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1986-12-18 第107回国会 参議院 法務委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十一年十二月十八日(木曜日)    午前十時十五分開会     ─────────────    委員異動  十一月十七日     辞任         補欠選任      関  嘉彦君     三治 重信君  十一月十八日     辞任         補欠選任      三治 重信君     関  嘉彦君  十一月十九日     辞任         補欠選任      長谷川 信君     遠藤  要君  十一月二十日     辞任         補欠選任      遠藤  要君     長谷川 信君  十一月二十五日     辞任         補欠選任      下稲葉耕吉君     後藤 正夫君  十一月二十六日     辞任         補欠選任      後藤 正夫君     下稲葉耕吉君  十二月八日     辞任         補欠選任      長谷川 信君     遠藤  要君  十二月十日     辞任         補欠選任      遠藤  要君     長谷川 信君  十二月十三日     辞任         補欠選任      下稲葉耕吉君     大島 友治君  十二月十六日     辞任         補欠選任      大島 友治君     下稲葉耕吉君  十二月十七日     辞任         補欠選任      安永 英雄君     本岡 昭次君  十二月十八日     辞任         補欠選任      斎藤 十朗君     大塚清次郎君      鈴木 省吾君     木宮 和彦君      徳永 正利君     野沢 太三君      土屋 義彦君     田辺 哲夫君      宮本 顕治君     橋本  敦君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         太田 淳夫君     理 事                 名尾 良孝君                 猪熊 重二君                 諫山  博君     委 員                 大塚清次郎君                 梶木 又三君                 木宮 和彦君                 下稲葉耕吉君                 田辺 哲夫君                 中西 一郎君                 野沢 太三君                 長谷川 信君                 秋山 長造君                 本岡 昭次君                 橋本  敦君                 関  嘉彦君                 瀬谷 英行君                 西川  潔君    国務大臣        法 務 大 臣  遠藤  要君    政府委員        内閣法制局第一        部長       関   守君        法務大臣官房長  根來 泰周君        法務省民事局長  千種 秀夫君        法務省刑事局長  岡村 泰孝君        法務省人権擁護        局長       野崎 幸雄君        法務省入国管理        局長       小林 俊二君    最高裁判所長官代理者        最高裁判所事務        総局人事局長   櫻井 文夫君        最高裁判所事務        総局民事局長        兼最高裁判所事        務総局行政局長  上谷  清君        最高裁判所事務        総局刑事局長   吉丸  眞君    事務局側        常任委員会専門        員        片岡 定彦君    説明員        警察庁刑事局捜        査第一課長    小杉 修二君        警察庁刑事局保        安部生活経済課        長        上野 治男君        警察庁刑事局保        安部経済調査官  緒方 右武君        大蔵大臣官房企        画官       杉井  孝君        文部省初等中等        教育局中学校課        長        林田 英樹君        厚生省保健医療        局精神保健課長  小林 秀資君        厚生省生活衛生        局指導課長    中井 一士君        郵政省電気通信        局電気通信事業        部業務課長    品川 萬里君        郵政省電気通信        局電気通信事業        部電気通信技術        システム課長   小嶋  弘君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付) ○検察官俸給等に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付) ○検察及び裁判運営等に関する調査  (当面の法務行政に関する件) ○夫婦別氏の選択を可能にする民法等改正に関する請願(第一号外五八件) ○継続調査要求に関する件     ─────────────
  2. 太田淳夫

    委員長太田淳夫君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨十七日、安永英雄君が委員辞任され、その補欠として本岡昭次君が選任されました。  また、本日、斎藤十朗君が委員辞任され、その補欠として大塚清次郎君が選任されました。     ─────────────
  3. 太田淳夫

    委員長太田淳夫君) 裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官俸給等に関する法律の一部を改正する法律案を便宜一括して議題といたします。  まず、政府から両案について順次趣旨説明を聴取いたします。遠藤法務大臣
  4. 遠藤要

    国務大臣遠藤要君) 裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官俸給等に関する法律の一部を改正する法律案について、その趣旨を便宜一括して説明いたします。  政府は、人事院勧告趣旨等にかんがみ、一般政府職員給与改善する必要を認め、今国会 に一般職職員給与等に関する法律の一部を改正する法律案及び特別職職員給与に関する法律の一部を改正する法律案を提出いたしました。そこで、裁判官及び検察官につきましても、一般政府職員の例に準じて、その給与改善する措置を講ずるため、この両法律案を提出した次第でありまして、改正の内容は、次のとおりであります。  第一に、最高裁判所長官最高裁判所判事及び高等裁判所長官報酬並び検事総長次長検事及び検事長俸給は、従来、特別職職員給与に関する法律適用を受ける内閣総理大臣その他の特別職職員俸給に準じて定められておりますところ、今回、内閣総理大臣その他の特別職職員について、その俸給を増額することとしておりますので、おおむねこれに準じて、最高裁判所長官最高裁判所判事及び高等裁判所長官報酬並び検事総長次長検事及び検事長俸給を増額することといたしております。  第二に、判事判事補及び簡易裁判所判事報酬並び検事及び副検事俸給につきましては、おおむねその額においてこれに対応する一般職職員給与等に関する法律適用を受ける職員俸給の増額に準じて、いずれもこれを増額することといたしております。  これらの給与の改定は、一般政府職員の場合と同様、昭和六十一年四月一日にさかのぼって行うことといたしております。  以上が、裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官俸給等に関する法律の一部を改正する法律案趣旨であります。  何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますよう、お願いいたします。
  5. 太田淳夫

    委員長太田淳夫君) 以上で両案の趣旨説明の聴取は終わりました。  これより、裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官俸給等に関する法律の一部を改正する法律案並び検察及び裁判運営等に関する調査のうち、当面の法務行政に関する件を便宜一括して議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  6. 本岡昭次

    本岡昭次君 本日は、裁判官検察官給与法改正についての審議であります。私は、人事院勧告によるこの給与改正が一日も早く行われることを願っておりますので、改正案には賛成であります。裁判官検察官に対して、改正された給与法により新しい給与支給がこの年内に行われることを願っているものであります。  せっかくの機会ですから、質問の通告をしておりませんでしたけれども大臣一言給与の問題についてお伺いをしておきます。  裁判官検察官給与一般職職員と同じように人事院勧告に基づくわけであります。したがって、人事院勧告民間賃金との較差をもとに行うのでありますが、裁判官検察官対応する民間とは一体どういうものになるのかということになってまいります。三権分立の司法という立場で重要な職務にある裁判官検察官給与がそれにふさわしい給与になっているのかどうかということ、また、人事院勧告がその機能を十分発揮しているかどうか、こうしたことが重要な問題ではないかと私は思っております。  大臣として、裁判官検察官給与がそうした職務重要性等々に関連しながら十分な給与になっているのかどうか、大臣の感想のような答弁でも結構ですから一言聞かしておいていただきたいと思います。
  7. 遠藤要

    国務大臣遠藤要君) ただいま提案理由の御説明でも申し上げておりますので、今の理由のとおりでございまして、今ここでお尋ねを受ければ適正な方途である、こういうふうにお答えをいたしておきたいと思います。  また、一般職についても、先生方も大変御心配をいただきましたが、このたびは人事院勧告が完全実施されたというような点でこれまた大変今の実情に即しておるんではないか、こういうふうに理解をいたしております。
  8. 本岡昭次

    本岡昭次君 もっとざっくばらんなお考えを聞かしていただきたいんでありますが、それに深く立ち入らないことにいたします。  私は、この法務委員会の論議に参加させていただくのは初めてであります。いささか緊張いたしておるのでありますが、まず質問に先立ちまして、日ごろから我が国における人権擁護の問題について御努力を賜っております遠藤法務大臣を初め法務省の皆さんに心から敬意を表するものであります。  さてそこで、私は、きょういただきました百分余りの時間を活用いたしまして、精神障害者子供たち人権侵害差別状況を明らかにしながら、人権擁護を進める立場にある法務大臣法務省役割について率直な御見解や対応策を聞かせていただきたいと思います。  以下、質問を行ってまいります。  まず最初に、静岡富士市で問題になっている佛祥庵について伺います。  静岡富士市にある佛祥庵は、少年から老人まで百人以上の人たちを収容しているのであります。そこに起こっている問題は、今私は新聞のコピーをたくさん持っておりますけれども地元紙がここに起こっている人権侵害の問題を報道いたしております。分裂症などの精神病患者さんを初め登校拒否家庭内暴力薬物中毒、アル中、知恵おくれの子供たちからギャンブルで厄介者扱いされている老人まで、ありとあらゆる人たちが電話、手紙、面会などのあらゆる外部との連絡を禁止された形で軟禁されています。私はここであえて軟禁と言わしていただきたいんであります。既に殺人事件も起こっております。  佛祥庵は、現在放置されたままで何ら変わっておりません。病院であれば分院をつくります。それと同じように最近は分庵というものがつくられ、また多くの人たちが収容されようとしているようであります。ここに起こっている問題は、この新聞に書かれたことを一読しただけでも極めて重要な人権侵害がこの中にある、私はこう思うのであります。一個人が、私人が人を拘禁し、憲法で保障された通信面会の自由を奪うことが果たしてできるのかどうか、法務省考え方を聞かしておいていただきたいと思います。
  9. 野崎幸雄

    政府委員野崎幸雄君) ただいま御指摘佛祥庵でございますが、これは精神修養施設というようなことを言いまして、御指摘のような少年など多数の者を施設内に起居させており、その入居者処遇等をめぐってこれまでもいろいろな問題があったということは私ども承知をいたしておるところでございます。  この件につきましては、昭和五十八年ごろに写真週刊誌やまたNHKの報道などでもその内情が報ぜられたことがありまして、私どもも直ちに静岡法務局、それから所管富士支局を通じまして情報収集等に当たってまいりました。当時、この佛祥庵が経営しておりました学習塾先生方からいろいろな情報がもたらされたこともございまして、私どももこれにいかに対応していくかということを検討してまいったのでありますが、何分にも問題が非常に多岐にわたっておるわけでありまして、しかも改善要求をしましてもなかなか改善要求に応じないということもございましたので、これは他の行政機関とも緊密に連携を保って処理をしていく必要があるんじゃないかということで、精神衛生法上の観点からは静岡県の当局、また不法監禁業務過失傷害などの観点からは警察当局防災管理体制消防法違反などの観点からは富士当局、また給食などの関係では保健所などがそれぞれ関係がございますので、これらの関係機関にも呼びかけ、どのように協力をしてやっていくかということを検討し、また各機関がそれぞれの所管事務の範囲内で状況改善努力してまいったわけでございます。  消防法違反等の件につきましては、既に新聞等にも出ておりますように、いろいろな勧告がなされ、また告発もなされておる状況でございます。また、暴行とか傷害等につきましては、警察等が捜査していろいろ既に刑事事件となり判決のあっ た事件もあるというふうに承知をいたしております。しかしながら、状況そのものが決して抜本的に改善されたものではないのでありまして、こういった場合に我々がさらにどのように対処していくかということに関しましては関係機関といろいろ検討し、どうしたらいいかということについて非常に苦労いたしておるような状況でございます。私どもといたしましては、今後ともこれら関係機関と十分な連絡をとって、何とかいい方法を考えていきたいと考えておるところであります。  御承知のように、これらの人々の受け皿をどうするかとか、なかなか難しい問題があるわけでございますし、抜本的に一挙に解決をするということはなかなか難しいわけでありまして、そこに我々の苦労があるということをお察しいただきたいと思うのでありますが、今後とも、状況を抜本的に改善することができるよう関係機関と協力して努力をしてまいりたい、かように考えておるところであります。
  10. 本岡昭次

    本岡昭次君 状況は大体わかりましたが、今、佛祥庵に対して改善要求を出しているとおっしゃいました。新聞等を見る限り、消防法とか建築基準法に基づいての改善要求というようなものが出されていて、 それに基づく何か問題の進展があるようであります。それで、どのような省庁がどのような形でこの改善要求佛祥庵に対して出したのか、よろしければそれを資料として私見せていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  11. 野崎幸雄

    政府委員野崎幸雄君) 早速、静岡法務局とも連絡をとりまして、仰せのような資料をできるだけ作成してお届けしたいというふうに思います。
  12. 本岡昭次

    本岡昭次君 ありがとうございます。  それで、今も答弁の中に、精神障害者の問題は厚生省精神衛生法に基づいて対応というふうな意味のこともありました。  そこで、厚生省もおいでいただいておりますのでお聞きいたしますが、成人精神障害者精神病院以外の施設に、先ほど問題になっているような形で拘禁するのは精神衛生法四十八条の施設外収容禁止規定に違反していると思いますが、どうかこの点は明確にお答えをいただきたいと思います。
  13. 小林秀資

    説明員小林秀資君) 御指摘精神衛生法第四十八条には、「精神障害者は、精神病院又は他の法律により精神障害者を収容することのできる施設以外の場所に収容してはならない。」と、こうされております。佛祥庵といいますのは精神病院でもなければ、また児童福祉施設等特定法律根拠を持つ施設でもございません。したがいまして、佛祥庵に入っていらっしゃる方々がもし精神障害者であるとすれば精神衛生法上の問題である、このように思っております。
  14. 本岡昭次

    本岡昭次君 それから、未成年子供を、一個人、一私人が、かぎがかけられ、あるいは鉄格子がはまっているという閉鎖施設に収容して、その上、窓一つない暗室——反省室というようであります。この暗室に隔離、拘禁し、しかも水も食料も五日間与えなかったという事実も起こっております。子供がそういうことを告発している映像を私は見ました。子供の話も聞きました。一体何の権限によってこんなことができるのか。これは明らかに子供に対しての人権侵害不法拘禁、そして虐待ではないかと思うんですが、法務省いかがですか。
  15. 野崎幸雄

    政府委員野崎幸雄君) もし仰せのような状況がございますればそういった問題が出てくる余地は十分あろうかと考えております。
  16. 本岡昭次

    本岡昭次君 さらに、何ら法的根拠も持たない一民間施設、一民間人が、こういう形で成人あるいは未成年を問わず拘禁するのは、法律立場からいえば不法監禁であり、私たち常識的に見ればそれは監禁罪に当たるというふうに考えるのですが、この点はいかがですか。
  17. 岡村泰孝

    政府委員岡村泰孝君) 監禁罪が成立するかどうかは具体的事実関係のもとにおいて判断されることになるわけでございますが、一般的に申しまして、本人の意思に反し、あるいは親権者等の同意もないのに、一定の場所から脱出することを不能にするような状態で監禁いたしますれば監禁罪が成立する場合が多いであろうと思われます。
  18. 本岡昭次

    本岡昭次君 文部省おいでいただいていますが、未成年の場合、特に義務教育年齢に当たる子供たちのことであります。  義務教育年齢に当たる子供たちが拘禁されているため学校に通えない、勉強できないという状況にありますが、これは教育基本法学校教育法にも違反するのではないかということであります。子供精神病院に私は見に行きました。そこは鉄格子もはまって、子供はおりますけれども、しかし、そこにはちゃんと学校があって勉強する場所がついております。これは当然だと思うんですね。いかがですか。
  19. 林田英樹

    説明員林田英樹君) 御指摘のように、義務教育を受ける必要のあります学齢児童生徒につきましては、当然学校教育を受けさせるに必要な措置が講じられなければならないわけでございますし、保護者通学をさせる義務があるわけでございます。したがいまして、第一義的には保護者が適切な措置をとって通学をさせる義務があるというふうに考えておるわけでございます。
  20. 本岡昭次

    本岡昭次君 今、二、三の例を取り上げて事実を申し上げました。  そこで、明らかに人権侵害が起こっている佛祥庵について調査し、それが事実であるかどうかということを明らかにし、もし人権侵害があればその人たち人権を擁護するという責任官庁は一体どこなんですか。
  21. 野崎幸雄

    政府委員野崎幸雄君) 先ほど申し上げました消防法でございますとか、いろいろな法律も決して人権には無縁でないわけでございます。また、私ども人権擁護機関は、人権が侵犯されている事件につきましてこれを調査し、是正措置を講ずる機関でもあるわけでございますので、そういった面からは私どもも今仰せのような機関である、かように考えております。
  22. 本岡昭次

    本岡昭次君 今の答弁は極めて不満であります。建築基準法違反あるいは消防法違反文部省がこう、厚生省がこうと、それぞれいろんな法律の体系の中からそれぞれが人権に迫っていく。  法務省もそのうちの一つであるということであれば常識的に見て法務省の存在とは何か、人権擁護局というのがあって国民の人権を擁護するというにしきの御旗を持っている法務省とは一体何なのかということを疑いたくなりますね。はっきりとそれは法務省である、法務省が先頭に立って、そしてそういう人権侵害が起こらないようにする、人権侵害が起こっているかどうかということについての調査法務省がその権限でもってやっていくということでなければ、何か並びの中の一つであるというふうなことを言われたんでは法務省の看板が泣くんじゃないですか。
  23. 野崎幸雄

    政府委員野崎幸雄君) 法務省人権擁護機関をどのように性格づけるかということであろうかと思いますが、例えば、学校教育の現場でも生徒人権という問題はあるわけでございまして、その点に関しましては学校がまず第一次的にお考えになることでございます。また、精神病患者の問題につきましては、現在精神衛生法改正の問題が議論されておるやに伺っておるわけでございますが、もちろんこういった改正につきましても、その専掌機関であります厚生省がその問題についてまずお考えになる機関であるということは間違いないわけでありまして、各省庁がそれぞれ個人の人権にかかわる事項を議論されます場合には、その省庁人権問題について御判断になる、第一次的にそういう判断をなさらなければならないという点は間違いのないところであろうかと思います。  しからば、法務省人権擁護機関は何をするのかということであります。私ども人権思想の普及、高揚を図る啓発機関であり、現に人権侵害が起きているときにはその是正を図る機関であるというふうに位置づけられておるわけでありますから、私どもとしましては、そういう専掌機関がある場合には、その専掌機関がどういうふうな措置 をとられるかということをまず見守っていくのが官庁間の役割分担であろう。しかし、そういう問題について専掌機関のない立場あるいはそういうものがうまく働いていかない場合については私どもがそれに入っていく必要がある、かように考えておるわけであります。  例えば、私どもは最近ずっといじめ体罰の問題に取り組んでおります。これは学校教育の場で起きるわけでございますので、まずは学校当局がその是正責任をお持ちになっておられるということは間違いのないところであろうかと思います。しかし、それは教育問題であると同時に、私どもから見ますと人権問題でもあるわけであります。そこで、私ども人権問題という角度からこのいじめの問題、また体罰の問題に取り組んでおる。しかし、その場合に学校教育の中身に介入するようなことがあってはならないことは申すまでもないわけでありますから、そういった接点をよく考え、その境界を侵すことがあってはならないということもまた大事なことでございまして、あらゆる人権問題については法務省がすべて第一次的に責任を負うというわけではなく、やはりこれは各省庁分担してやっておるという関係にあるということを御理解いただきたいと思うのであります。
  24. 本岡昭次

    本岡昭次君 今のその答弁でもどうも納得できないのですね。もっと具体的な事実に即して答えていただきたいと思うのです。  それは、学校であれば学校という一つ責任のある組織があり、そしてそれに指揮監督する一つ組織もあるわけです。監督官庁文部省と明確にあるわけです。それに対する法律も具備されております。精神病患者の問題は、精神病院というところは公立であれ私立であれ一つ病院として医療機関としての体制がある、法律によるさまざまな監督関係もあります。そういうふうにして皆あるでしょう。だから、私はあるところであればそこでやっております。学校で起こっておる問題は法務省に言ったことはありません、これは文部省です。精神病院で起こっておることは厚生省に言っております。  しかし、この佛祥庵はどこへ言えばいいのですか。どこが責任を持ってこういう人たち人権を守ってくれるのですか。中に入っておる人が子供ならそれは文部省だ、精神病患者ならこれは厚生省だ、一般民間人はどこどこというふうに、中に入っておる人の振り分けをして、外から眺めて、おれの所轄しておる人間が人権侵害されておるかどうかなんてできっこないでしょう。ないからこういうことが起こっておるのじゃないですか。とすれば、一体だれが面倒を見るのかという具体的な事実に即して言えば、これは他の官庁に遠慮をして他の省庁権限を侵すのではないか、もちろん大事なことです。  そうではなくて、佛祥庵というわけのわからぬものの中で起こっておる問題、これこそ人権擁護機関が啓蒙という問題も含めて積極的に踏み込んでいかなければ解決の道がない、こう思う。全般的にそこで人権侵害が起こっているのか、起こっていないのかということをだれが調べられるのですか。文部省子供だけをより分けるのですか、厚生省精神病患者だけをより分けるのですか、そんなことじゃないでしょう。部分的に起こっている問題じゃない。施設そのものが、佛祥庵そのものが人権侵害を起こすさまざまな基盤を持っているから問題になっておるわけです。  そういう意味で、今のような形式的な対応では本当の生きた人権擁護ということにならない。啓蒙というのは文書に書いたり調査をしたり、そしてアンケートをとったり何かパーセンテージで分類したり、傾向はどうであるとか、グラフに出したりすることじゃなくて、人権擁護機関が積極的に人権問題にかかわって、そしてかかわったことの中で社会に多くの問題を広げていくということが本当の啓蒙だと私は思うのですよ。そういう意味で今のような観点は本当に納得できないのであります。  しかし、現時点における対応はそのぐらいで、これからの問題を人権擁護立場から法務省にお尋ねをいたします。  問題は、こういう佛祥庵のようなものが全国のあちこちにできてしまったら、どうして人権が守れるかという問題なんですね。厚生省がある調査をしたと新聞が報道しております。事実かどうかは新聞報道でありますから、それに根拠がありますので私も自信を持って申し上げられません。しかし、新聞報道によると、こういう施設が全国に百近くあって、そしてそこには二千人近くの人たちがわけのわからない状態で収容、拘禁されているということが報道されているんであります。厚生省、後でそういう新聞報道は事実なのかどうか、またそういう調査をやったことがあるのかどうか、お答え願いたいのであります。  それで、私が申し上げたいのは、法務省が啓蒙という問題も含めて、そうした佛祥庵的なところに対して、本当に人権が守られているのかどうかという人権擁護立場から立入検査というふうな、一つ権限を持って、そこに収容され生活されている皆さんの状況を定期的に的確に把握する、そういう権限は現在はないとおっしゃるでしょうが、そういうふうなものをある意味では付与していかなければ今おっしゃるようなことになってしまうと思うんです。ひところベビーホテルの問題が社会問題になって、結局だれがそこのことのめんどうを見るのかという問題になったときに、これも厚生省が一歩踏み込んでそうした問題についての解決をしたということも聞いております。  しかし、佛祥庵というふうなえたいの知れないものに対してどこがかかわるのかという問題ですね。私は、法務省人権擁護という立場からかかわる以外にはない、そして立入検査というようなものも含めて人権擁護をする、できる条件を整えるべきだ、こう思うんでありますが、法務大臣、いかがですか。今までのやりとりを聞いておって、そういうふうな対応の仕方を今後していくということについての決断をしていただければありがたいと思うんでありますが、いかがでございますか。
  25. 野崎幸雄

    政府委員野崎幸雄君) 今の御質問に対しまして、まず事務当局から申し上げたいと思います。  委員も御指摘がございましたように、もし法務省人権擁護機関一般に立入調査権といったものを持つというようなことになるためには、今の人権擁護機関の性格を変えていくという必要があろうかと思います。確かに人権擁護行政を展開していく上におきまして、法務省人権擁護機関が非権力的な啓発機関であるということについてもっと強制力を持つべきではないかというような議論がなされてきておることは私どもも十分承知をいたしておるところであります。  この問題を御説明しますためには、まず人権擁護機関の創設の事情を御説明しなければならないと思うのであります。法務省人権擁護機関昭和二十三年に創設されたわけであります。それはちょうど片山内閣のときでございますが、人権擁護機関というものが必要だと。つまり、憲法で基本的人権が戦前とは比較にならないほど手厚く保障されることになった。そこで、そういうものを現実に保障していくためにはそれを専門に扱う機関が要るじゃないかということから国のどこかに人権擁護機関を設けようという議論になり、まず最初は、アメリカの司法省にあります人権擁護課というものをモデルにされたいきさつがございます。ただ、この人権擁護課と申しますものはアメリカの司法省の刑事局に属しておりまして、特に法律で規定された事件につきまして調査をし訴追をするということを担当しておる機関でございました。  そこで、人権擁護課というものをそういう刑事手続的なものにするかどうかということが問題になったわけでありますが、むしろそれよりも啓発機関として位置づけた方がよくはないかということで現在のような人権擁護機関というものができ上がったわけであります。その結果、私どもは、特段の法律の規定がなくても、憲法の基本的人権 というものがゆるがせにされているというような状況がありますときには、それは人権問題であるということでかかわりを持つことができてまいったわけであります。  私どもはこれまで、例えば同和問題、いじめ体罰の問題、また近隣騒音の問題、公害の問題、ありとあらゆる問題について人権問題として介入してまいりました。これがなぜできたかということは、これは非権力的な啓発機関として位置づけられたからでありまして、私どもはこれまでそのことを非常に誇りにも思い、またその選択というものは非常に正しかったんだという確信を持ってやってきたわけであります。そこで、これを強制力を持たせる機関にするということになりますと、なかなか両者を兼有させるというわけにはまいらないことになるわけでありまして、恐らくそういう権限を行使できる場合を限定しないといけない。そしてそれが果たして今のような民事系統の法務局の中においていいのかどうかといったことにもなってくる。そういうことになっていきますと、かえってその活躍分野は狭まるんじゃないかというふうに私ども考えるわけであります。  したがいまして、ただいまの問題は、今申し上げましたように、法務省人権擁護機関の基幹にかかわる問題でございまして、法務省の基本的性格というものは今申し上げたようなものであるということをよく御理解いただきたい、私どもはそういうように考えるものであります。
  26. 遠藤要

    国務大臣遠藤要君) 今、先生の御質問、私も聞いておって、先生がいらいらされるのも無理がないなと、こう感じさせられております。さような点でこの問題、入庵者の処遇の問題や何かでいろいろの問題があるということは直接間接耳に入っております。さような点で、これは法務省内に人権擁護立場を今啓発機関として持っているということはそれはそれとして、私自身として関係省庁とこの対応をどうしていったらいいかということを検討させたい、したいと、こう思っております。  さらにまた、刑罰問題に触れるようなことがありますれば捜査当局が適宜適切な処置を講ずるものと私は信じております。さような点で御了解願いたいと思います。
  27. 本岡昭次

    本岡昭次君 今、局長大臣答弁でいいわけでありますし、私も十分理解はしているつもりなんであります。しかし、どうにもならぬというもどかしさみたいなことでそういうことが思わず口をついて出るという状況なんであります。それぞれの各省庁に、大臣がおっしゃいましたようにまたがる複雑な問題がありますので、人権擁護立場で、法務省関係しているところと十分緊密な連携をとってもらって、そして人権侵害にかかわる諸問題を早急に解決する具体的な手だてをとってもらえれば、何も立入検査権を行使してでもなんというようなことを言わなくても済むわけです。円の中心に近づかずに何か同じ距離のところをぐるぐる回っているような気がして、さらにそこが分庵をつくって、さらに大きなものをつくるとか、全国に同じようなものがふえてくるとすればこれはもう大変なことになるんじゃないかと、こういうことで申し上げたわけで、今大臣がおっしゃいましたように、早急にこれの対応をお願いしたいと思います。  最後にお聞きしておきます。  これはビデオをあるところで見て、そこでことの責任者がいろんなことをしゃべっておるのです。その中で一つ大変気になったことがあります。それは、親が頼みに来るから私は引き受けているんです、親が頼みに来るということは親権者が交代をするということになるんだ、だから私は何でもできるんだ、こう言うんですね。親はそれこそわらにもすがるような思いで、結局そういうところへ行かなければならぬということ自体が社会的な問題だと思うんですが、最後のよりどころとしてお金を持ってそこへ子供を預けにいく。  しかし、受け取る側はこれで親権が交代するんだ、何をやってもいいんだ、こういう受け取り方で、そこで児童虐待に近いことがなされる。しかし、それを正当化するというこの発想、それこそ人権啓蒙の上から言えばとんでもないことだと思うんであります。親の側にも問題があると思いますが、しかしそういう立場で何をやってもいいんだという形で、戸塚ヨットスクール的なものを根絶していくという意味で、啓蒙という立場でのしっかりとした対応をお願いしたい、こう思います。
  28. 野崎幸雄

    政府委員野崎幸雄君) 私は、今御指摘になりましたビデオを見ておらないわけでありますが、親が頼みに来れば何でもできるわけでもないことは親が何でもできないことからも明らかであろうと思うのでありまして、そういう間違った考えに基づいてそういう施設が運用されているとすれば人権上も大問題であろうかと思います。  本日、いろいろな点を御指摘いただきましたので、早速所轄の法務局とも連絡をとりまして、さらに事情を改善するための努力をしてまいりたい、かように考えております。
  29. 本岡昭次

    本岡昭次君 それでは、次の問題に入らしていただきます。  次に、精神障害者への差別問題について伺います。  憲法第十四条は、「すべて国民は、法の下に平等であつて、」社会的身分などにより「政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。」と定めています。国際人権A規約、B規約も同様の規定があります。A規約には二条二項、B規約には二条一項、十六条にございます。  ところが、精神障害者法律によって、つまり、国の行為によって実はさまざまな差別を明文で受けております。これはもう大変な人権侵害の問題であります。先ほどから論議しておりますように、人権問題の担当であります法務省は、法律政府の行為によって精神障害者がどのような差別を受けているか、その実情を把握しておられるかどうか、まず伺っておきたいと思います。
  30. 野崎幸雄

    政府委員野崎幸雄君) 精神障害者につきまして、法律上いろいろな制約がなされておるということは私ども承知をいたしておるところであります。ただ、法律に基づく行政行為というものによって人権侵害されている場合ということになりますとこれはなかなか難しい問題でございまして、御承知のように、法律というものは制定されるに当たりましてその合憲性といいますか、そういう問題についてまず判断がなされ制定されておるわけであります。したがいまして、戦前の司法機関におきましては法律の違憲判断というものはしてはならないとされておったのでありまして、これはまさに国会が国権の最高機関であるということから当然の要請であったわけであります。  戦後の憲法は最高裁判所に違憲立法審査権というものを認めまして、その限りにおいて司法の優位ということが言われるようになったわけでありますが、それは、裏返して言うならば行政機関はそういう権限を持たないということであります。  したがいまして、私ども行政機関立場から、ある法律というものが憲法の保障しておる基本的人権侵害しておるんじゃないかということを申し上げる立場にはないわけでありまして、恐らく問題は基本的人権の制約に関する法律があったときに、できるだけ必要最小限、できるだけ制約がない方向へ改善していくべきではないかという御議論であろうかと思うわけであります。その問題につきましては、先ほど申し上げましたように、まずその法律所管官庁があるわけで、そこで御検討があるべきものであり、現にいろいろな法律についてはそういう検討がなされておるというふうに私どもは伺っております。  私どもといたしましては、そういう改正作業の中で必要に応じ意見を申し上げて、よりよい方向へ事態がいくようにと努力をしてまいりたい、かように考えておるところであります。
  31. 本岡昭次

    本岡昭次君 今の抽象的な御答弁は大変不満なんですけれども、後ほどの質問の中でまた順次明らかにしていきます。  そこで、具体的な問題に入る前に、法務大臣にも一言伺っておきます。  一九七五年の国連の総会で障害者権利宣言が採択されたことは御存じのとおりであります。精神障害者も身体障害者も差別はしないということがその中の重要な問題なのであります。その二条では、「いかなる例外もなく、」「すべての障害者に与えられる。」と言っています。精神障害者も「他の人々と同等の市民権及び政治的権利を有する。」と定めてあります。国際障害者年には総理大臣責任者となって、これは我が国でも当然のこととして承認をしたはずであります。少なくとも、法律政府による精神障害者に対する差別があってはならないと考えるのであります。  法務大臣のお考えをお聞かせ願いたいと思います。
  32. 遠藤要

    国務大臣遠藤要君) 精神障害者は医療の必要上その行動が制限されることはありますけれども、その基本的な人権はひとしく尊重されるものである。立法行政においてもその人権侵害されることのないようにすべきことは当然であると信じております。
  33. 本岡昭次

    本岡昭次君 明快な御答弁をいただきましてありがとうございます。  それでは次に、現在の国内におけるさまざまな分野で、精神障害者が具体的にどのような差別を受けているのかということを一、二申し上げてみます。  今も大臣、医療上の問題とおっしゃいましたが、それは主として精神病、病気であります。だから、病気の治療という面に当たっての違いがあるという意味をおっしゃったんだと考えます。そこで、医療法という法律があるわけでありますが、医療法上も差別をされております。医療法では、入院患者十六名に対して医師一人、入院患者四人に対して看護者一人が必要である、こう定められております。にもかかわらず、精神病院、これは病院でありますから病気を治すところであります。精神病院では、政令、通達でもって医療法がゆがめられて、医師はその基準の三分の一でいい、看護者はその基準の三分の二でよいとされています。しかし、実際にはこのように低められた基準を満たしているものもごくわずかで、ほとんどか基準の七〇%程度を充足するのに精いっぱいという状況です。  かつて、宇都宮事件というものが起こりましたけれども、千人の患者に対して一人の院長だけが診断をしていたというふうなことが起こるのであります。そして栃木県が実態調査に入りますと、医師はおることになっているのでありますけれども、全部それは医師の免許状の写しがあるだけでありまして、実態としての医者はいない。それでも病院として通用するというふうな大変なことがあるのであります。ほかの病院であれば患者さんがまず承知しませんね。そこで診てもらう患者の周辺の者が承知しない。しかし精神病院はそういうことが堂々と白昼まかり通るという状況があるんです。  なぜそういうことなのか。医療法の上で同じ病院でありながら、今言いましたように医師、看護者は低くてもいい、こうなっている。これが差別でなくて何であるのかと私は言いたいのであります。精神障害者は国によって十分な医療を受けなくてもいいということを明らかに言っている。同じ病気になっても、精神病という病にかかった者は国によって十分な医療を受ける権利をここで拒否されているということになります。私は医者ではありませんから病気について詳しくありません。しかし、心の病というものがかなり難しい病であるということはわかるわけであります。手術をしたり薬を飲んだだけでは治らない。かなり長期にわたって十分な手厚い介護、看護が要る。そういうところが他よりも少なくていいということについては何としても理解ができない。  厚生省に対して、私どもは再三何としても差別を撤廃すべきではないかと。ということは、これは法務省に言われるまでもなく、直接の省庁であります厚生省には申し上げておるんです。ただ、ここで言っているのは、こういうものがありますよということを法務大臣にもちゃんと知っておいていただきたいということで申し上げております。  それで、私は厚生省には、ここに課長においでいただいておりますが、ここで長々と私の言うことに対する反論は時間の関係で聞きたくないのでありまして、要するに、法務省といたしまして、こういうものがあって、これは先ほど言いましたように、心身障害者という中に身体障害者、体に障害があるということと、精神障害者、精神に障害を持つということがなぜこういうふうに分けられなければならぬのか、なぜ分けられているのかという問題についておかしいなと思う心を法務省当局に持ってもらいたいと私は思うのであります。  厚生省一つの理屈があるからこういうことをやっているのだと思うのですが、しかし、人権擁護を啓発し、人権侵害をなくする立場にある法務省は、先ほど言いました障害者権利宣言とかあるいはまた人権上の立場からそこのところはおかしいという気持ちを持っていただきたいという願望を私は持っているんですが、いかがでございますか。
  34. 野崎幸雄

    政府委員野崎幸雄君) ただいま御指摘のようなことにつきましても十分関心を持って勉強していきたい、かように考えております。
  35. 本岡昭次

    本岡昭次君 具体的な中身はまた別の厚生省のところでやらせていただきます。  それで次に、もう一つ出してみたいのですが、福祉法上にも多くの差別がございます。身体障害者、精神薄弱者には福祉法がございます。身体障害者福祉法、精神薄弱者福祉法というのがあります。そして、法律の保護のもとに一定の福祉の施策が進められています。ところが、精神障害者には福祉法がございません。それではなぜ精神障害者には福祉法がないのかという問題があります。また心身障害者対策基本法というものがございます。この法律の中に、入院中の精神障害者適用されないということがあります。また、社会福祉事業法というのがございます。身体障害者や精神薄弱者は入っておりますが、精神障害者は対象になっていません。このような状態でございますから、精神病者の福祉事業はほとんど進まないという具体的な実態にあるということも御存じおきいただきたいと思います。  厚生省答弁をいただきたいんですが、これは一つの事実としてあることだけ申し上げてみたいと思います。  それから、労働上にも差別がございます。身体障害者雇用促進法があっても精神障害者雇用促進法がございません。精神障害者は働かなくてもいいのか、あるいは国が雇用保障という立場で働かせてやるというふうな意味での責任はないのか、こういう問題を含んだ現在の法律であります。ここに精神障害者の生存権も労働権も侵害されているという状況がございます。  労働省にも来ていただいておりますけれども、ちょっと時間が足りませんので、答弁についてはまた別の機会にさせていただきたいと思います。お越しいただいて済みません。  それで、今言いました福祉法上のこの問題、あるいは労働上のこの問題、こうした基本的な国の明文化された法制度の中に明確に精神障害者だけが分けられているというこのことを、法務大臣は一体どうお考えになりますか。感想のようなことでも結構ですからお答えをいただきたいんです。
  36. 遠藤要

    国務大臣遠藤要君) 人権擁護の面からということになると、これはすべてが人間社会の中でございますのでそれにかかわらない問題は一つもない、こう思いますが、精神障害者に対する福祉の面においてのいろいろの行政的な国としての面倒見がという御指摘がございましたけれども、なるほど、今お話があって、そういうふうなものかなと。勉強不足でございまして、今承知をしたというわけでございますので、今頭に入っただけで、感想はと聞かれるとまたお答えするだけの時間がございませんので、いずれ何かの機会に先生に親しく感想を述べたいと思いますので、御了承願いたいと思います。
  37. 本岡昭次

    本岡昭次君 きょうは、法務大臣に十分こういう実態を知っていただくことが私の目的でございますので、また後日の機会に内容の問題については言っていきたいと思います。  次に、精神障害者に対する資格制限の問題があります。私は、法務省立場から具体的に突っ込んだ形で考えを聞かせていただきたいと思っています。資格制限というものがあるんですね。こういう職業についてはならない、こういう職業にはつけないというのがあるんです。その中には禁治産者とか準禁治産者に対するものもたくさんあります。しかし、それは一応裁判所が、そういう資格を持つこと、そういう職業につくことに対しては無能力であるという判定を下して、そしてこういう職につけない、こういうふうにあるんです。  しかし、恐ろしいことに精神障害者精神障害者であるゆえをもって、裁判所の判定を受けることもなく、だれがどういう手続で決めるのかわかりませんけれども精神病者、精神障害者精神病にかかっている者、精神疾患とかいうふうなさまざまな名前でずっとふるいにかけて、そして絶対にこの職業についてはならぬという絶対要件というものがあるんであります。通訳やガイド、調理師、警備員、美容師、理容師、自動車運転手と、ずっと百近い職業から絶対的に排除をしております。このことは精神疾患あるいは精神病にかかっている者、精神病者、精神障害者などと一体どういうふうにして、何によってふるい分けをやって、資格を取るときにだれがそういうふるい分けをするのかということなんですね。精神病という病にかかった人、またそういう病気を持ちながら今悪戦苦闘されている方々の社会参加を困難にしているだけでなく、そういう人たちにとって本当に差別的であり極めて侮辱的な内容であるというふうに私はそれをずっと見てしまったんであります。  そこで、この資格制限をする目的というのは、つまるところ、その資格を取ることに不適格者というものがあるから、あなたは不適格でありますよということに、排除するところに目的があるんでありますから、要するに、この資格制限の理由として、有資格者として要求されている職務を遂行することが不能である場合と、何々の職業を遂行する場合にその能力として不足があるとか、能力として不適格であるとか、あるいは不能であるからということを定めればいいわけで、特に精神障害者というものをきちっとはめて、そしてだれが判定するのかわからないような状態で特定をしていくということは大変な問題があると思うんですね。この基本に精神障害者精神病者は治癒しない、あるいは緩解しない、要するに治らない病気であるという考え方があり、座敷牢以来この人たちは危険な人であるから、あるいは閉じ込め、あるいは社会から隔離をしていくべき人たちであるという古い偏見の発想に基づいておると私は考えます。  しかし、現在のこの医学の中で、私は多くのお医者さんに聞きますと、精神病といえども十分な介護、看護というものを施すことによって一応の病気の治癒あるいはまた緩解というものは可能なのであるということも聞いております。いつまでも精神障害者という字句を残して、そして差別的状況を固定化するのは大変不当であるというふうに私は思うのであります。  それで、私は提案をしてみたいんであります。仮に制限をするとしても、禁治産者、準禁治産者と同じように、その精神病あるいは精神障害というものがあって、特定の仕事に従事することが不能であるという判断裁判所がやってこう持ってくるというんなら、そういう第三者の権威のあるところで判定を下すというのならば私も納得できる部分であります。家庭裁判所で司法的手続というものを行って、そして制限をするというふうなことにできないか、その文字を削って。そういうふうな事柄も含めて、この絶対的要件としての資格制限を全面的に見直していくということを精神障害者人権擁護という立場でやっていくべきときではないかと私は思うんであります。法務省にそうした問題の考えを聞かしていただきたいと思います。
  38. 野崎幸雄

    政府委員野崎幸雄君) 医師でございますとかその他いろいろな職業につくに当たりましては、職業の資格を得るに当たりましては、その職責を少なくとも果たし得る人でないといけないということで精神病患者というものが問題になっておるものと考えます。今御指摘のような法律はそれぞれの諸官庁があるわけでございますからそこでお考えいただくことであろうかと思いますし、また、きょうは裁判所の方からはどなたもお見えになっておられませんので、    〔委員長退席、理事名尾良孝君着席〕 今、むしろ裁判所がそういうものを判断すべきではないかということについても私の方がお答えする立場にはないわけでございますけれども、そういう認定を裁判所に任せるということになりますと、これはまた司法権との絡みでいろいろ問題があるのではないかなという感想を持っておることだけ申し上げておきたいと思います。
  39. 本岡昭次

    本岡昭次君 私は、個々の問題を幾つか、警備員とか美容師とか理容師とか通訳とかいうように並べましたが、そうしたら理容師はどこ、警備員はどこ、あるいはまた通訳はどこの省庁というふうにふるい分けしてしまったらここで論議する必要はないわけでありまして、私は初めに、精神障害者だけがなぜ他の身体障害者との間においてこういう職業につくことについても差別を基本的に受けなければならぬのかという、そこのところを求めているんであります。  だから、この問題を大臣にお尋ねしても、初めて聞くことでありましてというふうな答えが出てきたんではどうしようもないのであります。しかし、私が言っている裁判所にというのは例えば一つの例であります。裁判所にその判断を仰ぐことがいい結果を生むのかどうかということはさらに詰めてみなければわかりません。しかし、少なくともだれが、どこで、どんな手続によって精神病患者だと認定するのかという問題が依然として残るんであります。そうでしょう。履歴書に私は精神病患者ですと書く人はいないでしょう、本当に就職しようとするならば。だれが認定するのかということがないまま一人歩きしていくことに私は一つの差別というものが起こる可能性があるだろうと言っておるんです。  それで、精神病というものが病気であるならば、病気というのは一定の治療と看護をすれば治るから病気なんでしょう。また、その状態が軽くなるからなんでありましょう。しかし、精神障害者というのは一体どこまでの範囲が精神障害者なんですか。治ってもその人は精神障害者と言うんですか。そういうものが依然明らかにならないまま包括的にとにかく精神障害者精神病者、精神病にかかった者などとやっている、そういうことは極めて差別的ではないかということを私はここで申し上げているんであります。だから、現に法律の中にこうしたものもございますよと。  例えば、今法律を変えなければならぬと言っている北海道旧土人保護法というもの、私もあれにはびっくりしました。旧土人とは何か。それは明治時代には正しい法律用語で差別的なものでなかったんでしょう。しかし、今は自民党さんも含めてすべての政党が、今ごろ旧土人なんていうのはおかしいではないかというふうに、時代の変化の中でそのときは差別的でなかった諸状況も変わっていくんであります。だから、時代の中で変えるべきものは積極的に変えていかにゃいかぬという種類のものではないか。そういう範疇に入るものが精神病精神病患者で、一くくりにして一定の職業なり社会から切り離していくという思想を変えていくということは、同じような範疇のものとしてやっていく必要がある。こういうふうなことで一般的な問題として私は法務省に論戦を挑んでいるわけなんですよ。だから、余り木で鼻をくくったようにやらないで、乗ってきてもらってやってもらわにゃ困ると思うんであります。いかがでしょう。
  40. 遠藤要

    国務大臣遠藤要君) 今御指摘精神障害者の 問題については、医療その他のいろいろの点で制約を受けていると考えられますけれども、その基本的な人権はひとしく尊重されるべきである、先生と同じような考えでございまして、それを超えて制約、制限をするということは相当でない、こう思います。
  41. 本岡昭次

    本岡昭次君 したがって、そういう立場で最後に大臣にお考えを聞かしていただきますが、そのときにまた突っ込んだ質問をさせていただきます。  そこで次に、公衆浴場法というのがありまして、四条にこんなことが書いてあるんです。「営業者は伝染性の疾病にかかっている者と認められ、又は他の入浴者の入浴に支障を与える虞のある精神病者と認められる者に対しては、その入浴を拒まなければならない。」という法律があるんです。私も小さいころ銭湯に行ったときに何かこの種のものが銭湯のところに書いてあったなというような記憶がぽっとよみがえるんでありますけれども、この公衆浴場法の第四条に堂々と今のような言葉が書いてあるんであります。一体なぜここにこういうふうに、「入浴に支障を与える虞のある」と、これは、そうしたおそれがあるのは精神病患者だけがそういう状態を起こすのか。私はなぜここにこのような特定がなされるのかということをまことに奇異に感じるのであります。  そうすると、例えば、アパートなんかに住んで、まあ精神障害にかかっている方というのは生活基盤が皆弱いです。だからアパートとかいうそういう低い家賃のところにお住まいになるということが多いんじゃないかと思います。そういうふうに思うことが私もまた差別かもしれません。しかし、実態としてそうであればそういうところにはふろがない。そして当然銭湯に行かなければならぬ。しかし銭湯に入ったらいかぬと、こう言われる。この人たちはふろに入るなということになるのかという単純な疑問さえ起こってくるのであります。なぜ銭湯から締め出さなければならぬのか。現にこんな法律が存在している。これは、法をつくりそれを執行している政府の大変な偏見が残っている。もしこれに対して合理性のある見解があるんなら私は聞かしていただきたいと思うんです。
  42. 中井一士

    説明員(中井一士君) 公衆浴場法四条の規定でございますが、今、先生から御指摘のございましたような条文が設けられているのは、そのとおりでございます。この規定の趣旨は、この条文に書いております一般の入浴者に支障のある精神病患者が混浴することによって公衆衛生上の危害を防止しよう、こういう趣旨から設けられた規定でございますが、この条文の取り扱いにつきましては、公衆衛生を確保するという観点から、今後、その運用の実態等を調査するなどして十分な検討をしてまいりたい、かように考えておる次第でございます。    〔理事名尾良孝君退席、委員長着席〕
  43. 本岡昭次

    本岡昭次君 大臣いかがですか。何とかしてくださいよ。
  44. 遠藤要

    国務大臣遠藤要君) 先ほど申し上げたとおり、きょうの先生のいろいろのお気持ち、そういうような点を各省庁と何らかの機会にいろいろ協議して、前向きで進ませたいと思っております。
  45. 本岡昭次

    本岡昭次君 しかし、省庁と相談することもありましょうが、一人の人間として、この文言が第一気に入らぬし、文言が極めて差別的なんですよ、今の課長の答弁もね。「他の入浴者の入浴に支障を与える虞のある精神病者」というふうに、他の入浴者の入浴に支障を来すというのは、これは子供だって、中にはわあっとこういうふうにして、いろんな支障の来し方がありますね。だから「精神病者」を取ったって何もおかしくないわけでしょう。「他の入浴者の入浴に支障を与える虞のあると認められる者に対しては、その入浴を拒まなければならない。」と。そうでしょう。その「者」の中に精神障害者が入っていたって何もおかしくないじゃないですか。その他の者が入っていたって、いろんな反社会的な人が入っていたって何もおかしくない。なぜわざわざここにこれを特定するのかというところに極めて、政治の分野、法律の中に明記された差別があるんです。  だから、啓蒙宣伝されるといったって、こんなところにこんなものがあれば、精神障害者は差別してはならないんだといかに啓蒙宣伝しようとしても、法律にあると、ああ、やっぱり精神障害者って怖いんだな、絶えず周りにいろんな混乱や支障をもたらし公衆という中にはなじまない人なんだなということをむしろ積極的に啓蒙宣伝をしておる。だから、啓蒙宣伝の立場にある法務省としては、こういうふうなものは断固、それは法務大臣いろいろ権限の横並びがあろうと思いますが、これは都合悪いよ、だめだよと遠藤法務大臣ならはっきり言えるんじゃないか、私はこう思ってやっているんですが、そこはいかがですか。
  46. 遠藤要

    国務大臣遠藤要君) いろいろ先生のお話を聞いて、各省庁ともいずれ検討したい、こう思っております。例えば、プールなんかに入るにも、入れ墨の入った人は御遠慮願いますという、そういうふうな書き方をして制限されている場所もございます。そういうような点がございますが、精神障害者とはということになりますけれども、恐らくアパートを借りて入浴するという人はもう全快者だ、こう思っておるわけですが、確かにそういうような点で差別がされているなというような感じもなきにしもあらずだと、こう思いますので、この点などもいろいろ御相談していきたいと思いますので、御理解願いたい。  また、きょうの先生の御質問がマスコミの御協力で報道されますると、さっきからのお話も、直接私から警告しなくともいろいろ改善される点が大きいと思いますので、その点も御理解願っておきたいと思います。
  47. 本岡昭次

    本岡昭次君 私は問題点ばかり指摘しましたが、国としても差別を撤廃しようという積極的な動きもあります。厚生省も一方では、私たちがああうまいこといいことやったなと思うことがある一方、何でこれを改めぬのかという両方があるわけです。  それで、いいことをしたという方を言います。ふろと同じで、プールというのがありますね。あれもみんなか入るんですよ。ところが、プールにも今まで精神病者を入れたらいかぬということが同じようなことで通達の中に書いてあったようであります。ところがそれを、本年の五月三十日付の通達でもって、今私が言いましたように、「精神病者」という条項を抜いたんであります。例えば、こういうことが昔の通達の中にございました。「伝染病疾患、泥酔者、精神病者、付添人のない老幼衰弱者及び他の遊泳者に迷惑を及ぼすおそれが明らかである者は、遊泳をさせないこと。」ということで、ここに「精神病者」というのが入っていたのであります。それを五月三十日厚生省生活衛生局長の名前で「遊泳用プールの衛生基準について」の新しい通達が出されております。その中ではこういうふうになっております。「遊泳者の管理」というところで、「伝染病り患者、泥酔者、付添人のない老幼衰弱者」と、こういうふうになって、「精神病者」という字句を外しているのであります。外せばいいんですよ。他に迷惑のかかるおそれのあるということでくくってしまえばいいんですよ、迷惑をかける人があれば。ここではちゃんとこういうふうに削っている。  これは、局長のいわゆる指導通達の範疇のところであったものを削っている。一方は法律でありますから、これは局長が一生懸命、課長がそう思ってもなかなか手のつけられない部分だから、私は、恐らくプールはやれても銭湯は残っているんじゃないか、こう思うのであります。だから、こういうふうにプールの面で改善をされたのならば、当然大衆浴場も同じような形でやっても十分なる整合性がある、あるいは合理的である、こう考えるのであります。そういうふうにきちっとやれることがあるということをひとつ知っておいていただきたい。  そこで、厚生省に一言関連して質問しておきますが、全国の一般公用のプールすべてに改正されたことが広く周知徹底されるようにどのようにし ているのか。私の耳に入ってくるのには、プールがよく使用された八月の段階にまだ昔の看板があって、精神障害者は入ってはならない、私のところは入れませんというふうな看板をかけているところが現にあったということを聞いております。そこを見に行ったんですが、もう冬ですから看板がなかったもので実態がわかりませんでした。だから、厚生省として周知徹底方がどのように行われているのか。それから、現にあるプール、温水プールでは今でも使用できるわけでありますし、これの周知徹底が今どのようになっているかという調査を一度していただきたい、こう思うのでありますが、厚生省
  48. 中井一士

    説明員(中井一士君) 御指摘のように、局長通知の改正は本年の五月でございますので、十分時間が経過しておりませんので周知徹底していない部分もあろうかと思いますが、本改正趣旨にのっとってより徹底するように一層いたしたい、かように考えております。
  49. 本岡昭次

    本岡昭次君 この点の最後の質問をさせていただきますが、このほかにフェリー会社の約款の中に、私どものフェリーは精神病者は乗せませんよというふうなことが書いてあるというようなことも耳にいたしております。調べ上げればいろいろこういうものがあるんじゃないかというふうに私は考えるんです。したがって、今必要なことは、法務大臣もおっしゃいました、結局法務省が中心になっていただかなければならぬと私は思うのでありますが、総務庁とか厚生省とか文部省とか労働省とか、関係する省庁と十分連携をとって、そして国の責任精神病者に対する差別、そういうものはどういう形で行われているのか、あるのか。また、その差別でないような状況にしても、現に精神病者と特定しているような字句がある。国の法律あるいはその下位の規則、通達とかにそれがどういう形で存在しているのかということを一遍洗い直していただきたいと思うんですよ。そうすると、法務大臣が、へえ、そんなことがあるのかとおっしゃる。私もこれを調べながら、ああこんなことがあるのかと驚いたのであります。恐らく、全部洗い直すとこんなところまで精神障害者とか精神病者ということが入ってきているのかということに私たちは気づくんではないかと思います。  ちょうど来年、精神衛生法改正していこうじゃないか、それは広く人権という問題にかかわり合いながらやっていこうということで、厚生省も大変な努力をしていただいておりますし、国際的にも日本のあり方が注目されております。それだけに時期も適しておりますので、これは人権擁護という立場にある法務省が音頭をとっていただいて、洗い出しを一度やっていただきたいのであります。その中で、これはもうはっきり差別であると、例えば今のふろのようにわざわざここに特定して書く必要もあるまいというふうなものを撤廃していく、あるいはまた急激にできないものは段階的にその問題の排除について一定の手順を踏む一つの計画を立てる、このようなことをやっていただきたいと思うんです。こうしたことを日常ふだん絶えず注意をして見ている人がいなければ、これは結局人間の、私たちの視野から外れていくんですね。そして、そういうものが残っていく、何か問題が起こらないとわからない、こうなります。  だから、こうした差別の問題に対して絶えず目を光らせ、差別や人権侵害が起こらないように専門的に活動していく差別防止のためのオンブズマン制度というふうなものも人権擁護、啓蒙という立場から確立して、もちろん法務局で十分やっている、法務省でやっているとおっしゃればそうかもしれませんが、しかし、そうしたものを新たにさらにつくってやっていくというのも一つの方法ではないかと、こういうことをいろいろ勉強してみて私は思ったのであります。法務省並び法務大臣の決意あるいはお考えをお聞かせをいただきたい。
  50. 野崎幸雄

    政府委員野崎幸雄君) 精神障害者につきましても、いろいろな制約というものは医療上の必要から必要最小限にとどめられるべきことは当然のことでございます。しかし、精神障害者に対する偏見というものはなお根強いものがあるわけでありまして、私どもも障害者の社会に対する完全復帰というものを一つの啓発の重点目標としてこれまでも啓発をしてまいったわけでございますし、今後ともその線で啓発を続けてまいりたい、かように考えております。  今、いろいろ各法律の洗い直しといったことが指摘されましたけれども法律の洗い直しというのはなかなか大変な仕事でございますし、また、果たして私どもの仕事、私ども所管事項であるかということになりますといろいろ問題もあろうかと思います。  ただ、今そういう御指摘のありましたことは十分頭に残して帰りたい、かように考えておるところであります。
  51. 遠藤要

    国務大臣遠藤要君) お答えいたします。  基本的な人権の尊重ということは当然なことでございまして、その点から人権擁護の啓発というような趣旨で、今、先生から御指摘を受けたような点を各省庁にも、こういうふうな点で差別になるのではないか、なりませんかというようなことで協議をして、先生の考えられているような方向に努力していきたい、こういうふうな点で御理解をちょうだいいたしたいと思っております。  とにかく、先生としては大変御熱心にこの問題に取り組んでいただいておって、大変私も勇気づけられております。ぜひ差別という問題が、言葉がなくなるように私も一生懸命努力いたしたいと思いますので、皆さんの御協力もお願いいたします。
  52. 本岡昭次

    本岡昭次君 大臣の決意は一〇〇%承っておきます。ただ、法務当局として、法務省として私たちの所轄で、権限で、仕事の範囲でできることであるかどうかということをいつも念頭に置きながら答弁いただいておるようでありまして、そこのところがひっかかるのであります。もちろん、現在の膨大な法律なり下位にある規則とか政令、通達まで法務省が全部やれと言ったってこれはできると思っておりません。ただ、そういうことを一度、きょうの私の質問を契機にして、法務省の音頭で、もちろん法務大臣にとっていただかなければなりませんが、各省庁関係者に集まっていただいて、皆さんの法律なり、あるいはまた通達なりいろんなところに精神障害者がどういう形で位置づけられておりますか、一遍全部洗い出してみてくださいよというふうな、これは、何も正月までにしてくれなんて言っているわけではないんでありまして、一年間かかってでもゆっくりやっていくというふうなことでぜひやってもらいたい。  もし、それをおたくがおやりにならないのなら、私たちの方で何らかの手を使って、それこそ何年かかってでも一遍やってみなければいかぬじゃないかという気になっているのでありまして、もしそんなことを我々がやったらおたくらがお困りになるんじゃないかと思いますよ。だから、もう少しそこのところは、そういうふうな問題を一遍検討してみるとか。しかし、この場の検討というのはしないのと同じことだとよく言われますけれども、それでもここで検討すると言われたら私は勇気づけられるわけでありまして、そしてこの問題の締めくくりにしてもらえませんか。そうしなかったら私はずっとこだわってぐずぐず言っておらなきゃいかぬことになります。
  53. 遠藤要

    国務大臣遠藤要君) 先生のお気持ち十分——自分もこの七月以降この場に座らせていただいて、役所というのは大変ガードが厳しいんだなということをしみじみ感じております。私以外の局長なり部長の答弁も、よその役所を余り刺激するような言葉は使わないでほしいというような気持ちで、大臣にも陰に陽にそういうふうな締めつけ方をされております。  しかし、私は今の先生のお話よく認識をいたした次第でございますので、できるだけ協議をして、先生の気持ちというものを頭に描いて努力したいということで御理解を願いたいと思います。
  54. 本岡昭次

    本岡昭次君 よくわかりました。私も遠藤大臣 だということを頭に置いて論戦を挑ましていただいたようなわけでございまして、よろしくお願いいたします。  それでは最後に、国際法律委員会というNGO——国連の非政府機関ですが、「日本における人権精神病患者」ということについての報告を出し、それを「精神医療人権基金」運営委員会というところが私たちにも読めるように日本語に訳して本を出してくれております。これは法務省の方もお持ちではないかと思うんでありますが、これを読んでいただけましたかどうか、お伺いをしたいと思います。
  55. 野崎幸雄

    政府委員野崎幸雄君) ただいま仰せのような報告書が出されておること、私どもも十分承知をいたしております。
  56. 本岡昭次

    本岡昭次君 それでは、私は法律家ではございませんので非常に知識も乏しく、あなた方との論戦にたえるだけの力を待っておりません。それで、これをかりてお伺いをいたすことにいたします。  まず、厚生省がおられるので非常につらいんでありますが、厚生省との関連で若干御質問いたします。  厚生省は、去る十一月二十五日の本院の社労委員会で、現在の精神衛生法の制度に国際人権規約違反はないと言っておられる。当然あるとは言えませんからないと言わざるを得ないと、このことはある意味では私は善意に理解をいたします。しかし、この国際法律委員会は、日本の精神障害者に対する法律精神衛生法は国際人権B規約に抵触するんではないか、あるいはまた違反する部分があるんではないかということを言っております。その点では、厚生省と国際法律委員会とは正面から対立する。しかし、国際法律委員会というのは非常に自由な立場にある。厚生省の方は、現行法というものの枠がありますから、非常に厳しい環境にあるので、本来そうだという合意点があるとしても、そこに到達するのにはかなりの時間を要するというふうに私は理解をしておるものであります。  そういうことを前提にした上で、幾つかの点について、ここで述べられている意見について法務省の見解を伺っていきたいと思います。  国際人権B規約というのがございます。その第九条は、身体の自由という項目になっております。その四項に次のような言葉があります。  逮捕又は抑留によつて自由を奪われた者は、裁判所がその抑留が合法的であるかどうかを遅滞なく決定すること及びその抑留が合法的でない場合にはその釈放を命ずることができるように、裁判所において手続をとる権利を有する。 という内容であります。  そこで問題は、精神衛生法の中に調査請求権というふうなものがあるわけでありますが、しかしそれは行政機関の知事等に対するものであって、そこの病院に入って拘束を受ける、あるいは行為の制限を受ける、そうしたことはイコール身体の自由が奪われたという形態であります。そのときに、そのことに対して合法であるかどうかということを申し立て訴えをするにしても、それが裁判所に対するものではないというところが基本にあるようであります。そしてまた、精神衛生法の中では強制入院に対する不服申し立ての機会というものがオープンの形、自由の形で存在していませんし、自分ができないときにそれを代弁する独立の擁護者、つまり、弁護士を立てて代弁をさせるという仕組みも具体的に存在していないという状況であります。  したがって、私は今までいろいろと精神病院事件にかかわってきたんでありますけれども精神障害者に対するさまざまな人権侵害なりあるいは病院の不正事件あるいはまた不正な医療行為、こういうふうなものがあってもほとんど外に出てこないということもあったし、そうしたことも国際法律委員会は具体的にこの本の百一ページに指摘をしているのであります。これを今お読みいただいているということでありますので、このB規約九条四項に違反するのではないかという国際法律委員会の見解そのものについて、法務省はどういうふうにお考えになるか伺っておきたいのであります。
  57. 野崎幸雄

    政府委員野崎幸雄君) 精神病患者の問題は、特に同意入院の問題をめぐって当委員会でもこれまでもいろいろ議論をされたところであります。また、私どもも問題のあるケースにつきましては人権問題であるという立場からこれに介入し、また是正措置を講じてきたことも御承知のとおりでございます。  ただいま御指摘の第九条でございますが、第九条四項の規定が刑事手続における逮捕、拘留のみならず、他の類似の場合にも適用されるんじゃないか。その中には精神病患者として拘禁される者も含むんじゃないかという議論があり、これを肯定する考えも非常に有力である。また仮にそれに入らなくてもその精神というものは尊重されなければならないということはどなたにも異論がないというふうに考えております。  そこで最後に、この条項の最後の部分の「その抑留が合法的でない場合にはその釈放を命ずることができるように、裁判所において手続をとる権利を有する。」ということの関係で、現行の精神衛生法がどうなのかということもこれまで再三議論されてまいったところであります。御承知のように、日本におきましても、また先進諸国におきましては逮捕、拘留というものにつきまして司法権の関与を認めておる場合がほとんどでありまして、我が国の場合におきましては、逮捕というものは裁判所の発する令状が必要であり、また拘留につきましても裁判所がその決定権を持っておるわけであります。したがいまして、その手続からそれを解くという手続が当然のことながら裁判所の関与のもとに行われなければならないというのは、手続の進行ぐあいから見て当然のことであります。しかしながら、精神病患者の入院につきましてはこれとはいささか趣を異にするわけでありまして、その手続の過程で裁判所が入ってくる余地がなかなかない。またそういう点から手続上の差異が出てくることもまたやむを得ないところであろうかと思うわけであります。  そこで、精神病で入院をさせられた者が、その入院について不服を有する場合、特に入院決定というものが合法的でないと確信する場合にどうすればよいかということになってまいるわけでありますが、今の精神衛生法上の手続におきましても、究極的には、例えば、人身保護法による救済の請求あるいは措置入院の場合におきましては行政不服審査法に基づく不服申し立て、抗告訴訟の提起など、最終的には裁判所の救済を求め得る立場にある。また同意入院の場合におきましても、まず都道府県知事の審査請求を行い、もし知事がその審査権を発動しない場合には行政不服審査法に基づく不服申し立て、さらに抗告訴訟といったものも提起し得るわけでありますし、また、人格権に基づいて普通の民事訴訟法上のいろいろな訴訟または仮処分ということも起こし得るわけでございますので、一応そういう司法手続が最後には残されておるという意味では、今の精神衛生法もこの九条の四項には反しないのではないかというふうに考えられておると思うのであります。  ただ、今問題になっております精神病者の処遇につきましては、各方面からいろいろな勧告もなされ、現在、厚生省におきまして抜本的にそのあり方を見直しておられるというふうに伺っており、いろいろな制度改革というものが予定されておるやに伺っておりますので、私どもといたしましては、その中でさらに人権上の配慮も十分にされた新しい法律ができてくることを大いに期待しておる、かようなことでございます。
  58. 本岡昭次

    本岡昭次君 おおむねそのような答弁しか出ないんじゃないかと思っておったんですが、さらに突っ込んで論議する意欲を喪失しましたので、また別の機会にやらしていただきます。  それでは、時間も参りましたので、最後に、外国人登録証の常時携帯問題について、法の運用について一言質問申し上げまして終わります。  私も、この問題は三、四年前に質問をさせてい ただいたのであります。その当時に比ぶれば、外国人登録証の常時携帯について現場の警察段階における非常識な運用というものは減ったというふうに聞いております。しかし、なお多くの問題があって、そのことが在日外国人に深刻な人権侵害を引き起こしております。それで、常時携帯について、どういうときに常時携帯を必要とするのかという基準のようなものについて法務省考え方を明示していただきたいと思うのであります。  例えば、最近私たちのところに時々入ってくるのは、警察が交通法上の取り締まりによって運転免許証の提示を迫ります。それで出すと、韓国の方だったり朝鮮の方だったりすると、そのときに、あなたは登録証を持参しておりますかということで、持っていなければちょっと警察まで来てくださいということで問題が起こり、そして何か事があるとそのまま逮捕というところにずうっといくというようなことがいまだにあるようでありまして、常時携帯という事柄の中で、すぐそれが逮捕に結びついていくような非常に厳しい形の法の運用、これはある意味では人権侵害につながるんじゃないか、こう思うのであります。  何か、個々人の警官の、警察の判断考えによってあるときは非常に厳しくなったりそうでなかったりすることなく、まあ在日外国人の皆さんが登録証の常時携帯という事柄についての一定の判断ができるようなもの、そういうようなものを何とか出していただけないだろうかというふうな要請も耳にするのであります。私の考えが必ずしもこの問題に関する全体の意見を代表していると思いませんけれども、個人的な考えも含めながら、このことについて法務省のお考えを聞かしていただきたいと思います。
  59. 小林俊二

    政府委員小林俊二君) ただいまの先生の御質問は、法の運用ということでございましたので、常時携帯制度というもの自体が必要かつ不可欠であるということについては御理解をいただいているものと存じます。その運用につきましては、私どもも従来から極めて強い関心を持っておりました。そのために、例えば昨年五月十四日の閣議におきまして一定の指紋押捺問題に関する運用上の改正を行った際に、当時の法務大臣から特にこの点について御発言をいただきまして、そして自治大臣から警察の立場を代表して常識的な運用、取り締まりという観点からの御発言をいただいた経緯もあるわけでございます。私どもといたしましても、この点に関する在日外国人の関心は十分承知いたしております。  そこで、種々部内においても検討をいたしたわけでございますけれども、この点を法律あるいは法律以下の条文、法令上の規則といったようなことで書き分けるということは極めて難しいという結論に到達せざるを得なかったわけでございます。例えば、最近、在日外国人の中でも最も多くの部分を占める民団あたりから、常時携帯という制度を生活圏の範囲内においては免除するということは考えられないかといったような示唆もございました。しかしながら、私どもでいろいろ相談をいたした結果によりますと、しからば生活圏をどのように定義するか、その民団の方の御意見は、例えば、都道府県というような単位、東京都に住む者は東京都の範囲内では携帯をしなくとも済むというような規定にできないかということでございました。  しかしながら、生活圏という言葉が都道府県と一致するかどうかということはまた極めて疑問でございます。例えば、東京都の東の端、西の端に住んでおる者につきましては、むしろ東京都よりも隣の県の方が生活圏といった実態に合うということもあり得るわけでございまして、そうした状況のもとで都道府県ということを範囲とするわけにもいかない。あるいは自宅から百キロメートルあるいは五十キロメートルといったようなことでありましても、携帯をしていない場合に、その場所が自宅から五十キロメートル、百キロメートルということをどうやって立証するのかといったような問題も生じますし、非常に取り締まり上の複雑さ、難しさというものはついて回るということでございます。  そういうことでございますので、結局これは常識的な取や締まりというその精神を取り締まり当局の内部において末端まで徹底していただくほかはないということであろうかと存じておるわけでございます。事実、この点につきましては取り締まり当局におきましても、その後、極めて真剣にお考えをいただいておるものと了承いたしております。現に警察庁の内部におきましても、その点については地方に至るまで明確な指示が行われているというふうに承知をいたしておるわけでございまして、例えば、先ほど先生が御指摘になった交通検問における際の運転免許証の提示とともに、それが外国人の名前であると直ちに登録証明書の提示を求めるといったようなことも、その後影を潜めつつあるやに伺っております。この点は民団の幹部からも聞いております。  したがって、そうした警察庁内部における認識の高まりあるいは措置といったものは全国的に徹底しつつあるのではないかと私どもはこの点を一つの進歩として評価している次第でございます。この点につきまして、私どもとしても、制度の乱用は制度そのものを危うくいたしますので、今後とも行き過ぎのないようにということで関係当局との連絡を密にし、努力をしたいと存じておる次第でございます。
  60. 本岡昭次

    本岡昭次君 終わります。
  61. 太田淳夫

    委員長太田淳夫君) 午前の質疑はこの程度とし、午後一時まで休憩いたします。    午後零時三分休憩      ─────・─────    午後一時三分開会
  62. 太田淳夫

    委員長太田淳夫君) ただいまから法務委員会を再開いたします。  委員異動について御報告いたします。  本日、鈴木省吾君及び宮本顕治君が委員辞任され、その補欠として木宮和彦君及び橋本敦君が選任されました。     ─────────────
  63. 太田淳夫

    委員長太田淳夫君) 休憩前に引き続き、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  64. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 本日は、最初に抵当証券に関する問題をお伺いして、その後審議中の給与法案について若干伺いたいと思います。  最初に抵当証券に関する問題をお伺いします。  法務省とすると、抵当証券の問題は各種委員会で今までいろいろ御質問、御答弁があって大変でしょうけれども、ぜひ私も質問さしていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。  皆さん御承知のとおり、抵当証券売買ということで世間言われておりますけれども、実際には法務省法務局発行のいわゆる抵当証券そのものの売買ではなくして、モーゲージ証書という証書による取引が一般的に行われております。抵当証券そのものは法務局の作成した正規の有価証券ですけれども、このモーゲージ証書というのは各抵当証券会社が独自に発行した私製証書であって、そのモーゲージ証書の記載内容は一口に言えば、抵当証券を売り買いします、しかし本物の抵当証券は抵当証券会社でお預かりしますというふうな趣旨の書面でございます。もし、抵当証券取引といって本当に抵当証券そのものが売買されて買い主のところに行っていれば、現在問題になっているような抵当証券に関する各種の問題はほとんど起きてこなかったろうと私は思うわけなんです。  それが、モーゲージ証書という抵当証券会社の作成した私製証書によってあたかも抵当証券そのものの取引のような外形をとっていたことの結果として、抵当証券がないにもかかわらずあるがごとく装って売買するいわゆる空売りの問題だとか、あるいは仮に抵当証券は一枚あったとしても、それを二重に三重に売るというふうなことが可能になってきたわけであります。ですから、現在問題になっているこの抵当証券の被害の問題は、モーゲージ証書による取引というところに根 本的な原因があると私は考えるわけなんです。  そこで、法務省にお伺いしたいのは、いわゆる抵当証券取引と称しながら実際にはモーゲージ証書による取引がなされていたという事実を御承知になったのはいつごろでしょうか。
  65. 千種秀夫

    政府委員(千種秀夫君) モーゲージ証書と言われるものの取引が活発になりましたのが昭和五十七、八年ごろからでございまして、私どももそういうことからそういうことを知るようになったというのが事実でございます。  ただ、このモーゲージ証書という言葉が使われたかどうかは存じませんけれども、そういうものが今のように盛んにはなりませんまでも、そういうことが考え出され使われたというようなことを今になって調べてみますと、大体昭和四十八年ごろにそういうものが考案されたように承知しております。
  66. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 モーゲージ証書による取引がいつごろからなされたかという質問を申し上げたんではございませんでして、法務省が抵当証券取引という名目のもとにモーゲージ証書による取引がなされているということを知ったのはいつでしょうかという質問でございます。
  67. 千種秀夫

    政府委員(千種秀夫君) ただいま申し上げましたように、いわゆるモーゲージ証書による取引という、そういうものが我々の認識の中に入ってきたのが、盛んになったという五十七年以後のことでございます。
  68. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 そこで、いわゆる抵当証券上の権利内容と、モーゲージ証書に表示されている権利内容の同一もしくは差異についてお伺いしますが、まず債権金額については、二つの書面の関係はどうでしたでしょうか。
  69. 千種秀夫

    政府委員(千種秀夫君) モーゲージ証書と言われておりますものは、必ずしも様式、内容等共通で同じものでございませんものですから、まあ発達したといいますか、だんだんと盛んになるに従いましていろいろな変形的なものがあらわれてきたように承知しておりまして、最初のころは抵当証券と同じ金額のもの、言いかえますと抵当証券そのものを売買したり預かったりというような形の記載があったようなふうに承知しております。事実私もそういうものを見たこともございますが、最近ではそれを小口に分割いたしまして、一定割合の金額というような形で表現したものも多いように承知しております。
  70. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 そうすると、債権金額は、モーゲージ証書上の金額と抵当証券と同一のものもあるし、あるいは抵当証券上の金額を何分かに細分化した金額が記載されているモーゲージ証書もある、このようにお伺いしてよろしいわけですか。
  71. 千種秀夫

    政府委員(千種秀夫君) 私どもはそう承知しております。
  72. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 それでは、抵当証券上の記載とモーゲージ証書の記載の異同について、さらに弁済期及び利率についてはどのようになっているでしょうか。
  73. 千種秀夫

    政府委員(千種秀夫君) まず、弁済期でございますが、モーゲージ証書の弁済期は、抵当証券に化体されております債権の弁済期よりも早いのが一般のようでございます。これは言いかえますと、抵当証券が満期になるといいますか、本来の債務を弁済する前に抵当証券会社がモーゲージ証書を買い戻すというような約款がついている場合が多いんでございますが、強いて言いますと、買い戻しの期限というような意味を持つようでございます。  一方、利率につきましては、モーゲージ証書に記載された利率の方が少額のものが多いようでございます。これはどういうことかと考えますのに、約款の上から見ますと、抵当証券会社がその証券を保護預かりいたしまして、債務を弁済するという段階になりますと債権の取り立て委任を受けるというようなことで、その差額が利率にあらわれているようでございます。
  74. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 次に、抵当証券の譲渡は、御承知のとおり、抵当証券法第十五条一項によって裏書交付によってなされる、こういうことになっておるわけですが、モーゲージ証書による取引の場合は、証券そのものの交付はなされていないわけです。それにもかかわらず抵当証券の譲渡、売買があったと言えるかどうか、その辺についての御見解はいかがでしょうか。
  75. 千種秀夫

    政府委員(千種秀夫君) そこは法律問題といたしまして議論のあるところかと存じますが、一般に、動産の取引という一般論から考えまして、引き渡しを一応いたしますが、これをまたもう一度預かるというようなこともございますし、それを省略いたしまして占有改定と言われる方法で引き渡しと同じ効果を持つという取引もございます。抵当証券そのものについて、モーゲージ証書がぴったり同じ内容のことが書いてあって、そういう引き渡し、占有改定と保護預かり、こういうふうに書いてありますと、これはなるほどそういうこともあり得るなというふうに考えられるわけでございますが、これがまた違ってまいりますと、それに応じましていろいろとこの効力については問題が生ずると思います。
  76. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 抵当証券そのものは渡さなくても、先ほど局長が御説明のように、占有改定という方法によって引き渡しがあったように法的に考える余地もあるということは私も理解できるんですが、ただ、モーゲージ証書の記載によれば、買い受け人は、占有改定で結局抵当証券会社にある抵当証券そのものの交付を自由にいつでも交付の請求ができるようにはなっていないように思います。その場合でもなおかつ抵当証券の交付があったというふうに考え得るでしょうか、どうでしょうか。
  77. 千種秀夫

    政府委員(千種秀夫君) その辺は実は約款を読んでみないとならない問題でもございますが、その約款にそういうふうに書いてあります場合にも、さらに解釈といたしましては必要があるような場合には引き渡し請求権を留保していると解釈する余地があればその限りでは有効という解釈も出ましょうし、そういうことが絶対にないというふうに読める場合にはそれは引き渡しはない、こういうふうに効力を全部否定してしまう場合も出てくると思います。
  78. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 以上のような事実を前提にして、すなわちまず抵当証券とモーゲージ証書の各書面の記載内容及び今度は抵当証券の裏書交付という側面から考えてみた場合に、法務省としてはモーゲージ証書による抵当証券取引というものについて真実抵当証券の取引であると言えるかどうか、むしろ抵当証券の取引という法概念の中には入り得ないんじゃないかと考えられるか、その辺について、いかがでしょうか。
  79. 千種秀夫

    政府委員(千種秀夫君) ただいまの御質問で乙ざいますが、いわゆる抵当証券取引という言葉が適切かどうかということになりますと、現在のモーゲージ証書による取引は抵当証券即そのものの取引というものとは少し外れておるように思います。それがどういう効力を持つかということはまたさらに検討することが必要かと思います。
  80. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 法務省民事局第三課のお役人であった藤原勇喜さんという方のお書きになった書物等によっても、法務省ないし民事第三課の見解として、どうもモーゲージ証書による取引は抵当証券の売買そのものと見るわけにはいかないんじゃないかというふうな記述がございますが、このような考え方が法務省の見解というふうにお伺いしてよろしいでしょうか。
  81. 千種秀夫

    政府委員(千種秀夫君) 法務省の見解と申されますと、私ども法務省の中で統一見解を検討したわけでないものでございますから自信がございませんが、私ども抵当証券を発行するという事務を取り扱っている者から見ますと、感覚的にあの証券が直接取引されているんではないな、そういう印象を持つということは確かにございます。
  82. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 続いて、大蔵省銀行局ないし証券局に対して、今いろいろ私の方でお伺いしたモーゲージ証書による抵当証券取引と称するものが一体どのような法的な性質を有するものかについての御見解を伺いたいと思います。
  83. 杉井孝

    説明員杉井孝君) ただいま法務省の方から御 答弁がありましたように、抵当証券、現在、取引仕法で行っております先生御指摘のようなモーゲージ証書による取引ということにつきましては法律的な解釈はいろいろあるようでございまして、いずれにいたしましても私どもといたしましては、先生御指摘のようなモーゲージ証書による取引仕法に伴う問題点というのは重々認識しておりまして、先生も御案内のように、先般法務省と共同で抵当証券研究会をスタートさせまして、法律専門家の立場からいろいろ御検討を願いたいということで、現在検討を進めているところでございます。
  84. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 もう少しはっきりお伺いしたいんです。  要するに、この後、詳しくお伺いしますが、モーゲージ証書による取引というのは、私から見れば大蔵省が抵当証券会社に指導、協議してやってきたように私には思えるんです。これも後でお伺いします。ですから、モーゲージ証書による取引というものが真に抵当証券そのものの取引と言えるのか言えないのか、そう法的に見えるのか見えないのか、もう少し明確に御答弁いただきたい。というのは、現在一生懸命研究しています、何だという問題じゃなくて、もうこの問題は五十七年、八年からの問題なんですから、五十七年、八年、九年、六十年と、この間大蔵省銀行局ないし証券局として、このモーゲージ証書による取引が何であるかということを、どのようにお考えになっていたのかということをお伺いしたい。
  85. 杉井孝

    説明員杉井孝君) その点につきましてはいろいろな解釈があろうかと思いますが、私どもとしては、抵当証券そのものは保護預かりといたしまして抵当証券取扱会社が保管しまして、そのかわりにモーゲージ証書を交付する、こういう取り扱いを現在しておるようでございます。そこの法律解釈は非常に難しい問題はございますが、抵当証券の売買と考える余地もあるんではないかということを考えております。  ただ、いずれにいたしましても、法律論でございますので、法務省ともいろいろ御相談をしながら、あるいは先ほども申し上げましたように、法律専門家の立場からの御検討もいただいておるところでございます。
  86. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 どうもはっきりしませんけれども法務省民事局長さんのお考えだと、モーゲージ証書による取引なんというものは抵当証券取引と言えないんじゃなかろうかというふうなお考えのようだし、大蔵省銀行局の方のお考えだと、モーゲージ証書による取引も抵当証券取引と言えるんじゃなかろうかというような御答弁のようにお伺いするんです。  内閣法制局に、この問題についての御見解をお伺いしたい。
  87. 関守

    政府委員(関守君) 実は、大変恐縮でございますけれども、今お話しになっておりますいわゆるモーゲージ証書あるいはモーゲージ証書による取引というものの実態につきまして私ども全く承知しておりません。非常に問題になっているということは承知してはおりますけれども、そういう次第でございますので、これが法的にどういうような効力を持つのかといった点につきましても正確に御答弁申し上げられる段階ではございませんので、大変恐縮でございますけれども答弁を差し控えさしていただきたいと存ずる次第でございます。  なお、この点につきましては、今お伺いいたしますと関係省庁でもいろいろ御検討のようでございますし、相談がございますればそれに対応して十分検討してまいりたいというふうに考えております。
  88. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 法務省及び大蔵省銀行局それぞれに対して、ただいまの法制局の御答弁のとおり、そちらの方からいろいろ相談があれば法制局としての見解をまとめる、あるいは検討して何らかの結論を出すと、このようなお話です。内閣自体の法律解釈が狂っている、違っているようじゃ困るんで、ぜひ法務省、大蔵省、内閣法制局で見解を統一されるようにお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
  89. 千種秀夫

    政府委員(千種秀夫君) 御指摘のように、いわゆる抵当証券取引というものはいろいろな問題を含んでおりますので、今大蔵省からも御説明がありましたように、月に二回ぐらいの割合で研究会をやっておりまして問題を整理しておりますので、なるべく早く速やかにその対策を講じたいと考えております。
  90. 杉井孝

    説明員杉井孝君) 私どもといたしましても、研究会で専門的な立場から検討をいただき、それを踏まえてできるだけ早く対応考えていきたいと考えております。
  91. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 それでは、法務省、大蔵省とよく協議された上で内閣法制局の見解をできる限り速やかに取りまとめて、できれば私としては当委員会に報告してもらいたいと思うんです。  委員長、その辺はいかがでございましょうか。
  92. 太田淳夫

    委員長太田淳夫君) 理事会で協議いたします。
  93. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 次に、モーゲージ証書に関連する抵当証券会社と大蔵省とのおつき合いというか、指導というか、その関係についてお伺いしたいと思います。これから順次大蔵省にお伺いしますので、大蔵省の方で御返事いただきたいと思います。  抵当証券業者が、任意団体として抵当証券業懇話会という団体を設立しておりますが、この懇話会が設立されたのはいつごろで、設立当初の加盟業者はどのくらいだったでしょうか。
  94. 杉井孝

    説明員杉井孝君) 先生御指摘の抵当証券業懇話会は、昭和五十九年の一月に設立されました。設立時の加盟会社は二十社というふうに聞いております。
  95. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 この二十社の会社の性格というか内訳というかをお伺いしたいんですが、いわゆる抵当証券会社には、銀行が出資している銀行系の抵当証券会社と、証券会社が出資しているいわゆる証券会社系列の抵当証券会社と、生保、損保の各保険会社が出資している保険会社系の抵当証券会社とがあるわけですが、この二十社はどんな系統の会社によって構成されていたでしょうか。
  96. 杉井孝

    説明員杉井孝君) 当時の加盟社二十社のうち、銀行の関連会社というものは十一社、証券会社の関係会社は三社となっております。
  97. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 保険会社系列のものはございませんでしたか。
  98. 杉井孝

    説明員杉井孝君) そのようなものはございません。
  99. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 そうすると、私から考えると、いわゆる銀行系十一社の抵当証券会社については、その設立についても大蔵省としてはいろいろ指導したり、あるいは協議にあずかったりしていると思いますが、いかがですか。
  100. 杉井孝

    説明員杉井孝君) 銀行、生保あるいは証券会社などは、金融機関等の関連会社が行う業務につきましては、金融機関の本業専念義務や、金融機関の経営の健全性等の観点から、金融機関業務に関連する業務等一定の業務に限っているところでございます。  抵当証券業務につきましては、金融機関の関連会社が行う業務として認めているところでございまして、金融機関がこのような関連会社を設立する場合には当局にも相談がなされることとなっております。
  101. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 そうすると、抵当証券会社の設立自体についても御相談にあずかっておられるわけですし、そのような抵当証券会社が懇話会をつくろうということになれば、その懇話会の設立についても大蔵省銀行局、証券局等は御相談にあずかっていると思いますが、いかがですか。
  102. 杉井孝

    説明員杉井孝君) 金融機関の関連会社の設立に当たりましては、一般的に申し上げますと金融機関の他業禁止の観点から問題はないかとか、あるいは関連会社を通じて金融機関の経営の健全性が損なわれることはないかどうか、あるいは既存業界との摩擦を惹起することはないかどうか、そういったような観点から指導を行っているところでございまして、抵当証券業務の中身とか、ある いは自主的な団体をつくるとかいったような点にまで及ぶものではございません。そういう意味から申し上げて、そういった観点からの相談が正式にあったわけではございません。
  103. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 それは、つくっていいとかつくって悪いとかという問題じゃなくて、つくることについてのいろんな打ち合わせというか相談というか、そういうものが問題あったんじゃありませんかということを私はお伺いしているわけなんです。  それでは、つくるときの話は別にしても、懇話会が五十九年一月に設立されて以降今日まで約三年間に、懇話会と大蔵省銀行局ないし証券局との間にはどのようなつながりがありましたか、お伺いします。
  104. 杉井孝

    説明員杉井孝君) 抵当証券会社が抵当証券事業の健全な発展を図り、公共の利益を増進するというような目的で懇話会を設立したいという考えを持っていたことは大蔵省としても承知していたところでございます。懇話会は自主的に設立されました任意団体でございますので、大蔵省として指導、監督を行うというような立場にはございませんが、従来から抵当証券購入者の保護の問題といったようなことにつきまして随時意見交換を行ってきたところでございます。
  105. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 もう少し具体的に、懇話会と大蔵省銀行局は月に一回定例会をやっているとかやっていないとか、あるいは昼飯会をやっているとかやっていないとか、もう少し事実に即して具体的にお答えいただきたい。
  106. 杉井孝

    説明員杉井孝君) 懇話会との関係一般的な実態は先ほどお答えしたとおりでございますが、今御指摘は役員懇談会ということだと思います。そこには現在もオブザーバー的に出席をしております。
  107. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 私が聞きたいのは、何も公式な会合でないにしても、月に一回程度の昼食会であれ、あるいは研究会だかなんだか知らぬけれども、もう少し折衝しているという事実があるんじゃありませんか。
  108. 杉井孝

    説明員杉井孝君) 役員懇談会は原則として月一回開かれておりますが、その席に、先ほども答弁申しましたように、オブザーバー的に参加をしている、意見を伺っているということでございます。
  109. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 そうすると、大蔵省銀行局ないし証券局は、銀行系あるいは証券会社系あるいは保険会社系、こういう抵当証券会社の設立自体に関与し、そのような任意団体の設立に関与し、その後も月に一回程度の懇談会だか昼飯会だか知らぬけれども、そういうところにいろいろおつき合いがあるということを前提にすれば、懇話会加盟の抵当証券会社が昭和五十九年以降、先ほど私が申し上げたモーゲージ証書による取引をしているということは懇話会設立当初から大蔵省としては御存じだったと思いますが、いかがですか。
  110. 杉井孝

    説明員杉井孝君) 先生御指摘のように、抵当証券取り扱い会社がいわゆる共有持分権販売方式というものを始めたのは昭和五十八年ごろからと聞いております。その際、先ほども申し上げましたように、銀行等の関連会社となっている抵当証券会社から正式に相談を受けたことはないわけでございます。ただ、共有持分権販売方式の法的な性格でありますとか、あるいは事業の健全化を推進するための自主的な基準の設定という動きがございまして、それが先ほど先生御指摘の自主的な団体であります抵当証券業懇話会において検討がスタートしたわけでございまして、その観点から私どもとしましてもその動きを見守ってきたところでございます。
  111. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 時間が余りありませんから、私の聞いたことに直接的に答えていただきたい。  私が聞いたのは、銀行系、証券会社系あるいは保険会社系の抵当証券会社は五十九年以降モーゲージ証書による取引をしている、このことについて大蔵省はその当時から知っていたんじゃありませんかという質問なんです。質問にだけ答えてください。
  112. 杉井孝

    説明員杉井孝君) 正式な相談はございませんが、事情は承知しておりました。
  113. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 そういうふうに答えてもらえば話がどんどん進みます。  ところで、例えば一億円の額面の抵当証券を百万円の抵当証券百枚に分けたい、あるいは十万円の抵当証券千枚に分けたいというふうに考えた場合に、そのような法的手続は規定されておりますか、いかがですか、大蔵省にお伺いしたい。
  114. 杉井孝

    説明員杉井孝君) 私ども所管ではございませんが、抵当証券法に従って分割できるように聞いております。
  115. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 だとしたら、懇話会加盟の、特に大蔵省の系列下にある抵当証券会社に対して、一億円の抵当証券を売るについては額が大き過ぎて不便だとすれば、小口に債権を分括して、抵当証券を小口に分割する方法があるんだと、だからそのようにして抵当証券を売るようにしたらどうだというふうな指導をされる方が適切だと思いますが、このような指導をされなかったのはなぜなんですか。
  116. 杉井孝

    説明員杉井孝君) 先ほどもお答え申し上げましたが、当時、共有持分権販売方式という方式の法的な性格やあるいは事業の健全化を推進するための自主的な基準の設定という動きがございまして、それが先ほどの抵当証券業懇話会で検討を進める動きが自主的に盛り上がってきたわけでございます。当時といたしましては抵当証券取り扱い会社の数自体がそれほど多くなく、しかも大手が中心という事情もございました関係で、私どもといたしましてはその検討を見守っていくということで現在までまいったわけでございます。  ただ、先生御指摘のように、その後悪質な抵当証券会社による被害が予想される事態になったわけでございまして、そういう状況にかんがみまして大蔵省においてもまた改めて検討をしてきたという事情でございます。
  117. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 先ほどお伺いしたように、モーゲージ証書による抵当証券取引がいわゆる抵当証券そのものの売買でないというふうに考えられるとすれば、法律的に非常に重大な問題が起きてくる。このモーゲージ証書による取引の法的性格については、先ほど内閣法制局が明確に内閣の見解を統一してまたこちらの方にお知らせいただくということになるので、やや仮定的な質問になりますが、法務省の御見解のように、モーゲージ証書による取引というものが抵当証券そのものの売買でないというふうに考えられるとした場合に、モーゲージ証書による抵当証券売買という名にかりて、仮に抵当証券が真実存在したとしても、その抵当証券を担保にしての金集めにすぎないことになると思います。  そうなった場合、まさに抵当証券会社は資金を貸し付けて債権抵当権を取得し、今度はこれを担保にして多数投資者から金集めをするんだとしたら銀行法二条二項一号に言う預金の受け入れと資金の貸し付けとあわせ行うこと。これを営業としているということになったらまさに銀行業そのものだと私は考えますが、大蔵省の見解はいかがですか。
  118. 杉井孝

    説明員杉井孝君) 先生御指摘のモーゲージ証書の取り扱いにつきましては、先ほどもいろんな解釈があるということを申し上げたわけでございますが、私ども承知しているところで申し上げれば、不動産抵当債権である抵当証券を販売して、その預かり証としてモーゲージ証書を交付しているというふうに聞いておるわけでございます。この場合、抵当証券の譲渡の対価として金銭を受け取るものでございますので、先生御指摘の銀行法の預金業務には該当しないものと解されるところでございます。
  119. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 銀行法に違反するだけでなくして、もしこのモーゲージ証書による金集めが預かり金だとしたら、出資の受け入れ、預かり金及び金利等の取締法に違反することにもなると思いますが、これについても大蔵省の御見解としては今の銀行法の問題と同じでしょうから質問はいたしません。  ただ、私が大蔵省にお伺いしたいのは、法的解釈がA説、B説、C説といろいろあるにしても、銀行を指揮監督し、出資の受け入れ、預かり金による不正金融的なことをなしにしようというその金融の一番の監督官庁である大蔵省が、なぜ業界に一番ぴったりしたような変な解釈をして今日まで来たんですか、そこをお伺いしたい。
  120. 杉井孝

    説明員杉井孝君) その点につきましては、先ほども答弁いたしましたように、共有持分権販売方式というものについて、その法的な性格とかあるいはどういう手法がいいのかというような観点につきまして、業界サイドにおいて自主的に検討が進められるという事情にございましたし、当時におきましては、先ほども申し上げましたように、抵当証券を取り扱っている会社もさほど数は多くないし、大手が中心であったというような事情もございまして、そういう検討をまず見守っていこうということで対応したわけでございます。
  121. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 ともかく、だれがいいのか悪いのかわからぬけれども、何千万円という金を一般国民が詐欺師会社のような抵当証券会社に取られて苦しんでいるというこの現実があるわけなんです。  それで、警察庁にお伺いしたい。  現在までに警察庁として、抵当証券会社に対し捜査したことの概況で、例えば、対象となった抵当証券会社の数だとか、被疑者の数だとか、あるいは被害者の概数だとか、今まで調べた中での被害金額であるとか、公訴提起の有無だとか、この辺について概略で結構でございますからお伺いしたい。
  122. 緒方右武

    説明員(緒方右武君) お答えいたします。  この商法につきましては、一部悪質業者がこの業界に参入しまして、抵当証券の販売等に藉口して被害者に損害を与えるおそれがありましたので、警察としてはこれまで強い関心を持って臨んできたところでございます。その結果、これまでの検挙状況でございますけれども静岡市所在の日証抵当証券株式会社等五社を検挙し、八名を逮捕しております。そのうち二名が昨日までに起訴されております。これら五社にかかわる被害者総数でございますけれども、約千七百名、被害総額約二十四億円に上っており、引き続き解明中でございます。警察としましては、今後ともこの種事犯に対しては、法令を多角的に活用して検挙に臨んでいきたいと思っております。また、この抵当証券商法の問題点について広く国民に広報し、被害の未然防止、被害の拡大防止に今後とも努めていく所存でございます。
  123. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 これは仮定の問題で非常にお答えにくいかもしれませんけれども、捜査をしてみた結果として、もし抵当証券そのものの売買がなされていたとすれば、現在捜査しているような問題は起きなかったんじゃないかと思いますが、この辺いかがでしょうか。警察庁の方の御見解をお伺いしたい。
  124. 緒方右武

    説明員(緒方右武君) 現在までこの抵当証券商法の捜査につきましてやってきた結果を見ていますと、二重売り、空売りというのが大きな問題になっている。それからもう一つは、抵当証券そのものはありましたけれども、最後の段階になったら勝手に登記を抹消した事案も起きておるわけでございます。現実に、これは商法のことはわかりませんけれども、被害者から見た商法を見てみますと、抵当証券そのものを販売していればその点については問題はなかったんじゃないかと考えております。ただ、各会社自身がどういう考えを持っているかはまたわかりません。
  125. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 私は、先ほどからお伺いしている法務省ないし大蔵省の対応がわかったようなわからぬような対応であるのに比べて、警察が、民事に絡む非常に難しい問題を含んでいるにもかかわらず、本年五月から捜査に着手して十月十五日強制捜査、逮捕に踏み切られた。しかも、警察のこのような捜査をマスコミが大々的に報道してくれたおかげで抵当証券の被害がこれ以上続発するということがなくなってきたんじゃなかろうか、そういう意味において警察の捜査に国民の一人として非常に私はよくやってくれたと、このように考えるんです。というのは、この後、抵当証券問題に関して法務省、大蔵省の対応がどの程度の進行状況か聞いてみようと思いますが、これに比べて警察の対応はあるいは人によればまだ遅過ぎるという意見もあるかもしれませんが、私としては難しいのによくやっていただいた、非常にありがたいと思っております。  なお、今後のこの抵当証券に絡む捜査の見込みを今から伺うのもちょっと変ですけれども、警察庁としては今の段階でどの程度さらに被害が増大する見込みであろうかとか、その辺の概括的な感想的な見通しで結構でございますが、簡単にお伺いしたい。
  126. 緒方右武

    説明員(緒方右武君) この問題につきまして、国会やマスコミ等で非常に大きく取り上げられましたので、抵当証券の被害、この会社自身の信用があるかないかというのが一番大きな問題でございますけれども、信用のない会社が大分淘汰されてきたんじゃないかと思います。  捜査状況については、まだ問題のある会社について引き続き解明中でございますので、何とも言えないわけでございます。ただ、今解明した中から法令違反にひっかかるのであれば徹底的に検挙していく方針でございます。
  127. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 法務省刑事局長にお伺いします。  このように、せっかく詐欺罪等で被疑者を取り調べ、訴追しても、詐欺罪として構成する限りにおいて、御承知のとおり、詐欺罪だけでしたら懲役十年が最高限併合罪加重しても懲役十五年以内ということになるわけですが、従前の例から見るとせいぜい一億、十億取り込み詐欺みたいなことをしても三、四年の刑で終わりというふうなのが一般的じゃないかと思うんです。しかし、今後もこのような金融に絡む犯罪は多発するおそれが非常にあるわけですし、それに、その被害にかかるのはとらの子の三百万、五百万で一生死ぬまで持っていこうと思っている人が、少し利息を余計にしようと思って取られちゃって元も子もなくなるというようなことになっているわけです。だとしたら、このような金融に関連する犯罪というのは、人を殺すわけじゃないけれども、五百万取られて死んだ人がいれば、自殺せざるを得ない人がいれば、間接的な殺人とどれだけの違いがあるかと、ちょっと暴論ですけれども。  いずれにせよ、私が申し上げたいのは、五億、十億取っても、これだけ刑務所へほうり込まれたら合わないぞというぐらいの求刑をしてもらいたい。判決は裁判所だからしようがありませんけれども、刑事局長の御意見をお伺いしたい。
  128. 岡村泰孝

    政府委員岡村泰孝君) 検察当局といたしましても、国民大衆の多くを被害に巻き込むような犯罪、あるいはまた被害額の多額な犯罪等につきましては厳しい求刑を行っているところでございまして、現に詐欺事件で懲役八年あるいは十年程度の実刑を科せられた事案もあるわけでございまして、今後とも検察当局といたしましては、事案に応じまして厳しい処分で臨むものと思っております。
  129. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 法務大臣に、今までいろいろ申し上げたことを前提にして、主として今の求刑の面も含めて、抵当証券取引による被害者の発生を今後防ぐ、あるいは刑の求刑の問題、この辺について、厳しい御意見をお伺いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
  130. 遠藤要

    国務大臣遠藤要君) この問題については先生に大変御熱心に御質問をちょうだいいたしておりますけれども、先ほど来お話がございましたように、質問者である先生自身が何をぼやぼやしているかといういら立ちを感ぜられておると思います。自分自身も、この問題については毎日新聞紙上をにぎわしているときに、対応策というのがもっとびちっといかないのかというような点を民事局長やなにかに話をしておる、そういうようなことでございまして、今大蔵省ともども研究会ということで検討されておるようでございますけれども、可及的速やかにこの検討結果によって対応させたいということが一つと、先般の予算委員会で も申し上げたことでございますけれども、被害を受けるのも、今先生のお話のように概してお年寄りとか御婦人が多い。そういうような点を考えると、このような問題に、幾らかでも金利を多く取りたいという気持ちはわかりますけれども、命の二番目のような気持ちで、大切な金を出されるときには、私は先般の予算委員会では、交通信号が横断歩道でも青になっても右左をいま一回見て渡ってほしいというような心境でおるということも御理解願いたいと思います。  また、この問題に当たって、悪質な問題に対しては厳しく対応していくということが、これからのまじめに仕事をされている人、まじめに投資をされている人に影響を与えないということも大切だと思いますので、厳しい処置をとってほしいということを申し上げておきたいと思います。
  131. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 せっかく法務大臣からそのような誠意ある御答弁をいただいたんですが、私はこの問題が生じてから現在までの主として大蔵省、法務省も含めての対応、まことに遺憾に思うんです。  まず本年四月二日、本院の大蔵委員会において、当時の竹下蔵相は、この抵当証券問題に関して、法務省とも相談して適切に対処し、一般投資家の被害を未然に防ぎたい、このようにお述べになっているんです。これが四月二日のことです。それから約二カ月後の六月十五、十六、十七日ぐらいの新聞報道によれば、大蔵省は抵当証券について投資家を保護するための法規制の導入を考え、「秋までに大蔵省案をまとめ、法務省と調整したうえで、年内にも法改正か新規立法に踏み切る考え」であるというふうなことが報道されているんです。そうすると、大蔵省は、抵当証券問題は被害者が出て大変になるかもしれぬ、何とか適切にやりますと言ったのは四月二日。六月十五日には年内に何とか目鼻をつけます、こう言っておられた、法務省と協議して適切な措置を講じたいと。ですから、もう半年、九カ月過ぎているんです。現在におけるこの問題に対する大蔵省の対応について概略をお伺いしたい。
  132. 杉井孝

    説明員杉井孝君) 今春から改めて検討をしてきたところでございます。ただ、先生先ほど御指摘のような法律的な問題にかかわる点もございまして、非常に難しい問題があるということもございます。  そこで、この十月三十日から学識経験者をメンバーといたします抵当証券研究会を法務省と共同でスタートしていただきまして、現在、学識経験者のメンバーの中において鋭意検討を急いでいただいておるところでございます。
  133. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 そのような研究会が開かれたのは、私の伺うところによると第一回目が開かれたのが十月三十日だと伺っていますが、間違いありませんか。
  134. 杉井孝

    説明員杉井孝君) そのとおりでございます。
  135. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 先ほどから何度も申し上げるように、四月から問題になって六月もやりますと言って、そしてようやく第一回の研究会を開いたのが十月三十日。先のめども全然ついていない。こんなことで、これだけの被害が出ている国民の大切な問題に対する対応として大蔵省はどうお考えなんですか。  しかも、私が非常に心外なのは、先ほど来申し上げているように、銀行系、証券会社系、保険会社系、みんな立派な紳士のような形をしている。そしてそれが大蔵省の監督下にある。このようなところが五十九年から始めている。大蔵省といろいろな関係があるわけなんです。こういう被害が出てきたら、五十九年からの決着をつけるためにももっと誠意ある、もっとす早い対応があってしかるべきじゃありませんか。何ですか、十月三十日に第一回の会議を開いて、これから先どれだけえっちらおっちらやるのか知りませんが、まことに国民の負託にこたえていないと私は心中怒る。精いっぱいやることについてもう一回お答えいただきたい。
  136. 杉井孝

    説明員杉井孝君) 現在、研究会で専門的な立場から検討をいただいているところでございますが、できるだけ、最大限急いで検討を進めていただくようにお願いしているところでございます。
  137. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 法務省も、大蔵省の非常に遅いテンポに巻き込まれないようにどんどん法を検討して、内閣法制局と統一見解をとって、この抵当証券法の改正であるとか、あるいは新規業法の立法であるとか、この辺について努力していただきたいと思う。所見を伺いたい。
  138. 千種秀夫

    政府委員(千種秀夫君) 一生懸命努力したいと思います。
  139. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 抵当証券の問題については、非常にいろいろ難しい問題があることもわかるし、大蔵省だけどうこう言っても非常に気の毒だとは思うんですが、しかし、ともかくこれだけ被害が出ているんだから、もう少し一生懸命頑張ってやっていただきたいことを希望しておきます。  次に、法案の審議に入ります。  今回の法案は給与法案でございますので、この給与法案に関連して二、三点お伺いしたいと思います。  まず、判事補の十二号、これがいわゆる広い意味の裁判官の一番最初の任官したときの号俸でございますが、判事補の十二号、検事の方で申し上げますと二十号ですけれども、この一番最初の初任の号俸は、大学を卒業してどのくらいの年数がたった者を基準にして定められているわけでしょうか。
  140. 櫻井文夫

    最高裁判所長官代理者(櫻井文夫君) 判事補の十二号は、司法修習を終えまして判事補に任命される最初に支給される報酬でございます。したがいまして、一番若い人の場合は大学を出まして二年経過ということでございまして、二十四歳というのが一番若い年齢の者でございます。裁判官報酬は、この点、行政官よりはある程度高い報酬ということで定められておりまして、同じ二十四歳でとってみた場合、行政官との間では相当の格差があるような定めになっております。  ところが、御承知のとおり、司法試験合格者はある程度高い年齢になっておりまして、したがって、裁判官に任官する者も、今申しましたような二十四歳という者はそう多くいるわけではございませんで、大学を出てある程度年数のたった者が任官しているというのが実情でございます。大体二十七歳代というのが判事補初任時の年齢でございます。そういたしますと、平均的には大学を出まして五年程度たっている者ということになるわけでございます。大学を出て五年程度たった者ということで行政官の俸給と比較してみましても、これもある程度の格差が保たれております。試みに試算いたしてみますと、行政官に任命されて五年程度経過して四級二号俸を受けている者と判事補十二号とを比較いたしますと、判事補十二号の報酬が大体一・二倍程度になっているというのが実情でございます。
  141. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 そうすると、判事補十二号の俸給を決めるについて、二十四歳、要するに、大学を卒業して二年ということをめどに、大学を卒業して二年の行政官の給与を基準にして定めているというわけではないんでしょうか。
  142. 櫻井文夫

    最高裁判所長官代理者(櫻井文夫君) 大学を出て二年を経過した判事補として考えているわけでございます。そういうことで行政官との間で格差を設けてあるわけでございます。ただ、判事補の現実の平均年齢、行政官よりはある程度年齢がいっているその平均年齢を考慮しても、なおかつある程度の格差はまだ保たれているということを申し上げたわけでございます。
  143. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 要するに、私がお伺いしたいのは、判事補の初任給をとる場合に、大学を卒業して二年間の行政職の給与を基準にして、例えば何倍と、何倍というのは何・何倍ということで、それで決めてあるんだとすると、実際には、先ほど人事局長がおっしゃられたように、二十四歳で任官するんでなくて、平均的に言えば二十七歳ということになると三歳違うわけですね。この三歳についての、三歳というか三年間についての、採用に際してこの三年間の年数というものは初任給に何らか考慮されているんでしょうか。
  144. 櫻井文夫

    最高裁判所長官代理者(櫻井文夫君) 裁判官報酬をどういうランクに決めるかということは、もう随分以前から行政官の報酬との関係で格付がなされておりまして、それを定める際にはいろいろな考慮があったわけでございます。事実上、裁判官の場合は一般行政官に比較してある程度年齢が上であるという点ももちろんその考慮の中には入っていたこととは思いますけれども、しかし、基本的には、裁判官が行政官と同じように進んできたものとしても、裁判官報酬が行政官に比してこの程度の格差を設けるべきだというそこの考え方が一番基本にあるというふうに私どもは理解いたしております。
  145. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 要するに、私がお伺いしたいのは、裁判官の最初の任官の際の判事補十二号というのが、二十四歳の人も、五つ上の二十九歳の人も同じということであるとすると、判事に任官する希望者が非常に少なくなるんじゃなかろうか。その辺で年齢による加算というのか、給与のこと私よく知りませんけれども、何か年齢を考慮することができないものかどうか。年齢を考慮すればもう少し任官希望者も多くなるんじゃなかろうかということを考えるために申し上げたんで、その点いかがでしょうか。
  146. 櫻井文夫

    最高裁判所長官代理者(櫻井文夫君) おっしゃる御趣旨、大変よく理解できるわけでございますが、現在の運用といたしましては、二十四歳で任官した者も、二十九歳あるいは三十歳で任官した者も全部同じ十二号の報酬を受けるという考え方になっております。これは同じ仕事につく者については同じ報酬を与えるという考え方が一番基本にあるわけでございますが、実際問題といたしましては、ただいま申しましたように、判事補の平均年齢、仮に二十七歳代をとってみましても一般行政官よりも随分有利な報酬になっておりまして、さらに二歳、三歳上回って、例えば三十歳程度であっても、まあ現在のところ魅力を失わないと言える程度の報酬ではなかろうかというふうに考えております。
  147. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 現在、裁判官の任官希望者は例年に比べてどのようになっておるわけですか。要するに、予定に対して非常に少なくて困るとか、そのようなことはないんでしょうか。
  148. 櫻井文夫

    最高裁判所長官代理者(櫻井文夫君) 裁判官の任官希望者は大体例年六十名台ということできたわけでございます。これが過去二、三年少し減ってまいりまして、昨年度五十名台もしかも下の方ということになって、これは少し問題ではないかということから判事補の初任給調整手当の増額等の措置がとられたわけでございます。ことしの春は七十名の希望者がございました。来年卒業する司法修習生がどの程度の希望者があるものか、これはまだこれから願書が出てくるという段階でございまして、来年についてはまだ把握できていないという状況でございます。
  149. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 最後に一点だけ。  今お話の出た初任給調整手当ですが、四十六年にこの調整手当の額が決まってから、今年度初めて十五年ぶりにですか、一回増額された。今年度は増額されたからまたというわけにはいきませんが、これを逐年、ベースアップというか、それとあわせて増額するというふうなことは考えられないわけでしょうか、いかがですか。
  150. 櫻井文夫

    最高裁判所長官代理者(櫻井文夫君) 初任給調整手当は非常に長い間隔を置いてことし大幅な増額でございましたが増額になったわけでございます。これは初任の弁護士との収入の格差ということがその算定の一つの基準になっているわけでございます。ただ、この手当はやはり他の手当とは違いまして、裁判官検察官への任官希望者数の動向というものもこの手当をどうするかということに密接に関連するわけでございます。今年度大幅な改正をすることができたわけでありますか、この点はこれからの弁護士との収入の格差のみならず、今後の任官者数の動向というものもあわせて見ながら、十分注目をして、改定すべきものがあるかどうかということを念頭に置いてやっていきたいというふうに思っております。
  151. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 これで終わります。  いろいろありがとうございました。
  152. 諫山博

    ○諫山博君 私は、今回の裁判官検察官給与法改正案には賛成です。ただ、問題がないわけではありません。  一番疑問だと思うのは、上厚下薄の傾向が改められようとしていないことです。戦後、最高裁の制度が発足して現在までどのように変わったかといいますと、最初のころは最高裁長官と一番下級の裁判官給与の差は二・五倍でした。現在はもうこれが四倍を超しております。    〔委員長退席、理事名尾良孝君着席〕 私たちはこの格差はなるべく是正すべきだと考えております。しかし、法案全体には賛成ですから給与の問題には触れませんけれども、この際、一言最高裁の裁判官のあり方について質問します。  最高裁の裁判官は、刑事法廷で判決を宣告するときには主文だけではなくて理由も述べなければならないと思いますが、どうでしょうか。最高裁にお聞きします。
  153. 吉丸眞

    最高裁判所長官代理者(吉丸眞君) 最高裁におきましては、大審院以来の慣行に従いまして、判決を宣告するに当たっては理由の朗読等をしない取り扱いがなされております。
  154. 諫山博

    ○諫山博君 刑事訴訟規則の適用は受けませんか。
  155. 吉丸眞

    最高裁判所長官代理者(吉丸眞君) 刑事訴訟規則三十五条二項に規定がございますが、問題は、この規定の上告審の判決宣告への適用に関する解釈の問題であろうというふうに考えます。
  156. 諫山博

    ○諫山博君 この規則が最高裁の裁判官にも適用されるというのはもう通説です。そして、従来最高裁自体がそのことを認めておりました。ただ、慣例だから最高裁は理由を告げないと言われますから、この問題をめぐつて最高裁の法廷でしばしばもめております。被告人は刑事訴訟規則どおりに判決の理由を述べてほしいと主張する。裁判官は規則は規則としても慣例でございますからと言って理由を述べない。そのためにしばしば法廷がもめております。    〔理事名尾良孝君退席、委員長着席〕  私はこの際、最高裁判所に要請します。これは一人の裁判官だけのやり方ではないんです。第一小法廷、第二小法廷、第三小法廷、さらに大法廷でも刑事事件の判決のときに理由を述べません。被告人や弁護人が理由を述べてもらいたいと言っておるのに理由を述べません。これは明らかに刑事訴訟規則違反です。刑事訴訟規則というのは最高裁判所が定めたものです。最高裁判所がみずから判決の理由を述べなければならないと定めておきながら、最高裁がこれを守らないというのは最高裁七不思議の中の一つだと言われております。しかし、これは七不思議どころで済まされることではありません。みずから定めた刑事訴訟規則を最高裁が守らずにどうして国民に法律や規則を守れと言えますか。  私が要請したいのは、最高裁判所の何らかの正式な機関で私の提起をぜひ議論していただきたいということです。間違っている慣習ですからこれを改めるべきです。訴訟規則どおり、これから法廷では主文だけではなくて理由も告げるというやり方に改めていただくようにお願いします。そういう検討を要請しますが、いかがですか。
  157. 吉丸眞

    最高裁判所長官代理者(吉丸眞君) 最高裁判所の現在の取り扱いが刑事訴訟規則三十五条第二項に違反しているという御趣旨でございますが、先ほども申しましたとおり、この問題はこの規定の上告審の判決宣告への適用に関する解釈の問題でございます。最高裁判所は現在上告審における判決の宣告に当たっては理由の朗読等をしなくても同条項に違反しない、そういう解釈に立って取り扱いを行っているものと推測されるものでございます。ただ、このことは最高裁判所各法廷の裁判事務に関することでございますので、事務当局立場からはこれ以上意見を申し上げることは差し控えさせていただきます。  また、これを最高裁の法廷に伝えて検討せよという御要望でございますが、先ほど申しましたと おり、この問題は最高裁判所の各法廷の裁判事務にかかわる問題でございます。したがいまして、私ども事務当局として御要望をお伝えし、回答を報告する、そういう性質のものではないように思われます。このあたりについて御理解をいただきたいと思います。
  158. 諫山博

    ○諫山博君 今の答弁は極めて不本意ですけれども、次の問題に入ります。  そこで法務大臣質問します。  日本共産党の国際部長である緒方靖夫氏の家に電話盗聴の装置がつけられました。これは憲法で保障された基本的な人権をじゅうりんし、表現、結社の自由、さらに通信の秘密を侵害する許すべからざる行為であります。特に緒方靖夫氏は日本共産党の幹部です。国際部長です。政党や政党幹部の活動を電話盗聴する、こういうやり方というのは、基本的な人権をじゅうりんするだけではなくて、議会制民主主義を根幹から破壊する許しがたい犯罪行為であります。かつてアメリカでは、ニクソン大統領が野党である民主党本部に盗聴器を仕掛け、これが主な原因となって彼は辞任に追い込まれました。いわゆるウォーターゲート事件です。自由と民主主義を擁護するという立場から見れば、公党の幹部に対して電話の盗聴をする、これが絶対に許されないものであるということをまず法務大臣に御認識いただきたい。  衆議院において、中曽根総理は我が党の松本善明議員の質問に答えて、このようなことは民主主義社会における公益、安全を害する重大な侵害行為であって、あくまで厳正、公平、公正に、だれであろうと遠慮することなく捜査を行うべきである、こう述べられました。  そこで、法律人権擁護に直接の責任を負っている法務大臣としてこの事件をどのように認識しておられるのか、まず初めにお聞きしたいと思います。
  159. 遠藤要

    国務大臣遠藤要君) お尋ねの事件に関しては現在捜査中でございますので、中身についての問題は差し控えさせていただきたいと思いますけれども法務大臣立場として申し上げれば、総理が答えられておるように、民主主義国家においていかような、だれがどうしようと厳正公正な捜査をし、そして処理をしていくということが今の日本憲法を守るためにもその必要があると私は信じております。
  160. 諫山博

    ○諫山博君 きょう私は、当委員会にNTTの関係者に参考人として出席さしていただくようにということを理事会でお願いしました。しかし、残念ながらこれは認められておりません。自民党の理事の方は、自民党としてNTTを参考人として呼ぶことには反対だと言われました。一昨日の非公式な折衝でも、自民党の理事の方は自民党としてNTTを呼ぶことには賛成できないと言われております。社会党の秋山先生からは積極的に賛成するという発言をいただきました。その他の理事の方からは、残念ながらNTTを参考人として当委員会に呼ぶことに賛同が得られませんでした。私としてはまことに遺憾です。  やむを得ませんから、NTTを指導監督する立場にある郵政省に若干のことをお聞きします。  NTTの町田電報電話局は本件を既に刑事事件として告発しています。NTTは本件をいついかなる経過で承知したのか、またいかなる方法で盗聴可能の状態になっていることを確認したのか、この点についてお答えください。
  161. 品川萬里

    説明員(品川萬里君) お答え申し上げます。  今回の事案につきましては、当省といたしましてはNTTから次のような報告を受けております。去る十一月二十七日、日本共産党の町田市議の五名の方々が町田電報電話局においでになりまして、先生お名前を挙げられました緒方国際部長さんの自宅の電話に雑音が入る、盗聴されている疑いがあるので緊急に調査してほしいとの申告を受けたわけでございます。これによりまして、NTTで当該利用者の方の加入者線配線状況、付近の端子函を調査いたしましたところ、接続端子函の中でこの御申告のありました利用者の方の電話回線に他の引き込み線が接続されているということが判明したというふうに報告を受けております。NTTにおきましては、現場を保存するとともに、有線電気通信法違反の疑いがあるとして、所轄の町田警察署に対し十一月二十九日に告発をしたというふうに報告を受けております。  以上でございます。
  162. 諫山博

    ○諫山博君 十一月二十九日というのは、警察が正式に告発を受理した日です。それ以前、二十七日に町田警察署に盗聴されている事実を知らせる。二十八日に口頭で、さらに後で文書で告発をしているはずですけれども、その点はどうですか。
  163. 品川萬里

    説明員(品川萬里君) 二十七日から二十九日までの間で町田警察署の方と電報電話局の方で接触している、こういうふうな話も聞いております。
  164. 諫山博

    ○諫山博君 二十八日に告発していることも聞いておりますか。
  165. 品川萬里

    説明員(品川萬里君) 正式の告発というのは二十九日であるというふうに報告を受けております。
  166. 諫山博

    ○諫山博君 私は、そういう不正確な事実認識にならないようにNTTの責任者に出てもらいたいと思ったんです。二十八日に口頭で告発し、警察はそれを受け付けませんでした。そして二十九日に公式に告発を受理したというのが経過です。  そこで、今度の緒方氏宅の電話盗聴というのは、普通の一般人でやれるような盗聴工作ではありません。極めて専門的で、極めて組織的で計画的な、集団的な犯罪です。例えば、緒方氏宅の電話盗聴を工作するためには、緒方氏宅の電話の配線、配色をあらかじめ承知しておかなければなりません。これを知る通常の方法というのは、町田電報電話局が保管している線番対照簿を見ることです。線番対照簿というのは、町田局が部外秘の資料として保管しておるもので、限られた人しか見ることができません。NTT自身が線番対照簿が局外に持ち出されるようなことはあり得ないと言っております。線番対照簿を見ないで盗聴工作をするとすれば、緒方氏宅の電話の配線を調べ、メゾン玉川学園の近くにある電柱の端子函で多数の配線の中から緒方氏の配線と同じものを調べ上げることになります。  私は、メゾン玉川学園の前の端子函をあげた写真を二つ持ってきました。法務大臣ごらんください。(写真を示す)これは二百本のケーブルです。この中から緒方氏の配線と同じ色のものを選び出す、これは専門の知識、経験がある人でないと到底やれないことです。緒方氏宅の電話盗聴というのは、今私が指摘したように、端子函の中でさまざまな工作をしてメゾン玉川学園の二〇六号室の配線と緒方氏宅の配線を結合している。そういうやり方であることは郵政省御存じですか。
  167. 小嶋弘

    説明員(小嶋弘君) 今回の件につきましては、捜査当局において調査中と聞いておりまして、答弁は控えさせていただきたいと思いますけれども一般的にはNTTにおきまして線番対照簿は厳重に管理されており、特定の者しか見ることができないと聞いております。
  168. 諫山博

    ○諫山博君 線番対照簿を使わずに本件のような盗聴工作をするとすれば、私が説明したような方法によらざるを得ないんじゃないでしょうか。いかがですか。
  169. 小嶋弘

    説明員(小嶋弘君) 線番対照簿は厳重に管理されておると聞いておりますので、特定の者しか見ることができないと聞いておりますし、そう承知しております。
  170. 諫山博

    ○諫山博君 私が今質問した点についてはNTTから聞いてきませんでしたか。私は、線番対照簿に基づいて盗聴工作がされたとは断定しておりません。線番対照簿に基づいて緒方氏宅の配線を調べ、それに基づいて工作するというのが普通の方法だ、ただ、線番対照簿を用いなくても盗聴工作はできる、それはメゾン玉川学園の前の電柱にある端子函をあげて緒方氏宅の配線と同じものを探し出すことだ、この探し出す作業というのは極めて技術的、専門的で普通の人にできることではないということを言っているんですけれども、このことはNTTで確かめてこられませんでしたか。
  171. 品川萬里

    説明員(品川萬里君) 先生御指摘の件も含めまして現在捜査当局において捜査中でございますので、先生御指摘のような事実がどのようにして行われたかというのは、その調査結果を待ちたいと私ども思っておるわけでございます。
  172. 諫山博

    ○諫山博君 警察と検察庁は刑事事件としてもちろん捜査するでしょう。しかし、NTTと郵政省は電話線に不当な工作を加えられた被害者として、どういうことが行われたのか、どうすればこういうことが再発しないで済むのか、当然調べるべきではありませんか。調べていませんか。調べているはずですよ。
  173. 品川萬里

    説明員(品川萬里君) 大変不幸なことながら、事案が刑事事件ということで扱われておるわけでございますから、私どもといたしましてはNTTも含めまして捜査当局の結果を待ちまして、もし対処すべき点があれば適切に対処してまいる、かように考えております。
  174. 諫山博

    ○諫山博君 この盗聴工作というのは実に計画的です。例えば、犯人が居住していたと思われるメゾン玉川学園の二〇六号室は、昨年の六月ごろから賃貸契約がされております。そして、この盗聴工作を実施するためには、メゾン玉川学園の前の電柱に登らなければなりません。端子函のある位置は地面から約五メートルです。私は登りました。そして、端子函のあるところで今私が述べたような作業をし、さらにこの端子函の配線と緒方氏宅の電話の配線をつなぎ合わせなければなりません。つなぎ合わせるためには、あらかじめつなぎ合わせるためのケーブルを準備していなければなりません。しかも、高さ五メートルの場所で両手を使って作業するわけですから、体を支える胴綱というものが必要です。一人でやれることではありません。本件の盗聴工作がそのようにして行われているということは確認していませんか。
  175. 小嶋弘

    説明員(小嶋弘君) 今回の件につきましては、捜査当局におきまして調査中でございまして、どのような線が使われたかにつきましては把握しておりません。
  176. 諫山博

    ○諫山博君 捜査中と言いますけれども、あなたは警察官ではないんですよ。NTTと郵政省は、被害を受けたものとして独自に事態を調査する責任があるはずじゃありませんか。  この問題で、共産党の山中郁子参議院議員そのほか何名かの人がNTTに申し入れに行きました。そのときにNTTの方では、警察の犯罪捜査とは別に独自にNTTとしても事態を調査したい、こう言っていますよ。そういう回答をしたのは高橋常務です。そのときに高橋常務は、内部犯罪の疑いを持たれないためにも警察とは独自に別個に調査したいと言っております。NTTはそう言っていますけれども、郵政省の立場は違いますか。
  177. 品川萬里

    説明員(品川萬里君) 通信事業者といたしまして、NTTとして通信の秘密の確保等種々対策を講ずることは当然でございますけれども、本件につきましては、先ほども申し上げましたように、刑事事件として警察当局における調査のもとにあるわけでございますので、私どもといたしましてはその結果を待ちまして適切な対処に臨むということが適当ではないか、かように考えております。
  178. 諫山博

    ○諫山博君 捜査を口実にして、重要な問題に対して答弁を避けるという態度は私は納得できません。  それでしたら、一般的な問題として質問します。  本件盗聴で端子函に工作が加えられていることは否定しないでしょう。どうですか。
  179. 品川萬里

    説明員(品川萬里君) NTTからの報告では、先ほど最初に回答申し上げましたように、接続端子函の中で他の引き込み線が接続されていたということが判明したということは報告を受けております。
  180. 諫山博

    ○諫山博君 端子図の中で工作をするためには、さっきの写真で示した二百本からの回線の中から緒方さんの一つの回線を選び出さなければなりませんね。そして、これをメゾン玉川学園の二〇六号室の配線とつなぎ合わせなければなりませんね。一般論としては認めますか。
  181. 品川萬里

    説明員(品川萬里君) 具体的にその接続がどのような形でなされておったか、またそれはどういう姿で行われたのかということにつきましては、先ほど申し上げましたように、今刑事事件といたしまして捜査の対象にあるわけでございますから、その結果を待ちませんと、私どもとしましては今この具体的事案について一定のことを申し上げることはいかがかと、かように思う次第でございます。
  182. 諫山博

    ○諫山博君 あなたは、端子函に工作が加えられたことは認められました。どういう工作が加えられたんですか。
  183. 品川萬里

    説明員(品川萬里君) 重ねての御答弁になりますけれども、接続端子函の中でこの緒方さんの電話回線に他の引き込み線が接続されていたということは報告を受けておりますけれども、それ以上にどのような形でどのような姿でということは承知しておりません。
  184. 諫山博

    ○諫山博君 報告を受けているだけではだめなんですよ。積極的に調べてくれということを私は要請しました。NTTの代表者が来ておられればこんな議論は無用だったかもしれませんけれども、自民党として反対するという立場で私はNTTの人に直接聞けませんから、だからたくさん調べてくれとお願いした。  ところで、端子図をあげてこれに工作をした、そして二つの線が接続されたということまでは認められました。接続するためには接続するためのケーブルを用意しておかなければなりませんね。それはどうですか。
  185. 品川萬里

    説明員(品川萬里君) この引き込み線に何か線が接続されていたということでございますが、当然そのような線をつけた人は用意したというふうに考えられます。
  186. 諫山博

    ○諫山博君 きのう、参議院会館の中で、私はNTTの代表者の人と約二時間にわたって話し合いました。そのときに、盗聴工作というのは普通の人にできることではない、極めて専門的な技術を要する、さらに普通の人が手に入れにくい資材も使われているということを言ってますけれども、郵政省はその点把握していますか。
  187. 品川萬里

    説明員(品川萬里君) 本件は、一般論としてはいろいろ申し上げることができるかと思いますけれども、この件はあくまで具体的な事案として申し上げるのはちょっとどうかと思います。本件につきましては、先ほど申し上げましたように、現実の具体的な刑事事件として捜査を受けておるわけでございますので、御指摘の点が本当に専門家でなければならないのかどうかということも刑事事件の捜査の対象として今後明らかにされるであろうと考えております。その結果を待ちまして私ども判断してまいりたいと思っています。
  188. 諫山博

    ○諫山博君 あなたは、端子函をあげた、そして端子函で緒方さんのところの線と盗聴したところの線を接続したことまでは認められた。こういう作業というのは地上から五メートルぐらいの高さで行うはずですけれども、どうですか。
  189. 品川萬里

    説明員(品川萬里君) 端子図が具体的に何メートルのところかということまで私ども承知しておりませんけれども、いずれにしましてもその現実の、仮につけられたとしますと、そのような行為がどのような形で行われたかということは、刑事的事件でございますから、捜査当局の結論を待ちませんと、それがどのような形で行われたかということについては私ども答弁を差し控えさせていただきたいと思います。
  190. 諫山博

    ○諫山博君 わかり切ったことまでそういう口実で説明されないというと、私たちは逆に疑いますよ。説明しにくい事情があるのではないかというふうに疑わざるを得ませんよ。大体、盗聴工作をする場合に一番便利な方法はNTTしか持たない綿番対照簿を見ることです。そういう事実があるのに、わかり切ったことまで説明しないというのはなぜですか。端子函というのは日本じゅうどこにもある。大体電柱の五メートルぐらいの高さのところにあるでしょう。そして、この端子函でい ろんな作業をするためには、はしごを持ってくるか胴綱を用意するか、どちらかでないとできないでしょう。これは一般論としてどうですか。
  191. 品川萬里

    説明員(品川萬里君) 高いところでの作業は、もし地上から登るとすればそのような道具は必要になろうかと思います。
  192. 諫山博

    ○諫山博君 郵政省にはまた後で質問します。  警察の方にお聞きします。  警察が本件の捜査を開始したのはいつなのか、捜査の端緒は何だったか、説明してください。
  193. 上野治男

    説明員(上野治男君) お答えいたします。  十一月二十七日午後三時ごろ、警視庁の町田警察署に対しましてNTT町田電報電話局から次のような内容の通報があったわけでございます。その内容は、日本共産党から、同党緒方国際部長宅の電話が盗聴、妨害されているらしいので、NTTが調査するから、警察としても所要の措置をとってほしいということでございました。
  194. 諫山博

    ○諫山博君 NTTが口頭で警察に告発しているはずですけれども、何日の何時でしたか。
  195. 上野治男

    説明員(上野治男君) お答えいたします。  告発と申しますと、告発というのは、犯罪の発生した事実を告げ、処罰の意思を表示すること、こういうふうに理解しておりますが、となりますと、どの時点をとらえて告発ととらえるかというのはある面では大変難しい面がございます。最初の二十七日に事実を伝えていただいておりますその段階で、ある程度わかっている範囲内での実態を調べてほしいということから問題は始まるんだと思いますが、最終的に正式の文書として受理さしていただきましたのは十一月二十九日でございます。
  196. 諫山博

    ○諫山博君 告発というのはもちろん文書を要件としませんね。口頭の告発というのは受け付けるべきでしょう。  ところで、警察が本件の強制捜査を開始したのはいつですか。
  197. 上野治男

    説明員(上野治男君) 確かに、犯罪を認知した段階におきまして警察としては所要の措置をとり始めるわけでございます。したがいまして、犯罪の一部でございましたが、最初に十一月二十七日に犯罪の部分を認知しておりますので、その段階から順次所要の措置をとっていった次第でございます。二十九日に正式の文書を受理した後さらに捜査が深まってきました。
  198. 諫山博

    ○諫山博君 犯人が居住をしていたと思われるのはメゾン玉川学園二〇六号室。この二〇六号室に対する家宅捜索をしたのはいつですか。
  199. 上野治男

    説明員(上野治男君) 十二月一日に捜索を実施しております。
  200. 諫山博

    ○諫山博君 緒方氏宅の電話が二〇六号室から盗聴されていたということは十一月二十七日に既にわかっております。共産党の調査団もそのことを確認したし、NTTの技術陣も確認したし、そして警察の金子巡査部長も現場で確認をしております。そうすると、二〇六号室がどういう状況になっているのか、二〇六号室にだれが住んでいるのか、どういう証拠物件が遺留されているかということは犯罪捜査にとっては決定的に重要な段階です。十一月二十七日にそういう事実を承知しておきながら、強制捜査が十二月の一日までなされなかったのはなぜですか。
  201. 上野治男

    説明員(上野治男君) お答えいたします。  本件につきましては、法律的にも技術的にも難しい面を幾つか持っております。現場の警察署だけでこの事件を十分処理、捜査をするということは容易ではないことでございます。そういったようないろいろな事情を考えますと、この件につきましても、警視庁で捜査をしているわけでございますが、専門家の応援を得ないと捜査ができないという面がございますので、認知してから十二月一日までの期間というのは、捜査上より合理的な期間であろうと私どもは理解しておる次第でございます。
  202. 諫山博

    ○諫山博君 NTTや私たちの党が、二〇六号室が犯人の居住しているところだということを確認したときには犯人がまだそこに居住していた形跡があります。この種の事件で初動捜査が極めて重要だということは常識だと思います。何はともあれ真っ先に二〇六号室に駆けつける、そして犯人が逃げないようにする、証拠が隠滅されないようにする、これが一番先にやることではありませんか。いろいろ内部で検討すべきことはありましょう。しかし、最も緊急にやらなければならないのはこの初動捜査だったはずです。これをなぜ四日間もぼやっと見過ごしたかということです。
  203. 上野治男

    説明員(上野治男君) 御指摘のことでございますが、十一月二十七日に認知して以来、私どもといたしましてはその現場保存を含めまして所要の措置はそれぞれとっておった次第でございます。  具体的な内容につきましては捜査の中身に至りますので答弁を控えさせていただきますが、具体的に証拠が隠滅されないように、あるいは必要な捜査の資料を収集するための各種の活動はその間に行われておったわけでございます。したがって、先生今御指摘のような心配はいずれの期間にもなかった、こういうふうに確信しております。
  204. 諫山博

    ○諫山博君 私たちから見ると、到底納得のできない強制捜査の遅延です。  そこで、警察が二〇六号室の強制捜査を行ったのは十二月の一日九時半ごろからです。この途中に東京地方検察庁の検事が現場に来ています。その日の午後四時半ごろ、東京地方裁判所の八王子支部の裁判官が民事上の証拠保全の手続のために現場に来ました。警察と検事裁判官が鉢合わせをしたわけです。裁判官が現地に来た目的は民事上の損害賠償をもとにした証拠保全です。そして、証拠保全の手続として裁判官は緒方さんの家を検証しています。メゾン玉川学園の前の電柱の端子函も調べました。電柱に登っております。そこで最後に二〇六号室で検証をする、とりわけ配線盤を調べようとしました。そのときに、家宅捜索に来ていた警察官が妨害をしております。裁判官はアパートの管理人の承諾を得て配線盤をあげようとしましたけれども、警察官が管理人を裁判官に会わせなかったでしょう。そしてその管理人を警察の車に乗せてどこかに連れていってしまいました。そのために結果的には裁判官の証拠保全手続が最後まで終わらなかった、こういう状態です。裁判官は見物に来たんじゃありません。緒方さんの権利を守るために証拠保全に来たんです。その裁判官の証拠保全をなぜ警察官が邪魔しましたか。なぜ管理人を連れ去りましたか。説明してください。
  205. 上野治男

    説明員(上野治男君) お答えいたします。  まず最初に、警察官が裁判官の証拠保全手続を妨害したという先生の御指摘でございますが、私どもはそういう事実は全くなかったものと理解しております。当日、十二月一日のことでございますが、午後四時ごろには確かに二十人か三十人の方、あるいは時間を追うに従いましてもう少し大勢の方がアパートの周りに集まっておりました。それだけ大勢の方がおられましたが、現場の警察官に対して自分が裁判官である旨を直接告げられた方は一人もおられなかったわけでございます。いわんや、裁判官が証拠保全手続に来られたという話も当然現場ではなかったし、また通常はその種の場合は事前に関係者に連絡をされておるんだと思いますが、私どもにそういう話は全くなかったということの報告を受けている次第でございます。
  206. 諫山博

    ○諫山博君 そんなでたらめな言い方がありますか。裁判官が弁護士と一緒に来たんですよ。目的は証拠保全ですよ。そのときに裁判官が来ていたかどうか警察は知らないと言うんですか。答えてください。
  207. 上野治男

    説明員(上野治男君) そのとおりでございます。裁判官であるということはどなたもその現場でもって言われておりません。確かに、先生おっしゃるように、弁護士のバッジをつけられていた方は何人かいたということは報告を受けております。しかし、裁判官がいたということは全く報告を受けていません。いわんや、証拠保全手続に必要だというような話があるということは全くなかったというふうに報告を受けております。
  208. 諫山博

    ○諫山博君 それは、逃げ口上としても最もへた な逃げ口上じゃありませんか。  それでは、裁判官は配線盤をあげるためにアパートの管理人に会おうとしました。その管理人は警察の車に乗せられてどこかへ行きましたね。私たちは警察が拉致したというふうに理解していますけれども、どこに連れていったんですか。
  209. 上野治男

    説明員(上野治男君) 捜査を担当しております現場からの報告によりますと、この報告を受けましたのは、赤旗に記事が載っておりましたので私ども照会した結果わかったことでございます。その報告によりますと、当日の午後四時ごろには二、三十人の人が、五時には四、五十人の方が捜索の現場に集まってきていたということでございます。  私どもは、朝から捜索を行っておったわけでございますが、立ち会いをある方にお願いしたわけでございまして、これは御婦人でございます。その方は私どもの立ち会いの協力に快く応じていただき、長い時間にわたって積極的な協力をしていただいたわけでございますが、次第に時間がたちますと、その間に、今申しましたように、現場に大勢集まってきた屋外におられた方が、大きな声でその御婦人の名前を呼び捨てにして、何々出てこいとか、何々に会わせろというようなことをかなり大きな声で騒ぎ立てられた。このようなことにその御婦人はもともとふなれでございますから、とても怖いし、早くここから帰りたい、一人で帰れないので送ってほしいというような申し出がありましたので、捜索が終了した段階で私どもでお送りしたわけでございます。
  210. 諫山博

    ○諫山博君 警察がお送りしたという女性が建物の管理人ですね。警察はいろいろ弁解しておられますけれども、警察が否定しようにも否定できない事実があります。  それは、裁判官の証拠保全というのは第一項、第二項、第三項となっておって、第一項、第二項は実施されました。第三項は警察が妨害をして管理人を連れ去ったためについにこれは不達成に終わっている、未遂に終わっている。このことだけは裁判所の資料で明白ですよ。そういう状態になっていることは警察は知っていますか。
  211. 上野治男

    説明員(上野治男君) そのような事実はないものと承知しております。  なお、考えますのは、今申しましたように、裁判官がおられたということであります。そして弁護士さんが何人かおられた。それは私どもバッジで確認しておるわけでございますが、それぞれがすべて正しいといたしますと、現場には十分法律知識を持っておられる方がおられたんだと思います。警察が捜索をしている場合、さらに必要ならばその手続に従って明確に申し出をしていただければ、私どもとしましてもその手続を踏むことができたわけでございます。一般の素人さんでしたらばそういうことをわからないままに終わってしまうということはあり得るかと思いますが、法律家がかくも大勢集まっておられて、その人たちが現場でもってやるべきことをやらなかった。しかし現場にいたんだと後で言われて、そうだったということは、私ども現場の報告と両方兼ね合わせて考えてみても考えられないことでございます。したがって、現場にはそのような申し出をされた裁判官がいなかったという捜査の現場からの報告がそのとおり正しいものと私ども考えておる次第でございます。
  212. 諫山博

    ○諫山博君 今のあなたの発言を裁判官に聞かせてやりたいですね。裁判官がなぜ名のらなかったかと言わんばかりの言い方じゃないですか。裁判官と名のれば妨害はしなかったんだという言い方ですよ。  私たちは、今度の事件で警察が何らかの形で関与しているんじゃないかということを疑っております。裁判官が二〇六号室に入ることを警察は怖がったんじゃないですか。裁判官が入れば当然緒方さんの代理人である弁護士も入ります。配線盤も裁判官と弁護士が確認することになります。私たちは、それをさせないために警察が妨害をして、そして今になって裁判官が現場に来ていたかどうか知らなかったというような逃げ口上を並べ立てているとしか思われません。  そこで、警察との関係について少し聞きます。  盗聴を行っていた人が二〇六号室に居住していたということは明らかだと思います。これはもう常識です。裁判官やNTTの人が緒方さんのところの電話が二〇六号室で聞きとれるということを確認しております。二〇六号室に居住していた人は今のところだれかわかりません。ただ、借り受け人は東芝の二十二歳の社員だということになっております。この人のお父さんは神奈川県警の現職の警察官だということも明らかになっております。そして、アパートの借り受け人の保証人の志田という人は現在東芝の社員ですけれども、かつて警察官で警備畑で仕事をしたことのある人です。  こういうことはもう既に新聞でも報道され、とりわけ、借り受け名義人の父親が現職の警察官だったということから新聞でもいろいろ本件と警察との関係が取りざたされております。もちろん警察もこのことは知っていると思います。公務員で現職の警察官にマスコミによって嫌疑がかけられるという事態が出ておりますから、当然警察としては事実を調べているはずです。調査の結果どうなりましたか。
  213. 上野治男

    説明員(上野治男君) 私どもといたしましては、事件を認知いたしましてからいろいろな角度から多角的に捜査を推進しておる次第でございます。現在捜査がある面でいけばまだ緒についたばかりの段階でございますので、捜査の具体的内容につきましては答弁を差し控えさせていただきたいと思っております。
  214. 諫山博

    ○諫山博君 十二月一日に警察はメゾン玉川学園で初めて家宅捜索をして一定の証拠物を押収していきました。この証拠物は今どこに保管されていますか。
  215. 上野治男

    説明員(上野治男君) その問題につきましても捜査の具体的な内容にかかわるかと思いますので、答弁を差し控えさせていただきたいと思います。
  216. 諫山博

    ○諫山博君 法務省の刑事局長にお聞きします。  被害者の緒方靖夫氏の告訴に基づいて今東京地検特捜部が捜査を開始していると思いますけれども、そのとおりですか。
  217. 岡村泰孝

    政府委員岡村泰孝君) そのとおりでございます。
  218. 諫山博

    ○諫山博君 十二月十三日の毎日新聞、サンケイ新聞が、メゾン玉川学園二〇六号室の家賃や光熱費等は神奈川県警の公費で支払われていると報道しております。これは全国紙で広く報道されていますし、犯罪捜査においてはあらゆる情報が捜査の重要な端緒となる。新聞記事ももちろん捜査の端緒の一つだというのは捜査に当たる者の常識だと思いますけれども、この新聞記事に対して法務省は何らかの関心を示しておられますか。
  219. 岡村泰孝

    政府委員岡村泰孝君) 捜査いたしておりますのは東京地検でございまして、東京地検におきましてもこの種の報道につきましては、捜査の上の一つ情報と申しますか、そういった形で参考にはするものだろうと思います。
  220. 諫山博

    ○諫山博君 警察にせよ検察庁にせよ、あらゆる情報を収集して、そして捜査を発展させていくというのは常識です。このショッキングとも言える毎日とサンケイの新聞報道に対して、どのような関心を払われ、どのような対処をされましたか。
  221. 岡村泰孝

    政府委員岡村泰孝君) 先ほど申し上げましたように、東京地検におきましては現在捜査中でございますので、このような報道に基づいてどういう捜査をするのかしないのかといったようなことも含めまして、具体的なことにつきましては答弁いたしかねるのでございます。
  222. 諫山博

    ○諫山博君 初めに申し上げましたように、今度の事件というのは基本的人権侵害だ、表現自由の抑圧だ、通信の自由も侵されている、通信の自由というのは憲法で保障された原則だ、こういう面を持っていると同時に、政党の幹部に対する盗聴行為ですね。まさにウォーターゲートと同じ性格の事件です。この種の事件に対しては、法務省としては特別な決意で捜査を続けることが必要だと 思います。とりわけ本件では権力とのかかわりがいろいろ言われているだけに、法務省の毅然たる捜査態度が必要だと私は考えております。この点についての刑事局長考えを聞かせてください。
  223. 岡村泰孝

    政府委員岡村泰孝君) 検察当局といたしましては、厳正公平な立場で本件についても捜査を行うものと思っております。
  224. 諫山博

    ○諫山博君 厳正公平とというのはすべての事件に共通しますけれども、私が刑事局長に要請したいのは、権力とのかかわりがとやかく言われている事件であるだけに特別な強い態度が必要だ。中曽根総理自身は、犯人がだれであっても遠慮なくやれというような言い方をしておりますけれども、この総理の発言を刑事局長はどのように受けとめておられますか。
  225. 岡村泰孝

    政府委員岡村泰孝君) 総理の御発言どおりでございまして、犯人がだれであれ厳正公平に検察当局としては捜査いたすものと思っております。
  226. 諫山博

    ○諫山博君 どのような形で盗聴工作がなされたかということについては、もちろん検察庁としても調べていると思います。私たちは、この事件というのは一個人でできることでもないし、素人でできることでもない。しかも、二〇六号室の賃貸借契約というのは昨年からです。相当長期の計画に従って組織的、集団的に行われた犯罪だと私たちは認識しております。そういう認識のもとに捜査を続けられているのかどうか、この点も刑事局長説明してください。
  227. 岡村泰孝

    政府委員岡村泰孝君) 告訴、告発を受けまして捜査を開始して以来、まだそれほど日にちもたっていないわけでございまして、捜査の中で次第に解明されていきます事実関係に基づきまして、真相解明のために検察当局は鋭意捜査を行うものと思っております。
  228. 諫山博

    ○諫山博君 新聞報道によりますと、警察が押収している書類を、あるいは証拠物を検察庁が引き揚げたように書かれています。令状に基づいて引き揚げたのか、任意に警察から出していただいたのか、新聞自体では明確でありませんけれども、その点はどうなっていますか。
  229. 岡村泰孝

    政府委員岡村泰孝君) 検察当局といたしましては、告訴、告発を受けておりますので、必要な捜査を行っているところでございまして、捜査の中身といたしまして必要な証拠品等の押収も行っているところでございますが、その具体的な事柄につきましては、現在捜査中でございますので答弁いたしかねるところでございます。
  230. 諫山博

    ○諫山博君 郵政省に戻ります。  本件の真実の究明を警察だけに任せておっていいのかという問題です。  NTTは、初めのころは警察が捜査をしていますからという言い方をしていました。しかし、私たちはいろいろNTTと接触して、それではだめじゃないか、犯罪捜査は犯罪捜査として捜査機関が担当するとしても、NTTとしてもあるいは郵政省としてもやるべきことがいっぱいあるんじゃないのか。例えば、こういう事件は予防できなかったのか、再発を許さないためには何か適当な手段はないのか、こういう問題について当然NTTとしても郵政省としても独自の調査を行うべきだと思います。そして、その調査の結果を天下に公表する責任があるというふうに私たちは考えております。この問題、郵政省としてはどう考えているのか。  さらに、私はNTTがどういう態度かということを確かめていただきたいということを要望しておりましたけれども、NTTとしてはどうでしょうか。
  231. 品川萬里

    説明員(品川萬里君) 今回の事案、先ほども申し上げましたように、刑事事件ということで警察当局によって捜査中でございます。したがいまして、私どもも厳正公平な捜査あるいはその結果の真相解明を待ちまして、それの結果に基づきまして指導すべきものは指導する、あるいは対処すべきは対処してまいりたい、かように考える次第でございます。
  232. 諫山博

    ○諫山博君 そうすると、NTTとしても郵政省としても再検討すべき問題はない、再発予防の対策を講じる必要もない、そういう立場ですか。
  233. 品川萬里

    説明員(品川萬里君) 今回の事件の解明が明らかにされ、私どももその結果を知る中で、順次適切に対処してまいりたい、かように存じます。
  234. 諫山博

    ○諫山博君 警察にもう一回質問します。  警察が正式に告訴を受理したのはいつですか。
  235. 上野治男

    説明員(上野治男君) 何回かのやりとりがありましたが、最終的な文書をいただきましたのは十一月二十九日と承知しております。
  236. 諫山博

    ○諫山博君 それ以前、二十七日においても二十八日においてもNTTが口頭で事件を警察に報告し、処罰も求めていますけれども、これはなぜ告訴として受理しませんでしたか。
  237. 上野治男

    説明員(上野治男君) 私がただいま申し上げましたのは、現在私どもが持っておる告訴状を受け取りましたのが十一月二十九日付という意味でございます。したがいまして、もう一度最初からさかのぼって申し上げますと、十一月二十七日の日に最初に電話でこういうふうに共産党の方から話がありましたという連絡をいただきました。私どもはその通報を受けた段階で所要の捜査手続等を始めたわけでございます。  そして、さらに翌日の二十八日に至りまして、NTTの電話局の幹部の方々から、直接警視庁の町田警察署にお越しになり、いろいろな話を承っております。  その際にも、実は最初に文書をお持ちになっておられるわけでございますが、そのときの文書の内容等いろいろ検討さしていただきましたところ、公的な機関からいただく文書としてはもう少し明確に内容を書いていただいた方がよろしいんではないかという意味でもう一度文書をお持ち帰りいただきまして、二十九日に正式に文書をいただいているわけでございます。  そして、その間に、私どもとしましては二十七日に最初に認知しております。二十八日には一度文書をお持ちいただいておりますので、それぞれの段階におきまして私どもで認知した内容に基づき所要の捜査はその段階において始めておったというふうに承知しております。
  238. 諫山博

    ○諫山博君 さっきの問題に戻りますけれども、この事件の捜査で決定的に重要なことは、二〇六号室の家宅捜索であったはずです。家宅捜索を十二月の一日まで行わないというのはどこの判断ですか。
  239. 上野治男

    説明員(上野治男君) お答えいたします。  先ほどの御質問の中に、その間に時間が経過したから証拠隠滅のおそれがあったではないかという御指摘でございました。  私どもといたしましては、この事件につきましては最初に認知した段階から、その現場が破壊されないように、現場の証拠の保全ができるように警察として必要な所要の措置はとっておったつもりでございます。  その内容につきまして、どういうふうに見ていたかということにつきましては具体的に申しかねるわけでございますが、確かにアパートの周りには大勢の方がおいでになっておられます。昼間、夜を問わずいたわけでございますが、その中においてなおかつ現場が破壊されないように、証拠が隠滅されないようにという所要の措置をとってきて、事実、十二月一日の日に捜索をした段階には、最初に認知した状態から何ら変わらない状態において捜索が実施することができた、そういうふうに思っておりますので、捜査上あるいは証拠保全の手続上問題は全くなかったものと私は理解している次第でございます。
  240. 諫山博

    ○諫山博君 刑事局長に最後に質問します。さらにあと法務大臣に聞きます。  この盗聴行為の特徴というのは、刑事事件として見た場合には、犯人特定、真相究明のための資料が非常に多いということです。何しろ犯人は長期間にわたって二〇六号室に居住しておりました。居住の痕跡というのは山ほど残されているはずです。警察も検察庁も相当多量の証拠物を押収しております。これは私たちの仲間が確認しております。これだけ犯人特定が容易な事件というのはそうたくさんはないと思います。過去において 共産党や民主団体に対する盗聴事件というのはさまざまありました。ただ、警察や検察庁の力で真相が解明されたというような事件は一件もありません。私は、この事件がうやむやになったり、真相がわからないまま時効になるというようなことは絶対に許されてはならないと思いますけれども、捜査に当たる刑事局長としてのこの点についての考えを聞かしてください。
  241. 岡村泰孝

    政府委員岡村泰孝君) 本件につきまして、犯人の特定が容易か困難かというようなことにつきましては今の段階で何とも申し上げられないところであろうかと思うのであります。いずれにいたしましても検察当局といたしましては、告訴、告発を受けました以上、本件につきまして厳正公平な立場で捜査を行うものと思っております。
  242. 諫山博

    ○諫山博君 法務大臣質問します。  盗聴の経過、盗聴の手段、その計画性、組織性、専門性というのはもう法務大臣御認識いただいたと思います。何しろ共産党の国際部長に対するとんでもない盗聴行為ですから、これは議会制民主主義を守るという点から見ても絶対にゆるがせにはできないと思います。  法務大臣は法秩序について直接の責任を持っておられる方です。事柄は憲法上の原則に関します。中曽根総理は内閣委員会で総理としての立場を述べられましたけれども、法秩序に直接の責任を負う法務大臣として、今この事件をどのように認識されておられるのか。また、この事件の処理についてどのように考えておられるのかお聞かせください。
  243. 遠藤要

    国務大臣遠藤要君) 先生お話しの趣ではございませんけれども、現代民主社会を構成していくに一番大切なのは法の秩序だ、このように私は信じております。そのような観点から、この社会をさらによりよい社会に構成していくにはどうしても法の秩序を厳守していかなければならない。  そのような点で、今御指摘の問題については、捜査中でもございますので、その結論を得ずしてどうこうということは申し上げかねますけれども、厳正な処理をしたい、このような考えであるということを御理解願いたいと思います。
  244. 諫山博

    ○諫山博君 終わります。
  245. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 本日の議案になっております裁判官及び検察官給与改定の問題については、何ら異存がございませんので質問することはございません。きょう質問したいと思っていますことは、私、かねがね考えている問題について若干お尋ねいたしたいと思っております。  物の本なんか読みますと、アメリカの社会というのは何でもかんでも何か争いがあるとすぐ裁判に訴える社会で、極端な場合は子供が親を訴えるというようなことまであるそうで、そこまで行き過ぎるのはいかがかと思っておりますけれども、日本の社会は逆に、本来裁判に訴えて正義を求むべき事件であっても何か裁判というのは一般人たちが近寄りがたいような感じを持っていて、争いが起こっても暴力に訴えて解決するとか、あるいは暴力団であるとかボス、そういった世話役に頼んで非常に不明朗な解決の仕方をするということが多いように思います。これは社会慣習なんかの違いで、急にどうなるという問題でもないと思いますけれども一つ考えられるのは、裁判に訴えても解決するまでに非常に時間がかかる、だからそれよりも軍団でも引き連れていって殴り込みでもかけた方が早いんだ、そういう考え方になるんではないかと思うんです。  伝え聞くところによりますと、刑事はそれほどでもないようですが、民事の方はかなり時間がかかっているようであります。歴代の最高裁長官は、就任と同時に少しでも裁判を迅速化しなければならないということを訓示されておりますけれども、一体どの程度、裁判、民事で結構ですけれども、一件平均かかっておりますか。  それからまた、最近それは改善されつつあるのかどうか、そのことをまず最初にお伺いいたしたいと思います。
  246. 上谷清

    最高裁判所長官代理者(上谷清君) 民事訴訟事件の審理期間のお尋ねでございますが、全般的に申しまして最近は短縮化の傾向にございます。  具体的な数字で申し上げますと、昭和六十年度、昨年一年間に既裁になりました民事第一審通常訴訟事件の平均的な審理期間、平均審理期間と申しておりますが、これを見てみますと、地方裁判所の第一審の事件では十二・四カ月、大体一年という数字が出ております。この数字は十年前、つまり昭和五十年度に比較いたしますと約四カ月ばかり短くなっております。昭和五十年度の統計で見てみますと十六・三カ月かかっておりましたのが、六十年では十二・四カ月ということになっておるわけでございます。  それから、もう一つの第一審裁判所でございます簡易裁判所ですが、こちらで見てみましても、昭和六十年度の既裁事件の平均審理期間という形で見てみますと三・四カ月、大体三月余りで済んでおるという数字が出ておりまして、これも同じ十年前、昭和五十年が五・六カ月でございましたので、これに比較いたしまして二カ月余り短くなったというふうな数字が出ております。  同じような傾向は控訴審の事件についても、あるいは上告審の事件についてもそれぞれ見られるところでございます。  細かい数字は省略いたしますが、今申しましたとおり、全般的には審理期間は短縮化の傾向にあるというふうに申してよいかと存じます。
  247. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 この十年来、短縮の傾向にあることは喜ぶべきことですけれども、それでも平均して十二カ月、一年というのは場合によってはそれより非常に長いものもあるということですね。その間には転任なんかもされるんだろうと思うんですけれども、私は裁判官あるいは検事の人数の問題なんかに関係があるんではないかということをかねがね疑っているんですけれども裁判官の数については先ほど猪熊委員から質問がございまして、お答えがありましたので結構ですけれども検事の方の最近の任官状況、司法修習生を終わった人たちの任官の状況、それから途中退職者の状況はどういうふうになっていますか。まず人数をお知らせください。    〔委員長退席、理事名尾良孝君着席〕
  248. 根來泰周

    政府委員根來泰周君) まず、修習終了者で検事に任官した者の数でございますが、本年の四月は三十四人でございました。順次さかのぼって申し上げますと、昨年度は四十九人、その前は五十人、その前は五十三人、五十三人と続いております。これから見ますと、若干最近任官者が減っておるという感じを持つわけでございます。  それから、退職者でございますが、これは毎年大体四十人台の退職者がございます。五十歳以上でやめる方が一番多いわけでございますが、次いで三十歳から三十九歳ぐらいの者が多いという傾向でございまして、二十九歳以下の者は極めて少ないという状況にございます。ですから、一番多いのは五十歳以上、その次は二十歳から三十九歳、その次は四十歳から四十九歳、二十九歳以下は非常に少ないという傾向でございます。
  249. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 私は、絶対数が少し足りないために裁判の遅延が起こるということもあるのではないかと思うんですけれども、現在の司法試験の合格者の決定、これはことしは大体何人ぐらいとるというので、点数が千点満点でずっと順番があるとすると、その上の方からことしは五十人なら五十人とるというふうにして決められておるのか、あるいは千点満点のある点、例えば六百点であればそれ以上は全部採用する、そういう採用の仕方をしておられるのか、どちらでしょうか。
  250. 根來泰周

    政府委員根來泰周君) 御理解いただいておると思いますけれども、司法試験の合否決定というのは、試験ごとに任命されます司法試験考査委員というのがございます。これが大体百人弱ございますけれども、その合議によって決定されるわけでございまして、毎年その委員会といいますか、考査委員会議である一定の点で合格者を決めているという状況でございます。その点は若干上下いたしますけれども、毎年同じような点であると理解しております。
  251. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 そういう質問をしますのは、新聞で もう二、三カ月前になりますか、新聞検事の志望者がだんだん減ってきているので、志望者がふえるようにいろいろPRをやっているんだということを読んだんですけれども、だんだんそういったふうに減っているということは人数が足りないということだろうと思うんです。この司法修習生の試験によって、今おっしゃったように、何人と決められるのは大体必要数に応じて計算して決められるのか。あるいはその場合に、研修所の施設であるとかそういったふうなものも考慮して、これ以上はだめであるからというので決められるんですか。どちらでしょうか。
  252. 根來泰周

    政府委員根來泰周君) 確かに、合否決定者の数を決めるにつきまして、司法研修所等の実務修習の収容能力といいますか、そういう能力を念頭に置いてやっておると思いますけれども、極めて抽象的に申し上げますと、その者が法曹の卵としてこれから二年間勉強して、法曹として十分活躍できるかどうかという点で判断されるものと考えております。
  253. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 今後活躍できるかということを考慮してというのは、試験の成績が悪いと司法官として活躍できないからという、そういう意味ですね。    〔理事名尾良孝君退席、委員長着席〕
  254. 根來泰周

    政府委員根來泰周君) そのとおりでございます。
  255. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 私の友人に弁護士なんかいるんですけれども、非常に技術的な難しい試験であって、及第するのと落第するところの境あたりにはたくさんの人が集中していて、ことしは試験に通っても来年受けたらどうも落ちるんじゃないかというぐらいに合格と落ちる者の差というのが非常にデリケート、微妙なものだと思うんです。したがって、仮にその点数を十点なら十点ぐらい下げる。そうすると人数がふえるわけですが、十点ぐらい下げても司法官の質がそれほど劣るものでもないんじゃないかと思うんですけれども、もしふやす意思さえあればふやせるわけですね。どうですか。
  256. 根來泰周

    政府委員根來泰周君) 仰せのように、合否すれすれと申しますか、そういうところでは紙一重という感じはいたします。したがいまして、一点下げますと五十人も六十人も合格するとか落ちるとかというような話になるわけでございます。先ほど申しましたように、考査委員会議の合議で決められるものですから、考査委員会議を構成される考査委員の方の考え方によるわけでございまして、私どもも事務当局としていろいろ意見は申し上げておりますけれども、これはあくまでも参考意見でございまして、最終的には考査委員のお考えで決まるものと理解しております。
  257. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 先ほど申しましたように、日本人が裁判所になるたけ余り近寄りたがらないということがもし裁判の遅延ということにあるとしますならば、私はもっと人数をふやすべきじゃないか。行政改革の時代ではございますけれども裁判官検察官というのは法秩序維持の根幹にかかわる問題でございますので、仮に一割ぐらいこれをふやすということはそれほど金額がかさむものでもないんではないかと思います。  大臣いかがでしょうか。
  258. 遠藤要

    国務大臣遠藤要君) 先生のおっしゃるような考え、自分自身も何とかそういうふうな方法で進めたいというような考えを持っております。  問題は、試験の問題も厳しいという先生の御指摘もございましたが、検事という職場が一般からは何となく暗いイメージを持たれているということが一つと、それから検事職というのは同一任地に何年もおるということでちょっと困難だと、そういうふうな点でお年寄りを抱えられておったり、子供の教育ということになると二年、三年で職場を転任転任ということになると大変なことで、そういうふうな点もいろいろ影響があるのではないかなと、こう思っておりますので、できるだけ、検事職というのはいかに今の日本社会においての法の秩序のためには大切かという御認識を深く高めていくことが一つと、そういうふうな面の改善策について検討してまいりたい、そして先生のおっしゃるように、増員を図りたいというのが大臣の今の心境でございます。
  259. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 私もそういう考え方は賛成ですので促進していただきたいと思います。  それに関連しまして、もう一つ問題があるんです。それは、先ほどの猪熊委員質問にも関連するんですけれども、猪熊委員判事補のことを質問されまして、裁判官に任命される年数が大体二十七歳平均だというふうな裁判所の方のお答えでございましたね。その問題は給与に関して猪熊委員質問されたんですけれども、ほかの社会に比べまして、学校を卒業して研修を二年なら二年するにしても、平均して二十七、八歳で任官するというのは少し遅いんではないか。ほかの方に行った人たちはそれぞれの地位を得てある程度の収入を得ているというころに二十七、八歳で新しい仕事を始める。これは恐らく検事も同じぐらいの年齢ではないかと思うんですけれども、これはやはり遅いんではないか。  普通にまじめに法律学を勉強して、そして一生懸命専門の法律を勉強した者が、一年ぐらい浪人するのは仕方ないにしても、二十四、五ぐらいで任官できるようにすることが私は必要ではないかと思うんですが、これは試験問題が余りに専門的にわたっているために、試験が難しくなって合格する人がどうしても遅くなる。テクニカルな問題を一生懸命やらないと試験に合格しない、そういう点があるんじゃないかと思うんですけれども、その点どうでしょうか。
  260. 根來泰周

    政府委員根來泰周君) 私も人事課長をいたしておりまして、司法試験の庶務を長い間担当しておりましたので、先生の御意見にはもう全面的に賛成でございます。確かに現在二万四千人近い者が受けるわけでございます。そして五百人ぐらいが合格するわけでございますけれども、その合格者の構成というのは、二十五歳以上の者が圧倒的に多いわけでございまして、二十五歳以下の者は極めて少ない状況にございます。年齢が高いからいかぬというわけではないし、また中途で転職して弁護士なり法曹を目指すということは結構なことだと思いますけれども、その割合が非常に高いわけでございまして、最近は要するに五年も六年も司法浪人といいますか、そういうことをして試験を受ける者が非常に多いわけでございます。  そういう傾向が非常に目立つものですから、事務担当者としてもおっしゃるような基本的な問題に絞ってやりたいということで考査委員各位の御理解を得ておるところでこざいますが、なかなか思うように進まないというのが実情でございます。
  261. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 そういう、何年か浪人しなければ合格できないような細かな問題をやるために、ともすると社会的常識のない人たちが合格する、ほかの人に比べて有利になってくるんではないかということを私は恐れているんです。どの社会でもいろんな不心得な者がいるのはいたし方ないんですけれども、やはり裁判官検事、弁護士は法秩序を守る人たちですので、最近のように常識のない裁判官が出てきたり、検事をやめて民間会社へ顧問なんかで行って起訴されるような前検事人たちが出てきたり、あるいは弁護士でも弁護士会から除名されるような人たちが出てくるということは、やはり何か社会的常識において欠ける点があるんではないか。  したがって、その試験の内容も普通の大学の法学部をかなり優秀な成績で出れば、法律の専門的な技術の点ではこれは研修所に入ってからやればいいんで、そういった社会的常識に富んだ人たちがもっと司法官になれるように、そういう試験の内容も変える必要があるんではないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。
  262. 根來泰周

    政府委員根來泰周君) 現在法曹になっておる者が常識が欠けているとは思いませんけれども、おっしゃるようなおそれは多分にあるわけでございまして、私ども試験事務を担当しておりますと、こういうのでいいかなというのが少なからずおるわけでございます。しかし、試験の内容とい たしまして、いわゆる社会良識をはかる試験はどういうのがいいかということになりますと、これまたいろいろ問題がございます。私どもの部内でもまたいろいろ学者の先生方にもお知恵をかりて研究しておるところでございます。
  263. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 私も専門家じゃないので、どういう試験をしたらいいかというふうなことはなかなかわかりませんし、また客観的に社会的なコモンセンスをはかるテストというのは非常に難しいことはわかりますけれども、十分研究して試験の内容についても御検討願いたいというふうに考えております。その問題はそれで打ち切ります。  あとごく簡単な問題ですが、時事問題で、最近新聞をにぎわしているビートたけしの問題について、前回のこの委員会で、私は、写真週刊誌の問題、写真週刊誌が個人のプライバシーを侵害している、けしからぬ話じゃないかということを質問いたしました。それとのバランスをとる意味で、決して私は週刊誌を擁護するつもりは少しもない、依然として現在でも多くの週刊誌がプライバシーを侵害するような写真なんか撮っている、そのことに対しては私はやはり警告する必要があるということは考えていますが、同時に、この間の集団的な殴り込みをかける、先ほども言いましたように裁判による正式の手続を求めずに暴力によって解決しようと、この風潮は私は極めて憂慮すべき問題であると思います。昨日の衆議院の法務委員会でも法務大臣は所感をお述べになったようですが、そのごく一部が新聞にも掲載されておりましたけれども、今度の問題につきまして改めて法務大臣の御所感をお伺いしたいと思います。
  264. 遠藤要

    国務大臣遠藤要君) 先生はさきに写真週刊誌の問題について人権問題でお尋ねがございましたが、その後にこのような問題が惹起したということは非常に遺憾だと、こう思っております。この問題は今捜査途上でございますので内容的には差し控えたいと思いますけれども、何はともあれ集団で暴力を振うということは絶対に許されないことであるということは申し上げておきたいと思います。  さらに、一般論でございますけれども、さきに先生にもお話し申し上げているように、これからの報道、取材等に関しては今憲法で報道の自由を認めておる中でございますけれども、それが人権擁護にいろいろ批判のある、今取材の間においてはいろいろ一般から強い批判も出ております。そういうふうな点を考えると、せっかく憲法上で取材の自由を認めているのに範囲を狭めるようなことがあってはいかぬ、こう私は思っております。そういうふうな点を考えると、私としては希望でこざいますけれども、自主的に報道関係で一定の基準というのをつくって取材をしていただけばなということを感じておるわけでございまして、今般の事件については捜査中でございますので、その言及は避けたいと思いますけれども理由はとにかく集団暴力は許されない行為であるということを申し上げておきたいと思います。
  265. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 こういう問題が起こってきますと、そちらの方も悪いがこちらの方も悪いという、何かそういう場合に上の句よりも下の句の方に重点が置かれて、何かそのために上の句の方で言ったことが免罪されてしまうような傾向があるんですけれども、この場合は私はやはり両方とも反省すべきである。週刊誌の取材の問題はこの前申し上げましたからこれ以上は繰り返しませんけれども、ビートたけしなる者の行為も十分反省すべきであると思いますが、その後民放なんかにも出ているようでございまして、どうも反省が足りないのではないかというふうな感じを持ちます。  民放の方でも、世論がどっちに転ぶか見ながら、あるいは放送するか放送しないか決めようなんというようなことを考えておられる民放もあるようですけれども、民放の方としても、こういう事件を起こした人を人のうわさも七十五日もたたないうちに放送するというふうなことは少し反省していただきたい。そういう世論をつくる意味において私はここで強調しておきたいんですけれども大臣、いかがでしょうか。
  266. 遠藤要

    国務大臣遠藤要君) その点は法務大臣としては何ともお答えすることができないのが残念でございます。
  267. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 誤解ないように言っておきますけれども、私は決して権力的に介入しろなんということを言っておるわけじゃ全然ないんです。これは国民世論で解決すべき問題だ、その世論の喚起の一助として申し上げた次第でございます。  カメラがお待ちの本番が控えております。前座はこの程度で質問を打ち切りたいと思います。     ─────────────
  268. 太田淳夫

    委員長太田淳夫君) 委員異動について御報告いたします。  本日、徳永正利君が委員辞任され、その補欠として野沢太三君が選任されました。     ─────────────
  269. 西川潔

    ○西川潔君 よろしくお願いします。  国会の方に参加させていただきましてもう約半年たつんですが、毎日専門家の先生方にいろいろと勉強させていただきまして、今一生懸命頑張っています。  法務委員会に参加させていただきましてこれで三度目の正直でございまして、一度目、二度目は流れまして、いつ質問させていただけるかと期待をしておったんですが、やっときょうその質問をさせていただくチャンスに恵まれました。ですから実質的には本当にきょうがスタートではないか、こういうふうに自分自身も思っております。  自分は、二十年近く老人ホームなどを慰問いたしまして、お年寄りの現状を見たり聞いたり感じたりして、余りにもお年寄りの、社会に本当に貢献されたお年寄りの万々、寂しい人生を送っていらっしゃる方がたくさんいらっしゃる。ホームによっても随分貧富の差がありまして、そういう方々が何とか幸せになってもらいたい、そういう気持ちで立候補させていただきまして、こちらの方へ参加をさせていただきました。本当は社労の方に参加させていただきたかったんですが、法務委員会の方へ入れということで、こちらへ来て初めて数と力というものも実感させていただきました。またチャンスがあれば、先生方どうぞよろしくお願いいたします。  きょうは、まず写真週刊誌のことをお伺いしたいと思います。  今先生方からいろいろと出たんですけれども、私も人ごとではございませんのでお伺いしたいんです。まず、九日午前三時過ぎにタレントのビートたけしとたけし軍団が講談社のフライデー編集者を相手に取材の方法をめぐって暴行事件を起こしたんですが、この事件の処理状況を警察の方にお伺いしたいんです。今どういう状態になっているかということをお伺いしたいんですが、お願いします。
  270. 小杉修二

    説明員(小杉修二君) お答えいたします。  事件は、目下まだ捜査中でございまして、今後この事件の警察としての処置をどうするかということは、もっと捜査を詰め、また所要の捜査を遂げて事件の全容というものをきちっとつかんだ上で警察としての処置を判断する、こういうところでございます。したがいまして、最終的には書類送致ということになろうかと推測しております。
  271. 西川潔

    ○西川潔君 続いて、写真週刊誌ののぞき見的な撮影というんですか、プライバシーの侵害にもつながると思うんですけれども、この間も私、食事に参っておりまして、これからいただこうかなと思うときに一人の男性が入ってまいりまして、名刺を出しまして、フライデーの記者ですが、何ですか、ちょっと飯を食っているところを写させてくれないかと。御飯ぐらいゆっくり食べさせてもらいたいものですからお断りしますと、一枚だけでいいですからということでしたが、お断りさせていただきまして帰っていただきました。二時間ばかり食事をいただいて外へ出ますと、外で写されて、それがその週のフライデーに載っておったんですが、本当にゆっくり飯も食っていられないというのが正直な気持ちでございます。  それに、僕が疑問に思うのは、僕らは、たけしさんなんかも芸能界の人たちはそうですが、写さ れたり取材をされると何がしかの謝礼をいただくんです。それが無料で写して莫大な収益を得ているという、こういう問題はどういうふうになるのか。また、こういう苦情が法務省の方なんかにも寄せられているかどうかということをお伺いしたいんです。
  272. 野崎幸雄

    政府委員野崎幸雄君) 法務省人権擁護機関では人権相談というのをやっておりまして、年間三十五万件を超える相談件数があるわけでございますが、実は、これまでの統計ではこういった写真週刊誌等からの取材に対する苦情という項目を設けておりませんので、数的にそれを申し上げられないのがまことに残念でございます。  御参考までに、ちょっと御質問趣旨からは外れるかと思いますが、東京都の人権擁護委員連合会が昭和五十九年九月二十八日に、芸能人やスポーツ関係者に対しまして、プライバシーの侵害を受けたことがあるかどうかというアンケート調査をいたしたことがございます。実は、九百九十三通出したようでございますが、残念ながらお答えくださいましたのはその一九%に当たる百八十六でしかございませんでした。しかし、この百八十六人のうち実に百二十一人、つまり六五・〇五%の方々がプライバシーを侵害されたことがあるというお答えになっており、またその回数が二回以上という方が百一人で八三%を超えておりました。また、プライバシーを侵害したマスコミはどういうものであったかという質問に対しましては、週刊誌、これは写真週刊誌を含んでおるわけでございますが、それが三六・七%、スポーツ紙が二二・四%、テレビが一五・九%でございました。  また、内容としましては、異性との交遊に関するものというものが二六・七%で一番多く、夫婦に関するものが一〇%、離婚に関するものが九%。その中ですべて事実を書かれたんだと言われているのはわずかに五%、事実に近いと言われるのが二%で、すべて事実無根であるというのが一四%。それから、大部分が事実と違うというのが二〇%、誇張またはつくりかえられておるというのが四〇%、かなり曲げられたというのが二〇%ということで、非常に御不満が多いようであります。  また、取材方法としては、全く取材なしに書かれたというのが実は三四%もあるのでありまして、こういう取材というものはいろいろ問題があるのかなというふうに考えさせられた次第でございます。
  273. 西川潔

    ○西川潔君 次に、補償の問題をお伺いしたいんですけれども人権侵害に当たる写真撮影があった場合に、公的にこれを規制する方法なんかはないものでしょうか。また、私的に未然に防止したり損害賠償などを法的手段でというようなことはないんでしょうか。  また、例えば、異性の方と一緒に歩いておりまして、写されます。そして例えば、それを間接的に、不倫の場合なんかでしたら女房が見ます。また子供学校へ行っていじめられたりします。そういうことでもって奥さんが自殺をしたりとか、子供いじめられたりとか、またノイローゼになって精神病院に行かなければいけないとかいうことになった場合に、例えば、自殺の場合なんかは間接的な殺人になるような気もするんですけれども、そういうことはいかがなものでしょうか。
  274. 千種秀夫

    政府委員(千種秀夫君) そういう侵害行為に対しまして民事上はどういう救済が与えられるかということに限って申し上げますと、民法では大変概括的な規定しかないんでございます。例えば、故意または過失によって権利を侵害したとか、身体、自由、名誉を侵害したとか、そのぐらいの規定しかございませんけれども、その中で最近は特にプライバシーということも問題にされております。こういう問題は、最近は人格権でございますとか名誉権あるいはプライバシーに対する権利、こういうふうにだんだんと細分化して実務上認められておりまして、こういうものに対して侵害が加えられた場合には裁判所に損害賠償の請求を申し立てることができるということになっております。名誉につきましてはそのほか謝罪広告を求めるという特別な規定もございます。  また、一般に不法行為が行われるということがわかりました場合、例えばプライバシーを侵害する写真を撮りましてこれを公表するというような問題になりました場合に、これが間に合う場合には事前にこれの差しどめを求めるということを裁判所に申し立てることも今の実務上では許されております。実際問題といたしまして、訴えを起こすということでは間に合わない場合には仮処分という手続がございまして、差しどめを申し立てるということもできるわけでございます。
  275. 西川潔

    ○西川潔君 どうもありがとうございました。  それでは次に、自分がライフワークにしたい老人問題に移りたいと思います。  初めに、民法上の扶養、相続の関係につきまして法務及び関係当局の方々にお伺いいたします。  民法の八百七十七条以下に扶養の規定があり、子供は親を扶養する義務があるとされていますが、年老いた親が子供から扶養を受けることができないときは、まずどのようにしたら実際に扶養を受けられるんでしょうか。
  276. 千種秀夫

    政府委員(千種秀夫君) お答えいたします。  もちろん、これは法律以外、教育の問題もございましょうけれども法律上の問題として申し上げますと、扶養のような親族関係につきましては特に家庭裁判所の関与をすることに法律上の規定がございまして、まず家庭裁判所にこの扶養の義務を履行するようにという申し立てをすることができます。これはまず調停という手続がございまして、話し合いで解決しました場合には調停条項に従って今度は裁判所の方でまた履行の確保をする手続もございます。協議が調わない場合には家庭裁判所が審判を行う。まあ判決の手続に似たようなものでございますが、法廷でやるわけではございません。そういう審判手続によって扶養をどのようにするか、多くの場合は扶養料を支払うということで解決するのでございますけれども、引き取って世話をしろと、いろいろな場合が考えられるわけでございます。それによって従わない場合には強制執行をするというような規定があるわけでございます。また、例えば親族の者がやらないというためにほかの人が扶養して費用を出したというときには、その人が扶養義務者に対してその費用を償還する手続も裁判の上では考えられることでございます。
  277. 西川潔

    ○西川潔君 通常、扶養と考える場合は私的な扶養がありまして、次に、私的扶養がどうしても不可能な場合に公的扶養が行われるという順序になっております。例えば、老夫婦の一方が死亡した場合、特に御主人に先立たれた奥さんは遺産で生活するんですが、長年連れ添った奥さん、そういう資料を読ましていただくと、奥さんが二分の一であるというのは少し少ないんではないかなと自分は思うんでありますが、いかがなものでしょうか。
  278. 千種秀夫

    政府委員(千種秀夫君) 民法はすべての人に適用になるために平均的な大体のところを規定しておるわけでございまして、個々のケースから言いますと、結婚してすぐ死んで二分の一とは多過ぎる、こういう人もいるわけでございますし、二度目三度目の方になりますとそういう非難が出たりすることもないではございません。そういうわけで、大まかなところ二分の一というわけでございますが、これも昭和五十五年の改正のときに三分の一から二分の一に変わったという経緯がございます。これは、昔は子供が多かった、しかし最近の子供は少ないので、割合からして半分は奥さんにやる方がいいのではないかというようなことでこういう改正になったわけでございます。  しかし、これも遺言によって二分の一をふやすということもできるわけでございます。ただ、子供のいる場合には遺留分といって、全部やってしまうということはいけませんので、四分の三までは遺言でやることができるということになっております。しかし、実際問題としましては、子供さんが放棄をして全部奥さんに上げる場合もありますし、奥さんが放棄して全部子供にやる場合もあ りますので、これは一つの基準ということであろうと思います。
  279. 西川潔

    ○西川潔君 次に、法定相続分と異なる相続をするには遺言制度を利用するしかないのでしょうが、一般の方には余りなじみがないんです。僕なんかも手続が本当によくわからないんです。遺言の件数が今どれぐらいあるのか、そしてまたその方法、ひとつ簡単な方法があれば我々にわかりやすいように説明をお願いします。
  280. 千種秀夫

    政府委員(千種秀夫君) 遺言と普通社会で言っておりますのには、口頭の遺言もありますし、様式を整えない遺言もあります。要するに、酒飲むなというのがおやじの遺言だというような言い方もございますわけですが、財産について遺言だけで権利関係をきっちりと決める、後に争いがあっても遺言がありますとそのとおりになるというためには、やはり後の争いを防ぐ意味から要式が厳格に定められております。  民法では大体三つの種類の遺言が決められておりまして、自筆証書といいまして、遺言をなさる方が自筆で書いて署名捺印をしてというような、こういうものが一つございます。あとは、公証人の前で公正証書遺言というのが一つございます。それから、秘密証書遺言といって自分で封印をしましてちゃんと署名捺印をしておくという三種類のものが考えられます。しかし、病気の場合ですとかいろいろな特別な場合がございますから、その場合にはそれぞれの特例があるわけでございますが、大体分けますとこの三つの要式を整えていないとそれ自体で権利関係をすぐ確定するというわけにはいかないのが現状でございます。
  281. 西川潔

    ○西川潔君 かしこまりました。  今お伺いしますと、公証人の方々に来ていただいて、そして書面でもって書くということでございますが、ここで一つ僕は提言をしたいんです。  長年にわたってテレビでお世話になっていたものですから、そこでひとつ自分は考えたんですけれども、遺言を公証人の方に来ていただいてビデオテープでおさめてはどうかなと。年をとりますと、目も不自由になってまいりますし字も書けなくなります。そこで、きょうもたくさんのカメラがあるわけですけれども、カメラの前に親子で座りまして、例えばこちらの方に親が座りまして、あちらの方に子供に座っていただきます。そして、公証人の方々にお越しいただきまして、まず長男にはというときにはカメラがあちらを向きまして長男を写しまして、これだけの財産を、次男には、三男には、長女にはと、そういうふうにしていただきますと、何というんですか相続する側の、そしてまた譲る側の心が、本当に親子の愛情がいつまでも孫やひ孫の代までビデオテープに残って、一家団らんのときでも、今こうしてこのうちに住んでいるのは——ちょっと待っときやということでビデオを映しますと、おじいちゃんやおばあちゃんが今このおうちを残してくれたんや、あなたたちがこうして元気に学校へ行けるのも、私たちのお父さんお母さん、こういう人たちが本当に子供たちに愛情を持って、お父さんお母さんを大切にし、また先祖も大切にするんではないか。  最近では本当に優しい子供が少なくなっておりますし、道徳の時間もふやすというようなことを総理大臣もおっしゃっておりますが、こういう新しい制度を取り入れていただけないでしょうか。いかがなものでございましょうか。
  282. 千種秀夫

    政府委員(千種秀夫君) 大変新しいアイデアで感服いたす次第でございますが、そういういい遺言ができるような家族では大体争いは起こらないわけでございます。争いが起こったときにたえられるというもの、なかなか改ざんのできないようなやかましいものでないといかぬというのが今までの民法の考え方でございます。  今、ビデオを簡単に編集できるというわけではございません。それは、そういうビデオができても決して悪いことはないのでございまして、これだけ写真が集まっていただければそれはいいんですが、すべての人にそういうことも期待できませんものですから、やはりこれから研究していく課題であろうと考えております。
  283. 西川潔

    ○西川潔君 それだけ仲のいい家族であればもめごとはないというふうに今御意見をお伺いしたんですけれども、それがなかなか、仲のいい者でもお金が絡みますとそんなことではない家族も多々いらっしゃるそうでございますので、今までの制度を残していただきながら新しい遺言、そしてビデオがもう各家庭に普及しておりますので、ぜひ前向きな姿勢で考えていただきたいと思います。そして、操作をして編集をして悪いことをするというようなことは、長年テレビの方でお世話になりましたが、なかなか今はそういうことはできません。編集する機械だけでももう何億円。それならもう財産を譲り受けない方がよっぽどいいと思うんです。封印をしまして信託銀行なんかに預けていただきますと十二分に利用価値はあると思いますので、よろしくお願いいたします。  次に、私的扶養が期待できないときには公的扶養に頼らざるを得ないんですけれども、およそ一般世間には、扶養義務や、もちろん扶養の能力がありながらわざわざ同居のお年寄りと世帯を別にしてお年寄りだけ生活をさせる。私も面倒見る、僕も見るという甘い言葉で年老いた親の屋敷を売り払い、それぞれの扶養義務者で分配してしまい、その上、たちい回しの果て老親を老人ホームに入居させざるを得ない状況にというふうに、僕なんか本当に二十年近く回りまして、そういうお年寄りが大変おります。本当にかわいそうに思います。見舞いに来るからなというのも最初だけだそうです。  つい先日も老人ホームへ行ってまいりました。お金を一カ月に一回ぐらい必ず息子や娘が取りに来るそうです。職員が見るに見かねて、渡すことはない、金を渡すからまた来るんや、こう言いますと、そのおじいちゃんが、いや息子や娘に注意をしないでくれ。実はお金でもって私たちの親子関係は保たれているんや。あなた方他人から見たら渡すことに不信感を抱くかもしれないけれども、私は渡すことによって息子や娘が来てくれることが大変うれしい、こういうお年寄りも実際にはいらっしゃるわけなんです。そういうことで、面会にも来ないんですが、そしてまた、亡くなるとき臨終にも来ないそうです。ただ、福祉年金などがたまっているという連絡を受けたら、すぐにやってきまして、まくら元で本当に罵声を張り上げて争いが演じられる、こういうこともホームで聞いております。  お年寄りの扶養やその生活についてお尋ねしてきたんですけれども、既に我が国においても高齢化社会に入ったと言われております。私は、国会へ参りまして、国会の中のお年寄りの方々は老人ホームの方々に比べて本当にお元気だなと思いました。本当にお元気でございます。ですから、本当に、三百円が五百円に、四百円が千円にという、こういう地位も名誉も金もある、息子や娘もそんなに生活に困らないような状態のお年寄りの方々が多いと私のこの大きな目玉にはそう映るのでありますが、本当に、大臣は老後のことを考えていらっしゃいますか。
  284. 遠藤要

    国務大臣遠藤要君) 現在が老後の生活だ、こう思っております。
  285. 西川潔

    ○西川潔君 ちょっと聞き取りにくかったのですが。
  286. 遠藤要

    国務大臣遠藤要君) 年齢がもう老人でございますので、現在が老後の生活だと思っております。     ─────────────
  287. 太田淳夫

    委員長太田淳夫君) 本日、土屋義彦君が委員辞任され、その補欠として田辺哲夫君が選任されました。     ─────────────
  288. 西川潔

    ○西川潔君 国会に参加させていただいて、いろんな大臣の方とごあいさつもさせていただきましたが、遠藤大臣は義理と人情というのですか、物すごく取っつきやすい、我々庶民の味方であるというふうに常々思っております。大変いつもわかりやすい答弁をいただきましてありがとうございます。ただ本当に、大臣が老後のことをどういう ふうにお考えになっているのかなということも一度伺ってみたかったものですから。  続きまして、御承知のとおり、現在人口の約一割が高齢者人口と我が国は言われておりますが、これからの人々の生活は一部の恵まれた人々を除いて大部分が、また同居の場合についても言えることですが、お年寄りのわずかな手持ちの預金、つまり退職金などの取り崩しや国民年金や厚生年金、共済年金などに頼って、また日雇いなどによる日当で生活を立てているのが現状かと思われます。それにしてもこれからのお年寄りは、あの戦中や戦後本当に親の面倒を見てたくましく生きてこられましたし、同時に、我々の子育て、いわゆる我々を立派に育ててきてくれました。中でも子育ては本当に涙ぐましいものがあったと思います。  一口に世間では妻子を養うと言いますが、現実には夫婦が全く一つになって家庭を築いております。それは、子育ての中で夫だけの収入では子供の教育、まあ本当に家庭教師だとか塾だとかということではなかなか夫の収入だけではやっていけないと思うのでありますが、政府関係者の方で今共稼ぎの方はちょっと手を挙げていただけますか。——ああ、だれも手が挙がらないということは、公務員の給料上げることはないですね。一度聞きたかったのです。やはり共稼ぎで大部分の奥さん方が御主人を助けて、子供の教育には奥さん方の収入が物すごく影響しているということも聞いております。  一般的には、子育てが終わりますと趣味だとか教養だとかいう、大部分はそういうふうにして老後を暮らしたいんですが、なかなかそうはいきません。ですから、老後、夫婦が仲よく暮らしていくために、本当に保険のことだとか、そしてまた扶養のことだとか、最終的に大臣にまとめていただきたいと思うんですが、いかがでございましょうか。
  289. 遠藤要

    国務大臣遠藤要君) 今、先生からお話ございましたが、やはり子が親を扶養する義務というのは十分認識をしていただかなければならぬ。ましてや、これから毎年毎年高齢化していくことでもございますので、子供に対する教育等においても高齢化の時代は高齢化、先ほど御意見のあった検事が少ないときは検事をどうしてふやしていくか、裁判官をどうしてふやしていくかということを政治、行政面で努力していかなければならぬ、こう思っております。  特に先生は、ただいまお話しのとおり、老人ホームやなんかを年じゅう御慰問され、激励され、そして先生の御両親、奥さんの御両親もともども先生が面倒を見ておられる。このような気持ちをこれからの若い人一人一人に身につけていただきますれば、高齢化社会が何の不安もない、こう思っております。しかし、今現実にお年寄りを扶養する義務を強要しても、なかなか、強要すること自体が問題でございます。そういうような点もございますが、これからの高齢化社会に対応されるような、安心して高齢者が老後を過ごされるような制度の確立を私どもとしてもこれから研究していきたい、こういうふうな考えを持っております。  さような点で、いろいろの面においては西川先生を初め皆さん方の御意見を徴しながら、お互いに日本の社会、高齢化社会にいかにして持っていくかということにともども研究してまいりたいと思いますので、どうぞ先生も今後とも高齢化社会に対して一層のひとつ御精進をお願いいたしたいと思っております。
  290. 西川潔

    ○西川潔君 どうもありがとうございます。我が家の家族構成までちゃんと調べていただきまして恐縮します。  自分も本当に初心を貫きます。一生懸命まじめに勉強さしていただきまして、一人でもお年寄りの方々が幸せになれるように。ただ、お年寄りといいましても、うちの家にも三人おるんですけれども、ただ保護するばかりではないということも十二分に把握さしていただいているつもりでございます。例えば、老人ホームを一つつくるにしても、いろいろ回らしていただきましたら、老人ホームの隣にはこれからは例えば子供施設も一緒に併設していただくと楽しいんではないかな、そういうことも聞きますし、自分はそういうことがまた夢でもあります。お年寄りの方々からいつも僕は聞くんですが、こういう空気のええところで朝、昼、晩おいしいものをいただいて大変幸せやけれども、こういうところで住むだけが幸せやないねん、きよしさんと。景色いいけどちょっとここ見てみと。電車も走ってない、バスも走ってない。息子や娘のところへ帰りとうてもすぐに会いに帰れないと言って、僕なんかに泣いてお願いされるお年寄りの方々もたくさんおります。  何かこう、社会に参加をしながら生きていけるような、そしてまた生きていて本当によかったなというような思いをさしていただけるような努力を、初心を忘れずにこれから十分一生懸命頑張りますので、各省庁の皆さん方もよろしくお願いします。  きょうは、どうもありがとうございました。
  291. 太田淳夫

    委員長太田淳夫君) 検察及び裁判運営等に関する調査のうち、法務行政の基本方針に関する件につきましては本日はこの程度といたします。   ─────────────
  292. 太田淳夫

    委員長太田淳夫君) 裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官俸給等に関する法律の一部を改正する法律案につきましては、他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  293. 太田淳夫

    委員長太田淳夫君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより両案に対する討論に入ります。  御意見のある方は、賛否を明らかにしてお述べ願います。——別に御発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。  それでは、まず、裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  294. 太田淳夫

    委員長太田淳夫君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  次に、検察官俸給等に関する法律の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  295. 太田淳夫

    委員長太田淳夫君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、両案の審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  296. 太田淳夫

    委員長太田淳夫君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  297. 太田淳夫

    委員長太田淳夫君) これより請願の審査を行います。  第一号夫婦別氏の選択を可能にする民法等改正に関する請願外五十八件を議題といたします。  本委員会に付託されております請願は、お手元に配付の付託請願一覧表のとおりでございます。  これらの請願につきまして、理事会において協議の結果、第一号夫婦別氏の選択を可能にする民法等改正に関する請願外五十八件は保留とすることに意見が一致いたしました。  以上のとおり決定することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  298. 太田淳夫

    委員長太田淳夫君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  299. 太田淳夫

    委員長太田淳夫君) 次に、継続調査要求に関する件についてお諮りいたします。  検察及び裁判運営等に関する調査につきましては、閉会中もなお調査を継続することとし、本件の継続調査要求書を議長に提出いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  300. 太田淳夫

    委員長太田淳夫君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  なお、要求書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  301. 太田淳夫

    委員長太田淳夫君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時二十六分散会