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久保田真苗君 私は、
日本社会党・護憲共同を代表して、ただいま議題となりました
防衛庁設置法及び
自衛隊法の一部を改正する
法律案に対し、反対の討論を行うものであります。
まず、本
法律案の内容の問題を申し述べる前に、その背景となる
政府の
防衛政策について重大なる危惧の念を示さざるを得ません。中曽根内閣になってからの
防衛政策は、日米安保体制の強化と軍事優先路線そのものであります。
これまで歴代
政府が国会の論議を通じて示してきた
基本防衛政策をも無視した中曽根内閣の姿勢は、外では米国の対ソ封じ込め戦略に加担し、西太平洋での米
戦力の有力な一翼を担うため、軍事力の
増強に努めてきたのであります。また、内では財政再建に名をかりて福祉予算等を削減し、国民に負担を強いながら
防衛予算のみを突出させてきたのであります。今これらのツケはすべて国民の肩に重くのしかかってきております。
政府が九月九日
決定したSDI研究参加は、米国
政府の
見解とは別に、戦略核兵器廃絶を求めるものではなく、核戦略での米国の優位を求めるものであることは明らかであります。また、研究への民間企業の参加は武器禁輸政策に見られる平和産業の方針を転換させるものと言わなければなりません。これらは中曽根内閣の手で行われた対米武器技術供与の
決定からの流れと
指摘できます。さらに、SDI研究は、核爆発を利用するエックス線レーザー兵器など非核三原則に抵触するものも含まれているなど大きな問題を含むものであり、即時中止すべきであります。
国是たる非核三原則は、トマホーク搭載の戦艦ニュージャージー等の寄港に見られるように、口先だけの遵守とは裏腹にその空洞化がますます進行し、
政府は米国の核持ち込みに対しては事実上の黙認姿勢をとっているのであります。
また、池子、三宅島に見られるように、
地域住民の意志を無視した形での米軍基地化の動きがあります。さらに、地位協定の拡大解釈による思いやり予算についても、円高対策と称して、
政府みずからがこれ以上拡大できないと言っていた労務費についても、一層の拡大解釈を図ろうとしております。
我が国の円高対策も不十分な中で、なぜこのような措置が必要なのか
理解に苦しむところであります。
政府が今思いやる必要があるのは、米軍にではなく、
我が国の国民であることを強く主張するものであります。
在韓米軍の対地攻撃機A10等も参加したさきの日米統合演習は、米国を核として
日本と韓国が軍事上密接不可分な
関係にあることを明確に示しました。この行き着く先は日米韓の集団安全保障体制であります。
このような一連の行動は、すべて日米安保条約の
運用の円滑化、効率化という名のもとに行われているのであります。日米安保体制の持つ危険性の本質がますます明確になってきていると
指摘せざるを得ません。
また、
政府の
防衛力増強はとどまるところを知らないと言わざるを得ません。
防衛費は今や三兆三千億円余になり、毎年突出した増額が認められております。その結果、
昭和四十二年度以来二十年にわたり歴代
政府が遵守してきた
防衛費のGNP一%以内の不文律を毎年、突破しようとしているのであります。最近に至っては、公然とその見直しを表明するに至りました。
それのみならず
政府は、
極東ソ連軍の
増強等を根拠として、
潜在的脅威を過度に強調し、
政府みずからが基盤的
防衛力構想と称して、五十一年に定めた
防衛計画の
大綱を見直す姿勢すら示しております。
防衛計画の
大綱の
水準すら際限のない軍拡の
計画であるにもかかわらず、別表の改定は自由であり、
大綱水準達成の際には基盤的
防衛力構想すら見直す
可能性を示唆したことは、
我が国が米国の要請を受けて、さらに飽くなき軍拡に踏み出すことを表明したものとして、絶対に容認できるものではありません。財政的、規模的上限が撤廃された
防衛力の行き着く先は、まさに過去の歴史が証明しております。
軍事力で真の平和を得ることはできません。私は、
政府が今こそ理性を取り戻すべきことを国民の声として主張するものであります。
本
法律案は、このような背景の中で
自衛官と予備
自衛官の
定員を
増強しようとするものであり、認めるわけにはいきません。また、通信施設等の防護に武器を使用できる規定は、自衛隊優先の姿勢であり、国民に銃を向ける発想であり危険なものと言わなければなりません。国賓輸送等のための航空機の保有と任務の付与は、自衛隊にする必要はまるでないのであって、不要のものと
考えます。
特に、この際強調しなければならないのは、予備
自衛官に民間人を採用することを検討していることが明らかになったのでありますが、これは
我が国を軍事体制に限りなく近づける発想であり、直ちに中止すべきであります。しかも、それが
防衛行革の名のもとに
防衛庁の内部で行われていることに強い疑念を感じざるを得ないのであります。
以上、私は
政府の
防衛政策及び本改正案の持つ危険性を
指摘いたしまして、本改正案に対する反対の討論を終わります。