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1987-05-26 第108回国会 衆議院 安全保障特別委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十二年五月二十六日(火曜日)     午前十時開議 出席委員   委員長 大村 襄治君    理事 有馬 元治君 理事 北口  博君    理事 椎名 素夫君 理事 月原 茂皓君    理事 宮下 創平君 理事 渡部 行雄君    理事 渡部 一郎君 理事 米沢  隆君       石原慎太郎君    谷川 和穂君       中川 昭一君    中山 太郎君       増岡 博之君    三原 朝彦君       箕輪  登君    上田  哲君       左近 正男君    井上 和久君       神崎 武法君    神田  厚君       東中 光雄君  出席国務大臣         外 務 大 臣 倉成  正君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 栗原 祐幸君  出席政府委員         防衛庁参事官  瀬木 博基君         防衛庁参事官  古川 武温君         防衛庁参事官  児玉 良雄君         防衛庁参事官  筒井 良三君         防衛庁長官官房         長       友藤 一隆君         防衛庁防衛局長 西廣 整輝君         防衛庁教育訓練         局長      依田 智治君         防衛庁人事局長 松本 宗和君         防衛庁経理局長 池田 久克君         防衛庁装備局長 鎌田 吉郎君         防衛施設庁総務         部長      平   晃君         防衛施設庁施設         部長      岩見 秀男君         防衛施設庁建設         部長      田部井博文君         外務大臣官房審         議官      渡辺  允君  委員外出席者         外務大臣官房外         務参事官    村田 光平君         外務省北米局安         全保障課長   岡本 行夫君         運輸省航空局飛         行場部管理課長 鈴木 光男君         特別委員会第三         調査室長    寺田 晃夫君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  閉会中審査に関する件  国の安全保障に関する件      ――――◇―――――
  2. 大村襄治

    大村委員長 これより会議を開きます。  国の安全保障に関する件について調査を進めます。  防衛庁長官から、防衛政策基本に関し説明を求めます。栗原防衛庁長官
  3. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 平素から、我が国安全保障に深い関心を持って御指導いただいている安全保障特別委員会皆様に、私の所信の一端を申し述べさせていただきたいと存じます。  御案内のとおり、我が国は、自由主義諸国の有力な一員として、日本国憲法に従い、自衛のための必要最小限防衛力を確保し、もって、自国の安全と世界の平和に寄与しなければならないと考えております。このためには、日米安全保障体制を堅持し、自衛のため必要な限度において、質の高い防衛力整備を、継続的かつ計画的に行っていくことが肝要であります。  すなわち、従来から、「防衛計画大綱」に定める防衛力水準早期達成を図ることを基本方針とし、その具体的実施に当たっては、昭和五十一年十一月の閣議決定を尊重し、これを守るよう努めてきたところであります。  昭和六十二年度予算における防衛関係費については、厳しい財政事情を勘案して引き続き経費の抑制を図りつつ、円高油価格低下等も踏まえ、全体規模の圧縮に努める一方、「大綱水準達成を目標とする中期防衛力整備計画の第二年度目として、主要な正面装備について同計画を平準的に実施するために必要な数量を確保するとともに、正面後方の均衡のとれた質の高い防衛力整備するため、指揮通信機能の充実、練度向上及び隊員生活環境の改善を特に重視することとし、ぎりぎりの努力を行った結果、名自GNPの動向もあって、対GNP比が一%をやや上回ることとなったものであります。  かかる状況を踏まえ、総合的に慎重な検討が行われた結果、本年一月、今後の防衛力整備に係る新たな指針についての閣議決定がなされたのであります。  これは、専守防衛等我が国基本方針を引き続き堅持すること、中期防衛力整備計画所要経費の枠内で各年度防衛費を決定すること、さらに、昭和五十一年十一月の閣議決定節度ある防衛力整備を行うという精神は引き続き尊重すること等を定めたものであり、今後の防衛力整備指針として適切なものであると考えております。  我が国は、防衛力整備と同時に、我が国防衛のかなめである日米安全保障体制信頼性向上のため、日米共同訓練積極的実施防衛施設機能の維持と安定的使用確保等、両国間の信頼関係を揺るぎないものとするよう努めているところであります。  もとより、国の防衛は、国民の深い理解と力強い支持があって初めて成り立つものであります。  我々は、決して戦争というものを好むものではありませんが、しかしながら、平和というものは、ただ単に平和でありたいというだけでは保てません。我が国にとって防衛力整備が必要であること、国の防衛力日本の平和と世界の平和を守るゆえんであるということを、懸命に国民に訴えていきたいと考えております。  また、自衛隊国民理解支持を得るためには、まずみずからの手でみずからを厳しく律するとともに、隊員一人一人が国防の礎となる気概を持ち、その使命を自覚し、与えられた任務に最善を尽くすことが必須であります。  私は、自衛隊を統括する防衛庁長官として、文民統制十分意を用い、隊の規律を厳にして、今後とも国民の期待にこたえ得る真に精強な自衛隊建設に邁進してまいる所存であります。  終わりに、我が国安全保障に関し、幅広く論議される場である当委員会での御審議を通じ、一層の御鞭撻を賜ることをお願いして、私の所信表明とさせていただきます。(拍手)     ―――――――――――――
  4. 大村襄治

    大村委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。渡部行雄君。
  5. 渡部行雄

    渡部(行)委員 まず最初防衛庁長官に対して、シビリアンコントロール防衛庁長官姿勢について、長官文民長官として最も重要な任務責任をどのように考えておられますか。その点をお伺いいたします。
  6. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 今御指摘のとおり、防衛庁長官として一番重要な問題、責任一つは、文民統制、いわゆるシビリアンコントロールを的確に行うということだろうと思うのです。  私が申し上げるまでもないことでございますが、過去の戦争はどうして起きたかといいますと、これはやはり天皇軍隊であった、そして天皇軍隊のもとにおいて天皇の名をかりて統帥権というものが政治を支配をした、そのために過去の大きな戦争につなかったと私は考えます。  ところが、戦後は国民が選んだ国会議員の中から総理大臣を選出をしている。その総理大臣自衛隊最高責任者として指揮をする、防衛庁長官がその意を受けて実質的統括責任の任に当たる、こういうふうになっておるわけでございます。  そういう意味で、戦前と戦後では軍事に関する政治体制ががらりと変わったというふうに考えております。それだけに、その意図を十分にわきまえて誤りなきを期さなければならぬと思います。第一義的には総理大臣防衛庁長官でありますが、その背後内閣があり、その最も根底にありますのは国会でございます。したがいまして、私どもは今申しましたような趣旨にのっとりましていろいろな施策をしなければなりませんが、最終の段階では国民を代表する国会皆様方のいろいろの御審議をいただきながら、御指導、御鞭撻をいただきながらしっかりと文民統制をやっていきたい、こう考えているわけであります。
  7. 渡部行雄

    渡部(行)委員 過去の戦争天皇制が起こした、今度は民主国家になって文民統制がきいておる、その最終的な責任国会にある、こういう御説明でございましたが、なぜ防衛庁長官文民にしなければならないか、こういう点については長官はどのように考えておりますか。
  8. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 私は、経過についてはつまびらかにいたしませんけれども政治的に考えますと、過去の戦争というものは軍事政治を左右した、そういう観点から防衛庁長官総理大臣というものは文民でなければならない、そういうふうになったと思います。
  9. 渡部行雄

    渡部(行)委員 これはその人その人でいろいろ見解の相違はあるかもしれませんが、なぜ軍の最高責任者文民にしたかということは、軍隊というのはもともと自己増殖する一つ法則性を持っているわけですね。ですから、これを軍人に任せておけば限りなく軍の増強を図り、そしてそれがやがては自信過剰になって戦争へと突き進む、そういう一つ必然性というものがあるわけです。これは今までの歴史が示すとおりでありまして、したがって、平和というものを実現していく上で、文民であれば総合的な情勢の判断もできるし、そういう一つ自己増殖法則性に対してブレーキをかけ調整を図ることができる、こういうところで文民長官というものを考えられたと私は思うのです。したがって、長官軍人ではないのだから、軍人のその自己増殖法則性必然性というものに対して常に監視し、それが行き過ぎないように、ある意味ではブレーキ役となって調整を図っていく、これが長官の態度だろうと思いますが、いかがでしょうか。
  10. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 確かに仰せのとおり、自衛隊の中には、いわゆる軍事的合理性といいますか防衛的合理性といいますか、そういうものを追求する、それは非常に潜在的に強くあると思うのです。それに対して、大所高所から日本憲法にのっとってコントロールしていく、そういう必要があるということは御指摘のとおりだと思います。
  11. 渡部行雄

    渡部(行)委員 そこで私は、どうしても長官のそういう思想とは別に今の自衛隊政策が進んでいるように思えてならないのです。  その一つは、まず今度の六十二年度予算から、GNP比一%枠を突破しないという、その枠内で防衛費を考えるという五十一年の閣議決定が今度は外されてしまっておる。そして一%を突破しておる。こういう予算を組んできたということの背景には、やはり一つ自衛隊の中からの自己増殖法則が作用したということ、もう一つアメリカからの要請が強くなっておるということ、それからもう一つは、長官やあるいは安全保障会議議長の中曽根さんが、ここが一つ防衛政策の転換期である、こういう認識から、初めに一%突破ありき、こういうことで私は今度の予算編成並びにこの防衛力整備計画が考えられたと思います。  というのは、この五年間で十八兆四千億という総枠を組まれたこと自体が、これを五で割れば単年度防衛関係費というものは明らかに今の計算でいくとGNP一%をオーバーする、これは最初からわかり切っているのです。こういうことをなぜやらなければならないのか。なぜ今、昭和五十一年のあの三木内閣国民に向かって約束した枠を撤廃しなければならないのか、そういう問題について国民はさっぱり理解できないと思うのです。その点で長官は、これを理論的に国民になるほどそうかと納得させる一つ責任があると私は思うのです。その点について御説明願いたいと思います。
  12. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 今のお話の中で、自衛隊みずからの中に自己増殖気持ちが非常に強い、そういうことでGNPの一%を超えたのじゃないかというのがまずございましたけれども、これはそうじゃないのですね。  いわゆるいろいろ議論をするものの中に、今の「防衛計画大綱」、そういうものが古い、もっと所要防衛力でどんどん伸ばせという議論もあることは事実なんです。しかし、平時から保有すべき必要最小限度のものとして「防衛計画大綱」というのができた。これだけはぜひやらなければならぬ。その大綱に基づきまして中期防ができたのです。ですから、一番の根底は、限定かつ小規模の侵略に対応するそういう防衛力整備、これだけはやっておこうじゃないか。それをやっている間にだんだんと費用が重なってきたということですよ。  特に、昭和六十二年度の場合には経済成長が鈍化しましたために、いわゆる一%の枠との間ですね、防衛費の伸びが前年に比して四・八%しか天井がなかった。今までは七%か八%、そういうことでございますので、非常にきつくなった。私は国会でも言っておりましたけれども、一%を突破するごとに生きがいを感じてないのです。防衛費というのは少なければ少ないほどいいのだ、しかし必要なものだけはやらなければならぬ、必要なものは何かというと「防衛計画大綱」である、そういうことを言ったのです。  しかも、一%というのは何かといいますと、確かに十年間続いてきて非常に貴重な有用な役割をしたと私は思うのでありますが、これを決めたときに「当面」「めど」とあるのです。ですから、これは絶対に変えてはならぬというものではない。むしろ「防衛計画大綱水準達成の中でぎりぎりの線をどうするかという観点から、私も十二月になりまして、経済成長が随分低くなったな、その中で組まねばならぬことは何かというと、やはり後方の方を組まねばならぬ、そういうことからやむを得ず超えざるを得なかったということでございまして、初めから一%突破ありき、あるいはそれを助長するような行動をとったというのは、少なくとも私の気持ちの中にはないということを御理解いただきたいと思います。
  13. 渡部行雄

    渡部(行)委員 長官は参議院の予算委員会の中でも「当面」と「めど」ということを盛んにお答えになってそれを強調されておるようですが、しかし、三木内閣がみずから国民に約束したというのは、これは日本国民だけじゃないのですよ。世界に向かって約束したことだと私は思うのです。それは、平和憲法との関連において、また日本の過去の戦歴において、日本軍国主義という汚名を世界じゅうから浴びせられて、そういうものに平和国家としてこたえていくために節度ある防衛力整備というものを考えられた。その結果としてあの一%枠が決められたと思うのです。  ですから、これは国民要請があったから一%が決まったのでなくて、三木内閣そのものが、言ってみれば自民党そのもの国民世界に向かって、日本は再び軍事大国にはなりませんよ、このように平和憲法の中で節度ある防衛費計画を遂行しているのだということを表明したものだと私は思うのですよ。ですから、当面ということは、まず、時代の変化あるいは情勢の進展、そういうものははかり知れませんからここで「当面」ということと「めど」ということが言われておると思うのですが、今国際情勢はそれほど緊迫しているのでしょうか。私は、長官がどういう国際情勢軍事情勢認識を持っておられるか、その辺をお聞かせ願いたいと思うのです。
  14. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 国際情勢認識でございますが、レーガンさんとゴルバチョフさん、これが精力的に軍縮の問題にも取りかかろう、そういう機運が出ていることは大変私は歓迎すべきことでございまするし、これが前進されることを望みます。  しかし、御案内のとおり、世界のいろいろな軍事情勢を見ますと、そういう傾向が出たからそれがそのままずっといってしまうのかというと、必ずしもそうではない。しかも核の問題もございますけれども、同時に通常兵力の問題もある。そういうような観点から、いわゆる軍縮とか軍備管理というものについては積極的にやっていかなきゃならぬけれども、しかし必要最小限のものだけはやっていかなきゃならぬ。「防衛計画大綱」について、これは一%さえ守っておればいいんだという今のお話でございますけれども、私は「防衛計画大綱」というのは必要最小限度防衛力整備、こう考えておりますので、それを達成するためには、それを継続的、計画的にやらなきゃいかぬ。ちょっと情勢が緩和になってきたからこれは休もう、あるいはこれは非常に急だから進めようなんということは防衛では成り立たない、そう思います。  ですから、世界動きというものについては十分私は関心を持っておりますけれども、しかし同時に、だからといって、ここですぐにどうこうという問題ではない。少なくとも我が国では、もっとしっかりやって、もっと増強しろという空気もある種のとこうにはあったわけでございますが、そういうことはできません、「防衛計画大綱水準がまず最初です、それをやります、しかも私はそれ以上のことはやらない、こう言っているのです。  そういうことでございまして、いわゆる世界情勢との関連からいえば、今直ちに従来の姿勢をストップさせるあるいは変えるということは好ましくない、こう考えております。
  15. 渡部行雄

    渡部(行)委員 国際情勢が若干いい方に進んでおるからといって即座にそれに対応する必要はない、常時一つのレベルで進まなけりゃならぬという趣旨ですが、それじゃなぜ一%の枠を突破しなけりゃならぬのでしょうか。私は、そうなったら今までどおりに継続して一%枠を守って、しかも世界的にも日本防衛方針は変わらないということを明確にすべきじゃないかと思うのですよ。  しかるに、今度の一%枠突破でどういう国際的反響を呼んでいるか。もう早速中国では、日本軍国主義のにおいがするということで相当の問題にしておる。後でまた議論しますが、長官が訪中されるのは恐らくそういうものの疑惑を解消しようとして訪中されるのではないか、こういうふうに思いますけれども、しかしこれはアメリカの中にでも批判があるんです。こういうときになぜそういうことをしなければならないのか。これは国民が納得しませんよ。今、INFが全面的に廃止されようという、そういう核軍縮動きがはっきりしてきておるし、一方でやはり世界のあらゆる混乱に対してもこれを何とかしようという動きも出てきておるわけです。そういう中で日本が特別、軍備増強するということは、これはどうしても国民世界も納得しないことだと私は思うのです。  そういう点で、長官はまず節度ある装備をやっていく、いわゆる節度ある防衛力整備をやる、こういうふうに言われますが、その節度というのが今までの一%枠であったと思うのですよ。これを突破したら節度がなくなるんじゃないですか。いや、それは総額明示節度にしてやる、こう言うかもしれません。しかし、この総額明示方式というのは、それが達成されたときには全然枠がなくなってしまうのです。新たな観点でまた次の防衛力を考えなければならない。そのときに何がその考え方を規制しあるいは牽制するかというと、それがなくなってしまうのですよ。だから、幾らでも軍備はエスカレートして、文民としての長官があっても、長官みずからそういう思想で臨むとすれば何の文民統制になるだろうか、私は非常に疑問です。その点はいかがでしょうか。
  16. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 繰り返しますけれども防衛力増強と言いますけれども、私どもは「防衛計画大綱水準達成するという、それをやっているので、いわゆる俗に言うどんどんどんどん防衛力増強する、そういう増強の方に意味があるのじゃなくて、整備をする、整備達成するための努力をしておる、そういうふうに御理解を賜りたいと思います。
  17. 渡部行雄

    渡部(行)委員 防衛大綱達成をするために一%枠突破をしたと言いますけれども、今度〇・〇〇四%超過しているわけですが、このことは、わずか〇・〇〇四%だから大したことあるまい、こういう話がよくされるわけですよ。しかし、〇・〇〇四%オーバーしたから大したことないならば、〇・〇〇四%少なくても大したことないと思うのですよ。同じ理屈だと思うのです。だとすれば一%を尊重しようという、一%枠を尊重しようということは、その大したこともないところから選択する際に、枠突破をしない選択をするのが当然じゃないでしょうか。それが論理だと思いますがね。ところが、枠を最初から突破して、十八兆四千億を五で割ると全部、各年度全部一%枠突破なんですよ。これを十七兆五千億にしてみなさいよ。そうするとこれは枠突破にならないんです。わずかの配慮の問題で国際的な問題を引き起こし、そして国民から不信を買う、こういう防衛政策というのはおかしいんじゃないか、私はこういうふうに思うのですが、長官いかがでしょうか。
  18. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 一%を〇・〇〇四超えた、これは大したことない、そういうことは政府は言っておりません。(渡部(行)委員「いや、よく言ってますよ」と呼ぶ)いやいや、そんなことはない。そんな大それたことは私は言ってない。むしろこの一%を超えたことに対しまして非常に重い責任を感じているのです。  しかし、それはなぜ超えたかというと、超えざるを得なかったわけです。少しぐらい超えたって当たり前だ、私はそういうふうに思っておりません。ですから、認識が全く違うのでありまして、一%を超えざるを得なかったということを御理解いただき、その内容については厳正を期して執行していきたい、こう考えております。
  19. 渡部行雄

    渡部(行)委員 これは新聞論調やあるいはその他の文献を読んでも明らかですが、今一番問題になっておるのは、この一%枠突破意味が今後どういう日本防衛力整備方向づけていくか、このことなのですよ。ただ、若干出た、出ないとかの問題じゃないのです。問題は、今まで国民世界に向かって約束してきたことをやめて、新たな防衛力整備考え方をしている。しかも、その背後にはいろいろあるでしょう。エイジス艦の購入なりOTHレーダーの問題なり支援戦闘機の問題なり、いろいろあるわけですよ。そういうものとかみ合わせて考えた際に、日本防衛政策というものはここで大転換を図ろうとしているのだなということが世界の国々から考えられていると思うのです。問題はここですよ。日本は、かつての前科がなければいいのです。前科があるから痛くない腹まで探られるのですよ。だからこそ我々は慎重にこの問題を取り上げなければならないわけなのです。そういう点で、これは結局防衛庁長官の腹で突破したのではなくて、そういう外的圧力、もろもろの条件がそうせざるを得なかった、こういうふうに解釈していいでしょうか。
  20. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 先ほど来のお話の中で、一%は公約である、こういうお話がありましたが、公約という意味はいろいろございますからそれはそれとして、しかし、「防衛計画大綱水準達成するというのも歴代内閣がずっと言ってきたことですから、そういう意味でも、これは公約と言えば立派な公約なのです。その中でどう調整するかというのが、昭和六十二年度予算で一%を超えざるを得なかった、こういうことでございます。したがいまして、これは本当にやむを得なくて超えたということでありまして、そのほかの何物でもない、こういうふうに御理解いただきたいと思います。
  21. 渡部行雄

    渡部(行)委員 昭和六十二年一月二十四日の安全保障会議決定閣議決定によれば、特にこの中で「「中期防衛力整備計画」終了後の昭和六十六年度以降の防衛関係経費の在り方については、」と書いて、これは「国際情勢及び経済財政事情等を勘案し、」となっているのです。そうすると、今の経済財政事情というものと国際情勢はどうなのかということをまずはっきりとさせなければならぬと思う。この前提を明確にした上で、だからこういう防衛力整備はやむを得ないのだということならばそれは国民も納得するでしょうが、国際情勢は平和の方向に流れている、軍縮方向に流れている。そして経済情勢はというと、今アメリカあるいはECとの貿易摩擦を起こして、しかも日本の国は交易では黒字を大きくしておるけれども、国の財政はもう百五十兆になろうとするほどの赤字財政菅のです。  この赤字財政の中でなおかつ出血防衛予算というものを考えなければならぬのはなぜか。私は、情勢というものにマッチした政策があってこそ国民理解できると思うのですよ。ところが、情勢とは全く相反する方向防衛力整備が考えられている。これはどこかに別な要素があるのじゃないでしょうか。例えばアメリカからの圧力が強くてとても耐え切れない、あるいは日本軍事産業からの圧力があってどうしてもこの辺でそれをのまなければならない、いろいろなそういう関係があるならばそれを明らかにしていただきたいと思うのです。  むしろ政治家の一番大事なことは、情勢の見通し、それに適合した政策の決定なのですよ。「治にいて乱を忘れず」という言葉がありますけれども、それは政治家の言葉でなくて全く軍人の言葉だと思っているのです。政治家というのは、これから戦争が起こるのか、いや戦争は起こらない、平和が維持できる、こういう判断に立てば、全く資源のむだ遣いであり金のむだ遣いである防衛費というものはもっともっと削減していいはずなのです。そして、その間に日本財政の確立なり平和産業の振興なりを図ってこそ国民にこたえる道だろうと私は思うのです。そういう点はいかがでしようか。
  22. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 アメリカの圧力や日本の国内防衛産業からの圧力があるのではないかということでありますが、さようなことはございません。  これは自分で言うと大変恐縮ですが、私はアメリカに行ってワインバーガー長官と話をするときにも、まず防衛問題から話さないのですよ。世界の平和と軍縮の問題から話をしました。「どうしてこういうふうになるのだ。非常に大変な金を米ソ両国を中心として使っておる。これを貧困なところ、悩めるところ、苦しんでいるところにやったらいいじゃないか。そういう意味合いでアメリカ防衛力というものを言う前に、まずいかにして軍縮をするか、そういう問題についてやってもらいたい」という話をしているのです。これに対するワインバーガー長官の答えは、「全く同感だ。しかし、絶えず言うことは、相互検証についてソ連は我々の言うことを聞かないのだ。そこがあるとなかなかできないのだ」ということも言っておるわけです。  しかも、我が国防衛力大綱水準達成するというのは、これは必要最小限度のものなのですね。これが達成した後、それ以上のことをやるのはけしからぬじゃないかという問題と、まず基本的なものだけは達成しておかなければならないという問題とは分けて考えなければならない。私どもは、基本的に常時備えておかなければならぬ必要最小限度防衛力というのはこういうものだということでお願いしているのです。  もっと言いますと、しかしいろいろのこういうものを買うというのはおかしいじゃないかということになりますれば、それがまさに国会におけるシビリアンコントロールだ。そんなものは必要ないあるいは必要だ、そういう論議に行くのが本当のシビリアンコントロールである。一%の枠の中で、これ以下ならばいい、これを超えたらだめだ、そういう議論でのみ審議することは適当でない、こう考えております。
  23. 渡部行雄

    渡部(行)委員 防衛大綱を全く無視しているわけではないでしょう。今長官が言われたように、大綱達成を非常に重大な責任と感じておる。しかし、今までだってそういう方向でやってきていることには間違いないわけですから、何もここで急に変える必要はないじゃないですか。しかも今、防衛大綱の中でも別表が改定されようという情勢にあると聞いておりますが、そういうふうに一つ一つ軍備がかさばっていきます。しかし、この防衛大綱にせよ中期防衛計画にせよ、情勢の変化、科学技術の進歩、そういうものを考えた際には、いろいろまたそれに対応する変化が要請されてくると思うのですよ。しかし、変化が要請されたからどんな変化をしてもいいというものではないと思うのです。そこに節度ある整備計画というものが要請されるわけです。だから、このところは、総額明示方式を歯どめとするなどという考え方自体が問題だと私は思うのです。総額明示で歯どめになりはしないのです。それは初めからそれだけの計画なのですよ。歯どめじゃなくて執行目標なのです。歯どめというのは、その出ようとするものにブレーキをかけるものであって、最初からその出ようとする範囲を決めておいてかかるのは歯どめじゃないのです。そういう意味では、十八兆四千億というのは何らの歯どめになっていない。長官の腹の中に、もっと軍備増強したい、もっと予算を拡大したいというものがあってこそ、それが歯どめになるのですよ。そういう腹がなければ歯どめになりはしない、この辺はどうでしょう。
  24. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 ここになって急にいろいろやり出すというお話しがございましたけれども、そうではなくて、私が最初防衛庁長官になりましたときに五九中業というのをやった。五九中業の長官指示は、大綱水準達成を期するということだったのです。それが今度は、その五九中業に基づいて中期防というのができた。その中期防を継続的、計画的に実行していこうというようなことが年々の予算になっているわけです。ですから、この範囲は限定されており、どういうものを選ぶかということを十分審議してのせているのです。そういう意味合いで、決してこれはここになって急にやったのではないということです。今言ったような段取りで来ているということをひとつ御理解いただきたいと思います。  なお、どういう装備をどうするというようなことにつきましては、防衛局長の方から答弁させます。
  25. 西廣整輝

    西廣政府委員 御質問は、個々の装備ということよりも、総額明示方式では歯どめにならないというお話であったと思いますが、いわゆる防衛力整備基本的な歯どめは、憲法があり、非核三原則その他の政策があり、防衛力整備のトータル目標としての大綱があると私どもは前々から申し上げております。さらに申し上げれば、個々の整備、具体的な整備内容を盛り込んだ内容の御審議を十分にいただくことが最大の歯どめであると考えておるわけでございます。  そういう意味で、一次防以来、総額明示方式、主要なものについての装備内容を含んだ計画制度というものを維持しておったわけです。しかるに、当時、野党も含めて国民皆様から要望されておった、行きどまりというか、防衛力整備一つの目標を示しなさいということで大綱というものをつくり、かつその執行については、従来どおりの年次計画を我々としてもつくりたかったわけでありますが、当時の経済財政事情その他からそういうものをつくり得る状況になかった。当時、野党の方からも、そういう中期計画総額明示の、しかも主要な、具体的な整備内容の入った計画制度をなぜやめるのだという御指摘がありましたけれども、こういったものをつくり得る状況になかったので、やむを得ず一%というものを当面の執行のめどとしたわけでございます。  しかしながら、一昨年、中期防衛力整備計画もできて、そういう中期的展望に立った計画ができ得るようになったということになりますと、その中期計画の全体規模なり内容なりを十分御審議いただくということが一番の歯どめになり得ると私どもは考えておるわけでございます。  なお、例えば一%という数字だけにこだわって言いますと、私どもは、必要なものがきっちりできるのであれば一%よりももっと下でもよろしいわけでありまして、一%であれば常によろしいというような考え方は必ずしもとらないわけであります。  一方、必要最小限のもの、平時から持たざるを得ないもの、そういったものを持つために必要なものはお認めいただきたいというのが我々の立場でございまして、要は、整備するその内容なり全体規模というものを十分御審議いただくことが重要ではなかろうかというように考えておるわけでございます。
  26. 渡部行雄

    渡部(行)委員 今局長は、別に一%というものにはこだわらないのだ、内容がよければ守ってもいいんだというようなことを言われました。しかし、先ほどから私が言っているように、この一%というのは数字だけの問題じゃないのですよ。一%をちょっぴり出たからとかいう問題ではなくて、その一%を突破したことによってどのような国内的、国際的反響を起こしておるか、重大なのはここなんですよ。  そこで、この問題について、評論家の人もそうですが、軍事戦略の大転換という受けとめ方をしておる人たちが多いのです。軍事戦略の大転換ということは、今まで憲法に遠慮しながらやってきたことを、ここで意識的にこの線を突破しておけばこの次にもっとやりやすくなる、軍備増強がもっと容易になる、こういう一つのねらいが込められて今度の一%枠の突破だと私は思うのです。そうじゃないでしょうか。
  27. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 そういうことを期待する向きがあるのかどうかわかりませんが、もしあるとすれば、それは断じて許せないと思います。どこまでも憲法の枠の中で、限定かつ小規模の、必要最小限度防衛力整備する、大綱にのっとってやっておるわけでございます。これが外れたから、よし、どんどんやっていけるのじゃないか、やろうじゃないかというような空気がもし出るとすれば、それは厳に慎まなければならぬ、それは私が先ほどから申し上げておるとおりです。国会においても十分に御論議をいただかなければならぬし、防衛庁長官としても大綱水準達成を期する、「防衛計画大綱」というのは歯どめだ、これを私は変えるつもりはない、そういうことを強く言っているのは、そういうことが起こった場合に、起こるならば、そういうものはいけませんよということで申し上げている次第であります。
  28. 渡部行雄

    渡部(行)委員 時間も迫っておりますから次に移ります。  洋上防空システムというものについて、その概要の説明をお願いしたいのです。  洋上防空というのは最近使われ出した言葉で、もっとも軍国主義時代は相当使われた言葉ですが、またその言葉が復活した。この新しい洋上防空システムというのはどういうものなのか、それを明らかにしていただきたいと思います。
  29. 西廣整輝

    西廣政府委員 ただいま御質問の洋上防空システムあるいは洋上防空構想というような言葉をお使いだと思いますが、私どもは、洋上防空のシステムあるいは洋上防空構想、構想というと何かわかりませんけれども、新たにどこかを守るという考え方が出てくるようなお考えがあるとすれば、そういったことは考えておりません。  私どもは、洋上防空というのは、いわゆる防空機能の中の一部であるというようにまず理解をいたしております。そして、防空機能の中の洋上防空については、それぞれの状況、そのときの軍事技術なり周辺諸国の軍備の動向というものに応じたありようがあると思います。  そこで、最近我々として非常に関心を持たざるを得ないのは、非常に高速で航続距離の長い爆撃機等の数がふえてきて、洋上でそれらの航空機が活動し得る余地といいますか、活動する機会が非常にふえてきておるという実態、それともう一つは、航空機に搭載する対艦ミサイルあるいは対地ミサイルの射程というものが非常に延びてきて、そういったものが多用されるような状況になってきておるということであります。  そこで、それではその種洋上における防空機能がどういうことに影響するかと申しますと、まず一つは本土防空に関連した問題があります。例えば、本土防空というのは、従来、レーダーサイトで敵機を見つけ、敵機が我が国土上に来た場合にこれを要撃するということで、国土の上で爆弾を落とすことをいかにして防ぐかということを中心で考えておったわけです。ところが、先ほど申したように、非常に射程の長いミサイルというものが使用されるようになりますと、例えばレーダーサイトから五十キロ、百キロ離れたところからレーダーサイトを破壊をするということができますので、今まで国土上空で何とか相手に対応すればよかったものが、もう五十キロなり百キロ先で対応しないとレーダーサイトという防空システムの一番の基盤になるものがやられてしまう、そういったことにどう対応するかという問題がある。  もう一つは、従来から行っております海上交通の保護、そういったときの船舶の防空をどうするか。従来であれば、まずそういう洋上に来る敵の数が少なかったということがありますが、それがふえてきた。しかも、その敵が非常に離れたところから、先ほど言ったような対艦ミサイル等を用いるということになりますと、従前のように船舶を護衛しております船が高射砲であるとか射程の短いミサイル、対空ミサイル等をもって対応したのでは、相手がもっと離れたところからスタンドオフ攻撃ということで、自分の方は全く被害を受けないで、あたかもおりの中にいる動物を射撃するような格好で相手が攻撃をしてくる、そういった状況に対してどう対応するかということを考えることが一つあります。  第三番目は、これまた従来からあったことでありますが、例えば北海道等に敵の侵攻があった、そういうところに増援部隊を送る、あるいは補給物資を送る。逆に、北海道の方から避難民を引き揚げてくる、船で連れて帰ってくる。そういった場合、つまり相手がもう攻撃してきている、場合によっては昔で言う制空権、航空優勢がとられておるような状況下にも、こちらから大量輸送するためにはどうしても船舶を送らなくちゃいけない。この船舶の防空をどうするかという問題があります。  これも従来は、先ほど申したようにその船舶の頭上に来る敵機に対応すればよかったわけですから、高射砲なりミサイル、それから航空優勢がありませんから大したことはできないにしろ、本土からの直衛の戦闘機等で守るということで考えておったわけですが、それらについてもかなり離れたところから攻撃された場合にどうやって守るかといったような問題が現実の問題として非常に大きくなってきている。それにどう対応すべきか、どういう機能を持つべきか、従来の機能をどう強化すべきかというようなことを勉強しているというのが、現在の洋上防空能力についての我々の関心を持っておること、研究していることの内容であります。
  30. 渡部行雄

    渡部(行)委員 今までは洋上防空の考え方の中に「周辺空域」ということがよく言われておったのです。そういう限定が白書の中でも言われておったが、六十一年度の白書では「能力の及ぶ範囲で」、こういうふうに変わってきておる。この変わり方はどういう意味でしょうか。
  31. 西廣整輝

    西廣政府委員 先ほどお答えした中に尽きておると思います、が、まず相手方の航空機の行動範囲、活動範囲というものが広がってきているということが一つあります。前々から洋上を航海する護衛艦あるいはそれが護衛する船舶等を守るための防空装備というものは我々は持っておったわけでありますが、そういったものの必要性がより高まっているということを私は申し上げているわけであります。そして、航空自衛隊の本土防空、全般防空というものについていえば、本土そのもの及びその周辺空域も含めた全般防空を航空自衛隊は担当しているというふうに御理解いただきたいと思います。
  32. 渡部行雄

    渡部(行)委員 「周辺空域」と「能力の及ぶ限り」というのでは相当考え方が違ってきておるのではないか、私はこんなふうに思われるわけです。そこで、それを裏づけるように、今度の洋上防空に関するいろいろな新しい武器の購入あるいは通信施設の設置、そういうものが考えられておるようです。そこで、この洋上防空というものを、今考えておる一つの大要、概要をそのまま実行したと仮定すれば、大体総計で一兆円を超すのではないか、こういうことも言われておるのですが、その辺の予算についてはどのように考えておられますか。
  33. 西廣整輝

    西廣政府委員 私ども、先ほどから申し上げておるように洋上防空という新しい機能なりシステムを建設しようとしてそのための一つのそのプロジェクトについての予算ということで考えておりませんので、金がどのくらいと言われてもなかなか困るわけでございますが、中期防衛力整備計画、これに関連して申し上げますと、洋上防空に関連すると言えるとすれば、例えば艦艇の対空ミサイル能力の近代化ということで、後年度負担を含めまして契約総額として約千五、六百億の金を計上しているものがあります。これは護衛艦の対空火器、ミサイルシステムの能力向上のためのものの予算であります。  それからOTHレーダーについて、これは有用性を研究して、必要があればこの措置をとるということで、契約権能額として約五百億、歳出額としては三百五十億程度のものを考えているといったことが、五カ年計画の中に含まれているこの種洋上防空機能の能力強化に関連するものではなかろうかと思います。
  34. 渡部行雄

    渡部(行)委員 その洋上防空、特別にそういう考えはないと言って今説明されましたけれども、これは新聞等では比較的まとめて発表されているんですね。   「洋上防空」は、護衛隊群の対空ミサイル艦(DDG)をふやし、超水平線レーダー(OTH)基地を新設する、などを骨子としている。  DDG増強で、地方隊とあわせ艦艇は六十六隻に。「約六十隻」の別表枠をはみ出す。OTH部隊ができれば「レーダー部隊二十八個」の枠を突破することになる。  質向上が新戦略、新装備を要求し、量拡大に  つながる。〝大綱路線〟は、満十年に至って、この〝軍事の論理〟に突き当たった。 こういうように新聞で報じられているのです。  だから、今言われた一連のもの、超水平線OTHレーダー、これが大体三千キロから四千キロメートル先まで監視できる、空中警戒管制機AWACS、同時に十数個の目標にミサイル誘導の能力を持つエイジス艦、迎撃戦闘機の飛行距離を延ばすための空中給油機は、一つのシステムとして考えられているのではないかと思うのですが、その点はどうでしょうか。これは全く関連性のないことなんでしょうか。
  35. 西廣整輝

    西廣政府委員 まず前段についてお答え申し上げますが、新聞に書いたことを一々コメントする立場にございませんが、書いている点、今お読みになった点について私若干のコメントを加えますと、かなり認識が間違っておられるのではないかと思います。  一つは、例えば対艦GMを積んだミサイル護衛艦を二隻造成する、これはもう前々から大綱枠組みの中であと二隻つくることになっておるものでありまして、そのためにさらに造成するというようなことはないわけであります。ただ、積むミサイルシステムをどういうものにするか、より近代化するかしないかということで、先ほど申したように、歳出予算にして五百億ぐらい、契約権能額で千五百億ぐらいの金を手当てをして、その護衛艦に積むミサイルの近代化をどうするかということを考えることになっておるわけであります。  それから、OTHレーダーと別表にありますいわゆる警戒管制部隊の数とを一緒にしてその数を超えるとか超えないとかいうふうに申されておりますが、別表で定められておりますのはレーダーの数ではなくて警戒管制部隊の数であって、警戒管制を行う部隊を規制しておるわけです。これは相当な人数を要するものでありますから、別表で規制をしておるわけです。レーダーの数ということになりますと、レーダーというのはそのほか高射砲にもついておる、艦艇にもついておる、たくさんの数がありまして、これらの数とは全く関係がない。それから、OTHレーダーで言えば、これは航空機の管制をするための部隊ではなくて、より広範な戦略情報あるいは戦術情報をとる情報収集のための機能であるというように御理解いただきますと、それを警戒管制部隊の枠組みの中でお考えになっておる方が間違っておるということになろうかと思います。  それらはその程度にいたしまして、今先生の別途のお尋ねは、OTHレーダーエイジス艦、空中給油機というものがセットかどうかというお話ではなかろうかと思います。今先生の申された幾つかのウエポンが出てまいりましたけれども、私はこれは大きく分けると三つのグループに分かれるのではないかと思うのです。  一つはエイジスシステムのような対空ミサイルのシステム、これは洋上防空というよりもそういう艦艇の防空システム、自衛火器、自分を守るためあるいは自分が守っておる船団を守る防空装備の問題であって、先ほど私が申し上げた洋上における全体防空をどうするかとか本土防空についてどうするかといった中で言えば、艦艇そのものの防空をどうするかという分野で、まず切り離されるものであろう、ほかのものとは格段のつながりはないのではないかと思います。  それから次にOTHレーダーでございますが、これもいわゆる洋上防空におけるOTHレーダーの役割、早期発見という意味合いというものはかなり大きなものがありますが、OTHレーダーは決してそれだけのものではない。より広い戦略情報を得る、あるいは戦術情報を得るというもっと広い意味で情報収集機能として独立して非常に重要なものだというように考えております。  あとのグループが、例えば戦闘機なら戦闘機というものを中核にして空中給油機であるとかあるいはAWACSといったような管制機、そういったものが仮に将来考えられるとすれば、これは例えばOTH等でその状況の概位を把握したものに対する要撃ユニットといいますか、そういう相手の爆撃機等が出てきているものについて要撃するために自分の方から出撃する一つのユニットとして考えられるもので、セットのものになり得るというように考えております。ただ、空中給油機なりAWACSといったものは、そういったユニットとしての機能のほかに、本土防空のCAPであるとか、あるいは空地共同作戦におけるコマンド・アンド・コントロールにAWACSを使うとかいろいろな使い方がありますから、それだけではありませんけれども、洋上防空という関連で申せば一つの仲間であるというようにお考えいただきたいと思います。
  36. 渡部行雄

    渡部(行)委員 この洋上防空というものは、日米シーレーン防衛共同研究の中ではどのように位置づけられて、どのような議論を今までされておるわけですか。
  37. 西廣整輝

    西廣政府委員 洋上防空とシーレーン研究とのつながりということ、これは直接的にどうつながりがあるかということはなかなか申し上げにくいのです。というのはシーレーン防衛研究で洋上防空機能はどうであるかというような格好のことをやっておりませんので、これはシーレーン研究の方の状況をちょっと申し上げなければいかぬと思いますが、シーレーン防衛研究というのは、我が方について言えば、その研究が始まった当時既に予算手当てをしてあるものが就役してくる時点の我が防衛力というものを前提とし、その時点におけるアメリカ側の支援というものをこのぐらいということを想定して、一方その時点における周辺諸国の軍備の動向等を見て、日本に侵攻してくる国があるとすれば、こういう機能、こういう装備で、このくらいの量でシーレーンの破壊等を行うであろう、そういう作戦のシミュレーションでありますので、その中に相手が航空機を当然持っておりますから、航空機による船舶等の攻撃を行いますので、それは言うなれば洋上防空とかかわりのある部分であります。しかしながら洋上防空はどうだというそこだけを切り離して研究の中の一つの部分を占めるというものではない。全体のシナリオというか、相手の出方の中で空から攻撃するものは洋上防空と関連があるし、潜水艦が攻撃してくるものは対潜作戦と関係があり、陸上部隊が攻撃してくればそれは着上陸作戦と関係があるというようにお考えいただきたいと思います。
  38. 渡部行雄

    渡部(行)委員 これからだんだんと洋上防空もはっきりした姿をあらわしてくると思うのです。今までは日米安保条約によって、問題が起きたとき、武力攻撃を受けたときに直ちに米軍が来援して米軍が守ってくれるんだ、こういう思想で貫かれておったのですが、今度はそういう考え方が若干変わってきているのではないか。つまり米陸軍部隊の来援とか、あるいは海軍の来援とかを受ける前に、できるだけ日本の戦闘力を強めて、そして場合によっては逆に今度はアメリカの艦船の護衛に当たる、こういうようなことができるように考慮されてきているのではないかと思うのでありますが、その点はどうでしょうか。
  39. 西廣整輝

    西廣政府委員 日本に対する侵略、日本の国土等に対する侵攻があった場合、安保条約が直ちに発動されてアメリカの支援があるというのは、観念的にはそのとおりでありますが、実際問題としては当然のことながらタイムラグがある。陸上部隊が来るにはそれなりの編成なり輸送なりというのに相当期間がかかります。艦艇部隊であっても、日本周辺に常に必要なだけの部隊が遊よくしているというわけではございませんから、それらが直ちに日本防衛のために参加できるという条件におるとは限りませんし、逆に言えばアメリカ自身が方々いろいろな地域で部隊を拘束されているときこそ日本を攻撃するチャンスにもなるわけでございますから、そういう意味では、攻撃が行われた瞬間からそういったものを期待するということはもともとできないわけでございます。  したがいまして、「防衛計画大綱」でも、その種の余り予測できないような状況、いわゆる小規模限定的な事態というものに対しては日本が独力で有効に対応できるようにしておかないと、せっかく日米安保が有効に機能しても、それらによる支援のいとまがない間に既成事実をつくられてしまうということになりますので、その種、小規模限定的な事態に対しては独力で有効に対応できる防衛力をつくろうということが決められておるわけでございます。
  40. 渡部行雄

    渡部(行)委員 ことしのアメリカ国防報告一九八八年から八九年会計年度の中の日本に関する部分で、シーレーンという表現がなくなって、シーラインズ・オブ・コミュニケーションズ(SLOC)にすべて統一されているようですが、このシーレーンという今までの日本考え方とSLOCの考え方とはどこがどう違うのか、その点を説明していただきたいと思います。
  41. 瀬木博基

    ○瀬木政府委員 本件につきましては参議院においても御質疑がございましたが、私どもが米国に確認いたしておりますところでは、米国におきましてもシーレーンまたシーライン、シーラインという場合にはシーラインズ・オブ・コミュニケーションというふうに使っておることが普通でございますが、米国の観念においても二つのものは全く同じに使われているという回答を受けております。  これはまた参議院において政府の方から答弁をしてございますが、シーレーンといいシーラインといい、この観念はその国、その国情によって違うということはあるというように思います。しかしながら、その二つの言葉によって内容が異なるということはございません。
  42. 渡部行雄

    渡部(行)委員 そうすると、シーレーン防衛共同研究の内容というものは、まずそういう点でいろいろ表現の相違によっても内容が変わっているのではないか、こんな疑惑が出ておるわけでございますので、その内容について明らかにしていただけませんか。
  43. 西廣整輝

    西廣政府委員 このシーレーン防衛研究に着手するに際しましては、シーレーン防衛の研究をするあるいはSLOCの防衛の研究をするといったような、言葉でお互いの誤解が起きるというようなことが全くないように、要するに日米防衛協力のためのガイドライン、その枠組みの中でやるということがまず大前提になっております。つまり、このガイドラインの枠組みということは、日本が攻撃された場合、日本有事の際の日米協力の枠組みの中でやるということであります。つまり、日本自身がもう攻撃され防衛出動命令が下命をされている、その事態にアメリカが支援をしてくれる、そういった状況下が枠組みの中に入っているということがまず大前提になっているということであります。  そこで、それではどういう研究をしたんだということでありますが、これは先ほどちょっと触れましたけれども、そこに投入される相手方の兵力、我が方の防衛力なりアメリカの支援兵力というものについては先ほど申し上げたような考え方に立って、そして海上交通の破壊を中心にしたものでありますから、シナリオとしては広い地域でもあるし、幾らでも書けるわけですが、そういろいろなことをやるわけにもいきませんので、そういうシナリオは一定のものを決めてしまった。仮に、ある方の側がこのシナリオに応じて作戦をして大変まずくいっても、まずくいったから次はこうやろうというようなことはしない、一つ計画どおりとんとんと進めていくということで行われておるわけであります。  それでは、侵略側が我が方にいろいろ仕掛けてくるわけであります。まず、熱い実際の直接的な攻撃が始まる前に隠密裏に港湾等に機雷を敷設するといったようなことから始まって、ある時期急に船舶に対して潜水艦が攻撃を仕掛けてくる、あるいは航空機による攻撃を仕掛けてくるという状況。それから我が方のそういう船舶を守るための航空機なり艦艇基地に対する航空攻撃を加えてくる。さらには、海上に彼らが進出するために非常に枢要と考えられる海峡等の近く、そういった地点に対して上陸侵攻してきてその地域確保をねらってくるといったような形で、相手方がいろいろ作戦をしてくる。それに対して我が方は哨戒なり護衛あるいは防空、さらには着上陸してくるものに対して洋上阻止をする、あるいは上陸したものの撃破を図るといったような各種の作戦をして、これをできるだけ守ろうということを考えるわけであります。  そこで、個々の作戦においては、我が方の被害、これはいわゆる商船の被害、それからそれを守っておる部隊の被害、それから相手方に与えたダメージ、そういったものがそれぞれ出てくる。そして、最終的にはそれらの一連の作戦が終わる段階までの間に日本に入港する船舶量というものがどのぐらい減るかという形で答えが出てくる。どの程度のものが守れ、どの程度入港船舶が減るかという形で検証をするという形のものであります。
  44. 渡部行雄

    渡部(行)委員 話が少しあちこちに飛びますけれども、このOTHレーダーというもの、それからAWACS、またエイジス艦、空中給油機、これの輸入は決まったのですか。どの程度今この輸入についての話が進んでおるのですか。
  45. 西廣整輝

    西廣政府委員 まずAWACSから申し上げますが、AWACSというのは、何種類か飛行機はあるのかもしれませんが、我が方の一昨年できました中期防衛力整備計画の中でその種航空機を購入する計画は計上が全くされておりませんので、これについてはまだ何らの検討もいたしておりません。  それから次にOTHでございますが、OTHについてはその有用性というものを検討し、必要な措置を講ずるということが中期計画で決められておる。そこで私ども、ここ、もう一年、二年ぐらいいろいろ研究いたしております。それは、我が防衛についてどの程度有用であるかという面と、実際に設置する場合、いろいろな点を研究しなければいけません。これはどこに置くかということもありますし、電波等の問題もあります。そういったものについての基礎的な勉強をしております。  そこで、六十二年度におきましては、先般成立しました予算でその調査費が入っておりますので、アメリカで現在実験中のOTH・Rという、我が方が導入すればこれだと考えておる機材について調査のチームを派遣して、各種技術的な問題について調査をさせていきたいという状況であります。  もう一つエイジス艦といいますか、エイジスシステムにつきましては、中期防衛力整備計画で対空ミサイルを積んだミサイル護衛艦を二隻つくることになっております。その二隻に積むミサイルシステムについてどう近代化を図っていくかという問題であります。この点については来年度、六十三年度防衛庁の事業計画、先般防衛庁長官の方から各自衛隊に対して指示がございましたが、その中で検討し、必要な措置をとるということになっておりますので、これから来年度、六十三年度の事業として検討してまいりたい、その検討の結果によって、来年度エイジスシステムというようなものを導入するべく概算要求なりをいたすのか、あるいはもう少し勉強するのかといったことをこれから勉強いたす、こういう状況であります。  空中給油機につきましては、先ほど申し上げた中期防衛力整備計画の中で研究だけをするということになっておりますので、これを必要な措置をとるとかそういうことになっておりませんので勉強だけいたしたいということになっておりますが、まだ勉強はいたしておりません。
  46. 渡部行雄

    渡部(行)委員 今挙げたこれらの武器は、それぞれ洋上防空に関連するものとして軍事評論家あたりは受け取っておられるようですが、しかし今のお話だと、それぞれそういう関連の中で考えられているのではなくて、個別に検討したり、あるいは購入の方向で研究が進められているものもある、こういうことでございますね。
  47. 西廣整輝

    西廣政府委員 例えばこれから研究することになっている空中給油機あるいはOTHもそうだと思いますが、その種のものについては、私どもの中で洋上防空能力についての研究をいたしております。そういった中でも出てくる可能性がありますし、一方これから本土防空とか全般防空体制、航空自衛隊の関係ですね、そういったところの日本の防空をどうするかという研究も当然のことながら航空自衛隊においてはいろいろ研究するわけでございます。そちらの方でも出てくる可能性としてあるわけでございます、利用することについて。それらが出てきたところで今度はそれでは空中給油機というものに絞って、それがどういう機能にどういう役に立つかというような研究に場合によってはいく可能性もある、しかしそれは全く行っていない状況であります。
  48. 渡部行雄

    渡部(行)委員 私は、戦略とか戦術とか、あるいはそのために使われる兵器というものは、それぞれに皆関連を持っていると思うのですよ。アメリカが使っているからあれはいいなといってそのものだけを考えるのは、本当の意味でナンセンスだと私は思うのです。そういう点で洋上防空というものを考えた際に、これらが皆関連して考えられなければならない。そうすると、これらをすべて関連して考えた際に、大体どのくらいの予算がかかるかということを考えると九千億から一兆円を超えるだろう、こういうことが今の軍事評論家によってはじき出されているわけですよ。そうすると、それだけの莫大な金をかけて洋上防空の今のようなシステムというものが果たしていかがなものかということが国民の中にもあるわけですから、本当にそういう問題を進める上では、なるほどこれはやむを得ないんだというような説明が十分なされるべきじゃないか、こういうふうに思うわけです。  そこで、前に進みますけれどもOTHレーダーを仮に輸入するとすれば、今四千キロメートル先の状況を監視できる、そういうのと、あるいはそれよりやや小型のいわゆる海軍型、そしてその大型といいますか四千キロ以上の能力を持ったのは空軍型として使われているようですが、もし自衛隊が考える際には、このどちらの型を考えておられるのでしょうか。
  49. 西廣整輝

    西廣政府委員 空軍タイプのものと海軍タイプのもの二種類あることは先生の御指摘のとおりでありまして、どちらが大型かという点については、確かに海軍が今開発中のものがある程度移動可能性があるということでありますが、いずれにしろかなりの地上施設が要るということで、特に到達距離、監視の距離が違っているというものでは必ずしもないと思います。  ただ、二つのもので性格の非常に違う点は、現在海軍が中心になって開発をしておるものは空中の航空機等を探知するだけでなくて、海上における船舶、艦艇等の動き、そういったものも探知できるものをということで開発されております。私どもが仮に導入するとすれば後者、海軍が開発中のものを入れたいというふうに考えておるわけでございます。
  50. 渡部行雄

    渡部(行)委員 そうすると、大体OTH、超水平線レーダーというものを導入したい、そういう意思であることは確認できますか。
  51. 西廣整輝

    西廣政府委員 OTHレーダーについては先ほど来累次申し上げておりますように、我々にとってはそういう広い範囲のものを見得るということで情報収集の面では非常に有用なものだと思いますが、これが果たしてどの程度の性能を有するものであるかとかそういった点については、まだ開発中であるし、今度調査団を送ってみなければわからないという点もございます。それからいろいろ技術的な問題あるいは配置上の問題等もございますし、まだまだ研究しなくてはならない問題が多うございますので、これを導入するということを決めるにはまだ相当時間がかかるというふうに考えております。
  52. 渡部行雄

    渡部(行)委員 まあ研究しているのだから、そういう意思もあるものと思います。  そこで、OTHレーダーに対して米側から、一つOTHレーダー情報解析のためのソフトウエアは日本に提供しない。それから二つ目は、日本OTHレーダーは、生データを横浜市の米軍上瀬谷通信施設に直送してほしい。三番目は、同施設には米海軍がアリューシャン列島のアムチトカ島と西太平洋のグアム島に設置する同型レーダーのデータも集め、総合的に解析評価した情報を日本側に提供する。こういう三つの条件を出してこられたようですが、これは非常に大変な問題を抱えていると思うのです。  日本の国にこの施設をつくって、しかもその情報は全部アメリカが握って、そしてその情報解析のソフトウエアは日本には持たせない。そうすると、全く日本はただ情報基地を提供するにすぎない、こういうことになっていくと思うのです。しかも、こういうシステムの中に日本が組み込まれたら、これは明らかに集団安全保障の枠に飛び込んでしまうのではないか、こういう問題を含んでいると私は思うのです。長官、その点についてはいかがでしょうか。
  53. 西廣整輝

    西廣政府委員 確かに、今先生がおっしゃった新聞に書かれているようなとおりであれば私も問題がありそうな気がしますが、そういうような申し出は全くアメリカからはございません。まだ我が方が導入するかしないか決めていないわけでありますが、我が方は、仮に自衛隊装備として日本の金で装備をするということになれば、当然のことながら自主的運用というものが必要になってくると思います。  そこで、二、三技術的な問題を含めて申し上げますと、一つは、OTHレーダーについて解析ソフトというものは日本に渡さない、そういったものがないと使いこなせないというお話のように聞こえますが、OTHレーダーで探知した情報というものは、その場で解析できるし、それはさほどややこしいものではない。一般のレーダー以上にぼやっとしたものでありますから、それ自身がそう難しい解析装置がどうこうというたぐいのものではないと私ども理解をいたしておりまして、これをアメリカに送って、アメリカで何か料理してもらわないと使えないという代物ではないと思っております。  それではアメリカのアムチトカなりほかのところとの関係はどうなんだということでありますが、OTHレーダーというのは、そこの設置しておる部分に対してある程度近づいてくるあるいは遠ざかっていくものについては探知可能でありますけれども、全く平行に、電波を出している地点から等距離のところを動いているものについては探知できないわけであります。そういう点で、仮に日本が設置したものと、例えばアムチトカみたいな別の方向から見でいるものがあるとすれば、それは方角が九十度違っておるとすれば、我が方が見えないものが見えるということで、そこから情報をもらえればそれはよりベターであるということはあろうかと思いますが、それはまた別個の問題であろうと思います。  いずれにしましても、情報交換一般についていえば、細部についてはまだ非常に長い話になろうかと思いますが、集団的自衛権の行使というのは日本の武力行使を伴うものに関する規制でございますので、一般的に言えば、情報の交換というのは集団的自衛権に抵触するとかそういった問題は起きないものと考えております。
  54. 渡部行雄

    渡部(行)委員 これは真偽のほどはどこまで本当かわかりませんけれども、一応六十一年三月四日の朝日新聞の伝えるところでは、こういう方式で、米軍が求めているやり方では日本が設置するOTHレーダーの情報はそのまま米軍に流れることになって、自主的判断はできない。したがって、日本は実質的に米軍の戦略、戦術情報システムの一翼を担う指揮下部隊になってしまうのではないかという点であります。  今言われましたように、このOTHレーダーの情報というものを解析評価する能力を持つソフトウエアは日本自身で十分開発されているのでしょうか。  この二点についてお伺いします。
  55. 西廣整輝

    西廣政府委員 まず後段の方からお答え申し上げますが、要するにOTHレーダーの機材そのもの、その技術をアメリカ日本に提供する、日本に売ってくれるということになれば、それが使えるものでなければいけないわけでありまして、我が方はそれを設置をして電波を出しているけれども何がとれたのかわからない、アメリカに渡してそれをアメリカが何かいろいろ料理をしてくれたら何となくわかったということではどうにもなりません。レーダーというものは、そもそもリアルタイムにその状況がわかるのが重要なものでございますので、そういったものは、その機材から出した電波が受信した段階で一元的に処理されてしまう。そういうものでなければ何ら意味がないものであるから、その種のものであると理解しておりますし、アメリカ側から何かソフトをやるとかやらないとか、そういう話は全く聞いておりません。  それからもう一点は、果たして御質問を十分理解しているかどうかわかりませんが、先ほど申し上げたように、日本日本の金で自分のものとして整備するものについて何をアメリカ側に提供するかということは日本の国益に即して自主的に判断して提供されるものであるということで、自分でつくったものからとれる情報なり果実が自動的にアメリカに行ってしまって、そのおこぼれをこちらがもらうということは全くあり得ないわけでありますので、その点は御理解をいただきたいと思います。
  56. 渡部行雄

    渡部(行)委員 時間がだんだん迫っておりますから、これ以上詳しくやりたいのですけれどもやめますが、ただ一つ、こういう情報の交換という名のもとに、実際は情報の指揮命令あるいはその解析評価というものを通じて日本一つのシステムの中の一部分に組み込まれてしまうことを私は一番恐れているのです。日本が機械の部品にならないように、独立国家としての防衛のあり方をきちっと踏まえてやっていただかないと、後で内容が国民にわかって、それ大変だというようなことにならないようにお願いしたい。これは集団防衛との関係を特に気をつけていただきたい。  次に移りますが、ペルシャ湾防衛日本の立場についてです。  これは今アメリカの議会の中でも大変な議論を呼んでおり、それからワインバーガーの演説の中でも非常に問題になっておるようですが、これらの動きに対して長官はどのように考えますか。
  57. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 ペルシャ湾の事件は、我が国にとりましても経済活動の根源をなす油等の物資を得なければならぬという立場から、これは極めて重大な問題だと認識しております。これについてアメリカのワインバーガー長官あるいは議会等からいろいろ意見が出ております。そういった問題につきましては私どもも十分に耳を澄まして、聞くべきものは聞かなければならぬ、そういうふうに考えております。
  58. 渡部行雄

    渡部(行)委員 そこで、今どういう動きがあるかを、これも新聞を通じてでございますが、少し読んでみます。  ワインバーガー米国防長官は二十四日、米NBCテレビのニュース番組などの中で、「ペルシャ湾において、米国だけではなく西側諸国の利益を守るためには、これまで以上の艦船と航空機が必要で、「これらの増強は、米軍に限らない」と述べ、西側諸国が協力してペルシャ湾で防衛行動を強化すべきだとの見解を示した。」また、「今後、米国がペルシャ湾での原油確保を西側全体の利益と位置付け、その防衛力の強化を打ち出す姿勢を公式に表明したものとみられる。」という記事でございますが、これに対して日本防衛庁は今後どう対応しようとしておられるのか、その辺をお伺いいたします。
  59. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 これは日本防衛庁がどうこうするという前に、日本政府としてどう対応するかというのがもとだと思います。その方が先行しなければならぬと思います。したがって、この問題について私から話をすることが適当なのか、あるいは外務省等がこの事態を踏まえてどう考えているか、そこら辺を先にすべきかという点があると思います。外務省の方で何かあれば外務省の方で先にやってもらう、これが筋だと思います。
  60. 渡辺允

    ○渡辺(允)政府委員 突然のお尋ねでございますので完全なお答えになるかどうかと存じますけれども、最近のペルシャ湾の問題をめぐります米国内の議論は、御承知のように米国軍艦が被弾をしたという問題から発生しておるわけでございますが、あの事件自体、非常に痛ましい事件であったというふうに私ども考えております。  日本といたしましても、先ほど防衛庁長官が御答弁されましたように、この地域については非常に重大な関心を持ち続けなければならないわけでございます。米国といたしましては、当然のことながら我が国の外交政策あるいは防衛政策については十分承知しておりますし、ワインバーガー長官の発言なるものについて具体的に正確には承知いたしておりませんけれども、当然そういう認識を前提にした発言というふうに考えております。実は、ほかの場所でワインバーガー長官は、議会であったかと思いますが、例えば日本あるいは西ヨーロッパ等がより以上にこの湾岸の防衛をすべきではないかという質問に対して、そうではない、むしろ米国が西側全体の利益を守らなければ、そのこと自体が米国の国益に反することだという趣旨の答弁をしたというふうに記憶いたしております。
  61. 渡部行雄

    渡部(行)委員 政府答弁は大体型にはまっているからそういうことを言われるのでしょうが、米上院がペルシャ湾での単独護衛を中止の可決をしておる。参考までに読んでみますと、「米上院本会議は二十一日、ペルシャ湾でクウェートのタンカーを米海軍艦船が単独で護衛する計画の中止を求める法案を賛成九一、反対五の圧倒的多数で可決した。法案は、日本や欧州などペルシャ湾からの石油安全輸送の恩恵を受けている同盟国との十分な国際協力態勢を提示しない限り、米政府計画を推進してはならない」としたものであるわけです。そうなりますと、なぜアメリカだけが西側諸国の利益のために血を流さなければならないのか、なぜ犠牲にならなければならないのか、こういう論理が当然そこから出てくると思うのです。  そうした場合、日本平和憲法があるから、とてもそれには協力できない。ところが今度、ヨーロッパ諸国、いわゆるNATO諸国は、これはやはり重大事だということで、アメリカと集団安全保障の立場で一つの艦隊を組んでこの護衛に当たる。ペルシャ湾の中にそれぞれプレゼンスというか、そういうものが起きた場合、日本はそのままこれを拒否し続けることができるでしょうか。その辺を明確にしていただきたい。
  62. 渡辺允

    ○渡辺(允)政府委員 先生御指摘のように米国内にいろいろな考え方があることは私ども十分承知しておりますけれども、米国政府と私どもとの間においては認識の食い違いはないと思っております。  それから、日本といたしましては従来から、例えばイラン・イラク紛争等の関係あるいは経済協力という面でできるだけの外交努力をしてきておるわけでございますけれども、今後ともそのように日本としてでき得る手段をもって貢献していくという考え方でございます。
  63. 渡部行雄

    渡部(行)委員 どうも答弁が少し食い違っているようだけれども。  私の言いたいのは、独立国には憲法があるので、その憲法の重要性を世界にPRする必要があるのではないか。そして、なるほど日本は、この憲法を変えない限りはそういうものに協力はできないのだ、させるには、経済面とかその他の部面で日本の協力を仰ぐしかないのだ、そういう理解を今から与えるように外交を展開すべきではないかということです。どうですか。
  64. 渡辺允

    ○渡辺(允)政府委員 その点は先ほども申し上げましたとおり、私どもといたしましても、各種の外交活動あるいは経済協力その他の手段を通じまして、我々としてできることをやっていくという考え方で従来から対処いたしておるところでございます。
  65. 渡部行雄

    渡部(行)委員 外務大臣が来るまで継続してくれという要請もありましたので、そういうつもりでやりますから。  今度はFSXについてお伺いいたします。  今、機種選定で長官も大分頭を痛くしておられるようでございます。F15の改造とかF16、18の改造とか、あるいは全く国産か、アメリカとの共同開発か、こういうようなことが取りざたされ、そのいずれかを選択しなければならないということで、今、長官の判断が最も重要な段階に来ていると思います。三菱重工等を中心とした日本防衛産業界では、一つのこのFSXの支援戦闘機を形まではっきりさせて政府に迫っておるようでございます。これに対して長官の判断と、それからこれにどのように対応していくのかお聞かせ願いたいと思います。
  66. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 今、事務的にどのような折衝が行われているか、そういう経過につきましては、後ほど必要があらば政府委員の方からお答えをいたしますが、私は、この種のものは今までの例から見まして、航空機という、これは我が国防衛にとって極めて重大であると同時に、この航空機をどうするかということをめぐって、いろいろと忌まわしいような事件も今までにないわけじゃなかった。そういうことを考えますと、まさに厳正に対応しなければならぬ。  その場合どこに重点を置くかというと、まず、これは防衛上最もいいものであるかどうか、客観的に見て。防衛上最もいいものを選ぶ、客観的に。これがまず第一ですね。それから、我が国は日米安保でございますから、そこら辺を考えまして、いわゆるアメリカとの協力体制というものを考えますと、もちろん日本独自で決めるわけでございますけれども、少なくともアメリカの国防総省の理解だけは得ておかなければいかぬ。もう一つの問題は何かといいますと、最初に申し上げましたとおり、内外の防衛産業の圧力といいますか、そういうものに屈してはいけない。このいわゆる三原則を固めまして、これでいろいろと判断を願うというふうにしているわけでございます。
  67. 渡部行雄

    渡部(行)委員 アメリカの戦闘機の改造論ですが、これは十五年前のもう古くなっておる戦闘機で、それを改造したところでどの程度の期待ができるのか、その点についてはどういう御判断でしょうか。
  68. 西廣整輝

    西廣政府委員 まさに今、そういったことについて私ども研究、勉強しておるところであります。いずれにしましても、FSXというのは一九九〇年代、それから二十一世紀に入ってまで使うという航空機でありますから、その時点で使う航空機としてどの程度の能力は少なくともなくちゃいけないかということで、これから詰めていきたいというふうに考えておるわけです。  ただ、航空機というのは最近非常に寿命が延びておりまして、例えば私どもの方で最近改造してさらに使おうとしているF4というのは、一九五〇年代に初飛行した飛行機であります。それに比べれば、F15とか16あるいは18といったものは十五年以上も新しい、十年以上も新しい飛行機だということで、それらの航空機についても当然何らかの改良を加えながら、今後さらに十年、二十年使われることは間違いないわけでありますが、それが我が方のFSとして適当なものであるかどうかということについて、これから検討してまいりたいということであります。
  69. 渡部行雄

    渡部(行)委員 この支援戦闘機は、大体、二十一世紀に対応させるという考え方で進めていくのか、それとも現在緊急対応として考えていくのか、その辺が私は非常に重要なポイントになるのではないかと思います。  そこで、時間がありませんからはしょりますが、六月下句にワインバーガー国防長官が訪日されるようでございますけれども、これは支援戦闘機の売り込みに来て、ここで大体決着を図ろうとしているのか、あるいはそのほかどういう重要な内容が討議されるのか、明らかにしていただきたいと思います。この二点をお答えください。
  70. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 ワインバーガー長官日本へ参りますのは、特定の用務はないと思います。私が昨年の九月にアメリカへ参りまして一応お話をした。その後ワインバーガーさんは、私のところへ訪ねたい、そういう意思表示が数回にわたってあったわけです。今度は、いろいろのスケジュールの中で、じゃ帰りに日本へ寄ろうということでお寄りになるのであって、特定のFSXについてどうのこうの、いわんや売り込むというようなことはないわけであります。私は、彼をかばうわけじゃございませんが、彼はそういう売り込みをするなどという卑しい政治家ではないと考えております。
  71. 西廣整輝

    西廣政府委員 FSXの使用される時期というお尋ねだと思いますが、現在F1という支援戦闘機を使っておりますが、これが逐次耐用命数が参りますのが昭和六十年代の末ごろからということで、昭和七十二年には新しい第一番目の飛行隊をつくらなくちゃいけないということでありますから、実際に今回検討しておりますFS部隊が活動する時期というのはほとんどが二十一世紀に入ってからというようにお考えいただいた方がいいと思います。
  72. 渡部行雄

    渡部(行)委員 長官、ワインバーガーがまさか長官に恋人に会いに来るような気持ちで来るわけじゃないと思いますよ。やはりいろいろ問題にかこつけて日本に立ち寄るでしょうが、それはこっちとしても、相手がこういう問題を持ち出したらこういうふうにこたえる、またその他の問題を持ち出すではないか、それは大体どういう問題かという見当くらいはつけて迎えないでは、これは政治家と言えないじゃないですか。その辺どうでしょうか。
  73. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 私は、特定の話はないと思いますが、もしあれば、それに適切に対応いたします。それは私の頭の中で十分、そのときに対応いたします。
  74. 渡部行雄

    渡部(行)委員 じゃ次に移りますが、SDI参加の問題についてでございます。  大体政府は参加の方針で固めつつあるようでございますが、これはいつごろ大体確定する予定なのか、その辺をお聞かせ願いたい。  時間の関係で次の質問も申し上げますが、今、米国下院議員で共和党のダンカン・ハンター議員が、「日本のSDI研究参加は、技術流出を絶対に許さない厳しい内容のスパイ防止法の成立が前提であるべきだ」と言明している。スパイ防止法の成立がなければ日本はSDIに参加すべきでない、こういうことを言っておるのですが、これに対して政府はどのように考えておられますか。
  75. 渡辺允

    ○渡辺(允)政府委員 簡単にお答え申し上げます。  まず第一に、私ども現在アメリカとの間で行っておりますSDIの参加問題についての協議でございますが、これは昨年の秋に官房長官談話を発表いたしまして、その中で、日本の企業等が参加を希望する場合にその参加がなるべく円滑にいくように所要の措置を協議するということで、アメリカと協議を始めたわけでございます。昨年の十月末以降三回にわたって協議を重ねておりますが、なお結論を得ておりません。私どもといたしましては、できる限り早い時期に日米双方が受け入れられる形での了解をつくり上げたいということで現在やっておりますけれども、まだ具体的にいつまでに結論が出るということを明確に申し上げる段階には至っておりません。  それからもう一つ、米国のハンター議員の発言についてのお尋ねでございますが、私どももそういう発言があったという報道がございましたことは承知いたしておりますけれども、発言そのものを確認してあるわけではございません。  いずれにいたしましても、昨年の官房長官談話にございますように、私どもはSDI参加の問題は、いわゆる技術の保護の問題等も含めまして、現行の国内法と日米間の取り決めの枠内で処理するという方針をはっきり基本的に持っておりまして、そういう方針の枠内で結論を得るということで現在話し合いをしておるところでございます。
  76. 渡部行雄

    渡部(行)委員 これは私は前もって言っておったのでございますが、SDIというのはアメリカの単なる防衛戦略ではなくて世界戦略としてとらえるべきだと思うのですよ。SDIに組み込まれてしまえば、ちょうど機械の一部品に日本がなってしまうのではないか。運転する者はアメリカであって、いつとめるもアメリカが勝手にできるし、あるいは部品の取りかえも勝手にできる、しかし部品そのものはもう自分の意思ではどうにもならない、とめようとしてもとまらない、こういうふうなことになると思うのです。ですから、これはよほど慎重に取り扱っていかないと日本アメリカに売ることになりはしないか。この辺を十分配慮していただきたい、こういうふうに思います。いろいろ聞きたいのですが、これはその程度でやめておきます。大臣もいないから。  さらに、宇宙基地の米軍の参加が最近言われておりますが、宇宙基地の利用は平和利用ということで限定されていると思うのですが、その点について、もし万々一アメリカ軍が宇宙基地に参加した場合は日本としてはどうなさるおつもりか。
  77. 村田光平

    ○村田説明員 宇宙基地が民生用及び商業用のものであるということにつきましては、すべての参加国との間で確認されているわけでございます。  御指摘の、国防総省の参加問題につきましては、アメリカ側から現時点では具体的な利用計画があるわけではないとの説明を受けておりまして、その意味で現時点で種々コメントすることは適当ではないのじゃないかと考えるわけでございます。  いずれにしましても、我が国としましては宇宙の平和利用に関します我が国の立場を十分踏まえて対応する所存でございます。
  78. 渡部行雄

    渡部(行)委員 今そういうことを論ずる段階でないと言われますけれども、これは向こうが決めてしまってからでは遅いのですよ。今から対応してそういうことのないようにこちらからむしろ攻撃的にアピールをして、世界に宇宙基地の利用のあり方について日本の態度をどんどんと宣伝する必要があると私は思う。そうして、やはり日本の態度を世界に知らしめるという積極的姿勢が要求されるのじゃないか、私はこう思いますよ。
  79. 村田光平

    ○村田説明員 御指摘のように、我が国の立場を貫くことにつきましては最大限の努力を払っているのが現状でございます。
  80. 渡部行雄

    渡部(行)委員 それから防衛庁長官、最近余りにも自衛隊機の事故が多過ぎる。これは長官になってから一体どれだけの事故が起きているのか。長官になる前の一年間でどのくらいあったか。これを比較して発表していただきたいと思います。
  81. 依田智治

    ○依田政府委員 昨年の七月二十二日から今日までの事故をお尋ねでございますが、九月二日T2、ことしに入って三件ございまして、合計四件の破壊ないし人身の死亡事故を伴う事故が発生しております。航空機四機、それから人員の死亡三名、行方不明二名、民間人の負傷二名でございます。  なお、その前の一年間ということでお尋ねでございますが、六十一年に三件、それから六十年十月に一件、計四件ございまして、航空機の破壊は五機。それは昨年六月十六日F4が二機同時に墜落しておりまして五機、人員死亡六名、負傷三名、こういう状況でございます。
  82. 渡部行雄

    渡部(行)委員 そろそろ外務大臣が来るそうですから、この辺でやめますが、最後に防衛庁長官に。  今言ったように自衛隊機の事故が非常に多い。その上問題なのは、日米合同演習がその規模も大きくなっているしまた回数も多くなっている。一体これからどういう演習が予定されているのか、その点も前もって国民に明らかにする必要があると思うのです。これがだんだんエスカレートしていくと、日本は本当にアメリカ軍の一部分として組み込まれる危険性があるというふうに私は考えます。  そして最後に、やはり言葉の使い方もよほど注意してもらわないと、この防衛白書の二百十八ページ、第六節に「ホスト・ネーション・サポート」ということが書いてあるのですね。これはNATOの中では大変重要な意味を持っていると言われておるのですよ。こういうものを簡単にこういうところに、しかも解説なしで載せるなどというのはちょっと常軌を逸しているんじゃないか。日本のこういう平和憲法下の防衛というのはもっと相当神経を使ってやっていただかないと大変なことになると思うのですよ。その点、長官所信をお伺いいたします。
  83. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 いろいろと御指摘をいただいた点につきましては私どもとして十分留意をし、これからも懸命に努力をしなければならぬ点がございます。それらの点につきましては、今後も誠心誠意成果が上がるように努力をいたしたいと考えております。  今、いろいろと御意見がございましたが、貴重な御意見として十分今後に生かしていきたい、このように考えております。
  84. 渡部行雄

    渡部(行)委員 終わります。どうもありがとうございました。     ―――――――――――――
  85. 大村襄治

    大村委員長 この際、外務大臣から、我が国安全保障政策について説明を求めます。倉成外務大臣。
  86. 倉成正

    ○倉成国務大臣 衆議院安全保障特別委員会の開会に当たりまして、我が国安全保障政策について、所信の一端を申し述べたいと思います。  我が国の平和と繁栄は、言うまでもなく、国際情勢の動向に大きく依存しており、良好な国際環環境を築いていくことは、我が国にとって死活的な重要性を有するものであります。今日、我が国の対外関係は、政治、経済の両面にわたって大きな転換期にあります。今日ほど、我が国国際情勢を的確に判断し、他の自由民主主義諸国との団結と協調を維持しながら、諸問題の解決に向けて適切に対処していくことが求められているときはないと思います。我が国に対する内外の関心や期待は日増しに強くなっております。我が国は、二十一世紀に向けて、真の「国際国家日本」を建設し、世界の平和と繁栄に積極的に貢献していかなければなりません。私も、外交の衝に当たるものとして、内外の期待にこたえるべく、できる限り努力する決意であります。  最近、米ソ軍備管理交渉をめぐって活発な動きが見られることは御承知のとおりであります。核の廃絶は人類の悲願であります。他方、今日の世界の平和と安全は核を含む力の均衡と抑止により維持されているというのが冷厳な現実であります。かかる現実を踏まえ、具体的な成果を求めて一歩一歩着実に努力を積み重ねていくことが、結局、核軍縮への近道であると思います。我が国は、今後とも、我が国を含む自由民主主義諸国全体の安全保障を念頭に置きつつ、米ソ間の軍備管理交渉促進のため、他の西側諸国とも協調しながら、米国の交渉努力を積極的に支援してまいる所存であります。  東西関係の改善のためには、我が国としても東側諸国との対話を行い相互理解を深める努力が重要であります。昨年八年ぶりに、二度にわたり開催された日ソ外相間定期協議において、領土問題を含む平和条約交渉が再開され、さらに、これを継続することが合意され、また、最高首脳レベルも含めて日ソ間の政治対話の一層の強化につき合意を見たことは、今後の対ソ政策を進めるに当たって重要な第一歩であったと考えます。また、本年一月、中曽根総理が、我が国総理として初めて東西関係の接点に位置するフィンランド、東ドイツ、ユーゴスラビア及びポーランドを訪問し、各国首脳との間で、相互理解及び友好関係の増進を図るとともに、緊張の緩和と東西間の政治対話の進展に向けてお互いに努力することについて意見の一致を見たことは有意義であったと考えます。  我が国が、自由民主主義諸国の一員であるとともに、アジア・太平洋地域に位置する国として、この地域の平和と繁栄に寄与することは、我が国の安全にとっても不可欠であります。そのため、今後とも、関係諸国の理解を得ながら、我が国にふさわしい役割を果たしていく所存であります。朝鮮半島における緊張緩和、カンボジア問題の政治解決やイラン・イラク紛争の早期平和的解決のための環境づくり、アフガニスタンからのソ連軍の全面撤退を含む政治解決等に向けて、できる限りの努力を続けていく考えてあります。  開発途上地域の安定と発展は世界の平和と繁栄にとって不可欠であります。今や世界有数の経済力を有する我が国にとって、これら地域への経済協力を拡大していくことは重要な国際的責務であります。現在、第三次中期目標を掲げ、政府開発援助の拡充に努めておりますが、今般、本目標につき、少なくとも七カ年倍増目標を二年繰り上げて実施すること等を明らかにしました。また、量的拡大にとどまらず質的改善も加えつつ、各国のニーズに合致した適切かつ効果的、効率的な援助を実施してまいりたいと考えております。  我が国は、以上に述べましたように積極的な外交により、平和で安定した国際環境を維持し、危機の発生を未然に防止することに努めております。同時に、脅威が現実化した場合に対処するための備えを行っておくことも肝要であります。こうした備えを行ってこそ脅威が現実化することを抑止することができます。我が国は、自由と民主主義という基本的価値観を共有する米国との安全保障体制を堅持し、必要最小限度防衛力整備することにより、いかなる態様の侵略にも対応し得る体制を保持し、もって侵略を未然に防止することとしております。  日米安全保障体制を円滑かつ効果的に運用し、その信頼性を高めることは、我が国安全保障の基盤であります。現在、「日米防衛協力のための指針」に基づく研究の推進、共同訓練の実施、対米武器技術供与の枠組みの整備などに代表される日米防衛協力は着実に進められております。昨年九月には、SDI研究参加問題につき政府の方針を決定し、現在、参加を円滑なものとするため米国政府と協議を進めているところであります。政府は、空母艦載機の夜間着陸訓練場の確保や米軍家族住宅の建設について地域社会の理解を得るべく努力してきておりますが、これは日米安全保障体制の基礎をなす米軍の我が国駐留を効果的なものとするために極めて重要であります。個人の自由と尊厳に立脚する民主主義を守り、繁栄した市民生活を確保していくことは、諸般の努力を通じて日米安全保障体制を維持することによって初めて可能となります。  最後に、この委員会に御出席の皆様方は、安全保障問題に精通され、多年にわたってこれに真剣に取り組んでこられた方々であります。今後とも、皆様の御指導と御鞭撻を賜り、引き続き外務大臣の重責を無事果たせますよう、皆様の御協力をお願い申し上げます。(拍手)
  87. 大村襄治

    大村委員長 午後二時より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時十七分休憩      ――――◇―――――     午後二時二分開議
  88. 大村襄治

    大村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。井上和久君。
  89. 井上和久

    ○井上(和)委員 本国会におきましても重要な問題でございます防衛費の対GNP比一%枠突破という問題についてお伺いをいたしたいと思います。  円高、売上税の廃案、こういうことがありましたら六十二年度防衛関係費は一%枠の以内に実質はなるのじゃなかろうか、こういうふうに思うわけでありますが、六十二年度防衛費は補正で修正をされてもなお一%枠を突破するのかどうか、この見通しについて長官にお尋ねをいたします。
  90. 池田久克

    ○池田(久)政府委員 六十二年度予算の補正後の姿がどうなるかというお尋ねでございますが、まず最初に、売上税、円高で実質的には一%にいってないのじゃないかという点がございましたけれども、売上税につきましては、御承知のように衆議院議長の依頼によります協議会が現在進行しておりまして、あくまでも売上税所要額つきましては引き続きお願いしているという形に予算上はなっております。また、外貨の問題につきましては、いろいろ変動があると思いますけれども、今この段階でどれだけ円高で不用が出るかということは予測できない、今後の推移の問題になってきております。  問題は補正の問題でございますが、この補正につきましては、今言ったような要素がどういう格好で出てくるか、これは今の段階でにわかに判断できない要素がございます。それからもう一つGNPの動向でございますけれども、補正をいつ組むかという問題とも絡んでまいりますけれどもGNPがどういう格好で動きますか、そういうわけで分母、分子ともに今、この段階ではにわかに断定できない状況でございますので、何ともお答えしにくい状況でございます。
  91. 井上和久

    ○井上(和)委員 三兆五千百七十四億円、それで〇・〇〇四の部分というのが百三十四億円と言われておりました。それで、売上税の部分というのはそのうちで百十六億円であろう、こういうふうに私どもは承知をしておるわけであります。そうしますと、突出部分というのは一応十八億になるのじゃないのかな、約その程度だろう、こういうふうに考えるわけであります。  そういたしますと、当初の計画のときには一ドルを百六十三円で計算をなさっておるというふうに伺っておるわけでありますが、現時点では百四十円前後、これが実態だと思います。  円高差益の三本柱というのがございますね。この中に第二番目のところに一般輸入分というのがございまして、その中には、例えば六十一年度でございますと二百九円で計画しておって、実勢レートは百五十八円であった、したがって九十二億円が補正修正をされたというふうな経過が昨年度ございました。そういうふうな実績から考えましても、ことしのこの百六十三円で組んであって現在まで見ますと、昨年度のような状況が再びでき上がるとなれば完全に一%以内であることは間違いない、こう思わざるを得ないのでありますが、いかがでしょう。
  92. 池田久克

    ○池田(久)政府委員 売上税の問題でございますが、六十二年度売上税相当額として百十六億円を予想していることはそのとおりでございますが、六十二年度予算で売上税分として新たに計上した分がそのうちの九十三億でございます。残りは何とか節約できないかという範疇に属しております。  次に外貨の問題でございまして、一般輸入につきまして六十一年度の補正で九十億円不用が出たことは事実でございますし、また、一般輸入は原則として実勢レートで運用してまいりますから、外貨の今後の推移によりまして不用が出てくる可能性は十分あると思います。しかし、先ほど申し上げましたように、年間を通じましてレートがどうなるか、これは今の段階で予測はできない問題であります。ただ、計算上は、一円動きますとドルの場合、一般輸入で二億円強の不用が出てくることは事実でございますから、仮に十円動けば二十億強出るということは十分予想されます。しかし、あくまでも先ほど申し上げましたように六十二年一年間を通じまして、特に輸入の場合は年度後半ということになりますから、その段階でどうなるか、それは今この段階では予測できない、そういう状況でございます。
  93. 井上和久

    ○井上(和)委員 国民の皆さん方もこういうふうに思うと思うのですが、円高というのは急速に進んでいる、あるいは売上税の部分がなくなる、こういうふうになると、一%枠はごくごく少しの突破であるというふうに政府みずからおっしゃっておるわけでありますから、それはなくなるだろうというふうな考え方をお持ちになる皆さん方多数いらっしゃるというふうに私は思います。そう考えますのに、今伺っておりますと、どういうふうになるか非常にわからない、分子、分母ともに動くからというような御答弁がございますが、そういうふうなことで言いますと、それでは非常にわからないままで予算を運営しているのかということにもなるのじゃなかろうか、こういうふうに思います。今年度の実勢レートについては大体どのくらいであろうということもわからないでしょうかね。
  94. 池田久克

    ○池田(久)政府委員 予算編成の段階ではその時点における最も適切なレートを支出官レートとして算定いたしました。それがドルの場合、昨年の十一月の実績をもとにする百六十三円でございます。したがって、わからないで計算したわけではございませんで、その段階では一番妥当なレートと考えたわけであります。そして、GNPもその段階で予想されるものを政府の見通しで採用されておりまして、それによっているわけでございます。  問題は、今後どうなるか、レートがどうなるかということでございますが、これは率直に申し上げましてわからないと申し上げる以外にないわけでございます。
  95. 井上和久

    ○井上(和)委員 次に、六十二年の一月二十四日の閣議決定がございます。この中では五十一年の十一月五日の閣議決定にこれが「代わるものとする」、こういうふうになっておるわけでありますが、この「代わるものとする」ということは、五十一年の十一月五日の閣議決定は消滅をしたぞということになるのかどうか。
  96. 西廣整輝

    西廣政府委員 防衛庁が申し上げるのは若干問題があるかもしれませんが、「代わるもの」ということですから、形式的には当時の閣議決定というものは廃止をされたというように考えるべきではないかと思います。しかしながら、今回の閣議決定にありますように、節度ある防衛力整備を行うという五十一年当時の閣議決定の精神、それを継承しているという意味で「代わる」という言葉を使われたのではないかと考えております。
  97. 井上和久

    ○井上(和)委員 この閣議決定の場合の、例の土手といいましょうか堤防といいましょうか、それがきちっと残っているかどうかということをお伺いしたかったわけでありますが、消滅したというふうに明確に言われるわけですね。閣議決定は消滅したと。
  98. 西廣整輝

    西廣政府委員 形式的には、かわる新しい閣議決定ができたわけでございますから、従前の閣議決定は消えたというように考えるべきだと思います。
  99. 井上和久

    ○井上(和)委員 中期防総額明示方式というものが果たして歯どめなのかどうなのか、これについての根拠をお伺いをいたしたいと思うのですが、新しい歯どめというのは、むしろブレーキでなくしてアクセルである、こういうふうに私は思うわけであります。第二次中期防あるいは第三次、第四次、こういうふうに新しくかわるごとに閣議決定ということで次から次へと新基準というものが出てくるということになるならば、これはまさに歯どめであったりはしないのじゃないのか、ブレーキにはならないのじゃないか、こういうふうに思うのですが、これはどうでしょう。
  100. 西廣整輝

    西廣政府委員 かつて年次防方式、一次防から四次防までその種方式をとったことがございます。その時期と今回の場合と一つ大きく違う点があると思います。  当時の一次防から四次防までというのは、御承知のように三年計画なり五年計画の積み重ねであって、全体として防衛力をどういう目標で整備していくのかという全体構想について何も決めていなかったという問題があろうかと思います。そういう御批判が事実四次防当時にいろいろ出てまいって、そういう点におこたえするために「防衛計画大綱」という形で、我が国が平時から保有すべき防衛力というものについていろいろな面から大綱というもの、水準というものを書きあらわしたものができておるわけでございます。したがって、そういう一つの大目標を持っておる、そしてそれを建設していくための年次計画ということになりますから、かつての年次防とはまた違ったものになっているということはあろうかと思います。  それからもう一点。それでは一次防以来の年次防方式というものが歯どめがなかったかどうかということについて過去の経過を調べてみますと、御承知のように、一次防が発足した当時の防衛費の対GNP比というのは約一・四幾つということで、一・五%近い数字だったと思います。その間、高度成長でどんどんGNPはもちろんふえてまいり、各種の施策、例えば福祉なり公共事業なり文教というものもどんどんふえてまいったわけであります。三十年当時、公共事業、文教そして社会福祉、防衛費というのはほぼ同じくらいの額、一千億なり一千億強の数字で並んでいたと思います。その中で防衛費というものが、単にGNP比ということではなくて、五カ年計画として内容を精査され、年次防方式をとっていたために、御存じのとおり〇・八%台まで逐次落ちていった、対GNP比ということで考えれば。ということで年次計画方式、必ずしもそれは歯どめのない、とめどなき軍拡というような実績になっているということではない。かえってそういう内容を精査して、中期なら中期の内容をまず中期計画をつくる段階で精査して、さらに年度予算節度ある防衛力をつくっていくという防衛予算を組むことによって十分歯どめの役割は果たしておるというように私どもは考えております。
  101. 井上和久

    ○井上(和)委員 総額明示方式というのが歯どめになり得ないということにつきまして、まず第一に総額が決まれば五年間は変わらない、こういうふうに言われるわけでありますが、これは物価上昇率などを当初から見込んでおったといたしましても、兵器の価格変動などでこれは変わるべきものではないのかというふうに思います。  それから第二に、国際情勢認識で大幅に総額が変わることも考えられると思うわけであります。現にこれは四次防のときであったと思いますが、石油パニックで大幅な物価の上昇がありまして、状況の変化で総額が変わったということがございました。  それと第三に、政府の恣意的な判断いかんで総額が変わってくるのではないか、こういうふうに思います。  また第四には、後年度負担という名のツケ買いの比率が高くなってまいりますと、計画年度の総額を決定しても実際はそれを無視した形で発注が可能になるのではないのか。こう考えますと、歯どめだと言うけれども総額明示方式というのは歯どめにはならないものだ、こういうふうに思いますが、いかがでしょう。
  102. 西廣整輝

    西廣政府委員 一昨年閣議決定されました中期防衛力整備計画の十八兆四千億という総額でございますが、これは六十年度価格ということでつくられております。したがいまして、いわば六十年度時点における実質価格ということでありますから、今先生が御質問されました名目上の物価の値下がりであるとかあるいは値上がりであるとか、そういった名目部分につきましてはこの十八兆四千億には入らない。したがって、年度年度予算の累積というものについてやはり我々としては六十年度予算時点の価格に引き直して比べる必要があると思います。したがって、物価上昇分があればそれは差し引いて十八兆四千億と比べるし、仮に最近のように円高があるとかあるいは油が値下がりをしたということで六十年時点よりも名目価格が下がってきたということになりますと、それについては差っ引いて、十八兆四千億からその部分を差し引いたものと比べてみるということでないといけない。  そういう意味で、十八兆四千億が実質価格で明示されているということは、物差しが浮動しないで、きちっと一本決まっておるということで、名目的なもので総額が決めてあるよりもかえってはっきりと、その枠の中にとどまっておるのか超えてしまったのかということがわかるというように考えております。
  103. 井上和久

    ○井上(和)委員 ということは、今お聞きしてますと、結局はその現実に合わしてそれを見直しているような形になりはしませんか。今お話を聞きますと、六十年度現在時点のものに合わすということは、その現実のものに持っていくためにもう一度見直している、私はそういうように思うのですが、これほどうですか。
  104. 西廣整輝

    西廣政府委員 一例をもって申し上げますと、例えば六十二年度予算についてそれぞれの費目のお金が、予算計上額が出てまいります。それと六十年度価格と比べる際に、例えば油であれば六十年度当時一キロリッター幾らであったというものが値下がりしております。そうすると、油の値下がりによる減分が例えば三百億なら三百億あります。それから円高による減の分が二百億あった。そうすると五百億というものが仮にあったとしますと、それから仮に六十二年度防衛費が三兆なら三兆といたしますと、そのうち五百億は実際は値下がりした結果の三兆でありますから三兆五百億であったということで十八兆四千億と比べていくというような形で比較しなくちゃいけないということになります。  そういう点については六十一年度、六十二年度、それぞれ本来であれば防衛デフレーターとでもいうべきものをきっちりつくればいいのかもしれませんが、それはなかなか大変でございますので、我々は一般的には一般のGNPデフレーター、これをもって換算をいたしますけれども、特に六十二年度のように防衛費にかかわる分野で非常に名目的な価格が変動があったもの、例えば油とか円高というようなものについてはそれを抜き出して計算をして、したがってそれを六十年度価格に引き直したところで比べてみる。したがって、十八兆四千億のうち六十一、六十二年度でどこまで消化をしたか、あと残りはどれくらい残っているかということを整理することができるということで、その点では十八兆四千億というものが融通無碍になるということはなくて、これは固定したきっちりした物差しであるというように私どもは考えておるわけでございます。
  105. 井上和久

    ○井上(和)委員 先ほどお伺いした第四点目にあったのですが、後年度負担の件ですね。これにつきまして、総額を決定いたしたとしても実際はそういう名目でもって発注することができるのだろう、ということになりますと実際は歯どめとは言えないのではないかと思いますが、そこのところをもう一度。
  106. 西廣整輝

    西廣政府委員 おっしゃるとおり、防衛庁で調達いたします装備品等につきましては、艦艇、航空機等、三年、四年かかるものがあります。したがって、期間内に契約するあるいは調達に着手するものが全部支出することはありませんで、後年度負担にずれ込んでいくものが当然出てくるわけであります。ところが、それぞれの航空機なり艦船のそれぞれの年度に年割りで支払うべき比率というものはおのずから過去の経験値で決まっておりまして、そう作為的にも動かせない状況になっておることも事実であります。  一方、十八兆四千億というものの中には、この中期防衛力整備計画ができました、執行いたします六十一年度以前の六十年度以前に契約したものの歳出化も入っております。それを含めて十八兆四千億というキャッシュペースの総枠を決めるわけでございまして、今度はこの六十五年までの五カ年間でかなりの後年度負担が出て後年度に送り込むことになると思いますが、仮にそれを全部踏まえた上で次の五カ年計画をつくる際には、総額キャッシュベースでどのくらいのものにするかということで、それが新たな計画をつくった上にぼんと余分に乗るということではなくて、それをまず前提にして総額を考えるということでございますので、必ず総額十八兆四千億、あるいは次の計画で何兆になるかわかりませんが、そういった総額を決める際には、送り込まれてきたものを十分にらんで、その上でぎりぎりどこまでの歳出ベースの総額を決めるかということで審議なされますので、その点の御心配はない。要するに、後年度負担分は別枠で計画外のような形で無条件で認めるというものではございませんので、その点は御理解をいただきたいと思います。
  107. 井上和久

    ○井上(和)委員 そうなりますと、かえって当初の計画自体と後年度負担との関係というものによって目標どおりのことが現実にでき上がるか、それはにらみ合わせてやるというお話でございますが、これは大変難しいのではなかろうかと思うのですが、そこら辺の問題点というのは起こりませんか。
  108. 西廣整輝

    西廣政府委員 御質問を十分理解したかどうかわかりませんが、確かに五カ年計画をつくりますときは、その五年間だけに行う事業あるいは支払うお金というものでは十分ではございません。例えば現在の五カ年計画は六十五年までの計画でございますけれども、その計画をつくるためにはやはり六十九年ごろ、六十五年に契約したものが出てくる時点までを十分にらんで、その時点にどういう飛行機が耐用命数に来るか、そのかわりのものを六十五年に契約しておくというような形で、いわば九年分くらいの状況というものを十分精査した上でその前の五年契約ができている、そのように御理解願いたいと思います。
  109. 井上和久

    ○井上(和)委員 六十二年一月二十四日以降、五十一年十一月の例の「防衛計画大綱」というのは生きておりますか。
  110. 西廣整輝

    西廣政府委員 「防衛計画大綱」は厳として生き続けております。
  111. 井上和久

    ○井上(和)委員 昭和五十二年の防衛白書の八十一、八十二ページですが、それまでの三次防、四次防の五カ年固定方式をやめて単年度方式を主体とする理由を明確に述べておられます。その三番目の中に、転換期にあり流動的要因の多い我が国経済事情からしても、従来のような五カ年固定方式の整備計画を決定し、あらかじめ防衛費の大枠を決めることは適当でなく、年々の経済事情等を勘案して云々、こういうふうに書いてございますね。  これは過去の歴史的な事実といたしまして、四次防に至るまでの防衛費が倍々ゲームと言われるほど増加をいたした経過がございます。したがいまして、今回大綱あるいはGNPの一%方式というものになったのであると我々は理解しておるわけでありますが、そういうふうに明確に五カ年固定方式というもの、大枠を決めるやり方は適当でない、政府みずからそう言われておるわけであります。しかし、今回それにまた戻そうとされようとしているわけでありますが、これによりましてかつてのような倍々ゲームと言われるようなことがまた起こるのではないか、こういう憂いを持つわけでありますが、いかがでしょう。
  112. 西廣整輝

    西廣政府委員 大綱策定後、その白書にございますように、大綱に基づいてこの大綱達成するための防衛力整備をどういう枠組みの中でやっていくかということについて、当時の防衛庁としては、防衛力というのはやはり単年度ではとても見通せないようないろいろな問題がありますので、より計画的、継続的にするために五年くらいの中期計画が欲しいということでそういった案を準備もし、お願いもしたわけでございますが、当時の経済財政事情から見て、御承知のように高度経済成長から安定成長時代に大きく曲がり角の時期でございまして、五十一年ごろの時点で新たに五カ年間を見通した固定的な中期計画をつくれるような状況になかったというのが事実でございます。  したがって、御承知のような一%といったような防衛力整備のためのめどを別途つくったわけですが、その後そういった枠組みの中で、五カ年計画というものは防衛庁限りの計画として中期業務見積もりというような格好で執務上の参考資料としてつくってやってまいりましたけれども、幸いにして一昨年、政府レベルの五カ年計画がまたつくれるような状況になったというか、実際につくっていただいた、決定していただいたということがありまして、いわば五十一年当時の物価その他、非常に大変動期にあったころから比べますと非常に安定してきた現状において改めて五カ年計画をつくれる状況になった。したがって、我々かねがね念願しておったし、一%といったような枠組み以上に、より金額もはっきり決まっており、かつ主要な装備、事業内容について具体的な内容も盛り込んだ計画ということで、より明確な歯どめとなり得る今回のような五カ年計画方式、総額固定方式というものに復帰できるようになったと考えております。
  113. 井上和久

    ○井上(和)委員 転換期にあって、また流動的な要因の多い我が国の経済の状況というものが五十一年当時は今よりももっと顕著であった、こういうふうな考え方を言われるわけであります。ただ、国民の皆さん方としては、防衛白書にはきちっとそう書いてあって、とにかく固定方式、五カ年枠、そういうふうなものは適当でない、だからこれは単年度方式に変えなければなりません、これは白書として全体に公表しているわけです。それが今回またもとへ返ったということは非常に不思議な気がするであろうと私は考えているわけです。これについての説明はもっとわかりやすくなさる必要があると思います。  それと、経済事情でありますが、私考えますのに、見方によりますと今の方が当時以上に転換期じゃないのかという気がするわけでありますし、また流動的な要因というものから見ますと今の方がもっと流動的ではないのかなという気がするわけでございます。こういうふうに考えますときに、この大枠を決めるという行き方に返られた、これについてもう一度しっかり御答弁願いたいと思います。
  114. 西廣整輝

    西廣政府委員 繰り返しになる部分もかなり多いと思いますが、一次防以来年次計画方式で来た。年次計画方式そのものが悪いというよりも、それだけでは最終目標というものが十分示されていないという点で大綱というものができまして、そこで防衛力整備の大きな目標というものができたわけですが、今度はこの目標を達成するためどういう計画方式なりをとるかということで、当然のことながら五十一年当時、いろいろな論議がなされたわけであります。防衛庁としては、防衛力整備というものは一年度ずつ毎年毎年考えていくということではとても計画的、継続的な整備はしにくいので、常に五年ぐらいの計画を持って整備していくのが望ましいということはかねがね申し上げているわけでございます。  ところが、五十一年当時、政府全体でいろいろ御論議になった結果、現状では五カ年の中期計画をつくるような状況にはない、そういうことはできないということで決まったわけでございます。しかし、我々としては、全くめどもなしに防衛力整備はできない、それにかわるものとしてある程度の年度予算めどになるものを示していただきたいということで、一%ぐらいをめどにするということをお決めいただいた。政府としてはそこまでやってもらった。  一方、防衛庁部内としては、それだけでもまだ十分な計画的な防衛力整備はできませんので、一年ほどおくれましたけれども、中期業務見積もりという、防衛庁限りの執務参考用のものを初め五十三年に、それから五六中業、五九中業という形で、五カ年のローリングでつくっておりました。  ところが、五六中業のころから、自分の執務参考用とはいえ、防衛庁ではそういうものをつくっておるではないか、そういったものは政府部内でもっと大いに論議した方がよろしいのではないか、国防会議等に報告した方がいいのではないかという御意見が野党その他からも出てまいりまして、五十六年の中期業務見積もりは国防会議に御報告したという形をとりました。  引き続き、五十九年度、五九中業をつくるべく、私どもとしては、初めは従前と同じように防衛庁限りのものとしてつくり、状況によって国防会議に御報告するということで準備を始めたわけでございますが、その後、国防会議等で各省庁からいろいろ御意見が出まして、この際、政府決定の五カ年計画をつくろうじゃないか、つくるべきである、そういうことになりまして、五九中業を大蔵省その他との間でさらに精査した結果、先般の中期防衛力整備計画ということで、政府決定の五カ年計画として御決定いただいたわけです。  したがいまして、我々としては、この種の中期的な事業を検討するための計画というものは、防衛庁限りのものであれ政府決定のものであれ、何らかのものがないと、年度年度、単年度でやっていては防衛力がどこに行ってしまうかを十分詰め切れないということで、そういうものを持ちたいということは前々から考えておりますし、そういうことで続けてきたわけであります。そして、それが政府レベルでつくられた場合、つくられない場合が過去にあったわけでございますが、これらはあくまで、国防会議等で各省庁から御意見があって、この期間はこれでいこうということをお決めになったものを私どもとしては受け身として受けておるというふうに御理解いただきたいのでありまして、我々自身が政府計画に変えた、あるいは防衛庁限りのものに変えたということではなくて、大綱のような長期目標、五カ年ぐらいの計画年度計画というふうに三段組みの計画制度が常にあった方が計画的な、節度のある防衛力整備ができると考えております。  政府としてどういう方式をとるかというのは、そのときどきの内外の情勢を見ながら国防会議等で御決定をいただいておる、こういうことであります。
  115. 井上和久

    ○井上(和)委員 それでは次に行きたいと思います。  六十二年一月二十四日の閣議決定のうち4というのは何を言わんとされておるのか、簡単で結構ですから御説明願いたいと思います。
  116. 西廣整輝

    西廣政府委員 4は、私ちょっと手元に持っておりませんが、三木内閣当時の閣議決定の精神、いわゆる節度ある防衛力整備を行うという精神を尊重するということが書かれておったと思います。五十一年の三木内閣当時の一%枠の決定というものは、先ほど申し上げたように五カ年計画にかかわる、防衛力整備年度年度予算編成についてのめどを示す枠組みとして決められたものだと思います。  その中に流れる基本的なものは、節度ある防衛力を、恣意的にあるいは増強増強というような形でやっていくということではなくて、国の他の政策なり経済財政事情ともにらみ合わせると同時に、個々の事業内容についてもぎりぎりのところまで効率化等を図り、これ以上絞りようがないというぎりぎりのものを計上していくべきである、そういう精神でつくるべきであるという意味のものであるというふうに理解いたしております。そういった節度ある防衛力を行っていくのだということについては、一%枠という閣議決定が仮に形の上ではなくなろうとも、それは引き続き継承されていくべきものであろうと考えております。
  117. 井上和久

    ○井上(和)委員 局長、時間が余りございませんので、端的にお答えいただきます。  この六十二年一月二十四日の閣議決定の4、五十一年十一月五日閣議決定の「節度ある防衛力整備を行うという精神は、引き続きこれを尊重する」こうお書きでございます。この精神の尊重ということは一体何を意味するのか。我々考えますに、防衛費GNPの百分の一に相当する額を超えないというのが精神だ。それ以外の精神というのはどういうものだと思いますか。
  118. 西廣整輝

    西廣政府委員 これは文字どおり節度ある防衛力ということでありまして、私どもの考えでは、一%内であれば常に節度あるものであるということでは必ずしもない。節度ある防衛力というのは、必ずしもその数字に密着したものではないと思うのです。仮に〇・八%で十分賄える内容のものであったら、それを一%にすること自身意味がないのです。たとえ一%以内であっても、〇・九%であろうが、それは節度を超えている場合もあり得るわけであります。逆に、必要な範囲内でぎりぎり詰めた結果、たまたま今年度予算のように一・〇〇四になりましても、それは内容的に節度ある防衛力だということもまたあり得るということをお認めいただきたいと思うわけであります。
  119. 井上和久

    ○井上(和)委員 五十一年十一月の三木内閣の決定の中には、節度ある防衛力整備を行うということはどこにも書いてないわけでありまして、書いてあるのは、百分の一を超えないということでございます。したがいまして、これについて、三木内閣の決定というものは節度ある防衛力整備を行う精神をうたってあるのだ、少なくともそれが前提にあるのだというふうに言われるということは、私は解釈として正しくないと思うのです、この場合は。やはり一%以内にするということが三木内閣閣議決定に対する正しい理解じゃないのか、こう思います。
  120. 西廣整輝

    西廣政府委員 一%という数字が当時出てきた、それも「当面」というような言葉を二回ほど使いながら出てきたのは、大綱で目標水準というものが示されました。しかし、それをいつまでに達成するのだということになりますと、一年、二年でやろうとすれば物すごい防衛費を一挙につぎ込まなければいけない。一方、いつまででもいいのだということになって、百年でも二百年でもかかっていいのだということになると、これまたいつまでも平時から持つべき防衛力が持てないことになってしまうわけであります。  そこで、当時の経済成長率、長期の経済見積もりがあったわけでございますが、そういったものを見ながら五年なり十年という合理的な計画的な整備達成し得るものとしてどの程度のものが適当であるかという当時のGNP、経済見積もり等とにらみ合わせて一%という数字が出てきたものであって、数字そのものは永遠に変わり得ないものとか、それ以下であったり以上であってはいけないというものではなかったというふうに私どもは当時理解をいたしております。
  121. 井上和久

    ○井上(和)委員 超えてはいけないものではないとかいうことに対して、大変僕は心外といいましょうか、おかしい御答弁だというふうに思います。というのは、やはり三木内閣で決定されたあの事柄というのはGNPの一%以下である、その「百分の一に相当する額を超えない」というこれが最も重要であり、これ以外にないと思われるようなものであると思うのです。そういうふうに理解するのが正しいと私は思います。  それで、特にこの一%枠を守ることができない、また守れなくなりました、それで今度新基準というものを決めました。しかし、新基準というものは三木内閣で決めであることと反対の事柄である、こういうふうに言えると思うのです。それを決めながら、なおかつ三木内閣の精神は尊重いたしますと言うことは非常に矛盾をしておるし、おかしな話じゃないのかなと思います。三木内閣で決定をされたこと、それがこのまま守れているということであればそれでいいと思うのです。そうじゃなくて、それに反対するような総額明示の新基準というものを決めた。これは三木内閣の反対の事柄が決まったんです。そして、その後には三木内閣の精神は守るんだと、こう言う。これはおかしいと言わざるを得ないと思いますがね。
  122. 西廣整輝

    西廣政府委員 五十一年当時の閣議決定といいますのは、一%を超えないことをめどとするというややややこしい表現になっておりますが、仮に一%がもう上限であって、少なければ少ないほどいい、ゼロならいいということであれば一%以下でなくちゃいけないというような決め方もあったと思うのですが、そうではなくて、当時大綱というものができ、これを合理的な期間に当時の経済成長率、経済見通し等からやるためにはこのくらいのテンポがよかろうということで決められたテンポであると私どもは考えております。  その際に一%を超えないところをめどとするというのは、要するに、一%ひらひらちょっと足りないぐらいのところをめどにしていけば、テンポとしては合理的な期間にできるということで決められたものであると私どもは思っておりますし、そういった状況が続いておった。要するに、GNPとその後成長率が当時一三%であったものが現在四%とか五%に下がっておりますけれども、そういう状況の中で相当長くあの閣議決定というものは「当面」といいながら使われてきて、しかも守られてきたなあと思っておりますけれども、それが超えたら絶対いけないとかそういった歯どめという意味よりも、防衛力整備を合理的に行っていくためのテンポを定めたもの、いわゆる五カ年計画等の計画にかわるべきものでありますから、そういった枠組みというようにお考えをいただきたいと思います。
  123. 井上和久

    ○井上(和)委員 じゃ、それはそういうことで次に行きたいと思います。  この三木内閣の精神というものは尊重されるということでありますが、この精神というものが、それでは数値で示すとすれば、今言った必ず一%以内を意味するものではないという御答弁がございました。それならば逆に言えば、例えば一・四四四ならいいのか、あるいは一・九までは構わない分野だと思っておられるのか、そのことについてきっちりとお答えをいただきたいと思います。
  124. 西廣整輝

    西廣政府委員 私は、防衛力整備というのは、GNP比ということになりますと、GNPそのものも変動するものでありますから数字をもってこれということはなかなか言えないのじゃないかと思います。例えば、現在お願いをし先般通過いたしました防衛費というのは、作成当時の政府見積もりのGNP比にしますと一・〇〇四でございます。これで私どもとしては節度ある防衛力、ぎりぎりの防衛力だというふうに考えております。仮にこれが執行段階で、先ほど話がありましたように円高がさらに進行するとかそういった状況で結果的にGNPの方が同じぐらい成長したと仮定しまして、〇・九八なら九八に執行上おさまったということになりますと、私どもは六十二年度についても〇・九八が節度ある防衛力のぎりぎりのものになったということに結果としてなると思います。  一方、今後どういうことになるかわかりませんが、先のことを言って申しわけありませんが、ベア等があったということで、ある程度積まざるを得なかった、その結果GNP等も余り変化がなくて防衛費が一・〇〇四から一・〇〇五なり大なりになった、そういうことになりましても、それは一・〇〇四が六になったから節度を超えたということでなくて、これはベアというそういう他動的なやむを得ざる要素でぎりぎりのところで入ったということであって、これはこれでまた節度ある防衛力になるというふうにお考えいただきたいということを申し上げておるわけであります。
  125. 井上和久

    ○井上(和)委員 三木内閣閣議決定というのは、私は精神論ではないというふうに思うのです。これは明確にその基準が数値でもってきちっと示されておる。これが三木内閣閣議決定意味であるし価値だというふうに思うのです。これは国民の皆さん大方の人がそう思っておると思うのです。その精神が生きておるのがすばらしいんだということじゃない、これはこう思わざるを得ないと思うのです。しかしながら、先ほどからの御答弁ではそういうところがありまして、具体的な数では今やっているそのことについてが最もベターなんだ、そう言われるのでありまして、そのことにつきましては大変心外でございますが、次に行きたいと思います。  政府が今回決定されました新基準、この中では六十六年度以降の歯どめというのは白紙の状態でございます。これにつきまして、なぜこれを六十六年以降どうだということを明示されないのか、また、そのときに、三木内閣の精神と今言われておるものは六十六年以降も尊重をされていくか、あるいは中期防の倍といいますと、六十年度価格でも三十六兆八千億からになるわけでありますが、こういうことになり得ることもあるのかどうか。この三点について。
  126. 西廣整輝

    西廣政府委員 先ほど来再三お答えしておりますように、政府決定について防衛庁が有権的な解釈はできないわけでございますが、たびたび申し上げるようですが、私どもとしては、防衛力整備節度あるものとし、かつ計画的でむだのない効率的なものとするためには五カ年計画のような中期の計画制度というものはあるべきであるというように考えております。  ただ、先般の閣議決定時に、引き続き現在の中期防衛力整備計画に続く五カ年計画をつくるかどうかというようなことは、現内閣よりも先の話になるということの御遠慮があったかどうか私どもはこの辺はつまびらかにしませんが、お決めにならなかった。その時点で状況を見て決定をするということになっておりますが、我々としては中期防衛力整備計画のような中期の計画というものは必要であるという気持ちは持っておりますし、また、そういうものがつくられるであろうというのが常識的な考えではないかというようには考えております。
  127. 井上和久

    ○井上(和)委員 ということは、三木内閣の精神のあるものは六十六年以降も尊重されるということですか。
  128. 西廣整輝

    西廣政府委員 当然尊重されるべきものだと考えております。
  129. 井上和久

    ○井上(和)委員 この六十六年以降の新しい歯どめですね。これは第二次中期防がそれになる、そういうふうな総額が決まるであろうから、そうするとそれを歯どめと考えるんですというような御答弁だったと思いますが、そうでしたね。
  130. 西廣整輝

    西廣政府委員 御質問の趣旨、十分受け取れなかったのですが、いずれにしましても、日本防衛力整備の歯どめというものは、たびたび申し上げますが、憲法であり、その他の政策的な、非核三原則その他の政策面がございます。それから防衛力整備につきましては、大綱という全体的な防衛力整備目標というものについて、政府としては閣議決定で目標として一つの姿というものを描いておる、それが歯どめというように考えるべきだと思います。  それを年々、そのような防衛力をどうつくっていくかというようなことについては、これはそのときどきの経済財政事情なり国際情勢というものとにらみ合わせながらやるべきものだと思いますが、その際には五カ年計画のような中期的な視野に立った審議といいますか審査をして、計画をつくる段階で一つ節度ある防衛力はどういうものだということをやることと、それから年度予算で、もう一度年度予算として精査するという二段階でやることが最も望ましいのではないかというふうに考えておるわけであります。
  131. 井上和久

    ○井上(和)委員 この第二次中期防というのですか、ポスト中期防といいましょうか、この原案づくりというのはもう進めなければならぬのじゃないかという気がするのですが、原案づくりにつきましてはいつごろから始める計画か、お伺いします。
  132. 西廣整輝

    西廣政府委員 原案づくりということになりますともう少し後になると思います。私どもやはり、現在の防衛力に対して新しいもの新しいものを継ぎ足していくということでは限りなくふえていくということでありますから、一つの先の、例えば五年先の防衛力整備のための計画をつくるためには、その前にまず現状を見直す必要があるだろう。そういった点で昨年来いわゆる防衛行革と申しますか、そういった意味で現在の機能なり組織なりといったものを全面的に見直しをしている。そこで余分な、従来に比べれば必要性が減じたものがないかとか、合理化できるものはないかとか、そういった現状分析から始め、さらに今度はもう少したちますとできるだけ先がどうなるかということを、これはまたなかなか難しい問題でございますが、見通すための見積もりをやって、それらを踏まえて五カ年間の事業というものをつくっていく。したがって、事業計画そのものの案をつくるというのはもう一、二年先になるのではなかろうか、一年以上先になるのではなかろうかと思っております。
  133. 井上和久

    ○井上(和)委員 これはかなり時間がかかるということはよくわかるわけですし、もう始めなければならないというふうに思うわけであります。その場合に、何度も申し上げますように新しい歯どめというものがきちっとないと、原案はつくり始めたわ、その歯どめというのは何もないわというので原案をつくり始めると大変まずいのじゃないかというふうに思うわけなんです。原案がつくり始められるときには、この範囲内でこの程度でという、せめてそういう歯どめというのはきちっとあって、そして原案がスタートするのが正しいのじゃないかというふうに私は思うわけであります。  そしてもう一つは、見直していかれるということです。見直しというのは大変大事だと思います。確かに組織が動く上におきまして、プラン・ドゥ・シーというのですか、やってみて後で総括をしてまた始めるというふうになるのだろうと思うのです、そういう意味から必要なんですが、ただ、そうしますとこの一月二十四日の閣議決定の中の2でしたか、あの中には見直さないということが書いてあるのですね。そして、聞くと見直すという話があるのです。どちらがいいとか悪いとかいうのじゃないのでありますが、ただちょっとおかしな話だなというふうに感じます。  これは長官にお願いしたいと思うのですが、結局こういうふうに一%の枠が取り払われた、そして新しい基準というものが生まれた、基準になるかならないか、こういう議論を申し上げたわけでありますが、枠を超した、だから新しいものをつくった、例えばまた超した、また新しいのをつくった、そういうふうになっていきますと、こういう実態がもしここで生まれてきますと、結局は政府、また長官初め皆さん方に対する、我々も含めてでしょう、政治的な姿勢というものに対して国民の信頼が失われないか、私はこれが非常に心配なんであります。これについて御所見を……。
  134. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 お話を承っておりまして、そういう御心配をされるということについてはそういうこともあるかなということで私も理解をいたします。  ただ、一%枠の問題でございますが、政府委員からお話がありましたとおり、これは「当面」「めど」というのがございまして、もともと絶対的なものではなかったわけです。いま一つは「防衛計画大綱」、これが必要最小限度のものとして閣議決定を受けてきているわけですね。そことの間をどうするかということで今まで来たわけです。今度、三木内閣節度ある防衛力という精神は受け継ごうということは、要するに一%を超えた、一%の枠がなくなった、それだったらどんどん野方図にやってもいいということか、またやるべきじゃないか、そんなことはございませんよ。そんなばかなことをしてはいけませんよ。それはどこまでも節度のあるものでなければならない。一%を超えたから、これから後どんどんやってもいいのだ、そんなものではない。やはりそのときそのときの財政経済情勢等を見てやっていかなければならない。もっと言うと、一%を大きく超えることはいけませんよということなんです。  それで今度、六十六年以降の問題についてはどういう計画を立てるかということがまだペンディングになっておりますが、これはそのときの内閣を今の内閣が手を縛るようなことはよくない、そういう配慮があって、経済情勢政治情勢いろいろなことを勘案してやるべきだと言っておりますけれども、底を流れる節度ある防衛力整備、この三木内閣の精神だけは受け継ぐ。そうして防衛庁長官の私は、「防衛計画大綱」というのが歯どめであって、大綱水準を維持するというところに力点を置くべきであるということを機会あるごとに申し上げておるわけでございまして、これによって防衛力が野方図にいくというようなことはあり得ないし、またさようなことは断じてさせてはならぬ、そういう決意でございます。
  135. 井上和久

    ○井上(和)委員 次に、OTHレーダーの件につきまして若干お伺いをいたしたいと思います。来月、アメリカにこの調査団が行かれるということですが、何を調べに行かれますか。
  136. 西廣整輝

    西廣政府委員 私どもの導入の対象として検討しておりますOTHレーダーというのは、先ほど午前中の御審議にも出てまいりましたが、OTH・Rと申しまして米海軍が開発中のものでございます。現在アメリカの大西洋岸のノーフォークでその実用試験が行われつつある段階であります。  そこで、我々としては、仮にOTH導入について今まで机上の検討をいろいろ加えておりましたけれども、果たして我々が期待するような精度の情報が得られるのかどうかということもございます。それから、これは短波を使用するレーダーでございますが、その出す短波というものが他の電波等に干渉を与えるかどうかとか、いろいろな問題がございます。その種の問題について現物、現地に即して調査をしてまいりたいということで、その調査の結果を今後このOTHそのものの採否についての基礎データといたしたいということであります。
  137. 井上和久

    ○井上(和)委員 このOTHレーダーの配備の件ですが、候補地につきましては、先日の新聞報道によりますと、硫黄島に設置するというような話が出ておったように思います。まずこれは何カ所にするつもりか、またいつまでに決めたいと思っておられるか、この二つだけ簡単に。
  138. 西廣整輝

    西廣政府委員 OTHレーダーというのはかなり広い範囲の地域の探知が可能でございますから、置くとすれば一カ所。ただし一セットということになります。これは受信所と送信所の二つが要りますので、場所的にはそれが離れたところで二カ所要ることになります。装置としては一つでございますが、受信用のものと送信用のものとが要りますので、電波を出す方と受ける方が要りますので、二つの場所が要る。それもかなり離れたところに二つの場所が要るというものでございます。  それから時期の問題でございますが、いつまでに入れなくちゃいけないというものではございませんで、入れるかどうかを含めて検討するものでございますので、タイムリミットというものは必ずしもないというように考えております。
  139. 井上和久

    ○井上(和)委員 ということは、来年度の概算要求の中には入らないということですね。それがあるとタイムリミットはないというわけにいかぬでしょう。それでは、そこには入れないということですね。  それと、もう一度確認しておきますが、当初は二カ所必要ではないかというようなお話を、私何かで見たような感じがするのですが、間違いなく一カ所でよかったのですね。
  140. 西廣整輝

    西廣政府委員 繰り返すようでございますが、要するに機材は一セット、その場合に電波を出して受けるわけですから、出す場所と受ける場所ということでありますから、施設、土地ということからいうと二カ所要ります。これはちょっと私正確なことは知りませんが、少なくとも十キロぐらい離れている必要があるとかそういったことで二カ所は要るということは事実であります。ただしそれは一つ分という意味であります。
  141. 井上和久

    ○井上(和)委員 場所の硫黄島の件はこれでよろしいのですか。
  142. 西廣整輝

    西廣政府委員 OTHの設置場所につきましては、新聞でたびたびここに決定した、ここがあれだというふうに報じられているわけでありますが、防衛庁で何か決定をするというのは、概算要求を決めるとか、あるいは予算がついて業務計画として年度の執行計画を決めるという、一つの事業についてせいぜい一度か二度しか決心ということはありませんで、そうくるくる決心が変わるわけではございませんので、設置場所等についてまだ検討中でありますから、いまだかつて一度も決めたこともなければ現在決まっておるものでもありません。ただ終始して、私どもとしては硫黄島あたりが場所としては一番いいということは承知しておりますから、硫黄島が場所として一番適当な場所であろうということは存じでおりますし、そういったものを中心に物を考えていることは事実でありますけれども、決定をするとか決心をしたとかそういったことは全くございません。
  143. 井上和久

    ○井上(和)委員 もちろん候補地は何カ所か考えておられるのでしょう。
  144. 西廣整輝

    西廣政府委員 物理的に置き得るという点では何カ所かあるかと思いますが、やはりこれは飛行場のように相当長い施設が要るものでありますから、例えば人が住んでいる町中にそういうものをつくるとか畑をつぶしてつくるとかいうことはなかなか困難であるというふうに考えております。
  145. 井上和久

    ○井上(和)委員 OTHの探知する範囲ですが、これは三千キロか四千キロかと言われるわけでありまして、その範囲の中には中国が入っておりますか。
  146. 西廣整輝

    西廣政府委員 これは一にどちらを向けて置くかということになると思うのです。ただ、ある一カ所に置きますと、探知幅というのは六十度の幅だと思いますので、私どもが見たいと思うところを向いた場合に、例えば硫黄島の方からやって我が国の国土に向かってくるものを見る、あるいはその周辺の海域を見るということになりますと、中国はまず入らないと考えた方がいいと思います。
  147. 井上和久

    ○井上(和)委員 かつてこのことに関しまして、場所の設定等につきまして、新聞報道にもありましたように、相当数の国会議員にお金が何十億流れたとかいうようなお話があったわけでありまして、大切なこのOTHレーダーの設置の場所等につきまして、特にこの監督官庁でもありますし最高責任者でもあります防衛庁長官に、このことについて少なくともそういうことが絶対に起こらないようにしていただきたいと思いますが、決意をお聞きします。
  148. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 防衛の問題で金がいろいろ動く、そうなりますと、我が国防衛に対する国民の信頼というのが根底から覆りますね。私はそういう意味合いでは、まさに身を持すること厳にして、いやしくもそういう疑惑を受けてはならぬということを強く徹底をさせていくつもりでございます。
  149. 井上和久

    ○井上(和)委員 運輸省、お越しいただいておると思いますので、ちょっとお伺いをしておきたいと思います。  それは民間航空路の件でありますが、大変民間航空路の安全ということが今言われておりまして、特にそういう段階にありまして、今、口頭でしょうけれども防衛庁から民間空港の上空の体験飛行をしたい。飛行体験というのですか、こういう申し入れがあったということでありますが、どういう申し入れがありましたか。
  150. 鈴木光男

    ○鈴木説明員 先般防衛庁さんから私ども運輸省に対しまして、民間空港について自衛隊機の上空通過による経験飛行を実施することの可能性について打診がございました。
  151. 井上和久

    ○井上(和)委員 ちょっと資料として簡単にお答えをいただきたいのでありますが、民間空港に対して自衛隊機の着陸が六十年度で何件でしたか。
  152. 鈴木光男

    ○鈴木説明員 私どもの統計は年度ではなくて暦年のものしか現在ございませんけれども昭和六十年で全国の民間空港への自衛隊機の着陸回数は三万四千四百九十五回となっております。
  153. 井上和久

    ○井上(和)委員 長官、三万四千四百九十五回、一年間で自衛隊機が民間空港におりているわけなんです。そういう事実がありながら、上空を体験飛行することはもう必要ないのじゃないかという気がするのですが、これはどんなものなんですか。
  154. 依田智治

    ○依田政府委員 今運輸省さんの方から三万数千回ということでございましたが、このうち大部分、ほとんど九五%以上は共用して、例えば山形とか新潟とか共用空港で、陸上のヘリコプター部隊等が一緒におるところ、そういうヘリコプター等が連日離発着している、その回数が九五%以上、残りのところは大体いろいろな捜索、海難の捜索とか、森林火災、急患の輸送等、災害派遣とか、国賓の輸送、そういうようなこと、また輸送機が着陸する、そういうのが大部分でございまして、私どもが今上空体験飛行という形でお願いしておりますのは、F4の例のように戦闘機パイロット、これは三万数千の中にほとんど入っておりませんので、戦闘機パイロットの慣熟という意味での上空通過をお願いしておる、こういう状況でございます。
  155. 井上和久

    ○井上(和)委員 松山の空港なんですが、六十年に二十一回の自衛隊機の着陸があったわけであります。松山の空港はローカルではありますけれども、767も導入されましたし、十年前に九十一万人のお客さんであったのですが、六十年では百七十三万人、こんなに増大をいたしております。しかもこの空港上におきまして自衛隊機あるいは米軍機も含めまして、着陸はしないけれども上空へ飛来するというのですか、これはすごくあるというふうに言われております。この飛来した数はわかりましょうか。というのは、航空機の事故というのは、滑走路の上で起こるものもありましょうけれども、大体が空中を飛んでいてやるものでありまして、飛来したということは状況的に大変危険な状況になるだろうと思いますので、この掌握している数を教えてください。
  156. 依田智治

    ○依田政府委員 恐らく管制等に従って訓練等のために通過するというようなことはあるのじゃないかと思いますが、その数は把握しておりません。
  157. 井上和久

    ○井上(和)委員 もう時間がありませんので、最後に長官にお伺いをいたします。  長官は今度二十九日から中国を御訪問なさるそうでございまして、これにつきまして一、二点お伺いをしておきたいと思います。  まず、中国の首脳と会談をされると思います。どういうふうな方々と会談を予定されておられるかということ。  もう一つは、GNPの一%とか、あるいは靖国神社の公式参拝とか、いろいろな事柄が重なりまして、中国におきまして軍国主義の批判というものが大変強いものがある、こういうふうに我々は承知をしておりますが、これに対して長官はどのように対処されるおつもりなのかということをお伺いいたします。  もう一点お伺いしておきますが、日中軍事協力あるいは情報交換について新たな取り決めをする意思というのはおありなのかどうなのか、この三点について。
  158. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 第一番目のだれと会うか。これは張愛萍、向こうの国防相と会います。あとはわかりません。中国の方は行ってみないとスケジュールはわからぬそうですから、行ってみてだれと会うかがわかるようであります。今のところは、張愛萍さんが私を招待していますから、この方と会うことは確実でございます。  それから、軍国主義ということについて向こうの方がどういうふうに言われるかわかりませんが、まず私の方から我が国防衛力整備というのはこういう方向でやっております、その中で軍国主義になるようなことは絶対にございません、その理由は何か、戦前と戦後では違います、こういうことでよくお話をするつもりです。(井上(和)委員「一%突破は言いますね」と呼ぶ)当然出てくるのじゃないですか。僕の方は超えるという話ですけれども。いろいろありますから、何も悪びれる必要もないので、自分の方の考え方を整々と申し述べる、相手方の方で誤解があるようでございましたならば、それはぜひ誤解を解いていただきたい、そういうことでいきたいと考えております。  何を取り決めるか。今度は向こうの御招待ですから、特別、任務を持って行くわけじゃないのですよ。しかも再三にわたっての向こうの御招待でございますので、それではお邪魔をいたしましょう、そういうことでございますから、軍事施設その他見せていただくでしょう。それから後は相互理解を深めるようないろいろな話があるでしょう。そういう中で中国側がどういうふうに出られるか、それを見た上で我が国防衛政策に背馳しない限度内でいろいろやることがあればそのときに考える、こういうことです。
  159. 井上和久

    ○井上(和)委員 以上で終わります。ありがとうございました。
  160. 大村襄治

    大村委員長 米沢隆君。
  161. 米沢隆

    ○米沢委員 私は、FSXの機種選定に絡みまして若干の質問をさせていただきたいと思います。  新聞等で報道されておりますように、いよいよFSXの機種選定の作業が大詰めを迎えておりまして、まずこの際我が国中期防衛力整備計画における次期支援戦闘機の位置づけと、その整備に関する基本方針はどのようなものであるか、そしてこの際FSXの機種決定から生産及び機数の導入までの計画を明らかにしていただきたいと思います。
  162. 西廣整輝

    西廣政府委員 まず、中期防の中でどういう扱いになっておるかということであります。  計画として入っておりますのは、仮に現在のF1にかわるFSですね、これが機種が決まったということで、現在のF1というのは七十五機編成に対してぎりぎりの数になっておりますので、それの損耗補てんをやる場合もあり得べしということで、お金目としては歳出が十億円、後年度負担が六百九十億円、合わせて七百億円の金が入っております。仮にこれが開発になるということになりますと、そういったつなぎで事故損耗等補てんすることはできませんので、今申し上げた七百億円の金は研究開発の方に回って研究開発を行うということになろう、そういう点ではフレキシブルに扱われる格好で中期計画には入っております。  このFSXのFSの選定といいますか、物の考え方いかんということでおりますが、これについてはまさにこれから検討していく上でそれを選定する上での視野といいますか物差しというものがいろいろ出てまいると思うのです。ですから、必ずしも私、全部言い尽くせるとは思いませんが、まず基本になることは、御存じのように戦闘機というのは航空自衛隊の主力の装備品であります。そして、これは大綱の別表によって作戦用航空機何機という中で、戦闘機何機ということがおのずから枠が決まっておりますし、かつ現在の飛行場なりの数から言うとそう数はふやせるものでもないということになっております。この戦闘機をもって日本の防空機能、それからシー・インターディクションといいますか支援戦闘任務と両方を賄わなくちゃいけないということになります。しかも、今回機種選定をしようという航空機は、先ほども話がありましたけれども、二十一世紀の前半二十年ぐらいあるいはそれ以上にわたるかもしれませんが使われる航空機であるということでありますから、その時点で十分役立つもの、それも防空任務、支援戦闘任務あわせて全般に役立つものでなくちゃいけないということがまず大前提であります。そういう点をにらみ合わせて、日本にとってどういう機種が一番いいかを選ぶというのが我々の機種選定の主たるねらいになっておるわけでございます。
  163. 米沢隆

    ○米沢委員 これからの全体計画がちょっと御説明が抜けましたが。
  164. 西廣整輝

    西廣政府委員 全体計画というのを、ちょっとあれしていただきたいのですが……。
  165. 米沢隆

    ○米沢委員 機種決定の時期、それから機数の導入、いつごろまでにそれを導入するのか、いつから配備するのか、そのあたりです。
  166. 西廣整輝

    西廣政府委員 今検討しておるFSはF1という現用機にかわるものであります。このF1は逐次損耗を始めて、このF1部隊にかわる第一番目の部隊というのが、現在の見積もりどおりであれば昭和七十二年に一番目の部隊をつくりたいということになります。したがって、そういった状況でありますので、量産機といいますか部隊配備のための機種決定というのは少なくとも今後七、八年後までには決めなくちゃいけないということになろうと思います。仮に研究開発ということになると、ことしじゅうに決めて来年にも着手しないと七、八年後の機種決定に間に合わない、こういうことになります。
  167. 米沢隆

    ○米沢委員 御案内のとおり、FSX計画に関しましては、防衛庁は去る五十七年七月に決めました五六中業、あれの補足資料の中では、現在のF1は、昭和六十年代後半には耐用命数に達し、また相対的な能力不足も見込まれるということで、中業の最終年度昭和六十二年度にF1の後継機を二十四機購入するという方針が盛り込んであったわけですね。その後、F1の運用状況に照らしまして耐用命数の見直しなどがなされて、F1の後継機の購入時期が、当初六十五年度中に二十四機そろわねばならぬという計画が約五、六年ずれ込んで、今おっしゃったように七十一年ですかぐらいに配備すればいい、こういうことになったということですね、経過は。
  168. 西廣整輝

    西廣政府委員 おっしゃるとおりでありまして、F1の当初見積もっていた耐用命数が、当初のとおりでありますと六十年代には損耗するということで早く機種を決めなくちゃいけない、次のものに生産にかからなくちゃいけないという状況であったわけですが、幸いにしてその後の検討の結果F1の寿命が延びたということで、代替機の配備は七十二年ごろからでよろしいということになったわけでございます。また、それに伴って研究開発しても何とか間に合うかもしれないぐらい交代時期が延びたということにもなります。
  169. 米沢隆

    ○米沢委員 問題は、耐用命数の見直しは別にいたしまして、五六中業の資料で指摘されました「相対的な能力不足も見込まれる。」という指摘ですね。その後こういう問題認識はどういうように変化しておるのか。ですから、どのような認識を今持っておられるのかという点でございます。  例えばその当時、行動半径がちょっと短過ぎるとか、あるいはまた搭載能力が不足しておるのではないか等々が、いわゆる「相対的な能力不足」という言葉であらわれたのではないかと思うのでございますが、もしその能力不足の認識が変わっていないとするならば、少なくとも今F1を使っておるわけでございますから、約十年間我が国防衛体制は能力不足を持っておるという意味で、ある程度穴があいた防衛体制である、こういうふうになるわけでございまして、次期支援戦闘機の調達時期は早ければ早い方がいい、こういう認識が本当なのではないか、こう素朴に思うのでございますが、いかがですか。
  170. 西廣整輝

    西廣政府委員 F1が相対的に能力不足ということは、私は確かにそういう面は否めないと思います。なぜならば、F1そのものが、どちらかというとこれは練習機として開発されたT2を改造したものでありまして、当時の時点、F1というのは非常に新しい、いわばF15とかF16と時代としては同じくらいの時期の飛行機でありますが、練習機タイプとしてつくられたものを転用したものでありますから、戦闘機としての能力としては、なお不足している部分というものは否めないと思います。  そういう点で、純粋に防衛的立場からいえば、より早い時期に新しい機種に変わっていくことが望ましいことは事実でありますが、従来から航空機の耐用命数がまだあるうちにそれを退役させて別の航空機にするというほど防衛力整備について余裕はないといいますか、やはり使えるものはぎりぎりまで使い、他の機種で足らざるは補うというようなことでやってまいりましたので、もう能力不足であるからそれは寿命はあるけれどもやめてしまってすぐ次の機種にということにはまいらないというふうに考えております。
  171. 米沢隆

    ○米沢委員 ところで、FSXに対する防衛庁の選択肢は、従来から開発、現有機の転用、外国機の導入、この三つだと言われておりましたが、これは現在も変わっておりませんね。もしこの三つの項目の中で、中身等の変化、考え方の相違が出てきておるとするならば、そのあたりを説明してほしい。
  172. 西廣整輝

    西廣政府委員 開発、現用機の転用、それから外国機の導入という三つの枠組みの中で考えておるということでは変わっておりません。  従来から若干変わった点があるとすれば、当初はたしか、中期計画を決められたころは国内開発という言葉を使っておったと思います。その後、国内開発とは何ぞや、共同開発とは何ぞやといろいろな論議もありまして、いずれにしろ独力ですべてをやるわけではないということで、開発という文字に変わっております。  そこで、内容的には多分御存じだと思いますが、開発の中に入るものとしては、新たな航空機を開発するというものが一つございます。あとは既存機を改良、開発するというものが、例えばF16とか18とか、そういったものが入ろうかと思います。それから外国機の導入ということになりますと、候補となっておるのはF16、18、それからヨーロッパのトーネード、この三機種。それから現用機の転用という分類に入るかなと思われるのは、F4なりF15といった現用機をどうするかという問題であろうかと思います。
  173. 米沢隆

    ○米沢委員 よく言われるのでありますが、外国機の導入は、今御答弁ありましたように対象になっておるのはF16、F18、トーネードの三機種が候補となっておるわけでありますが、これらはもう御案内のとおり、いずれも初飛行は一九七〇年代といいますから、もし我々がFSXを配備するとなりますと、これは二〇〇〇年以後でございますから、その時点におきましては、もう開発以後二十五年を経過するという代物になるわけですね。そうした場合に防衛庁としては、それでもこの三機種がFSXの対象になり得るというふうに本気で考えていらっしゃるのですか。
  174. 西廣整輝

    西廣政府委員 F16、18、そういったものが我々の選定しようとしているFSに適合するかどうかというのは、まさにこれから検討しようとすることでございますので、私、現段階では何とも申し上げられないと思います。そういうことであります。  ただ、年代からいいますと、例えばF4という戦闘機、現在援用しておりますが、これは初飛行は一九五〇年代、量産が始まったのが一九六〇年代の初めというのを、最近になって我々がこれを改良して、さらに今後十年なり何年なり使おうとしておるわけであります。一方、F1というのは、F1そのものの初飛行は一九七〇年代の半ば、それの母機であるT2でも一九七〇年代の初めであります。  そういったものがもうリタイヤしていく。そのかわりを今考えなくちゃいけないということで、必ずしもそのできた時期そのものですべてのものが決まってしまうものではない。それがどのように近代化し得る余地があるかどうかということも含めて、我々考える必要があると思いますが、いずれにしましても、今後どういう航空機がいいかということは、これからの検討の結果によるということであります。
  175. 米沢隆

    ○米沢委員 現有機の転用というのは、具体的には我々の理解は大体F4かなと思っておったのですが、このごろF15あたりがやはり現用機の転用の対象になるというふうに聞いておるのですが、これはそうなるのですか。
  176. 西廣整輝

    西廣政府委員 現用機の転用という際、そのFSというものに対してどの程度の期待をするか、もうごくわずかで、また次の機種が出てくるのを待つというつなぎ的なものとして考えるか、二十一世紀に入って相当期間、二十年なり三十年間使うものとして考えるかによって考え方が変わってくると思います。それによってF4が対象になるかF15が対象になるかということは変わってくるのではないかと思います。
  177. 米沢隆

    ○米沢委員 二十一世紀に使う飛行機だとすれば、結局F15の転用ということも考えられるという方針なんですね。
  178. 西廣整輝

    西廣政府委員 最初にちょっと申し上げたと思いますが、航空自衛隊の戦闘機というのは、支援戦闘部隊であろうと地域の防空任務を担っておるわけであります。したがって、当然のことながら、支援戦闘の任務とあわせて防空機能も十分持っていなくちゃいけない。従来の常識的な考え方からいきますと、ある時点での要撃戦闘機としてハイ・ロー・ミックスで新しいものと古いものとあったとしますと、それが二十年後になりますと、現在の一番ハイレベルのものが二十年後の要撃戦闘機としてはローレベルでようやく使える程度ということになろうと思います。  そういうことを考えますと、二十一世紀に入って、これから二十年後に主力戦闘機となる支援戦闘機であれば、それの要撃能力というのはF15並みというのが常識的な線じゃなかろうかというように考えております。
  179. 米沢隆

    ○米沢委員 先般、四月の中旬でしたか、アメリカの国防総省のサリバン調査団がやってきて、どうもF16、F18はそのままじゃだめだ、あるいは改良したとしても日本の要件に合わない、そういう観点からF16、F18がだめならF15あるいはF14を支援戦闘機として導入すべきではないかということを言って帰ったというふうに新聞なんかは書いてありますが、その事実はいかがでしょうか。もしそうであれば、本来の支援戦闘機の構想から逸脱するという部分が含まれていないのかどうか、どういう御認識ですか。
  180. 西廣整輝

    西廣政府委員 サリバン氏のチームというのは、航空自衛隊を中心とする我が方の技術なり運用の中心の連中との会議に来られたので、私は全部に話を聞いているわけではございませんが、私ども防衛庁に来たミッションというのは何かと申しますと、これから日本が選択しようとしているFS支援戦闘機というものはどういう機能を持つべきであるかというようなことについて、彼ら自身はこうしたらいいんじゃないですかということをサゼストするというか、日本との討議の中でそういった自分たちの考えも言いたいということがまず第一点。  第二点は、日本の航空技術そのものについて彼らの目で見、そして説明を聞いて、日本の航空技術についてどの程度のものであるかということの認識を得たい、それに基づいて彼ら自身の、日本がFSXをつくるについてのもろもろの考え方に対して手助けをしたいというものであろうと思います。したがって、この飛行機をどうですかという話ではないと思います。強いて言えば、日本がつくろうとしている航空機と、彼らがといいますか彼らのアメリカの方の企業が提案しているF16あるいはF18の改良機、そういったものとの技術的格差というものはほとんどない、無理して新しいものをつくらなくてもいいのかもしれないといったような話はあるいは出たかもしれませんけれどもアメリカ国防総省としてこういう航空機が適当ではなかろうかといったような話が出たということは全く聞いておりません。
  181. 米沢隆

    ○米沢委員 第三番目の共同開発ですが、これは具体的にはF16とかF18というアメリカの既存機の改良等をベースにした共同開発という考え方もありますし、あるいは日本の民間企業等が提起しておりますFSX案ですね、このあたりをベースとした共同開発、いわゆるアメリカに協力をいただくという立場の、日本が主体性を持った共同開発、この二つがあると言っていいですね。
  182. 西廣整輝

    西廣政府委員 主体性という意味をどうとるかによりますが、私は、いずれにしましても仮に我が方が開発という案になった場合に、日本政府と契約して開発する主契約者といいますか、それは日本の会社になるんじゃないかと思う。というのは、日本にしか売れない、ごくわずかしか売れないようなものについてアメリカの企業が主導権をとって日本から開発を請け負いするということはまずないのではなかろうかと思いますので、そういう意味では主体性といいますか、契約の主たるメインのコンダクターというのは日本企業ではなかろうかと思います、開発になるとすれば。  それから、その開発の中身が、米国機の既存のものを母体としたものとするか、新たな航空機の開発になるかということはまさにこれから検討していく課題の一つになるというようにお考えいただきたいと思います。
  183. 米沢隆

    ○米沢委員 ところで、今まで日本のFSX計画関連しまして、アメリカ政府とかアメリカの国防総省は一体今日までどういうような要請をしてきておるのか、明らかにしてほしい。
  184. 西廣整輝

    西廣政府委員 要請というものは特にないわけですが、我々としてはこれから整備しようとしているFSの問題についてアメリカ側に、国防総省にできるだけ支援をしてほしい、いろいろ相談に乗って知恵をかしてほしいということで申しておるわけであります。それに対しまして、アメリカの方は喜んで力をかそうということで、要は日本防衛にとって何が一番適しておるものであるか、と同時に日米のインターオペラビリティーといいますか、そういうものをどう考えるかというようなことについてアメリカ側といろいろ協議をし、我々自身の選定の参考にいたしたいというふうに考えておる次第であります。
  185. 米沢隆

    ○米沢委員 このごろ新聞なんかを読んでおりますと、アメリカはいわゆるFSXの機種選定に関連しまして、どうも日米経済摩擦と絡めてアメリカ企業を基本とする日米共同開発をしたらどうかという動きがかなり強いような感じですね。そういうことを考えておりますと、どうもこれから二十一世紀にも通用する我が国の国益に合うFSXを、機種を選定しようという際に、今日の経済摩擦は確かに大きな問題ではありますけれども、経済摩擦と絡めて、あるいは経済摩擦の解消策としてFSXが議論されるということはちょっと議論としてはおかしいのではないか、そういう感じを私自身持っておるわけです。量産するにしても十年後ですね。あるいはうまくいってライセンス生産をしようとするならば、貿易インバランスという観点からそう関係ない議論であって、何もかも貿易摩擦に絡めてアメリカの機種を買えという議論は、本来の筋からいうとわからぬわけでもありませんし、我が国としてもどこかの頭の隅ではそのあたりを配慮しながらということはあり得ても、しかし、少なくとも日米経済摩擦が一つの大きな理由になって機種選定にそれが影響するということは大変おかしな話だ。少なくとも我々としては、我が国にとって何が一番最善かという手法で選ぶべきだ、こう考えるのですが、防衛庁長官、このあたりはどういうふうにお考えですか。
  186. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 それは全くそのとおりでして、防衛問題と貿易とを一緒にするということはあってはならぬことだと思います。  ただ、仰せのとおりアメリカの議会筋あたりで絡めようという動きがあることも事実でございます。ですから、この動きというものを軽視するわけにはいかない。しかし、どこまでも貿易と防衛とは違うんだ、これで対処をいたしたい、こう考えております。
  187. 米沢隆

    ○米沢委員 外務省の方、来ておられますね。仮にFSXを日本が主導権を握ってといいましょうか日本の案をベースにしてといいましょうか、国内開発ということに決定した場合に、アメリカ議会ではどういう反応を示すのか。今おっしゃいましたように特に議会筋あたりがうるさいというふうに聞いておるのでございますが、日米関係をとの程度悪化させるものになってしまうのか、そのあたりの御判断は何かありますか。
  188. 岡本行夫

    ○岡本説明員 アメリカとの関係でございますけれども、先般総理が訪米されました際も、上院議員のグループとの会合あるいはナショナル・プレスクラブでの質問等に答えまして総理は、第一に我が国のFSX選定については防衛上の技術的、専門的見地から日本防衛にとって費用対効果を含め客観的に最善のものを選定する、第二に日米安保体制の運用の重要性を踏まえる、第三に内外の防衛産業からの影響を排除するというのが栗原防衛庁長官の考えであって、自分もそれに全面的に賛成であるという御説明をされております。したがいまして、アメリカ側が聞いております日本側のFSX選定作業というのはそういったものでございます。  御承知のとおり米国の一部、特に議会を中心といたしましては、FSXについてはアメリカ製の戦闘機の性能の水準の高さあるいは価格競争力の面での優位さなどを強調しつつ、さらには今先生御指摘されました貿易摩擦の側面も絡めまして米国製の戦闘機ないしはその改造型の購入を日本に行わせるべきだという声があるのは事実でございます。ただ、先ほど防衛庁の方からも御答弁がございましたように、アメリカ政府といたしましては日本側の選定作業を慎重に見守っているところでございます。  そこで御質問でございますけれども、循環論法になりまして恐縮でございますけれども栗原防衛庁長官も申されておりますとおり、我が国のFSX選定作業というのは米国の国防関係者の理解を得てこれを行っていかなければいけないというとおりでございまして、そのような米側の国防関係者の理解を得られる合理的な結論であれば、これで日米関係が全体的に悪化していくといったようなことを懸念する必要はないと存じている次第でございます。
  189. 米沢隆

    ○米沢委員 ところで、世界の先進国の中でアメリカから戦闘機を買っている国はありますか。欧州諸国のいわゆる戦闘機開発の現状は一体どうなっているのかという点とあわせてお答えいただきたい。
  190. 筒井良三

    ○筒井政府委員 かつて欧州もF4等、その前にはF104等米国の戦闘機を主力戦闘機として購入して現在も一部使っている事実はございますが、それ以降、欧州の場合には欧州で共同いたしまして、トーネードという戦闘機に切りかえております。その次の戦闘機としては、欧州の将来戦闘機としてEFAといったようなプログラムのものを主として英国、ドイツ等を主体といたしまして共同開発を行うということを検討着手の時期にあるかと聞いております。その他米国の戦闘機のF16とか18、それはカナダとか韓国とか方々の国が使っておりますけれども、主力戦闘機を特に開発している国となりますと、やはりヨーロッパとか、あるいは一部イスラエルとかインドとか、非常に限られた国ということになるかと思います。
  191. 米沢隆

    ○米沢委員 今答弁にありましたように、過去においてはそれぞれアメリカの戦闘機等を買って対処したという事例は多々あるかもしれませんが、このごろ一つの流れとしては、少なくとも先進国といいましょうか、自主開発できるような能力を持ったところは、お互いに共同開発するとかあるいは自主開発するとかいう方向にほぼ流れは変わっておると思うのです。  御承知のとおり先般イスラエルが、昨年の十二月でしたか、ラビという戦闘機を自主開発して初飛行を行ったところ、その翌年の一月、アメリカの方がF16またはF18の改良型をそのかわりに買えという要求をして、イスラエルがこれを拒否して、今両国間で交渉中という話を聞いておるのでございますが、今の日米のFSX交渉と似たようなものがあるような気がするのですが、いかがですか。
  192. 筒井良三

    ○筒井政府委員 イスラエルが次期戦闘機としてみずからが研究開発を今実施中で、ございますが、これはイスラエルという国の大きさ等からも考えまして、資金、技術の大部分は米国に負っているものというぐあいに聞いております。その結果、航空機の開発が終わった段階でございますけれども、これをイスラエル空軍がそのまま装備化するものかどうかということに関して米国といろいろな議論が行われているというぐあいに承知しております。
  193. 米沢隆

    ○米沢委員 次に、インターオペラビリティーに関して若干質問をしたいのであります。  今、日米安保体制のもとで、両国が使用する兵器等について最近しきりと相互運用性という問題が強調されておることは御案内のとおりでございます。そこで防衛庁はこの相互運用性をFSX選定の際具体的にどのように理解をされて進めようとされておるのか。その基本的な見解をちょっとお示しいただきたいと思います。
  194. 西廣整輝

    西廣政府委員 我が国装備します装備品、特に戦闘機のような主力装備品については、当然のことながら日米安保というものを考慮して相互運用性というものは配慮しなければいけない。相互運用性という場合にいろいろな面があります。例えば同じ機種を使うというのも一つの相互運用性でありますし、通信その他十分連絡がとり得る共国運用が可能なような場合も相互運用性であります。あるいは部品等の互換性といったものを考慮するということも相互運用性の中にありますが、いずれにしましても、そういったものについて日米が共同対処する際に十分な連携がとり得るものにするというのが基本であろうかと考えております。
  195. 米沢隆

    ○米沢委員 何かアメリカの議員さんの話なんかを新聞で聞きますと、どうもインターオペラビリティーを確保するためにはアメリカの機種でないとだめだというような議論が盛んに聞こえてくるのでありますが、私はこれは間違いだと思うのです。インターオペラビリティーといった場合に、具体的には、例えば燃料あるいは武装、ウエポン、それから通信及び識別等々、それらの分野において互換性があるあるいは相互運用性が確保できるということであって、何もアメリカさんと同じ機種を使わねばインターオペラビリティーは阻害されるということではないと理解をするのですが、どうですか。
  196. 西廣整輝

    西廣政府委員 おっしゃるとおりだと思います。インターオペラビリティーの中には、アメリカ側の言っているコモナリティーといいますか、同じものを使うというものもありますけれども、必ずしも同じものでなければ相互運用性というものは確保されないものでもないということはまた事実であります。また、同じものを使っておれば、例えば損耗して後で向こうから持ってくれば、パイロットさえ健在であればすぐまた使えるという利便もございますけれども、必ずしも日米安保共同対処行動を有効に果たすために物そのものが同じでなければならないというようには私どもは考えておりません。
  197. 米沢隆

    ○米沢委員 そうだといたしますと、例えばFSXを国内開発しても、これらの燃料とか武装とか通信及び識別等々についてアメリカ機との互換性が確保されればインターオペラビリティーは阻害されないという認識を持っていいということですね。
  198. 西廣整輝

    西廣政府委員 おっしゃるとおりだと思います。
  199. 米沢隆

    ○米沢委員 六月にワインバーガー長官が来日される予定だそうでございますが、FSX問題は基本的にはこの会談で大体大筋が決まると見ていいですか、防衛庁長官
  200. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 先ほども申し上げましたけれども、ワインバーガー長官はそれを決めるために私のところへ、日本へ来る、そういうふうに私は考えておりません。ですから、そのときの情勢の中でワインバーガー長官がどういうふうな発言をされるかというのは私どもは今一切予想しておりません。
  201. 米沢隆

    ○米沢委員 しかし、決めねばならぬ時期はもう切迫しておると思うのでございますが、来年の予算に計上するということになると、一体いつごろまでに機種の決定はなされるのか。非常に興味のあるところですが、どうなっていますか。
  202. 西廣整輝

    西廣政府委員 最初にお断りしたと思いますが、FSの機種決定というのは、何度も申し上げますように決めるのは昭和六十年代の終わりになると思うのです。要は開発するかどうかということによります。  先ほど三つの選択がございまして、開発するということになると一日も早く開発に着手した方がよろしゅうございますから、来年度予算要求にも盛り込みたいということになると思います。そういうことになると、概算要求の期日といえば八月いっぱいにはそれを決心しなければいけない。もちろんそれ以降でも追加要求なり差しかえ要求というのは可能でございますけれども、最も整々とした形ということになれば、八月いっぱいまでに決めて概算要求をするということであろうと思います。
  203. 米沢隆

    ○米沢委員 時間がなくて最後になりましたが、このFSXの決定についてはいわゆる栗原三原則というものがあるそうでございまして、そのような三原則などを踏まえて、あくまでも我が国防衛にとってどの機種がふさわしいかという問題が基本となって、我が国防衛技術の将来やまた今後の日米関係などを十分考慮しつつ、自主的な立場に立って決定すべきであるという考えを我々は持っておりますが、最後に防衛庁長官基本的なこれに対する今日における方針、御見解をお聞きしまして、質問を終わりたいと思います。
  204. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 自主的に責任を持って決めたいと思います。
  205. 米沢隆

    ○米沢委員 終わります。
  206. 大村襄治

    大村委員長 東中光雄君。
  207. 東中光雄

    ○東中委員 私も引き続いてFSXについてお伺いしたいと思います。     〔委員長退席、有馬委員長代理着席〕  今度の「昭和六十二年度業務計画の作成に際して指針とすべき事項に関する長官指示」五月二十一日付のこれによりましても、「支援戦闘機(F-1)の後継機の整備について検討の上、必要な措置を講ずる。」まさに目前の問題になっておると思うのであります。  最初に私がお伺いしたいのは、支援戦闘機ということ自体であります。日本だけで言っている言葉のようでありますが、防衛学会編の朝雲新聞社から出している国防用語辞典というのによりますと、「支援戦闘機(support fighter)と呼称しているが、機能的には戦闘爆撃機」ファイターボンバーであるというふうに書いてあるのです。支援戦闘機という日本だけで使っている言葉は、戦闘爆撃機と違う点があるとすればどういう点が違うのか、同じなのか、まず防衛局長にお伺いしたいと思うのです。
  208. 西廣整輝

    西廣政府委員 私、そういうことに余り詳しくありませんが、戦闘爆撃機と言い支援戦闘機と言う場合でも、いろいろあると思います。対地支援戦闘機、地上作戦を支援する戦闘機というのもあろうかと思います。あるいは我が方の場合は、地上戦闘を支援する任務もありますし、同時に、着上陸しようとしておる艦艇、そういったもののシー・インターディクションと申しますか、そういう海上におけるインターディクション、艦艇攻撃等をやる任務も持っているわけであります。したがって、支援戦闘任務にもその国の使い方によっていろいろ違いがあると思いますし、自衛隊のように非常にマルチの任務、多目的な任務を持たせるということになりますと、それはアメリカのようにいろいろな機能についてそれぞれ専用機を持っているところとはまた違うのではないかと考えております。例えば我が方の支援戦闘機は、先ほど来申し上げておるような対地支援任務あるいは艦艇攻撃任務のほかに、要撃任務、防空任務を持たせておる、アラートにもつけておるということで非常にマルチな任務を持っておる。したがって、その種の飛行機というものが各国共通的にあるというふうには必ずしも思っておりません。御指摘のように戦闘爆撃機になるのか何かと言われましても、これですというようにぴたりとお答えできないと思うわけでございます。
  209. 東中光雄

    ○東中委員 戦闘爆撃機というのは、世界一般どこでも使っている用語としてありますね。ファイターボンバーと、増原防衛庁長官があの当時でさえ盛んにそういう言葉を使っています。ところが、我が国は「防衛計画大綱」の別表でも、要撃戦闘機部隊が十個飛行隊で、支援戦闘機部隊は三個飛行隊と基本的に任務分担を決めて、支援戦闘機部隊――これは日本らしいのですが、なぜこういうふうになったのか。爆撃機あるいは戦闘爆撃機部隊というふうにしないのは特別に何かあるのですか。岸首相時代に爆撃機はいかぬというふうに岸さんが言ったので、そういう言葉は使わぬようになったのだということも巷間言われておりますけれども我が国の今の体制の中でこういうことを言っている、その支援戦闘機、F1の後継機ということですから、そういう点で特徴があるのかないのかということをお伺いしたい。
  210. 西廣整輝

    西廣政府委員 この種の論議がどういう意味があるのかよくわかりませんが、戦闘爆撃機、ファイターボンバーという言葉はなかったとも私思いませんけれども、最近の戦闘機の分類について、戦闘爆撃機と何かという分け方は余り聞いたことがございませんで、それよりも、例えば制空戦闘機、戦術戦闘機というような分け方の方が外国ではより一般的ではないかと思っております。  いずれにしましても、先ほど申し上げたように限られた防衛力の中でいろいろな任務を持たせる、その際に、航空自衛隊の主たる任務は防空でありますし、そして平時からアラートに、支援戦闘機部隊も含めて七カ所の基地に配備して防空任務につかせておる。その中で三個飛行隊については対地あるいは対艦攻撃任務といいますか、そういった機能を持たせた戦闘機にしておるということであります。
  211. 東中光雄

    ○東中委員 辞典を見ますと、戦闘機というのは要撃戦闘機、制空戦闘機、戦闘爆撃機。航空宇宙辞典でも大体同じような分類をしておって、支援戦闘機という日本で使っている特殊な言葉も説明が入っておるということなんです。  私があえてこういうことを聞いているのは、日本憲法下における専守防衛ということを強調している、そういう論理的な建前から、爆撃機ということを避けて支援戦闘機とわざわざ言ったというところにまず注意を喚起しておきたいがらであります。だから、FSXの候補に挙げて、日本からF18とF16とトーネードの三機種についてそれぞれ質問書を出した、調査を行ったということが報道されておりますが、F18にしてもF16にしてもトーネードにしても、これは戦闘爆撃機あるいは攻撃機と言われているものであって、支援戦闘機などと言っているところはそれぞれの国についてないと思うのです。その点はどうでしょう。
  212. 西廣整輝

    西廣政府委員 私、言語学の方は余り詳しくありませんので、その種の分類、お答えする資格があるかどうかわかりませんけれども、例えばF16、これはF15なんかに比べてより小型な軽戦闘機だと思いますが、戦術戦闘に多用されている。ヨーロッパは東西間が非常に近づいておりますから、防空戦闘任務よりも、その戦闘機に与える任務として刺し違え攻撃のような格好で戦術戦闘あるいは攻撃といいますか、そういった任務に使われるのだろうと思います。  ただ、先生は先ほどから戦闘爆撃機という言葉を使われますが、あの小さなF16が戦闘爆撃機で、F15が制空戦闘機か要撃戦闘機かという分け方は、余り常識的でないような気がいたします。
  213. 東中光雄

    ○東中委員 名称の問題ではないのです。その機能の問題を私は言っているのです。殊さらにそう  いうようにそらさぬでもいいじゃないですか。  いずれにしましても、F16、それからF/A18、トーネード、あるいはそれぞれの改良型について、そして最近ではF15Eストライクイーグルも選考の対象にしておられるように我々は新聞上知っているわけです。それについては何かの基準が要ると思うのですが、要求性能をどういうふうに考えておられるのか。いろいろ報道も出ておるようですが、その点をまずお聞きしたいと思います。
  214. 西廣整輝

    西廣政府委員 要求性能の細部については、まさに防衛上の非常に重要な秘密事項でありますので、これを公表することは差し控えさせていただきたいわけであります。  今御質問の中にF15Eというのがございましたが、これは先ほど申し上げた開発、現用機の転用、外国機の導入の中で言えば、外国機の導入――新しい飛行機、まだ現にない飛行機でありますが、新しい外国機の導入の分類に入ると思います。ただ、外国機の導入ということでは、既にF16、18、トーネードという三機種に絞っておりますから、F15Eは対象にしていないというふうに御理解をいただきたいと思います。
  215. 東中光雄

    ○東中委員 F15E、最近になってあるいはF15転用ということを先ほど言われましたけれども、転用機種としてのF15ということを言われましたが、それとは別にF15Eを対象にするということは合していない、将来もない、こういうことですか。
  216. 西廣整輝

    西廣政府委員 まず、F15そのもの、Jですか、現在使っておりますものについては、現用機の転用ということでもう最初から選択肢の中に入っておる。それから、F15Eというのは、まだある飛行機でもございませんし、開発中のものでアメリカの新たな飛行機だと思いますが、これは強いて分類の中に入れれば外国機の導入という分野に入ると思うのですが、外国機の導入については、もう昨年F16、F18それからトーネードという三機種に絞りましたので、今さらF15Eが入ってくるということはないということを申し上げておるわけです。
  217. 東中光雄

    ○東中委員 ついでにちょっとお伺いしておきたいのですが、F15Eストライクイーグルの性能というかそういうものについて、防衛庁としては、まあいろいろ出ておるでしょうけれども、どういうふうにお考えなんでしょうか。
  218. 筒井良三

    ○筒井政府委員 F15Eと申しますのは、現在のF15型がいろいろございますけれども、これは制空戦闘機としまして、エア・ツー・エア、空対空の性能を最も重要視した戦闘機でございますが、これに対しまして戦術要素、つまり爆撃能力等を相当付加することを考えまして改造したものでございます。主な改造点といたしましては、改良した時点が新しいものでございますから、搭載電子機器等はほとんど新しくなりました。それから、そういう爆弾等の搭載量に合わせて強度の強化も図っております。座席もたしか一人を二人にしたと思いますが、まだ何分試作機が昨年末に飛び立った段階程度の開発中のものと承知しております。
  219. 東中光雄

    ○東中委員 じゃ、それはそう承っておきますが、八六年、去年の十二月十三日に、筒井さんが派遣団の団長で米国防総省を訪問されて、日本側のFSX開発の基本方針を示したというふうに報道されておるのです。そして意見交換したということのように聞いていますが、この基本方針というのはどういうものなんでしょうか。
  220. 筒井良三

    ○筒井政府委員 昨年十二月に、私ほか航空幕僚監部及び技術研究本部の、全部これは航空機の専門家でございますけれども専門家が参りまして、米国防省の専門家とともにFSXに関連します技術的な意見の交換を行ってきたものであります。そのとき当然私どもとしましても、私どもの研究開発をする場合にはこのような航空機になるであろうというような話もいたしましたし、また国防省側としても彼らの経験上のいろいろな技術上の、ためになる話もしてくれた、そういう意見の交換の場でございました。
  221. 東中光雄

    ○東中委員 その我が国としての基本方針といいますかという中で、要求性能なんかを明らかに向こう側に出しておられるんじゃないかと我々はそんな感じがするわけですが、それで、これについてはアメリカ側から、新聞報道によると、いろんな過酷な実現不可能な要求だとか、貿易摩擦との関連で非関税障壁だというようなことさえ言うくらい、いろいろ出てきておるのですが、そのときに示されている要求性能あるいは性能の基準といいますか、そういうふうなものは、この国会で明らかにすることはできないんですか、どうなんですか。
  222. 西廣整輝

    西廣政府委員 米側に、現用機F16なり18について、必ずしもアズ・イズ、そのままの状態で我が方の要求性能に合わない部分があるということで、彼らにとって改良して我が方の要求を満たすということも考えられますし、その種の希望もあったわけであります。したがいまして、我々としては、改良に際しての最小限必要な基本的な要求項目というものについては向こうに示しました。ただし、これについては、先ほど来申し上げているように、公表は差し控えさせていただきたいと思っております。
  223. 東中光雄

    ○東中委員 新聞報道によりますと、航空自衛隊が要求する諸機能の性能については、ソ連本土を十分攻撃可能な、戦闘行動半径八百数十キロ、これはそういった足の長さを要求している。それから攻撃力なんかでも、現有のF1の約二倍のパワーを持つというようなことがいろいろ報道されていますね。そういう、四百五十ノーチカルマイルの行動半径がなきゃいかおとか、四発の搭載が可能なようにと、いろいろ出ておるわけですから、そういう点についてはどうなんでしょう。
  224. 西廣整輝

    西廣政府委員 艦艇なり航空機の航続距離については、かなり前、今から三十年以上も前だと思いますが、いろいろ論議されたことがありました。沿海州まで届くのではないかというようなことでいろいろ論議されたことがあります。しかし、沿海州というのはわずか二百キロぐらいのところもあります。北海道からサハリンということになれば数十キロしかない。そこが届かないような船なり飛行機というのは全く意味がない航続距離になってしまうわけであります。そういうことでありまして、必ずしも足の長さそのものが他国に届くものであればだめだとかそういう論議は、私どもとしては、もう既に議会でいろいろ御論議いただいて克服された問題であるというふうに考えております。  あとは我が国防衛に対して、当然のことながら、相手が日本に対して上陸侵攻を企てる、いわゆるFS部隊が活躍する状況になれば、事前に航空攻撃というものが行われるわけであります。そういった状況下でFS部隊というものが生き残って、かつ、相手が上陸しようという時点でそれに対応するためには、相当後陣まで下がっていなくちゃいけない。そこから発進をして、上陸しようとする部隊なりあるいは上陸した部隊、敵を攻撃して帰還するということになれば、当然ながらそれに必要な相当の航続距離も必要であるということを御理解いただきたいと思います。
  225. 東中光雄

    ○東中委員 えらい三十年も昔の古いこととおっしゃいましたけれども昭和五十三年の三月四日、衆議院予算委員会で、F15の対地攻撃機能及び空中給油装置についての政府の統一見解が出されました。その統一見解の中では、古いことをも引用してあるわけですが、その中に、昭和四十七年十一月七日の衆議院予算委員会における政府見解として、F4のときについての政府見解を引用しています。  長官にお聞きしておきたいのですが、このF4の場合は、「行動半径の長さを勘案すればいわゆる「爆撃装置」を施したままでは他国に侵略的、攻撃的脅威を与えるようなものとの誤解を生じかねないとの配慮の下に、同機には同装置を施さないこととしたところであり、」この点は政府見解として生きているんだという趣旨のことを言うています。だから、足の長いものについてはそれは爆撃装置をつけないというのが政府の統一見解なんだ。こういう見解、今はもう改めるということになるんでしょうか、やはり同じ見解を貫くということなんでしょうか、防衛庁長官のお考えをお伺いしたいと思います。
  226. 西廣整輝

    西廣政府委員 四十七年十一月の政府見解、今先生の言われた部分まさにそのとおりでありまして、要するにF4について爆撃装置を落としたその時点においては、F4の能力なり攻撃力といいますか爆弾搭載量その他含めて全体的な能力的に見て、これが「他国に侵略的、攻撃的脅威を与えるようなものとの誤解を生じかねない」、それが侵略的、攻撃的なものだというふうに言い切ったわけではなくて「誤解を生じかねない」というごとで、そういうことで施さないということをしたということは言っております。  何度も申し上げるようですが、要するにある装備品がそれ自身他国に侵略的な脅威を与えるかどうかというのは、単にその航空機の航続距離がどうだとかあるいは爆弾搭載量がどうだとか、あるいは爆撃装置があるかないかとか、そういった一点だけで見るものではなくて、従来から申し上げているように全体としての装備する規模あるいはそのときの世界的な軍備の動向なり軍事技術の動向、そういった水準、そういったものと引き比べて判断すべきものでありまして、ある時点のものがそのままいつまでも適用されるということでないことは今までたびたび政府側で御答弁申し上げたところでありますし、御理解いただけると思います。
  227. 東中光雄

    ○東中委員 私も、何も算術計算を言っているわけではないのです。ただ、考え方基本を言っているつもりであります。だから、要撃戦闘上は滞空時間が長いということで利用点があるけれども、行動半径が長いということになるとそれは爆撃可能な、戦闘機も爆撃機としての機能を持つわけですから、そういう場合は範囲が、航続距離が長い場合は切るんだ、爆撃装置をつけないのだというのがF4のときの最初でありました。  それからF1のときに、これは昭和四十七年十一月七日の衆議院予算委員会での増原答弁ですが、   四次防で整備する新支援戦闘機FST2改は、わが国土及び沿岸海域において、わが国の防衛に必要な支援戦闘を実施することを主目的とする戦闘機であるので、この任務を効率的に遂行するために必要な器材として、爆撃装置をつけることにしている。しかしながら、同機の行動半径は短く、他国に侵略的、攻撃的脅威を与えるおそれを生ずるようなものではない。 だから、短いからF1については爆撃装置をつけるのだ、こういうふうに言っているのです。  この両方を合わせますと、はっきりと今度は後継機ということで支援戦闘あるいは爆撃ということになれば、これは行動半径をうんと、F1の倍にもするということは絶対許されないということを私は言っているわけです。その点、どうでしょう。     〔有馬委員長代理退席、委員長着席〕
  228. 西廣整輝

    西廣政府委員 たびたび同じようなことを繰り返すことになりますけれども、これはたしか五十七年三月に防衛庁長官がお答えになったと思いますが、要するに我が政府が他国に侵略的、攻撃的脅威を与えるような装備は持たないという基本的な方針は変更する考えは全くない、こういった「方針の枠内で保有することが許される装備は、軍事技術の進歩等の条件の変化に応じて変わり得るものでもございます。」ということを申し上げておるわけであります。  したがって、これから採用するFSが、支援戦闘機がどういうものになるかということもあります。それからは何機持つかということも関係あると思いますが、そういったものを前提として、それが果たして周辺諸国に脅威を与えるようなものになるかならないかという御判断になろうかと思うわけであります。  先ほど来申し上げているように、単に現在の軍事技術の中で、当時増原長官がお答えになったころのように、窓から手を出して爆弾を落とすというようなことはいいけれども爆撃装置で爆撃するのはおかしいという時代から、すべてのものがそういう照準装置というものを持つことが一般化されておって、そういう時代にその種の爆撃装置といいますかそういったものを持ったものであり、かつ足の長いものを一機たりとも持ってはいけないか、あるいは何機だったら持っていけないかというようなことは、その時代時代におけるその種装備の全体の中でどの程度の重みを持つかということによって判断されるものであって、今ちょっと抽象的にどういうものがよくてどういうものが悪いというようなことをお答え申し上げる段階じゃないと私は思っているわけです。
  229. 東中光雄

    ○東中委員 F4の爆撃機への試改修の場合も、爆撃装置は当初のようなものはつけないということを言っていますね。これはもうつい最近のことです。  それからF15との関係で申し上げますならば、F15は「要撃性能としては、速力や上昇力はもちろん、旋回性能その他空対空戦闘のための性能が極めて重要なものとなって来ている。今回導入しようとするF-15は、このような要撃性能に主眼がおかれた、専守防衛にふさわしい性格の戦闘機である。」要するに、航続距離はいろいろありますけれども、要撃専用だからいいんだ。爆撃用には使わないわけではないということを言っていますね。  しかしそれは、「航空自衛隊の有する支援戦闘機の数は、必ずしも十分でないので、これを補うため、要撃戦闘機は、付随的に対地攻撃機能を有することを必要とし、従来とも限定的ではあるが、この機能を維持して来たものである。」付随的で限定的であるから、そういう対地攻撃機能を限定的に持っておるということは、こればあるんだ。しかしそれは、全面的に専らそういうふうな支援戦闘機に変えちゃうということになると問題なんだということを、この政府統一見解は言っておりますし、F15はそういう点では対地攻撃機能を付随的に持っているけれども、「空対地誘導弾や核爆撃のための装置あるいは地形の変化に対応しつつ低空から目標地点に侵入するための装置をとう載しておらず、」またF15は対地攻撃専用の計算装置等を有していない。だからいいんだ。要するに、爆撃用の特別の装置を持っているわけじゃないから、だから要撃戦闘機として専守防衛で足が長いけれども認められるんだ、これが政府の見解だったわけです。  それを今度は変えちゃう。支援戦闘機ということになって転用することになったら、この三つの、そういう機能を持たしていないと言っている部分は一体どうなるのかということなんですが、お伺いしたい。
  230. 西廣整輝

    西廣政府委員 今先生が読まれた点、私まさにお答えしようと思ったところなんです。要するに、そういった具体的な内容、今度装備しようとするものが何を積んだものかということが決まらなければ論議の対象にならない。例えば遠距離爆撃等できるように地形追随装置を持ったようなものは積むのか積まないのか、それから、私は当然積むことはあり得ないと思いますけれども核爆撃装置がそれについているかどうか、そういったことが具体的に論じられて初めてそれは他国に脅威を与えるようなものであるかどうかという判断がなされるべきであって、FSXについては現在またどの機種にするか全く決まっていないという段階で、そういうふうに話を広げられて、核爆撃装置まで持ったものを持つのではないかというような抽象論で言われてもお答えのしようがないということを申し上げているわけです。
  231. 東中光雄

    ○東中委員 いやそれは違いますよ。あなたの方は、制空戦闘機というかあるいは要撃戦闘機としてのF15を入れるときに、そのF15は付随的に対地攻撃能力を持っている、あるいはそれは限定されたものなのだ、だから制空戦闘機として専守防衛としてこれは許されるのだ、こういう議論であった。ところが今度は、それが任務が変わってしまって支援戦闘機F1の後継機にするのだ、だから大綱の別表で言うている要撃戦闘機部隊十個飛行隊に対して三飛行隊の支援戦闘機部隊の中心にもするということになれば、要撃戦闘機そのままで支援戦闘機というのは、これはもうナンセンスなことになってしまいます。付随的、限定的であるからいいと言っておったのが、今度はそれが主になってきたらこれはだめだということになるじゃないですか。だから転用というのは、そこを対象にしているということになれば、これは政府が示していた統一見解、政府見解に反することになっていくんじゃないかということを航続距離との関係で私は言っているわけですよ。
  232. 西廣整輝

    西廣政府委員 先ほどお答えいたしたと思いますが、例えばF4であれば、F4を我が方が装備しようという検討をし始めたころ、昭和五十年代においては、しかもその当時のF4というものは核爆撃装置も積んでおるF4、地形追随装置も積んでおるF4、こういったものについていえば世界の中で有数な、まさに先ほど先生が言われた戦闘爆撃機と言われる範疇に入るものであり、他国に脅威を与えるという誤解を招きかねない代物であるということを政府は配慮してそのうちの爆撃装置を外した、そういうことだろうと思うのです。  その後、F4が初飛行したころから二十年ほどたった現在の時点で眺めてみて、それじゃ世界の中の戦闘機というものを見ると、今のF4というものがそういう攻撃性というものが極めて高いものに位置づけられるかというと必ずしもそうじゃない。その点については前々から政府考え方として時代とともにそういったものをどう評価するかというのは変わっていくのであるということを申し上げているところであります。  またそれ以外にその航空機の持っておる爆撃性能なり、あるいは長距離爆撃に関する機能としてさっき先生も言われた地形追随装置なり、あるいは核の爆撃装置、そういったものについてどうするかという問題は、引き続き今後もそういうものが仮についている航空機を導入するということになれば、そのものを取り外すかどうかということは当然問題になるだろうし、そういったことは個々の問題に即して論ぜられるべきでありますが、ある時代のレベルがそのまま適用されるものじゃないということは先生も十分御理解の上、御質問されていると思いますので、今後の問題としては、具体的な候補、仮に今F4改を対象として、F4改が従来の政府の言っておる規定より超えているというふうにおっしゃるのであれば、現状におけるF4改というものは決して他国に侵略的な脅威を与えるような、その種の代物とはとても及びもつかないほど機能的にもあるいは能力的にも小さなものであるというふうに思っております。
  233. 東中光雄

    ○東中委員 一九八二年二月に防衛庁から「現有戦闘機の対地攻撃能力」という一覧表をもらったのですが、これによりますと、標準支援戦闘武装時の行動半径ということ、F1は約二百海里と書いています。それからF4EJは約二百五十海里、こうなっています。そしてF15Jは約二百八十海里、こう書いているわけであります。足が長いと言われておったF4と比べても、この時点でF15Jはさらに長いということであります。しかも非常に性能のいい大きな飛行機ですから、F1の後継機ということで、現在F1は三沢に二個飛行隊、築城に一個飛行隊があるわけですが、その後へF15の転用機が後継機として配備される、あるいは、考えてないと言われましたけれども同じF15E、これが開発中でどうなるか知りませんが、同じF15という点でいうならば、もしここへ入るというふうなことになるとすれば、三沢はソ連領土との関係で、築城は北朝鮮との関係でいずれも対地攻撃が可能になるということになるわけですから、他国に侵略的、攻撃的な脅威を与えるような爆撃機はいかぬのだということ、これはもうずっと一貫して増原さんのときから続いてきているわけですので、そういうことはやってはいかぬことじゃないかというふうに思うのですが、最後に防衛庁長官。今までの流れからいきまして、支援戦闘機という名前で、実際国際的には爆撃機としてあるいは攻撃機として言われている足の長いものを後継機として持つということは、専守防衛という観点からいって、今までの政府の統一見解からいってよくないことだと思いますが、どうお考えでしょうか。最後に防衛庁長官に。
  234. 西廣整輝

    西廣政府委員 先ほど来申し上げておりますように、政府憲法上持てないものというのは、基本的には他国に壊滅的な打撃を与えるような武器は持てないということでございまして、あとは自衛のための最小限のものを超えるか超えないかというのはその装備、例えば一機の飛行機の性能なりそういったものから見るものではなくて、全体的な戦闘力、航空機であればそれを何機持つか、仮にその航空機を、一つ一つがそれほどの能力がなくても何万というものを持つというようなことになれば、それはそれで他国にとっては攻撃的な脅威を感じるかもしれない、そういった数と量と質との全体的な兼ね合いでもって決まる。それが自衛の範囲を超えるものかどうかということがそもそもの日本が持ち得る装備であるかどうかという決め手でありまして、個々のもの一つについて言えば、何度も申し上げているように他国に壊滅的な打撃を与えるものということで核ミサイルであるとかそういったものが典型的なものとして取り上げられるべきものであるというように考えております。
  235. 東中光雄

    ○東中委員 時間ですからあれですが、今の防衛局長の答弁は甚だけしからぬ答弁だと私は思いました。  といいますのは、他国に壊滅的な打撃を与えるような、そういうものはいかぬのだ、それ以外のものは自衛のためということであればいいんだと、壊滅的なものというふうなことを、そしてそういうふうに限定された。これは今までのタイプとまるっきり違うのですよ。非常に重要なことだと思うのです。そういうものだけしか持ってはいかぬのであって、それ以外のものはいいんだ、壊滅的な打撃を与えない攻撃機を持ったって構わぬのだ、核兵器なんかはいかぬのだ、あなたはこういうように言いました。私は大変重要だと思うのです。防衛庁長官、これは基本的な問題にかかわることですから、やはり防衛庁長官の御意見をお伺いしたいですね。
  236. 西廣整輝

    西廣政府委員 私は憲法解釈上の政府の統一見解を繰り返して申し上げたわけでありまして、その点について言えば、明らかに我が国が持てないものというもので言えるものは、他国に壊滅的な打撃を与えるようなもの、そういうことで政府は従来言っております。あとは、最初に申し上げたように全体の重なり質なりそういったものを全部にらみ合わせて、それが自衛のため最小限必要な範囲を超えるものであるかどうかということを十分審査の上その範囲内にとどまるかどうかが問題であって、一つの武器がどうこうという論議は余り適当でないということを申し上げておるわけであります。
  237. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 今の政府委員の答弁で必要にして十分だと思います。
  238. 東中光雄

    ○東中委員 じゃ、時間ですから終わります。      ――――◇―――――
  239. 大村襄治

    大村委員長 この際、閉会中審査に関する件についてお諮りいたします。  国の安全保障に関する件につきましては、議長に対し、閉会中審査の申し出をいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  240. 大村襄治

    大村委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次に、閉会中審査案件が付託になり、閉会中、委員派遣を行う必要が生じました場合には、委員長において、議長に対し、委員派遣の承認申請を行うこととし、その派遣の日時、派遣地及び派遣委員の人選等所要の手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  241. 大村襄治

    大村委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  本日は、これにて散会いたします。     午後四時三十二分散会