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1986-12-09 第107回国会 参議院 内閣委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十一年十二月九日(火曜日)    午前十時八分開会     ─────────────    委員異動  十二月八日     辞任         補欠選任      板垣  正君     小島 静馬君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         岩本 政光君     理 事                 大城 眞順君                 亀長 友義君                 村上 正邦君                 久保田真苗君     委 員                 大島 友治君                 岡田  広君                 小島 静馬君                 古賀雷四郎君                 斎藤 文夫君                 永田 良雄君                 永野 茂門君                 堀江 正夫君                 小野  明君                 野田  哲君                 飯田 忠雄君                 峯山 昭範君                 内藤  功君                 柳澤 錬造君                 宇都宮徳馬君    国務大臣        内閣総理大臣   中曽根康弘君        外 務 大 臣  倉成  正君        国 務 大 臣        (総務庁長官)  玉置 和郎君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  栗原 祐幸君    政府委員        内閣法制局第二        部長       大森 政輔君        総務庁長官官房        長        古橋源六郎君        総務庁長官官房        審議官      百崎  英君        総務庁長官官房        審議官      稲橋 一正君        総務庁行政管理        局長       佐々木晴夫君        防衛庁参事官   瀬木 博基君        防衛庁参事官   古川 武温君        防衛庁参事官   千秋  健君        防衛庁参事官   筒井 良三君        防衛庁長官官房        長        友藤 一隆君        防衛庁防衛局長  西廣 整輝君        防衛庁教育訓練        局長       依田 智治君        防衛庁人事局長  松本 宗和君        防衛庁経理局長  池田 久克君        防衛庁装備局長  鎌田 吉郎君        防衛施設庁長官  宍倉 宗夫君        防衛施設庁総務        部長       平   晃君        防衛施設庁施設        部長       岩見 秀男君        防衛施設庁建設        部長       大原 舜世君        外務大臣官房審        議官       斉藤 邦彦君        外務省北米局長  藤井 宏昭君        外務省中近東ア        フリカ局長    三宅 和助君        大蔵政務次官   藤井 孝男君        大蔵省主計局次        長        角谷 正彦君    事務局側        常任委員会専門        員        林  利雄君    説明員        外務省欧亜局外        務参事官     野村 一成君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付) ○地方公共団体執行機関が国の機関として行う事務の整理及び合理化に関する法律案内閣提出衆議院送付)     ─────────────
  2. 岩本政光

    委員長岩本政光君) ただいまから内閣委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  昨十二月八日、板垣正君が委員を辞任され、その補欠として小島静馬君が選任されました。     ─────────────
  3. 岩本政光

    委員長岩本政光君) この際、理事補欠選任についてお諮りいたします。  委員異動に伴い、現在理事が一名欠員となっておりますので、その補欠選任を行いたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 岩本政光

    委員長岩本政光君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事村上正邦君を指名いたします。     ─────────────
  5. 岩本政光

    委員長岩本政光君) 防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案を議題とし、前回に引き続き質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  6. 柳澤錬造

    柳澤錬造君 前回質問の中にも大分宿題が残っておりますけれども、時間の関係もありますから、先へ質問を進めていきたいと思います。  最初は、時々ここでも議論になっております昭和五十一年十月二十九日に閣議決定をいたしました防衛計画大綱、この防衛計画大綱というのがいつ達成できるという見通しをお持ちなのかということ。それから、昨年の九月に中期防衛力整備計画というものをおつくりになって、これから昭和六十五年までいくわけですけれども、それができたならば達成したということになるのか。その辺の御見解をまずお聞きしたいんです。
  7. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) ただいま先生質問のように、昨年九月に策定されました中期防衛力整備計画、これは六十五年まででございますが、この計画によって着手された事業が実際にでき上がってくる、例えば装備品等発注したものが入ってくるのが最終的には六十八年になります。したがって、六十八年度段階になりますと、仮にこの計画が確実に実施をされ、しかも六十六年以降短期間、六十八年までの間に損耗するもの等が補てんされれば六十八年には一応防衛計画大綱水準が達成されるということになろうかと思います。  ただ、一言お断り申しておきたいんですが、防衛力というものは、一年ほっておきますとどんどん古いものはリタイヤしていくというようなことがございますので、達成されたらそこで固定的に達成できたということではなく、引き続き努力は必要だということは御理解いただきたいと思います。
  8. 柳澤錬造

    柳澤錬造君 よくわかりました。  長官防衛計画大綱というのを決めて現在でちょうど十年たった。それで、今局長お話だと、六十八年になればほぼ達成できるというんですからまだこれから七年ぐらいかかるわけですけれども、現在時点でも計画をつくってもう十年たった。内外の情勢変化というものを考えてそういうものは変更する必要かないのかあるのか。その辺についての防衛庁の方のお考えというのは、どういうお考えをお持ちかということをお聞きしたいんです。
  9. 栗原祐幸

    国務大臣栗原祐幸君) 確かに大綱をつくってからもう十年たっておる、その間に大綱をつくるときの国際情勢基本的な枠組み、そういうものについても大きな変化があるのではないかというようなお話でございますが、私は、基本的な枠組み変化はないと思っています。もちろん大綱をつくりました後、例えばソ連アフガニスタン侵攻とか、あるいは極東ソ連軍増強、いろいろとアクセントはついてきておりますけれども基本的な枠組みは変わっていない、こういうふうに認識をしております。しかも、今私ども大綱水準の達成を期するということで一生懸命やっているわけでございまして、現在、私といたしましてはこの大綱を見直すというようなことは考えておりません。
  10. 柳澤錬造

    柳澤錬造君 わかりました。  次に、対ソ関係でお聞きをしてまいるんですが、航空戦力で見ると我が国が大体三百五十機、それに対してソ連の方は二千三百九十機、約七倍なわけです。飛行機の数での七倍ですから、火力からいけばそれはもう当然十倍以上の差があると思うんです。それから、ソ連の太平洋艦隊の方もこの十年間に約五割増しからの増強をして、日本が二十五万五千トンだというのに対して向こうは百八十五万トン、八百四十隻、これも七倍以上からの戦力を持っておるわけです。  こういう現実というものに対して政府脅威を感じているのかいないのか。その辺をどのような御判断をしているかということをまずお聞きをしたいんです。
  11. 瀬木博基

    政府委員瀬木博基君) ただいま先生が挙げられました日ソの間の戦力比較というものにつきましては、我々が持っておりますところの認識とほぼ同じものであると思います。  おっしゃられましたように、地上兵力にいたしましても数の上で三倍近く、またそれの個別の火力比較においても二倍ないし三倍、また航空戦力が約七倍、海上兵力についても隻数、トン数とも五ないし七倍というような数であるということは先生の御指摘のとおりでございます。そういうような増強が近年非常に進んできたということ等、また、それに伴って活動が非常に活発化していくということをあわせて考えてみますと、これは我が国に対する潜在的脅威が増していると遺憾ながら見ざるを得ないだろうと思います。  それで他方、これが先ほどの先生の御質問に関連することといたしまして、日本大綱枠組みまでも変えるものであるかということにつきましては、ただいま防衛庁長官から御答弁申し上げたとおりであろうと思います。
  12. 柳澤錬造

    柳澤錬造君 対ソ関係について我々が持っている認識は、私の考えと同じだと今御答弁なさったんだけれども、私が聞いているのは、数字的にこれだけ航空戦力も艦隊の戦力も大きな差がついているんです。それに対して政府はどうお考えになっているんですか、脅威を感じないのですかと言ったら、最終的に潜在的脅威と言われたんですが、その潜在的な脅威といいましょうか、その辺の政府見解というものをもうちょっと解明してほしいと思うんです。  と申しますのは、もうちょっと敷衍して言っておきますと、前回のときここでもって私は、他国脅威を与えるような軍備を持たないというのが今まで総理も各政府防衛庁長官も言っておりますんで、脅威を感じるか感じないかは相手が考えることなんでしょうと、日本の国が他国脅威を与えるような軍備を持ちません、そういう判断、見方というのはどこから出てくるのですかと。これは前回のこの内閣委員会で御答弁もいただいておるんですけれども、私から言わせれば答弁になっていないんであって、それは宿題にしておきましょうと言って、後ほど防衛庁の方からきちんとした御返事をいただくようになっているんです。だから、その辺でもうちょっと、潜在的脅威という言葉を使われて、これも新しい言葉ではない、前々からもう何回もお聞きしています、どういうところを根拠にしてその潜在的脅威というような御判断をなさるのかということを解明してください。
  13. 瀬木博基

    政府委員瀬木博基君) 先生のただいまの御質問にお答えする前に、私が申し上げたことでちょっと答弁の要領が得なかったかと思いますので、もう一回明確にいたしたいと思いますのは、先生のおっしゃいました数字、客観的な事実の認識においては私どもと同じである、そういうことを先ほど申し上げたわけでございます。  潜在的脅威ということにつきましては、かねてから政府が何度も御答弁申し上げているところでございますが、国際的な脅威というものは、ある国家が我が国に対してどういう戦力を持っているだろうかということと、また、その国がいかなる意図を持っているであろうかということに大きく二つに分けて分析してみると、その戦力的な物理的な力と申しましょうか、そういうものに着眼して見るならば、やはり一つ可能性としての脅威が存在するということ、これに着目するならば潜在的脅威というふうに見ざるを得ないだろうと思います。他方意図というもの、またその国際的な関係ということを考えてみる場合、現在ソ連日本というものをとらえてみれば、これはお互いに重要な隣国でございまして、決して戦争が起きるような状態にあるということではないと、またそういうことがあってはならないということで、日本としては隣国としての相互理解関係を深める等の外交努力をいたしておるわけでございます。しかして、そういうことから考えれば、今という時点に着目するならば、ソ連日本に対して侵略的意図または脅威を与えようとする意図を持っているというふうに判断することはないのではないだろうか、そういうことから、そういう二つのことをあわせて潜在的脅威と申し上げているわけでございます。  他方他国脅威を与えるかどうかと、これは日本の問題でございます。これは日本日本の主体的な意思として、憲法またそれぞれのいろいろな関係法規、国の建前というものからして、日本防衛態勢というものは車守防衛という態勢でいこうということで日本が決めているわけでございます。これは主体的な意思として、日本他国脅威を与えるような国にはならないということを決めているんだろうと思います。これを他国日本防衛力を見てどういうふうに評価するか、これはまた別の問題だろうと思います。日本がそういうふうに見ていても、なかなか日本車守防衛というのはやはり大したものだというふうな評価を下してくれれば、これはそれとしての抑止力というものは十分に働き得るものであると考えます。
  14. 柳澤錬造

    柳澤錬造君 それ以上深入りしないでおいておきたいと思います。  ただ、今おっしゃられたそれは言わない方がいいんですけれども、専守防衛ということもこの前ここでもって私は政府統一見解をお示しいただきたいと言ったら、回りくどいことをくどくど言っておって、私はこう考えますと言って、防衛庁長官はそれは柳澤さんの方がよっぽどはっきりしてわかりやすいわというふうなことになって、これも宿題で後でいただくようになっている。  それから、他国脅威を与えるような軍備を持たないというそのことも、今若干言われましたけれども、その辺もまた後ほど解明をしていただくようにして、きょうのところはそれほど深入りしないでおいておきたいと思います。  次に進ましていただいて、この法は合計してともかくも六百六名の定員増が今度の防衛二法の趣旨なわけです。ところが片方で、定年になって退職される自衛官が大体年六千人から七千人おるということになっておるわけなんですから、そういう点でもってその補充は可能なのかどうなのかということをお聞きをしたいんです。  六百六名の定員は、それなりにいろいろ皆さん方の方で手だてをなさってその程度のものは集めることができるだろうけれども、毎年六千か七千、ここ数年間ずっと退職者が出るということになると、その方の補充というものの見通しはいかがなことなんですか。
  15. 松本宗和

    政府委員松本宗和君) ただいま先生指摘のとおり、ここ数年、毎年定年退職者が六千人ないし七千人というかなり大きな数字で出てまいります。ただ、この定年退職者の数でございますけれども、今後の推移を見ますと、大体六十五年ぐらいまでが六千人台で経緯いたしまして、その後大体四千人台に急激に減ってまいります。現在は今先生指摘のとおり六千人、七千人ということで、隊員の募集数も約二万三千というような形で今実施しておるわけでございますけれども、その募集でございますが、今申しました数字募集の中で大部分を占めております二士の男子でございます。  これの応募でございますが、毎年これの倍の大体四万人台という応募数がございます。そういうところから考えてまいりまして、それからただいま申し上げました将来の定年退職者数の減少と申しますか、そういうことも考えますと、所要の充足というのは十分可能であると私ども考えております。
  16. 柳澤錬造

    柳澤錬造君 そういうことになると、陸上自衛隊がここ十年間も二万五千人から欠員のままでずっときておって、これは前にも十年間それだけ欠員でいるんならば、十八万人の定員をそれだけ減らしたらどうですかと言ったこともあるくらいで、その補充充足というのは微々たるものです。今あなたのあれを聞いていると、倍の四万人からの応募者がいるんだからその六千、七千ぐらいの充足は可能だと言うんだけれども、そうすると、何で陸上自衛隊の二万五千人の欠員を十年以上も放置しているんですか。そこはつじつまが合わないことになる。
  17. 松本宗和

    政府委員松本宗和君) 欠員の問題でございますけれども、これは平時におきます部隊運用のための最小必要限度と申しますか効率性と申しますか、そういう観点からこれは計画的に、陸上自衛隊で言いますと、約八六%ということで抑えられておりまして、その範囲内で私ども募集を実施しておるということでございます。したがいまして、欠員が自然に生じておるということではございませんで、これは計画的にそういう欠員を抱えたままで部隊運用をし、またそれに必要な募集を実施しておるというのが現状でございます。
  18. 柳澤錬造

    柳澤錬造君 外務大臣おいでになって、もうきょう御出発のところを御無理して来ていただいたんだから、それも宿題にしておきます。そういう答弁なんかが成り立つと思っているところが私から言わせたら間違いなんです。今のようなことを言うならば、もう定員を十八万から十五万五千に減らして、そしてまた今度それがふやせるようになったときに、毎年のようにこうやって定員をふやしてきているんだから、それと同じように、そのときになったらまた皆さん方にお願いして定員増にしてもらいますよと言えばいいこと。何で十年以上も二万五千人からの欠員をそのままにしてやってきているかと。だからその点は、そういう答弁では答弁になりませんということを申し上げてそれは宿題にして、お忙しい外務大臣、おいでいただいたんですから、そちらの方に質問させていただきたいと思います。  本当に外務大臣、きょうヨーロッパ御出発のところをおいでいただいて感謝をして、若干の点だけ質問させていただきたいと思います。  第一は、サンフランシスコ講和会議が終わってもう三十年以上になるわけです。あの講和会議千島列島南樺太は一切の権益を日本が放棄したことは、これはもう事実です。しかし、その千島列島南樺太がどこの国の所有かということはいまだに決まっていないわけでしょう。私から言わせるならば、あの講和会議を主宰したアメリカがその関係国を集めて、言うならば後始末をどうするかと言っておやりになるのが筋だと思うんだけれども、もう三十何年たっているのに、いまだにそういうままにしておるわけなんですけれども、その促進方ということについてアメリカに言うべきだと思うんですが、その点についての御見解をお聞きしたいんです。
  19. 倉成正

    国務大臣倉成正君) 今の、委員指摘のとおり、サンフランシスコ条約が効力を発生しましたのは昭和二十七年の四月二十八日だと記憶しております。この対日平和条約の第二条(c)項は、日本南樺太及び千島列島、すなわち得撫島以北に対するすべての権原及び請求権を放棄する旨を規定していることは、今委員の御指摘のとおりでございます。しかし、日本がどの国のためにこれらの地域に対する権利を放棄するかは規定していない次第でございまして、南樺太及び千島列島帰属は未決定であるということも委員の御指摘のとおりでございます。  ただ、南樺太及び千島列島最終的帰属については平和条約締約国である連合国決定すべきものと考えておる次第でありまして、いずれにしましても、サンフランシスコ条約によりこれらの地域に対する領有権を放棄した我が国としては、その帰属について発言すべき立場にはないと考えておる次第でございます。
  20. 柳澤錬造

    柳澤錬造君 発言する立場にない。それも一つの理由だと思いますから、じゃそういう受けとめ方をして、次に、日本固有領土だという北方領土、これも長いこと宙ぶらりんになっておるわけなんです。それで、ソ連とどういうような交渉をしようとしているのか。たまたま中曽根総理も今のところソ連に行く気配がないようですけれども、この前も、代表質問のときに自民党の先生の方からその点について質問をしておったんです。北方領土解決についての見通しが立つんじゃなかったならば、総理ソ連なんかに行くべきではないではないかという質問をなさっておって、私は総理がどういう答弁をなさるか非常に注目をしておったんですが、総理はそれについては答弁なさらないで終わっちゃった。私は、きょうここでもって、外務省としてどのような交渉をしようとしているのかということが一つの点。  それから、この北方領土の問題では、予算委員会で私も何回も取り上げてやっているんですが、問題のポイントは、四十八年の十月に日ソ首脳会談、いわゆる当時の田中総理ブレジネフ会談というのが行われた。あのときに、田中総理日本に帰ってきて日本の国会でしゃべっていたことと、ソ連向こうでもって判断をするというか何というか、見解とが大きく食い違っていたことが明らかなんです。  そこで、予算委員会のときに私は、それだけのことについて何で外交ルートでもってその点を明確にしないんですか、はっきりさせて、外交ルートでその問題を取り上げて、それでどういう理解をするんだということについての意見の一致を見なけりゃいけないという点で、そういうことをやるべきじゃないかと言ったんですが、その後そのことをおやりになったのかどうなのかということをまずお聞きをしたいんです。
  21. 倉成正

    国務大臣倉成正君) 経過の問題に入る前に基本的な立場を申し上げますと、私が外務大臣に就任した直後、ゴルバチョフ書記長来日を駐日ソ連大使に要請をしました際にも、この北方領土の問題を解決して平和条約締結ということが我々の最大関心事である、この件についての前進があることによってのみゴルバチョフ書記長の御来日が意義深いものになる、そしてまた両国友好関係、そして確固たる両国の諸問題についての基礎になるということは申し上げたわけでございます。そしてまあその後しばしばシェワルナゼ外相と会談したり、あらゆる外交ルートを通じてもこの立場は貫いてきておるところでございます。  ただいま委員の御指摘の問題についての経過について申し上げますと、日本政府としましては、ただいま申し上げましたように、日ソ間の最大懸案である北方領土問題を解決して、平和条約締結することにより、我が国の重要な隣国たるソ連との関係に真の理解に基づく安定的な関係を確立することが、従来より一貫した我が国対ソ外交基本方針でございます。  近年、ソ連側北方領土問題に関し、我が国との話し合いにすら応じてこなかったところ、本年の二度にわたる日ソ外相定期協議の際、安倍外相の時代ですね、我が方より北方領土問題を日ソ間の最重要懸案として提起してソ連側話し合いを行った次第でございます。  その際、昭和四十八年の田中ブレジネフ会談の結果、委員お話しのように、日ソ間の「第二次大戦の時からの未解決の諸問題を解決して平和条約締結」すべき旨が共同声明で規定されることになり、さらに、同未解決の諸問題の中には北方四島の問題が含まれているとの口頭了解が両首脳の間で行われた事実を我が方よりソ連側に強く主張した次第でございます。しかしながら、遺憾ながらソ連側の本問題に対する立場は依然として厳しく、本問題を含む平和条約交渉には応じるとしつつも、問題の中身については解決済みという態度をとってきておるわけでございます。  したがいまして、政府としては今後とも首脳会談外相間の定期協議を初めあらゆる機会に歯舞、色丹、国後、択捉の北方四島一括返還実現のため粘り強い交渉を行っていく所存でございまして、先般、衆参両院におきまして御次議をいただいたことも踏まえて、この点については我が国基本的な方針として外交を進めていく所存でございます。
  22. 柳澤錬造

    柳澤錬造君 外務大臣、私が一番聞きたい点は、今大臣もおっしゃられた田中ブレジネフ会談で、田中総理日本に帰ってきて、この国会でもいわゆる共同声明の中に「未解決の諸問題」という言葉を使っているその中に北方領土の問題も入っているんだ、それはちゃんと確認をしているよということを田中総理は国会でもそういう報告をしているわけなんです。ところが、向こうソ連のそれなりの人たちはそういうものは一切ありませんよと、ちゃんと公式な場で言っているんですよ。だから私が予算委員会で言ったことは、それだけ食い違っているんだから、それを正式な外交交渉のルートに乗っけて、その辺の口頭了解をしたということの意見の食い違いというものをきちんとするのが外交交渉じゃないんですか。それをぜひおやりになってください。おやりになった気配がないから、もう何年かたってあれだけれども、またもう一回私はこれをお聞きしているんだから。  日本の方では未解決の諸問題の中に入っていると言っている、ソ連は一切そういうものはもう解決済みで、ないと言っている。この食い違いというものを何で外交交渉のルートに取り上げておやりにならないんですか。むしろおやりになったことがあるんですか、どうなんですか。あったならば、それについての答えが出ているはずなんです。そこのところをお聞きしたいんです。
  23. 倉成正

    国務大臣倉成正君) 口頭で、会議の席で田中総理から問題を提起して、これに対する返答があったと、いわゆるダー、ダー、ダーという表現がよく使われているわけでございますが、これは明確な事実でございます。ただ、その問題についてどういう交渉をしているかという委員お話でございますが、あらゆる機会に、その後その問題は提起をしておるわけでございまして、安倍・シェワルナゼ会談でもこの問題は提起して議論をした、しかし先方は、この事実に対して肯定的な答えをしていないと聞いておる次第でございます。また事実関係、さらに必要であれば政府委員からお答えをしたいと思います。
  24. 柳澤錬造

    柳澤錬造君 大臣、口頭了解は今厳格な事実だというふうに御答弁なさった。だから私が知りたいというか、言っているのはそこなんです。口頭了解としてブレジネフはうんと言ったことは厳格な事実だというならば、何でそのことを、普通皆さん方は、口頭了解といってもそれはちゃんと文書になさるわけでしょう、外国との関係で。だったら、何でそのことを文書にして、田中ブレジネフ会談における口頭了解事項としてそのことについてちゃんと証拠に残すというか何というか、それをおやりにならないのか。口頭了解であってもやっぱり外国との関係の場合にはそういうものについては文書にして残すというのが外交の、まあ慣例と言っていいかどうかは私もよくわからないんだけれども、慣例だと思うんですよ。問題は、日本側が言っていることとソ連側が言っていることが全く食い違っている。明らかに食い違っていることがわかったんだから、外交交渉のテーブルにのっけてそのことをやってください。そして、やっぱり統一した見解を一致した結論にしなけりゃいけないんじゃないですかということを言ってきているわけなんであって、そこをちゃんとしてくれなくちゃだめなんですよ。
  25. 野村一成

    説明員(野村一成君) 私、田中・ブレジネフ交渉の際に末席で参加したものですから、そのときの経緯を思い出してちょっと御説明させていただきたいのでございますが、やはり私ども、この北方四島の問題が日ソ間の懸案であるということを明文で、共同声明の形ではっきりと文言で残すべく最大努力いたしたわけでございます。しかし、その点については、どうもソ連側も応じなかったというのが実態でございまして、したがいまして共同声明上は「第二次世界大戦の時からの未解決の諸問題」という表現でございますが、他方、それだけでは解釈の余地が残るということで確認のための特別の会談を設けまして、先ほど大臣から御説明しましたような、はっきりと歯舞、色丹、国後、択捉の北方四島が日ソ間の懸案であるということの確認を求めて、それに対して確認を得たというのが事実でございます。  これに対して、口頭了解だということではありますけれども、その後ソ連側がこれを否定するような態度をとってきているというのがまたこれも事実でございまして、それに対して私どもはいろんな、外交ルートのみならず、両大臣間の会談等で引き続いて今後ともこの事実に反するということは強く指摘してまいる所存でございます。
  26. 柳澤錬造

    柳澤錬造君 だから、私はきょうこの問題を取り上げて言っているのもそこなんです。その未解決の諸問題、その中にはと言って、恐らく時の田中総理は言ったでしょう。それはブレジネフさん、うんと言ったでしょう。しかし、その証拠がどこにあるんですか。日ソ首脳会談から帰ってきて田中総理は――私もあのときの関係の書類を全部見た、それで、もう明らかにその中では、おれはちゃんとこう言っていると国会でも答弁をしているんですよ。しかし、それを裏づけるものはソ連側にはただの一片の紙切れもなければ、だれか高官がそのことについてそうだったんだという談話一つすらも――どこかでだれかがしゃべっていれば、ああそうだったんだと。またそれは、その後の日ソの外交の情勢変化でもって変わることも私はあると思うんだけれども、そういうふうな経過がありましたと言うならば、何でそのことを口頭了解事項として書面にしてサインをするだけのことをおやりにならなかったんですか。それはもう外交交渉関係であれば当たり前のことじゃないですか。  だからそういう点について、もうこれ以上申し上げても何ですから、どうなさるか。これは重大なことだと思う。そのことをきちんとしないで、それでもって、いや、我々はこう言って、それを向こうがちゃんと何したと言ったって、それを裏づける証拠が何にもない限りにおいてこれはどうにもならないんですから、その点は御検討いただいて、日本外務省はどういう扱いをするか、また御返事をいただきたいと思います。
  27. 倉成正

    国務大臣倉成正君) ただいま政府委員からお答え申し上げましたとおり、田中総理北方領土の問題は入っているということについての確認を求める会議を開いた、そのことはもうまごう方なき事実でございます。ただ、委員がおっしゃるように、これを口頭了解なら文書になぜ残しておかなかったかと、当然文書に残しておかなければ、ちょうどこの委員会でいろいろ委員と私との発言が記録に残るように、残しておくべきであったという御指摘はまことにおっしゃるとおりでございます。しかし、それをやりたいということで最善の努力をしたけれども、先方が応じなかった。したがって、その中に口頭了解として文書に残らなかったというのが事実関係だと思います。  したがって、そのときの会議に出席した人たちもまだ残っておることでございますので、今後も粘り強くこの問題について交渉は続けていく所存でございます。
  28. 柳澤錬造

    柳澤錬造君 大臣、やっぱり努力をしていただいて、今いみじくも言われた、書面にして残そうと思ったけれども相手が応じなかったと、当時の田中総理が言ったときにブレジネフさんがこっくりしたかなんかしらぬけれども、相手は認めていなかったということになる。認めておるならば、それを文書で残すことに何もとやかく言うわけじゃないんですから、やはりそれはきちんとしていただきたいということを申し上げて、次へ進みます。  今度は、その北方領土における世界各国の地図でどういう色分けをしているかということです。これは何年か前に取り上げてやって、そして北方領土日本の領土と同じ色分けにしているというのは、中国と韓国と西ドイツとトルコのたった四カ国。もう大分たちましたから、その後、外務省皆さん方の御努力で、それ以外のどれだけの国が日本領と同じような色に変更したかどうか、そこをまずお聞きしたいんです。
  29. 野村一成

    説明員(野村一成君) 諸外国の地図につきまして、私ども随時各国の地図の出版社に対しまして御訂正を求めるように行ってまいりました。昭和五十四年には総点検を行いました。さらに五十五年には、この総点検の結果を踏まえまして、誤った地図を刊行している出版社に対しまして訂正を行うよう指示いたしました。こういった指示に基づきまして在外公館等において適宜訂正申し入れを行っている次第でございます。  ただ、地図の改訂と申しますと、一般に数年間に一度の頻度で行われるということ、さらには出版会社の中に、地図には現実の支配の状況を反映すべきだということがあるといった事情からいたしまして、直ちにすぐ訂正に応じるというわけではございません。  現在、各国における状況をさらに点検しているところでございますけれども、現時点におきましてはトルコ、中国、韓国、西独それからパナマにつきまして、北方領土の記載ぶりが日本領となっているというのを確認済みでございます。
  30. 柳澤錬造

    柳澤錬造君 これは外務大臣御存じないと思うから言いますけれども、今、昭和五十四年に総点検をしたと、こう言っている。外務省みずからが総点検したんじゃないんです。国会で問題として取り上げられて、そして外務省がおやりになった。外務省が総点検するならば、少なくともあのサンフランシスコ講和条約でもって一件落着したそれから数年後におやりになることなんだ。これはずっとやってなかったことなんだ。昭和五十四年のこのときになって、また、国会で我が党の北方問題に関する特別委員長をやっておった小沢貞孝さんが取り上げて問題にして、そして全部集めいということになってやったことです。  それで、これは大臣お聞きいただきたい。前回のときにも、峯山議員の質問に、大臣は盛んに日米の信頼関係を損なうと一生懸命あなた御答弁なさって、私は聞きたいんだけれども、今言った、北方領土日本と同じ領土の色分けになっていない中に、今はほとんど世界大部分がそうなんです、アメリカもしてくれていないんです。少なくとも、日米関係がいかにいい関係でなくちゃならぬか、日米安保条約が結ばれておる、日米の信頼関係は築かなきゃいかぬといっていろいろ言われるそのアメリカですらも、あの北方領土日本の固有の領土と認めての日本と同じ色に塗り分けていない。そのことがいまだに外務省はやり切れない。そのことを、何でアメリカに向かって、そういうことをおまえらがやっておれば日米の信頼関係は損なうぞと言えないんですか、直させられないんですか。
  31. 野村一成

    説明員(野村一成君) アメリカにつきましてもよく訂正の要求を行っておりまして、現在、アメリカ政府の作成します地図の記載に当たりましては、北方領土を記載する場合には、一九四五年以来ソ連が占領、日本領有権を主張、というふうな付記、フットノートをする等の決定を行っております。アメリカの民間の地図会社も、今後でございますけれども、地図の改訂に当たりましては、今申しましたアメリカ政府決定を受け入れるというふうな態度であるというふうに承知しております。  以上でございます。
  32. 柳澤錬造

    柳澤錬造君 私は大臣からお聞きしたかったんだけれども、もう時間がないから。やっぱりこれこそ、いまだに日本の領土として認めないような色分けをしているということを、それでおまえら日米の信頼関係が何で保てるかと私はせめてこんなときぐらい堂々と言ってほしい。  それで、もう時間もあれだからもう一つ。これは外務省の方にやっていただかなけりゃと思うんだけれども、今度の法案の中で、国賓を輸送するのに航空機とかヘリコプターとかあるんです。私は結構なことだとは思う、だかう賛成なんですが、一つお聞きして、ぜひやってほしいことは、これは外務省関係だというからお聞きするんですけれども。  イランとイラクが戦争になって、あそこでもってああいう状態になって在外邦人が随分苦労して、バスでもって隣の国まで抜け出していって、そこへ助けに行ったわけです。ああいうときに、緊急に使える飛行機がないわけです、今日本は。だから、国賓なんかにそういう輸送に使う飛行機をお持ちになることは私は結構だと思うから、そのぐらいのことはこれだけの経済力のある日本としてはやっていただいて、同時に、そういう飛行機を持っておったら、在外邦人が緊急に避難しなきゃならぬような事態が起きたときには、そういう場合にもこの航空機は使えますという、そういうふうにしていただかないと、外国の国賓には使えますが、日本人が緊急避難しなきゃいかぬときに、いやそれはだめです、ではなりませんから、そういう場合にも使うような道は開いておきますという御返事を聞かせていただきたいと思うんですが、いかがです。
  33. 倉成正

    国務大臣倉成正君) 今委員が御提起になりました問題、自衛隊機による緊急時の在外邦人の救出の問題については、国会におけるいろいろな御議論や国民の世論等を踏まえつつ、政府全体として慎重に検討していくべき問題と心得ている次第でございます。自衛隊法等の問題がございますので、この問題については真剣に検討させていただきたいと思います。
  34. 柳澤錬造

    柳澤錬造君 時間がなくなったから、もうそれで、大臣慎重に検討で結構ですけれども、あのイランとイラクのときには何百人からの人間が大変な苦労をしたんです、幸いなことに、たしかあれはお隣のトルコかどこかが非常に便宜を図ってくれたからよかったですけれども。だから慎重に検討で結構ですけれども、そういう場合には実際にすぐ飛んでいって救出をしてこれるようなことだけは要望申し上げておきますから、頭の中に入れて、そういうときはすぐ対応していただきたいということ、これは要望だけ申し上げて終わります。
  35. 内藤功

    ○内藤功君 本年四月二日の当委員会で、当時の加藤防衛庁長官が私の質問に対しまして、有事における日米共同対処には二つのケースがある、一つは安保五条の施政権下有事、もう一つは施政権外、例えば公海上で日本船舶が攻撃された場合で、安保条約四条により協議をして共同対処があり得る、この二つのケースについてシーレーン防衛研究をしていると思うという趣旨の答弁をしております。外務省の御見解はどういう御見解でしょうか。
  36. 藤井宏昭

    政府委員藤井宏昭君) お答え申し上げます。  シーレーン防衛研究は、「日米防衛協力のための指針」に基づいて行われておる研究でございまして、その「日米防衛協力のための指針」は、五条事態を想定しておるわけでございます。加藤前防衛庁長官がおっしゃいましたように、我が国が個別的自衛権の行使がいかなる場合にできるかということ、この実態につきまして防衛庁長官が種々お述べになっておるわけでございますが、大別して二つの場合であると。一つは、我が国の施政権下にある領域に対する武力攻撃があった場合、もう一つは、我が国の施政権下の領域外におきましても、我が国の船舶、航空機等が組織的、計画的な攻撃を受けた場合ということでございまして、この二つの場合があるということをるる御説明なさっておるわけでございまして、シーレーン防衛研究が通常五条事態を想定しているということにつきましては、その後もこれは、本年四日十日、衆議院の内閣委員会におきまして、上原康助先生質問に対して政府委員答弁しているとおりでございます。
  37. 内藤功

    ○内藤功君 そうすると、加藤前長官見解と全く同じと伺っていいんですか。どうですか。
  38. 藤井宏昭

    政府委員藤井宏昭君) ただいま申し述べましたように、加藤前長官が御指摘になっている点が二つあるかと思いますけれども一つは、実態問題として我が国の個別的自衛権がいかなる場合に行使し得るかということでございます。それから、シーレーン防衛研究計画についてでございますけれども、シーレーン防衛研究計画につきましては、ただいま申し述べましたように、政府委員から四月十日にお答えしておりますように、通常、五条を想定しているということでございます。
  39. 内藤功

    ○内藤功君 そうすると、加藤前長官答弁では、この二つの場合、「二つのケースがあって、その日米有事につき、シーレーンの防衛につき研究しているという、そういう制度であろうと思います。」、明らかに加藤前長官答弁は五条、四条二つのケースについてシーレーン研究していると、こういう答弁ですが、これとあなたの答弁、五条をシーレーン研究でやっている、この点は違うという理解でよろしいですか。
  40. 藤井宏昭

    政府委員藤井宏昭君) 先ほど申し述べましたように、シーレーン研究と申しますものは、御存じのとおり「日米防衛協力のための指針」に基づいておるものでございまして、この指針は五条事態を通常前提としております。したがいまして、シーレーンの防衛研究は通常五条事態を想定していると思いますけれども、いわゆる四条事態、すなわち先ほど申し述べました我が国の船舶、航空機等が我が国の施政権下以外の場所で組織的、計画的な攻撃を受けたような場合、これについて全く排除しているのかどうかということでございますが、そういう場合を全く排除しているかと申しますと、それはあくまで研究の趣旨は五条事態であるということかと存じます。
  41. 内藤功

    ○内藤功君 趣旨ではなくて、加藤前長官の両方の場合について研究しているということについて、あなたは同じ見解かどうか、その点についてどうですか。
  42. 藤井宏昭

    政府委員藤井宏昭君) シーレーン防衛研究につきましても安保条約の運用関係がございますので、防衛庁から適時いろいろその進捗状況について通報を受けておりますけれども、私の方で申し述べていることはその趣旨でございまして、その実態について私の方からどのような実態であるかということについて申し述べることは困難かと思います。
  43. 内藤功

    ○内藤功君 そうすると、大体わかってきましたが、外務省としてはあくまでシーレーン研究は日米ガイドライン、安保五条事態、これで行われるべきであるということで、それ以上のことは外務省としてはわからないという答弁であることが私ははっきりしたと思うんですね。ところが、シーレーン防衛研究の中にそういう二つの研究が行われているという加藤前防衛庁長官見解とは明らかにここに認識の違いがあると私は見るんです。防衛局長はどうですか。
  44. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) どうも先生の御質問はすりかえがあるように私は思うわけでありますが、当時シーレーン研究について御質問がありまして、それは五条事態であるのか、あるいはいわゆる我が国施政権下以外の公海上で起きた場合を研究しているのかという御質問がありまして、私がるる御説明して、このシーレーン防衛研究は制服同士でやっておる研究でございますから、そのいきさつがどういう事態で、我が国の領域内に攻撃があって、それから後にそういう状況になったのか、あるいは洋上において、公海上においてそういうことが起きて、それがシーレーン防衛につながっているのかという、そういうそもそもの日本に対する、日本が個別的自衛権を行使する段階について特に仕分けをして研究しているものではなくて、もう既に洋上におけるいろいろな防衛作戦が行われている、そういうものの研究を行っているんですと、こういうお答えを申し上げたわけです。  それに対して先生防衛庁長官に言われたときに、防衛庁長官は、このシーレーン防衛研究でやっておる海上の防衛行動というものについて、それが起きるいきさつについては二つのものがあり得るということを申し上げただけであって、研究そのものが二つについてそういう自衛権行使に至る段階を研究しているものではないということは、私がもう最初にお答え申し上げたとおりでございます。
  45. 内藤功

    ○内藤功君 これはもう議事録ではっきり残っているわけです。そのために議事録があるのです。加藤前長官は「二つのケースがあって、その日米有事につき、シーレーンの防衛につき研究している」とはっきり言っているんですね。私は外務省の方が正論だと思うのは、シーレーン研究はガイドラインの枠内、五条の前提だと、こう言っているんですから、この間には明らかな違いがあるというふうに私は思います。これは、いろいろ防衛局長言われますけれども、議事録ではっきりしているという問題です。こういう不統一の問題というものがあって行われている。これはなぜか。本来の建前と違うところを日米の研究の中でやっていると、必ずそういうふうな矛盾が起きてくると私は思うんですね。もう私はこれは答弁求めません。答弁したって同じことなんです。そんな答弁幾ら聞いたって同じなんだ。建前と実際やっていることが違うからだ。
  46. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) ただいま先生議事録のことを申されましたから、私も議事録を読ましていただきますが、その加藤長官の御答弁のある前に、先生から御質問があったわけです。つまり「日本の領域には武力攻撃はない、しかし公海上で攻撃があると、こういう場合どうですか。これはやりますか、そういう研究は。やれますか。」と、こういう御質問があったわけです。  それに対して私は「もう既に我が国有事になっておって、そこで我が国と米側とが共同対処行動するときの状況をやっておるわけでございますから、制服の人にその辺の憲法上どこまでできるかとかそういう研究を私どもさせるわけございませんので、」云々と、こういうふうにお答え申し上げて、きょうと全く同じことを申し上げておるわけであります。  そういった一連の、前段の御質問と答えがあった後の答えでありますので、その辺は最後のところをつまみ食いされると大変困るということを申し上げておるわけであります。
  47. 内藤功

    ○内藤功君 最後のところが大臣なんですから。あなたは局長なんです。最後のところに大臣が出てきて、大臣は明確に、二つのケースがあって二つ研究していると、こう言っているんですから、私はもう会議録を読めば読むほど、あなたが答弁すればするほどおかしくなるだけだよ。私はそういうふうに申し上げておきたいんです。引き続きこれは、徹底的に予算委員会その他でもこの違いは明らかにしていきたいと思っております。  それで局長、それなら聞きますけれども、この一月七日から三日間、ハワイで第十七回日米安保事務レベル協議が行われるんですか。
  48. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 事務レベル協議につきましては、これは外務省アメリカ側と調整されてお決めになることでありまして、私どもとしてはまだいつやるということについては聞いておりません。
  49. 内藤功

    ○内藤功君 外務省、どうですか。
  50. 藤井宏昭

    政府委員藤井宏昭君) 一月に事務レベル協議を行う可能性は全く排除いたしませんけれども、まだ日にち等についてアメリカ側と合意したわけではございません。
  51. 内藤功

    ○内藤功君 そこで、このシーレーン防衛研究の文書ですが、今月末にこれが日米間で調印を見る予定であると、こういうことも私は報道で聞いておりますが、この点はいかがですか。
  52. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) これは先般、先生の御質問に対して私がお答え申し上げたとおり、もう現在日米間でこのシーレーン防衛研究についてはまとめの段階に入っておるということでございますので、これができ次第、当然のことながら大臣、総理等に御報告をして、調印をするという運びになろうかと思います。
  53. 内藤功

    ○内藤功君 調印されれば、一月の日米安保協議には当然時間的に報告をすると、こういう段取りになりますか。
  54. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 事務レベル協議の段取りにつきましては、先ほどお答え申し上げたとおり、日付も何をやるかという内容もまだ決まっておりませんので、現在どうなるかということは申し上げる段階にございません。
  55. 内藤功

    ○内藤功君 このシーレーンの防衛研究の中で、中東方面で発生した緊急事態が北東アジア、北西太平洋地域に拡大をして我が国に対する武力侵攻に発展してくる事態、こういうものをシナリオとして想定されているかどうか、この点はいかがですか。
  56. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 先日来申し上げているように、研究の内容を具体的に申し上げることは、いろいろの問題、差し支えがありますので差し控えさしていただきたいと申し上げておるわけであります。いずれにしましても、このシーレーン防衛研究といいますのは、どういう状況から発展していくかというようなシナリオが重要なのではなくて、シーレーン防衛能力を判定するためのものであるということを御理解いただきたいと思います。
  57. 内藤功

    ○内藤功君 過般来、私がこの点をある意味では執拗に聞いておりますのは、集団自衛権の行使、個別自衛権の枠の逸脱という問題があるのではないかと、この点をやはり国権の最高機関であり、シビリアンコントロールの最高の機関である国会ではっきりさせるという意味で聞いているんであります。ところが、あなたはこの中に一歩も入ろうとしない。甚だ遺憾な態度だ。防衛二法を通してくださいという防衛庁の態度として甚だ遺憾だということを私は声を大にして申し上げておきたいと思うんです。  時間がありませんから、シーレーンに関連をして海上自衛隊のイージス艦、その他新造予定の艦船、新造艦にいわゆるCBR対策、EMP効果の防止対策がとられている、こういうふうに聞いておりますが、その内容とその理由を御説明願いたい。
  58. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) イージス艦等については、新しい船で自衛隊が持っておりませんので私承知をいたしておりませんが、例えば艦艇等については従来から、汚染があったときにそれを排除するための水洗というようなシステム、そういったものがついておることは事実でございます。  また、最近我が国が導入しているもの、例えばペトリオットとかこの種の各種の新しい装備がございますが、この種の装備については、古い時代のものに比べれば、先生の言われたパルスといいますか、そういう衝撃波に対する防御能力もまさっておるというように聞いております。
  59. 岩本政光

    委員長岩本政光君) 時間が参りました。
  60. 内藤功

    ○内藤功君 最後の質問になりますが……。
  61. 岩本政光

    委員長岩本政光君) 内藤委員、時間が来ておりますので簡明に一言だけ。
  62. 内藤功

    ○内藤功君 私は、まずこれは非常に重大な内容だと思うんですね。いわゆる与圧装置とかフィルターとかそれから放射能センサー、それから電子機器の防止対策、まさにこれは核戦闘参加を前提としたものじゃないですか。これは本当にけしからぬと思うんです。巨額の予算をこういうところに用いることは、今の日本の非核三原則に全く反するということを私は指摘をして、私の質問を終わります。
  63. 岩本政光

    委員長岩本政光君) 午前の質疑はこの程度とし、午後一時まで休憩いたします。    午前十一時十二分休憩      ─────・─────    午後一時開会
  64. 岩本政光

    委員長岩本政光君) ただいまから内閣委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより内閣総理大臣に対する質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  65. 野田哲

    ○野田哲君 防衛二法の審議に関連をいたしまして、総合安全保障という立場から総理に何点かお伺いをいたしたいと思います。  まず最初に、最近アメリカで非常に大きな問題になっている、そして世界の注目を浴びている、イランゲートとかいろんな呼び名があるようでありますけれども、ホワイトハウスの展開をした対イラン、対ニカラグアの反政府ゲリラに対する秘密外交工作、このことに関連をして、まず中曽根総理に二、三お伺いをいたしたいと思います。  今問題になっているのは、レバノンで人質になった米人の釈放のために、イランの影響力の行使を求めるために秘密裏にアメリカが武器を提供した、そしてその代金をニカラグアの反政府ゲリラの支援に充てた、こういう驚くべき秘密外交交渉でありますけれども中曽根総理がこの問題に関連をして二回にわたってイランに特使を派遣してその仲介役を果たした、こういう報道がアメリカやあるいはイラン、ヨーロッパから寄せられているわけであります。  そこで、まず伺いたい点は、アメリカからはいつどのような外交チャネルを通じてどういう要請が中曽根総理に行われたのか。まず、その点からお伺いをいたします。
  66. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) まず、アメリカとイランの間を仲介したという事実は全くありません。それから、この問題に関しましてアメリカから特に強い要請をいただいて行ったということももちろんない。人道的観点からアメリカの捕虜を含め、人質を含め、当時はフランス人もおりましたし、そういう人質の解放について親書の中の一部に述べたということはあります。  我が国は、中東問題については非常に深い関心を従来から持っておりまして、イラン、イラク双方に対して我々はさまざまな接触を今までやってきたわけであります。特に中東紛争の解決あるいはイラン・イラク戦争の終結に向かって積極外交を展開してきたのは御承知のとおりであります。その一環といたしまして、昨年七月にラフサンジャニ国会議長を招待いたしましておいでいただいたわけです。  その際に、いろいろな国際関係及び二国間問題等について私は話をいたしましたが、特にイラン・イラク戦争の終結あるいは国際テロの排除、防圧問題、それから人質の釈放、こういう問題について言及したことはもとよりでございます。それで、ラフサンジャニ議長の見解も伺いました。そしてその後、イランに対しましてその会談等にも基づきまして、ちょうど中山元大使、中東調査会理事長でしたか、それがイランへ行くという、そういうことがありまして親書を託したことは事実でありますが、これはアメリカから頼まれてやったというものではなくして、一般的に人道問題解決という考えからイラン・イラク戦争の終結あるいは人質、国際テロ等の問題について言及もして、そして親書を託したと、そういう事実はあるんです。しかし、それはアメリカが特に頼んで今度の武器輸出の問題等と絡んでそういうことが行われたということは全くございません。我が国独自の判断、今までの中東やイラン・イラク戦争の終結、国際テロ、人質解放という問題のその延長線上で、我が国の独自の判断に基づいてこれは行ったものでございます。  それと、それから藤尾政調会長が自民党の政調会長としてイラン、イラクへ参りましたが、そのときもまた同じように、イラン・イラク戦争や人質問題等々についてもいろいろ頼んでおいたわけでございます。その前後して三宅中近東アフリカ局長が昨年はイラクへ一回、イランヘ二回ぐらい行っております。これはやはりイラン、イラク双方と情報も交換するし、また我が方の考えも伝える、そういうことで積極的に我々は動いてきておる。そういう我々の積極的外交活動の一環である、そういうふうにお考え願えれば幸いであると思っております。  先般、アメリカやあるいはイラン側の報道がなされまして、武器輸出問題等が発表されまして非常にびっくりした次第でございまして、そういうものとの牽連関係は一切ございません。
  67. 野田哲

    ○野田哲君 今総理のおっしゃるような形での趣旨であれば、何も私は正規の外交ルートの頭越しに秘密の特使、こういう形のものをイランに派遣される必要はないんじゃないか、こういうふうに思うわけであります。藤尾政調会長、私も承知をしております、イランとの友好議員連盟の会長をやっていらっしゃるわけでありますから、この方が行かれる。このことには意味もあると思うわけでありますけれども、特に総理が昨年の八月、中山さんを総理の特使として派遣をする、それからさらに、藤尾さんが行かれるときに親書を託された。  そういう形で、新聞の報道によると、特に秘密を必要とするために外務省のルートを通じないで親書を持たせて特使を派遣したんだ、こういうふうに報道されておりますが、今総理のおっしゃったように、別にアメリカに頼まれてやったものでもないし、人道的な見地から人質の釈放などについてイランの議長が来日の際にも話をし、さらにイランに要請をした親善を託した。こういうことであれば何も秘密の特使を派遣する、こういう必要はなかったんじゃないでしょうか、その点いかがですか。
  68. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これはちゃんと外務省、外務事務次官が局長とも連絡をとって、現地の大使とも連絡をとって、現地の大使が向こうとアポイントメントをとって藤尾君にしても中山君にしても会った。秘密の特使というようなそういう性格のものでは別にありません。
  69. 野田哲

    ○野田哲君 それならば、総理がこの二人に託された親書の内容についてイラン側でこれを発表したからといって、特にこれに対して日本側が不快感を表明したり、あるいは大使が日本政府に、外務大臣に会って陳謝をする、こういうやりとりは必要ないんじゃないかと思いますが、親書を託されたことの内容には公表をはばかられるようなことがあったから、日本政府も不快感を表明し、向こうも陳謝をしてきたのではないのですか。一体この親書というのはどういう趣旨のことが書かれていたんですか。
  70. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これは七月、八月でしたか、ラフサンジャニ議長と私との会談に基づいて、ラフサンジャニ議長も人質問題、テロ問題については非常に重大関心を持っており、人質の釈放にも努力する、また、国際テロについては防圧に協力すると、そういう話もありまして、そういうような話の結果もあって、中山君が行くというから、じゃ親書を託そう。その後の話といいますか、そういう意味もありまして、イラン・イラク戦争の問題、あるいはアメリカ人、フランス人等々の人質の釈放の問題等々、たしかあるいはIJPCもありましたかどうか、今記憶は定かでありませんが、二国間問題、そういうような問題について手紙を書いたということであります。  ただ、我々の友邦であるアメリカ及びフランスの国民が人質になっており、両国とも人質釈放には非常に熱心である。そういう話はもとより我々も聞いておりました。TWAの飛行機の問題についても非常に痛ましい事件であると我々思っておったわけですから、そういう人道上の考えに基づいて我々独自の判断を持って、今までの日本とイランとの友好関係にかんがみてそういう手紙も出した、言及もした、そういうことであります。  ただ、両方の首相あるいは議長が交換した親書というものは、片っ方に無断で公表すべきということは外交慣例に反するんですね。では、ラフサンジャニさんから私のところに来た返事をここで黙って出していいか。内容は別の問題です、いい、悪いとか。しかし、それを外交慣例を破ってやるということは私は不適当ではないか。これは念のために外務省が注意をした、そういうことではないかと思います。
  71. 野田哲

    ○野田哲君 新聞の報道によりますと、日本の仲介は成功した、こういうことを伝えている新聞があります。イランのある外交官の話でありますけれども、それによりますと、その成功は日本が同問題に極めて深く関与をしていたことを示すものとして注目をされる、こういうふうに述べております。さらに、この仲介工作を通じて日本がイランの意向をアメリカに伝え、イラン向けに武器供与が行われたと見られる、こういうふうにあるイランの外交官とのインタビューを伝えています。  ちょうどこの問題の具体化したのは昨年の八月でありまして、中山さんが総理の特使としてイランに派遣された時期とタイミングとしては一致をしているわけであります。そしてさらに、きのうの夕刊各紙一面トップでニューヨークからの報道を伝えております。アメリカのニューズウイークの最新号がアメリカ政府筋からの情報として伝えたところとして、「深刻なスキャンダルとなった米・イラン秘密交渉のきっかけは、昨年七月初めイランのハシェミ・ラフサンジャニ国会議長が訪日した際、中曽根首相を通じて手渡された同議長あてのレーガン米大統領親書だった、という。」こういうふうな報道。これは読売のきのうの夕刊でありますけれども、毎日の夕刊も同じように、やはりこのニューズウイークの報道をトップで伝えているわけであります。これによると、総理とラフサンジャニ議長との東京における会談、これが非常に大きなきっかけになった、こういうふうに伝えているわけであります。もしこれが事実であるとするならば、このイランゲート事件は日本中曽根総理がその片棒を担いできた、こういうことになるわけであります。こういう一連の報道についての総理見解を伺いたいと思います。
  72. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ラフサンジャニ議長が日本に来たときに、私が仲介してアメリカ大統領の手紙を渡したとかメッセージを渡したということは全くありません。その記事は間違いです。先ほど申し上げたとおり、アメリカあるいはフランスの政府は自国民の人質については非常に心痛もしておった。それはよく知っておりますし、我々としても、サミットでもよく会ったり話したり、人質問題やあるいは国際テロの問題についてはよく話もしてきているわけであります。情報交換もやろうということになってきておるわけです。  そういういろいろいきさつもあって、友邦の国民がそういう形になって困っているという場合には助け合う、そういう精神から我々独自の判断で今のような外交的な動作を行った。それも今申し上げたように、イラン・イラク戦争の終結とかそのほかの問題との込みの中でそういうことをやった、そういうことでございます。
  73. 野田哲

    ○野田哲君 総理と私とは与党、野党、総理と野党の立場ということで外交、防衛の問題では何回も論争をしているわけですが、日本総理大臣の立場というものがこういう形でアメリカで大々的に報道されるということは、私は与党、野党にかかわりなく、日本の一国会議員として大変遺憾に思うわけです。  そして今、総理がここで述べられた趣旨のように、総理が善意でイランに対して人質の釈放の問題とか、あるいは中東の平和の問題についてラフサンジャニ議長にいろいろ要請をされた。ところが、それと時期を同じくしてアメリカ側からイランに対して、今までのアメリカがとってきた政策とは全く相反する形で武器と引きかえに人質の釈放を要求し、そしてその代金を今度はニカラグアの反政府ゲリラの支援に充てている、こういう汚い手段がとられていた。そしてしかも、それにあたかも国際的に見ると日本総理がかかわっていたのではないか、こういう汚名をかぶせられるようなアメリカのやり方、これに対しては総理も、これは日本の国益、信頼を確保する上からも、きちっとアメリカのこのような一連の動向や報道に対しては対処されるべきではないでしょうか。このような形で日本総理大臣を巻き込んでいることについての総理の所見を伺いたいと思うんです。
  74. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 真実の前には与党も野党もないと思うんです。今のようなニューズウイークですか、ここに報道されているような事実は全くないのでありますから、ここで明らかにいたしておきます。これは恐らく世界に報道として流れるだろうと思いますし、もし必要あらば正式にそういう事実はないという措置をとっても結構でございます。
  75. 野田哲

    ○野田哲君 この問題は、またアメリカで解明の調査が進むと思うので、何か日本にかかわるようなことがあれば、また改めて総理見解も承りたいと思います。  次は、防衛予算の問題について防衛庁長官総理から見解を伺いたいと思います。  防衛庁の方では昭和六十二年度の予算編成、概算要求で三兆五千五百四十一億円、伸び率で六・三%、こういう形になっているというふうに伺っているわけであります。さらに新聞などで報道されるところによりますと、これに三百億円ぐらい上乗せをしたものを要求される、こういう報道があるわけでありますが、まず長官、そういうことでやっておられるのかどうか伺いたいと思います。
  76. 栗原祐幸

    国務大臣栗原祐幸君) 概算要求で前年度比六・三%、これは要求してございます。その上に三百億ぐらいのものというのはどういうことを意味するかわかりませんが、今後の状況いかんによりましては、この概算要求とは別の案件についてお願いをするということもあり得ると思います。
  77. 野田哲

    ○野田哲君 別の案件とおっしゃったわけで、私にも大体推定はつくわけですが、金額的には、私が具体的な数字を挙げたそういう金額を大体見込んでおられるわけですか。
  78. 栗原祐幸

    国務大臣栗原祐幸君) そういう具体的な数字はまだ決めておりません。
  79. 野田哲

    ○野田哲君 この概算要求の三兆五千五百四十一億円、六・三%の伸び、これはもう明らかに今の経済動向、特に六十一年度の上期から下期へ向かう経済動向を見て、恐らく間もなく昭和六十二年度の経済見通しも経企庁の方で策定をされると思うわけでありますが、今の景気動向から見ると、GNPの一%以内に防衛費をおさめる、そういう大前提というものは全く長官の、あるいは防衛庁の予算要求の考え方には念頭にない。三兆五千五百四十一億円でも恐らくこれはGNPの一%を超えることになるだろうと思う。それにさらに上乗せをする。こういうことではもう長官を初めとした防衛庁の皆さんには、防衛費はGNPの一%以内、こういう十年前からずっと政府防衛予算の前提として考えてこられた制約、これを全くもう念頭から取り去ってしまっている、こういうふうに受けとめられるわけですが、その点はいかがですか。
  80. 栗原祐幸

    国務大臣栗原祐幸君) 三木内閣のときに決定いたしました防衛費の一%の枠というものは念頭にございます。これは守ってまいりたいということできておるわけです。ただ、これは私が毎々申し上げているとおり、防衛庁立場からいたしますと、防衛計画大綱水準をできるだけ早く達成したい、そのために中期防衛力整備計画をつくって、その第二年度として必要な所要の額というものはどうしても確保しなければならない。そういうことで要求をしているわけです。  ただ、最後の決定というのは、予算を編成するときに決められる。そのときの決定に従うことはこれは当然でございますけれども防衛庁として必要なものはぜひいただきたい、この要求をすることは正しいことだと考えております。
  81. 野田哲

    ○野田哲君 防衛計画大綱には、大綱策定の基本的な考え方として、そのときどきの経済財政の事情、それから国内諸施策との調和、これが明確にうたってあるわけです。そして、それの具体的な数字としての目安が一%、こういうことに三木内閣の当時策定されたと思うんですね。ですから、大綱の中のいわゆる装備とか人員とかそれだけではなくて、やはり大綱策定の前提としての財政的な事情、経済の事情、諸施策との調和、こういうことも当然念頭に置かれなければならないと思うんですが、その点は長官いかがですか。
  82. 栗原祐幸

    国務大臣栗原祐幸君) ですから、それは予算を決める最後の段階でいろいろの要素で決められる、決められたものには従うのは当然である、こう思っているんです。  ただ、ここで申し上げたいことは、私は、日本防衛力の整備というのは必要最小限度の防衛力の整備でやるということでこれは諸外国にも言うているわけですよ。西側陣営の一員として我が国は、専守防衛で自分としてできるだけのことはやるということを言っているわけですね。ですから、日本の財政事情その他も必要でございまするけれども、国際環境の中で日本が果たすべき実質的な役割についても同時に考えないといけない、こういう考え方でございます。
  83. 野田哲

    ○野田哲君 昭和六十二年度の防衛費の扱いにつきましては、去年、おととしの例を見ても最終的には総理の裁断、こういうことで決定をされると思うわけでありますが、総理としては、その裁断に当たっては五十一年の三木内閣の決定、たしか総理はそのときは与党の大幹事長をなさっておられたと思います。この防衛費はGNPの一%以内、こういう決定、そして、大綱策定の理念になっている経済財政状況を考慮し、国内諸施策との調和を図る、こういう基本的な立場をとって裁断をされるべきだと思いますが、総理は、ことしの場合、防衛費の取り扱いについてはどうお考えになっておられますか。
  84. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 予算編成の際に、防衛費につきましては私が最終的に判断した場合もあり、あるいは三役のレベルで決まった場合もございまして、いろいろなケースがございます。いずれにせよ、三木内閣のあの閣議決定というものは守りたいと考えております。
  85. 野田哲

    ○野田哲君 栗原長官に別の問題で伺いたいと思いますが、最近ときどきマスコミなどにも紹介をされて話題になるわけでありますけれども、極東第二戦線、こういう考え方といいますか、戦略がアメリカで動いている。アメリカの国務省のソロモン政策企画局長が、ことしの六月にこれを次のように発表しております。「戦争が起きれば戦場はソ連側が望む場所だけに限定されないことを、ソ連に思い知らせなければならないのである。我々はアジアで第二の戦線を開く準備を怠ってはならない。」、「この地域の軍事バランスについて行われたどの評価を見ても、アジアの状況は、いまなお米国にやや優位という結論になるだろう。」、そして「我々には、日本、韓国、タイ、フィリピン、オーストラリアという強力な同盟国がある。」こういうことで、ヨーロッパで東西の間に軍事的な衝突が起きれば、それに呼応してアジアにおいても第二戦線を形成していく。その場合は、日本どもその同盟国の一員だ、こう言っているわけでありますけれども、この点は防衛庁としてはどのようにアメリカから意思表示を受け、検討されておられるのか、まずその点を伺いたいと思うんです。
  86. 瀬木博基

    政府委員瀬木博基君) 当委員会におきましてもかねてからお答え申しておるところでございますけれども、米国の国防政策の基本は抑止でございます。ただいま御指摘にありましたソロモン局長の講演並びにそのもとになっておりますワトキンズ前海軍作戦部長の発言におきましても、基本は抑止であるということをはっきり書いております。  このソロモン局長並びにそのもとになっております論文のねらいといたしますところは、ソ連が誘惑に駆られて外に脅威を持って侵略をするということがあってはならない。その侵略を抑止するためには、自分の好むところ、好むときに侵略ができないということをはっきり示すことが必要である。こういう見地から、アメリカとしては他の侵略が行われるようなことがあっても、他の場所で反撃する能力もあるのだということを示す、これが抑止の最大の理由であるということが書かれております。これがアメリカのねらいであると考えております。
  87. 野田哲

    ○野田哲君 能力を示す、こういうことだけにとどまらないような状態に動いていったときには、一体どうするおつもりなんですか。
  88. 瀬木博基

    政府委員瀬木博基君) ただいま申し上げましたように、まさに抑止というのは、抑止が理論上破れるようなことがあっても、これがそれに対して第三の政策、そういうものの備えがあるということで何重にもわたって抑止が働くということが示される、これが大事なんだろうと思います。  我が国につきましては、いずれにいたしましても、我が国の憲法その他の関連法規、日米安全保障条約等の法規に従った国策に沿って国益にのっとった防衛政策をとる、これは当然のことであると思います。
  89. 野田哲

    ○野田哲君 総理は、今の私と参事官とのやりとりをお聞きになっていると思うんですが、防衛の最高責任者である総理としては、アメリカ考えているようなこの極東第二戦線論、つまりヨーロッパとかあるいは中近東とか、そういう地域で東西間の衝突が起きたときには、極東において第二戦線を構築していくという考え方、今参事官も述べたように、こういうソロモン政策企画局長が述べたような形での極東第二戦線論ということは、日本の憲法の九条、特に集団的自衛権には加わらない、こういう立場からして、幾らアメリカがこのような構想を持ったとしても日本は全く関与しない、こういう立場であろうと思うんですが、総理のお考えはいかがでしょうか。
  90. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) そのとおりであります。日本防衛は、憲法、国防の基本方針等、あるいは非核三原則、専守防衛と、こういう組み立てでできておるのでありまして、我が国が侵略されてきたという場合にはこれを排除する。それが自衛でありますから、そういう我が国の領域が侵略されない、そういうような事態におきまして、いわゆる第二戦線とかなんとかに関係するというようなことは考えられないことであります。
  91. 野田哲

    ○野田哲君 総理長官は今述べられたようなお考えであっても、防衛庁の庁内にこの極東第二戦線論というアメリカの構想と相通じるような防衛論があるとするならば、私はやはり非常に重要なことだと思うんです。  防衛庁北方前方防衛論、こういう防衛計画といいますか防衛論、これがあるわけであります。ここに私は現物を持っているわけでありますけれども、こういうふうに書いてあるわけです。ヨーロッパや南西アジアにおける東西間の戦争の抑止にいかに貢献するかということが、日本の安全保障政策の重要な考慮の対象になってきている。「有事にとり得る防衛態勢によっては、地域の戦略的連結を逆用して、欧州戦争や南西アジア戦争の抑止に貢献することができる。そのような防衛態勢が、北方前方防衛態勢である。北方前方防衛態勢は、緒戦から海峡地域の確保を目指すものである。」こういうふうな内容になっているわけであります。つまり、ヨーロッパや南西アジアの戦争、この抑止に貢献をするための日本北方前方防衛態勢をとれ、その第一番にやることは海峡の確保、つまり海峡封鎖、これを目指すことである、こういう庁内に論文がある。  これは、今総理栗原長官の述べられた趣旨とは全く趣を異にする、基本的なスタンスが違う、こういうふうに思うわけですが、長官、こういう考え方が防衛庁内にあるということについてどのような御所見をお持ちですか。
  92. 栗原祐幸

    国務大臣栗原祐幸君) 私も、防衛大学の助教授がそういう論文を書いておるということは承知しております。ただ、この論文というのは我が国防衛政策そのものを批判しておる、あるいは防衛政策に対してそれはけしからぬことだというふうに、直接的にこれは変えなきゃならぬという趣旨のものであれば、これはえらいことだと思うんです。これは許されない。だけれども、学術的見地からいろいろ所見を述べるという問題につきましては、いわゆる言論の自由という立場から、これをどのように取り扱うべきかという問題もあろうと思うんです。  いずれにいたしましても、これは防衛の政策ではないわけですから、そういう意味合いではこれについてコメントする立場にないというふうに考えます。
  93. 野田哲

    ○野田哲君 長官は言論の自由ということをおっしゃったわけですが、妙なところに言論の自由を強調されると思うんですよ。一般の国民が防衛について何を述べようとこれは自由であります。しかし、これを書いた人は紛れもない防衛庁の職員であるわけです。防衛庁の職員である以上は、やはりその論文というものが日本の国の方針、防衛政策、それを踏み外したものをいかに言論の自由だからといって世間に問う、こういうことは私は許されることではないと思うし、しかもこの人は教育に携わる立場の人ですよ。そして学術的な論文だとおっしゃるけれども、これは最優秀ということで表彰を受けているわけですね。表彰受けているんです、この論文は。これは、私は今の長官答弁で軽々に片づけられるようなことではないと思うんです。表彰を受けたということは、やはりこういう考え方が評価をされている、こういうことなんです。  総理は、庁内にそういう考え方があるとすれば、防衛の最高責任者としてどのような御所見をお持ちでしょうか。
  94. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 学術論文というものは多様性があっていいと思うんです。いろいろな発想でいろいろなアイデアが出るでしょうが、それが防衛庁あるいは政府が正式政策として決定する場合は、今まで申し上げたような制約のもとに政府が責任を持って行う。そういうことで、それ以外に学者が論文を発表するということを一々干渉がましいことはやらぬ方が賢明だろうと思います。
  95. 野田哲

    ○野田哲君 内容が適切であるかどうかということの見解を伺っているんです。
  96. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 今聞いた範囲内におきましては、我々の政府の方針とは、採用している方針とは若干ニュアンスが異なる、そう思っております。
  97. 野田哲

    ○野田哲君 時間が参りましたので最後に、先般の予算委員会総理とSDIの問題でやりとりをしたわけですけれども、時間が参りまして総理に重ねての質問ができなかったので、この機会に伺っておきたいと思うんです。  私は、十一月十一日に予算委員会でSDIの問題について総理見解を伺いました。まだ総理も日も間もないことですから御記憶であろうと思うんです。私が問題にした点というのは、政府はSDIは非核の兵器だと国民に説明しているが、SDIは核爆発のエネルギーを破壊力として使うことになっている、だからこれは核兵器ではないんですかと、こういうふうに繰り返し指摘をしたわけなんです。総理はこれに対して、「エックス線レーザー発出の部分、これは全体の体系の中の一つの部分でありますけれども、その小さな部分といえどもやはり我々は関心は持ってやるべきであると思います。」「研究がどういうふうに進むか、でき上がりがどういうふうになるか、そういう点についてやはり関心を持っていかなきゃならぬ、私はそう思っております。」こういうふうに答えられているわけです。そこで私が総理に対して、「非核でないということが明確になれば手を引きますか。核を破壊力に使うということが明確になったならば手を引きますか、」こういうふうに伺ったところ、総理の方では、「従来の我々の解釈と違う、直接それが殺傷に使われるというような場合にはもちろん手を引きます。」こういうふうに答えておられるわけです。翌日の新聞もそういう形で殺傷に使われれば手を引く、こういうふうな報道をしているわけなんです。  私は、SDIの問題ですから、破壊力という言葉を使って総理見解を伺ったわけです。それに対して総理は、殺傷に使われる場合はと、こういうことで答えておられるんですが、そこのところは破壊も殺傷も含めてということで理解していいわけですか。
  98. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) その点は注意してお答え申し上げたのでありまして、原子力基本法をつくったとき核兵器とは何ぞや、そういう定義で随分検討もしまして、あのころは松前さんが社会党からも出ておられましたが、結局核爆発あるいは水爆の爆発、そういうものが直接人間の殺傷に使われる、そういう場合にはこれは核兵器と考えていい。しかし、それが間接である場合、例えば原子力推進の推進力に使われるというような場合、それが普遍化した場合には我々も原子力潜水艦を持てる、そういう定義をあのときつくったわけです。  そういう意味におきまして直接、間接ということが非常に大事な要素になっておったわけで、ですから、直接爆発というものが殺傷に使われる場合は、それは核兵器として考えますから、その場合には手を引きますと、そういう意味で申し上げたわけです。しかし、これからSDIというものがどういうふうに展開していくか、まだ未知の情勢でございますから、最初に野田先生がおっしゃったように、ある余裕を持った答弁もしておいたわけでございます。  ですから、今後どういうふうになるか、最終的に仕上げの状態を見て判断をすることでありますが、それまでの間は直接、間接ということが、やはり非常に重要なファクターであると自分は考えております。
  99. 野田哲

    ○野田哲君 時間が参りましたので、また次の宿題にいたします。
  100. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 二、三お伺いしたいと思います。  国の外交、防衛、こういうふうな政策を推進をするためには、何といいましても国民の信頼、あるいは国民の協力、こういうものが私は大変大事だと思いますけれども総理いかがですか。
  101. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 全く同感でございます。
  102. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 もう一つは、我々政治に携わる者といたしまして、約束を守るということは大変大事なことだと思います。そういうふうな意味で国民と交わした約束を守る、これは非常に大事なことだと思いますけれども、いかがですか。
  103. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 全く同感であります。
  104. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 きょうはそういう観点から総理二つお伺いしたいと思います。  まず第一点は、大型間接税の問題であります。  これは総理が何回もおっしゃっておりますように、また、委員会やいろんなところでも随分議論してまいりました。「国民や自民党員が反対する大型間接税と称されるようなものをやる考えはない。」と、総理は同日選挙に向けての東京都での決起大会でおっしゃっておられるわけであります。そういう点からいきますと、今回自民党税調で導入を決めた売上税、こういうふうな名前になっておりますけれども、売上税、あるいは日本型消費税とも言われておりますけれども、これは総理が国民に約束した大型間接税そのものじゃないか、こういうふうな論調もいろんなマスコミの皆さん方の中にも出ているわけです。総理はそうじゃないとはおっしゃっておりますけれども、私は国民の立場から見ればこれはもう明らかに国民と約束したことと違う、こういうふうに国民は受け取っているんではないかと思いますけれども総理のお考えを初めにお伺いしたい。
  105. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 公約に違反していないと思います。先般、自民党がこの案を採用する際にも総務会において満場一致で決められて、公約に違反していないと、そういう認定で行われたものであります。私も政府税調及び党税調に対して、いろいろ税制改革をやる際には、私は選挙中こういう公約をしているからそれに違反しないようにやってくださいとお願いをして、そのとおりやっていただいていると考えております。  大型間接税というものについて国会で私は何遍も答弁しておりますが、一番皆さんに御記憶願っておるのは、矢野書記長あるいは民社党の大内書記長に対する答弁で、多段階、包括的、網羅的、普遍的で大型の消費税を投網をかけるような形で余すところなく取る、そういうものはやりません、やりたくない、そういうふうに答えています。  今回のいわゆる売上税というものは一億円以下の売り上げの商店等については例外として取らない。大体日本の企業の八七%は例外で納めなくてもいいという形になります。それから、対象の品物もこれから決まるわけでありますが、生活必需品であるとかあるいは病気の関係の医療品であるとかあるいは教育資材であるとか、恐らくそういうものは除かれるであろうと予想しております。そういういろんな面を考えてみますと、これは多段階云々と申し上げたいわゆる大型間接税ではない、このように考えておる次第です。
  106. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 総理、私はその説明は全く当たっていないと思っております。といいますのは、この総決起大会での報道の中身を私は全部読んだわけじゃございませんけれども、少なくとも大型間接税そのものをそのままおっしゃっているわけじゃないんです、大型間接税と称されるようなもの、とおっしゃっておりますね、そのときの発言は。少なくとも国民はそういう細かいことはわからないわけですよ。そういうような点からいきますと、明らかに私はこれは公約に違反している、こういうふうに受け取らざるを得ないわけです。  そこで、今の総理の発言に対しても後ほどもう一点お伺いしたいと思いますが、これは「自民税調 最後の攻防」といって発言の中身が詳細に報道されておりますね。この新聞報道がそのまま全部だとは私は思いませんが、そのポイントのところは、こういうような論争があるんです。ある方が「一つだけ聞きたい。この基本方針では、首相が公約違反を犯したと山中会長は考えるか、考えないか。それだけを聞きたい。」と、こう言うておるわけです。それで山中会長は、総理が「うそをついたと思う。公約違反であることは認めざるを得ない。」と、はっきりこうおっしゃっているわけです。「うそをついたと思う。」と。「公約違反であることは認めざるを得ない。」と。そうしたら、これに対して相当いろんな反論が出て、そんなのじゃ困るとかごちゃごちゃ出てきまして、最終的にまた「山中会長発言は誠に残念だ。我々は首相が公約違反にならないよう苦労して今日まで議論してきた。党を愛する山中会長が、自分たちの総理・総裁が公約違反したというのは問題発言だ。訂正してほしい。」と、こう言っているんです。そうしたら山中会長が「公約違反したことは事実である。」と、またこう言うておるわけです。そしてまた、その後の論争はいろいろあるんでしょう。あるんでしょうが、会長が提出したやつの中身は修正してないわけですから、山中会長ですらこれだけごちゃごちゃおっしゃって、これはもう明らかに「公約違反」だとおっしゃっているわけです。  総理、純粋に考えて、これは総理は幾ら公約違反でないと言っても、国民の立場から見れば明らかに公約違反になるんじゃないか、私はそう思うんですけれども、もう一遍、どうでしょうか。
  107. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 今お引きになりましたのは審議過程の一こまでありまして、その後があるわけです。その後では山中会長は、公約に違反しないようにつくっていこう、そういうことも言いまして、そしてその後の記者会見等におきましては、公約には違反してない、すれすれのところだと。すれすれのところで違反していない、そういうことですから、やはり外角すれすれのストライクじゃないか、そう思います。
  108. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 いや、それは総理、全く詭弁でありまして、山中さんがみんなからさんざんやり込められて丸め込まれたと。丸め込まれる前には本人もこういうふうに純粋に私は発言していたんじゃないかと思います。  さらに、総理が先ほど言いました公約に、大型という問題を消すために、年間売り上げ一億円未満の業者を非課税にするとか、あるいはその非課税の物品やサービスを設けるとか、いろんなことを随分書いておりますけれども、これは小細工を重ねただけで逆にゆがみが広がってきたということもあるわけです。また、これを逆に言いますと、実際は今、自民党のこの間から提出されております売上税の中身を計算し、あるいは大蔵省が自民党税調に示した試算、こういうふうなものから見ますと、私のこの資料が正確であるかどうか、あくまでも新聞報道ですが、新聞報道によりますと、大蔵省が自民党税調に示した試算によると、夫婦子供二人のサラリーマン世帯の場合、年収三百万では二万八千円、所得税、住民税合わせて減税になりますと。ところが、五百万では六万円の減税、一千万では三十六万九千円の減税、三千万では九十四万七千円の減税、五千万以上の年収になりますと、五千万の人で二百九十四万八千円の減税になります、こういうふうな大蔵省の示した試算であります。これからいきますと、今回の税制は明らかに金持ち優遇税制じゃないかと。  それだけじゃありませんよ、総理。それ以外にも、これも大蔵省の試算ですけれども、これは法人税減税分の個人への還元を除いてはじき直しますと、減税の恩恵を受けるのは年収六、七百万円に限られて、年収二百万円台から五百万円台の二十代から三十代のサラリーマン、それに六十代の家庭では逆に増税になると。これはまた別の試算ですけれども、ある大学の教授の試算によりますと、年収九百万以下はすべて増税になる、だから試算して減税になる分野というのは一千万円以上のみである、こういうふうなことを発表した方もいらっしゃるわけでございます。  これは総理が先ほどすれすれの線とおっしゃいましたけれども、すれすれの線なんていいましても、これは国民に対する約束との、もうほんまに何というのかな、ぎりぎりの線、守られたか守られないかと、総理自身がそこまで思っていらっしゃるわけですから……。
  109. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) いや、私が言ったんじゃない、山中君が言っている。
  110. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 今総理が山中さんの話を聞いておっしゃったわけですね、逆に言えばね。これはまだ正式に出たわけじゃございませんから、これから法案として出るわけですから、これは明らかに国民に対する総理の公約違反である、もしこのまま出てきた場合はですよ。少なくともこの間議論をする前に山中さんが試案として出した、それをまだ修正してないわけですから。このままですとこれは明らかに公約違反になる、私はこう考えるわけですけれども、もう一遍総理のお考えをお伺いしたい。
  111. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ぎりぎりすれすれだと言ったのは、山中会長がそう言ったと。ですから、山中会長の考えというものはぎりぎりのストライク、外角すれすれのストライクという意味なんですねと、そういう意味で山中会長の考えを私が言ったので、私がそう考えているというわけじゃない。私は適当なストライクであると、そう考えております。公約はちゃんと守っているストライクである、こういうふうに考えておるわけです。  それで、減税の恩恵に浴するのはどうであるかということを考えますと、やはり何といっても二、三百万から九百万ぐらいまでのサラリーマンの皆さんに減税の恩典を浴びさせなければいけない、そういう考え基本にあって税が刻まれ、つくられたということをまず申し上げたいんです。  大きなマクロの関係からすればこれはニュートラルであると思いますが、その中にあってもやはり今申し上げたような線で、子供二人ぐらいで住宅ローンや教育費に一番かかっているその層に軽くなるように、そういうことで特に注意してつくったもので、詳細については政府委員から答弁させます。
  112. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 これは総理、私はこの議論はまた後ほどやりたいと思います。たとえこれが一億円以下にいたしましても、実際に税を払う方は広く国民が負担するということになるわけですね。したがって私は、これは明らかに総理の公約違反であると、それ以外の考えようがない。したがって、大型間接税と我々は言っておりますが、売上税についてはぜひとも撤回をいただきたい、こういうふうに申し上げておきたいと思います。  それから、もう一点の、国民の信頼と協力という問題で、先般のこの委員会でも議論をしてまいりましたけれども、非核三原則の問題があるわけであります。  総理、この非核三原則は今後とも総理の方針として厳守していかれるわけですね。
  113. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 守ってまいります。
  114. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 これも世論調査によりますと、五十九年一月の世論調査でありますが、非核三原則に賛成か、国民の皆さん方は賛成七六%、反対一四%であります。大部分の方が非核三原則に賛成、総理と同じであります。ところが、政府の核兵器の持ち込みを認めないとの方針は守られていると思いますかと、こういう質問に対しまして、守られていない、こういう方が八〇%、核兵器の持ち込みは守られていますと、八%であります。この非核三原則を守られていないと国民の大部分の方が思っていらっしゃるわけですね。この世論調査は一つだけじゃありません、幾つもありますよ。総理、これはどうお考えになりますか。
  115. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 政府は非核三原則を守って実行いたしております。
  116. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 政府が、中曽根さんが守っていますと言うのに、国民は何で守ってないと、こう思っていらっしゃるんですか。
  117. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 我々の理解していただく努力があるいは足らないのかもしれません。
  118. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 この問題についてもうきょう時間がございませんので端的に申し上げますが、私もこの非核三原則の中の核持ち込みの問題につきまして国会の中で相当議論をしています。会議録を読むだけでも昭和三十四、五年ごろから最近に至る会議録がずっとあるわけです。その議論の中身というのは、特に核持ち込みの問題が国会論争の中心になっております。中でもいわゆる事前協議の対象として日本の領海、領空の通過という問題、それからもう一つは、日本に一時寄港する艦船ですね、この二つが事前協議の対象になっているのかいないのかというのが今までの議論の大部分のところでこの議論が行われているわけであります。この点に対して総理はいかが思いますか。
  119. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 従来の政府答弁と同じでありまして、北米局長から答弁させます。
  120. 藤井宏昭

    政府委員藤井宏昭君) お答え申し上げます。  安保条約の六条が安保条約に基づきまして基地の使用を認めるという安保条約の中核的な条文の一つでございますが、その六条に関連いたしましていわゆる岸・ハーター交換公文というのがございます。この交換公文が言っておりますことは、合衆国軍隊の装備における重要な変更は、日本政府との事前協議の主題とする、ということを言っておるわけでございます。さらに、この岸・ハーター交換公文に関連いたしまして、いわゆる藤山・マッカーサー口頭了解というものが存在いたしまして、これが言っておりますことは、合衆国軍隊の装備における重要な変更ということは核弾頭の持ち込みを言う、ということを言っておるわけでございます。したがいまして、合衆国軍隊の装備における重要な変更すなわち核弾頭の持ち込みというものは、事前協議の対象となるということが明確になっておるわけでございます。  その際、合衆国軍隊とは何かということでございますけれども、安保条約の全条文を通じまして非常に明確でございますのは、合衆国軍隊と申しますのは、いわゆる在日米軍、日本にその本拠を置きますところの日本に配備された米軍のみならず、日本を一時的に通過しておる、領海とか領空とかを通過しておる米軍、あるいは日本の港に寄港しておる米軍というものをすべて含んでおりまして、これらはすべて日本の領域内にある限りにおきまして安保条約の対象となっているということでございます。  したがいまして、以上のことから極めて明確でございますけれども、核の持ち込み、それは寄港であろうが、領海通過であろうが、事前協議の対象となるということでございます。事前協議をアメリカが行ってきました場合に、日本政府といたしまして非核三原則というものが現存するわけでございますので、核の持ち込みに関しては、イエスと言うこともノーもあるということではなくて常にノーと言う、という政策を日本政府は鮮明にしておりまして、この点についてアメリカは、最高首脳を含めましてどうもアメリカ政府にとって疑いのないところでございます。
  121. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 わかりました。  僕はあの答弁何回も、きょうもこの間もここで聞いたわけです。わからぬわけですよ、総理。要するに、私の手元にもあります安保条約第六条の実施に関する交換公文、岸・ハーター交換公文とかあるいは藤山・マッカーサー口頭了解とか、これ英文と両方ちゃんとそろっています。ありますけれども、この中の持ち込みという条項のこの中身がわからぬわけです。今の領海の通過とかそういう問題については、今極めて明確、極めて明確とアメリカ局長は四回ぐらい言いましたけれども、ひとつも極めて明確じゃないわけですよ、そこのところが。  何で私こんなことを言うかといいますと、総理日本の国会ではもう会議録がこんなにたくさんになるぐらいこの問題について議論をしておるわけです。しかも、この問題についてアメリカ側から問題が提起されなければ私もそれなりにまた理解をするところもあるわけですけれども、これは総理も御存じのとおり、四十九年の十月にラロック証言というのがありましたね。そして五十六年の五月にはライシャワー元駐日大使の発言がありました。ことしの八月にはデービッド・オズボーンという元駐日公使の発言がありました。この発言の要旨は何かというと、日本の領海、領空の通過あるいは一時寄港というのは事前協議の対象になっていなかったんだと、そういう趣旨なんですよ。だから、アメリカからそういうことを言われるたびに日本の国会やいろんなところでわあっともう一回疑念が出てくる。国民もそういう議論を見ておりまして、やっぱり核兵器は持ち込まれているんじゃないかなと、こういう疑惑が出てくる。これは我々国会議員としましても明らかにする必要がある。この点をこの間から随分議論をしているわけです。その議論に対しましてアメリカ局長の今の説明、同じ説明をずっとやっているわけです。これは私は説明にはならぬと言っているわけです。  だから、先ほどのニューズウィークのお話の中で、総理はラフサンジャニ議長にそういう親書を渡した覚えはないと。ニューズウィークに書いておる、こういうふうに言いましたら、場合によってはそういう事実はないという手続をとってもよろしいと、ここまで総理は先ほどおっしゃいましたね。それと同じで、少なくとも我が日本の国としては、我々としては、日本の領海、領空の通過あるいは一時寄港というのは当然事前協議の対象である、こういうふうに考えておりますが、アメリカさんどうですか、アメリカさんもこのとおりですね、という確認を明確にしていただきたい。  何で私はこういうことを言うかといいますと、元外務大臣の木村さんもそれと同じようなことを言っておるわけです。文章は今具体的に読み上げませんが、木村発言の骨子ということで、ことしの八月二十四日付の新聞でありますが、こういうように報道されています。   米艦船が核を積んだまま、日本領海内を通過し、寄港しているのは事実だ。政府は核兵器の陸揚げや貯蔵のほかに領海通過や寄港も日米安保条約に基づく事前協議の対象だとしているが、これを証明する文書はない。このため、いつわりを続けるよりは米艦船が核付きのまま、領海を通過したり寄港することだけは容認する方針を田中首相と相談して固め、対米折衝した結果、内々合意した。しかし、本交渉に入る前に田中内閣総辞職でご破算になった。 これは本当かうそか私は知りません、現物を見ていませんから。しかし、そういうふうに報道されているわけです。これも、この持ち込みの中身の問題なんです。  したがって、私はアメリカ局長とこの委員会が始まる前にもいろいろと話し合いをいたしましたが、そのときにはこういうことをアメリカさんに直接言うのは失礼だというわけですよ。外交交渉上無理だというお話でございました。そうかもしれません。しかしながら、我々国民の立場からいたしますと、この問題についてみんな心配をし、国民の八割までもが中曽根さんの政策は守られていないと、こう世論調査の中にあらわれてきているわけでございまして、これはやっぱり何とかする努力をせにゃいかぬ。事前協議の対象です、対象ですという答弁はもういっぱいもらっているわけです。けれども、それはあくまでも日本側だけの答弁でございます。アメリカ側はそれを尊重しておる、例えば国会での議論は十分知っておるはずですと、こういうふうに言っておるわけですね。  ですから、そういうことを踏まえまして、総理として、今すぐとは私は言いませんが、何らかの機会に何らかの対応策をとって国民の疑惑をきちっと晴らしていただきたい、こういうふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。
  122. 藤井宏昭

    政府委員藤井宏昭君) 総理が御答弁になります前に一言言わせていただきたいと思います。  先ほど私、北米局長について御言及ございましたけれども、正確に申させていただきますと、先ほど申し述べましたように、条文上極めて明確であるということでございまして、したがいまして、アメリカに事前協議の義務があるわけでございますが、その点につきまして日本政府答弁、これは過去二十年以上やってきておるわけでございまして、それにつきまして十分アメリカも存じておりますし、それから節目節目におきましては、例えばF16の三沢搬入とか、あるいは本年のニュージャージーの日本寄港というような際には、外務大臣が改めて駐日大使を招致いたしまして日本の非核三原則、事前協議制度について述べておるわけでございます。  それで、アメリカは安保条約上の義務を忠実に履行するということを累次表明してきておるわけでございまして、アメリカが事前協議を行ってきていない、それはもしかしたらおかしいんではないのかというような疑いの念を、米国の義務の不履行ということを前提とするということでアメリカ側に聞くということは、失礼と申しますよりは、それは信頼関係というものが一番基本でなければならないこの種の防衛条約におきまして、安保条約におきましては極めて大切なことであるということを申し上げたかったわけでございます。
  123. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 今、北米局長が答えたとおりでありまして、先般も倉成外務大臣がニュージャージーの問題についてマンスフィールド大使を招致して、そして非核三原則並びに事前協議制について確認をして、先方もそれを確認し、アメリカは誠実に遵守いたしますと、そう答えておるとおりであります。
  124. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 総理、それじゃいかぬわけですよ。何でいかぬかというと、二つあるんです。一つは、信頼関係の問題からいえば、アメリカとの信頼関係は大事にせにゃいかぬけれども日本の国民の皆さん方からの不信とか、疑問という問題に対しては何ら答えていないという問題が一つあります。それからもう一つは、駐日大使を呼んで話し合いをしたときに、事前協議は守られているかいないかという問題について、事前協議はぜひ守ってもらいたいという、あくまでも抽象的な言い方なんですよ。  ですから、そうじゃなしに、今の持ち込みという問題がこういうふうにこれだけ問題になっているわけでありますから、領海通過とか寄港という問題を明確にして、こういうことも我々としてはこういうふうに考えているんですよ、そうですねというふうに、そこら辺のところを明確に確認をしていただきたい。  これは、今、何にもないときに突然ぽっと言えばこれはおかしくなるかもしれませんが、そういうふうな艦船が入港して、この次確認をする場合にそういうことをやっぱりきちっと出して確認をするということは、私は大事なことじゃないかと思うんです。例えば個々の艦船に核を積んでいるか積んでいないかなんという議論になるとややこしい問題になりますので、それはできないわけですから、あくまでもこれは抽象的でないとしようがないわけですよ。そういうような意味で、そこのところは明確にしていただきたいと私は思うんですけれども、いかがでしょうか。
  125. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ですから、ニュージャージーの問題だとか、あるいは三沢のF16の問題だとか、そういうたびごとにそういうことは確認しておるわけであります。
  126. 岩本政光

    委員長岩本政光君) 時間が来ましたので……。
  127. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 もうこれで終わります。  いや、そういうことを確認していないんですよ。あくまでも事前協議の問題、核持ち込みの問題は、ニュージャージーの問題とか三沢の配備の問題のときの確認の中身というのは、総理、もう少し踏み込んで話し合ってもらいたい、こういうふうに私は申し上げておるわけです。
  128. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 先ほど申し上げたとおりでございます。
  129. 内藤功

    ○内藤功君 総理大臣としての、また与党の総裁としての中曽根総理にお伺いをしたいと思います。  昨年の国会で廃案となりました国家機密法案を部分的な修正を加えて再び提出しようという動きがあります。総理は、自分の内閣のときでなければこういう法案はできない、ぜひということで積極的推進のお考えをお持ちということを聞いておりますが、いかがでしょうか。
  130. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 何回も本院で申し上げておりますように、日本はスパイ天国であって、これに関する法規がないということは甚だ残念である。したがって、国の機密を守る適切な法規は必要である。特に防衛、外交関係については必要である、そういうことはかねてから申し上げておるとおりです。  今、自民党でもいろいろな案につきまして検討しておる最中であると思います。いずれ党で正式に決めてきたら国会へ提出するということになると思いますが、目下のところは各機関機関におきまして検討しておる最中であるというところでございます。
  131. 内藤功

    ○内藤功君 日本弁護士連合会、これは全国の強制加入組織でありますが、本年の十月に発表した要請書というのがあります。これは、修正案、またもとの案とも採用すべきでないと。ここにございますが、修正案については処罰規定の基本的な骨格と構造は、前に廃案になった旧法律案と全く変わらないとはっきり述べております。法曹界、言論・報道界を含め強力な反対世論があります。地方議会などでも、法案の内容が次第に知られて論議されるに伴って反対決議の数が非常にふえてきておる。中には、賛成から百八十度反対へ変わった地方議会も出てきておるという状況であります。与党内でも消極意見の方がかなりおられるという話も、私は漏れ承っております。  一たん廃案になったものを、あえて反対世論を押し切って再提出するというのは道理に合わない、これはもうこれだけの反対がある以上断念すべきだと私は思うんですが、総理・総裁のお考えを伺いたいと思います。
  132. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 先ほど申し上げましたように、日本のこのスパイ天国みたいな情勢を見ますというと、何らかの措置は必要である、そう考えておるので、それによりまして党で目下のところいろいろ検討を加えておる、こういうことであります。
  133. 内藤功

    ○内藤功君 このスパイ天国という言葉が何ら論証のないものであるということがはっきりしましたのがことしの国会の論戦だと私は思います。現行法令と現行体制で対処できないので、どうしてもこの種の法律を必要とするという、そういう状況があるんですか。ありとすれば実証すべきである。ところが、なされなかった。  防衛庁の元事務次官をやった丸山昂さんという方がおられます。前ここでよく答弁をされた方です。こういうふうに言っていますね、「現実に、(スパイが)ウロウロしている状態ではないだろうと思うんですがね」、「(防衛庁に在任時、防衛庁の秘密が漏れたと思われたことは)」という質問に対して、「それはありません。少なくとも、私は自信がございますね。とくに、問題になる(日米間の)防衛秘密は絶対大丈夫です。年次防衛計画といった極秘のものもない」これは、読売新聞の出しているある雑誌の去年の八月号の記事としてはっきり出ております。  それから、竹岡勝美さんという元防衛庁の官房長、この人もここでよく答弁した。この人は、「自衛隊創設以来三〇余年、寡聞にして今までそれほど重大な防衛秘密がスパイされたとは一度も私は聞いていない」「スパイ天国の例に引かれる宮永陸将補事件も、スパイした情報とは中国軍部ですら鼻にも引っかけない程度の中国の軍事情報にすぎず、ただその入手経路を秘匿するために陸上幕僚監部が「秘密」情報としたものであろう」「私自身も、防衛庁の人事教育局長、官房長、調達実施本部長という・・・在勤を経た今日、口が裂けても口外できないとする重大な防衛秘密は何一つ持ち合わせていない」これは、ことしの七月号の「軍縮問題資料」という雑誌にこのとおり載っておるんですね。  このように、防衛庁事務次官、官房長を歴任した方がはっきりこういうことを述べておるんです。私は、スパイ天国が論証されないだけではなくて、かえってその逆の事実が元高官から出てきている、こういう状況だと思いますが、なおスパイ天国というものに固執されますか。
  134. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) それ以上もっと多くの事務次官や局長をした先輩諸君は、やはり必要性を言っておるだろうと思います。
  135. 内藤功

    ○内藤功君 それを出してください。どこの局長、どの次官が言っているか。
  136. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私が、自民党の中におきまして、いろんな人の話を聞いている範囲ではそういうことでございます。
  137. 内藤功

    ○内藤功君 局長と次官のだれが言っているかここで出してください。
  138. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 自民党内部においていろいろ聞いてみますと、そういう声が非常に私のところには来ておるんです。その辺にもいらっしゃるから、今度委員会が終わったらよくお聞き願いたいと思います。
  139. 内藤功

    ○内藤功君 何回聞いてもその程度の答弁だということで、ますます論証不能じゃないですか。そうじゃないですか。  ラストボロフ事件というのはこの前言いましたね。これは何年前の事件ですか。
  140. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) かなりもう前の事件だろうと思います。
  141. 内藤功

    ○内藤功君 それでは私から申しましょう。昭和二十九年一月二十四日なんですよ。三十三年前の事件しか、これはあなたじゃないけれども、官房長官です、持ち出せないんです。しかもこの事件は、七カ月たってから、外務省事務官三名が、それもラストボロフとの関係があるかどうかははっきりしないまま、国家公務員法と外為法違反で検挙されて、それで立件されたわけです。現行法で処断されているわけです。処断されているが、ラストボロフとの関係は、今なおいろんな文献を見てもはっきりしないんです。そういうものしか出せないじゃありませんか。どうですか。
  142. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ともかく、今の国際情勢を見て、各国の例等を見ますというと、アメリカにおいてもあるいはソ連においても、あるいはフランスやイギリスにおいても、相当国外追放を命じたりいろいろやっておりますね。日本でそういう活動が行われていないという確証もまたないわけです。いわんや日本の場合には、そういうようないろんな保障措置が欠如しておる。そういう意味において、私は活動はかなり強いものがあるんではないかと想像しますし、また、そういうような欠陥を自分は感じておるわけであります。
  143. 内藤功

    ○内藤功君 いよいよ弱々しい論拠だと思います。  岸内閣が昭和三十三年に警察官職務執行法改正案というのを出しているんですよ。あのときは、国会の中と外の猛反対で、結局廃案になって、岸内閣は一年ちょっと後に退陣をしたと思うんです。それから池田内閣、これはもう中曽根総理御自身が御体験でしょう。池田内閣が政治的暴力行為防止法案というやつを再三出したんです。これまた野党と世論の反対で廃案になりまして、内閣は間もなくかわる、こういう結果になります。  私は、日本国民というのはこの種の立法に非常に敏感だと思います。これが強行されるならば世論の強い反撃は必至です。特に今私は、巨額の軍事費をつぎ込んでいろいろとシーレーン防衛なんかやろうとしておるこういうときに、この防衛、外交の問題を国民の言の端にのせないようにする、あるいは言論、報道の自由をその面で制限する結果になる、こういう法案に私は強く反対をし、また再提出をされない、そこに総理が見識を示されることを要望するものであります。  次に、三宅島の問題を最後にお伺いをしたいと思うんです。  これは政府委員で結構ですが、三宅島のNLP問題で防衛庁は概算要求調査賢三億五千万円をさきに要求されましたが、この内容を具体的に説明をしていただきたい。なお、それに関連をして、この中に鉄塔が入っているかどうか、この点を伺いたいと思います。
  144. 宍倉宗夫

    政府委員(宍倉宗夫君) 三宅島に関しましてただいま概算要求中でございますが、おっしゃいますように三億五千万要求いたしております。その内容といたしましては、現地連絡所にかかる経費及び土地取得等のために必要な調査に要する経費、それから地形測量、地質調査等の基本調査及び環境に関する現況調査のための環境予備調査、そういったものでございます。それから、二段目にお尋ねの鉄塔ということでございますが、私ども考えておりますのは、候補地域におきます気象状況を把握いたしますために現地に観測塔を建てまして、風向、風速等の調査を行い、気象資料を収集いたしたいと考えております。そのことをお指しのことかと存じますが、今申し上げましたようなことで、風向、風速計をつくりたいということがこの三億五千万の中に入ってございます。
  145. 内藤功

    ○内藤功君 最後に、総理に伺いたいと思うんですが、この三宅島では最近相次いで村長選挙、議員のリコール投票、それからそれに伴う村議会の補欠選挙が行われまして、いずれも島内においてNLP飛行場反対の立場に立つ方が優勢を占めていることは御存じのとおりだと思うんです。防衛庁長官の訪米とほぼ同時に行われた選挙でもそうでございました。私は、これは島民の多数の意思であると思います。同時に、いわゆる飛行場該当地の付近住民、土地の地権者、所有者の揺るがない意思だと私は思うのであります。ところが、こういう意思を無視して三億五千万の調査費を計上して概算要求をする、甚だ民意に反する取り上げ方であると、本当に遺憾なことだと私は思います。  これに加えて、去る十一月二十一日、伊豆大島三原山噴火事故を本当に近くで三宅島の人は見まして、これは人ごとじゃないということを多くの方が言っておるわけです。というのは、三宅島は地震計が大島に比べて少のうございます。それから、国土地理院の水準測量というのをやりますけれども水準測量の水準点というもののうちの二点が今言われておる飛行場予定地の中側に入るということが、国土地理院その他の専門の科学者の方々から言われておるわけでございます。これも加わりまして、さらに最近では情報が非常に発達していますから、厚木でのA6イントルーダー艦上攻撃機のオーバーランの事故、こういうものが起こっているということから、島民の非常に強い意思として、この三宅島の問題、NLP基地を絶対許さないという意思が強く表明をされております。  私は、何度も島民の人と会っておりますので、この意思をいやというほど感じるわけです。どうか総理防衛庁長官日本の国民の立場に立って島民の意思というものをアメリカの当局者に明確に言わなくちゃいけない。日米の安保条約というものをかさに着て、島民の犠牲においてやるということについて私は厳しく反対の意向を表明しておきたいと思いますが、総理並びに防衛庁長官の御答弁、お考えを伺っておきたいと思うんです。
  146. 栗原祐幸

    国務大臣栗原祐幸君) 安保条約をかさに着てということは、大変私は適当でないと思いますよ。立場は違うかもしれませんが、私どもはいわゆる必要最小限の防衛力と同時に、日米安保で日本の国の安全を保障しよう、そういうことでやっているわけですから。しかも日本の安全は、日米安全保障条約のもとに全国民がそれなりの重荷をしょっていこうということなんです。したがいまして、三宅島だけが例外たり得ない。三宅島の方々にも日本の平和を守るために最適地なんでございますから、ぜひお願いをいたしたい。しかも、それによって三宅の将来のことに対してお手伝いできることがあったらお手伝いいたしましょうと言っているんです。  あなたのお話を聞くと、三宅島の方々が全部反対みたいなお話ですけれども、要するに、あそこの人たちというのは非常に純真な方々なんです。ですから、説明の仕方その他によっていろいろと変わってくるんです。その点については我々政府といたしましては、十分でなかったということで、もう一回ことわりを申し上げて御理解、御協力をいただこうということなんです。私は必ずわかっていただける、そう思います。私の聞くところでは、三宅島は頑張っていればもうNLPは来ないようだなどといううわさもあるそうです。さようなことはございませんから、どうぞそういう意味合いで御協力をいただきたい。
  147. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 防衛庁長官がお答えしたとおりですが、最近私のところへ来た情報では、大島の事件は不幸な事件でしたけれども、ああいうのを見ると飛行場はもう一つあった方がいい、そういうような意見がぽつぽつ出始めていると、本当かどうか知りませんが、そういうのが情報として私のところへ来ております。いろいろ経験を経て、また理解を深めていただけば、情勢も変わってくるんじゃないかと思います。
  148. 柳澤錬造

    柳澤錬造君 せっかく総理おいでいただいたんですから、重要な問題点二点ほどお聞きをしてまいりたいんです。  一つは、防衛庁から毎年のように定員増や何かのこういう法案が出るので、防衛といったら国家にとって非常に重要なポジションだと思うんですけれども、それを扱っているのが日本の場合には総理府の外周の防衛庁、こういう扱いを受けているのが世界の主要な国の中で他にありますか。私はないと思うんです。それで、総理も安全保障の重要性ということはよく説かれるわけですけれども、安全保障がいかに重要かといいながら、それを所管する官庁が総理府の外局の単なる防衛庁、これでは総理がいかに重要性を説いても実態がそれに伴っていないんであって、重要な官庁であるならばそれにふさわしい扱いをすべきだと思うんですけれども、その辺についての総理の御見解いかがですか。
  149. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 昭和三十年ごろ、今の防衛庁設置法案をつくるについて私参画した一人でございます。そのころからも柳澤さんのような御意見もございまして、防衛省にせよ、あるいは国防省にせよ、外局でない省にせよ、そういう議論もありました。しかし、日本の当時置かれている立場、あるいは現在も憲法そのほかの関係から見て、いろんな立場から見て総理大臣の直属の庁にしておいた方が適切であろう、そういう考えに立ちまして今のような防衛庁を外局にしたわけでございます。今、急にこれを変える必要はないんではないか、私はそう思っております。
  150. 柳澤錬造

    柳澤錬造君 総理の直属の機関に置いておく方がいいんだというのが今の総理の御見解なんですけれども、そういうことになると、大蔵省なんかどうなんですか。大蔵省なんてやらないで、総理府の外局に予算編成庁かなんとかとこうして直属で置いて、それで総理が直接指揮をとって予算編成をなさったら。私は前から、大蔵省が予算の編成権も持てば、税金の取り立ての権限も持てば、使うのも持つ、いささかもって大蔵省は少し欲が深過ぎるじゃないかとよく言った方ですけれども、今の総理の御見解からいくならば、大蔵省もそういうぐあいでもって総理の直属にした方がいいと思うんですが、その辺はどういうことになるんですか。
  151. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) やはり歴史の重みというものもまたありまして、そういうものも無視できない点もあると思うんです。
  152. 柳澤錬造

    柳澤錬造君 歴史の重みという言葉でごまかすのは、総理、少しよろしくないと思う。  それはそれにしまして、これ以上深入りしても、総理もなかなか御返事を言いにくいと思います。  もう一つの点は、領空、領海が侵犯されるということは国家の主権が侵されることだと思う。こんなことは私が言わなくても総理も御存じだと思うんだけれども、今スクランブルが年間約九百回前後あるわけです。ミサイル積んで飛び立っている。それで、昭和五十年代にソ連機によっての領空侵犯がちょうど十回あるわけですから、大体毎年二回ぐらいずつ領空侵犯がやられている。そのたびに、防衛庁外務省に言って、外務省から紙切れ一枚の抗議文を向こうへやっているだけなんです。うんでもなければすんでもない。それで何にもしないでおく、そうするとまた領空侵犯される、そうするとまた外務省のルートを通じて抗議文を送るということを繰り返しているんですけれども、私は独立国家としての権威がどこにあるんでしょうかと。そういうことについて、最高指揮官である内閣総理大臣としてどういうお考えをお持ちになるか、お聞きしたい。
  153. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 領空侵犯は主権に対する侵害でありますから、我々は非常に重く見ておる。これをないがしろにすべきではないと思います。ですから、その都度我々は関係国に厳重なる注意を促しておる。  たしか、先般も礼文島で侵犯が行われたときには厳重に注意をして、先方から遺憾の意の表明があったと思います。こういう問題は、丹念にその都度厳重にやらなきゃいけないと考えております。
  154. 柳澤錬造

    柳澤錬造君 いや、だから総理、礼文島のときは、五十年代に領空侵犯をやられたことが十回あって、その中でソ連が認めたのはそれ一回だけのことなんです。だから、私から言わせるならば、主権を侵されても、それに対して何にもできないのかしないのか知りませんけれども、そういうことならばそんなスクランブルをかけるのをやめたらいいと思うんです。スクランブルかけるということはどういうことかといったら、これはもう国際法上からもいってはっきりしているわけなんですから、日本防衛体制というのか、それは防衛庁長官の責任になにするのか、内閣総理大臣の指揮権によるのか、その辺が私らから見たら極めて不明確なんです。  かつて領海侵犯されたときもそうなんだ。官房長官は、領海侵犯と受けとめると言ってソ連の大使館の参事官を呼んで文句を言った。言ったにもかかわらず、ソ連の軍艦の四隻が日本の領海を二時間四十五分にわたって突っ切っていってしまった。防衛庁、海上自衛隊何をしておったんだと言えば、防衛庁長官いわく、いえあれは出動命令が出ておりませんから海上保安庁の仕事です、私たちは関係ございません、というのが国会における答弁なんです。領海侵犯されて、それについて海上自衛隊が何もできないならば、そんな海上自衛隊はもうなくなしたらいいじゃないか。そのときに、少なくても、官房長官が領海侵犯と受けとめると言ったんです。そして最高指揮官の内閣総理大臣がそのときにどういうことを指示したのかと言ったら、最初から最後まで一言も何にも言いませんでしたというのがそのときの官房長官答弁なんですから、総理、厳重に抗議をして云々という、まさかこれもさっき言った歴史の重みで始末をするわけにはいかないことなんで、もうちょっと独立国家なら独立国家らしい、独立国家の内閣総理大臣としてその辺のけじめはきちんとして指示をしていただきたいと思うんですが、いかがですか。
  155. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 主権を守るために領海侵犯については厳重にその都度やらなきゃならぬと思います。  先般のソ連の潜水艦の領海侵犯の問題について私事情をつまびらかにしておりませんが、ああいう場合でも、先方から日本に対して、潜水艦事故によって緊急の事態であるので通過を認めてもらいたい、そういうちゃんとした手続があってやるのがしかるべきであると思います。  今後もしそういうことが起こればやはりそういう措置をやらすべきであると考えます。
  156. 柳澤錬造

    柳澤錬造君 これも余り深入りしようと思いません。ただ、総理、領海侵犯のあのときもそうなんですけれども、官房長官が領海侵犯と受けとめると言って、ソ連の大使館の何とかという参事官を呼んで文句を言ったんです。だから、今総理も言うとおりに、あれは事故を起こしたんですから、だったら初めから無害通航として認めると言って素直に通してやったらいいじゃないか。領海侵犯として受けとめると言って文句を言ったならば、少なくとも日本政府として、言ったらしいことをしてやってくれ、二時間四十五分にわたって我が国の領海を侵されていくのについて手も足も出ないでただ見ているというふうな、そういうことでは困る。  ですから、今後のこともありますから何ですけれども、過去のことはさておいて、これからそういうふうな領空なり領海なりの主権を侵されたというときには、独立国家らしい、そういうことについてきちんと指揮をとっていただきたいということを御要望申し上げて、その御返事をいただきたいと思う。
  157. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 将来はちゃんと折り目けじめをつけてやりたいと思います。
  158. 柳澤錬造

    柳澤錬造君 終わります。
  159. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 今度の二法案ですが、相当人数がふえるわけですから、予算が相当ふえますね。これ間違いないわけです。それで、この予算措置はどうなっておるんですか。これから出すんですか。今出ているんですか。
  160. 池田久克

    政府委員(池田久克君) 法案に関連する経費でございますけれども、歳出予算で四億八千三百万、国庫債務負担行為で四十九億円、今年度予算でお願いをしております。
  161. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 これから出す予算で埋めるわけですね。
  162. 池田久克

    政府委員(池田久克君) これは今年度実施する事業に関連する予算関係法案でございますので、もう既にお目通りいただきました予算の中に含まれております。
  163. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 それは予備費のようなものですか。
  164. 池田久克

    政府委員(池田久克君) これは防衛庁に既に認められた防衛関係費の内枠でございます。
  165. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 つまり、そのときからいえば法律のできない前に予算枠をこれはとっておるわけですね。
  166. 池田久克

    政府委員(池田久克君) 今回の自衛官の増員などのように予算上の措置と法律上の措置の両方を必要とする場合、予算と予算関連法案を同一国会に提出し審議を受け、議決を願うことは当然でございます。また慣例にもなっております。その場合、法的措置が予算編成前に必ずなされていなければいけないというそういうものではないと心得ております。
  167. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 その問題はそれとしまして、ともかくこれは相当予算のふえる法律ですね。日本防衛費一%枠、こういうものを持っているわけですね。これは自民党内閣の、三木内閣のときにできた一つの原則です。防衛費に対する一つの歯どめですね。防衛費などというものは、外国の例えば強要なんかがありますし、それからやっぱり産軍体制とかいろんな利害関係もあって、必ずしも国民的な必要に即しない防衛増強要求というのが出てくるわけですね。ですから三木内閣の時代に一%枠というものをきちっと決めてあるわけです。  私は総理にお尋ねしたいんだけど、あなたは三木内閣のあのときの自民党の幹事長だったわけです。私は中曽根幹事長は非常にいいと思って推薦したことがあるわけです。そういう内閣が決めた一%枠についてあなたはどう考えますか。一%枠は守るべきであるか守るべきでないか。
  168. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) あのときに当面の措置としてああいう決め方をしたことは一つの見識であると思っております。
  169. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 いや、その見識を聞いているんじゃないんです。あの原則、あの歯どめというものは現在でも生かすべきものであるかどうか、生きているわけですよね。だれも総理大臣ではっきり否定した人はないんです。ですから、あなたは否定するんですか、否定しないんですか、それを聞いておるわけです。
  170. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 今でも守りたいと思っておりますと申し上げているとおりです。
  171. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 守りたいということは、男なら守るということだね、これは。そう理解していいですね。
  172. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 前から私は守りたいと申し上げておるんです。しかし、GNPがどういうふうになるか、来年度予算のいろんな諸要因というものがどういうふうに変化するか、今非常に微妙な線まで来ております。そういう意味において、予算編成の際に努力はしてみたいと、そういう意味でもあります。
  173. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 これは守りたいと思えばわけはないんですよ、要求を減らせばいいんですからね。総理大臣はそれだけの権限を持っているんですから。ただ、守りたいと思ってもいろいろな情勢によって守れない事情があるというなら、これははっきり説明しなきゃならぬですね。ただ守りたいじゃ済まない。私はだから、あなたが総理大臣として守りたいとこう言っているんだから、これはもう一%枠は当然尊重されるものというふうに理解しますけれどもそれでいいですね。
  174. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私は前から申し上げておりますが、これは防衛庁長官も同じように申し上げておりますが、防衛計画大綱水準に早く近づくようにやりたい、この間決めた五カ年計画を予定どおりぜひ完遂したい、こういうことがやはり一方にはあるのであります。私もやはり防衛計画大綱水準にできるだけ早く近づけたいということと、それから今の一%を守るという点との調和点をどこに見出すか、これは予算編成の際に慎重によく考ていきたい。予算編成の際にどういう数字が出てくるか今のところまだ予断を許しません。防衛費がどれぐらいになるのか、景気やあるいは日本のGNPがどういうふうに変化するのか等々、最終的な数字が出てきたときによく考えてみたいと思っているわけです。
  175. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 大綱を守る、それから一%枠も守るということですね。両方守りたい、必ず矛盾が生じます。そのときにはどちらを修正しますか。大綱というものもこれは非常に弾力性のあるものですね。しかし、一%枠はこれは弾力性がありません。ただ、今度のようにドルがどんどん安くなると外国から購入する武器の値段が下がりますね、武器の値段が下がってくる。大体御説明願いたいのは、今度のドル安、つまり二百五十円ぐらいのものが百五十円近くまで下がっちゃって今百六十円ぐらいですね。えらい値下がりです。日本は相当いろんな防衛資材、航空機その他を買っているはずですね。AWACSなんかを買うなんといううわさもある。これは一機二十億ドルなんと言われたこともありますね、サウジアラビアに売った四機なんかね。防衛予算のうちにはそういう外国から買うものもあります。いろんな弾力性があるわけですけれども、とにかく一%を守るという原則が大事か、そのときの情勢に応じる変化が大事かということになりますが、しかし、今ドルが下がっている状況というのは非常に守りやすい状況であると私は思いますが、防衛庁長官どう思いますか。
  176. 池田久克

    政府委員(池田久克君) 我々六十二年度予算につきまして現在概算要求をいたしていろいろ御説明を申し上げておる段階でございますが、これは外貨でも防衛庁の場合はドルだけじゃなくてフランだとかポンドだとかございますけれども、それにしてもドルが多いわけでございます。ドルの場合につきまして今一ドル百七十円で要求をいたしております。来年度予算で例えばドルの場合何円にするかということがまだわかっておりませんので、数字とかそういう動きにつきましてはしかと申し上げる段階ではございません。
  177. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 予算を要求するときにはとにかく都合のいい要求の仕方をする。予算を制限するときには何が何だかわからないなんと言っちゃ困るね、これ。それで、今度の予算でドル安であなたは百七十円で計算するというのだけれども、購入予定のもののつまりドル安による予算縮小可能性は大体どのくらいありますか。
  178. 池田久克

    政府委員(池田久克君) 現在概算要求いたしているもので外貨関連のものが大体二千三百億ぐらいございます。そのうち、大部分のものがドルでございますけれども、平板的に計算いたしまして一円動きますと六億円強が動く、そういう計算になっております。ただし来年度幾らにするか、レートがわかりませんので何とも申し上げられない段階でございます。
  179. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 百七十円なら百七十円で今のものかかってと、つまり去年の予算と比べるとどのくらい減り得るかということを私は聞きたいのですよ。それはできますわね。
  180. 池田久克

    政府委員(池田久克君) ただいま申し上げましたように、例えば百七十円で要求をしておりまして、一円動いて百六十九円になるといたしますと、ドルの関係で六億円強必要でなくなる、そういう計算になります。
  181. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 首相、防衛庁の予算がふえていく要因もあると思いますけれども、減る要因もあるわけですね。だから私は、あんたが一%枠を守るという決心をすれば、――つまり三木内閣時代に決めた、あんたが幹事長時代に決めた枠、これは国民に対する一つの大事な公約です。それから国際的にもやっぱり一つの安心できる、例えばASEAN諸国なんかにとっちゃ安心できる公約の一つです。それは守れると思いますね、今のドルの状態からいうと、今の返答からいって。どう思いますか。
  182. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) あれを決めたときは、たしか日本の経済成長がかなり多目に見られて、あの経済計画の五カ年計画でも一〇%から一三%ぐらいの成長を見込んで、その前提で一%という数字があのとき出てきて、数年でこれは完遂できると、そういう発想であったと思うんです。しかし、ことしの景気自体、GNPを見ていますというと、四%成長自体が非常にきつい情勢に今なっている。来年度予算編成の場合に経済成長をどの程度に見込めるかという点を考えてみると、ことしの情勢から見ますと、今の状況が続くならばかなりまたきついということは考えられる。そういう情勢が続くと一%を守るということはよほどきつい状況にもなるのではないかと想像しています。ことしの状況はたしか〇・九九七ぐらいでしたか、そういう数字であったと記憶しております。そういう面で、やはりいろんな数字、計数等も見詰め、また慎重に考えなけりゃいかぬと、そう思っておるところであります。
  183. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 一%枠というものは国民総生産の枠ですから、総生産の枠がふえりゃ楽になるわけで、それが減りゃつらくなる、こういうことです。問題はしかし、今の経済は非常に悪いですよ、本当に、実際を言いますと。これはなかなか回復の見込みが立たない。ですから、やっぱり減税ということがこれは本当に必要になってくる、実際において税収入は減ると思わなきゃいけませんね。したがって、国民負担というものを考えると、いろんなむだな費用というものは節していかなきゃいけません。だから防衛費なども十年一日のように同じような構想じゃだめであって、できる限り安い防衛費ということを考えなきゃいけない。そういう場合に、一%枠を守ろうという一つの歯どめですね、これは非常に有効なんですから、これをいいかげんに考えないようにしてもらいたいと私は思います。防衛庁長官、ひとつ答えてください。
  184. 栗原祐幸

    国務大臣栗原祐幸君) 今総理からいろいろお話がございましたけれども、私どもは三木内閣の防衛費の問題については守ってまいりたい、ただ、いろいろの要因がある、大変難しい状況にもあるということでございます。
  185. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 先ほどから申し上げているように、守るために難しい要因もあれば易しい要因もできている、例えばドル安みたいなね。ですから、守れますよ。きちっと守る決心でいてもらいたいということを希望します。  これは一度被ると、一%程度なんて言い出すと、やっぱり歯どめの役を果たせなくなりますよ。よく防衛の非常な重大性を最近になって言われますけれども、我々はあんた方よりちょっと年が上だからね。日本の陸海軍あたりが競争して防衛費をどんどんどんどんふやした。国を守るんだと言ってふやしたわけです。しかし、その結果守れなかったんです。かえって侵略なんかして今のような状態になったんであって、防衛費をふやすから国が守れるというものじゃ決してない。これは我々のこの世紀に経験した深刻な経験なんだから、この経験はひとつしっかり覚えてなきゃいけません。ただ防衛費をふやせば守れるだなんてね……。
  186. 岩本政光

    委員長岩本政光君) 時間が来ておりますので簡単にお願いいたします。
  187. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 いいかげんなことを言ってちゃだめですね。  もういけないんですか。一つだけ。
  188. 岩本政光

    委員長岩本政光君) 時間が来ておりますので簡潔にお願いいたします。
  189. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 先ほど中曽根首相は、日本はスパイ天国だと、こう言いましたね。総理大臣はそんなことを簡単に言っちゃいけませんよ、あんた、総理大臣は。泥棒天国と言ってもいけないしね、やっぱり国の悪口だから。総理大臣がそんなことを簡単に言っちゃいけません。あんたが心ひそかに思ってるのはしようがないけれどもね。総理大臣が公式の席上で日本はスパイ天国だなんてばかなことを言っちゃいけませんよ。日本がスパイ天国ならスパイ天国は幾らでもある。スパイが活躍し得る一番の条件は、政府が機密を漏えいするということだ。庶民が機密を知っているはずがないもの。政府が、総理大臣とか防衛大臣とか、そういう者がうかつに機密を漏えいする、そういうことだ。だから、自分の責任を考えないで、日本はスパイ天国だなんていいかげんなことをこれからひとつ言わぬでもらいたいと私は思うんだ。それは厳重に御注意願いたいと私は思います。  それじゃ、どうもありがとうございました。
  190. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 日本はスパイ天国であると言われていると、そういうふうに前から申し上げております。
  191. 岩本政光

    委員長岩本政光君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」「異議あり」と呼ぶ者あり〕
  192. 岩本政光

    委員長岩本政光君) 御異議があるようですから、これより挙手により採決をいたします。  本案に対する質疑を終局することに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  193. 岩本政光

    委員長岩本政光君) 多数と認めます。よって、本案に対する質疑は終局することに決定いたしました。  これより討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
  194. 久保田真苗

    久保田真苗君 私は、日本社会党・護憲共同を代表して、ただいま議題となりました防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案に対し、反対の討論を行うものであります。  まず、本法律案の内容の問題を申し述べる前に、その背景となる政府防衛政策について重大なる危惧の念を示さざるを得ません。中曽根内閣になってからの防衛政策は、日米安保体制の強化と軍事優先路線そのものであります。  これまで歴代政府が国会の論議を通じて示してきた基本防衛政策をも無視した中曽根内閣の姿勢は、外では米国の対ソ封じ込め戦略に加担し、西太平洋での米戦力の有力な一翼を担うため、軍事力の増強に努めてきたのであります。また、内では財政再建に名をかりて福祉予算等を削減し、国民に負担を強いながら防衛予算のみを突出させてきたのであります。今これらのツケはすべて国民の肩に重くのしかかってきております。  政府が九月九日決定したSDI研究参加は、米国政府見解とは別に、戦略核兵器廃絶を求めるものではなく、核戦略での米国の優位を求めるものであることは明らかであります。また、研究への民間企業の参加は武器禁輸政策に見られる平和産業の方針を転換させるものと言わなければなりません。これらは中曽根内閣の手で行われた対米武器技術供与の決定からの流れと指摘できます。さらに、SDI研究は、核爆発を利用するエックス線レーザー兵器など非核三原則に抵触するものも含まれているなど大きな問題を含むものであり、即時中止すべきであります。  国是たる非核三原則は、トマホーク搭載の戦艦ニュージャージー等の寄港に見られるように、口先だけの遵守とは裏腹にその空洞化がますます進行し、政府は米国の核持ち込みに対しては事実上の黙認姿勢をとっているのであります。  また、池子、三宅島に見られるように、地域住民の意志を無視した形での米軍基地化の動きがあります。さらに、地位協定の拡大解釈による思いやり予算についても、円高対策と称して、政府みずからがこれ以上拡大できないと言っていた労務費についても、一層の拡大解釈を図ろうとしております。我が国の円高対策も不十分な中で、なぜこのような措置が必要なのか理解に苦しむところであります。政府が今思いやる必要があるのは、米軍にではなく、我が国の国民であることを強く主張するものであります。  在韓米軍の対地攻撃機A10等も参加したさきの日米統合演習は、米国を核として日本と韓国が軍事上密接不可分な関係にあることを明確に示しました。この行き着く先は日米韓の集団安全保障体制であります。  このような一連の行動は、すべて日米安保条約の運用の円滑化、効率化という名のもとに行われているのであります。日米安保体制の持つ危険性の本質がますます明確になってきていると指摘せざるを得ません。  また、政府防衛力増強はとどまるところを知らないと言わざるを得ません。防衛費は今や三兆三千億円余になり、毎年突出した増額が認められております。その結果、昭和四十二年度以来二十年にわたり歴代政府が遵守してきた防衛費のGNP一%以内の不文律を毎年、突破しようとしているのであります。最近に至っては、公然とその見直しを表明するに至りました。  それのみならず政府は、極東ソ連軍増強等を根拠として、潜在的脅威を過度に強調し、政府みずからが基盤的防衛力構想と称して、五十一年に定めた防衛計画大綱を見直す姿勢すら示しております。防衛計画大綱水準すら際限のない軍拡の計画であるにもかかわらず、別表の改定は自由であり、大綱水準達成の際には基盤的防衛力構想すら見直す可能性を示唆したことは、我が国が米国の要請を受けて、さらに飽くなき軍拡に踏み出すことを表明したものとして、絶対に容認できるものではありません。財政的、規模的上限が撤廃された防衛力の行き着く先は、まさに過去の歴史が証明しております。  軍事力で真の平和を得ることはできません。私は、政府が今こそ理性を取り戻すべきことを国民の声として主張するものであります。  本法律案は、このような背景の中で自衛官と予備自衛官定員増強しようとするものであり、認めるわけにはいきません。また、通信施設等の防護に武器を使用できる規定は、自衛隊優先の姿勢であり、国民に銃を向ける発想であり危険なものと言わなければなりません。国賓輸送等のための航空機の保有と任務の付与は、自衛隊にする必要はまるでないのであって、不要のものと考えます。  特に、この際強調しなければならないのは、予備自衛官に民間人を採用することを検討していることが明らかになったのでありますが、これは我が国を軍事体制に限りなく近づける発想であり、直ちに中止すべきであります。しかも、それが防衛行革の名のもとに防衛庁の内部で行われていることに強い疑念を感じざるを得ないのであります。  以上、私は政府防衛政策及び本改正案の持つ危険性を指摘いたしまして、本改正案に対する反対の討論を終わります。
  195. 大城眞順

    ○大城眞順君 私は、自由民主党を代表して、ただいま議題となりました防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案に賛成の討論を行うものであります。  申し上げるまでもなく、国の独立を保持し、国民の生命と安全を守ることは政治の最重要課題であり、政府与党である我が自由民主党の政策の根幹をなすものであります。また、近年我が国の国際的地位の向上とともに、世界の平和と安全確保に対する我が国の貢献も一段と要請されてきているところであります。  今日の国際情勢は、依然として厳しく、国家間の力の均衡によって辛うじて平和が保持されていると言っても過言ではありません。  このような状況のもと、政府は外交的努力、経済協力等のいわゆる総合安全保障政策を推進し、日米安保体制のもと、効率的な質の高い防衛力を整備することによって、自国の平和と安全を確かなものとするとともに、さらには広く国連の場において、軍備管理、軍縮など東西間の対話の促進を世界各国に訴え続けてきたことは御承知のとおりであります。  すなわち、防衛力整備に当たっては、国防の基本方針にのっとり、専守防衛の理念を堅持して他国脅威を与えるような軍事大国とならないとの立場を内外に明らかにし、文民統制を確保し、防衛に関する国会の決議を尊重するとともに、防衛関係費についても他の諸経費との調和を図りつつ、節度のある有効かつ効率的な防衛力の整備を図ってきたところでありまして、自衛隊創設以来三十年、ようやくにして全国民的な支持と信頼を得ておりますことは、過般の衆参両院の選挙結果に徴しても明らかなところであります。  今回の防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案による自衛官及び予備自衛官の増員措置は、さきに閣議決定を見た中期防衛力整備計画の初年度に当たる六十一年度業務計画に基づいたものであり、これまた国民の支持と信頼にこたえ得るものと信じます。  今後も政府は、国際軍事情勢及び諸外国の技術的水準の動向を考慮し、これに対応し得る効率的な防衛力の整備を図るため、陸上、海上及び航空自衛隊のそれぞれの各種防衛機能について改めて精査し、資源の重点配分に努め、さらには各自衛隊の有機的協力体制の促進、統合運用効果の発揮に配意しつつ、防衛計画大綱基本枠組みのもと、これに定める防衛力水準の達成を早期に図るべく一層の努力を払われるよう要望して、私の賛成討論を終わります。
  196. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 私は、公明党・国民会議を代表して、ただいま議題となりました防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案に対し、反対の討論を行うものであります。  我が国防衛政策は、平和憲法のもと、国是たる非核三原則、集団的自衛権の不行使、武器輸出三原則、GNP一%枠等の基本原則を厳守して進められるべきものであり、防衛力の整備は、他国脅威を与えない、領域保全能力に限定されるべきものであります。  このような立場から見ると、最近の政府のとっております防衛政策は、これらの原則を形骸化するものであって看過し得ないものであります。  第一に、SDI研究への参加であります。  政府は九月九日、SDI研究への参加を決定いたしましたが、これは宇宙の平和利用を定めた国会決議の趣旨に反するものであります。また、SDI研究の中核といわれるエックス線レーザー兵器は核爆発を利用するものであり、核兵器であるとの疑惑の極めて濃いものであって、このような研究に参加することは非核三原則に反するおそれがあるのであります。  第二に、防衛費のGNP一%枠が突破されようとしている点であります。  六十一年度は円高の影響や原油価格の低下によって一%枠内におさまったものの、六十二年度予算でこれまでの防衛費の異常な突出を続けるならば、一%枠を突破するのは確実であります。さらに政府は、一%枠にかえて一%程度論を持ち出したり、大綱のみを歯どめとする立場をとろうとしております。しかし、このようなあいまいな基準では歯どめとしての効果が期待できないのであります。一たび歯どめを外したならば、際限のない軍拡へ向かうおそれが生じることは歴史の証明するところであります。  第三は、集団的自衛権の行使に踏み込む危険性であります。  十月下旬に北海道で行われた日米共同演習は、初の統合実動演習であると同時に、在韓米軍の攻撃機が参加しており、従来のものから一歩も二歩も踏み出したものであります。先日の金日成主席死亡の誤報事件に見られるように、朝鮮半島の緊張度は依然として高いものがあります。その韓国に駐留する米軍との共同演習は、従来は米軍からの要請があっても集団的自衛権の問題に絡み、我が国の方で慎んできたとされておりますが、それを今回実施したことは極めて重大であります。我が党は、日米共同演習を全面的に否定するものではありませんが、我が国基本的な立場から、その実施にはおのずから限度があり、今回の共同演習はそれを超えるものと理解せざるを得ないのであります。  最後に、自衛隊の綱紀粛正について申し述べたいのであります。  今年に入って連続して発生した航空機事故や不祥事は、自衛隊に対する国民の信頼を裏切るものであり遺憾であります。去る十月二十六日の自衛隊観閲式においても中曽根総理は綱紀粛正を呼びかけておりますが、航空自衛隊幹部の公私混同飛行に見られるように、その根は深いと言わねばなりません。F15、P3Cといった最新鋭の装備をそろえれば防衛力が高まるものではないのであります。国民の信頼を回復するために、防衛庁、自衛隊の猛省を促すものであります。  以上申し述べました基本的な立場から、本法律案我が国防衛政策の基本原則を逸脱する流れに沿うものであることを指摘して、反対の討論を終わりたいと思います。
  197. 柳澤錬造

    柳澤錬造君 私は、民社党・国民連合を代表して、防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案について賛成の討論を行います。  本防衛二法の要旨は、自衛官定員を六百六人増員するということ、予備自衛官を千三百人増員するということ、国賓の輸送に航空機を使用するということ等々であり、これらについては賛成するものであります。  むしろ今日の内外情勢を眺めるとき、近代産業国家日本としての国の安全保障がいかに重要か、その基本姿勢についてもっと明確に示すよう、次の点を要望しておきます。  一つ自衛官定員を六百六人増員するというが、陸上自衛隊は二万五千人も欠員のままなぜ十年以上も放置をしておくのか、その真意がわかりません。  二つとして、安全保障は、我が国の国土と一億二千万国民の生命、財産を守るという平和国家存続のためのものであり、その平和の維持はただではないということです。  三つとして、我が国防衛は、主権が侵されてもたった一枚の抗議文を送るだけであります。これでは独立国家としての権威がないと言わざるを得ないということであります。  以上の要望、意見を付して賛成討論を終わります。
  198. 内藤功

    ○内藤功君 私は、日本共産党を代表して、防衛二法の一部を改正する法律案に反対の討論を行います。以下、反対理由を述べます。  第一、本法案の背景となる政策は、日本をレーガン政権の海洋戦略、第二戦線戦略に加担させようとするものであります。レーマン海軍長官、ワトキンズ作戦部長、ケリー海兵隊司令官は、一九八六年一月の米合衆国海軍協会会報に公式戦略として論文を発表し、欧州、中東有事の際、北西太平洋でソ連海空戦力を先制攻撃する、千島、サハリン等に上陸進攻する、同盟国の部隊ソ連潜水艦を壊滅させると強調しました。ソロモン国務省政策企画局長は六月、海軍大学校の講演で、ヨーロッパ有事の際の第二戦線を西北太平洋でつくり、ソ連の力を分散させることを強調しました。これを裏づけたのは、八月下旬より九月末にかけてのヨーロッパでの北大西洋軍ノーザンウエディング演習、ノルウェー上陸演習と連動する日本周辺、ベーリング海、オホーツク海、日本海、西北太平洋でのニュージャージー、カールビンソン、レンジャー基幹の水上戦闘群、空母戦闘群によるソ連領域付近での相次ぐ演習であります。本法案の増員及び艦船防護の武器使用の規定は、この戦略への自衛隊の加担を一層強めるものであります。  第二、公海上における日本船舶への意図的、組織的、計画的、多発的武力攻撃への日米共同対処に見られるとおり、日本領域に武力攻撃なくも、公海上の日米艦船への攻撃を口実、契機となして、米軍との共同作戦に入る余地をつくろうとしております。シーレーン防衛の名のもとに新たに増強しようとしている装備は、専門家の試算によれば、イージス艦一隻千五百億円を四隻、OTHレーダー一カ所五百億円、早期警戒機AEW一機二百億円二十二機分として、実に一兆一千億円と試算されるのであります。このような膨大な国民の血税をもって防護する対象は、結局、海洋戦略に基づいて、西北太平洋、日本海での米艦船、兵たん補給の重要輸送船団となることは必至であります。本法案は、自衛艦及び支援船を船舶の中に含め、艦船防護の名のもとに、部隊指揮官の判断のもとに、武器使用の余地を与え、日米安保条約五条による我が国施政権下への武力攻撃以前でも共同作戦参加を可能ならしめるものであります。  第三、十月初めの日米統合共同実動演習――キーンエッジ演習は、自衛隊を米軍と事実上一体の軍隊として投入する危険を示すものであります。同時期に米国は、統合参謀本部が主宰し、太平洋軍、大西洋軍、欧州軍、中央軍、南方軍及び即応軍の各統合軍、航空宇宙防衛軍、戦略空軍、軍事空輸軍各特定軍の参加する世界的規模の複数職域での演習を行いました。本法案の自衛官増員、武器防護対象の拡大は、全世界的規模の米軍戦略の補完戦力として自衛隊を組み込む危険性を持つものであります。  第四、臨調行革の名のもとに、国鉄からは安全サービスに不可欠の職員を含め九万三千人を余剰人員として退職させようとしています。六十万人から九十万人と言われる産業調整による失業の事態も予想されています。教育、福祉の予算は切り詰め、大型間接税で国民に犠牲を強要しています。こういう中でひとり憲法違反の自衛隊を増員することは、国民の納得を得られるものと言えません。  第五、本年九月以降、百里基地F15のサイドワインダーの暴発事故、新田原基地におけるT2の墜落事故、千歳空港での再度にわたるパンクによる空港使用不能、高級飛行クラブとも称せらるべきT33練習機十機及び燃料を私用に使い、文字どおり私物化する行動など、国民の生命、身体、財産を脅かし、交通を妨害し、血税を浪費する行動はもってのほかであります。  第六、予備自衛官については、本法案に関連し、いわゆる民間人初め自衛官未経験者から、若年者を中心に二十万人ないし三十万人の大量採用の方途を検討中なのではないかとの質疑に対し、肯定も否定もせず終始したことは重大であります。一カ月三千円、訓練中は一日四千七百円の安上がりの兵員、招集命令におくれるならば懲役、禁錮、有事においては第一線への補充という予備自衛官に民間人、自衛隊未経験者の青年の大量採用をすることは、徴兵制に道を開くものとして強く反対するものであります。  以上の理由により、本法案には反対するものであります。  日本の進路は、唯一の被爆国として核兵器廃絶の先頭に立ち、際限のない軍備拡大をやめ、大幅な軍事費削減を行い、国民生活優先の方向に進むことであります。我が国が、他国の戦争にはせ参じ、また他国の戦争に巻き込まれるおそれのある軍事同盟を解消し、非核、非同盟、中立、自衛の道を歩むべきことを強く主張して、反対討論を終わるものであります。
  199. 岩本政光

    委員長岩本政光君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。  これより採決に入ります。  防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  200. 岩本政光

    委員長岩本政光君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  201. 岩本政光

    委員長岩本政光君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  202. 岩本政光

    委員長岩本政光君) 地方公共団体執行機関が国の機関として行う事務の整理及び合理化に関する法律案を議題といたします。  まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。玉置総務庁長官
  203. 玉置和郎

    国務大臣(玉置和郎君) ただいま議題となりました地方公共団体執行機関が国の機関として行う事務の整理及び合理化に関する法律案について、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。  政府は、国、地方を通ずる行政改革を当面の重要課題の一つとして位置づけ、その推進に取り組んできているところであります。その一環として、昨年末の閣議決定昭和六十一年度に講ずべき措置を中心とする行政改革の実施方針について」において、臨時行政改革推進審議会の答申で指摘された機関委任事務及び国、地方を通ずる許認可権限等の整理合理化事項について答申の趣旨に沿って措置する旨、決定いたしております。  今回は、これらのうち所要の法律案を国会に提出するものとされた事項を取りまとめ、ここにこの法律案を提出した次第であります。  次に、法律案の内容についてその概要を御説明申し上げます。  第一に、機関委任事務の整理合理化に関する事項としましては、社会経済情勢変化等により実質的な意義が失われたものについては、これを廃止することとし、地方公共団体事務として既に同化定着しており、その自主的な判断によって処理することが適当なものについては、団体事務化することとし、市町村において処理することが効率的であるものについては、これを市町村委譲することとする等、合わせて五十事項を措置することといたしております。  第二に、国、地方を通ずる許認可権限等の整理合理化に関する事項としましては、性質上全国的統一性等を確保すべきものについても、地方の実情を踏まえた事務処理を行うことが望ましいものについては、これを都道府県知事に委譲することとし、十一事項を措置することといたしております。  この法律案は、以上のとおり、地方公共団体の自主性、自律性を強化しつつ、地域の実情に合った総合的、効率的な行政の実現及び事務運営の簡素化を図る観点から、機関委任事務及び国、地方を通ずる許認可権限等の整理及び合理化を行うため、十一省庁四十三法律にわたる改正を取りまとめたものであります。  なお、これらの改正は、一部を除き公布の日から施行することといたしております。  以上がこの法律案の提案理由及び内容の概要であります。  何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同あらんことをお願いいたします。
  204. 岩本政光

    委員長岩本政光君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。  本案についての質疑は後日に譲ります。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時三十二分散会