○佐藤昭夫君 私は、
日本共産党を代表して、
老人保健法等の一部を
改正する
法律案に対し、
反対の
討論を行います。
我が党は、本
法案が
老人医療費に対する国の支出を減らしながらお
年寄りと
国民に大幅な
負担増を強いるものであり、新たな
福祉切り捨ての突破口を開く性格を持った重大な
法案であるため、徹底した
審議を強く求めてまいりました。にもかかわらず、本院において
委員会の
質疑がわずか三日間という不十分な
審議のもとで、しかも昨日十八日は
採決は行わないとしていたにもかかわらず、この悪法の根幹を何ら変えない
修正案を提示した途端に、自民党に一部野党が協力して
採決を強行した事態に対し、まず最初に私は強く抗議するものであります。
次に、本
法案に
反対する
理由を述べます。
第一の
反対理由は、
老人患者の自己
負担を
外来で二倍に
引き上げ、一年
入院した場合には八倍という、お
年寄りのつつましやかな暮らしぶりを無視した大幅な
引き上げであります。しかも、総理は、さきの選挙においてお
年寄りに豊かな
老後をと約束していたではありませんか。それを本
法案によって踏みにじることは、大型間接税導入とともに許すべからざる公約違反であり、
国民を欺くその責任は重大であります。
政府は、
平均的な
老人世帯の
所得をとらえて無理なく
負担できると説明していますが、老齢
福祉年金をとってみても、この四年間にわずか八・四%
引き上げたにすぎないのであります。一方、取る方は三倍にも
引き上げるところに
中曽根内閣の非情さがあらわれています。お
年寄りの
負担をふやすことで
受診を抑えるなら、まず
病院に行けなくなるのは低
所得者であり、より
医療を必要とする弱い立場のお
年寄りであることは明白です。
これでは、
政府の言う
医療費の削減どころか、早期発見のおくれから病気の重症化を招き、むしろ
医療費を
増大させることは、四年前の
老人医療費の有料化の結果が何よりもはっきりと示しているではありませんか。お
年寄りの健康を守り、
医療費の節減を図るには
早期治療が最も有効であることは、我が党が指摘した沢内村の実例が明らかにしています。力づくで
医療費を抑えつけるやり方でなく、労働者の健康診断を
充実することを含めて、保健事業を一層拡充させ、
老人医療費を無料に戻すことこそが近道ではありませんか。
第二に、
老人医療費に対する
国庫負担を大幅に削減するため、
拠出金の
加入者按分率の引ぎ上げで
被用者保険にその
負担を押しつけようとすることであります。
被用者保険の
負担増は、今後四年間だけを見ても二兆円にも上り、これによって各保険
財政が圧迫され、労働者の
負担増になることは必至であります。
政府は、これをあたかも
国民健康保険財政の健全化のための
対策であるかのように言っていますが、もともと困難な国保
財政を今日の窮状に
陥れたのは、
退職者医療制度の
創設に伴い、国の補助率を大幅に引き下げたところにその根源があることは明白であります。
したがって、
老人医療費の財源は、国保に対する国庫補助をもとに戻すとともに、
社会保障財源の労使
負担割合がフランスの一対二・五、イタリアの一対五を初め、国際的に見ても極めて少ない
我が国の
現状に照らし、特に大企業に適正な
負担を求めるべきであります。これこそが真に
負担の公平の道ではありませんか。
第三に、本
法案によって
創設される
老人保健施設は、
老人の
入院医療費の圧縮を中心のねらいとしたものであります。これは
昭和七十五年に三兆円の
入院医療費の削減を見込んでいる
政府の試算からも明らかです。したがって、利用者には高い
負担を求めながら、低
医療、低
福祉を押しつけることは避けられません。
今でも七十歳以上のお
年寄りは、六十九歳以下の人に比べて、同じ病気で
治療を受けても診療
報酬を低く抑えられ、差別されています。この
老人保健施設ではさらにこの差別が拡大され、病気や症状の違いを無視して二十万円ぽっきり、
一般の
病院の二分の一程度の質の低い
医療・介護サービスしか行われないのであります。しかも、日常
生活費という名目で利用者に高額の
負担が求められ、その額は当面五万円程度と
政府は説明していますが、法的には何ら制限がない青天井になっています。安心してお
年寄りが預けられ、十分な
医療、介護、リハビリテーションを行う
施設をもっと建設してほしいという
国民の願いを逆手にとるようなやり方はやめ、特別養護
老人ホームなどの入所
施設を増設拡充するよう強く求めるとともに、お
年寄りの人間的尊厳が保障される
施設として再
検討するよう要求します。
第四は、
国民健康保険料の滞納者から保険証を取り上げ、
医療給付を差しとめるという制裁
措置を盛り込んでいることです。
もともと
国民健康保険料滞納者の
増大は、
政府が国保
財政への国の補助率を大幅に削減したため、
全国の九割以上の自治体で国保料を
引き上げざるを得なくなったことが大きな原因であります。
政府の責任は棚に上げながら、
保険料負担に耐えがたい低
所得者に制裁
措置を強行することほど冷酷な政治はありません。我が党は、このような
国民皆
保険制度を崩し、国保加入者の命にかかわる制裁
措置は断じて認めることはできません。国庫補助率をもとに戻し、被
保険者が払いやすい国保料に戻すことこそ先決ではありませんか。
以上、述べましたように、本
法案は、
医療保険制度と
福祉制度の根幹を崩し、お
年寄りと
国民にのみ
負担を押しつけることで
老人医療への国の
負担を削減しようとするものであり、
老人の命を守る
老人医療費への
国庫負担は削りながら、命を奪う軍事費に国の財源を最優先に回すという自民党政治の
政治姿勢を端的に示した改悪案であり、絶対に容認できません。
中曽根内閣は、その上に、大型間接税の導入やマル優の廃止でお
年寄りと低
所得者に打撃の追い打ちをかけようとしています。このような政治を
全国のお
年寄りと
国民は決して容認しないでしょう。
我が党は、重ねて
老人医療費の無料
制度の復活を要求し、
老人福祉の
充実のために闘うことを表明して、
反対討論を終わります。(
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