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1987-05-15 第108回国会 衆議院 環境委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    国会召集日昭和六十一年十二月二十九日)( 月曜日)(午前零時現在)における本委員は、次 のとおりである。   委員長 林  大幹君    理事 小杉  隆君 理事 武村 正義君    理事 戸沢 政方君 理事 中村正三郎君    理事 山崎平八郎君 理事 岩垂寿喜男君    理事 春田 重昭君 理事 滝沢 幸助君       石破  茂君    江崎 真澄君       小沢 一郎君    片岡 武司君       河本 敏夫君    齋藤 邦吉君       杉浦 正健君    田澤 吉郎君       平泉  渉君    大出  俊君       金子 みつ君    山口 鶴男君       遠藤 和良君    斉藤  節君       岩佐 恵美君    田中 角榮君 ――――――――――――――――――――― 昭和六十二年五月十五日(金曜日)     午前十時一分開議 出席委員   委員長 林  大幹君    理事 小杉  隆君 理事 戸沢 政方君    理事 福島 譲二君 理事 山崎平八郎君    理事 岩垂寿喜男君 理事 春田 重昭君    理事 滝沢 幸助君       石破  茂君    片岡 武司君       森  美秀君    金子 みつ君       馬場  昇君    山口 鶴男君       遠藤 和良君    斉藤  節君       岩佐 恵美君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (環境庁長官) 稲村 利幸君  出席政府委員         環境政務次官  海江田鶴造君         環境庁長官官房         長       山内 豊徳君         環境庁長官官房         会計課長    山下 正秀君         環境庁企画調整         局長      加藤 陸美君         環境庁企画調整         局環境保健部長 目黒 克己君         環境庁自然保護         局長      古賀 章介君         環境庁大気保全         局長      長谷川慧重君         環境庁水質保全         局長      渡辺  武君         通商産業大臣官         房審議官    緒方謙二郎君  委員外出席者         警察庁刑事局保         安部生活経済課         経済調査官   緒方 右武君         科学技術庁原子         力安全局原子力         安全化原子力安         全調査室長   尾藤  隆君         厚生省生活衛生         局食品保健課長 大澤  進君         厚生省生活衛生         局水道環境部環         境整備課産業廃         棄物対策室長  横田  勇君         林野庁指導部森         林保全課長   山口 夏郎君         水産庁研究部研         究課長     河田 和光君         建設省建設経済         局建設業課長  小野 邦久君         環境委員会調査         室長      山本 喜陸君     ――――――――――――― 委員異動 一月二十二日  辞任         補欠選任   中村正三郎君     福島 譲二君 三月四日  辞任         補欠選任   山口 鶴男君     井上 普方君 同月十三日  辞任         補欠選任   井上 普方君     山口 鶴男君 同月二十四日  辞任         補欠選任   片岡 武司君     染谷  誠君   金子 みつ君     武藤 山治君 同日  辞任         補欠選任   染谷  誠君     片岡 武司君   武藤 山治君     金子 みつ君 同月二十五日  辞任         補欠選任   遠藤 和良君     石田幸四郎君 同日  辞任         補欠選任   石田幸四郎君     遠藤 和良君 四月六日  辞任         補欠選任   石破  茂君     竹下  登君   片岡 武司君     古屋  亨君   岩佐 恵美君     野間 友一君 同日  辞任         補欠選任   竹下  登君     石破  茂君   古屋  亨君     片岡 武司君   野間 友一君     岩佐 恵美君 同月十五日  辞任         補欠選任   遠藤 和良君     大久保直彦君 同日  辞任         補欠選任   大久保直彦君     遠藤 和良君 五月十五日  辞任         補欠選任   河本 敏夫君     森  美秀君   山口 鶴男君     馬場  昇君 同日  辞任         補欠選任   森  美秀君     河本 敏夫君   馬場  昇君     山口 鶴男君 同日  理事中村正三郎君一月二十二日委員辞任につ  き、その補欠として福島譲二君が理事に当選し  た。     ――――――――――――― 三月二十六日  公害防止事業団法の一部を改正する法律案(内  閣提出第八三号)  絶滅のおそれのある野生動植物の譲渡の規制等  に関する法律案内閣提出第八四号) 同月二十七日  公害指定地域全面解除反対等に関する請願  (河上民雄紹介)(第一二五四号) 四月十五日  公害指定地域全面解除反対等に関する請願  (石井郁子紹介)(第一七二二号) 同月十六日  公害指定地域全面解除反対等に関する請願  (春田重昭紹介)(第一七八九号) 五月六日  公害指定地域全面解除反対等に関する請願  (岩垂寿喜男紹介)(第二五六四号)  同(土井たか子紹介)(第二五六五号) 同月八日  公害指定地域全面解除反対等に関する請願  (大出俊紹介)(第二六八六号)  同(堀昌雄紹介)(第二六八七号)  同(岩佐恵美紹介)(第二七七一号)  同(金子みつ紹介)(第二七七二号)  公害指定地域解除反対等に関する請願(安藤  巖君紹介)(第二七六四号)  同(石井郁子紹介)(第二七六五号)  同(経塚幸夫紹介)(第二七六六号)  同(東中光雄紹介)(第二七六七号)  同(藤田スミ紹介)(第二七六八号)  同(正森成二君紹介)(第二七六九号)  同(村上弘紹介)(第二七七〇号) 同月十一日  公害指定地域全面解除反対等に関する請願  (柴田睦夫紹介)(第二八六三号)  公害指定地域解除反対等に関する請願田中  美智子君紹介)(第二八六四号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  理事補欠選任  国政調査承認要求に関する件  環境保全基本施策に関する件      ――――◇―――――
  2. 林大幹

    林委員長 これより会議を開きます。  この際、理事補欠選任についてお諮りいたします。  委員異動に伴いまして、現在理事が一名欠員となっております。その補欠選任につきましては、先例により、委員長において指名することに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 林大幹

    林委員長 御異議なしと認めます。  それでは、理事福島譲二君を指名いたします。      ――――◇―――――
  4. 林大幹

    林委員長 次に、国政調査承認要求に関する件についてお諮りいたします。  環境保全基本施策に関する事項  公害防止に関する事項  自然環境保護及び整備に関する事項  快適環境創造に関する事項  公害健康被害救済に関する事項  公害紛争の処理に関する事項以上の各事項について、その実情を調査し、対策を樹立するため、関係各方面からの説明聴取及び資料の要求等の方法により、本会期調査を進めたいと存じます。  つきましては、衆議院規則第九十四条により、議長の承認を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 林大幹

    林委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ――――◇―――――
  6. 林大幹

    林委員長 環境保全基本施策に関する件について調査を進めます。  この際、環境庁長官から環境保全基本施策に関する所信を聴取することといたします。稲村環境庁長官
  7. 稲村利幸

    稲村国務大臣 第百八回国会における衆議院環境委員会の御審議に先立ち、環境行政に関する私の所信を申し述べ、委員各位の御理解と御協力を賜りたいと存じます。  環境行政は、国民の健康と生活公害から守り、豊かな自然環境保全するとともに、潤いと安らぎのある快適な環境創造を目指す重要な使命を帯びた行政であります。私は、今日の経済社会変化に対応して、環境行政がその使命を全うできるよう、その責任者として全力を注ぎ込んでまいる所存であります。  ことしで、公害対策基本法が制定されてから二十年になります。この間、環境行政は、国会を初めとして、地方公共団体国民各位の御協力を得て着実に成果を上げてまいりました。しかし、なお今後とも総合的に取り組まなければならない各種課題も多いのが現状であります。生活環境を守るというばかりでなく、身近な自然との触れ合い、質の高い快適な環境やゆとりを求める国民要求も高まってきております。また、環境問題は国際的な広がりを見せ、熱帯林の減少や砂漠化等地球的規模取り組みが必要となっております。  私は、このような状況を踏まえ、環境行政は二十一世紀を目指して長期的な見通しのもとに多角的に推進されなければならないと考え、昨年十二月に策定した環境保全長期構想において、環境政策の今後の方向の基本を示すものとして三つ観点を掲げました。一つは、環境への配慮の徹底ということであります。狭い国土の中で高密度の経済社会活動が営まれている我が国においては、公害等未然防止自然環境の適正な保全を初めとして、環境への配慮を隅々にまで行き渡らせる必要があります。二つには、環境との触れ合いのための基盤整備ということであります。国民の求めにこたえ、快適な生活空間や自然との触れ合いの場を積極的に確保、創出していくことがますます重要になると考えます。三つには、環境の恵みの保持増進ということであります。我が国の恵み豊かな環境を持続的に活用しつつ次世代に引き継いでいくため、その計画的な管理を図っていく必要があります。  このような基本的な考え方に立ち、私は、次のような事項重点を置いて、環境行政推進に最大限の努力を払ってまいる所存であります。  第一に、予見的、総合的な観点から新たな環境保全施策を積極的に展開してまいります。  特に、先端技術進展に伴い、新たな環境問題を発生させることのないよう早期に適切な対応を図ってまいります。  また、環境影響評価の適切な実施を図るとともに、特に首都圏等大都市圏については、広域的な観点から環境の適切な管理を図る等地域特性に応じた施策を進めてまいります。  なお、近年の都市・生活型公害進展等公害に係る行政主要課題の移行に適切に対応するため、公害防止事業団業務を見直し、新たな業務の展開を図ることとし、公害防止事業団法の一部を改正する法律案国会に提出いたしたところであります。  第二に、安全で良好な環境確保であります。  環境への影響が懸念されている有害化学物質については、汚染未然防止に資する対策をさらに推進してまいります。  また、大気保全につきましては、大都市を中心とした道路交通公害問題や窒素酸化物問題等緊要な課題に対し、発生源規制の一層の強化を図るとともに、低公害車の普及や人流、物流の効率化による交通量抑制等施策関係省庁と連携を図りつつ総合的かつ計画的に推進してまいります。  水質保全につきましては、湖沼内湾等閉鎖性水域水質改善を図るため、東京湾、伊勢湾、瀬戸内海における新たな総量規制を円滑に実施するとともに、湖沼水質保全特別措置法に基づき計画的かつ総合的な湖沼対策推進します。また、生活雑排水対策等推進に努めます。  さらに、社会経済条件変化に対応した実効ある公害防止計画の策定を進めてまいります。  第三に、緑と潤いのある環境積極的形成であります、  質の高い環境への国民要求の高まりにこたえて、地域特性を生かした快適環境創造や自然との触れ合い増進のための各種施策推進を図ります。特に、ナショナルトラスト活動を初めとする国民による環境保全のための自主的活動を一層促進します。また、静けさこそが人の心の緑であるとの観点に立って、近隣騒音対策を積極的に進めてまいります。  第四に、野生生物保護等自然環境保全であります。  野生生物保護の問題につきましては、いわゆるワシントン条約絶滅のおそれのある野生動植物の輸出入を規制しておりますが、我が国ではその国内での取引が問題となる等内外からの指摘もあり、国際社会の一員として一日も早くこうした事態を是正する必要があると考えます。このため、絶滅のおそれのある野生動植物国内取引規制等を行うための法律案を取りまとめ、国会に提出いたしたところであります。野生生物保護増殖事業等施策と相まって、野生生物保護対策の一層の強化が図られることになります。  また、自然に関する調査研究を進め、生態系保全観点に立って体系的な自然環境保全に努めるとともに、自然公園等施設整備推進することとしておりますが、特に、釧路湿原につきましては、その保護適正利用を図るため、新たに国立公園指定し、必要な体制を整備することとしております。  第五に、公害による健康被害についての救済と総合的な環境保健施策推進であります。  公害健康被害補償制度につきましては、近年の大気汚染の態様の変化に対応して、公正かつ合理的なものにしていかなければならないと考えます。このため、今般制度の見直しを行い、既に認定を受けている患者救済に引き続き万全を期すとともに、今後は第一種地域指定をすべて解除し、個人に対する補償から健康被害未然防止重点を置いた施策への転換を図るよう、公害健康被害補償法の一部を改正する法律案国会に提出いたした次第であります。  この法律改正により、公害健康被害補償協会業務に新たに健康被害の予防に関する事業を加えることとし、環境保健サーベイランスシステム構築等とあわせて総合的な環境保健施策推進するとともに、大都市地域における窒素酸化物等大気汚染を改善するため、効果的な対策推進に真剣に取り組んでまいる所存であります。  また、水俣病対策につきましては、認定業務の一層の促進等その推進に努めてまいります。  第六に、地球的規模環境保全国際協力推進であります。  今年は、我が国の提唱で設立された国連環境特別委員会最終会合がこの二月に東京で開催されるなど、地球的規模環境問題への取り組みを進めていく上で重要な年であります。本会合を受け、同委員会から提示された二十一世紀に向けた地球環境長期的保全戦略を踏まえ、我が国としても総合的な環境協力指針を策定し、二国間、多国間の環境協力をさらに強化推進してまいる所存であります。  以上、私の所信の一端を申し述べました、  私は、環境行政の持つ重要な使命を深く認識し、健全で恵み豊かな環境国民共有の財産として二十一世紀に引き継いでいけるよう全力を尽くす所存であります。  本委員会及び委員各位におかれましては、環境行政の一層の進展のため、何とぞ今後とも御支援、御協力、御指導を賜りますようお願い申し上げる次第でございます。ありがとうございました。(拍手)
  8. 林大幹

    林委員長 これにて大臣所信表明は終わりました。     ―――――――――――――
  9. 林大幹

    林委員長 続いて質疑に入るのでありますが、質疑に入る前に委員長から一言申し述べたいと思います。  本委員室の構造上、発言者のマイクは使っておりませんので、発言者以外の方々は御静粛にお願いいたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。馬場昇君。
  10. 馬場昇

    馬場委員 ただいま長官から所信表明をお聞きしたわけでございます。二十一世紀に向かって環境公害行政に積極的に取り組むという立派な所信を拝聴させていただいたわけでございますけれども、私がきょう質問しようと思っております水俣病関係対策につきましては、ほんのわずか一行しか触れられておりません。私も十五年ぐらいこの委員会でこの問題と取り組んできているのですけれども、今度の長官所信が一番短いのじゃないか、そして中身が十分ではない、こう私は今感じた次第でございます。二十一世紀という言葉が出ましたので思い出すのですが、かつて石原長官のときに、石原さんは現地にも行ったのですけれども、あの悲惨な状況を見ながら、この水俣病を本当に完全に解決しなければ二十一世紀の文明というのは語れないんじゃないか、そういうことをおっしゃって積極的に取り組まれたわけでございます、私はきょうの所信を聞いて、今から質問していくわけでございますけれども、やはり冒頭この所信のところで積極的な姿勢を示していただきたかったということをまず最初に希望を申し上げておきたいと思います。  そこで、質問いたしますのは、去る三月三十日に熊本地方裁判所水俣病の第三次訴訟について判決を下したわけでございます。これは実はもう七年間にわたりまして慎重に審理して判決が下されたわけでございまして、ここにその判決の全文を持ってきておるわけでございますけれども、これだけ厚い、五冊にわたってあらゆる角度から慎重に審理した結果の判決が出ておるわけでございます。そこで、大臣ももうお読みになって検討もされたと思いますので、この水俣病の第三次訴訟判決について、公害行政環境行政責任者としての所感をまずお伺いしておきたいと思います。
  11. 稲村利幸

    稲村国務大臣 この判決におきまして、水俣病発生、拡大に関し国家賠償法に基づく国の責任が認められたことについて、残念に思っております、  患者方々救済につきましては、今後とも医学基礎として救済すべきものは救済する、こういう観点から、引き続き国と県と一体となって現行制度の着実な運用に努めてまいりたいと思います。
  12. 馬場昇

    馬場委員 この判決を残念に思うというようなただいまの所感をお聞きして、何たることかというような感じが私はまずいたしました。  具体的にお聞きしますが、この判決の中で、国とか熊本県は水俣病発生させて、それを拡大させて、それをそのまま放置して、さらに患者救済をおくらせておる、さらに言うならば切り捨てておる、こういう加害責任というのが問われておるわけですよ。だから、一々の法律のこの条項、この条項ということは後で申し上げますけれども、全体的に見て、公式に発見されてから三十一年、なぜこんなに長引いておるのか、裁判が十幾つも二十近くも行われておるという事実もあるわけですけれども、今言いましたように、被害発生させて、拡大させて、放置して、患者救済をおくらしておる、こういう責任が問われておることについてどうお考えですか。これは大臣に、政治家としても長官としても、さらに私は人間としてということもつけ加えておきたいのですけれども、そういう意味で、三十年以上にわたるこの水俣病に対して、今言ったことについてお答えいただきたいと思います。
  13. 稲村利幸

    稲村国務大臣 行政としての責任はもちろん感じております。国民の健康を守れず水俣病発生したことは、これこそ残念であり遺憾でもあります。私としては、水俣病認定業務促進等に努める、そういう気持ちでおります。  法律的に言うと、厳密に言うと法律的には国の責任ではない、国に対する損害賠償を求める第三次訴訟は現在福岡高裁で係争中、こういうことでございます。
  14. 馬場昇

    馬場委員 歴代の長官がどういう態度でこの責任問題を処理されたかということについてはまた後で申し上げまして、それに対する現長官考え方もお聞きしたいわけでございます。控訴をなさっておりますから今なかなか言えない点があるということじゃないかと思いますので、控訴問題にも後で触れますからそこでお聞きしたいのですが、しかし行政責任者として、法律個々のことは一応後で議論するとして、総体的に言いましても、やはりこういう判決が出たわけですから、国とか県は直ちに判決に服して控訴すべきじゃないと私は思っておりますけれども、すべての被害者救済とかあるいは水俣病問題の全面解決に向かって、原点に立ってさらに決意を新たにして全力を挙げて施策を講じていかなければならないという決意は、やはりこの判決をごらんになって、個々法律問題は別にして、行政責任者としてお感じになりませんか。
  15. 稲村利幸

    稲村国務大臣 行政としては、先ほど申し上げましたとおり責任感じておりますが、この控訴につきましては、環境庁、各関係の通産、農水、厚生と十分協議をしてのことでございますので、御理解をいただきたいと思います。
  16. 馬場昇

    馬場委員 控訴問題は後で申し上げると言ったのですが、私が今聞きましたのは、判決個々の法的問題については見解の違いがあったでしょうから控訴されているわけですけれども、少なくとも三十何年続いてきてこういう判決も出たわけですから、これから決意を新たにしてさらにその原点に戻って、そして被害者救済とかそのほかいろいろな水俣病問題があるわけですから、そういうものの解決のために全力を尽くしていきたいという決意は出なかったですか。
  17. 稲村利幸

    稲村国務大臣 大変気の毒な病気でありますので、こうした公害が再び起こらないように未然防止対策に万全を期さなければならないことは、これはもう当然でございます。  また、先ほど申しましたとおり、医学基礎として救済すべきものは救済する、これはもう決まり切っていることでございますから、今後、水俣病患者方々の迅速かつ適切な救済に努めたい、こう思います。
  18. 馬場昇

    馬場委員 この判決の中で法の精神というのも説いているわけです。その中でこういう言葉を使っておられるのですが、法の解釈とか運用いろいろ違いがありますけれども、法の究極目的というのは国民生命、健康の安全確保にある、こういうことをこの判決は言っておられます。この考え方には賛成ですか、反対ですか。
  19. 稲村利幸

    稲村国務大臣 それは気持ちは十分わかりますから、(馬場委員賛成ですね」と呼ぶ)それはそうですね。
  20. 馬場昇

    馬場委員 大体この法の精神というのはもうだれでもわかり切ったことでございます。これがうまく行われたか行われないかということが問われておるのであって、法の精神というのは、究極目的生命とか健康を守るということにあるのは当然でございまして、この運用のことが今から問題になるわけでございますが、この基本線というのは一致させておきまして、これに近づいた行政をしているのかどうかということが今から実は問われるわけでございます。  そこで、具体的な内容は長官は十分御承知でないかもしれませんので局長でもいいと思いますが、またこれは各省庁にまたがっておるわけでございますので、それをまとめた形でひとつお聞きしたいのですが、今控訴をなさっていますね。その控訴をした理由は何ですか。
  21. 渡辺武

    渡辺(武)政府委員 先生御承知のように、この件に関しまして国の責任が問われました省庁は四つほどございまして、それぞれ個別法に基づいた判断を裁判所がなさいましたことに対しまして、私たちの従来の主張と違いますので控訴したということになっております。  私たち環境庁関係でその点について申し上げますと、私たちの方で責任を問われましたのは、今はもうありませんけれども、かつて存在いたしました水質保全法という法規がございますが、これに基づきます水域指定いたしまして水質基準の設定をすべきであったという点でございます。しかしながら、その点につきましては、私たちは当時の事情等もいろいろ検討してみたわけでございますけれども、その当時の状況におきましてはそれはやはり不可能であったということでありまして、それが認められなかったわけでございますので、再度司法当局の御判断をいただきたいという趣旨で控訴を申し上げた次第でございます。
  22. 馬場昇

    馬場委員 その点について環境庁は、当時は経済企画庁だったわけですけれども、あと農水省、通産省、厚生省も各法律について問われているわけでございますが、皆一緒に控訴をしたわけでございます。この法律の施行について、例えば今環境庁の方では、当時はこの法律を施行するのは不可能であったというようなことをおっしゃったわけでございますが、多分ほかの省庁も当時その法律を適用するのは不可能であった、だから事実が誤認されているんだ、不満だから控訴するんだ、こういうことを実はおっしゃっておることを承知はしておるわけでございます。  まず厚生省にお聞きいたしますけれども、この判決が出ました後、厚生省のどなたかが新聞に、当時の状況では措置が難しかった、それを批判されると法そのものが不備と言わざるを得ない、こう不満を述べておられるわけですが、そういうような気持ちですか、厚生省。
  23. 大澤進

    ○大澤説明員 私どもその新聞がどの新聞かというのはあれですが、少なくとも私どもの方でそういうような発言をしたことはないわけでございます。  結果的に、今回の判決については、食品衛生法そのものの適用に不備があった、こういう指摘があったわけでございます。食品衛生法の適用解釈について第一審で私どもそういう主張をしてきたわけでございますが、それが結果的に今回認められなかった、そういうことで私どもの主張が入れられなかった、非常に厳しい判決だと感じております。その食品衛生法そのものの権限行使につきましては、この判決で認めた点につきましては、事実の認定とか法令適用に私ども認めがたい点があったわけでございますので、四月八日にさらに上級審の判断を求めるべく控訴したところでございます。
  24. 馬場昇

    馬場委員 厚生省に対して判決は、食品衛生法と強力な行政指導によって水俣湾内における魚介類の摂取、販売等を禁止する措置をとらなかった、この責任が問われておるわけでございます。今よく聞き取れなかったのですが、事実の認定に誤りがあるとか、法令の施行について意見が違うとかいうようなことをおっしゃったわけでございますけれども、実はこれは後の方で農水省の漁業法とか、あるいは熊本県漁業調整規則に従って十分法令の施行をしなかったということを言われておりますし、通産省なんかも排水の排出停止とか規制をしなかった、そういうところが法令に照らして間違っておると言われておるわけでございます。何か皆さん方のお話を聞いておると、とにかく事実に誤認がある、法令適用について見解の違いがある、こういうことが大体控訴の理由のようですけれども、事実の誤認というのは、私は現地の生まれですからよく知っているのですが、そういうことは実はない。  具体的に申し上げますと、この水俣病昭和三十一年に公式発見とされておるのですけれども、実はその前から患者も出ておるわけですね。そこで、資料としてここに持ってきましたので一番古いのは昭和二十七年です。昭和二十七年に水俣市の漁協が熊本県の水産課に対しまして、どうもチッソから出ておる排水がおかしいと思う、だから排水の調査をしてください、また水俣湾内の調査をしてくださいという依頼が二十六年にあったのですけれども、その年は台風があったものですから、二十七年に熊本県の水産課の三好という技師が調査に行って、昭和二十七年の八月二十七日に「新日本窒素肥料株式会社水俣工場排水調査」という復命書を出しておるわけでございます。「新日本窒素肥料株式会社廃水調査を命により調査しましたので別紙の通り復命します。」といって報告をしておる中で、「現在漁業の被害と考えられるものは、この百間に排水される汚水の影響と、百間港内にあった従前堆積した残澤」であるという報告をして、対策として「排水に対して必要によっては分析し、成分を明確にしておくことが望ましい。」「排水の直接被害の点と長年月に亘る累積被害を考慮する必要がある。」こういうことを水俣病が公式発見される前に実は報告しておるのです。このときに熊本県あるいは関係省庁がこの三好さんの報告に基づいてチッソの排水を調査しておれば、水俣病はほとんどわずかで、何人かで済んだのではないか。こういう事実があるのですから、この報告書を握りつぶした責任というのはあるのじゃないか、そういうぐあいに思います。  さらにもう一つ、水俣病が公式発見とされました三十一年の翌年の三十二年にまた水俣漁協の方から実態調査要求があって、今度は内藤という熊本県水産課の技師が調査に行って復命書を公文書で出しておる。この公文書の中で、「現在この一帯においては漁獲皆無で漁民はこの付近で魚介類をとる事に恐怖を感じており、奇病発生が今後も予測される」「海岸一帯顕著にみられることは磯に付着している、かき、ふじつぼ等の脱落で、特に干潮線付近のものは死殻のみで、満潮線付近にわずかに生貝をみとめられるが、その肉質は外殻の大きさに比較し小さく、しかもその色は濁った白色又は暗灰色を呈し、繁元前の状態にある、又これと同時に体長一糎前後の二枚貝の死殻が多数認められた。」また「明神岬の内側恋路島の東岸には海藻類の付着がほとんどなく」「岩礁は灰色に覆れ海藻類は全然認められない。 なお海岸に死した小魚、しゃこの漂着が認められ、翼、脚のきかない、かいつぶりを発見した」、こういうことが書いてある。そして水俣市漁協に対策委員会ができまして、この対策委員会が、工場汚悪水が奇病とのかかわりにおいて漁業資源に大きな影響を及ぼしていると委員会としては判断するので、新日窒工場に対し完全浄化装置の申し入れを行っているが、県または国からの強力な勧告をお願いします、こういうことが公式発見された昭和三十一年の翌年の三十二年に実は出ておるのです。  こういうことをこの復命書に基づいて国と県が行っていればこんな被害は起こらなかった、実はこういうぐあいに思いますし、そういう事実があっても各省庁は事実がわからなかったとおっしゃるのかどうかわかりませんので、ちょっと主張しておきたいのです。  それからまた、ちょっと申し上げますと、昭和三十四年には、もう熊大の研究班が水俣病の原因物質は有機水銀であるということを発表しているわけです。また昭和三十四年に厚生省は、チッソ水俣工場排水中の重金属が水俣病の原因であると関係当局に通知しておるのです。そして三十四年十一月には、厚生大臣の諮問機関である食品衛生調査会は厚生大臣に、水俣病の原因物質は有機水銀であると答申しておるのです。大臣は余り詳しくないかもしれませんが、今私が言ったように二十七年にああいう状況が起きましたが、公式発見とされているのは三十一年ですよ。それから三十四年にこんなことが行われておるのに、政府が有機水銀が原因だと認めたのは昭和四十年です。九年間かかっておるのです。さらに、政府が公害病と認めたのは昭和四十三年ですからそれからまた三年たっておる。公式発見されてから十二年間、チッソはもうどんどん生産を増強していって水銀を垂れ流しておる、被害を拡大させてきた、実はこういう歴史があるわけでございます。  さらに、厚生省は事実誤認だとか言いますけれども、この水俣病公害病と認定されました我が熊本県出身の園田元厚生大臣が、実はこういうことを私の本に寄稿していただいております。「公害病の認定にあたって」ということで園田さんがこういうことを言っておる。「水俣病について、原因は「ある種の有機水銀による中毒」との結論を熊大医学部研究班を中心とする食品衛生調査会水俣食中毒部会が出したのが昭和三十四年七月ですが、私が厚生大臣に就任した昭和四十二年十一月までに」、三十四年に答申しておるのに、園田さんが就任しました四十二年までに「政府はなんら目立った政策を打出していませんでした。」その後「厚生大臣になってみて分ったのは、水俣病が新日本窒素から排出された有機水銀が原因であるとの結論が出ているにもかかわらず極秘にされているということでした。」厚生省の中で極秘にされておった。「私の公害認定――と言葉でいえば簡単ですが、なにしろ明治以来、踏襲されて来た工業優先の思想を根底からくつがえす決断だっただけに、さまざまな場面で体を張らざるを得ませんでした。」そして最後に、「人間の心がにごれば、空気や水はあっという間に汚れます。他人を犠牲にしてまでも己れの利潤を追求する心がすなわち環境を汚し、他人の生命を平気で犠牲にするのです。」こういうことを実は言っておられるわけであります。あらゆることから考えてみましても、控訴されました皆さん方が事実が違うとか事実認定が違うとか言われましても、もう時間がないから言いませんが、たくさんの資料が実はあるわけです。  それから、実は昭和十八年ごろに静岡県でカキ中毒とアサリ中毒が出た。そのとき静岡県は魚介類の採取を禁止する通知を出して、実は県の規則までつくっているのです。ここにもその回答がありますが、これは熊本県の衛生部が静岡県の衛生部に問い合わせたもので、昭和三十二年に回答している。それを見ると、「静岡県令第二四号 貝類ノ採捕禁止区域二関スル件左ノ通リ走ム 昭和十九年三月二十二日 静岡県知事」ということで、アサリ中毒、カキ中毒が出たものだから、静岡県知事はその地域の魚介類の採取を禁止するという静岡県令を出しておるわけです。熊本県が問い合わせましたところが静岡県からそういう回答が来たので、熊本県はそういうことをやりたいと言ったら、厚生省からそういう漁獲禁止はできないという通知が熊本県に出ているわけです。  そういうことを考えてみますと、いずれから見ても控訴の理由というのは当たらないのではないか。事実誤認はない、事実ははっきりし過ぎるほどはっきりしておるということで、その面の控訴の理由は失ってしまうのではないか、私はこういうぐあいに思うのです。そこで、今私が言ったことについて、それでもどの辺が違うのかということを各省庁から、まず厚生省から言ってください。
  25. 大澤進

    ○大澤説明員 先生御指摘の幾つかの点があったわけでございますが、例えば、食品衛生調査会で原因は有機水銀だという判断がされたという意見書を出しておりますが、それはいわばある種の有機水銀ということで、必ずしも学問的に特定の有機水銀であるという断定なり最終判断がそのときまだ出ていなかったような状況であります。あるいは静岡県のアサリの関係も、これは静岡県の県当局における措置についての点でございますが、これにつきましても、食品衛生法そのものを適用した、こういうことではなかったということでございます。いずれにしましても、私どもも、当時の食品衛生法の適用ができないまでも、でき得る措置としていろいろな行政指導をしたわけであります。  そういう点、例えば熊本県からも当時、静岡県の措置を例として国、厚生省に対して、食品衛生法四条の二の適用ができるかどうかの解釈の問い合わせがあったわけでございますが、食品衛生法の四条の二というのは、有害物質が含まれている、あるいは付着した食品、こういう規定であるわけでございます。そういうことからして、水俣湾の中の特定の地域の魚介類のすべてが有毒化しているという明らかな根拠は認められない、こういうことで、これらの地域における魚介類のすべてに対して食品衛生法四条の二を適用することはできない、こういう回答をしたわけでございますが、その中で、ただし、法の適用はともかくとして、原因不明の神経系疾患が発生しているおそれもあるということで、今後とも行政指導として摂食されないように指導されたい、こういう回答を県にしたところでございます。
  26. 馬場昇

    馬場委員 今、食品衛生法の四条二項についてお話しになったわけでございますが、この食品衛生法の四条二項というのは、「有毒な、若しくは有害な物質が含まれ、若しくは附着し、又はこれらの疑いがあるもの。」となっているのですから一目瞭然じゃないですか。そして、こういうものは販売、採取、加工してはならない食品だ、こうなっておるわけですから、「疑いがあるもの。」ということになっているわけですから、ああいうふうにして魚が死ぬし、人間が死ぬし、大変な狂乱状態の中にあるときに、そのくらいの解釈では裁判から言われるのは当然だと思うのです。  そこで、これは後でまた申し上げますけれども、通産省に聞きますが、三十四年十月にチッソは猫実験というのをやっておる。よそから、天草からと山の中の人吉から猫を持ってきて、そして水俣の排水のところからとってきた水の中に魚を生かしておいて、その魚を猫に食わせたら水俣病発生した、そして今度は、食べ物に排水を直接かけて食わせたら水俣病発生した。これが有名な猫四百号実験と言われておるわけですけれども、このことはちゃんと報告をしてあるのです。県も通産省なんかも知っておるはずです。そして、このことによって水俣病というのはチッソの排水が原因であるということを知っておったはずです。これは水俣保健所でやったときもこういう結果が出たから報告してあるはずです。そして、熊本大学の研究班が原因が有機水銀であるということを明らかにしたのに通産省は何をしたかというと、化学工業会なんかとぐるになって、有機水銀じゃないんだ、工場排水じゃないんだ、水俣に爆弾が戦時中投げ込まれたのが原因だ、農薬が原因だと会社とぐるになって、こういう猫実験もやっていながら、この原因が有機水銀じゃないということを否定するのに加担した動きを通産省は三十四年ごろからずっとやっている。こういう事実を通産省は知っていますか。
  27. 緒方謙二郎

    緒方政府委員 昭和三十四年当時、先生の御指摘のとおり、七月に熊本大学の研究班が有機水銀説を発表したわけでございますが、その当時の状況につきましては、御指摘のように、原因物質が何であるかをめぐりまして学界でもいろいろな議論があったと私ども承知しております。タリウム、マンガン、セレンなどいろいろなものがその疑い物質ではないかと擬せられました。そういう中で熊本大学が有機水銀説を発表されたわけでございます。それについても議論があったようでございますが、三十四年十一月、食品衛生調査会の答申で、御指摘のとおり、ある種の有機水銀化合物が原因であるということが国の立場でも明らかになったわけでございます。ただ、その時点で私どもの承知しておりますのは、ある種の有機水銀化合物が原因であるということになりましても、それがいかなるものであるのか、それからさらに当時の常識といいますかあれでは、チッソの工場で使っておりましたものが無機水銀でございまして、私も専門ではございませんが、専門家の当時の常識というのは、無機水銀が有機水銀に変わるということは考えられないということだったそうでございます。したがって、ある種の有機水銀化合物が原因であるということが特定されましても、それが水俣の工場の排水に直ちに結びついて法律上の規制をしなければならないというところまでの判断に至らなかったというのが実情であるというふうに理解しております。通産省が諸説混乱をさせるのに加担をしたというお言葉でございますが、そういうことは一切ございませんで、学者の方がいろいろな説を発表されたということであろうと考えております。  なお、通産省は三十四年十一月の食品衛生調査会の答申が出ました後、十一月十日付でございますが、当時の軽工業局長名で、当時の新日本窒素肥料株式会社の社長あてに「かねてから、排水路の一部の廃止等種々の対策を講ぜられているところであるが、水俣病が現地において極めて深刻な問題を惹起している状況にはまことに同情すべきものがあるので、この際一刻も早く排水処理施設を完備するとともに、関係機関と十分に協力して可及的速やかに原因を究明する等現地の不安解消に十分努力せられたい。」というような通達を出しているわけでございまして、当時として通産省は最大限の努力をしておったものと私どもは理解しておるわけでございます。
  28. 馬場昇

    馬場委員 会社とぐるになって最大限の努力をしたのは私はよく知っている。今言われたように救済のために努力したのではなかった、これははっきり言えるけれども、それを議論しますと時間がありませんからやめますが、そんな感覚で今おられたらこの判決の読み方が全然違ってくるわけですよ。本当にぐるになってどれだけ化学工業会なんか使ってやったかということは枚挙にいとまがないほど実例があるのです。だから、そういうことを勉強してもらいたいと思うのです。  そこで、この議論をしてもしようがないのですから長官に。  結論は、なぜこういう議論をしたかというのは、やはりこれは控訴の理由が納得できないのです。それは私だけでなしに患者さんたちも、苦しんでいる者は納得できないわけで、やらなければならないことをやらなかっただけではなしに、国の産業政策とちょうど一番マッチしているのですが、チッソは昭和三十五年と三十六年にアセトアルデヒドの大増産をやっている。メチル水銀を含んだ汚悪水を不知火海にこのころどんどんまき散らしておる。十二年間まき散らしておるわけですから、それで水俣病が拡大していったのです。  先ほどもちょっと言ったのですが、長官、よく聞いてもらいたいのは、政府が有機水銀を認めたのは公式発見から九年後です。だれが何と言っても九年もたつはずはない。公害病の認定をしたのはそれからまた三年たった十二年後ですからね。その十二年間、チッソの水銀をたれ流しさせて拡大していったわけでございます。こういうことを見ますと、患者側、地域の側からいいますと、公式発見からでも今日まで三十一年たっているのですよ。私が言いましたように、二十七年とか二十何年に第一号患者が出ているというあれもあるのですけれども、四十年、半世紀ぐらい地域の人たちは筆舌に尽くせないような苦しみを現地でやっているわけです。そして本人、患者たちが苦しいだけでなしに、世界的に水俣病と言われて、対立とかいろいろありまして暗い暗い社会の中に呻吟してずっと生き続けてきておるわけでございまして、現在まで認定患者は二千名を超しております。その中で七百八十五名は死んでいる。しかし、死んだ者は苦しみがなくなったと言っているのですよ。生存患者の苦しみというのは今どん底にあるのです。また、今この裁判をやった人の年齢を見てください。七十幾歳というもう余命幾ばくもない人たちが裁判をやっているのですよ、もう四十年も放置されていますから。そういうことであるし、まだまだ底辺に水銀に暴露された住民が何十万とおるわけです。  こういう状況で不安な毎日が続いておるのですが、そういう人たちが今何と言っているかというと、早く苦しみを取ってくれということはもちろんでありますが、まず当面、裁判をした人に言わせれば、生きているうちに救済してくれと言うのです。ところが、これを控訴したら何年たちますか。最高裁まで行ったら何年たちますか。この患者の塗炭の苦しみ、悲痛な叫びを聞いて人間として心が痛まないかと私は思います。だからこれは控訴を取り下げて、そして患者さんたちと話し合って、県とも話し合って、そういう人たちの苦しみを救ってやる方向で前向きにやるべきではないか、それが長官としての義務ではなかろうかと思うのですが、ぜひこの患者の悲痛な叫びにこたえていただくために控訴を取り下げるという検討をなさる気持ちはございませんか。
  29. 渡辺武

    渡辺(武)政府委員 まず、事務的にお答えさせていただきたいと思います。  各省それぞれ理由は違いますが、やはり裁判官の申されておることにつきましては、事実認定あるいは法律の解釈等に関しまして私たちとしては疑義を持っておるわけでございまして、控訴させていただいたわけでございます。したがいまして、こういう訴訟という純法律運用なり解釈をめぐってのお話でございますので、そのような点につきましての解釈といいますか御判断は、再度でございますけれども、やはり司法当局の御判断をいただきたいと感じておるところでございます。
  30. 稲村利幸

    稲村国務大臣 馬場委員の大変ヒューマニズムに基づいた御意見、私もまことに同感のところがありますが、現在控訴している段階で、今の段階では取り下げるということには残念ながらいきません。  しかし、これはこの問題だけでなく、裁判が、一つの公訴があってから、あるいは申し立てがあってからの結論が日本のすべての事件において長いということは、これは国民が本当に耐えられない事例がこれに限らずいっぱいあるわけですね。ですからそういう方向に、こういう機会に私としては政治家として、そういう裁判の審理に早い答えをせめて出していただけることを念じてやまないところがあります。
  31. 馬場昇

    馬場委員 長官、この問題が起きまして、環境庁ができまして、最初の長官の大石さんなんかすぐ現地へ飛んでいって、ある時点で行政がもう少し積極的に対処しておればこの世界に例を見ない惨事が、患者の数は十人単位、百人単位でとまったかもしれない、しかしそれが今日千人になり、あるいは万単位に広がるかもしれない、国の行政責任者として責任感じておわびする、全力を挙げて対策をやるというようなことをおっしゃった。三木さんも現地に行かれまして、本当にあの悲惨な状況を見て絶句して言葉がなかった。私も一緒に行きましたから。そして、こういうことをしでかした行政、政治の責任を痛感して、全力を挙げて救済のために努力をするというようなことを言われましたし、石原長官も同じようなことを言って、さっき言った二十一世紀の話までされて、二十世紀が生んだ人間のエゴとかなんとかによる文明破壊ですから、こんなものを続けていったら二十一世紀はないのだ、これを片づけて二十一世紀に行かなければならぬというようなこともおっしゃったわけでございます。  今控訴をなさっておりまして、高等裁判所の判決をいただこうとおっしゃっておりますけれども、これは裁判所は違う、また裁判の事案は違うのですけれども、実は高等裁判所でも結論が一回出ておるのですね。昭和五十二年に川本輝夫君がチッソの従業員に暴行を加えて告訴された。そのときに、これは刑事事件ですけれども、東京高裁はこういう判決を出している。「当初奇病といわれた段階から一五年間も水銀廃液が排出されている状態を放置しておかなければならない理由は見出せない。熊大研究班による地道にして科学的な原因究明が行われた経過の中で、熊本県警察本部も熊本地方検察庁検察官もその気がありさえすれば、水産資源保護法、同法等に基づいて定められた熊本県漁業調整規則、工場排水等の規制に関する法律、漁業法、食品衛生法等……を発動することによって、加害者を処罰するとともに被害の拡大を防止することができたであろうと考えられるのに、何らそのような措置に出た事績がみられないのは、まことに残念であり、行政、検察の怠慢として非難されてもやむを得ないし、この意味において、国、県は水俣病に一半の責任がある」こういうふうな判決が東京高裁で一回出ているのです。  だから、控訴をさいましてもこれは引き延ばしにしかならない、患者を苦しめることにしかならない、こういうように私は思います。これは他省庁との関係もあるわけでしょうから、今この場所でそれこそはっきりはおっしゃれないと思いますけれども、そのことはぜひ検討せよと強く主張したことをよく心にとめておいていただきたいということと、逆に、他省庁とそういうことをやる前に、環境庁がやるべき完全救済の手だてをぜひとっていただきたいということを申し上げておきたいと思いますが、いかがでございますか。
  32. 稲村利幸

    稲村国務大臣 今の先生の御意見、よく承ります。
  33. 馬場昇

    馬場委員 そこで、この判決が出てから各関係省庁、もちろん環境庁を含めて、水俣病問題で何か改善した点がありますか。また、この判決が出てからこういうところはやはり改善しなければいかぬなと思って検討している点がありますか。あったら一言ってください。
  34. 渡辺武

    渡辺(武)政府委員 それでは、まず私たちが問われております水質保全法、これはかつての法律でございますが、その関係で申し上げますと、この法律は四十六年にはなくなっておりまして、それを拡充いたしました形での水質汚濁防止法というのが四十六年にでき上がっております。これによりまして、かつて水質保全法が生きておりましたときのようななまぬるいやり方の予防措置ではなくて、日本の全公共用水域につきまして国が定めた一律の排水基準を適用する。従来の水質保全法では必要のあるところを地域を決めてやるということになっておったわけでありますが、全国一律に決めました基準を適用するために全公共用水域についてそれを適用する、こういう法律ができ上がっておりまして、汚染未然防止につきましての制度整備されておりまして、今私たちはそれに基づきまして規制の徹底に努めてまいっておるという段階でございます。したがいまして、この判決を受けたからということで、今申し上げましたようなことがもう既に成立済みでございますので、この判決を機会に新たな対策というようなことは特段考えておらない次第でございます。
  35. 馬場昇

    馬場委員 ほかのところも特段具体的にやっておるということは私も聞いていないわけですが、多分、判決が出て皆さんがやったのはもう控訴しただけだと私は思うのです、  実は長官、私はここで合いろいろなことを言っていますけれども、これは私一人の意見では絶対ないわけでございまして、この判決が出ましてから各新聞社の社説がほとんど全部出ました。新聞の社説というのは国民の声、国民の世論です。それが一社ならともかくとして、ほとんど全社が同じような社説を掲げておるということは、これは世論の表現だ、国民の声だ、こう聞かなきゃならないと思うのですが、そこで言っておりますのをちょっと紹介いたしますと、まず朝日新聞は、「裁かれた水俣病行政」「三十年にわたる水俣病行政に厳しい反省を求めた判決と受け止めたい」と社説で言っております。地元の熊本日日新聞は、「公害行政、根本から見直し迫る」と言って、「今回の判決によって、国・県の公害行政はがけっぷちに立たされた形になった。弱い庶民を守る公害行政とは何かについて、真しな反省が求められている。」それから西日本新聞は、「水俣病判決を後退させるな」「行政がもう少しでも義務を果たしていたら「水俣病は世界最大の公害病にはならなかった」」こういうことを言っております。それから鹿児島の南日本新聞は、出水の関係が多いものですから、「行政を糾弾した水俣病三次判決」、そして「消極的だった行政」、法の目的生命保護にあるというところの主張を展開しております。それから東京新聞は、「公害行政に反省を迫る判決」。毎日新聞は、「公害行政救済の視点を」「行政のからんだ主な水俣病訴訟で国と県はことごとく敗訴している。水俣病対策は全面的見直しを迫られているといってよく、その際忘れてならないのは被害者救済の視点であろう。」読売新聞は、「「水俣判決」が下した行政責任」「生命や健康に関する行政は、「疑わしきは規制する」という構えが必要である。」こういうことを言っておりますし、さらに熊本日日新聞は再び社説を載せまして、「混迷の水俣病行政に望む」として「現行の認定制度被害者救済制度につながっていない一との司法判断はほぼ定着している」「裁判が確定するまで諸対策が現状でよいとは決していえない。判断条件を含む認定制度の見直し作業には早急に着手すべきだと考える。」「水俣病対策が混迷を深める理由は、不知火海一帯に広がった被害の全容がいまだに掌握されていないからである。全容が不明のままでは本来、対策の立てようがないはずである。」今、水俣の原点を洗い直す作業が必要だ、こういうことを口をそろえて社説は全部言っておるわけでございます。  そういう中で、熊本県知事細川さんは、熊本県としても国に対して言うべきことについては言う、全面解決のために最大限の努力を払います、こういうことを言っております。チッソの社長なんか患者の前に十四年間姿をあらわさなかったのですが、今度は姿をあらわして、深くおわびをする、今後は皆さんの要求について話し合いをいたしますという反省を示しておるわけです。そういうことですので、こういう世論、国民の声に耳を傾け、熊本県知事もやっているのですから、控訴の問題は問題としてさっき言われたように後で検討してもらうことにしながらも、水俣病全面解決のために長官が最大限の努力をするということは、この判決を機に患者さんたちにも県民にも国民にも強く表明していただきたいと私は思うのですが、いかがですか。
  36. 稲村利幸

    稲村国務大臣 今、馬場委員の新聞論調を例に引かれての御意見、ごもっともだと思います、私も行政責任者という立場で、知事あるいはチッソの社長の意見も引かれましたが、御意見を踏まえて、控訴控訴として、関係省庁ともう一度その問題についてよく協議してみたいと思います。
  37. 馬場昇

    馬場委員 そこで、今、熊日、地元の新聞にもあったのですけれども、私も前々から主張しておるのですけれども、混迷しておる理由の一つに、水俣病被害の全容が正しく把握されていない、そしてまた水俣病像というのも解明されていない、そういう基盤があやふやなものだから根本的な対策が十分立てられていないのです。これはこの水俣病の歴史ではっきり示してきておるわけです。そこで私はこの環境委員会でそのことを強く主張いたしまして、これは事務局は知っていると思うのですけれども、実はこの環境委員会で、自民党から全政党を含めまして、満場一致で「水俣病問題総合調査に関する件」という決議が行われております。これは昭和五十三年ですから約十年前ですが、その一部でこういうことを言っているのです、「水俣病は事実判明後、二十二年を経た今日においても医学的病像さえも、今なお未解明であり、被害の全体像及びそれが及ぼした影響等について、実態が明らかでない。水俣病問題解決の遅滞をなくし、住民の健康が守られ、環境が改善され、豊かな社会生活がいとなまれるための、完全な水俣病対策を樹立するには、基礎となるべき水俣病問題の総合調査を行う必要がある。」そしてその内容として、「水俣病健康被害、漁業被害及び環境破壊等、医学的、生物学的調査及び各分野への影響」を調査する、「右決議する。」という決議をいたしまして、その当時の山田環境庁長官は、御趣旨に沿ってこの調査について実施をいたしますとこの決議の後で決意を述べておる。それから実に十年たっているのですね。この十年間、その総合調査はどうなったのだ。片一方、私は、水俣病問題総合調査法という法律昭和五十三年にこの委員会に提出して、ずっと審議入りしていただけずに継続、継続ということで実は今日まで及んでおるのです。  だからそういう意味におきまして、きょうはどういう調査をしたかということも内容を聞きたかったのですが、余り時間がございませんので、ここで長官にお願いして要求しておきたいのは、この国会の決議、これは全政党の満場一致の決議なんです。そこで、総合調査をやってみて、そして実態がわかれば、例えば二十万人以上の不知火海沿岸の住民が水銀の被害を受けておるということがわかれば、ちょうど今、原爆の救済のための二つの法律がありますが、ああいう特別立法でもしてこの問題の抜本改正が図られるのじゃないかという期待を持ってこういう提案も実はしているのですけれども、そういう中でやはりこの機会に、今まで県とか国で調査したのも大分あるのですが、それを整理する。そしてまた新たに調査をして実態を明らかにするということを、今までもう十年間に少しはやられたと思いますが、今後さらに強力に進めてもらいたい、全体像を明らかにしてもらいたい、こういうことを思いますが、いかがですか、
  38. 目黒克己

    ○目黒政府委員 御指摘の点につきましては、先生がおっしゃいましたように水俣病に関します総合調査については、総合的な調査の手法を開発するということで研究班が長くやっているわけでございます。その結論が出てないわけでございますが、水俣病被害に係る医学調査については、今後どういう調査が必要であるかどうか、あるいはまたその可能性があるかどうか、あるいはその中身といったようなことにつきまして引き続き鋭意調査研究を今も行っていただいているところでございます。したがいまして、私どもといたしましては、この研究班の調査あるいは結果というものを待って適切に対応してまいりたい、このように考えているところでございます。
  39. 馬場昇

    馬場委員 水俣病は、その広さ、深さ、悲惨さ、地域社会に及ぼした影響、あらゆるものを総合して世界の公害原点と言われておるわけでございまして、こんなに見苦しいことはないわけでございますが、それの調査さえ行っていないというのも、これも世界に冠たるサボタージュじゃないかと私は思うのですよ。そういう意味で、裁判がこんなに多いというのも、これもまた世界の公害原点と言われる恥ずかしいことだと思うのですが、ぜひこういう総合調査ということで実態を明らかにする。十年たっているのですよ、部長。今、鋭意研究中でございますということですが、十年間何しているのです。そういうことですから、さらにこの機会に力を入れていただきたいということを申し上げておきたいと思います。  そこで、次に認定制度、判断条件についてお聞きしておきたいと思うのですが、これは直接行っております熊本県知事が、認定制度は破綻しておる、こういうことを言ったこともあるわけでございます。そして実際、申請者がもう一万人を超したのです。その中で処分者が今五千五百件をちょっと超しております。そのうち認定された者は千六百人ぐらいですが、まだ未処分者が五千人以上おるのです。こういうことで、もう長官も御承知と思いますが、これは行政が不作為違法の状態にあるのだ、違法状態を続けておるということで、だから待たせ賃も出しなさい、こういうぐあいに判決も出ているのです。  判断条件についても、最近の裁判所の判決は、六十年八月の福岡高裁の第二次訴訟判決で、政府の五十二年判断条件は厳格に失して、患者救済制度としては機能をしていないということを福岡高裁ははっきり言っております。六十一年三月に出ました熊本地裁の棄却取消訴訟判決でも、現行認定制度患者救済として機能していない、こういうことを言っておりますし、今回の第三次の判決も全く同じようなことを言っておるわけでございまして、いわゆる判断条件に対して、これはもう患者救済制度として機能していないというのは裁判所の定着した考え方に今なっておるわけでございます。それを、裁判は裁判だ、行政行政だと、何でそんなに唯我独尊的にかたくなにあなた方の態度を守っておらなければいかぬのかそれは行政の越権以外の何ものでもないし、怠慢以外の何物でもないと私は思うのです。  そこで一番問題は、また一番やりやすいのは、一番協力を得やすいのは、あなた方が四十六年次官通達を五十三年次官通達にかえたというところから問題が発生して、トラブルも非常に起こっているのです。何回質問しても、四十六年次官通知と五十二年次官通知は同じだとあなた方は言うのだが、私が見ますと違うのですけれども、こういう判決が出た機会に四十六年次官通達に戻して、そこを出発点にして完全解決患者協力も得ながら進めていこうという気はないですか。
  40. 目黒克己

    ○目黒政府委員 御指摘の判断条件につきましては、裁判等でもいろいろ触れておられます。しかしながら、私どもの方といたしましては、この認定業務は先ほど来申し上げておりますように、医学基礎として救済すべきは救済するという考え方基本になっているものでございまして、この認定業務につきましても、国と県が一体となってこの検診、審査体制の充実、現行の体制の充実ということで努力をしているところでございます。  また、この判断条件につきましては、一昨年、六十年の八月に出ました判決に基づきまして私ども専門家の会議を持ちまして、水俣病の判断条件に関する医学専門家会議の中で、現行の判断条件は妥当である、こういうような御判断をいただいているところでもあり、現在私ども、この判断条件を改めるというふうなことは考えていないわけでございます。
  41. 馬場昇

    馬場委員 今私は具体的に四十六年次官通知に返せばいいじゃないかと言いました。これは同じだとあなた方は言っているのですけれども、実際は違うようです。裁判所が幾つも幾つも積み重ねて、今の法は救済機能を果たしていないと言っている。一人も残らないように被害者救済せいというのが法の精神ですから。  また、二次訴訟判決の後、六十一年六月からあなた方は特別医療事業制度を発足させています。棄却された患者の中から一定の神経症状、四肢の感覚障害で居住歴を有する者に医療費の自己負担分を支給する特別医療事業というのをやっているのですけれども、水俣病でないということで棄却した者に何でそんなことをする必要がある。棄却しているのですから、あなた方は。認定制度というのは棄却か保留です。保留はいずれ棄却か認定になるのですけれども、それ以外のものはないわけです。だから、棄却した者にこういう医療費を公費で支給するというのは矛盾している。ただ、あなた方は棄却するためにそれをつくったのだから、あなた方の切り捨てからいうと矛盾してない。悪らつな意図は貫かれておると私は思うのです。四肢に障害があるわけですから、そういう人は法の精神でいけば当然救済しなければならない。棄却した者に公的な金を出すのは間違い、しかし、その棄却された人は障害があるのだからこれは認定すべきだ、こういうことでございます。こういうことを考えてみますと、今の認定制度というのは、特別医療事業制度も含めましてあなた方は棄却する道具に使っている、こう言わざるを得ません、その証拠には、六十一年度に認定された者は五%ですよ、長官。そして、棄却された者の中で七〇%から八〇%は特別医療費で公的に救済しているのです、こういうことは理論的に矛盾も甚だしい、切り捨て以外の何ものでもない。私がここで主張しておきたいのは、この特別医療事業によって救済されているような人は認定すべきである、それが法の精神であるし裁判所の判断であるということで、そのように改善をされたいということです。そのことの答弁は時間がないので要りません。何もしなかったと言ったのですけれども、この判決が出た後、特別医療事業を何か少し改善したいということを熊本県が言っているというようなことを新聞で見たのですが、この部分についてはどうですか。
  42. 目黒克己

    ○目黒政府委員 先生のお話にございました特別医療事業を含めまして、このような対策は、専門家会議の意見の中で、通称なお書きと呼んでいる「なお、水俣病と診断するには至らないが、医学的に判断困難な事例があることについて留意する必要がある」ということから、私どもそのような対策を打ち出してきたところでございます。先生の今の御指摘の点でございますが、この特別医療事業と申しますのは六十一年からスタートしたものでございまして、実施からまだ一年を経過してないのでございます。したがいまして、現段階では、この事業の内容の見直しはもう少し推移を見たいというふうに考えているところでございます。つまり、事業内容の見直しについてはこの事業の実績も見てみなければいけないだろう、あるいはまた、私どもまだ聞いておりませんが、熊本県等の意向といったものも聞きながらこれは勉強していくべきものではなかろうかな、こういうふうに思っているところでございまして、現在の時点では事業内容の見直しは考えていないというところでございます。
  43. 馬場昇

    馬場委員 長官は時々かわられますが、あなた方はずっとあちらにおる。あなた方に一遍水銀を飲んで苦しんでもらって、対策を十分してもらいたいぐらいな気持ちが私はするのですよ、何か他人事というようなことで責任者としての自覚も責任感じないという態度で、最近、公害行政が非常に後退していると言われておりますが、どんどん役人がかわった後で質問してみるとそういうことを如実に感ずるのです。それはそれとして、姿勢を正してもらいたいと思います、  次に損害の補償について。この判決によりますと国が加害者となったわけですから、国も県も損害賠償しなければならぬという責任があるのですが、あなた方は控訴しているものだからどうしているか知りませんけれども、これはその前に歴史があって、いわゆる損害補償というのは、まず被害者が当時の加害者であるチッソと長い長い話し合いをして補償協定をつくっております。その補償協定によって今補償が行われておるのですが、この患者と加害者チッソが結んだ補償協定というのはいかなることがあっても遵守されるべきだと思うし、これを遵守させるために当時の環境庁長官の三木さん、熊本県知事、そして私ともう一人。水俣市民の代表が立会人になっておるのですが、この際、この損害補償についてのお考えを聞いておきたいと思います。
  44. 目黒克己

    ○目黒政府委員 先ほどの先生のお言葉でございますが、私どもも私どもなりに努力をしてまいっているところでございます。認定業務等にっきましても、審査体制の拡充に努めるとか、御所浦に検診センターを設けるとか、国立水俣病研究センターの充実あるいは特別医療事業といったようなことで努力をしてまいっているところでございます。  それから、今御指摘がございました補償の問題でございます。先生は補償協定のことをおっしゃっているのではなかろうかと思っておりますが、この補償協定につきましては、あくまでも加害者でございますチッソとそれから被害者団体の両当事者間において、民事上の損害賠償問題を解決するものとして締結されたものでございまして、私ども環境庁といたしましては、その是非について申し上げる立場にはないものと考えているのでございます。どうぞ御理解をいただきたいと思います。
  45. 馬場昇

    馬場委員 現在、この損害賠償補償金について、県債は大体どのくらい発行して応援しておるのか、そして今後の県債に対する見通しがわかれば答弁してください。
  46. 加藤陸美

    ○加藤(陸)政府委員 県債の額についてお尋ねでございますが、これはずっと長期間にわたって発行引き受けをいたしてまいっておるものでございます。現在、六十一年まででございますが、四百三億になっております、
  47. 馬場昇

    馬場委員 今後の見通し。
  48. 加藤陸美

    ○加藤(陸)政府委員 申し忘れました。今後の見通し、これはいろいろな不確定要因もあるわけでございますので端的には申し上げにくい点がございます。しかし、既にある程度推定ができるもの等々も含み、かつチッソ株式会社の経営の状況等も勘案いたしますると、額は何とも申し上げかねますが、今後とも御協力をいただかなければならないのではないかなと思っておりますが、なお確定というわけではございません。
  49. 馬場昇

    馬場委員 時間も切迫してまいったのですが、水俣湾のヘドロ処理あるいは排水路等のヘドロ処理であります。水俣湾とか排水路とかのヘドロ処理、環境復元はいつまでにでき上がるのか、あるいはヘドロの埋立地の跡地利用の検討はどうなっているのかということをお知らせください。
  50. 渡辺武

    渡辺(武)政府委員 ヘドロ処理事業でございますけれども、まず水俣湾の部分でございます。熊本県が事業主体、運輸省の第四港湾建設局が施行主体ということで五十二年十月から着手をされました。着手直後工事差しとめ仮処分申請……(馬場委員「いつまでにでき上がるのですか。」と呼ぶ)水俣湾の部分につきましては今も継続中でございますけれども、しゅんせつそのものは六十二年度に終了する予定でございます。ただし、埋め立てました工区がございますが、その上に埋め立てたと申しますか、しゅんせつしましたヘドロの上の表面処理、それから覆土等にはそれからなお若干時間がかかるわけでございます。  それから、丸島百間水路あるいは丸島漁港というところでも、事業主体等は違いますがしゅんせつ事業が行われております。丸島百間水路につきましては、しゅんせつ工事は六十二年度で終了する予定でございます。それから丸島漁港にっきましても、事業主体は違いますけれども、これも六十二年度にしゅんせつ工事は終了する予定となっております。  以上でございます。
  51. 加藤陸美

    ○加藤(陸)政府委員 なお若干、先生お尋ねがございましたその跡地の利用の問題、これはもうるる申し上げませんが、先生御承知のとおり懇談会を設けまして、熊本県知事を初め関係の有識者に入っていただきまして、大いに勉強の努力を続けておるところでございます。その結論と申しますか中間的な取りまとめも含めましてでございますが、この夏前、できれば六月のしかるべき時期にと思っております。先生方の御都合もございますので若干の幅は見ていただきたいと思いますが、そんなことで進めておるところでございます。そういう御意見も踏まえながら、また地元県、市の御意見、御意向も踏まえながらその活用方策は考えてまいりたい。ただし、地盤が安定する前の時間というものは相当ございますので、御了解願いたいと思います。
  52. 馬場昇

    馬場委員 次は長官にお尋ねしたいのですが、後であの地域は水俣芦北地域振興計画をするということに閣議の了解事項で五十三年に決定しておるわけでございます。その一環にもなるわけでございますけれども、私はこの委員会におきまして、あそこに国際環境大学を設立してはどうか、こういうことを何回も提案しております。最初提案いたしましたのは昭和五十五年ですが、当時の鯨岡環境庁長官は私の提案に対して、環境に関する研究は人類のために学問として定着していかなければならぬ問題である、したがって、それを専門とする学校が国の手によってできることは時代の趨勢として当然起こり得る問題であり、水俣という考えただけでもほぞをかむようなその地点に、再び過ちは繰り返しませんという意味で環境大学を設立することは一つの有力な考えだと答弁している。そして、環境庁としては文部省に国際環境大学の設置について検討を申し入れる、こういうことで、実は文部省に国際環境大学の設立の申し入れを環境庁はなさっておるのです。  文部省といたしましては、実は県などとも十分相談して検討したい、こういうことが当時の森文部大臣の答弁になっておるわけでございますが、今現地におきましては、国立国際環境大学をつくった方がいいのか、いや県立でもいいんじゃないか、いや私立でもいいんじゃないか、あるいは第三セクターでもいいんじゃないか、とにかく環境大学を公害原点水俣につくろうじゃないかという話し合いが行われておりまして、一部民間人の手によって私立の環境大学をつくろうというのが具体的に動いておるわけでございます。鯨岡さんも、そういう立派な学問を研究するというのはいいだろう、努力をするということで努力されてきたわけでございますが、現状は、国立とかあるいは設置形態は問わずにあの地域環境大学をつくろうという動きがあるわけですから、こういう点については鯨岡長官の答弁の趣旨を引き継がれまして、新長官も十分援助、努力をいただきたいということを申し上げておきたいと思いますが、いかがでございますか。
  53. 稲村利幸

    稲村国務大臣 馬場先生のお地元でございますし、お地元のそういう御意見もよく尊重しながら慎重に検討してまいりたいと思います。
  54. 馬場昇

    馬場委員 慎重に積極的にということをつけ加えてもらわなければいかぬのですけれども、当然、言葉静かに決意はかたく長官はやられると思いますので、お願いしておきたいと思うのです。  そこで、水俣病研究センターがWHOの協力機関になったということでございますが、最近WHOが、水俣病研究の国際セミナーを水俣で開催してくれないかというような話を環境庁なり外務省なりと話し合いをされておるということを私は聞いておるわけでございます、このWHOからの要請があります水俣病研究の国際セミナーを水俣で開くという問題は、私は非常にいいことだと思います。公害原点のところで公害を撲滅するとか環境を守るとかいう会議が開かれる、そういうものもどんどんやりながら、できます環境大学も国際大学として留学生なんかもどんどん受け入れて、世界の公害の研究センターにするとかというような意味を含めて、あるいは国連とかユネスコとか、そういうところの協力も得ながら大きいものにしてもらいたいという気持ちを持っているのですけれども、そういう意味を含めて、この水俣病の国際セミナー開催問題について今どうなっているのかちょっと聞いておきたいと思います。
  55. 目黒克己

    ○目黒政府委員 御指摘の水俣病研究センターにおきますWHOの協力センター、こういうものが指定されておるわけでございます。ここの事業の一つといたしましてセミナーが計画をされているというふうに私ども聞いておるわけでございます。このセミナーにつきましては、WHOがいろいろな分野におきまして研究施設、WHOの協力センターというものをまず指定いたしますと、その分野で施設とか規模とか研究者の数とかいろいろなものを評価して決めるわけでございますが、その中の一つの事業としてこのセミナーのようなものも入っているわけでございます。  このセミナーにつきましては今計画中でございます。WHO等におきまして恐らく今検討しておられることと思いますけれども、何年度にどういうふうにといったような具体的なものについては私どもまだ承知をいたしてはおりません。来年度とか再来年度とかあるいはいろいろやったらどうか、あるいはやるとしたらどうかといったような構想といいますか考え方程度ということで、今WHOの中で協議が行われているというふうに私ども聞いているところでございます。
  56. 馬場昇

    馬場委員 私は、やはり水俣病というのは二十世紀の人間の欲というか、わがままというか、そういうもので地球が健康を害し、その健康ががんにまで進んだ、この地球の前がん症状というのが水俣に噴き出したのが水俣病だ、こういうぐあいに思います。だから地球は、人類はこの水俣病を完全に解決しなければ、さっき言いましたように、二十一世紀というのは地球、人類に環境はあり得ないじゃないかというような気がしますし、だから、いわゆるがん細胞を取ってしまって完全に解決しなければまた起こるわけですから、そういうことは一水俣、一日本だけでなしに世界の人たち環境問題として、地球にあらわれた前がん症状をみんなでどう根治するか退治してしまうかというような意味において、全世界的な問題としてもまた考える必要があると思います。そういうセミナーなんかは、積極的に外務省なんかとも環境庁は話し合われて、なるべく早く、なるべく立派に行うように努力をしていただきたいということを申し上げておきたいと思います。
  57. 稲村利幸

    稲村国務大臣 ごもっともだと思いますし、これこそ前向きで検討いたしたいと思います。
  58. 馬場昇

    馬場委員 そこで、もう時間が来ましたが、水俣芦北地域振興計画というのを国土庁が中心でやっておられます。これは何か今までのを見ると、県債で四百億ぐらいもう熊本県の県民が借金してあそこに突っ込んでいるわけでございますし、そういう問題がございます。国土庁中心でやっておられますけれども、どうも今まで通常ペースの公共事業を寄せ集めて、それが水俣芦北地域振興計画の事業であるみたいな印象をぬぐい切れないのです。だから、あそこはあそこでこうやって振興するのだ、大きいプロジェクトで研究して一つの案をつくってそれに予算をつけていく、そういう芦北水俣地域振興計画というのを、熊本県も出しておりますが、それにひとつよくなるようなものをつけ加えて努力をしていただきたいということを国土庁に申し上げておきたいと思います。  その中の一つとして、最近、チッソの経営状況はどうなっているのかということと、チッソはこの県債を出しますときに約一千人おりました。この一千人の従業員の雇用を確保するということは至上命題だ、そういうことを条件にしながら県債を出すのだというような議論もいたしまして、通産省も、必ずその一千人体制は維持するように会社に努力するように言います、こういう話がありましたが、現在の経営状況と雇用状況についてちょっと報告してください。
  59. 緒方謙二郎

    緒方政府委員 まず、チッソ株式会社の最近の経営状況でございますが、主力製品でございます石油化学あるいは化学肥料全般が構造的不況に陥っております中で、五十七年ごろまでの二、三年間は辛うじて収支均衡を維持しておったわけでございます。その後、石油化学あるいは化学肥料の分野で特定産業構造改善臨時措置法に基づきます構造改善が推進をされまして、またアメリカの景気の回復等の影響もございまして業況の好転がございました。また、液晶などファインケミカル分野の新しい分野の貢献もございまして、五十八年度の決算で経常利益で五億二千万円の黒、五十九年度が十七億八千万円の黒字、六十年度が二十七億二千万円の経常利益の黒字を計上しておるわけでございます。六十一年度はまだ年度決算が終わっておりませんが、上期は前年同期を上回る十八億三千万円の経常利益を計上しておりまして、近く行われます年度トータルの決算でも、四十億円を上回る経常利益が計上できるものと推定をしております、  それから雇用の方でございますが、チッソの経営の改善を進めるためには、非採算部門を切り捨て、採算性のいい部門を拡大し、また見込みのある新規事業分野を推進するというようなことをやってまいるわけでありまして、その過程で雇用数についてある程度の変動があることはやむを得ないことではないかと思っておりますが、いずれにいたしましても、水俣工場のその地域におきます役割というものは大変大きなものでございますので、雇用の安定を重視しながらチッソ水俣工場の維持発展を図ってまいりたいと考えておるところでございます。また、チッソの会社の方でも、新規事業の展開などにっきましては、チッソ関係の他の工場ではなく、水俣工場を中心に重点的に改善をしていくというような方針で取り組んでいるように承知をしております。
  60. 馬場昇

    馬場委員 時間が参りましたので終わりますが、長官、先ほどから言っておりますように、ぜひこの判決で一回原点に戻って、水俣病の完全解決のために最大限の努力をお願いしたいということで、ぜひその決意の答弁をお聞きして終わりたいと思います。
  61. 稲村利幸

    稲村国務大臣 先生の水俣病患者に対しての大変思いやりのある御意見をずっと拝聴いたしておりまして、なるべく先生の御趣旨に沿うべく努力したいと思います。
  62. 馬場昇

    馬場委員 終わります。
  63. 林大幹

    林委員長 午後一時より再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時四十六分休憩      ――――◇―――――     午後一時一分開議
  64. 林大幹

    林委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。遠藤和良君。
  65. 遠藤和良

    遠藤(和)委員 午前中にもいわゆる水俣病判決を中心にいたしました質問があったわけでございますが、私も、水俣病というのはいわゆる公害原点と言われているものでございまして、大変大事な問題であるという認識のもとに、三月三十日に行われました熊本地裁の判決をもとにして質問をしてみたいと思っております。  今回の判決は、初めて行政責任というものが裁判で裁かれたわけでございますけれども、国と県に行政責任がある、こういう意味では大変画期的な判決であったと考えております。午前中の大臣のお話では、この判決についてどういうふうに受けとめておるのかという質問に、大変残念に思うというふうな答弁でございまして、いささか私は、それこそ遺憾に思っているものでございます。判決そのものについての受けとめ方については先ほど御答弁がございましたので、重複を避けまして、基本的に幾つかの点を確認をしておきたいと思います。  まず、いわゆる行政の規制権限の問題でございますけれども、一般的に、行政当局が法律を適用して規制権限を行使するかどうかというのは行政の幅広い裁量権に任されている場合が多いのでございますが、この判決では、とはいっても国民生命や健康に関する重大な危険を目の前にして何もしないということは、いわゆる裁量権の消極的な乱用である、こういうふうに判決文では言っているわけでございます。このことにつきまして、環境行政の最高責任者である環境庁長官はどのように解釈をしておるのか、この点を明確にしていただきたいと思うものでございます。
  66. 稲村利幸

    稲村国務大臣 遠藤先生の御質問に対して、先ほど馬場委員にもお答えいたしましたとおり、患者方々救済については十分意を尽くさなければならない、こういう気持ちで国、県一体となって現行制度の着実な運用に努めていきたいということでございます。それと、この間の判決にっきましては、残念というか、言葉が非常に難しいので、国家賠償法に基づく国の責任ということを言われたわけでございますので、関係省庁控訴をしている現実でございます。そういう点を配慮され、先生からいろいろと御推察いただければと思うのですけれども……。
  67. 遠藤和良

    遠藤(和)委員 そういう話を午前中伺ったものですから、私は、法律の中身といいますか判決の中身についてどういうふうに受けとめておるのかという話を聞いているのでございまして、いわゆる行政の裁量権の消極的乱用という判決文があるわけでございますが、このことについてどのように理解をしておるのかということを聞いておるのです。
  68. 渡辺武

    渡辺(武)政府委員 先生御指摘のように、判決の中におきましては行政権の消極的乱用といったような判断を下されまして、国それから県に対して責任があるということをおっしゃっておるわけでございます。裁判官のお考えだと思いますけれども、これは関係省庁四つございまして、それぞれ個別の法律に基づく措置をとらなかったということを言われておるのでございますが、私たち環境庁関係では、かつての水質保全法、これを発動しなかったということが消極的権限の乱用である、こう言われておるわけでございます。状況等を勘案されての御判断であろうかと思うのですが、法律を実際に適用していくというそのための条件なり何なりということを判決が言われております当時に当てはめて私たち考えてみましたときには、条件が熟していなかった、残念でございますけれども熟していなかった、したがって、水質保全法で言いますと水質基準というのはつくり得なかったのだということでございまして、私たちは決してそのような権利の乱用ということで事柄をしなかったということではないというふうに考えておる次第でございます。各省いろいろ相談いたしました。最終的には法務省とも御相談申し上げまして控訴することになったものでございます、
  69. 遠藤和良

    遠藤(和)委員 もう一つ、判決文の中では、国民生命、健康に危険が迫っている場合、行政庁は積極的にいろいろな法律を使い強力な行政指導をして危険を防止し、排除する義務がある、こういうふうに注文をつけているわけでございます。法律があってその法律を使わなかった、こういう責任もございますが、一方においてどの法律を適用すべきか適法がなかった、したがって、その周辺にある法律を使って最大限人間の生命、健康を守っていく、その立場になるのが行政府の責任だ、こういうふうにさらに突っ込んだ注文をつけているわけでございます。行政は大変遅きに失している、非常に消極的過ぎている、こういうふうなことが今回の判決の大きな争点ではないか、明らかになった部分ではないかなと思うわけでございますが、そこの部分についてはどのようにお考えになりますか。
  70. 渡辺武

    渡辺(武)政府委員 国民生命あるいは健康を保持し、快適な生活を営めるようにするというような趣旨、それをその状態、三十四年当時に当てはめてこの法の趣旨を見た場合には、そのような状態にもう来ていたんじゃないか発動すべき時期に来ていたんじゃないか、そしてそれは国家公務員あるいは地方公務員の義務となっておる、そしてそれを怠った、このように立論をされておるわけでございます。国家公務員の義務となっておるかどうかというところがまさに問題でありまして、個別具体的ないろいろな状況に即しまして、そのことに関係いたします公務員が一切のそのような事柄を十分に把握し、そして技術的にもあるいはその当時の状況とあわせて自分のとり得る手段が本当にあり得るのかどうかということを判断する義務はあろうかと思いますけれども、それが法律上の義務となってしまっておったというところについては、やはりこれは非常に争いのあるところでありまして、一審の判決が出る前の審理の段階におきましてもいろいろ御議論があったところであります。裁判官はそのような、先ほど申しましたような立場に立たれまして言われたわけでございますけれども、私たちといたしましては、それはその仕事に携わっておりました公務員がそれぞれそのような義務を負うに至ったというところまでは至らないのではないかということを考えておるわけでございます。     〔委員長退席、戸沢委員長代理着席〕
  71. 遠藤和良

    遠藤(和)委員 行政の中でも特にいわゆる公害行政というものを行う立場の者として常に考えていかなければならないことは、疑わしきは規制をしていく、人間の生命を守るということが一番大事なことでございますので、その行政官の責任のあるなしにとらわれず、さらにこの判決で言っていることより前面に出て、行政というものは国民生命と財産あるいは健康を守っていくという立場で行っていくのが、私は行政官の責任だと考えるわけでございます。それがなお判決より後ろの方で行政官の責任を論じておるということは環境行政を行っていく者としては大変に消極的である、後退をしている、私はこのように感ぜざるを得ないわけでございますが、長官環境行政を行うに当たって、疑わしきは規制をしていく、そこまでやって人間の生命、健康を守っていくのだ、こういう立場に立つべきだと思うわけでございますが、そういう考え方はございますか、     〔戸沢委員長代理退席、委員長着席〕
  72. 稲村利幸

    稲村国務大臣 ごもっともと思いますが、一概にそういうふうに割り切れないところに難しさがあるのだと思いまして、それにしても、医学的に見てお困りの患者さんに対して救済しなければならない点は救済をしていくという、今のところこういう方針でございます。
  73. 遠藤和良

    遠藤(和)委員 水俣病認定基準でございますけれども、今回の判決では、水俣病認定審査会が棄却処分にした申請者に対しても全員水俣病と認める判断を示しているわけですね。また、水俣病の病像でございますけれども、これについても、神経疾患以外にも血管あるいは腎臓、肝臓障害などを来す全身性疾患であるというふうに原告側の主張をほぼ全面的に認める判断を下しているわけでございます。私は、こういった判決の趣旨に沿ってこの際認定基準並びに病像を見直すことがぜひ必要ではないか、少なくともそのぐらいは行うべきではないかという意見を持っているものでございますけれども、その点はどのように考えておりますか。
  74. 目黒克己

    ○目黒政府委員 御指摘の病像等でございますが、確かに判決によりましていろいろなものがあるのは事実でございます。一例として申し上げますれば、熊本二次訴訟と呼ばれております六十年八月の判決、ここでは全身性疾患説を退けまして神経系疾患といったようなことで述べておるのでございますが、今度の熊本三次訴訟、六十二年三里二十日の判決文では全身性疾患、今先生がおっしゃったようなことを言っているわけでございます。裁判の中でもいろいろ取り上げ方があるのは事実でございますし、また、この判決を踏まえまして各方面でいろいろ御意見があるのも事実でございます、しかしながら、私どもといたしましては、先ほども申し上げましたけれども、六十年の八月以降十月に専門家の会議を持ちまして、現行の判断基準については妥当であるという趣旨の御意見を賜り、私ども、その月のうちに変えないという判断をしたわけでございます。したがいまして、私どもといたしましては、現在の時点でこの判断条件を変えるということについては考えていないわけでございまして、極めて妥当なものというふうに私ども考えているところでございます。
  75. 遠藤和良

    遠藤(和)委員 水俣病発生してからもう三十年以上たっているわけですね。いまだに水俣病全面解決はされておらぬ。患者の皆さんには、行政は頼ってもしようがない、こういうあきらめの気持ちがある。じゃ頼るのは何かといいますと、これは裁判所しかないのだ、裁判所に行って水俣病認定をしていただく。これは考えてみると本当におかしな話なんですね。認定するのはやはり行政がやるべきでありまして、裁判所が水俣病認定するというのは大変おかしい話でございます。しかし、そこに持っていかなければ解決ができないという立場に立たされているわけですね。しかも、今回また控訴ということになりますとさらに時間がかかってくるわけでございまして、もっと行政として司法によらないで救済をする道というものを考えるべきである、ぜひそうしていただきたいと思うものでございます。これは法律を超えて人道的な問題としても、三十年放置したということは余りにも公害行政が後退をしておる、消極的である、こういうふうに言われてもしようがないのじゃないかと思うわけでございます。  そこで長官にお伺いしたいわけでございますが、今回の所信表明の中でも、二行にわたってこの水俣病の問題について言及をされているわけでございます。「認定業務の一層の促進等その推進に努めてまいります。」とございますけれども、具体的に何か計画がおありなのでしょうか。
  76. 目黒克己

    ○目黒政府委員 御指摘のこの認定業務推進ということでございますが、昭和六十一年度から、私ども従来に引き続きましてさらに検診、審査の体制を拡充してきたところでございます。熊本県の例を挙げてみますると、熊本県におきます月間二百五十人の検診、それから二百人の審査の体制というものへ移行している、あるいは離島に在住しております申請者のために御所浦に検診センターを設置する、あるいはこのほか棄却者のうち一定の要件を満たす者につきまして、その者の有する症状の原因解明ということに資するために、医療費の自己負担分を補助する特別医療事業を実施するといったような認定業務を一層促進するということを具体的に行ってまいりましたし、またそれを引き続き六十二年度に向かってさらに充実強化してまいりたい、こういうことでございます。
  77. 遠藤和良

    遠藤(和)委員 今、水俣病認定申請者治療研究事業というのがございますね。それから今度新しく特別医療事業というのを始められたわけでございますが、いわゆる一定の水俣病認定申請者に対して行う治療研究事業では、はり、きゅう、マッサージの施術療養費が支給されるということが明文化されておりますが、この水俣病認定申請を棄却された者のうち、水俣病に類似する一定の神経症状を有する者に対して行う特別医療事業ではこの定めがありませんね。これはどうしてないのですか、
  78. 目黒克己

    ○目黒政府委員 治療研究事業と特別医療事業というものの間に御指摘のような差があるということは事実でございます。両事業につきましては、治療研究事業については、結果として認定審査が長期にわたっている申請者に対しまして特に配慮を払う必要があるために行うということでございますし、また特別医療事業は、ただいま先生の方からお話がございましたように棄却者のうち一定の期間要件を満たす者について、その者の有する症状の原因解明に資するということを目的としているものでございまして、それぞれの趣旨、目的の範囲内で必要な事業を行うこととしているわけでございます。御指摘の点につきましても、特にこの特別医療事業につきましては、六十一年の六月から具体的に始まったものでもございますし、まだ一年を経過しておりませんし、現段階では事業の内容の見直しということについては考えておらないのでございます。しかしながら、今後この事業の実績あるいは推移といったようなものを見守ってまいりたい、そしてまた熊本県等の意向等も聞きながら勉強してまいりたい、このように考えておるところでございます。
  79. 遠藤和良

    遠藤(和)委員 もう少し詳しく申し上げますと、申請者治療研究事業では、はり、きゅう、マッサージ合わせて一カ月五回を限度として、はりまたはきゅうのみの場合は一回につき千円、はり、きゅう併用の場合は一回につき千五百円、マッサージの場合は一回につき六百円という定額支給制度ですね。一方の特別医療事業では要するにほかの保険医療と同じ扱いで、医者の同意書がある者に限ってはり、きゅう、マッサージの施術を行い、その自己負担分を支給するという考え方である、このように承知しますが、間違いございませんか。
  80. 目黒克己

    ○目黒政府委員 そのとおりでございます、
  81. 遠藤和良

    遠藤(和)委員 それでこの差がどうしてあるのかということを伺っているわけです。一方においてはいわゆる定額で支給を行い、一方においては保険医療の枠の中で扱う。何でこういうふうに扱いを変えているのですか。
  82. 目黒克己

    ○目黒政府委員 これは、基本的にはこの二つの事業が別個にスタートしたということが一つございます。先ほど申し上げましたように、特別医療事業の方はどちらかというと考え方が、先生おっしゃいましたように棄却した者に出す、こういうことでございます。それから治療研究事業の方は申請をする者がやる、こういうことでございます。それで、特にこの特別医療事業については、原因を究明するということが一つの目的になっていることは事実でございます。したがいまして、はり、きゅうといったような治療そのものが原因究明に役に立つか立たないかということについても今後とも議論をして、あるいは勉強していかなければいけないのじゃないか、こういうふうに考えている部分もございますCいずれにいたしましても、はり、きゅうを同じように行うかどうかということについては、技術的にもあるいは制度の上でも、この原因究明ということ、あるいは棄却者に対して、水俣病ではないという判断の者に行うということについて今なお論議があるところでございますので、私どもの方としてはこれを入れていない、こういうことでございます。
  83. 遠藤和良

    遠藤(和)委員 原因究明をやるために医師の同意書がある者に限ってはり、きゅうの療養を行う。そうすると、治療研究事業の方は原因究明はやらぬのですか。
  84. 目黒克己

    ○目黒政府委員 治療研究事業というのは、あくまでも水俣病ではないかということで申請をされた方々に対しまして申請した事項認定に相当するかどうかという判断以前の問題でございまして、また先ほど来いろいろ申し上げておりますように、この認定審査が長期にわたっているというふうなこともございまして、それに特に配慮を行うといったようなことから出しているのが治療研究事業でございます。したがいまして、治療研究事業といってはり、きゅう、マッサージを含めてやっておりますものにつきましては、まだ特に原因究明といったようなことではなく、認定審査が長期にわたる者に対する配慮ということでやっているという趣旨から私ども入れていないということでございます。
  85. 遠藤和良

    遠藤(和)委員 時間がないので先に進みますけれども、ほかにもいろいろ差異があるわけでございます。申請者治療研究事業では、交通費見合いの研究治療手当や介添え手当が支給されますが、特別医療事業では支給されませんね。この特別医療事業は六十一年六月から開始されたと聞いておりますが、これまでの間に、昭和六十一年六月から六十二年三月までの間に認定を棄却された人が千二百六十人、そのうち特別医療事業の要件を満たす人が八百四十四人、その中で特別医療を受給した人は四百六十二人でございまして、残りのうち再申請した人は二百十五人、態度が不明の方が百六十六人いるわけです。これを考えてみますと、特別医療事業というのは患者の皆さん方から必ずしも歓迎されていない。これは事業の説明が十分に行き渡ってないという面もあると思うのですけれども、少なくとも申請者治療研究事業の水準に拡充すべきではないのかという考えを持ちますが、この点はいかがでございますか。
  86. 目黒克己

    ○目黒政府委員 私ども、この特別医療事業と申しますものをスタートいたしましたのは、治療研究事業がスタートいたしましたのがたしか約十年前だと記憶いたしておりますが、十年ぶりにと申しますか十年の間を置きまして新たにこのような事業に踏み切ったわけでございます。その踏み切りました経緯と申しますのは、先ほど申し上げましたように、六十年の裁判を契機として専門家の会議で、水俣病と診断するには至らないけれどもなお配慮を要するものがあるといったような趣旨のなお書きをもとにいたしまして出てきたものでございまして、私ども必ずしもこれが受け入れられてないというふうには承知していないわけでございまして、私どもの方といたしましては、この事業は徐々に理解されつつある、こういうふうに考えているところでございます。  ちなみに月別の件数を申し上げますと、六十一年七月末に百五十四名の要件該当者数に対しまして適用いたしました者が五十一名ございますが、その後適用いたした者の月別の数を申し上げますと、徐々に増加をいたしておりまして、六十一年七月初めに五十一名であったものが十二月末には二百五十五名、さらに三月末には四百六十三名というふうに該当者数あるいは適用者数がふえているわけでございますので、私はこの増加している傾向を見てみまして、恐らく今後大いに拡大していくのではなかろうか、数はふえて、受け入れられていくのではなかろうかと考え、それ相応に私ども行政の方も努力してまいりたい、このように考えているところでございます。
  87. 遠藤和良

    遠藤(和)委員 長官にお伺いしたいのですけれども、長官は就任以来大変積極的でいらっしゃいまして、いわゆる環境行政は受け身ではなくて積極的に打って出る役所にしたい、こういうふうな考えで、御自身も就任早々、昨年十月でございましたか、知床のシマフクロウとか、ことしの一月には沖縄のヤンバルクイナとかノグチゲラを守るために現地に赴かれているわけでございます。こういう積極的な姿勢をぜひ公害行政にも持っていただきたいと要望するわけでございますが、水俣に伺われる気持ちはあるかないかこの点を確認したいと思います。
  88. 稲村利幸

    稲村国務大臣 これまで歴代の長官の中で、三木先生や幾多かの長官も現地に足を運んだ事実はよく承知しておりますし、その経緯についても私なりに文書で目を通させていただいておりますが、この問題がいろいろな意味で複雑で、私がただそこへ行くことによって解決するという簡単なものではありません。先生の御意見を私なりによく拝聴させていただきまして、受けとめさせていただきまして考えたいと思います。
  89. 遠藤和良

    遠藤(和)委員 今、公害行政は大変おくれているというか、後退をしているというふうな指摘が各界からあるわけでございまして、ぜひそういった意味で、人間の生命を守るために積極的な活動をされることを望みます、  最後に一問だけお願いをしたいことがございますが、フロンガスの危険性でございます。今大変憂慮されているところでございますが、アメリカでは既に五十三年からスプレー類への使用を全面禁止しております、日本では生産量がここのところ急ピッチでかなり増大をしているわけですね。昭和四十九年に五万五千トン、五十四年は八万二千トン、五十九年は十五万トン、六十一年は十六万七千トン、大変増加しておりまして、いわゆる成層圏のオゾンを破壊するのではないか、こういうことが世界各国から憂慮されているわけでございます。世界の皆さんの批判を和らげていくといいますか、地球環境保全をしていくという大きな立場からこの問題はぜひとも積極的な取り組みをお願いしたいことでございますが、今環境庁としてはどういうふうな取り組みをしておるのですか。
  90. 長谷川慧重

    ○長谷川(慧)政府委員 お答えいたします。  フロンガスによります成層圏のオゾン層の現状の問題は、ただいま先生からいろいろお話がございましたとおりでございまして、地球規模の環境悪化につながる極めて重大な問題であるということでございまして、私どもといたしましては、手おくれにならないうちに具体的対策を講ずる必要があるというぐあいに考えているところでございます。このため、成層圏オゾン層科学の分野で我が国を代表する専門家の方々にお集まりいただきまして、検討会を設置いたしておるところでございます。そしてこの中におきまして、フロンガスの成層圏オゾンに与える影響や、人の健康に与える影響等に関します最新の科学的知見につきまして整理、評価を行いまして、今後の対応策の作成に当たられるべく検討をお願いいたしているところでございます。それで、専門家の方々には熱心に御検討いただいておるところでございまして、近く何らかの報告が取りまとめられるというぐあいに期待いたしておるところでございますが、環境庁といたしましてはその内容を踏まえまして、先生のお言葉もございますが、関係省庁と御相談の上に適切な対応策を講じてまいりたいというぐあいに考えておるところでございます。
  91. 遠藤和良

    遠藤(和)委員 以上で終わります。ありがとうございました。
  92. 林大幹

    林委員長 斉藤節君。
  93. 斉藤節

    斉藤(節)委員 時間が大分なくなってきましたので、残念でありますけれども、まず、長官所信表明演説に対しまして御質問申し上げたいと思います。  長官所信表明、大変私は敬意を持って聞かしていただいたわけであります、国民の健康と生活公害から守っていこうとする長官の並み並みならぬ御努力、また決意のほどを感じまして、これで我が国環境行政も盤石であろう、そんなふうに確信いたしたわけでありますけれども、そこで私は、長官の御決意と本年度の環境庁重点施策事項との関係について質問をしたいと思うわけでございます。  まず、長官所信表明演説の中の七ページから十二ページまでの間、第二、第三、第四とありますけれども、第二は「安全で良好な環境確保」、第三は「緑と潤いのある環境積極的形成」、それから第四は「野生生物保護等自然環境保全」、この部分は六十二年度の環境庁重点事項の第二、第三、第四に相当すると思うわけでございますが、それでよろしいのでしょうか。
  94. 山内豊徳

    ○山内政府委員 おおむね一致している、そのとおりでございます。
  95. 斉藤節

    斉藤(節)委員 では、これらの事項の今年度の予算をちょっと見てみますと、一億二千八百万円も減額になっているわけでありますけれども、これで昨年よりも力を入れて環境行政をやっていこうということになるのでございましょうか。まず長官の御決意のほどをお聞かせ願いたい、
  96. 稲村利幸

    稲村国務大臣 私が所信で述べました重点事項につきましても、厳しい財政事情のもとで、若干ずつですが残念ながら減少をしているものがございます。個々施策の間で予算の重点的な配分に努めまして所期の目的が達成できたら、そういうふうに考えておりますが、詳細は政府委員から少し補わしていただきます。
  97. 山内豊徳

    ○山内政府委員 御指摘のとおり、大臣所信あるいは環境庁重点事項の中で項目を挙げたものでありましても、予算の額という面から見ますと、それぞれ合わせますと先生御指摘のように一億というオーダーの滅が出ているのはそのとおりでございます。御存じと思いますが、環境庁の全体の予算は四百七十三億と一六%も伸びたのでございますが、これらの政策予算については、総括的には減っているのは事実でございます。  ただ、御理解いただきたいと思いますのは、例えば、安全で良好な環境確保、三十三億ばかりありました予算が三十二億台に落ちているという事実はあるのでございますが、中身をごらんいただきたいと言いたいのは、新規に約四億の新しい項目を計上した有害化学物質対策のようなものがあります。そのかわり、やはり財源的にといいますか、全体の財政状況の枠の中で見直さざるを得ないということで、例えば都道府県の施設整備的なものは少し削減をする、そのために予算の計上の上で、金額の上では新規に持ち出したものよりはそういうふうに整理をした額が大きいという結果になっておりますが、私どもはそれぞれに重点として挙げましたもの、例えば今申しました安全で良好な環境確保は約三十二億九千万、自然環境保全に至りましてもやはり三十一億というそれぞれの予算を確保しておりますので、大臣申しましたように、全体としてはこの運用をすることによって重点としての役割は果たせる予算である、そのように信じておるわけでございます。     〔委員長退席、戸沢委員長代理着席〕
  98. 斉藤節

    斉藤(節)委員 時間がありませんので、簡単に御説明していただいて結構であります。  そこで、減額になっている項目、例えば水質保全対策の総合的推進、これの千八百万円だとかあるいは各種公害対策推進だとか、こういったようなものが減っているわけですね。こういう減額になったというのは、もう去年ほど予算は要らなくなったという意味で減らしたのでしょうか。その辺はどうですか。
  99. 山内豊徳

    ○山内政府委員 総体的に申しますと、今例示を挙げましたように、施設整備的なもので先送りをしても何とかしのげるというものの額を前年より落としたもの、それからもう一つは、今まで市町村単位にアメニティーのようなもので補助金を組んでいたものを、財政的なことと、もう一つは、市町村単位ではなくて県を中心に市町村をまとめてもらおうという発想から都道府県の補助システムに変えた、そういうことで言葉は憩うございますが、予算計上額を何とか工夫できたものが幾つがあった、ほとんどそれによるものと御理解いただきたいと思います。
  100. 斉藤節

    斉藤(節)委員 それでわかったわけでありますけれども、特にことし重点政策としてふえておりますのは、有害化学物質対策の総合的推進というところで三千三百万円ふえているわけであります。これの中身をちょっと見させていただきますと、何か研究費が随分多くなっているのです、  実は私、これは場所、会社名ははっきり申し上げませんけれども、ある電気機器メーカー、ここを見学といいますか視察したことがあるのです。これは昨年やったのですが、そのとき感じましたことは、あそこでは1・1・1トリクロロエタンだとかそれからメタン、こういったものを使ってプリント基板を洗浄していたわけですけれども、そこでやっていましたのは、最終的に排気ガスを集めまして活性炭方法で処理しているわけです。それで完全にキャッチして、後で活性炭を酸洗いしてその水を回収していくということでやっているわけですけれども、何回か繰り返しているうちに活性炭は劣化するわけです。劣化して、では全然くっつかなくなったのかというと、実際くっつかないのですけれども、むしろくっついたのがとれなくなってしまったために処理できなくなるわけです。  そこで、活性炭をどうしているのですかと私聞きましたところ、それは廃棄物処理の業者に渡しているのだという。環境六法を見ても、それから環境庁から出している「IC産業環境保全関連資料」などにおける有機物質の廃ガスの処理は活性炭法を使っているということですけれども、使った後の活性炭をどう処理しているかについては何らないのです。持っていった業者がどんなことをやっているか私はそこまで視察していないからわからなかったのでありますけれども、大抵焼却あるいは埋めたりしているという。もしそうだとすると、活性炭は御承知のように炭素でありますから、そこにくっついていたトリクロロエタンだとかメタンが後でまた土の中に入ってしまう。また焼いた場合、非常に安定ですから飛んでしまうとか、そういうふうなことでまた地上に降ってきて、いわゆる地下水汚染の原因になっているという場合が非常に多いわけでございます。そういうことで、活性炭は活性炭として処理するということになっているが、活性炭についているそういう有害物質についてどうするということはないのです。私はそこが盲点じゃないかと思うのですけれども、その辺までの監視を環境庁さんはやっていただきたいと思うのです。その辺はどのくらいやっているかお答えをいただきたいと思います。
  101. 渡辺武

    渡辺(武)政府委員 御指摘のように、近年の先端産業、先端技術の発展に伴いまして、産業廃棄物の中にも、従来のようなものばかりでございませんで、有害物質を含む廃棄物が多くなってきておりまして、この処理を誤りますとこの廃棄物を通じて新たな環境汚染が生ずるということで、環境庁としても従来から非常に重大な関心を持っておりまして、調査研究等に努めておるところでございます。ところが、現実の廃棄物の処理ということになりますと、廃棄物処理法という法律がございますが、厚生省が所管しておりまして、個々事業者に対する指導等をやられておるわけでございます。私たち環境庁のかかわり合いはその廃棄物の最終処分についての基準をつくるというところにあるわけでございまして、一部を所管させていただいておるという状態でございます。したがいまして、廃棄物の処理についてのお話でもございますし、私たち、担当省庁である厚生省とも密接によく連絡をとりまして、適正な処理の推進に努めてまいりたいと基本的に思っておるところでございます。
  102. 斉藤節

    斉藤(節)委員 確かに廃棄物に関しては厚生省が所轄官庁になりますけれども、そこで処理の仕方が悪いために地下水が汚れたとなると、これは環境庁の問題になるわけですね。そういうことで、確かに今申されたように厚生省に十分その辺を申し入れていただきたいと思うのでありますけれども、活性炭は活性炭ということで処理しますので、御案内のように活性炭というのは、さっきも申したようにいろいろなものをたくさんくっつけるわけですから、そういうくっついているものも一緒に活性炭の処理としてやられたのでは、そこについていたものが環境汚染になるわけです。そういう意味で、活性炭だけあるいはトリクロロメタンならメタンだけじゃなくて、別々にしないで、くっついているものもあるということを御承知おき願いたいと私は思うわけでございます。その辺よろしくお願いします。  さて次は、長官所信表明の中で最後の第六のところに「地球的規模環境保全国際協力推進」という言葉がありますけれども、「二国間、多国間の環境協力をさらに強化推進してまいる」とは具体的に一体どういうことをやられようとしているのか、その辺をお尋ねしたいと思うわけであります。  予算の方を見ますと、六十二年度は一億四千六百万円で昨年より千五百万円増加しているわけでありますけれども、我が国の黒字が今や一千億ドルを超えたような段階で、二十一世紀に向けて地球環境保全国際協力をやっていくということですが、その額にしては余りにも少な過ぎるのではないか、私はそんなように感ずるわけですけれども、長官はどのようにお考えになりますか。
  103. 山内豊徳

    ○山内政府委員 まず事務的な説明をさせていただきます。  ここで述べております二国間の協力と多数国間ですが、二国間というのは、特定の国から要請があった場合に主としてJICA、国際協力事業団を通す場合が多いのでありますが、特定の問題に環境庁として協力しているというのが幾つか例がございます。それから多国間というのは、過日も特別委員会が開かれましたが、UNEPのような国際的機関に外務省予算で拠出金を計上して協力する、あるいはそういうものに私どもも直接出席してということでございます。  予算面でぜひ御理解いただきたいのは、確かに環境庁予算の中の国際協力予算というのは、本年度でも、ふえましても一億四千万円という金額でございますが、実は環境関係国際協力も広い意味でのODA予算と思いますが、国際海外協力予算の中で主として外務省に計上されているもの、あるいは国際協力事業団、JICAに計上されているものとございまして、その中からテーマなり国の要請に応じて環境対策面の予算を使わせていただくという形になっております。したがいまして、一億三千万がことし一億四千六百万に一千五百万円伸びましたのは主として会議費とか調査派遣費という形でございますので、予算の性格上、環境庁国際協力予算ではそういう金額になるという前提だけはよく踏まえて御理解願いたいと思います。     〔戸沢委員長代理退席、委員長着席〕
  104. 稲村利幸

    稲村国務大臣 国際環境協力は、御指摘の当庁予算のほかにJICAを通じてのものがございますが、発展途上国、開発途上国も、こちらからこうやったら要求している国にとってもう少し有効だろうと思うのです。簡単に言えば、道路とか橋とかということを向こうはすぐ言うのですが、出先機関でもう少し現地との連絡を綿密にとっていただいて、本当に環境をよくするという方向で指導ができたら、協力ができたらというふうに、少ない予算を有効に使ってもらいたいと私は思います。  さらに、UNEPを通じた国連活動の支援、また我が国の提唱により設立された国連環境特別委員会の報告書において、今や環境問題は地球的規模で広がりを見せており、その解決国際協力が極めて重要だと言うように、熱帯雨林や砂漠化の問題等々で我が国の果たす役目は大きいものがありますので、その辺のJICAの予算、これまで指摘されたミスが幾つかある中を、私どももそういう点を細かく神経を使って有効に環境問題で使わせてもらえたらと思っております。
  105. 斉藤節

    斉藤(節)委員 我が国公害に対する研究は世界的にも相当進んでいると私は思うわけで、そのようなノーハウを国際的に諸外国で十分使えるように、そのためにも予算化をできるだけ多くしていただきたい、そんなように私は考えているわけでございますので、よろしくお願いしたいと思います。  そこで私は、長官所信表明の中でちょっと物足りなく感じたのは海浜でございます。海浜についてのお話が出ていなかったのではないか。水質保全だとか閉鎖性の湾とか湖沼水質改善ということは言われておりますけれども、この海辺、海浜の保全、これは私は非常に大事だなと思うのでございます。海浜の重要性については私から何も述べることもないのでありますけれども、実際問題申し上げてみますと、生態学的価値が非常に高いということですね。あるいは陸界とそれから水界との接点である、そういう意味で非常に生態学的に重要な場所ということが言えると思うのです。特に、生物の生産活動が活発な場所でもあるし、また栄養が非常に豊富で、生物の産卵場所でもある。それからウミドリの寄留地でもあるし、またこういう海浜というのは非常に波がありまして海水の撹伴がよく行われるために、酸素を十分吸収するために浄化能力が出ておる。そういう点で非常に大事であるわけです。また人間生活とのかかわりだって、これは申し上げるまでもなく、散策したりあるいは景観を楽しんだり、魚を釣ったり泳いだり、あるいはいろいろウインドサーフィンだとかそういったようなもので楽しんだりするわけでありますけれども、そういう意味で教育的価値が非常に高い、自然の博物館とも言えるのじゃないかというほど海浜というのは大事だと私は思うわけでございます。  しかしながら、最近非常に埋め立てが多いのですね。まずこの埋め立ての実態でありますけれども、これは環境庁が十一年前、一九七六年に調査されて発表されたものによりますと、自然海岸が五九・六%、十一年前で五九・六%しかないのです、それから半分自然海岸になっておるというようなところが一九・二%、人工海岸が二一・二%ですね。トータル一〇〇%になるわけでありますけれども、このように自然海岸が六割に満たないぐらいにまで減っている。それから大分埋め立てられておりますのでまた減っているんじゃないかと思うのですけれども、その調査はございますか。
  106. 古賀章介

    ○古賀政府委員 先生の今御指摘になりました調査昭和五十三年度の調査でございます。その後、昭和五十九年度に実施いたしました海岸調査によりますと、我が国の海岸線の延長は三万二千四百七十二キロメートルでございまして、そのうち自然海岸は一万八千四百二キロメートルで、総延長に占める比率は五六・七%でございます。これを五十三年度の比率と比較いたしますと、自然海岸におきまして二・三%の減少になっておるということでございます。
  107. 斉藤節

    斉藤(節)委員 そこで、そのようにどんどん減ってきているわけでありますが、今後の課題として私は長官に提案したいのでありますけれども、海浜地帯保全法というものをつくってはどうかな、そんなふうに思うわけであります。現行法体制を見ますと、開発促進とそれから埋め立て促進、例えば公有水面埋立法だとか、こういうふうに埋め立てることを促進する法律は非常に整っているが、埋め立てを規制して海浜の環境保全しようという法はないと言えると思うのです。そういう点で、こういう海浜地帯保全法といったようなものをどうかな、そういう点、長官お考えあるでしょうか。
  108. 古賀章介

    ○古賀政府委員 事務的な点がございますので私からお答えさせていただきますが、海岸を保護する法律と申しますのは幾つかあるわけでございます。例えば自然公園法でありますとか自然環境保全法、それからさらには瀬戸内海環境保全特別措置法といったような法律がございます。こういうような現行法を適切に運用することによりまして海岸の保全というものが図られるのではないかというふうに考えております。
  109. 斉藤節

    斉藤(節)委員 それは、そういう法律があることはわかっております。しかし、もう少しはっきり海辺を守っていくんだということの法律が必要じゃないかなと私は思うのでありますけれども、ぜひ御検討願いたいと思うわけでございます。
  110. 稲村利幸

    稲村国務大臣 埋立法とかそういう法ばかり確かにありますからね。大変貴重な御意見として心にとめて、前向きに検討させていただきたいと思います。
  111. 斉藤節

    斉藤(節)委員 じゃ、よろしくお願い申し上げます。  もう時間が大分なくなってしまいましたので、次に、原子力関係のことをちょっと私、御質問申し上げたいと思うわけでございます。  我が国の原子力発電所あるいは原子力研究所あるいは原子力施設などはかなりたくさんあるわけでありますけれども、これは環境庁じゃなくて科学技術庁の方お答え願いたいと思うのでありますけれども、これらの施設に対して具体的にはどのような対応をしておられるのか、その辺お聞きしたいと思います。
  112. 尾藤隆

    ○尾藤説明員 先生の御質問につきましては、原子力は非常に大きなプロジェクトでございまして、設計、建設、運転の各段階におきまして、原子炉等規制法という特別の法律がございまして、その他の法律も関連しますが、厳しい安全規制を実施しているところでございます。  まず、安全確保基本的な考え方でございますが、施設内で発生した放射性物質、当然その原子炉の中で燃えるわけですから発生しますが、それを施設の内部に閉じ込めておかなければならないというのが大原則でございます。したがって、平常運転時におきまして、そこから環境中に放出される放射性物質による周辺の皆さんの受ける線量を法律で定めております限度以下にするということが大原則になっております。また、国際的な機関としまして国際放射線防護委員会というのがございます。ICRPと言っておりますが、その勧告に基づきまして、合理的にできる限り少なくなるようにという観点で、全身被曝線量年間五ミリレムという形で決めて、それ以下になるように管理しております。この数値は、ちなみに比較して申し上げますと、人々が自然に受ける放射線の約二十分の一ということでございます。  それからもう一つの基本的な考え方でございますが、原子炉はどんなことがあっても事故があってはいけないということでございますが、設計の観点で、異常がもし発生するとしてもこれを未然に防止するような手段を講じなければならない。例えばフェールセーフになっておりますとか、あるいは計測制御におきましても複数の信号等によって検出、制御するとか、そういうような異常があったり突発的なことが出てきたときには正常に戻せるような設計を講じなければならないとか、仮にそういう装置に異常があって実際、炉の状態に異常が発生したとしましても、それが事故まで拡大し、その周辺の公衆に著しい放射線被曝のリスクを与えることのないよう十分な事故防止対策が講じられていなければならない。例えば放射線が施設から出てきたときにそれを検知する装置がなければいけませんし、その検知器を一定の値にセットしておくことによって、それを超えたときには例えば制御棒が速やかに入る、スクラムと申しますが、原子炉が安全にとまるようにするとか、あるいは万が一を考えまして格納容器というものがございますし、あるいは冷却材が喪失するような事故が起きたときにはそれを冷却するような緊急冷却装置とかそういうものが講じられている、設計上そういう配慮があらかじめされていなければならない。当然のことながら、そういうような装置が工事できちんとつくられているかどうか、製造段階あるいは建設段階で国による検査が行われますし、またその安全設計に沿ってきちんとそういう形で運転がされているかどうかにつきましても、法律に基づきまして保安規定等を定めまして、毎日毎日の運転がそのように守られて運転されているかどうか検査もし、監督もしているところでございます。  さらに立地の観点から、その技術的見地から見て最悪の場合には起こるかもしれないような事故、それを重大事故と言っておるわけでございますけれども、さらにそれを超えるような、技術的見地から見て起こると考えられないような事故、これは我々は仮想事故と称しておりますが、そういうものを仮定いたしまして、周辺公衆の安全がそれでも確保できるように、施設とそれからその周りの人々の住んでおられるところとの距離を適切に保つように立地条件が確保されております、  こういうような考え方に基づきまして、設計段階から安全確保対策をとっておるわけでございますけれども、それを実証するという形で周辺にはモニタリング装置などを設けまして、実際にはそういう線量以下になっているということを毎日確認しておるわけでございます。以上によって安全確保ということは十分なされていると確信しております。
  113. 斉藤節

    斉藤(節)委員 大体それでかなり安全性は保てるような気がしますけれども、一般の社会的リスクあるいは個人に対するリスクですね。普通我々道路を歩いていても交通事故に遭うリスクといったものがあるわけですけれども、そういう施設ができることによって、社会的に一般に受けるリスクよりもかなり低く見積もっておるかどうか。設計あるいはその施設を考える場合に、その辺はどうですか。
  114. 尾藤隆

    ○尾藤説明員 先生の御質問のリスクということの定義によるかとは思うのですが、仮に、例えば災害が起こる規模でございますとかそれが発生する確率、そういうものが一般的に保険なんかで用いられるリスクということじゃないかと思うのでございますけれども、そういう観点で、原子炉施設の安全性ということでリスクを見積もるということは、これは施設として非常に巨大でございますので、実際、個々のどういう場所にどういうふうな設計のものがあって、どういうふうにつくってあるのかということは個別に全部違いますから、それを全部信頼できるような数値で得るということは大変難しい問題でございます。現に各国でもそういう研究がないわけではございません。同じような原子炉について、違う人が見積もれば違う値が出てまいります。そういうように、まだ完全に国際的にリスクというものの数値について信頼性が確立されているとは理解しておりません。したがって、ほかの危険の問題、例えば火力発電所、端的に言ってそれと比べてどうなのか、石炭火力に比べてどうなんだというようなことについてもしその研究が進めば、比較するという意味では安全全体の整合性がとれて大変結構なことだと思うのでありますけれども、残念ながらこちらの方でもなかなか難しい問題ではないかと思っております。ただ、こういうような研究をすることは大変結構なことだと思っております。したがって、そのような研究は我が国におきましても今後とも取り組んでまいりたいと思います。
  115. 斉藤節

    斉藤(節)委員 この問題につきましては、また科学技術委員会か何かで私やらしていただきたいと思っておりますけれども、いずれにしましても、放射能が漏れだというような場合にはやはり環境汚染するわけでございまして、そういう意味で環境庁としても黙ってはおれないのじゃないかな、そういうふうに私思いますので、長官、こういった放射性物質が漏れるというようなことがあったら大変でありますので、その辺、環境庁としてどのようにお考えになっておられるか、最後に御答弁していただきまして、私の質問を終わります。
  116. 稲村利幸

    稲村国務大臣 所管は科学技術庁でございますが、先生御指摘のとおり、これは十分留意しなければならないことだと心しております。
  117. 斉藤節

    斉藤(節)委員 これで終わります。どうもありがとうございました。
  118. 林大幹

  119. 滝沢幸助

    滝沢委員 委員長、御苦労さまです。大臣以下政府委員の皆さん、御苦労さまです。  最初に、公害健康法はまだ付託になっておりませんが、これに関連しまして、事業団法は付託をちょうだいしております。しかし、このことはまたいずれ触れる機会があろうと思いますので、きょうは一言だけお伺いしておきます。  この事業団、それに協会、この関係の組織、機構、そういうものはどのようになっておりますか。簡単にひとつおっしゃっていただいて、いずれの機会にまた申し上げるということでお願いしたいと思います。
  120. 加藤陸美

    ○加藤(陸)政府委員 お答え申し上げます。  事業団の組織、機構とそれから補償協会のことと存じますので、御説明申し上げます。  公害防止事業団の組織は、六十一年度末現在の状況でございますが、役員五、四部十六課室、人員は役員を含めまして本部百三十四人、建設事務所に五十二人、計百八十六人という体制であります。六十二年度末では百八十五人となる予定でございます、また、事業計画の点については、なるべく要点のみにいたしますが、建設譲渡関係で四百億円の予定、貸し付け二百億円、計六百億円を予定いたしております。  それから、公害健康被害補償協会でございますが、組織は、六十一年度末現在でございますけれども、役員五名、うち三名は非常勤でございます。三部八課一支部で、人員を申し上げますと、役員を含めまして七十六名でございます。行革の方針で六十二年度末には七十五人を予定いたしております、なお、事業計画の方でございますが、第一種地域に係る補償給付費千七十六億円、それから賦課金の徴収八百五十一億円、政府からの交付金百九十九億円を予定しておるところでございます。
  121. 滝沢幸助

    滝沢委員 一応拝聴しておきます、  そこで、私が申し上げたいことは、臨調におきましていろいろと御指摘いただいたことでありますが、しかし国民の側から国のこれらのことを見ておりますと、臨調で指摘をされた、しかし、その臨調を逃れるために幾らか模様がえをしたり仕事の内容を多少変えたりしてやはり残っていくと見ているわけです。特に私が申し上げたいことは、これらの団体の長ないしはそういうような役員の方々がいわゆるやめ役――やめ検というのがあるそうでありますが、やめ役なんというのがあるかどうかわかりませんが、高級官僚と言ったら言葉が悪いかもしれません。しかし、そういう方々が一たん大層な退職金をちょうだいされて本省のお仕事を終わられて、そしてこれらのいわば外郭団体に天下って来ていらっしゃる。国民の常識からいうとこれはわからぬのです、そういう意味からいって、今後なおこういう人事がこの種団体にも繰り返されるならば、これはやはり国民から理解を得ないだろうということでございまして、次の機会までにどうぞひとつそうしたいわば役員の方々の前職といいますか、そういうようなことの資料もあわせちょうだいしたいと存じます。  次に、先般、松くい虫対策特別措置法ですかが延長されました。住民の側からいうと、健康にまつわるものということでいろいろと反対もあったのでありますが、私は、国、また議会が勇気を持って延長して松くい虫を防止しようということに一応の敬意を表する次第でございます。しかし、その後これらのことはどのようにされようとしておるのか。私はこの対策をお伺いしたいとともに、これもやはり住民の側に立った見方も大事にされて、国が金を出して仕事をしていることに対して国民の皆さんの反対があるというのは大体がおかしいのでありまして、もっと国の考え方、そしてこれらの事業の必要性というものを説明してあげる必要があるのではないかこのように思います。それは松くい虫だけではなくて、いわゆる空中散布等の一連の作業についても申し上げているわけでありますが、住民とよくコンセンサスをされたらいいのではないかというようなことをも含めて御希望し、その後の対策のあり方を一言お伺いしたいと思います、
  122. 山口夏郎

    山口説明員 林野庁の森林保全課長でございます。  先般、三月二十七日、松くい虫被害対策特別措置法の改正法を通していただきました。これまで十年間いろいろ対策を講じてまいりまして、被害量は、かつての昭和五十四年に比べましたら現在ほぼ半分程度にまで一応落ちてきております。しかし依然として百万立米を超えるという状況でございますし、一方、被害は現在四十五県に及んでおりまして、北海道、青森以外の県は大体松くい虫被害が侵入してきている。しかも、被害がだんだんと北の方まで、それから山側へと上がってきておるということで、地域によっては拡大傾向があるということから、私どもといたしましては、この異常な被害をもう少し静めなくてはいけないということで改正をお願いしたわけであります。  今回の改正におきましては、これまでの被害状況それから防除の経験というものを検討いたしまして、一つは、防除を必要性の高い地域において重点的に実施していくということで、都道府県知事等が積極的に防除を推進する松林の範囲を変更しております。ここでは、保安林だとかどうしても松でないと森林の機能を確保できない、特に公益的な機能を確保できないというような山についてこれを防除することにいたしております。二点目といたしまして、駆除を効果的に行うために、被害木の伐倒とあわせまして破砕、焼却等を行う特別伐倒駆除というものを従来一%以下である微被害地には施行できないようにしておりましたけれども、これを被害が拡大している先端地域等において適用したいということで、これの適用範囲を拡大しております。三点目といたしましては、最近の被害がだんだんと高寒冷地に及ぶに従いまして従来と被害態様が異なってきておりまして、秋に一斉に枯れるというばかりでなくて年を越してからも枯れるという状況が出てきておるということで、これらを、春、虫が羽化脱出する直前にまで駆除できるように、都道府県知事が駆除命令にかえてみずから伐倒駆除を行える緊急伐倒駆除ということを盛り込んでおります。四点目といたしましては、できるだけ他の樹種等から成る森林へ転換を図っていくことが可能な山につきましては、他の樹種へと積極的に樹種転換を図るというようなことを促進するため、知事に指導、助言、努力していただくというような規定を盛り込んで改正いたしております。  私どもといたしましては、今後、この改正法に基づきましてこれから五カ年間の実施に早速ことしからかかるわけでございますが、先生御指摘のように、地元住民の方々理解協力がなければなかなか対策がうまくいかないということもございます。そういう点で、いろいろと防除計画をつくる段階におきまして地域住民等の意見を反映させるということで、松くい虫被害対策推進連絡協議会というものを開いて計画を作成し、実施に当たっては地区ごとの説明会を通じて地域の住民の理解協力を得るというようなこともこれまでやってきましたが、今後もこれを進めていきたい、  また、今回の改正に当たりましては、農林水産大臣の定める基本方針におきまして、自然環境保全法の規定により指定されました野生動植物保護地域の松林、自然公園法、鳥獣保護法に規定する特別保護地域の松林、また病院、学校、水源等の周辺の松林については、原則として特別防除、いわゆる空中散布を行わないようにするというようなこと等にも気を配りまして、生活環境等の保全に十分配慮する規定も盛り込んでおります。私どもといたしましては、今後とも地域住民の意見をできるだけ反映して実施してまいりたい。さらに、地域の皆さん方の防除意欲が必要でございますので、その辺につきましては、先生御指摘のように、もっといろいろと地域方々にPRをしていく必要があるのではないか、かように思っておる次第でございます。
  123. 滝沢幸助

    滝沢委員 時間が切れてきましたので先に進みますが、先ほど大臣から湖沼水質保全特別措置法のことをおっしゃっていただきました。敬意を表します。そこで、湖沼の水を汚すものは多々ありますが、魚介類の養殖も行われております。どの程度の湖沼でこれが行われておりますか。
  124. 河田和光

    ○河田説明員 我が国湖沼におきます主たる内水面の養殖業の対象は、琵琶湖、霞ケ浦、北浦のコイそれから淡水真珠が主体でございまして、六十年の生産量はそれぞれ約六千トン、真珠では三千八百キログラム、また経営体数は、それぞれ百八十、八十経営体となっております。
  125. 滝沢幸助

    滝沢委員 そこで、何か承れば、養殖に頼っている魚の量というのは日本で使う魚の一〇%以上とか聞きました。ハマチが十万トン、ニジマスが二万トン、コイが二万トンなどという数字を私手元には持っておりますが、いずれにしましても、大変な量の魚介類が養殖で生産されている。もちろん湖沼のたぐいでされるものとそれ以外の施設でされるものもあるでしょう、いずれにしましても、これらのものは人間の体にいずれは入ってくることになるのです。ある友人が私に、とにかくハマチとコイとウナギは食べない方がいいよ。ウナギは黙っていますからね、私、残留の薬持っているのよなんて言いませんから。  ということは、申し上げたいことは、お魚が病気になる、このお魚が病気になることに対して薬を投与している、この薬の投与されるあり方が問題であります。人間様の方ですと当然これは病院に行きまして、お医者様の指示によりまして、要指示薬ということになりますから指示されたものを使うのです。ところが、お魚の方は承れば家畜の医だそうでありまして、獣医師にはちょっと無理なといいますか、所管外の薬等も相当使われている、問題は、薬を使わないでいただけばいいのですが、そうなれば養殖は全滅してしまうということだそうでありまして、このことの所管はどこですか。
  126. 河田和光

    ○河田説明員 御承知のとおり、二百海里時代ということで養殖業が非常に伸びてきているわけです。それは海面漁業が、今先生おっしゃったようにハマチを初めといたしましてタイとか伸びておりまして、湖沼関係では今お話し申し上げましたようにコイが昔からやっておりまして、あとは内水面のウナギとかニジマスとかがあります、この養殖の指導については、確かに過密で養殖するとか、えさのやり方だとか、現に養殖業が非常に伸びておりますので、そういうものの指導は水産試験場なり私どもの水産研究所なりが行っているわけでございます。水産用医薬品にっきましては、水産庁の研究課が窓口になってその製造承認のヒアリングをしたり、実際の製造承認は、薬事法に基づいて中央薬事審議会の議を経てやっておるわけでございます。
  127. 滝沢幸助

    滝沢委員 この責任の所管がきちんとしていないのではないかと私は思うのですがね。これは学のあるところを申しますと、お魚のかかりやすい病気はビブリオというのだそうですね。これは人間の下痢、マラリアみたいなものでしょうか。それに類結節という病気もあるのだそうでありまして、これらの病気にいわば水産薬ということになる。水産薬というものは何らの指示もなしに使うことができる、これはそのとおりですか、
  128. 河田和光

    ○河田説明員 水産用医薬品も動物用医薬品の一環でございまして、製造するに当たってはもちろん製造承認申請もメーカーから来て、いろいろ試験をした結果をもとにして使用の規制をしていますし、それから、昭和五十四年十月に水産用医薬品を含めました一定の動物用医薬品につきましては薬事法を改正しまして、これは五十六年四月から施行しておりますけれども、使用の対象動物を限って用法、用量、使用禁止期間等に関する使用規制措置が講じられているところでございます。
  129. 滝沢幸助

    滝沢委員 これは年間にどの程度の量が使われていますか。
  130. 河田和光

    ○河田説明員 金額で申しまして、水産用医薬品は数十億円の単位。病気の被害も二百五十億ぐらい、薬の使用金額とすれば数十億円の単位だろうと思います。
  131. 滝沢幸助

    滝沢委員 その薬は、つまりは指示が要らないのね。
  132. 河田和光

    ○河田説明員 動物用医薬品は要指示薬になっておるのでございますけれども、水産用医薬品の場合には要指示薬になっていないというのは、水産の動物は変温動物で、必ずしもその病気が人間に移行するとかそういうことはありませんし、副作用の問題もないので、そういう面で要指示薬制度というのはとっていないわけでございます。
  133. 滝沢幸助

    滝沢委員 そこのところが問題なんですよね。いつかのテレビをごらんになりましたか。消費者は大変不安なんですよ。魚は物を言いませんからね。そこで、それらの指示が必要なものと必要でないものとの区分け、しかもそれがどの程度にどう使われているか。何か聞くところによりますると抗生物質等も与えられている、これが水産用医薬品ということで指示なしに通れる、こういうのでありますが、そうですか。
  134. 河田和光

    ○河田説明員 抗菌剤ももちろん使われておるわけでございます。重複になりますけれども、動物用医薬品を要指示薬とする目的は、投薬対象動物の副作用の防止と、それから耐性菌の発生の抑制である。魚の場合には副作用の問題というのは人や家畜ほど重大でございませんし、また耐性菌の発生にいたしましても、魚の病原菌は人や家畜の病原菌とは異なるために人への影響は問題とならないということから、使用規制が措置されている現段階で水産用医薬品を要指示薬にする必要はないというふうに考えております。
  135. 滝沢幸助

    滝沢委員 だから、あなたも書いたのを読んでいるのですよね。書いたものの範囲のことを言っている。あなたの体をもってこの実態がわかっておりますか。本当に要指示のものだけが通っていく、そして指示の要らないものはどこにどう通っていくか実態がよくわかっていますか。そうならばテレビも取り上げないし、消費者も恐ろしい思いをしなくて済むわけですよ。ですから、これが厚生省の人間様に対するもの程度に行くのかどうか、そこを聞いているわけです。
  136. 河田和光

    ○河田説明員 水産用医薬品の使用の実態といいますかこれは先生御承知のとおり、先ほども御説明しましたように、今ハマチの養殖やタイの養殖とかいろいろ養殖が盛んになっておりますし、そういう面での使用の適正化を図るために、養殖業者、関係者に私どもとしては説明会の開催をしたり、養殖の現場に巡回指導を実施したり、出荷前の養殖生産物に対する医薬品の残留検査を実施したり、また、水産用医薬品の使用規制内容の変更があることにパンフレットを配布したりして指導の促進を図っているところでございます、
  137. 滝沢幸助

    滝沢委員 問題は魚を養殖して、そして売るわけでしょう。それはもうけなくちゃいけませんから、本当に指示いただいた薬を使っていただけでは計算が合わぬことになります。そこで農林省と厚生省のはざまの中でお魚は育っている、それを知らぬが仏で人間様が食べて仏になる。きちんとしませんと大変なことになりますよ。  それじゃ時間がないからちょっと先に進みますが、ワクチンがアメリカでは公然と承認を得て使われていて、どうして日本は使えないのですか。それはなぜかわかりますか。
  138. 河田和光

    ○河田説明員 ワクチンにつきましては、先生御指摘のとおり欧米でもサケ・マスを対象にして実用化されてきているわけですけれども、我が国としてもその研究の推進を図る必要があるというふうに考えております。
  139. 滝沢幸助

    滝沢委員 日本の医学は今はドイツ以上でしょう。世界一でしょう。それがどうしてお魚になったら世界で百番目か五十番目か知りませんけれども、欧米に劣るのですか。つまり、何のチェックもなしに通るお魚が使う薬は百億と言われておる。百億とも言われるだけの薬が買われて、そしてこれはあなたたちのチェックしないところで使われて、これが魚に残留しないと言うのだけれども、残留しない証拠はない。この魚がおぜんに出てきて、魚は、私はきのうもおとといもさきおとといも薬を飲んできましたなんて言いませんからね。そこが問題なんですよ。これは今申請されているでしょう。共立さんは輸入した薬を申請している。許可にならない。北里研究所ほか四社が申請した国産の、これこそあなたが言った、研究しておりますというやつだ。けれども、これが許可にならない、許可されれば薬屋は百億売れなくなるわけだ。そこが問題なんですよ。ですから、よその国が使っていて、もうよその国使っているでしょう、申請されたらそのあしたにも許可していいじゃないですか。どうして許可にならないのですか。
  140. 河田和光

    ○河田説明員 魚の病気は、今魚で問題になっておるハマチでありますとかタイでありますとか、こういうものはもうヨーロッパではほとんど養殖をしないので、日本が非常に進んでいることは事実でございます。ヨーロッパの方はサケ科の魚類の養殖が確かに盛んでございます。  それで、安全性の問題でございますけれども、先ほども御説明しましたように、私どもは鋭意漁業者に指導を実施しておりますし、一方では残留の検査もしておりますし、その限りでは問題はないわけでございます。しかし我が方としましても、本来であれば、密殖とかそれからえさのやり方とか、そういうことで病気になることが多いわけでございますので、そこは鋭意これからも指導し、桑を余り使わないように指導しなければならぬ。一方では、使わなければ病気が出るのも事実でございますから、そういう面で新しい病気の、今先生おっしゃったような抗菌剤の使用を減らすという意味でワクチンの開発というのは大変大事でございますし、昨年、先生も御指摘のようにアユのビブリオ病不活化ワクチンの製造承認申請も受けておりますし、ニジマスのビブリオ病不活化ワクチンの輸入承認申請が来ておりまして、現在のところ、事務局でヒアリングしながら書類の整備をしておるということでございまして、今後、中央薬事審議会において審議がされるということになろうかと思います。私どもとしても、なるべく薬を使わない方法あるいは少ない薬で消費者に安全に養殖の魚を食べられるようにつくり育てるという大きな役割がございますので、私どもとしても鋭意努力をしてまいりたいと思っております。
  141. 滝沢幸助

    滝沢委員 では、二つ注文があります。一つは、政府の名において、いろいろと騒がれているけれども魚はちゃんと国が監督をしているので全部安全ですという安全宣言をしなさい。できますか。それが一つ。  そして、このワクチンの薬事審議会の審議はいつまでにできるのですか、よその国で全部使っているのですから、学問的には日本の医学がこれを認定できないほど程度の低いものであるとは思わない。できるはずです。なぜこれが許可にならないかが疑問なんです。ですから、いつこれは許可になるか。この二つをはっきりおっしゃってちょうだい。
  142. 河田和光

    ○河田説明員 安全宣言という話ももちろんあるわけですけれども、これはまさに漁業者が使うか使わないか、使わないように指導しているわけですけれども、そういう面で現在生産者段階で適正使用に誤解のないように徹底的に強化をする、適正使用の徹底強化に努めるということで、漁業者のサイドで反省すべきところは反省しながら適正使用にお互いに協力しようということで話し合いを行っているところでございますし、水産庁においても適正な使用の徹底強化についてこれからも指導をしてまいりたいというふうに思っております。  それから第二点のワクチンでございますけれども、これも先ほどちょっと御説明しましたように、欧米では確かにサケ・マスを中心にしてできておりまして、今後、アユとかニジマスについても十分申請書類の検討をいたしまして、なるべく早く中央薬事審議会の議が得られるように努力してまいりたいと思っております。
  143. 滝沢幸助

    滝沢委員 もう時間になりましたが、あなたの答えは親切で御無礼というもので、全然はっきり物を言わない。安全宣言はできないでしょう。ですから業者に要望しておるという、要望ぐらいで物がうまくいくのなら何も政治が、行政がこれほど何事にしても苦労はないでしょう。交通安全を守ってくださるように要望する、選挙違反しないように要望する、要望ぐらいで物が済むのだったらあなたたち役人は全然要らないのです。そこはきちんとおっしゃい。安全宣言が責任を持ってできますか。できないならばきちんと規制しなさい。そうしてニジマスがどうでとかなんとか言っていましたが、同じでしょう。ワクチンを許可する、許可しないということに関係ない。いつ薬事審議会を開いて、いつ議を下するのか日程をきちんとおっしゃい。
  144. 河田和光

    ○河田説明員 現在書類を受け取って整備をしておる段階でございますので、この席でいつまでというふうにお答えすることは、大変申しわけございませんけれどもできないわけでございます、
  145. 滝沢幸助

    滝沢委員 大臣御苦労さま、委員長御苦労さまです。終わります。
  146. 林大幹

  147. 岩佐恵美

    岩佐委員 最初に、水俣病問題について質問いたします。  三月の熊本地裁の判決に対して国や県はこれを控訴し、チッソも追って控訴しました。私は、この国のとった態度は全く誤っている、三十年以上も被害者を苦しめてきた責任の重大性を全くわかっていない、このことを強く批判したいと思います。今回の判決は、チッソとともに国や県にも水俣病発生、拡大の責任があることを全面的に認めました。また、原告全員を水俣病と認めることによって、これら被害者を冷たく切り捨て、放置してきた行政責任を三たび厳しく問うものとなりました。先ほど長官は、行政責任感じていると言われました。この判決を真剣に受けとめ、被害者を一日も早く完全に救済すべきであると思います。長官決意をまずお伺いしたいと思います。
  148. 稲村利幸

    稲村国務大臣 先ほど来申し上げておりますが、先般の判決におきまして、水俣病発生、拡大に関し、国家賠償法に基づく国の責任が認められました、私どもの主張が通らなかったということにつきまして残念ということ、そういう気持ちではおりますが、患者方々救済につきましては今後とも万全を期したい、救済するべきは救済する、こういう気持ちで、国、県一体になって現行制度の着実な運用を図っていきたいと思います。
  149. 岩佐恵美

    岩佐委員 現在五千人を超える方々水俣病認定してほしいと申請をしておられます。今度の判決に照らしてみれば、国の基準で認定されていないこれらの方の中に水俣病患者が多数おられることは間違いないというふうに理解されます。ところが、損害賠償はもちろん、十分な医療も受けられず苦しんでおられる方が多いのが現状です。私も水俣現地で患者の皆さんと御懇談もしました。本当に大変な事態だということで胸をつかれたわけであります。今度の判決を受けて、最低限のこととして医療的救済を充実させることが必要ではないかと思うわけでありますけれども、この点、いかがでしょうか、
  150. 目黒克己

    ○目黒政府委員 私ども、この判決にっきましては、二次訴訟あるいは今回の判決等々があることは承知をいたしておりますが、現段階では、特段の新しい医薬に基づく救済といったようなものを考えているわけではないのでございます。と申しますのは、六十年の判決の後、私ども、専門家会議を設ける等々のことをいたしまして、六十一年度に特別医療事業をやったとかあるいは認定促進のための努力をしたといったようなことを含めましたことをやっておるところでございます、特に、先生御指摘の点はあるいは特別医療事業のことをお考えかもしれませんが、私ども現在の時点においては、六十一年度にスタートいたしました新しい事業の推移を見守っていくということで、特に新しいものを考えておるものではないのでございます。
  151. 岩佐恵美

    岩佐委員 患者さんは特別医療事業について、現状では極めて不十分だと訴えておられるのです、例えば、はりやきゅうが対象にならないとかあるいは申請して一年たつと適用される治療研究事業の場合はばり、きゅうも対象となるのに特別医療事業では対象にならない、そういうことはおかしいというような意見があります。それから治療に通うための交通費、これも治療研究事業の場合は一部の人には一日五百円支給される、離島の場合には上積みされて支給されますけれども、特別医療事業ではないわけですね。離れ島の御所浦の場合にはチャーター船が必要だということで、一日通うと一万円もかかる、こういう方もおられるわけです。これでは満足な治療ということは到底言えない、これをぜひ改善してほしい、こういう要望があるわけでありますけれども、これはもっともな要望だと思いますが、いかがですか。
  152. 目黒克己

    ○目黒政府委員 先ほどちょっと申し上げました特別医療事業目的でございますけれども、これは先般の専門家の会議で、医学的に見ると水俣病と診断するには至らない、しかしながら何分かの留意する必要がある云々といった趣旨のものがございまして、それを受けてスタートしたものでございます。したがいまして、私どもは棄却をした者についてこれを対象とするようにいたしておるわけでございますが、その棄却をいたしましたものを考えてみますと、その棄却した方々に対しまして私ども最低限今の事業の趣旨等を申しまして六十一年度からスタートしたばかりでございまして、そういう現状を考えてみますと、やはりこの推移を見守っていきながら、今後とも一つの課題として勉強してみたいというふうには思っている次第でございますが、現在の時点では、特に御指摘のこと等について取り入れることは考えていないのでございます。
  153. 岩佐恵美

    岩佐委員 却下された方が裁判で患者さんだということで認められているわけですね。ですから、今度の判決の基準に照らせば、特別医療事業を受けている人のほとんどが水俣病認定されていいというふうに私どもは受け取っています。ですから判決を機会として、これはぜひ改善をしていくべきだということで取り組んでいただきたいということを強く要望しておきたいと思います。  さらに、この特別医療事業ですが、患者の皆さんが非常に不安に思っておられるのはこの制度が三年間だということでありまして、将来一体どうなるのだろうかということで大変不安に思っておられるわけであります。先ほどからこの点についての議論が行われているわけでありますけれども、私たちは、特別医療事業制度はさらにこれを強化充実をし、発展をさせるべきではないかというふうに思っているわけでありますけれども、そういう点についての御意見を伺いたいと思います。
  154. 目黒克己

    ○目黒政府委員 御指摘の点の有効期限のことも含めてでございますが、あくまでも私どもこの特別医療事業の対象としておりますものは、水俣病ではないということで棄却をされた方々を対象としているという大前提があるわけでございます。したがいまして、またその方々を対象とした場合に、その原因の究明のために行っているのでございますが、御指摘の延長の問題等々含めたことでございますが、更新と申しましょうか、三年ごとに更新するということになっているわけでございます。この更新の方法にっきましては私ども今後とも検討してまいりたい、まだ三年ございますので間に合うように検討していきたい、このように考えておるところでございます。
  155. 岩佐恵美

    岩佐委員 次に、八王子の問題、片倉町というところにあります森林三ヘクタールほどになりますか、その面積で不法な産業廃棄物及び土砂が投棄をされている、そういう件について御質問をしたいというふうに思います。  現地は、当初、水田を二千平米の広さで二メーターぐらいの高さに埋めて畑にする、そういう計画でありました。ですから農業委員会の方は、一、二カ月程度の埋立期間なら申請する必要はないということで埋め立てを了解したということであります。しかし、実際には埋立期間は既に一年間に及んでいます。面積も今申し上げたように三ヘクタール以上、埋め立ての高さも二十メーター以上、ひどいところでは三十メーターから四十メーターぐらいになっています。そして田部井さんというお宅の場合には土砂崩れの危険にさらされる、それから、すり鉢状の下に残っている家屋には花火の火薬庫があるというような事態で大変危険な状況だということで、付近の皆さんは危険を感じているということを訴えておられます。しかも、私も十三日の朝、現地を見てまいりましたけれども、現にトラックが入りまして土砂が捨てられる、それからかわらの下のスレートといいますか、石綿のようなものがトラック一台分以上捨てられている、置いであるというような状況がありました。こうしたトラックが毎日百台から三百台の数で来て、もちろん土砂ばかりでなく、コンクリート、タイヤ、ドラム、家具まで捨てていくというような状況になっております。  そこで、厚生省に伺いたいのですが、産業廃棄物の投棄についてはどういう指導を行っているのでしょうか。
  156. 横田勇

    ○横田説明員 お答え申し上げます。  厚生省では、建設廃材は残土と区別いたしまして適正に処理するように都道府県を通じて指導しております。
  157. 岩佐恵美

    岩佐委員 委員長大臣が今いないのですけれども、現地の写真をちょっとお見せしたいと思うのですが、よろしいですか、――その写真を見てもおわかりいただけますように、現地では産業廃棄物そのものが捨てられるというような状況になっているわけです。森林の樹木もそのままなぎ倒されて土砂の下に埋まっていますし、また、この地域に旅館があったわけですけれども、その四棟はもう既に土砂の下に埋められています。それから、あるお宅も土砂の下に既に埋まっている、こういう状況になっているわけです。これは明らかに違法状態、何の許可もとってなくこれらのものを捨てているわけですから違法状態ではないかというふうに思うわけで、現地を調べてこれは厳重に対処すべきだと思いますけれども、厚生省、いかがですか。
  158. 横田勇

    ○横田説明員 今先生からのお写真を見ただけでは判断が難しいわけでございますが、もし土砂の搬入者が廃棄物も一緒に搬入したと判断できるような状況であれば違法というふうに考えられますので、都道府県を通じて十分適切な指導を行ってまいりたいというふうに考えております。
  159. 岩佐恵美

    岩佐委員 次に、農水省に伺いたいと思いますが、無許可でこのように森林の原形をとどめないような姿にしていく、これが現地の写真であります。当地は林地開発変更許可を受けているのかどうか、お伺いしたいと思います。
  160. 山口夏郎

    山口説明員 先生、今問題の箇所につきましては、開発許可地域を越えた部分として、越えてやっていると思います。
  161. 岩佐恵美

    岩佐委員 要するに何の許可ももらっていないわけですね。明確に法律違反であると思います。これは直ちに対処をすべきであるというふうに思います。特に近年、このような悪質な例が都市近郊地域でふえています。委員長の地元であります千葉でも恐らく同じような状況があるんだというふうに私は思いますけれども、森林法によれば、こういう無許可の開発行為に対しては、都知事が中止を命令して復旧を命ずることができるというふうになっています。その点について厳格に対応していただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。
  162. 山口夏郎

    山口説明員 当該の箇所は、先ほど先生の御指摘になりましたように、地目はいわゆる農地、それから私どもの森林法第五条の地域森林計画対象という森林地帯、それと雑種地という三つの種にわたってかかわっているわけでございます。私どもの森林法におきましては、先ほど先生のおっしゃったとおり、いわゆる開発許可制度の中でそういう違法なものに対しての対処というのがございますけれども、ここの場合におきましては単に森林部分だけという対応ではなくて、直ちに現地調査を行って現地を把握するとともに、全体を一体的にどうやっていくのかということが必要だろうということで、東京都の関係部局と十分連絡調整を図りながら、要するにそこをちゃんとしていただきたいということで適切に指導してまいりたい、かように思っております。
  163. 岩佐恵美

    岩佐委員 違法な投棄が行われていると思われる面積は、山林が二ヘクタール半ぐらい、田畑が四千五百平米、原野が三百五十二平米、全体で三ヘクタール以上という状況になっているわけで、本当にこれは大変な事態だと思います。それから、先ほど写真をお見せしましたけれども、田部井さんのお宅はすり鉢状の下にあるわけです。私も現地に行ってすごいなと思ったのですけれども、一番低いところからずっと見上げると、二十メーターぐらい残土及び産廃物の山が上がっているわけです。ですから、ここ一両日雨が降りましたけれども、私どもが歩いたってずくずくのところでありますからどんな事態になるかわからないわけで、これは時間をかけて会議をしていても始まらないと思いますので、早急に対応していただきたいというふうに思います。  続いて警察庁にお伺いしたいわけですけれども、当地は明らかに産廃の違法な投棄が行われています。産廃物の不法投棄によって市民の安全な生活が脅かされている、これは重大な事態であります。警察としても直ちに調査をして取り締まるべきだ、こういう違法状態を野放しにするということになると市民は一体どこを頼っていいかわからないという状況になりますので、ぜひその点をやってほしいと思うわけですが、いかがでしょうか。
  164. 緒方右武

    緒方説明員 警察としましては、従来から国民の健康な生活環境を図る立場から、このような環境を破壊する事案に対して積極的に取り締まりを行ってきたところでございます。ただいまお尋ねの事案につきましては詳細は承知しておりませんけれども、違法な状況があれば適正に対処していきたいと思っております。
  165. 岩佐恵美

    岩佐委員 先ほど申し上げたように、年々公害事犯がふえているわけであります。しかも、公害事犯の中で産業の不適正処理が占める割合が高いわけです。例えば五十六年から六十年までを見ましても、公害事犯が五十六年の場合は五千三百七十四件、そのうちの産廃に関するものが四千五百二十一件、五十七年が五千六百三十七件、産廃が四千七百二十八件、五十八年が五千九百八十二件、産廃が五千二百二十八件、この場合は相当比重が高い。それから五十九年が六千九百二件のうち六千六十件、六十年に至っては六千八百五件のうち六千二百六十一件、九〇%以上をこの産廃の事件が占めているわけです。  本件のことも含めてこういう問題について、厚生省が産廃の直接の所管でありますから、今後こういうことがないようにきちんとしていただきたい。この写真を見ただけではどうのこうのとか、はっきりしたことは言えないとか言っておられますけれども、これは現地で撮った写真でありまして、こういうことが野放しに行われるということは絶対に許されないわけです。厚生省の決意をお伺いしたいと思います。
  166. 横田勇

    ○横田説明員 お答え申し上げます。  厚生省としましては、従来から建設廃材は残土と区別して適切に処理するよう指導しておるところでございますが、今後もこのような取り扱いが徹底されるように都道府県、今回は東京都でございますが、東京都を通じまして指導してまいりたいと考えております。
  167. 岩佐恵美

    岩佐委員 きょうは建設省にもおいでいただいていますが、要するにこれは、捨て場がないままにどんどん開発が行われていっていることが大きな問題だと思います。建設省は廃材の処理についていろいろ細かく行政指導をしているというふうに伺ってはいますけれども、私ども都市近郊に住む者にとっては、現実にはその実効が上がっていないということを痛感せざるを得ないような事態があちこちで起こっているわけで、その点、建設省の対応、それから今後の基本的な姿勢についてお伺いをしておきたいと思います。
  168. 小野邦久

    ○小野説明員 お答え申し上げます。  先生御指摘のとおり、八王子市内の問題につきましては詳細を十分承知しておりませんけれども、建設省といたしましては、産業廃棄物の処理の問題につきまして、五十八年に建設木くずが産業廃棄物に指定されたことに伴いまして、都道府県あるいは建設業団体に通達を出しましていろいろな処理を指導いたしておるところでございます。その内容は、例えば処理を適切に行うように業界団体を指導するとか、建設廃材の処理に要する費用を適切に積算価格に計上するようにといったような点でございます。特に直轄事業につきましては、残土の処理あるいは産業廃棄物の処理において、捨て上条件、処理条件といったようなものをしっかりと施工条件に明示した上で発注をするように六十年に施工条件の明示の通達を出しまして、関係の発注部局の指導にも努めているところでございます。今後とも、建設廃材の適正処理につきましてはなお一層適切な運用に努めてまいりたい、こういうふうに考えております。
  169. 岩佐恵美

    岩佐委員 環境大臣に写真等をお示しして現地がどういうことなのか説明をさせていただきたいと思いますけれども、よろしいですか。――大臣、今資料をお示ししましたけれども、この地域というのは既に許可をとっている地域の奥にずっと広がっている、そういう不法投棄の場所なわけです。既に許可をとっている地域と地続きでずっと谷沿いに土砂を埋めていっている、そういう地域であります。そこにタヌキの一家だとかキツネだとか、それから私が現地に行きましたときには、チョットコイチョットコイというあの鳴き方でコジュケイが鳴いているということで野鳥も数多く見られるところで、その写真を撮られた方は土砂の下に家が埋められてしまって、今業者がしつらえたバスで生活をしている。一カ月したら家を建ててあげるからと言われたのだけれども、もう六カ月以上もバス生活をしているという本当にすさんだ状況に置かれているわけであります。その方がえづけをしたタヌキや何かがそうやって写真に撮られているわけで、本当に豊かな自然が残っているわけですが、こういう自然が今のような違法な状態のもとでどんどんと壊されていっている。それはもう多摩地域でそこだけじゃないのですね。本当に各地に広がっている。そういう点で、ぜひ大臣に、環境庁としてこの問題を含めてきちっと対応していただくようにお願いをしたいというように思うのですが、いかがでしょうか。
  170. 稲村利幸

    稲村国務大臣 実態をよく把握いたしまして、調べて、関係省庁とこういうことは時間をかけずに適切に対処したいと思います。
  171. 岩佐恵美

    岩佐委員 終わります。
  172. 林大幹

    林委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時一分散会