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1987-03-25 第108回国会 衆議院 商工委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十二年三月二十五日(水曜日)     午前九時二十一分開議 出席委員   委員長 佐藤 信二君    理事 臼井日出男君 理事 奥田 幹生君    理事 加藤 卓二君 理事 田原  隆君    理事 与謝野 馨君 理事 城地 豊司君    理事 二見 伸明君 理事 青山  丘君       甘利  明君    石渡 照久君       上草 義輝君    榎本 和平君       尾身 幸次君    大坪健一郎君       大西 正男君    奥田 敬和君       梶山 静六君    金子原二郎君       熊川 次男君    鈴木 恒夫君       玉生 孝久君    中山 太郎君       野中 英二君    牧野 隆守君       松本 十郎君    宮下 創平君       小澤 克介君    緒方 克陽君       奥野 一雄君    上坂  昇君       関山 信之君    浜西 鉄雄君       早川  勝君    水田  稔君       長田 武士君    森田 景一君       森本 晃司君    薮仲 義彦君       米沢  隆君    藤原ひろ子君       矢島 恒夫君  出席国務大臣         通商産業大臣  田村  元君  出席政府委員         公正取引委員会         事務局経済部長 厚谷 襄児君         経済企画庁調整         局審議官    田中  努君         通商産業大臣官         房長      棚橋 祐治君         通商産業大臣官         房総務審議官  山本 幸助君         通商産業大臣官         房審議官    山本 貞一君         通商産業大臣官         房審議官    末木凰太郎君         通商産業省通商         政策局長    村岡 茂生君         通商産業省貿易         局長      畠山  襄君         通商産業省産業         政策局長    杉山  弘君         通商産業省立地         公害局長    加藤 昭六君         通商産業省基礎         産業局長    鈴木 直道君         資源エネルギー         庁長官     野々内 隆君         中小企業庁次長 広海 正光君  委員外出席者         公正取引委員会         事務局経済部調         整課長     土原 陽美君         労働省職業安定         局庶務課長   伊藤 庄平君         労働省職業能力         開発局能力開発         課長      大月 和彦君         自治省財政局指         導課長     松本 英昭君         商工委員会調査         室長      倉田 雅広君     ――――――――――――― 委員の異動 三月五日  辞任         補欠選任   甘利  明君     小坂徳三郎君   石渡 照久君     小此木彦三郎君   奥田 敬和君     宇野 宗佑君   中山 太郎君     相沢 英之君   額賀福志郎君     志賀  節君   牧野 隆守君     松野 幸泰君   宮下 創平君     田中 龍夫君 同日  辞任         補欠選任   相沢 英之君     中山 太郎君   宇野 宗佑君     奥田 敬和君   小此木彦三郎君    石渡 照久君   小坂徳三郎君     甘利  明君   志賀  節君     額賀福志郎君   田中 龍夫君     宮下 創平君   松野 幸泰君     牧野 隆守君 同月二十四日  辞任         補欠選任   甘利  明君     中尾 栄一君   奥田 敬和君     山中 貞則君   中山 太郎君     藤波 孝生君 同日  辞任         補欠選任   中尾 栄一君     甘利  明君   藤波 孝生君     中山 太郎君   山中 貞則君     奥田 敬和君 同月二十五日  辞任         補欠選任   麻生 太郎君     上草 義輝君   小川  元君     鈴木 恒夫君   粕谷  茂君     金子原二郎君   額賀福志郎君     榎本 和平君   山崎  拓君     熊川 次男君   関山 信之君     早川  勝君   長田 武士君     森田 景一君 同日  辞任         補欠選任   上草 義輝君     麻生 太郎君   榎本 和平君     額賀福志郎君   金子原二郎君     粕谷  茂君   熊川 次男君     山崎  拓君   鈴木 恒夫君     小川  元君   早川  勝君     小澤 克介君   森田 景一君     長田 武士君 同日 辞任          補欠選任   小澤 克介君     関山 信之君     ――――――――――――― 三月六日  民間事業者能力の活用による特定施設整備  の促進に関する臨時措置法の一部を改正する法  律案内閣提出第五一号) 同月十七日  産業構造転換円滑化臨時措置法案内閣提出第  四三号) 同月十九日  暖房料金引き下げ等に関する請願(児玉健次  君紹介)(第九五七号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 三月十一日  中小企業の振興に関する陳情書外八件  (第四二号)  水力発電施設周辺地域交付金交付期間延長  等に関する陳情書外四件  (第  四三号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  輸出保険法の一部を改正する法律案内閣提出  第二一号)  産業構造転換円滑化臨時措置法案内閣提出第  四三号)      ――――◇―――――
  2. 佐藤信二

    佐藤委員長 これより会議を開きます。  内閣提出輸出保険法の一部を改正する法律案及び産業構造転換円滑化臨時措置法案の両案を議題といたします。  これより両案について順次趣旨説明を聴取いたします。田村通商産業大臣。     —————————————  輸出保険法の一部を改正する法律案  産業構造転換円滑化臨時措置法案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  3. 田村元

    田村国務大臣 輸出保険法の一部を改正する法律案につきましてその提案理由及び要旨を御説明申し上げます。  我が国企業が行う対外取引は近年ますます多様化しつつあり、かかる対外取引円滑化を図る必要があります。  具体的には、現在輸出保険法対象となっている輸出取引以外に、前払い輸入仲介貿易に伴うリスクをてん補していく必要性が高まっております。  さらに、海外投資についても、そのリスクをてん補する範囲を拡大する必要が生じております。  他方、九百億ドルを超える貿易黒字を有する我が国としては、一兆ドルを超える累積債務に悩む発展途上国に対して、その黒字を還流することが内外から要請されております。  我が国企業が行う対外取引に伴うリスクをてん補する範囲を拡大することは、我が国黒字の諸外国への還流にも寄与するものと考えられます。  これがまさに、輸出保険制度拡充を図るべきゆえんであり、ここに本法律案を提案した次第であります。  次に、この法律案要旨を御説明申し上げます。  まず、法律の題名を輸出保険法から貿易保険法改正することとしております。これは、本法律対象にこれまでのものに加えて、次に述べるような前払い輸入仲介貿易対象としたためであります。  実体的な改正内容として主要な点は、次の諸点であります。  第一は、前払輸入保険創設であります。  本制度は、輸入者輸入代金船積み期日前に前払いしたにもかかわらず、貨物が到着しないため前払い代金返済を請求したときに、輸出国における外貨送金制限戦争革命輸出国企業倒産等により、その前払い代金が回収不能となるリスクをてん補するものであります。  第二は、仲介貿易保険創設であります。  我が国企業が、外国間で貨物を移動する仲介貿易を行った場合に、仕向け国における外貨送金制限戦争革命仕向け国企業倒産等により、その代金が回収不能となるリスクをてん補することとしております。  第三は、海外投資保険拡充であります。  現行海外投資保険では、主として戦争、収用、外貨送金制限といった非常危険をてん補し、投資先企業の破産といった信用危険については、資源開発輸入のための融資のみを対象としております。これに対し、今回の改正におきましては、信用危険のてん補対象を、製造業投資等に拡大することとしております。  第四は、多数国間投資保証機関その他の海外保険機関との再保険制度創設であります。  なお、輸出金融保険については、国内金融環境変化に伴う当保険に対するニーズの減少等にかんがみ、一年後にこれを廃止することとしております。  以上が、この法律案提案理由及びその要旨であります。  何とぞ慎重御審議の上、御賛同くださいますようお願い申し上げます。  次に、産業構造転換円滑化臨時措置法案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。  我が国貿易収支黒字幅は、昨年一年間で九百二十七億ドルにも上っております。このような大幅な対外不均衡の是正を図り、我が国経済中長期的発展基盤を確立していくためには、我が国産業構造を国際的に調和のとれたものに転換していくことが極めて重要であり、我が国経済構造調整の主要な柱の一つとなっております。産業構造転換の動きは、円高の急速な進展、定着を背景として最近加速されつつありますが、これに伴い一部の業種に属する事業者について、事業規模縮小による雇用問題の発生等種々の問題が生じております。また、事業規模縮小等を迫られている事業所に依存する度合いの高い地域を中心に地域経済状況が悪化しております。  本法律案は、このような我が国経済状況にかんがみ、産業構造転換進展に伴って生じつつある産業活力の低下、雇用問題の発生地域経済悪化等に対し適切な対策を講ずることにより産業構造転換円滑化することを目的として立案されたものであります。  次に、この法律案要旨を御説明申し上げます。  第一は、内外経済的事情の著しい変化により、生産能力が著しく過剰となっている設備事業の用に供する事業者について、その新たな経済的環境への適応円滑化するための対策であります。この法律案ではこのような事業者を「特定事業者」とし、特定事業者は、新たな経済的環境への適応のため、特定設備処理及び設備処理とあわせて行う事業転換に関する事業適応計画を作成し、主務大臣承認を受けることができることとしております。事業適応計画承認を受けた特定事業者に対しては、設備処理のために必要な資金借り入れに係る債務保証設備処理に伴う除却損に係る欠損金繰越控除期間延長事業転換に対する金融上の支援事業転換に必要な生産設備特別償却等助成措置を講ずることとしております。  また、同一の業種に属する二以上の特定事業者は、設備処理その他の新たな経済的環境への適応措置を円滑に実施するため、生産受委託合併等に関する事業提携計画を作成し、主務大臣承認を受けることができることとしております。事業提携計画承認を受けた特定事業者に対しては、生産受委託等に必要な設備に対する特別償却合併等に伴い必要となる登録免許税軽減等助成措置を講ずることとしております。  第二は、産業構造転換進展により事業規模縮小等を迫られている事業所に相当程度依存しているため、経済及び雇用状況が著しく悪化している地域に対する対策であります。この法律案では、このような地域を「特定地域」として政令で指定し、特定地域経済の安定及び発展を図るため、種々対策を講ずることとしております。具体的には、特定地域経済活性化雇用安定等を図るため、地方公共団体等出資して行う事業に必要な資金に係る出資及び低利融資を行うための利子補給特定地域における工場等の新増設等に対する低利融資を行うための利子補給特定地域において新しい産業を興すために必要な資金借り入れに係る債務保証等措置を講ずることとしております。  最後に、以上の対策を講ずるために、現在の産業基盤信用基金業務拡充し、特定事業者が行う設備処理のために必要な資金借り入れに係る債務保証特定地域安定等に資する事業に必要な資金出資その他の産業構造転換円滑化に必要な業務を追加するとともに、あわせて名称を産業基盤整備基金に変更する等所要の規定整備を図ることとしております。  以上が、この法律案提案理由及びその要旨であります。  何とぞ慎重御審議の上、御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  4. 佐藤信二

    佐藤委員長 これにて両案の趣旨説明は終わりました。     —————————————
  5. 佐藤信二

    佐藤委員長 輸出保険法の一部を改正する法律案について審査を進めます。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。緒方克陽君。
  6. 緒方克陽

    緒方委員 きょうは久しぶりの商工委員会でございますが、そういう委員会の前日であります昨日、円のレートが百四十八円ということになったわけでありまして、新聞報道などによりますと、百四十円時代の幕あけというような表現もされているわけでございます。いわゆる二月二十二日のG7合意が必ずしも守られていないのではないかというようなことになるわけでありまして、百四十円台から下手をすれば百三十円台へというようなことも聞かれるわけでございます。  円の一気に百四十円台への突入というこの問題について、のっけからの質問で申しわけございませんが、大臣としてはそれなりの御見解もあるだろうというふうに存じまして、その件について一言御見解を賜ればということでお尋ねをしたいと思います。
  7. 田村元

    田村国務大臣 おっしゃるとおり大変な円高状況でございます。昨日の終わりが百四十八円八十銭であったかと思いますが、ニューヨークの終わりが百四十九円三十五銭、東京のきょうの寄りつきが百四十九円六十銭、いずれにしても百五十円を割っておるわけであります。先般、たしか一月の十九日だったと記憶しておりますが、一時的に百五十円をわずかながら突破した。そのときに、瞬間的でありましたが、これは大変なことだというので通産省内臨時円高対策本部をつくりまして、福川事務次官本部長にしていろいろ対策を講じ、三月十一日にこれをまとめ上げたわけでございますが、今度のこの円高も、率直に言って我我が好ましいと考えておるレベルまで戻ることはなかなか並み大抵でない、時間もかかろうかと思います。  そこで、私は昨日会見でも言ったのでありますけれども、とにかくこの際日本はG5、G7合意に基づいて、アメリカその他の国々に、特にアメリカに強く要請して協調介入を強める。それによって一層の円高を食いとめる。反面また、今内需の拡大ということにより一層の努力を傾けねばなるまい。今予算審議の最中といいますか、まだ予算審議にかかったばかりでありますけれども、これはおおよそ予測し得なかったような事態が起こったわけでありまして、言うなれば緊急避難的な行動をとらなければなるまい。恐らく与党、野党を問わずこれは御理解願えるものと私は思いますので、総合経済対策を一日も早めて、その中身も大きなものにして、かつ中身を濃いものにして、日本経済のために資するべきではなかろうかというふうに考えておる次第でございまして、これからも折に触れでこのことを強く進言し、また推進していく所存でございます。
  8. 緒方克陽

    緒方委員 そこで本日の法律案審議の問題でありますが、法案改正の関係でどうしても触れざるを得ない問題がございます。それはIJPCの問題でありまして、イランジャパン石油化学の問題でございます。これは昭和五十四年の総選挙のさなかに国家事業ということになったようでありますが、もう時間がありませんからそのことは触れませんけれども、昨年の十月二十一日の新聞報道によりますと、このイランジャパン石油化学日本側中核企業である三井物産は、その工事イランイラク戦争で六年も中断をしているという状況の中で、今回輸出保険法改正議題になっておりますが、規定されております事業の六カ月以上の休止を理由にいたしまして、政府に対して休業補償による保険金支払いを請求する方針を決めたという報道が載っているわけでございます。その後、このことについてはマスコミ報道もされておりませんけれども、私は本法律案と非常に絡みがあるというふうに思うわけでございまして、国民的関心事でもあろうかと思います。したがって、このIJPCの現状と今後の見通しについて、要点で結構でございますので、大臣の方からお答えをお願いしたいと思います。
  9. 村岡茂生

    村岡政府委員 やや事務的なこともございますので、お答えさせていただきます。  IJPCプロジェクトは、御存じのように長年にわたり計画され実行されてきたプロジェクトでございまして、当初の資金需要といたしましては、一九八〇年の改定見積もりでございますが、約七千三百億円ということで見積もられたわけでございます。現在まで、日本側イラン側双方合わせまして約六千億円弱の資金が投入されてまいったわけでございます。しかしながら、不幸にいたしまして、建設途上におきましてイラン革命、そしてまた引き続くイランイラク紛争に巻き込まれまして幾度も工事が中断する、こういう憂き目に遭ったわけでございます。  現在、そのプロジェクトの将来の展望でございますけれども御存じのとおり、このプロジェクト日本イラン両国政府の友好のシンボルという意味合いを持っております。日本政府といたしましてもこれまでできる限りの支援を行ってきたところでございます。現在工事再開見通しが得られない、こういう苦しい戦争その他の状況の中にあるわけでございますが、私どもといたしましては、日本イラン両当事者間で本件の取り扱いについて友好的な話し合いが進められるということを強く期待しているところでございます。
  10. 緒方克陽

    緒方委員 そこで輸出保険法特別会計についてお尋ねするわけでありますが、このIJPCの関連の件は、さきの新聞報道で三百億、全体としては一千億程度の保険金というようなことが報じられているわけでございますけれども、この会計昭和五十六年に一千四百五十億円程度あった輸出保険特別会計でありますけれども、その支払い準備累積債務国の増大によって昭和六十年度には三百億となったということで、その後このお金は崩せないということから資金運用部からお金を借りて次々と短期借り入れがされているようでありますが、六十二年度では実に三千三百六十三億ということになっているわけでありまして、私は安くない額だというふうに思うわけであります。  確かに累積債務国のリスケという問題が起きておりまして、いろいろあると思うのですが、私が貿易局担当官に聞いたところによりますと、九〇%がその後納入されているということのようですけれども、三千三百億という中で一〇%のおくれがある、納入がされていないということは大変な問題ではないか。特別会計というのは一〇〇%納入されるのが前提ということになっているというふうに聞いているわけでございますが、そういう中で九〇%だということは非常に問題ではないか。そういう中でいわゆる累積債務国がいろいろな、特別の国の名前を出すと問題がありますから申し上げませんが、戻せないあるいは戻らないというような問題が起きた場合に、これは一体どうなるのかということについてお答えを願いたいと思います。
  11. 畠山襄

    畠山政府委員 輸出保険特別会計資金繰りでございますが、御指摘のような債務累積国債務支払い繰り延べ、いわゆるリスケジューリングということが頻発をいたしまして資金繰りが悪化しておるということは事実でございます。それで六十一年度の借り入れ予想ということでも二千三百億円ぐらいの借り入れということになっているわけでございます。ただこれはリスケジューリング債務繰り延べでございまして、支払いの停止ということではございませんものですから、今御質問の中にもございましたように、八割強の数字が返ってきておるということでございます。  どれくらいリスケジュールがあるのかというのは、若干さっき御指摘借入金数字そのものではございませんで、リスケジューリング規模につきましては、例えば六十一年度の事故等で申し上げますと二千百億、それから六十二年度の予測といたしましては千七百億というようなことを考えておりますが、それにしてもその一割なり二割なりが返ってこないということは大変なことでございます。私どもとしては、そういうものは準備金なりあるいは資本金なりということで将来てん補するなり、あるいは保険料収入というものがございますので、そういったもので賄っていくというふうに考えているところでございます。
  12. 緒方克陽

    緒方委員 今御質問申し上げましたのは、戻らない場合があったという場合に、その額が大きいということもあるのじゃないか。それに対して、今のお答えの部分だけで十分対応できるような額なのかどうか、そこが非常に問題ではないかと思うのですが、その点についていま一度。
  13. 畠山襄

    畠山政府委員 ただいまはIJPCということではなくて一般論として申し上げましたけれども、御質問IJPCということでございますれば、御案内のようにまだこれは企業の方から申請が出てきておりませんので、ここで支払う、支払わないという問題を申し上げる段階ではございませんけれども、仮に出てまいりましても、緒方委員指摘のように非常に規模が大きゅうございますので、審査は非常に慎重にやらざるを得ないということでございまして、その調査等に時間がかかるということであろうかと思います。したがいまして、保険金請求の資料が整備されたところから順次支払っていくということも一つの形態としてあり得るのではないかということでございまして、そういたしますと、当該期保険財政にそれほど大影響ということはなしに済むのではないかというふうに考えております。
  14. 緒方克陽

    緒方委員 今IJPCのことについてのお話でございましたが、私がさっき再質問いたしましたのは、例えば南米などの累積債務国が具体的に返済ができないというようなことが現実に、さっきも言いましたように国の名前を挙げれば外交的にもいろいろあるかということで申し上げておりませんが、そういう事例が出るときに、この会計というのは十分対応できるのか、そういう質問でありまして、その点についてのお答えを願いたいと思います。
  15. 畠山襄

    畠山政府委員 中南米その他で債務累積に悩んでいる国が多うございまして、そういう国がら回収金が十分戻ってこないというときにどうするのかということでございますが、現在までのところ、御指摘の中に一部ありましたように、八七%ということで良好に返ってきておるということでございます。回収金の額も、ひところは年度例えば二百五十億円というような額でございましたけれども、昨今一、二年は五百億円というようなことで、ふえておるということでございます。  そこで、しかしながら御懸念は、将来どうしても取りっぱぐれると申しますか、そういうものが出てきたらどうするんだということでございますが、これは先ほど来ちょっとフレームを申し上げましたように、保険料収入それから準備金、そういったものの中で対処していくということになるわけでございます。それが一時的に、そういうことで会計上困るということでございますれば、借入金規定もございますので、借入金で対処していくということでございます。
  16. 緒方克陽

    緒方委員 今のお答えでは全く借入金というお話でございまして、そういう現実的な問題が今あるということで、一つのお話というか、今日の時点での問題として確認をしておきたいと思います。  そこで、私が質問をいたします前にイラン・ジャパン石化の問題について保険の問題でお答えがあったわけでございますが、ホルムズ海峡は昨今の報道でもいわゆるイランの対艦ミサイルの配置というような状況の中でさらに緊張が高まっているということでございます。先ほど、この保険については請求がされていないから書類が整備次第それぞれという話でございましたけれども、今日の状況はなかなか見通しが立てがたい現実ではないかというふうに思うわけで、この保険に与える影響も大きいというふうに私は思うわけでございます。仮の話ですけれども、今具体的に申請がされた、保険金の請求がされたという場合に、そういう個々的な対応だけで済むという問題ではないようなこともこれにはあるのではないかという気がいたしまして、現実にそういうものが起きた場合には総額一千億という額でありますから大変な問題であります。国家的プロジェクトでもありますが、そういう中でどう対応されるのか。今の御答弁では、余り問題なしにやれるというようなことにお聞きしたのですが、そんな簡単な問題じゃないのではないかというふうに私は思います。御答弁をお願いしたいと思います。
  17. 畠山襄

    畠山政府委員 まず、保険のことについてお答え申し上げます。  御案内のように、一般に保険金支払いの判断は被保険者から保険金請求が行われた後に行うということにいたしておりますので、現段階で具体的に考えているわけじゃございませんけれども、ただ、出ましたならば当然約款なりそういったものの規定に従って十分検討した上で判断するわけでございます。御指摘のように規模が非常に大きゅうございますので、もし私先ほど簡単にやれるというようなニュアンスを与えていたとすれば、それはそういうことではございませんで、やはり規模も大きゅうございますので慎重にその被害の実態、そういったものを見きわめた上で処理をしていきたいと思っておるわけでございます。ただ、調査を慎重にやりますので、仮に支払うことになったとしても支払いには非常に時間がかかるだろうというふうに考えているわけでございます。
  18. 緒方克陽

    緒方委員 もう時間が参りましたので、きょうはこれで質問を終わりますが、この問題については非常に国民的な関心も高い問題であるという認識であるということだけ最後に申し上げておきたいと思います。  終わります。
  19. 佐藤信二

    佐藤委員長 城地豊司君。
  20. 城地豊司

    城地委員 本日は非常に時間も制約されておりますので、質問も要点に絞って申し上げたいと存じます。したがって答弁の方も簡潔に、かつ要領よくお願いをしたいことを最初に申し上げておきたいと存じます。  今回の輸出保険法改正提案理由の中に「我が国黒字の諸外国への還流にも寄与する」とか、さらに大臣の所信表明の中にも「累積債務問題に悩む発展途上国に対し、我が国からの民間資金の還流を進めるため、」云々というような文言があります。また改正趣旨でも「民間セクターを通じての還流に資するべく、」というような言葉があるのですが、非常に貿易の黒字を還流するという言葉が使われているし、そのことが今回の改正の非常に大きな眼目ということでありますが、この黒字の還流の経路がちょっとわからないわけであります。どういうふうにして黒字が還流されるのか、そのことについて簡単に御説明いただきたい。
  21. 畠山襄

    畠山政府委員 今回の改正のねらいは、城地委員指摘のように還流が主な目的にもなっておるわけでございます。還流の経路という御指摘でございますけれども、今回の改正は主として三つを内容としております。一つ前払輸入保険であり、もう一つ仲介貿易であり、三つ目は投資保険の信用保険への拡充でございます。  それぞれについて還流の経路ということで申し上げますと、まず輸入前払いにつきましては、前払いをしなければその輸入されるであろう物資の生産発展途上国で行われないであろうというような場合に前払いをいたすわけでございますので、その意味で還流が起こるわけでございます。  それから仲介貿易の場合は、払う者とそれから受け取る者と両方ございますので、確かに一般論としては還流が余り起こらないわけでございます。ただ、払う方はキャッシュで払い、それから受け取る方は延べ払いで受け取るということでいきますと、その間発展途上国お金が戻っておるということになるわけでございます。  それから海外投資の信用危険の担保ということは、これは今までは破産等の危険が怖くて海外投資が行われなかった、そこでちゅうちょしたというような場合に、この保険でカバーすることになれば出ていくものもあろうかと思いますので、そういう形を通じて還流してまいるわけでございます。
  22. 城地豊司

    城地委員 次に、前払輸入保険創設それから仲介貿易保険創設、この関係についてまとめて質問をいたしたいと思います。  この前払輸入保険創設の中で、個人輸入を対象にすべきかどうかということでのいろいろな意見があったと聞いています。しかし今回は個人輸入は対象にならなかったということでございますが、なぜ対象にしなかったのかということが一点でございます。  それから仲介貿易の関係では、仲介貿易見通し、六十年は約六千百億円ですか、そういうことで出ておりますが、仲介貿易の今後の見通しについて伺いたい。  第三点は、仲介貿易保険創設の中で船積み前のリスクについては今回見送られたということでございますが、なぜ見送ったのかということでございます。  さらに、前払輸入保険の引受限度額四千五百億円、仲介貿易保険保険引受限度額二千五百億円、これはそれぞれ私ども素人が考えても金額が引受限度額としては少ないのではないがというように考えるのですが、それらについての御見解を伺いたいと思います。
  23. 畠山襄

    畠山政府委員 第一点に、個人輸入を前払い輸入の中でなぜ見送ったかという御指摘でございますが、この点は私ども個人輸入といいますか輸入全般を推進する立場から、個人輸入についても保険ができないものかどうかということで真剣に検討いたしました。しかしながら、個人輸入そのものが今比較的順調に進んでいるということから事故例が今の状況ではそれほどないということもありまして、輸出保険審議会で引き続き検討するようにということでございましたので、とりあえず今回は見送らせていただいておるということでございます。  それから第二点の仲介貿易見通してございますが、昨年が四十四億ドルくらい、四十億ドル台くらいのことでございますけれども、六十一年になりますると六十億ドルというようなことを計上いたしているわけでございます。今後も一定の伸び率で、この保険制度の採用それからその利用の状況いかんにもよりますが、順調に伸びていくものと期待をいたしているわけでございます。  それから第三点のお尋ねといたしまして、仲介貿易保険の中でなぜ船積み前の危険も担保するようにしなかったのかということでございますが、これは保険技術上のテクニカルな話でまことに城地委員に恐縮でございますけれども輸出保険の場合、貨物日本にございますが、船積み前の危険というのは一体幾らなのかというのを査定するのが、貨物日本の中にございましてもなかなか難しゅうございます。それで価格査定委員会なるものをつくってやっているのが実情でございますが、仲介貿易でございますと、貨物が海外にあるわけでございます。それが船積みされてしまいますると、船積みされたときの価格というのがはっきりいたしますのでよろしいのでございますが、船積み前は、どこまでその貨物ができ上がっておったのかとかというようなことを一々海外で調べなければならないという非常にテクニカルな話がございまして、確かに御指摘のように船積み前もカバーしたらどうかということも議論はさしていただいたわけでございますが、そんなテクニカルな話がございまして断念をいたしたわけでございます。  それから保険限度、今度の新種保険の前払い保険なりそれから仲介の保険の引受限度が少な過ぎるのではないかという御指摘、まことにごもっともだと思っております。思っておりますが、とりあえず今後の六十二年度の従来からの伸び率、そういったものを推計いたしまして、それから推量される一応の量の一応二倍を見込んだということでございまして、新種の保険でもございますので、やや御指摘のように少な目かなということもございますが、とりあえずその二倍を見て様子を見たいというふうに思っております。  とりあえず以上でございます。
  24. 城地豊司

    城地委員 次に、輸出保険特別会計について質問したいと思います。  この特別会計につきましては、第一点としては支払い準備率の現状でございますが、これは各国とも支払い準備率の基準はないというふうに言われておりますけれども支払い準備率は高いほどいいに決まっているわけであって、現状を見ますと、この保険そのものを経営として見ますと、支払い準備率が非常に低いので問題じゃないかというふうに考えるのですが、その点についてどのようなお考えを持っておられるか伺いたい。  それから、資金不足のために借入金を毎年非常にやっているわけでございます。先ほどの同僚議員の質問とも若干関連いたしますが、借入金が六十年度七百四十億円、六十一年度二千二百四十三億円、六十二年度三千三百六十三億円というような状況に毎年多くなってきている。これはリスケジュールの関係も若干あると思いますけれども、こういう状況借入金三千億という金は大変な金でございますが、そういうような状況からどんどんふえていくという状況、これは必ずしも好ましい状況ではないというふうに考えておりますが、これらについての御見解を伺いたい。  第三点は、資本金の問題でございますが、資本金は多いほどいい、これはだれもが考える常識的なことでございます。現状では、昭和四十二年に三十億円の資本金から六十億円にした。しかし、それ以降二十年近く資本金は六十億のままで、今年は新しく保険創設するということもあったのかもしれませんが、十億円ふやして七十億にする。事業規模資本金という関係では、民間の会社とは違いますから一概にそういうことは言えません。また、資本の回転率云々というようなことがこの輸出保険に適用されないとは思いますけれども、しかし、これだけの事業をやっていて資本金が七十億というのでは非常に少ないのではないか。財政問題で云々ということで、このごろは非常に予算の関係が前年度横ばいもしくはゼロシーリング、マイナスシーリングというようなことで言われておりますが、必要なものはどんどん増額をしていくということは当たり前のことであって、何もかも、どれもこれもふやす方はだめだというようなことでは運用としてはうまくいかないことははっきりしているわけであって、そういう意味で資本金問題についてこれでいいとお考えなのかどうか、その点が質問の第三点でございます。  それから、前回、五十九年の改正のときもたしか申し上げた記憶があるのですが、この保険関係の人員の問題でございますが、前回、五十九年の改正のときよりは若干ふえていると聞いておりますが、現状百八十五人がこの業務に携わっている。この資料を見ますと、年間六十二万件の処理をしているという状況でございます。この輸出保険特別会計輸出保険というのは特別な保険でありますけれども、一般の民間の保険会社の数と比べますと処理件数が非常に多い。一日一人十件ぐらいの処理をして年間三百件で六十万件ということになるわけであって、そういう意味では人的な関係でも非常に問題なのではないか。とすれば、これから新たに仲介貿易保険とか前払輸入保険創設をした場合に、そちらまで手が回らないのじゃないかという心配をするわけでございますが、それらの点についてどのようにお考えになるか、お伺いいたします。  それから、運営の実績の関係で、これも先ほど同僚議員がIJPCの関係で質問いたしましたが、それだけではなくて、昭和六十年度だけを見ましても保険料収入が四百六十七億、回収金が三百八十八億、合計で八百五十五億、支払い保険金額は千六百四十二億ということになって、単年度だけで見ても八百億円ほど持ち出しが多い。ですから借入金もするということになるわけですが、単年度で見てもそういうことですし、昭和五十六年から六十年までの五年間を見ましても、保険料収入千九百十億円、回収金が九百七十一億円、これに対して支払い保険金が四千八百六十三億円ということで、二千億円以上支払い保険金の方が五年間を通じて多いというような実績が出ているわけでございます。  そういうようなことから考えても、この運営の実績がそういうことでありますから、特別会計の運営について非常に懸念を持つわけでありますけれども、これらについての御見解を伺いたいと思います。
  25. 畠山襄

    畠山政府委員 第一点の支払い準備率の問題でございますが、これは城地委員に例えば五十六年の国会等々でも御指摘をいただいた重要な点でございます。しかしながら、当時に比べまして支払い準備率が今非常に減っておりまして、私どもの手元の計算ですと、六十年度の率でございますと〇・二一というようなことになっております。これが悪くなっておりますのは非常に憂慮すべきことでございますので、後段のお答えとも関連いたしますけれども準備金なりあるいは資本金なりといったものの増加にできるだけ努めてまいりたいと考えているところでございます。  それから、第二点の借入金の点でございますが、借入金は非常にふえておりまして、今御指摘のように二千億ないし三千億というようなことになっております。ただ、これがこのままずっとふえていくかという点は、先ほど別のお答えでも申し上げましたように、リスケジューリングお金が戻ってくるものですから、当座のところこういう借入金が多うございますけれども、ある程度ピークがございまして、その後は減っていくと考えているわけでございます。  それから、資本金、人員というものが過少ではないかという貴重な御指摘でございまして、私ども全く御指摘のとおりの側面があると考えております。おりますが、御指摘のような財政事情もございまして今までのところこういうことになっておるわけでございます。  資本金は、六十億を今度十億円ということでふやしましたけれども、これは今までの六十億円と同じようなお金を入れたということよりは、やや債務累積国への引き受け緩和という弾力化対策として十億円足したというようなことでございますが、御指摘の点も踏まえまして、運営基盤の充実を今後とも図っていきたいというふうに思っております。  また、人員の強化というのも重要でございまして、今回も増員こそいたしましたけれども、三名でございました。ですから、今後とも人員の強化を図りますとともに、コンピューター化の推進、それから事務をできるだけ外部へ委託するとか、そういったことでの合理化もあわせて図ってまいりたいというふうに考えているところでございます。  それから、最後に御指摘の運営実績、今後の運営見通しという点でございます。これも以上お答えした点と関係いたしますけれども、確かに借入金が非常に多うございまして、やや脆弱な経営基盤になっておりますので、準備率の増大、それからできれば資本金の引き続く増大、それから事務の合理化、そういったことに上って対処してまいりたいと思っております。  ただ、当面の資金繰りが、二、三千億の借り入れをしなくちゃいけないということから、非常に悪化しているのじゃないかというふうに客観的には受け取られるわけです。内部での状況は、先ほども別途申し上げましたように、回収金等は予定以上に戻ってきておるというようなこともございまして、外部的に、表面的に見えるほど不健全になっているわけではないというふうに考えているところでございます。
  26. 城地豊司

    城地委員 最後に、できれば田村通産大臣から御見解を伺いたいと思うのです。  今、短い時間の中でありましたが、この輸出保険、今度貿易保険ということになりますが、前払輸入保険創設や、さらには仲介貿易保険創設、その他事業を拡大して、今回貿易保険と名称も改めてやるという状況でございます。  いわゆる事業の拡大というようなものについては、私ども日本の国の貿易の現状から見て当然だと思うのでございますが、大臣も聞かれましたように、いわゆる運営の実績は必ずしもいい状態ではないと思うのであります。リスケジュール等でそれは先へ繰り延べた、いつかは金が入ってくると言うのですが、私が先ほど五年間の実績について申し上げましたが、例えば五十六年から六十年の五年間であっても、回収金は九百七十一億円でございます。支払い保険は四千八百六十三億円、保険料が千九百十億円ということでございます。とすれば、そういう意味では、先へいけば入ってくるかもしれませんが、それらが例えば十年後にこういうわけで五千億円入ってきますよ、十五年後に八千億円入ってきますよということが明記できればいいのですが、現状ではなかなか累積債務の問題はそんな簡単なものではないように私どもは考えているわけでございます。そういう点からしても、この勘定といいますか、特別会計の運営は非常に問題だ、たくさんの問題点があると思います。  ですから、意欲を持って事業を拡大していくというのは、日本は貿易立国で当然必要なんですから、この仕事もふやす、この仕事もふやすということではいいのですけれども、一方で、財政の制約があるからといって財政の面ではさっぱりふやさないというようなことについてはやはり大きな問題だと思います。  例えば、先ほど指摘した資本金の問題でも、これだけの事業をやって七十億円の資本金というのも、幾ら通産省でやっておられる事業にしてもちょっと基盤が脆弱だというふうに私は考えるわけでございます。  それともう一つ、例えばことしの場合に、信用調査委託費というものがありますが、これは前年度は一億五千七百万予算をとっておりまして、今回はそういう仲介貿易とか前払輸入保険創設をするのですからふやしてもしかるべきでありますが、円高等の関係で少し円が高くなったからといって一億三千九百万円に減らされているという紛れもない事実があるわけです。片方で事業はふやしていく、円高のメリットがあるからといっても一億五千七百万をことし一億三千九百万にするというのは、これはまさにひどいのじゃないか、私はそのように考えるわけです。  こういうように見ていきますと、事業はどんどん拡大する、貿易立国の日本のために輸出保険を貿易保険と改善して意欲的にやっていこうという気持ちは十分理解できますけれども、その裏づけを、どんなに財政が苦しくてもやるべきところにはやはりやっていかなければならない、これが政治ではないかと思うのです。そういう意味で、田村通産大臣は非常に意欲的に取り組んでおられる通産大臣でありますので、これらの問題について今後どのように対処をされるおつもりか。  それから、私の希望としては、通産省でやっているいろいろな所管事項の中で貿易保険関係そのものはそんな大きなウエートを占めないと言われればそれまでかもしれませんが、我が国が貿易立国として生きていくためには非常に重要な法案だと思うわけであります。ですから、そういう点ではぜひとも今後ともきめ細かく目を配っていただきたいということを要望申し上げ、大臣見解を伺いたいと思います。
  27. 田村元

    田村国務大臣 日本が貿易インバランスでこれだけの大きな黒字を抱えておる、そういう立場になっておりますだけに、なおのこと黒字の還流を初めとして国際的に努めなければならない面は多多あると思います。今おっしゃったとおりでありまして、お金の問題にしても人員の問題にしても、率直に言って十分であるとまだ思っておりません。これは適切な対応をこれからしていかなければならぬと思うのです。  先般中曽根首相が中国へ参りましたときもそうでございましたが、私は、日豪定期閣僚会議があって、その帰りにASEANを回ってまいりました。そして、こういうふうに考えておるのだがと言って、この保険説明もその中の話題の一つに入れたのでありましたが、インドネシアのスハルト大統領を初めとして非常に深い関心を示しておりました。今城地先生おっしゃいましたような御趣旨、もうまことに適切な御指摘でございますから、私どもこれに対してとやかく御答弁申し上げる必要もないぐらいのことでございますけれども、さらに意欲を新たにして取り組んでまいりたい、このように思っております。
  28. 城地豊司

    城地委員 たくさん申し上げたいこともあるのですが、時間が参りましたので、以上で終わります。
  29. 佐藤信二

    佐藤委員長 森本晃司君。
  30. 森本晃司

    ○森本委員 輸出保険法質問に入ります前に、大臣に、昨日の円相場が百五十円を突破した、この問題について所感をお伺いしたいわけでございます。  百五十円を突破して今また景気の足を再び引っ張る懸念があるということはもう十分考えられることでありますし、また同時に、報道されているところでございます。今経済界では昨日の百五十円突破に大変な不安感を感じておりますし、私も、昨年末から本年初頭にかけまして、いわゆる城下町と言われる地域円高の影響を受けている地域の特に中小企業の皆さんの実態をいろいろと調査し、そして声を聞いてまいりました。中小企業の皆さんが受ける打撃は非常に大きくなって、もはや悲鳴に近いような声も聞いておりまして、政府経済無策を中小企業の皆さんが大変嘆いてもおられた実態でもございます。もはや企業努力も限界に来ているのではないかというふうに言っても決して過言ではない、私はそのように思うところでございます。  そこで、総合経済対策の繰り上げも論ぜられているところでもありますし、また同時に、円高差益の還元等当面の実施可能な対策についていかが考えておられるかということをお伺いしたいと思います。
  31. 田村元

    田村国務大臣 為替レートが、先ほど申し上げましたように昨日の終わりが百四十八円八十銭、きょうの寄りつきが百四十九円六十銭、九時半が四十五銭、九時四十五分で百四十九円六十銭というような相場の推移でございます。これはまさに重大な局面に当面したということでありまして、端的に申し上げまして製造業者、とりわけその下請をいたしております多くの中小企業にとってはもう限界を突破したということが言えると思います。どんなにか苦しい対応ぶりであろう、また将来を考えればどういうふうに悩んでいらっしゃるであろうと思うとまことに胸の痛む思いでございますが、私どもとしては、だからといってこの問題に対して単なる建前とか単なる形とかということのみであってはならないと思うのです。あくまでも実質的な、しかも思い切った対応が必要であろうと私は思うのです。  例えば協調介入にいたしましても、G5、G7の話し合いがございましたことは御承知のとおりでありますが、強く要請をしてアメリカにも協調介入をしてもらう、日本もどんどんやっていく、そして相場の戻りをねらう、これは当然のことでございましょう。私も昨日来、大蔵大臣を初め関係方面に強く要請を続けておるところであります。今回の協調介入はある程度の額であったというふうに聞いておりますが、今後もこの介入の継続はどんどんと図ってもらいたいというふうに思っております。  それからまた、我が国が果たすべき仕事でございますけれども、やはり何といっても究極的には内需の拡大ということに尽きると私は思います。今予算案の御審議中でございますから、私ども余り立ち入ったことを申すべきではないのかもしれませんけれども、私はあえて率直にこれから物を申していきたいと思っております。これは緊急避難の色彩が濃いわけでございますから、どんどんと物を申していきたいと思っておりますが、これはもう与党、野党を問わず恐らく皆さん同じ御意見だと思います。皆さんが良識を持って対応されると思いますが、たとえ予算案審議中であっても、やはりより一層大きな総合経済対策を早急に策定して、そして中身の濃いものにしてこれを実施に移す。私は、本来ならば予算成立時の経済状況を見て、それを踏まえて総合経済対策を立てるというのが筋だろうと思いますけれども、緊急避難ということを考えますれば、並行して作業していいのではなかろうか、このようにも思っておる次第でございます。  こういう考え方、あるいはおしかりを受けるかもしれませんけれども、私は産業界、とりわけ円高に泣く中小企業を救うためには、あえておしかりを受けることを覚悟の上で思い切った対策を講じることを政府の中でも提言し、また国会に対しても機会あるごとに申し上げていきたいと思っておる次第でございます。
  32. 森本晃司

    ○森本委員 ありがとうございました。特に中小企業の皆さんの声を聞くにつれ、私も早急なる対策を講じていただかなければならないと強く要望するところでございます。  それでは輸出保険法の問題点に入らせていただきたいと思います。そこで大臣、大変恐縮でございますが、再びよろしくお願い申し上げます。  国際経済情勢の変化の中で、世界最大の債権国であります我が国として、国際経済社会に占める位置にふさわしい役割とその責任を担っていかなければならないわけでございますが、調和のある対外経済関係の形成と世界経済に積極的に貢献するために、今回の法改正の持つ意義はどのような意義と定められておるのか、お伺いしたいと思います。
  33. 田村元

    田村国務大臣 御承知のように、我が国は九百億ドルを超える貿易収支の大幅黒字を抱えております。また一方、発展途上国におきましては実に一兆ドルを超える累積債務で苦しんでおるわけでございます。我が国に対する世界の批判というものが日を追って強まっておることも否めない事実でございます。  そういうことから考えますと、貿易黒字というのは民間セクターによるものでございますから、もとより政府は直接還流できるものではございません。民間が稼いだ金でございますから、政府が直接これを還流することはできません。そこで民間資金の還流の条件を整備していく、これが政府の役割であろうと思うのであります。そこで、この民間資金の還流のためには、これに伴うリスクを軽減することが何よりも不可欠ということになりますと、こういう法改正をして対応し、そのリスクをいささかでも軽減していく、そして民間セクターが還流をしやすいようにするというふうに考えるのでございます。
  34. 森本晃司

    ○森本委員 次に、現行輸出保険の運営実績を見てまいりますと、各保険とも横ばいないし減少傾向にあるわけでございます。そういった状況を見ましたときに、私は、利用者にとって今の制度が魅力のないものになっているのではないだろうか、だからこそ利用者が少なくなっているのではないかというふうに思うわけですが、いかがでございましょう。
  35. 畠山襄

    畠山政府委員 森本委員指摘のとおり、確かに近年各種保険の引受金額が減少傾向にございます。  ただその要因は、第一に、累積債務国などの発展途上国に対する輸出が非常に減っておるということでございます。発展途上国二十二カ国ぐらいをとって五十六年度と比べてみますと、これらの国に対する輸出が五三%も減っておる。そういうことが一つあると思います。  それから、そういうリスクの高い国に対して、これは保険財政の健全化の観点から、あるいは今の御指摘の点に関連するかもしれませんが、やはり引受制限をやっております。そこで引き受けが減ってしまっておるということがございます。これは、裏を返せば魅力がなくなっておるということかもしれませんけれども、そういうことがございます。  それから、円高等で非常に各企業は合理化を迫られておるものですから、コスト削減のために輸出者側が保険に掛けるものを選別するという問題もございます等々の問題があって減っているわけでございまして、こういうことに対しまして私どもとしましても利用者側のニーズの変化、要望等に対応いたしまして、例えば今回のこの改正もその努力の一環だというふうに御理解いただきたいと思います。
  36. 森本晃司

    ○森本委員 この制度の健全運用のためにも、さらに利用者の増加が必要ではないかと考えるわけでございますが、ともすればお役所の保険であるだけに手続が複雑であったりするという声も私たちは聞くわけでございます。合理化、迅速化、簡素化等々を図るなどしてサービス向上に努めなければならないと思います。  また同時に、海外投資が今どんどん増大しておる折から、特に中小企業の皆さん方がこの制度の利用に対して余りよくわかっていらっしゃらない部分があるのではないだろうかといったことを考えると、そういった中小企業の皆さんも簡単に利用できるように、もっとPRしあるいは簡素化していく必要があるのではないかと思うのでございますが、いかがでございますか。
  37. 畠山襄

    畠山政府委員 御指摘のように手続の簡素化、事務の合理化、迅速化、そういったことは非常に重要だと考えておりまして、私ども、地方も入れまして百八十六名の保険担当の人員が従事いたしておりますが、非常に一生懸命働いてもらいまして、事務の迅速化その他に毎日毎日努めているところでございます。他方、それだけでは足りませんので、従来から輸出組合とか銀行とかを活用いたしまして、そういった外部の応援も得るということのほかに、事故関係の事務処理をコンピューター化するとか、信用調査業務の一部を、輸出保険協会という財団法人がございますが、そこへ委託をするとか、そういうことでも合理化を図っているところでございます。  それから、中小企業につきまして特にサービスを強めていかなければならないのは御指摘のとおりでございまして、中小企業事業団の海外投資アドバイザー制度というのがございますが、これは海外投資保険についてでございますけれども、そういった海外投資アドバイザー制度というようなものを活用しながら、きめ細かく中小企業者に対する保険面からのサービスの向上に努めてまいりたいと思っております。
  38. 森本晃司

    ○森本委員 このたびの法改正により創設されます新種保険の引受限度額はいかなる基準、根拠で決められているのでしょうか。また、この限度額で十分機能すると考えておられるのか、その辺の見解をお伺いします。
  39. 畠山襄

    畠山政府委員 今回お諮りいたしております新種の保険制度につきましては、それぞれの対外取引の六十二年度見込み額を過去の伸びから試算いたしまして、その結果に利用率、推定利用率と申しましょうか、それを掛けて見込み額を算定しているわけでございます。  それで、この限度額の方でございますが、これは六カ月分でございますけれども、新種保険の場合、現実の引受額が見込み額と相当程度乖離する可能性がありますけれども、当初は慎重な運営も必要であるということで、一応先ほど計算いたしました引受見込み額の二倍というものを計上しているわけでございます。将来新種保険の運営が安定化いたしまして、引受見込み額が急増する状況になりますれば、それに応じて限度額を拡大するというようなことで対処して、うまく機能させていきたいというふうに考えております。
  40. 森本晃司

    ○森本委員 次に、輸出金融保険が六十三年四月一日から廃止されることになるわけでございますが、今日までの実績を見ますと、六十二年度は六百億円の引受限度額が計上されている。確かに輸出総額に占める引受金額のウエートは〇・〇四%という状況で非常に低いわけでございますけれども、引受件数は千件を超えている。こういう状況から考えまして、今回この輸出金融保険が廃止されることに関しては十分な法改正の周知徹底を図る必要があるのではないだろうか。また、経過措置としてできるだけ対応をしていただきたい。さらに、これは廃止になったからそれでしまいだという形ではなくして、廃止後における中小企業者等の輸出金融問題についての相談はどこで応じ、どこで適切な指導をやっていくのか、廃止後のそういった中小企業の皆さんへの配慮を必要とするのではないかと思うわけでございますが、その点についてお伺いしたいと思います。     〔委員長退席、与謝野委員長代理着席〕
  41. 畠山襄

    畠山政府委員 御指摘のとおり輸出金融保険中小企業を主体に利用されておるところでございますので、廃止後の措置について御指摘のような十分配慮の行き届いた措置を講じてまいりたいと思っております。廃止後も制度上国内生産それから集荷与信に関する一般の保証制度、例えば信用保証協会とかございますが、そういった他の国内製品向けの与信と同等に対応し得るようなそういうことをよく御説明申し上げるとか、中小企業者の輸出金融問題について適宜相談に応じていくとかということで、この輸出金融保険が廃止になった後においても十分経過的な措置が講ぜられるように御趣旨を踏まえまして努力してまいりたいと思います。
  42. 森本晃司

    ○森本委員 時間がございませんので最後の質問とさせていただきますが、この制度には中小企業に対する特別措置がないわけでございます。この予算の中ではそれを組み込むことができないとしても、何らかの形で別途予算上で手当て、配慮はできないものだろうか。また、最近中小企業の貿易決済の仕方が変わってきているわけでございますが、この現制度はその変化に対応できているのかどうか。そういった点を考えまして、私は中小企業の皆さんに対する新しい保険制度創設する必要があるのではないかと思うところでございます。現行で厳しいとしても、今後そういった考え方があるのか、どんな考え方を持っておられるのかということを最後にお尋ねしたいと思います。
  43. 畠山襄

    畠山政府委員 森本委員も御理解いただいておりますように、現行の保険法律上収支相償ということで行うものですから、したがって、その料率にいたしましても事故率を基本として決めていくということでございまして、中小企業の事故率と大企業の事故率を比べてみますと、前者の方が後者よりも低いというようなことが言えないことから、中小企業についてこの保険の中で何か特例を講ずるというのは御指摘のようになかなか難しゅうございます。  そうした場合に、中小企業の決済方法の変化に対応した新しい保険制度ができないかということでございますが、貿易保険審議会と今度名前を変えていろいろまた議論もしていくと思いますので、そういった御指摘の点も検討の対象に加えまして今後勉強させていただきたいと思います。
  44. 森本晃司

    ○森本委員 以上で終わります。ありがとうございました。
  45. 与謝野馨

    ○与謝野委員長代理 青山丘君。
  46. 青山丘

    ○青山委員 最近、ブラジルが累積債務の利子の不払い宣言をいたしました。このことは累積債務国にとっては大変深刻な状況であろうということは推測できるのですけれども日本の立場に立って見ますと、累積債務返済繰り延べ、リスケジュールが実施されるということになってきておりますから、どうしても保険支払いがかさんでくる、そういうことから特別会計が不足を来してきています。昭和六十年で七百四十億円、六十一年で二千二百四十三億円、六十二年でも三千三百六十三億円が資金運用部から借り入れという形で充てられているということであります。もっとも短期資金の借りかえということですから、これは一定の期間内に八割の債権の回収は確実であるという前提条件があって短期資金の借りかえで補てんがなされているようでありますが、しかし今申し上げたブラジルあたりの累積債務の利子の不払い宣言というようなことが、他の累積債務国に影響してくるのではないかと憂慮しております。  我々の考えからしますと、借りたものの利子を返さないなどということは到底考えられないことで、むちゃくちゃなことを言い出すのだなと思います。しかし、静かに考えてみて、こんな不名誉なことを言わなければならない国もそれなりの苦しさを味わっている。しかし問題は、そのしわ寄せをこれから我が国が受けていくわけでありますから、他の累積債務を抱えている国々にとってもこれが影響してくれば深刻な事態を憂慮せざるを得ません。  債権回収は、通常は保険金支払いを受けた民間会社がやるわけですね。しかし、リスケジュールということになりますと、二国間協定ですから、国が債権の回収を図るための努力をしていただく、その辺の兼ね合いをこれからどういうふうに進めていかれるのか。それから、リスケジュール関連の債権回収の状況はどのようになってきておるのか、これからどのようになっていくと考えておられるのか、まずお答えいただきたいと思います。
  47. 畠山襄

    畠山政府委員 第一に、リスケジュールが起きました場合に回収を政府が行うのかあるいは民間が行うのかという問題でございますが、御指摘のようにパリ・クラブでリスケジュールが行われることになりますると、その計画に従って向こうが支払ってくるかどうかというのは主として政府が見張っておるということになるわけでございます。  それから、リスケジュールになったお金支払い状況はどうかという御指摘でございますが、これは現在までのところ平均いたしまして八七%の回収率になってございます。ですから、将来とも八〇%以上の回収が期待できるというふうにとりあえず私ども考えさせていただいているところでございます。
  48. 青山丘

    ○青山委員 当面はそういう形でやっていかざるを得ないのかなと私も実は思っておりますが、特別会計の基盤が大変弱い、そのために、支払いがかさんでくればどうしても資金運用部からの借り受けをしなければやっていけない。こんなことではいつまでたっても基盤が強くならないし、こうして法改正をしてこれから製造業にまで保険範囲を拡大していこうということになっていきますと、現状は、これまではここでやむを得なかったと思うのです。しかし、これからの対策としてはこんなことをいつまでも続けていたのではいけない。基本的に特別会計の基盤を強化していくという考え方がなければいけない。その辺の見解はいかがですか。
  49. 畠山襄

    畠山政府委員 保険事業の財政基盤につきましては、六十年度の引受規模十兆円に対しまして資本金が六十億円という現状でございまして、債務累積国への引き受け緩和という現下の緊急課題にこたえるべく、六十二年度予算におきましては一般会計から一応十億円増額はいたしたところでございますが、御指摘のように、それで十分というわけではないと考えております。したがいまして、今後は保険事業の財政基盤のこうした現状を踏まえまして、できるだけ運営基盤の充実を図ってまいりたいと思っております。
  50. 青山丘

    ○青山委員 今回の法改正で、海外投資保険拡充ということで製造業にまで海外投資の信用危険のてん補対象として拡大をしていく。これは、最近円高や貿易摩擦等で中小企業の人たちも国内における事業の展開というのが大変難しい。中小企業も海外で製造していこうということで中小企業の投資が進んできております。その意味で私はよくわかるのですが、問題は、そうなってきますと、例えば保険金目当ての計画倒産みたいな形が出てきたんじゃいけない。とは言いながら、そういう任意性の倒産、事故を恐れる余りそれぞれの段階におけるチェックが大変厳しくなってくる、保険の引き受けもガードが狭まってくる、引き受けをしたが後運用はいつもなかなか厳しいことを言ってくるとか、チェックが厳しい余りに中小企業者の海外投資意欲をそいでいくということになっては、これはかえって法の精神を損なっていくということも憂慮されます。その辺の兼ね合いが非常に難しくて、保険制度はできるだけ幅広くみんなが参加してくれる、そのことの方がリスクが分散していくということで、私はもっと多く利用していただきたいと思うが、さりとて任意性の事故を恐れる余りにチェックが非常に厳重になってきて、かえって投資がそこで後退をしていくというようなことになってもいけない。その辺の兼ね合いを今どういうふうに考えようとしておられるのか、いかがですか。
  51. 畠山襄

    畠山政府委員 青山委員指摘の点はある意味で私どもも非常に悩んでいる点でございまして、重要なポイントだと思いますが、一応現在の海外投資に係る今度の信用保険のてん補というのを採用するに当たりましては、貿易保険の健全な運営ということに配慮しながら、ます第一に投資計画のフィージビリティー、それから第二に投資先の国の受け入れ環境等をチェックして引き受けを行うことにいたしておりまして、こうした点は、御指摘のような例えば中小企業というような企業も自分自身としても一応チェックを必要とすることでございましょうから、それに補完的に情報を提供するというような形で、保険を行う私どもとそれから被保険者と共同しながらそういうチェックを行っていって、お互いの利益になるというような気持ちでやってまいりたいと思っているところでございます。  それで、具体的に付保手続に参りましたときには事前の相談を十分に行いまして、必要に応じまして中小企業事業団の海外投資アドバイザー制度というようなものの活用も図ってまいりたいということを考えておりまして、それらによりまして中小企業の投資者にとってこの保険のチェックが過重な負担にならないようにということを考えているところでございます。
  52. 青山丘

    ○青山委員 投資はできるだけ円滑に進めていっていただきたい。しかし、保険の健全性という点を無視するわけにはいかないということで、二律背反、悩みは尽きないと思う。思うが、しかし経済社会環境は、おっしゃられるように海外投資をできるだけ進めていくというような全体の機運が出てきておる。そういう中で海外投資保険もこういう形でさらに拡大をしていくということですから、その辺は余り厳重になり過ぎないで、さりとてしかし危険を顧みるなというつもりはありませんけれども、方向としてはぜひひとつ海外投資円滑化のための努力をしていっていただきたいと私は思います。  それから、中小企業海外投資や貿易取引が活発化してまいりますと、中小企業者はこうした保険制度を活用していただかなければなりませんが、実態は、中小企業者の中にもこの保険制度というものがまだなかなか十分に行き渡っておらない、存在すら知らない人たちが多くある。私は、そういう意味ではもっと政府もPR活動を積極的にやるべきではないかと思います。例えば輸出保険協会というのがあるのだそうでございますが、これも輸出保険協会としてこれからも進めていくのか、貿易保険協会という名前に変えさせるのか、その辺はどうなのかわかりませんが、ここらを通じてもう少しPR活動を積極的にやっていただきたい。  最近、この保険制度の利用率というのがいささか横ばいになっているか、むしろ段下傾向だ。これではこの保険制度そのものが問われてくるときが来るのではないかと私は心配しておるのです。やはりもっと多くの海外投資者に利用していただいて、そういう形の中で幅広くリスクを分散していくということが基本的に保険の健全性にもつながるのではないかと私は思うのです。そのあたりはいかがですか。
  53. 畠山襄

    畠山政府委員 御指摘のように、最近保険の利用率が低下をいたしておりまして、例えば、八三年ですと三六・九%であったものが八五年には二四・三%に低下しているという状況になっているわけでございます。  そこで、御指摘のような制度の普及、利用の促進ということを図る必要がございまして、財団法人輸出保険協会、こういうものを通じましてパンフレットを配りましたり、あるいは平易な解説書をつくりましたり、それから相談事業を実施する、あるいはコンピューターを利用して海外バイヤーの情報提供を行う、こういうようなことで制度の普及、利用の促進に努めているところでございます。  ちなみに、この輸出保険協会という財団法人は、もしこの法律が通りますれば、貿易保険協会というふうに名前を変えさせていただこうと思っておりますが、今後とも、この協会の一層の活用、それから中小企業関係諸団体いろいろございますので、確かに御指摘のように輸出保険の存在自体を御存じない向きもあろうかと思いますので、この中小企業関係諸団体に新たにまたお願いもいたしまして、制度の普及、利用の促進というものを図ってまいりたいと思っております。
  54. 青山丘

    ○青山委員 中小企業分野ではまだまだ余地があると私は思うのですね。だから、もう少し利用していただけるような取り組みをぜひやっていっていただきたい。  それから、もっと利用の促進を図る立場からも保険事務、保険業務が余り煩雑であってもいけない、手続を簡素化していっていただきたい。それから、事務のスピード化をしていただかなければならぬ。そういうサービスの向上を図ることも必要であります。同時に、当事者の皆さん方もリスケジュール関係の業務が大変ふえてきておる、あるいはまた新しく再保険関係の業務もふえてきておる、大変になってきております。しかし、これは状況としてはいいことだというふうに受けとめていただいて、今コンピューター化やシステム化がどれぐらい進んでおるのか、あるいは一部の業務は他の機関に業務委託するようなそういうこともできないのかというふうに考えておるのですけれども、いかがでしょうか。
  55. 畠山襄

    畠山政府委員 リスケジュールの事務が増大いたしておりますし、再保険、それから今度の新種の保険の事務もございますので、事務が全体として非常に増大していることは御指摘のとおりでございます。そこで、従来から輸出組合も利用しておりますし、銀行も利用いたしておりますが、そのほかに六十年四月からコンピューターの処理を始めまして、これは短期保険の分野を今生としてやっております。そのほかに、外部委託で信用調査業務の一部をさっき御指摘輸出保険協会に委託するというようなことをやって、政府の事務負担の軽減も図っているわけでございます。今後ともこうした方向を強めてまいりたいというふうに思っております。
  56. 青山丘

    ○青山委員 時間が来ましたのでやめますが、特別会計の基盤をしっかり強くしていただくことがこれからの課題ではないかと私は思う。ぜひひとつしっかり取り組んでいただきたいと思います。  終わります。
  57. 与謝野馨

    ○与謝野委員長代理 矢島恒夫君。     〔与謝野委員長代理退席、委員長着席〕
  58. 矢島恒夫

    ○矢島委員 法案に対する質問に入る前に、円高問題で大臣にちょっとお聞きしたいのです。  既に他の委員からも質問がありましたけれども、昨日大臣は今日の状況について、この円高はひど過ぎる、円高がこれ以上加速されると産業界は大変なことになるという談話を記者会見で発表されました。ほかの新聞等を見てみますと、日米両通貨当局の対応の鈍さを指摘する、それが円高の一層のはずみとなったという新聞もありますし、けさは一斉にこの問題を取り上げていますが、政府は今度の円急騰に及び腰だ、それは日米経済摩擦の激化にある。先日ヤイター通商代表が、貿易戦争に限りなく近い状態だという発言もありましたし、また時事通信の伝えるところによりますと、アメリカ議会は円高歓迎であり、日本は円相場をアメリカからの警告と見るべきだという記事も載っております等々、対日圧力が強まってきているわけです。私は、このアメリカの言いなり姿勢でなくて、日本政府の毅然たる態度を望むものですが、大臣見解をお聞きしたいと思います。
  59. 田村元

    田村国務大臣 大変な円高で、製造部門を中心として、とりわけその下請の中小企業が大変苦しい状態に追い込まれておるという認識は、これはすべての人に共通した認識だと思います。  それで、新聞がいろいろ書いておるということでございますが、これはいろいろとそれは書くでしょうが、例えばヤイターが言ったのは、私の記憶に間違いがないとすれば、二、三の問題についてというまくら言葉がついておるんじゃなかったかと思います。  アメリカに対してあれだけ大きな貿易インバランスでございますから、これはアメリカが騒ぐのもまた当たり前のことだと思います。日本には日本の言い分はございますけれども、率直に言って言い分はございますが、しかし現実に非常に大きな貿易インバランスということは事実。それからまた、かつて自動車のメッカであったデトロイトの市長さんが十何人のミッションで日本へ工場誘致に来たということも新聞で読みましたが、それほどアメリカは苦しんでおるという認識は認識として持っていいのではないかと思います。  ただ、だからといって日本アメリカに従属的な行動をとるべきではない。やはり堂々たる相手国であり、また時にはパートナーであるという考え方の上に立って行動すべきであると思いますが、そのような話はとにかくとして、私どもは一月十九日に一時的にせよ百五十円を突き破った、あの時点で通産省では間髪を入れず御承知のように臨時円高対策本部を設置いたしまして、本部長に事務次官を任命いたしました。自来今日まで毎日のように勉強会が繰り返されて、三月十一日に大体のリポートをまとめたところでございます。  とにかく先ほど来何遍も申しておりますように、何といっても協調介入は必要でございましょうし、またそれ以上に内需の拡大ということが必要だろうと思います。今日まで外需に頼ってきた日本産業を内需の方向へだんだんと方向転換させる、また外需によるマイナス面を内需の拡大によって吸収していく、これは産業上からいっても、また雇用の面からいっても、何としても必要だろうと私は思うのであります。  でございますから、先ほど申しておりますように、本来ならば予算が成立した時点の経済状況を勘案して、それを踏まえて総合経済対策というものは立てられるべきであると思いますけれども、このようなトラスチックな円高という状況、言うなれば非常事態に追い込まれておるわけでございますから、しかも日本の一国の力でどうにもならない問題という点もまた要素の一つとしてはあるわけでございますが、日本としてはできるだけのことをしなければなりません。その意味において私は、予算案審議と並行してでも総合経済対策を講じていくべきではなかろうか。もちろん、予算審議の最中に何たることを言うかとおしかりを受けるかもしれません。しかし、私はあえて産業界、とりわけ中小企業を守るためには、それだけの勇気を持ってこれから発言し行動していかなければならぬと思っております。どうか与党、野党を問わず、こういう非常事態の緊急避難的措置という点で、なるべく大きな中身の濃い総合経済対策が立てられますように、側面から御協力を願いたいと思う次第でございます。
  60. 矢島恒夫

    ○矢島委員 それでは法案の方の質問に入りますが、まず現在の輸出保険制度についてお伺いいたします。  私、今ここに一九八五年の「主要外国輸出保険機関との比較」というのを通産省からいただいてまいりましたのですが、これによりますと、日本保険料というものが引受金額との対比で見ますと〇・三六%、イギリス、フランス、西ドイツ、アメリカなど他の国と比較いたしましても極めて低いわけです。アメリカは、これですと日本の五・四倍にもなっているわけなんですが、このことについて、日本は包括保険制度という特異な制度だから単純な国際的な比較はできない、こういうわけですけれども、専門家の皆さんの言葉を聞きますと、例えば通産省の前の輸出保険課の桐山さんのお話など聞きますと、保険料水準も全体として見れば欧米諸国より相当程度低い、こう評価されております。  また、同じこの資料の中で、事務取扱費という点を見ましても、群を抜いて低いわけです。聞くところによりますと、この保険業務をイギリスが千八百人ぐらいでやっているところを日本では百八十人でやっているということを聞きましたが、ということになりますと、日本輸出保険制度の運営というのがいわゆる効率的、経済的であって、被保険者にとって国際的に見て大変恵まれているのではないかと思うのですが、その点はいかがでしょうか。
  61. 畠山襄

    畠山政府委員 御指摘のように、我が国の平均の保険料率は、お出ししました資料からもございますように〇・三六%ということで低くなっておりますが、これも御質問の中にありましたように、これは我が国が包括保険という制度をとっておりまして、したがってリスクの少ないものも入ってきておるということでこうなっているわけでございまして、個々に比較をいたしますと必ずしも低くなっていない。したがいまして、今の最後の御質問の点に直接お答え申し上げれば、その個個の被保険者にとっては外国と比べて恵まれた状況にあるというわけでは必ずしもないという状況であろうかと思います。
  62. 矢島恒夫

    ○矢島委員 どうも率直にお認めいただける答弁ではないのですが、それでは今までの、現行の海外投資保険制度についてお伺いするのですが、保険料率を見ますと〇・五五%ないし〇・六五%、これも世界で最も低い範疇に入っていると思うのですが、同時に引受規模を見ますと世界最大で、世界銀行からも高く評価されている、こう聞いておるのですけれども、そのとおりでしょうか。
  63. 畠山襄

    畠山政府委員 海外投資保険の料率は、大体〇・六%とかそういうことでございます。また、規模として世界の最大の利用規模になっているということは御指摘のとおりでございます。
  64. 矢島恒夫

    ○矢島委員 この海外投資保険制度を、今までの主として非常危険のてん補であったのを信用危険のてん補についてさらに製造業投資などにも拡大しようというわけですけれども、そういう制度を持っている国が諸外国の中にあるかどうかということをちょっとお尋ねしたいのです。
  65. 畠山襄

    畠山政府委員 海外投資保険につきまして、今回のように信用危険をも担保するという保険は世界で初の試みでございます。
  66. 矢島恒夫

    ○矢島委員 そうしますと、法案説明によれば、本改正案のねらいというのはLDCへの海外投資の拡大ということですけれども、先進国への海外投資もさらに増大する結果になりはしないかと思うのですが、その心配は全くないと言い切れるのでしょうか。
  67. 畠山襄

    畠山政府委員 先進国への投資一般がこの保険の問題と離れて今後どうなるかということはまた別の問題であろうかと思いますが、この保険創設することによって先進国への海外投資がふえるということは特にないのではないかと考えております。  といいますのは、先進国というのは、投資をいたしましてもそれほどリスクもない、それから予測できないような経済情勢の変転というのも発展途上国に比べれば少ないということもございますものですから、そのように考えるわけでございます。
  68. 矢島恒夫

    ○矢島委員 先の予想の問題ですからそういう御答弁もあろうかと思いますが、実際に今日までの状況、先進国でのこれによるところの信用危険によるリスク問題というのが少ないというわけですけれども海外投資家にとっては、そのことが先進国への投資にも相当有利に働くのではないかという気がいたします。  次に、前払い保険制度創設する問題に移りたいと思います。  この法案は、先進国からもあるいは発展途上国からも前払い輸入を促進することに支援する役割を果たすもの、このように理解してよろしいでしょうか。
  69. 畠山襄

    畠山政府委員 この法案のねらいは、我が国からの前払い代金が途上国へ還流といいますか、前払いをすることによりまして、途上国の生産・集荷金融円滑化に貢献して、その産業開発を促進することが大きなねらいになっております。これで途上国で品質のいい、あるいは加工度の高い製品などが生産されることが可能になりますので、これら諸国からの製品の輸入促進になるというふうに考えておるわけでございます。
  70. 矢島恒夫

    ○矢島委員 先進国からの状況についてはいかがでしょうか。この前払い制度によってどういう見通しでしょうか。
  71. 畠山襄

    畠山政府委員 それは先進国の金融状況にもよろうかと思います。一般論で恐縮でございますが、一般的に先進国の多くは、金融は今そうタイトな状況ではないということでございますので、したがいまして、発展途上国に比べますとこの保険がきく度合いはちょっと違ってくるというふうに考えております。
  72. 矢島恒夫

    ○矢島委員 仲介貿易保険についてですが、この保険の新設はアジアNICSやLDCに対して大きな役割を果たすと通産省は説明されております。  ところで、この保険の新設というものに対して、日本の商社は歓迎し大きな期待を寄せていると思うのですが、その点と、日本のプラント輸出のてこ入れ策の一つと考えられるのですが、そのように理解してよろしいでしょうか。
  73. 畠山襄

    畠山政府委員 まず第一点の仲介貿易保険は、例えば日本の商社なら商社がその発展途上国Aという国からどこか売り先のBという国ヘマーケティングをいたしまして、そしてその商社なら商社がファイナンシングをやるというようなことで助けていくわけでございますので、発展途上国経済にプラスになる、ここは私どもの目的としているところでございます。  ただ、今御質問の、この制度日本の商社が非常に歓迎しているかどうか、ここは、無論反対はいたしておりませんけれども、是が非でもと言っているかどうかというところは、ややニュートラルであろうかというふうに考えております。
  74. 矢島恒夫

    ○矢島委員 プラント輸出のてこ入れ策の一つと考えてよろしいでしょうか。
  75. 畠山襄

    畠山政府委員 お答えを漏らして申しわけありませんでした。  プラント輸出のてこ入れ策という意識はございませんけれども、したがってそれが全般ではございませんが、そういうふうに機能する部分がございます。といいますのは、一般に一〇〇%仲介をいたします場合にはプラント輸出と関係がございません。これが主体でございます。しかしながら、やや例外的な場合といたしまして、日本から一部プラントが出ていく、そして大部分が第三国から別の第三国へ渡る、こういうケースがございます。これは、現在のところ保険制度対象になっておりません。そのようなものが、今回仲介貿易保険というものが創設されますと、五〇%以下でございますけれども日本から出ていくプラントも対象になりますので、そういう意味合いでは、プラント輸出にもプラスの貢献をするという機能が一部ございます。
  76. 矢島恒夫

    ○矢島委員 時間がなくなりますので大臣にちょっとお伺いしたいのですが、次の三つの点でお答えいただければと思います。  一つ海外投資保険のてん補拡大の問題ですけれども、六十年の海外直接投資の実績から見ますと、先進国向けが四二%と大幅に伸びておりますが、発展途上国向けは逆に五%の減少となっている。こういう状況から見ましても、今度の対象拡大ということは大企業の投資行動に対応したものと言わざるを得ないのではないか、そこで世界各国との投資摩擦の一層の激化を招くものではないかという点。  もう一つは、この円高の中で海外直接投資が加速されて、通産省の発表ですが、二〇〇〇年までは年平均一四%増加するだろう、こういうふうに言われておりますけれども、そういう中で毎年二十万人の失業者が出てくる、完全失業者が四%に達する見通しを通産省も発表しています。そうすると、海外投資保険の適用拡大というのは、企業の海外流出あるいは産業空洞化、失業の増大、こういうものに拍車をかけるものになるのではないか。  三つ目は、前払輸入保険は、中小企業性製品の輸入が促進されてくる、円高でそれでなくても不況に立たされている中小企業にさらに追い打ちをかけるものではないか。加えて仲介貿易保険制度創設ですけれども、特に、装置産業の海外調達というのがますますふえてくる、これまた産業の空洞化や労働者の失業あるいは下請企業にとって重大な打撃、こういうものをもたらすのではないか。この三点についてちょっとお聞かせいただければと思います。
  77. 畠山襄

    畠山政府委員 三点お尋ねいただきましたけれども大臣に真ん中の点をお答えいただくことにいたしまして、第一点と第三点についてお答えをさせていただきます。  まず投資摩擦を招かないかという点でございますが、先進国の投資増が非常に急激であって、そして発展途上国が横ばいないし微減である、これは事実でございます。そこで私どものねらいは、むしろこの発展途上国へちゅうちょしているのを少しふやしてはどうかということで、そういった今までの流れをただ助長しようということではなくて、投資摩擦のないような発展途上国への投資をやっていったらどうかということでございます。  ただこれは、この保険だけで投資という一大決断をできるというふうには思っておりませんで、海外投資は、好むと好まざるとにかかわらずやはり実行されていかなくてはいけないという側面を持っていると思いますので、特に、中小企業が生き延びるためにも海外投資をしなければいけないという側面もあろうかと思いますが、そのときに信用リスクが怖くて投資できないというようなときに、その手助けをしてさしあげるというような性格のものとして位置づけていきたいと考えているわけでございます。  それから、前払い輸入中小企業性製品の輸入増を招くのではないかということでございますが、円高進展によりまして、既に六十一年の中小企業性製品の輸入額はドルベースで対前年比二二・七%増ということになっております。こうした円高によってもたらされます輸入の増大等経済環境の著しい変化中小企業が円滑に対応できるようにするために、当省としては、御案内のように中小企業事業転換対策でございますとか特定地域中小企業対策、下請中小企業対策等、中小企業の構造転換円滑化のための対策をいろいろ講じているところでございます。ですから、そういう対策、積極的な内需拡大策とかそういったことでやっていくというふうに考えているところでございます。
  78. 末木凰太郎

    ○末木政府委員 ただいまおおむね第一点と第三点について御答弁申し上げたわけですが、第二点について私から御説明させていただきます。  海外投資に伴いまして国内経済の空洞化が懸念されていることは確かに私ども承知しておりますし、またそういうことがあってはならないと思っておりますが、現実の数字で見ますと、非常に極端な空洞化ができるような大きな流れの数字にはまだなっていない。例えば一つ数字を挙げますと、国内生産と海外生産の比率を見ますと、日本は四%程度でございますが、アメリカは一九%、ドイツは一四%、例えばそういうようなことでございます。大きな流れとしてはそういうことでございますが、ただ、瞬間風速が速過ぎたりすればもちろん問題はございますので、これはよくウォッチをしていかなければならないと思います。  基本的には、ただいま貿易局長の答弁にもありましたように、国内において新しいビジネスチャンスをつくり出していく。一つの流れとしては新技術を核としたものでございますし、もう一つの流れは経済のサービス化に即応したものだと思います。したがいまして、大臣の答弁にもございましたように、内需の拡大によってそういう新しいビジネスチャンスの創出がしやすいような環境をつくるとともに、現在御審議をお願いしております産業構造転換円滑化措置法等によりまして所要の対策を講じつつ、御指摘のような空洞化あるいは失業の増大を避けるように努力をしてまいりたいと思います。
  79. 矢島恒夫

    ○矢島委員 時間が来ましたので質問は終わりますが、このような重要な法案を、しかも通産省自身も日切れ法案ではない、こういうふうにおっしゃっていらっしゃるのですが、こういうものを短時間で国会を通していこうというのは非常に問題だと思います。  質問できなかった部分も多々ございますけれども、私たちはこういう国境なき経済活動を促進するような、あるいは空洞化の問題あるいは保険収支や損益の悪化を招く問題、こういう問題等を抱えている本法案に対して反対することを表明いたしまして、終わりたいと思います。
  80. 佐藤信二

    佐藤委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  81. 佐藤信二

    佐藤委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  輸出保険法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  82. 佐藤信二

    佐藤委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決されました本案の委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  83. 佐藤信二

    佐藤委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  84. 佐藤信二

    佐藤委員長 午後零時十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時二十四分休憩      ————◇—————     午後零時十二分開議
  85. 佐藤信二

    佐藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  産業構造転換円滑化臨時措置法案について審査を進めます。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。水田稔君。
  86. 水田稔

    ○水田委員 現在我が国経済が直面しておる状況というのは、これまで四十八年のオイルショック以来二度にわたって大変な危機があったわけですが、そのときに比べて全く様相が違うと思うのですね。そういう点では、これからの産業構造のあり方、そういったものに対する取り組みというのが、これまでと同じようなパターンではどうにもならないだろうと思うのです。そこへもってきて、二月のG5、G7で協調して大体一ドル百五十円ぐらいのところでというのが暗に合意されておったようでありますけれども、現実にはきのうの状態ではさらにそれを上回っている。そして、このことは見方によっては、ドルの暴落ということにでもなれば、これは国際的、世界的な大変な経済状況、いわゆる恐慌にもなりかねない、そういうものを含んでおるわけでございます。そういう点では、円滑化法案というのも一つの手だてではありましょうけれども経済の基本的な取り組みの姿勢というものが今大変大事なときではないだろうか。その点について基本的なお考えをまず大臣にお伺いしたいと思います。
  87. 田村元

    田村国務大臣 二度の石油危機を経験したわけでありますが、あのときと今度の場合とは本質的に内容も全然異なっております。第一次石油危機、四十八年のときは、御承知のように石油価格が上昇して狂乱物価、そして国際収支も赤字というような状態で、このために公定歩合の引き上げを行う一方、エネルギー革命以降石油エネルギーに高度に依存しておりました我が国経済構造の脱却を図り、そして省エネ、省資源の推進などを図って、需給のバランスをとるために供給力の強化を行うというような、これが当時の課題であったと思います。  ところが、今度の場合は大幅な国際収支の黒字、貿易インバランスの問題が基本に横たわっておるわけでございます。円高が御承知のように急激に進行しております。きょうもまだ百五十円台に戻しておりません。百四十九円台で低迷いたしております。低迷といいますか高迷といいますか、円高になっております。この円高企業はついていけるのか、私は危機的な状況にあるのじゃないかというふうに考えておるのでございます。  そこで何をなさねばならぬか。まず目先の問題としては、G5、G7等で合意されました点の第一の問題である為替レートの安定のための相互の努力であり、そして中長期的には、アメリカに体質改善をしてもらわなきゃならぬことは当然でございますが、ドイツもそうでしょうけれども日本の内需の拡大策を中心とする対応、それに産業構造の調整ということであろうと思うのであります。  それで、ここで特に強く申し上げておきたいことは、午前中も申し上げましたけれども、本来絵合経済対策というものは、現在予算案が審議中でございますから、この予算が成立した時点の経済状況の動向にかんがみて組まれるべきものであることはこれは論をまちませんが、このような異常な円高ということになりますれば、我々はやはり緊急避難的な行為をとらなければならない。それは産業界のためにも、とりわけ中小企業のためにも我々は英断をもって取り組まなきゃならない。つまり、予算審議中といえどもこの総合経済対策というものをより大きな、より中身の濃いものにするために並行して努力をしていく必要があるのではないか。これは恐らく国会は野党、与党を問わずお許しをいただけるのじゃなかろうか、むしろある意味においては御賛成をいただけるのじゃなかろうか、こう思って強く世論づくりにいそしみたいし、その旨閣内におきましてもまた国会におきましても外におきましても強く提言をしてまいる所存でございます。
  88. 水田稔

    ○水田委員 具体的なことじゃなくて決意のほどは聞かしていただいたのですが、実は今の日本経済状況を見てみますと、貿易収支のアンバランスが極めて顕著になっておる。株式市場だけが活況を呈しておる。累積債務がGNPさえ上回る国が出ておる。資金が余っているのに生産設備に投資を余りしない。これは御承知と思いますが、大企業設備投資のいわゆる資金調達を見ますと、昭和四十五年から四十九年の平均では銀行借り入れ八三・九%が六十年には二九・七%になっている。ですから七〇%は、そのまま置いておけば損をするわけですから、これは投機に回るという構造になってきている。これらの点を見てみますと、これは累積債務の点でいえば一兆ドル、一九二九年ならまさにドイツということですね。そういう点で大変な恐慌含みではないかという心配がされておるわけでございます。それだけに今我が国産業構造の転換に求められておるのは、新しい展望を切り開くためには、本当を言えば今申し上げた点は一つ産業政策の問題、一つ金融政策といいますか財政、そういったものに絡みがあるわけです。  そこで今の円高が、自然に経済的な力によってバランスがとれて為替換算の率が決まっていくというのならいいのですが、まさに一昨年九月のG5によって急激に進行したわけです。その点については、本来言えば大蔵省、通産省が、今の世界の経済、財政、金融といった面を総合的に見ながらお互いが対応できるということでなければならぬと思うのです。そこで、一昨年九月のG5の会議の前に通産大臣は大蔵大臣から事前に、これはもちろん日本産業を考えれば通産大臣が責任を持たなければならぬのですが、そういう点の相談があったのかどうか。本来そういうことがあってしかるべきだと思うのですが、あったのかなかったのかを伺いたいと思うのです。
  89. 田村元

    田村国務大臣 実は私はその当時通商産業大臣ではございませんでしたので、当時のことをいろいろと調べてみました。一昨年九月のG5は、昨年五月の東京サミットより前に開催された会合でございます。通貨当局者の非公式な協議の場であったという性格だったそうでございまして、その内容について事前に相談を受けていたわけではございません。相談があったかということでございますが、私が聞いておる範囲内では、一昨年九月のG5における相談はなかったということのようでございます。
  90. 水田稔

    ○水田委員 今、日本の基幹産業の置かれておる状況というのは、もともと鉄鋼、造船というのは構造不況という状況の中にあったわけです。その中で、例えば一億二千万トンのキャパシティーを持ちながら一億トンで生存していこうということで合理化努力をやってきたわけです。そこへG5以来の急激な円高によってとうとう百五十円になりますと、今後、三、四年間に本工だけで四万三千人、下請を入れますと十万人の雇用がそこでは失われる。あるいはまた造船でいいますと、ドックを廃棄するのは、最盛期に比べて大体半分ぐらいになってしまう。それでもNICSの追い上げによって一体競争力がもち得るのかどうかというような問題があるわけであります。さらに、非鉄金属の山の多くは閉山せざるを得ない、あるいは製錬所も縮小していく、こういうことでありますし、アルミは水力発電の蒲原一カ所を残して火力発電のアルミは全部製錬をやめるということになってしまう。石炭も多くの山がとにかく閉山になるわけです。そして、一月には失業率が三%に達した。通産省の予測によりますと、昭和六十五年には四%になるのではないかと言われておるわけです。今百八十二万、そして四%になれば二百五十万という失業者が出るわけです。  先ほども申し上げましたように、為替相場がいわゆるファンダメンタルズによって変動してきたのであれば、それはある程度の期間がありますから、それぞれの産業によって対応していくのは当然でございます。しかし、一昨年九月からの急激な円高というのは、まさにそういう点では対応の時間がなかった。まさに大蔵省が主導で、貿易収支の黒字というのをとにかく為替相場でコントロールしようということが主たる話し合いの結果でありまして、それによって起こる日本の国内における産業がどうなるのか、それに対応するためにどういう施策、どういう時間的な余裕が必要かということは全くないまま深刻な事態が起こってきたわけでございまして、そういう点では私は政府として責任があるのではないかというぐあいに思うわけです。全く自然の世界経済の流れの中で、それぞれの企業の対応がまずくて、あるいは産業の対応がまずくてそれでつぶれるというならそれは経営者の責任ということになりましょうけれども、今度の場合は、そういう点ではまさに政治の責任というのが全くないとは言い切れないのではないか。その点について、通産大臣としてというより国務大臣として、中曽根内閣の大臣としてどのようにお考えになるか、お伺いしたいと思います。
  91. 田村元

    田村国務大臣 政治の責任ということは、日本の政治の責任のみということに限定されない、世界の経済先進国の政治の責任ということならそれは当てはまるかもしれないと私は思うのです。といいますのは、余りにも急激な円高、これは裏返せば、余りにも急激なドル安ということがむしろ強い意味を持っておるのではなかろうかと思うのであります。でございますから、我々としても、もちろんアメリカ産業のあり方、マーケティングのあり方あるいは構造のあり方等々について改めていただかなければならないということは当然でございますが、同時にまた、我が国も内需の拡大、構造調整等々いろいろとやらなければならぬことがたくさんあるわけです。それがG5、G7合意されたわけでございます。  端的に言いまして、アメリカのみならずヨーロッパにおきましても我が国の内需拡大政策が進まないという誤解といいますか危惧の念といいますか、そういうことを非常に強く彼らは感じておるようでありまして、それに対するいら立ちというものが日本に対する攻撃となり、それが大きく円高にもまた結びついておる面もあるというふうに思いますから、我が国だけではないが、広い意味での政治責任ということであれば、私はもちろん政治の責任でもあろうし行政の責任でもあろうというふうに思います。
  92. 水田稔

    ○水田委員 大臣、そうなりますと、もちろんG5で各国から日本の内需拡大が一つの条件として要求されている。しかし、外国から要求されるのではなくて、国際社会の中で日本が、資源のない国が生きていくためにこれまでにやるべきことはたくさんあったと私は思うのです。内需拡大と一口に言いますけれども、例えば賃金を引き上げるということも内需拡大につながる。これは日経連を中心に好況の業種についても抑えてきたという歴史があります。あるいはまた、日本の場合問題になるのは、五業種が突出して大変な輸出をしておる。ドイツの場合は二十五業種で、それぞれが少しずつですから、トータル的には相当な貿易収支の黒字があっても、一つ業種ごとの反発というのは少ないわけです。そういう産業構造のあり方の問題、そういう一つ企業の、日本経済だけじゃなくて世界の経済に与える影響ということでの社会的なあるいは国際的な責任というのが十分果たされておったのだろうかどうだろうかというような問題もあります。あるいは減税の問題もあります。そういう点で言えば、これまでに内需拡大のために努力すべき点が足りなかったという点での、それが結果的にはG5で急激にやられるというところへいったわけですから、その前段階における政府の責任というのはやはりあると私は思うのです。その点はいかがですか。
  93. 田村元

    田村国務大臣 今日までにおける財政当局の考え方というものは、間違いであるということより、彼らがそれが正しいと考えておったのでありましょうから、これは私は善悪で判断すべきものではないと思うのです。けれども今日におきましては、これはもちろん今おっしゃった世界的な日本の信用の問題もありますけれども、それ以上にもう我が身かわいいといいますか、日本産業界、とりわけ製造業関係の中小企業を救うためには、もうとにかく円高を食いとめ、あるいはこれを円安の方向へ導かなきゃならぬ、そのためには内需の拡大というものがとにかく、従来は中長期、中期的に内需の拡大というものは考えられた面があったかもしれません。けれども今では目先の問題として、協調介入と同じぐらいの目先の問題として内需の拡大というものは考えられなければならぬのじゃないか、このように思いますので、財政当局に対しても、これからは率直かつ活発に物を言っていくつもりでございます。
  94. 水田稔

    ○水田委員 大臣、私の言い方が、責任ということになれば、これはそれに対してあったというのは答えられぬと思いますが、今の答弁からして極めて不十分であったという反省はあったのではないか、そういうぐあいに受け取りたいと思います。その上でこれからの対策をぜひやっていただきたいと思うのです。  そこで私たちは、日本には資源がないわけですから、一次産業、二次産業がどんどん衰微して、いわゆるサービス業、三次産業だけで、情報通信が幾ら発達しても国内では物をつくらぬということになれば、こんな社会というのは資源がないだけに成り立たないと思うのですね。そういう点では、一次産業なりあるいは基幹産業というのが、ある程度の規模でやはり国際競争できる条件で存立させなければならぬ。それをやらないと、今のいわゆる深刻な雇用状況を救うこともできない。ですから、いわばこの円滑化法案というのはまさに新しい法律ですから、日切れではないわけですね。しかし今の深刻な雇用状態に対応するために、少しでもそれが救われるということであるならば緊急に処理して生かしていくべきじゃないか、そういう判断から、日切れ法案に準じて扱おう、こういうことになったと思うのですね。  そこで、この法律は施行されることによってどれだけの雇用が守れるのかということが私ども一番知りたいわけですね。そこでこれを立案された段階で、予算も組んでおられるわけでございますが、確定的に細かい計算はできないにしても、ほぼこういう形での転換というのができることによってどの程度の雇用がそこでは確保できる、こういうぐあいにお考えになっているか。それからもう一つは、私は、先ほど来申し上げていますような国際的な大きな経済の転換か行われる、そういう中で日本産業がどうやって生きていくかということになれば、この法案だけでは極めて不十分だと思うのですね。大臣総合経済対策という中で積極的な取り組みをやりたいというお考えの披瀝があったわけでございますが、それ以外に日本産業構造、どういう方向へ持っていってそこでどういう雇用を確保していくための、あるいは国際社会の中で生きていける産業構造というのはどういうぐあいにお考えになっているのかを含めて、御答弁をいただきたいと思うのです。
  95. 杉山弘

    ○杉山政府委員 二点のお尋ねがございました。  まず第一点は、今回この法律に基づく対策を実現することによってどの程度の雇用が確保されるのか、こういうことでございます。  もう既に御案内のように、この法律では、内外経済事情の変動によりまして能力が過剰になっております設備処理を円滑に進める、またその過程で過剰となってまいります雇用につきましても、できるだけ当該企業の中でつなぎとめをしていただく、また事業縮小等によって影響を受けている地域については、その地域経済の振興なり雇用機会の創出をするために各種の助成措置を用意をさせていただいております。今年度予算といたしましては、開銀からの出資を含めまして百億円の用意をいたしておりますが、いずれにいたしましてもこういった措置につきましては、これを事業者なり各地域なりでどの程度御活用いただけるかということでございますので、今我々の側で、この措置によりましてどの程度の雇用が確保されるかということを定量的に申し上げることにつきましては、極めて困難なことであろうかと思います。  ただ、最近具体的に発表されております鉄鋼等につきましても、各企業とも設備縮小等は考えられますが、その過程におきまして過剰になってまいります雇用につきましては、その相当部分を新しい事業分野へ進出すること等によりましてつなぎとめていくという御計画をお持ちでございまして、私の記憶によりますと、新日鉄では六十五年までに一万九千人の雇用が過剰になってまいりますが、そのうち六千人程度、全体の約三分の一程度を新しい事業分野での事業を拡張することによって吸収したい、こういう意向も持っておられるようでございますので、私どもはむしろこういう計画に対してこの法案で用意をされております措置の御利用をいただけるということを考えておりますので、それなりに効果はあるものと思っております。  また雇用確保につきましては、第二点のお尋ねとも関連をいたしますが、この法案による措置だけではございませんで、先ほど来大臣が申し上げておりますように、やはり全体として日本産業構造転換を円滑にしていきますためには四%程度の、中程度の高目の成長を実現をしていくということが基本でございますから、このために当面総合経済対策、さらには長期的な経済運営についても配慮をしていかなければならない。さらには国内におきます産業調整、また海外への直接投資ということによって国内で失われます雇用機会、これをできるだけリカバーするという意味におきましては新しい産業分野を切り開いていかなければいけない。そのためには新しい技術革新、種を拾い上げていく技術開発が必要でございますし、また新しい国民のニーズに応じるサービス産業等の育成ということも必要でございます。こういった点につきましても十分意を尽くしていかなければならないと思っております。  また、産業調整の過程で影響を受けます中小企業につきましては、既に昨年中小企業事業転換法及び特定地域におきます中小企業に関する特別の臨時措置法律規定をしていただきましたが、こういったことのほか、下請中小企業に対する新しい経済環境への適応に関する助成措置等も六十二年度から用意をさせていただいておりますので、こういった通産省に関連する各種の対策のほか、労働省の地域雇用開発等促進法に基づきます三十万人雇用プラン、こういったもの、政府として各種の対策を総合的に活用することによりまして、できるだけ雇用問題について御心配をおかけしないように努力をしていきたい、かように考えているところでございます。
  96. 水田稔

    ○水田委員 基本的な産業構造問題については、また別の機会に論議をさせていただきたいと思います。  具体的な法案の内容についての質疑に入りたいと思いますが、産業構造の転換というのは、一つ企業にとってみてもこれは大変な決断も要るし、また努力も要ることであります。しかしそこに働いておる者にとってみれば、そこで働けるのかあるいは外へ出なければならぬのかということは、まさに家族を含めての生活のかかっておる問題です。さらに言えば、本工以外に日本の基幹産業というのは下請が同数がまたはそれ以上存在しておるわけですね。そこらの存立というのにも大変な影響が与えられるわけでありますから、私どもは、いわゆる産業構造の転換をやる場合に、企業の生き残りということと同時に、そこに働いておる人なり中小企業の問題というのは同じようなウエートで考えてもらいたい、そういう気持ちがあるわけです。  法案の内容を見ますと、第一条には、産構法には第一条の目的の中に入っておる雇用の安定、関連中小企業という言葉が入っていない。また、五条の事業適応計画承認、七条の事業提携計画承認の中に計画の記載事項というのがあります。その中に雇用に関する事項というのが入っていないわけです。そういう点では、我々が一番心配するのはやはり雇用の問題ですが、なぜそれを入れなかったのか。産構法とは若干スキームの違うものとは言いながら、私どもは、気持ちとしてはそこらは同じウエートで考えてもらいたいという気持ちがありますが、なぜそういうことになっておるのか。入れるお考えになぜならなかったのかということをお伺いしたいと思います。
  97. 杉山弘

    ○杉山政府委員 法文に則してのお尋ねでございますが、まず、第一条の方になぜ特定産業構造改善臨時措置法と同様に雇用及び関連中小企業への配慮という字句を入れなかったのかという点でございますが、これにつきましては、今回の法案では特に第二条というものを設けさせていただいておりまして、この第二条の中では、先ほどの御答弁で申し上げましたように、新しい雇用機会の開発を目的とした新しい産業分野の開拓と並びまして、雇用機会の確保、中小企業者の新たな経済環境への適応円滑化等の関連施策については、国、地方公共団体がその責務として確保されるように努めなければならないという条文を置いております。これに相当する条文は産構法の中にはないわけでございまして、むしろ私どもといたしましては、第一条の目的に入れるよりは、特に条を設けて国、地方公共団体の責務として雇用の確保、関連中小企業への必要な対策といったものを確保すべき旨を定めた。そういう意味におきましては、特に雇用、関連中小企業への影響というものについては十分配慮することに意を用いたつもりでございます。  また、事業適応計画及び事業提携計画の中に労務に関する事項というものが入っていない、こういうお尋ねでございますが、これにつきましては、それぞれの条項の中に計画記載事項で「その他主務省令で定める事項」という記載がございまして、私どもは、これらの計画の中に労務に関する事項が出てまいります場合には、それを任意的な記載事項としてこの計画の中に記載していただくよう、主務省令の中でそういうことを定める心づもりにいたしておりましたために、特に必要的な記載事項としてはそれぞれの条項の中に記載をしなかった、かような次第でございます。
  98. 水田稔

    ○水田委員 二条というのは国の責務なんですね。私どもが言うのは、もちろん国も責任を持ってやってもらう。同時に、実施する企業も、その雇用についてはやはり十分考えてもらわなければならぬ、あるいは中小企業のことも考えなさい、そして国もそれに対して支援しましょう、こういうスキームにするのならやはり一条に入らなければいけないわけですね。ですから、これは私どもの基本的な考え方ですから、実際の運用の面ではぜひ、時間がありませんから、もうこれは何回やっても同じことになりますから、私どもの基本的な考え方だけ申し上げて、法の運用については国も責任を持ってやっていただくけれども、同時に実際に実施する企業雇用やあるいは中小企業の問題というのは考えなければならぬ、そういう立場で取り組むようにやっていただきたいと思います。  次には三条の関係で、これは事前に私ども法案説明を受けたときにお話があった中で若干誤解があるのではないかと思うので念のためにお伺いするのですが、三条の情報提供に「我が国事業者の海外事業活動等の動向を調査し、」こうあるのですが、この情報提供というのは、いわゆる日本企業の海外進出を奨励するという意味に受け取れる説明が事前にちょっとあったものですから、真意はどういうことなのかということを伺っておきたいと思います。
  99. 杉山弘

    ○杉山政府委員 三条の、国による各種の情報提供条項について御質問がございました。  この中で、御指摘のように、我が国事業者の海外事業活動等の動向を調査して必要な情報を提供するということを決めておりますが、この条項では、事業者の海外事業活動等の動向に関する情報の提供だけではなくて。その前に、内外産業の動向についても調査して必要な情報を提供するということになっております。  この条項は、全体といたしまして我が国経済を取り巻きます各種の情報を国として的確に把握をして、これを事業者に提供することによって各事業者の新しい経済環境への適応というものをできるだけ円滑にしていただく、こういう意図で設けたものでございます。内外産業と並んで我が国事業者の海外事業活動の動向というものが入っておりますのも、御案内のように最近では海外直接投資がかなり進んでおりまして、我が国事業者の海外での生産活動というものが相当程度に行われるようになってきた、こういう状況を踏まえて、国内ないしは外の同種の産業の動向だけではなくて、我が国事業者の海外での事業活動というものも十分に考えないといけない、そういう趣旨からでございまして、この情報を提供すみことによって海外での我が国事業者の直接投資をより促進する、そういう意図を持って行ったものではない、こういうふうに御理解をいただきたいと思うわけでございます。
  100. 水田稔

    ○水田委員 それから十二条に、「当該措置に係る事業所における労働組合(当該事業所において、労働組合がない場合には、労働者の過半数を代表する者)と協議して、」とあるのです。これは協議のやり方によって、話しおく程度というものもあれば、本当に十分労働者が納得するような協議が行われる場合もあるのですが、この場合の協議というのは、私どもは計画立案の段階、いわゆる事前の段階から詰めていく、そういうぐあいにやってもらわないと本当に雇用に対する配慮が十分されたとは思えないわけですが、この法案で言う協議とはどの程度のことを考えておられるのか、伺いたいと思います。
  101. 杉山弘

    ○杉山政府委員 お尋ねの十二条につきましては、特定事業者主務大臣から承認を受けました事業適応計画または事業提携計画に従って具体的に設備処理事業転換、または事業提携を行う場合につきましての組合との協議について規定をしているわけでございます。  協議の程度がどの程度かということにつきましては、これは計画の実施の段階の規定ではございますけれども、私どもといたしましては、計画作成の段階から事業者と組合との間で十分な協議が行われるということについてはこれは必要なことであろうと思っておりますし、もしそういった協議が十分に行われないまま計画が出てまいりましたような場合には、計画の承認基準の中には、労働者の地位を不当に害するようなものであってはならないという承認基準等もございますので、十分な協議が行われないまま計画承認というような段階になりました場合には、残念ながらこれは承認対象にはなかなかいたしかねるのではないかというふうに考えておりますし、また実際企業等につきましても事前に十分な協議が行われるように私どもとしても指導をしてまいりたい、かように考えております。
  102. 水田稔

    ○水田委員 ぜひそのようにお願いしたいと思います。  労働省おいでになっていますか。——実は今起こっておる事態というのは、まさにこれまでの業種では訓練されても生きていけないという時代、新しい分野の職業訓練を受けなければならぬ、そういう時代だと思うのですが、現実に現地へ行ってみますと、職業訓練というのは、都道府県がやっておるものあるいは雇用促進事業団でやっておるものがあるわけですが、ほとんどが転業の場合は短期大学校へ入るのじゃなくて県の訓練センターで受けるわけです。そこらの職種を見てみますと、溶接であるとか機械であるとか塗装であるとかブロックであるとかあるいは庭木をやるとか、そういうものが多いわけです。日本産業構造は大きく変わっていくわけですから、実際見てみますと、ここの訓練を受けることによって雇用保険をそれだけ期間を延ばしてもらって受給するというぐらいのことで、それを受けたから必ず新しい分野でその職につけるという保証はないし、また今起こっている産業構造の転換というのはまさに全く違う分野というのが多いわけですから、そういう点では科目をもう一遍考え直してみるべきじゃないか。そのためには文部省もかんでもらって、文部省令による学校の定員の枠を広げてそこに吸収できるものもあれば、あるいはまた訓練センターなり雇用促進事業団の短期大学校なども新しい時代に対応する科目をつくっていく、そういうこともなければならぬだろうと思います。  中には、例えばある企業に聞いてみますと、コンピューターの要員が三千人我が社におるというのです。これで新しい分野へも出ていく。そこらも有効に使ってもらえるなら、その地域で新しい教育機関で、いわゆる在籍のままでもできるかできぬかわからぬけれども、例えば雇用調整金を受けながらでも在籍で訓練をできるというようなこともやれぬことはない、あるいは公的な職業訓練の機関に派遣してもよろしい、こういう意見もあるわけでございます。  時間がありませんから全部一緒に申し上げますが、そういう点で職業訓練の科目について根本的にやり直す、それをやらなければこれは対応できないのじゃないかというのが一つ。  それからもう一つは、鉄鋼に限って申し上げますと、造船の場合は余ったのはとにかく人員整理で、希望退職でやめても、現に労働省が受けなければならぬところへ受けておる。鉄鋼の場合は労使の間で協定があるものですから、三年ないし四年は本来外へ出るのを中において抱えてやるわけですから、そういう場合は、例えば新しい地域雇用開発促進法で、これはその地域、例えば釜石を見ますと、釜石でどこか採用してくれるところがあれば、中小企業なら三分の二、大企業なら二分の一出す。あるいは室蘭でもそうです。そういうのはないわけですから、全部企業城下町で、へこんでいったら働くところがないから、この労働省の法律ができても適用されぬわけです。だけれども、鉄鋼の場合は中で抱えていたから法律の適用が難しいと思うのですが、中で在籍のまま向こうも給料を半分持つあるいはこの制度を利用して半分持って、そして在籍のまま二年なら二年の訓練が受けられる、そういうことも検討してしかるべきではないだろうかという気がするわけです。労働省にそういう点についてぜひ御検討いただきたいのですが、いかがでしょうか。
  103. 大月和彦

    ○大月説明員 ただいまの職業訓練に関する御質問お答えいたします。  第一点の公共職業訓練校における訓練科目が時代の流れに合わないんじゃないか、こういう御指摘についてでございますが、確かに御指摘のとおり現在非常に産業構造の変化あるいは技術革新が速く進んでおりまして、必ずしも公共職業訓練施設の訓練科が対応していない面も間々見られるわけでございます。私ども公共職業訓練施設がそういう地域の需要あるいは企業の需要に対応していくためには、さらに今後の雇用需要の見通し等、そういうようなものを考慮しながら訓練科を設定する必要がある、こう考えているわけでございます。そしてこのような観点から、最近は都道府県あるいは雇用促進事業団の施設におきましても、むしろ第三次産業を中心にした訓練科目への転換を図りつつございます。例えば情報処理関係あるいはデザインというような、今まで余りやっていなかった分野への訓練科の転換を進めているところでございます。さらに今後そういった方向で指導していきたい、こう思っております。  それからもう一つ、こういう公共職業訓練施設だけではやはり施設あるいは定員の関係でなかなか対応できない事情もございますので、むしろ今後の方向といたしましては、公共職業訓練施設のみならず、民間における教育訓練機関あるいは専修学校、各種学校というようなものが随分職業に関する教育訓練を行っておりますので、そういうところへの委託訓練というような格好で進めていきたい、こう考えているわけでございます。  それから第二点の、いわゆる過剰な労働者を抱えている業種について在職のまま訓練を受けることができないか、こういう御指摘でございますが、私ども今考えております三十万人雇用開発プログラム、この中におきましては、いわゆる過剰労働力を抱えている不況業種から雇用吸収力のある産業なり企業への移動が円滑に行われますよう、離職予定者あるいは出向予定者というような方々を、在職のまま公共訓練施設や専修学校で能力開発を行う。さらに新しく、企業に委託したままでいわゆる企業委託訓練も実施することを考えておりまして、既に昨年の秋から一部の地方で実施しているところでございます。そして、この場合の訓練期間の問題にちょっと触れられたわけでございますが、現在私どもこういう職種転換の場合には、原則、標準六カ月の期間で実施しているわけでございますが、これはその内容に応じまして最高一年まで延長できる、こういう制度でございます。  そういうことで今後対応していきたい、こう考えておるわけでございます。
  104. 水田稔

    ○水田委員 新しい時代に対応する歴史的な転換を迫られておるわけですから、こちらが好きこのんでやるわけじゃないのですが、ですからその点ではぜひ、今の点については十分配慮してやっていただきたいと思うのです。  それから自治省おいでになっておりますか。——企業城下町のようなところで基幹の設備が廃棄されますと、所によって違うのでしょうけれども、とにかく大体千人従業員が減ると人口が一万減るのですね。例えば室蘭の例を挙げますと、人口十八万でとにかく下水道から道路から学校からいろいろな整備をしてきた。起債を使ってやっておるわけです。だんだん減っていって十三万になってくる。これでまた減るかもしれない。そうなりますと、支払いだけはずっと残ってくるわけですね、人口が減った中で。そういう点では、特に財政上の配慮もしなければこれは立ち行かないんじゃないかと思うのですが、その点自治省いかがですか。
  105. 松本英昭

    松本説明員 御指摘のような人口減少を伴いますと財政にも大変影響があるわけでございますが、それに対しましては、人口の急激な減少に対しまして交付税の算定上、人口急減補正というのをやっております。したがいまして、そういう場合におきましても、基準財政需要額が急激に減少することのないように私どもとしては配慮をいたしております。
  106. 水田稔

    ○水田委員 時間がありませんのでまとめてちょっとお伺いしたいのですが、一つは、先ほど来申し上げましたように、各産業が対応する時間があればこれは対応してきたと思うのです。それが時間がないままに起こって設備廃棄をしなければならぬという事態になったわけですね。ですから、もちろんいろいろな債務保証なり利子補給なりというような支援措置を講ずるわけですけれども、余剰設備除却損について一部何らかの別途の支援措置というものは考えられぬものかどうか。これは内容は違いますけれども、この円滑化法案との横並びで特定船舶製造業経営安定臨時措置法案というのが運輸へかかるわけですが、これはドックの買い上げ、まあ中小でしょうけれども、そういうことがあるわけですね。そういう何らかの支援措置は考えられないのかというのが一つ。  それから、企業企業の判断でどこの地域設備を廃棄するかというのは、これはすぐれて企業の経営判断の問題で、我々はとやかく言うべきではない。しかし現実には、企業城下町のようなところで基幹になるところがぽっとなくなれば将来にわたって全部つぶれてしまう、そういう不安を持っている地域というのは大変多いわけですね。そういう点では、確かに生き残っていくために国際競争力を持つということの設備の集中化というのは当然だろうと思うのです。しかし、いわゆる経済合理性だけではなくて、地域社会の崩壊につながるような、あるいは地域経済が崩壊するようなことについては何らか少し考えるという、その程度のことは通産省が全体の産業構造の転換の中で物を申してもいいんじゃないかというぐあいに思うんですが、その点はいかがでしょうか。  それからもう一つは、今度のこの法案に基づく基金というのが、第三セクターへの出資が五十億、債務保証の枠が二百億で十倍ですから二千億、利子補給の枠というのが四千八百億と思うのです。これからやってみなければわかりませんが、実際にはこの法律だけでは全部が転換できるわけではないのですから、この法律も利用する、またほかのスキームも考えていくとしても、これの枠がいっぱいになってくるということもあり得ると思うんですね。そういう場合には枠をふやして、やはり有効に使えるなら思い切った金をかけるということをお考えになっておられるかどうか、三点お伺いしたいと思います。
  107. 杉山弘

    ○杉山政府委員 三点のお尋ねがございましたが、まず第一点は、整備廃棄について税制上の手当てだけではなくて、何らかの支援措置が講じられないかということでございますが、先生御指摘のように急速な円高という事態で企業に対応するいとまがない、そういう中での構造調整ということにつきましては我々も十分認識をいたしておりまして、この点につきましては事業転換なり地域対策につきまして、むしろこれまでの政策体系上異例とも思われるような助成措置を講じているところでございます。御指摘設備廃棄につきましては、私どもの関係でも中小企業の場合には国が助成をした格好での設備の共同廃棄事業等もこれまで行われてきておりますけれども中小企業以外の分野につきましては、これまでの政策体系のバランスから申しますと、これ以上に踏み出すことはなかなか難しいというのは残念ながら実情であろうかと思います。  それから第二点でございますけれども地域経済に影響があるような場合には、単なる経済合理性のみではなくて、地域経済に対する配慮という観点から通産省としてもいろいろ指導すべきではないか、こういう御意見でございます。  当然のことながら、企業城下町等におきます企業については、設備処理等をやります場合には地元と十分お話し合いをしているはずでございます。またこれからもそういうふうにしていくだろうと思います。我々といたしましても、企業城下町等におきます企業地域経済との関係については特にこの法律の中でも配慮をいたしておりまして、との法案の二十四条には「都道府県の意見の申し出」という規定を置いておりまして、都道府県は、特定設備処理事業提携その他の措置地域経済に著しい悪影響を及ぼす場合、またそのおそれがある場合には主務大臣に対して意見を申し出ることができるという規定もわざわざ置いております。したがいまして、こういう規定に基づいて都道府県から地域経済についての各種の意見が出される場合には、主務大臣としても当然これを尊重して処理をしていくということになろうかと思うわけでございます。  それから第三点は、当面計上されている財政措置だけで十分かどうか、これにつきましては私どもも成算があるわけではございませんが、冒頭の御質問お答え申し上げましたように相手がありまして、この制度をどれだけ御利用いただけるかという実情がこれから法律施行後はっきり明らかになってきました段階で、もし万一不足するという事態があれば、その時点で改めて追加その他必要な措置について検討させていただくということではないかと思っております。
  108. 水田稔

    ○水田委員 終わります。
  109. 佐藤信二

    佐藤委員長 奥野一雄君。
  110. 奥野一雄

    ○奥野(一)委員 最初に、私はこの産業構造転換円滑化臨時措置法案、大変重要な法案だというふうには思っております。実際に現地調査などに入りましても、関係する業界とかあるいは自治体の方からも、これと今社会労働委員会の方にかかっております地域雇用の開発、この法案についてはできる限り早急に成立をさせてほしい、こういう要望があることは事実でございますが、私はそれだけに、重要な法案であるから本来であれば少し時間をかけて、産業構造の転換とかあるいは円高対策とか内需拡大問題とか、そういう関係することについて本来ならじっくり審議をして間違いのない形で通すべきだ、こう実は思っておったわけでありますけれども、こういう形になりまして大変少ない時間の中でお尋ねをしなければならないということでございます。いずれ、大臣の所信表明があったことでもございますから、その質問の際にまた改めて意見の交換もさせていただきたいと思っているわけです。  そこで最初に、この法律の提案説明をちょっと読ませていただきまして、これは私の理解がちょっと違っているのかもしれませんけれども、冒頭に、我が国の貿易収支の黒字幅というのは大変大きなものになっているんだ、こういう大幅な対外不均衡の是正を図るために我が国産業構造を国際的に調和のとれたものに転換していくことが極めて重要だ、こう書いてあるわけなんですが、後の方に円高云々と書いてあるわけでありますが、円高に伴って今いろいろな業界が大変落ち込んでいるということもあるわけでありまして、そっちの方で産業構造の転換をするということならまだ話がわかるのですけれども、貿易収支の黒字というものを直していく、そのために我が国産業構造というものを国際的に調和のとれたものにする、こういうふうな受け取り方をしますと、そっちの方はそれじゃどういうような産業構造の転換をしていくということにするつもりなのか。貿易収支で黒字をどんどん出している業界の方は産業構造の転換は考えないということなのか。貿易収支の黒字が問題であるならば、黒字を出している業界を内需型の産業に切りかえていく、輸出をある程度制約をしても、制限をしても、それは国内向けのものにしていくというのが本来の姿ではないのかな、こういうふうな感じもしているわけなんで、これはどっちの方を主体にして考えているということになるのでしょうか。その辺のところを最初にちょっとお聞きしておきたい。
  111. 田村元

    田村国務大臣 輸出の削減というのは、私は自由貿易の立場から軽々に行うべきでないと思いますが、書き方の順序があるいは誤解を与えたのかもしれませんけれども、要するに日本産業構造が輸出型の製造部門に非常に偏り過ぎているところから、しかもこれが構造不況的な面も持ち、どんどんと売りまくって貿易黒字が大きくなる、貿易黒字が大きくなるとそれで円高という姿になってくる、円高ということになるとまた輸出依存型の産業に大きな打撃を与える、こういうようなことでございますから、貿易黒字というのは、最初に出たのはちょっと文章を書いた者のあれで、私ももちろん書いてあるとおりに読んだわけですけれども、抜本的に産業構造を国際的に調和のとれた、輸出輸入のバランスのとれた姿にいたしましょう、これが、この法律案を離れて物を申しますと、産業構造調整の基本的な姿でございます。貿易黒字が出たということは二義的なことで、こういう今の産業構造だから貿易黒字が出たのであって、出たこと自体がコンパスのしんではない、こういうことでございます。
  112. 奥野一雄

    ○奥野(一)委員 私は決して輸出を全部やめろとかなんとかということを言っているのではもちろんないわけです。ないのですが、例えば同じ輸出産業の中であっても、輸出をどんどんやって黒字をどんどん上げている業種と、それからそうでない業種と今分かれているわけですね。ですから、全体的に輸出をやめると言うことはできないと思います。しかし、例えば相当な黒字を出している、これが輸出を制限されると海外、現地生産ということになっていっている、現実そうなっているわけです。そのことで、黒字がもちろん大幅にあるから、なおそれに対して今度はほかの産業に対する攻撃が別にかかってきているわけです。その業種にかかってきているのであればこれはまだいいわけですけれども、違う産業の方がばたばたとやられる。それに加えて、今度は円高になって、競争力が弱いというのですか、後進国などに追い上げられている業種はだんだん落ち目になって現在のような状況が出てきている。そうすれば、産業構造を考える場合には両者を考えていかなければならないのではないか。黒字をどんどん出す輸出業者はそのまま放置しておくという形にはならないのではないかという気が私自身はするのです。  ですから、そっちの方は例えば自動車なら自動車、今約五五%くらいの輸出ですか、それを四〇%くらいに抑えられないか。あとの一五%はひとつ国内向けにもっと安い車をつくりなさいとか、いろいろな工夫をしたり、それこそ別な産業に転換していくとか、そういうことをやっていけば黒字の方は幾らか減る。そうすると、そのほかの産業に対する諸外国からの攻撃はそんなに強くならなくて済むのではないか、こういう感じがしているわけなのです。したがって、この法案を見ますと、今の鉄鋼だとか造船だとか繊維関係だとか、そういう輸出型の産業であるけれども円高で今相当深刻な状況になっている産業が中心、こういうふうにとっていいわけですか。
  113. 杉山弘

    ○杉山政府委員 私どもの考え方につきましては、ただいま大臣から大筋御説明したようなことでございますが、少し敷衍させていただきますと、産業構造調整と申しますのは、大きく分けますと二つあるのではないかと思います。  一つは、大臣申し上げました国際協調型の産業構造にということでございますが、これもその中を見てまいりますと二つに分かれると思います。  一つは、輸出型産業については、これまでのように国内で商品を生産してそれを海外に持ち出すということではなくて、むしろ現地の労働力資源等を活用する形で海外生産を進めていただいて国内からの輸出をモデレートなものにしていただくという方向が一つございます。それからもう一つは、輸入を拡大する、そのためには国際的に比較優位を失っております産業について国内でのいわば戦線縮小と申しますか撤退を円滑にしていく、こういう方向であろうと思います。  この二つの方向というものはいずれも雇用機会の減少につながってまいりますから、一方ではもう一つ新しい雇用機会を確保するための産業分野を切り開いていく、これが大きな二番目の産業構造転換の方向であろうと思うのでございます。  実は、今回御提案申し上げておりますこの法案は、二つの産業構造転換のうちの最初の方の国際協調型産業構造への転換の中で、むしろ最近の円高によりまして国内での産業調整を迫られている、そういう業種につきましての対応ということであろうかと思います。輸出型産業海外投資につきましては、先ほど水田先生の御質問にもございましたが、これまでの円高によりましてむしろ相当程度加速化されつつあるように思いますし、例えば自動車等につきましては、既に九〇年代前半までには北米で二百万台を超えるような生産能力を持つ海外進出が企画、実施されております。そういうことから見ますと、今の段階で海外投資について直接政府として直ちに何らかの対策を講ずるというような段階ではなくて、むしろ国内で産業調整を迫られている分野についての対応が必要だ、こういう判断でその分野についてだけ御提案を申し上げているわけでございます。  ただ、全体としましては、大きな産業構造転換必要性に基づいておりますし、その産業構造転換は何のためにやるかと申しますと、大幅な対外インバランスの改善、それに向けて産業構造転換をしていかなければいかぬ、そういう意味で提案理由の中にも書かしていただいたというところであろうかと思います。
  114. 奥野一雄

    ○奥野(一)委員 そうだろうと思っておったのですが、そういうことになりますと、それでは円高による影響を受けている産業ということになりますと、問題になる円レートというものをある程度予測をしておかないと、これは今まで大体似たような法案がずっと出てきていました。あるいは総合経済対策なんかもやられてきているのですけれども、それをせっかくやって、また半年ぐらいたったら円レートが物すごく上がってしまった、そういうことになると、今これを土台にしてやってみたのだけれどもまただめだということになりかねないのではないか。今まで円レートの関係についてはいろいろな方からも質問が出ていますけれども、的確には答えられないというのがお答えであったわけなのです。しかし、ある程度の想定をやっていかないと、これをやったのだけれどもまたことしの七月あたりになったらやらなければならぬのではないか、こういう感じがするのです。  その辺のところは、先ほど水田委員に対する大臣の御答弁では、前のG5のときにはそちらの方からは相談がなかったようだ、こういうことでもあったのですけれども、どうなんでしょう、こういう対策を立てる場合に、通産は通産で対策を立てられても、財政の方が勝手にと言うと語弊がありますけれども、通産の考えているものとマッチするような財政金融政策というものを一緒にやってもらわないと、またおかしくなってくるのではないかという危惧があるわけですけれども、円レートそのものに対する見通しというのは、やはり全くわからないということになるのでしょうか。
  115. 畠山襄

    畠山政府委員 円レートの見通しにつきましては、一応の、当然の前提といいますか、そういうものを置いて計算はいたしておりますけれども、それで絶対に推移するのかということでございますれば、それは絶対にそういうことで推移するとは保証しかねるということでございます。  ただ、先ほど水田委員の御質問大臣お答えいたしましたように、例えばG7合意文書でございますとか、そういうものについての具体的なすり合わせは財政当局とうちとの間でございませんけれども、ただ、事前にあるいは事後にいろいろ情報を緊密に連絡いたしておりまして、私どもが想定しておるような姿で今後レートが推移していくことを期待し、またそういった情報交換で実現していきたいと考えているところでございます。
  116. 奥野一雄

    ○奥野(一)委員 その問題はまたいつか機会あるごとにやらせていただきたいと思います、時間がありませんから。  次の方ですが、これは先ほど産政局長お答えを聞いておりまして、適用になるのかなというふうにも思ったのです。先ほど水田委員の方から質問したことにも関連するのですが、国の責務の中に「研究開発の推進等による国際経済環境と調和のある新たな産業分野の開拓、雇用機会の確保、中小企業者の新たな経済的環境への適応円滑化」、こういうふうに述べられているわけなのですが、具体的にどんなことを今通産として考えておられるのか、その成功するという見通し、もちろんそれはなくて出すということではないと思うのでありますけれども、そういう見通しがあるかどうか。  それから、先ほど水田委員が言われましたように、私ども室蘭の方に現地調査に入りまして、新日鉄の方では、自分たちの方でいろいろなすぐれた技術を持っているから、労働者が失業しない以前に新日鉄なら新日鉄の内部でもって別会社をつくってそっちの方へ吸収してやりたいのだ、しかしそれに対する助成というのは今までほとんどない、そういうことについてやはり助成をすべきでないか、こういう意見なんかも伺ってきたわけなのです。先ほどもちょっと質疑を聞いておりまして、それは可能なような感じもしたわけなんですけれども、その点についてお伺いしたい。  それから、これまたいつも私の方の地元のことばかり申し上げて申しわけないのでありますけれども、例えば函館どっくも今度の合理化で二百人ほど希望退職ということになっているわけです。ところが、函館どつくは大変優秀な技術を持っている部分があるのですね。そっちの方に、例えばそれを別会社にするのかどうかは別ですけれども、そういう自分たちの持っている技術というもの、造船以外の技術、これはボイラーです。ボイラーは大変いい技術を持っているわけなのですが、そうすると、そういうものを例えば別会社がなんかにつくって、解雇される人を解雇されない以前にそちらの方に吸収をしてやる。先ほど水田委員が言いましたように、そうすると、その間、例えば転換に必要な職業訓練も社内でやろうがどこでやろうが、そういうものにもある程度助成をしていって、そしてできるだけ解雇されないうちに別な仕事につかせる、そういう対応ということはこれは考えていく必要があるのじゃないかな、こういう気がしているのですが、その辺はどうなのでしょうか。
  117. 杉山弘

    ○杉山政府委員 まず、お尋ねのこの法案の第二条で国の責務として言っております研究開発の促進、雇用機会の確保等につきましての具体策ということについては、まず研究開発の推進に関しては、私ども通産省におきましては、基盤技術研究促進センターの事業によりまして基盤技術の研究開発について出資または無利子融資制度を実施いたしておりますが、こういった基盤技術研究促進センターの事業規模を拡大することによります基礎研究の充実、さらには工業技術院を中心としてやっております大型工業技術研究開発制度、こういった各種の技術開発に対する助成制度を強化拡充いたしまして、新しい産業分野を開く種を育てていきたいと思っているわけでございます。  また、雇用機会の確保につきましては、これはこの法案の中でも、設備処理に伴う事業転換につきましては、後ほど御説明をいたしますように助成措置を講ずることにいたしておりますが、これとはまた別に、労働省の方で地域雇用開発等促進法というものを御提案申し上げておりまして、地域雇用開発、三十万人雇用開発プランといったようなものも実施をしようとしておられますが、こういった政府としての総合的な対策を講ずるというものがこの二条に基づきます具体的な措置でございます。  それから、転換への助成について、鉄の場合、造船の場合の具体的な例を引いてお尋ねがございましたが、この法案によります特定設備として、構造的に過剰になっていると認められる設備処理に伴い過剰雇用をつなぎとめるための新しい事業分野への転換につきましては、この法案に基づきまして金融上、税制上の助成措置を用意させていただいております。例えば金融上の措置といたしましては、新しい事業分野への転換をおやりになる事業者につきましては、その設備資金につきまして開銀からの最低利の融資を用意して御利用いただけるようにいたしておりますし、また、新しい分野に転換のために取得される設備につきましては特別償却制度をも御利用いただけるようになっております。  その他、この法律におきます特定地域におきまして事業転換をやる場合には、金融上の助成措置についてもさらに一段と優遇された金利の適用がございますし、特別償却につきましてもその償却率が割り増しされるというようなことに相なっております。  また、その場合に、この新しい事業分野での事業を行うのがその設備処理をやる事業者だけに限られるのかどうか、その子会社等でやるような場合でもいいじゃないか、こういうようなお尋ねにつきましては、むしろ別会社にして機動性を持たせるということも必要かと考えておりまして、この法律の五条の二項におきましては、直接設備処理をやる特定事業者だけではなくて、経営を実質的に支配していると認められる子会社等につきましても、その事業につきましては事業適応計画に含めて承認を受けることができるというふうに規定をいたしておりますので、そういう面におきましても、できるだけ円滑に設備処理とそれに伴う過剰雇用のつなぎとめのための新しい事業分野への転換ができるように配慮をいたしたつもりでございます。
  118. 奥野一雄

    ○奥野(一)委員 今の後段の方はよくわかりましたけれども、今までの事業転換法の審議の際にも随分指摘をされてきておったと思うのですが、事業転換といってもなかなかそう簡単にはいかないわけですね。そして、単純なというと語弊がありますけれども、いろいろな技術をたくさん持っている事業でありますと、別な方へ転換しようとかあるいは子会社をつくろうとか、そういうことは比較的可能だと思うわけでありますけれども、そうでない部門は仮に事業転換するといったってなかなか大変だ。そういうときに、私は、国の責務の中の研究開発の推進ということに大変大きな期待をかけたわけなのです。それだから、国の方も大変だと思いますけれども、そういうものをやって、おたくの産業だったらこういう方に転換をしたらよろしいのではないか、そういう誘導的なことをやってもらわないと事業転換そのものができなくなってしまう。何をやっていいのかわからない、そういう技術のノーハウもないとかそういうのであれば、結局はつぶれてしまう。そういうことにつながっていくのじゃないかという危惧を持っているものですから、国の責務として出しているのであれば、そういう方面にやはり力を入れていただいて、その事業が仮に転換をしなければならないのであれば、転換が容易にできるようなそういう指導というものをやってもらわないと、転換するときに、いやこれはこういうもので資金の面倒は見ますよとかというようなことは後の始末だけの話ですから、それではなかなかうまくいかないのではないかな、こういう感じがしておりまして、その点についてこれからまた運用上御検討願いたいというふうに思っているわけです。  時間がありませんからちょっと先へ進んでまいります。労働省の方からおいでだと思うので、ちょっと労働省の方にお聞きをしておきたいのですが、労働省の地域雇用開発等促進法案というものを見ますと、これは今我々が審議をしているこの法案とは表裏一体の関係にあると私は理解をしているわけなんですけれども、この目的の方を見ますと、「地域雇用開発のための措置又は失業の予防、」こういうふうになっているわけでございます。いろいろな御説明を聞いておりますけれども、果たしてこれでうまくいくのかなという感じが実はしているわけなんでありまして、「措置」というのは一体どういう措置をとるのか。いただいた資料の中にいろいろなことが書かれておりますが、これがその「措置」に該当することになるのか。それから「失業の予防」ということではどういうことについてやられようとするのか、お尋ねをしておきたいと思うのです。「失業の予防」ということになっても、実際に企業が行き詰まっているときに幾らかの助成をして、果たしてそれで効果が上がるのかどうか、こういう疑問があるものですから、その辺のところを御説明をいただきたい。  それからもう一つは、私もいろいろな現地調査に行ってまいりまして、職業安定所なんかからもお話を聞いておるわけでありますけれども、求人開拓のための人間が非常に少ない、こういうことで大変困っておられるというのが現場の実態でございます。そういうことについてどういう対応をされようとするのか。せっかくこういう法律を出されるわけでありますから、それに見合った体制というものは当然とるべきでないか、こう思っておりますので、その点について一つはお尋ねをしておきたい。  それからもう一つは、先ほど水田委員質問で大体理解ができるような感じがするわけでありますが、労使協議。これは両方からちょっとお答えいただければと思うのですが、労使協議という場合であって、協議が調わなくて紛争しているという場合、先ほどの産政局長からのお答えだったと思うのですが、そういう場合だったら承認にならないというふうに理解をしているわけなんですけれども、そういう理解でいいか。それから労働省の方とすれば、そういう労使紛争をしているということについて、例えば労使紛争をしているのにこういうものが適用になったということになった場合には、これは労働者にとっては大変困ったことになるわけでありますが、そういう点についての労働省としての見解をお尋ねをしておきたいと思うわけです。  それからもう一つは、先ほど職業訓練のことでもちょっとお話がございましたけれども、訓練センターというものについてどういう考え方を持っておられますか。私ども現地調査に入った中では、大都市の中心部だけにそういうものをつくってもらっても困る、やはりそれぞれの地域適応したところにそういうものを設置すべきでないか、こういう意見なんかもあったわけでありますが、その辺のところもあわせてお尋ねをしておきたいと思います。
  119. 伊藤庄平

    ○伊藤説明員 最初の二点につきまして私の方からお答え申し上げたいと思います。  最初の地域雇用開発等促進法の目的規定に関連してのお尋ねでございますが、先生御指摘になりましたように、この地域雇用開発等促進法は地域雇用開発につきましての体系を新たに整備しようということで考えておるわけでございますが、その第一の柱がこの「地域雇用開発のための措置」で、こういうことが目的の中でもうたわれております。具体的には、私ども政府におきまして地域雇用開発のための指針を定め、これとタイアップした形で都道府県が具体的な雇用開発の計画をつくる、それを受けて関係の市町村、また関係の労使団体と一体となりまして具体的な雇用開発の方向を固めていくというソフト面の体系を整備しておりますけれども、同時にそれにあわせまして、私ども地域雇用開発のための助成金制度を手厚くつくっていこう、これをバックアップ材料として、そういうソフト面の体系整備とあわせて雇用開発を進めていく。同時に地域に対しましては、福祉施設の整備とかあるいは職業訓練施設の整備のための融資制度等も設けまして、雇い入れやすいような環境整備もあわせて図っていくということでございまして、それらが総合的に、また地元との積極的な話し合いが進む中でひとつ効果を上げていきたいというふうに思っております。  それから「失業の予防」の点でございますが、これにつきましては、これから指定いたします雇用機会の不足している地域、さらに産業構造の変化等によりまして多数の離職者が出てくるようなおそれのある地域につきましては、御指摘のありました雇用調整助成金制度業種のいかんにかかわらず適用いたしまして、これを一時的には休業とかあるいは他の職種あるいは他のところへ転換していくための教育訓練あるいは出向等につきましても、特に三十万人の雇用開発プログラムの中で今年度から助成率を非常に手厚いものにしておりますので、それらを使いまして、できるだけ離職者となってあらわれてこないように雇用を維持していく。それで、先ほど申し上げました地域雇用開発のための措置と相まって失業をできるだけ食いとめたいということでそれらの措置を行っておるわけでございます。  それからもう一点でございますが、求人開拓等に奔走しております第一線の公共職業安定所の体制整備でございますが、先生御指摘のとおりでございまして、非常に厳しい雇用失業情勢に対処していくため、何とか公共職業安定所の体制を一層強化していきたいというのが私どもの念願でもございます。六十二年度におきましては、特に不況地域に、専門に地域雇用開発を担当する専門官を新たに増員の形で設けました。これらを不況地域の公共職業安定所等に配置いたしまして積極的な取り組みをやっていきたいと思っております。また、そのほか各種の職業指導、職業相談に応じます専門官等も増員しておりますので、それらの配置に当たりましては、その辺の事情、不況地域の実情を十分勘案しながらやっていきたいと思っておりますし、また、今後とも増員は、環境が非常に厳しい情勢でございますが、安定所の置かれました状況を関係方面にも十分認識していただきまして、引き続き必要な体制の整備が図られるように努力していきたいというふうに考えております。
  120. 杉山弘

    ○杉山政府委員 事業転換計画の承認につきましての労使の話し合いについてのお尋ねがございました。  先ほど水田委員の御質問に対してお答えをいたしましたように、私どもといたしましては、事業適応計画等につきましては、特定事業者が労働組合等と十分な話し合いを行ったかどうか、またその計画の内容が労働者に対し十分な配慮を行っているかどうかということにつきましては、承認に当たりまして十分確認をした上で承認するというつもりにいたしております。また、そういう趣旨でございますので、計画を作成する段階におきましても労使間の十分な話し合いが行われるように、通産省としても事業者を指導していきたい、こういう気持ちでおります。  したがいまして、お尋ねのようなケースで労使間の話し合いがつかない限りというのは、実質的に十分な話し合いが行われているかどうか、実質的に十分な配慮が行われているかどうかという実質の判断ということにさせていただきたいと思っておりまして、単に形式的に話し合いをやっているというだけで十分な話し合いが行われていないということになりますれば承認はできないということになりますし、十分な話し合いはしているけれどもなかなか話がつかないという場合には、つかない限り承認ができないのかというと必ずしもそうでもないのかな、形式的な問題ではなくて実質的な判断でやってまいりたい、かように考えているところでございます。
  121. 奥野一雄

    ○奥野(一)委員 もう時間がありませんので、お答えの方もひとつ簡単にしていただきたいと思うのですが、一つは四条の「特定設備」、非鉄金属の場合には鉱山と製錬所があるわけでありますけれども、これは両方特定設備というようなことで入るかどうか。  それから公取の方にちょっとお伺いしたいのは、現在の産構法の中では私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の適用除外があります。これは十一条です。それから十二条では、主務大臣がやろうとする場合には事前に公正取引委員会の同意を得なければならない、こうなっているわけなんですが、新しい法律の中では同意ということではなくて「必要があると認めるときは、その申請書の写しを公正取引委員会に送付する」、こうなっているのですが、実際に中身としては変わってないということになるのでしょうか。扱いとしてはどういうことになるのか。ちょっと時間がありませんので私の方からの説明も簡単にさせていただきましたけれども、この二点だけ簡潔にお答えをいただきたいと思います。
  122. 杉山弘

    ○杉山政府委員 鉱業と製錬業について特定事業者になり得るかどうかという御質問がございました。  第四条の第一項におきまして「「特定事業者」とは、鉱業又は製造業に属する事業者であって、特定設備をその事業の用に供するもの」ということになっておりますので、山及び製錬所はこの事業者の定義の中には十分入りますが、具体的に特定設備として指定できるかどうかということになりますが、これは四条の二項に書いてあります要件に該当するかどうかということで決まりますので、この点につきましては実態を早急に詰めた上で判断をいたしたいと思っております。
  123. 土原陽美

    ○土原説明員 公正取引委員会の方から答えるのが適当かどうかわかりませんが、現在の特定産業構造改善臨時措置法いわゆる産構法には公取と関係する部分が二つございまして、一つは今先生御指摘の、設備処理のための適用除外のカルテルを実施することで、そのカルテルを実施するときに公取の同意が必要だという規定がございます。もう一つは、事業提携を行うときに、これは独占禁止法に抵触しない形で実施するものですけれども、これについて主務省と公正取引委員会の間で意見交換するいわゆる調整スキームが定められております。  これに対しまして、本法案におきましては最初の適用除外カルテルの規定はございません。もう一つ事業提携についての公取との関係というのは産構法と同じように加えられております。
  124. 奥野一雄

    ○奥野(一)委員 終わります。
  125. 佐藤信二

    佐藤委員長 薮仲義彦君。
  126. 薮仲義彦

    薮仲委員 私は、ただいま提案されております産業構造転換円滑化臨時措置法案審議に関連しまして、何点か大臣並びに関係の方々に質問させていただきます。  まず大臣と認識を一致しておきたいことがあるわけでございますけれども大臣がこの法案をお出しになる前段階で、通産省は二十一世紀に向かっての世界経済の創造的成長への貢献を目指すということで検討を続けていらっしゃいました。「二十一世紀産業社会の基本構想」の中でポイントを幾つか挙げられて、その中で産業構造の転換、これからの国際社会の中で日本の国が果たさなければならない課題として従来の産業構造を変えていこうということで壮大な、壮大というか雄大な構想のもとに日本が二十一世紀に向かってすばらしい国づくり、ある意味では産業社会、ある意味では人間を優先する社会をつくろうということで始まったわけでございますが、その中で二十一世紀に向けての産業社会の課題と政策運営の基本的態度というところで、一つは国際協調と国際貢献、二つは創造性の発展による産業活力の保持、三番目に新しい生活文化の創造、この三つを骨子として始まっていることだと思うのでございます。具体的な施策の方向の第一点に産業構造転換ということで、この法案の前には中小企業、そして今回は一定規模以上の大企業の転換ということになっているわけでございますが、この中で言われていること、ポイントだけちょっと確認をさせていただきたいと思うのです。  それでは、産業構造の転換能力の低下を踏まえて雇用のミスマッチ等を指摘しながら、経済基盤の脆弱な中小企業についてはより一層強力な政策補完が必要である。政策提言の中で一番最初に出てきているのは、中小企業を大事にしていこうということがまずうたわれているわけでございます。それから、高齢化社会に対する雇用のミスマッチ、この問題が今後重要な課題である。さらには、このような多面的な政策を整合的、一体的に進めていくためには何が必要かというと、情報というものがこれから非常に必要になってくるというような点も指摘されております等々、この中で重要な課題が幾つかったわれておるわけでございますが、この法案の、二十一世紀に向かって課題として挙げた中で、いわゆる中小企業の問題あるいは雇用のミスマッチの問題等々を踏まえながら、大臣に何点か質問をさせていただくと同時に、大臣と認識を一致しておきたい課題があるわけでございます。  それは今最初に指摘しました中小企業の問題でございますけれども中小企業というものが日本経済社会の中で相当大きな役割を占めておる。中小企業白書を見るまでもなく、事業所数では約九割あるいは従業員数では八割が中小企業の中で頑張っていらっしゃるわけでございます。そうしますと、この壮大な産業構造の転換という中で、大企業の中でいろいろな役割を果たしておる中小企業の立場について私たちは大臣と認識を最初に一致しておいて、中小企業に対してはさきの法案、今度の法案もございますけれども、これが一番大事な点じゃないかなと思うことがございますので、私は指摘をさせていただきたいと思います。  これは手元の資料といっても、大臣所掌の資料の中から私は質問した方がいいと思いまして、白書の中から読み上げてみます。これは白書の五十ページのところでございます。  「中小企業は、一貫して我が国経済において大きなウエイトを占めてきた。昭和三十二年から五十六年にかけての非一次産業計の中小事業所の従業者シェアの推移をみると、一貫して八割」これは先ほど指摘したとおりであります。「一方、我が国経済は、単に経済規模を拡大させてきただけでなく、高度成長期の重化学工業化や石油危機以降の知識集約化等、経済環境の変化に応じて産業構造を変化させることにより、経済発展を続けてきた。第二次大戦以降今日までの我が国産業構造の変化をみると、産業別には、第一次産業のウエイトが一貫して低下している一方、近年においては第三次産業のウエイトの高まりが見られる。また、第二次産業内においては、繊維・繊維製品を中心として軽工業品のウエイトが長期的に低下し、重工業素材型業種のウエイトも近年低下傾向となっている一方、電気機械を中心として重工業加工型業種のウエイトが高まってきており、」こうなっておるわけでございます。  これは、経企庁をここで呼んではおりませんけれども大臣も御承知のように、日本産業構造は、過去の第一次産業が主流を占めておった時代から、第三次産業が主流であるということでございますけれども、ちなみにこれは認識を一致させるために数字だけ申し上げますと、一九五〇年代は日本の第一次産業は全産業の二六%でした。それが六〇年代で一四・九。将来の八〇年代にどうなるのか、わずかに二・六%になるだろう。急激に減少します。第三次産業は五〇年代で四二%のものが、一九八〇年代は六割近くに伸びを示すであろう。これがここで指摘されているわけでございますが、やはり産業構造が大きく第三次産業へ移行してきている。  これは時代の推移の中で見逃せない重要なことでございまして、この中で何を私が言いたいかというと、「このようななかで、中小企業は、経済環境の変化に積極的に対応することにより、我が国産業構造の重要な一翼を担い続けるとともに、我が国経済産業構造を変化させる上で、大きな役割を果たしてきた。」いわゆる産業構造転換の中で中小企業が非常に重要な役割を果たしてきたという指摘でございますが、私はこの点がこれからの産業構造転換の中あるいは施策の中で非常に重要だなという認識で、改めてここで述べさせていただいたわけでございます。  さらに中小企業の特性について書いてございます。「我が国経済が世界に類を見ない高度成長を続けるなかで、一貫して中小企業我が国経済の大宗を占め続けた」「先進諸国に比べ層の厚い中小企業層を持つ我が国経済が、先進諸国のなかでも総じて良好なパフォーマンスを示し続けた」、この点も後ほど私が大臣質問したい点の一つなんでございますけれども日本の国が先進諸国の中でも活力を持って産業が前進し続けたその中には、やはり中小企業が非常に重要である。こういう点、御記憶にとどめておいていただきたいと思います。  それから「中小企業は、製造業において、大企業とともに下請分業構造を形成することにより、我が国産業の基盤を支えている」、これは今度の転換法に最も影響することでございまして、大企業が転換したときに、それに付随する数多くの関連企業というものも同じような転換を迫られなければならない。日本の花形である自動車といっても、大臣御承知のように、そこにはもうすそ野の広い、幾千幾万という企業体で一企業が支えられているわけでございますから、大企業といっても、大事なのはやはりその支えている中小企業のところを私たちは見逃せない。特にその次に、「中小企業は、我が国雇用創出においてもきわめて大きな役割を果たしている」、ここがまた大事な点だと思います。産業転換で役に立ち、雇用創出で中小企業が大変大きな役割を果たしている。  この認識をちょっと数字を挙げて大臣と一致させておきたいのでございますが、中小企業庁の方からいただいた資料でございますので中小企業庁、ちょっと御答弁を、数字だけで結構です。総務庁の事業所統計をお持ちになって私に御説明いただきました。規模別従業者数の推移ということで、四十七年から五十六年、製造業、卸売業、小売業、この三つで結構でございますから、中小企業、大企業の増減の数字だけちょっとここで言っていただけませんか。
  127. 広海正光

    ○広海政府委員 お答え申し上げます。  四十七年から五十六年にかけまして、製造業では合計で四十三万五千人従業者数が減ったわけでございますけれども、その中で中小企業は三十四万三千人ふえた、大企業は七十七万八千人減ったということになっております。  それから卸売業でございますけれども、この間に六十万五千人ふえております。その中で中小企業は六十八万五千人ふえまして、大企業は八万人減ったということになっております。  それから小売業でございますけれども、この間に二百五十五万五千人全体でふえておりますが、その中で中小企業は二百二十三万七千人ふえております。また大企業もこの場合には三十一万八千人ふえております。
  128. 薮仲義彦

    薮仲委員 大臣、今数字を読み上げていただいたわけでございますけれども、これは五年ごとにとっておりますので、直近の資料はこれから出てくるわけでございますが、四十七年−五十六年、この五年間の推移を見て、製造業において中小企業が三十四万三千人雇用を増大させた。ところが逆に大企業は七十七万八千人雇用が減衰した。卸売業においても中小企業は六十八万五千人ふやしていただいたのに、大企業では八万入減ってしまった。このように、各事業形態の中で中小企業雇用を一生懸命守っている。小売業においては、今ここに挙げましたように二百二十三万七千人もふえている。ところが大企業は三十万の増であります。  こういうことを見ますと、中小企業産業において、雇用の面あるいは事業転換の面で果たしている大きな役割は大変重大なものがある。このたびの産業構造の転換という壮大な事業の中で、私は大臣にまずお考えをお聞きしたいのは、やはり日本産業が二十一世紀に向かって本当に住みよい社会をつくるために、こういう中小企業を守りながら大企業事業転換を図っていっていただきたい。この点、大臣のお考えをまずお聞きしたいのであります。
  129. 田村元

    田村国務大臣 まさにおっしゃるとおりでありまして、私の答弁も御質問とイコールということにお答えしてもいいかと思います。  御参考までに申し上げますと、中小企業というものが事業所数におきまして全体の六百二十七万カ所に対して六百二十三万、大企業がわずか四万であります。その占める比率は九九・四%。特にその中で小規模、いわゆる中小企業というより零細企業と言っていいのでしょうが、小規模事業所が七九・二%でございますから、もうほとんど、約八割が小規模。それから従業員数で大企業が八百五十一万人に対して中小企業は三千七百二十一万人でございますから八一・四%、そのうち小規模が三二・九%でございます。  今薮仲委員がお読みになりました中小企業白書の一節、私も繰り返し読んでおるところであります。ちょうど五十一ページから五十二ページにかけてそれが書いてあると思いますが、そういう数字を考えますときにも、日本産業というものはだれが支えておるか、これはまさに中小企業が支えておる。しかも、この円高不況等のあおりをだれが一番食らっておるか、これもまた中小企業である。中小企業の約三分の二は多かれ少なかれ下請をやっております。特に製造部門において中小企業が非常にひどい目に遣わされておるというように考えますときに、一層心を引き締めて、中小企業対策こそ商工政策の根幹であるという考え方で進みたいと思っております。
  130. 薮仲義彦

    薮仲委員 大臣のその御決意を伺って、私もなお一層心強くしたところであるわけでございます。  その一致をもとにして、これから先は大臣と非常に意見の違う話をしなければならないので残念でございますけれども、今大臣の認識されたように、私は、日本の国の通商産業政策というものが、自由主義経済という大きな基盤の中で経済原則、いわゆる競争原理を導入なさっている。今のような好ましい、すそ野の広い、中小、零細に至るまで守り育ててきたのが今日までの通産省の政策だったと私は思うのです。その中で幾つもの企業創設され、あるいは栄え、あるいは衰滅していった企業もございますけれども、その生々流転の中にダイナミックな活力を生み出してどんな困難も乗り越えてきた、大臣の御指摘のとおりだと思うのです。  そこで、先ほど私はわざわざ失礼に当たるようなことで第三次産業のことまで申し上げました。第三次産業といいますと流通、サービスです。ああいうものがこれからの二十一世紀の主流になっていく。いわゆる物を耕す、つくるというものから、ああいう流通、サービスが日本経済の主流になってまいりますと、この産業社会というものは通産省の政策の中で非常に重要な部分であり、また大事に守り育てていかなければならないと思います。  私が何をここで言いたいかと申しますと、今回問題になっております売上税というものがあるわけです。私は、売上税を転嫁すればどうとか税率がどうだとか、そういうことを問題にはしたくないのです。今日まで営々と日本の自由主義経済の中でこれだけの産業基盤を築いてきた産業構造というものが、いわゆる産業政策以外の税制というところでどういう影響が出てくるのか、私はきょうこの点を大臣にしかとお伺いしたいと思っておるわけでございます。売上税が税率云々であるとかどうのこうのということは抜きにして、今日本産業社会を支えている第三次産業に、サービス業に、流通業にどういう影響が出てくるのか。大臣の、売上税を入れてもいい、間違いないという確かな手ごたえのある御返事がいただけるのかどうか。  私は、この法案審議に当たって所掌の皆様方からいろいろとレクを受ける機会がございました。しかし、私はその中で自分で納得できる御答弁をいただいたようには思いませんでした。ですから、きょうこのように質問させていただくわけでございます。  私はなぜこういうことを申し上げるか。先般うちの矢野委員長が訪米いたしました。そして、いろいろな要人と会い、レーガンがなぜ入れなかったか、これは大臣御承知でございますから避けて通らせていただきますが、ECの教訓がそこで指摘されました。その中で三つの主な点がございまして、いわゆるイギリス病と言われるような不況がどうしても発生する、二番目に流通段階において中小あるいは零細企業の数がどんどん減少してくる、三番目に失業がどうしても増大をしてきた、こういうことが言われておるわけでございます。  今大臣も白書を指摘なさいましたけれども、白書でもこのことは同じような形で指摘をしているわけでございます。今大臣がおっしゃった白書の五十二ベージ、その続きをちょっと読んでみますと、「中小企業の積極的意義を評価する見方は、近年欧米先進諸国でも強まっている。産業の硬直化、活力の低下とそれに伴う高失業率等のいわゆる先進国病に早くから悩まされたイギリスで、一九七一年に、中小企業経済社会における役割の重要性を指摘した「ボルトン報告書」がまとめられたのをはじめ、最近でも、一九八五年五月のボンサミット宣言において、中小企業育成の重要性が強調された。」このボルトン報告書は、「ボルトン氏を委員長とする中小企業諮問委員会が、一九七一年にイギリス通商産業大臣あてに提出した報告書。イギリスの中小企業は長期的な衰退傾向にあり、そのことがイギリス経済の硬直化を促す懸念があることを指摘し、中小企業に配慮した制度改革を行う必要があるとの勧告を行った。」とあります。  これはここで中小企業白書が指摘するまでもなく、大臣が先刻御承知のように、中小企業が少なくなるということは経済に活力がなくなってくる、そしてそこには失業もふえてくる、イギリス病と言われるものが出てくることを非常に懸念しなければならない。きょうここで売上税が産業構造に与える影響について、これは最後に大臣に伺いますけれども、担当の局長がどういうお考えなのか、具体的にお伺いしたいわけでございます。  まず、流通段階において垂直統合が起きないかどうか、この点が第一点。特に取引上物をつくって売る。理論的に同じ物を用意ドンで例えば十円の原料で始まって売ります。ここからスタートして売るまで付加価値によって課税されるのですか。付加価値によって課税されるということは、流通段階をショートカットすることが同じ品物であれば競争力が強くなってくる。A社とB社で用意ドンで競争する。私も経営者なら、つくった物を庭先で売ろう、極論すれば、そこのA店からB店までの距離を最短距離にして付加価値が介入しないようにやろう、これが最も競争力を強める。ということは、流通段階を好むと好まざるにかかわらず、競争しなければならないときに、これは整理統廃合が起きてこないかどうか。  また、こうなってまいりますと、直販化あるいは大規模化、あるいは今度私が例えば物をつくる、仕入れの段階であったらどういうことをやるか。私が建設業者であれば、建材を入れようとするときに建材業者から入れようとするかもしれない。でも、この建物を競争に勝つためにどうするか。そうなったら、私はメーカーからストレートで入れます。鉄骨から木材、あらゆるものを製造元からストレートに持ってくる以外に競争に勝てないとなったら、今までの好ましい商慣習、ストックを滞留するためにある流通段階はちょっとおいて、この商売だけは何とかということになってくると、どうしても私は仕入れの段階でも、済みませんがあなたとのお取引を考えさせていただきたい、あるいはまた私が経理の担当の者であれば、やはり経理面から系列化を図っていかないと帳票の整理がやりにくいということも出てくると思う。  また、私の地元は、私は選挙区が違いますけれども、浜松というところがございます。あそこはいわゆるアパレル産業のメッカです。いわゆる座元というのがあります。例えば今大臣が座元へ行ってお会いになる。座元ははるかに先の製品をつくっております。アパレル業者は来年はどうなるか、再来年はどうなるか、フランスヘ行きあるいは世界の国々を回って流行を追って、ニーズをつかまえて国民に提供しようと思って来年のことをやっています。そのときに、今はある程度の見積もりができます。でも、その見積もりは、繊維なんというのは十何段階ある。デザイン一つ、捺染一つ、染色一つ、すぐれた技術を持っているかもしれない。しかし、その人がもしも非課税業者であるとか、ややこしいことを言ってきたらば、どうしても我々が物をつくるときに、これは大臣も先刻御承知のように、これを幾らでつくれますかということが、まず値段ありきから始まって、どういう材料でどうやってつくろうかということは、私も営業マンとして八年いましたので、これを幾らでつくってくださいとお得意さんに言われると、後ろを振り返って、材料から売るまでの間を考えてコストを決めていきます。まして、一年先の商品のコストを決めようというときに、アパレル業者が非課税だ何だかんだということが出てくると、果たして今までの本当に好ましい、よりよいものをより安く国民の皆様に提供しようという活力が、何となく物を動かせば金がかかるのだ、これが、先ほど白書の中でも指摘しているように、いわゆる活力を減衰させてしまうのではないか。  そういう意味で、仕入れの段階あるいは販売の段階あるいは見積もりの段階、流通の段階、あらゆる段階において、大臣が最も好ましい形で育ててきた産業社会を、この税制、売上税というものがだあっと入ってくることによって産業政策とは別の形をつくらないか。それが果たして二十一世紀のこれからの厳しい国際社会の中で生き残れる唯一最善の方法と大臣は断言なさるかどうか。  私は税制がどうのという大蔵の立場ではございません。商工の立場です。通産大臣、この税制が日本の流通、第三次産業に与える影響について悲鳴を上げている方々がいるわけです。それを何か変なふうに見ないで、本当の立場でこれを見ていくと、私は通産省としての答え、本当に大丈夫なのかどうか、この辺をしかとお伺いしたいわけでございますが、いかがでございますか。
  131. 杉山弘

    ○杉山政府委員 ただいま、売上税が導入された場合に、流通機構等で複雑多層的な取引がある場合に、その都度売上税が課されるということになって、できるだけ簡略化、短絡化されるのではないか、そういう観点から流通機構に対して大きな影響があるのではないか、こういう趣旨の御質問があったというふうに承知をいたしておりますが、私から申し上げるまでもなく、今回の売上税と申しますのは、先生がおっしゃいましたように、各段階での付加価値に応じて課税をされるということでございますから、税の累積というものが存在するという仕組みにはなってはおらないわけでございます。現在でも流通機構につきましては、日本の流通機構は複雑多岐であるという批判がございまして、同一の商品でも流通過程が変わっているという場合が間々ございますが、そうした場合でも、最終的には小売価格というものはほぼ同一のレベルになっているのではないかと思います。ということは、言葉をかえますと、流通過程の段階の多寡にかかわらず、その過程での付加価値の額というものがほぼ等しいのではないかというふうに考えられます。したがって、そういうことで考えますと、より複雑な流通過程を持っている場合には各段階でのマージンの率が少ないということになろうかと思うわけでございますし、より簡素化された流通過程の場合には個々の過程におけるマージンの率が大きいということになっております。  そういうことを前提にいたしまして付加価値税が導入された場合の影響を考えますと、各段階で納められる売上税の総計というものは、流通過程の多少にかかわらずやはり同一になるのではないか。そういう意味におきましては、売上税というものは流通機構に対して中立的に働いてくれるものと考えられます。  ただ問題は、売上税が取引の過程を通じて取引の相手方によって負担をされるかどうか、いわば転嫁が可能かどうかということが、今申し上げましたことについての基本的なかぎを握ることになろうかと思います。したがいまして、この転嫁の問題につきましては、私ども政府といたしましても、この税が導入されました場合には、できるだけ取引の相手方に受容をしていただくようにPRその他指導等の措置に努めますとともに、また、その過程において例えば独禁法との問題等が生じました場合には、そういった点についての措置を講ずることによりまして転嫁をより容易にするという措置もあわせて講じていきたい、かように考えているところでございます。
  132. 薮仲義彦

    薮仲委員 失礼ですけれども局長さん、自分で商売やってごらんなさい。あなたは営業マンの経験がないからそんなことを言う。私は少なくとも営業マンの経験が八年間ある。原料を買って品物をつくって納入して、納期が間に合う、間に合わないというせっぱ詰まった八年間を私は過ごしてきた。そんな悠長なことを言っていられない。用意ドンで、例えばこのコップを競争するのです。競争すれば、値段は同じ、そんなことはありませんよ。値段なんか全部違いますよ。このコップの値段は、例えば百円で売ろうと思えば百円で売れるし、五円で売ろうと思えば五円で売れるのが商売というものだ。あなた、例えばソニーの盛田さんのを読んでごらんなさい。骨とう屋に行って、あんなつぼだれが見たって欲しくないけれども、欲しい人はとんでもない金額を出してもあの骨とうのつぼが欲しくる。それが商売のうまみなんです。そして要らないものは幾らあったって買わないのです。  何を言いたいかというと、このコップだって、十八段階経たのと三段階経たのと付加価値が全然違うのですよ。例えばこれとこれが十円でスタートして、こっちが十八段階過ぎて、こっちが三段階あるいは一段階、値段は全く違いますよ。このことを言っているのですよ。転嫁される、されないの問題ではないのです。転嫁は一〇〇%したとしても、三段階と十八段階でどちらが高いか、これがわからなくてはだめですよ。同じ十円の物が十八段階過ぎて消費者の手に渡ったときに幾らになるか。その利益がゼロでも流通の運送コストはかかるのですよ。それを考えて、十円の物が十八段階で幾ら、三段階で幾ら、庭先で売ったら幾ら、そのことを言っているのです。転嫁される、されないの問題じゃなくて、流通の中間段階がどうなるか、私はそれを心配しているのです。  今資料をお見せします。委員長、これをちょっと大臣にお見せしたい。大臣、きょうは時間がないからこの結論は要求しませんけれども、先般我が党の矢野委員長が訪米のときにこういう問題があったという指摘をきょうはしておきたいと思うのです。  まずその前に、これは大臣もお読みになっていると思いますけれども、三月二十一日の日経で、桜井修信託協会の会長のこういう発言があるのです。「桜井氏は付加価値税を導入した欧州の例をあげ、「どこの国も古い流通機構が急速に簡素化、大規模店舗に集約される状況発生している。このため、税収が上がらないので税率を上げ、そのたびに簡素化がさらに進み、かなりの失業が出るという悪循環になっている」」。これはそこの資料には載っておりません、申しわけございませんが。これは桜井さんという信託協会の会長の、ECにおいて売上税を導入したときに店舗が大規模化されているという指摘なんです。  そこで、今大臣にお渡しした資料の三番を見てください。資料の三番、四番です。  フランスが売上税を導入したのが一九六八年です。その前の一九六六年に、いわゆる流通段階の中小小売企業でございますが、合計を申し上げますと五十九万五千七十五の店舗があったのです。それが一九六八年に導入されてどうなったか。一九七二年の資料をごらんになればわかるとおり三十一万一千百四、この間に二十八万三千九百七十一店舗が減っているわけです。四七%もカットされた。これはいわゆる流通革命が起きたという表現になっています。しかし、流通革命の原因は何だったのか。  また、フランスだけではありません。西ドイツがあります。西ドイツが導入したのが一九六八年です。その前の一九六八年から一九七六年のやはり業種別の数がここに出ております。一九六八年は合計が四十五万九百一二十一、それが一九七六年には三十四万四千七百五十二。ここで十万六千百七十九も数が減っているわけです。二三・五%も減です。  西ドイツだけではありません。イギリスです。イギリスが導入したのが一九七三年。その二年前の一九七一年は四十六万九千百七十三です。それが導入した後のデータ、一九七六年は何と三十八万五千六百十八、マイナス八万三千五百五十五、一八%の減です。特にイギリスには、同じようなデータでほかの角度からとったのがございます。大臣、その真ん中の第一表というのを見てください。「イギリスの業種別小売業事業所数」、これを見てみますと、一九五〇年、一九六一年、一九六六年、この三年は大体五十万台で推移しております。ところが、先ほどのとおり一九七三年に導入されました。このことによって一九七一年の四十七万二千九百九十一から一九七八年に三十五万三十八。イギリスは角度を変えてとっているわけでございますが、これでも十二万二千九百五十三の流通革命が進んでいるわけです。集約化されているわけです。  イギリスだけではありません。その下にスウェーデンがあります。スウェーデンは導入されたのが一九六九年です。この六年前の一九六三年の数は七万一千六百四十二。一九七〇年、導入後は四万九千六十。二万二千五百八十二の減少です。三一%の減です。  きょう私はここで大臣とこれを論議するつもりはないわけでございますけれども大臣、このようにEC諸国において導入した途端に数が減っていることは実態として明らかです。確かに言われ方は流通革命という表現で出ていることは私は承知しております。しかし、このように流通革命を起こさなければならなかった要因の中に、この売上税が指摘されなければならない。先ほどの桜井修氏のおっしゃったことについて、私はこの方にお会いしたわけじゃない。この方のデータは持ち合わせておりません。しかし、私の手元にあるこの資料によれば、明らかに流通形態が大規模店舗化していることは確かです。日本のように大店法がないからとかいろいろな論議はあるかもしれません。それはそれとして、やはりこの売上税というものが各国において導入された途端に顕著にこれだけ変わってきています。この数字はやはり現実の確かなものとして、私は冷厳に見ていただきたい。  そしてこのことが日本の大事な産業構造を狂わさないかどうか。私は国民の一人として、納税のこともわかっております。でも、もっと大事な国民経済、国民生活、この売上税が産業の構造をこのように集約化したことによって、先ほど私がなぜあの白書を読んだか。中小企業の数が減るということは雇用をどれほど不安にするかわからない。あるいは産業構造の転換のときに、中小企業は何回も倒れては立ち上がっていくのです。私の周りにも多くの経営者がいます。でも、みんな歯を食いしばって、倒れてもまた立ち上がって、この自分の事業を支えています。それを思うと、中小企業のこのダイナミックさ、あるいは活力、この日本経済を支えている、国民生活を守っているというこの産業構造、今も通商産業省の施策の中で育ってきたものが売上税という形によって破壊されることがないのか、私はそれが本当に心配なんです。賛成する反対するの以前にこういうことをきちんとして、我々に大丈夫だと確かな手ごたえがあるならば、私はなるほど大丈夫だなと思うかもしれません。しかし、先ほどの局長のお話は納得するに足りません。十円のものが十八段階と、庭先で売ったのと、だれが考えたって距離が短い方が付加価値が少ないのです。これは当たり前の論議であって、後ろから来る仕入れも流通も同じなんです。だから私は、今あのような御答弁があったけれども、それはあなたのある意味では机上の空論であり、いわゆる官僚の一人として言えない立場かもしれない。しかし私は大臣にお願いしておきたい。こういうことが日本の国に起きたら取り返しがつかない。税制改正というのは、国民全部がそれは痛みを分かち合って日本の将来のために納めましょう、これはだれしも思っていることなんです。しかし、我々は通産の委員として言うならば、こういう活力を失うようなことにはさせてはならない、こう私は思うのです。  そういう意味で、こういう点での本当の調査をなさって、確かに大丈夫だ、通産省があらゆる角度から検討しても、シミュレーションを行っても大丈夫だというならば、私は多くの国民は納得すると思うのです。もう一度私はこの点について、その角度から産業構造がどういうことになるか検討した上で、大臣にこの売上税については結論を出していただきたい、これをお願いしたいのでございますが、いかがでございますか。
  133. 田村元

    田村国務大臣 大変貴重なデータ、貴重な御意見を確かに承りました。私ども、実は通産省という役所は、売上税を、つまり税を徴収するということを推進する立場にある役所ではありません。むしろその税に対してどういうふうに産業界が対応するか、その対応ぶりを十分に把握し、そしてその個々の声を肌で感じて徴収側に物申すという性格を持った役所でございます。もちろん売上税に対する御批判は、当然御批判なさるわけでございますけれども、我々はその御批判は御批判として、法人税の減税、所得税の減税というものにも大きな魅力を感じました。でございますから、問題は価値観の問題であろうと思います。  確かに定義どおりに物を申せば、売上税というものによって幾らかの不況感が出ることは否めない事実である。しかし法人税、所得税の減税ということがほぼイコールで出てくるならば、それはますます景況感において中立的な姿になるであろう、こういう判断をしてまいりました。やはり法人税、所得税の減税ということに対する魅力というものは、産政局長が非常に強く感じておるということ、あるいは中小企業庁長官が感じておるということは当然だと思います。しかしそれはそれとして、私は通産大臣であると同時に、おっしゃるとおり国務大臣でございます。と同時に国会議員でもございますから、今貴重なデータを拝見し、また貴重な御意見を拝聴いたしたということで、しかと承りましたということで、それ以上のコメントをするわけにも立場上まいりません。まいりませんが、確かに貴重な御意見として承りましたということを申し上げてお答えにいたしたいと思います。
  134. 薮仲義彦

    薮仲委員 それではこの問題は大臣お答えで納得をいたしておきます。大臣も合いみじくもおっしゃられたように、一人の政治家として、与党、野党、という問題ではなくして、賛成、反対ということではないと私は思います。この売上税が、本当に通産省が懸命に築いてきた、あるいは国民の英知を集めて努力してきた日本産業構造にどういう影響を及ぼすのか、この点だけはしかと通産省の立場から見きわめていただいて、いわゆる大蔵省の言う税の転嫁であるとかそういうことの手続ではなく、これが産業政策上是とできるか非とできるか、その点について十分御論議をいただきたい。私はこのことをお願いをいたしておきます。もっとしたいのですが、時間が来ましたので、ほかの問題に移らしていただきます。  大臣のところに資料が行っていると思うのですが、今の三番、四番の前に一番、二番が行っているかもしれません。大変ポンチ絵みたいな絵で恐縮なんですが、資料の二は通産省の方からいただいた資料でございます。その二をもとにしてつくったのが上の資料の一でございまして、これは私のところでつくりましたからごらんいただきたいと思うのですが、これは何を言いたいかといいますと、為替レートの急激な百四十円台突入ということに対して、大臣も心を痛めていらっしゃると思うのです。私は、この日米の貿易摩擦というものが、為替レートを論じても黒字は減らないんじゃないか、物事の本質をきちんとしないで、為替レートを変えれば貿易黒字が転換される、あるいは改善されるということはある意味では錯覚に等しいのじゃないか、こういうことをきょうは指摘したいと思うのでございます。  そこでポンチ絵をかかしていただいたのでございますが、現在の日米間の貿易の状態がどうなっているか。ポンチ絵にございますように、まずドル建てでございます。ここには為替レートを二百円、百五十円、百円と円高ヘシフトした絵がかいてあるわけでございます。大臣、この前提もちょっと御了解いただきたいのですが、この前提では、通産省の通関統計を私もいただきました。  日本の輸出の上位の十品目、これは自動車、ビデオテープレコーダーあるいはICの素子、こういうものが一番の主力の輸出の上位の商品でございます。これは極めて競争力が強い。いわゆるICであるとかビデオはアメリカにおいて、例えばICなどはここに資料をいただきましたけれども、DRAMで言えば、二百五十六キロビットのDRAMはシェアで八〇%から九〇%、一メガビットになってまいりますと何と九〇%が日本のシェアを持っています。ICの問題が起きるのもむべなるかなと思うのでございますが、またVTRにしましても日本は圧倒的に競争力が強い、これは確かだと思うのです。しかし自動車については二百三十万台という自主規制枠がはまっております。このポンチ絵の前提は何かといいますと、自動車については一定量の輸出である、そしてビデオであるとかICにしても、全く向こうが批判できないほどストレートに入っていく商品であることを前提にしております。  その前提を踏まえて、ちょっとこれを説明させていただきます。  簡単にするために、自動車が一台一ドルといたしましょう。為替レートが一ドル二百円レートであっても、ドル建てですから間違いなくアメリカ企業に一ドル入ります。そのときは、一ドルで売ったものが一ドルで買われたのですから、アメリカの貿易収支はプラス・マイナス・ゼロと出ております。  仮に為替レートを百五十円に円高にシフトします。ドルベースですから、一ドルで自動車を売っていきますと、円高にシフトしても一ドルは一ドルのままアメリカ企業には入っていきます。ところが、日本企業は一ドルで百五十円しか入りませんから、これはたまらないということで、これを五十円値上げするのが二番目の段階で出ております。日本企業は、赤字ではかなわないから百五十円を二百円に値上げします。二百円にしますと、今度は為替レートが換算率が変わってきます。一ドル百五十円ですから、車の実体は今までと何も変わらないのに、レートが変わっただけで一・三三ドルと値上がりになります。そうするとアメリカは一・三三ドルで自動車を買う。アメリカ企業は損したなと思うわけです。それで、このときにどうなってくるかというと、一・三三ドル日本へ払っておりますから、貿易収支はマイナスで、貿易赤字が〇・三三出る。  三段階目は、仮にさらに百円にシフトしたとしますと、ドルベースで一ドルで売っているときには一ドルで入りますから、これは関係ありません。日本企業は一ドルでは百円しか手元に入りませんから、たまらないから百円値上げします。そうすると二百円になります。ドル換算が一ドル百円ですから、二百円は、アメリカに行くときは二ドルになります。アメリカ企業は一ドル高い品物を買うわけです。通関のところは二ドル払っておりますから、マイナス一ドルという数字が出てまいります。  大臣、難しいことは聞きませんから、いいですか、これは何を言いたいかといいますと、例えばこれが自動車だとしますと、二百円のときも百五十円のときも百円のときも日本は同じ自動車を売っているのです。同じ値段で売っているのです。同じ自動車を売っているのですけれども円高にシフトしてくると、同じ自動車が同じ数量だけ向こうへ行っても、通関手続の数字は全く同じだ。ところが、貿易収支だけは黒字で残ってくる。だから、貿易収支が黒字だというけれども、これは数字のトリックだ。日本の自動車が一台こっちへ移っただけで、レートが変わっただけで——もともと自動車を二百万なら二百万という値段で円建てでやれば、これはもっと圧縮されるのです。そうすると複雑になりますので、きょうはやめます。  国内で二百万のものを仮に一ドルとして、どの円レートのときも同じように売っているのです。ところが、円がシフトされただけで貿易収支は黒字に出てくる。日本企業はその都度赤字に泣かされているのです。貿易収支は確かに黒字ですけれども、では売っている輸出業者はどうなのかというと、値段を下げて売るか、あるいは自動車のように競争力があってもう少し上乗せできれば、これは自動車ですからみんな値上げしていますが、現実は値上げができないので手取りが減って泣いているのです。  ですから、私は何を申し上げたいかというと、円高にシフトすれば貿易黒字が減るということは誤りです。なぜかならば、通産からいただいたこの日米の通関の資料を見てみても、主力な製品というのはほぼ一定量、アメリカが必要ですといってどんどん行ってしまう。ですから、これは為替レートに問題があるのではない。もっとはっきり日本の国も物を言わなければならない。これでいきますと、レートを円高にシフトすればするほど貿易黒字は逆にふえていきます、日本アメリカの間は。それをいかにもG5だ、G7だといってやっておりますけれども、本質はそこにあるんじゃない。レートを高くすればするほど数字的には、ここに表が示すとおり、通関の黒字は上がってくるわけです。日本黒字はふえてアメリカの赤字はふえる。  しかもこれは、一番下の表を見てください。仮に円レートを、最初の二百円をぼんと四百円に上げちゃった、こうなると、レートだけぽんと変えて同じ自動車が行っただけでどうなるかといいますと、一ドルで日本企業は四百円、企業はほくほくです。じゃ大変だからこれを二百円に値下げしましょうといって、二百円自動車を値下げしても二百円です。二百円で安く売りますよというと、これが為替レートを通っていきますと何と〇・五ドルになる。今まで一ドルだった自動車が〇・五ドルで買えますからアメリカ企業もにっこり、〇・五ドルもうかった。通関でも同じように〇・五の黒字が残るのです。  このように、今のは為替レートのトリックみたいなものである。それで、同じ自動車が行っているだけなんですけれども、いかにも為替レートが円高にシフトすれば貿易黒字が減るという、それはどなたが言っているのか知らないけれども、まあそのことは確かに日本全体の貿易を抑制しますから、これは非常に国内景気にとってマイナスなんですけれども、今日本の主力となっている自動車とかビデオとかICとか、これがある限りこの黒字は全く減らない。ですから、円高にシフトすれば変わるだろうなんというそのおまじないみたいなことはやめて、もっとはっきり物を言わなければならない。  何をはっきり言わなければならないかと言えば、通産省の統計も大蔵省の統計も私はもらいました。じゃ日米の主要品目の中で何が一体輸出として強いのだろう、弱いのだろう。この数字を見てみますと、ある意味ではがっかりするわけでございますけれどもアメリカから輸入を拡大しなさい、こう言われるわけです。最近の主要輸入品目を大蔵省からもらいました。アメリカからどういうものが入ってくるのだろう。この中に十品目ぐらい挙がっております。ちょっと読んでみます。トウモロコシ、大豆、小麦、木材、石炭、航空機、こういうところですよ。これは幾ら貿易を拡大しろといっても、一定限度以上入ってきません。これがアメリカからの輸入の主要品目です。幾ら為替レートをどうのこうのといって、じゃトウモロコシを今の倍食えるか、小麦を倍食えるか、あるいは石炭を倍使えといっても使える相談じゃない。もう限界があるような品物もあるわけです。     〔委員長退席、与謝野委員長代理着席〕  そうなってきますと、こういうことは我々ですから言えるわけでございますけれども、この原因の大方はアメリカ国内の経済運営、あるいは日本の国が買えるように国際競争力のあるものをつくらなければ、日米の貿易のインバランスは円高に幾らシフトしたって何にも変わらない。そして、わずか三億ドルぐらいのICの素子がどうのこうの。金額でいったらわずか三億ドルです。それを袋たたきに遭わせるようなやり方は、決して正しい経済運営のあり方じゃないと私は思うのです。そういう意味で、輸入をしなさいと言うのだったら、輸入できるような努力をし、アメリカは大国としてもっと国際競争力のある品物をつくらなければならない。  また日本としては何が必要かと言えば、大臣もきょうも委員会で何回もおっしゃっていますが、内需の拡大です。私も全く同感でございます。このことも後でお伺いしたいのです。それと同時に、いわゆる差益の適正な還元ということも、内需の拡大の上では非常に大事なことだと私は思うのですね。そうしますと、単なる円レートを円高にシフトするということだけではなくて、やはりもっとアメリカに対して物を言い、日本の国内でも、単なる円高にすればどうのこうのという神話のごときものはやめていただいて、本気になってこの貿易摩擦を解消するとなったら、単に円レートをやったところで全く変わらない。そうではなくて、輸入できる品物をまずやるということ、国内においては差益を適正に還元することを考える。  内需の拡大と言いますけれども、私はこの内需の拡大についても、もう時間が来たようですから大臣にいきなりお伺いしたいわけでございますが、大臣が、まだ予算が通っていないから予算を通してくれ、こうおっしゃると思うのですね。私は、あの程度の予算ではいかがかなという感じを持っております。通産省も、大臣のもとでGNPの一%はやらないとだめだなという暴言もなされておるようでございます。やはり今日本が本当に内需拡大をして、国内産業を助けなければなりません、輸出できないのですから。内需の拡大というと言葉は何かあなた任せみたいな話ですけれども、内需の拡大というのは何かというと、国内の中小企業、国内の産業を守るために、つくったものが国内で消費できないと国内経済はぶっ壊れてしまう。豊かな国民生活が保障できません。外の話とは違って、私は今本気になって国がこの内需拡大に——財政再建もそれは大事です。でも、私は民間を見ておって思いました。会社が倒産すると債務は棚上げです。そして何とか会社を生き残らせようとします。国も今は、もうここまで来るとやらなければならないのは、財政再建はちょっとおいておいても、通産大臣として内需の拡大、景気の回復、国民生活を守らなければならない。腹を据えて取り組まないと日本の国がおかしくなる。  しかも私は、予算を通したい。でも、あそこに売上税が入っていると、私は商工の委員としてさっきの答弁では納得できない。本当に納得できれば私だって、ここにいる野党の先生だってみんなそうだなと思うかもしれない。納得できないものがあるから反対する。下手に言っているのではないのです。理路整然と言っているのです。だから、私たちも予算は確かに通したい、でもあれば考えなければならない。また、財政再建はどこかにおいておいても大臣に本当に国民生活、産業を守っていただきたい、こういうことを思っております。  もっといろいろなことを言いたかったのですが、大臣、今の為替レートの問題等含めまして、日本の国をよくするのはやはり通産大臣、通産大臣が本当に腹を据えて国をよくするように施策を講じていただかなければだめだと思うのです。そういう意味で最後に御答弁をいただいて、残念ながらこれで終わります。
  135. 田村元

    田村国務大臣 まず、アメリカ日本に対して競争力を強めて、アメリカからいえば輸出、日本からいえば輸入、そういう品物のアイデア、ノーハウあるいは品質というものをどんどんと向上せしめるべきではないか、私は全く同感でございます。  それから、今ここで「貿易動向(ドル建て)」という資料をちょうだいしました。これはおっしゃる意味もよくわかるのでありますけれども、いわゆるJカーブ効果というものでありまして、確かに一時的にドル建ての金額はふえます。そして数量は減ります。けれども企業がこれに対応して合理化をし、あるいは、例えばアメリカならアメリカへ進出をしてそこで向こうの部品をどんどん使ってというような、それがいいとか悪いとかという意味ではありませんが、そういう努力をしていくことによってJカーブ効果は必ずある時期に峠を迎えると思うのです。その場合に、数量に見合った金額にだんだんと整合性を持っていくであろう、このように思いますから、その意味では、これは一つの典型的な形として御提示いただいたのでしょうが、これほど極端なことはあるまいという感じが実はいたします。  それから内需の拡大、もうおっしゃるとおりでございます。私は今円高という現象も、また円高に対する対応も、すべて内需ということに直接リンクしていくというふうに思っております。ですから、先ほど来申し上げておりますように、本来ならば予算が成立した時点で、そのときの経済状況を見て総合経済対策は立てられるべきでありましょうけれども、百五十円を突破したような今日の異常な姿を見ますと、これは野党、与党を問わず各位の御理解を得て、また恐らく御賛同願えると思いますが、予算審議に並行して総合経済対策はどんどんと進めていっていいのじゃなかろうか、緊急避難じゃなかろうか。そしてその枠は一店大きなものにし、その中身はうんと濃いものにする。通産省で試算いたしましたGNPの一%という数字は、少なくともGNPの一%以上はやはり考えなければならぬのではないかということでございまして、事務方はやや遠慮したようですが、私は、一%ないし一・五%といえば三兆五千から五兆ということになるのでしょうが、その数字のよしあしはともかくとして、思い切った内需拡大策をとるべきである、このように思います。  財政再建につきましては、ここは何といっても委員会の公式の場でございますし、速記の残ることでございますから、私が絵理大臣にも大蔵大臣にも企画庁長官にも相談もしないで勝手な発言をするわけにもまいりますまい。いずれお茶を飲みながらいろいろとお話し申し上げたいと思います。
  136. 薮仲義彦

    薮仲委員 どうもありがとうございました。終わります。
  137. 与謝野馨

    ○与謝野委員長代理 青山丘君。
  138. 青山丘

    ○青山委員 内需拡大の話が今出ておりましたが、これから予算の問題もあるのでしょうけれども、よほど思い切って内需拡大をしていかないと大変な事態になるのではないか。特に今の我が国経済というのは、一昨年のあの急激な、しかも大幅な円高のために、製造業は本当に深刻な不況に直面しております。そういう中、先月でしたか、G5、G7合意のおかげで一定の期間円は安定しておりましたが、おとといからきのうにかけてまた再び円高への動きが出てきております。そういう状況の中で輸出産業というのは塗炭の苦しみを味わっておりますし、輸入品と競合する産業も同じようなことであります。また、そういう産業に大きく依存してきた地域社会というのは、これもまた同じように、今非常に深刻な状況にあります。     〔与謝野委員長代理退席、委員長着席〕  そういう中で、雇用情勢は、先ほど来お話がありましたように本年に入って三%を超えてきた、今後さらに失業者はふえてくるであろう。通産省の試算でも、昭和六十五年には失業率四%を超える。失業者数二百五十万人。こうした非常に見通しの暗い状況の中で我が国産業を支え発展させていく。よほど性根を据えていかなければいけない時期であります。しかも、今お話がありましたように、内需の拡大というのは国内でどうしても克服していかなければいけない問題であると同時に国際的にも公約をしてきた内容でもありますから、これが空手形になっていけば当然日本は国際的にもさらに孤立化していく、こういう厳しい状況であろうと思います。  こうした状況の中で、内需拡大の足を引っ張ろうとするような売上税を導入する。売上税の内容を調べてみましたら輸入品には課税される、ところが輸出品には課税されない。こういうことになりますと、今の日本が国際的にも最も求められている輸入に制限を与えブレーキをかけ、むしろ逆に輸出を暴発させるというような、そして内需の足を引っ張るというような売上税を導入しよう、そういう神経が私は全く理解できない。何を根拠に内需拡大と売上税が結びついてくるのか、どこに脈絡があるのか全く信じられない思いでいっぱいです。  そういう中で予算案を早く審議してくれ、こういうことですが、今も出ておりましたように、今回の予算程度で景気刺激効果がどれぐらいあるのかということは私は大変悲観的に見ています。昭和六十一年度でも当初四%経済成長を見込んでおりました。しかし、昨年暮れは三%へと下方修正されて、そして最近ではこの三%すらとても望み得べくもないというような状況の中で、六十二年度三・五%の経済成長は実際可能なのかどうか。これは努力目標であってはいけない、世界の国が非常に注目して見ています。そういう意味では、減税もやっていく、あるいは思い切った積極的な財政運営を図っていくというような大きな転換をしていかなければいけないのではないかということを考えております。  時間がありませんから、まず冒頭大臣に内需拡大の決意というものをもう一度聞かしていただいて、今の段階で私が発言してはと今おっしゃいましたけれども大臣としては何を考えておられるのかということをぜひひとつ明確にお答えいただきたい。同時に、三・五%という経済成長の見通しに対する決意を聞かしていただきたいと思います。
  139. 田村元

    田村国務大臣 確かにおっしゃるとおり、今のままで行けば三%達成、なかなか厳しい状況にあることは事実でございます。それだけに内需の拡大ということの切実さを感じるわけでありますが、ただ、予算案を早く通していただきたいという趣旨は、単に政府の閣僚として予算案を早く通していただきたいというだけではないのであります。  それは、今あの程度の予算でどうするか、通してみてもどうするかということですけれども、あの程度がごの程度かということを私から言うわけにはまいりませんが、あくまでも仮におっしゃるとおりであるとしても、早く通していただくことは、通していただかないよりはいいということになるわけです。そしてすっきりした姿のときに思い切った総合経済対策ということが打ち出せるわけです。五十日の暫定予算といいますけれども、本来ならもう考えてみればぼつぼつ予算の成立が間近になってきたころですから、予算が素直に通っておってくれたならばもうどんどんと総合経済対策が打ち出せたはずです。でございますから、もう相当、ある程度大っぴらに作業も始まったと思うのです。それを考えますとまことに残念という気持ちでございまして、どうか今からでもまだ遅くはありません、早く通していただきたい。ただ、ここは予算委員会じゃありませんから、余りそっちの方へ物を申すのもどうかと思います。  それから、売上税を輸入品にかけるのは一体どうじゃというお話でございました。これは後で官僚からお聞きを願いたいが、諸外国も皆そういうふうにしておるようでございます。
  140. 青山丘

    ○青山委員 大臣、御見解いかがでしょうかね。売上税が導入されれば内需拡大の足を引っ張ることになるし、輸入品にブレーキをかけることになって輸出の暴発を招くのではないかと私は心配しております。そのあたりはいかがでしょうか。
  141. 杉山弘

    ○杉山政府委員 売上税が導入されますと、結局消費者に転嫁が予定されておりますので、転嫁が行われますと物価上昇ということになりまして、それだけをとりますと、確かにおっしゃるように内需拡大にはマイナスという点は否定できないと思います。  ただ、税制改正全体としてごらんいただきますと、ほかに法人税の問題、所得税の減税といったような問題もございますし、総額としてはレベニュー・ニュートラルというようなことにもなっておりますので、全体としては、おっしゃるような意味で内需拡大の足を引っ張っているという方向ではないんではなかろうかと思われます。  それから輸出入の問題についての売上税の問題、今大臣からお答えをしたようなことでございますが、輸入品は課税をされますが、国内産品につきましても同様に、課税がされるという意味では、輸入品だけを特に差別しているということにはならないんではなかろうかと思っておりますので、その意味で、導入がされました場合にも、輸入品を特に差別して国産品を優遇しているということには相ならぬと思うわけでございます。
  142. 青山丘

    ○青山委員 私は別に輸入品を特に制限しておるというふうには言っておりません。輸入にブレーキがかかるということを言っておるのです。それから輸出にはむしろドライブがかかる、税金がかりませんから。そういう形になってきますと、今日本が世界の国から要請されている最も重要な内需拡大、そしてまたできるだけ輸出を抑え込んでいくというような動きとむしろ逆行する方向にあると私は思う。その辺はいかがでしょう。  それからもう一点。大臣は内需拡大にひそかに決意しておってくださると私は期待しております。内需拡大に具体的にどんなことをしようと考えておられるのか、ひとつぜひ明らかにしてもらいたいと思います。
  143. 田村元

    田村国務大臣 実はきょう私は初めて申し上げた、特にどの閣僚もまだ言っていない表現を使いました。これは相当勇気の要る表現であります。と申しますのは、大体我々が使っております答弁の言葉、表現というのは、予算成立の時点における経済状況を勘案して可及的速やかに総合経済対策を講じましょう、こういうことを言っておるわけであります。それを私はあえて、一部から批判を受けるかもしれないことを覚悟して、といいますのは、産業界、とりわけ中小企業はもうもちませんから、私はあえて覚悟して、さりとはいえどもこのまま予算が成立するまで待っておるわけにいくまい、緊急避難的な行為としてこれと並行して総合経済対策を立てていっていいんじゃないか、検討していっていいんじゃないか、しかもそれは相当大きな枠で中身の濃い、そういうものが好ましいと思う、そのために私は大いに発言をしていきたいと思うし行動もしていきたいと思っております、こういうことを申し上げたわけであります。その一語に尽きておると思います。道路がどうの産業基盤がどうのといって一々具体的なことを申し上げるまでもないと思います。私の答弁としてはそれで尽きておるんじゃなかろうかと思います。
  144. 青山丘

    ○青山委員 ことしの一月に大臣は、日本産業をよく考えてみると百七十円プラス・マイナス十円ぐらいが妥当ではないか、率直に申し上げて私もそんなところかなという印象を強く受けました。百五十円台で、きょうあたりはまた切っておるのかもしれませんが、百四十円台に入っていって太刀打ちできる産業が一体幾つぐらい日本にあるのか。百七十円よりも安くないととてもやっていけないという産業がほとんどであろうと思います。そういう中で今のこの動きを大臣としてはどう思われますか。ちょうど半年ほど前に、もう少し安かったころに私はお尋ねしたのですが、大臣の立場として為替の適正なレートを申し上げるのはどうかと思うなんていうことをおっしゃいました。しかし、ことしの一月に明確に言っておられます。そういう立場から見てどう思われますか。また、大臣の立場で、日本産業を育て守っていくという立場からはどうすべきだと考えておられますか。
  145. 田村元

    田村国務大臣 我が国経済産業の実態から見た円レートというものがどの程度が適正水準か、これは業種、業態によって異なると思います。一概に言えるものではないと思います。私が百七十円プラス・マイナス十円と申しましたのは、日米の経済ファンダメンタルズの状況、とりわけインフレ率から見た購買力平価、これの試算などを参考としながら、我が国経済産業の実態から判断してぎりぎりのやむを得ないレベルではないかと考えたからであります。私は、率直に言って百七十円プラス・マイナス十円という数字は今もって間違ったことを言ったと思っておりません。今でも正しいと思っております。  そこで、今の為替レートはそういう考え方の私から見て異常だとしか言いようがありません。これではもう日本産業はもたないという感じでございます。そこで、じゃどの程度が好ましいのか。それは百七十円プラス・マイナス十円が一番好ましいのでありますが、とにもかくにも当面、先般のG7というんですかG6で為替レートを当面の水準の周辺に安定させるという合意をしましたが、この当面の水準の周辺というものが百七十円プラス・マイナス十円にうまくひっかかってくれるところまで戻ってもらいたいものだ、とりあえずは。そして、それは百八十円はもっといいでしょう、百九十円はもっといいでしょうけれども、せめて百七十円プラス・マイナス十円のどこかのところへとにかく潜り込んでくれて、この姿で安定をしてほしいな、そのための努力をしたい、こういうことでございます。
  146. 青山丘

    ○青山委員 やはり基本的には、為替は、たとえどの水準であろうとも安定をしてくれることがまず非常に重要だと思います。成約を進めていくときにも一定の見通しが立てられないととても応じてくれないというようなことですから、百五十三円ででも安定をしていたときに、私はこれはこれで評価ができるというふうに理解しておりました。ただあのときに一言だけ、適正と言えるのかなと不安を持ったんですが、ファンダメンタルズを適正に反映した水準であるというようなG5、G7合意であったように思うのですが、私はとても適正ではない、やはり二十円から三十円ぐらいはどうしても高いというふうに見ています。そのあたりはどうでしょうか。
  147. 田村元

    田村国務大臣 当面の水準の周辺という非常に幅の広い、言うなればアバウトな表現をしてありますから、その意味ではその周辺のどの辺がというところが問題になるのであって、まさか百五十円台という、百円台の後半のところで周辺というのが二、三円ということは考えられない。もっと幅のあるものだと思うのですね。周辺というアバウトな表現を使ったということは、これは幅のあるものだと思うのです。ですからその意味では、G6の合意というものは、これ以上の円高はもう大丈夫だ、ないよという安心感を与えてくれた点では私は評価したのです。ところがいかんせんそれを突き破ってしまったということで今青くなって対応を練っております。本当は、きょう陣頭指揮で為替問題と取り組みたいところでございましたが、先ほどから立ったり座ったりしておりますのは電話で指示を与えておるわけですけれども、そういうことでこれから大いになお頑張らなければならないということを考えております。
  148. 青山丘

    ○青山委員 幸いにして、あの合意を踏まえてアメリカもイギリスもきのうは支えに入ってくれたようです。日本政府としては、ぜひしっかりとこの合意を守ってくれるように努力していただきたいと思います。  本法律案についてお尋ねをいたしたいと思います。  今回の円滑化法、と申していいのかどうかわかりませんが、この法律案においては対象業種を特定しておりません。対象業種を特定しておらない理由というのをどういうふうに理解しておられるのか。もしこれが、また対象業種を特定すれば諸外国から批判の的になるというような配慮であったとすれば、その必要はないのではないか、この程度ならむしろOECDは積極的に支援をしてくれるのではないかと思っています。どうでしょうか。
  149. 杉山弘

    ○杉山政府委員 この法案の概要につきましては、最近の急速な円高進展、定着を背景にして国内で急速に産業調整が進んでいる、各事業者の自主的な判断によって設備の廃棄、縮小等が行われている、むしろそれに伴う雇用問題、地域問題等を解決してこれを円滑に行わせたい、こういう趣旨でございます。したがいまして、すべての事柄は設備処理、廃棄というところからスター小をいたすわけでございます。  先生念頭に置いておられるのは、最近の立法例で申しますと特定産業構造改善臨時措置法のようなものではなかろうかと思うわけでございますが、あの場合には、全体として各業種ごとにどれだけの構造改善をやったらいいかという目標をつくりまして、その目標達成のために例えば必要な場合には指示カルテル等もやらせるというようなことで進んできておりますけれども、むしろ最近の情勢にかんがみますと、そういった業種全体についての包括的な目標を設定してそれに向かって対応していくというようなことは特に必要がなく、むしろ業者の自主的判断、市場原理というものに任せておいてもかなりうまくいく可能性がある、むしろそういう個別事業者の判断というものを尊重して事を処理していきたい、したがいましてその対象としての設備の特定というところから始めれば物事がうまくいくんではないか、こういう判断で、業種指定によらず設備指定という方法を選んだわけでございます。
  150. 青山丘

    ○青山委員 ちょっと見方が違うのですけれども、構造不況に陥った基礎素材産業については、過去に特安法、産構法、これらで設備凍結、設備制限を実施してきました。そのことによって一定の成果を上げてきたと私は評価しています。ただ長期の設備制限をやってきましたので、NICSあたりの新しい設備に比べて設備力で格差をつけられてきておる。したがって、競争力においても格差がついてきておるというようなことがありまして、反省材料もいささかあると私は思いますが、今回の場合、こうした構造不況の産業であって、片一方では過剰な設備ということで廃棄をしていく、しかし競争力を回復していくためには新しい設備をどうしても進めていかなければいけない。そういうような場合、企業それぞれの自助努力の判断に任せていくのかどうか、この辺はいかがでしょうか。
  151. 杉山弘

    ○杉山政府委員 お尋ねのようなケースが鉄鋼その他でも既に見られておるのではないかというふうに判断をするわけでございます。そのため鉄鋼業等におきましては、新鋭設備生産を集約するという方向を選んでおります。ただ、業種によりましては、これまでの設備投資が十分でなかったために、NICSに対抗できるような新鋭設備が十分入っていないというケースももちろん想定されないわけではございませんので、そういう場合につきまして、古い設備処理をするけれども新しい設備を入れたいという場合には、もちろんそれを否定するものではございません。  ただ、本法の適用対象になりますのはあくまでも設備処理の部面だけでございまして、設備投資に相当する分につきましては本法とは全く無縁のものでございますので、これは助成なしに事業者リスクですべておやりをいただくことになるかと思います。ただ、これは自主的にスクラップ・アンド・ビルドというような範囲のものであればよろしいわけでございますが、仮に指定された設備であった場合に、事業者設備処理をするときに新しい設備を入れるということで全体としての設備処理がうまくいかないというような場合が出てまいりますと、この設備の新設という問題についてはかなり慎重に取り扱っていただかなければいけない部面もあるのではないかというふうに考えております。
  152. 青山丘

    ○青山委員 過去に、設備処理をしていくその認定を受けて処理を進めてきた、制限も進めてきた、ところが社会経済情勢が変わってきて早く解除してもらいたいというようなときもありました。そういう不安が今産業界の中に少しあるのですね。今回の法改正でその辺はいかがでしょうか。
  153. 杉山弘

    ○杉山政府委員 これにつきましては、あるいは特定設備の指定をいつ必要に応じて解除することがあるかどうかというような話になるのかと思うわけでございますけれども法律の存続期限は一応九年ということにいたしておりますが、特定設備としての設備の過剰性、ある程度の期間、例えば三年とか五年とかという期間にわたって過剰であるかどうか、将来のそういった期間にわたって過剰かどうかということを一つの判断のメルクマールにしたいと思っているわけでございます。したがいまして、そういった判断の基準になりました期間が過ぎまして問題が解消したという場合には、一たん指定したからといっていつまでも指定を続けるわけではございませんで、その段階で特定施設設備の指定を解除するということも当然考えていくことになるというふうに思っております。
  154. 青山丘

    ○青山委員 その解除の問題と、似たような産業で、企業の内容によっては必ずしもみんな過剰設備になっているとは限りませんから、従来の設備を使って技術革新されたものを進めていく、こういうようなことになってきますと、一律にすべてこれが認定されるものではありませんから、その辺は企業それぞれの判断に任せていくということでよろしいですね。その点が一点。  時間がありませんから、ちょっと先へ進ませてください。  それから、過剰設備特定設備については省令で定めることとなっておりますが、省令は今回何を根拠にして認定していこうと考えておられますか。つまり、過剰な設備というのは企業産業によってみんな違ってくるわけで、これは国内だけではなくて幅広い国際的な需給動向というものを中期的にも長期的にもきちっとビジョンを持った上での対応なら、非常に信頼できる形で産業企業も安心して過剰な設備の廃棄という形で事業転換ができると私は思うのです。そういう背景を持っての上なのかどうか、いかがでしょうか。
  155. 杉山弘

    ○杉山政府委員 第一点の御質問につきましては、先ほども私御答弁申し上げましたように、国の一方的な判断で目標を立てるというものではなくて、市場メカニズムに基づいた事業者の自主的な判断を尊重するということになるわけでございますから、同じ設備を持っておられる方であっても、処理の計画をお出しになる方もあればお出しにならない方があるということも当然であろうと思いまして、そこについてはすべて同一でなければならないというものではないと考えております。  それから、第二点の特定設備の指定の基準でございますが、これは法律の四条の二項におきまして、まず三つの要件を規定いたしておりまして、需要が減少していること、それからその設備生産能力が全体として現時点で過剰であること、ただし、そのほかに三番目といたしましてその状態が長期にわたって継続することが見込まれるという時間的な要素、この三つを基準にいたしております。したがいまして、この三つの要素は、日本国内だけではなくて、こういう国際化の時代でございますから、御指摘のような国際的な需給状態を当然頭に置いて判断することになると思われます。
  156. 青山丘

    ○青山委員 そのビジョンをぜひ明らかにしていただきたい。まだそんなに固まってはいないと思うのですね。  それから最後の質問ですが、特定地域経済の安定並びに発展及び雇用の安定を図るために、特定地域における第三セクタープロジェクト事業、工場の新規立地等に対して支援措置を講ずるということで、出資もする、利子補給もする、債務保証もしましょう。現実に第三セクターなるものはどのような構想を持っておられるのでしょうか。既にその構想はありますか、いかがでしょうか。
  157. 佐藤信二

    佐藤委員長 簡潔にお願いします。
  158. 杉山弘

    ○杉山政府委員 地域振興のための第三セクターにおきましては、各地でさまざまなものが計画されているというふうに承知をいたしております。
  159. 青山丘

    ○青山委員 どのくらいですか。
  160. 杉山弘

    ○杉山政府委員 件数については、私ども今掌握しているだけでも十件は超えると思われます。さらに、現在いろいろ計画を練っておられるところもございます。したがいまして、将来にわたりましては、我々の希望としましては、特定地域につきましては少なくとも一件はぜひそれぞれ考えていただきたい。一地域につきまして一件は少なくとも具体的なものが出てきて、この法律対象になるようになっていただきたいという希望を持っておりますし、これから各地域といろいろ相談をしてやっていきたいと思っております。
  161. 青山丘

    ○青山委員 もう少し具体的な内容を聞きたかったのですが、時間がありません。私はまだいろいろな問題で大臣のお考えをただしていきたいという点がたくさんありますから、後日また所信に対する質疑あるいは一般質問でもやっていきたいと思います。  産業調整は雇用調整という苦い、血を流しながらの転換でございますから、そうした産業雇用を守るという立場で十分に行き届いた取り組みをぜひしていただきたい、この希望を申し添えて、質問を終わります。
  162. 佐藤信二

  163. 藤原ひろ子

    ○藤原(ひ)委員 本法案の目的は、前川リポートの提言に基づきまして特定事業者対策特定地域対策を講ずることにより、我が国産業構造の転換の円滑化を図ろうとするものでございます。  そこでお尋ねをいたします。法案の第四条で、特定事業者特定設備について定義をしておりますが、この特定設備とはどんな要件を備えた設備を指すのか、またどんな設備があるのか、具体的にこの二点についてお聞かせください。
  164. 杉山弘

    ○杉山政府委員 特定設備の指定の要件と具体的な設備対象についての御質問がございました。  要件につきましては、御案内のように法案の四条二項におきまして三つの要件を規定いたしてあります。一つが、その設備を用いて生産される物品に対する需要が著しく減少しているということ、そういう理由のため、二番目の要件としては、設備生産能力が需要に対して著しく過剰になっているという要件、それとともに三番目には、その生産能力の過剰になっている状態が長期にわたって継続することが見込まれる、こういう要件が法律の中に規定をされております。この要件に従いまして、我々としてはこれから法律の施行に備えて各業種、業態の実態を踏まえて対象設備を選定していくわけでございます。  例えば需要の減少につきましては、最近一年間で生産量が一定程度以上減少しているというようなことで判断をしてまいったらいかがかと考えております。また、生産能力が著しく過剰かどうかということにつきましては、その設備の稼働率が適正稼働率を一定率以上下回っているというような指標で判断をしてはいかがかというふうに考えております。また、長期にわたって継続するといいますのも、この法案では法律自体が九年という状況になっておりますので、むしろ三年ないし五年程度の期間内において能力の過剰状態が継続する見込みがあるかどうかということを判断してまいりたいと思っております。  したがいまして、こういうことでこれから具体的な特定設備の選定に入るわけでございますが、例えば現時点でその候補として私どもは非鉄金属の製錬設備でございますとか化学繊維の紡糸設備といったようなものを頭に置いているところでございます。いずれにいたしましても、法律の施行まで早急の間に、この指定設備につきましては実態判断をして範囲を確定してまいりたい、かように考えております。
  165. 藤原ひろ子

    ○藤原(ひ)委員 長々と御説明いただきましたが、減少しているのは五%以上、過剰となっているというのは五%から一〇%以上、継続するというのは三年から五年ということをお答えいただきたかったわけですが、そのとおりでいいわけですね。  それから、特定設備としても具体的にいただきたいと言ったわけですから、それを簡単にきちんと、長時間とらないでおっしゃってください。
  166. 杉山弘

    ○杉山政府委員 具体的な判断の数字につきましては、今先生から御指摘のありましたようなことを私ども念頭に置いております。
  167. 藤原ひろ子

    ○藤原(ひ)委員 そうしますと、例えば特定設備であります高炉とか転炉とか圧建設備、これを事業の用に供する特定事業者ということになりますと、新日鉄とか日本鋼管あるいは住友金属ということになるわけですね。  私はここで高炉、転炉、圧延設備の過剰がどうして生まれたかということを、経過をちょっと振り返ってみたいと思うのです。  それは、一九七〇年五月一日でした。当時の佐藤内閣が決定をいたしました新経済社会発展計画では、一九七五年の粗鋼生産目標、これを一億五千万トンといたしました。一九七三年の二月十三日田中角榮内閣が決定をいたしました経済社会基本計画では、一九七七年の粗鋼生産を一億六千万トンとしました。このときの通産大臣は今の中曽根首相であったわけです。さらに、一九七三年十月に第一次石油危機が発生をしまして約一年後ですが、一九七四年九月十三日、産業構造審議会が中曽根通産大臣に答申をした産業構造の長期ビジョン、これによりますと、一九八五年の粗鋼生産見通しを一億七千三百万トンから一億七千八百万トンとしたわけですね。こうした政府経済計画や産構審のビジョンに沿いまして、第一次石油危機以降も炉内の容積は四千立米から五千立米の大型の高炉が次々と建設をされていったわけです。その数は大手五社で八基に上っているわけですね。これに伴いまして転炉、圧延設備ども次々と増強をされてくるわけですね。こういう経過に間違いがないというふうに思うのですけれども、御確認をお願いしたい。  それからまた、粗鋼生産能力ですね。これは一九七四年に既に一億五千万トンに達していたというふうに思うのですけれども、それもあわせて御確認を、そのとおりなのか違うのかという点でお答えいただきたいと思います。
  168. 田村元

    田村国務大臣 御指摘の各種の計画及びビジョンにつきましては、それぞれの策定時点における経済動向等を踏まえた粗鋼生産見通しが示されているということでございます。これはあくまでも各企業の経営判断に基づいて設備投資がなされたものでございます。今おっしゃいました新経済社会発展計画、昭和四十五年五月一日の発表ですが、これが五十年度で一億五千万トン程度と予想、計画で想定される成長率等を前提に産業連関モデルを中心に試算、試みに算術をした。それから四十八年の経済社会基本計画、これも五十二年に一億四千万トンから一億四千五百万トンと予想、産業連関モデル等により試算。それから昭和四十九年の「わが国産業構造の方向」、これも六十年度で一億七千三百万トンから一億七千八百万トンと予想、鉄鋼の国内需要及び輸出にかかわる積み上げ計算により試算ということでございまして、これはあくまでも見通してございます。  これは恐らくどこの国でも見通しを立てておるでございましょう。そして、それが当たることもあれば外れることもございましょう。これは自由経済の国であっても、あるいは社会主義国家でありましても、それぞれに長期計画という一つの長期の見通しを立てて、あるいは社会主義国家においては長期の計画を立てて、それが当たるときもあれば外れることもあるということでございますが、日本の場合においてはあくまでもそういう試算をしたということで、見通しを示したということでありまして、そういうふうにしなさいといって業界を指導したわけではございません。
  169. 藤原ひろ子

    ○藤原(ひ)委員 大臣の、試算であるということはわかりました。  そういった中で、先ほど特定設備の要件として挙げられました「内外経済的事情の著しい変化により、」云々ということにありますように、今日の鉄鋼業の過剰設備というのは、きのうきょうというようなことでつくられたものではない。今も大臣がおっしゃるように、あくまで見通しであって、試算であって、当たるも八卦当たらぬも八卦、こういうことだおっしゃったわけであるのですけれどもね。言いたいのは、きのうきょうの事情によりましてこういう過剰なものができましたということではないということなんですね。  特に第一次石油危機の発生によりまして、世界的に鉄鋼の供給能力過剰ということはだれの目から見ても明らかになった。その後においても過大な見通し、試算であるのか、とにかく見通しですね、次々と大型高炉建設を推進をしてこられました。これに対する、こういう見通しを立てられた政府と、そういうもとで実行してきた鉄鋼メーカーの責任というのは非常に重大だというふうに思うわけです。現在の粗鋼生産能力も約一億五千万トンですし、生産の方もこの十年来年産一億トン前後でずっと推移しているのですね。ですから、ずっと三割前後の設備過剰で推移しておりますよということを言っているわけです。  そこで重大なのは、第二章第五条など事業適応計画、ここの部分ですね。法案では、特定事業者特定設備処理目標、廃棄、休止などの処理内容、実施時期、事業転換対策など関係子会社も含めて事業適応計画をつくって大臣承認を得て計画を実行する、こういう枠組みになっているわけです。  今鉄鋼大手の高炉休止、大量人減らし計画、これが発表されているわけですね。関連下請を含めますと十万人を超えるというような人減らしがやられているわけです。こういう計画で企業城下町という状態は日本じゅう本当に大変な衝撃を与えております。これらの人減らし計画、合理化計画、これは高炉であるとか転炉であるとか圧延設備の休止、こういうものと裏腹の関係、一体の関係なんですね。そうしますと、この法案は、過剰設備をつくった政府や大企業の責任を棚上げにして、今度は大臣承認設備の休廃止等を実行するということになるわけです。そういうことは、つまり国のお墨つきによって企業が人減らしを実行するということにつながらざるを得ない、こういうふうに思うのですね。ですから、見通しであれ、実際の計画を通産省で示したのであれ、どちらにせよそういうことにならないでしょうか。大臣いかがでしょう。
  170. 田村元

    田村国務大臣 藤原先生、政府が過去において公式に示してきた見通しというものに対して少し偏見がおありじゃないでしょうか。当たるも八卦当たらぬも八卦で、八卦のようなことで決めたわけじゃないので、あらゆる試算に基づいてやった。それが途中でいろいろなアクシデントがあって今日こういう体制になったということでございますから、その点はどうぞひとつお含みおきを願いたいと思います。  この鉄鋼生産設備の投資というのは、あくまでも各企業の経営判断に基づいてなされてきたのでございます。でございますから、それは企業に責任がないというわけではありませんでしょうけれども、しかしこういう円高という考えられなかった事態に追い込まれたわけでございますから、その点ではやはりいろいろとお考え願いたいと思うのです。私どもとしては、関係省庁と連携を図り、合理化に伴う雇用あるいは地域経済に与える影響を極力緩和すべく努力してまいる所存でございます。  ただ、私ども申しますことにもいろいろと矛盾の生ずることもございます。と申しますのは、ここまで苦しい鉄鋼業者に高い国内炭を買えと私は迫ったのです。これもまた矛盾した行動だったかもしれませんが、野党の皆さん方からもそうしろと言って僕はお勧めいただいたものですから、野党といって全部じゃありませんけれども、高い国内炭を鉄鋼業界に売り込みに行ったわけです。随分嫌がりましたけれども、高いものを無理に買わせた。これはもちろん鉄鋼業界の業況全体に及ぼした影響とは言えませんが、それにしても金額がある程度大きかっただけに、済まぬことをしたと思っておりますけれども、だからといってこれからもまた買ってもらわなきゃいかぬのでございまして、八卦を引いてやったというわけではございませんので、その点をどうぞ御理解願いたいと思います。
  171. 藤原ひろ子

    ○藤原(ひ)委員 一生懸命やっていただいていることはよくわかります。そのように理解をいたしておりますが、心配をして言っておりますのは何かといいますと、特安法のときでも産構法のときでもそうじゃなかったじゃありませんかということです。  特安法の結果については、前回産構法に改正されたときに論議がされているわけですけれども、特交法の四年間で造船が五万人、合成繊維が四万人など、指定の十四業種で十一万八千人の人員削減が行われているわけですね。産構法でも同じことなんです。合成繊維、これは特安法、産構法、どちらも指定されたわけです。事業の多角化が進みまして人員削減が相当新分野で吸収されております。それでも八六年三月期を特安法指定前の七七年三月期と比較してみますと、旭化成であるとか東レなど大手六社の従業員は一万三千八百人、つまり二三%減らされているわけです。その一方で売り上げはどうかといいますと一・四倍、経常利益は七・六倍に伸びているのですね。石油化学、これは産構法で指定業種になったわけです。指定前の八二年の三月期と比べてみますと、八六年の三月期、三菱化成、住友化学、三井東圧など大手五社の従業員数は三千八百人、一二%減っております。ところが、経常利益は二百九十八億円の赤字から一挙に八百三十一億円の黒字、まさに急回復をしているわけですね。雇用の確保、中小企業への配慮、これは特安法や産構法でも今回と同様に法律の条文にもきちんと明記されておりましたが、何の歯どめにもならなかったわけです。  そこで、今大問題になっております鉄鋼大手の大合理化計画、本法案によって国がお墨つきを与えて高炉の休止とかあるいは大量の人減らしを促進するのではなくて、鉄鋼メーカーが計画を白紙撤回する、社会的責任をきちんと果たせ、通産省はこれを指導すべきだというふうに思うわけなんですね。その点お聞かせいただきたいと思います。
  172. 鈴木直道

    鈴木(直)政府委員 現在鉄鋼業が直面しております困難な事情は、例えば六十一年度の決算の見通しが赤字四千億以上を超えるであろう、これは実質赤字でございますが、そういうことが予想されておるわけでございます。円高が起こります前の例えば六十年度の上期では一千億の利益を上げていたわけでございます。それ以後円高の影響で内外需が大幅に削減されまして、その結果として今申し上げましたような経営状況になっているわけでありまして、やはり鉄鋼業自体といたしましては、今後の生き残りをかけた合理化というのはやむを得ざる方向ではないかと私ども考えております。  しかし、おっしゃいましたように、地域の特に雇用の問題というのは非常に大きな問題でございます。私どもといたしましても、例えば昨年の補正予算におきまして鉄鋼不況地域にがさ上げ措置を講ずる等々公共事業につきましての重点配分を行うとか、関連中小企業につきまして例の中小企業の域下町法を活用いたしまして手当てを講ずるとか、あるいは労働省がやっていただいております雇用調整金を活用いたしまして雇用対策をやる等々、地域雇用中小企業についての対策に万全を期したい、かように考えておるわけでございます。
  173. 藤原ひろ子

    ○藤原(ひ)委員 そうおっしゃいますけれども、鉄鋼の過剰設備というものには政府や大企業に重大な責任があるというふうに思います。なぜかといいますと、私ども共産党の国会議員団調査団をつくりましてずっと日本全国ほとんどのところへ行ってきたわけです。綿密に調査をしてまいりました。時間がありませんから具体的には言えませんけれども、そういう中で鉄鋼メーカーが今日世界一というふうな座を占めているわけですが、そのためには何がされているかというと、国ももちろん県も市も、こういうところから予算や金融、税制などの多面的な手厚い助成を系統的に受けているということが明らかになっているわけです。ですから、鉄鋼メーカーが社会的責任を問われるのは当然だ、こういうふうに思うわけですね。しかも、新日鉄の持ち株の値上がり益というのは二年間で八千二百二十億円にも上るとか、あるいは鉄鋼メーカーはそれぞれ持ち株や土地など莫大な含み資産を持っているわけです。経営の危機というような状態ではとてもとてもないわけですね。鉄鋼メーカーがそれぞれ合理化計画を白紙撤回して——方、人減らし、合理化で職場や労働者や家族、地域はどうなっているかこの目で見てきたわけですけれども、本当に荒れた、例えば炭鉱でいえば炭柱ですね、ススキがぼうぼう生え上がっている、こういう事態で生き残るも地獄、去るも地獄というふうな状況にあるわけですから、今こそ労働者とその家族の生活と権利、これを保障するように通産省は指導をすべきだというふうに強く要求をしたいと思うわけです。これは時間がありませんし、すれ違いになりますから次に進みたいと思いますが、私はこの目で見てきて、本当に心からそれを強く要求し、お願いもしたいというふうに思うわけです。  御承知のように、我が国の自動車メーカーというのは猛烈な海外進出を展開いたしております。アメリカだけ見ましても、一九九〇年までには百七十七万台の現地生産が行われるというような見通しがございます。通産省もこうした方向を積極的に支援してこられたわけです。ところが、三菱銀行の調査月報の一月号を見ますと、現地生産によって、我が国の対米乗用車輸出では、一九九〇年には八五年と比べて百六十四万台減少するという予測を出しております。そうしますと、我が国の自動車生産台数は年産で千二百万台、乗用車で七百万台ですから、十数%あるいは二十数%の生産減、設備過剰になるわけですね。鉄鋼の二の舞になることがわかり切っていながら、企業の競争によって海外進出を急増させ設備過剰をつくり出す、まことに無責任な企業の行動ではないでしょうか。このことを私は指摘をしているわけです。この場合に、乗用車の生産設備も本法案で言います特定設備対象になり得るのでしょうか。さらに、電機関係でも冷蔵庫やカラーテレビやVTR、電子レンジなどの生産がどんどんと海外へ移されているわけです。そうすると、将来こうした生産設備も過剰になれば特定設備として指定をする可能性もあるのかどうか、これをお聞かせいただきたいと思います。
  174. 杉山弘

    ○杉山政府委員 御指摘の自動車、家電産業等につきましては、現時点では特に生産、需要動向等について今この法案で予定しているような問題は生じていないと考えております。  先生御指摘の点は、自動車産業について現地生産計画が実現をした場合にどうかということでございますが、これにつきましては、現在の計画が全体として完全に実現をするのは九〇年代初頭以降というふうになっておりますので、その段階で世界全体としての自動車産業に関する需要その他がどうなっているか、またそのために国内での自動車産業がどういう状況になるか、これはにわかに予断をすることができないところでございます。現在、通産省ではこういったことに備えまして機械情報産業局におきましていろいろ検討もされておりますが、この辺は今の段階で指定ができるのかどうかということについて結論を軽々に申し上げることは差し控えたいと思います。事態の推移に応じてその段階で判断をしてまいりたいと思っております。  それから、先ほど新日鉄を中心とした鉄鋼について、まだ余力があるのに今の段階からここで助成をするのかというお話がございましたが、私ども特に過剰雇用を他の新しい事業分野への転換によってつなぎとめるということを考えますと、余力が尽き果てた段階では非常に難しゅうございまして、まだ企業体力が残っている段階でむしろそういう方面に積極的な努力をしていただきたい。したがいまして、ある程度企業として余力を残している段階からそういう方向での努力をお願いしたいというふうに考えておることを申し添えておきたいと思います。
  175. 藤原ひろ子

    ○藤原(ひ)委員 あいまいな御答弁ですけれども、この対象になり得ないのだというふうにおっしゃったとしても、産構法の審議のときに通産省は鉄鋼業は対象にならないというふうに答えておられたけれども、今こうして本法案対象として救済されようとしておられるわけですから、これも特定設備の要件からして当然対象になるだろう。はっきり言えないとおっしゃいましたけれども、世界的な需要の見通しもほとんど微増ないし横ばいということで、設備過剰になることがわかっていながら、各自動車メーカーがみずからの市場を確保し、利潤を追求するために海外への進出を進め、これを通産省も促進をしておられる。それで国内で生産減、設備過剰が恒常化する。そうすると、今度は本法案で過剰設備処理と大量人減らしを実行する、こういうことになります。  しかも、自動車の減産の影響は極めて大きいわけです。トヨタ自動車の試算によりますと、年間百二十万台の減産で直接関連する労働者の雇用減は二十七万です。三菱銀行の予測のとおり百六十四万台減産ということになりますと、三十七万人という雇用減になってしまうわけですね。今度の法案は、過剰設備処理事業転換を進める大企業のために、減税であるとか低利の融資であるとか債務保証等の支援措置まで設けているわけです。国の責務として研究開発の推進や産業基盤整備を進めることも明記をしているわけですね。  一月一日の朝日新聞に出ましたから御存じだと思いますが、新日鉄の武田社長はこう言っておられます。「第四次の合理化案を打ち出します。三年後にはムクムクと起き上がっていますよ」とさえ語っておられるわけですね。一方、高炉の火を消すな、室蘭を、釜石を、広畑を見殺しにするな、一生懸命会社に協力してきたのに会社は余りにも身勝手過ぎる、大企業は社会的責任を果たせ、こういう労働者の声ですね、住民の切実な要求。これにこたえるために、労働者、中小企業地域住民を犠牲にするというような本法案は撤回すべきだ、このことを主張しているわけです。最後に大臣見解をお聞きして終わりたいと思います。
  176. 佐藤信二

    佐藤委員長 通産大臣、時間が参っておりますから、簡潔にお願いします。
  177. 田村元

    田村国務大臣 鉄鋼は申すに及ばず、あらゆる産業に対し通産省は万全を期して対応をいたす所存でございます。
  178. 佐藤信二

    佐藤委員長 藤原ひろ子君、時間が参っておりますから、簡潔にお願いします。
  179. 藤原ひろ子

    ○藤原(ひ)委員 時間がないので、私の方からいろいろ聞きたいのですが、なかなか今のお答えでは納得できないわけです。  その上、このような重要法案を皆さん大変慌てながら、不十分なまま、各党そのような質問だったと思うのです。日切れ法案でもないのにこの法案をその扱いとして、参考人質疑もなしに、本当に短時間で議了、採決するということは認められないということを申し述べて、終わらせていただきます。
  180. 佐藤信二

    佐藤委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  181. 佐藤信二

    佐藤委員長 この際、本案に対し、与謝野馨君外三名から、自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議及び民社党・民主連合四派共同提案による修正案が提出されております。  まず、提出者より趣旨説明を求めます。城地豊司君。     —————————————  産業構造転換円滑化臨時措置法案に対する修正   案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  182. 城地豊司

    城地委員 ただいま議題となりました修正案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。  修正案はお手元に配付したとおりであります。  御承知のとおり、本法律案は、我が国をめぐる厳しい経済環境に対応して、産業構造を国際的に調和のとれたものに転換していくことが重要であることにかんがみ、その円滑化を図るための措置を講じようとするものであります。  その具体的な内容として、特定事業者事業適応計画または事業提携計画を作成し、主務大臣承認を受けた場合に、金融、税制上の支援措置を講ずることが大きな柱となっております。  ところが、計画を申請する場合の記載事項には、労務に関する事項が規定されておりません。  言うまでもなく、これらの計画で行われる特定設備処理事業転換等及び事業提携は、経営の根幹にかかわるものであり、当然労働者の利害に大きな影響を及ぼすものでありますので、承認申請の記載事項に、計画の実施に伴う労務に関する事項を明示することが必要であります。  以上が修正案の趣旨であります。  委員各位の御賛同をお願いいたします。
  183. 佐藤信二

    佐藤委員長 これにて修正案の趣旨説明は終わりました。     —————————————
  184. 佐藤信二

    佐藤委員長 これより討論に入ります。  産業構造転換円滑化臨時措置法案及びこれに対する修正案を一括して討論に付します。  討論の申し出がありますので、これを許します。矢島恒夫君。
  185. 矢島恒夫

    ○矢島委員 私は、日本共産党・革新共同を代表し、産業構造転換円滑化臨時措置法案並びに自民、社会、公明、民社四党共同提案の修正案に対する反対討論を行います。  法案に反対する理由の第一は、対米公約の前川リポートに基づき、国際的に調和のとれた産業構造への転換を図ることを目的として、我が国産業の空洞化に拍車をかけ、労働者、国民を犠牲にして大企業の大もうけの体制づくりを支援するものであることです。  鉄鋼高炉五社は、この十年間に海外での従業員数を三万五千人ふやし、国内の従業員を三万八千人減らしてきました。その上、五社は現在四万四千六百人の人員削減計画を提案し、関連下請を合わせると十万人をはるかに超える空前の大量人減らしを行おうとしています。そして新分野進出など事業の多角化とあわせ、一層の高収益体制を確立しようとしています。  過剰設備処理から事業転換、新分野進出に至るまで、税制、金融その他多角的な助成策を盛力込んだ本法案は、さきに採決された輸出保険法案の一部改正案とあわせ、大企業の海外進出、産業の空洞化を一層促進するとともに、大企業の大もうけの体制づくりを支援するものにほかなりません。  第二は、過剰設備をつくり出した政府、大企業の責任を棚上げして、大臣承認すなわち国のお墨つきで大企業の過剰設備処理を実行し、あわせて大量の人減らし、中小企業切り捨てを強行するものだからです。  第一次石油危機の発生によって世界的に粗鋼の設備過剰が明らかになった後でさえ、国の経済計画や長期ビジョンを受けて大型高炉を次々と建設してきた鉄鋼の例を見るまでもなく、過剰設備をつくり出した政府、大企業の責任は明白です。  こうしたみずからの責任を棚上げし、異常円高をてこに、鉄鋼、石炭、非鉄金属、繊維などの大企業は、今全国で設備の休廃止、工場閉鎖・縮小、大量人減らしを計画、実行しています。  本法案は、大企業のこうした人減らし合理化を促進するために国のお墨つきを与えるものと言わざるを得ません。これは、これまでの特安法あるいは産構法の結果からも明白であります。  第三は、大企業に対し地方自治体や地域住民への責任を果たさせる実効ある措置を盛り込まず、地域経済に重大な打撃を与えるものだからです。  特定地域対策も、大規模設備休廃止、人減らし合理化を前提にしたもので、大企業の役には立っても、雇用確保、地域経済の振興など、地域住民が期待している内容とはほど遠いものにならざるを得ません。  第四は、現行産構法の枠組みを継承した事業提携と、それに関する公正取引委員会との調整条項が、独禁法を骨抜きにし、産業の寡占化、同調値上げ等を容易に可能とする危険があるからです。  以上の理由により、本法案の撤回を強く要求するものであります。  さらに自民、社会、公明、民社四党共同提案の修正案も、大量人減らしの歯どめとなるどころか、むしろ大企業の人減らし計画に一層明確に国のお墨つきを与えるものであり、反対であります。  以上で反対討論を終わります。
  186. 佐藤信二

    佐藤委員長 これにて討論は終局いたしました。     —————————————
  187. 佐藤信二

    佐藤委員長 これより採決に入ります。  まず、与謝野馨君外三名提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  188. 佐藤信二

    佐藤委員長 起立多数。よって、本修正案は可決いたしました。  次に、ただいま議決いたしました修正部分を除く原案について採決いたします。  修正部分を除く原案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  189. 佐藤信二

    佐藤委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。     —————————————
  190. 佐藤信二

    佐藤委員長 この際、本案に対し、与謝野馨君外三名から、自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議及び民社党・民主連合四派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  まず、提出者より趣旨説明を求めます。二見伸明君
  191. 二見伸明

    ○二見委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。     産業構造転換円滑化臨時措置法案に対する附帯決議(案)   政府は、本法施行に当たり、現下の大幅な円高等により、雇用情勢及び地域経済情勢等が著しく悪化している実情にかんがみ、内需拡大等を中心とする経済対策の一層の推進、為替相場の適正化のための環境整備等を図るとともに、今後の産業構造転換の推移に対応して施策の拡充・強化に努めるほか、次の諸点について適切な措置を講すべきである。  一 産業構造の転換の円滑化を図るため、特定事業者事業適応計画又は事業提携計画の作成に資するものとして、個別の産業の実態を踏まえ、産業構造の中長期的ビジョンを早急に策定すること。  二 事業適応計画等の実施に関する雇用の安定を図るため、特定事業者又は提携事業者の計画承認の申請及び承認計画の推進に当たっては、関係労働組合の意見を十分聴取するよう努め、関連中小企業等の労働者をも含めた雇用の安定に最大限の考慮を払うよう指導すること。  三 産業構造転換に伴う失業の予防及び離職者対策に万全を期するとともに、特定地域における経済活性化及び雇用の創出に努めること。  四 事業提携計画の作成及び承認に当たっては、独占禁止法及び本法の立法趣旨を踏まえ、特定事業者をとりまく経済環境、その競争実態、産業構造転換必要性等に照らし、厳正かつ適確に行うこと。  五 特定地域活性化を図るため、特定出資法人事業工場等の新増設等及び新分野開拓事業に対する資金の確保等の支援措置については、事態の進展に即し、万全を期すること。 以上であります。  附帯決議案の内容につきましては、審議の経過及び案文によって御理解いただけると存じますので、詳細な説明は省略させていただきます。  何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
  192. 佐藤信二

    佐藤委員長 これにて趣旨説明は終わりました。  本動議について採決いたします。  与謝野馨君外三名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  193. 佐藤信二

    佐藤委員長 起立多数。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。  この際、通商産業大臣から発言を求められておりますので、これを許します。田村通商産業大臣
  194. 田村元

    田村国務大臣 ただいま御決議をいただきました附帯決議につきましては、その御趣旨を尊重いたしまして、産業構造転換円滑化対策の実施に遺憾なきを期してまいる所存でございます。ありがとうございました。     —————————————
  195. 佐藤信二

    佐藤委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました本案の委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  196. 佐藤信二

    佐藤委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  197. 佐藤信二

    佐藤委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時三分散会      ————◇—————