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1986-10-29 第107回国会 参議院 産業・資源エネルギーに関する調査会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十一年十月二十九日(水曜日)    午後二時開会     ─────────────    委員の異動  十月十三日     辞任         補欠選任      上野 雄文君     小野  明君      本岡 昭次君     大森  昭君     ─────────────   出席者は左のとおり。     会 長         浜本 万三君     理 事                 川原新次郎君                 沢田 一精君                 宮島  滉君                 小野  明君                 飯田 忠雄君                 神谷信之助君     委 員                 岩動 道行君                 工藤万砂美君                 沓掛 哲男君                 田沢 智治君                 森山 眞弓君                 大森  昭君                 対馬 孝且君                 馬場  富君                 小笠原貞子君    事務局側        第三特別調査室        長        高橋 利彰君    参考人        財団法人日本エ        ネルギー経済研        究所理事長・総        合エネルギー調        査会需給部会長  生田 豊朗君        東京大学名誉教        授        大島 恵一君        神奈川大学経済        学部教授     川上 幸一君        埼玉大学教養学        部助教授     室田 泰弘君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○理事辞任及び補欠選任の件 ○産業資源エネルギーに関する調査  (エネルギー需給見通しエネルギー対策基本的方向に関する件) ○参考人出席要求に関する件     ─────────────
  2. 浜本万三

    会長浜本万三君) ただいまから産業資源エネルギーに関する調査会を開会いたします。  まず、理事辞任についてお諮りいたします。  去る十月八日、対馬孝且君から、文書をもって、都合により理事辞任いたしたい旨の申し出がございました。これを許可することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 浜本万三

    会長浜本万三君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  この際、理事補欠選任を行いたいと存じます。  理事選任につきましては、これを会長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 浜本万三

    会長浜本万三君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事小野明君を指名いたします。     ─────────────
  5. 浜本万三

    会長浜本万三君) 産業資源エネルギーに関する調査を議題といたします。  本日は、エネルギー需給見通しエネルギー対策基本的方向に関する件の調査のため、参考人として財団法人日本エネルギー経済研究所理事長総合エネルギー調査会需給部会長生田豊朗君、東京大学名誉教授大島恵一君、神奈川大学経済学部教授川上幸一君及び埼玉大学教養学部助教授室田泰弘君の御出席をいただいております。  この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多忙中のところ、本調査会に御出席をいただきましてまことにありがとうございました。皆様から忌憚のない御意見を拝聴し、今後の調査参考にいたしたいと存じます。  議事の進め方といたしましては、まず三十分ずつそれぞれ御意見をお述べいただきまして、その後一時間程度委員の質疑にお答えいただく方法で進めてまいりたいと存じます。よろしくお願いを申し上げたいと存じます。  それではまず、生田参考人からお願いいたします。生田参考人
  6. 生田豊朗

    参考人生田豊朗君) 日本エネルギー経済研究所生田でございます。  いただいた時間が三十分でございますので余り詳しいお話はいたしかねると思いますが、御容赦をいただきたいと思います。  私がこれから御報告いたします主な点は、エネルギー全体の見通し、その中で特に石油石炭LNG、その辺に重点を置いて報告をしろと、そういう御趣旨でございますので、そのようにさせていただきたいと思います。  エネルギー情勢全体でございますけれども、最近数年間、具体的に申しますと、昭和五十四年にイラン革命を引き金にいたしました第二次オイルショックが発生をいたしましたけれども、それが一段落いたしましてからは全般に落ちついた情勢になっております。その間第二次オイルショックで三十四ドルまで高騰いたしました石油価格も徐々に低下を続けまして、特にことしになりましてからは大幅かつ急激な原油価格低落が起きております。御承知のように現在の価格水準が一バレル約十五ドル程度でございますので、昨年と比べまして大幅な下落であります。ちなみに、昨年の原油価格、これを国際石油市場での平均価格、当然FOB価格でございますが、それでとりますと大体二十六ドルから二十七ドルの間でございます。それが最近、今申しましたように十五ドル前後に低落をいたしておりますし、本年に入りましてから二度ほど底値が出ておりまして、十ドル割れ、八ドルとか九ドル、こういう底値が二回ほど出ております。八月以後反騰しまして十五ドルぐらいになっているわけであります。  こういう情勢でございますのは、何と申しましても石油中心にいたしましてエネルギー需給全体がいわゆる買い手市場の形、つまり、やや供給過剰の状態になっているからでありまして、その供給過剰の状態を反映しましてエネルギー価格全般石油に引きずられる形で低下をしている。したがって、需給上の問題は現在のところは特段にございません。またその間、ことしになりましてからの石油価格低落が起こります前までの時期は石油価格下落も緩やかな低下、年間で一ドルないし三ドル程度の緩やかな下落でございましたので、先ほども申しましたように国際石油市場での石油価格は比較的高い水準で推移しておりました。繰り返しになりますが、昨年で二十六、七ドルであります。したがって、この高い石油価格世界経済構造あるいは産業構造、または各国の国民の生活様式に相当の影響を与えたわけでありまして、それによって経済成長エネルギー消費との関係は、第一次オイルショック昭和四十 八年でございますが、それと比べましてかなり大きく変化をしております。  具体的に申しますと、経済成長速度よりもエネルギー消費増加速度かなり遅くなっているわけでございまして、日本経済の場合、オイルショックの前の高度成長の時代におきましては経済成長率よりもエネルギー消費増加率の方が高かったわけでありますけれども、それが逆になりまして、最近では平均的に見まして経済成長率の大体半分かあるいはそれ以下の速さでエネルギー消費増加するということでございます。私どもの言葉で弾性値と言っておりますが、これが一でございますと経済成長率エネルギー消費増加率が同じになるわけですが、それが高度成長のときは一を上回っておりましたのが、昨今では〇・四、五まで低下しているという状況でございます。  このような傾向は今後ともかなり長期間続くのではないかと考えております。私どもでもエネルギー需給長期的な予測をしておりますけれども、これから紀元二〇〇〇年にかけまして、紀元二〇〇〇年と申しましてもことしから十三年余りしかないわけで、もう目の前でございますけれども紀元二〇〇〇年までの十三、四年間の間でエネルギー消費がどの程度増加するであろうかということでございますけれども、今申しましたように、経済成長率の半分あるいはそれ以下のスピードでしかエネルギー消費は多分増加しないだろうと考えております。つまり弾性値を〇・四ないし〇・五と見ておりまして、これは政府総合エネルギー調査会、先ほど会長の御紹介がございましたように、私需給部会長を務めさせていただいておりますが、これが三年ほど前、昭和五十八年につくりました見通しでも弾性値を〇・六ぐらいに見ております。これから先見通しの改定をするに当たりましても、大体〇・五前後の弾性値で考えるというのが現時点では常識的なラインではなかろうかと思います。  そういたしますと、今後日本経済成長率がどのくらいかという、これは予測前提条件になるわけでありますけれども、これは前提条件でありますのでいろいろな値をそこに入れることが可能でございますが、政府見通しでございますと四%という成長率をとっておりますし、最近の経済運営におきましても四%の経済成長率を維持するというのが政府の基本的な姿勢のようでございますが、私どもではやや低目に考えまして、前提条件としまして、これから二〇〇〇年にかけての経済成長率、これは実質成長率でございますが、それを三%から三・五%ぐらいと考えまして、それで先ほど申しました弾性値を〇・四ないし〇・五として計算をいたしますと、エネルギー消費伸び率が大体年率で一・五%かあるいはそれを若干下回るという程度の数字になってまいります。そういたしますと、紀元二〇〇〇年におきます一次エネルギー我が国需要でございますが、これは余り大きくなりませんで、石油換算で五億キロリットルから五億五千万キロリットルの間ぐらいというところにおさまるだろうと思っております。これは世界全体を見ましてもほぼ同様の傾向でございまして、世界エネルギー需給展望いたしますのはもっと難しい問題がいろいろございますのですが、特に先進工業諸国いわゆるOECDに加盟しております国の成長率とそれから発展途上国経済成長率、これをどう見るかというところがかぎでございます。  我が国を含めましての先進工業諸国におきましては、先ほど申し上げましたようなエネルギー利用効率、簡単に申しますと省エネルギーでございますが、これがかなり定着をしておりますので、したがって、先ほど来言いましたような経済成長率よりもエネルギー消費増加率の方が相当遅いと、増加率が低いということがほかの先進工業諸国についても言えると思います。ただ発展途上国につきましては先進工業諸国ほどの省エネルギー定着がございませんので、世界経済全体を眺めまして発展途上国経済成長率が比較的高い場合にはその部分におきましてエネルギー消費増加かなり大幅に起きると考えられます。そこが今後の世界全体としてのエネルギー需給を見る一つの大きなかぎだと思います。しかし、それにいたしましてもエネルギー消費の総量としましては先進工業国の分が圧倒的に多いわけでありまして、発展途上国の分はそれほど多くありませんので、発展途上国でのエネルギー消費かなり速い速度増加をいたしましても世界全体としては余り大きなエネルギー消費増加にはならないであろうと考えられます。  しかし、世界全体を通じましてもそれから日本をとりましても、まとめて申しますと、これから先のエネルギー消費動向といたしましては緩やかに増加をしていくということだろうと思います。日本の場合、最近二、三年間をとりますと、これは経済成長率が高かったこと、それから気温の要因、その他もございましてエネルギー消費増加率年率で三%あるいはそれを上回っているわけでございますけれども総合エネルギー調査会長期エネルギー需給見通しにおきましては年率二・一%のエネルギー消費増加予測しているわけでございますが、やや長い目で見ますとそのラインにほぼ近寄ってきているということでございますので、この辺の二%程度ライン、あるいはさっき申しましたようにそれを少し下回るようなライン、その程度の緩やかな増加率でこれからのエネルギー消費増加していくと考えてよろしいかと思います。したがって、それに見合った形でのエネルギー供給確保を考える、これがエネルギー政策の基本的な問題点だろうと思います。  あと時間が半分しかございませんので、特に私の場合、石油それからLNG石炭重点を置いて報告をしろという御指示でございますので、各論の方に移らせていただきたいと思います。  まず石油でございますけれども、総論として考えます場合に、石油依存度、すなわち一次エネルギー供給の中での石油の占める比率でありますけれども、これは徐々にこれからも低下を続けていくと考えられます。日本の場合をとりますと、昭和四十八年の第一次オイルショックの直前におきましては石油依存度がほとんど八〇%に近かったわけであります。正確に申しますと七八%でございましたけれども、それが毎年低下をいたしまして、昨年度におきましては五七%を若干下回るところまで下がってきております。この傾向は今も申しましたように今後も続くと考えられますが、しかし昭和四十八年から最近までの十三年間の間に七八%から五七%まで二一%の低下があったわけでございますが、これと同じようなスピード石油依存度低下していくことはまずないだろうと思います。さっき申しましたように徐々に石油依存度は下がっていくと思いますけれども、やはりこの低下の何と申しますか、速度かなり小さくなってくると思いますので、紀元二〇〇〇年におきまして我が国石油依存度は恐らく四五%程度、あるいは場合によっては五〇%、そのあたりにしか下がってこないのではないかと考えております。最近石油連盟が発表いたしました石油業界としての長期予測がございますが、それによりますと、紀元二〇〇〇年の石油依存度を五〇%と見ております。これは二〇〇〇年にかけまして幾つか考えられるシナリオの中で比較的石油依存度を高く見たシナリオでございますけれども、場合によってはそれもあり得ないことではないと考えておりますので、四五%から五〇%の間ぐらいと見るのが妥当なところではないかと思います。  と申しますのは、これまで石油から石油代替エネルギー転換しやすいところはもうほとんど転換をしてしまったわけでございますので、今残っております石油需要は比較的石油にとっての固有の需要分野が大きく残っております。その最大のものは自動車、それからプロペラの飛行機などのような内燃機関燃料でございまして、これは遠い将来は別にいたしますと、当面、当面と申しましても相当これから長期間石油に依存するしかないものでございます。そのほか暖房用燃料などにおきましても石油かなり大きく残っております。ただ、加熱用燃料発電用も含めまして、その分野におきましては石油需要、これは具体的に申しますとC重油でございますが、これは大幅に代替エネルギー転換をしております。そういうことでございますので、個々のエネルギーをとりますと、これから長期的な展望をいたしましてもやはりエネルギーの主力は石油だと考えられます。  この場合に石油資源枯渇の問題が出てくるわけであります。石油枯渇性エネルギーでございますので、いつかは当然枯渇する運命にあると考えられます。これは石油だけではございませんで、天然ガス石炭などについても同様でございます。しかし石油資源量とそれから消費量との関係、つまり平たく申しますと、あと何年石油がもつかというこういう質問がよくあるわけでございますが、それにつきましては非常に多くの誤解があるわけでございまして、三十年たつと枯渇すると。これは明らかに誤りでございます。  これは時間がございませんので詳細は省略させていただきますが、埋蔵量の定義が幾つかございまして、その中の一番小さい確認埋蔵量をとった場合、これは現在の消費量と対比しまして、かつては三十年ぐらい、現在では消費量が減っておりますので四十年ぐらいということになりますが、そのほかに資源全体とそれを採掘し得る現在の技術との関係、いわゆる究極的な可採埋蔵量、採掘可能な埋蔵量でございます、と言っておりますが、これで見ますと、いろいろこれも予測の数値がございますけれども、現在の消費量前提にいたしまして、大体大ざっぱに申しまして百年ぐらいはもつということになってくると思います。今後の石油回収技術の進歩などを考えますと、私の個人の意見としましてはもっと長くもつのだろうと考えておりますので、やはり枯渇性資源であるということは十分認識する必要がありますけれども、しかし当面は石油枯渇ということを考える必要はまずないのではないかと思っております。  石油につきましては、それよりも第一次、第二次のオイルショックで実際に実現しましたように、経済的な問題あるいは資源的な問題以外の原因石油供給が大きく制約される、特にはストップすることもある。それと連動いたしまして価格が急騰する、そういう危険が常時あるわけであります。したがって、石油供給につきましては、その資源的な問題のもう一つ前に、そういう二度のオイルショックで示されたような資源あるいは経済的な原因以外の原因による、つまり軍事的な原因とかあるいは政治的な原因、つまり戦争とか革命によって石油供給が中断される、あるいは減少するということでございますが、そういう問題を十分に考える必要があると思います。最近のような国際的に石油需給が緩和しております状況下では、よほどのことがございませんと第三次オイルショックが発生するおそれはまずないと考えられます。しかし長期的に考えますと、今後の石油需給動向いかんによっては第三次オイルショックの発生する可能性も十分にあり得るわけでございます。  これまで二度のオイルショックが発生しましたその状況を分析いたしますと、二つの要因によってオイルショックが発生するわけであります。第一は石油需給のバランスが非常にタイトである、つまり供給不足需要供給を超過するというような状況に加えて、戦争とか革命のような要因によって供給が制約されますとそこでオイルショックが発生するということでございます。二度ともそういう状況下オイルショックが発生しておりますし、昭和五十五年、一九八〇年のイランイラク戦争が発生いたしましたときは、その戦争による供給減少量は非常に大きかったわけでありますけれども需要がもう既に停滞をしておりましたので第三次オイルショックにならないで今日に至っております。  したがって、この問題を考えます場合には長期的な石油需給展望をすることが必要だと考えられますが、長期的に見ました場合、先ほど言いましたようなエネルギー消費あるいは需要の緩やかな増加よりももう少し小さい増加率石油消費長期的にはふえていくと考えられます。一方、供給の面でございますけれども、第一次、第二次オイルショックの後でOPEC以外の各国におきます石油生産量が急増をいたしまして、これは地理的に申しますと中東以外の地域での石油生産量が大幅にふえたことになります。これが現在に至ります価格低落を起こす最大原因になったわけでございますけれども、これから先を展望いたしますと、資源的に見ましてやはり中東地域石油資源が大きく偏在をしておりますし、OPEC以外の産油国での生産には割合近いところに限界があると考えられますので、今後石油消費世界的に緩やかではあっても増加してまいりますと、OPECに対する依存度は再び増加する傾向はまず避けられないと考えられます。  この傾向が一九九〇年代以後に徐々に現実化してくると考えられますので、私どもは、石油価格は現在の停滞状況からことしの年末にかけてやや上昇すると思っておりますが、その後、短期的にはそのマーケットを支配する幾つかの要因によって乱高下をいたしました後で先ほど申しましたような原因によって徐々に石油価格は上昇していく。紀元二〇〇〇年には二十五ドルから三十ドルぐらいのところまで、これは現在の実質価格でございますが、上昇していくだろうと思いますし、OPEC市場支配力を再び握ることによってまたいろいろの新しい問題が出てまいりますし、そういう時点において特に中東地域において新しい戦争革命などが発生しました場合には第三次オイルショックになる可能性も再びかなり強くなってくると思いますので、石油確保、それから石油依存度、特に中東依存度をなるべく減らすという在来の政策は今後とも続けることが必要と考えております。  それから石炭でございますけれども日本の場合、御承知のような国内炭が非常に不振の状況でございますし、経済的にも競争力を失っておりますので、今後とも国内石炭需要増加輸入炭によってカバーするということはどうしても避けられない状況でございます。ただ、第二次オイルショック後の全体としてのエネルギー消費停滞の中におきまして石炭需要停滞をしておりますので、かつて積極的に取り組んでおりました海外炭開発も今のところかなり影が薄くなった状況でございます。しかし、これから長期的な石炭需給展望をいたしますと、やはり長い目で見て国際協力をベースにいたしまして海外炭開発は息を長くして続けていくことが必要だと考えております。  ただ、石炭につきましては、世界的に環境問題との関係が特に最近二、三年間強く論議されるようになってきております。一つ酸性雨の問題であります。それからもう一つは、CO2による温室効果と言っておりますが、地球の表面の熱が上昇する、それが環境を破壊するという問題でございまして、特に酸性雨の問題は現実にヨーロッパ、アメリカなどではもう具体的な問題になっております。日本でも早晩この酸性雨の問題は出てまいると思いますので、石炭につきましては、これまで論議されておりましたような国内環境問題、つまり大気汚染の問題とかあるいはその灰の処理の問題、あるいは炭じんによるいろいろ汚染の問題、こういう問題に加えまして、やや地理的に広い範囲での酸性雨あるいはCO2というような問題を検討していきませんといけないと思います。  あとLNGでございますけれども、これはある意味では石炭と逆でございまして、環境に対しては非常にすぐれたエネルギーであります。つまり環境汚染程度が非常に小さいエネルギーでございますので、我が国におきましては、オイルショックの以前から東京中心にいたします首都圏におきまして東京電力、東京瓦斯がむしろ環境対策としてLNG導入して燃料に使った。従来の石油にかえてLNG導入したわけであります。その後、七三年、昭和四十八年に第一次オイルショックが起きまして、石油から石油代替エネルギー転換が進められる中でこのLNGはやはり石油にかわる有力なエネルギーとして取り上げられまして、現在に至りますまで代替エネルギーとしての意味とあわせまして、クリーンエネルギーとしてのそういう性格も加わりまして大幅にその消費需要増加をしてきております。しかし今後の展望といたしましては、これから先は非常に難しい段階になるわけであります。  つまり、これまでLNG導入の主役でありました大手の電力会社及び都市ガス会社はほぼ導入を完了いたしまして、これから先は余り大幅にふえない見通しであります。一方でLNG導入は相当の設備投資を伴いますので、いわゆるスケールメリットかなりございますので、小規模で導入するということは経済的に見て不可能と言ってよろしいかと思います。したがって、これから先LNG国内需要をいかにして拡大していくかということが問題でございまして、これにつきましては、例えば都市ガスにつきましては各地方にあります小さな都市ガス会社を結集して、それの横の協力によってLNG導入ができるように、これは政府補助金でそのセンターを設立しまして進めておりますが、例えば国内での輸送問題、パイプラインをどうやってどこに建設するかというような難しい問題もございまして、なかなか簡単にはいかないと思います。  それから電力につきましても、これは経済性の面、それから資源的な面その他から原子力をベースロードに使っているわけでございますし、今後ともその傾向が強まると私は考えております。それで、LNGはどちらかと申しますとベースロードとピークロードの間のいわゆるミドルロードに主として使われていくということでございますけれども、この面におきまして石炭と競合関係になってまいりますし、それからあるいは石油が今後とも低価格で推移をいたしますと、それとの競合問題もまた出てくるということでございますので、必ずしもこれまでのような大幅な増加は今後は見込まれないのではないかと思います。  こういう問題に関連いたしまして、LNGにつきましては幾つか問題がございます。  一つは、現在日本LNG輸入はインドネシアにかなり大きく依存をいたしております。大体五〇%インドネシアに依存しているわけでございますが、やはり供給の安定の問題を考えますと供給源の分散化が必要だと考えますので、今後どういう形で分散化を進めていくか、これが一つの課題でございます。  それからもう一つは、先ほど申しました資本投下の量が大きいということを反映いたしまして、これまでのLNGの輸入契約におきましてはテーク・オア・ペイという条項が全部入っているわけでございます。つまり、LNGを引き取っても引き取らなくても代金だけは払うという方式でございますが、これが、契約によっていろいろ違いますが、大体輸入契約量の九〇%ぐらいをカバーしておりますので、どうしても電力会社、ガス会社は引き取らざるを得ない。ということになりますと、例えば電力のミドルロードというようなかなり需要量が変動する分野におきましてはなかなか使いにくいものでありますので、現在各LNGの輸入をしております会社が強く輸出国の方とも交渉しておりますけれども、このテーク・オア・ペイの条項を全廃するか、あるいは全廃が不可能な場合であっても大幅に緩和する、これがやはり国内LNG需要をふやしていく重要な項目だと考えられます。  まだいろいろございますけれども、いただきました三十分を消化いたしましたので一応終わらせていただきまして、あと何か後ほど御質問がございましたらお答えさせていただきたいと思います。
  7. 浜本万三

    会長浜本万三君) 生田参考人ありがとうございました。  次に、大島参考人にお願いいたします。大島参考人
  8. 大島恵一

    参考人大島恵一君) 私、東京大学名誉教授の大島でございます。  本日は、今後のエネルギー需給見通しの特に原子力を中心としてお話しするようにということですので、最初に、レジュメで配りましたように最近新しいエネルギー需給構造という形が、生田さんのお話もございましたが、出てまいっております。そういう意味での大きな変化と、それと電力における原子力、そういう問題についてお話しいたします。資料を配ってございますので、説明の関係上座らせていただきます。  まず、最近の非常に大きな変化は、生田参考人のお話にもございましたように、過去二百年間と申しますか、産業革命以後、経済成長エネルギー消費というものは一対一の相関をもって進んでくる。過去において、いわゆる指数関数的と申しますか、急速に経済成長とともにエネルギー需要は伸びていたわけでございますが、二度の石油危機を、石油ショックを経ましてこの関係が崩れてきているということでございまして、これは先進工業国全般的な傾向でありますけれども日本において特にその状況が顕著にあらわれております。  これは資料でお配りいたしました最初の図をごらんいただきますと、全体のGNPがずっと伸びておりまして、そこに二度の石油危機のときが出ておりますが、それを契機にいたしまして、全体の総エネルギー需要というものは一応平らになっておりますのに対して、GNPは我が国の場合に伸びているわけでございます。特にその図の中間をごらんになりますと、石油需要というものは代替エネルギーとの関係もありまして減少しております。ただ、電力需要というものは大体緩やかにはなっておりますけれども伸びてきておりましたが、この図でおわかりのように、第二次の石油ショック以後は、電力の需要もGNPに対する相関がなくなっております。  ただ、最近になりまして緩やかにこういった需要が伸びてきているということがございます。この原因を見てまいりますと、大変大きな問題は、これは次の図にございますように民生用、すなわち家庭用、事業所用のエネルギーというのはかなり上昇しているわけでございますが、一番大きな顕著な変化が産業用のエネルギーのところにあらわれております。運輸用も伸びております。上り方は緩くなっておりますけれども、この事実は産業構造及び産業エネルギー状況が非常に変化してきているということをあらわしているわけでございます。  実は、その次のページにございますように、これは生田さんのところでの分析などもございますが、この図でごらんになりますと、三つの、すなわち原単位の変化というのは同じプロセスをするのにエネルギーをどれだけ節約できるかということでありますが、原単位の変化というもの、最初はそれが非常に大きかったわけですが、その次は産業構造の変化という斜線に書いてございますのがあらわれております。そして、その状態は下のところの図の製造業全体のエネルギー消費原単位というところにございますように、この二つのエネルギーショックを契機といたしまして急激にエネルギー消費の合理化並びに産業構造の変化が起こっておるわけでございます。  この産業構造の変化というのはどういうことかと申しますと、今言われておりますような情報化あるいはソフト化と言われておりますが、それはただ単に情報化という言葉で当たるかどうかわかりませんが、今までの重化学工業といったエネルギーに依存する、あるいはエネルギー消費産業からエレクトロニクスあるいは組み立て産業、あるいはさらにそれのソフト的な産業ということで産業構造が大幅に変わっているわけでございます。実は、このことは単にエネルギー価格が上昇したから起こっているということよりは、むしろこの事実は大きな技術革新、一九八〇年代から起こった技術革新によって産業構造の変化、さらには社会構造の変化が起こっているというふうにとらえるべきではないかと思うわけです。  このことはどういうことを意味しているかと申しますと、将来石油価格が、今低迷しておりますが、たとえエネルギー価格が下がったとしても、再びかつてのようなエネルギー消費産業構造あるいはGNP、すなわち国民総生産が伸びるためにはエネルギーがどうしても必要だというような第一次産業革命以後のそういった構造ではなくなってきているということであります。これは将来のエネルギー需給を考える場合に極めて重要なことではないかと思うわけでございます。  この事実は次のページの資料をごらんになればおわかりになると思いますが、その需要の変化の中に、今は産業構造のことを申しましたが、そこに家庭部門のエネルギー源別消費量構成比推移というのがございます。この図をごらんになりますと、丸印で一定に伸びておりますのが電力でございます。都市ガスあるいは灯油、油は低迷といいますか、割合に伸びていないわけですが。すなわち、家庭の消費あるいは一般のサービス部門などの中において生活の豊かさとともに電力化、電力としてのエネルギー需要が伸びているということを示しているわけでございます。このことは、産業の方における一つの構造の変化と同時に一般の消費構造も極めて変化してきている。  これは言い方をかえますと、ここに、私のメモには「需要の量から質への変化」というふうに書いてございますけれども、使いやすいエネルギー、あるいはきれいなエネルギー、さらに非常に安定したエネルギーといったような、エネルギーにおいても単にカロリーベースで安いということよりは質というものが非常に大事になってきているということであります。これが第二のエネルギー需給の新しい時代への移行の特徴と言えるわけでございます。これは、そこの表の1—7というところに書いてございますように、電力化率というのは一定な割合でだんだん電力化が出ている。すなわち、上は家庭部門だけですが、下は全体としてもそういう状況になっているということを示しております。  四番目に書いてございますのは「エネルギー供給の多様化」ということであります。過去のエネルギー供給を見てまいりますと、最初は薪炭、炭、木炭といったようなものから、次に石炭が主要なエネルギー供給源になりまして、そして戦後急速に石油エネルギーの主要な供給源になってきたわけでございます。実は、そういう意味では前に申し上げた産業構造の変化あるいは量から質へということも関連があるわけですが、最近の一つの大きな傾向は、一つエネルギー、すなわち石油は依然としてかなり大きな量を占めておりますけれども、それが例えば原子力に全部かわるとかあるいは石炭にかわるとか、そういうことではなくて、いろいろな形での供給が出てきている。すなわち、エネルギー供給の多様化ということが起こっているわけでございます。これは実は先ほどの需要の方の変化との関連もあるわけでありますけれども、例えば非常に安定した電力、例えばコンピューターを使うとかあるいは家庭用の場合の電力化で見られるような意味では電力というものは非常に重要でありますが、一方場合によってはむしろ違った形、すなわち、一方で質が要求されておりますが、ある場合には非常に安くて、あるいは一定した供給でなくても単にコストが安ければいいというようなものが出てくる。さらにはいわゆる最近起こっておりますコゼネレーションというような、熱と電力と両方を供給するというようなこと。さらにまた都市ガスを使って、今までは冷房は電力ということでしたが、ヒートポンプを使うというようなことでガスで冷房をすると。そういうような形でまいりますと、それぞれの状況によってどういうエネルギーが有利であるかということは必ずしもカロリーベースだけでは決まらない、そういうようなことがございます。  これはマクロに見ましてもそうでありますし、ミクロに見てもそうでありますが、その意味で、「複合エネルギー時代へ」と妙な言葉を使っておりますが、エネルギー間の競合と申しますか、それぞれの場所における使われ方の違いというものが出てきている。一つエネルギーで全部が賄えるという形ではなくなってきているわけであります。これは後で申しますように、特に電力供給の場合には、今原子力が非常に大きな役割を果たしつつあるわけですが、一般的なエネルギーにおいてはそういう競合の時代になっている。  それから五番目に書きましたのは、「技術集約化と技術革新」という言葉で書いてございますが、これは、エネルギー需給構造の変化の一番大きな理由は、石油ショックによるエネルギー価格の高騰もありますけれども、実はそれ以上にいろいろな技術革新が起こってきたということであります。  例えば太陽電池というようなものについては、経済的にそういうものができるかどうかということは、最初の例えばサンシャイン計画を始めました十年前には全く未知数だったわけですが、現在では非常にそのことによって、新しい技術の発展で、例えば離れたいわゆる電力の供給網の余りないようなところではむしろ太陽電池というものが経済的にも有利であり、また安定した供給ができるというようなことになってまいりまして、すなわち、今までは資源の存在によって規定されていたエネルギー供給というものが技術革新によっていろいろな形の供給ができるようになってきた。原子力などはその最も顕著な例だと思いますが、技術によっての新しい供給体制ができてきている。あるいはこれはまた一方、先ほどのヒートポンプなどでも申しましたように、需要の面においてもそういうことが起こっているということであります。  これがエネルギー需給の変化でありますが、次に原子力に入らせていただきますと、まず「電力需給と原子力発電」ということで「原子力発電の定着から原主油従へ」ということが書いてございますが、それはこの図でごらんになりますと、日本の電力供給の中において原子力が石油を、この表の中の一番下が原子力で、点が入っている二番目のところが石油ですが、昨年からことしにかけて大体原子力が電源としての供給の二六%で石油の二四・七%を超したということでございます。このことは、原子力というものが過去においては単に一つの発電源としての役割では石油に付随する、いわゆるある意味で言うと従であったものが主要な発電源になったということであります。  その理由について見てみますと、次に表3ということで、これ、いろいろなところからとってまいりましたので表の順序は必ずしも数と合っておりませんが、これは通産省で試算したので必ずしも、いろんな前提がございますので絶対的な数字としてこれがどれだけ正しいかということは問題があるかもしれませんが、少なくともこの発電原価において原子力がほかの電源よりも安くなっている。この点は、その下の図にございますように、水力それから石油火力、LNG石炭火力、そのいずれに比べましても原子力が低位にあるわけであります。このことはどういうことかと申しますと、原子力のコスト、原子力発電のコストが日本の電力コストに、先ほど申しましたように原主油従になってシェアが、割合が非常に大きくなっているということと同時に、コスト的にも非常に重要な役割を果たしているということを示しているわけです。  次のページにありますのは、今度は軽水炉の技術的な何と申しますか、性能がこの過去十年間の間に極めて上昇しているということを示している図であります。これは丸で書いてある線は設備利用率でありまして、それで見ますと、一九七五年、すなわち石油ショックの、石油危機の後ぐらいのところでは設備利用率は四〇%、五〇%の間を大変上下していたわけで、ある意味で非常に不安定な状態で運転していた。すなわち、いろんなトラブルが起こってとめたりなどせざるを得なかったわけですが、その後軽水炉の技術が極めて定着してまいりまして、そこに示しましたように、現在では七〇%から七五、六%、これは定期検査のための設備の停止を考えますとほとんど一〇〇%に近い性能を、稼働率を示しているわけです。  その次のページにあります数字をごらんになりますと、特に日本の軽水炉の性能が急速に上昇しているというのがわかります。これでごらんになりますと、フランス、日本、スウェーデン、西ドイツと書いてございますが、この辺のところの稼働率が高くなっている。もちろん、国際的な設備利用率の比較というのはいろんな条件が違いますので、必ずしも数字そのものが比較できない面もございますけれども、いずれにせよ、こういった意味世界的にも軽水炉というものの技術が確立しているということがあります。  その下の「海外とのスクラム回数の比較」と書いてございます、スクラムというのは何か故障が起こったときに原子炉が停止するために制御棒が下に入って炉をとめるわけですが、この回数が日本では一年に〇・一、すなわち一つの炉に関して言いますと十年に一回というような数になりますし、別な言い方をしますと十基の原子炉のうちの一基だけが年に一回そういうことでとまるということで、これもほかの国に比べまして日本の性能が極めて高いことを示しております。  その次は原子力発電所の従事者数の伸びを示したものであります。このような状態で考えますと、長期的に見たときに日本においては原子力が発電の主流になるのは当然のことだと私は考えるわけであります。  それで、長期的な見通しというものについて最近私が委員長をやりまして取りまとめました通産省の原子力ビジョンの中からの数字をそこにお示ししてございます。その中で非常に重要な点は、一つは、原子力発電の比率というところがございます、二番目のところ。絶対的な原子力発電設備がどこまでいくかということについては、これは電力需要の伸び、その他先ほど生田参考人からお話がございましたように、かなり不明確なところがございますので、その点については今後いろいろ変わると思いますし、これは二〇三〇年というかなり五十年も先の話になっておりますので、その絶対数は別といたしまして、一つは原子力の比率という問題がございます。我が国におきましては大体四〇%ぐらいのところまでこれを持っていこうというような考え方がございます。それは設備でありまして、いわゆる原子力発電電力量によりますとこれが六〇%までということになっております。そして、これはあとそこに数字がありますのは、設備のどの程度でつくられるか、あるいは産業としての売上高が書いてあります。  それからもう一つの重要な問題は、先ほどから出ております電力化率をどこまで見るかということであります。この長期計画におきましても大体電力化率というのを二〇三〇年で五〇%ぐらいまで上がっていくというふうに見ているわけであります。これはちなみに各国との比較をその上の方に出してございます。  もう一つ、最近議論になりますのは、一体電源のうち原子力に何%まで、例えば四〇%原子力の発電が先ほど申しましたように設備として考えるのは多いのか少ないのかということでありますが、これは国際比較で最も高いのは左から三番目のフランスでありまして、フランスは六〇%近くまで将来二〇〇〇年に原子力化を目指しているわけであります。我が国は今申しましたように大体先ほどの四〇%というようなところで見ておるわけでありますが、設備比率で四〇%、それから発電量で六〇%、そういう見方をしております。  次にどのくらいのところまでいくかということでは、図の2—2という次のページにありますのは、バックグラウンドの数字はそこに書いて、後でごらんいただければいいと思いますが、大体二〇〇〇年ぐらいまでは六千万キロワット、これも幾分幅がございますが、ここにケース1、ケース2という形で出ているわけであります。将来に関してはかなりいろいろな見方がありますが、いずれにせよ、原子力が主流になるというふうな見方をすべきではないかと考えるわけであります。  それから、時間がございませんので簡単に申しますと、その次の数字は立地の地点ということで、これは、今後原子力発電を進めていく場合に立地問題というのはかなり重要な問題であります。そして二〇〇〇年ぐらいまでは立地は今の条件が整備されておりますが、それ以降になりますとやはり立地問題というのについてかなり真剣に取り組む必要があるのではないかというふうに考える次第でございます。  それから表の4—1は、現在の軽水炉というものがかなり長期にわたって非常に性能的にも、また次世代型軽水炉というふうなことが書いてございますが、現在以上にこの性能を、稼働率の向上あるいは作業員の受ける放射線被曝の低減あるいは廃棄物の減少といったような意味でまだまだ技術開発によって現在以上のパフォーマンスが得られるということを示しているわけでございます。  最後に、時間がございませんので簡単に申し上げますと、そこにメモに出しました「原子力産業展開の諸条件」ということで三つの点だけを申し上げたいと思います。  一つは、原子炉の問題につきましては今申し上げたように軽水炉が非常に定着してきておりますけれども、しかし将来のことを考えますと、実はここに「核燃料サイクルの諸条件」と書いてありますが、すなわち原子炉は、現在の軽水炉と申しますのはウランのエネルギーの約一%程度を使っているものであります。これに対しまして将来、現在フランス、日本でも開発しております高速増殖炉というものになりますと、ウランをプルトニウムに変えてそれによってさらにエネルギーを出すということになりますと、ウランの燃料が現在の一%から数十%、すなわち現在のウランの燃料、天然ウランの利用率に対しまして高速増殖炉になりますとそれが七、八十倍になる。逆の言い方をいたしますと、今の天然ウランの資源が例えば今後百年軽水炉でもつとすれば、それが七十倍になれば七千年と申しますか、ほとんど今の天然ウランというものの資源を無限に使えるということに実際上はなるわけでありますが、そういった炉が現在開発を進められているわけであります。  それで、実は今の軽水炉の性能が大変いいものですから、最初に予想していた二〇〇〇年から高速増殖炉に移るのではないかという見通しを今までは多くの人がしていたわけでありますけれども、その時期がだんだん長引いておりまして、高速増殖炉の技術的には非常に大きな飛躍がありまして開発はされておりますけれども、一方経済的に見ますと、まだ軽水炉に競争できるのは二〇三〇年、二〇四〇年、そのころではないかと見られているわけであります。  しかしながら、究極的には原子炉というものはいわゆる増殖炉、高速増殖炉という形で、しかもそのためには燃料を再処理いたしまして、燃料の中からプルトニウムを取り出してまた使うという形がとられなければならないわけであります。そのために我が国一つの重要な問題としては、核燃料サイクルの条件、そういった高速炉に使うプルトニウムの技術及び産業としての確立、さらには今の日本の現状から見て濃縮とかそういった、炉だけではなくて燃料サイクルそのものの確立をする必要があると、これが現在の大きな課題であり、その方向に進んでいるわけであります。  それから第二の問題は、「安全規制」と書いてございますが、安全性の問題であります。それで、これはチェルノブイリの最近の事故から原子力の安全性については世界的に大きな議論がなされておりますが、先ほどの数字でお示しいたしましたように、日本の原子炉は、世界で最もと言っていいと思いますが、極めて放射能の蓄積においてもまた安全性の記録においても高い水準にあり、私どもはその点では技術が完全に確立したと考えているわけでございます。ところがこの間のチェルノブイリの事故は、実は日本だけが非常にいい炉で安全性を保っても、それはやはり国際的な形での安全というものが非常に重要であると。そのためには国際協力、さらにはこういった安全規制というものが国際的な水準、標準のもとに施行されなければならないというような問題が出ております。すなわち、我が国だけではなくて国際的な協力のもとに世界全体としての原子炉の安全性を保持していく必要がある。これは細かいことになり ますが、運転員の訓練、あるいは炉の形、さらには規制の条件と、そういったものがあるわけです。  一方もう一つの問題は、「核不拡散と国際協力」と書いてございますが、これは、原子力の一番大きな問題は平和利用と軍事利用との関係であります。それで、我が国は平和利用ということに徹するという形で実際にその努力をしてきているわけでありますけれども、これが国際協力になりますと、原子炉の平和利用の技術が軍事用に使われるというような問題、そのために国際的に核不拡散、すなわち平和利用から軍事利用に移らないための協力が必要である。この点も今の安全の問題と同様に我が国としては非常に重要な関心を持つことであります。  最後に、ちょっと順序が逆になっておりますが、世界の中で現在最も原子力に対して力を入れ、また力を入れざるを得ない国というのは日本とフランスではないかと言われているわけです。その理由は、今申しましたように原子力のコストもまたパフォーマンスもいいわけですが、日本のように資源のない国、国産資源のない、エネルギー資源のない国においては特に発電用電源としての原子力というものを安全性あるいは核不拡散の問題を含めて確立しなければならないという非常に強い要求があるわけです。それに反しまして国内資源の豊かな国、あるいはエネルギーコストの安い国においてはそういった資源を使うという、依然として昔ながらのエネルギー供給による電力というものが主流になっているというのが世界の現状ではないかと思います。その意味で将来の原子力政策の一番大事な点は、今まではどちらかというと外国の技術あるいは外国の政策というものと、大体日本国際協力を含めてそれにいわゆる倣ってきたわけでありますけれども日本エネルギー問題を考えますと、今後は日本自身がその推進力となって技術的にも今申しました安全性の確保、あるいは核不拡散を含めて、あるいは原子力のコストの低下とか、あるいは高速増殖炉といった問題もありますが、そういう問題に対して自主的なしかも積極的な政策をとるべきではないか、そういうふうに考える次第であります。  以上であります。
  9. 浜本万三

    会長浜本万三君) 大島参考人ありがとうございました。  次に、川上参考人にお願いいたします。川上参考人
  10. 川上幸一

    参考人川上幸一君) 神奈川大学の川上でございます。  着席させていただいてよろしゅうございますか、ちょっとメモを小さい字であれしましたので。
  11. 浜本万三

    会長浜本万三君) どうぞお願いします。
  12. 川上幸一

    参考人川上幸一君) 調査会の方からお尋ねの点につきまして、若干私見を申し上げたいと思います。  エネルギー需給全般につきましては、ほかの参考人の方からいろいろお話もございますし、その点は比較的簡単にいたしまして、特に原子力発電の位置づけというようなことにある程度絞ってお話を申し上げたいと思います。そういう御注文でもございます。  一般情勢につきましては、ちょっと予定したところを少し省かせていただいて、結論的なところだけをつなぎながら申し上げますと、石油につきましては、原油の値下がりということがありましたけれどもオイルショック後の原油の供給構造というものが基本的に変わったということではございませんので、これまでの政策を変更する必要は当面ないだろうというふうに考えております。  それで、原油の値下がりというのはOPECにとりましてはこれは死活問題でございまして、そうなると団結が回復するということで、現に生産制限を維持するということで現在の底値から再び上昇するというような気配が既に見えております。そういうことで石油情勢の前途を余り楽観するわけにもいかないというふうに考えております。それから長期的な点としては、先ほど生田参考人からもお話がございましたが、資源量という点では、徐々にではあるけれどもやはり供給がタイトなものになっていくというふうに考える必要があると。したがいまして、今後の原油価格というのは、OPECの側の生産管理とそれから消費動向の間で綱引きが続きまして、シーソーゲームを繰り返すということで、長期的にはやはり若干じり高の方向に向かっていくというふうに見ておくのが一番妥当な見通しではないかと思います。  それから日本につきましては、先ほどもお話がありましたように、エネルギー需要というのは横ばい状態が続いておりますが、鉄鋼業を初めとして、エネルギー消費産業の縮小過程というのが依然として続いておりますので、その需要増加要因というのは当分は比較的マイルドなものであるというふうに考えられます。ただ、石油依存度の点につきましては、一次エネルギー消費量の五七%というところまで低下しましたけれども、欧米諸国に比べてまだ高い水準でございまして、五〇%以下に持っていくという従来からの目標を堅持していくべきではないかと考えております。  そういう点から言いまして、やはり代替エネルギーへの転換、これは今後ともやはり重要な政策問題あるいは目標でありますし、どのエネルギーにどの程度依存していくか、また依存することが可能であるかという点は、これは経済性ということはもちろんですけれども、その国のエネルギー資源の賦存状況とかあるいは技術開発見通しであるとか、さらに国民世論の動向というような社会的、文化的な要因というものも影響しまして各国の選択というのはかなり大きく違っている面であるというふうに考えます。  それで、例えば石炭について言いますと、先ほどもお話がありましたが、日本石炭は国際競争力を失っている。日本消費量の大部分は輸入石炭である。輸入をふやすことで当面石油依存度の切り下げあるいはエネルギーの多様化ということに貢献してきたわけですけれどもエネルギーの輸入依存度という点から言いますと特に改善されたわけではございません。これは天然ガスについても同様でありまして、やはりこれは日本の宿命だと思いますけれどもエネルギー供給のセキュリティーという面ではまだ考えるべき問題が残っているというふうに思います。  それから、これも生田参考人からお話がございましたが、石油石炭天然ガス——天然ガスの場合は比較的少ないのですけれども、そういう化石燃料については大気汚染の問題がございます。いわゆる炭酸ガス問題のように非常に先行きの不透明な問題がございまして、これはまだ時間の余裕があるというふうに考えられますけれども、しかし事態は一日一日進行をしているわけでございまして、私はやはりエネルギー政策の一番土台のところにこの大気汚染をできるだけ減らしていく、そういう長期的な目標が——これは今までもなかったわけではございませんけれども、きちんとそういう目標が組み込まれる必要があるというふうに考えております。そういう観点から言いますと、現在の日本エネルギー供給構造というのが、石油依存度の切り下げには一応成功しましたけれども、まだ過渡的な性格、過渡的な段階のものではないか。つまり、とりあえず石油依存度を減らすための言ってみれば緊急避難的な性格もあるというふうに考えます。  それから、原子力と新エネルギーあるいはソフトエネルギーということですけれども、これらについては、今まで申し上げた石油依存度あるいは輸入依存度の切り下げとか、あるいは大気汚染を減らすというような点で望ましい特性を持っているということは言えるかと思います。正確に言いますと可能性としてそういう特性を持っている。ただしかし、どちらの方も今の時点では問題がいろいろあることも事実でありまして、原子力の方は最近ソ連の事故があったばかりでございますし、それから新エネルギーについては、一部利用は進んでおりますけれども技術面でやはり相当なブレークスルーがないと本格的な実用というのはまだ難しいというのが現在の一般的な状況ではないかと思います。そういう問題点を一体どう考えていくか、どう解決していくか、あるいは解決できるだろうかというあたりが今後のエネルギー政策の議論の一つの重要なポイントではないかと考えております。  そこで、私に与えられた原子力発電の位置づけあるいは問題点ということについて申し上げたいと思います。  ちょっと古い話から申し上げますけれども、原子力の開発が始まったのは昭和二十九年でございまして、三十一年に原子力委員会が発足をしましたので、ことしが三十年目というふうに言われておりますけれどもエネルギー政策の上でこの原子力発電というものの位置づけが明確にされましたのは、これは三十八年の通産省の総合エネルギー部会の報告書が最初であろうかと思います。このときに既に石油依存への反省、それから石炭問題が当時ございまして、エネルギー源を多様化する必要がある、総合的なエネルギー政策が必要であるということが強調されまして、その中で原子力は電源の多様化ということの一環として大きな期待がかけられたというのが始まりであると思います。  そういう原子力の役割に対する認識というのは今日まで一貫しておりますけれども、その間エネルギー情勢の側にもいろいろと変化がございましたし、それから原子力自体も実際に開発を進めてみますと当初予見しなかったようなことが起きたりあるいはわかってきた、そういう点が幾つかございます。  まず、四十八年のオイルショックと、それからその後の第二次石油危機の影響でございますけれども、これは原油が値上がりしたことによって原子力発電の経済性というものが相対的には上がった。当初予想されていたよりも早く火力との競争が可能になった。さらに進んで、原子力が一番安い電源である、キロワットアワー十二円台というような状態が実現したわけでありますが、これは原子力の側から言いますと一種の好運に恵まれたという面もありまして、外部要因のおかげて経済的なものになったということも言えます。しかし原子力の導入というのはもともと石油資源枯渇するだろうというようなこと、そういう事態を予想して行われたわけでありますから、そういうエネルギー政策見通しが正しかったのだ。石油危機が意外に早くやってきましたけれども、とりあえず原子力がそれに間に合ったというふうな見方もできるわけであります。  最近、原油が値下がりしたことによって各種電源の発電費というのはかなり接近している。原子力はもう安いわけではない、あるいはまだ計上されていないコストがあるじゃないかというような疑問も出されておりますけれども、先ほども申し上げましたように、化石燃料価格というのはシーソーゲームで恐らく変動を繰り返すという状態が続いていくと思いますし、現在たまたま原油が底値になっている、そこでコスト比較をしてもこれは余り意味がないわけでありまして、一方の原子力の方は、これは燃料費が安いという基本的な特性がございます。ウランの値段が多少変動しても発電費に対しては余り響かない、発電コストには余り響かない。つまり経済的に安定した電源であるという原子力の特性は今後も変わらないと思いますので、そういう点を頭に置いて経済性比較というようなことはやっていく必要があるというふうに考えております。  ところが、先ほど原子力が石油危機に間に合ったというふうに申し上げましたけれども、こういう言い方は若干問題がございまして、オイルショックのときは原子力はほとんど唯一の有力な代替エネルギーだということで非常に大きな期待がかけられたわけですけれども、その後の経過を実際に見ますと、原子力発電計画は何回も下方修正を繰り返しまして今日に至っているわけであります。御承知のように、昭和四十七年の原子力開発利用長期計画では六十年度に六千万キロワットという大きな目標を掲げました。今はちょうど六十一年ですから目標の六十年をもう既に過ぎているわけですけれども、原子力発電容量というのは現在二千五、六百万キロワット、目標から見ますと半分以下にとどまっているわけでありまして、今ちょうど長期計画の改定作業というのが始まっておりますけれども、その中でもさらに計画を下方修正する必要があるかどうかというような議論が出ている次第でございます。  そういう経過から見ますと、原子力発電が石油危機に間に合ったというのは若干言い過ぎでありまして、もちろんある程度の寄与はありましたけれども、期待に十分こたえるというところまではいかなかった。その分は石炭天然ガスの輸入をふやすことによって穴埋めをしてきたというような見方ができるかと思います。問題は、こういう今までの経験を今後への教訓としてどういうふうに受けとめるかということにあるかと考えます。  私は最初の六十年度六千万キロワットの計画を作成するときに担当課長として実は参加しておりまして、六千万キロワットという数字は、国民のアクセプタンス、これは原子力の側からいいますと立地問題ということになりますが、それ一つだけを考えてもとても無理ではないかということを申したのですけれども、時の勢いといいますか、当時の産業界は一種の押せ押せムードがございまして、結局この六千万という数字を採用したという経緯がございます。そのときから私の考え方は一貫しておりまして、原子力のような電源、原子力のような技術というのはどうもいわゆる計画というものにはなじまない、つまり、エネルギー事情の側からいって原子力がこれだけ必要であるとか、願望として原子力はこれだけやってもらいたいというようなことを言いましても、そういうアクセレレートするような考え方は通用しない電源であるということであります。このことは日本だけではなくて、アメリカを初めとして各国の経過を見ても明らかだと思います。唯一の例外としてフランスがございますけれども、一般的には明らかなことであると。  そのことはもちろん幾つか理由がございまして、先ほど申し上げた国民のアクセプタンスの問題、これは言いかえれば安全性の問題でございますけれども、それももちろん重要な一つの理由でございます。それからそのほかにもう一つ、原子力発電を産業体系として見た場合に、これはいわゆる核燃料サイクルを含めまして、これを産業体系として完成させていくということは非常に大変な事業であります。現在の軽水炉は、これは大島先生もお話しになりましたように、非常に苦労をした結果順調に運転できるという、非常に成績がいいということになったわけですけれども、核燃料サイクルということになりますと、これを完成させてそこをフローがスムーズに流れるというまでにはまだまだ時間がかかる、非常に遠い先の問題だという気がいたします。その大変さの一つというのは、これは研究開発要素がやはり含まれているということで、これが一番アクセレレートしにくいものでございます。それからもう一つは、核燃料サイクルの中にリサイクルの考え方が含まれております。つまり、使用済みの燃料を再処理しまして、そこから出てくるプルトニウムや回収ウランを再利用しようということを考えております。これはもちろん非常に考え方としてはいい考え方ですけれども、実際にやろうとしますとこれはなかなか厄介な問題がいろいろとございます。余りよく考えないでリサイクルをやっていきますと、この核燃料サイクル自体が非常に複雑なものになるのではないかということを私などはかなり懸念しておるわけです。  その理由を簡単に申し上げますと、最初に使う燃料の天然ウランというのは、これはきれいなものであります。ところが、リサイクルするプルトニウムとかあるいは回収ウランというのは、燃料価値として見ればこれはほぼ同じと考えていいと思いますけれども、いろいろな点で性質が違います。例えば放射線があるとかないとか、そういうような違いもございまして同じ扱いができないという点がございます。それからもう一つは、リサイクルといいますけれども、これは理屈の上では何回でも回せる。特に高速増殖炉はそういう考え方に立っているわけですが、実は際限のないところがある。どこかでそのサイクルを打ち切る必要があるんだろう。これは今申し上げたようないろいろ付随する問題がございますので、サイクルはどこかで打ち切らなきゃならぬであろう。しかし、どの辺で一体それを打ち切ればいいかということはまだちょっと詰められない段階でございます。その辺が固まってこないと核燃料サイクルの全体像というものは見えないわけでありまして、これは今後の研究開発の資金需要ということにも非常に大きな関係のある点ではないかと考えております。そういういろいろと不確定な要素というものがどうも原子力にはつきまとっているわけでありまして、そういうことに十分気を配りながら実際に可能なテンポで進めていく必要がある、そういう性格の電源が原子力であるというふうに私は思っております。  そういうことで、原子力の成長のテンポというのは、これは見る人によっていろいろ見方があると思いますが、かなり緩やかに成長をしてきたということですけれども、しかし、先ほどもお話がありましたように、昨年度の実績で原子力の発電量は二六%と、石油火力を抜きまして第一位の電源ということになりました。一次エネルギーの比率で言いますとまだ九・五%ぐらいのところですけれども、電源として原子力のシェアをどこまで伸ばしていくかということをそろそろ考えなければならない時期になっているわけであります。現在建設中のものが完成しますと電力量で三〇%台、それからさらに四〇%というふうに伸びていくと思われますし、その点を見るためにちょっとお手元に資料を差し上げた中に、表の2をごらんいただきますと、原子力比率がかなり高い国というのがございまして、フランスの六四・八%とかあるいはベルギーの五九・三%。日本はまだ低い方でございます。近くの台湾とか韓国の方がむしろ高くなっている。しかし、ヨーロッパの場合は電力の国際間融通ということもありますから、一国内の比率だけでは必ずしも判断できないという点もあるかと思います。  したがって、電源構成として原子力をどの程度にするか、原子力だけに偏り過ぎるということに果たして問題がないか、そういうようなことをこれから考えていく必要がある。ただ、産業体系として考えますと、特に核燃料サイクルの面からいいますと、やはり採算規模とかスケールエコノミーという問題がありますので、原子力発電の規模というのはある程度ありませんと核燃料サイクルが成り立たないという問題もありまして、もう少しやはり原子力発電規模がないと産業的には成り立たぬというそういう問題もございます。そういうようなことで、極めて大づかみな見通しですけれども、一次エネルギーの比率で言いますと、原子力は二〇%前後というようなところが一つの境目になるのではないかというふうに思っております。  それからもう一つ申し上げたいのは、原子力が余りアクセレレートできないという理由の一つに放射性廃棄物の問題がございます。燃料をリサイクルしてできるだけ有効利用いたしましても最後は廃棄物ということになって残る。それから、原子力施設をどんどん建てますと何十年か後にはその施設の相当部分がやはり放射性廃棄物になります。放射能のないところももちろんありますけれども、汚染された部分がかなり出てくる。そういうようなことからいって、この処分問題、安全な処分ということのレールをきちっと敷かないと、原子力利用を進めながら実は若干不安が残るということは否定できないという気がいたします。  私も放射性廃棄物の専門委員の一人でございまして、この問題の解決については私なりに知恵を絞っているつもりでございますけれども、放射性廃棄物と一口に言いましてもこれはいろんな種類のものがございまして、放射能のレベルで大づかみに分けますと高レベル、中レベル、低レベルということになりますが、そのうちで一応めどがついた、つきつつあるというのは低レベル廃棄物でありまして、これは主に原子力発電所で発生するもので、電力会社の責任において処分をするということになったわけで、実行段階に入ろうとしております。それから使用済み燃料の再処理から出てくる高レベル廃棄物、これが一番厄介でありますが、これは基本的な方針は国の責任で処分する、費用については発生者が負担する、そういうことが決まりました。しかし実行についてはこれからというところで、これが始まりますと何十年から何百年のオーダーにわたっての事業ということになります。  そのほかにもう一つ中レベルというのがございまして、これはいろんなところから発生いたしますけれども、まだ方針が未定であります。いろんなところから発生するということは、つまり日本の場合はお役所の所管が違うとかそういう縦割り行政の問題なども絡みまして、つまらない議論、私どもから見ますと非常につまらない議論で足踏みをするという点がございます。しかし、放射性廃棄物という面では何も対象物が違っているわけではございませんので、欧米の場合はそういうところは一元化して国の責任で処分する、大抵の国がそういう合理的な方針を立てているわけですが、日本でも早くそういう考え方を確立する必要があります。この問題はぐずぐずしますと、我々の世代はいいのですけれども、子供や孫の世代に非常に重荷を負わせることになる、そういう点をひとつ御認識いただきまして、国会の方でもぜひ御検討、御推進をお願いしたいと思います。  余りもう時間がございませんが、最後にちょっと二つほど簡単につけ加えさせていただきます。  これは、先ほど原子力にはリサイクルの考え方を含んでいるということを申し上げましたが、プルトニウムや回収ウランをリサイクルして利用できるということは原子力が備蓄効果を持っているということでございまして、原子炉の中に入っている燃料自体も平均して三年間燃やせるということがございます。燃料自体が備蓄の要素を持っているわけで、原子力にはいろんな問題がありますけれども、捨てがたいところは、やっぱり日本のような少資源国においてはこういう備蓄効果のある燃料というのはセキュリティーの観点からいって非常に魅力があるというふうに私は思うわけであります。  それから、プルトニウムのリサイクルには三つぐらいの方法が現在のところございます。大島先生も先ほど触れられましたが、今までの考え方は、軽水炉から高速増殖炉へ行くんだと。これはもう第二次大戦後からの非常に古典的な考え方がずっと現在まで続いてきたわけですが、その辺に若干どうも問題が出ておりまして、高速増殖炉の実用化はかなり先になる。やはり技術的な問題もございますし、確かに軽水炉が非常に順調であるということも影響しているわけですが。二〇二〇年とか三〇年ということになりますと、今まで三十年やってきてさらに三十五年か四十五年先だということでは、これは実際はなかなかどうも目標が定まらないということでありまして、そういうことでいいのかなと。やはりプルトニウムの利用ということは、プルトニウムを燃やしていくということは非常に大事なことだと思うのですけれども、もう少し考え方を変える必要があるのではないか、もう少し手の届くところにある技術でさしあたってやっていくべきではないか、その辺がいろいろ議論の必要な点になってきておるというふうに思います。  最後に結論として申し上げますと、そういうプルトニウムのリサイクルの問題、それから先ほど申し上げたように、原子力産業というのはやみくもに手を広げていきますと産業体系が非常に複雑になるという懸念もありますので、原子力の産業体系というものを簡素化していくというような一つの物差し、政策を判断する場合の物差しが必要なんではないかなというふうに私は感じておりまして、この廃棄物処分まで含めて原子力の産業体系というのはこういうものであると全体が早く見渡せるように、最後の終点が早く見えるようにしたいものだというふうに考えるわけであります。  以上で私の意見を終わりたいと思います。
  13. 浜本万三

    会長浜本万三君) 川上参考人ありがとうございました。  次に、室田参考人にお願いいたします。室田参考人。お座りになって結構でございます。
  14. 室田泰弘

    参考人室田泰弘君) 室田でございます。座ってやりますことを許していただきます。  私は、需要動向の方向から日本長期的なエネルギー需給の将来動向という点を申し上げてみたいと思います。お手元の資料に基づいて申し上げたいと思いますので、それを御参照いただきたいと思います。  最初に、まずエネルギー需要の方でございますけれども、結論的に申し上げますと、多分長期的には日本エネルギー需要というのはふえるのではなくて減り始める、減る可能性が強いということでございます。それはなぜかということを——需要というのは普通三つの分野産業で使われるエネルギーと、それから輸送に使われる運輸のエネルギーと、それから民生、家庭とか業務で使われるエネルギーとに分かれますけれども、そのそれぞれについて見ていきたいと思います。  まず産業でございますけれども日本産業構造は急速に工業化の時代を終えつつあるという感じがいたします。工業化というのは重化学工業、すなわち鉄鋼とか化学とか窯業土石とか紙パルプとか、こういったエネルギー消費産業が実は経済成長を引っ張っていった時代であります。したがいまして、経済成長エネルギー需要の急増を伴ったのは当然でございます。  しかしながら、現在では経済の重化学工業離れが極めて顕著でございます。例えば四ページ目の上の図—1をごらんいただきたいわけでありますけれども、そこにはGNPと粗鋼、つまり鉄鋼の生産量とを年代別に並べておりますけれども石油危機以降は粗鋼生産量、鉄鋼の生産量が横ばいであるにもかかわらずGNPの方は伸びているという形になっております。従来鉄鋼は産業の米などと言われておったわけでありますけれども、今や主食の位置からある意味で副食の位置に落ちつつあるということであります。こういったエネルギー消費産業にかわってエレクトロニクス等の機械産業が製造業だけをとっても主役になりつつあるわけです。  こういったことがエネルギー消費にどういう影響を与えるかといいますと、こういった産業は鉄鋼や化学等のエネルギー消費産業に比べて生産額当たりのエネルギー消費が極めて小さいわけであります。例えば四ページ目の左下の図—2という「単位生産額あたり必要エネルギー量」、黒い棒グラフの書いたものでございますけれども、これをごらんいただきたいわけでありますが、縦棒は何かといいますと、一円生産するのに当たりどれだけのエネルギー投入を必要とするかということが産業別に比べてあります。左の四つ、紙パルプ、化学、窯業土石、鉄鋼、いわゆるエネルギー消費産業と言われるものでありますけれども、その隣が機械金属製品産業というものであります。これをごらんになるとおわかりのように、仮に今のようなシフトが起こる、つまり多消費産業からそうではない産業にシフトが起こるとすると、エネルギー消費は一単位生産するのに当たり非常に大げさに言うと十分の一から三十分の一に減ってしまうということになるわけであります。こうした産業構造のシフトが実は産業におけるエネルギー消費を飛躍的に減少させる可能性を持つわけであります。  こういったところが産業でございますけれども、二番目は運輸です。輸送の問題であります。輸送は二つに、物の移動とそれから人の移動という形に分けられます。その両方ともにやはり将来伸び悩むであろうというふうに考えられます。  第一番目に物の流れでございますが、どういう単位ではかるかというと、トンキロという単位ではかります。つまり何トンの物を何キロ運んだかということが輸送のはかる単位でございます。これは例えば五ページ目の上のグラフ、図—3をごらんいただくとおわかりになるのですが、これはトンキロとGNPとを比較したグラフですけれども、実は物の流れ、輸送トンキロとGNPは石油危機以前、七〇年ごろから、そこの上のグラフの「変曲点」と書いてあるところがございますけれども、実はこのころから比例関係がなくなり始めているわけです。なぜなくなり始めているかというと、重くて大きい物を大量に長距離運ぶということから、だんだん軽い物を短距離もしくはしばしば運ぶという形に輸送構造が実は変わってきたということでございます。これは実は先ほど申し上げたようなエネルギー消費産業産業の主役をおりたということと非常に密接な関連を持つわけであります。  次に人の流れの方でございますけれども、これはいろんな指標がございますけれども、典型的なガソリン需要の場合、要するに車を運転するガソリン需要の場合を見てみることにいたします。  ガソリン需要というのは、非常に単純に言いますと何台車があるか、一台当たり何キロ年間走るかの関数であります。さらにそれを燃比で割った関数です。ですから、車の保有台数がふえればふえるほどガソリン需要はふえます。それから一台当たり走る距離が伸びるほどガソリン需要がふえる。逆に燃比がよくなるとガソリン需要は減るわけであります。これを五ページ目の下の図—4でごらんいただきたいわけでありますけれども、今の三つの指標がどういう形で変化をしているかといいますと、一番上の斜めに上がっている線が燃比でございますけれども、燃比は、もちろんこれは新車が入ってきて、古い車もありますから平均的な燃比はなかなか上がってこないわけですが、いずれにしろ燃比は年々向上しつつあります。それから乗用車保有台数はそろそろ、一家に一台とは言えませんけれども、大体二軒に一台ぐらいの車になってまいりましたからほぼ飽和し始めている。それから一台当たり走る距離というのはだんだん落っこちて今横ばいに近づきつつあります。以上を掛け合わせますと、保有台数は伸び悩む、それから走行距離は横ばいになる、それから燃比はよくなるということでございますから、分子は小さくなって分母が大きくなるということでございますから、実はガソリン需要も中長期的には伸び悩む可能性が非常に高いということでございます。  ただ、より基本的な問題がございまして、それはその次のページ、六ページ目の上のグラフ、図—5を見ていただきたいわけでありますけれども、情報化社会になるということはどういうことをもたらすのかというと、今の人の流れが通信で代替される可能性かなり強いということです。つまり、人間が例えば伝票を持ってオートバイで走り回るかわりに電話回線で相手のコンピューターに送り込むということが始まる時代であります。そうするとどのくらいエネルギーが減るかというケーススタディーがあるわけですが、それが図—5でございますけれども、例えば通勤しなくなるということになると、その通勤と、仮に分散勤務の場合、一番左は自家用車ですから例外といたしましても、右の二つを比べてみても、つまり都市大量輸送機関が満員で運んだ場合とそれからそういった機関を使わないで分散勤務の場合とを比べてみても、約五分の一程度エネルギー消費が減るわけであります。したがいまして、こういった情報化社会における交通と通信の代替ということを考えると、交通においても長期的にはエネルギー消費が飛躍的に減る可能性が強いということでございます。  三番目に民生でございます。産業、運輸、民生の最後の民生でございますが、これは先ほど申し上げたように家庭用と業務用とに分けられるわけでありますけれども、業務用については実は暗黒大陸と言われておりまして、現状分析すらはっきりわからないという状況でございます。ですから、今回は家庭エネルギー動向のみについて申し上げたいと思います。  家庭需要は、先ほどの産業や運輸に比べてまだ伸びる可能性が実はあります。なぜ伸びてきたかということが重要なわけでありますけれども、これまでは需要の伸びというのは、高度成長によって所得がふえてくるということによって、テレビだとかクーラーだとかそういった耐久財がふえてくるということによって支えられてきたわけであります。しかし、これは六ページ目の下のグラフをごらんいただきたいわけでありますけれども、主要耐久財はほぼ飽和、急速に伸びる段階から少なくとも伸びが落ちる段階に来ております。  では今後はこういった家庭用需要は何で伸びるかというと、非常に単純に言いますと、住宅規模が拡大すると伸びる可能性があります。これはかなり地域の詳しいデータに基づいて研究した結果が幾つかありますけれども、何で一体家庭用需要が決まるかというと、やはり今後はどうも家庭の要するに住宅の大きさがキーになるのだということになっております。ところが、御承知のようにGNPと住宅の広さというのは必ずしも比例しないわけでありまして、それは七ページ目の下のグラフを見ていただくとおわかりになるのですが、GNPとこれは新築着工住宅面積の一戸当たりの推移でございますけれども、これは土地問題その他の難しい問題があってなかなか大きくならないということがありますので、こういったことからすると民生用の家庭用のエネルギーも今後飛躍的に伸びる可能性はなかなか難しいのではないかということになるわけであります。  ですから、以上の需要面をまとめますと、今後の日本エネルギー需要長期的には純減、伸びるのではなく減る方向に行く可能性が強い。それを分野別に見ますと、産業や運輸のシェアが低下して民生のそれが拡大するという形をとるでしょう。ただ、これは非常に重要な意味があるわけでありまして、それはどういうことかといいますと、例えば鉄鋼で一キロカロリー使うのと家庭で一キロカロリー使うのとは、キロカロリー単位、熱量単位にすると同じだけれども、その内容が非常に違うわけであります。鉄の場合には例えば非常に千度とか高い温度で使うわけです、鉄鋼石を溶かさなければなりませんから。ところが家庭の場合は、二十度ぐらいで暖房するとかせいぜいお湯を沸かすと百度ということでございます。天ぷら油で二百度、三百度ということでございます。ですから、産業や運輸が減って民生が伸びるということは、実はエネルギーの中身が非常に質が低くなってくるということを同時に意味するわけであります。  以上のことを、需要動向前提にしながら今度は供給について少しお話を申し上げたいと思います。一体こういう需要動向と整合的な供給構造というのはどうなるのだろうかということでございます。これは七ページ目の上のグラフをごらんいただきたいわけですが、ポンチ絵が書いてございますけれども、工業化時代のエネルギー供給構造というのは需要が非常に急激にふえたわけでありますから供給量もふえたわけでありますが、そのときに主要供給源がどんどん変わっていったわけであります。図—9、下のグラフのところにどういう供給源があったかということを百年ぐらいにわたって書いてございますけれども、最初一八八〇年代、百年ぐらい前はまきが中心であった。それから一九二〇年代から四〇年代にかけては石炭の時代になって、現在では御承知のとおり石油の時代になっているわけであります。ですから、供給量の増大とともに主要エネルギー源も変わってきたということが言えるわけであります。  では今後、ここで七ページ目の上のグラフでございますけれども、「脱工業の時代」と書いてございますけれども、これはどうなるかというと、恐らくいましばらくは石油の時代が続くだろうというふうに考えられます。先ほども石油三十年説というのがありまして、まあいろんなとり方があるんですが、従来は確認埋蔵量がふえる、例えば一九四〇年代から現在を比べますと大体三倍ぐらいに推定値がふえておりますけれども、という形で供給埋蔵量がふえるという形で需要はふえてきたけれども需要に対する埋蔵量の比率はそう悪くならないのだという形で伸びてきたわけでありますが、昨今は逆に需要量がそれほど伸びないという形で、石油の今食い延ばしが割とうまくいっているという状況であります。ただし、先ほどからの議論にもありましたように、石油価格はこれはほぼ今世界で大体見方としては似たような見方をとられているわけでありますけれども、九〇年代からまた上がる、上がるけれどもそこから先は恐らく四、五年ぐらいの循環をしながらやや長期的に上がってくるという形態をとるであろうと思います。したがって、こういった石油価格の循環的な変動が経済の攪乱要因にならないような形で、保険をつけていくことが今後のエネルギー政策として非常に重要であるというふうに考えられるわけであります。  以上のようなことを考えますと、いわゆる代替エネルギーの位置づけ、つまりここでは代替エネルギーというのは石炭とか原子力のことを考えているわけでありますけれども、意義が大分変わってくるのではないかというふうに考えられるわけであります。三ページ目のところにちょっと示してありますけれども、「石油危機以前」の考え方というのは、需要がこれからもまだまだ伸びる、それに対して主たる供給源であった石油埋蔵量余りふえないだろう。ですから、需要がふえるのに対してピッチャーがなかなか力がなくなるといったようなものでありますから、需要供給の間にギャップができるだろう。過剰需要になるだろう。その過剰需要を埋めるものとして代替エネルギーを大きく開発していかなければならない。つまり、量を補うという意味代替エネルギー開発していかなければならないといったような形で代替エネルギーの意義に対する議論が行われてきたと思います。しかしながら、以上のようなことを考えますと、つまり「石油危機以降」とそこでは書いてあるわけでありますけれども需要が低迷する、ただし石油は恐らくさらに不安定化するだろう。ということは、価格が恐らく非常に不安定化するということが続くだろう。ということになると、代替エネルギーの意義というのはむしろ保険、つまりまさかのときの対応としての意味が非常に大きくなるのではないか。つまり量的な補いではなくて、まさかのときの保険としての意味を強く持つのではないかというふうに考えられるわけであります。  そうした場合に、例えば石炭とか原子力についてどう考えるかということでありますけれども、私は経済学者でございますので、技術的なことはよく知りませんのでその点は省かせていただきますけれども、例えば原子力について言うと、今言ったようなことからすると電力需要余りふえません。もしふえるとしても民生部門における冷暖房等の、つまり余り質の高くない需要部分がふえるわけであります。こうしたところがふえることを、ここからは実は判断の問題になるわけでありまして、それにもかかわらずやはり電力をふやすべきだ、原子力をやるべきだという考え方も当然ございます。ですけれども、私の個人的な感じでは、そういった需要を賄うためにわざわざ原子力等で賄う必要はないだろう。それはなぜかというと、第一番目に、どこかで大きな事故があればやはり同型炉、同じ形の炉はモラトリアムにどうしてもならざるを得ないだろう。ということからすると、やはり供給の安定化というよりむしろ不安定化につながる可能性が強い。それからもう一つは、需要の中で実は産業から民生に移るということは、特に電力等で言うとどうなるかというと、非常に単純に言うと、ベースロードとピークロードがあった場合に、ピークロードの比率がベースに比べて大きくなる可能性が非常に強いわけであります。ただし、これは例えば貯蔵をすればいいわけですが、それはいろんな意味で非常に難しい問題がございます。したがって、今のままで考えるとピークロードが高まる。ところが、原子力というのは、これは御専門の方がよく御存じのようにベースロードに非常に適したエネルギーでありまして、そうすると需要はピークがふえる、供給側はベースがふえるということでの一種のそこでの整合性をとることがやっぱり厄介になる。そうすると、例えば揚水をするとか、もうちょっと不経済なことをいろいろ考えなければならないということになるのではないかと思います。ただし、原子力に関する判断は、判断でございます。つまり、そういう前提を見たときに、どっちをとるかということは判断の問題であるということでございます。  もう一つ代替エネルギーであります石炭でございますけれども、今国産の石炭のことを頭に置いて申し上げているわけでありますけれども、国産であるわけでありますので、保険としての意味は非常に大きいわけであります。問題はもちろん価格でございますけれども、私はやはり最近かなりエネルギー税制について不思議な感じを持っておりますけれども、それは道路整備に充てられている石油消費税の問題でございます。例えば六十一年度で二・五兆円ほどありますけれども、これは今目的税になっているわけでありますけれども、こういったものの一部をこういった保険のため、つまり安全保障のために仮に使う、例えば一千億を使えば一千万トンに対して一万円ということになるわけであります、非常に単純な話ですが。というふうなことを考えると、実は税制における対応でかなり国産エネルギー石炭に関する対策は可能性がいろいろな形で出てくるのではないかというのが私の感じであります。  三番目に、今需要供給を見てまいりましたので、今後の課題ということでございますけれども、私は基本的にはこのエネルギー問題はなるべく市場メカニズムに任すべきである。すなわち、余り政府とかそういったものは介入しないで、価格の上下によって合理的な行動を消費者もしくは企業にとらせた方が結果的にはうまくいくと考えております。  以上のような、需要がふえてこない、それから需要の内容が非常に変わっていくというような状況では、実はエネルギー供給産業の今まで基盤となっていた地域独占という理由がだんだん薄れてくる可能性があるということであります。この点についても長期的にかなりいろいろな形での突っ込んだ議論が必要になってくると思われます。  例えば電気事業法というのがございますけれども、なぜ今まで、先ほどの御議論にもありましたけれども需給見通しが非常に高い方高い方に引っ張られたかというと、一つはやはり電気事業者は供給義務というのがございまして、絶えず需要家が欲しがるだけの供給をしなければならないという条項がございますから、それを考えるとどうしても安全サイドをとって高目高目につくるということがあったわけであります。これは実は高度成長時代にはある意味で非常にうまくいくわけでありまして、供給義務がある、だから施設を拡大しよう、そのコストを賄える価格にしようという形になるわけでありますけれども、今後のように需要が非常に価格で変わり、しかも低迷するようなときには、むしろピークに対してその料金体系を変えるとか、つまり需要の変動を規模の拡大によって対処するのではなくて、むしろ市場メカニズムによって対応する、それによって負荷率の低下を防いで資本コストをむしろ下げる方がはるかに現実的ではないかという感じがいたすわけであります。  最後に、国際的な側面でございますけれども、今までの議論で一つ申し上げなかった非常に重要な点は、日本産業構造エネルギー離れしていることは間違いないのでございますが、そのときに実は鉄鋼業とか自動車工業とか、そういったような重化学工業が、もしくは化学でもそうですけれども、現在途上国にどんどん移りつつあるという問題がございます。これを我々は産業移転の問題と言っておりますけれども、これは実は途上国の経済発展の可能性、もしくはそのときにどういう形でエネルギーが調達できるのかできないのか、どういう形で省エネルギーをやっていくのかということで非常に大きな問題を今後持っているわけでありますから、そういったことから考えると、日本かなりこれまでいろいろな経験と知識もしくはファンド、資金を持っておりますから、途上国に対する産業移転、重化学工業の産業移転が円滑になるような形で積極的な援助をしていくということは、世界経済が健全な発展をしていく上でも非常に重要であるというふうに考える次第でございます。  少しまだ時間がございますけれども、大体そういったことがきょうの申し上げたい点でございます。
  15. 浜本万三

    会長浜本万三君) 各参考人の方々には、有益なお話大変ありがとうございました。以上で参考人の方々からの意見聴取は終わりました。  これより質疑を行いたいと思います。質疑のある方は会長の許可を得て順次御発言をいただきたいと思います。
  16. 小野明

    小野明君 初めに生田先生にお尋ねいたしたいと思いますが、先生のお話ですと、石炭というのはこれはもうなくなってもいいんだと、むしろ酸性雨CO2の問題等からまことにこれは石炭というのは縮小すべきである、こういう御意見のように拝聴いたしました。しかしながら、今室田先生の御意見ですと、やはり国産のものであり、この石炭エネルギーというのは何らかの形で保護すべきではないか、こういう御意見がございました。  今、第八次の石炭政策の答申を間近にいたしまして、石炭というのが大きな問題になっております。私は福岡県でございますが、実際は石炭関係で成り立っている町、石炭による経済で成り立っているというのが多いのでございます。これが、石炭がばっさり切られるというようなことになりますと、勢い社会政策というような問題にも発展をしてくるわけでございますが、そういった点で生田先生と室田先生、両先生の御意見を伺いたいわけでございます。  もう一問ございます。もう一問は、大島先生の御意見でございますが、電源別発電原価の試算結果というのがございます。昭和六十年度運開ベース、資料の五ページでございます。これを見ますと、一キロワットで原子力の場合十円程度、こういう資料が出されております。これは、原子力というのは先生ももう専門家でございますからなんでございますが、設備投資というのが非常に大きい。それからリサイクル問題、それから廃棄物の問題等でまだ計上されてない、予測されない費用というものがこれに考えられなければならぬのではないか、こういうふうに私は思うのです。そうしますと、一キロワット当たり単に十円ということで一般水力、石油火力、石炭、その他と単純に比較ができるものかどうか、十円程度であるから低コストであるというふうに言えるかどうか、この辺をひとつお尋ねいたしとうございます。  以上二問でございます。
  17. 工藤万砂美

    ○工藤万砂美君 関連でございますが、川上参考人にちょっとお伺いいたしたいのですが、今委員がお伺いしたような原子力のコストの問題でございますけれども、確かにリサイクルの問題に対する研究とかそれから廃棄物のコストの問題、これを私どもとしては今世紀中に何としても完成をしなきゃならないというような感じがしてならないわけです。ということは、今世紀で最大の恐怖を与えたのは原子力であるし、また我々日本社会に最大の不幸をもたらしたのも原子力で、平和利用ということでございますね。しかし、今世紀の我々の時代でいろいろなそういう問題が起きたのを何としてもやっぱり二十一世紀につないで、二十一世紀には本当に完全無欠なものにしてお渡ししなきゃならぬといった責任があると思うのですよ。  そういう意味から言いますと、先般来のチェルノブイリの問題やらいろんなことを考えてまいりますと、これはやはりただ単に原子力の発電コストが安いからということだけで、先生がおっしゃったようにやみくもに進展させていいものではないという意見と私も同じ意見を持っているわけです。そこで、原子力がただ単に安いからというだけではなしに、実際にこういう問題がある、ああいう問題があるということで先生は試算をされていられるかどうか。例えば今の少なくとも一般水力のコストとかあるいは石炭のコストぐらいになってもこれは私はやはり完全なものにしていかないと、これからの原子力の平和利用という問題については国民の皆さん方の合意を得づらいという問題があると思うのですよ。ですから、今小野委員がおっしゃいましたように、コストとしては大体どの程度の上乗せがされるんだというお見通しがあればこれはぜひお伺いをさせていただいて、そしてその御意見で今後のいわゆる原子力政策に対する国のてこ入れの仕方というものを我々は積極果敢にやっていかなきゃならぬ、かように思うのですよ。たまたま私ども北海道に御案内のような幌延という問題を控えておりまして、これは幌延にいたしましても完全ないわゆる取り組み方というものがまだ理解をされてない面がございます。  私はフランスも行ってまいりましたし、ベルギーにも行ってまいりましていろんな現場を見てきておりますけれども、どちらかというと、フランスのやり方とかベルギーのやり方というのは非常に私はまだラフだと思います、はっきり申し上げて。日本世界で唯一の原爆の被害国でありますから、それだけに国民の原子力という問題に対するアレルギーというものがかなり強いと思うのです。そういうものを払拭するためには、やはりこういうふうに完全なんだ、そして完全な研究に向かって今政府かなり力を入れてやっています、そのためには、やはりコストはただ単に十円とか十一円ということでなしに実態としてこのぐらいかかる見通しでございますよぐらいのことを言って、一般の方々に安心をしてもらった上での原子力政策というものを進めていかないと私は大変だと思うのですね。そういう面でのいわゆる関連質問でございますけれども、ぜひそれはお伺いをさせていただきたいと思うのです。
  18. 浜本万三

    会長浜本万三君) それでは、生田参考人から御発言いただきたいと思います。
  19. 生田豊朗

    参考人生田豊朗君) 石炭の問題でございますが、先ほど時間がありませんでしたので、はしょってしまいまして細かいところまで申し上げられなかったので、多少間違ってお聞きになったように思います。  石炭全般の問題と国内炭とに分けて申し上げたいと思いますが、石炭の問題について先ほど私が申しましたのは、環境問題に十分注意しなければいけないということを申し上げたわけであります。  なぜかと申しますと、石炭石油に比べて世界的な埋蔵量もたくさんありますし、それから地域的にも石油のように中東に偏在しているものでもない。世界各国かなり分散してバランスがとれて賦存しておりますので、したがって、これから先のエネルギー供給については石炭にもう一度戻って、つまり、かつて産業革命の前から石炭の時代が続いてきて、その後石油に追い抜かれたわけでありますが、以前のように石炭に大部分を依存する形でもエネルギー供給には問題がないのではないか。そういう石炭に非常に傾斜した考え方が特に第二次オイルショックの後から最近まで強かったことがございます。これは明らかに行き過ぎでございまして、それぞれのエネルギーはそれぞれの特徴がありますので、どのエネルギーだけでいいとかあるいはどのエネルギーがなくてもいいという考え方は私はとっておりません。それぞれのエネルギーがバランスのとれた形で組み合わされるべきだというふうに思っておりますので、石炭ももちろんこれから重要なエネルギーとして供給量の相当の部分を占めていくと思います。ただ、石炭だけですべてをカバーできるというものでもありませんし、特に石炭余りに傾斜して供給、すなわち反対の面から申しますと、消費を拡大しますと環境への影響が相当出てくると思います。  ただ環境問題、特に酸性雨につきましては、これは我が国で非常に進歩しましたような公害対策技術、これが世界的に採用されますと相当程度それを解決することが可能だろうと思います、排煙脱硫でございますけれども。したがって、私は日本の公害対策技術世界的に輸出するのが特に石炭については酸性雨CO2もある程度同様でありますけれども石炭消費に関連する環境問題を解決するいい方法ではないかと思います。酸性雨につきましては、御承知のようにこれは大体自分の国内で発生した原因国内に影響を与えるということは少ないわけであります。アメリカのような大きな国ではそういうことがございますが、日本のような島国は特にそうですし、ヨーロッパでも西側にある国で発生した原因が東側にある国によって、つまり偏西風に乗って酸性雨が降るということでありますので、自分の国の国内だけでは解決できない問題がありますので、これはやはり国際協力で解決していくということだと思います。したがって、石炭については石油天然ガス、原子力などに比べて私は一番環境問題の影響が大きいものだと思っていますので、その点に特に注意をして、しかし石炭は今後とも重要なエネルギーとして使っていくべきであると考えております。  それから国内炭の問題でございますけれども、これは先ほど御指摘がありましたように、私もその国内炭の閉山、これは今進行しているわけでありますけれども、これが余りにも早く過度に進行しますと地域経済に非常に大きな影響を与えますし、それから雇用問題も大きく出てまいりますので、これはむしろ一種の社会問題として慎重に考えなければいけないと考えております。ただ、日本国内炭のように、もう資源状況が悪くて、したがってコストの点で海外の石炭と大きな差がついてしまっているものについては、これはやはり長期にわたってそれを残していくというのは非常に難しいことだろうと思います。  残すとすれば、もう安全保障という見地から経済性を無視して残さなければいけないということだと思いますが、その場合に費用の負担の問題、先ほど室田さんからはガソリン税の一部を充当したらどうかという案がございましたけれども、何らかの形でそういう国民全般の負担で残すというコンセンサスを獲得するか、そうでなければその石炭消費産業が、これは安全保障というよりも、その燃料の調達のための一種のバーゲニングパワーとして国内炭を残す必要があると考えるかどうかであります。これは鉄鋼の例などに見られますように、消費産業としてはバーゲニングパワーにはもうならないという判断をしているようでありますので、そうでなければ国民全般の負担ということにせざるを得ないかと思います。ただ、もう現在の出炭ベースでは、一次エネルギーの総供給に対して三%程度のウエートしかないものでございますので、果たしてエネルギー供給の安全保障という面から、三%の国内炭を相当長期にわたって残す、そのために相当の国民に負担がかかるという政策が妥当かどうかという点については慎重に検討する必要があると思います。
  20. 室田泰弘

    参考人室田泰弘君) 私の方は、需要が今後落ちるであろうというふうに考えておりますので、そこから出発させていただきたいと思います。  まず最初に石炭とその環境問題でございますが、これは生田先生がおっしゃったとおりの問題がございます。ただし、酸性雨に関しては何が恐らく割と早く問題になるかというと国際問題でありまして、大体日本の汚染排出量に比べて中国の排出量は、ある測定によりますと数十倍と言われております。ということになると、国際問題の方が恐らく酸性雨としては早く出てくるであろうという感じがいたします。  それから、第二番目の炭酸ガス問題でございますけれども、これは確かに温度上昇があるということが非常に厄介な問題でありますけれども、それ以上にその場合に非常に大きな問題になりますのは雨、降雨分布が実は世界的に変わってくるという問題がございます。ある推計によりますと、アメリカの中西部ですね、今の穀倉地帯の雨が非常に減って、むしろシベリアが非常に温暖化して穀倉地帯になるというような推計もあるように、要するに世界的な農業の生産力の配分が大幅に変わる可能性があるということが非常に大きな問題で、今世界的に議論されているということだそうでございますけれども。そのときに、仮にCO2問題を議論するとしたら、温度上昇があるのかないのか、それから、あったときに一体どういう形で何といいますか、世界的な波及があるのかということについての御慎重な検討、これは私専門家でございませんので、むしろ例えばシカゴ大学におられる方とか、いろいろな専門家がいらっしゃいますから、そういった方々を御喚問になっていろいろと話を聞かれたらよろしいのではないかと思います。  それから国内炭の問題でございますが、これも今申し上げたように、需要がある程度落ちてくるということから考えますと、石炭の位置というのはかなり依然として大きな位置を占めるということでございます。したがって、その場合にある程度国民に負担を強いてもやはり安全保障のためには石炭を維持すべきであると考えております。  ちなみに、現在の場合には市場コスト、つまり輸入炭に比べて高いか安いかという、要するに企業ベースで議論しているから当然合わないわけでありますけれども、セキュリティーコストで計算する場合にはどうやるかといいますと、一単位エネルギーが減ったときにどれだけ例えばGNPなり生産量が、つまり国全体の経済活動が落ちるかという形で評価をするわけであります。ですから、今は石炭を例えば鉄鋼に使ったときに海外炭と比べて高い、低いという議論でありますけれども、セキュリティー議論をする場合にはそうではございませんで、仮に一単位エネルギーが入らなくなったときにそれを国内炭で補う場合にどれだけメリットがあるかということで評価するわけでありますが、そうすると、アメリカ等でもそういった計算がございますけれども、大体普通のコスト評価の二倍から三倍というところ、これは条件によって変わりますから単純な数字は申し上げられませんけれどもかなり今みたいな形での比較とは違った結論が出る可能性があるということでございます。
  21. 大島恵一

    参考人大島恵一君) このコストの試算については、これは資源エネルギー庁その他の数字でありまして、どちらかというと非常に正確なというよりは相対的な比較というふうにお受け取りいただければと思うわけです。  それで第一の御質問の、原子力のコストがどうであるかという場合に、ここに書いてございますコストは御指摘のように発電のコストでありますけれども、実は日本の原子力発電のコストというのはたしかフランスに比べて倍ぐらいでありまして、台湾などに比べても五割以上高いわけです。それで、これはいろんな理由があるわけですけれども、例えば安全性の問題、あるいは耐震設計もありましょうが、いろいろ日本の設計における何と申しますか、いわゆる余裕を持った設計をしているということにもよるわけですが、もう一つは、実は原子力の特徴と申しますのは、これは非常に大きな部分が資本費であります。資本費であるということは、それは土木工事ではなくてかなり機器が入っているわけで、これが先ほど申しました非常に技術集約的なエネルギーである。すなわち、燃料費というものでなくて、資本費というものは技術革新によってさらにそのコストを下げることの可能性が非常に大きいわけで、実はこの新しい型の原子炉、軽水炉の場合でも、大体最低今の一〇%あるいは一五%ぐらいは少なくとも日本においてもコストダウンができるだろうということはもう既に言われているわけです。  そういう意味におきまして、その一番問題と申しますか、コストの問題というのは、一つは原子力の場合にはかなり技術革新によってさらにコストダウンができるという可能性があるということを第一に指摘したいわけです。ただ問題は、ここで指摘しておりますのは、例えば今の石炭の問題あるいはほかのエネルギーとの競合の問題あるいは再生エネルギーその他もあるわけですが、私が申し上げたのは、確かに今後のエネルギーというものは、ただ原子力だからいいとか石炭だからいいということではなくて、かなりいろんなエネルギーが共存するという形で存在することになるのではないか。その場合に、電力のコストを引き下げる大きな要因としては、私はやっぱり原子力というものが非常に重要な役割を技術集約的であるということで果たすと、そういうふうに考えるわけです。  それから、第二の問題として原子炉、すなわち発電以外のコストがあるのではないか。これはやっぱり一番大きなものはいわゆる廃炉といいますか、使ってしまった原子炉を、先ほどもちょっと御指摘があった取り壊すのに費用がかかるのではないかということが、これは今計算に入っていないものです。  それから、その次には廃棄物というようなことになりますが、廃棄物は燃料でございますので、例えば試算で、高レベルの廃棄物が二〇三〇年というかなり四十年、五十年ぐらい先で、ドラム缶で三万本から四万本ぐらいのものだと言われているわけですけれども、これは多いようにお考えになりますけれども日本じゅう全体の累積でありまして、この部屋の十倍ぐらいあればそのくらいはたしか入ると思います。ちょっとドラム缶を入れてごらんになると割合そういうものですから。その方のコストは廃炉に比べては大きくないわけですが、その廃炉のコストその他を入れて大体たかだかキロワット時当たり二円ぐらいじゃないかと言われているわけです。これは先ほどほかの、あるいは川上参考人の御指摘があったと思いますが、あるいは生田参考人がたしか委員長をやっておられる、高レベル廃棄物をどういうふうに処置するかということは今検討中でございますので、正確なコスト計算はできませんけれども、けたからいうとそういうけただと思います。
  22. 川上幸一

    参考人川上幸一君) 御質問の点は二つあるかと思いますが、一つは処分をどういうふうに進めていくかという点と、それから処分の費用の問題、二十世紀中に問題をやはりめどをつける必要があるという、全く私も同感でございます。  処分の進め方につきましては、私も大分ヨーロッパ各国状況を見ましたけれども、進め方としては例えばスイスの進め方、これは非常に堅実な進め方をしておりまして、やはり地下実験室をまずつくる。これは実験室の中で岩石の分析をするだけではだめでございまして、やはり実際の地層について、いろいろどういう拡散状態が起こるかとかそういうことは実際の地層でやる必要がある。地下実験室というのは、これはスイスの場合もほかの国もそうですけれども、これは処分場ではございません。処分場ということを考える前にまずそういう実験が必要である。いろいろなテストをして、十分地層とそれからそこに処分する高レベル廃棄物との関係を見きわめる必要があるということがまず第一段階でございます。  それから、その次にやはり高レベルの廃棄物を処分する場合は千メートルぐらい深いところの地層に入れるわけですけれども、その地層の選定が非常に重要であるというふうに私は考えます。できるだけやはりいい地層を選定する必要がある。そういう段階までいくのにはまだちょっと時間がかかりますけれども、やはりそういう段階を踏んで着実に進める必要があるというふうに私は考えます。これは放射性廃棄物の専門部会の全体の意見でもあるというふうに私は思います。  それから廃棄物の処分のコスト、特に高レベルですけれども、これは今正確なコストを言えと言われましてもちょっと申し上げられない点がございます。これは何も日本だけではなくて、各国とも正確なコストというのは、まだ実際に地層処分をやっているわけじゃございませんので正確には出せない。各国はどういうふうにしているかといいますと、そこはやはり概算で出しているわけです。つまり、地下処分場をつくる技術というのはそれほど技術としては難しいものではないわけで、地下の炭鉱を掘る技術、それが基本になると思います。それをもう少し深くまで掘り下げるということでありまして、地下炭鉱をつくるということで、それをモデルにして考えれば概算的な数字は出てくる。現在その概算をやっております、 あるところで。近いうちにその概算の数字は出ると思いますけれども。  むしろ必要なことは、先ほどおっしゃいましたように、二十世紀中に解決した方がいいとおっしゃいましたが、つまり世代間の負担の公平ということから考えますと、廃棄物はもう既に相当量発生しているわけでありまして、毎日毎日また発生を続けているわけでありますから、そのコストというものは現在の電力料金の中に入れなければいかぬわけです。その措置を一日も早くとる必要がある。これを延ばしていきますと、結局我々は原子力発電の電力で非常にいい生活をしたけれども、後の世代はその後始末だけを押しつけられるということになるわけですから、概算でもって、これは私は個人的な数字としては最初のスタートはキロワットアワー二十銭か三十銭でいいと思いますけれども、そのくらいのことで、とにかく発生者である電力会社がそれを今から出していく。それから、理論的にはやはり今までに発生した分についてもある程度出さなければいかぬわけですね。これは最終的には消費者である我々が負担するわけですけれども、その措置をまずやるべきだ。  それから、後の処分の進め方は実際にはまだちょっと時間がございますから、その間にやはり十分に技術開発をしてできるだけ安全な処分ができるように必要な実験は十分重ねるということで進めていけばよろしいかと思いますので、まず当面必要なことは、今おっしゃったように、コストをどういう形でか現在の料金の中に入れていくということをやる必要があるだろうと思います。
  23. 神谷信之助

    神谷信之助君 生田参考人大島参考人どちらかと、それから川上参考人にお伺いしたいと思うのですが、ソ連のチェルノブイリの事故以来、大体各国とも原子力発電の計画というのはスローダウンぎみになってきているように思うのですけれども、それに対して我が国の原子力ビジョンが、先ほども御説明がありましたけれども、非常に壮大な計画になってきているんですね。その根拠に、一つは経済性の問題、それからもう一つは安全性の問題があります。  経済性の問題は、先ほどちょっと質問がありましたので私重ねてお尋ねはしませんが、安全性の問題でたしか日本が使っている軽水炉でスクラム件数というのは非常に少ないというようにおっしゃっているんですが、まあ事実そうなっているんですけれども。しかし、軽水炉自身もアメリカの中では、今もう現在の軽水炉の設計は将来価値ある選択とはならないように思われる、軽水炉の設計は改良されるか代替原子炉の概念が考慮されなければならないというような議論も出てきているようなんですけれども、その辺が一つどういうことなのかという点。  それから事故の問題ですが、先ほどちょっとおっしゃいました平和利用か軍事利用かという問題で、平和利用を完全に貫徹をしていくという点でやっぱり非常に大事なのが自主、民主、公開の三原則を本当に貫くかどうかということになろうかと思うのですよ。そういう点でいいますと、事故でも原発の会社の方は、あってもなかなか実際に正直に報告しないですね。今度のソ連の事故でも、大分おくれてからでないと実態がわからないという状況。スリーマイルのときでも相当時間がかかりましたし、それから日本の原子力発電所の小さい事故だけれども、その事故を我が党が指摘をして、あるいは国会等で指摘をして初めて明らかにするというようなことで三、四件出ていますね。だから、そういう点からいうと本当に安全性は確実なのかどうかという点が一つあるわけです。  そういう点で、今廃棄物処理の問題ではまだこれからいろいろ研究開発が必要だという点を川上先生も御指摘になっておりますが、基礎的な研究といいますか、原子力発電についての開発の基礎的なそういう研究という点が非常にまだおくれているという指摘も学者の中にはありますし、そういう点を含めて我々はそのスピードアップをして、そしてどんどんつくっていく、新しく三十五地点まで立地点をふやしていくというようなそういうことがいいのかどうか、そういう必要があるのかどうか、この辺について生田先生、大島先生のどちらかと川上先生にちょっとお聞きをしたい、こう思います。
  24. 沓掛哲男

    ○沓掛哲男君 関連質問でございます。  私は、室田先生とそれから今のに関連した原子力の安全性、そういうものについてお尋ねしたいんですけれども、さっき室田先生は、確かに我が国の中ではいわゆるエネルギー消費量はそうふえていかない、減っていく方向だということだと思います。しかし、このエネルギーという問題は一国で考えるべき問題じゃなくて、グローバルでやはり考えていかなきゃいけないというふうに思います。  ことしの七月七日に世界の人口は五十億を超したということを米国の人口研究所が発表しておるわけで、その中で先進国の人は四分の一程度で、そして今の人口のふえ方を見ると、先進国一に対して開発途上国は三の勢いで伸びておるわけでございまして、そうなると、今の先進国の人たちはそうエネルギー消費する方向にはいかないでしょうが、開発途上国の人たちはどんどんどんどんやっぱり先進国の後を追ってくるわけですし、現に北京等へ行くと今住宅をどんどんつくっておりますですね。日本の後を追いかけてきているということになると、国際的に見るとこのエネルギー消費というのは非常に大きなものになっていくんじゃないか。そういう中で一方我が国のことも考えなきゃいけないわけですけれども、今石油というものはいろんなもの、石油でなきゃ使えない用途があるわけで、例えば内燃機関なんかは石油でなきゃ使えませんし、いろんな化学製品をつくるのも石油でなきゃ、不可能じゃないけれども経済的にはできませんし、石油というのは私はそういう非常に国際的に大切な、グローバルな資源だというふうに思います。  そこで、電力という形にできるんであれば、これは原子力とか石炭というものでできるだけ電力用のものをつくっていったらいいんで、そういう中で、例えばクライシスマネジメントというものをいろいろおっしゃいましたけれども、クライシスマネジメントというのはそんなにいつまでも長い時間続くわけではございませんので、やはりベース的なものさえあればピーク的なものはある程度その期間は遠慮してもらうとかいうことでも対応できるんじゃないか。ですから、先ほど来いろいろのお話で、電力に対してのシェアは原子力が二六%で、ある程度ほかとのエネルギーのバランスをということを言われるのだけれども、その原子力についてほかに問題がないということであれば、原子力のウエートが電力のシェアに占めるのは相当高く占めても問題は起きないんじゃないか。問題というのは、例えば核燃料というものもかなり長期間に続くものでしょうから、クライシスマネジメントという面においては対応できるんじゃないか。ただ、いろいろ安全性とか立地とかいろんなことはあるんでしょうが、そういうものが今どういうふうなのか。そういうものがうまく動いているならばできるだけ電力用のエネルギー源としては原子力を、急でなくても計画的に高く高めていくことが我が国エネルギーとして必要じゃないかというふうに思います。  それから一つ石炭についてでございますが、さっき室田さんから道路整備に石油消費税が云々ということがございましたけれども、これはここへ来るまでにはいわゆる受益者負担、それから損傷者負担という理念のもとに長い間かかって何回もお互いに話し、理解を得たものでございまして、それをすぐほかへ持っていくというのはちょっと理論に飛躍があるのじゃないかなというふうに思うわけでございます。  それからもう一つは、ODAの予算が今どんどんどんどんふえている。それは確かに資源国もあるし非資源国もあるわけですが、資源国の中にはこういう石炭関係埋蔵量の多いところがいろいろあるので、ODAというのは大抵いろいろ借款条件を決めるけれどもそのとおり返してくれない国が多いんですから、もう少しうまくそこの資源をODAとの関係確保していくというようなそういう何か施策も必要ではないかなという気がするのですが、お答え教えていただければと思います。
  25. 浜本万三

    会長浜本万三君) 今の最後の質問はどなたに。
  26. 沓掛哲男

    ○沓掛哲男君 最後のは室田さんにいろいろお聞きして、それから原子力の安全性だとかそういうお話は川上さんか大島さんかにお聞きしたいと思ったのですけれども
  27. 浜本万三

    会長浜本万三君) それでは生田参考人からお答えをいただきましょう。
  28. 生田豊朗

    参考人生田豊朗君) 原子力の御質問につきまして、大島先生と私と両方でお答えさせていただきます。  ソ連のチェルノブイリの事故でございますが、これは申し上げるまでもなく大変な事故であります。世界各国の原子力発電計画に相当大きな影響を与えておりますが、実は私二週間ほど前にヨーロッパ、パリに参りまして、国際エネルギー機関、IEAの事務局長のシュテークさん、私は彼女と個人的に非常に親しいものですから訪ねましていろいろ懇談をしてまいりました。そのとき私もシュテーク事務局長に、ソ連のチェルノブイリの事故以後世界の原子力発電計画にいろいろ影響が出ているようだが見通しはどうかということを聞いてみたのですが、そのシュテークさんの説明をそのまま申し上げますと、これまででも国によって原子力発電計画が順調にいっている国、それから原子力政策がしっかりしている国となかなかうまくいってない国と両方あったわけだが、今度のソ連の事故の影響は、これまでいろいろ難しかった国にはもっと難しい問題を投げかけて現実に相当スローダウンしている、しかし原子力計画が順調にいっていて政策のしっかりしている国にはほとんど影響がないということを言っておりました。  具体的に申しますと、フランスと日本がうまくいっている国でございまして、両方ともほとんど影響は出ておりません。アメリカ、これは原子力計画が余り順調にいっていなかったわけですが、最近順調にいきかけていたところにこのソ連の事故が起きましたのでまた停滞した状況に落ち込んでおりまして、私は今後ともアメリカの原子力計画はなかなかうまく進まないんじゃないかと思っております。問題はドイツでございまして、これはちょうど日本、フランスとアメリカの中間ぐらいの位置づけでありますが、これはシュテーク事務局長の話では、近く総選挙がございますので、総選挙の結果にかかっているというようなお話でありました。したがいまして、チェルノブイリの原発事故の影響というのは私もシュテーク事務局長の感じと同じような感じを持っておりまして、ある程度の影響はありますけれども、それによって世界の原子力発電計画が全部だめになってしまうということではないと思います。  第二に安全性の問題でございますけれども、これはもう安全性を重視するのは申すまでもないことでありまして、私はもう原子力発電から安全性を抜いてしまったらもともと成立しないと考えておりますので、これは何といっても安全性第一でやっていくことが大事だと思います。したがって、これからの原子力発電計画にしましても安全性を多少手抜きをして建設を促進するというのは明らかに誤りでありまして、これから先の原子力発電への需要かなり大きいと思いますので、安全性に十分注意をしながら原子力発電に対する需要の増大に対応していくということが重要だと考えております。
  29. 大島恵一

    参考人大島恵一君) それでは、まず最初に世界の動静については、私もこの間カンヌの世界エネルギー会議に参りまして、そのとき二つの非常に大きな問題、すなわち石油原油価格低落とチェルノブイリ、この二つが非常に大きな話題になっていたわけですが、大体、今生田参考人の言われたように、このことは非常に大きな影響を与えてはおりますけれども、また逆に言えば、ある意味で非常に原子力の安全性の問題を根本的に見直す契機となったという意味で、将来に対してむしろ、プラスというのはおかしいんですが、重要な影響、そういう意味での影響を与えたと思うのです。  具体的に申しますと、先ほどTMI、アメリカの事故の例が出ましたが、それからチェルノブイリ、この二つが非常に大きな原子力における事故であったわけですが、まず、TMIのときの一番特徴的なことは、あれだけの事故が起きていながら環境に対してはほとんどと言っていいくらい許容量以下の放射能しか出なかった。その意味では、非常に逆説的な話になりますけれども、TMIの事故というのはある意味で安全の概念といいますか、安全性というもので一番大きな問題は、安全性の一番基本は一般の周りの環境に影響を与えないということが最大の要点でありまして、原子炉が壊れたり、経済的な負担を電力会社が負うというのは、これはいわゆる安全性というより経済性の問題であって、安全性からいえば放射能が出るか出ないかが一番大きな問題で、むしろTMIの事故はその意味では非常にもう極端なミスオペレーションといいますか、運転者の全く不手際にもかかわらず安全性が守られたというそういうことがあった。  ところが、今回のチェルノブイリの事故で実は最も重要な点は、環境に対して極めて大きな影響を与えたということであります。それで、これはもちろん私どもが今回いろいろ調べて、これは生田参考人の研究所でもいろいろ言っておられますけれども、基本的にはやはり安全設計の概念及び安全規制の概念がソ連においては非常に西側と違うというところがあるわけです。それからもう一つは、あの原子炉というものが軍事用のプルトニウム生産炉であったために、いわゆる商業炉としての最適な設計になっているかどうかという点では、率直に言って技術的には、ソ連側はそういうことはないと言っておりますけれども、我々は依然としてそれは疑問を持っているし、私の個人的見解であれば、そういう二つの目的のためにある意味でそういう安全性の犠牲を払っていた。しかも、あとは具体的に申しますと運転のときに安全のいろいろな機能をとめて、そして実験をしたというようなそういうことがあるわけです。  それで、その意味日本の場合に安全の問題について幾つかの点が教訓になっているわけでありまして、一つは安全設計の概念があくまでも環境に出ないということを中心にしているわけでありますし、商業炉の場合には、徹底的に安全というのは、今のコストも含めて、もし一度事故を起こせばこれはもう会社はつぶれるどころじゃない、もうすべての今までの計画がふいになるというような意味では、これは極めて重要な要因であるために、二つのこと、西側と申しますか、自由世界においてはその関心が非常に高くて、むしろオーバーデザインといいますか、過剰設計になっているんじゃないかと言われているわけですが。それともう一つは、今言いました運転要員との関係について、日本などでは非常に装置の安全性と運転というものは一貫して取り扱っているわけです。それで、実は安全性というのは最終的には経験によって確立されていくことでありまして、ただ設計概念とかあるいはただトレーニングだけじゃなくて、実際にいろいろな事態を一つ一つ経てきて、そして安全性というものが出てくるわけです。その意味日本におけるスクラムのレートがほかの国の十分の一であるという事実は我々にとって大変重要な事実でありまして、日本の今まで安全性というのは、日本が被爆国であるとかいろんなこともありまして、日本における安全性の要求というのは非常にシビアであったために技術的にはそこまできているわけです。  私は今回の原子力ビジョンの作成にもかかわったわけですが、最も重要な問題は、ちょうどビジョンの検討の途中でチェルノブイリの事故が起こったわけですけれども、その点で、我々は原子力の長期ビジョンを出すときに、今申しました安全性の問題について日本の過去の経験及びTMIの事故、チェルノブイリの事故、そういうものを、チェルノブイリの詳細についてはまだ不明なところもございますが、大体ソ連側も非常に今回は積極的にデータを出して協力をしておりますので、大体我々の知識は間違いないと思いますが、その結果、我々はむしろ確信を持って日本の原子力計画は間違ってなかったんだという感覚を特に安全性については持っているわけです。  ただ問題は、先ほどちょっと私が触れましたように、日本だけがそんなことを言っていてもほかで何か起こったら大変じゃないかという議論は依然としてあるわけでありまして、この点については、これは国際協力あるいは先ほどの技術の公開というような問題もありますが、日本が、商業的な問題もあるでしょうけれども、安全性及び原子炉の技術日本がすぐれているところは、やはり積極的に海外にも出す必要があるんじゃないかというようなことを私は考えております。  それからもう一つ、先ほどの緊急事態が起こったときに原子炉を全部とめるかどうかということは、まだ技術が未熟な時期には何かが起こったらそれ大変だということですけれども、そういった緊急な事態というのは、私は今の少なくとも技術状況、あるいは日本の運転のシステムから見れば、日本においてそういうことは起こらないと思いますが、例えばほかの国で起こったときに日本の原子炉もとめるかどうかという問題があったわけです。事実たしかTMIのときはしばらくとめた、PWRをとめたんですけれども、今の技術というものが今申しましたように国によってだんだん違ってきているということもありますし、お互いに情報を交換しているという意味で、そういう事態ですべての炉をとめるというような事態というのは実際問題として将来は、特別の場合絶対起こらないとは言わないんですけれども、非常に少なくなってくるんじゃないかと私は思っているわけです。例えば、少なくともチェルノブイリが起こったときに西側が炉はとめなかったわけです。その意味は、あの炉と軽水炉のPWR、BWRとは非常にシステムが違いますから、それで自動的にとめる理由はないわけです。では全く同じPWRが今度どこかで事故を起こしたときにどうするかということについては、今申しましたように、まだ非常に未知なところが多い場合にはそういうことが起こるわけですけれども、現在のようにどんどん技術が進んでまいりますと、私はそういう事態というのはだんだん減ってくるというふうに思うわけです。ですから、将来において何か事故が起こってすべてとまるというような意味でのこの原子力の何といいますか、シェアが大き過ぎるということに対する懸念はむしろだんだん減っていく方向にあるというふうに私は考えているわけです。
  30. 川上幸一

    参考人川上幸一君) 安全性の問題につきましては、今お二人の参考人から御意見がございましたし、私は経済学の方でございますので、私から申し上げるのは余り適当ではないと思います。  それで、スピードアップしていくのがどうかという点につきましては、これはもう先ほど申し上げたとおり、私はやはりスピードアップということはもともと原子力には向かないというか、そうしようと思ってもなかなかできないんだという面がございますので、その点は先ほど申し上げたとおりでございます。  それから、チェルノブイリの事故の影響ですけれども、これは先進国、ヨーロッパが地理的には非常に近いところにあって、各国それぞれいろいろな影響を受けております。しかし先進国の問題と同時に、原子力は発展途上国かなりやりたいというところがあります。これはお隣の中国もそうですし、韓国その他インドネシア、みんなやりたいと思っているわけですが。途上国がどうして原子力をやりたいかというのは、やはり日本エネルギー事情とは大分違いまして、これはパキスタンのカーンさんという原子力委員長が見えたときにパキスタンの事情を聞きまして、確かに例えば石油火力を建てる方が最初は安い、だけれども、パキスタンみたいな外貨のない国では石油価格がちょっとでも変動したらもうおだぶつだ、とてもじゃないけれどもそういうものはつくれない。その点、原子力は最初資本費が非常に高いけれども、ウランそのものは非常に安いわけですね。どうしてもやはり経済計算をやってみるとパキスタンではやはり原子力だと、そういう結論が出るんだという話を伺いましたが、一般的に途上国というのはそういう状況があると思います。  それで、日本の役割というのは、先ほどからいろいろお話がありましたように、確かに日本だけが一生懸命うまくやっても近所の国で事故が起きるというようなことがあったらこれはもう日本もやっていけないということになりますので、国際協力をやはり日本はやるべきだと。そういう段階に来ているにもかかわらず非常に日本国際協力という点ではおくれておりまして、今まで盛んに先進国から技術をもらってやってきたにもかかわらず現在軽水炉技術というものはかなりいいところまで来たのに協力しないということでは、これは国際的にも非常に日本の立場は悪くなると思うのですね。ですから、特に安全面等を中心にしてそういう途上国、少なくともアジアの途上国に対して日本が積極的に協力していく。原子力協定一つ見ましても日本の結んでいる原子力協定は先進国との協定ばかりで、途上国との協定というのは最近の中国との協定が一つあるだけでございます。もっと原子力協定を結んでそれで協力をしていく。原子力の場合はやはり協定がないとなかなか協力を進めにくいという面がございますので、協定の中で必要なことはちゃんと決めて、それでやっていくということが非常に必要だろうと思います。  以上でございます。
  31. 室田泰弘

    参考人室田泰弘君) お答え申し上げます。  まず最初に、世界的なエネルギー問題が重要ではないかという御指摘でありますけれども、私もそのとおりであると思っております。その場合に、かなり世界エネルギーの伸びは人口の伸びに比例するのではないかという御指摘でありますけれども、それもそのとおりだと思います。ただし、少しこの人口の伸びについては調べてみたことがあるんですけれども、どういうことが起こっているかといいますと、一人当たりGNPがふえてくると、あるところ、数百ドルまでは非常に人口の伸びが高うございまして、そのある段階を超えると、つまり所得水準がふえてくると人口の伸び自体は急速に落ちてくるという現象がございます。ただし例外国がありまして、それはカソリック諸国でございます。これは若干例外でございます。ということになると、途上国がうまく健全な発展をある期間のうちにできれば、途中はきつい人口爆発の時期があることは間違いないわけでございますけれども、ある時期を超えれば割と人口の伸びは世界的に見て落ちついてくる可能性があると思います。  この場合に日本は一体何をなすべきかということが第二点でございますけれども一つは、やはり今もおっしゃったように、確かにこれからの世界エネルギー需要の問題は途上国の問題であることはほぼ間違いないわけであります。その場合に先ほど申し上げましたように、日本がもしもこれ以上何といいますか、非常に重要な経済条件のために使うなら別ですけれども、せいぜい民生の暖房とか冷房にそのエネルギーを使うぐらいならば、それをとっておくことによって途上国に使ってもらう、それをとっておくということがまず第一であろうと思っております。  それから、第二点は代替エネルギーの問題でございますが、例えば石油が安いときには私は逆に日本石油を使うべきだろうと思っております。例えば先ほどから議論になっておるこの発電源別の原価でございますけれども、これはちょっと先ほどどなたかからの御指摘もありましたけれども、現在の価格低落のもとではほぼ石油火力と原子力はもしもこの想定を使っても同じぐらいになる。ただし瞬間値でございますから、それが何も正しいとか、だからどうということではございませんけれども、要するに、この数字というのはせいぜいお互いに比較できる程度であるということで御理解いただいた方がよろしいと思います。  とすると、安いときになぜ日本石油を使った方がいいかというと、今余り安過ぎるために石油関連会社等が開発をやめてしまっているわけです。ですから、新規の埋蔵量増加は実はこの数年の価格低迷ということが非常に大きく効いておりまして、むしろなかなか新規開発石油関連会社が向かわないという状態が起こっております。ということになると、むしろ需要家がある程度安くなったらどんどん臨機応変に石油を使うということが石油価格の下支えになって、それがエネルギー関連業者のある意味で将来に対する期待ですね、要するにこのくらいならこれからももっと埋蔵量をふやして採掘、探鉱をふやしてもいいなということにつながるわけでありますから、日本が逆にエネルギーが安いときにはそれをむしろ食うことによってある程度下支えをするということは、むしろ積極的な役割ではないかと考えるわけであります。  それから道路についてでございますけれども、おっしゃるとおりで、これはかなり乱暴な議論だと思いますが、ただ何を申し上げたかったかと申しますと、今閉山をしてしまいますと、石炭というのは一たん閉山してしまいますと、まあ技術屋でないからもしかして間違っているかもしれませんが、復活するのは非常に困難だというふうに聞いております。もしもそうだとすれば、最初石油三税が道路を目的にしたときには議員立法であったように伺っておりますけれども、その当時と比べてやや舗装もよくなったし、そういったときに二・五兆円のうちの一部を今非常に、今やめてしまえば何といいますか、永久に閉山に追い込まれるようなところにある程度向けるというのは、確かにおっしゃるとおり背後関係とかいろいろあって難しい問題はございましょうが、私はそういうことは学者でございますので勘弁していただくことにしまして、そういった形での使い方もあるのではないかということを申し上げたかったわけでございます。
  32. 浜本万三

    会長浜本万三君) 他にまだ御質疑の方あると思いますが、時間も経過いたしましてお約束の時間が参りましたので……。
  33. 工藤万砂美

    ○工藤万砂美君 一分だめですか。  実は、私どもこのエネルギー調査会の中でも特に緊急の課題というのは、何と申しましても今日本のいわゆる石炭産業の問題をどうするかということで、今第八次政策を目の前にしているものでございますから、きょうはエネルギーの中でもほとんど特に原子力の問題にお触れになられて、石炭の問題については室田参考人からちょっと御意見をいただいたということでございまして、私どもは、もう少し活発に、どういうふうにしたら国内石炭を残していくかあるいは残すべきではないかといった議論が出るかと思って実は楽しみにしておったわけですが、たまたま室田参考人がちょっと石炭の問題をお触れになりました。感謝しておりますけれども、たまたま今一番最初に同僚委員から御指摘ございましたように、石炭というのはいわゆる日本の国のエネルギーの安全保障というには余りにも少なくなってしまいまして、エネルギーの安全保障にはならないということは我々も承知をしております。  しかし現実の問題として、産炭地域振興臨時措置法からいいますと、六条指定や二条指定、十条指定を入れますと二百十六市町村がいまだにまだ石炭政策の恩恵を受けているわけです。それで、その人口からいいましても八百三十万人も実はいるわけですよ。そういう方々が直接間接、あるいはまた何らかの形で恩恵を受けて各市町村に住んで、地域住民の方々が生活をしているということを考えますときに、ただ単に合理性だけで、いわゆるそれは室田先生のようにエネルギーは市場メカニズムに任した方がいいということになりますと簡単に全部つぶれてしまいますね、石炭というのは。そういうふうにしたくないということで、我々は何とかしてよりよい八次政策を出したいなということで頑張っているわけですよ。  そこで、これは私の個人の意見ですけれども、先生方にお伺いしたいのですが、まず国外炭と太刀打ちできるというようなことになりますためには、やはり国内石炭産業自身が合理化をしてコストを下げなきゃならぬということもありますけれども、三倍にもなっている石炭は到底そんなことできません。したがいまして、この間じゅうから話になっておりますけれども、言うならば輸入石炭に関税をかけるという方法が一つと、それを財源にするという方法と、それから、エネルギーの専門家ですから西ドイツへ行ってお話を聞いたろうと思いますけれども、言うならばコールペニヒ制度の問題がございますね。これは国民全体で負担するということからいうと、例えば日本の各電力業界が負担をしていただいて、わずかに一キロワット当たり二十銭かそこらやってくれれば五百億や六百億の金は出ますよと。そうしますと国の財政にも非常に助かるという問題がございます。  そこで、例えば電源開発株式会社がもっとコストを下げる下げると九電力から言われていますけれども、そこにお引き取りいただいて、各電力がそれを買うわけですから、若干九電力のコストが高くなってもこれはコールペニヒ制度と同じ形になって何とか国内炭がやっていけるし、九州では先ほどお話がございましたように原料炭鉱はつぶれてしまうという心配の中でも、原料炭を一炭に造成できるなら造成して、選炭比率を変えるとか、あるいはまたもっと先ほどお話がございましたような硫黄分を抜くとかいうふうな方法をとりながらやっていけると私は思うのですよ。例えば九州が二%のサルファがあれば、北海道は例えば〇・三%でございますよと。両万合わせて使えば何とか公害規制にひっかからないような、しかも脱硫装置をみんなつけていますからね。そういうことで九州の石炭も北海道の石炭もお互いに生きていけるではないかといったような考え方を我々持っているわけですけれども、そんなような、コールペニヒ制度のようなことについて諸先生からこれはどうだというような御意見を承るわけにはいかないでしょうか。
  34. 浜本万三

    会長浜本万三君) 工藤委員にはまことに申しわけないのですが、その問題は八次答申前後にまた機会をつくらせていただきたいと思います。したがって、今のせっかくの御質問でございますから、参考人の方々からどなたかお一人、何か御発言があれば伺いたいと思います。
  35. 工藤万砂美

    ○工藤万砂美君 御発言があればということで結構です。
  36. 生田豊朗

    参考人生田豊朗君) 大変難しい問題でございますけれども、私は率直に申しまして、何らかの助成措置をするとすれば、これはただではできないわけでありますので、だれかが負担しなければいけない。先ほど石炭に触れて申し上げましたように、国の安全保障ということでしたら私は国民全般が、つまり納税者が負担するのが一番正当だろうと思います。それから石炭消費産業にとって、国内炭を残すことがメリットがある、つまり将来の輸入炭価格交渉その他に関連しまして、バーゲニングパワーとして残した方がいいのであれば、消費産業がそう思えば消費産業が負担すべきであるというように思います。  先生の今おっしゃいましたような電気料金に上乗せするというのは、これは認可料金制でございまして、マーケットメカニズムが通用しない世界でありますので、これはもう税金の場合とほとんど差がないということでありますし、日本国民のすべてが電気を使っているわけでありますので、これは結局納税者が負担するのと大差がないと思います。果たしてエネルギー供給の三%のものについて、国民全部がそういう負担をするというコンセンサスが得られるかどうか私はよくわかりませんのですが、これはその点についてコンセンサスが得られればもちろん結構なことだと思いますし、また御指摘がありましたような輸入炭をプールするというのも、実は私、しばらく前に個人的に似たような案を考えまして提案したことがございますけれども、残念ながら余り受け入れられなかった経緯がございます。この点も負担をする人が果たしてそういう認識を持つかということでございますので、これはどうしても必要だという国民的なコンセンサスができればもちろんそれは結構だと思っております。
  37. 工藤万砂美

    ○工藤万砂美君 ありがとうございました、その辺で。
  38. 浜本万三

    会長浜本万三君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人の皆さんに一言お礼を申し上げます。  本日は、長時間にわたり御出席をいただき、貴重な御意見をお述べいただきましてまことにありがとうございました。ただいまの御意見等は今後の調査参考にいたしたいと存じます。  なお、本日参考人から御提出いただきました参考資料のうち、発言内容把握のため必要と思われるものにつきましては、本日の会議録の末尾に掲載させていただきたいと存じますので御了承をいただきたいと存じます。     ─────────────
  39. 浜本万三

    会長浜本万三君) 次に、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  産業資源エネルギーに関する調査のため、次回調査会参考人出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  40. 浜本万三

    会長浜本万三君) 御異議ないと認めます。  なお、その日時及び人選等につきましては、これを会長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  41. 浜本万三

    会長浜本万三君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時四分散会