○岩佐恵美君 私は、
日本共産党・革新共同を代表して、
公害健康被害補償法の一部を
改正する
法律案について、
総理並びに
関係大臣に
質問をいたします。
加害
企業の
費用負担で医療と生活を支える
公害健康被害補償制度は、不十分とはいえ、
公害患者にとってまさに命綱であります。それを非情にも切り捨てていこうという今回の大
改悪に対して、私は心からの憤りを覚えるものであります。(
拍手)。一九六〇年、四日市石油コンビナートに端を発した
大気汚染公害は、たちまち東京、大阪など
全国に広がりました。
我が国経済の高度成長は、まさしく
国民の生活と健康の破壊、さらには命と引きかえのものだったのです。当時、
政府や
企業が
被害者の
救済に手を差し伸べることをしなかったため、
被害者はみずから
救済のために裁判に訴えるよりほかありませんでした。
公害健康被害補償制度は、こうした
公害患者の命をかけた闘いによって実現されたものなのです。
この経過を振り返るとき、
大気汚染公害が
企業による社会的犯罪であるとはっきり
認識すること、さらに、
行政は
企業の側にではなく
患者、
国民の側に立つべきこと、これこそが
公害行政の原点であることを改めて痛感するものでありますが、
総理はどのようにお考えですか、まず最初に、
基本姿勢について伺います。(
拍手)
政府、財界は、
公害は終わった、だから
指定地域を
解除してもいいんだとして、毎年新たに発生する九千人もの
大気汚染による
公害患者を切り捨てようとしています。しかし、
公害は本当に終わったのでしょうか。とんでもありません。
公害認定患者は法制定後毎年ふえ続け、十二年間で六・七倍にもふえ、その数は九万六千人を超しています。このことは、まさに
大気汚染が広がり、深刻になっていることを示しています。現に、この二、三年でも、東京、神奈川、大阪では
二酸化窒素の
汚染がひどくなり、緩められた五十三年の
環境基準さえ超えてしまう
地域が全体の六割から八割以上にも上っているのです。
また、昨年発表された足かけ八年に及ぶ東京都の
大気汚染健康影響調査では、
幹線道路に近いほど持続性のせき、たんなどの呼吸器症状の有症率が高いこと、道路から五十メートル以内の乳幼児は呼吸器の病気が他
地域に比べ高い上に症状が重いこと、さらに、
幹線道路周辺の過去十年間の死因別調査では、
大気汚染との関係が高く、特に商業
地域では高いこと、女性の肺がんによる死亡と
大気汚染との関係が高いなどのショッキングな事実が明らかにされています。
総理、事実に照らして、
硫黄酸化物の排出量が減ったからといって単純に
公害は終わったなどと言えるのですか。今や、
大気汚染の原因が
硫黄酸化物、
窒素酸化物、浮遊粉じんなど
複合汚染によるものだということは常識ではありませんか。
中央
公害審議会の
答申は、
公害地域指定の条件について、専門委員会
報告の文章を曲解して、
大気汚染がどう健康に
影響しているかを数字の上で明確に示すことができなければならないとか、その
地域の
患者すべてが
大気汚染によるとみなすことができなければならないと決めつけています。これに対し、中央
公害審議会の鈴木武夫専門委員長は、「病気の現実を知らない人が書いた文章だ。これらの条件を満たすような病気があるかどうか逆に
質問したい。事故以外にはあり得ない」と
批判しています。
政府はこれにどう答えるのですか。はっきりした
答弁を
願います。(
拍手)
また、専門委員会
報告にある「感受性が高く、
被害を受けやすい人たち」の中には、児童、高齢者、呼吸器系の
患者等が含まれるのは、これは医学の常識だと鈴木委員長が
説明しているのに、
中公審答申はこれを無視し、そういうことはないんだと
結論づけていることについて、鈴木委員長は激しく抗議しています。
地域指定解除の理論的根拠となる
中公審答申のこのような事実の歪曲は許されません。
地域指定解除の択捉が崩れたのですから、当然
地域指定解除は撤回されるべきであります。
総理の明確な
答弁を求めます。(
拍手)
次に、関係五十一の自治体のうち、
指定地域解除に同意できないが二十一、慎重に対処は二十四、賛成はわずか六つにしかすぎないではありませんか。慎重、
反対が全体の九割を占めています。これらの自治体の
意見を
政府は全く無視しているのではありませんか。そもそも、法第二条第四項で、
内閣総理大臣に自治体の
意見を聞くよう義務づけているのは、何よりも
大気汚染と
住民の
健康被害の
実態など、その
地域の実情を最もよく知り得る
立場にある
関係自治体の判断を重視し、その
意見を尊重しなさいという
趣旨ではないのですか。
総理、自治大臣の
答弁を求めます。
新規患者を切り捨てることで最大の利益を受けるのは財界であると言われています。向こう十年間で二千五百億円の経済メリットを受けるとい身試算があります。財界はどのような利益を受けるのか、明確に
お答えください。さらに、財界の
拠出金五百億円は、財界が別に五百億円出すのですか。そうではなく、六十二年度の総
賦課金額をこの先五年間固定し、既存の
認定患者をどんどん切り捨てて、その分のお金を浮かせて、積み立てて捻出するのではありませんか。そうであるとするならば、
患者を犠牲にした
政府と財界の醜い政治的取引で、絶対に許せません。
認定患者の皆さんが納得のいく
説明を求めます。(
拍手)
以上、限られた時間内で幾つかの
問題点を
指摘しただけでも、本
法案は、手続的にも
内容的にもまさにうそとごまかし、そして、問答無用のやり方であり、公約違反の売上税とそっくりではありませんか。
総理、あなたはなぜ、
公害に苦しむ
患者さんや
公害の危険にさらされている
国民の
立場に立って、財界、
企業に、
公害補償の額がふえるのが嫌なら
公害をなくす
努力をしなさいと真っ正面から言えないのですか。今も東京湾横断道路、首都圏中央連絡道、関西新空港、さらには東京湾に三百万キロワット級の超大型火力発電所などの建設が計画され、
公害がますますひどくなることが予想されます。
今、
患者の多くの皆さんが、発作的に起こるせきに襲われ、絶えず死と直面し、苦しんでいます。その
患者さんが、きょうは
補償法を心配して、病身を押してこの本
会議を息を詰めて見守っておられます。
総理、あなたには
患者の皆さんの悲痛な叫びが聞こえないのですか。本
法案は
患者を苦しめ、
公害を野放しにする以外の何物でもありません。撤回を強く求めて、私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣中曽根康弘君
登壇〕