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1986-10-23 第107回国会 参議院 農林水産委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十一年十月二十三日(木曜日)    午前十時三分開会     ─────────────  委員氏名     委員長         高木 正明君     理 事         北  修二君     理 事         水谷  力君     理 事         宮島  滉君     理 事         稲村 稔夫君     理 事         刈田 貞子君                 青木 幹雄君                 上杉 光弘君                 浦田  勝君                 大塚清次郎君                 川原新次郎君                 熊谷太三郎君                 坂野 重信君                 鈴木 貞敏君                 初村滝一郎君                 本村 和喜君                 上野 雄文君                 菅野 久光君                 村沢  牧君                 及川 順郎君                 下田 京子君                 橋本  敦君                 三治 重信君                 喜屋武眞榮君                 山田耕三郎君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         高木 正明君     理 事                 北  修二君                 水谷  力君                 宮島  滉君                 稲村 稔夫君     委 員                 青木 幹雄君                 上杉 光弘君                 浦田  勝君                 大塚清次郎君                 川原新次郎君                 熊谷太三郎君                 坂野 重信君                 鈴木 貞敏君                 初村滝一郎君                 本村 和喜君                 上野 雄文君                 菅野 久光君                 村沢  牧君                 及川 順郎君                 下田 京子君                 橋本  敦君                 三治 重信君                 喜屋武眞榮君                 山田耕三郎君    国務大臣        農林水産大臣   加藤 六月君    政府委員        農林水産大臣官        房長       甕   滋君        農林水産省経済        局長       眞木 秀郎君        農林水産省構造        改善局長     鴻巣 健治君        農林水産省農蚕        園芸局長     浜口 義曠君        農林水産省畜産        局長       京谷 昭夫君        農林水産省食品        流通局長     谷野  陽君        食糧庁長官    後藤 康夫君        林野庁次長    松田  堯君        水産庁長官    佐竹 五六君    事務局側        常任委員会専門        員        安達  正君    説明員        外務省アジア局        外務参事官    柳井 俊二君        外務省アジア局        北東アジア課長  高野 紀元君        農林水産省経済        局統計情報部長  松山 光治君        海上保安庁警備        救難部管理課長  茅根 滋男君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○国政調査に関する件 ○農林水産政策に関する調査  (派遣委員報告)  (当面の農林水産行政に関する件)     ─────────────
  2. 高木正明

    委員長高木正明君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。  国政調査に関する件につきましてお諮りいたします。  本委員会は、今期国会におきましても、農林水産政策に関する調査を行いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 高木正明

    委員長高木正明君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  4. 高木正明

    委員長高木正明君) 農林水産政策に関する調査議題といたします。  まず、先般、本委員会が行いました農林水産業実情調査のための委員派遣につき、派遣委員報告を聴取いたします。北君。
  5. 北修二

    北修二君 委員派遣報告をいたします。  本調査団は、去る九月四日から六日までの三日間にわたり、北海道宗谷上川支庁管内におきまして、農林水産業実情調査してまいりました。  派遣委員は、高木委員長水谷理事宮島理事稲村理事刈田理事下田委員三治委員喜屋武委員山田委員、それに私、北修二の十名でありました。  以下、日程に沿って調査の概要を御報告申し上げます。  日程前半に視察いたしました宗谷管内は、北海道の最北に位置し、社会的制約に加えて冷涼な気象、特殊な土壌等、厳しい自然条件のもとにあります。このような地域の数少ない産業の中にあって、特に基幹産業である水産業及び酪農は、御承知のとおり、北洋漁業規制強化生乳生産調整等、いずれもが非常に厳しい状況の中にありました。  まず、水産業でありますが、宗谷管内漁業は、いそ根資源及び底魚資源対象とした沿岸中小漁船漁業と、スケトウダラ、ニシン等対象とした沖合底びき網漁業に大別されます。  管内水揚げ量は、五十二年の各国二百海里設定とこれに続く各国水域での漁業規制強化によって減少し、六十年には五十一年当時の四五%に至っております。  さらに、本年の日ソ漁業交渉の結果、管内にある関係漁船五十一隻のうち二十七隻の減船が確定するなど、漁業はもとより水産加工業運送業燃油業鉄工業等関連産業においても非常に厳しい状況に追い込まれており、特に水産加工業への影響は大きく、これまで底びき網漁業漁獲物へ大きく依存していたため、北洋漁業出漁停止に伴う原料不足により休業、操業短縮等を余儀なくされた加工場も多数出ております。  また、減船に伴い、底びき網漁船乗組員が四百七十一名離職しており、水産加工など関連業種でも七百名近い離職者が出るなど、雇用状況も厳しいものとなっております。  一方、沿岸においては、積極的な漁場づくりや稚貝、稚魚の放流が進められ、育てる漁業への基盤づくりに対する積極的な取り組みが行われておりますが、韓国漁船不法操業等により、こうした努力が危機にさらされる事態に至っております。  次に、酪農についてであります。  宗谷管内におきましては、昭和三十一年の天北集約酪農地域の指定を契機として、畑作から酪農に転換し、多額の国費及び道費の投資による生産基盤等整備経営近代化に向けての諸施策、さらに農業者経営努力等と相まって、現在では千二百十戸の酪農家乳用牛六万三千五百六十頭を飼養し、六十年の生乳生産量は二十一万三千九十三トンに達する等、北海道の主要な酪農地帯に発展しております。  近年、酪農をめぐる情勢は、乳価の値下げ、計画生産の実施、多額負債等償還等、極めて厳しく、宗谷酪農にあってもその影が色濃く出ておりますが、その中で、酪農のすぐれた担い手の育成等を積極的に進め、高度の技術を駆使した生産性の高い経営を確立するため、離農する酪農家農場施設を新規に就農を希望する有為な責年に有効活用してもらうリース農場事業等、意欲的な取り組みも行われております。  日程後半は、上川管内であります。  上川管内は、北海道のほぼ中央に位置しており、石狩川を初めとする大小河川周辺に広大な沃野を有しております。また、気象条件にも恵まれており、稲作中心に、バレイショ、豆類、てん菜等畑作、さらに酪農畜産野菜花卉園芸等、多数の作目経営形態があり、北海道農業の中で極めて高い位置を占めております。  その中で、我々は和寒町におきまして稲作経営農家を視察いたしました。当地では、長い間水稲中心農業が行われてまいりましたが、近年の米の生産調整により、五九・五%もの転作が行われており、これは都府県の一八・七%、全道の四四・二%、上川管内の四九・六%と比べ最も厳しい数字となっております。また、主な転作物は、小麦、牧草、野菜大豆等でありますが、いずれも価格低迷需給緩和基調により厳しい状況にあります。このような事情から、現地においては水田利用再編次期対策における転作配分に関し、現状の是正が強く望まれております。  次に、林業林産業でありますが、上川管内における森林面積は、管内面積の七七%を占める七十五万五千ヘクタールであります。全道の森林面積で見ても、その一三・五%に及ぶものとなっております。  また、管内工業業種別出荷割合を見ますと、パルプ紙紙加工品製造楽木材木製品製造業及び家具製造業木材関連業種で全体の四六%を占めており、当地林業地域産業振興にいかに大きく貢献しているかが理解できる次第であります。  しかるに、現在、林業では、経費増木材価格低迷による採算性の低下で、造林、保育、間伐等森林整備が停滞しており、また林産業では需給の停滞と外材の輸入増加で不況を強めておる等、いずれも深刻な状況に陥っており、地域経済全体に大きな影響を及ぼしております。  以上が今回視察してまいりました北海道における農林水産業現状の一端でありますが、本報告の中で詳細に触れることができなかった現地要望につきましては、本日の会議録末尾に掲載していただくようお願い申し上げます。  最後に、今回の調査に当たって特段の御配慮をいただきました方々に対し心から感謝の意を表しまして、御報告を終わります。
  6. 高木正明

    委員長高木正明君) ありがとうございました。  ただいまの報告にありました現地要望につきましては、これを会議録末尾に掲載することといたします。     ─────────────
  7. 高木正明

    委員長高木正明君) 続いて、農林水産政策に関する調査議題といたします。  質疑のある方は順次御発言願います。
  8. 菅野久光

    菅野久光君 私は最初に、今派遣報告にもありましたけれども北洋漁業減船対策、このことについてお伺いをいたしたいと思います。  このことにかかわりましては、私も何回か大臣のところへ行きまして、率直にいろんな点について申し上げ、要望をしたわけでありますけれども、十月八日に政府補正予算が決まったその段階で百九十五億六千二百万円ということで、これを受けて水産庁が十四日、業種別内訳などを決めたわけであります。  水産業界は、減船隻数四百九十六隻、うち北海道は四百一隻ですが、これに対して補正予算で千二百九十五億八千万円を盛り込むことを要求しておりました。今回の決定は、業界要望額のわずか一五%、地方負担を入れても二〇%そこそこというような状況であります。こんなことでは一体どうなるのか。その減船対象者あるいは漁船乗組員を初め、それを抱える漁協、そしてその連合会、さらに関連業界は、今率直に言って途方に暮れているというのが実態ではないかというふうに思います。そして、そのことがまたパニックへと発展するのではないかと関係者大変心配をしております。  減船対象となりました北洋関連業種業界代表人たちは、それぞれに、船主は多額借金を背負っている、その借金返済乗組員の解雇に伴う特別退職金政府予算で賄おうと考えていた。十四日決定配分を見ると、負債は返せないし、廃業すらできない、こういうふうに言っておるわけですね。  例えば、沖合底びき網漁船の場合、道内百六十一隻のうち七十三隻の減船方針を決めておりますが、道機船連では減船補償は四億二千万円を要求しておりました。沖底船の一隻当たりの借金は四億五千万円、今回の決定額はスクラップをしても九千九十万円にしかすぎない。こんなことで、道機船連では、この額では負債は払えない。倒産ということになれば地域社会に与える影響は甚大であると、今後直面する問題を大変心配しております。  太平洋小型サケマス漁業協会では、このほど緊急役員会を開いて、もう対策も何もない。余りの少額であり、何もできない。役員会では、そのため、これといったものをまとめられなかったと、いわば吐き捨てるように言われたということも報ぜられております。  中型底刺し網漁船は、二十三隻全船の減船を余儀なくされた。これは、この漁業の場合に、ソ連二百海里から締め出されたら操業する漁場がないから、これは全船減船しなければならないわけであります。石崎道水産会の会長は、今回の政府決定額について、この金額ではとても受けられない、計画どおり減船を実施できるかどうかわからない、そういうコメントも出しております。  政府としても、いろいろな面を考えて計算はしたのでありましょうが、業界要望にこたえ、地域経済の混乱を防ぐ額にはほど遠い額だ。このまま推移すれば、それぞれの地域パニック状態が起きることが十分に予想される。そんなような状況だというふうに思うんですね。いわば、激甚災害に値するような、そういう状況だというふうに思うんですが、こういうふうに決定された。そしてその後、それぞれの業界の中では、水産庁で決めた内訳を一応受け入れていかざるを得ないという業界もありますけれども、まだ決まっていない業界もある。こんな状況でありますので、この状況について大臣としてどのようにお考えか、ひとつ所感をお聞きしたい、このように思います。
  9. 加藤六月

    国務大臣加藤六月君) 菅野委員を初め、各党あるいは業界関係皆様方からたびたび御陳情をいただき、その趣旨を実現すべく最大限頑張ったわけでございますけれども、千三百億という御要望と、先般決定を見ました中身とに開きがあるのは事実でございます。私たちも全般的にいろいろ考えたわけでございますけれども感想とおっしゃいますので感想を申し上げておきますと、国際的に二百海里体制というものが本格的に定着してくる中で、今回のような漁獲割当減船等により北洋漁業減船をせざるを得なくなったことについてはまことに残念なことだと、こう思っておるわけでございます。また、減船者にとっては大変なことである。理解もしておるつもりでございます。  さらに、今おっしゃいましたように、地域経済に及ぼす影響についても極めて大きいものがあるというように受けとめております。  そういうような事態を踏まえまして今回の救済対策を行うこととしたものでございまして、厳しい財政事情のもとでできる限りの配慮を行ったものでございます。  これによりまして減船漁業者等に対する影響が少しでも緩和されるように努めてまいりたいと考えておるところでございますし、さらに今後、二百海里体制の定着のもとで、中長期的な展望に立ちまして我が国漁業再編整備を推進するとともに、我が国の二百海里内の漁業開発を進めていくことが重要であると考えておるところでございます。
  10. 菅野久光

    菅野久光君 業界あるいは漁民人たちが期待していたものとは大きくかけ離れた、しかも五十二年の二百海里施行時の減船のときの対応と、昨年のカニツブエビ減船のときの対応と、ことしの対応とが違うわけですね。そのときそのときの財政事情によって対応が違うということは、ある意味で言えば、同じような状況減船をせざるを得ない、そういう人たちにとっては、期待感といいますか、そういうものを大きく損なっているわけなんですよ。これは公平の原則ということからいえば非常にやっぱり問題のあるあり方ではないかというふうに思われます。  先ほど申し上げましたように、業界によっては、この水産庁で決めた方針をのまざるを得ないということで今現実的に作業を進めているところもありますが、業界によっては、とてもこれじゃ減船どころの騒ぎじゃない、もう話にすら入れないようなところもある。そんな個々業界状況ども十分踏まえて、もうこれで決めたんだからあと政府責任がないんだ、政府責任としてはこれだけ決めたんだからあとはいいんだというようなことであっては私は困ると思うんです。やっぱり、それぞれの業界業界にかかわっているいろんな問題がありますから、それぞれの業界業界問題等もまた十分水産庁としても把握をし、もしも今回のことでどうしてもおさまらないというようなところについては、やはりそれなり手だて、第二弾の手だてというものを私は考えざるを得ないのではないかというふうに思うんですけれども、その点はいかがでしょうか。
  11. 佐竹五六

    政府委員佐竹五六君) 私どもも、今回の決定額を前提にいたしまして、北海道において各漁業種類別の団体において協議が進められていることはよく承知しておりまして、その際、その中で今、先生の御指摘のあったような御意見があったことも十分承知しております。そのようなこともございまして、私どもも私どもの意のあるところを説明するために、特に先週末、漁政部長を派遣し、よく私ども考え方も御説明したわけでございます。  今後さらに、現在の漁業が置かれている環境条件等から考えまして、やはり減船をすることが一番いい道ではないかと私ども考えておりますので、十分業界方々ともひざを突き合わせて意思疎通を図りまして、今回の決定額施行につきましては、できるだけ業界の御意向も反映するように決定額施行はいたしたいというふうに考えているわけでございます。そのような手だてを尽くして、できるだけ円滑に減船が進められるようにしてまいりたい、かように考えている次第でございます。
  12. 菅野久光

    菅野久光君 円滑にということはわかるんですけれども個々業界についていろいろな問題が出て、どうにも業界の今の状況の中では解決がつかないといった場合には、それなり手だてというものをやはり政府としてはすべきだというふうに思うんです。その手だて内容は別ですよ、内容は別ですが、これをやったんだからもうあと業界で自主的にやってくださいということだけでは済まないように思うんですが、そこのところはいかがですか。
  13. 佐竹五六

    政府委員佐竹五六君) 今回の決定につきましては、私どもは、それなり内容について、カニツブエビ先例等も考慮し、さらにその漁業実態あるいは操業実態も考えて決めたものでございまして、これ自体を変えることはできないわけでございます。  しかし、今御指摘もございましたような、さらに減船を円滑に進めるために共補償要望等が一部業界にあるようでございますが、そのような点については、その要望内容を具体的にお聞きいたしまして、過去の先例等も考慮して対応してまいりたいというふうに考えているわけでございます。私ども、決して一方的に押しつけてあとは知らないなどというふうな態度で今後この問題に取り組むつもりはございませんので、そのことは御理解いただきたいと思います。
  14. 菅野久光

    菅野久光君 最後に言われた、これで思わったんだということではなくて、今後も十分業界が生きていけるようなことでひとつ努力をしていただきたいということを申し上げておきたいと思います。  なお、もう一つ、今回大蔵省が非常に支出を抑えたその理由、まあ主計局長ども言っているわけですけれども、二百海里施行からほぼ十年たっている、このことは当然予測されたことじゃないか、その予測されたことが今現実的に起こってきて、それについて補償せいなんというのは余りにも虫がよ過ぎるのではないかと言わんばかりのことを言っているわけですね。このことについてはどのように受けとめておられますか。
  15. 佐竹五六

    政府委員佐竹五六君) 財政当局とのやりとりでいろいろ議論があったことは事実でございまして、財政当局に言わせれば、この種の国の施策によって直接間接に影響を受けた業種に対して直接交付金を交付するというふうな例は、現在時点では漁業以外にはないということを申しているわけでございます。したがって、行政省としては融資を基本に対応すべきであるということを強力に主張したわけでございます。私どもは、やはりこの減船が実質的に見て国際的な漁業交渉の結果に基づいて余儀なくされたものであるということを踏まえまして、それからまた過去の措置等とのバランス等も考えまして、従来どおり交付金を交付することとしたわけでございまして、決してそのような財政当局考え方をそのまま水産庁農林水産省としてとったことでないことはひとつ御理解いただきたいと思います。
  16. 菅野久光

    菅野久光君 そういうことであれば、北洋にかかわる例えば公庫融資漁船の建造なんかに対する公庫融資をなぜ認めたんだと私も言おうと思ったんですが、私が本当に大蔵省はそう思ったのかと、こう言いましたら、いやいや今のことはということで、打ち消すようなことがありましたのでそれ以上は言いませんでしたけれども、まさかこんなことになろうとは恐らく言っている大蔵省だって思わなかったのではないか。いずれそうなるだろうということはあったとしても、これほど急激になるであろうとは思わなかったのではないかと思うんです。それは水産庁もそうであったろうし、漁民人たちもそうだったというふうに思うんですね。  そういう点で、私は、大蔵省がこういう言い方を私どもにもしたということは全く許せないことだというふうに思っておりまして、そのことをちょっとお尋ねしたわけであります。  きょうは、実は十月末で期限の切れる、先ほど委員派遣報告の中にもありましたが、韓国漁船の問題ですね、これは何としてもひとつこの十月末までの期限が切れるこの機会をとらえて何とかしなければならない。北洋からは撤退させられる、そして韓国漁船日本漁場が荒らされている、もう本当にこんなことでは日本漁業というものの将来があるのかというようなことで、これからちょっとお尋ねしたいわけであります。  韓国漁船我が国水域内の不法操業問題を初めとして日韓漁業関係をめぐる諸問題については、再三私も当委員会で取り上げてまいったわけであります。今申し上げましたように、本年十月をもって、この五十八年に取り決められました日韓政府間暫定措置、いわゆる自主規制措置有効期限が切れるため、今後の日韓漁業関係にとって極めて重要な段階を迎えております。二十日には大臣が李駐日韓国大使を農水省に招いて、本土周辺における韓国漁船操業自主規制をめぐって難航する日韓漁業実務者協議を早く円満に解決するよう強く申し入れたというような報道もございます。  そこで、今の韓国漁船の動向についてちょっとお伺いをいたしたいと思いますが、水産庁海上保安庁等による韓国漁船不法操業取り締まりが実際行われているわけでありますが、国会におきましても、本委員会発議による外国人漁業規制に関する法律の一部改正案、あの罰金二十万円というのを四百万円にするというものですね。これは我が国に来るときに二十万円持って、不法操業だったら、じゃ、ほいということで二十万円出して、それで堂々と不法操業をやっているというようなこと、こういうことがありまして、この一部改正案が成立をしたわけであります。  そこで、韓国漁船についても幾つかの問題についてお尋ねをいたしますが、この一部改正が成立した後、最近の韓国漁船我が国近海での操業状態はどのようになっているのか、ひとつ簡潔にお答えいただきたいと思うんです。
  17. 佐竹五六

    政府委員佐竹五六君) 韓国船の操業は、大きく分けまして北海道沖と西日本ということになるわけでございまして、北海道沖につきましては現在十四隻の操業が行われているわけでございます。その操業海域を見ますと、大体、冬季のスケソウダラを漁獲の対象とする時期はほぼ全船が襟裳以西海域を中心とする太平洋岸に参りまして、春から秋には出漁隻数が減少いたしまして、日本海、武蔵堆を中心に操業しております。  なお、本年六月以降北海道沖に出漁する隻数が減少いたしまして、八月以降は四隻以下となっているわけでございます。  それから、西日本における韓国船操業状況でございますが、特にただいま先生の御指摘のございました外国人漁業規制法の罰則改正を行った本年六月以降八月までの間におきましては若干操業隻数が減少しております。これは主として、比較的沿岸で操業することの多いアナゴかご漁船が領海侵犯をする可能性が非常に高かったわけでございます。これらにつきまして、二十万円が四百万円に引き上げられたことによって侵犯の件数が減ってきている、かように見られるわけでございまして、それなりの効果があったのではないかと私ども考えているわけでございます。
  18. 菅野久光

    菅野久光君 それなりの効果があったということは今の報告でもわかりましたが、現在の日韓漁業関係の枠組みの中だけで今後は秩序ある漁業関係が維持され得ると水産庁はお考えでしょうか。
  19. 佐竹五六

    政府委員佐竹五六君) 枠組みの中で最も基本的なポイントといたしましては、決められたことを守らせる方法ということになるわけでございまして、これは日韓漁業協定に基づく枠組み、あるいは北海道自主規制措置に基づく枠組み、いずれも旗国主義をとっているわけでございまして、韓国船が決められたことに違反した場合に、日本の取り締まり船がこれを取り締まることはできないわけでございまして、この点に漁業者の方に大変強い不満がございます。私どもも、現在の仕組みではどうも必ずしも十分ではないというふうに判断はしているわけでございます。
  20. 菅野久光

    菅野久光君 私も、五十八年に出てきてから、韓国漁船不法操業の問題については何度かこの委員会指摘をしました。そのたびに、とにかく韓国政府に対して不法操業をやらないように厳重に申し入れるというような旨の答弁を何回ももらいました。何回ももらっても繰り返し繰り返しそれが一つも改まらない、そういうことがあります。  北海道の羽幌沖の韓国漁船に対する投石事件、目の前で自分の漁具がやられて、しかもその船の上に乗っているのが見える、もう本当にやめてくれと、こういうことを言っても、何せ向こうは七百トンから一千トン級の大きな船で、もう全く相撲取りに子供といったような船の大きさの違いもあったりして、本当に何とも言えない気持ちで、つい船べりにあったコンクリートのかけらをぶつけた、それが当たってけがをしたということで罰金を取られたそうでありますが、もうそうしなきゃならない、しかも一度ならず再々だということになればそういう気持ちになることは私は無理からぬことだというふうに思うのですね。  この漁具の被害なんかについても、これまでに約二千件以上も起こっておりまして、被害金額は九億円にも上るというふうに試算をされております。一方、これに対する補償についてはさっぱりされていないんですね。韓国の大型トロール漁船の夜間操業による定置性の漁具の被害が大変多い。それで加害船を特定することができない、非常にその確認が難しいということでありますし、漁船同士の事故なんかについても、先ほど申し上げましたように魚船の規模が違うものですから、事実上当事者間での事故確認の手続ができないというようなことなどがありまして、本当に涙金といいますか、少額の見舞い金程度で処理されてしまうケースが大変多いというふうに聞いております。  政府は、このような状況を多分認識してはいらっしゃると思うんですが、この泣き寝入りせざるを得ないような被害者に対して何らかの救済措置がとれないものなのかどうか。特に、沿岸漁民というのは非常に零細漁民が多いわけですね。ですから、そうやって自分たちの生業の手段である漁具をやられてしまうと本当にどうにもならないわけですね。そんなことで、何らかの救済措置がとれないものかという声を浜へ行くとよく聞かされるわけでありますが、この点についてはどのようにお考えですか。
  21. 佐竹五六

    政府委員佐竹五六君) この漁具被害でございますが、韓国船自主規制措置実施直前の五十二年には二億六千万円にも上ったわけでございますが、自主規制措置実施後の五十六年に一千万円程度まで減少いたしまして、その後徐々にまた増加いたしまして、六十年現在五千万円程度の被害があるわけでございます。  これにつきましては、民間間の交渉にこれを基本的にゆだねているわけでございますが、ただいま先生も御指摘のございましたように、海上の事故でございますので、なかなか確認が難しいということではかばかしくいかないのが現状でございます。私どもも、これを完全に民間に任せるということではなくて、その解決方法につきまして、どうしてもわからない場合に一体どうするかというようなことも今後日韓間の話し合いの中の一つのテーマとして取り上げていきたいと、かように考えているわけでございます。
  22. 菅野久光

    菅野久光君 そういう被害が起きないようにすることが何よりも大事なことで、それはまた後の段階で申し上げますが、先ほどことしの北洋関連にかかわって、大臣の答弁にもありましたが、我が国の二百海里水域内における資源保護、魚族資源をどう保護していくか、あるいは育てていくか、これがこれからの日本漁業にとっては大変大事なことであります。  我が国は、国連海洋法条約に署名して、またみずからも漁業水域に関する暫定措置法を制定して、自国の二百海里水域内の水産資源の適切な保存及び管理等について責任を持つ立場にあるわけですね。事実我が国漁業者は、多くの規制を受けつつも貴重な資源を次代の日本国民に引き継いでいくために譲り合って操業を行っている。しかし、我が国周辺水域における韓国漁船の操業に対しては、一部の自主規制措置、いわゆるトロール漁船のみが対象であるわけですね。それ以外に規制はないわけですから、資源に対する配慮もなしに無秩序に行われているのが現在の状態、それが実態だというふうに思います。  例えば、日本側のオッタートロール禁止区域で韓国船が操業している。資源保護のために禁止期間を設けて、我が国漁船はそこへ行ってない。そこへ韓国漁船が堂々と入ってきて、目の前でとっていくわけですよ。また、日本海では、日本側でほとんど操業していないスケソウの索餌期、四月から十月までですね、ここで韓国トロールは総漁獲量の四分の三に当たる約一万六千トンもの未成魚を漁獲している。資源に重大な影響を与えているというのが実態です。  日本漁民は、自分たちの前浜、二百海里内の漁業資源、漁族資源を守るために、禁漁期間を設けて、あるいは禁漁区域を設けてそこには我が国漁船は入らない、そして資源を保護していく。そういうことを苦しい中でもみんなが守ってやっているときに、韓国漁船がそこに堂々と入り込んできて、日本のような二十トンだとか百トンだとかいう船じゃない、七百トンだとか千トンとかという大きな船が入ってきて、しかもオッタートロールで根こそぎさらっていく。もう日本海で好漁場とされた武蔵堆なんかははげ山のようになってしまって、あそこでとれたスケソウがもうとれなくなってきている、そんな状況にまでなってきているわけです。  だから、一年延ばせば一年だけ日本の二百海里内の資源が大変な状況になっていく、早く韓国漁船に対する規制をやってくれということを何回も私はこの委員会でも申し上げましたが、いまだにそのことが実行されていない。そういうことに対する漁民の怒り、これはもう言いようのないものになってきております。  特に今、北洋から撤退してきたんです。そしたら、日本漁民日本の二百海里内でしか漁業ができないような状況というのが現実的に生まれてきているわけですね。そこを韓国漁船が、しかも本当に七百トンから一千トン——私はこの二百海里の問題で外務大臣のところへ行きました。外務大臣は長崎出身なんですね。それで、韓国漁船のオッタートロール来てとっていくと言ったら、百二十トンか三十トンぐらいの船だろうというふうに思っていたのですが、私は七百トンから一千トン級の船だと、こう言いましたら、そんな大きな船が行くかいなと、こういう話なんですね。すぐ大臣室から水産庁長官のところに電話をかけまして確認して、私がうそを言ってないということを確認されまして、それは大変だなという認識を改めてしてもらったわけであります。  こんなようなことでは、資源管理型漁業を推進するために二百海里内の漁業振興施策、いわゆる栽培漁業とかあるいは沿整、漁場管理、これを予算をかけてやっているわけですよ。片方では我が国の予算をかけてやりながら、片方では韓国漁船に全く持っていかれてしまう。これは政策の不一致というか、矛盾と言おうか、そういうことになるのではないか。早急に検討、是正されるべきだというふうに思うんですが、その辺はどのようにお考えですか。
  23. 佐竹五六

    政府委員佐竹五六君) ただいまの先生の御指摘につきましては、私どもも特にソ連二百海里から日本沖合底びき漁船が大幅に締め出された現在段階では、かつて五十五年に自主規制措置でお互いに合意をしたわけでございますが、そういう合意をするわけにはいかない事情日本の国内に出てきたということであろうかと思います。  ただ、申し上げておきたいことは、北海道漁民からすれば、恐らく韓国船の操業を全部排除すればそれだけ減船が少なくなっただろう、済むはずだと、こういうお考えだろうと思いますが、ただ日本漁船もまた韓国の二百海里内で操業しているわけでございます。全面的に排除するという考えは、水産庁としてはこれはとれないところでございます。  ただ、確かに日本沖合底びき漁船は百二十四トンでございます。韓国船は小さいもので三百三、四十トン、大きいもので千トンでございますので、しかもソ連海域を日本漁船も失ったわけでございますので、少なくともオッタートロールラインの外に出ていって操業してもらうということが私どもの最低限の要求であるということで現在交渉を続けているわけでございます。  さらに、若干つけ加えさせていただきますと、日韓の漁業関係には、西の海域につきましては日韓漁業協定が存在するわけでございます。この日韓漁業協定の存在を前提にいたしまして二百海里体制に移行することはできないわけでございます。これは法律的にも無理なわけでございます。  一方、この漁業協定につきましては、この協定をつくるために西日本漁民が大変な血の汗を流してかち取った漁業秩序であるという感覚があるわけでございます。韓国船の取り締まり艇から銃撃されながら自衛船をつくって割って入ってつくった、かち取った現在の漁業秩序である。単に水産庁が、政府が交渉だけでまとめたものではない。あの漁業秩序は我々がかち取ったという非常に強い信念を持っておられる漁民方々もいらっしゃるわけでございまして、それを一方的に破棄することは私どもまたできないわけでございまして、そこに今、現在まで再三いろいろ御意見、御指摘をいただきながら、問題が今日まで延びてきて現在のような仕組みでの暫定的な解決を図ってきたわけでございます。  先ほど来御指摘ございますように、ソ連の二百海里内から日本漁船が大幅に締め出され、北海道周辺にひしめいているという状況のもとでは、私どもも従来のような解決方法はできない。やはりこの辺でいろいろ考え直さなければならないということで韓国側と今折衝を続けているわけでございます。その点をひとつ御理解いただきたいと思います。
  24. 菅野久光

    菅野久光君 私は、日本のこの二百海里内から韓国漁船を完全に締め出せなんということを、そんなむちゃなことを言っているんじゃないんです。ただ、何としてもこの無謀操業を、せめて取り締まり権だとか、そういうものはやはり旗国主義というものを改めさせて、やっぱり取り締まり権は日本の国に持たせるだとか、それから我が国の国内における規制、これがしっかり守れるようなそういうことでやってくれるのであれば、こんな問題というのはそう起きないわけです。ところが、全く違うところに今この韓国漁船に対する二百海里の問題があるわけでありますから、私は今、長官が言われたように、全く我が国の二百海里内から韓国漁船を締め出せなんというそういうむちゃなことを言っているのではない、そのことだけは私は申し上げておきたいというふうに思います。  しかし、今までこの規制措置の問題について、四回ほど韓国といろいろ実務者協議をやってきたけれども、まだ結局主張に隔たりがあると言おうか、日本側の主張を受け入れるような状況あるいは話し合いが、そこで接点が持たれるようなそういう状況にないというふうに私どもは受けとめております。そういうことから言えば、もう漁業団体がこぞって二百海里の適用というようなことを言っている状況、あるいは韓国漁船が私が先ほど指摘したようなそういう具体的な無謀操業をやっているという実態、そういうことについて果たして韓国側は深刻に受けとめているのかどうか。日本漁民北洋から締め出されてきている。そして減船だ、自分たちの生活がこれからどうなるかわからないというようなそういう実態があるという、そういう厳しい状況を本当に韓国側が受けとめているのかどうか。  もう今や世界は二百海里体制の中だと、この中でいかに漁業秩序というものをお互いに守ってそれぞれの二百海里内における漁業をやっていくか、これが今世界的に求められていることだというふうに思うわけです。それが何か一方的な形で今なってきているから、私も声を大きくして、もうこれ以上の韓国漁船の無謀操業、これを許しちゃいかぬ、こんなことをやったら日本水産業の将来はないということで私は今申し上げているわけなんです。これいえば、北海道漁民だけでなくて、やっぱり日本全体の漁民人たちの声だ。また、その漁民人たちの声だけではなくて、こういう実態を知っている人たちはみんなそういうふうに思っているわけです。そのことをしっかり背中にしょって頑張っているとは思うんですけれども、これからもひとつ対韓国との問題に当たっていただきたいというふうに思うんです。  日韓漁業協定の適用範囲の問題なんですが、これもいろいろあるわけですね。以西の方だけだというふうに解釈する部分もありますし、全域だというふうに解釈するところもあるんですが、外務省おいでですから、その辺を外務省としてどのようにお考えなのか。
  25. 高野紀元

    説明員(高野紀元君) お答え申し上げます。  今、先生から御質問ございました適用範囲の問題でございますが、昭和四十年に本件協定が締結された当時の事情ということから考えますと、当時はいわゆる李承晩ラインの問題が日韓間の主たる関心事でございました。そういう観点から言えば、日韓両国交渉関係者の関心はおおむね韓国周辺を含む西日本以西の水域に主として向けられていたということが言えるかと考えております。日韓漁業協定には、同協定の適用水域そのものを取り上げてその範囲を直接明文で規定した条項は置かれておりません。したがって、適用水域の範囲の問題については、本件協定の目的等を総合的に考慮しまして、協定全般の解釈を通じて合理的な結論を出すということにならざるを得ないわけでございます。いずれにいたしましても、北海道周辺水域においての韓国漁船の今御指摘の操業問題につきましては、今の自主規制措置ということで今までのところ実際的な解決が図られてきているわけでございます。  政府の法的な立場をこの場でこれ以上明確に申し上げるということは、今まさに行われております交渉あるいは将来の日韓の漁業関係全体に与える影響もございますので、ここでこれ以上申し上げることは差し控えさせていただぎたいということが私どもの立場でございます。
  26. 菅野久光

    菅野久光君 今交渉中だからそこに影響を及ぼすということについではわかりますが、韓国の自主規制措置というものは自主規制なんていうものじゃないんですね。規制も何もない、全くとりほうだい、そこにあるものをとるというような状況だというふうに私は思うんですよ。そこに今のこの問題があるので、実際に今二百海里体制ということでいけば、やっぱり二百海里規制の中で新たな日韓漁業協定というものを結んでいく。そうでなければ、私は現在のこういう問題を解決するということにはなっていかぬのではないか。  そうすれば、協定破棄ということになれば、通告してから一年ということになるわけですね。じゃその一年間一体どんなことになるのかというようなこと、あるいは今月末が一応期限でございますから、期限が切れるまでに何らかの話し合いができるのか、あるいは期限が切れるということを目前に控えてどのような態度で交渉に臨まれようとしているのか、その辺はいかがでしょう。
  27. 佐竹五六

    政府委員佐竹五六君) 期限が切れることになれば、当然のことながら、韓国船としては、北海道周辺において十二海里の外においては公海上の操業ということで自由な操業ができることになるわけでございまして、かかる事態を招きますと大変な混乱を生ずることも必定でございますので、そのようなことの生じないように、最大限残された期間の交渉に全力を傾注したい、かように考えているわけでございます。
  28. 菅野久光

    菅野久光君 私もこの問題ずっと取り上げてまいりまして、そして先ほども申し上げましたけれども、やはり現在の韓国漁船の操業のあり方について、我が国の国内漁業規制、こういったようなものを完全に守らせることが一つと、それからその実効を期するために旗国主義をやめて我が国の取り締まりの管轄下に置くと、この二つが一番やっぱり大事なことなんですね。これが今まで何回言ってもきちっとならなかったわけでありますが、もうこれ以上の無謀操業を許さない。そのためにも、当面してこの二点ですね、この二点に全力を挙げて韓国とのひとつ話し合いをやってもらいたいというふうに思うんですが、この点についてはいかがでしょうか。
  29. 佐竹五六

    政府委員佐竹五六君) ただいまの二点でございまして、これにつきましては、例えば具体的に申し上げまして日韓漁業協定の中にもそういう思想があるわけでございます。合意議事録八条(a)項に、それぞれの国内規制によるトロール禁止あるいはまき網禁止海域については、それぞれの国の漁船がそこで操業しないように措置を講ずるという思想があるわけでございまして、私どもも韓国船を全面排除するという意図はないわけで、ただルールのある、秩序のある操業をしてほしいということを主張しているわけでございますので、私どもの主張は客観的に見ても決して受け入れられない主張ではないというふうに思うわけでございます。  それから、取り締まり権の問題について言えば、過去に日韓漁業協定締結当時、韓国側から旗国主義は反対であると、日本側はむしろ旗国主義を主張したという事実があるにせよ、現時点で言えばお互いにその取り締まり権を持つわけで、これは日本の出漁船も同じように韓国の取り締まり権に服するわけでございますので、これも極めて平等な扱いでございますので、韓国としては絶対にのめない案ではないというふうに思うわけでございますが、現実問題としては、交渉の過程ではこの点には非常に強い拒否反応があるわけでございます。  その場合、じゃその二つを実現する手法としては何かということになれば、二百海里制度の適用ということになるわけでございますが、これにつきましては、先ほど来申し上げておりますような日韓漁業協定との関係の整理という非常に難しい、法律的にも実態的にも難しい問題があるわけでございまして、今後外務省ともその点についてはよく協議いたしまして、何とかその二点、私どもも実現させたいというふうに考えているわけでございます。
  30. 菅野久光

    菅野久光君 私は、この二百海里体制という、もう世界的にこういう体制になってきているわけですから、改めてやっぱり二百海里というものをきちっと規制して、その上に立って新たな日韓漁業協定ということをやっていかなければ、今のこの韓国漁船の問題は根本的にはやっぱり解決していかないのではないかというふうに思いますので、そのことを強く、私の意見を申し上げておきます。  時間がございませんので、実はあすは甘蔗糖の価格決定という予定になっているようですが、本年度の畑作三品ですね、十七日に決定されたわけですが、本委員会が都合によって開かれなかったので、価格決定に当たって質問、意見を述べる機会がないまま、麦に続いてこの三品の価格もまた引き下げられました。  御存じのとおり、私の地元である北海道畑作は、麦、大豆、てん菜、バレイショを主体として行われております。いずれも全国一の生産量を誇っているものの、五十七年以降手取り価格据え置きという厳しい現実の中で農家は苦悩しております。麦がこの夏一・一六%引き下げられて農家にショックを与えましたが、今またこのバレイショ、てん菜、大豆も価格を引き下げられる。農家は農政に対して強烈な不信を抱いているということが今の状況だというふうに思います。  北海道は、高率の減反を押しつけられていることからしても、この畑作物に頼らざるを得ないわけであります。また、減反の奨励作物としても、政府も一生懸命奨励をしている。その支持価格が厳しく抑制されるとあっては、一体何をつくればいいのか、そういう戸惑いが農政の不信となって出てきているというふうに思うんです。地元を回ってみますと、国には財政はあっても農政はないのではないかとよく詰問されるわけでありますが、私はこう言われてちょっと答えようがないんですが、何かうまい答えがあるのか、大臣にこういう場合の答え方をひとつ教えていたたけたらというふうに思うんですが、いかがでしょうか。
  31. 加藤六月

    国務大臣加藤六月君) 何といいましても、それでも北海道経営面積が大きく、生産性向上の効果は着々と上がっておるんだから、まあ苦労しながらでも英知を結集して頑張っていこうと、励まし、諭してやっていただきたい。北海道以外のところとのいろいろ耕作面積その他を比較した場合は、相当な開きがあるということを一つは大前提として教えてやっていただければ、そうかなという気持ちにもなってくるんじゃないかと思いますので、よろしくお願いいたします。
  32. 菅野久光

    菅野久光君 いや、今の大臣の、模範解答になるのかどうかわかりませんが、そんなことを言ったらもう怒られてしまいまして、とてもではありませんけれども説得ということにはなり得ないわけで、畑作は作付指標なども決めていろいろやっているわけで、これはポスト三期の問題でもまた出てきますから、コスト引き下げというような問題いろいろありますが、今、何といっても農家の負債なんですね。過日、ある党の方が、農家は非常に富裕だ、お金持ちだ、高級乗用車も乗り回しているなんというようなことを言って、これは農業統計にもある、負債額よりも貯金額の方が多いんだなんというようなことを言われておりますが、二兼農家も全部含めればそういう形になりますが、専業農家はそうでないということは、大臣もよく御存じのとおりだというふうに思うんです。負債にかかる車み、経営に対するコストの問題が非常に大きいわけで、この問題もまた別な機会にひとつ取り上げて、そこのところが解決すれば、今よりも相当コストの問題というのは下げることができるというふうに私は思っております。非常に農家の期待を裏切るような現在の価格決定のあり方だというふうに思わざるを得ません。  北海道のバレイショでん粉でありますけれども、農家保護のために輸入自由化の枠拡大は行うべきではないというふうに思っておりますし、また五万トンを在庫させるということは、これは保管料などの問題からいっても非常に問題がある。つくったものは全量ひとつ売りさばく、これは生産者もあるいは政府もみんなで力を合わせてやらなければならない、そういう問題だ。価格を下げられてつくったものが売れないという状態が一番困るわけでありますから、そういう意味では、ぜひこのことについて農水省としても全力を挙げてやってもらいたいというふうに思うんですが、それはいかがでしょう。
  33. 谷野陽

    政府委員(谷野陽君) ただいま御質問にございましたように、本年はでん粉、つまり原料用のカンショ及びバレイショがその生産物でございますけれども、その生産が大変好調でございまして、現在の予測から申しますとかなりの生産が行われるというふうに考えられておるわけでございます。ただいま御質問にもございましたように、国内産の芋でん粉につきましては、輸入のでん粉あるいはコーンスターチと比較をいたしまして価格的にかなりの差がございますので、コーンスターチ用のトウモロコシにつきまして無税の部分をつくる、いわゆる関税割り当て制度を設けまして、抱き合わせ販売によりまして需要と価格の維持を図っておるところでございます。  本年の問題でございますが、ただいま申し上げましたように、例年になく生産が多いという実態があるわけでございます。しかしながら、本年のものにつきましては、これは私どもといたしましては、関係の需要者等に話をいたしまして、何とか需給の中でこなすというように努力をしていかなければならないというふうに考えております。ただ、事情は大変厳しいものがございまして、でん粉自体の需要が異性化糖の伸びが最近はとまりまして停滞をいたしております上に、トウモロコシの国際相場が下落をいたしました。さらに円高がありまして、トウモロコシの輸入価格が大変下がってきておるわけでございます。現在、タリフクォータシステムで二次税率はトン当たり一万五千円という水準でございますが、現在の価格水準に比べますと、これは定率にいたしますとかなりの額になるわけでございますけれども、それにもかかわりませず、国際相場の下落、円高によりまして、二次税率とそれから抱き合わせの間の差が非常に縮まってきておるというのが実態になっておるわけでございます。  私どもといたしましては、とにかく今年のものにつきましては、そういう中で御協力をいただきまして、価格につきましても、原料及びでん粉そのものにつきまして引き下げの措置を講じさせていただいたわけでございますから、これらのことを十分需要側にも説明をいたしまして、今年のでん粉の消化につきましては全力を挙げてやってまいりたいというふうに考えております。  ただ、こういう状態が将来とも続きますことにつきましては、私どもは制度の維持運営上多少の危惧を持っておるわけでございまして、将来につきまして計画的安定的な生産というものを考えていくことも、これまた重要な課題になっているのではないかというふうに考えている次第でございます。
  34. 菅野久光

    菅野久光君 最後にてん菜でありますが、ことしから糖分取引ということになりました。そこで、農家も非常に糖分の問題については努力をしておるわけですが、農家の努力があらわれるような、そういうことをぜひやってもらいたいというふうに思うんですが、そこのところについて簡潔にひとつお答えいただきたいというふうに思います。
  35. 谷野陽

    政府委員(谷野陽君) 各方面の格別の御協力によりまして、大変長い間の懸案でございました糖分取引が本年から実施をされることになったわけでございます。今御質問にございましたように、この制度は、生産者にとって糖分向上の努力が報われなければならない、または全体といたしましててん菜の生産の合理化につながらなければならないという命題があるわけでございまして、私どもといたしましてはそういうことな基本にいたしたつもりでございます。  ただ、初年度でございますので、これは、糖分取引と申しますのは、糖分の高いところは値段がよくなるわけでございますが、低い方は値段が悪くなるという、全体としては変わらないわけでございますが、そういう実態がございます。糖分取引に伴いましてそれぞれ御努力を今いただいておる最中でございますので、その経過的な措置といたしまして、当面はその中心の糖分帯というものをやや広目にとる、あるいはその格差のカーブにつきましてもモデレートな形にするというようなことで今回の措置を講じたわけでございますが、今後はさらに糖分の上昇等の状況を見ながら改善を加えてまいりたいというふうに考えております。
  36. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 ただいまは菅野委員から、特に北海道漁業の大変な状況というのが切実に提起をされましたし、また特にその中でも、無謀な韓国漁船の操業ということに対する政府の節度あるきちんとした対応を求める質問があったわけであります。私は、私自身もこの漁業問題についてはいろいろときょうはお伺いをしたいというふうに思っておりましたが、時間の関係もありますのでひとつ基本的な考え方だけ伺っておきたいというふうに思います。  それは、北海道漁民ばかりではなく、これから先二百海里の時代ということになってくれば、それこそ日本漁民は二百海里で操業する以外に方法がない、我が国の二百海里内で操業する以外に方法がないというところへだんだんと追い込まれていくのではないだろうかというふうにも思うわけであります。それだけに、一体その二百海里内の操業対策というものについて、先ほど漁業資源の観点から菅野委員からいろいろとありましたけれども、この二百海里内の問題というものにどれだけの力をこれから入れていかれようとするのか。そのことが、例えば北洋はもうほとんど撤退ということになってしまうわけでありますが、そうすると現在の漁業者の中でどの程度の者がそういう二百海里の中で今度は生活をしていけるということになるのだろうか。  そういう将来の見通し等も、私は今すぐに具体的なものはなかなか出てこないとは思いますけれども、一定の方向性を持ちながら私は政策というものは立案し、推進をしていかなきゃならぬというふうに思いますので、その辺の基本的な考え方をひとつお聞きをしておきたいと思います。
  37. 加藤六月

    国務大臣加藤六月君) 二百海里時代が定着してくると、対韓国、対中国の問題を除きましても、我が国の二百海里の面積というのは世界で六番目の広さを持つようになった。そこを基本にしましていろいろ考えておるわけでございますけれども稲村委員がおっしゃいましたとおり、この二百海里水域を高度に開発、利用していくということがもう一番重要でございます。  今考えておりますことは、まず一番目は海の畑づくりということで、沿岸漁場整備開発事業及び沿岸漁業構造改善事業によりまして魚礁や増養殖場その他の漁業生産の基盤となる施設を整備するということでございますし、また海の種づくりといたしまして、種苗の生産・放流技術の開発、サケ・マスふ化放流事業等を実施し、つくり育てる漁業を推進しておるところでございますが、今後ともこれらを強力に推進する必要があると思います。  また、水産業を核としました沿岸・沖合水域の総合的整備開発を目的といたしますマリノベーション構想の検討を進めますとともに、社団法人マリノフォーラム21を活用いたしまして、産・学・官が協同して先進的技術開発を推進していくことが肝要であると考えております。  冒頭申し上げましたように、今後ともこれらの施策の一層の展開を図りまして、我が国二百海里水域における漁業の振興に取り組んでまいらなくてはならないと考えておるところでございます。
  38. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 大臣の今のお話は、方向性としてはそれなりに私どもも理解をいたします。しかし、やはり問題は、我が国漁業に従事をしていた企業、人、そういう立場がこうした全体の計画の中で吸収をしていくことができるのかどうか、あるいはその全部ができないという見通しがあるならば、どの程度のものが吸収できるように持っていきたいというふうにお考えになっているのか。私は、やはりその辺のところは、言ってみれば大きな産業の改革ということになるわけでありますから、そういった一定の見通しくらいは持ってなければならぬと思うのでありますけれども、その辺はいかがですか。
  39. 佐竹五六

    政府委員佐竹五六君) 今、先生からお話のございましたように、外国二百海里の漁場から排除された我が国漁船の漁獲努力量、あるいはそれに従事する人たちを今後どういうふうに沿岸域で雇用していくか、これは大変重大問題だと思います。  まことにお恥ずかしいことではございますけれども、私ども四十八年の第一次オイルショック、それから五十二年の二百海里体制の移行以降、当面の問題に追われてまいりまして、その辺について計数的な見通しをつけるだけの材料もただいま持ち合わせてないわけでございますが、これらの影響がほぼ出尽くしたというふうにも判断できるわけでございまして、ただいま御指摘のございましたように、四十万余の漁業就労者のうちここ十年で遠洋漁業から排除された就労者の数が今回に限っても六千二百人ぐらいあるわけでございますけれども沿岸域でどの程度吸収できるかというような見通しをつける作業にも早急に取り組みたいと考えております。
  40. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 この点は議論をすればいろいろとまだあるんでありますけれども、私は一つは、かなりこれ苦情を申し上げて恐縮でありますけれども、当面のことに追われてきたということは、これはよくわかります。しかし、やはりその二百海里時代というものをもう迎えたときから、この見通しというものを立てながら対応というのはしていかなければならなかったものですということにもなりますし、またそういう対応をしていかないと、常に当面のこと、当面のことで新しい課題にぶつかってはその解決だけに追われる、最後にはもう収拾が結局つかないということになってしまうということになる。それを大変恐れるわけなんでありまして、今までその点について私どもの提起の仕方も足りなかったのかもしれませんけれども、少なくともこれから取り組みをされるということでありますから、早急にその辺のところははっきりとさせていただきたい。  これは、私は後にこれからお伺いをしていきたいと思っております農業関係ともみんなずっと全部絡んでまいりますので、要望を申し上げておきたいというふうに思います。漁業は以上にさせていただきます。  次に、畑作関係について伺いたいと思います。  これも、ただいま菅野委員から北海道のてん菜あるいはバレイショ等についての生産者価格の問題を、北海道での切実さというものをいろいろと提起されながら意見を出されておりましたけれども、私もどうもわからぬという点がございます。  それは、大臣のお答えの中で、北海道では何かいろいろと御努力をなさってメリットも出ていてと、少しこうお褒めになっているのか何かちょっとわからない感じですけれども、そういう御答弁ございましたが、私はその言葉はぜひ変えていただきたい。要するに、北海道ですらこんな状態だというふうにやっぱり認識をしていただくことが大事なんではないだろうか、こんなふうに思うんです。それは、これからお伺いをしていくことの中で私の論点はなおはっきりしてくるであろうと、こんなふうに思います。  そこで、二十四日、あすサトウキビの価格が決まるのではないかというようなことがずっと言われてきておりましたし、新聞等でも伝えられております。そして、これにつきましては、畑作の他のものを下げたのだから、このサトウキビについても大体一%くらい下げるのではないか。一%で攻防なんというような表題のついた新聞もございますけれども、あるいはそれ以上になるのかわかりません。数字のことはよくわかりませんが、いずれにしても引き下げの方向にあると、こういうふうにほぼマスコミも口をそろえて報道をしております。この点は、大体マスコミ報道の方向に行きそうなんでしょうか。その辺をちょっとひとつお答えいただきたいと思います。    〔委員長退席、理事北修二君着席〕
  41. 加藤六月

    国務大臣加藤六月君) 六十一年産のサトウキビの生産者価格につきましては、農業パリティ指数に基づき算出される価格を基準としまして、物価その他の経済事情を参酌して決定することとしております。その際、生産性向上の動向、他の畑作物とのバランス、それから厳しい財政事情及び需給事情等をも総合的に勘案して決定してまいりたいと、このように考えておるところでございます。
  42. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 その総合的にというのがなかなかくせ者なんでありましてね。今言われた中で勘案をしていただけば、当然生産費の増分として取り込んでいかなければならない部分、価格引き上げをしていただかなければならないであろうという要素も含まれ、そしてまた引き下げになるのではないかと、こう思われるような要素もいろいろと組み込まれて、そして総合的にというお話でありますから本当にわかりづらくて困るわけでありますが、そこで私なりにもう少し理解を深めさせていただくためにお伺いをしていきたいと思います。  先ほど私は、去年のサトウキビの生産費の調査資料をいただいて今、目を通したところであります。この生産費そのものは、第一次生産費、第二次生産費ともに、サトウキビ生産農家のここで出てくる平均的なものは、これは金額を言えば、十アール当たり第一次が十七万八千四百五十円、それから第二次生産費が十九万七千六百四十一円、こういうことになっておりますけれども、これが今度は沖縄県のサトウキビ生産農家の面積別で見てまいりますと、これなかなか平均が当てはまらぬわけでありますから、そこでちょっとお伺いしたいんでありますが、大体一ヘクタール以下の農家、生産者というのが全体で八五%以上になりますね。いただいた資料で申し上げています。そうすると、この平均生産費を償う、これで償える農家というのはこの一ヘクタール以下の生産者の中でどのくらいあるということになりましょうか。
  43. 松山光治

    説明員(松山光治君) 生産費、先般公表したわけでございますが、今のサトウキビの生産費の利用実態、それから勘案いたしまして平均的な形で表象しておると、こういうことでございます。  階層別の生産費の問題につきましては、実は年報の段階で今これ集計整理中でございますが、特に主要な形態でございます株出し形態の栽培形態のものについてこれを出していくと、こういうふうな一応今扱いをしておるわけでございます。
  44. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 いろいろな御都合や理屈があると思いますけれども、私は少し常識的な理解を深めたいというふうに思って伺います。  平均生産費というのは、これは実際にこの生産費の農家というのはほとんどないと言っていいわけですね。平均というのは事実とは合致はしないんです。しかし、少なくともこの平均生産費、価格をいろいろと決定されるに当たりましては生産費を無視をして価格決定というのはないはずです。生産費というのは必ず見込まれると思うんですが、その価格決定には平均生産費がとられるんですか。それとも、別な方法で生産費というのは見ていくんですか。
  45. 谷野陽

    政府委員(谷野陽君) サトウキビの価格につきましては、ただいま大臣から御答弁申し上げましたように、パリティによって算出されます価格を基準といたしまして、諸要素を勘案して定めることになっているわけでございます。したがいまして、他の方式と異なりまして、生産費自体から価格決定されるという仕組みにはなっていないわけでございます。  ただ、私どもといたしましても、生産費の動向につきましては、これには価格決定に当たりまして重要な関心を払うべき事項であるというふうに考えておるわけでございます。そういう前提で申し上げますと、私どもといたしましては、やはり数字といたしましてはサンプル数も限られておりますので、全体としての平均の生産費というものを最も重視して従来考えてきたというところでございます。
  46. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 そうすると、生産費の動向というのを勘案をするという中では平均生産費を対象に考えていきたい、こういうことですね。そういたしますとね、パリティ指数がどうだとか、いろいろな要素が入ってくるとなかなかわかりづらいから、私は極めて単純化をしながら常識的なというふうに申し上げているんです。  そうしますとね、この生産費で償う農家というのは、償う生産者というのは大体どのくらいの規模、サトウキビを栽培していればどのくらいの規模のもの以上がこの平均生産費でいって大体見合うことになるんでしょうか。その辺の見通しがなくて価格決定なんていうのはできないはずだと思うんですけれどもね。
  47. 谷野陽

    政府委員(谷野陽君) 統計上の制約がございまして、規模別の全部の形態別の生産費に関します十分なデータというのがないわけでございます。これは、先ほど申し上げましたように、サトウキビの価格決定はパリティ指数基準という方式をとっておりますものですから、私どもいろいろお願いを各方面にするわけでございますが、諸種の制約もございまして、価格決定の際の資料といたしまして、それぞれウエートをつけられて御調査をいただいておるということから来ておるわけでございまして、細かい計数はないということでございます。  一つだけ数字としてございますのは、サトウキビの生産費調査対象農家の作付面積調査作物の作付面積というのはつまりサトウキビの作付面積でございますが、これが四十六アールないし四十七アールぐらいであるというふうに承知をいたしております。それと対応いたします計数といたしまして、沖縄における一戸当たりの収穫面積は六十一アール、鹿児島におきます収穫面積は七十九アールと、こういうことになっております。これは統計の種類が多少違っておりますから、生産費調査の系統とそれからこういう収穫物の調査の系統ということで多少違っておりますので、直に計算することにつきましては多少統計上の厳密さは欠くというふうには思っておりますが、現在私どもが持っております数字ではそういうことになっておるわけでございます。
  48. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 どうもまだ納得できない、よくわからないんでありますけれども、それはまたちょっと後にしまして、そうするといろいろな要素が勘案をされるというお話の中に、例えば昨年は沖縄県は干ばつと台風によってサトウキビの生産が前年度よりも落ちている、こういうことなんでありますけれども、そうしたマイナス要因というもの、それは価格決定の要因の一つとして参酌をされるものなんですか、どうなんでしょう。
  49. 谷野陽

    政府委員(谷野陽君) 私どもサトウキビの価格決定につきましては、農業パリティ指数に基づき算出される価格を基準といたしまして諸要素を参酌するわけでございますが、その中では生産性向上の動向、他の畑作物とのバランス等々の事情を勘案するわけでございます。  ただいまお話がございましたように、沖縄あるいは鹿児島県の南西諸島におきます今年の作柄というのは、平年に比べまして約一割の減収であるということは私どもも十分承知をいたしております。この数字がどういうふうに影響を与えるかということでございますが、この点につきましては私どもはただいま慎重に検討をしている最中でございますけれども、例えば生産性向上の動向を見ます際に、ことしの単収が極めて低い、これは大変変動がある状態でございますが、まあそういう状態が近時の生産性動向の趨勢を見る際にやはり要素として一つ入ってくるということはあるのではないかというふうに考えております。
  50. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 どうも回りくどくてわからないんですよね。そして、最後の言われたところが、動向があるのではないかということです。  そうすると、もっとはっきりしてください。その価格決定というものの中にその生産性向上の分というのを参酌する、こういうふうに言われました。それはプラス面ですよね、言ってみれば。プラス面を参酌する、だからそのプラス面を参酌するときに、大きな変動が起こったときには、例えば今回のような被害が非常にあって収穫が非常に落ち込んだ、こういうようなときはその分を、そのプラスをどれだけ見込むかというところで必ず参酌をするんですかしないんですか、それをはっきりしてください。
  51. 谷野陽

    政府委員(谷野陽君) 一番端的な生産性向上は単収であると私どもは思っております。したがいまして、過去数年の単収と近年数年の単収とを比較いたします際に、六十一年の収量は低いわけでございますから、それはそういう意味では、先生仰せのように、その数字の中にことしの単収が低いという事実は入ってくるというふうに思っております。
  52. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 それでやっとわかりました。私なりにわかりました。  そこで、これは畑作三品の価格問題もそうなんでありますけれども、私が先ほどからその平均単収とその栽培経営面積について伺っておりますののは、生産費割れを起こしてまで農家が生産をいつまでも続けるかどうかということになったら、これは間尺が合わなきゃやめざるを得ないということになるわけなんでありまして、これは至極当たり前のことなんです。  そういたしますと、私は基本的にここで価格を下げられたということは、言ってみれば経営面積の小さい方からやめていただきましょう、間尺の合わないものはやめていただきましょう、こういうことに通じていくのではないかというふうに思うんですけれども、私の考え方間違っていますか。
  53. 谷野陽

    政府委員(谷野陽君) 農産物の価格を算出いたします際には、いろいろな方法が従来からとられてきておるわけでございます。  ただいま先生御指摘のことをお伺いいたしておりますと、あるところで線を引いて、いわばそれが例えば平均の生産費であるというふうに仮定をいたしますと、それ以下の農家は生産費を償っていない、したがって生産から次第に退出をしていく、減っていく、こういうことになるのではないかという、そういう御質問ではないかというふうに感ずるわけでございますが、ある水準の生産を非常に刺激して、どうしてもその水準以上のものについて生産を確保する、あるいは増強するという場合には、かつて限界生産費を価格決定の一つの要素として取り入れたことがあるというふうには私も承知はいたしておるわけでございます。  ただ、価格決定につきましてはいろいろの方法がございまして、私どもが今畑作物について中心としてとっておりますパリティ方式というのは、全体としてパリティと申します経営のコストを示す指標というものを補償してやるような計算の係数を掛ける、さらにそれに生産性の向上の動向というものを加味していくということによって全体として生産が円滑に行われる、数量的に見ましてもそれなりの生産が行われるということが政策目標になっておる、こういうことになるわけでございます。  事実関係といたしまして私どもが数年見ておりますところによりますれば、現在の価格畑作物の生産というものはおおむね維持され、物によってはかなり増加をしてきておるというふうに考えておるわけでございます。    〔理事北修二君退席、委員長着席〕
  54. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 その辺のところでかなり見解が食い違うところが出てくるわけですけれども、私は少なくとも生産費を償わなければこれからの、特に自由経済的な手法を導入していけばいくほど生産費が償われなければその作物はつくらなくなる、こういうことになるのが経済的な法則性であろうというふうに思うんですね。  ですから、私はそのパリティ指数で計算をされるということ、決してそれを否定しているわけでもありませんけれども、要はどれだけの、どこまでの、生産費でマイナスにならない部分をどのところに照準を置いて定めるかということによって国内のその生産量というものとのかかわりがはっきりしてくるわけです。逆に言えば、例えば砂糖なら砂糖はどれだけ国内自給をするのか、このことがきちんと定まれば、それで価格決定をされればおのずと限界生産値も決まってくる、こういう関係にも経済的にはなるんじゃないかと思うんですが、そうすると砂糖はどの程度自給するという方針でおられるのか、これを明らかにしていただきたい。
  55. 谷野陽

    政府委員(谷野陽君) 砂糖の自給率の目標でございますが、昭和六十五年を目標といたします現行の長期見通しによりますと、おおむね三割の自給率ということで見込んでおるわけでございます。  この見通しができました前後の、例えば昭和五十年、五十一年、五十二年ごろの砂糖の自給率と申しますのは一五%から二〇%の間にあったわけでございまして、当時といたしましてはかなり意欲的な見通しをとったわけでございます。その後の砂糖に関します生産の推移を見ますと、生産が逐次増加をしてまいりまして、現在の自給率は、先般終わりました昭和六十砂糖年度では三三・四%、昭和五十九砂糖年度では三二・八%ということになってきておるわけでございまして、おおむね自給見通しの目標の程度、あるいはそれを多少超えるという程度にまで上がってきておるということが実態でございます。
  56. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 そうすると、こう理解していいんですか。自給量目標を定めた、その目標生産は一定程度成果を上げて確保するようになった、それを超えるような生産ぐらいにもなってきた。だから、言ってみりゃそれを上回る部分は生産をやめてほしい、こういうことにもなりますから、引き合うところに価格をある程度設定すると、こういうことに結果としてはなるんでしょうか。
  57. 谷野陽

    政府委員(谷野陽君) 私ども、将来の見通しにつきましては、現在この六十五年自給見通しにつきまして省内で検討が進められておりますので、その中で十分検討いたしたいというふうに考えております。  ただ、砂糖につきましては、現在我が国の国内の砂糖の生産、それから砂糖の輸入というものの両方で供給されておりますが、その相互の間にはかなりの価格差があるわけでございます。その価格差を国からの交付金と、それから糖価安定の制度によります輸入糖からの調整金で賄っておるわけでございます。  この現在の制度ができました当時の自給率は、先ほど申しましたように一五%ないし二〇%程度という中で輸入糖と国産糖のバランスがございまして、それをにらみながら制度ができ上がってきております。それが現在三〇%というシェアになってまいりますということは、この相互の関係について慎重な検討を必要とする段階に差しかかっておるのではないだろうかというふうに思っております。もちろん国内の砂糖がもっともっと安い価格で生産が急速にできるようになるということになりますれば、これはまた一つの考え方でございますけれども、その辺の兼ね合いを見ながら、この糖価安定制度というものが当面、将来にわたりまして円滑な運営がされていくというようなことにするにはどうしたらいいかということも考えながら、将来の見通しを立ててまいりたいというふうに考えております。
  58. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 時間もなくなってまいりましたんで、サトウキビ価格につきましては、もう要望あとはとどめさせていただきたいと思います。  先ほどもありましたように、減産をしているという事実もあるわけでありますから、そういう中で十分に今後生産を続けていける、意欲を持っていけると、こういうことを考えていただいて、価格引き下げというようなことかないようにということを希望しておきます。  次に、もう時間がございませんから、今話題の中で出てまいりましたが、国際価格我が国の農畜産価格とのかかわりということについて若干伺っておきたいと思います。  砂糖が一番いい例の一つなんだと思うんですけれども、先進国が補助金つきで、輸出奨励策でどんどんと余剰農畜産物を国際競争の中へぶち込んでくる、こういう形、アメリカとかECですね、という形が、逆に例えば砂糖なら砂糖の生産ということで今まで一生懸命やってきていた開発途上国の価格にも重大な影響、引き下げの要因として働いてくる、こういうこともあるのではないかというふうに思うんであります。  そういう観点なども含めて、ちょっと細かく説明をする時間がないから、非常に荒っぽい言い方になるんでありますけれども、私は、農畜産物について、本来は国際競争ということで価格を比較すること自身にいろいろと問題点があるんだというふうに思っております。それが今、砂糖に一番端的にあらわれているというように思うんです。ですから、私は少なくとも、しかし実際には競争があることはこれは否定ができないんですから、少なくとも私は、自分の国の中の農業生産というものは、自給をどこまで、どれだけの範囲を自給するのかということをまず原則的にきちんと確認をした上で、その範囲を超えるものについて輸入とか、いろいろと国際的な対応ということを考えていくべき性格を持っているのではないだろうかというふうに思います。米だけは何か今まで自給の原則、一〇〇%自給の原則ということになっておりましたけれども、ほかの農畜産物は自由化の波に乗ってどんどんと今までの制限なども撤廃をされるという形の中で、私は米もそういう形でだんだん追い詰められてくる形になっていると思うんです。  そういう意味で、この辺で我が国農業全体がどれだけのものを確保していくのかということをきちんとしていただきたいと思うんでありますけれども、その辺はこれからの作業としてはいかがな見通しをお持ちになっておりましょうか。
  59. 甕滋

    政府委員(甕滋君) 農業の振興につきましては、現在農政審議会の場におきまして、二十一世紀にわたる農政展開の模様をいろいろ検討していただいておるところでございます。  狭い国土におきまして、一億二千万人の国民に対して食料を安定的に供給していくという大きな命題に対しまして、国内で生産できるものにつきましては極力国内の資源を活用して、その自給力の強化を図っていくということがあくまでも基本になると思いますが、農業産業であります以上、国際化された経済全体の中におきまして、生産性の向上を図ってまいるということも当然要請されておるところでございますので、そういった生産性向上、国際化への対応、こういったこともその中におきまして論議をされてきておるところでございます。  そういった中で、昭和五十五年に現在私ども農産物につきましての長期見通し、これをもちまして今後の生産の誘導を図っておる。これは国としての今後の見通しを定めますと同時に、農林漁業者に対しましても一つの目安を与えると、こういう役割を期待をしておるものでございますけれども、農政全体の二十一世紀の展開の中で、これを新しい目標としてどういったものにしていくのか、この作業も現在農政審の中で御検討を願っておりまして、この秋のうちを目途に現在作業中という状況でございます。
  60. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 時間がありませんから申しわけありませんが、農政審で結論を出す、検討している最中だからと、こういうお話であります。農政審のあれを見てからまた私はいろいろと私なりに質問もしていきたいと、こんなふうに思っております。  しかし、とにかく我が国農業の今の生産性を上げていけばそれだけ生産性が上がって、そうすると、今までの例えば米だったら、自給をしていたものがさらに過剰になるとかそれから自給度が上がる、ちょうど今の砂糖の問題のようにというようなことで、輸入とのかかわりの摩擦も起こってきますし、そしてその生産性を上げることによって、そうすれば生産者の数を減らさなきゃならないというようなことにも通じてもくることになりますし、この辺のところはいろいろと問題があると思います。  特に、農業におきましては、今後の農業者が就労する場所をどうするかというような非常に大事な問題があるというふうに思います。農業から必ず拡大をしていけば離れるものが必要なんです。国際的に今の資本の流出、空洞化という問題の中で、これはもう今後ゆゆしい問題になると思っておりますので、その辺のところをしっかりと踏まえた議論を農政審でしていただけているのかどうかということもお伺いをして、私は終わりたいと思います。
  61. 甕滋

    政府委員(甕滋君) ただいまお話がありましたように、農林漁業産業として確立してまいります中で、雇用の場を提供いたしまして、地域社会としてもその形成に大きな貢献をしてまいるという使命を持っておるわけでございます。そういった観点から、現在農政審におきましても、今後の構造問題、価格問題、そういった分野にも検討を及ぼしまして、もろもろの検討を行っていただいておるところでございます。
  62. 大塚清次郎

    大塚清次郎君 私に与えられています時間は十分間でございます。したがいまして、ただいまホットで、しかも非常に差し迫った問題でございます米のRMAの提訴の問題に絞りまして質問をいたします。  まず、私は二点ばかり前提となる事柄についてお伺いをしまして、そして最後に核心に触れた問題についての御見解をいただきたいと思います。  まず、ただいまありますのは、ガットの訴状にあります十二品目がございます。それから、ごく最近日米のたばこ交渉が九割方決着を見たようでございます。これはこのガットの中で、それからもう一つはルールの上で、たばこはいわばガットの国家貿易品目に等しいわけでございますけれども、ガットの外でこれも米国の通商法への提訴をちらつかせまして、そして押し切られたというような状況がございます。そういうことで非常に心配しておりますと、たばこあるいは十二品目が内堀、外堀としますといよいよ城の本丸、米にやってきた感が深いわけでございまして、これは非常に我が国有史以来の衝撃的な問題だろうと思います。  なぜこういうように、アメリカがこんな通商法にひっかけたこそく独善な手法を用いたかということでございますが、この点につきましての農林当局の考えを前提として伺っておきたいと思いますし、またもう一つの前提として伺いたいことは、今度の提訴の背景でございます。  これは、私なりの見方で申しますと、一つは我が国の国内的な要因、これはやはり米価据え置きという事態が非常に国民世論の乖離をもたらしておるということが一つ。それからもう一つは、為替レートがG5によりまして、とにかく日米のドルと円のレートがことさら日米の間において特に開いておる、特に発展途上国との関係では大変な落差でございます。まずそういうことが一つの輸入をプールする、引っ張る要因になっておる。  もう一つ、国際的にはやはり世界的な米の需給緩和、特にそういうことで主産国の間、過剰状態が出てきておる。特にアメリカでは異常過剰、三百七十万トンとも言われておりますけれども、異常過剰の状態にある。何とかこれをさばきたいということですね。さばくにしても援助米を主とするアメリカの米の値段は非常に割高である、国際競争力をなくしておるということから、どんどん減っておるということ。一時は三百五十万トン程度輸出されておったアメリカの米が半分ぐらいに減っておる。そこで、アメリカ政府はマーケティング・ローン・プライスというのをつくりまして、そしてもみ四十五・三キロに、十二ドルの目標価格に七ドルの財政をつぎ込んで、輸出補助金に似た形で輸出奨励をやるというような、ちょうどそのさなかにある。こういうことが米国が日本に対する魅力あるマーケットとして輸出プッシュをしてくる一つの要因になっておる。  こういう相乗作用がこのような提訴ということにつながったんではないかと、こういう見方を私はいたしておりますが、そしてまたタイミングとして非常にいいタイミングをつかまえておる。アメリカの中間選挙、ルイジアナ、私も行ったことがありますけれども、あのミシシッピのほとりの穀倉地帯、それからカリフォルニア、そういったようなところの中間選挙。この選挙への農民の影響力をてこにしまして、そのタイミングを見計らってやってきておると思いますが、この背景等についても、まず前段としてお聞かせをいただきたいと思います。
  63. 後藤康夫

    政府委員(後藤康夫君) お尋ねの、なぜ三百一条の申し立てをアメリカのお米の団体がやったか、またその背景いかんということでございますが、今御質問の中でお触れになりました十二品目あるいはたばこ、こういったものにつきましては、アメリカの行政府がみずからのイニシアチブで二国間交渉、あるいはまたガットでその問題を議論をする、あるいは三百一条を援用するという形でございましたか、三百一条の援用につきましては、行政府がイニシアチブをとる場合と団体がイニシアチブをとる場合がございます。今回の場合は、民間団体であります精米業者協会という団体が申し立てをしたということでございまして、アメリカの行政府の方が申しておりますのは、これは行政府の方は申し立てを受けて今国内法手続をやっている最中であって、この申し立てに直接アメリカの行政府が関与をしているものではないということを申しております。  それから、こういった申し立てが行われた背景ということでございますが、やはり幾つかの背景があると思っております。  一つは、世界の貿易量が縮小をいたします中で、アメリカ、タイ、豪州などの米の輸出国が非常に激しい輸出競争をやっている。そして、その中で特にアメリカの輸出量が、七〇年代後半ごろにはタイと同量程度でございましたけれども、米国の米の価格が国際価格に比べて割高であるというようなことも影響いたしまして、八五年の統計数字が一番最近の数字でございますが、タイの約半分ぐらい、百九十万トンぐらいに減少してまいってきておる。しかも、その中でいわば援助米の比率というようなものが高まっている、商業輸出が非常に落ち込んでいる、こういった状態がございます。  そういうことに加えまして、今お話がございましたような本年四月からマーケティングローンという制度が設けられまして、財政負担はこれでかかるわけでございますけれども、アメリカの米のいわば国際競争力が高まったと、そういうことでその輸出競争力を国際市場で発揮をしたい、こういった考え方が強まってきた。  まあ、タイミングにつきまして中間選挙というようなことも、これは我が国におきましても先般の同時選挙の際に生産者団体のアンケートというようなこともございましたけれども、アメリカのRMAもそういったタイミングをにらんで申し立てを行ったということではないかと思っております。
  64. 大塚清次郎

    大塚清次郎君 それでは、率直に質問の核心に入りますが、そういう背景、情勢があるにしろこれは非常に問題だと思いますのは、したがってその一点だけ、私が問題とするところについてお伺いをしたいと思います。  今度のRMAの生産者団体の提訴は、国際協約のルールをこれは無視しておる、私はそう思います。それは、アメリカ通商法の三百一条の発動の申し立てということをよく見てみますと、必ずしも必要な発動要件を十分充足しておるものではないという見方が私の見方です。第一義的にはガット違反であるかどうかということが要件になっております。それから、第二の要件としまして、それこそ今度提訴されたよりどころになっておるのが、いわゆる米の貿易制度が不合理、不公平あるいは差別的だといった場合、そういったような場合に申し立てできることになっておりますが、これはまことに危険な申し立てのやり方だと思います。これは一方的な恣意で提訴をしていいのかどうかという疑問がわいてくるわけです。  発動の要件は、今申しましたように確かに二つの項目がございますが、その一つはやはり通商法と矛盾するかまたは協定に基づき米国の利益が否定されているかどうかという問題、これはガットだと思います。その二つ目が問題ですが、不公平、不合理、差別的であって米国の通商を阻害し制限しているかどうかということでございますが、今度の発動の申し立ては、私はこの申し立ての訳文を持っておりますけれども日本の米の輸入制限は一九七四年通商法第三百一条に基づき提訴し得ると。その理由は、日本の米政策は第三百一条に規定する不合理なものに該当する、こういうことでございます。それから第二番目は、日本の米政策は米国の通商に負担をかけ、制限しているということでございます。  今度の申し立ては、その後者の要件を盾にとって提訴しているのは間違いない。私の考えからいたしますと、国際協定は、いつの場合でも、また世界的にもこれはあらゆる国内法に優先するものという見方、考え方でございますが、この点についてはいかがなものでございましょうか。  いずれにしても、こういうように米国の通商法を盾にするこのやり方は、やはりこれは一つはいつでもガットという協約はありながら、どの品目にでも提訴できるということだと思いますが、そういうことになればやっぱりガットに許されておる国境措置とかあるいは主権とかいうことは一体どうなってくるのか、その辺についての所見をひとつ聞いて私の質問を終わりたいと思います。
  65. 眞木秀郎

    政府委員(眞木秀郎君) お答え申し上げます。  御承知のように、ガットは、今回の当事国でございます日本あるいはアメリカ、両国を含みます多くの同々が締約国となりまして、その遵守をかたく約束をしておる包括的な貿易を律する国際通商協定でございます。このガットで容認をされております我が国の米の貿易制度に対しまして、米国の国内法である通商法三百一条を根拠として非難をしてくるということは、妥当性を欠くものであると考えております。  また、今御指摘のありました条文の中の要件のように、その基準が必ずしも客観的に明確でない包括的な国内法の規定、これを広義に解釈して国際的に容認されました他国の国内制度に適用し、規制を加えようとすることは、国際社会におきますガットを守るといった、そういう合意を尊重するための基礎なり基盤を不確かなものにするおそれがあると考えております。  以上でございます。
  66. 高木正明

    委員長高木正明君) 午後一時まで休憩いたします。    午後零時五分休憩      ─────・─────    午後一時二分開会
  67. 高木正明

    委員長高木正明君) ただいまから農林水産委員会を再開いたします。  午前に引き続き、農林水産政策に関する調査議題といたします。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  68. 熊谷太三郎

    熊谷太三郎君 食糧自給に関しますPR、すなわち情報活動についてお伺いをいたします。  三年前、政界におけるある政策通が、日本はその食糧の七〇%を外国に依存しているという発表をされました。そこで調べてみますと、当時の国内における食用農水産物の総額は九兆六千五百八十八億円、同じく輸入額は一兆三千九百二十六億円でありまして、逆に大体八対二の割合だということがわかりました。しかし、当時これに対しまして当の農水省からは、別に反論らしい反論も、説明らしい説明も承らなかったわけであります。それ以来、私は農水省の情報活動がまだ不十分ではないかということを思ったわけであります。  言うまでもなく、政策の円滑な推進をしますためには、その政策の内容及び背景が国民に十分理解されねばならぬと思いますが、農水省は大切なこの食糧自給対策に関するPR、すなわち情報活動としてどんな方法をとっておられますか。簡単で結構でございますが、ひとつお伺いをいたします。
  69. 甕滋

    政府委員(甕滋君) ただいま御指摘ございましたように、食糧の安定供給は農政の最も重要な課題でございますし、そのまた食糧自給の現状あるいは自給力の維持向上対策等につきまして、情報活動は非常に大事な事柄であると心得ております。  農林水産省といたしましても、農業白書でございますとか、政府の公式報告等はもちろんでございますが、刊行物あるいはそれらをわかりやすく伝える広報紙による紹介等に努めております。また、ラジオ、テレビ等の活用、さらには各地域におきます「一日農林水産省」の開催といった行事のほか、フードウイークあるいは農林水産祭等の各種イベント等もいろいろ試みておるところでございます。  また日常的な事柄といたしましては、「消費者の部屋」を通じてのPR、あるいは各種報道機関に対します農政のPR、こういったことにも心がけておるわけでございますが、今御指摘もございましたように、これで十分ということではございませんので、今後とも一層の工夫によりまして食糧政策に関する正しい情報を広く国民に伝えてまいるように努力いたしたいと思います。
  70. 熊谷太三郎

    熊谷太三郎君 ここに最近食糧庁で出されました「データにみる日本の食糧」というパンフレットのようなものがありますが、これによりますと、ある箇所に「わが国の穀物需要量の三分の二は輸入」という見出しがあります。しかし、穀物の中には自給率の高い米もありますし、極端に低い麦やコウリャン、トウモロコシ等もございますから、このように内容の全く違ったものを一緒くたに出しますと、米まで輸入率の高い仲間に入るという誤解を与えやすいこともございます。国際的に必要な場合はやむを得ないかもしれませんが、国内向けに発表される場合には、このような誤解を与えてまで米も麦もコウリャンもトウモロコシも一括して取り上げねばならぬ必要があるのでしょうか。もしその理由がありましたら簡単にお答え願いたいと思います。
  71. 後藤康夫

    政府委員(後藤康夫君) 実は農産物なり食糧の自給率につきましてはいろいろな計算の仕方あるいは出し方がございまして、私ども大臣にも少しいろんな数字があり過ぎるんじゃないかというふうなことを時々おしかりを受けたりしているわけでございますけれども、御指摘のございました「データにみる日本の食糧」、この中に確かにそのような見出しの項がございます。ただ、本文をごらんいただきますと、その中では「昭和五十九年度のわが国の穀物自給率は、主食用穀物(米、小麦など)では六九%ですが、飼料用を含めた穀物全体の自給率は三二%となっています。」ということで中では分けて書いておるわけでございます。  ただ、見出しをなぜ穀物全体、飼料穀物も含めて三分の二は輸入というふうに書いたかということでございますと、これはこのパンフレット全体が食糧自給力の維持強化の必要性を訴えたいと、そういう気持ちからこういう見出しのっけ方をしたということでございますけれども、ただいま先生から御指摘ございましたように、米はもう豊作の年は一〇〇を超えるわけでございまして、それに対して小麦は一二%、大・裸麦は一六%というようなことでございますし、トウモロコシ、マイロというふうなことになればほとんど海外依存ということでございますので、今後この種のパンフレットなり資料の作成に当たりましてその辺は誤解のないようにいたしてまいりたいというふうに思っております。
  72. 熊谷太三郎

    熊谷太三郎君 現在我が国の食用農産物の自給率はカロリーベースをベースにしますと大体七〇%、このうちの麦類が一〇%台、大豆が五%台でそれを除けば大体八〇%ぐらいかと思うわけであります。また、このほかに重要な飼料が三〇%台足らずでありますから、具体的に食糧全体の自給率を上げますためには麦類、豆額、飼料用穀物の自給率を上げねばなりませんが、これは幾ら努力をいたしましても日本現状では限界があるのではないかと思います。仮に、これらを八〇ないし一〇〇%自給いたしますためには、現在の農地のほかにその倍に近い約一千万ヘクタール近くの農用地が要るという勘定になるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  73. 甕滋

    政府委員(甕滋君) ただいまお話ありましたように、穀物あるいは大豆が大量に輸入されておりまして、それを仮に全部あるいはその大多数を国内でつくった場合には一体どのぐらいの耕地が必要かという御指摘をよく受けるわけでございます。全量国内生産によって代替する場合にどのぐらいの面積か、これもいろいろ考えてみますと難しい問題ではございますけれども、単純に考えまして計算をしてみた数字を申し上げてみたいと思います。  五十九年度末におきまして小麦が五百五十万トンの輸入でございました。大・裸麦が二百三十万トン、雑穀が千九百万トン、大豆が四百五十万トン、合計三千百万トン余りとなっております。五十九年度の数字でございます。したがいまして、これを仮に各作物ごとの平均単収で割り戻すということをしてみますと、必要な作付面積としまして約千三百八十万ヘクタールという数字が出てまいります。
  74. 熊谷太三郎

    熊谷太三郎君 今お話がありましたような農用地の事情などにつきましては、先ほど申し上げました「データにみる日本の食糧」というパンフレットにも、また同じく六月に農水省でお出しになりました「農政の課題と展開方向」、そういったものにも全くこういう問題は触れられていないと思います。もっと具体的に現状を明らかにして、自給し得る限界を一応取り上げた上で、その限界ぎりぎりまでこれまでの方法でそれぞれ努力するという政策目標をわかりやすく、かつ広くPRされていきますことが、その政策を円滑に推進する道ではないかと考えるのであります。当局のお考え、また大変お手数ですが、大臣の簡単な御所信を承れれば幸いでございます。
  75. 甕滋

    政府委員(甕滋君) 先生の御注意もごもっともと思います。  御指摘のように、限られた国土に一億二千万人もの人口を抱える現在のような我が国の食生活を今後とも豊かに維持していくということから申しますと、畜産に必要な飼料につきましては、どうしてもコストの点もございまして飼料穀物を大部分輸入に依存せざるを得ない。その結果、飼料穀物を含めますと穀物自給率はその分だけ大幅に低くならざるを得ない、こういう状況にあるわけでございます。  そういった点も十分理解していただきながら、かつ限られた国土を有効利用いたしまして、生産性の向上を図りながら、国内で生産可能な農産物は極力国内生産で賄うという方針のもとに、今後とも総合的な食糧自給力の維持強化といった点に心がけてまいりたいと考えるところでございます。
  76. 加藤六月

    国務大臣加藤六月君) 農林水産行政の展開に当たりましては、国民各界各層の御理解と納得をいただくということが最も重要でございます。御指摘のように、我が国の穀物自給についても、その実情考え方対策を国民に幅広く御理解いただくことが必要であると考えております。  このため、農林水産省としても従来から種々の努力を払ってきたところでありますが、今後さらにきめ細かな配慮と工夫を加え、国民各界各層の皆様方へのPR、広報活動を充実してまいりたいと考えます。
  77. 熊谷太三郎

    熊谷太三郎君 それではもう一つお尋ね申し上げます。  米価に関連いたしまして一言申し上げたいと思いますが、本年の米価も据え置きないし引き下げをめぐって激しい攻防が行われたわけであります。今後この米価問題はさらに厳しい論議の対象になると思います。しかし、この際看過してならないことは、例えば山間の狭い傾斜地などにあります水田などから生産される米に関してであります。これらのいわゆる段々畑に似た水田等は、近代的な土地改良などを行って生産性の向上を図るということもできません。したがって、今後米価が厳しい詮議を受けまして、こういう生産性の低い土地では収支を簡単に償い得ない米価が出現するということになりますと、それこそこのように生産性の低い農地は、そのままでは荒廃していくほかはないと考えられるわけであります。しかし、これは狭い国土をできるだけ利用して米などの自給に努めねばならぬ日本にとりましては、極めて重大な結果を招くことになるわけであります。  したがって、こういう狭い、生産性の低い農地を維持していくために何か政府として今後お考えになる、そういうことはありますか、一言お伺いを申し上げます。
  78. 鴻巣健治

    政府委員(鴻巣健治君) 山間地帯の農業は、今お話しのように耕地面積全体で八十九万八千ヘクタール、うち水田が今のお話にほぼ近いのですが、四十万二千ヘクタールと考えておりまして、農家戸数にいたしますと七十一万七千戸、就業人口で百十万七千人ほど農業に従事をいたしておると考えております。それだけに、やはり農山村の位置を考えると大変重要だと思っておりますが、御指摘のように山間の農業は傾斜地もかなりありますし、それから一団地の規模もかなり小さい、それから分散の傾向もありますし、基盤整備をしようとするとそのコストが結構かかるということで、平坦地に比べて農業基盤の整備率もかなり低いという現状にあるわけです。  そこで、私ども現在は第三期の山村振興対策あるいは農村地域定住促進対策、こう言っておりますが、要するに山村あるいは過疎地域に対して非公共事業でいろんな総合的な助成事業をやっております。そのほかに、特に山間でございますので一般の公共事業ではなかなか拾えませんので、公共事業の採択基準も下げたり、あるいは特に補助率をかさ上げをするというような優遇措置を講じております。  それで、水田の整備率を見ますと、五十年には全体で整備率が五%というかなり低かったんですが、五十八年、これはちょっとデータ的には古いので恐縮ですが、今の土地改良長期計画をつくるときに調べましたときには三倍近い整備水準の上昇がございまして、五十八年には一四%に上昇しているわけでございます。それからもこういう形で公共事業あるいは非公共事業について水田の基盤整備に意を用いてまいりたいと考えております。
  79. 坂野重信

    坂野重信君 与えられた時間が短いものですから、ひとつ簡潔にお答えいただきたいと思います。  私は農政の素人でありますが、少なくとも農林大臣には大変苦労されている気持ちはよくわかるつもりでございます。米の過剰問題、そういう時期へもってきて、アメリカからの米に対する強い自由化要請、非常に客観的に厳しい中で減反問題も云々されている。党の方でも政府と一緒になって今勉強中でございますが、今後における我が国の水田の将来像といいますか、そういうものについてまず政治家農林大臣のひとつ将来像というものを簡単にお聞きしたいと思います。
  80. 加藤六月

    国務大臣加藤六月君) 水田農業の将来像いかんという坂野委員の御質問でございます。  水田農業を考えます場合に、私たちは、今日の米の潜在生産力と在庫状況、将来の需要動向を見て、今後とも転作画積は拡大することが見込まれますが、また逆に、米は我が国の国民の主食であり、稲作中心とする水田農業我が国農業の基幹であるということには変わりないと考えております。したがって、経営規模の拡大や生産組織の育成等によりまして稲作経営の体質強化を図りますとともに、水稲と水田を利用して生産するその他の土地利用型作物との合理的な作物体系のもとで、意欲ある担い手によって担われた生産性の高い水田農業の展開を図ることが基本的に重要であると考えております。  なお、このような水田農業のあり方につきましては、現在、農政審議会にお願いしております「二十一世紀へ向けての日本農業のビジョンづくり」の中で検討を願っているところでありますが、今週中を目途にその取りまとめを行っていただくことといたしております。
  81. 坂野重信

    坂野重信君 何といっても米作は農業中心でありますし、私も農家の出身でありますし、かつては子供のときに田の草取りをやったり、米作に従事したこともございますから、何といってもひとつ大事な米作の問題については慎重に将来像を考えながらやっていただきたい。  そこで、ポスト第三期対策における転作面積であるとかあるいは転作奨励金についての考え方はどうなっているのか、これは局長の方で結構ですからお答え願いたいと思います。
  82. 浜口義曠

    政府委員(浜口義曠君) ただいま先生から御質問のポスト三期対策に関連いたします具体的内容に関連する問題でございますが、この点につきまして今、大臣からお話を申し上げましたとおり、五十三年度から水田利用再編対策を推進してきているところでございまして、本年度で最終年度を迎えるわけでございまして、この次期対策に関連いたしましては、現在農政の最重要課題として早急にその骨格を固めるべく検討中のところでございます。  したがいまして、次期対策転作目標の面積につきましては、米の需給動向等を見きわめながら慎重に決定していくことということになりますが、現在実施しています水田利用再編対策におきます在庫積み増し部分がなくなることといたしまして単純に計算するだけでも、十万ヘクタール以上が転作面積に上乗せされることになろうと思います。  また、本事業におきまして一つの対応として行っております土地改良通年施行等の補助金の取り扱い等を含めまして、転作奨励金のあり方等につきましては、国の財政事情、あるいは行革審の奨励金依存から脱却し得るよう見直すという答申等々極めて厳しい状況のもとで検討を進めていくことが求められているところでございますが、このような制約状況のもとで最大限の効果が得られるよう対策のあり方を詰めていかなければならないものと考えております。  いずれにいたしましても、次期対策におきましては、農家の方々あるいは農業団体の方々にみずからの問題として主体的に取り組んでいただくことが必要だというふうに考えておりますが、先ほども大臣申し上げましたとおり、農政審議会を初めといたしまして関係各方面の御意見をお聞きしながら鋭意検討しているところでございます。
  83. 坂野重信

    坂野重信君 今ちょっと触れられましたが、転作奨励金の問題ですね。先般の生産者米価で大変農林大臣以下苦労されたことはよくわかりますけれども、そうだからといって転作奨励金をカットするというようなことになりますと、特に通年施行、先ほども熊谷先生の話がありましたが、特に雪寒地帯には、私は雪寒の委員長を最近までやっておりましたが、なかなか条件が厳しいわけですよ。夏場は仕事をしやすいけれども冬場は仕事がしにくい、しかも土地改良通年施行地域がだんだん山中の方に入ってくる、状況が悪いことになってくるわけですから、その辺も踏まえて転作奨励金については慎重な配慮のもとでぜひひとつ考えていただきたい、これは要望です。構造政策というものが価格政策と並んで非常に大事な時期に来たと思っております。こういうときこそ山間僻地における通年施行ができるような体制というものを何としても農林省が農業者の意欲をそぐということのないようにひとつぜひ考えていただきたいと思います。  そこで、ちょっと具体的な問題で、転作目標面積、各県ごと各地域配分されておりますが、今までどういう考え方配分しておったか、それから今後どういう考え方配分に当たるかという点をひとつお述べいただきたい。
  84. 浜口義曠

    政府委員(浜口義曠君) 転作目標面積地域におきます配分の問題でございますが、現行の水田利用再編対策におきましては地域の特性に応じた農業生産の再編成を図る方向ということで進めてまいっているところでございまして、この転作目標面積配分に当たりましても、農業生産の地域の特性、あるいは産米の品質、さらには麦、大豆、飼料作物等の特定作物への転作の可能性等を総合的に勘案をして行っているところでございます。  三期対策後の対策のあり方につきましては、先ほども申し上げましたが、稲作とあるいは転作とを通ずる生産性の向上、あるいは輪作農法の確立、さらには需要の動向に応じた計画生産を一体として図るための対策として取り組んでいかなければならないということでございますが、目下農政の最大の課題として早急にその骨格を固めるべく検討をしているところでございます。  次期対策におきます転作目標面積配分につきましても、対策の一環として検討をしているところでございまして、関係各方面の御意見も伺いながら今後決定をしていくことと考えております。
  85. 坂野重信

    坂野重信君 話はまことに立派な話なんで、よくその考え方という事情はわからぬわけではありませんけれども、具体的に申しますと、例えば鳥取県のような場合、北海道はまあ別として、日本海各県に比べてかなり突出したカット目標だ、中国五県に比べても突出している、これはどういうわけですか。
  86. 浜口義曠

    政府委員(浜口義曠君) 今、先生御指摘のとおり、現実の鳥取県の転作面積の比率は、数字的に申し上げまして二四%近くになっておりまして、中国五県の中でもかなり高い数字になっております。このように、鳥取県につきまして周辺各県に比べて転作率が高い、こういう御指摘の点につきましては、これまで実施の水田利用再編対策、あるいはその前からの事業の実施等におきまして形成をされましたものでございますが、例えば圃場整備が進んでいるとか、あるいは乾田の割合が高いとか、そういったもろもろの理由等によりまして総合的に決定をされてまいったものだというふうに考えております。
  87. 坂野重信

    坂野重信君 どうも納得できないんですけれどもね。苦労して畑作をやったり圃場整備をやったり、それなりに地元は苦労しているわけですよ。毎年毎年幾ら言っても高い伸び率でいくものだから、生産者はもうこの辺が限界だということで、きょうもそういう話が私のところへもたらされておるわけですよ。  そこで、今まで済んだことはやむを得ませんからあえて追及しませんけれども、今後ポスト三期の配分に当たっては、よく地元の生産団体——農水省から出ているじゃないですか、その方針が。とよく話し合って納得を得た上で、コンセンサスをもとに、行政が上から強圧的に配分するというようなことでなくして、そういうような考え方に徹して今後十分にバランスのとれた配分を農水大臣ひとつお願いしておきます。十分その点を配慮願いたいと思います。
  88. 加藤六月

    国務大臣加藤六月君) 先般の米価決定の際にも、ポスト三期問題については団体が自分のこととして自主的に積極的に取り組むという覚書もいただいておるわけでございます。他の農産物はほとんど全部自主的に調整をやっていただいておる中で、米だけがこういう問題であったということは、食管制度があり、それに伴う問題で国や県、市町村当局がやるべきだというような考え方が強かったわけでありますが、今申し上げましたような覚書の取り交わしもいたしました。そこら辺すべての問題を十分配慮しながら、地域の特性あるいは一番効率的な方法は何かということ等を考えながらやっていきたいと思います。
  89. 坂野重信

    坂野重信君 時間の関係もありますので、これで水田問題を終わります。  次は、午前中も管野先生からもこういう質問が出ましたが、日韓漁業問題、特に竹島問題を中心にして、本当は外務委員会等で領土問題がありますから追及すべき問題かもしれませんけれども、やっぱり何といっても水産関係を中心とした被害意識というものが非常に地元に強いものですから、便宜上農林水産委員会の場で質問するわけでございます。  日韓の漁業関係については、大変な深刻な問題が北海道初め各地で出ておりまして、水産庁長官以下苦労されていることよくわかりますけれども昭和四十年に発効した日韓の漁業協定見直しの問題、いろいろな問題が出て苦労されていることよくわかりますけれども、竹島を中心とするいろんな漁業問題については、大変深刻な問題が起きているということは今さら私が指摘するまでもないと思いますが、昭和五十三年の四月に竹島十二海里水域が設定されて、それ以来我が国漁船が締め出されているというようなことによって、イカであるとかべニズワイガニかごというような問題が大変な損害を受けておる実情にあるわけですが、一体どのくらいのこの周辺で損失が見込まれているのか、農水省としてのひとつ見積もりというものをお知らせいただきたい。
  90. 佐竹五六

    政府委員佐竹五六君) 竹島問題につきましては、ただいま先生お話ございましたように、五十三年四日に韓国側が領海を三海里から十二海里に拡大したことによって、その十二海里内に漁場を形成される可能性が非常に高くなったためいろいろ問題が出てきているわけでございます。ただ、年によって非常に海流の状況等が異なりまして、漁場が形成されない年もございます。  当時竹島周辺では、今、先生がおっしゃられましたようなイカ釣り、カニかご、大中型まき網漁業等の重要な漁場になっていたわけでございますが、大体一万六千トン程度の漁獲量を上げておりまして、漁獲金額にして約七十億弱、この程度の漁獲を上げていたわけでございます。申し上げましたように、年によっては全然漁場が形成されない場合もございますので、これが即損失と言うわけにもまいりませんが、一つの目安にはなろうかと思うわけでございます。
  91. 坂野重信

    坂野重信君 外務省見えていますか。——竹島はどこの国の領土ですか、これは。
  92. 柳井俊二

    説明員(柳井俊二君) 竹島は、歴史的事実に照らしましても、また国際法上も我が国固有の領土である、このことは明白でございます。ただ、昭和二十九年に至りまして、韓国の当局は竹島に官憲を駐留させる、このように発表いたしまして、その後実際に官憲を駐留させているわけでございます。この年以降、遺憾ながら竹島が韓国の官憲によって不法占拠されているということを我が方も確認しております。  政府といたしましては、韓国側によるこの竹島の不法占拠、さらには各種施設の構築をまことに遺憾であると考えまして、今日まで繰り返し文書または口頭で先方の不法占拠に抗議をいたしまして、即時撤去を要求するというような措置をとっております。またそのほか、竹島周辺の海上巡視を実施することなどの方法によりましても、我が方の立場を明確にしてきている次第でございます。
  93. 坂野重信

    坂野重信君 まあ日韓友好という問題もありますし、我々自身が日韓友好議員連盟に入っているんですよ。しかし、これは我が国の領土を勝手に占領されて、よくまあ今まで外務省もおとなしく放置していた。北方領土問題は、これは確かに大きな政治問題として国会で議決したり、いろいろなことをやっていますけれども、余りにも外務省の対応というものがなまぬるいんじゃないですか。どうですか、それ。きょうは外務大臣呼びたいところだけれども、外務委員会じゃないから遠慮したんですよ、それから野党の皆さんとのバランスもあるということで。私は局長あるいは外務大臣呼びたかったんですよ。遠慮して今言っているわけです。どうですか。
  94. 柳井俊二

    説明員(柳井俊二君) お答え申し上げます。  ただいま御指摘のとおり、竹島が韓国側に不法占拠されているということはまことに遺憾でございます。外務省はおとなし過ぎるのではないかという御指摘でございますけれども、先ほども御答弁申し上げましたように、外務省としてはこれまで再三再四いろいろなあらゆる機会をとらえまして、この不法占拠に対する抗議、あるいは周辺の海上巡視ということを実施してきているわけでございます。遺憾ながらまだこの問題は解決しておりませんけれども、今後とも平和的手段により解決するという基本方針に立ちまして、一層努力を重ねていきたいと思っております。
  95. 坂野重信

    坂野重信君 先般の外務大臣同士の定期協議ですか、あのときも外務大臣が発言されたということで非常に我々も評価しているわけですけれども、何となく動きが鈍いし遠慮している。しかし、本当に日韓友好親善といっても、主張すべきことは堂々とこれ主張していいわけですよ。しかも、事が領土に関する基本的な問題ですから、もうちょっとひとつこの問題については外務省勇気を持ってぜひ対処してもらいたいと思います、ここで幾ら言ってみてもしようがないのですが。  しかも、漁業の関係からいうと、きのうも鳥取県、島根県の皆さんに聞きましたところが、ことしは特にまた漁業条件がいいというわけですね。寒流が早くから入ってきて、目の前に非常に立派な漁場があるのに、これに手が出せぬ。しかも、午前中に話があったように、我が方は禁止期間には遠慮してとらないにもかかわらず、向こうは勝手にやってきて竹島周辺中心として漁をやっている。何としてもこれは耐えがたい事実だということでございますので、外交上なかなか簡単には片はつかないと思いますけれども、正当な理由なくして沿岸漁業者が締め出されているということを何としても、これは地元民の一人として、これはもう本当に辛抱できないような実情にあるわけでございますので、領土権の確立に向けての努力と並行して、竹島周辺で何とか漁業が確保できるように、これはひとつ農林大臣中心となって、関係各省の一段の努力をぜひこの際また改めてやっていただくことを御表明いただきたいと思います。約束していただきたいと思います。どうですか。
  96. 加藤六月

    国務大臣加藤六月君) 竹島周辺における日本漁船の安全操業につきましては、領土問題が絡む問題でもありますし、かねてより外交ルートを通じまして安全操業確保のための努力を積み重ねてきておるところでございます。今後とも、現実に我が国漁船が安全に操業できるように、さらにさらに努力してまいりたいと考えておるところでございます。
  97. 坂野重信

    坂野重信君 竹島はもちろんでございますが、竹島以外でも山陰の漁業者というものは相当な漁場を荒らされて、どうにもならないような状態になっている。  そこで、先般成立した罰則強化、あれは一体効き目があったかどうか、そういう問題も含めて、韓国の不法操業に対して今まで海上保安庁なり水産庁としてどういうぐあいに対処してきたか、その辺の実績をひとつ述べていただきたいと思います。
  98. 佐竹五六

    政府委員佐竹五六君) 山陰沖における韓国漁船不法操業につきましては、我が国の領海内の操業につきましては、海上保安庁の巡視船及び水産庁の取り締まり船により監視取り締まりを行っているところでございます。また、領海外における我が国の底びき網の禁止ライン等につきましては、これは日韓漁業協定に基づきまして、双方、韓国側も日本の底びき禁止ラインを守るということに合意議事録八条(a)項によってなっているわけでございますが、これらの取り締まりについては一応旗国主義ということでございまして、まあ韓国漁船に対しては我が国の取り締まり船から警告、指導を行うとともに、当該船名等を韓国側に通報して、韓国側による処分をしていると、かようなことになっているわけでございます。  なお、先般の外国人漁業規制法の罰則改正によりまして、罰金が二十万円から四百万円までに引き上げられたわけでございますが、本年六月以降八月までの間におきましては韓国船の操業隻数の減少が見られているわけでございますが、これは比較的沿岸近くで操業することの多いアナゴかご漁船、これによる領海侵犯が多かったわけでございますが、これが減少しております。その限りでこの罰則の改正は非常に有効であったんではないかと私ども判断しているわけでございます。
  99. 坂野重信

    坂野重信君 海上保安庁。
  100. 茅根滋男

    説明員(茅根滋男君) 海上保安庁の方からお答えをいたします。  韓国に比較的近い山陰あるいは対馬周辺、九州北西岸というのは従来から韓国漁船不法操業が絶えないところでございますので、海上保安庁といたしましては、航空機を飛ばしまして、どの辺で操業しているのか、情報を早くつかみまして、その場に巡視船艇を急行させるというような方法で取り締まりをやっておりますけれども、なかなか根絶しがたい。しかも、最近では、その取り締まりの厳しいところを避けまして、日本海の東北沖合あるいは北陸あるいは太平洋側で尾鷲沖というようなところまで今度は出没いたし、その取り締まりの手薄なところをまたねらって漁場を広げてくるという傾向にございます。  山陰沖に関して申しますと、五十九年の四月に今、水産庁長官からお話のありましたアナゴかご漁船不法操業が非常に目立ちましたので、同年の四月二十八日から六月二十日まで、ここを担当しております第八管区海上保安本部のみならず、近隣の管区本部から巡視船艇、航空機等十九隻、五機を投入いたしまして、特別取り締まりを実施したわけでございます。以後も引き続きまして、地元の海上保安部が中心になって韓国漁船の操業状況に応じて一生懸命やっておりますけれども、なかなか根絶に至らないというのが現状でございます。ちなみに、六十年には三十隻、六十一年には九月末現在で十七隻の山陰沖で韓国漁船を検挙しているわけでございます。今後とも、韓国漁船の取り締まりについては一生懸命やってまいりたいというふうに思っております。  なお、罰則強化の問題でございますが、改正法の施行日であります本年の六月九日以降九月末日までの全国沿岸での韓国漁船の領海内操業の確認隻数は二十隻でございます。昨年全く同時期の二十一隻に比べまして、現段階で特別に顕著な変化が見られるというふうな状況はつかんでおりませんけれども、山陰沖のみについて申しますと、昨年の十隻が本年は一隻というふうに格段に減っているわけでございます。この辺がどういう原因で減ったのか、改正法の施行後日もまだ浅うございますので、海上保安庁としては期待を持ってしばらくその経過を見たいというふうに思っているわけでございます。
  101. 坂野重信

    坂野重信君 御苦労さんですが、ひとつ今後とも厳重な姿勢で頑張っていただきたいと思います。  それから、午前中に話のありました日韓漁業協定の見直し問題、これはひとつ引き続き精力的に頑張っていただきたい、こう思います。  そこで、やっぱり二百海里の全面適用という非常に全国的な強い要望があるわけでございますが、この辺でひとつ農林水産大臣に腹を固めていただいて、ただし竹島は向こうに行っちゃぐあいが悪いです、竹島は取り込む形で、この際二百海里の適用という決意をこの辺で固めていただいて、ひとつ抜本的なこの対策というものをぜひお願いしたい。同時に、繰り返しますが、外務省はこの問題に対する対応の仕方をもう少し勇気を持って、力強い態度でぜひ臨んでいただきたい。これを最後の質問といたしまして、私の質問を終わります。  農林大臣と外務省の方から御答弁を願います。
  102. 加藤六月

    国務大臣加藤六月君) 昨日も熊本で全国漁港大会が行われました際に、来賓として全漁連の会長がこの問題を強く訴えられました。今、坂野委員が御要望あるいは実情に対しての御意見がありましたように、この問題を解決するために、二百海里漁業水域制度を韓国にも適用することも手段の一つであるとは考えておりますが、このことについては、日韓漁業協定との関係の整理等、午前中議論も出ましたが、解決すべき多くの問題があると、こう思っております。したがいまして、今鋭意全精力を集中して行っておるわけでございますが、実務者間の協議により実態問題の解決を図っていきたい。そして、その上にこれにふさわしい制度的枠組みを整備すべく鋭意折衝中でございます。
  103. 柳井俊二

    説明員(柳井俊二君) お答え申し上げます。  ただいま大臣から総合的にお答えがございましたので、私の方からつけ加えることは余りございませんけれども、外務省といたしましても、この我が国周辺水域で最近、韓国漁船による操業の問題が発生しており、なかなか深刻な問題があるという事実関係もよく承知しております。  また、これに関連いたしまして、その解決方法の一つとして我が国の二百海里制度を適用すべきだという御意見があることも承知しております。この韓国漁船に対して二百海里制度を全面的に適用するということにつきましては、ただいま大臣からも御答弁ございましたように、いろいろな要素を慎重に検討する必要があろうというふうに考えております。例えば、我が国周辺水域への韓国漁船がどのように展開しているか。また、韓国水域におきましても我が国漁船が操業しております。あるいはまた、現存の日韓漁業秩序との関連をどうするか。さらに、日韓関係全般に与える影響等を総合的に勘案しながら、慎重に検討すべき問題であると考えております。  いずれにいたしましても、先ほど来御指摘の点を含めまして、特に自主規制措置が近く期限切れになります北海道、済州島周辺水域の問題等も含めまして、今後の日韓漁業関係のあり方全般につきまして目下部内で鋭意検討中でございます。  また、韓国側との間におきましても、日韓関係、日韓漁業関係全般につきまして精力的に協議を行っているところでございます。  なお、この北海道、済州島周辺水域の自主規制の措置がこの十月末に期限切れになりますので、目下のところこの問題の処理を集中的にかつ優先的に協議を行っているという状況でございます。
  104. 及川順郎

    及川順郎君 まず、きょうの質問につきましては、農林水産全般にわたって基本的なことを承っておきたいと思います。  最初に、先ほど大臣の所見の中で国民の理解を求めながらという御発言がございましたけれども、時代的に見ますと非常に今、飽食時代、食べる物がなかった時代と時代様相が違いまして、国民に対する理解と協力を求めるという点については、農政全般に対して非常にある意味では難しい面が私はあるだろうと。しかし、本当に独立国として力をつけていくためには、この農政というものは国策の骨幹をなすものであることは変わらないわけでございまして、ぜひ私は冒頭、財政はあっても農政はないなんというようなことのないように、大臣の一大奮発を御期待しておきたいと思います。  そういう前提に立ちまして、一方では今日の農業保護政策に対する批判といいますか、これが非常に強くなってきていることも、これも否めない事実でございまして、そうした批判の骨幹をなすものというのは、一つには補助金制度あるいは価格の支持政策、そして生産から流通にかかわる農協への批判、こういうものが非常に象徴的にあらわれているわけでございますが、これらを総括的に見まして、この農業保護政策に対する大臣の御所見をまず承っておきたいと思います。
  105. 加藤六月

    国務大臣加藤六月君) 私も、世界じゅう全部の国々の農業政策を勉強し、また何か日本農業政策の参考になるような国はないか、あるいはそういうことで成功した国はないか随分勉強もし研究もしてみましたけれども、これだというのが見当たらないことを非常に残念に思っております。  どの国におきましても、いろいろな農業政策を展開しておるわけでございますけれども、そういう中でいろいろな価格政策をとっておるわけでございます。また、農業保護政策という及川委員御表現をされましたが、世界の国々、それぞれ形を変え、中身は違っておるにしましても、その国情に応じて、あるいはその国の食糧事情等を勘案しながらの保護政策といえば保護政策をとっておると思います。ある面ではこういう面をいま少し国民の皆さんにも御理解もしていただかなくてはならないだろうか。  そして、食糧欠乏時代から今日の飽食時代になりました。その間における国民意識の変化というものと、また国民のニーズの多様化という問題等があります。そういう中で、ある場合には本物志向になり、ある場合には舌が肥えてくる、いろいろな要素があります。そういう中でありましても、農林水産省としては一億二千万の国民に安定的に食べ物を供給していく、これがある面では農林水産省のよってある機縁であり、また政治の原点でもある。その安定的供給という枠内においていろいろな対策を講じなくてはならない。それが見よう見方によっていろいろに映るというところに、私たちも苦労しておるところがあると考えておるところでございます。
  106. 及川順郎

    及川順郎君 価格の面でございますけれども、農産物のコストを何とか下げなければならない、そういうところから、例えば小さな規模のコスト高になるところをなるべく縮小して、規模を大きくしてコストを下げる、こういう論理が最近強くなってきているわけですけれども、大規模農業重視の農政に、今後の二十一世紀を展望した中での農政審の検討ということもあるでしょうけれども大臣のお考えとしてその方向に行く方がいいというぐあいにお考えでしょうか、どうでしょうか。
  107. 加藤六月

    国務大臣加藤六月君) 農政も国民の理解と納得の上に成り立っていかなくてはならないと思いますが、先ほど熊谷委員の御指摘、御質問にもありましたように、例えば山奥の僻地のしかも耕作面積の狭いところを果たして切り捨てていいのか悪いのかという問題もあるわけでございます。外国を見ますと、そういうところにも国が特別な補助制度を、助成制度を置いて農業酪農等をやってもらうというシステムもあることも心得ております。そういう点を見ながら、しかしやはり何といいましても生産性の向上ということとコストを引き下げていくということは、今日我が国の農政が抱えておる大切な問題でもあります。  そこら辺どうバランスをとっていくかということは、これはまたある面では我々の大切な仕事でもございまして、そういう問題等含みまして、ただいま農政審議会においていろいろ御検討を賜っておるところでございます。そういう点を答申いただきましたなら、またいろいろ勘案、検討いたしましてやっていきたいと思っておるところでございます。
  108. 及川順郎

    及川順郎君 非常に生産から流通まで極めて重要な立場を握っております農協問題につきまして、さきに玉置総務長官の農協の行政監察発言がございました。その後、総務長官より農水大臣の方に何かお話がありましたかどうか。この点をちょっと伺っておきたいと思うわけでございますが、あわせましてある評論家の指摘ということで申し上げておきたいわけですけれども、国民が高い農産物を買わされるのも、農業経営者が借金の返済に苦しむのも、また国が巨額の補助金を農政に出すのもすべて農協が原因である、こういう指摘をする批判の声もあるわけです。しかし一方では、地域によりまして農協がその地方の農業経営をリードしてすばらしい成果を上げている、こういう指摘もあるわけでございまして、先ほどの総務庁長官の発言を通しまして、大臣の農協に関する行政監察に対する考え方、それから農協の今後のあり方についてどのようにお考えになっておりますか、その点の御所見を賜りたいと思います。
  109. 加藤六月

    国務大臣加藤六月君) 農協は、農協法に従いましておのずからやっていくところははっきりいたしておるところでございます。先般、総理府の方から連絡がありまして、事務当局同士で話を詰めさせまして発表いたしたとおりでございます。  農協につきましては、国の補助金に係る分野は調査対象に当然なると思いますが、それに係らない分野については農協自身の理解と納得をしていただきながらやっていく。しかも、その過程におきましては、まず農林本省に対するヒアリングということ、それからサンプル調査ということ、それから本格調査ということ、いろいろな過程でこれから行われていくと思います。そういう点についての連絡はありました。  それから、今後の農協のあり方につきましては、非常に立派にうまくやっていただいておる御指摘のような農協も非常にたくさんあるし、また非常に参加組合員に尊敬され信頼されておる農協も数々あると思います。そういう中で、あくまでも正すべきものは正しながら、そしてまたスリム化は農協自身が一生懸命行いながら、この内外ともに厳しい農業問題を解決していく役割を果たしてもらいたい、こう考えておるところでございます。
  110. 及川順郎

    及川順郎君 農業の基本的な方向性をどう持っていくか、これは一朝一夕にはいかないと思いますけれども、先ほど来から出ております、二十一世紀を目指しての農政審の日本の将来の農業政策の展望についていろいろ御検討をいただいているという御発言が出ておりますけれども、今後この問題に対して具体的なスケジュール等がわかっておりましたら、それをお示しをしておいていただきたいと思います。
  111. 甕滋

    政府委員(甕滋君) ただいま農政審の方にお願いしております二十一世紀のビジョンづくりにつきましては、極力早期におまとめいただきたいというお願いをしておりまして、この秋のうちに第一次的な骨格的な取りまとめはしていただけるものと思っております。
  112. 及川順郎

    及川順郎君 わかりました。また詳しく出ましたならば、この問題は論議をさせていただきたいと思います。  次に、農産物の価格政策について御質問を何点かしたいと思いますが、最近国の内外における農産物の生産並びに需給のバランスの上に立ってこの産物価格に対するさまざまな批判あるいは考え方が出ておりますけれども、こうした時代展望の中に立ちまして、現在行われております管理価格制度を初めとして安定基金制度まで大体六種類ぐらいに大ざっぱに分けられてございますが、この価格政策につきまして、大臣、今後この政策をどのようにお考えになっていらっしゃいますでしょうか。
  113. 加藤六月

    国務大臣加藤六月君) 農産物の価格政策につきましては、近年主要農産物で食料消費の伸びが低迷する一方、農業生産は増加傾向にあります。しかも、需給事情緩和基調となっている等のことから、生産性向上等を反映しつつ、押しなべて抑制的に運用を行っているところであります。
  114. 及川順郎

    及川順郎君 具体的な問題でちょっと。  先ほど来から米価の問題が出ておりますけれども、食管制度につきまして中曽根総理大臣みずからが、現行の食管制度の見直し、これは非常に意欲的であるというぐあいに伝えられておりますけれども、担当大臣といたしまして現行の食管制度についての所見、そしてまた今後の対応等についてお答えいただければと思います。
  115. 加藤六月

    国務大臣加藤六月君) 食管制度に関しいろいろな議論が行われておるのはもう御高承のとおりでございます。政府としましては、こういう議論に十分に耳を傾け、国民各界各層の理解と協力が得られるよう今後の食管制度の運営に誤りなきを期してまいりたい、こう考えております。  そして、さらに申させていただきますならば、食管制度は国民の主食である米を政府責任を持って管理し、その需給及び価格の調整と流通の規制を行うことによって、生産者に対してはその再生産を確保し、また消費者に対しましては家計の安定を図るという重要な役割を果たしております。このような制度の基本は維持しつつ、今後とも事情の変化に即応して必要な運営面での改善を積極的に図ってまいりたいと考えておるところでございます。
  116. 及川順郎

    及川順郎君 今の御答弁の中で、食管制度が国民各界各層から理解が得られれば食管制度について検討する余地はあるという考えであるというぐあいに受けとめてよろしゅうございますか。
  117. 加藤六月

    国務大臣加藤六月君) 一つの制度が、いろいろな変遷、経過はあるわけでございますけれども、その制度が健全に運用、運営、機能していくためには国民各界各層の理解と納得と支持が絶対に必要である、こういう立場で申し上げたわけでございます。
  118. 及川順郎

    及川順郎君 この問題はこのぐらいにさせていただきます。  先ほどサトウキビの問題で出ましたけれども、端的に言いますと、生産する農家の立場から言いますと、昨年より低い価格決定という状況になってはこれはどうも納得しかねるという、こういう発想でいるわけですね。ほかの問題と農産物、あるいはまた農産物の中での生産者米価とか、あるいは一般の公務員等を初めとした勤労者の賃金がアップしていく中で、自分たちが一生懸命改良努力をしたり、あるいは生産のための努力をしている。しかし、一部肥料が円高の影響で下がった、こう言っても、とてもじゃないけれどもそれで前年度に比べて下がるということは納得できないというのが皆さんの率直な気持ちなんですね。  そこで、これからサトウキビの価格決定がなされるわけでありますけれども政府の基本的な考えをまず承っておきたいと思います。
  119. 谷野陽

    政府委員(谷野陽君) 六十一年産のサトウキビの生産者価格でございますが、これにつきましては、農業パリティ指数に基づぎ算出される価格を基準といたしまして、物価その他の経済事情を参酌して決定することといたしております。その際、生産性向上の動向、他の畑作物とのバランス、厳しい財政事情及び需給事情等をも総合的に勘案をいたしまして決定してまいりたいというふうに考えております。
  120. 及川順郎

    及川順郎君 生産者側からでございますけれども、サトウキビの最低生産者価格は再生産できる価格としてトン当たり二万六千円とし、糖分取引推進費あるいは奨励金は別途に基本価格に織り込むようにといったようなそういう要望がなされているわけであります。この点に対する考え方と、もう一つはサトウキビをつくっております農家の経営安定を図るために、甘味資源作物生産総合振興事業の充実強化を要望しておりますけれども、この二点に対しての基本的な対応をお答えいただきたいと思います。
  121. 谷野陽

    政府委員(谷野陽君) 生産者及び関係の団体からただいま先生御指摘のような御要望を含めましていろいろな御要望が出ておるということは十分承知をいたしておるわけでございます。私どもといたしましては、それらの御要望につきましても十分検討いたしておるわけでございますが、先ほど申しましたとおり、生産者価格につきましては、法律の定めるところに従いまして、農業パリティ指数に基づき算出される価格を基準といたしまして、諸般の事情を勘案しながら慎重に検討の上、決定をいたしたいというふうに考えております。
  122. 及川順郎

    及川順郎君 もう一つ、砂糖消費税の問題ですけれども、これはやはり撤廃をしてもらいたい、こういう強い御意見が出ておりますけれども、この点についてはいかがでしょうか。
  123. 谷野陽

    政府委員(谷野陽君) 砂糖消費税につきましては、大変長い明治時代以来の歴史を持つ税金でございます。当初、明治の中期にできたときには、砂糖というものがある意味では嗜好品、奢侈品的な性格を持っておったというような歴史的な経緯もあるわけでございますが、現時点で考えますときには、砂糖の社会的な状態というものはかなり変わっておるのではないかというふうに我々も理解をいたしておるわけでございます。そのような認識の上に立ちまして、ただいまございましたような御要望につきまして対応をしてまいりたいというふうに考えております。
  124. 及川順郎

    及川順郎君 じゃ、砂糖の問題はその程度にとどめまして、豚肉の問題を少しお伺いをしておきたいと思っておりますが、豚肉需給とその価格の動向につきましては、これはバランスの上でどうなっているかという状況もございますけれども、輸入の実態というものが少なからず影響しているんではないか、こんなぐあいに考えられるわけですが、ここ数カ月の推移を、数量、金額、輸入単価などを踏まえまして、統計データがありましたら最近のものをお示しいただきたいと思います。
  125. 京谷昭夫

    政府委員(京谷昭夫君) 豚肉の需給状況についてのお尋ねでございますが、御承知のとおり現在国産の豚肉の卸売価格は九月下旬以降かなり低迷を示しております。  この要因としましていろいろな要因があるわけでございますが、私ども考えておりますのは、やはり御承知のとおりこの二年ほどの間に急激な勢いでえさの価格が低下をしておりまして、これがかなり国内生産を刺激しているのではないかというふうな問題が一つございます。  それからもう一つ、今御指摘のございました輸入の問題でございますが、若干最近外国からの豚肉輸入量はふえる傾向を示しておりまして、ことし一月から八月までの輸入総量は、部分肉ベースでございますが約十三万トンで、前年同期比で一〇%を若干上回るという増勢を示しております。ただ、先ほど申し上げましたように、国内の需給がかなり緩んでおるということもございまして、七日までは増加傾向にあったものが八月に入りまして前年同期を下回る様相を示しておりまして、九月以降、若干今までの増勢というものが変わってくるのではないかというふうに考えております。
  126. 及川順郎

    及川順郎君 今の輸人豚肉の問題でございますけれども、御承知のように四十六年以降自由化品目になっておりますけれども、やはり暴落時には畜安法によって差額関税制度が適用される、こういう状況の中で、輸入は大体抑制されるという見方を関係者はしておったわけですけれども、逆にそういう豚肉が下がっているときでも実際輸入が伸びている、こういう状況の中で、この差額関税の存在というものが有名無実になっているというような指摘があるんですけれども、この点についてはどうでしょうか。
  127. 京谷昭夫

    政府委員(京谷昭夫君) 豚肉につきましては、御指摘のとおり自由化品目でございますが、これに対する若干の国境調整措置としまして、御指摘のとおり差額関税制度、定率関税と並行しまして差額関税を徴収すると、こういう仕組みになっておりますが、この制度は、むしろ暴落時というふうな限定をつけておるわけではなくて、一般的に豚肉の輸入については定率関税五%でございますが、これを掛けた後でもなお国内の安定帯価格から算定をした一定のレベルと格差がある場合には、その格差部分を常に差額関税で徴収すると、こういう仕組みになっております。特別の場合にこの差額関税をどうするかという点は、むしろ価格が暴騰したときには一定の条件下で一定の算式に従ってこの差額関税を免除するというルールがございますけれども、暴落時に限って差額関税を徴収することではなくて、平時において定率関税と差額関税のいずれか高い方を常時徴収すると、そういう仕組みになっておるわけでございます。  そういった仕組みにもかかわらず、外国からの輸入が一定のレベルで維持されるというのは、いろんな要因がこれまたございますが、御承知のとおり豚肉の相当部分がハム、ベーコン、ソーセージ等の加工原料になるわけでございまして、特に加工原料用の豚肉については、品質なり規格が一定のものが定時定量に入ってくるというふうな加工サイドの要請もございまして、比較的長期的な期間を定めた契約も多いという実態がございます。そういった事情もございまして、短期的な国内市況変動ですぐさま輸入量が変動しがたいという事情があるということも御理解をいただきたいと思うわけでございます。
  128. 及川順郎

    及川順郎君 もう一つの理由として、先ほどお答えがありました飼料の値下がりですね。これは生産者の人たちから見ますと、安定基準価格の引き下げの理由として飼料代の値下がりが言われている、確かに本年の四月以降三回行われて大体トン九千円安くなっている、しかしコストに占める飼料費の割合というのは大体三割から四割と言うんですね。で、この状況を勘案すると、とても現状のこの安定基準価格ではやっていけないというのが実態なんですね。  特に、この安定基準価格としての五百四十円という状況がございますけれども、全国市場に大きな影響を持つ東京を中心にとって考えてみますと、この五百四十円も下回りまして四百二十二円から四百七十円台、こういう状況になっている。こういう状況の中で、養豚経営者の実情というのは厳しくなってくることは、これは当然でございまして、この辺に対する認識と今後の対応に対するてこ入れといいますか、そういうものに対する考え方がありましたらここでお述べいただきたいと思います。
  129. 京谷昭夫

    政府委員(京谷昭夫君) 御指摘のございました昭和六十一年度の豚肉についての安定基準価格五百四十円は、御承知のとおり本年の三月に、その時点におきます豚肉の生産コストの状況需給事情を総合的に勘案をしまして、畜産振興審議会にお諮りをして決定したレベルでございまして、それ自体養豚経営実情に十分沿い得るものだというふうに考えております。  さらに、そういう前提のもとで決定をしました後に、御承知のとおり四月、それから七月、それから十月と三度にわたりまして先生からお話のございました総計でトン当たり九千二百円というふうな飼料価格の値下げがございましたので、そういう面を織り込みますれば五百四十円以下のコストでも十分やっていけるような条件があろうかと思います。  ただ、その程度につきましては、御指摘のとおり九月下旬以降の市況の低下の状況が大変急激なものでございますだけに、私どもも放置できないということで、生産者団体なりあるいは加工メーカーとも御相談をしまして、十月初旬から、加工メーカーによる協同組合あるいは全農が中心になりまして、市場に出回る枝肉でございますけれども、これを市場に介入して買い上げて市場隔離をするという活動を現在自主的に進めております。価格のレベルがまだ十分に回復してないという問題がございますが、ともかく九月下旬から十月初旬に見られたレベル、底入れをしまして現在回復の方向に向かって市況を支持しておると、こういう状態になっております。  また、これと並行しまして、私どもこういった卸売価格の低下を機会に、消費者の皆さんに消費の拡大をお願いするということで、流通関係の皆さん方に協力を呼びかけて、これの安売り等を通じまして消費の拡大を図るとか、あるいは全農それからメーカー筋に対しまして、豚肉を原料とした新しい加工品の開発、販売を進めて需要の拡大を図るというふうな措置を現在とっておるところでございます。  そういった調整ほか、新しい消費の拡大等を通じまして市況の回復が図られるようさらに努力をしてまいりたいと、かように考えております。
  130. 及川順郎

    及川順郎君 まあ五十四年、五十五年に豚肉が大暴落をしたときがございまして、このときに経営安定基金あるいはまた経営改善資金等の緊急融資が行われているわけですね。それが今、返済時期にかかっている。しかも、そういうときにこの豚肉が落ちているという、こういう状況の中から、一時繰り延べのような救済措置がとれないものかどうか、ぜひそれを強く政府要望していただきたい、こういう声が強い。  ですから、これに対する一つの考え方と、もう一つは、現在政府税調で赤字法人に対してある一定の税金を課する検討がなされている。こういう状況の中で、これは食料生産の継続維持から、このような赤字法人に対する一定の税金をかけるというようなことが取り入れられた場合にもう大変な問題になると、これは絶対に避けていただきたいという、こういう強い要望があるんですけれども、この二点について御見解をお伺いしたいと思います。
  131. 京谷昭夫

    政府委員(京谷昭夫君) 最初の点の五十四年当時に御指摘のとおり豚肉の卸売市況が大変低迷をしまして、その翌年の安定価格決定する際に、一つのそういった事態対応した経営対策として御指摘のような対策をとった経過があることは事実でございます。ただ、その後豚肉といいますか、養豚経営につきましては市況が大幅に回復をいたしまして、少なくとも昭和五十九年ぐらいまでには相当の収益力を持った状態ができておりまして、いわば五十四年当時の不況対策として講じた施策は、この回復時において十分相償われたというふうな考え方な持っておりまして、五十四年当時の負債問題を云々するということは現時点では考えておりません。  それから、税金の問題として赤字法人への課税問題が議論されておることは、私どもも仄聞をしております。養豚経営固有の問題としてこの問題を取り上げるのはなかなか難しいかと思いますが、法人経営による各種農業経営もあるわけでございますが、課税の一般原則の中でどのような主張ができるのか、よく検討をしてまいりたいと考えます。
  132. 及川順郎

    及川順郎君 時間の関係で次の質問に移らせていただきたいと思います。  農業生産活動と農地問題というのは密接不可分でございまして、特に最近は都市の内部あるいは隣接地域で農振の網のかかっているところ、むしろこれは外して、農地としてそのまま残しておくよりはやはり市街地として土地利用した方が今日のような気違いじみた土地高騰に対する対応としても効果があるのではないか、こういうような意見が出、また現状を見ますと、そういうことは非常にうなずける部分があるんですけれども、この点に対して大臣のお考えを承っておきたいと思います。
  133. 鴻巣健治

    政府委員(鴻巣健治君) 市街化区域の中の農地及び農業についてのあり方のお尋ねだと思いますが、これはちょっと古い統計で恐縮でございますが、一九八〇年農業センサスを使ってみますと、三大都市圏の特定の市町村の中の、つまり市街化区域に編入されています特定の市町村の農業に占める重みを見てみますと、農家戸数全体で五十万戸がその市街化区域、三大都市圏の市街化区域の中にございまして、全国の約一割を占めています。  それから、男子つまり男性の基幹的農業従事者数を見てみましても二十一万人、これも全国の男子の基幹的農業従事者数の一〇%強ということでございまして、かなりの重みを占めています。野菜であるとか、あるいは花あるいは芝、そういったものの生産、都市農業としての特徴のある農業を営んでいるというわけでございます。  他方、今御指摘のように、市街化区域は原則として都市計画法上おおむね十年以内に計画的に都市計画地域にすべきところだというような形で編入されていったわけですが、実際には道路がなかなかできない、あるいは下水がうまくいかないということで、そういう都市的な施設がいかないために、農地から宅地への転換もなかなか進まないという現状でございます。  そういう意味で、長期的に見れば市街化すべきところとしてもちろん宅地として供給しなきゃいけないところでございますが、当面、農業も当分の間存在し、かつかなりの重みを占めているという事実を考えて、その農業の継続と、それから長い目で見た都市計画上の市街化すべき地域としての要するに兼ね合いというのを考えながら進めていくことが大事であろうと考えております。
  134. 及川順郎

    及川順郎君 それではまた、突っ込んだ話は次回に移しまして、林業について若干伺いたいと思います。  林業を取り巻く状況というのが非常に厳しい状況であることは、これは事実でございまして、大変林業経営のサイクルが長いという、こういう事情が大きく影響していると思うんですね。最近の木材価格の低下が物すごく著しいと、二十年以上たった樹木がたったの五百円なんというような、考えられないようなこういう価格状況も聞く中で、この木材経営というその経済性だけではこの森林事業というものは考えられない状況に来ていると、こういう状況の中で、やはり保養や水源涵養あるいはまた災害防止等、多目的な森林資源の活用というものが考えられるのではないか、これに対する基本的なスケジュール闘争に今後どのように取り組んでいこうとしているのかという点をまず一点伺いたいと思います。
  135. 松田堯

    政府委員(松田堯君) 昭和五十五年以降、木材価格は低落の一途を続けている、あるいは木材需要そのものも低迷をしておる、一方林業経営費は増加を続けている、そういったような状況の中で大変林業経営厳しい状況にあるわけでございます。そういったような状況の中で、今後の森林、林業のあり方につきまして、林政審議会におきまして林政の基本方向ということで現在いろいろ審議をいただいているところでございます。年内にはその基本方向をお示しいただく、こういったような状況になってございます。
  136. 及川順郎

    及川順郎君 基本的な問題ですね。この公益的な機能といった面での評価すべき部分というのが森林には多い。特に国有林野事業というのは、これは非常にその部分の占めるウエートというのは多いと思うんですね。そういう状況の中で、これまでどおり独立採算制を原則とした特別会計体制でやっていくというような考え方、これはやはり見直すべきではないかと思いますし、先ほども申し上げましたけれども、機能分割化、それから民営化も含めてやはり検討すべきときに来ているのではないか。  あわせて、確かに林野事業の関係が今赤字になっているという状況はよくわかりますけれども、将来の国家百年の大計の上に立って物事な見た場合に、長期展望で見た場合に、このように国が経済的に力をつけている、こういうときにこそ、これは国はこうした森林事業に対して思い切って金な投ずべきではないか、このように思うんですけれども、この点については担当省庁としていかがでしょうか。
  137. 松田堯

    政府委員(松田堯君) 国有林経営が大変財政的に厳しくなっていることは事実でございます。昭和六十年度末の債務負担一兆三千六百億にもなっているわけでございます。これをどのように持っていくか大変な課題でございます。そういう中で、これも林政審議会におきまして、これからの国有林の経営のあり方につきましてつい最近御報告をいただいたところでございます。  その内容につきまして、一つは、なお自主的な経営再建の努力をしていくべきであるということと、もう一つ、今、先生おっしゃいましたように、構造的な問題等抱えているわけだから、これからの国有林の経営のあり方についての基本的あり方について一方において検討をしていきたいと、こういったような二段構えの報告をいただいたところでございます。  そういったような形の中で、国有林のこれからの経営改善を進め、あるいは経営のあり方を求めていきたい、このように考えておるところでございますが、公的側面につきましては、これまでも保安林の造林とか、あるいは林道の開設等につきまして一般会計の繰り入れをいただいているところでございまして、治山事業についてもすべて一般会計の繰り入れによりまして進めているところでございます。そういう中で、これから公的側面についての役割を果たす上におきましての一般会計繰り入れ等についてはなお検討を進めていきたい、このように考えているところでございます。
  138. 及川順郎

    及川順郎君 現状努力はわかりましたけれども現状でもって間に合っているという認識ではなくて、今後さらにこれは充実すべきであると、こういう考え方に対して財政通の大臣いかがでしょうか。
  139. 加藤六月

    国務大臣加藤六月君) 森林、山というのは非常に我が国にとって大切でございますし、そしてまた、我が国の自然的条件、地形等から見ましても山を荒らしてはならない。ところが、現実には山の荒廃が進んでおる。これを何としても防ぐためには、前向きに積極的にいろいろな対策を講じていかなくてはならないと考えておるところでございます。
  140. 及川順郎

    及川順郎君 次に移ります。  松くい虫対策でございますが、これが六十一年度改定時期に入っているわけでございますが、これまで対策の立法化がなされまして、五十二年を初めといたしまして五十七年に改定がなされて、またそれから今回という状況の中でかなり成果は上げていると思いますが、しかしまだ北上している傾向というのはとどまっていない。  私は今、山梨県が所在地でございますけれども、毎年調べております。気象状況もありますけれども、昨年に比べましてことしは多少減っているかな、こういう成果が上がっているかなという感じかするわけですけれども、そうした地元の自治体とあわせましてこの対策を推進している中で言われているのは、まあ現在の法でいきますと、山林と高度公益松林、これに対しては対策の補助が認められているという状況の中で、最近の傾向としましては、山つきの庭園木、それから何百年という非常に文化財的価値を持っている銘木が枯れていく姿というのはまことに寂しい感じがするわけでございまして、この点に対する対策費を拡大して運用できるようにぜひ改正してもらいたいと、こういう要望が強いわけでございますが、この点に対してのお考え方、ぜひ今後の検討の中にこれは入れていただきたい、このように思っているんですけれども大臣いかがでしょうか。
  141. 松田堯

    政府委員(松田堯君) 松くい虫の防除方式といたしましては、薬剤の空中散布によります特別防除、伐倒したものを焼却もしくは粉砕する特別伐倒駆除、それから倒しましてそこに薬剤を散布する伐倒駆除と、いろいろの方式を使って防除に努めているわけでございますが、今御質問のありました庭園等にございます松、これにつきましてもそれらの防除方法によりまして必要な場合には防除事業の対象としているところでございます。
  142. 及川順郎

    及川順郎君 次に、知床国有林の例の伐採問題につきまして、大臣は来年の二月いっぱいかけてこの森林の動物調査を行う、それまで凍結という御発言をされました。しかし、とりようによりますと、調査結果によってはこれは年度内伐採の可能性を残しているということでございまして、やはり自然保護団体の運動というのは、とにかく息長い闘いの中でこの部分を取り外すまで頑張るぞと、こういう姿勢でいるわけですね。  私は、地元営林署の考え方、今の林野事業の状況から見て、かなりこの問題に対しては神経を使って取り組んできているということは十分承知しております。しかし、日本版ナショナルトラストと言われるあの知床の一坪運動、こういう状況の中で自然保護の非常に全国から注目されているところ、それだけにこの世論は全国に広がっている。こういうことを考えますと、この世論を押し切ってまでこれを強行することが林野事業の将来に対して決して私はプラスにはならないんではないか。したがって、これから十カ年計画で今考えておりますこの伐採地域の中からあの地域だけは限定つき地域として外すということを、これを明確にした方がいいんではないかと思いますけれども、この点について御質問をいたしまして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。
  143. 松田堯

    政府委員(松田堯君) 知床の国有林もそのほかの国有林も、森林計画に基づきまして森林の活力化あるいは資源の保続といったようなことを十分に考えながら計画をしているものでございます。知床の国有林につきましても、いろいろの経緯がこれまでございまして、地元の要望等十分に承るなど配慮をしてまいったところでございまして、今回もそのような形の中で御説明をしてきているところでございます。  当面、しっかりした動物生息調査をいたしまして、その上でいつ伐採するか検討していきたい、決めていきたいと、このように考えております。
  144. 加藤六月

    国務大臣加藤六月君) この際、及川委員の御質問に私のちょっと考え方というか経過を申させていただきますと、あのナショナルトラストに対して最大の理解者は私だと思っております。  昭和六十年度税制改正に当たりまして、当時の環境庁長官が熱心に私にラブレターをおよこしになりました。それは二つの問題についての減税措置であったわけでございます。私もその全体をさばくときにいろいろ考えまして、関係省庁の猛烈な反対の中にあのナショナルトラストに対するもろもろの減税、税制措置は私が決定したという、私は自信とうぬぼれかもわかりませんが持っておるわけでございます。  したがいまして、あの知床がある面ではナショナルトラスト運動の一つの聖地のようになってきつつあるということは十分承知いたしておりますが、しからば今のあのナショナルトラスト運動によって行っておる運動のやり方が、及川委員もあるいは現地を見ていただきましたならば十分納得がいくかどうかという問題が一つあると思います。  それからもう一つは、一切手をつけずに残しておくのが本当の保護、保全になるのか、あるいは常に原生林のある面では活性化ということを考えてやっていくのが本当の意味で緑の保全になり原生林の保存になるのかという問題です。  それから三番目に申しておきたいのは、私は先般いろいろ考えてああいう発表をいたしました。その小動物に対する一つの考え方というのは、本当の意味で日本国内の権威者を網羅しましてあらゆる問題に対処するようにしてやっていきたいということでございます。  そこら辺を当参議院の権威のある農林水産委員の先生方にもこの席をかりてはっきり申し上げておきたいと、こう思う次第でございます。
  145. 下田京子

    下田京子君 大臣、私きょうは、特にアメリカの精米業者協会が日本のお米けしからぬよという格好で提訴された、そのことについて質問をしていきます。  御承知のように、全米精米業者協会、RMA、これが去る九月十日、米通商代表部、USTRに提訴した。その内容は、日本の米の輸入制限の撤廃を求めるものであって、七四年の通商法三百一条を発動しなさいと。中身は、第一にお米の輸入制限の関税撤廃かあるいは顕著な自由化、二つ目にはアメリカ産米の日本での大量消費を奨励する措置をとれ、三つ目に、もしくは食糧庁によるアメリカ産米の買い上げを行いなさいと、こういうことであったと思うんですね。  このことにつきまして、既に十月十日、共産党国会議員団が大臣に申し入れも行いました。大臣も、翌九月十一日ですか、既にコメントを発表されておりますけれども、お米というのは国が管理しているものだ、これは国際的にもガット上も認められているものだ、同時に自由化ということになると将来国民に対して大変な不安を与えることになるということで、こういうことは受け入れるべきでないということで、米国政府にも働きかけるようにと、こういうように言いましたときに、大臣はあらゆる努力を行いたい、こう話されたと思うんですけれども、まあきょうの昼のニュース等でUSTRがこのRMAの提訴については却下されたというような報道も聞いているんですけれども大臣日本政府としては米側にどのような説明をされてきたのでしょうか。
  146. 後藤康夫

    政府委員(後藤康夫君) 米の問題につきましては、米国に対しましてこれまでいろいろな機会をとらえまして我が国における米の重要性等説明をし理解を求めてきたところでございますが、特に九月の十日にRMAの申し立てがございましてから、外務大臣がウルグアイで行われましたガットの閣僚会議の場で、ヤイター通商代表あるいはリン農務長官に、我が国におきます米の重要性等にかんがみて、この問題について慎重な配慮を求めるということの会談をされました。  またその後、外務大任は、アメリカにも寄られました際に、シュルツ国務長官とも話し合いをされております。また、松永駐米大使は、米国側と我が方の立場を踏まえて継続的に対応をしていただいておりますし、農林水産省といたしましても、日本大使館をバックアップをいたしまして、米国の通商代表部や農務省等関係方面に日本実情考え方というものについて説明をし、理解を求めてきております。  以上のようなことを踏まえまして、私ども米国政府の慎重な対応を求めるべくあらゆる努力を今まで払ってきたところでございます。
  147. 下田京子

    下田京子君 今度は大臣答えてください。大臣に聞いたわけね。申し入れに行ったときに大臣がやりますよと言ったから、どうやったのと聞いたので。  それで、さっきのニュースの話なんですけれども、USTRがどういう状況の中でそのRMAの申し立てを却下したのか、この辺詳しくは恐らくまだ承知してないんだろうと思うんですけれども、RMAが今までもいろんな形での揺さぶりをかけてきているわけですね。あの報道によれば三条件を出しているわけで、第一の条件というのは日本が援助米として年間百万トン五年間にわたって買い付けてくれ、二つ目には同様に加工用米五十万トンを日本が輸入せよ、三つ目には日本の米市場開放問題をガットの新ラウンドのテーマとせよ、この三条件が受け入れられるならRMAも提訴却下もいい、こういうような話が出ているんですけれども、こういう話が日本政府としてのめるのかどうか、これは大臣に。
  148. 加藤六月

    国務大臣加藤六月君) けさ十時から当委員会に出席させていただき、いろいろ御高見を承っておるところでございます。  アメリカからのいろいろのことは下田委員の方がお詳しいような御質問でもございますけれども、公式にはまだ何も入っておりません。さらに、それ以外いろいろな条件をRMA、ライス・ミラーズ・アソシエーションが日本側に働きかけてきたんではないかというような趣旨の御指摘もございましたけれども、公的には何らそういうものはございません。
  149. 下田京子

    下田京子君 もう一つ、公式にはまだ聞いてないということですが、外務省がその辺の状況について調在していると聞いているんですが、いかがですか。
  150. 後藤康夫

    政府委員(後藤康夫君) きょうの午前中からただいま下田先生お尋ねのような外電が流れておるわけでございますが、これは現地時間の二十二日にヤイター通商代表がRMAの幹部と会談をした。その後、その会談の席上でヤイター代表がどうもこの申し立てを受理しないということを言ったとRMAの幹部が言ったという報道が流れているということでございまして、私ども外務省にも昼休みに聞いてみましたけれども、正式に何ら米国政府がそういうことを決定したとか、あるいはまたそういうことについてUSTRから連絡があったということは全くないということでございます。
  151. 下田京子

    下田京子君 大臣、三条件の話についてのコメントなんですが、正式に言われたら、じゃどうするかということです。援助米年間百万トン、加工用米五十万トン、あるいはガット提訴への話、それに対してきっぱりと拒否されるのかどうか。  これとあわせて、玉置総務庁長官が九月十九日ですか、経済構造調整推進本部の会合で、米国産の米を輸入して開発途上国に援助したらどうなんだというお話しをされて、まあこれは玉置総務長官の何か自論のようなんですけれども、食管問題とかということになるとこれはもう農水大臣の所管でもあるので、その辺はきちっと御説明されていると思うんですけれども、納得したかどうかも含めて御答弁をください。
  152. 加藤六月

    国務大臣加藤六月君) 第一番目の御質問に対しましては、はっきりお答え申し上げます。すべてそういう問題に対して私はノーであります。一切受けつけません。  それから、今御質問の玉置長官の問題でございますが、漏れておるような中身の発言は、私はなかったと記憶しております。それでも、本来援助米につきましては外務省の所管にかかわることでございますが、ちょうど外務大臣が外遊されておられ、官房長官が臨時外務大臣を兼任されておったときの問題ではないかと思うわけでございますけれども、そういう問題についてもすべて不可能であるということを所管外ではあるが若干御説明いたしておきますということを申したような記憶があります。
  153. 下田京子

    下田京子君 玉置総務庁長官には私、直接会ったんですよ。あんなこと言われちゃだめじゃないと言ったら、いや食管を守るためにそのぐらいやらなきゃだめなんだというようなことで話もしていたので、きちっとやっぱり説明していただきたい。  次に、今回のRMAの提訴の背景がどうなのかということなんです。これはきちっと確認したいことなんですけれども、日経新聞に日出食糧庁企画課長が書いておられます。これは個人論文ではなくて政府の考えであると思うんですが、念のために確認させてください。  今回のRMAの三百一条提訴の背景には大きく言って二点ある。一つは米国産の米、これが非常に国際競争に負けて激減している。確かにFAOの政府資料を見ましても、八〇年当時は三百万トンから輸出していたのが現在二百万トンを切っていますよね。逆に、タイ米の方が四百万トンという格好で伸びてきている。それは、タイのお米が非常に安くてアメリカの米が割高になっているということと、それから従来輸出相手国であったインドネシアあるいはインド、韓国などが自給率を高めてきてアメリカの米を買わなくなっている、こういう問題だと。  もう一つは財政事情で、米が輸出助成策をとっている。詳しくは申し上げませんけれども、八五年のやつで、これも政府の資料を見ましたら、目標価格でもみトン当たり二百六十二ドルですね。これが輸出価格といいますか、これはもみトン当たり六十六ドルになっていますから、その差額はマーケティングローン制度という形で米政府の負担になる。農家手取り額の約四分の三が政府の助成策になるわけで、こういうものをとってどんどん輸出競争力をつけていこうと思うわけだけれども、財政的に厳しくてそう長くもやっていけない。こんなこともあって、今回のこういう状況に、RMAが提訴してきたんじゃないか。これは間違いございませんね。
  154. 後藤康夫

    政府委員(後藤康夫君) 今回のRMAの申し立ての背景技にはそのような事情があるというふうに私どもも考えております。
  155. 下田京子

    下田京子君 そうしますと、米側の農業不況打開のために輸出競争力をつけて、それでもって日本に政治的圧力をかけてきているわけですから、自民党の前羽田農相なども行っていらっしゃるようですけれども、何かお土産みたいな格好で譲歩をするようなことがないようにということは、大臣、篤とこれはお願いしておきたいと思います。  そこで、RMAが提訴文であれこれ言っているんですけれども、非常にその中身が不当であるという点で以下質問を申し上げたいんですけれども、特に日本のお米は国際価格に比べて十倍だというものです。明確にしておきたいんですけれども、RMAが提訴文の中で引用されているこの国際価格十倍論ですけれども、これはアメリカのお米との比較ではなくてタイ米との比較である。そうですね。
  156. 後藤康夫

    政府委員(後藤康夫君) 小麦のような国際貿易商品、世界生産の中の大体一五%とか二〇%が貿易されるというものと違いまして、米の場合は生産量の三、四%しか取引がございませんので、国際的に一般的に価格の指標として使っておりますのは、タイ米のボード・オブ・トレードの公表価格というものを使っております。今おっしゃいましたようにタイの価格でございます。
  157. 下田京子

    下田京子君 それで、そのタイの価格で、しかもそれは消費者価格ではなくて生産者価格でございまして、そのタイのお米の品質の特性いかんというふうなことで、時間がないから、私は農水省としてどうなのか、まとめて持ってきてくださいねと言ったら、タイ米の特性ということでこう言われています。  一、粒型が細長い、それから二つ、粒ぞろいが悪い、三つ目に砕け米の混入が多い、四つ目が粉状質粒の混入が多い、で、御飯に炊いたときに粘り気がない、要するにこういう特性を持っているということなんです。日本とタイのお米の形質そのものが違うわけですけれども、この混入割合でいきますと、例えば日本の場合に、規格外米の場合にはもう一万円を割るようなときもあるわけですが、玄米でもって被害粒とか死に米とか合わせて全体の二〇%を超えているというような格好になりますと規格外にもなる。そういうふうになるものだというふうに理解しても差し支えないですね。
  158. 後藤康夫

    政府委員(後藤康夫君) 我が国の規格外米とタイの国際的な価格の指標としてとられておりますいわゆる砕米、ブロークン混入率一〇%というものとの品質を直ちに比較をするというのはちょっと難しいかと思っております。
  159. 下田京子

    下田京子君 それで、最初の形質の方は、タイ米の品質。
  160. 後藤康夫

    政府委員(後藤康夫君) タイ米の形質は、ただいまお話がありましたような形質であるという認識でございます。
  161. 下田京子

    下田京子君 大臣、お聞きのように、これは私は、アメリカ自身が安いタイ米との競争で苦しんでいるのに、そのタイ米を日本のお米と比較して十倍、けしからぬと言うのは、これは大変な自己矛盾で、こういう例自体が大変問題だと思うんです。大臣はタイのお米の生産状況なんかよく御存じだそうですから、私が改めて言うまでもないと思うんですけれども、品質も違うし、それから両国の賃金、物価事情ども全く違うし、そういう中で、タイのお米は、むしろ数年前に比べて、八一年ですともみトン当たりで三百四ドルだったものが、現在は何と百三十七ドルという格好で、もう大変な形でのコストダウンで国際競争力をつけて出回っているというような状況があるわけで、そういったものを全く無視した形でのこのRMAの言い分というのは大変不当だと私は思うんですが、大臣の御認識を聞かせてください。
  162. 加藤六月

    国務大臣加藤六月君) RMAの提訴した文書を手に入れまして、私も二晩がかりで読んでみまして、こういう点が矛盾しておるな、こういう点は例証の誤謬を犯しておるな、こういう点は都合のいい数字だけをとっておるなと、いろいろ勉強したことはあります。そういう過程の中での一つとして、今、下田委員がおっしゃった問題等を考えたこともあります。
  163. 下田京子

    下田京子君 考えたこともあるだけではよくわからないんですが、やっぱり不当だというふうに思っていらっしゃるんでしょうね。しかし、そこはまずいところはまずいときちっとおっしゃらないと、逆にRMA等のそういう不当な言い分を何か大臣がうやむやにしているんではなかろうかということになりまして、米輸入に対する米側の、言ってみれば勇気づけるようなことになりかねないんで、そこは言っておきます。  それから、国際価格十倍のその責任の一端が円高にある。しかも、急激な異常円高にあるという点の問題なんです。  これは農水省の資料ですが、ごらんいただきたいと思います。八五年に日本の生産者価格はもみトン当たり二十三万九千円、これは八六年、ことし産も同じですね。過去三年間同じです。ところが、ドルに直しますと、昨年は九百九十五ドルです。ことしは一千三百八十四ドルです。実に約四〇%もアップしているんですね。こういう点でこの米国産米との価格差を見るときに、異常円高が大きな原因になっている、これはお認めになりますね。
  164. 後藤康夫

    政府委員(後藤康夫君) 他の物資もそうでございますが、円高が進行いたしますと、国内価格、それから国際価格の方のドル建ての価格が同じでございましても、レートの変化によりまして格差は当然増大するわけでございます。
  165. 下田京子

    下田京子君 そうすると、RMAの言い分の不当性というのは、米の内外価格差が為替レートの変動で左右されるということを全くもう抜きにして、あたかも日本の農民の責任であるかのように、あるいは日本の食管制度に原因があるような言い方をしている。大変問題だということを長官もお認めになったんだと思うんです。  そこで長官、先月、日米連のシンポで演説というか、講演されていますね。これは商経アドバイスという新聞に報道されておりますが、今回のアメリカからの反感や輸入要求の背景には、日本がことし生産者米価を据え置いたことが原因の一つであるかのようなことをおっしゃっているんです。これは、私はとんでもないことだと思うんですよ。まさにRMAを勇気づけるものではないかと。そして、むしろ長官が今認めなきゃならないのは、いいですか、そういうことを言う前に、アメリカと日本価格支持制度をきちっと見てくださいよね。日本は一九七七年を一〇〇としたら、この間に米価は八・三%しか上がっていません。ところが、アメリカの場合に、同じく七七年を一〇〇として四四・二%アップしているんです。そうですね。この事実だけでいいです。弁解もう聞いている時間ない。ごめんなさい。
  166. 後藤康夫

    政府委員(後藤康夫君) 数字の推移はそのようになっておると思います。  それから、今お尋ねがございました講演でございますけど、新聞でどう報道されているかわかりませんが、私が申し上げたと記憶いたしておりますのは、RMAの幹部が、生産者米価の決定以後日本の国内で米とか食管についての世論が非常に変わってきた、そこで申し立てをする、そのことが申し立てをする決意の一つの要因になっておるということをRMAの幹部が言ったということを申し上げたつもりでございます。
  167. 下田京子

    下田京子君 そう言ったということの客観報道だけでなくて、しかし日本はという形でそこをぴしっと言ってほしかったですね。いいですか。アメリカの農業保護というのは大変大きいものだと思うんですよ。さっきのマーケティングローン制度によって、聞きますと、八六年度、ことしアメリカのお米を輸出するための財政負担がざっとどのぐらいになるかというと、農家手取り価格がもみトン当たり二百六十二ドルで、実際に売り渡し価格が七十九ドルだと、ざっとやりますとおおよそ二千億ぐらいになるわけですよ。そういう状況にあるんだということをきちっと置かなきゃいけないと思うんです。  なお、説明していただきたかったなと思うのは、消費者価格の格差の問題についてもなんです。農水省が既に資料等発表されていますね、八四年時のものでもって大体一・九倍格差だみたいな。ただ、もう一つの資料見ますと、これは八四年当時の、今のように異常円高でないときのやつを見ますと、日本の場合に、標準価格米小売指標価格ですか、指導価格ですか、ILOの労働統計季報によると、これは精米十キロ当たりにすると三千六百二十八円で、アメリカの場合には、十月現在の小売価格で二千六百円ですよ、精米十キロ。ですから、二年前の数字ですが、当時は一・四倍。間違いないですね。
  168. 後藤康夫

    政府委員(後藤康夫君) ILOの数字によりますと、そういう統計数字になっております。
  169. 下田京子

    下田京子君 さらに、国際価格の比較で十倍だというようなことが、次々にその事実に反することが明らかになっているんですけれども、アメリカの場合で日本のササ、コシなんかに匹敵すると言われている国宝米ですか、これ幾らぐらいするんだということで、農業新聞なんかも書いておりましたが、全中の山口専務理事なんかが言っておりました、一キロ当たり五百十円から五百三十円すると。  それで、政府にもいろいろ聞きましたら、大体アメリカの米というのは、もう品物はばらばら、値段はばらばら、どこで売っているかもわからない、ばらばらだというような状況であるということが言われたわけです。つまり、そのことから言うとお米の商品というのは非常に特性があるんですね。七五年当時で世界のお米の輸出量というのは七百八十万トン程度だったそうなんです。で、八五年で一千百七十万トン、約一千二百万トンと言われておりますけれども、そうするとほぼ日本の今の消費量と大体見合うというような形なんですけれども、もし米を輸入するというような格好になりましたらこれは大変なことになる。つまり、そういうことになりますと、穀物商社、メジャーなどがお米を支配するわけですから、品不足で値段が上がるというような格好での乱高下が出てくる。これは当然のことだと思うんですが、なお御認識を伺います。
  170. 後藤康夫

    政府委員(後藤康夫君) 仮定の問題といたしまして、米の輸入自由化を行って、米の多くを輸入に依存しました場合どういうような問題があろうかということでございますが、世界の貿易量が小麦などと違いまして生産量の三、四%ぐらいでございますので、輸出国の作況いかんによってはこの一億二千万人の我が国の人口にとりまして十分な量の輸入が難しくなるというような事態が生ずることが考えられますし、また国際価格水準そのものが生産量に比べまして貿易量が小そうございますから、かなり乱高下をするということが考えられます。  また、国内の生産者販売価格が低落をする、あるいは乱高下をするというようなことから、国内の水田農業に対する影響というものも大きく出てまいると思いますし、いざ生産増強が必要になりましたときに、水田と申しますものは数年放置をいたしますとなかなか復元が難しいということがございます。  そのほか、農村地域におきますいろんな雇用問題というようなことも関連をしてまいろうかというふうに考えております。
  171. 下田京子

    下田京子君 私の持ち時間ないんで、大臣最後に、さっきも食管の問題で、運営面で改善していくべきはしていきたいし、国民の理解と納得を得るんだと、こうおっしゃいましたが、国民のどの層の納得を得るのかということが問題になるわけですよ。それで、市場原理、市場原理とおっしゃっておりますけれども、この市場原理ということになると、資本が入ってくると今言ったような形での心配があるんです。この論議は別に譲ります。そこの認識をきちっとしておいてください。  そこで、最後に言いたいのは、RMAの提訴の問題でUSTRは却下されたということなんですけれども、今後どういう形で出てくるかわかりません。大臣にきちっと押さえていただいて、自主的な立場で外交交渉を進めていただきたいんです。  そこで言いたいのが、現在もなおガット提訴に十二品目を行っていますよね。同時に、三百一条に基づくたばこ協議ですか、持ち込んでいって、それでもって一年たって関税ゼロにしちゃいましたよね。そういうことをやりながら、アメリカではどうかというと、あえて私が言うまでもなく大臣御承知だと思うんですけれども、ウエーバーをガットで認めさせちゃって、これというのはアメリカの農業調整法二十二条で何でもかんでも不都合だと思ったやつは勝手に入れられるんですよね。そして、輸入規制をかけられるんですよ。かつて一九七四年までは小麦、大麦、小麦製品等全部入っていたんだということを押さえた上で、ちゃんと外交交渉をやって、日本の米を守ってください。決意を聞かせてください。
  172. 加藤六月

    国務大臣加藤六月君) 食管制度の問題につきましては、国民各界各層の理解をいただいていかないといけないということでございます。  それから私、農水大臣に就任して以来一番最初にあったのは、ハワイにおける八月十一日、十二日の日米貿易会議等があります。そのときにも、眞木経済局長が行くということにつきまして、アメリカのウエーバー問題についてもはっきりこちら側として言ったらどうだと、あるいはまた逆に、国民皆さんに我が国だけが十二品目あるいは二十二品目を非自由化しておるというようにとられてはいけないよと、アメリカも十六品目についてウエーバーをかけておると、あるいはEC諸国は八十数品目について国境保護措置をしておるということを国民皆さんにもよくPRし、理解しておいてもらう必要があるのではないかということをかねがね省内外で私は言っておるところでございます。
  173. 橋本敦

    橋本敦君 今の下田議員の質問に関連をして一言さらに大臣の所見を伺っておきたいんですが、まさに米の自由化ということでは農民の挙げての強い反対があるわけですね。    〔委員長退席、理事北修二君着席〕 そういう中で、今問題になった提訴が却下されたという公電には接してないというお話ですけれども、そういう情報はどんどんテレビにも入っておるわけです。伝えられるとおり却下されたということであれば、それは日本政府としては好ましいことであるとはっきり言っていいのじゃないかと思いますが、いかがお考えですか。
  174. 加藤六月

    国務大臣加藤六月君) 好ましいことでもありますし、さらに一面、我々はさらに米について生産性の向上ということと、コストの低減ということと、おいしい米を日本の農民にもしっかりつくってもらってという、逆に国内においてやらなくてはならない多くの問題が私の頭の中には浮かんでまいります。
  175. 橋本敦

    橋本敦君 後で浮かんできている問題はじっくりまた論議をすべき問題ですね。  そこで大臣、アメリカがかさにかかって米の輸入を急激にこういった状況で持ち出してきている背景、先ほどお話がありましたが、もう一つ日本政府の姿勢にかかわる背景としては、いわゆる経構研の前川リポート、これでもって日本産業の構造の転換、輸入型への転換ということを打ち出している。ここでも基幹農作物以外の輸入促進という方向が出されておりますが、これが中曽根総理がアメリカに行かれたときにレーガン大統領と話をされたということで、米側にとっては日本政府の対米公約だというように受け取られているのではないか、こういうことが今の提訴を含む対日、米輸入圧力ということになっておる背景の一つにある。そういう意味では日本政府に全然責任がないわけじゃないというように私は感じておりますが、大臣はいかがお考えですか。
  176. 後藤康夫

    政府委員(後藤康夫君) 最初に事務的なことについて一言だけ御説明をさせていただきたいと思いますが、アメリカの民間団体であります全米精米業者協会というところが、アメリカの通商法という国内法に基づいて手続上の申し立てをやっておるということでございまして、アメリカ政府日本に米の市場開放を求めているという状態にまだなっておりません。そういう状態に今ないということだけ一言御説明させていただきます。
  177. 加藤六月

    国務大臣加藤六月君) 基幹作物中の基幹作物は米であります。
  178. 橋本敦

    橋本敦君 大臣は、政府の広報誌ですが、「時の動き」という最近の雑誌がございまして、ここで農政についての抱負を語っていらっしゃる。私もこれを読ませていただいたんですが、この中で穀物の自給率の問題に触れまして、この問題はこのままでいいかということの質問に対して、「先進国の中で穀物の自給率が下がっておるのは、日本だけであり、三二%となっています。また、食糧全体の自給率をカロリーベースで申しますと、五三%ないし五四%に下がってきておる。」と、こういう事実を指摘された上で、イギリスあるいはまたその他の諸国は「戦後三十年間の努力でぐっと自給率を上げてきた」と、こういうことにも学んで、この日本でも「何でも自給するというわけにはいきませんが、この極端に自給率の低いものについて、生産性の向上を図りつつできるだけ自給率を上げていく努力をすることが大切」だと、こうおっしゃっておりますが、このお考えは変わりないわけですね。
  179. 加藤六月

    国務大臣加藤六月君) 変わりございません。  さらにつけ加えますと、私は今から二十年前に国会議員になったわけでございますけれども、当時は七〇%ぐらいであったのを何としても八〇%ぐらいに上げなくてはならないという意欲に燃えておったときがあったんでございますということ等もそのときには言ったわけでございますが、編集の都合上カットされたのではないかと思います。
  180. 橋本敦

    橋本敦君 食料の、特に穀物の自給率の向上については総理府の一九八四年九日実施の世論調査でも、「国内で自給が可能なものは、できるだけ自給するようにした方がよい」というのが七五%、「国産品よりも安ければ、外国のものを輸入するようにした方がよい」というのが一四・一%しかない。やっぱり国民意識は、日本農業を守れ、自給率を高めよということになっているわけですから、こういう観点から見ても自給率の向上というのは大事な課題である。  そこで、もう一度先ほどの前川リポートに戻るわけですが、大臣はこの前川さんともいろいろ議論をしたとおっしゃるんですけれども、どういう点をどう議論なさったのか。私に言わしめれば、この前川リポートは、率直に言って基幹的な農作物を除いて他の品目については着実に輸入の拡大を図れ、こう言っているわけです。だから、そういう意味では、基幹的な農作物を何にするかという議論は残るけれども、その趣旨は、これはもう自給率の問題じゃなくて輸入を拡大をせよ、こう言っているわけですから、大臣のおっしゃる趣旨と矛盾するのではないか、これはもうはっきりと前川リポートに大臣の立場としては物を言われる必要があると思うんですがいかがですか。
  181. 加藤六月

    国務大臣加藤六月君) 政府と党の中で今、経済構造調整推進会議というのが設置されております。そして、総理がこれは本部長におなりになったわけでございますけれども、ここでもいろいろ勉強しながら、着実に経済構造調整推進はやっていかなくちゃならぬ。それは、我が国が今後国際的に協調し貢献していく分野に対して、はっきりそれを打ち出していかなくてはならない。我が国が孤立し、世界から非難されるような立場にしてはならない。そのためには、私は国民の英知と努力を結集してこの問題は乗り切っていかなくちゃならぬという一つの大きな前提を認識し、その前提の上に立ってやっていかなくてはならぬ、こう思っております。  そういう中で、基幹的農産物とは何と何ぞやという問題は、また若干、こういう幅か、こういうものかということでの御議論はありました。しかし、四方を海に囲まれた我が日本として、「時の動き」の中にも若干言っておるところでございますけれども、私は全体的な食料、国民の食べる食料の自給率というものは向上させていかなくてはならない。ただ、戦後四十何年間の我が国内における食料の自給率、これを品目別に見た場合に、自給率の向上したものと自給率が下がったものと両方分極化しつつある。そこら辺の問題を、きょう午前中からただいままで御意見、御指摘、御質問がありましたこれからの農政を考える場合に、両極端化してきたものをどう調整してやっていくかというところに、ある面では農政のそれこそ英知と努力を結集していかなくてはならぬと考えておるところでございます。
  182. 橋本敦

    橋本敦君 この問題で長く時間をとるわけにいかないんですが、要するに前川レポートで言っていることとの関係で言えば、大臣がおっしゃった基幹作物中の基幹作物である米については、これは輸入絶対反対だ。そして、その他の食糧穀物について自給率を向上させるという、まあこういう方針ははっきり持っているという意味において、この点に抵触する限りにおいては前川レポートは農水省としては素直にこれは受け取らぬということをおっしゃったというふうに理解してよろしいですか。
  183. 加藤六月

    国務大臣加藤六月君) 素直に受け取る受け取らぬではなくして、経済構造調整でもう既に農水大臣である私もそのメンバーとして推進をいたしておるところでございます。
  184. 橋本敦

    橋本敦君 またややこしくなった。どっち向いて推進しているんですか。やっぱりここに前川レポートというのが、現在日本の農政に持っている危険性があるということが証明明されたということを言っておきましょう。  そこで、時間がありませんから具体的な問題に入って、畑作物、これの価格が農民の皆さんの要求にもかかわらず引き下げられたということはまことに遺憾でありますが、サトウキビの問題、きょうここでも委員会で議論になりました、この問題について質問をしたいと思うんです。  この問題について、生産農民の皆さんは、トン当たり二万六千円の要求ということをお出しになって、私は当然だと思うんですが、まず農水省は、これは御存じのとおりですが、農家手取りが最近は二万一千四百七十円、これにずっと五十七年から据え置かれてきた。そして、農家の生産費、これをとってみますと、沖縄では大体二万六千三百円あるいは二万六千百円という、こういう数字になっていますから、生産費から比べてみましても平均して三千以上マイナスになっているという事実は、これはもう農水省の統計でも明らかですが、間違いありませんね。    〔理事北修二君退席、委員長着席〕
  185. 谷野陽

    政府委員(谷野陽君) サトウキビの価格につきましては、ただいま御指摘のとおりこの数年間据え置きで経過をしているわけでございます。正確に申しますと、手取りベースで申しますと昭和五十八年、五十九年、六十年の三カ年間二万一千四百七十円、トン当たりでございますが、という数字であるということはおっしゃるとおりでございます。また、トン当たりの第二次生産費につきましては、昭和六十年の数字で見ますと、鹿児島では二万二千七十三円、沖縄では二万六千百三十七円という数字が出ているということも御指摘のとおりでございます。
  186. 橋本敦

    橋本敦君 そこで、このサトウキビの価格については農民の皆さんが基本的におっしゃっている生産費を償う所得補償方式でやるのが当然だと思いますが、きょうは時間ありませんのでそこまでの議論はしませんけれども、法律の建前そのものから見まして、砂糖の価格安定等に関する法律で、御存じのとおり二十一条は、はっきりと最低生産者価格について、これは農業パリティ指数に基づくということを基準としながら、物価その他の経済事情も参酌し、その次にはっきりと「再生産を確保することを旨として」決めなくちゃならぬと、こう書いてありますね。だから、「再生産を確保する」ということになりますと、生産費も償わなきゃ生産意欲が落ちるし、実際再生産の確保はないわけですから、法の趣旨からいっても今お認めになった生産費さえ償っていないという価格は、少なくとも所得補償方式をとるまでもなし、この二十一条の趣旨からいって早急に引き上げなくちゃならぬというのは法の要請ではありませんか。
  187. 谷野陽

    政府委員(谷野陽君) 法律にさような規定があることは私どもも十分承知をいたしております。で、法律の規定で書いてございますのは、今おっしゃいましたように「農業パリティ指数に基づき算出される価格を基準とし、物価その他の経済事情を参酌し」決定する。で、再生産の問題がその後につながっているわけでございます。  私どもは、具体的な係数といたしましては、農業パリティ指数というものを基本といたしまして、それに生産性向上の動向その他の事情を総合勘案して従来決定をしてきたわけでございまして、かような価格に基づきまして既に決定をいたしましたものでございますが、てん菜の生産につきましてはかなり増加をしてきておりますし、甘蔗につきましてもおおむねその生産というものは維持をされてきておる。全体として日本の砂糖の生産は伸びてきております。自給率も当初十年ほど前には一五%から二〇%程度であったものが現在三三%という水準に達しておるわけでございまして、私どもは今までの取り扱いも法の趣旨に反していないというふうに思っております。
  188. 橋本敦

    橋本敦君 大臣に答えていただきたいのですが、農水省も生産費を償っていないことは認めているわけですよね。農民の計算ではトン当たり六千円という声もあるが、今の農水省の数字でもトン当たり三千円生産費を償っていないんですから、まあ言ってみれば客観的に赤字だというのですよ、生産それ自体が。ところが、法の趣旨は再生産を確保することを旨としてやれということです。だから、そういう意味では生産費を償う所得補償方式そのものではないけれども、法の趣旨は生産費を償うということをやっぱり大事な基準にして考えて、この趣旨を生かすならば早くこの差額がマイナスでないようにしていかなくちゃならぬという要請が考え方としてあるということは法の解釈として当然じゃないんですか、大臣。——いや、大臣に。もうあなたの答弁わかっているから、大臣に。
  189. 谷野陽

    政府委員(谷野陽君) 法律の解釈の問題でございますので一言御説明をさせていただきますが、もう申すまでもないことでございますが、サトウキビの価格に関します法律の規定は、私どもは生産費所得補償方式ではなくパリティ基準の問題であるというふうに考えております。で、そういうふうにやはり法律の規定の仕方に差があるわけでございますから、それを生産費所得補償方式と同じように取り扱わなければ法律の趣旨に反するというふうに私どもは解釈できないのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  190. 橋本敦

    橋本敦君 あなたそんなこと言ったら、そしたらそれはどういうふうに解釈するのですか。「甘味資源作物の再生産を確保することを旨として定めるものとする。」と書いてある。これはどういうように解釈するのですか。これはあってもなくてもいい条文ですか。前の農業パリティ方式だけあなた読んでだよ、あと読まないというのはそんな勝手な法解釈はないよ。これはどういう意味なんですか。これは法的に意味があるんですか、ないんですか。
  191. 谷野陽

    政府委員(谷野陽君) 先ほど御説明を申し上げましたように、したがいましてそのような方式によりまして例えば砂糖の生産がどんどん落ちていくというような現象が明らかでございますれば、それは結果としてそこに定められております再生産の確保が行われていないと、その旨が果たされていないと、こういうことになるわけでございます。しかしながら、実際の生産の状況を見ますと、先ほど御説明を申し上げましたようなことでございますので、私どもはそういう趣旨が守られてきておるというふうに理解をしておるわけでございます。
  192. 橋本敦

    橋本敦君 これは大臣、とんでもない話ですよ。農家の皆さんが赤字になって借金にまみれて、それでも必死になって汗水垂らして生産を上げる。そうしたら、それは生産量がふえているから、再生産確保されているから生産費を償う方向に持っていかぬでもいい。何ということを言うんですか、あなた。農民の犠牲でどんどん生産をふやしていることを平気で肯定するような冷たい農政でいいんですか。法律はそんなことを私は言ってないと思いますよ。そういう冷たい農政で大臣いいんですか。できるだけ農家の犠牲を少なくして生産費を償うようにしてあげると、所得補償方式でなくても二十一条をそう理解するのは当たり前じゃないんですか。これはもう承知できませんね、その答弁は。どうですか、大臣
  193. 加藤六月

    国務大臣加藤六月君) 橋本委員は弁護士でいらっしゃいます。そこら辺の法律はよくお読みになると思いますが、今お読みいただいた条項の中に「旨」という言葉があるところに意味深長なものがあると御理解いただければありがたいと思います。
  194. 橋本敦

    橋本敦君 もうあと二分しかないから大臣と論争できないのが残念なんですが、私が言いたいのは、この二十一条の趣旨からいっても、鹿児島、沖縄、ことしは干ばつで減産が三割か、かなりのものだということを農水省も調査で知っていらっしゃると思いますが、そういう状況であることからいっても、それからさらに基盤整備が進んでいない。例えばかんがいについて言いますと、沖縄県の資料でも要整備量に対して一三・三%、それから鹿児島の場合、南西諸島は一二・五%ということで、基盤整備も進んでいない。農家は大変な苦労をしているということです。  こういう状況ですから、問題の糖度によるブリックススライド制度を今すぐ導入するということになりますと、これから将来ブリックスを高めるための指導、かんがい整備、基盤整備が進めば別ですが、現状においては大変なやっぱり収入減になるということも農家にとっては不安材料になっておりますし、そして現在、こういった干ばつの被害という状況の中で価格が引き下げられるということになりますと、それこそ生産意欲を失う。先ほどあなたがおっしゃった、来年生産が伸びるかどうかわかりませんよ、こういう状況ですから。  最後に私が言いたいのは、あしたお決めになるというキビの価格については、農民の要求を十分しんしゃくをして、引き下げてくれるなと言っている声を十分聞いて、慎重な判断をしていただきたい。このことを最後大臣にお願いして質問を終わります。
  195. 加藤六月

    国務大臣加藤六月君) 先般来、沖縄県の知事さんを初め多くの皆さん方から御要望を聞き、また本日は、昼食の間に奄美大島関係の皆さん方が来られましてるる苦しいお立場を御開陳になりました。そして、本日の午前中以来出ておりましたところの干ばつによる被害という問題に対する御議論等も十分承っております。すべてそういうものを総合的に勘案しながら決定していきたい、こう思っておるところでございます。
  196. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 私は、いよいよあしたにサトウキビの価格決定が迫りつつある、それから持ち時間も少ない、こういう焦りを今感じながら立っておるわけであります。  それで、私はいろいろとお聞きしたいこともたくさんあります。時間をかけてやり取りもしたいんですが、そういうことを一応抜きにして、やっぱり甘味資源の問題でありますから、その甘味が甘いのか辛いのか、その味をすぐ味わえるという、そういう短兵急の、短距離で質問をいたしたいと思いますので、御答弁もそのようにひとつお願いいたしたいと思います。  まず、そういった認識に立って言いたいことは、基幹作物ということに対する考え方であります。  我が国の基幹作物といえば、もう例外なくそれはお米であるということは、だれも異存はないでしょう。ところが、その米を守るために食管法があり、あるいはその調節弁であるところの減反政策、それに伴うところのまた奨励費とかあるわけでありますが、ところで今度の米価、生産者米価の決定につきましても、いろいろ過程において問題があったということは今さら申し上げるまでもありません。最終的には、やっぱり基幹作物であるこの米の問題は、どうしてもという政治的配慮から据え置きになったいきさつもよく存じ上げております。  ところで、沖縄における基的作物はサトウキビであることは、これはどなたもお認めになると思います。ところが、そのサトウキビは、米のように減反政策とかあるいは特別に守っていくという、こういう配慮が私たちの立場からしますと冷たい、こう言わざる得ないんです。  それで、大臣にお尋ねしますが、午前中からいろいろとこの問題も触れてくださって大変心強く思っておるんですが、大臣のお言葉に、総合的に勘案して価格を決めるという、この文言が、非常に私はいろいろな意味においてその内容には含みがあると思います。  そこで私は、その見地に立ちまして、沖縄のサトウキビは他にかえがたい、どう沖縄の将来が、日本の将来が変わろうが、やっぱりサトウキビは基幹作物、こういうある面においては宿命的な面もあるわけであります。そこで私は、基幹作物に値するということを駆け足で裏づけたいと思いますが、まずサトウキビの総生産額は農業総生産額全体の三三%を占めておるということが一つ。第二点に、キビ作農家戸数が全農家戸数の八六%を占めておるという点。第三点には、収穫面積が全耕地面積の約五〇%を占めておるという事実。こういうふうに主なる点を挙げますと言えるのでありますが、このような事実を踏まえて、しかもそれが基幹作物であるというならば、国としてどう配慮すべきであるか、このことが、愛情ある行政そして農政の責任者としての大臣、どう沖縄を認識し、この基幹作物を理解して、それに対応してくださるかという、これが大事な問題であると思っております。  そこで、先ほど来も話がありましたが、この点はぜひ確認しておきたい。法の解釈はどうあろうと、生産者価格が保障されておるということ、このことはいかなる理屈をもってしても、本当に基幹作物であるという前提に立つならば、そして愛情ある政治を、こういう前提に立つならば、このことはきちっと認めてもらわなければいけないと私は思うんですが、大臣いかがですか。
  197. 加藤六月

    国務大臣加藤六月君) 私は、沖縄のサトウキビ問題については、いつも八割そして七割という数字を頭に入れております。沖縄の全農家の九割の方がこれに関与され、そしてまた全耕地面積の七割を占めておるという問題で沖縄のサトウキビ問題をとらえようといたしておるところであります。  それからまた、特別な個人として感じを持っておりますのは、一昨日も衆議院でちょっと申し上げたんでありますけれども、沖縄にはサトウキビしか生産ができないのかなという自然的条件という問題であります。  それからまた、ある面でいいますと、沖縄のサトウキビも生産性の向上と品質の改善ということも努めてもらわないといけないんではないかな、こういった感情を、気持ちを持ちながら今回の価格決定に臨みたい、こう思っております。
  198. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 沖縄のサトウキビは前後三年据え置かれておるという、まずこの事実ですね。ところが、常に政府試算の生産費を大幅に下回っておるというまずその事実、これ事実ですから。それいろいろ理由をおっしゃるでしょう。私も私なりに考えております。とにかくこの政府試算の生産費を大幅に下回っておると。  そうすると、生産費さえも加えない、この状況に置かれておるという実情をどう認識し、どうとらえ、どう対策を持つか、ここに政治ありと言いたいわけでありますが、最低生産者価格、まず何としてもこれを否定するわけにはいかぬでしょう。認めてもらわなければいかぬでしょう。それは具体的な裏づけということは、あるいはまた弁解の余地もあるかもしれませんが。そこで、この最低生産費価格ということについては、すなわち生産費と所得を補償して再生産が十分確保できる価格としてと。このことはどんなに崩そうとされたって崩してもらったら困る、また崩させてはいかぬと我々は言うわけなんです。  こういうきちっとした一つの原則に立って、甘味資源を守る全国共闘会議からトン当たり二万六千円をずばり要求しておりますね。私は、それは本当であると信じたい、駆け引きのない、掛け値のない。ところが、私は生産費を大幅に下回る、こう申し上げましたが、ことしの十月九日に沖縄県総合事務局農林水産部、六十年度サトウキビのトン当たり生産費は二万六千一百三十七円で、前年より八百二十一円、三・二%増加と発表しておるんですよ。これに比較しましてもはるかに生産費、この手取りが落ち込んでおるこの事実を私は大事にしたいんです。ですから、私が申し上げることは、ただ架空の数字をもって言っているのではない。責任あるこの発表に基づいて、生産費を下回っておるという、ここを最低限、だから生産費を補う義務があると私は一応主張するわけです。  そして、その弁解の一、二としてこれまで政府側からよく言われておりますことは、生産コストが高過ぎるということをよく指摘されておるんです。なぜだろうかというところにまた問題があるんですね。高過ぎる、まあ理由もいろいろあります。まず、基盤整備の立ちおくれ、機械化の立ちおくれ、台風、干ばつ、そして病虫害、こういうもろもろの天災、人災。私は、このごろ政治災という言葉も使っておるんですが、天災、人災、政治災、これが積み重なってますます踏んだりけったりということになるんだと、なっておるんだと、こう言いたいです。  それでは、本当にこの基盤整備がおくれておるかということも、第二次振計の目標、もう第二次振計の後半に差しかかっておるわけでありますが、六十六年が十年目でありますから、基盤整備のおくれはこう示しておりますよ。圃場が七〇%——六十六年の目標なんです。に対して二二・四%現在いっておる。かんがい排水が五二%の目標に対して一三・三%。かんがい施設の四〇%の目標に対して七・七%。製造七〇%の目標に対して三六・六%。これはこの目標の中では比較的プラスになっておるという、進んでおるという、これが基盤整備現状でありますよ。  ですから、コストが高くついておると指摘されたって、これは生産農家として考えるべき点もあるでありましょうかね、政府責任はないのかと、こういうことを強くまた主張したいんです。台風十四号の被害といって既に二万トンの減収だと言っておるわけなんですね。このように予期しない天災、人災が積もり積もってそのような価格になっておるということを思うたときに、もう黙っておってはいけないと、こう思うわけなんです。  そこで大臣、あすに迫った価格はどの辺までは持っていこうとお考えですか。
  199. 谷野陽

    政府委員(谷野陽君) ただいま御指摘がございましたように、沖縄のサトウキビは、面積で申しましても、また所得その他の点から申しましても、基幹作物という名にふさわしい重要な地位を占めておるというふうに私どもも理解をしておるわけでございます。将来ともにこのような重要な地位を占めたサトウキビ生産が行われていくためには、私どもは、今御質問の中でもお話がございましたように、より生産性を高めていくこともまた重要であろうというふうに考えております。  沖縄と鹿児島県と両方でサトウキビが生産されておるわけでございますが、双方の生産費の調査を比較いたしましても、沖縄の方が例えば労働時間で鹿児島が百十九時間に対しまして沖縄は百七十七時間というようなことで五十数時間の違いがあるわけでございます。そのまたよって来るゆえんは、ただいま御質問の中にもございましたように、これに対応いたします基盤整備の問題でございますとか、あるいは生産管理につきましては、沖縄では剥葉、葉っぱをむしるという特別の栽培管理の慣行がございまして、そのような栽培管理の方法がどういう意味を持つかというようないろいろな議論が今まで行われてきておるわけでございます。  私は、長期的な方向といたしましては、これらの諸問題を解決し、より効率的な生産を行っていかなければならないというふうに考えておるわけでございますけれども、今年度のサトウキビ価格決定に当たりましては、先ほど来お話がいろいろございますように、南西諸島、沖縄県の基幹作物であって大変重要であるということ、それから本年は干ばつの被害もあるということを念頭に置きながら、法律の定めるところに従いまして、農業パリティ指数に基づき算出化される価格を基準といたしまして、物価その他の経済事情を参酌して、慎重に総合的に勘案をいたしまして決定してまいりたいというふうに考えております。
  200. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 今の御答弁にもありました総合的に勘案ということで、これはもう非常に受けとめ方によっては逃げ道にもなるし、また生産者の立場からすると大きな期待感も寄せるわけでありますが、どうかひとつ沖縄の現状をしっかり詰めて、政府責任はないのかというその点を特に感じていただかなければもう救う道がない。いわゆる本土の物差しで沖縄をはかったんじゃ、これは遅々として——本土はさらに前進をするわけですから。それをどうしても本土並みに持っていくためには、二倍も三倍もフルスピードで駆けないというと追いつかないと、こういうことになるわけであります。  特に、サトウキビは、日本農業の立場からも全部これは消すわけにはいかないはずです。沖縄の特殊事情からも、これはどうしても、多様化の問題もまたその面からはあるわけですが、ところがどうしても残す宿命を持っておるサトウキビ、パインの問題にしても、こういうことを改めてひとつ御理解願いまして、一歩も二歩も縮めていただかなければいけない。相当農業面においては、もう沖縄は、派生的な部分的な多様化はまた亜熱帯農業産業という立場からありますけれども、どうしてもサトウキビを消すわけにはいかない。  このことを思うときに、しかもそれが基幹作目であるという前提であるならば、何としてもこれを守ってもらわなければいけない、こう思うんです、沖縄の特殊事情上。基地の被害、基地面積はさらに縮小しても、量も質も広がりつつあるという、こういう犠牲を補うのは一体何なのか、抜本的には基地撤去でありますが、どうかひとつ、そういった特殊事情という言葉でも詰めるでしょう、いろいろな形での特殊事情配慮してもらわなければいけませんよ。  そこで、大臣にこの問題について、大臣は沖縄のサトウキビ、鹿児島も含めて結構でありますが、我が国のサトウキビ農業の将来については、その内外価格差をあるいは生産条件の厳しさ等を踏まえて、どのような展望を持っておられるのか。日本のこの甘味資源のサトウキビ作物について、どのように将来を見つめておられるのか。そのことを大臣にまずお聞きしたい。
  201. 加藤六月

    国務大臣加藤六月君) 甘味資源全体につきましては、先ほどもちょっと触れましたが、生産性の向上ということと品質の改善ということにさらに努力をしていただきたい。そしてまた、ぎりぎりの自給率は国内においてぜひ確保していきたい、こういう気持ちでございます。
  202. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 この問題も、サトウキビの問題、非常に舌足らずの感じを持っておりますが、もう一つ基幹作物の一つにパイナップルがありますが、これがまた最近における国際的な円高・ドル安の直撃を受けましてひどい目に遭っておるわけですが、それに対する第一点は、沖縄のパイナップル産業の円高による現在の危機に政府とされてどのように対応しておられるか、あるいはどう対応しようとしておられるか、現在及び将来に向けて、その点をお聞きしたい。
  203. 加藤六月

    国務大臣加藤六月君) パイナップルは沖細県農業の基幹作物の一つであり、パイナップル産業地域経済にとって重要な分野であるという認識をいたしております。そして、今御指摘がございましたように、近年岳詰需要の停滞ということと、円高の影響により沖縄県産パイナップル缶詰の競争力が低下する等、極めて厳しい環境下に置かれておるという認識をいたしております。  このような沖縄県のパイナップル産業の活性化を図るために、パイナップル作の生産性の向上及び品質の改善を図るとともに、原料の安定供給、加工の近代化が図られてきておるところでございますが、今後は需要の動向等にも即しまして果汁の生産を検討していくことが必要であると考えております。いずれにしましても、沖縄県のパイナップル産業の重要性を念頭に置きつつ各般の施策を展開していかなくてはならないと考えておるところでございます。
  204. 山田耕三郎

    山田耕三郎君 先ほどの質問で若干お触れになりました点もございますが、私は知床の原生林問題に関連をしてお尋ねいたします。  加藤農林水産大臣は、御就任以来本件については慎重に対応してこられ、関係者に対しましても、慎重を期して第三者も納得し得る調査をと指示しておいでになるように承っております。その結果、クマゲラの生息地に近いということで白神山地の伐採を五カ年間見合わすことを決定され、今回さらにまた、たとえ短期間ではありましても、動物調査のため知床国有林の伐採の延期を決定されましたことは適切な措置と賛意を表するものであります。  さらに大臣は、一般論だがとの前置きをして、これからは木材を生産する施業林と自然を守る森林とに分けて別々に対応しなければならないとも語っておられます。まことに卓見と存じます。自然を守る森林はそれだけ公益的機能を重視する必要があるからであります。  知床の原生林については、現地の営林署職員の皆さんの中にも、切らずに済めば残したいとの意見もあるように聞いております。私自身は、知床一帯の森林は経済性よりも自然性が優先をされる地域と考えるのでありますが、林野庁とされましては、経済性を優先する地域と考えておいでになるのか、それとも自然性を優先すべき地域と考えておいでになりますのか、端的にいずれを選択されるのか御所見を承りたいと思います。
  205. 松田堯

    政府委員(松田堯君) 御高承のとおり、森林には木材生産、国土保全、水資源の涵養等々多面的な機能があるわけでございます。国有林の経営に当たりましては、地域施業計画、これは森林の取り扱いを決める計画でございますが、その中におきまして森林の置かれております自然的、社会的な諸条件を十分踏まえる中での森林の取り扱い方を決めているわけでございます。  知床も、そういった意味におきましては、いろいろの条件にある森林が存在するわけでございますが、三万九千ヘクタールの森林のうち、国有林が約九割、三万六千ヘクタールを占めているわけでございます。そのうち自然環境の保全が強く要請されている森林、これを私どもは二万三千ヘクタールの線引きを行いまして、基本的には人手を加えないで将来とも原生的な状態が保全されるような取り扱いをするように決めております。  残りの約四割に相当いたします一万三千ヘクタールでございますが、この森林につきましては、自然環境の保全に十分に配慮しながら、木材資源の利用も考慮し、森林の多様な機能を総合的に発揮することによりまして地元振興にも資したいと、そういう取り扱いをいたしたいということで線引きを行っているところでございます。
  206. 山田耕三郎

    山田耕三郎君 先ほどのお答えにも、森林の活性化を図るという必要性を強調しておいでになりました。大きな木を切ることは、一時的には森林を壊すように見えるが、伐採により森の中に光が入り、それまで大きな木のために成長が抑えられておった周辺の若木が急速に成長をして森林が若返りします、こういう御意見が林野庁の代表的な意見のようです。  私は先般、知床の原生林というものを一人でどなたにも妨げられることなく丹念に調査をいたしてまいりました。もちろん一人のことですし、素人のことですから限度はございます。しかし、私なりに考えてみて、原生林の生態系だとか、もっといえば自然の摂理というものはそんな簡単なものではなさそうに思えました。例えば、ここは何回か手が入っております。だから切り株がございます。切り株の周辺には若木は育っておりません。むしろそこはササが群生をいたしておりまして、他の植物を排除をいたしておりますように思います。風倒木のあるところには、本来は木材は腐りにくいものだと言われておりますが、コケ類やキノコが生えておりましてそれを促進をしておるように思え、その周辺には若木が育っておりますし、苗木はいわば群生をし、ササはまばらであります。  こういう実態が至るところに見受けられますのでございますけれども、こういったことはやっぱり私たちが考えていかなければならない問題なのではないか。原生林の中では生きとし生けるもの、例えば植物、大動物、昆虫額のような小動物、さらにはバクテリアに至りますまでが神秘的に絡み合って、お互いに相補いながら種の保存と繁栄のために機能をしておる場所のように思えてなりません。光を当てればよいという簡単なものでなしに、そこでは生物が生存するための湿度も必要であります。温度も必要であります等、それらは人間の力ではなかなか整えることのできない、いわゆる自然の摂理のように思えてなりませんけれども、このことを考えていかなければ大変な取り返しのつかないことにしてしまうのではないか、このように思いましたのが一つございます。  そして、考えてみますと、あの土地から何百年間蓄積をしてきた養分を風倒木は一切残らず土地に返してしまいます。人間がそれを伐採をして商品にいたしますと、それは大地から収奪をしてしまうことになってしまいます。森にとってどちらが有用であるかはもう比較するに至らない、このように私は考えておるのでございますけれども、その辺のところが大変重要だと思います。  もう一つの問題は、人手を加えることにより現在見られるようなすぐれた森林に育て上げられましたとの御意見もありますけれども、これは大変な思い上がりではないかと思います。確かに、原生林は南方と北方とでは様相が違います。しかし、同じ北方の寒冷地帯ではそんなに変わらないと思います。私自身が、今から四十年余り前のことです。目的は原生林を見ようとして行ったのではありません。偶然に遭遇をいたしました中国大陸北部の原生林と比べてみますと、あのようなものではありませんでした。そういったものから考えますと、原生林とは言いながら知床のあの部分はやっぱり疎林になっておるように思えてなりませんのですが、そういうところへたとえこれからわずかであっても手を加えていくということになれば、大変な間違いを犯すことになるのではないか。  例えば、伐採を計画しておられるところで調べてみました。全体ではありません、局地になるかもしれませんけれどもあと百年たって切られようとしておる木まで成長をするであろう次の時代の木を見つけるのに困難をいたしました。この辺のところもやはり当事者としては十分考えていただかなければならない問題なのではないか、このように思いますのが第二点。  それからもう一つは、私は学者でないからわかりません。けれども日本における森林学が体系化されたのは明治の三十年代だと聞いております。しかも、その初めはドイツを見本にしてまいりましたそうですが、それは当然のこととして平地林であります。日本は、主体は山岳林でありますし、わけても知床のように極地における寒冷地の森林のことであります。十分研究はしていただいておりますと思いますけれども、まだまだ日は浅いのではないか。ましてや、森林学における学説は、暁を見ずという言葉で言われておりますように大変息の長い、周期の長い仕事であります。わずかの体験だけでもってよろしいということにはならないと思います。  もう一つの問題は、赤い帯が巻いてあります切られようとする木はみんな真っすぐに伸びております。しかも、元気がよい木のように見えてなりません。もちろん、これは商品価値を考えてのことだと思います。けれども、これらが切られていった後で残ったのはこぶのある木ですとか曲がっておる木だけが残っていったとしたら、果して優生学的に、遺伝学的に何にも考えなくてよいのだろうかという疑問も出てまいりました。  聞きますと、木というものはそれよりも環境に支配をされますものですということでした。けれどもまた、営林署で聞きますと、種はよい種を選んでまきますというお話でございました。よい種とはどういう種なのだろうか。やっぱり種を産んだ親木を見ていかなければ判断することができないのではないか。学者の中にはやっぱり遺伝学的要素もないとは言えませんというお答えをいただいた方もございましたけれども、こういった点はどっちにしたところで長い長い研究の未到達せなければならない問題ですが、こういったことを考えてみますと、林野庁でおっしゃるようにそんなに簡単に活性化が図れるものなのだろうか、大変疑問に感じました。この辺に対するお考え方を承りたいと思います。
  207. 松田堯

    政府委員(松田堯君) 林木の成長が非常に長い年月を必要とするものでございまして、しかも自然の力に対する依存度が大変大きいものでございます。しかも、木材の生産だけではなくて、公益的機能等多面的機能を持っておりますから、一度取り扱いを誤りますととんでもないことになる、こういったような性格を持っておりますので、私どもといたしましては森林の取り扱いを決める場合には大変慎重を期しているつもりでございます。先ほども申し上げましたように、五年置きにその間の施業の実施状況をチェックしながら、そして改めるものは改めて次なる計画をつくるというシステムになっておりますのも、そういったような今、先生おっしゃったような性格があるからでございます。  そういったような中で、先ほど先生おっしゃいましたように、大変疎林化しているところもあるし、あるいは非常に密度の高いところもある、自然林でございますのでミクロに見ますと大変内容は区々でございます。そういう中で、私どもといたしましては、これまで得られましたところの自然の法則性といったようなことを十分踏まえる中で属地的に森林の取り扱いを決めているつもりでございます。  選木につきましても、極めて弱度の私どもの専門用語で申し上げますと択伐、抜き切りでございますが、そういう方式をとっているわけでございますが、材積的に見ますと一%以下、また本数にいたしますと、二十二センチ以上の本数と対比いたしましておおむね一割程度、この程度の選木をしているところでございます。
  208. 山田耕三郎

    山田耕三郎君 次は林野庁会計のことでお尋ねをいたします。  特別会計で運営されております林野事業が赤字に転落をいたしましてから極端な経営不振が今日まで続いております。昭和六十年度においても長期借入金に対する元利支払い金が一千三百二十八億円で、この額は歳出総額の二六%を占めておりますし、今後も毎年二百五十億から三百億円増加し続けていくとのお話であります。木材販売代金の自己収入が二千六百五億円で、これは総収入の約半分だそうでございますが、もちろん公益的機能もありますので、先ほどの答弁にもありましたように、一般会計からも受け入れておりますとは言いますけれども、全体のわずか〇・〇二%に当たります百六億円だけであります。残りは長期借入金で賄っておいでになりますようでございますので、これでは第二の国鉄とささやかれておるのも無理ないことだと私は思っております。  森林は、木材を生産するだけではなしに、水ですとか空気ですとか、さらには国土の保全ですとか、野生動物に生息の場を与えるようにさまざまな公益的機能があります。わけても、国有林は国立公園だとか水源林が多く、保安林が四九%を占めておるにもかかわりませず、この公益的機能に対する負担額が明確にされておりませんから、このことが国有林の深刻な状況を国民に理解しにくくしておるように思います。  さらには、このごろは遺伝子工学には欠くことのできない場所ともなりつつあると聞いておりますけれども、公益機能が直接お金にならない今日の状況下においては、独立採算制を取り続けられます限り、林野会計は、やっぱり国立公園の中にある国有林であっても木を切って売っていかなければ採算を合わせていくことができない。それは当然のこととして森の荒廃と自然の破壊につながっていく、そういうことを抑止することができませんのではないか。わけても森林は、他の一次生産物のように短期間に栽培して収穫するいわゆる培養産業とは異なる性格を持っておりますことを考えますときに、どうしても林野会計の独立採算制、単年度収支均衡原則というのは見直していくべきだと思いますが、林野庁の御所見を承りたいと思います。
  209. 松田堯

    政府委員(松田堯君) 大変な経営状況、特に財政が厳しくなっておりまして、これをどのように改善していくか、大変大きな課題なわけでございます。  一つには、自主的改善努力をこれからなお積極的に進めていくということでございまして、業務運営の一層の改善合理化、また要員規模の適正化、さらには自己財源の確保といったような事項につきまして最大限の自主的改善努力というものを尽くしてまいりたい、このように考えておるところでございます。  また、一方におきまして、公益的機能の側面等に関しましての財源措置をお願いするということも大変重要なことでございます。既に保安林内の造林とか幹線林道の開設につきましては一般会計から繰り入れをしていただいておるところでございまして、治山事業につきましても昭和五十八年度以降すべて一般会計の負担におきまして実施しているところでございます。毎年度一般会計の繰り入れにつきまして努力をいたしておるところでございまして、今後ともそういった公益的な側面につきましての一般会計の繰り入れにつきましては改善努力をしていきたい、このように考えているところでございます。
  210. 山田耕三郎

    山田耕三郎君 最後に、まとめとして加藤農林水産大臣にお尋ねをいたします。  今お尋ねをしてきましたように、やはり知床の原生林だけはお金にすべきではないという立場から申し上げましたのが一点。しかも、現場の現業庁の職員諸君をここまで追い込んでいくということは、特別会計はよろしいけれども独立採算制というやっぱりこの締めつけは考えていかなければならないという立場からお尋ねをいたしました。  ひとつ例え話で大臣にお尋ねをいたしますが、先般も作家の司馬遼太郎さんが、言葉を選びながらではありますけれども次のようなエピソードで警告をしておいでになりました。  明治六年ぐらいのことです。そのころの明治政府の事実上の宰相は大久保利通でした。薩摩藩の人であります。しかしながら、明治六年に薩摩藩は真っ二つに割れて、西郷隆盛と大久保利通の二つの派に分かれました。西郷一派はすべて今の鹿児島県に帰ってしまいました。大久保はその政治的な争いから少し冷却期間を置くため関西旅行をした。これは大久保にとって極めて重要な旅行でした。  まず、京都、大阪などを旅行し、京都では嵐山が遊び場所です。大久保は革命家として幕末には京都にずっといた人であります。嵐山には何遍も来ています。そのときの嵐山は実にきれいなものでありましたが、革命後六年しかたっていないのに嵐山は荒れほうだいでした。大久保は土地の人を呼んでなぜこんなに荒れたのだと聞いたら、土地の人は、昔の幕府は偉いものでした、この嵐山の景色が悪くならないようにとお金を出して保存してきたのです、絶えずそのために人が雇われて働いていたのです、それが新政府になってから、その人たちはお金がもらえないのですから山に入らなくなり、このように荒れましたということです。後に大久保が東京に帰ったときに、かつての幕臣の勝海舟に聞いてみたら、そうなんだ、幕府は目に見えないところにお金を出してきた、政府というものはそうあるべきものなんだ、新政府はそういうところをやっていない、それはよくないと説教したそうです。  また、大久保は続いて堺に行ったそうですが、昔の堺は非常にきれいなところでして、真っ白な砂、そして松林でした。中でも一番美しいのは高師浜というところでした。大久保はその高師浜に行ったのですが、何と行ってみて驚いた、どんどん浜の松原が切られております。びっくりして、何のために切るんだ、土地の人に聞いてみますと、お上がこれを切らせているということです。お上というのは堺県のことであります。失業士族救済のためにということでした。堺には与力とか同心とかそういう士族がいました。それらが食べていけないので木を切ってまきにして生活をさせていたとのことでした。大久保はこれを取りやめさせたそうですけれども、何かこのエピソードは、今の時代に置きかえてみても、お金の使い道や国民生活を守る手法について大きな示唆を与えておるように思えてなりません。  富国強兵の明治の時代において緑や自然を守る先見を持った政治家の言葉が今におき残っておるのでございますけれども加藤農林水産大臣に、ぜひまたこういったことを参考にしていただいて、今まで慎重に対応してきていただきました、これからもぜひ残すべきものは残していくという立場で御対応いただくようにお願いを申し上げさせていただき、所見を承って私の質問を終わります。
  211. 加藤六月

    国務大臣加藤六月君) 先人の例をお引きになりまして懇々と申されたことは、私も熱心に承らせていただきました。  変な申しわけになるようでございますが、京都の嵐山は国有林でございます。今日、林野庁が松を植え、梅を植え、一生懸命頑張っておるところでございます。京都の市民並びに近郊の方々から非常に愛され、そして林野行政に感謝されておるということを、私はひとつこの席をかりて申し上げておきたいと思います。  それから、堺県堺市、今日の堺市の現状と江戸時代、あるいはまた幕末との雲泥の相違という問題はあります。  国土の狭い、そして可住面積の狭い日本に世界的な人口密度を有しておる我が日本国民が生きていく場合に、自然との調和を考え、自然を大切にしながら生きていく。我が国民の歴史というのは、自然との調和、自然を大切にし、自然の中に生きていくという一つの生存哲学を今まで持ってきておったと思うわけでございます。戦後急激な経済成長発展の陰でこういう問題がなおざりにされてきた点は、我々率直に認めなくてはならない、こういう気持ちも持つわけでございますが、今からでも遅くない、大いに自然を大切にし、自然の風致景観その他を立派にして、後世の国民に伝えていくという義務が、今日の国民全体に、そしてまた政治にある、私はこのように考えております。  山田委員の貴重なお話、十分承り、今後できるものはできるものとして生かしていきたいと考えておる次第でございます。
  212. 高木正明

    委員長高木正明君) 本件に対する質疑はこの程度といたします。  本日はこれにて散会します。    午後四時二十五分散会