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1986-11-10 第107回国会 参議院 予算委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十一年十一月十日(月曜日)    午前九時開会     ─────────────    委員の異動  十一月七日     辞任         補欠選任      渡辺 四郎君     福間 知之君  十一月八日     辞任         補欠選任      斎藤 文夫君     林 健太郎君      田辺 哲夫君     林田悠紀夫君      寺内 弘子君     森山 眞弓君      向山 一人君     石本  茂君      吉岡 吉典君     立木  洋君  十一月十日     辞任         補欠選任      塩出 啓典君     中西 珠子君      秋山  肇君     野末 陳平君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         桧垣徳太郎君     理 事                 佐藤栄佐久君                 原 文兵衛君                 降矢 敬義君                 村上 正邦君                 吉川 芳男君                 野田  哲君                 峯山 昭範君                 内藤  功君                 井上  計君     委 員                 岩動 道行君                 石本  茂君                 梶木 又三君                 金丸 三郎君                 北  修二君                 坂野 重信君                 坂元 親男君                 下稲葉耕吉君                 杉元 恒雄君                 関口 恵造君                 竹山  裕君                 名尾 良孝君                 中曽根弘文君                 永田 良雄君                 鳩山威一郎君                 林 健太郎君                 林田悠紀夫君                 増岡 康治君                 森山 眞弓君                 吉村 真事君                 稲村 稔夫君                 粕谷 照美君                 福間 知之君                 矢田部 理君                 安恒 良一君                 山口 哲夫君                 高桑 栄松君                 鶴岡  洋君                 中西 珠子君                 上田耕一郎君                 立木  洋君                 小西 博行君                 秋山  肇君                 野末 陳平君                 青木  茂君    国務大臣        内閣総理大臣   中曽根康弘君        国 務 大 臣  金丸  信君        法 務 大 臣  遠藤  要君        外 務 大 臣  倉成  正君        大 蔵 大 臣  宮澤 喜一君        文 部 大 臣  塩川正十郎君        厚 生 大 臣  斎藤 十朗君        農林水産大臣   加藤 六月君        通商産業大臣   田村  元君        運 輸 大 臣  橋本龍太郎君        郵 政 大 臣  唐沢俊二郎君        労 働 大 臣  平井 卓志君        建 設 大 臣  天野 光晴君        自 治 大 臣        国 務 大 臣        (国家公安委員        会委員長)    葉梨 信行君        国 務 大 臣        (内閣官房長官) 後藤田正晴君        国 務 大 臣        (総務庁長官)  玉置 和郎君        国 務 大 臣        (北海道開発庁        長官)        (沖縄開発庁長        官)        (国土庁長官)  綿貫 民輔君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  栗原 祐幸君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       近藤 鉄雄君        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)      三ツ林弥太郎君        国 務 大 臣        (環境庁長官)  稲村 利幸君    政府委員        内閣法制局長官  味村  治君        内閣法制局第一        部長       関   守君        内閣総理大臣官        房審議官     本多 秀司君        公正取引委員会        事務局長     佐藤徳太郎君        総務庁長官官房        審議官      百崎  英君        総務庁人事局次        長        兼内閣審議官   田中  史君        総務庁行政監察        局長       山本 貞雄君        総務庁恩給局長  品川 卯一君        北海道開発庁計        画監理官     大串 国弘君        防衛庁参事官   瀬木 博基君        防衛庁参事官   古川 武温君        防衛庁参事官   千秋  健君        防衛庁参事官   筒井 良三君        防衛庁長官官房        長        友藤 一隆君        防衛庁教育訓練        局長       依田 智治君        防衛施設庁総務        部長       平   晃君        防衛施設庁建設        部長       大原 舜世君        経済企画庁調整        局長       川崎  弘君        経済企画庁国民        生活局長     横溝 雅夫君        経済企画庁物価        局長       海野 恒男君        経済企画庁総合        計画局長     及川 昭伍君        経済企画庁総合        計画局審議官   冨金原俊二君        法務省人権擁護        局長       野崎 幸雄君        外務省アジア局        長        藤田 公郎君        外務省北米局長  藤井 宏昭君        外務省経済局長  渡辺 幸治君        外務省条約局長  小和田 恒君        外務省国際連合        局長       中平  立君        大蔵省主計局長  西垣  昭君        大蔵省主税局長  水野  勝君        大蔵省理財局長  窪田  弘君        大蔵省国際金融        局長       内海  孚君        大蔵省国際金融        局次長      畠中 杉夫君        厚生省保健医療        局長       仲村 英一君        厚生省社会局長  小林 功典君        厚生省保険局長  下村  健君        厚生省年金局長  水田  努君        農林水産大臣官        房長       甕   滋君        農林水産省経済        局長       眞木 秀郎君        農林水産省構造        改善局長     鴻巣 健治君        農林水産省農蚕        園芸局長     浜口 義曠君        農林水産省畜産        局長       京谷 昭夫君        食糧庁長官    後藤 康夫君        林野庁次長    松田  堯君        水産庁長官    佐竹 五六君        通商産業大臣官        房審議官     末木凰太郎君        通商産業省通商        政策局次長    吉田 文毅君        通商産業省貿易        局長       畠山  襄君        通商産業省産業        政策局長     杉山  弘君        通商産業省機械        情報産業局長   児玉 幸治君        資源エネルギー        庁長官      野々内 隆君        中小企業庁長官  岩崎 八男君        運輸大臣官房国        有鉄道再建総括        審議官      林  淳司君        運輸省運輸政策        局長       棚橋  泰君        運輸省海上技術        安全局長     間野  忠君        労働省労働基準        局長       平賀 俊行君        労働省婦人局長  佐藤ギン子君        労働省職業安定        局長       白井晋太郎君        建設大臣官房長  高橋  進君        建設省建設経済        局長       牧野  徹君        自治大臣官房審        議官       森  繁一君        自治省行政局長  大林 勝臣君        自治省行政局公        務員部長     柳  克樹君        自治省財政局長  矢野浩一郎君    事務局側        常任委員会専門        員        桐澤  猛君    説明員        日本国有鉄道総        裁        杉浦 喬也君    参考人        税制調査会会長  小倉 武一君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○昭和六十一年度一般会計補正予算(第1号)(内閣提出衆議院送付) ○昭和六十一年度特別会計補正予算(特第1号)(内閣提出衆議院送付) ○昭和六十一年度政府関係機関補正予算(機第1号)(内閣提出衆議院送付)     ─────────────
  2. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 予算委員会開会いたします。  昭和六十一年度一般会計補正予算昭和六十一年度特別会計補正予算昭和六十一年度政府関係機関補正予算、以上三案を一括して議題といたします。     ─────────────
  3. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) この際、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  昭和六十一年度補正予算案審査のため、本日、税制調査会会長小倉武一君を参考人として出席を求めることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  5. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) これより稲村稔夫君の質疑を行います。稲村君。
  6. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 総理中国への訪問大変御苦労さまでございました。  きょうは、帰ってこられてから最初の国会委員会ということにもなりますので、中国中国首脳総理がどのようなお話し合いをしてこられましたか、まずその辺をお聞かせいただきたいと存じます。
  7. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 胡耀邦書記の招待を受けまして、日中青年交流センター定礎式出席するために一泊二日で行ってまいりました。この間におきまして、中国官民から非常な熱烈な歓迎と温かいもてなしをいただきましたことを感謝する次第でございます。また、中国官民日本国民に寄せる大きな親愛の情については日本へ帰ってからよく伝えますと、そういうことも言ってまいりましたので、この機会を通じて国民に申し上げる次第でございます。  私は滞在中、鄧小平主任胡耀邦書記、それから趙紫陽首相と三回会談をいたしまして、まず日中間にある基本的諸原則、すなわち国交回復のときの共同声明あるいは日中平和友好条約あるいはいわゆる四原則、こういう基本諸原則を尊重しつつ、お互いに主権と独立を尊重し、国民感情を尊重し合いながら、この原則のもとにさらに友好協力を増進しよう、そういうことを確認いたしまして、日中間を二十一世紀にわたっても揺るぎのない平和と繁栄の関係に導くという決意を披瀝し合いまして、完全に合意してまいった次第でございます。  なお、そのほか国際問題あるいは両国間の経済問題等についてもいろいろ広い範囲にわたって話をいたしました。例えば、レイキャビク等における米ソ首脳会談に対する評価、この影響、特に私からはINF、SS20の展開に関する我々の日本側としての見解、アメリカのとった処置等についてこれを説明いたしました。あるいはさらに、朝鮮半島平和的統一及び緊張緩和問題等々、あるいは世界経済問題等につきましても隔意のない懇談をし、日中間経済問題の解決あるいは貿易拡大的発展均衡への努力等についてもいろいろ話し合って帰ったところでありまして、会談は極めて成功裏に終わりましたことを満足しておる次第でございます。
  8. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 いろいろと懸案についてお話をされたようであります。その中でちょっと気がかりになる面も、私のあれかもしれませんがありますが、それは、今朝鮮半島のことに触れられましたが、これは我が国としては南北それぞれの国連加盟ということでの、外務大臣がそういうことでの動きをされているというふうにはあれしておりますけれども、こうした南北朝鮮国連加盟という問題とのかかわりではどういうふうにお考えになっておりますでしょうか。
  9. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 朝鮮半島の平和及び平和的統一という問題は、両国の大きな関心事項でございます。そういう方向へ導くために、環境醸成について協力しようということをまず原則的に話しました。  先般、ソウルアジア大会に、私は開会式へ列席しましたが、中国選手団が五星紅旗を先頭に入場すると韓国の皆さんが立ち上がって万雷の拍手をした、物すごい拍手でありましたと、そういうことも報告して、韓国民中国に対する友好感情というものも伝えました。中国側からは、それに対しては韓国側の好意には感謝する、そういう意思表示もありました。  朝鮮半島の問題については、韓国の方から我々に幾つかの依頼がございます。それは、要するに韓国中国関係を打開したい。まず、民間レベルにおける経済あるいは文化交流スポーツ交流等も推進したい、あるいは八八年のソウル・オリンピックにはぜひ中国の御参加を願いたい等々の 御要望もありましたので、それをお伝えしたわけでございます。大体それに尽きると思います。
  10. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 私はこの南北の問題、朝鮮半島の問題というのは、北の方意見というのもいろいろと重要な役割をしていると思うのでありまして、そういう面でいきますと、韓国側からの意向だけを伝えられたわけですね。そうすると、北の方意向というのは、我が国としてはこれから何か積極的にとらえていくという方針はございますか。
  11. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 南北統一の問題は、まず平和的でなければならない、それからこの問題は南北の当事者がまず話し合ってやるのが第一義的である。したがって、南北間の首脳部あるいは政界人あるいは文化人経済団体あるいは社会福祉関係、そういう諸団体対話を推進するということが望ましい、そういう点も私は申し上げて、そういう直接対話の推進という点については意見は一致したと思っております。しかし、北の方考えというのは、我が国は正式の外交関係はございません、したがいまして、その考えを云々するということは私は適当でないと考えております。
  12. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 私は、今の御答弁ではちょっと不安になるばかりでございますが、この点はさらに所管の委員会等でもいろいろと今後御議論になることであろうと思います。いずれにいたしましても、二つの朝鮮というのを固定化するというような形に、主観的意図は別にあったとしても、それに手をかしたというようなことにならないように十分に今後のことで御留意をぜひともいただきたい、このように考える次第でございます。  次に、貿易インバランス問題等についてもお話をいろいろとされたようでありますけれども、これは今後拡大をしていくということになりますと、我が国とのかかわりでいくとブーメラン現象などということも過去によその国との間ではあったわけでありますけれども、その辺のこと等もお考えになっておられるわけでございましょうか。
  13. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 拡大均衡が望ましい、それから自由貿易を推進するという点、私は大いに強調してきました。貿易インバランスというものは、経済発展している国の間においては摩擦的にある程度ある期間は、これは必然的に起こり得るものであると思う。しかし、それが度を超すというとこれはよくない。そういう意味において、両国努力をして拡大均衡のもとにその貿易インバランスを縮小していく、そういう努力をやりましょう、そのためには両方が努力が必要で、我が方としては市場を開放するという今までの政策を推進する、それから直接投資その他についてもこれを奨励する、中国側においては輸出努力を行うと。販路の開拓であるとか商品の質の向上であるとか、あるいは日本人の嗜好に合った品物の選択であるとか、そういう点についてはこもごも経済視察使節団を交換し合い、あるいは政府レベルにおいていろいろ話し合っておりますけれども、これらをさらに促進して、そうして成果が生まれるように積極的に努力いたしましょう、そういう話をしてきたところでございます。
  14. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 特に貿易インバランスについては、我が国中小零細企業等もいろんな影響を今後受けてくるということ、拡大をされてきますとそういうことが起こるということも十分に考えながら貿易拡大インバランスの解消という努力をしていっていただかなければならない、こんなふうに思うわけであります。これは要望として申し上げます。  総理に対する質疑はこの程度にさせていただきまして、次に、せっかく参考人として税調会長に来ていただいておりますので、小倉税調会長に若干御質問申し上げたいと存じます。  それはまず第一は、新型間接税大型間接税ということがいろいろと議論されているわけでありますけれども、その辺のところがどうもよくわからぬわけでありますが、新型間接税を答申の中に導入をされたというその根拠について一度お伺いをしておきたいと思います。特に、その辺が大型間接税とどう違うのか、あるいは一般消費税C案とがどう違うのかというようなこと等についてお聞かせをいただければありがたいと思います。
  15. 小倉武一

    参考人小倉武一君) お答え申し上げます。  まず、新しいタイプ間接税導入についての理由でございますが、これまで間接税にも種々ございますけれども、どうも経済の進展というものとうまくマッチしない嫌いがあるわけです。なかんずく物品税などはその最たるものであります。多少手直しを加えてはまいりましたけれども、これに限度があると。さらにまた、これまでの間接税は個別的でございました。個別間接税でございました。物品税もその一つでありますが、またサービスという分野、これが非常に経済発展に伴って拡大をしてまいりましたのですが、サービス一般についての課税ということは考えられていないといいますか、そういう税制はないというふうなことで、これまでの間接税につきましては個別にいろいろ手だては講じてまいりましたけれどもそれぞれに欠点が生じてまいった、それを手直しをする、大幅に手直しをする必要があるんじゃないかということはかねて考えられておったことであります。  さらにもう一つは、一方において所得税あるいは法人税住民税減税ということがあります。そういう減税財源をどこで求めるのかということになりますと、むろんいろいろ財源はあり得ると思いますけれども、減税に限れば、税制調査会としては、あるいはまた国の財政事情からいいましても、減税ということでありますればやはりその財源は税に求めざるを得ないというような状況かと思います。  そこで、そうなれば一つ今申しましたような間接税ということの手直し、あるいは抜本的な手直しということが考えられるのじゃないかというふうに思うわけです。また、そういうことが可能ではないかと思われる経済的な実態もございます。と申しますのは、国民所得の配分というようなものが非常に平均化してきた。貧富の差といいますか、所得の上での貧富の差というのが非常になくなりまして、階層別に見ました場合の所得の格差というのは縮小してまいったということがございます。したがいまして、そういう点から見ますというと、消費に対して税を求めるということもあながち不合理ではない、むしろある程度合理的ではないかと思われる節もあるわけであります。と申しますのは、所得課税が一番公正の理念に適しておるということでこれまでそういう意味での直接税を中心に税制が組み立てられてきたわけでありますが、何しろ所得を総合的に把握するということは、理念としては考えられることでありますが、実態としてはなかなかできにくい。その実態としてなかなかできにくい総合課税ということをそのまま実施してまいりますというとかえって不公正がそこに生じてくる。消費でありますればこれは所得のように把握が困難ではないというわけで、消費に着目して税をいただく。よく直間比率見直しということが言われますけれども、直間比率見直しというようなことが言われるゆえんのものはおおよそそういうところに根拠があるのではないかと思います。そういうような意味で新しいタイプ間接税導入ということが税制調査会で多くの方々の支持を得たわけであります。  そこで、新しい間接税タイプでありますが、どういうものが考えられたかと申しますと、御承知のとおり、製造業者売上税、それから事業者間の免税の売上税、それから最後が日本型の付加価値税という三つでございます。三つが典型的なタイプでありますけれども、それをまたいろいろ組み合わせる、あるいはそれにいろいろの限定をするというようなことがむろん考えられるわけでありまして、したがいましてタイプとしては三つに限らず幾つものタイプが考案でき得るかと思います。それらの長短というものについて今後なお検討がなさるべきものであるというふうに考えております。
  16. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 一般消費税C案との違い。
  17. 小倉武一

    参考人小倉武一君) 一般消費税との関係でございますが、一般消費税はやはり一つの、その名前のとおり、課税ベースの広い消費税ということにおいては新しいタイプ間接税と類似しておりますけれども、これは国会で採用がまかりならぬというような御決議もございましたので、一般消費税というようなものはこの際提案はいたしておりません。  その違い等についてもし必要であれば、また別途お答えをいたします。
  18. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 一般消費税新型間接税、特にC案との区別が私にはつかないから聞かしてくださいというふうにお願いをしていたんですが。
  19. 小倉武一

    参考人小倉武一君) 一般間接税と申しますのは、Aという業者からBという業者に物が売買されるというときに、Bという方の売り上げからAという人の売り上げを引いて、その差し引きについて税がかかる、こういう仕組みでございました。そういう仕組みはいろいろ考えられるわけですが、簡便なためにといいますか、そういう仕組みを考えたわけでありますけれども、日本付加価値税といいます場合は、前段階で納められた、前段階の業者が納めたその税額は次の業者の納めるべき税額からそれを引くと、そういう税額控除方式でございます。そこが違いの大きな点かと思います。
  20. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 どうも今御説明を伺っても私の頭が悪いのかよくわかりませんが、大型間接税導入しないと総理がいろいろ言っておられました。そうすると、大型間接税というのと今度の新型というのは違うんですか。
  21. 小倉武一

    参考人小倉武一君) 巷間大型間接税と言われておりますものについては私どもよく存じないわけです。と申しますのは、学界でそういう言葉が使われておってそういうものについての解説があるわけでもありませんし、税調で大型間接税とは何であるかということを審議したこともございませんのです。したがいまして、大型間接税というものについて私はどういうものであるかという説明をする能力はないわけです。 そういうわけでございますからちょっと私にはお答えしにくいのです。
  22. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 大変会長には苦しい御答弁をいただいたわけでありますけれども、よくおわかりにならないということでありますから、大型間接税導入しないという、取り上げないということを言っておられます総理のお考えを聞きたいと思います。
  23. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) この点は、前から議会で答弁申し上げているように多段階、包括的、網羅的、普遍的でそしていわゆる大型の消費税を投網をかけるような形ではやらないとそう申し上げて、それに対していろいろ御質問がございましたが、それに関して私の説明は今まで申し上げてきたとおりであります。
  24. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 困ったですね。総理の言われるその大型間接税というのは、そうすると具体的には小倉会長のお話だと学問的にもはっきりしたものではないしわからないということになるんだろうかとも思うんですが、もう少し具体的なイメージが浮かぶような御答弁がいただけないかと思って期待して質問したんですけれども、結局同じようなことの繰り返しで大変残念でございます。しかし、この問題も私はそれだけに税制改革に今後大きな禍根を残すようなことになるんじゃないだろうか、そう心配をしているわけでございます。  そこで、総理にもう一度確かめたいのでありますけれども、そういう総理がおっしゃるような大型間接税というのはどこかの国で採用しているものなのでしょうか。
  25. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私は外国の税制まで余り勉強しておりませんのでよくわかりません。しかし、日本日本独自の見解に従って処理していくべきである。それは国情も違うしあるいは流通過程も違いますし、税に対する国民の感受性も違いますから、日本日本考えていくべきであると考えております。
  26. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 それじゃ小倉会長、もう一度恐縮ですがお願いいたします。  そういう総理が言われたような最後の言葉であれすれば、投網をかけるような間接税というのをやっている国はどこか会長は御存じでございますか。
  27. 小倉武一

    参考人小倉武一君) 私どこの国というふうに申し上げるわけにはちょっとまいらぬわけです。というのは、外国語ではどうも大型間接税という言葉はございませんですね。だから、私の国は大型間接税だというふうにその国の税制を説明している国はないんじゃないかと思います。むしろ日本にその例があったわけです。総理国会でもよくおっしゃいましたと思いますが、終戦直後ありました取引高税、あれは総理のおっしゃる国民の同意を得ないといいますか、自民党員の賛成しないそういう大型間接税に属するものであるということだと思います。 それからまた、いわゆる一般消費税といいますか、国会で御決議になりましたもの、あれもそのたぐいではないかということかと思います。
  28. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 どうも聞けば聞くほどわからなくなってくるのでありますが、税制改革と具体的に事務的にも取り組んでいかなければならないということに大蔵省はなるわけだと思うんですけれども、そうすると大蔵大臣としては今の私の質問にはどういうふうにお答えいただけますでしょうか。
  29. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 結局国会の御決議にありますようなことはやってはならぬことでありますし、また、総理大臣が選挙中あるいは国会において御言明なさいましたその趣旨に背馳をするわけにもまいらない。その中で政府の税調が御答申になりました案をいわばたたき台にいたしましてどういうものが可能であるか、今まで申し上げたような条件に抵触いたしませんでどういうものが可能であるかということをただいま政府と与党との間で検討をしておる、こういうことになると思います。
  30. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 ちょっと質問の趣旨と違っておりまして、聞き方が悪かったのかもしれませんが、大型間接税と言われるものがどこか外国でやっているのを御存じですかと、こういうことを伺っています。
  31. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 私もどうも寡聞にしてそれは存じません。私が申し上げましたのは、大蔵大臣としては今後どのような税制改正を考えるかというお尋ねでありましたものですから、そのようにお答えを申し上げたわけです。
  32. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 私は税というのは国民経済に直接重大な影響を与えますそういうものでございますし、また、今我々が強く減税を求めて与野党合意事項の実行を迫っておるというような経緯等もございます。いずれにしてもそういう重大な問題でありますから、それこそ十分な論議をして道筋を見つけていかなければならないものだ、こんなふうに思うわけでありまして、今いろいろと御答弁をいただいたとば口の議論だけでも今回の税制改革というものに対しては大きな疑念を持つわけでございます。この点幾ら議論をいたしましてもまだ平行線ですし、時間もないようでありますから次へ移らせていただきたいというふうに思っております。  そこで、今度は農政の問題についてお伺いをしたいというふうに思っております。農政といいましても特に今焦点になっております米の問題にひとつ集中をした形で、主にそこに力点を置いて伺いたいと思います。  まず、農林水産省に伺いますが、今アメリカで我が国への米の輸入要求というものが非常に大きな問題になっているわけであります。特に今度の選挙で民主党の勝利ということで、それがさらに圧力が強まるのではないか、こんなふうに言われておるわけでありますが、その中でアメリカの生産者価格が我が国の約八倍だという資料が農政審議会に提出されたという報道がかつてありました。どうしてこのようなことになるのでありましょうか。その辺の根拠は何であるのか、まず御説 明をいただきたいと思います。
  33. 後藤康夫

    政府委員(後藤康夫君) 農産物の価格の比較と申しますのは、いろいろ価格の制度の問題がございますし、品質格差の問題等々ありまして非常に難しいわけで、技術的にいろいろな問題がございますが、八・四倍と申します数字につきましては、これはアメリカの農務省の資料によります一九八四年の全米平均の農家庭先価格と我が国の農村物価賃金統計によります農家のお米の平均販売価格を、ことしに入りましてからの為替レートの平均というようなもので換算をしまして比較をいたしたものでございます。このアメリカの方の農家庭先価格には不足払いの分が入っておりません。アメリカの価格支持制度は、農産物を担保にいたします短期の融資、償還がなければそのままそれが政府の買い取りと同じような効果を持つという意味での市場価格の支持の上に不足払いが乗っかっているという二階建てになっておりますが、その不足払いを含まない農業の庭先価格の平均とを比べたものでございます。
  34. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 そういたしますと、不足払いが入っていない、つまり農家の手取り価格とは違うということになるわけですね。
  35. 後藤康夫

    政府委員(後藤康夫君) 市場価格としての受取価格と比較をしているということでございます。  不足払いも含めまして比較するとどうなるかということでございますが、これは政策価格同士の比較ということでいたしますと、これでございますと、今年産について一応それぞれ政府が価格を決めておりますのでそれで比較ができるわけでございますが、我が国の政府買い入れ価格、一―五類一、二等平均というようなものと米国の目標価格、それと市場価格との間をいわば不足払いで埋めるわけでございますが、この目標価格とを比較いたしますれば約五・四倍というような数字に相なるわけでございます。
  36. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 そうすると、比較をする場合というのは、本来この目標価格と我が国の生産者価格というのを比較しなければならないのではないかというふうにも思うわけであります。  それからまた、そういう目標価格との間の不足払い制度があるとすれば、アメリカ政府の財政負担というのも結構あるのではないかというふうに思うわけでありますけれども、聞くところによりますと、アメリカは米の輸出には輸出奨励金もつけている、こんなふうにも聞いておりますが、アメリカの政府の財政負担、米に対する財政負担というのはどの程度になっているかというのを御存じならばお聞かせいただきたいと思います。
  37. 後藤康夫

    政府委員(後藤康夫君) これは、一九八五会計年度につきましてのアメリカの米の価格、所得支持関係の費用でございますが、約十億ドルというのがアメリカ農務省の予算の資料から推定をされるところでございます。本年からは一九八五年の農業法というのに基づきまして新しくマーケティングローンというような制度を取り入れまして、恐らく財政負担は増加をするだろうと思っておりますけれども、どのくらいのものであるかというところまでは私どもつまびらかにいたしておりません。
  38. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 ちょっとわかりやすくするために、トン当たりにするとどの程度の財政負担をしているということになりましょうか。今の新しいものでなくて結構です、わからない部分は仕方がありませんから、わかる一番新しいものを教えていただけませんか。
  39. 後藤康夫

    政府委員(後藤康夫君) トン当たりで申しますと、ことしの制度で申しますと、もみのトン当たりでちょっと恐縮でございますが、目標価格が二百六十二ドル、ローンレートが百七十六ドルということでございまして、百七十六ドルで政府から融資が受けられる。これは償還請求がございませんので、市価が上がって、お金を返して、質に入りました農産物を受け戻さない限りは政府買い入れと同じ結果になるわけでございます。 それが百七十六ドル、目標価格が二百六十二ドル、いずれももみのトン当たりでございます。
  40. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 それから、我々が比較をする場合にもう一つ大事なポイントとして消費者価格の問題がありますが、アメリカの米の消費者価格というのは大体幾らくらいになっておりますか、キロ当たり。
  41. 後藤康夫

    政府委員(後藤康夫君) 消費者価格につきましても、これは我が国と違いましてアメリカの場合には、お米と申しますのは穀物でございますけれども消費が野菜的な形態でございますし、都市によりましてもまたいろんな銘柄によりましても非常にばらつきがございます。そういう意味でなかなか難しいのでございますが、ILOが各国の主要な生活物資の小売価格の国際価格の統計をやっておりますが、それから、その数字をもとに最近の為替レートで我が国と比較をいたしますと、我が国消費者米価はアメリカのお米の小売価格の二倍程度というふうな数字に相なるわけでございます。
  42. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 アメリカの消費者価格にすると二倍程度と、生産者価格で五・四倍程度、これが八倍くらいというふうに非常に過大に宣伝をされているというところには、私は何か意図的なものを感じてならないわけでありますが、さらに、その生産者価格の中でアメリカは輸出奨励金をつけていると、こういうことにもなるわけでありますから、かなりの財政負担をやっているということになります。この財政負担、輸出奨励金をつけてまで輸出をしなければならないという、その背景というものをどのように考えておいでになりましょうか。
  43. 後藤康夫

    政府委員(後藤康夫君) これは、八〇年代に入りましてから世界の米の生産は開発途上国を中心にしまして非常にふえておりますが、そういった中で輸出はむしろ伸び悩み、減少をいたしてきております。そういう意味で、特にアメリカが輸出をしておりましたアジア関係の諸国が食糧自給を達成してきたというようなことがございまして、国際的な輸出競争の激化と申しますか、そしてアメリカは今恐らく一年分の輸出量を上回る国内在庫を抱えている、そういった状況を反映しているものだと思っております。
  44. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 私は、もう一つの点を加えて大臣に今度は御答弁をいただきたいというふうに思っております。  いずれにいたしましても、輸出奨励金をつけてまで輸出をしている、それを今我が国に圧力としてかけてきている、この辺にもどうしても納得できないものがあるのでありますが、同時に、こうした輸出奨励金つきの輸出ということは国際ダンピングということにもなると思うわけであります。なぜこのようなダンピングがやられているかということになれば、特にタイとのかかわりで輸出途上国の米の価格、国際価格をそれによって引き下げるということで、途上国経済に対してもアメリカのこの政策というのは重大な影響を与えているのではないか、こんなふうにも思うわけであります。これをどのように政府としては御理解になっているか、その辺のところを大臣の御答弁をいただきたいと思います。
  45. 加藤六月

    国務大臣(加藤六月君) 先ほど来政府委員から御説明申し上げましたようなアメリカの米の政策というものはあります。そしてまた、過剰を相当たくさん抱えておるという問題があります。さらに、その上に加えまして国際的にも相当需給が緩和しておるという関係がある。そういう中で、アメリカの米の業者はなかなか政治力があるという一つ考え方も持っていなくてはならないと思います。そして、開発途上国のタイ等に対する、もしそれが今までどおり、今の主張どおり行われるということになると相当大きな影響が出てくるのではないかと想定されます。国名を先ほど政府委員は挙げなかったわけでありますが、インドネシア、韓国等において、今までアメリカが米の輸出をしておった国が米の自給が向上してきたということで、アメリカはその輸出先を相当失ってきた。それからさらに、生産者米価の関係におきますと、タイ米の方が安いということ等での問題があると思います。  そして、我が国内におきましては、もうたびたび申し上げておりますように、米は国民の主食で あり、あるいはまた環境、自然を守っていくためにも水田、稲作というのが重要な役割を果たしており、さらには日本の文化、伝統に深くかかわっておるのが米でございますから、私たちは食管制度の基本は守りつつ、消費者の理解と納得をいただきながら、そしてまたそのニーズに適宜適切に応ずるように改正も一生懸命やっていって、今後国民の主食である米の安定供給を進めていきたい、こう考えておるところでございます。
  46. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 その際は強い決意で今後臨んでいただきたい。今の大臣のお言葉を私も受けて、本当に頑張っていただきたいというふうに、激励を申し上げますと言ったらあれですが。  さらにもう一つの点、アメリカがダンピングすることによって国際価格を引き下げていくのではないか。主として、タイの農村等に与える影響経済に与える影響というのは非常に大きなものがあるのではないだろうか、こんなことも心配をするわけでありますが、その辺、米輸出の途上国として非常に大きな、タイを一つの例にとりましたが、農村に影響を与えているかどうか。その辺については、農林水産省は掌握しておられますか。また、外務省は御存じでしょうか。
  47. 後藤康夫

    政府委員(後藤康夫君) 米の国際市場におきます競争の激化、そしてまたアメリカ側のマーケティングローンというような制度をとりまして、先ほど申し上げました短期融資の受けられる価格の半値ぐらいで農産物を受け出して輸出ができるという制度をつくりましたので、ことしに入りましてさらに競争が激化をいたしております。農村、農家にどんな影響がタイ国で及んでいるかというところまで私ども必ずしも詳細に承知をいたしておりませんけれども、ことしに入りましてから、タイが今まではエクスポートタックスとかエクスポートプレミアムという形で財政収入目的の輸出課徴金を課しておりましたが、これを全廃をいたしました。それから、もみの買い上げの政府買い入れ価格の保証、これを競争が非常に激しくなったということで廃止をいたしました。それから輸出業者が一定の在庫を持たなければいけないという義務がございましたが、こういうものを緩和するというようなことで、いろいろな影響はあらわれているというふうに見ております。
  48. 倉成正

    国務大臣(倉成正君) ただいま農水省の方からお答えになったとおりでございますけれども、御案内のとおり、アメリカは一九八一年に約三百万トン精米ベースで輸出しておりましたが、一九八五年百九十万トン、精米ベースにしますと数量で約百十万トン、約四割に減っておるわけでございます。これは御承知のとおり、八〇年代に入ってドル高によって米国の輸出競争力が非常に減ったと、それからまた、先ほどお話しのように韓国やインドネシアが生産量を増加させたという点でございます。この点について、やはり最大の米の輸出国であるタイ国等については大変関心を示しておりまして、特に政府の代表団をアメリカに送っております。これに対してアメリカ側は友邦の被害をできるだけ最小限にとどめるように趣旨を明らかにして、問題が一応鎮静化していると聞いております。しかし、注意深くこの動向を見守っているというのが現状でございます。
  49. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 私は、我が国がこれから大変なアメリカからの圧力を受けるかもしれない、こういう中で今アメリカの持っている問題点、そしてまた途上国に対する影響というようなものを十分に考えて対応していただきたいと、こういうつもりでいろいろとお聞きをしたわけであります。  そこで、最後に総理に伺いたいわけでありますが、アメリカのこうした要求が今後強まってきた場合にも毅然とした態度で米については頑張っていただきたいというふうに思います。その辺の決意と、それから今後の我が国の食管制度についてどのようにお考えになっているかという点についてお聞かせをいただきたいと思います。
  50. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 食管制度の基本は守る、それから、衆参両院におきまして行われました米の自給に関する国会決議はこれを遵守する、これははっきり努力してまいりたいと思っております。  それから日本の米に関しましては、やはり生産性という点にさらに着目してもらって、国際価格との乖離をできるだけ縮小するように努力していく必要があると思います。瑞穂の国のお米が外国の米に比べて余り割高だというのは祖先に済まないんじゃないかという気もいたします。やはり米というものは日本文化を支えている非常に大きな目に見えない太い軸があるわけでありまして、そういう意味においても、いろんな事情はありましょうけれども、農村関係あるいは農業の生産者、農協の皆さんにも御努力を願って、そしてできるだけこの国際価格との乖離を縮小するように政府も一生懸命努力いたしますから、みずからいろいろ御研究くださって、我々も協力できるように御努力を願いたいと、そう願っておる次第でございます。
  51. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 ぜひその決意でお願いをしたいと思います。  それから、続きまして次は国有林野事業についてお伺いをしたいと思っております。これは、私、伺いたいと思っているのは一点なんでございまして、めったに質問者がなかろうと思いますので、この際、金丸総理に御質問を申し上げたいというふうに思っております。  ことしの三月四日の与野党幹事長・書記会談で合意をされました中で今の減税等の問題についてはいろいろと詰められているという形になっておりますが、これに国有林野事業改善について財源も含めて六十一年中に結論を得るように最善の努力をすると、こういうことに幹事長時代にお決めになりました。その後、これはどういうふうに対処をしていただいておりますでしょうか、ひとつお伺いをしたいと思います。
  52. 金丸信

    国務大臣金丸信君) 森林・林業、非常に厳しい時代になりまして、また国有林関係は財政的にも六千八百億有余の累積赤字をつくってきた。私は、林業というものは、防衛庁じゃありませんが、国土防衛の一環をなしておる、これがおろそかになったらどういうことになるんだろう、こういうような意味でこの合意というものはまことに合理性があると。そういうことで、今年じゅうにということで私も林野庁の方にも、あるいは農林大臣にもその趣旨を伝えて、今この問題については林政審議会で審議されておる。その状況につきましては林野庁の方からお聞き取りを願いたいと思います。以上。
  53. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 与野党合意になりました点は、具体的に当時その責任を持たれた副総理としては、幹事長時代に責任を持たれたんですから、それがどういうふうに進められているかということを私は伺っているわけですけれども。
  54. 金丸信

    国務大臣金丸信君) 林野庁の方から、林政審議会でこれが進められておるということでございますから、その中で順次進んでおる。その後の問題については、私も関心は持っておりますが、何やかやほかにも仕事があるものですから承っておらない。
  55. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 副総理がそう言われるんですから、そうしたら林野庁、どういうふうな進捗状況ですか。
  56. 松田堯

    政府委員(松田堯君) お答え申し上げます。  国有林野事業の財務事情につきましては大変厳しさを増しているわけでございまして、今後のあり方につきまして林政審にいろいろ御審議をいただいていたわけでございますが、八月二十九日にその中間報告が出されたわけでございます。それによりますと、業務運営の一層の改善合理化、要員規模の適正化、自己財源の確保等、最大限の自主的改善努力を尽くせと、こういったような報告書の内容になっているわけであります。  財政の対策につきましてはこれまでも所要の財源措置を講じてきたところでございますけれども、国の財政、大変厳しい状況下にはありますけれども、六十二年度の概算要求につきましても、従来の財政措置の拡充を図るほか、新たに所要の財政措置を講ずるべく現在予算の要求をしているところでございます。
  57. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 農林水産大臣、今のような御答弁なんですが、きょうはもう十一月何日ですか、それで財源問題というのはこれは非常に大変な問題なんですよね。それを年内に、もう六十一年中ですよ、めどをつけるということ、こういう大変大事な、与野党の合意事項という大事な問題なんですよね。その取り扱いが今のような御返事の中で本当にやれるというふうになりますか。
  58. 加藤六月

    国務大臣(加藤六月君) 私も幹事長・書記会談の結果各党間で熱心にあの問題を協議していただいておるのかと農林水産大臣に就任する前までは思っておったのでありますが、なってみていろいろ勉強してみますと、税の問題は各党間で一生懸命おやりいただいておるわけでありますが、国有林野関係について与野党間で一生懸命その問題の財源措置についてやっていただいておるということは不敏にして聞いておりません。しかし、それではいけないわけでございますから、今次長にお答えさせましたように、既存の制度の財政措置の拡充強化という問題と新しい財政的な助成策を講じさすようにいたしまして、八月末の概算要求提出日までに出さしておるわけでございます。今後は六十二年の予算決定までに新規のもの、拡充強化したものをぜひ実現していくように頑張っていきたい、こう考えております。
  59. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 与野党合意事項で提起をされたのは、私は自民党さんの回答ということで最後に皆が納得をしたんだと思うんですよ。ですから私は、やはり積極的にこの問題に対して取り組んできていただいて、そして与野党でまた話し合いができる条件をつくっていただくのが本来の姿ではなかったんだろうか、こんなふうにも思うのでありますけれども、その辺もう一度御見解をお願いいたします。
  60. 加藤六月

    国務大臣(加藤六月君) 林政審議会の国有林野部会の中間報告もいただきました。そこら辺を踏まえ先ほどお答えしましたようなところをやっておるわけでございますが、与野党幹事長・書記会談でおやりいただいた以上、さらに激励し話し合いを具体的に詰めていただけば私は非常にありがたいと思っておるところでございます。
  61. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 それでは、非常に大事なことでありますから、農林水産大臣が今与野党でさらに詰めていただけばというお話がございましたが、総理、この辺は総理としてはきちっと受けとめていただけますか。
  62. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 与野党で早期に詰めていただきましてその合意の結果が出ましたら、政府としては尊重して実行してまいりたいと思います。
  63. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 先ほど総理がお答えになった中で、特に農業の合理化の問題がございました。合理化ということは、農業の従事者の中で特に一種兼業あるいは専業農家が大変苦しい状況になっている中で、私は一部の離農ということを促していくということにもなろうと思います。といったときに、今後の雇用問題ということでも農業問題は極めて重要な意味を持ってくるのではないか、このように思うわけであります。農業の問題を雇用の問題からとらえたという機会が今まではなかったわけでありますが、今後雇用という観点からも極めて深刻な問題が出てこようと思いますので、その辺についても政府の方に私は総合的に目を配っていただいて対応を考えていただくようなことが必要なのではないか、このように考えているわけでございます。  そこで、最後に総理にお伺いをするわけでありますが、日本の農業の合理化を積極的に進めていくという政策的な観点から、そうした総合的な観点を持っていただくことができるのかどうか、農業というものを雇用の観点からも見ていただけるかどうか、その点をお伺いして私の質問を終わりたいと思います。
  64. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私は農業を非常に重視しておるのでありまして、農は国のもとと前から申し上げているとおりでございます。これが改革を前進していく上についていろいろな問題が惹起してくるかもしれませんが、しかしやはり農は国のもとという大原則の上に立って実行していかなければならぬと思っております。その間にもし万一そのような離農者というものが出る場合には、政府としては万全の措置を講じてやらなければならないと考えております。
  65. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 以上で稲村稔夫君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  66. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 次に、立木洋君の質疑を行います。立木君。
  67. 立木洋

    立木洋君 私は、既に私のお尋ねするテーマを提出していますが、玉置長官がやむを得ない御事情で退席されるということなので、最初に恩給の問題に関連してお尋ねをいたしたいと思います。  戦後四十年を超えてまだ解決されていない問題の一つに、旧軍人軍属の恩給を受けていない人が数百万人に上っておられるわけです。これらの方々は既に高齢者になっておられますし、個人に対する国家補償の措置など一日も早い解決が望まれているわけであります。玉置長官はかねてからこの問題に深いかかわりを持ってこられたということがありますので、特にこの際はっきりとした御見解をお聞きしておきたいと思います。
  68. 玉置和郎

    国務大臣(玉置和郎君) 御質問の趣旨は、私が自民党の中で軍恩欠の同志会というのがありまして、そこの会長に推されて、そして推進役に回っておった。それが閣僚になって、ほかでは勇ましいことを言うが余りそれは言わぬじゃないかというような趣旨だと思うのですよ。そうでしょう。閣僚に初めて私はなって知ったのですよ。閣僚というのはなかなか難しい。この前も何か言ったら総理に、それはなかったことにしましょうとぴたっと抑えられたら皆、はあっと言う。やっぱり閣僚は閣僚のそういう存在があるのだなということになりましてね。それで立法府と行政府のバランス、これがうまくとれておるのじゃないかなというふうな感じを私はします。私の気持ちの中では個人補償の問題についてもやってあげにゃならぬな、そうしないとなかなか解決しないなというような気持ちがありますが、中曽根内閣の一貫した姿勢というものは立木さん御承知のとおりです、個人補償はなかなかできにくい。それだけにこの問題は官房長官が中心になって長年進めてきた問題であります。私も不肖中曽根内閣の一員でありますので、その方向に向かってしばらく辛抱しております。
  69. 立木洋

    立木洋君 私のところにもこれらの問題というのはたくさん要請が来ておるわけでありますが、積極的に解決するという立場で、所管の後藤田長官、いかがでしょうか。
  70. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) 恩給の性格ですが、これは政府は今まで、一般の社会保障の意味合いはもちろんその点では同じだけれども、性格が違うんだということを申し上げているんです。立木さんから、先ほどの御質問を承っておると、軍人恩給も国家補償、他の方と同じだと、初めて聞かせていただいたわけでございます。もちろんこの問題は私どもは非常に重要に受けとめておるわけでございます。  ただ、昭和五十七年の六月から五十九年の十二月まで二年六カ月ばかり、この問題については御案内のように戦後処理問題は幾つかございます。その中の一つとして関係者の皆さん方の非常に強い御要望があるわけでございますから、こういった方々のお立場というものを私どもとしては受けとめて真剣にこれは対応しなきゃならぬ課題であるということで、官房長官のもとに有識者のお集まりを願って、いろいろ御意見を拝聴いたしました。  その御意見は、ほとんどの方が、今日ここまで来ていわゆる個人補償というのは政府としてこの際やることは適当ではなかろう、適当でないと。むしろこういった方々のお立場に十分配慮をして、いわゆる基金構想というものでこういった方々に何らかの慰謝の念をあらわすのが適当である、こういう御答申をちょうだいしたわけでございます。したがって、それを受けまして六十年、六十一年の両年度にわたって調査費がつけられてお ります。昨年一年調査をし、本年の予算の中では、ともかく対象者の把握が四十年もたっておりますから非常に難しいわけです。恩欠の問題も当然ですし、シベリアの問題も当然だし、それからまた在外資産の問題についても、対象者がおよそ推計で全部合わせますと常識的に五百五十万人ぐらいと言われております。しかし、必ずしもこの実態が明らかでない。そこで、その実態を調査しなければいかぬのではないかという実態調査をやっております。それと同時に、この基金の事業の内容、こういうものももう少し詰めてみようということで、その調査をやっておるさなかでございます。  こういったことが一方にありながら、しかし、同時に自民党の中あるいは野党の方々の中にも、基金構想とは別に個人補償ということをやるべきではないのかという強いお気持ちで動いていらっしゃる方が多数おるということも承知をいたしております。それならば、政府としては、もともとこういう問題についてはやはり基本は温かい気持ちで対応するのが私はあるべき姿だと思いますよ。しかし、同時にいろんな問題への波及のこともございますし、財政上の問題も当然のことながら政府としては配慮しなきゃならぬ。こういうようなことを考えますと、今日の段階でこれらの運動をなさっていらっしゃる方のお気持ち、関係者の方の御心情、よく政府はわかりますけれども、今の段階で回答しろということであるならば政府としては基金構想でやらせていただきたい、かように考えております。
  71. 立木洋

    立木洋君 長官、今シベリア抑留者の問題にも触れられましたが、この問題についても関係者から強い要望が補償の問題としては出されているということは御存じのとおりだと思うんです。  ここにいわゆる念書なるものを私は持ってまいりましたが、この中には五人の方の名前が書かれております。その内容を読みますと、「「被抑留者等に対する特別給付金の支給に関する法律案」についての了解事項」「右法律案(別紙)については、次の国会に提出し、成立を期する。 昭和六十一年五月十五日」。この五名の中で、私は全部言いませんが、確かに約束をなされたという方がそちらにお二人座っておられますので、お一人ずつ、まずお伺いしたい。  当時の総務会長である官澤大蔵大臣、このお約束を実行されるのかどうなのか、どのように現在お考えになっているのでしょうか。
  72. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) そのような覚書ができます経緯がいろいろございまして、そういうことにもかんがみましてただいま政府・与党の間で協議をいたしておるところでございます。
  73. 金丸信

    国務大臣金丸信君) この問題につきましては、ただいまあなたが持っておられるその書類に署名しろということで、私は署名をする前に、これは政府がするのかと。政府がするということでございましたが、大蔵大臣と官房長官はこれにサインがしてないという状況が今のような状況になっておる。
  74. 立木洋

    立木洋君 宮澤さんも金丸さんも、これは五月の十五日です、選挙の前ですね、サインされて約束しているんですよ。選挙が終わったら、政府の方も約束しておったかもしれないけれども、政府の方は約束していなかったと言うんだから私はどうなるかわからないなどというふうなことでは困るんですよ。一体どうなんですか。お二人とも明確にしていただきたい。
  75. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) 政府の方は選挙の前に約束しておって、選挙が済んだら約束しておらぬという……
  76. 立木洋

    立木洋君 お二人が。
  77. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) お二人がでしょう。  私は今までに同意をしたことは一度もございません。
  78. 立木洋

    立木洋君 長官もちょっとお聞き間違いになられたようでありますけれども、お二人の方は政府がやっておられると思って約束したと言うけれども、選挙の前にそういう約束をお二人はしているんですから、お二人ははっきり責任を持ってもらわぬといけないんじゃないですか。そういう意味でお二人の意見をもう一度確認したいということです。
  79. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) それが先ほど申し上げたようなことになるわけでありまして、この覚書ができました経緯もございますので、それにかんがみまして政府・与党間でただいま協議をいたしております。
  80. 金丸信

    国務大臣金丸信君) 十分責任は感じております。
  81. 立木洋

    立木洋君 政治家というのは、選挙のときに公約するということは非常に大切なことだと思うんです。国民に対して、私が政治家になったならば一体何をするのか。これは軍人の補償の問題でも繰り返しこういう事態があるんですよ。だから、選挙のときに政治家が責任を持ってこれをやるという約束をしたならば、努力をする。戦後の問題の中でいろいろとそのほかにも問題が解決されないで悩んでいる方々が大変おられるわけですから、そういう意味で、署名をなさっているんですから責任を持って私はやっていっていただきたいということを強くこの際要望しておきたい。  それで、次の問題に参ります。  アメリカでの放射能人体実験の問題についてですが、去る十月の二十四日に、アメリカの社会で三十年間余りにわたって病人やお年寄りなど六百九十五人に対して放射能人体実験を行ってきたという驚くべき事実が発表されているわけです。首相は、本会議で、報道は見たけれども事実は知らないとお答えになりましたが、総理、その後お調べになったでしょうか。
  82. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 何しろ非常に多忙で、中国へ行ったりアキノさんが来られるものですから、そっちの勉強に忙しくてまだ調べておりません。
  83. 立木洋

    立木洋君 お忙しいことはわかりますけれども、重要な問題ですから、そういうことにも必ず気をとめていただきたい。  私はそうではないかと思って外務省にこのことを調べるように要求しておきましたが、外務省、どうですか。
  84. 藤井宏昭

    政府委員(藤井宏昭君) お答えを申し上げます。  ただいま委員御指摘のような趣旨の報告書が先月出ております。
  85. 立木洋

    立木洋君 内容を言ってくださいというんですよ。外務省に調べろというのは、出ているか出ていないかじゃなくて……
  86. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 質問の内容は明確にしてください。
  87. 立木洋

    立木洋君 内容について明確に述べてください。
  88. 藤井宏昭

    政府委員(藤井宏昭君) この報告書は、一九四〇年代中ごろから一九七〇年代の初期にかけまして、アメリカの市民に対しまして放射線の影響を調査するための人体実験が行われたというふうに述べており、三十一回の実験で約六百九十五人に対して実験が行われたというふうに述べております。
  89. 立木洋

    立木洋君 私もここに現物を持っているんですが、「アメリカの核のモルモット――三十年間にわたる米国民にたいする放射能実験」という題名で、米下院のエネルギー保全小委員会のスタッフが報告をしたものなんです。  この最初の梗概と概説のところに大変なことが書かれているんです。   文字通り数百人もの個人が実験で放射能を浴びせられ、被実験者にほとんど、あるいはまったく医学的救済がおこなわれなかった。これらの実験の主たる目的は放射性物質の生化学上の影響を直接測定すること、注入、摂取、吸入した放射性物質から出る致死量を計ること、放射性物質が人体を通過するのに要する時間を測定することであった。アメリカ国民はこのようにして核の測定装置となったのである。  これは大変なことであります。こんなことが三十年間にわたってアメリカによって行われていた。こういう事態、許すべからざる核軍拡が進行 してきた、こういう状況の中でこのような非人道的な所業がやられている。放射能の人体実験が許されていいのかどうか、私はその一節だけ読み上げましたが、総理、このことを聞かれてどのようにお考えになるのか、はっきりとしたお考えを述べていただきたいと思います。
  90. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 日本には日本の見解がありますが、アメリカ政府やアメリカがやったことについては、どうぞ直接アメリカに抗議するなり文句を言っていただきたいと思います。
  91. 立木洋

    立木洋君 あなたの御認識はいかがですか。
  92. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) その内容について、私深く、よく承知しておりません。ほかの国のやったことについてとやかく批判すべきでないですが、人間の生命というものは非常に大事であり、尊厳である、そう考えております。
  93. 立木洋

    立木洋君 私はこうした事態は許されるべきじゃないと思うんですよ。この問題は、この冒頭のところにも書いてある、どこがこんな実験をやっているのか。エネルギー省の前身であるマンハッタン計画、原爆を製造したマンハッタン計画が関与しているというんでしょう。原子力委員会あるいはエネルギー研究・開発局、これは原爆を製造している、これを開発する、研究する、こういうところが関与している。それなら医療に関係があるかというと、アメリカの保健社会福祉省なんというのは全く関与していないです。こういう事実を見てもこれは極めて重大なことである。そういう点では、十分に人間の命を尊重すると言われるならば、明確な御認識を持っていただきたいということを指摘しておきます。
  94. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 関連質疑を許します。内藤功君。
  95. 内藤功

    ○内藤功君 外務大臣にお伺いしたいと思うんですが、広島、長崎に原爆が投下された直後の一九四五年の九月に、アメリカの調査団が広島から膨大な日本側の資料を押収して駆逐艦でアメリカに持ち去ったのであります。この間の経緯についてどのように御認識か、まずお伺いしたい。
  96. 倉成正

    国務大臣(倉成正君) ただいま内藤委員の御質問でございますけれども、終戦後、広島、長崎の被爆関係の資料が米国に渡った。米国の関係者が保管をしている原爆資料については、従来より外交レートを通じて返還を請求いたしております。昭和五十七年には改めて現在まで返還された資料のほか未返還の原爆関係資料の探索を依頼しておる次第でございまして、右探索の結果新たな資料が発見された場合には米側関係当局より返還の申し出があるものと期待しておるわけでございます。
  97. 内藤功

    ○内藤功君 日本側の医学また科学の専門家が生命の危険を冒して集めた膨大な資料、未返還の部分がかなりある。ことしの三月に厚生省はいまだ海外に重要資料があるということを言っておりますが、どういうものですか。
  98. 仲村英一

    政府委員(仲村英一君) 広島、長崎の被災資料でございますが、現在、米国の国立公文書館にあるのではないかということでございまして、照会中でございます。その存在、所在の確認を行った上で可能なものについては収集するように努めてまいりたいと考えておるところでございます。
  99. 内藤功

    ○内藤功君 この中には、いわゆる解剖第一号所見報告書あるいは当時の住民の所在を示す米穀通帳、こういう貴重なものがあるはずであります。  次に、一九四六年の十一月に、アメリカの大統領命令でアメリカの防衛と安全のためと称して原爆傷害調査委員会、いわゆるABCCがつくられました。これと今の放射線影響研究所の関係はどうなりますか。
  100. 仲村英一

    政府委員(仲村英一君) お尋ねのABCCでございますが、これは原爆傷害調査委員会ということで、終戦直後の昭和二十年九月に組織されました日本における原子爆弾の影響に関する日米合同調査団の建議に基づきまして、米国大統領が米国の学士院、学術会議に指示いたしまして二十二年の三月に設置したものでございます。ただいまの放射線影響研究所は、このABCCが行ってまいりました調査研究活動を引き継ぐものとして昭和五十年の四月に設立された団体でございます。
  101. 内藤功

    ○内藤功君 その放射線影響研究所の概要、特に予算、職員、業績報告書の配付先等に重点を置いて御説明いただきたい。
  102. 仲村英一

    政府委員(仲村英一君) 放射線影響研究所の概略でございますが、目的は、平和的目的のもとに放射線の人に及ぼす医学的影響及びこれによる疾病を調査研究し、原子爆弾の被爆者の健康保持及び福祉に貢献するとともに人類の保健の向上に寄与するということでございます。この放影研は民法に基づく財団法人でございまして、外務と厚生、両大臣の共同所管でございます。  昭和六十年度におきます職員の数でございますが、四百八十六人でございまして、うち日本人が四百七十人、外国人が十六人でございます。六十年度におきます役員の数でございますが、十四人でございまして、日本人が七人、アメリカ人が七人、同数でございます。理事の数は十二人で、それぞれ六人ずつでございます。  先ほど申し上げましたように、設立年月日は五十年四月でございまして、現在放射線影響研究所におきましては、広島、長崎の原爆被爆者の調査対象者につきましての原爆放射能の後影響の探知、究明のため、被爆者の寿命調査、成人健康調査、病理学的調査、遺伝学的調査等を行っております。  予算は日米折半でございまして、五十八年度の予算額は三十五億六千万円、五十九年度は三十六億六千万円、六十年度は三十七億二千万円でございます。  資料は、毎年、年報として研究成果を発表しておりますが、主な配付先はアメリカが百六十三冊、西ドイツが二十三冊、フランスが十九冊、チェコが二十五冊、東独が二十六冊等でございまして、アメリカへは一括米国学士院あてに送っておるようでございます。日本国内には約二百カ所の送付先となっております。
  103. 内藤功

    ○内藤功君 私の聞きたいのは、アメリカの学士院いわゆるNASと言われておりますが、そこから先どういうアメリカの研究所、役所に送られているのかということです。
  104. 仲村英一

    政府委員(仲村英一君) ただいま申し上げましたように、一括学士院へ送っておりまして、それから先の配付先は不明でございます。
  105. 内藤功

    ○内藤功君 不明と言いますが、ことしの八月三日、朝日新聞ですが、この特集に、送り先、ロス・アラモス、ローレンス・リバモア、オークリッジ、こういう国立研究所、それから国防総省、米軍病理学研究所、米軍放射線生物学研究所、空軍省本部、陸軍医療研究開発司令部と挙がっておりますが、いかがですか。
  106. 仲村英一

    政府委員(仲村英一君) けさほど急にお尋ねがございましたので、実は研究所の方へ問い合わせいたしましたところ、先ほどお答え申し上げましたように、学士院に一括百六十三冊を送ったということでございます。
  107. 内藤功

    ○内藤功君 これはしっかり調べてもらわなきゃ困る問題であります。  総理に伺いますが、原爆投下以後四十一年ですが、アメリカが今なおこの種の研究を日本において継続しておるというこの意図をどのようにお考えになりますか。
  108. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) やはり医学研究、科学研究の一環だと思います。
  109. 内藤功

    ○内藤功君 総理の認識は非常に間違っていると思います。被爆国の総理としてお考えいただきたいと思うんです。アメリカの国防省、原子力委員会、それからロス・アラモス国立研究所のつくりました「原子兵器の効果」という文献がありますが、これによりますと、この調査によって原子戦防御の計画樹立にかなりの基礎資料が得られる、こうはっきり書いてあります。原爆開発マンハッタン計画の参加者の一人であるパグウォッシュ会議の委員バーナード・フェルト博士は、「報告書の送り先から見て、核戦略研究に使われていることは確実だ。個々の研究者がいくら善良で、純粋な気持ちであっても、その研究成果が予期せぬことに使われていく、それが科学の怖さなのだ」、こう述べております。私は、最後に立木委員と私 の質問で指摘をした被爆者を研究材料に利用する非人道的な行為を根絶するためにも、核戦争阻止、核兵器廃絶が緊急に必要である、このことを指摘して私の関連質疑を終わります。
  110. 立木洋

    立木洋君 続いて、私は核兵器完全廃絶、この問題についての質問をいたしたいと思います。  中曽根総理国会でなさってきたいろいろな答弁、レイキャビク首脳会談の問題や核問題あるいはSDIの問題について私は聞きました。しかし、私は幾ら考えても総理の話では成り立たないと思うんです。総理はSDIは核軍縮のてこだというふうに言いますけれども、核兵器そのものをすべてなくしてしまえばSDIなんて要らなくなるんです。そうじゃないですか。SDIというのは、相手が核ミサイルを撃ってくる、それを撃ち落とすものなんでしょう。それならば全部撃ち落とせるかといったら全部は撃ち落とせない。するとどうなるのか。結局はSDIというのは核戦争を想定したそういう武器だ、兵器だということになるんじゃないですか。総理いかがですか。
  111. 倉成正

    国務大臣(倉成正君) 今、立木委員お話でございますけれども、現在の平和というか、現在の核の問題につきましてはいわゆる核の均衡、一方が核攻撃を加えた場合に相手方に相当なダメージを与える、したがって、その恐怖ということに対してなかなか攻撃はしにくい。いわゆる核の均衡、恐怖の均衡、そういうことで成り立っておるわけでございますから、そういうことを考えてまいりますと、核廃絶は当然のことでございますけれども、それをどうやってやっていくかというプロセスというのが一番大事でございますから、我々はステップ・バイ・ステップ、とにかく核兵器を少なくしていくステップをどうやって探求していくかということではないか。一片の宣言や一片の演説で核兵器が廃絶できないということは、私自身長崎の出身でございますから一番痛切に感じておるところでございます。
  112. 立木洋

    立木洋君 全然答弁になっていないですよ。  総理、いかがですか。
  113. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 外務大臣の答弁は理があると思っております。
  114. 立木洋

    立木洋君 私は、SDIが軍縮のてこだと言うから、SDIというのは核戦争を想定した武器ではないかと聞いたのです。
  115. 倉成正

    国務大臣(倉成正君) SDIというのは、いわゆる大陸間弾道弾、また将来はショートレンジのINFを含めて、そういう中距離の核兵器についても無力化していくという、非核の手段によってこれをやろうという構想でございます。それと同時に一方的な優位は求めない、またあわせて軍備管理、軍縮をやっていく。また、研究はやるけれども実際の開発、配備については同盟国あるいはソ連とも相談する、そういう形の研究でございますから、これは核廃絶を目指す一つの新しい発想の転換であると思うわけでございまして、核をなくそうという核廃絶の理想と決して矛盾するものではないと確信をいたします。
  116. 立木洋

    立木洋君 レーガンが八五年の五月八日に、SDIは核弾道ミサイルを撃ち破る能力を持つことが可能になるとはっきり言っているんですね。盾だとか防御だとか言ったって、そうじゃないんですよ。大量エネルギーというのが攻撃に使われないという保障はないんです。問題は、一歩一歩やるということを言いますけれども、それならば私ははっきり総理にお尋ねしたいんですが、SDIがこれから一体どれだけたったらできるのか。アメリカが言っているのはSDIができるのは何十年先、来世紀のことだ、できないかもしれない、はっきり言っているんでしょう。しかも危険な軍拡を宇宙にまで一層進める大変なものですよ。そんなようなSDIに人類の未来をゆだねることができるでしょうか。拘束力のある、核兵器を完全に地球から一掃する、これからの核兵器をいかなる国においてもつくらない、明確な国際的な協定を結ぶ、これこそが完全な保障じゃないですか。そして、その取り決めに基づいて順次手順によって核兵器を地球から完全に一掃する、このような協定を早急につくり上げるという努力こそ保障ではないかと思いますが、この協定の問題についてもあわせて総理の見解を聞きたい。
  117. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ですから、私は、今共産党がおっしゃるようなことは幻想的核廃止論だと、そう申し上げているんです。前から申し上げているように、核兵器を廃止するためには廃止するに値する信頼できる情勢をつくらなけりゃ廃止できない。何のためにこういう業の兵器が生まれてしまったか、一たん生まれてしまったらこれはもう業の兵器になってきている。したがって、これをなくすというためにはお互いが安心できる情勢を、いろいろ基礎条件もつくり上げてやめょう、そういう体制をつくらなければ、演説だけではだめだと。  そこで、じゃどうしてなくすかといえば、今まで言われてきたのは検証の問題ですね。検証の問題は、最近はレイキャビクあるいはヨーロッパ安全保障の問題では前進してきつつあります。私は大いに歓迎しておる。情勢によってはその現場まで外国人あるいは第三国人が行って確かめ合う、そういうところまでいくべきだ、そう思っておるのです。これも、遅々とはしておるけれども最近はかなり前進してきましたですね。そういうような具体的措置を講じてやめる。しかし、一遍に全部やめるというわけにはあるいはいかぬかもしれぬから、半分にする、それを四分の一にする、そしてなくす、そういうような年次計画もつくってそしてやっていくということが正しいでしょう。ですから、アメリカ、ソ連だけじゃない、あるいはフランスも持ち、イギリスも持ち、中国も持っておると言われておる。このほかの国々もやはりなくしてもらわなきゃ困るでしょう。そういうような具体的問題を一つ一つ積み上げて、そして安心してやれるという体制をつくるのが政治なのであって、そういう環境をつくり、一歩一歩現実的に安心できる体制をつくらぬで、演説だけでやるというのは政治にならぬと私は申し上げておるのです。
  118. 立木洋

    立木洋君 私が話したことを空論だと言われるけれども、もっと私の話をよく聞いてくださいよ。実際に空論なのかどうなのか。あなたの方が一体科学的に成り立つのか成り立たないのか。いいですか、これから事実で明確にお尋ねしますから、よく答えていただきたい。  あなたは今検証の問題を言われた。ソ連は検証を受け入れると言っているんです、六カ国の提案も。そして、今度の会談の中で、レイキャビクの会談の後、シュルツ国務長官が言いましたよね、十分にこの問題は話し合った、いいところまで来た。根本問題はそこにあるんじゃないんですよ。問題は、具体的に一遍に解決できないなどと言いますけれども、あなたはいろいろな情報をお聞きになったと思うんです。今度のレイキャビク会談でいいところまで話がいった。そのときに、あの会談場の中には机が足らない、だからアメリカのパール国務次官補とリンハード大佐がふろ場に行って浴槽の上に板を張って、そこで緊急に書き上げた。何を書いたか。これまでに例を見ない徹底した軍縮案を書き上げたというのだ。やろうと思ったらできるんですよ。核兵器というのは人間がつくったんだから、人間がなくすことができるんですよ。問題は、政治家が本当に核兵器をなくすために努力するかしないかということなんです。核の翼の傘に依然としてしがみついているような態度をとっていたのでは核兵器はなくならない。  だから、私はここではっきりあなたに御質問したいのは、アメリカはSDIがいつできると言っていますか。必ずできると言っているんでしょうか。明確にお答えいただきたい。
  119. 倉成正

    国務大臣(倉成正君) 新しい科学技術の進歩によってその理想を追求している。これができるかできないか、一〇〇%確実であるかどうか、これを研究するのがSDIでございます。したがって、これからその最大の理想を目指してやっていっておるのが現実の姿でございますから、これがもう完全に今、いつできるというようなことがわかればそれはもう大変なものですけれども、それがわからないからこれからそういう研究を一歩一歩一生懸命やってみよう、そして核兵器を廃絶し ようということでございます。
  120. 立木洋

    立木洋君 それなら、倉成さんでも結構ですが、総理、アメリカの大統領特別顧問のポール・ニッツェ、この方がSDIの今後の計画、見通しについて明確に述べた演説があります。たしかごらんになっているだろうと思いますけれども、どのような内容が書いてありましたか。――お二人ともわからぬのですか。こんな重要な問題まで読んでいなくていいかげんなことを言うというのは答弁になっていないじゃないですか。
  121. 藤井宏昭

    政府委員(藤井宏昭君) お答え申し上げます。  ポール・ニッツェ氏は、昨年二月のロンドンの講演におきまして、大体十年ぐらいの間はSDIというものは研究期間であろう、その後数十年かかってSDIが徐々に現実の戦略の中に入ってくる、その後核が廃絶されるであろうということを述べております。
  122. 立木洋

    立木洋君 最後が違います。第一段階十年間、研究期間。移行期間数十年、それはいいでしょう。最後に何と言っていますか。それで核がなくなりますと。  そうじゃないんだ、SDIができてからこう書いているんだ。「しかるべき技術的、政治的諸条件が整うならば、」と。そのときになって整わなかったら、なるかならないかわからぬのだ。そして、「われわれは核兵器がゼロになるまで削減しつづけることができるようになることを希望するであろう。」ですよ、あなた。なくなるなんて書いてないんだ。ところが問題は、その次に何と書いてあるか。「きわめて率直にいって、それは達成不可能なものであることが立証されるかもしれない」と書いてある。できるかできないかわからぬのだ。数十年先なんですよ。こんなことに、今大変な核の脅威で困っておる人類に対し、これは立派です、これで核兵器をなくせます、そういうようなことを言うような、国民に宣伝するようなことで責任が持てますか。これから数十年といったら、残念ながら総理も私もこの世でそれを確かめることができないかもしれないんだ。そういう永遠のことなんですよ。だから、今すぐ直ちにそのことに努力するようにやるのが現実的ではないか。核戦争を想定するような武器を持ち出すようなやり方ではだめだ。もう一遍明確にお考えを述べていただきたい。
  123. 倉成正

    国務大臣(倉成正君) 今立木委員お話でございますけれども、現在地球上には、米ソを含めまして人類を何回も皆殺しできるくらいの核兵器が存在するわけでございます。これをどういう手段でなくしていくかということを今考えていくのが人類の課題でございます。また政治家の責任でございます。それがなかなか難しいということでSDIという構想をレーガン大統領が出して、そしてこのSDI構想が一つの契機になってまたジュネーブ交渉が始まったり、あるいはレイキャビクにおきましても相当大幅な合意が見られた。しかし最終的において合意は見なかったということでございますから、やはり理想を追求していくということは大事なことじゃないでしょうか。そのほかに、立木委員が必ず核兵器は廃絶できるという、すぐでも廃絶できるという方法があればそれはお示しいただきたいと思います。
  124. 立木洋

    立木洋君 倉成さん、今の世界の動きというのは数年前と違うんですよ、大変な状況になってきているんです。世界の核大国が核兵器の廃絶の問題を話し合うという時代になってきているんですよ。これはソ連とアメリカだけじゃないんです。先日、九月の初めに非同盟首脳会議が開かれましたね、百カ国近くが参加しておる。この非同盟首脳会議で一体どういう政治宣言が出されていますか。「非核兵器保有国にとって、核兵器の使用または使用の威嚇にたいする唯一の信頼できる保障は核兵器完全廃絶にある」と、繰り返し述べている。そして、「中でも核破局の脅威を除去することは、多くの問題の中の一つではなく今日のもっとも鋭く緊急な課題だ」と、こう位置づけておるんです。百カ国の代表たちが、集まった政府の人たちがこう述べているんです。あのメキシコ宣言にもありました。デリー宣言でも、五大陸の六カ国の首脳が集まった。何と言いましたか。米ソが核兵器をなくすために努力をすることが今最も重要だと明確に指摘しておるじゃないですか。そして、国連の大使ですら、国連の総長ですらこの問題についてはっきりとした問題提起をしておる。去年の国連総会ですよ。あなたはまだそのとき外務大臣でなかったからお読みになっているかどうかわかりませんから私が述べてあげますが、すべての核兵器の明確な完全禁止と全面的な廃棄、この国際協定をつくるために努力すべきだと。 そして、これが国連総会に出されてテークノートされたんですよ。このような状態になってきた。  そのような状態になったからこそ米ソ首脳が核兵器をなくそうという問題で話し合う状況が生まれたんじゃないですか。SDIが出てきたから、だから会談ができるようになったんじゃないんですよ。情勢の変化ということをあなたはよく見ていただきたい。そのようなことを見ないで言うようなことでは私は困る。  私が言いたいのは、彼が、アメリカが何のためにSDIを持ってきたかといったら、核兵器をなくしたいなくしたいと言いますけれども、ワインバーガーが八四年の二月の一日、アメリカ上院の軍事委員会で何と言っているか。こんな質問があったんですね。SDIのためにお金をどんどん使っていくけれども今までの軍拡よりもいい状態がこの中で生まれるんですか、こう言って質問された。それに対してワインバーガーが何と答えたか。アメリカが効果的でソ連の兵器を無力化できるとわかっているシステムを手に入れることができたならば――これがSDIなんですね、できたならば、例えばアメリカが唯一の核兵器保有国だった状態に戻るだろうと書いてある。アメリカだけが核兵器を持っておった状況、そういうふうになるんだ。これは軍事の優位をねらっているという明確な証文じゃないですか。総理いかがですか。
  125. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) さっきからお聞きして、私は前に申し上げたように、やはり演説調が非常に強い御質問であると、そういうふうに感ずるんです。核兵器を一日も早く地球上からやめさせたいというのはみんな願っていることなんであって、だからこそレーガンさんもゴルバチョフさんもレイキャビクへ突如慌ただしく飛んで行って、そして四回も会談をして何とか合意に達しようと努力したんでしょう。その誠意は我々は疑うことはできない。それは全人類のそういう悲願を身に受けてやっておられることで、我々もそれが一日も早く成立するように願っているわけです。しかし、なぜジュネーブで会談が行われ、あるいはレイキャビクで行われ、あるいはワシントンで行われようとした――ワシントンだけまだ行われない、かといえば、それに対する障害が両方ともあると。その障害を取り除くために、またこの間ウィーンでシュルツさんとシェワルナゼさんが会いましたね。あるいはジュネーブにおいても専門家が話し合いをしておりますね。  そういう血のにじむ努力が何のために行われているかといえば、安心できてやめさせる体制をつくるための努力をしておる。子供がおもちゃをぽいと捨てるように核兵器というのはやめられるものではない。業の兵器だと前から申し上げておる。核兵器がなぜ存在し、なぜやめられないか、どうしたらやめさせられるかというそういう具体的な科学的な安心できる措置まで考えないで、やめりゃいいんだ、やめりゃいいんだ、なぜやめないのかというふうにおっしゃる立木さんの御演説を聞いて、私は極めて宣伝臭の強い演説であると感じたんです。
  126. 立木洋

    立木洋君 私のしゃべり方が演説調かどうか、これは個人の自由でありまして、演説調だから宣伝臭いなどというふうに言われては困るんです。それは話し方にはそれぞれの人のいろいろな特徴がありますからね。  ただ私が言いたいのは、今度の十月の二十四日、日本政府は西側の諸国と二国間の軍縮管理の問題について国連に決議案を提案しましたね。ところが、その中に、私見てみましたら、核兵器の 完全廃絶という言葉がないんですね。すべての核兵器を完全になくすと書いてないじゃないですか。あなたは核兵器をなくしたい、すべてなくすんだと言いながら、日本が参加しておる国連に、先日ですよ、十月の二十四日に出した文書に書いてないじゃないですか。核兵器をすべてなくそうということが一言もない。皆さんがテレビで聞いているからといって、そういう言い方をなさったらいけないですよ。  いいですか、アメリカに核兵器を使わないように言ってくれと言われたとき、あなたは何と言いましたか。それは核兵器を持っている国の自由だ、そのようないろいろなことを差し出がましく言うのは主権を侵しかねない、干渉になるのではないかと思われるので疑問だとあなたは言われた。核兵器をなくすのだったら、核兵器をつくらせない、核兵器を完全に廃絶するというなら、堂々と国連の舞台で唯一の被爆国である日本政府としての文書を出せばいいじゃないですか。そういうことも出していなくて問題のポイントを外してはならないんですよ。  あなたは先ほど私が申し上げたワインバーガーの発言を正しいと思われるのか正しいと思われないのか、お答えいただきたい。
  127. 倉成正

    国務大臣(倉成正君) 一言立木委員に申し上げたいと思います。  私は、先月国連総会で日本政府代表として、核兵器は廃棄されるべし、原爆を受けました唯一の広島、長崎の市民の一人として、政治家としてこれは日本の政府を代表して申し上げておりますから、このことはひとつ御記憶いただきたいと思います。
  128. 立木洋

    立木洋君 答弁いただきたいんですけれども、それはどこでやろうと私のは演説だというんですよ。そうしたら倉成さんのも演説だと、同じことになるんじゃないですか。実際にやるかどうか、どういう文書を国連に出したかということが問題になる。それで私は――結構ですよ、倉成さん、あなたに聞いているんじゃないんですから。ワインバーガーの発言に対してどのようにお考えになるのか。正しいと思われるのか、間違っていると思われるのか。
  129. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ワインバーガーは、我が国に来たときもあるいは私が向こうで会ったときでも、やはりSDIというものは核兵器を廃絶するための道具であって、我々は核兵器廃絶を念願しておる、それを実際、現実的に実現させるためにこういう防御兵器で核兵器を途中で落としてしまう、無力にしてしまう、そういうものができること、核兵器というものはもうやめよう、意味がない、そういうことでアメリカもソ連も核兵器をやめる手段になる。それはできるかできないかまだわからない、しかしできそうだ、そこで全力を奮って、核兵器を廃絶する大事なはしご段になるからそれを一生懸命つくろうとしておるんだ、そういうことを私は聞いておるのであります。
  130. 立木洋

    立木洋君 ワインバーガーの発言については直接お答えになっていない。ワインバーガーは、ソ連の兵器を無力にすることのできるシステムを手に入れることができるならば、例えば核兵器唯一国だった状態にアメリカは戻るだろうと言っているんですよ。あなたはそのことについて直接答弁されていないし、そのことを否定することもできない。  現在、アメリカではどのような戦略核兵器あるいは職域核兵器が開発されているんでしょうか。これは事務当局で結構です、お答えください。
  131. 藤井宏昭

    政府委員(藤井宏昭君) 現在、アメリカにおきましてMX、次期戦略核兵器が開発されているというふうに了解しております。
  132. 立木洋

    立木洋君 簡単に言われてもらっては困るんです。いいですか、私だって知っている。海洋発射巡航ミサイル、空中発射巡航ミサイル、BIB爆撃機、見えない戦略爆撃機、MXミサイル、ミゼットマンミサイル、トライデント型ミサイル原潜、たくさんのものがつくられているんですね。一方では、SDIで核兵器をなくすんだというふうに言われるから、それならアメリカは核兵器を減らしていっているんだろうかと思ったら、そうじゃない。どんどんふやしているんですね。これはまさにSDIで相手の核兵器を無力化する、自分の方の核兵器はどんどんふやす。まさに軍事的な優位ということじゃございませんでしょうか、中曽根さん。
  133. 藤井宏昭

    政府委員(藤井宏昭君) ただいま委員御指摘のような新機種の兵器でございますけれども、これはいわゆるリードタイムということがございまして、この開発を決定いたしますのは十年から数年の時間がかかるわけでございます。それらが現在いろいろ実戦配備等にたまたま来ておるということでございまして、これは委員御存じのとおり、七〇年代におきましてアメリカの国防費がどちらかというとむしろ漸減したというような状況、ソ連の国防費が非常に急速にふえておるという状況の中で、レーガン政権が八〇年に登場いたしまして、それから新しくいろいろなことを始めた。それが現在このようなことになっているということでございます。  なお、SDIをアメリカ・レーガン大統領が唱えましたのは御存じのとおり八三年の三月でございます。
  134. 立木洋

    立木洋君 今述べた核兵器というのは、一部既に実戦配備されているし、これから配備される過程のものもあります。一九八〇年代までを目指しての計画の内容になっております。 レーガンがかつて述べたことの中に、ソ連の核攻撃を受けた後残ることのできるアメリカの戦略核兵器の数を一九九〇年までに今日の二倍程度にするということを述べた事実があります。  そこで私はお聞きしたいんですが、総理、国連において核兵器を使わないようにしようという決議に対して、アメリカはこれまで賛成したことが一度でもあったでしょうか。
  135. 中平立

    政府委員(中平立君) 我々が知っておる限り、反対しておると思います。
  136. 立木洋

    立木洋君 一九六二年に国連事務総長に核兵器の使用を禁止するような問題についての報告書を作成してくれというときにだけ棄権しているんです。あとは全部反対しておるんです。全部反対じゃないんですよ。事実は明確に調べておく必要がある。特に一九七八年、国連の軍縮特別総会が開催されてから、使用禁止の問題というのは重要な問題になりました。それから以降はもう全部完全に反対していますよね。  ここで、私は総理にどうしてもお聞きしなければならないのは、今私が述べましたように、アメリカではSDIが何十年先にできるかどうかわからないというんです。核兵器はどんどんふやしているんです、増強しているんです。一九九〇年代には現在の倍以上持つと言っているんですよ、レーガンが。そして、核兵器を使うのか使わないのか。使いませんということは一言も言っていない。国連で全部使用禁止に対しては反対している。こういうのはだれの態度か、アメリカの態度です。そういうSDIに、レーガンの言うことを全く信用なさって賛成だと言って協力されている、それが中曽根さんです。そして同時に、アメリカの抑止力に依存するのだということですから、アメリカの核の傘の中に入る。核の傘に入るということは、アメリカの核か弱かったら困るから、強くなってほしいという核の存在に依存している姿勢、これは核兵器をなくそうということと両立しないんです。  アメリカのホワイトハウスの発表で「大統領のSDI」というのが発表されております。これは八五年の一月です。この中に何と書いてあるかといいますと、ソ連がもしかSDIを持つようなことになったらどうなるかということが書いてあるんです。そうしたら、これはソ連の大規模な攻撃戦力の増加と相まって、二十年間抑止が依存してきた基盤は破壊されるだろう、大変なことになる。ソ連がSDIを持ったって大変なことになるのだ、こう言っているんです。そしてさらに、レーガンの指示でつくった未来安全保障戦略研究チームというのがあります。このホフマンが報告しておりますが、それによると、もしソ連がSD Iを先に持つようなことになったらどうするか。それこそ一大事だと書いております。 そして、そういう状態になったら、特に近い将来に予防的措置を講じ、防衛網を突破する我々の攻撃戦力の能力を強化することが必要になってくると書いておりますよ。  この間、あなたは矛だとか盾だとか言いました。盾だから問題ないのだと言った。けれども、これはソ連がもしか盾を持ったらアメリカは直ちにそれなぶっ壊す矛をつくる、その必要があると書いているんですよ。つまり、このように見てくると重大な問題が浮かび上がってくるんです。問題は、何か攻撃用の兵器を守るということで盾をつくるというけれども、それを破る矛がつくられないという保障はないんです。そんな保障が一体どこにあるか。双方がこういうような状態になっていけば、地球どころか宇宙にまで大変な戦争が起こっていくんです。しかも膨大な金が使われる。今多くの人々が飢えで苦しむような状態にありながら膨大な金がこれに使われる。安全どころか一層危険な状態になるじゃないですか。何でSDIで核兵器の廃絶ですか。とんでもないと言わなければならない。どうです、総理
  137. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 立木さんのお話は、我々が願っている一番究極的状態というものをすぐ持ち出してきて、それができないのはけしからぬじゃないかと、そういう御説で終始一貫しておるんです。しかし、第二次世界大戦後の国際情勢及び世界の平和がなぜ維持されてきたかという現実的分析、その分析と事実の上に新しい平和は構築されなければ政治ではないのです。そういう意味において、第二次世界大戦後戦争が、大戦が起こらなかった理由はどこにあるかということを見ると、アメリカもソ連も一致している、その点は。それは何であるかといえば、それは均衡と抑止というそれでできているわけです。ですから、お互い数を減らそうとかいろいろ議論して、六千発だ、半分にするとかと言っているのは均衡が大事だから。同じぐらい持っておってにらみ合っておけば両方手を出さない、その均衡によって平和が保たれてきた。それによって戦争が抑止されている。その理論に立脚して今まで四十年の平和が保たれた。今後もそういう形で当分は平和を保っていかなきゃならぬ。だからこそ六千発は次に三千発にする、あるいは五百発にする、五百発もあればもう十分だ、あるいはそれだけだって地球がぶっ壊れるかもしれぬ。だがしかし、平和が維持されてきたという四十年の実績はここに現存するわけです。  ですから、今後また四十年、また百年平和を維持していくためにはこういう原理で維持していくことが大事だ、実績をごらんと、そういう考えに立ってアメリカもソ連もやっておるわけでしょう。ですからゴルバチョフさん、レーガンさんの間でも、さっき申し上げたように六千発にしようとか、もっと半分にしようとか、そしてやめにしようとか、そういう話し合いを進めておるわけですよ。その話し合いをしてやめに持っていくというためには何が大事かといえば、やはり査察であるとか、あるいはICBMなら、大陸間弾道弾があっても意味がなくなる、そういう兵器が新しくできてきたらやめになると。そのときは両方持ってもいいじゃないか、話し合いをしようじゃないか、そういう考えに立っておる。  アメリカが最初にできればソ連は非常に脅威を感じますね。ですから、そのときは相談しようと、そういうことも言っておる。ソ連側は、そんなものはくれるはずないよとゴルバチョフさんは言っていますね。しかし、世界の前に、核をなくすために両方ともそういう話し合いは厳然とやっていることを宣言しているわけでしょう。ですから、それを進めようと我々はさらにさらに努力して終局的に廃絶に持っていく、これがやはり我々の科学的な廃絶論で、あなたは、全人類が望んでいるにじのような、夢のような理想的な状態をまず国民の前に見せつけて、それが出てこないのはけしからぬじゃないか、アメリカはけしからぬじゃないか、何だかんだとおっしゃっておる。それは幻想的な話にすぎないんだと、もう少し現実に立脚して信頼できる保障措置を一つ一つつくり上げていくべきである。レーガンさんでも第一撃はやらないと言っておるんですからね。それは日本に来ても言っていましたね。それからフランスは何と言っていますか。フランスの大統領のミッテランさん、日本国会に来て演説をして、我が国の防衛というのは三つだ、それは力と均衡とそれから連帯だと。フォルスとかエキリーブルとかソリダリテとはっきり言っていましたね。フランスでもやっぱりそういう議論に立脚して、社会党のミッテランですらそれを言っているんですよ、力と均衡ということを。  世界の現実というものはそういう冷厳な事実の上に立脚しているということを国民の皆さんもよく知っていただきたい。あなたの理想論、あなたの夢は我々の思っている夢なんです。その夢をどうして実現するかということでお互いが苦労しておる。あなたはその苦労を嫌がっているんだと、私はそう言わざるを得ない。
  138. 立木洋

    立木洋君 私は、国際的に、何カ国も行って、数十カ国の方々と平和の問題、どう実現するか話し合ってきているんですよ。あなたの今言っていることこそすべて空論で、今まで成り立たなかったことにあなたが一生懸命しがみついているということを私はまざまざと聞きましたよ。  あなたは、バランスで平和が保たれる。とんでもないですよ。いいですか、今度の戦略核兵器をなくそうという交渉の過程、米ソどうだったです。アメリカはソ連のICBM、これが最も強力だと思っているから、それをなくしたい、減らしたいと考えているんですよ。ソ連はどうか。アメリカのSLBMや爆撃機、これを何とか中心になくしたい、こう考えている。だから、この問題で戦略核兵器何%削減しましょうと言ったって、一回も今まで合意になったことがないじゃないですか。なぜ合意にならないのか。均衡というのは成り立たないということなんですよ。核兵器というのは、その用途も、能力も、破壊力も、それから性能も全部違うんです。今までの国会で政府が答弁されている答弁をごらんになってください。 バランスを図ることができるのかと。すべて外務省の答弁、そういうものはできませんと答えていますよ。そんなことにしがみついて無理難題のことをやろうとしたってだめなんだ。兵器というのは全部秘密なんですから、相手に対して隠している。バランスを図るようなことはできない。  いいですか、これまでの歴史の経過を振り返ってみますと、アメリカの歴代の大統領がすべて核兵器を使うということを言っているんです。生々しい、これは全部アメリカが出している、これまでのアメリカの国防省の秘密外交文書の中で全部出されているじゃないですか。最もひどいことを私は挙げますよ。  一九五三年二月の十一日から五四年の一月の八日まで、アイゼンハワー大統領の当時、国家安全保障会議が開かれた。この間に何と、七月の二十七日には停戦協定、朝鮮の停戦協定が成立したんです。この一年足らずの間をめぐってアイゼンハワーが、停戦協定ができる以前に五回、核兵器を使えということを問題にして議論している。停戦協定が結ばれた後四回も、核兵器を使うことが必要であるということが、あなた国家安全保障会議で出されているんですよ。この議事録は明確なんです。公表されているんです。これは朝鮮戦争のときだけじゃないんです。金門・馬祖のときだってそうです。ベトナムのときだってそうです。この間発表された、一九八五年ですか、六年でしたか、国務省が報告しましたベトナム編、この外交文書の中にも、ベトナムでどのようにして使おうとしているか事実が明確に示されている。こんなことをやってきているんですよ、問題は。  あなたは、SDIができたらソ連と話し合うと言いましたけれども、いいですか、SDIというのを、これほど、アメリカほど秘密にしているところはないじゃないですか。西ドイツと結んだあの秘密保護協定、ごらんになってわかるでしょう。あの協定が破棄されても秘密は守らぬといか ぬとあの文書に書いてある。先端技術だって、ソ連に流れることができないようにできないようにと考えているじゃないですか。それを、せっかく大量の金を使ったアメリカがつくったら、はい結構です、ソ連どうぞ協議しましょう、この技術を差し上げますなんということになりますか。そういうことはだれが考えたって今の現実に合わないですよ。協議しようと言っているから問題がないんだと、そういうことではないんです。問題はそういうところではなくて、ましてやバランスによって均衡が保たれるのではなくて、また、あなたは第一撃はしないと言っている。国連で第一撃をしないということを宣言しようじゃないかというのが、この四年間毎回国連にかけられてきたじゃないですか。核兵器の不使用と核戦争の防止、国連にかけられた決議、ただの一回もアメリカは賛成したことがありますか。先に使わないなんて演説で言いながら、国連ではまるっきり反対の態度をとっているじゃないですか。事実というのは冷厳なんですよ。私たちがやろうとしているのは何か。問題は、こういう事態をやろうとしているのは国民の世論、本当に政治を変えていく国民の世論が高まって、核兵器にしがみつく政治を変えなければならないということなんですよ。  アメリカの前回の中間選挙のときに、御承知のようにアメリカはあの中間選挙でどうたったか。レーガンは物すごい話を、演説をしましたよ。強いアメリカでなければならないし、強化をしなければならないと、核兵器を。ところが問題は、そのときに同時に行われた住民投票、三〇%の人々が参加をした。そしてその投票の結果は、六対四で何と核兵器の実験と生産、これを停止せよというのが勝ったんです。その結果をレーガンは頭に入れなければならなかった。自分の次の大統領選挙でこういう国際世論の高まり、国内世論の高まりを考慮に入れなければならなかったということでSDIということを利用し始めたんですよ。  問題は、本当に政始家が国民に責任を持って努力をするかどうかというところに重要な基本問題がある。だから、私が先ほど来述べているように、今日大きく変わってきた世界の情勢があるんです。日本国民が核兵器をすべて廃絶せよということを強く要求しているんです。そういう状況だからこそ、政府はその立場に立って核兵器の廃絶のために全力を尽くす。それは何か。もう既に米ソ大国まで核兵器の廃絶のことについて話し合う状況になってきているんですから、この核兵器をなくそうという、そしてこれからもいかなる国でもいかなる核兵器も一切禁止する、この拘束力のある国際協定をしっかりとつくり上げる。そしてその手順に基づいて、その取り決めた内容に基づいて核兵器をなくしていく。  私の言っているのは、今ここで瞬間的にぱっと核兵器をなくせなんて言っているんじゃないんですよ。速やかに核兵器をなくすという政治家のかっちりとした意思を固めるということが重要だと思う。それによってどういうふうになくしていくかと、そういう段取りをとって解決をすべきだということを私は銘記しているんです。核兵器の完全廃絶、この国際協定をつくるという問題について総理はいかがですか。
  139. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ソ連もアメリカも、先ほど来申し上げているようにこの四十年の実績を今日に至るまで見るというと、やはり両方の均衡とそれによる抑止で戦争を起こさせなかったと。今後も戦争を起こさせない、それが彼らの基礎理論にあるわけです。ですから、さっき申し上げたように六千発にしようとか三千発にしようとか、やがてはゼロにしようとか、そういう話し合いをしている。これは明らかに、均衡とそれで戦争を起こさせない抑止ということを考えているわけでしょう。  私はアメリカがどういうことを考えているか知らぬけれども、そういう脅威というものがあってお互いが使うのをやめている。したがって、レーガン大統領その他は我々に対しては、第一発は我々の方から先にやりません、そう言っておる。しかし、恐らく想像では、条約によってそれまですべてやめてしまうという形になると、この均衡による抑止力、いつでも相手がかかってきたらやるぞ、そういうようなものがなくなればまた平和が乱れる、そういうような心配が一面にあってお互いがお互いの間に対する信頼感がまだできてない。それをやるについてはまず査察が必要である。現場に両方が行って立ち会って安心できる体制をまずつくってくれ、それからだと、そういうような気持ちがあるのではないかと私は想像しております。  しかしアメリカもソ連も、第一発、最初の一発を両方でやる、自分が先に引き金を引こうなんという考えは持っていませんよ。そんな業の兵器を政治家としてだれがやれるものですか。今までの四十年の実績を見れば、そういう形で平和を維持していかなけりゃならぬ、だから業の兵器だ。しかし、そういう業の中にいつまで入っていていいというものじゃない。だから早く業をやめるための方法を現実的に両方で話し合いなさい、やりなさい、そういう形で今話が進められていいところまで来ているんですから、ここでこの道をさらに歩ませて頂上に至るように立木さんも御協力を願いたい。頂上ばかり言っているというと溝に落ちますよ。
  140. 立木洋

    立木洋君 中曽根さんの話というのは何ぼ聞いてもこれ空論で、成り立たないですね。抑止力というのは核の存在そのものを肯定する論理なんですよ。だから核兵器の廃絶の方向には進まないんです。まああなたがそこまで言われるんだから、最後にこの問題について私の見解を述べておきましょう。  今回レイキャビクの会談が行われました。ある人の話を聞きますと、一連の分野でいわゆる大筋まとまるところまでいったのにそれが葬り去られてしまったのは非常に残念だと言う方がいます。しかし私は、お互いの均衡、こういうふうなことを条件とするような交渉であるならば、一方がある部分で頑張れば交渉自体が無になってしまうということを今回も示したということですよ。総理考えはあくまでレーガンさんを信用なさって相当信用の度が強いようでありますけれども、どこまでいっているかわかりませんが、そういうような状態になって日本国民の核兵器廃絶の願いに背を向けていると。世界の流れを私はしっかりと見きわめていただきたい、そして世界の流れに沿うように唯一の被爆国の首相であるならば当然行うべきだということを私は最後に述べて、次の質問にいきます。  次は、円高不況と中小企業対策の問題です。  去年のG5以来異常な円高の根本が、アメリカへの追随と大企業の輸出ラッシュにあったということは言うまでもありません。これが、今日中小企業の経営や労働者の雇用に深刻な状態をもたらしております。  そこで総理にお尋ねいたしますが、総理はことしの三月の二十二日、当院の予算委員会でこの円のレートの問題についてどのような御答弁をなさったか、あなた御自身の発言ですからおわかりでしょう。お答えいただきたい。
  141. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 大分前のことですから、もし資料をお持ちでしたらどうぞお読みください。
  142. 立木洋

    立木洋君 人間というのは忘れるということもあるでしょうから、それなら私の方からお伝えしましょう。  これは議事録にちゃんと書いてあるんですが、首相は「百七十四円とか五円ぐらいにもこの間なりましたが、あれは行き過ぎである、両国経済力、実体経済という面から見ると行き過ぎであると、そういうふうに我々は考えておりました。」、はっきり述べているわけですね。百七十五円、これは行き過ぎだ、こう言っているんですよ。総理、今でもこの考え方はお変わりないでしょうか。
  143. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) あのころはそういう気持ちがしていたことは事実です。
  144. 立木洋

    立木洋君 今はどうなんです。
  145. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) いろいろ経済情勢が変わりまして、東京サミットもあるし、それから 最近には宮澤・ベーカー・レターというものもありますし、そういう情勢でその後は経済の基礎条件に合うような為替の反映が望ましいと。それでこの間は百六十円、百六十二、三円ぐらいでありますが、もうこれで十分基礎条件は反映されて、これ以上の円高はそう必要もない、そういうような判断を我々は持っておる、そういうことであります。
  146. 立木洋

    立木洋君 わずか半年ぐらいの間にそんなに経済的な基礎条件がころころ変わるものでしょうかね。あなたがこっちで述べているときにこう述べているんですね。今度の円高、急激な変動が起こった、この根本原因は、と書いてあるんですよ。あなた自身の発言ですが、アメリカが債務国に転落した、これを一つ挙げているんです。もう一つはアメリカの赤字財政が続いている、この二つが大きな原因だ、これが急激な円高の原因だと。この二つの原因とあなたが指摘なさった原因は変わりましたか。
  147. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) そのころ国会の答弁でも、日本の膨大な黒字というものがある、そういうこともたしか言っているはずです。
  148. 立木洋

    立木洋君 変わったかと私は聞いているんですよ、あなたが述べたことが。
  149. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 日本の膨大な黒字はなかなか減らない。もうちょっと早く減る現象が出てくると思っていましたけれどもようやくそれが出始めたという程度で、それは今の三つの条件というようなものは、やはり一つの大きな要件として存在していると思います。
  150. 立木洋

    立木洋君 あなたは九月の十八日、当院の本会議で我が党の吉岡議員の質問に答えて、日米間の円・ドル関係というのは合理的な安定、合理的な水準に長期に安定していく、これが望ましいと考えている、こう述べていますが、この合理的な水準というのはどういう内容でしょうか。
  151. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) つまり、経済の基礎条件を反映して安定的に維持される水準を意味します。
  152. 立木洋

    立木洋君 それじゃ事務当局の方にお尋ねしますが、産業構造審議会「二十一世紀産業社会の基本構想」では購買力平価で見ると一ドル何円だというふうに述べているでしょうか。
  153. 畠山襄

    政府委員(畠山襄君) 購買力平価でレートを決めるというのは、委員御案内のとおり幾つかの仮定を置いて計算をするものでございますから、今御指摘の産構審の数字も非常に幾つもの仮定、前提を置いての上での話でございますので、これが通産省の公定版のレートであるとか、まして政府のレートであるとか、そういう意味では全くございませんが、産構審の中に出ております数字は一九八四年度についてドル当たり二百十四円という数字が出ておると承知いたしております。
  154. 立木洋

    立木洋君 二百十四円、こういう数字が出ていると言うんですね。確かに、購買力平価というのは、消費者物価かあるいは総合卸売か、工業製品卸売か輸出価格とかいろいろあるでしょう。  それで、ここで言われている、総理が合理的な水準というふうに言う場合、本当に国民生活が成り立つ、国民生活に打撃を与えないそういう水準が望ましいんだというふうに考えるわけですが、あなたはどうお考えでしょうか。
  155. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 経済の諸元との調和のとれた水準が望ましいということです。
  156. 立木洋

    立木洋君 これは消費者物価でいきますと、計算されている三井銀行のあれでは二百四十円ぐらいだと言っていますよね。あるいはウシオ電機の社長さんですか、ことしのエコノミストで書いている。生活水準で見るならばせいぜい二百五十円どころですと。新日鉄専務の古賀さんが「私もそう思います。」、こういう言い方をしている。生活水準で見るとこうだ。しかし、我々はこれを直ちに実現せいと言っているわけじゃないんですよ。問題は、国民生活に基礎を置くべきだ。輸出物価に置いたならば百二十八円とか百三十円だとか大変なレートになりますから、そういうことを言っているんじゃない。国民全体の生活が本当に打撃を受けないで安定するような形でこのレートというのはやっぱり決められていかなければならぬ。そういう考え方を持つべきではないか。国民生活ということを基本に置いてレートの問題も考えるべきだということを政治家としては常に念頭に置くべきではないでしょうか。どうです。
  157. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 現在はしかし、いわゆる管理された自由変動相場制というので、結局これが一番能率的な安定的な制度になる、そういうふうに考えておりまして、人為的にあるいはターゲットゾーンをつくるとか、あるいは昔のIMF体制、三百八円とか三百六十円とかそういう固定相場に戻るということは考えておりません。
  158. 立木洋

    立木洋君 それは総理の言葉とも思われませんね。昨年の九月のG5、あれは人為的じゃないんですか。ことしの一月のG5、これも人為的じゃないんですか。宮澤・ベーカー会談、これも人為的じゃないんですか。私は、その問題についてはそういうふうな言い方をしてはいけない。政治家がどういう考え方をこの問題に持つべきかということを私は言っているんですよ。政治家の姿勢を聞いているんですよ。
  159. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) あなたの考えの背後には共産主義的統制経済があるんですよ。つまり、為替管理の思想があるんですよ。我々は自由貿易考えておるので、そういう人為的に数字を幾らに固定するというような考えは持っていないんですよ。しかし、国民生活を考えることは大事なんだ。また、経済の諸元と調和した形でいかなければ長期的安定的に維持されない、そういうことも大事です。昔の、今から五年や十年や十五年さきと今とは、もう国際社会における投機資金というのは莫大な金額に上っておる。やれシカゴが動くだとかいろいろ言われていますね、ユーロタラーがどういうふうに動くとか。そういうような大きな変化が最近は起きてきておる。そういう情勢を見たりしますと、固定相場あるいはターゲットゾーンの維持というものは非常に苦しくなる。かえってそれがまた逆にひずみを国内経済につくっていく、そういう現象も非常に危惧される。  したがって、この間の東京サミットあるいはその前のボン・サミットあるいはロンドン・サミット、あるいはIMFの臨時総会、IMFの暫定委員会、宮澤・ベーカー会談、そこで決まったことは何であるかというと、政策協調と構造改革ということなんです。各国は政策協調をしよう、大体この辺でこういうふうに持っていこうじゃないか、そういう一般的な政策協調。つまり、日本の場合には黒字を減らす努力を一生懸命していく、アメリカならば財政赤字を減らすように一生懸命努力していく、そういうような政策協調と構造改革。日本の黒字削減のために何が大事か、輸入市場を拡大しようとか基準・認証制を改革しようとか、そういうようないろんな面で経済実態をそこに合うようにしていこう。人為的に数字を挙げてそこへねじ込むという考えは、これは経済の調和を妨害して、結局は世界経済を混乱に陥れるもとだ。共産党みたいな統制経済考えていない。
  160. 立木洋

    立木洋君 私は一言も統制経済なんて言っていないですよ。そういう言葉と私を結びつけておっしゃるというのは、極めてあなたも独断的ですね。私が言いたいのは、アメリカに同調してこれまでやってきているということなんですよ、円高の状況というのが。アメリカの赤字の問題にしたって日本の黒字の問題にしたってそうですよ。私は、だから事実でこの問題については明らかにしていきたい。  日本における製造業で占めている中小企業、事業所数でも九九・五%、出荷額でも半分以上を占めておりますし、労働者の数でも七五%。我が国経済の基礎を占めているというのが中小企業です。この中小企業の問題について、中小企業がやっていけるレートの水準というのはどのように中小企業庁は調査していますか。
  161. 岩崎八男

    政府委員(岩崎八男君) この採算レート、これは企業によっても、また業種によっても違うと思います。それで私ども、今回の円高、昨年発生しましてから、輸出比率二〇%以上の五十五産地について継続的な調査をしてまいっております。そ の中で、現在あなたの採算レートはどの程度と思われますかという質問もしております。その回答によりますと、九月段階の調査において、採算レートは百九十円ぐらいであるという答えが多うございます。それでこれは、昨年十一月下旬時点で同じ質問に対しては、採算レート二百二十円から二百三十円ぐらい、こういうのが多うございました。それからことしの五、六月ごろは採算レートは二百円ぐらい、こういう回答が多うございました。  したがって、今回のこの急激な円高の中で各産地の中小企業者、非常に血のにじむ努力と覚悟を持ってこの間相当な具体的な努力をしてきておられる。しかしそれにもかかわらず現在なお、時間の関数だけではなくて、そういう業種、企業によって努力にも限界がございますから、そういう限界の中で各産地御苦労になっておられる、このように理解しております。
  162. 立木洋

    立木洋君 中小企業の状態というのは、私たちもいろいろお聞きしましたけれども、非常に深刻な大変な状態に今ありますね。この問題については、やはり少なくとも今中小企業が成り立つようなレートの水準にすべきだ、そういうことを私たちは本当に考えるんですよ。問題は、この輸出型産地の中小企業の状態が全国的にどういうふうになっているのか、どういう把握をされているのか、いかがでしょうか。
  163. 岩崎八男

    政府委員(岩崎八男君) まず一番大きな影響は、輸出向けの新規成約価格、これが当然推測されることながら非常に低下しております。したがって、余り採算がよくないものを多くとるというわけにもまいりませんので、契約残、これができるだけ少なく、少ロットで日常の業務のレベルを落とさない限度において受注をする、そういう形で行われております。  ただ、そういう結果でございますので、中小企業の輸出、円ベースでいいますと、このところ毎月前年同期比二割減ぐらいになっておりますし、生産もことしの三月以降、前年比マイナスというような形になっております。
  164. 立木洋

    立木洋君 経常利益や廃業、倒産、雇用の問題なんかの影響はどうでしょう。
  165. 岩崎八男

    政府委員(岩崎八男君) やはり経常利益、これは極めて悪く、現在大部分の企業が赤字であるというような回答を出してきている産地が多うございます。かつ、そういうところで先ほどのような生産状況でございますので、パートあるいは時間外労働、そういうものの削減といったこと、あるいはまた廃業、それから倒産の事例等も報告をされております。
  166. 立木洋

    立木洋君 経常利益で言いますと、通産大臣、御承知でしょうけれども、半分以上の企業は赤字になるという産地が八割以上あるんですね。廃業あるいは倒産、これが見込まれる産地が四割から五割に上っている。それから人員整理が見込まれているのは六割近くもある。私は本当に壊滅的な打撃だと思うんですよ。通産大臣、これをどのようにお受けとめになって、どういう対策でこれを改めていかれるのかお聞かせいただきたい。
  167. 田村元

    国務大臣(田村元君) 極めて重大なことと受けとめております。対策はいろいろ立てております。具体的なことは、もう時間がありませんから、また一つ一つお聞きがあれば長官からお答えをさせます。
  168. 岩崎八男

    政府委員(岩崎八男君) この円高問題が起きまして以来、私ども業種別あるいは下請企業対策等各般にわたっての最大限の努力をしてきたつもりであります。特に、この二月にいわゆる新転換法というものを成立させていただきまして、それに基づいて円高による特に著しい影響を受けている業種等についてのいわゆる国際経済特待しと言われるもの、あるいは特別の信用保証制度、あるいは組合等の新販路開拓等に対する支援、そういうことを実現してまいりました。ただ、その後さらに円高が進展してまいりましたので、今回政府の九月十九日の総合経済対策において特に中小企業対策、これを一つの大きな柱として総合的に一兆円に上る対策を決定し、それに従って現在補正予算において二百三十四億、それから特に今回そういう非常に集中した影響を受けている地域というものに対する総合的な対策が必要であるという判断から、今国会に特定地域中小企業対策臨時措置法というものを御提案申し上げ、現在早期成立に向けて御審議をいただいているところでございます。
  169. 立木洋

    立木洋君 いろいろなことをやられているようでありますけれども、例えば事業転換法にしたって、あるいは特定地域中小企業の対策法にしたって、私はこういうふうなやり方だけでは本当に今の事態は解決できない、こういうことは政府御自身がよく私は知っていることだと思うんですよ。いかがです、通産大臣。――ちょっと、聞いておいていただきたいんですが。
  170. 田村元

    国務大臣(田村元君) ええ、じゃ、もう一回。
  171. 立木洋

    立木洋君 事業転換法あるいは特定地域中小企業対策法、こういうふうなもので十分だとお考えですかというのです。
  172. 田村元

    国務大臣(田村元君) それは物事は上を見りゃ切りがない、下を見りゃ切りがない。我々としてはもちろんやりたいことはもっともっとたくさんございます。ございますけれども、政府の財政事情も苦しゅうございます。でございますから、今我々ができ得る範囲内での最大限の努力をいたしておる、こういうことでございます。
  173. 立木洋

    立木洋君 最大限の努力だとおっしゃいますが、企業庁、八月二十一日に中小企業で調査した結果がありますね。事業転換法の見通し、これはどういうふうになっていますか。転換の見通しです。
  174. 岩崎八男

    政府委員(岩崎八男君) これは転換というものは当然のことながら非常に難しいということで、特に資金面、技術面あるいは販路開拓面、こういうところに困難を感じている、こういう状況にございます。
  175. 立木洋

    立木洋君 同じ調査の中で、廃業についてはどういうふうに述べていますか。そこのところを読み上げてください。
  176. 岩崎八男

    政府委員(岩崎八男君) 「輸出型産地では、大半の中小企業が今のままでは現在の市場で生き残っていけないとみているが、廃業については借入負債、退職金の支払が大きくまた資産も少ないこと等から、やめるにやめられない中小企業が多い」としております。
  177. 立木洋

    立木洋君 やめるにやめられないというのはどういうふうな状態のことを言うのでしょうか。具体的に。
  178. 岩崎八男

    政府委員(岩崎八男君) この報告にもございますように、非常に借入金が多い、特に労働債務等、どうやって退職金等を支払うか、こういうことについて懸念をしております。また資産、土地、建物等を売ろうにもなかなか、そういう離れたところでありますので効果的な売却というのが難しい、こういう面も指摘されております。
  179. 立木洋

    立木洋君 通産大臣、事業転換法の実施状況を調べてみたんですよ、私たちも。例えば埼玉でも見てみますと、これに基づく相談というものは六百二十件あったというのです。ところが、九月三十日現在で転換できるというふうになって認定された人はただの一人もいない。ゼロなんです。東京では八月末調査をしてみましたけれども、これによって認定されたのはたった一件なんですよ、この広い東京で。  ちょうど四月ごろでしたか、選挙の前でしたか、これは新聞にも出ておりましたけれども、当時竹下大蔵大臣が業者の方々から、竹下さん、あすからあなた歌手になれと言われたら歌手になれますかと言われたと新聞に出ておりました。事業転換というのは大変なことなんですよ。現実に今まで全国を全部調べてみたって四十件ぐらいしかないと言っているんでしょう。本当にそうした大変な状態なんです。こういうことはできないということなんですよ。  さらに埼玉でもいろいろ調査をしました。おもちゃ製造業者の人が自己破産したい、もう廃業をしたいといって法律事務所に行ったというのですよ。法律事務所の弁護士さんといろいろ相談した ら、自己破産に必要なお金が七十万円かかる、破産するにも金が要る。その七十万円が工面できないから私は破産もできない、一体どうしたらいいんですか、こういう状態なんですね。まさに私は深刻と言わなければならないと思うんです。ですから、業者の方々から政府に対して厳しい批判が出るのは私は当然だと思うんですよ。  いろいろお聞きしました。融資制度の問題についてもそうだ。天気のときに傘を使えと言っておいて、雨になったら貸してくれないようなものだ。あるいはまた、政府の円高対策というのは二階から目薬だ、こんなことまで深刻な状態を業者の方々が訴えております。私は、本当に本格的にこうした状態を解決していく、努力していくと言われるならば、総理、いろいろお読みになっているようでございますが、ちょっと聞いていただきたいんですが、こういう大変な状態ですから、中小企業の今日が成り立っていけるような状態、少なくとも百九十円から二百円とまで言われているんです。そういう問題も含めて本格的に努力をされて、金利三%の問題、休業補償制度、これを実行されるように心からお願いしたいと思うんですが、いかがでしょうか。
  180. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 今回我々は経済政策をやりましたが、三点セットでやったわけです。  一つは、三兆六千億円の補正予算を組んで公共事業費等を中心にして内需の拡大をやる。もう一つは公定歩合を引き下げた。三番目は、宮澤・ベーカー会談によって為替の問題について、もはや既に経済条件を満たしている、そういうことでこれ以上の円高は我々は望まない、そういうことをはっきり我々としては意思表示をしておる。ということは、やはり日本の業種業種によってどの程度でやれるかという問題を我々は知っておる。知っておるけれども、こっちが人為的に数字を工作したり何かするということは自由経済の建前上やれない。したがって、あらゆる環境の整備等々によってこれを実現したいと思っておる。金利を引き下げたというのも、一面においてはこの経済条件をよくするというもののほかに、やはり為替に対する影響考えておったわけであります。そういう意味において、大体どの業種がどの程度の相場で引き合うかという見当も通産省は知っておるし、我々も聞いておる。そういう面において我々はこの管理された変動相場制の範囲内において努力していく、そういうふうに考えております。
  181. 立木洋

    立木洋君 休業補償と金利三%。
  182. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 今回法律案の御提案もいたしまして中小企業に対する緊急対策を幾つかお願いしておりますが、この法律を至急成立させるということと、それから今まで我々が言ってきたことは誠実に実行してまいりたいと考えております。
  183. 立木洋

    立木洋君 金利三%というのは、今三・九五にするだとかなんとか言われていますけれども、問題は、今度の補正予算を見ますと、民活プロジェクトの促進策として補正予算に補助金として三十三億円計上されておりますね。これは三菱地所だとかあるいは新日鉄など超一流の企業にやってある補助金ですね。大企業には出せるんです。ところが、この三十三億円、これを回せば三%に金利ができるんですよ。そういうことも実行されないんですか。私は、そういうことをきめ細かに実行して、大企業にも一時そういう問題を引き揚げてもらう、もうけているんですから。そういうことをお考えになりませんか。
  184. 岩崎八男

    政府委員(岩崎八男君) 三・九五%、これは私どもとしては、金融常識としては極めて超低利の貸付制度を今回創設することになるというふうに考えております。かつまた、そういうことその他のために二百三十四億という補正予算を今回計上しているところでございます。
  185. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 金融その他の面についても今申し上げたように努力をしておりますし、地方公共団体と組んで、あるいは中央官庁と組んで第三セクター方式等によりましても民活等によって大いに景気を伸長させたい。あるいはさらに、裏、北日本あるいは日本海沿岸、あるいは北海道や九州、四国というような景気の不調な場所については公共事業費の傾斜配分ということも考え、また、もし失業が出る場合についてはこれらに対する万全の措置を今講じさしておるところであります。
  186. 田村元

    国務大臣(田村元君) 今の民活プロジェクトのこと、国民の皆さんに誤解を与えてはいけませんからあえて申し上げますと、これは公共事業に極めて近い地域対策でございますから、その地域が非常に大きな恩恵を受ける問題でございますから、一私企業の問題ではございません。
  187. 立木洋

    立木洋君 これは、これまでだって大企業に対する補助金というのはたくさん出したというんですよ。私は次にも例を挙げますけれども、次の問題では海外進出と雇用の問題でお尋ねをしますが、今日の海外投資あるいは部品輸入の増大で、合理的な人員削減だとか、中小企業の状態というのは大変なより深刻な状態が加速されているということが言えると思うんです。それで、海外投資が国民経済そして雇用、こういうものに与えている影響をどのように把握されているのか、通産大臣と労働大臣にお願いします。
  188. 吉田文毅

    政府委員(吉田文毅君) お答え申し上げます。  昭和六十一年版の通商白書におきまして、まず我が国の海外直接投資の現状について、投資額が年々増加を続けております。昭和五十九年度におきましては百二億ドルに達した旨をこの白書で指摘をしております。  さらに、海外の現地生産の今後の動向でございますが、円レートが百八十円から百九十円前後で推移をしておりました本年二月時点で通産省が実施をいたしましたアンケート調査によりますと、十年後には各企業とも海外生産比率を現状から五%ないし一〇%程度高める意向である。また、全体の三二・三%の企業が十年後には一五%を超える海外生産比率を目指すというようにしておりまして、今後とも引き続き海外投資が拡大していくという見通しを行っております。  また、その雇用への影響につきましては、同じアンケート調査によりますと、海外直接投資に伴う余剰人員数としましては、百人以下とする企業が大部分でありまして、その余剰人員の対応策としましても、関連企業への出向や解雇の方針を有する企業はほとんどないというようにこのアンケート調査ではなっております。  また最後に、今後の国内産業への影響を踏まえまして、企業の次期製品の開発やあるいは事業の多角化を円滑に進めるため、我が国の国内需要の確保あるいは新分野を開拓するための技術開発の推進等の重要性が指摘されているところでございます。  以上、通商白書の内容から御説明申し上げました。
  189. 平井卓志

    国務大臣(平井卓志君) 要点だけ申し上げます。  従来の海外進出でございますが、日本の雇用問題に大きい不安を及ぼしたという契機はございません。相当の中身が、日本の輸入制限を回避するというような形で従来の海外進出が行われてまいった。今後の経済政策、産業政策、為替問題を中心にいたしましてどのような展開になっていきまするか。そういう中で、大企業のみならず中堅企業に至るまでかなりの数が今後の海外進出ということを企画しておるということも聞いております。  ただ現実問題として、そのこと自体が大きい雇用不安ということではございませんが、今後の問題としては非常に重要な課題だというふうに理解をいたしておりますので、ただいま雇用問題政策会議において有効適切にどう対処すべきかという対策を御協議願っております。
  190. 立木洋

    立木洋君 具体的にお尋ねしますが、我が国の自動車メーカーがアメリカでの生産を行う場合、行おうとしている一九九〇年代にはどういうふうに推定されるのか。さらに同時に、それによって雇用の状態がどういう影響があるのか。
  191. 児玉幸治

    政府委員(児玉幸治君) 対米自動車メーカーの現地進出の問題でございますが、既に進出をして 動いているものが三社あるわけでございます。そのほかには、今お尋ねのように九〇年代までということになりますと、さらに四件の計画が現在いろいろ準備中でございまして、もちろん割合進んでいるものとこれからというものもございますけれども、それらがもし全部稼働をしたといたしますと、九〇年代の初めごろには日本からの進出によりますメーカーの現地での生産は、能力的には百六十五万台程度になるものと思われます。  雇用の点についてのお尋ねでございますけれども、これはアメリカの大きな市場に着目をして出ていくわけでございまして、出ていったということが直ちに日本の国内の雇用にはね返るという問題でもないわけでございまして、これから先まだ九〇年代までということになりますと、日本におきましてもあるいはアメリカにおきましてもさまざまな経済情勢が予想されるわけでございまして、現時点においてこのプロジェクトが日本の雇用にどういうふうな影響を及ぼす可能性があるかという点については、具体的にはっきりしたことを申し上げるのは困難でございます。
  192. 立木洋

    立木洋君 大分少なく計算されて推定されておるようですけれども、八五年度の自動車の対米輸出実績というのは二百三十万台、私たちが一九九〇年代、いろいろ調べてみますと、二百万台から二百十万台大体アメリカで生産されることになるだろう。そうすると、これまで輸出した一年間の実績と同じぐらいのものがアメリカで生産されるということですね。日経ビジネスで先日出されましたのを見てみましても、そのことによって今後五年間で自動車産業十五万六千三百一人、これだけが人員削減されるというふうに言われていますが、こういう問題まで含めて労働大臣の方では十分に計画を持って抜本的な対策を立てる予定でしょうか。
  193. 白井晋太郎

    政府委員白井晋太郎君) お答えいたします。  自動車産業の海外投資の将来については今通産省が申し上げたとおりでございますが、直接どういうふうに雇用に響くかということにつきましては、地域や業種、それから輸出と置きかえられると見られる結果等によりまして複雑な面があって、直接の計算は難しいわけでございますけれども、現在までのところ、昭和五十三年に五十八万三千人の自動車関係の従業者がいたわけでございますが、昭和六十年では六十八万六千とむしろ部品の生産その他でふえてきているわけでございます。今後これらがどういうふうになっていくかということにつきましては、先ほど大臣が申し述べましたように実態をよく把握しながら専門家の意見等も参酌して対応を十分検討してまいりたいというふうに思っております。
  194. 立木洋

    立木洋君 総理経済同友会がことしの六月調査して企業アンケートを発表していますが、そこで代表的な製造業三百五十九社の方々にとったところ、海外にこれから進出する必要があると国際分散化の問題を肯定的に回答しているのは九四%というのですね。第一勧銀の調査によりますと、一兆円の海外生産は国内では十八万二千人の雇用機会を奪うことになるだろう、大変な私は状態になるだろうと思うんです。こういう岡内で大量な人減らしを行うような大企業の海外進出の規制だとか、雇用の問題についての抜本的な対策を立てるということをぜひお願いしたいんですが、いかがですか。
  195. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) この点は、国際経済に調和した日本の産業構造改革、いわゆる経構研報告の我々が政府として練り上げた自主的政策におきましても、雇用問題というものは非常に重要視して指摘されておるところでございます。  私はしかし、指摘されるように、日本の企業が海外へ出たからといってそう空洞化がそのとおりできるものとは思いません。外国へいらっしゃる方もおられるでしょうし、国内においてそれの補給やらあるいは下請との関係をいろいろ整える準備も必要ですし、それ以上に我々は新しい情報産業や新しい科学技術に基づく新しい産業分野あるいはサービス分野というものをさらに拡大していく運命にありますし、金融の面におきましても日本の債券市場の拡大、円の自由化、そういう面においてさらに膨大な人間が必要になってくるという可能性もございます。 現にオフショア市場もこの秋からつくるという、どんどん新しい仕事をつくりつつありますから、そういう形によりまして労働問題を起こさないように全力を尽くしてまいります。
  196. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 立木君、時間が参りました。
  197. 立木洋

    立木洋君 最後に一言だけお願いします。  今述べましたけれども、結局、我が国有力社長六十三人のアンケートによりましても、七六%が空洞化するという危険があるということが指摘されているんですね。そしてまた、仕事を今すぐかえるといってもなかなか仕事はかわりにくい。この日経ビジネスによりますと、ここに「国滅んで企業が栄える」、私けだし名言だと思うんです。政治家というのは本当に企業だけのための政治をやるのではない、中小企業の問題、国民生活の問題、そういうことを徹底して考えてやらなければならないというのが私は政治だと思うんです。 そのことを強く主張して、私の質問を終わります。
  198. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 以上で立木洋君の質疑は終了いたしました。(拍手)  午後一時まで休憩いたします。    午前十一時五十五分休憩      ─────・─────    午後一時一分開会
  199. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 予算委員会を再開いたします。  昭和六十一年度補正予算三案を一括議題とし、これより井上計君の質疑を行います。井上君。
  200. 井上計

    ○井上計君 総理は八日、九日の両日、中国を訪問されました。大変御苦労でございました。  総理中国訪問についての目的あるいは成果等々お伺いするつもりでおりましたが、午前の同僚議員の質問に対してお答えがありました。成功をおさめた、このようなお答えがございました。これについて私も評価をして、したがってそれらのことについては改めてお伺いすることを省略いたします。  そこで、お伺いしたいのでありますが、中国の首脳との会談の中で、靖国問題あるいは教科書問題、あるいは藤尾発言問題あるいは蒋介石総統の遺徳を顕彰する会等々の問題について中国の首脳から発言があったかどうか、この点だけをお伺いいたしたいと思います。
  201. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 今お挙げになった諸問題は一切会談の言の端にも上りませんでした。
  202. 井上計

    ○井上計君 それでは私の意見を交えてお伺いをいたしたい、かように考えます。  去る十月二十四日でありますけれども、新聞にこのような報道がなされておりました。中国胡耀邦書記が、訪問した作家の山崎豊子さんに対して「日本には誤国主義者がいる。」、この誤国主義というのは国を守る主義者じゃなくて、誤った主義者、誤国主義者が多数いるというふうなことを言われたようであります。私もこの誤った誤国主義というのは初めて耳にする言葉でありますけれども、それは、四十数年前に戦争をしかけた連中は売国主義じゃなくて誤国主義者である。ところが、最近は愛国主義のつもりでも、物事を短絡的に考える誤国主義者が日本におる。例えば蒋介石総統の顕彰会を開いたりする人たちは誤国主義者である、こういうふうなことを山崎豊子さんに話をされて、今度賓客として見えるときにこのようなことを総理に言うことは失礼だから、あなたから総理にお伝えをするようにと、このような発言がなされたということが各紙に報道を大きくされておるわけであります。  あえて、このことを総理が山崎豊子さんからお聞きになったかどうかということについてはもうお伺いいたしませんけれども、私は胡耀邦書記のこの発言は、中国首脳の発言としてまことに遺憾、残念である、こういうふうな感じを強くいたしておるわけであります。仮に立場を逆にした場合、我々がこのようなことを発言したら中国の首 脳が何と言うであろうかということを考えますときに、私は抗議とは言いませんけれども、もっとこれらのことについて、いわばお互いの国民の信条等の自由、これらについてまで踏み込んでくることはいかがであろうか、こういう感じを特に強く持っておるわけであります。  したがって、私はこの機会に私の意見としてぜひお聞きをいただき、またテレビを通じて国民の皆さん方にも御理解をいただきたい、あるいはまた中国の首脳にも御理解をいただきたいとも考えるわけでありますが、蒋介石総統の顕彰会ができまして、私もいわばこの設立発起人の一人であったわけであります。  そこで、蒋介石総統が終戦のときに日本に示していただいたいわば対日四大政策は非常に温情であろう、こう私は信じております。また、事実そうであったわけであります。すなわち、恨みに対し徳をもって行うというこの布告のもとに、四つの大政策日本に示していただきました。その一つは、当時中国大陸に残留しておった軍隊及び民間人二百数十万人、約二百五十万人と言われておりますが、これを半年以内に無条件で送還をしてもらったこと。さらには、天皇制廃止ということが事実上連合国側で決まっておりましたのを反対して、天皇制護持を明確に主張して、またこれを実現してもらったこと。さらには、我が国に対して当時八百億ドルあるいは六百億ドルと言われておりましたいわば中国に対する戦争によって与えた被害に対する賠償権、賠償を取ることによって日本は絶対に再起できないということでこれを放棄してもらったこと。そうしてもう一つ重大なことは、日本の占領政策、当時は分割占領が決定しておったわけでありますが、北海道はソ連、四国、中国中国、本州はアメリカというこの分割占領政策に反対をして、そうしてアメリカ一国の占領政策になった。おかげで現在のいわば朝鮮半島やドイツのような分裂国家にならないで済んだということ。あれこれ考えるときに、現在の平和、そうして自由、そして豊かさ、これはそのおかげであるということを感じますときに、純粋にその恩義に対して我々が感謝をするという会をつくることが果たして国を誤った主義であるかどうか。私はそのようには考えられないのであります。  したがいまして、我々はこのことについて、胡耀邦書記がどういう考え方か知りませんけれども、あえてこのことを純粋に日本人として、また人間として感謝とそして恩に報いるというふうな発露であるということをぜひ中国の首脳にも理解をしていただいて、いわばこのような思想や良心の自由を侵してはならないという、我が国の憲法に明記されておるわけでありますから、これらのことを十分御配慮いただきたいし、また今後も総理並びに外務大臣は外交政策の中でやはりそれらのことについても配慮しながらお考えをいただきたい、このように思うわけであります。  このことについて総理の御所見をお伺いすればいいんですけれども、総理のお立場上、また現在の中国あるいは韓国等々の問題からしてまた別の問題が起きてもいかがと、このように案じますので、あえて御答弁はいただきませんが、それらのことについては明確にしておくべきだ。事実は事実として我々が国民に知らせ、あるいはまた国民に知ってもらい、そこで現在の我が国発展があることは、いろんな理由がありますけれども、その中の一つの大きな理由はそうである、このようなことも明確にすべきであろう、このように私の意見としてお聞き取りをいただきたい、こう思うわけであります。
  203. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 日本と今の中華人民共和国が国交を回復しましたときには、大事な原則的約束をしております。これは国際的約束として厳守しなければなりません。  それは、中国一つであり、二つの中国をやるという陰謀に加担しない、二つの中国を我々政府として公式に認めるわけにはいかない、北京に首府を持つ中華人民共和国政府が唯一の正統政府である、そういうことをはっきり我々は国交回復のときに条約においても約束しておるわけであります。中国側はどういう意図で今の問題を提起しているか想像する以外にありませんが、恐らくそういうようなことが大々的にあるいは国が関与したりして行われるという場合に、公的機関が関与するというような場合には、二つの中国という印象を日本国民や世界に与えるのではないか、そういうことを心配されて、それは国交回復のときの原則に違う、そういうことは起きないようにという意味の念のための発言ではないか。誤国主義云々と言われた背景にもそういうものはあるのではないか、そういう中国側の懸念の表明であって、それは国交回復のときの国際的な約束自体を誠実に守ってくれと、そういう意味の注意的な発言ではないかと私は思います。  蒋介石総統の問題につきましては、民間団体がおやりになるということについては、自由民主主義国家である日本においてはそれを一々制肘するという権利はないし、憲法に違反することにもなります。ですから、民間団体がおやりになることについてはそれは我々としては手は届かないと。しかし、公的機関がこれに関与するということは日中国交回復原則に違反する、そういう危険が出てまいりますから、政府としては厳にこれは戒めておるところであり、私は自民党の幹部の皆さんについても、この点はよく検討して、考えて行動してもらいたいということも申し上げておるわけであります。今のような民間団体がおやりになるということについては、我が国の憲法の条章等に照らしても一定の限度があって、それ以上政府は手が届かないのだということは先方にも説明してあります。
  204. 井上計

    ○井上計君 総理のおっしゃっていただいたこと、よく理解できます。また、当然そうであろうと、こう思います。したがいまして、今回の蒋介石総統の遺徳を顕彰する会はあくまでも民間人が集まって、いわば自然の発露によってそのようなものを持った、そして各種の会合を持ったと、こういうことでありますから、総理の今御懸念される二つの中国論争等々とは全く違うわけでありまして、純粋な気持ちの発露であるということを御理解いただきまして、今後とも総理としてもまたそのような問題になれば十分ひとつ先方にその意をお伝えいただきたい、このことをひとつ期待をしておくわけであります。  そこで、今私が申し上げましたような終戦時の事実、これはやはり私は国民としても、二つの中国だとか現在の日中の友好を破壊するとかという意味じゃなくて、日本の現在があるのはどうであるか、あるいは日本の歴史という面から見て多くの国民が承知をし、また後世に伝えるべきだと、このように考えておりますが、全くこれを知らない人が非常に多いわけであります。知らない理由はいろいろあります。学校で全く教えていないこと、あるいはマスコミがこれらの事実をほとんど報道しないということ、いろいろなことがありますけれども、私は今後これらの問題等についても、マスコミもやはり事実は事実として国民に知らす、認識をしてもらうようなそういう方法をとることについては当然であり、また差し支えがないし、また日中友好云々ということについても問題が生じないと思いますが、外務大臣、いかがお考えでありましょうか、お伺いいたします。
  205. 倉成正

    国務大臣(倉成正君) ただいま総理からお答えしたことで尽きると思いますが、政府といたしましては、従来より我が国の主権と独立を守り、我が国益に沿うような形で我が国の外交を進めておるところでございます。今後ともこの方針は変わらないところでございます。  先ほどの顕彰の問題につきましては、御案内のとおり民間団体が行ったことでございますので、これに対するコメントは差し控えたいと思いますが、いずれにいたしましても、政府といたしましては一九七二年日中国交正常化以降、台湾との関係を処理するに当たっては日中共同声明の立場を堅持すると、今後ともこの立場は変わらない、また政府としてはいかなる形でもこれには関与しないと、こういう立場を堅持してまいりたいと思う のでございます。
  206. 井上計

    ○井上計君 これに関連をいたしますけれども、既にもう数年前からこれまた大きな問題になっておりますが、台湾の元日本兵の戦死者あるいはまた戦傷者に対する弔慰金、見舞い金の問題であります。  対中国との問題からして、なかなか思うように進展をしない、しかし大変気の毒だと、また申しわけないというふうな気持ちが多くの方々にあるわけでありまして、最近、有志が集まって議員立法としてこれらの補償をというふうな動きがあるわけであります。これも御答弁は要りません。が、それについてもぜひ総理外務大臣も十分なる理解を示していただいてこの問題について対処していただきたい。これは特に要望をしておきます。御答弁は要りません。  次いで、円高に起因するデフレ、さらには深刻な不況問題等についてお伺いをいたしたいと思います。  既にこの問題も再三出ておりますし、また午前の質疑の中でも総理からいろいろと御答弁がございました。しかし、昨年九月のG5のドル高・円安を是正するという合意が合意以上に進展をしたと。急速に進展をして、異常な円高によって我が国の多くの人たち、ただ単に輸出関連企業ではありません。輸出関連企業だけでなく、一般のいわば内需産業にも大変それらの問題が大きくなってまいりました。被害が相当大きく出てまいりました。しかし円高というふうな方向になりましたけれども、当時G5の目的であったところの貿易収支のインバランスは一向に改善されません。逆にさらに本年度は、史上最高と言われ、最大と言われるような貿易収支の黒字が発生をすると、もう明らかであるわけでありますけれども。  そこで、とにかくお考えいただきたいと思いますことは、容易な事態ではないと。しかも最近新聞紙上には、円高によって倒産あるいは休業あるいはレイオフ、人員整理等々連日のように報道されておりますし、また円高に対応できる唯一と言われておる自動車産業あるいは電機産業等においても、人員の整理あるいは赤字決算ということが報道をされておるわけであります。特に基幹産業である鉄、造船というふうなものの不況色が大変強まっておりまして、深刻な事態に陥っておるわけでありますが、これについて総理はどのような認識をしておられますか、お伺いをしたいと思います。
  207. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 経済企画庁の月例報告でも景気の見通しに対する表現を少しずつ変えてきております。今までのものに対して二面性を持ってきた、いいところと悪いところが出てきている、そして停滞感が次第に広まってきていると、そういう表現に変わってきております。我々も、輸出産業が円高のためにかなり打撃を受け、あるいは地場産業あるいは造船、鉄鋼、繊維その他の産業がかなり手ひどい打撃を受けているということも知っております。これらにつきましては、内需の振興というようなこと、あるいは今回の公定歩合の引き下げとかあるいは円・ドルレートの長期的安定、双方が満足するレベル、レートに安定させていく、景気を次第に明るい方向に持っていくように今後とも努力してまいるつもりでおります。
  208. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 関連質疑を許します。小西博行君。
  209. 小西博行

    ○小西博行君 ただいまの井上議員の質問に続きまして、私は十一月四日に我が党の塚本委員長とともに広島へ参りまして、いわゆる従来まで造船王国と言われておりました広島県の造船の実態について調査に行ってまいりました。もちろん、県知事を初め県の幹部の方あるいは造船工業界のトップの方、あるいは下請の方、組合の方、こういう方々が百五十人ぐらい集まりまして、具体的な問題について詳しく陳述されました。まさに涙とともにその実態を伺ってきたわけであります。広島県側といたしましては、かなりこの問題について積極的に取り組んでおります。ことしの予算二十三億六千万円、これだけを計上いたしまして、何としても頑張るという姿勢でありますが、残念ながら国から予算という形で入っておるのはそのうちの二千三百九十万円であります。したがいまして、今回のこの補正予算について、何としても大きな予算を組んで産業の活性化を図りたい、あるいは転換に持っていきたい、こういうような強い要望があったわけでありますが、大変がっかりしておられました。そういった意味で、総理がいつも申されますように、内需はやや伸びつつあると、このようにおっしゃっているわけでありますが、業種によっては非常に厳しい状況がある。そういう実態を踏まえて、ぜひとも具体的な答弁をお願いしたいと思います。総理、大蔵大臣、運輸大臣にお願いしたいと思います。
  210. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 御指摘のとおり、我が国の造船業は現在非常に困難な状況にありますし、今後の見通しも大変厳しいものがございます。このような状況下における今回の補正予算でありますが、この補正予算におきましては、既存の中小企業特別調整対策の拡充、延長、また特定地域中小企業対策、雇用対策を講ずるための所要経費が計上されておるわけでありまして、造船業もこれらの措置が活用できるように関係各省庁との間の連携を密にし、遺漏なきを期してまいりたいと私どもは考えております。  なお、造船業界におきまして、六十二年度に過剰設備の削減、集約化等による産業体制の整備を中心とする抜本的な対策を実施することとしておりまして、運輸省としては、これらの対策が効果的かつ円滑に実施されるよう六十二年度の予算要求において所要の経費の要求をいたしております。  また、過剰船腹の解消、同時に工事量の不足を補うために今後とも船舶解撤事業を促進するとともに、造船業が行い得る、船そのものではない各種需要の創出を図るために関係各方面、各省庁への御協力をお願いし、働きかけを行っているところであります。
  211. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 造船業は他の産業と違いまして、いわゆる見込み生産というものができない。修繕はともかくといたしまして、注文生産しかできないということで、注文がなくなりますと仕事が即なくなるという非常に難しい産業であります。殊に、世界の船腹量がこういう状況でありますので、ここに来まして全国的に非常に深刻な問題になっておる。広島県の場合にはたしか全国で最大のシェアを持っておりますから余計そうでありますことは私もよく存じております。いろいろ施策について御検討を運輸大臣がなさっておられますので、この予算化につきましては全面的にひとつベストを尽くしてまいりたいと考えております。
  212. 小西博行

    ○小西博行君 特に因島の問題につきまして新聞、テレビでもう相当詳しく報じられておりますが、現在の段階で雇用保険を適用されている方が大体千四百五十人ぐらいだと言われています。ことしいっぱいで切れるのがそのうちで千人。来年の三月までにはほとんど全部切れる、こういう状況でございます。そういった意味で、因島の中で再就職ということを考えましても造船しか実はございません。そういう意味で、雇用保険日数を延長してもらえないかということが一点であります。  それからもう一点は、厚生年金の受給年齢を五十五歳に上げてくれないかと、こういう気持ちが私もいたしますし、陳情の中では非常に強い要望がございました。この点につきまして労働大臣と厚生大臣にお願いしたいと思います。
  213. 平井卓志

    国務大臣(平井卓志君) 雇用保険の問題でございますが、これは委員ももう御案内のように、一定の理由によりまして再就職が困難な者につきましては、所定給付日数に加えて六十日の延長給付ということになっております。さらに、造船業を初め特定不況業種からの離職者のうち四十歳以上の者に対しましては、さらに三十日を加えた九十日の延長を行っておる。例えば五十五歳以上の高齢者につきましては最高三百九十日の給付を行う。かなり他の離職者よりも手厚い措置を講じておるわけでございまして、そういう形で求職活動 の援助を行っておるわけでございます。  さらに、これも御案内のとおり、公共職業安定所長の指示によりまして公共職業訓練等を受講する場合には、所定給付日数にかかわらず訓練終了まで失業給付を受けられるというのが現行の制度で整備されておるわけでございます。そういうことでございますから、さらに延長を行うのはどうかということはただいまのところは考えておりません。そういう枠組みの中で、今後労働省としまして各種の援護措置を講じて早期就職の促進に努めてまいりたい、かように考えております。
  214. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) 厚生年金の支給開始年齢に関するお尋ねでございますが、御承知のように、これから迎えます長寿社会へ向かって年金制度をその公的年金の中心として確固たるものにするために、先ごろ年金の大改革を行っていただいたわけでございます。その際には、将来に向けての支給、また現役の負担という問題について一定の国民的合意がなされて、これでいこう、こういうことになっておると考えております。そういう中で、支給開始年齢も六十歳ということで今行っておるわけでございますが、そういう長期的な見通し、また長期的な安定の中に年金を運営していかなければならないという観点から考えまして、せっかくの御提案でございますが、特定な一部の状況の中で支給開始年齢を引き下げるということは適当でないというふうに考えております。
  215. 井上計

    ○井上計君 今、小西委員からも雇用の深刻化についていろいろと質問がされました。ところで、現在雇用問題については私は二重の意味がある、このように考えておるわけであります。  一つは、今、小西委員が指摘をいたしました造船を初めとして石炭、鉄鋼、繊維等々、既に国際競争力を失いつつある上に、今回の円高によって一気にこれが雇用不安を巻き起こしておる、企業の経営不振を巻き起こしておるという業種があります。同時に、そのような企業が中心となったいわゆる企業城下町の失業対策、これは直面する大きな問題であるわけであります。この対策が一つ。  もう一つは、前川リポートの提言のように、我が国の産業構造を国際協調型に変えていく、これは変えていくことが正しいのかどうかの論議は別としまして、いずれにしてもそういう方向に行かざるを得ないとするならば、その具体策としては、海外直接投資、工場の海外移転がさらに今後大規模に展開されるであろうということが予想されるわけであります。したがって、その面での近い将来への雇用不安というものが非常に今大きくなっておるわけであります。ある権威ある調査機関の調査によりますと、五年後にこのようなものが進んで、海外への直接投資が進み工場移転が進んだ場合、軽易黒字は二百二十億ドル程度に減少はするけれども、その一方、それだけ国内生産が低下するわけでありますから、失業率は現在の倍以上の七%程度になることは確実だ、このようなことが論ぜられておるわけでありますが、当面する不況対策と同時に、近い将来、このようなことによって起きる不況対策というような二重の問題を真剣に考えていく必要がある、こう考えます。  そこで通産大臣にお伺いいたしますけれども、企業の海外進出、海外直接投資について十分ひとつ通産大臣として慎重に指導を願わなくちゃいかぬと思いますが、御見解をお伺いいたしたいと思います。
  216. 田村元

    国務大臣(田村元君) 井上委員のおっしゃること、まことにごもっともでございまして、私どもも一番意を用いておるところでございます。  我が国の高い経済力の蓄積を生かして海外直接投資等を通じて産業の国際的な展開を進める、いわゆる国際協調型にしていくということは、これは前川リポートの志向するしないにかかわらずやらなきゃならぬことだと思います。そういうことでございますが、ただ同時に、反面、今おっしゃったような心配もしなきゃならない。そこで、国内におきましては内需主導型の高目の経済成長を図るとともに、新たな技術革新、それから情報化の成果を生かすこと等により、産業の新しい発展分野の開拓を図って多様な雇用機会の創出を我々は企画していくことであろうと思います。その必要があると認識しております。このために、今後とも産業構造の転換等に対応した諸施策を積極的に推進することによりまして、産業活力の維持、雇用の安定に万全を期する所存でございます。  井上先生御承知のとおり、私どもももちろん安易な気持ちでこの問題に取り組んでおるわけではございませんので、建設省の傾斜配分をお願いしたり、あるいは労働省とのハイレベルの協議会を持ったりということで苦心惨たんをいたしております。何とか皆さんに対応できるように頑張りたいと思っております。
  217. 井上計

    ○井上計君 ぜひ十分なる対応を希望しておきます。ただ単に雇用不安だけではありませんで、それらの海外進出を計画しておる企業の下請も大変な今不安に駆られておるわけでありますから、大臣として十二分な対応をひとつお願いしておきます。  次に、円高メリットの還元ということが随分言われてまいりました。しかし一向に還元をされたという意識が余り国民の間には起きておりません。事実、電気料金、ガス料金等については若干の還元がなされておりますけれども、国民が直接感じるのは、やはり何といっても食料品が安くなったということにならなければ本当の円高のメリットというものを受けておるという感じがしないであろうと、こう思います。  そこで私は、食糧問題、特に小麦の問題等につきましていろいろと意見を申し上げてお伺いをしたい、こう思います。牛肉は、最近やや輸入肉の安売りが行われておりますので、若干消費者の中で円高のメリットが還元されたというふうな意識もありますけれども、小麦については全くといってないと思います。これは事実去る十月六日の当委員会で私は農水大臣にお尋ねしました。農水大臣のお答えの中で、円高による小麦粉の差益はパン一斤当たり二円三十銭である。トースト一枚にすればこれがわずか三十銭程度にしかならないというお答え、これは事実そうであろうと、こう思います。だから、円高によっても小麦粉は安くなっていないという理由は別のところにあるわけであります。  そこで私はお尋ねしたいのでありますけれども、現在小麦の国産、自給率といいますか、輸入と自給率はどのようになっておるか、ひとつこれは食糧庁で結構でありますが、お答えをいただきたい、こう思います。
  218. 後藤康夫

    政府委員(後藤康夫君) 小麦の自給率は高度成長期の三十年代から四十年代にかけて非常に低下をいたしましたけれども、その後若干向上を見ておりまして、現在一二%程度の自給率でございます。
  219. 井上計

    ○井上計君 小麦の自給率が一二%ということは、米と違って小麦についてはもう我が国の主食という考え方でなくて、実は事実上輸入が自由になっておる、このように考えてもいいと、こう思いますが、事実いただいた資料によりますとこれは六十年はありません、五十九年度ですけれども、国内の消費向けに出した小麦が六百十六万四千トン、それについて国内産の麦は七百四十一万トンでありますから、五千五百五十万トンを輸入に依存している。これは自給率わずかに一二%、しかもこれは昭和五十五年から本格的な転作奨励をしてなおかつその程度であるという数字がありますが、これは事実ですか。余り細かい数字はいいです。
  220. 後藤康夫

    政府委員(後藤康夫君) ただいま先生がおっしゃいました自給率はそのとおりでございますが、数字、トン数につきましては一けたずれておる数字だと存じます。
  221. 井上計

    ○井上計君 六百十六万トンですね。それで、国内産がそのうち五十九年度は七十四万一千トンということですね。  とにかく、いずれにしても転作奨励をしてもなおかつ麦の自給率は一二%程度であるということは、主食という考え方から外してもいいんではないか、こういう感じがするんです。だから、現在 食管法によって麦は主食、米と同じような扱いで規制されておりますけれども、食管法の、私は全面的な見直しとは言いませんが、せめて麦については食管法から外しても何ら国民の食糧問題に差し支えがないではないか、こう考えますが、いかがでありますか。
  222. 後藤康夫

    政府委員(後藤康夫君) 麦は我が国の、生産面で申しますと冬作物として非常に重要なものでございますし、それからまた消費の面で申しましてもいわゆる米の御飯と申しますか、そういうものとめんなりパンというものとの間の代替関係というようなものもあるわけでございまして、そういった両面から米麦を合わせて食糧管理制度のもとに置きまして、生産の方の安定と消費者への供給の安定と両方を図っていくという考え方をとっているわけでございます。
  223. 井上計

    ○井上計君 どうも今の御答弁では理解できません、納得できないんですが、じゃ先を急ぎます。  そこで、もう一度お伺いします。五十九年度でも六十年度でも結構でありますが、現時点では小麦の内表の買い上げ価格は十八万四千円ですね。そうして売り渡し価格が八万四千円、そうして現在のレートでいくと大体トン当たり輸入小麦は四万一千円程度ですね。したがって、十八万四千円で買ったものを八万四千円で売り渡しておる逆ざやが約十万円。それから輸入している小麦が四万一、二千円程度のものが八万四千円でありますから約四万一、二千円のいわばプールといいますか利益といいますか、このような実態になっておると思いますが、それによって本年度あるいは去年の、六十年度でも結構でありますが、この逆ざやによって政府が支出をしておる金額は幾らになりますか。
  224. 後藤康夫

    政府委員(後藤康夫君) 麦の管理におきましては、先生ただいまおっしゃいましたような内外麦のコストをプールして売り渡し価格を決めるということにしておりますので、内麦の損失と外麦の利益とがほぼ見合うような形で毎年決算が行われ、また予算も組むようにいたしておるわけでございます。  この内外麦コストプールという考え方につきましては、臨調の第一次答申におきましても、内外麦合わせて麦管理について赤字を生じさせないようにというような御答申もいただいておりまして、そういった線に沿って、このところずっとそういった考え方で予算を編成し、また、売り渡し価格も毎年十二月に今申し上げましたような考え方で決定をいたしておるわけでございます。
  225. 井上計

    ○井上計君 では、今年度この内外麦とんとんに持っていくという考え方のようですが、今年度の見通しはどうですか。
  226. 後藤康夫

    政府委員(後藤康夫君) 今年度におきまして円高の差益が一方にきまして、現在のところ年度を通じまして二百五十億程度出ようかと思っております。若干それから国際価格のドル建ての建て値の低下というのがございますが、これはごく最近またちょっと戻しているところがございます。他方、内麦につきましては、ことしは昨年に続きまして豊作でございまして、内麦の方の損失が、先般も予備費の手当てをいたしましたけれども、百億程度増加をするというような状況を見込んでおります。  いずれにいたしましても、十二月までの間にいろいろな状況を見定めまして、十二月に価格の問題につきまして一定の判断をいたすということにいたしておりますので、その時点で今年度の決算の見通しなり、あるいはまた来年の予算で内麦、外麦の損益を見定めました上でこの問題について判断を下したいと思っておるわけでございます。
  227. 井上計

    ○井上計君 わかりました。  そこで長官、ちょっと足がお悪いようでお気の毒だが、六十一年度見通しが無理なら五十九年度でもいいですが、六十年度でもいいですけれども、今年度円高によって非常にやはり安くなっていますね。国際価格も変わらぬといってもかなり安くなっている。差益が二百五十億円だというお話でしたけれども、差益以外に売り渡しの八万四千円との差額の合計がありますね、これ以外に。それから今おっしゃった百億程度内麦が豊作で損失がふえておると言われたが、じゃ内麦についての補償が、要するに逆ざや補償ですね、十八万四千円で購入するわけでしょう。それと八万四千円との差額はトータルで幾らにたりますかということをひとつお聞きしたい。内麦の生産量と補償の約十万円を掛けりゃすぐ出るでしょう、簡単に、出ませんか。
  228. 後藤康夫

    政府委員(後藤康夫君) 六十一会計年度の内麦の管理勘定の損失が予算で千二百十億を予定いたしておりますので、これが約百億増加するであろうというふうに見込んでおります。
  229. 井上計

    ○井上計君 どうも私の質問について的確なお答えがいただけないんですが、大体理解できました。  だから端的に言うと、内麦の損失が約千三百億円になるということですね。だから円高差益を別に置きまして千三百億円という多額のものを、一二%程度しか自給率がない、どんなに上げてもその程度しかならない麦に対してそれまですることが、今の経済情勢、財政状態あるいは円高で大変困っておってもう深刻な悲痛な叫びを上げておる一般の産業界を考えて、そのような必要性が依然としてあるかどうかという疑問を私は持っておるんですが、これは大臣どうお考えでしょうか。
  230. 加藤六月

    国務大臣(加藤六月君) 井上委員の御指摘の点はありますが、また逆のことを申さしていただきますと、昭和四十七年ごろから小麦の国際価格は暴騰しました。そのときにも我々はパン、うどん、そうめんのもとになる小麦を国民に安定供給するために約二千五百億円の金をかけまして安定供給をするようにやってきたところでございます。そしてまた、先ほど来より御指摘のように、自給率一一、二%である、これがある面ではここまでよくこそ上げてきたと考えなくてはなりません。麦類は土地を利用するものとして、冬型作物として最高のものであります。そして今申し上げましたように、パン、うどん、そうめん等に通ずるものでございますから、そこら辺を全体的に配慮しながら、そして消費者に安定的に供給していくという立場から米と小麦を食管制度の枠の中へ入れてやっておるわけでございます。両方のメリット・デメリットはあるのは確かでございます。
  231. 井上計

    ○井上計君 昭和四十六、七年ごろの国際価格が非常に暴騰してパンが値上がりして云々ということについては承知しております。しかし、当時と現在とは全く国際情勢も違っておる。あるいはまた国内、国外の農産物の状況も違っておるということから、それをいつまでもおびえながら現在の政策方針が変えられぬということについてはいかがであろうかという疑念はやはり持たざるを得ません。  それからもう一つは、転作奨励金が今年度も二千三百億円出されておる。そのうちかなりのものが小麦への転作である。したがって、片方で転作奨励金を出し、そして片方で、そこで生産された小麦がトン約十万円というふうなものをまた逆ざやで補償をしておる、補てんをしておる、こういうふうないわば二重のそのような政策がこれから通じるのであろうか。むしろ私は食管法の根幹を維持していくためには、この際少なくとも小麦については考え方を根本的に見直し、改めたらどうであろうかと思いますし、同時にそれが、改めることが消費者にやはり少しでも安いめん類、パン類等々の小麦製品を供給することになりますし、また先般も申し上げましたけれども、小麦はそのような形で非常に安く輸入したものを高く売っておる。ところが二次製品、菓子等の二次製品については輸入が自由であるから、国内の生産価格の半値、物によっては三分の一というものがどんどん輸入されておって、それらの製品を業としておる中小企業、大企業もそうでありますけれども、中小企業はまことに困っておる。円高のデメリットを逆な面で非常に強く受けておるという企業がますます多くなっておるということで、私はぜひひとつ検討すべき大きな課題であろう、このように思いますので、特にこのことを大臣に強くひとつ要望をしておきます。  ほかに米の全量買い上げの問題等々についても見直しをするというふうなことも最近言われております。これについても当然農林省お考えでありましょうが、今のような状態が続くと全量買い上げということがさらに財政を圧迫し、国民に大きな不満をますます生じせしめるというふうなことになろうかと思いますが、全量買い上げの問題等についてはどのような御検討をしておられますか、お伺いをいたします。これは長官でも結構です。
  232. 後藤康夫

    政府委員(後藤康夫君) 現在の食糧管理制度のもとにおきまして、米は全量買い上げにはなっておりません。昭和四十四年に民間流通の長所を生かすということで自主流通米制度というものを設けまして、既に政府を通らないで一定のルートを通っているお米が四割を超すような状態になっております。それから米の需給事情を考慮いたしまして、昭和四十六年からでございますか、予約限度数量というものを設けまして、政府の買い入れ数量にも一定の限度を設けておるわけでございます。
  233. 井上計

    ○井上計君 今後のそれらの方針について、さらに全量買い上げの問題についてどうされるのかということをお尋ねしたのでありますが、何か現状の弁解だけのようですがもうこれで結構です。ただ、既に社会経済国民会議も先般政策提言しておりますが、食管制度の廃止というふうな実は提言をしております。私は即座廃止とは言いませんけれども、いずれにしても時代に適合した、さらにこれからの変化に対応できるような食管制度というふうなものを国民は一番期待しておる、このように考えますので、あえてこのことを提言しておきます。  それからこの問題に関連しますけれども、我が国とアメリカの消費者の標準家庭で食料費の占める割合が随分差があります。これらの点について経企庁長官はどういう認識をされておるのか。また、このような差があるのは何に原因があるのか。またそれらについての是正、大きな問題でありますが、経企庁長官のお考えがあるとすればお伺いをいたします。
  234. 横溝雅夫

    政府委員(横溝雅夫君) 食料費の家計支出に占める割合がアメリカと日本で大分違うという御指摘でございますが、一九八三年の数字で申し上げますと、アメリカが一五・三%、日本がこれは八四年でございますけれども二三・〇%、確かに御指摘のように両国の間では差がございます。
  235. 井上計

    ○井上計君 八三年ですか。
  236. 横溝雅夫

    政府委員(横溝雅夫君) アメリカが八三年、日本が八四年でございます。  ところが、西ドイツは二五・四、オーストラリアは二三・四、スウェーデン二五・〇というような数字がございまして、ちょっとアメリカと日本は非常に開いておりますが、日本はヨーロッパ諸国と比べるとそう特に大きいという感じもいたしません。  先生の御質問、その理由とかあるいはそれに対する対処策という御指摘がございましたけれども、ちょっと突然のあれでございますので、原因は詳細には存じませんけれども、一般的には日本の食料品価格が国際的に今高いということは事実だろうと存じます。
  237. 井上計

    ○井上計君 質問通告をしたつもりであったんですが、じゃ私が落としたかもしれません。  ただ、今御答弁がありましたが、アメリカの統計は八三年で一五・三%、日本は八四年で二三%というのは、要するに円安の時代でありますから、現在の円高に置き直すと、私が承知しているのでは日本が二七%、アメリカが一五%ですから、そこに一二%の差がある。したがって日本消費者は、アメリカ国民と比べますと標準家庭で家計費の中で一二%は何らかの理由で、政策の失敗とは言いませんが、何らかの理由で多く食料費を支出しておるんだということでありますから、経企庁としても大いに留意をしてこれについての対策を当然のこととしてお考えをいただきたい、こう思います。  余り時間がありませんので次に移ります。次いで、中小企業の問題でありますが、先ほど円高の影響による不況については申し上げました。当院の商工委員会として五、六、七の三日間、それらの実態を直接調査するために委員派遣として愛知県、大阪、和歌山等々に参りまして関係団体の代表から説明、陳情を受けました。また、工場を実際に調査をしてまいりましたけれども、私どもの予想しておった以上に深刻な事態に陥っておるということが判明をいたしました。特に陶磁器、刃物、自転車等々の中小企業の輸出企業は、一年前と比べても大変な状況に陥っております。人員整理が既にもう行われております。縮小あるいは倒産も既に出ておりますけれども、これらの要望を聞きますときに、一つはそれらの人たちが異口同音に言うのは、現在の円高は政府の責任である。したがって我々の採算点、先ほど中小企業庁長官の調査の結果の御答弁がありましたが、ある程度の採算点よりも円高が進んだ場合にはその差額は政府が補償すべきである。米とか麦と同じように政府が補償すべきだという議論さえ実は出てきておるというふうなことでありました。もちろんそれを我々が肯定したわけではありませんけれども、そういう声が非常に大きくなっておるということであります。  そこで、今回提出されておる補正予算の中で、私はそれらの実態考えるときに中小企業関係対策費が少ない、こういうふうに感じておりますけれども、これで十分に対応できるのかどうか、中小企業庁長官に承りたいと思います。
  238. 岩崎八男

    政府委員(岩崎八男君) 円高に対応する中小企業対策につきましては、この二月のいわゆる新転換法による国際経済特貸しあるいは信用補完の特別の枠の創設等の対策を打ってまいりました。また、下請企業の親企業からの圧迫等に対する監視、これも強めてまいっております。さらに、円高が進展いたしましたので、九月十九日の総合経済対策において一層の金融、信用補完対策あるいは技術の開発の支援、新しい販路開拓の支援あるいは疲弊しております地域に対する企業誘致その他の活性化対策等々、最大限の具体策を創設しようとしているつもりであります。それが来年度予算ということでは時期的に間に合いませんので、今回提案しております補正予算の中にそういう金融対策等を裏づけるものとして二百三十四億という金額を計上しておるものでございます。  厳しい予算の中でございますけれども、来年度の中小企業対策予算におきましても、中小企業の現在の窮状の打開、特に新しい方向に対する構造転換への支援ということについてできるだけの支援をしていきたいと思っております。
  239. 井上計

    ○井上計君 私は中小企業の声としては、今回の補正で今言われた二百三十億円程度では十分でないという、そのような不安と不満があるということを申し上げておきますが、さらに来年度予算の中で、特にこれは大蔵大臣に要望でありますけれども、お考えいただきたいのは、六十一年度の中小企業一般会計から出ておる予算が全体で二千五十二億円であります。ところがその中で、聞くところによりますと、既に従来制度金融についての逆ざや等々の補てん等で約五百億円ぐらいが円高のために実は使われておる。円高の状態がなければ使われない、必要としない金が、低金利と円高のためにそれらのものが使われておるということでありますが、実質的にはるかに減っておる。ところが中小企業関係の予算は、十年前の昭和五十年度は全体の、少ないとはいいながら〇・六%であったわけです。千分の六。ところが、逐次その後財政の関係等々でだんだんダウンしまして、現在六十一年度はわずかに〇・三八%、千分の三・八しかないということですね。これだけ多くの中小企業、また中小企業の従業員等々に対する対策が全体の予算の千分の三・八というのは余りにも少な過ぎる。それからなおかつそのような、いえば制度金融等々の逆ざやの補償というものが出ますと、一般のこれから転換あるいは合理化あるいは体質改善等々で必要な中小企業対策が果たして可能かどうか、このように考えますが、ぜひその面について大蔵大臣の御配慮をいただきたいと思 いますし、通産大臣はどのような御見解をお持ちでありますか、お伺いをいたします。
  240. 田村元

    国務大臣(田村元君) 中小企業対策、確かに見た目にそう多いというわけにはちょっとまいらない。確かに御指摘のとおりだと思います。ただ、現在の厳しい財政事情下においてはよく協力してくれたと、私ある意味においては大蔵省に感謝の気持ちを持っております。ただ、だからといって今のままで放置するわけにもまいりませんので、これから対大蔵の折衝、特に六十二年度に向けての折衝につきましては私自身も厳しく目をつけていきたいと思っておりますが、何分にも先般来ずっと、大蔵への概算要求の内容も全部調べようと思っておりましても、毎日の委員会で朝から晩まで缶詰を食らっておるものですから何にもできないという無念さがありますけれども、できるだけのことをしたいと思っております。大蔵省としても苦しいんでございましょう。余り責めないようにしてやっていただきたいと思います。
  241. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 確かに急激な円高になりましたので、中小企業の御苦労というのは、先ほどから井上委員のおっしゃいますように、並み大抵のものでないということを私もしみじみ感じます。財政が非常に苦しゅうございますけれども、通産大臣にも御理解をいただいて、その中でいろいろ重点的にまた六十二年度の予算についての御相談もあろうかと思います。できるだけひとつ最善を尽くしまして、御相談に乗ってまいりたいと思っております。
  242. 井上計

    ○井上計君 もう一点、大蔵大臣に要望であります。  先日の政府税調の答申で法人税減税が盛り込まれております。大変結構であります。しかし、中小企業に対する軽課税は三一%据え置き、こうなっております。据え置き結構でありますが、しかしこの際、中小企業と言っても所得八百万円まででありますから、これが八百万円に決められてもう大分たちます。したがって、現在の指数からいうとこれはやっぱり千五百万円ぐらい、少なくとも千二百万ぐらいにこの軽課税の対象となる所得を引き上げるべきだ、こう考えますが、いかがお考えか、これが一点。  それから法人税減税のために租税特別措置の大幅な整理見直しをやるということでありますが、余り租税特別措置が全部だめということになりますと、民間設備の導入に大変水を差すということになろうかと思います。これも慎重にひとつおやりになるべきだろう、これは要望しておきます。  それからもう一つは、中小企業の交際費の損金算入を縮小するということでありますが、中小企業の交際費というのは販売促進質的なものが非常に多いわけでありますから、むやみにこれを縮小するということはやはりいかがであろうか、こういうふうな疑念を持っておりますが、その三点につきましてお答えをお願いします。
  243. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) いわゆる中小法人の軽減税率の問題でございますけれども、このたびの税調答申では、存続そのものはやむを得ないだろうけれども、しかし基本税率との格差は縮小していくべきものだろうということを述べておられまして、そこで今見ますと、八百万円以下で軽減税率の適用を受けている法人数は全部の中小法人の九割に達しておるそうでございます。百六十万社中百四十万社ございますそうで、これは資本金一億円以下ということでございますが、そういう事実もございますので、ひとつそれも申し上げておかなければならないと思います。  それから第二の問題は……
  244. 井上計

    ○井上計君 第二は租税特別措置の見直しと設備の投資意欲の減退について。
  245. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 一般に租税特別措置法を、個々の特別措置を見直しましてそれによりまして法人税の税率を軽減していこう、こういう考え課税ベースを広くしようという考えでありますことはお認めをいただきたいと思いますが、だんだん特別措置ももう中小企業関連のものがほとんどになるようになりました。そういう事実もございますので、その点も考えながらやってまいります。  それから交際費のことは、確かに中小企業の場合にはいわば二種類ございまして、大変に懐ぐあいが楽と申してはいけませんけれども、そういう方と、本当にぎりぎりで販売促進のために大変につらい交際費を使っていらっしゃる方と、両方あるようにお見受けをいたしますが、これにつきましてもよく検討させていただきます。
  246. 井上計

    ○井上計君 次に、大蔵大臣に財投金利のことについてお伺いいたしますが、あわせて通産大臣にも伺います。  低金利時代になりました。ところが、現在の資金運用部資金法によりますと、昭和三十六年四月でありますから、いわば七%以上の公定歩合が高金利時代に決められたそのままで現在に来ておりますから現在では全く事態にそぐわない、そのために民間活力の促進に水を差し、中小企業の金融の逆ざや、あるいは住宅金融公庫の融資その他に非常に支障がある、こう考えますけれども、通産大臣はどうお考えでありますか。まずお伺いいたします。
  247. 田村元

    国務大臣(田村元君) おっしゃるとおりでございまして、今般の公定歩合の引き下げに伴う短期金利体系全般の低下とあわせまして、長期貸出金利の引き下げが極めて重要と我々認識いたしております。長期プライムレートの引き下げとともに、政策金融機関の貸出金利それから財投金利の引き下げはぜひ必要であると、そのようにしてほしいものと考えております。
  248. 井上計

    ○井上計君 かねて厚生省は、財投金利の引き下げともあわせてといいますか、例の厚生年金の運用に今後重大な支障が起きる、そこで厚生年金の運用すなわち資金運用部資金法を改正して自主運用をいたしたいというふうなことを既にお考えのようでありますが、厚生大臣、このことについてお伺いいたします。
  249. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) 現下の経済情勢の中で、景気対策やまた内需拡大というような観点から資金運用部資金の預託金利の引き下げを行うべきであるということについては、私も十分理解をいたすところでございます。しかしながら一方、今後将来、長寿社会へ向かって安定的に運用いたしてまいらなければならない年金の積立金の収益につきましても非常に大事な問題でありまして、ここ数年、預託金利が引き下がる中で、この年金財政を確保して、また安全かつ有利に運用していくということに対して最も力を注いでいかなければならない問題であるというふうに考えております。そういう中で、預託資金の一部について自主運用をいたしたいということをかねてから考えておるわけでございますが、今回、こういうようなことになるとするならばぜひにも自主運用をいたしたい、こう考えておるところでございます。  ちょうど先週の金階日、十一月の七日でございますが、年金審議会の皆様方からも「緊急意見」という提言をちょうだいいたしました。いろいろ書いてございますが、結論のところを申しますと、「積立金の自主運用という代償なく、保険料拠出者の一方的負担のみを強いる預託金利の引下げをこれ以上行うことは容認し難い。政府においては、このことを十分肝に銘じ、当問題の処理に当たるよう強く要望する。」、こういう年金審議会からの提言もいただいております。  また、一部にはこのようなことが続くならば財投資金からの積立金を撤退すべきであるというような非常に厳しい強い御意見も賜っておりますので、私といたしましては、積立金の一層の有利な運用のために最善の努力をいたし、また各方面の御協力をいただいてまいりたいと考えております。
  250. 井上計

    ○井上計君 今通産大臣は財投金利の引き下げを強く要望されました。厚生大臣は自主運用を強く要望されましたが、大蔵大臣の御見解はいかがでありますか。
  251. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) お聞きになられましたように、いろいろお立場がありまして、結局お預けくださる方とお借りくださる方との利害が別で ございますので、どうも私も進退やや窮しておるところでございます。正直申しますと、金利水準が下がったわけでございますので、一般論としてある程度下がってもいいのではないかということは言えそうでございますけれども、しかしなかなかこれはうまくいきませんで、もう少し各省と相談をさせていただきたいと思っております。
  252. 井上計

    ○井上計君 どうももう少し明確なお答えがいただけると思ったのですが、残念です。現状ではこの程度でやむを得ないと思いますが、十分ひとつ御検討いただく、引き下げと自主運用と、二つともぜひ御検討いただきたいと要望しておきます。  間接税のことについてお伺いいたしますが、総理、もうたびたび当委員会でも、また衆議院でも言われておりますけれども、改めて私は確認の意味でお伺いしたいと思いますが、総理がかねて公約しておられますところの大型間接税とは、多段階で包括的で網羅で普遍的で、さらに大規模な投網をかけるようなもの、このように言明されておる。ところが、先日の同僚委員の質問には、この五つの条件を全部備えておるものを大型間接税として導入しないという公約であって、一つでもこれが外れておれば、すなわち四つ以下であれば公約違反でないというふうなお答えがありましたが、確認の意味でもう一度お伺いしたい、こう思います。
  253. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) その説明をするときにはいつもそういうことを申し上げまして、縦横十文字に投網でがっぷり入れたような、ばっちり取る制度を言っていると、そういうふうに解説をしてきたところでございます。まあ、しかし物事には常識というものがあるのではないかと思います。
  254. 井上計

    ○井上計君 時間があればもっとこの問題を総理と問答したいんですが、しかしいずれにしても総理の御答弁では、国民の多くは総理の公約は実はこの五つといろいろ言われておりますが、そういうふうなもの一つでも該当すれば導入しないのだという総理の公約だと、こういう認識なんですね。だから総理、公約違反だという非難が随分出てくると、こう思います。時間がありませんからさらに間接税問題等についてはまた別の機会にもっと詰めたいと、こう考えますが、そのような不満が多いということを総理、ぜひ御銘記をいただきたい、こう思います。  時間がなくなったのであと一問、ひとつお許しいただきたいと思いますが、農業団体経済事業が随分と活発に行われております。驚くほど広範囲にわたっております。また、規模が大きくなっておりますが、そこで農水省と公取にお伺いしたいのでありますけれども、公収は、農業団体が行っておる経済事業について独禁法違反並びに抵触するような疑い、そのようなものが多いと、このように伝えられ、新聞報道等にも随分載っておりますが、従来どのような調査をされておるのか、あるいはまた調査をされた結果はどうであるのか、どのような認識をされておるのか、お伺いいたします。  それから農水大臣にこれは要望いたしますけれども、農協を初めとする農業団体、全農、全共連等は聞くところによりますと子会社が千社以上ある。その千社以上ある子会社のほとんどが赤字である。ところが一向につぶれない。原因は何であるかというふうなことも実は疑われておりますし、また最近新聞、週刊誌ではかなり農業団体実態が明らかになって、ますます国民の不信を買っておるということだろうと思います。中には農家自体が新聞投書等に、匿名ではありますけれども、このままでは農業の経営が成り立たぬようになる、農協に振り回されてどうにもならぬ、むしろ農協がない方がいいんだという投書さえ載っておるわけでありますから、農水大臣は十分なる指導を適切におやりいただく必要がある、こう考えます。  時間がありませんから、公取と農水大臣のお答えをひとつお願いいたします。
  255. 佐藤徳太郎

    政府委員佐藤徳太郎君) お答え申し上げます。  先生御承知のとおり、農業協同組合は小規模事業者の相互扶助を目的とする事業協同組合と同様に原則として独占禁止法の除外となっておりますけれども、農業協同組合が不公正な取引方法を利用します場合でございますとか、あるいは競争を実質的に制限することによりまして不当に対価を引き上げることとなる場合には独禁法の適用を受ける、こういう制度になっております。  これまで公正取引委員会が独禁法違反として勧告を行いましたのは九件ございまして、いずれも不公正な取引方法に該当するということでございます。私どもといたしましても、今後とも農業協同組合が独禁法の違法な行為に当たるというような具体的な根拠を得ました場合には厳正に対処してまいりたい、かように考えております。
  256. 加藤六月

    国務大臣(加藤六月君) 先ほど公取から御説明があったようなことが昭和五十一年にあったようでございます。したがいまして、公正取引委員会から指摘を受けた点につきまして、同年、局長通達を出しまして、このようなことの起きないよう指導を強化し、最近におきましては御指摘のような事実はなくなっておると考えております。  いやしくも農協の経済活動については、農業者の協同組織として独禁法に抵触することが起きないよう今後とも十分指導してまいる所存でございます。
  257. 井上計

    ○井上計君 終わります。
  258. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 以上で井上計君の質疑は終了いたしました。     ─────────────
  259. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 次に、山口哲夫君の質疑を行います。山口君。
  260. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 まず、総理に地方行革の問題について質問いたします。  今、国民が地方自治体に求めていることは何かと言えば、社会の多様化、高齢化、情報化それから国際化、あるいは価値観の多様化など、そういうことについて国民は地方自治体に求めていると思うわけであります。すなわち、地方自治の基本であります自治と分権ということが一番基礎にならなければいけないだろうと、そういうふうに考えるのでありますけれども、残念ながら政府の行っている地方行革というものはこの地方自治の精神と全く反していると思うわけであります。  まず、地方自治体の補助金を大幅に削減してまいりました。財政が非常に貧困になってやりたいこともできない。それからもう一つは、裁判抜き代執行を提案してきております。これは自治体の権限を縮小するものだと思いますし、また、強く要望している機関委任事務も自治体の要求どおりにはさっぱりやってもらえない。そして、自治省は不当に自治体に対して行革に当たって介入をしてきております。これはまさに地方自治の精神に全く反するものであろうと思うのであります。  総理はこの間の所信表明演説の中で、地方行革に触れまして、地方行革はあくまでも自治体の自主的な立場でやってもらいたい、こんなふうに述べておりましたけれども、どうも総理のおっしゃることと政府のやっていることとは全く違う、私はそういうふうに指摘せざるを得ないわけでありまして、このことに関する総理の御見解を承りたいと思います。
  261. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 住民が一番地方自治体に求めているのは、一つは地方税を下げてくれ、住民税そのほか非常に高いじゃないかと。それから二番目は、もっと簡素化して親切な行政をやってくれ。これがやはり一番大きいのじゃないかと私は思います。これらはいずれもやはり行革にも関係することでございまして、機構を簡素化させ、そしてできるだけ小さな政府でやってくれということであります。それには国も責任がありまして、いろいろ機関委任事務であるとか、あるいはそのほかのいろんなことで煩わせている面もなきにしもあらずです。ですから、中央と地方の権限、機能の調整、そういうことから始めまして今、できるだけ簡素化した、そして周りのことは住民、自治体でやる、そういう方向に切りかえようと努力しておるところでございます。
  262. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 確かに、住民は地方税の減税、そういったことも要求していることは事実でありま す。しかし、今私が総理に尋ねていることはそういう問題ではなくして、今のこの行革に対してなぜ政府がそういった不当な介入をしなければならないのか、そういうことから考えれば、これは総理の言う自主的な判断で行うという考え方と全く違う、だからこういう不当な介入だけはやめるべきである、そういうふうに申し上げているわけであります。一体、総理は政府と自治体との関係というものをどういうふうにお考えでしょうか。
  263. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) やはり憲法に基づきまして地方自治の本旨に基づいた地方自治行政が行われることが正しいと思っております。ただ、自治省は監督する権限を持っておりまして、政府も地方行革大綱をつくり、その行革大綱に基づいて、地方自治体がおのおの自主的に自分たちの行政改革計画をつくっていただいてそれを実行しているところでございます。自治省としても、その監督権に基づいて、その地方行革大綱及び各自治体がおのおの自主的におやりになっておる行革を推進するようにいろいろ指導助言しておるのではないかと思います。
  264. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 憲法の地方自治の項を十分ひとつお読みいただきたいと思うんです。これは全く基本的に違いますね。指導する、監督をするというようなことは一言も書いてないですよ、憲法の解釈からいきましても。そこが一番間違いなんです。政府と地方自治体というのは、憲法の解釈によれば、あくまでも対等並列にあるのが原則だと書いてあります。それをとかく戦前の教育を受けた人は何か監督的指導的な立場にあるという、そういう間違いを犯すことが非常に多いからここは注意しなければならないというふうに憲法の解釈にはちゃんと書いているんです。だから何をやっても食い違うんです。もう一度お尋ねします。これは基本的に違います。
  265. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 一般的にはそうであります。ですから、地方自治の本旨と申し上げました。しかし、たしか法律の中にも局部的、部分的に地方自治体のやることについていろいろ指導する権限は自治省にもあるのではないかと思いますが、詳細は政府委員から御答弁申し上げます。
  266. 葉梨信行

    国務大臣(葉梨信行君) 地方行革を推進するためには、国におきまして、地方の行革を阻害し地方行財政の膨張をもたらしておりますような制度、政策を見直すことが必要であろうと思います。また、厳しい地方の行財政事情の中で住民のニーズにこたえるためには、地方自治体が足並みをそろえて、総力を挙げて対応することが必要であろう、こう考えるところでございます。そのために自治省といたしましても地方行革大綱を策定したところでございまして、各地方自治体におきましては自主的、総合的に地方行革を推進していただぎたいと要請したわけでございます。具体的に地方行革を推進するためには各地方自治体がみずから自主的に決定し実現をしていくように努めていただきたい、こう考えているわけでございまして、地方自治を阻害するというような意図は一切持っていないところでございます。
  267. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 地方自治を阻害する考えがないというのであれば、足並みをそろえさせること自体をやめるべきだと思うんです。そして自治法の中には指導監督なんというのはないですからね。この問題は、きょうこの問題だけでやるわけでありませんので、地方行政委員会でぜひひとつ、できれば総理にも御出席をいただいて地方自治体の基本的な考え方について一度十分御論議をしてみたい、こんなふうに思っております。  もう一つ行革問題で質問いたします。  最近非常に住民参加ということが自治体の中で叫ばれるようになりました。大変結構なことだと思いますし、総理が言う自主的な面が非常に出ていると思うわけでありますけれども、そういう点で、最近の地方行革大綱の中に住民参加による町づくりということが随分書かれてきておるわけであります。これも自治の精神からいって大変いいことであると思っております。できればこういうことこそ全国的に大いに進めるために奨励をするべきだと考えますけれども、いかがでしょうか。
  268. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 住民参加による町づくりはもとより大賛成でありまして、大いにやっていただきたいと思っております。
  269. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 次に、地方交付税について大蔵大臣に質問いたします。  当初予算に見積もられました地方交付税が四千五百億円も減少いたしました。大変残念なことです。この原因というのは法人税の減収だと思っております。これは明らかに経済成長を四%に見込んだ甘さによるものではないか、そんなふうに考えておりますけれども、そのために昭和五十九年度で中止をしたはずの交付税の特別会計に対する借入金制度、これをまた今度の補正予算で復活をいたしておりますけれども、これはまさに自治体に責任を転嫁するものと考えますが、いかがでしょうか。
  270. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 法人税九千八百十億円、所得税四千二百六十億円等々の減収に基づくもので、御指摘のとおりでございます。  そこで、五十九年度に一たんこういう場合には借り入れをしないというお約束を両省の間でしておるわけでございますから、今度それにもかかわらずこういうことになりまして、借りていただくということにならざるを得ませんでした。これは自治省もよく国の財政を御理解くだすって、ともかくああいう原則原則として、自分の方もそれは理解してやろうというお話であった。もちろんこの利子、金利につきましては国の負担とすることはもとよりでございますけれども、それでもそういうことをお願いせざるを得なかった。自治省に御迷惑をおかけいたしましたが、御理解をいただいて私としては感謝をしておるわけでございます。
  271. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 おととしの一月の十九日に竹下大蔵大臣と田川自治大臣が覚書を取り交わしているわけです。今後絶対にそういう借り入れ制度をやらないと、こういうふうに覚書まで取り交わしているんですけれども、自治大臣が私は一番しっかりしてもらわなきゃ困ると思うんですけれども、この問題についてどうですか。
  272. 葉梨信行

    国務大臣(葉梨信行君) ただいま大蔵大臣からお話がございましたように、昭和六十一年度、所得税法人税の減収が一兆四千七十億円という膨大なものが見込まれるに至りまして、これは大変予想外の事態でございました。この予想外の事態に対応するために、国税三税の三二%分四千五百二億円につきましては、臨時異例の措置といたしまして全額地方交付税特別会計から借り入れることにしたわけでございます。  ただこれは、この利子相当分につきましては全額、ただいま大蔵大臣が御答弁申し上げたように国において措置をされることとなっておりまして、自治省と大蔵省との覚書によります対応と同じように、自治省としての負担は増加するわけではございません。そのように御理解をいただきたいと思います。
  273. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 自治大臣、もう少し自治体の立場をしっかり踏まえて頑張っていただきたいと思うわけです。要望だけしておきます。  それから昨年度と今年度自治体の財源が大幅に不足をいたしました。これは国の補助率の引き下げによるものであります。もしこの補助率の引き下げがなければ地方財政の財源不足はある程度解消されたはずであります。政府は今、国や地方を通しまして個人所得税法人税減税を検討中でありますけれども、社会党といたしましても個人所得税はもっと大幅に減税するべきであると要求を出していることは御存じのとおりであります。問題は、これに伴います地方税、交付税の減収が出てまいります。これを完全に補てんするべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。
  274. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 中央、地方の税制改正がまだどのような形になりますか最終的に決定をいたしておりませんし、またその後に国会の御審議を仰ぐことになるわけでございますが、どのような形になるにいたしましても、地方財政の運営に支障を生じませんようなことはこれはぜひ考えてまいらなければならない。どういう改正になり ますかによりましてその方途は違ってまいると思いますけれども、原則としては、そういうことは支障が生じないようにしなければならないことはもう守ってまいらなければいけないと思っております。
  275. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 過去には、国税の減税に伴う減収の補てん、それから既に発行されている地方債の償還、こういうものは大抵交付税の引き上げで処理をしてきたはずであります。今、地方交付税の特別会計は借入残高が五兆七千億あります。この借入金の返済のために毎年度交付税は大幅に目減りをいたしております。もうこの辺で地方交付税の税率を前例に倣って引き上げるべき時期だと私は思いますけれども、いかがでしょうか。
  276. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 私はどうもそういうふうには考えておりません。仮に現在の制度がそのまま維持されていくといたしました場合に、三二%というものはこれはひとつ、国の財政もこのような状況でございますので据え置かせていただきたい。ただ、今後の税制がどういうふうになりますかということが全く未決定でございますので、そのこととの関連で申し上げることができませんけれども、現行の制度でございましたら、この三二%は、国の財政もこういうことでございますのでひとつ御理解を願いたいと思っているところでございます。
  277. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 国の責任で減税をする、それが地方財政にも影響を及ぼす、その場合には当然今までは税率を引き上げてやってきたんです。だからそういうことを十分考えてほしいということであります。  それからもう一つ。新しい間接税考えているようですけれども、これは自治体の自主財源を吸収してしまう危険性があります。そういう立場からも反対であります。アメリカは個人所得税を大幅に減税いたしましたけれども、その財源は何かといえば、大企業の法人税の租税特別措置の整理によって、その増税で補てんをしてきているわけであります。いかなる間接税もレーガンはやらない、こういうわけであります。中曽根総理はレーガンとは特別親密な御関係にあるそうでありますから私はこういう税制のことをもっと学んでもいいのじゃないかと思うんですが、ちなみに、不公平な税制をただす会の計算によりますと、これは租税特別措置の整理によりまして国税で七兆九千億、地方税で五兆二千億、合わせて十三兆一千億であります。どうでしょうか、不公平税制を私たちとしては整理をするべきだと考えますけれども、いかがでしょうか。
  278. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 洋の東西を問わず、外国の制度でこれはいいと思って日本に適合するものはどんどん勉強していきたいと思っております。不公平税制の是正の問題も臨調答申に指摘されておるところでございまして、今後も努力を続けていきたいと思っております。
  279. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 税制問題につきましてはまだ、特にこの交付税を中心にしていろいろと論議をしたいところでありますけれども、次の問題もありますので、これも改めて地方行政委員会の中で十分にひとつ論議をしたい、こう考えます。  次にアイヌ問題、少数民族の問題についてでございます。  総理は四日の衆議院の予算委員会で我が党の伊藤委員にこういうふうに答弁しております。民族の定義というものは国際的に非常に難しいんで専門家で検討させたい、こう言っております。確かに民族の定義にはいろいろあるようであります。しかし、一般的に社会学的にはアイヌというものは少数民族であるということは、これはもう明らかでございます。これは百科全書、これにも克明に書いております。時間がありませんので省略いたします。  私は、やはり今の問題は、この民族の定義をどうのこうのと言うときではないだろうと思うわけです。権利を奪われているアイヌの方々を少数民族としてまず認めることから始まらなければならない、それが今日の政治的な課題だと私は思うわけでございますけれども、専門家にゆだねるのではなくして、総理御自身のお考えを承りたいと思います。
  280. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) この問題については、前に申し上げましたように、日本民族は、日本列島に先住した民族が長い歴史の中でこの島に渡ってきました南方系、北方系あるいは大陸系の諸民族と混合一体化して形成されたもので、アイヌ民族もまたその中の一つであったと考えられますが、その子孫の方々が現存することは事実であります。そういう人々をいわゆる少数民族と呼ぶかどうかという問題はいろいろの見解があり得ると思いますが、しかしこれらの人々を含め、日本国民は憲法のもとで法的、制度的にすべて平等な権利を保障されておりまして、国際人権規約二十七条に言う権利を否定され、制限された少数民族というものは我が国には存在しないと、こう考えて前から申し上げておるとおりでございます。
  281. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 ということは、少数民族として認めるということですね。端的にお答えください。
  282. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 少数民族という定義が非常に難しいと。民族と言う場合には、単に人種だけの問題ではなくして、さまざまな要素が要るし、また人間の意識というものもありますし、ある程度の人間の数という問題も要るのではないかと思います。そういう意味において今鋭意検討しているところで、この国際人権規約に基づく報告もいずれ来年ぐらいには出す必要があると思いますから、もう一回よく検討するように今政府内部において専門家で研究してもらっておるというところであります。  先般私が申し上げたのは、梅原猛先生の本を私大分読みまして、その中で、日本人とアイヌの皆さんとは非常に融合しておる、そういうような融合しているという学説を紹介申し上げたと、こういうことなのであります。
  283. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 一方的な学説は別にいたしまして、いわゆる社会学的には、当然、一つのある特定の地域に同じような血縁関係にある人が住んでいるものは、これは一つの少数民族として認められているわけですから、そういうことからいけば、これはアイヌの方々は少数民族であるという定義はもうはっきりしていると思うんです。専門家の問題ではありません。これは政治の問題だと私は考えております。  そこで、今自民党の議員の一部に北海道旧土人保護法の名称を改正したいというような動きがあると伝えられております。私は名称だけ変えても問題は解決しないと思うんです。失礼ですけれども、私は中曽根という名前が余り好きでないから今度は宮澤にしようといったところで、本質が変わるわけでもありません。体質が変わるわけでもありません。まあ、総理大臣の名前が変わればまたこれは別かもしれませんですけれども、そういうものだと思うんですね。  だから、今求められているのは何かといえば、アイヌの民族的権利の回復を前提にした人種差別の一掃をするということがまず第一、二番目には民族教育、文化の振興、三番目には経済の自立対策、こういう抜本的、総合的な制度を確立することであろう、こんなふうに思います。ウタリ協会の方々は、北海道旧土人保護法を廃止して、今申し上げたような基本的なことを織り込んだアイヌ民族に関する法律を制定してもらいたい、そういう要求が強く出されております。こういう新法制定に対するお考えを聞きたいと思います。
  284. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私は、アイヌの皆さん方に対しまして、今申し上げたように、法的、制度的に差別があるとは思っておりません。しかし、これは事実上の問題としては、日本人全般についていろいろな人権侵害の事件等もあって、そのために法務省でもいろいろ人権擁護をやっておるわけでございます。そういうものはないとは言えませんけれども、法的、制度的にそういうものがあるとは考えていないのであります。言語も自由でございますし、信仰も自由でございますし、独自の文化を持つことを阻害している要因もないのであります。  そういう考えに立ちましてこの法律を見た場合 に、土人云々と書いてあるというのはもう非常に古い考え方だ、そういう意味で、まず名前が適当でない。それから、内容につきましても今党でいろいろ検討も加えてもらっておる。今、党の検討の結果を待って見ておるというところでございます。
  285. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 関連質疑を許します。粕谷照美君。
  286. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 総理が、単一民族国家論に抗議をしておりますアイヌ団体の質問状に対しまして、はがきでこのような御返事を出されております。その中に書かれました新聞報道の歪曲の部分がアイヌ団体の新たなる反発を呼んでいるわけでありますが、代筆であるということと関連して、責任の問題も非常に論議を呼んでいると思います。返事をいただいた側からすれば、中曽根康弘と書いてあるわけでありますから当然責任は総理にあると、こう考えると思いますけれども、この点についてはいかがでございますか。
  287. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 広い意味で政治家中曽根康弘の管轄の範囲内で起きたことでありますから、そういう意味においては私は責任がないとは申し上げません。
  288. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 国連婦人十年の間に、歴代総理大臣の女性観が大きく問われております。それとこの問題との関連でございますけれども、この問題について記者団がいろいろ総理に説明を求めたというんですか、話し合いをされたんだと思いますけれども、その記事が幾つかの新聞に載っております。そのときに、「いや、まあ女の子が書いたので。事務所長が遺憾の意でも表明するんだろう。」という総理の言葉が書かれているんです。実にリアルで、ああ、そういうことをおっしゃったのかなと思う感じがいたしました。また、総理側近の一人が、どなたかわかりませんけれども、「事務所の女性職員が本人の判断で書いたもので総理は知らなかった」と、こう釈明をして手落ちを陳謝したという記事も載っているわけであります。  これは事実であるかどうかということと関連して、私はこれが事実であれば非常に大変な問題であるというふうに大勢の女性たちが考えているということを申し上げたいと思うわけであります。私のところにも、沖縄からも北海道からも電話がかかってまいりました。まず、何を女性たちが問題にしているかといえば、女性職員のしたことだからそう目くじらを立てる問題ではないさ、あるいは女性はいかにも判断力に欠けているというべっ視の思想がある、こういうふうに怒っているわけであります。また、自分の名前で書かれた手紙のミスを女性に転嫁してマスコミからの免罪符を得ようとしているのではないか、こういう声も相次いでおります。  私は、この電話を聞くたびに、女性はネクタイの色ばかり見ているわけではない、確かな目を持っているというふうに思っているわけでありますけれども、このことについての総理のお考えをお伺いしたい。というのは、ニューススポットの中にありました自治省の新採用、キャリア採用が十六人のうち十六人とも男性である。男女雇用機会均等法の初年度であるにもかかわらず女性がゼロで、しかも大変バラエティーに富んでいるなどと自慢されたのでは大変なことだというふうに思うわけでありますので、総理の女性観をお伺いして質問を終わりたいと思います。
  289. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) あの言葉は、記者団の皆さんから質問がありまして、だれが書いたのかというそれに関連するような話がありまして、たしか調べたら私の事務所の女の子が書いたという話だと。女の子という意味はかわいい女の子という意味がありましてね、男の子が書いたんじゃない、女の子が書いたんだ、そういう意味で、むしろ愛称的意味で言っておるんです。しかしその後私ちょっと、それを言ってから、これはしかられるかなと思って、事務員が書いたんですと、そういうふうに一回そんなことを言ってから後は事務員、事務員という言葉を使っておるんです。それは私はそういう気持ちで、善意で、非常にかわいい女の子が書いたんですと、そういう意味で申し上げたんですけれども、怒られるといけないと思ってそれですぐ直したというのが事実であります。  それから私は何も責任転嫁しようというんじゃないんで、事実を調べてみました。そのときに、その末尾にありましたような言葉を書いた記憶がないと彼女は言っておりました。しかし、いろいろその後調査した結果、書いた事実があったようでありましたので、これを監督しておる事務所長が遺憾の意を表明したと、そういうことでございます。  以上でございます。
  290. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 今の答弁を聞いておりますと、やはりどこか心の隅に女性べっ視のあれはあったんだなと。慌てて取り消したというわけですから、十分ひとつ注意してほしいと思うんです。最後に要望しておきたいと思います。  世界の歴史を見ておりますと、人種の差別をしたり、それから単一民族としての純血を誇りにしてきたような指導者というものはみずからの国と文化を破壊してきている、こう言われております。失礼ですけれども、総理が大変尊敬しておられるそうですけれども、ヒトラー、ムソリーニ、これがしかりであります。日本は今経済大国と言われておりますけれども、経済大国だけではなくして文化国家としても世界に認められるためには、まずやはりアイヌの方々を少数民族として素直に認めることから始めるべきだ、そういうふうに思います。法的には差別はない、こうおっしゃいましたけれども、今総理の言葉の中にも、社会的にはある、こう差別を認めております。そういうアイヌの主権、権利を守る立場での立法措置を十分にひとつ検討されるように要望して、この項を終わります。
  291. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 山口哲夫君の残余の質疑は再開後に譲ることとし、午後三時四十五分まで休憩いたします。    午後二時四十三分休憩      ─────・─────    午後三時四十六分開会
  292. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 予算委員会を再開いたします。  昭和六十一年度補正予算三案を一括議題とし、休憩前に引き続き、山口哲夫君の質疑を行います。山口君。
  293. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 次に、北海道の問題について質問いたします。  御案内のとおり、北海道は今我が国が抱える経済不況のすべての問題を抱え込んでおりまして、重大な危機に直面をいたしております。この根本的な打開策がない限り、日本経済全体に及ぼす影響も非常に大きいという、そういう観点で北海道問題に絞って質問をしたいと思います。  まず、農水大臣にお伺いいたします。  漁業問題ですけれども、ソビエトではスケトウダラが非常にたくさん余っているという話を開いております。それで漁業問題の対策として、日ソ、日米の共同漁業の拡大を図るべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。十一月二十五日から日ソ漁業交渉が東京で始まると聞いております。ぜひ、この共同漁業の拡大について積極的にひとつ主張をしていただきたいと思いますけれども、見解を承りたいと思います。
  294. 佐竹五六

    政府委員(佐竹五六君) 日ソ漁業交渉につきましては、本年度は十五万トンにクォータが減るというような著しい変化があったわけでございまして、そのことを前提にいたしまして、十一月二十五日から漁業委員会が開催されるわけでございます。その漁業委員会におきまして、ソ連側の出方を見まして、今御提案のございました共同事業等についてもソ連側の出方を見ながらこれに取り組んでまいりたい。  いずれにいたしましても、従来のやり方から何かの転換を図る必要は私どもも感じておるところでございまして、そのように取り組みを進めてま いりたいと、かように考えております。
  295. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 相手の出方を見てということですけれども、減船で漁船員の失業というのが相当出るということは明らかであります。したがって、漁師の方々におかに上がって仕事をせいと言う方が無理でありまして、できればやはり漁業の中で生きていく道を考えるべきである、そういうことから考えたら、共同漁業の拡大というのは当然やるべき問題だと思いますけれども、大臣、どうでしょうか。
  296. 加藤六月

    国務大臣(加藤六月君) まだ、これから交渉を開始するわけでございます。それに対してあらゆる方法を、あるいは手段というものを研究し勉強しておかなくてはなりませんが、一つの検討に値する項目であると考えております。
  297. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 次に、通産大任に石炭問題について伺います。  第一は、第八次石炭答申の時期はいつごろになるでしょうか。
  298. 田村元

    国務大臣(田村元君) 大体困難な問題がこなれてきたようでございますから、今日末ぐらいには最終答申になりはせぬかと思っております。
  299. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 続いて大臣に質問をいたします。  現存する炭鉱を最大限に維持存続していくためには、過剰在庫の貯炭、三百四十万トンほどありますけれども、その対策が非常に重要だと思っております。そこで、仮称ですけれども、貯炭買い上げ機構をつくりまして、そして減産補給金制度の手だてを考えるべきだ、そういうふうに考えます。  それからもう一つは、第八次石炭政策の柱というものは、これは国が政策的手だてによる財政措置を講じなければどうにもなりません。そこで、例えば石炭特別会計の前倒しと財源の借り入れを行うべきだと思いますし、西ドイツ方式による石炭の消費税考えるべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。
  300. 野々内隆

    政府委員(野々内隆君) 現在貯炭が急増いたしておることは事実でございますが、貯炭に伴います個々の企業の資金繰りにつきましては、当然石炭企業あるいは親企業の支援も含めまして自己努力で対処するというのが基本であろうかと考えておりますが、各企業の資金繰りの状況を見まして、現在石炭鉱業審議会で検討中の八次策の中でそういう問題も取り上げて御議論いただくことになっておりますので、それを踏まえまして対応策を考えてまいりたいと思っております。  減産補給金制度その他いろいろ御要望がございますが、御承知のような財政状況でございますが、八次答申の中で産炭地対策その他を含めまして御議論いただいておりますので、早急に結論をいただきまして検討してまいりたいと思っております。
  301. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 石炭問題の最後は、自治大臣にお尋ねします。  産炭地の公共事業に対しまして一定の補助率を拡大しているようですけれども、それでも不十分でありまして、せっかく産炭地の振興のためにやった補助金ですけれども、公共事業は自治体が持ち出し財源がないために全然仕事ができないという実態がございます。もっと特別な補助制度を検討するべき時期だと思いますけれども、自治大臣、いかがでしょうか。
  302. 葉梨信行

    国務大臣(葉梨信行君) このたびの補正予算の追加事業につきましては、それのための地方負担分につきまして地方債によりまして措置することといたしております。そして、その元利分につきましては地方交付税に算入することとしておりまして、財源につきましては十分に措置をとっていると考えているところでございます。  特に、財政事情の厳しい産炭地等につきましては、個別にその地域の財政事情をよく聞きまして、追加補正分の事業を含めまして指導をしてまいりたい、このように考えているところでございます。
  303. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 次に、労働大臣に失業問題についてお尋ねします。  失業率は、北海道は四・二%で、全国平均二・八%を非常に大きく上回って、全国一であります。有効求人倍率は、北海道は〇・三四、全国平均〇・六八の半分くらいであります。特に室蘭では、鉄鋼の町ですけれども、〇・二〇、産炭地は〇・二五、極端に低いわけであります。六十二年以降、石炭、漁業、鉄鋼、造船、国鉄、こういう多くの問題を抱えてますます深刻になっていくわけでありますけれども、北海道について抜本的な対策を講じなければどうにもならない実態でありますけれども、労働大臣としてどうお考えでしょうか。
  304. 平井卓志

    国務大臣(平井卓志君) お答えいたします。  御指摘のように北海道は、今二、三の業種の御指摘がありましたけれども、実態を見てみますると、今後北海道の経済の活力ある牽引車となるような産業が見当たりませんで、非常に今後の雇用問題が懸念されておるわけでございます。委員御指摘のように、失業率は現在のところ全国一でございます。そういう中で労働省の対策いかんということになりますると、従来我が国の雇用対策というのは失業者をできるだけ出さないというところに重点がございまして、雇用調整助成金を柱に組んできたわけでございますが、非常に業種が多岐にわたりまして、また今後の見通しも非常に見通しが立たないというわけでございますので、特定不況業種対策、現在の特別措置法がございます、また助成金制度もございますが、これらを弾力的に全面的に機敏に活用しそれだけで事足りるかということになりますと、先般も当委員会で御答弁申し上げましたように、やはり地域の抜本的な雇用開発促進対策が必要であろうということで、総合的な対策といたしましてただいま中央職業安定審議会においても御審議願っておりまするし、抜本的また総合的な対策として次期通常国会にぜひともお諮りいたしたいということで、産業政策とも表裏一体、打って一丸となりました抜本的な雇用対策をただいま検討いたしておるところであります。
  305. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 北海道の不況対策について、今もお話がありましたように、総合的な対策が抜本的に講じられる必要がある、そのとおりだと思うんです。  そこで、今もお話がありました内需拡大についてということで補正予算をいろいろと出されております。私たちといたしましては極めて不十分ではありますけれども、大蔵大臣にお聞きしたいんですが、北海道に対する公共事業の傾斜配分、これだけ北海道は失業者も多いわけですから早急に公共事業の発注を行うべきであるし、そういう意味で傾斜配分をぜひ行ってほしいと思いますけれども、いかがでしょうか。
  306. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) ただいま御指摘のような北海道の実情は各閣僚とも一様によく存じておりまして、今回の歳出追加につきましても、北海道のシェアは当初予算のシェアよりもできるだけ多くするようにということで、現実に多くいたしてございます。また、執行につきましても、所管大臣におかれて、殊に積寒地帯でもございますので、できるだけ早くまたそれにふさわしい、見合ったようなものをということで御配慮を願っておると承知をいたしております。
  307. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 開発庁長官にお伺いします。  北海道では、六十三年度を初年度として北海道の新計画を作成していると言われております。一方、開発庁では北海道の開発計画をこれまた十カ年計画で立案中と聞いております。この際、北海道の新計画を全面的に北海道開発計画の中に織り込むべきである、そう考えますけれども、いかがでしょうか。
  308. 綿貫民輔

    国務大臣(綿貫民輔君) 北海道開発法の第三条にも明記してありますように、開発計画につきましては関係の自治体の意見を申し述べることができるということになっておりますので、これからいろいろと申し出があると思いますが、十分参酌して計画に盛り込みたいと考えております。
  309. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 最後に、総理にお聞きしたいと思います。今各大臣からお話がありましたけれども、本当に北海道の景気不況対策というのは抜本的な対策を講じない限りどうにもなりませんの で、総理としての御決意を聞きたいと思います。そして、来年にはソ連のゴルバチョフ書記長が来日するというふうに聞いております。北方領土問題も極めて重要でありますけれども、道民があすを生きるためには、北海道とソ連は隣り合わせですから、どうしても沿岸貿易拡大と漁業問題を積極的に話し合ってほしいと思いますけれども、決意のほどをお伺いします。
  310. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 北海道は、石炭やあるいは北洋漁業とかあるいは造船あるいは鉄鋼等々において非常な苦難にあることは私もよく承知しておりますし、非常に心配しておるところでございます。公共事業費の配分その他についても重点的にやるようにお願いしているところでございます。我々の失業対策、中小企業対策等も北海道を重点に今後も努力してまいるつもりでございます。  今の漁業問題等につきましても、もしそういう機会があれば私としては十分努力してまいるつもりでおります。
  311. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 最後に、防衛庁長官にお尋ねいたします。  私は十月の十六日に札幌市にあります陸上自衛隊北部方面隊に参りました。社会党の北海道本部、全道労協外三団体の代表と一緒に参りました。目的は、日米共同演習、実動演習の中止を求める申し入れであります。栗原防衛庁長官と井上陸上自衛隊北部方面総監あての文書を持参いたしましたけれども、応対に出ました総務部長が、演習に反対するような文書は受け取れない、こういうことで拒否をいたしました。一緒に参りました者が、これではまるっきり昔の軍隊と同じだと大変みんな頭にきておったわけであります。  こういう総務部長の対応は、請願法第五条、  「この法律に適合する請願は、官公署において、これを受理し誠実に処理しなければならない。」ということに違反していると思いますけれども、いかがでしょうか。
  312. 栗原祐幸

    国務大臣(栗原祐幸君) 事実関係がございますので、まず政府委員から答弁させます。
  313. 友藤一隆

    政府委員友藤一隆君) お答えいたします。  先般の日米共同統合実動演習に際しまして、山口先生の御一行からたしか十月の十六日に北部方面総監部に当該演習の中止の申し入れがございまして、総監部でその申し入れについての御意見はお伺いをしましたものの、申し入れ書の受け取りについてはお断りをしたことは事実でございます。  これについて御説明申し上げますと、現地の部隊としましては、命令に基づいてこの演習を実施しておるということでもございまして、北部方面総監部ではこの演習を中止する権限がないということが一つと、中止というお申し入れであれば、直接この演習の中止権限を持つ長官を補佐する部局に持っていっていただいた方が申し入れの趣旨に沿うのではないかというような判断をいたしまして、そのように申し上げたということを聞いております。文書の受け取りはいたしませんでしたが、お見えになった方々には、お話もお聞きし、御質問等にも十分できる限りお答えをいたしており、またその後その申し入れの趣旨につきましては中央に報告が参っておるところでございます。  しかしながら、御指摘のケースでは、上級のしかるべき機関にこういった申し入れについて伝えよという御趣旨もあったかと思われます。したがいまして、申し入れ書を受け取りまして内部的に送達をするという方法が私どもとしては好ましいとも考えられますので、今後十分な対応をとるように指導してまいりたいというふうに考えております。
  314. 栗原祐幸

    国務大臣(栗原祐幸君) 今政府委員の申したような方法で処理したいと思います。
  315. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 山口君に申し上げます。時間が来ております。
  316. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 あと十秒で終わります。  それでは、全自衛隊に対して今後こういうことのないように指示をするというふうに解釈していいですね。
  317. 栗原祐幸

    国務大臣(栗原祐幸君) 良識の存するところで処理をしろと、こういうようにいたします。
  318. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 以上で山口哲夫君の質疑は終了いたしました。(拍手)  明日は午前九時三十分から委員会開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時四分散会