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1987-05-15 第108回国会 衆議院 大蔵委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十二年五月十五日(金曜日)     午後四時五十九分開議 出席委員   委員長 池田 行彦君    理事 大島 理森君 理事 熊川 次男君    理事 笹山 登生君 理事 中川 昭一君    理事 中村正三郎君 理事 野口 幸一君    理事 宮地 正介君 理事 玉置 一弥君       新井 将敬君    井上 喜一君       今枝 敬雄君    江口 一雄君       遠藤 武彦君    金子 一義君       木村 義雄君    笹川  堯君       杉山 憲夫君    高鳥  修君       谷垣 禎一君    戸塚 進也君       鳩山由紀夫君    村井  仁君       村上誠一郎君    柳沢 伯夫君       山本 幸雄君    上田 卓三君       沢田  広君    中村 正男君       早川  勝君    堀  昌雄君       武藤 山治君    日笠 勝之君       森田 景一君    矢追 秀彦君       山田 英介君    安倍 基雄君       工藤  晃君    正森 成二君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 宮澤 喜一君  出席政府委員         経済企画庁調整         局審議官    田中  努君         大蔵政務次官  中西 啓介君         大蔵大臣官房総         務審議官    足立 和基君         大蔵省主計局次         長       角谷 正彦君         大蔵省主税局長 水野  勝君         大蔵省理財局長 窪田  弘君         大蔵省証券局長 北村 恭二君         大蔵省国際金融         局長      内海  孚君  委員外出席者         経済企画庁調整         局調整課長   吉川  淳君         経済企画庁調整         局財政金融課長 大塚  功君         経済企画庁総合         計画局計画官  小島  襄君         外務大臣官房外         務参事官    平林  博君         外務省北米局北         米第二課長   田中  均君         大蔵省銀行局保         険部長     関   要君         通商産業省貿易         局輸入課長   鳥居原正敏君         通商産業省貿易         局為替金融課長 糟谷  晃君         通商産業省産業         政策局調査課長 江崎  格君         建設省道路局有         料道路課長   松延 正義君         大蔵委員会調査         室長      矢島錦一郎君     ————————————— 委員の異動 五月十五日  辞任         補欠選任   石破  茂君     木村 義雄君   小泉純一郎君     谷垣 禎一君   藤波 孝生君     柳沢 伯夫君 同日  辞任         補欠選任   木村 義雄君     石破  茂君   谷垣 禎一君     小泉純一郎君   柳沢 伯夫君     藤波 孝生君     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和六十二年度の財政運営に必要な財源確保  を図るための特別措置に関する法律案内閣提  出第一号)      ————◇—————
  2. 池田行彦

    池田委員長 これより会議を開きます。  内閣提出昭和六十二年度の財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。武藤山治君。
  3. 武藤山治

    武藤(山)委員 宮澤大蔵大臣とこうして議論できるのは、大臣企画庁長官のとき以来のような気がいたします。大変古い時間が経過いたしたような気がしております。私は昭和三十五年以来の歴代大蔵大臣評価をするのが癖でありまして、いつも評価をしてきたのでありますが、今回、まだ時間が浅いから、きょうの質問ではちょっと差し控えたいと思っておりますが、これから補正予算、対外的な対処の仕方などを見て、果たして宮澤大蔵大臣が戦後歴代大蔵大臣の中の第何位に入るか、もうしばらく時間を見させていただきたい、こんな気持ちで今大蔵委員を務めております。  さて、今回の通常国会売上税法案並びに他の税法関係がことごとく審議未了ということになることはやや確定的であります。審議未了になれば、これは廃案ということで二十七日に一応ピリオドが打たれる、国民のすべてがそう思っていると思いますし、私たちも政党間の約束ですからそうなるだろうと信じております。そこで、税法関係担当大臣として、この事態についてどんな心境であるのか、反省しているのかしてないのか、その辺少し心境のほどを先に伺っておきたいと存じます。
  4. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 武藤委員も御承知のとおり、かつてのシャウプ税制改正以来久しく我が国税制を基本的には改めておりませんでしたので、このたび根本的な税制改正を御提案申し上げたわけでございます。その機会に、何と申しましても所得税法人税等直接税関係勤労意欲あるいは企業意欲をそぐと言われるまでに高くなっておりましたし、また所得税そのものには、クロヨンと言われるほどではございませんが、勤労所得についてかなりきついというようなこともございましたから、その点も改めさしていただきたいと考えたわけでございます。  ただ、このような歳入状況でございますので、やはり財政再建の途次でもあり、それらの減税に見合う歳入を何とか考えなければならない。たまたまこのように所得水準が高くなり、また所得分配が非常に格差が少ないというような我が国においては、間接税にもう少しウエートをかけてもいいのではないか、殊に二十一世紀に近づきますと、社会老齢化をいたしまして、我々老人のことは数少ない若い人がしょってくれなければならないという状況になりますと、それに先んじまして老人もそれを間接税の形で負担をするという薄く広い負担を創設しておくということは大事なことではないかと思ったわけでございます。これが政府の基本的な意図でございました。  しかるところ、この売上税をめぐりまして世論が十分にこれを受け入れるところとならなかった。ならなかった理由はいろいろあろうと思いますけれども売上税についての、私ども立場から言えばPRということになりますが、国民がそれを判断するだけの十分な議論が行われないままに、この税金は非常に悪いという印象が国民の間にかなり根強く生まれました。そういう状況の中で、いろいろ説明に努めよう、あるいは議論機会をと思いましたけれども、ついに今日までのところその機会を得ることができなかった。  これは、私ども反省といたしましては、いろいろな意味でもう少し周到な準備をし、国民にもわかりやすいように、つくり方、名前のつけ方、いろいろあったろうと思いますけれども、あるいはもっと時間をかけることも必要であったかもしれない。それらのことについてはまことに残念なことであった。国民の前にこの税がどういうものであるかということをよく知っていただいた上で判断を願うという機をただいままでのところ失してしまった。これについては少なからず反省をいたしております。
  5. 武藤山治

    武藤(山)委員 ああなったゆえんは、もういろいろ雑誌、報道機関、あらゆることで、責任はどこにあるか、うそをついたのがいけないというのが出発点のようでもあるし、また、法案をつくるのに二週間くらいではたばたと与党の本当の数少ない人たちで決めてしまって、我々野党との議論の場も設けなかった、国民の見える場所での議論が全然なかった、いろいろあると思うのでありますが、何といっても総選挙中曽根さんが大型間接税はやらない、自民党内に反対の意見があればそういうようなことは私はやるつもりは全くないというようなことを再三約束したのを裏切ったから、国民から見れば全くうそをつかれたということの反撃が想像以上に広がった。したがって、挙げて中曽根総理大臣責任があると私は思いますよ。ですから、本来ならこの二十七日の国会が終わったら総理は速やかに責任をとって辞職すべきだ、私はそう考える。それが政治家出処進退国民に対する責任の果たし方ではないか、こう思うのですよ。ですから、総理大臣にやめてもらう方がいいと思うのですが、閣僚のお一人として、ニューリーダーの一人として、どんな考えですか。
  6. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 御提案いたしました売上税法は、総理大臣選挙で言われました公約に背馳しないように私どもがいろいろ工夫をしてつくりまして御提案をしたつもりでございますけれども、必ずしも世の中のすべての方がそうとはお思いにならなかったようでありまして、その点はいろいろ反省の余地があると思っております。  しかし、いずれにしても、これだけの税をひとつ国民に御理解を願おう、受容をしていただこうということになれば、やはりもっと大きな努力と時間が必要であっただろうということはあれこれ考えておりまして、いろいろ反省をすべき点がございます。
  7. 武藤山治

    武藤(山)委員 宮澤先生はやがて総理にうわさされている人でもありますし、恐らくことしじゅうに立候補もするんだろうと思いますので、特に私はいろいろな角度からこれからの税制のあり方に関心を持つ一人なのでありますが、もし総理に就任をした場合に、直間比率を直すんだという際には、今のような売上税の仕組み、中身、これがやはり妥当だ、やや正しいシステムだ、そう考えて臨むだろうか、それとも、いやもう売上税という今の仕組み、中身の問題も全部一回白紙にして新たな討議をしてもらう、そういうような気持ちで臨む方がよろしいと考えるか、その辺の宮澤さんの考え方はどうなんでしょうか。
  8. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これは大蔵大臣としてお答えを申し上げるところでございますが、御提案を申し上げましたが、いろいろな事情でもしこのまままいりますと審議未了となります。それは廃案となるというせんだっての議長のごあっせんでございます。そういたしますと、協議機関においてこのお取り扱いの御協議が行われる、そういうことでございますので、その協議機関の御協議には私どももとより全力を挙げて御協力を申し上げなければならない。お求めがあれば当然そうしなければならないのが私どもの務めでございますが、その際に、私どもがどうしてこのような税法案考えたかということは十分お聞き取りを願いたい、まずそれをお願いいたしたいと思いますし、所得税法人税の大きな減税をしようとすればかなり大きなそれに見合う財源が要るということもぜひ御理解を願っておきまして、税制改正という全体のピクチャーの中でおのおのの問題を御検討いただきたいということもお願いを申し上げたいと思います。それらの上で、協議機関がこの点をどういうふうにお考えになるかということは、一応私どもは心をむなしくして協議機関の御協議を見守ってまいりたい、こう思っております。
  9. 武藤山治

    武藤(山)委員 昨日、二階堂先生総裁ダービーに参加する、国とりをいよいよ決断したという新聞報道でありますが、そうしますと、今までの予想された人とまた一人ふえて大変混沌としてまいりました。宮澤先生総裁選にはひとつ立候補しようという腹固めをしているんでしょうか。いや、まだ時期が早いから次まで待つというのでしょうか。総理総裁になろうという決意を秘めているのかどうか、ちょっと心境を聞かしてください。
  10. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 税法に関するお尋ねと承りましたので、大蔵大臣でおります限り、この税制改正は何十年に一遍ということでございますので、何とかこの機会協議機関の御協議を得てお願いをいたしたいと思いますので、そのことに私は専念したいと考えております。
  11. 武藤山治

    武藤(山)委員 宮澤先生政治家、私たち政治家の端くれでありますが、国家、国民庶民大衆のためにということで仕事をしているわけでありますが、今世界経済の動向も混沌としておるし、また国内のこれからやらねばならぬ問題を整理するとしてもなかなか大変な情勢であります。こういう情勢のときに、ニューリーダーの一人として世界人類責任を持つ立場から、何が世界の問題として課題なのか、その課題優先順位を仮につけたとして、三、四点を列記したらどんなことが課題だと考えられるのか、ひとつ政治家としての宮澤さんの御所見を承りたい。
  12. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 我が国軍事大国にならないことを決心し、またそれを今日まで実践してまいりましたし、これからもそうでなければなりません。したがいまして、我が国世界の平和と繁栄についての貢献はそれ以外の分野でなされるしか方法がない。しかも、それ以外の分野で我々は全力を挙げて努めませんと、いわゆるただ乗りという非難を免れないわけでございますが、その分野は、やはり発展途上国に対して我々が誠心誠意どれだけの物的、精神的な援助をすることができるかという問題であろうと思います。これは我が国にとりましては相当な負担になると思われますけれども、ある意味でそれは我々の安全保障であるというふうに考えるべきであろう、これが我が国世界に対して持っておる、幾つか大切な仕事はあると思いますが、大きな責務一つではないかというふうに考えております。
  13. 武藤山治

    武藤(山)委員 国際的には平和と繁栄。平和の方は、何といっても米ソ力関係米ソ軍備管理、そういうようなものの話し合いが進まないとなかなか人類の不安は解消できない。そのために日本として貢献し得る道は何かを探求することは当然だと思うのでありますが、繁栄の問題で、今のような援助を出すということだけで一体今の飢餓やアフリカの状況やあるいはアジアにおける貧困国の状態というようなものが解消できるのか。もっとグローバルな、米ソも含めた大きな何か世界的な規模におけるプロジェクト、そういうことを考えない限りなかなか世界人類が幸せに繁栄の道をたどることができないような状況にあるのではないか。そういうようなことについて適切な発言をあらゆる場所で、あらゆる閣僚会議の席で日本がもっと積極果敢に発言をする必要があるんじゃないのかな。どうもアメリカという枠の中に閉じ込められて、そのたがの中だけで物を見、行動しているというような政府姿勢に見えてしょうがないのであります。その辺、もうちょっと勇気を持って言うべきことを言える日本政治家でなければいかぬなという感じがしてなりません。その点どうなんでしょうか。国際会議世界を歩いていて、宮澤さんの行動姿勢というのは、自分に省みてどうでしょう。
  14. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そこまで理想を高く掲げて考えますと、米ソ間において、最近、一度レイキャビクの挫折はございましたけれども、再び核兵器の管理について首脳会談に導かれるような動きがございまして、これは非常に歓迎すべきことでございますが、その間にあって我が国はやはりそれが所期の目標を達するように我が国としての努力をいたすべきは当然のことと思います。が同時に、米ソがそういう関係にございますことにも関連しまして、多くのいわば発展途上国とも思われる国が巨額の金を軍備に使っておりますことはまことに残念なことであります。世界軍備に毎年使っております金は一兆ドルに近いということを言われておるわけでございますから、これはまことにむだなことであって、もしこれだけの資源エネルギーが本当に発展途上国繁栄のために使われるならばこれはもう莫大なことでございますから、そういうことは、やはり我が国としては自分で実践しておりますところでございますので、自信を持って各国に常に呼びかけていくべきであろうと考えております。
  15. 武藤山治

    武藤(山)委員 世界人類に対する我々の責務という立場から考え課題は平和と繁栄、私も同感であります。  同時に、もう一つ地球汚染の問題が深刻にならないように、できるだけ化石燃料の使用というのを減らす方向でやる。地球汚染というものは、やはり今後長い間を考えたときに、もう大変汚染状況が進んでおる。そういうようなものは科学技術の駆使やあるいは他の代替エネルギーへの転換を積極的に進めていく。そういうことを開発途上国を含めてやはり世界で合意を得ていかないといけないんじゃないか。私はそれをもう一つつけ加えて、平和と繁栄にプラスしたい、こんな感じでおります。  それから、国内の問題で日本という立場考えた場合に、特に政治に携わる者から見て、優先的にこの課題、この課題、この課題が今緊急な大きな問題点だとそれを三つ、四つもし挙げるとしたらどういうことを考えられますか。
  16. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 我が国は敗戦後今日まで心に誓いまして軍事大国にならない道を歩いてまいりまして、これは今日までのところまずこの道を歩いて間違いなくまいりましたし、これからもそうすべきであって、世界情勢は決して我々のその決心に不利に発展、展開しているとは思いません。これが第一であります。  次に、文字どおり基本的人権の尊重される自由な社会でありたいということにつきましても、その都度その都度いろいろ問題はございましたが、大まかに申しまして、きょう我々は世界で最も自由な社会を築くことができている。しかも、国民所得水準が高うございまして、その分配が比較的格差が少のうございますので、国民のだれもが自分経済力を持って自由をいわば享受することができるという意味で、私は文字どおり実質的には日本世界で一番自由な国ではないかと思います。この体制は続けてまいらなければなりません。なるべく政治国民の心の中へ踏み込むことがないように、政治は、国民が自由であり幸せであるような環境をつくることは大事でございますけれども、心の中へ余り踏み込むということはどちらかといえば好ましいことではない。国民の一人一人がいろいろおのおの異なった価値観を持っておりますから、それが十分に自分責任で活動ができ、達成ができるような、そういう開かれた社会というものが大事ではないかと思います。  そこで、第三には経済問題でございますけれども所得水準は確かに高くなったわけでございますが、輸出をしなければ生きられないという長い間の身につきました物の考え方がどうもあるものでございますから、フローは高くなりましたけれどもストックというものは一向に十分ではない。住宅を初め社会資本というのは、先進国としては甚だ実は自慢できない現状だと思います。したがいまして、海外からも輸出過度の体質を批判されているときでもございますから、そしてやがて老齢社会になることがわかっておりますから、それより前にフローをできるだけストックに蓄積をいたしまして、いわば住宅を含めまして社会資本の充実した住みよい国土というものをつくっていくという問題が明らかに残されておると思います。これは何としても達成をしていかなければならないと思います。  第四に、これは先ほど申し上げたことと関連をいたしますけれども、そういう中から我々が世界の、発展途上国ばかりではありませんが、平和と安全に対する経済的な寄与、援助への資源を我々の努力によって生み出していかなければならない、そういったような課題を持っておるかと存じます。
  17. 武藤山治

    武藤(山)委員 大体宮澤先生意見はそう違わないのでありますが、今一番目に挙げた、軍事大国にならない、そういう精神が大変大切だ。かつて鈴木内閣のときに、宮澤さんが官房長官でしたか、この席で、この同じ場所で、宮澤さんは数多い自民党の中で自主憲法制定議員同盟に入っていない、これは立派なことだ。そして、日本の今の平和憲法基本的人権尊重憲法は、世界に先駆けて試してみる価値のある憲法だ。当時そういうことが新聞に載ったのですね、宮澤さんの発言が。私はそれを取り上げて、あなた、この議員同盟に入っているのかいないのかと言ったら、入っていない。私が調べても入っていなかった。そこで立派だと当時称賛したのを今思い出すのでありますが、現在もあの自主憲法制定議員同盟には加入していないのですか。
  18. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 おりません。
  19. 武藤山治

    武藤(山)委員 それはなかなか信念の強い、尊敬に値いたします。私たちは、やはり日本の今の平和憲法精神基本的人権を尊重する、そしてリベラルな各人の自由の行動各人の自由を傷つけない自由な社会、そういう社会が望ましい社会だと思いますので、そういう点では大臣と相通ずる思想の持ち主であることを表明しておきたいと思います。  ただ、細かい日本課題の中で、今混沌としていて迷っていて何からどう手をつけたらいいか、ここに前川レポート、さらにきのう経済審議会で決めました文書を先ほどだあっと読んでここへ来たのでありますが、なかなかあれもこれもと考えてみても解決策がすぽっと出るような状況じゃないのですね。住宅のことを先頭に書いているけれども地価が高くて住宅はできない。では、地価対策どうするか。では、地価対策をやるには、所有権利用権を区別して、利用権に対する法的な規制をきちっとして、そしてよりよい環境をつくるために土地が利用できる、そんな法律を果たしてつくれるのか。あるいはまた、よく堀さんと私はもう十年来あらゆる場所で主張してきたのは、大都市改造法案法律として出すべきだ、そして東京、横浜、川崎、名古屋、そういう大都市においては耐震耐火都市構造、そういうものを三十年戦略で、年間四兆円ぐらいずつを三十年間ぐらいずっと続けて都市の大改造法案社会党として出すべきじゃないか、そういうことを党内でずっと議論をし、一時、土地利用法については、オイルショックのときに堀案という形で国会にも出したのでありますが、なかなか日の目を見ない。自民党の諸君は審議すらしようともしない。いわゆる国会議員自身がそういうグローバルな長期的戦略を持ってない。これはアメリカも同じなんですね。アメリカ国会議員に至ってはもっと自己中心で、選挙中心で、本当に世界を見渡そうとする発想が少ない、そういう感じを強く持つのでありますが、日本政治家にもそういうところが非常に多いのであります。でありますから、前川レポートで書かれたようなことをやろうとしてもなかなかできないのですね。  そこで、中央で何でもやってしまおうと思うとなおなかなかできないので、中央集権的な今のシステムをできるだけ分権化していく、できるだけ地方で発想し、地方で物をやれるような、中央集権から地方分権への方向を年次的にかなり長期なスケジュールでいろいろ考えなければならぬ問題がたくさんあるのじゃないか、そんな気もしてなりません。  要するに、長期的な土地問題の解決地方分権の確立、そして不公平、格差というものをできるだけなくす。もちろんフランスやイギリスと比較したら日本ぐらい平等社会はないと思います。思うけれども、やはり日本のその中にあってもまだ不平等と格差というのはお互いの中にはたくさんあるわけですから、そういうものをどう解消していくかということをさらに私は大臣の今の見解につけ加えておるのでありますが、ぜひ総理になったらひとつそういう方向の視点で住みよい日本という環境をつくる、そういう方向努力を願いたい、こう考えます。  限られた時間でありますからどんどん次へ行かなければなりませんので、次には、通告してあるのは財確法の問題でありますが。今回、財確法案審議、なぜ国会財確法案提案したのですか。
  20. 角谷正彦

    角谷政府委員 この法律の第一条「趣旨」のところで書いてございますように、昭和六十二年度におきましては国の財政事情が著しく不均衡な状況にある、すなわち、歳出面におきましては一般歳出をゼロにするというふうな形で引き続き懸命に努力を払い、また、税外収入につきましても、いろいろな努力を払いその増収の確保に努めたわけでございますけれども、なおその財源に不足があるということから、財政法四条ただし書きのいわゆる建設公債以外の特例公債の発行を含めまして、昭和六十二年度におきましてその財政運営に必要な財源確保を図るための特別の措置をお願いせざるを得ない、そういうことが立法の趣旨でございます。
  21. 武藤山治

    武藤(山)委員 足りないから赤字公債を出す。足らなくないようになぜやらないのか。やろうと思えばできるのじゃないですか。なぜやらぬのですか。ネックは何なんですか。
  22. 角谷正彦

    角谷政府委員 特例公債を発行しないで済ませるということのためには、一つは歳出をそれだけ切り込む、あるいは公債以外の歳入をそれだけ確保するということが必要なわけでございますけれども、現実問題としまして、歳出につきましては、昭和五十八年度以降五年間連続一般歳出をゼロ以下にするという懸命な努力を払っているわけでございますが、これ以上の歳出削減につきましてはやはり限度があるということが一つございます。と同時に、歳入につきましては、税外収入につきましていろいろな努力を払う。税制につきましては、先ほどからお話がございましたように国会でいろいろ御論議があるところでございまして、これまたいろいろなかなか難しい事情がある。こういった点からこういうふうな措置をお願いせざるを得ないというのが昭和六十二年度の現状でございます。
  23. 武藤山治

    武藤(山)委員 不足部分をだんだん税収をふやして埋めるということができない最大のネックは何ですか。自民党の評判が悪くなるから、政府総理大臣の人気が落ちるから、それとも大蔵省が、まあこの程度安易な赤字公債の方法があるのだからそんな嫌なことをやらぬでいいということですか。なぜできないのですか。
  24. 角谷正彦

    角谷政府委員 税制につきましては税制それ自体としていろいろな問題が指摘されているわけでございまして、そういった意味で、私がお答えするのが適当かどうかは別といたしまして、税制改正全般につきまして政府税調初めいろんなところで御議論が行われている。そういう中で、現在、現行税制のひずみあるいは負担感、そういったものを是正するための措置がとられているわけでございますけれども、それが御案内のような形でなかなか前に進まないというのもまた現状でございます。
  25. 武藤山治

    武藤(山)委員 わかっておるんだよ。財政法第四条は百もわかっているんだよ。しかし、それを特例特例と言いながら、特例を何年続けるかというのですよ。五十一年から始めてずっと続いている。  その前に、国債発行した最初のときの昭和四十年十二月二十二日、初めて福田大蔵大臣のときに国債発行をやるときの議事録。私が質問した。夜中の零時二十八分開議。夜中にやったんですよ。我々が抵抗して、国債発行をするとやがて雪だるま式に大変なことになりますよ、戦争中経験がありますね、安易に流れで大変なことになる、やめた方がいい、と。当時は二千七百億円ですけれども、そういうものを福田さんは、いや、来年、再来年になれば景気よくなって減らせるんだ、そして景気が悪いときだけ緊急の状態としてやるんだからひとつ見逃してくれということを彼は盛んに言っていたんですよ。そしてそのころ、この次の二十五日にまた私やっているのですが、この福田が目の黒いうちは雪だるま式に公債がふえるなんということは断じてない、そう言ったんですよ。断じてあったんですよ。  こういうことで、その場その場を糊塗しようとしてやってきた。これは昭和四十年ですから、もう二十二年前の話。大臣の答弁が今まで一つも生かされていない。その場の言い逃れに終わっているんですね。私はこういうのを読んでみてまことに残念であるし、大蔵官僚の手法も大変その場その場の行き当たりばったりの安易な道を選んでいる。  もっと総選挙のときも率直に財政自体の実情を訴えて、どうしてもこのままではどうにもならぬ、サラ金地獄にどんどん入っていって、公債というのは税の先取りみたいなものですから、やがてはこれみんな払わなきゃならないわけですから、租税の前取りをしているわけですから、こういう点もうちょっと節度あるきちっとしたことを、本当のことを自民党選挙で言わなきゃいけないですね。ところが今の選挙法というのはどうも本当のことを言えない仕組みになっちゃっているんですね、宮澤さん。五名区、四名区なんというと自民党が三名いたり四名いるから政策の論争にならないですね。後援会つくって、金集めて、バスで送り迎えする。バスの中で前のやつが飯を食い終わるのを待っているんだ。それで、前のが終わったらまたバスから出て食べる。それで自民党選挙やっているんですよ。証拠何ぼでもある。そんなことをやっているから政策の論争なんというのは選挙で起こらない。同じ政党同士で複数でおるから。ヨーロッパの選挙制度と大分そこらが違うですね。だから政党本位の選挙が行われないですね。ここらも日本のいろんな制度や仕組みを直す上においての大変な障害になるんですね、選挙自体が。  鈴木善幸先生は、そういうことを大変心配して、今までの全国区というのをああいう比例代表にして政党本位にしょうということに踏み切った総理大臣。鈴木さんが立派なことを後世に残したとすれば、あの制度ですね。政党本位の選挙法に参議院だけでもまず手がけた。ああいうものをやはり本気で政治家考えないと、これは政治の腐敗と停滞と官僚主導の国家から抜け出られないですね。やはり本当の意味の、政治家政治をやるという、行政をちゃんと政治家が主導し、コントロールしていけるという、そういう議員というのは出てこられないですね。そういう点も課題としては重要な問題じゃないか。  今私は小学生みたいに、なぜ特例法を出すのかということから質問に入ったのは、そういうことも含めて、どうも政党政治が機能していない。官僚主導で、官僚は二年も局長やればいなくなっちゃう。自分のいるときだけ御身大切、そして自民党のお偉方に憎まれるや外郭団体の偉いところに行けないからびびっちゃっている。だから官僚というのは発想も長期的な展望を持たない。自分のついている任期だけ何か問題がなければいいという発想になっちゃうんですね。  そういう意味で、財特法は臨時措置だと言っているんですけれども、ただ臨時でやるんだと言うんだけれども、臨時が二十二年も続くなんというのはもう臨時じゃないですよ。特例じゃないですよ。こうなっちゃうと、もう特別措置なんということじゃないですよ。もう恒常状態になっているんですよ。現実は百五十二兆円ももう国債がたまっちゃっている。だから、財政法が悪いんなら、その財政法を改めなければいけない。財政法に欠陥があるから今の現状に合わなくなっちゃった。昭和二十二年の古い、戦争後のインフレの時代の財政法だから。だから均衡主義をとっているわけでしょう。もうああいう混乱にならぬようにという。ところが、それをやろうといったって、現実にもうそれを適用できないほど変わっちゃっているんですね、財政の体質も。だから、財政法だってこの辺できちっと見直さなきゃ責任を果たしたということにならないんじゃないですか、大蔵大臣。大蔵官僚にそういう点をきちっと検討を命ずるくらいな大蔵大臣になってもらいたいですが、どうですか。
  26. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 実はその問題は、かねて私ども昭和六十五年には赤字公債依存の体質から脱却をしたいという政策月標を掲げておりまして、国会におきましてしばしばそれはもうここまで来て非現実的ではないかという御指摘を受けております。確かにここまで参りますと容易でないことは私も認めざるを得ないのでありますけれども、こういう財政の状況で、御承知のように一般会計の二割が国債費であるというような状況が当分改善されそうもないということでございますと、やはり何か財政のディシプリンのためのそういう旗印というものは要る。六十五年でなければそれなら何なのかということにつきましては、やはり今後の経済状況、財政見通し、あるいは、殊に国際経済がこのごろは変転いたしますから、そういうことについてもある展望を持ちまして新しい目標を掲げなければならない。そうでないと、ただ看板をおろすだけでは事は済まないんだろうということを実は考えております。考えておりますが、それは、幸いにして多少の時間がございますものですから、今から考えても遅くないというふうに思うのでございますが、そういうことを考えますこととの関連で、今武藤委員の言われましたようなことも果たしてどういうふうにすべきなのか、あるいはまた国債の管理、それから国債の減債制度等々についても考えることはないのかといったような問題を全部実は総合的に考え直す必要があるのではないかということを思っております。これはしかし非常に大きな作業でございまして、かなり時間もかかることでございますから、比較的早く始めませんと、六十五年といってもそうそう遠いことじゃございませんので、やはりそういうことは考えてみなければならないのではないかと実は私も思っております。
  27. 武藤山治

    武藤(山)委員 ぜひ十分考えていただきたいと思います。  主税局、だれか来ておるかね。大蔵大臣、報告を聞いていますか。税収の状況ですけれども、この三月末の税収を引き伸ばしてずっと見ると、一体歳入欠陥は起こらずに済むのかどうか。補正後予算額に対して、三月の累計ではまだ七兆四千四百八十億円不足をしておるのですよ。しかし、法人が入るのは五月末までありますからかなり埋まるんでしょうが、六十一年度の歳入欠陥が出る心配はないかどうか。
  28. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 補正後の目標は三・二%でございますが、ただいままでの累計が六・五になっております。そこで、御承知のように一番大きな勝負はこれから三月期の法人の決算で、これが非常に大きいわけでございます。それはそれといたしまして、ただいままでのところで申し上げますと、比較的好調でございますのは、例えば個人の所得税、申告納税におきましても土地関連の譲渡所得などが相当大きい。あるいは相続税もそういう傾向がございます。有価証券取引税はもとよりかなり好調である。法人の中では比較的小法人がいいというふうなことを聞いております。  それで、あれこれ総合いたしまして、三月決算、これは大法人も相当ございますのでどういうことになりますかの見通しはいまだ持ち得ないわけでございますが、私が事務当局から受けております印象では、歳入欠陥は出さないで済むのではないだろうか、この大きな部分が三月期の法人でございますので、なぜとおっしゃいますとはっきりこれこれでと申し上げることができませんのですが、その程度の印象は事務当局の者が持っておるように存じます。
  29. 武藤山治

    武藤(山)委員 これは主税局長に、歳入見込みの現状、そして例年法人税が四、五でどのくらい入っていたかの積算、わかっておるわけですから、それを比較すれば大体の数字がわかると思いますので、後で大臣、報告をさせてください。  四点目は世界経済全体の問題ですが、今あちこちで世界恐慌が起こり得るか否かという大論争が行われている。元大蔵省国際金融局長をしていた加藤さん、山一証券の研究所長が、大変膨大な資料でありますが、「大恐慌再来の懸念はないか一九三〇年との比較検証」というのを出しました。これを読んでみたり、アメリカの現在の金融、経済動向は大変危険な要素をはらんでいるというガルブレイスの見解などを紹介しながら今のアメリカの実態をかなり詳しく述べた大森実の本をこの間読んでみました。また、大前研一などもアメリカの現在の金融、為替、ドルの状況などを検証してみると、一九三〇年代、その前夜によく似てきたと言っている。  五点についてその点を集約して三菱総合研究所が「経済大恐慌時と現在の類似点」、こういう点を指摘しておりますね。  一つは「貿易収支インバランス」の問題。「一九二〇年代、アメリカは工業力を飛躍的増大させ、輸出大国になった。いっぽう、イギリスは戦争で国力を消耗して転落した。この状況は、現在の日米間の国際摩擦ときわめて似ている。」これが一点。二番目が「株式市場の異常な活況」。「一九二〇年代後半、アメリカの株式市場は異常なまでにオーバーヒートした。現在、日本の株価上昇の傾向曲線は、恐慌時のニューヨーク株価上昇のそれときわめて相似している。」それから「累積債務の拡大」。「第一次大戦後、ドイツは賠償金を支払うため、膨大な借金をかかえた。現在の状況も、それに似て、中・南米、アジアには、利子さえ払えず、GNPを上回わる借金をもち、返済不能と思われる借金をかかえた国が幾つかある。」これも恐慌前のヨーロッパの状況とよく似ている。それから「余剰資金が生産設備回避」、これを四番目に挙げております。「第一次大戦後、アメリカはしばらく設備投資の時代がつづいたが、需要が一巡すると、設備投資も頭打ちになった。その余ったカネは、不動産、株式などの投機に使われた。この状況は現在のアメリカ日本にみられる。」現在の金の余っている日本と非常によく似ている。アメリカもそうだ。五番目に「コンドラチェフ長期波動の底」の時期だ。「コンドラチェフの長期波動は、ほほ五十年のサイクルで起きているが、一九三〇年前後は、この波動の底の部分に当ったが、五十年後の一九八〇年代も、ほぼ底の部分に相当している。」これが三菱総合研究所の五点にまとめた、世界経済が恐慌前夜に大変似ているという点を述べているものであります。  そしてまた、元大蔵省にいた加藤さんは九点について相似点を述べているのですね。  それは、株式価格の急上昇と異常高、二番目が物価と金利の低下傾向、三番目が農産物の過剰、四番目が途上国の累積債務、五番目が先進国の貿易インバランスの拡大、六番目が国際資金の偏在と投機化、七番目が為替相場の基礎的不均衡、八番目が国際通貨制度の老化、九番目が保護主義の台頭。加藤さんは、この九つが一九二九年と非常によく似ている問題点である、したがって目が離せない部分があるのではないか、しかし、情報通信、コンピューター、飛行機、いろいろなものが当時と今とでは比較にならないほど進歩発達してきているから、協議によって、話し合いによってこの恐慌への道を避ける可能性がかなりある、それは各国の協調にあるということを言っているわけでありますが、その恐慌を防ぐためには次の三つぐらいのことが言えるのではないか。  その一つは、アメリカを主とする先進資本主義諸国の経済政策、彼らの間の政策協調、協議が不況、恐慌の回避を基底として現在行われていること、現在の蔵相会議中央銀行の総裁の会合などはそのために行われているのだという認識、第二は、IMF、世界銀行などの国際金融機関や諸国の大銀行が国際通貨危機を小さな火のうちに消しとめるよう協力していること、第三は、先進諸国の政府、産業界ともにデフレよりインフレまたはディスインフレを先行する傾向があるというこの三点から見て、昭和初期のような大恐慌にはならずに食いとめることもあり得る。しかし、一〇〇%恐慌を回避できるかというと、だれも断言できない。起こるかもしれない。起こらないかもしれない。ガルブレイスは起こると断定していますね。じゃ、いつ起こるか、どのくらいの規模になるかは何人もわからないとガルブレイスは言っているのですね。  そこで、政治なり金融、財政に直接かかわる大蔵大臣として、こういう国際経済状況の中でどういう心構えで対処したらいいか。大蔵大臣がここで恐慌が起こると思いますなどと言ったら株価やなんか全体に大変なことになるから言えないのはわかって質問しているわけでありますが、対応の心構えとしてどうか。かなりの学者や実務家がこういうことを言い出して「エコノミスト」やいろいろな雑誌にも書いているわけですから、国民や企業家の中にも大変な不安があることは間違いない。みんな心配している。これから五年先ですから一九九〇年ごろがその大恐慌の山に入るのではないかという時期まで言っている学者もおるわけであります。そういう問題について大蔵当局は世界情勢なり金融の動き、為替の動きあるいは各機関の行動なりを十分注意深くチェックしてないと、こういう経済状態の中でインフレなき持続的安定成長というサミットの合意はなかなか達成できないのじゃないか、こんな気がしてなりません。こういう論について大臣として今どんな感じで受けとめておりますか。
  30. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 今武藤委員の言われましたことの中に幾つかの答えと申しますか対策が御示唆として出ているわけでございますけれども、まず一九二九年ごろと今を比べて格段に違うと思いますのは、各国間の政策協調が頻繁かつ積極的に行われるようになったということを挙げることができると思います。また、IMF等々の国際機関がそれなりの役割を担っているということも申し上げることができると思います。それから、各国の国内で急激な経済的パニックが来ないようなビルトインされた制度が先進国には幾つかございます。例えば失業保険あるいはいざという場合の預金保険、それから各種の社会保障措置、これらは一九二九年のようなことが急激には起こらないようにいわばビルトインされたセーフガードであるということを申し上げることができると思います。そういう国際的な協調関係と各国が持っております国内のある程度の安全保障措置、そういうものが一九二九年と基本的に異なるということが言えるであろうと私は思います。  しかし、ここで我々はどういうことに注意すべきかということについては幾つか考えるべきことがやはりあると思います。  一つは、武藤委員が言われましたように、とかく金が投機に向かいやすいという状況。申すまでもなく、投機というのは一遍外れますとガラを生じる、そういう実需の伴わないものでございますから、日本もそうでございますが、国際的にそういうところに金がどんどん向かっているということは危険な状況であると考えざるを得ません。  なぜそうなったかと言えば、一つは、やはり実需というもの、物的な生産あるいは設備投資、在庫投資が起こらない。なぜ起こらないかと言えば、一見需要がないからであるということになるであろうと思います。  一見需要がないと申しました意味は、一つは、例えば累積債務国は需要がないわけではございませんけれども需要を満たす手段がないわけでございます。まだまだ世界各国にはだしで歩いている人がたくさんあります以上、地球上にそういうものの需要がないとは言えないだろうと私は思いますけれども、お互いの知恵が足りませんものですからその需要を実需に持ってくることができない。一つは、累積債務国の問題なんかを処理いたしますと、そこから新しい需要が生まれてくる可能性がございます。  また、先進国間のインバランスも、もしアメリカが財政赤字を少なくし貿易赤字を少なくすることが本当に必要であれば、それにかわる需要はだれかがつくりませんとそれだけ需要不足になりますが、それは申すまでもなく黒字国の責務であろうということはまた申し上げられると思います。また、累積債務国になりませんでも、農産物一次産品価格が不当に安いということは、この国に需要が起こらないということでございますから、これについての何かの安定措置を考えてやる必要がある。  都合幾つかのことを申し上げましたが、結局国際的にも国内的にもある程度のセーフガードができておりますから一九二九年のようなことになるとは思っておりませんが、そのためには国内的にないし国際的に需要を起こして、潜在的な需要がないわけではないのでございますから、需要を起こすことによって世界資源と資金が生産的な投資、設備投資、在庫投資に向かっていく、したがってそれが投機的な投資からそちらへ動いていく、こういう状況をつくり出すことが大事なのではないかと思っております。  一九二九年のときには、御記憶のようにスムート・ホーレー・アクトなんというものができまして、これが非常に悪かったということはアメリカにも重々反省がございます。私どももいろいろな意味でのあの当時の教訓は忘れておらないわけでございますから、そういうことを思い起こしながら今のような施策を中心考えていくならばおっしゃるような事態は防げるのではないかと考えております。
  31. 武藤山治

    武藤(山)委員 内海さん、国際金融の専門家だからちょっとお尋ねします。  今世界経済はいわば混沌状態にある。何人も先の見通しなどできないほど混沌としていて難しい。結局資本主義経済体制というのは、貨幣、商品、貨幣、その運動を続けて利潤を獲得するというのがその特質であります。結局その媒介となるのが金でありますね。かつてはポンドが国際基軸通貨として百年の生命を維持した。今ドルが国際基軸通貨になって約五十年。まだ五十年になりませんね。しかし、意外と早くドルは国際基軸通貨からおりるのじゃないか、崩壊するのじゃないか、そんな感じもする。いや、そうでもない、アメリカの国力というのは大変なものだ、またドルは信認を受けて安定的になる、こう見るべきなのか。  そして、元大蔵省にいた日本債券信用銀行顧問の渡辺誠さん、彼は最後のところでこう言っているのですね。「ポンド(金本位制)、ドル(IMF体制)が金に繋がって安定していた時には世界経済は円滑に運行し、それらが崩壊した時には激動が世界経済を襲った。このことは貨幣こそが経済の中核、そのレギュレーターであることを明確に示している。人々は往々にして貨幣制度の重要性を忘れている。現在の金から離れた為替変動制は制度ではない。今こそ国際通貨制度の再建または世界貨幣制度の創設を最も必要としている時である。早晩、世界経済一つに統合されていく。」であろう、こう結んでいるのですね。こういう所論について、現職の国際金融局長として、世界通貨の問題と世界経済の安定の問題についてどんなことを考えているのですか。
  32. 内海孚

    ○内海(孚)政府委員 本来、国際通貨制度が今までたどってきた道から考えまして、今後どうあるべきかということについての私の意見ということだろうと思います。  これはちょっとおこがましゅうございますが、一九七六年に新しいIMF協定によりましていわば国際通貨制度から金というものの役割をやめていこうということになったわけでございます。そのときのイメージといたしましては、SDRというものを中心として考えていったらどうだろうか。そもそもドルを中心としてきたものが破綻いたしましたのは、御記憶かと思いますが、いわゆる流動性ジレンマというようなことが言われまして、アメリカの国際収支状況が非常に黒字であるときには世界の流動性が不足する、他方、アメリカの国際収支が赤字になりますと、流動性の方はだぶだぶしますが基軸通貨であるドルの信用がなくなるということの反省から、SDRというようなものを中心としていったらどうだろうかということで、十年ちょっと前にそういう考え方が支配的であったわけでございます。  ところが、その後の推移を見てみますと、どうもSDRというのはなかなか一般のビジネスの世界では使われない。そうしますと、結局実態は何かというと、やはりドル中心で動いてきたのがその後の姿であったと思います。そのとき、そういうことを見てみまして、さて今後どうなっていくのかというときに、例えば、今御指摘のような金とのつながりというものを再び重視してみようじゃないかという意見、これは例えばアメリカでもジャック・ケンプというような人たちが言い始めるというような傾向もございます。  他方、これにつきましては、恐らく変動相場制というものになってから結局各国の政策というものがいわば何にも束縛されなくなっちゃったのじゃないかというところの反省みたいなものがあるのだろうと思います。つまり、我が国を例にとりますと、かつては国際収支の壁あるいは外貨準備の壁というものがいつもありまして、これは固定相場制度を守っていたわけでございますので、経済が少し発展し過ぎた場合には外貨準備が底をつく。それでそれにブレーキをかける。さらに、黒字になってくると、逆の場合には今度はできるだけ発展しよう、こういうことになるわけですが、変動相場制になると、その辺はいわば外貨準備を媒介としたシーソーゲーム、例えばこちらのグループが黒字になり、こちらのグループが赤字になると、相互に経済調整が、自動的に国内政策で相当きついことをやりながら調整せざるを得ないという仕組みがあった。  しかしながら、そういうのに戻ろうと思いましても、今は一日約二千億ドルの金が世界じゅうの市場で動いているわけでございますので、その中で貿易の占める割合というのが恐らく七%とか八%とかいう程度、そういう世界になってきますと、なかなかこれは人為的に調整ができなくなってきているということもございます。したがって、歴史をもとに戻すのはなかなか難しいという感じがいたします。結局はドルというものが基軸通貨であるということはやはりなかなか変わらないのではないか。ただ、そこにおきましてアメリカの経済というものの世界における比重というのが徐々に下がってきております。これに応じまして例えば日本の円とかあるいはドイツ・マルクというようなものがいわばアメリカのキーカレンシーであるドルを補足するような形で徐々にその役割を高めて、いわば複数のキーカレンシーズというものを中心として通貨制度というものが維持されていくということなのであろうかと私は思うわけでございます。  最後に、変動相場制というのはもうこれは通貨制度とは言えないという今のお話がございました。そういう変動相場制につきましては、今まだトライアル・アンド・エラーみたいな段階を経ているのではないか。一昨年九月のプラザ合意というあたりを境といたしまして、相場はマーケットに聞けというようなことからだんだん何とかして安定というものを求めていくにはどうしたらいいかといってとを手探りで始めた。その間におきまして、いろいろ今後もそういうトライアル・アンド・エラーみたいな段階は続くと思いますけれども、基本的にはまず政策協調をベースとしながらある程度みんなで協力して為替市場における協力というのもやっていくということなんだろうと思います。  一言で申しますと、よく言われましたが、ちょうど円ドルが例えば一ドル二百五十円というころでございますが、あのころ、銀行でいうと調査部長は、こんなのはあり得るはずがない、アメリカの大きな赤字と日本の大きな黒字を抱えていればあるはずはないと言う。一方、マーケットで日々扱っておりますディーラーたちは、いや、もっと今度は三百円になるんだというような形で動いているというように、いわばエコノミストの見方とディーラーの見方が非常に離れているときに、ああいうプラザ合意のような形で政策協調のアナウンスメントを行ってやったからこそそれほど大きな介入額でなくて動いたわけですが、その後は今度逆の方に振れて同じような問題がある。そこで、ルーブル合意とかワシントンでのG7というような形でいろいろ協力を積み重ねながら安定への道を模索しているというのが現状ではないかと思うわけでございます。
  33. 武藤山治

    武藤(山)委員 内海さん、今、マルクと円がドルを補助するような形でキーカレンシーとして少しシェアをふやすこともドルの下落を防ぐ一つの補助手段になる、私も同感なんですが、しからばなぜ円が輸入の代金支払いに利用できないのか、また輸出の受取金額も円にしてもらいたいと言っても通用しないのか、その点の説明をちょっと聞きたいのと、もう一つは、現在マルクは世界通貨の大体一〇%近くいっているでしょうね。もっといっていますかな。ところが円は二%か三%ぐらいでしょうね。そこらの数字も正確なところをちょっと発表願いたいのです。それは、なぜドイツが一〇%以上になっているのに日本の円が、これだけ強い円が世界から好かれないのか、受け取り側から嫌がられるのか、その辺の原因が私にはよくわからない。それとも日本の商社なり企業家がそういうことを好まないでドルの方を好むのか、どちら側に原因があるのですか。
  34. 内海孚

    ○内海(孚)政府委員 まず数字から申し上げますと、日本輸出に占める円建ての比率は御指摘のようにまだ三五%程度でございます。これは昭和六十年代にはもう三〇%に達して三五%までなっております。輸入の方は依然として一けたで一〇%に達しない状況にございます。それから準備通貨としての割合でございますが、これは一九八五年末におきまして米ドルが六五・一%、ドイツ・マルクが一五・五%、円はやはりかなりこのところ比重を高めまして七・六%までなっております。  まず、日本輸出入に占める円建ての比率の少ないことについてでございます。これは私は輸入と輸出とで局面を若干異にすると思っております。といいますのは、我が国の輸入は圧倒的に第一次産品、原材料が多いわけでございまして、この価格はいわば国際マーケットで決まっている、したがってどうしてもドルの決済ということになりがちだというのはこれはこれで私はわからないではないと思いますが、いずれ我が国がもっと製品輸入の比率を高めてまいりました場合にはあるいは変わってくる局面があり得るかと思います。  それからもう一つ、今度は輸出の方でございますが、この辺は私は御指摘の点が一つ課題だと思っておりますが、例えば刃物とか繊維あるいは陶磁器というような伝統的な輸出品の場合には、これは相手方バイヤーとの力関係でドル建てにしろと言われたらやむを得ないかもしれません。しかしながら、例えば多くの自動車会社、それからエレクトロニクスの会社は、例えばアメリカとの関係で申し上げますと、アメリカに子会社を持っているわけでございます。アメリカに子会社を持っておりましてそこに輸出するわけでございますが、その場合も円建てでなくてドル建てが圧倒的に多い。これにつきましては、私もそういった会社のトップマネジメントの方と大分議論をしたことがあるわけでございますが、どうもやはり日本的な考え方で、子会社に移送すると為替のリスクが移る、そうすると、子会社で為替のリスクのマネジメントをいろいろやるとどうも穴をあけたりコントロールできないので本社でまとめた方がいいんだ、こういうお話でございまして、この辺はそろそろ考え方を変えていただくことがやはり円の国際化、ひいては我が国産業の輸出収入の安定化という観点からも望ましいのではないかという感じがいたしておるわけでございます。  それから、我が国の円が外国の通貨当局によって保有されるということにつきましては、単に円の信用だけではなくて、長期、短期をあわせましていかに多様な、かつ魅力のある円資産というものを我が国のマーケットが持っているかということにかかると思います。その点におきまして我が国がちょっとおくれていると思いますのは、やはり短期的な資産についてそれだけバラエティーがないということでございまして、武藤委員御高承のとおり我が国の金融資本市場もこのところ大分ピッチを上げて国際化、自由化を進めております。そういう意味ではこういったニーズに従来よりもこたえられるようになってきていると思いますが、一層の努力が必要であるというふうに思っております。
  35. 武藤山治

    武藤(山)委員 もう一問。いずれにしても今の世界資本主義経済の混沌とした状態というのは不均等発展から来ておるわけですね。この世界経済の不均等発展というのを、それぞれの国が国際化の中で国境をできるだけ薄くして話し合いをやる以外にない。何年先ぐらいにこの不均等状態というのはやや均衡世界経済になるという展望を大蔵省あたりでは持っているのですか。何年ぐらいかかるのですか、この日米のは。これは大蔵大臣でもいい、大臣の観測で。  これは私は二十年ぐらいだめだろうと思って主張していたら、加藤さんは、いや、アメリカという国はやろうというときは強力にやる、そういう国だから五、六年先にはかなり改善されちゃうという見方もあるのですね。将来展望としてこの不均等発展がややいいところまで均衡状態になるのは何年ぐらい先と見ておりますか。
  36. 内海孚

    ○内海(孚)政府委員 不均衡ということをどことどこの間で、例えば開発途上国と先進工業国とでとらえるか、あるいは日本、米国の間でとらえるかということをいろいろ大変難しいあれですので一つの例で申し上げますと、今武藤委員おっしゃいました米国の不均衡というのはどういうふうにとらえているかということでございます。  これにつきまして私の見解を申し上げるのはちょっとおこがましいのですが、例えば米国の財政赤字というものは、今年当初に発表されました予算教書では、これは到底実現は難しいという見方が圧倒的に多いわけですが、八八年度の財政赤字を千七十八億ドルにしょうということを言っておるわけでございます。恐らく自然体での赤字額、つまり特別な努力なしの赤字額というのは、この際行政府は大体千五百億ドルぐらいと見ております。議会予算局ではこれを千七百億ドルぐらいと見ている。したがって、依然として大きいわけでございます。ただ、私の記憶では、二年前に一九八八年度の自然体の赤字額というのは二千五百億ドルというふうに言っておりました。こういうふうに考えると、やはりグラム・ラドマンはある時期におきまして相当大きな役割をしてきたということは言えると思いますし、お話ございましたが、アメリカ税制改正もこれは到底だめだと思っていたら一転してでき上がった国でございますし、大変いろいろ問題はあるけれどもある意味ではバイタリティーが政治的にも社会的にもある国だという気も私はいたしておるわけでございます。
  37. 武藤山治

    武藤(山)委員 主税局長、わざわざお呼びしたようですから、一点だけ。  先ほどお尋ねしたのは、六十一年度の税収見込み、法人税と石油税がちょっと落ちておるので、五月まで法人税の納税が行われた後でないとわかりませんが、今の推移から見て歳入欠陥は起こらないかどうかということの質問をしたのですよ。歳入欠陥は全く出ない、補正後の見込み税収はある、こう見ておるのかどうか、その見通しをちょっと。
  38. 水野勝

    ○水野政府委員 大臣から既に御説明、御答弁申し上げておるかと思いますのでそれに尽きるわけでございますが、あるいは繰り返しになろうかと思いますけれども、三月末での数字を申し上げますと、累計では六・五%の伸びになっておりますし、補正後予算の伸びは三・二%でございます。それから三月までの達成率は八一・一%でございまして、去年は七八・七%で、それに対しましては二・四%よくなっているというところでございます。  ただ、何と申しましても三月決算法人が五月に納付していただきます法人税のウエートが非常に大きいわけでございます。去年の進捗割合、達成割合に比べましては確かに二・四ポイントいいわけでございますけれども、例えばこれを過去五年間平均での三月までの達成割合を見ますと、これは八一・五%になっておりまして、それに比べるとことしの達成率は下回っておるというようなこともございまして、そこらはすべて四月、五月に納まります法人税に左右されるところが大きいわけでございます。去年の数字で四月、五月二カ月分の法人税、ほとんどこれは五月分でございますけれども、合わせますと四兆二千億ぐらいが入っておるわけですが、ことしの予算で法人税の残っておる二カ月分は四兆一千億ぐらいでございますから、去年と同じように入れば達成できるわけですが、いろいろ民間の調査機関、その中に日銀の短観も含めました調査機関の三月決算の利益状況を見ますと、平均しますと前年比二割程度の減益を見込んでおる。こういうことからしますと四兆一千億はとても入らないということになるわけでございますが、必ずしも最近の法人税の税収、中小企業を中心としてそんなに悪いということでもないといたしますと、民間平均の見込みのような二割減益になるのかどうかは、そこまで行くこともないのではないかということでございますと、現在の全体の税収の勢いからすると欠損になることはまずないのではないか。しかし、何と申しましても四兆円以上残っております法人税次第でございますということでございます。
  39. 武藤山治

    武藤(山)委員 時間が大分迫ってまいりましたから、企画庁、今おいでいただいておりますね。通産省も来ておりますね。二人に先に質問しましょうか。  通産省、アメリカの貿易収支の赤字を縮小し日本の黒字も縮小する、これがアメリカの最大のねらいですべてだと言ってもいいくらい、当面アメリカの要求はアメリカの貿易赤字を減らすこと、日本の貿易黒字を縮小すること、それを内需拡大という方法で何とかしようというのですが、私は不可能だと思うのです。内需拡大で輸入を激増させて貿易バランスをかなり改善するなんて簡単にはいかぬと思うのでありますが、貿易収支の問題だけを取り上げて考えてみたときに、アメリカが均衡するまで五年間ぐらい日本輸出を一〇%ぐらい自主調整、自主規制を業者だけでやれないものかどうか。五年間ぐらい一〇%ずつ輸出を減らす。政府が介入してはいけません。これは自由経済の原則を侵すから、私は課徴金をかけるなんというのは反対だし、結局業者自身がやはり摩擦を減らすために調整をする以外にないのじゃないかと思うのです、一番大きな額をねらうには。通産省はそういう点については業者と年じゅう話し合っておる機関ですけれども、そういう考えについてはどんな考え方を持っておるのですか。
  40. 糟谷晃

    ○糟谷説明員 ただいまの先生の御質問、大変難しい問題でございます。私どもとしましては、日米間の貿易インバランスを何とかして縮めていきたいということを念願しておるわけでございまして、今先生がおっしゃいました、対米輸出について業者が自主的にそれを抑えていくという考え方はどうかということでございます。御案内のように既にアメリカに対しましては幾つかの品目につきまして輸出を自主的に抑えているという品目もあるわけでございますけれども、ただこういう品目と申しますのは、貿易収支のためといいますよりもむしろそれぞれの業界の事情によりまして貿易摩擦を回避するために緊急避難的にやっている、こういうものでございまして、貿易収支の改善のためにこういう手法を広げていくということにつきましては私ども消極的な考え方を持っているわけでございます。  と申しますのは、御案内のように既に自動車とか家電製品を初めとしますほとんどの品目で円ペースの手取りは前年に比べて大変減っております。そういうことで企業経営の足を引っ張っているわけでございますけれども、これに加えまして今先生がおっしゃいましたような方法をとるということは、既に苦しい状況にある日本の経済の足をさらに引っ張る、非常に深刻な影響が与えられるのではないかということがまず第一にございます。  それからもう一つは、そういう私どもの今までとっております自由貿易体制という考え方に照らして、やはりインバランスの是正は拡大均衡という方向でいくべきものではないかというふうに考えておりますので、そういう我が国政府がとっております基本的考え方に照らしてみてもどうかなという考えがもう一つございます。  三番目の点といたしましては、日本側が自主的に輸出を抑えるということを特にアメリカも求めてきているわけではございませんし、そういうことをやることがアメリカから評価されるのかということを考えますと、先ほど申し上げました、日本の今までの旗印である自由貿易の堅持あるいは拡大均衡ということで対応すべきではないかというのが私ども考え方でございまして、そういう意味輸出を抑えるという発想はとりたくないというのが通産省の考え方でございます。
  41. 武藤山治

    武藤(山)委員 そうなると、結局財政と金融、ここがいつも大変なしわ寄せで苦労しなければならないということになるので、これはなかなか日米戦争は終わらぬ、かなり長期化する、そういう決断を私はいたしたいと思います。それはアメリカ責任があるので、日本はよくて丈夫で見てくれもよくてしかも値段もそこそこだとなればどこの国民も買いたくなるのは当たり前なんで、無理に売っておるわけじゃないので、九〇%アメリカ責任がありますね、今の摩擦は。しかし、国際化の中だから一国の主権だけを主張していたのでは物事は解決しない。げんこの振り上げっこになったら大変だということでお互いが我慢ということになるのだろうと思うのでありますが、しかし今の貿易秩序ということをそれぞれ業界が少々自発的に自主的に考えるのは、貿易立国として別に足を引っ張ることじゃなくて、期限を決めて五年間ぐらい、そしてアメリカとの黒字の幅を日本はここまでみんな心配してやっておるんだということでアメリカを説得する大きなファクターになるのではないか、私はそう考えているのであります。党内には、輸出課徴金をぶっかけて少し税金で取り上げてブレーキをかけるという意見もあるのですが、私はいつもそういう議論にはくみしていないものですから、今通産省の指導というようなものも大変重要な時期に来ているんじゃないかな、こう思っております。  企画庁、内需拡大ということをOECDの会議でも、きのうの新聞を見ると、日本に強く要請をしております。五兆円の内需拡大をやるという非公式の約束を中曽根さんもしてきたし、またOECDからの強い日本に対する指摘でもありますが、五兆円の内需拡大をすることによって一体輸入がどのくらいふえると見込んでいるのですか。そして、これは今のインバランスに対して貢献をするというのがねらいでやるのか、それとも、政府経済見通しが三・五%見込んだけれども実際二・五くらいしか達成できそうもない、この一%を埋めるために何とか三・五という政府努力目標を実現するために五兆円の補正を組もうとしておるのか、その辺は企画庁はどんな考え方でやっておるのですか。
  42. 田中努

    田中(努)政府委員 まず、経済見通しで三・五%という数字を掲げたわけでございますが、現状から考えましてどういう状況にあるかというあたりから申し上げてみたいと思うわけでございますが、三・五%見込みましたときには、円高のもとにおきまして内需はかなりの速度で拡大するだろう、しかしながら外需はどうしてもマイナスぎみに推移するであろう、こういうことを見込んだわけでございまして、内需の寄与が成長率に対しまして四%くらいは期待できる、これに反しまして、外需の面ではむしろマイナスの〇・五%くらいの足を引っ張る影響が出るだろうということで、合計をいたしまして三・五%、こういうふうに考えたわけでございます。  その後の推移を見てまいりますと、想定をいたしましたように、やはり内需にはかなりいい影響が出ておりまして、特に非製造業を中心にかなり景気がよろしい状態が持続しておるというふうに見られております。しかしながら、いわば景気の二面性ということで逆の面が出でおるわけでございまして、輸出に特に関連の深い製造業を中心に雇用面も含めましてかなり悪い影響が出ているということでございまして、成長率で申しますと、このところ国民所得統計が判明している昨年末までの段階で申し上げますと、約二%台の成長にとどまっておるわけでございます。これは円高が予想以上に進行したというふうなことでございまして、今後その影響が日本経済に対してどのように出てくるか、これが非常に注目されるところであると思うわけでございます。  そこで、そういう状況で、日本経済にはかなり厳しい状況がある。また、日本経済を取り巻く外国の経済に目を転じましても、アメリカ経済も、この一−三月かなり伸びたようには見えますけれども、これはいわば後ろ向きの在庫の増加によって名目的に膨らんでいるという面がございまして、どうも内需の動きを見ておりますとかなり弱い面が出てきている。また、ヨーロッパも西ドイツを中心にかなり落ち込んでいる、力強さを欠く状態になってきているというようなこともございまして、ここで内需拡大策を積極的に講ずることが必要な状況にあるのではないか、こういう判断をいたしておりまして、自民党のおまとめになりました内需拡大の基本的な考え方を尊重いたしまして、予算案が成立した後におきまして具体的な内需拡大策を打とう、こういうことになっておるわけでございます。  御質問の三・五%成長との関連でございますけれども、これは、当初の三・五%の成長の達成が現在がなり厳しい状況にございますけれども、この達成をより一層確実なものにしていこう、こういう考え方に立ったものであるというふうに理解をいたしております。  これに伴いまして、国際収支の面でございますけれども、当初の見通しては経常収支につきましては八百八十億ドルの黒字が六十一年度の実績見込みの想定でございましたけれども、ここから出発をいたしまして六十二年度には七百七十億ドルということで百十億ドルほど減少させるということを当初から見込んでおったわけでございます。これは、経済成長率が六十一年度の実績見込みの数字でございます三・〇%から三・五%に高まるということによりまして内需が拡大することに伴う輸入増が見込める、さらに近年実施をしてまいりました輸入の自由化措置等々によりましてその効果がかなり増幅をして期待ができるのであるまいかというふうな想定に基づいておったわけでございます。したがいまして、今回の内需拡大策によりまして、当初の三・五%成長をより確実なものにすると同時に、国際収支の面におきましても、当初見込んでおりました百十億余りの改善、これについても一層確実なものにしてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。  当初の八百八十億ドルという想定でございますが、実績の数字が既にできておるわけでございまして、九百三十億ドル程度の黒字ということで、出発点が少し高目になってきておるわけでございますので、さらに政府調達枠の拡大でございますとかそういった輸入拡大の措置もあわせて講ずることによりましてできるだけ黒字削減の効果を大きくしてまいりたい、このように考えておるところでございます。
  43. 武藤山治

    武藤(山)委員 その内需拡大の目玉、どういうところに重点を置こうとしているのですか。これが一点。これはやはり企画庁が指導するのかね。どこかね。内需拡大の中身
  44. 田中努

    田中(努)政府委員 私どもといたしましては、自民党の四月二十四日にお決めになりました総合経済対策要綱の項目を尊重いたしまして、これから各省とも御相談の上で政府としての中身のある内需拡大策あるいは緊急経済対策というものを取りまとめさせていただきたいと考えている次第でございます。  その内容といたしましては、党の要綱にもございますように、あくまでも予算成立後の話でございますけれども、公共事業につきましては過去最大の前倒しを行う、それから大型補正予算の編成を行いまして公共事業の追加あるいは研究開発、教育等に係る公共的な投資の追加を行う、それから住宅の増改築、規制緩和等々の措置でございますが、一番中心的な項目といたしましては、財政措置によりまして五兆円を上回る内需拡大策を講ずる、こういうところに一番の力点があるかと存じております。
  45. 武藤山治

    武藤(山)委員 内需拡大と関係がないのかもしれないが、二、三日前の日本経済に「政府も買います外国製品 緊急対策で調達10億ドル上積み」と出ていますね。通産省はスーパーコンピューター、試験研究機器、運輸省は長距離救難機、長距離救難ヘリコプター、気象衛星、厚生省は医療機器、文部省は学術図書、美術品、建設省は災害対策用ヘリコプター、科学技術庁は大気観測装置、郵政省は電波妨害監視システム、警察庁は警護指揮車、こういうものを買うという各省庁の一応物色中の目玉商品が出ているのですよ。これは既存の予算の中で操作ができるものなのか、新たに補正予算の中から出すべき買い物なのか。緊急輸入をふやすための政府の方針で今各省にハッパをかけているようですが、大蔵大臣、これはどこから金が出るのですか。
  46. 角谷正彦

    角谷政府委員 外国製品の政府調達につきましては、OECDの政府調達協定というのがございまして十万SDR以上の物資購入につきましては内外無差別で原則として競争入札で買うということになっているわけでございます。  この実績を見てみますと、六十年時点で見てみますと大体四百億円程度でございまして、そのうち油代が半分ぐらいを占めるわけでございますが、正直言いまして、最近の円高あるいは油価の低下等を反映いたしましてそうふえてはおりません。  こういった中で、貿易収支の不均衡がかなり大きいといったふうなことで、今般中曽根総理が訪米されましたときに、日米首脳会談におきまして、相当規模の臨時特例の財政措置を講じまして政府が率先して輸入拡大の努力を払うというふうなことをおっしゃられました。そういったことを受けまして、現在外政室でどういったものが政府調達の対象になり得るかということを内々検討しているようでございます。財政当局としてはまだその話を具体的に伺っておりません。そういう意味では今後そういったものが出た段階で私どもいろいろ外政室との検討も踏まえつつ各省庁との間で検討することになろうと思いますが、今お話がありましたスーパーコンピューター等について申しますと、これは現在全官庁、いわゆる問題になっているような意味でのスーパーコンピューターにつきましては購入されておりませんし、六十二年度予算におきましても購入の予定は今のところ当初予算においてはございません。  そういったふうな意味では、そういったものにつきましては、当初予算の中ではなかなか対応不能なものにつきましては今後追加的な何らかの財政措置を講じていく必要があろうかというふうに思っておりますけれども、そういったことのタイミング等につきましては、今後いろいろな対策の推移等を見守りながら財源措置を含めて検討していく必要があろうかと考えております。
  47. 武藤山治

    武藤(山)委員 野口さんがなるべく早くしまおうと言っているからこの辺で質問を終わりますが、最後に、大蔵大臣、五兆円で内需拡大をする、恐らく財政がほとんど出動せよというのが強い要望のようですね。これは税収を上げて財源をつくるのですか、何でこの財源を賄うのですか、補正予算の五兆円。
  48. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 補正予算のことを余り早く申し上げるのは慎まなければなりませんが、その点を御了解願うといたしまして、一つは時期にも実はよりますし、それから税制改正についての協議機関の御協議がどのくらいの速さで進むかということにも実は関係をいたすものですから、今国会が終了いたしますごろの時点から少し具体的に考えてみたいと思っております。  しかし、いずれにいたしましても公共事業が昨年の補正と比べましても相当大きくならざるを得ないと考えております。という意味では、やはり建設国債が昨年よりはかなり増発を見込みませんとなかなか予算は組めないであろう、そこのところまではある意味で覚悟をいたしておりますが、それ以外のものは、先ほど税収のお尋ねもございましたし、前年度の問題も少しございますし、もう少したちませんと具体的には申し上げられませんが、とにかくかなりなものはやはり建設国債を出さざるを得ないと思っております。
  49. 武藤山治

    武藤(山)委員 いずれにしても、財政がこういう状態のときに、モルヒネ注射をときどき打っては何とか先へまた生き延びよう、こういう手だてをしていって本当に財政体質というのはよくなっていくのか。与党自民党は票が欲しいからいろいろアドバルーンを揚げては建設業者にみんなよこせとか建設大臣みたいな勇ましいことを言っている大臣もおるし、そうかといって、きのう堀さんの質問に答えたように、公共事業はもうシェアが決まっていて全体枠あるいは額が決まればどこへ何がいくか決まっているなどというのでは、これは輸入拡大に結びつくなんという内需拡大でもないし、既存のまま建設会社や土建会社に少し潤いを与えるだけの話になってしまうので、その辺は、補正を組む際にも、大蔵大臣、毅然として、何がねらいでこの補正を組むのかという、本筋から外れるようなところには金を出さない、そういう覚悟が必要だと思うのですね。私は、本当に内需拡大なんかやるんだったら、工業高等学校とか大学の工科系の機械なんというのは、旋盤など古いのを使ってやっているわけですよ、高等学校などは。そういうのを徹底的に更新をする金に使うとか、やるべきことはいっぱいあると思うのですよ。  今度は野党の意見も事前によく聞いて、売上税の轍を踏まないように、補正予算を組む前に野党の政策担当者と大蔵大臣が少し話し合うくらいのことをやることが本当の参加の政治であり民主政治なんであって、できたものを、さあみんな議論してみろなんというおこがましい態度はこの辺で少し反省してもらいたい。そういうことを最後に注文して、まだ時間が余っていますけれども、野口理事の顔を立てて、質問を終わりたいと思います。
  50. 池田行彦

    池田委員長 安倍基雄君。
  51. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 私どもは余り時間が長くないので簡単に言いますけれども大臣、去年ちょうど売上税のいわばどの業種を免税にするかという議論が行われているさなかに、私は売上税は問題であるということを質問したことがあると思います。覚えていらっしゃるかと思いますが、その際、私は、多段階的、つまり日本は生産、流通が非常に多層化している、その間にこういうのを入れると中小企業が転嫁できないで非常に困るよという問題とか、いわば短期間にそういった業種を決めると必ず不公平が起こる、納税コストの問題、納税トラブルの問題等いろいろお話をしたと思います。そのときに、私は本当に短期間に決めるのはいかぬぞというお話をした。そのとき大臣は、ともかく今一生懸命やっていますということでお答えになりました。私は大蔵OBではあるけれども売上税はやはりまずいよということをはっきりと同僚にも言いましたし、後輩にも言ったわけでございます。あのときの議論考えますと、別に私はその後私の議論をみんながまねしたとは言いません。いろいろ同じような議論が出てきておりましたけれども、結果的にはこういう結果になったということです。私はやはり我々の言うことに耳を傾けていただきたいと思います。  私は、今回はたまたま武藤議員も似たようなことを言われたわけでございますけれども、まず第一にお聞きしたいのは、これは外務省に聞きたいと思いますけれども中曽根さんがこの間アメリカに行って約束してきたと言われる今度の五兆円規模の内需拡大策、公共投資というものに対しまして、きのうの本会議でしたか、私も同僚議員に聞いてくれといって頼んだのですけれども、一体これは対外公約であるのか否かということに対しても、中曽根さんは、これは私は自民党案を見せてきたにすぎませんという話を言われました。この五兆円の内需拡大策というものが果たして対外公約であるのかどうか、あるいは自民党の案を見せてきたにすぎないのか、これは非常に大きな問題でございますので、まず外務省の見解と、その後、大蔵大臣の見解をお聞きしたいと思います。
  52. 池田行彦

    池田委員長 急遽呼び出したようでございますが、まだ到着していないようでございます。
  53. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 では、外務省の見解をお伺いする前に、大臣に、これを対外公約とみなすのかどうか、あるいは全く自民党案を見せてきたにすぎないのであるのかどうか、これをどうお考えになるか。
  54. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 総理大臣と大統領が話をされて共同声明にある程度のことが出ておるわけでございますから、ただこれは自民党の案を話をしてきただけだというわけにはまいらないだろうと思いますが、総理大臣もしかしその点はこの共同声明にもございますようにかなりゆとりのある広い範囲での表現をしておられますから、厳密な意味で大変にもう一種の自由を拘束されるような意味での約束だとは私思っておりません。ただしかし、総理大臣と大統領が話されてこういう共同声明が出ているということでございますから、やはり我が国にはそれなりの期待が寄せられておって、その期待に我々としてもこたえるべきものだろうと私は考えております。
  55. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 それじゃ、きのうの答弁の、私は自民党案を見せてきたにすぎませんという発言は、誤りとお考えですか。
  56. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは恐らく公約かというお尋ねでございますと、厳密な意味で約束ということではございませんから、それを強調されたんだと思いますが、それならこの共同声明というものはもう忘れてしまってもいいかと申しますれば、そういうものではないだろうと思っております。
  57. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 ということは、自民党案を見せてきたにすぎないという答弁は、誤りととっていいわけでございますね。
  58. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 もしそれが、この声明に書いたようなことは別に日本政府としても何もしなくていいんです、忘れていいんですという意味におとりになりましたら、それは総理大臣の真意ではなかっただろうと思います。
  59. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 もう外務省の方、見えたんですか。——じゃ、いいです。  それでは、今度サミットに行かれる、そこでやはり似たようなことを発言してくれば、これはまさに対外公約とみなさざるを得ないわけでございますね。いかがでございますか。
  60. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは対外公約ということを一応普通の言葉の意味でおっしゃっていらっしゃるんだろうと思いますけれども、きつく考えますとこれは一種の厳密に法律的な拘束ということにまでなりますから、それまでの意味にお考えにならずに、やはり日本総理大臣としてこういう意思を持っているということを公の文書で申されましたら、それはそこから生ずる期待に対してはやはり全力を、誠意を尽くしてこたえようとするのが私は相手に対する我々としての務めであろう。務めというのも、法律的な意味ではございませんですよ。ございませんが、我々としてすべきことではないかと思います。
  61. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 たしか、私の記憶によりますと、レーガンと五兆円規模の主として公共事業を中心とした内需拡大策を話してきたというぐあいに聞いておりますけれども、またこのベネチア・サミットにそれを持っていく。私はとんでもないことだと思うのですよ。  というのは、我々売上税をあれだけ議論して棚上げにした。終わった途端に、五兆円規模の公共事業。何事であるか。私どもは内需拡大には賛成ですけれども、今武藤議員がお話しされたように、この五兆円規模の公共事業がどの程度貿易バランスに響くのか、円高是正になるのか、まことに疑問なんですね。これは本当にそのために円ドル関係が安定して、要するに為替相場が安定するなら話は別ですけれども、ここで五兆円の公共事業をやってみてどのくらい効果があるのか。  今武藤議員がまさに同じことを質問されました。貿易バランス、円ドル関係の安定にどのくらい役に立つのか、そういう吟味が全くなされていない、私はそう思います。公共事業のうちでどの程度、これはまだ内訳は決まっておりませんけれども、大枠かもしれませんけれども、どういう内容なのか。私は、今、一般的に公共事業の波及効果というのは前よりも大分減っている、しかも、例えば土地を買うような場合に非常にそういった要素もふえているということで、今考えられている五兆円規模の公共事業というものの内容、それはどのくらい波及効果があるのか、そしてまたその中における土地取得費は何割ぐらいあるのか、その三つの点を聞きたいと思います。
  62. 角谷正彦

    角谷政府委員 四月二十四日の自民党の総合経済対策、それは今総理が向こうで御紹介されたという中身でございますが、これは五兆円を上回る財政措置を伴う内需拡大策ということでございまして、公共事業のみで五兆円、そういうことではございません。内需拡大策全体を合わせて五兆円を上回るということでございます。  そこで、その五兆円の中身でございますが、これは政府地方あるいは政府関係機関といいますか、それらによる全体の措置を含みますし、それから、これも総理大蔵大臣が前から御答弁いただいているように、仮に減税が実施されればそれもこういったものの中に入るのだろうということでございまして、主たる内容が公共事業にあるということになるかとは思いますけれども、それが公共事業だけで五兆円であるということではないということをまず御理解いただきたいというふうに思います。そういった意味で、五兆円の中身をどうするかという問題は、これから緊急対策策定等を通じまして、あるいはその後の補正予算の作業等を通じまして具体化される話でございまして、内容的には今固まったものは全くございません。  それから土地の問題でございますけれども、用地費の問題につきましてはそういった意味で現在検討中でございますので、土地代がどの程度かかるかということについては特に申し上げる状況ではございませんけれども、またこれまで経済対策として公共事業を追加するといったふうな場合には、内需拡大効果を最大限に発揮させるために、いわゆる新しい土地取得を要するような事業は原則としてこれを行わないといった形で、速やかに事業の進捗が図られるような事業を追加するということにしておりますので、今回もこういった考え方に沿いまして、用地費を伴うようなものは極力これを対象としないような配慮をしてまいりたいというふうに考えております。
  63. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 これはむしろ企画庁の方にお聞きしたいと思います。外務省が来られたようですけれども、大体大蔵大臣の答えでカバーされておると思いましたから一応それは省略します。  いわば投資がどのくらいGNPを押し上げるかということがまず一つ問題点となる。それからいわば公共投資が、さっきも出ましたけれども、どのくらい貿易バランスを改善するのかということ、特殊的に言えば対米バランスをどの程度改善するのかということについて知っている限りを簡単に言っていただきたい。私は、本当にこの公共事業によっていわゆるドル、円の相場をどうのこうのと、対外的に内需拡大というのが実体があるのかどうか、非常に疑問に思っています。基本的には、公共事業拡大と言うとみんな喜ぶわけですよ。各地でまた票ももらえるし、いろんなことで。であるからこそ売上税が終わった途端に、公共事業中心の内需拡大、異口同音に、さっき、自民党案、要するに自民党の大綱に沿ってやるという話を言われましたけれども、これはどの程度日本の経済を押し上げ、貿易バランスを改善し、かつ具体的に米ドルとの関係でもってプラスになるのか、その辺についての企画庁、そして大蔵省の意見を聞きたいと思います。
  64. 大塚功

    ○大塚説明員 まず公共投資がGNPをどの程度押し上げるかということでございますが、御案内のとおり、現在内需拡大を図るために六十二年度予算が成立し次第緊急経済対策を策定する予定ということで作業をしているわけでございます。現在のところ、その具体的内容についていろいろ検討している段階でございますので、計量的にどの程度五兆円の財政措置を伴う措置がGNPを押し上げるかということは申し上げることができないわけでございます。  ただ、一般的に申し上げますと、今回の措置ということを離れて考えますと、一つの手がかりといたしましては、マクロモデルによりますところのシミュレーションというのが参考になるわけでございます。ただ、このシミュレーションにつきましてもいろいろなモデルがございまして一概には言えないわけでございます。ただ、私どもの経済企画庁の経済研究所というところで一九八四年の二月に開発いたしました世界経済モデルによりますと、公共投資、これは用地費等を除きました公的固定資本形成ベースの公共投資でございますが、これを一単位追加いたしますと初年度の経済効果はその一・四七倍のGNPの拡大効果があるというような計算がございます。ただ、これも一応の目安でございまして、経済効果はそのときどきの経済情勢でありますとか投資の内容によっても違ってまいりますので、あくまで一つの参考ということで御理解いただきたいと思います。  それから貿易収支とか対米収支に与える効果でございますが、これにつきましても、今回の措置ということではまだ具体的内容が決まっておりませんので申し上げられませんし、それからGNPの場合に比べましてさらに難しいのは、相手国の輸出努力でありますとか為替相場の動向によって随分違ってくると思われますので、これにつきましてもなかなか申し上げられません。また、これにつきましてはマクロモデルにおいても今のところでは具体的にどのような数字ということを申し上げることはできないような状況でございます。
  65. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 簡単に言いますと、大臣、この公共事業を中心とした内需拡大策というのは全く貿易バランスには関係ないと、全くと言っては言い方が悪いかもしれませんけれども考えられるわけです。内需拡大策、拡大策、向こうの求めているのは、日本の内需を拡大することによって輸出入バランスが大分変わってくるということをむしろ考えているわけでございます。それが全く影響のない、さっき武藤委員がいみじくも指摘いたしましたように、この問題はもっともっと輸出の自粛とか別の方法で考えないと、みんな財政におんぶされてくるわけです。  我々は財確法をやっておりますけれども売上税をやめたわ、五兆円の公共事業をやるわ、それも建設国債でやるわ、いわば不況をアップするという意味では、円高不況を救うという意味では意味があるかもしれませんけれども、円ドル関係に全く関係のないことですよ。これを自民党が勝手に決めて対外的に約束してきた。ベネチア・サミットでも約束する。これは一体財政再建気持ちがあるのかどうか。  私は、今の企画庁の説明でもありますように、昔、投資の乗数効果というものを自分自身で計算したことがございます。やはり一から二の間でございましたから、大体今の数字は間違ってないと思います。しかし、これが貿易にどう影響するかなんというのは全然わからないのですよ。わからないところか、今一番大事なことは、外国に行って約束してくるのが、中曽根さんは経済音痴ですから、内需拡大すればいい、要するに公共事業をやればいい、そうすれば円ドルが安定するだろう。とんでもない話ですね。この辺、大臣が、ベネチア・サミットに行く前の中曽根さんに、つまらぬことを約束してくるな、そこをびしっと言ってもらわなければいかぬと思うのです。  私も今の国内的な不況的なものを下支えしなければならぬという要素はあると思います。しかし、今企画庁も言っていましたように、これは全く円ドル関係関係ないのです。ここを履き違えては困る。私は武藤さんの意見を聞きながら、私もまさに同じ質問を用意しておったわけでございますけれども、この辺はよくよく考えていただかないといかぬ。大蔵省の連中が一生懸命やった売上税は私どもはどうしてもまずいと思って抑えました。途端に五兆円の内需拡大、何でもいいと言い出すのは、まさに無責任きわまると思います。財政の担当者である大蔵大臣が、ベネチア・サミットに中曽根さんが出られる前にこれをびしっと抑えておかなければ、何を言い出すかわからないですよ。その結果、公共事業の前倒し、前倒しということで、財政なんかほったらかして行くに決まっています。この点、いかがでございましょうか。
  66. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 その点は私は実はこう考えておりますが、あるいは安倍委員のお考えと違うかもしれませんが、いかがでございましょうか。  私は、今の日本の病気と申しますか経済のあり方というものは、よって来るところがなかなか深いと思うのでございます。したがって、一遍補正予算を組んだら効果が出て治るというものではないだろうという見方をいたしております。それは、やはりよって来るところは、一九八〇年から八五年の間でございますが、八〇年に六十億ドルであった貿易収支が八五年には六百億ドルを超えておったという、実に十倍になったわけでございますから、その期間がドル高の期間であり、また油が非常に高くなって、何とか輸出をしようと考えた期間でございます。この間に日本の経済が過度に輸出依存体質になったと思われます。なってしまったわけでございますから、それを今度正常な事態に直すとすれば、一年や二年の努力では直るはずはない。やはりでき上がったものは、でき上がったよりあるいはもう少し長い期間かけないと転換ができないかもしれないぐらいに正直申しますと考えておりますが、それはしかし、日本社会資本が不足でございますから、日本のためにもやっていいことだし、やらなければならないことだ、こう思っております。  そういたしますと、実は財政に対する負担は、あるいは安倍委員の思っていらっしゃるよりも大きくかつ長いものかもしれないと私はひそかに考えております。また、それが恐らく前川報告の言っておることだと思うのでございます。したがいまして、今度これこれの補正予算を組んだら一体どれだけ輸入誘発効果があるか、どれだけ為替に影響するかということは、実はそれよりもむしろそういう努力がこの時期から始まったということが私は大事なんだと思いますし、また為替の面で言えば、日本の政策がそういうふうに変わってきたということで為替に敏感に反映することは案外あるかと思いますけれども、貿易バランスがそこから急によくなる、輸入が急増するというようなことには私はならないだろう。しかし、そうかといって、この努力を何年か続けなければ日本の姿は直らないわけですし、また直すことが対外的にも対内的にも意味のあることでありますから、実は財政はそのくらいの覚悟をしておかなければならない。経済がうまく動き出したら呼び水としての財政は少しずつ役割が軽くなるかと思いますが、それまではやはりそういうことではないかと実は私は思っております。
  67. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 実は内需拡大の正論は、あり余る民間資金、すべて海外に流出しているが、その資金がどういうぐあいに国内で使われるかということでございまして、幾ら単に政府が公共事業に投資しても、それが本当の呼び水になるようなプロジェクトでなければ全く意味がないのです。全体の規模からいったら、もう民間の金余り現象の金と比べると、五兆円あたりのあれはもうまるでなきに等しいわけです。ですから、いかに民間資金が投資機会を見出すか、見出せるような環境をつくるかということが中心であるべきであって、これをいわば税金をもとにした公共事業にあるいは国債をもとにした公共事業に流し込むということは、本当に全部の負担を財政に持っていくようなものです。  その辺をきちっと見きわめていただかないと、確かに私ども社会資本が不足しております。しかしそれは需要に上がってきておりません。民間資本も利益の上がらないところにはなかなか投資されない。それがある程度公共的ないわばサポートを持ちながら本当に投資機会を見出すような内需拡大をしなければいけないのであって、単に外国に行って円ドルをあれするために五兆円の公共事業をやりますなんて、とんでもない。そういうことではなくて、今の説明によると五兆円というのは必ずしも全部が全部国の資金とは言いませんでしたけれども、要するに国内のいわば民間資金が流れ込み得るような道をつくることが本当に内需拡大なんですよ。  だから、ここでベネチアあたりに行って五兆円の、聞いてみると何かネットベースで、予算ベースでやるなんということを言ったとか言わないとか言っておりますけれども総理は何か死に体になるのを恐れて、予算だって通していかないと相手にされないと思っている。要するに、彼は、対外的に死に体にならないとか政治力のあれを持ちたいとかそういうのが先に立って、中身がわからないままに勝手に約束してくるわけですよ。しかも自民党のわけのわからぬ五兆円がなんかの内需拡大策を持っていって、この前突っ込まれたら、いや自民党案を提示したにすぎないとまた言い逃れているわけです。  外務省に聞く時間もないけれども大臣が言われたように、あそこまで言ったら半ば公約に近くなるわけです。ベネチアに行ったら本当の公約になるのです。ベネチアに行く前に、内需拡大といってもそれを全部国庫負担でやるような意味ではない、我々としてはこれから民間資金が本当に国内に流れ込むようなことを考えていくんだということをぴしっと言っていただきたいのですが、いかがでございますか。
  68. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それはよくわかりました。
  69. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 大臣はどのくらいまでおられるのかな。大臣がおられるときにお聞きしたいけれども。  それから、これは建設省の方に聞きたいのですけれども、東京湾横断道路は実際のところ私はけしからぬと思っているのです。要するに本当の意味の経済効果を考えているかどうか問題である。しかも、でき上がったところを道路公団が要するに買う。道路公団がそれをどうやって最終的に償却するのかという見通しが十分できているのかどうか。これは非常に長期間でございますけれども、本当はもっともっと、どういう経済効果を持つのだとか。これは確かに民間資金を入れたようで一歩あれですけれども、メガロポリスにすべての投資を集中するにすぎない。しかも、それの採算が、十分、それは何十年後というのはわかりませんけれども、民間にやらせるなら本当に先々のある程度の収支も考えてやる。最終的に道路公団におっつけて、道路公団がやる場合に、道路公団はどのくらいの収支見込みを持っているのか、これを簡単に答えてください。
  70. 松延正義

    ○松延説明員 東京湾横断道路の建設につきましては、東京湾横断道路の建設に関する特別措置法というのがございまして、これに基づいて日本道路公団と会社が協定を締結して、会社が建設工事を行い、公団はその建設工事に要する費用を会社に支払うことになっております。  それで、工事としては一応十年間を予定しておりまして、それ以降三十年かけて、これは一般有料道路と同じでございますけれども、三十年かけてかかった費用すべてを償還するという計画にしております。それで、その費用については利用者の方々からいただきます料金をもって充てることにしております。
  71. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 基本的にはそういった大きな橋ができれば対岸の地価なんかぐんぐん上がるわけです。要するに地価とかそういったものが公共投資のいわば果実としてあらわれてくるわけです。したがいまして、公共投資をやるときに、これはどの程度の役に立つんだという審査をきちっとやっていただく、しかもそれが民間資金をどのくらい誘引するかという本当に細かいきちっとしたものが必要なわけです。私はメガロポリスにすべてを集中させることは非常にまずいと思っておりますけれども大臣はベネチア・サミットに行かれる前にその辺を進言されると言われました。これからの公共投資がどうあるべきか、額だけふやせばいいのではないのだ、いかに民間資本を誘引しながら長期的な意味で役に立つかという本当に厳しい目で見ていただきたいと思います。大臣、これはよろしゅうございますね。  おなかが減っているかもしれませんけれども、あと一つ大臣がおられるときに。  実は私はこの間の大蔵委員会で、ドル下落に伴うキャピタルロスが機関投資家にどのくらいあるんだという質問をいたしました。そのもとになる議論は、ドルが落ちるおととしの九月になる前に私が大蔵委員会で、資本の巨大な対外流出があるだろう、今にドルが落ちるかもしれない、そのときのキャピタルロスはどうするんだという質問をしたことがあるのです。そのときの答えは、それぞれの機関投資家は金利をちゃんと考えているからそんな心配はないよということでございました。ところがその後、果たせるかなドルの暴落が来ているわけです。相当巨大なキャピタルロスが生じているに違いない。この間私が国際金融局長に幾らくらいあるんだと言ったら、ちょっと評価できませんという話でございました。そうしたら、最近新聞あたりに、二兆円とも何兆円ともいろいろ報道されています。この辺はどうなのかということと、第二に、つい最近アメリカの国債を日本の機関投資家が買った、その際に大蔵省の指導があったというぐあいにも報じられております。この二点につきましてもう一度はっきりしたお答えをいただきたい。
  72. 内海孚

    ○内海(孚)政府委員 まず後の方の御質問にお答え申し上げますが、大蔵省におきまして機関投資家に対してドル債を購入するように慫慂した事実はございません。  それから第一の方の御質問については、以前より安倍委員のお話も伺っておりますし、私ども考え方も申し上げているところでございますが、投資家がいかなる物件にどのように投資するかというのは、こういう自由化のもとにおいては基本的には投資家の判断でございます。その判断の結果プラスになることもマイナスになることもあるかと思いますけれども、それ自体に私どもが介入する気はありませんし、また、それがゆえにドル債の購入というようなことを慫慂したこともないわけでございます。
  73. 関要

    ○関説明員 ただいま安倍委員がお触れになりました数字は、新聞等報じているところは生命保険会社の数字だろうと思いますので、私から御答弁をさせていただきます。  生命保険会社の経理におきまして、期末でいろいろ決算をいたすわけでございますが、その際、為替による減価だけを厳密に取り出すことはなかなか難しくなっております。と申しますのは、例えば証券でございますと、価格の変動と為替の変動が込みに出てくるというようなこともございます。そういう意味では、やや細かくなりますが売却損とか評価損とか為替損、そういう形でひっくるめて出てくるわけでございます。また、その評価損の中には一部国内債券等のものも入っているという前提でございますが、そういう前提で全部まとめますと、昨年度で約九千四百億円の為替差損等が出ているわけでございます。今年度はどうかということになりますが、これはまだ決算が確定しておりませんけれども、恐らくその数字をかなり大幅に上回る二兆円程度というような数字が出てくるのではないかと予想しております。
  74. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 今金融局長が、個人の責任だと。しかし、機関投資家としてみんなから金を集めてそれを投資している。そうすると、機関投資家のいわば長としての責任はどうなるのです。みんなから金を集めてそれを投資して大損したということについての責任問題があるじゃないですか。
  75. 関要

    ○関説明員 ただいま申し上げました数字は、評価損とかそういうものが入っている数字でございます。したがいまして、その数字全部がいわゆる実現した損というものではないわけでございます。御存じのように、機関投資家、生命保険会社は特にでございますけれども、非常に長期の資産運用をいたしておりますので、その資産運用が果たして効率的であったかどうかということはかなり長いスパンで判断をしなければいけないものだと思っております。それからまた、対外投資に資産運用を向けておりますのは、先生も御存じのようにかなり内外金利差というものがございまして、過去に五%とか六%とか内外金利差があったわけでございます。その内外金利差の有利な部分というのは過去において保険会社が既に所得をしておりますし、将来とも一たん評価損を立てた後はその内外金利差の有利性は残っている、こういう形になっているわけでございます。
  76. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 もっと時間があったらこの議論をしたいのですけれども、結局、例えば向こうの債券を持っていて、金利が下がれば、価格が上がったといっても、日本債に投資した場合と外国債に投資した場合と同じように金利が下がっていれば、ドルを持っていたことにおける差が随分大きく出るわけです。しかも金利差があったといっても、その期間が非常に長ければ別ですけれども、ちょっと技術的になりますが、これだけの大きなドルの変動があるとそれは金利差を大きく上回ってしまう。さっきの証券の評価益というのは、アメリカで金利が半分になる、日本が半分になるという意味であれば、日本債に投資した場合と向こうに投資した場合との円ドルにおける差損は同じことなんですから。細かい話になりますからまた改めてこの話はいたしたいと思いますが、大蔵大臣、こういう問題をどうお考えになるか、その答えを聞いてから、食事にでも立たれていいと思います。
  77. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 今のお話は、機関投資家、生保——損保も多少ありましょうが、その為替差損についてのポテンシャルなロスがどのぐらいあったかということを保険部長から申し上げたわけでありますけれども、今安倍委員がまさにおっしゃいましたように、これはもともとの金利差の問題がございますし、証券の値上がりということもあるでしょうし、長期考えますとその投資が間違いであったか間違いでなかったかということは簡単には言えないことで、私の感じでは恐らく結果として損な投資をしていないのではないかという印象の方が実は強うございます。もちろん保険業法上の免許事業でございます。大蔵省といたしまして、もしその契約者に不利益になるようなことがございますと、これは当然保険業法によりましていろいろの監督をしておるわけでございますから、必要がありますれば注意を促すのにやぶさかではございませんけれども、現状は恐らくそういう状況ではないのだろうと私は考えております。
  78. 池田行彦

    池田委員長 安倍君、お約束の時間はかなり超過しておりますので、簡潔に願います。
  79. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 これでもう一応結構です。私は、玉置議員がせっかく時間をいただいたものですから交代いたしますし、それで食事の時間もございましょうから……。  要するに今の問題、もう一遍議論いたしますけれども、この点やはり大きな問題でございますので、よくよくお考えになっていただきたいと思います。特に、繰り返しますけれども、ベネチア・サミットへ行く前の中曽根さん、きちっとよくかぎを締めておいてください。  じゃ、終わります。
  80. 池田行彦

    池田委員長 玉置一弥君。
  81. 玉置一弥

    ○玉置委員 大変いい質問を中断して私がかわりに出てまいりましたけれども、確かに今話がございましたように、財政再建の側から見ると、内需拡大のための公共投資の追加というのは非常に問題がある。しかし、国内の景気対策という面から見ると一部やむを得ない。しかし、対外貿易不均衡の改善という面から見るとまさに本当に効果が出るのかなという、大変心配をいたしているところでございます。現在のいろんな経済政策あるいはアクションプログラムというのがございまして、政府の方もやらなきゃいけないと思いつつも、政策を打ち出しながらなかなか実効が上がらないというのが現状でございまして、変動相場制そのものの作用以外の部分もかなりあるのではないか、こういうふうな感じがするわけでございます。  私は、きょうここに無理やり時間をつくっていただきましたのは、実は貿易収支改善の話ばかりが進んでおりまして、今の為替レートが日本の各産業にどういう影響を与えているのか、これがなかなかアピールされてない、こういう感じがするわけでございます。実は、ごく最近の新聞によりますと六十一年の貿易収支、これが黒字が空前の一千億ドルを超えた、こういう数字が出ております。不均衡を是正しようという中で、いわゆるJカーブ現象というものがなかなか生きてこない、こういうのもございますし、今の国際金融の緩みといいますか、そういうような状況から従来の貿易外のいわゆる資本移転、これが大変な大きな要素を示している。こういう面から考えていきますと、ともかく今の一ドル百四十円という、これで日本がどこまで持ちこたえられるか、大変心配をしているところでございます。  内需拡大という話がさっきからずっと続いておりますけれども、内需拡大というのを日本の場合考えてみた場合に、公共投資の拡大で内需拡大をやろうということでございますが、やはり日本もだんだんと欧米に似てまいりまして、個人消費のウエートが非常に大きくなってきている、公共部門が割合としては小さくなってきている、こういうことでございますから、一時しのぎ的な公共投資拡大だけでは内需拡大につながらないだろう、私はそういうふうに思うわけでございます。ですから、いかに潜在的な国民の生活に密着した購買力を引き出していくかということでありますとか、あるいは消費水準の向上、それから社会資本の整備、こういう政策の実現をしていかなければいけないのではないか、こういうふうに思うわけでございます。  そのためには、今の硬直的なといいますか、従来からいわゆる縮小均衡経済を目指した財政運営、我々も再度にわたって指摘をしたわけでございますが、これがきょう時点、今まで続けられている。一方では、今度は一挙にその網が破れた状況のように、財源の見通しのないのに五兆円の補正追加とかそういう話が出ている。どうも政策的に筋が通らない、こういう感じがするわけです。  しかし、現状、日本の経済の危機といいますか、財政の危機でもありますから、そういう意味日本経済を立て直す、いわゆる構造改善をやる、こういうことが必要でございまして、これをやはり急がなければいけない。これは非常に難しいんですね。私もさっき討論の原稿を書いていまして、積極拡大経済を目指せと言いながら、今度はこの財源を国債に頼るのはおかしい、こういう話を後でするわけでございます。そういう状況から見て、緊急事態ということは確かにあります。ただ、緊急事態であってなおかつ今のその場のしのぎとともに、じゃ、今使ったお金を、資源を、財源をどこから求めていくのか、これはやはり制度として確立をされていかなければいけない、こういうふうに考えるわけでございます。  そういう面から考えまして、今の一ドル百四十円というもので主要産業なり日本経済あるいはその収支バランス、こういうものがどうなっていくのか。大変大きな、大まかな質問でございますけれども、この辺についてまずお伺いをしたいと思います。これはまず通産省からですかね。
  82. 鳥居原正敏

    ○鳥居原説明員 お答え申し上げます。  最近の輸出入の動向を見ますと、先ほどるる先生からお話ございましたように、輸出は円ベースでは減少いたしておりますが、ドルベースでは大幅な円高ということで、いわゆるJカーブ効果ということで増加がかなり著しい状況でございます。一方輸入の方は、製品輸入は大幅に増加いたしておりますけれども、原油価格を中心に一次産品価格が非常に下がっておりますので、ドルベースでは減少しており、円ベースでも、円高ということで換算いたしますので大幅な減少ということになっております。この結果、最近の時点、六十一年度のIMFベースの貿易収支は、円ベースで言いますと十六兆二千億円、ドルベースで言いますと一千十四億ドルという数字で史上最高ということになったわけでございます。しかしながら、これは数量ベースで物を見ますと、輸出は着実に減少傾向を見せておりますし、輸入も着実に増加をしてきているということで、今後は貿易収支の改善がかなり、徐々にではありますが期待できるのじゃなかろうか、こういうふうに思っております。  いずれにしましても、このインバランスの解消ということで、製品輸入の拡大等輸入の拡大あるいは内需拡大策等々について努力をいたしているところでございます。
  83. 玉置一弥

    ○玉置委員 各産業、自動車、電機、鉄鋼、繊維、それも化繊の方でございますけれども、その辺の業界とかあるいは中小企業が中心でございます食器類、それぞれ価格面、いわゆる収益面ですね、これが大変悪化をしている、こういう状況でございます。輸出としては、金額的にはふえているわけですが、これはあくまでも損益のレベルを上げでいかなければいけない、こういうことで価格改定を年に何回か行いながら損益を少しでも改善をしていこう、しかし、それ以上になりますと今度、先ほどのお話のJカーブの現象で低下をしてしまう、こういうことになるわけでございます。  ここに、一ドル百四十円のときの収益がどうなっていくのかということで一応、ある本でございますけれども数字が出ておりまして、これは参考に言いますと、機械類では五七%収益がダウンをする、それから自動車では大体三八%ぐらい、電気機器では二一%ぐらい、ともに大変な収益の悪化を招いているわけでございます。普通の企業ですと大体、損益分岐点というのは八〇%ぐらいのところにありまして、いわゆる粗利が二割ということから考えていきますと、ほとんどのところが原価割れに近くなってしまう、あるいは原価を割ってしまう、こういう状況でございます。  OECDが今年の二月に、昨年一九八六年の一ドルの評価をした数字が出ております。これは相対的な、いわゆる購買力平価ということで比較をしたものでございまして、一ドルが二百二十三円、こういう数字が出ております。また経済企画庁は、一ドル百七十円というものが適正である、こういう数字を出されておりますけれども、こういう数字からいきますと、今時点の百四十円というのはこれまた大変なところにあるわけでございまして、きょうの附帯決議にも入れていただいたのですけれども、適正かつ安定相場、こういうものが一番日本の、いわゆる貿易立国としての安定的な発展につながっていく、こういうふうに考えるわけでございます。  大蔵省として、為替介入というのは非常に難しいと思いますけれども、要するにもともとが人為的な為替介入から始まって今の相場になった。それから、変動相場制以外の要素が働きますと、かえっておかしくなるというのが通常の例だと思いますけれども、我々考えますと、ここのところは大臣に聞いてほしかったのですけれども、サミットへ行かれて、要するにレートが安定して日本円が高くドルが下がって評価をされるということでは困るわけでございまして、確かに貿易収支は不均衡が拡大しておりますけれども、実際のところ輸出産業を取り巻く環境というのは非常に悪いということを、やはりいろんな機会を通じて世界各国にアピールをしなければいけない、こういうふうに思います。  時間がございませんので、ほかにいろいろ準備したのですけれどもその点に限ってお答えをいただいて、まず適正な相場安定、これについて今申し上げましたように日本の国情、これを十分に大臣に御理解をいただいて、事務当局としては世界各国にアピールする材科をそろえていただきたいという私のお願い意見でございますが、それに対してお答えをいただきたい、こういうふうに思います。
  84. 内海孚

    ○内海(孚)政府委員 ただいまの円レートの現状あるいは相場の変動の状況等が我が国の経済に非常に難しい影響を与えているということは、宮澤大臣が数次にわたりましてアメリカ初め先進工業国の大蔵大臣と話し合っていましたときに、常にそういう点は訴えてきたところでございますし、また今次の中曽根・レーガン会談におきましてもその話が出まして、委員御高承のとおりアメリカの大統領の方も、今度は、これ以上のドルの下落というのは、単に日本の成長だけでなくてアメリカの成長にもマイナスだということ、さらに日米両国のインバランスを是正する上においてもマイナスだということを認めたということは、そのような背景があるわけでございます。  どの程度の為替レートをもって適正とするかということは、現在の百四十円前後というところでは、我が国の経済、産業にとって非常にきつい水準であるということは十分認識をしているわけでございますが、他方、為替レートにつきましては、これは一国の状況だけで決められるものでないことは御存じのとおりでございまして、向こう側には向こう側の、また適正と思われるというような考え方あるいは違うものがあるわけでございます。それを、いわば変動相場制のもとでは、市場に出てくる需要、供給という形を反映させることによって決めていくということであるわけでございますが、そこには先ほどもお触れになりましたように、いわゆるそういったファンダメンタルズ以外の要素で動くこともあるわけでございます。そういう場合には私どもも、介入というような手段によってそれをモデレートにするという努力は当然するわけでございますが、基本的には円ドル関係につきましては日米両国のファンダメンタルズ、これは先ほど通産省の説明員の方からもお話がありましたように、貿易面には徐々に影響が数量的には見えてきております。これがいずれはドル表示でもあらわれてくるのは理の必然でございますので、例えばそういったようなファンダメンタルズを通じて改善されていくということを我々としては期待しているわけでございます。
  85. 玉置一弥

    ○玉置委員 時間がありませんのでもうやめますけれども、きょうせっかく来ていただきました経済企画庁、外務省、通産省、それぞれお呼びしたのですけれどもちょっと時間がなくなりましたので、質問はもう省略したいと思います。  それで、アクションプログラムの具体的な実施状況の中で、経済企画庁が十三項目ありまして、そのうち六項目は一応済んでおりますけれども七項目できてないとか、あるいは外務省はほとんどできてないとか、五以下が今数字が出ているのですね、通産省もありますけれども。珍しく大蔵省が成績がいいわけでございますが、ぜひ具体的な項目を挙げて、政府部内で統一をされてやっているわけでございますから、ぜひそれぞれ官庁が音頭をとってやっていただきたいし、また外郭団体あるいは特殊法人とございますけれども、それらも項目を挙げながら一向に進んでいないというのが現状でございます。中曽根政治をまさに各行政庁が実施をしているのではないか、こういう心配をしております。言葉だけじゃなく実効の上がる中身ということで、前向きの姿勢をぜひお願いを申し上げまして質問を終わります。
  86. 池田行彦

    池田委員長 正森成二君。
  87. 正森成二

    ○正森委員 大蔵大臣が御不在のようですが、人間として当然の権利を守らないといけませんので、最初に大臣の御答弁でなしに、事務当局あるいは賢明な政務次官で御答弁をお願いすることにいたしまして、質問させていただきます。  まず最初に、我が国の財政状態の主要国との対比について伺いますが、国際会議などに参りますと財政赤字を一般政府ベースで見まして、それがGNP比幾らであるかというようなことを言う向きが多いようですけれども、そういう考え方が妥当なのかどうか、そのことについてまずお答えを願いたいと思います。
  88. 角谷正彦

    角谷政府委員 正森委員御指摘のように、一般政府ベースでの財政赤字ということがよく言われるわけでございますけれども、この一般政府ベースというのは、御承知のように国、地方、それから社会保障基金というのが入っております。社会保障基金につきましては、御案内のように日本社会保険制度は年金等につきまして、特に修正ではございますが修正積立方式ということでやっておりまして、現在の段階におきましてはまだ保険料等の徴収の方が被給付より多いといいますか、そういう意味では保険料残高が、積立金が積み上がっているという状況がございます。  ただ、これも正森委員御承知のように、我が国は今後急激な高齢化社会を迎えております。これは社会保障制度審議会等々の長期推計をまつまでもなく、年金、医療等の社会保険というのは将来はだんだん積立金を食いつぶしまして、むしろ年金財政をどうするかということが問題になってくるといった状況にあるわけでございまして、いわば現在の社会保障基金の黒字というのは経過的なものではないかというふうに思うわけでございます。そういった意味では国それぞれによって、制度によって事情があろうと思いますけれども、少なくとも我が国の現状を見る限りにおきまして、財政の赤字か黒字がというものを一般政府ベースで見るというのは、少なくとも中長期的に見る限りにおきましては正しくないというふうに思っております。
  89. 正森成二

    ○正森委員 ここに「図説日本の財政 昭和六十一年度版」というのがございますが、その五十五、六ページ以下に今次長の述べられた見解が載っておりまして、そういう考え方はおおむね正しいというように思っております。やはり財政赤字が一国の財政に対してどういう意味を持つかという場合には、その財政赤字が中央政府の一般会計の中でどれくらいの比率を占めるか。特に、利払い等のために向ける国債費が一般会計の中でどれくらいの比率を占めるかという問題を考えませんと、財政の対応力という点から見て非常に問題があるというように思います。  そこで、予算委員会の資料等としても提出されたのですけれども、GNP比とそれから一般会計の中に占める比率と利払い費が一般会計の中に占める比率、この三つの指標についてアメリカ日本、西ドイツ、フランスについて簡単に説明してください。
  90. 角谷正彦

    角谷政府委員 まず、長期債務残高のGNPに対する比率でございますが、昭和六十二年でございますが日本は五一・六でございます。なお、これは普通国債といいますか長期国債、私ども今御審議いただいておる国債だけに関して言いますと四三・五でございますが、国全体の特別会計等を含めました長期債務残高としては五一・六でございます。  アメリカにつきましては昭和六十年でございますが三六・五、イギリスは昭和五十九年で数字は古うございますが四七・〇、西ドイツは昭和六十年度の数字でございますが二〇・七、フランスの場合におきましては短期国債でつないでいるという資金繰り上の性格もございますので、九・九と非常に低い数字になっております。  それから、利払い費の一般会計の歳出総額に占めますところの割合でございますが、日本は六十年度におきましては二〇・二、アメリカにつきましては、これは今度の大統領教書におきますところの六十三年度の見積もりでは一三・六、それからイギリスは六十年度で六・九、西ドイツが六十二年度で一一・五、フランスが六十二年度で九・四でございます。  それからもう一つ……
  91. 正森成二

    ○正森委員 もう結構です。  GNP比は省略しましたけれども、今挙げられた二つの指標では、これは我が国が主要国のどれに比べても指標が悪いといいますか、特にフランスなどに比べると著しく悪いということは言えると思うのですね。  そこで宮澤大蔵大臣、御苦労さまです。お帰りいただきましたので伺いたいと思いますが、最近新聞報道によりますと、新しく発足いたしました行革審がいろいろの財政再建についての新目標ということで報道をされております。  御存じかと思いますが念のために申し上げますと、これは五月十日の朝日新聞でございますが、国債の増発を容認いたしまして、今も主計局次長から答弁いただきましたが、その上限をGNP比で設定したらどうか、それを五〇%にしたらどうかということで、現在が一定の金額でございますけれども、対GNP比を五〇%にした場合には約十五兆円もの国債増発が可能になるという説を述べたり、あるいは別の報道では、財政再建昭和六十五年までに特例公債をゼロにするというのを三年間延期するということにしたらどうかとか、あるいはその組み合わせとか、いろいろ報道されております。これにつきまして大蔵大臣の御見解を伺いたいと思います。  その前に、おいでになりませんでしたけれども、一国の財政赤字の状況を対GNP比だけで考えるのは適当ではないというのがこれまでの大蔵省の見解で、この大蔵省から出されました「日本の財政」にもその見解が載っておりますし、現在はどうかと思って質問しましたら、主計局次長からやはりそういう考えであるという答弁もいただいておるということを申し添えまして、大蔵大臣のお考えを伺いたいと思います。
  92. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 おくれましてどうも御迷惑をかけました。  行革審が今言われましたような二点について何か意見をお出しになるということは、私は承っておりません。報道では読みましたけれども、直接伺ったことはございません。このような内外ともに内需の拡充ということが言われまして、ある程度財政もそれに役割を果たさなければならないという状況の中で、行革審のメンバーの方がいろいろお考えいただいておるということはあるかもしれませんけれども、正式には何も伺っておりません。  実は、この二つの問題ともなかなか大きな問題でございますし、この結論を出しますためにはかなりいろいろな要素を検討して、一定の展望に立って結論を出すべきものであると考えておりますので、もし行革審がこのようなことをお考えであれば、私ども財政当局の意見をお聞きくださるなり、あるいは私どもに検討を御委嘱になるなり、何かそういうことがあるはずではないか、これは少なくともそのくらいの、いろいろな要素をあわせ考えまして結論を出さなければならない問題であろうというふうに思っておりまして、ただいまのところ、行革審からは別段のことを伺っておりません。     〔委員長退席、大島委員長代理着席〕
  93. 正森成二

    ○正森委員 非常に慎重な御答弁ですけれども、言外にGNP比という新しい目標を設定するのは消極であるというお考えが私には酌み取れたということを申し上げておきたいと思います。  その次の問題に入りますが、NTTの売却益というのは、国債整理基金との関係で非常に我々が関心を持っておるところでございますけれども、五月十一日には五万円のものが三百十二万円ですね。私ども大蔵委員会が視察に証券取引所に参りましたときは、たまたま三百六万円という数字を掲示しておりましたが、三百万円は超えているわけですね。そうしますと六十二年度予算案では、私の承知しているところではたしか一兆八千三百億円ぐらいですか、そういうことで計上しておりますが、その約三倍ぐらいですね。そうすると百九十五万株ですから、六兆円弱の収益が上がる可能性がございます。それとの絡みで今報道などによりまして、NTTの株の売却方法が報じられております。  最初に売却するときは、大蔵委員会や逓信委員会でしばしば論議になったと思いますが、価格をどういうぐあいに設定するかというようなことについて基準がございませんので、私も証券取引所のマニュアルなどを取り寄せていろいろ質問した記憶がございます。私の理解で誤りがなければ、そのときに私が指摘してこうあるべきじゃないかと言いました基準は、おおむね外れずに今行われておるというように理解しております。  最近の報道では、もう既に上場されているんだから、六月初めに国有財産中央審議会のNTT株式売却問題小委員会で検討して、証券会社に対するその買い取り引き受け方式ですが、しかも一括で行うのが適当でないかというように報道されております。こういう考え方でおられるのかどうか。もしおられないとしましても、いかがお考えなのか、答弁できる範囲で答弁していただきたいと思います。
  94. 窪田弘

    ○窪田政府委員 初めに一言申し添えますと、きょうの終わり値は二百九十四万円でございました。  それで、売却方法でございますが、これは予算に売却数をお許しをいただきませんと売り出せませんものですから、具体的な検討は予算をお認めいただいてからということになろうかと存じますが、昨年と違いますのは、今も御指摘がございましたように、既に株式が上場されておるというようなことが基本的に違うわけでございます。昨年、株式売却問題研究会でことしの問題を御検討いただいたときに、結論というほどでもございませんけれども、既に市場価格が存在することになるため、売却時の市場価格に基づく証券会社による買い取り引き受け方式による売り出しが一般的と考えられるのではないか、こういう御意見をいただいておりますが、なお具体的にはよく検討するようにということをおっしゃっていただいております。  ただ、これが実際問題となりますと、非常に巨額なものを売り出すわけでございまして、証券会社のリスクあるいは営業活動あるいは買い取りの人の資金の準備をしていただかなければならないとか、いろいろまた複雑な問題がございまして、現在内々勉強はいたしておるところでございますが、予算成立後、国有財産中央審議会にお諮りした上で決めることといたしております。
  95. 正森成二

    ○正森委員 大蔵大臣に伺いたいと思いますが、いずれにせよ、予算に計上したよりも大きな額が今のままだったら国債整理基金に入ると思います。参議院の予算委員会でも質問されたことでございますが、その使途についていろいろ議論がされております。もう参議院でお答えになったことかもしれませんが、現在の時点での大蔵大臣のお考えを承りたいと思います。
  96. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これは実際に売却できます時期、それからどのぐらいの価格で売却ができるかということにもよることでございますが、原則的には、国債整理基金に属しておりますから国債の償還にまず充てるということでございますが、お尋ねの意味はそれよりさらに、かなりの余剰が出たときにどうするかということであろうと思います。  いずれにしても、そうなりますとこれは法律改正をお願いしなければならないことでございますが、私は原則として、これは国民の過去の努力の蓄積でございますかう、費消することなしに、できるだけ財産形成と申しますか、資産形成という意味での投資的な形で使うのが本当ではないかというふうに考えておりまして、具体的にまだそれならどういうことかと申し上げる準備はございませんけれども国内にも本当に全国各地あちこちに、いろいろ民活のプロジェクトであるとかあるいは地域地域での、特色のある地域の基盤形成の御計画もおありでございますし、何かそういうことに国としてもひとつお役に立つというような方法はないものかといったようなことをぼんやりと考えておりまして、しばらく前から何か考えはないかなということは事務当局とも話をいたしておりますが、まだ具体的に申し上げる段階になっておりません。
  97. 正森成二

    ○正森委員 現段階ではぼんやりとしかおっしゃれないというお気持ちはよくわかります。  次の問題に移りたいと思いますが、国債の金利ですね、これが五年物、二年物いろいろあるのですが、十年の利付というように一応限定して考えましても、ここ十年はおろか、ごく最近のことを考えましても、非常に金利が低下しておりますね。ということは、国債の値段が上がっているということですね。ここに新聞を持ってまいりましたけれども、四月九日の日経では「長期債利回り最低の三・八%」というのが相当大きく出ておるのです。ところが五月十三日になりますと、「八十九回債 利回り二・六%割れ寸前」ということで、近々一カ月ほどの間にそれぐらい低下しておるという状況であります。  そこで、事務当局にお調べいただきたいということでお願いしておきましたが、実はここに持ってきておりますのは予算委員会の資料でございまして、そこにも出ておりますので、一々お答えいただくのも時間が遅くなっておりますので私が申しますから、間違っていたらそれは指摘してください。ここに予算委員会に提出された資料がございます。  それを見ますと、例えば十年利付国債で見ますと、昭和四十九年十月から約一年間は表面利率が八%ですね。そして、発行価格が九十七円七十五銭とか九十八円二十五銭で、応募者利回りは八・四一四とか八・三二〇というように高い水準であります。あるいは、それから少し低くなりまして七%ぐらいになっておったのですが、昭和五十五年の三月からまた八%、五十五年の四月八・七に表面利率がなりまして、発行価格はいずれも百円を下回っておりますから、応募者利回りが一番高いときには八・八八八というようになっております。それが順次低下いたしまして、この予算委員会に提出された資料では一番新しいものは六十二年の二月でございますが、これが表面利率が五%で発行価格は九十九円ですから、応募者利回りは五・一五一というようになっております。さらに、別の六十二年四月八日現在という資料を入手してまいりました。それを見ますと、これは公定歩合が既に二・五になっておることもございまして、表面金利が四・七ですか、それから応募者利回りが四・七三六というようになっております。  この四月八日よりもまだ新しい資料はあるのですか。それだけ答えてください。
  98. 窪田弘

    ○窪田政府委員 今おっしゃった数字はそのとおりでございますが、その次に五月の数字がございまして、表面利率四・〇、発行価格九十九円ちょうどでございまして、応募者利回りは四・一四一ということになっております。
  99. 正森成二

    ○正森委員 大蔵大臣、二月、四月、五月とわずか三カ月の間でそういうぐあいに低下しております。こういうように金利が低下してきた理由は何だとお思いになりますか。
  100. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 結局、いわゆる過剰流動性とでも申しますか、金が余っておる。設備投資にも在庫投資にも需要がない。しかも、ちょっと妙な言い方でございますけれども、国債そのものがまた品がすれだということが恐らく言えるのであろうと思います。そういう状況の中でいわゆるディーリングでもいたしますと、これはかなりいいいわば投資と申しましょうか、あるいは投機と言ってはいけないかもしれませんけれども、利殖の対象になるというようなことがいろいろ複合しておるのではないかと思います。
  101. 正森成二

    ○正森委員 大蔵大臣が御答弁されたのは、いずれもその限りではそのとおりですね。ただ、そのほかに最近のエコノミストなどが言っておりますところをさらにつけ加えますと、今までは余ったお金が外債購入の方に向けられ、特に米国債の購入などが多かったのですけれども、それが余りの円高・ドル安、及びアメリカの債務超過が余りに継続的であるということで、今さっき同僚議員からの質問もございましたが、生保などの大きな損失などからやはり余り外へ出ていくのは危ないということで、日本の中で債券投資その他で運用しようという気持ちが出てきたということがさらに拍車をかけておるのじゃないかというようにつけ加えて思うわけです。  同時に、大蔵大臣が今言われました、国債そのものも、品薄とたしかおっしゃいましたね、小さい声でございましたが。(宮澤国務大臣「品がすれと申しました」と呼ぶ)品薄と似たようなものでございますね。特に、発行のときの金利の高いものは皆持っておって、ほとんど市場へ出てこないというような点が、価格の値上がりですね、金利は下がるわけですが、それを倍加したというように考えられるわけであります。  そこで私は、あらかじめ申しておいたのですが、大蔵当局のお考えを伺いたいのですけれども、国債の残高は百五十二兆になります。その金利負担というのは膨大なもので、一般会計の二〇%前後に達する、今度は二〇%を超えましたけれども。これが大変な負担で財政の対応力を失わせまして、必要ななすべき施策——お断りしておきますが、私どもは軍拡には反対ですよ。しかし、それ以外にも、いろいろ国民のためにやらなければならないことがなかなかできないという状況になっております。こういうときに政府や財政当局がいつでも考えますことは、金利負担をできるだけ減らしたいということは、これは財政当局の常識なのですね。  そこで調べてみますと、一九三二年にはイギリスで非常に大幅な低利借りかえが行われております。時間の関係でその点は、国会図書館で調べてきたのですけれども、詳しくは申しません。それから、日本では日露戦争の五分利債ですが、ごく少数六分債もございましたが、それを低利で借りかえるということで、明治四十年に桂内閣が断行いたしました。それとは意味が違いますが、昭和十一年の廣田内閣の馬場財政ですね、これがやはり相当大きな低金利の国債借りかえを行いました。  ただ、馬場財政のときには趣旨が多少違いまして、これまでのものを借りかえて少なくするということじゃなしに、低利借りかえでそういうルールをつくって、将来の軍事予算のファイナンスのために、政府が低利で資金を調達できるようにする地ならしをするという意味を持っておりましたので、そういう意図でやられるとこれは大変な迷惑にはなるのですが、しかし、それでも政府の金利負担を低下させるということでは大きな効果を上げたというように、財政に関する書物を見ると書いてあるわけですね。  この三つの場合は、物の本を見ますと、必ずしも財政当局が低利借りかえを実行しようとしたときには、低利にはなり切っていなかったのですね。それを財政当局がいろいろ自己資金で買いあさってみたりいたしまして低利に誘導して、その上で断行したのです。ところが、今の日本状況というのは、もちろん日銀が短期金利を低利誘導しているというようなこともございますけれども、基本的には政府が非常に人為的に何かをやって低利になったということではなしに、こういう国際情勢の中で異常な低利が実現しているわけですね。  そのときに、今発行すれば四%でできるものを、表面金利が八%、八・五%というものを残しておるというようなことは、これはそれこそ金利差が四%もあるわけですから大変なことで、仮に目の子勘定で百五十兆の国債残高、そのうちの三分の一の五十兆について金利を二ないし三%節約することができるとすれば、これは目の子勘定で一兆円ないし一兆五千億円節約できるということになって、今年度の予算で復活折衝のときに僅々二千数百億円を皆血眼になって取り合いしたのですから、そういう点から見ると、一兆円前後の金が節約できるということは非常に大きなことであるというように言わなければならないと思うのですね。  それらの点についで、財政当局で、賢明な方が多いわけですけれども、歴史の教訓から何かお考えになったことがあるのかどうか、あるいはそれはこれこれこういう理由で現在は考えられないと思っておられるのか、一応見解を承りたいと思います。  なお、私は一つ調べてまいりましたが、その低利借りかえが法律上はできないものかどうかですね。あるいは、できるけれども今はまだ考えていないのかどうか、あわせてお答えください。
  102. 窪田弘

    ○窪田政府委員 法律上で申しますと、明治二十九年に既に国債証券買入銷却法というのがございまして、「政府ハ」「国債証券ヲ買入レ之カ銷却ヲ為スコトヲ得」とありますが、ただし、「前項買入ノ価格ハ該証券面金額ニ超過スルコトヲ得ス」、つまり、額面以上で消却してはならぬという規定になっております。他方、国債整理基金特別会計法では、「政府ハ計算上利益アリト認ムルトキハ額面以上ニテモ買入銷却ヲ為スコトヲ得」、額面以上の場合は計算上利益がなければ買い入れ消却ができない。  そこで、国債を毎月一兆円以上発行しておりまして、今年度二十六兆二千億円発行予定でございますが、もはや今後余り国債に依存しないということならば、それは強制的な買い入れ消却をして、例えば昭和十一年、さっきの御指摘のときのように暴落をするという事態が起こってもいいということならばあるいはできないことではないかもしれませんが、来年も恐らく借換債を含めて二十兆円以上の国債を発行することになると思いますので、ちょっとそういう乱暴なことはできかねる。  そこで、買い入れ消却の方ができるかどうかと申しますと、例えば八・七%の二十七回債というのが今百十五円しております。これはあと三年ございますが、これを今五月債の四%の国債で借りかえた場合は、確かに金利は計算いたしますと三年間で十二円、百円について十二円の低価になりますが、額面が九十九円で今出せますが、その消却すべき相手は百十五円しておりますので、計算上、十六円額面の大きい国債を発行しなければならない。結局、十六円マイナス十二円、四円六十銭ほど政府負担は大きくなるわけで、これは買い入れ消却をする時期ではないと考えております。そのかわり、国債管理上、こういう金利の安いときは長いものを出すのが常道でございますので、二十年債を出す、あるいは円滑に出せないときは短期の借換債でしのぐというふうに、金利負担の軽減には管理上最大の努力をしているつもりでございます。     〔大島委員長代理退席、委員長着席〕
  103. 正森成二

    ○正森委員 今理財局長が言われたのは、国債整理基金特別会計法六条ですね。計算上利益が見込まれるときは額面以上の買い入れ消却ができる。これは買い入れ消却です。しかし、それだけでなしに、第五条で「各年度ニ於ケル国債ノ整理又ハ償還ノ為」借換国債を発行し得るというのがありまして、これについての法律家の解釈は、「各年度ニ於ケル国債ノ整理」の中には低利借りかえも含むというのが法律家の解釈であります。かてて加えて、各国債発行の告示には償還期限を明記しておりますが、その後に必ず繰り上げ償還もあり得る旨のただし書きをしているのですね。ですから、法律上できないことはないわけで、あなたが今、そんな乱暴なことはできないと言いましたが、法律に違反するという意味で乱暴ではないのですね。法律上は完全に合法なんですね。  そうしますと、あなたは今、乱暴だとおっしゃったけれども、果たして明治四十年の、戦争がもう終わってしまってこれからはそう需要がないというときに比べて、今の日本はそれほどぜいたくなことが言える状況かといいますと、アメリカとの関係では大変だし、連法でないものについて、一言のもとにそういう乱暴なことはできないと言えるような状況では必ずしもないと思うのですね。私は、やりなさいということを言っているのじゃないですよ。検討課題一つにはなり得る問題ではないかという、問題指摘をしているだけなんです。大蔵大臣がいろいろ物事をお考えになるときに、頭の隅に置いていただければいいんではないかというように思います。
  104. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私どももそういう議論を何度かいたしておりますのですが、今、理財局長が乱暴だと申し上げましたことは、それは全く金融秩序を壊してしまうことになるわけでございますね。そういう意味で私どもは、やはりそういうことは考えない。
  105. 正森成二

    ○正森委員 金融秩序を壊すと言われましたけれども、今までの明治四十年や昭和十一年の例を見ますと、シンジケート団とそれから大蔵省が話をしまして、それで、もちろん当時は今と違って愛国心だとかなんとかいろんな経済外的要素もありますけれども、ある程度の納得を得てやっているんですね。ですから、金融秩序を一概に破壊するというようなことは言えないと思うのですね。  それからもう一つ申し上げたいと思うのですが、理財局長、七、八年前からですけれども、今国債を財投資金で引き受けていますね。それが大体毎年三兆円ないし四兆円に上がっていますね。これからはさらに郵貯特会だとか何とかで買わせるということもございますが、私の言葉遣いでは国債が品薄といいますか、と言われているときに、そして生保などが国内で投資対象がなくて、非常に危険な海外の外債の購入に充てまして、そして二年間で三兆円というような損害を出しておるときに、わざわざ財投で買って、そして民間で買う機会を奪うということが、七、八年前は別ですよ、償却がしにくかったときは。今もなお妥当する政策であろうかどうか。しかも、今内需拡大のためにお金をどこから持ってくるかということが言われておりますが、本来財投こそ、そういう内需拡大のために政策金融を行ってみたり、あるいはしかるべき方法で内需拡大のために、今同僚議員が生活密着型の公共事業ということを言われましたが、出動する時期じゃないですか。  その場合にもちろん、一般会計の無償資金と違って、財投の場合は有償であります。したがって、私どもの政策でも言っておりますが、国民生活安定特別会計とでもいうべきものをつくって、ここに一般会計の資金をある程度はうり込んで、それを財投の資金と合わせて出資金として組み合わせるとか、あるいは利子補給というような関係で使いますと、割と有償の財投資金が比較的使いやすい形で、いろいろそういう方向にも使えるという点もあるじゃないかというように思うのですね。そういう点について、財投資金で三兆円も四兆円も国債を買っておる今の政策というのは見直す必要があるんじゃないですか。
  106. 窪田弘

    ○窪田政府委員 建前から申しますと、財投のお金は郵便貯金のお金が大宗でございまして、我が国国民の貯蓄のかなりの部分が郵便貯金になっているわけでございますから、これは国債を引き受けるのにふさわしい資金であるということを臨調答申にもお書きいただいておりますが、ただ最近の時点を見ますと御指摘のようなこともございます。  そこで六十二年度は、実は国債発行の総額は借換債を含めまして三兆七千八百億ふえたのでございますが、そのうちシ団の引き受けは去年に比べまして三兆ふやしまして、運用部の分は一兆減らし、郵便局で新たに窓販をやっていただくことになりまして、これを一兆というふうに市中消化の分をふやしておるわけでございます。毎年の国債発行懇談会でこのシ団の要望を受けまして、御相談をしてまいりますが、方向としてはおっしゃるようなことはあると思います。  それから、財投のお金を一般会計のお金その他とまぜて事業費を伸ばすということはまことにそのとおりでございまして、ことしもそういう方向でいろいろ工夫をしたつもりでございます。
  107. 正森成二

    ○正森委員 次に私は、外債投資による損失の問題について伺いたいと思います。  これは既にきのうも質問がございまして、きょうも同僚委員から質問がございましたので、重複しないように質問さしていただきたいと思いますが、ここに資料も持ってまいりましたけれども、生保だけで六十年が約九千四百億円、そして本年が、まだ結論が十分出ておらないけれども二兆円、合計三兆円ということになっております。資料が正確に載っておりますのは東洋経済の生命保険特集号、六十一年九月四日で、これは六十年度の決算が載っておるのですけれども、為替差損が二千二百五十六億円、財産売却損が三千二百八十四億円、財産評価損が三千九百三億円ということで、これを合計しますと、今政府委員が答弁されたような六十年の数字になるわけですね。大体合っていますね。——うなずきましたからそれでいいと思うのですけれども、そういうようにえらい損害が起こっているのに、六十一年はそれに二倍する二兆円の損害が起こっているわけですね。  そこで伺いますが、国際金融局長、あなた方は、六十年にこれだけの損害が起こったときに、これを国内の値上がりした債券の売却益等で償却するようにという指導をたしかされたと思うのですね。そのときに、おおむね三年で償却するようにということで、それにつきましては各生保等の自由裁量に征して、ある生保はドル以外のものは償却するとか、あるところはカナダ・ドル以外のところは償却するとか、そういうぐあいにばらついて、私が読んだところでは、主要七つの生保のうちで、去年ドルも含めて償却したのは二つだけですね。五つはドル以外について行ったということになっております。そうしますと、去年は九千四百億くらいだったのに三年かけてやれ、こう言うたのに、ことしはその償却分も済んでいないで新たに二兆円ふえているのに、一年で償却しろという指導をしたと報道されておりますが、なぜ早急に、このような莫大な損失を含み益を吐き出すという形で、国内の債券の売却益で償却するという指導をしたんですか。
  108. 関要

    ○関説明員 六十年度におきまして、今先生御指摘のとおり、売却損、評価損、為替差損、ひっくるめまして約九千四百億円の損失が発生するということが見込まれたわけでございます。これは、先ほども御説明いたしましたけれども、すべてが実現した損ではないわけでございまして、いわゆる評価損的なものがかなり占めているということをまず御理解いただきたいわけでございます。  それからまた、先生も御存じだと思いますが、債券等の評価につきましては、上場債券については低価法といいまして、下がった場合は必ず評価損を立てなければならない、こういうことになっておりますが、非上場の証券につきましてはむしろ原価のまま、取得のまま表示をしておくのが通常のやり方ということになっております。  ところで、生保の九千四百億強の損失が発生したもとをあれしますと、かなりの部分が、非上場の債券に仮に計算をいたしますとそういう数字が出てくるというものでございます。したがって、そのまま放置をすれば放置をしておいても、商法等の原則には必ずしも触れないのでございますが、機関投資家に対しましては、損がある場合にはできるだけ早目にその姿を表に出して消してやる、こういうやり方をとった方が保険行政という立場からはいいのではないか、こういうふうに考えたわけでございます。しかしながら、何分巨額な数字でございますものですから、またかつ、今申し上げましたように、強制的にやらなければならないというものでもございませんものですから、各社の実情を見て、二年ないし三年程度でできるだけ早く償却をしてはどうか、こういう指導をして、先ほど申しましたように各社の対応があったわけでございます。  今年度においても引き続き同じような方針をとっておりまして、そういう前提の中で各社におきまして、例えばことしは比較的その償却をするに当たって株式等の売却益が取りやすい年であるとか、そういった事情も各社が判断いたしまして、各社において思い切って消していこうという気持ちが強いというのが今の現象でございます。
  109. 正森成二

    ○正森委員 そこで伺いたいのですけれども、内海金融局長は、外債の購入を慫慂したというようなことはないという答弁を同僚議員に対して先ほどされたばかりであります。しかし、報道を見ますと、また私らが実際に聞いておるところでは、必ずしもそう思えない報道がたくさん出ておりますね。  例えばどんな報道が出ているかというと、「為替相場安定のため異例の「応札要請」をしたといわれる大蔵省などの後押しで、証券などが「かなり無理をして入札した」のも事実。」というような報道とか、五月九日のある新聞では「日本時間八日未明の入札の直前まで、生命保険、信託銀行などの投資担当者のもとに大蔵省から「おたくはどれぐらい買いますか」という電話が入った。もちろん「買え」とか「買うな」という指示は一切ない。しかし、深夜になって電話してくる同省の意図がどこにあるかを、業界人は百も承知している。役所言葉でいう「ヒヤリング」が業界へのけん制であることは、この世界での常識なのだ。」こう書いてあるのですね。深夜におたくどれだけ買いましたかと言ったら、買ってほしくないときにそんなことを言うわけがない。余り上品な言葉じゃないですけれども、触れなば落ちん風情などというのがありまして、おわかりでしょうと言わんばかりのことをやったと新聞に報道されているのですね。  しかも、それだけでなく、これには背景があって、「首脳会談に先立って特使として訪米した自民党の安倍総務会長に対して、ベーカー財務長官は入札問題を取りあげ、日本は過去の実績で約三分の一を落札してきたことを強調して「善処」を求めた。帰国後、安倍総務会長の周辺は、首脳会談の主要議題は「ドル安防止」で、入札を円満に乗り切るよう日本が協力することが当面の課題であることを強調した。」云々というように書いてあるのですね。これが本当じゃないですか。  新聞では、ほかにもまだありますよ。例えばこれは毎日新聞ですが、「一方、大蔵省は為替相場の安定と米国経済の回復を図るため、金融界に対し非公式に入札への協力を求めたといわれ、「強力な行政指導があった」(関係筋)という。」こう書いてある。だから、あなた方は正面から買え買えというようなことはやらなかったでしょうけれども、だれが見てもそれとわかるやり方で強力な指導をしたのではないですか。大蔵委員長などは、昔のことだからよくおわかりじゃないですか。
  110. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私もその新聞記事を読みまして、余りうまく書いてありますからまさかと思うがと言ったら、いや冗談じゃございませんと言っておりますから、大丈夫でございます。
  111. 正森成二

    ○正森委員 同じですか。——もういいのですね。  大臣が既にお答えになったのですから、金融局長も当然同じお答えをされると思いますけれども、これは断っておきますがある新聞の記事ですよ。ある新聞といっても赤旗じゃないのです。赤旗だったら、正森さん、それはあなたが言ったことじゃないですかというようなことを言われても困りますから。赤旗じゃないのですね。その普通の新聞に——私ども政治紙ですからね。「ドル安の根源には、米国の巨額の財政赤字がある。」これは大臣が先ほど同僚議員にお答えになったとおりです。「日本がせっせと米国債を買っているから米国の赤字体質が改まらない」つまり、赤字になってもそれをファイナンスしてくれるところがおるという意味ですね。「という指摘は欧州諸国に根強い。「入札不安」は米国経済の無理が限界に近づいていることへの市場の警告のサイン、とも受けとめられるが、日本は官民挙げての協力で米国を助けた。」その後が大事で、「見方を変えれば、日本人の預金や生命保険料が米国の軍拡型赤字予算を支え続け、ドル安の基本問題を拡大しつつ先送りしたことになる。」こう書いているのですね。  これは赤旗に持ってきても通用する主張で、まさにそのとおりなのですね。だから、政府などが余り外債を買い過ぎたり深夜に電話をかけたり、今はないとおっしゃいましたけれども、それは結局日本の零細な国民の預金や保険料で軍備拡大に向かうアメリカの財政赤字をファイナンスするということになるのですね。しかもアメリカは、何とかやっていけるということでますます節度のない財政政策をとる。これが、三十年物国債でもなかなかはけない、だから金利がこんなに上がってきたということになれば、幾ら世界一の大国アメリカでも、こんな赤字だったらいかぬなということで反省すると思うのですね。ところが、今の我が国あるいは大蔵省の政策——政策と言ったらいけないのですが、自然体は、こういう赤字体質を容認し、それを支えるという方に向いているのじゃないかと思われて仕方がないのですね。  ここに、下村さんの「日本は悪くない」という本を持ってきました。これは、大臣あるいは大蔵省もお読みになったと思うのです。私らとは立場が全く別のエコノミストですね。池田内閣の経済上のブレーンですね。宮澤大蔵大臣も、古くは池田さんと一緒に池田・ロバートソン会談などにも同席されて、卓越した役割を発揮されたと物の本で読んでおりますが、そういう意味では池田さんになじみの方ですね。その方がこういう本を書いているのですが、その横に小さい字で「悪いのはアメリカだ」と書いてあるのですね。下村さんの真意は、こちらの方を本の題にして「悪いのはアメリカだ」、横に小さく「日本は悪くない」というようにしたかったのであろうということが、この本を読んでみたらよくわかるのですね。  この本の中には、もちろん防衛の問題についてとか教育の問題についてとか、私たち意見の違う点は多々ございますよ。多々ございますけれどもアメリカの財政赤字というのが今のドル安・円高問題の根源だ。さっき伺っておりますと大蔵大臣は、日本の貿易の黒字体質というのを言われまして、ずっと前から六十億あった、それが今五百何十億ドルだと言われましたが、下村さんの分析は、それは確かにあるけれども日本の貿易黒字が爆発的にふえたのは昭和五十八年からだ、そのときに一挙に二百億を超えたのだ。それはなぜかといえば、日本の大企業のビヘービアにもあるけれども昭和五十八年以降それだけ爆発的にふえたのは、アメリカがレーガノミックスによって大減税を行う。それだけアメリカ人の購買力がふえますね。一方では財政赤字で軍備拡大をやる、それがまた軍需会社の需要をふやしますね。そういうことで、アメリカが節度のない需要拡大政策をとったので、それに吸引されて日本輸出ラッシュが一層加重したのだ。だからこの二つの原因が重なったものであって、決して一方の原因だけではないということを言われているのですね。これはある意味では当たっていると思うのです。  時間の関係で節約することになっていましたから終わりますが、さらに重大なのは、この本の中で、日本人は貿易黒字で稼いだ金をアメリカの財務証券だとか国債に投資して、その金が一体返ってくると思っているのだろうかという問題を提起しているのです。アメリカは返さないよ。今のように毎月百億ドルずつの貿易赤字がふえているような状況では、アメリカはたった三年間でこれだけの膨大な債務国に転落したのだから、こういう傾向が続き、もしアメリカが財政赤字をなくさないならばいずれはモラトリアムになって、日本が今まで投資した金はその価値を失うに至るであろう、結局日本はそれを棒引きするより仕方がないだろうということを、エコノミストで池田内閣の顧問だった人が言わざるを得ないような状況になっているのですよ。  必ずしも、私ども党がそう考えているというのじゃないのですよ。しかし、下村さんがそういうことを言わざるを得ないような状況になっている。そういうときに大蔵省のなすべきことは、政府の外債投資枠を、一〇%というのをアクションプログラムで二五%にふやしましたね。銀行局長の通達でしょう。そういうようなことをやるのじゃなしに、もっとアメリカ反省を求め、日本の資金に国内での投資対象を与える、しかもそれを生活密着型に向かわせる。また、国債発行の仕方についても変えて、資金を吸収する必要があるのじゃないかという問題提起を私はしているわけであります。  各党とのお約束でございますので、まだ時間が残っておりますけれども大蔵大臣、もし何か一言ございましたら承って、私の質問を終わります。
  112. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 せっかく御協力くださいましたので黙っておるのがいいのかもしれませんけれども、二言だけちょっと申し上げさせていただきます。  大変巧みに論理を運ばれましたので、ここで誤解なさる方はいらっしゃらぬと思いますが、もし世の中に誤解があるといけませんので申し上げます。  正森委員のお考えは、句か日本の個人にしろ機関投資家にしろ、政府が慫慂して、損するのを覚悟でアメリカに投資している、アメリカのボンドなりビルを買っている、こういうふうな御立論でございました。その前段に、機関投資家が一兆とか二兆の為替差損が出ただろう、こういうことからお始めになった。  為替差損については、先ほど政府委員が申し上げましたように、これは金利差もありますし、証券の値上がりもありますし、長期投資でございますから、機関投資家はトータルとしては決して損はしていないと実は私は思っております。これからもまた投資するだろうが、それはアメリカのためではなくて、金利差が大きいし、証券が値上がりするとかいろいろなことがあるからしておるのでありまして、政府はそういうことを一切慫慂いたしておりません。この点は、決してアメリカのための投資ではない、純粋な経済行為であるということだけを申し上げたいと思います。  なお、「悪いのはアメリカだ」という下村さんの副題は、それはアメリカの経済政策にやはり問題があるということを言われておる、悪いということにもいろいろな意味合いがございますので。私も、確かにアメリカの財政赤字が大きいということが問題だと思いますが、それは軍備のためだとおっしゃいますと、またそこで、いや待てよ、そうかもしれないが、社会保障かもしれないし、増税を怠っているからかもしれない。そこはまたいろいろあろうと思いますので、一言だけ申し上げます。
  113. 正森成二

    ○正森委員 時間がございませんのでもうやめますが、政府が全く慫慂してないと言うと、やっぱりそうかなあと思うわけで、アメリカ日本に公定歩合の引き下げをしばしば求めていますね。それはなぜか生言えば、金利差が五%なり六%なければ日本の機関投資家は投資してくれない、それならばアメリカの財政赤字はファイナンスできないからやっていけないということで、日本国内だけを考えれば、公定歩合を史上最低の二・五にする必要性なんかはないわけです、それは日銀総裁も言っているけれども。しかし、なおかつそれをやれということを蔵相会談などで言うわけなんで、それをのんでおるということは、金利差をふやすことによって為替がそうそう変動してもやはり投資する魅力があるようにして、ファイナンスに協力するということになっておるので、そういう点では日本政府はやはり協力しておるのだということを申し述べまして、時間がありませんので終わらせていただきます。
  114. 池田行彦

    池田委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  115. 池田行彦

    池田委員長 この際、本案に対し、中村正三郎君外四名から、自由民主党提案による修正案が提出されております。  提出者から趣旨の説明を求めます。大島理森君。     —————————————  昭和六十二年度の財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律案に対する修正案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  116. 大島理森

    ○大島委員 ただいま議題となりました昭和六十二年度の財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律案に対する修正案につきまして提案の趣旨及びその内容を御説明申し上げます。  御承知のとおり、この法律の施行期日は、原案では「昭和六十二年四月一日」と定められておりますが、既にその期日を経過いたしておりますので、これを「公布の日」に改めることとするものであります。  以上が本修正案の提案の趣旨及びその内容であります。  何とぞ、御賛成くださいますようお願い申し上げます。
  117. 池田行彦

    池田委員長 これにて修正案の趣旨の説明は終わりました。     —————————————
  118. 池田行彦

    池田委員長 これより原案及び修正案を一括して討論に入ります。  討論の申し出がありますので、順次これを許します。江口一雄君。
  119. 江口一雄

    ○江口委員 私は、自由民主党を代表し、昭和六十二年度の財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律案及び同法律案に対する修正案に賛成の意見を述べるものであります。  本法律案は、成立が予定されております昭和六十二年度予算とまさに表裏一体をなす重要な財源確保に関する法律案でありまして、六十二年度予算の円滑な執行を期するために、その早期成立がぜひとも必要なものであります。  すなわち、第一に、特例公債の発行であります。  昭和六十二年度予算につきましては、まず、歳出面において、あらゆる分野にわたり、経費の徹底した節減合理化を行うことを基本として、その規模を厳しく抑制しつつ、一方、社会経済情勢の推移に即応するため、公共事業の事業費確保、雇用対策の充実を図るほか、限られた財源の中で質的な充実に配意することに努めることといたしております。この結果、一般歳出の規模は、前年度に比べ八億円の減額となっており、五十八年度以降五年連続の対前年度減額を達成いたしております。  他方、歳入面におきましては、最近における社会経済情勢の変化に即応し、租税特別措置の整理合理化など、税制についてもその見直しを行うとともに、税外収入につきましても、可能な限りその確保を図ることとしております。  しかしながら、このような歳出歳入両面にわたる厳しい見直し等の政府努力にもかかわらず、六十二年度においてはなお財源が不足するため、四兆九千八百十億円の特例公債の発行を予定するに至っておりますが、財源確保のためには、必要かつやむを得ない措置と考えるものであります。  第二に、国債費定率繰り入れ等の停止であります。  基本的には、現行の減債制度の仕組みを維持するのが適当と考えますが、六十二年度においては、日本電信電話株式会社株式の円滑な売却が行われれば、定率繰り入れを停止しても現行償還ルールに基づく公債の償還に支障は生じないものと見込まれているとともに、特例公債依存体質の財政からの早期脱却を目指し、特例公債の減額に最大限の努力を傾けなければならないことを考慮いたしますれば、一時これを停止するなどの措置をとることもまことにいたし方のないところであります。  第三に、政府管掌健康保険事業に係る繰り入れの特例であります。  現下の極めて厳しい財政事情にかんがみれば、このような会計間の財源調整により、一般会計の負担軽減を図ることもやむを得ないものであります。  なお、本特例措置につきましては、後日、健康勘定の収支状況によっては減額分に相当する金額を繰り戻す等の適切な措置を講ずることとしており、政管健保の適切は事業運営が確保されるよう配慮されているのであります。  以上、本法律案に盛り込まれている各措置は、いずれも昭和六十二年度の財政運営にとって必要な財源確保するためのものでありまして、現下の厳しい財政状況のもとで、国民生活と国民経済の安定に資するための措置として必要不可欠であるものと考える次第であります。  また、修正案は、事の性質上当然の措置であります。  最後に、私は、政府が引き続き行財政改革を一層推進し、我が国経済の着実な発展国民生活の安定向上を図るため、財政の対応力を一日も早く回復されるよう努力されんことを切に希望いたしまして、本法律案及び修正案に対する賛成討論を終わります。(拍手)
  120. 池田行彦

    池田委員長 早川勝君。
  121. 早川勝

    ○早川委員 私は、日本社会党・護憲共同を代表して、昭和六十二年度の財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律案及び同法の修正案に対して、反対の討論を行います。  我が国経済は、円高、貿易摩擦、雇用問題等々厳しい状況に直面しており、財政についても「増税なき財政再建」、六十五年度赤字公債依存体質からの脱却の目標も達成不可能な中で、財政の出動いわゆる積極財政政策を国際公約として遂行しなければならない局面を迎えております。今日の事態は、従来の臨調行革路線に立った中曽根内閣の経済財政政策の完全な失敗をあらわすものであり、その結果であります。特に、この間の財政運営は、財政至上主義ともいうべき本体の経済の変化を軽視して財政再建に取り組んできましたが、経済も財政もいずれも展望を持てない状態に陥ったのであります。言うなれば、経済と国民の生活を忘れた財政政策、租税政策がここで明確に破綻を来したのであります。  今求められているのは経済財政政策の転換でありますが、新たな財政再建目標を設定できないままに、また減税政策の積極的活用も社会資本投資の思い切った転換の方針も立てないままに、政府はこの難局に対処しようとしているのであります。これでは輸出依存の経済から内需主導の経済への転換も、特例公債依存財政からの脱却の展望も期待できないのであります。  以下、本法案に対する主な反対理由を申し上げます。  まず第一に、財政法第四条の趣旨に反しての公債発行であり、しかも特別措置として認めるには余りにも長期にわたっての発行が行われることであります。言うまでもなく、四条公債それ自体が特別、例外的な発行であり、本法案特例公債はさらに特例とするもので、本来的には十二年間にわたって発行される性格のものではないのであります。しかも、特別措置が今後も継続せざるを得ない現状からするとき、今回の措置は認めがたいのであります。  第二には、四兆九千八百十億円の特例公債の発行が、着実な財政再建への取り組みのあらわれとは言えないことであります。公債依存度一九・四%も、国債費定率繰り入れ等を停止することなく国債整理基金特別会計への繰り入れを実施するならば、依存度は二三・七%となり、これは五十七年度の依存度を上回ることになるのであります。また、特例公債の減額も前年度当初予算よりわずかに二千六百五十億円で、六十一年度当初予算での減額四千八百四十億円を下回っており、政府財政再建がここでも後退していることが明らかであります。  第三には、政府特例公債減額の計画が進まない一方では、国民への負担の転嫁が行われていることであります。今回も、政府管掌健康保険事業への一般会計からの繰り入れのうち一千三百五十億円を削減しております。昨年度の一千三百億円、一昨年度の九百三十九億円の削減と三年連続の措置ですが、この背景でいわゆる受益者負担の強化、利用者負担の増加によって受診の抑制、家計負担等々が高まっているのであります。弱い立場の者の負担による財政再建は、福祉向上を目指す社会に逆行するもので認めることはできません。  第四には、国債整理基金特別会計への国債費の定率繰り入れの停止による特例公債の減額も資産、NTT株の売却益によって支えられ、国債償還財源の問題についても根本的解決策は提示されないままに推移してきていることであります。六十五年度特例公債脱却目標を優先させる中で、百五十二兆円を超える公債残高を持ち、その償還に長期間を要する基金のあり方についての基本的な検討をすることなく、臨時的対応を続けることは許されないのであります。  なお、財政の立て直しのためには税制改革が必要になりますが、改革に当たっては、不公平税制の是正による税に対する国民の信頼、公開された納税者参加の論議が重要になることを強調いたしまして、私の反対討論を終わります。(拍手)
  122. 池田行彦

    池田委員長 宮地正介君。
  123. 宮地正介

    ○宮地委員 私は、公明党・国民会議を代表して、ただいま議題となっております昭和六十二年度の財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律案及び同修正案に対し、反対の立場から討論を行うものであります。  我が国経済は、一昨年九月のG5以降の急激な円高が進行し、一ドル百三十円台というかつてない厳しい局面を迎えております。輸出の低迷、産業構造の調整に伴う失業者の増大など円高不況、雇用不安が深刻化しており、円高不況克服のため内需主導の積極的な財政運営が求められています。  中曽根内閣は、六十五年度赤字国債脱却を目標として掲げ、財政再建を緊縮財政の運営によって推し進めてまいりましたが、これは政府が景気対策と財政再建を対立的にとらえていることを示しており、問題であります。  本来、財政再建は、積極的な財政運営で経済の安定成長を図り、税の自然増収を確保するとともに、不公平税制の是正に取り組む一方、肥大化している行政機構、非効率的な行政制度の抜本的な行政改革を進めることによって達成されるものであります。しかるに政府は、所得税減税、公共投資の拡充、福祉の確保など実効ある内需拡大を怠るとともに、本来的な行政改革を徹底もなさず、さらには税制の抜本的見直しの名のもとに売上税導入、マル優廃止など大衆増税を画策し、「増税なき財政再建」の達成とは全く逆行する施策をとり続けてきたのであります。巨額の歳入欠陥を生じさせ、財源確保のためにこのような特例措置をとらざるを得ない状態を招いたのは、まさに政府の誤った財政経済運営にあることは明確であります。  反対の理由の第一は、赤字国債の増発による財源確保はまさにサラ金財政の助長であり、健全なる財政運営ではないからであります。  第二は、国債費定率繰り入れの停止を連続六年も行うことは、償還財源を枯渇させ、赤字国債の借りかえに拍車をかけることになるからであります。  第三は、政管健保への繰り入れ減額は単なる財源あさりであり、後年度負担の先送りにすぎないからであります。  政府は、事実上破綻している六十五年度赤字国債脱却の政府目標に固執することなく、実効性のある新たな財政再建計画を策定し、積極的な財政運営への転換を図ることを強く要求いたしまして、反対の討論といたします。(拍手)
  124. 池田行彦

    池田委員長 玉置一弥君。
  125. 玉置一弥

    ○玉置委員 私は、民社党・民主連合を代表して、ただいま議題となっております昭和六十二年度の財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律案及び同修正案に対し、反対の討論を行います。  現在の我が国の経済は、六十年九月以降の急激な円高のため、ほとんどの産業が苦況に陥っていると言っても過言ではありません。昨年四月、九月と、政府も円高不況克服のための経済政策を打ち出していますが、いまだに実効が上がらない状況であります。  アメリカを初め諸外国から、日本国内の内需拡大を急ぐ要請が日増しに強く、六十二年度予算の中にもそのための対策が一応織り込まれておりますが、その一方で我が国の財政の状態は年々悪化の一途をたどり、六十二年度の公債発行は四千四百五十億円減額されておりますが、結果として十兆五千十億円の発行を行わざるを得ない状況であります。公債発行残高も百五十二兆五千億円に上っています。  従来の行政機構や各種制度の見直しを行う機能を十分活用しないままに、財政再建だけを目的とした縮小均衡予算による財政運営を続けてきた結果、国内経済が伸び悩んでいる上に円高による不況が浸透し、外国から指摘されている貿易収支不均衡がより拡大しているのであります。  本来、財政運営のための原資は、税及び税外収入等正常な制度から調達できるもので充当しなければなりません。その場しのぎのために特例をつくることは、財政の健全性を阻害し、負担の公平を欠き、後世にそのツケを残すことにほかならないのであります。もし、特例としてどうしても資金調達が必要になる場合は、その後にその分の返済ができるような政策の実施が行われねばなりません。  今日のように円高不況の克服が急がれ、内需拡大を図らなければならないようなときには、思い切った政策転換を行い、積極経済政策等を進めていく決断が必要であります。そのような観点から見ると、本法案は、安易な財源不足の穴埋めとしか思えません。財政的な危機にこそ、財政制度の根本的な改善が望まれるのであります。  根本的な改革の実施と今の円高不況克服のための政府の積極的な推進を強く求め、私の反対討論を終わります。(拍手)
  126. 池田行彦

    池田委員長 工藤晃君。
  127. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 私は、日本共産党・革新共同を代表し、昭和六十二年度の財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律案及び同修正案に対し、反対の討論を行います。  反対する第一の理由について述べます。  今日の深刻な財政危機は、石油ショック後、政府自民党が財界の要望に従い、極めて無謀な国債の大量発行による財政ばらまき政策を強行したことから引き起こされたものであります。さらに、この数年間政府自民党財政再建を図るとして進めてきた諸施策は、軍拡優先を著しく強め、大企業奉仕の財政、税制上の構造も温存、強化し、専ら国民犠牲を加重するところの臨調行革路線の実行であり、その結果、我が国財政は国債費が一般会計予算の二割台を突破、新規財源債収入よりも国債費が上回るというサラ金財政の新たな段階に突入し、再建どころかまさに破綻のきわみに達したのであります。  本法案は、このような破綻を招いた政府自民党、財界の責任及びその根本原因を棚上げし、そのしわ寄せを国民の財産の食いつぶしや、いずれ国民負担になる赤字国債の恒常的な大量発行や借りかえなどで、全く責任のない国民に肩がわりさせ乗り切ろうとするもので、到底容認できるものではありません。  第二の理由は、国民本位の財政再建の方途に背を向け当面を糊塗する安易な財源確保策であり、財政危機を一層加速、深刻化させるものであるからであります。  四兆九千八百十億円もの赤字国債の増発は、財政危機を深刻化させる根本原因であります。さらに赤字国債の借りかえは、元金償還を先送りして当面の負担を軽減するものの、将来にわたって国債残高の累増と利払い費の急増をもたらし、財政危機の重圧を二十一世紀へ向け永続化させるものにほかなりません。  また、昨年を上回る三年連続の政管健保への国庫補助千三百五十億円もの削減措置は余りにも不当であります。口実となっている健保財政の黒字は、本人一割負担導入など、三年前の健保大改悪による受診抑制と患者負担増によってもたらされた財政効果にほかなりません。直ちに本人十割給付を復活すべきであります。健保大改悪の結果として黒字が出たからといってそれを安易に国庫に召し上げるやり方は、改悪の屋上屋を重ねるもので、国民を納得させるにはほど遠いもので、断固認めることはできません。  第三の理由は、本法案が大軍拡と大企業奉仕を貫く国民犠牲の反国民的な六十二年度予算案の財源対策であるからであります。  六十二年度政府予算案は、レーガン政権への誓約であるGNP一%突破の歯どめなき大軍拡の推進、民活の名による新たな大企業関連支出の拡大の反面、福祉、教育予算を厳しく抑え込み、実質マイナスとし、中小企業、農業、石炭などを経済構造調整の名のもとに切り捨て、あるいは破綻に追い込もうとしているものであります。  かかる反国民的な予算案、施策のための財源確保策は断じて認められないところであります。  以上で、私の反対討論を終わります。(拍手)
  128. 池田行彦

    池田委員長 これにて討論は終局いたしました。     —————————————
  129. 池田行彦

    池田委員長 これより昭和六十二年度の財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律案について採決に入ります。  まず、中村正三郎君外四名提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  130. 池田行彦

    池田委員長 起立多数。よって、本修正案は可決されました。  次に、ただいま可決された修正部分を除く原案について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  131. 池田行彦

    池田委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。     —————————————
  132. 池田行彦

    池田委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、中村正三郎君外三名から、自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議及び民社党・民主連合の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨の説明を求めます。宮地正介君。
  133. 宮地正介

    ○宮地委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表いたしまして案文を朗読し、趣旨の説明といたします。     昭和六十二年度の財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律案に対する附帯決議(案)  政府は、次の事項について十分配慮すべきである。  一 我が国経済の着実な発展国民生活の安定・向上のためには、引き続き財政の改革を強力に推進し、その対応力の回復を図ることが緊要であり、歳入歳出両面において制度改革を含め更に徹底した見直しに取り組むこと。  一 現下の内外経済情勢にかんがみ、均衡と調和のある経済発展を図るため、引き続き、適切かつ機動的な財政・金融政策の運営を行うこと。  一 為替相場の我が国経済等に与える影響が極めて大きいことに配慮し、今後とも、各国との政策協調等を通じて、適正かつ安定した為替相場の実現に努めること。  一 財源対策としては、臨時的な税外収入に安易に依存することのないよう留意し、中長期にわたる展望に基づいた対応を図ること。  一 公債の円滑な償還を図るため、所要の償還財源確保に努め、金利負担の軽減等公債に対する国民の信頼の保持に万全を期すること。 以上であります。  何とぞ御賛成くださいますよう、よろしくお願いを申し上げます。
  134. 池田行彦

    池田委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  135. 池田行彦

    池田委員長 起立多数。よって、さよう決しました。  この際、本附帯決議に対し、政府より発言を求められておりますので、これを許します。宮澤大蔵大臣
  136. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいま御決議のありました事項につきましては、政府といたしましても、御趣旨を踏まえまして配意いたしてまいります。     —————————————
  137. 池田行彦

    池田委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  138. 池田行彦

    池田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  139. 池田行彦

    池田委員長 次回は、来る二十一日木曜日午後一時五十分理事会、午後二時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後九時散会      ————◇—————