○吉川芳男君 私は、自由民主党を代表して、ただいま議題となりました
昭和六十一年度
補正予算三案に対し、賛成の討論を行います。
昨年秋以来の円高は本年九月以降安定的に推移し、一時の棒上げや天井知らずの不安は解消しております。懸案の国際収支の問題も、ドル表示こそふえているものの輸出数量が減少しており、貿易黒字縮小の兆しが見えてきました。しかし、円高が為替市場の値決めにより急激かつ大幅だったため、
日本経済に多大の影響を与えました。もちろん、円高は長期的に実質所得を増加させ経済を拡大させるメリットがあり、既に物価の超安定や家計部門における消費拡大があらわれ始めておりますが、なお輸出関連企業の業績悪化から、総体的に見て景気の足取りは重く、雇用
情勢には厳しいものがあります。
本
補正予算案は、円高メリットが経済全体に浸透するまでの間、公共事業を追加し、景気を支えるとともに、内需中心の経済を実現して過度な輸出依定体質から脱却しようとするもので、時宜に適したものであります。
以下、賛成の主な理由を申し述べます。
第一は、内需拡大についてであります。
政府は、内需を中心とした景気の拡大等を図るため、九月に公共事業費一兆四千億円の追加を含む総額三兆六千三百三十億円に上る総合経済
対策を決定したところでありますが、本
補正予算において、災害復旧等の事業費や一般公共事業関係費を計上するほか、国庫債務負担行為の追加により、この総額を確保しております。このため建設国債を五千四百九十億円追加発行することになりましたが、現下の経済
情勢を考慮すれば、財政をめぐる
環境がいかに厳しいとはいえ、景気の着実な拡大を図り雇用の安定を確保することが最優先する課題であります。このため早期のそしてより多くの財政支出が求められているところであり、やむを得ない措置であると考えます。
私はむしろ、今回
政府が
補正予算において八年ぶりに一般公共事業関係費の追加を決断したことは適切であると高く評価したいのであります。これらの措置は、第四次公定歩合引き下げや
国民経済の中に浸透しつつある円高メリットと相まって、景気を押し上げる大きな
役割を果たすものと確信します。
第二は、中小企業
対策であります。
円高等
内外の経済
環境の急激な
変化により影響を受ける中小企業者の事業資金の融通を円滑化するため、中小企業等特別
対策費二百五十二億円を計上しております。輸出に多くを依存する中小企業にとって今回の円高は急激過ぎ、その対応に苦慮しているところであり、財政による助成を求める声が高まっているのであります。幸い円高もようやく峠を越えたと見られる現在、みずから対応するために資金融通の円滑化を図ることは適切な措置であります。
第三は、財政
改革の
基本路線の堅持であります。
既定経費の節減や可能な限りの財源捻出に努力する一方、追加する経費を真にやむを得ないものにとどめることにより、特例国債の増発を回避したことであります。給与改善費、北洋漁業救済
対策費、義務的経費の追加等特に緊要である歳出の追加額は、総額で一兆四千三十五億円となっております。これに対し
政府は、既定経費の節減、公債費の減額等歳出の減額に努力する一方、前年度の決算剰余金を全額歳入として充当するなどの措置により、一兆円を超える大幅な歳入欠陥が見込まれたにもかかわらず、特例国債の増発を行うことなく
補正予算の編成を可能にしたのであります。このことは財政
改革の
基本路線は守るという
政府の強い意思を示すものと思われ、大いほ評価するものであります。
第四は、人事院勧告の完全実施であります。
政府は、極めて厳しい財政事情にかかわらず、去る八月十二日の人事院勧告に基づき
国家公務員給与を四月より二・三一%引き上げ、六年ぶりに完全実施することに踏み切りました。
国家公務員諸君におかれては、一層公務に精励されるとともに、厳正な綱紀の維持に努められることを切望しておきます。
以上、
昭和六十一年度
補正予算三案に対し賛成する理由を申し上げてきましたが、最後に、
政府に要望しておきます。
今回の
補正予算による公共事業費の追加により内需を中心とする景気の拡大が期待されるところでありますが、この配分に当たっては、できる限り速やかに行うとともに、地域の事情をよく考慮し不況地域等への傾斜配分を行っていただきたいのであります。
また、昨今失業者が増大する傾向が見られます。今後、
日本の企業が海外進出するのに伴い雇用問題が一層深刻化するのではないかと懸念されるので、雇用
対策の十分な検討をお願いしたいのであります。
以上をもって私の賛成討論を終わります。(拍手)