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1986-11-07 第107回国会 参議院 予算委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十一年十一月七日(金曜日)    午前九時開会     ─────────────    委員の異動  十一月四日     辞任         補欠選任      上杉 光弘君     石本  茂君      沓掛 哲男君     北  修二君      永野 茂門君     杉元 恒雄君      宮崎 秀樹君     金丸 三郎君  十一月六日     辞任         補欠選任      石本  茂君     向山 一人君      田中 正巳君     中曽根弘文君      林 健太郎君     斎藤 文夫君      福間 知之君     渡辺 四郎君      野末 陳平君     秋山  肇君  十一月七日     辞任         補欠選任      森山 眞弓君     寺内 弘子君      林田悠紀夫君     田辺 哲夫君      中西 珠子君     塩出 啓典君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         桧垣徳太郎君     理 事                 佐藤栄佐久君                 原 文兵衛君                 降矢 敬義君                 村上 正邦君                 吉川 芳男君                 野田  哲君                 峯山 昭範君                 内藤  功君                 井上  計君     委 員                 岩動 道行君                 梶木 又三君                 金丸 三郎君                 北  修二君                 斎藤 文夫君                 坂野 重信君                 坂元 親男君                 下稲葉耕吉君                 杉元 恒雄君                 関口 恵造君                 田辺 哲夫君                 竹山  裕君                 寺内 弘子君                 名尾 良孝君                 中曽根弘文君                 永田 良雄君                 鳩山威一郎君                 林田悠紀夫君                 増岡 康治君                 向山 一人君                 森山 眞弓君                 吉村 真事君                 稲村 稔夫君                 粕谷 照美君                 矢田部 理君                 安恒 良一君                 山口 哲夫君                 渡辺 四郎君                 塩出 啓典君                 高桑 栄松君                 鶴岡  洋君                 中西 珠子君                 上田耕一郎君                 吉岡 吉典君                 小西 博行君                 秋山  肇君                 下村  泰君                 青木  茂君    国務大臣        内閣総理大臣   中曽根康弘君        国 務 大 臣  金丸  信君        法 務 大 臣  遠藤  要君        外 務 大 臣  倉成  正君        大 蔵 大 臣  宮澤 喜一君        文 部 大 臣  塩川正十郎君        厚 生 大 臣  斎藤 十朗君        農林水産大臣   加藤 六月君        通商産業大臣   田村  元君        運 輸 大 臣  橋本龍太郎君        郵 政 大 臣  唐沢俊二郎君        労 働 大 臣  平井 卓志君        建 設 大 臣  天野 光晴君        自 治 大 臣        国 務 大 臣        (国家公安委員        会委員長)    葉梨 信行君        国 務 大 臣        (内閣官房長官) 後藤田正晴君        国 務 大 臣        (総務庁長官)  玉置 和郎君        国 務 大 臣        (北海道開発庁        長官)        (沖縄開発庁長        官)        (国土庁長官)  綿貫 民輔君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  栗原 祐幸君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       近藤 鉄雄君        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)      三ツ林弥太郎君        国 務 大 臣        (環境庁長官)  稲村 利幸君    政府委員        内閣審議官    中島 眞二君        内閣法制局長官  味村  治君        内閣法制局第一        部長       関   守君        内閣総理大臣官        房審議官     本多 秀司君        公正取引委員会        委員長      高橋  元君        公正取引委員会        事務局審査部長  樋口 嘉重君        総務庁長官官房        審議官        兼内閣審議官   勝又 博明君        総務庁行政監察        局長       山本 貞雄君        総務庁統計局長  三浦 由己君        北海道開発庁総        務監理官     西原  巧君        防衛庁参事官   瀬木 博基君        防衛庁参事官   古川 武温君        防衛庁参事官   筒井 良三君        防衛庁長官官房        長        友藤 一隆君        防衛庁装備局長  鎌田 吉郎君        防衛施設庁長官  宍倉 宗夫君        防衛施設庁総務        部長       平   晃君        防衛施設庁施設        部長       岩見 秀男君        防衛施設庁建設        部長       大原 舜世君        経済企画庁調整        局長       川崎  弘君        経済企画庁物価        局長       海野 恒男君        経済企画庁調査        局長       勝村 坦郎君        環境庁企画調整        局長       加藤 陸美君        環境庁企画調整        局環境保健部長  目黒 克己君        環境庁大気保全        局長       長谷川慧重君        国土庁土地局長  田村 嘉朗君        法務省民事局長  千種 秀夫君        法務省刑事局長  岡村 泰孝君        外務省アジア局        長        藤田 公郎君        外務省北米局長  藤井 宏昭君        外務省欧亜局長  西山 健彦君        外務省経済局長  渡辺 幸治君        外務省経済協力        局長       英  正道君        外務省条約局長  小和田 恒君        外務省国際連合        局長       中平  立君        外務省情報調査        局長       新井 弘一君        大蔵大臣官房総        務審議官     足立 和基君        大蔵省主計局長  西垣  昭君        大蔵省主税局長  水野  勝君        大蔵省理財局長  窪田  弘君        大蔵省理財局次        長        入江 敏行君        大蔵省銀行局長  平澤 貞昭君        大蔵省国際金融        局長       内海  孚君        国税庁次長    冨尾 一郎君        文部省教育助成        局長       加戸 守行君        厚生省健康政策        局長       竹中 浩治君        厚生省保健医療        局長       仲村 英一君        厚生省保健医療        局老人保健部長  黒木 武弘君        厚生省生活衛生        局長       北川 定謙君        厚生省薬務局長  森  幸男君        厚生省社会局長  小林 功典君        厚生省保険局長  下村  健君        厚生省年金局長  水田  努君        社会保険庁医療        保険部長     内藤  洌君        社会保険庁年金        保険部長        兼内閣審議官   岸本 正裕君        農林水産大臣官        房長       甕   滋君        農林水産省経済        局長       眞木 秀郎君        農林水産省構造        改善局長     鴻巣 健治君        農林水産省農蚕        園芸局長     浜口 義曠君        食糧庁長官    後藤 康夫君        林野庁次長    松田  堯君        水産庁長官    佐竹 五六君        通商産業省通商        政策局長     村岡 茂生君        通商産業省産業        政策局長     杉山  弘君        通商産業省立地        公害局長     加藤 昭六君        通商産業省基礎        産業局長     鈴木 直道君        通商産業省機械        情報産業局長   児玉 幸治君        資源エネルギー        庁長官      野々内 隆君        資源エネルギー        庁次長      見学 信敬君        中小企業庁長官  岩崎 八男君        運輸大臣官房長  服部 経治君        運輸大臣官房国        有鉄道再建総括        審議官      林  淳司君        運輸省運輸政策        局長       棚橋  泰君        郵政省貯金局長  中村 泰三君        労働省労働基準        局長       平賀 俊行君        労働省職業安定        局長       白井晋太郎君        建設大臣官房総        務審議官     渡辺  尚君        建設省住宅局長  片山 正夫君        自治大臣官房審        議官       森  繁一君        自治省財政局長  矢野浩一郎君        自治省税務局長  津田  正君        消防庁次長    山越 芳男君    事務局側        常任委員会専門        員        桐澤  猛君    参考人        日本銀行総裁   澄田  智君        税制調査会会長  小倉 武一君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○昭和六十一年度一般会計補正予算(第1号)(内閣提出衆議院送付) ○昭和六十一年度特別会計補正予算(特第1号)(内閣提出衆議院送付) ○昭和六十一年度政府関係機関補正予算(機第1号)(内閣提出衆議院送付)     ─────────────
  2. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 予算委員会を開会いたします。  昭和六十一年度一般会計補正予算昭和六十一生度特別会計補正予算昭和六十一年度政府関係機関補正予算、以上三案を一括議題といたします。     ─────────────
  3. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) まず、理事会における協議決定事項について御報告いたします。  審査を行う日は、本日七日、十日及び十一日の三日間とし、審査方式総括審議方式とすること、質疑割り当て時間は総計四百十九分とし、各会派への割り当ては、自由民主党及び日本社会党護憲共同それぞれ百十三分、公明党・国民会議六十五分、日本共産党四十八分、民社党・国民連合三十二分、新政クラブ、二院クラブ・革新共闘及びサラリーマン新党それぞれ十六分とすること、質疑順位及び質疑者等についてはお手元の質疑通告表のとおりとすること、以上でございます。  右、理事会決定のとおり取り運ぶことに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  5. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 次に、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  昭和六十一年度補正予算案審査のため、本日、日本銀行総裁澄田智君、税制調査会会長小倉武一君の両名を参考人として出席を求めることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  7. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) それでは、これより順次質疑を行います。安恒良一君。
  8. 安恒良一

    安恒良一君 まず、総理経済見通しについてお伺いをしたいんですが、対前年度比実質四%の達成総理は本当に自信を持たれているのだろうかどうかと。それはこの国会では修正をされないわけですから四%責任を持つと、こういうふうに国民は思いますが、それを裏切ることはないでしょうね。総理の御見解を聞きたいと思います。
  9. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 円高の影響を受けまして景気はやや停滞ぎみはなってきておりますが、しかしいろいろ調べてみますと、内需はかなり旺盛で大体の予想より上回るぐらいで果ております。特に一般消費それから住宅関係、こういう面においてはかなり顕著に伸びてきております。ただ、輸出関係あるいは中小企業等において困難がかなり出てきておる。それで外需の面から非常に落差が出てまいりまして、しかし内需の今の旺盛ぶりを見ますと、内需にはずみをつけてやれば望みなきにしもあらずと、そういうことで今回も三兆六千億円の補正予算を組み、また利子の低下も先般行いまして四%に近づけるべく全力を奮っているというところでございます。
  10. 安恒良一

    安恒良一君 全力を奮っているということですが、経企庁長官に伺いたいんですが、四%の経済見通しは当初から少し無理があったんじゃないか。昨年の暮れに企画庁自身が三%の前半ということを言っていましたし、その当時民間の各経済見通しは三%が非常に多かったわけです。ところが、こういう実態を無視して何らかの意図を持って四%成長を打ち出したのではないだろうかという、この点について経企庁長官のお考えを聞かせてください。
  11. 近藤鉄雄

    国務大臣近藤鉄雄君) ただいま総理からもお話がございましたように、最近の経済情勢内需については大体当初見通しと近い線にいっているわけでございますが、問題はいわゆる海外経常余剰という貿易収支が、輸入の量的な拡大が御案内円高で相当進んでいる、こういうことでマイナスになっているわけでございますので、この対海外経済関係マイナス分内需でどうカバーするか、こういうことだと思うわけであります。したがいまして、当初から私ども経済見通しに無理があったんじゃなしに、ただ当初私ども考えましたのが、為替レート一ドル二百四円で計算をしておったわけでありますが、これは御案内のように相当急激に円高が進みましたのでその分だけがマイナスファクターとして出てくる、こういうことでございますので、これも総理お話にございましたように補正予算総合経済対策、そして公定歩合引き下げといった一連政策をとって外需落ち込み分内需でカバーする、こういうことで当初の目的にできるだけ近づけたい、こういうことでございます。
  12. 安恒良一

    安恒良一君 具体的数字でお聞きしましょう。  九月十日発表されました四―六の国民所得統計では前年比〇・九%増で、これを年率で換算しますと三・六%と、四%を下回っています。そこで、四%達成のためには残りの四半期何%の成長が必要なんでしょうか。そしてそれは年率に換算すると幾らになりますか。
  13. 近藤鉄雄

    国務大臣近藤鉄雄君) 四―六月期前期比〇・九%のGNP伸びでございますので、これで四%経済成長達成するとすれば、機械的に計算いたしますと毎期一・七%の伸びが必要である、こういうことでございますので、年率計算いたしますと七%前後の伸びが必要だ、こういうことでございます。
  14. 安恒良一

    安恒良一君 総理、具体的に言いますとこれから一・七%強だと、しかも年率に直すと七%ないとできないと、これは科学的数字なんです。一方、御承知のように総理東京サミットやそれから東京サミット前の地ならしでアメリカに行かれまして、そこで過大な私は経済見通しを約束されたと思います。これはもう国際的性格を持っていますから、もしもこのとおりいかないと逆に今度は非難が増幅をすると思いますし、また東京サミットでは経済運営相互監視も決まったというふうに私は聞いていますが、今の数字を聞かれて、総理、本当に達成できるんでしょうか。どうでしょうか。
  15. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これは国際公約という性格のものではなくして、我々の昭和六十一年度予算編成についてはそういう数字一つのベースにして努力をしておる、今後も達成に向かって努力をしていきたい、そういう我々の意思の表明であって、相手とこれをやりますといって約束した、そういう性格のものではございません。もとより経済成長がごときものは外国と約束してするような性格のものではないわけです。  そこで、九月以降の情勢を見まして今回一連措置をやったわけでございますが、やはり三つの点で我々はやりました。一つ内需の振興で、三兆六千億円の予算を組み一兆四千億円に及ぶ公共事業費を計上した。第二は金利を下げた。この間公定歩合引き下げをやりました。第三番目は、為替の安定について宮澤大蔵大臣ベーカー長官との間に文書の交換をやりまして、もう大体経済基礎条件を反映するところまで来ている、そういう合意を見まして、これ以上の円高というものは期待しないで、情勢は変わった方向に進行するように我々としては期待している、そういうことでございます。
  16. 安恒良一

    安恒良一君 そこで、いま一つ具体的数字を挙げてみたいと思いますが、ことしの一―三月の国民所得統計成長率は前年比マイナス〇・五%ですね。これは年率に直しますと二・一%に落ち込んでいるわけです。そこで、今総理が言われたように、政府の施策を見ますと、公共事業の契約の前倒し、三月、四月、今度十一月一日に公定歩合引き下げがやられました。今総理がおっしゃったようなことで四%成長ラインに乗るんだろうかということについては、私は今言ったような数字から見ても大変無理があると思うんですが、いま一度この点については、総理経企庁長官、それからきょう日銀総裁にお見え願っていますから、金融政策として今度公定歩合引き下げられました、そういう中から、我が国のこの四%成長についてのお考え方について、日銀総裁のお考えも聞かせていただきたいと思います。
  17. 近藤鉄雄

    国務大臣近藤鉄雄君) 四―六月期の前期比〇・九%という成長率で仮に第二、第三、第四・四半期伸びるといたしますと、機械的に計算いたしますと二・七%六十年度より上がる、こういうことになるわけでございますから、これは機械的な計算の結果でありますけれども、四・〇%から考えますと一・三%マイナスである。これが先ほど申しましたように海外的な要素でダウンしているわけでございます。〇・九%というのもこれも内需で一・九に、外需マイナス一・〇で差し引き〇・九と、こういう数字になっているわけでございますが、そこで一%程度の新たな内需拡大というものがこれからなされればもとへ戻ると、こういう形に計算になるわけでございます。  そこで、三兆六千億の総合経済対策、これはGNP対比一・一%強でございますから、これがどれぐらい年度内に消化されるかということによって、これにいわゆる乗数効果というものを加算いたしますと落ち込み分相当もとへ戻るのじゃないかと、こういうことでございますし、同時に、これも総理からお話がございましたが、公定歩合引き下げによって将来の景気に対する前向きの明るい見通し民間方々がお持ちになる、それから円レートが百五十円台でございましたが、今度は百六十円前半にこれも公定歩合引き下げ等々で推移すると、こういうことになってまいりますと、輸出関連企業の方でもこれから明るい見通しをお持ちになる方々も出てまいると思うわけであります。  こういう国の積極的な内需拡大政策民間投資意欲、そして一般消費者方々のこれも将来の明るい見通しがプラスしていきますと、総合して、先ほど申しましたように、相当な回復が可能になるというふうに考えている次第でございます。
  18. 澄田智

    参考人澄田智君) 私ども日本銀行といたしましては、これまでも成長率見通しについて申し上げたこともございませんし、今回の措置につきまして、直接これをストレートに成長率に結びつけてお答えすることはできないわけでありますが、御承知のように、本年に入りまして過去三回公定歩合引き下げております。今回が四回目でございます。これらの効果が相乗されまして、そうして企業借り入れコストを下げる、あるいは収益に対する見通しを改善するというようなこと、さらには住宅等建設にもそういった金利負担が軽減されるということが促進になるというようなことで、設備投資住宅投資等の増加というようなことによる内需の着実な拡大に資することを期待している次第でございます。
  19. 安恒良一

    安恒良一君 そこで、内需拡大の方に入っていこうと思うんですが、その前に経企庁長官総合経済対策三兆六千億はGNPを来年の三月まで何%押し上げるという計算をされているんですか、来年の三月までですよ、年度内に。
  20. 近藤鉄雄

    国務大臣近藤鉄雄君) この三兆六千億の中心になりますのが、一兆四千億の国が直接関係をしております公共事業であり、これこそまさにただいま補正予算ということで御審議をお願いしているわけでございますが、それにプラスして地方自治体単独事業の八千億、そして一千億の道路公団その他の財投による事業と、こういうことでございますから、二兆三千億は直接国や地方自治体公社公団等で仕事ができるわけでございます。これに電力会社が今年度設備投資を一千百億上積みをしていただきます。さらに、プラスアルファとして来年度の設備計画から一千億前倒しをしていただくとかその他中小企業、いろいろございますが、これがどれぐらい年度内に消化できるかということは、今大蔵大臣初め通産大臣建設大臣、各関係閣僚にできるだけ年度内消化を図っていただきたいということでお願いしておりますから、どれぐらいできるかということは、全力を尽くしてお願いをしているわけでございますので相当なことが年度内消化が可能であると、かように考えておる次第であります。
  21. 安恒良一

    安恒良一君 経企庁長官、そんなことじゃ困る。何%上げると思っていますかと数字を聞いているんです。
  22. 近藤鉄雄

    国務大臣近藤鉄雄君) ちょっと私言い忘れましたが、これに住宅関係設備投資が七千億ということでございますので、これも住宅金融公庫を中心としてできるだけこの消化をお願いしているわけでございますので、これは先生、相手のあることでございますから、ここで計画的に私ども考えて、これは計画だこうだというわけにいかないわけでございますので、ともかく年度内消化努力をする、こういうことでございますし、また政府のそうした施策が民間方々に、いろんな方に影響を与えておりますし、プラス公定歩合引き下げと、こういうことでありますから、国の行う年度内事業の消化と、そして年度内民間方々がこれに対して呼応をして積極的な投資活動をしていただく、こういうことが相まってまいりますと相当な実績を年度内に上げるものと、かように期待しているわけであります。
  23. 安恒良一

    安恒良一君 ちょっと時間のむだです。  私はGNPを何%押し上げるのかということを聞いているのに、相当相当じゃ全然わかりません。
  24. 近藤鉄雄

    国務大臣近藤鉄雄君) なかなか具体的な見通しは立てられないので、例えば国がこれまで発表しております今年度に関するGNP数字としては、お話がございました四―六月期しかないわけでございますね。七―九月期の見通し、データがそろいますのが十二月に入ってからでございますから、そういたしますと、ここで具体的な数字として申し上げられる段階ではない。ただ、あえて申しますと、円高で円ベースの輸出金額は七、八、九、それぞれ二割ぐらいずつ受け取りはマイナスになっているわけでございますから、これが相当なデフレ効果経済に与えておりますが、しかし逆に円ベースの支払いは、もう七、八、九と大体前年同期比三割五分から四割ぐらい減っているわけでございます。したがって、円ベースで言いますと、その水際における円の支払いの減が相当ふえておりますので、毎月毎月一兆二千億から、また最近は相当金額の、例えば九月だけとりますと一兆三千億の円の受取残がふえているわけでございます。したがって、こういうものがこれからの日本の経済に相当大きな影響を与えないはずがないわけでございますので、その正確な数字をここで申し上げるわけにいきませんけれども、繰り返し申し上げておりますように、相当なプラスの効果が期待されるものと私ども考えているわけであります。
  25. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 企画庁長官に申し上げておきます。質問に対して簡明にお答えをするように要望をします。
  26. 川崎弘

    政府委員(川崎弘君) お答えいたします。  ただいま大臣が申し上げましたように、年度間の効果というのは大変難しゅうございますが、一定の仮定のもとにこの対策が一年間どれだけ効果が出るだろうか、定量化できるものだけをとりまして申しますと、波及効果を含めまして四・九兆円、名目GNPの一・五%に相当するものと我々は考えております。ただ、これ以外に定量化できないものがございます。例えば、一兆円の対策規模を持っております中小企業対策、あるいは規制緩和の対策というのはこれは定量化できません。加えまして雇用対策の効果、差益還元の効果、こういったものを含めますと今回の対策の全体としての景気浮揚効果というのは相当程度に上るものと、そういうふうに理解いたしております。
  27. 安恒良一

    安恒良一君 委員長、答えは正確でありません。私は今回の総合経済対策三兆六千億は年度内GNPをどれだけ上げるかと言っている。今の答えは一年と言うんですね、もう年度半分終わっているんですから。それを答えてください。
  28. 川崎弘

    政府委員(川崎弘君) ただいまお答えいたしましたのは、確かに一年間の効果ということで申し上げました。
  29. 安恒良一

    安恒良一君 来年の三月まで。
  30. 川崎弘

    政府委員(川崎弘君) 来年の三月までということになりますと、大変定量化するのが困難な部分というのが出てまいりますということはございますけれども、一・五%を半年間ということで計算をいたしますと、〇・七とか〇・八という数字が出てまいります。しかしながら、これ自体としてはただいま申し上げました一・五%の波及効果を半分にしたということでございますが、実際問題としては、先ほどから長官が申し上げておりますように、できるだけ年度内消化を例えば公共事業等でやっていただく、そういうふうな努力を各省庁にお願いいたしております。そういったものを含めまして、なるべくこの年度内効果を高める努力をやりたい、そういうふうに考えております。
  31. 安恒良一

    安恒良一君 総理経企庁長官を呼んで、その四%達成が無理だと言ったから、しかられたものですからああいう苦しい答弁を一生懸命して時間を費やしているんですよ。それだけ私は言っておく。私はとても半年で、来年の三月までしかないんですから、そんなにGNPを大幅に押し上げる効果はない、こういうふうに思っています。このことを言って、次に入ります。  そこで、内需拡大についてお聞きをしたいんですが、いわゆる政府はさきに総合経済対策、それから今回の歳出の追加一兆四千億の予算補正を行われました。これで本当に国内外からの内需拡大の要請に十分こたえられるというふうに思われますか。要請と実行の間にギャップは起こりはしませんか。これは総理大蔵大臣、お答え願いたいと思います。
  32. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 先般もIMF総会等々がございましたときに、先進何カ国かの幾つかの会議をいたしまして、各国おのおの自分の事情がございますので、その国としてベストを尽くすということに事柄としてはならざるを得ません。いわゆる先ほど安恒委員の言われましたサーベーランスというものもそういうものでございます。そういう意味では、我が国は本当にベストを尽くしておるというふうに外からこれで見られる。そういう意味では、我々のできることをいっぱいやっておるということとお考えいただいて私はよろしいと思います。
  33. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 今回三兆六千億円の補正予算をつくった、あるいは公定歩合引き下げた等々の措置については、アメリカ筋におきましても日本の努力を評価していると、こういう情報を受け取っております。
  34. 安恒良一

    安恒良一君 これも的確に答えていない。そういう要請あるいは実行との間にギャップは起こりはしませんかと、起こらないなら起こらないということでいいんですが。  そこで、少し中身を聞いてみたいと思うんです。まず、総合経済対策、三兆を超える事業規模の中で地方単独八千億ということになっています。これが確実に実施できるだろうかということ。それは、地方財政が今日大変窮屈に各自治体はなっています。ですから、年度後半に八千億の追加事業を実行するということが絵にかいたもちになりはしないか。自治大臣からその点について具体的にお示しを願いたいと思います。
  35. 葉梨信行

    国務大臣(葉梨信行君) 今回の総合経済対策におきまして、公共事業の追加とともに地方単独事業の追加が要請されているところでございます。地方団体におかれましては地域の経済の振興とかあるいは雇用の安定のためにこの追加事業を積極的に行うよう自治省としても要請しているところでございます。総額八千億円でございますが、これは各地方団体の動向などをある程度把握した上計上したものでございますので、総合経済対策の趣旨に沿って積極的に地方団体が対応していただければこの実施は可能であろう、このように考えているところでございます。
  36. 安恒良一

    安恒良一君 これも既に事前に詰めてありますから、具体的数字を説明してください。
  37. 矢野浩一郎

    政府委員矢野浩一郎君) 地方単独事業の追加八千億をどのようにして計算をいたしたかということでございますが、今回の内需拡大策に伴いまして、自治省といたしましても地方自治体にこの趣旨に沿って協力を強くお願い申し上げました。  具体的には、八月末の時点で都道府県について今後の単独事業の追加計上見込み額を調査いたしました。都道府県におきましては、今後の追加計上見込み額、災害復旧事業も含めて千九百八十四億円程度の額が見込まれるということでございました。市町村につきましては、これは多数に上りますので一々把握はできませんが、従来の決算等の実績から見てまいりますと、追加予算における地方単独事業の中で市町村の占める割合は全体の約七割ぐらいでございます。したがいまして、都道府県分が約三割ということに従来の経験値からなるわけでございます。そういうぐあいにして計算をいたしますと、市町村分につきまして一般単独事業で約四千五百十七億、災害復旧事業の単独を含めまして約四千六百億円程度。これらを足しますと普通会計分といたしまして六千六百十億円程度が見込まれる。さらに、このほかに下水道を中心といたします公営企業分がございます。これは、地方債の申請等によりまして大づかみでございますが把握可能でございますので、約千五百億円と見込み、合わせますと八千百十億円と一応、計算をしたわけでございますが、この数字を丸めまして八千億円と、このように私どもとしては全体を推計いたし、この額を総合経済対策として地方団体の単独事業追加として期待をする額と、このようにいたしたものでございます。
  38. 安恒良一

    安恒良一君 自治大臣、推計とか期待をすると言われていますが、私があなたに聞いたことは、具体的に消化ができますかと、できるかできぬかということを答えてください。
  39. 葉梨信行

    国務大臣(葉梨信行君) 地方団体としましては当初予算におきましても地方単独事業につきまして三・五%の増で計上しておりまして、さらに、今財政局長から御答弁申し上げたような段取りでできるであろう、そしてその裏づけとしましての地方債等につきましては十分に配慮していきたい、こう考えているわけでございます。
  40. 安恒良一

    安恒良一君 次に、建設大臣にお聞きしますが、住宅金融公庫の事業規模七千億ということで追加でありますが、私が聞いたところによると、これは融資が決まってから予算成立後三、四カ月たたないとなかなか実行に移れない、こういうことです。既に六十一年度の半ばでありますが、この効果ですね、今自治大臣がお答えになったようなことできちっとできるんでしょうか。
  41. 天野光晴

    国務大臣(天野光晴君) 総合経済対策においては住宅金融公庫の追加事業規模を七千億としています。これは、特別割り増し貸し付けの増額等により六十一年度中に三万戸の申込戸数の増加が見込まれていることによるものであります。公庫の融資は住宅の工事の推進、進捗に応じて資金を交付するものであり、中間資金の交付を経て最終資金の交付までには数カ月を要します。このため、六十一年度内の申し込みではあっても資金交付が一部六十二年度にずれ込むものもあると考えております。  建設省としては、総合経済対策効果が十全に発揮されるよう、募集時期を例年より一カ月繰り上げて十月下旬から実施するとともに、募集期間も約十日間ふやすなどの措置を講じて、できるだけ早く消化のできるような措置を講じたいと思っております。一〇〇%は使い切れないと思います。
  42. 安恒良一

    安恒良一君 なかなか正直でいいですね、一〇〇%は使い切れないということですから。  そこで、さらに中身を詰めていきたいんですが、公共事業費の追加が一兆四千億、これは災害復旧が五千五百億ありますし、そうすると一般公共事業は八千五百億ですか、国の負担分はわずか千三百三十億ですと、一段と小さくなっています。私は政府の苦労がわからぬわけじゃありませんが、GNPが三百三十六兆円の経済規模に比較しますと本当にこれで内需拡大になるんだろうか。私たちは、例えば公共事業だったら五兆円ぐらいやったらどうかとか、減税についても、これは後から減税のところで議論しますが、三兆二千億と、こういうことを私たちは積極的に提案をしているんですが、大蔵大臣総理、本当に内需拡大にこれがなり得るだろうか、そして成長率をきちっとできるだろうか、この補正でと。このことについてひとつお答えを願いたいと思います。
  43. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 補正予算におきまして一般公共事業のために建設国債を出すことになりましたのは、八年ぶりでございましょうか、久しくなかったことでございまして、これは政府の今回の総合経済対策にかけるいわば意気込みといいますか、決意を示すものというふうに私は考えております。もとより財政が許しましたら多々ますます弁ずでございますが、その点は御承知のようなことでございますので、与えられました環境においてベストを尽くしてやったつもりでございます。
  44. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 政府は一方において土光臨調の答申を実行する、そういう考えで進んでおりまして、できるだけ公債をふやさない、公債の借金の利払いを減らす、そういう努力を片一方でやり、片一方では景気をまた上昇させなきゃならぬ、二律背反の中で実はやっておるわけです。その中で両方をある程度満足させつつやるという点で大蔵大臣も非常に努力して、苦労したところでございますが、しかしこれだけのことをやらしていただいて、これを年度内に消化すれば大体所期の目的は達するであろうと。問題は年度内に消化できるかどうかという勝負になってきましたから、関係各省庁、大臣の皆さんにあらゆる努力を払って年度内消化をやるように督促しているところでございます。
  45. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 関連質疑を許します。粕谷照美君。
  46. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 先ほどから安恒委員が質問しておりますように、この補正予算案は内需拡大して景気浮揚のための公共事業費の追加が大きな柱になっていると思いますが、文教関係においても公共事業費性格を持って、しかも国民や地方公共団体から切実に要求されているものがあると思います。例えば子供たちの安全のために老朽化した危険校舎を改築すること、それからいじめだとか非行だとかいろいろと問題の多いマンモス校を分離して適正な規模の学校にすることなどであります。ところが、今度の補正予算案を見てみますと、公立文教施設整備費については追加どころではないんですね、減額になっているのであります。教育条件の改善のためには極めて問題があるというふうに思いますけれども、文部大臣はこの点についてどのようなお考えをお持ちですか。
  47. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) 教育施設の予算伸び悩んでおるということは事実でございまして、非常に残念なことだと思うております。  しかし、御承知のように、教育施設というのは人口の伸び率と合わせて計画的に進めていっておるものでございまして、全体として見ました場合にはそれぞれの需要には適応しておるということでございます。特に、最近では児童生徒が漸減していく傾向にもございますし、市町村におきましてもそれの整備については非常に慎重な態度をとっておる。しかし、一方におきまして大規模修繕事業というのがございますが、これにつきましては、文部省も大蔵省と協議いたしまして大幅にこの点についてはふやしてきておるということでございます。しかし、現在の予算が全体が苦しい中におきまして、我々ももっと積極的に公立学校施設の整備のための予算の獲得には努力いたさなければならないと思うております。
  48. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 教育問題に関連して、文部大臣、大蔵大臣そして総理にお伺いをいたしたいと思います。  小学校、中学校などの義務教育にかかわる費用を国が負担する制度は非常に歴史的に古いものがあります。大正八年と私は記憶をしているわけですけれども、現在の制度は昭和二十八年に発足したというふうに思っております。この義務教育費国庫負担法が果たしてきた役割について、まず文部大臣の御所見をお伺いいたします。
  49. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) この制度は、全国均一の教育を実施していくという点におきまして非常に大きい効果があったと思うております。しかも、これによりまして相互に質的向上も期してこられたと思うておりますし、またさらに、この制度が全国民に公平な教育の場を与えてきた、こういう意味において私は大きく評価しておるものでございます。
  50. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 その文部大臣が大きく評価をされております法律について、八月十六日に某新聞が、そして先週にはNHKの報道がこういうことを言っているわけですね。大蔵省が公立学校事務職員と栄養職員の給与を義務教育費国庫負担法の対象から外すことを決定した、こう言っているわけであります。私は法律の核心に触れる非常に重大な問題であるというふうに思いますけれども、この点について文部大臣はどのようにお考えになっており、そして大蔵大臣はどのようにお考えになっていらっしゃるか、お伺いいたします。
  51. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) 報道機関が報道したことは私もまだ見ておりませんでした。その当時はまだ文部大臣になっていなかったのではないかと思うておりますが。しかし、そういうことがうわさとして言われておることも私は耳にいたしております。しかし、学校事務職員並びに栄養職員というのは、今日におきましては学校運営の基幹職員でございますし、そうであるだけに一般の義務教育関係の国庫負担制度、これにのせておることでございますし、であるとするならば私はこの制度をあくまでも堅持してもらわなきゃ困る。特に昨年の十二月、予算編成時でございましたか、自治大臣と大蔵大臣との間におきまして地方財政と国との関係について覚書がございますが、その中にもこういう基本的な制度については三年間変更しないというのがございます。この精神は、文部省におきます学校運営の基幹職員、これの制度にも私は適用されるべきだと思うて、私はそのように解釈し現にまたそれを信じておるわけでございます。
  52. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 私はただいま、今の問題については何も聞いておりません。いずれにいたしましても、議論になるとすればこれから予算編成過程で議論になるのであろうと思いますが、私としては、今そういう決定をいたしていないのはもちろん、そういう問題をまだ聞いておりません。
  53. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 最後に、それではこのことについての総理大臣の御所見を伺って終わりたいと思います。
  54. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 義務教育は国が責任を持ってやるというふうに憲法でも決められておりまして、これは全国的な教育水準を高め、またこれを均等化するというために大きな力を果たしていると思います。その精神を守って今後とも政策を推進してまいります。
  55. 安恒良一

    安恒良一君 前段の総理の答弁で、問題は年度内消化だと言われました。そこで私たちは、補正予算の提出を野党としては早く出すようにと言ったのですが、非常におくれてしまい、もう積雪寒冷地では工事が非常に難しくなっていると思います。  そこで、北海道、東北地方の事業費の配分、箇所づけ、設計施行はどのようになっていますか。本当に年度内に消化できるでしょうか。また、一般公共事業費の配分で円高不況等の地域別傾斜配分はどうなっていますか。大蔵大臣関係大臣からお答えを願いたいと思います。
  56. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) これは当初から閣議でも各閣僚が関心を持たれた問題でございまして、北海道等々の積雪寒冷地、しかも北海道の場合は経済そのものが非常に落ち込んでいるということがございます。その他円高によるもの、いわゆる企業城下町に関係するもの等々については、早期工事の実施と傾斜配分と両方のことは、閣議が全員実はそういうことについて意見が一致をいたしておりまして、そのように心がけております。  なお、具体的に所管大臣におかれてそのような御配意のもとにただいま作業を進められておると承知をしております。
  57. 天野光晴

    国務大臣(天野光晴君) ただいまの御質問ですが、私多年公共事業を担当しているものですから、一体いつこの予算が上がるのかということで私自身が東北地方ですから心配をしたわけでございますが、なかなか、ここが出すのが遅くてももっとスピードがあればなおいいと思うのですが、ここで仕上げて地方の議会を通さなきゃいけない問題が数多くあるわけでございまして、そういう観点から、十二月に入らないと地方議会は大体開きません。それを繰り上げをしてもらうとか、あるいは予定どおりこれが上がるようでしたら、一日で済むわけですから臨時議会を開いてもらいたいというような要請を今自治大臣にいたしております。  仕事につきましてはなかなか、北海道等本来ならば私は重点的に相当配分をしたかったのであるが、時期的に非常にまずいものですから、そういう観点で北海道地区あるいは寒冷地帯には、作業のできるものを中心に検討をさせましてそれを発注したいと思っております。例えばトンネル、隧道あるいは橋梁、あるいは河川というような関係であります。  それとまた、この予算自体が円高対策で内需拡大のためにつくられた予算でありますから、そういう観点で、我が国の各地における円高によって非常に影響をこうむっている地域、私はこれは点ですから調査するのは難しくないと思いまして、鉄鋼業あるいは造船業、あるいは炭鉱、その他の貿易関係のものの地域で容易でない地域に重点的に配分したいと思いまして作業中でございます。
  58. 安恒良一

    安恒良一君 それでは、地域別傾斜配分については、円高不況問題ですから通産省の方もあるんだと思って聞いたんですが、関係ございませんかこれは、通産大臣
  59. 田村元

    国務大臣田村元君) 実は、私から直接建設大臣にお願いいたしまして、先々週でございましたか、こういう地域をよろしくお願いしたいということで通産省の役人を差し向けまして、大変快く最優先の好意的な箇所づけの扱いを受けておるようでございます。
  60. 安恒良一

    安恒良一君 具体的資料を後でいただきたいと思います。  そこで、今度は財政再建と経済運営について少しやりたいんですが、政府は六十一年度予算審議のとき私たちには、円高のメリットが後半に出る出ると、こう言ったんですね。ところが、どうも後半になっても景気がよくならない。私たちは逆に六十一年から六十二年にかけてはさらに不況色が強まるんじゃないかと思っていますが、ここのところはどういうふうにお考えになっているのか。  それから、いま一つあわせて聞いておきますが、いわゆる景気転換点はいつだっただろうか。二つのことを、総理経企庁長官、それから日銀総裁に来ていただいていますから、日銀の立場から見てこの六十一年から六十二年にかけての我が国の不況ということについてどうお考えか、その点を聞かしてください。
  61. 近藤鉄雄

    国務大臣近藤鉄雄君) 円高メリットにつきましては、私の計算では十兆四、五千億ございま す。これが消費物価また投資物価に反映して物価の安定という形で約五兆円ばかり還元しておりますが、残りのことにつきまして、実は円高メリットは水際で発生したのでありまして、実際末端まで浸透いたしますのには多少時間がかかって、私どもは、半年から九カ月ぐらいということでございますので、これから出てくるものと考えております。  景気の転換点につきましては事務方から説明させていただきます。
  62. 勝村坦郎

    政府委員(勝村坦郎君) お答えをいたします。  景気の転換点という御質問でございますけれども、現在の経済企画庁で行っております景気基準日付につきましては、五十八年春の、底を打ちまして上昇したところの転換点を定めておりますが、その後につきましては転換点がいつであったかということはまだ決定をいたしておりません。  それで、転換ということではございませんけれども、月例経済報告におきましては、今年の八月、それまで緩やかな拡大と申しておりましたものを、拡大という判断を続けられる局面では既にないだろうという判断から、景気の足取りは緩やかなものであるという表現に変えております。  それで、「拡大」を取ればすぐ後退かと申しますと、必ずしも現実の景気判断はそういうふうにはいかないわけでございまして、現在を後退局面と見ているわけではございません。現在は円高によります調整局面が進んでいる段階である、こういうふうに判断をいたしております。
  63. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 企画庁が答弁したとおりでございますが、今までの世論調査を見ますと一番国民が要望していたのは物価でありましたが、最近は物価が三位に転落して、一番は減税、二番が社会福祉、それから物価、こういう意味でやはり円高メリットはかなり浸潤している。卸売物価は昨年に比べて一割も下がってきている、消費者物価は大体昨年と同じぐらいだ、これはもう昭和三十年以来最大の物価の安定期に入ってきている。そういう意味で、これからは実質賃金を維持しつつあるいは拡大しつつ消費の方へ向けていく。消費とそれから民間のサービス関係設備投資それから住宅、これがやはり牽引力になるように努力しておるところであります。
  64. 澄田智

    参考人澄田智君) 円高は、申すまでもなく輸入原材料価格の低下やあるいは物価の安定ということを通じまして企業の収益や個人消費にプラスの効果を持つこと、これは確かでございます。しかし、その前に円高のデフレインパクトの方が先行してあらわれてくるということ、これもまた事実でございまして、そういう点について我々も十分内外の情勢とあわせて総合的に判断をしなければならない、こういうふうに考えてきたところでございます。  年初来、先ほども申し上げましたが、四回にわたる公定歩合引き下げをこれで行ったことになりますが、このための金利の低下によるコストの低下、さらには企業、個人等の心理に与える影響、さらに政府総合経済対策効果が浸透する中で徐々に円高のメリットもさらに出てくるということが期待できますので、こうしたことが今後ことしから明年にかけての景気に好影響を与えてくる、こういうふうに判断をいたしておるわけであります。徐々ではありますが好影響を与える、こう思っております。
  65. 安恒良一

    安恒良一君 私が聞いたのは、円高のメリットだけではなくて景気の動向を聞いたんですが、経済景気の診断というのは私は正確なデータでもっと適切にやらなきゃならぬと思うんです。それを政治的な力によって引きずられて一日延ばしすることはいけない。例えば、今も聞いたんですが、八月の月例報告で拡大という二字が消えたということですが、それで景気転換を察してほしいということなのかどうか。でないと、私はもっと明確に景気が後退しているなら後退をしている、不況なら不況という事態を認めた中でいわゆる不況対策の出発点にしなきゃならぬと思うんです。そういう点でもう少し数字的に、それじゃ経企庁長官、主要経済指標で景気拡大の方向に向いているものと自信を持っているのか。後退面と私は両局面あると思いますから、後退指数、不況感指数、その他説明してください。
  66. 勝村坦郎

    政府委員(勝村坦郎君) 御説明を申し上げます。  御承知のとおり、円高が急速に進展をいたしましたことで、まず需要構造に大きな変化があったことは言うまでもございません。したがいまして、内需はこれまでにもう既に円高のと申しますか、交易条件のメリットというのはある程度出てきているわけでありまして、したがって内需は全般に現在のところ好調である。ただ、内需一つ問題があるとすれば、製造業の設備投資が弱含みになっているという点であろうかと思うわけであります。これに対しまして外需は、輸出は数量で大体横ばい、輸入は数量面でかなりの増加を示している、こういうことでまず需要面でいい部分と悪い部分の乖離がございます。  それに伴いまして、産業構造で、製造業の方が外需の悪さということから非常に大きな影響を受けますので、製造業の方がかなり生産、雇用等、悪い状況になっている。一方、内需は非製造業に対しましてむしろ高い誘発効果を持ちますので、非製造業の方は全般に現在のところ堅調な動きを示しておりまして、例えば最近の設備投資調査などでも、六十一年度につきまして非製造業の設備投資は大体一〇%近くの増加をするというふうに見込まれております。もちろん、これに対しまして製造業の設備投資マイナスである、こういう状況になっておりますし、企業収益等も内需関連企業輸出関連企業というふうに分けてとってみますと、明らかな対照が見られるわけであります。  さらに、雇用面についてもう一点つけ加えますと、現在特に製造業の方で雇用調整の動きが表面化しておりまして、いわゆる雇用調整実施企業割合という統計をとってみますと、これはかなり上昇をいたしております。したがいまして、そういう製造業から非製造業の方に産業構造がシフトし、雇用構造もそれに伴って転換を迫られているということからまいります構造的摩擦というのが相当顕在化しているということは否めないと思います。ただ、雇用動向全般をとってみますと、雇用者の伸び、これは大体一・七%ぐらいの増加を最近持続しておりまして、もちろん内容は非製造業での雇用がかなりふえているということによるものであります。  大体、主要な点は以上のようなことかと思います。
  67. 安恒良一

    安恒良一君 私の手元にいただいています主要経済指標に見られる景気の二面性から見ますと、やはり後退指標が、もしくは不況感が非常に強まっているのが多いんです。しかもこれは今日現在であって、私がお聞きしているのはこれから来年の三月までないし再来年についてどうなるか、こういうことを聞いているわけで、私は非常に景気は楽観を許さない、そして政府の認識は甘い、対応策が非常におくれている、こういうことはまことに政府にとって責任は重大だと思うんです。  ですから私は、素直にそういう点、特に経済景気動向を把握することを素直にやってもらいたいということで次の質問に進みます。  そこで、最後になるのは財政再建でありますが、この点については衆議院におきまして、いわゆる総理宮澤大蔵大臣の間に若干のニュアンスの食い違いがあるようであります。そこで、この際正確にただしておきたいのですが、総理に伺いたいんですが、本当に六十五年度特例公債脱却、財政再建ということは実現できるかどうか、この点をきちっと、それから宮澤大蔵大臣のお考えをお聞かせください。
  68. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) これは私から先に申し上げさせていただきます。  昭和六十五年度において特例公債依存の体質から脱却をするというのが政府の目標でございます。もうここまで参りますとこの目標はなかなか難しい、至難であるということは私も認めておるわけでございますけれども、しかしそれならこの目標を変えるか、看板をおろすかというと、それは現実に財政をやってまいります立場からはそうはまいらない。こういう目標がありますからこそ歳出を抑えていくことができる、また各省庁の方々にも御理解を得てそれをやることができるわけでございまして、これを変えるという考えはございません。それが第一でございます。  衆議院でお尋ねがございましたのは、しかしここまで来るとなかなか容易ではないんだろうから新しい目標を設定したらどうかという、こういうお尋ねがございまして、しかし新しい目標を設定するとすれば、それはどういう環境のもとにどういう目標になるかということについていろいろ議論がございます。いろいろ議論がございましょうから、今新しいものにそれを変えるというそういう現実の問題としては、それはなかなかそれならどうだということについてのコンセンサスは得られないのではないか。そこで私が申し上げましたのは、かなりの時間がたちまして我が国の内外の状況が非常に変わってまいったというときには、あるいはそういう新しい目標を考えることが可能であるかもしれない、そのときには検討するのにやぶさかではございません。ただ、ただいまとしてはそういう状況にない、こういうふうに申し上げておるわけでございます。
  69. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 六十五年度赤字公債依存体質から脱却するということが非常に厳しいということは、もう毎回申し上げておるんです。しかし私は、内外の情勢考えまして、臨調路線を我々は守っていく、そういうことを申し上げているので、この旗はおろしませんと言っておるのであります。例えば電電公社の株式の値がかなりいい値がついておる。これがある程度いい値で売れてくれればこれは減債基金、国債整理基金に入るわけでありますから、一般会計からそこへ入れる金が要らなくなる。そうすれば一般会計に多少余裕が出ます。そういうような今後もいろいろなファクターがありまして、これからの政策のやり方次第によっては必ずしも望みなきにしもあらずである。ともかく必死になってこれは守り抜くべきものであると私は考えております。
  70. 安恒良一

    安恒良一君 それじゃ少し数字的にお聞きしましょう。  五十九年度から今年度まで特例公債発行をどれだけ削減しましたか。それから六十五年度までにゼロにするためにはこれからの三年間でどれだけの削減をやるつもりですか。数字的にお答えください。
  71. 西垣昭

    政府委員(西垣昭君) 特例公債の発行額の数字でございますが、五十八年度当初予算が六兆九千八百億でございます。それで現在の、六十一年度の発行額が五兆二千四百六十億でございますので、その差額、一兆七千三百四十億削減されておるわけでございます。
  72. 安恒良一

    安恒良一君 人の質問に正確に答えを。毎年幾らずつですか。
  73. 西垣昭

    政府委員(西垣昭君) それで、六十五年にゼロにするためにはこの五兆二千四百六十億を四で割りますから、一兆三千百十五億かと思います。
  74. 安恒良一

    安恒良一君 これから毎年一兆三千億ずつやるというその数字だけでも私は不可能だと思います。  そこでさらに数字を聞いていきますが、六十一年度の税収の落ち込みの金額と、それからそれが六十一年度にどれだけの悪影響を与えるのか。また、大蔵大臣に、六十二年度財政の中期展望で見込まれている税収をいわゆる確保できるのかどうか、そこらを聞かしてください。
  75. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 今回の補正予算におきまして計上いたしております不足額は一兆一千二百億円でございます。六十二年度、それからまた六十五年度までの税収につきましては、マクロ的な計算はできる面もございますけれども、具体的に六十二年度予算編成を間近に控えております。これからの経済情勢なりそれまでの税収の動向等を勘案いたしまして見積もるわけでございまして、現時点では正確な見込みは立てられない状況にございます。
  76. 安恒良一

    安恒良一君 質問に答えていない。六十二年度の財政中期展望で見込んだ金額は幾らか。それは入るのかどうか。何も六十五年まで聞いていないんだよ。六十二年を聞いているんだよ。
  77. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 六十二年度の予測につきましての税収だけの見込みは立ちます。それからまた、マクロ的な計算はございますが、今回の一兆一千二百億をもとにいたしました数字としては、現在まだ見込みは可能な状態にはなっておらないということでございます。
  78. 安恒良一

    安恒良一君 結局、今回の落ち込みから財政中期展望で見込んだ四十三兆千二百億はまだ計算ができないと、こう答えてるんですね、大蔵大臣。そういう状況の中で、さらに六十二年度は私は公共事業のいわゆる拡大景気対策、これは重要な課題になってくると思いますね。これは今年度補正したぐらいですから。そういうような中で本当に来年の予算が編成できるんだろうか。私はもう早かったら来年度の予算の編成で財政再建計画は破綻するんじゃないか。来年は何とか糊塗しても、とっても数字的にいろいろ今詰めた数字ではできないと思うんです。だからこそ、あなたもある時期に来たらということで総理に遠慮しながら積極財政の方向を言われているんですが、そこらのことを財政ですからいま少し正直に考えてお答えを願いたい。今言ったように税収、予算その他ずっと考えてきて、来年は何とかごまかしてももうその次は大変なことになるんじゃないですか、宮澤さんどうですか。遠慮なく答えてください、ニューリーダーだから。
  79. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 私は必ずしもそう思っておらないのでございます。ここ何年かの日本経済成長というものはいかにも潜在力が十分にあらわれていない。これは外からのいろいろな影響によるものでございまして、これが日本経済の本来の姿だとは考えておりません。昔のような高い成長があるとは思えませんけれども、もう少しいろいろ条件が整いますといけるはずだというふうに思っておりますから、私は、財政は大変だということはおっしゃいますとおりで、もうそのことは御理解をいただいてまことにありがたいと思いますけれども、しかし決して前途は悲観をいたしておりません。
  80. 安恒良一

    安恒良一君 これ以上は押し問答になりますが、財政再建の目標、財政運営の間に大きな亀裂が出てきて、恐らくポスト中曽根さんの後では完全に違った財政再建方針なり財政運営に変わるだろうと私は思います。このことだけは申し上げておきまして、答弁は要りません。ニューリーダーもたくさんおられますから、どなたがなられるかによっても違うと思いますが、私はそれだけを申し上げておきたいと思います。  続いて、税制に入っていきたいと思いますが、十月二十八日、政府税調の答申が出ましたが、これは所得税の不公平を徹底的に改革するという視点が不十分ではないか。それに加えて、消費、資産課税を加味すれば公平になると、こういうふうに政府税調は考えておるようでありますが、これを受け取られた総理として、これで公平な税制の確立ができるとお考えでしょうか。まず総理のお考えを聞かしてください。
  81. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 政府税調ではいろいろな考え方、それからいろいろな税目を並べまして、多少の所見は入っておりますが、これは選択して御採用くだざいと、そういう趣旨で答申が出ております。  そこで今、党は自民党の内部におきまして党税調でいろいろ議論をして、どういうふうな組み合わせでいくか、どれにはしをつけるか、一生懸命努力している最中でございますので、バランスのとれた税革ということへ前進していけるだろうと思います。
  82. 安恒良一

    安恒良一君 党税調でやっておるという逃げ方をされますが、税というのは具体的な問題ですから少し中身を、そういう抽象的なことでなく中身でお聞きしたいと思いますが、総理は所得税が今回の税制改正の一つの中心であるということを認められています。そこで、所得税をめぐってクロヨン、それから資産優遇、この二つが税に対する不信の大きな根源となっていますが、今度の答申でこれを根絶することができるというふうに総理はお考えでしょうか。
  83. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) クロヨンという実態をそのとおり認めるわけではございませんけれども、確かに事業所得と給与所得との把握に違いがあるということは私は事実であろうと思います。それで、そういう意味では、これは税務執行の面と税制の面と御承知のように両方からございまして、執行の面で申せば、やはり実地調査の励行であるとか、青色申告、白色申告についての指導であるとか、地方とのいろいろ連携であるとか、そういうことをさらにやってまいらなければならないと思っております。税制の面では、やはりそういう不公平感を頭に置きながら、例えば今度政府税調が申しておりますことは、給与所得控除、勤労所得控除につきまして実額控除といったような道を開いてはどうか、あるいは配偶者に対して特別控除を考えてはどうか、それからまた、みなし法人につきまして家族に対する給与の問題等々をどう扱うかといったような幾つかの面並びに所得税そのものの累進構造、税率の刻みを工夫いたしまして、中堅の給与所得者のところの減税分が一番、何と申しますか、いわゆるライフステージによってしょっちゅう、しょっちゅうこの刻みの上へ上がるような状況にないように幅広い税率を設ける、こういったようなことがおっしゃいました問題に対処する制度上の改善案であるというふうに考えております。
  84. 安恒良一

    安恒良一君 そこで、制度上の改善案の中身について少し議論をしたいんですが、実額控除が設けられたというんですが、これは非常に制限的で申告の実益がないというふうに報じられていますし私もそう思うのですが、またこれは一方、事業者の費用認定とは雲泥の差がありますね。これで本当に不公平税制の根源が改められるか、どうもサラリーマンが怒っているからサラリーマンに対する見せかけの対策ではないかと私は思いますが、いかがでしょうか。  それからいま一つ、給与所得者と事業所得者の二本立ての現行所得税制を一本化の方向になぜ改革をしないんですか。そうすることが私は総理が言われているところの簡素、公平、公正のお考えに合うことになると思いますが、なぜおやりにならないんでしょう。この点については、税調の中でどのような議論がされてこういう結論になったのかということについて小倉税調会長からもお聞かせ願いたいし、総理ないし大蔵大臣に、なぜこれを一本化しようとされないのか、このことについて聞かしていただきたいと思います。
  85. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 今回の税制改革作業におきましては、御指摘のサラリーマンとその他の所得者との間の不均衡感の問題、その問題の解消が大きなテーマとされておるところでございます。  一つの論点といたしまして、御指摘のございました実額経費控除制度でございますが、この点につきましては御指摘のような点もございますが、とにかくサラリーマンといたしましては、毎月の源泉徴収と年末調整で完結してしまう、申告する方法がないという点が一つの大きな御不満の点でもあったわけでございまして、そうした申告納税の道を開くというところに私どもは意義があるのではないかと考えておるわけでございます。また、申告所得者とサラリーマンとの税制の一体化につきましては、これも不均衡感、バランス・アンバランスの問題の一つでございますが、その点につきましては、ただいま申し上げましたサラリーマンでございましても御自分で必要経費を算定し、申告納付する道を開くというところが御指摘の税制の一体化の一つの方向でもあろうかと思うわけでございます。また、税制調査会で各種の減税のタイプを四つばかり挙げて具体的に検討されておられるわけでございますが、その中にはそうした御指摘のような思想も含めまして、いろんな観点からそのバランスを回復すると申しますか、維持するような方向での審議が行われたところでございます。
  86. 小倉武一

    参考人小倉武一君) 税制調査会におきます論議について御紹介しましてお答えにかえたいと思いますが、お尋ねの趣旨は、俗にクロヨンと言われておる税制あるいは徴税上の問題からそういう言葉があるわけですけれども、そういう事業者の所得とサラリーマンの所得との恐らく税制上あるいは徴税上のシステムを一本化したらどうかという議論が税調で行われたかどうかというお尋ねでございます。  これはいろいろな面からございまして、クロヨンあるいはトーゴーサンと言われているようなものをなくするという方向で考えるべきだ、そうすればおのずから一本化するという考え方もあると思いますので、そういう議論は従来からございました。今回もそういう議論はございましたけれども、今度の税制調査会の特色といたしましては、そういう一本化ということではなくて、是非の判断はいろいろあると思いますけれども、クロヨンと言われるようなことで示される税制上あるいは徴税上の不公平、不公正というものをサラリーマンの税制改革によって多少手直しをしたい。多少と言うと語弊がありますが、あるいは大いにでもいいわけですが、大いに手直しをしたらどうかという方向で審議が進んだその結果、ただいま主税局長からも申しましたような具体的な措置を提案しておる、こういう次第であります。
  87. 安恒良一

    安恒良一君 小倉さんに重ねてお聞きしますが、二本立てをやはり一本化することが簡素、公平、公正になるという、そういう議論はないんでしょうか。また、そのことについてあなたはどう考えられますか。
  88. 小倉武一

    参考人小倉武一君) 一本化するということは、税調の中の議論を踏まえてお答えしますというと、ちょっとこれはいろいろ差しさわりがあるかもしれませんけれども、例えば事業所得者としますと、白色申告があり、青色申告があり、あるいはみなし法人あり、さらに法人成りがあるというように、各種の税制上取り扱いを別にするという段階といいますか、区分があるわけです。こういうものは甚だおもしろくないから、例えば一番問題はみなし法人かもしれませんが、それを撤廃する。青色申告についても、就業者の所得、月給といいますか、これが青天井であるというのはいかがなものであるかというような議論が相当ございました。それで、そういうものを見直しをすべきだという議論もありまして、そういうことの見直しをするという趣旨が多少出ておったかと思いますけれども、根本的にそれを見直しして改めて一本化するというような意見は余り強くはございませんでした。  私自身は、またそういう一本化ということはある意味においては望ましいですけれども、何といいますか、一つの秩序がもうできておるわけです。個人事業者とみなし法人とそれから法人、そういう秩序ができておりまして、その間にまた青色申告がある。それぞれの秩序ができておりますから、それを根本的に改めるということは、これはなかなか大変であって、また意見としては全くなかったわけではありませんが、そういう方向で税調の答申を取りまとめるというわけにはいきませんでした。
  89. 安恒良一

    安恒良一君 総理のお答えがありませんでしたが、やはり総理がおっしゃる簡素、公平ということからいうと、私はできるだけ早くこの給与所得者と事業所得者の二本立ての現行所得税制度というのは一本化の方向にぜひ進んでもらいたい。そのことが一番早い問題だと思う。このことは意見として言っておきます。  そこで、次に資産優遇、金持ち有利税制を改めなきゃならないのですが、これも大蔵大臣小倉税制調査会長にお聞きしたいのですが、課税最低限で見ますと、夫婦子供二人の標準家庭では給与所得者は二百三十五万七千円、配当所得者の場合は五百十三万六千円。私はこれをやはり同額にする税制改正があってしかるべきだと思うのです。  それからまた、あれほど批判が強かった有価証券譲渡益課税、これは申しわけ程度に、答申では「原則課税を志向すべきである。」。これで本当に課税面での公平感が出るのでしょうか、どうでしょうか。このところひとつ大蔵大臣総理、それから小倉税制調査会長、お答えください。
  90. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 必要がありましたら政府委員から補足をしてもらいますが、まず前段の問題は、つまり夫婦子供二人で所得が配当所得だけであるという場合には、勤労所得と課税最低限が非常に違っている、そのとおりでございます。そのとおりでございますが、これは御承知のように、結局配当所得については千万円までは一〇%の税額控除をいたしておるからでございます。これも御承知のように法人のところで既に課税が行われておるという、法人と個人との調整をそういう形で行うという、これは各国いろいろな意見があり、いろいろな制度がございますけれども、そういう制度の結果であって、それ自身は不公正ということはないと者えておるわけでございます。  それは現行の制度でございますが、もう一つの問題は結局キャピタルゲインの問題でありますが、株式を譲渡しましたときの価格はわかりましても、購入したときの価格がきちんと把握ができるであろうかとか、また現に有価証券取引税が相当高額になっておるとかいうことも恐らく御配慮の上であのような答申になったのではないかと私はお見受けをしておるわけでございますが、なおこの点は税調会長からお話があろうかと思います。
  91. 小倉武一

    参考人小倉武一君) 各種所得の間の不公平というのは、現に今実際の数字をお示しになったようにございます。これは当然一本にすべきでございますけれども、例えば先生のお話しになったことのほかに、事業所得者とサラリーマンとの課税最低限も大変開いておって、事業所得者の方からいえばこれは甚だ不公平じゃないかという意見もたまに聞くことがございます。それらを一体一本化するのが適当かどうかということについても問題がありましょうが、配当につきましては特に把握が一体うまくできるのかどうかという問題もございます。この点についてはしかし答申では、できるだけ均衡がとれるような、公平が実現できるようにできるだけ配当も課税の中に取り入れていくという方針にいたしております。  それからキャピタルゲインでございますが、これもまた配当所得の把握以上に難しいことは御承知のとおりでございまして、この点につきましても一〇〇%はいきなりなかなか困難である、これは有価証券の取引に及ぼす影響等もございますのでよほど慎重にしなければならぬという別段の考慮もございますけれども、目標としてはやはり全額課税対象に持っていくというふうな方向で努力すべきであると、こういうふうに答申ではなっておると思います。
  92. 安恒良一

    安恒良一君 総理、重ねて聞きますが、汗水流して働いたサラリーマンの課税最低限は四人家族の場合に二百三十五万円だと。いわゆる配当だけで食っている四人家族は五百十三万円だと。これで本当に総理がおっしゃっているところの公平、公正、簡素と、こういうことになるんでしょうか。これは非常にサラリーマンから言わせると、汗水垂らして働いているのに余りにも開きがあり過ぎるじゃないか。ここのところどう思われますか、総理。これは総理の御見解です。総理に。
  93. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 配当の場合は、今お話がありましたように法人で取られておる、それからまた個人へ配当が回った場合にまた取られる、そういうような税法上の理論からも来ておるのであろうと思います。問題はサラリーマン、特に中堅サラリーマンを重税感からいかに解放するかという点にあるので、そういう意味において今回は中堅サラリーマン、例えば三百万から九百万、一千万ぐらいまでの方はできるだけ税制は率を同じにして、給料が上がっても税金は上がらない、できるだけそういうようなタイプに改めようという努力政府税調の答申の面でも出てきておりまして、それは非常に貴重な意見であり、我々の党の税調でも今それは検討してもらえるものであると考えております。
  94. 安恒良一

    安恒良一君 私のお尋ねには総理は全然答えられなかったんですが、そこで話を少し進めていきまして、今言ったように金持ち優遇は温存しながら、今度はささやかな庶民の方は、高齢化社会を迎えて老後のためにわずかな預貯金のマル優制度は原則的に廃止の方向が打ち出されている。私はこのマル優廃止には反対であります。こういうやり方ではますます不公平感は拡大をしていく、税制は改悪の方向にいくんじゃないかと思います。  そこでお聞きいたしますが、このマル優廃止について総理はどうお考えですか。それから郵政大臣、いわゆる郵便貯金の少額貯蓄優遇、これはどうするつもりですか。大蔵大臣、国債購入三百万円までの優遇措置、これは廃止するのですか、どうですか。それぞれお答えください。
  95. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) マル優問題でございますが、マル優問題も含めまして政府税調の答申に対する考え方は、今党の税調において真剣な討議がされておるので、党の税調の結論を待って我々はこれを検討し、法案化していく、そういうことを考えておるので、党の税調の結論が出るまでは政府関係としては意見は言わない、そういうことをけさも閣議で私から皆さんに念達したところでございます。やはり政党政治でありますから、党はまず第一にいろいろな考えを決めていただく、そういう立場をとっておるのでございます。
  96. 唐沢俊二郎

    国務大臣唐沢俊二郎君) マル優問題はいろいろな角度から論ぜられておりますが、やはり中心は、日本の経済を支えてきた貯蓄の奨励、貯蓄の優遇の歴史的な使命が終わったかどうか、貯蓄の重要性に変化を来したか、こういう問題だと考えております。日本も公共的な施設はかなり整備されてまいりましたけれども、まだ欧米主要国に比べますと大分差がある。特に下水道の普及率でありますとか、一人当たりの都市公園の面積等を見ますとかなりの隔たりがございますので、今後とも貯蓄を有効に活用して社会資本を充実していく必要があると考えております。  また、今先生言われましたように、長寿社会を迎えまして自助努力による貯蓄の重要性というのは今後むしろ高まっていくのではないかと考えておりまして、やはり国民の多くの方がこの制度の存続を望むのもそのためだと思っております。にもかかわりませず、最近の郵便貯金の動向を見ますと、九月も純減、十月も純減ということになっておりまして、どこにシフトしたか知らないが、これは問題ではないかと考えております。  今総理おっしゃいましたように、この問題は党の税調で御審議をいただいておりまして、いろいろな御意見があることは私も重々承知はいたしておりますけれども、郵政大臣といたしましては、この貯蓄の重要性にかんがみ、また特に十月十六日に出されました郵政審議会の答申の趣旨を踏まえ、郵便貯金非課税制度存続のために今後とも努力してまいる所存でございます。
  97. 安恒良一

    安恒良一君 国債購入三百万は。
  98. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) そこで、これについての意見は総理のその御答弁の枠内で申し上げることになるわけですが、結局政府税調が言われましたことは、非常に大きな金額の利子所得が課税の対象になっていない、所得によって課税されあるいは課税されないというようなことはそこは不公正である。ただし、老人であるとか母子世帯であるとかということについては、これはもう特段の配慮を加えなければならないというのが税調の答申であって、それを今私ども政府・与党の間で検討しておるということでございますが、その場合に国債の優遇はどうなるかということでございますが、これはやはり全体と同じ措置をせざるを得ないと思います。
  99. 安恒良一

    安恒良一君 廃止するのですか、残すのですか、国債について。そこのところを答えてください、前段は要りませんから。残すか、廃止するか。
  100. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ただいま申し上げたとおりであります。ほかのものと一緒の処理をするしか方法がない。
  101. 安恒良一

    安恒良一君 総理は政党政治だからと言われていますが、今お聞きをしましても、郵政大臣はやはり郵便貯金の少額優遇制度は残したい、存続したいとおっしゃっていますね。宮澤さんは総理に気を使われまして、この国債のことは触れてないんですが、右に倣ってと、こういうことですが、どうも私は、例えば今言ったようなことになりますと、優遇策が別々になりますと今度は資金がどこかに偏在をする、こういうことで、金融市場に対する税制の中立性がなくなるというふうに思いますが、総理はどういうふうに裁断をされますか。
  102. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 税の問題については私は非常に注意深い発言をしておりまして、ともかく党の税調でいろいろ全党員が今熱を上げて議論している最中でございますから、その結論を待ってやる。ただし、公平、公正、選択、簡素、それから民活、そういうような趣旨に沿ったバランスのとれた税制改革を実行したい、そう思っております。郵政大臣は郵政審議会の答申をいただいたものですから、これに尊重すると書いてあるものだから、職務上言うのはやむを得ませんが、しかし最終的には我々は自民党の考えに従って行動すべきものであることは当然のことです。
  103. 安恒良一

    安恒良一君 私は、もう少し国会で論議を深めるべきだ。総理は税調をやっているときは税調で逃げられて、そして今度は自民党が始めると自民党と、こう言って逃げる。逃げではいけないと思うんです。国民が一番このことは、きょうも恐らく多くの人がどうなるだろうかと思って心配してテレビを見詰めてくれていると私は思うのでありますが、少しきちっとした答弁をしてほしいということで、さらに中身を進めていきます。今までのことは大変私は不満である。  そこで、総理の税制改革の基本方針、私も何回か総理と議論しましたが、増減税同額ということをいつも言われていましたが、これはいつまで維持されますか。
  104. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 今度の今やっておる税制改革におきましては、何といいますか、レベニュー・ニュートラル、増減税同額、そういうような形でおさめるのがいいと思っております。
  105. 安恒良一

    安恒良一君 そうしますと、いま一つ、これも確認しておきたいんですが、今度のやつはそうだということでありますが、財政再建のために増額をしない、こういう約束もいろいろされましたね。そこで、新型間接税が創設されましても、総理が言われる財政再建期間というのは六十五年度まででありますから、その間は増税がない、増減税は同額の約束を守る、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  106. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 今回の税制改革に当たりましては、先ほど出し上げましたようにレベニュー・ニュートラルという、そういう原則を守ってまいりたいと思っております。将来の問題につきましては、毎年毎年の予算編成において決めていくべき問題であると思い、党とも相談をして行う、そういうことでございます。
  107. 安恒良一

    安恒良一君 そこはやはり後退しているのですが、総理、この前のときは財政再建のための増税はしない、こういう約束をされた。そして、財政再建期間はいつまでか。あなたは、旗をおろさない、六十五年度までやる、あれだけ私との論争で言い切られたんです。  そうしますと、私は未来永劫までということを言っているわけじゃないんですよ、六十五年度の財政再建が完成するまでの間はやはりこれは増減税は同額でやられるんでしょうかと、こう聞いているんです。
  108. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 先ほど来申し上げましたように、また前から私は申し上げているように、今回の税制改革というものは税の増収を目的として行うものではございません、そう申し上げております。今回の税制改革についてはそういう考えでいくつもりでおります。
  109. 安恒良一

    安恒良一君 私の質問にお答えになっておりません。  今回のこと、同じことを二回言われましたが、六十五年度までの分については増減税は同額ですかと聞いているんですが、イエスかノーかを答えてください。
  110. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ともかく党の税調で今やっておることでございまして、その間に私らがいろいろ意見を差し挟むということは適当でない。しかし、私が国会で言明しましたことは守ってまいります。それは、今回の税制改革というものは税の増収を目的として行うものではありません。ゆがみとかひずみとか重税感とかあるいはバランスを回復する、そういう意味において行うのであります。これは一貫してやっていきたいと思っております。
  111. 安恒良一

    安恒良一君 この点、はっきりしませんことは大変遺憾です。  そこで、これは新聞報道で十月二十九日、総理は、減税優先で増税は後だ、こう発言されておりますが、減税優先というのは国民みんなが賛成すると思いますが、減税実施の年次とそれから増税実施の年次、これを明確にお答えください。
  112. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これも前から申し上げておりますようにレベニュー・ニュートラル、そういうことを言っておるので、原則として各年次においてバランスをとる。それで、今回の税制改革をやる心構えとしては、まず減税を決めましょう、そうしてそれに見合う調整措置をどうしたらいいかということを次に決めましょう、そうして包括的一体として税制改革として法律案をつくりましょうと、そういうふうな順序で申し上げておるわけです。
  113. 安恒良一

    安恒良一君 そうすると、新聞報道は間違って、総理の真意を正確に伝えていません、そう受け取ってよろしいですか。
  114. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) もし新聞にそれと違っておることが書いてあれば新聞の報道が間違っている、そう思います。
  115. 安恒良一

    安恒良一君 時間がありませんから、また、これから総理も党の税調でやっておるということで逃げられますから、私は引き続き関係委員会の中で徹底的にこのことを追及していこうと思います。  感想だけ申し上げておきますと、今の論議を聞きますと、税制改革の論議を通じて一つだけ明確になった。それは、どうも国民大衆、サラリーマン等が望む税改革にはほど遠く、多分現行の不公平税制が温存になるのじゃないか。その上に新型、大型の間接税の導入へと道が開かれつつあるのじゃないか。それでは低所得者やサラリーマン層には二重の不公平、不平等を押しつけることになる。そういう危険性があるということだけを私は指摘しておきたいと思います。この点には答弁は要りません。  続いて、雇用問題に入っていきたいと思いますが、まず最初に、失業ということに対する中曽根総理、平井労働大臣の基本的な概念をお聞かせください。
  116. 平井卓志

    国務大臣(平井卓志君) 非常に単純に考えまして、収入の基盤を失うということでございますから、極めて生活的に不安定な状態に置かれます。さらには職業生涯という勤労者の立場から考えますると、やはり職場を通じての社会との連帯というのも断たれるわけでございまして、非常に苦痛を伴う悲しむべき状態ではなかろうかと考えております。したがって、そういう失業をできるだけ予防してまいらなければならぬ、さらには離職した場合には再就職を急がねばならぬ、このことが民生安定の上からも国政の重要課題の一つではあろうかと理解をいたしております。
  117. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 社会人で働く意思があっても働く場所がないという方、そういう状態が失業というものではないかと思います。
  118. 安恒良一

    安恒良一君 私は、基本的概念で失業というのは社会の諸悪の根源であろう、さらに失業問題を放置すると遠からず深刻な社会問題が起きるのじゃないか、こう思いますが、総理、そう思われませんか。
  119. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) そう思います。
  120. 安恒良一

    安恒良一君 では、それを前提にして少し話を進めていきたいと思いますが、最近の失業の状況 について労働省、関係省庁からそれぞれ状況を説明してもらいたいと思います。
  121. 三浦由己

    政府委員(三浦由己君) 労働力調査によりますと、本年九月の完全失業者の数は百六十七万人でございまして、前年同月に比べて九万人増加しております。また、季節調整値で見ました完全失業率は、七月、八月が二・九%、九月が二・八%となっております。
  122. 杉山弘

    政府委員(杉山弘君) 通産省の所管に関して申し上げますと、私どもでは従来厳しい状況にございました石炭、非鉄、アルミといったものに加えまして、最近では鉄鋼におきましてもかなり雇用調整の動きが出てまいっておりますし、また円高で輸出型の中小企業産地におきましても雇用調整の動きがかなり広がりつつあるように思っております。こういったことが先ほど御答弁にありました各種の指標にあらわれていると、かように理解いたしております。
  123. 白井晋太郎

    政府委員白井晋太郎君) 労働省関係の失業指標を申し上げます。  有効求人倍率でございますが、昭和六十年後半以降低下傾向にございまして、六十一年九月には〇・六一倍となっております。
  124. 安恒良一

    安恒良一君 そこで総理、労働大臣、今のような現状認識の上で、円高に伴う雇用、失業面への影響が本格的にあらわれてくるのはこれからだと思います。経済成長率の低下一つをとっても、それから輸出輸入の構造、産業構造の変化、そんなところから、労働大臣、来年の一月から三月において我が国はどういう状態に完全失業率、失業率はどういうふうになっているというふうに予測をされますか、今の現状から。考えを聞かせてください。
  125. 平井卓志

    国務大臣(平井卓志君) 今後につきましては、いろいろな要因がございますが、造船業等の不況業種、特定の地域において雇用調整が本格化してくるというふうに懸念されておるわけでございます。そういう意味で各種の要因に影響を受けまするので、具体的に数字を挙げてどうかと断言申し上げるのは難しいわけでございますが、今の状態でまいりましたら失業率も三%台に達することを懸念いたしておるわけでございます。でありますから、できるだけ正確にこの状態を早く把握しまして機動的に対応することが肝要であろうかと考えております。
  126. 安恒良一

    安恒良一君 私は、完全失業者が二百万台を超えるだろうし、失業率も大臣がおっしゃったように三%台になるだろう、こういうふうに思っています。それに加えて、今通産省からも御説明があったように、加えて国鉄分割・民営化による余剰人員、石炭切り捨ての余剰人員、北洋漁業撤退の余剰人員、それに加えていわゆる素材を中心とした第二次産業の不振、まさにもう海も陸も地下も全部が雇用不安が加わっているわけであります。ですから、こうなりますと、単なるこれまでのミスマッチから生じた失業というとらえ方では安易過ぎると思います。構造的失業へと質的に変わっていくととらえることが正しいだろうと思います。そうなりますと、こういうときこそ雇用量が大幅に減りますから、それに対する対応策をどのように考えられているのか、具体的にお聞かせください。
  127. 平井卓志

    国務大臣(平井卓志君) 絶対的な雇用量の増加が必要であるという御指摘はまさにそのとおりでございまして、そういう意味では単なる労働省の雇用対策以前の問題として、基本的に内需拡大、総需要量をふやし雇用の総量をふやすという基本政策が何よりも必要でなかろうかというふうに考えております。したがって、総合経済対策をそのために決定いたしたわけでございまして、既に委員案内のような雇調金制度等の拡充は十月二十日より既に実施に移しておるわけでございます。また、業種並びに地域からの離職者の発生がふえるということも見込まれておりますので、ただいま御審議願っております補正予算に七百九十三億円の失業給付費を計上いたしておるわけであります。いずれにしましても今後非常に重要なことは、総合的に地域の雇用対策をどこまで抜本的に突っ込んだ対策としてやっていくか、こういうことでなかろうかと思いますので、具体的な検討を急いでおります。
  128. 安恒良一

    安恒良一君 次に私、産業の空洞化という問題で少しお聞きしたいんですが、長期信用銀行の調査によると、三九%の企業円高に始まった昨年の九月以降海外に進出した、もしくは数年以内に進出すると言っているんですが、こういうものの雇用にあらわれる影響、それからいま一つは、同じく産業構造審議会が「二十一世紀産業社会の基本構想」で将来の雇用環境悪化を予測していますが、そういう点についてそれぞれ関係省庁から説明をしてください。
  129. 杉山弘

    政府委員(杉山弘君) 二点のお尋ねがございました。第一点の企業の海外進出に伴う雇用への影響ということでございますが、なかなか統計的な数字でははっきりと把握ができませんが、伝えられますところによりますと、円高によりまして企業の海外投資がかなり前倒しされているというような印象を受けております。これが国内での生産を継続いたしました場合に比べますと、そういう面で国内の雇用に影響が出てくるのは当然のことかと思います。  こういった点について、お尋ねの第二点の産構審の「二十一世紀産業社会の基本構想」でございますが、企業の海外投資によります国内の雇用への影響につきましては、一定の仮定を置いて試算もいたしております。また、その中におきましては、製品輸入の増加があった場合これまた国内の雇用に影響も来しますので、そういった点につきましても一定の前提を置いて試算をした結果を発表いたしているところでございます。
  130. 安恒良一

    安恒良一君 数字を言ってくれと言っているんだよ。
  131. 杉山弘

    政府委員(杉山弘君) はい。  まず、製品輸入の拡大に伴います雇用減少でございますが、これは国内におきます中間財の中に占めます輸入中間財の割合、これが一九八〇年段階では五・二%でございましたので、仮にこの比率を倍にするという前提で試算をいたしますと、国内の雇用につきましては約五十五万人の影響が出てくるという数字がございます。また、製品輸入は中間財だけではなくて完成品もございますので、全消費財及び全設備投資財に占めます製品輸入比率、これが同じく一九八〇年におきまして三・七%でございましたので、この比率を仮に当時倍に上がっていたと仮定をいたしましたらということで計算をいたしますと、これで約五十万人の雇用への影響ということが出てまいります。  それから海外投資につきましては、これから西暦二〇〇〇年にかけまして毎年度の海外直接投資の累積額ベースでまいりまして一二%の伸び率で伸びていくということで仮定をして計算をいたしますと、二〇〇〇年におきまして五十六万人の国内の雇用機会に対する影響が出てくるということを試算いたしておるわけでございます。
  132. 安恒良一

    安恒良一君 今言われただけでも百六十一万人の雇用が減る、総理、こう言われているわけですね。そして既にもう、大企業が海外に出ていきますと中小企業だけ置き去りにされている。そういうことから今度は中小企業が出ていった影響を受けてまたこれを解雇していく、こういう問題が出てまいります。それから大企業自身は今度は国内では一時帰休や雇用調整、こういうことで余剰労働力対策をやっている、こういう状態になっているんですが、この産業の空洞化、こういうような問題について、総理、どのようにお考えでございましょうか。
  133. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 二十一世紀にかけての産業の展望の問題にいたしましてのこれから十年、二十年ぐらいのスパンを考えてみました場合に、やはり製造業というものは日本の産業の中でも重要な位置を占める。鉄鋼にしても造船にしてもその他にしてもそう考えております。鉄鋼とか造船とか、そういうものの基礎の上にコンピューターというものが発達していく。コンピューターが使われるのもそういうものがあって初めて使われる。そういう意味において製造業あるいは三次産業というもののバランスを巧みに得つつ、一歩一歩前進して高度情報社会へ前進していくというのが我々の行く道であります。  一遍に今のように、こうなったらどうなるか、中間財が来なかったらどうなるか、輸出が、輸入が減ったらどうなるかという数字を出せば、なるほど百五十万ばかりのものが出てくるという数字にはなりますけれども、それは一つ計算でありまして、我々が産業政策をこれから持っていくという場合には、今度の国際経済に調和する産業構造の改革ということをやるにいたしましても、そういう雇用問題とのバランスをよく注意しながら一歩一歩前進させていく。片方においてはそのように整理縮小される部分も出てきますけれども、片方においてはコンピューターが出てきたらさらに人が余計要ってくる、そういう部分もあるわけでございます。  そういう、より高度化した方向に我々はさらに雇用分野をふやしていく、科学技術を最大限に活用しつつ伸ばしていく、それが我々の目標でありまして、前進したからといって雇用を切り捨てるとか、そういう考えは毛頭ございません。それでは政策になっていない、そう思っておるのであります。
  134. 安恒良一

    安恒良一君 総理からそういう答えがあったんですが、労働省はこの産業構造審の試算をどう考えておられますか。それから、こういうものをつくるときに労働省も一緒になってこういうものの議論に加わられたんでしょうか。
  135. 白井晋太郎

    政府委員白井晋太郎君) お答えいたします。  今の「二十一世紀産業社会の基本構想」の考えでございますが、今お話しございましたように、国際経済社会との調和のとれた国際分業関係の構築を図る、そして内需中心の高目の経済成長達成しつつ、新たな産業分野の育成に努め、雇用機会の確保を図ろうとするものであるということでございまして、こうした考え方は労働省としても基本的には妥当なものであると考えております。具体的には、その産業政策の実施に当たりまして、特に雇用面への影響に十分配慮して進めていただくことが重要であると考えておりまして、その面につきまして通産省、関係省庁にも常に連絡をとっているところでございます。  お話しの、この問題そのものにつきましては実際に作業に加わっておりませんが、政府一体となって経済政策、産業政策等、関連施策との緊密な連携のもとに実施していくことが重要であるというふうに考えております。
  136. 安恒良一

    安恒良一君 総理、お聞きのとおり、この産業政策と労働政策、連携をとってやってないんですよ。だから総理から言わせると、あれは計算にすぎないと、こういう御議論にこれはなるんですが、この点は注意をちょっと喚起しておきたいと思います。  そこで労働省に、今度の円高で雇用失業情勢が悪化している問題に対する政府の具体的な、今とっておられる、もしくはこれからとろうとする雇用対策について中身を説明してください。
  137. 白井晋太郎

    政府委員白井晋太郎君) お答えいたします。  労働省としましては、円高等による雇用情勢の悪化に対応するために、業種、地域の雇用の実態を的確に把握し、雇用調整助成金制度について業種の指定基準の弾力化等を行うとともに、その機動的な活用により失業の予防を図ること、それからさらに特定不況業種、特定不況地域対策を積極的に推進する等の対策を進めてまいりました。また、先般決定されました総合経済対策におきましても、雇調金の助成率の改善、出向の助成と退職期間の延長等で各種助成金の制度の大幅な改善を図りました。また、出向等の活用や転職のための職業訓練の実施による円滑な産業間、企業間の労働移動の促進等、従来に比べましてかなり思い切った施策を盛り込んでいるところでございます。それで早急に実施するために、十月二十日から実施いたしております。それから不況業種、不況地域を中心としての離職者の増加が見込まれることから、先ほど大臣が申し上げましたが、補正予算において約七百九十三億円の失業給付費の計上をさせていただきました。そのような施策をとっているところでございます。
  138. 安恒良一

    安恒良一君 きょう今お聞きしますと、相も変わらぬ給付行政中心の繰り返しですね。ただ一つ新しくつけ加えたのは、都道府県に臨時雇用対策本部を設置する、これだけなんですね。これは私から言うと一時的な対策にしかすぎない、本当にこれで失業防止やさらに雇用の創出の効果が出るというふうに考えられているんですか。これでどの程度の効果が上がるというふうに、今の失業状況の中で、例えば来年の一―三月には三%を超えるだろう、こう言われていることについて効果が上がると思われますか、大臣御答弁を願います。
  139. 平井卓志

    国務大臣(平井卓志君) ただいま御指摘ございましたように、現在までの対策を労働省の枠組みでやりますると、御案内のように失業の予防に重点を置きまして、あとは離職した場合の中継ぎ、救済、給付、職業訓練、あっせんということでございますけれども、この雇調金制度の活用によりまして私はそれなりにかなり失業の予防に貢献はしてまいったであろうというふうに考えております。ただ、委員御指摘ございましたように、今後大型化してくる、また特定の地域、業種にこういう雇用不安が集中してまいるということになりますると、おっしゃるとおり労働省のみの対策をもって雇用の増加ということは図れませんので、関係省庁との労働政策、さらには経済政策、産業政策の一層一致した今後の対応策が必要ではないかと考えております。
  140. 安恒良一

    安恒良一君 私は、産業の空洞化を初め大量失業時代の十分な対策は今の御答弁では不可能だと思います。そこで押し問答してもしようがありませんので、私の方から抜本的な雇用対策の確立、雇用創出の機会をつくり出すための提言をいたしますので、それについて総理並びに労働大臣にお答えを願いたいと思います。  まず一つは、総理もおっしゃいましたように産業政策と雇用政策が一体とならなければできません。そこで、総理が本部長になられまして大蔵、通産、運輸、建設、厚生、労働等の関係閣僚がお集まりくださいまして雇用対策本部をおつくりになって、そこで抜本的な雇用対策の見直しをおやりになるお考えはございませんか。これが一つであります。  第二番目には、我が国の労働時間は国際的に長いという非難を受けています。目標はヨーロッパ並みの千九百時間と言われていますが、これをやはりスピードを上げるということが一つだろう。と同時に、いわゆる個人の労働時間の短縮と仕事の分かち合いということでワークシェアリング政策を制度的に導入する、これは欧米諸国では既に実施していますが、これを実施する気持ちは総理ございませんか。  それから第三番目でありますが、ここのところは厚生大臣も含めて御答弁願いたいんですが、急速な高齢化社会を迎えようとしています。そこで社会福祉部門の労働力の需要が非常に高まってくるのでありますから、社会福祉部門に労働力を投入するための思い切ったマンパワー政策をやる、それを抜本的に見直してやって、ここで雇用を拡大していくということを積極的におやりになる気はございませんか。    〔委員長退席、理事原文兵衛君着席〕  そして第四番目でありますが、以上の対策をやっても一時的にはやはりまだ失業者がたくさん出てくると思います。そうしますと、その失業者はやはり中高年齢者にどうしても偏ってくる場合があるわけでありますから、私は前の失対事業についてはいろんな意見がありますからあのものそのものをやれと言っているわけではございません。しかし、構造的な失業対策として失対事業的なことを政府の責任において一時考えなければ、例えば今申し上げたように、三%の大台に大きくなったというときには社会不安が起きてくると思いますが、以上の四点を私の方から提起いたしますから、関係大臣のお答え、総理のお答えをお願いしたいと思います。
  141. 平井卓志

    国務大臣(平井卓志君) 御質問が多岐にわたりますので順次申し上げます。  非常に深刻化してくる様相の中で雇用対策を抜本的にやれと、もう御指摘のとおりでございます。ただ、総理大臣を本部長とする雇用対策本部を設けるべきと思うがどうかという御質問でございますけれども、現在、もう御案内のように、通産省と協議をいたしまして構造調整関連対策協議会というものをつくっております。労働省としましては、この構造調整というのはまさしくそのまま雇用調整であるというふうに受けとめておりまするので、今後さらに各関係省庁とも連絡を密にいたしまして、万般総理にも御報告を申し上げて、またそれなりの御決断もいただかなければならぬ、かように考えております。いずれにいたしましても、この問題は政府が一体となりまして強力な対策を推進しろという御趣旨だろうかと解釈をいたしておりますので、提案の御趣旨に沿いまして今後急いで検討を進めたいと考えております。  いま一つの問題は時間短縮、そういう中でワークシェアリングということを制度化できぬかというふうなお尋ねでございますが、これはいろんな観点から申し上げて、時間短縮というのはもうまさしく時代の要請でございまして、少しでも早目に、おっしゃるような形において年間最低千九百時間、これは実労働でございますが、そこまでの切り込みを進めていきたいと考えております。このワークシェアリングを制度化する前にどうしてもやらなければならぬのが時間短縮の浸透でございまして、そういう意味におきましては、労働基準法の改正ということをただいま審議会で御審議いただいておりまして、この結果を待ちまして進めてまいりたいと考えております。  それからもう一つ、今後の労働力の需要面から見ましたら、マンパワー政策と申しましょうか、社会福祉分野に労働力を投入すべきではないかという御指摘でございますけれども、確かに社会福祉部門、さらに健康医療部門等の拡大が今後見込まれておりまして、こうした分野で雇用の拡大を図ってまいりますことは非常に重要な課題であろうと思っております。そういう意味で、これからそういう雇用分野の実態、また必要となります職業能力等について的確に分析をいたしまして、雇用情報の提供、また職業紹介、能力の開発、そういうものを含めて今後社会福祉部門への雇用拡大の誘導策を詳細に検討してまいりたい、かように考えております。  いま一つ、最後の御質問でございますが、端的に申し上げて失業対策的な事業はどうかということでございまして、これはもう委員御専門でございますから私は従来の方策はどうであったかということは申しませんが、労働省としましては、現在、第三セクターを含めた事業所の新増設に対する援助、またそれに伴う雇い入れに対する助成、そういうふうな多角的な援助措置を講じることによりまして、特に地域における雇用機会の開発を図るという観点から、地域雇用対策の抜本的な改善を図ることとして検討をいたしておりまして、次期国会に法整備を図りたいと考えております。いずれにしても、この問題に対する御示唆の点は、今後十分に知恵と工夫が要るのではなかろうかと、前向きに検討したいと思います。
  142. 田村元

    国務大臣田村元君) 今の労働大臣の答弁に少し補足をしたいと思います。  経済構造調整対策推進本部は内閣総理大臣を本部長としておりますが、ここで雇用問題も検討することになっております。当然、総理大臣を本部長とした雇用対策の場があるわけでございます。ただ、たまたま私は御縁があって労働省で政務次官と大臣をやったものですから、労働省の機能、能力、性格等を知り尽くしておるつもりでございます。そこで私は、先般、労働大臣を労働省に訪れました。そうして、辞を低くして協力をお願いしたわけです。    〔理事原文兵衛君退席、委員長着席〕 早速できましたのが両省の事務次官を長とする協議機関、これを常置することにいたしました。  それで、従来、労働省の雇用政策というのは、私の時代ですが、ややともすればいろいろな問題のおしりぬぐいという場合が多かったんです。でございますから、現実に今に対応するという問題と、それから予防的に協議をしていくという問題の両方あると思うのです。もちろん推進本部で雇用対策は十分にすると思いますけれども、それ以上に小委員会的に濃密な協議をしていこうというので、先般第一回の協議をやりまして、両省が問題点を一応全部洗い出した。これからどんどんとこの話は進んでいくと思います。
  143. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) 社会福祉に関するマンパワーの問題でございますが、これから長寿社会へ向かって非常に多様化したニードにこたえていかなければならないと考えております。そのためにお年寄りなどを中心とした社会福祉施設また在宅に関する福祉サービス、これらに関するマンパワーの養成というものは非常に重要なことであると考えておりまして、その養成を図るとともに、職種の資格とか、そういったものにまだ不十分な点がございますので、こういう点も十分検討してこれに対応し、こたえていけるよう確保してまいりたい。そうすることによって、先生御提言のような雇用の創出ということにつながってまいると考えております。
  144. 安恒良一

    安恒良一君 それでは、最後に総理に答えていただく前に、もう一遍今のところを総理、来年の一―三月には二百万人台をオーバーするだろうという見方が強いんですね。そういうときですから、通産大臣と労働大臣だけの話ではだめだろう。それは非常に重要でありますが、やはり運輸とか建設、厚生それから大蔵、こういう関係閣僚がお集まりになってやる。そういうことになりますと、これは横並びになっちゃうんですよ。そこで、これは本部長なり、もしくは本部をつくりたくないとおっしゃるならば雇用対策関係閣僚会議でも結構ですが、全体的な取りまとめ――というのは、残念ながら恐らく我が国が今まで経験したことのない大量失業時代の方向に向かいつつあるのじゃないか。ヨーロッパのようになっては大変なんですから。そのために言うと、どうしてもやはり雇用というのは雇用創出も積極的にやっていかなきゃならぬ。出てきた人を救うということも非常に重要であり、防止も重要。しかし、こちら側から雇用をつくり出していく、総理がおっしゃったように。そういうことになりますと、私は総理にとっては大きな大変な仕事だと思うんですね。  その意味から言うと、雇用対策関係閣僚会議等をやって、それを総理がきちっとやられると名総理になる、こう私は思うのです。そこのところについて、今まで私が時間をかけて雇用の中身について議論をしてきたと思いますから、最終的に総理のお考えをお伺いしたい。  それと同時に、労働大臣には、今までの既存立法だけでは私はだめだと思いますから、次の国会には新しい法律を出すということについても約束をしておいてもらいたい。  以上です。まず総理、どうぞお願いします。
  145. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 御意見はごもっともだろうとは思います。よく検討してみたいと思います。  今までの大臣の御答弁のとおりでございますが、二週間ぐらい前に労働大臣を呼びまして、全国に、地域別に、また時間別に、いつごろ、どの程度、どういう種類の失業が発生するであろうかという雇用対策地図をつくりなさい、それに対応する構えを労働省として自分で案を練って各省庁と協議する準備をしなさい、そういうことを指示しております。これはいわゆる摩擦的失業のみならず、出てくるであろうと予想される構造的失業に対する対策も考えてやっているわけでございまして、それらの労働省の資料が出てまいりましたら、今申し上げたような閣議レベルでこの問題は総がかりでいくべき問題であろう、そう心構えをしております。  労働省に対しては、今まで、出てきたら対応するというのじゃなくて、出る前に推進準備計画をつくっておくように、そういうことで指示しておりまして、これからも御主張の線に沿って努力してまいりたいと思っております。
  146. 平井卓志

    国務大臣(平井卓志君) 先ほども御答弁申し上げましたが、今後の対策といたしましては、特定の業種、また特定の地域に雇用不安が集中する可能性が非常に強いわけでございまして、地域の雇用創出、また雇用の促進、そういう総合的な対策案をできるだけ早急にまとめまして、来国会にお諮りをいたします。
  147. 安恒良一

    安恒良一君 続いて、今度は社会保障関係に入っていきたいと思います。  総理は所信表明演説の中で、活力ある豊かな長寿社会の建設ということで、六月に決定された長寿社会対策大綱に基づいて施策を積極的、総合的にやる、こういうことでありましたが、私は昨年の委員会でも言ったのですが、答申はたくさんできているんだ、実行の段階だ、こういうことを総理にも申し上げたと思います。そこで、これはどういうふうに具体化するのかということについて少し総理のお考え並びに関係大臣、厚生大臣、大蔵大臣に聞きたいのです。  総理がおっしゃったことの具体化のためのタイムスケジュール、それから、たくさんのことが書いてありますからそれの優先順位をつけたプログラム、それからそれに対する財政の裏づけ、こういう点を御説明願いたいと思います。
  148. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) これから迎えます長寿社会が本当に活力ある豊かな、また潤いのある社会でなければなりませんので、それに向かって総合的な施策を長寿社会対策大綱という形で決定をし、これをブレークダウンする形で厚生省といたしましても来年度の予算要求をいたしておるところでございます。  その主なものを申し上げさせていただきますると、これまでの在宅福祉サービスのより一層の拡充。また、老人保健事業等の来年度以降の第二次五カ年計画へのスタート、こういったことを既存の事業の主な点として挙げることができると思うわけであります。また、新規事業としての要求をいたしておりますのは、在宅や介護を要するお年寄りの方々のいろいろな悩みに対応できる総合相談センターというようなものを各地域に設けてはどうか。そして、これを後方で支援する形の中央情報センターというものをつくってまいろうと考えております。  もう一つは、何といいましても福祉と保健、医療というようなものが一体となって総合的に機能していかなければなりませんので、そういう観点から各地域で福祉サービスの調整会議というようなものをつくっていこうというようなことを考えております。  また、痴呆性老人対策につきましてはこれまでも行ってまいりましたが、来年は国立療養所においてそのモデル事業を進めてみよう。また、社会福祉施設いわゆる特別養護老人ホームにおける、痴呆性老人の方々を収容していただいているところに対する措置費の特別加算というようなものも考えてまいろう。また、今後、将来へ向かっての痴呆性老人対策などを中心とした長寿科学の研究の推進というようなことに努めてまいろう。こんなことを来年度新規予算として考えておるところでございます。
  149. 安恒良一

    安恒良一君 この長寿社会対策大綱は、雇用・所得保障システム、健康・福祉システム、学習・社会参加システム、住宅・生活環境システムということで、厚生大臣は自分の分野だけを説明されたんですが、具体的なタイムスケジュール、施策の優先順位をつけたプログラム、財政の裏づけということで関係大臣、財政の裏づけは大蔵大臣なんです。それぞれ御担当があると思いますから、それについてどうされようとしているんですか。ただ単にスローガン的に、抽象的に言うだけではだめなんです。そのことをお聞きしていまして、今厚生大臣は自分のところの今までやったことと今度やることだけを言われたんですが、そういう関係について関係大臣のお考えを聞かせてください。財政の裏づけはどうするのですか。
  150. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) これは長寿社会対策大綱というまさに大綱でございますので、今後社会情勢、またお年寄りの高齢化、またそれぞれの状況の変化、それに応じて大綱の線に向かって逐次各省庁が連携をとり合って総合的に施策が進められるものというふうに考えております。
  151. 安恒良一

    安恒良一君 答えになっていません。タイムスケジュール、優先順位、プログラム、財政の裏づけ。
  152. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  153. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 速記を起こして。
  154. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ただいま厚生大臣が長期のプログラムについていろいろお述べになられました。具体化の段階で私どもの方も御相談をしてまいりたいと思います。
  155. 安恒良一

    安恒良一君 タイムスケジュールとか優先順位、こういうものはどうするんですか、厚生大臣。あなた答えになっていないじゃないですか、抽象的なことばかり言って。できなけりゃできぬとか、できているならできていると答えてください。時間をとるだけじゃないですか。
  156. 勝又博明

    政府委員(勝又博明君) 長寿社会対策大綱の二十一世紀初頭を展望しながら、雇用・所得保障あるいは健康・福祉あるいは学習・社会参加、さらには住宅・生活環境等、広範な分野にわたる経済社会システムの改革の基本的な方向を示した指針でございます。したがいまして、具体的にそういった施策というものは各省庁において展開されていくわけでございますが、内閣といたしましては、今後各年度、各省庁の施策の実施状況についてフォローアップしていくということを考えております。
  157. 安恒良一

    安恒良一君 総理、あなたが所信演説で言われたことは非常にトーンが高いんです。それを実行するためには、総理が命令されまして、そのタイムスケジュールや施策の優先順位ぐらいは御指導していただかないと、各省各省ということで全然答えをしていないんですよ、やっていないんです。やってなけりゃやってないと答えりゃいいんですが、ああいう抽象的なことを言ってこれを逃れようとしておりますから、私はこのことを言っておきます。  そこで、これ以上時間をとるのはもったいないですから、私は財政のところでちょっとお聞きしたいんです。  中長期に考えますと、大蔵大臣、長寿社会対策のための特定財源を導入することをもう考えるべき段階に来ているのではないだろうかと思いますが、この点大蔵大臣どうですか。厚生大臣どうですか。そして、最終的にこれは財源の問題ですから、総理どのようにされようとしますか。
  158. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ただいまの段階では具体的なプログラムなり対策がはっきりいたしておりませんので、お答えできる段階ではないと思います。したがいまして、特定の目的税といったようなものをただいまとしては考えておりません。
  159. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) 御指摘のように、高齢化が進む中で社会保障関係の経費を確実に確保していくということは現在大変難しい状況になっておりまして、毎年毎年大変な苦労と工夫を凝らしておるところでございますが、抜本的にどのようかの制度を考えていく必要があろうかというふうに考えております。ただ、財政的に非常に大きな問題でありますので、政府全体の話にもなると思います。また、その財源をどうするのか、またどういう事業の内容にするのかというような非常に難しい問題がございますので、慎重に、また前向きに検討をいたしてまいりたいと考えておるところでございます。
  160. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 長寿社会対策大綱はかなり長年月を要して実行するものでございます。厚生省においてもその優先順位というものは事務的にも検討しつつあると思いますが、いずれそれらが出てきた場合に、財政裏づけについては各年度予算の編成のときにいろいろ優先順位を考えて取り上げていくべきものである、そう考えております。しかし、まず厚生省の方で大体の優先順位、いわゆる工程管理表というようなものをあらかじめつくって、そしてこの大まかな計画をどう推進するかという展望をつくることは大事であると思っております。
  161. 安恒良一

    安恒良一君 財源のところはなかなか歯切れのいいお答えもないんですが、高齢化社会になるとどうしても国民の負担増は避けられないと私は思うのであります。そこで、高齢化社会において国民が負担する原則をどこに据えるかということだろうと思います。私の主張は、次の三つの原則が必要ではないかと思いますが、大蔵大臣、厚生大臣の御見解をお聞きしたい。  一つは、制度矛盾と不公平をなくした上で負担増を求めていく。二つ目には、社会保険料よりも所得再配分の効果の高い租税を中心とすること。三つ目には、自立自助を盛んにお勧めになりますが、それならばお年寄りや障害者が積極的に参加すると同時に自治権を拡大していく。こういうコンセンサスが得られることによって私は国民負担増ができると思いますが、今私が挙げました三つの原則について大蔵大臣、厚生大臣の御見解を賜りたいのです。
  162. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) ただいま御指摘のありました三点、まず第一の制度間の矛盾、不公平の是正ということでございますが、高齢化が進行するに伴いまして社会保障にかかわる国民負担が増大いたします。増大すればするほど、より一層給付と負担の両面にわたって公平かつ公正であることが重要視されなければならないというふうに考え、私どもも御指摘のとおりだと考えております。  また第二点の、租税を中心にしたらどうかというお話でございます。これはそれぞれの制度の特性に照らしてそれぞれ判断していかなければならない問題であろうと思いますが、社会保障の中心的な柱であります年金、また医療保険ということにつきましては、これまで国民皆保険、皆年金という中で保険方式というものが国民の中に定着してきているのではないかというふうにまず判断されます。またもう一つは、かえってこの保険方式の方が、拠出と給付の関係がそれぞれ皆さんに明確になりやすいのではないかというような点もあろうかと思うわけでありまして、これはいろいろ難しい問題でありますけれども、どちらかといえば、社会保険方式をとっていく中で租税との組み合わせを考えていくというのがいいのではないかと私は考えております。  また、自治権の拡大というようなお話でございますが、これは国民の自立自助を前提として、これを支援する行政サービスというものを進めていかなければなりませんので、これに対応できる地域における体制をつくっていくということが肝心であり、また、いろいろなニードにこたえていくために対象の皆様方の御意見を十分お聞きしていくということが必要なことであるというふうに考えております。
  163. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 第一点と第三点につきましては、ただいま厚生大臣がお答えになられたとおり私も考えております。  社会保障の財源についてでございますけれども、社会保障経費の大宗をなします医療それから年金でございますが、社会保険方式でいくということは、私は国民の理解が現に得られているものと思いますし、これからもそうであろうと思いますので、これはやはり社会保険料を中心とする負担の仕組みは基本的には維持してまいりたいというふうに考えております。
  164. 安恒良一

    安恒良一君 そこで、第一原則についてはおおむね私の考えと同じだと、こうおっしゃったんですが、同じだということならばあなたたちがやっていることにかなり矛盾がありはしないかと思います。例えば、国民健康保険の給付水準が一番悪いところ、それから世帯当たりの保険料が一番高いという事例があるんですが、同じ国民保険の中でも非常に保険料が高いところがあるわけですね。そういう不公平を制度の改革をなさない、それで国保が困っているから国保を助けてやってくれ、こういうことになるわけですね。ですから、老人保健法を今審議していますが、これが通過しましたら国保を助けるという意味で国保の保険料は安くなるんですか。そこのところはどうされるんですか、斎藤さん。
  165. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) ただいま御審議をいただいております老人保健法がそのまま成立すれば国保の保険料が直ちに安くなるかというお話でございますが、直ちに安くなるということではございませんが、ただ、そうでない場合にはもっと保険料が高くならざるを得ないということがございますので、そういう面においては非常に有効に働くと考えております。
  166. 安恒良一

    安恒良一君 いや、私は二つのことを言っているんですよ。国保の給付水準、公平の原則からいうと国保の保険料は非常に高低があるわけですね、世帯当たりの、市町村によって。そういうところもまず直していかなきゃならぬのじゃないですか。国保自体を直していかなきゃならぬのじゃないですかと。そういう状況の中で、サラリーマンの方も加勢せいというなら一つの方法じゃないかということを言っているのです。後で答弁してください。  それから私は保険主義がいいかどうかということについて、所得再配分ということで考えますと、保険料よりも租税を中心にした方がいいことは事実なんです。これは学問的、学説的にもそうだと思う。我が国の現状はこうなっているということだけにしかすぎないんですね。  そこで、私は老人保健法の問題で少しお聞きしたいのですが、老人保健が赤字になったからいわゆる保険料から金を出せということであって、そして税金から出す分はどんどん減らされている。ですから、ちょっと説明してもらいたいのですが、老人医療に占める国費の負担の割合、六十一年度から六十五年度で、中間はいいですから六十一年度と六十二年度、それから六十五年度、改正をした場合、改正後のいわゆる国庫負担の割合を示してもらいたい。それから、同じくサラリーマンの労使保険の割合が、改正した場合、改正しなかった場合、これを六十一年度、六十二年度、六十五年度について説明をしてください。
  167. 黒木武弘

    政府委員(黒木武弘君) お尋ねの数字でございますけれども、国庫負担の老人医療費に占める割合は現行四二%程度でございます。この国庫負担の割合が六十一年度では四〇・五%、六十二年度では三五・四%になります。六十五年度では三四・八%と見込んでおります。  それから被用者の保険料の割合でございますけれども、現行では三〇・六%でございますけれども、これが六十一生度には三二・四%、六十二年度には四〇・三%、それから六十五年度には四一・五%という割合に変化いたします。
  168. 安恒良一

    安恒良一君 総理、今数字を挙げてもらいましたように、国の負担は六十五年度になると七・五%も減るんです。ところが、サラリーマンの方は一〇・九%も、一割以上もふえる、約一一%ふえるんですね。こういうやり方では、いわゆる高齢化社会の負担のあり方というのは間違っているんじゃないか。公平、公正、総理が好きな言葉なんですが、そういう観点から見ても私は今の老人保健法の改悪はこれはぜひとも考えてもらわなきゃならぬし、反対だということを具体的な数字をもって申し上げておきます。  そこで、第三番目の原則はこれは皆さんお認めになったんですが、そうすると厚生大臣、これからこういうことになりますか。例えば、関係審議会にはお年寄りの代表や障害者の代表も入れる、それから関係施設を利用する場合にはそういう代表を入れた施設運営委員会、こういうものが設けられる、それが自治権の拡大だと、そのところに合意ができると思いますが、そういう方向について厚生大臣は御努力される気でありますかどうですか、お聞かせください。
  169. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) 施設におきましては原則的にはやはり施設の管理者が責任を持つべきだと考えますが、そういう中で入所者の意向やらを十分酌み取ってまいるということに指導いたしてまいりたいと思います。  また、いわゆる給付対象者の方面でございますけれども関係審議会等につきましては、先生も御承知のとおりそれぞれそういう代表の方々に入っていただいて今も運営をいたしております。今後ともそういうことを念頭に置いてやってまいりたいと考えております。
  170. 安恒良一

    安恒良一君 次に、SDIの問題について聞いてまいります。  総理、レイキャビクの米ソ会談の成功は世界のみんなが望んだところでありますが、残念ながら土壇場でアメリカのSDI問題がどうしても解決せずに物別れになってしまいました。総理はこの会談の内容と結果についてどういう分析と評価をされていますか。
  171. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) レーガン大統領もゴルバチョフ書記長も真剣な態度で、実らせるべく臨んだと思います。私はその善意を疑っておりません。そして、あの結果は不調ではありましたが、シュルツ長官も、潜在的合意は成立した、そういうことも言っておりますし、ゴルバチョフ書記長も、あれを撤回する考えはない、そういうことを言っておりますから、不到達であったけれども最高のところまで行った、そのレベルから次の交渉を開始する、そういう精神でスタートしていると思います。現にウィーンにおいてシェワルナゼ外相とシュルツ長官がきのうも三時間余にわたって長い協議をやり、専門家の会議もやりましたが、恐らくある段階で、あるポイントで到達しなかったものがあると思うんです。その問題については今後ともうまずたゆまず両方があらゆる機会を通じて努力し合う、そういう場ではないかと考えておりまして、できるだけ早期に合意に達するように私たちも側面的にも協力してまいりたい、それが世界平和の根因である、そういうふうに考えております。
  172. 安恒良一

    安恒良一君 分析と評価の基本的考えを聞いたんですが、その後総理はアメリカ側からどんな報告を受けておられるのだろうか、また米ソ首脳会談の今後の見通しについてどんな説明を総理はアメリカ側から受けておられるのか、お聞かせ願えれば幸いだと思います。
  173. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) アメリカ側からは会談の途中において、また会談後において詳細な説明を受けております。特に我々が非常に関心を持ってアメリカに強調してきたINF、つまり中距離弾道弾の、アジアの犠牲においてこの問題が解決されないようにという日本側の提案を最大限にレーガン大統領は採用して、そしてゴルバチョフ氏との会談に強く主張してくれたようで、この点は高く評価しています。  中間的結論は、ヨーロッパ部はゼロにする、アジア部は百に減らすと言っておりましたけれども、この百という数字は約七〇%の切り下げを意味しておる。アジア部においてどこに置くかというところが問題でありますが、我々の方はアジアとヨーロッパの真ん中に置いてくれ、そういうことを強く言ってきたんです。レーガン大統領はそれを強く主張したらしいです。ですから、ノボシビルスク付近に置いたらどうかということも言っているようですが、ソ連側はその点については賛成しなかったというところであります。私たちは今までの原則にのっとりまして今後とも努力してまいりたい。  今後の展望は、こういう問題はそう一挙に解決できるような問題ではない、それはもう両国の運命を賭するような、また世界的影響力に対しても大きな関係を持つ問題でありますから、何回か何回かうまずたゆまずやり合って、そうして最終的に合意に達するものだ。ちょうどエベレストを登るようなもので、何回かアタックしなけりゃだめだ。しかし、うまずたゆまずこの熱意を失ってはならぬ。両方が熱意を持って交渉を持続しているというところにまた平和が維持されているポイントもありますから、両方が熱意を持って、継続的にうまずたゆまず妥結に向かって努力するように強く要請したいと思っております。
  174. 安恒良一

    安恒良一君 今度は問題のSDIについてですが、政府は去る九月九日、研究参加を決定されました。その際の官房長官談話も読みましたし、また国会のいろいろな議論も聞かせていただきましたが、私は重大な疑問、危険性は何一つ解消していないと思う。  そこで、まずSDIの概念をはっきりさせたいのですが、SDIとは発射された敵方の弾道ミサイルを宇宙においてあるいは空中、地球から攻撃し破壊する兵器システム、これは私の定義づけでございますが、政府側でもっと正確な具体的な定義づけがあればお聞かせください。
  175. 倉成正

    国務大臣(倉成正君) SDIいわゆる戦略防衛構想は、御案内のとおり、今言われているいろいろな、SDIは弾道弾が発射された直後から数段階にわたり弾道弾を捕捉し、非核の防御的手段で順次無力化していく、また自国及び同盟国の安全を図っていく、そして最終的には核兵器の保有を無意味にして、究極的には核廃絶を目指すもの、ハイテク、特に近代技術の発展を基礎として考えられたものでございまして、全体の構想というのはいろいろ言われておりますけれども、今その研究に入っておるわけでございますから、確たる全体の構想というものはまだでき上がっていないと思います。
  176. 安恒良一

    安恒良一君 どうも定義づけ、私はこう思うということを言いながらお聞きしたんですが、わからないですから重ねて聞かせていただきたいと思います。外務大臣、もう少しわかりやすく、SDIというのはこういうものだということを聞かしてください。
  177. 倉成正

    国務大臣(倉成正君) それであれば、もう少しわかりやすく私の意見を申し上げたいと思います。  いわば盾と矛の理論で申しますと、例えば盾は防御、矛は攻撃的兵器ということを考えてまいりますと、現在の平和というのはいわゆる矛、すなわち攻撃的な兵器、しかも核兵器、この核兵器の相互の力の均衡、私は余り好きな言葉でございませんけれども、恐怖の均衡と申しますか、難しい言葉で申しますとMAD――相互確証破壊、そういう言葉で言われているいわゆる矛の理論でやっておるわけでございます。しかし、これはそういうことではなくて、今度は盾の方、防御を中心として考えていく、しかもそれを非核の手段でやっていく、しかも核廃絶を最終的に目指していくというのがこの考え方でございます。したがって、現存の我々の核兵器、今までと根本的に違うのは、相手国の国民や国土に大きな殺傷をもたらすことを目的とするものではなくして、自国の防衛を、非核の手段で核廃絶を目指そう、そういうものでございます。
  178. 安恒良一

    安恒良一君 研究参加を何とか弁護しようと思って持って回って言われて全くわかりませんが、これ以上やってもしようがありませんから私は私なりに中身を進めていこうと思います。  そこで、SDIはアメリカが独自に配備することになっていると思いますが、その防衛の範囲はどうなっていますか。世界じゅうのいわゆる西側諸国全体が対象なのですか、アメリカ国土全体なのですか、それとも米国内の戦略基地が重点なのですか、お聞かせください。
  179. 藤井宏昭

    政府委員(藤井宏昭君) SDIは、ただいま大臣が御説明申し上げましたとおり、研究計画でございます。その研究計画が目指しておるところのものはアメリカ及びその同盟国に対する防衛でございます。
  180. 安恒良一

    安恒良一君 そうしますと、SDIはソ連の二千基以上の核ミサイル、核弾頭にしますと数万発に上る核戦略すべてを撃ち落とすことができる、こういう各種の兵器を配備するものと考えられますが、ヨーロッパを初め世界じゅうの科学者たちはそれは不可能だ、非現実的だと言っています。最近では、やはりアメリカ政府の中でも、戦略核の一部分を破壊して一部分の戦略拠点を防衛する、こういうふうにトーンダウンされていますが、まずこれは米国の戦略核の補強システムになるということであって、核全廃が実現できるというのはうそではないかと私は思いますが、その点はどうですか。
  181. 藤井宏昭

    政府委員(藤井宏昭君) SDIは研究計画でございまして、コンピューター一つをとりましても現在存在する技術の百倍から一万倍の精度が必要と言われております。そのようなものが一体できるのかどうか、それも技術的にできるだけではなくて、経済的その他可能であるかどうかということを研究するのがこのSDIでございます。その目的とするところは、先ほど申し述べましたように、単にアメリカのみならず同盟国も防衛するということでございまして、確かに一部の議論といたしましては部分的に配備していったらいいじゃないかという議論もございますけれども、レーガン大統領もその点について、SDIの目的というのはあくまでアメリカ及び同盟国を守っていくものであるということを申しております。
  182. 安恒良一

    安恒良一君 いや、私が聞いているのは、それでは、ソ連ならソ連の二千基以上、数万発を全部捕捉できる、こういうことになるならば、本当に核の全廃が実現できるのだろうかと、こう聞いているんですよ。
  183. 藤井宏昭

    政府委員(藤井宏昭君) SDIはそういうことができるかどうかを技術的、経済的に研究しているわけでございます。今日そういう技術が存在するわけでございませんので。そういうことが仮にできるとすれば核の全廃につながっていく、それが目的でございます。
  184. 安恒良一

    安恒良一君 仮にできるとすればという仮定でおっしゃいますが、まあ仮にできるとすると、それでは、ソ連側もSDIを突破し得るような新しい核兵器体系の開発や、ソ連みずからがSDIそのものを無力化する、破壊する兵器体系をつくることの開発に本格的に今度は乗り出すことになると思うんですね。ですから、SDIによって配備される宇宙兵器というのは、一方においては何を動力にするかというのは、学者の間ではエネルギー源は、例えば原子力すなわち原爆になると想定されております。そうすると、我々の頭上を何百発もの原爆が通常飛び回る、そしてお互いに今度はそれを空中で爆破し合う、破壊し合う、こういうことにだんだん発展していくんじゃないですか。そうしますと、核軍拡の宇宙への拡大以外の何物でもないと思いますが、その点はどうお考えですか。
  185. 倉成正

    国務大臣(倉成正君) ただいま委員は核の問題だけを中心にお話しでございましたけれども、SDI計画の中での運動エネルギーはカイネティック・エネルギー・ウエポン――KEWまたは指向性エネルギー―― DEW、この二つがございまして、その指向性エネルギーの中の一つにエックス線レーザーというものがあるわけでございますけれども、それをもって全部何かSDIがそういうものであるかのような錯覚を持つとしたらそれは間違いであると思います。
  186. 安恒良一

    安恒良一君 私はこの点はやはり核兵器だ、非核兵器ではないという意味で言っているわけでありますから、その点は間違えないように。  そこで、次のことについて少しお聞きをしておきたいんですが、SDI研究開発計画は米国内でも強い反対がある。特に民主党内でありますが、過日の米ソ会談について、大統領はSDIに固執し過ぎる、貴重な機会を失ったと批判しております。今回十一月四日に行われました米中間選挙の一つの大きな争点になりました。選挙の結果は、民主党が六年ぶりに上院においても過半数を制し、両院を支配することになりましたが、今度の選挙の結果私は、レーガン政権は今後の軍備管理なかんずく戦略防衛構想の推進に大きな制約を受けざるを得なくなるんじゃないかと思います。  そういう場合に我が国のSDI研究参加の対応にも影響が出てきはしないかと思いますが、この点については総理、今度の選挙の結果とSDIの関係についてどのようにお考えでございましょうか。
  187. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) SDIにつきましては、アメリカの共和党、民主党の内部は交錯的意見がありまして、共和党だから全部賛成、民主党だから全部反対、そういうことではないようです。それで、選挙後民主党の今度院内総務になると言われておるバード上院議員が言ったという情報を聞きますと、彼個人はSDIに賛成のようですね。それから民主党はSDIに必ずしも全部反対というわけではない、そういうことを言って、SDIの予算をたしか二十七億ドルですか、今度計上した。あの際にも民主党員で賛成したのもかなりおる。そういう情勢で、SDI自体がアメリカ議会全体として否定されているという状態ではない、そう思っております。したがって、私はあの予算は維持されるであろうし、バード上院議員のその言明をたしかCBSニュースか何かで言ったとか聞いておりますが、間違いでなければ。やはりSDIというものはそのまま継続されるであろう、そう考えております。
  188. 安恒良一

    安恒良一君 総理、都合のいいことだけ聞かれているようですけれども、民主党内には賛成派の人も一部おるでしょうが、反対の意見が非常に多いわけですね。結局、米ソ首脳会談が壊れたのは余りにも大統領がそこに固執し過ぎたからだ、こういうことを民主党としては言っているわけですから、私は今回のいわゆるアメリカの中間選挙の結果この問題についてレーガン大統領がかなり大きな制約を受けることは事実だろうと思います。ですから、そういうところは注意をして見守って対処してもらわないと対処をお誤りになることになると思う。  そこで、この問題の結論ですが、いろいろ議論をしましたけれども、まだ研究開発の段階でわからぬわからぬということで、矛盾点や問題点についてはいわゆる明確なお答えがありませんでした。大変残念に思います。しかし、私は当初から申し上げましたように矛盾性や危険性が非常に多いと思いますが、中曽根総理は米ソの相互確証破壊という、抑止と均衡か平和の条件であると主張されてきています。SDIはその現状をさらに新たな軍拡で覆すものだと私は思うんです。それに日本が参加協力する。それは一層世界を不安定化するし、世界の不安定化に日本が寄与することになるだろう。だからむしろ日本は今の現状を、おおむね均衡が成り立っていると言われています、でありますから、この現状認識の中で、まず核軍拡を凍結する、続いて通常兵器の削減も含めた大幅な軍縮を世界的な規模で行う。すなわち、世界の非核国やその他の中小国と力を合わせてそのことを米ソに迫る、そしてこの米ソ会談を成功させる、こういうイニシアチブを総理が発揮されるのがいいのではないだろうかと思います。中曽根総理のやられる方向はどうも少し方向が間違っていると思うんですが、私の考え方についてどうでしょうか。
  189. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 今おっしゃられましたことも一つの御見識であると思います。  しかし、今度の米ソ会談というものを見ますと、まず昨年の一月以来のジュネーブ会談、軍縮交渉が再開されたのは何であるかというと、どうもSDIという問題があるからである。それから米ソ首脳会談が合意されたのも、ソ連側からはSDIをやめさせたいためにそれが合意された。今度レイキャビクで急に首脳会談が行われた。それで、レイキャビクでは潜在的にかなり核兵器をやめるというところまで前進した。例えば長距離弾道弾については最初の五年で半分に減らしちゃおう、残りの五年で全部やめちまおう、INF、中距離についてもヨーロッパ部はやめる、アジア部は百に減らす、そういうような合意ができて、凍結どころじゃない、思い切って減らす、そしてなくす、そういうところまで潜在的合意ができたというのは、どうも一面においては片方はSDIをやめさせたいという意図からそういうのが来たんじゃないか。やめるかやめないか、あるいはABM条約を逸脱するかしないかとか、ABM条約の解釈あるいは運用等の、あるいは条約を改正するという、そういう微妙な点で最終的に合意が成立しなかった。そういう意味から見ますと、やはりSDIというものは何らかの作用を持っておって、そしてそれが核兵器全廃に向かっての一つのてこになりつつあるということは言い得ると思うんです。また、それによって核兵器を全廃するための検証、現場へ行って確めてみる、そういうところまで前進してきた一つのてこにもなっている。  そういう意味において、私は核兵器を全廃させたいと思っておりますから、このSDIというものについては、そういう点からも注目しておるところでございます。でありますから、今までの政府の立場はそのまま堅持してまいりたいと考えております。
  190. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 安恒良一君の残余の質疑は午後に譲ることとし、午後一時まで休憩いたします。    午前十一時五十五分休憩      ─────・─────    午後一時二分開会
  191. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 予算委員会を再開いたします。  昭和六十一年度補正予算三案を一括議題といたします。  休憩前に引き続き、安恒良一君の質疑を行います。安恒君。
  192. 安恒良一

    安恒良一君 これから地価対策、平和相互銀行問題、防衛施設庁の基地周辺の住宅防音工事問題等について聞きたいのでありますが、私の時間は九分しかありません。そこで、質問通告をいたしておきましたが、ポイントのところだけを聞かしていただくことをまずおわびをしておきます。そして、これらの問題は引き続いて私は予算委員会で追及していきたいと思います。  まず、平和相互銀行問題について簡単に聞きますからお答えを願いたいんですが、平和相互銀行の関連事件は捜査が終了したと言われていますが、私が問題を提起しました金まき絵びょうぶ「時代行列」四十億の流れについては全然解明が行われておりません。このことについては、マスコミ界はもとより、検察庁の内部でも疑問の声が出ていますが、なぜこの事件を解明しようとしなかったのか、何か大物の立場を遠慮して捜査をやらなかったのか、法務大臣、お答えを願いたいと思います。
  193. 遠藤要

    国務大臣(遠藤要君) お答えいたします。  東京地検では、この金びょうぶの売却問題に絡んで国会においての御論議、また報道等を念頭に置いて捜査を進めたというように承知をいたしておりますけれども、この件は犯罪になるような立証を得られなかったというように聞いております。  さらに、今先生のお話のように、何か政治的な圧力云々というお話がございましたけれども、そのようなことは考えられません。しかも先生も御承知のとおり、日本の検察は世界に誇っていい厳正な検察でございまして、その点、証拠に基づき捜査によって対処しているということを御理解願いたいと思います。
  194. 安恒良一

    安恒良一君 著しく値段が安いものを四十億で売りつけるというその問題が犯罪にならなかったということですが、これ以上は時間をとりますので、改めてまたゆっくり聞かしていただくことにしましょう。  それから次は大蔵大臣と法務大臣に聞きますが、「時代行列」に四十億を支払った、ところがこれを受け取った側は調べたらそんな価値がないということで、とりあえず平和相互銀行が内容証明書を出して返してくれということを督促していますし、そこでその後合併になったんですが、大蔵省は住友銀行をしてこの債権の回収を実行させる気があるのかどうか、それから同時に「時代行列」を実勢価格とほど遠い四十億で売りつけた佐藤茂氏、真部氏等について住友銀行をして告訴させることを考えられるかどうか、そのことをできれば本委員会で私に約束してもらいたいと思いますが、大蔵大臣、法務大臣の答弁を求めます。
  195. 平澤貞昭

    政府委員(平澤貞昭君) 御質問にお答えいたします。  第一の点についてでございますが、一般論といたしまして、銀行が債権回収に努めるということは当然のことでございます。したがいまして、大蔵省といたしましても日ごろからそのように各銀行を指導しているわけでございまして、関係の銀行にも常日ごろからそういう点は十分に徹底していると考えております。  それから第二のお話でございますが、今申し上げましたように、銀行が債権回収に努めるのは当然でございます。そういう中において、こういう問題について告訴その他の手段をとるかどうかという点につきましても、これは銀行が判断する問題であるというふうに考えております。
  196. 安恒良一

    安恒良一君 この問題も答弁は必ずしも納得できないところありますが、時間がありませんので次に行って、改めてまたやらさしてもらいます。次は、土地問題についてお聞きしますが、最近、東京都を初め大都市の土地の値上がりが大きく国民生活に脅威を与えておりますが、まず土地の値上がりの原因は何だろうか、このことについてお聞かせください。
  197. 綿貫民輔

    国務大臣(綿貫民輔君) お答えいたします。  十月一日に発表いたしました地価調査の結果でもおわかりのように、全国では二・七%ということでほぼ横ばい状態でございます。特に東京を含みます一部の都市の商業地域を中心に異常な高値が見られておりますが、特に東京の場合は急速な国際化と情報化によりましてビル用地が不足した、オフィスビルが不足したということから、それを求めての地価高騰ということが考えられるわけであります。
  198. 安恒良一

    安恒良一君 私はそれも一つの理由だろうと思いますが、一つはやはり金余り現象、投機的な資金がいわゆる底地買いの財源として大きく流れている、このことがあるんじゃないでしょうか。二つ目には、国土計画や都市計画の手法を無視して東京へ再集中化する、こういうことが、やはり政治的な発言にもいろいろある、これがあるだろう。三つ目には、国鉄用地を初め国有地の売り払いがここのところ都心の一等地に集中している、こういうことがあると思いますが、その点はどうですか。
  199. 綿貫民輔

    国務大臣(綿貫民輔君) ただいま申し上げました土地の高騰に乗じて短期の譲渡によりまして利得を得ようとするような一部の動きもあることは事実であります。それらを防ぐために、いろいろ税制その他を含めて、対策を今各関係省庁と協議をしておるところでございます。  なお、都心におきます公有地その他につきましては、これも周辺の地価を押し上げないような売り方について関係省庁と十分協議をしてまいるつもりでございます。
  200. 安恒良一

    安恒良一君 大蔵大臣、銀行や損保の融資がどれだけ底地買いに流れているか、融資先の調査をされたことありますか。それとその結果について、またそれらに対する指導監督についてお話しください。
  201. 平澤貞昭

    政府委員(平澤貞昭君) まず、後の方の御質問の指導監督の方についてでございますが、常日ごろから金融機関等が不動産融資について十分に公共性ということを認識しながらやっていくようにという指導をしているところでございます。そういう観点から、昨年七月に、各金融機関に対しまして今申し上げたような趣旨で注意を促しております。それからさらに、最近になりまして、御存じのように都心の一部地域における地価がかなり急騰しておりますので、本年四月十六日に再度通達を発して指導をしたところでございます。  次に、第一の御質問の点でございますけれども、これにつきましては、この二回目の通達の際に、金融機関に不動産融資について報告するようにということを申しておりますので、その報告が順次今集まっておりますので検討している段階でございます。
  202. 安恒良一

    安恒良一君 その報告はいつ集計して、その結果を私どもに知らしていただけますか。
  203. 平澤貞昭

    政府委員(平澤貞昭君) できるだけそのような方向で対処したいと考えます。
  204. 安恒良一

    安恒良一君 それじゃ早急に調査をして資料を出してください。  次に、国土庁長官、土地の買い占めの実態調査を進めていますか。また、土地の買いかえ特例が悪用され、いわゆる転がしの利益が生まれるための税制の改革に手をつけられていると思いますが、いつやるんですか、どの国会にどのように提出されるか、言ってください。
  205. 綿貫民輔

    国務大臣(綿貫民輔君) 買い占めの実態と申しましてもなかなか把握が難しゅうございますが、この短期の譲渡所得に対します超重課課税を課するというような方向で、税制の改革を目下各省庁と協議をしておるところでございますし、また、買いかえによりましてそれが周辺に及んでいろいろと土地高騰の原因をつくっておるのではないかと言われておりますので、それらの問題につきましてもいろいろと税制につきまして基本的な問題を含めて立案を今考えておるところでございまして、これが各省庁との協議が終えられますれば次の通常国会に提出したいと考えております。
  206. 安恒良一

    安恒良一君 国土庁長官、急いでやらなきゃだめですよ。もたもたしておったらもう悪いやつが全部買い占めた後に税制ができたって何にもなりませんから、そのことを私はあなたに警告しておきます。  そこで、林野庁長官、港区六本木の宿舎を一般競争入札にするに至った経過をひとつ報告してください。
  207. 松田堯

    政府委員(松田堯君) お答え申し上げます。  六本木の宿舎跡の敷地につきましては、五十八年に処分方針を決めまして、現在まで検討をしてきたところでございます。当然のことながら公共用優先の原則に即しまして売り払い手続を進めてきたところでございますが、東京都、港区等に買い受けの意思がない旨の正式回答を得ているところでございます。なお、その際港区等から住宅・都市整備公団へ受り払ってほしい、こういった御要望がございましたので、三年にわたりまして折衝を行ってきたところでございますが、基本的条件に折り合いがつかないということで、この五月に折衝を打ち切ったところでございます。国有林野事業の業務運営上、本件売り払いを延ばす余地がない実情にございますので、国民から負託された国有財産である以上、会計法の基本原則であります一般競争入札によりまして公正に処分することとしたものでございます。  なお、その際、都心の地価が高騰している状況にございますので、投機による不当な地価上昇につながらないよう厳しい入札条件を設定することとしているところでございます。
  208. 安恒良一

    安恒良一君 基本的条件が合わないというのはよくわかりませんから説明してください。  それから建設大臣、住宅・都市整備公団が林野庁との交渉の結果、価格が合わなかったというのですが、その価格は公示価格を一とした場合どのくらいの幅で交渉されたのですか、それをお答えください。
  209. 片山正夫

    政府委員(片山正夫君) 公団と林野庁との交渉の経過は先ほど林野庁から御説明しているとおりでありますが、公団の買い受け希望価格に関しましては、交渉の過程で数字が出ておりますこともありますので、申し上げることは控えたいと存じます。
  210. 安恒良一

    安恒良一君 だめですよ。公示価格を一とした場合どのくらいの幅の交渉であったかと聞いているのです。それぐらいのことは言えないはずはないと思います。
  211. 片山正夫

    政府委員(片山正夫君) 買い受け希望価格を申し上げることを控えさしてもらっていますので、その倍率につきましてもそれを基準にしませんと倍率が出ませんので、申し上げられないわけであります。
  212. 安恒良一

    安恒良一君 だめ。そんなばかなことはない。
  213. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  214. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 速記を起こして。  一種の資料の要求でございますので、理事会において協議をいたします。
  215. 安恒良一

    安恒良一君 私は、この西戸山の開発のときはいろいろ国民から総理関係者は訴えられているのにもかかわらず、これはマンションをつくるということで随契がされている。今回は、公団からもそれから私の手元には港区から、きょう七日の十三時、臨時区議会で全会一致でひとつ競争入札の撤回を求めるということをやりたいといって、港区の区の議長から連絡を受けています。そういうのにこれは競争入札でやるというのは、全く同じ国のものを処理するのに矛盾があると思います。  そこで、これも幾ら言い合ってもしようがありませんから、総理にひとつお聞きしたいと思いますが、十二月に競争入札をやられるそうですが、これを凍結しまして港区、東京都、建設省、国土庁、住宅・都市整備公団、それから必要なら大蔵省も入れてオープンにして対策会議を設けて、そこでお話し合いをしていただきたいと思いますが、どうでしょうか。これが一つ。  それから二つ目は、これからも国の土地を私はやたらに売ることは賛成でありません。しかし、ある場合には売却しなきゃならぬ。いわゆるその場合は随契もあれば競争入札もあるでしょう。また、ある場合には土地の信託ということもあり得ると思います。そういうときに一々こういうことで議論することのないように一定の規模以上の処分に関してはルールをきちっとつくる、そしてその問題については国会の方も報告する、承認を求める、こういうふうに国有地の処分を明朗にしたらどうかと思いますが、この二つについて総理のお考えをお聞かせください。
  216. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) まず、林野庁の土地の処分の問題については長い経緯がありまして、いろいろ関係各省でも協議があり、最近におきましても官房長官が中心になってこれが処理を協議した結果、これをやってよろしい、ただし厳重な条件をつけまして、転売は何年以内は禁止するとか、そのほかの条件をつけてゴーサインを出したものでありますからそのように御了承を願いたいと思うんです。  それから土地の処分につきましては、国有財産審議会というものがありまして一定の基準を持っておりますし、それからいろいろ処分をするという場合におきましても、公共団体に対しては特別な配慮をするとか、また場所によっては一般競争入札について厳しい条件をつけるとか、いろいろなちゃんとしたある一つ考えを持ってやっておるのでございまして、特に国有財産審議会においてそういうポイントについてもいろいろ検討もしておるところでございまして、もしそれ以上要することがあれば検討はやぶさかでございませんが、大体今の調子でいいのではないかと思っております。
  217. 安恒良一

    安恒良一君 総理、私はぜひ検討してもらいたい。なぜかというと、住宅・都市整備公団がやっぱり住宅をつくりたいと言っているわけですよね。それなのに価格が折り合わなかったから、だからということで競売にされる。一方、西戸山の方はこれは随契でいったわけですからね。ですから、余りにも同じ住宅をつくりたいということについて矛盾があるわけですから、私はやはりこういう問題についてはもう少し、国民が疑惑の目をもって見ることがないように、また地方自治体からもそういう要望が現実に与野党含めて満場一致で決まるということの連絡も受けているんですから、そういう意味で、この問題はこれ以上時間がありませんのであれしますが、ひとつ御検討願いたいと思います。  続いて、防衛施設庁の問題について。  いわゆる昭和五十二年六月一日につくられました防衛施設庁の外郭団体であります財団法人防衛施設周辺整備協会の設立の目的、業務内容、さらにその役員数、職員数について、それからいわゆるそこでの具体的な業務内容を明らかにするとともに、業務運営の経費はどこから捻出されているのか、それからこの協会の業務方法書と過去五年間のいわゆる防衛施設庁に提出しております予算書、決算書、そういうことについてこの場で説明をしていただきたいと思います。
  218. 宍倉宗夫

    政府委員(宍倉宗夫君) 三点お尋ねがありましたので、一点目から御説明申し上げます。  防衛施設周辺整備協会の目的と事業内容でございますが、目的は寄附行為の三条にございますが、「防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する諸問題の解決と改善のため、必要とされる施策についての調査及び研究を行い、その結果を国及び地方公共団体等の施策に反映させ、又必要な事業の推進に協力し、もって民生の安定及び福祉の向上に寄与すること」、これが目的でございます。  それから事業内容でございますが、多岐にわたっておりますが、項目的に申し上げますと、「生活環境の実態調査及び環境保全への対策についての調査研究」、それから「地域開発の実態調査及び防衛施設と地域開発との調和を図るための対策についての調査研究」、それから「刊行物の発行及び講演会等の開催」、それから「防衛施設周辺において、国・地方公共団体が行う環境保全への対策及び防衛施設と地域開発との調和を図るための対策についての協力」、それからそういうことにつきまして「国・地方公共団体・個人等から委託等を受けて行う事業」、その他目的達成事業ということになっております。  それから役員数についてお尋ねでございましたが、役員数は常勤が五名でございます。それから非常勤が十三名でございます。合計して十八名でございます。職員数につきましては約二百七十名というふうに承知いたしております。それが第一の問題だったかと存じます。  それから二番目に、どういうところから事業の資金が来ているかというお尋ねであったかと存じます。  この協会は、個人の委託を受けて委託事業を主としてやっております特別会計、及び特別会計で剰余ができましたときに、それを財源といたしましていろいろな、先ほど申し上げましたようないわゆる公益事業と言っておりますけれども、そういったものを行っております一般会計というふうに分かれてございますが、主として申し上げますと、例えば受信障害対策事業につきましての補助金でございますとか、あるいは住宅防音事業の収入でございますとか、そういったものが主たる事業の収入源ということになっております。  それから最近の決算書等につきましてでございますが、決算書につきましては御承知のように……
  219. 安恒良一

    安恒良一君 予算書、決算書。
  220. 宍倉宗夫

    政府委員(宍倉宗夫君) 予算書、決算書につきましては、総理府令に基づきまして私どもの方に提出を義務づけられているわけでございますが、これは監督を行うという目的で出していただいております。そういうことでございますので、私ども予算書、決算書そのものを御提出するということはいかがかと存じますが、内容的に御説明を申し上げたいと存じます。  決算の中身につきましては、先ほどもちょっと申し上げた次第でございますけれども、この協会の特別会計につきましては、例えば昭和六十年度で申し上げますと、事業当期利益金が三百六十九万九千円ということになっております。そのほか税金等の充当額が約六千万円ということになっております。  あと細かな点につきましては、別途資料として提出させていただきたいと存じます。
  221. 安恒良一

    安恒良一君 総理、私が最初求めたら、予算、決算書を出せと言ったらこんなばかげたものを持ってくる。六十一年度幾ら幾ら、予算が。決算は六十年度こうと。これを持ってきた。国会議員をばかにするのも甚だしいんだ、防衛庁。軍の機密でも何でもないんですから。いわゆる今おっしゃったように、監督の立場でもらっているんだと、それはわかります。しかし、このことに対して私どもいろいろ疑義を持っていますから、国会議員としての調査権が私はあると思います。しかも軍の機密に関することではありません。そこで、どうしても過去五年間の予算書、決算書、これをぜひ出してもらいたい。それに基づいて質問をしたいと思います。
  222. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) ただいま御要求がありました安恒君の要求資料につきましては、その取り扱いを理事会において協議いたします。
  223. 安恒良一

    安恒良一君 じゃこれで時間が来ましたから終わります。
  224. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 以上で安恒良一君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  225. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 次に、降矢敬義君の質疑を行います。降矢君。
  226. 降矢敬義

    ○降矢敬義君 最初に、総理にお伺いいたしたいと思います。  私は、戦後四十年たちました現在でもなお世界は不透明な状態にありまして、それは政治的にも経済的にもそうだと思います。東西関係も緊張緩和の努力の中で安定を保っているんだと思っております。しかも現在は地域紛争も後を絶っておりません。経済を見ましても、全体として今成長が鈍化してまいりましたし、そうした中で累積債務国の存在が一層不安をかき立てておるようでありますし、したがってまた保護主義の台頭の影も見え隠れしております。私は、世界がこうした激動しておる潮流の中で、我が国自身も政治的にも経済的にも、そして社会的にも大きな転換点にあるんじゃないかなと、こう常々思っております。総理は今日の時代をどのように認識されているのか、まずお伺いいたしたいと思います。
  227. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) まさに降矢さんおっしゃいますように大きな転換の時代に入りつつあると思っております。あるいはもう入っている最中であるとも考えられます。  まず、米ソ間におきまして久方ぶりに首脳会談が行われまして、核軍縮を中心にして真剣な討議が開始されておる、世界がかたずをのんでその結果を見守っておるということ、これは大きな変化であります。この点である程度打開ができますれば、それは必ず世界の地域地域に対していい影響を持ってまいりまして、中近東あるいはアフガニスタン、あるいは朝鮮半島、あるいはヨーロッパ、各地に対しても影響が出てくると思います。そういうような意味におきまして、米ソ首脳会談というものはどういうふうに今後世界に影響を及ぼしてくるか、深甚なる研究を要するところであると思います。  経済の問題にいたしますれば、二度の石油危機を経て世界経済がへたったのでありますが、その後アメリカの景気が回復して、それに伴うて景気は世界的にも回復してきました。しかし、最近の模様を見ますと、円高あるいは世界的な通貨関係等々の情勢もありまして、やや乱気流の気味であります。これはアメリカの膨大な赤字財政あるいは膨大な輸入超過というような現象が世界経済にも影を落とし、また日本の膨大な黒字というものが世界経済にも影響を与えている。また、発展途上国の累積債務問題という問題が同じように影を落としている。  こういうさまざまな影響を受けまして世界経済自体がやはり停滞ぎみ、石油危機後の繁栄を一時回復したが、アメリカ経済がある程度苦しみ出してきている、そういうような面から見まして停滞ぎみ、特に石油の値段が非常に落ちてきたというようなことがそういう一つの現象になっています。これからいかに脱却していくか、そして保護主義の蔓延をいかに世界から防いでいくかということに世界の運命はかかってきております。日本もその一翼を担っておるのでございまして、やはり応分の貢献を日本は自分の犠牲をいとわずにやらなきゃならぬ面もある、そう思っております。そういうような意味におきまして大きな時代の転換期に差しかかっていると認識いたしております。
  228. 降矢敬義

    ○降矢敬義君 ただいまの総理の認識との関連においてもう一つお伺いしておきたいことがあります。  それは総理が所信演説の中で、「戦後の歴史の流れの中で、我が国にとっての最も大きな変化は、その国際的立場が大きく変わったことであります。」というふうに述べられております。私もまさにそのとおりだと思います。そして続きまして、「「世界の中の日本」から、「世界と共にある日本」さらに「世界に貢献する日本」として、世界の平和と繁栄に責任を持つ日本を築いていくことこそ、「国際国家日本の実現」の真の意味であります。」と述べられております。  私は、総理のおっしゃる「国際国家日本」というものの描いているイメージ、姿というものをもう少しわかりやすく説明していただき、その実現に向かっての決意をお伺いしたいと思います。
  229. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 今のお話にありましたように、「世界の中の日本」から世界に積極的役割を果たす日本へ、そこへ今前進しなければならぬところに来ております。そのためには、世界に向かって応分の貢献をする、それから日本自体の封鎖性を解除して外国をどんどん受け入れる、つまり発信と受信とをどんどん行うような国家になっていく必要がある、そういうような点が大事な点ではないかと思っております。
  230. 降矢敬義

    ○降矢敬義君 次に、外交について総理及び外務大臣に二、三お伺いしたいと思います。  十月の米ソ首脳会談、まさに幻の合意に終わったわけでありますが、先ほど御質問があってお答えされましたけれども、これに対する総理の評価は承知いたしました。そのことがゴルバチョフ書記長の訪日にどんな影響があるのか。私があえてこのことを御質問いたしますのは、これも所信表明の中で、「ゴルバチョフ書記長の早期訪日についてソ連との間で折衝を進めております」という総理お話が載っておりますので、重ねてお伺いし、また折衝がどのように進展しておるのか、あわせてお伺いいたしたいと思います。外務大臣。
  231. 倉成正

    国務大臣(倉成正君) 先般のニューヨークでの日ソ外相会談におきまして、先方は、ゴルバチョフ書記長の訪日を希望していると。米ソ間に懸案が残っているからしばらくこの時期を明記することはできないということを話しておりました。一定の時期が来たら訪日の時期を日本側にお知らせしたいという旨を発言しております。したがって、米ソ首脳会談を踏まえた上の今後の米ソの動きがどのような影響を及ぼすかということはわかりませんけれども、先方がこちらに来たいという希望は、先般来日しましたソ連のカピッツァ外務次官からも近いうちに来たいということを伝えてきております。  いずれにしましても先方に、ボールはソ連側にあるわけでございまして、我が方は政経分離はしないという立場を絶えず繰り返しつつ、先方のボールが打ち返ってくるのを待っているのが現状でございます。
  232. 降矢敬義

    ○降矢敬義君 隣の国であるソ連との関係改善を図り、そして平和条約を早急に締結する、その際、総理の所信表明の中にもありますとおり北方領土問題もあわせて解決して平和条約にこぎつけたい、こういうことは私も心から望んでおるところでありますが、あえてお聞きいたしたいのは、ソ連のゴ書記長の訪日について、あるいは実現するかどうかわからないにしても、総理の対ソの外交の視点を重ねてお伺いいたしたいと思います。  なおあわせて、外交儀礼というふうに承っておりますが、相手の首脳が訪日された場合にはこちらから総理も儀礼上相手の国に行くというのが慣例のように聞いておりますが、それはそれとして、総理自身、訪ソの御意思があるのかどうか承っておきたいと思います。
  233. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ことしの正月にシェワルナゼ外務大臣が参りまして安倍前外務大臣と協議しましたときに、日ソ首脳部の相互訪問というものは約束されており、その後累次にわたり、ゴルバチョフ書記長が来日したいという希望を持っておられる、時期はいずれ御通知する、そういうことでありました。我々の招待は今でも生きておりますから、ですからゴルバチョフ書記長はできるだけ早期に来日なさることを希望してやみません。  それから日ソ関係の改善を期する我々の政策の原点は、やはり最も大きな問題である領土問題を解決して平和条約を締結する、それが我々の政策の原点でございます。日ソはお互いに隣人同士の関係でございます。したがいまして、これは地球が壊れない限り隣人として生きていかなければならぬのでございますから、お互いに友好関係を維持していくということは望ましいことであり我々の願いでもあります。ただしかし、やはり国家というものが存在する上について一番基本的問題である領土という問題について、我々が満足できるような解決を図るということは日本政府国民に対する重大な責任でありまして、まずこれを解決しなければならぬと、そう思っておるわけでございます。そういう基本、原点はわきまえつつ隣人として対話を広げ、そして共存していく道を探っていくということが好ましいことであると考えます。
  234. 降矢敬義

    ○降矢敬義君 総理はあす訪中されますね。その目的は、我々が承知しているところでは、日中青年交流センターの定礎式、言うなればそこに出かけて祝意を述べられるというふうに聞いておりますが、私は日中友好を一層増進するためにいい機会じゃないかなと、こう思っております。我々の承知しているところでは、中国の胡総書記、趙首相、鄧小平主任、この三者と率直に意見を交換する機会をお持ちのようであるというふうに聞いております。  私は、この際、日中友好のきずなを深めるという観点も当然でありますけれども、中国とソ連との関係あるいは中国と東南アジアとの関係、こういう問題を含めて幅広く中国首脳と意見を交換されることは日本にとっても有意義であり、かつまたソ連のゴ書記長が訪日されるということが実現されるならば、恐らく日本の立場を明らかにしながら有意義な話ができるんじゃないかなというひそかな期待を込めておるわけでありますが、総理はどういうふうにお考えでございましょうか、お伺いいたしたいと思います。
  235. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 国会の御了承をいただきまして、あした、あさって中国へ行ってまいりますが、これは私と胡耀邦総書記の間で話しました二十一世紀に向かっての友好を促進するための日中青年交流センターの定礎式にぜひおいでくださいという招待を受けて参るものであります。私は二年ぶりに参るわけでありますが、この間にあって世界もかなり激動いたしましたし、最近におきましては国際政治あるいは経済関係あるいは日本と中国の経済問題等さまざまな問題がありますから、首脳部と隔意ない懇談をいたしまして、日中関係のさらに友好親善を強め協力を確実にしていくという道を話し合ってみたい、そう考えておる次第でございます。
  236. 降矢敬義

    ○降矢敬義君 ぜひそのようなことが実現されることを重ねて希望申し上げます。  次に、新ラウンドについてお伺いいたしたいと思います。  このたびの新ラウンドは、三年前、レーガン大統領が訪日の折に中曽根総理御自身が主張をされまして三年間、ようやく先般交渉開始宣言がガットの閣僚会議特別総会で採択されまして、四年間のマラソン交渉が始まったわけであります。私は、世界の貿易が保護主義と管理貿易主義を排し、引き続き自由貿易体制を維持していく上で、これは明るい展望が開けたものとして高く評価しておるものであります。しかも、この交渉開始宣言に至るまでの間、こうした経済の国際的枠組みづくりにおいて我が国として初めて主導的な役割を果たすことができたということについても、先ほど総理がおっしゃいました国際国家日本にとって大変意義があることだったと思います。それだけに、このラウンドの成功に我が国としては大変な責任を負うことになると思います。そこで、この新ラウンドの成功にかける総理の御決意を承りたいと思いますし、特に我が国の主導的役割についての決意をぜひ承りたいわけであります。  重ねて、新ラウンドの問題について外務大臣にこの際お伺いしたいと思いますが、この新ラウンドの交渉項目は御案内のとおり十五項目でありまして、サービス貿易から知的所有権あるいは農業、ハイテク、ガットのルールまで含めまして大変広範な問題が討議されることになっているわけ でありますが、実は考えれば、今我が国としては対外不均衡問題を抱えておりますし、またこの新ラウンドは自由貿易を主体とし保護主義を排するわけでありますから、問題は、国内問題も相当激しい対立を生むものだと私は思っております。それだけに、これを乗り切っていくことには相当の努力と勇気と決意が要るんだと思います。その辺について外務大臣にお伺いいたしたいと思います。  まず、総理からお願いしたいと思います。
  237. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ガットのニューラウンドはウルグアイ・ラウンドと呼ばれましたが、これの発端は、レーガン大統領が五十八年の十一月、来日されましたときに私からレーガン大統領に申し込みまして、そしてニューラウンド、東京ラウンドの後の用意をしましょうということで賛成していただき、その後、コール首相が来ましたときにも賛成していただき、アメリカ、日本、カナダ、その他の国々が英国、ヨーロッパの国々と一緒になって推進してきたものです。ECの中には渋る国もなきにしもあらずでありましたが、しかし大局的見地に立って同調していただきまして、ウルグアイ・ラウンドまでこぎつけました。この間における日本の外務大臣、通産大臣あるいは大蔵大臣、官房長官の皆さん方が一生懸命努力した成果であると考えております。  ウルグアイ・ラウンドのウルグアイにおける会議の結果は、日本としてはまず満足すべき結果であったと思います。  まず第一に、いわゆるジャパンバッシングと言われる結果における利益の均衡問題、これは正式の文章には載らない、議長総括で両論併記という形で抑えました。次に大きな農業問題につきましても、農業にかかわるあらゆる包括的な問題を討議するという形で補助金問題を処理いたしました。それから知的所有権等の問題、サービスの問題等についても、出てきている人たちの生活の知恵によりまして、インドやあるいはブラジルの協力も得まして、閣僚の会合ということでこれを決定していただいた、そういうわけで、大体満足すべき結果であります。  いよいよこれから個別交渉に入るわけでございますが、問題は非常に難しい複雑な問題が新しく出てきております、サービスの問題、ハイテクの問題、知的所有権の問題、こういうものは全部新しい問題ですから。この問題を一つ一つ丹念に最大多数の最大公約というところでまとめ上げて関係各国の了承を得るという血のにじむような努力一つ一つ築き上げていきたいと思います。  このような保護主義に対抗する自由貿易主義の大きな仕事を世界じゅうが総がかりでやっている間は、どの国においても保護主義というものは余り頭をもたげにくいものでありまして、保護主義を抑えていく大事なこれは一つの抑えになってきている。そういう意味もあって、我々はアメリカそのほかにおける保護主義をにらみながらガットの推進ということを強力にやってきたものです。今後におきましても同じことでございまして、ガット・ウルグアイ・ラウンドを成功させるということが保護主義に対する大きな戦いであると思いまして、努力してまいるつもりでおります。
  238. 倉成正

    国務大臣(倉成正君) ただいま総理からお答えしたとおりでございますが、新ラウンドはいろいろな経過はございましたけれども、一応私は成果を上げたものと思います。  まず、ウルグアイ・ラウンドが出発したということは、保護主義の傾向になろうとする世界の国々の動きを抑えた、すなわち自由貿易主義を守ろうというルールをつくった、そういう意味において大きな意義があったと思うのでございます。これからがいよいよ正念場でございまして、総理お話しになりましたように、やはり利益の均衡の問題という問題、名前は大変難しい表現を使っておりますが、実際は貿易が余り大きな黒字を出している国に対する風当たりと申しますか、日本を名指してはおりませんけれども、日本のように大きな黒字を出している国に対する問題に対して、ひとつ宣言の中に入れようという動きがあったわけでございますが、この問題については田村通産大臣とともに努力をいたしまして宣言から排除することができました。  これは御案内のとおり、ガットというのはマルチの多角的な交渉でありますから黒字の国もあれば赤字の国もある、そういう意味で理論的におかしいということで我々は排除したわけでございます。しかし、二国間の関係に至りますと、一方の国が余りに黒字を出して一方の国は赤字であるということになると、マージャンをしても碁をやっても、あるいはゴルフをやっても、いつも勝ってばかしおるというのではおもしろくないわけでございまして、どうしてもやはりある程度のバランスが必要であるということを考えるわけでございますから、我が国としても産業構造の調整、あらゆる努力をいたしまして、世界の国々からそういうターゲットにならないような努力をすることが必要であります。そのためには相当の血のにじむようなやはり国内の産業構造の改革の努力もしなければならない、そういうふうに考えておる次第でございます。
  239. 降矢敬義

    ○降矢敬義君 田村通産大臣にも御苦労を謝して、お伺いしようと思って通告してございましたが、時間がちょっと後の関係がありましてカットされておりますので、この席で厚く御礼を申し上げて、今後ともよろしくお願いいたしたいと思います。ありがとうございます。  次は、対外経済援助の問題について若干お伺いいたしたいと思います。  これも国際国家日本の今後果たすべき重要な最も大きな部門であると思いますし、我が国も第三期中期計画をつくってこの問題をスタートさせているわけであります。そういうことを前提にしながら、実は多少細かいと言えば細かいんでありますが、私はそういう問題について簡潔にお答えを願いたいと思います。まとめてちょっとお伺いいたしますので、外務大臣にお願いいたしたいと思います。  一つはJICA、国際協力事業団の援助問題につきましては、例のマルコス疑惑を発端として、また開発調査の問題でコンサルタントの業者の間に汚職があって非常に残念だったと思いますが、あの審議の際に、援助のあり方についてやはり抜本的な見直しを至急やるというお約束がございました。それがどのように進んでおられるのか、それをまずお伺いいたしたいと思います。  それから第二番目には、まとめて恐縮でありますが、大臣も御案内のようにNGOという機関がございます。いわゆる非営利事業団体のボランティアの団体で、言うなれば援助の草の根のレベルの援助をこつこつとやっている団体がございます。日本にもOISCAとか、あるいはシルバーボランティア団体とか、あるいは医療、看護団体とか、そういうものがございます。これが十月の六日、七日と世界銀行や外務省の援助、支援も受けながらOIS CA産業開発協力団が主催で世界のシンポジウムをやりまして、世界から百五十人ぐらい集まってやったわけであります。これが意外に成功しまして、国際協力の中で政府の果たす役割、あるいはこうした民間の果たす役割、あるいは国際機関が果たす役割、それぞれがやはり連携をとっていない。したがって、このシンポジウムを通じて三者の緊密な連携がどうしても必要だということをお互いに世界の援助関係者が認識をし、東京宣言を出されたことも外務省として御案内だと思います。  こういう団体が実は本当に、私もフィリピンやバングラデシュ、ああいう方面等を見ましても、地元の人たちとの温かい肌と肌とのつき合いのような援助をやっている姿を見ました。こういう団体が一番困っているのは人材とそれから資金であります。外務省もODAの中から金を出していただいておることも承知しておりますが、この支援組織を外務省としてももう少し積極的に取り組んでみたらどうかなということを思っておりますので、この点についての御意見もあわせてお伺いいたしたいと思います。
  240. 倉成正

    国務大臣(倉成正君) 二つの問題についての御質問でございますから、まず第一にマルコス疑惑やJICAの問題についてお答えしたいと思います。  政府は、適正かつ効果的、効率的な援助実施のため、従来より種々の措置をとってまいりましたが、先般のいわゆるマルコス疑惑やJICA職員逮捕事件もありましたことはまこには遺憾でございまして、援助実施に当たって改善すべきところは鋭意検討を進めております。  具体的には、適正かつ効率的援助の実施により一層努めるため、援助の流れの各段階につき従来以上にきめ細かい配慮を払うと。そういう考え方に基づきまして事前調査の拡充、円滑な案件実施、評価の拡充、質的改善等に関する具体的措置を現在鋭意検討中でございまして、速やかに結論を出したい考えでございます。  また、JICA事件との関連では、先般JICAより人員の適正配置、内部監査体制の強化、コンサルタントの選定手続の改善等を含むJICA改革方針につき報告を受けたところでございますが、JICAにおきましても右改革方針に基づいて果断にこの改革を実行するように大臣から要請しているところでございますし、また各界の皆さん方からも率直な外部からの御意見を伺って私はこの問題に対処したいと思っております。要するに、使命感を持って、モラルを持つということが一つの大切なことではなかろうかと思っておる次第でございます。  第二の問題、いわゆるNGO、ODAと並んで民間のボランティアの活動によるもろもろの援助でございますけれども、この問題の重要性については、先生御指摘のとおり、まことに同感でございまして、私はこのNGOの活動に従事しておられる方々の御努力に深く敬意を表する次第でございます。したがいまして、政府は積極的に活動に従事しておりますNGOに対する補助金の交付、NGOとの連絡体制の強化、個別のNGO援助活動への支援等を行ってまいっておりますけれども、なお今後ともNGOの活動の自主性の維持の観点も踏まえながら適切な協力をいたしたいと思います。  さらに、政府、NGO、国際機関三者の代表についてのシンポジウム等行われたと聞いておりますが、この三者の連携についても積極的に努力をしてまいりたいと思う次第でございます。
  241. 降矢敬義

    ○降矢敬義君 今の大臣の御答弁で、JICAの関係につきましてはこれはなかなか四省庁体制からいろいろな体制問題もありまして、そういう指摘が先般の国会でもやられたわけでありますけれども、至急改善策を実現されまして一層適正な効果的な援助ができるようにお願いを申し上げたいと思います。  NGOの活動との関連で若干あるんですが、先般十月十日、エルサルバドルの地震災害で国際緊急援助チームが我が国からも派遣されまして、報道はよれば、向こうでの活動も大統領が賛辞を与えるぐらい一生懸命やっていただいたことは皆さん御案内のとおりだと思います。国威といいますか、日本の援助の原点をきちっと示していただいた意味では、私はこの救助隊の活動に深く敬意を表する一人であります。  しかしながら、実際行ってこられた方の話を聞きますと、例えばスイスとかあるいはフランスとかイタリアというものはもう三十五人から四十人、五十人というそういう救助隊が行って、半分は働いて半分は休む。それで全然夜昼なく救助活動ができたにもかかわらず、我が日本は九名でありましたものですから、そういう意味の夜昼交代で休みながら救助活動を続けるということもできなかったようでありまして、これでは、せっかく去年からこういう国際協力援助のいわば本当の原点の活動が生まれたにもかかわらず少し残念でなかったかなと私は思います。  この点について、消防を所管する葉梨大臣の所感を承って、今後どう改善したらいいかについての御意見を承りたいと思います。
  242. 葉梨信行

    国務大臣(葉梨信行君) 先生が今お話しになりましたように、政府におきましては、現在海外で大規模な災害が発生した場合におきます国際緊急援助体制の整備を進めているところでございます。この体制は、昭和六十年十二月二十七日の閣議におきます外務大臣、自治大臣の発言をきっかけとして行われていると聞いております。  その重要な要素としまして、消防庁では、世界のトップレベルの援助技術を持っております我が国の消防救助隊を国際消防救助隊として派遣する体制をとっているわけでございます。地方自治体にございます三十二の消防機関の精鋭救助隊員三百八十五名を既に登録しておりまして、その体制整備を進めてきたところでございます。そして、今先生お触れになられましたように、このたびのエルサルバドル地震災害に際しましては、遠隔の地に対する初めての派遣でありましたけれども、地震発生後四十五時間で、アメリカに次ぎまして二番目は現地に到着をいたしまして、生存者二名を救出するなど大きな成果を上げることができたわけでございます。特にファイバースコープを使ったり、いろいろな救助技術能力は現地の各方面から高い評価を受けたところでございます。  ただ、先生御指摘のように、今回の経験を通じまして、より効果的な救助活動を行うためには、一つには、炎天下で長時間救助活動に当たる隊員が交代で活動できるようにすべきであろう。二番目としましては、クレーンを装備した救助工作車など、救助活動に有効な資機材の現地搬送を考慮すべきであろう。第三番目には、夜間まで救助活動を行い、現地の期待にこたえることが望ましい。また、四番目としましては、各国の救助隊が混在して活動を行う被災現地におきまして、より主導的な役割を果たすことができるようにしなければならないであろう。これらがぜひとも必要であると痛感しているところでございます。  今後の派遣に当たりましては、災害の状況にもよりますが、必要な資機材を携行した救助隊が隊としての部隊活動を交代で行えるだけの規模を備えた人員を派遣するよう、外務省とも十分協議してまいりたいと思う次第でございます。
  243. 降矢敬義

    ○降矢敬義君 私はこの際提案がございます。  日本は国際援助、海外援助、これをこれからの大きな国是としていかなきゃならぬわけでありまして、こういうときに冒頭申し上げました国際国家日本という姿を内外に宣明をして、国民のコンセンサスのもとにその実を上げる、こういうことを誓う意味合いにおきまして、私は国民の祝日に準ずる公式の記念をする日として、国際協力の日を制定することを提唱したいのであります。実は、この問題は、我が国が戦後初めて国際的な援助機関であるコロンボ計画に参加した日が昭和二十九年十月六日であります。いうなれば、日本の海外経済援助の原点がこの日であると私は思っております。そういう意味で、こういう日も勘案して、外務大臣の御所見を承りたいと思います。
  244. 倉成正

    国務大臣(倉成正君) 経済協力拡充と国際協力の意義、重要性については、国民の関心を高め、理解を深めるために国際協力の日を設けることについての御提案につきましては、私も極めて意義深いものであると思います。その実現ができるように努力をいたしたいと思います。  なお、コロンボ・プランへの我が国の参加は我が国の経済協力の開始を象徴するものであり、コロンボ・プランへの参加を決定した十月六日を国際協力の日と指定するのも貴重なアイデアと考える次第でございます。
  245. 降矢敬義

    ○降矢敬義君 総理、同じような質問についての御所見を承りたいと思います。
  246. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 今外務大臣が御答弁申し上げたとおり、日本は国際国家として今後とも努力してまいるつもりでおります。
  247. 降矢敬義

    ○降矢敬義君 次は、為替問題に関する日米合意についてお伺いいたしたいと思います。  宮澤大臣とベーカー財務長官と、為替相場、円・ドル相場について十月三十一日に最近の水準に維持するための日米政策協調を進める内容を持つ合意をされたことは私はこれを歓迎するものでありますが、この点について一、二お伺いいたしたいと思います。  一つは、さきのIMF・世銀総会では、日独の利下げとか為替調整の話では具体的な成果が得られなかったと聞いておりますが、それはどうかという問題が一つであります。それからその後ほぼ一カ月半、二カ月近くたって先般のような日米合意に至った背景は何であるのか。この二点は大蔵大臣にお聞きいたしますが、同時に、後の問題、合意に至った背景について、金融当局から見てこの点をどういうふうに評価するのかについての御意見を日銀総裁に承りたいと思います。
  248. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) まず、日米蔵相の共同声明の趣旨でございますが、昨年の九月二十二日、いわゆるプラザ合意によりまして為替介入が行われた。この考え方は、ドルがいかにも実態を離れて高過ぎる、したがってドルの水準をファンダメンタルズに合わせる必要がある、それに向かいまして各国が協調して介入をしたというのが昨年の九月二十二日のプラザ合意でございますが、その後一年の間にドルは非常に下落をいたしまして、低い水準になったわけでございます。  ただ、他方その間、殊に我が国の場合には非常な円の上昇が短期間に起こりましたために、我が国の経済がそれに十分対応できないような状況になりましたことは御承知のとおりであります。そこで、私とベーカー長官の合意は、今や円とドルの関係は両国間の経済のファンダメンタルズを反映するに至った、そういうところまで来たので、昨年の九月以来努力が続けられてまいりましたけれども、もはやこれ以上円を高くする必要はないし、それはまた望ましいことでもない、こういうのが合意の中心の部分であります。  つまり、アメリカから見ましても、アメリカの財政赤字を減らす、あるいは国際収支の赤字を減らすということになれば、だれかがそのかわりの役割をしなければならないわけであります。と申しますことは、我が国あるいは西ドイツの経済がもっと成長してそのかわりを果たさなければなりませんが、今やドルがこれだけ高くなって、しかも不安定であるということは、日本の成長そのものに実は有害である、害があるということをベーカー長官自身も十分にそれを認識したということでございます。  したがいまして、ここで円とドルの関係はファンダメンタルズを反映するに至りましたから、これ以上円が高くなる必要はない、今後の円・ドルの関係というものは市場の自然の勢いに従って決定されればいいのであって、かつて米国の当局者が円はもっと高い方がいいといったようなことを発言したことが何度かございましたが、そういうことはいたさない、こういうことでございます。私としては、昨年の九月以来のドルの下落の効果がぼつぼつアメリカの貿易収支にもあらわれていいころでございますし、その他いろいろなことから市場の原則に従って為替が決定していくということは望ましいことである、私自身今の円の水準が理想的だと考えておるという意味ではございませんで、市場が自然に状況の改善を反映していけばいいのではないかというふうに考えておるわけでございます。  後段の御質問でございますが、九月の末から十月にかけましてIMFの総会がございましたときに、先進各国の間でいろいろな話がございました。非公式の話、公式の話、いろいろございましたが、それは結局、これ以上為替が余り変化をしないで国際的な不均衡を是正していくためには、各国の政策協調というものがやはり一番大事だと、こういうことで合意をいたしたわけでございまして、私とベーカーの声明に盛られております政策協調というのも、実はそういう意味合いを反映したものでございます。  なお、この九月から十月にかけましてのこのような会合には日銀総裁も御出席になっておられまして、総裁とされまして、その間のいろいろ国際的な話し合いの中からいろいろな考え方、見方をなさったかと思いますけれども、この点はおっしゃいますように総裁からお話があろうと思います。
  249. 澄田智

    参考人澄田智君) 今後におきます我が国の経済の持続的成長のためには、何よりも為替相場の安定が強く望まれることであるというようなことは、九月末―十月初めのIMFの総会、その前後の一連の国際会議においても強く大蔵大臣も主張され、私もそういうふうに考えた次第、また主張した次第でございます。  今回の日米共同声明におきまして為替相場の安定に向けて協力し合うという旨が表明されましたことは、これはそういう為替相場の安定ということの重要性にかんがみまして今般公定歩合引き下げを実施したわけでございますが、それを含めまして、そしてまたこれまでの財政金融面からとってまいりました施策、これが内需拡大の実効を上げていくことに大変資する環境をつくるものである、こういうふうに考えてきた次第でございます。そういう意味におきまして私どもといたしまして、金融面からあるいは日本銀行の立場として、今回の共同声明は高く評価をしているものでございます。
  250. 降矢敬義

    ○降矢敬義君 今のお話で、この日米合意によって為替がそれなりに安定の道を歩むような期待が持てるわけでありますし、私たちが九月にこの参議院の予算委員会の調査で大分に参りましたときに異口同音に、為替相場の異常な円高、急激な円高とともに、とにかく安定をしなければどうしても企業経営は成り立たぬということを盛んに言われたわけであります。もちろん円の高過ぎたこともありましたけれども、もう一つは安定の問題であります。そういう意味では、今大蔵大臣日銀総裁の評価をぜひ我々も支持していきたいと思いますし、またこの問題は生き物でありますからこれだけではいけませんけれども、そういう方向で行きたいと、期待を込めてあと三点だけ簡単にお伺いいたしたいと思います。  実はこの合意についてしばしば言われることは、いわゆるターゲットゾーンというのは本当にできたんだろうかということであります。十一月六日のこのときに円が乱高下いたしまして、大蔵大臣も何か再度衆議院で答弁をされたようなことを新聞紙上で知りましたけれども、いわゆるターゲットゾーンというもの、そういう考え方あるいはそういうものとして今後為替が安定していくのかということについての大蔵大臣の御所見、それからもう一つは、今も大蔵大臣お話がありましたが、この円・ドルの関係で、上に行こうと下に行こうと非常に急激な変動がある場合には、やはり先進国同士で、特にアメリカと日本の関係でありますが、協調介入というものを期待できるような合意の内容なのかどうかという二点について承りたいと思います。
  251. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) まず第一のターゲットゾーンの問題でございますけれども、これは実務家からも学者からもいろいろに議論をされて、望ましい、どうやればいいかというようなことはしばしば問題になりますけれども、ついぞ実現したことがない。昨年のプラザのあのような合意におきましてすら、何をターゲットにするかということはとうとう合意できなかったところでございます。私どもはそういう経験を現実に持っております。今度の場合も、私もベーカーさんもそのことはよく存じておりますので、したがいましてあえてターゲットゾーンということを考えませんでした。抽象的に今のあたりの水準ということを申しております。現在の、あるいはナウというようなことはぼんやりした言葉ではございますけれども、ここらあたりのということ、どうもそれが一番適当なのではないかということがお互いの合意であったと思います。  それから介入のことでございますが、介入ということは昨年のプラザ合意以来しばしば行われましたし、また首脳による東京サミットでも認められておるところでございます。ただ、事の性質上、介入というのはあらかじめどういう場合にどうということを申さないところに意味がございますし、いわんやこの場合には、外国がどういう場合にどういう介入をするかということになりますと、それを私が申し上げますことは差し控えた方がいいのではないかと思います。  ただ、一つ申し上げられますことは、共同声明の中に、日米両国は必要な場合には為替市場の問題について協力する、エクスチェンジ・マーケット・イシューズと、わざわざ市場ということを申しております。この点は御留意をいただいてよろしい点ではないかと思います。
  252. 降矢敬義

    ○降矢敬義君 この日米合意とあわせて行われたのが公定歩合引き下げであります。戦後最低水準になったわけでありますし、本年も一月から今回で第四次目の引き下げであります。私は、これは経済が次第に不況色を強めてきた一つのあらわれじゃないかと受けとめておるわけでありますが、この利下げの問題につきまして日銀の総裁に二、三お伺いいたしたいと思います。  それは、IMFや世界銀行のあの総会のときに利下げの話が出たように承っておりますけれども、総裁の当時の新聞談話を見ましてもかなり抵抗をされたようでありまして、そのときには、デフレもデフレだけれども、金余り現象というものはやはり市場を攪乱し、経済を攪乱するということで御心配を述べられた記事があります。その後、あのときから一カ月ぐらいの間に円高デフレが円高のメリットを乗り越えてどんどん浸透していったわけだと思いますので、その辺、総裁はどういうふうに御判断なさってこの利下げに踏み切ったのか。  同時に、あわせてお伺いしたいのは、今、その時期が果たしてタイミングとしてよかったのかなということについて私は多少疑問なしといたしません。それは、予想したよりも円高デフレの浸透が早くて、それが輸出とか、あるいはそういう製造業から非製造業の部門、また雇用調整の面までどんどん駆け足のごとくに来ている状況でありまして、これが午前中にも質問がありましたような失業雇用問題にまで発展してきているような経済状況なのであります。そういうことを考えると、この利下げのタイミングというのは本当によかったのか、もう少し早い方がよかったのじゃないかという気が私はいたしますので、こういうこともあわせて総裁の御所見を承りたいと思います。
  253. 澄田智

    参考人澄田智君) 最近の国内の景気につきましては、個人消費あるいは住宅投資あるいは非製造業の設備投資はなお底がたいものがありまして、そうしてこれが景気を下支えしている、そういう基本的な姿はIMF総会の当時と現在と変わっているわけではない、そういうふうに思っております。  しかしながら、このところ円高のデフレインパクトから輸出関連産業におきまして設備投資の抑制を強めておる、あるいは雇用調整を強化する、そういう動きが広がっておりまして景気の停滞感がやや強まってきている、こういうふうに見られるわけでございます。こうした状況にかんがみまして、政府において総合経済対策に基づく来年度の補正予算を決定されましたその機会をとらえまして、もう一段の公定歩合引き下げを図ることが内需拡大に資するという観点から適当であると、この時点において判断いたしたものでございます。  一カ月前の時点に比べまして判断が変わったのではないかというような点につきましては、金融政策の運営については常に予断というものは禁物でありまして、そのときどきの情勢に応じて判断しつつ機動的に対応するということを心がけるべきものであると、こういうふうに我々常日ごろ思っている次第でございまして、今回もそういうような観点から実施をした次第でございます。同時に、一連の国際会議等において要請がございました日本及びその他余裕のある国の内需拡大ということに対して、そういう国際協調という面についても、この点からもふさわしい、こういうふうに判断し、そういう観点もあわせて今回の公定歩合を決めた背景にあるわけでございます。  遅過ぎるのではないかというような点につきまして御批判は率直に承りますけれども、私どもといたしましては金融緩和に伴う諸現象の状態等もいろいろと見きわめまして、今回の時期が適当ではないか、かように考えた次第でございます。
  254. 降矢敬義

    ○降矢敬義君 公定歩合引き下げのタイミングの問題につきましては、私たちは何も専間家じゃありませんから具体的に理論的に申し上げることはできませんけれども、何となくそういう感じがあるということを申し上げておきたいと思います。  この問題に関連いたしまして、大蔵大臣一つだけお伺いいたしたいと思いますす。公定歩合が下がると大体金利が連動して下がるのが普通でございますが、資金運用部資金の金利の法定されている問題から、政府関係機関の金利についてこれがうまく連動しない嫌いがあります。この点につきましては近藤経企庁長官も、新聞記事によれば、総理にも何か申し上げ、総理も法の改正も含めて検討したらどうかという御指示をしたというふうに聞いておりますが、この問題は金を預ける側、金を使う側、そして国家全体の金融という、いろいろな三者三様の問題がありまして一刀両断に結論は何となく出しにくい問題ではあると承知しておりますけれども、しかしこれからの、石油の価格がどうなるかは別にしまして、金利が低い状態でいくときに、そういう金利が法律で決められて機動的に動けないというのは、さらに金利自由化の進展等も考えますと、正しい姿か、いい姿であるのかなということに私は疑問を持っておりますので、その辺について大蔵大臣の所感を承りたいと思います。
  255. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 確かにこの問題は、いわば私どもから申しますと、お預けくださっているお方と、それからお貸ししているお方とのそういう意味での利害が別だという問題でございますが、ここに参りまして、聞くところによりますと預託金利というのは伝統的には長期プライムレートと貯金利子とのちょうど真ん中ぐらいに長いこといたものだそうでございますけれども、かなりもうそれが長期プライムレートに近づいてしまっておるということからいろいろな問題が提起されておるわけでございます。  殊に市中金利が下がっておりますので、つまり資金運用部から借りておられる方々金利が高いではないかという御批判が当然ある。また、ある意味では、お預けいただいている方々も、お貸しになる金利は下がっておりますから、それだけ実はマージンがないことはないというふうに考えていきますと答えが出そうなものなのですが、なかなかそこが、これは降矢委員もよく御承知のような、大変に利害関係が錯雑しておりまして、ただいま関係者の間でいわば自由な討議をして、フリーディスカッションをしておるようなことでございます。  それとまた関連いたしますが、一体こういうことを法定しておくことがいいのかということも確かにおっしゃるとおりなのでございますが、ある意味で法定ということが預託者に対しての一種の保証になっておった、幾ら下がってもいいというわけではないということを申し上げておったという点がございますので、この点も実はあわせましてしばらく関係各省庁の間で検討さしていただきたいと思っております。
  256. 降矢敬義

    ○降矢敬義君 ぜひ御検討を願いたいと思います。  日銀総裁結構でございます。ありがとうございました。  順序をかえまして小倉税制調査会会長には長くお待ちいただきましてまことに恐縮でございました。税の問題に入らせていただきたいと思います。  小倉会長に三点だけお伺いいたしたいと思います。一つは、税制調査会の御議論の中で、租税負担の水準、今税は国民所得の二五%でありますが、そのほかに社会保障の負担が一一%、要するに強制負担するものが三六%ありますが、負担水準の御議論はどのような形であったのかお伺いいたしたいと思います。  それから第二番目には増減税同額、収入中立という原則で税制改革を進められる、これは総理の諮問の中にもあるわけでありますが、そうした議論の中で、何回も議論がいろいろなところに展開 されておりますけれども、赤字財政とのかかわりについてどんな御議論があったのか承りたいと思います。  それからもう一つ。所得税、法人税の減税についての案をお示しいただきまして、それを補てんする財源として新しいタイプの間接税あるいは利子配当課税、あるいは特別措置の整理合理化、課税ベースの見直しという格好で示されておりますが、こうしたほかに何か具体的なほかの税目について御議論があったのかどうか、以上三点について簡潔にお伺いしたいと思います。
  257. 小倉武一

    参考人小倉武一君) お答えいたします。  まず、税の負担率ということでございますが、今回の抜本改正に関する税制審議におきましては、租税の負担率あるいはそれに社会保障を加えての負担率ということについては特に審議あるいは議論というものはございませんでした。ただし、ずっと以前には、中山先生が会長をされておった時分には租税負担率というのは非常に議論になったことを覚えていますが、それ以後は租税負担率というのは臨調なり行革審の場で議論されておりまして、税制調査会ではむしろ歳入のうちどの程度の割合が租税で賄われるべきかというようなことは論じたこともございます。今回はそういう種類のことも論じておりません。と申しますのは、減税ということを頭に置いて、それを賄う財源措置、特に税源措置ということでございますので、税負担率は押しなべて言うと余り変わらないというようなことになっておったからだと思います。  その次の増減税ゼロという、税制改正と財政との関係と申しますか、そういうことについてのお尋ねでございますが、総理からの御諮問もございましたように、減税ということを先に考えてそれに対する税制上の財源措置ということでございまするので、特に財政の改革といいますか、財政再建と税制の関係ということについては真正面には取り上げておらないと言った方がよろしいかと思いますが、ただし議論としては無論ございまして、新型間接税を導入するというようなことについては、単にそれを減税の財源に充てるということではなくて、将来の財政再建、財政改革に資するようにすべきじゃないかという一方において議論があり、他方において、そうではなくて租税負担というものは今日以上ふやすべきではないということからそういう見解には反対であるという両面の議論が並行的にあったかと思います。  それから所得税減税の財源措置についてでございますが、御質問にもございましたようにいろいろのことがございますが、税制調査会としては、利子配当について課税ベースを広げてそこに財源を一つ求める、もう一つは間接税のあり方を改めて広く消費に課税をお願いするというようなのが主でございますが、そのほかに、所得税につきましてもあるいは法人税につきましてもそれぞれ課税ベースを広げてその中に税源を求めるということもございまするし、特に法人税については、法人の引当金の問題その他についてやはり法人税制の中で法人税の実効税率を下げてまいる財源も生み出さなければならぬというようなことがございました。  なお、議論といたしましては、資産課税についてもう少し充実すべきじゃないかという議論がありまして、資産の所得は先ほど午前中にもお話がございましたけれども、資産そのものについての課税というようなものについても考えたらどうかということが議論になりまして、これはなお今後検討するというようなことになっております。  おおよそそういうことでございます。
  258. 降矢敬義

    ○降矢敬義君 時間も大分迫りましたので、税制について基本的なことを二、三大蔵大臣にお伺いいたしたいと思います。  一つは、今度の税制改正で増減税同額という、これは税制の体系、システムの改革としての話、今のひずみ、ゆがみを直すそういう税制を将来に向かって構築するという話じゃないかなと、もちろんこれは基本の話なんですが、実はよくわからないのは、先ほどの総理の御答弁もありましたが、じゃ税制改正について税制調査会に御諮問をなさって、やはり来年度の予算編成にかけてどんな税制改正を具体的にやるのかということは大蔵大臣としてはまた税制調査会に御諮問なさるのか、あの答申で終わって後は党の税調の御議論の中でつくられていくのか、その辺がちょっとわかりにくいところでありますし、もう一つは今度の改正は増減税ゼロだと、その考え方はよくわかるんですが、それなら来年の予算編成のときにも、また本当に全体としてどういう税制改正になるのかという、それは歳入歳出と具体の予算編成になりますので、その辺のところが先ほどの御質問を通してもよくわかりにくいのでありますので、あえて大蔵大臣に御質問をさしていただきたいと思います。
  259. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 最初の部分のお尋ねでございますけれども、お答えから先に申し上げますならば、やはり昭和六十二年度の税制をいかにすべきかということにつきましては、改めて政府税調に諮問を申し上げてお答えをいただく、そういうことになろうと存じます。  それに先立ちまして、先般答申がございました、いわば抜本改正についての答申をただいま政府と与党との間でいろいろ検討しておることは御承知のとおりでございますが、その中から、恐らくは今後恒久的なと申しますか、抜本改正に当たります部分と、さしずめ六十二年度をどうするかという部分と、両方の恐らく検討がなされることになろうと想像いたしますが、いずれにいたしましても、政府としてはそれを受けまして六十二年度にはどういう税制改正をするかということを政府税調に諮問をしてお答えをいただく、そういう手はずになろうかと思います。
  260. 降矢敬義

    ○降矢敬義君 もう一つ重ねてお伺いしたいのは、その際その税制改正も、やはり財源との関係も見合いながら増減税ゼロというお考えでありましょうか。それともそこは多少弾力的な、要するに具体的な財政運営の問題でありますから、しかも財政再建の旗はやはり掲げながら来年の運営をしなければいけませんものですから、その辺について御所見があれば承っておきたいと思います。
  261. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) まさに財政運営の問題であるわけでございますが、今の歳入状況から申しますと、やはりこの点も、単年度でもいわゆる歳入中立的と申しますか、過不足ないものでありませんとなかなか財政の編成が困難ではなかろうかとただいまとしては考えております。
  262. 降矢敬義

    ○降矢敬義君 なかなかそこはほかの財源との見合いでありますので、これ以上お話を承ることはやめようと思います。  それからもう一つ。税制改正の問題で、やはり負担の公平というのは総理も一番念頭に置いておられることであります。その見地から二つだけお伺いしたいと思います。  一つは、先ほどもお話にありましたが、いわゆるキャピタルゲインの課税のあり方については、今も若干段階的に課税方向にいくということになっていますし、現在も二十万株以上の売買のときには課税するというような方向になっていますが、何か知恵を出して、この方向を少しでも前進することを考えられないかなというのが一つであります。  それからもう一つは、税務執行体制を見直す必要があるんじゃないのか。例えばクロヨンという話もあるいはそういうところとのかかわりがあって、非常に課税の件数がどんどんふえてきても実調の割合は、大臣御案内のとおり、ほとんど変わってないんですよ。十年前、二十年前と全然変わってないんです。だから、その辺も、所得の適正な把握という面から見ても執行上の不公平感というのがやはりあるんじゃないかなと私も思っておりますので、その辺についてのお考えを承りたいと思います。
  263. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) キャピタルゲインにつきましては、殊に株式のキャピタルゲインにつきまして、今般答申がなされておりますが、結局、これは少し長い目で見て整備をきちんとしていかなければいけないという御趣旨と伺っておるわけでございます。そう言っておられます意味は、やはりこれについてのいろいろ資料であるとか事実関係であるとか調査であるとかということが御承知のとおり非常に難しい。そこのところを慎重にいたしませんとかえって非常な不公平な結果になるということもございますしいたしますから、その辺はよく整備しながら考えろと言っておられる趣旨と存じます。現在でも御承知のように非常にまとまった大きな取引、あるいは年に何十回という回数の取引については課税をするということになっておるわけでございますから、そこらのところを少しずつ強化をしていくといったようなことででもあろうかと思いつつ検討をいたしております。  それからクロヨンのことは、これは現実にクロヨンということを認めるわけにもまいらないことでございますけれども、税務の執行の面と制度の面と恐らく両方問題がございましょうと思います。執行の面につきましては、やはり実地調査と申しますか、実調をもう少し効率的にできないかといったようなこと、あるいは青色申告とか白色申告につきましてももう少し工夫がないか、それから見なし法人の給与の点等々も何かもう少しいろいろないかということ、それから制度面で申しますと、給与所得の方の実額控除を考えられないか、あるいは配偶者に対する特別控除等々は、つまり行政面と制度面――もう一つ申し上げるのを忘れました。一番大事なことは、やはり給与所得、中堅給与所得者のところの累進構造をなるべく幅の広い税率で、毎年昇給しますとどんどん重税感が重なっていくようなことでないやり方、行政面と制度面でクロヨンという感じの給与所得者に対する不公正感をできるだけ解消してまいりたいと思っておるわけでございます。
  264. 降矢敬義

    ○降矢敬義君 ぜひ税務執行の体制につきましては、一生懸命職員がやっておりますけれども、私の見るところではかなり労働もきついんじゃないかなという感じがありまして、御配慮願えればありがたいなと。これは別に陳情を受けているわけじゃありません。私の実感であります。  それで、時間がなくなりましたので、二つだけ補正予算に関連して大蔵大臣にお聞きしたいんです。  実は今度の補正予算は減額補正予算で、約二千六百億ぐらい減にしております。それは財政再建、片方に景気のてこ入れ、建設国債を発行して、非常に苦心の産でありまして、高く評価するわけでありますが、実は私はちょっと違う感触を持っていまして、今の円高デフレはかなり深刻だなと受けとめておりますので、減額するぐらいだったらその分を公共事業の方へでも少し回してもらえないのかなという感じがしております。それが一点です。  どうしてそういうことを言うかというと、大臣が十八カ月予算構想というのをちょっとお漏らしになったことがあるんです。それはやはり景気に対する財政の出動ということを考えてのお話でないと十八カ月予算なんという構想は余り意味がないんだなと思っております。補正予算からつなげていく財政の景気に対する出動態勢というものは、そういう姿であるならば一番いいんじゃないかなと。補正予算で減額するお金を、規模を縮めてまでやるんだったら、その分は公共事業に回すような御決断があってもよかったのではないか。これは私の感じでありますが、大臣はその辺はどうお考えでございますか。
  265. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 今の景気の落ち込みから申しますとこの程度では十分でないという御指摘は、そういうお立場からは私は決して理解ができないわけではございませんが、ともかくも、ここで補正予算としては何年かぶりで一般公共事業建設国債の増発をしたということ、それからそういうこともありまして、特例公債はどうしてもふやしたくなかったという、そういう二つの配慮の結果でございます。財政再建という問題がございますものですから、その中でぎりぎりのことをやったという感じを私としては持っておるわけでございまして、そのような点も御理解をいただきたいと思うわけでございます。
  266. 降矢敬義

    ○降矢敬義君 いや、大臣の御苦心を高く評価しているということは冒頭に申し上げたわけですが、しかし私にはどうも、金融も発動しました、今度税制改正をして、税制もやがて発動していきますと。それで、先ほどもありましたように、私はやはり同じように失業もふえていくと見ておるわけでありまして、三%からもう少し出るのかなという、それが地域的にも非常に集中してくるようなところもありますので、この際財政がもう少し出動をしてもいいなという感じを持っておりますので、そのことだけ申し添えさしていただきたいと思います。  それで、時間がなくなりましたので、ひとつ加藤農林大臣にお伺いいたします。  私は、例のRMAの提訴の問題について、USTRは確かに三百一条の訴えは却下しましたんですが、あれでちょっと私は、新聞記事だけでありますけれども、どうも日本が、新ラウンドでやるぞ、それも受けなければまた通商法の三百一条でやるよというような、いわば多少おどかされたような感じを持たないわけではありません。私は、堂々と日本の米の地位というものにつきましては、それは主食であるとか、あるいは農業生産の三分の一であるとか、農民の八割、九割が米をつくっているとか、そういう意味のほかに、日本の文化に根差したものであるという、そういうことの高い御主張を新ラウンドの場で堂々とやって、そういう意味で日本の本当の姿というものを知っていただく方がいいんじゃないかと。農林大臣のあのときの御声明では、まだラウンドの対象にするかどうかについては何ら言質を与えていないというお言葉もありましたが、私はむしろきちっと御主張された方がいいなと、こう思っております。それが第一点であります。  それからもう一つは、米をめぐって最近非常な各方面の御批判があります。それに反批判があります。これは、農政が足腰の強い農政として三十六年農基法農政からスタートして二十五年、四分の一世紀過ぎました。それで、今またこういう農政に対する各方面の批判があることは決して悪いことじゃないと私は思っています。農業が我が国において強くなるためには、いろんな人の意見に耐えながら自分が力強く生きなきゃならぬと思っています。そういう意味で、その中での一番大事なことは、日本の農業の基本は食管制度である、それと米の結びつきが日本の農業を支えているんだと私は思っています。つまり、これと複合経営あるいはこれの大規模な単作と、こういう姿でこれからも伸びていく以外に方法がないと思いますし、それが例えば規模拡大でもいいしあるいは生産集団という格好でもいいわけでありまして、そういう格好できちんと伸びていかなきゃならぬ。そういう意味ではやはり食管制度を基本に置いてこれを支えていかなきゃならぬと私は思っています。  もちろん、食管制度の運営の合理化とかあるいは生産性の向上とか、規模の拡大とか、構造政策とか価格政策を、ある移度構造政策との調整をきちっと図っていくとか、今議論されていることはいずれもごもっともだと思いますが、一番基本のところについて実は総理の御意見も農林大臣の御意見もあわせてお聞きいたしたいと思います。
  267. 加藤六月

    国務大臣加藤六月君) RMAの提訴が却下された際、降矢先生からもただいま御説明ございましたが、私は十月二十四日に談話を発表いたしました。そのときに、却下ということは一応の評価ができるが、これは、ガット新ラウンドの場において取り上げるという意向を表明されたことは今後に大きな問題を残すという趣旨のことははっきり言っております。  そしてまた、第二番目に御指摘になりました、しからばガット新ラウンドの場において堂々とその必要性を主張したらどうか、こういう御意見でもございます。もちろん先ほど来降矢委員と外務大臣との応答も熱心に承っておったところでございますけれども、私としましては今後アメリカに対して日本の米の必要性、先ほどおっしゃったような趣旨をさらに強調して理解と納得を得る運動をいたしたい。そしてガット新ラウンドの場におきましては、まず一番これから問題になるのは、日本が行っておるような輸入数量制限問題がある。それからまた、米国もウエーバーによるところの輸入制限という数量制限をやっております。あるいはまた、ECが輸入課徴金というものを取っております。このような国境保護措置をそれぞれの国がやっております。こういった問題、あるいは最近穀物の、国際的に余っておるということで輸出補助金、穀物の輸出奨励金という問題があります。こういう問題も大いに議論になってくると思うわけでございますが、私は、ガットの場においては農業貿易に影響を与えるすべての措置を対象として各国が守っていけるようなより実行性のある新しいルールづくりの交渉が行われることになっておると、このように理解いたしております。そしてニューラウンドの場におきましても、我が日本は世界最大の農産物の輸入国であるということと、それから我が国の食糧安全保障を重視するという立場等に立って、農業というものは工業とは異なる特殊性があるということを十分配慮した新しいルールづくりができるように最善の努力をいたしたい、こう考えておるところでございます。  そして次に、おっしゃいました食管制度を中心とするいろいろの多くの批判あるいは御要望というものがあります。近々農協自身もみずからの新しい体質改善の方法を出していただけると思います。また農林省といたしましても、ポスト三期の問題について思い切った改革を出していきまして、国民皆さん方が食管制度に理解をいただきながら、そしてまた国民皆さん方が喜んでいただけるような我が国の農政の展開をしていきたい。それには先生がおっしゃいましたように、過去を振り返りまして、生産基盤の拡大がおくれております、あるいは新しい担い手としての集団の育成であるとかあるいは新しい強力な生産機構というものをつくり上げることもおくれております、そういう問題に鋭意努力いたしまして御期待に沿うようにやっていきたいと考えておるところでございます。
  268. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私は前から、農は国のもと、農業は生命産業である、そう言っておりますが、そういう言葉の背景には米の問題が非常に重大であると考えておるからであります。そこで、食管制度の基本を維持する、それから米の需給に関する国会決議を尊重していく、この二本というものをやはり基本にして米の政策も推進していかなきゃならぬと思っております。  ただしかし、最近における内外の風圧、世論等を見ますというと、今までのような形で我々が晏然としておるわけにはいかない内外の風圧が高まってきていることは事実です。しかし、国民の世論調査を見るというと、米が高いのは困るけれども、しかし食管制度は維持した方がいいと、これが今の国民の世論の大多数で、それはやはり米というものの日本社会における特質というものを国民自体が身をもって感じているからではないかと思っております。このような情勢をよく認識して、私は、農協みずからがこの大きな時代の変化あるいは内外の米の価格の落差というようなものをよく分析して、そしていかにこれを改革していくか、時代の新しい、新農政といいますか、そういうものを農協みずからがつくってもらうことがよろしいと、そういうことを私は農林大臣にも言いまして、農協とよく話し合って、そしてその農協が考える農政あるいは農協の改革というものに協力してあげて、政府・与党一体になってそういう方向に進めようではないか、そういうふうに今私は進めておるわけでございます。  農協の方においてもそういうような風潮がだんだん出てまいりまして、やはり改革しなければこの大きなときは過ごされない、看過するわけにいかぬという空気が出てきたことは非常に歓迎すべきことでありまして、ともに手を携えて、農政の改革あるいは農協の改革という面に国民の納得のいく、また農民が喜ぶ、実体的に喜ぶ、そういうような方向にぜひとも力を加えていきたいと考えておる次第でございます。
  269. 降矢敬義

    ○降矢敬義君 食管の基本を維持し、米の自給に関する国会決議の尊重、やはりそういう原点に立って、私も足腰の強い産業としての農業というものをこれからつくっていかなければいけないなということを思っております。そういう意味では基本的に総理と同じでありますが、いろんなプロセスの問題についてもこれからも議論をさせていただきたい、こう思っております。  それで、ちょっともう時間もありませんので、最近の問題を一つだけお願いしたいんですが、法務大臣と大蔵大臣の所管でありますが、抵当証券問題であります。  もともと、これは中小企業者が長期の資金を調達する方法として生まれたわけでありますけれども、最近、運用の実態が金融商品のような扱いになりまして、それが必ずしも投資家の保護につながっていないという現状はもう新聞紙上にもたくさんございます。アジサイ寺までこの問題に関係するに至ってはまことに噴飯物だと思いますが、ほうっておけない問題になってきておりますので、これについて研究をし至急に法的な手段を講ずる必要があると思いますが、法務大臣と大蔵大臣の御見解を承りたいと思います。
  270. 遠藤要

    国務大臣(遠藤要君) お答えいたします。  先生お話しのとおり、これ本来は大蔵大臣だろう、こう思いますけれども、せっかく御好意によって答弁をさしていただいて本当にありがとうございます。  この種の抵当証券に関する問題は、今種々問題が指摘されておってまことに遺憾だと思っております。そのような点で、大蔵省と法務省が協議をして、抵当証券研究会というようなことで有力者にも御参加を願って今検討のさなかでございまして、これは一般投資家の保護を中心として何か方策をということでございまして、できるだけ早くその検討結果を踏まえて対処したい、このように考えております。  それで、この答弁を先生を通じて皆さん方にも、またこれをお聞きの方にも私からお願いを申し上げたいのは、やはり命の次は金だと、こう言われておるのでございまして、御承知のとおり交通問題も、青信号があって自動信号の中において青で渡ればいいかということになりますると、学校や何かで右、左を見て、さらに手を上げて渡れ、こういうふうなことでございますので、投資家もやはり財布を出す前にちょっと右、左を見て投資してもらうということも必要ではないか、こう思いますので、よろしくお願いいたしたいと思います。
  271. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ただいま法務大臣の御答弁のとおりでございますが、最近になりまして、まことに善意の市民がこれに巻き込まれてといったことを間々聞くようになりましたので、今法務大臣がお話になりましたように、両省の間で抵当証券研究会というものを実はつくりまして、今学識経験者に検討していただいております。もしその結果として要すれば法制の整備ということになりますかどうか、その点を含めましてこの研究会になるべく早く結論を出していただきたい、こう思っております。
  272. 降矢敬義

    ○降矢敬義君 国保の問題については先ほどもあったわけでありますが、いろんなことを聞きたいんですけれども時間がありません。  ただ一つ、この国保財政、国保の運営について行政改革審議会の答申で広域運営というものを考えろという御答申が出ていることは御承知かと思います。私も保険単位は大きい方がいいし、将来、過疎の市町村というか、そういうものを考えると、どうもやはり今のままでいいのかなという気持ちを前から持っております。単にこれは財政だけの話ではないと思いますので、最後に厚生大臣の御意見を承りたいと思います。
  273. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) 市町村国保の財政は大変厳しい状況の中にございます。先ほどもお話に出ましたように、今回の老人保健法の改正によりまして相当部分改善はされるとは思いますが、なお引き続き国保の安定的な運営のために全力を挙げて検討をいたしてまいりたいと考えております。  そういう中で、今御指摘がございましたいわゆる実施主体をもう少し広くした方がいいのではないかというお考えでございますが、保険、インシュアランスでありますので、母体が広ければ広いだけ安定的であるということは当然であろうと思いますし、そういったお考えも非常に有力なお考え一つであろう。また、国があり、県があり、市町村があるという中で、県がどのような負担を国と地方との関係の中でしていただくかというような問題もあろうかと思いますす。いろいろな幅広い検討をいたしてまいるわけでございますが、そういう中で今おっしゃられたような事柄についても当然検討をいたしてまいりたいというふうに考えております。
  274. 降矢敬義

    ○降矢敬義君 終わります。
  275. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 以上で降矢敬義君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  276. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 次に、高桑栄松君の質疑を行います。高桑君。
  277. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 それでは質問をさせていただきます。  最初に、前百四国会で私はエイズはがんとどちらが怖いでしょうかという御質問をさせていただきました。外務大臣、科学技術庁長官、それから厚生大臣、大蔵大臣総理大臣からそれぞれ御返事を承りました。大体皆さんのおっしゃるところは、この病気は解明されていない、予防、治療法が確立されていないということで、やはりエイズの方が怖いのではないかという御返事でございましたが、私はさすがに知的水準の高い御返事であったと大変評価した次第でございます。国民の健康を守るという政府の責任においてエイズに対処する決意を官房長官が新聞記者会見で述べられたということを新聞で拝見いたしまして、私はこれも非常によかったと。しかも、迅速に対応されるというのは、政治の場でもこういうことがやはり物と場合によってはあるということを知りまして大変うれしいと思いました。  しかし、あれが三月でございましたが、この十月までの正確に言えば七カ月でありますけれども、その間にエイズの患者がどうなったか、確定患者でありますが。アメリカでは三月の時点では患者が一万六千でございました。今二万六千でございます。死亡者が一万四千、過半数以上であります。日本はあのときに十四名の確定患者、今二十一名で、死亡が十三名でございます。致命率は五〇%を超しております。感染者がアメリカでは大体百倍から二百倍、日本では百倍から三百倍といっておるわけで、アメリカの例をとりますと二百六十万から五百二十万ということであります。感染者、つまりウイルス保有者でございます。WHOはこの春に、世界のウイルス保有者の数をおおよそ一千万を超えたと言っております。これはやはり大変ゆゆしい問題であろうかと私は思うのでございます。  去る十一月四日のアメリカの中間選挙で――私はスローガンはよくわからないんですけれども、カリフォルニア州でありますが、びっくりしたのは、何か住民投票とかというものの提案の中で三大焦点の一つにエイズが取り上げられている。これはやはりアメリカではどれほどこれが恐ろしいものと考えられているかということではないかと思います。  そこで、実はきのうきょうの新聞をごらんになったと思うので、私もあっと思ったんですが、フィリピン女性のことが出ておりました。二十一歳のフィリピン女性が九月十七日に入国をして、十一月四日に入国管理局の方に出頭をして、今そこにいるわけですね。国立予防衛生研究所で検査をする、二日間ぐらいすると結果が出るだろうと言っております。滞在したのが大ざっぱに言って四十日であります。本人は、長野県数カ所で売春をしていたと、こういうふうに言っております。何人掛ける四十日か知りませんが、これは相当な数に上るのではないか。しかし私が非常に奇妙に思いましたのは、マニラからの報道で本人がエイズにかかっていることがわかったと言っているんですよね。私は、推定でありますが、恐らく接触感染調査の結果、そこがダブっていって、あの人だということがわかったのじゃないかなと思うんです。逆に言いますと、この人の接触をした、何人か知りませんがその接触調査が必要になってくるんじゃないかということでございます。一応こういう前提に立ちまして、我が国のウイルス保有者は百倍から三百倍といいますと、二千から六千人くらいの間になります。  それから、ちょっと比較をして言えば、核兵器をまたなくても、予防、治療法がないという病気でありますから、そして非常に感染の幅が広がっておりますので、人類滅亡の病気ではないかという、そういうことが言われている病気でございます。我が国は幸い数千の保菌者でございますので、何とか水際で食いとめることができるという形に持ち込めるのではないか。もう一 つは、グローバルな意味で、やはり我が国もこれだけの文化国家でございますから何らかの貢献をしなければならないのではないかと思いますので、この辺を踏まえて総理大臣にお考えを承りたいと思います。
  278. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) エイズの問題については先生から累次にわたりまして教えをいただきまして、非常に感謝しておるし、先見の明について敬意を表する次第でございます。私も、その後いろいろ勉強させてもらいまして、エイズというものはいかに重大な問題であるかということを深く認識いたしました。特に、予防薬、治療方法がまだ発見されていないというところが非常に致命的な問題で、むしろがんよりも怖い、そういう存在になってきたように思います。  問題は、日本の潜在力がどの程度あるか、それがどう拡大していくかというポイントにあるので、この点については厚生省において医師会あるいは病院等とも連絡をとってこれらの解明に努める必要が絶対あります。それから、国民の皆様方にこの恐ろしさをよく知っていただいて、そして自分で警戒をするという、そういう予防措置を講じていただく必要がある。これを厚生省としては至急やっていただきたいと思いまして、厚生省を督励しておるという状態でございます。  一方、エイズの病因、原因等についても、いろいろ調べて聞いてみますというと、がんに近い遺伝子の構造とかあるいはある意味においては老化現象にも通ずる要素があるということも聞いておりますが、これが解明についてもひとつお医者さん、専門家に懸命に努力していただきたい、そう思っておるところでございます。
  279. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 それでは早速、我が国の国内体制がどうなっているかということを、例えば検査の場所、全国で何カ所、チェックするべき献血件数、それから処理能力、それからマンパワー、そういったことについて厚生大臣にお伺いしたいと思います。
  280. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) ただいま総理からもお話がございましたように、エイズは大変難しい病気でありまして、これについての対策はいろいろ講じなければなりませんが、その中で現在一番中心と考えておりますのは、献血血液の中におけるウイルスの抗体保持者を見つけて、そして事前に感染を防止するということであろうと考えております。  現在、ことしの九月に全献血血液の検査を行うべく用意をいたしまして、十月いっぱいでこれを完了し、そして現在十一月に入っておりますので、全献血血液についてのエイズの抗体検査が実施されております。ATLについても同様でございます。そして、全献血血液と申しますのは、年間八百七十万件と予想しております。また、その検査する体制でございますが、全国の血液センター七十五カ所にわたって全域で行っておるということでございます。
  281. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 検査件数は八百七十万件ですね。約九百万件でございますが、それの能力というふうなのは一カ所どれくらいずつ処理できるのか。いかがでしょうか。  それからついでに、検査での擬陽性というのが出る確率もあるんですね。その辺のことをちょっと確かめたいと思います。
  282. 森幸男

    政府委員(森幸男君) 先生お話しの、まずこの検査を行うに当たりまして、一つは検査の要員がどうなっているか、二つ目には検査の機器等の物的な面がどうなっているか、それから三番目は、検査の試薬と申しましょうか、そういうものはどうなっているか、こういうようなところが問題かと思っております。  それで、検査技師につきましては、日本赤十字社の七十五センターでこの検査ができるように、十月に検査の担当者に技術研修を一週間ほどやりまして、要員は十分確保できた、こういうふうに考えております。    〔委員長退席、理事原文兵衛君着席〕 それから検査機器につきましても、十月中旬までにすべて確保いたしてございまして、検査試薬も同じく十月中旬までに確保いたして、そういう人的、物的、それからまたその試薬の面も含めまして、先ほど大臣が申し上げましたように、十一月の初めからすべての献血血液について安全に供給できるというような体制に持ってきたところでございます。
  283. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 今、十月に体制を整えるということでございましたが、官房長官にちょっと伺いたいんですが、三月の時点で、これは大変重大な問題だから銭金を惜しんではいられない、政治決断をもって、というようなお言葉が新聞に載っておりまして、私みたいな政治なんかよくわからない人間が大変感激をしたんです。もう四月から五月にはかかるのかと思っておったら十月まで何にもないというのは、官房長官の御指示はどういうことであったか承りたいと思うんです。
  284. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) 確かに私はこの委員会で、あなたがああいう御提言をなさって、質疑応答があり、それを受けまして記者会見でこの話が出ました。そこで、御質問の中にありましたように、大変致命率の高い、しかも何というか感染が非常に迅速というか、速く、どんどん広がっていく、しかも治療法はと言えば必ずしも明確でない、勢いまた最近の現象ですから国内の予防対策、治療対策が整っていない、こういうような質疑応答を受けて、確かにこれは大変重要なことで、銭金の問題ではないと思う、重要な課題だとおれは思う、こういう発言をした記憶がございます。  そこで、今の御質問は、それにしてはあかんやないか、こういうことでしょう。しかし、あれ、御質問があったのが三月だけれども予算はもう提出してしまっておるんですね。先に予算措置を――お役所の仕事というのは予算で飯を食っているんですから、そこらはやはりお考えをいただかなきゃならぬと思いますよ。しかし同時に、事柄は非常に重要ですから、それだけに厚生省当局、これは総理からもお話があったんです。そこで、厚生省は、今大臣が答弁しましたように、調査研究の拡充、それから同時に血液対策、これらを本年度からもやるべきことはやっていこう、こういうことで私は本当に真剣に取り組んでいると思います。しかし、それじゃそれで十分かと言えば、この病気の恐ろしさから言えば、私はこれでは不十分である。もう少し政府も地方団体も、またお医者さん、医師会も大学も、みんなが一体となって取り組んでいかないと民族の将来を考えた場合には大変なことになるよと、幸い日本は今、アメリカその他と違いまして患者の数も少ないんですから、今のうちにきっちりした対応策を整えるべきであろう、これは政治の場にある者としての私の物の考え方でございますが、政府としてもそういう線でこれからも進んでいきたい、かように考えております。
  285. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 後藤田さんのお顔を拝見していますと、おっしゃることはそのとおり実行されているというふうに私も受けとめておりますので、今後ともひとつハッパをかけていただきたいと思うんです。  ところで厚生大臣、そうするとこの七カ月の間、国民の皆さんも心配だと思うのは、では検査がされないままに輸血が行われてはいないかという心配がございますが、どうなっておりましょうか。
  286. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) ただいま官房長官からも御答弁申し上げましたことと関連いたしますけれども、当初、本年二月から、東京、大阪を中心に百万件体制ということで進めたわけでございます。そして、その後抗体保持者が三名発見をされました。そして、七月からは東京、大阪以外の大都市圏を含む八つの都道府県に広げまして、三百七十万体制ということで始めました。そして、九月の段階でおおむね百二十万件を検査する中で、もう五名ふえまして八名の抗体陽性者を発見したということでありまして、数の上ではそれほどの高率ではなかったかと思うわけであります。しかし、この病気の恐怖の度合いの強さから考えまして、九月には全血液の検査に踏み切った、こういうことでございます。その間には段階的にそれらの体制を強化いたしてまいって、約半年強で全血液の検査ができるようになったというふうに御理解をいただきたいと思うわけであります。  そしてもう一 つは、十一月一日からは全献血血液に対応いたしておりますと申しておりますけれども、その十一月前の、これまでの献血を受けたもので血液センターやまた医療機関に保存、備蓄されておる血液、これについてもさかのぼって検査をいたして、済んでおります。でありますので、十一月一日からはこの検査を通らない献血血液はないというふうにお考えいただいて結構でございます。
  287. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 大変よかったと思いますが、今まで百万ぐらいで、年間約九百万ですから多分足りないんだなと僕は思っておりますけれども、やっぱりとったもので検査できないものはストックしてある。それを順次チェックしながら使用できるものは使用していくということのように承ったんでやむを得ない一つの経過措置だと思いますし、安全であるということは一番大事でございますから大変よかったと思いますが、厚生省もひとつ頑張ってこれを充実していただきたいと思います。  そこで、一件当たりどれくらいの費用がかかって、今トータルでどれくらい見込んでいるか、ちょっと承りたいですね。
  288. 森幸男

    政府委員(森幸男君) 所要経費でございますけれども、エイズとATL合わせまして一人当たり四百二十六円でございます。全体の献血者八百七十万人に掛けますと大体四十億円弱というようなところになろうかと思います。
  289. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 私が質問した段階で厚生省から承ったのは、一件多分千円だろうということでございましたが、そこでいくと百億だったんですが、かなり今安くなってきたんで、円高差益なのか何かわかりませんが、ともかくよかったと思いますが、総理大臣も官房長官もあれほどおっしゃっておられますので、厚生省は遠慮なさらないでこれについてはじゃんじゃん予算を要求された方がいいと思います。  続きまして、現在輸血による感染予防以外は予防法、治療法がない。非常にこれはもう悲劇的なことに思うわけでございますけれども、しかし何か予防しなきゃならぬわけです。さっき例を挙げましたが、フィリピン女性の件がございますが、こういうのはどういう対処をなさることになるのでしょうか。
  290. 仲村英一

    政府委員(仲村英一君) エイズの予防対策でございますが、ただいまは献血者からの感染防止ということでのお尋ねでございましたが、それ以外の予防対策でございますが、おっしゃいましたような、いわゆる私どもで言っております二次感染予防というのは非常に重要なことだと思います。フィリピンの女性の例もそれに含まれるわけでございますが、こういう方たちには、抗体の陽性の方でございますとかそういう方たちには私ども通知をお渡しいたしまして、どのような日常生活をしたらいいかというふうなことで、生活指導を行 うというふうなことで二次感染を防止してまいりたいというふうに考えております。ただ、いろいろそういうエイズを心配する方たちもおられますので、相談窓口を多く開きますことでございますとか、一般方々にリーフレットあるいはテキストをつくる、さらには関係者に対しまして研修を行うというふうなことで知識の普及その他に努めて、エイズ防止につきまして努力してまいりたいと考えております。
  291. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 私が申し上げたいと思ったのは、さっきの女性を例に挙げますと、四十日間いた間の接触があるわけですよ。専門用語で言うとコンタクトトレーシングというのですが、接触感染調査というのが要るんですね。しかし向こうも言わないだろうし、彼女は帰ってしまいますから、これはもう困るので、そこで必要なのはエデュケーションになるんです。  アメリカでも、エイズについてはパニックかエデュケーションかという大きな見出しで語っていますね。さっき総理大臣が言われたのもこれ重要なんです。エデュケーション、教育だとおっしゃる、これは非常に重要なことで、これについて厚生省は力を入れて、やはりその申し出があるような体制をつくってもらわないと、コンタクトの先が、簡単に言えばこういう問題というのは倍々ゲームで進んでいきますから、百人に感染したとしますとたちまち二百人になるわけですから、非常に重要でございます。ですから私は、内容のことを今御答弁をと言っても困るでしょうから、力を入れてもらいたい。お金は総理大臣と官房長官と、大蔵大臣は今下を向いておられますけれどもちゃんと聞いておられるはずでございますから、遠慮しないでひとつお金はいただかれた方がいいと思います。
  292. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) 血液の検査と同時に、あとは発生のメカニズム、また治療、予防という研究ということも大事でありますとともに、やはり現在一番重要なことは、今先生がおっしゃられますように啓蒙普及活動ということであろうと思います。この面に全力を挙げてこれからもやってまいる決意でございます。
  293. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 そこで、総理大臣にひとつ承りたいんですが、ワクチンの開発というのは世界の権威の人の言っているのを聞いていますと難しいようなんですね。つまり予防の手段が非常に難しいだろうと思うんです。しかし治療には希望が持てる。ですから、やはり力を入れてもらうのの一つは治療研究だと思うんです。研究費は増額をしてもらいたいと思うんです。  承っていると時間がかかると思いますから、我が国の研究費は六十年度で四千万ぐらい出ました、科技庁ですね。ことしは多分二千七百万ぐらいですよ。アメリカはNIHだけでエイズだけで四百八十億かな、けたが違います。ですから総理大臣、ハッパをかける意味で研究費のことをひとつ触れていただきたいと思います。
  294. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) お金を出すことは幾らでも出しますが、問題は研究者の提携といいますか、研究協力だと思うんですね。これは単独で、一人でやれるものじゃないので、あらゆる学問が総合的に攻め合って、そして予防の方法なり治療の方法なり、あるいは病原菌を発見していく、そういう努力が必要なんで、そういうふうなチームワークなりあるいは病院なり医者を中心にした一つの体系と、それに対する援助ということで考えていきたいと思います。
  295. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 まだ尽きませんけれども、尽きさしていただかないとその次の質問ができませんので、では老人保健法の方に入らしていただきます。  ポイントは外来一部負担の増額ということと老人保健施設だろうと私は思って、この二点に絞って質問をさしていただきますが、まず一つは、健康保険における医療の考え方が独立採算ということで物をお考えなのか相互扶助ということなのかということを、厚生大臣、まず基本原則として承りたいと思います。
  296. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) その中心は保険制度による相互扶助であると考えております。
  297. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 大変これはオーソドックスでございまして、そのとおりに私も思っておりますが、そこで、外来の自己負担の一部負担の増というのは明らかに受診を抑制するというデータが幾らでも出ております。これは昭和五十八年の二月に老人医療有料化ができて、一回百円取っただけで、札幌の例ですが、健廉診査に年間五万人来ておったのが二万四千に減ったというんですから。百円だけですよ。それから五十九年の健康保険の本人一割負担のあの改正の翌年、六十年で、前年比で比べますと政管健保で一割受診が下がっているんです。  ですから今の外来の負担増は明らかに受診抑制につながるということでありますし、医療費を見ますと、老人医療のことを五十八年二月有料化になってからというのを見ますと、有料化になって一年目に、医療費というのは毎年伸びておりますが、伸び率がぐっと減ったんです。つまり医療にかからなくなったということが一つあるわけです。一年目ですね。ところが二年後はもう俄然急増したんですね。これはどういうことかというと、受診抑制があった、そういたしますと早期発見、早期治療というのがおくれますから、病気がかなり進行してから医者のところに行く。つまり重くなるということで医療費がもう格段に上がったんです。  そういうことがございますので、この際外来に関して負担増ということは、私は予防医学の立場で申し上げているんです、エコノミーのことで申し上げているのではありません。予防医学の立場では受診抑制をしてはならないと思っているんです。ですから私はこの増額についてはもとへ戻してもらいたい。本当はゼロであるべきですが、そうはいきませんでしょうから今までどおりでここは据え置いてもらいたいというのが私の予防医学者としての主張でございます。厚生大臣、お考えを。
  298. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) 御専門の高桑先生に申し上げて恐縮な感じもするのでございますが、健康保険法の一割負担導入の際とこの老人保健の今回引き上げをお願いしているケースとは少し違うのではないかというふうにまず考えさしていただきます。  また、この老人保健制度が創設されましたときに、それまで無料でございましたのが一部有料になりました。このときには、調べてみますると、昭和五十八年には外来の受診率が若干低下をしております。三・四%程度低下をいたしておりますが、一方一件当たりの日数は増加をいたしておりまして、言うならば必要な受診が抑制されたというよりもじっくりと受診、かかりつけのお医者さんにじっくりと診療がなされたというふうにも見られるのではないかというふうに思うわけでございます。一方また、今回の改正につきましては、保険制度なり、もしくは今後将来にわたっての老人医療費をどう負担していくか、そして長寿社会にどう安定した保険制度を維持していくかという観点も加わっておるわけでございますので、ひとつ御理解をいただきたいと思います。
  299. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 データは同じようなことを申し上げてもあれですから省きますけれども、北海道の中川町、鷹栖町等で全町健康管理を行っているところがあるんです。十年後になりますと俄然医療費、入院費が減ってくる。間違いなく減ってくるんですね。やはり早期発見、早期治療というのが国民の幸せであると同時に医療費の低減につながっているということは、もうこれは私が特に専門家だからと申し上げなくても当たり前の常識的論理の帰結だろうと、こう思うんです。ですから、やっぱり健やかに長生きをしてもらうには早く病気を治してやる、そういう体制をどうしてもとってもらいたい。  私は百一国会の健康保険法改正に当たって質問さしていただいた中で予防給付をということを申し上げて、この予防給付を健康保険法第二十三条に初めて入れていただきました。保険の歴史で初めてである、予防に金を出すのは。これはもう私いたく感激いたしまして、政治というのは大事なものだ、余り怠けていちゃいけないというのをそのときにつくづく思ったのです。ですから、厚生大臣、余りエコノミーの立場でだけお考えにならないで、予防ということがどんなに国民の幸せであるか、と同時に、医療費が今度は低下していくものなんだと。いずれはみんな死ぬんですから。それはもうそうなんですね。そして私たちも同じように、きょうは人の身であってもあすは我が身なんだから、そういうことをやはり考えていただきたいと思うんですが、もう一度お考えを。
  300. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) 先生御指摘のとおりだと思います。この老人保健制度の中にも、その一つの大きな柱といたしまして老人保健事業というものが創設をされております。そして、それが今実施されてまいっておりますが、これはまさに四十代を過ぎて壮年期からの健康づくり、そして年をとっても病気をしないようにしていこうというための事業でございまして、今これまで実施してまいりました中では、予算額で言えば四倍の予算をつぎ込み、毎年非常に厳しい財政状況の中でありますけれども、三割以上の予算伸び率でことしまでやってまいりました。しかし、なおまだ十分でございませんし、もっともっと充実しなければなりませんので、来年以降第二次の五カ年計画を策定してこれに力を入れてまいりたいというふうに考えております。
  301. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 再度、私は予防医学の立場から外来本人一部負担の増額には反対でございますので、もう一度それは主張させていただきまして、質問を次のポイントに移します。  大蔵大臣に承りたいと思うんですが、老後の経済保障というのは老人福祉の基盤だろうと思うんです。命の次は金だとさっきおっしゃっておられたようでございますが、そういう意味で今の老人には老後経済保障に不安材料が非常に多いんじゃないかと思うんです。    〔理事原文兵衛君退席、委員長着席〕 商品取引というのがありましたし、抵当証券という、たまたまきのうのNHKで現在一万人の被害で数百億に上ると言っていました。そのターゲットが老人が多いというんですね。だから、いかに不安が反映しているかというふうに私は思うんです。そこへもってきて貯蓄が百万以下が老人人口の四五%だという資料がございます。だから、つまり貯金も少ない。そこへマル優はどうなるのかという、マル優の行方も心配だと。金利はまた公定歩合が下がりました。私はエコノミーはわかりませんが、やっぱり貯金の利子が減るというのは心細いだろうと思うんですね。そういう老後保障というものの経済保障について大蔵大臣としてはどういうふうにお考えになるかを承りたい。
  302. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) これはいろいろな点から総合的に施策が行われていることでありまして、年金でありますとか保険でありますとか医療でありますとかいうことはもう御承知のとおりでございますが、今不安という点でおっしゃいますと、広い意味での消費者保護でございますね。抵当証券なんかも実はそういう範疇に入るのであろうと思いますが、殊にお年寄りの場合には新しい制度についてふなれでございますから、そういう意味での消費者、特にお年寄りのような方々に対するいろいろな保護の配慮というものも入り用であろうと思いますし、それはあれこれあろうと思います。金利が下がったこともどうなんだとおっしゃいますれば、そういうことはございます。理屈を申せば、金利が下がって物価も落ちついておるということであれば、それはそれなり経済的な利益がお年寄りにも及ぶとは申せますけれども、御自分の持っていらっしゃる預金の利子が下がるということでございますから、したがいまして今先ほどマル優のこともおっしゃいましたが、いろいろ施策をいたしますとしましても老人の方々に対しては制度の激変がないようにやはり考えなきゃいけないとか、あるいはシルバー預金であるとか、そういったようなことはやはりできる限り考えていかなければならないと思っております。
  303. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 それでは、この問題についての最後に総理大臣に承りたいんですが、今の老人の老後保障、経済保障ということと外来一部負担の増額ということについて総理大臣のお考えをひとつ述べていただきたいと思います。
  304. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 我々としては長寿対策大綱を推進して二十一世紀に備えていきたい、そう考えておりますが、何せ最近医療費の増高、これは老人世代が急増してきているという面も大きく力あっているわけです。そういう面から、老人の医療問題等につきましてもある程度の御負担を願う、それと同時に、国の方も老人に対するいろいろなテークケアを広げていく。そういう両々相まった措置を今度お願いいたしまして、そして老人保健制度の長期的な安定性と世代間の公平性と、それから新しいテークケアの方向をつくり出した、そういうことでありますのでぜひ御支持願いたいと思う次第であります。
  305. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 それでは、外来一部負担の件はこれぐらいにしまして、老人保健施設に移りたいと思います。  改正案では、この施設は医療法で言う病院または診療所ではないと、こういうことになっているようですね。つまり医療法の適用を受けないで医療をするということに聞こえるんですが、これはどういうことなんでしょう。
  306. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) 今総理からテークケアというお言葉がこざいましたが、それを実現するために新しい老人保健施設というものを創設いたしたいということでお願いをいたしております。  これは、簡単にわかりやすく申し上げさしていただきますと、老人病院が専ら治療を受けるための施設であり、また特別養護老人ホームが在宅で介護できない方々を預かって専ら生活サービスを行うところであるとするならば、そのちょうど中間に当たるところでございます。すなわち、治療そのものは済んだがなお医療的なケアが必要である、リハビリが必要であるという方々、それでいて自宅にはまだ帰りにくい、もしくは帰っても在宅で介護が受けられにくいという方々、こういう方々にお入りをいただく、すなわち医療サービスと生活サービスとを半々に持ったような施設ということでございます。そういうことでございますので、全く新しい施設としてこの老人保健法に制定をさしていただいたわけであります。  先生御指摘のように、その半分の部分については医療ケアでございますので医療の部分を担当するわけでありますが、医療法に規定はいたしておりませんが、この老人保健法の中にその医療に必要な医療法上の法文というものを引用いたしましてここに規定をさしていただいておる、こういうことでございます。
  307. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 よくわからなかったんですが、医療法の適用を受けないでいいということでしょうか。
  308. 竹中浩治

    政府委員(竹中浩治君) 先ほど大臣からお答え申し上げましたとおり、今回老人保健法の改正でお願いをいたしております老人保健施設は、医療サービスと生活サービスと両方あるわけでございます。そこで、現在の医療法と申しますのは、御承知のとおり、医療の面だけについて規定をしてございます。したがって、この両方のサービスを提供する施設を今直ちに医療法に規定するということになりますと、例えば医療法の目的等との関係もございます。いろいろございまして今直ちに入れるということには大変問題があるということでございまして、そこで今回の改正法におきましては、老人保健施設については老人保健法に規定をする。ただし、医療を行うわけでございますので、医療法が病院、診療所に対して行っております規制に準じた規制を老人保健法で行うということにいたしておるわけでございます。
  309. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 この問題はまた後でもう一度蒸し返したいと思いますけれども、そうすると老人保健施設の療養費ですね、これは医療込みで定額だというふうに承っているんですけれども、定額という意味は医療制限ではないか、こう思うんですが、いかがでしょうか。
  310. 黒木武弘

    政府委員(黒木武弘君) お答えをいたします。  老人保健施設の機能は先ほど大臣からお答えしたとおりでございます。病院治療が終わった寝たきり老人の方々に対しまして必要な医療ケアあるいは生活のお世話をするわけでございます。したがって、ここで行われますサービスというものは、主としてリハビリテーションあるいは看護、介護サービス、それから比較的安定した症状に対します診察とか検査とか投薬、処置等の医療サービスが行われるわけでございます。もちろん、どんな医療をしていいか悪いかという医療制限は一切行うつもりはございません。ただ、そのサービスに必要な経費については、私どもとしては非常に症状が安定した定型的なサービスでありますので、一つ一つ、薬代が幾ら、あるいは処置代が幾らということではなくて、定額の形で標準的な経費としてお支払いをしたいというのがこの提案をいたしております定額の理由でございます。
  311. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 ことが大変興味のある論争点なんですね。医療を請負でやってくれというのは生まれて初めてというか、世界でもめったにないことじゃないかと思うんです。  それから標準的なとおっしゃったけれども、標準的老人だけを入院させるならいいけれども、非標準的な老人を入れたときどうなるのか。しかも、老人の特質というのは、突発的に症状が出たり、併発症があったり、合併症があったりいたしますから、それが標準的というわけには普通はいかないだろうと思うんです。  それから、もし何か緊急事態が病気で起きたときにはどうするんだと。よそから医者を呼べ、でなかったら転院させろというふうに承ったんですが、そういうことでしょうか、いかがでしょう。
  312. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) 今先生が御指摘のとおり、症状そのものが安定した状況にあるというふうに考えておりますが、しかし突発的に緊急な治療を要するように症状が急転するということもあります。そういう場合には、まず第一義的に考えられますことは、その中間施設と提携していただいております医療機関から往診を求める、そして診断をしていただくということ、もしくはその医療機関に入院をしていただくということが考えられます。しかしながら、それが間に合わなくて、中間施設には医師もおるわけでございますので、その医師が治療に当たるということもできなければいけないと思います。  そういう意味から、この定額の療養費を設定する場合に、そういった緊急の事態の場合の定額加算をどのようにしていくかということについて、これから老人保健審議会において御検討をいただく。定額の範囲を決めていただくと同時に、そういう部分についても決めていただきたいというふうに考えております。
  313. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 これまたいろいろと問題が出てきたようでありますが、特養ホームと違うのは医師が常勤であるという条件ですね、常勤なんですね。常勤の医師が緊急事態にも手をこまぬいているというのが第一番目の処置なわけだ、そうですね。もし手おくれになったときの判断は、やっぱり常勤の医師に負わされるのかということが一つあると思うんです。それなら最初から常勤医師がやるべきですよ。だから、それはお話としては大変奇妙な話ではないかというのが私の疑問ですが、いかがですか。なるべく大臣にひとつ。
  314. 竹中浩治

    政府委員(竹中浩治君) 私どもといたしましては、緊急事態が発生をした場合に、やむを得ず転院あるいは協力病院への入院あるいは往診を求めるということがあるわけでございますが、その際におきましてもこの施設の常勤の医師ができるだけの措置をしていただくということが当然だと思っております。
  315. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 いや、私は、今当然であるとおっしゃったけれども、その前に判断が先行すると言ったんですよ。判断があって、手おくれになっても責任はないという条件がなければいかぬということを言っているんです。いかがでしょう。
  316. 竹中浩治

    政府委員(竹中浩治君) 老人保健施設の医師にこの老人保健施設の医療の管理をしていただくわけでございますので、この管理に当たる医師がこの患者さんについて、例えば急変した場合に専門医の往診を求めることが必要であるかどうか、あるいは協力病院に入院をしてもらわなければならぬかどうか、その判断はこの施設の医療管理をされる医師がしていただくということでございます。
  317. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 今二つのことがまた出ちゃったんですけれども、私がくどく申し上げているのは、判断をということは、それはもし手おくれなときの責任を負わされるかどうかということなんです。負わされなければいいんです、判断で結構です。しかし、負わされるとすればどうかということです。  それから施設の管理とおっしゃいましたが、この規則には施設管理者は医者でないということになっているようですが、いかがでしょう。
  318. 黒木武弘

    政府委員(黒木武弘君) 施設管理でございますけれども、私どもとしては医療サービスにつきましては医師が管理者として責任を持ってその任に当たってもらう必要があるということで、法文上明確に医療サービスについては医師が管理するものと規定をいたしておるわけでございます。  ところで、施設全体の管理者の問題でございますが、多くの場合医師が施設全体の管理者になられようかと思いますけれども、この施設は医療サービスと生活サービスを両方兼ね備えたサービスを提供する施設でございます。したがいまして、例えば特養ホームが併設も考えられるわけでございまして、したがって、そういう併設のような場合にはその特養ホームの施設長も施設全体の管理者としてあるいは適切な場合があろうかという考え方でございます。しかし、医療はいずれにしても医師が管理をしなければならないというふうに規定をいたしております。
  319. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 医療は医師が管理するというのは質問とか答弁の問題じゃないですよ、当たり前のことでございまして、そういうことを言っているんじゃないんです。施設の管理者がだれなんだと聞いているんです。医者でなくてもいいということが問題ですよ。施設というのは医療の設備が入っているんですから。ですから、その施設を医師が管理しないということになれば、それならやっぱり医療の責任は負えなくなるのではないかということを僕は申し上げている。  もう一つは、特養ホームが出てきました。特養ホームは本法では医師が管理者なんです。しかし、特養ホームは医師は非常勤でいいことになったわけだ。つまり、非常勤だがら管理者でないんですよ。しかし、これは常勤医師がいるんだから、施設の管理者は医者でなければおかしいんじゃないか。医療法は医療の行われる場は医師が管理するとなっていますよ、おかしいではないかということです。いかがでしょう、大臣。
  320. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) 医療サービスの部分と生活サービスの部分とを兼ね備えておるわけでございますので、全体としては医師でない管理者ということもあり得るわけでございます。しかし、そういう場合でも医療の部分については医師が管理者として責任を持つ。全体を医師が責任を持ち、また医療部分を医師が責任を持つ場合と、こう二種類あると思います。
  321. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 もう一度病院の例を今度は挙げてみますと、病院の場合は医療はもちろんですが、施設についての管理者は医者なんです。ただ、開設者は別でもいいんです。この場合は、そうすると開設者が管理者になるわけだ、あり得るわけだ。そのあり得るというのはあいまいなんですよ、どっちでもいいということですから、ない方に取れるんですから、それで申し上げているんです。  医療というものは、医師免許証というものは、私は医者を養成した立場でございますので、厳しく私自身は教育してきたつもりであります。したがって医療についての責任を負わねばならぬのです。それを施設の管理者ではない、それから常勤していながら突発事故に対しては判断が求められるだけなのか、そんなことで医療の責任が負えますかと、大臣いかがでしょう。
  322. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) 先ほども申し上げましたように、施設全体としては医師でない場合もあるわけでございます。しかし、それでありましても医療の部分については医師が管理者として責任を持つということであります。そして、先ほどの突発的なことについての医療上の責任は、その責任を持つ医師が責任を持っていただくわけでありますが、先ほど、まず最初に往診を求めたり入院をさせたりというようなことを申し上げましたのは、その医師が必ずしもそのときの突発的なことに対応できる医師でない場合もあろうかと思って申し上げたわけでこざいます。
  323. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 先ほど老人保健審議会に医療の内容についてもどうするかということを審議してもらうというふうに私が聞いたんですが、そうであるとすれば何ですけどね。まず老人保健審議会というのは、拠出金のことだけ今までやっていましたよ。ところが、今度のこの改正によりますと、老人保健に係る重要案件はまあ全部だ、そういうふうになっていますね。それは権限が改めて拡大をされたということになると思います。それから医療の内容ということを聞くとすれば、これは医療の内容、報酬等は全部今まで中医協で行ってきております。ですから、中医協はこの場合には除外されるのかということを承りたい。
  324. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) この老人保健施設の施設設備の基準とか、また人員のあるべき基準とか、そういうようなこと等について老人保健審議会において御審議をいただき、決めていただくということになっております。そして、今回のこの療養費の定額制につきましても、ただいま申し上げましたそういった施設とかまた人員等の問題と非常に密接に関連をいたしておりますので、そこにおいて療養費の問題についても御審議をいただく。そしてそのために、老人保健審議会に老人保健施設に関する検討部会というものをつくっていただきまして、そこに福祉とかまた医療担当者の代表の方々、そういう方々にお入りをいただいてそこで御検討いただく、こういうことにいたしております。
  325. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 それでは現在の老人保健審議会に医療を論ずる人が何名中何名おるか承ります。
  326. 黒木武弘

    政府委員(黒木武弘君) 二十名中二名でございます。
  327. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 二十名中二名ね。それで今までの原案ができたわけだ。大変なことだと思いませんか。人の命を預かる部分が医療ですよ。生活のどこにいてもやることなんだわ、医療というものは、やっぱり命なんだから。第一は命だとおっしゃったじゃありませんか。それを二十名中の二名で今までのことをやってきたということは、中医協を無視したことだと思います。中医協という公的機関が、何年続いたか今私は忘れちゃったけれども、長い間やってきたんだから、それを無視して、二十名中二名の委員で医療のことを論議できますか。だれとだれです。いや名前を聞かぬ方がいいや、ちょっと批判になると困りますからね。やっぱりそれは、医療ということをなめてもらっちゃ困る。二十名中二名なんですね。欠席したらいなくなるわけだ。そういうことだってあるでしょう。出席率は何ぼですか、ちょっと承ります。統計の興味があります。
  328. 黒木武弘

    政府委員(黒木武弘君) 老人保健審議会につきましては、これまで主として拠出金についての審議が多かったわけでございます。したがいまして、医療担当者と申しますか医療関係者は二名であったわけでございます。出席率は、私が承知しておる限りでは必ず出席をしていただいております。これから新しく権限として老人保健施設が加わるわけでございます。そのための審議にふさわしい場とするために医療関係者なり福祉の関係者も入っていただいて、専門的に審議する部会をつくりまして、そこで御審議を願って、よりよき老人施設の具体的な実施細目ができますように、ぜひそこのところは医療関係者、福祉関係者に御参加を願いたいというふうに考えております。
  329. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 これからのことを今論じているんじゃないですよ。今出てきたのが既に審議されたではないかと申し上げているんです。それでいいんですか。これからならメンバーをかえて、そういう人をちゃんとどれだけか入れて、それでできてきてから出していただいたらどうなんですか。
  330. 黒木武弘

    政府委員(黒木武弘君) 今回の老人保健施設の私どもが検討するまずベースになりましたのは、社会保障制度審議会が中間施設を創設したらどうかと。その際、保険財源を投入しあるいは定額の支払い方式をとったらどうかという提言がございました。それを受けまして、私どもは厚生省内に中間施設の懇談会をつくりました。そこで中間施設に関係ある専門家に御参集をいただきまして、そこの審議を経た上で、そこの御意見をいただいた上で老人保健審議会に私どもの案をお諮りをして、私どもの案をまとめたということでございます。
  331. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 こういうのを考え出した過程はいいと思うんです、素人でもいいと思うんです。私は医療の内容を審議するときに二十名中二名の医師側の委員でいいのかと申し上げているんです。むしろ過半数いなければいけないんじゃないかと。生活部分は命に直接かかわっていないわけだ。どっちが都合がいいかということなんですから。医療は命にかかわる。だからこういうずさんな考え方が出てきたんじゃないか、どうも医療法ともかかわってきますし、それから医師の医療責任を免除するみたいな感じで受け取れるとか、どう考えてもこれはおかしいのだけれども、私の時間もございますので、私は納得はしていないということを申し上げてもう一つ伺います。  健康保険それから国保の保険料というのは、健保法、国保法によりまして医療給付と現金給付に限定されていますよね。福祉には出さないことになっている。今度は出るのですね。いかがですか。
  332. 黒木武弘

    政府委員(黒木武弘君) このたび私どもが給付の対象といたしておりますサービスは、先ほど申しましたようにリハビリテーション、それから看護、それから医学的管理のもとの介護、その他必要な医療について、それを施設療養という定義をいたしておりますけれども、そういうものについて給付の対象にするということでございますから、私どもは医療サービスについて給付対象、お金を出すというふうにお受け取りいただきたい。そして生活のお世話、食費とかあるいはもろもろの生活過程においても必要になるような生活サービスの費用は利用者負担でお願いをしたいということで法案を提出させていただいております。
  333. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 いや大変明快になりました。生活は五万円ぐらい、そうでしたね、本人負担だ。あとの二十万円は全部医療なわけだ。なぜ中医協に諮らないのですか。明快ですよね、これは。大変明快になった。
  334. 黒木武弘

    政府委員(黒木武弘君) 私ども考え方は、先ほど大臣から申し上げましたように、この法案の実施に当たりましていろいろな諸基準、それから療養費の額も決めていくわけでございますけれども、私どもは中医協というのは診療報酬を専門的に審議する場であろうと判断をいたしております。したがいまして、施設基準なり人員の基準というのは、やはり老人保健審議会で審議していただく必要がある、それとの絡みにおきまして施設基準あるいは人員基準、そういうものの一環として、そういうものの一体として施設療養費の額もお決め願うのが適当ではなかろうかということで、老人保健審議会に諮問して御審議をいただくことにいたしております。
  335. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 金額で言うと二十五分の二十、つまり五分の四は医療であるということは明快になったと思います。そうすると、メンバーも五分の四は医療関係者を入れていただきたい。厚生大臣、これで締めてひとつ承りたい。
  336. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) でありますから、先ほど申し上げましたように、この老人保健施設のことについて御協議いただきますのは、その老人保健審議会の中に専門的な検討部会を設けて、その部会の中には医療担当者の方々にも十分お入りをいただいて御検討をいただく、こういうことにい たしておるわけでございます。
  337. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 どうも私も少しくどくなりましたけれども、それをしてから法案を出すならいいけれども、やっちゃってから後でメンバーをかえるというのは本末転倒ではないかと申し上げてありますから、これくらいにしておきましょう。  時間がだんだんなくなりまして、今度は、私は北海道に大変関心が深いので北海道関係の御質問を少しさせていただくのですが、私の余り得意でない経済不況対策でございますが、常識的な範囲で質問をさせていただきます。  まず、炭鉱閉山でありますけれども、全国主要炭鉱十一のうちの八つが北海道にあって、従業員が二万四千のうち一万四千が北海道である。そして、出炭量も原料炭についてはちょうど六割が北海道から出ている。これが昭和六十六年度で引き取りがゼロになるという方針で、炭鉱市町村は人口依存度が七割ということでありますので、炭鉱閉山は町が消えるということでございます。振興対策を待ち望んでおりますが、通産大臣、お考えを承りたいと思います。
  338. 田村元

    国務大臣田村元君) 御承知のように、今審議会で大詰めになっております。この審議会では地域振興対策も含めて御審議を願っております。  私は今もう石炭にかかり切りと言っても過言じゃないぐらいのことでございますけれども、これは福岡もございます、あるいは高島もございますが、どのようにして地域振興対策をするか、答申を受けましたら、もう恐らくそれのみと取り組むと言っても過言でないほどの努力をいたしたいと思っております。
  339. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 次は、鉄冷えなんですが、私も室蘭の新日鉄、日鋼には労働衛生の関係でたびたび行っておりましてよく知っているんです。しかし、室蘭市の人口はこと五年の間に一〇%減ったと言っております。新日鉄、日綱は昔に比べて従業人口が四割になっちゃったんですね、つまり下請もその分だけ減ったというふうにお考えいただけるのではないか。これは一に内需拡大に期待をしているということでありますが、通産大臣、またいかがでしょうか。
  340. 田村元

    国務大臣田村元君) 鉄鋼業は本当に大変な状態でございます。先般国内炭の引き取りをお願いしたときに全く胸痛む思いでございました。大幅な円高、しかも余りにも急激であった大幅な円高、それから国内需要の減退、それから輸出競争力の低下、それに加えて国内市況の悪化等余りにも悪い面の条件がそろい過ぎてまいりました。今年度の我が国の粗鋼生産は一億トンを大幅に下回るものと見られます。高炉大手五社は今年度上期に著しく大幅な実質赤字が発生する見込みでございます。このため中間配当の見送りを決定したというふうに承っております。  政府といたしましては、今般決定されました総合経済対策を実効あるものとするよう、補正予算の早期成立を期するとともに、対策を着実に実施することにより内需拡大を図ることとしております。また、鉄鋼業の合理化、技術開発等への努力を支援いたしますとともに、関係省庁と連携を保ちながら、雇用面あるいは地域面における施策についても万全を期する所存でございます。たとえて申しますならば、先ほどもちょっとお答えをしたのでございましたが、石炭、鉄鋼等あるいは鉱山もそうでございますが、特に構造的に不況な業種につきましては、地域を書きまして建設省へお出しをして、公共事業の優先的な箇所づけ配分を行っていただくようにしてあります。また労働省とは、大変労働省が意欲的でこざいまして感謝いたしておりますが、労働省とも十分の対応をいたしております。事務次官を長としてチームを組んでおります。先般第一回の会合を開いて、いろいろな、もうとにかく基礎的なものを一遍洗い出してみた。それを一つ一つ討議していく。しかし急がねばなりません。そういうふうに万々の対応をいたしてまいる所存でございます。
  341. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 次は北洋漁業なんですが、日ソ割り当て、昨年六十万トンに対してことしは十五万トンと四分の一になったということです。日ソサケ・マス交渉も、昨年の三万七千六百トンが二万四千五百トンになった。六五%であります。したがって減船、千五百隻が千隻に下がったということで、その船の八割は北海道の船だというふうに聞きました。これは国際政治との絡みがあって大変なことだと思いますが、それだけ国の早急な救済が期待されているということでありまして、農水大臣、ひとつお願いいたします。
  342. 加藤六月

    国務大臣加藤六月君) 今次日ソ漁業協定によりまして北海道に大変大きな影響を与えておることはよく存じておるところでございます。したがいまして、今回の補正予算におきましても、財政事情の大変厳しい中でありますけれども、滅船対策等の予算につきましてできる限りの措置をさせていただいておるところでございます。なお、融資措置につきましても、北洋漁業対策特別資金、あるいはまた国際規制関連経営安定資金、そしてまた水産加工経営改善強化資金等の融資措置をいたしまして、原料不足に悩む水産加工業者、あるいは底刺し網漁業、沖合底びき漁業等の滅船しなかった者に対し、あるいは滅船残存者に対する措置も講じてきておるところでございます。さらに、国際協定の締結等に伴う漁業離職者に関する臨時措置法、漁臨法というのがあるわけでございますが、これで沖合底びき網あるいは底刺し網等の離職者に対しまして指定をいたしました。他の業種につきましても、目下運輸省、労働省に積極的に働きかけておるところでございますし、最大限の努力をいたしておるところでございます。
  343. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 それでは国鉄ですが、どうもやっぱり北海道と九州が大変似ているような状態のようですね。国鉄の在籍者が二万八千人で、分割・民営によりまして余剰人員が一万三千人と言っております。そのうち再雇用の未確保が八千人ということで、しかも北海道の有効求人倍率が〇・三八というんで、国全体の半分に近いということのようです。これはやっぱり深刻な問題を生んでおりますが、これに対して、雇用対策等々について、何遍も御答弁なさったようでありますが、運輸大臣、ひとつお願いいたします。
  344. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 確かに今御指摘のとおり、六十二年度首の過員の規模というものは恐らく一万三千名ぐらいと私どもも予想をいたしております。それに対して、現時点で北海道におきましての採用申し出数は約三千五百名でありまして、相当な乖離があることは御指摘のとおりであります。  私どもとしては、やはり職員の方々の気持ちとすれば、たとえ国鉄を離れても道内に残りたいというお気持ちが大変強いことも承知しておりますので、全力を挙げて地元における再就職の努力は続けてまいりたいと考えております。しかし同時に、今委員が御指摘になりましたように、北海道自身がその他の分野におきましてもさまざまな雇用問題を抱えている状況でこれだけの方々の職場を全部用意をすることはなかなか難しい、これは事実私も否定ができません。そこで私どもとしては、できるだけ広域異動によりまして他の地域における再就職、再雇用の場を見出したい、その努力をいたしております。  現在までに第一次の募集は既に発令をいたしました。そして今第二次の広域異動の募集につきまして約八百名の応募をいただいておりますが、ちょうど時期的に、例えば高等学校在学中のお子さんをお持ちの御家庭とか、大変移りにくい時期でもありまして、現在まだ八百名の応募にとどまっておりますが、私どもとしてはできるだけこの広域異動に応じていただきたい。そのかわりこれは私たちも、例えば住宅の問題でありますとか、まさに公立の高等学校に在学中のお子さんをお持ちのケースでありますとか、関係各省庁の全面的な協力も得ながら対応をいたしてまいりますので、できるだけこの広域異動に応じていただきたいということを今願っております。いずれにしても、これは北海道だけではなく全国的に抱えておる問題でありまして、全力を尽くしてまいるつもりであります。
  345. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 北海道の特に不況のポイント四つを挙げてお話ししたわけでありますが、ちなみに国鉄の分割・民営のときに、三島会社と言うと黙っていても北海道、九州、四国のようですね。本州は大陸だというふうにとっているのかなと思うんですが、ハワイで言いますとメーンランドというのが本土なんですね。本州はメーンアイランドなんですよね。それを三島と言って差別するのは、このごろ差別論議が大きいようでありますが、北海道にとっては甚だけしからぬことではないかと今主張しておきたいと思うんです。ちなみにでございますが、地図を見ると北海道は小さく書いてありますが、あれは拡大率が違うのでありまして、北海道は全日本の面積の五分の一であります。人口が五%なんですね。つまり四国と九州を合わせたのが北海道でありまして、だから三島というのはまことに差別用語ではないかというふうに感じたのでちょっと申し上げておきますが、この四つのポイントを踏まえて、北海道の特殊事情に対して、これから申し上げる大臣、それぞれ一言何かお願いをしたいと思います。  労働大臣どうぞお願いいたします。
  346. 平井卓志

    国務大臣(平井卓志君) 北海道の問題につきましては、私も就任早々非常に難しい状態であるということを聞きまして、八月に室蘭の現地に入りました。かつて北海道経済を牽引した活力は今日もはや見る影もございません。そういう意味でさらに認識を改めたわけでございますが、午前中安恒委員の御指摘にもございましたように、ただいま従来の臨時措置法、制度の枠内で労働省は失業の予防、さらにはその救済に全力を挙げておるわけでございますが、相当大型の不況でございまするし、特に北海道の場合は、特定不況地域として全国で三十八カ所指定してございます中で、既に地域指定が三分の一、十二カ所に及んでおります。なかなか一口に申し上げてこれという決め手はございませんが、現行制度の枠内で機動的に運用しながら、私が午前中申し上げましたように、もう雇用対策は単独で効果を発揮いたしません。当然のことながらこれはもう産業政策と表裏一体でございまして、通産大臣からも御答弁がございましたように、これはもうきっちりチームを組んで根本的にこの対策に当たらなければいかぬ。  そのような中で労働省がかなり大型に考えておりますのは、今後の地域の雇用開発対策、これはもう総合的に中身を詰めまして次の通常国会にお諮りをいたしまして今後とも万全を期してまいりたい、かように考えております。
  347. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 同じようなことでございますが、北海道開発庁長官お願いいたします。
  348. 綿貫民輔

    国務大臣(綿貫民輔君) だれよりも北海道を愛しておられます高桑先生が、先ほどから今国際化あるいは国鉄改革というような大きなあらしの前でそれぞれの産業が曲がり角に立っておりますことを憂えて各大臣にいろいろと御質問をしておられる様子を拝聴いたしておりまして、私も同様に心を痛めておるものでございます。  しかしこの際、先ほどからお話がございましたように、各省庁におかれまして北海道には非常な御理解をいただきまして、この産業転換あるいは後退による後遺症が少しでも少なくなるように御配慮をいただいておりますし、また公共事業その他におきましても傾斜配分を特に皆さん方から御心配をいただいております。この際公共事業をてこに新しい北海道の基盤づくりを進めるとともに、また新しい産業の立地その他を含めましてあり方について新しい総合開発計画も今立案中でございますので、皆様方と一緒にひとつ真剣に考えてまいりたいと考えております。
  349. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 私だけじゃなくて、閣僚の中でも道開発庁長官はもちろん御熱心でございますが、葉梨自治大臣はまた北海道を大変御心配になっておられると思いますので、葉梨大臣からひとつお話を承りたいと思います。
  350. 葉梨信行

    国務大臣(葉梨信行君) ただいま累次先生並びに各閣僚から、北海道を取り巻く経済社会の情勢の変化につきまして、厳しさについてお話がございました。その社会経済情勢の変化を北海道の主要産業が大きく影響を受けまして、鉄鋼や造船あるいは漁業、水産業等が大変な状況になっておりますし、公共事業も北海道で希望するだけの伸びがないというようなことで、今景気の停滞感が非常に強まっておる状況でございます。私も九月の初めに視察に参りまして、肌にしみて感じてきたところでございます。  一方、北海道、道とそれから北海道開発庁は二十一世紀を見据えた北海道の振興策を検討中でございます。豊かな自然、豊富な人材等の特性を生かしまして、また民間事業者の活力を生かして景気の浮揚を図っていっていただきたいとこいねがっているところでございます。  こういう状況の中で、北海道は自治省と協議をいたしまして、自治省が五十九年から進めております地域活性化対策事業六地域を既に選定いたしまして事業を進めているわけでございます。宗谷地域、それから北見・網走地域、釧路あるいは遠軽・紋別地域、それから西胆振地方、それから渡島地方、この六地域でただいま進めておりますが、そのような北海道の自主的な積極的な努力をこれからも展開していっていただいて、この景気に対するひとつ対策を進めていっていただきたい。自治省といたしましては、それらの努力に対しましてこれからも大いに御援助を申し上げていきたい、こう考えているところでございます。
  351. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 私、北海道を申し上げたのは、特に北海道エゴで申し上げたのでございませんので、政治というものはやっぱりその地域差の生活レベルのアンバランスをどのように政治の場でバランスをとっていくかということが大事だろうという意味で、北海道アイランドについてはそういう意味で格差是正に真剣に取り組んでいただきたい、そういうふうに私は申し上げたつもりでございます。  そこでもう一つ経済関係なんですが、今間接税論議というのがしょっちゅうありまして、私もいろいろな人に、いろいろな人というわけじゃありませんが、聞かれてもだめなんですね、わからないんです。何だか大蔵大臣はごく最近日本型付加価値税というのに傾斜しているように受け取れるような新聞記事が載っておりましたが、いずれにしましても大型、新型、日本型というのは私にとってはさっぱり区別がわかりませんので、それぞれのデフィニション、定義をひとつ大蔵大臣にお願いしたいと思います。
  352. 水野勝

    政府委員(水野勝君) お話しの大型間接税あるいは新型間接税あるいは日本型間接税、もろもろの言葉があるわけでございますが、税制調査会におきまして間接税をいろいろ御審議を願ってまいりました。その審議の過程におきましては、現在の間接税はいわば個別消費税と申しますか個別間接税でございまして、法律で定められた課税物件なり課税対象、そうしたものに対しまして個々に御負担を申し上げていく、それに対しまして対置されますのが課税ベースの広い間接税ということでございます。今度の税制調査会の審議の中では、個別に掲名されたものに対しまして課税をお願いするというのでなくて、原則としては広く薄く御負担をお願いする、そして課税するのにふさわしくない対象物件、こういったものにつきましては課税をしないというそういう分け方があるのではないか。また、今後はそうしたものを正面から取り上げてみる必要があるのではないかという御議論でございます。したがいまして、そうした個別間接税、それに対しましては課税ベースの広い間接税という言葉が使われておるわけでございますが、言われておりますような大型間接税、新型間接税、こういったもろもろの言葉につきましては、したがいまして厳密な定義があるわけではございませんで、議論の中身としてはただいま申し上げてきたような議論がその主なポイントでございます。
  353. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 そこで総理大臣の御出馬をお願いしたいと思いますが、今区別のはっきりしないということでございましたが、大型間接税はしないとかとおっしゃったのは総理大臣の発案でなかったかと思うのでございますが、そうすると総理大臣のお考えの定義をひとつ承りたいということと、この三者のうちのどれに現時点では一番傾斜しつつあるかということをひとつ承りたいと思います。
  354. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) いわゆる大型間接税につきましては、予算委員会におきましていろいろお尋ねがあり、特に矢野書記長からもお尋ねがあってお答えした記憶がございます。それによりますれば多段階、包括的、網羅的、普遍的でいわゆる大型の消費税を投網をかけるように取るようなそういう消費税はとりません、やりたくありません、そう申し上げたことでございます。  A、B、Cの三案がありますけれども、全く白紙の状態であります。
  355. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 でも大型はやらぬとおっしゃったんだから新型と日本型と二つしか残ってないんで、やっぱり二者のどっちかでないかなと私は、これはどうということはございませんが、そういうふうに思ったわけです。
  356. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 関連質疑を許します。塩出啓典君。
  357. 塩出啓典

    塩出啓典君 関連いたしまして、まず最初に総理にお尋ねしたいと思いますが、総理は今日まで自民党の税制調査会に対していろいろ総理の公約に違反しない案をつくれ、このように話をしていると承っておるわけでありますが、先般山中税調会長が案をつくるのに、二段階に分けて、そして前半は減税に見合う増税案、第二段階は六十五年度赤字財政脱却のための増税案、こういう二段階に分けて検討すると記者会見で発表しておりますが、これは総理のお考えと一致しているのかどうか、これをお伺いしたいと思います。
  358. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私は一、二週間前に党税調の幹部を呼びまして、その中には山中会長も入っておりますが、その際、税制改正をよろしく頼むと言いまして、まず第一は私の公約を守るということ、それから減税及びこれに対する調整財源、これは同額にしていわゆるプラス・マイナス・ゼロということ、それから三番目は予算編成に間に合わせるようにやってくれ、こういうことをお願いしまして、三人とも、承知しました、そういうことで別れておりますので、私の要望を満たしてくれるものであると考えております。
  359. 塩出啓典

    塩出啓典君 そうしますと、二段階に分けてやるというのは総理のお考えと一致している、こう判断していいわけですか。
  360. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 一致してないということであります。つまりいわゆる増減税ゼロ、そういう形でやるということです。
  361. 塩出啓典

    塩出啓典君 それからもう一つ、これも総理にお伺いしておきたいと思うのでありますが、総理は衆議院の委員会で、自民党の税制調査会が決定をすれば公約違反にはならない、こういう意味の発言をされたわけであります。ダブル選挙で自由民主党が国民の多数の支持を得てきたわけですから、だからその自由民主党が決定したことは国民の意思に沿うものである、こういうような発言であるとするならば、私は全くおごりの姿勢と言わざるを得ない。何をやってもそれは公約違反にならないじゃないか、まさに自民党は国家なりということになりかねないと思うのであります。私は、自民党が大勝すればするほど、大地に耳につけて、そうして公約に違反しないように一生懸念努力する、こういう姿勢でいかなければならないと思うのでありますが、その点総理のお考えをお伺いしておきます。
  362. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私は塩出さんと全く同じ心境におります。  今の発言は、自民党がじゃ認めてやればそれで国民も賛成し自民党も云々ということになるのか、そういうような趣旨の質問であったと思います。私は国民も反対し、また自民党員も反対するようないわゆる大型間接税というものはやりませんと選挙中言ってきた、そういうことを守りたい、守ってくれとも言っておる。だからまず自民党が賛成しなければできない。第二番目は国民がそれに対して賛成してくれるかどうか。これは国民世論をよく見ながら判定してやっていく、そういう二つのことを申し上げておるのであります。
  363. 塩出啓典

    塩出啓典君 私は、やはり与党として選挙前に国民に約束したことは誠意を持ってやる、こういう姿勢が不可欠だと思います。  これは多少税制の問題とは外れますが、戦後シベリアに抑留された人たちが全仰協という組織をつくっているわけですが、ことしの五月十五日、選挙の前でありますが、自由民主党三役、官房長官大蔵大臣が被抑留者等に対する特別給付金の支給に関する法律案を次の国会に提出し成立を期する、こういうように文書で約束をしておる。そうして選挙後この態度を実行していないという、こういうふうに選挙前と選挙の後の姿勢が変わるということは私は許せないと思うのでありますが、総理大臣としてこの問題にどう対処されますか。
  364. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) この問題については官房長官がずっと長い間処理していまして、党の皆さんの陳情も受け、いろいろ今相談を継続しておるというところであります。  今までの取り扱いでは、この戦後処理の問題については、いわゆる諮問の委員会をつくりまして、そしてその答申をいただいておる。この答申は、一人一人個別的にお金をもって支払うというやり方によらずして、皆さんの共同の基金をつくってそれで処理したらどうか、そういうたしか答申が出ておる。官房長官はそういう答申の趣旨を尊重して今まで処理してきた、そういうことでいろいろ協議しておる様子であります。
  365. 塩出啓典

    塩出啓典君 私は、やはり約束したことはやる、できないことは選挙のためとはいえそういう約束はしない、こういう姿勢でいってもらいたいことを強く要望しておきます、当然の話でございますが。  そこで、今総理からお話がありましたように、総理は衆議院における我が党の矢野質問に答えて、多段階、包括的、網羅的、普遍的で大規模な消費税を、投網をかけるようなやり方はしない、そういうように言っている、我々よくわからないんですけれども。じゃ、今度の場合の政府税調が提案しているいわゆる日本型付加価値税というのは多段階であります。そういう意味では公約違反である、このように理解をしますが、どうでしょうか。
  366. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私は、国会で申し上げましたように、多段階、包括的、網羅的、普遍的、そして投網をかけるように云々ということは、同時に成立するという考えで言っておるわけでありまして、いろいろな限定がそこに入ってきてそういう形になれば必ずしも背馳しない、そういうふうにも考えます。要するに、多段階というのは縦の系列でずっと何段階か、それから包括的、普遍性というのは、普遍性というような場合は横の広がり、縦横で目いっぱいみんな伸びておって、そしてそれが投網でごっそり入る、そういうような意味で申し上げているわけですから、それがいろいろ限定を受けてくる、あるいは混合型が出てくる、そういうことになれば要件は満たさない、しかしこれも常識がありますから、ですから常識で判断すべきものだろうと思います。
  367. 塩出啓典

    塩出啓典君 じゃお尋ねしますが、いわゆるEC型の付加価値税、イギリスとかあるいは西ドイツ、フランス等においてもいろいろ免税点があって、ある一定の範囲は免除されておる、そういう点を考えますと、総理がやらないと言ったような形の税金の制度というのはこの広い地球上のどこかにあるんでしょうか。
  368. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) いや、私は不敏にしてどの国にどういう税制があるか知りませんが、しかし質問がありましたから、そういう定性的な性格からいえばこういうものであります、そういうふうにお答えしたわけであります。
  369. 塩出啓典

    塩出啓典君 それでは税の専門家の大蔵省にお尋ねしますが、今のすべての条件に反しない、いわゆる総理の公約をしたその税に、やらないと言ったのに当たる税金の制度に一番近いのはどこのどれでしょうか。
  370. 水野勝

    政府委員(水野勝君) ただいま御指摘のございましたように、ヨーロッパにおきましても免税点 でございますとか非課税取引でございますとかもろもろの態様があるわけでございます。したがいまして、いろんな非課税取引の範囲、免税点の範囲あるいは課税段階、その中でいろいろ組み合わせもあり得る、そういったもろもろの組み合わせなり変形の中から、ただいま総理からお話のございましたこうした条件に適合するか背馳するか、そういったものをひっくるめまして税制調査会でも御検討いただいたところでございますが、なお詰めるべき点も多いというところから選択の幅が残されておる。現在、この選択の幅の中で各方面と検討が続けられておるということで、いろいろな条件のもとでは難しい選択であるという面もございますけれども、私ども、これまでの国会での御論議、こういったものを十分踏まえて、その中に、狭い選択ではございましょうとも、そうしたものに適合するものを鋭意考え出すように現在検討が行われておるというふうに承知をいたしておるわけでございます。
  371. 塩出啓典

    塩出啓典君 この論議を幾らしてもはっきりしないんじゃないか。これでやめますが、いずれにしても総理の発言はまことに用意周到というか舌先三寸というか、私は、やはり総理の姿勢に本当の誠意がない、国民にわかってもらおうというそういう誠意がない、そういう点で大変不満であることを申し述べたいと思います。  そこで大蔵大臣にお尋ねをいたしますが、例えば日本型付加価値税、これは各流通の卸、小売段階でしかもサービスにも課税をする、そういうようなことになった場合には、やはり各商店の事務量あるいはまた国税庁の徴税体制においてもかなりの人員の増加が必要であると思いますが、そういうような点はこの税制の論議の中であわせて私は検討しなければならないと思うのでありますが、そういう点はどうなのか、検討されているのかどうかお尋ねをいたします。
  372. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 先刻も総理が言われましたように、政府税調の答申がありました後、今私ども政府・与党の中で、税制調査会が党にございまして、そこで検討を始めたところでございます。その結果を私ども待たなければなりませんので、したがいまして、仮にというお尋ねでございますから仮にというふうにお答えを申し上げます。その点誤解がありませんようにお願いを申し上げてお答えを申し上げますが、例えばいわゆる政府税調で言っておられますC型の案にいたしましても、要はできるだけ国民各層に煩瑣なお手間をかけてはならぬという、これはどういう場合にも大事なことでございますから、例えば非課税事業者はどういうふうな範囲にするか、あるいは非課税取引はどのようなものを含むか、あるいはまたインボイスというようなものは欧米でやっておるところもございますけれども、そういうことが我が国にそぐうかそぐわないかとか、あるいは納税をしますときに無論一件一件ということではなくてある程度期間をまとめまして納税をすることが実際的であるかどうかとか、そういったようなことは、この制度を考えますときに、実はこれは制度の一部でございますけれども、当然考えなければならないことであると思います。  これは仮にというお尋ねでございますので、仮にということでお答えを申し上げました。
  373. 塩出啓典

    塩出啓典君 通産大臣にもお願いをしておきたいわけですけれども、これは質問通告はしておりませんが、仮に一つの税制がスタートする場合に、納税者である企業なり個人がどういう影響を受けるかということはよく周知をしてやっていかなければいけないんじゃないか、何だかんだ法律は通ったけれども後大変だという、そういうようなことになるとこれは本当に中曽根総理の名前も後世にまで悪名として残る心配があると思うんですね。そういう点で私は通産大臣においてもそういう点をしっかりよく検討をして、税制というのはそういうものをあわせて検討してもらいたい。この点どうでしょうか。
  374. 田村元

    国務大臣田村元君) 私は私の所管の件につきましてははっきり物を言うつもりでございます。
  375. 塩出啓典

    塩出啓典君 中曽根総理は、選挙の前には減税を打ち上げて、そして一方一般消費税はやらない、あるいはまたマル優を廃止しない、そういう公約をして選挙に勝利をし、そしてその後の姿勢においては我々から見れば大変公約に反することをやろうとしておる。ところが、今の総理の御答弁から見れば、総理の見方から見ればいかなる税制も公約には反しないというそういうおかしなことになっちゃうと思うんですね。したがってやはりこういう制度は、国民に理解を求める意味で、アメリカも二年間時間を置いたわけでありますが、私は性急にやるべきではない。また本来ならば、きちっとした税改革の制度を発表して、そして解散をして国民に信を問うてからやる、私はそれが政治の常道だと思うのでありますが、その点はどうですか。
  376. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私は選挙の公約に違反したことをやろうとは思いません。これはやはり誠実に守っていくべきものであると思い、そういう意味でも党の税調の首脳部に対して選挙の公約を守るようにとよく頼んであるわけであります。  それから先般の選挙に際しまして、今マル優の話がありましたけれども、マル優に関しては、老人とかあるいは未亡人の家庭とか社会の弱い方々、こういう者に対してはマル優というものは当然存続すべきものである、そういうことを言明してきておるのであります。大体この間の選挙でいろいろ減税あるいは減税財源の論争が行われまして、公明党さんでも随分大型間接税反対とかいろいろおっしゃいまして、国民の皆さんも税という問題は非常に大きな関心を持って候補者の言うことを聞いてきたわけでありますから、私はそれらの国民の試練を経た、また国民の世論をよく聞いた上で国会議員諸君も今出てきて税制を審議しているわけですから、私はここで税法を制定しても差し支えないものであると、そう考えております。
  377. 塩出啓典

    塩出啓典君 次に、景気対策についてお尋ねいたします。  今回の補正予算が今審議されておるわけですが、これを速やかに執行して、そして四%に努力をする、こういう政府の方針と承っておりますが、やはりこれは執行を速やかにしていかなければならない。政府としてはどういう姿勢で臨むのか、またこの結果によっては四%達成を目指して第二、第三の対策も考えるのか、この点を承っておきます。
  378. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) これは私がお答えいたしますのが適当でないのかもしれませんけれども政府といたしまして、この予算はひとつ速やかに御審議をいただきまして、成立の上は、殊にだんだん寒い季節にも入りますので、積雪寒冷地もございます、速やかに執行いたしますために、また地域によりまして非常に経済が落ち込んでおりますところ、円高等々によりまして影響を受けておりますところ、いろいろございますから、そのような地区に対する傾斜的な配慮も含めまして、それからまた地方にお願いをしている部分が非常にございますので、地方議会にも速やかにひとつ御協力を願ってそうして執行をさせていただきたいということで、所管大臣皆様そのようなことでいろいろ御配慮を願っておるところでございます。なお、財政としてできる限りのことをいたしたわけでございますので、さらにそういう追加予算補正予算という面からこれに加えることは実はない、できるだけのことをいたしましたのでこれを最大限にひとつ執行いたしたいと考えております。
  379. 塩出啓典

    塩出啓典君 さらに、円高差益の還元が今日まで言われてきたわけですが、先般経企庁の発表では十兆四千億円の円高差益のうち四兆五千億が還元されておる。私は、こういう円高による苦難というのは国民全体が全力で受けていかなければならない。そういう意味で、一方ではコストダウンで命がけでやっている企業がある一方で、円高差益でのんびりしている、そういうようなことは私は許されないと思うんですけれども、特に政府の統制下にある部分がなかなか還元されていない、こう言われておるわけでありますが、これに対してはどう対処しますか、お伺いいたします。
  380. 近藤鉄雄

    国務大臣近藤鉄雄君) お答えいたします。  先生の御指摘もございましたように、経済企画庁が計算をいたしますと、円高として約六兆四千億円、そして原油価格低下分で四兆円、合計十兆四千億円ある計算になるわけでございますが、消費物価が安定をしておりますしそれから投資物価も安定をしておる、こういうことで大ざっぱに計算いたしますと四兆五千億円ほどが還元されている。そのうちいわゆる電気、電力、ガスその他料金が二兆四千億円でございます。それ以外のものにつきましても、総理からの御指示もございまして関係各省にそれぞれお願いをしてございまして、航空料金やまた輸入消費物価については追跡調査をするなり、また並行輸入を促進するなり等々の措置を講じまして、できるだけ円高差益が末端の消費者の方々に還元できるようにできるだけの措置を講じてまいりたい、また講じている次第でございます。
  381. 塩出啓典

    塩出啓典君 それから、特に、先般公定歩合が戦後最低に下がったわけでありますが、これは大蔵大臣にお尋ねしたいんですが、そのように金利が下がっても、その結果が速やかにやはり第一線のところまで行かなきゃならぬ、ところが特に不況業種とかあるいは零細企業中小企業ですか、そういうところは貸出金利も下がりにくい、また政府関係の金融機関も既に貸し出したものについてはなかなか下がらない、こういうような状況でございますが、私はやはり政府関係機関の既貸し出しの分も含めてできるだけ金利が下がるように、これをやはり法改正を含めて検討すべきだと思います。その点はどうお考えでしょうか。
  382. 平澤貞昭

    政府委員(平澤貞昭君) 先般、本年度に入りまして四度目の公定歩合引き下げが行われたところでございます。過去三度の公定歩合引き下げの際には、預貯金金利引き下げまして、それとほぼ同時にいわゆる金融機関の短期プライムレートも三回にわたって引き下げられてきているわけでございまして、そういう意味では貸出金利はずっと着実に低下を続けてきております。したがいまして、今回につきましても去る十月三十一日に預貯金金利引き下げの発議を行ったわけでございますが、今後これに引き続きまして民間金融機関の短期プライムレートにつきましても一段と引き下げるという方向で金融機関が検討しておりますので、近く具体的に引き下げ幅を明らかにするということになろうかと思います。
  383. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  384. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 速記を起こして。
  385. 塩出啓典

    塩出啓典君 総理に特に私お願いしたいのは、先ほど申しました円高差益の還元、それから金利の低下がやはり末端まで行き渡るように、そういう点について今後ともひとつ努力をしてもらいたい。その点どうでしょうか。
  386. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 円高差益の還元の問題は、ことしに入りましてもう正月からやかましく各省を督励してやらせておりまして、先ほどここで御報告がありましたように徐々に浸透してまいりまして、特に輸入品の値下げというものは、バーゲンセールということでもう大体一千カ所以上のところで、スーパーやらデパートでも行ってもらっておりまして、浸透してきております。政府関係のものでは電力代やガス代、そういうものもやっておりますし、最近はガソリンも大分下がってきまして、百十円とか百十五円ぐらいになってきておるところもあります。今後とも総動員で監視の手を広げまして、円高差益が浸透するように、特に必需品である牛肉であるとかガソリンであるとか、そういうような問題については特に関心を持ってやらせたいと思っております。
  387. 塩出啓典

    塩出啓典君 それでは最後の問題でございますが、東京の地価の高騰が非常に問題になっております。それに対して政府としては、税制面とかあるいは金融機関の不動産貸出規制とか、いろいろな規制をやっておるようでありますが、私はそういうものとともに土地の供給をふやしていかなければやはり根本的には解決をしないのではないか。そういう意味で、これは土地をつくるわけにはいきませんが、大都市に存在する国鉄用地あるいは国有地とかそういうものを、都市再開発のために残された貴重な土地でございますので、これを個々ばらばらに民間に払い下げるのではなしに、例えば都市開発の専門である住宅・都市整備公団等に払い下げをして、そしてそこで住宅をつくるべきじゃないか。  そして特に、国民の住宅に対する要望も画一的なものではなしに非常に個性化、多様化しておるわけですね。そういう意味で、私はそういうところに、これは代用土地と言われているわけでありますが、高層ビルをつくってそこはもうフロアだけつくる。そして国民の人たちはそのフロアを借りて、そのフロアは普通のアパートのように薄いフロアではなしに、厚い、大地にかわるようなそういう厚いフロアにして、そして若い新婚のときには小さい部屋をつくり、子供がふえてくればだんだん建て増しをしていくという、そういうフリースペース住宅といいますか、そういうようなものをもっと国の力で大々的にやって土地をふやす、そういうようなことをやるべきではないか。このことを提言したいわけでありますが、これについて建設大臣総理の御意見を聞いて、質問を終わります。
  388. 天野光晴

    国務大臣(天野光晴君) 国有地等の有効活用に当たっては、大規模であることなどの理由から道路、下水道等の基盤整備が必要となる場合があり、そのようなときには住宅・都市整備公団等に基盤整備を行わせることが望ましいと思っております。したがって、建設省としてはそのような事例についてはできる限り同公団の活用を図ってまいりたいと思います。  次に、住宅の供給に当たっては御指摘のとおり多様化する住宅需要に的確に対応できるような供給を行うことが重要であると考えておりまして、このため住宅・都市整備公団では、間取り変更可能住宅、メニュー方式の住宅やフリープラン賃貸住宅の供給を行ってきているところでありますが、今後さらに御提案のような方式も研究をしながら、需要動向に的確に対応した住宅の供給を推進してまいりたいと思います。
  389. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 建設大臣が申し上げたとおりであり、また先生がおっしゃいましたように、一番長期的な基本的な課題は住宅をふやすということ、これがやはり一番基本的であると思います。今の大臣のいわゆる方針に従いまして政府としても督促してまいります。  先般、新聞で新宿西戸山の住宅の記事が出ておりました。あれは私は民活第一号としてできるだけ早期に完成させたい、そう思いまして、役所のやり方はどうもペースがのろいものでありますから、どうか民間の力でやれないものかという形で、六十七社でありましたか、コンソーシアムをつくって公平に各社が入ってきて、そしていろいろ各方面で努力して都市計画の認定をやって、それで六十何社がつくった会社に払い下げをやって、払い下げの値段も客観的に大蔵省の審議会を経た値段でやって、そして地元の区及び都の協力を得て民活でやったわけです。  それがもうどんどん工事が進んで、この間募集しましたら四十四倍平均だという。公務員住宅を昔のままにしておいたら、あれだけ広い場所にぜいたくな古い建物が建っているだけでありますけれども、それを取っ払ってしまって、そして都民の住宅、それから公務員住宅はその一角に高層化して建てる、都民住宅も高層化して建てる。森林の中に、また文化施設の中に入れるというやり方であれができてあれだけの人気が出たわけであります。あれをやるについては、随分共産党の方や一部の「赤旗」その他毎回攻撃を受けましたけれども、しかし我々は民活としてどうしても早くやるというやり方でやってみようと思って、各方面の御協力をお願いしてやったわけです。あれだけ都民が喜んで殺到しているのを見ますと、やはり我々はある程度勇気を持って、合法的な手続の中で都民の要望を満たすことをやらなきゃいかぬ。 住宅の供給という問題もこれは一つの例だと、私はそう確信いたしております。
  390. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 それでは環境庁長官に御質問させていただきます。  公害健康被害補償法に関連したことですが、第一種の地域指定を全面的に解除するということが上がってきているようでありますが、これについて私は、地域解除は時期尚早である、そう思っておりますので、私の考えを質問を通して次に展開させていただきます。  まず、中公審が十月三十日に上げてきましたものの中で、健康影響は否定できない、現状においてですね。こういうことが何カ所にも出てくるわけですが、これはやはり患者の発生を予測しているということになると私は思うんですが、いかがでしょう。
  391. 目黒克己

    政府委員(目黒克己君) お答えいたします。  専門委員会の報告では、現状の大気の汚染の中ではそういう患者さんの発生することは否定できないというふうに述べられているのでございます。
  392. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 これに関連しまして地方自治体からいろいろなコメントが挙がっております。神戸市は、科学的根拠に立って公正にしてほしい。東京都は知事談話で、納得できる内容とはなっていない等々、まだございますが、これを環境庁はどう受けとめておられますか。
  393. 目黒克己

    政府委員(目黒克己君) 各地方自治体からいろいろ御指摘のような御要望等がございますが、それに対しましては、私ども十分に受けとめて、そして審議の方向の中でそれを取り入れていったというふうに私ども理解しておりますが、私ども環境庁といたしましては、この問題については今後とも検討を加えながら対処していきたい、このように考えているところでございます。
  394. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 それでは、現在大気汚染の環境基準として、二酸化硫黄、二酸化窒素、浮遊粉じんと、一番大きなのが三つあるわけですが、これがどのようになってきつつあるか、環境基準をクリアしつつあるかどうか、こういったデータを御説明ください。
  395. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) お答えいたします。  今お尋ねの中の二酸化硫黄につきましてはほぼ環境基準をクリアしているわけでございますが、二酸化窒素にかかわります状況を申し上げますと、年平均値で見ますと全国的には近年では若干改善の傾向にあります。総量規制が実施されております東京都、神奈川県、大阪府の三地域におきましても、六十年度の結果を含めましてもほぼ同様、若干改善の傾向は見られるところでございますけれども、道路沿道を中心といたしまして依然として環境基準を上回る測定値が相当程度残されておる状況にございます。なお一層の努力を要する状況にあるというぐあいに考えております。  また、浮遊粒子状物質につきましては、近年改善傾向を示しておるところでございますが、環境基準の達成率は、昭和五十九年度の数字でございますけれども、約五割にとどまっておるところでございます。この物質につきましては、測定体制の整備がおくれておる点があるわけでございますので、今後重点的な整備を促進しつつ、濃度の推移を見きわめながら適宜対処をしてまいりたいというぐあいに考えておるところでございます。
  396. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 昭和六十年度の環境白書によりますと、今お話しのように、二酸化硫黄はほとんどクリアして、限度から半分近い値になっているんですね。しかし、二酸化窒素は、自動車排出ガス測定局ではもう常時上限をオーバーしている。それから一般環境大気測定局では上限値と下限値のちょうど真ん中辺でなおかつ上限に近い中間値だというふうに環境白書には出ております。  そこで、次の問題なんですが、二百六十三ページにわたる専門委員会の報告書を私は読ませていただきました。全部読みました。非常に文献的考察を主とした大労作であると、久しぶりに喜んで読ませてもらいました。あれを読んでいろんなことを考えたわけでございますが、私はこれを学問的に高く評価しているところであります。これについて若干の説明をやはり環境庁にしてもらいたいと思うんですが、まず大都市は今や二酸化硫黄からNOxですね、二酸化窒素に主役が移ってきたと言っているようですが、この二酸化窒素についてひとつ説明をしていただきたいと思います。東京都の調査も出ておりますから、それも含めてやっていただければ大変ありがたいと思います。
  397. 目黒克己

    政府委員(目黒克己君) 専門委員会報告の中では、全体的な大気汚染の中でやはり二酸化窒素と大気中の粒子状物質が特に注目される物質だというふうに述べておるわけでございまして、当然、先生御指摘のような二酸化窒素の問題につきましても触れているわけでございます。  また、東京都の実態調査等があったわけでございますが、この調査は幹線道路の沿道住民の健康影響を調べた調査と、あるいは学童の肺機能検査を行った調査、あるいは基礎的な動物実験などの各種の調査から成っているものでございます。東京都の公害衛生対策専門委員会では、この調査結果につきまして、窒素の酸化物を中心とする複合大気汚染と健康影響との関連を示唆するものであるが、大気汚染と健康影響との因果関係については未解明な分野が残されているのでなお調査し検討を加える必要があるというふうに評価をしているのでございます。  また、今回の中央公害対策審議会の答申におきましてもこの東京都の調査について触れておりまして、この調査によりまして中央公害対策審議会の専門委員会報告の結論が変わることはない、こういうふうに述べているところでございます。
  398. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 今の中でもうちょっと詳しくお願いしたいのは、幹線道路の沿線の距離的な問題で調査したデータがあるわけですが、簡単に説明していただけませんか。
  399. 目黒克己

    政府委員(目黒克己君) この調査の中でATS方式と申します質問票を用いました幹線道路の周辺住民の有病率の調査がございまして、これは環七を対象といたしまして、あるいは国道二十号線、十六号線等々を対象としてやったものでございまして、四十から六十歳の女性を中心として学童あるいは老人といったような延べ約九千五百名の人を対象として行った調査でございます。
  400. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 その有意差は何か出ていますね。
  401. 目黒克己

    政府委員(目黒克己君) この調査は五十二年からずっとやっていたものの一部でございますけれども、年によりまして有意差が出ているものもあるのでございます。
  402. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 距離では二十メートルないし百五十メートルよりも以内と、遠いところのあたりで有意差の検討をしておりますね。それでやはり出ているというところの方が目につくわけであります。  そこで、私の方から若干レクチャーをさせていただきますと、NO2の影響というのは、非常に重要なポイントの一つは、これは溶けて入りますと過酸化窒素を形成する。過酸化脂質というのは細胞膜を障害するものなんですね。これは例えば老化現象なんかにも関係あると言っているんです。これはNOxが入ると過酸化脂質を形成していくということが非常に大きいポイントであろうと思います。  それから気道感染ですが、微生物が増殖をして、それに対して抵抗力が下がっていくというのをやはり免疫学的な立場からも動物実験で証明をしているというのが出ております。  もう一つは、肺胞の壁が厚くなるということなんです。この実験は〇・〇四ppmつまり下限値です。これの九カ月、十八カ月、二十七カ月という非常に大変な動物実験の結果出てきたものでありますが、なぜ肺胞壁というのが――これは亜硫酸ガスに比べてNOxは溶液に溶ける度合いが少ないというんです。溶けないというんです。溶けないから奥まで届くんだと。なるほどわかったですね、それは、奥まで届く。溶けてしまえば途中で吸収されちゃう。溶けないから奥までいく。つまり最終の終末気管支または肺胞まで届く。したがって、そこに炎症を起こすということが言える。つまり肺胞壁が膨れたというのは理屈が合うんですね。ですから私はやはり、しかも下限の〇・〇四ppm以下でいろいろなことが論議されているので、今のNOxの環境基準がクリアされないのに解除することは反対であるということを申し上げたわけです。  もう一つ、東京都の学童の健康調査によりますと、尿中HOPというものを調べているのがNO2の濃度の濃い地区では高く出ている。これは肺組織が損傷したことを反映するものだという解説がついているわけです。したがって、やはり肺胞壁に影響を与えるのではないかということが懸念されるというふうに私は思います。  そのほか、データはいろいろありますけれども、もう私の持ち時間がなくなってきましたので途中で次の方に移りますが、この専門委員会の答申の中で「「自然有症率」「自然発生率」とみなして、これらの概念を用いて、」というのが出てまいります。私も疫学を専門の一分野としておりますけれども、疫学で自然有症率、自然発生率というのは聞いたことがないんです。これは医学用語であるのかどうか、だれが使ったのか、国際的に通用しているかを承りたい。
  403. 目黒克己

    政府委員(目黒克己君) ただいまの点でございますが、医学の用語ではございませんで社会的な用語でございます。また、この用語につきましては私ども環境庁が使用をいたしてきたものでございます。
  404. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 私これで、学生時代精神料で習った言葉を思い出したんです。造語症というんです、言葉をつくる。これはオノマトポエジア、ドイツ語ではボルトノエビルグンと言うんです。これはどういうふうになっているかというと、自分だけに通用する独自の文字や言葉をつくるのだと書いてある。私はこれをちょっと思い出しまして、例えば大事な学術論文にこんな言葉を使われますと、どんなにいい論文でも、これを見ただけで全部非科学的だと思いますから、環境庁だけがお使いになっているのは環境庁だけでお使いいただき、国会で使っていただきたくないということを申し上げたいと思います。  そこで、だんだん時間がなくなりましたので、しようがないのですけれども、自動車排出ガス測定局で上限をここ十年間上回っていますね。環境白書ですから環境庁の関係しておられるやつですが、ちゃんとそう出ております。六十年度です。十年間は上限を上回っています。これはやはりSO2だけを念頭に置いた大気汚染であれば話は別ですが、NOxというものを念頭に置く、基準を決めているんだから、これの上限を上回っている限り局地汚染ということは当然考えなければいけないんですね、測定局が示しているんだから。一般大気は中間値で、上限に近い中間値をいっているんですから、これはやはり健康障害のおそれがあるということになると思うんです。しかも、NOxにしてもSOxにしましても、これは単体で環境基準を決めてきている、複合染汚ということは考えていません。一つ一つなんです。しかし、この二つを取り上げますといずれも粘膜刺激なんですね。粘膜を刺激する症状なんです。したがって、独立であっても恐らく複合汚染ということは相加的であると言うべきだと思うんです。相乗とまで言わなくても相加的であると言わなければならぬので、今やNOxだけを考えても指定解除は難しい。まして、SOxも少し残っているんだから、ですから複合汚染ということを今検討する段階ではないか。大臣いかがでしょう。大臣にお願いしたい。
  405. 目黒克己

    政府委員(目黒克己君) 御指摘のNOxを含めまして、SOxを含めまして専門委員会報告では総体としての健康影響、こういうふうに御判断をいただいているものでございます。
  406. 稲村利幸

    国務大臣稲村利幸君) いよいよ最後になりましたので、本当に専門家であられる高桑先生、これは公害研究所の副所長ですから、さっきから見識を拝聴しておりまして、窒素酸化物につきましては、もうこれは今先ほど来の答弁と御質問のとおりで、これに対する対策が急務でありますし、これがこれからの一番の要点でございます。  ただ、三年間ちょうどかかりまして中央公害対策審議会であれだけの議論をされた、四十二回、そして十一回の作業小委員会。そういうことで、ここで答申を出されて、その答申がこの辺で、先生先ほど厚生大臣とのやりとりで予防が大事ですよと力説されていましたけれども、こちらも予防的な方向で後追い的でなくいこう、この辺で切りかわることは大切だなと思いますね。そういうことで、今後窒素酸化物に対して公害防止に一生懸命力を入れていきたい、こう思っております。
  407. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 稲村さんは、いろいろお話を伺う機会があったんですが、いつもすっきりしておられて大変僕は好きなんだけれども、しかし切りかえてというところは気に入らないね。健康予防のために努力をする、本当は時間があればもっと僕はちゃんと意見が、内容があるんですけれども、これはしようがないから、努力することはもう当然だしやってください。しかしそれと解除とは別です。解除はいけないんですよ。しかし健康増進事業はしなければならない、これは別だということなんですね。切りかえるというところを切りかえてもらわなきゃいけませんね。これは切りかえていただく。  それでは、今度ひとつもう時間がございませんのでまとめみたいなものを私申し上げたいんですが、解除というのは去年まで新規患者が六千人いるのにきょうはなくするということなんですから、健康と疾病というのは連続したスペクトラムの中にありますので、すぱっとオール・オア・ナンということではないんだな。これはもうだれだってわかっていることです。したがってすぱっと切ることはだめなんで、その中間段階に対する措置というものがなければならぬと僕は思うんです。その内容についてのアイデアを僕は持っていますけれども、きょうはしようがない。そう思います。  それで、三つの私の結び、結論があるんです。これを聞いていただいて、大臣の御見解と総理大臣の御見解を最後に承りたいんです。  一つは、疾病、健康障害というのは医学の対象でありますから、医学に基づいて我々は健康を保持し、長寿を保つようになったわけで、健康にかかわる行政というのは少なくとも医学的な解析とその判断に基づくべきであるということが一つです。医学的解析、判断に基づいてほしいというのが一つ。  二番目は、公害による健康被害は、疑わしきは救済するというのが基本の考えではなかったのかということであります。つまり、否定できないという状態でなぜ解除するのかというのが二番目です。  三番目は、健康と疾病は連続的なものである。したがって、全面解除の前に少なくとも中間的なステップに対する検討措置があってしかるべきだというこの三点でございます。  まず環境庁長官にお願いをいたします。
  408. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 高桑君に申し上げます。時間が参りました。
  409. 稲村利幸

    国務大臣稲村利幸君) この専門委員会での審議を踏まえての答申ですので、先生御指摘の今の三点についても十分これは意を体しておる、こう解釈をしたいのでございます。
  410. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 先生が御指摘したことにつきましては我々もよく研究をいたしてみたいと思います。医学を基礎にするということは当然のことです。  それから予防と疾病との間のスペクトラム、この中間的措置をどうするか、これもやはり一つの御見識であると思います。  それから、真ん中のところがこれはどういうものかなという気が正直に言ってしておるわけでございますが、しかしこの点もひとつよく検討して考えてみたいと思います。
  411. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 ありがとうございました。
  412. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 以上で高桑栄松君の質疑は終了いたしました。(拍手)  次回は来る十日午前九時に委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時三十分散会