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1986-11-21 第107回国会 参議院 日本国有鉄道改革に関する特別委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十一年十一月二十一日(金曜日)    午前九時三十二分開会     ─────────────    委員の異動  十一月二十日     辞任         補欠選任      木村 睦男君     田辺 哲夫君  十一月二十一日     辞任         補欠選任      上杉 光弘君     坂元 親男君      永田 良雄君     久世 公堯君      穐山  篤君     丸谷 金保君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         山内 一郎君     理 事                 伊江 朝雄君                 浦田  勝君                 江島  淳君                 亀長 友義君                 赤桐  操君                 安恒 良一君                 矢原 秀男君     委 員                 大島 友治君                 梶原  清君                 久世 公堯君                 倉田 寛之君                 坂元 親男君                 下条進一郎君                 田代由紀男君                 田辺 哲夫君                 高平 公友君                 野沢 太三君                 真鍋 賢二君                 増岡 康治君                 森田 重郎君                 吉川 芳男君                 吉村 真事君                 青木 薪次君                 田渕 勲二君                 丸谷 金保君                 渡辺 四郎君                 鶴岡  洋君                 中野  明君                 三木 忠雄君                 諫山  博君                 内藤  功君                 田渕 哲也君                 柳澤 錬造君                 野末 陳平君    国務大臣        内閣総理大臣   中曽根康弘君        大 蔵 大 臣  宮澤 喜一君        運 輸 大 臣  橋本龍太郎君        労 働 大 臣  平井 卓志君        自 治 大 臣        国 務 大 臣        (国家公安委員        会委員長)    葉梨 信行君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       近藤 鉄雄君    政府委員        内閣官房内閣内        政審議室長        兼内閣総理大臣        官房内政審議室        長        的場 順三君        内閣審議官    中島 眞二君        内閣法制局第四        部長       大出 峻郎君        日本国有鉄道再        建監理委員会事        務局次長     吉田 耕三君        警察庁長官官房        長        新田  勇君        警察庁警務局長  大堀太千男君        警察庁刑事局保        安部長      漆間 英治君        警察庁交通局長  八島 幸彦君        警察庁警備局長  三島健二郎君        経済企画庁物価        局長       海野 恒男君        経済企画庁総合        計画局審議官   冨金原俊二君        法務省保護局長  俵谷 利幸君        大蔵大臣官房総        務審議官     足立 和基君        大蔵省主計局次        長        角谷 正彦君        運輸政務次官   柿澤 弘治君        運輸大臣官房審        議官       井山 嗣夫君        運輸大臣官房国        有鉄道再建総括        審議官      林  淳司君        運輸大臣官房国        有鉄道部長    丹羽  晟君        運輸省運輸政策        局長       棚橋  泰君        運輸省地域交通        局長       熊代  健君        運輸省貨物流通        局長       松村 義弘君        労働大臣官房審        議官       佐藤 仁彦君        労働省労政局長  小粥 義朗君        労働省労働基準        局長       平賀 俊行君        自治大臣官房審        議官       森  繁一君        自治大臣官房審        議官       渡辺  功君        自治省財政局長  矢野浩一郎君        自治省税務局長  津田  正君    事務局側        常任委員会専門        員        高池 忠和君    説明員        日本国有鉄道総        裁        杉浦 喬也君        日本国有鉄道常        務理事      岡田  宏君        日本国有鉄道常        務理事      須田  寛君        日本国有鉄道常        務理事      長谷川 忍君        日本国有鉄道常        務理事     山之内秀一郎君        日本国有鉄道常        務理事      岡田 昌久君        日本国有鉄道常        務理事      澄田 信義君        日本国有鉄道常        務理事      山田  度君    参考人        日本国有鉄道再        建監理委員会委        員長       亀井 正夫君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○日本国有鉄道改革法案内閣提出衆議院送付) ○旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律案内閣提出衆議院送付) ○新幹線鉄道保有機構法案内閣提出衆議院送付) ○日本国有鉄道清算事業団法案内閣提出衆議院送付) ○日本国有鉄道退職希望職員及び日本国有鉄道清算事業団職員の再就職促進に関する特別措置 法案内閣提出衆議院送付) ○鉄道事業法案内閣提出衆議院送付) ○日本国有鉄道改革法等施行法案内閣提出衆議院送付) ○地方税法及び国有資産等所在市町村交付金及び納付金に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付) ○日本鉄道株式会社法案村沢牧君外五名発議) ○日本国有鉄道解散及び特定長期債務処理に関する法律案村沢牧君外五名発議) ○日本鉄道株式会社退職希望職員等雇用対策特別措置法案村沢牧君外五名発議)     ─────────────
  2. 山内一郎

  3. 山内一郎

    委員長山内一郎君) まず、参考人出席要求に関する件についてお諮りをいたします。  各案審査のため、本日、日本国有鉄道再建監理委員会委員長亀井正夫君を参考人として出席を求めることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 山内一郎

    委員長山内一郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  5. 山内一郎

    委員長山内一郎君) これより質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  6. 田渕勲二

    田渕勲二君 私は、まず最初に、貨物関係に関しまして質問いたしたいと思います。  貨物というのは、地方交通線とともに国鉄赤字の元凶と言われまして、特に貨物部門では五十九年では二千二十億円余の赤字を出しておる。したがって、それほどの赤字を出している貨物部門というものが六十二年度から一転して十六億円の黒字になるということはとても私には信じられないわけでありまして、だからこういった改革案だけで対処しようということは、これからの国鉄の民営化された貨物が恐らく安楽死していくんじゃないか、こういう心配を私は実はしているわけであります。  したがいまして、そういう安楽死を我々が予想せざるを得ない事態というのはどういうところから来るかと申しますと、国鉄貨物がこういう状況に立ち至ったというのはいろいろ原因もありましょうけれども、しかし私はその一つには、競争相手であるトラックなり内航海運等シェアを次次と奪われていった、こういうところに大きな原因があろうかと思うんです。  そのシェアを奪われた経緯をいろいろ見てまいりますと、特にトラック貨物が奪われたということは、言いかえれば公正な競争トラックと行われていなかったと私は思います。なぜかと申しますと、ここ十数年来トラック過当競争といいますか、競争の激しさといいますか、これは大変なものがありまして、特に現在我々が問題にしておりますのは、トラックの過積載、いわゆる過積みですね。これは十トン車に二十トンぐらいを積んで走っているわけです。そして、大変なスピードでトラックが走る。そういうような経緯を見ますると、鉄道貨物というものがこれから生き延びていくためには、やはり公正な競争をしていかない限りは、単にこの改革案だけでは私は国鉄貨物が生き延びるということはあり得ない、こう思うのであります。したがって、そういう面におけるやはり対策というものをぜひ講じていかなければならない。特に鉄道輸送というのは、私自身もこれにかかわっておりましたけれども、非常に安全で省エネでしかも無公害、そして大量で、考え方次第ではもうトラックよりははるかに早く着く輸送ですから、これは何としてもこれからも活用していかなければならぬ、こういうように実は思うわけであります。  したがいまして、こういった観点に立つとすれば、やはり監理委員会が出されましたこの法案の基本でありますけれども、ここには大変な競争下にある物流市場というものを前提にはされておりますけれども市場メカニズム依存、こういう前提に立っておられるようであります。しかしそれだけでは、先ほど申し上げましたように、単に市場メカニズム依存だけではこれは到底対抗し得る問題ではありませんので、そういう意味で現在の大変無秩序なトラック輸送というものを何とかしなければならぬ、こういう観点にまず立っていくことが最も必要であろう、このように考えるわけであります。  そういう視点から、総理大臣並びに運輸大臣にその基本的な考えを質問するわけでありますけれども、こういった鉄道貨物輸送特性を生かしたいわゆる政策提起、あるいは国家的見地からの高度な行政、こういうものが特に今必要なのではないかというふうに考えるわけでありますけれども、それに対する基本的な物の考え方を御質問申し上げますからお答え願います。
  7. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私は、委員提起をされた問題の中には、非常に大切な問題が二点存在すると思います。一つは、まさに今御審議を願っております貨物会社というものが市場原理のみの中で生き抜いていけるのかという問題点。もう一点は、現実のトラック輸送の実態というものを踏まえて、これについての問題提起、そういうふうに考えられると思います。  私たちは、今各種の輸送機関が発達をしております中で、原則として物流市場における各輸送機関お互いの間の競争、また利用者の自由な選択というものを通じて効率的な物流体系というものが形成をされると考えておりますが、そのために物流市場についての国の規制というものも、参入規制でありますとか運賃規制など必要最小限のものにとどめていくと同時に、運用においてもできるだけ弾力的な対応を図り、これは一方ではユーザーの選択幅等もふやすことに努めてきました。  新しい貨物会社がこのような物流界の一員としてこれから生きていくわけでありますけれども、過去の国鉄貨物というものが次第次第に追い詰められていった経緯というものを十分に考えられたその上に立って、民間的な手法による効率的な事業運営というものを行っていけば、個別の御論議は後ほど恐らくいただくと思いますけれども、私どもは今後とも我が国の物流市場における相応の役割を果たし得るものだと基本的に考えております。同時に、もともと社会労働委員会で主として働いてまいりました私の立場から申しますと、トラックというものについては、実は従来から過労運転の問題でありますとか過積載といった、いわゆる雇用労働という視点からこの問題に目を向けてまいりました。今運輸行政の主管という立場になりますと、おのずから同じ問題をとらえるにいたしましてもその視点は変わるわけでありますが、この過積載問題にいたしましても過労運転の防止の問題にいたしましても、いわゆる輸送秩序の問題としては、これはトラック輸送安全確保という視点からいきましても大変重要な課題でありますし、参議院の五十八年の四月の運輸委員会において決議が行われていることを承知いたしておりますが、関係各省庁の協力をも得ながらこの解決に鋭意取り組んでおるところであります。  しかし同時に、今回の新しい貨物会社というものが鉄道貨物輸送特性を十分に発揮することによりまして、トラック輸送の持つ問題点、解消しなければならない雇用労働に関するような問題点を解決していくものとはこれは別の視点として、私は他の輸送機関十分競争、対抗していける体制を確立することを目指しているわけでありまして、民間的な手法による効率的な事業運営というものがこの貨物会社において十分活用されていくことにより、やはり私はトラック輸送の持つ問題を解決する問題とは別に、まさに対抗する一翼を担って活動はできると考えております。しかし、トラック輸送につきましての御指摘の問題は、これは別途私どもとしては、その安全確保という視点からも極めて大切な問題でありまして、これは十分に対応していかなければなりません。
  8. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 今度の国鉄改革によりまして貨物輸送会社ができるわけでございますが、今までの国鉄貨物輸送の経験をよく反省いたしまして、やはり中距離あるいは短距離においてはもうトラックに完全に食われている、また小回りのきかないという弱点をつかれている、そういうような点もよく反省をして、そして大単位長距離、大量、定型輸送、そういうような形で生き延びようという考えで、また国民経済に貢献しようという考えで出てきていると思いますが、そういう今までの弱点、これからまさについていこうというこちらの長所というものをよく勘案いたしまして、着実にこの会社が発展するように努力してまいりたいと思う次第でございます。
  9. 田渕勲二

    田渕勲二君 続きまして、亀井委員長大変お忙しいところ恐縮でございます。ありがとうございました。  お伺いしたいんですが、この貨物部門全国一元の事業体として存続するということは、全国システムの維持をという意味からも非常にこれは評価できると思うのであります。しかし、これはいろいろよく内容を精査してみますと、全国一社の貨物会社にはなりましたけれども、やはり六つ旅客会社レールを借りて走るということになりますと、全国一本で貨物会社は残したものの、レール六つに分断をされはしませんが、いろいろそうした効果が減殺されてしまうのではないか。そういうことを考えますと、この国鉄改革ポイントというのはあくまでも旅客鉄道会社にあるのであって、貨物会社というのはそれを仕方なく全国一本ということにして、悪い言葉で言えば安楽死を待っていこう、こういうように思う人は非常に多いわけです。  というのは、本来ならば旅客貨物もやはり全国一本のスケールメリットというものを私は望むわけですけれども、いろんな事情で旅客六つにする、貨物は一本にする。こういうようなことから考えますと、先ほど申し上げたように、どうも旅客会社が優先されて、いずれは貨物会社というのはなくなってしまうのではないか、こういう心配を私は持つわけですが、それについての御見解をひとつお聞かせ願います。
  10. 亀井正夫

    参考人亀井正夫君) ただいま先生から旅客優先貨物は後というそういうことではございませんで、私ども検討いたしましたときは、やはり貨物というのは現在最低の状況にあるというふうに判断したのでございます。これはもう先生御承知のように、今から二十五年前には全国貨物の約四〇%を運んでおったのが、二十五年間にだんだんと落ちて現在はわずか五%の段階になった。しかし、将来を考えてみましたときに、御指摘がございましたように、トラック輸送というものにつきましても、例えば東名とか名神とかいうのはもう全く満杯状態、あるいは公害の問題もある、あるいはトラック運転手老齢化あるいは安全問題、いろいろ問題がございまして、これも一つ限界点に達しておりますので、やはりコンテナ中心にした長距離、しかも大量輸送、余り現在迅速でございませんけれども、これを迅速化することによって国民経済ニーズに合うようなやり方をする。  経営分析をしますと驚くべき数字でございました。とにかく二千億足らずの売り上げに対して四万六千人の従業員がかかっておる。でありますから一人五百万円。退職金も入れますとしますと、もう人件費だけで二千三百億というような数字になっておる。こういう状態ではこれは成り立つはずがない。いろいろな操車場も見ましたけれども、そこにおいての貨車いろいろ配置とか何かを見ると、大正時代ぐらいのことでやっておって近代化が非常におくれておる。こういうようなことでございますから、私どもはむしろこれをコンテナ中心にして、しかもタイムスケジュールどおり動くということにすれば、これからは国民ニーズにこたえてだんだんとよくなっていくであろうということで、私ども貨物についてもこれは国民経済上絶対に必要であるという観点からやりました。  余計なことでございますが、いろいろ心配をして、御専門の、もう亡くなりましたけれども、日通の会長であられた広瀬さんの御意見も何回かいろいろ聞きまして、亀井君、これは絶対やれる、ぜひやりなさい、こういうことでございましたので、私どもは自信を持ってこの案をこしらえたということでございます。
  11. 田渕勲二

    田渕勲二君 亀井さんに重ねてお聞きしますけれども、先ほど私も申し上げたように、鉄道貨物会社というのは他人のレールを借りて走るわけですから、そうしますと旅客会社が、今現在使っている地方交通線過疎に至る線についてはどうももうからないからこのレールは外す、営業しない、こういうようなことがありますと、特に地方で、トラックだけではなくてやはり鉄道貨物に頼っている地方産業とかあるいは過疎に住んでおる国民皆さん生活物資というものがそれによって運べなくなる、こういうような心配を非常にされている人が多いんです。  特に、この間私も新潟地方公聴会に行ってまいったのですけれども、大変な豪雪地帯はどうしても鉄道ラッセル車が早く雪をかき分けて線路を確保する、そういうようなことが、果たして旅客会社になったときにそんなことまでして、余り利益の上がらぬようなことはやめておこうじゃないかというようなことで雪もよけないというようなことになりますと、実際そこには貨物列車も走らないわけですから、そういう地方産業地方生活をしている国民皆さん方に対するそうした配慮というものがどうもこのシステムでいくと将来的に心配なんですが、その点いかがでございますか。
  12. 亀井正夫

    参考人亀井正夫君) お答えいたします。  地方ローカル線利用の問題でございますが、私どもの出しました意見におきましては、一次、二次、三次の特定地方交通線を除いた地方交通線、これは九十線は全部残すと。しかも、新しい企業形態によれば必ずそこが残っていけるという確信を持ってつくった案でございます。これは今から蒸し返しになりますが、去年の一月に旧国鉄幹部が出された案でございましたら、九十の地方交通線のうち二十線だけをやる、七十は皆離してしまうという案でございましたが、私どもは、新しい新生旅客会社になればこの木の幹や根がしっかりするので、枝葉であるローカル線は栄えていけるんだと、今までのやり方は幹や根が腐ってきたから枝葉が枯れていったんだと、考え方が逆転しておるのではないか、そういう観点から地方交通線は必ず残り得ますし、それからそれに関連して、したがって貨物もそのレールによって運ばれる。  それから旅客会社貨物会社とのレールの奪い合いが出るのではないかということでございますけれども、これは民間経営においてはむしろ同業というものは相協力し合いながら栄えていくと。これは失礼でございますけれども官僚システムというものですと縄張り争い権限争いが非常に強いと。民間においては、例えば神田の古本屋街なんというのも、ずっと並んで、お互いに協力し合って繁栄をしておる。こういう精神がこれから前垂れがけ精神ということによって生きていくので、地方の方々に対する貨物運輸あるいは国民経済に対してもこれからますます貨車運輸というものは発展していくであろう、そういう極めて楽観的な考えを持っておるということでございます。
  13. 田渕勲二

    田渕勲二君 それでは、貨物会社のもう一つ重要なポイントになるアボイダブルコストというのがありますが、このいわゆる共通経費の分担のしようによっては、これからの貨物会社の生殺に、生きる死ぬに非常に関係してくると思うんですけれども、このアボイダブルコストと言われておることをもう少しわかりやすく言いますとどういうことになりますか。ちょっと御説明願いたいんですが。
  14. 林淳司

    政府委員林淳司君) アボイダブルコストという概念を導入しておりますけれども、これは共通経費配分一つの方法でございます。現在、鉄道の場合は旅客貨物という大きく言えばこの二つの事業があるわけでございますけれども、この経費配分の仕方といたしまして、それぞれ旅客あるいは貨物個別経費というのがございます。そのほかにいわゆる共通、両方が共通して使っている施設その他につきましてのいわゆる共通経費がございます。その共通経費をどのようにそれぞれの部門配分するかという場合に、通常でありますとこれはフルコストと申しますか、旅客貨物のそれぞれの使っておる指標に従いましてその割合で配分をしていくというのが、これは通常フルコストによる配分方式になるわけでございます。  それに対しまして、共通経費をそういう形で、フルコスト配分するのではなくて、例えば旅客貨物の場合に、仮にでは貨物がないとするならば、その共通経費のうちのどれぐらいの経費が不要になるか、こういう経費、これは回避可能経費というふうに呼んでおりますけれども、そういう回避可能経費、いわゆるアボイダブルコストでございますが、これについて、これを貨物の分担すべき経費とすると。仮に貨物がないとした場合になお残る経費というものについてはこれは旅客の負担とするというふうな方法で配分するのが、いわゆるアボイダブルコストによる配分方法ということになるわけでございまして、通常フルコストの場合よりもアボイダブルコストというのは、今の旅客貨物で申しますと、貨物の分担の経費は少なくなるというふうに考えられるわけでざいごます。  そのような方法で配分したものでございまして、これは若干概念的に申し上げますと、例えば共通経費と申しますと、レールとか架線とか、こういうものがあるわけでございますが、そういうものの資本費、これは仮に貨物がなくなってもその資本費は残るわけでございますので、これはいわゆるアンアボイダブル、いわゆる回避不可能経費ということで旅客の方に負担をさせると。それに対しまして、例えばレールとかあるいはトロリー線というものにつきまして、これはレールそのものあるいはトロリー線そのもの、資本費は別としまして、そういうものの修繕費というふうなものは、これはそれぞれの使用頻度に応じてやはり分担していくと。すなわち、貨物列車が走ればその分だけ摩耗するわけでございますので、それぞれの使用頻度に応じて分担をさしていくということになりまして、そういうものは回避可能経費というふうに考えられるということでございます。そのような概念整理をしたものがいわゆるアボイダブルコストでございます。
  15. 田渕勲二

    田渕勲二君 そうしますと、このアボイダブルコストというのは行政指導でやられるということなんですか。法的な根拠というのは一切ないわけですね。私が心配をするのは、今はいいでしょうけれども、これが民間会社お互いになった場合に、このアボイダブルコストを双方で調整する必要が生まれてくるんじゃないかと思うんですが、そのときに今ここで答弁されたようなことが今後将来とも保証されるのかどうか、その点いかがですか。
  16. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 今内容について総括審議官から御説明を申し上げましたけれども、私たちは、現在の鉄道輸送の実態というものを前提にしております限りにおいて、基本的には将来とも継続的にこの手法はとられるものだと考えておりますし、こういう関係に大きな変更が生じるとは考えておりません。その場合において、当然これは存続をいたします。そして、もしこの関係に大きな変更が生じるような場合が仮にあったといたしまして、旅客会社貨物鉄道会社の間で話し合いが行われたといたしましても、その時点での実態を踏まえた費用負担のルールづくり、あるいは具体的なコストというものが当然定められるだろうと思います。  ただ、今委員の御質問を仮に延長していって、それがうまくいかない場合はどうすればいいんだということになりますと、これは運輸省の立場からすれば、旅客会社貨物会社の間における十分な調整が図られるような指導はもちろんするわけでありますけれども、それが円滑を欠いて放置しておいては利用者に非常に御迷惑をかける、あるいは公共の利益を阻害しているというような場合には、鉄道事業法二十三条というものによりまして、鉄道施設の使用条件の変更についての運輸大臣の命令を発するという規定を生かし、この事業改善命令で最終的には想定されるような事態を回避することを担保できる、基本的にはそういうことになろうかと私は思います。そして、今委員の御指摘のような状態はまず我々とすれば当面起こり得ない状態だと思いますが、最終的な場合まで考えればこういう状況で担保ができると考えております。
  17. 田渕勲二

    田渕勲二君 そうしますと、貨物会社が営業努力であるとかあるいは内部の合理化なんかで利益をどんどん上げ出したと、そうなると、当然共通経費旅客会社の方からは配分変更を迫ってくるんじゃないか、こういうことが予測されるんですね。それによって、せっかく黒字計上を始めた貨物会社赤字に転落するということも、そのアボイダブルコスト次第ではそうなるというふうに思うんですが、いかがですか。
  18. 林淳司

    政府委員林淳司君) 私どもが現在試算をしておりますものによりますと、アボイダブルコストは大体三百億円程度というふうに考えております。それに約一%程度のインセンティブ、旅客会社も全くゼロということでは問題がございますので、一%程度のインセンティブを加えて、それを貨物会社から旅客会社に支払う使用料というふうに考えておるわけでございます。その場合に、その使用料というものは、まずこれはこの今度の法律に基づきまして運輸大臣の認可を必要といたします。したがいまして、まずは貨物会社旅客会社の間でいろいろ話し合いをしていただいて、そして両者の合意する使用料を決めていただくということが基本にあると思いますけれども、最終的にはその適正であるかどうかという判断は、行政的な判断を加えまして認可をされるという形になるわけであります。  したがいまして、将来的に貨物会社として、例えば非常に高品質の輸送商品をつくりたい、ところがそれが旅客会社との間で、例えばラッシュ時間帯との調整その他でなかなかうまくいかない。しかしある程度、インセンティブを少し一%プラスさらにこれを上げれば、そうすれば旅客会社としてもそれだけのメリットがあるのでそれは結構でしょう。貨物会社としても、そのインセンティブを、プラスアルファを払ってもなおかつ採算が十分とれるというふうな場合には、そのインセンティブを少し上げていくというふうなことは当然考え得ると思います。しかしそれについても、果たしてそれによって貨物会社というものの経営がしっかりとやっていけるかどうかというふうな観点とか、あるいはその他もろもろの観点からの最終的な行政チェック、すなわち使用料の認可というものは必要でございまして、その過程を経て最終判断が加えられるということでございます。  そういう形で認可を受けたものについて、さらに実際の業務運営の段階でもろもろの問題がもし生ずる、行政的にむしろ主導的に何らかのチェックを必要とするという場合には、先ほど大臣から申し上げましたように、最終的には業務改善命令というものでもって担保しているわけでございますが、その前段階で使用料の認可という形で十分なチェックが加えられるということでございます。
  19. 田渕勲二

    田渕勲二君 そうしますと、今聞く範囲ではかなりあいまいな基準だと思うんですね。だから、その二社間の契約に認可権限を持った政府の立場考えると、貨物会社経費の重要な部分について政府が介入する可能性があるということですね。だから政府が貨物会社の言うてみれば生殺与奪の権を握っている、こういうように思わざるを得ないわけです。  しかし一方、新幹線のリース料などについては法案でかなり細かく決定方法が決められておりますね。その算定方法なども省令で細かく書くことになっておるということでありますが、またおまけに二年ごとの見直し規定まで法定化している。一方ではそういうことをやりながら、貨物会社旅客会社関係についてはそういう行政的なことだけで終わっていて、なぜそれを法律的に明記できないのか、この点についてお伺いしたいと思います。
  20. 林淳司

    政府委員林淳司君) 先ほど申し上げました使用料の認可でございますけれども、これは旅客会社貨物会社のいわゆる使用料だけではございませんで、今度の鉄道事業法によりまして、いわゆる第三種鉄道事業者と第二種鉄道事業者との関係、この関係でも使用料というものが生ずるわけでございます。これは旅客でも同様でございます。そういう一連の公益的なチェックの一つでございまして、運賃とかあるいは今申し上げました使用料、これは使用料その他の使用条件ということでございますが、いわゆるレールを借りる事業者と貸す事業者との間の利用関係とか、今申し上げました運賃の関係とか、そういう関係について一連の公益的なチェックでございまして、これによって行政が特別の介入をするということではございません。あくまで妥当性の判断、そういうチェックを行うということでございます。
  21. 田渕勲二

    田渕勲二君 非常にそういう点では私ども考えていることとは随分差があるようですが、これ以上やりとりしてみても時間がたつばかりですから次に移ります。  次に、輸送見込みという点について質問してまいりたいと思います。  貨物会社の収支見通しの前提になっている貸物需要量の見通しでございますが、六十年度の貨物輸送量が輸送トン数で前年比が八・五%減少し、そして国鉄貨物の減少傾向が相変わらず続いておるわけであります。この原因というのは、トラック輸送への代替が進行していること、あるいは物離れとか軽薄短小化といった現象が進展していることなどが考えられるわけでありますけれども、したがって、今後とも経済がある程度拡大したにしても、国鉄貨物輸送量というのはそれほどそれに見合って増大をしていかない、逆に長期の減少傾向をたどらざるを得ないと考えておるわけなんでありますけれども、これからの貨物輸送の需要の伸びですね、こういうものをどのように認識しておられるのか、その点について御質問いたします。
  22. 杉浦喬也

    説明員(杉浦喬也君) 今までの傾向を見ますと、鉄道貨物全体は大変減少傾向にあるということはもう事実でございます。ただ、その中身をよく見ますと、やはり鉄道特性というものに着目をいたしまして、全体で減っている中で伸びているものもある。例えばコンテナ輸送、これは国鉄の経営努力もさることながら、やはり一般の荷主の需要があるということでございまして、コンテナは過去五年間を見ますと約一四%程度伸びておるという状況でもございますし、あるいはまた石油、紙パルプというような物資別輸送というような点におきましても、これもダウンというよりもむしろ横ばいというような状態でございます。  それに比べまして、いわば分散型物資といいますか、肥料とか飼料などというものは、これはやはりトラック輸送の方に適しているということで大変落ち込みが高いというような、それぞれの物資のそれぞれの特性鉄道に合った特性とそうでない特性というものが分析できるわけでございまして、私ども十分にそれぞれの物資別に分析をし、さらにまた荷主なり、あるいは今までの関連のある物流業者、いろんな意味での関係業者から事情をよく聞きまして、将来鉄道特性を発揮できるものはどういうものかというようなことに着目をしつつ、個別に積み上げをいたしまして将来を予測したものでございまして、かなりかたい見込みの中で健全経営ができる、そういう輸送需要を算定したつもりでございます。
  23. 田渕勲二

    田渕勲二君 それをもっと具体的に申し上げるとよくわかるんですけれども、政府は、国鉄の物資輸送需要見通しの中で、今後の貨物輸送量は六十二年度の五千七百七十七方トンから六十六年度の五千二百九万トンへと、四年間で九・八%のこれは減少を想定しておりますね。しかし、過去の五十五年から五十九年までの四年間の国鉄貨物輸送量の推移を見ると、この間に三八・四%減少しているのですね。これは非常に大きい落ち込みをしているのですけれども、そういう過去の例から見ると、今総裁のおっしゃったような政府の貨物需要の見通しは少し楽観的過ぎませんか。
  24. 杉浦喬也

    説明員(杉浦喬也君) 数字的にはおっしゃるような数字でございますが、ただ極端な言い方をいたしますと、トラックとの競争裏におきまして、鉄道特性を発揮できない分野におきまする落ち込みというのがもう限界に達しておる。トラック輸送に行くべきものはもうほとんど行ってしまっておるというような実態もあろうかと思います。そういう意味合いから、もう一度ここで荷主の御要望なり諸般の情勢を分析いたしまして、コンテナ輸送に重点を置きつつ、他の輸送のものも物資別にいろいろと積み上げをした結果でございまして、過去の落ち込みと将来の落ち込みの差がかなりあるということは事実ではございますが、私どもはそうした輸送の将来像というものは十分に確保できるというふうに思っておるところであります。
  25. 田渕勲二

    田渕勲二君 これは見通しですから、それはそう言われてみれば違うという、将来のことはわかりませんけれども、それにしても石炭、石灰岩ですね、あるいは石油、紙パルプなどなど、これは本当に一々見通しと過去の状況を見てみると余りにもその差が大き過ぎるものですから、それがどうも甘い見通しの上に立って新貨物会社のこれからの収入に結びつけられておりますので、そうなりますと、この見通しが狂いますともう根底から、貨物会社の十六億の黒字計上なんというものじゃなくて、また数千億の赤字を、数千億といかぬまでも相当な赤字を計上せざるを得ない、こういうように思うんですけれども、そういう個々の品目について特徴的な需要の見通しがあればちょっと教えていただきたいと思います。
  26. 杉浦喬也

    説明員(杉浦喬也君) 見通しの面で非常に大きな数字としてダウンするもの、これは石炭あるいは石灰石等の数字でございまして、石炭は現在の産業構造の中におきます石炭の位置づけ等の関係もございまして、私ども、六十二年度を一〇〇といたしますと六十五年度では二八・五と、輸入炭というものを中心とした数字にまで落ちるという見込みを立てておりますし、あるいは石灰石におきましても相当なダウンを計上いたしまして、六十二年度に対しまして六十五年度は五八・五と、落ち込みは四一・五%に及ぶであろうというふうに思って算定をいたしているところでございます。  それに対しまして石油等は、これはやはり陸上輸送というものとの対比におきまして、鉄道のタンク車というものがかなりまだ輸送の需要はあるという見方をいたしまして、若干の、三・三%程度の落ち込みはあるにいたしましても、ほぼ横ばいというような算定をいたしておるところでございます。あるいはまた、紙パルプ等はむしろ若干の輸送の増、四年間で五%程度の伸びはあるであろうというような見込みを持ってるおところでございます。  個別の物資別の見込みは、主なところはこういうところでございます。
  27. 田渕勲二

    田渕勲二君 それでは、さっき総裁が言われたコンテナについてちょっと見通しを見ますると、確かにおっしゃるように近年コンテナ輸送は伸びてはきております。しかし、コンテナが伸びた背景には、一トン当たりの平均運賃が値下がりしているという要因が非常に大きいように思われるわけであります。例を東京―大阪間にとってみますると、往復輸送原価が、トン当たり原価が三千七百六十二円で、トラックの市場運賃に比べまして一トン当たり鉄道が八百五十三円高くなっているわけです。事実、五十五年から五十九年度にかけましてコンテナ輸送量が一四%も伸びてはおりますけれども、運賃収入の方はほぼ横ばいではないか、こういうように思うんですが、いかがでございますか。
  28. 杉浦喬也

    説明員(杉浦喬也君) コンテナ輸送は、私ども、これから鉄道貨物特性を発揮する最大の目玉商品であるというふうに思っておりまして、大いにそれの荷主への対応をやっていきたいという、いわば競争力をつけたいというふうに思っておる商品でございます。そういう意味におきまして、何といいましても荷主の今の御要望というものは、貨物だから遅くていいという時代ではもう今はないわけでありまして、やはりかなりのスピードアップ、それからダイヤの、いわば使いやすいダイヤというような点も十分に考慮をし、これからのダイヤを一応つくっておるところでございます。  ただ、いずれにいたしましても、今先生おっしゃいましたようなトラック輸送との対比におきましてやはり相当競争の場にさらされているということは事実でございまして、そういう面におきましては、販売体制あるいは運賃そのもの、あるいは営業割引の仕方というようなものにつきまして、その競争に勝つように弾力的な運用というものを、いわば商売の気持ちを十分にあらわして経営をしていかなければならぬということも事実でございます。そうした面での経営努力も今後十分にやってまいりたいというふうに思っております。
  29. 田渕勲二

    田渕勲二君 資料を見ますると、六十二年から六十六年度にわたりまして百八十四億円の収入が増加する、こういうことだそうですけれども、これは先ほど来申し上げておりますように、コンテナ輸送というのはある程度伸びるかもしれませんけれども、今おっしゃったようにトラック輸送との関係でなかなか収入としては上がらない、こう思うのでありますけれども、そうすると、やはり競争相手トラックと互角以上に貨物鉄道としてこのコンテナを伸ばそうとすれば、どうしても運賃収入の増加を想定する、まあ運賃を値上げする、こういうようなことが想定されているのではないかと思うのでありますけれども、その点いかがですか。
  30. 杉浦喬也

    説明員(杉浦喬也君) 貨物の運賃は大変難しい競争相手の中の運賃設定でございまして、原則的には、いわば公式的な運賃値上げというものは余り考えるべきものではないと思います。むしろ、営業割引というようなものをどの程度するかということにより、トラックとの対比というふうに考えつつ、なお荷主の御要望におこたえする輸送量の増に結びつけるというのが営業の基本ではなかろうかと思います。
  31. 田渕勲二

    田渕勲二君 それでは、それに関連をいたしまして、鉄道貨物運賃の関係について若干質問をしてまいりたいと思います。  この貨物会社事業運営のあり方については、六十年十一月、昨年十一月の「新しい貨物鉄道会社のあり方について」という政府の方針に沿っていかれるものなのかどうかということについて、そう理解していいんですか。
  32. 林淳司

    政府委員林淳司君) 昨年の十一月に、政府といたしまして新しい貨物体制のあり方についてということでまとめたわけでございますが、それをさらにその後具体的に荷主にも当たり、それからさらに現場でいろんな経費等の積み上げ計算もし、その結果今回の試算、あるいは今回御提案申し上げております法律に基づくような体制というものを考えたわけでございまして、基本は昨年の十一月の新しい貨物体制のあり方というものに基づいているものでございます。
  33. 田渕勲二

    田渕勲二君 これによりますと、貨物鉄道事業については、コンテナ輸送と石油、セメントなんかの専用貨物列車を特化させる。あるいはヤード経由輸送を直行輸送に切りかえる、そしてコンテナ列車は通運事業者等による購入が確保できると見込まれるもの、あるいは専用貨物列車は荷主の需要に応じて採算のとれるものに限って列車設定する、こういうようになっていると思うのでありますけれども、これによりますと、企業間競争でどう勝つのかという考え方ではなくて、どうも国鉄だけの見込み経営方針、そういうようなものに思えてならぬのですけれども、そういう点、いかがでございましょうか。
  34. 林淳司

    政府委員林淳司君) むしろ、ただいま先生指摘ございましたようないわゆる見込み輸送と申しますか、これが従来の国鉄貨物のいわばあり方であっただろうと思います。それに対して、それではまずいんじゃないか、やはり需要というものをきちっと把握した上で、その需要にこたえるような輸送というものを提供しなければいけない。これはデマンド方式と申しますか、そういう形で貨物輸送というものは今後経営をしていく必要があるだろう、こういう考え方が基本にございまして、したがいまして、先ほどの昨年十一月の新しい貨物会社のあり方にしましても今回の考え方にしましても、やはりデマンド方式というものを基本は考えておるというふうに御理解をいただきたいと思います。
  35. 田渕勲二

    田渕勲二君 それではちょっとここで、五トンコンテナトラック競争していく上での条件について質問していきますけれども貨物会社の六十二年度の発足当初の収入というのは千六百億円と予定されていますが、このうち千三百七十二億円ですか、このコンテナ収入というのは。ほとんどの分を占めているわけでありますけれども、東京貨物ターミナルから大阪貨物ターミナルまでの五トンコンテナ鉄道運賃というのは幾らですか。
  36. 岡田昌久

    説明員岡田昌久君) 五トンコンテナ、東京ターミナルから大阪ターミナルまでは三万五千円でございます。
  37. 田渕勲二

    田渕勲二君 このコンテナの運賃は、国鉄の「国鉄コンテナ利用案内」において公示をされておるわけですね。東京貨物ターミナルから大阪貨物ターミナル間は、おっしゃるようにオンレール運賃が三万五千円です。  この運賃の割引制度についてお伺いするわけですけれども、この割引制度というものはありますか。その実態はどうですか。
  38. 岡田昌久

    説明員岡田昌久君) 貨物につきましては大変競争が厳しゅうございますので、他運輸機関の動向を踏まえまして他運輸機関と競争できるような運賃にまで割り引く制度はございます。
  39. 田渕勲二

    田渕勲二君 公示価格というのはディスカウントが通常であるというように私自身は聞いておるんですけれども貨物会社の六十二年度の約千六百億円の収入、このうちコンテナは恐らく千三百億だと思うんですけれども、割引運賃を想定した収入なんですか、この千六百億円というのは。いかがですか。
  40. 岡田昌久

    説明員岡田昌久君) 先生ちょっと訂正させていただきますが、コンテナ運賃は八百一億でございます。その運賃の算定につきましては、もちろん現在の運賃の収受から収入を想定いたしておりますので、現在の運賃収入は既に割引が入っております。したがって、当然割引を踏まえた数字でございます。
  41. 田渕勲二

    田渕勲二君 それでは、競争相手トラックの運賃と比較する意味で質問をしていきますが、鉄道貨物の駅から荷主までの集配料運賃はどうなっておりますか、オフレールの。
  42. 岡田昌久

    説明員岡田昌久君) コンテナの集配につきましては距離によって違います。一番短い距離で申しますと九千六百円でございます。公示運賃でございます。その次の区間では一万一千九百円でございます。それから、それよりさらに遠くなりますと一方四千二百円というふうに三段階に分けて運賃を定めておる、これは通運料金でございます。
  43. 田渕勲二

    田渕勲二君 そうすると、この下限一〇%割引ということになりますと、この九千六日円ということになると八千七百円ですね。プラス八千七百円ということになるんですが、仮にこの公示の割引しない料金で計算すると、東京―大阪間の一区ですが、集配込みの運賃というのは、確認のためにお聞きしますが、幾らですか。
  44. 岡田昌久

    説明員岡田昌久君) 先ほど申しましたように、三万五千円に九千六百円が足されます。これは通運料金でございます。三万五千円が鉄道の料金でございますので、四万四千六百円ということになります。
  45. 田渕勲二

    田渕勲二君 違うでしょう。いいですか。――そうすると、区域トラック運賃で十トン車の東京―大阪間の認可運賃、これ言ってください。東京―大阪間、十トン車。
  46. 松村義弘

    政府委員(松村義弘君) 十トントラック、区域トラックの大阪までの運賃でございますけれども、基準運賃は地域の割り増し料金を全部含めまして十二万二千円でございます。ただ、トラックの運賃といいますのは上下それぞれ一〇%の幅運賃でございます。また長期契約割引、これは一五%でございますが、往復割引二〇%等の割引制度がございます。したがいまして、法律の許す範囲内において一番下まで下げたと仮定いたしますと、東京―大阪間で十トントラックは八万六千円まで下げることができます。
  47. 田渕勲二

    田渕勲二君 問題は、公示のそうした運賃の比較をすると、それぞれ五トンコンテナ、それからトラックの場合は十トン車ですからその二倍になるんですが、比較して運賃というのはそれほどの差はないと思うんですね。  ところが、問題なのはここからなんですけれどもトラックというのは過積みが常識になっているわけです、過積載が。そうすると、過積載というものがどういう実態にあるかということについて、それをまず聞いてみなきゃならぬですが、これが常識なのかどうかについて。この点についてだれにお聞きをするんですか、過積みの実態についてひとつお知らせを願います。
  48. 松村義弘

    政府委員(松村義弘君) 私ども年間を通じまして監査計画を立てて監査しております。また事故などを起こした業者に関しましては特別の保安監査をいたします。そういった監査を通じまして過積みというものの違反をチェックしているわけでございますけれども、過積みというのは非常に件数としては多うございます。過積みをチェックいたしました後、特に悪質な者につきましては行政処分をしておりますけれども、その件数を申してみますと、五十七年度におきましては七百九十四件、五十八年度は九百七件、五十九年度は千三百四件と増加の傾向を示しております。これは、過積みといいますのは交通事故の原因であると思いますので、重点的な監査項目に指定しております。そういったことから現在ここに重点的な監査が行われておりますので、過積みの違反件数が相当増加しているということが実態かと思いますけれども、しかし、これはやはり看過し得ない問題で、重要な問題だと思っております。何とかこれを撲滅するように努力してまいりたいと思っております。
  49. 田渕勲二

    田渕勲二君 その件数を聞いたわけではないんですが、どの程度トラックが平均して過積みしているか、こういうことを調べられたものはありませんか。
  50. 八島幸彦

    政府委員(八島幸彦君) お答えいたします。  警察で過積載違反の取り締まりをやった件数でございますが、昨年一年間に十万六千七百五十六件検挙いたしております。このうち過積の量の割合で申しますと、五割未満が三万七千二百六十七件、五割以上十割未満が四万五千六百十件、十割以上、二倍以上になりますが、十割以上が二万三千八百七十九件という実態でございます。
  51. 田渕勲二

    田渕勲二君 今聞いてまさに驚くほど、検挙された十万件の中でかなりの部分がもう五割以上、こういう状況トラックが走っているということなんです。そういたしますと、五トンコンテナ貨車の運賃と、そして過積みをして走っているトラックの運賃の比較というようなことをやりますと、これはもう比較にならぬのですね。コンテナに荷物が流れないわけです、これは。その方が安くて速い。この速さとかなんとかはいろいろこれから新会社になってからなるでしょうけれども、運賃の面において、これだけの過積みをしているトラックで走るわけですから、当然五トンコンテナの料金よりは、いかに割引をしたとしても、四割も三割も過積みをしているトラックとは恐らく二万円も三万円も差が出てくると思うんですが、この辺の対策は運輸省としてどういうふうにお考えですか。
  52. 松村義弘

    政府委員(松村義弘君) 過積みの防止それから過労運転の防止というのは、交通事故対策として非常に重要な要因だと我々は考えております。これをやはりなくすためには、まず事業者の自覚を促す必要がございます。そういった観点から、地域懇談会を開きまして事業者の自覚を促す。それから一方、事業者だけを責めても始まりませんので、これは荷主の皆様方によく御理解をいただかなくちゃいかぬ。それで荷主懇談会を開くといったような対策を講じております。そういったことで広く御理解を求めながら、しかしそれだけでは十分ではございませんので、先ほどもちょっと触れましたけれども、監査の重点項目に指定しまして、これは徹底的に取り締まるという方向で臨んでおります。
  53. 田渕勲二

    田渕勲二君 それでは次に、所要時間ですね。鉄道貨物トラック競争をするわけですから、当然所要時間というものが必要になってくると思うんですけれども、東京―大阪間の鉄道トラックの所要時間について御説明を願います。
  54. 岡田昌久

    説明員岡田昌久君) 東京―大阪間だけの列車は、そのほかも仙台から大阪というのがございますけれども、東京―大阪間だけの列車では今五本ございます。一番短時間で運行いたしておりますのは、今回設定いたしましたスーパーライナー、百キロ列車でございまして、これは七時間をちょっと切る六時間五十九分で運行いたしております。その他の九十五キロ列車につきましては八時間三十分前後でございます。なお、あと二本につきましては、集荷するときに、例えば隅田川から出まして、新座、湘南貨物等に寄りまして、それを拾って大阪に到着するというような列車でございますので、これは十時間から十一時間を要しております。  それから先生、先ほど大変失礼いたしましたが、一個あたりの運賃の場合、配達だけを申しましたが、集荷がかかる場合はさらに九千六百円かかるということでございます。
  55. 田渕勲二

    田渕勲二君 スーパーライナーというのが今度できて七時間弱ですか、これで東京―大阪間を走るということになるんですけれども、それ以上は八時間半とか九時間とかいう、そういうダイヤになっていると思うんですね。  それで私の調べでは、やはりトラックというのは大体七時間ぐらいで東京―大阪間を走っています。これに高速料というものが仮にかかったとしても、早く着いて、これでペイしているわけです。これは当然過積みしていますから、相当な利益を上げていると思うんですね。したがって、鉄道貨物トラックとの競争で一番問題なのは、やはり先ほど来いろいろお話があるように、今までは荷主のニーズに合ったダイヤでない。国鉄だけの見込みダイヤで、それにお客さんをこのダイヤがあるからこれにつけろというようなダイヤだったんですが、そういうことでは当然だめでして、これからの新しい会社はそうではないようにしたいという説明が今まであるわけで、ぜひそうしてもらわなければなりませんけれども、しかし、それにしてもこのトラックというのは輸送時間を自由に設定できるし、鉄道貨物よりもかつ自由に、しかも荷主の利便を図って、そうしたダイヤを設定してトラックを走らせる、こういう状況は変わらないと思うんですね。  そうすると、やはり鉄道貨物というのは、確かに今度ピギーバック方式というんですか、こういうものを採用して大いに売り込もうということになっておるんですが、やはり何といっても、今申し上げたようにダイヤ自体が荷主の要請に応じたダイヤにセットできるかどうか。これは今までのように鉄道だけのダイヤじゃなくて、今度は旅客会社と相談しながらダイヤを設定しなければいけませんので、そうすると、どうしても旅客会社というのは自分のところのお客さんを運ぶためのダイヤを優先的に引こうとするしあいた時間に貨物は走ってくれ、こういうようなことになりますと、意気込みはいいですけれども、なかなか実際の面で荷主の要請に応じたようなダイヤが組めるかということになるんですが、その辺についていかがでございましょうか。
  56. 杉浦喬也

    説明員(杉浦喬也君) おっしゃいますように、ダイヤの設定というものは非常にこれからの貨物の営業にとりまして大事なポイントであるわけであります。また、そのダイヤも、旅客列車が走るレールを使うというところにまた大きな特徴があることも事実でありまして、この両者間にうまくダイヤを円滑に、スムーズにいくように仕組みませんと貨物が伸びない、こういうことに相なるわけであります。  そうしたことから、旅客会社貨物会社の間に常時連絡体制を置き、調整を行い、なかんずくダイヤのいわば優劣、優先順位というような点が非常に問題になるわけでありまして、旅客の方ばかりがいい時間帯をみんな取ってしまいますと、これはまた貨物にしわ寄せがくるということでございますので、現在検討中のところでありますが、その優先度合いというようなものを一ランクから五ランクまで、旅客貨物共通に全部ランクづけをいたしまして、例えば旅客の方の特急列車というものは貨物の方も先ほどのスーパーライナー、高速貨物列車に大体同じ性質を持たせようというようなことで、それぞれの相関関係を見ながらあらかじめルールを決めてしまいます。  そうしたルールに従いまして相互に、何といいますか、一番経営上有利と思われるそういうダイヤをつくり上げよう、こういうふうに考えておるところでございまして、ともすれば旅客優先というふうに見られがちではございますが、その中で貨物にとりましても十分に荷主におこたえできるようなダイヤを設定することが可能であるというふうに思います。
  57. 田渕勲二

    田渕勲二君 そうしますと、もう少し観点を変えますと、政府の改革案では、旅客会社貨物会社では事業の範囲は大きく違っておるんですが、施行法十二条三項では、貨物会社の第二種鉄道事業の免許についてはその業務範囲を貨物輸送に限定する、こういうふうにしていますが、旅客会社事業範囲はオールマイティーですから、この規定の精神、政府の将来展望をそんたくするなら、貨物会社の自然消滅ということを私は非常に心配するんです。  なぜかと申しますと、仮に旅客会社が、どうも貨物需要が非常に高まってきて、この路線については旅客会社自体でひとつ貨物運行をやってみようと、こういうようなことを仮に新しい旅客会社が思いついて、そして旅客会社自体が貨物を走らせるということにしてもこれは違反じゃないと思うんですが、そういうことができるのか、また、した場合どういう状況になるのか。これについて御見解をお聞きしたいんです。
  58. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 確かに、御指摘のように鉄道事業法案の第三条三項の規定で「第一種鉄道事業及び第二種鉄道事業の免許は、業務の範囲を旅客運送又は貨物運送に限定して行うことができる。」としておりまして、この移行時においては、旅客会社に引き継がれる営業線のうち現に貨物運送が行われておりますものにつきましては、旅客会社とともに貨物会社も同一の鉄道線路を使用して鉄道事業を経営することになるわけであります。このため、両会社間の事業分野に適切な調整を行うことが必要になるわけでありますけれども貨物会社を設立する趣旨は、まさに改革法八条に規定するとおり、国鉄貨物鉄道事業というものを一体的かつ専門的に経営することにあるのでありまして、いわゆるみなし免許に当たっては、貨物会社については確かに業務の範囲を貨物運送に限定をいたしました。  これは対して旅客会社につきましては、確かに理論的には委員のお話のようなことも起こり得るかとは思います。しかし、貨物会社貨物鉄道事業の免許を付与されている以上、旅客会社が本格的な貨物輸送を行うということは実態として見込まれないと思いますし、当該鉄道線路の所有管理は旅客会社が行うことでありますから、仮に将来、その貨物会社貨物運送を行わないという場合がありましても、旅客会社がこれを行い得るよう措置しておくことは必要であろうということから、旅客会社については業務の範囲の限定はいたしませんでした。  ただ、実質的に発足をいたします時点で、貨車につきましてはこれが皆貨物鉄道株式会社の所有になるわけでありまして、仮に今委員がお話しになりますように、この路線はどうも貨物がもうかりそうだからおれのところで手を出すかということになりますと、旅客会社貨車の製造、購入の時点からスタートをすることになるわけであります。実質的に私どもはそういうことはあり得ないと考えておりますけれども、みなし免許は旅客限定ではございませんから、確かに法律的には不可能ではありません。しかし、臨時特例的なものは別として、まず私どもとしては、旅客会社が本格的な貨物輸送を行うということは実態として考えられませんので、貨物会社旅客会社との間で競争をしなければならない事態というものは通常あり得ないということを考えております。  また、仮に同一路線において旅客会社貨物会社と競合し得るような本格的な貨物輸送を行おうとした場合には、会社法の第一条三項のいわゆるその他事業の認可を受ける必要が生ずるわけでありますが、そのような認可申請がもしあったとすれば、これは旅客鉄道事業の適切かつ健全な運営について支障を及ぼすおそれがあるかないかということから十分に検討をすることでありまして、私は理論的にあり得ないとは決して申しません。しかし、そういう事態はまず想定しないで済むものと考えております。
  59. 田渕勲二

    田渕勲二君 だから、今いろいろやりとりしてきましたけれども、やはりそういういろんな心配が客貨分離によって起きてくるわけなんで、したがって、民営化はともかくとしても、客貨が分離して分割されるというのではなくて、客車も貨車全国の一元的な運営、こういったものが非常にやはり私は効率的に運営ができると思うんですけれども、大臣、いかがですか、お考え直しになる気持ちはありませんか。
  60. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 貨物全国一社制を採用したことについてお褒めをいただきましたことはありがとうございますと申し上げますけれども、だからといって、旅客会社を分割し運営をすることを取りやめるという考えには私は到達し得ません。申しわけありません。
  61. 田渕勲二

    田渕勲二君 それでは、続きまして競争相手になるトラック運輸の実態についてこれから質問していきます。  まず、六十年度の運輸白書二百十五ページに「トラック輸送においては、過積載過労運転、違法白トラ、運賃ダンピング等が発生し、いわゆる輸送秩序の乱れの問題が生じている。」と、こういうように書かれておるわけでありますけれども、これにつきまして実態と数字的な裏づけについて御説明を願いたいと思います。
  62. 山内一郎

    委員長山内一郎君) 答弁者、早く願います。
  63. 松村義弘

    政府委員(松村義弘君) お答えいたします。  まず、過積載関係でございますけれども、それは先ほどお答えしましたので省略させていただきます。  運賃ダンピングの問題でございますけれども、運賃ダンピング、これはやはり監査項目の重点の一つに指定されております。五十九年度の行政処分をいたした結果でございますけれども全国で六十二件摘発しております。これは件数としては相当多いのでございますけれども、その事情によりまして、例えば輸送効率から見てある程度容認できるといったような良質なものは処分いたしておりませんけれども、みずから求めて運賃ダンピングをして荷主さんを他の事業者から奪うといったような悪質なものに関しましては、これは断固処分するということで六十五件の処分をしております。  また、白トラの関係でございますけれども、これは道路運送法によりまして、まず届け出をさせております。届け出の際に、白トラ行為というのは非常に社会秩序を乱すからよくないという厳重な指導をしております。それにもかかわらず、街頭取り締まりをしてみますと、白トラというものは相当の活躍をしているというような実態でございます。そういったものが我々の手で摘発された場合、または警察庁の方から通知があった場合には、これはトラックの使用停止といった行政処分をしておるのが実態でございます。その件数でございますけれども、五十七年度は千百二十六件、五十八年度は千五件、五十九年度は九百七十件といった大きな数に上っておるのが実態でございます。
  64. 田渕勲二

    田渕勲二君 交通安全白書の六十年版によりますと、大型トラックの過積み違反の取り締まり件数は、運転者の違反が十万六千七百五十六件、使用者の違反が五百二十九件、こういうようになっておるんですが、これは間違いございませんね。
  65. 八島幸彦

    政府委員(八島幸彦君) お答えいたします。  運転者の違反は御指摘のように十万六千七百五十六件でございますが、使用者の背後責任の追及は五千二百九十一件検挙いたしております。
  66. 田渕勲二

    田渕勲二君 それを青ナンバー、白ナンバーに分けて言っていただけませんか。
  67. 八島幸彦

    政府委員(八島幸彦君) 検挙いたしました十万六千七百五十六件のうち、四一・一%が営業用ナンバーでありまして、残りの五八・九%が白ナンバーでございます。
  68. 田渕勲二

    田渕勲二君 もう一遍、今の。青ナンバーよりも白ナンバーの方が少ないんですか。大型車ですよ。大型、普通に分けて言ってください。
  69. 八島幸彦

    政府委員(八島幸彦君) 大型と普通で申しますと、大型貨物が四五・一%、普通貨物が五四・六%、その他若干ございます。そういう状況でございますが、その大型貨物、普通別に白ナンバー、青ナンバー別の数字はちょっと現在手元にございませんので、後ほど御報告いたします。
  70. 田渕勲二

    田渕勲二君 六十年度版の交通統計、これは警察庁が出したものですけれども、これによると大型と普通とを合計した積載違反の件数は青ナンバー、いわゆる営業車が四万七千四百十一件、それから白トラックですね、違法のトラック、これが七万一千七百九十九件と、こういうように非常に自家用車が積載違反が多いんですね。しかし、先ほど聞いておりますように、運転者の違反が十万六千件ですか、使用者の違反が五千件というようなことになっていますけれども、これは非常に実情と合ってないと、こういうように私は思うんです。だから、過積みの業者に対する取り締まりは、いわゆる雇い人である運転者の責任ではないと、多くは事業者の責任に帰する問題でありますから、道路運送法によるこの過積み違反事業者は五十九年度の場合千三百四件で、トラック事業者のわずか三・六%にしかならないわけですが、こういう事業者に対する取り締まり体制、こういうものについて問題があると思うのでありますけれども、この点いかがでございますか。
  71. 松村義弘

    政府委員(松村義弘君) 取り締まりの実態を申しますと、陸運支局末端に輸送課がございます。そこにおいて職員が取り締まりに出かけるわけでございますけれども、それは管理職を全部入れまして二百人足らずといったところでございます。そういった体制では不十分でございますので、貨物自動車輸送秩序改善指導員という方々を、民間の方でございますけれども、これらの方に指導、改善のお願いをしております。六十一年度は百七十二名の方を予定しております。これは、割合業界の動きに詳しい方々を一定の研修をいたしまして、そしてその方々の協力を得て取り締まりを強化するといった対策を講じております。  いずれにしましても、我々としては、限られた予算でございますけれども、いろんな知恵を働かして取り締まりを強化してまいりたいと考えております。
  72. 田渕勲二

    田渕勲二君 この取り締まりは、私どもがいろいろ過去、関係省庁にお願いをしていきますと、必ず監視員が足らぬとか、あるいは重量計などの設置も非常に少ないわけで、予算が足らないというようなことで、今日の交通事故の大半はこうした過積載というものが大変な大きな事故を起こしておるわけで、これはもう国家的な問題だと思うんですね。  せっかく大蔵大臣がお見えになっていますから、お願いをしたりお聞きをしたりするんですけれども、この道路の監視体制、十トン車に二十トンも積んで走ったりするような、この取り締まりをするのにいつも関係省庁が予算が足らぬ、予算がない、監視員が足らない、重量計が足らないということになるんですが、こういうところにひとつ重点的な予算の配分をぜひお願いしたいと思っておるんですが、大蔵大臣、何か御見解ございませんか。
  73. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) その点は私どもの党内でも実はそういう声が非常に高うございまして、予算編成に関しまして関係省庁とよく検討いたしてまいりたいと思います。
  74. 田渕勲二

    田渕勲二君 人が非常に足らないということは確かに私どもも実態として知っているんですが、せっかくこういう機会、国鉄が民営になるわけで、大変たくさんの人があちらこちらの民間なり公共企業体に再就職されるわけですが、ここなら何万人来てもらってもこれは実効の上がる場所なんですね、こういう監視員というのは、監視体制についてもらうというのは。そういう点で国鉄職員をここに振り向けるという考えはございませんか。
  75. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 先ほど担当局長の方から予算、資材の不足という話が出ましたが、これも事実でありましょう。しかし、それだからといってこうした問題を放置しておいていいはずはないわけでありまして、その限られた中で最大限の努力を関係各省庁の協力も得ながら進めてまいりたいと思います。
  76. 田渕勲二

    田渕勲二君 したがいまして、こういう事態があるということはひとつ総理大臣以下お聞きいただいたわけでありますから、こういう道路の今日大変な交通事故、公害を巻き起こしている、大変な社会問題になっておるような問題でありますから、ひとつ十分予算もつけていただいて、監視員なりあるいは重量計などの設置をしてやっていくと。そのためには、ぜひひとつ国鉄職員の転出先にこういった点も十分配慮していただきたいということをお願いしておきたいと思います。  したがいまして、いわゆる過積み業者というのは、むしろ白トラといいますか、そういう自家用で違法な営業行為をしておる業者に大変多いわけでありますから、そういう問題を、まあ放置はされていませんが、非常に手ぬるい検挙体制ということでありますから、こういう問題についてこれを放置しておいては、幾ら我々が輸送秩序を確立しようと、こう言ってもなかなかできるものじゃございません。したがいまして、こういう点についてひとつぜひとも今後この面の強化を図っていただくように、特にひとつ運輸大臣にお願いしておきたいと思います。  それでは次に、ちょっと情勢をここで申し上げておきますが、トラック労働者十万余で組織しております運輸労連という組織があるんですけれども、この運輸労連は毎年毎年この実態調査をやっておるわけでありますけれども、最近のアンケート調査によりますと、これは運転者の調査ですが、過積みの解消を何としても政府や荷主に交渉してもらいたいし、交渉したいと、こういうことをトップに挙げる運転者が全体の三五%近くも占めているわけです。これがもう要求の第一位なんですね。こういう点でも過積みそのものは運転者をやはり苦しめていると、こう思わざるを得ないわけです。したがいまして、こうしたことを十分ひとつ御理解いただくと同時に、運輸大臣、先ほど申し上げましたけれども、さらに強化をひとつ図っていただきたい、このように申し上げておきます。  それで私は、この輸送秩序の確立ということで特に申し上げていきたいことは、やはり現在の労働時間、こういうものをきちっと守らせる、そして労働基準法というものをさらに拡充をしていく。こういうことで、特に運転労働者にとりまして、今一片の通達でございますけれども、二七通達というのがあるんですが、これを何としてもやはり私たちは法制化していくと、単に通達ぐらいなら守る必要はない、こういうような事業者が非常に多いわけでありまして、そうではなくて、これを法律に定めることによってきちっと事業者にもこの法の観念を植えつけると、こういう意味からこの二七通達の私は法制化を要求したいわけでありますけれども、この二七通達の守られている状況についてぜひひとつ伺っておきたいと思うのであります。それについてひとつ労働大臣お願いしたいと思います。
  77. 平賀俊行

    政府委員(平賀俊行君) お答えいたします。  二七通達は、労働基準法に規定されたいろいろな労働時間に関する諸規定を超えて、拘束時間あるいは運転時間等についても通達をし、業者の方に守っていただくように各監督署で労働基準法上の監督とあわせて監督指導を行っているところでございます。それで、先ほどお話にございましたけれども、一片の通達ではなくて、やはり労働基準法上の諸規定の監督とあわせることによって実効を期することができると私ども考えております。  二七通達の遵守状況等についてお尋ねでございますが、この点につきましては、各項目によって違いますが、大体監督をし、その項目について違反のあったところというのが一〇%から三〇%ぐらいの割合になっております。それから全体としてその事業所で何らかの違反があったかどうかということにつきましては、約半数強の事業者について違反があったという結果が出ております。
  78. 田渕勲二

    田渕勲二君 労働組合が調べた数字を言いますとこれはまたいろいろ我田引水じゃないかと言われますから、ここではその数字じゃなくて、いわゆる経営者団体の全日本トラック協会というのがあるんですが、その協会が六十一年三月、ことしの三月にまとめました「トラック運送事業における運行実態調査報告書」、こういうものがあるわけでありますけれども、例えばこの報告書によりますと、一日の拘束時間が平均十六時間六分です。基準法では八時間という労働時間になっておるにかかわらず、大体拘束されている時間が十六時間、これはもう平均ですから、なっておる。こういうように経営者自体も二七通達の状況というものは十分でないということを認めているわけです。五十四年に、今から七年前ですか、一一七通達が制定されたわけでありますけれども、こういう実態であるわけです。  したがって、六十年度で私の調べたところでは、四千四百二十五事業場について労働省が調べたのでしょうが、監督実施したのが二千三百三十八で、このうち違反をした事業場は五二・八%、こういう数字が実はあるんですが、これはこのとおりでしょうか。
  79. 平賀俊行

    政府委員(平賀俊行君) 先ほども概略御答弁申し上げましたけれども、ほぼそのとおりでございます。
  80. 田渕勲二

    田渕勲二君 したがって、労働省は一定期間ごとに自動車の運転者を使用する事業場に対する監督実施結果、こういうものをまとめて公表しておるわけですけれども、しかしこの報告は、各事業場を監督した中から自動車関係を取り出してまとめたものだと、こういうように聞いております。仮にそうだとすれば、なぜ十分に守られていない二七通達の遵守の徹底を図るための特別な監督を実施して改善策を講じないのか、その辺のところがよくわかりません。  また、自動車運転者の労働時間の超過過労運転、こういうものが事故につながっておるということは十分御承知のはずなんですけれども、こういったところについて重点的な労働省の徹底した監査といいますか監督といいますか、こういうものが非常に私は不足をしておるように思うんですけれども、この辺の見解はいかがでしょうか。
  81. 平賀俊行

    政府委員(平賀俊行君) 二七通達を、基準法の規定を超えて拘束時間あるいは運転時間等について通達をしておるということ。それから二七通達を出したということに関連しまして、そういった業種、陸上貨物自動車運送業等について重点的に監督の対象にしているということでございます。  また、先ほどから違反率の問題もございますが、私ども、もちろん重点的に監督しておるその監督件数その他が十分とは思っておりませんけれども、ほかの業種についてより手厚く監督をしておりますのと、そういう状況でございますので、監督対象を選ぶにつきましては、やはりできるだけ問題のありそうなところについて監督を実施しておる。そういう結果がその数字にあらわれていると思っております。  なお、そういった結果、それから田渕委員もかねがね自動車運転関係労働条件の改善に御尽力をいただいておると思いますが、例えば労働災害の発生件数とか、あるいは事故の件数等について見ますと、長期的には相当大幅な改善を見ていると考えております。
  82. 田渕勲二

    田渕勲二君 これで、私は非常に気になることが一つあるんです。やっと労働省が重い腰を上げたと思うんですが、中央労働基準審議会で二七通達の法制化を含めて検討中と聞いておるんですけれども、しかしここで大臣にお聞きしたいのですが、経営者側はどうも業界の特殊事情ということを理由にして法制化は困難であるということを盛んに陳情しているように聞くわけです。業界新聞をここに持っておりますけれども、反対を表明していろいろ労働省に言っておられるわけです。  これによりますと、労働省の松原労働基準局監督課長ですか、この談ですけれども、「二七通達の法制化について業界の特殊事情の中で困難だとする声があるのも事実だ」と、二七通達を法制化しないと、するのは問題だと、こういうような発言のように私は受け取るんですが、そういうことでは私は非常に困るんですね。したがって、今まで労働省が二七通達の法制化も含めて検討していると非常に前向きに我々受け取ったんですけれども、こういうような発言が飛び出してきますと、どうも労働省の姿勢が最近ぐらついたんじゃないか、こういうように非常に心配するんですが、その点、大臣いかがですか。
  83. 平井卓志

    国務大臣(平井卓志君) 荷主のニーズにこたえると申しましょうか、できるだけ早く、できるだけ効率よくというふうな過当競争の中から、先ほど御論議のありました過積みの問題、さらには長時間労働の問題等々が発生しておると思うわけであります。トラック運転者の労働条件の改善につきましては、関係労使がかねてから努力をいたしておるわけでございますが、今議員御指摘のように、労働時間が長いということで労働条件にかなり問題があるということは御指摘のとおりであります。そして、今のお話でございますが、確かに過去関係業界からもいろいろな御意見がございました。いずれにいたしましても、この二七通達の趣旨が隅々まで徹底されておるとは私理解いたしておりません。  そういう中で、結論から申し上げますると、やはり労働条件の改善と事故防止という観点に絞って考えましたら、いろいろな関係それぞれの考え方はございましょうけれども、二七通達の趣旨を徹底させる方向で基準審議会はおいて御論議があるものと、私はかように考えております。
  84. 田渕勲二

    田渕勲二君 ぜひひとつそういう趣旨で推進をしていただきたいと思います。  したがって、この二七通達のもとになっておるのはILOの百五十三号条約、これは自動車運転者労働時間の国際的な基準であるわけですけれども、我が国はこれは批准こそしていませんけれども、ILOの場では採択に賛成をしておるわけですね。しかしながら、国内的には通達の形で基準化をして今日に至っておるわけでありますけれども、今お話がありますように、監督実施事業場の五割以上が何らかの形で二七通達の違反をしておる、こういう事実が明らかでありますけれども、これは非常に国際的な信用という点からも問題があると思うんですけれども、これらについて運輸大臣労働大臣、御所見をお伺いしたいと思います。
  85. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 今労働省当局の方からも、また大臣からもお話がありましたけれども、私どもとしては、いわゆる白トラック問題等等につきましても、道路運送法第四条違反ということで、百二十八条の規定によっての一年以下の懲役あるいは三十万円以下の罰金が科せられるということを生かし、また百二条の規定によっての車両の使用停止等の行政処分も行うことができることになっております。今、私どもとすれば、現行の法規を最大限に使って対処しつつあるところでありまして、今後とも取り締まりの徹底と道路運送法違反に対する厳正な処分を行うとともに、使用届け出制度を適切に運用し、自家用トラックに対する違法な営業行為の取り締まりというものを気をつけてまいりたい。  先ほど来の御指摘を伺っておりまして、なお私は関係各省庁と、現行の法律利用する中におきましても対応の方法があり得るなというような感じもいたしておりまして、今後ともに勉強してまいりたいと思います。
  86. 平井卓志

    国務大臣(平井卓志君) ILOの第百五十三号条約でございますが、この目的、内容におきまして国際的な基準とすることが適当であるという判断から、採択に当たり賛成したことは委員御承知のとおりでございます。そういうことでございますので、労働省は、御案内のような、五十四年にこの条約の趣旨を踏まえた改善基準、俗に言われる二七通達を策定いたしまして、その遵守徹底を図るために関係事業場に対する監督指導等に努めておるわけでございまして、今後一層御指摘の線に沿って指導監督を強化してまいりたいと考えております。
  87. 田渕勲二

    田渕勲二君 いずれにいたしましても、新しく生まれ変わる貨物鉄道会社というものは、今後将来存続できるか否か、こういうことは他のいわゆるトラック中心とした輸送機関、これらの公正な競争の条件が備わっているかどうかにかかっておると、このように私は思うがゆえに先ほど来質問をしてきておったわけです。  もう少しこの実情について御披露申し上げますと、労働省の調べられました毎勤統計、これによりましても、いかに運転労働者の労働時間が長いかということについて調査が出ております。これは昨年六月で申し上げると、月間の労働時間が全産業平均で百八十九・四時間です。これに対してトラックの場合には二百二十六・一時間、全産業の平均よりも三十六・七時間労働時間が多いと、こういう実態が労働省の調べでも明らかである。  また、年間の労働時間を調べますと、これはもう本当に初めての方は驚かれると思うんですけれども、これも経営者団体の調べた全日本トラック協会の調査によりますと、路線トラック、これで年間に三千百五十五時間も路線トラック労働者は働いている。さらに、区域トラック労働者は幾らかというと、二千九百三十九時間、これは現在基準法の改正の目標になっておりますいわゆる週四十時間、週休二日、そして年間は二千時間以内と、こういうのに比べましても、実に千時間以上もこのトラック労働者の労働時間は長いということです。しかも、全国に営業トラック会社というのは約三万六千社あるわけでありまして、この三万六千のトラック会社が大変な過当競争を繰り広げておるわけでありますけれども、こういう実は図式になると思うんですね。  各トラック会社というのは、もう今大変産業が冷え込んでおりますから、どんどん運賃を買いたたかれる。だから、お互いが運賃ダンピング競争を繰り広げて安い運賃で仕事を引き受けるわけですね。しかし、その安い運賃で引き受けてもこれが採算がとれるのはどういうことかと申しますと、それは過積みでその分をカバーしているわけですね。そして、そのしわ寄せを受けるのはこのトラック運転労働者なんです。そのトラック運転労働者は、これは賃金は、時間がありませんから余り申し上げませんが、これも平均から比べて非常に安いんですが、その低賃金をカバーするために超過労働をやるわけです。これが三千時間というような状況になってくるわけですね。そしてそれが結局は過労につながっていわゆる無理な追い越し、スピード出し過ぎ、こういうものが大変な重大事故はつながっていく、こういうサイクルになっているんですね。  こういうような実態について御披露申し上げたわけでありますけれども、特にひとつこういう面の改善のためには、先ほど来、取り締まりを強化して、あるいは二七通達を法制化して、そして公正な競争条件に置いていくと、こういうような観点に立たなければ貨物会社の申請、貨物会社なんということは言えないと、このように私は思うのでありますけれども、取り締まりの方面からぜひ公安委員長がお見えになっておりますから所見をお伺いすると同時に、これに対する運輸、労働両大臣の再度のひとつ御見解をお願いしたいと思います。
  88. 葉梨信行

    国務大臣(葉梨信行君) 過積み等の問題につきましては、交通安全上大変危険な問題でもございまして、これらにつきましては従来厳重な取り締まりを行ってきたところでございます。また、特にこの問題につきましては、安全管理上の問題もございますので、運転者に対する取り締まりだけでなく、使用者に対しましても取り締まりを強化いたしまして、この問題につきましての徹底を期したいと考えているところでございます。また、関係省庁、各省庁とも十分に協議をいたしまして効果が上がるようにいたしていきたいと考えております。
  89. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 従来、社会労働委員会立場から見ておりました過重な労働というものを、きょう改めて運輸省の立場からいわば見直したという感じがいたします。十分相談をしながら、関係省庁と連携をとり、対応してまいりたい、そのように思います。
  90. 平井卓志

    国務大臣(平井卓志君) ただいまの全産業の年間実労働時間とこれは比較するまでもなく、相当超過勤務が問題になっておりまして、かなり問題点はもう非常にシンプルに明確になっておりますので、さらに一層監督を強化してまいりたいと考えております。
  91. 田渕勲二

    田渕勲二君 いろいろ申し上げてきましたけれども、結局鉄道貨物との競争というのは、やはり今申し上げたように、公正な競争が一方で起きなければこの貨物会社の再生はあり得ないということを再度申し上げておきたいと思うのでありますが、それに伴いまして、それらの関連の法規をぜひひとつ的確に改善していただくということをお願いしておきたいと思います。  続いて若干時間が、実は関連事業関係も質問がありますので、最後に国鉄の要員の関係についてちょっとお聞きをしておきたいと思うのであります。  昨年十二月運輸省が出しました「新しい貨物鉄道会社のあり方について」というものによりますと、貨物会社の要員数というのは適正要員が一万人ですか、これに二割程度上乗せして一万二千五百人程度になるということになっておるんですが、まずこの一万二千五百人というのはどのような根拠で出されたのか。旅客会社の場合だと私鉄並みという一つの規律が与えられておりますけれども貨物についてはその辺のところがちょっとよくわからないんですけれども、この一万二千五百人という数字が出てきた根拠についてちょっとお聞かせを願いたいと思うのであります。
  92. 林淳司

    政府委員林淳司君) この一万二千五百人の要員の算定根拠でございますが、これは旅客会社の場合と同様でございまして、各現場の機関ごとに、例えば駅でありますとか、あるいはその他機関区でございますとか、いろいろございますけれども、現場の機関ごとに営業とか、あるいは運転とかいう系統別に積み上げ計算をした。もちろん、これはこれから非常に効率的なコストの安い体制でやっていかなきゃいけませんので、そういう点を十分念頭に置きながら、なおかつ必要な人数を個別に現場機関ごとに積み上げ計算をして出した数字でございます。
  93. 田渕勲二

    田渕勲二君 そうすると、一万二千五百人というのは、当初十二月二日の運輸省案では貨物充当人員という考え方だったと思うのであります。つまり、充当人員ということになりますと、客貨兼務の人間を〇・五とか〇・三とか、こういうように計算して積み上げられたと思うのでありますけれども、それといわゆる社員といいますか、正規社員というんですか正規従業員というんですか、充当人員と正規従業員というのとはちょっと違うように思うんですが、その辺いかがですか。
  94. 林淳司

    政府委員林淳司君) 先生指摘のとおり、昨年の貨物体制のあり方というときには、これはいわゆる充当人員でございます。例えば、駅でございますと、旅客貨物両方取り扱っている駅の場合、そこの例えば事務要員というものはその比率に応じて配分するというふうな形でのいわゆる充当人員でございます。今回の精査をいたしました形での一万二千五百人と申しますのは、これは新しい貨物会社に所属する職員数でございます。  たまたまこの数字は一致したわけでございますが、これはどういうことかと申しますと、今の考え方では、例えば非常に貨物の扱い量の大きい機関区というふうなものについては、これは貨物会社に所属させる。しかし、そこの機関車が例えば旅客列車も一部引っ張るというふうな場合には、これは旅客会社の方から使用料をいただくという形にしております。また、それとは別に逆のケースもございまして、貨物会社の方が旅客会社に業務を委託するというものもございます。そういう相互の受委託の関係がちょうど同じぐらいの数になっておりまして、したがいまして結果的には一万二千五百人という数字でございますけれども、確かに昨年の場合には充当人員、それから今回は貨物会社に所属する職員数というふうに考えております。
  95. 田渕勲二

    田渕勲二君 それじゃもう時間がありませんので、次の課題に移らせていただきます。  関連事業関係についてお伺いしたいと思います。  まず、昭和六十年度決算において関連事業収入は一千四億千六百万円ということになっていますが、その内訳をお聞かせ願いたいのです。
  96. 長谷川忍

    説明員(長谷川忍君) お答え申し上げます。  一千四億の内訳でございますが、主要な項目で申し上げたいと思いますけれども、構内営業料、これはキヨスク等でございますけれども、二百六十九億でございます。それから広告料、これが二百四十七億、用地等使用料が百九十一億、駐車場収入が七十二億、その他十億、それから直営売店収入が三十一億、それから不動産賃貸収入古六十三億、配当金五億、以上申し上げましたのが旅客関係でございまして、それ以外に貨物関係、自動車関係等の関連事業がございまして、合計いたしまして一千四億ということでございます。
  97. 田渕勲二

    田渕勲二君 そうすると、新旅客会社六社の六十二年度の関連事業収入は合計で千三百九十五億ですか、これを見込んでおられるわけですが、六十年度に比べて三八・九%、これは大変な大幅増でありますが、その積算根拠はいかがですか。
  98. 長谷川忍

    説明員(長谷川忍君) 全体的に申し上げますと、確かに先生おっしゃったように、六十年度実積に対しまして六十二年度の目標、四割増、四百億ばかりの増を見込んでおるのでございますが、これまで過去十年間の実績を見ますと、大体毎年一〇%前後伸びておりまして、五十年に比べますと六十年度実績で約三倍強になっておるわけでございます。これを今年度二〇%増、来年度もさらに二割ふやすというわけでございまして、その内容なんでございますが、概略的に申し上げますと、キヨスクあるいは駅ビル、そういった構内営業関係でございますね。あるいは広告関係、これにつきましては料金の見直し、あるいはキヨスク、駅ビルの料金の体系は売上歩合制になっておりまして、これらの増収によりまして期待しているという点がございます。それに加えて駅あるいは高架下等の活性化をいたしまして、その中でいろんな物販店なりあるいは飲食店等々をどんどん開発していきたいと、こういう計画なんでございます。
  99. 田渕勲二

    田渕勲二君 それじゃ貨物会社について、関連事業の比率はどの程度見込んでおられますか。
  100. 岡田昌久

    説明員岡田昌久君) 貨物会社につきましては、六十二年度で二十二億の収入を見込んでおります。
  101. 田渕勲二

    田渕勲二君 これからの、旅客会社貨物会社が今後展開していく関連事業の種類というのは、先ほど六十年度で申された、いろいろキヨスク初めいろんな関連事業の対象範囲がありますけれども、これらのほかに関連事業としてどのような事業考えておられるか、この点について御質問申し上げます。
  102. 杉浦喬也

    説明員(杉浦喬也君) 当面は、新しい会社といえどもやはり鉄道事業本体、これに全力投球をいたすわけではございますが、おいおいやはり関連事業を新規に開拓いたしまして、民鉄に近寄せるのはなかなか大変でございますが、現在民鉄の関連事業が総体収入の三四%を占める、こういうような状況でもございますので、やはり新規開拓をやっていきたいというふうに思うわけでございます。  その着眼点でございますが、一つはやはり駅というものにもう一回着目いたしまして、大変多くのお客さんがここに集まるわけでございますので、この駅というものをもっともっと活用する道はないか。現在業務用の施設に使っているところもございますので、この辺も集約をいたしまして駅にすき間を設けまして、そこに十分に新しい事業を展開してまいる。レストランとか物販等の従来の店以外に、さらにまた情報コミュニケーションといいますかそうしたもの、あるいは文化センターというような、人々の集まることによります新たな事業の展開を図ってまいりたいと思いますし、あるいはまた駅と駅との間の空間、高架下等を使いまして、ここでトランクルームとかあるいはスポーツ施設あるいは工業化農業というような新しい分野にまで手を伸ばしたいということで現在勉強中であるわけでございます。
  103. 田渕勲二

    田渕勲二君 私鉄というのは広範な沿線開発、こういうもので不動産部門が非常に大きく伸びたと思うんですけれども、新しい旅客会社にこういった沿線開発、こういうものを計画されますかどうか。
  104. 杉浦喬也

    説明員(杉浦喬也君) 従来の私鉄の歴史を見ますと、新線建設を行う場合にあらかじめ付近の土地を購入し、それの開発利益をみずからのところに還元するというようなことを考えてきた歴史がございます。今後の鉄道につきまして新しく線路をつくるということは非常に難しいわけでございますのでそうしたことの発展は望めませんが、例えば先ほど申しました駅の点に着目いたしまして、特に地方におきまして駅をふやす。今、駅間距離がなかなか長いわけでありますので、駅をふやして、その際に駅をその町の文化センターみたいなものにすると同時に、周辺の住宅開発等もあわせて考えるというようなことも一つの方法かと思います。これらはまだ具体化には非常に難しい点があると思いますが、そうした不動産事業というものもあわせて考え、勉強しなければならぬのじゃないかというふうに思います。
  105. 田渕勲二

    田渕勲二君 ところで、ここにこれは去年の新聞ですけれども持っているんですが、東京駅に国鉄が書店を出そうということで施設も用意されたようですけれども、これはオープンのめどが立っておらぬようですけれどもその後どうなっておりますか。
  106. 杉浦喬也

    説明員(杉浦喬也君) 今おっしゃいましたように、東京駅の丸の内北口に本屋さんを開業するつもりで準備をいたしたわけでございます。開店を目前に控えまして、東京都の書店商業組合から反対の申し入れがございまして、なおまた東京都から、いわゆる商調法によりますあっせん調停が申請をされました。  こうしたことで東京都から話し合いを続けられたいというような御指導を受けまして、本屋さんの組合と一生懸命話を続けておる段階でございますが、ただなかなか、中小企業の書店を大企業の国鉄が行うことによりましてそれの経営を圧迫するというような御主張が続けられ、一部具体的な案等も提示をしつつあるわけではございますが、現時点におきましてなお解決に至っていないという状況であります。
  107. 田渕勲二

    田渕勲二君 いわゆる新しい民間会社になることによって、その関連事業というものが非常に中小企業を、国鉄の関連している地域で商売しておられる方々が心配になっているわけでありますけれども、そういう意味で質問しておるわけでありますけれども、いわゆるこの会社法案の第十条ですね。仮に会社事業活動を行う場合には中小企業に十分配慮して行うべきである旨が規定してありますね。したがって、この十条で言う「中小企業者の事業活動を不当に妨げ、又はその利益を不当に侵害することのないよう」ということなんでありますけれども、これは具体的に言いますと、今総裁が言われた、東京駅で書店をやる場合、この十条の配慮条項から考えて出店することがいいのか悪いのか、いかがですか。
  108. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私は、この東京駅のケースを離れて一般的に従来から、いわば横から眺めておりました段階での印象を踏まえながら御答弁をさせていただきたいと思うんです。  私は、往々にして従来、現在の国鉄が、例えばホテルを駅ビルを使って経営されようとしたり、あるいは地域に新たな何かを進出させようとしたときに、非常に下手だなと思って眺めておりましたケースが多々ありました。と申しますのは、事前に、例えば地域の商工会議所でありますとか、あるいは商工会でありますとか、あるいはそれぞれの業種別の団体といったものに対して一言連絡をして、こういう計画を持っているから地元でも協力してほしいというようなことをおっしゃっておればトラブルがなかったと思われるケースを私は幾つか存じております。また、あるいは国鉄自身がその経営のノーハウを必ずしもお持ちになっておられない、そうすればむしろ国鉄がそれを経営しながら地域の民間業者の方々に委託された方がよほど効率的な経営ができるのではないかと思うものを、御自分でやろうとして現地でトラブルを起こされたり、何回かそういうケースに逢着をしてまいりました。恐らく私は、東京駅における書店の問題等々にも、当初においてそういう意味でのボタンのかけ違いがあったのではなかろうかという印象を個人的には持っております。  しかし、新たに生まれ変わる旅客会社あるいは貨物会社というものが民間的な経営手法をもって関連事業に進出してまいります場合に、従来のような問題点は恐らく変わってくるであろうと私は期待はいたしております。また同時に、新しい会社というものは、当然自由な事業展開を認め、民間企業として発展を遂げていくわけでありますから、事業範囲についても制約は加えませんでした。しかし、やはり従来のさまざまな経緯の中で民間の方々には委員指摘のような不安というものが現実に存するわけであります。  そうなりますと、いずれも大変規模の大きな特殊会社として発足をいたし、しかも大量の利用者の集散する駅というものを有しておる新しい会社というものが営もうとする事業の規模あるいは種類によりましては、地域に大変な混乱を生ずることも考えられないわけではありません。それだけに、やはり会社がそれぞれの関連事業というものを企画される段階において、それぞれの地域における関係の方々との話し合いというものは十分にやってもらいたい、そういう意味で中小企業者の事業活動を不当に妨げる、あるいは利益を不当に侵害することのないようにという配慮規定を設けたわけでありまして、むしろこうした規定が活用されないこと、されないで済むことを私としては願っております。
  109. 田渕勲二

    田渕勲二君 従来は、国営の企業がそういう事業に進出する場合には、当然民営の圧迫ということで規制があったと思うんですね。従来から、中小企業庁の見解によりましても、国鉄相手の紛争もいわゆる小売商業調整特別措置法十五条三号の調停あっせんの対象になる、こういう見解を示されておったんですけれども、仮にこれは民間旅客会社になりましても同法の適用関係は同じだと理解していいかどうか、この辺いかがですか。
  110. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 当然、大企業として、分調法等についても適用を受けることになると思います。
  111. 田渕勲二

    田渕勲二君 それでは次に、国鉄の関連企業について伺いたいと思います。  国鉄が現在所有されている関連企業の株式は、額面、時価でそれぞれ幾らでございますか。
  112. 長谷川忍

    説明員(長谷川忍君) 現在国鉄が保有しております出資株式の時価でございますが、トータルで九百五十九億でございます。
  113. 田渕勲二

    田渕勲二君 そうすると、国鉄分割後における関連企業の株式の保有関係、これはどういうようになりますか。
  114. 杉浦喬也

    説明員(杉浦喬也君) 関連企業は出資会社が約百二十ぐらいあるわけでございますが、その中で全国的な規模を持つものと、それから地域によりましてそれぞれ仕事をするものというふうに分かれるわけでございますが、その地域によって仕事をしている会社につきましては、今後地域ごとにそれぞれエリアを持ちます旅客会社にこれを持たせる。それからまた、これは旅客の分でございますが、全国的なシェアを持っております会社につきましては、これは適当な規模で株式を分割しなければならないということで今検討をいたしておるところでございます。  それから貨物関係の関連事業、これもあるわけでありますが、それの出資は、これはもう貨物会社全国一社でございますから貨物会社にこれを持たせる、こういう方向でございます。
  115. 田渕勲二

    田渕勲二君 そうすると、六十年度決算において、関連企業のうち当期利益を計上している会社は何社あるのか、それが全体に占める割合はどれぐらいあるのか。  それからついでに申し上げると、関連企業からの配当金収入、これがどれぐらいあるか、できたらここ五年間の推移を示してもらいたいんです。
  116. 杉浦喬也

    説明員(杉浦喬也君) 関連企業のうちで、出資会社百二十二社につきまして数字を申し上げますが、そのうちで筆頭株主が国鉄であるものが百十三社でございます。このうちで一社は決算がまだ対象になっておりませんが、六十年度で決算対象は百十二社でございますので、その中の赤字会社、黒字会社ということでありますが、累積赤字会社、依然として累積赤字を持っている会社が三十八社ということでございまして、未開業の九社を含めますと四十七社が赤字であると、こういうことになっております。
  117. 田渕勲二

    田渕勲二君 無配の会社はどれぐらいありますか。それで配当率は平均どれぐらいになっておりますか。
  118. 長谷川忍

    説明員(長谷川忍君) 申し上げます。  現在出資会社は全体で百二十二社でございますが、そのうち当期未処理損失計上の会社が五十社ございまして、それから当期未処分利益を計上している会社が七十一社ございますが、そのうち配当している会社は四十一社でございまして、ですから営業中の会社では配当をしていないところは七十社になるわけでございます。それにプラス未開業の会社が十一社ございまして、合計いたしまして百二十二社のうち八十一社がまだ未配当というところでございます。
  119. 田渕勲二

    田渕勲二君 そうすると、改革後新しい会社になるわけですが、その場合の配当金収入の見込みは各旅客会社貨物会社別にどのようになっていますか。
  120. 長谷川忍

    説明員(長谷川忍君) 現在配当金は、六十年度で申し上げますと五億の配当金収入がございますが、これにつきまして六十二年度での見込みは、若干これがふえる程度で見込んでおるところでございます。
  121. 田渕勲二

    田渕勲二君 それでは観点を変えて要員に関して申し上げますが、国鉄職員二万一千人を関連企業が受け入れることになっておりますけれども、どうもその二万一千人だけの枠でおさまらないでさらに多くの受け入れを関連企業としてもしていかなきゃならぬように聞いておるのですが、その辺のところはいかがでございましょう。
  122. 杉浦喬也

    説明員(杉浦喬也君) 関連企業にかなり無理を申し上げまして、一緒になって苦楽をともにしてくださいということで、国鉄の職員の採用につきましていろいろと個別に話をしておるところでございます。  話の過程におきましては、二万一千人という数字をややオーバーするようなそういう数字にもなったことはございますが、現時点におきまして各個別の会社のそれぞれの積み上げによりまして確定した数字としまして二万一千人ということになっております。
  123. 田渕勲二

    田渕勲二君 そのように関連企業がかなり国鉄職員の受け入れをやるわけですけれども、その結果関連企業自体が損失を計上した、そして結局それが借入金で収支を補てんする、つまり国鉄赤字を関連企業に押しつける結果になるということを非常に心配するのですが、その辺いかがですか。
  124. 杉浦喬也

    説明員(杉浦喬也君) 人の面でいろいろと御無理をお願いしておるわけではございますが、これは毎年の採用する人を国鉄からお願いしたいということ、あるいはまた定年制を下げてそのあいたところへ国鉄の職員を採用してほしいというようなことでお願いをしておるところでございまして、経営本体にまであれやこれやというふうに強くお願いしておるわけではございません。  しかしながら、国鉄自体のこれからの新しい仕組みというものもございますし、全体の景気の動向等もございますので、なかなか経営が大変なところもたくさんございます。そうした面では、親元である国鉄と関連企業との間、そうした面も十分に相談を受けながら関連企業の健全化に向けて努めていきたいと思っております。
  125. 田渕勲二

    田渕勲二君 今のその配当金収入が五億円という、六十二年度ですか、そういう見込みで立てておるようでありますけれども、結局関連企業の収支が悪化すればするほど当然配当収入にも影響してくるわけであります。そうしますと旅客会社貨物会社の配当収入の減少にこれは結局つながるわけで、その心配というのは私は非常にあるんですが、その辺のところを重ねて、そういう心配はないかどうか、それに対する対策、これについて、総裁、お答え願います。
  126. 杉浦喬也

    説明員(杉浦喬也君) なかなか国鉄の本体の事業が非常に大変な局面を迎えておりますし、また新しく仕組みを変えるというような重大な現状でございますので、それに大変結びついておる関連企業のあり方もいろんな意味で検討しなきゃならぬ面もございます。  今先生関連企業の事業の経営を御心配いただいておりますが、そうした点も十分に私ども配慮をし、本体はもちろんではございますが、関連事業の健全化につきましてもこれから十分に両者で相談をしながらやっていきたいと思います。
  127. 田渕勲二

    田渕勲二君 いずれにしても、どうもその辺の収入の積算というのは非常に私は甘いと思うんですね。したがって、新会社の経常収支を均衡させるためにいろいろ御説明がありますけれども、そういった関連事業一つとりましても、非常にそういう過大な甘い収入を予定されているというように私どもとしては非常に危惧するわけであります。単に本日の委員会で答弁しておけばいいということじゃないと思うんですね。やっぱりこれはいずれもう一年たてば明らかになるわけでありまして、そのときにいろいろ答弁されたことがみんな当たらなかった、こういうようなことになりますとこれはもう非常に大きな責任があるわけでありますから、そういう点について十分ひとつこれからも配慮をしていただきたいということをお願いしておきたいと思うのであります。  そこで、国鉄が新会社民間になっていろいろ関連事業に手を出すということになる。これはもう民間になれば当然もうけなきゃなりませんから、恐らく一年か二年たてばもうなりふり構わず関連事業に手を染めていくのじゃないかと私は思うんですね。それは大臣もいろいろその点の歯どめはかけるとおっしゃっていただいておりますけれども、なかなかそうはいかないだろうと思うんです。  しかし、私鉄が不動産なり観光、ホテル、百貨店、こういう分野で非常に多くの利益を上げて本体の鉄道をカバーしているということはこれはもう御承知のとおりでありますけれども、それには単にうまくいっている結論だけ見るのじゃなくて、そのために私鉄が人材の養成であるとかあるいは派遣、スカウト、相当な事前の努力をやって、しかも非常に多くの設備投資を含めた経費の投入が行われたわけですね。それがこういう結果を招いていると思うんです。  そういうことをおいて、単に国鉄が、私鉄がもうけているからといってそういう不動産なり観光、観光といいましても旅行業からレジャーランド、遊園地等々ありますし、あるいはまた先ほど私が申し上げたような、こういう零細な業者を圧迫するような隣の書店あるいは食料品、食べ物屋というようなことをどんどん広げていくということについては非常な脅威を感じているわけですけれども、私鉄がうまくいったからといってなかなか国鉄も関連事業がうまくいくとは私は限らぬと思うんです。そういう面で人材面にも実績面にも非常に乏しい、こういうことが言えるわけでありますから、私はやはり国鉄旅客会社貨物会社というのはもうレールに徹する、これで黒字を出していく、これで利益を上げていく、こういうことが本体、本業でなきゃならぬと、私はこのように常々思っているのでありますけれども、その辺の基本的な考え方につきましてひとつ大臣以下にお答えいただきたいと思います。
  128. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 確かに、委員が御指摘のように、旅客会社旅客鉄道輸送というものによって、貨物会社貨物鉄道輸送というものによってその収支が黒字になるような状態であればそれは一番望ましいことであります。しかし、現実問題として私は今の世の中においてそれだけで完全に黒字を発生させるということにはなかなか困難があらうと思います。また、それが可能でありますならば、今国鉄が置かれております現状というものも恐らく相当大きな変化があったでありましょう。そういう状況考えてまいりますと、もちろん本体業務においてその収支を好転させる努力は死に物狂いで払ってもらわなければなりませんけれども、やはり関連事業分野というものにおいてそれを補完する役割を果たしていかなければ将来に向かっての発展の可能性が摘まれてしまうのではないか、そういう気持ちを私は持っております。  ただ、それが行き過ぎてならないことは御指摘のとおりでありますし、またなりふり構わず関連事業にいわば中小企業者をけ飛ばして参入していくことは、その企業そのものが国民的な支持を得られなくなるということも当然あるわけでありまして、そうした横暴が国民に許されるとも私は思いません。おのずからの節度を持ちながら関連事業を含めて将来を築いていってもらいたいと私は強く念じております。
  129. 田渕勲二

    田渕勲二君 もう時間もなくなってきましたので、最後の方になりますが、同じこれ関連事業でありますけれども鉄道弘済会との関係についてちょっと説明をお聞きしたいんですが、扱う品物によっては鉄道弘済会と非常に交錯をしてくると思うのですけれども鉄道弘済会と旅客会社、こういう関係がどうなっておるのか、利害の調整関係、仕事の協力関係それぞれの立場からひとつ御説明をいただきたいと思います。
  130. 杉浦喬也

    説明員(杉浦喬也君) 鉄道弘済会はいわゆるキヨスクというホームにおきます物品販売業、こういう収益事業という面が主体ではございますが、これは今財団法人でございますように福祉事業という面も抱えておるわけでございます。この両面をどういうふうに見るかということが非常に重要な観点ではございますが、私ども将来の展望といたしましては、福祉事業というものも、これは内容をよく精査いたしまして、必要なものということではございますが、やはり残していかなきゃならぬというふうに思っております。ただ、形、経営形態をどうするかという点につきましては、現時点では福祉事業はやはりこれは財団法人といいますか、いわゆる公益法人のスタイルで残すべきであろう。そこで、従来はそこが一体ではございましたが、収益事業の面ではこの際はっきりと株式会社に転換をした方がいいのではないかというふうに思っております。  なおまた、旅客会社六つに分かれるわけでございますので、それぞれの旅客会社と非常に経営面では密接不可分な関係がございますから、弘済会も株式会社にいたすわけではありますが、それをそれぞれ六つ会社に分割をした方がいいのではないかということで今検討をしておるところであります。
  131. 田渕勲二

    田渕勲二君 そうなると、旅客会社になりましても、直営売店と弘済会の関係国鉄時代と同じと理解していいんですか。
  132. 杉浦喬也

    説明員(杉浦喬也君) 今申し上げましたような、会社には分けますけれども、しかしお客さんの利便という面で非常に果たしている役割は大きゅうございますので、従来どおりの関係を継続していきたい。ただ、ここで先生指摘のようなそれぞれの旅客会社みずからがやる直営的な関連企業のあり方とも関連いたしますが、両方とも伸ばしていくようにうまく調整をとってやっていきたいというふうに思います。
  133. 田渕勲二

    田渕勲二君 そうすると鉄道弘済会の構内の使用料がありますね、これはどうなっていくんですか。
  134. 長谷川忍

    説明員(長谷川忍君) 現在弘済会からは年間百二十三億ばかりの構内営業料金を徴収しております。
  135. 田渕勲二

    田渕勲二君 百二十三億ということですが、そうなると旅客会社になった場合の構内の使用料というものも当然見直していかれるんですか。
  136. 長谷川忍

    説明員(長谷川忍君) 構内営業料金につきましては弘済会だけどうだというふうには決めてないわけでございまして、国鉄の駅構内におきます構内営業者は皆同じ制度によって監督指導しているわけでございます。ですから、今後新しい事業体になりました場合に構内営業料金の体系をどうしていくかという点につきましては、今のところ検討中なんでございます。
  137. 田渕勲二

    田渕勲二君 以上、時間が参りましたのでこれで終わりますが、いろいろやりとりの中で私が聞いておりましても、貨物鉄道会社の経営というのは結果的にはどうも見方が甘い。そして、非常に期待可能性のあるような収支の見通しなどがあるわけで、そういうようなことで初年度から十六億、そして四年後も三十何億というように年々黒字計上ができるというような会社になるようには私はなかなか思えません。来年すぐ結論が出ますから、これはもう明らかですね。非常にその点私は心配をするわけで、したがってそれには当然、シェアを奪われてきたトラックなり内航海運との競争というものが、何度も繰り返すようですけれども、公正な競争で法の秩序に従って両輸送機関競争する、こういうことがなければ到底この貨物会社が再生していく道はない、私はこのように思います。  したがって、この中身を読ましていただけばいただくほど、また聞けば聞くほど、大変無理なつじつま合わせがどうも行われているように思うのであります。しかし、私も冒頭に申し上げましたように、国鉄貨物鉄道というのは国民の共有財産といいますか、非常に安全であり、かつまた省エネルギーで、そして公害もないし、大量に早い、こういう輸送機関というものは私は決して野たれ死にさしちゃならぬと思うんですね。それだけに、片方ではそうした先ほど申し上げたようなことを手当てしていただきながら、本気でひとつ鉄道輸送の再生をやってもらわないと国民は困ると思うのであります。  そういう意味で、きょう私が質問したような多くの問題点、疑問点、こういうものをぜひひとつ問い直してもらいたいということをお願いすると同時に、最後に力強い総理大臣のこの見解をひとつぜひお聞かせ願って、運輸大臣とお二人の見解を願って私の質問を終わりたいと思います。
  138. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 非常に専門的な視点からの問題提起をいただいたことにお礼を申し上げます。  それぞれの機関が公正な競争を担保することが大切であるということはそのとおりであると考えておりますし、安全輸送という視点から見ましても、御指摘をいただきましたような問題点についてはなお私自身も勉強したいと考えております。
  139. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 冒頭に申し上げましたように、貨物会社の日本の単一組織の経営というものはなかなか初めての試みでもありますし、問題を含んでいる点も御指摘のとおりだろうと思います。しかし我々が考えた結果の末では、この方式以外にないという結論に達しました。この特色を生かしまして、そしてこれは実行するに当たりましてもいろいろな面で摩擦の起きないように、しかも効率性を大いに重んじた経営としてぜひ成功させたいと思っております。  また、国鉄の行ういろいろな関係業務等につきましても、いろいろ周囲との摩擦等を起こさないように十分配慮しながら行うようにいたしたいと思っております。
  140. 田渕勲二

    田渕勲二君 以上で終わります。
  141. 丸谷金保

    丸谷金保君 最初にちょっと、総理というよりか総裁に申し上げておきたいんですが、私は、自民党さんの方がきょう質問を取りやめたので、急遽二番バッターになったんです。議院内閣制で、一般質問なら別です、法案審議で与党の議員さんが聞きたださなければならないような法案を出さないようにしてください。これはお願いしておきます。  それから杉浦総裁に、道新の記事なんですが、これはほかの議員も聞いたそうですけれど、資料の提出要求には非常に協力してくれている、しかしその上に、これは衆議院の方のことですけれど、審議がさえなかったというのが書いてあります。それで実はお伺いするんですが、「昭和六十二年度以降五か年間の旅客鉄道会社経営見通し」の中で、六十二年度物件費四百四十四億となっております。そして、これが同じく国鉄から出てきた資料によりますと、「北海道旅客鉄道会社物件費見通し」というこの内訳の中では四百七億、それに電話等の基幹通信の十五億の委託料分が入って四百二十二億になる、こういうふうなことで出てきております。ここの間に二十二億の差があるんです。これは一体どういうわけなんですか。
  142. 山田度

    説明員(山田度君) まず、四百二十九億と四百四十四億との差でございますが、四百四十四億の方は四百二十九億に基幹通信等の負担金を含めてございます。これは従来の……
  143. 丸谷金保

    丸谷金保君 その辺はわかっている。
  144. 山田度

    説明員(山田度君) よろしいですか。
  145. 丸谷金保

    丸谷金保君 はい。
  146. 山田度

    説明員(山田度君) それから四百七億との差でございますが、これは病院等を含んでございます。
  147. 丸谷金保

    丸谷金保君 総裁、いいですか、これを調べてみると、病院の十億と直轄、直営売店の十二億、こういうものが抜けて、入ってないんです。じゃ、「北海道旅客鉄道会社物件費見通し」という表にはならないんですよ、これ。こういうのが抜けているんです。この二十二億合わないので随分調べました。それで最後にこれが出てきたんですけれど、こういう資料は非常に不親切だと思いますよ。見通しの中でどっらも同じ物件費の見通しなんです。片方では物件費の見通し四百四十四億、片方は四百二十二億。今聞けば、それは病院等が入っている、入ってないと。じゃ、これは病院等を抜いているというぐらいのことは出さなきゃ、同じ物件費の見通しという中でこういう二通りの資料を出して、資料で協力しているなんということにならないので、気をつけてください、これも。
  148. 杉浦喬也

    説明員(杉浦喬也君) 今御指摘の点は、資料の説明の内容が若干とり方が違っておる点で少し数字が違った数でそれぞれ出ていると思います。そうした点は大変資料のお目通しを願う意味におきまして紛らわしい、わかりにくいという点は確かに御指摘のとおりでございます。これからの資料の御要求の中身につきましては、できるだけそういうことのないようにわかりやすい、数字に気をつけまして出すつもりでございます。
  149. 丸谷金保

    丸谷金保君 大蔵大臣にお伺いいたしますが、昭和五十九年六月二十一日の参議院大蔵委員会で私の質問に対していろいろな答弁がありましたが、最終的に国鉄債務の責任はだれなんだ、どこにあるのだということに対して、平澤政府委員から、「国鉄の責任であることは当然でございます。しかし、この国鉄がこのまま進みまして、仮にそういう債務を支払うことが不可能になった場合」ですね、今のような状態は。「不可能になった場合には、国が全額出資しておりますので、そういう出資者としての立場から国の責任になるということでございます。」と、こう答弁しておるんです。これは大蔵大臣かかわってもこの答弁はこのまま生きておりますね。
  150. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 現在ございます国鉄、その債務は終局的には国の債務である、そのとおりであると思います。
  151. 丸谷金保

    丸谷金保君 監理委員長にお尋ねしますが、監理委員会の方々がテレビその他で、この債務は最終的に国民に負担してもらうということを言っているんです。国に負担してもらうということをどういうわけか言わない、国民国民がと。これは明らかに今大蔵大臣も御答弁したように国の責任なんですよ。いいですか、国が責任を持って支払うべきもので、国と国民同じだなんということはこれは違うんで、ニュアンスが違うんで、この際はっきり、これは国民に負担してもらうのでなくて、国が負担をして国の責任で処理していくんだということをもう一回ひとつ言ってください。どうもテレビなんかを見ていると、何かもう国民国民かと言って国はどこかへいっちゃっているんです。
  152. 亀井正夫

    参考人亀井正夫君) いろいろこれはわかりやすいように解説してそうなっておるんですが、具体的に申し上げますと、もう先生御承知のように三十七兆を超す債務を処理しなきゃいかぬ。私ども考え方は予算委員会等でるる申し上げましたが、一番のスタートはやはり国鉄から出た借金であるから、できるだけ鉄道のところから返す努力をひとつすべきではないか。したがって旅客会社、いろいろこれはあるいは新幹線で返済をする、その残りをやはり土地を、余っておる土地を処分する、あるいは株を処分して、そしてぎりぎり残るのが現在の精査では十四兆七千億という数字になっておりますが、これについては、国というのは私どもの解釈ではこれは国会及び政府というふうに伺っております。そこで処理をするといっても、国会では御審議をなさる、そして政府で処理をするとしても、政府に金があるわけでございませんので、結局は、終局は国民の負担になっていく、こういう趣旨を簡単に申してあるいは先生に誤解を与えたと思いますが、論理的に言えばそういうことだ、こういうことでございます。
  153. 丸谷金保

    丸谷金保君 国の責任というのを国民がというふうに切りかえますと、全部そうですね、何も国鉄だけじゃないんです、何らかの形で税金その他から支払うことになるんですから。すべての予算は全部国民ですね。そこのところが、どうも国の責任というふうなことがあいまいになりがちなんで、本来これは国の責任なんだということをこの際もう一度明確にしておきたいと思うんです。国民が支払うといっても国民の責任じゃないんで、責任は国なんだと。これは総理大臣いかがですか。
  154. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 我々は大体普通、国の責任はおいてというふうに申し上げております。
  155. 丸谷金保

    丸谷金保君 大蔵大臣にお伺いしますが、マネーサプライが異常にふえてきております。日銀総裁も過日の証券業の大会の席でも、マネーサプライは非常にこれからもふえる方向にあるというふうに申しております。このことは一つ間違えば、今幸い物価は安定しておりますけれども、消費者物価が八月、九月というふうに少しずつ上がってきました。過去のマネーサプライの非常にふえたときというのは、いわゆる四十年代の狂乱物価のときです。幸い今は為替あるいは石油価格、そういうふうなもので安定しておりますけれども一つ火がつけば、この異常なマネーサプライのふえ方というのはインフレにつながりかねない危険性も持っているというふうに心配しておるんですが、いかがでしょうか。
  156. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) マネーサプライ、仮にM2とCD合わせたものをおっしゃったかと思いますけれども、ちょっと確かに高いという感じが私もここのところいたしておるわけであります。心配をしておるわけではないのでございますけれども、例えば相当金融が緩和しておりますし、あるいはいろいろ新商品が、金融商品ができておりますので、そっちに金が行っているのかもしれない。どうもはっきりわかりませんが、ちょっと高いなという感じはいたしております。  しかし、ちょうど今おっしゃいましたように、卸売物価は一〇%以上の下落でございますし、消費者物価はゼロでございます。都会地の商業地あるいはオフィスビルディングなどが相当高くなっておりますのは実需もあるのでありましょうから、それらをいろいろ考えまして私は、お言葉を返すようですけれども、インフレーションになるというような心配はいたしておりません。御承知のように、製造業の生産設備は随分遊んでおりますし、農産物の供給も順調でございますし、あれこれ考えましてインフレーションというふうなことを心配いたしてはおりませんけれども、日本銀行自身もマネーサプライが少し高いということについては関心を持っておるようでございます。
  157. 丸谷金保

    丸谷金保君 経済企画庁、インフレの要因は心配ないという大蔵大臣のあれですが、今後五年間くらいのGNPあるいは物価動向等について簡単にひとつ見通しを言ってください。
  158. 近藤鉄雄

    国務大臣(近藤鉄雄君) お答えをいたします。  昭和五十八年八月に閣議決定をいたしました「一九八〇年代経済社会の展望と指針」におきましては、五十八年度から六十五年度までの対象期間中の経済成長の姿として、実質成長率では年平均四%程度、名目成長率では年平均六%程度から七%程度、こう見込んでおるわけでございますが、その間の物価でございますが、消費者物価の年平均上昇率は三%程度を目安としておりますし、また卸売物価の年平均上昇率は一%程度と見込んでございます。
  159. 丸谷金保

    丸谷金保君 北海道の会社の問題について御質問したいと思うんですが、監理委員会の方では、大体国鉄の試算によりますと、毎年運賃を六%ぐらいずつふやしていく計画になっております。これはもちろん、そういう経済企画庁その他と横の連絡をとり合ってこの程度はというふうな数字に出したものなんでしょうね。
  160. 亀井正夫

    参考人亀井正夫君) 運賃につきましては、私ども考え方はできるだけ抑えていきたいということでございましたけれども、やはり運賃というものは原価を反映するというのが現在の国鉄法にも書いてございますので、この運賃について過去、最近においては二年ごとに一〇%近く上がっておりますので、その程度はやむを得ないということで、もちろんそういうことについて、将来のインフレとかいろいろな問題については経済企画庁の御意見も聞いて判断をしたわけでございます。
  161. 丸谷金保

    丸谷金保君 インフレの懸念はないという中で毎年六%ずつ上げていく。  収入の方は同僚議員が後でやりますが、支出の方で見ましても、例えば物件費の中の修繕費、これらも非常に何といいますか少なく見積もっておりますね。それで、監理委員会が五十八年度の実績を中心にして試算したのと、国鉄が六十年の決算を踏まえて試算したのでは北海道の営業経費が大きく実は狂ってきております。これは二年間の誤差があるからやむを得ないと、こういうふうにおっしゃるかと思いますが、こういうことからいいますと、六十二年度の推定計算も六十二年度になって狂わないという保証はないわけです。その場合は事実に基づいて、六十二年度のそういう現況に基づいてまたこうした計算を変えて、もし大きく赤字が出るようでしたら政府としてはいわゆる基金の上積みをする、こういうふうなことになるんでしょうか、どうでしょう。
  162. 林淳司

    政府委員林淳司君) 確かに先生がおっしゃいますように、物件費で見ますと監理委員会は北海道について三百五十二億、それから今回政府の試算では四百四十四億ということでございまして、九十二億程度の差がございます。  これにつきましては、一つは先ほど先生指摘のように時点が二年ほど違う、五十八年と六十年という時点の違いがございます。それからさらに監理委員会の方では、主として私鉄の実績というものから輸送密度別に回帰分析をしてそして数字を出した、こういう手法を使っております。私ども政府側といたしましては、それを参考にしつつ具体的に現場で積み上げ計算をいろいろいたしまして、具体的なダイヤその他に即応した積み上げ計算をいたしまして、その結果が四百四十四億ということはなったわけでございまして、その間、監理委員会監理委員会なりに相当の綿密な計算をしておりますし、それを参考にしながらも政府の方としてはさらに具体的な積み上げ計算をしたわけでございまして、この数字については私どもとしては相当強い確信を持っております。これで十分会社はやっていけるという確信を持っておるわけでございます。  したがいまして、これを基礎にいたしまして収支を計算し、そしていわゆる基金というものを算定したわけでございまして、この基金で会社は十分経営が成り立っていくというふうに私ども考えております。
  163. 丸谷金保

    丸谷金保君 監理委員会もこの数字を出した時点では、これはもう絶対に自信を持てる数字で、しかも、私鉄から見て二〇%も上乗せしたんだから、これは間違いのない数字だと再三いろんなところで申しております。しかし、これを見ますと明らかに数字の違いが出てきております。営業費目だけでも千三百一億、それから千二百七十億というふうに三十億近い誤差が出ておるわけですね。三十億近く営業費目だけでも出ておるわけです。これ、こういうふうに出てきますと監理委員会数字というのはやっぱり間違っていたわけですね、そうですね、委員長
  164. 亀井正夫

    参考人亀井正夫君) 私どもが推計しましたのは、データとしてわかるのは、これは国鉄の決算というのはその年の八月末でないと出てこないわけでございます。したがいまして、私どもは六十年の七月に答申を出しました、その現在においては五十八年度の正確な数字しかつかめなかった。それと私鉄とか援用しましてやりまして、その後の時間的経過、あるいは運輸省において専門立場からさらに精査をされたということで、私どもの案の上にさらに精微なものを加えて正確なものにされたということで、私どもは大変うれしく思っております。
  165. 丸谷金保

    丸谷金保君 亀井委員長、精査をしたら前の数字と違ったものが出てきたのを、間違っていたと言わないんですか。
  166. 亀井正夫

    参考人亀井正夫君) 数字に相違が出たことは事実でございます。しかし、ここで釈迦に説法のようでございますが、丸谷先生は十勝平野の池田町において町長として非常に立派な経営成績を残された。その場合に私感銘を受けておりますのは、先生のお言葉に「日計して足らず歳計して余りあり」、毎日の会計では苦しいかもしらぬけれども一年ロングプランで努力すればよくなるんだ、これが処世訓で、いろんな若い人にも言っておるということ。そういう考えでいけば数字の違い、いろいろまた誤差は出ましたけれども、そういう気持ちでひとつ「歳計して余りあり」ということでぜひとも激励をお願いしたい、そういうふうに思う次第であります。
  167. 丸谷金保

    丸谷金保君 ちょっと私の座右の銘を誤解しておるんです。というのは、これは歳計して足らなくなったんじゃないですか、これだけ、三十億。「余りあり」じゃなくて、これ歳計して足りなくなったんで、逆ですよ。いいですか。  そうしますと、これは時点が違うから、前の数字がその時点で決して正確なものでないとは言いません。しかし、二年たてば、これは絶対の数字だと思ったものでもこういうふうに変わるんだ。そうすれば、今六十年で六十二年を見通しても、やはりこれと同じように、二年たったら、六十年を基礎にしてこういうふうにやったけれども変わってくるということはあり得るんです。絶対に今言われたようにこれで大丈夫だなんていうことはだれにもわからないことですよ、本当のところは。これは絶対なんていうようなことは言わないでくださいね。いいですか。そうすれば、もし違っていた場合には訂正するという考え方を持っていただかないと、これは「余りあり」も出てこないんです。運輸大臣いかがですか。
  168. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 今委員亀井参考人のやりとりを大変興味深く拝聴しておりました。そして、ロングレンジで見て収支の合う状況にしていきたい、そう思います。
  169. 丸谷金保

    丸谷金保君 合わなかったときはどうするかと聞いているんです。合う場合には、おめでたいでいいんですよ。
  170. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) ロングレンジで見て合うような経営をしていただけるような経営陣を選びたいと思います。
  171. 丸谷金保

    丸谷金保君 例えば物件費、これが現在でも、これは船舶とか自動車を抜きましても、北海道三百五十九億かかっているんです、前にはね。これが六十二年度に国鉄の試算によると三百十一億になるんです。こんなに少なくなって、これ大丈夫なんですか。
  172. 林淳司

    政府委員林淳司君) ただいま先生がお示しいただきました数字は、昭和六十年の北海道会社鉄道部門の物件費であろうかと思います。昭和六十年、これは推定でございますが、新しい会社になった場合と同じ方式で計算をいたしますと三百五十九億。それに対しまして昭和六十二年の試算値が三百十一億ということでございます。これは動力費、修繕費、業務費と三つあるわけでございますけれども、動力費につきましては同じ四十五億でございまして同額でございます。それから業務費につきまして、昭和六十年が百四十八億に対して百四十二億ということで六億の差がございますが、ほぼ同じでございます。一番大きく違いますのは修繕費で、百六十六億というのに対して百二十四億ということで、四十二億程度の差があるわけでございますけれども、これにつきましては、昭和六十年の時点とその後昭和六十一年現在でございますが、かなり輸送量に差が出てきております。  それからさらに、今回の十一月のダイヤ改正等におきまして、車両等について非常に効率的な運用をしていくということで、従来非常に長大な列車を動かしておった、ところが需要の少ないところについては、列車回数は減らさないけれども車両編成は短くするというふうなこと等々、いろいろな合理化施策を進めております。そういうことによりまして、例えば車両の工場に入れる車両数が減ってくるとか、そういう修繕費のかなりの節減というものが見込まれます。そういうものをベースにいたしまして計算をした結果このような差が出てきたわけでございまして、この百二十四億という修繕費で、今現在の状態でいわゆる修繕には十分の額であるというふうに考えているわけでございます。
  173. 丸谷金保

    丸谷金保君 計算のとり方で私たちもいろいろ試算してみていて気がついたんですが、例えば北海道の経営成績、六十年度をとってみまして、幹線、地交線その他というふうな表をいただいております。ところがこれは、貨物の分離は不可能だと、こういうふうにおっしゃっているんです、いろいろ聞いてみますと。それから人件費の区分の中でも退職手当や年金負担等を細分して行っていないためにその内訳の把握は困難だと。内訳の把握が困難なのに人件費でも何でも振り分けているんですよ。これ一体どういうことなんですか。しかも、振り分け困難だとわざわざただし書きまでついているんですよ。
  174. 山田度

    説明員(山田度君) 六十年度までの実績につきましては、御指摘のように国鉄の場合客貨を一体といたしまして、また共通的な例えば鉄道、船舶、自動車等の各部門につきましても一体的な運営をしてまいっております。したがいまして、それらの間に厳密な原価の区分ということは一つの計算になるわけでありまして、言葉はちょっと不穏当かもしれませんけれども、推計ということに相なります。北海道総局の場合等を取り上げましても、線区別という形での計算をやっておりますけれども、特にそれをさらに客貨に分けるとか、あるいはそれからさらに人件費、この場合特にそれらの運輸部門に対しまして補助経営的な立場となります工場等の、中間勘定と申しておりますけれども、それらの人件費を配賦するということは大変困難であるということで、一つの推計にしかなっておりません。ただし、今回の新会社におきましては、明確に旅客鉄道会社ということで一つ部門を独立させるわけでありますので、その場面につきましては経費が明確に把握できるというような事情があるわけでございます。
  175. 丸谷金保

    丸谷金保君 ですから、国鉄が六十年度の決算を基礎にして六十二年度を推計した。その基礎になる六十年度の決算ではこういうものを分けられないんですよ、地交線だとか、それから残すことになっている幹線と。今おっしゃったように分けられないんですよ。分けられないのを分けて、これだけは地交線の方の経費でこれだけは幹線の経費だと、こうやっているんです、この資料ね。分けられないものをどうして分けたのか、これをもう一回聞かしてください。
  176. 山田度

    説明員(山田度君) これは、従来から国鉄がとってきております会計制度あるいは原価計算制度に基づくものでございますけれども国鉄としての経営成績をなるべく各部門ごとに、あるいは業務分野別は明確に把握したいという意図に基づきました原価計算の分野でございます。経費はそれぞれの箇所において発生いたしますけれども、それらを用役との対比で明確に把握するために内部に原価計算制度をつくりまして、一つは線区別原価計算制度でございます。もう一つは、運輸別の客貨別の原価計算制度でございます。それらにつきまして、それぞれの発生しておりますところの用役あるいは充当しております人員というものを推計いたしまして、そして配賦していくという過程をたどっております。したがいまして、これは推計でございますけれども、しかしながら原価計算制度としては一応我が国の企業会計原則で公正妥当と認められている制度に基づいて長年行ってきているという制度でございます。それらを今回の場合、特に六十年度につきまして推計したということでございます。
  177. 丸谷金保

    丸谷金保君 あくまでも推計なんですよね。例えば六十年度の人件費、幹線で千四百九十九億、地交線で二百七十八億というふうに分けてありますけれどもね。そしてこれの、今度あれでしょう、貨物を分離するんだから、一体貨物を幾ら分離するかというふうなことも分けなきゃならない。ところが、人件費は分けられませんわね。同じ駅長が貨車も発車オーライ、客車も発車オーライやるんです。そうすると、この駅長の人件費貨物に幾らで旅客の方に幾らだなんというふうになかなか分けられない。分けられないから、こういうふうに内訳の把握は困難だと書いてあることは了解するんですよ。そうしてみると、あくまでも一つの理論数値に基づいた推計にしかすぎないわけです。絶対確実だなんというものじゃないんじゃないですか。北海道の例えば千三百一億ですか、国鉄のやったものでもですね。これらの営業経費人件費だってこれ分けられないものを分けて、今度はこれだけとしているんですからね。そうでしょう。
  178. 山田度

    説明員(山田度君) ちょっとそこのところで性格が分かれるかと存じます。  六十年度までの部分につきまして、例えば例で申し上げますと、旅客貨物共通に管理している駅長がおるといたしますと、その駅長の人件費は、その駅員の中に旅客にどの程度作業を行っているか、あるいは貨物についてどのように行っているか、そういう作業人員の比によって配賦するというような過程をたどります。  ただ、今回の六十二年度におきましては、旅客鉄道会社ということで明確に旅客鉄道のみに従事するということを基本といたしまして一つ会社のもろもろの原単位を積み上げてきておりますので、その場合におきましては、明確にこれは旅客鉄道のものというふうに把握できるわけでございます。ちょっと六十年度までのものと六十二年度とは性格が異なるものというふうに考えるわけでございます。
  179. 丸谷金保

    丸谷金保君 性格は違うけれども、あなたは先ほど六十年度の決算に基づいてそれから推計を立てたと言っているでしょう。その性格が違うなら、それに基づくことはできないじゃないですか。  時間もありませんので、こうした問題については極めてまだやってみなければわからない。それをいかにもこれはもう絶対間違いのない数字だなんというふうなことで皆さんたちは御答弁しているけれども、それは間違いなんで、例えば修繕費なんかを見ましても、今までは人件費が入っていたから七五%これは人件費の方に回したとか、いろいろ言っています。しかし、物件費、人件費その他を見ましても、どうも私たち無理に合わせたような、非常に何といいますか過小に見ているんではないかという気がしてならないんです。  しかも、これらをいろいろ資料要求して聞いていきますと、最後は一つの推計だということで、つかまえどころがないんです。原価計算の方式、じゃその方程式を出せと言ったら、それはなかなか、大変難しくて何日もかかってと。大体こういう経理とか会計の数字というのはなるたけわかりやすく説明のできるようにつくらなければならないのに、少し突っ込んでいくと全部これわかりにくい。わかりません、それはとてもじゃないけれどもコンピューターがはじき出すのに何日もかかります、こういうふうなものでなくて、会計制度というのはもっとわかりやすくやっていかなければならないと思うんです。その点で、私はこの六十二年度の見通しの人件費あるいは物件費、これじゃとてもおさまらない。時間がないので、その中身に入ると、これまた何日もかかってインプットしたものを取り出してこなければならぬ。じゃ、そのインプットしたもとがどうだったという議論を徹底的にやらなければならないんですが、そういう時間がないのは甚だ残念なんです。  それで、今度は青函連絡船の問題に移るんですが、青函連絡船の問題は私はしばしばこれ取り上げてきました。固定資産税の問題とかその他取り上げてきたんですが、実はきのう穐山委員に対して政府答弁で、青函連絡船の六十三年度以降の運航についてはいずれにしても新会社において判断すべきもの、こういう見解を示されましたですね。だから、これは新会社がどうするかということを決めればいいというふうに理解していいですか。
  180. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 昨年十月十一日の閣議において、青函航路につきましては青函トンネルの完成後原則として廃止する旨が決められております。これは、新しく青函トンネルが完成をいたしました場合に、現在の青函航路の運営実態から考えてみますと、新会社がトンネル完成後も恐らくその航路を存続することはないだろうという判断を当時なされたものと私は聞いております。  ただ、これは実は宇高連絡船なんかでも同じ問題があるわけでありますが、仮に今の業務は変わりましたとしても、その場合に他の例えば観光とかその他で生きられないかということは現実に当事者たちは真剣に検討をいたしております。そして、これから少なくとも青函トンネルが実用化される時点までに新しい会社が約一年の間この航路を運航しなければなりません。私はおのずからそういう中で将来に向けてさまざまな知恵が出されるであろうと考えておりますけれども、いずれにしてもこれは逆に新会社の経営者の判断によるものだ、そう考えております。
  181. 丸谷金保

    丸谷金保君 そうしますと、トンネルなんですが、これを引き受けるか引き受けないかも新会社の判断によるというような法制になっていると理解してよろしゅうございますか。
  182. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 青函トンネルは、完成後国鉄が経営することを前提として鉄建公団が国鉄と協議をしながら建設を進めてきたものでありますから、国鉄鉄道事業を経営する北海道会社がその地位を継承し、同トンネルの完成後これを使用して鉄道事業を経営することは当然のことと考えております。  しかし、法律的な整理ということになりますと、法案成立後、事業の引き継ぎなどに関する承継計画を定めることによりまして、改革法と施行法第十条一項の規定によって北海道旅客鉄道会社が第一種鉄道事業の免許を受けたものということになるわけでありますから、鉄道事業の経営を行うということになります。その場合に、青函トンネルにつきましては、私どもはこれまでの経緯、性格、また本州と北海道の交通に果たす役割というものにかんがみて、新会社がこの営業を廃止するということはちょっと常識的には考えられないと思うんです。ただ法律的には、これは鉄道事業の廃止について、鉄道事業法案の二十八条により運輸大臣が許可をすれば可能なことではありますけれども、それは私はちょっと本当に考えられないことだというお答えでとどめさせていただきたいと思います。
  183. 丸谷金保

    丸谷金保君 つまり、理論上はそういうこともできる法体系になっているけれども、実態としてそういうことはあり得ない、私もそうだと思います。しかし、そのことは実は大変道民が心配しているんです。今は幹線として残っているところも、理屈の上ではトンネルでも断れば断れる法体制になっていれば、ここはもうからないから、あそこはもうからないからと今度新会社がどんどん切っていく場合に、政府としてはこれに対して何のあれもないわけですね。そういうことになりますね。そんなことはないというふうにひとつ言っていただかないと……。
  184. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私は、レール締結式に当たりまして、北海道側から青森県側までトンネルの中を通り抜けてきました。そして、私自身、自分の目で見ましても、これが利用されず放り出されるとは到底これは考えられません。しかし、理論的には確かに委員の仰せられるようなケースは成立し得るわけでありますが、しかしその場合におきましても、鉄道事業法案の二十八条は、「廃止によって公衆の利便が著しく阻害されるおそれがある」かないかを審査するわけであります。そして、青函トンネルの中のレール利用しないというようなことは少なくとも私は著しく公衆の利便を阻害する状況というものであるとその時点の運輸大臣は判断をされると思いますし、そうしたことが私は認可をされるとはとても考えられません。これは御安心をいただくべきではなかろうか、また御安心がいただき得る状況に持っていく責任が我々にはあると考えております。
  185. 丸谷金保

    丸谷金保君 私はトンネルのことを聞いたんじゃないんです。トンネルでさえもそういう法的な状態なんだから、現在残すことになっているローカル線がありますね、これらについても新会社の判断で、他に代替する輸送機関があればという条件はつきましょうけれども、できるのではないか、こう大変心配しているんで、いやそういうことはないんだと、トンネルではないですよ、安心してくれというふうにひとつ、今残すことになった幹線は大丈夫なんだと……。
  186. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私も郷里に帰りますと、地方交通線の駅の周辺に住んでいる人間であります。私の子供たちはその地方交通線を使って登校をいたしております。これらが会社の経営者の恣意的な行動で廃止をされるようなことがあってはたまったものではありません。ですから、理論的は確かに存在し得ることでありましても、公衆の利便を著しく損するといったその時点における状況判断というものは、私は地域住民がその鉄道を見限ってしまって不要なものと判断をしない限りにおいて、そう簡単に起こる状態だとは思いません。
  187. 丸谷金保

    丸谷金保君 つまり、会社になってもいわゆる社会的な道義性が必要だし、公共性もあるものであるから、そう一方的に簡単にやられるべきものでないというふうに御答弁いただいたと理解してよろしゅうございますね。  それでもう一つ、トンネルの関係で、連絡船が一年動きますね、この職員がしたがって残るわけなんですね。そして計画によると、これは新会社がみんな引き継ぐということになっております。ただ、ほかの方は、例えば地方自治体だとかいろんなところへ再就職の道はもう来年の四月までの時点で政府が一生懸命やっているんです。しかし、この連絡船が動いている間はやっぱり皆さん使命感を持って動かすと思います、連絡船の要員の方たちが。それがしかし六十三年になったらもう新会社に移っているんで、政府がそういう再就職とかいろんなことについて心配をしてくれなければ、これは国の現在の状態でトンネルを掘るまでの間は動かさなきゃならないということになるわけですから、やはり国もこの連絡船の要員については、六十三年の時点でもう一回そういう点の心配もしてやるということにぜひお願いしたいと思うんですが、いかがですか。
  188. 林淳司

    政府委員林淳司君) ただいまの点でございますが、連絡船は御指摘のとおり一年間タイムラグがあるわけでございます。そこで、来年の四月に連絡船を動かすに必要な要員というものはこれは新会社に行くわけでございますけれども、その次の六十三年の四月という時点で仮にその青函航路が廃止されたということになった場合には、その要員は、その会社の中で他の部門に配置転換をしてその会社の業務に従事をしていただくということを前提にしております。したがって、その船舶関係の要員がその時点で再就職をしなきゃならぬという事態にはならない。そのためにも当初、来年四月の時点で引き継ぐ要員はできるだけやはり少ない合理化された要員でいくべきであろうというふうに思っております。それで、仮に船舶運航に若干でも要員が足らないということがあります場合には、暫定的に一年間他から派遣をするというふうなこともあり得ると思いますけれども、できるだけ合理化した上で来年四月に要員を引き継ぎ、そしてその要員は、六十三年にはその会社の他の部門に配置転換をして、その会社の職員として仕事をしていただく、こういう前提考えております。
  189. 丸谷金保

    丸谷金保君 これは本人たちの都合でなくて、やはり国鉄の都合によって残るんですね。そして国鉄の都合によって六十二年度でやめる人たちについては他への転職の心配を国がして、一年たった後は全部会社に引き継ぐというのではちょっと不公平過ぎます。これはやっぱり国においてもその時点で、いや船はいいけれどもとても陸だったらほかの方へ就職したいという人だって出てくるかもしらぬですよ。国鉄マンですからね、やはり何といっても責任感を持って一年間の船はやるでしょう。そうすればその後の心配、いや新会社に引き継ぐからいいんだというだけでは私は済まないというふうに思うので、この点申し添えておきます。  それからトンネルのことなんですが、新しい会社の公租公課が六十二年度十三億、六十三年度十四億、六十四年度十八億、六十五年度が十九億と、結局これ六十四年度からはトンネルの分の固定資産税を支払わなきゃならなくなるのでここはふえているんですか。
  190. 山田度

    説明員(山田度君) 北海道につきましては、特に今回の法案におきましても特別の減税措置等をお願いしておりますけれども、六十二年以降の御指摘の租税の増加につきましては、一つはやはり青函トンネルにかかわります租税の増、それからその後の北海道におきましても、年間約百四十億円ぐらいの投資をしてまいりますので、そういう投資増に基づく固定資産増に対応するものだと見ております。
  191. 丸谷金保

    丸谷金保君 時間もありませんので簡単にお願いしたいんですが、私の聞いているのは、青函トンネルの分の固定資産税を聞いているんです。これは、だから六十四年からそれが入っているので、急にぼっと四億もふえたんですかと。そうでないならそうでないでいいんですよ。しかし、一体どこに入っているんです。今度払わなきゃならぬでしょう。だからこの公租公課の中にはその分の固定資産税も見ていますね。幾ら見ていますか。
  192. 林淳司

    政府委員林淳司君) 北海道会社の租税公課、おっしゃるように六十二年度が十三億、六十三年度が十四億、それから六十四年度から十八億、それからその次が十九億、十七億と急激にふえております。それで、青函トンネルの分はこれは三億程度でございまして、これはそう変わらないわけでございまして、六十四年度から大幅にふえておりますのは、これは新規税制が六十四年度からでございますので、新規投資分についてはこれは軽減税率がなくなるということが原因でふえておるということでございます。
  193. 丸谷金保

    丸谷金保君 もう時間がございませんので一方的になりますが、今の問題は今の答えではちょっと答弁になっていないと思うんです。したがって、幾らかということを私聞いたので幾らと言ってくれればよかったのを、時間がなくなりましたのでこれで一応やめますが、まだこのほかに地交線の問題で長大四線、例えば天北線の中に小石峠というふうに、もうアイスバーンで車が非常に危険だというようなところや、あるいは小利別なんという池北線に十日ほど前にマイナス十一度まで下がる、こういうふうな非常に厳しい実態のところもありますんですが、これらはもう時間がなくてあれなので、大変答弁は遺憾ですけれども、これで質問を終了いたします。
  194. 山内一郎

    委員長山内一郎君) 午後二時二十分に委員会を再開することとし、これにて休憩いたします。    午後一時二分休憩      ─────・─────    午後二時二十一分開会
  195. 山内一郎

    委員長山内一郎君) 日本国有鉄道改革に関する特別委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、各案について質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  196. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 国鉄百十四年の大改革でございますので失敗があっては絶対ならない、こういうことで今日まで審議をしてきたわけでございます。もちろん大改革でございますから、長期債務の問題それから雇用問題、さらに年金の問題、残る清算事業団の問題等それぞれ大切だと思います。その中で、同じようにやはりバス部門についても失敗があってはならない、こういう意味から貨物部門についても私は大切ではないか、こういうように思います。そういったことで私はきょう、バス部門それから貨物部門、安全輸送、こういう点についてこの大改革に当たって確認をしておきたい。また、将来どうあるべきかということについて質問をさせていただきたいと思います。  まず最初に、国鉄改革に伴う国鉄バス部門のあり方についてでございますが、営業の面について、政府の方針によりますと、バス事業は最初監理委員会の答申では全国十三グループとのお話でございましたけれども法律化する運輸省の段階でこれが十グループ案、こういうふうになりたわけでございます。そこで、午前中もお話ございましたけれども監理委員会が十三グループ、そして運輸省段階で十グループ、こういうふうになったわけでございますけれども、私が思うのには、バスを除いて監理委員会の答申をコピーしたような法案が出てきておりますけれども、バスの場合はこういうふうに変わっておるわけです。特にその中で、北海道、四国、九州のいわゆる三島は旅客会社が経営し、本州についてはとりあえず旅客会社が引き継ぎ、後に七グループに分離する、こういうふうになっております。  そこでお伺いしたいのは、このように十三グループが十グループになった理由、これが一点と、それから本州はそのまま引き継がれてそして後に分離する、こういうことになっておることの確認でございます。
  197. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 委員が御指摘のように、国鉄のバス事業の経営単位であります地域ブロック数につきましては、監理委員会意見では確かに十三グループに分かれておりました。その意見をちょうだいいたしました後、国鉄及び運輸省において、バス事業の地域的なまとまり、また路線網の一体性、収支状況、波動輸送への効率的な対応などの要素を主体に検討いたしました結果十ブロックといたしております。また、そのうち三島につきましては、鉄道とバスの補完関係などを考慮した結果一体経営とする方が適当だと考えております。  例えば、監理委員会の御意見によりますと、中国ブロックにいたしましても二つに分かれておりました。しかし、例えば岡山から山口へかけましての地域を考えました場合に、やはり地域の一体性というものを勘案しますと、強いてこれを二つに分離する必要があるのかどうか、そうしたことも検討してきた次第であります。三島のバス部門につきましては、旅客会社が最終的に鉄道と一体経営をすることにいたしました場合には、その後重大な事情の変更とでも言えるようなものが起こりません限りは、バス部門を分離することはあり得ないと考えております。
  198. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 それと今お話しあったように三島のバス部門でございますけれども、北海道、四国、九州については当分の間というのではなくて永続的にこれは分離はしない、こういうことになるのでございましょうか。
  199. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 今私どもが想定し得ないような大変何か大きな事情の変更が出てまいりますれば、これはやはり検討を必要とする場合があるかもしれません。しかし、そうした重要な事項の変更のない限りにおいては私どもは分離はないと心得ております。
  200. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 重要な変更というのは天変地異か何かわかりませんけれども、重要な変更というのはどういうことを想定しておりますか。
  201. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 通常に想定できる範囲であれば私どもはこの分離はあり得ないと考えております。ただ、委員が御指摘のように、未来永劫絶対にないかと聞かれますれば、私は本当に今想定し得ないような状況というものがもしあれば、それはやはり検討の対象ではあろうと思いますので、その部分を留保させていただいたということであります。
  202. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 七グループの旅客会社よりの分離についてでありますけれども日本国有鉄道改革法の第十条に「旅客自動車運送事業の引継ぎ等」の項目の中に「その事業を併せて経営することが適切である場合を除き、」云々、こういうふうにありますけれども、「適切である場合を除き、」ということは適切でない場合もあると、こういうことですね。この適切である場合と適切でない場合、どのように決めていくのか御説明いただきたいと思います。
  203. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 「その事業を併せて経営することが適切である場合」、例えばこれは民間並みの生産性を確保してもなおかつ自立経営の目途が得られないような場合、あるいはバス事業としては黒字であるが鉄道と一体経営をした方が旅客会社及び利用者の双方にとって適切である場合、バスの事業を分離しない方がそれぞれの地域における全体としての輸送需要に的確に対応し、効率的な輸送を提供し得ると判断をした場合というふうに考えております。
  204. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 そうすると併営すること、いわゆる旅客会社とバス会社が併営することが適切であると認めた場合は、本州の中にあるバス部門のある部門旅客会社と一緒に経営するという、こういう意味になってきますか。
  205. 林淳司

    政府委員林淳司君) 改革法第十条の趣旨でございますけれども、これは原則としてはやはり鉄道経営とそれからバス経営というのはかなり違う面があると、要するに地域性と申しますか、地域に対する広がりの度合いとかその他の面でかなり違う面がございますし、それから同業、ほかのバス業者との関係から考えても、かなりやはり鉄道経営とは違う面がある、鉄道とバスとは違う。そういうことから、原則はやはり分離するのがバス部門を本当に生かしていくには一番いいんじゃないか、こういう大原則に立っております。それに対して、例外的にむしろ併営する方がいい場合があり得るのではなかろうかということで、先ほど大臣から申し上げたようなことで、そういう例外的な場合として併営を考えるということでありまして、原則はやはり分離した方がいいんじゃないか、こういう考え方に基づくものでございます。  それで、現在までの私どもの検討段階では、本州の七ブロックにつきましては、これはやはり基本的には分離した方がより適切な経営ができるのじゃなかろうか。それに対して、北海道、四国、九州の場合は、それぞれ事情が違いますけれども、北海道と四国はどちらかというと鉄道との相互補完関係と申しますか、そういう連携の度合いが非常に強い、それから九州は、どちらかといいますとやはり自立経営についてのめどが非常に難しい、そういう事情の違いはございますけれども、この三つのブロックにつきましては、これはやはり例外的に併営をしていかざるを得ないのじゃなかろうか、こういうふうに考えているわけでございます。
  206. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 今、林さんの答弁だと、四国、北海道、また九州、それぞれ簡単に併営するという理由を説明されたようですけれども、それでは本州の中にもこの三島と同じような条件のある路線はあると思うんですけれども、そういうところはどういうふうになるんですか。いわゆる北海道、四国というのは併営した方がいい条件が、貨物と非常に連携が密になっているとか、こういうことですね、九州の場合はまたほかの理由があるわけですけれども。それじゃ、九州と同じような条件のところがこの本州の中にもあると思うんです。それは本州の中にあるわけですから、将来は分離する、こういうことですけれども、この同じような条件にあるところは、これはどうするんですか。一緒にしてもいいんですか。
  207. 林淳司

    政府委員林淳司君) その点につきましては、今回の法案におきましては、これは来年四月以降六カ月間、この間に経営者が分離をするのが妥当であるかどうかという経営判断を検討いたしまして、その経営判断のもとに最終的に分離するかどうかの方針を決めまして運輸大臣に報告をしてくる、それに基づいて手続が進められる、こういうことになりますので、法的には、現段階でこれは分離する、これは分離しないというのを私どもが決めるべき問題ではなかろうと思います。  ただ、私どもの現在までの検討の状況によりますと、北海道、四国、九州の場合はむしろ併営の方が適当であろう、それから本州の七ブロックはむしろ分離した方がより適切な経営ができるであろう、こういうふうに、検討の結果がそういう結論に一応なっているわけでございますけれども、今申し上げましたように、最終的には経営者が判断をして、分離をするかどうかを検討して決めて大臣に報告をしてくるということになるわけであります。
  208. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 大変恐縮ですけれども、それでは、先ほど簡単にありましたけれども、北海道と四国と九州、これは併営するというその理由ですね、ちょっと細かく言ってくれますか。なぜ併営するのか。
  209. 林淳司

    政府委員林淳司君) まず九州でございますけれども、九州については、十ブロックについて収支の検討をいろいろしてみたんですけれども、ほかの九ブロックと違いまして、九州のブロックというのは非常にやはり採算をとるのが難しい。これは特に南九州のバス路線について非常に採算が悪うございまして、全体として九州のバスブロックというのは収支採算が非常に難しいので、これはやはり旅客会社で一緒に、一体でやっていかざるを得ないんじゃないか、こういう判断をしております。  それから北海道と四国につきましては、現在の路線の状況等を見まして、例えば北海道でいいますと、地方交通線との関係とかあるいは幹線との連携補完関係とかいうものが、本州の各ブロックというのがかなり独立してバス事業をやっているのに対して、鉄道との連携関係が非常に強いというふうに考えておるわけであります。四国についてもほぼ同様の条件にあるというふうに考えておるわけでございまして、なお詳細につきましてもし御必要でございましたら、国鉄の方からさらに詳細な答弁をさしていただきたいと思います。
  210. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 もうちょっと詳しく言ってみてくれますか。
  211. 須田寛

    説明員(須田寛君) 補足してお答えを申し上げますが、北海道につきましてはかなりな程度の鉄道線につきまして、輸送密度のかなり低いものが今後もございます。ところが、北海道は比較的道路の状況がよろしゅうございまして、国鉄バスも割合にいい成績を持っておるわけでございますが、相当並行区間がございます。したがいまして、鉄道とバスとをダイヤ調整をいたしますことによりまして、両者が非常に円滑な役割の分担ができるというところが大変多いように思います。  それから四国につきましても、これから本四の架橋ができまして輸送体系が相当変わってまいるわけでございますが、今後のいろいろ道路の整備状況等を考えますと、やはり北海道と同じようなことが言える。  九州につきましては、先ほど審議官からお話がございましたように、これはかなり採算性に問題もございますので、やはり鉄道が一体として経営をいたしまして、むしろ相互補完関係、つまりバスが鉄道を培養するという関係がございます。そういったところをうまく改善をいたしながら、できるだけ赤字を小さくしていくという意味におきまして共通経営の方がいいのではないか。今のところ、こんなふうに考えまして、運輸省と御相談申し上げているところでございます。
  212. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 北海道は道路状況がいいとか、ダイヤ調整が都合がいいとか、四国も同じように地方交通線との関係だとか、いろいろ検討した結果、三島は併営ということに決めた、こういうことですね。それを、先ほどの大臣からのお話ですと、この七グループ、六カ月検討期間を置く、こういうことでございますけれども、すなわち六十二年の九月三十日までに運輸大臣に報告することとなっておりますけれども、わずか六カ月間で今言ったようなことを本当に検討できるのかどうなのか。六カ月間にした理由は何ですか。
  213. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) これがもし、例えば収支実績を調べるとかいうことでありましたなら確かに私は六カ月というのは短いと思います。しかし今回の場合、バス事業というものを鉄道事業から分離することがいわば原則でありますから、いわば鉄道とバスとの補完関係などを考えながら、一体経営が旅客会社及び利用者の双方にとって適切であるかどうかという判断を検討するわけであります。それであれば、むしろ私どもは六カ月あれば十分検討ができると思っております。
  214. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 大臣、そうおっしゃいますけれども、この大改革で民営になり、そして分割になり、旅客会社自身、会社設立後半年の間でやるべきことは私はたくさんあると思うんです。いろいろの面で忙しいとか、また煩雑な面も出てくるでしょうし、また営業面それから人事面、会計等、これはもう新会社の体制づくりに非常にこの六カ月間というのは大変だと思うんです。私が思うのには、むしろ新会社の決算等が明らかになって、またバス部門の経営面においても見通しが出て、今後の発展の可能性がある、こう見きわめた時点で結論を出してもいいんじゃないかなとも思うんですけれども、いかがですか。
  215. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私は、それも確かに一つ考え方として成り立つものであることを否定はいたしません。ただ同時に、今まさに委員が御指摘になりましたように、新会社が発足をいたしましてから相当、いろいろ実際は会社を動かしていく段になりますと問題も多いと思います。そしてやはりこのバス部門というものを将来ともにその会社に一体運営を考えていくべきであるのか、あるいは分離すべきであるのかという結論は、私はその進行していく過程としても、企業としてはできるだけ早くに結論を出すべきテーマであろうと思います。そうなりますと、むしろ私はその半年という期間は十分な期間だと考えております。
  216. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 そうすると、もとへ戻りますけれども、検討の期間があるわけですから、中には併営の場所も出てくる、こういうふうに理解してよろしいですか。
  217. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) ですから、理論的にそういうものがあり得ることは私は否定をいたしません。ただ、これはむしろ新しい会社が発足をし、その経営者たちが判断をすることでありまして、今私どもがどうこう余り予測をして論じるには、運輸省の立場としては好ましいことではないと思います。むしろ経営陣において慎重に判断をしていただきたい、そう思っております。
  218. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 それでは収支の見通しに入りますけれども、六十二年度のバスの収支見通しですが、政府試算によると、六十二年度のバス部門の収支見通しは、九州を除き全部――九州が九億ですか、赤字でございますけれども、あとは黒字になっております。しかし、五十九年度における収支実績は各グループとも相当な赤字を出しております。合計で三百十二億。北海道三十七億、東日本七十億、東海が二十八億、西日本が百十七億、四国が二十三億、九州が三十七億と、こうなっております。  ここで、政府試算で、九州を除く他のグループが黒字となるのは、人件費がほぼ半額近く減額されているからだと私はこれ推測するわけでございますけれども、ということは、すなわち合理化によって人員削減のみが収支改善の方策と思われますし、この数字からいくと、物件費というのはほとんど変わっていないんです。例えば合計でいくと、物件費の方は五十九年が百十三億、これが六十二年度の収支見通しでいくと百八億、大して変わっていません。それから北海道が十四億に対して十二億、こういうことで大体どこも変わっておりません。しかし、営業損益はこういうふうに五十九年から六十二年になるところっと変わって、それは物すごい利益にはなっておりませんけれども、合計で二十七億。北海道四億、東日本が二十四億等々、九州を除いてふえているわけです。増収というか、利益が出ているわけです。  また、車両効率から数字を見てみますと、国鉄のバス部門というのは、バス事業者としては九州の西鉄に次いで第二位の車両保有数の大手でございます、これは御存じのとおり。数字を挙げると、例えば西鉄の場合は保有台数が三千四十七両、従業員が六千二百十九人、収入が五百五十四億九千八百万、こういう数字が出ております。車両分の収入ということで車両効率という数字を出してみますと一八・二と、こういうことになっております。国鉄の場合を取り上げてみますと、保有台数が二千四百五十一両、従業員が七千五百六十四人、収入が三百九十三億六千六百万、いわゆる車両効率一六・一と、こういう数字になっております。もう一つ挙げますと、東京都、保有台数が一千九百十九両、従業員が四千七百十九人、そして収入が三百九十二億八千八百万、車両効率が二〇・五と、こういういわゆる車両効率というのが出ております。  この車両効率が他社と比べ低いのは、一に民間企業、都市圏自治体と異なって、民間で路線を維持することができない地域をいわゆる公共性というこういう立場国鉄が今まで運行してきた、こういうふうに私は見ておるのでございますけれども、政府試算によると、六十二年度収支見通しを五十九年度実績と比較してまず気づく点は、赤字が先ほど言ったようにころっと黒字になる、営業収入がわずかでも増加している、こういうことになってくるわけです。  そこで質問ですけれども、運輸統計を見ても、乗り合いバスの輸送人員、国民一人当たりの利用回数、それから輸送人キロなど各種の統計要素はどれでも輸送量が減ることがこれは明白に数字で出てきております。それにもかかわらず、営業収入がわずかでもふえるという理由、この根拠、納得のいくような数字をお示しいただきたいんですが。
  219. 須田寛

    説明員(須田寛君) 今先生指摘がございましたように、確かに経営収支がかなり大幅に改善する見通しになっておりますが、一つはやはり職員の勤務能率、勤務効率というものを私鉄バス並みに大幅に変えるということが一つの大きな要素でございますが、同時に物件費につきましても、やはりその後燃料単価の最近の状況によりまして燃料費を見直しますとか、あるいはいろいろな経費につきましても、修繕費等におきまして今まで外注をいたしておりました車両の修繕を、職員の働き度向上によりまして要員をふやさずに直営化するというふうなことで、いろいろな経費節減の努力も見込んでいるところでございます。  それから収入につきましては先生から御指摘がございますが、余り過大な見積もりはいたしたつもりはございません。ただし、これは最近におきまして運輸省も非常に御理解をいただきまして解決をしつつあるわけでございますが、貸し切りバスの営業、それから高速バスに対します私どもの方のバスの進出、こういった問題につきましてもできるだけ民間バス並みの対応をお願いいたしまして、これは今お願いをしつつあるわけでございますが、そういうものを若干見込ませていただいております。そのようなことを考えました結果、総合的に九州を除きまして黒字レベルでの一応会社発足ができる、こんなふうに試算をした次第でございます。
  220. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 いろいろ御説明がございましたけれども、ということは、基本的には北海道六十二年度の場合四億とか、それから東日本が二十四億とか東海が三億、西日本が二億、こういうふうに出ておりますけれども、この程度は大丈夫だと、こういうことで確信を持って言えるわけですか。
  221. 須田寛

    説明員(須田寛君) そのように考えております。
  222. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 それではこれに関連して、六十二年度における新事業体のバス部門の職員数が四千八百五十人としておりますけれども、五十九年度の数は七千四百十人。これに比べますと六五%の人員になっておるわけです。非常に大胆に切り込んだなと、こういう印象を持つわけでございますけれども、この四千八百五十人にした根拠、これが一点。それから、こうした職員数の見込みについては、現在のバス部門関係者の意見を尊重しての積み上げ計算であると私は思いますけれども、そのプロセスはきちんと積み上げ計算をやってきたのかどうなのか、これが二点目。  それから三点目は、国鉄自身として、この人数で相当、いわゆる五十九年度の七千四百十人から四千八百五十人という数になりましたので、安全運行の面は心配ないのかどうなのか。この三点についてお伺いします。
  223. 須田寛

    説明員(須田寛君) 第一点につきましてまずお答えを申し上げますが、この四千八百五十という数字につきましては、現在におきまして、これは昨年でございますけれども、組合との間でいろいろハンドル時間の協定の変更をいたしております。これは職員の勤務をより充実させるということでございまして、その交渉が成立をいたしまして現在その見直しをいたしておりまして、これでかなり乗務効率が上がっている。つまり勤務時間の中で実際車の運転をする時間の密度が高くなっておるということでございます。  それからもう一つは、昨年からことしにかけまして路線の削減を各地でやらせていただいております。これは本年度分をもちまして一応終了することにしておりまして、来年度以降につきましては路線の削減は特に見込んではおりませんけれども、そういったようなこともございまして、かなり路線の素質がよくなってきている、極端に悪いものがなくなってきているというその二つの要素からこのような減員が可能になったものでございます。そして、この四千八百五十名体制と申しますのは本年度中に達成することにいたしておりまして、つまり六十二年度首の数字でございますので、現在ほぼこのレベルに近づきつつあるというふうに申し上げておきたいと存じます。  それからもう一つは、この数字につきましては、今申し上げましたようなことでございますものですから、完全な積み上げの結果であるというふうに申し上げておきたいと思います。  それから安全問題等につきましても、自動車につきましては、いろいろ道路交通上の諸規制がございます。かなり厳しい安全規制もございますが、もちろんそれらにつきましてはすべてクリアをする、そして安全運行には何ら支障がないという確信を持って計算をしたものであるということを申し添えます。
  224. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 この安全運行の面に関連して、事故が生じた際に支払われる賠償費用についての取り扱いでございますけれども、従来国鉄は、これは旅客部門、バス部門もそうだったと思いますけれども、この賠償費用を物件費の中の業務費として計上してきた、私はこのように聞いておりますけれども、これは間違いございませんか。
  225. 須田寛

    説明員(須田寛君) 業務費として計上いたしております。
  226. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 この点で、衆議院の審議の中で旅客会社の収支見通しに関する質問の中で我が党の議員が伺ったわけでございますけれども、どうもその答弁が、私議事録を見ましたけれども、正確でないというのか、納得いかないので、もう一度その点についてお聞きしたいわけでございます。  民間会社は事故に備えて損害保険を掛けております。万が一の事故の際の賠償に充てるようにどこの民間会社もいわゆる任意の保険を掛けております。しかし国鉄は今、そちらで申しましたように、事故の賠償金はいわゆる物件費の中の業務費、こういうふうに計上しているというわけでございますけれども、この業務費の計上額が六十二年度収支見通しではどのようになって入っているのか調べると、国鉄側から出た数字でございますけれども、六十二年度の収支見通しにおける賠償費計上額、これは今言いましたように業務費として入っている額でございますけれども、北海道が二千百万、東日本が一億四千九百万、それから東海が一千四百万、西日本が一億三千七百万、四国がただの二百万、九州が四千四百万、合計三億六千七百万、こういう数字国鉄から出ております。総額を言いますと今言ったように三億六千七百万で、このうち四国は二百万計上しているにすぎないわけですけれども、この数字は間違いないですね。
  227. 須田寛

    説明員(須田寛君) 自動車の保険につきましては、現在は自賠責だけ強制保険でございますので加入をしておりまして、約一億弱の実績がございます。  今先生の御指摘がございました数字で申し上げますと、今度のこの自動車会社の収支におきましては、自賠責のものと、これは約一億九千万でございますが、それから任意保険といたしまして全国的に約一億五千万を保険料として見込んでおります。これは大体観光バス、高速バス、それから都市観光路線のバスをその保険に入れることにしております。  先生の御指摘がございました四国の二百万でございますが、ちょっとこれは私の方であるいは数字を間違って申し上げたのかと思いますけれども、実は二千万でございますので、二千万の保険料を四国のバス会社の収支には見ているということでございますので、その点だけ申し上げておきます。
  228. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 あなた余計なことを言わなくたっていいんだよ。私が聞いているのは、旅客会社でいわゆる賠償費として業務費の中に入れた。いわゆる保険料はかかっていないわけですから、その保険のための賠償費としてお金はどこから出ているのか、業務費から出ている。じゃ、その業務費の中からどのぐらい出ているのかという計算をしてください、これは旅客会社ですよ、そう言ったところが、おたくの方から出てきたやつが、これが三億六千七百万、こうなっているわけです。そのうち分析していくと四国は二百万、こういう数字が出る。これは旅客会社です。バスのことは私はまだ聞いていないんだよ。だから、聞かないことは言わなくていい。  もしこの三億六千七百万円を損保を掛けるというトータルでやると、今業務費でやっているわけですから、損保を掛けるということになった場合には約五億三千万の保険料となる、こういうふうに計算をされているわけです。これは衆議院段階で確かに言いましたね。したがって、三億六千七百万というそちらから出た数字というのは五億三千万より少ないのだから、業務費で計上した方が有利である、こういう話にもなってくるわけです。計算上はそうでしょう。  そこで質問ですけれども、四国旅客会社の損害賠償は今言ったように二百万。二百万といえば自動車一台分ぐらいしかないわけです。もし人身事故が生じた場合にはどうするか。これでは到底今のどこの会社のあれを見ても対応できないのじゃないか。ホテル・ニュージャパンでも火災がございましたけれども、あれにしても、これは同じ人身事故があった場合に、ニュージャパンの場合は数千万から約一億、それから日航の事故もございましたけれども、この補償は一億前後、こういうふうに聞いております。  そこで、お尋ねしたいんですけれども、そういうことで業務費で計上はしているものの、実際にはそれでは対応できない数字ではなかろうか、私はこういうふうに思いますし、今度民営化されるわけですから、損保に加入するのが私は自然だと思いますけれども、それに基づく経費を計上して旅客会社の収支見通しを出すべきだと思いますし、損保に加入するのが自然だと思いますが、その点はいかがですか。
  229. 林淳司

    政府委員林淳司君) 先ほど先生が申されました合計三億六千七百万、これは旅客部門、バス部門含めた従来のいわゆる賠償費、業務費に計上された賠償費でございまして、先生がおっしゃった数字どおりでございます。  これについては、先生も今御指摘ございましたように、保険を掛けた方が会社として経営上有利であるのか、あるいは従来もこういう程度の賠償費で済んできたので、これでいわゆる自家保険的な形で運営するのが経営上より有利であるのか、こういう判断の問題になってくると思うんですけれども、一応今の段階では、保険料と比べた場合に従来の実績の賠償費の方が低いので、やはり自家保険的な形でこれを運営していった方がいいだろう、こういう実はこの収支試算の段階では判断をしたわけでございます。  ただ、バスにつきましては、これはいわゆる強制保険の制度がございますし、現在でも国鉄バスもこの自賠責保険に加入しておりますので、これについては、先ほど国鉄の方から答弁がございましたように、バス部門について一億九千万の保険料を見込んでおる。それから任意保険については、これは従来いわゆる保険には入ってございませんでしたけれども、バスについては任意保険に加入するという前提で一億三千万を収支試算の中に計上をしておるということでございます。鉄道部門については一応自家保険という形でやっていった方が従来の実績から見てそれで十分ではなかろうかというふうに判断をしておるということでございます。
  230. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 わかりましたけれども、強制保険に入るというのはこれは法律で決まっているんです。我々だって入るんですから、これは当たり前のことです。ただ、今までは業務費として入っておった。それが保険に入った場合よりトータルで額が少ない。そうではなくて、民営になるのだから、やはり損保に入って任意を掛けなきゃいけないんじゃないか。今のお話ですと一億何千万か掛けるようになったということですけれども、私が思うのには、軌道の上を走るいわゆる列車の方の事故と、山の中からあらゆるところを走る、道路のあるところすべてを走るバスの事故の発生率というのは、バスの方が多いんじゃないか。  ここに統計がございますけれども、例えば警察庁の交通局で出している「交通統計」ですけれども、これからいくと自動車が第一原因となった事故というのは五十九年でいくと、死亡件数が八千百五十件、こういう数字が山ております。事故件数が四十八万八千二百六十六件、こういう数字が出ておりますし、これは地方鉄道等を含めてですけれども、軌道の場合には、それよりぐっと軌道のあるいわゆる国有鉄道を初め地方鉄道を含めて非常に少ないわけです。ですから、私は人間は同じですから、バスにおいても最近の事故を見ると、三重交通のスキーバスの事故もございましたし、それから中央高速の二階建てバスの横転事故があった。事故はない方がこれはいいわけでございますけれども、万が一生じた場合の事故に備えてのいわゆる損保でございますから、収支見通しに損保料を計上するのが私は自然であり、当然のように思いますけれども、もう一回、きちっと損保を掛けるか掛けないのか、それとどの程度掛けるのか、その点をお伺いいたします。
  231. 林淳司

    政府委員林淳司君) 繰り返して御答弁申し上げるようなことになりますけれども、バス部門につきましては、おっしゃるように道路を走るというふうな面もございますし、種々問題がございますので、これについては保険に加入をするという前提で計算をしております。すなわち、いわゆる強制保険の関係では一億九千万、これは六十二年度でございますが、それから任意保険については一億三千万ということで、合計三億二千万の保険料を収支計算上計上しております。
  232. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 そうすると、バス部門の収支見通しの中には当然この額は入っている、こういうことでございますね。――はい、わかりました。  次に、このバス会社の同じく収支見通しでございますけれども、九州グループが赤字九億円、こうなっております。経営状態はバスの需要を考えても当分の間これは赤字は続くんじゃないか、こういうふうに思われるわけでございますけれども、そこで、この九州のバス部門の六十三年以降の収支見通しはどのような傾向になっていきますでしょうか。
  233. 須田寛

    説明員(須田寛君) 先生指摘のように六十二年度で九億円の赤字ということでございますが、その後いろいろ増収努力をいたしましたり、先ほど御説明いたしました経数節減等を考えました結果、六十六年度につきましては大体四億ぐらいにこの赤字は縮減できる、こんなふうな見通しを持っております。
  234. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 九州旅客会社の六十二年度収支は営業損益で二百七十億円、これは旅客会社ですね。赤字が三島基金の利子から出ますけれども、いわゆる収入が二百八十一億円、それで損益が十一億円の黒字、こういうふうになっているわけです。これは二百八十一億から二百七十億引けば十一億になる、これは黒字ですね。それで今言ったように年間九億円のバスの赤字が出る。こういうことになると、ここでバス部門が足を引っ張るというか、非常にバス部門が大きな負担となってくる、これははっきりしていますね。  そこで、将来それが続いてきた場合にこのバス会社を切り離すのかどうなのか。これは赤字をしょって、その赤字の大部分をバス会社がしょっていくということになると、旅客会社自体でも大変なんですから、このバス会社が足を引っ張るようなことがあってはこれはとてもじゃないということで切り離すことになるのかどうなのか、廃止するのか、その辺はいかがですか。
  235. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 今委員指摘でありますけれども、実は六十二年度の九州旅客会社におけるバス部門の営業損益ベースの赤字九億、これは既に旅客会社の収支試算の中に織り込んでおりまして、これを織り込み済みで三島の基金を設定いたしております。  また、先ほど国鉄の方から御答弁申し上げましたように、高速バスの採用その他いろいろな手法は当然講ずるわけでありますけれども、バスそのものの経営見通しからいきますと六十六年四億の赤ということで、だんだんこの赤字は減っていく傾向にあります。いわば赤字ではありますけれども、六十三年度以降のバス部門状況というのは改善傾向にあるわけであります。それだけに、私どもは長期的に見てバス事業旅客会社の大きな負担となるというおそれはないと考えております。現在織り込んでいる以上に大きな負担になることはまずないであろうと考えておりまして、九州会社がバス部門について最終的に鉄道と一体の経営を考えました場合には、その後、先ほど御論議をいただきましたような、ちょっと今私の想像のできないような重大な変更事情でも生じない限りにおいて、私はバス部門を切り離すことはないと思います。
  236. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 そうすると、切り離すこともないし廃止なんということは到底考えられない、こういうことですけれども、今九州グループのバス部門の収支をお聞きしたわけでございますけれども、九州グループだけではなくて、例えば西日本の石川グループ、それから中国グループ、この経営状態も、これもそちらからいただいた経営見通しの表でございますけれども、これは六十二年度はゼロ、こういうことになっているわけです。  したがって、私はこれから非常に困難な状況が続くのではないかなと、この二つのグループについても。その証拠といいますか、裏づけとして営業収入に占める人件費、これは人件費というのは一番大切なわけですから、一番また経費がかかるわけです。例えば石川グループの場合には八〇%、それから中国の場合は六七%、関東の場合は五六%、上信の場合は一番いいので五〇%、この程度になっておりますけれども、この営業収入に占める人件費の比率というのは、今申しましたように石川八〇%、中国六七%、九州は八八%、こういう高い数字が出ております。したがって石川グループ、中国グループも九州に負けず劣らず大変ではないかと思いますけれども、この辺はそれではいかがでございますか。
  237. 林淳司

    政府委員林淳司君) 鉄道部門と比べまして、バス部門というのは割と人件費比率が高いわけでございます。ちなみに五十九年度でございますけれども民間のバス会社の平均的な人件費比率を見ますと、大体七四%弱になっております。  ただいま先生指摘の石川グループあるいは中国グループ、これについて八割あるいは七割ちょっとということでございまして、確かに石川グループについては八割というのは高いと思いますけれども民間バス会社に比べてそう非常に大きな開きがあるというわけでもないかなという感じはいたします。いずれにしましても、しかし人件費というのが経営にとって非常に重要な要素でございますので、その点についての今後のやはり経営努力と申しますか、効率化努力と申しますか、そういうことは十分今後もやっていかなきゃならぬだろうというふうには思っております。
  238. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 今申しましたように、西日本旅客会社のいわゆる石川グループ、中国グループ、この損益からいくと経常利益がゼロでございますから、どのような見通しを立てても私は赤字経営が予想されるような気がしてならないわけでございます。営業収入が六十三年度以降六十六年度まで一定水準という状態には私はなり得ないような、どうも数字からいってそういう感じを受けるわけです。このような経営体質では旅客会社から分離することはできないのではないかなと、こういうふうに思われてならないわけです。  そこで、西日本会社が抱えざるを得ない、また分離するとしても地域の住民の足を守るためには、また路線維持のためには、これは補助がどうしても必要になってくるんじゃないかと、こういうふうに思いますけれども、この補助の件についてはどうですか。
  239. 林淳司

    政府委員林淳司君) 私どもの現在の試算では、長期的に見てと申しましても一応今のところ五年間の収支を見ておりますけれども、五年間の収支を試算した段階におきまして、バス部門についても、本州については少なくとも分離してこれを独立経営していくことについて、やはり五年程度見ましてもいずれも黒字基調というものは続くわけでございますので、健全経営の基盤は逐次定着をしていくのではないかというふうに考えておりまして、これが将来いわゆる過疎バス補助制度とかいうことの対象になるような事態というのは恐らく避け得るであろうというふうに現段階では考えております。
  240. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 そこでその補助金のことですけれども、これは万が一というか、将来を想定してお尋ねするわけでございますけれども、現在国鉄バスは全体の五〇%強、これが民間で言うならば二種、三種。いわゆる二種というのはその路線で十五人未満五人以上、それから三種というのは五人未満と、これが五〇%強になっているわけです、この路線全体から見ますと。  それで、地域の足を確保するという、いわゆる公共性といいますか国民福祉といいますか、こういう役割を国鉄バスは今まで果たしてきたし、また果たさなきゃならない、こういう立場にあるわけです。民間バス路線と違うそういった公共性、それから国民福祉という立場は違うところがございますけれども、そのために地方バス路線、いわゆる運営費補助というのが今行われているわけです。この補助名目は、民間事業者が補助されているいわゆる生活路線維持費補助、これに準じた私は制度ではなかろうかと、こういうふうに思うわけでございますけれども、ここでこれは万が一を想定して、もしそうなった場合には、いわゆる民営化された国鉄バスについては生活路線維持費補助というのを、これを適用するのかどうなのか、この点はいかがでございますか。
  241. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 今総括審議官から御答弁を申し上げましたように、分割・民営時におきましてバス事業も含めて、私ども旅客会社事業が健全かつ円滑に運営できるような安定的な事業基盤を整備して発足をさせることにいたしております。それだけに、欠損補助の性格を持っております現行の地方バス補助制度に基づく生活路線維持に係る補助というものを受ける事態というものは実は考えておりません。しかし、理論的にはそうした事態はあり得る、存在し得るわけでありますから、そうした事態が発生をいたしましたならば、私はそれは対象になり得ると思います。なり得ると思いますけれども、私どもとすれば実は今旅客会社というものがバス事業も含めて健全経営が可能なようにということで仕組みをつくりました次第でありまして、これを受けるというような状態を想定はいたしておりません。
  242. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 民営になるんですから、形態としては現在の民間会社と同じになるわけですね。そういった場合に、先ほど言ったように生活路線維持費補助というのはこれは法的には適用になる。ですから私は最初から万が一の場合と、こういうふうに言っているわけです。万が一の場合にはそういうことはあり得ると、こういうことですね。  そこで、これも万が一になりますけれども、そうなった場合に、生活路線維持費補助というのはこれは県知事が指定するわけですね。この線がその路線であるとかないとかというのは県知事が指定するわけです。本州の場合には七グループになるわけですから、その一グループが県にまたがる場合があるわけです。そうなった場合に、それではどちらの県知事が指定するのか、また本社のあるところの県知事が指定するのか、これが一点と、それから民間生活路線維持費補助というのは国が三分の一、県が三分の一、市町村が三分の一と、こういう規定になっているわけですけれども、その補助金を出す段階になった場合には、それではどこの県がどの程度、どの市町村がどの程度、これは路線バスというのは走っているわけですから、二県にまたがる、三県にまたがる場合もあり得るかもしれない。そういった場合にはどうなさるんですか、自治大臣。
  243. 熊代健

    政府委員熊代健君) 国鉄バスが分離された場合の想定でございますが、私ども現在の地方バス補助のシステムについてどうなっているかということについて御説明することでかえたいと思いますが、おっしゃるように地方バス補助制度は、都道府県が路線を指定するというようなことによって都道府県が補助をすると、その二分の一を国が補助するという間接補助になっております。  具体的な路線の指定につきましては、これは路線ごとに指定いたしますものですから、またがっている場合にもそのそれぞれの路線の行政区域を担当している知事が指定する。またがっておりますれば、その二つなら二つの知事が指定をするということで、それぞれに応じてこの補助を実行するということでやっております。それで、両者について意見が合わないといったようなことは今までほとんど例はございませんが、調整が必要であれば運輸局長等が調整をする。現実にまたがっておりますのが六十年度の実績で申しまして二十四系統ばかりございます。これは繰り返して申し上げますけれども、それぞれの路線の存する都道府県知事がそれぞれ指定をして補助を行っているということでございます。
  244. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 バスの件ではこれが最後になりますけれども、現在民間バス事業者はバス事業だけでは成り立たない、そういうことでほとんどが関連事業を兼ねて事業をやっております。国鉄バスを抱える北海道、四国、九州旅客会社にとってはバス事業を、赤字経営というんですか、そういうことを覚悟で運営することになると思いますし、また本州各グループが分離されると、関連事業をやらなければこれは非常に将来厳しい、こういうふうになると思うので関連事業をやらなきゃならない。しかし、この関連事業をやる際について、各旅客会社の進出との兼ね合いから、バス会社のいわゆる関連事業の新事業への進出というのは、先ほど言ったように六カ月検討して、そして実際に分離するのは本州の場合は一年後になるかその後になるかちょっとわかりませんけれども、そうなった場合には、関連事業に手をつける場合には後発になる、こういうことにもなりますし、それから当然関連事業をやるのには用地が必要である、施設設備が必要である、人の面でも必要であると、しかしそれ相応の余裕、余力が私はバス会社にはないように思います。分離する場合には限定された最小限の用地、最小限の設備と、こういうことになっておりますし、それと今言ったように後発になる、既にもう旅客会社で関連事業は手をつけている、こういうことに私は相なってくるのではないかなと、こういうふうに心配されるわけです。  そこで、各バス会社の経営状態から、もしだめならば、運輸大臣はだめにならないように努力すると、これは当然でございます。また、職員にも一生懸命頑張ってもらわなきゃなりませんけれども、今の状況数字をはじいていくとどうも経営状態が厳しいのではないかと、こういうふうに思われるわけでございます。この対策は何か講じなきゃならないと思いますけれども、例えば三島基金ではございませんけれども、そのような考えはありやなしやでございますが、いかがでございましょうか。
  245. 林淳司

    政府委員林淳司君) バス会社につきまして、関連事業等でございますけれども、当面はバス事業での経験というものをできるだけ生かしていくという観点からいいますと、例えば自動車分解整備事業とかあるいは旅行業の分野にもある程度進出は可能であろうかというふうに思います。さらに将来的には、民間のバス会社のいろんな事例というものを参考にしてやはりできるだけ多角経営に乗り出していくということは望ましいと考えております。いずれにしましても、今回の収支試算におきましてはそういういわゆる関連事業というものは見込んでおりませんで、バスそのもので五年間見て収支はとれるなと、こういう確認はしたわけでございまして、それにプラスして、今のような関連事業をできるだけ展開して経営努力をしていくということによって健全経営の基盤は逐次定着をしていくというふうに考えておりますので、基金とかそういうたぐいのものは、今のところバス会社についてこれを設定するという考えは持っておりません。
  246. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 それでは、基金とかそういうことは考えていないと、こうおっしゃいますけれども、関連事業についてはこれは多角経営の一環としてやらせていきたいと、こういう希望というんですか、そういうふうにしていきたいと、こういうことでございますけれども、それにしても、今私申しましたように、バスが分離した場合はその経営の最小限度の土地、最小限度の施設と、こういうふうになっているので、現実的には物理的にはできないような状況になっているわけです。それを余裕を持たせるような措置を多少できるのかどうなのか、その辺はいかがですか。
  247. 林淳司

    政府委員林淳司君) バス部門につきましても鉄道と同じで、事業に最少限必要な土地とあるいはその施設というものはこれは引き継いでいくわけでございます。バス部門についてはそれほど大きな余剰の土地というものはもともとないわけでございまして、鉄道と違いましてそういう余地というものはもともとないわけでございます。いずれにしましても、その土地を使うだけでなくて、やはり先ほど申しましたように、旅行業とか、こういうものはバス部門につきましてもかなりいろんなノーハウ等もございますのでその展開の余地はあると思いますが、そういうことでできるだけ多角経営化を図っていただくということであろうかと思います。
  248. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 それでは、貨物部門についてお伺いいたします。  貨物部門については、輸送距離が長く、往路復路不均衡になりやすい貨物輸送を円滑に行っていくためには、いわゆる旅客部門から独立し全国一元的な一本の事業運営を行う方が望ましいと、こういうふうになろうとしているわけでございますが、国鉄貨物赤字原因の一部、一部というか半分というか、貨物原因になってきたわけでございます。この貨物部門の見通しについて、どのようないわゆる根拠と仕組みで経営が可能になるのか、この辺、運輸大臣御答弁いただきたいと思います。
  249. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 今回の貨物会社の収支見通し試算は、以下のような考え方によったものであります。  まず、収入につきましては、六十年度の実績を基礎として通運事業者、荷主などの需要動向を踏まえて予測をいたしました輸送需要量に、六十年度実績を基礎とした合理的な範囲での実収運賃の増加を見込んで想定をしたトン当たり収入を乗じて算出をいたしております。一方、経費につきましては、まず人件費については、六十一年度首の国鉄の給与実績を基礎としてその後の定昇及びベアを考慮した人件費単価に貨物会社の職員数を乗じて算出をし、物件費につきましては、過去の実績を基礎として最近の物価の動向及び経費節減等を見込み、今回のダイヤ改正における貨物輸送体系のシステムチェンジを前提として積み上げにより算出をし、租税公課、減価償却費についても、引き継ぐ資産額をもとに積み上げて算出をいたしております。  なお、詳細の説明が必要でありましたら、事務方から補足をしてもらいます。
  250. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 国鉄改革によって貨物部門は、いわゆる三島の旅客会社の経営というのは非常に厳しいと、こういうふうに今思われるわけでございますけれども、私は、この貨物を分離して一本にした場合には、またそれ以上に経営は心配されるのではないかと、こういうふうに思います。我が党は貨物会社旅客会社の併営ということを考えておりますけれどもレールは同じであり、また貨物の取扱駅等においては職員の兼務、また物件費は相当な額になるわけでございますけれども、その節約等において、併営すれば大分効率的に節約もできるんじゃないかなと、こういうふうに思います。  そこで、政府案が旅客分灘そして全国一本と、こうなったのはどんな理由があるんですか。
  251. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) これは実は衆議院でも同様な御論議を公明党の委員皆さんからもちょうだいをいたしました。その際にも申し上げたことでありますけれどもコンテナ輸送に見られるように、旅客会社に比べて輸送距離が長いことから、六十一年十一月のダイヤ改正後のコンテナ列車の状況で見ますと、その六割以上が複数の旅客鉄道会社事業領域の区域にまたがって運行されることになります。鉄道貨物輸送というものが、往路と復路の輸送量が不均衡になりやすい、その輸送を円滑に行っていくためには、復路の貨物確保、貨車コンテナ等の操配の面において一元的な管理が必要なこと、また事業の運営に当たっては荷主や物流事業者との関係において一元的な営業政策の展開が不可欠であること、貨物鉄道部門独自の収支管理を行い経営責任を明確化する必要があること、こうした点を考慮して、貨物鉄道部門旅客鉄道部門から分離独立をさせ、むしろ全国一社制による事業運営を行う方が望ましいという判断をいたしました。  現実に、従来からの旅客及び貨物の移動の距離をとってみますと、全く旅客の移動と貨物の移動には大きな違いがございます。今、正確な私は数字を記憶いたしておりませんけれども、例えば四会社を通り抜けるもの、三会社を通り抜けるもの、二会社を通り抜けるもの、一社の中で輸送が完結するものというふうな取り方をしてまいりますと、コンテナを除く貨物におきましても、私は相当部分が二社以上にまたがっていたように、今ちょっと数字を忘れましたが、記憶をいたしております。一方、旅客輸送は全部を平均いたしますと、たしか二十四キロぐらいの移動にとどまっていた、新幹線の場合はこれは別でありますけれども、そんな数字を記憶いたしておりまして、いわば物の流れと人の流れの実態に着目をした場合に、貨物については全国一社制の方がより望ましい効率的な姿であると判断をいたしたわけであります。
  252. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 それは運輸大臣の言い分であって、私もいろいろ調べてみましたけれども、もちろんそのメリットもあるけれども、私はデメリットの方が多いような感じがするわけでございます。  そこで、経営見通しとかコスト計算、要員配置、この旅客会社との関係について少々お伺いをいたします。  貨物輸送量が六十二年度で五千五百万トンが六十六年度では五千二百九万トン、こういうふうに五千五百万トンから減るわけです。これに対して運輸収入の方は、六十二年度は一千五百八十四億円、六十六年度にはこれが増加して一千七百七十三億円、こういう増加する見通しになっておりますけれども、その理由はどういうわけでございますか。
  253. 杉浦喬也

    説明員(杉浦喬也君) 今おっしゃいましたような数字でございますが、理由を考えますと三つあると思います。  一つは、過去の運賃改定の実態等あるいは物騰の傾向等を見まして、六十三年度以降毎年一・五%の実収運賃の増加を考えているということ。それから二つ目は、青函、宇高の収入につきましては、六十二年度が船舶収入ということでこれは旅客会社に計上をされますが、六十三年度以降は、これは開業いたしますと貨物がこれを使う、こういうことになりまして、貨物会社の収入に計上をされるということ。それから三番目には、これからコンテナを大いにふやそう、こういうことで努力をしてまいりますので、トン当たりの収入が比較的高いコンテナ輸送量増が見込まれます。したがいまして、相対的には収入の増加が高い、こういうことであります。
  254. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 三点ございましたけれども、その中でコンテナ貨物が今後ふえ続ける、増収に大きく寄与する、増収につながっていく、こういう説明でございますけれども、物資別の需要見通しは、ここにいただいておりますけれども、確かにコンテナは六十二年から六十六年の変化率を見ると一二・八%、こうふえていますね。しかし、車扱いの方は六十二年度から六十六年度の変化率からいくと一六・九%のマイナス、減、こういうことになって数字が出ております。これは間違いないですね。
  255. 岡田昌久

    説明員岡田昌久君) 間違いございません。特に車扱いにつきましては、紙パについては若干伸びは見ておりますが、その他のものについては減少を見ております。
  256. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 仮に国鉄の言うようにコンテナ貨物に力を入れる、そしてまた増収を図る、コンテナ貨物が増加するとして、収入がこれほどその割に私は伸びるような気はしないわけでございます。  それでは、コンテナ貨物の運賃改正率はどう見込んでいるのか。それから物資別、いわゆる貨物のトン当たりの運賃をどういうふうに算定するのか、これが一点。さらに、これも衆議院段階において我が党の石田議員の質問に対しての答弁ですけれどもコンテナを主力商品として期待している、また将来にわたり順調に伸びていくという予測を立てており、貨物会社全体としては着実に増加し得ると見込んで試算したとのことでございますけれども、私はちょっとこれは甘いんじゃないか、こういうふうに思います。  過去の実績を見てみますと、昭和五十六年のいわゆる九・九%の運賃値上げがございました。そこで輸送量、またコンテナの収入がその運賃値上げによってぐっと下がりました。そして、この運賃値上げにより五十五年のレベルに回復するのには、五十六年ですから、五十七、五十八、五十九と、それから三年かかっております。そこで、五十八年の運賃据え置きでようやくいわゆる輸送量は前年比一二〇%増となりまして、五十五年のレベルに回復した、こういういわゆるグラフが出ております。しかし収入は前年比一一三%と、輸送量に対して収入は同率で推移しないことがグラフに出ております。つまり貨物運賃の安易な値上げは収入増に結びつかない、こういうことではないかと思います。  そこでもう一つ貨物会社が着実に増加し得ると見込んでいる根拠は、今までの車扱いであった例えば米だとか、それから紙だとかパルプだとか食料工業品、これはコンテナ化にするということにすぎないのではないか、こういうふうに思います。輸送量が減少している中でどんな政策によってそれでは増収を図っていくのか、何か具体的にございますでしょうか。
  257. 岡田昌久

    説明員岡田昌久君) 今回もダイヤ改正を行いましてスピードアップを行いました。また、ピギーバック等を行ったわけでございますが、要するに荷主のニーズを的確につかむことによってコンテナは過去五年間では一二二%の伸びになっております。私どもは十分この見込みは達成できるというふうに考えております。  なお、運賃につきましては、他運輸機関が大体平均毎年三%ぐらいのアップを見ておりますので、私どもといたしましては一・五%ぐらいの実収が見込めるというふうに考えておりまして収入を算定いたしております。
  258. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 今毎年三%アップということでございますけれども鉄道貨物の場合はいわゆる鉄道部門、オンレールの運賃とオフレールの運賃、これを合わせたものが荷主から荷受け人、それが料金になっているわけです。貨物輸送がじゃどれぐらいシェアがあるのかというと、我が国のいわゆる総輸送量のわずか四%、その四%の中でいろいろ新しい商品をつくって増収を図ろう、こういうことに結論はなるわけでございますけれども、そこへきて鉄道貨物が果たして今のトラックとの競争ができ得るのかどうなのか。  要するに、荷主からレールまで持ってくる、これはトラックで持ってくる。そして、レールに乗っかってこちらの目的地のレールまで行く。ここから今度は荷受け人のところまでトラックで行く。これは別会社でやっているわけです。この貨物のいわゆるシェアというのは今言ったようにわずかに四%。その中でそれではいわゆるレールの部分をいろんな商品をつくってサービスのいい、それから安全性のある、速い、こういうことを考えるんでしょうけれども、どうもこの四%の中でやっているだけのことで、じゃ幾らサービスがよくなった、それから営業を一生懸命やっているといっても、そんなには私は一遍に二倍になるとか三倍になるとか、こういうことはあり得ないと思いますし、また、それだけのいわゆる荷というのは出てこないと思うんですけれども、この四%の中でどういうふうにしたら増収につながるのか、もう一度お答え願いたいと思います。
  259. 岡田昌久

    説明員岡田昌久君) 確かに四%のシェアでございます。国鉄全体、車扱いも含めてのシェアでございますが、四%のシェアでございますが、先ほど申しましたように五十五年から六十年をとりますと、コンテナは一二二%増になっております。この間、営業用トラックはどのぐらい伸びているかと申しますと、私どもでとった数字ですと一二%増でございます。国鉄が二二%コンテナ、一二%増となっております。  また、都合のいいことばかり言うようで申しわけございませんが、最近の荷主動向調査というのを通運連盟がやっておりますが、このときのコンテナの荷主さんがどういうふうに評価するかという今後の期待を含めた評価を見ておりますと、一つは到着日時が明確であるということ、第二点は荷痛みが非常に少ないということ、それから場所によりますけれども、運賃が比較的安いというところ、また保管機能がある等のメリットを言われておりまして、将来とも使いたい、うまくいけばもっと使いたいというような統計も、調査も出ております。今回そういうものを踏まえまして、ダイヤ改正でもスーパーライナーというような百キロ、東京―大阪間七時間を切るというような列車をつくりましたし、あるいはピギーバック等の輸送、あるいは今後の問題ではございますけれども、もう少し少量型の荷物を開発するような小型コンテナの開発というのを今後続けてまいりたいと思っておりますので、そういう点を踏まえますと、私どもが計算したコンテナの増量につきましては自信があると思っております。
  260. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 これに関連して、鉄道貨物輸送事業として成り立つ要件の一つとして、「販売方式の改善による安定収入の確保」、こういうことが言われておりますけれども、その中に、「トラック事業者等物流事業者の注文による往復列車単位の販売に重点を置くなど販売方式を改善し」、こういうふうにございますけれども、この販売方式の改善というのは具体的にどういうのを言うんですか。
  261. 林淳司

    政府委員林淳司君) 先ほどの御質問にも若干関連するわけでございますが、今回の改革におきまして貨物会社につきましては、単に経営形態を変えるだけでなくて、いわゆる経営の仕方、中身を抜本的に変えていこうという発想に立っております。すなわち、例えばいろんな効率化によりまして大幅にコストダウンをする。そしてさらに、さっきございましたようにスピードアップをしまして、いわゆる品質の非常に高い、高品質のそういう輸送商品をつくり上げていくということをまずベースにいたしまして、あと販売の方式としましては、きょう午前中にも御質問ございましたけれども、いわば見込み生産方式ということではなくて、むしろ注文生産販売方式、いわばデマンド方式と申しますか、そういう形に販売体制も変えていこう。要するに、注文に応じて列車を仕立てていくという形にしていこう、こういうことを考えておるわけでございます。  その場合に、今御質問ございましたように、いわゆる往復列車単位の輸送商品というものは、これは注文に応じまして、通運業界と相当綿密に詰めたわけでございますが、例えば、でき得れば年間契約で、往復列車単位で、ある通運会社あるいは通運会社が連合した組織というものにこれを買い上げてもらう。あるいは年間でなくても、ある一定期間あるいは一列車という形でもいいわけでございますが、できるだけ大きなロットでこれを買い上げてもらう。ということになりますと、これは会社の方にとってリスクがそれだけ少なくなるわけでありまして、ある意味で物流業者のリスクにおいて安定的な収入が確保できる。  こういうことになるわけでございまして、言うならばデマンド方式によって今後鉄道輸送商品というものを販売していく、その場合に、できるだけ大単位で、すなわち往復列車単位という大単位で列車を販売していく、それを通運業者が良質かつ低コストのものであれば喜んで買ってくれる、こういう形を期待して、そういう方向にこれから経営というものを持っていこうという考え方を持っているわけでございます。
  262. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 そこで、衆議院段階での附帯決議の六番目、「日本貨物鉄道株式会社の経営安定のため、通運・トラック事業との協業化及び通運事業免許の運用の弾力化等が図られるよう努めること。」、こういう附帯決議が貨物に関しては一つ出ておりますけれども、これには具体的にどういうふうに対処していただけるのか、この点についてお伺いいたします。
  263. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 衆議院で今委員お読み上げになりましたような附帯決議をちょうだいしたわけでありますが、新しい鉄道貨物会社の健全な発展を図っていくためには鉄道と通運の協調関係を強化していく必要があることは御指摘のとおりでありますので、この附帯決議の趣旨を踏まえながら、鉄道と通運事業者から成る鉄道貨物協議会の場において、一体的な、具体的な協調体制を整備していくところでございます。  なお、本年十一月に開始をされましたピギーバック輸送、これは私どもからいたしますと鉄道トラックの協調体制の一つの方向を示すものであるととらえております。  また、通運事業免許の運用の弾力化につきましても、鉄道貨物事業の健全な発展を図るという観点を念頭に置きながら、今後具体的な方策について検討してまいりたいと考えております。
  264. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 そうすると、もっと具体的に言うと、先ほど言いましたように、荷主から駅に来る、そしてレールに乗っかって、レールの目的地に着いたならばそこからまたトラックで行く。これは、今いわゆる通運業者がトラックの部分を担当しているわけです。国鉄はオンレールだけ、こうなっているわけです。  今、通運事業免許のことについては弾力的に考えると、こういうことでございますけれども、それを突っ込んで、いわゆる貨物にも限定もありますし、路線もありますし、それから集配用の一般もございますけれども、この通運免許を国鉄のいわゆる貨物会社に免許するかどうか、その点はいかがですか。
  265. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 鉄道貨物輸送というものをドア・ツー・ドアの一貫した輸送システムとして成立をさせ、きめ細かなサービスを実施できるようにするために鉄道と通運の連携をさらに緊密化していこうということで、現在、鉄道貨物協議会など両者の関係者から成る会議体を設置して体制整備を図っている最中であります。  今御指摘のように、貨物鉄道会社がみずからドア・ツー・ドアの一貫輸送を行いたいということで通運免許の申請が行われるといたしました場合には、鉄道貨物輸送の健全な発展を図るという観点などを念頭に置きながら判断をしてまいりたいと考えております。現時点におきましては、この協議会において通運事業者との話し合いが行われておる最中でありまして、この中からどういう方向が出ていくかを見きわめたい気持ちでありますが、仮に今、委員指摘のように申請が出てくるというような状態になりました場合には、そうしたことをも念頭に置きながら判断をしてまいりたいということであります。
  266. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 わかりました。  次は、六十一年の、ことしの十一月ダイヤ改正作業の中で、六十二年度における収支均衡の見通しができたということで、収支表がここにございますけれども、六十二年度は、これからいくと十六億円のいわゆる益金が出ております。プラス十六億。五十九年度で見ると二千二十二億のマイナスであったのが、先ほど言ったようにころっと十六億の増収になっているわけです。ちょっと理解できないんですけれども、主な要因というのはどんなものなんですか。
  267. 林淳司

    政府委員林淳司君) 御指摘のとおり、貨物会社の六十二年度の経営については十六億の黒字を計上しておるわけでございますが、特に経費の面におきまして千四百八十三億円というふうにこれは大きく減っているわけでございます。  この経費が減っておりますのは、具体的には、例えば人件費で申し上げますと、職員数が一万二千五百人ということで大幅に人員が減少しております。それからさらに、従来は、共済年金の例えば追加費用というふうなものについては国鉄という事業体が負担をしておったわけでございますが、これは今回の改革によりまして清算事業団の方に行くということで、そういう面からも人件費については大きく経費が減っておるということが言えるわけでございます。それから物件費は、これは過去の実績を基礎といたしまして、最近の物価動向というふうなものを見込みまして、十一月ダイヤ改正でかなり大きなシステムチェンジをしたわけでございますので、それを前提として積み上げ計算をしております。  そういうことで、結局人件費、それから物件費もそうでございますけれども、従来に比べて経費の面で非常に大きな節減をしておるということが結果的に黒字という形に結びついているわけでございまして、特にその中で、先ほど申しました追加費用というふうな問題は、これは特殊事情として控除されておるということでございます。
  268. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 その経費でございますけれども、この経費計算に、午前中も出ておったようでございますけれどもアボイダブルコストという計算方法を用いるというふうに聞いておりますけれども、そのとおりですか。
  269. 林淳司

    政府委員林淳司君) これにつきましては、やはりフルコスト共通経費配分するよりは、現在の旅客貨物の実態から見て、やはり貨物会社アボイダブルコストというものを使用料として旅客会社に支払うというのが一番妥当なやり方であろうというふうに考えております。そういう線で今後対応していくことになろうかと思います。
  270. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 このアボイダブルコスト――ダブルコストというんですから両方にかかるコストになるわけでしょうけれども貨物会社の経営を維持するために、いわゆる旅客会社との間のアボイダブルコストというのは、商業ベースに基づくコストというよりは政策的、人為的色彩の非常に濃いものだ、そういう計算の上に立った計算方法だ、私はこういうふうに疑問に思うんですけれども、こういう中途半端というか、中身がよくわからないというかはっきりしないというか、こういうアボイダブルコストというのを導入するわけはどういうわけですか。
  271. 林淳司

    政府委員林淳司君) アボイダブルコストという考え方は、これは同じ企業体の中で部門別に分けた場合に、それぞれの部門がぎりぎり限界的にどの程度の費用を負担したらいいかというふうなところから、企業分析の手法として本来は出てきたものであろうというふうには考えております。例えばイギリスの国鉄あたりではかなり以前からそういう手法でもって企業分析をしておるということでございますが、しかしこれはその企業体を分ける場合におきましてもその考え方というものは通用するんじゃないかというふうに私ども考えておるわけでありまして、要するに現在の国鉄旅客貨物の実態と申しますか、それぞれの置かれた地位というものを考えた場合に、貨物会社はその限界的な費用を負担するということでもってこれは十分ではなかろうかというふうに考えているわけであります。したがって、別企業体との間であってもそういう考え方は十分成り立ち得るものであろうと思います。  現に、アメリカあたりでございますけれども、アメリカの鉄道におきましては、ここは私鉄が主体でございますが、主としてこれは貨物輸送をしておるわけでございます。それに対して、都市間の旅客輸送というものについては、アメリカではやはりモータリゼーションの影響で経営が非常に厳しいわけでありまして、これはいわゆる公的な主体であるアムトラックというところがこれを担っておるわけでございますけれども、このアムトラックは主として貨物を経営しております私鉄の会社からレールを借りて運行しておりますが、その場合にはやはりアボイダブルコストというものを払って経営を行っておる、こういう実例もあるわけでございまして、企業体が異なってもそういう考え方は十分成り立ち得るというふうに考えております。
  272. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 それでは、このアボイダブルコストというのは、六十二年度に分割になった場合のいわゆる初年度のアボイダブルコストですか、この額はどのぐらいになりますか。
  273. 林淳司

    政府委員林淳司君) 今回の試算におきまして、六十二年度約三百億を見込んでおります。
  274. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 その三百億ですけれども、それに加えてインセンティブとして一%を加える、こういうことになっているようでございますけれども、このインセンティブの一%の根拠というのは、三百億なら三億円になるわけですけれども、この一%の出てきた根拠というんですか理由というんですか、これは何なんですか。
  275. 林淳司

    政府委員林淳司君) インセンティブということで一%程度をプラスしておるわけでございますが、現在の状況から見て、旅客に比べて貨物は非常に厳しい状況にあるわけであります。  そこで、今回の改革によりましてむしろこれは反転して再生をしていただくということを期待しておるわけでございますが、少なくともそのスタートの時点においては経営は非常に厳しいであろうということが予想されますので、そのインセンティブとしての額はそれほど大きな額を支払うということはなかなか難しいであろうと。そこで一%というのは特別の根拠があるわけではございませんが、旅客会社に対して何がしかのやはりメリットがあるという点から見て一%程度の、とりあえずスタート時点ではその程度のインセンティブを考えた、こういうことでございます。
  276. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 これが四月一日から発足するとして、旅客会社も頑張って収益を上げる、それから貨物会社も頑張って収益を上げる、こういう場合を想定した場合、このアボイダブルコストというのは、これは三百億からもっと上がるということは言えますか。  それともう一つ、このインセンティブの一%、これももう両方もうかっているんだから、貨物会社も当然もうかるようになったんだから、それじゃこれは二%にしようか三%にしようか、こういうことがあり得るのかどうなのか。
  277. 林淳司

    政府委員林淳司君) 現在の我が国の鉄道におきますところの旅客貨物関係と申しますか、地位と申しますか、この実態というものは恐らく今後も余り変わらないだろうというふうに思います。したがいまして、このアボイダブルコストという形で使用料を負担していくという考え方は今後も永続的にこれを続けていかざるを得ないであろうというふうに考えております。  それからインセンティブの点でございますが、これについてはやはり貨物会社が今後経営がどうなっていくかという問題と関連するわけでございますが、ただもうかるからインセンティブをどんどん上げていくということでは必ずしもないと思います。とりあえず現在の状態から見て一%程度が妥当であろうということでスタートをさせようとしているわけでございますけれども、その後貨物会社の経営状況考え、それからもう一つはやはり貨物会社においていろいろこれから高品質の輸送商品をつくり上げていかなければならぬわけですが、その場合に、ラッシュ時間帯を使わしてもらうというふうな場合にはそれなりのリターンがないと旅客会社としてもなかなか難しかろう、その辺のぎりぎりのやはり商取引と申しますか、そういう中からこのインセンティブについては若干の変更は出てき得るものであろうというふうに考えております。
  278. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 大臣にお聞きしますけれども、このアボイダブルコストの件について、衆議院の質問の中で、大臣の答弁でございますけれども貨物会社の使用頻度が高まって大きな黒字を享有できる場合は新たなルールづくりが行われると、こういうふうに答弁しておりますね。  ここで確認しておきたいんですけれども貨物会社の使用頻度が高まって黒字がふえる場合以外はこのアボイダブルコストが維持されるということになるのですか。
  279. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) どうも私はこのアボイダブルコストというのが舌をかみそうで大変苦手なんでありますけれども、私は基本的には、大きな変わりがないという場合には継続的にこの状況が続くと思います。しかし、それが非常に大きくその貨物会社の線路利用度がふえる、それほどむしろ貨物会社がうまく営業ができる状態になれば大変幸せなことでありますけれども、その場合にはやはり私は、いわばその関係に変更の生じたという状況の中で旅客会社貨物会社の間には話し合いが持たれるでありましょうし、その実態を踏まえて費用負担のルールあるいは具体的なコストというものは設定をされるであろうと思います。  しかし、むしろ委員が想定をされるように、貨物会社の使用頻度が非常に大きくなり、現状を変更しなければならないほど貨物会社がうまくいってくれれば本当に私としては幸せです。
  280. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 それでは人件費と要員にかかる問題でございます。この点についてお尋ねいたします。  貨物会社の要員は一万二千五百人、こういうことで六十二年度からスタートすると、こういうことになっておりますけれども、これに要する人件費は六百七十二億、一人当たり計算すると五百三十八万円、給与だけですと五百五万円、こういうことになるわけです。経営力の弱い三島会社と給与費を比べてみると、北海道は五百十五万、四国が四百六十九万、九州が四百七十六万と、この数字からいくと貨物会社は北海道に次ぐいわゆる高い給料と、こういう水準になってくるわけです。どうしてこんなふうにばらつきが出るのか、この点についてお伺いいたします。
  281. 杉浦喬也

    説明員(杉浦喬也君) この給与の基本的な人件費単価につきましては、旅客貨物も同じような考え方でやっておるわけでございます。ただし若干の異なる点がございますが、まず基本的な考え方は、いずれの会社も本年度の四月一日現在の年齢別の平均給与というのを基本といたしまして、それでそれに対しましてさらにベア率を、本年度、六十一年度は二・〇二、六十二年度が三・〇と仮定をいたしまして算出しております。これが共通の要素であります。  それに対しまして異なる要素としまして、年齢階層別の要員の数が会社によっていろいろとばらばらであります。したがいまして、この人件費の総体を要員数で割り算をいたしました一人当たりの単価というものは会社によって違ってくる、こういうことが一つ。それからもう一つは、地域別に、都市手当とかあるいは寒いところの寒冷地手当、こういうようなものが地域によって違ってまいります。したがいましてその単価が違うと、こういうようなことであろうかと思います。
  282. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 私がお聞きしたいのは、寒冷地手当とかいろいろな手当が地域によって多少違うということはわかりますけれども、いずれにしても貨物会社旅客会社が分離されるわけですから、そうなった場合に給与水準というのはこれは計算からいけばばらばらというか格差ができてくる。そこで私今言いましたように心配するのは、旅客会社貨物会社というのはレールが一本、それで同一職場であるわけです。また、今日まで貨物会社旅客会社というのはこれは当然一緒に仕事をやってきた、働いてきた。そこで、会社が分離しただけで同じ職場にいた者が働きながら労働条件が違う、こういうケースも当然出てくるわけです。そうなった場合に心配になるのは、いわゆる勤労意欲というんですか、片方はもともとというのか、給料が上がった、こっちは上がらないし。かし今まで一緒にやってきた、そして現在も一緒にやっている。仕事の内容は確かに違うかもしれないけれども、そういった場合に勤労意欲とかそれから企業意識を減退させるようなことになるのではないかなと、こういう点が心配なんですけれども、こんな点はどういうふうに解決したらいいんでしょうかね。
  283. 杉浦喬也

    説明員(杉浦喬也君) 各会社の今後の設立後の給与のあり方につきましてはそれぞれ会社が独自の形で労使間におきまして決定をされてくると思いますが、その場合に同じ職場で働く職員間に差が出るということ、これもある程度やむを得ないかと思いますが、そういう意味で勤労意欲が低下するかどうかというとらえ方でございますが、現在の実態を見ましても、国鉄の例えば貨物駅におきまして国鉄の職員それから通運業界の職員等が混在して働いておる、あるいはまた私鉄と国鉄旅客の駅で共通なところがございますが、そうした面でも違う給与体系をそれぞれ持っておるというような実例等もあるわけでございます。  その間で非常に問題があったという感じではありませんが、いずれにいたしましても、総体といたしましてかなり厳しい経営の中でそれぞれ各社が懸命の努力をしていかなければならぬ、その際コストの大きな要素を占める給与につきましてもかなり厳しい見方をしなきゃならぬと思いますが、私といたしましては、将来各会社におきまして職員が希望を持って働き得るような、最低限そうしたような給与条件になることを期待する次第でございます。
  284. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 それでは、貨物部門で最後になりますので総理にお伺いしたいのですけれども、我が党は御存じのように基本的には今回のこの大改革については賛成でございます。しかし、貨物のいわゆる全国一本化というのは、給与水準の面から見ても、またアボイダブルコスト、先ほど申しましたようにああいう点から見ても、経費の面から見ても、今申しましたレールは一本で旅客会社というのは一緒になっているわけですから、そういうさまざまな点を見ると、もちろんデメリットはあると思いますけれどもメリットの方がずっと多いのじゃないか。こういうことで旅客貨物は併営の方がいいと、こういう主張をしておるわけでございますけれども、総理、この点についてどんなふうにお考えになりますか。
  285. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 旅客貨物の流動性、流動距離が非常に違いますし、それから貨物には貨物独特の事情で貨物利用が減衰してきた、貨物自体の性格も昔と非常に変わってきた、そういうような面から長距離定型的な大量輸送、そういう性格に変わってきて、そこへ貨物輸送の活路を見出すべきである、それでトラックと勝負できる、こういう発想で全国一元化の貨物輸送体制というものを採用いたしました。旅客につきましては流動性、効率性その他の理由から分割をしたと、こういうことでありまして、お客さんとそれから物との性格の相違、それから最近における情勢の変化というものをわきまえた処置であると考えて、私は適切な措置であると考えております。  しかし、よほど貨物の方も注意してやりませんと我々が予想したことと違う事態になりかねまじきこともあります。そういう点につきましてはよほど注意してまいりたいと思っております。
  286. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 最後と言いましたけれどももう一点だけちょっと聞いておきたいのですが、貨物会社の資金計画を拝見しますと、六十二年度は先ほど言いましたように経常利益が十六億円、こうなっておるわけです。人件費の面から見てですけれども、この十六億円のいわゆる経常利益が出る根拠というのは、人件費の面から見ると三十七歳を平均として計算していると、こういうふうに私は承知しているんですけれども、このとおりですか。
  287. 山田度

    説明員(山田度君) おおむね、三十七・ちょっと端数がつきますけれども、三十七歳とお考えいただいてよろしいかと思います。
  288. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 貨物会社は一万二千五百人、将来は一万人と、こういうことを聞いておりますけれども、このいわゆる給料、人件費を三十七歳、三十七・幾つかわかりませんけれどもそこで計算した、こういうことですが、もしこれが三十八・幾つ、三十九・幾つ、一歳いわゆる平均年齢が高くなった場合にはどのぐらい違ってきますか。
  289. 山田度

    説明員(山田度君) この平均年齢というものは一つの想定に立っておりますので、現時点におきましておおむね三十七歳台と、こう見ております。ところで、これが狂うかどうかということは今後職員が年度末にかけまして希望退職を申し出てまいります。まだこれから続くと思います。また、設立委におかれまして採用条件、労働条件を提示いたしまして貨物会社の職員を募集する、その希望者の中から採用する、こういう過程の中で、現実に貨物会社に行かれる職員がどういうものであるかということが決まってまいるわけでありますので、現在の時点でその年齢構成をさらに別のものと予断いたしまして想定することは困難でございますけれども、いずれにいたしましても、仮にそういう年齢構成の変化が現実にあり得るとした場合には、そういう現実を踏まえまして新しい貨物鉄道会社の収支試算というものが今後確定されるわけでありますので、それに対して必要な措置がとられるものと、これは私どもの期待でございますけれども、そういうふうに考えております。
  290. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 ごじゃごじゃ言いませんけれども、結論としては、年齢が上がればそれだけ人件費がかかる、こういうことでございますから、十六億といういわゆる見通しについては、これも想定である、こういうことになるわけです。私、計算してみないのでわからないし、また一万二千五百人というのはこれはまだ決まっていないわけですから平均年齢を出すことができませんので、これもあくまでも想定になってしまうのではっきり言えませんけれども、一歳違うと恐らく三億なり四億なり私は違ってくるんじゃないかなと、計算していませんのでわかりませんけれども。そうすると、十六億といういわゆる経常利益というのはこれはますます苦しくなってくる、十六億というのはわずかな収益ですからこれは変更せざるを得ない、こういうふうになってくるのではないかなと、こういうふうに思って今お聞きしたわけでございます。  それでは、貨物の点については以上で終わりにいたします。  時間があと十分足らずでございますので、鉄道公安官について最後に一、二点お伺いします。  鉄道公安官を鉄道警察隊として警察庁が各県警本部で引き受け、来年四月一日から国鉄職員がいわゆる警察官に職務が変わるわけでございますけれども、この鉄道警察隊の業務内容はどうなるのか。また、今後発足すると言われるいわゆる旅客会社だけの範囲にその業務範囲が及ぶのか。また、鉄道警察隊というのは今回初めてできるわけですから、これは今回できたということを契機にして、現在あるいわゆる民鉄、そういうところまでの業務内容として警備の範囲に入るのか。この二点についてお伺いいたします。
  291. 漆間英治

    政府委員(漆間英治君) まず第一点の鉄道警察隊の業務内容でございますが、私どもといたしましては、駅構内、線路、踏切等の警ら、警戒、列車内における警乗活動、駅における雑踏警備、すり、置き引き等の各種犯罪の予防、検挙、迷子、家出人等の保護等の業務を予定いたしております。  また、鉄道警察隊が発足した場合に、既存の私鉄との関係はどうかというお尋ねでございましたけれども、既存の私鉄につきましては、現在各都道府県警察が警察署を単位とする一般的な体制によりまして警ら、警戒を行っておりまして、それぞれの実情に応じて治安維持に当たっております。国鉄分割・民営化後、鉄道警察隊が設置されました場合におきましては、例えば現在の国鉄と私鉄が相互に乗り入れておりますターミナル駅での警察活動のように、鉄道警察隊員と警察署の私鉄対策要員とを統合して運用した方が合理的であるという場合も考えられますので、そういう場合も想定いたしまして、その運用方法等につきまして現在検討している段階でございます。
  292. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 公安官は私の聞いているのは二千八百八十二人と、こういうふうに聞いております。鉄道警察隊というのは各県に二千八百八十二人配置されるわけでございますけれども、この二千八百八十二人、いわゆる統一された組織ではないと、このように聞いておりますけれども、そうなればなるほど、今度分割されたいわゆる六つ会社、この警備に当たっては連絡体制、それから要員配置等も非常に難しくなってくるのではないか。特に列車というのは県境を越えて走っているわけですから、そういう点について連絡体制、それから要員の配置等はどんなふうにするつもりなんですか。
  293. 漆間英治

    政府委員(漆間英治君) 鉄道公安制度廃止後における鉄道警察施設内の治安維持のために各部道府県警察本部に鉄道警察隊を設置することといたしておりますが、その拠点につきましては管轄区域内の主要駅の駅施設構内に置くのが最も効率的であると考えておりまして、従前の鉄道公安室や分室に拠点を設け必要な要員を配置して運用していく方向で検討を行っております。  なお、鉄道の特殊性から広域的な対応が必要である場合が多いと考えられますので、各都道府県警察の鉄道警察隊相互間の連絡体制を確保しまして、連係活動が円滑に行われるように十分配意するとともに、警察庁及び管区警察局に所要の連絡調整に当たるための体制を整備する方向で検討いたしております。
  294. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 それでは公安官の二千八百八十二人、現時点ではどのように配置をするか、配置の割合というか、それはどのぐらい進んでおりますか。
  295. 大堀太千男

    政府委員大堀太千男君) 都道府県警察が国鉄の民営化後鉄道施設内の治安維持の責めに任ずることになるわけでございますが、基本的な考え方といたしましては、現在鉄道公安職員によって維持されております鉄道施設内の治安水準を下げることのないように、その任務を全うするために必要な人数を配置するということにいたしております。  具体的には、列車の警乗業務でありますとか、あるいは駅構内における各種犯罪の予防、検挙、あるいは警備活動業務、その他各都道府県ごとの特殊な事情を総合的に勘案をしてその要員を算出をしたわけでございます。  現在そのための要員の採用業務はというお尋ねかとも思いますが、それにつきましては、現時点で第一次的な希望をとりまして約千九百名の方が採用をおおむね予定、内定をしておるところでございます。なお、そのうちの七百名につきましては、本年の十月一日付で沖縄を除く各都道府県警察の、将来は鉄道警察隊要員として配置をすることが多いと思いますけれども、都道府県の警察官として採用をいたしております。
  296. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 以上で終わります。ありがとうございました。
  297. 内藤功

    ○内藤功君 私たちはこの法案に対しては反対の立場国鉄分割・民営化に一貫して明確に反対の立場をとっております。  国鉄赤字原因、これは公社という形態にあるというのが政府の答弁ですが、私たちは、採算を無視した借金による膨大な設備投資、これが今日の膨大な赤字を生み出した最大の原因であるということを明確に主張しております。私自身も、昭和五十一年から五十五年までの四年間、運輸委員といたしましてこの点について強く党の立場から警告を発してきたところであります。  例えば、借金による設備投資をこれ以上進めないこと、それからモータリゼーションというものについては、総合交通政策その他適切な政策をとって国有鉄道の仕事を守っていくということ、それから運賃の値上げを自由化したことにも反対して、これは必ず客離れを招くということも強く警告をしてきました。貨物が大企業に安い運賃料金で奉仕しているが、ドア・ツー・ドアの本当に国民の需要に応じていないということを改めるべきだということも主張してまいりました。安全サービスの一層の充実強化も主張してきました。それからローカル線問題など、地方自治体、利用者労働組合一貫となった民主的な国鉄をつくるということも提案をしてきた。しかし、こういう警告を無視して今日に至ったということであります。  そうして、今日この民営・分割化の法案というのは、結局その責任を、いわゆるしりぬぐいを国鉄の職員とそれから利用者である国民の肩に負わせようとしておるのであります。私はこういう点でこの法案に強く反対せざるを得ないのであります。特にこの分割・民営の本質が極めてあらわになっておりますのが安全問題と労働者の権利の問題でありますので、私はこの二点に絞って御質問をいたします。  まず、安全問題であります。七月十五日に静岡県焼津地方に、八時十分から九時までの五十分間に七十ミリ、十二時五十分から十三時三十分までの間、四十分間に五十三ミリ累積降雨がありました。新幹線総局の災害時運転規制等取扱基準規程十二条、十三条によりますと、一時間の雨量が五十ミリ以上の場合には列車停止措置をとらなければならないとされておりますが、かような場合の手順を具体的に説明していただきたいと思います。あわせて、このような規程のつくられている趣旨を御説明願いたい。
  298. 岡田宏

    説明員岡田宏君) 新幹線におきますところの降雨時の運転規制等の措置がどのような仕組みでとられていくのかということについて、まず御説明を申し上げます。  約十キロから十五キロの間隔に設けております管理室という制度がございます。この管理室には雨量計が整備されております。この雨量計は自記記録計ということになっております。これらの自記記録計の雨量は、場所によって違うわけではございますが、今先生からお話のございました静岡地区におきましては、管理室にございます自記記録の雨量計が記録をいたしました雨量を地区指令のところに出すという仕組みになっています。後で申し上げますが、全部出すわけではございませんが、一部出すという仕組みになっております。そうして、この雨量が示しました時雨量によりまして、警備の基準、徐行の基準それから運行停止の基準、それがそれぞれ定められているわけでございます。  そういたしますと、まず、ある点の雨量が警備の基準を超えたという場合にそれが地区指令の表示板に警備の基準を超えたということが表示される仕組みになっております。その場合に、地区指令は現場の管理室に対して、警備の雨量を超えたからそれぞれ警備態勢をとりなさいという指示をするわけでございます。この警備の態勢といたしましては三種類の態勢がございますが、ちょっと細かくなるので省略をさせていただきます。さらに雨量が強くなりまして、これが徐行をとるべき基準に達しますと、管理室から地区指令に対しまして、現在の管理室の雨量計の雨量が徐行をとるべき基準を超えたということで徐行をする必要がある旨の報告をいたします。  そういたしますと、地区指令は中央指令に対しまして徐行をとるべき旨の手配を要請するわけでございます。それに基づきまして中央指令が徐行をとる。さらに雨が強くなりまして、これが停止をするという基準に達しますと、先ほど徐行の場合で申し上げましたと同じような手順でもって、管理室から地区指令、地区指令から中央指令へという段階を経まして、中央指令が列車の抑止、停止の態勢をとるということでございます。現在、新幹線総局で決めております停止の基準は、時雨量五十ミリということで決めているわけでございます。これらの時雨量五十ミリということを決めましたのは、実際の雨の降り方としてはいろいろな降り方が考えられるわけでございます。例えば時雨量五十ミリと申しましても、それが大変長い間続いて五十ミリになった、あるいは瞬間的に非常に強い雨が降ったという場合もございますし、それからそれまでに大変長雨が降っていたという、いろいろなケースがあるわけでございます。  したがいまして、その停止の基準を決める場合には、本来はそういった雨の降り方に応じましてきめ細かく決めるべきであるかと思いますけれども、実務面におきましては非常にそれが煩雑になりますので、どちらかといいますと安全側の余裕を見まして、今、時雨量五十ミリということで停止の基準を決めているわけでございます。
  299. 内藤功

    ○内藤功君 そういうことですね。しかるに、このとき当該現地の施設指令は停車措置をとらないで徐行運転をやった。しかも、重大なことは、静岡施設指令の累積降雨量記録表では八時からの雨量を一時間四十八ミリとしておるわけです。また、十二時半から十四時までの一時間半の雨量は四十八ミリと報告しているわけです。つまり、改ざん、変造したということを言っていいと思うんですね。私は非常に重大だと思うんです。どうしてこういうことになったのか、その原因、その責任はどういうふうにとられているのか、また処分、処置はどういうふうになされているのかという点を伺いたいと思います。
  300. 杉浦喬也

    説明員(杉浦喬也君) ただいま御指摘の点はよく調査をいたしておるところでございますが、おおむね事実であるということが判明をいたしておりまして、二つ問題がございますが、一つは、さきの説明のとおりの基準、これを超えておるにかかわらずそのいわば規制、規則に従ったそういった措置をとらなかったということが一つ。それからもう一つは、今御指摘のような、事後処理としまして雨量計に表示された正確な数字でない数字を表示したというところに大変遺憾な行動があったということは事実でございます。私ども常日ごろからこうした問題、安全全体の面につきましてもう口を酸っぱくするように指導、督励をしておるところでございますが、こうした事実につきましては厳正な処置をもって今後絶対にそういうことのないようにということで処分をいたしたところでございまして、担当の責任者あるいは実行者その者に対しまして、減給八名、戒告一名、訓告二名の処分を実施したところでございます。
  301. 内藤功

    ○内藤功君 二つの点で問題ですね。安全のための規定を無視したということですね。雨が降ってこれはとめなきゃいけないのに、行け行けと言ったわけでしょう。そうして、その上、雨の量を改ざんしたわけです。二重に許せないことであります。私はこれは単なる担当者の処分だけ、これは処分は当然でしょうけれども、この人たちだけじゃないと思うんですね。こういうやはり安全を無視した営業第一主義というものが大きく背景にあるというふうに思わざるを得ないわけであります。  運輸大臣の今の点についてのお考えを伺いたい。
  302. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私は、今の事案、委員の御質問と総裁の答弁によって初めて事実関係を承知したわけでありますが、その事実そのものは極めて遺憾な問題だと思います。そして、国鉄当局としてそれに対する処分をしたことも当然のことであろうと思います。
  303. 内藤功

    ○内藤功君 営利を第一にして安全を軽視する、このことを特に昭和五十年代以降私も私たちの党も強く強調していたんですが、この民営・分割化という方向が決まってから、私の見るところ、安全に関するゆゆしき事態が続出していると思うのですよ。  次に今度は、国鉄の各職場におきまして労働災害が続発しております。特に、地上作業中の労働者と列車や機関車などの車両とのいわゆる触車事故というものが続出して、災害の致命率が、致命率というのは死に至る率ですね、三一・九%にも及んで重大災害化しておるわけです。触車事故は過去五年間で九十一件発生しております。私がよく行きます隅田川の駅というのがありますが、南千住にあるんですけれども、ここではことし若い職員が二人、いずれも触車事故で轢断されて亡くなっております。若いとうとい命が失われておるんです。国鉄における触車による死亡災害撲滅というのは私は緊急課題だと思うんです。  そこで私は労働省に伺いたいんですが、労働安全衛生規則の五百五十条、五百五十四条、これらは現在の日本国有鉄道にも適用されると私は思うんです。五百五十条は、「通路と交わる軌道で車両を使用するときは、監視人を配置し、又は警鈴を鳴らす等適当な措置を講じなければならない。」という規則です。五百五十四条は、「軌道上又は軌道に近接した場所で作業を行なうときは、労働者と当該軌道を運行する車両とが接触する危険を防止するため、監視装置を設置し又は監視人を配置しなければならない。」という規則で、非常に大事な規則であります。この適用問題、いかがでございますか。
  304. 平賀俊行

    政府委員(平賀俊行君) お答えいたします。  安全衛生規則五百五十条及び五百五十四条は、広く一般の事業者を対象にした義務規定でございます。したがって国鉄も、労働者を使って事業を行うということで適用がございます。
  305. 内藤功

    ○内藤功君 これに関連しまして、十月の十六日ですが、北海道の苗穂機関区の運転係の方が札幌東労働基準監督署に基準法百四条により申告をしたのを初めとして、各地の監督署にこの五百五十条あるいは五百五十四条違反の申告がなされているというふうに聞いておりますが、その申告の件数及び、これは簡単で結構ですが、主なる申告の内容を御説明願いたい。労働省。
  306. 平賀俊行

    政府委員(平賀俊行君) ただいま御質問にありました札幌東監督署の管内の苗穂機関区のほか、私どもの把握しているところでは、全国で十件の申告が最近なされております。その細部については必ずしも承知しておりませんけれども、先ほどの御質問の趣旨に関連する申告であるように承知をしております。
  307. 内藤功

    ○内藤功君 我々の調査によりますと、現在国鉄のいわゆる運転区所など構内の車両点検作業には監視人、監視装置、警報器もつけておりません。私自身も幾つかの現場に行って歩いてみましたが、ないですね。運転車両の誘導員で代替しているということを言う人もいるんです。しかも、今度の十一月一日のダイヤ改正でこの点の改善はなされません。逆に、障害事故を起こした人は勤務成績の査定の対象にされるというふうになってきて、列車誘導員千数百人が合理化をされている。私は、労働安全衛生規則に照らしまして、当然監視人の配置、監視装置の設置あるいは警鈴の設置というものをなすべきだと思うのです。  また、この列車誘導員は五百五十四条の監視人には当たらないという見解を私は持っているんですが、この点いかがでしょうか。  さらに、労働省としてこれらの申告が出されている現時点でこの問題についてどのような態度でお臨みになるかという点も含めて、労働省の御見解を賜りたいと思います。
  308. 平賀俊行

    政府委員(平賀俊行君) 安全衛生規則の五百五十条は、先ほどその内容をお読みになりましたように、作業場に通ずる通路について軌道と交わるときの安全衛生対策、それから一方の方は軌道の中あるいは軌道のそばでの作業における安全対策、こういうことになろうかと思います。具体的にはそれぞれの規定に従って必要な危害防止の措置を講ずるかどうかということがポイントになるわけで、結局具体的な状況を調べて判断する以外にはないと思います。  それからそれに関連して、誘導員が監視人に当たるかどうかという御見解でございますけれども、これもそのときに必要な監視人も含めて、監視人、または具体的な危険防止の措置をとっているかどうかということの判断をすることになろうかと思います。したがって、誘導員というのが監視人に当たるかどうか、それも具体的な状況に応じて判断するということになるのではないかと思います。  いずれにいたしましても、申告がございました場合には、私どもとしてはいかなるものについても具体的な状況について調べて措置をするということで、そのような措置をとることにいたしております。
  309. 内藤功

    ○内藤功君 基準局長、細かい点ですけれども、一点だけ。  誘導員という場合にいろんな形態が観念的には考えられるんだけれども、赤、青その他色のついた旗を用いて車上から誘導する、こういう誘導員は監視人に当たりますか。
  310. 平賀俊行

    政府委員(平賀俊行君) 監視人に当たるかどうかはともかくとして、その状況に応じて危害の防止のための措置がとられておるか、また誘導員という名前で車上から見ておっても、そこら辺の措置がとられておればこの条項による危害防止のための措置には当たると思います。
  311. 内藤功

    ○内藤功君 誘導員の代替自体が大きな問題ですが、これ自体が今減らされているという状況はもう明らかに逆行の方向に来ていると思うのですね。  運輸大臣、お聞きいただいていて、今の国鉄職員の安全問題をどのようにお考えになりますか。
  312. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) これは国鉄のみならず輸送に携わるあらゆる分野共通の問題でありますが、一つは乗客の安全、これには幾ら心を使ってもそれで十分ということはないと思います。同時に、それぞれの職場において働く職員の安全というものにも当然十分な配慮が払われるべきものであると思います。
  313. 内藤功

    ○内藤功君 運輸大臣は安全綱領というのは御存じですか。
  314. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 日本語としては存じておりますが、委員が今どういう意味でその言葉を確認されたのかについては私はよくわかりません。
  315. 内藤功

    ○内藤功君 杉浦総裁は、安全綱領というのは御存じですか。
  316. 杉浦喬也

    説明員(杉浦喬也君) 一般的な概念としてはわかりますが、具体的にどういうものであるかは先生からお伺いしませんとよくわかりません。
  317. 内藤功

    ○内藤功君 だれか常務理事で説明してください。
  318. 山之内秀一郎

    説明員山之内秀一郎君) 安全綱領は国鉄の安全に関する基本的な取り組みを決めたものでごさまして、例えば安全は輸送業務の最大の使命である等五項目の基本的な内容から成っております。
  319. 内藤功

    ○内藤功君 これは、現場の国鉄の検査係とか機関士の人に聞けば全部暗唱して言いますよ。これは大事なものです。安全は輸送業務最大の使命である。それから疑わしいときは手落ちなく考えて最も安全と認められる方法を選ばなければならない。一字一句全部これと同じかわかりませんけれども、大事なことなんですね。総裁が知らないのは驚きました。これは、やっぱり大事なことなんです。基本ですよ。  次に、十月の十二日午前零時二十五分に山手線新宿駅構内十一番線ホームで、外回り二四二五電車が到着しましたが、ホーム側のドアが開かず線路側、ホーム反対側のドアが事前のアナウンスもなしに開くという事故が起きました。この原因は一体何か。この種事故の再発防止のために何か措置をとっているかどうか。
  320. 山之内秀一郎

    説明員山之内秀一郎君) 十月十二日の零時二十五分ごろ、山手線の電車が新宿駅でふぐあいのためにドアがあかなくなりました。そこで、この電車には正規の運転士のほか運転士見習いが乗っておりまして、車掌と連絡をとりましてドアをあけるべくいろいろと努力をしておったわけでありますが、この運転士見習いが、ドアスイッチが正常に機能しているかどうかを調べるためにホームと反対側のドアのスイッチを押したために、一時的にドアがあきましたという事実がございます。この扱った電車運転士見習いは機関士からの転換養成中でございましたので、この事故にかんがみまして再度個別指導を四日間行いまして、この種機器の扱い方と安全についての再教育を行った次第でございます。
  321. 内藤功

    ○内藤功君 もしドアにもたれかかっている人がいたとすれば、これは転落事故から死傷事故につながった重大な事故であります。  これだけではなく、九月の二十一日中央線三鷹駅、十月十五日南武線川崎駅でも同じような事故が起きております。これらの原因並びに再発防止措置について御説明願いたい。
  322. 山之内秀一郎

    説明員山之内秀一郎君) 最初の御指摘の件のは、私どもの調査ですと九月二十日ということになっておりますが、三鷹駅で十五時十九分ごろ折り返しになる電車が到着いたしまして、反対向きにこれから走るわけでありますが、この電車にも先ほどと同様に機関士から電車運転士に転換をするために養成中の見習いの運転士が本務の運転士以外に乗っておりましたが、この場合、この運転士が間違えまして過って一時的に反対側のドアをあけたということがございました。これは列車の遅延は生じておりません。  それから次の十月十五日の川崎駅の件でございますが、これもほぼ同様でございまして、やはり列車の遅延は生じておりません。  いずれの場合につきましても、この種のことが起きないように見習いの運転士、それから二番目の場合については正規の運転士について、再度この種の折り返し駅のスイッチ方の徹底と安全に対する基本的な指導を行ったわけでありますし、三番目の件は本務の運転士でございますので、十五日間にわたって個別の指導を行っております。
  323. 内藤功

    ○内藤功君 この例でもわかるように、広域配転で本年夏以降他の地方から来られた人、機関車や気動車の運転では熟練でありましょうけれども、国電は違うんですね。国電の運転士としての経験がない、十分な訓練を受けてないという中でこういう事故が非常に発生しております。  私は、きょう、ほかのテーマもありますので全部これを挙げるいとまがございませんが、特に国電区間で発生している事故、これを総括しますと、基本的な取り扱い動作、操作についての極めて初歩的なミス、規則、手引どおりやればよいのにそのようにやれない、やらないというミスが相次いでおります。これを単に広域配転で来られた方の個人の責任のみに私は負わせることはできないと思うんです。こういうような安全にかかわる運転部門中心に、非常に無謀と言うべき広域配転、乗務をさせている。  私のところに新潟日報という新聞の十月二十六日付がありますが、これには、新潟の長岡運転所から二十七歳の運転士の方が三鷹電車区へ広域配転で来られたと。ところが、「前を走る電車を見ながら追い掛ける過密ダイヤ。すし詰めの人間を乗せているんだから、事故も怖い」ということで三カ月でやめた記事が出ておりますが、私は、こういう大きな背景が今日の事故の一つ原因に介在しているということを申し上げたいと思うのであります。  そこで次に、私は人材活用センターの問題についてお伺いをしたいと思うんです。  この人材活用センターは、大きなやはり人権問題だと私は思います。十一月一日現在、この人材活用センターは全国でどのぐらい設置されて、配置人員はどのぐらいなのか。また、そこに配置をされておる労働組合別の人員数と比率はどうなっているかということをまず御説明いただきたいと思う。
  324. 澄田信義

    説明員(澄田信義君) 十一月一日現在の人材活用センターに配置しております職員数は一万八千五百十人でございます。配置職員の組合別内訳は、国労が八一%、動労が七%、鉄労が六%、その他六%となっております。
  325. 内藤功

    ○内藤功君 人数で。
  326. 澄田信義

    説明員(澄田信義君) 人数で申し上げますと国労が一万四千九百六十人、動労が千三百七十人、鉄労が千九十人、その他千九十人でございます。
  327. 内藤功

    ○内藤功君 箇所数は。
  328. 澄田信義

    説明員(澄田信義君) 箇所数は千四百三十八カ所でございます。
  329. 内藤功

    ○内藤功君 この人材活用センターへの配置の基準を御説明願いたい。
  330. 杉浦喬也

    説明員(杉浦喬也君) いわゆる過員といいますか、余剰人員といいますか、そういうものの増大に対応いたしまして、所要員を上回る人数、所要員の中につきましてはこれはいわゆる本来業務につけるわけでありますが、所要員を上回る人数につきましてはこれを効率的に活用するということで、従来各局、地方管理局でばらばらに運用されておったものを、今回人材活用センターという全国統一の仕組みでこれを設置するように決め、また実行しているところでございます。  この場合の人材活用センター配置の考え方でございますが、それぞれの所属長がその権限と責任におきまして、個々の職員の能力、意欲、適性等々を総合的に判断いたしまして適材適所の考え方で行っておるところであります。
  331. 内藤功

    ○内藤功君 所属長に聞きますと、所属長は局の人事課がやるんだと言っております。局の人事課へ行くと、所属長がやると言っています。その点はっきりしてもらいたいんですが。
  332. 杉浦喬也

    説明員(杉浦喬也君) 考え方の基本につきまして局の指導があるかもしれませんが、あくまで所属長の権限と責任において行っておるということでございます。
  333. 内藤功

    ○内藤功君 当該担務指定をされた職員が所属長に聞きますと、所属長はおれにはわからぬ、人事課に聞いてくれ、こういう例があるんですが、その場合はその職員はどこへどうして聞いたらいいんですか。そういう場合が非常に多い。
  334. 杉浦喬也

    説明員(杉浦喬也君) 細かい運用その他人事課が行うわけではございますが、あくまでその権限と責任は所属長でございます。
  335. 内藤功

    ○内藤功君 総裁、やっぱり下の方のことをよく御存じないですね。よく聞いてみてください。現実はそうなんです。  それから今勤務成績、適性、能力とおっしゃいましたか、これはどういうことなんですか。勤務成績なり適性なり能力がすぐれている人を送るんですか、劣っている人を送るというんですか。
  336. 杉浦喬也

    説明員(杉浦喬也君) 活用センターで実施しておる内容はいろいろでございます。中にはやはり例えば一定の資格を得たい、あるいは他の職種への転換のための教育を受けたいというような、教育上の必要がある、そういう人もございます。あるいはまたセールス活動ということに従事する場合もありますし、直営売店でみずから経営を行うという場合等々いろいろとございますから、したがいまして、それぞれの活用の仕方に対応いたしましていわば適材適所というふうに考えた結果でございまして、成績が悪いからそこへ入れるんだという一律の基準はありません。
  337. 内藤功

    ○内藤功君 特にわからないのが勤務成績なんですよね。勤務成績というのを基準としてあなたが言われたから、勤務成績ということを基準として言われたならば、勤務成績のよい人を人活センターに配置するんですか、悪い人を配置するんですかと、これを聞いたんですが、いかがですか。
  338. 杉浦喬也

    説明員(杉浦喬也君) 勤務成績というふうにはっきり申し上げませんでして、今当人の能力、適性等を総合的に勘案してというふうに申し上げましたが、判断の材料の中には勤務成績もあろうかと思います。
  339. 内藤功

    ○内藤功君 だから聞いているんで、その判断の中の勤務成績というのはいい人を送るんですか、悪い人を送るんですかと、そこを聞いているんです。
  340. 杉浦喬也

    説明員(杉浦喬也君) 先ほど申し上げましたように、活用センターでの仕事の中にいろいろとございますので、一概に申し上げるわけにはまいりません。
  341. 内藤功

    ○内藤功君 大体、勤務成績を基準に入れるときには、いい人を入れるのか悪い人を入れるのか、どっちかの判断がなくて基準の中に入れるなんというのは聞いたことがありませんね。基準が不公正、不明確であっては、これでふるいにかけられる方はこれは大変な御心配だし、いわば災難だと思うんですね。私は、これを再度聞いても同じような答えでしょうから押し問答になりますけれども、勤務成績についてはいい人を送るのか悪い人を送るのかこれは答えがなかった、答えられなかったというふうに確認してよろしいですか。それならそれでよろしいですよ。
  342. 杉浦喬也

    説明員(杉浦喬也君) 本来業務に従事する人、これは本来の鉄道事業鉄道そのものの従事者でございますから、そうした方のあり方というものは、やはりいわば勤務成績良好でありしっかりと仕事をやっているという人がまず本来業務だと思います。それ以外の仕事をやるという場合の判断でございますから、勤務成績がいい場合もあるしそれから悪い場合もある、それぞれの人に対する総合的な判断ということで決めていくということであります。
  343. 内藤功

    ○内藤功君 私は、今の点についてのお答えは全然私の問いに答えていないと思うんです。ただ、これをやっていても押し問答になりますから、次の方法で別の方から聞いてまいります、やむを得ませんから。  総裁も言い、中曽根総理も言うんですけれども、有効活用、効率的運用、適材適所と言いますけれども、国労組合員がさっきのお話のようについに全体の八一%を占めているというんですね。国労の組合員は国鉄職員の中で最近過半数を割ったと報道されておりますよ。そうすると、国労の組織は過半数だが人活センターに入っている人は八一%に上っているという点は、まず一つ、国労という組合に対する組合間差別だという推定が働くわけですね。不当労働行為ではまず第一の推定です。これにはどうお答えになりますか。
  344. 杉浦喬也

    説明員(杉浦喬也君) 結果的に国労の諸君が多かったということでございまして、私ども、人活センターへの職員の配属に当たりまして組合による差別は一切行っておりません。
  345. 内藤功

    ○内藤功君 数字が非常に雄弁に物語っているわけです。  それから普通、差別をする人というのは、私は差別をいたしますとか、しましたということは絶対言わないものなんですね、これは言わない、九九%言わないでしょうね。労働委員会や裁判所の不当労働行為でも、やった人は大体否認いたしまして、周りの動かぬ事実から認定されるものですから、今のお言葉でも私はやっぱりこの手かというふうな感じがするだけの話なんですが。  そこで、国労の組合員の場合に、職場でも非常に有能な職員ですね、職場で仕事の上でも第一人者と自他ともに認める、なくてはならない人、本来業務の上で。そういう人をあえて本務から外して人活センターへ配属している例を私はもう本当にたくさん聞いているんですよ、たくさん聞いているんです。十月十六日開かれました国鉄全国ブロック別総務部長会議での職員課関係の指示事項というのがこの間市川正一議員の手で出されましたんですけれども、それにはこういうふうに書いてあるんです。もしお手元にあったらその資料を見ていただきたいんです。「4.人材活用センター」の「(1) 人活センターへの今後の職員の配置方」というところなんですけれども、市川議員の提出された資料、私の手元にありますが、   ① 人活センターに集めて、集中的に管理し、効率的、効果的に活用していくという方針は不変とする。 解散をさせたり、縮小をしたりすることはしない。   ② 但し、ダイヤ改正後の配置方については、現行スペース並びにダイヤ改正後不要となる直ちに使えるスペースの範囲内での最大限の配置を図る。   ③ その際、配置スペースに限界があるため、現行配置要員の中で勤務成績等に優れ、本務要員として活用する必要がある者(更正者も含む)については、人間の差し替えを積極的に行うものとする。   ④ 時期は雇用情勢も判断しつつ、十一月中旬から下旬に固めて一挙に配置する方向で検討する。 こう書いてあるんです。  まず聞きますが、法務省来ておられますか。――犯罪者予防更生法という法律がありますが、更生というのはどういう定義でございましょうか。
  346. 俵谷利幸

    政府委員(俵谷利幸君) 御説明申し上げます。  犯罪者予防更生法におきまして用いてあります更生の意味でございますが、これは犯罪または非行のあった者が犯罪や非行の原因あるいは動機となった性格、習慣、生活態度等を改めまして、その状態が安定化し、実社会の健全な一員として復帰した状態を言うと、かように解釈をいたしております。
  347. 内藤功

    ○内藤功君 総裁、いかがですか。この総務部長会議が十月十六日開かれて、そのときの職員局職員課の関係の指示事項の中にこういうふうに「勤務成績等に優れ、本務要員として活用する必要がある者(更正者も含む)については、人間の差し替え」、つまり今人活センターに入っている人を差しかえるということを「積極的に行う」と言っているんですから、私は、これは勤務成績にすぐれている人も来ているという意味なのか、あるいは勤務成績等にすぐれているというのは人活センターに来てからの意味なのか、これは両方の意味にとれると思いますけれども、とにかく勤務成績優秀な人が人活センターにも来ているということを言っておるんですね。こういう人は一体、この本社の総務部長会議という重要な会議で指示されているんですが、何人ぐらいいるというふうに考えているんですか。どういうふうにこの入れかえをやるというんですかね。ここらあたりをちょっとお話しいただきたい。
  348. 杉浦喬也

    説明員(杉浦喬也君) 今先生指摘のような会議、十月十六日の会議はあったことは事実でございます。そこで配られたという資料につきましては、私は見たことがございません。恐らくそういう資料が配られたことはないと思います。したがいまして、その中の表現につきましてコメントすることは差し控えたいと思います。
  349. 内藤功

    ○内藤功君 総裁が知らなきゃ、だれか担当の常務は知らないんですか、職員局の関係の。
  350. 澄田信義

    説明員(澄田信義君) 私もこの会議が催されたという事実は知っておりますけれども、当日いかなる資料が配られたかは存じておりません。しかしながら、先日お配りいただきました資料を拝見いたしました。今これも見ておりますけれども、今委員が御指摘のこの紙は当日配られたものではないというぐあいに思います。したがいまして、私はこれは前回見ましたし、今見ただけでございます。
  351. 内藤功

    ○内藤功君 しかし、私のところにはこれが入っているんですよ。いただいておるんです。ここで入手しておるんですよ。しかも、この後を見ると、その次をちょっとついでに読んでみましょうね。給与問題――ちょっとお待ちください。「給与関連」としましてね、   新会社の給与制度については、法案成立後設立委員から示されることになるが、大幅に変更になるものと考えておいた方がよい。職員全員についての人事異動だ、と思わなくてはいけない。(個々人の給与関係基本事項確定作業)   管理局における担当者の業務がどんなに大変な作業であるかを認識させる。次に、清算事業団の給与条件について。先般の運輸大臣答弁は、概算要求における人件費の積算方(便宜的においたもの)を述べたにすぎず、職員の給与条件とは別である。清算事業団の給与条件については、現在検討中であり、検討後変更する部分について、法案成立後団交で提案する。新聞報道は、正しく伝えていない。   特別対策対象者で管理業務に従事する者は九〇%となると報道され、管理者の中に動揺している向きもあると思うが、そう決まったわけでないし、又、そういうふうにしないようにしたいと思っているので、頭の中に入れておいてほしい。 これはあれですか、こういうことをやってないですか。  さらに、もう一つありますよ。例えば要員の雇用問題では、   部外から数字を求められた場合は、必ず本社に連絡のこと。 政府報告、国会提出資料との整合性の問題があるので厳守。 と書いてあるんですよ。ここまで書いてある。それから、   職員募集に際して、「行く気はなくても受けるだけ受けてみろ。」的な勧奨は行わないこと。選考段階で辞退者が続出するようでは、国鉄の姿勢を問われかねない。   面接を受ける職員に対しては、服装、礼儀等について注意を与えておくこと。また、面接の席上「転職の意思なし」というような返答をさせてはならない。 等々ですね。(「いいことも書いてあるな」と呼ぶ者あり)もちろんいいことも書いてある。しかし、これは知らぬのですかね。もう一遍聞きます。
  352. 澄田信義

    説明員(澄田信義君) ブロック別総務部長会議というのは、私ども目下の国鉄業務を遂行するために再々にわたって開いております。また、その席上私が出ることもございますし、また出ないこともございます。その都度業務に必要な連絡をいたしましたり、あるいは地方意見を聞いたり、現在の国鉄改革等々がスムーズに進むように適時適切に開催しておるところでございます。その席上ではいろいろな資料も配りますし、配った資料について、またその中身につきまして一々御報告する必要はございませんと私は感じます。しかしながら、今御指摘の件につきましては、恐らく席上で語った内容もあるいはあるかもわかりません。また、話してない内容もあるかもわかりません。私、一々チェックしておりませんけれども、いずれにいたしましても、先ほど御指摘のございました更正者云々の資料につきましては私は一切見ておりませんし、恐らくその資料は全然出ておらぬし、しかも当日配られたものではない。また私どもの、私の部下にそのような更正者などという言葉を使う者は一切いないというぐあいに信じております。
  353. 内藤功

    ○内藤功君 使う者がいるかいないかじゃなくて、ここに書いてあるということが問題ですね。この中にはこのように話したこともあるかもしれぬし、ないこともあるかもしれぬということを言われたから、結局暗に認めたことになるじゃないでしょうか。なかなか一遍にはこういうのは認められないでしょうけれどもね。はっきりしたらどうですか。はっきりしてくださいよ。やっぱり認めたということなんだ、これは。そうじゃないの。私のところにこれはちゃんとあるんだ。わからないなら調べなさいよ。
  354. 杉浦喬也

    説明員(杉浦喬也君) 先ほど申し上げましたとおり、その資料につきましては私は全然これを知りません。また、推測するに、そうした資料は配られていないというふうに思いますから、中身につきましての一切のコメントは差し控えたいと思います。
  355. 内藤功

    ○内藤功君 これは正式に調査を要求いたします、こういう資料があるかどうか。推測じゃだめなんだよ。こんなところへ来て推測なんと言ったって通るわけがないんだ。ちゃんと調べなさい。きちんと調べて回答しなさい。いいですか。
  356. 杉浦喬也

    説明員(杉浦喬也君) そういう資料はないものと思いますので、調べようがございません。
  357. 内藤功

    ○内藤功君 例の手なんですけれども、これが問題なんだね。あるかないかはやっぱり調べるべきです、これは。しかも、澄田常務理事と総裁の答弁は微妙に違っていてね。澄田常務理事は、さっき言ったようなことを説明したかもしれぬし、説明しないことがあるかもしれぬと。ただ、更正者ということは使う人間はいないと、こういう答弁で、微妙なこれは食い違いが生じたと思いますよ。
  358. 澄田信義

    説明員(澄田信義君) 総裁の答弁と私の答弁に食い違いがあるとは思っておりません。私は、先ほど申されました部分についての資料は見たこともないということを申したわけでございまして、その他の部分につきましては、言ったか言わないかはわかりませんが、私の今の感じで申し上げますと、今おっしゃったような中身の話が中には一部分あるいはいろんな点で出たかもわからないということを申し上げただけでございます。総裁の答弁と私の答弁に食い違いはないと思います。
  359. 内藤功

    ○内藤功君 じゃ澄田常務理事、この表の中でどの部分をあなたは見たことがない、どの部分についてはしゃべったことがある、指定できますか。
  360. 澄田信義

    説明員(澄田信義君) 私その資料を今全部初めて見ましたので、そのチェックは不可能でございます。
  361. 内藤功

    ○内藤功君 もう大体この問答でこれがはっきり否定できないということはわかりました。しかも調査をしようとしない、こういうところに国鉄当局の非常に国会を軽視している態度があるということを私は厳しく申し上げておきたいと思うんです。本当にけしからぬことであります。大体、きちんと書いてあるじゃないか、ここに。けしからぬ。  さてそこで、私はそれじゃ聞きますけれども、実際の話をしますよ。高速コンテナ貨車のブレーキ検査のベテランを人活センターに送って、電車の窓ガラスふきや電車の天井の整風板の清掃をやらせているのであります。この人は四十二歳で東京北局の隅田川客貨車区の車両検査係であります。隅田川客貨車区というのは、本社としても特に指定している重要基地だと思うんですけれども、どういう役目を持っている基地ですか。
  362. 山之内秀一郎

    説明員山之内秀一郎君) 隅田川客貨車区は、東京地区の北口の大きな貨物のターミナルでございます隅田川貨物駅に付随をしてございます現場でございまして、主にコンテナ関係貨車の点検修理等を行っております。
  363. 内藤功

    ○内藤功君 隅田川客貨車区は、今常務が言ったように、隅田川貨物駅に発着する貨車、荷物客車などの検査修繕を業務とする職場です。長距離直行便の高速コンテナ貨車、いわゆるコキ一〇〇〇〇形式、これが約百三十両、コキ五〇〇〇〇形式が大体二百両、その基地であります。門司と並ぶ基地の一つであります。  この人は、高速コンテナ貨車のブレーキ関係の検査修繕を十一年間やって第一人者であります。安全輸送と直結する仕事です。ことしも三月十日から検査実習の教育担当をやっている。七月十五日に松戸の電車区の人活センターへ配属を命令されたんだけれども、七月十五日の松戸の人活センターへ担務命令発令が下るまでは検査長に作業方法、手順、技術的ポイントを習得させて、教えていたんです。直前まで教えていたんですね。教えていて、教え終わると今度は辞令で人活センターに持っていかれたわけであります。理由を聞いても、現場長は、総裁ね、局の指示だと言うだけなんです。さらに局に問い合わせると、現場から上がってきたと言うんです。全く無責任ななすり合いを局の人事課と現場長はやっているという実態をあなたのお耳に入れておきたいと思うんですよ。  現在、この松戸電車区人活センターではどんなことをやっているか。私はここに写真を持っていますので、けさの理事会でお許しを得て運輸大臣、総理にお見せしたいと思うんです。(写真を手渡す)  これは、今そこの写真にも出ておりますけれども、本務から外されて、電車の窓ガラスふきをやらされているんです。それから天井の整風板清掃、それも十一名で午前十両、午後十両ですから、一時間で終わっちゃう。後は詰所というところにいて何にも指示がないという状況ですよ。  私は清掃の仕事の価値を云々いたしません。そういうことは言いません。仕事は何でも同じであります。しかし、本務外の仕事につかせるということが問題なんです。この人はベテランの検査修繕要員なんです。ところが、本務の技術、技能の向上には何一つつながりません、窓ガラスふきをやっても天井の整風板をやっても。そして、いわば精神的に苦痛でありましょう、不利益を与えていわば見せしめ懲罰にするということじゃないんでしょうか、これは。このようなことは本当にもう異常な、常識に反する人事だと言わなきゃなりません。  それから、ここにあります詰所ですね。これは今運輸大臣ごらんになったと思いますけれども、シリコン整流器と申しまして二百ボルトの電流が流れるやつが入り口近くに設置されておる。これは国電に充電するための機械であります。現実に電流が流れております。「キケン、さわるな」とここに書いてあります。そうして、ここに入れられてから百十五日間あったんです、これは。百十五日目の十月三十日になりまして、本人たちの重なる要求でようやくこの十月三十日にこのシリコン整流器は撤去したんです。  十七畳半に十六人が詰め込まれております。これですね。こういうような状況であります。全部本人の陳述書もここにあります。換気扇もない。国鉄職場には絶対必要な鉄道電話もないですよ。気管支ぜんそく患者、公害病認定患者、中学三年のときに気管支ぜんそくに認定された人が一人。腰痛、椎間板ヘルニア、これは三十キロある例の連結器のやつを持ち上げるときにおかしくなってそのまま悪くなっている人が一人。若いけれども脳血栓を過去患ったことのある人が一人。三人病人の人もいる。病人と活動家ですね。病人と国労幹部を入れているわけです。十六人中病人五人、組合青年部役員八人、一般平組合員は三人です。この三人も活動家である。  これでは収容所だとこの人たちが言っても私は言い過ぎじゃないと思う。収容所。「国鉄収容所からの告発」。これもけさの理事会で御了承を得ましたので運輸大臣並びに総理にもお目通しをいただきたい。これがそうなんです。(資料を手渡す)  私は人材活用にならぬと思うんです。有効活用にならぬ。適材適所じゃないですよ。適材適所と言うんなら、隅田川客貨車区でブレーキのなにをやってもらうといいんです。  私は、こういうことを申し上げておきたいんです。ブレーキのことについて人活センターに移されてから、職場の上司、検査長から数回にわたって鉄道電話で、つまりその部屋には通じませんが、よその鉄道電話で問い合わせがきて、あなたが人活センターにいてわからないが、これはどうして直したらいいんだということを数回アドバイスが求められております。さらに、ほかに転勤した元助役からも、ブレーキのことをあなたに聞きたいんだと、人活センターで窓ふきをやっている人に教わりに来ているんですね。つい十日ぐらい前ですけれども、この人が久しぶりで本区の現場へ帰ったところ、武蔵野から広域配転で来た研修助役が三十人ぐらい集めて現車訓練をやっているんです。ちょうどいいところへ来たと――これは藤田君というんですが、藤田君ここへ来て教えてやってくれ、おれにはわからなくなっちゃったからと言うので、おれを人活センターから出せば教えてやるよと言ったんだけれども、まあその場ですから全部教えてやったそうです、この人は。そう言っていましたよ。  私は、本当にこれは間違ったことがやられていると思います。これが今やられているんです。そうして、この人と一緒に配転された渡辺君というんですが、青年部書記長はこういうふうに言っております。  私たちが日々頑張って守ってきた国鉄の安全はどうなってしまうのでしょうか。私の技術をそのために使うことは二度とできないのでしょうか。一日も早くもとの職場に戻らなければ私の技術も仲間の技術も落ちていきます。私たちを飼い殺しにして私たちの人間性を切り刻むようなことはやめてください。どうぞ人間として、労働者としての命のぎりぎりをかけた叫びを理解してください。こう言っております。これは、いかなる理由があってもこういうことは、人が足りないとき、また国鉄が何十年かけてつくり上げた大事な技術者でしょう、国鉄の宝なんです。こういう人をこういうところに使っていいのかという問題ですね。  総理、どうお考えになりますか。政治家としてどうお考えになりますか。運輸大臣、どうなんです。
  364. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 今初めてこの写真集を渡されて拝見をしておったところでありますが、私は現在、国鉄当局が人材活用センターを運営いたしております中で、今御論議をされておるようなことがあるとは考えておりません。そういう報告も受けておりません。
  365. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 運輸大臣と同じです。
  366. 内藤功

    ○内藤功君 総裁、どうですか。
  367. 杉浦喬也

    説明員(杉浦喬也君) 今問題は、職員のあり方、特に職員が現在いわば過員を抱えて、その中でどのようにしていったらいいかという非常に難しい問題を抱えておるわけでございます。そうした中で、そうした過員というものを有効に活用しようというような結論がこの人材活用センターでございまして、その趣旨を十分にわきまえながら万遺漏のない活用の仕方でやっていくということが最善の道であるというふうに私は考えておるところでございます。
  368. 内藤功

    ○内藤功君 労働大臣、いかがですか。労働者の問題です。
  369. 平井卓志

    国務大臣(平井卓志君) 先ほど来御論議を承っておりますと、人材活用センターそのものへの配置転換、選抜等々が一口に申せば不当ではないかというふうな御意見のようでございますが、個別の問題は私承知いたしておりませんけれども、この人材活用センターの問題につきましては、たしか七月でございましたか、国労が公労委に調停を申請しまして、公労委が、人材活用センターへの職員の配置は余剰人員の特定化を目的とするものでないことを踏まえ対処するという旨の調停案を示されまして、これを労使双方が受諾しているという過去の経過がございまして、これが個別の問題として不当労働行為であるかないかということになりますると、これはやはり権限のある公労委ないしは裁判所において具体的な事実に即して御判断あってしかるべきものと、私はかように理解をいたしております。
  370. 内藤功

    ○内藤功君 いずれも非常に不満ですね。特に総理、運輸大臣は初めてこれをお知りになったと。ぜひこれを、私からの問題提起だけでまだ十分おわかりいただけないというなれば、必要な関係機関に命じて資料を出させてお調べいただきたいと私は思うんですね。  さらに、総裁は再びまたまた、人材有効活用、余剰人員の活用ということを言われたが、これくらいこういう事実の前に空虚な響きを持つ言葉はない。まさに職場で一番必要な人ですね。技術を聞きに来られている人、そういう人が窓ガラスふきをやっている、本当におかしいと私は思います。もちろん個別の問題はそれぞれの機関で処理されることですけれども、そういうことが余剰人員活用の名で行われているという問題を私はここで事実をもって指摘をしたいんです。  そこで、これは労働省にお伺いしたいんですが、このように本務以外の仕事に従事させる、そしてある一カ所に労働組合の活動家あるいは組合の役員という人たちを集めて本務の仕事を与えないで、あるいはいかなる仕事も与えないで置いておくということは、状況いかんでは不当労働行為にもなる、こういうふうに私は思うんですが、労働省の御見解はいかがですか。
  371. 小粥義朗

    政府委員(小粥義朗君) 個別事案の問題については、先ほど大臣がお答えしましたように、見解を述べることは差し控えさせていただきたいと存じますが、一般論としてお答えいたしますと、労働組合法七条にありますように、特定の組合に属することないしは組合活動をしたことを理由として、そのことのゆえをもって不利益な取り扱いをするとなれば、これは不当労働行為に当たる可能性を持つというケースはございます。
  372. 内藤功

    ○内藤功君 これはもう経済的な不利益だけではなく精神的な不利益も含むということは常識だと思うんです。  局長にお伺いしますが、中央労働委員会の出した命令で、十和田観光電鉄という事件の有名な命令がありますが、内容は御存じですか。
  373. 小粥義朗

    政府委員(小粥義朗君) ちょっと今承知しておりません。
  374. 内藤功

    ○内藤功君 中山伊知郎さんが会長をしておったときの、昭和三十四年十月七日に既に中労委の命令で確立されているものですね。これは昭和三十三年に起きた事件ですが、企画室というのを会社へつくって、そうして余剰人員の配置ということでその人員を拡充したんです、企画室を。そうして総合業務の調整及び推進と施設の新設、保存に機動性を持たせたということで、労働組合の役員それから組合の活動家をそこに配置転換、異動したんですね。これについて中労委は、   必ずしも人員が余剰でないとされている部門から、企画室に異動になっている者があり、また余剰人員があるとして企画室への異動があつた部門で、その後人手不足を理由に企画室から応援をうけていたり、企画室勤務者を原職に復帰させたりしている事実が認められ、必ずしも一貫した方針のもとで人事異動が行なわれたわけではない。   また、一定の技能経験を有し、永年勤続した者が、矯正教育の名のもとに、企画室に勤務させられていることは、個人にとつては不名誉なことであり、劣等感を抱きながら、将来に対する希望を失ないつつ、毎日心理的にきわめて不安な状態労働に従事していることが認められるのであつて、第一組合員の企画室への異動が、会社の主張する会社再建を目的とする適材適所、人心の刷新を図るためのものとは到底考えられない。   以上のとおり、今回の企画室への人事異動に関する会社の主張は、いずれも納得せしめるところに乏しい。 という判断をして、この人事異動については不当労働行為と認められるというのが昭和三十四年十月七日、これは労働委員会命令集に出ています。こういうのがありますが、いかがですか。こういう命令が出ていますね。  私は、企画室と人材活用センター、言葉は違うけれども、まさにこの判例の考え方、これのもっと大きな規模が今人材活用センターの中で行われているというふうに思いますよ。これはもう私は不当労働行為である、こういうことを断ぜざるを得ない。そうして人材は本当に有効に活用されてないというふうに思うわけであります。  そこで次の問題ですが、そういう人材活用センターに派遣される人について、昭和六十一年七月十四日付の東京西鉄道管理局施設部総務課長名の「人活センター用人事調書の提出について」という文書がここにあります。横書きです。丸を書いて秘と書いてあります。これです。これは衆議院の特別委員会におきまして村上弘議員から配付をされたもので、既にもう御存じだと思うんです。ここには、「ついては、人活センター設置等の参考資料としたいので下記により「人事調書」を提出されたい。」とありまして、2として、対象者は「職員管理調書の総合評価(人事調査定)、4及び5の者」、3として、組合所属は「六十年四月以降変更のあった者については、前及び現所属を記入する」、5として、ナンバー、「悪い順に総合順位を付ける」と、こうありますね。  私はお伺いしたいんですが、この職員管理調書で総合評価、局の人事課査定で4、5をつけられた人が人活センターへ送られるということがここでもう明らかになっていると思うんです。組合の所属も配置の基準であることが明らかだと思うんですね。組合では差別しないと言っていますが、順位をつけることも行われているのです。いかがですか。
  375. 杉浦喬也

    説明員(杉浦喬也君) 今の資料は私初めて見るところでございまして、今直ちにお答えはできません。
  376. 内藤功

    ○内藤功君 杉浦総裁、今初めてごらんになりましたか、本当ですか。十月二十三日の衆議院の委員会議事録で村上弘さんに対して、「ただいまの資料はちょっと私、見ておりません。よく中身を拝見させていただきたいと思います。」。十月二十三日に見ておるじゃないですか。いつもそう言うのかね。
  377. 杉浦喬也

    説明員(杉浦喬也君) その瞬間的な判断でそう御返事を申し上げましたが、今もう一回初めてではなしに二度目であるわけではございますが、私、中身をよく知りません。
  378. 内藤功

    ○内藤功君 よく調べてください。その内容をよく調べてください。そこにはっきりと成績の4と5、つまり成績の悪い人が人活センターへ送られる、これにはそう書いてあります。私が最初にいい人を送るのか悪い人を送るのかと聞いたのは、そういうこともあって聞いておいたんですよ。ここには4とか5が送られるんです。どうするんです。わからないままに済ますんですか。
  379. 杉浦喬也

    説明員(杉浦喬也君) 事実をよく調べますが、事柄は内部におきます人事上の指導の問題でございますので、中身につきましていろいろとお答えをすることがなかなかできないと思います。
  380. 内藤功

    ○内藤功君 厳重に調査をしてこれは回答をいただきたいと思うんです。  そこで、いろんな文書があっていろいろの調査をしているんですね。まず昭和六十一年九月十五日付におきまして川崎駅長作成の職員調書、調査期間(成績率)昭和六十一年四月一日から九月十五日、川崎駅長として川崎駅長の四角い職印があります。これが押してある文書がここにあります。コピーです。  これには百十三人の職員の氏名、年齢、担務、これは運転とか営業とか信号とか庶務とか、それからサンクス派遣とか、それから注意指導回数、これには服装、暴言、苦情、お褒めと書いてあります。それから処分、それから小集団グループ、知識、技能、これはA、B、Cで表示をしてあります。それから局人事課の評価、一一〇番という略号で書いてあります、一一〇番。それから特記事項、今回の成績評価というふうに欄が並んでおるんですよ。これですね。次に所属組合を符号で示しております。一番が国労です。二番が動労、三番が鉄労、七番が無所属です。そうして、これをパイパンと言っているそうです。国労は九十人おります。鉄労は二十人います、私勘定したら。動労は三人です。各組合別に分類して1、2、3、4、5の評価をつけております。さっきの五点評価です。そうしますと、国労は1がありません。2が十三人、3が四十人、4が十九人、5が十八人と圧倒的に4と3が多いんです。鉄労の方は七人が1であります。十一人が2であります。3が二人であります。4と5はゼロですね。動労の方は1がゼロです。評価2が三人です。3、4、5はゼロであります。  こういうふうに組合別に、国労は3が四十人、4が十九人、5が十八人、そして鉄労、動労は4、5がない。ここですね。これではもうさっきの基準でいけば4、5は全部国労が占めておって、国労が人活センターに送られる、こういうことになるんじゃないんでしょうか。このことにつきましては、私のほかにある新聞も入手をしたとして新聞の記事が、一昨日ですか、出ておりました。この点についての総裁のお考え、御見解、御認識を伺いたいと思います。
  381. 杉浦喬也

    説明員(杉浦喬也君) 先生今おっしゃいましたように、ある新聞にそうした記事が載っておるのを私は見たわけでございますが、この中身、現物につきましては全然私は見ておりませんし、またそこでいろいろと新聞報道の中身で推察をいたしますと、これは現場におきます管理者の職員の把握のためのメモみたいなものだなという感じは受けました。しかしながら、中身はそれぞれ職員のプライバシーに関する問題であるわけでございますので、私としましてはやはりコメントはできないわけでございます。
  382. 内藤功

    ○内藤功君 厳然として国労と鉄労、動労の区別、差別が数字で明らかであります。  もう一つ私は申し上げておきたいんです。それは、これは小田原、平塚、熱海の電力区の資料であります。これは職員名簿、職員名簿一般、系統別名簿、評価別名簿とありまして、六十一年八月六日付になっております。これをずっと見てみますと、平塚と小田原と熱海の電力の職場で電車、電灯、変電の仕事に従事しておられる電気技術主任、電気技術副主任、電気技術係、事務係の名簿であります。総員七十一名です。そのうち国労は二十五人です。これ名簿に基づいて私自身分析してみました。そのほかいわゆる東京鉄道協議会、動労、鉄労等の方、これが四十六人おられると。そうして氏名、生年月日、学歴、就職年月日、住所というものがずっと書いてあります。昭和六十年と六十一年の職員台帳、A、B、C、D、Eで表示しております。そして問題の局人事課の評価、いわゆる一一〇番、ここに出ております。五段階評価です。そして、なおおもしろいことに一番から七十一番まで順位をつけております。  私はこれを分析して非常に問題だと思いましたのは、まず、国労はすべてこの4、5、2、3というところに位置しています。数を言いますと、国労が二十五名で1がありません。2が四名、3が八名、4が十一名、5が二名です。そして改革協というところに入っている方が、1が一人、2が十四名、3が二十四名、4が六名、5が一名、こういう数字になっています。明らかにこの2、3にほかの組合は集中し、国労は4、5に集中している。  さらに順位を見ますと、順位は五十七番以下七十一番までの低位は六十四位を除いて全部国労です、五十七番以下七十一番まで。それからその上は八番から十七番、三十番から四十番の間に点在をいたします。四十一位から五十六位までが他の組合。要するに、五十七番から最低位までが全部、一人除いてほかは全部国労が占めている。こういう数字があらわれております。これは、ですから川崎だけじゃない。小田原、平塚、熱海の電力区もそうだ。  まだほかにもどんどん出てくると思いますけれども、私は時間の関係で、ほかにもありますが、この二つを見ただけでも、いかにこの組合間差別が総裁のここでのお言葉にもかかわらず現場でやられているかということであります。これは現場長の判断でできるわけじゃないんです。国鉄のやっぱり職員局あるいは総裁というところのオーケーがなければこういう大変な人の評価、一生、生死にかかわりますからね。自分と家族が食えるか食えなくなるかという問題にもかかわる問題ですからね。これが組合で差別されていいのかということですよ。私は、この点、明確なお答えをいただきたいと思うんです。こういうことをやっているんでしょう、実際。
  383. 杉浦喬也

    説明員(杉浦喬也君) 職員の管理につきましては、これは一人一人現場の管理者が把握するようにということで本社から指導をしておるところでございます。しかしながら、その場合に、先生がおっしゃるような組合による差別というようなこと、あるいは組合活動による差別というようなことは一切行っていない。また、そのような指導は一切しておりません。
  384. 内藤功

    ○内藤功君 それなら聞きますが、これは新潟鉄道管理局であります。新潟鉄道管理局の人材活用センターに既に配置されている職員の方の名簿であります。氏名の実名を私、プライバシーにかかわりますから申しません。氏名、年齢、人材活用センターの名称、勤務箇所、職名と書いてあります。そうして、これはKが国労ですよ。Tが鉄労です。Dが動労で表示されていますが、何とこの評価を1、2、3、4、5で示しますと、国労は全部この新潟の場合4、5ですね。鉄労、動労は4、5は一人もなく、1、2、3のみです。そうして、しかも鉄労、動労の方は配置場所は事業開発部といいますから、直営店の方に配置をされている。それから鉄労には訓告一回の人が一人ありますが、訓告一回受けているのに評価は3になっていますよ。国労の方は訓告一回の方は二人おられますが、一人の方は4、もう一人の方は5です。これは差別の分析の場合のポイントはここなんですね。ここがやっぱり組合間差別の一つの象徴になっています。本人は御否定になってもこういうふうになっています。いかがですか。  もう一つは、東中光雄議員が衆議院でお出しになった、配付された資料で「職員評定調書」です。これは松山駅です。組合活動で差別していないとおっしゃるけれども、四月と九月の評定で3から4にランクを下げられた人がいます。4から5へランクを引き下げられた人がいます。合わせて六人います。これの理由は、いずれも七月二十六日の十七時半から十八時半までの間、松山駅前の抗議集会に参加して、分割・民営化反対、不当差別、選別に抗議したということが理由なんです。「現状認識ができていない。」と、十七時半から十八時半、時間外じゃないですか、これは。この点どうですか。こんなにあるんです。幾らでも出しますよ、否定するなら。これでも組合間差別じゃないんですか。
  385. 杉浦喬也

    説明員(杉浦喬也君) 何遍も申し上げるとおり、個々の職員の現場におきます把握というものをしっかりやらなきゃいかぬ。四月一日現在の管理調書を今見直しておるということも事実でございますが、しかしながら、その際に先生指摘のような組合による差別あるいは組合活動による差別、こういうことは一切行ってはならないし、現実そのように行っていないというふうに思います。
  386. 内藤功

    ○内藤功君 総理に質問いたします。  この間、十一月十三日にここで我が党の市川正一さんが総理に質問しました。松山駅で荷物を持ったおばあさん、お年寄りの方を助けるなど非常にいい活動、善行をしたという人が、この松山駅で組合の民営・分割反対の集会に出席をしたということで評価を下げられているわけですね。  この点について総理自身感想を聞かれて、立派な模範的な人もいるんだ、国鉄職員の中には、ということを言われましたけれども、こういう人が職場集会に参加したということによって評価を下げられる、こういうのは人間に対する、労働者に対する評価としていいものでしょうか、これは。私は、こういうことが行われていたらその職員の士気にも関係するし、その職場の労使関係は、特に安全というものに関係する職場である以上非常に問題だと思うんですけれども、総理のお考えを伺いたいと思うんです。
  387. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 事実未確認の問題についてコメントをすることは適当でないと思います。
  388. 内藤功

    ○内藤功君 事実未確認じゃなくて、この間きちんと総理に事実を示して御質問した問題であります。私は非常に、この組合間差別でないということがいかに現場の事実では空疎な言葉かということが私ははっきりしたんじゃないかと思います。  そこで私は、時間がそろそろ少なくなりましたので次の質問に移りますが、労働省にこれは見解を伺いたいんですが、――その前に運輸大臣にお伺いしたいんですが、しばしば承っておりますと、国鉄の新会社への名簿作成行為について国鉄は設立委員の補助者、時には履行補助者の行為だと言っておりますが、そうしますと、設立委員とこの国鉄の履行補助者というのは同人格と見てよろしいんですか。
  389. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 設立委員がそれぞれの会社の、例えば雇用条件でありますとか労働条件を設定する、そしてどういう方を受け入れたいかを決める、その採用の方針に従って、補助者の立場として国鉄はその意を受けて個々の職員の方方の希望を聞きながらその配置を決めていく。いわば新会社のお手伝いをするということでありましょう。
  390. 内藤功

    ○内藤功君 同人格かどうかという点はいかがですか。
  391. 林淳司

    政府委員林淳司君) いわゆる名簿作成等につきまして国鉄がこれを行うということに法律上規定してあるわけでございますが、これは法律的に見ますと、事実行為の委託といいますか、準委任、民法で言いますと準委任という関係になろうかと思います。そういう意味で、同人格かどうかという、そういう観点から私ども考えたことはございませんけれども法律的にいいますと民法で言うところの準委任、これに近いものであろうというふうに思います。
  392. 内藤功

    ○内藤功君 そういうお答えを前提にして、労働省に伺いますが、これは一般論としてのお答えでいいですが、労働基準法の二十二条第三項では、いわゆる労働組合運動に関する通信を、あらかじめ第三者とはかり、就業を妨げる目的をもってなすことはできないと、それについては罰則がありますね。この規定の内容、特に労働組合運動に関する通信という意味と、それから妨げる目的という意味、これは労働省としての御見解はどうなっているか、お伺いしたい。
  393. 平賀俊行

    政府委員(平賀俊行君) 労働基準法第二十二条三項には、御質問のように、「使用者は、予め第三者と謀り、労働者の就業を妨げることを目的として、労働者の国籍、信条、社会的身分若しくは労働組合運動に関する通信をし、又は」云々という規定がございます。また、これには罰則もございます。ただ、これにつきましては、「労働者の就業を妨げることを目的として」ということがございます。これは、この場合は一般的に言って、退職をした前の使用者が、新たな就業を妨げることを目的として、就業を妨害する、再就職ができないことを目的として、そういうことを目的としてこういうことをしてはならないと一般的に理解をしております。  それから「労働組合運動に関する通信」、これは広く労働組合運動に関する事項が入ると思います。
  394. 内藤功

    ○内藤功君 労働組合運動に関する事項――労働処分を受けたとか、何々労働組合の組合員であるとか、組合活動に、集会に参加したとかいうことはまさに労働運動に関する事項なんですね。  そこで労働省にお伺いしますが、これも一般論としてお聞きしますが、そういうものを書いた文書、職員全員あるいは職員の多数の、そういう組合活動についての、組合所属、組合活動あるいは組合活動に参加して処分を受けた経歴等、これを、Aの会社からその職員が移るということが予想されるBの会社、あるいは採用を希望することが予想される別の会社に渡すという場合は、これはそのもの自体が違反かどうかの問題も起きるし、立法の趣旨から見ては一体どういうふうに考えたらいいのか、こういう問題をお伺いしたいと思うんです。
  395. 平賀俊行

    政府委員(平賀俊行君) ただいま労働基準法の二十二条三項についてお話ししたように、そういうような労働組合活動に関する通信をすることについて、あらかじめ第三者とはかり、それから就業を妨げることを目的としてやるということになれば、それは二十二条三項の違反になると思います。
  396. 内藤功

    ○内藤功君 まだまだ質問したい問題があります。特に、この今問題になっている職員についての組合所属と組合活動によって表をつくっている。そしてこの表が、私は新会社設立のときに必ず新会社に行くものだと思うんです、総裁が新会社の設立委員になろうとしているんですから。そういう報道もあるというわけですからね。問題ですよ。  なお他に用意した質問があります。団体交渉権の問題その他重要な問題がありますので、残余の質疑は次回に行うことを明らかにしておきます。
  397. 山内一郎

    委員長山内一郎君) 本日の質疑はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後五時五十一分散会