上げてみますと、五十年には〇・二七四二、こう開いてくるわけです。五十八年には〇・二六五二、五十九年には〇・二七二五、そして六十年には〇・二七八五、こういうぐあいにジニ係数はずっと開いてきています。これは六十一年が出ればもっと開くと私は思いますね。  ですから、そういうときにこの売上税を入れるということの、つまり薄く広く、平準化をしておるからという基盤は明らかに崩れておる。政府税制調査会が絶えずこれを基盤にして間接税を入れなさい、こう言ってきておりましたが、そのことが崩れておる。そして格差は開きつつある。そのときに格差の拡大を促進する売上税を入れるということは間違いだ、私はこう思います。その点いかがですか。
  111. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 薄く広くというときに二つ条件がございまして、一つは所得水準がかなり高くなければいけないということ、もう一つはなるべく所得格差が小さい方がいいという、その二つとも我が国は国際的に見て充足をしておるというふうに考えておるわけです。今お尋ねになりました格差の問題ですが、第一分位と第五分位との差が大体一対二・九である。アメリカでは一対九だそうでございますから、一対二九というのは相対的にはやはり世界の中で一番日本の格差が少ない、国民も中流意識を持っておるということと思います。  ただ、川崎委員の言われましたのは、その格差の開きというものがここのところ何年がよくなっていない、少しずつまた開いていないかと言われますことは、ジニ係数でもあらわれておりますし、それは間違いでないと私は思うのです。ないと思いますが、それはやはり石油危機以後の日本経済がちょっと不調でございます。御承知のとおり、昨今はまた別の意味で大変不調でございますから、逐年もっともっと格差が縮まっていけばそれにこしたことはございませんけれども、残念ながらここのところちょっとその点は不調であるし、雇用の不安もある。それでも社会全体としてはやはり世界で一番格差の少ない国であることには違いない、こう思っておるわけでございます。
  112. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 そこで、アメリカの場合に、大型間接税を入れないということを検討の結果出しましたね。自民党の「Q&A」では逆進性は一部認めて、しかしどこういうことになっておるわけですね。だけれども、レーガンの税制改革の際には付加価値税の導入を見送った。それは、逆進性が大きいということを言っているわけですね。財務省のレポートではそこらまで細かに計算をしているわけです。細かに計算をしてこれだけの数値が出る、だから付加価値税を入れるのはいけないという結論を出しているわけです。財務省が、付加価値税による所得に対する負担割合が富裕層と貧困層との間でどれだけの格差を生ずるかということについて数字を出しているわけですが、それをどういうふうにごらんになりますか。
  113. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 その点、私存じませんので、政府委員からわかれば申し上げますが、アメリカが付加価値税を今回もしなかったということは、これは川崎委員承知のことでございますけれども、連邦政府以外のところに、主として州に間接税がございまして、それとの重複という問題がやはり一番大きな理由だったと思います。  もう一つ、しかし逆進性ということであれば、所得格差が一対九の社会と一対三の社会では、フラットの税金を導入しましたらそれは一対九の社会の方が逆進性が大きく作用いたします。その点も私はアメリカにとっての問題ではないか、我が国ではその問題が少ない、こう思うわけです。
  114. 水野勝

    ○水野政府委員 アメリカの財務省報告の分析におきましては、いろいろな計数は示されておるところでございますが、アメリカの財務省の考え方といたしましては、アメリカにおきまして現在の所得税負担なり全体としての税負担を階層別に見て、余りその階層別間の負担の変更は考えない。あくまでそれぞれの所得階層の中でゆがみ、ひずみがあって大きなループホールがある、そういったものを是正をする。全体としての税負担配分は変えない。こういう基本的な考え方でもって貫かれておるところでございますので、そうした御指摘のような分析も行われてはおりますけれども、それでもって全体としての税体系を変える、間接税を考えるということとは必ずしも結びついていない、あくまで現行税制の中での配分のゆがみを直したい、これが財務省の主たる考え方のようでございまして、分析もございますけれども、全体としての方向にはどうも余り響いてはいないような感じを持ってございます。
  115. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 今局長が言われるように、ループホールを、抜け穴をふさいで、そして法人税の増税をやり所得税の大幅な減税アメリカの場合はやっているわけです。そこで先ほど触れました付加価値税による所得に対する負担割合というものの、富裕層と貧困層とでは一対六の格差が生ずる、こういう分析をしておるわけです。ですから日本の場合に、アメリカの財務省の一私は何が言いたいかというと、アメリカはそこまで議論をするときに出しているということなんです。つまり財務省案が大統領の命令によりまして、一九八四年の十一月に出た。その場合にはそこまで分析をしたものを出しておる。そして国民の議論、また議会の議論にそれを提供しておる。ところが日本にはそれがないのです。そこが問題だと私は思います。ですから、この格差の問題と同時に、つまり税制改革の議論の仕方というものが大変問題だ、私はこう思います。  納税コストの問題について、ではもう一つお尋ねをしたいと思います。これは公明党の大久保さんへの大蔵省の回答でございますから、池田さんの方からあるいはされるのかもわかりませんが、ちょっと触れさせてもらいたい、こう思います。これは全く抽象的な答えを出しているだけです。納税コストがどうだという実態の分析は何もないわけです。  イギリスでなされました数字を見ますと、例えばイギリスの調査例というのが出ているわけですけれども、イギリスのバース大学のサンドフォード教授をチーフとするプロジェクトチームが、売上高別のコンプライアンス・コストを計算しているわけです。そうしますと、「売り上げに対するコストの平均は〇・九二%となっている。仮にこの割合がわが国でも同じとするなら、利益計上法人の営業収入に対する所得率三・七%は、納税協力コストの結果、二・八%以下に低下することになる。」こう分析してきているわけです。「赤字法人の場合は、赤字がもっと増えるわけである。」この「コンプライアンス・コストは売上高百万ポンド以上の企業では〇・〇四%であるのに対し、一万ポンド以下の企業では一・六四%となり、逆進的である」つまり、企業の場合も逆進的である。ECに加盟するためにイギリスが大変時間をかけて、しかもグリーンペーパーなり出して、国民の議論を受けてEC型付加価値税への方向をとったわけでありますけれども、つまりそれが民主主義だ、私はこう思うのです。だから大久保さんの納税コストの問題について、イギリスのこのような分析はどうなっているんですかということを私は伺いたいのです。具体的な数字で出してほしいのです。
  116. 水野勝

    ○水野政府委員 先般資料をもちまして申し上げておりますとおりでございまして、創設に伴い何らかの事務負担をお願いをするということは否定できないわけでございますが、仕組みそれ自体を思い切って簡単なものといたしておりますので、法人税の税務処理、そういったもの等から見ますと相当程度簡単なものではないかと思うわけでございます。  実務的な面からもろもろの検討はいたしてございますが、そういった面におきましても、ある業種は〇・数%、ある業種は〇・〇数%といったようなことでございまして、まさにそれぞれの業種業態によりまして違いますし、それからまたイニシアルコストありランニングコストありでございますので、統一的に計数としてお示しをいたしますことは、前回の御要求のときもいろいろ御説明申し上げまして御理解を賜ったところでございますが、いずれにいたしましても、それほど大きくはならないのではないかということを先般資料としてお示しした、そのあたりで御了解を願えれば幸いでございます。
  117. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 だから、わからぬのですよ。例えば百貨店協会はこういうことで出しておりますよ。しかし、あなた方がどういうシミュレーションをやったのか、あるいはどういう業界とそれぞれ業界別に具体的にやられたのか。業界別に、ここはこうだここはこうだと、やはりそういう、今流通業界の皆さん方は特にいろいろと価格の転嫁の問題もあり、大変反対をしておられるわけです。それなら、それを納得させるだけの数字をやはり出すべきだ、こう思うのですよ。こういうものを出してくださいよ。
  118. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これは前回も資料要求をいただきましたので、私どもとしては最善の努力をしてお答えをしようとしたわけでございますけれども、定数的なお答えをすることができませんでした。政府関係のものはお答えをしてございますけれども、それはやはり、個々の企業の取引形態、仕入れ経費の内容などが千差万別でございますので、正直申してそれを定量的に今把握をしてみろと仰せられましても、その推計の方法もちょっと見つからないというのが事実でございましたので、それで前回あのような、やや、定量的でない定性的なお答えを申し上げたのでございますが、これはまことに申しわけございませんけれども、具体的にどのくらいの企業側のコストになるかということは、実は算定が困難でございます。
  119. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 限られた時間ですから、だからここでストップということになればストップになるのかもわからぬですけれども、それじゃ暫定予算は通りませんから、私はそういうことはいたしません。これは課題として残します。  だから、非常に無理があるのですよ。公約違反云々は問いませんが、これは中央公論の四月号です。これに渡辺さん、今売上税の自民党の突撃隊長さんで、随分あちこち矢弾に当たりながら全国を駆け回っておりまして、なかなか頑張っているな、さすが中曽根派だなと思って見ておりますけれども、ただ私は、これは簡単に読み過ごせない問題があると思うのです。それは長谷川慶太郎さんと作家の邱永漢君、邱永漢君は高等学校の、クラスは違ったが私の同窓なんですけれども、こう言っているのですよ。  いいですか大蔵省。「大蔵省は七年間もずっと研究をしてきた。研究はしてきたが、認められるか認められないかわからないということなものですから、十二月の半ば頃までぜんぜん出さなかったわけですよ。それをワッと出したものですから、各役所は全部知らないし、国会議員はまったく知らないわけですよ。だから、これはやはり、かなり長いPR期間が本当は必要だったと私は思いますね。」彼は前の通産大臣だし元の大蔵大臣ですし、現在政府税制調査会の副会長です。ですから私は、この言っておることをいいかげんなものとしては扱えない、こう思います。彼自身が、わっと出した、十二月の中旬だ、こう言うわけですよ。  そうしますと、私はやはりこれは手続きが間違っておったのじゃないか。アメリカも三年かけた。これは議会の問題でありますけれども、例えば議会に来たときに議会の――大蔵省はまともな資料を持ってこなかったんです、私はたから国会図書館で調べましたけれどもね、非常にインチキだと思いました。議会での議論の仕方も、つまり一年半かけておりますが、例えば下院の場合は一千人公聴会に呼んでいるわけです。それはもう服飾関係からホテル、モーテルあるいは野球の大リーグあるいはUSスチールという大会社、小売商、ありとあらゆる階層の人一千人呼んで、その議事録は九千ページあるわけです。  上院は少しまた検討の仕方が違う。上院の場合ですと、数はちょっと限定されますけれども、やはり一千ページからの議事録があるわけです。それは制度論をやるわけですね。アメリカの会計事務所は二百人、三百人と大きいわけですから、そういう会計事務所であるとか、法律事務所であるとか、経済研究所であるとか、大学教授やら役者やらを呼んで制度論をやる。つまりそれだけの議論をして税制改正というのを国民のものとしてやっているわけです。  ヨーロッパの付加価値税というのは歴史がありますね。ドイツは一九一六年、フランスが一九一七年、全部第一次大戦です。イギリスは一九四〇年です。ヒトラーとの戦争のときですね。ですから、ここに来るまでにそういう長い長い時間をかけておるわけです、既に基礎として。アメリカの州税はこれは朝鮮戦争のときの戦争処理ですよね、そこで州税を入れている、付加価値税を入れているわけです。そういう歴史があるわけですよ。  EC諸国を見ますと、このEC諸国自体が導入開始が六八年でございますけれども、その前に五年間議論をしているわけです。五年間審議しているわけです。先ほど言いましたようにイギリスが九二年間、そしてこれは何遍も法律を出し、修正をし、四回目に通しているわけですね。イタリアは四年、ギリシャが六年、そしていずれの国も導入後不服審査、訴訟、脱税に関する訴追等の件数は所得税や法人税と並び大変いざこざが続いているわけです。  そういたしますと、総理が十二月、渡辺氏に言わすとぽっと出したことになりますけれども、そういうものをこの国会に出す。だから業界の意見なども、今党本部に政調会長を中心に各業界を呼んで修正の話をしておる、こういうことでございますけれども、私は民主的じゃない、こう思います。だから国会に出す前になぜ国民に議論をしてもらえるようなそういう手続をとらなかったのか。最高の責任者であります総理の見解を伺います。
  120. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 税制調査会におきまして約一年半にわたって御議論もいただき、最終の段階においてはいわゆる間接税の中にA、B、Cと三案を出してきたと思います。そして、それについて党におきましていろいろ議論をしました結果今のような案がいいということで落ちついて、政府はそれを受けて提出した、そういうことでございます。  確かに御指摘のように、ある意味におきましては国民の皆さんの御議論を承る時間が短かったと思います。その点、我々も反省しております。しかしこの際、今までの間におきましてもかなりいろいろな議論もわき起こっておりますし、国民の皆さんも長所弱所おのおの御認識もだんだんしつつあります。それで大蔵委員会におきまする審議の過程におきましてやはり時間をかけて、そうしてその間に公聴会をやるとか皆さんの御議論を拝聴するとか、そういう形で十分議を尽くしてまいりたい、そう考えておる次第でございます。
  121. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 金丸副総理、お尋ねをします。  副総理は、どうもこれじゃぐあいが悪い、何か検討せなければいかぬのじゃないかという修正発言というのがございました。大変物議を醸したようでございますけれども、金丸副総理のこの修正発言というものの真意を伺いたいと思います。
  122. 金丸信

    ○金丸国務大臣 私の真意は全然からくりもないし、ただこのような円高あるいは貿易摩擦あるいは失業あるいは景気浮揚しなくちゃならぬというような状況の中で、国会では全然審議が続けられていかない、こんなことは私も三十年国会に議席を置きましたがかつてないことだ、こういうような状況の中でうまい知恵はないか、こういう質問をしたところが、新聞記者はそれに対して思惑で修正という考えを持つ、あるいは凍結という考え方あるいは強行採決という考え方を持った人もあるようであります。真意は、私は国会のこのような状態を心配して申し上げた、こういうことであります。
  123. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 そしてそのときの政府・与党の役員会議では原案修正せず、こういう――違うのですか、後藤田官房長官違うのですか、頭を振っているようだが。
  124. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 その件につきましては、今副総理からお話をしましたように、率直に言いますと当日の朝でございました。早朝私のうちに電話がございまして、今のこの予算委員会状況、何か後藤田君いい知恵はないのか、こういうお話でございましたから、いい知恵があるんならこんなになるわけはない、そう簡単に知恵を出せと言われてもないが、しかし当然私も官房長官でございますからよくひとつ勉強はさしてもらいます、こういうお話を申し上げたことは事実でございますが、ちょうどその昼に副総理からさらに何かいい知恵はないのか、しかしこれは君、修正の話をしているんではないということだけは、これは大前提としてお話がございました。  そこでそうだなというようなお話で別れたのですが、これは私の推測です、金丸副総理の真意に対する。それは金丸さんはかねがね、幾ら選挙で三百四名になろうとならなかろうと、ともかく多数党が議席を多く占めたからといって何でもやっていいというわけでは後藤田君ないよ、やはり少数の意見というものも十分聞いて、お互いに与野党間で話し合いをして国会というものは円満に運営をしていくのがおれの政治哲学だ、こういう話も聞かされたわけでございます。  そこで今日の状況を見ると本当に心配だ。もちろん審議もない段階で修正なんということがあるわけはないが、しかし、何か後藤田君、君考えろよ、こういうお話が再度あったのが事実でございます。その後、党の幹部が集まりまして、さて何かいい知恵はないかというような話し合いをしたが、しかし、とかく世間で修正だというような論議が流れましたから、これはやはり大変なことである、何よりも肝心なことは、国会予算委員会なり大蔵委員会審議をしていただくように、することが大事だという結論になったのが今日までの偽らざる真相でございます。
  125. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 総理浜田委員に対する総理の御答弁を聞いておりますと、議会で議論をしてくれ、それから国民の皆さんの世論をと、こう言った。修正に関する発言であった、私はこういうふうに思うのです。いかがですか。
  126. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 予算を出しておる、この予算の中には税の関係も入っておるので、これを御審議願っておるときに修正の話というのは政府から出せっこない。先ほど申し上げたとおりです。しかし、議会というところは委員会中心にいろいろ与野党が議論をし、そして合意を形成してきておるところで、各委員会みんな同じようにやっておる。だから税の問題についても大蔵委員会におきまして与野党でいろいろ議論をしていただいて、そしてその中で建設的ないい知恵が出てきたとかあるいは非常に立派ないいお考えだ、そういうような問題については与野党で話し合って今まで来たわけであります。同じような態度をもって我々は大蔵委員会においてもこの税制を慎重に慎重に審議しよう、そういう場を早くつくってください、我々も謙虚に耳を傾けるにやぶさかでございません、そういうことを申し上げておるわけです。
  127. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 今私は、総理の心中察するに余りあるものがあると思うのです。東京都知事選挙を初め全国で統一自治体選挙が行われておるときに、どこからも応援に来てくれという話がないということ、そしてまた中山議員ですか、せっかく努力をされたそうですが大阪府連もあかん、こういうことになったようでありまして大変残念だ、こういうふうに思います。しかしこれは、公認の知事を初め自民党推薦の諸君あるいは自民党の皆さんの組織の地方の諸君というのが明らかに支持をせず、特に争点になっております売上税の問題についてはそういう姿勢があるわけですから、これは私はもう不信任だ、こう思います。と同時に、各世論調査は支持率が大変下がって、支持せずというのがぐっとウナギ登りに上がってきているし、この大型間接税については撤回、こういう世論が大きいわけですね。  そういたしますと、つまり国民及び自民党員の反対をする売上税は導入をしない、大型間接税は導入しない、こういうことでありましたけれども、今中曽根首相に与えられている選択の道は私は二つだ、こう思います。  それは、一つは撤回ですね。つまり撤回をする。この売上税を撤回するということが私は今最も正しい。手続についてもそういうあれもあったかな、こういうことも言われたわけでありますが、私はやはり撤回をすべきだというのがまず第一。しかし、しゃにむに通すのだというのであれば、保利見解もありますように、国政選挙で問わなかったことをしゃにむにやりたいというときには信を問うべきだというのが亡くなられた保利元議長の見解でございました。そういたしますと、去年おたくの山中税制調査会長も公約違反をわびと、こう言っておるわけです。公約違反だと、こうまず税制調査会長が言っておるわけですけれども、あえてどうしても通すというなら、この売上税法案で解散をし国民の信を問うべきだ、私はこの二つの選択しかない、こう思います。総理の見解を伺います。
  128. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 山中会長は、党の総務会やあるいは税制調査会において公約違反だという言葉を撤回したのであります。それで、党の総務会においてもこれは公約違反でない、そういう認定で今このように御審議を願っておるわけなのであります。  私の進退に関しては、私に任せていただきたいと思います。貴意に沿いかねる次第であります。
  129. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 終わります。
  130. 砂田重民

    砂田委員長 この際、菅直人君より関連質疑の申し出がありますので、川崎寛治君の持ち時間の範囲内でこれを許します。菅直人君。
  131. 菅直人

    ○菅委員 きょうの朝以来、特に日米摩擦の激化あるいは円高のさらなる激化ということを含めて、少なくとも内需拡大については政府あるいは与野党ともぜひやるべきだということでは意見が一致をしていると思うわけです。  そこで、総理に特にお尋ねをしたいというか見解を伺いたいのですが、今、我が国の内需拡大にとって土地問題というものが非常に大きなネックになっているのじゃないか。ウサギ小屋という言葉もありますけれども、私が調べた限りでは、大都市で比較しますとヨーロッパと東京の一人当たりの住宅面積というのはほぼ半分だ。そういう意味では個人消費も伸び悩んでいる。あるいは公共投資も、新しく越路の拡幅をやろうといっても大部分は用地取得費に食われている。そういう意味では、公共投資も個人消費も、いろいろやろうと思っても土地問題が大きなネックになって、それが進められないという状況にあると思いますが、総理としてこの日本の土地問題についてどういう認識をお持ちか、まずお尋ねをしたいと思います。
  132. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 土地問題が非常なネックであり、問題であるということはよく認識しております。ですから、土地問題に関する閣僚会議もつくったり、あるいは建設省、各省を中心にいろいろ専門家を集めて努力をしておるところであります。ただ、土地問題については、例えば大前構想であるとかあるいはそのほかいろいろな構想も出てきておりますが、これはペニシリンのようにすぐ効くというようなものは余りないのですね。というのは、なぜかといえば、経済基盤、経済環境というものがそういうものを醸成しているわけでありますから、やはり熱を冷やしていく、そういうあらゆる総合政策で固めて徐々に冷やしていく、そういうことが大事ではないかと思うのです。しかし、土地問題といっても東京の土地問題が問題で、ほかの全国の各地におきましては大体一・七%でしたか鎮静の気味にあるので、問題は東京、大都会におけるその中心地帯、それからそれが波及している部面に対する対策が大事ではないかと考えておるところであります。
  133. 菅直人

    ○菅委員 私は、特に宮澤大蔵大臣に重ねてといいますかお聞きしたいのですが、宮澤大蔵大臣は持論として資産倍増論ということを言われているというように聞いているわけですが、私はまさに東京を選挙区にしている者でして、例えば三十坪の土地に建坪が三十坪程度の家を持つのに、今私が住んでいる武蔵野であればもう一億円を超えるような価格になっているわけです。従来それが例えば坪百万円で三十坪の土地に小さな家を持っていた、それが坪二百万円になった、資産が倍増した、ああこれはよかったなと言う人がいるかといえば、それはいないのですね。ですから、私はあえて言えば、資産倍増というのではなく、まさに一人当たりの住宅面積が広くなることが生活の質をよくすることにもなりますし、そういう方向で考えないと、単なる財テクとかそういうことでの資産倍増になってしまうのではないか。この辺についての見解を伺いたいと思います。
  134. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私が申しましたのは、一つ住宅について、一つは社会資本について、一つ金融資産について倍増をということを申しておるわけですが、金融資産はともかくといたしまして、住宅あるいは社会資本についてはもとより実質価値を申さなければ意味はなしません。例えて申しますれば、下水道であれば三三%の普及ではいけない、六〇%にしたい、もっとふやしたい。住宅で申せば床面積をふやす、あるいは中の質的な向上を図る。もちろんそういう実質的な価値を考えております。
  135. 菅直人

    ○菅委員 そこで、元ほど総理も総合的に考えなければいけない、そういうふうに言われましたけれども、私もこの土地問題については比較的長くいろいろな専門家の皆さんの意見を聞いてきたのですが、何が一番ネックになっているのかということを考えると、簡単に言えば土地というものがほかの商品と全く性格を異にしている。つまり、ほかの品物であれば、物の値段が上がれば、例えば時計の値段一つが今まで二万円だったのが五万円になれば、ほかのメーカーもどんどん同じものをつくって、いわゆる供給が出てくるから値段がある一定以上上がらないで済む、これが経済の一番の原則だと思います。しかし、土地の場合は逆に値段が上がることが予想されるから供給されない。つまり売らない。じっと持っていた方が得だ。ですからほかの物品とは全く異なる行動をするということだと思うのです。  戦後の土地に関するいろいろな政策を私なりに調べてみましたけれども、国土庁長官にお聞きしたいのです。これまで土地は売らないでずっと持っていた方が得だ、その原則を何とか崩さなければいけないと私は思うのですけれども、その原則を崩すような政策が何か行われてきたか。つまり、これまでいろいろ税制とかなんとかありましたけれども、結局のところは土地はじっと持っていた方がいいんだという原則が戦後四十年間ずっと続いてきたのではないか。そこに民活とかいろいろな言い方で需要がある、そして無限に上がってきたというのがこういう状況じゃないかと思いますが、国土庁の見解を伺いたいと思います。
  136. 綿貫民輔

    ○綿貫国務大臣 戦後のいろいろの時代の中で、土地の問題はずっと重要な問題として提起されてまいりました。その間、地価の安定ということにつきましては、やはり適正な土地の取引が行われるような土壌をつくるために努力してきたつもりでございます。そのときどきの土地に対する税制あるいは改正、また土地の供給に関しても住都公団その他を通じましての政策も推進してまいりましたし、また地価公示制度とか国土利用計画法におけるいろいろの届け出制その他規制も行ってきたわけでありますが、その結果、昭和三十年代には土地の値上がりは二三・一%、四十年代では一四・九%、五十年代では三・八%というふうに、その成果は得られてきておると考えております。
  137. 菅直人

    ○菅委員 私は、今の長官の見解は全く納得ができないというとあれなんですが、先ほど言いましたように土地をお金にかえる動機づけは何があるか。例えば今土地を一万坪持っている東京近郊の、一応農家が多いでしょうけれども、農地という形で持っている人が土地を売るときの動機というのは、それをお金にかえて貯金をしようか、せいぜい貯金をしても、今時に金利が下がっていますが、高い時期だって長期金利よりも高い勢いで土地の値段は上がっている。結局は相続とか、あるいは何か事業に失敗したとか、あるいは買いかえ需要以外では土地を売る人は経済の原則としていない状況にある。ですから今、長官が土地の値上がりは以前よりは下がっていると言われるけれども、少なくとも長期金利よりも高い勢いで上がり続けていることはだれの目から見ても明らかですし、特にこの一年の上がり方は異常ですから、結局その構造は壊れていないということだと思うのです。  そこで私は、短い時間ですので余り抜本的な提案ということにもなりませんけれども、この間台湾の税制を私なりに調べてみました。孫文が三民主義という考え方の中で平均地権ということをベースにした土地税制を提案し、現在実行されているように聞いております。この考え方は、大都市の土地というのはできるだけ平均的に所有すべきだ、そして土地の値上がりの利益は必ず公に帰すべきだ、漲価帰公という言葉でそれを言っているようですけれども。私は、今日本に最も必要な考え方は、土地というものは自分が使おうが使うまいが、持っていればそのうち値上がりをして自分が得をするというような構造を変えること、つまり、本当に必要な人がそれなりの負担をして取得をして使うことはもちろんいいわけですけれども、値上がりによって利益を受けるような構造をなくすること、このことが最も重要だと思いますが、国土庁長官にこの台湾の土地政策を含めてどういうふうな見解をお持ちか、お尋ねをしたいと思います。
  138. 綿貫民輔

    ○綿貫国務大臣 お答えいたします。  菅先生が台湾方式について大変勉強をしておられることもよく存じておりますし、土地の問題が出ますときに台湾方式という案がよく出されるわけでございますが、我が国における土地に対する考え方あるいは土地に対する租税の現状等考えますと、いろいろとそのまま導入するわけにはいかないような問題もたくさんあると思います。しかし、この台湾方式というものは従来からも極めて興味のある案であると言われておりますので、私どもも今後勉強する上において十分参考にさせていただきたいと考えております。
  139. 菅直人

    ○菅委員 台湾の土地政策そのものについては、もう国土庁長官の方でも検討されておられるようなので、私なりにそれを参考にした考え方を一部申し上げて、問題点もちょっと指摘をしたいのです。  先ほど総理大臣が、東京が問題なのでほかの地域は大したことはないとおっしゃったわけですね。私は実は東京を問題とするときにも、都心の土地、いわゆるビル用地としての都心の用地と、郊外の東京で言えば三多摩とか板橋とか練馬とか、あるいは神奈川県の方、千葉の方、こういう郊外の土地と、それからさらに離れた穀物地帯であるような山形県だとか秋田県だとかの農地、つまり都心の土地と郊外の用地といわゆる生産用の農地というものを政策手段としても区分して考えなければいけないのではないだろうか。  今東京周辺で起きていることは、都心のビル用地が足らない、そこで民活で地上げが行われる、買いかえ需要で郊外の土地がめちゃくちゃな値段に上がるという、つまり都心の用地と郊外の用地が連動してしまった。あるいは宅地並み課税というものが、本来農業保護というのは農業生産を保護することは必要かもしれませんが、郊外の農地の大土地所有者を保護するようなやり方というのは不公平だと私は思うわけですけれども、そういうことが農業保護という名目で郊外の土地については行われた。つまり政策の混乱がここにあると私は思うわけです。  そこで。先ほどお手元にお渡しした私なりの提言の中で、自分の持っている土地を自分で申告をする、地価を自己申告して、その値段に基づいて固定資産税をかけると同時に、その値段に基づいて、それよりも高い値段で売った場合はキャピタルゲインとして売ったときに累進的な課税をする、そういう譲渡益課税と保有税を連動させるやり方が一つの考え方としてあるのではないだろうか、こういうことを提案しているわけです。  そういうことを含めて、これは大蔵大臣、自治大臣、あるいは国土庁長官にもお尋ねをしたいのですが、今、日本の土地の値段というのが何種類あるかということなんですね。取引価格が一つ、国土庁から出されている公示価格が一つ、相続税のときの路線価格が一つ、固定資産税の評価が一つ、つまり四つの価格が動いている。だれにとって一番有利で、だれにとって一番不利なのか。それはたくさん土地を持っている人にとっては、固定資産税の評価は、農地という名目で大都市周辺に持っていれば非常に低いですから、固定資産税は安くて済む。しかし、売るときには取引価格で、その利益については一部課税がされるにしても大部分は自分の懐に入りますから、取引価格で当然売る。そういう価格が四種類にもなっていることにおける非常な不公平が出ていると私は思うわけですけれども、そういった意味で地価、土地の値段の評価について政策的に一元化していく必要があるのじゃないか、一本化していく必要があるのじゃないか、このように考えるわけですが、まず大蔵大臣、いかがお考えでしょうか。
  140. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ちょっと私、所管でありませんので十分お答えできませんが、おのおのやはり政策目的に従って今の何種類かの土地の価格を考えているということが現実、現状であるというふうに思っております。
  141. 菅直人

    ○菅委員 自治大臣、いかがですか。
  142. 葉梨信行

    ○葉梨国務大臣 土地の評価に対します課税の問題を御質問でございますが、土地を売り買いする利益に対しまして行う課税、それからずっと持っているという場合に対する課税というものはおのずから性質が違うと思うわけでございまして、またそれに対していろいろな評価が行われるのは現実の問題として当然ではないかと思う次第でございます。
  143. 菅直人

    ○菅委員 今、大蔵、自治の見解が言われておりますけれども、国土庁長官に特にお聞きしたいのですけれども、実はここに一番日本の土地政策の、特に土地税制の問題点がある。つまり、政策目的によって違うと言われるけれども、それはいわば土地政策としての目的によって違っているのじゃなくて、別の、所得税の範疇で言えば大蔵省はこういうふうに考えます、あるいは自治体の財源という意味で言えば自治省はこう考えます、土地政策は勝手にどこかでほかでやってくださいというふうになっているところに問題があるのじゃないかと思いますが、国土庁長官、いかがですか。
  144. 綿貫民輔

    ○綿貫国務大臣 お答えいたします。  いろいろの地価があるということでございますが、それぞれの制度の目的に応じた評価がなされておると思っております。したがいまして、上昇度にこれを合わせたらいいじゃないかということでございますが、いろいろ困難な面があると思いますし、また固定資産税の評価額、相続税の評価額などいずれも地価公示の結果を重要な参考として行われておると考えておりますので、現状においてはこういう形で進んでおるということはお認め願いたいと思います。
  145. 菅直人

    ○菅委員 問題点を幾つか指摘したわけですが、最初に総理が、土地の重要性についてはよく考えていて、そのために地価対策関係閣僚会議をつくっているというふうに言われたわけですけれども、その責任者である官房長官に、今の議論を踏まえて、いわゆる省庁がそれぞれの立場でそれぞれの土地政策を持つことは一つの必要なことかもしれませんけれども、省庁の枠を超えた形でのそういった地価の問題あるいは土地政策の必要性、これについてどういうふうにお考えなのか、意見伺いたいと思います。
  146. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 先般来菅さんから地価問題について極めて建設的な御意見を拝聴させていただいておるわけでございますが、その中で地価の自己申告制の導入、土地増価税の導入、土地保有税の適正化、起債による自治体の公有地取得の促進、こういった四項目ばかりの非常に建設的な御意見をちょうだいいたしておりますので、政府としても地価問題は随分対応策に苦慮しておるさなかでございますので参考にさせていただきますが、ただ一つ、私どもも勉強いたしますが、菅さんにも御勉強願いたいのは、憲法の規定が台湾と日本は違うという基本があるわけでございます。  といいますのは、昭和四十七、八年のころにやはり狂乱地価の問題がございまして、関係省庁、大体十省庁ぐらいでございますが、お互いに協力しなければならぬということで、毎朝八時から二時間ぐらい相当長期間検討した経験がございます。最初に私の方からお願いしたのは、土地というものは自由商品なりや、それとも公共福祉によって相当程度の制約を受けてしかるべき品物なりや、この点についての結論を出してもらいたい、これが第一だ、こう言ったのですが、長期論議の結果は、現行憲法では自由商品である、こういう解釈にならざるを得ない結果になったわけでございます。その憲法下に今もあるわけでございます。  そういうようなことで、なかなか地価の問題というのは率直に言って決め手がない。といって、十省庁が勝手なことをやられたのでは、今おっしゃるような、これは経済問題であるのみならず、ある意味における社会問題でもあると私は思います。そういう点を考えまして、昨年の暮れから総理の御指示もあって、調整権は私どものところにありますから、何とかひとつこの際、少なくとも一部の東京なり大阪なりの中心地域におけるまさに狂乱地価と言っても差し支えないこの状況に何かのメスを入れる方法はないのかということで、せっかく今勉強しておるさなかでございますので、こういった際にもぜひひとつ菅さんの積極的な御提言もこの上ともにお願いを申し上げたい。私どもも努力をさせていただくつもりでございます。
  147. 菅直人

    ○菅委員 十分検討されるということなのでそうしていただきたいのですが、憲法の制約あるいはそれによって自由商品として扱わざるを得ないという現状であるからこそ、先ほど来申し上げているように税制といういわば誘導政策を使ってやっていく道が非常に有効なのではないか。これを規制するとかあるいは収用するとかということになれば私権制限にストレートにぶつかるわけですけれども、土地税制を活用すればそれは現在の憲法の制約下でも十分やっていけるのではないか、そういうことを前提に提言を申し上げておりますので、私の方もさらに検討を続けていきたいと思っております。  あと残り少ない時間ですけれども、一、二、先般来の売上税の問題あるいは野党減税問題についてお尋ねしたいのです。  私は、先週未来、北海道あるいは地元の東京で知事選とか首長選を見てまいりました。その中で自民党が推薦されている知事候補や首長候補が軒並みと言っていいほど売上税反対と言われているのですね。そして、それを推薦している自民党の責任者の中曽根総理は、きょうの発言を見ても売上税はベストだからやるんだと言われている。これは国民は明らかに矛盾して戸惑っていると思うのです。  これは総理にぜひお聞きしたいのですが、そうすると総理は、自分が推薦している候補者が当選をして、そして売上税が導入されれば公約違反になると思うのですが、公約違反になっても仕方がない、そのようにお考えなのかどうか、お聞きしたいと思います。
  148. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 地方の自治体における首長あるいは議員さんの候補者は、相当数は共同で推薦している無所属の候補者なので、自民党だけの候補者ではないわけであります。したがって、そういう人の立場を考えると、推薦してくださっている母体の御意向もある程度考えざるを得ない。それから、自民党だけのわがままを申し上げるというわけにはいかない、そういう点があるわけです。  それからもう一つは、国税の問題というものは国会議員が国会で決める問題でありまして、地方の自治体の方々は権限はないわけであります。地方の自治体の仕事というのは、これは地域の問題は、身近な問題は自分のところで片づける、そういう地方自治の本旨にのっとって、地域の建設というものが主体であります。そうあるべきであると私は思うのです。そういう都市なりあるいは可なり村なりあるいは県なりの建設はだれが一番うまいだろうか、だれが住民福祉に貢献し、だれが交通をよくし、だれが産業を興して失業を減らすことができるか、そういうような腕比べが実は地方選挙の趣旨であります。それで、国税の問題というのはお互い国会議員が権限を持ってやることでありますから、地方でおっしゃることは参考意見として我々は聞く、そういうことではないかと思うのです。
  149. 菅直人

    ○菅委員 今の総理のお言葉をかりれば、地方選挙で公約をしても、自民党推薦候補が幾ら公約をして売上税反対と言っても、それは効果がありませんよということをみずからお認めになったということに理解していいわけですね。
  150. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 今申し上げたとおりで、共同推薦している無所属の候補者について自民党だけの考えを強制するということは、それは地方自治の本旨等から見ましてもなかなか難しいのではないか、やはり礼儀というものがあるのではないかと考えております。
  151. 菅直人

    ○菅委員 この議論を国民がどう評価をするのか、まさにこれが統一地方選に問われていると思います。  もう一点。先ほど、今おられませんが浜田議員の方から、正式な公表がされてない野党の統一原案について幾つか、何といいましょうか、やや一方的な意見が述べられたわけですが、これは正式な決定という形で出ておりませんので、私たちも誤解だけを払拭をしておかなければならないと思いますが、少なくともこの中で議論をされたものは、新聞報道の中にもありますけれども、今の経済状況の中で、まさに内需拡大が急務な中で、増減税をどういうふうにやっていこうという政府の考え方それ自体がおかしいのではないか。そういう意味では減税を先行させるべきではないか。もちろん、売上税は即時撤回をして、減税を先行させるべきではないか。  先ほど総理は、野党案の方が政府案よりも減税額が小さいなんて言われておりましたけれども、そうではなくて、六十二年度で見る限りは、今の政府案よりももっと大きな減税をすべきだという考え方が基本になっているわけです。そして、その中で計算が二千億ほど合わないじゃないかと言われましたけれども、それは税収だけを見るからでありまして、税外収入あるいは一般歳出歳入があるわけですから、税外収入などを勘案すれば十分にこの減税先行というものがやり得るということは、これは専門家の大蔵大臣を初めとして当然おわかりになるわけでありまして、そういう意味で、まだ野党が正式に提案をしていないものをつまみ食い的に歪曲をして、野党案が自分たちよりは減税が少ない、あるいはその収支が何か合わないというようなことを言われるのは控えられた方がいいのではないか。  最後にそのことを申し上げまして、時間になりましたので、質問を終わらせていただきます。
  152. 砂田重民

    砂田委員長 これにて川崎君、菅君の質疑は終了いたしました。  午後一時三十分より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時五十四分休憩      ――――◇―――――     午後一時三十一分開議
  153. 砂田重民

    砂田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。池田克也君。
  154. 池田克也

    池田(克)委員 公明党の池田克也でございます。  暫定予算審議に入りまして、一時間ちょっとの時間をいただきました。関連で防衛問題等を神崎君にお願いをいたしまして、四十分ちょっと教育問題と売上税、当面の問題についてお伺いをしたいと思います。  初めに、総理とこうしてこの場で、昨年の今ごろでしたか大学の入試改革について議論をさしていただきました。ことしの大学の入試は、御存じのとおりかなりいろいろと混乱と申しましょうか、足切り問題あるいはA、B二種類に大学の入試形態を分けたこともありまして定員割れが出たり、さまざまな現状が報ぜられているわけでありますが、まず文部省から、今つかんでいらっしゃることしの大学入試の特色、いろいろ報道されておりますが、足切りがあった、あるいは検定料を返してくれという御意見もいろいろ出ておった、あるいは一部地域におきまして、まあ一部地域ではない全国ですが、A、B二種類の大学の入試をやったことから定員割れなども出まして、追試、二次募集等も出た。総括、まだ全部ついてないと思いますが、そうした状況を御報告いただいて、後に、総理、大変入試問題に御関心がおありですので、この場で今後の問題等も含めてお聞かせいただきたいと思っております。
  155. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 今回の入試制度の改正、御承知のように受験の機会をできるだけ多くしようということでございまして、そのことは、一つとして自分が入りたい学校を選べるという機会を与えたということになろうと思いまして、それはそれなりの効果はあったのでございますが、確かにこの恩恵を受けたのはよくできる学生だけであるということもよく言われておりまして、そういう点で、しかしチャンスを与えたということは事実でございまして、その意味で効果はあった。  しかし、第一回のことでもございましたので、ふなれなこともあったと思うのでございます。特に学校側からの、特に大学側からの情報が少なかったものでございますから、学生は自分も挑戦してみようという気持ちで相当共通一次試験を受けたことは事実でございますが、その結果といたしまして十万人の足切りが出た、九万九千出た、こういうことでございました。しかし、ずっと私の方で精査いたしましたら、結局、国公立をどこも受けることができなかった人は大体三万人ぐらいのことになってまいりまして、ほとんど十万人が整理されていったということでございまして、これでまあ一つは私も安心をしておるのでございますが、しかしいずれにしても大量の足切りというものが出たということは、これは将来検討しなければならぬことであろうと思っております。  それと、A、B二つに分けて、そして公立と三つのチャンスを与えたということでございますが、このA、Bの振り分けについて議論はあると思うのであります。けれども、受験生の声を見ますと、チャンスを与えてもらったということと、自分の入りたい学校が選別できるということに対しては評価しておる。そこで、この分け方なんでございますけれども、これは今後とも十分に検討してみたいと思っておることでございます。  それからもう一つ、受験料のお話がございましたが、学生の方の要求は私は気持ちとしてよくわかります。わかりますが、今までもずっとそのようにやっておりますように、受験料というものは一次、二次合わせて受験料を払っておるわけでございまして、わしは一次だけでよろしいわという受験料じゃないわけでございますので、したがって一次、二次のセットである以上は、一次試験で、つまり共通一次で足切りになったからこれを返せというのは、学生の方の気持ちはわからぬでもないが、これは制度としてはそういうようなことはちょっといたしかねるということでございますし、その点につきましては、かなりな理解は進んできておると思うのでございます。ですから、今後この制度を原則として我々はやはり維持していきたい、学生に挑戦への機会をできるだけふやしたい。けれども、改善すべき問題、例えば情報の提供をどうするかということでございまして、今回非常に問題になっておりますのは、受験産業は割合に的確に情報を出しておるのに、学校当局は全然情報が間違っておるじゃないかということを言われております。こういうことについて、学校側がある程度情報を早期に、しかも正確に出し得ることをするならば受験指導に相当役立つであろうと思いますので、この点に十分な力を入れていきたい、こう思っておりまして、逐次改善を進めたいと思っております。
  156. 池田克也

    池田(克)委員 今文部大臣から報告を伺ったところでございますが、いろいろと入試改善というのは非常に長い議論が続いているのですけれども、これという名案がない。委員長も文部大臣をしておられまして、いろいろと文教委員会でも議論をさしていただいたのですけれども、ことしの一つのこうした現象というのが、果たして前進であると見るのかあるいは後退であると見るのか、これは見方が分かれるところですが、けさの報道なんかを見ておりますと、現場の高校の先生方は大変否定的であります。非常に混乱が激しかった、特に進学指導では学校では非常に苦労したというようなことが伝えられておりますし、全国を一元化するような大きな予備校が持っている情報が的確であればあるほど、結局、お金で入試の非常に重要な選択、どの学校を選ぶかというような部分が決まってくる。そうすると、父母に力がある、特に経済的に力がある父母の方が子供たちの進学については有利である。そういう点では、弱者と申しましょうか、生活に苦しんでいる人たちの家計あるいは子弟という部分が切り捨てられる大変悲しむべき事実じゃないかというふうに私は見るのですが、重ねて文部大臣、今の段階でこの御評価をすぐにいただくことはちょっと無理かなという気もしますけれども、率直に申し上げて、今最初にお話がありましたような、できる子には有利だった、そうじゃない子に、裏を返して言えば大変気の毒なことしの試験であった。しかし気の毒だては済まされない、一生に一遍しか訪れない十八歳の春であるということから考えますと、この入試改善というのは失敗は許されない、非常に慎重にやっていかなければならない部分ではないかなと思うわけでございまして、重ねて、ことしの入試のあり方というものがそうした反省の上に立って、もう来年は繰り返さない、何らかの改善をするんだというお気持ちがあるかどうか、お尋ねをしたいと思います。
  157. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 これは確かに若い青年にとりましてはもう大変な、一生を決める問題でございますので、我々もそういう若い人に精神的なフリクションを起こさないように十分いたしたいと思っておりまして、早速改善の方法を検討したいと思って、省内でその検討委員会を発足さす予定でございます。  そこで非常に顕著に出てまいりましたのは、学校側の反省も私は必要だと思うのであります。まず、大学におきましても、大学が選択されたということは、これは大学の今後のあり方についても十分に考えなければならぬ。やはり学生、若い人たちは、特色のあり、そしてまた教授に魅力のある学校を選んだということは歴然としておると思うのでございまして、これは大学相互間における大きい刺激になってきた。これを受けでどのように大学を整備していくかという貴重な資料にもなろうと思っております。  それから、受験生に対しましては、私はもっと情報を、何も受験産業に頼ることのないように、そうせぬでもいいように、高等学校の段階でそういうデータと申しましょうか資料が絶えず入りやすいようなことを将来考えていかなければならぬと思いますし、それと同時に、進学指導に高校の先生ももう少し十分な責任を持っていただきたい。初めからAという学校を受けても無理だと思っておる者でもあえて挑戦さすというのではなしに、先生がこの子の、生徒の特徴をつかまえて、そして君はこういうところへ行くのがいいだろうという指導をやっていただく。そのためには先生自身がデータが必要だろう、こう思うのでございまして、そういう点、あらゆる面から見まして改善を加えていきたい。  私は、今一番最重点に考えておりますのは、情報、要するに入学試験の手続あるいは共通試験の受験の状況とかあるいは大学への入学の手続とか、そういうことに関してあらゆる情報をすぐに受験生が知り得るようなそういう体制を早くつくってやること、今これだけ情報ネットワークが発達しておりますので、それを何とかして徹底したい。その点につきまして、それぞれの各都道府県の教育委員会がそれを受けてそれを各学校に流していくようなことも考えていきたい、こう思っております。
  158. 池田克也

    池田(克)委員 私どもお願いしたいのは早急な対策ということなんですが、実はこういうふうにして試験の改善が議論されている中で、臨時教育審議会の答申によって昭和六十四年から実は新テストを導入するということになっていたわけです。その話を実は去年この席でお伺いをいたしました。当時海部文部大臣だったと思いますが、私は、どうしても六十四年ですかということをお伺いをいたしました。無理でしょう、六十五年でもどうかな、私は一年先送りがいいということを主張いたしました。政府はどうしても六十四年ということを重ねて答弁をされておりました。  その後、たしか昨年の暮れ、十一月ごろだったと思いますが、塩川文部大臣になられてから六十五年という答えを出されて、総理にそれを報告されたように伺っております。最初総理は六十三年にできないかということを指示なさったと伺っております。私は、こういう改善について総理のお気持ち、これは売上税ともちょっと関係があるのですが、かなり早目早目に時間を設定される、そういう部分がおありになる。私は、今度の売上税の問題どこの問題とは別次元がなと思って見ているのですが、六十四年、実際は六十五年に今セットされておりますが、今回のこういう入試混乱を見ますと、六十五年もどうかな、もっとこの改善というのは本当に慎重にあらゆるところをチェックしていかなければどうかなということを昨今の報道を見て思うのですが、文部大臣、六十五年の新テスト導入は大丈夫ですか。私大の参加とか、一科目でも取り入れるとか、総理から御注文のあった、なるべくマークシートじゃないものがいい、こういうさまざまな要望があそこに載せられておりまして、この委員会でも総理と文部大臣の意見が分かれまして、たしか昨年の二月十七日でしたか海部文部大臣から際立って共通見解が述べられたことを記憶しておるのですが、六十五年の新テストは大丈夫ですか。
  159. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 これはかねてからの懸案でございますので、六十五年実施をめどに、ぜひこれは六十五年にいたしたいと思っております。  ただ、今私たちが進めておりますのは、やはり現場の声を直接、生に聞きたいということで、国公立の大学並びに私大、そして高校、そして大事なのは学生の意見も聞いてみたいと思っております。こういうところで、審議会でいろいろやりますとどうしても自分の立場を主張される意見が多いのでございまして、そういうことのないように、国家百年、青年をどうするかという立場に立っての議論をしていただきたいと思いまして、この四月の入学手続が一段落いたしますと同時に、私の方から国公立、私立、それから高校、それから受験生、そして父兄というふうに順番にずっと聞きまして、拙速にならないように十分な議論を重ねていたしたいと思っております。
  160. 池田克也

    池田(克)委員 文部大臣からいろいるお伺いしてまいりましたが、総理はこの試験の成り行きをどう見ていらっしゃったか、いかがでしょうか、ことしの試験です。
  161. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 文部大臣とほぼ同じ考えです。受験生が大学をみずから選考する、そういう意味においては受験生の選択の方向の力が強くなってきた、そういう点は私はいいんじゃないかと思います。  それから受験の機会が非常にふえてきた。前よりはふえてきた。ただ、今のような足切りの問題が出てきまして、これは情報そのほかで直さなければいかぬだろう。  それからやはり各国公立大学において補欠試験を何回もやってもらうように、そして救済してやる、足りないところはそれで補う、そういうことが大事であると思いますし、地方大学の魅力が薄れた感がありますね。そういう意味において地方大学の特殊性、特色というものをうんと出させていただいて地方大学にも均てんするような考え方をとっていく必要がある、そういうふうに感じております。
  162. 池田克也

    池田(克)委員 文部大臣と同じであるという、ことしは随分総理慎重な御答弁なんですが、臨教審のいろいろ答申も最終段階を迎えているのですが、このごろ総理は余り教育に関心を示していらっしゃらないというようなことも伝えられているのですが、私は去年の総理の答弁を思い出すごとに、総理一つ教育観がある。それは試験において、総理が答弁されましたように、共通テストのような中間介在物を置かないで、なるべく子供と大学が一対一でぶつかりなさい、負けたら負けたであきらめがつくじゃないか、こういう哲学を持っていらっしゃる。その問題と今問われている税制改革の問題とちょっと私は重ね合わせてみたいと思う。  要するに強者の論理。一生懸命働いてもうける者、これは余り税をかけないで活力をとろうじゃないか。やはり力のある者はそれなりに世界へ伸びていき、自分の努力というものがうんと報われるべきだ。反面、そういう考え方を是とするならば、いわゆる再配分という考え方が緩くなってしまって、そして逆進性という問題も出てくる。いわゆる郵貯の変化のあり方、マル優廃止あるいは売上税の導入によるところのそうした苦しい生活の方々がやはり税をかぶらなければならない、こういうことを見ておりまして、戦後の日本のいろいろな行き方というのはかなり力ある者に厳しい制約を加え、そして日本が暴れないようにというふうな発想からか知りませんが、戦後の日本の歩み方の中にはいろんな手かせ足かせと申しましょうか、そうした平準化の論理とか、あるいはそれぞれの持てる力をある面では制約しながらも平準化を目指し、平和な、そしてどっちかというと穏健な、世界の中でもひっそりと生きていこうというふうな、そうした道筋がつけられてきたんじゃないか。  それに対して総理は、何かの一つ転換ではないかなという発想を持っていらっしゃって、今これだけの強引な施策というものをいろいろと積み重ねてこられたんじゃないか。売上税もその流れの一環にあるんじゃないかな。国民が心配しているものは、戦後ずっと平和憲法のもとに持ってきたそうした日本人の再び戦争をすまいという憲法の誓い、そして、そのいろいろと条件となるような、教育におけるところの戦前とは違った、大変まどろっこしいけれども一つ教育のあり方、あるいはお金持ちに対する、どちらかというと大変重い税の立て方、企業の税のあり方、そうした戦後ずっとたどってきた道筋について、総理が新しい問題を投げかけ、それを改善と申しましょうか改悪と申しましょうか、かじを切ろうとする。この一つの行き方についての価値判断の問題がいろいろと今問われているんじゃないか。そんな気が、私はこの入試の問題とちょっと絡めて思ったりしたのですが、いかがでしょうか。
  163. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 入試の問題と税金の問題とは関係ありません。ただ私は、自由をとうとぶ自由主義経済あるいは自由主義哲学というものをかなり強く心に持っておるものであります。そういう意味において、働く者に恵みあれ、悪平等はとらない、しかし、困っておる人たちについては最大限手を差し伸べてあげなければいけない。しかし、原則としてやはり人間の能力を最大限に発揮させるような、チャンスを平等に与えて、あとは本人の力で試してみなさい、そういう基本的な考え方を持っております。  その点があるいは池田さんと多少違うかもしれませんが、しかし私は、それが今日の日本にも非常に大事ではないか。ただし、先ほど申し上げましたように、本当に困っている方々あるいは恵まれない人たちについては、徹底的に我々は手を差し伸べなければいけない、それは当然片一方においてはそういう措置を必要とする、そういうふうに考えておるものであります。
  164. 池田克也

    池田(克)委員 総理は、困っている人に手を差し伸べるという方にかなり力点を置くように今はお話しになっているのですが、思いっきりやってみろという方が強く今度のいろいろな改革の中を見ていて私は思うのですね。きょうは時間が短いので、この問題はまた機会を譲っていろいろとお伺いをしたいと思うのです。  雇用の問題、非常に厳しい産業構造の調整などについてお伺いをしたいと思うのですが、昭和六十五年には失業率が四%に達する、失業者数が二百五十万人という危機的状況になる、こう言われておりますし、この暫定予算にも雇用対策の経費を盛り込んであると伺っておりますが、雇用に対する打つ手というのは具体的にこの暫定予算でどういうことになっているか、大蔵大臣からお伺いしたいと思います。
  165. 平井卓志

    ○平井国務大臣 お答えいたします。  雇用問題は、委員も御案内のように当面の緊急課題ということで、各党の方々に格段の御理解をいただいたわけでございます。特に労働省としてお願いをいたしております三十万人雇用開発プログラムを初めとする雇用対策でございますが、一日も早い執行が急がれておるということで、この暫定予算におきましては、失業給付が相当多額でございますが、それも入れまして二千七百六十一億ということでお願いをいたしておるわけでございます。  その雇用開発の中身はどうかということになりますと、柱が三つくらいございまして、一つには職業転換訓練助成制度を創設する。就業の内容が最近御案内のように非常に多様化、高度化いたしておりまして、とにかく労働力のミスマッチその他の解消を考えました場合に、今後の雇用対策で訓練というのは不可欠の一つの大きい柱であるということに対する助成でございます。さらにま   これは民間主導でございますが、産業雇用安全センターの運営費を助成してまいる。いま一つは、昨年からやっておりますけれども、失業を予防するという本来の我が国のとりました雇用対策、この雇用調整助成金の強化、活用ということ。いま一つは、地域法として既に成立をいたしましたけれども、地域雇用開発等促進法という中にも盛り込んでございます地域の雇用開発、これを行う。そういう中で、これらのプログラムに対しましては約百五十八億ということで計上いたしております。  ただ、これだけではなかなか雇用問題は解決できませんで、当然のことながら、やはり抜本的な内需の拡大ということが側面にございませんと、労働省の雇用対策、もって事足れりというわけにはまいらないわけでございます。いずれにいたしましても、こういう施策を、私は、制度運営上の問題もございますので、できるだけ機動的に弾力性をもちまして早速に四月一日から実施に踏み切りたい、かように考えております。
  166. 池田克也

    池田(克)委員 いろいろと雇用対策の予算を今お示しになったんですが、問題は、激しい円高によって企業が壊滅的な打撃を受けるであろう、これについてはどんなふうなお考え、そしてどんなふうな見通しを持っていらっしゃるのか。百四十五円という話、これから先どんなふうな見通しになっていくのか。雇用はますます厳しくなっていく、こう私たちは心配をしているんですが、この状況あるいは見通しについてお示しをいただきたいと思います。
  167. 平井卓志

    ○平井国務大臣 基本的に当面非常に重大な問題となっております為替の安定、その裏腹の関係にございますのは、抜本的なめり張りのきいた内需の拡大策ということでございます。  こういうふうな状況下の中で、今後の雇用対策はどうか、その点に対して心配はないかという御指摘がございましたけれども、やはりすべての施策と関連しまして、特に雇用情勢というのは非常に流動的でございまして、固定して物を考えるというわけにはまいりません。したがいまして、一応三十万人雇用開発という名前はつけてございますけれども、これは約千百三十億という予算の裏づけで三十万人と申し上げておるのでございまして、今後できるだけ中小企業の方々にもこの制度、法律の中身を御理解いただいて、さらに全国安定所総力を挙げまして、こういう中身に対する御理解、そしてまた指導等によりまして、全面的に御利用いただくという中で、さらに予算問題が生じました場合には、これはまた特段のお願いをして追加するということも考えておりまして、そういう観点に立ては三十万が五十万でも一応対応はでき得るというふうに考えております。
  168. 池田克也

    池田(克)委員 大変短い時間の中ですので、問題を先へ移します。  売上税の問題についてでございますが、先ほども指摘が出ましたけれども、所得減税のために売上税を導入する、こう説明をされております。さて、サラリーマンの方々にいろいろ聞いてみますと、増減税同額ということでありますけれども、そんなに減税にならない。自分たちの暮らしを考えてみますと、非常に厳しい毎日であって、減税が本当に全面的に取り入れられて可処分所得がふえることには賛成であるけれども、その財源として新たな売上税なるものが導入されてほぼ同じである、あるいはまた所得の六百万円以下の人たちにとっては増税になる、こう伝えられているのでは、これはかなわぬ、このことが一番強い声になっているわけでございます。政府からも法人税の減税が家計負担を軽減するという御説明を伺っているわけでありますけれども、これも説得力がいま一つない。  確認をさせていただきますけれども、今回の税制改正で法人税減税を除きますと、サラリーマン世帯の場合、五分位の階級で第四分位がどういうふうな収支のバランスになるか、データをもってお示しいただければと思うわけでございます。
  169. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは既にお手元に資料を差し上げてあるのではないかと存じますが、まだでございましたらぜひお目にかけますが、結局所得課税、所得税・住民税の減税になります分、それから今度は利子課税が出てまいりますのでその分、それに売上税の分、その増減に加えまして法人税が減税になる。その法人税の減税を、半分株主、半分消費者というふうに、これは何かの基準を設けませんと計算ができませんので便宜そういう基準で分けさせていただきました。したがいまして、その株主分あるいは消費者分、これは所得階層によって違うというふうに推定をいたしましたので、そのいかんによりましてはこの法人税分を丸々ゼロにいたしますとネットでやや増税分が残るという階層が幾つか出る、決して多数ではございませんけれども、そういうことになっております。
  170. 池田克也

    池田(克)委員 ここのところが非常に問題なんです。今大蔵大臣は、多数ではない、幾つかなんだ、こうおっしゃっているのですが、ちょうだいしたこの表を拝見しておりますけれども、大蔵大臣、この表によっても第一分位、第二分位、第三分位、第四分位、ここまでは全部増税になる。一万六千、一方、一万六千、一万五千、こういうふうな数字が出ております。今お話を伺いますと、第五分位、これのみが少し具体的に残ってまいりまして、あとは増税だ、こう私はこの表を拝見して思っているのですが、間違いございませんでしょうか。
  171. 水野勝

    ○水野政府委員 今回の税制改革によりますライフステージにおきますところの負担の推移、あるいは五分位に分けましたところの階層別の負担の推移、二つ御提出申し上げているところでございます。法人税を入れました四つの柱によりまして計算をいたしますれば、全部減税でございます。  それから、ライフステージに応じますところの負担の変動につきましては、先ほど大臣から、幾つかのライフステージの点におきましては増税になるところもございますというふうに御答弁を申し上げているところでございまして、非常に若年層の場合、それから現役を引退された方々でまだ老人のグループに入られない六十歳代の前半の方々、こういった方々につきましてはライフステージにおきましても負担の増加が若干あるという数字でございまして、これがただいま大臣から申し述べた数字でございます。  また、御指摘の五分位につきましては、おっしゃるとおり、四本の柱を通計いたしますと各分位とも減税でございます。法人税を入れて分析をした表もお出ししておりますが、これを抜いて計算をいたしますと四分位までは負担の増加がある、五分位は負担の減になっておる、そういうことでございますが、端的に申し上げれば、所得税につきましてはこれが一番間違いなく減税になるところでございます。  次が売上税でございますが、これは事業者からの転嫁によりましてサラリーマンの方にも御負担になる。各分位ともこれを含めたところでもちろん減税に相なっておるわけでございます。  二つの、法人税と利子課税の点につきましては、これは即時というわけではございませんで、利子課税で申しますれば五年から十年ぐらいかかる、法人税も経済に定着したときの話でございますから、そうした時間的先後はございますかと思いますが、全体を通ずれば減税に相なっておると申し上げることができようかと思うわけでございます。
  172. 池田克也

    池田(克)委員 今の御答弁の結論なんですが、この五つに分けた中の四つまで、第一、第二、第三、第四までは増税だ、こう水野局長が答弁をしておられます。ただし法人税を抜いた場合ということになるわけです。  さて、言われているように、実収入六百九万円まで増税だ。今それを政府はお認めになったことになるわけですが、その前提が、法人減税が具体的にサラリーマンの手元におりてこないという一つの前提です。これは先ほど大臣が答弁されましたようにいろいろと学説もあるようですが、現に今の円高あるいはまた企業の構造転換、いろいろな状況の中で企業側も苦しい。むしろもうそれよりも人員整理が先だと言われるような状況の中で、春闘の問題もありますけれども、賃上げが大変苦しい。ある労働組合が最近調査したところによりますと、法人税の減税国民に還元されるかどうか、これは企業を通じて調査をいたしました。それから見ますと、還元をしましょうというのは一割もない。現に、在来型産業雇用で必死に頑張っているところでは、とてもじゃないがそんな余裕はない。こういうことを、これは先日の公聴会で、ここで、ある労働組合の幹部の方が述べられた速記録でございます。生活が非常に苦しい、法人減税サラリーマンの手元に返ってくる見込みがない。こういうことでございますと、今私どもがこの売上税をいろいろと勉強するに当たって、この法人税が戻ってくるのを計算に入れないで具体的にどういうことになるかと見る方が正確なんじゃないか。そうすると、巷間言われている六百万円までの人たちは結果増税なんだという説は私はそれで正しいのじゃないかと思っているのですけれども、大蔵大臣いかがでしょうか。
  173. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 まず法人税の還元の問題でございますけれども、これがすぐに半年とか一年とかいう間に還元をされるというふうにはもとより考えることができません。その点は、利子課税にいたしましても、実はフルに戻ってまいりますのには時間がかかるというのと同じような意味でございますから、つまり税法改正が完全に効果が定着した時点というふうにお考えをいただきたいと思います。  それから第二に、経営者の方々がそういう還元というのは余裕はないと言われたことは、恐らく経営者の主体的な意識としては私はそうであろうかと思います。とても、配当をふやすとか、製品価格を下げるとか、あるいは春闘をうんと奮発するとか、そういう気にはならないよとおっしゃるのは、経営者としてそうであろうかと思いますが、私どもの申しておるのは、こういう完全な競争社会でございますから、経営者はそういう状況を株主から強いられる、あるいは消費者から求められる。競争の中で、自分の主体的な意思にかかわらずそういうふうに競争社会というものは動いていくという経済の実態をとらえまして申し上げておることでございます。
  174. 池田克也

    池田(克)委員 いわゆるサラリーマン大衆は、仮に金額にしても、世帯当たり月額で一万五千円、一万一千円、一万三千円です。本当にぎりぎりの暮らしの中で新しく税が一万五千円ふえる、あるいは仮に戻ってきても一万一千円である。私は、今こうやって売上税を調べておりますと、子供たちの学費だけでも、まず自宅から通っている子供、そうじゃない子供と違いますが、一人五千円から三千円は間違いなしにふえてくる、こういう調査もあるわけですね。塾なんかが特にそうだと思います。これはいろいろなデータもたくさんありて、全部が全部それを計算に入れてどうこうというわけではございませんけれども、サラリーマンの家計は今本当に苦しい。先ほど受験生の話がここで出ましたけれども、今度のこの売上税を見ておりますと、学校の経費を取り上げても、入学金、授業料は非課税でございますけれども、教科書も非課税ですが、参考書あるいは塾その他子供たちの着るもの、運動にかかわるもの、クラブ活動にかかわるもの等、ほとんどそうした周辺のものは課税ということになっておりまして、父兄から見て、今度の売上税が導入されると、結局待ったなしに子供たちの出費はどうしてもかさんでくる、これは生活かなわぬなというのが実感であろうと思うわけでございます。  こうやってこうしたデータを拝見しますと、統計の数字ですからこれは厳粛なものであろうと思いますが、いつも思います、統計の数字と実感とは随分違うものだな。これからの暮らしを一体どうしていくのだろうかということで、今地方選挙のさなか、みんながこの売上税に心配をしているときに、本当に間違いなしに減税になるんだと言い切れない。部分によって若干こうなります、これは経営者の判断によるところです、非常に微妙なところです。要するにやらない方がいいんだな。結果は、今のこれほど厳しい、下手に春闘だとか賃上げを要求すれば、下手にいったら首になりかねない。企業経営者の方も、毎日円高になって経営が危なくなっている。こういう時期にこういう売上税のようなものを持ち出すべきではない、一遍これはタイミングを見直すべきだというのが大方のサラリーマンの声だ。  サイレントマジョリティということを総理おっしゃっておりますが、私は、都市に住んで家賃が大変だ、子供たちの学資、子供たちの塾、先ほどの激しい競争で、大きな塾へ行かなければ入試の選択も十分にできないというふうな状況がことしの入試では出てきている。こういう状態の中で、確かに一億円未満の小さな塾は非課税かもしれませんが、ことしの入試を見る限りでは、試験の大きなデータのコンピューターの総合性がなければ学校の進路選択も思うように当たらないということになれば、どうしても課税されるような大きなところに行く。予備校は専修学校として非課税になりましたが、短期の夏季講習とか冬季講習とか短いものは課税される。そうしたものをずっと積み重ねていくと、家計の負担はこれはかなわぬな。減税も、仮に企業の経営者の大変な恩情をもって法人減税が還元されても大したことはない、ほとんどはそうならないであろう。こうサラリーマンが思って、今反対の大きな渦の中にある。  そして、予算審議と言われますけれども、この問題がネックになって、大事な景気の問題、雇用の問題、これからの日本予算の問題がとまっている。この暮らしの問題を考えたときに、総理、本当に名誉ある撤退と申しましょうか、ここでもう一遍考え直そうじゃないか、そして別のことを協議しようじゃないかというのが今国民の声じゃないかと私は思うのです。いかがでしょうか。
  175. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 けさほど申し上げましたように、我々としては税制全般の改革、シャウプ以来のよじれ、ねじれ、そういうものを是正して、そうして所得税減税をできるだけ早期に実行しよう、法人税減税も実行しよう、そういう考えに立って我々としては最善の案として考えたものでございまして、貴意に沿いかねる次第でございます。しかし、いろいろな御意見につきましては、大蔵委員会におきまして建設的な御意見は十分傾聴してまいりたい、そういうふうに考えておる次第であります。
  176. 池田克也

    池田(克)委員 建設的な意見をどこでお聞きになるのですか。私どもは前々から審議しなさいと言われている。そして、今ここで繰り返し申し上げていますように、けさほども与党の質問にも出ました。この六百万円から下の収入の人たちは実質増税になるんじゃないか、ここのところを何とかできないのかというのが、けさは与党の御質問でもあったわけです。要するに私どもが心配をするのは、現実に庶民の暮らしが一体どうなるか、ここに一番焦点を当てて考えていかなければならない。  ですから、私も昨日いろいろと懇談をした中で、お年寄りのふえる時代だ、だから税制を改革するんだ。これはわかる。ところが、じゃ今度の売上税の導入によってお年寄りの施設がふえるんでしょうか。今何カ月もお年寄りの施設に入りたくて待っている人がいる。こういうのがどんどん建つんでしょうか。いや、そうじゃないようだ。減税に回され、サラリーマン減税になってくる、法人の減税になってくる。高額所得者が随分と減税されるそうじゃないですか。私たちはパートに行きたくてもだんだんパートの口もなくなってきているんだ。  輸出産業円高で、もう悪いけれどもこれから先は商売閉めて、この土地を、工場だったものをマンションを建てて、そして貸した方が商売になるんだよと言って、今までパートの人たちを集めて電線の皮をむいたところはやめちゃった。そこが今マンションが建つように工事が始まっちゃった。東京においては地価が高騰して、そういう小さな近所の奥さん方が今までちょっと一日何時間かパートをして、そして何かの足しにした、子供たちの塾通いの足しにした、そういう暮らしが、働く場所すらなくなっちゃって、すごいマンションに今切りかえられようとしてきている。働く場所もないんですよ。  こうやって売上税の議論をして、毎日国会が動いたの、とまったの言っているけれども、この問題を一体どうしてくれるんだろうか。きょうは動いておりますが。  要するに、具体的に一体何ができていくんだろうか。あるいは病院についても、本当にいい治療と言われるけれども、病院の経費も次第次第に制度が変えられて高いものについてきた。子供たちの暮らし、お年寄りの将来、あるいは主人の仕事の現場における、一たん失業したらほとんど新しい職場は中高年の場合ない、こういう状況の中で、買い物の際に新しい税が課せられる。あるいはまた、それに伴って何らかの徴税コスト、納税コストがふえて物価が上がる。政府の御答弁でも一・六%一回限り上がる、これは勘弁してほしいと大蔵大臣もおっしゃっているけれども、その一・六%すら怖いんだ、こういうのが庶民の切なる願いではないか。それを本当にこの場で皆さん方に、政府の提案者に、私たちは庶民の声を代弁して申し上げているわけです。     〔委員長退席、今井委員長代理着席〕 何とかしてこのこれだけの大きな声、もう地方選挙どこへ行っても、先ほど総理に遊説のお声がかからないなんという新聞もありますけれども、私は決していい姿ではないと思います。やはり対案を示して、そして議論をしようじゃないかとおっしゃいましたが、まさに対案を示すこと、与党、野党の党首が選挙という場で、公の場でマイクを通してお互いに舌戦を展開する、これがまさに選挙、そしてそれが民主主義の議論の場だと思います。議会で対案を示すことも結構ですが、選挙の場でじかに大衆に向かって駅前広場でやる。与党の党首は来ないじゃないか、野党の党首は来るけれどもどうなっているんだ、こういう状態は私は異常だと思って、きょうはこの場で切実な庶民の声をお訴えしたところでございます。  御答弁をいただいて、関連質問に移りたいと思います。
  177. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 今お年寄りのお話がございまして、今のようなお話を伺っていますと、確かにその方々はあるいは所得税を納めていらっしゃらないかもしれません。そして、そういう方々にはしたがって売上税だけが新しい負担になるのかとおっしゃれば、それは現在所得税を納めていらっしゃらない限りはそうなるとやはり申し上げざるを得ません。  ただ、そういう方々は恐らく若い人々のような消費、同じ形態の消費をなさるわけではございますまいと思います。そして、どちらかといえば売上税は生活に密着しておるものほど非課税になり、あるいは非課税業者が御利用いただけることになりますので、私は一・六%そのものをそんなに受容し得ないほど高い物価の上昇と思いませんが、それほどまでのこともあるいはそういう方々にはないかもしれない、そういうふうにお考えをいただきたい。その方々は今のお年寄りでいらっしゃいますから、若い人たちがまだまだお支えをすることができます。しかし、今から十何年たちますと今度はそういうことが難しくなる、先々の準備もこの際させていただきたいというのが私どもの本意でございますので、御理解をいただきたいと思います。
  178. 今井勇

    ○今井委員長代理 この際、神崎武法君より関連質疑の申し出がありますので、池田克也君の持ち時間の範囲内でこれを許します。神崎君。
  179. 神崎武法

    神崎委員 防衛問題についてお尋ねをいたします。  私は、矢野訪米団の一員として、本年の二月末から三月初めにかけまして訪米をいたしまして、平和軍縮の問題あるいは為替の問題、日米間の貿易摩擦問題、防衛問題について米国側と意見交換を行ってまいりました。その中で特に印象に深く残りましたのは、SDI、戦略防衛問題につきまして、これが研究の段階から一歩進みまして実験、開発の段階に至っているのではないか、そういう印象を強く受けたわけでございます。わが国の政府は、このSDI問題について、あくまでも研究への参加交渉である、こういう説明国会に対してもしているわけでありますけれども、現実には将来の配備というものを念頭に置いた実験、開発の段階に至っている。この研究への参加が即実験、開発への参加という事態になってきているわけでございまして、その意味におきましてこれは大変大きな問題であろうかと思うわけでございます。この点につきましては、今後また国会の場で大いに論議をしたいと考えております。  さらにまた、防衛費の一%枠突破問題につきまして、私ども米国側とまたいろいろ白熱した議論をしたわけでございますけれども、一%粋を突破したということは防衛費の歯どめが全くなくなってしまう、エンドレスに防衛費が増大する危険性というものが生じてしまうのだ、その意味において我々は反対である。また、この一%というものは単に数値の問題ではなくして、国民の防衛力整備のあり方に関するコンセンサスというものがようやくできつつある、それを崩してしまった、その意味の責任は極めて大きいと思うし、また近隣諸国に対しても、日本が軍事大国にならない歯どめとして、そのあかしとしてこの一%枠というものを平和政策のシンボルとして今日まで高く掲げてきた、それを取り払ったということで、近隣諸国にまた軍事大国になるのではないかという警戒感を生じさせた、こういう点においても我々はこの一%枠突破には強く反対であるという主張をしてまいったわけであります。この点に関しましては、各紙の世論調査の結果からいたしましても、多くの国民の心情というものは私が今申し上げたこの一%枠突破に反対である、また新基準が何ら歯どめにはならない、これは国民の率直な心情であろうかと私は思うわけであります。  さらに加えまして、今月の二十三日から二十七日まで、北京におきまして軍縮に関する地域会議というものが各国の外務次官級が集まりまして開かれました。それに出席をいたしました方から伺ったところによりますと、非常に和やかな雰囲気で、昔のようなああいう米ソ対決のイデオロギー的なそういう論争ではなくして、軍縮のための査察、検証という具体的な問題について各国から、さまざまな専門家から論議がなされた、そういうお話も伺っております。  今や世界各国が平和軍縮へのそういう流れを求めてきているわけであります。わが国がその平和のイニシアチブをとるべきであるにもかかわらず、あえてこの時期に一%枠を撤廃してさらに軍拡への道を開いた、そういう点はどうしても私としては承服ができないわけでございます。  売上税と同様、この一%枠突破に関しましては国民の厳しい批判があるわけでございます。そういう意味におきまして、ぜひとも総理にお尋ねをいたしたいわけでございますけれども、一月二十四日のこの閣議決定を撤回されまして、また新たにこの一%枠厳守の立場に戻っていただきたい、これが国民の心情であろうと思いますが、いかがでしょうか。
  180. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 既にこの国会で申し上げましたように、我々は今までの三木内閣の閣議決定の精神を尊重して、今までの防衛に関する諸原則を守りながら節度のある防衛力を引き続いて建設していこうというのでありまして、この点については御理解をいただきたいと思っておる次第です。  詳細、具体的な考え方につきましては、SDIあるいは軍縮も含めまして防衛庁長官から御答弁いたします。
  181. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 軍縮等につきまして話し合いが進められるということは非常に結構だと思います。特に検証問題について米ソ間で討議をするということは大変結構なことだと考えております。  ただ、軍縮問題がこういうふうにきておるから一%問題について、あえて一%を超える必要はないじゃないかという御議論でございますけれども、もともと今政府がやっております「防衛計画の大綱」水準の達成、すなわち中期防というのは、大綱の精神であります限定かつ小規模の侵略に対応し得る必要最小限度のものをやろうということであります。そういうことでございますから、これは軍縮というようなそういう動きの問題と直接影響ない、核軍縮が行われても通常兵器というのがあるわけでございますから、そういう意味合いで我々は十分慎重にこれをやっていかなければならないと考えます。  なお、いわゆる近隣諸国でいろいろ不安があるのじゃないか。あるいは世論調査を見ますと、いわゆる一%突破の問題について異論があると言われておりますが、私どもは突破という気持ちはございません。また世論調査を見ましても、これは設問の仕方によって答えが違っているのです。言うなれば、国民の皆さんにまだまだ一%をなぜ超えたか、それと防衛費の問題についてさらにさらに私どもは積極的に御理解を得る努力をしなければならない。そういう意味合いでは、きょうお話しのような御意見を承りまして、そういう国会における論議をどんどん進めていくことが必要じゃないかと思います。  なお、誤解をされておる近隣諸国につきましては、私みずからもその機会に、そういうことではない、先ほども申しましたように、日本民主主義体制というものは戦前と違うのだ、決して軍事大国にはならぬのだということを積極的に御説明申し上げたい、こう考えております。
  182. 神崎武法

    神崎委員 私は、一月二十四日の閣議決定によるいわゆる新基準というものも新しい歯どめにはなり得ないのじゃないかと思うわけでございます。この新基準は総額明示方式を採用しているわけでありますけれども、結局中期防の総額明示方式、これを使っているわけでございます。もともと中期防は、三木内閣の閣議決定の一%枠厳守を破るために六十年の九月に一%枠を突破した形で策定をされたものであります。それを使ってこの一%枠突破後の歯どめだというのは私はおかしいのじゃないか、もともと歯どめをする意思がないからそういう中期防を使っておるのじゃないかと思うわけでございます。  さらにこの中期防は後年度負担という名の、ツケの後払いを多用しているわけでありまして、防衛費は末広がりにふえていくという宿命を常にこれは持っているわけでございます。したがいまして、ポスト中期防というものをどうするか、ここを明確にしておかなければ、この中期防による総額明示方式自体が新しい歯どめにはなり得ないと思うわけであります。ところが、実際にはこのポスト中期防については全く有紙の状態だということでございます。そういうことになりますと、第一次から第四次までの防衛力整備計画、年次防方式が倍々ゲームと言われる防衛費の拡大を招いたと同じことが繰り返される危険性というものが常にあるわけでございます。  そこで総理にお尋ねをしたいわけでございますけれども、ポスト中期防、これは総額明示方式をとられるのかどうか、この点を含めまして、ポスト中期防にはどういう歯どめをお考えになっているのか、また、過去の年次防の倍々ゲームを繰り返さないためのどういう保障というものをお考えになっているのか、この点についてお尋ねしたいと思います。
  183. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 中期防というのは、御案内のとおり総額で十八兆四千億、六十年方式で、ということでございまして、これは別に一%を突破するために設定したものだと思っておりません。一番重要なことは、一%も非常に重要であるけれども防衛力の整備も非常に重要である、どちらを優先するかということになると、やはり防衛力の整備ということでなきゃならぬじゃないかというのがここのところの私どもの考え方です。特に私はそのことを強調してきた。大綱というのは御案内のとおり……(発言する者あり)今、番外からお話がございましたけれども、大綱というのは必要最小限度の防衛力の整備ですから、そのこと自体を十分によく理解すれば今の不規則発言は出てこないと思いますが、いずれにいたしましても、中期防衛力整備計画というのは、十八兆四千億でちゃんと決まっておりまするし、また六十六年度以降も、今度の閣議決定におきまして、いわゆる昭和五十一年の防衛費に関する閣議決定の精神を踏まえてやっていく、こういうことでございます。  六十六年度以降はどうするかという問題については、いわゆる軍事情勢あるいは国際情勢あるいは財政経済情勢を勘案してその時点で考える。これは、これからの内閣の手を練るわけにいきませんからそうなっていますが、実質的にはいわゆる中期防方式でいくものと私は思います。それが妥当だと思います。中期防方式でいくと倍々ゲームになるじゃないか。それは違うので、この前も話したとおり、二次防から四次防になりましたときには、高度経済成長ですべてのものがどんどんどんどん上がったんです。昭和三十七年と五十一年、二次防と四次防を比べてみますと、社会保障費については十六倍、文教及び科学振興費については十倍、公共事業費については八倍、防衛関係費については七倍、一般会計歳出については十倍、国民総生産につきましては十倍。その中で防衛費が一番伸びが少ないんです。ですから、倍々ゲームでいったから今後も倍々ゲームでいく、そういうものではないということを御了承いただきたいと思います。
  184. 神崎武法

    神崎委員 今回の閣議決定では、三木内閣の「節度ある防衛力の整備を行うという精神は、引き続きこれを尊重する」ということをうたっているわけでございまして、また、今防衛庁長官も、この三木内閣の閣議決定の精神を引き続き尊重するんだから、そんな防衛力が急激にふえるということにはならないんだ、こういう御答弁をされたわけでありますが、そうであるならば、精神とおっしゃるけれども、非常にこの精神というのはわかりにくい。国民の目から見て、数値でこの精神というものをどう判断したらいいのか、ぜひお答えいただきたいわけでありますけれども、三木内閣のこの精神ですね、これはGNP一%以内というのか、あるいはGNP一・一%以内というのか、半分ぐらいの一・五%未満というのか、GNPの二%未満というのか、どこまでが三木内閣の精神なのか。防衛庁長官、どうでしょう。
  185. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 節度ある防衛力ですからね、一%を大きく超える、そういうものでないということです。それが一・幾らだということは言えません。
  186. 神崎武法

    神崎委員 そこがわかりにくいわけですね。ですから、大体このぐらいなんだというところが数値で、何も私今具体的にここまでだと、そこまで言えということを言っているわけじゃありません。大きく言って大体どの枠でこの一%、この三木内閣の精神というものを守るつもりなのか、数値で言うと大体のところは、目安はどんなところなのか、こうお尋ねしているわけです。
  187. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 ですから、それは一%を余り大きく超えないということです、抽象的に言いますと。もっと言うと、具体的には、予算を組みますね、そのことが一%を大きく超えているか超えてないか、最終的な結論は国会で決めていただく、そういうことであります。
  188. 神崎武法

    神崎委員 本当にわかりにくい答弁でございますけれども、この一%突破問題につきまして、私どもが訪米をした折にも、米国側は、脅威対処論の立場からこの日本政府の決定は歓迎するんだ、こういう発言があったわけでございます。実は、この「防衛計画の大綱」以前の年次防の考え方というものは、脅威対応の所要防衛力構想であったわけでございます。大綱とリンクいたしましたこの一%枠を取り外しましたことは、大綱の哲学でございます限定小規模侵略に対抗する基盤的防衛力構想から脅威対応の所要防衛力構想にかじを切り始めたんじゃないか、私はアメリカでのやりとりでもそういう印象を受けてきたわけでございます。そういう意味において、この一%突破は「防衛計画の大綱」の見直しに次の段階にはいくんじゃないか、こういうふうに考えられるわけでありますけれども、この点はどうでしょうか、総理
  189. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 大綱水準を達成するためにいわゆる防衛計画を立てているわけでございますから、大綱水準を超えるというためにやっているわけじゃない。そのことは明瞭でございます。大綱水準の達成のために、今着実に計画を立てているのですから。
  190. 神崎武法

    神崎委員 そういたしますと、今後も、いわゆる中期防においても、ポスト中期防においても大綱の見直しは全く考えていない、このように受けとめてよろしいでしょうか。
  191. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 情勢に特別の変化が起きてこれからの内閣がどうするか、その点については私は言及するわけにはまいらない。ただ、特別の事情がない限り、今の大綱水準を守って防衛力を整備していく、これは当然だと思います。
  192. 神崎武法

    神崎委員 以上で終わります。
  193. 今井勇

    ○今井委員長代理 これにて池田君、神崎君の質疑は終了いたしました。  次に、木下敬之助君。
  194. 木下敬之助

    ○木下委員 総理に早速お伺いいたします。  アメリカのレーガン大統領が二十七日、日米半導体協定違反を理由に日本に対して報復関税を課すことを発表しました。これは、日本製電気・電子機器に一律一〇〇%を課し、総額三億ドルという厳しいもので、実質上輸入禁止に等しく、日米経済関係は戦後最大の危機を迎えたと言えると思います。このことを総理はどう受けとめてどう対処していくおつもりか、お伺いいたします。
  195. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 甚だ残念な結果であります。日本側としては非常に懸命な努力をいたしまして協定を遵守しておるところでございます。通産大臣からもけさ御答弁がございましたが、日米関係直接そのものについては問題はない、第三国市場を回っていくものの一部について向こうから摘発らしきものがあった、そういうことであります。  そういう意味におきまして、日本側としては協定に違反した覚えはないし、今全力を尽くして努力をしている最中であり、そういう意味において、緊急の協議を要請して、そして審議官を派遣する、こういうことによりまして、できるだけ早期にこの問題を解決すべく努力してまいりたいと思っております。
  196. 木下敬之助

    ○木下委員 このような措置は当然ガット違反だと思われますし、また、十五品目といわれておる報復対象候補品目の中に、写真フィルムのように半導体と直接関係のない品目も候補に上っている等、不可解な点も多々ございますので、強い姿勢で交渉に当たられることを期待いたします。  お伺いしたいのですが、今円高がまた急激に進んでおるような事態でございますが、この措置とここのところの円高とは関連がございますか。
  197. 田村元

    田村国務大臣 それは円高といいますのはいろいろな要素から出てまいっておりますから、全然関係がないというわけではないでしょうけれども、例えば日本に対する経済財政上のいろいろな措置のいら立ちとかいろいろあるでしょうけれども、直接的には関係はないと思います。
  198. 木下敬之助

    ○木下委員 日米経済間の問題は円相場に大きな影響を与えていると思います。この三月二十四日に円が一ドル百五十円台を突破して以来、かなりどんどん高くなってきたように思います。きょう午前中の御答弁の中で百四十五円と言われておりました。その後百四十四円七十五銭という高値もつけたようで、先ほどちょっとお伺いしたら、結局百四十五円三十五銭で午前中が終わった、このようなことでございます。  かつて宮澤大蔵大臣が二月二十二日にパリで行われたG6に参加されて帰ってこられたころのことについて、三月十三日の予算委員会での御答弁では、総理は、百五十円を割るうというときには、これは絶対防止しなければならぬという意味で下げどめのくさびを打とうという趣旨であります、これはドルの下げどめという意味であります、このように言われた、私たちは、もうこれで百五十円を突破するようなことはないのだな、こう思っていたのですが、現実には今私が述べたような状態でございます。このことを総理はどう受けとめておられますか、お伺いいたします。
  199. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 この間のいわゆるG7の会議におきまして共同声明が出ましたが、あの中の最後のところに、為替相場の問題についてはアラウンド・カレント・レベル、そういう言葉がありまして、大体この周辺において長期安定を願っておる、そういう線が出ておったのであります。それが大体百五十円台ということでありましたから、そこで日本としてはその線を維持する、そういう考えに立って今まで介入とかその他の努力も促してきたところであります。  詳細については大蔵大臣から御答弁いたします。
  200. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ということで各国の蔵相、中央銀行総裁が合意をいたしたわけでありまして、したがって、今回それを割り込む事態が起こりましたについて各国がおのおのの立場からおのおのの負担において共同介入をかなり大きな規模でやっておるというのが今日までの現状でございます。何ゆえにこのようなやや思惑的な動きが起こりましたか、少し時間がたってみませんと分明ではございませんが、ともかくそういう動きに対して各国が共同の防衛に立っておるというのが現状でございます。
  201. 木下敬之助

    ○木下委員 確認いたしたいと思います、大蔵大臣。  二月二十二日のパリG6時点での合意の前提であった、当時の各国のファンダメンタルズ、この認識の変化はない、このようにおとらえてございますか。
  202. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それからわずかの日しかたっておりませんので、ファンダメンタルズそのものがそんなに急激に変化するとは申せないと思いますけれども、ただ、各国おのおのについて起こっております事情については、市場筋はやはり非常に敏感にそれを見ておるということはあるいは事実であろうかと思います。     〔今井委員長代理退席、委員長着席〕
  203. 木下敬之助

    ○木下委員 このように円高によってその影響を強く受けておるのが特に中小企業の経営者であるということは言うまでもないと思います。政府はどのような基本姿勢で中小企業対策を講じようとしているのか、お伺いいたします。中小企業対策をお伺いしております。
  204. 田村元

    田村国務大臣 御承知のように特定中小企業者事業転換対策臨時措置法とか特定地域中小企業対策臨時措置法等の施行を初めとして、数次の円高関連中小企業対策を講じてきております。この二つの法律を骨格として、業種対策あるいは地域対策をいたしておりますが、六十二年度におきましてさらに下請中小企業の構造調整支援策等を充実することによって支えをしようと考えておりますが、まことに残念ながら、この内容の性格上、これが暫定予算の中に入らなかったのです。でございますから、何とかこの本予算を一日も早く通していただいて、中小企業者をとにかくお助け願いたい、これは与野党を通じて私は心からお願い申し上げたい。  今、これは百四十円台に突っ込んできた。これからどうなりますことやら。そうなりますと、下手すれば軒並み倒産ということは起こり得るのです。でございますから、どうぞ中小企業者のために予算を一日も早くお通しいただきますように心からお願いを申し上げます。
  205. 木下敬之助

    ○木下委員 それは、売上税を撤回すれば異存のあることはないと思います。  下請企業対策は、これまで必ずしもニーズに対応したものになっていないようですが、特に下請企業経営者の立場を十分考慮された、きめ細かい対応を講じる必要があると考えますが、政府施策をお伺いいたします。
  206. 岩崎八男

    ○岩崎政府委員 ただいま大臣から申し上げました新地域法あるいは新業種転換法、これらは、現在製造業の三分の二は下請企業と言われておりますので、十分下請企業者にも裨益するつもりでやっております。  ただ、下請企業という特定の形に着目した施策をさらに充実したいということで、六十二年度本予算におきまして下請企業者の転換のための技術開発、あるいは下請企業者に対する技術アドバイザー制度の抜本的拡充、あるいは特別の低利融資制度の創設、こういうことを実は考え、六十二年度予算の中に盛り込んでおる。これを、今後成立し次第、私どもできるだけ早急に実施に移したいと思っております。  また、下請代金支払遅延等防止法の運用につきましても、各半期ごとに約二万八千事業所、昨年度も上半期二万八千、下半期二万八千調査をいたしました。そこの書面調査で違反の疑いがあるものについて、六十年度下期調査については昨年の上期に千九百二十事業所に対し実施し、それから六十一年度上期調査の結果に対して昨年後半にさらに四千三百八十二事業所について現在立入検査をしている、こういう状況でございます。
  207. 木下敬之助

    ○木下委員 売上税について御質問いたします。  宮澤大蔵大臣にお伺いいたします。  大臣は三月十三日の予算委員会の御答弁で、売上税は転嫁が原則である、こう言われていると思います。この点をもう少し確認させていただきたい。価格転嫁できるのかできないのか、これは大問題でございます。価格転嫁が望ましい、価格転嫁はできると考えておられますか。
  208. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 価格転嫁が本則でありますし、それができると思っております。
  209. 木下敬之助

    ○木下委員 今いろいろな業界とか自民党の独占禁止法特別調査会等で、売上税が導入された場合の販売価格に転嫁するやり方について議論がなされているようでございます。業者が申し合わせて税額を外枠表示する。これは、定価が一万円、そして税額五百円、合計一万五百円、こんなふうに値札に書くのだと思いますが、これを実際に効果あらしめるようにしようと思うと、ただそういう方式を話し合うだけではなくて価格決定まで話し合わなければ円滑な転嫁はできない、こういった意見が多くて、価格決定の協議をすることが独禁法違反なら、立法措置をしてでも価格決定の話し合いをして転嫁できるようにすべきである、こういった意見も出ておるようでございます。  ちょっと公取に確認しておきたいのですが、外枠表示を申し合わせること自体は当然違反でないと思いますが、その点と、価格決定まで申し合わせる、こういうことにすると、それが仮に売上税導入時の当初のみだったとしても、これは違反になりますか。
  210. 高橋元

    高橋(元)政府委員 最初にお尋ねの表示方法の方からお答えいたします。  例えば税抜き価格と売上税額とを並べて書く、それから、税込み価格と売上税額を並べて書く、それから税込み価格一本で書く、こういういろいろな表示方法があろうと思います。こういう価格の表示方法は、価格の内容を明らかにするものであって、消費者の正しい商品選択を容易にするという効用があると思います。したがって、事業者団体で今申し上げた三つのいずれかで表示する基準を設けるということについては、独禁法上特段の問題はございません。  それから第二点でございますが、事業者団体が各構成員の公正自由な事業活動が正常に遂行されるように売上税分の転嫁の仕方、新価格の表示方法、これはただいま申し上げました、などに限って話し合いをすることは問題にならないと考えておりますが、売上税の転嫁に便乗して事業者間で商品一サービスの対価を決定するということは独占禁止法に当たる行為であると考えております。
  211. 木下敬之助

    ○木下委員 大蔵大臣、このように、価格転嫁させようと思ったら立法措置をして話し合ってやったらいいのじゃないか、こういうことも言われておりますが、こういった方向をどう考えられますか。歓迎されますか。転嫁を望んで、転嫁できるとおっしゃっている大臣、転嫁するためにこういう道もあるということを言われておりますが。
  212. 宮澤喜一

    吉澤国務大臣 今公取委員長が言われましたように、価格そのものをみんなで相談をして決めるということが独禁法の違反になる、こういうことでございますと思いますが、今回の場合、転嫁が行われる結果、一度だけ価格がその分だけ上昇をする、転嫁というのはそういうことであると思いますが、それを確保するためには、表示だけでなくて、価格そのものについてみんなの相談、申し合わせが成立しないと有効に転嫁ができないのだ、そういう議論そのものに私自身は実は疑問を持っております。そうは言えないだろうと思っております。  さて今度は、全くの立法論としまして、こういうことの転嫁を確実にするために、そういう場合に限っては、ということは、あるいは期間で切りますとか場合で切りますとかいうことになろうかと思いますが、限ってはそういうことを独禁法の例外として立法するということがいわば立法者としての意思として考えられるかどうか、私どもの党内でそういう検討が行われていると実は私は承知をいたしております。立法技術としては相当難しいのではないかと思いますけれども、党内でそういう検討が行われているように聞いております。
  213. 木下敬之助

    ○木下委員 それを望んでおるかどうかははっきりはお答えになりませんでしたが、とにかく価格転嫁するために、金額等も話し合って、そして申し合わせて外枠に表示をする、こうすれば価格転嫁がしやすいと。これは課税業者の場合はそういうことでございましょうが、一体非課税業者の方はどういう形でやれば価格転嫁ができるのでしょうか。非課税業者が、当然値上がりになるのはもう皆さん御承知でしょうけれども、今まで八千円で仕入れて一万円で売っていた、これは課税業者であるならば八千円で仕入れるときに八千四百円になって、その一万円が一万五万円で売るわけですが、非課税業者であっても、仕入れが八千円に四百円の税を払えば、一万四百円で売らないと今までどおりの収入ができない。そういうときに、どうやればいいのでしょうか。価格を、自分のところはもともと一万円だったものを、大きな業者は話し合ってこれに税額五百円、こういう書き方ですれば転嫁がしやすいじゃないか。非課税業者は、まさか自分のところの仕入れ値がはっきりわかるような、一万円、これは前は仕入れ値で四百円払いましたとか書くわけもいかぬし、課税業者の場合はそのほかに運送賃とか配達賃とか、いろいろなものが税額控除される仕組みになっております。ところが非課税業者はそれがありませんから、その四百円の上にそういった税額で負担が増になった分も足してやらなければならぬ。こういったものを一体どんなふうに非課税業者はやっていけばいいと考えておられるのですか。
  214. 宮澤喜一

    吉澤国務大臣 問題は非課税業者の場合でございますから、非課税業者の場合には、この五%そのものの税金があるために価格が上がるわけではない。木下委員のおっしゃいましたのは、国内の各経済のいろいろな分野において売上税の影響を受けていわばコストがそれだけ上がっていくであろう、それはそういうことであろうと思います。そういう場合でございますと、例えば輸入原材料の価格が上がったとか、あるいは一般的な、仮に幾らか物価騰貴があるとかいうことで物の値段というのはしょっちゅう動くわけでございますから、それをどのようにして小売業者が消費者に転嫁をするか、小売価格を上げていくかという一般の問題に帰着するのだというふうに私は思います。
  215. 木下敬之助

    ○木下委員 大臣、もう一度よく聞いてください。  非課税の品目にもいろいろかかってくるという話じゃないのですよ。課税品目です。課税品日を、非課税業者ですから、八千円で仕入れて一万円で売るときは、この八千円で仕入れるときにもう八千円に四百円の税金を払わなければなりません。基本的のベースにぽっと四百円積むのですよ。そのほかにも自分のところが運送賃やらいろいろなものでもっと上がってくる。だから課税業者の方は、今まで八千円で入れていた、これを一万円で売って五百円、一万五百円で売ればそれで済むし、そのほかにもいろいろとかかった配送費等のものは、その中から、自分のところが納める分の中から税額を引かれるわけです。非課税業者の場合は、そのもともと払った四百円の上にいろいろなものも、次に価格転嫁してもらわないと合わなくなる、こう申し上げておるのですから、価格競争は、もし利幅の少ないところだったら、もしかしたら課税業者の方が安く売れるという状態も考えられるほどの問題でございます。その辺、微妙なものの積み重ねと錯覚なさらずに答えてください。
  216. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 いや、それは同じことだと思います。  どういう事由かで前段階までの間にその品物の値上がりがある、しかし自分自身は非課税業者でございますから自分がそれを今度、つまり自分のところはそれを乗せるということはない、単純にそういうケースだと思います。
  217. 木下敬之助

    ○木下委員 それは、この税法はすごく欠陥があるということじゃないですか。一億以下の業者は小さくて大変だから非課税にしようと言っているけれども、実際こうやって話してみると、課税の方はいろいろと転嫁する道は、これは税金で上ったのだから下さいと言える。非課税の方は、いろいろ上がって、結局は、もっと上がるかもしれないけれども、それは税として取れない。自分のところのただの値上がりでしか取れない。これは大臣、私は非常にやりにくいと思います。  いろいろなことが言えると思いますけれども、そうですね、例えてクリーニング。背広なんかにクリーニング券かなんかつけて出てきたりなんかします。あのクリーニング券なんか、今発行していたものが、仮に税が導入された後にそれを持ってきてクリーニングしてくれということになると思います、これは六百円か八百円か、幾らかわかりませんけれども。そのときに、課税の業者であれば、これに税金がつきますから、済みません、もう三十円下さいと、これは税でもらいやすいですね。ところが、非課税の業者は、いや、実はその、何とかにかかって、あれやこれかかったからもう二十円負担してくださいと言ったって、これはなかなかもらえないのじゃないですか。  だから、結局この税は、課税業者は正当に税として消費者に要求する権限がある、まあ権利みたいなものがあるのか買う方は払わなければならぬ義務があるのか。非課税業者の場合は、それまでに自分のところが実際は税として払ったものだけれども、これはただの値上がりとして交渉するしかないのか、この辺を明らかにしていただきたいと思います。
  218. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 同じことをおっしゃていらっしゃると思います。今のクリーニングの場合は、課税業者であると五%要求できる、それは課税分でございましょうと思います。非課税業者であるとそれは別に要求しない。それは課税がないからである。いずれの場合も、その前段階までにクリーニング料というのが何かの事由で上がっておりますと、したがってそれを請求するというわけにはいかない。それは自然の形で値上がりするということなら別でございます。
  219. 木下敬之助

    ○木下委員 ということは、非課税業者は転嫁できないということじゃないですか。転嫁するのに大きな業者の方はいろいろな方法がある。ところが非課税業者はない。私は、この非課税業者は、そうじゃなくても流通の中間段階に入ったときは不利益になると言いましたけれども、原則的には私がここで提起した問題は同じ問題を含んでいると思います。このことを考えたときに、非課税業者は一体どのようにやればいいと思っておられるのか、転嫁を望むと言われた大蔵大臣が一体どのように非課税業者に転嫁するように指導していくのか、お伺いいたします。
  220. 宮澤喜一

    吉澤国務大臣 同じ問題を御議論になっておると思いますのは、課税業者であれ非課税業者であれ、その売上税の施行によりまして、課税部門あるいは非課部門、経済のいろいろな分野に起こっている一般の資材のあるいはサービス料金の上昇というものは、それはそれ自身を消費者にこの税として要求するということではないんだと思うのでございます。つまり一般的な、非常に大きくはございません、むしろ小さいのですが、やや微弱な物価騰貴が経済全体に一偏だけ起こる、そういう部分は、これはどこへどういうふうに請求するということではありません。
  221. 木下敬之助

    ○木下委員 大臣、大きい業者はいろいろやって転嫁しやすい方法をやっている、それに対して非課税業者は転嫁する方法がないじゃないか、私はこの不公平をどう大臣として受けとめるのかをお伺いしておるのですが、これがいつも同じ質問に聞こえますか。私は、大臣は何か私の質問に全然答えてくれてないと思いますが。
  222. 水野勝

    ○水野政府委員 課税業者の場合に、六百円の例でございますと三十円お上げになる。ただその場合に、先ほど御議論のございました別枠表示されるかされないか、これはそれぞれの業界なりそれぞれの業者の方の御選択で、課税業者の場合にすべて別枠表示されるということでもまずなかろうかと思うわけでございます。そうしますと、新しく課税業者の場合は六百三十円になる。それに対しまして非課税業者の場合は、前段階の税額がございましても、今のお話ですと二十円ぐらい高くなるかもしれない。しかし、いずれにしましても課税業者の場合は、税込みあるいは別枠表示かもしれませんが、六百三十円の御請求になる。片や非課税業者の場合は、あくまでその業者の段階の付加価値部分は非課税でございますから、経済的にはいかなることがございましても有利であることは否定はできないであろうかと思います。したがいまして、表示する、しないということと、もう一つ経済的に有利、不利ということで考えますれば、あくまで有利でございますし、それは課税業者の場合が別枠表示されれば、非課税業者の場合は、これは当店は非課税ではございますが根っこがございますという御説明かもしれませんし、あるいは課税業者が別枠表示されません場合ならばもろに十円安い、そこが不利であるということは絶対にないのではないかと思うわけでございます。
  223. 木下敬之助

    ○木下委員 それは、今そのクリーニングの例をやって、クリーニングの場合は原価みたいなものが二十円しか上がらないということを言っておられるかもしれませんけれども、そうじゃなくて、例えばそれなら作業衣みたいなものを八千円で仕入れて一万円で売るように、もうずっと一年契約を結んでいたとします。そうしますと、一年契約を四月から来年の三月三十一日まで結んでいたとすれば、来年の一月から三月まで、来年に導入されれば、その分は売上税がかかってくるようになる。契約をちゃんと結んで、商人の話し合いとして、今まで一万円で売ります、こう言っていた。これが課税業者であるならば、仕入れも八千円で入れていたときに、四百円上がるかもしれないけれども、税金として五百円上がりましたからと言って、契約は契約だけれども税金は消費者の方が負担すると言っているからあなたの方が負担してください、こう請求する権利があると思います。  ところが非課税業者の場合は、自分のところは、仕入れ八千円で買うときに卸屋の方からは今まで八千円で卸しておったけれども四百円上げてください、これは請求されるから払わなければならない。ところが請求するときには、これは税金じゃないのだから、ただ仕入れ値が上がったから、もらえないじゃないですか。ましてこれは、こんなものは商売ですから話し合いでするでしょうけれども、その話し合いというのはどこまでももめたときは、では最終的には裁判をしたときにどっちが払わなければならないのかということです。  この原則は、非課税業者の方に不利ならば話し合いは弱いに決まっていますよ。私はこの点は、この税制、もっときちっと本当の小売業者の立場に立って、そこで現場で話し合う人間が一体、前に一遍出したクリーニングの券を、六百円のを持ってきたときに、税金がもう三十円かかるから下さい、お客さん、済みません、あれはもう以前のものですからというのはもらいやすいかもしれないけれども、実は何とかがかんとかでもう二十円上がりましたなんかいうのが、あっちだったら三十円でこっちだったら二十円だから二十円の方がやりやすいなんて、そんなことはないですよ。商売というのは十円、二十円の問題じゃない。やはり責任があって払わなければならぬと納得して払うお金なら高いとは思わないけれども、一銭だって払わなくて済むものは払いたくない、こういうものが商売のそういうときの話の原則じゃないですか。私は、きょうお伺いして、こういう本当の末端のこの売上税によって影響を受ける人たちの気持ちになってこの税を本当に検討したのかなと、腹が立ってたまらないです。  時間がどんどん来ます。こういう点をだんだん熟知してくると、全国で五百六十七万ある非課税業者、これはやはり課税になった方がいいという選択をする可能性が私は大変大きいと思います。そして、先ほど私は一年間の契約かと言いましたが、政府は、非課税になったり課税になったりするようにできるようになっています。これは、非課税業者が長期契約をして、そろそろ課税になろうか、もしくは売り上げが上がってなったとします。そうすると、今度課税の分を今までの契約からまたたくさんもらわなければならなかったり、かなりこの非課税業者、こういった問題、混乱が大きく予想されております。そして、ただいま申し上げましたように、この非課税業者が課税業者への道を選択したとすると、これは、かなりの大量なものが非課税であるからこれは網羅的じゃなくて大型間接税ではないと言われた総理、こんなことで非課税業者が不利だということがだんだんわかってどんどん課税業者への道を選んだときに、まさに網羅的になりませんか。そして、ほかのとの関係でやはり少しでも税金が安い方がいいということで仮に非課税業者が非課税のままで選んだとしても、この税金の影響は企業者にかかるんじゃないですか。こんな大変な課題を、非課税業者だったからというわけじゃない、いろいろなものを抱えていかなければならぬ。私はまさに大型間接税だと思います。総理、どうですか。
  224. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先ほども申し上げて、どうもおわかりいただけなかったのは残念ですが、要するに、非課税業者を選んで、その上に損をするということはあり得ないわけであります。取引上非課税業者であることが不利であるということはあり得ますけれども、計算上損だということはあり得ない。殊に、非課税業者が消費者を相手に、小売が消費者を相手に売ります場合には絶対に課税業者を選ぶということはあり得ない。それはみすみす損でございます。商売上も損でございます。あり得る場合は、非課税業者がつまり例えば納入をするといったような場合に、納入業者として不利な立場に立つことはあり得る。そういう人たちが課税業者を選ぶ数はどのくらいかと先般御質問がございまして、主税局長がそれは四、五十万というふうにお答えをいたしたと思います。三十万、四十万ですか。絶対が六百何十万でございますから、動きましてもその程度のことでございます。
  225. 木下敬之助

    ○木下委員 私はそう思いません。今絶対に損することはないと言いましたけれども、利幅の非常に少ないところもございますよ。先ほど私は八千円で仕入れて一万円と申し上げましたけれども、これをずっと極端な例でします。九千九百円で仕入れて一万円で売る、百円しか利幅がないような業者があったとします。その非課税業者は九千九百円に対して売上税をもう支払っております。それを全部上乗せしたときで、値段はもちろんこれはなにですが、一万円に今払った九千九百円に対する売上税分を上乗せしたときでやっと今までと同じ百円の利益を生むことができます。それにはしかし配達料やら輸送料やらそんなものに対して払った売上税が引かれません。ですから、そのコストが余分にかかってくると、課税業者よりも高い値段で出さなければならない非課税業者が計算上は出てくると思います。私は、時間がございませんからこれ以上この問題を詰めることはできませんが、問題を提起しておきますので、十分御検討をお願いいたします。  もう少ししかございませんから、最後に総理にお伺いいたしたいと思います。  売上税が国会決議の一般消費税に当たってこれは国会決議違反じゃないか、このように言われております。このことを整理していくために、まず売上税が税制分類上の一般消費税であるかないか、このことを確認せねばならぬと思います。これは固有の、五十三年の十二月に骨子の出たものであるかないかという話の前に、まずは分類上の、ごく普通に皆さんの使っておる一般消費税であるかないか。ないとすれば、これは国会決議、問題ありませんが、総理は、先日の永末我が党副委員長の質問に、「これは一般消費税ではなくして、性格的に言えば付加価値税の一種である、そういうふうに考えておりまして、一般消費税ではございません。」このように答弁されて、聞いておりますと、これは一般消費税ではなくて付加価値税です、こう言うと、この二つはまるで両立しないものを言っているように聞こえます。  ところが、実際は両立するわけでしょう。ですから、国会決議の言っているものが固有のものを指しておるか、それとも通称的なものを指しておるかは別の論議にしまして、とにかくこの売上税が分類すれば一般消費税の一種である、このように思いますが、どうですか、総理
  226. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 国会決議における一般消費税(仮称)、前に竹下大蔵大臣がいつも(仮称)、そう言ってきましたのは、あのとき論議された一般消費税である。それは大平内閣が選挙のときに初め考えた一般消費税である。今度のものと一番根本的に違うのは、今度のものは累積課税を避けている。この前の場合には累積課税を認めておる、そういう点が著しく違っておる。そのほかのいろいろな点は一億円であるとか、除外品目をうんと多くしたとか、あるいは税率が違うとか、そういう点がございますが、ポイントはそういう点が一番中心にあるのではないかと思います。  間接税というものを消費税である間接税という抽象論で言えば、これは一般的な間接税である消費税という範囲に入るかもしれませんが、あのときの国会決議で決められているのは、ちゃんと性格が決められている一般消費税であったのです。
  227. 木下敬之助

    ○木下委員 その国会決議に違反するかどうかは、またこれが一般消費税(仮称)の修正版であるかどうかというのは次の論議にすることにしまして、とにかくこの売上税が普通分類で言われている一般消費税の中に入る一種だ、このことは今お認めになられましたですね。
  228. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 それは今申し上げましたように、一般論として間接税の中で消費にかかる税金である、そういう意味においてはこれは消費にかかる税金、転嫁を前提としておるものでありますから、定義の仕方によっていろいろ変わるでしょうけれども、一般論としては入り得るものである、そう言えるでしょう。
  229. 木下敬之助

    ○木下委員 時間が来ましたので。
  230. 砂田重民

    砂田委員長 これにて木下君の質疑は終了いたしました。  次に、工藤晃君。
  231. 工藤晃

    工藤(晃)委員 日本共産党・革新共同を代表して質問をします。  まず、売上税問題で総理に対しまして。先ほども聞いておりますと、売上税導入、マル優廃止は公約違反ではない、ただ国民への説明が足りなかったということを述べておりました。しかし、昨年選挙で総理が連日のように演説して歩いた内容によりますと、野党の皆さんが言うような大型間接税は導入しません、国民が反対するような大型間接税は導入しません、そういうことを繰り返しておられました。だとすると、公約違反かどうか判定するのは国民の側であります。野党の共産党の側であります。  そして、NHKの世論調査でも公約違反は七六%である。今回の税制改革反対六六%である。朝日新聞の調査では、公約違反七四%である。売上税反対は八二%である。もう国民の判定、審判は下っているではありませんか。だから、説明の足りなかったことを反省するというのではなしに、公約違反というのを反省しなければならないのではないでしょうか。
  232. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 公約違反でないということは、先ほど午前中も申し上げたとおりでございます。国民の皆様方に対しては、今後とも精力的に御説明申し上げて御理解を深めていくようにいたしたいと思っております。
  233. 工藤晃

    工藤(晃)委員 国民が反対するような大型間接税はやらないって、国民がもう七割も八割も反対しているのに、なお今さらそういうことを言うのですか。先ほども言いましたように、この問題の審判官は国民ですよ。アンパイアは国民であります。もう公約違反だと言っているのにあなたは審判が判定を下してもまだおれが勝っているかもしれないと言っているのと同様ですよ。  それで、続いて聞きますけれども、先ほども、定義に基づいて大型間接税はこういうものであるということで、そういうものではないということを盛んに言われますけれども、総理がたしか一昨年定義のあるものを述べられたときに、私二月十六日に聞きましたね。西ドイツの付加価値税は、医療、教育、放送、金融、保険、郵便などを非課税にしている。そうすると、総理の言う包括的、網羅的、普遍的というような定義では、西ドイツの付加価値税などは首相の言う大型間接税に入らないということになってしまうのではないでしょうか。三度聞きました。会議録があります。三度とも答えられないし、ここまでしか答えられないということで、結論がそうなったわけであります。しかし、そもそも分類に関する定義というのは、世界にあるもの、現実にあるもの、これが当てはまるか当てはまらないか、それが説明できない定義というのは、定義としては全く無意味であるし、世間に通用しませんし、世界にないようなものをお考えになってつくった定義なら、ますますそれは通用しないわけであります。あのとき私がそういうことを言うのはヨーロッパの付加価値税導入、それを意図しているからだと判断せざるを得ないと聞きましたけれども、あなたは私のことを否定もしなかった。あのときから、やはりそういう意図をお持ちになっていたのではないでしょうか。
  234. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 税制調査会の答申を待って、白紙の状態であったのであります。  いわゆる大型間接税につきましては、この国会で私からちゃんとした定義を申し上げておりまして、それは公明党の書記長さんも民社党の書記長さんも皆様方もちゃんと耳にしていらっしゃることでありまして、それが大型間接税ですと申し上げ、そして選挙のときにも、国民が反対し党員が反対するいわゆる大型間接税と称するものはという表現をわざわざ使ったのは、国会で答弁したということがやはり頭にあって言っておるわけであります。  それで、今度のようにこれだけ大きな除外例をつくりまして、一億円以下というものは除外する、これで約九〇%近くのものが除外される。あるいは対象物件にしても三五%、消費者物価を決める場合の対象の三五%しか対象にはならない。あるいは税率にしても五%で、ヨーロッパの国々が二〇%とか一四、五%近くであるのに対して、日本は五%である。税収に占める割合から見ましても、フランスあたりはたしか四五%は付加価値税でありまして、所得税、法人税と並ぶあるいはそれ以上の税源になっておる。あるいはドイツやイギリスにおきましても二二%あるいは二九%の税収率を占めておる。日本の場合は、六十二年度は三%でありまして、仮にこれが年間を通じてやるようになった場合でも最高一二%であります。しかし、これは地方税でなくなるものがありますから、間接税で。そういうものを差し引きしますと、たしか国税、地方税を通ずれば最高八七%程度であります。  そういうような面から見ましても、所得税、法人税の占めている割合、所得税にすれば十六兆、法人税にすれば約十二兆、そういうようなものに対して今回は二兆九千億円、そういうような情勢から見ましてもこれは明らかに大型とは言えないと考えておるわけであります。
  235. 工藤晃

    工藤(晃)委員 あなたが定義したということに対しては、先ほど言いましたように包括的で網羅的とか、ああいう、委員会の場で私が直ちにこれはどういう意味かと聞いて説明できないようなものは大体世間に通用しないですよ。しかも選挙のとき、あなたは大型間接税につきまして、国民の皆さんが考えている大型間接税と、私の頭の中にある大型間接税と、こう違いますと説明しましたか、一度もされなかったわけでしょう。しかも、これはもう文字どおり大型間接税です。  そもそも大型間接税というのは、税調がちょうど八〇年の十一月、五十五年の十一月、中期答申で「広く消費を対象とする間接税」と、このときこれが大型間接税というふうに呼ばれるようになって、そして税調の方で単段階のものから付加価値税というものは出されて、この中でも一番大型の付加価値税というのを出してきたわけであります。しかも五兆八千億といって、国民にとって大体一人当たり五万円、こういう額からいいましても、それかう業者の皆さんにとっては大変な、課税業者も非課税業者もつぶれるようなことになることからいっても大型間接税であることはもう疑いもないことを、選挙のときの公約をさっぱりどこかに置いてしまいまして、国民が反対するようなものを導入しません、国民が八割も反対しているのに、さらにまた公約違反でない、こういうことは絶対に許せないし、認められません。そういう態度をおとりになる以上、国民の反対はますます大きくなりますし、私も先頭に立って撤回を要求しますが、一つだけこれに関してもう少し質問をしておきたいと思います。  先ほどの質問にもありましたけれども、一般消費税と売上税は、付加価値税であるから仕組が違うと言いましたが、どこが違うのですか。総理は取引高税と混乱しているのじゃないかと思いましたが。
  236. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 一番の大きな違いは、累積課税を認めるか認めないか。一般消費税と言われる場合には国会決議に触れないようにということなので、もの国会決議の一般消費税というのはちゃんとした性格が決まっておりました。それは大平内閣のときの一般消費税で、さっき申し上げたような累積課税を認めるていのものであった、それが一番違う点であると申し上げるのであります。
  237. 工藤晃

    工藤(晃)委員 ちょっと大蔵大臣、訂正した方がよろしいのじゃないですか。一般消費税は累積しません、一般消費税というのは付加価値税の一種であります。違いは控除法をとるか税額控除法をとるかという税額の計算の違いだけ。これは本質的な違いではない。この違いについてシャウプさんは税額控除法というのは控除法の変形にすぎないと言っている。しかも、あの決議というのは、仕組みや構造は国民は理解しなかった。ですから、あの一般消費税は反対だという国会の決議、これに反して今度の売上税イコール付加価値税、一般消費税も付加価値税、これは全く同じタイプのものであり、構造であり仕組みであり、国会決議違反ではありませんか。今の答弁でいよいよはっきりしました。
  238. 水野勝

    ○水野政府委員 一点だけ補足をして御説明させていただきますと、一般消費税(仮称)につきましても、一応の累積排除の方式はとられておりますが、仕入れ控除方式と申しますか、アカウント方式と申しますか、とにかく一般的に世界で付加価値税なり今回の売上税でもとられております方式をとっておりませんので、その点が完全に累積排除なり二重課税の排除に一体なるのかどうか、その点が一番議論になったところでございまして、これが今回の売上税と一般消費税とで一番違う点でございますし、また一般消費税(仮称)が付加価値税と質的に異なっておった点ではなかろうかと思うわけでございます。  そのほか、免税点の点でございますとか、非課税範囲の点でございますとか、大きな差異はございますが、最初の点は御確認をお願いをいたしたいと思うわけでございます。
  239. 工藤晃

    工藤(晃)委員 絶対に納得できません。  私、これ、シャウプの「財政学」を持ってきましたよ。シャウプさんなら文句ないと思いますけれども、この中に一般売上税というのが、さっき言ったすべての消費を対象とする間接税ですね。その歴史を見ると、取引高税、製造者売上税、卸売売上税、小売売上税及び付加価値税、こういう歴史を遂げてきた。そしてこの消費型付加価値税については控除法が適切である、これがいわゆる仕入れ控除法ですね、一般消費税。そうなっているでしょう。そしてその変形として税額控除法というのがあるんだから、付加価値税の中で税額の計算の仕方の中に控除法と税額控除法の二つがあって、それで一般消費税というのは控除法をとった、アカウント方式をとった、そういうことになっているんじゃないですか。  だめだよ、大蔵省、あんな説明したら。ひどいよ、これは。そんなの大蔵省、無責任だ、そんな答弁。
  240. 水野勝

    ○水野政府委員 シャウプ税制におきますところの地方税としての付加価値税も、そのあたりはやや混乱をしております。それからまた、そのような控除方式をとっている例は世界的にないわけでございますので、現在ございますのはヨーロッパにございます付加価値税であり、インボイスによる前段階税額控除方式をとります付加価値税、これが世界にございます付加価値税でございます。
  241. 工藤晃

    工藤(晃)委員 大蔵省がこれほど認識が低いとは思いませんでした。シャウプ税制改革のとき、地方に入れたときの付加価値税と、これはシャウプさんが最近に書いた本の「財政学」ですよ。あのときはシャウプさん自身もこれを控除するかどうかわからなかったと言っていますから、そのときはそうだったかもしれませんが、これは比較的新しい「財政学」の中にある。そういう中で、一般売上税の中で最も高度なそういう付加価値税の中に、税額計算の仕方にこの二種類がある。むしろこの税額控除方式というのは、アカウント方式の変形であると書いてあるのですよ。  こういうことも御存じなくて、よく大蔵省は答弁すると思って私は不思議でしょうがありません。だから、もともとこの法案を提出しても、これほど無責任だとは思わなかったですよ。もう一度訂正してください、話にならないと思いますよ。
  242. 水野勝

    ○水野政府委員 シャウプの「財政学」は、私どもも一緒になって翻訳をしたところでございまして、十分承知をいたしておるところでございますし、確かにいろいろ控除方式がございますが、世界にあるのはヨーロッパ型であるということでございます。  もちろんいろんな控除方式があり、アカウント方式も累積排除の方式の一つであるということはおっしゃるとおりでございます。
  243. 工藤晃

    工藤(晃)委員 要するに、じゃ累積しない、取引高税でない付加価値税ということじゃないですか、一般消費税は。そのことだけはっきりさせてください。そんなことさえはっきりできないようだったらもう……。訂正してください。
  244. 水野勝

    ○水野政府委員 前回の答申におきましても、仕入れ控除方式の採用等によりましてヨーロッパと違っておるということを述べておるわけでございまして、(工藤(晃)委員「それはインボイスとアカウントとの違いだけだよ」と呼ぶ)その点が結局最後まで議論になり、結局転嫁をあいまいにしているという御指摘が強かったために、その点は改善をいたすこととして今回の方式を御提案を申し上げておるわけでございます。
  245. 工藤晃

    工藤(晃)委員 だから取引高税でない付加価値税である、税額控除の方式でどっちがいいかということだけであって、構造も仕組みも同じじゃないですか、一般消費税と付加価値税と売上税と。累積しないんじゃないですか。ただ、実際実行したときに、こちらの方が累積しやすいかしにくいかということだけであって、建前としては累積させない付加価値税じゃないんですか。そんなことはっきりさせてくださいよ、もう一度ここへ来て。そんなことじゃ議論にならないですよ、税制の議論に。
  246. 水野勝

    ○水野政府委員 前回の一般消費税(仮称)におきましても、その点は考えたわけでございますが、結局アカウント方式をとった、それが一番の難点で、これが果たして確実な転嫁を保証するものであるかどうか、その点につきましていろいろ議論があり、結局は前回のものはこれはとらないというふうに国会でも御指摘を受けているところでございまして、したがいまして、その点を改善をいたしましたと申し上げますのが売上税でございます。
  247. 工藤晃

    工藤(晃)委員 だから、やっぱり付加価値税じゃないですか、ただアカウント方式をインボイス方式に近づけただけじゃないですか。こんな答弁の仕方をして時間ばかりとっていたら、これは本当に売上税問題の討議、いつまでたったって大変ですよ。  このことはあくまで追及することにして、私も限られた時間がございますので、次の問題に移りますけれども、売上税はもうあらゆる面からいって大型間接税である。さっき言いました額からいいましても、一人五万円、四人家族で二十万円。一%を上げるだけで一兆二千億円、三%上げると防衛費を倍にすることができる。しかし、この五兆八千億円という数字は減税、増税を合わせるための政治的な計算ではございませんかということであります。  付加価値から見た税額計算というときには、必ず非課税業種のそこを外しますけれども、同時に、課税の生産物の中に入った非課税の原材料などは加えて計算しなければならない。したがいまして、これは業種ごとにはっきりと具体的な計算を示さなければならないのですが、今までのところ大蔵省は、ただ五兆八千億円ということだけであって、業種別にもどれだけ付加価値を見積もり、どれだけさらにつけ加えたか、これが出せないでいる。なぜ出せないのか。欠陥計算をごまかしているのではないか。そう言うのは間違いだというならば、そう言われたくないのであるならば、その根拠をはっきり示してください。それができるのかどうか。大蔵大臣、よろしく願います。
  248. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは資料で差し上げたのではなかったかと思いましたが、申し上げますと、結局付加価値の総体を二百兆ととらえまして、それから幾つか控除項目がございます。それは、第一は純輸出、純投資、それから非課税取引の課税対象、それから免税点以下の事業者にかかる課税税額を引かなければなりません。おのおの十三兆、十五兆、五十兆、十六兆を引きまして、残りが百六兆でございますから、これは六十年度ベースでございますので、これを六十二年度ベースに換算しまして百十六兆、その五%、こういう計算をいたしております。
  249. 工藤晃

    工藤(晃)委員 その数字はもう前からいただいておりますので、問題はそれぞれを計算するときに、例えば非課税取引とかの五十兆円を削りました、免税点も十六兆円を削りましたというときに、非課税業種のそれぞれについてどういう計算をしたのか求めているのに、それをいまだにお出しいただけないということでありますので、きょうは私の方から一つの計算を持ってまいりました。もう既に配られているはずであります。  「売上税の税額にかんする試算」でありますけれども、売上税の税額計算は大蔵省がおやりになったような付加価値の方から計算する方向は確かにあります。もう一つは、最終支出の方から計算するやり方もあり、これはその方向をとっております。今の売上税というのは消費型付加価値税でありますから、消費に着目して計算するわけであります。  問題は、国内家計最終消費支出、これが一番大事になりますが、これは国民経済計算に基づき、国民経済計算の中には幾らか帰属計算といって膨らました計算がありますから、それを取り除いて出して試算しております。もちろんこれは家計調査に基づきまして、どれが課税か非課税か分類し、わからないものも合理的に配分し、そして非課税のものについてもかなりのものを最初から外しまして、あと明らかに物財費が入るようなものは流通と売り上げのマージンを除いて物をつくっているベースのところへ持ってきてその物財費をはかるという非常に慎重なやり方をとっております。  民間住宅建設の方は、国民経済計算の方から、これは普通五割から七割ぐらいが物財費だと言われておりますから六割でとりました。  (3)の政府最終支出などは、これは政府の方から予算委員会に出された数字をそのままとっておりますから、何の御異存もないと思いますが、この数字についても、特にいろいろな政府関係機関のやる公共事業公共投資関係に入ってくる売上税を省いておりますから、非常に少な目にとってあるということが言えると思うわけであります。  それでも、この結果から見ますと、七兆九千八百六十三億円、約八兆円近い数になります。これは、非常に多くのものを省いておりますから、実際、八兆円を超えると言っていいでしょう。こういう数字になってまいりますと、五兆八千億よりも二兆円も、あるいはもっと多くなれば三兆円も超えるということになり、減税、増税同額というのは全く成り立たなくなる。もちろん減税、増税同額であっても、既に明らかになっているように、サラリーマン国民の九割までが実際は増税になって、大企業とか高額所得者だけが減税になるという仕組みでありますが、これに加えて二兆円も三兆円も多い額だということになると、一体これはどういうことになるのでしょうか。全く驚くべき大増税であり、そしてその背後にあるのは、例えば軍拡を進めるとか、そういうためにこういうものを持ち出したということがよりはっきりしてくると思うわけであります。  私のこの計算にはブラックボックスがありません。大蔵省の計算はブラックボックスだらけです。もし本当にこの計算に、もっと公表すべきであるとかいう御意見があるなら幾らでも私は伺います。ただし、その場合、大蔵省の方もはっきりとどういう根拠で計算をしたか示してください。我が党にとってみれば、これはまだ第一弾にすぎません。次から次とこういうもっと立ち入った計算をしていくつもりでありますが、どうですか、大蔵省の方の計算の方式、明らかにする決意があるかどうか、大臣の意見伺いたいと思います。
  250. 水野勝

    ○水野政府委員 突然のお示しで検討をさせていただく時間もないわけでございますが、ざっと拝見いたしましたところ、この非課税品目につきましての見方、この点が非常に大きいのではないかという感じがするわけでございます。  私ども、先ほど大臣から申し述べましたように、五十兆円の非課税取引というものを控除項目として立ててございますが、その点につきましては、もちろん非課税品目が課税取引の中に投入されることによる影響も考慮いたしておるところでございますが、その点につきましての差が非常に大きく、これが決定的に数字の差になっているのではないかと思われるわけでございます。私どもとしては、先ほど大臣から申し述べました出発点から計算をいたしておりますし、また、国民経済計算、産業連関表等々と十分なサイトチェックもいたしまして御提出申し上げているところでございます。
  251. 工藤晃

    工藤(晃)委員 もう付加価値税、いやこの税額計算の方式についても一般的な理解が示されなかったと思います。さっき言ったように、付加価値の方から計算するその方向と、最終需要の方から、消費支出からやる方法で、私の方はこちらをとっている、大蔵省はこの縦の系列をとっている、これは横の系列をとっている、こういう違いを言って、これとこれと比べて、それなら一致するわけないのは当たり前で、しかし、どちらからいっても結論は必ず同じになるのですよ、これは。ですから、そういうはっきりしない答弁で幾ら続けてもしようがないと思いますから、この問題は我々はさらに追及していきますが、明らかにこの五兆八千億円というのは政治的な計算である疑いが大きくなってきております。大変これは重大な問題であります。  そこで、この問題はやはり今のGNP一%問題とも大きく関連すると思いますけれども、さきの二月三日の衆議院本会議で、不破委員長の質問の中で、アメリカの八八会計年度国防報告で、防衛費の継続的増加は、これは日本のことを言っております、日本が西側諸国の一員としての責任、すなわち中曽根首相が公式に認めた義務を認識していることを示しているということに対しまして、総理が「義務」と書かれているのは間違いで不適切と答弁されましたけれども、本当に間違いで不適切と言うのならば米当局に対しまして何らかの訂正する、抗議的な申し入れをする、そういうことをやられましたか。やられたらどういう形でやられたか答弁をお願いします。
  252. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 あのときの御質問は、防衛費を増額するその義務というふうな趣旨の御質問であったのに対して、私は、国防報告に、中身に盛られていることは自由世界の一員としての連帯のもとにあるという、そういう意味における仕事分担の責任、義務、そういう意味で義務という言葉が使われたので、直接的に防衛費を増額するという義務、そういう意味ではないのです。そのことを明らかに申し上げたつもりなのであります。
  253. 工藤晃

    工藤(晃)委員 あのとき私も聞いておりましたが、大分答弁のニュアンスが変わってきたと思いまして、やはり義務は義務だとお認めになったようでありますが、しかし、今の国防費の増額、軍事費の増額につきましても、総理予算権限法第八百十二条というのは御存じだと思います。この中ではっきりと、日本が「一九八〇年代末までに、合意された一〇〇〇カイリ自衛能力を獲得するのに十分な予算、調達計画、戦力向上のための資源を含んだ一九八六三一九九〇年度の中期防衛計画を実現すべきである。」こういうふうに書かれてあります。やはり予算のことも書いてあるわけであります。そして同時に、日本の誓約を実際に履行する際の進捗状況や、米国政府がそのためどんな督促手段をとったかも大統領は議会に報告せよということになっているわけであります。  さらに八六年五月八日の国防総省の議会に提出したその一報告によりますと、この権限法のこの条項に基づく報告の一端が書いてありますが、その中で、中曽根内閣が中期防達成のためGNP一%枠廃止に動き出したことを詳しく説明し、それに熱い期待を表現しているわけであります。  続いて、昨年十二月二十九日、中曽根内閣がGNP一%を突破したときにワインバーガー米国防長官最大限の賛辞を行い、米国は日本の中期防衛計画を高く評価、その予算的裏づけを要請してきたが、日本政府予算案はこの要請にこたえた、こうなっているわけでありまして、まさに予算の問題まで要請があったという判断をせざるを得ないと思いますが、いかがですか。
  254. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私は、国会におきましても、日本の防衛については非核三原則あるいは専守防衛等々日本防衛の諸原則のもとに節度のある防衛力をやる、そして「防衛計画の大綱」水準達成を目途に一生懸命、できるだけ早く達成を行う、その具体的な方途として中期防というものをつくって、そしてそれで今努力している、日本の防衛についてはあくまで自主的に、日本人の意識、日本人の自覚に基づいて、日本財政やそのほかのことも勘案して自分たちで決めているのだ、そう申し上げたとおりであります。
  255. 工藤晃

    工藤(晃)委員 きょう一時一ドル百四十四円七十銭までいったこの問題についていろいろ伺いたいのですが、時間がなくなってきたのは残念でありますが、これは明らかに、この前の本会議で私の質問に大蔵大臣がお答えになりましたパリ合意で、ここでもう歯どめがかかったというそれが崩れだということが見事に示されていると判断せざるを得ません。  もともとレーガン政権が極めて無計画な、しかも大規模な軍拡をやり、財政に赤字をつくり、アメリカの多国籍企業がどんどんどんどんアメリカの貿易収支赤字を拡大する、こういうことがあるときに、その問題を解決しないで、為替レートの調整だけで、この問題を解決しないのは最初から明らかであったにもかかわらず、それこそ一昨年の九月のG5の合意以来、この問題の解決はさておいて為替の調整だけでいく、日本側の責任だけでやる、こういう誤った方向をとったためにますます今日の事態を招いた。私はあのとき大失政だと言いましたが、その感を深くするものであります。  さて、質問の最後でありますが、一言述べておかなければなりません。我が党の金子書記局長の総括質問がいまだに実現されていない、これは議会制民主主義に基づく政党の質問権を否定するものであり、絶対に許せないことであります。私は改めて早急に実現するよう強く要求します。  同時に、日本共産党・革新共同は、六十二年度暫定予算三案に反対することも表明しておきたいと思います。それは、売上税導入、軍事費の一%枠突破の本予算のごり押しを前提に編成されておりますし、売上税、マル優廃止を直ちに撤回し、軍事費の大幅削減など抜本的組み替えを強く要求しながら問題点について触れておきたいと思います。  雇用対策、石炭政策産業構造調整などで景気てこ入れと言っておりますけれども、基本的には対米公約の前川レポートの実行、大企業が異常円高を口実に進めている大規模な人減らし、労働者首切りを認めるなど失業大量発生の大もとは抑えず、かえって拡大する方向をとっております。公共事業も補助・負担率の引き下げを盛り込み、地方自治体の負担を重くするとともに、各地域で住民が強く求めている生活基盤の改善と雇用拡大、中小企業の需要拡大を中心としたものにはなっておりません。この点を私ははっきりと指摘し、私の質問を終わるものであります。
  256. 砂田重民

    砂田委員長 これにて工藤君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして昭和六十二年度暫定予算三案に対する質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――
  257. 砂田重民

    砂田委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  昭和六十二年度一般会計暫定予算昭和六十二年度特別会計暫定予算昭和六十二年度政府関係機関暫定予算、以上三案を一括して採決いたします。  右三案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  258. 砂田重民

    砂田委員長 起立多数。よって、昭和六十二年度暫定予算三案は、いずれも原案のとおり可決すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました昭和六十二年度暫定予算三案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  259. 砂田重民

    砂田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ―――――――――――――     〔報告書は附録に掲載〕     ―――――――――――――
  260. 砂田重民

    砂田委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時四十七分散会      ――――◇―――――